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1991/09/19 第121回国会 参議院 参議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第4号
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1991/09/19 第121回国会 参議院

参議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第4号

#1
第121回国会 法務委員会 第4号
平成三年九月十九日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月十七日
    辞任         補欠選任
     種田  誠君     北村 哲男君
 九月十八日
    辞任         補欠選任
     北村 哲男君     種田  誠君
     篠崎 年子君     肥田美代子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鶴岡  洋君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                野村 五男君
                千葉 景子君
                中野 鉄造君
    委 員
                加藤 武徳君
                斎藤 十朗君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                福田 宏一君
                糸久八重子君
                瀬谷 英行君
                種田  誠君
                肥田美代子君
                三石 久江君
                橋本  敦君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省民事局長  清水  湛君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  今井  功君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       内閣総理大臣官
       房参事官     堀内 光子君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    石附  弘君
       国土庁土地局土
       地政策課長    板倉 英則君
       国土庁土地局地
       価調査課長    木村 誠之君
       法務省民事局参
       事官       寺田 逸郎君
       厚生省社会局保
       護課長      酒井 英幸君
       厚生省児童家庭
       局母子福祉課長  冨岡  悟君
       建設省建設経済
       局宅地企画室長  瀬野 俊樹君
       建設省都市局都
       市政策課長    安達常太郎君
       建設省都市局部
       市再開発課長   高橋 健文君
       建設省住宅局住
       宅政策課長    川村 良典君
       建設省主宅局民
       間住宅課長    石井 正弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○借地借家法案(第百二十回国会内閣提出、第百
 二十一回国会衆議院送付)
○民事調停法の一部を改正する法律案(第百二十
 回国会内閣提出、第百二十一回国会衆議院送
 付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨十八日、篠崎年子君が委員を辞任され、その補欠として肥田美代子君が選任されました。
#3
○委員長(鶴岡洋君) 借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○種田誠君 私は冒頭、現在審議されております借地借家法に関しての、これは大臣は何回も衆議院でも参議院でも述べられていることかとは思いますが、現在、これらの法案の改正をしなければならない積極的な理由、新しいニーズにこたえなければならないとか、新しい視点に立った公平を求めるための調整機能をつくっていかなければならないとか、幾つか述べられているわけでありますが、その辺のことに関しまして、恐縮でありますが、もう」度きょうの質疑に先立ちまして大臣の方から述べていただきたいと思うわけです。
#5
○国務大臣(左藤恵君) 借地法、借家法、この二つの法律は、大正十年に制定されまして昭和十六年に改正された後は、基本的一な改正というものは、半世紀が経過したわけでございますけれども、その後行われていないわけでありまして、この間に社会経済情勢の変化は非常に激しいものがあり、現行法の仕組みでは対応し切れなくなっている部分がある。特に、現行法が借地・借家関係の存続を画一的に規定しているということで、土地・建物を貸そうとする側にとっても借りようとする側にとっても一つの障害になっている問題があるのではないか。こういった点に着目しまして、今回の改正は、そうした社会経済情勢の変化に対応できるように、定期借地権の制度を創設するなど、当事者の権利義務関係をより公平かつ合理的なものにしよう、そして利用しやすい借地・借家制度としようとすみことを目的とするわけでありまして、将来の国民の生活の基盤整備にとってぜひ必要なものである、こう考えて今回の御提案を申し上げた次第です。
#6
○種田誠君 今、大臣のお言葉にもあったわけでありますが、新しい社会のニーズにこたえる、そういう意味で条文を拝見いたしますと、私どももすぐ見てわかるのが定期賃貸借地権の導入とか、その他建物に関しての期限つきの賃貸借とか、まさにこの辺の条文を見る限りにおいては今述べられたことが積極的に理解をできるわけでありますが、他方、第六条とか借家に関する二十八条などを見ますと、むしろ新しい社会的なニーズにこたえるということよりは、また別な意味での目的にこたえるような形で考えられておるのじゃないか、そうも思うわけであります。
 そこで私は、借地・借家に関しては、改正をする上でも、さらに改正後の解釈をする上でも、法律がつくられてきた立法趣旨、そして運用上の経過、そういうことも推しはかった上でこれを行っていかなければならない。とするならば、借地・借家における第六条とか二十八条などにおける一つ法として求められているもの、これは何だったのであろうかということをはっきりと確認をしておかなければいけないのではないだろうかとも思うわけです。
 そういう意味で、その辺のところについて法の六条、二十八条等の本来持っていた立法趣旨、さらには果たしていた機能、こういうのは一体どういうところに求められておったのか、そのことを伺いたいと思います。
#7
○政府委員(清水湛君) 委員既に御案内のとおり、借地・借家法というのは大正十年に制定されまして、存続期間につきましてはある程度長期の存続期間というものが保障されたわけでございます。ところが、昭和十六年に、大正十年からほぼ二十年を経過するというような事情もございまして、期間の更新ということが問題になりまして、そこに正当事由条項というものが追加された、こういう経緯をたどっているわけでございます。
 この正当事由につきましては、昭和十六年当時の立法、これは現在の法文もそうなっているわけでございますが、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他正当な事由がある場合、こういうことになっているわけでございまして、こういう条項が入る前におきましては、期間が満了しますと地主、家主は契約の更新を拒絶することができる、基本的にそういう前提がございまして、それを制約する意味におきましてそのような正当事由条項が設けられたというふうに言われているわけでございます。ところが、この正当事由条項につきましては、立法当時におきましては貸し主がみずから使用する必要さえあれはこれは直ちに返してもらえる、こういうような説明がされたということも言われているわけでございます。
 しかしながら、果たしてそれでいいのかどうかというようなことが戦後の住宅難、宅地難の時代に非常に問題になりまして、これは最高裁の判例までいろんな形で争われたわけでございますが、結局そこに一つの判例法理として、まず貸し主側の事情、借り主側の事情を公平に考えるべきである。その他もろもろの正当事宙についての判断要素というようなものが指摘されたわけでございます。形式的に言いますと、昭和十六年の条文のウエートがある意味においては貸し主側にあったものが、判例法理によって貸し主、借り主のいわば公平な判断というような形にやや法文自体が修正されてきたのではないか、こういうような評価をされる方もあるわけでございます。こういうようなことをめぐりまして、いわゆる正当事由というのは何であるかということが戦後の裁判例の非常に多くのものを占める。およそ借地・借家法の問題点といえば、実務上も判例上も正当事由であるというくらいに正当事由の問題が大きな問題になってきたわけでございます。
 こういうようなことから、例えばこの正当事由の考え方が少し貸し主側に有利に過ぎるのではないかとか、そういうような批判も実は一部に出てまいりましたし、あるいは土地の高度利用、有効利用というような観点から正当事由についてもそのような要素を加味すべきである、こういうような議論もまた一方では出てきた、こういう状況があったわけでございます。
 借地・借家法の改正問題を議論する場合には、この問題を避けて通ることはできませんので、法務省としましてもこの点についての問題点を示し、それぞれの方々、地主側の立場の方々、借地人、借家人側の立場の方々、いろんな方々の御意見を拝聴してきたわけでございますが、最終的な結論としては、やはり戦後五十年近く裁判所の判例によって打ち立てられた正当事由の判断基準と申しますか、判断についての基本的要素あるいは補完的要素というものを素直にそのまま条文化するのが公正、公平であろうということで、六条、二十八条のようないわば判例、あるいは現在行われている裁判実務を素直にそのまま条文化させていただいた、こういうことでございます。
 もちろん法律の規定の仕方といたしまして、現行法のままでいいじゃないかという御議論もあったわけでございます。現在の法律のままそれを現代語化して、口語化して法文化すればよいのではないかという御意見もあるわけでございますけれども、同じように現在の時点でそういう条文を書きおろしますと、貸し主がみずから使用を必要とする場合というふうに書きますと、もうそれだけで正当事由があることになるという昭和二十年代あるいは三十年代初めの論争をまた新たに繰り返すというようなおそれもあるというようなことから、法文をわかりやすく現代語に書き改めるということになりますと、結局判例の示された基準をそのまま素直に条文化するしかない。こういうことでこの六条とか二十八条という条文が最終的にでき上がった、こういうふうに御理解いただきたいと思う次第でございます。
#8
○種田誠君 そうしますと、今の局長の答弁の中にもあったわけでありますが、この六条や二十八条の条文の制定から今日までの流れの中には、一貫して借地人や借家人の居住の安定性、継続性を確保していかなければならない、その上でいかに公平な調整をするか、こういうふうな理念に基づき判例も蓄積されてきた。問題は、この借地借家法の根底に流れております日本の住宅政策や住宅状況を背景とした社会政策的な視点が、今日においても十二分に了解された上での今回の改正であるということに関しては変わりないわけでありますね。
#9
○政府委員(清水湛君) 大正十年の借地・借家法あるいは昭和十六年の改正が借地人あるいは借家人の権利を保護してその安定化を図る、こういう趣旨にあったということはそのとおりでございまして、今回の改正法もその点においては全く変わるところがない、借地・借家法の基本的理念というものは全く変えられていないというふうに私どもは考えております。
#10
○種田誠君 そうしますと、この六条や二十八条、その他の条文に関しての、今局長が言われた全く変わっていないということを前提にした逐条的な質問は後ほどさせていただきたいと思います。
 その前にもう一点、冒頭に確認しておきたいことは、大臣も局長も、これは法律上もまた明らかなことでありますけれども、従前来の借地・借家に関しては、本法を原則として適用せず、従前来の法文によるのだ、こういうふうに述べておるし、附則上もそうなっておると思うのです。しかしながら、先ほど来お聞きしております六条や二十八条は、この改正の流れがやはり旧来の契約にも影響することは間違いないものだと思うのです。
 そういう意味で、今般の六条や二十八条の改正というものが従前来の法文並びに判例の積み重ねであるとするならば、私はこの六条と二十八条の中における最も重要なものとして、今回財産上の給付の旨の申し出をするとかこれを考慮するとか、こういうふうな条文がつけ加えられたということに関しましては、これはいかように理解をし、従前来の判例に影響させないように対処しようとしておるのか、その点についてだけ伺っておきたいと思います。
#11
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、既存の借地・借家関係には、新法の更新及び更新後の期間に関する規定、これは更新事由としての正当事由及び更新後の存続期間に関する規定がございますが、それは適用しない、こういうことにいたしております。したがいまして、六条、二十八条の正当事由条項そのものには適用されない、こういうことになるわけでございます。
 実はこの点につきましては、法案作成の過程で法務大臣の諮問機関でございます法制審議会において長い間議論されたわけでございますけれども、存続期間の点については、これは形式的に既存の借地・借家関係を修正、借家はございませんけれども借地関係を修正することになる、だからこの適用はすべきではないという考え方が圧倒的だったのでございますが、正当事由条項、六条、二十八条については、これは今までの判例なり裁判実務で行われていることをそのまま書いたのであるから、これは素直に適用してもよいのではないかということで、法制審議会の答申では適用すべきであるということになっているわけでございます。
 しかしながら、その後、そうはいっても条文の形が変わるわけでございまして、既存の借地・借家関係の方々がこの正当事由条項が適用されると不利益な扱いを受けるおそれがあるというような御心配をされておるというような話がございまして、私どもはそういう心配はする必要がないということを申し上げたのでございますが、しかし、何か不利益を受けるのではないかという不安が非常に強くある、こういうようなお話がございました。人間のいわば生活基盤である住にかかわる問題でございますから、そういうものについて少しでも不安を抱かれるということは、これはやはり重要な問題として我々は考えなければならないし、受けとめなければならない、こういうことから、正当事由条項については従来の法律及びその法律によって積み重ねられている判例理論というものがあるわけでございまして、実質はこの正当事由、六条、二十八条と同じでありますと我々は考えているわけでございますけれども、それなら従前どおりの取り扱いをすることにするということで、これは法律の附則で、明文の規定で明らかにさせていただいたわけでございます。
 俗に立ち退き料というふうに言っておりますが、財産上の給付の申し出というふうに条文では言っておりますが、これも地主側に財産上の給付の申し出をする義務があるわけではございませんし、常にそういう申し出があるというわけではございませんけれども、そういうような申し出があった場合には、その申し出についても裁判所は補完的に正当事由の有無についての判断をする場合に考慮するというようなことが裁判実務で久しく行われておりますので、そういう裁判実務をそのまま書いたということでございますので、この新しい六条、二十八条の規定があることによって既存の借地・借家関係の方々に不利な影響を与えるとか、あるいは異なった取り扱いを与えることになるということにはならないというふうに私どもは考えているわけでございます。
#12
○種田誠君 この六条、二十八条の中で、さらにもう少しこのことについて詰めておきたいのは、従前来の条文と大きく変わったのは「自ラ」という言葉がなくなったことと、今申し述べておる金銭の給付、しかも金銭の給付に関しましては、判例を見ますと、ほとんどの判例においては補完という言葉が使われていますね。いわゆる補完と積極的に正面から位置づけられるというのでは全く意味合いも違いますし、財産給付、金銭給付の果たしている役割、機能も違ってくることだろうと思うのです。
 そういう意味では、六条や二十八条というのは、まさに判例理論の積み重ねであるという一つの流れがあったことは私も十二分に理解できるわけでありますが、この二つの条文が従前来の契約にも適用になるのだということならば、やはり私は、「自ラ」という言葉と補完という言葉が明記されていないというのは、何かいただけないような気もするわけでありますが、その辺のところはどういうふうに理解しておるんでしょうか。
#13
○政府委員(清水湛君) この六条、二十八条の規定は、従来の契約には形式的には適用されないわけでございます。その辺のことは明らかにさせておいていただきたいと思います。
 この財産上の給付等が補完的な要素であるということを私どもは繰り返し申し上げているわけでございますけれども、この第六条の規定ぶりをごらんいただきましても、「前条の異議は、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほかこ云々ということになっているわけでございまして、当事者双方が「土地の使用を必要とする事情」というのは、最も基本的な判断要素として考えるべき事柄である。そういう事情につけ加えて、「借地に関する従前の経過」等、あるいは「財産上の給付をする旨の申出をした場合における申出を考慮してこということになっておりますので、規定の上からも、基本的な要素が土地の使用を必要とする事情であるということは、文理解釈と申しますか、文言の解釈の約束上そういうことが言えるのではないかというふうに私どもは考えでこのような条文にいたしておるわけでございます。二十八条についても同じような趣旨でございます。
 それから、第六条、第二十八条におきまして、「自ラ使用スルコトヲ必要トスル」という、この「自ラ」という言葉をとったのはなぜかというお尋ねでございますけれども、現行法の解釈といたしまして、先ほどちょっと申し上げましたけれども、昭和十六年の改正の当時におきましては、土地所有者がみずから、自分で土地を使用する必要がある場合には、それだけで正当事由がある、こういうような解釈が行われていたようでございます。しかしながら、その後、土地所有者が土地の使用を必要とするという、必要性といっても現実の社会ではその程度がさまざまである、どの程度を超えれば必要性というものがあるということになるのか、土地所有者本人なのか、土地所有者家族なのか、あるいは土地所有者の経営している会社の使用人なのか、いろいろバラエティーが出てくるというような要素があるわけでございます。
 他方、土地所有者の土地の使用の必要性だけではなく、先ほどもちょっと申し上げましたように、もともと現行法の解釈は、当事者双方、つまり借り主側の土地の使用の必要性というものを考慮しなければいけないんだと。土地所有者のみずからの使用の必要性だけじゃなくて、借り主側の土地の使用の必要性、これは借り主みずから使用する必要性があるのか、あるいは借り主の家族なのかという問題が一方ではあるわけでございますけれども、そういうような条文の上には出ておりません借り主側の使用の必要性というようなものも考慮する必要があるというふうに判例が修正されてきた、こういうことは先ほど申し上げましたけれども、そういうようなことになりますと、結局みずからというようなことが余り重要な要素ということではなくて、貸し主と借り主の当事者双方の使用の必要性を判断する場合における一つの要素と申しますか、そういう場合にしんしゃくされる一事情にすぎないというようなことになっているわけでございます。
 判例でも、みずからということにもうこだわらない、双方の使用の必要性を比較考量して考えなさいということになっているというように私ども理解しているわけでございますが、そういうようなことから、現行法にはある「自ラ」の話を削除しても現在の実務における正当事由というものの考え方には反しないし、あるいはむしろそれに即したことになるという考えのもとに「自ラ」を削除した、こういうことになるわけでございます。
#14
○種田誠君 今の議論のやりとりの中で、私自身まだちょっと理解できないのですが、今千葉委員にも確認をしたのですけれども、局長の方で六条について、従前来の契約には六条の新しい改正案は適用にならないのだと、いわゆる二本立てのような趣旨のことを述べられたと思うのですね。それは附則の方で確認していかなければならないと思うのですが、附則を拝見しますと、四条、五条、六条、七条、八条、九条、十条、十一条、その他ずっと続くわけでありますが、この更新拒絶並びに明け渡し正当事由に関して従前来の契約関係には六条や二十八条は適用にならないのだというようなことを明文で書かれたものはありますか。どうも六条がそうじゃないかなと読むのですが、この書き方だと不親切きわまりない。ここは極めて重要なところですからもう少しはっきりとこの附則の文言を直していただきたい、そう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
#15
○政府委員(清水湛君) これは「借地権に係る契約の更新に関してはこということで、更新の場合には、更新するかしないか、あるいは更新後の期間は何年であるか、こういうことでございまして、「更新に関してはこということで、当然に更新するかしないかということと更新後の期間は読めるという法文の解釈のもとに、第六条によりまして更新するかしないかの事由の問題、つまり正当事由の問題、それから更新後の存続期間の問題が、これは借地でございますけれども読めるという、法制局との協議の結果そのようになっているわけでございます。法律というのはかなり技術的な要素があるわけでございますけれども、このことについては疑う余地がないというふうに私どもは考えておりますので、もしそういう御疑念が起こる可能性があるということであれば、十分に法律成立後この条文の解釈については明確に周知徹底をしてまいりたいというふうに思います。
 借地については六条でございますけれども、建物に関しましては十二条でございます。これは、建物の場合には、今回の法律で出てまいりますのは更新の拒絶理由に関する二十八条だけでございますので、つまり更新後の期間ということは問題になりませんものですから、ここはそのことだけを取り上げて書いた。土地については、更新後の期間と二つございますので、「更新に関してはこというふうな表現ぶりにした、こういうことでございます。
#16
○種田誠君 十二条の方は割とわかりやすいんですが、実は私も千葉委員も弁護士なんですが、六条の方は非常にわかりにくい表現で、不親切だなと思うぐらいでありますから、では一般の方がこの六条とか二十八条の経過措置を法務省はどういうふうに考えて提案したんだろうかという、法務省とか法制局の方はわかっておるにしても、なかなか表現上わかりにくいというのは、本来、私人間の権利調整の法律ですから余り使わない方がよろしいのじゃないかなと思うので、もう少し技術的にも検討し、かつまた運用上この辺のところを明確にしていただきたいと思います。
 一応とりあえず法務省さんに伺うことはこのくらいにしておきまして、また後半で伺いたいと思います。
 先ほど局長の話の中にも、借地借家法の制定、これまでの運用、そして判例の積み重ねというのは、いわゆる日本における住宅事情などを考慮した上で、かつまたその根底には住宅に困窮するという社会政策的な配慮を加えた上で今日まで積み重ねられてきたと。そうであるならば、この借地借家という法律はいわゆる民法の特別法ですから、建前上は私人間の権利関係の調整という大きな役割を果たすわけでありますが、その根底にやはり住宅政策というものがどのようになっているのかということが極めて大きな意味合いを持ってくると思うのですね。そういう意味で、建設省の方が見えておりましたら、まず今日、日本の住宅状況というのは一体どのようになっておるのか、その辺のところを恐縮ですが数字を挙げて説明していただければと思います。
#17
○説明員(川村良典君) 御説明申し上げます。
 我が国の住宅事情についてのお尋ねでございますが、昭和六十三年の住宅統計調査によりますと、全体で四千二百一万戸の住宅がございます。持ち家が二千二百九十五万戸、借家が一千四百二万戸でございまして、空き家は三百九十四万戸という状況でございます。一世帯当たり一・一二戸というのが現在の我が国の住宅の状況でございます。
#18
○種田誠君 申しわけございませんが、ちょっと今聞き逃していれば申しわけないのですが、いわゆる借家関係、とりわけその中の民営と公共を分けた数字はございますか。
#19
○説明員(川村良典君) 借家につきましては、全体で一千四百二万戸でございます。そのうち公営住宅が約二百八十万戸でございます。
#20
○種田誠君 先ほどの話で、世帯数に比して住宅の戸数の方が上回っておるというふうに理解できると思うのですが、そういう中で、現実に住宅に関して極めて厳しい住宅難の状況がある、こう言われておりますし、現実に何かそのような社会的な背景も存在しているような気もするわけであります。
 さらに、公営住宅やいわゆる公共住宅関係の応募状況などを見ますと、これまた決して住宅は世帯数に比べて余剰があるという認識は持てないのですが、その辺のところはどういうところからそういう現象が生まれ、住宅難という一つの今日的な状況を迎えているのか。その辺のところをどういうふうに分析しておりますか。ちなみに、公営住宅の東京都における募集状況などもわかればちょっと教えていただきたいのです。
#21
○説明員(川村良典君) まず、お尋ねの東京都の公営住宅の入居倍率でございます。
 新築の公営住宅でございますが、昭和五十六年度は十八・三倍、六十年度は二十八・〇倍、平成二年度は五十五・一倍というふうに大変高い倍率で推移をしておるわけでございまして、一応上昇する傾向にあるというふうに言えようかと思います。なお、今申し上げました数字は新築の公営住宅ということでございまして、空き家を含めました東京都全体の平均の入居倍率は平成二年度で十三・三倍というふうになっておるところでございます。公営住宅の倍率は、非常に立地条件その他がいい、それから家賃その他についても低廉に抑えられているといったこともありまして人気が高いということでございます。
