くにさくロゴ
1991/09/17 第121回国会 参議院 参議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第3号
姉妹サイト
 
1991/09/17 第121回国会 参議院

参議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第3号

#1
第121回国会 法務委員会 第3号
平成三年九月十七日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月十三日
    辞任         補欠選任
     北村 哲男君     種田  誠君
     肥田美代子君     篠崎 年子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鶴岡  洋君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                野村 五男君
                千葉 景子君
                中野 鉄造君
    委 員
                加藤 武徳君
                斎藤 十朗君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                福田 宏一君
                糸久八重子君
                篠崎 年子君
                瀬谷 英行君
                種田  誠君
                三石 久江君
                橋本  敦君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
       法務省民事局長  清水  湛君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  今井  功君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    石附  弘君
       建設省住宅局住
       宅政策課長    川村 良典君
       建設省住宅局民
       間住宅課長    石井 正弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○公聴会開会承認要求に関する件
○借地借家法案(第百二十回国会内閣提出、第百
 二十一回国会衆議院送付)
○民事調停法の一部を改正する法律案(第百二十
 回国会内閣提出、第百二十一回国会衆議院送
 付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、肥田美代子君及び北村哲男君が委員を辞任され、その補欠として篠崎年子君及び種田誠君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鶴岡洋君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に千葉景子君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(鶴岡洋君) 公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案の審査のため、来る九月二十四日午前十時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。
 つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(鶴岡洋君) 借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明並びに衆議院における修正部分の説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○糸久八重子君 社会党の糸久八重子でございます。
 私は、最初の質問者でございますから、総論的な質問をさせていただきたいと思います。
 このたび借地法、借家法、建物保護法の三つの法律を廃止して借地借家法という新法を制定するということですが、そのようになった理由について、まずお聞かせ願いたいと思います。
#10
○国務大臣(左藤恵君) 借地法、借家法は、大正十年に制定されまして、昭和十六年に改正された後は基本的な改正がなくて既に半世紀が経過した、こういうことでございます。
 現行法の仕組みでは、この間の社会経済情勢の変化に対応し切れなくなってきている、こういう問題があり、特にその画一的な規制ということになりますと、貸そうとする側にとりましても、また借りようとする側にとりましても障害となってきている問題があり、かねてからその不都合が指摘されてきたわけでありまして、今回の改正はこのような不都合を解消して、当事者の権利義務関係をより公平に、かつ合理的にするということによりまして、利用しやすいとか貸しやすい、また借りやすい、そういう借地・借家制度を築くということを目的として今回の改正を行ったものでございます。
#11
○糸久八重子君 続いて大臣にお伺いいたしますが、借地・借家の現状をどう認識していらっしゃるでしょうか。
#12
○国務大臣(左藤恵君) 今、申しましたように、現行の借地法、借家法では、借地人、借家人の権利等の保護とその安定化を図るということを目的として法が決められておったわけでありますが、こういった点、一層安定化を推進しようという点では、今回の改正法につきましても、変わるところはございません。
 ただ、借地人や借家人が法の趣旨に従って、現実の生活において、現状も一応は安定はしておるわけでありますけれども、いろんなケースが出てくるだろうと思います。そういった意味におきまして、借地・借家関係のより一層安定性を図ろうとすることを期待しての今回の改正である、このように御理解いただければと思います。
#13
○糸久八重子君 自分の家を持てない人たちに対し、生活の基盤である住居を安定させたいという意味で、現行の借地法、借家法の果たしてきた役割は非常に大きいものがあったと思います。
 現行の借地法、借家法が制定されてから七十年も経過し、この間の社会経済情勢の大きな変化に対応できない状況とのことでございますが、自分の家を持てない経済的弱者の人たちの立場というのは変化はないような気がするわけでございます。この社会経済情勢の大きな変化というのは、具体的に何がどう変わって、現行法のどの点がどのように対応し切れないというのでしょうか。
#14
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 今回の改正の主な点は、定期借地権制度の創設とかあるいは期限つき借家制度の創設、あるいは借地権の存続期間の見直し、あるいは正当事由を明確化する、あるいは地代家賃増減請求の手続を改善する等を主な内容とするものでございますけれども、このうち定期借地権は借地に対する需要が多様化していることに対応しようというものでございます。
 御承知のように、現在の借地法というのは、非常に規制が画一的でございまして、つまり堅固の建物、非堅固の建物という種類の違いは認めておりますけれども、要するに、俗に言う一たん貸すとなかなか土地は返ってこないというような現状が生まれてきたわけでございます。そういうようなことから、貸す方でも土地は借地に出せない、また、借りようとしても高額の権利金を支払わないと土地が借りられない、現実の問題として借地の供給はどんどん減ってきておるというのが現在の状況でございます。
 こういうような状況の中で、例えば一定期間だけでいいから土地を借りたい、その期間が来たら必ず返します、こういうような形、あるいは、例えば住都公団等で七十年なら七十年の期間借地に提供してもらえば、そこに公団住宅をつくって人に貸す、しかし七十年たったら必ず土地を返しますというような紳士協約で、現実には借地をしているという事例も出てまいったわけでございます。そういうふうに長期の、あるいは一定の期間、事業用で十年なら十年、十五年なら十五年貸してもらえば、間違いなく土地は返してもいい、こういうような方々がたくさん出てきたわけでございますけれども、現行の借地法ではそういうものに対応することができない。こういうことから新たな借地契約のパターンとして定期借地権制度を導入するというようなことにいたしたわけでございます。
 それから、例えば期限つきの借家、これはまた後ほど詳しいお話が出ようかと思いますけれども、サラリーマンが転勤等をする場合に、東京にある家に人が住まなくなる。そういう場合に、現在の借家法ですと人に貸すと自分が転勤から帰ってきたときに必ず返してもらえるという保証がない。そういうようなものにつきまして、一定の厳しい条件を付した上での話ではございますけれども、一定の期限が来れば必ずその家は返してもらえるという期限つき借家制度というようなものを新たに導入する、こういうような点であります。
 またさらには、借地権の存続期間につきましても、現在の社会経済情勢の中で堅固の建物と非堅固の建物、そういうような区別がそもそも適当であるかどうか、あるいは存続期間もそれによって違えるのが適当であるかどうか、社会経済情勢の変化は非常に激しく進んでおるというような状況のもとで、これらの存続期間についても見直しをする必要がある。こういうようなことから今回の改正がされておるというふうに申し上げて差し支えないと思う次第でございます。
#15
○糸久八重子君 貸す側と借りる側との経済的、社会的状況の変化というのはわかりました。
 しかし、今度の法改正というのはそればかりが理由ではないようですね。その辺はいかがでしょうか。
#16
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 大臣も御答弁になりましたように、借地借家法の基本的な目的は、借地・借家関係の当事者の実質的な公平を確保する、借地・借家人の権利を保護してその権利の安定化を図る、こういうことをその主たる目的とするわけでございまして、今回の法改正においてもそのことは基本的には全く変わっておりません。
 ただ、そういうことを前提にいたしまして、先ほど申し上げましたような定期借地権とか期限つき借家の制度を創設して利用者の需要にこたえるとか、あるいはもう一つは法律関係というものを、形式的には借地法、借家法、建物保護ニ関スル法律という片仮名の文語スタイルによる三つの法律があるわけでございますけれども、そういうものを一本化して国民の皆様方にもわかりやすい法律にする、こういうことを一つの大きなねらいとしているわけでございます。そのような過程の中で、借地法にとって非常に重要な概念である更新拒絶の際における正当事由というようなものにつきまして現行法では極めて簡単にしかその表現をしていないわけでございますが、これまでの判例とか裁判実務で積み上げられてきて一つの基準に到達しているものを法文化してわかりやすいものにする、こういうようなこともいたしているわけでございます。
 個々的に見ますと、これは借地人にとって有利であるとか、あるいは地主にとって有利であるとかというような見方をしようと思えばあるいはできない点もないわけではないとは思いますけれども、基本的にはやはりそういう公正、公平を図るというようなこと、あるいはわかりやすくするということ、新しい需要に対応すること、こういうような観点から今回の改正案が作成されておる、こういうふうに御理解いただきたいと思う次第でございます。
#17
○糸久八重子君 現行法の借地法、借家法は借り主の権利を手厚く保護しておりますが、これは持てる者と持たざる者との力関係を考慮してのことであると思います。このことはこの法律の基本理念だと思うわけですが、借地人、借家人の保護規定の多くが強行性を持っているというのもやはりこのためだろうと私は解釈いたします。この精神の有要性は現在でも変わりませんし、今後も持ち続ける必要があると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。今回の法改正のどこにそのような精神が生かされておるでしょうか。
#18
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、借地法、借家法は借地人の権利を保護してその安定化を図る、こういうような趣旨のものでございます。
 大正十年の制定によってその存続期間に一定の制約が加えられると申しますか、民法との関係で申しますと一定の長期の存続期間を保障しなければならない、それから昭和十六年の改正でいわゆる正当事由条項が追加されて、正当事由が存しない限り貸し主の方では土地・建物を返せと言うことができなくなった、こういうことになるわけでございます。こういうような借地人、借家人の権利の保護と安定化を図るという基本的な枠組みは今回の改正では変えてないわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、新たな時代の需要に対応するための諸制度を導入したということ、それから借地権の存続期間等について現在の社会経済情勢に即した合理的な調整を行うこととしたこと、こういうことでございます。
 なお、借地人の権利を保護するという面で具体的に特に新法によって保護されるようになった点を挙げよということでございますと、例えば建物が滅失した場合でありましても掲示による借地権の対抗力の維持を認める、こういう制度を新たに導入した。これは第十条第二項でございますけれども、そういう借地権の対抗力のいわば拡張を図った、こういう点。あるいは、転借地権者が借地権設定者に対して直接に建物買い取り請求権を有するということを明らかにしたというようなこと。あるいは、借地権者が建物を建てかえようとする場合に、事前に借地権設定者の承諾を得て権利関係を確定しておくことができるような道を開いたということ。そのようないろいろ細かい点はございますけれども、そのほかにも借地上の建物の善意の貸借人に対し借地終了時に明け渡し猶予を請求することができるというような制度も新たに導入する、このようなことをいたしているわけでございます。
 個々的に見ますと、細かい点で借地人、借家人の保護を図っているわけでございますが、基本的には先ほど申し上げましたように、従来の借地・借家法の理念を変えることなく新しい時代に応ずるための新しい類型の借地あるいは借家制度の導入を図った、こういうことになろうかと思います。
#19
○糸久八重子君 基本的には変わりはないという御答弁をいただきました。現行法を改正するのではなくていろいろ新しいものがつけ加わったということは伺ったわけですけれども、それならば新法を制定した理由というのはどこにあるのでしょうか。
 恐れ入りますが、御答弁もう少しゆっくりと聞かせていただきたいと思います。
#20
○政府委員(清水湛君) お尋ねの趣旨が、現行法の借地・借家法はそのままにしておいて、例えば新しい定期借地権を認めるというための特別の法律をつくったらいいのではないかというような趣旨をも含まれているというふうに思いますけれども、基本的には借地・借家をめぐる法律関係の一環でございますので、新しい類型の借地契約関係を導入するということになりますと、これは借地法の改正という形で借地法の中に入れなければならない、こういうことになろうかと思います。期限つき借家の新しい制度も、これは借家法の中に入れるということになろうかと思います。
 そういうことを前提とした上で、現行法におきましては借地法及び借家法という二本の法律になっているわけでございますが、いずれも他人の不動産を借りるという関係での法律でございまして、法律の趣旨、性格を共通にする面がございますため、一般にもこの二本の法律をあわせて借地・借家法というような形で呼ばれていることもあるわけでございますが、そういうようなことを考慮いたしまして、かつ一般の国民の方にわかりやすい法律にするという趣旨からこの改正案のような一本の借地借家法という法律案にさせていただいた、こういうことになるわけでございます。
#21
○糸久八重子君 今お話の中で、従来の漢字片仮名まじりの難しい法文スタイルを現代語に改めてできるだけわかりやすくした、そうおっしゃっているわけですが、それは大変結構なことだと思います。私は法務委員会は門外漢でございましてよくわからないのですが、日本の法律というのは一体どのぐらいあって、その中に片仮名文語体の法律というのは大体幾つぐらいあるものなのでしょうか。
#22
○政府委員(清水湛君) 正確な数字は本日ただいま持ってまいりませんでしたけれども、あるいは後で答弁を訂正させていただくことになるかどうかわかりませんが、法律の数は約千六百ぐらい我が国に現在有効な法律があるというふうに言ってよいと思います。
 それから、その中で漢字片仮名まじりの法律が約百四十ぐらいある、こういうふうに承知いたしております。その中で漢字片仮名まじりでございますけれども、法務省関係のものがかなりのウエートを占めておるというような実情でもございます。
#23
○糸久八重子君 一般的に言って、法律は大変難しくてわかりづらいのですね。それは文語体はもちろんそうなんですが、口語体になっていても大変回りくどい記述が多くて、そして素直に理解できないものが多いわけですね。法律というのは、法律の専門家だけがわかって国民には難解な法律、読んでもすぐわからないような法律というのはやはりいけないのであって、もっとすらっと読んだらすぐわかるような法律にしていただきたいと思うのですね。私もいろいろと法律にかかわって読んでいるのですが、一体何を言っているのだかさっぱりわからないというところが大変多いのですよ。
 先般来、私は法制局にお願いをして実は育児休業法という法律をつくりました。そのときも大変記述が難しくて、もう少しこれがすらりとわかりやすいような表現にならないだろうかと法制局に申しましたら、いや、法律というのはこういうふうに書かなければならないものでございますと、そう言われまして、そんなものなのかなと引っ込まざるを得なかったのですけれども、特にこれからできる法律、法律というのは国民のためにあるものですから、わかりやすいような法律にぜひしていただきたいと思うのですが、その点について、大臣、いかがでございましょうか。
#24
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、国民に法律をできるだけ理解しやすくわかりやすいものにするということが最も大切なことであることは仰せのとおりだと思います。そのためには現在、今お話がありましたように、片仮名で文語体の非常に古い形の法律というものを平仮名、口語体という表記に改めるということは必要であると思いますし、今局長から御答弁申し上げましたように、法務省の所管の法律に非常にそれがたくさんありまして、こういったことについて民事訴訟法とか民法とかそういった法律、これにつきましては既に現代語化と申しますか、そういうことで非公式の研究会を設けていろいろ基礎的な研究に着手しておりまして、できるだけ早い機会にこうしたものの口語化、現代語化を図っていかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
 今お話がありましたように、法律というのは概念といいますか、そういうものを正確に表現して、いろんな解釈ができないように一つの概念を正確に表現しなければならないという、そういう法律としての使命みたいなものがあるわけでございますから、そういう意味で単に語りかけるような言葉だけで条文をつくり上げるということは非常に困難であることは御理解のとおりだと思いますけれども、少なくとも今の段階でそうした明治以来の法律そのままで残っておる、あるいはそれを一部修正しているという程度のことであっては本当に現代の社会に生きる人たちの法秩序を確保していくという点で問題があろうと思いますので、これはできるだけ早い機会にまずそうした口語化、現代語化を進めていかなければならない、このように考えておるところでございます。
#25
○糸久八重子君 そういう意味では、新法は読んで大変わかりやすいということで評価をしたいと思います。
 さて、この新法を制定することによって法務省が考えているように土地利用の促進が図られるのかどうか、その辺についてはいかがでしょうか。
#26
○政府委員(清水湛君) 土地の有効利用とか高度利用ということが政府の土地政策の中で非常に重要な目的になっているということは私ども承知しているわけでございますけれども、御承知のように、借地借家法というのは貸し主と借り主の権利義務関係の調整を図ることを目的とする法律でございまして、直接に土地の高度利用とか有効利用とか、あるいは住宅供給を拡大するとかというような土地住宅政策を目的とする法律ではないわけでございます。広い意味における土地政策の一環を占めるということは、これはそのとおりだと思いますけれども、それは借地借家法自体がそれを目的とするということではございませんで、借り主、貸し主の間の法律関係を合理的に調整し、その間の法律関係が円滑にいくことにより、結果として良好な借地あるいは住宅が供給されることになる、つまり貸しやすく借りやすい法律関係が形成されることによって良好な借地・借家の供給が促される、こういう面があるというふうに私どもは考えているわけでございます。
 そういう意味におきまして、土地の有効利用というようなものを直接の目的とするものではございませんけれども、そういう面に寄与することが期待される、こういうふうに考えているわけでございます。
#27
○糸久八重子君 今回の法改正提出に当たっては、最近の土地問題、それに伴う臨時行政改革推進審議会の答申とか、それから日米構造協議等における土地の有効利用促進の動きを受けての面があるのではないかとも思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
#28
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、昭和五十年代後半から臨時行政改革推進審議会の答申等、各方面から広い意味での土地政策の一つとして借地・借家法の見直しというようなものが提言されてきたことは事実でございます。また、さきの日米経済構造協議におきましても、借地・借家法の改正の問題が土地政策の問題の一環として取り上げられたという経緯がございます。
 私どもといたしましては、そういうような土地政策面からのアプローチということではなくて、大正十年に借地・借家法が制定され、昭和十六年に正当事由条項の追加がございましたけれども、実質的な枠組みの変更がされることなく、昭和十六年から数えましても既に五十年という期間が経過しておる、大正十年から数えますともう七十年の期間が経過しておる。こういうようなことを踏まえまして、現在の社会経済情勢というものにマッチすることができるように借地・借家法の見直しをする必要がある、こういう考え方のもとにこの作業を始めているわけでございます。
 昭和六十年に問題点の公表をいたしましたが、まだそのときには日米構造協議では借地・借家法の問題は取り上げられてはおらなかったわけでございますけれども、その問題が取り上げられる前に、既に私どもといたしましては問題認識を持ちましてこの改正作業に着手したわけでございます。
 昭和三十五年にも、実は借地・借家法の全面改正という作業を一時した経緯があるわけでございますけれども、これは途中で一部だけが昭和四十一年改正という形で取り込まれましたが、そのまま実現することなく放置されてきたという経緯もございます。
 そのような経緯を踏まえまして、私ども独自の判断でこのような改正作業に着手した、こういう経過になるわけでございます。
#29
○糸久八重子君 今の臨時行政改革推進審議会の答申とか、日米構造協議の土地の有効利用とか、それを受けている土地基本法、それから一連の土地関係法との関係、それは一体どうなっているのでしょうか。
#30
○政府委員(清水湛君) 土地基本法は、御承知のように、適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な地価の形成を図るための土地政策を総合的に推進することを定めているわけでございます。そのために、土地の利用状況の調査とかいろんなことを具体的に掲げているわけでございます。しかしながら、借地借家法は、これまでも述べましたとおり、貸し主と借り主の権利義務関係の調整を図ることを目的とする法律でございまして、今回の改正は土地基本法に示されている政策目標を達成することを直接の目的とするものではないわけでございます。
 ただしかし、先ほども申し述べましたように、定期借地権制度の創設等、社会経済情勢の変化に見合った利用しやすい、貸しやすく借りやすい借地・借家関係をつくるということによりまして、結果として良好な借地・借家の供給が促され、土地基本法の目的とするところの「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」ことになるのではないか、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。
#31
○糸久八重子君 それでは次に、借地・借家の現状及び推移についてお伺いをいたします。
 日本の住宅の状況、特に借地・借家の現状とか総世帯に占める割合、そういう状況をお話しいただきたいと思います。
#32
○説明員(川村良典君) 御説明申し上げます。
 持ち家の関係でございますが、持ち家のうち敷地の所有関係が借地であるものは、昭和五十八年が二百四十七万戸、昭和六十三年が二百十二万戸でございまして、持ち家の総戸数に占める敷地が借地であるものの割合でございますが、それぞれ七・一%、五・七%というふうに若干減少してきております。
 一方、借家でございますが、借家の総住宅戸数は昭和五十八年が千二百九十五万戸、昭和六十三年が千四百二万戸でございまして、総住宅戸数もふえておりますので、割合といたしましてはそれぞれ三七・三%、三七・五%と余り変化いたしておりません。
 以上でございます。
#33
○糸久八重子君 続いてお伺いしますけれども、借地借家の供給動向、それはどうなっておるでしょうか。
#34
○説明員(川村良典君) 住宅着工統計によりますと、昨年度、平成二年度の貸し家の新設住宅着工戸数は平成元年度と比べまして六・五%減少の七十六万七千戸でございまして、昭和六十三年度以降三年連続で減少いたしております。
 なお、借地による住宅供給戸数のお尋ねでございますけれども、これについては統計をとっておりませんので、数を申し上げるということはできません。
#35
○糸久八重子君 供給動向が減少しているようですけれども、その原因の中で現行法はどの程度障害の要因になっておるのでしょうか。これは法務省にお願いします。
#36
○政府委員(清水湛君) 先ほどの建設省の方のお答えにもありましたように、借地をして家を建てる、持ち家をつくるという数が非常に減少しているわけでございますけれども、そういう減少の背景には住宅金融とかもろもろの要因があると考えられます。
 ただしかし、その一つとして私どもが考えますことは、借地法の規制というものが非常に硬直的で、土地所有者の間に土地を一たん貸すと返してもらえないというような認識が広まる、あるいはそういうことから貸す以上極めて高額の権利金を要求する、こういうようなことが現象として出てまいりました。そういうことがやはり土地は持っていてももう借地には出さない、こういうことになってきたのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。統計的な数字で正確に申し上げることはできませんけれども、現実に借地をして持ち家をつくるという数が毎年減ってきておるというようなことからもそういうことが言えるのではないかというふうに思う次第でございます。
#37
○糸久八重子君 二千万を超える人々が借家に住んでおる、そして六百万の人たちが借地上に住んでいる、そういう状況で今度の法律の改正で約二千六百万の人たちが影響を受けるわけですが、今回の改正に当たってこれらの人々の意見をどのように聞いて、そしてそれをどう集約して新法に反映させたのか、その辺のところをお伺いいたします。
#38
○政府委員(清水湛君) 今回の改正案を作成するに当たりましては、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会で昭和六十年から調査審議を始めたわけでございます。昭和六十年に借地・借家法改正の問題点というペーパーをつくりまして、これを各界に公表いたしました。
 これは関係の学会あるいは法曹界、裁判所とか弁護士会、その他の団体を初め、不動産関連の業界とか経済界、金融界、商工団体、不動産関係の研究団体等、あらゆる団体をいわば網羅したわけでございますが、その中に当然のことながら、貸し主の団体あるいは借り主の団体、借地借家人組合というような形での団体にも当然御意見を求める、こういうことをいたしたわけでございます。さらに、そういう問題点に寄せられた各界の御意見というものを参考にいたしまして、平成元年に借地法・借家法改正要綱試案というものをつくりまして、それをまた公表いたしまして広く関係方面の意見を聞くという形にいたしたわけでございます。
 そういうようなことの過程の中で一つ問題として出てまいりましたのが、今回の改正の中には定期借地権というような制度を新規に導入するどいうものもあるわけでございますけれども、借地権の存続期間の問題とか、あるいは私どもこれは判例をいわば法文化したにすぎないと申しております正当事由に関する規定を明確化するというような規定があるわけでございますが、こういうような規定が現在既に借地人、借家人になっている方々に適用されるということになりますと非常に不利益を受けることになるのではないか、あるいは不利益を受けることになるのではないかという不安を生じさせるというような問題が生じてきたわけでございます。
 私どもは、これからの借地・借家関係のあるべき姿についてもこれらの方々の意見を十分に尊重するとともに、既に借地人、借家人である方々に無用な不安と申しますか、いたずらな不安と申しますか、そういうものを生じさせることは適当ではない、こういうようなことから、新しいこの借地借家法による借地権の存続期間とかあるいはその更新に関する規定、あるいは借家法における更新に関する正当事由に関する規定、こういうものは一切適用しない。つまり、この法律施行の際に既に借地人、借家人になっている方につきましては、これらの点につきましては現行の借地・借家法がそのまま適用される、こういう形でその不安を除去するということに配慮をいたしたわけでございます。
#39
○糸久八重子君 地方によってはさまざまな借地・借家慣行がありますね。特に、その中で金銭にまつわる慣行、つまり権利金とか敷金、それから更新料とか建物建てかえとか名義書きかえ承認料とか借地権割合とかいろいろあるわけですけれども、一般的に不明確なものが多々あるわけです。法律相談でもこれらを払うべきかどうかということ、払おうとするならばどの程度払う必要があるのか、そういう質問が常に寄せられているわけです。これらを明確化ないし規制されるおつもりはおありなのでしょうか。
#40
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、権利金とか更新料とか、あるいは名義書きかえ料というようないろんな呼称があるわけでございますけれども、こういうようなものが一定の地域において慣習的に行われておる、あるいはこれをめぐるトラブルというのが多いということは私ども承知いたしておるわけでございます。
 今回の見直しにおきましても、当初の、先ほど申し上げました昭和六十年の借地・借家法改正の問題点におきましては、借地・借家関係に伴い授受される金銭、これは敷金とか権利金とか更新料等ということでございますが、そういうものに関する法律慣行について何らかの措置を講ずることが必要かという問題点を掲げまして、各方面の意見を聞くということをいたしたわけでございます。
 しかし、これに対しまして、借地・借家法というのは本来借地権とか借家権というものの経済的な対価と申しますか、そういうような価額を規制するというような趣旨の法律ではございませんし、例えば地代・家賃についても規定がございますけれども、これは借地権、借家権というものを存続させるということを前提の上で増減額の基準を示しているというものにすぎないというようなことから、このような金銭について借地・借家法で規律をするということはいかがなものか。
 さらに加えて権利金とか更新料につきましては地域による慣行の差というものが非常にございます。また、金額も時代によって変わっているというようなこともございまして、現実の立法化というのは非常に難しいのではないかという、この立法技術の困難性ということも当然指摘されたわけでございますけれども、少なくとも借地・借家人あるいは地主、家主との関係における契約関係というものをベースにした権利義務関係を法律的に規律するという借地・借家法の中で更新料とか権利金、そういうものの額自体についての規制をするということは非常に難しいということで、今回の法改正からは見送られたという経緯があるわけでございます。
#41
○糸久八重子君 大変不当な金額を要求された場合に、要求された人々はやはり泣き寝入りをしなければいけないのですか。一体どうすべきでしょうか。
#42
○政府委員(清水湛君) 権利金につきましては、最初借地権を設定する際に授受される性格のものであって、この権利金の法的性格は何であるかということについては実にいろんな議論があるところでございます。一種の地代の前払いというふうに見る方もおられますし、あるいは事実上その土地が一たん貸されるともう返ってこない、結局その間土地所有者は所有権者として所有権を行使することができない、こういうことの対価として権利金は授受されるもの、こういうような考え方もあるようでございます。いろんな商業関係の土地ですと、いわば営業的な利益というものに対する対価というような説明も可能な場合もあろうかと思います。こういうような法的性格はかなりあいまいであるということ、それから権利金も法律上当然に要求することができるというわけではございませんで、あくまでも当事者の話し合いによって決めるべき性格のものである、こういうようなことに現在はなっているわけでございます。
 期間が満了した場合の更新料につきましても、話し合いによって更新料を払うということにすることは差し支えないわけでございますけれども、更新料を払わなければならないというような法的な義務はどこにもないということになっているわけでございます。
 そういうようなことの過程の中で、契約更新の際に更新料、あるいは設定の際に権利金というものが当事者間で話題になるわけでございますけれども、特に更新料などにつきましては、貸し主側に正当事由がない限り支払わなくても当然引き続きそこに借地人として居住し、あるいは借家人として居住することができるわけでございますので、不当に高額な更新料の支払い請求については断固として法律的には拒むことができる筋合いのものだというふうに考えられるわけでございます。
 ただ、現実の問題として、以後における地主さんとの関係あるいは家主さんとの関係を円滑にするというような趣旨から慣行的に話し合いで当事者双方納得の上で更新料等の支払いが行われているというふうに承知しておりますが、不当なものについてはそれだけで正当事由が補完されるということはないわけでございますから、不当な更新料の支払い請求等については断固として拒否し、そこに居住を続けるということは法律的には保護されておる、保障されておるというふうに言って差し支えないのではないかというふうに思います。
#43
○糸久八重子君 断固として拒否をすると言いましても、やはり借り主側としては弱い立場にあるわけですね。だから、貸し主側に強い。ことを言われると、どうしても払えないのだから、じゃ出ていかなければならないのだろうかというようなことになるわけです。だから、地方の慣行をそのまま温存させておくのではなくて、やはりきちっとしたものを決めていかなければいろいろトラブルが起こってくるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
 現行の借地法それから借家法が借地人や借家人の側に非常に傾き過ぎているという批判も一部にはあるのです。しかし、私も先ほど申しましたとおり、弱い立場にある者を保護するというのが基本的な立場でありますから、こういう批判というのはおかしいわけでありますけれども、こうならざるを得なかったと申しましょうか、そういう理由というのは、政府、地方公共団体が安価で良質な住宅を十分に供給する責任を怠って、そして貸し主にそのしわ寄せをしてきた面があるのではないかというふうに私は思います。特に土地高騰のために今後もマイホームを持たずに一生賃貸住宅に住まなければならないと考えている人々が徐々にふえているということは世論調査の中でも明らかになっているわけです。いつでも入居できる安価で良質な公共賃貸住宅がたくさんあれば当事者はもっと対等であるはずなのですけれども、借地借家法にしわ寄せしないためにも政府・建設省の責任ある施策を望みたいわけです。
 そこで、建設省にお伺いしたいのですけれども、首都圏における勤労者向け住宅の最近の価格と住宅事情の状況、それから都営住宅の応募の状況について聞かせていただきたいと思いますし、またあわせて今後の住宅供給についてもお伺いをしたいと思います。
#44
○説明員(川村良典君) 御説明申し上げます。
 首都圏における住宅事情等でございますが、まず価格でございます。民間の調査機関の資料によりますと、平成二年一年間に首都圏で新規に発売をされました住宅の平均価格は、マンションが約六千百万円、戸建て住宅で約六千五百万円というふうになっております。
 それから、都営住宅の応募倍率のお尋ねでございます。東京都の新築の公営住宅の入居倍率につきましては、昭和五十六年度は十八・三倍、六十年度は二十八・〇倍でございましたが、平成二年度には五十五・一倍と高い倍率になっておりまして、ほぼ毎年上昇する傾向にございます。ただ、これは新築の公営住宅の入居倍率でございまして、空きを含めました東京都全体の平均の入居倍率は、平成二年度で十三・三倍というふうになっておるわけでございます。
 今後の住宅供給方策についてのお尋ねでございますが、住宅政策の基本は、国民の住宅に対する需要を踏まえつつ、持ち家対策、借家対策をバランスよく総合的に展開することと考えております。しかしながら、大都市の借家世帯の居住水準が低いこと、地価の高騰によりまして、先生御指摘のとおり、賃貸住宅への需要が高まることが予想されますので、公共賃貸住宅を初めとする良質な賃貸住宅の供給を促進することは極めて重要であるというふうに考えております。このため、平成三年度を初年度とする第六期の住宅建設五カ年計画におきましても、公共賃貸住宅全体として第五期計画に比べまして四万戸増の三十八万七千五百戸の公共賃貸住宅の供給を計画しているところでございます。今後、さらに借り上げ方式等によります公共賃貸住宅の供給促進、公共賃貸住宅の総合的な建てかえの促進などの施策を積極的に推進いたしまして公共賃貸住宅の供給を促進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#45
○糸久八重子君 地価高騰とか地上げ、それから固定資産税のアップ、そういうサイクルの中で都心では昔ながらの安価なアパートが消えていきつつあります。辛うじて残った古いアパートには行き場のないお年寄りが取り残されているという現状があるわけです。そして、そのようなアパートも取り壊しに伴って立ち退きを求められているケースがほとんどだと伺っております。行き場がなくて追い立てに眠れない夜が続いているとの訴えが多く寄せられているわけですが、法改正をして土地を有効利用するのならば、これらの方々のために高齢者用低家賃の公営住宅をつくることがまず先決ではないかと思うのです。
 そういう意味で、借家に住んでおられる高齢世帯はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。これは建設省にお伺いしたらよろしいんでしょうか。そのうち、公営住宅は大体どのぐらいなんでしょうか。その辺の数字を教えていただきたいと思います。
#46
○説明員(川村良典君) 高齢者の居住状況でございますが、昭和六十三年度の住宅統計調査によりますと、六十五歳以上の高齢者のいる世帯のうち、持ち家が八五%強、借家等が一五%弱というふうになっております。また、借家居住者のうち公的借家が約三〇%、民営借家が約六七%というふうになっております。
#47
○糸久八重子君 住宅政策として高齢者対策はどうなっておりますか。
#48
○説明員(川村良典君) 住宅政策といたしましても、高齢者の方々の居住の安定の確保を図ることは重要な課題だというふうに認識をいたしております。このため、高齢者の方々の居住状況等を的確に把握いたしまして、地域の実情に応じて老人世帯向けの公営住宅の供給、公営住宅、公団住宅における入居面の優遇措置等の施策を講じてきたところでございます。
 さらに、今年度におきましては、地方公共団体や住宅供給公社が、土地所有者の建設をいたします良質な賃貸住宅を借り上げまして、家賃負担を軽減しつつ高齢者に賃貸する高齢者向けの借り上げ公共賃貸住宅制度を創設したところでございまして、今後とも住宅政策における高齢者対策の充実に努めてまいりたいと考えております。
#49
○糸久八重子君 建設省のそういう施策についてお伺いしたのですが、法務省、やはりそういう行き場のないお年寄りがたくさんいるという現状、それについてはどうお考えですか。
#50
○政府委員(清水湛君) これは、具体的には借地借家法の正当事由条項の問題とも関係してくると思うわけでございますが、先ほども申し上げましたように、借地借家法というのは土地の高度利用とか有効利用ということを目的とするものではない、つまり、東京のいわば下町に低層の木造の住宅が仮にある、そういうものを取り壊して高度利用する、あるいは有効利用するというのは土地政策なり住宅政策の問題でございまして、借地借家法は直接そういうことを目的とするものではないわけでございます。
 正当事由条項をどういうふうに定めるかというような議論の過程で、これもまた後ほど議論になろうかと思いますが、当該借地なりそういうものが存在する土地の利用の状況だけじゃなくて、周辺の土地の利用状況というものを考えて正当事由というものを考えるべきだという議論があったわけでございますけれども、そういうものを入れますと、やはり土地の有効利用、高度利用というところにつながってくるおそれがございますので、そういうものは正当事由条項から落とされた、こういう経緯があるわけでございます。
 したがいまして、有効利用とか高度利用という目的を掲げてこの借地借家法の中で、そういうところに住んでおられるお年寄りの方が、あるいは弱い方が借地借家法によって追い立てを食う、こういうことにはならないというふうに私どもは考えているわけでございます。あくまでも当該土地なり建物を使用する必要性、あるいは当該建物の利用状況とか土地の利用状況というものを勘案して貸し主と借り主との間の権利関係を公平に調整するという観点から考えるべき問題でございまして、土地の有効利用とか高度利用というものとは直接関係がない、これが借地借家法の基本的な考え方でございます。
 したがいまして、例えばそういう建物に住んでおられるお年寄りが本当に行き場がないということでございますと、恐らく裁判所に出ましても、それはそこに住んでおられる方、あるいは土地を使って借家を持っておられる方に対して、地主なり家主の方に正当事由があるから立ち退きをせよと、あるいは更新を拒むというようなことを裁判所が認めるというようなことにはならないのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#51
○糸久八重子君 土地の有効利用は建設各の所管、そしてそこに住んでいる借家人の問題は法務省の所管、私はほかの委員会でも感ずるのですけれども、各省庁との壁というのが大変厚く立ちはだかっておって、そこの壁を取り払って両方でうまく話し合いができないものかということをいつも考えるわけですけれども、今このお年寄りの問題等も含めて、やはり建設省の有効な土地利用、そして借家人の立場、そういうことをよく考えて両省で話し合っていっていただきたい、そう思うのですね。お年寄りにしてみれば、やはり長年住みなれたところを離れたくない。しかもそこを新しく建てかえたら、相当家賃が高くなってとても生活できないような状況になっているという、そういう事例がたくさんあるわけですから、そういうことを希望しておきたいと思います。
 次に、現行制度下にある借地・借家の取り扱いが今後どのようになるかについてお伺いをしたいと思います。
 新法では、先ほども説明がありましたけれども、既存の借地・借家関係に全く適用しない、既契約除外が明記をされておるわけですけれども、その理由とそれらにかかわる経緯について説明をしていただきたいと思います。
#52
○政府委員(清水湛君) この借地借家法案の附則で、既存の借地・借家関係につきましては、借地権の存続期間及びその更新後の期間に関する規定あるいは更新事由としての正当事由に関する規定というのはこれは適用しない、これについては従前の例によるということにいたしているわけでございます。
 先ほどもちょっと説明いたしましたけれども、現行の借地・借家ですと、借家はちょっと除外いたしますが、借地ですと、契約によりまして一般的には木造建物の所有を目的とする場合には存続期間は二十年、それから堅固の建物の所有を目的とする場合には三十年ということを契約で定めるのが普通でございます。そしてこの期間が満了いたしますと、二十年契約のものはまた二十年延びる、三十年契約のものはまた三十年延びる、こういうふうに現行法のシステムはなっているわけでございます。この二十年、三十年というものを統一いたしまして、原則三十年ということにいたしました。そのかわり、更新後の存続期間は以後十年ごとになる。十年間だけ延びる。また十年たって正当事由がなければまた十年延びる。さらに十年たって正当事由がなければまた十年延びる、こういう形にいたしているわけでございます。
 こういうようなことにつきましては、一応形式的に見ますと、既存の方々につきましては更新後の期間が二十年あるいは三十年ですから、そこに差が出てまいりまして形式的に不利益になるのではないか、こういうことが問題になったわけでございます。この点につきまして、法制審議会ではやはり形式的な不利益というものが生ずるというようなことから、原則的に既存の借地関係には更新後の存続期間に関する規定というのはもう適用しないということにしたらどうか、仮に適用するにいたしましても、新法施行後二回目の更新のときから新しい法律による更新期間十年という規定を適用するようにすべきだ、こういう答申をいただいたわけでございます。法制審議会といたしましても、この存続期間につきましては、基本的には適用しない、二本立てでいくべきではないかというのが多数を占めたということもございまして、そのことにつきましては法制審議会答申どおり、答申と申しますか、原則的な考え方とおり一切適用しないということにいたしたわけでございます。
 次に、正当事由に関する規定、これは現在の正当事由に関する規定というのが貸し主がみずから使用を必要とする場合その他正当な事由と、こういうことになっているわけでございまして、この条文の解釈をめぐりまして恐らく借地・借家関係の裁判例というのはもう無数に存在しておる、こういうことになっているわけでございます。そういうことから、法律の専門家が見てもそれだけ議論が起こるわけでございますから、新しい口語化の法律をつくりました場合に、現行法と同じような規定をそのまま移すということになりますと、非常にわかりにくい法律になるということから、現在の判例あるいは裁判実務で到達したところのものをそのまま素直に条文に書くという形で正当事由に関する規定を整備いたしたわけでございます。
 しかし、これにつきまして法制審議会におきましては、これは判例をいわば整理したものであるから既存の借地・借家関係にもそのまま適用してよろしいという答申をいただいたところでございますけれども、しかし中には、法文の規定の仕方が変わっていると。現行法は、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他正当事由と、非常に簡潔に書いているわけでございますが、相当いろいろと長いことを書いておるというようなことから、内容が違ってきておるんじゃないか、つまり、そのために借り主の方が不利益を受けることになるのではないかというような不安が出ておるというようなことが指摘されたということもございまして、この点は法制審議会の答申とは異なりますけれども、やはりこの正当事由の関係というのは人間の最も基本的な法律関係でございますので、そういうことについて不安が現実に生ずるということは適当ではないということから、この正当事由に関する規定も、既存の借地・借家関係には一切適用しない、こういうことにいたしたわけでございます。
#53
○糸久八重子君 既存の借地・借家関係が影響を受けないとしたことは、これは結構なことだと思うのですけれども、そうすると借地・借家を規律する法律というのは、現行法と新法の二種類になるわけですね。しかも、それが半永久的に続くことになるわけです。これらについて、いずれ整理、統合するおつもりはあるのですか。
#54
○政府委員(清水湛君) 既存の借地・借家関係とこれからの新しい借地・借家関係について、二本立ての制度になるというのは御指摘のとおりでございます。特に、存続期間とその期間更新に関する正当事由等の関係、これは適用にならないということになるわけでございます。そのために混乱が生ずるのではないかという御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、この違いというものを、この法律が国会を通過、成立をいたしました場合には、徹底的に周知徹底をする必要があるというふうに考えております。このことについて混乱が生ずることのないようPRに努める必要があるというふうに思っております。
 将来、この一本化を図るのではないかというお尋ねでございまけれども、現在全くそのようなことは考えていません。二本立てという形で残るというふうに考えているわけでございます。
#55
○糸久八重子君 代がわりということが考えられるんですよね。代がかわってくると、どちらの法律に基づく借地関係かがはっきりしなくなってしまうのではないか。代がかわって、例えば親が家を借りていた、そしてその子供がその跡を継いだ、そういった場合に、新法の内容に基づく契約が取り交わされるというようなことも当然考えられるわけでしょう。そういう場合どうするのですか。
#56
○政府委員(清水湛君) 借地関係は大変長い期間にわたって継続するものでございますから、その間に土地所有者が死亡するとか、あるいは借地人が死亡して相続が開始されるというようなことが起こるということは容易に想像されるわけでございますけれども、そういう相続がありましても法律関係は同一性を持って移転するわけでございますから、これは既存の借地・借家関係であるということは変わりがないわけでございます。
 ただ当事者が、これは耕し、い法律が施行された後に契約されたものであるか、その前のものであるかというようなことがわからなくなってしまう、こういう問題はあり得ないわけではないと思いますけれども、最近の借地・借家関係というのは必ず書面でされるということが普通になっておりますので、当事者間においてそのような書類をきちんと保存しておく、例えば更新の場合には新しい契約書を差し入れるというようなことをしているようでございますけれども、古い契約書もきちんと保存する必要がございましょうし、あるいは更新のときに新しい契約書を入れる場合には、これは旧来の借地権なり借家権というものの更新契約としてこういう契約をすることにしたものであるというようなことをきちんとした形で文書の上に明らかにしておく必要があると思います。
 いずれにいたしましても、そういうことでいたずらな混乱が生ずることのないように常に配慮をしておく必要はあると思いますし、そのことについての関係方面に対しての周知徹底ということも大事なことだというふうに考えている次第でございます。
#57
○糸久八重子君 法務省民事局作成のパンフレット、「よりよい借地・借家関係に向けて」というのが出ておりますけれども、それを拝見いたしますと、既に借地借家の契約をされている方へということで、現在、土地・建物を借りている方々の立場は変わりませんとありますし、既にされている貸し借りには契約の更新や更新後の法律関係に関する新しい法律の規定は適用されずとありまして、それ以外の部分は適用されるような印象を受けてしまうのですね。それは全く変わらないのか、それとも適用される規定もあるのかどうか、その辺のところはいかがでしょうか。
#58
○政府委員(清水湛君) 適用されないのは、借地権の存続期間とその更新後の期間に関する規定及び更新拒絶事由としての正当事由に関する規定、これが適用されないということになるわけでございます。
 例えば一つの例として、地代・家賃なんかについて将来紛争が起こるということがございます。そういう場合には、今回の法律案では地代・家賃についての紛争だけに限定しておりますけれども、家主さん、地主さんかいきなり訴訟を起こさないで、まず裁判所に調停の申し立てをせよという調停前置主義という制度を採用いたしております。そういうような制度は、これは地代・家賃の紛争を簡易な手続で、しかも安い費用で合理的に解決するということのための制度でございますので、こういうものは当然適用になる。
 もちろんそのほかにも、新しい法律になっておりますが、従前の借地法、借家法の規定をそのまま持ち込んでいるというような規定もございますし、それから、新しい規定でもいわばこれを合理化する、簡素化するというような形で設けている規定もございます。そういうような規定は、基本的には借地人の権利とか借家人の権利とか、あるいは地主の権利とか家主の権利というものに影響を与えないということでございますので、そういうものはまた適用される、こういうことでございます。
 ですから、既存の借地・借家関係に一切適用がないという意味は、先ほど申しましたような更新に関する諸規定である、こういうふうに御理解いただきたいというふうに思う次第でございます。
#59
○糸久八重子君 先ほど周知徹底を図る、そうおっしゃったわけですけれども、確かに積極的なPRが必要になりますが、衆議院の附帯決議の中でも表明されておりますけれども、どのようなPRの仕方、どういうふうに周知徹底なされるのか、その辺のところをお伺いいたします。
#60
○国務大臣(左藤恵君) この法案におきましては、新法の借地・借家関係の更新、それから更新後の法律関係に関します規定を既存の借地・借家関係には一切適用しないということは法律の条文の中で明らかにしておるわけでありまして、既存の借地・借家関係は新法になっても従前と変わらない取り扱いを受ける、こういうことにしておりまして、こうした既存の関係は従来の法律の規定によってこれまでどおり保護されるということを国民の皆さんに十分理解していただくということが大切である、このように考えております。
 今回、リーフレットとかそういったものを作成したりいろいろなことで法務省の各出先機関から自治体とかそういったところの面で広く周知徹底に努力いたしておりますが、今後とも積極的な広報を行い、あらゆる機会をとらえまして国民の方々に十分理解していただけるよう鋭意努力する必要がある、このように考えておるところでございます。
#61
○糸久八重子君 マスコミとか街頭ポスター、パンフレットだけでなくて、更新時に貸し生あるいは仲介不動産業者等は借り主に対して文書で告知することを義務づけるなど、そういうことは考えていらっしゃいませんか。
#62
○政府委員(清水湛君) 宅地建物取引業者が仲介をする際にいろんな条件等を文書で明示して説明するというような制度が宅建業法等で定められているということは承知いたしております。ですから、その際に文書の中身に入れるかどうかというのは、これはちょっと建設省の御意見を伺わなければ結論を申し上げることはできませんけれども、建設省の方でも新しい借地借家法の内容あるいは旧借地・借家関係に対する適用関係等については、そういう業者に対して積極的に周知徹底するように配慮いたしたいということを申しておりますので、その方面に対する周知徹底は建設省を通じてされるというふうに私どもは考えております。
 私どもといたしましては、弁護士会が非常に重要でございますけれども、恐らく今の弁護士会におきましては、このことはもう既に完全に了解されておるというふうに思いますので、そういう弁護士さんを通じた一般国民への周知徹底ということも非常に効果的だと思いますけれども、弁護士さんのところまで、窓口まで行けない方々も多数いるわけでございますから、そういう方々につきましては司法書士会とか、あるいは先ほど大臣からちょっとお話がございましたけれども、こういったリーフレットとかパンフレットとか、あるいは法務局における人権相談等の機会を通じて、いろいろな方法があると思いますけれども、いろんな機会を通じまして積極的に周知徹底を講じてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
#63
○糸久八重子君 それでは、今回の改正点についてお伺いをしたいと思います。
 普通借地権の改正についてですけれども、借地期間を短縮しております。当初三十年、最初の更新は衆議院の修正で二十年としておりますけれども、このように決めた根拠というのは何なのでしょうか。
#64
○政府委員(清水湛君) 借地権につきましては、更新後の存続期間、これは原則十年、これは衆議院の方で修正されまして最初の更新期間は二十年ということになりましたけれども、私どもの提案した当初の案では十年というふうに短縮されているわけでございます。
 このように期間が短縮された前提には、借地権の原則的な存続期間をまず三十年とするということがあるわけでございます。普通建物については二十年、堅固な建物については三十年、契約でする場合には大体この期間で契約がされておるというのが実情ではないかと思います。そういう違いを改めまして、まず土地を建物を建てるために貸すということであるならば、三十年間は返してもらえないということは保障されてしかるべきである。しかし、三十年たった場合には、地主側あるいは借り主側にもそれぞれその間における事情の変更というものがある。三十年たった時点でそれぞれの使用の必要性というようなものを考慮して、正当事由があるかどうかということで争いになった場合には裁判所が最終的に判断するわけでございますけれども、とにかくその基本的な三十年という期間が保障された後においては、できるだけ地主側の事情の変更というようなもの、あるいは借り主側の事情の変更というようなものが借地関係の存続にできるだけ的確に反映されるようにする必要があるのではないか。
 地主の方から見ますと、例えば三十年契約で貸した場合には、最初の三十年期間が来ると、また正当事由があるかどうか、したがってまた返してもらえるかどうかという判断をさらに三十年先にならないと判断してもらえない。その間に子供も大きくなって結婚する、家族もふえるというような地主側の事情もある。こういうような事情があるのに、三十年先にならないと判断してもらえないということではいささかどうかと。これだけ社会経済情勢の変化が激しく進んでいる時代には、やはりそういう地主側の事情の変更、借り主側の事情の変更というようなものをできるだけ数多くの機会にチェックをして、双方の公正、公平な権利関係の調整を図る必要がある。
 こういうような観点から、原則期間を三十年と長期化させた上で更新後の期間は十年と、十年ごとに正当事由があるかどうかをチェックする。もちろんこの正当事由は現行の正当事由と変わらないわけでございますので、十年チェックの際に正当事由が貸し主側に存在しなければそのまままた十年延びる。さらにまた、その後十年たった後に正当事由がやはり存在しなければそのまた先十年延びる、こういうことになるわけでございまして、基本的には借地人の権利が十年と短縮されたことによって弱まるということにはならないわけでございますけれども、いわばそういう意味における事情の変更をできるだけ的確に権利関係に反映させる、こういう趣旨から更新後の期間を十年、こういうふうにいたしたわけでございます。
#65
○糸久八重子君 建物の朽廃について、現行法では、存続期間については合意のなかった場合借地権は消滅するとしております。今回の法案では、当然には消滅しないとしておるわけですけれども、この理由は一体何なのですか。
#66
○政府委員(清水湛君) 現行法でも、契約で例えば二十年とか三十年というふうに期間を定めた場合には、建物が朽廃をいたしましても別に借地権は消滅をしないわけでございますけれども、当事者が期間を定めないで建物を建てるということで土地を貸した場合には、恐らく当事者の意思は、そこに建てた建物が朽ち果てるまで、こういう期間貸したことになるんだという、一種の当事者の意思を推測いたしまして、建物が朽廃するまでの間は借地権が存続する、逆に朽廃すると借地権はそこで消滅をする、こういうのが現在の考え方であるわけでございます。
 しかし、その後、昭和十六年改正によりまして正当事由というような条項が入り、今日では正当事由による取り扱いというものが定着しているわけでございますが、今回、そういうことを前提とした上で基本的な存続期間を三十年、更新後の存続期間を十年ということにいたしたわけでございますので、特に今、朽廃による消滅というような制度を存置する必要がないのではないか。特に、当事者が特別に期間を定めないで借地に出す、これは昔だったらあったかもしれませんけれども、現在ほとんど考えられない。こういうことも一つの事情として考慮されたわけでございます。
 それからもう一つの問題は、これはもう大変実は裁判所も悩んでいる問題でございますけれども、何をもって建物の朽廃というかということが非常に難しい問題になってくるわけでございます。建物が朽ち果ててまさに倒れるというのが朽廃でございますけれども、その間に少しずつ建物の修繕をしていくということになりますと、また建物の寿命が延びる。そこで、例えばそういうような補修工事をしなければ建物が朽ち果てたであろう時期をもって朽廃とするというような理屈がまた生まれてくるというような余地も出てくるわけでありますけれども、およそ個人のいわば生活の基盤である借地権がそういうあいまいな建物の朽廃という概念で消滅したりしなかったりするということは適当ではない、こういうようなことから、今回の改正におきましては朽廃による消滅という制度はやめよう、こういうことになったわけでございます。この制度はほとんどの大方の方からの御賛同をいただいているというものになっております。
#67
○糸久八重子君 次に、定期借地権制度導入についてお伺いいたします。
 これは新法の目玉だそうですけれども、新たに借地契約をしようとする場合には、更新がない定期借地権という新しい借地をすることのできる制度を導入していく。これらの利用の可能性についてはいかがなんでしょうか。
#68
○政府委員(清水湛君) この定期借地権制度の導入というのは、まさに時代の変化に対応する今回の改正点の重要な目玉でございます。一たん土地を貸してしまうとなかなか返してもらえない、だから貸さない。貸す以上は高額の権利金を取る。こういうようなある意味における循環を繰り返しているわけでございますけれども、そういうようなことをいわば打ち破るというような意味でこの定期借地権制度の導入の必要性が言われてきたわけでございます。
 これがどういうような形で利用されていくかということになるわけでございますが、定期借地権につきましては三つのタイプを認めております。一つは、存続期間を最初から五十年以上というふうに定めまして、長期の定期借地権という制度でございます。
 これは実は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、例えば現在、住宅・都市整備公団あたりが東京都とかその郊外に土地を持っておられる方から土地の提供を受けて公団アパートをつくるというようなことをやっているわけでありますけれども、地主さんの方ではとにかく一定の期間が来たら必ず返してもらえるという保障がないと土地は貸さない、こういうことでなかなか土地を公団としては貸してもらえない。そこで、公団の方では七十年なら七十年たったら必ず返しますという約束をして土地を借りておるという実情があるようでございます。そういうような場合に、住都公団ですから紳士協定を守って返すということで貸す方も安心して貸すのでありましょうけれども、そういう約束は現行法上は実は無効でございまして、七十年たつと現在の解釈に従いますと七十年の期間が延びる、現行法上はもし裁判の場に出て争うとそういうことになるわけでございます。
 そこで、住宅・都市整備公団あたりですとそういう信用ができるということになるわけですが、それを一般化いたしまして、間違いなくそういう形で返すということが約束されるならば土地は貸してもいいということに、法律上もそういう保障をいたすことによりまして、そういう形での土地の供給を期待することができるのではないか。そういう意味では、住宅・都市整備公団のみならずいろんな方々がこれを利用する、その結果として、例えば期間は決まっているわけでありますから地主の方は安心し、あるいは権利金も安くて済む、こういうメリットが出てこようかと思います。