#22
○種田誠君 もう一つ、いわゆる先ほど伺った中で世帯数に比べて住宅戸数が一・一一倍になっておる、そういう現状にあるにもかかわらずなぜ今住宅難なのかということについてはどのように分析しておられますか。
#23
○説明員(川村良典君) 第六期住宅建設五カ年計画というものが平成三年度からスタートしておるわけでございます。この五カ年計画におきましては、居住水準の目標といたしまして最低居住水準、それから誘導居住水準という二つの目標を立てておるわけでございます。これは四人世帯でいいますと、一応全体面積五十平米が最低居住水準というふうに考えておるわけでございまして、全国の統計調査によりますと、この最低居住水準以下の住宅にお住まいになっていらっしゃる方が約九・五%いらっしゃるということでございます。
 私どもとしては、できるだけ早期にこの最低居住水準以下を解消していきたいというふうに考えておるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、一応量的には各世帯住むところはあるわけでございますけれども、ただその居住環境が今申し上げましたように必ずしも十分ではないということでございまして、そういう意味で良好な住宅に住んでいただきたいということで施策を展開しておるわけでございますが、現在の住宅難というのは量の問題ではなくてむしろ質の問題ではないかというふうに考えているわけでございます。
#24
○種田誠君 第六次住宅建設計画の中に、今述べられたような視点での施策が取り入れられることに関しては、私もこれを積極的に評価をさせていただきたいと思うわけでありますが、いわゆる住宅の供給という点から考えまして、今回の借地・借家法の改正とのかかわりにおいて建設省においては一体今どのようにこれを認識し、どのような施策を展開しょうせ考えておりますか。
#25
○説明員(石井正弘君) お答え申し上げます。
 建設省としての認識でございますが、今回の借地・借家法の改正は、賃貸借当事者双方の公平な利害調整の確保等合理的な借地・借家関係の確立を図ろうとするものであるというふうに理解しておるわけでございまして、今回の改正によりまして定期借地権あるいは確定期限つき借家の特例といったものが導入されるわけでございますが、これらの制度が導入されることによりまして賃貸人の土地あるいは建物の返還にかかわる不安といったものが解消されるであろうということで住宅宅地の供給に資するものであろうというふうに考えておるところでございます。
#26
○種田誠君 今の借地・借家の改正法の中に、新たな国民のニーズにこたえるという意味での定期賃貸借や一時賃貸借の規定が具体的に施策の中に展開されるだろうということはわかったわけであります。
 もう一つ、これは今回の改正案の提起に至るまでの審議会などでも問題になってきたということでありますが、やはり今回の改正に伴って従前来の借地・借家のもとに居住をしていた方々が新たな居住生活を余儀なくされるような現象が生まれている。これに対しても何らかの適切な対応をしなければならないだろうというようなことも議論をされ、問題提起もされてきたというふうにも伺っております。そういう意味で、建設省などにおきましても、今回の借地・借家法の改正に伴う新たないわゆる賃貸借の創設に対しての施策ばかりでなくて、従前来の賃貸借関係の、今回新たに法改正に伴って社会現象として生まれてくるだろうと思われる社会政策的な意味での住宅のフォローというようなことに関しての建設省における積極的な手だてというようなものを今考えておるでしょうか。
#27
○説明員(川村良典君) 借地・借家法の改正につきましては、賃貸借当事者双方の公平な利害調整の確保など合理的な借地・借家関係の確立を図ろうとするものであるというふうに理解をしておるところでございます。また、借地・借家法改正案におきましては、正当事由に関する新法の規定は既存の賃貸借関係には一切適用されないこととされているところでございまして、貸借人の居住の安定に留意されているものと考えておるところでございます。
 ただ、私ども建設省といたしましては、引き続き高齢者等社会的弱者に対して公営住宅など公共賃貸住宅の的確な供給に努めることといたしまして、平成三年度に創設をされました高齢者向けの借り上げの公共賃貸住宅を活用しつつ社会的弱者の居住の安定ということに努めてまいりたい、かように考えております。
#28
○種田誠君 そのことでさらにちょっと伺いたいんですが、今回のこの改正案がまとめられる過程の中で、建設省も幹事としてこの審議会などにも参加をしてきたというふうに聞いております。そして、これは新聞報道でありますが、当初、今回の法改正がなされても、都市の再開発などに伴って高齢者世帯などが、また社会的弱者とされている方々が不当な形で現在の住まいから追い出されることはないだろうというような物の見方があった。しかしながら、現実に社会の流れは法改正前である今日においても、日ごろの新聞に報道されているように、かなり深刻な明け渡しの求めが繰り返されている状況にもある。
 そういう中で建設省としては、この審議会の中で、法改正に伴う不本意だけれども生まれてしまうこれらの現象に関してどのような形で対応すべきかというようなことを法務省の方に相談なり、法務省との間で協議をしたような経過がございますか。
#29
○説明員(石井正弘君) 借地・借家法の改正につきましては、今お話がございましたように、法務省の方の法制審議会において検討が行われ、法務省におきまして本年の二月四日に要綱が取りまとめられ、借地借家法案として取りまとめがなされたということでございますが、私ども建設省といたしましては、住宅宅地政策を所管する立場ということで、法制審議会の民法部会の幹事といたしまして関係者が加わり今回の改正作業にかかわってきたところでございます。
 また、当然その場合、建設省の住宅宅地政策を所管する立場として、高齢者対策あるいはそういった方々の社会的弱者対策というものも十分念頭に置きながら所要のいろいろ問題点もこちらの方の意見を申し上げて改正作業にかかわってきた、かような経過をたどってきております。
#30
○種田誠君 そうしますと、先ほど申し上げましたように、既に都市部などにおきましては再開発に伴っての借地・借家の一つの混乱、実際は借地人や借家人が追い出される、住居を失うというような現象が生まれていたということも改正作業の中でそれなりに協議されてきたのではないだろうかと思うのです。そうであれば、私は、法務省の方におきましても、これらの問題を建設省の方と政策的な展開を行う上でも、両省が一つの法律をつくった結果、社会にどのような影響を及ぼすのかということを十二分に配慮した上での法の改正並びに施策の展開というものをあわせて行うのが本来正しい物の進め方ではないだろうか、このようにも思うわけでありますが、その辺について一言、まず法務省の方のお考え、そして建設省のお考えを伺いたいと思います。
#31
○政府委員(清水湛君) 今回のこの法改正が成るにつきましては、昭和六十年から調査審議を始めているわけでございまして、私どもも、第三者と申しますか公正、中立な立場から各界にいろんな御意見を照会いたしました。
 その中には、例えば都市再開発とかそういうことに資するように借地・借家法を改正すべきであるというような御意見、これはデベロッパーとかそういう不動産関係の業界の方々の一部からそういうような意見も述べられたということもこれは事実でございます。しかしながら、審議の過程におきましては、やはり既存の借地・借家人の権利というものは尊重しなければならないということになったわけでございまして、これが例えば先ほど附則の六条、附則の規定なものですから余りよく読まれないという面もあってやや誤解が生じたのかもしれませんけれども、附則の六条で更新に関する更新事由とか更新の要件とか更新後の期間あるいは更新の効力と申してもいいと思いますが、その種の規定を一切適用しないということで既存の借地・借家関係の方々の不安を除去するということをこの法律案の一つの重要な目玉といたしているわけでございます。
 建設省におかれましても当然そのようなことについては御配慮をいただいておるというふうに私どもとしては思うわけでございますが、なおこのことにつきましては周知徹底が少し足りないのではないか。この法律がまだ通っていないにもかかわらず、法律が通れば追い出しやすくなるのだよというようなことを言って地主、家主が借地・借家人に迫っておるというような新聞報道があるわけでございまして、もしもそういう事実があるとすればまことにけしからぬと言うとちょっと語弊があると思いますけれども、まことによろしくない行為であるというふうに思うわけでございます。
 なぜ、そういうようなことをなさるのか。その原因は、この借地・借家法の改正論議にその原因があるのか、あるいはそういうことに藉口していわゆる地上げというようなものを容易にしやすくしようとしておるということなのか、私どもにはその背景は必ずしもわかりませんけれども、場合によっては違法な行為までしてそのようなことをしておるというような報道もあるわけでございます。
 このような現象がもしあるということになりますと大変残念なことでございますので、これに対する対策といたしましては、とにかく私どもがせっかく既存の借地・借家関係は従前どおり取り扱われるということを法律の明文の規定で明らかにしておるということでもございますので、そのことについての周知徹底方については相当力を入れてやらなければならない。このことについては建設省にもお願いいたしまして、所管の不動産関係の皆様方にも十分周知徹底をしていただきたい、こういうふうに実は考えているところでございます。
#32
○説明員(石井正弘君) 先ほど法務省さんの方から御答弁がございました改正案の内容につきましては、私どもも関係者の方々に正しい今回の法改正の内容についての理解が広く得られますように周知徹底を図ってまいりたい、かように考えております。
 都道府県に住宅相談窓口を私ども設置しているところでございますが、今回の借地・借家法の改正に伴う住民等からの相談があった場合には、これに適切に対応いたしますように通達等によって指導の徹底を図るということも具体的に検討いたしているところでございます。
#33
○種田誠君 そのことはそのこととして、ぜひ両省において積極的に努力をしてもらいたいと思うのです。
 私が伺いたかったのは、この借地・借家に関する法律が強行法的な保護内容を持っている社会政策的な立法である。この法律の改正というのに伴って、一つの社会現象として先ほど私が述べたようなことが現に先行的にというか、今日的にも進んでおる。そういう中で、実に私が寂しいなと思ったのは、日本で例えば都市の再開発をする、都市の新たな創造を図っていく、そういう場合に、そこで生活をしていた人たちが今後どのようになっていくのかということに関する積極的な施策が、例えば公共住宅の積極的な供給がフォローしてなされていないというところに日本の住宅政策の問題性とそれから都市再開発などの遅々として進まないという現状があるのじゃないだろうか、こう思っているわけなんです。
 ヨーロッパなどにおいては、公共住宅がもう二〇%とか三〇%の比率を占めております。日本では七%弱というようなこと。こういうところからも私はこのような現象が起こってくるのじゃないかなとも思うわけでありますが、今回の借地・借家法の改正は、まさに個人の住居という、衣食住という生活の一つの重要な要素にかかわることは間違いのない法律の改正、そしてそれに伴って社会現象が生まれておるというところに、私は、この法の改正と公共住宅とのあわせフォローし合いながらの施策の展開がないと双方がうまくいかないのじゃないか、こういうふうにも思うわけなので、その辺のことについてもう一度建設省の方ではどのように考えておるか、施策等ありましたらお願いしたいと思うのです。
#34
○説明員(高橋健文君) 今回の借地・借家法の改正案は、既存の借地・借家関係には大きな影響を及ぼさないということとなっておりますので、市街地再開発を進めるに当たって、今回の改正案を契機としまして、借地・借家人の方が特に不利益をこうむることはないだろうと考えたわけでございます。
 都市再開発法に基づきます市街地再開発事業におきましては、借地人につきましては従前の資産、権利に対応した形で再開発ビルの床が与えられることになっておりますし、また借家人につきましては、引き続き再開発ビルに入居できるようにもしておりますし、またさらにいろんな御事情がありますので、借家人のそういう事情に応じまして地方公共団体がその再開発の地区内でありますとか、あるいは周辺に用意します再開発住宅、これは公営住宅に準ずるような規模あるいは家賃で公共団体が用意するものでございますが、そういったところへの入居受け入れでございますとか、あるいは公営住宅さらには公団住宅、そういったところへの入居のあっせん等も行っているわけでございます。
 さらに、事業の実施に当たりましては、地区の住民の方が十分再開発に対する理解をしていただくようによく説明会等を行って事業の理解を求めるようにということで、公共団体あるいは事業の施行者を指導しているところでございます。
#35
○種田誠君 ぜひその辺のところのきめの細かい施策の展開をお願いしたいと同時に、今回のこの法改正だけが原因ではないと思いますが、やはり住宅に関する諸問題を提起しているところには、都市の再開発、とりもなおさず今回の再開発が民間主導の規制緩和、とりわけ容積率とかゾーニングの諸問題の緩和というような形の中であわせて展開されてきた中に今日的現象があるとするならば、その辺のところを今のお答えの点のきめの細かい施策の展開とあわせて、これからこの住関係を都市部においても安定的に展開するというためには、私は都市計画において今までのものをやはり反省をした上で新たな展開を重ねてもらいたい、このように思うわけであります。
 特に、最近アメリカなどにおいては都市の成長管理、またドイツでは都市の縮小論、そしてフランスなんかにおいては人間規模での都市づくりとか、こういうふうな形でいわゆる拡大成長の方向に合った都市が、今まさに諸外国においても反省をしながら、新たな人間らしいきめの細かい居住を重要視しながら都市づくりに動こうとしておりますので、ぜひこの辺のところに関する新たないわゆる基軸をつくり直していただきたい。来年の二月ごろには都市計画に関する新たな答申などもなされるとも伺っております。その意味で、今回の借地・借家法の改正などとの絡みの中で新たな都市計画像がどのようにつくられていくのか、今ある程度の考える方向があるならば、ここで述べていただきたいと思います。
#36
○説明員(安達常太郎君) お答えいたします。
 都市計画制度の見直しでございますけれども、現在都市計画中央審議会の場におきまして検討が進められております。このほど、同審議会の計画制度部会から中間報告がなされたところでございます。中間報告の中では、土地の有効・高度利用の要請が特に強い地域において住宅供給等に資する優良な計画が策定されれば容積率を思い切って上乗せするとか、計画ができるまでは現状のままで一時的に容積率を凍結する制度を創設すること、これが一つ。第二点は、主として地価負担力の比較的弱い住居系土地利用の保護を図るため、用途地域を細分化すること、こうした主要な二点について提言がなされているところでございます。
 今後、この審議会における最終的な検討を下しまして必要な制度の見直しを行っていこうということでございまして、この見直しは今回の借地・借家法の改正と必ずしも直接には関連するものではないというふうに認識をしておりますけれども、今委員の御指摘のいろいろなダウンゾーニング等の制度につきましては、よく検討して審議会の場でも議論をしていきたいというふうに考えているところでございます。
#37
○種田誠君 いわゆる都市づくりということが個人の住生活に大きく影響することは間違いないし、まさに住生活のよりよい質と環境をつくるために都市計画があるわけでありますので、今回の借地・借家法の改正などの動きというのもしっかり念頭に置いてぜひその辺の施策をつくっていただきたいし、進めていただきたいと思うわけであります。
 建設省の方に最後にもう一点だけ伺いますが、今回の法改正に伴いまして、まず一つには法務省の方で従前来から述べられておるように、また法文にもありますように、従前来の賃貸借に伴う契約と、それから新たな法改正に伴って今までとは異なった形態の契約関係がたくさん生まれるわけですね。今回の更新期間が異なる普通契約、そしてそのほか定期的な賃借権にしても三種類生まれるし、それから借家関係に関しても従前のものと新たに今度二つふえるわけでありますから、この辺になってきますとこの契約を一体どのように国民の皆さんが判断するのかということは極めて難しいし、かつまた契約にそのことを懇切丁寧に書いておかぬと後でとんでもない不当な事態が発生するということが予想されると思うのですね。
 私は、多様なニーズにこたえるということは結構だと思うのですが、まさに多様なニーズにこたえるためにはその過渡期でありますから、なおさら業界を指導して標準契約書をケース・バイ・ケースに応じていろいろつくっていただきたい、このように思うわけでありますが、その辺の準備はもうなされておるのでしょうか。
#38
○説明員(瀬野俊樹君) まず、宅地の関係から御説明申し上げます。
 今回の改正法案に盛り込まれております委員御指摘のいろいろな借地のバリエーション、特に定期借地権方式というもの、私ども極めて関心を持っております。これの活用を図るため、定期借地権の類型に応じたモデルプランでございますとか、そういったものを踏まえての標準約款の作成というものを今年度から来年度にかけて行うべく現在研究会を設置して検討を行っておるところでございます。
 委員御指摘のように、こういった制度の創設にあわせまして、その類型に応じた約款を作成し世に周知徹底することは、貸し生あるいは借り手の双方のニーズに合った安定的な借地関係を構築し、ひいては土地の有効活用、さらには宅地の供給促進にも寄与し得るものではないかというふうに期待をしているところでございます。
#39
○種田誠君 ぜひ、さらにいろいろ工夫を重ねていただいて、より適切な指導などを今後ともしていただきたいと思います。
 次に、また法務省の方に返りまして、私自身も改正条文を拝見いたしまして理解ができないようなものもありますので、事の重要性だけの条文を追うのではなくて、順次条文について御説明などをいただきたいと思います。
 まず第三条です。これは簡単で結構ですけれども、借地権の存続期間を三十年としたという根拠、この問も千葉委員その他の委員の方からも述べられておりましたけれども、三十年とし、しかも衆議院の方での修正で当初の更新は二十年、その後は十年、このようにしたということでありますが、この三十年、修正による二十年、十年というのを定めたはっきりした根拠というのは一言で言えばどういうところにあるのか教えていただきたいと思います。
#40
○政府委員(清水湛君) 現行法上は、木造建物の所有を目的とする場合には、契約で期間を定めるという場合には最低が二十年ということにされておりますし、また堅固の建物の所有を目的とする場合には最低が三十年、こういうことになっているわけでございます。
 そこで、堅固、非堅固の区別をなおそのまま存続させるかどうかということが問題点の一つとしてございます。これにつきましては、今の世の中で木造か鉄筋等の堅固な建物かというようなことを区別する必要性というものは余り実際問題としてないのではないかというような御意見が圧倒的多数を占めた、こういうことからまずその区別をなくそうと。さらに、では基本的な存続期間を何年とするかということでございますが、現在、堅固の建物の所有を目的とするものについて三十年、こういうことになっておるということ、それから現在の建築実務の上でも、これはもちろん例外はたくさんあるわけでございますけれども、鉄筋コンクリートのビルというようなものでございましても、小さなものですとまあ大体三十年ぐらいたつと再築、建てかえというようなことが検討される事例が多いというようなこと、経済的な耐用年数というようなものを見ますと三十年というような期間が建物の所有を目的とする場合における最も短い期間として要請される期間ではないのか、こういうようなことから三十年ということにいたしたわけでございます。
 また、土地を貸す場合に、借地権の一応の安定性が確保されるということから見ますと、現行法の木造建物二十年というのはやや短さに過ぎるというような御意見もございまして、当初の存続期間を三十年というふうに一律にいたしたわけでございます。もちろんこの三十年というのは契約で定め得る最短の期間でございまして、必要に応じまして四十年、五十年あるいは百年という期間を定めることも一向に差し支えないわけでございましで、例えば大きな霞が関ビルみたいなものを仮に借地の上に建てるということになりますと、これは当然、契約で相当の長期の期間を定めることになるだろうというふうに思うわけでございます。
 それから、更新の場合における期間を私どもの案では十年というふうにいたしたわけでございます。この十年といたしましたものは、基本的な最短期間を三十年とした上で、三十年間はどういうような事情の変更がございましても貸し主の方では土地を返してくれということは言えない。しかし、三十年も経過いたしますと、貸し主側にもいろんな事情の変更というものはあるだろう、あるいは特に現在のように社会経済情勢が刻一刻変わるというような激しい転変をしていく時代におきましては貸し主側にもいろんな事情の変更がある、借り主側にもまたいろんな事情の変更がある、家族構成とか事業の問題とかいろんな問題がある、こういうことが考えられるわけでございますが、三十年を経過した後においてはできるだけそういう当事者間の事情の変更というものを借地関係に適正に反映させるというのは、これは公平の見地にも沿うということになるだろうというふうに考えられるわけであります。
 そういうような観点から、例えば三十年の期間が経過したら期間の定めのない契約になる、これは借家がそうでございますけれども、期間の定めのない契約になって正当事由が備わればいつでも解約をすることができる、こういう一つの極端な意見がございます。それから、そうじゃなくて、ある一定の期間をやはり保障すべきであるというような意見もございます。
 そういうようないろんな意見の中で最終的な調整として出てきたのが、十年単位に正当事由の存否をチェックする、十年単位に貸し主側あるいは借り主側の事情を比較考量して、この借地契約を継続させるのが当事者間の公平な利害の調整というものに適合するものであるかどうかというようなことをチェックするということが適当であるということになりまして、最初の政府提案では、基本的な最短の存続期間を三十年保障するということとした上で更新期間については十年を最短の保障期間とする。もちろん契約で十年ではなくて二十年というふうに定めるのはこれは構わないわけでございますけれども、法律が絶対的に強行的に保障する期間は十年、こういうことにいたしたわけでございます。これが衆議院の段階で、最初の一回については二十年ということでいいのではないかというような修正がされたわけでございます。そういうような経過をたどっております。
#41
○種田誠君 この点については私と局長の方では若干認識を異にしますので、議論を展開することは平行線になってしまうかと思います。
 私は、土地などについて、土地を借地でもって利用するという、このこともやはり重要な権利であるし、これからむしろ土地そのものの利用形態の一つとして借地というのをどのように補強し、多様化していくかというようなことも極めて重要だと思うのです。その場合、その土地を返すとか返さないとかという問題と土地の利用というのは、これは本来別のはずだと思うのです。そこをどうも今回の改正の中では、地主サイドの土地が戻ってこないということが何か極めて重要な課題であるというふうに位置づけてしまったために、土地の利用によって貸し主も借り左もどのように利用を継続しながら一つの満足を得られるかというような視点のいわゆる物の見方というのがちょっと希薄だったのじゃないか、そういう視点がなかったのではないだろうか、なかったと言うと語弊があるかもわかりませんが、極めてその辺の物の見方が薄かったのではないだろうか、そのように思うわけであります。
 むしろ私は、三十年なら三十年で結構ですけれども、また更新期間も二十年とかという形で期間というものをある程度保障しながら、土地の利用というものを、建物の利用というものを双方がベストの状態で利用できるような形態をどうつくっていくかというのが本来の借地・借家法の改正の私は流れじゃなきゃならないのじゃないかと思うのです。そして、明け渡しとか明け渡さないとかというような問題は、一つの契約期間の流れの中においてその期間満了と同時にそこでどうするかということが当事者が合理的に公平に協議できるような新たなシステムをこれからつくっていくという、そういう視点でこの借地・借家法の改正というのを考えていただければ、この期間の問題などもまた別な角度からの物の見方があったのじゃないかと思うのです。
 そういう意味で、この辺については置いた視点が若干違うので、議論を進めても多分同じことだと思いますのでこれ以上は結構でございますが、今後運用の上でぜひ私が今申し上げましたようなことを御理解願いたい、このように思うわけであります。
 そこで次に、問題の第六条でありますが、先ほども冒頭、「自ラ」ということと財産上の給付の申し出に関しての補完的な役割ということについては伺ったわけでありますが、そのほかに、ここに今までと異なりましてより具体的に幾つかの要件が明記されたと思うのです。そのことについて伺いたいと思いますが、まず、今回「自ラ」ということをとって「土地の使用を必要とする事情」というふうにしたというのは、これはどういうことを意味するのでしょうか。
#42
○政府委員(永井紀昭君) 先ほど局長からも答弁申し上げましたとおり、例えば現行の借地法ですと第四条でございますが、ここに書かれております条文の文言、すなわち文理解釈と現在の裁判所における運用といいますか、判例との間にギャップが生じている、乖離が生じているということを申し上げたと思います。現在の時点でこれを条文として書きますときには、現実に今のような条文のままですとかえって貸し主側の事情を優先するような形になってしまうという、そういうことになっております。