 それから、もう一つの事業用の定期借地権でありますけれども、これは期間を十年以上二十年以下というふうに、むしろ現在の借地権よりかもっと短く期間を限定いたしております。これは事業用だけに限って認められるという制約があって、しかもその契約は公正証書でしなければならない、つまり乱用を防ぐという意味でそういう非常に厳しい制約を課しているわけでありますけれども、この借地権につきましては、例えば郊外の外食店舗とか量販店とか遊技場といったようなところがこの事業用借地権を利用するのではないかというふうに言われております。
 現在でも、例えば郊外にいろんな外食店とか量販店をつくりたい。ところが、地主の方ではとにかく一たん貸してしまうと返ってこないということがあるものですから貸さない。したがって、例えば十年なら十年、二十年なら二十年の事業を考えて、安い権利金でその期間だけ事業をしてまたほかの方に移るというようなことを考えている業者といたしましては、地主がなかなか貸してくれないものですから半永久的に借りることを前提とした権利金を払わないと貸してもらえない、つまり設備投資じゃなくて土地に対する投資で大部分の資金が費やされてしまう、こういうような問題もあるというふうに指摘されているわけでございます。
 したがいまして、この事業用定期借地権は、そういった事業者の需要に対応するために期間は一定の期間、十年以上二十年以下という期間で限定して定める、こういうことでその期間が来ましたら必ず土地を返す、こういう前提でございますので、権利金とか地代というものも非常に安く済むことになるのではないかというふうに私どもは考えております。
 これは、経済の法則が一方で働きますのでどの程度とうなるのかということは私どもにはにわかにわかりませんけれども、現在この種の業者は、例えば土地は貸してもらえないものですから、金を地主にやりまして地主の方で家を建てさせ、その家を業者の方が借りるという複雑な形をとっているようでございますけれども、そういうようなものにかなり利用されるのではないかというふうに期待をいたしております。
 それから、三十年以上の期間を定めまして、三十年の期間が来たらその上に借地人が建てた建物ともどもこれは建物所有権が地主の方に移る、土地ももちろん地主の方に返るという、いわば建物ごとそっくり土地が地主の方に返るという契約がこの建物譲渡特約付借地権の設定でございますけれども、こういうものも例えば分譲住宅業者等が利用するのではないかというふうに言われているわけでございます。地主の方でその時点で建物を買い取るための代金を用意する必要があるということにはなりますけれども、権利は確定的な期間で安定しているということは間違いなく言えるわけでございまして、そういった形での土地利用形態も出てくるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#69
○糸久八重子君 法務省からいただきましたこの資料集を見ますと、「定期借地方式による借地に関する土地所有者の意向」というのが出ていますね。そうしますと、個人では貸したいと思う人が四九%で思わない人が四三%、そういう数字が出ておるわけですけれども、余りこういうような制度をつくっても個人で持っている土地というのは貸したいと思う人と思わない人は大体半々だと、そういう状況なんですね。ですから、そういうものを見ますと、この利用の可能性なんかについてはちょっとどうなのかなと思わずにはいられないわけです。
 それと、あと、事業用の定期借地権、それは今お話がありましたとおり、オフィスビルとかファミリーレストランとか、それからスーパーとかディスカウントショップとか、そんなような法人の業務用需要にはこたえられるでしょう。しかし、企業は利しても宅地供給が増大して個人を利するという結果にはならないのではないかと思うのですけれども、その辺はいかがですか。
#70
○政府委員(清水湛君) まず、私どものこの法律案関係資料に載っております、これは日本不動産研究所の調査で昭和六十二年度のものでございますけれども、貸したいと思うという人が全体の五三%、それでも貸さないという人が四一%いるわけでございますけれども、定期借地権制度についての趣旨等がだんだん理解されてまいりますと、安心して貸せるということになりまして貸し地がふえるのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
 事業用の定期借地権というのは、これは住宅の供給にはつながらないのではないかということでございますけれども、短期の十年以上あるいは二十年以下の事業用につきましては、これはまさに個人企業でそういうことをなさる方もおられると思いますけれども、現在のように事業というものがすべて法人成りというか、法人化した形で行われている状況のもとではやはり法人の事業ということになろうかと思います。しかし、個人商店とか、あるいは個人の事業であっても構わないわけでございますので、そういう意味でいろんな営業を郊外に小さな店舗で展開していくというような場合にはやはりこの事業用の定期借地権を利用されるのではないかというふうに思います。
 それから、先ほど五十年以上の長期の定期借地権につきましては住都公団の例を申し上げましたけれども、そういうような形で住都公団のみならずいろんな業者が利用して貸しマンション、貸し公団住宅、そういうようなものを研究して、それが住宅供給の促進につながるというようなことも私どもは考えているわけでございます。
#71
○糸久八重子君 定期借地権の制度を創設した趣旨というのは、確定期限を設けるかわりに権利金等を安くして利用しやすくするというところにあるはずだと思います。この趣旨が生かされずに確定期限で返還されるというところだけが強調されては困るわけですが、運用に当たってどう徹底なさいますか。
#72
○政府委員(清水湛君) 権利金の授受というのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、都市部を中心として当事者間の合意によって行われているわけでございまして、東京の中心部における権利金とかあるいは東京の郊外における権利金とか、あるいは大板ではまたいささか事情が違うとか、さらに農村部に行きますとそもそも権利金の授受が行われていない、こういうようなことがあるようでございます。
 私どもとしては、一般的には定期借地権の場合には権利金は理論的には安くなるというふうに思うわけでございます。具体的な当事者間の力関係とか経済事情、その土地を本当にその借り主の方で必要とするかどうかというようないろんな事情が絡み合って権利金の額というものは決まってくるわけでございますけれども、少なくとも新しい借地法というものを前提といたしまして、当事者が合理的に考える限り、従来のような不当など申しますか、高額な権利金を徴収するということにはならないのではないか。ただ、先ほど申し上げましたように、権利金には一種の地代の前払い的な要素もあるということは否定できないところがございますので、地代をうんと安くするかわりに権利金を少し高く取るというようなことも個々の事案によってはあり得ないわけではないというふうに思います。しかし、基本的にはやはり権利金は下がるのではないかというふうに見ているわけでございます。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
#73
○糸久八重子君 それでは、あともう一つ期限つき借家制度の問題についてお伺いをさせていただきます。
 総務庁の住宅統計調査によりますと、全国の空き家は三百九十四万戸あるそうですが、そのうち百三十万戸、空き家の三分の一は事由不明とのことでございます。少なくとも数十万戸は転勤族のものだろうと不動産業界は見ているようですが、サラリーマンにとって転勤はつきもの、貸した我が家が期限を過ぎても戻らないというトラブルがふえている現在、この確定期限つき借家制度は貸すサイドにとっては大変朗報だろうと思います。しかし、期限を切ったといいましても、要件は転勤族だけでなくて、例えば療養とか親族の介護とかいろいろ入っているわけですが、こういう場合に二年と期限を切ったとしても一年半で戻ってこなければならなくなったとか、それから二年と切ったけれども三年になってしまったとか、そういうことは往々にして考えられると思うのですね。そういう要件が変更した場合などについては一体どうするのでしょうか。
#74
○政府委員(清水湛君) 期限つき借家の制度につきましては、勤労者の団体等から非常に好評をもって迎えられているという制度でございます。
 御指摘のように、現在、これは建設省の方にお聞きした方がいいと思うのですけれども、借家で空き家がかなり数としては多いということが指摘されております。しかしながら、サラリーマンなんかで地方、遠方に転勤をするというような方がマイホームとして持っておられる家というのはかなり水準も高くて良質な家だというふうに言われております。こういう方々が結局転勤から帰ってきても返してもらえないということのために、その間はただでだれかに貸すとか、あるいは会社に使ってもらうとか、あるいはそのま省空き家にしておくというようなことがあるというふうに言われているわけでございます。
 そこで、この法律ではそういう事由を限定して、しかもこれは契約書にきちんとどういう事由で貸すかということを明記してもらわなきゃいけないということになっているわけでございますけれども、そういうふうにまず事由を限定して、しかも期間を一定の期間として定める、こういうことにいたしておるわけでございます。したがって、借りる方としても、当初契約で定めた期間だけは借りられるという前提でそこに住むということ、逆に言うと期間が来たら間違いなく出なければならないという前提でそこで生活設計をしていただくということがどうしても必要になるわけでございます。
 そういうときに、例えばたまたま東京の方が北海道へ三年という予定で転勤したところ、何かの事情で一年半でこちらへまた戻ってきたというようなときに、そういう方の事情を考慮いたしまして、解約権と申しますか、だから今度は家を返してほしいというようなことまで認めるかどうかということは一つの問題点として議論がされたわけでございますけれども、一定の契約期間というものを定めている以上、これは実は現在も借家についても同じことが言えるわけでございますが、期間を定めている以上途中で解約することはできない。家賃を支払わないというような債務不履行というような事実があれば別でございますけれども、きちんと家賃を払って、借家人としてもきちんとその義務を尽くしておるというようなときに、家主の方の都合で一年半で転勤になったから解約するというようなことを認めると、先ほど申しましたように、一定の期間を前提としてそこで。生活設計を立てておる借家人の立場がまた失われてしまうということでございますので、そういう途中解約はできない。そのかわり、期間が来たら間違いなく返さなければならない、こういうふうにさせていただいたわけでございます。
#75
○糸久八重子君 新しい目玉の内容だとは思いますけれども、何かやはりいまいち安心して家が貸せないというような現状もあるように見受けられたわけでございます。
 実は私の持ち時間がもう経過をしているわけですけれども、それでは最後に大臣にお伺いをしたいと思います。
 この法律の改正を背景に地主側が借り主にさまざまな要求や圧力を及ぼさないように、そして提供された借地が資本力の強い企業に吸収されて個人住宅用地が圧迫されないように、そして更新期間の短縮で借地などの回転が早まって地代高騰の引き金にならないように、心配される面は非常に多々あるわけでございます。この法律は、社会的弱者保護という基本理念をしっかり持ってそして追跡監視体制を十分に確立しておく必要がありますが、法律を改正したから借地がわいてくる状況ではないように感じられますし、したがって、強力で公正で骨のある地価抑制対策が前提にあって効果も期待できるものと思います。改正によるマイナスを最小限にするために、国民の幅広い声や要望をきめ細かにくみ上げて運用の適正をお願いしたいと思いますけれども、その辺について大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
#76
○国務大臣(左藤恵君) 最初にもお答え申し上げましたが、この法案そのものが借地・借家関係を一国会理的なものにしていく、そういうことを目的として、既存のものは既存としてそのまま残す、新しくこれから設定する場合に、そうしたことについての一層の借地・借家人の権利保護、安定化というものを目的としておるわけでありますから、そういった意味で今お話がありましたことの内容を十分周知徹底を図る必要もございますし、さらにその運用につきまして適正を期していかなければならない、このように考えているところでございます。
#77
○糸久八重子君 ありがとうございました。
 終わります。
#78
○千葉景子君 今、同僚の糸久委員の方から総括的な質問がございました。若干重なる部分もあろうかと思いますけれども、具体的な法案の内容についてできる限り質問をさせていただきたいと思います。
 その前にちょっと一、二点、総括的な問題について質問をさせていただきます。
 この借地・借家法の改正なんでございますけれども、これが提案をされるこれまでの経過の中で大変いろいろな問題を引き起こしてまいりました。従来から、中曽根元総理の民間活力の導入あるいは規制緩和政策、こういう中でバブル的な地価の高騰、あるいはそういうことを背景にして暴力的に弱者を追い出す地上げの横行などが誘発をされ、これが社会問題となったことは私たちの記憶にも新しいところでございます。そして、そういう形の中で、秩序のない開発といいましょうか、そういうことが強められてきたということも指摘をされているところでございます。その一つの背景といいましょうか、その後ろにやはり借地・借家法の見直しというものが一方で公表され始めてきた、こういうこともそれに拍車をかける要因になったことも否定できないんではないかというふうに思います。
 特に、その内容が地主や家主の方に有利に改正されるのではないか、あるいは土地の再開発などが優先されてくるのではないか、こういうような受けとめ方なども強まりまして、借りている側にとっては非常に不安が増大をしてきた。そしてまた、こういう事情を先取りするような状況も出てきておりましたですね。いろいろな契約関係とか、土地の明け渡しにかかわる問題などを見ておりますと、例えば新しい借地法がもう制定されるから、そうなったらそれに応じて契約は変えますよというような状況が既に見られたり、あるいは再開発を行うので明け渡しを求めたいというような申し入れが出てきたり、あるいはいろいろな開発の計画の中に、当然のごとく借地人とか借家人については期間が来れば追い出せますよと言うと語弊がありますけれども、明け渡しを求められますからその開発が進められますというような計画案が出てきたり、そういう先取りをするような状況も多々見られてきたということがあろうかというふうに思います。
 こういう改正に至る経過の中で、こういう状況を生み出してしまったということ、これについて一体どういうふうに考えていらっしゃるのか。私は、今必要なのは、やはりそういう関係者の合意のもとで、例えば秩序ある都市計画をまず進める、あるいは町づくりに対する基本姿勢を決めていく、そういうことを基本にして、その中で長期的に借地・借家関係のよりよいあり方、近代化といいましょうか、そういうことを展望すべきではなかったのかなという気がいたします。
 そういう意味で、こういう土地問題などを含めて総合的な基本的な考え方というのは一体どういうところにあったのか、その辺について、まず確認をさせておいていただきたいと思います。
#79
○政府委員(清水湛君) この借地・借家法の改正につきましては、昭和六十年から法制審議会において調査審議が始められたわけでございます。私ども、そういうことからいろんな各方面に出されている意見等を調べまして、借地・借家法改正の問題点という形で世間にその意見を問うたわけでございます。
 こういう意見に対しまして、当然のことながら、例えば昭和五十年代から非常に活発になってまいりました土地の高度利用、有効利用という観点、あるいはそういうものを現行の借地・借家法が阻害しておるのではないか、その障害事由になっておるんではないかというような考え方、そういうような考え方をする方が一部におられたということも事実でございます。そういうような方々からは、例えば正当事由について、土地の有効利用とか土地の再開発とかあるいは高度利用、こういうようなことを踏まえた借地・借家法をつくるべきであるというような御意見も出されたわけでございます。他方、借地人、借家人の権利をもっと強化すべきであるというような御意見も当然のことながら出されたわけでございます。
 私どもがそういう問題点を公表いたしまして、それに対して出された各界の意見の中にはその種のものもございましたために、そういうようなことから、例えば借地・借家法が改正されると借地人、借家人の追い出しか容易になるんだというようなことを不当に宣伝して、地主側あるいは家主側かもしれませんが、借地人、借家人に不当な圧迫を加えるというような事例があるという新聞報道もされたことを実は私ども承知いたしているわけでございます。
 しかしながら、そういうようなことは、これはまあ一つの意見としてそういうものが述べられたというだけでございまして、法制審議会の審議の過程の中では、本来の借地借家法というのは土地の高度利用とか有効利用、これはまあ建設省の方でお考えいただくことであって、あくまでも借地人と地主、借家人と家主との公平な契約関係に基づく権利関係を調整する、こういうことが借地借家法の本来の趣旨である、その範囲を出ることはできないということから、例えば再開発とか、土地の高度利用、有効利用というような観点からの修正というのは、これは採用されなかったわけでございます。
 結論的にはそういうことになっているわけでございますが、審議の過程等における各界の意見が要らぬ誤解をと申しますか、あるいはそれを意図的に利用されているいろな問題が生じているというようなこともございましたけれども、この点は、新しいこの法律案の中身を十分御検討いただければ、そういうのは単なる不安だということが御理解いただけると思います。
 そして、私どもといたしましては、土地政策とか住宅政策というようなものと基本的にこれは直接リンクするものではございませんけれども、しかし、建設省なり国土庁が今後住宅政策なり土地政策というものを進めていく場合に、土地の一つの利用形態である借地関係あるいは建物の利用形態である借家関係というものが現在の経済情勢に見合ってない、あるいは不適切である、こういうことになりますと、まあ借地関係というのは土地の所有権と同じようにこの種の政策を進めていく場合のいわば基礎でございますので、この基礎がぐらぐらするということになりますと、良好ないろいろな各種行政政策を進めるということも非常に難しい面が出てくるというふうに思うわけでございます。
 私どもといたしましては、これから政府が進める土地政策あるいは住宅政策の基本となる私人間の権利関係についての規制を明確にし、これを適切なものにする、そういう意味において非常に意味がある改正であるというふうに思っているわけでございます。こういうものを前提として、これからの地価の問題だとかいろいろ難しい問題、私どもには必ずしもよくわかりませんけれども、そういった政策が的確に展開されていくということを期待しているわけでございます。
#80
○千葉景子君 さて、今回のこの改正の目的ですけれども、それについては先ほども御答弁をいただいているところでございますので、これは重ねてお聞きはしませんけれども、ただ、この改正案の全体を眺めてみますと、方向としては、借り主のところに視点を置くよりむしろ社会的経済的な変化、その要請、そういうところに着目しているというところはやはり否定できないだろうというふうに思うんですね。その反面、結果的には、借り主の側にとっては負担が大きいあるいは地位を弱める、そういう方向に機能するのではないか、こういうこともやはり改正の幾つかの点を考えてみますと、例えば更新の回数がふえるとか、あるいは正当事由についてはまだ後ほどお聞きしますけれども、そういうことを総合して考えてみますと、結果的にはやはり借り主側に負担が大きくなるのではないか、こういうことが予想されるわけでございます。
 そういう中で、この改正、借り主側にそれだけ負担を強めながら社会経済的な状況の変化に本当に機能するんだろうか、わざわざそんなことを今する必要があるのだろうかという気がまずしないでもないわけなんですね。その辺については一体どうお考えでしょうか。今後の見通しとか、この法律が今後どう具体的に機能していくのか、その辺どんなふうな御認識を持っていらっしゃいますか。大臣にお聞きできればと思います。
#81
○国務大臣(左藤恵君) 今お話がありましたけれども、今回の改正というのは決して借り主の地位を弱めるとかそういうことを考えておるものではございませんで、借地・借家関係を改善するということが目的でありますけれども、特に、定期借地権とかそういったものの制度を創設することによって、当事者の権利義務関係をより公平、合理化しよう、前から御答弁申し上げておりますように、利用しやすい借地・借家関係、そういう制度を目的として将来の国民生活の基盤整備、そういうものに寄与したいということが今回の改正の目的でございます。
#82
○千葉景子君 私も、ぜひせっかく改正をするわけですから、今後国民の期待にこたえられるようなものであってほしい、そう思うことは当然でございます。しかし、順次内容について御質問をさせていただきますけれども、本当にその期待にこたえられるのかどうかやはり疑問点がございますので、これは個々の問題点を踏まえながらまた最後に御意見を聞かせていただきたいというふうに思います。
 ところで、今回の改正に当たっての大きな問題点としては、存続期間、更新、正当事由、それからまた調停の問題などもございます。それから定期の借地権等の導入です。しかし、その反面、私はこれ以外に現在検討すべき問題、この改正に当たってむしろ明文化したりあるいは法的にきちっと整備をしておかなければいけない、そういう点が多々残っているのではないだろうか、そんな気がいたします。
 そこで、一つずつお尋ねをしていきたいというふうに思っているんですけれども、一つは、借地権の権利性についてなんです。従来、借地権というのは単なる契約上の権利、いわゆる債権というにとどまらずに、物権的な権利として評価をされてくるようになってきているわけです。対抗力の問題とかあるいは独立した財産的な評価をされるなどの形で、いわゆる物権的な権利とでも言ってよろしいかというふうに思うんです。これについては、今後一体方向としてはどう考えていらっしゃるのか、この権利性をより明確にする方向に行こうとしているのか、あるいはもうこの程度だと、これ以上権利が強くなってもらっては困るんだというふうに認識されているのか、この点についてお聞きしたいと思うんです。
 そして、その中で一つ大変大きな問題になっているのは、この借地権を担保にできるかどうかという問題が大きな課題でもあろうかというふうに思うんです、これは多分検討が加えられたはずだというふうに思うんですけれども。現在は、解釈上は借地上の建物を目的とする抵当権の効力が借地権に及ぶという形で評価をされております。これをむしろ積極的に担保として、権利として使えるようなそういう法制化をすること、これについてやはり考えるべきではないかというふうに思うんです。借地人にとっては金融を受けやすくなる、あるいは建物完成前にも対抗要件を備え得る、そして譲渡などの対象にできるというようなこともあり、これは一つの大きな課題であろうというふうに思います。
 ただ、一方で、土地所有者との関係とか、競売の場合の建物の問題などがありますので、問題は多いかというふうに思いますが、この借地法の改正の時期を逃しますと、この問題はまた相当先送りということになってしまうかと思うんです。この点についてはどうお考えでしょうか。
#83
○政府委員(清水湛君) 法律的には大変難しい問題を提起されたわけでございますけれども、まず第一に、借地権の物権化という問題でございます。
 物権ということにいたしますと、これは御承知のように、登記その他の公示方法によって対抗力が付与される、また、権利の存続期間も長期であり安定する、それから、原則として譲渡転貸は自由である、こういうこと。それからもう一つとして、当然に登記請求権がある、こういう四つの要素があるんではないかというふうに考えられます。この借地権、これは賃借権と地上権でございますけれども、地上権については、つまり地上権たる借地権についてはこの問題はすべて解消しているわけでございますけれども、我が国の借地権の大部分は賃借権であると、こういうことからこの問題が出てきておるというふうに思われるわけでございます。
 先生が御承知のように、明治四十二年の建物保護法によって対抗力が与えられ、それから大正十年の借地法によって存続期間の長期安定化が図られ、さらに昭和十六年の正当事由条項追加によってそれが実質的に裏づけられた、こういうことになるわけでございますが、結局、賃借権たる借地権の物権化現象の問題として最後に残ったのが自由譲渡性と、それからもう一つは、登記請求権の問題であろう、こういうふうに思うわけでございます。
 実は、昭和三十五年に法務省民事局内部で、これは法制審議会とは直接の関係はないんでございますけれども、借地・借家法の全面改正の研究会が持たれましたが、その中では借地権という物権をつくるというようなことを議論した経緯がございます。しかし、このことにつきましては非常に各方面から問題があるという指摘がございまして、この案が結局ついえ去ったわけでございます。しかし、何らかの形で借地権の自由譲渡性をやはり認める必要があるのではないかということが要請されまして、御承知のように、自由譲渡性を与えるわけではございませんけれども、一種の非訟事件手続で裁判所が相当と認める場合には、賃貸し人の承諾にかわる許可の裁判をするという非訟事件手続化した形での賃借権たる借地権の自由譲渡性というものを認めた、こういうことになるわけでございまして、ここでまた借地権の物権化というものがある意味においては一歩前進したということが言えるわけでございます。
 しかし、この四十一年改正がそこで踏みとどまらざるを得なかったということは、借地権を物権にしてしまうということについての土地所有者側の非常に強い抵抗があったということが、これは一つの事実として存在するわけでございます。それに加えて、今度はさらに賃借権について登記請求権を認めるかどうか、こういう問題でございますけれども、これはやはり民法の基本に触れる問題でございまして、賃借権という債権的な権利という形で借地・借家法の中に存在させておく以上、これはやはりこの法律だけで当然の、つまり物権的請求権としての登記請求権というものを認めることは非常に難しいし、理論的にも問題があるということで今回の改正の中身にはならなかったわけでございます。
 現行法の解釈論といたしましても、借地権たる賃借権については登記請求権があるんだということを主張する学者もいないわけではございませんけれども、民法あるいは借地・借家法の現在の解釈として、これは判例上からも否定されているわけでございまして、そこまで現在の段階で借地権を強化するというような情勢はまだ育ってないと申しますか、そういう状況にはまだ立ち至っていない、こういうことになるわけでございます。
 そういうようなことから、私どもとしては、今回の改正に当たりましては、例えば建物保護法による対抗力というのは、建物の登記をすることによって対抗力が与えられるわけでございますが、その建物が消失してしまった場合に対抗力が直ちに消滅するというのはいかがかというようなことから、対抗力の存続について若干の補強をしようということで、そういう意味での強化は図っているわけでございますけれども、全体的な物権化という点については、これは現段階においては適当ではないということに最終的には至ったわけでございます。
 それから、借地権の担保化の問題につきましても、これはいろんな議論があるわけでございます。しかしながら、一つには物権そのものではないということ、やはり債権でございまして、借地権たる賃借権については当然に土地にその登記をするという権利は与えられていない、地主さんとの話し合いで、合意で借地権の登記をするということは可能でありますけれども、合意がない限りその登記をせよという請求権を現段階で認めるのは適切ではないというようなことを、それからさらには、先生御指摘のように、現に借地上に建物を建てまして、その建物に抵当権を設定する、つまり、建物を担保にして金を借りるということが多く行われているわけでございますけれども、この場合の建物の抵当権の効力は当然に借地権に及ぶ、抵当権の実行として建物が競売されますと借地権つきの建物という形で競売の対象になる。
 こういうことになっているわけでございまして、そのことについての手当ても、現行借地法に地主が承諾しない場合には裁判所がかわって許可をするという制度として導入されているわけでございます。そういうような建物の抵当権の効力が借地権に及ぶという現在の民法の解釈、これはもう確定的な解釈でございますが、そういうものを前提とした場合に建物とは別個にこれを独立の抵当権の対象とするということにいたしますと、その間の権利関係の調整、特に抵当権の実行によってその借地権を取得した人と建物との関係等々、これはもう相当詰めなければならない複雑な法律問題がある、こういうことが考えられたわけでございます。
 経済界の一部に借地権の担保化という要請が強く存在するということは私ども承知しているわけでございますが、その辺の法律整備を民法と絡めてやっていかなければならないというふうなこともございまして、今回は見送らせていただいたという結果になっているわけでございます。
#84
○千葉景子君 大変懇切丁寧に御説明をいただきましてありがとうございます。この点につきましては、また他の機会に質問させていただくことがあろうかというふうに思います。
 そのほかにも、先ほども糸久委員の方からも話がございました。なかなか技術的に難しいかと思いますけれども、やはり更新料とか権利金についての規制の問題、これは特に土地高騰などを含めて大変高騰している。借地権価格の数%から数十%といいましても現在では相当な額に上るということにもなります。そういうことも含めて、それから今回の改正案の中では更新の機会がふえますので、そういう意味でも、更新料のアップにつながるというおそれなどもございます。そういうときに、こういうものを全く技術的に難しいとはいえ放置してよかったのかどうかという問題等もあろうかというふうに思います。
 それからまた、調停が今回は相当重視されます。この調停のあり方などについてももう少し整備が必要ではないかなどの点があろうかというふうに思うんです。これはちょっとそれぞれまた別なところで関連する問題でございますので、今は指摘だけさせていただきまして、また個々のところで質問をさせていただきたいというふうに思います。
 さて、借地権、今回存続期間について改正がなされるということでございます。先ほどもこの点について説明をいただきましたけれども、今回、堅固、非堅固を問わず存続期間を三十年としたということでございますが、これは何で両方一緒にしてしまったのか。これまで分けていたものを一律に、同じ年数にするということはどういう理由があるのか。その三十年とした基準といいますか、そういうところはどういうところに設けられているのか。
 それから、とりわけ堅固な建物について考えてみますと、従来の基本的な法律の建前からいくと、六十年から三十年にがたんと短縮をされたということでございます。非堅固の方はまだ理解できても、堅固の方は一体どうしてこう極端に短縮され、しかも一律な扱いになってしまったのか。耐用年数などを考えてみますと、むしろ耐用年数はこれまで以上に技術も発展して長くなってきているのではないか、そんな気もいたしますし、そしてまた三十年後の更新期間も、今回の改正案によって十年刻み、修正で二十年という最初の期間はございますけれども、こういうふうに非常に小刻みになってきている。これが本当に普通の常識に合うのかどうか、大変何か不思議な感じがいたします。これは結局、回数をふやして更新料を取る機会をふやすだけになってしまうのではないか。あるいは土地の回転はよくなるけれども、長期的な都市計画などの阻害要因にならないのかどうか、そんな問題もあろうかというふうに思います。