 すなわち、今の借地法の正当事由といいますのは二つ要件があるわけでございまして、一つは貸し主がみずから使用することというのと、もう一つは正当の事由という、こういう二つがあると思っていただければいいと思います。これは文理解釈上そうなっております。はっきり言いますと、みずから使用するというその部分は落としましょう、要するに正当の事由ということで一本化しよう、それが現在の実務に合っているという、そういう考え方でございまして、「自ラ」だけ落とすとかなんとかというものではなくなっているわけでございます。これは第六条でも正当事由の内容をむしろ明確にしてその要素をはっきりさせるということ、そういうところでこういう双方が「使用を必要とする事情のほかことして、ほかの付随的事情も挙げている、こういう文体といいますか、こういう条文の構造になっているわけでございます。
#43
○種田誠君 そうでありますと、私のこれは読み方のまだ不十分さかもわかりませんが、「土地の使用を必要とする事情のほかことありますが、「ほかこという言葉は要らなくて、「土地の使用を必要とする事情、借地に関する従前の経過」、こういうふうな形で表現すればよろしかろうと思うのですが、なぜ「ほか」という言葉を入れたのでしょうか。
#44
○政府委員(永井紀昭君) これが実は一番重要なところでございまして、これは「事情こで並列的に並べますと、正当事由を判断するときのそれぞれのこれらの要素がみんな同列になってしまう。すなわち、皆同じ比重といいますか、重さで判断するというようなことが読まれるわけでございます。一番重要な主たる正当事由を判断するときの要素は、双方が「土地の使用を必要とする事情」であるということを明示するために、まずそれを掲げて「のほかこということで、後の事情が補完的なあるいは付随的な要素でありますよということを示しているという、こういうことになっておるわけでございます。
#45
○種田誠君 そうであれば、決してこれは正当事由という一つの中における要素として並列的に理解するというよりは、あくまでも従前来のように、建物もそうだと思いますが、土地に関して地主さんがみずから使用する事情というふうに限定的に書くことと、「自ラ」ということをとることによってそこには大きく適用範囲が異なってくると思うのですね。ですから、その辺のところを私先ほどから伺っておるわけでありますが、この条文の書き方だというと、「土地の使用を必要とする事情」というのはこれまでよりも広がりますね。
#46
○政府委員(永井紀昭君) ここでは貸し主だけのことではなくて借り主のことも書いてございますね。今までは借り主のことを書いてないわけであります。従来の判例でも、貸し主側といいますか、貸し生みずからでなくてその親族等を含めたもの、あるいは借り主側としまして、借り主みずからと借り主の親族等を含めたもの、そういう双方の使用を必要とする事情を公平に総合勘案しなさいということを言っているわけで、これはむしろ判例をそのまま素直に表現しているということでございまして、貸し生みずから使用を必要とするという従来の条文のままですと、貸し主がみずから使用を必要とする事情さえあれば借り主の事情を考えなくて、正当理由があるといいますか、明け渡しを求めることができるという、こういう従来の文理解釈になっているわけでございますから、それを変更しているということを御理解いただきたいと思います。
#47
○種田誠君 このことばかりじゃなくて、そのほかに、「借地に関する従前の経過及び土地の利用状況」というふうに書いてありますが、これは普通どういうふうなことを意味するのでしょうか。
#48
○政府委員(永井紀昭君) 例えば第六条でございますと、「借地に関する従前の経過」と書いてありますが、これは具体的には土地を借りるに至った事情、例えば親戚同士で恩恵的に安い賃料で貸しているとか、そういった事情も入ってくるわけであります。あるいは権利金とか更新料というものを支払っていたかどうか、あるいは地代の額はどの程度であったか、あるいはその支払状況が余り芳しくないのじゃないかとか、そういう事情も入ってくるわけでございます。そういうふうに当事者間におきます従前のいろんな、どういう経緯で借りてどういうふうにその契約関係が推移してきたかという、そういった状況を示しておるわけでございます。
#49
○種田誠君 今の御説明だとすると、何か貸し主さんの方の立場に立った事情のように、例えば権利金をもらっているか、地代の高さはどうであったかとか、それから親戚がどうだとかということですけれども、では実際借り主の方で契約において建物をどのように利用してきているかということは当然ここに入るわけでしょう。
#50
○政府委員(永井紀昭君) そういう事情も入ろうかと思います。ただ、その次の「土地の利用状況」というのもございますので、現在どのように使っているかということはこの「土地の利用状況」の方に入ろうかと思います。
#51
○種田誠君 その辺のところはまだいろいろ伺いたいことございますので、ここだけで詰めることできません。
 そこで、次の問題なんですが、先ほど「財産上の給付」という言葉、これは補完であるというふうに述べられましたけれども、金銭の給付じゃなくて「財産上の給付」というふうにしてあるのはどういうことなんでしょうか。
#52
○政府委員(永井紀昭君) これは委員も十分御承知だと思いますが、土地の明け渡し等の場合におきましては、代替土地でありますとか代替家屋を提供するという、必ずしも金銭だけということではございません、そういうことの提供の申し出がある場合がございますので、したがいましてそういう意味で「財産上の給付」というふうな表現にしたわけでございます。
#53
○種田誠君 そこで、今の答弁にあったようなものも踏まえて、この「財産上の給付」というのがいわゆる補完的に正当事由を位置づけるのだ、こういうふうな判例の流れがあったわけでありますが、この六条の記載方法によると、そのことはどうも先ほどの答弁にありましたように、正当事由の一つの要素にすぎないというふうにしか理解できないと思うのですね。あくまでも補完であるならばこの「並びに」という言葉はちょっと考えなきゃならないのじゃないか。また「考慮」というような言葉もむしろ補完であるということをある程度明記するような方法で、またはそのことが理解できるような方法で記載すべきだと思うのですが、いかがなものでしょうか。
#54
○政府委員(永井紀昭君) 「並びに」とありますのは、双方が「土地の使用を必要とする事情のほかこの次にこの三つを並べているというふうに御理解いただきたいと思います。すなわち、借地に関する従前の経過、それから土地の利用状況並びに財産上の給付の申し出、こういうふうに三つが並んでいるというふうに御理解いただきたいと思います。それで、双方が土地の使用を必要とする事情のほか、付随的な従前の経過、土地の利用状況、財産上の給付の申し出を考慮するという、「考慮」するというのはこの三つにかかっているわけでございます。付随的な、補完的な要素の三つにかかっている、こういう読み方になっております。
#55
○種田誠君 そうすると、これだけははっきりしておいていただきたいのですが、今述べたことの確認ですけれども、「土地の使用を必要とする事情のほかこということと、それ以下の三つの条件というのは、あくまでも「ほかこに伴う補完的な条項なんだということで今後の解釈、運用を図るわけですね。
#56
○政府委員(永井紀昭君) 委員御指摘のとおりでございまして、これは判例でもそのような表現ぶりになっておりまして、判例をそのまま整理した条文でございます。
#57
○種田誠君 次に、第七条について伺いたいのですが、この第七条は、借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失した場合なんです。
 この条文の第一項をちょっと拝見しましたら、「借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき」云々、こうあるわけでありますが、その先に「借地権設定者の承諾がある場合に限りことこうなるんです。この条文から読みますと、滅失してしまった、そして借地人が建物を築造してしまった、築造した後に承諾というふうにこれは読めるのですけれども、むしろ私は、本来ならば、建物を「築造するに際し」というふうな表現の方が何かこの条文の意味するところを的確に表現すると思うんですが、この辺のところはいかがなものなんでしょうか。
#58
○政府委員(清水湛君) これは築造の先後を問わず、承諾があればよいということでございます。実際問題としては、再築の場合に、当事者間の話し合いが行われまして承諾をもらって築造するということでございますが、これは紛争を未然に防ぐという意味において当たり前のことでございますけれども、黙って建てちゃった後で地主が後で承諾してくれても、それはそれで承諾があるということになる、こういう意味でございます。それを、「築造するに際し」というと非常に承諾の時期が限定されてしまって、かえって借地人の方が不利になる、こういうようなことをおもんぱかったわけでございます。
#59
○種田誠君 そうしますと、「築造したときはこ、これはいいとします。もちろん、今お話にありましたように、借地権があるわけでありますから、その間に建物が滅失してしまった、火事で燃えてしまったというような場合においても、借地人は自分の判断で家をつくることは結構であると。ただし、承諾があったときというんですけれども、承諾というよりもこれはむしろ同意じゃないですか、事後の。これはあくまでも事後の承諾という意味でしょう。あえて言えば同意でしょう。これほどうなんでしょうか。
#60
○政府委員(清水湛君) 同意というか承諾というか、つまり借地権者がそういう建物を再築することを地主としては容認して異議を述べない、こういう意味で承諾という言葉を使ったわけでございます。
#61
○種田誠君 そうしますと、築造してしまった後の場合と築造する前の場合が考えられますね、この承諾には。
#62
○政府委員(清水湛君) 御指摘のとおり、築造する前に承諾がある場合もございますし、築造された後に、ほとんどそれは直後ということになると思いますけれども、承諾をするということも理論的にはあり得る、こういうことでございます。
#63
○種田誠君 その辺のところがちょっと、今ここで質疑をすれば十二分に私も納得できますけれども、最初に条文を見たときにあれっと思ったわけなんです。私も借地・借家法を使っていろいろ弁護士の仕事もさせてもらいましたけれども、先ほども言いましたように、できる限り現実に家や土地を借りる方がずっと読んでわかるようにしておいていただきたいと思うので、この辺のところももう少し親切に表現を改められるか、もしくは運用上ぜひ指導を賜りたい。
 もう一つここで念のために伺っておきますが、結局承諾が得られなくても残存期間は建物は合法的に建てられますよということを意味しているわけですね。
#64
○説明員(寺田逸郎君) 御指摘のとおりでございまして、この七条の第一項というのは、延長がいかなる場合に生ずるかという要件を定めているわけでございまして、その要件に該当しない場合には延長が生じない、すなわち残存期間がそのまま続く、こういうわけでございます。
#65
○種田誠君 そこで、これは八条ともかかわってくる更新との関係ですけれども、建物を建てた、それで承諾がない場合は既存期間だけと。そして、その後はこれは新しい法律ですから、第一回目は二十年、そしてその後は十年、こういうふうに行く流れになるわけです。それで、承諾があった場合には、結局そこから二十年、こうなるわけですね。前が、例えば三十年の契約のうちの二十年目で焼失してしまった、しかしそこから今度二十年というふうになるのですが、ここで二十年の存続というふうにしたのはどういう根拠でもって二十年としたのですか。
#66
○説明員(寺田逸郎君) これは一方では、当初の存続期間というのは非常に堅固なものの存続期間といたしまして当事者が合意した、あるいは法律上定められているわけでございまして、これが三十年ということになっているわけでございます。他方、更新後の存続期間、すなわち当事者のいろんな実情に応じて、土地所有者側、すなわち貸し手側のいろんな事情も考慮して、あるいはその借地関係を解消する、そういう期間といたしまして十年という期間が設定されているわけでございます。
 ところで、現行法におきましては、この期間というのは更新後の期間、すなわち二十年あるいは三十年と同じ期間が新たに建物が再築された場合の期間として用意されておりますけれども、現行法に倣うといたしますとこの期間は十年ということになります。それでは、しかしながら新しい建物を建てる場合といたしましては少し短いのではないか。せっかく新しい建物を建てる、しかもこの場合には土地の所有者が七条の二項によってみなし規定による承諾がある場合といたしましても、いずれにいたしましても承諾をしているという場合でございますので、それは少し短か過ぎるのではないか、このような議論から、いわば三十年と十年というもののバランスをとりまして、ここは二十年ということにいたしたわけでございます。
#67
○種田誠君 その点はわかりました。
 それでは、次に八条の方へついでに進んでいきたいと思うのですが、これは契約の第一回目の満了が終わって今度更新された。衆議院の修正がありましたから二十年という期間になっているわけでありますが、そこでこの条文一項、二項でまいりますと、例えば三十年が終わって二十年の更新に入って五年目で家が燃えてしまった。本来ならばあと十五年これは期間があるわけですね。そのときにこれは承諾が得られなかったという場合は、せっかく十五年の借地権期間があって建物をつくった場合、その建物が十五年ぴたっとで終わればいいですよ、十五年ぴたっとで朽ちてしまうような建物ならいいですけれども、果たしてその建物が十五年目で朽ちるのか、また二十年もってしまうのか、三十年もってしまうのか、ちょっとわからないと思うのです。そのときに承諾がないからといって契約は直ちに解除だというのはちょっと余りにも借地人に酷じゃないかな、こう思うのですが、この辺のところはどんなふうに調整するのでしょうか。
#68
○政府委員(清水湛君) 地主側が承諾をしない場合には建てられないということになるわけですけれども、それではお尋ねのような場合に非常に困るということから、十八条の規定を新たに設けているわけでございます。契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者つまり地主が承諾をしてくれないという場合には、裁判所に申し立てまして、これは従来の借地非訟と手続は同じでございますけれども、裁判所が承諾にかわる許可を与えることができる。その際には裁判所が
当事者間の利益の公平を図るため必要があれば、借地権の存続期間は今後何年とするというようなことも定められることができるということが十八条の後段にあるわけでございます。ここでいう
 「やむを得ない事情がある」という場合には、委員御指摘のように、まさに火事で焼けてしまったとか災害でその建物が失われてしまった、こういうような場合が典型的な事例であるというふうに言えようかと思います。
#69
○種田誠君 そうしますと、十八条、ついでに見せてもらうわけでありますが、ここに「やむを得ない事情」という言葉が一つありますね。これはどういうことなのかということを後で御説明願いたいことと、それから今言われたように、まさに。この十八条で「第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定めこ「その他相当の処分をすることができる。」、こうなっているわけですね。このことだと思うのですが、ここにおける「異なる期間」というのは一体何年ぐらいに考えるのですか。問題は、先ほど言ったように、余り不当な短い期間を決められても困るし、もちろん、借地法の関係からいうと、余り長い期間も困ると思うのですね。この辺のところに関して、裁判所に全くゆだねっ放していいのだろうか、法はある程度ここで指針を示す必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
#70
○政府委員(清水湛君) 七条第一項の期間ということになりますと、これは二十年ということになるわけでございますが、二十年という期間とは違った期間を裁判所で決めてよろしい、こういうことになるわけでございます。恐らく裁判所といたしましては、最終的にはこれは非訟事件裁判でございますから裁判所の決定によって裁判をするわけでございますけれども、その前に当事者をいろいろな形で審問するということも当然あるわけでございます。いろいろな財産上の給付の問題等も縮めまして、例えばある程度の財産上の給付をするかわりに期間は三十年としてほしいとか、そういうような当事者の意思表明というものは必ずあるわけでございますから、そういうものをしんしゃくして裁判所が借地人それから借地権設定者の両当事者たちに対してそれぞれ過不足なく公平な決定をしていただける、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。
#71
○種田誠君 「やむを得ない事情」とはどういうことを想定しておるのですか。
#72
○政府委員(清水湛君) 「やむを得ない事情」というのは、結局、十八条の第二項でございますけれども、「建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。」、こういうことになっているわけでございますけれども、これはそういう裁判をする場合において裁判所が考慮しなければならない事情でございます。これは結局、そういう情勢の中で「やむを得ない事情」というふうに裁判所が判断をすることができる場合ということになるわけですが、結局、具体的事案に即して決めるということになろうかと思います。
 しかし、不慮の災害でまだ耐用年数がある建物が滅失してしまった、火事で焼けてしまった、あるいは地震で壊れてしまった、こういうようなことが典型的な事例に当たる。この場合には、借地権者としては当然のことながら引き続きその土地に建物を建てて、とにかくそこで生活をしていかなければならないわけでございますので、ほとんどこの場合には認められる、ほとんどというか、当然認められるべき事案になるであろうというふうに思う次第でございます。
#73
○種田誠君 わかりました。
 それで、次に進みまして、二十二条と二十四条関係を伺いたいと思うのですが、定期借地権、この中で私ちょっと疑問に思ったのは、二十二条の末尾の方を見ますと、「その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。」とありますが、この「等」ということになりますと、公正証書でなくてもいい、書面ならいいんだということですが、公正証書を一応つくりなさいと指導しておきながら「等」でもいいということになりますと、何のために公正証書でやれというふうに言おうとしたのか、その辺の趣旨がぼけてしまうと思うのですよ。ですから、二十四条がまさに「公正証書によってしなければならない。」と書いてあるのですから、どうせ公正証書にして契約関係の安定を図るのなら、この「等」はとるべきだと思うのですが、いかがなものでしょうか。
#74
○政府委員(清水湛君) これはまさに御指摘のとおり、五十年という期間でございますので、その間に貸し主が死亡したり、借り主が死亡する、あるいはその間に普通の契約書でございますとこれがどこかに散逸してしまうというふうなことが十分考えられるわけでございます。そういう意味で、証拠を保存するということから、私どもといたしましては公正証書によることが一番望ましいというふうに実は考えたわけでございます。
 ただしかし、公正証書によらなければならないというふうに法律でいわば強制をするということは、まだそこまで我が国の契約慣行はいっていないのではないかというようなことが他面、指摘されたわけでございます。また、公正証書によらなくても、このような長期の契約ということになりますと、当事者としてはいろいろな利害関係を慎重に考慮するわけでございまして、場合によっては弁護士さんに相談をするというようなことで、弁護士関与の書類をつくるというふうなことも十分あり得るわけでございまして、そういうようなことになりますと、これはそういう書面でも十分に証拠として保全し得るというようなことから、このような条文にしたわけでございます。
 ただ、気持ちといたしましては、公正証書によることが望ましいという気持ちがここにあらわれておる。しかし、それでなければならぬということにはなってないということで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#75
○種田誠君 その理由はよくわかるのですけれども、ただ、これから新しい契約をつくっていくわけですから、これまでの過去の事情などだけで物を見るのではなくて、むしろ二十四条の方は、これは強行法規に違反するような形での契約をつくるから公正証書にしなければならないというふうに義務づけてもいいんだということかと思います。私は、二十二条、二十四条、これほどちらも、公正証書によってしなければならないと、将来権利の安定ということからもぜひそうしていただきたい、「等」は削ってもらいたい、こう思います。
 それから、時間がなくなってまいりましたので、二十八条はまさに先ほどの借地の六条と同じだと思いますので省略いたしまして、三十八条をお伺いしたいと思います。
 ここで、三十八条、三十九条もそうですが、いずれも「一定の期間」という言葉が使われております。私は、この二足の期間」というものに対してもある程度の期日を明確にすべきじゃないかと思うのです。というのは、御存じのように、裁判所の即決和解という方法で建物の明け渡し猶予期間を定める場合にも、実際の効力があるのは五年ぐらいだ、それよりも長い間の明け渡し猶予期間をつくってもそれはなかなか効力が認められないのじゃないか。その間の事情の変化も生まれてしまうし、その間の新たな権利関係も生まれてしまう。そういうことから考えますと、この二足の期間」というのをただ単に二足の期間」でいいのだというのじゃなくて、そういう実務の事情と背景をとらえて、例えば、今言ったように、即決和解が五年が限度と理解されているならば五年ぐらいの期間というのを最高限度にするとか、むしろそういうふうにすることによってはっきりすると思うのですが、いかがなものでしょうか。ごく簡単にお願いしたいと思います。
#76
○政府委員(清水湛君) 御指摘の点はよく私どももわかるわけでございますけれども、この三十八条の場合には、「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」という、非常に事情が限定されておるということと、それから、やはりこれは個人的な事情ということがございまして、その期間を一律に言うのはちょっと難しいということから、個々具体的な事情において二足の期間」ということにいたしたわけでございます。
 それから三十九条の場合には、「法令又は契約により」ということで、まず法令上、例えばある一定の期間に立ち退きを迫られておるとか、あるいは契約によって一定の期間が過ぎたらこの建物は取り壊さなければならないというようなことがはっきりしているという前提で、こういうものが間違いなく存在するということが前提の上での一定の期間でございますので、そのことも個々の事案に応じてきちっと対応することができるのではないかというふうに考えまして、このようにいたしたわけでございます。
 和解等における明け渡し猶予期間というのが、借地法の趣旨を潜脱する趣旨でそういう制約があるということを私ども十分承知いたしておるわけでございますけれども、三十八条、三十九条の場合には個々の事案に応じてこういう契約ができる要件というものがはっきり決まっておりますので、その要件が間違いなく存在するという前提のもとで、このような一定の期間、当事者で契約の定める期間でよろしかろう、こういうことにいたしたわけでございます。
#77
○種田誠君 借地・借家に関してはあと千葉委員の方からもフォローしていただくことにいたしまして、最後に、裁判所の方、大分お待たせして恐縮でございましたが、民事調停法の関係で一、二点お伺いしたいと思います。
 二十四条の三で調停委員会の制度がこのように定められたわけでありますが、私も調停などに立ち会っておりまして、実際、地代・家賃などを調停委員会で決めるというのは極めて簡単なようで煩雑な、かつ、いざとなると困難な状況を醸し出してしまう。それはどうしても、特に地方に行けば行くほど調停委員の中に地代や家賃などに関しての正確な知識を持った専門の方が少ないというようなことも加味されてそういうことが起こっているわけでありますが、二十四条の三によりますと、調停委員会が大変大きな任務を負わされることになるわけでありますが、まず、その点について裁判所の方で今どのように対策を練られて、今後どのようにこれを指導監督していくようにお考えなのか、お述べいただきたいと思います。
#78
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 御指摘のように、この法律案が成立いたしますと調停の役割というのが非常に大きくなってくるだろうと思われます。このような事件は、特にこの借地・借家に関して専門的な知識を持っておる調停委員というのが関与するということが非常に望ましいわけでございます。調停委員会は御承知のように、裁判官一人、調停委員二人ということでございますが、そのうちの一人の調停委員にはできる限りこういう不動産鑑定士その他の専門家というような者を入れて運用するということになろうかと思います。
 また、今御指摘のように、そうは申しましても、場所によりましては非常にそういう人を入れるのは難しいというところもございます。そのような場合には、一つの手当てといたしまして民事調停規則の十四条という規定がございます。これは、その調停委員会の調停委員ではないけれども専門的な知識を持っておる調停委員の意見をその場合に限って聞く、このような制度でございます。これを活用するということも考えられます。また、このような法律ができますと、調停委員に対しまして裁判所の方でもいろいろこのような問題については研修会、研究会を開いておりますけれども、その中で一層このような問題についての研修なり研究を強化するというようなことも考えておるわけでございます。また、事件の様子を見ましては専門家の調停委員を今よりもふやすということも考える必要があろうというふうに考えております。
#79
○種田誠君 その点で、実は地代にしても家賃にしてもまさに一カ月五十円上げるとか六十円上げるとか、そういうことで争うわけですね、調停で。そういう中で不動産鑑定とか簡易鑑定という方式もありますが、そういうことやると、そのためだけに四十万だとか五十万とかという鑑定料がかかっちゃうのですね。これはとんでもないことになってしまうという意味で、簡易鑑定という安易にできる方法があるけれども、これもまた数十万かかるというふうに言われておりますので、今後、調停の先生方が地代や家賃に関してある程度基軸になるような、何か参考になるようなものをこれからつくっていただきたいと思うのですが、その辺のお考えはどうでしょうか。
#80
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今、御指摘のとおりでございまして、そのようなことから調停前置というような制度もとられたのではないかというふうに考えておるわけであります。調停委員の執務の基準といいましょうか、そのようなものについてもできる限り今までの調停なり裁判例の集積というようなものをまとめて、例えば地代・家賃の改定についてはいろいろな方式がございますけれども、今までどういう調停でこういうような事件ではこのような額で調停がまとまったとか、あるいは裁判例もございますけれども、そのようなものについて何かまとめて調停委員の参考にするというようなことも考えられようかと思っております。
#81
○種田誠君 もう一つ伺いたいのですが、今回の改正で衆議院の方の修正がありまして、当該調停が係属している間に当事者間で調停に服するという合意ができた、こういうふうな場合は合意として認めていこうというふうになったわけでありますが、この場合、この合意がその調停外でできる場合もあるし、調停の中でもできる場合もあると思うのですが、調停の中でできるような場合に関して調停委員会としてどのような指導をしていくか、その辺のことも考えておられますか。
#82
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 二十四条の三のいわゆる裁定の制度ということでございますけれども、これはこのような場合に行われるのではなかろうか。調停をやりまして相当煮詰まってきたというんですけれども、いろんな事情がありまして最終的な合意までは見るに至らない、こういう場合であります。しかし、当事者としてはいろんな事情から、訴訟に持ち込んで解決するということまでは望まない、何とか調停で解決してほしいということでこのような制度が使われるだろうというふうに思います。
 それで、そのような合意がされたということになりますと、現在同じような制度は商事調停、鉱害調停についてございますが、これについては裁定をする前には「当事者を審尋しなければならない。」、こういう規定がございます。この法律案が成立いたしますと、恐らくそれと同じようなことを最高裁判所の規則で決めなければいけないだろうというふうに考えておりますが、その審尋の中で当事者の意見を聞くということになります。
 その審尋の中で聞く事項はどういうことかと申しますと、これは書面による合意がなければいけないわけですが、本当にその書面による合意ができたかどうか。これは調停手続の中でできますと確認できるわけですけれども、調停手続の外でできた場合もございますから、本当にそういう合意があるんだろうかということ。それから、こういう裁定をしてほしいのかどうか。これは申し立てがありますから、申し立てた方はもちろん問題ないわけですが、相手方についてそういう希望があるのかどうか。あるいは、裁定をするとすれば自分の方としてはこのような裁定をしてほしいというようなことを当事者双方からいろいろ聞きまして、その上でこういう裁定をするのがふさわしい場合には裁定をする、こういう運用になろうかと思っております。
#83
○種田誠君 時間が過ぎておりますので最後の質問に入りますが、この条項の中で、これは法務省の方だと思いますが、一項の末尾に「事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。」ということで、「適当」という言葉が入っておるのですね。お金の問題にこれはまつわるわけであって、お金の問題を決める調停事件に「適当な調停
条項」という表現は私はいただけないと思うので、むしろ適正な調停条項とか、こういうふうに改めてもらわないと困ると思うのですよ。国民が受ける印象もこれは異なってくると思いますので、これはぜひそう直していただきたいと思います。
#84
○政府委員(清水湛君) 現在の民事調停法三十一条、先ほど最高裁の民事局長のお話にもございましたけれども、商事調停における調停委員会の定める調停条項の規定というのが現在あるわけでございます。この三十一条の規定に、事件を解決するために「適当な調停条項」という、今までこういう言葉が使われておりますので、適正というふうにするのが悪いという意味で申し上げているわけではございませんけれども、今までそういう意味で「適当な調停条項」という言葉を使っておりますので、それをそのまま引用したと申しますか、使わせていただいた、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
#85
○種田誠君 では、その辺のところ、ぜひ私はこれからは適正という言葉に直していただきたいということをお願い申し上げると同時に、最後に法務大臣にお伺いしたいのですが、先ほど冒頭申しあげましたように、法改正前から地上げの問題とか不当な明け渡しの問題とか、この改正を先取りしたような形でやっているという、まさに法務省の意に反するようなことが行われているわけであります。そういう意味で、今度の法改正案はそういう不当な目的で改正が履行されるとか、まさにつくられようとしているのではないんだということを国民の皆さんに緊急に、直ちにPRすべきだろうと思うし、法施行後もそうすべきだろうと思うのですが、その辺についていかがなお考えをお持ちでしょうか。
#86
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、今回の改正というのは、趣旨がそういうことではなく、基本的には借地権者と建物の貸借人の権利を保護するとか、その安定化を図るということでは現行法の趣旨と全く変わるものではないわけでありますし、既存の借地・借家の関係につきましては、従来の法律の規定がこれまでどおり適用されることを国民の方々に十分理解していただかなければならないわけでございます。
 今までもそうした法案の概要についてのいろんなパンフレットとかリーフレットを配布するとか、いろいろ周知いたしてまいりましたけれども、この法律改正がお認めいただき成立いたしましたならば、一層このことに、つきまして国民の方々に十分理解していただけるように、あらゆる機会をとらえましてこの法律の趣旨の周知徹底に努力をいたしたい、このように考えております。
#87
○種田誠君 ありがとうございました。
#88
○千葉景子君 時間が限られておりますので、できるだけ御答弁の方もまた簡潔にお願いをしたいと思います。
 大変恐縮なんですけれども、最高裁の方には質問を準備させていただきましたが、種田委員の方からの質問できょうの部分はほぼ重なり合いますので、私の方からはきょうは割愛させていただきます。よろしくお願いいたします。
 さて、今大臣からもお話がございまして、これからこの法律について周知徹底をしていく、従来の契約関係には適用はされない、あるいはその内容についてもこれからわかりやすく説明をしていくというお話がございました。ぜひこれはやっていただきたいと思うと同時に、やはりその基本となるのは法律自体がわかりやすい、あるいは疑念を抱かせない、こういうことがまず根本だというふうに思うんですね。それなくして理解を求めようといってもなかなかこれは難しいところがあろうかというふうに思うんです。
 その点で、先ほど種田委員の方から附則の問題。について質問がございました。私もその御答弁をお聞きいたしまして、確かに法文上わからないわけではないと思います。しかし、附則の六条なんですけれども、これは試案のころ、私もその中身を拝見させていただいたりいたしましたけれども、この当時は正当事由を除いては従前の契約関係には適用しないというような考え方がとられていたようなんですね。そういう経過から考えますと、今回は正当事由についても従前の契約関係には適用されないということのようでございますけれども、そういう経過を含めて考えると、この附則の六条といいますのは、ちょっと構造が違いますので対比するのはなにかと思いますけれども、借家について規定をした附則の十二条と比較いたしますと、やはりいま一つはっきりしないということが言えるんじゃないかというふうに思うんです。
 重ねての質問で大変恐縮でございますけれども、この点せっかくこれから多くの皆さんに理解を求めていこうということですので、何らか工夫をしていただく、例えば更新の拒絶の通知とその期間とか、何か具体的に記載をしていただくなどの方法はとれないものでしょうか。
#89
○政府委員(清水湛君) 既に御存じのように、借家につきましては要するに基本的な改正というのはされていないわけでございます。期限つき借家制度というのが新規に導入されましたけれども、それ以外は正当事由に関する条文が整備されたこと、つまり正当事由が明確にされた、このことだけが従前の借家関係の方々にかかわってくる規定である、こういうことになるわけでございます。ところが、借地の方につきましては、基本的な存続期間あるいは更新後の期間、こういうようなものがございますし、それから更新の事由についての正当事由等いろんなそういう更新をめぐる若干の修正、あるいは基本的な部分の修正その他があるわけでございます。
 そういうようなことからどういうふうな書きぶりにするかということになるわけでございますけれども、借家の場合には更新に関しては従前の例によるとはちょっと書きにくいというような面がございまして具体的に書く。しかし、借地については、およそ更新するかどうかあるいは更新後の存続期間がどういうことになるかという更新の要件、更新の効果、そういうようなものが一切これは新法の規定が適用されないという意味におきまして、「更新に関してはこと広く規定をする、こういうことにいたしたわけでございます。これは一つの法律を表現する場合のテクニックというか技術と申しますか、そういう面の問題でもございますけれども、そういう意味で法制局とも御相談の上このような表現になったわけでございます。
 しかし、委員御指摘のように、この附則の規定というのは往々にしてなかなか始終目にとまるわけでもないし、理解しにくいということもございますので、この法律の趣旨はこういうことであるということは、これはよく関係の皆様方に理解していただかなければならないというふうに私ども考えております。
 また、この附則の六条あるいは十二条の趣旨について、私どもは従来からそういった解釈、この規定の解釈ぶりについては疑義の余地がなく、そのような答弁を衆議院でも繰り返し、現在ここでも繰り返しているわけでございますので、それはそれとして御理解をいただきたい、こういうふうに患う次第でございます。
#90
○千葉景子君 ぜひここのところは、工夫の余地もあろうかというふうに思いますので、これからも引き続き検討方をお願いしたいというふうに思います。
 さて、正当事由についてなんですけれども、これも先ほど種田委員の方からも細かく質問させていただきましたが、私もなるほどその中でこの法律の構造といいますか、規定の構造というのは確かによくわかりました。「土地の使用を必要とする事情」というのが一つあり、そのほかの幾つかの要素として、「従前の経過」「利用状況」「財産上の給付」というものが考慮されるんだ、こういう構造だというふうに理解をさせていただいたわけなんですね。この中で「土地の使用を必要とする事情」、これは大きな柱としてそれなりにわかります。ただ、あとの三点ですけれども、これが並列的に今回法文上では並べられている。それが
本当に判例の実情をそのままあらわしているのかどうかというのはちょっと疑問を持つんですね。
 例えば「土地の利用状況」というのがございます。これは例えば「借地に関する従前の経過」、先ほど幾つかの例などを挙げていただきましたけれども、そういうものと比較いたしまして、同じレベルと言うとおかしいですけれども、同じような条件として判例上考慮されているのかどうか、その辺大変疑問を持つんですね。全くないというわけではありませんけれども、判例上かなり重要なポイントとされているというのはそう多くないのではないかというふうに思うんですが、具体的にどんな形でこれが判例上考慮されたり、どういう形で認められている例などございましょうか、ちょっと説明をいただきたいと思います。
#91
○政府委員(永井紀昭君) 「土地の利用状況」といいますのは、現実にどのような建物が建っていてだれが使っているかというような、こういうようなことが一般的には挙げられるわけでございます。判例等におきましても、例えば福岡高裁の昭和五十四年十二月二十日という判例等では、博多駅前の古い木造建物であって非常に低賃料であるというような、いわば「従前の経過及び土地の利用状況」、これを含めて利用状況ということで、現実にこの古い木造建物では使用の必要性ということとも結びつけており使っていないじゃないかとか、そういうような利用のあり方というものも現実に考えている例もあるようでございます。
 「従前の経過」の中には、賃料その他にというものも含めて、そういったものを混然一体といいますか、「土地の利用状況」というだけでなくて、「従前の経過」の中に含んだそういうことを総合勘案している例もございます。もちろん、一番の主たる要素は双方がどれだけその土地の使用を必要としているかということでございますが、そういう付随的事情で考慮している例もございます。
#92
○千葉景子君 確かに、ほかの事情と総合的といいますか、重なり合って、これは例えば土地使用の必要性などとも絡み合ってくるわけでございまして、そういう意味では三つを並べて、そしてそのほかは別に挙げられていないわけですね。例示としてはこの三つが一応挙げられているということで、非常に何か固定的な規定の仕方のような、あるいは何か概念的といいますか、そういう感じがするわけですね。
 私は、それと比較をいたしましてもう一点ここは確認をさせていただきたいのですけれども、これも試案の段階で土地の存する地域の状況というものが一時検討されたことがございます。そして、これは今回法案としては採用されていないわけですね。ただ、例えば判例などを見ますと、決してその地域の状況が全く考慮されていないわけではございません。これもやはり他の要件と総合判断をされている。そして、それのみで明け渡しを認めるなどということはされていないのは当然でございますけれども、こういう状況もございます。例えば、貸し側の困窮度が借りている側の困窮度よりも著しいような状況があるなどの場合、再開発目的も正当事由として認められているような判例などもないわけではないわけです。
 そういうことを考えますと、土地の利用状況ということが例えばその周辺の状況と全く関係ないのかどうか、わざわざそういう周辺の問題は今回落としてあるけれども、総合的判断ということを考えますと、あるいは判例の積み重ねということを考えますと、決してそういうことも否定されているわけではないのだろうとも思うんですが、その辺はどう私たちは受けとめたらよろしいのでしょうか。
#93
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、改正要綱試案あるいはその前の論議の過程では、正当事由の中の一つの独立の判断要素として、土地・建物の存する地域の状況、こういうものを入れるべきだ、あるいはそういうものを入れたらどうかということが議論された時代がございました。しかしながら、これを入れますと、例えば当該借地を離れて周辺がどういう状況になっているかということによって場合によっては正当事由が認められるというようなことになる。それが実は再開発とか土地の高度利用とか、ここは土地の高度利用地域であるから、だから地主の方がその明け渡しを求めることができるとか、あるいは土地を公共的な見地から有効利用するということのために、周辺がそういうようなものに適する地域であるから、だから土地の明け渡しを認める正当な事由があるんだと、こういうようなことになってくるおそれがある、こういうことが心配されたわけでございます。
 そういういわば高度利用とか再開発利用とか有効利用というようなことは、これは国のいわば住宅政策、土地政策という面から大変重要な問題ではございますけれども、少なくとも借地人と地主との契約をベースとする借地関係でこれは基本的な一つの重要な判断要素として考慮されるべき事柄ではない、こういうふうに考えられまして、最終的には土地・建物の存する地域の状況というのは、これは正当事由上から落とすということになったわけでございます。
 ただ、今回の正当事由に関する第六条にございますように、「土地の利用状況」というのは、これは借地人がどういう形でその土地を利用しているかということを判断要素といたしておるわけでございますが、これは土地の利用状況というものが周辺の土地と常に全く無関係に判断されるということには常識的に言ってもならないわけでございまして、いわば土地の利用状況を判断するバックグラウンドとしてそういうものが判断の意思の中に入ってくるということは否定はできないような気はいたしますけれども、しかし基本的にはそういう再開発とか高度利用とかあるいは有効利用ということとは全く関係なしに、土地が借地人において適切に利用されているかどうかというようなことが判断要素になるということになるわけでございます。そういう意味におきまして、周辺の土地の状況というのはこれは正当事由の中の要素は占めない、こういうことになってくるわけでございます。
#94
○千葉景子君 今お聞きしておりましても、土地の利用状況というのは確かにその土地自体としてどういう使い方をしているかということもありますけれども、やはり周りと比較するとどうもとんでもない使い方をしているとか非常に落差のある使い方をしているというようなことも含まれてこざるを得ない内容だというふうに思うんですね。
 そういう意味では、この「土地の利用状況」というものは、ほかの使用の必要性とかあるいは従前の経過、その固有の借地人、借家人、借り主、貸し主、当事者の関係をより超えた非常に広い概念になっていく危険性が含まれているんじゃないかというふうに思います。そういう意味で、どうも三つをこういう形で並列的に記載をするということに大変これから先の危惧を感じないわけではないんですが、その点について御心配はございませんでしょうか。
#95
○政府委員(清水湛君) 正当事由についての従来の判例理論というものを詳細に検討いたしますと、やはり基本的な流れは当事者間における諸般の事情を考慮する、それ以外の客観的な土地の高度利用とか有効利用というような公共政策というようなものは、これは当事者間の契約をベースとする借地・借家関係というものには直接の関係はないんだと、こういうのが正当事由についての基本的な流れであるというふうに思うわけでございます。そういうことで、裁判所が具体的な事案、この具体的な事案というのはさまざまな要素を持っているわけでございまして、一つとして同じようなものはない。当事者が違えば必ず借地・借家をめぐる事情というのは違いますし、従前の経過とか利用状況というものもそれぞれすべて違う。こういう状況の中で、裁判所がここに掲げるような要件を考慮いたしまして適切な判断を今まで正当事由についてされてきたというふうに私どもは考えているわけでございます。
 このような従来の裁判所の判例に示された基本的な考え方というものは、これは私どもは正当であるということで、その思想をそのまま素直に第六条の中に書き込んでいるわけでございますので、今後ともこの条文を根拠に裁判所におかれて、これは最終的には紛争の段階における裁判所の判断ということになるわけでございますが、裁判所におかれて両当事者の利害を適切にかつ公平に調整する見地から正当事由の判断をされるというふうに考えているわけでございます。
#96
○千葉景子君 その辺がまだどうも不明確さが残ってくるような感じがいたします。この点についてはまだ時間がございますので、その際に聞かせていただきたいというふうに思います。
 限られた時間ですので、ちょっと十一条というところをお聞きさせていただきたいというふうに思うんです。
 この十一条は、地代等増減の請求権にかかわる条文でございますけれども、これは今回の条文の中には、従来は租税が上がったとか土地の価格の上がり下がり、周囲の土地の地代との比較などが挙げられておりましたが、今回「その他の経済事情の変動」という文言が使われております。これは一体どういうことを考えていらっしゃるのか。そして、これはやはり従前の検討の中では物価とか国民の所得水準の上がり下がりということなどの挿入が検討されている経過もあるようなんですね。そういうことを考えますと、これは物価とか国民の所得水準の上がり下がりのようなことを含んで考えていらっしゃるのか、あるいはどういうことをこの規定というのは意味しているのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
#97
○説明員(寺田逸郎君) もともとこの十一条という規定は、これはもう御承知だと思いますが、契約期間が長い期間拘束されておりますので、その間に事情の変動がある、その事情の変動に対して当初から全部約束をし切ってしまうのは難しい、したがってその事情の変動に応じまして地代を増減する、こういう趣旨の規定でございまして、いわばこの法律の制定当初はそういう事情の変動をどう要素に書きあらわすかということでここに規定が置かれたわけでございます。
 これに対しまして、そこに現にあらわれております規定は、土地の価格、それから公租公課、それから周りの地代、こういうものだけが重要な要素として挙がっておりますけれども、実際の判例を見ますと、先ほどの立法趣旨にかんがみまして数多くの事情が考慮をされております。その最も代表例といたしましては物価がございまして、これは諸外国でも地代・賃料というのは物価にスライドするというような扱いが多いわけでございますが、我が国におきましても地代の増減におきましては物価のようなものが一つ考えられているわけでございます。
 ちなみに、鑑定士協会が現在地代の増減がどういう要素でもって決められているかという分析をした結果がございますが、それによりますと、ここに挙げられております地価あるいは公租公課のほかに、国民所得、物価、通貨の供給量、あるいは労働賃金の指数、このようなものが現実に反映されているのではないかという、そういう分析結果がございます。
 このようなものは、言ってみますれば、現在の地価というものがいわばその土地の収益を正しく反映しているかどうかということについて専門家の間でも非常に議論があるところでございますが、現在の条文の中に挙げられております地価あるいは租税というものに余りに過度にウエートが置かれるということはむしろ避けて、このような全体の経済事情の変動をより穏当に反映するという指数を挙げるものがむしろ法律の規定としては妥当ではないか、このような趣旨で、判例に挙げられたもの、あるいは専門家による分析の結果、それを集約いたしますと、「経済事情の変動」、こういうようなことで集約できるのではないかということで挙げさせていただいたわけでございます。
#98
○千葉景子君 御説明をお聞きいたしましてなるほどと思うんですが、ただ、例えば土地が大変高騰するというような状況の中では、場合によってはそれに従って極めて地代などが急激に上昇させられてしまうということなども考えられないわけではないわけですね。そういう意味では土地の価格の問題、それをどう評価するかというようなことも難しいところですけれども、ぜひその経済事情の変動という名のもとに不当な地代の値上げとかそういうことがないように気をつけていかなければいけないだろうというふうに思いますが、その辺についてはどんなふうにお考えでしょうか。
#99
○政府委員(清水湛君) 都市部におきまして地価が物すごい上昇を示しておる、そういうものを例えばそのまま地代に反映することになりますと大変な金額になるということになろうかと思います。しかし、その値上がりした地価というものが果たして本当に客観的に正当な地価であるかということ自体が既に問題でございますので、これはそう簡単に地価が値上がりしたから地代が値上がりするということにはまだならないように思います。しかし、結局考えますところ、先ほど御答弁申し上げましたように、物価がどの程度上がったとか、あるいは一般国民の所得がどの程度上がってきたとか、あるいは労働者の平均賃金がどの程度上がってきておるとか、そういうようなことを考慮いたしまして、地主側といたしましても、家主側といたしましても、適正な地代・家賃というのはやはり確保したい、こういうことでこの経済事情というような言葉を入れて総括的な表現にいたしたわけでございます。
 私どもといたしましては、地代・家賃について、これは当事者間で話し合いで決めるというのは、差し支えないわけでございますけれども、最終的に話し合いがつかない場合における紛争、こういうものをやはり適切かつ合理的に処理する必要がある、こういうことから今回民事調停法の一部を改正する法律によりまして調停前置あるいは地代・家賃紛争についてのいろんな調停手続の特則というようなものを設けさせていただいたわけでございます。私どもといたしましては、そういう場において適正かつ合理的な地代・家賃が形成されて、それが各方面にいい影響を及ぼしていくということを期待しているわけでございます。
#100
○千葉景子君 まだ質問をさせていただきたい部分がたくさん残っているんですけれども、ちょうど時間でございますので、また予定しているものは後日に回させていただくということで、きょうは終わりにしたいと思います。
#101
○委員長(鶴岡洋君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
   午後一時二十三分開会
#102
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#103
○瀬谷英行君 最初に、大臣にお伺いしたいと思いますけれども、私は東京の生まれで東京の育ちなんです。それで戦前の東京の生活をよく知っているんですけれども、戦前の東京においては、深刻な住宅問題というのは私の知っている限りではなかったんです。それで、私は生まれたところも育ったところも借家なんです。今でも借地に住んでおりまして自分の土地なんというものは一坪も持っておりません、別に自慢になることじゃないけれども。そういう環境で今日まで来ているわけです。
 ところが、戦争前の東京では、父親が勤め人だったんですけれども、ともかく二戸建ての、庭がついておって木があったり池があったりして、間取りが三つなり四つなりある家が勤め人でも借りられたんです。それから、勤め人だけじゃなくて学生でも何人かでそういう家を借りて自炊をする、こういうケースがあった。だから家に入る、家を見つけるということは難しいことでも何でもなかった。町中を歩きますと貸し家札というのがあちこちにあったんです。貸し家札というのは今はちょっと見かけられません。どういうわけだか知らないけれども斜めに張ってあるわけで、あれは落語家に言わせると、この辺でどうだろうかなと首をかしげたときに合うような角度になっている。こういう話があるんですが、そういう貸し家札を散見するような状況にあって、しかも勤め人の間の話では、公務員であろうと会社員であろうと、大体定年まで勤めて退職金をもらったら、その退職金でもって家を二軒ぐらいこしらえて、一軒に自分が住んで一軒は家賃を取って老後の足しにする、こういう話が常識的に通用していたんです。