 それから、一方で五十年の定期借地権というものが導入されることになりました。この五十年というのはやはり一つの建物の存続期間といいますか、耐用年数などを含めて五十年程度というのが大体一サイクルと考えられるというようなことも背景にあるのではないかと思うのですね。そうすると、片方では五十年、片方では三十年であと小刻みにと、この辺がどうもいま一つ一般的な常識的な感覚からいうとすとんと落ちない、こういう点があるんですけれども、これは一体どういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
#85
○政府委員(清水湛君) 借地権の存続期間なりあるいはその後の更新期間をどうするかということがこの一つの大きな問題でございまして、いろんな意見がこの点については述べられたわけでございます。
 まず第一に、一律に三十年というふうにしたという点でございますけれども、例えば丸ビルとかあの辺の大きなビルについては、これはもう三十年なんということではなくて五十年とか百年というような、もしあれが借地でされるということになりますと、そういう契約が現実にはされるということになろうと思うわけでございます。しかしながら、一般的に、例えば木造の建物に対する住宅用の堅固な建物、ブロックづくりとか鉄筋コンクリート、鉄骨づくり等があろうかと思いますけれども、そういうものを想定して考えますと、つまり非堅固あるいは鉄筋コンクリート等の堅固を問わず、大体三十年ぐらいで建てかえられるというようなことも最近は多くなっておるのではないかというようなことも指摘されたわけでございます。
 耐用年数という面から見ましても、例えば現行法における堅固な建物についての最短存続期間が三十年とされているというようなことがございまして、一応の借地権の安定性というものを考えますと、堅固、非堅固を問わず、まず基本的な期間として三十年ということでよろしいのではないかということになったわけでございます。そういう意味におきまして、つまり鉄筋コンクリート等の建物と木造建物等で存続期間に差等を設けるのは現在の社会経済の実態に照らして適当ではない、こういうようなことが考慮されたと、こういうことになるわけでございます。
 それから、今度は更新後の存続期間を十年といたした点でございますけれども、これも先ほど申しましたように、基本的な存続期間というものを三十年とした上で、地主側の立場というもの、地主側における事情の変更というようなものをきめ細かくチェックし得るという意味におきまして、三十年経過後は十年ということでよろしいのではないかということになったわけでございます。この点について、例えばそういうふうに更新の機会が多くなりますと、それだけ更新料を取られる機会がふえて借地人の方が不利になるのではないかというような御指摘があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、期間が短縮されても正当事由が存しない限り借地権はそのまま続くという基本的な考え方をとっており、このことは現行法と変わらないわけでございますけれども、それによって特に更新料の負担がふえるということにはならないのではないか。事実として、借地人と地主が円満に今後の法律関係を続けていくためにどういう更新料の合意をするかという問題はあろうかと思いますけれども、法律的には更新料の負担がふえるということにはならないというふうに思います
 それから、長期型定期借地権の存続期間、これは原則五十年以上ということになっているわけでございますけれども、それとの対比において、原則的な存続期間が三十年で、私どもの案によりますと十年、十年ということになっておるという違いは何かということでございますけれども、当事者の契約でとにかく更新のない借地権として決めるという以上、少なくとも三十年では足りない、必ず返してもらえるという存続期間として考える以上、やはり五十年程度は必要である。
 こういうことで、一方では、長期の定期借地権というものにつきましては五十年以上でございますけれども、そのかわり契約で定めた期間に至れば必ず返す。つまり更新ということを考えないで貸す以上は、やはり五十年程度の期間は基本的に地主側としては覚悟すべきであろうということでございます。普通の借地権の場合には、三十年は基本的な存続期間として覚悟すべきであるけれども、地主側の事情の変更その他正当事由等の具備のぐあいによっては返してもらえるということ、そういう意味において更新期間を十年ということにするのも不合理ではない、合理的である、こういう考え方に立っているわけでございます。
#86
○千葉景子君 お話を伺っていますと、大体三十年程度でよろしいんではないかとか、そういう話で、いま一つなぜこうでなきゃいけないかということが明確でないのですね。では、何年がいいかというのはこれまた難しいことだとは思いますけれども、これまでよりもとりわけて改正をするという根拠として、いま一つ不明確さが残るなという感じがしないでもございません。そういう意味では、おかしな言い方ですけれども、例えば、では四十年ではどうだったのかなということになってしまうわけでして、この辺がこれからどう機能していくのか、かなり推移を見ていかなければいけないんだろうというふうに思います。
 そこで、先ほどの五十年の長期の定期借地権との関係ですけれども、これは逆に言えば、三十年というそこでもう一回賞すかどうか検討する機会を与えられてもいいということですが、そうすると、逆に五十年というのは長く感ずるんですね。というのは、五十年たちますと世代もある程度変わっていくだろうし、それから社会情勢とかも変動していくでしょう。そうなってくると、今度は逆に五十年の長い定期借地権というのは一体どういう機能を果たしていくんだろうか、両方から非常に疑問というか、不明確性というものが感じられて仕方がございません。その点についてはまだ定期借地権のところでもお聞きしたいというふうに思いますけれども、この存続期間、堅固の建物などについてやはりもう一歩明確な考え方というのを私たちも持っておくべきではなかろうかな、そんな気がいたします。
 さて、今も出ましたけれども、契約の存続期間のみならず、更新の原則十年ですね、更新後の存続期間。これも修正によって最初のみ二十年ということになりますけれども、これも堅固、非堅固で一律になった。そして十年という基準ですが、これも先ほどからお話を伺っているんですけれども、なぜ十年なんだろうか、二十年ではいけないんだろうか、あるいはもっと短くという意見もあったんだろうか、この辺もこういう数字というのはなかなか難しいように思います。ただ、こういう問題は実態とか、あるいはそれぞれの今の契約の実情などを踏まえて設定をしていかなければいけないだろうというふうに思いますけれども、この十年というのは本当に合理的な数字なのかどうか、もう一度お聞かせをいただきたいというふうに思います。
 それから、堅固、非堅固で一律に十年とすることの是非ですね、この点についてどう考えていらっしゃるのか、その点についてお聞きをしたいと思います。
#87
○政府委員(清水湛君) 堅固、非堅固の建物で期間に差等を設けるという合理性ということが議論されたわけでございますけれども、現在の社会経済の実態という点からいたしますと、むしろ社会経済的な耐用年数というのは堅固、非堅固でそれほど差がないのではないかというような認識、あるいはこれは建設省の技術専門家等の意見も私ども聞いたわけでございますけれども、そういうような方々の御意見に従いましても、その差を設けるという必要性は今の社会ではないのではないかというようなことからその違いを廃した、こういうことになるわけでございます。
 それから、定期借地権については五十年というふうにいたしましたけれども、更新をしないでとにかく返してもらう、この期間が来たら必ず返してもらうという前提で貸すわけでございますので、その間における建物の経済的、社会的な耐用年数が尽きるというようなことを考えますと、更新がないわけでございますから五十年程度が適当ではないか、こういうことにいたしたわけでございます。
 そこで、問題は、更新後の存続期間を十年としたわけでございますけれども、この点についての考え方を、議論の過程でどういうようなものがあったかということをちょっと説明いたしますと、一つには、非常にこれは強い立場でございますけれども、基本的期間を三十年として、三十年は貸した方では我慢をしなければならない。しかし三十年を過ぎたら、正当事由が地主側に備われば、つまりこれは現行法と同じ意味での正当事由が必要でありますけれども、正当事由が地主側に備わった時点でいつでも建物・土地の返還を請求することができるようにする。三十年たった後に五年目に備われば五年目、あるいは五年目もだめ、十年目もだめ、二十年目もだめ、三十年目にやっと正当事由が備わったということであれば、三十年目にその明け渡しなり土地の返還を求めることができるというふうにすべきだ。つまり、更新後の期間については特に法律で規定を置く必要がない、正当事由の具備の有無で判断をすべきであるというような考え方が一方で強く主張されたわけでございます。
 しかし、こういうような考え方をとりますと、借地人の方では、地主側に正当事由が備わり次第いつでも返還しなければならないということになって不安定であるということに当然のことながらなってまいります。しかし、地主側でも、現在のような社会経済情勢の非常に厳しい時代に家族の状況とかいろんな生活状況が次々に変わっていく、こういうような状況があるわけでございますから、少なくともその辺も適当に調節するということになりますと、十年単位ぐらいで当事者間の実情に応じた正当事由の具備を判断するということがあってもよいのではないか。つまり、そういうふうにすることが借地関係という長期継続的な法律関係の中に当事者の事情変更を的確に反映させるという意味において意味があるということにいたしたわけでございます。
 更新後の存続期間を二十年としたらいいじゃないかとか、あるいは三十年というふうにしたらいいじゃないかという御意見もそれはあり得ないところではございませんけれども、それではやや少し貸し主側の事情というものを借地関係に反映させることが難しくなってきて、かえって不公平になるのではないか、こういうようなことも考えられるわけでございます。
 基本的には、借地・借家、特に借地関係でございますけれども、そういう関係の長期安定的な継続ということが第一でございますけれども、地主側に生じた大きな事情の変更もこの関係に適切に反映させるということも公正、公平な観点からやはり必要なことであるということから、期間についてはいろんな意見があったところでございますけれども、最終的には私ども当初の案でお願いしたような三十年、十年、十年、十年というふうにいぐのが結局一番妥当ではないかということで、こういう数字に落ちついたわけでございます。
#88
○千葉景子君 いろんな御議論、御意見があるということはよくわかります。ただ、今のお答えからもわかりますように、結果的にはこれは従来よりも貸している側にさまざまな新しい機会をふやす、借りている側にはやはり明け渡しあるいは更新の負担という機会をふやすというふうに機能することは、これはもう否定できないだろうというふうに思うんですね、従来以上に。そうすると、これは正当事由の中身とも絡まっできますけれども、やはり解約の可能性というものが増大するんではないか、そしてまた、逆に長い期間の更新を合意しようとすると、更新料の増額のようなことにもつながっていくのではないか、そんな懸念も持たないではございません。
 そういう意味では、契約更新後の存続期間というものについては、やはりかなりこれまでの借地人、借家人、これからもそうですけれども、その地位を不当に弱めないような配慮とか、そういうことが必要ではなかろうかというふうに思うんです。そういう意味で、最初の回だけではございますけれども、二十年という期間に修正が衆議院の方でなされたということは、私は大変評価をすべきところであろうというふうに思うんですけれども、ではそれだけで十分かどうかという点もあろうかというふうに思うんです。この点についてどうでしょう、本当に十年でなきゃいけないんでしょうか。それとも、では十五年はどうか、二十年はどうか、こういう話になってくるんですけれども、その辺については率直にどうお考えでしょうか。
#89
○政府委員(清水湛君) 更新料の問題でございますけれども、更新料を期間満了の際に取るかどうかということ、これはそういうもを取っている地域もございますし、もう全然取ってないという地域もあるわけでございまして、恐らく非常に土地、が高価な都市部ではかなり更新料的なものが取られているのではないかなという感じ、そういう資料もございますけれども、という気がいたします。しかし、このことも、これまでのように更新後の期間が二十年あるいは三十年になると、これからまた当初の契約期間と同じ期間だけ地主側が拘束されるんだという前提での更新料というものと、存続期間としては十年であるという前提での更新料、これは当然その額は違ってくるわけでございまして、私どもは十年を前提とする更新料はそれほど高額なものになるというふうには実は考えていないわけでございます。もちろんこれは経済法則が働く分野でもございますので、いろんな要素を加味いたしませんと果たしてどうなるかということは申し上げかねる面がございますけれども、そういう意味で、必ずしも負担がふえるということにはならないのではないかというふうに思うわけでございます。
 それからもう一点は、例えば現在の借地契約、これは圧倒的に木造建物等を目的とするということで二十年という契約をしている例が多いと思いますけれども、現行法ですと二十年目が来て更新されるとまた二十年で四十年続く。それがさらに更新されますと六十年、こういうことになるわけでございますが、そういう契約を前提として考えますと、新法では基本期間は三十年になる、そうすると更新後の期間は十年ですから四十年目に二番目の更新期間が来る。そこまでは現行の圧倒的多数を占める二十年契約の借地契約の更新の場合と変わらないという実態がございます。
 そういうことから、私どもとしては最初の更新期間もやはり十年でそのままにしていただきたいという気持ちが強かったわけでございますけれども、そういうことではなくて二十年ということになりました。衆議院での修正がそうなりましたため、現在の借地契約よりか若干借地人側が有利になってくるということもあるいは言えるのかもしれません。しかし、その後の四十年後のものにつきましては、現行法ですと六十年目ということになりますが、新法では五十年目ということで一回更新の回数がふえる、こういうことになけるわけでございます。この場合、十年という期間を十五年にしたらどうかとか、十二年にしたらどうかとか、数字の問題ですからいろいろ議論しようと思えばできるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この問題について大方の御意見を伺いながら最終的に落ちつきやすい落ちつきどころとして三十年、十年、十年という数字に決めさせていただいた、こういうことになるわけでございます。
#90
○千葉景子君 さて、次に正当事由についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思いますが、大変時間が限られてきておりますので、ちょっと一点だけお聞きして、またその他は後日なりに回させていただきたいというふうに思います。
 正当事由に関してなんですけれども、これまでのいろいろな御説明とか、あるいは衆議院の審議などを通じて明らかにしていただいているのは、今回の改正というのは決して何か特別な、これまでと変わった目的を持つわけではなくて、判例とかいろいろなこれまでの学説等の集積、そういうものを踏まえて、それを法文上わかりやすく明確化しただけなんだというお話でございます。そうすると、判例の総合的判断の中ではいろいろな要素があろうかというふうに思うんですけれども、それを今回その中でも取り上げて、一定の要件といいますか例示をした趣旨、それは一体どういうところにあるんでしょうか。もし判例の集積であるとすればさまざまな要素を総合判断しますので、決してここに挙げられているそういう事項だけで判断できるとは限りません。だとすれば、逆にこういうことで限定をしてしまう、あるいはそう見えるような形にするというのはむしろ混乱を招く、誤解を招くおそれがあるんではないかというふうに思うんですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
#91
○政府委員(清水湛君) 正当事由条項は、御承知のように、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他正当な事由、こういうふうに現行法は書いているわけでございます。昭和十六年当時これが法律化されたわけでございますけれども、当時は大正十年に借地法が制定されましてちょうど契約による存続期間二十年が満了する時期でございます。そのころは、地主としては期間が満了したから土地を返してくれということがこれはもう堂々と言えたわけでございますけれども、それを規制する意味で、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他の正当事由ということにいたしたわけでございまして、いわば貸し主側の権利を制約するという形で昭和十六年改正がされました。そのことの結果として、貸し主の方で自分が使用する必要がありさえすれば、借り主の方に使用を必要とする事情があっても土地は返してもらえるんだという解釈が実は行われたわけでございます。つまり、当時の解釈としては地主側に非常に有利な解釈がされ、あるいはそういうことを理由に法律化されておるという経過があるわけでございます。
 しかしながら、戦後の住宅難、土地難の時代に、貸し主側の事情だけではなくて借り主側の事情も考慮して、総合勘案して公正、公平に判断すべきであるということに判例理論が形成されてきました。そういうように、ある意味においては、戦後の判例理論によりまして、昭和十六年の正当事由条項についての法文が実質的に修正されたような状況が起こってきておるというふうに評価をしてもいいのではないかと思われるわけでございます。そういうような状況のもとで、今度新しい借地借家法というものをつくる際には、これはもし現在の時点で現行法と同じような条文を仮に置くといたしますと、恐らく昭和十六年当時と同じように貸し主側に有利な解釈がまた出てくる可能性を多分にはらんでおる、こういう問題が一つございます。
 そこで、しかもその上に現代語化する以上、法律を読んだ一般の国民の方々が理解できるような条文にしなければならない。恐らく、現行法のような条文をそのまま条文化したのでは、これは何を言っているのかわからない。弁護士等の法律専門家が読めば判例でこうなっているということがわかるけれども、素人が読んだんじゃよくわからないんじゃないかという議論、反論が当然のことながら予想される、こういうふうになってくるわけでございます。
 そういうような状況を踏まえて、じゃどういう形でこの正当事由に関する条文を現代語という形で法律の中に盛り込むかということになってくるわけですが、そうなってきますと、私どものとり得る道は現在の判例あるいは裁判実務で確立されている重要な要素をそのまま素直に条文の中に織り込むしかない、こういうことに最終的な結論がなったわけでございます。つまり、判例というのは、これはいろいろ具体的な生の事実に法律を適用しておりますので、借地・借家関係というのはもう人間がかわるように法律関係も変わっていくわけでございますから、すべて全く同じというような事実関係はない。そういうような事情のもとで裁判所がいろんな判断をするわけですから、判例の中には実にさまざまな要素が盛り込まれているわけでございますけれども、そういう戦後数十年にわたって蓄積された判例というものを捨象してみますと、この法文に掲げられたような事実が列記できるのではないか。もし、その中から一つでも要素を落とすということになりますと、場合によっては新しい法律によって判例理論を修正したというふうに見られかねない要素もある。こういうような心配もございまして、結局のところ、現在の裁判例あるいは裁判実務というもので確立している考え方をそのまま素直に条文化しよう、こういうことにいたしたものでございます。
#92
○委員長(鶴岡洋君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十分開会
#93
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#94
○野村五男君 自由民主党を代表いたしまして質問をさせていただきます。
 借地・借家というのは居住や営業といった生活の基礎をなすものであり、土地や建物を借りている人が安心して住み続けるために現行の借地・借家法がこれまでに大きな役割を果たしてきたと考えられますが、そもそも借地借家法はどのような理念に基づいて制定されたのか、またこの法案は大正十年に制定された現行法を廃止し新法を制定しようとするものでありますが、新法の理念は現行法と異なるものなのか、法務大臣にお伺いいたします。
#95
○国務大臣(左藤恵君) 現行の借地・借家法は、今お話しのとおり、大正十年に制定されたものでございますが、その基本は、借地権者及び建物の貸借人の権利を保護してその安定を図るために制定されたものでございます。それから、今回のこの新法は、これはそうした現行の借地・借家法に対しまして、社会経済情勢の変化というものが非常に激しいものがあるわけでございますが、こうしたものに見合ったより合理的な借地・借家関係を創設しようとすることで所要の手当てをいたしております。そういった点では、新しく法律は変わっておりますけれども、基本的には借地権者及び建物の貸借人の権利の保護、その安定化を図るという趣旨においては現行法と全く変わるものではございません。
#96
○野村五男君 制定以来、借地人、借家人の権利を保護してきた現行法を今回改正しようとするものでありますが、なぜこの時点で法律を改正する必要があるのか、現行法の借地人、借家人の権利の保護を弱めようとするもめなのか、この点に対する答弁を含め、今回の改正の趣旨について法務大臣にお伺いいたします。
#97
○国務大臣(左藤恵君) 今も申し上げましたとおり、借地法、借家法、現行の法律は大正十年に制定されまして、昭和十六年に一度改正された後は基本的な改正が行われないままに半世紀を経過したところで、あり、この間に大変な社会経済情勢の変化があるわけであります。そうしたことで、現行法の枠組みの中、仕組みの中では対応し切れない問題も生じてきている。そういう点で、特に現行法が借地・借家関係の存続を画一的に規定しているということは、土地・建物を貸そうとする側にとりましても借りようとする側にとりましても障害になっている面がなくはないのでありまして、そういった点で今回の改正は定期借地権の制度を創設するということなど当事者の権利義務関係をより公平かつ合理的なものにしよう、利用しやすい借地・借家制度としようとすることを目的とするものでありまして、決して借り主の権利を弱めるというようなことではなく、むしろ将来の国民生活の基盤整備という点でもぜひ必要なものである、このように考えているところでございます。
#98
○野村五男君 今回の改正の趣旨を実現するためにこの法案ではどのような改正をしようとしているのか、主な改正点は何なのか、お伺いいたします。
#99
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 今回の改正の主な点は、定期借地権制度の創設あるいは期限つき借家制度の創設等を初めといたしまして一般の借地権についての存続期間の見直し、正当事由の明確化、地代家賃増減額請求の手続の改善等でございます。
 このうち定期借地権は、一定期間に限っての借地を必要とするなど借地に対する需要が多様化しているという最近の社会経済情勢にかんがみまして、それにこたえようとするものでございます。期限つき借家についても同様でございます。
 また、最近における社会経済情勢の変化の早さというものを考えまして、当事者間の関係の調整をより実情に即して行うことができるように、借地権の存続期間を見直し、更新後の借地権の期間を十年と規定するほか、正当事由についても現在の裁判実務で考慮されている基本的な要素を掲げましてその内容を明確にするということが第二でございます。
 また、地代・家賃の増減額請求をめぐる紛争につきましては、いきなり地主、家主の方から訴訟を提起するということではなく、簡易迅速かつ適正な解決を図るために調停手続を積極的に活用するものといたしております。
 今回の見直しは、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、借地・借家関係を社会経済情勢の変化に見合った合理的なものにすることが目的であるというふうに申して差し支えないと思う次第でございます。
#100
○野村五男君 改正点は、現在既にされている借地・借家契約にも適用されるのか。また、現在多くの人が土地・建物を借りて生活しておりますが、そのような人に対する改正法の影響についてお伺いいたします。
#101
○政府委員(清水湛君) 一般的に、新しい法律をつくりますと、特段の事情がない限り既存の権利関係についても適用するということが行われることが多いわけでございますけれども、今回の借地借家法につきましては、借地権についての更新後の存続期間あるいは更新を拒絶する事由としての正当事由についての規定を改めているわけでございます。そういうようなことから、既存の借地・借家人の方々に不利益を与える、あるいは不利益が与えられるのではないかというような不安と申しますか御心配があるというような事実の指摘がございましたので、この法案においては、新法が成立した場合でも既存の契約関係には新法の契約の更新及び更新後の法律関係に関する規定を一切適用しないということといたしまして、新法が成立いたしましても従来どおり現行法の規定で更新されるということとし、既存の契約に影響を与えないというふうにしているわけでございます。
 なお、民事調停法の改正は既存の借地・借家関係にも適用されますが、この改正は紛争解決のための手続の改正であり、当事者の権利関係の存否に影響を与えるものではございません。より簡易迂遠にかつ適正に地代・家賃をめぐる紛争が解決できるようにという趣旨で設けられた制度でございますので、これは既存の借地・借家人に関する地代・家賃の紛争を新法施行後に解決するという場合には民事調停法の規定が適用される、こういうことになるわけでございます。
#102
○野村五男君 借地・借家法の見直しについては、政府の土地対策の二環として位置づけられておりまして、土地政策の観点からも提言されているのではないでしょか。また、昨年の日米構造問題協議においても、アメリカ側から土地問題の一つとしてこの問題が指摘されましたが、今回の改正の目的には、優良で低廉な土地、住宅の供給の促進ということがあるのではないでしょうか。
#103
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、昭和五十年代後半から臨時行政改革推進審議会の答申でもこの借地・借家法の見直しというような問題が取り上げられておりますし、その他の各方面から広い意味での土地政策の一つとして借地・借家法の見直しというようなことが提言されてまいったわけでございます。これらの提言には、要するに借地・借家法というものが制定以来基本的な改正がなく今日まで経過しておる、しかもその借地・借家関係の規律は画一的で、現在の社会経済情勢というものに適合していない面があるのではないかというような面からの提言だというふうに私どもは理解しているわけでございます。
 また、昨年の日米構造問題協議におきましても、アメリカ側から土地問題の一環として借地・借家法の見直しについて日本政府側の見解をただされました。私ども、借地・借家法につきましては昭和六十年以来この見直し作業に着手しているということを説明したところでございますが、土地問題の解決を直接の目的としてこの借地・借家法を見直すということはこれはできませんけれども、借地・借家法を現在の社会経済情勢に適合したものにするということにより、結果として優良で低廉な土地、住宅の供給の促進につながるということが期待されるというふうに私どもは考えているわけでございまして、アメリカ側にもこのことを説明したところでございます。
#104
○野村五男君 そうしますと、今回の改正は土地や住宅の供給の促進につながるのかどうか、お伺いいたします。
#105
○政府委員(清水湛君) 昭和五十年代から各方面からいろいろ意見が寄せられておりますけれども、その意見の中には、例えば現在の借地・借家法というのが土地の高度利用とか有効利用というものの障害になっているんではないかというような御指摘があった部分もないわけではございませんけれども、しかし基本的には借地借家法というのは直接にそういう土地政策とか住宅供給ということを目的とする政策立法ではない、こういうことがあるわけでございまして、このことはもう大方の皆様方に理解されているところであるというふうに思うわけでございます。
 借地・借家法の今回の改正は、より合理的な当事者関係の確立を目指すということでございまして、住宅や宅地の供給を直接の目的とするものではございませんが、しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、定期借地権制度の創設というようなことによりまして借地・借家に対する多様化した需要にこたえるためのものができる、こういうようなことが考えられるわけでございます。私どもとしては、そういう意味で利用しやすい借地・借家制度が実現いたしますと、これらの制度の利用を望んでいる方々にとりまして、結果的に優良な貸し地あるいは住宅、そういうものの供給につながっていくものと考えているところでございます。
#106
○野村五男君 借地・借家をめぐりましては関係者のかかわり合いもさまざまであり、借地・借家法の見直しについてもさまざまな意見があったと思います。法案の作成過程においてはこれらの意見は十分に酌み取られたものかどうか、お伺いします。
#107
○政府委員(清水湛君) 借地・借家法というのは、これは民法の特別法でございますけれども、今や人間の居住という面に関する限りにおきまして民法と同一の最も基本的な法律であるというふうに私どもは考えているわけでございます。そういうようなことから、この種の問題を審議し法案をつくるという場合にはできるだけ幅広く各界各層にわたって意見を求める必要があるということに当然のことながらなるわけでございます。
 法制審議会におきましても調査審議に入りました直後、借地・借家法の改正について指摘されているいろんな問題点を網羅的に取り上げまして、「借地・借家法改正の問題点」というものを昭和六十年に公表いたしまして関係各界から幅広く意見を求めたところでございます。大学関係、法曹界、これは裁判所、弁護士会でございますが、そのほかに貸し主、借り主の団体、不動産関連の業界とか経済界、金融界、商工団体、不動産関係の研究団体等、実にさまざまな団体があるわけでございます。そういうような方々からいただきました意見に基づきまして、さらに借地法・借家法改正要綱試案というものをつくりまして、これにはいろんな関係方面の意見に基づいてつくられた甲案とか乙案とか丙案とかいろんな案が列記されているわけでございますけれども、そういうものを公表いたしましてまた幅広く各界の意見を求めたわけでございます。
 私どもといたしましては、借地・借家につきましではそれぞれ地主さん側の立場あるいは借地人、借家人の皆様方の立場からいろんな意見がたくさん出ているわけでございますけれども、これらの意見をすべて公正、公平に検討いたしまして最終的にこの今回の法律案をまとめ上げたというふうに考えているわけでございまして、関係者の意見は十分に尊重されているというふうに言って差し支えないというふうに考える次第でございます。
#108
○野村五男君 それでは、この法案の内容について説明を求めます。
 まず、今回の改正では借地権の存続期間を現行法と変えておりますが、このようにした理由は何であるか、お伺いいたします。
#109
○政府委員(清水湛君) これも午前中に御説明したところでございますけれども、当初の存続期間と原則三十年、こういうことにいたしているわけでございます。つまり、契約で定め得る期間の最短期間は三十年である。三十年以上の期間を契約で定めるのはこれは一向に構わないわけでございますけれども、これ以上短い期間を決めてはいけないという意味で、この基本的な存続期間を三十年というふうにしているわけでございます。それぞれの契約の中身とか態様とかによりまして、例えば丸ビルみたいな大きな建物をつくるというような場合には当然三十年以上の長期の期間を決めるということになるのでありましょうが、少なくともどういう事情があろうとも三十年以上でなければならないというふうにいたしているわけでございます。