 ところが、今日、とんでもない話ですよね。どういうふうに変わったかというと、もう戦争中のことは私よく知らないんです、戦争中は軍隊に行っておりましたから。戦後の状況はどうだったかというと、先般、小学校の百周年の同窓会があったんです。その百周年の同窓会のときには生徒の数が五百何十名でした。私が卒業したころは千人近くおりました。もっとも千人近くといっても、当時の小学校は高等小学校といいましたから、尋常小学校の上に高等科が二年ありましたから今より人数は多くても不思議はないけれども、それでも千人近くおりました。それが小学校の創立百年でもって五百名になって、その後百十周年という記念に呼ばれたんです。そうしたら二百何十名です。何で十年間に在校生徒が半分になっちゃったのか校長にいろいろ聞いてみました。そうしたら、小学校の児童を持っている父兄が住宅費が高くなってきて住めなくなっちゃった。そこでその近郷近在へ、つまりより住宅費の安いところへみんな逃げていった。東京でいうと三多摩地区あるいは埼玉県とか、千葉県とかあるいは茨城県とか栃木県とか、こういう遠くへ、土地の値段が安くて、住宅費もしたがって安いところへみんな流れていったというんですね。だから、もう十年間に学童の数が半減するんじゃ、あと十年たったらなくなっちゃうんじゃないかなと。そういう現象はこの近辺でもあるんです。永田町小学校だってそうです。閑古鳥が鳴くようになっちゃった。
 こういうふうに都心からは人間が、特に勤め人がどんどん地方へ分散してしまう。要するに住めなくなった。住宅費がそれほど高くなったということですね。これは一体どういうことか、政治問題として考えなきゃならないんじゃないかという気がするんです。
 それで、今回提案されました借地・借家法の改正、これが、例えば土地問題なり住宅問題を解決するのにこういうふうに役に立つということであれば話はまた別なんですけれども、必ずしもそうはいかない。ということは、例えばこの新聞の記事にも「借地借家法改正法案先取りに店子悲鳴」と書いてある。これはどういうことかというと、この法案が成立することを見越して、貸し主が借り主に対して法外な要求をぶつけるケースが激増をしているというんです。法務省は、この既存の賃貸関係に新法は適用されないと繰り返してまいりました。それは私もこの委員会でもって終始いやというほど聞いてまいりました。だけれども、法務省はここでそういう答弁を繰り返しても、現実に地代なり家賃なりを値上げしようということで、地主なりあるいは家主が借家人、借地人に対して法外な要求をぶつけるということになりますと、これは法の趣旨とは全く相反する二とになるんですね。この点は一体どのように理解したらよろしいのか、これは大きな政治問題だというふうに考えざるを得ないんですが、まず、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
#104
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、大都市の、特に東京のようなケース、私は大阪の市内なのですが、同じようなことがあります。私が行っておりました小学校もやはり同じようなことで、九百人ぐらいおった生徒が最後に百人ほどになりまして、今三つの小学校が統合されてしまってやっと一つになっている。そういうようなことで、いずれにしましても大都会の中心部に商業用といいますか、ビル、そういうようなものが建って、住宅というものが非常に少なくなってしまう。しかも非常に家賃とか高くなる、また地代も非常に上がる、地価が上がる、こういうようなことで、市内になかなか住みづらくなってしまってたくさんの人が外へ出ていくというような意味で、これは一つの住宅政策、土地政策というような問題で非常に大きな政治問題になっていることはお話のとおりだと思います。
 そうした状況の中で、少しでも土地の、住宅の供給とかあるいは地価対策というふうなことで何か今回の法律が役に立たないか、こういうお話でございましょう。直接にはもちろんそういうことを目的としておりませんので、今までありました借地・借家の関係につきまして、経済情勢のいろんな変化というようなことから多様化しました需要というものにこたえることができるような改正を一部今度は入れておりますけれども、なお安定した形としては、既存のそういった関係には一切適用しない、こういうことで御理解をいただこう、こういう趣旨で今回の改正をしておるわけでありまして、土地の有効利用、住宅の供給促進、土地問題の改善を直接には目的といたしておりませんけれども、結果としてそういうことに寄与することができればと、こういうふうに考えておるところでございます。
 それから、もう一つ、今、新聞の記事のことについての御紹介がありましたけれども、この問題につきましても、確かにこうしたことで、今回の改正案もまだ成立もいたしていない段階からそういうことを曲解というよりもねじ曲げまして、既にそういうふうなことで借地人、借家人に対してそういうことを要求するということは、全くこれは私は遺憾なことでございまして、当然そういったことはあってはならないし、あり得ないことなのですけれども、そういうふうに悪用しておるというふうな事例が出ておる限り、我々としましては、国民の皆さんの理解を求めるPR、努力を一層していかなければならない。既に法律を提案いたしました段階でもかなりいろいろ努力をいたしておりますけれども、そういった点がまだ十分でございませんので、この法案をお認めいただき成立させていただければ、その啓発、普及に徹底した努力をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。
#105
○瀬谷英行君 この法案が成立をすれば、法外な値上げを要求するといったようなケースはなくなるというふうに確信が持てるかどうかですよ、問題は。一生懸命PRをするというふうにおっしゃっているけれども、PRといったところで、別に新聞広告出すわけにはいかないだろうし、委員会でもって幾ら大臣がこう言われてもそれが徹底するかどうか難しいですね。
 特に、一昨日の質問でもって、暴力団が介入をして家を壊したとか放火したとかいろんなケースが報告されましたね。やくざ、暴力団のたぐいがそんなことをやるということになると、普通の市民じゃこれは対抗できません。したがって、そういう問題に対応するためにはどういう対策があるのか、これも具体的な問題として考えなきゃならぬと思うんですが、どうでしょう。
#106
○政府委員(清水湛君) いわゆる地上げ行為とかというようなことで違法な行為、不当に借地・借家人を圧迫するというような段階にとどまらず、刑法の罪に触れるような暴力行為、脅迫行為あるいは嫌がらせ行為というようなものを繰り返して、その土地からの退去を迫る、あるいは不当に高額な地代・家賃の値上げを要求し、あげくの果てはその建物から退去させる。こういうようないわば法律では容認されないような行為をして、借地人、借家人に対して不当な不利益を与えているというような行為があるという報道があるということは私ども十分承知いたしているわけでございまして、また、現実にそういったたぐいのものが刑事事件として警察の捜査の対象にもなっておるというようなことがあるわけでございます。
 私どもとしては、そのようなことは先ほど大臣からもお答え申し上げましたとおり、本来あるべきものではございませんし、またあってはならないことだ、こういう当然の認識でございます。ただ、今回の借地・借家法の改正は決してこれまでと比べて借地人、借家人の立ち退きを容易にさせることができる、つまり家主、地主の方から容易にさせることができるというようなこと、あるいは地代・家賃について、これまでよりより容易により高額の地代・家賃の値上げを請求することができるというような根拠には決してならないわけでございまして、そのようなことはおよそこの法律は予定していないところでございます。ところが、中には借地借家法案が通れば、そういうことが簡単になるんだからというようなことを現段階で申し向けて、情報を知らない借地・借家人をして困惑せしめておるというようなこともあるというような報道があるわけでございまして、私どもとしてはこれは大変残念なことであり、一面には私どものPRが不足というものもあるというふうに認めざるを得ないわけでございます。
 このPRの点につきましては、この借地借家法案について申しますと、まことに異例なことではございますけれども、多数のリーフレットとかパンフレットをつくりまして、市区町村の窓口等において関係者に配布してもらっておるというようなこともいたしておるわけでございますが、意図的に、悪意的にそういうようなことを中し向けて借地・借家人に退去を迫るというようなこと、これを禁圧するのは刑事の手続とか警察とかというようなそういう力を必要とするとは思いますけれども、少なくともそういうことがないようにさらにこのPRの方法についてはいろんな方法を考えてまいりたい。
 恐らく法案が成立いたしますと、政府広報というようなもので、週刊誌等にいろんな広報を出していただくことがあるわけでございますが、そういうようなものも積極的に活用いたしたいと考えていますし、あるいは弁護士会とか司法書士会とか宅建業界、そういうような国民に直接接触する皆様方、これは法案の中身というのは当然御理解いただけるわけでございますが、そういう方々を介しまして国民の方々にもよく理解をしていただく。決してそういう不当な強圧的な行為に屈することのないように、自分の権利は権利として主張することができるように、いろんな方法を講じてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#107
○瀬谷英行君 局長の答弁は本委員会を通じてずっとお聞きしておりますが、よく言えば極めて懇切丁寧、悪く言えばくどくて長い、その割にはわかりにくい、こういうことになるんだが。遠慮なく言わせてもらうけれども。問題は、せっかく局長が懇切丁寧にお述べになっても、その趣旨が果たして徹底できるかどうかという心配があるんです。
 特に、暴力団なんというのが動きますと、これは対抗するものが官庁であるとか大きな企業であれば怖くないかもしれませんが、個人対個人というケースになりますと、これは暴力団がそんなに大勢でなくたって、入れ墨をしたようなのが来たりしてすごまれたら、大概まあこれを追い払うなんという度胸のある人は少ないと思います。まごまごすると相手の言い分が不当であるというふうに思っていても泣き寝入りをしてしまうというようなことも起こり得ると思うんです。
 だから、その種の問題に対して、これは警察庁に聞いてみたいと思うんですが、どうなんでしょうか、弱者の立場に立ってそういう脅迫、迫害といいますか、それを阻止する、あるいは対抗するということができるのかどうか。警察庁としては、その種の問題についてはどのような対策をお考えになっているのかということをお聞きしてみたいと思います。
#108
○説明員(石附弘君) お答えいたします。
 地上げに絡む問題につきましては、警察におきましても市民の方々から種々相談を受けているところでございまして、過去三年間の相談件数は総計で約九百件余に及んでおります。内容的には、借地・借家からの立ち退き要求とか、土地売買の強要に関する相談が多く、この相談件数の約三分の一が暴力団絡みというふうに我々は見ております。
 地上げに絡む相談を受けた場合の警察の措置でございますが、例えば強要とか脅迫あるいは器物損壊等、こういった犯罪を構成する場合、またその疑いのある行為がある場合は、これは徹底した捜査を行い、事件検挙に努めることは当然のことでございまして、過去三年間で総計七十三件の事件検挙をしております。そのうち暴力団が関与したものとしてはと五十七件ございます。また、たとえその内容が犯罪を構成しない場合であっても、地上げの態様等によっては暴力団関係者等に対する警告とか、あるいはその相手方に対する対応方法等について助言、指導あるいは弁護士の紹介等の措置を講ずることにより、市民保護の徹底を図っているところでございます。
 警察に相談をした方で、大体三分の一は何かあればすぐ警察に連絡をしていただけるということで安心して帰られておられます。また、警察に相談をしたということで、相談に来た方が暴力団関係者にそのことを伝えることによって暴力団側が引っ込む、抑止効果がある、こういうふうに見ております。警察といたしましては、この地上げ行為が大きな社会問題として表面化した昭和六十二年に、都道府県警察に対しましてこの実態把握の徹底、相談への適切な対応、不法事案の徹底検挙等について指示を図るなど、地上げ等に対する不法事案についての取り締まり強化を図っているところでございます。
 なお、先般成立した暴力団対策法におきましては、指定暴力団が行う暴力的要求行為と認められる地上げ行為については、所要の規制を行うことが可能になったことから、同法の積極的活用を図ることによって、地上げに絡む不当な行為の防止を図るとともに、同法に基づき新たに指定される暴力追放運動推進センターの相談業務を通じて被害者等に対する支援業務をさらに充実してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
#109
○瀬谷英行君 取り上げられた件数からいうと、これは日本国じゅうのでしょう、七十何件とか、あるいは暴力団絡みが五十何件とかいうのは。日本国じゅうということになると、ごくわずかなんですな、正直な話。これは東京あるいは大阪、こういったような大都市だけだって、件数からいうとはるかに大きいんじゃないかなという気がするんです。だから、もうよくよく極端な場合が、これは警察の手によって取り上げられるということになるんで、それ以外にやはりおどかされて泣く泣くという例は少なくないと思うんです。だから問題は、やはりそういうところまで目が届かなければ意味がないということになると思うんです。
 今いろいろお話がありましたけれども、警察の対策というものが、未然にこの種の嫌がらせとか脅迫とかといったようなことでもって借地人あるいは借家人がおどかされるというような、あるいは追い出されるというようなことのないようなところまで手が届くことができるのかどうか、その点もちょっと重ねてお伺いしたいと思うんですが、どうですか。
#110
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 警察としては、日ごろの外勤あるいは防犯によりますところの地域のいろんな諸問題、いろんな情報が入ってきております。したがって、そういう過程の中で、今先生御指摘のようなことを発見あるいは聞き込んだ場合におきましては、できるだけ市民の側に立った相談あるいはアドバイス、事件関係絡みということであればまたこれは捜査の方が専門でございますので、そちらの方の部署でしかるべく措置をしてまいりたい、こう考えております。
#111
○瀬谷英行君 地上げ屋なんというのは、よその国に果たしてあるのかどうか。これ外国語に翻訳したら難しいと思うのですが、日本独特のもので、しかもこれ自慢にならないと思うんです。
 私は選挙区は埼玉県なんですけれども、埼玉県でも東京に近接したところは地上げ屋と称する人たちが活躍をしてどんどん地価を上げていくということを聞いております。
 具体的な例としては、例えば土地の高度開発などと言うと体裁はいいけれども、高層マンションができる。そうすると日陰になるところが出てくる。日陰になるところは何軒か結束をして反対運動を起こそうとした。反対運動を起こそうとした中に市会議員が一人いたんです。それで市会議員が被害地域の人をまとめて反対運動をやろうと思ったら周辺のところの人たちがいつの間にか声が小さくなっちゃった。よく聞いてみると、それぞれ金を不動産業者といいますか、地上げ屋といいますか、そういう人たちからいろいろと声がかかって何千万円とかあるいは何億とか、要するにそれらの人たちにしてみれば生まれて初めて聞くような札束を用意されちまって、それでしまいには市会議員一人残っちまった。だけれども、市会議員の方にも、おたくもどうぞこのくらいの金額でと、こう言われてきた。ただ、ほかの人は、じゃそれだけの金をもらうならどこかへ住みかえをしょうということができるかもしらぬけれども、市会議員が遠くの方から通ってくるんじゃ仕事にならぬのです。だから困っちまって相談を受けたことがあるんです。しかし、そういうケースの場合は脅迫は伴わないん、です。極めて丁重に、お金でもって解決できることならどうですかとこられるんです。これだって暴力団は介入しなくても、事実上は金の力でもって陥落をさせられる、こういうケースです。
 こんな形でもってどんどん住宅地というものがなくなっちゃって、マンションに変わり、工場に変わる、こういう格好になっちゃっているんですね。これが果たしていいかどうか、許されるかどうか。大きな政治問題になるというふうに私は思うんですが、大臣、これらの問題についてはどういう見解をお持ちでしょうか。
#112
○国務大臣(左藤恵君) これは、一つの土地政策といいますか住宅政策といいますか、そういった問題が基本にあって当然考えなければならない問題であり、恐喝とか脅迫とかということになれば、これは刑事問題ということで取り締まることもできますし、また、取り締まらなければならない問題でありましょうけれども、そういう意味での基本的な住宅政策とか、そういうもので適切な住居といいますか、必要に応じて適地につくることができれば問題は解決できるんじゃないかと思いますが、そういう基本的な問題、これは政治問題として我々は考えなければならないことではないか、このように思います。
#113
○瀬谷英行君 土地問題は住宅問題とかかわり合いを持っているわけですね。住宅は土地の上にあるわけですから、土地の値が上がるということになれば住宅だって上がってきますよ、いや応なしに。日本は金持ちだとか豊かだとかしきりに宣伝されますけれども、果たして住宅問題から考えてみて豊かと言えるかどうか。私は豊かとは言えないと思うんですね。
 外国へ行って、そう多くの例を知っているわけじゃありませんけれども、ほかの人からも聞いた話だし、私自身もいろいろ話を聞いて、なるべく住宅地というものを見たいと思って回ってみました。ヨーロッパの国々、フランスでもドイツでもスイスでもオーストリアでも、ああいう国々に行ってみますと、やっぱり住宅が広々としていてうらやましいという感じを持ちました。それからスペイン、今度オリンピックが開かれますけれども、スペインヘ行かれた方の話によると、地中海に面した非常にいい土地を売りに出しておる、その価格が日本に比べるとうんと安いというんです。二千万から三千万ぐらいも出せば、プールのついた庭と、それからベッドルームが四つもあって、もちろんダイニングキッチンその他については完備をしていて、何百坪という地所がついておる。それが二千万ないし三千万で手に入る。よかったら買わないかと言われたっていうんです。買わないかと言われたって、場所が場所ですからね。そう簡単に通うわけにいかないです、スペインとかカナダなんかになりますと。うらやましいけれども、残念ながら指をくわえて眺めるほかない。
 それに比べると日本では、東京都とは言いませんよ、東京や大阪とは言いませんが、その周辺だってプールだとかテニスコートのついた家屋が二千万や三千万で買えるなんてところはないでしょう。我々の家なんというのはプールに丸ごと入ってしまうくらい、それぐらいけたが違うんですね。
 ところが、実際問題として、日本の多くの勤労者はどういう生活をしているかというと、今日依然として通勤電車は満員ですよ。私は、新幹線が東京へ乗り入れするようになったから、新幹線で通うことがありますけれども、最近は朝のラッシュ時間帯になりますと新幹線が全部満席なんですね。例えば高崎だとか宇都宮だとか、百キロぐらいの地域から新幹線で通ってくる。学生なんかも下宿させるよりも新幹線で通わせた方が安くつくし安全だというんですね。そういうふうになっちゃっている。だから逆に言うと、日本の勤労者というのはいかに住宅事情に悩んでいるかということになるし、それから世界一住宅費が高くつくというんです、土地の代金ももちろんであるけれども。したがって、住宅の方も高くつくというんですね。
 だから、豊かだ豊かだと言われるけれども、住宅事情からいうと、そんな大きな家に住める人はいない。みんな鶏小屋みたいな――ウサギ小屋でしたか、ウサギ小屋にしたって鶏小屋にしたっており変わりはないけれども、そういうところに住んでいるんですよね。確かに食べる物は豊かになりました。食うには困らないけれども、住む方は鶏小屋だと、そういう生活はもうケッコーということになっちゃうんですね。その点をやはり考えなきゃいかぬと私は思うんです。
 豊かだ豊かだといって、余り外国へ行ってほらを吹かないようにしてもらわなきゃいかぬと思うんです、政府は。政府の方は、何か日本人は豊かになったというふうなことを外国の会議に行ってなまはんかにしゃべるものだから、日本人の旅行客がみんな向こうのすりにねらわれちまう。外務省の調べによると、日本人の旅行者でもってハンドバックをとられたとか、財布をとられたとか、パスポートをとられて動きがとれなくなったとかというケースが非常に多いというんですね。だから、豊かだという言葉を変に乱用されるとこうなる。
 しかし、実際この住宅問題ということを考えてみると、ちっとも豊かじゃないですね。豊かじゃないからこういう法律が出てきたんじゃないかと思います。貧しい者同士でもって、貸す方も借りる方も猫の額のような土地の貸借でもっていろいろいざこざが出てくる。
 さっき私、昔の話をしましたけれども、昔はおおらかだったです。大正十年にこの法律が制定をされたというけれども、大正十年以前、あるいは大正時代、あるいは昭和の初め、特に私のような年の者は昭和の初めのころを記憶しているのですけれども、家主とだな子の関係なんというものはぎすぎすしたものじゃなかった。ぎすぎすしたものじゃないからいろいろなトラブルがなかった。トラブルがなけれはこういう借地・借家法といったような法律も必要なくなってくると思うんですね。だから、私は、問題のもとにさかのぼらなければいかぬと思うんです。もとにさかのぼってくるとやっぱり住宅問題であり、土地問題であるということになってくると思うんですね。その点を考えてみたならば、この法案がどういう背景でもって生まれてきたのかということを考えてみると、これは手放しては豊かだ豊かだという言葉に酔うわけにはいかないと思います。
 では、大正十年、この法律ができる前はどういう状況にあったのか、日本は。その前はどういう法律でもって対応していたのか。いや応なしにこういう法律が出てきて、昭和十六年の改正から今日に至るまでの事情の変遷というものはどうだったのかということもお聞きしたいと思います。
#114
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおり、かつては大家とだな子というようないわば人情に基づく土地の利用関係、借家関係というものが存したということは御指摘のとおりだと思います。これはもう江戸時代から明治の初期、中期についてもしかりだと、こういうふうに言っても差し支えないと思います。しかしながら、日本が近代国家になるということ、それから明治二十九年に現在の民法がつくられまして、三十一年から施行されたわけでございますが、そこで土地・建物の賃貸借というようなことが近代的な形に装いを改めまして登場してくるわけでございます。特に日露戦争の後、急激に都市に人口が集中をしてくる、こういうような現象が生まれてまいりました。
 そこで、伝統的に、江戸時代からということを申し上げてもいいのかもしれませんけれども、大家だな子的な人情と申しますか、義理人情と申しますか、そういうものをベースとする借地関係、借家関係というもののほかに、都市に流入した新しいタイプの住人、労働者、勤労者を初めとするそういう方々の借地関係、借家関係というものが生じてきた、こういうことが一つの背景にあるというふうに思います。
 大正十年にこの借地・借家法というものがつくられたわけでございますけれども、それまでの法制というのはこれは民法だけでございまして、例えば民法の賃貸借の規定に従いますと、賃貸借の期間というのは二十年を超えてはならない、契約をする場合には二十年以上の期間を決めてはいかぬ、こういうふうに民法はなっているわけでございます。原則でございますけれども。そういうことが土地の賃貸借、建物の賃貸借というものの実情に合わない、特に多数の人たちが都市に集中して住まうようになってきたということを背景にいたしまして全く実情にそぐわないということになりまして、大正十年に、それまでいろんな議論がございまして、議員提案等による法案などが当時の国会に出された経緯もあるようでございますけれども、大正十年に至りまして、土地を貸す場合には契約で定める場合でも最低二十年以上でなきゃならない、そういうふうなことに借地法でなったわけでございます。言うならば、都市に住まっている人たちの生活の安定を図る、そういうようなことから当初の借地法が施行される地区というものも、大都市部に限定されて借地法が施行されたというような経緯があるわけでございます。
 ところが、こういうことで借地人あるいは借家人の保護というのは期間を保障するという点で図られてきたわけでございますが、それが昭和十六年という時代はちょうど大正十年から二十年という時代になるわけでございますが、当時、昭和十二年に日中戦争、シナ事変が勃発する、そういうようなことを契機として土地・建物の価格が高騰する、こういうような状況があり、さらに二十年目を迎えまして貸し主の方が契約の更新を拒絶する、期間が満了したから出て行ってもらいたいというようなことを言う事例が昭和十六年前後に非常に多くなってきたというようなことがあるわけでございます。
 当時もいわば戦時下でございまして、都市に人口が大量に集中して工場等に勤務する、こういうような状況があったわけでございますが、そういうような状況のもとで土地を借りて建物を建てて住む、あるいは家を借りて住むというような方々の生活の安定を期するという意味で、いわゆる正当事由条項というものが昭和十六年に追加されまして、以後この借地・借家法というのはいわばこの正当事由条項をめぐっていろんな場面でいろんな役割を果たしてきた、こういうことが言えようかと思います。
#115
○瀬谷英行君 問題を根本的に解決するためには、土地問題なり住宅問題というものを総合して解決をしなきゃならぬ、こういうふうに思います。