 このようにいたしました趣旨は、現在の建築技術上も鉄筋コンクリートあるいは木造建物というようなものも大体三十年ないし四十年程度で建てかえが検討されるというようなこと、あるいは三十年という期間が建物の所有を目的とする場合においては大体適当な期間ではないかというようないろんな各方面からの意見というようなものを参考にいたしまして、堅固、非堅固の区別をなくした上で、つまり最短期間が二十年、三十年という現行法の区別をなくして一律に最低の存続期間を三十年、こういうふうにしたわけでございます。これによって借地権の一応の安定性が確保されるということになるのではないか、こういうことでございます。
 なお、更新後の存続期間につきましても午前中いろいろと御質問があったわけでございますが、これにつきましても、この更新後の期間を契約で定める場合でも最低期間は十年であるという、最短期間としての十年という定めをしているわけでございます。これは当事者間の実情に応じまして少なくとも当初の存続期間が経過した後におきましては貸し主と借り主の関係を調整することができるよう、いわば調整の機会を十年単位で設けるということにしたわけでございます。十年という期間はそのような機会、つまり正当事由が貸し主側に生じたかどうかというようなことをチェックするという意味においても合理的と申しますか、妥当な期間ではないかというふうに考えられたわけでございます。
#110
○野村五男君 更新後の借地権の期間を短縮することは借り主の権利のいわゆる不安定につながるとの見方もありますが、この点について再度お伺いいたします。
#111
○政府委員(清水湛君) この十年という期間は、繰り返しになるかもしれませんが、基本的な存続期間は最低三十年、三十年を下ることはないという前提のもとに、その三十年の期間が経過した後におきましては十年ごとに正当事由の有無をチェックし得る、こういう意味で、最近のような社会経済情勢の変化の激しい時点におきましてはある程度短期間でもそういうようなチェックの機会を与えることが公平ではないか、こういうことから考えられたものでございます。
 ただしかし、正当事由が存しない限り貸し主の方としては当該土地の返還を求めることができない、こういう点は、これは現行法と全く変わらないわけでございますので、これによって借地権者の権利が不安定になる、こういうことにはならないというふうに私どもは考える次第でございます。
#112
○野村五男君 次に、正当事由について伺います。
 まず、正当事由の仕組みが導入されたのは昭和十六年でありますが、その背景をお伺いいたします。
#113
○政府委員(清水湛君) いろいろな事情が考えられるわけでございますけれども、一つには、大正十年に制定された借地法におきまして、木造建物の所有の場合でございますけれども、契約で定め得る最短期間が二十年というふうにされまして、多くの契約はその二十年という期間を定めて借地契約がされるという実情にあったようでございます。
 それがたまたま昭和十六年に二十年の期間が到来する、一番早いものでその時期に到来するというようなことが背景にあって、期間満了を理由に地主側が建物の収去、土地明け渡しを要求する機運が出てきたということ。それから、御承知のように、昭和十二年にいわゆるシナ事変が起こるわけでございますけれども、これによりまして土地・建物の価額が高騰するとかあるいは貸し主が契約の更新を拒絶するというわけでございますけれども、例えば国内に残されている留守家族の生活が不安定になる、こういうようなこともあるということ。さらには、そういう戦時下の影響を受けまして、いろんな軍需産業の工場等の膨張による都市人口の増加とか都市への人口集中、こういういろんな社会経済情勢がございまして、借地人の地位が二十年の期間経過によって不安定になるというようなことだとその権利が保護されないことになるのではないかというようなことになりまして、借地権及び建物賃貸借の一層の安定を図るという趣旨から昭和十六年改正がされた、こういうふうに私どもは理解しているところでございます。
#114
○野村五男君 この正当事由は借地・借家契約の更新の有無を決めるものでありますからへ現在では借り主の権利保護のために最も重要なものであると考えられております。この正当事由に関する規定を改正する趣旨をお伺いいたします。
#115
○政府委員(清水湛君) 昭和十六年改正によって入りました正当事由条項というのはい戦後の住宅宅地難というものを背景にいたしまして裁判所でも大変に争われることになってきたという状況が一つあるわけでございます。借地・借家関係の裁判例の圧倒的多数はこの正当事由をめぐってのものであるというふうに言ってもいいのではないかというような気すらするわけでございます。
 午前中もお答えしたところでございますけれども、この正当事由というのは、昭和十六年に、そのままでは期間が到来することによって地主の方からの明け渡し請求に応ぜざるを得ないというような実情が生ずるおそれがあるということを背景に、いわば地主側の権利を制限して借地人を保護する、あるいは借家契約でございますと借家人を保護するという趣旨で制定されたものでございます。しかしながら、当時の条文は、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他正当な事由がある場合ということになっておるわけでございまして、要するに貸し主がみずから使用をする必要があるということさえ証明すれば、借地・借家人の方でも使う必要があるということがあってもこれは返還を請求することができるというような解釈、あるいはそういう解釈を生む余地が十分にあったわけでございます。
 今回、借地借家法という現代語化した法律をつくる際に、この正当事由の条文をどのように書くかということが一つの問題でございましたけれども、やはり現行法のままこれを新しく書きおろしますと、中身は変わらないと申しましても、現在の時点においてそういう条文を置いたということになりますと、またそれなりの議論を生む余地があるということになるわけでございまして、正当事由をわかりやすく書くということと正当事由として何を盛り込むかという点が実は大変大きな問題であったわけでございますが、基本的には、わかりやすい条文を書く以上、現在の判例なり裁判実務で確立されておる基本的な考慮事項、こういうものを法文に明らかにする必要がある、こういうことからこの正当事由に関する規定を改正したわけでございます。
 したがいまして、基本的には昭和十六年改正後の正当事由に関する条文についての判例、解釈をそのまま踏襲したものでございまして、借地人に不利益であるとかあるいは地主に利益であるとか、そういうような要素は一切ないというふうに考えている次第でございます。
#116
○野村五男君 現在の裁判実務で考慮されている事情を掲げたものであると言いますが、それでは具体的にここで挙げた要素としてはどのような事情が考慮されるのか、お伺いいたします。
#117
○政府委員(清水湛君) 現在の法文ですと、貸し主がみずから使用を必要とする場合と、貸し主側の使用の必要性だけを条文に書いておるわけでございますが、裁判例で当事者双方の使用の必要性を比較考量しなさいと、こういうことになっているわけでございます。これが最も基本的な要素でございますが、そういうふうな当事者がどのような事情でその土地・建物の使用を必要としているか、こういうこと、これをまず基本的な要素として判断事項の対象といたしております。
 そのほかにも、借地に関する従前の経過、これは土地を借りるに至った事情とか、あるいは今まで借地関係をめぐってどのような金銭の授受が行われたか、地代をきちんと払っているかどうかというようなことが主要な要素になろうかと思いますけれども、要するに借地に関する従前の経過とかあるいは土地の利用状況、借地権者がどういう建物を建ててその土地をどの程度利用しているかというようなこと、これはその使用の必要性の裏返しの問題かもしれませんが、そういう利用状況というようなものを考える。さらに、裁判実務で認めておりますところの正当事由のいわば補完事由として、財産上の給付をする旨の申し出があった場合にはその申し出を考慮する。これは端的にはいわゆる立ち退き料の支払いを地主側が申し出ている、あるいは家主側が申し出ているというような場合に、それだけで正当事由があったということにはなりませんけれども、当事者双方が使用を必要とする事情を判断してもかれこれ決しがたいというような場合に、地主側で財産上の給付をするからというようなことを申し出た場合にはそういう申し出も考慮して正当事由についての判断をしてもよろしい、こういうふうにいたしているわけでございます。
#118
○野村五男君 ここに掲げられました要素の中ではどれが基本的な要素と理解できるのか、お伺いいたします。
#119
○政府委員(清水湛君) これは先ほどちょっと申し上げましたけれども、第六条関係で申しますと、当事者の使用の必要性、当事者双方がその土地を使用する必要性がどの程度あるか、こういうことがまず最も基本的な判断要素であります。そういう要素を考慮して、さらに先ほど申し上げました付随的な要素として、借地に関する従前の経過とか土地の利用状況あるいは財産上の給付をする旨の申し出等について考慮して正当事由を判断する、こういうことにいたしておるわけでございます。
#120
○野村五男君 現在でも高齢者の方などについては、借りている土地・建物に住み続けたい、またそのほかに住むところが見つかりにくいといった事情がある場合があろうと思いますが、このような借り主の事情は現在と同じように新法における正当事由の規定においても十分に考慮されていると考えてよいのか、お伺いいたします。
#121
○政府委員(清水湛君) この法律を作成する過程におきましても、あるいは法案を国会に提案した後におきましても、この新しい借地借家法によって高齢者などのいわば弱者がほうり出されやすくなるのではないか、こういうような御心配をなさる方がおられたわけでございます。これは現実の問題といたしまして、既に現在の法律のもとで、いわゆる地上げ行為というようなことによりまして高齢者が住んでいる借家、アパート等が取り壊されて、結果として高齢者がどこかへ立ち退かざるを得ない、こういうような現象があるんだというようなことが新聞等でも報道されたわけでございます。
 私どもといたしましては、そういう高齢者に対してどういう住宅を政策的に供給するかということは、それぞれまた専門の住宅政策あるいは福祉政策の問題としてお考えいただく必要があるのは当然だと思っておりますけれども、借地借家法においては、高齢者だから建物から出ていくべきであるとかあるいは借地から立ち退くべきである、こういうようなことには当然にならないわけでございます。先ほどもお答えいたしましたように、正当事由の判断は当事者双方の使用の必要性をまず考えなさい、こういうことになっているわけでございまして、お年寄りがそこに住んでいてそれ以外に行く場所がないということになってまいりますと、使用の必要性というのは非常に高いわけでございまして、そういうことになりますと、裁判所としても当然に住んでいる高齢者である借地人あるいは借家人に対して明け渡しを求める正当事由というのは地主側あるいは家主側の方にはない、こういうことに裁判上の判断としてはならざるを得ないし、なるであろうというふうに思っているわけでございます。要するに、高齢者でほかに行くところがないということであればむしろ正当事由はないということで、さらにそこでの居住は借地借家法上は保障されることになるのではないか、こういうふうに思う次第でございます。
#122
○野村五男君 また、法案の検討過程におきまして、平成元年に法務省は中間試案を発表しております。その中では、正当事由の有無の判断に際しては土地や建物の存する地域の状況という要素が考慮されることとされておりましたが、この法案ではこの要素は削られておりますが、この理由をお伺いいたします。
#123
○政府委員(清水湛君) 借地借家法の中で正当事由をめぐる論争というのが非常に激しく行われたわけでございます。
 この点につきましては、例えば特に都市再開発とか土地の高度利用あるいは土地の有効利用というようなものを積極的に主張する不動産業関係の。団体等におきましては、当該地域の土地の効率的な利用がされていないというような場合には地主側で期間満了の際に更新を拒絶するというようなことができてもいいのではないか、こういうような意見を持たれる方もいたわけでございます。しかしながら、高度利用とか有効利用といういわば公益目的のために借地人が犠牲になる、私人間の契約関係である借地・借家関係におきまして借地人なり借家人が犠牲になるということは、これは問題でございまして、そういうようなことは別途土地収用法なり都市再開発法という面で考慮されるべき事項だということに当然なるわけでございます。
 そういうような観点から、例えば御質問にでざいましたように、土地や建物の存する地域の状況、つまり当該契約の対象となっている土地そのものあるいは建物そのものの利用状況ではなくて、周辺がどういう形で利用されているか。例えば、問題の家は木造であるけれども、周辺は大体鉄筋高層化の傾向にある、こういうような状況がある場合には正当事由があるということになるんだというような意味におきまして、土地や建物の存する地域の状況というものを正当事由の判断要素として加えるべきだ、こういうことが主張されたわけでございます。そういう意見もあるということから、平成元年に発表されました法務省の要綱試案ではこの言葉を実は入れておったわけでございます。
 しかし、当然のことながらこういう当該借地あるいは当該借家とは関係のない事項を正当事由の判断要素とするということは、これは当事者間の契約関係をベースにしてその権利義務関係を合理的に調整するという範囲から逸脱をする、あるいは土地の高度利用あるいは有効利用という名目のもとにこの正当事由条項が利用されて借地人、借家人が不利益を受けるおそれがあるというような問題点が各方面から指摘されたわけでございます。弁護士会などもこの文言を入れるということについては強い反対を示したわけでございます。
 そういうようなことから、この当該土地や建物の存する地域の状況というのは正当事由条項から削除する、こういうことで最終的に今回の法律案のような中身になった、こういう経過をたどったわけでございます。
#124
○野村五男君 財産上の給付が考慮されることとされておりますが、多額の立ち退き料さえ払えば正当事由が認められるのか。今回の正当事由の改正が地上げのような行為を促進することにつながることはないのか、お伺いいたします。
#125
○政府委員(清水湛君) 先ほども御説明いたしましたように、正当事由の有無の判断は当事者双方の当該土地・建物を使用する必要性の度合いを考慮して基本的には決める、こういうことになっているわけでございます。その他の要素はそういう基本的な判断要素に対する付随的なあるいは補完的な要素でございまして、基本的な要素である使用の必要性というものだけでは判断しがたいときに考慮される事項、こういうことになろうかと思います。したがいまして、今回の正当事由条項の改正によって、多額の立ち退き料さえ払えば正当事由が認められるということにはならないわけでございます。
 現実に裁判の実務におきましても、要するに立ち退き料さえたくさん払えば正当事由があることになるんだというようなことを言っている判例は一件もないわけでございまして、多額の立ち退き料の支払いの申し出をしたにもかかわらず、裁判所の方で正当事由がないとして地主からの明け渡し請求を認めなかったという例もあるわけでございます。私どもといたしましては、そういう裁判例あるいは裁判実務における取り扱いというようなものを考慮いたしまして、正当事由を判断する場合のいわば要素として財産上の給付の申し出の有無ということを掲げたわけでございますが、現在の裁判例、実務で行われている以上のものを新たに付加するということにはならないわけでございます。
 したがいまして、今回の正当事由の改正が地上げのような行為を促進するということには到底ならない。そういうことを主張しておられる方もあるようでございますけれども、私どもとしてはそういうようなことは全くないというふうに思うわけでございます。むしろそういうことをよく理解していただいて、この正当事由条項の改正によって地上げが易しくなるなんということはないということをよく理解していただくためにこの法律の中身の周知徹底ということに今後とも努力を尽くさなければならないというふうに考えている次第でございます。
#126
○野村五男君 それでは次に、今回の改正ではこれまでにない新たな借地のタイプとして定期借地権制度を創設しておりますが、この趣旨を改めてお伺いいたします。
#127
○政府委員(清水湛君) 現行法では、御承知のように、木造建物の所有を目的とする借地権であるか堅固の建物の所有を目的とする借地権であるかという二つのタイプの区別はございますけれども、基本的にはその規律は同じでございまして、そういう意味では画一的で弾力性がない、こういうふうに言われているわけでございます。そこで、今回の改正案におきましては、従来の普通の借地権とは違った三つのタイプの定期借地権制度を創設するということといたしております。
 定期借地権というのは、要するに更新がない、当該定期借地権の設定契約で定めた期間が満了いたしますと、いずれにいたしましてもその土地を地主に返還しなければならない、こういう性格を持っているわけでございます。そういう性格がなぜ出てきたかということになるわけでございますが、一つには、現在の借地法による借地権というものが、期間を定めましても、その期間が満了する際に地主の方で返還を求めるといたしましても、自己使用その他の正当事由がないとこの返還請求が認められない。結果として一たん土地を貸すとほとんど半永久的に返ってこないというような状況になってきておる。そういう状況から、したがって貸す方ももう土地を貸さないし、借りる方も、仮に借りるといたしましても例えば高額な権利金を支払わないと借りられないというような弊害が出てきたというふうに言われているわけでございます。
 今回の改正案におきましては、このような従前の借地制度はもう長い間続いてきた借地制度でございますから、若干の存続期間あるいは更新後の期間についての修正はいたしておりますけれども、基本的にはこれはこれでそのままの形で残す、しかしながらそういう新しい需要と申しますか、更新のない借地権の制度というものを新しいメニューとしていわば追加する、こういう形で定期借地権制度を創設するということにいたしたわけでございます。
 この結果といたしまして、先ほども申し上げましたように、一たん土地を貸すともう半永久的に返ってこないというような心配から貸す方も解放され、また借りる方といたしましても、一定の期間が来れば必ず返さなければならないという前提のもとに権利金もあるいは従来のものと比較いたしまして種類によってはかなり安く借りられる。こういう意味で貸しやすく借りやすい新たな借地権制度というものになるのではないか。結果として借地の利用の幅が広がることになるのではないかというふうに私どもは期待しているわけでございます。
#128
○野村五男君 定期借地権にはどのような種類があるのか、また、それぞれどのような用途に利用されると考えているのか、お伺いいたします。
#129
○政府委員(清水湛君) 定期借地権には三つの種類があるわけでございまして、一つは、存続期間を五十年以上とすることを要件とする長期型の定期借地権でございます。長期定期借地権というふうに呼んでも差し支えないかというふうに思います。それから二番目は、存続期間を十年以上二十年以下として事業用の建物を建てることを目的とする短期の事業用借地権でございます。それから三番目は、借地権設定後三十年以上経過したときに借地上の建物が貸し主に譲渡されることをあらかじめ特約をする。貸すときに借地人が建てた建物は、三十年以上の期間ですから四十年なら四十年たちますと、そのときにその所有権が地主に移ると同時にその土地も地主に返還される、こういう約束をあらかじめした上で貸す建物譲渡特約付借地権、こういう三つの類型のものがあるわけでございます。
 このうち、二番目に申しました事業用借地権、存続期間を十年以上二十年以下とする事業用借地権というのは、用途も事業目的というものに限定されておる、期間も十年以上二十年以下と短いので、実際に利用されるのはこれは郊外の外食店舗とかあるいは量販店とか遊技場といったたぐいの事業のために利用が見込まれているわけでございます。これは事業用でございますから、住宅用に、住宅を建てるためにこの借地権を設定するということはできないわけでございます。そういうことから、この乱用を防ぐために公正証書でこの事業用借地権の設定契約をしなければならないというふうにいたしておるわけでございます。
 この事業用借地権につきましては、例えば、これは何も都市周辺部ということには限られないと思いますが、都市の中心部でも構わないわけでありますけれども、今でも借り主としてはそんなに長期の借地権は要らない、短期間でいい、そんなに高い権利金を払うほどの余裕はない、むしろそういう金があるならば店舗の設備等に投資をしたい、こういうようなことを考えている事業者の方から見ますと、比較的安い権利金で、期間は短いのですけれども、その間集中的にそこで商売をすることができる。貸し主の方から見ましても、間違いなく契約の期間が来れば返してもらえる。こういうことになるわけでありますから安心して貸せる、こういうことになろうかと思います。
 今までも当事者間の紳士的な話し合いと申しますか、紳士協約みたいなもので十五年なら十五年貸して必ず返すというようなことで貸すという例も全くないというわけではないようでありますけれども、これはこのような契約が裁判所に訴えられて裁判ということになりますと無効でございまして、期間の定めのない借地契約ということになりまして一挙に法律上三十年の存続期間というようなものになってしまう、こういうことになっているわけでございますが、そういうようなことから地主の方ではもう貸さないということになっていた分野であろうかと思います。そういうようなものにつきまして、この事業用借地権というのは大いに利用されるのではないかというようなことを考えている次第でございます
 それから、その他の二つ、つまり存続期間を五十年以上とすることを要件とする長期型の定期借地権あるいは建物の譲渡特約付借地権、こういう場合には、これは法律上特別の利用方法を想定しているわけではございません。事業用借地権のように事業用の建物というような限定は付していないわけでございます。
 しかしながら、この長期型の定期借地権につきましては、これまで紳士協定とされている住宅・都市整備公団の契約等の例に照らしますと、賃貸マンションとかオフィスビル、分譲住宅等への利用が見込まれるのではないかというふうに思います。現に例えば住都公団などでは、午前中も御説明申し上げましたけれども、公団住宅を建てるについても、土地を買えばもちろんいいわけでありますけれども、なかなか買えない、地主さんから土地を貸してもらうということで賃貸マンションをつくろうということで行動いたしましても、現行の借地法のもとでは一たん貸すと借り主の方がいわば開き直ってしまいますと返してもらえない、こういうような実情があるわけでございます。住宅・都市整備公団なんかの場合には、期間が来れば必ず返しますという約束、それを信頼していただいて七十年とか六十年というような期間を定めまして土地の借地契約をしておるというようなことも聞いているわけでございますが、今度はそれが紳士協定ではなくて法律上容認された制度として利用されるということでございますから、そういう公団、公社あるいは民間のデベロッパー等によって大量の賃貸マンションの建設のためにこれが有効に活用されるということになれば非常に私どもとしてはうれしいことだというふうに思っているわけでございます。
 同じように、建物譲渡特約付借地権につきましても同じような分譲住宅等への利用が見込まれるわけでございまして、ぜひそうなればという期待は大いに抱いているわけでございますけれども、これもまた経済の流れの中での話でございますから、どういうような影響が出てくるかということについては私どもとしてはなかなか言いがたいところがあるということでございます。
#130
○野村五男君 定期借地権の契約期間が満了すると建物はどうなるのか、またその建物を借りている人がいる場合にはどうなるのか、お伺いいたします。
#131
○政府委員(清水湛君) 定期借地権の種類によりまして若干その法律関係が変わってまいりますので、少し詳しくはなりますけれども、御説明申し上げたいと思います。
 長期の、要するに五十年以上の定期借地権とかあるいは事業用の借地権、十年以上二十年以内の期間を定めた事業用借地権というものにつきましては、これは建物は取り壊して借地権設定者に土地を返還するということになっているわけでございます。もちろん、これは話し合いで建物はそのままにして土地を地主に返すというような別段の合意をするということは一向に差し支えがないわけでございます。それから、二十三条の建物譲渡特約付借地権におきましては、これは建物は地主の方にそのまま譲渡されるわけでございます。建物は借地上に存在したままで借地権設定者に移る、こういうことになります。
 この二十三条でございますけれども、建物譲渡特約付借地権の場合には、これは建物貸借人の借地権者との建物賃貸借契約、つまり借地人がその上に建物を建ててその建物を第三者に貸しているという場合の借地人と建物貸借人との間の契約、こういうものは当然に借地権設定者の方に引き継がれまして、土地を返してもらった地主といたしましてはその建物に住んでいる建物貸借人の権利はこれは認めなければならない、こういうことになるわけでございます。法律的には第二十三条第二項によりまして、貸借人と借地権設定者との間に期間の定めのない建物賃貸借契約がなされたものとみなされるということになっておりますので、建物譲渡特約付借地権の場合の当該建物の貸借人は従来どおりその賃借権が保護される、こういうことになるわけでございます。
 次に、二十二条の一般の定期借地権、つまり五十年以上の期間を定めた定期借地権あるいは二十四条の事業用借地権の場合には借地権が消滅し建物も取り壊すどいうことになりますので、建物の貸借人もその土地から立ち退かなければならない、こういうことになるわけですが、ただ突然に建物の貸借人が定期借地権の期間が満了して建物を取り壊すことになったから出ていってくれというふうに言われたのでは非常に困る、こういうことに当然のことながらなるわけでございます。
 そこで、この法律の三十五条でございますけれども、貸借人が、この建物の貸借人でございますけれども、貸借人が定期借地権の終期をその一年前まで知らなかった場合には、裁判所に一年の範囲内で土地の明け渡しにつき期限の猶予を求めることができる、こういうふうにいたしているわけでございます。つまり、そういう定期借地権上の建物が第三者に貸されるという場合にはこの建物は定期借地権の上に建っている、そういうことで期間が満了すればこれは建物を取り壊して地主に返さなければならない、こういういわば運命を担っているものであるということを建物の貸借人にきちんと話をする必要があるわけでございますが、そういうことも知らされないまま突然出ていけと言われても困るわけでございますから、そういうことを定期借地権の終期の一年前まで知らされておらなかったというような場合には一定の期間だけその建物に建物の貸借人は引き続き居住をすることができる、こういうふうにいたしておるわけでございます。
#132
○野村五男君 それでは次に、新しい類型の借家契約についてお伺いいたします。
 まず、転勤等の場合の確定期限つきの借家の制度については転勤を伴う勤労者の方々などにメリットがあるものと考えられますが、今回法律上の手当てをした理由をお伺いいたします。
#133
○政府委員(清水湛君) 今回、借地法についてはかなり大幅な改正をいたしておるわけでございますけれども、借家法につきましてはこの期限つき借家の制度とあとは正当事由を明確にいたしたということだけでございます。もちろん、家賃をめぐる紛争手続についての調停制度の活用というのは入っておるわけでございます。そういう意味では、新しい借家法のいわば一つの目玉みたいなものになっているわけでございます。このような期限つき借家制度の導入につきましては、御質問にもございましたように、転勤等の事情によりまして建物の所有者が一定期間その建物に住むことができないという場合、そういう場合にその期間だけ建物を貸すことができる、こういうふうにしようという趣旨のものでございます。
 現行法のもとでは、結局、建物を一たん貸しますと、契約で期間を定める、その期間が満了したときに貸し主の方に正当事由がないとこの更新を拒絶することができない。多くの場合は、例えば転勤から帰ったというようなことは自己、貸し主がみずから使用を必要とする場合に当たるということになるように思われるわけでございますけれども、一方ではそこに住んでいる借家人の方でなかなかそう簡単に正当事由であるということを認めないというような紛争も起こってくるわけでございます。そのためにこの正当事由の有無をめぐって紛争が長期化する、結果としてそこの家に住めない、こういうようなことが現象として指摘されていたわけでございます。
 そういうようなことから、転勤等に伴いましてこの家をどうするかというような場合に、結局帰ったときのそういうトラブルを恐れて建物を貸さないで空き家のままにしておくとか、あるいは親戚の者その他関係者に無料で貸しておく、つまり、ただで貸しますとこれはもういつでも返せということが言えますから、そのためには無料にしておく、あるいは会社に頼み込んで会社の社宅として活用してもらうとか、いろんなことをしていたわけでございますが、とにかく一たんその借家人というものを入れますと期間が満了いたしましても正当事由の存否で争われでなかなか返してもらえないというような実情でございますから、そう簡単には貸せない。そのために、こういった勤労者の方が持っている家はかなりいい家が多いというふうに言われているわけでございますけれども、転勤者の方から見ますと、家賃ももらえないし、貸したら貸したで返してもらえる保証がないというようなことになるということから、何とかこういうことについて手当てをしてほしいという要請が各方面からあったわけでございます。
 私どもといたしましては、こういう実情にかんがみまして、この期限つきの借家契約というような制度を導入するということが望ましいということで今回の改正の機会にこの制度を導入したわけでございますが、他方、これが乱用されまして、普通の借家であるにもかかわらず、いやこれは転勤等に伴う期限つきの借家契約であるというようなことで、せっかく借家法の中に正当事由がないと更新を拒むことができないというような制度があるにもかかわらずそれが損なわれるということになると非常に問題でございますので、この新しい類型の借家契約についてはきちんと借家契約の中にどういう事情でこういう借家をするのかということを明らかにしていただく、こういうことで、もしそういうようなものと事実が違っているということになりますと、それはもうむしろ法律的には一般の借家契約とみなされるというような解釈が当然に出てくるというふうに私どもは考えているわけでございますが、そういうことを前提、とした上で今回一定の事由が存する場合に限ってこの期限つき借家というような制度を認めることといたしたわけでございます。これも私どもといたしましては、借家の利用の幅が広がることを期待している一つの分野でございます。
#134
○野村五男君 転勤のほかにどのような場合にこの契約をすることができるのか、具体例をお伺いいたします。
#135
○政府委員(清水湛君) 三十八条でございますけれども、ここに「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情によりこというふうにいたしているわけでございます。
 「療養」というのは、結局病気になりまして長期間入院をしなければならない、その関家に住む者がだれもいない、こういうようなことが起こるわけでございます。常に起こるというわけではございませんけれども、最近の家族構成等の事情からそういうようなことが起こる。ところが、療養を終えてうちに戻りたいと思いましても、今の借家契約ではやはり正当事由があるかどうかということをめぐってトラブルが発生しやすい、こういうような問題がございます。そこで、転勤と並んで療養のために長期間家をあけるというような場合をもこれに加えているわけでございます。
 それから、「親族の介護」というのをこの法律の中に入れております。これも最近の老人問題等でいろいろ問題が指摘されているところでございますが、郷里に残した親が病気になっておる、相当長期間そちらに赴いて介護をしなければならない、そのために自分たちが住んでいる現在の家をあけなければならない、それも相当の長期間にわたる、こういうようなことが現にもうあるというふうに言われているわけでございます。こういうような場合にも、やはり一定の期間は貸して家賃はもらいたい、しかし介護を終えて帰ってきたら必ず明け渡してほしい、こういうようなことは十分に考えられるわけでございまして、そういうようなことからこの親族の介護というものも挙げたわけでございます。
 「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情によりこということで、では「その他のやむを得ない事情」というのは一体何なのか、こういうことになろうかと思いますが、これはやはり三十八条で転勤とか療養、親族の介護というものを例示しておりますので、これに匹敵するぐらい重要な事情だと、こういうことに当然のことながらなるわけでございます。考えられますのは、一定の期間海外に留学をするという場合、学生の身分で留学する場合に自分で家を持っているという例は余りないかと思いますけれども、いろんな研究留学その他の留学もあるわけでございますから、そういうことの関係で海外に二年なり三年なり行かなければならない、こういうような場合、あるいはこれも「やむを得ない事情」ということに見ていいと思いますが、定年に備えて勤務地から離れた地方に持ち家を建てた、しかし定年まではその持ち家を生活の本拠にするということはない、こういうようなときに、定年になったのでその自分が建てた持ち家に戻る、そのときには必ず返してもらいたいというような、そういうような事情もある意味においては「やむを得ない事情」に該当する場合があるというふうに考えるわけでございます。
 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、転勤とか療養とか親族の介護によって一定の期間家をあけなければならない、こういうような事情、それに匹敵するような事情、こういうものが「その他のやむを得ない事情」というものに当てはまるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#136
○野村五男君 確定期限つきの借家契約をするには、その趣旨を明確にして契約されないと後でトラブルが生ずるものと思われますが、この点についてどのような手当てをなされているのか、お伺いいたします。
#137
○政府委員(清水湛君) まさに御指摘のように、確定期限つきでございますから、そういう借家契約をする場合には、後で、いやこれは確定期限つきの借家ではないとかあるとか、そういうようなことが争いになる、こういうことは予測されないわけではございません。そこで、この期限つき建物の賃貸借契約におきましては、契約期間の満了時に建物をめぐる紛争が生じないように確定期限つきのものであるということを明確にして契約をする必要があるということに当然のことながらなるわけでございます。
 そこで、この法律におきましては第三十八条の二項という規定でございますが、この「特約」は、先ほど申し上げましたようなやむを得ない事情というものを明らかにした書面によってしなければならないということにいたしているわけでございます。いずれにいたしましても、家を貸すという場合に、一般の借家でございますと期間が満了いたしましても正当事由がなければそのままずっと借家人はそこに引き続き居住することができる、こういう大原則があるわけでございまして、いわばその原則の例外として一定のやむを得ない事情があるという場合には、その期間が満了した際にその更新をしないということにいたしておるわけでございますので、そのことが書面によって明らかに証拠立てられなければならないということに当然のことながらなるわけでございます。そういうことを書面にさせる、書面が不可欠であるということにいたしましたわけですが、そういう理由に基づくものでございます。
 この書面につきましては、特にどういった種類の書面でなければならないということにはなってはおりませんけれども、きちんと非常に厳格に、後で争いを生む余地をなくすという意味におきましては、例えば公証人のところで公正証書をつくるということも考えられますし、あるいは弁護士さんに立ち会ってもらってそういう専門家のところで文書をつくってもらうというようなことも考えられますし、それに限定はされませんけれども、法律も書面でつくることを要求しているわけでございますので、きちんとした書面でやっておく必要がある、こういうことになるわけでございます。
#138
○野村五男君 それでは次に、取り壊し予定の建物の賃貸借についてお伺いいたします。
 これは具体的にはどのような建物を想定して設けられた規定なのか。例えば、家主が建物を新しく建てかえる計画を有している場合などでもいいのかどうか、お伺いいたします。
#139
○政府委員(清水湛君) 法律案の三十九条に「取壊し予定の建物の賃貸借」という規定を設けてございます。「法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。」、こういう規定でございます。
 これは簡単に申しますと、建物はもういずれ取り壊すということがはっきりしておる、しかし取り壊しかいろんな事情によって一年先あるいは二年先に延びてしまった。その間空き家のままにしておくということも考えられるわけでございますけれども、空き家にしておくのももったいないということで、取り壊し予定だということを明確にして、つまり取り壊すべき事由、どういう事情で取り壊すことになっているのかということを明らかにした書面によって賃貸借契約をいたしますと、この建物の賃貸借は建物を取り壊すことになる時期に賃貸借契約が終了するということにいたしたわけでございます。
 例えば、定期借地権の設定された土地の上に建てられている建物が一つの例として考えられます。五十年の定期借地権で住宅・都市整備公団が賃貸住宅を建てた。しかし、五十年がすぐもう間近に来ておる。そういう場合に、一年とか二年の間だけれども、借家人を入れてしまうと今度は正当事由がない限り出ていかないという問題が起こってかえっていろんなトラブルのもとになる、そういうようなことが考えられるわけでございますけれども、その場合に、これは二年後には取り壊すことに決まっておるので二年間だけの限度で建物を貸すんですよということを明らかにして、契約書にもそのことを明らかにして契約をすることができるということにいたしているわけでございます。
 そういうもののほかに、例えば契約上の義務を背景として一定期間が経過した後に取り壊すこととされている建物を賃貸する場合、黙って貸しますと結局期間が来ても正当事由がない限り明け渡しを求めることができない。もちろん、この場合に契約上取り壊しを法的な義務として負っているというようなことが正当事由の判断要素に当然なるということであれば問題はないわけでございますけれども、自己使用の必要性というような見地から必ずそうなるかということになりますと問題がないわけではないということからそういうようなことにいたしたわけでございます。
 大体そういう趣旨のものでございます。
#140
○野村五男君 それでは次に、民事調停法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。
 まず、今回の改正の趣旨及びその主たる改正点について説明を求めます。
#141
○政府委員(清水湛君) 民事調停法の一部を改正する法律案について、その改正の趣旨、主たる改正点についての御質問でございますが、現行の借地法、借家法のいずれにおきましても、契約で定められた賃料の額が不相当になった、そういうときには当事者はその額の増減を請求することができるということになっております。
 今、減ということはほとんどないと思います。ほとんど増額という形だろうとは思いますけれども、この増減額について当事者間にその値上げの幅をめぐりまして紛争が生じたときには、最終的には訴訟によって解決するということになるわけでございます。しかし、訴訟によるということだけでは争いの対象の割には時間と費用がかかる。つまり、借地権があるのかないのか、あるいは借家権があるのかないのか、解除が有効にされたかどうか、こういうような権利の存否にかかわる争いということになりますと、これはかなり時間と費用をかけても、また大きな訴訟という場でやっても、それにふさわしいということが言えるのかもしれませんけれども、一応借地関係は存在する、あるいは借家関係は存在するという前提の上で地代・家賃の額についての話し合いがつかない、こういうことでございますので、こういうような問題につきましては、まず裁判所で、立派な調停委員という者がおりまして調停制度というものがあるわけでございますから、そこで話し合いによって解決をしていただく、こういうことが望ましいのではないか。
 裁判所の方でも、今回この改正法が通りますと、地裁あるいは簡裁における調停委員について、特に地代・家賃紛争についての専門的な知識を有する者を多数加えて調停制度を充実させるというようなお話を私ども聞いているわけでございますが、そういうような形で簡易に迅速にかつ低額な費用で地代・家賃をめぐる紛争を解決していただく、こういうことにいたしたわけでございます。
 現在でもこの調停制度というものを利用する方々もあるわけでありますが、大体はいきなり地主さんなり家主さんの方が増額請求訴訟を裁判所に提起いたしまして、訴訟という形をつくり上げた上で、そこで話し合い和解をする、こういうようなケースが非常に多いというふうに言われているわけでございます。そういうことであるということも考慮いたしまして、まず調停前置と申しまして原則としてこれをめぐる紛争は裁判所の調停でやっていただく。調停というのはあくまでも当事者の任意による行為、つまり話し合いを尽くした上で任意の合意によって成立するものでございますから、調停ではできない、話し合いではできない、やはり訴訟でやっていただきたいという方々は、これはまたそれで訴訟という場に紛争を移していくということが当然のことながらできるわけでございます。そういうような調停前置の制度を導入する。具体的には第二十四条の二という規定でございます。
 それからもう一点は、当事者間におきまして話し合いはつかないけれども、調停委員会が調停条項を示してくれればそれには従いますと、こういうようなケースも間々あるわけでございます。例えば、家賃の額について家主の方では三万円と言っている。借家人の方では二万五千円と言っている。その差が五千円あるんだけれども、お互いにメンツがあって譲れない。感情的にも譲れない。しかし、ここで調停委員会でぱっと金額を決めてくれれば調停委員会の言うことなら従いますと、こういう方々も当事者の中には数多くおられるわけでございます。そういうような場合を想定いたしまして、当事者があらかじめ書面による合意をいたしまして、調停委員会の調停に服するというような合意をいたしました場合には、調停委員会におきましては、当事者の真意を確認の上、本当にそういう合意をしたかどうかということを確認した上適当な調停条項を定めることができる、こういう制度を導入いたしておるわけでございます。
 調停委員会が適当な調停条項を定めるわけでございますが、そういう合意がありましても、つまり調停委員会の調停に服するという合意がございましても、調停委員会としてはどうも適当な調停条項を定めがたい。例えば、家賃について一方は十万円だと言い、一方は一万円だと言い、その双方の開きがまことに大きいというような場合にはやはり適当な調停条項というものはなかなかつくりがたいということにもなろうかと思いますが、基本的にはそういう調停委員会の力を合理的に活用するという見地から、調停委員会の定める調停条項に服する、そういう制度も地代・家賃の紛争に限って導入をいたしておる、こういうことでございます。
#142
○野村五男君 調停条項による裁定の制度について質問いたしますか、その制度によって当事者が望まないのに調停委員会が調停条項を定めて紛争を終了させてしまうということはないのか、衆議院での修正はこの点とう関係するのか、お伺いいたします。
#143
○政府委員(清水湛君) この調停条項による裁定の制度というのは、先ほども御説明いたしましたように、当事者のそういう調停委員会の調停条項に服するという書面による合意が必要であるということが前提となっているわけでございます。これは現行法にも商事調停、それから鉱害調停制度というのが民事調停法の中にあるわけでございますが、そういう書面による合意ということが要件になっているわけでございます。
 衆議院で問題になりましたのは、その書面による合意というのを具体的に地代・家賃の紛争が起きる前に、例えば借地契約を締結する際によくあることですが、定型的な借地契約書、もう印刷した借地契約書みたいなものを例えば文房具屋さんで売っているというようなことがございます。その契約書の中に、調停申し立てをして調停が不調になった場合には調停委員会の調停条項に服するというような文言が不動文字で印刷されておる。そういう印刷された契約書に借地契約ということで判こを押すということになりますと、そこで形式的にはその書面による合意があったことになるのではないかというような疑問が提出されたわけでございます。私どもは、そういったいわば定型的な契約書に書かれているものに判こを押しても実質的には合意があったとは見られない、つまり一種の例文解釈というのがございますけれども、例文解釈ということによりましてその効力が認められないことが多いのではないかというふうには思いますが、しかし何も調停申し立て前の書面でなくても差し支えないというふうに考えていたわけでございます。
 なぜ考えていたかと申しますと、これは現在ある商事調停、鉱害調停についてもそうでございますけれども、調停委員会はそういう調停条項による調停、つまり裁定をする場合には当事者双方を審尋いたしまして、当事者双方を調停委員会の席上に呼んで、どうしてこういう合意をしたのか、合意をする意思というのはなお今も存続しているのかどうか、調停委員会が調停条項を示せばこれに服するということは間違いないか、こういうようなことを確認して調停委員会が適当と認めた調停条項を示すということにいたしておりますので、書面を作成する時期、つまり調停委員会の調停条項に服するという書面を作成する時期についてはそれほど神経質になる必要はないというような基本的な考え方でいたわけでございます。
 しかし、このことにつきましても、もしそうならば調停の申し立て後にこの当事者が最終的には調停委員会の調停条項に服するというやはり書面による合意をする必要があるのではないか。申し立て前の書面ということになると、ややそこでいろんな紛争が生ずるおそれがあるというようなことが指摘されまして、私どもそういう紛争が生じないのではないかという見通してございましたけれども、紛争を生ずる要素もあると言われますと、そのようなことも考えられないわけではございませんので、調停申し立て後に作成された書面に限るということについては、そういうふうに限定することについて異存はないということで私どもの考え方を申し述べさせていただいた次第でございます。
 以上でございます。
#144
○野村五男君 もうそろそろ時間ですので、あと二点ほどお伺いいたします。
 続いて、先ほど御説明を求めましたが、今回の改正により現在既にされている契約がどうなるのかという点に関し質問をいたします。
 まず、既存の契約には新しい借地借家法の規定が適用されないというのは、そのことは法文のどこに規定されているのか、確認のために質問いたします。
#145
○政府委員(清水湛君) これは既存の契約には新しい借地借家法の規定、つまり更新及び更新後の期間に関する部分でございますけれども、それは適用されないということはもう繰り返し御説明したところでございます。そのことは借地借家法案の附則の六条、これは借地関係でございます。それから、借家関係につきましては附則の第十二条という規定がございまして、その種の契約につきましては「従前の例による。」という表現で、従前のこれに関する借地・借家法の規定が適用される、こういうことにいたしているわけでございます。
#146
○野村五男君 既に土地や建物を借りている方々の権利は、今回の改正でも確かに法律の上では変わらないわけでありますが、問題は現実にその法律の趣旨が貫徹されるかどうかであろうと思います。もちろん、法律をよく読めば既にある契約には新法は適用されないことはわかるし、判例を知っていれば新法の正当事由の規定が現在の実務での扱いと変わらないことは理解できます。しかし、現実には、法律が変わるということから誤解をしたり、あるいはそれを利用して、法律が変わったら借り主の権利が弱められるといって立ち退きを迫ったり賃料の値上げを迫るといったおそれがないとは言えないと思います。このようなことを防ぐためには、今回の改正が現在ある契約には適用されないこと、借り主の権利を弱めるものではないことについて十分周知徹底を図る必要があると考えられます。
 そこで最後に、法務省はこのようなおそれについてどのように考え、それに対し今後どのように対処していくつもりなのか具体的な対策について問うとともに、法務大臣の決意をお願いします。
#147
○国務大臣(左藤恵君) この法案は、今お話がございましたように、借地・借家関係を社会経済情勢の変化に見合った合理的なものにするということを目的といたしておりまして、そのために定期借地権制度とかあるいは期限つき借家制度、そうしたものの創設、借地権の存続期間の見直し、正当事由の明確化、地代家賃増減額請求の手続の改善などを図ろうとするものであります。また、新法の借地・借家関係の更新及び更新後の法律関係に関する規定を一切既存の借地・借家関係には適用しないということを、今お話がございましたように、法律自体の中で附則でもって明確にいたしておりまして、そういうことで既存の借地・借家関係は新法になりましても従前と変わらない扱いを受けるようにいたしております。
 こうした借地・借家法の改正の趣旨、内容、とりわけ既存の関係は、従前の法律の規定によってもこれまでどおり保護されることを国民の皆さん方に十分理解していただくことが大切である、重要であると考えておりまして、今後ともあらゆる機会を通じて積極的に広報を行うなどこの法律の趣旨、内容を国民の方々に十分に理解していただけるよう鋭意努力してまいる決意でございます。
#148
○中野鉄造君 私は、あらかじめ初めにお断りしておきますが、午前中来の同僚議員の質問と私の質問は重複するところが多々あると思いますけれども、私は初めて御質問するわけでございますので、どうかひとつその点詳細に御説明をお願いしたいと思います。
 今回の改正は、現行の借地法、借家法、建物保護法を廃止してこれら三法を統合した、いわば統合法案である、こういうように理解しておりますけれども、今回の法案と平成元年に成立しました土地基本法との関係はどういうものか。すなわち、土地基本法は適正な土地利用と正常な需給関係の確保を大きな目的としているわけでございますけれども、今回の法案は土地基本法の精神を受けているのかどうか、まずその一点をお尋ねいたします。
#149
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのとおり、土地基本法というのは、「適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な地価の形成を図るための土地対策を総合的に推進」することを定めております。借地借家法は、貸し主と借り主の権利義務関係の調整を図ることを目的とする法律でありまして、土地基本法に示されている政策目標を達成することを直接の目的とするものではございませんが、今回の改正によりまして、先ほど来お話が出ておりますように、定期借地権制度の創設とか、幾つかの社会経済情勢の変化に見合った、利用しやすい、貸しやすく借りやすい借地・借家制度をすることによりまして、結果として良好な借地・借家の供給が促されて、土地基本法に言いますところの「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展」、このことに寄与することになるものと我々は期待しているところでございます。
#150
○中野鉄造君 土地基本法とは基本的に目的は違うというものの、今大臣の御答弁にもありますように、結果として一致する点もあるというような答弁でございますが、今回のこの法案の中に、そういういわば結果としてでもいいですけれども、土地基本法の精神というものがどういう点に生かされているのか、その点をお尋ねいたします。
#151
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 土地基本法につきましては、先ほどの大臣の御答弁にもございましたように、「適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な地価の形成を図るための土地対策を総合的に推進」する、こういうことにこの第一条で定められているわけでございます。借地借家法もそういう意味では土地の利用に関する法律でございますので、これがいわば広い意味における土地政策の一環を占めるものであるということは私どももそのとおりであるというふうに考えております。
 ただしかし、借地借家法は、土地基本法に定めるような政府の責務として良好な住宅なり宅地というものを供給する、その促進を図る、そして地価の適正安定を図る、こういうようなことを直接の月内とするものではございませんで、あくまでも借り主、貸し主の契約関係に基づく法律関係を公平かつ適正、妥当な形で調整をする、こういうことをねらいとするものでございます。
 しかしながら、借地人あるいは借家人、あるいは地主、家主との関係において、先ほどの大臣の御答弁にもございましたように、貸しやすく借りやすい、あるいは利用しやすい借地制度、借家制度というものが創設されますと、その結果として土地の有効利用も促進されるというふうに思われるわけでございまして、そういうような観点から今回の法律を見ますと、何と申しましても定期借地権制度の創設ということになるのではないかというふうに思います。
 もちろん、そのほかにも建物の再築をめぐる当事者関係の調整を合理的なものにする、実質的な権利の中身を変えるわけではございませんけれども、法律関係を円滑化し、合理化するというような改正もされているわけでございますが、こういったような借地・借家制度が現在の社会経済情勢に適応したようなものになりますと、それによって新しい借地需要、借家需要というものが生まれ、良好な住宅宅地の供給につながってくる、こういうふうに思うわけでございます。
 それからまた、政府はこれからいろんな住宅政策あるいは土地政策ということを推進する場合におきましても、最も基本である個人と個人との間の法律関係がきちっと整理されて安定しておりませんと、場合によっては土地政策、住宅政策というものの根幹が揺らぐということにもなりかねない要素があるわけでございますから、借地借家法をわかりやすくすると同時に、いろんな合理的な調整をすることによって、これをきちっとしたものにすることによりまして、これからの各種行政のいわば基礎として有効に活用されることになるのではないか、こういうふうにも私どもは考えているわけでございます。
#152
○中野鉄造君 要するに、現行の借地法、借家法のままでは適正な土地利用が確保できないということについて、法務省が出しているパンフレットの中にも、借地・借家関係の利用の幅が現行のままでは十分に広げられないということを言われております。ところが、それにもかかわらず現在継続している借地が四百万件、借家が約千二百万件、合計千六百万件、これ以上あるにもかかわらず「従前の例による。」という今回のこの法案の附則の条文によって現行法のままこれらは存続させる、こういうことになっておりますけれども、これでは果たして今回新しい法律をつくっても、大半が「従前の例による。」ということになりますと、どうも釈然としない面があります。いわゆる新法となるこの法案で旧法となる現行法の効力を存続させていく、こういうふうになってきますと、先ほどから申しております本法案の提出目的と、その目的は違うとはいえ土地基本法との関係がどういうことになるのか、この点についてお尋ねいたします。
#153
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、現在の借地関係、借家関係、特に借地関係だと思いますけれども、そういうものに新法を適用しなければ意味がないのではないかというような御意見もあることは承知いたしておるわけでございます。
 ただしかし、既存の借地・借家関係、これは現行法のもとで形成され、それなりの安定した状態を続けているわけでございます。さらにその上に、この借地・借家関係というのはいわば人間の生存の最も基本的な基盤でございますので、そういうものについて現に借地人、借家人である方々がいろいろ心配をされるというようなことは政策としても適当なことではない、こういうようなことが考えられるわけでございます。そういうようなことから、既存の借地・借家関係はこれまでどおりの法律で規律するということにいたしたわけでございます。
 他方、今回の法改正により新たに設けられました定期借地権制度というのは、これは新法で初めて認められた制度でございますので、これまではない。紳士協約でやっている例はあるというお話も払いたしましたけれども、基本的には制度として初めて認められたものでございます。そういうような新しい制度を導入せざるを得なかった一つの背景に、現在の借地法あるいは借家法もそうでございますけれども、一たん人に貸すと土地はもう半永久的に戻ってこない、こういうような認識が広まってきた。必ずしも永久的に返らないというわけではございませんで、裁判例などを見ましても、正当事由がないということで無条件に借地人に明け渡しを命じている判決などもあるわけでございますけれども、基本的にはやはり正当事由という問題に縛られまして、一たん貸すと返してもらえない。したがって、もう貸さない。あるいは、借りる方も相当高額な権利金等の支払いをしないと貸してもらえないというようなことから、借地の供給がずっと先細ってきてしまった。こういうようなことも指摘されているわけでございます。
 そういう現行法のもとで、貸したがらない、借りるのが難しいという状態がある中で、最近の社会経済情勢の変化というようなことから、短期でいいから貸してもらいたい、典型的には事業用の定期借地権でございます。あるいは、一定の期間さえ保障されればその期間だけでよろしい、そしたら必ず返すというような五十年以上の定期借地権、あるいは建物はいずれ地主に渡すからという前提で土地を貸してもらうような借地権、こういうようなものについての需要が非常に高くなってきておるということがあるわけでございます。
 しかしながら、そういう需要にこたえようといたしますと、結局今の借地法のままでは全くこれはこたえられない。まさに硬直化しているわけでございます。そういうようなことから、今まで貸し渋っている人たちが新しい定期借地権制度についてこれを活用して貸し出すということも大いに期待されるのではないかということ、これがある意味におきましては土地の有効利用という土地基本法の思想、あるいは政策というものに結果としてつながっていくというふうに言って差し支えないのではないかというふうに思うわけでございます。
 ただ、もとより私どもは、積極的にこの定期借地権というものを利用して何らかの行政目的を達成する、住都公団のように賃貸住宅をつくるというような政策官庁ではございませんので、果たしてこれがどの程度利用されるかどうか。昭和六十二年度の調査では、こういう制度ができても貸さないという人もかなりいるのでありますけれども、こういう制度ができれば貸したいという方も過半数を占めるというような実情でございますので、少なくとも宅地として貸し渋っていた部分がこの制度によって出てくる、こういうことは期待できるのではないかと私どもは期待しているわけでございます。
#154
○中野鉄造君 そうしますと、この法案が成立したとすれば、今おっしゃるような適正な土地利用と正常な需給関係はどの程度確保されることになるのか。言いかえますならば、適正な土地利用のうち、この法案成立によってどのくらいのパーセントが占められるのか、お尋ねいたします。
#155
○政府委員(清水湛君) この改正が土地利用の適正化あるいは宅地、住宅の供給の増大にいい影響を与えるということを私どもは期待しているわけでございますけれども、具体的な数量予測として、これによってどの程度の借地がふえるというようなことになるのか、あるいは借家がふえることになるのかという予測はちょっと難しいのではないかということでございまして、数字としてそういうものを私どもは今持ち合わせてはいないわけでございます。
 ただ、少なくとも現行法に比べますと貸しやすい、あるいは逆に言うと借りやすいという意味での借地・借家制度というものが新たにつけ加わることになりますので、これが大いに利用されて住宅宅地の供給につながっていくということ。そのためにはこの新しい借地借家法の趣旨とか内容、あるいはその利用等につきまして建設省などにもお願いしていろんな方法というようなものも研究してみる必要があるのではないかというような気もいたしておるところでございます。
#156
○中野鉄造君 そういたしますと、ほとんど希望的観測だけで、建設省あたりとこの辺のことについては大体どのくらいを試算しているというような、そういうものはないわけなんですか。
#157
○政府委員(清水湛君) 建設省の方にもこの法案作成の過程、つまり法制審議会の審議に建設省の方にも御参加をいただいていろんな御意見をちょうだいしているわけでございますが、建設省といたしましても、私ども聞いているところでは、この借地・借家法の改正によって、これだけによって具体的にどの程度の土地あるいは借家が数量的に供給されるという、その数量は把握することは困難であるというふうにお考えになっていると私ども承知しているわけでございます。
 ただ、建設省サイドといたしましても、このような制度が、借地・借家関係というものをめぐる法律関係というものが明確になっていろんな需要に対応することができる新しいメニューが用意される、こういうことによりまして借地・借家関係の円滑な推進というものが図られることになる、結果として住宅政策に資する部分があるというこはお認めになっておられるというふうに理解しているわけでございます。
#158
○中野鉄造君 今の御答弁で、この法案の成立によってそういう円滑な需給関係、また利用の範囲が広げられるというような直接的な効果ではなくて、極めて間接的な、しかも希望的観測をしておられるということがよくわかりました。
 そこで、次にPRパンフレットに掲げてあります「借家についての基本的な仕組みには変わりはない。」、こうなっておりますが、この期限つき借家権を新設するなど、基本的仕組みには変化があるようにも思われるわけですけれども、具体的にこの辺のところを御説明いただきたいと思います。
   〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕
#159
○政府委員(清水湛君) 借家関係につきましては正当事由の明確化のほかは期限つき建物賃貸借関係を新規に導入した、こういうことでございます。
 何が基本がという問題はあろうかと思いますけれども、一般的な借家法の概念というのは、どういう事情とかどういう目的で貸すかということとはかかわりなしに、要するに建物を貸すという場合を一般的に規律をしておる、こういうことになるわけでございます。住宅のみならず事務所用の建物というものもこの借家契約の対象になりますし、商売用の建物もこの借家契約の対象になる。こういう意味で、あらゆる種類の建物の賃貸借というものについてこれを規律しているということになるわけでございます。
 ところが、今回の期限つき建物賃貸借というのは一定の事由がある場合だけ、つまり「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」というふうに事情を厳しく限定するということ。そういうことになりますと、これはもう個人が個人住宅を貸す場合、こういう場合に限定されてきて、しかも非常に厳しい制約がついておるということでございます。そういうことでございますので、借家法全体の枠組みの中で考えますと、期限つき建物賃貸借は、いわば例外的な賃貸借契約として位置づけられておる、こういうふうに言っても差し支えないのではないか。そういうことからこの「借家についての基本的な仕組みには変わりはない。」という表現にさせていただいたわけでございます。