 これまた最近の新聞の記事ですが、「都が家賃を補助」する、「新築三DKでも月十万円前後多摩地区中心に来年度から実施」と、これは農協住宅だそうです。しかし、考えてみると三DKなんていうのはやはり外国に比べればささやかなものですね。にもかかわらず「三DKでも月十万円前後」、これが安い、安さが魅力だということで新聞の記事になるというんですね。これはやはり考えてみれば情けない話だなというふうに思いますけれども、それほど土地問題というのは今日深刻になって、しかもバブル景気でもってしこたま大もうけをした証券会社、銀行あるいは料亭のおかみが一兆に上る金を動かすというふうな、もう破天荒な事態を招いているという中には、土地が投機の対象となって、売買の対象となって、そして土地転がしによって大いにもうけたといったようなことは我々は否定できないと思うんです。
 そうすると、国土庁というのは土地問題を担当しているんだけれども、国土庁としては一体これらの問題に対して今日までどのように対処してきたのか。土地基本法というのがありますよね。土地基本法というのがあるけれども、土地基本法というのは果たして有効に機能したのかどうか。それから、関連した法律というのはいっぱいありますけれども、これが役に立っているのかどうか。役に立たなければ、どうやったら役に立てることができるのかというようなことについて国土庁の見解もお伺いしたいと思います。
#116
○説明員(板倉英則君) 今回の地価高騰についてのお尋ねでございますが、大都市圏の都心部における強いオフィスビル需要を背景といたしまして業務地への需要が急激に増大しました結果、地価が非常に高騰して、それに端を発しまして、さらに周辺住宅地における買いかえ需要の増大とか、さらにこれらの将来的な土地の値上がりを見込んだ投機的取引の増大というようなことが主たる原因となりまして地価高騰が生じたわけでございますが、これらの背景といたしまして、やはり金融緩和による金余り状況、あるいは資産として土地が有利であるというようないわゆる土地神話の存在というようなことが挙げられるのじゃないかと私ども承知しているわけでございます。
 政府といたしまして、このような認識に立ちまして、これまでも、逐一は申し上げませんが、土地の取引規制、土地関連融資の規制、土地税制の見直しを初めといたしまして、住宅宅地の供給促進、土地の有効高度利用の促進など需給両面にわたる各般の施策を実施してまいったわけでございますが、土地対策といたしましては、先生がおっしゃいますように、このような各般の施策が総合的に実施されるということが肝要であると承知いたしておりまして、私どもといたしましては今後とも、ことし一月二十五日に閣議決定されました総合土地政策推進要綱、これは土地基本法の基本理念に沿って政府の土地対策の基本方針を定めたものでございますが、この要綱に従いまして、構造的かつ総合的な対策を着実に推進することによりまして、土地政策の目標の実現を図るためこれからも関係省庁一体となって取り組みをしてまいる所存でございます。
#117
○瀬谷英行君 関係省庁一体となってというのは、具体的に言うとどの省とどの省、どういうところが一体になって協議をするということなのか、この点もお伺いしたいと思います。
#118
○説明員(板倉英則君) 土地政策につきましては、いわゆる土地利用の問題、金融規制の問題、それから土地税制の問題、いろいろ各般にわたるわけでございまして、それぞれ国土庁、建設省、大蔵省等関係省庁があるわけでございます。
#119
○瀬谷英行君 法律の中には、例えば国土利用計画法というのがあり、都市計画法があり、土地区画整理法があり、新住宅市街地開発法というのがあり、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法あり、あるいは公共用地の取得に関する特別措置法あり、公有地の拡大の推進に関する法律があり、まあ実にたくさんの法律がありますね。しかし、これらの法律が全部建前どおりに有効に機能していれば、今日のような途方もない土地の暴騰という事態を招かないで済んだはずだと思うし、そうでなければならぬと思うんですが、現実には、法律ばかりいっぱいあったってどの法律もみんなほこりをかぶっていて役に立たない。役に立たない法律ならつくらない方がいいと思うんですよね。役に立つように建前どおりに動いてもらわなきゃ法律を制定した意味がないと思うんですね。その点、これまた政治問題として、大臣に考えてもらう必要があるんじゃないか、こういう気がいたしますが、どうで
すか、大臣。
#120
○国務大臣(左藤恵君) これは、政治問題として考えていかなければならない問題でありまして、私は一省庁というよりも内閣挙げてこの問題に努力すべき性格のものであろう、このように思います。
 お話しのように、役に立たない法律というものが仮にあるとすれば、その法律は直していかなければなりませんし、現実問題として、一つの経済とかそういうものの勢いといいますか、そういうものに対して政治の方が追いついていっていないというようなことからこういったことが起こったのじゃないか、私はこのように思います。
 そうした意味におきましても、今先生お話しになった点で、各省庁とも十分連絡をとり、それは国土庁が中心になって立案されるわけでありましょうけれども、これは内閣全体の問題として、政府全体の問題として取り組むべき性格のものであろう、このように考えます。
#121
○瀬谷英行君 政府全体の問題として考えなければならないけれども、今日のような例を見ないような土地の暴騰という現実が存在をしている以上は、やはり社会現象に政府も責任を持たなきゃいかぬと思うんですね。建前はどんなに立派であっても、実際には土地価格が暴騰する、したがって住宅価格も暴騰する、庶民には手が届かない、こういう事象が現に存在しているんですね。しかし、こういう問題が存在している以上は、問題を根本的に解決するために政府自身も動かなきゃならぬというふうに私は思います。
 貸しやすく借りやすい借地・借家関係、こういうふうに政府も宣伝をしております。そのとおりになれば何も言うことはない。しかし、そのとおりにならないとすればどうしたらいいかということも考えなきゃいかぬだろう。特に、先ほどちょっと新聞の例を出しましたけれども、法案を先取りして、立ち退き、値上げ要求が出てくるなどということは、これは許しがたいとは思うけれども、そういう許しがたい事象が出てくる。そういう事象が出てきて後を絶たないというんなら、法案を出すのも考え物だということになっちゃうんです。そんなことをやるんなら法の改正をやらないぞ、こういうぐらいに開き直りをしないと、こういう問題はなかなか鎮静しないんじゃないか、こういうことを心配します。
 それから、法律の内容なんですけれども、この間からずっと委員会の審議をお聞きしておりますと大変に難しいんですよ、この法文が。さっき種田委員からの質問にありましたが、弁護士をやっているんだけれどもわかりにくい、こう言われた。この委員会は与野党を通じて弁護士さんがたくさんいらっしゃるんです。弁護士さんがわかりにくいというのを私どもがわかるわけはないんです。それをしかも懇切丁寧に解説をされると、これはちょっと聞いている方は神主の祝詞を聞いているような、神主の祝詞ならまだいいけれども、坊さんのお経ぐらいにわかりにくい。
 だから、やはりもっと法律をわかりやすくしてもらわなきゃいかぬと思うし、先ほどもちょっと聞いておりましたけれども、例えば「のほかこというのはどういうことか、あるいは「並びに」「考慮してこ「等」「やむを得ない事情」「適当な調停条項」、たくさんの問題が出てきました。「正当の事由」、正当な事由といったって何が正当かというのをどうやって判断するか、これは難しいですね。「やむを得ない事情」、それは近所でもって雲仙の普賢岳みたいに爆発をして火砕流が流れてきて住んでいられなくなった、こういうことがあればやむを得ない事情というのはわかりますよ。しかし、そうじゃない、やむを得ない事情というふうに抽象的に言われたら何がやむを得ない事情なのか。やむを得ない事情についてさっき質問がありましたら、具体的な状況に即してという御返事がありましたが、これだってわからないですね。話はちっとも具体的ではないんです。だから、この法律用語というものももう少し考えてみる必要があるし、抽象論だけでもってやりとりをしておりますと、これは切りがないんです。
 特に、日本の法律というのは、昔、私は、法律は日本語で勉強するよりも外国の法律をやった方がわかりやすいと言われたことがあるんです。日本語だってわからないのにどうして外国語がわかるか。なるほど先生に翻訳をしてもらって外国の法律を聞かせてもらうと、その方がわかりやすいんですよ。要するに、外国語を翻訳すると話し言葉になってくるんですね。日本の法律用語というのは、明治以来の伝統が残っておりまして、なるべくわかりにくくというふうに、そういうつもりじゃないのかもしれませんが、そのように解釈されるような書き方をしているという例が多いんですね。だから私は、法律というのはだれが聞いても、もう中学生ぐらいだったらわかるような法律にしなきゃいけない。解釈だって、「等」だとか「考慮してこだとか「適当な調停条項」――適当なよりも適正な方がいいだろうというさっき質問がありましたよね。いや、やっぱり適当なの方がいいと言うんですよ。答弁も適当だなと思って聞いていました。こういうふうに言葉のやりとりだけでもって済んでしまうとこれはよくないと思うんですね。
 そこで私は、これは委員長にもお願いしたいと思うんですけれども、問題が土地問題、住宅問題あるいは税制問題、みんな絡んでくるんですよ。大蔵省、国土庁、建設省、法務省、みんな絡んでくるでしょう。絡んできて、それぞれの委員会では、自分の所管のことだけでもって大臣も所管大臣しか出てこないということになると、やっぱり関連した法案の審議というのはやりにくくなってくる。
 だからそういう意味からすると、特に借地借家法というのは法案としては限られた問題のような気がしますけれども、貸し主と借り主との間の個人対個人のトラブルといったことであっても、その背景にあるのが住宅問題であり、土地問題であり、税制に関する問題であり、金融の問題であるということになってくると、やはり相互に各大臣がみんな責任を持って答弁するように、政府自身が協力できるようにという意味では、連合審査等もお考えになっていただいた方がいいんではないか。公聴会を開いて公述人の意見も聞きたいと思いますが、それらの公聴会の意見をもさらに総合して、これは関係各省一緒になってこの問題については審議をするというというような方向が法案の審議のあり方としてはいいんじゃないか、こういう気がいたしますので、この点は私の要望として申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問は終わります。
 以上です。
#122
○中野鉄造君 私は、一昨日質問した際に、時間の都合で答弁漏れがございましたけれども、そのことについてはちょっとお聞きしておりませんので、本日改めてお尋ねしたいと思います。
 その一つは、一昨日お尋ねいたしました中に、今回の借地借家法案が成立いたしますと、同じ借家人あるいは借地人の中でも新法で契約をしている人、今までの従前どおりの旧法での契約が適用されている人、こういう一つの法律で二つのものがこれから半永久的に続いていく、こういうことになるわけですけれども、同じ法律関係についてこういう長期間、いわゆる新旧二本立ての法律が適用になっている立法例がほかにもあるのかどうか、もしあるとすれば何という法律でどのような事例に対処する法律なのか。非常にこれは将来国民が困惑してくるのじゃないのか、こういう懸念がありますので、その点お尋ねいたします。
#123
○政府委員(清水湛君) すべての法律について当たったわけではございませんけれども、現在の利息制限法というのは昭和二十九年に旧利息制限法を廃止して新たに制定されたものでございますが、新法の「施行前になされた契約については、なお従前の例による。」ということで、二本立てを認めたものがございます。ただしかし、これは金の貸し借りでございますので、ずっと何年も続くというようなことは恐らくないという想定のもとにこの二本立てを認めたということではないかというふうに思います。
 今回二本立てが問題になりますのは特に借地関係でございますけれども、期間の点が既存の契約と新しく締結される契約では違う、こういう点が一つ。それから、更新の際における正当事由の規定の適用の仕方が違ってくる。借家については正当事由に関する規定の適用の仕方と申しますか、私どもは実質的な中身は同じだというふうに申し上げておるのでございますけれども、適用の仕方が違ってくる、こういうことがあろうかと思います。
 一番問題なのは、存続期間が片方は三十年、修正によって二十年、十年、十年、十年。既存のものは二十年、二十年、二十年、あるいは三十年、三十年、三十年、こういう形で続くという形で併存するわけでございますけれども、この点については先生が御心配のように、こういう二本立てが将来にわたって混乱を生ずることがないかというと、これは全く心配がないわけではございませんが、私どもといたしましては契約、特に借地関係は借り主の方の権利の中身と申しますか、そういう権利の消長に係る問題でございますので、きちっとした形で契約書その他が保存されることによりまして、実際問題としては混乱を生ずることはないのではないかというふうに考えているわけでございます。
#124
○中野鉄造君 そういうような御答弁ではございますけれども、私はこれは現実の問題、先般も申し上げましたように、例えば同じアパートにいる人でも、こっちの人は新法の契約者である、こっちの借家人は旧法適用の借家人である、そして家主さんあるいは地主さんは同一の人である。やはりこれは混乱が起こってくる可能性は多分にある、私はこう思うわけです。
 そこで二つ目の、この間もちょっと質問いたしましたけれども、現行の借地法、借家法の適用を受けている当事者がその契約の更新時期が来たときに、当事者同士が納得ずくの合意で、今まではこういうような継続をずっとしてきましたけれども、ひとつこの際定期借家法に切りかえたい、あるいは借地の場合でもまたいろいろ同じですが、いわゆる新法の適用でもって契約をしたい、じゃいいでしょうというように、双方が合意した場合、それはだめだ、どうしても以前からおる人であれば新法は適用されない、旧法でいくんだというような、そういうお答えがあったように記憶しておりますけれども、どうだったですか。もう一遍お答えいただきたい。
#125
○政府委員(清水湛君) その前に、まず借家についての二本立てという問題でございますけれども、借家につきましては期間の問題はございません。正当事由の根拠規定が違ってくる、現行法の正当事由の規定が適用されるか二十八条の規定が適用されるかという問題でございますので、私どもの立場に従えば、実質的な意味は同じでございますから、借家については混乱が生ずることはない、そういうことを申し上げているわけでございます。
 それから二番目の御質問でございますが、これは一つの観念論かもしれませんけれども、借地についてまず申し上げますと、この間の先生の御質問は、契約更新の際に、今後更新後の存続期間は新法の規定によることにいたしますという合意をした場合に、その合意の効力いかん、こういう御質問でございましたので、これは「従前の例による。」ということになっておりますから、この「従前の例による。」ということの中には、借地権の存続期間は借地人側に対する関係においては強行的に保障されているというのが従前の例でございますので、これを新法の存続期間によるという合意をいたしましてもそれは無効である、こういうふうに私申し上げました。
 それから、恐らくもう一つ先生の念頭にあるタイプといたしましては、それならば現存の借地契約は合意によって解除をする、借地契約はもうないことにしてしまう、一たん返した形にして改めて借地契約をし直す、こういうことが一つのタイプとして考えられる、こういうことでございます。
 前の方は、借地契約はそのままにしておいて、更新後の存続期間は新法によりましょう、これは無効になりますということを申し上げました。ところが、じゃ合意で解約をする、こういうことになりますと、これはお互いに本当に納得ずくで契約を解除するということ、これは阻止するということは法律上許されませんので、当事者の契約自由の原則というのは民法の大原則でございますし、自由意思を尊重するということは当然の前提でございますから、本当に合意で、自由な意思に基づいて今までの借地契約は解除して、それからじゃ新しく今度は新法の規定による借地契約を結び直しましょう、こういうことは観念論としては考えられるわけでございます。
 しかしながら、そこで問題になりますのは、果たして契約の形式はそういう形をとったといたしましても、実際問題としては今まで使っている土地をそのまま使うという前提でのいわば契約の操作でございますから、いわば一種の脱法行為という色彩を帯びる可能性がある。つまり、そういうことを形の上で整えましても、実質的には新法の規定を適用させる手段としてそのような形をとった。つまり、実質的にはもう既存の契約があるわけでございますから、更新後の期間だけが問題になるということでございますけれども、そういう方法をとって更新後の期間については新法の規定でいく、こういうような形にするということになりますと、これは私どもは実質的には先ほど申しました「従前の例による。」という規定の中におきまして強行的に更新後の借地期間が保障されておるという趣旨に反し、やはり無効ということになるであろうという解釈をとっているわけでございます。
 世の中には、合意で、本当に任意に解約をする、法律関係が面倒くさくなるからお互いに納得ずくで、あもいはそこで財産上の給付とか金のやりとりがあるのかどうか知りませんけれども、本当に抽象的に純粋に無垢に解約をして新契約をし直すというようなことは私どもはほぼ考えられない。やはり借地人が自分の権利というものを従前どおり保障してもらいたいという気持ちがあれば、そのようなことに応ずることは合理的に考える限りないというふうに実は考えているわけでございます。そういう意味でいわば仮装的に合意解約、新契約の設定というようなことをいたしましても、多くの場合無効という理論が出てくるのではないか、こういうふうに実は思うわけでございます。
#126
○中野鉄造君 借地の場合も借家の場合も同じことですが、今局長は借地のことを主にお答えになったようですけれども、借家の場合でも、例えば今まで同じ家をずっと借りておった、だけれども、いろいろ転勤だとかそういったような家庭の事情で今度は定期借家に切りかえたいと。いわゆる新法、今まで旧法にはこういうものはなかったんですから、今度は定期借家という契約で更新したい、こういうときも今お答えになったような、究極は無効だということなんでしょうか。
#127
○政府委員(清水湛君) 期限つき借家の場合に切りかえるということが果たしてあり得るのかどうかということをまず考える必要があると思うのでございますけれども、今までの借家人がそこに現にもう住んでいるわけでございますから、住んでいるものにつきこれを期限つき借家に変えるということは理論的にはないのではないか。
 つまり、理論的というか実際的と申しますか、新しい期限つき借家で申しておりますのは、自分が転勤をすることになった、あるいは親の療養、介護のためほかのところに住む必要が生じた、そのために自分が住んでいた家が空き家になる、そこでこれを貸す際にこれは期限つきの借家としてしか貸せませんよということを言うわけでございます。ですから、そうではなくて現実に自分はもうそこに住んでいないという前提でございますから、現実にはもう貸している借家の対象になっているわけでございますので、それを期限つきにするということは私は許されないことではないか、そのような特約は無効であるというふうに言って差し支えないというふうに思います。
#128
○中野鉄造君 借り主の方からいえばそうでしょうけれども、貸し主の方の都合で、このままの従前の法律からいけばずっとそういうようなことになって、さあ家を出てもらいたいと、そういうときにあるいはいろんなトラブルが起こる懸念も予想される。したがって、これからはせがれが大きくなってこの家に帰ってくるかもしれない、そういうことも考えられるので、どうかひとつ今後は新法で言うところの定期契約という形をとってもらいたい、こういうように申し入れた場合。当然あるんじゃないですか、そういう事例は。
#129
○政府委員(清水湛君) これは、例えば現在の借家契約で更新の際に(二年後には息子が帰っできますから二年後は間違いなく返してください、こういう特約というか契約をすることができるかどうか、これはできないわけでございます。二年後に明け渡す際には正当事由があるかどうか、こういうことで期間が更新されるかどうかということが判断されるわけでございます。
 ですから、今度期限つきの借家制度ができたからといって、普通の今までの借家について期間が満了した際に、三年後には私が住みますから――私が住むということでもいいと思うんですね、私はどうしてもほかに行くところがなくて今度会社をやめたらここに住みますから三年後は間違いなく出てください、こういう契約をする。これは現行法上無効でございますし、これは新法によっても無効である、こういうように私ども考えます。それで、そういう契約はあくまでも、例えばそのときに本当に会社を退職するとか、あるいはいろんな事情があってその家に住む必要が生じたということになりますと、これは今までの借家法と同じように、自己、貸し主がみずから使用する必要がある場合その他正当事由という条文があるわけですけれども、それに該当するかどうかで判断がされる。こういうことで、そのような特約をしても私どもは無効である、こういうふうに考えるわけでございます。
#130
○中野鉄造君 無効であるというその根拠は、この条文のどこにあるんでしょうか。
#131
○政府委員(清水湛君) 既存の借家契約についての正当事由の規定ということでございますので、現在の借家法の六条ということになります。改正法でございますと三十条、こういうことになります。
#132
○中野鉄造君 三十条はいわゆる強行規定として「この節の規定に反する特約で建物の貸借人に不利なものは、無効とする。」こうなっておりますね。これは貸借人に不利でしょうか。
#133
○説明員(寺田逸郎君) ただいまのお尋ねの中で、既存のものにつきまして正当事由条項を抜けた、そういう形での契約関係に入るという意味では旧法の六条が適用されますのでその規定に違反する、こういうことでございます。これが局長の申し上げた趣旨でございます。
 それから、今おっしゃいました三十八条の不在期間の建物賃貸借でございますが、これが要件がないにもかかわらずこの要件があるかのごとく申しましてもそれは無効である。それは三十八条をよくごらんいただきますと、「第三十条の規定にかかわらずこということになっておりまして、これは三十条に対しましてこういう場合にのみ三十条の規定をかぶらない例外規定を設けておる、こういう趣旨で規定してあるわけでございますので、したがいましてこの規定に当てはまらない場合には三十条に違反する、こういうことが言えるわけでございます。
#134
○中野鉄造君 もう早速こういうように、さあこの場合は旧法だこの場合は新法だ、こういうように混乱しできますね。これは混乱の懸念は少ないなんておっしゃいますけれども、一つ一つの事例の解釈をとってみてもこういうような事態がこれから再々起こってくるんじゃないかと私は思いますよ。その点いかがですか。
#135
○政府委員(清水湛君) 期限つき借家の制度というのは、これは新法によって新たに認められた制度でございまして、既存の借地・借家、まあ借家でございますけれども、借家関係との二本立て云々という問題では性質上ないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 ただ、先生の御指摘の問題は、既存の借家契約についてこれを変更するという契約、これは借家契約についていろんな形で変更契約をするということはあり得ることでございますけれども、新法で認められたそういう借家契約に変更するということが有効か無効か、こういう問題でございまして、これは二本立ての問題とはちょっと違うのではないかな、こういうふうに考える次第でございます。
#136
○中野鉄造君 そうすると、くどいようですけれども、今期限つきのものに、いわゆる新法で言うところの期限つきのものにお互いが合意の上で契約をやり直す、こういうことはできるんですかできないんですか。
#137
○政府委員(清水湛君) 期限つき借家契約について法律が定める要件、つまりあそこに規定しているとおりの要件がない限りこれはできない、こういうことになろうかと思います。現に借家人がそこに住んでいるわけですから、この要件を満たすということは普通ない、こういうふうに申し上げているわけでございます。
 それから、もうそういう特約が正当事由がなくても期限が来れば家を明け渡すという趣旨のものでございますと、それは先ほど申しましたような既存のものについては現行法の六条の規定によりやはり無効になる、こういう意味でございます。
#138
○中野鉄造君 どうも僕は頭が悪いのでわかりづらいんですけれども、今までここに住んでおった借家人の人がそろそろ一番当初、何年か前に契約しておったその期限が近づいてきた、そこでその家主さんにひとつこれから新法を適用しての新しい契約をしていただけませんかと、家主さんもいいでしょうと、こういった場合のことを私はお尋ねしているんですが、それはだめだということなんですか。
#139
○政府委員(清水湛君) この期限つき借家の要件を満たさない限り、これは一般の借家についての例外規定でございますので、これが乱用されるということは厳に慎まなきゃいけないことでございますけれども、要件がない限りそれはいわば普通の借家契約になってしまうということが一つございます。
 それから、正当事由があってもなくても、いわば期限つきの借家にするという契約は、これは借家人に不利な特約でございますので、納得の上でやりましても、これは後ほどそれが無効であるということを主張することができる、こういう意味で申し上げているわけでございます。
#140
○中野鉄造君 この新法というものが、当事者の一方に、特に借り主に対して非常に劣悪な契約内容であるとは思わないわけなんですけれども、しかも合意の上ですから。そして、今も申しますように、新法というものが決して民法九十条で言う公序良俗に反するような、言いかえれば反社会性のある、つまり悪であるというようなそういうものではさらさらない。それなのになぜこの新法が適用されないのか。しかも合意の上でそうやっているのに、ただ法律がこうなっているから、こうなっているからというそれだけの理由で、合意の上なのにどうして公平な新法に基づいた契約というものが認められないのかというのがどうしても私疑問ですけれども。
#141
○政府委員(清水湛君) まことに御指摘の問題というのは、立法論としては大変重要な問題だというふうに思うわけでございます。もともと、当事者の自由なる合意に基づいて契約をするということが大前提でございまして、契約されたものは守られるべきであるというのが当然の原理原則でございます。