 ただ、こういうような表現にさせていただいた背景にはもう一つ事情がございまして、この新しい借家法が出ますと、現在の借家人が追い出されるとかそういうようなことを誤解でございますけれども考え、あるいはそういうことについて不安を持っておられる方がたくさんおられるというような御指摘がございましたので、借家法の中で新たに認められるのはこういう転勤等の場合に限定的に認められる新しい借家権だけですよと。従前のものは従前のままだし、さらに一般的な借家につきましても、この転勤、療養、親族の介護等の要件がない限りこれは今までと同じような借家契約によってやられるわけでありますから、ちっとも基本的なことは変わっておりませんよということで、いわばそういう方々の誤解を、誤解であると思いますけれども、そういう誤解を解くと申しますか誤解を防ぐ、こういう意味でこのような文章ぶりにさせていただいた、こういうことでございますので御理解いただきたいと思う次第でございます。
#160
○中野鉄造君 今お答えになったことは法務省が出しているこういうパンフレットにもそのことは書いてあります。すなわち、借地についての改正は、既にされている契約には適用されないとか、あるいは現在契約をされている借家についても変わりはないということが書かれておりますけれども、それにもかかわらず反対論が非常に根強いというからにはそれだけの何らかの理由があるのではないかと思うわけですが、その反対論の理由と、そして旧法を存続させることの具体的理由をひとつここで述べていただきたいと思います。
#161
○政府委員(清水湛君) 一つには、この借地借家法案に対していろんな反対を述べる方がおられたわけでございますけれども、私ども、そういう方々に説明いたしますと大体全部理解していただける、こういうことも実はあるわけでございます。
   〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕
 何がゆえにそういうような反対が出てきたのかということでございますけれども、一つには、借地・借家法の改正審議の過程で私どもは問題点をオープンにして、そして広く意見を求め、あるいは要綱試案というような形で非常に強い案から弱い案まで、甲案、乙案、丙案というような形で、例えば甲案をとるならば借地人が非常に今よりかちょっとぐあいが悪くなる、やはり地主が強くなる、乙案ならば変わらない、丙案ならばその逆だというようないろんなバラエティーがあるような形での試案というものを各界の意見に基づいて作成して、またそれについて関係方面の意見を問うたというようなことがあるわけでございます。
 そういうことの過程の中で、例えば地主さんの団体とか家主さんの団体が非常に強くそれぞれの方の意見を公刊物等に公表されるというようなこともございまして、あるいはそれを受けたいろんな新聞、雑誌等の論調におきまして、この改正法は地主、家主に一方的に有利で借地人いじめである、あるいは借家人いじめであるというようなムードが形成されたのではないかというような気が実はいたしておるわけでございます。
 実は衆議院の公聴会におきまして加藤一郎公述人も、やはりいろんな議論の過程で、まだ最終的に採用するともしないとも決まってない問題がそのままあたかも採用されるかのごとく伝えられていろんな混乱が生じたというように思われるので、それは残念なことであるという趣旨のことを述べておられましたが、そういうようなオープンに非常に強い立場あるいは弱い立場からの議論がされていたということから、最終的なまとまりの法案についての理解が十分に徹底しなかったというようなことも一つの原因としてあるのではないかというふうに思われるわけでございます。
 そこで、そういうようなことから改正法案としてまとまった法案につきましてはこういう内容なんだ、心配することはありませんよということをもっと積極的に関係者に周知徹底して安心をしていただくということが必要であるということから、実はこの種のパンフレットもつくりまして市町村の窓口に置いていただく等の配慮をいたしたわけでございます。
 さらに、そういうような議論の過程で、これは具体的に既存の関係に新法の規定を適用しないこととした実質的な理由でございますけれども、この点につきましては、御承知のように、適用するとすれば問題となる点は二点あるわけでございます。一つは借地権の存続期間、これは既存のものですから更新だけが問題になりますけれども、更新後の期間をどうするか。現行法ですと、二十年で契約したものでございますと二十年、二十年、二十年という形で続いていく。ところが、今回の改正案ですと、基本期間は三十年ですが、更新は十年、十年、十年。これは衆議院で第一回目は二十年というふうに修正されましたけれども、私どもの案では基本的には十年、十年、こういうことになっているわけでございます。
 そういう期間を既存の借地権の更新期間に適用していいかどうかという問題、このことにつきましては法制審議とか我々が立案をする過程で各方面にいろんな意見をお伺いした過程の中でも、むしろこれは適用しない、永久に二本立てでいいのではないかという意見が圧倒的だったわけでございます。仮に適用するにいたしましても、新法施行後二回目の更新のときから新法の規定を適用するようにするということぐらいが限界だと。法制審議会の答申にも実はそういうことが書いてあるわけでございますけれども、そういうような意見が圧倒的でございましたので、更新後の存続期間についてはこの際一切適用しないというふうに法律で明確に定めたわけでございます。
 それからもう一つは、正当事由に関する規定を私どもはこれは判例理論に従ってそのままこれを法文化したというふうに考えているわけでございます。法制審議会の答申などでも、これは新法も旧法も変わりはないから旧法の借地・借家権に正当事由に関する規定を適用してもいいのではないか、こういうような答申をいただいたわけでございますが、このことにつきましてもやはり正当事由というのは、借地・借家関係の最も基本的な概念で、借地・借家をめぐる紛争はこの正当事由をめぐってのものがもう大部分であるという実情でございますので、このことについての条文が変わるということになりますと今までの借地人、借家人の方が非常に不安を覚える。何かやはり自分たちがこれまでより不利益に扱われるのではないかというような不安を抱かれる。
 このことに対しまして、私どもが、いやそういうことはございません、理屈からいっても、適用しても前と変わりませんよということを言いましても、やはり不安は不安としてなかなか解消されない。しかも、事が生活の基盤である住居にかかわる問題でございますためにそういう不安がつきまとうということはこれは適当ではないというようなこともございまして、法律案にする段階では、これはいろんな各方面の意見を私ども内々聞いたわけでございますが、最終的には正当事由に関する規定もこれは既存のものは旧来の法律の規定で、すなわち旧来の法律の規定及びそれに基づいて形成された判例法理でということになるわけでございますがそういうもので、それから新しいものは新しい条文でと。新しい条文といってもこれは旧来の判例法理をそのまま集約したものでありますからどっちでも同じじゃないかというのが私どもの論理でございますが、当事者の方では必ずしもそういうふうには受け取らなくて不安を持たれるということでございますからそういうふうにした。
 つまり、その結果といたしまして、既存の借地・借家関係につきましては、借地については更新後の存続期間、あるいは更新拒絶事由の正当事由についての規定、こういうものは一切適用されない、借家については正当事由に関する規定は適用されない、こういうことではっきりと既存のものと新法施行後のものとに振り分けた、こういうことにさせていただいたわけでございます。
#162
○中野鉄造君 今回の改正でいわゆる借地・借家関係については、今お話がありましたように、今日現在継続している借地・借家については現行法いわば旧法が適用される、そしてこの法案成立、施行後の借地・借家についてはいわゆる新法が適用される、こういういわば二本立てなんですね。同一の法律関係で適用法律が別々にあるということは非常に国民にとっては、これは混乱を招くおそれがあるのではないか、こう思うわけです。例えば同じ家主さんで、片方の借家人には新法片方には旧法、同じ借家人同士でも、私は新法組だ私は旧法組だと。いうふうな非常に混乱が起こるのじゃないか、そういう懸念もあります。
 特に土地になりますと、旧法となる借地法の更新期間は二十年あるいは三十年、こうなっております。それを二、三回更新すると百年近くになります。百年近くも同じ法律関係で二つの法律がある、こういう法律がほかにあるかどうか、その辺のところもお尋ねしたいと思います。
#163
○政府委員(清水湛君) まず、既存の借地・借家関係に適用されないと申しましても、借家については正当事由条項だけでございます。存続期間等については、これは新法は何もいじっておりません。旧法そのままでございますから、借家関係について御心配があるとすれば、正当事由に関する規定が適用の根拠が違う、こういうことになるのだろうと思います。したがいまして、この面での関係で混乱が生ずるということはちょっと考えにくいような気がいたしております。
 問題は借地でございまして、まさに先生御指摘のように、借地というのは相当長期にわたって継続するということが前提と申しますか、そういう性格を持つものだというふうに考えられます。そういうものについて新法の適用と旧法によるものとが期間の点について分かれるということから、ある意味においてはいろんな混乱というものが生ずるということが考えられないわけではないと思いますけれども、しかしながらこのことにつきましては、先ほど申し述べました事情により、これまでの借地人にいたずらな不安を抱かせない。あるいはその存続期間については、今までの規定によりますと二十年あるいは三十年という更新期間が保障されているのに、それが原則十年になってしまうというようなことは形式的に見ますと明らかに不利でございますので、これはどういたしましても二本立てとせざるを得ない、こういうことになったわけでございます。
 そこで、問題は御指摘のような混乱をじゃどうやって防ぐかということになるわけでございますが、この点については、これはやはり新しい法律の内容あるいは既存のものには適用しないとした経過措置についての周知徹底を図るということが大事だというふうに思います。
 それからまた借地の場合には、比較的短期の契約である借家契約と違いまして、当事者の間で契約書を取り交わすあるいは期間の更新の際には再度契約書を入れるというようなことにいたしておりますので、このことについて十分に注意をしていただくということによって混乱が生ずるということは防げるのではないか。借地権というのは非常に大事な権利でございますから、そう関係者が無意識に、このことを意識しないで対処するということもないのではないかという、いささか楽観論に過ぎるかもしれませんが、そんな感じもいたすわけでありますけれども、しかしより根本的にはこの新しい法律の内容、経過措置の内容というものにつきまして周知徹底をして、少なくとも混乱が生じないように対応しなければならないというふうに考えているところであります。
#164
○中野鉄造君 今申しますように、いろいろなそういう危惧が予想されるわけですけれども、今後いろいろな訴訟問題あたりでそういうようなことが起こった場合に、これは旧法を適用されている人だから新法の人だからといったような、そういうようなことでやはりどうしても面倒なことが起こる、したがってこれは将来行く行くは一本化すべきじゃないかというような見解を持っている人もいらっしゃるようですけれども、その点についてはいかがですか。
#165
○政府委員(清水湛君) 私どもといたしましては、新しい法律をぜひこの国会で通過、成立させていただくということだけを現在考えているわけでございまして、将来これを統合するとか二本立てを一本立てにするということは全く考えておりませんので、御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#166
○中野鉄造君 現在、現行の借地法または借家法の適用を受けている当事者が、その契約の更新時期が来たときに当事者双方が納得ずくの合意で、今後の法律適用は新法でお願いします、ああいいよと、こういうように合意をした場合、それにもかかわらずなお従前の法律すなわち旧法をもって適用されるのか。それとも当事者のその意思が尊重されて新法でいく、適用されるということになるのか。
 これは言いかえますと、附則の五条、六条、七条の規定はこれは強行規定であってかつ効力規定なのかどうかという疑問があるわけなんです。法務省のPRパンフレットによると、これはどうも強行規定ないしは効力規定のような気がしてならないのですけれども、その点お尋ねいたします。
#167
○政府委員(清水湛君) 新法が成立すれば、その後の更新期間は十年とするというような合意をいたしましても、これは借地人に不利な特約として無効であるというふうに私どもは考えております。
 これはどういうことかと申しますと、要するに「従前の例による。」というふうに附則六条で言っているわけでございますが、それは例えば二十年の借地契約を締結した方でございますと、二十年の期間が満了しますとまた二十年期間が延びる、こういう存続期間についての一種の借地人としてのいわば権利を持っているわけでございまして、現行法ですとそういう更新期間について、二十年ではない、十年とするというような特約をいたしましても、現行法上借地法の第十一条で借地人に不利な特約として無効である、こういうことに現在の解釈ではなっているわけでございます。
 それを今度は新法の施行によりまして、その間の関係は「従前の例による。」ということにいたしているわけでございますが、この「従前の例による。」というのは要するに更新後の存続期間は二十年の契約であれば二十年間保障されますよ、その保障を無視するような特約をしてもそれは無効ですよと、こういう効果を持った形での「従前の例による。」という趣旨でございますので、そういうことをいたしましても、もしそれが有効だということになりますと、これは従前の例によったことになりませんので、これはそのような特約をしてもその効力はない、こういうふうに理解すべきであるというふうに考えているわけでございます。
#168
○中野鉄造君 次に、今回の法案の大きな特色であります第四節の定期借地権等の新設は、土地有効利用の促進という土地基本法の精神にもかなう妥当な制度だと私は思います。
 この定期借地権についてお尋ねするのですが、法定更新とか正当事由の主張とかいうものは条文上これはありませんし、また制度新設の性質上もそのような法定更新等はこれはあり得ないはずなんですが、将来の判例上もこの点が変更されることはないかどうか、この点をお尋ねいたします。
#169
○政府委員(清水湛君) 借地借家法による法定更新はありませんし、正当事由条項が問題になるということはあり得ないというふうに私どもは考えております。では将来、裁判所が判例でそういうことを変更する可能性があるかということでございますけれども、私どもはその可能性も全くないというふうに考えるわけでございます。
 と申しますのは、この定期借地権制度というのは現在の一般の普通借地権というものを前提といたしまして、存続期間が満了すればさらに正当事由がない限り同じ期間だけまた延びます、こういう制度があるということを前提といたしまして、このような制度だけでは現在の借地需要というものに対応することができない、いわば法定更新とかあるいは正当事由というものをあえて除外するということのために定期借地権制度というものを導入することとし、国会でそういう趣旨で御審議をいただいているわけでございますから、裁判所が法律の規定を無視して法定更新を認めるとか、正当事由というようなものを論点として取り上げるというようなことはあり得ないことであるというふうに考えている次第でございます。
#170
○中野鉄造君 同じく定期借地権ですが、二十二条の定期借地権、二十四条の事業用借地権については、これは公正証書で契約を締結することが必要とされておりますね。
 ところが、二十三条の建物譲渡特約付借地権、この契約については公正証書の契約が要求されておりません。これは一体どうしてなのか。いわゆる公正証書にかわってこれは登記簿に何らかの登記がされるからなのかどうか。しかし、もしそうだとすれば、二十二条、二十四条の場合だって定期借地権あるいは事業用借地権の旨の登記が土地登記簿に記されるわけですから、この場合公正証書によることはこれは不要ではないのか、こういう気がするんですが、いかがですか。
#171
○政府委員(清水湛君) お尋ねのように、二十二条の五十年以上の定期借地権につきましては、公正証書による等書面によってするということにいたしております。これは五十年以上の期間でございますので、その間に当然に当事者の一万あるいは双方が死亡するというようなこともあり得ないわけではない。そういうときに、五十年前の証文を持ち出してきていろいろ紛争の種になるというようなことではぐあいが悪いということから公正証書ということにいたしたわけでございます。
 ただ、我が国ではまだそれほど公正証書によるということが一般的に普及しているわけではございませんので、この際は、一番望ましい姿は公正証書であるという認識のもとに「公正証書による等書面によってしなければならない。」、こういうことにいたしたわけでございます。
 それから、二十四条の事業用借地権につきましては、これははっきりと「公正証書によってしなければならない。」、こういうことにいたしております。これは借地権の設定当事者が事業者である、要するに事業を営んでいる者であるということに限定されておりますので、そういうようなことによっても差し支えがないということと同時に、これは一般の借地権が少なくとも三十年以上の期間を定めなければならないという強行法規であるのに、いわばそれを変える形で十年以上二十年以下、こういう短期の借地権ということにいたしておりますので、これが悪用、乱用されて一般の借地権までこういったような形で契約がされるということになりますと問題でございますから、公正証書という形でこのような不当乱用をチェックする、こういうような意味をも込めているわけでございます。
 ところが、二十三条の建物譲渡特約付借地権におきましては、これは書面は何も要求いたしておらないわけでございます。しかし、この二十三条の場合には建物の譲渡契約をするわけでございます。まだ三十年の期間が来ておりませんので、この譲渡特約なるものは、実際上は売買の予約あるいは停止条件つき売買契約、あるいは期限つき売買契約と申しますか一種の始期つき売買契約ということになろうかと思いますけれども、こういったたぐいのものにつきましては、その譲渡の対象となっております建物に当然これは仮登記をすることができる、こういうことになるわけでございます。
 つまり、この場合地主の方で三十年なら三十年たった後に土地を返してもらい、建物もこちらに所有権を移すということの権利を保全するためには建物について仮登記をしておく必要がある。この仮登記の請求権は、これは当然に法律上認められるということになりますので、もし借地人の方でこの仮登記に応じないということになりますと、訴訟を起こしてこの仮登記をするということもできますし、さらにもっと簡便な方法として仮登記仮処分という形で仮登記をすることすらできる、こういうことになっているわけでございます。
 したがいまして、二十三条の建物譲渡特約付借地権につきましては、これはあえて書面を要求いたさなくても、借地権設定者、つまり地主の方で権利を保全するという形で、ある意味におきましては最大あるいは最高に正確な登記簿によってその権利の存在を証明することができる、こういうこと一になるわけでございます。そういうふうなことから、書面は要求しなかったというのが私どもの提案の理由でございます。
 なお、先生御指摘のように、そもそも定期借地権につきましては、土地に定期借地権の設定登記ができるのそあるから、何も書面を要求しなくてもいいのではないかという御趣旨の御質問でございました。
 定期借地権につきましては、これは登記を地主、つまり借地権設定者と借地人が合意をいたしまして、この定期借地権の登記を土地登記簿にしようと思えばできるわけでございます。したがいまして、そういう合意があって登記が申請された場合のことを想定して不動産登記法の一部改正、これは附則でやっておりますけれども、附則の十五条で不動産登記法の一部改正をいたしまして、定期借地権の登記ができる道を開いているわけでございます。
 ただしかし、定期借地権につきましては、これが地上権でございますと当然にそういう設定登記を請求することができるということになるわけですが、賃借権たる借地権ということでございますと、これまでの通説、判例によりまして、そういうものには法律上当然に賃借権の登記を請求することができるということにはならない。つまり賃借権について登記をするためには、賃貸し人たる土地の所有者と貸借人が合意をしてこの賃借権については登記をするということでないと登記を求めることはできない、登記を請求することができないということになっているわけでございます。
 そういうようなことから、二十四条の事業用借地権あるいは二十二条の定期借地権につきましては、登記をするというのは現実の問題としてはなかなか難しいということが言えるわけでございます。そういうことから、やはり公的な信頼性のある書面というものを念頭に置いてこのような規定を設けたということでございます。当事者がお互いに話し合いで登記をするということがある意味においては望ましい要素であることは否定できませんけれども、法律的にそれを強制する手段がないということからこのようにさせていただいたということも言えるわけでございます。
#172
○中野鉄造君 時間が来たので、終わります。
#173
○橋本敦君 借地法、借家法は言うまでもありませんけれども、歴史的な経過を見ても借地あるいは借家の権利を保障するという社会的要請から経過を歴史的にはずっとたどってまいりました。それで、今日の民事法の重要な部分をなしていることは言うまでもないわけであります。
 したがって、この改正という問題は、まさにそういった歴史的な経過を今後どうやって今の社会の中で貫徹をしていくのかということも十分に検討していかなければならない本来的な要請があるわけです。今回の改正はそういった問題を正確にとらえているのかどうかという点になりますと私は全く逆で、今日の経済の異常な発展の中で企業なり財界なり、あるいは政府の土地政策なりを基本的には優先させる方向が非常に強いということを深く懸念するわけであります。
 例えば、法務省が一九八一年の二月に全国借地借家人組合連合会の皆さんと話し合ったときに宇佐見参事官は、これは改正するとすれば二十年も三十年もかかる、当面見直すような考えはないということをおっしゃって、問題の解決はむしろ異常な地価の高騰を抑えることだということを指摘されている。それはそれなりに理解できるわけです。ところが、それが大きく事情が変わって今回の改正へと歯車が大きく動き出しているわけですが、その背景的な事情というのは一体何があったのかというのが一つは明らかにしておきたい問題であります。
 その点で注目されるのは、一九八二年四月に経団連が土地政策に関する意見を発表いたしました。それを見てみますと、その中で今後の土地政策の方向ということで、「宅地供給を一層促進するとともに既成市街地の再開発等により土地の高度・有効利用を図らなければならない。」、これを基本にいたしましてその実施すべき対策として、この観点から借地・借家法の改正ということを提起しているわけであります。これは非常に明確にそう言っている。
 同時に、では政府側あるいは政府機関側の対応はどうかといいますと、同年の七月には臨時行政調査会第三次答申の中で、「借地、借家に関する制度の合理化等を行いこという提起が出てくる。つまり、民間財界の声と政府機関の声とが相呼応して改正に向けて進んでいくわけであります。そして十一月には、民間活力の活用推進、そしてまたいわゆる規制緩和、こういったことをうたい文句に大きく打ち出していった中曽根政権の誕生ということがありまして、これに勢いを得て財界やあるいは政府機関は土地問題について高度利用を中心に大きく動きを進めていくことになるわけであります。
 例えば建設省は、中曽根内閣が成立したその年の七月に規制緩和等による都市開発の促進方策を打ち出して、土地政策の方向づけをそういう方向から進める。そしてまたさらに、八五年の四月には国土利用計画法第三条に基づく国土の利用に関する年次報告が出されますが、その中で借地権の保護と借地供給の促進との調和を図りつつ、新しい観点に立っての借地制度のあり方を検討する必要がある、こういったことを打ち出してくる。
 こういう動きの中で、八五年の六月に法制審が改正審議を開始するという経過になるわけですが、今私が指摘したようなそういった動きが法制審の改正審議開始までにあったという事実は、これは間違いありませんか。
#174
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、昭和五十七年の四月に経団連が土地政策に関する意見の中で住宅供給促進、建てかえ促進のために借地・借家法等の制度の見直しが必要、こういうことを述べられております。このことが直ちに借地・借家法を改正せよというところまで踏み込んだ意見なのかどうか、これは見方が分かれるわけでございますが、借地・借家法等の制度というようなことを言っているわけでございます。それから、五十七年の七月には臨時行政調査会第三次答申で、「借地、借家に関する制度の合理化等を行い」ということでございまして、これが直ちに借地・借家法の改正というところまで踏み込んだ答申なのかどうか、こういうことについても問題があろうかと思うわけでございます。しかしながら、いろいろ曲折を経まして昭和六十二年には臨時行政改革推進審議会答申でははっきりと「借地・借家法の見直しを進め」と、こういうふうなことを言っているわけでございます。
 私ども、昭和六十年から借地・借家法の見直し作業を始めたわけでございます。その前に、御指摘のように、そういったようないろんな団体あるいは臨時行政調査会等でこの問題についての指摘があった、こういうことは御指摘のとおりであるというふうに思います。
#175
○橋本敦君 今、私が指摘した動きはその後も非常に強化をされていくのであります。
 例えば、八五年の七月には臨時行政改革推進審議会が「規制緩和の推進方策」ということでまた意見を出してまいりますが、同時に注目する動きが出てきたのは、八五年の七月十六日の日経新聞に大々的な意見広告として、全国貸地貸家協会、これは旧地主家主協会ですが、これが意見広告を出しまして、貸し主側の主張を非常に明確に打ち出しておるわけです。
 法務省はこれはごらんになっていると思いますが、そこでははっきり借地・借家法が都市再開発の障害になっているということを明確に言う。そして、借り主の権利強化によって借地・借家の新規供給、これが阻害されている、こういうことをはっきり言いまして、その中での一つに正当事由の運用の実態、これがまさに今日の要請に合致していない、こういう批判をしている。そしてまた家賃についても、金利と比べて低水準であって、これの問題も改善しなきゃならないということで、そういった方向から借地・借家法の改正が必要だということを言ってくるわけであります。
 これは露骨に貸し主側の利益を擁護しようとする立場ですが、こういった動きが非常に軽視できないのは、これが単に民間団体やあるいは政治団体の貸地貸家協会ということだけにとどまらないで、まさに法改正の方向を促進していく一つの運動として積極的に政治献金をするなど自民党の議員にも働きかけていく、後で触れますけれども、動きを強めていくところに一つは問題があるということ。
 一方、また八七年十月の臨時行政改革推進審議会では、借地・借家法の見直しを進めるということも明確に言うようになってくる。こういうことの中で、法務省は八九年の二月二十八日に改正要綱試案を発表するということで、いよいよ改正の段取りがまさにレールに乗ってくるという経過をたどってきたというように思います。
 だから、法務省は法的な問題の今日的な適用の調整が主だというようにおっしゃいますが、基本的には土地政策と今回の改正とが背離するものでないということもおっしゃっているわけです。まさにその動きの背景にはこういった状況があることは、これはもう否定できないと思うんです。
 それに加えて、もう一つ重要な改正のプロモートとして大きな力を持ってくることになったのが日米構造協議であります。御存じのとおり、日米構造協議では平成二年の六月二十八日、最終報告の中で、日本側から土地利用ということの提起がなされて、その五番目に借地法、借家法の見直しか提起をされました。
 まず、確認しておきますが、この事実は間違いありませんね。
#176
○政府委員(清水湛君) 日米構造問題協議におきましては、米側から土地問題の一つとして借地・借家法の見直しを進める必要性についての問題提起があったということは事実でございます。そういう問題提起があった時点において、もう当時既に日本側は借地・借家法の見直し作業も進めておりましたので、その作業の状況について説明をした、こういうことでございます。
#177
○橋本敦君 既に作業を進めていた上に加えて、この日米構造協議で一段とその改正作業というものに確かな枠組みがはめられていくことになることを私は問題にしている。
 例えば、六月二十八日の日米構造協議の最終報告がなされたその日に閣議了解、こうなっています。これによってアメリカ側は、借地・借家法の改正という問題は日本政府のアメリカに対する政治的なコミットメントである、条約のような権利義務を伴う約束ではないけれども、これは明らかに政治的なコミットメント、約束であるというようにとっているし、また日本政府もそういう性質のものであるというようにこれは考えていることは間違いはない。
 そういう意味で、これはまさに日米構造協議の最終報告で出されたことによって、借地・借家法改正問題というものが日米間の政治的な約束にまでなったということは、これは否定できないんじゃありませんか。大臣、どうですか。
#178
○国務大臣(左藤恵君) 現行の借地・借家法は、借地に対する需要の多様化等の社会経済情勢の変化に対応し切れないということを先ほど来申し上げております。今回の改正はこのような変化に対応し得るよう、更新のない新しい類型の借地・借家関係を創設するなど、借地・借家関係を改善することを目的といたしておりまして、これによって良好な借地・借家の供給、これが促されて将来の社会生活の基盤整備に寄与するものと期待されております。
 これは先ほど来申し上げているところでございますが、このような借地・借家法の見直しは日米構造問題協議開始前に既に始められているものでありまして、この日米構造問題協議におきますこの点についてのアメリカ側の指摘というのは、良好な借地・借家の供給が促されることによって、米側の関心事であります日本における土地問題の改善に資するという期待によるものと、このように理解しておるところでございます。
#179
○橋本敦君 私の質問に的確に大臣はお答えいただいていないように思うんですが、要するに従来から改正作業を進めてきた、それは歴史的経過はそうですよ。しかし、日米構造協議に持ち出すことにより、政府の閣議了解を経てまさに借地・借家法の改正はアメリカに対する政治的コミットメント、約束ということになって、日本政府はこれの推進に一層国際的責任を負う立場になったというのは当たり前じゃないでしょうかと、こういう質問です。それはそうでしょう。やらぬというようなことになったらアメリカは怒りますよ。
#180
○政府委員(清水湛君) 借地・借家法の改正につきましては、日米構造問題協議でももちろんそこで話題になったことは事実でございますけれども、先ほど来委員御指摘のように、昭和五十年代からいろんな団体でいろんな意見を述べられた、こういうことも事実でございます。
 私ども法務省といたしましては、そういう団体の意見はともかくとして、借地・借家法というのは大正十年から数えてもう七十年を超える、あるいは昭和十六年から数えても半世紀を超える……
#181
○橋本敦君 局長、私の質問に答えてください。
#182
○政府委員(清水湛君) こういうような状況でございますので、そういう状態を踏まえて、やはり現在の社会経済情勢に適応させる必要があるという観点から、そして貸し主、借り主の権利関係を公正、公平に調整するという観点からこの改正作業を始めたわけでございます。