 ただしかし、借地借家につきましては、自由なる合意という名のもとに現実には借地人、借家人に不利益な契約がされてきた。中には本当に自分で納得し、自分でも不利益と思わない形でそういう契約をされた方もあるでございましょうけれども、現実にはそういう自由なる合意の名のもとに借地人、借家人に不利益な特約が押しつけられてきたという経緯があるわけでございます。そういうようなことをおもんぱかって、法律は強行的に借地人、借家人に不利なものは無効であるという形で借地人、借家人の権利を保護しておる、こういうことでございまして、その意味におきましては、別に公序良俗に反するとか非常に悪いことをしておる、したがって無効であるということではございませんで、一つの借地・借家に関する法律秩序を維持する、こういう観点からそのような法律の規定を置いておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
#142
○中野鉄造君 法律というものは、先ほどからお話があっておりますように、広く国民のためにあるものだと私は理解しますので、もっともっとそこは実情に応じた、温かい血の通った法律というものがあってしかるべきじゃないか、こう思うわけですが、こればかり言っていてもいけませんので、先に参ります。
 今回の新しい制度で、定期借地権というのがどのように運用されていくかの問題についてお尋ねします。
 定期借地権には三類型があるわけですけれども、こうした定期借地権について権利金あるいは借地期間、賃料いわゆる地代ですね、そしてまた土地返還時の対処方法など、すべてこれは新しい制度のもとで問題になってくるわけですが、法務省はどのような対応をしていこうとされるのか。あるいは、こういう問題については、これは私人間のことであるから、民事問題だから何ら対応する必要はない、こういうようなお考えなのか。そこいらがいま一つはっきりしないような気がします。やはりここのところば明確に明文化すべきことではないのかな、こう思うんですが、この点いかがでしょうか。
#143
○政府委員(清水湛君) 定期借地権がどのような形で利用されることになるのかということについてはいろんな予測もあるわけでございますけれども、恐らくこれからの経済情勢の変動その他いろんな要素はあると思いますが、私どもはかなりの範囲において利用されるのではないかというふうに考えております。
 その際、例えば非常に明白なのは、短期の事業用の定期借地権とかそういうようなものにつきましては権利金というものほかなり低額のものになるでしょうし、地代というのはまあ必ずしも影響を受けみかどうかわかりませんけれども、権利金というのは相当程度低額のものになる、こういうことが予測されるわけでございます。また、五十年の定期借地権につきましても、これはなかなか難しい要素はございますけれども、とにかく五十年たてば間違いなく返してもらえるということで、安定した法律関係がそこに出てまいりますので、それ相応の権利金なり地代というものが、そこに経済的な法則というものが働いてくることはもちろんでございますけれども、設定され得るであろう、こういうことになると思います。
 それから、返還時にどう対応するかということにつきましては、これは事業用の借地権も、五十年の長期型の定期借地権につきましても、これは建物を収去してその土地を明け渡す、こういうことになっておりますので、そういうことを前提にして契約関係がいろいろと設定される、こういうふうに私どもは見ているわけでございます。
 少なくとも、短期のものにいたしましても長期のものにいたしましても、これから具体的な利用方法、利用形態等についてある程度具体的な標準的なものというようなものが形成されていくということを期待しているわけでございますが、法務省としては直接業者を指導するとか監督するとかという立場にはございませんので、私どもといたしましては、そういう定期借地権の法的性格とか趣旨とか、そういうものを正確にやはり世間の方々に伝えていく、こういうことが重要ではないかというふうに考えているわけでございます。
#144
○中野鉄造君 今回のこの法案は正当事由の内容をある程度具体的に列挙しておりますけれども、これはやはり、今までの正当事由に関する判例の内容を条文化したものである、このように理解いたしますが、その点いかがでしょうか。それとも、判例の内容以外に新しく追加した、そういうようなものがございますでしょうか。
#145
○政府委員(永井紀昭君) ただいま委員のお話しになりましたとおりでございまして、判例をできるだけ正確に整理したものでございます。
#146
○中野鉄造君 そこで、正当事由を規定しておりますこの六条と二十八条についていささかお尋ねいたしますけれども、つまり、「財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮してこと書かれております。今までの判例によりますと、財産上の給付というのはあくまでも正当事由の補完としてと、こういうように理解しております。言いかえれば、正当事由の要素は九〇%整っている、しかしながらあと一〇%が少し足りない、それを補うためとしての金銭の給付、これを認めて、これをもって正当事由が完備したというものであった、こう理解しております。
 ところが、今回のこの法案の書き方では、財産上の給付が補完としてではなく必要的あるいは義務的に運用されていくんじゃないのかなという懸念が残るんです。この点どのようにお考えであるのか。今申しましたように、あくまでもこれは補完としてとされるのか。そうであるとすれば、正当事由が完備しておれば財産上の給付は必要がない、こういうように理解してもいいのか、そこのところを明確にすべきじゃないかと思うんですが、どうですか。
#147
○政府委員(永井紀昭君) 最高裁の判例でも明確に言っておりますが、財産上の給付はあくまで補完的な要素にすぎないわけでございます。具体附に従前の判例等におきましても、こういう立ち退き料等の提供があっても正当事由がだめだという判例も多数ございます。すなわち、立ち退き料を出すから出ていってくれという貸し主測の要求に対しても、やはり借り主の方の必要性の方が高いということで、はっきり言いまして幾らお金を積んでもこれはだめだ、こういう判例も多数ございます。
 そういう意味で、委員御指摘のとおり、この財産上の給付というのはあくまで補完的な、補充的なものである、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
#148
○中野鉄造君 そうであるならば、今私が申しましたように、この補完というの、が新法の施行によってややもすれば、新しい法律になりました、これは義務的でございますだとか、あるいは必要的なものであるというような誤解をされてみたり宣伝をされてみたり、そういうことがないように、これは明確にPRをするべきじゃないか、徹底すべきじゃないか、こう思うわけです。
 そこで、今度は七条についてお尋ねしますが、この七条に借地権の存続期間満了前に建物が滅失した場合、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築するときは地主いわゆる土地所有者は異議を申し述べることができる、こうなっておりますけれども、この異議を言う場合にも正当事由の存在は必要なのかどうか。それがなくなったということだけで正当事由になるのか、それともさらに、なくなったのでこの際ここに自分が自宅を建てたいということを言ってそれによって正当事由というのが成立するのかどうか、そこのところをお尋ねします。
#149
○説明員(寺田逸郎君) この法案の七条は現行法の七条と同様でございまして、その異議の機能と申しますのは、異議を申し述べれば本来の期間のままで延長はないという、七条は先ほども別の御質問にお答え申し上げましたとおり、延長の要件を定めているわけでございますので、したがって異議が述べられれば延長が生じないという効果を生ずるにすぎません。したがいまして、現行法の解釈といたしましても、また新たなこの法案の七条の解釈といたしましても、異議を述べるについては正当事由、すなわち借地関係の解消に必要な要件というのは必要がないということでございまして、現行法の解釈としてもこの点は固まってい
るというふうに理解しております。
#150
○中野鉄造君 そうしますと、八条の二項の、契約更新後に建物の滅失があった、そしてその借地権者が地主に無断で残存期間を超えて存続するような建物を築造したときは、この地主は賃貸借契約の解約の申し入れをすることができる、こうなっておりますけれども、この場合にも正当事由の存在は必要なのか、それとも無断で行ったというそういう背信性からこれはもう解約申し入れに正当事由の存在は不要とするのか、これほどうでしょうか。
#151
○説明員(寺田逸郎君) この条文を御理解いただくためには八条の二項と同時に十八条をごらんいただかなければならないわけでございますけれども、今回の立法の趣旨といたしましては、できるだけ建物を壊した後に権利調整を行うんではなくて壊す前にも権利調整を行う機会を設けようとしたわけでございます。したがいまして、建物を建てかえたいという場合にも、十八条に基づきましてまず裁判所に土地所有者の承諾にかわる許可を求めるという道が新たにつけ加えられたわけでございまして、この手続を経ずに無断で新たに建物を建てたという場合には当然のことながら正当事由なしに解約ができるということになりまして、したがいまして八条の二項の解釈の要件といたしましては正当事由は不要だと、こういうことになります。
#152
○中野鉄造君 一昨日の質問でも同僚議員から質問があっていたようですが、現行の借地法は建物が朽廃した場合の規定と滅失した場合の規定がありますが、朽廃の場合には借地権が消滅することになっておりますね。ところが、今回の法案にはこの朽廃の規定はないわけですけれども、これはどういう理由で朽廃という規定はなくなったんでしょうか。
#153
○説明員(寺田逸郎君) この朽廃の規定は、実は現行法が大正十年にできました際に、借地権というのは一般に特定の建物を存立させるためのものであるという思想を強く受けまして、したがいまして期間の定めがない場合には当然その建物を完全に存立させる期間が借地期間だという、こういう思想のあらわれといたしまして朽廃によりまして借地権が消滅する、このような制度をとったわけでございます。
 しかしながら、この朽廃に対しては批判が二つの面からございまして、一つは、借地権というのは必ずしも特定の建物を存立させるためとは限らない。これは両当事者の意向は必ずしもそういうところにはないわけでございますので、したがいましてむしろ期間として保障するということが望ましいんではないかという場合も大いにあろう。したがって、期間の定めがないからといって朽廃によって消滅させるんではなくてその他の事情も総合的に判断する、すなわち、言いかえれば正当事由による存否の判断の方がより望ましいのではないか、これが一つでございます。
 もう一つは、朽廃というのは、実は定義といたしましては、自然の推移によって社会通念上建物としての社会的経済的効用が失われる程度に腐朽損壊するというように最高裁の判決では言われております。これが現在判例として認められている定義でございますけれども、実際の判定は非常に難しいということはこれはもう多くの実務家の共通の悩みでございまして、むしろ学者からもこのような概念による借地権消滅の制度は廃止してはどうかということがかねてから強く主張されていたわけでございまして、今回、借地期間の点に見直しを加えると同時にこの朽廃による借地権消滅の制度というものも廃止いたした、こういう次第でございます。
#154
○中野鉄造君 さあそこで、十条二項についてお尋ねしたいんですが、現行法では、地主から土地を借りてそこに建物を建てた、ところがそれが火災なりあるいは今言われたような朽廃でも何でもいいんですけれども、要するに滅失してしまった、その場合は賃借権はなくならないけれども第三者に対する対抗力というものはなくなってしまう。つまり、現行法では建物が滅失したという時点で地主がその土地を第三者に売却したとしても文句は言えない、こういうふうになっておりますね。
 そこで、今回のこの新法では、建物の滅失があったとしても借地権者が建物をまたここに建てますよという立て札などを立てて、いわゆる建物再築予定の旨を公告しておけば第三者に対して二年間の対抗力がある、こういうようになっております。いわゆる明認方法というそうでございます。しかしながら、なぜこの明認方法、つまり明治時代の立木法以前の判例当時の古い公示方法を現代の近代化された時代に持ち出したのかちょっと理解に苦しむわけですけれども、そういうことをしなくても、ほかに方法があるんじゃないのか。
 ここに私近い将来建物を建てますよと幾ら立て札なんか立てておっても、それを引っこ抜いてなくなった、何もそういうものが公示されてないというところで地主がそこを第三者に売却したら、これはどういうことになるのか。そういうようなことだって考えられるわけですから、立て札を立てるなんてそういう原始的なやり方ではなしに、例えば立法論として申しますならば、建物と土地をセットにして考える、マンション法だとか、あるいは借地上に建物築造の場合は建物保存登記と同時にセットして土地に借地権登記をさせる。そのため、立法として土地賃借権登記請求権を認めるという、こういう方法があるんじゃないかと思うんです。
 こういうような法的な措置をとれば、明認方法というようなそういう不安定な、不十分な公示方法ではなくて、確実に安定したいわゆる国家の登記簿による公示方法で関係者、国民が安心してその取引に入られるのではないかと私は思うんですけれども、このような立法のやり方があるのになぜこういう古い明認方法というようなものを取り入れられたのか、私は疑問に思うわけでして、今私が申し述べましたようなそういう近代的な立法をこれは再検討すべきじゃないのかなと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
#155
○政府委員(清水湛君) 大変民法その他にわたる根本的な問題を提起されたわけでございます。そういう意味では非常に難しい問題でもあるということを冒頭申し上げざるを得ないわけでございます。
 一般に、土地の賃借権について、これは双方が合意をすれば登記をすることができるわけでございますが、法律的には登記請求権はない、賃借権は債権でございますので、民法の体系上のいわゆる物権的請求権としての登記請求権はない、こういうことに民法上なっているわけでございます。そのために、せっかく土地を借りても、登記の方法はございませんから、先生御指摘のように、土地が第三者に移りますと、第三者の方では貸借人の権利を否認することができる、つまり売買は賃貸借を破るという法律現象がそこに生ずるということになったわけでございます。その結果として、借地上に建っております建物は、地主がかわりますと取り壊さなければならない、俗に地震売買と言うわけでございますけれども、そういうような現象が民法の施行下で起こったわけでございます。
 そこで、御承知のように、建物保護ニ関スル法律というのが明治四十二年につくられまして、建物の登記をすれば土地に登記をしなくても借地権が保護される、こういうふうにいたしたわけでございますが、そういうようにいたした理由は、建物は借地人のものですから自分だけで登記ができる、そういうシステムを利用しまして借地人の権利の保護を図ったわけでございます。
 ですから、そういう場合に改めて民法の根本にさかのぼって賃借権に登記請求権を認めればいいではないかという、これは大変重要な問題提起でございますけれども、しかし現行法の民法の体系上は非常に難しい議論であるということから、そこまでこの際足を踏み込むことは難しい、こういうことにいたしたのでございます。
 実は、先般の千葉議員の御質問にお答えしたところでございますけれども、昭和三十五年に法務省民事局内部で設けられた研究会では、借地権という物権をつくりましてそういう登記請求権を認めたらどうかという議論もされたわけでございますけれども、これは土地所有者側の抵抗というのが大変強くて、当時は到底問題にならなかったという経緯はあるわけでございますけれども、法律的にも理論的にも、これは民法の体系上、やはり相当慎重な研究、検討を要するということに現在なっているわけでございます。学者の中には、賃借権についてもそういう登記請求権があるんだということをおっしゃる方は一部ありますけれども、通説、判例にはなっていないという状況でございます。
 そういうことで、その点について手を触れないとするならば、それを前提とした上で借地人の権利をいかにして保護したらよろしいかということがその次の問題になったわけでございます。
 現行法ですと、建物の登記をしておけば借地権をもって第三取得者に対抗することができるわけでございますけれども、この解釈といたしまして、建物が滅失いたしますと、これは建物の登記簿は残っておりましても建物がないわけでございますから、そのときから建物の登記は無効になります。そういうことから、一たん生じた対抗力はそのときに消滅をするというのがほぼ通説的な見解である。中には、もちろん一たん適法に生じた対抗力は建物が滅失しても存続するんだということをおっしゃる方もいないわけではございませんけれども、大方はそういう考え方はとらない、こういうことになります。
 そこで、世の中大変世知辛くなってまいったわけでございますけれども、たまたま借地人の建物が何かの都合の、火事で焼けるとかあるいは災害で滅失する、こういうようなことをいわば奇貨として、その所有権を第三者に移してしまって第三者の方から土地の明け渡しを請求する、つまり借地権を否認するというような行動をとろうと思えばできないわけではない。恐らくそういうことをとりましても、いわば一種の背信的な悪意というような議論、つまり一種の不法な意図を込めたそういう行為でございますので、裁判所では救済するケースも多いとは思いますけれども、しかしすべてが救済されるということにはならない。
 そこで、今回の立法におきましては、そういう場合における借地人を保護するために、とにかく二年間だけは法律で保護を与える。そのためには公示札等を備える必要があるけれども、二年間だけは保護を与える。この二年間というのは、要するに建物が何らかの事情で焼けたり滅失した場合に、建物を再築するのに必要な最小限度の期間としてこの程度あればいいんじゃないか。余り長く置きますと、これはまた本来登記簿等で公示するという公示制度が乱れるという問題がございますので、二年間ということにいたしたわけでございます。明認方法というのは、明治の判例法理で認められたような制度をまた持ち出したという点でやや古臭いではないかといえばまことにおっしゃるとおりだとは思いますけれども、今までの民法の法理論体系というものを前提としますと、この辺がぎりぎりではないかというふうに実は思うわけでございます。
 なお、その公示札と申しますか、見やすい場所に掲示するという掲示、これは一種の文書でございますので、これを勝手に抜き取ったり廃棄するというようなことになりますと、刑法上の私文書毀棄罪を構成するというふうに私どもは考えているわけでございまして、その点からも支えがあるというふうに考えている次第でございます。
#156
○中野鉄造君 借地権だとか借家権というのは物ではないから、いわば債権のたぐいとして、今おっしゃるように、合意があれば登記できるけれども、強制化するようなことはできないということであります。この件につきましては、一昨日もここで質問があっておりましたように、借地権を担保に入れるとか、あるいはこれがいろいろな相続のときの問題になってくるというような問題等もありますし、この借地権の物権化、確かに今ではおっしゃるように非常に困難であるかもしれませんけれども、やはりこれは将来は何らかの施策を検討すべき問題ではないか、こう思うわけでございます。
 それと同時に、今申しましたように、この明認方法にしても、もう少し何か次善の策はないのか、こう思うんですけれども、そこいらも含めて御検討をいただきたい、こう思います。
#157
○政府委員(清水湛君) 借地権の物権化の問題、現在もかなり物権化しているわけでございますけれども、登記という問題については物権とは違う性格を持っているということは御指摘のとおりでございます。先ほど申し上げましたとおり、過去に物権化の問題を検討した経緯もあるわけでございますので、非常に重要な問題であるという認識はあるわけでございます。重要な問題であるだけになかなか簡単に結論が出ないという要素もあるということは御理解をいただきたいというふうに思う次第でございます。
 それから、明認方法というやや古臭いと言えば古臭い方法を持ち出さざるを得なかったということにつきましても、とにかく一瞬のすきをついて借地権者の権利が葬り去られるというようなことがあってはまずいということから、現在のいろんなシステムの中で考えられる方法としてこのような方法が現段階においては適当であるということで法案化したわけでございますので、いずれまた、先ほどの登記の問題等も含めまして、このような制度をさらに改善する余地があるかどうかということにつきましては今後の課題とさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
#158
○中野鉄造君 ぜひその点お願いしておきます。
 それから次に、十五条は共有の場合に限り自己借地権を認めておりますけれども、なぜ単独の場合でも自己借地権を認めないのか、何か法的な不都合があるのかどうか。つまり十五条の立法理由は何か、どういう場合を予定してのことであるのか、この点をお尋ねしたいと思います。
#159
○説明員(寺田逸郎君) この自己借地権は相当以前から一つの問題にはなっておりました。
 と申しますのは、現在、法定地上権制度というのがございまして、言ってみれば同じ所有者が土地と建物という、日本法では別の不動産として構成されている二つのものを持っている、その一方にのみ例えば抵当権を移すという場合に、その抵当権が競落された場合にあと占有権限が全く見出せない。そこで法律上、法定地上権というものを設けましてその建物の存立を図っていく、このような制度でございます。しかし、このような制度はいわば競落された後に裁判所がいろいろな権利関係を定めるということで必ずしも合理的な規制ではないんではないかということが言われておりまして、それにかわりまして、そもそも自分が建物と土地をあわせて持っている際に借地権を設定しておけばこれでもって事は足りるんではないか。すなわち、その借地権は一万のみが競落された後占有権限として生きるのではないか、このようなことから提唱された経緯がございます。
 しかしながら、今回この自己借地権を特に取り出して問題といたしましたのは、そのようないわば担保制度の一環としての法定地上権の見直しとは別に、具体的に申しますと区分所有建物、これは俗にマンションと言っておりますけれども、そのようなマンションが借地権つきで建てられるというケースが東京でもなお数%はございます。このような分譲事例が幾つかある中で問題になっておりますのは、分譲する際には既に借地権つきで売りたいということでございますけれども、建物を建てる際は土地所有者が自分の土地の上に自分でマンションを建てましてそれを分譲するわけでございますので借地権を発生させられる道がない。したがいまして、ダミーと申しますか、形式的に第三者を立てまして、その人を借地権者にして借地権を成立させ、その借地権を分けまして準共有持ち分つきでそれぞれの区分所有建物を分譲する。このような手間をかけて分譲しているわけでございまして、このような手間をかけることによってだれの利益が保護されるわけでもない、言ってみれば純粋なむだに感じられるわけでござ
います。
 このような問題を解決するためには、自己借地権すなわち土地所有者がマンションを建てた段階で借地権が設定できればいいということでございます。この制度を生かすためには、何も土地所有者であります方が自分で全部建物を持っている段階で借地権を発生させる必要はございませんで、買い主が一人あらわれた段階でその人と一緒に借地権を発生させ、あとは自分で確保して、その後その他の区分所有建物にこれをひっつけて分譲するという、俗に申しますればそういう形で分譲が可能になるわけでございます。
 先ほどの法定地上権制度の問題を解決するためには、御指摘のとおり、すべて所有者が単独で借地権者となる形での自己借地権を認める必要がございますが、この問題はなお担保制度の全般的な見直しの中で法定地上権制度を改めて検討してみないとその行方がどうなるかわかりません。そこで、現段階では必要最小限度の措置といたしまして、第三者とともにであれば自己借地権を設定することができるという形で新たな規定を置いたわけでございます。
#160
○中野鉄造君 もう時間がありませんので、最後にお尋ねいたしますが、附則四条についてです。
 附則四条には「この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。」、こういうように規定されております。つまり、新法がさかのぼって適用されるんだ、新法が遡及することを原則としているということが述べられております。ところが、附則五条以下を見てみますと、附則四条の特別規定としてほとんど全部が「従前の例による。」、こうされております。いわゆる旧法と新法の二本立てと言われるゆえんでございます。
 そこでお尋ねしますけれども、この附則四条により新法が適用される事例としてはどのようなものがあるのか。これはもう適用されることは限られていると思うんですけれども、そこのところをお尋ねいたします。
#161
○説明員(寺田逸郎君) この附則につきましては数々のお尋ねがございまして、なかなか読み方が難しいとおっしゃるのはそのとおりかもしれませんが、一般に民事法におきまして改正が行われた場合には既存の事実関係につきましても新しい法律を適用するということが望ましいという形で、まず原則としてこの四条の本文に見られる事項が置かれるわけでございます。しかしながら、その例外が二つ種類がございまして、一つはもう既に生じた効力を妨げないというそのただし書きでございまして、これは例えば、もう既に更新が行われているケース、あるいは既に家賃の増額が行われているケース、このように既に行われたケースにつきましては今さら新法を適用してもしょうがないということで、これはただし書きで除かれる。その他の事項につきましては、五条以下の特別の規定を置いて経過措置を定めているわけでございます。
 ところで、今御指摘のとおり、この法律におきましては非常に多くの事項について五条以下で特別の規定を置いてございますので、あたかも形式的にはこの四条の本文にどのような事項が当たるかということについて御疑問が生ずるのはまことにもっともなことでございますが、実を申しますと、この法律の一番大きい部分を占めますのは、旧法をただ単に現代語化して新法にした、このような部分でございまして、具体的に申しますと十条の一項、三項、あるいは十一条の二項、三項、このように全く新法と旧法変わらないところがございます。これにつきましては旧法下の借地権でも新法が適用されます。これは全く条文の表現上も変わりませんので、それはそのように原則としてすべきものでございますが、このことも四条の本文で読めるということでございます。なお、実質的な問題といたしましては十七条の一項で新たに借地条件の変更の裁判の対象が広げられたわけでございます。この対象につきましては旧法のもとでの借地条件も含まれるわけでございまして、これは四条の本文で読むということになります。
 具体的に申しますと旧法下、旧法下と申しますか現行法下で堅固、非堅固以外の借地条件、例えば一定の規模の建物以上は建ててはいけないというような借地条件がございましても、周囲の状況の変化で借り主の方々がもっと立派な建物を建てたい、このような場合には新法のこの十七条一項の規定が適用されるわけでございまして、そういう意味ではこの規定は借り主の方に有利な規定というように言っても差し支えないと思います。なお、そのほかに増減請求権の規定その他が適用の対象となるものと考えられます。
#162
○中野鉄造君 終わります。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
#163
○橋本敦君 私は、前回はこの改正法案が出されてくる背景的な事情に触れまして、そこから改正法が持っている基本的なねらいあるいは方向、こういった問題を質問でただしたわけであります。
 きょうから法案に即して質問をしていきたいと思いますが、まず第一は、先ほどからも問題になっております「従前の例による。」という、いわゆる二本立ての問題であります。今回、こういった異例の長期にわたる、ある意味では法的安定性を欠くかもしれないそういった異例の措置をとって、従前の契約関係については、借地権の場合はその更新、借家権の場合は正当事由の適用、こういったものを現行法によるというように決めたのは、それは既存の契約における借地権、借家権、これの権利保護を貫いていきたいというそれが基本的なねらいだと言ってよろしいわけですか。
#164
○政府委員(清水湛君) 結論的には、既存の権利については既存のままの状態でこれを従来どおり保護しよう、こういうことでございます。
#165
○橋本敦君 だから、そういう意味ではこの規定は幾つかの問題はあるけれども、一定の権利保護という意味での重要な問題を持っているわけですね。そうだとしますと、この問題をきちっと将来にわたって明確に保障していくということを審議の中で明らかにしておかなければならぬと思うわけです。
 その第一点の問題として私が聞きたいのは、前回も質問で提起をいたしましたが、この借地・借家法の改正が日米構造協議で持ち出されまして、これが本年五月二十二日の第一回フォローアップ委員会で論議をされた。日本政府から、この法案の改正の国会提出等の事情を説明したわけですが、アメリカ側からの発言でどういう発言がなされているか。外務省からもらった記録によってみますとこう言っております。
  規制措置の改正の分野では、政府が提案した
 借地・借家法の改正案は、既存の賃貸借契約に
 は適用されないこととなっている。そのため、
 借地・借家制度の改正の利点が十分実現するの
 は何十年も遅れることになる。借地・借家制度
 の改正を既存の賃貸借契約に適用する措置をよ
 り早い段階で導入することは、本件改正の実効
 性を大きく高めることになろう。こう言っているわけであります。つまり、アメリカ側は二本立てを早くやめて、そして一本化しなさい、そして効率のよい土地利用関係の推進に役立つようにせよ、こう言っているわけであります。
 こういうアメリカ側の発言があるけれども、法務大臣に聞きたいのは、二本立てということになっているこの建前は決して将来とも崩さないとこの際確言できるかどうかであります。
#166
○国務大臣(左藤恵君) お話しの点につきましては、法律の適用関係についての二本立てを解消することは全く考えておりません。
#167
○橋本敦君 将来どうなるか、それでもまだ不安は残るわけです。
 さらに次の問題に進みますと、現在、実際に家賃の改定の場合の契約書の更改あるいは土地の期間更新の場合の新しい契約の書きかえて、新しい法律が施行されたら新法によることにするという特約条項を地主側、家主側が押しつけてきている例が実際にあるわけです。そういったことを契約
として書き込まれた場合に、それはどうなりますか。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
#168
○政府委員(清水湛君) 先ほども御議論のあったところでございますが、既存の契約について更新の際には新法の規定によることとするという特約は、強行法規があるということで私どもは効力はない、借地人に不利な特約としてその効力が法律によって否定されると考えております。
#169
○橋本敦君 それは、この法案のPRの中で法務省は積極的にPRされますか。
#170
○政府委員(清水湛君) そのことにも触れたPR文書があったと思いますが、今後そのことは非常に大事なことだと思いますのでPRをいたしたいというふうに思っております。
#171
○橋本敦君 それで、今後いろんな紛争が起こって、家屋明け渡しの場合に正当事由の存否が争われてそれが裁判になったとしましょう。裁判官が判決を下すときに現行法は消滅してないわけですな。しかし、その契約関係が「従前の例による。」部分である場合に、適用する法律はもうないんですけれども、どうなるんですか。
#172
○政府委員(清水湛君) 形式的に借地法、借家法は廃止されますが、「従前の例による。」とされる限度においていわば従前の借地・借家法は生きておるということになりますので、正当事由の根拠条文は借地の場合ですと現在の四条、借家の場合ですと一条にということになろうかと思います。
#173
○橋本敦君 それで私が心配するのは、そういう裁判が三十年先、五十年先にもあり得るわけでしょう、実際問題として。この法律がなくなったら六法全書に現行法をいつまで載せてもらえるか。そんなものは法務省、保証できませんよ。そうでしょう、三省堂なり有斐閣が勝手に編さんするんだから。国民はわからないわけです。そういうことは法的安定性を著しく欠くという意味で重大な問題として残るんじゃないですか。法務省は国民に対する救済策をどうしますか。
#174
○政府委員(清水湛君) これは「従前の例による。」という限りにおいてその法律は生きておるという解釈は従来からされておりますし、私ども当然そう考えるわけでございます。その限りにおいて社会的な需要というか法律的な需要があるわけでございますから、市販の六法全書の出版会社は当然その部分について六法全書に載っけていただける、また載っけないとこれは実務にたえ得る六法全書にはならない、こういうふうに思うわけでございます。
 それからもう一つは、法務省の大臣官房司法法制調査部で編さんしております「現行日本法規」というものがあるわけでございますが、そういうものの中でもこの関係においては従前の借地法、借家法の場合生きているわけでございますから、そういうものも載録しておる。これはもう当然法務省として載録いたすことになっておりますから、御心配はないのではないかというふうに思います。
#175
○橋本敦君 いや、大いに心配があるんですよ。だから、そういう意味でこの「従前の例による。」ということによっても、完全に権利が守られるかどうかという点には重大な問題が残るということを私は指摘しているわけであります。
 特に私が言いたいのは、先ほど局長に言われたことなんですが、当事者が合意をして従前の契約を解約し、新法に基づく新しい契約ということが適用されるようになるから、あるいは仮装的に、真意でない仮装的な合意ということで新法適用の新しい契約だということになるのか。仮装的なら無効だとおっしゃいました。真意は実際に合意解約から進んできているのであればそれは有効だとおっしゃいました。この区別は、これは裁判所の判断でも容易な問題じゃないですよ、客観的にはわかりません。そういったことは実は立場の強い借家の貸し生あるいは地主の側の意向に押されて実際は不利な契約を結ばされる。そういった借地人、借家人に不利な契約は強行規定として無効とするという現行法の基本的な保護政策から見て、そういう余地を残すこと自体、私はまだこれは十分な法の基本的な建前を踏まえていない重大な問題を残すことになると思いますが、どう思いますか。明確じゃないでしょう、そんなことは。
#176
○政府委員(清水湛君) 私、先ほど合意で解約をして、それから改めて設定契約をし直す、こういうことを法律的に防ぐというか、そういう余地がない。ただしかし、合意という名のもとにおいて行われるものであっても、現実の借地契約が継続的に一体性を持って存続しておるにもかかわらず、形式的にそういうことを仮装した場合には、それはむしろ単なる更新後の期間についての規制を新法に持ってこさせるための仮装的な行為にしかすぎない。それは、契約を存続させたままで更新後の期間だけを新法の規定によるとした合意が当然無効であると同じように、やはり強行法規違反ということで無効とされる場合があるというふうに申し上げたわけでございます。多くの場合にはそういうことになるであろうということを申し上げました。
 これはやはり借地法なり借家法が、本当に合意という形をとりながらも、借地人、借家人に不利な特約は無効であるというその立法の精神、そういうものがそういう場面においても当然に生かされるということを考えているからでございます。
#177
○橋本敦君 だから私が言うのは、そういうような紛争で借家人や借地人が不利な状況に置かれて、それは真意ではないということを裁判で争わなきゃどうにもならぬようなことも多々起こってくる、そういう可能性がこの問題ではまだまだ残されているから、従前の皆さんの十分な権利擁護になるものではありませんよということを言っているわけですよね。だからあなたも、それは全部完全に大丈夫ですと言い切れないでしょう。そういう心配が残るということはお認めになりますか。
#178
○政府委員(清水湛君) 具体的な問題で争いになることがあるということは私は否定しませんけれども、しかし現実の問題として、契約は事実上一体性を持って存続して、借地人がそれを利用しているという状態がありながら契約を解除して新契約を結ぶ、存続更新後の期間は二十年、十年ということになりますか、そういうようなことをするということが合理的に考えたらあり得ないことなんですね。仮にそれが一時的に、あるいは表見的に借地人の自由な意思だということであるといたしましても、もともと自由な意思に基づく合意でございましても、借地人、借家人に不利な特約は無効だというふうに法律は言っておるわけでございますから、実際問題としては、そういうことでその契約が有効視されるということはないであろう。ただ、これもあろうでございますから、先生のおっしゃるようにないと、こういうふうに言わなければ御不満かもしれませんけれども、しかしどんな例外が世の中にあるか、ちょっと私、絶対例外はないと言えるかどうかということについてはやや自信がないものですから、そういう趣旨で申し上げました。
#179
○橋本敦君 わかりました。
 では、次の議論に移っていきますが、正当事由の問題であります。
 従前は、地主、家主がみずから使用する、そういったことを基本にして正当事由の存在、このことを厳しく法は規定をしてきたわけでありますが、今回土地や建物の利用状況あるいは従前の契約の経過やあるいは建物の現況、こういったものが正当事由の判断要素として掲げられてくることになりましたね。これは主たる正当事由の判断内容、要素はあくまで使用の必要性ということだけれども、補完的にこういうことが入ってくる、こういうようにおっしゃったわけです。しかし、私が指摘したいのは、そういった補完的なことだとこう言うけれども、こういう要素が掲げられたことによって、結局は総合的な判断ということの中で、全部が補完ということではなくて総合的な判断の中で全部考えられて判断が下されるということが傾向として一層助長され、主やあるいは従たるものというような区別は判決を見ても、あるい
は判断内容を見ても、それ自体明確になかなかならない。そういう意味では正当事由の要素の範囲の拡大につながるということを私は一つは指摘をしたいわけであります。
 そこで、そういう立場から質問をしますけれども、例えば建物の利用状況という問題が一つはありますね。この建物の利用状況と別個に、土地の存する地域の状況ということが言われていたけれども、それは削られた。しかし、その建物が存しているのは具体的な一定の地域の中に存しているわけであって、その建物の利用状況がどうかということは、そのこと自体と同時に、どういった地域にそれにふさわしい利用状況になっているか、あるいはそうなっていないかも含めて、利用状況の価値判断というのはその建物の存する地域の状況と全く無縁に判断できるものではない、関連的に判断されるということはこれはもう理の当然だと思うんですが、まずこの点についてどう考えますか。
#180
○政府委員(清水湛君) 当該土地・建物の存する地域の状況というのは、当該地域が一般的にどういう形で利用されているとか、あるいは高度利用あるいは有効利用というものが積極的に図られている地域であるかどうか、こういうようなことが問題になるわけでございます。そういうものとは別に、当該土地の利用状況あるいは建物の利用状況というのは、その土地だけを見て、例えば非常に広大な敷地の中に小ちゃな家が建っていて、どうも利用状況は必ずしも十分ではないと認められる、こういうことが基本的には考えられるわけでございます。ただしかし、そうは言っても、周辺が全部立派な広い敷地に家が建っているというようなことでございますと、それはまたいろんな考え方が出てくるかもしれませんけれども、そういう意味ではそれは周辺の状況というのは、一つの当該土地の利用状況というものを見る場合のバックグラウンドというようなものになるということは、これはもう言葉の問題じゃなくて事実の問題として私どもはこれはあるだろう、これは認めるわけでございます。
 しかし、あくまでもその土地の利用、土地というものに即した適切な利用がされているのかどうか、こういう観点あるいは建物が必要だと言うけれども、例えば小人数の家族で大きな家に住んでおるというようなこと、そういうようなあくまでも当該土地・建物の利用の状況に即して判断をする。その場合、その周辺の土地の状況というのは一つの背景として判断要素にはなるけれども、それ自体は独立の正当事由の判断要素ではない、こういうことを申し上げました。
#181
○橋本敦君 だから、関連的に背景的状況として判断要素になるということをおっしゃったのは私は当然のことだと思います。問題は、現在の法律のもとの正当事由の判断においていわゆる土地の効率的利用の問題あるいは地域開発の問題、こういった問題が明け渡しの正当事由の判断要素として取り入れられている判例というものが現にあるわけですね。こういう判例があることは局長も御存じと思いますが、間違いありませんね。
#182
○政府委員(永井紀昭君) 確かに委員御指摘のように、周囲の状況から見てこの建物が必ずしも十分な活用がされていない、利用されていないというようなところを強調した判例がございます。ただ、これも判例の読み方でございまして、割合判例を素直に読む限りは、委員御指摘のようなやはりそういった点を強調しているのかなとうかがえる判例もあることはございます。
#183
○橋本敦君 例えば私の手元に、建物収去等請求控訴事件として福岡高裁の昭和五十四年十二月二十日の判決があるんですが、「都市の発展、市街地の土地利用の効率化の観点からしても、著しく経済性を欠くものになってきている。」という状況を認定した上で、それで財産的給付を補充的に入れて明け渡しを認めたという判例が現にある。それからさらに私の手元には、東京高裁の昭和五十七年十月二十五日の第七民事部の判決でありますが、これは明確に都市開発法による市街地再開発の必要性、これを正当事由としてしんしゃくし得るものとして明け渡しを命じた判決もある。
 そこで私が言いたいのは、局長は背景的な状況として判断要素に入ってくるだろうとおっしゃいますが、近年の都市再開発ブームあるいは土地の効率的利用、建物の効率的利用というこういう社会現象の中では、関連的判断要素ではなくて具体的な正当事由の主要な判断要素にさえなっている判例もあるぐらいです。だからしたがって、正当事由として今指摘をした建物の現況とかあるいは土地の使用状況等が、これが明確に言葉でその土地の周辺の地域の事情ということがなくなったにしても、正当事由の拡大の要素として今度はまさに合法的にやられていく、そういう傾向が促進されるというように私は言わざるを得ない一つの面があると思うわけであります。
 それからさらにもう一つの問題は、財産的給付の申し出の問題であります。
 正当事由を判断するのに、そのこと自体で正当事由が十分でないから一定の金銭の給付で補完をして明け渡しを認めるという傾向が非常に強くなってきたわけでありますが、最高裁もそのことを明確には昭和四十六年十一月二十五日、この判決の中で言っているわけであります。もっとも、これまでの判例の基本的な考え方がどうかということになりますと、たとえ一定額あるいはかなりの額の金を出しても、それ自体で正当事由があるというわけにいかないよということでこれを認めなかった判決もあるわけです。
 ですから、そういう意味で判例はどうなっているかということになりますと、そういう判例の傾向もあるんですから、この際財産的給付、立ち退き料を認めることを正当事由の一判断要素として加えるというのは、判例の傾向を全く正確に反映したと言えない側面があって問題があると私は思うんです。しかし、私が指摘したいのは、こういう判例の傾向が出てから実際の裁判の傾向として明け渡しを認める判決がどんどんふえてきたという傾向はこれは認めざるを得ないのではありませんか。どうですか。
#184
○政府委員(清水湛君) 再開発というような言葉があらわれている判例、判例というよりかむしろ裁判例でございます。また、立ち退き料なんかにつきましても、それは高額の立ち退き料の提供の申し出をしても正当事由を認めなかったというような裁判例、いろいろございます。実にこの正当事由をめぐる裁判例というのはまさに数え切れないほどあるわけでございます。
 そういうことの中で、私どもは、各種の裁判の判決あるいは裁判実務ということの中で基本とされている要素と、それから補充的とされている要素を抜き出すと、この私どもが提案しているようなものになる、こういう意味で申し上げているわけでございます。再開発とかなんとかということになりますと、当該土地が存する地域の状況というような言葉を入れますと、これは再開発とストレートに結びついてくるわけでございますが、そういうものを議論しながら特に排除したということ、そういうことにまた私は法律解釈に今後与える影響というものは当然あるだろうというふうに思うわけでございます。
 正当事由につきましても、言葉だけでこれがいいか悪いかということを私どもは直ちに申し上げることはできませんで、現実の裁判におきましてはもういろんな事実が、個人個人の顔が違うように実にあらゆる事実が出てくるわけでございまして、そういうものに裁判所が貸し主、借り主の双方の立場を公平に考慮して判決をしておるというふうに私どもは考えております。
#185
○橋本敦君 私の質問に答えてください。結論だけ。
#186
○政府委員(清水湛君) それで、最近の立ち退き料等をめぐる判決あるいは立ち退きをめぐる判決はふえているかふえていないかというようなこともございますが、私どもはそういう判決がふえているかどうか正確には把握はしておりませんけれども……
#187
○橋本敦君 それはおかしい。
#188
○政府委員(清水湛君) これも一つにはやはり、裁判所が正当事由というものを現在の事実状況に照らして公正、公平に適用して判断した結果である、意図的に立ち退きを命ずる判決を多くしているというようなことは到底考えられない、こういうふうに思う次第でございます。
#189
○橋本敦君 局長、今の答弁おかしいですよ。判決の傾向を全然分析してない、知らないなんというのはこれは無責任です。判決の傾向を分析して正当事由に実質的にのせてきたと今まで答弁してきた。いいですか、財産的給付、立ち退き料給付を補完的事情として裁判所で認めるようになってから結果的に明け渡しを認容する判決がふえてきたというのは事実ですよ、学者も言っているじゃありませんか。そのことをどうかということをはっきり言いなさい。そんな事実を否定するようなことを言ってはだめだ。否定するなら幾らでも判例出しますよ。
#190
○政府委員(清水湛君) いわゆる判例集とか裁判例集とか、いろんな判決が載っているそういうものについては私ども当然分析をいたしております。しかし、現実に多数行われている裁判は、判例集にも判例を登載する雑誌にも載っかってないというのがたくさんあるわけでございまして、立ち退きを命ずる判決がふえているとかふえてないとかということは、そういう全国の裁判所でどういう形でされているかということを把握しませんと申し上げられない、こういう意味で私は申し上げたわけでございます。
#191
○橋本敦君 冗談じゃないよ。そんなあなた、よく調べてないようなことでこの審議がどうしてできますか。
 例えば、学者はちゃんと調べています。これはジュリストの八百二十八号だけれども、「借地法四条・六条の正当事由 戦後判例の総合的検討」として、民法研究会三十三回で提起された。そのことを私は資料として持っているけれども、結論として「時代的推移」の中で、昭和四十三年から五十年にかけては、一部についてであれ正当事由ありとした判決の比率が七五%で、それ以前の四〇%、それ以後の四二・五%に比して著しく高く、明け渡し認容した判決の率が不動産投機・建築熱の盛衰とほぼ社会的な歩調を合わせていると、こういう傾向分析もちゃんと出されている。それから、正当事由として財産的給付が補完的に入ってきている。この傾向はさらに助長されて認容判決が多くなっている。これは社会的事実ですよ。こんなことをはっきりしないでどうするんですが。大体、財産的給付、立ち退き料で補完をするというそのこと自体私は問題だと思うんです。
 局長も審議官も御存じと思うけれども、イギリスではこういったことは認められていますか。どうですか。はっきり認められているかいないか、知っているか知らぬかでいいです。御存じでしょう。
#192
○説明員(寺田逸郎君) イギリスにおきましては、特に我が国のように正当事由という形での借地の明け渡しという制度をとってございません。ただ、借家については一部規制がございますけれども、借家につきましては借家の要件を金銭をもって補完するということは一般には認められていないというように承知しております。
#193
○橋本敦君 一般には認められてないところか、借家人に金を出すから出ていってくれといったことを申し出てそういう行為をすること自体が平穏な借家権の侵害として刑法上禁止されている、刑法上罪になるんです。しかも、今裁判所がやっている財産的給付は借家人やあるいは土地を借りている人の全損害を回復するというようなものじゃありませんから、正当事由の補完ですから、その人が移転によって受ける全損害を補償するものじゃないんです。だから、わずかの財産的給付を加えることによって正当事由を補完して借家人や借地人を追い出していくということになると重大な権利侵害になる。そういう意味で、財産的給付を新しく正当事由の要素として書き加えるということは現行法に比して著しく借家人やあるいは借地人の権利を侵害する重大な問題を起こす、私はそのことを厳しく指摘しているわけです。
 そして、現に法務省自身がこの問題についてどう言っているか、「借地・借家法改正に関する問題点」が出されましたが、その説明の中で、こういうような財政的処置による利害調整、これをやることについてこう言っているじゃありませんか。「正当事由の存在による更新拒絶又は解約の場面においては、正当事由の補完という前記運用と大差がない、との見方もあろうが、このような措置を法律上」正当事由要素として「明確にすることによって、やや硬直化しているともみられる更新拒絶又は解約の運用についてより柔軟に処理することができるようになる、という意味があろうと考えられる。」、こう言っているんです。
 つまり、現行法の正当事由は、借家人や借地人の権利を非常に保護をして、これは非常に硬直していると。しかし、こういう正当事由に財産的給付、立ち退き料要素を加えることによって、それをその運用で柔軟に処理することができるようになると考えられると、法務省はこう言っているじゃありませんか。まず、こう言っている事実は間違いないですね、ここに文章があるんだから。間違いないですね。もう時間がないからはっきりしてください。
#194
○政府委員(清水湛君) 恐らく御指摘の文章は、借地・借家法改正の問題点というものを公表した昭和六十年の時点で、こういう問題についてはこういうことが考えられるとかああいうことが考えられるという形で問題点を照会した先の方々がいろいろ考えを整理する際に御参考になるようにということで書いたものでございます。そういう考え方をとるということが、まだその段階で決まっているというものでは危いということでございます。
#195
○橋本敦君 このような私が指摘した説明があることは間違いないんでしょう。
#196
○政府委員(清水湛君) この二十二ページでございますか。――同じものがあります。
#197
○橋本敦君 法務省はそう考えられると、こう言っているんだ。まさに正当事由の拡張なんですよね。
 だから局長、あなたはしばしば、正当事由については現行法と新法とでは従前の判例を実質的に整理しただけだから違いがありませんと、こう言ってきた。本当に違いはないとおっしゃるなら、新法はやめて新法の正当事由、これはもとのとおりに書いていいんじゃないですか。こういった給付を一要素に加える、あるいは建物の現況やそういったものを一要素に加えるということは削除していいんじゃないですか。削除しますか。
#198
○政府委員(清水湛君) この問題点提起は、借地権を消滅する場合に金銭によって利害を調整しようというそれまでの裁判実務における正当事由の補完事由という形でとらえるか、あるいは一般的に借地権の消滅する際の更新拒絶の正当事由でございますけれども、例えば借地権を今度消滅するということになった場合、権利金をたくさん払っているというような場合にその権利金の返還をするとかしないとかという利害関係の調整の一場面としてとらえようとした意識も一面にはあるわけでございます。
 そういういわば未整理の段階における問題点整理でございますが、現在のこの法律案におきましては、まさにこの説明の部分で言ってもおりますように、正当事由の補完事由としての立ち退き料、つまり現在の裁判実務によって行われているものをそのまま素直に書いた。新たにつけ加えてもおりませんし、差し引いてもいない、こういうふうに私どもは考えております。