 日米構造協議でも、米側が関心事として土地問題に対して大きな関心を抱いているという事実がございまして、その中でいろいろ取り上げた中の問題として借地・借家法の改正作業の進捗状況等について問い合わせがあり、私どもとしては現在こういう状況で作業を進めておる、こういうことをお答えしたわけでございまして、決してコミットメントあるいは約束、こういうような趣旨でこのことを、アメリカ側との約束を果たすためにこの法案をつくった、こういうことでは全くございませんので、その点はよろしく御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#183
○橋本敦君 アメリカ側との約束で法案をつくったなんて言っていませんよ。日米構造協議に日本政府の合意で持ち出されて米側との合意を得たということによって、改正作業がアメリカ側との政治的コミットメントというそういう枠組みにまで至っている、そういう重大な約束をしていることになっている、このことを言っているんですよ。
 外務省が私の部屋へ来て、これはやはり政治的コミットメントですから日本政府としてはこれを前進させる責任を負います、やってもやらぬでもいいものじゃありませんとはっきり言っていますよ。今の清水局長のおっしゃった答弁は、日本政府の答弁としては絶対成り立たないと思う。次回に外務省の役人に来てもらってもいいですよ。訂正するつもりはありませんか。そんな軽々しいものとアメリカは受け取っていませんよ。責任問題ですよ。
#184
○政府委員(清水湛君) 私どもといたしましては、日米構造問題協議で借地・借家法の改正ということが話題になりまして、時もう既にかなり改正の作業が進み、もう法案も法制審議会の答申も間近というような状況の時期でございましたので、そういう話し合いの過程の中でその作業状況を説明し、米側もその説明を了解しておる、こういうふうに理解しているわけでございます。
#185
○橋本敦君 だから、両国で外交的に了解をされたんだから、政治的には日本政府としては借地・借家法の改正は一層ないがしろにできない重要な対米約束をも含む施策の一つになったんではないかという当たり前のことを聞いているんです。そうでしょう。日米構造協議なんてどうでもいいんですか。
#186
○政府委員(清水湛君) 米側にそういう説明をしたということはもちろんあるわけでございますけれども、それによって必要性がよりさらに高められた、こういうふうには私どもは考えてはおらないわけでございまして、もともと借地・借家法の改正は必要である、そういうことで法務省としては各方面の意見を聞きながら全力投球をしていた時期でございます。そういう時期でございますので、そのことを説明し、従来の作業過程に引き続いて成果をまとめて法律案としてまとめた、こういうことになるわけでございます。米側に対して説明したことが、そのとおりこの法律案という形で私どものいろんな作業成果として取りまとめられて国会に法案の御審議をお願いすることになった、こういうふうに理解しているわけでございます。
#187
○橋本敦君 ずばっと明確に答弁することを随分と避けていますけれども、そういった私が指摘したような状況だからこそ日米構造問題協議のフォローアップ委員会が開かれて第一回の年次報告、外務省からここにもらっていますけれども、その中でも日本政府側は借地・借家法の改正についてその後の経過を説明する責任を負い、説明しているんですよ。そして、土地の問題、適正な利用あるいは優良な賃貸住宅の供給をも考慮して、時代の変化に即した新たな借地・借家関係の創設、このためにまた借家関係の解消の要件となっている正当事由の判断に当たっての考慮すべき諸要素の明確化等を定めた、こういった改正法案を国会に提出して、その早期成立に努力していますと、こういうふうに弁明しているんです。アメリカがそれに対してまた別に答えていますよ。
 しかし、そういった状況で、私が指摘するのは、アメリカに言われてやったとは言っていませんよ、私は一言も。今までの経過の中で、一つには日米構造協議に持ち出されたことによって一層政府としてはこれの促進ということについてかたい枠組みが出てきた、そのことは政治状況として当たり前ではないかと、これだけのことを言っているんですよ。
 そこで、私はこういった今回の改正について、何といってもこの基本問題としては従前の規制の緩和ということをやはり基本に置きながら、言葉はどうであっても今度の改正の根幹にはそのことが含まれているというのが中心課題だと思うわけであります。
 例えば、早稲田大学教授の内田勝一という方がおられますが、ジュリストの八百五十一号でこう言っておられます。
 借地・借家法の改正論議がこのように急速に高
 まった背景には様々な要因がある。昭和三〇年
 代の借地・借家法の改正論議は借地権の物権的
 な強化にあり、学説がその論議をリードしてい
 たが、今回の借地・借家法の改正論議の背景に
 は学説による借地・借家法の合理化の要請とい
 う側面もあるが、同時にかつてとは全く異なる
 要因がある。それは、土地の有効利用を目的と
 して、借地権・借家権の緩和を目指す様々な動
 きである。こう指摘しておられます。
 私は、この指摘は客観的に私が指摘した経過から見て正鵠を得た正当な指摘だと思いますよ。
 あるいはまた立教大学の水本浩教授も、「今回の借地・借家法改正の最大の特色」として、今までの改正論議、これは「いずれも地主・家主と借地人・借家人の対立利益の調整が、その目的であった」「しかるに、今回の改正においては、市街地再開発の必要性という外部的モメントが入ってきた点で特殊な性格を帯びるにいたっている。」、こうおっしゃっている。これは客観的に私は正当にこのことは見るべきだと思いますよ。そういうことでこの借地・借家法の今回の改正の基本的な方向づけというものはこれは否定できないと思う。
 ただ、それぞれの法律の定めている今回の改正の内容となった問題についていろいろそれは指摘された問題はありますよ。しかし、基本方向としてはまさに土地の高度利用、そのための正当事由の緩和、あるいは明け渡しを容易ならしめるための定期借地権の存在も私はその一つと思いますが、そういった方向づけが基本的に考えられてきたという方向は、今までの改正論議と違う特色としてまさに今回の中心部分をなしているというのは間違いないと思う。
 そこで、法務省に伺いますが、衆議院の段階で三点にわたって修正が行われてきましたね。一つは、先ほどから議論になっております更新の問題で二十年ということ。もう一つは、正当事由にかかわりますけれども、明け渡しの必要性、更新拒絶の必要性について、現実に使用しているという使用だけじゃなくて、収益ということがありましたが、この収益は削られたということ。それからさらには、家賃の値上げをめぐる紛議の解決として調停という問題がありますけれども、この中であらかじめ書面による調停条項受け入れの合意の問題を調停開始後ということに限っで採用するということにした。それなりに私は改善点があることは認めます。
 しかし、これらの改善点が修正によってなされたけれども、法務省が今回の改正として考えている基本方向、しかも法務省が土地政策そのものではない、こう言いながら期待感を持って、土地政策の今後の振興に資するものになってくれるようにという期待を持って考えている今回の法案の基本方向、根本問題というものはこれらの修正によっては何ら変わっていないというように考えているのではありませんか。
#188
○政府委員(清水湛君) まず、今回の借地・借家法の改正作業を始めるに当たりまして、非常に一つの極端な意見かと私どもは思うわけでございますけれども、土地の有効利用とか高度利用を図るために、あるいは都市再開発をもっと円滑にするために借地・借家法の改正をする必要がある、こういうような御意見を持っておられた方があったということは事実でございます。そういうような観点からあるいは地主、家主の立場から、もっと期間満了の際における明け渡しというようなものを容易にすることができるようにしてほしい、こういうようないろんな要望とか、あるいはそういう方々が先ほど御指摘ございましたように新聞に意見広告を出す、こういうようなことをされたということも確かにあるわけでございます。
 私どもは、借地借家法の問題点、これは実に法律は簡単ですけれども、現実の社会における借地関係というのは複雑で、人の顔が変わるようにそれぞれの借地・借家関係の顔色も変わる、こういったぐらい複雑な問題をそれぞれが個別に抱えているわけでございますけれども、そういうような状況の中でこの問題点を公表して議論していくということのためには、いろんな立場の方々の意見というものをとにかく一度聞いてみる必要がある。地主さんの立場、家主さんの立場、あるいは借地人の立場、借家人の立場、あるいはこういう紛争に常に関与されている弁護士会、弁護士さんの立場というようなもの、あるいは学問的に研究されている学者の立場、いろんな方々の意見を幅広く聞く必要がある、こういうことが基本的な態度として要請されるというふうに考えているわけでございます。そういうことの経過の中で、そういう再開発的な要素を借地借家法の中に持ち込もうとされた方々もあるということは事実でございます。
 しかしながら、法制審議会におきましてこれらの方々の意見をすべていろんな立場から分析、検討いたしまして、やはり借地借家法というのは地主、借地人あるいは家主、借家人という個人と個人の立場における平等な契約というものを前提とした契約関係の合理的な調整、公平な調整ということに本来の借地借家法の役目というものはあるわけであって、それを超えて都市の再開発とか、あるいは土地の高度利用とか有効利用というような公益的な政策要素というものを持ち込むべき性格のものではない。これは当然のことながら最終的な結論としてはそういうことになったわけでございます。
 そういう観点から、決して「部の方々のために借地・借家法を改正するとか、あるいはアメリカ側の要求があるからというようなことでこの改正作業をアクセラレイトするというようなことではございませんで、現在の社会経済情勢というものを率直に見て、これに適合するには今の借地法、借家法は規制が画一的で硬直化している、これはやはり新しい需要に対応する新しいメニューを用意しなければならない。こういうような基本的な観点からこの改正に取り組んだわけでございまして、決して一方の立場に偏るというようなことはない。このことは確信を持って申し上げることができるというふうに考えているわけでございます。
#189
○橋本敦君 質問に答えてほしいです。
 今おっしゃったけれども、法務省が出していらっしゃる「よりよい借地・借家関係に向けて」、の中のあなたの方の説明に、借地・借家法の今回の改正は、この法律はそれ自体土地政策そのものではないけれども、今日の土地対策と整合性を欠くことがないように配慮するのが必要であることは言うまでもない、こう言っているんですよ。いいですか、だから今日の土地政策との整合性もこれはあるというんですよ。法務省はその立場でしょう。
 それで、今日の基本的な要請を私はいろいろ指摘した。時間がないから繰り返しませんが、今回衆議院でなされた修正ということによって、法務省が考えている今日の土地政策と整合性を持つ中での今回のこの法改正の基本的な方向づけなり考え方というもの、それは修正によって大きく阻害されたとか変わったとかいうことはないでしょうと、こう聞いているんですよ。もう時間がないからはっきり答えてください、修正によって考え方が変わりましたかどうか。
#190
○政府委員(清水湛君) この三点の修正によって借地借家法の基本的な性格と申しますか、私どもが借地借家法の趣旨として考えることは変更を受けていないというふうに考えております。
#191
○橋本敦君 時間が来ましたから、終わります。
#192
○紀平悌子君 朝からの御論議を聞かせていただいておりまして、大変難しいというふうに思いますのが率直な感想です。
 聞くところによりますと、大学の講義でも、借地法、借家法、建物保護法などは民法の物権論と債権論の交わる領域だというふうに伺っております。大学の先生によっては一カ月ぐらいそれに時間をかけるという問題ですから、短期間の勉強で私にわかるはずがない。私にわかるはずがないのだからというと失礼ですけれども、国民の大半にわかるはずはないんじゃないかなというふうなのが感想でございます。特にそれに直接におかかわりの方は勉強なさって、私などよりよっぽど御勉強だと思いますけれども、わからないところからの質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、日本において一国一城の主という言葉がございますけれども、昔は家を持つことが経済的な成功、人間としての成功というか、独立の目安でございました。もはや今はこれは過去のものでございます。現在の地価高騰の状況では、普通の勤労者が大都市、特に首都圏に家を建てることが不可能な状況になりました。反面、莫大な家屋の貸借人、特に建物の一部を借りる、つまり部屋の賃借者が生じて、もしこの法律改正案が成立すれば、よかれあしかれ影響を受ける人たちがたくさんいるということで、実に生活問題としては重要な法案だというふうに認識をいたしております。
 そこで、これまでの借地法、借家法及び建物保護ニ関スル法律の立法趣旨を、それぞれ明快に、簡単に御説明をいただきたいと思います。特に、これらの法律で貸借人保護がいかに図られているか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
 また、現状では対応できない状況になった、それで法改正が行われるという点でございますが、現状で対応できないといういろんな点が先ほどから述べられましたけれども、最大の点を一言でお答えいただきたいと思います。法務省にお願いします。
#193
○政府委員(清水湛君) 現行の借地法、借家法、建物保護法の立法趣旨等についての御質問でございますので、お答え申し上げます。
 まず最初に、この中で一番古いのは建物保護ニ関スル法律、俗に建物保護法と呼んでおりますけれども、これはいわゆる立法経過的には、日露戦争後に頻発した、いわゆる地震売買に対する対応策だ、こういうふうに言われているわけでございます。
 明治二十九年に制定されました民法によりますと、いわゆる売買は賃貸借を破るという原則がございまして、土地を借りている借地人がそこに住んでおりましても、底地の所有権が第三者に移転した場合には、その第三者はその土地の貸借人に対し土地の明け渡しを請求することができる、こういうのが民法の原則でございます。つまり、一たん土地を他人に貸しましても、地主が交代すると新しい地主は、そんな前の賃貸借関係は知らないよ、だから貸借人は出ていきなさい、こういうことが言えるというのが民法の原則でございます。その結果、土地の貸借人が借地上に建物を建てておりましても、地主の交代によって建物を取り壊さざるを得なくなってしまう、こういうことから地震売買という言葉が生まれてきたわけでございます。
 そういうことでは、土地の貸借人、借地人の権利は保護されないということになりまして、急遽これは明治四十二年でございますけれども、地主がかわっても借地人がそこに引き続きおれるようにということで、その方法として土地に賃借権の登記をすることはできないけれども、建物に自分の登記をすればそういう権利を持って対抗することができる、こういう制度をつくったわけでございます。俗にそのことから建物保護ニ関スル法律、地震売買によって壊されるべき建物をこの法律によって保護して、地主がかわってもそこに引き続き建物が置けるようにしたというのが建物保護ニ関スル法律、明治四十二年でございます。
 これを前提といたしまして、借地法、借家法というのが大正十年にできました。借地法の趣旨は、これは民法の賃貸借によりますと、人に物を貸すという場合の存続期間につきましては二十年を超えてはならない、こういうのが民法の賃貸借の規定でございます。しかし、およそ土地を人に貸すという場合に二十年を超えてはならないというのはナンセンスではないか。時あたかも日本の産業資本主義の勃興期でございまして、多数の労働者が地方から都市に居住してくる、そういう方々は借地なり借家をしてそこで生活をするという状態が生まれてきたわけでございますが、そういう方々の権利の安定を図るということから、借地権については二十年を超えてはならないというのじゃなくて、最低二十年でなくてはならない、木造の建物の場合でございますけれども最低二十年はなくてはならない。堅固な建物でございますと最低三十年はなくてはならないというような形で、借地人の権利の長期安定化を図った、こういうことが大正十年の借地法については言えるわけでございます。
 借家法については、これは十年とか二十年というような期間はございませんが、これも一定の期間を保障する。例えば一年未満の借家契約については、これは期間の定めのない借家契約とするというような規定を置いたわけでございます。さらに、これの修正として非常に重要な意味を持つのが昭和十六年の正当事由条項の追加ということでございました。
 これは、先ほど来私説明しておりますように、大正十年に借地法が制定されまして、そのころ設定された借地権ですと、まあ普通契約で二十年という期間を定めるのが一般的だということもございまして、ちょうど二十年の期間が昭和十六年の前後に到来するということになりまして、借地人の生活の安定、権利の保護ということが当時の社会経済情勢というようなものも背景にありまして問題になりました。そこで、期間が満了いたしましても貸し主がみずから必要とする場合その他正当な事由がある場合でないと、地主、これは借家法についても同じでございますが、家主は引き続き借地人、借家人にその土地・建物の使用を認めなければならない、こういうふうにいたしたのが昭和十六年の正当事由条項追加でございます。これによりまして借地人または借家人の権利の保護とその長期安定化というものはほぼ完成した。そして戦後の未曾有の住宅難、宅地難という時代が到来するわけでございますけれども、そのような状況の中で借地人、借家人の保護を強調する判例法理が形成されてきた、こういうことがその経過として言えるのではないかと思います。
 こういうような状況でございましたが、最近の我が国の経済発展あるいはいろんな形での土地需、要に対する変化というものが出てまいりました。大正十年の借地法あるいは昭和十六年の正当事由条項追加というようなものによりまして、借地について一たん貸すとなかなか返してもらえない、したがって貸さない、貸す場合には高額の権利金を取るというような現象が生まれてきた。他方では、短期間でいいから土地を貸してもらいたい、そのかわり権利金を安くというような需要もいろんな経済情勢の変動に応じて出てまいったわけでございます。
 そういうようなものに対応しようといたしましても、これをいろんな契約で仮にそういうことをいたしましても、今の借地法によりますとすべて無効でございます。借地権というのは木造建物ということであれば最低二十年の期間は決めなきゃいかぬ。二十年の期間というものを決めると二十年ごとに、つまり二十年、二十年、二十年というふうに期間が更新されていく、こういうことにしかなってないわけでございます。これが例えば堅固の建物ですと、三十年、三十年、三十年、こういう形で期間が更新していくということになるわけでございまして、そういう意味では非常に画一的で弾力性を欠く。しかも、これに反する契約をすると、つまり地主の方に有利な契約、借地人の方に不利な契約、つまり期間を短縮するというような契約をいたしますと、これは借地人に不利な特約であるということで借地法上無効である、こういうことになっているわけでございまして、そういうような状況のもとにおきましては短期の土地利用あるいは定期の土地利用というものを考えていろんなことをしようと思いましても法律上はできないというような結果になっているというのが実情でございます。
 そういうようなことを踏まえまして、現行法の借地制度は借地制度として置きながら、新しいそういう需要に対応することができるような、いわば定期借地権がその典型でございますけれども、そういう新しいメニューをつけ加えて需要の多様化に応ずることができるようにした、これが今回の借地・借家法改正の背景でございます。
#194
○紀平悌子君 ありがとうございます。
 次に、現行三法を廃止して借地借家法という統一的な法律にしていこう、こういうわけですけれども、建物保護法がこの法律案の中でどう組み込まれておりますでしょうか。簡単に、具体的にお願いします。
#195
○政府委員(清水湛君) 具体的には建物保護法を廃止しておりますけれども、この法律案の十条で現在の建物保護法と全く同じ規定をここに置いております。
 それからなお、新たに十条の二項で対抗力の存続についての規定を置きまして、対抗力を強化しておる、こういうことになっております。若干の技術的な修正等はございますけれども、基本的には第十条でございます。
#196
○紀平悌子君 内容に入ります前に、今大変土地の異常な高騰、いわゆるバブル経済の原動力というのが不動産の資産としての側面の強調にあるというふうに言われております。これがいかなるひずみを社会にもたらしたか、その原因は何であったかを今こそ考える必要があるんじゃないかというふうに思います。
 バブルのひずみを象徴的に示すと思われる暴力団による悪質な地上げの暗躍が今表面化しております。最盛期は去ったなどと言われる面もありますが、この表面化している事例につき、主要なものを御説明いただきたいと思います。これは警察庁にお願いをいたします。
#197
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 お尋ねのような事件といたしましては、昨年の一月に大阪において、暴力団の幹部らが、これは地上げ屋でございますが、立ち退き交渉が進まないことに業を煮やしまして、交渉相手の市民の民家に侵入の上ガソリンを振りまいて点火して放火し、木造二階建ての家屋を全焼させた現住建造物等放火事件がございます。
 また、これも昨年二月でございますが、石川県において暴力団が飲食店街周辺の土地を買収し地上げを図ろうとしたが、交渉がうまくいかず、交渉相手の業者の店の前で、この業者というのは飲食店経営者でございますが、通行人に入れ墨を見せたり酒盛りをして威力を示して業務を妨害した事件がございます。
 また、本年六月には、北海道において暴力団組長らが立ち退き要求に応じない民家二棟をパワーショベルで損壊した建造物損壊事件がございます。
 私ども昨年一年で、いわゆるこの地上げに絡む不法事案の検挙二十三件ございますが、そのうちの約四分の三がこれら暴力団が関与していたものと把握をしております。
#198
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 次に、建設省にお願いをしたいのですけれども、この法案に対する建設省としての評価をしていただきたいと思います。
#199
○説明員(石井正弘君) 借地・借家法の改正は、賃貸借当事者双方の公平な利害調整の確保等合理的な借地・借家関係の確立を図ろうと、こういうものであるというふうに理解をしているところでございます。
 今回の改正におきましては、定期借地権あるいは確定期限つき借家の特例といった制度が導入されるわけでございますが、これらの制度の導入によりまして賃貸人の土地あるいは建物の返還にかかわる不安が解消されるであろう、したがいまして住宅宅地の供給に資するものであろうというふうに評価をいたしているところでございます。
#200
○紀平悌子君 法案と現行法とは、法案の経過規定において法律案の成立の前に既に存在する借地関係及び借家関係においては新法を適用せず、結果として現行三法によることになると考えられますけれども、先ほども中野委員、そして午前中には糸久委員の御質問がございましたが、私も重ねてこの二本立てという、いわば私の考えからすれば矛盾する二つの借地・借家の法体系というものが並行するということの法的な妥当性に実は私も疑問を抱いております。しかし、お答えいただく時間が実はございませんので、後にまた譲らせていただくとしまして、意見のみ申し上げておきます。
 そして、もしこの法案が成立した場合、混乱という先ほど御質問に出ましたけれども、その混乱を避けるためにはやはり国民に十分な法律の内容の理解が必要だと思います。どのような広報活動あるいは宣伝活動、そして趣旨説明の中でも借り主の不安の解消というふうなこともおっしゃっておられますので、今考えていらっしゃるというか計画をしていらっしゃる前向きの案がございましたら、ぜひこれは二倍、三倍のPRの必要なケースだと思いますので、お答えいただきたいと思います。
#201
○政府委員(清水湛君) 二本立てに伴う混乱等を生じさせないために十分な周知徹底を図る必要があるということは御指摘のとおりだというふうに考えます。
 この法案の段階におきましても、先生方の手元に差し上げてあると思いますが、パンフレットとかリーフレットを多数部刷りまして、これを地方自治体、都道府県庁とか東京二十三区の区役所とか政令指定都市とか東京都かの主な市町村あるいは借り主の団体、貸し主の団体等にお送り申し上げまして、これをごらんいただく。それからまた、法務省の機関である法務局、地方法務局等にこれを備え置きまして、その周知徹底を図る。あるいは民事部に借地借家法改正に関する問い合わせについての専用の電話を設けて、電話による問い合わせに対して法案の趣旨、内容を説明するというようなことを現在いたしておるわけでございます。
 このようなことにとどまることなく、この法律が成立いたした場合には、これまでいろんな意見をお寄せくださった団体等に対して、その趣旨説明というか内容を御理解いただくためのいろんな資料を送付するというようなことはもとよりでございますけれども、いろんな各地の団体あるいは建設省の方にもお願いして、宅建業者等についても周知徹底を図っていただくというようなことでこの内容の広報に努めてまいりたいと思っているところでございます。
 いろいろ非常に関心を持たれる方が多うございますので、私どもの説明に対して期待をしているというとちょっと言葉が不適当かもしれませんけれども、十分な説明会を開くというようなことによりましても相当の周知徹底が図られるのではないかというふうに考えているところでございます。
#202
○紀平悌子君 最高裁にお伺いしたいのですが、先ほどの野村委員の御質問にも重なる点でございますが、今回の法改正ではいわゆる更新拒絶の正当事由として立ち退き料の申し立ての有無が加えられました。これは、いわゆる正当事由についての判例の積み重ねまたは現実の明け渡しのときの状況を反映するものと推量いたします。
 そこで、最高裁の判例において立ち退き料の支払いがほかの条件と独立に正当事由として掲げられた例が果たしてあるのでしょうか。判例をざっと見るところでは、むしろ立ち退き料の提供は他の条件と補完し合う補充の条件として扱われる傾向にあるようですけれども、今回の改正ではむしろそれのみで更新拒絶を可能ならしめかねないという心配があるように思われるのです。法文化されますについては最高裁からの十分な御意見をお聞きになったと思いますので、その点最高裁からお伺いをしたいと思います。
#203
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 判決におきます裁判所の判断と申しますのは、具体的な事案事案に即して行われたというものでございますので、必ずしも一般化することは難しいわけでございますが、ある程度抽象化して申し上げますとこういうことになろうかと思います。
 今までの最高裁の判例を見てみますと、立ち退き料の支払いの申し出があったということ、それはそれのみでは正当事由があるという独立のものではない、むしろ貸し主、借り主の自己使用の必要その他の条件の補強条件というふうに考えられているのではないかと思われます。今、委員御指摘のとおりでございます。ざっと最高裁の判例を見ましたけれども、立ち退き料の提供だけが独立の条件だというふうに見たのはないようでございます。
 一、二申し上げますと、法務省でおつくりになりました法律案関係資料の参考資料十六ページに判決がございます。これは昭和三十八年三月一日の第二小法廷の判決でございますが、これにはこのようなことがございます。「原判決が、その認定した当事者双方の事情に、被上告人が上告人に金四〇万円の移転料を支払うという補強条件を加えることにより、判示解約の申入が正当の事由を具備したと判断したことは相当」であるというふうに「補強条件」という言葉を使っております。
 また、もう一つだけ申し上げますと、その次のページの昭和四十六年十一月二十五日の第一小法廷の判決でございます。これについては「右全員」、これは立ち退き料でございますが、「右全員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあって正当事由の判断の基礎となるものであるから」というような判示をしております。これによっても明らかなように、独立の条件ということではないということでございます。
 今回の法案でございますが、借地の関係では第六条、それから借家の関係では第二十八条でございますけれども、この条文を拝見いたしますと、この条文の文言自体から明らかなように、当事者双方の土地の使用を必要とする事情というのが基本でございまして、そのほかのそれの付随といいましょうか、付随条件というようなことで財産上の給付というようなことが書かれておるようでございますし、国会における法務省当局の説明もそのようでございます。
 今回の国会における議論というものは当然法律解釈をする上におきまして十分参考にされるものだ、裁判官はそのようなことを参考にいたしまして判決判断をする、こういうふうになろうかというふうに思います。
#204
○紀平悌子君 法務省にいま一点お伺いしたい関心事がございましたけれども、これは賃借権の物権化についての千葉委員の質問とも重なるところでございますので、ある程度承りましたが、なお次に残したいというふうに思っております。
 最後に、恐れ入りますが、大臣にお伺いいたします。
 法改正全体の問題なんですが、今回の法改正がもし成立すれば、提案理由によれば、土地・建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れていない状況を改善するため、現行三法を見直し、より公平を目指し、新しい類型の借地・借家関係を創設するということになっていますけれども、その実際的な効果というものが宅地や賃貸住宅の供給促進という民間部門の住宅供給や増進を図ったものと思わざるを得ないわけであります。
 さらに、これを考えていけば、結局は現在のような建設費の高騰やあるいは高い賃金の状況の中では、賃貸住宅にしてもかなりの高額な家賃でなければ採算がとれないということになると思います。つまるところは、いわゆる借地・借家契約の更新拒絶についての正当事由の拡張解釈によって、再開発地域の貸借人が追い立てられる最悪の結果のみ生ずるという非常に悪い予想ですけれども、最悪の場合はそうなるかもしれないということを心配いたします。
 今回の法改正が、そのような経済的な弱い立場にある者につらくて、強い立場の者を保護するという、いわばこれまでの三法の精神を百八十度というと言い過ぎですが、転回させかねない。この点について法務大臣は、経済的あるいは立場の弱い人たちの保護という見地からどうお考えになっていらっしゃいますか。母子家庭あるいはお年寄りの家庭など貸借人の中でも最も弱い立場にある方々だと思いますので、これを念頭に置いての御答弁を最後にお願いいたしたいと思います。
#205
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのお年寄りとかその他弱い立場の方々が、今回の法改正によって従来より不利益を受けることはないというふうに私は考えておりますが、これまでの借地人あるいは借家人が不利益を受けるのではないかという不安を生じているという御指摘もございますので、そういったことを考嵐いたしまして、まず第一に新法の借地・借家関係の更新とか更新後の法律関係に関する規定は、今までの既存の借地・借家関係には一切適用されないということにいたしておることが第一点だと思います。こういった点について、まず国民の方々に十分理解していただくことが大切だろうと思います。
 新しい法律につきましてもそういった心配はないということは、先ほどからいろいろと申し上げておりますけれども、今後とも積極的に広報を行うなどいたしまして、あらゆる機会をとらえてこの法律案の趣旨、内容を国民の方々に十分理解していただけるように努力をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。
#206
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 終わります。
#207
○委員長(鶴岡洋君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト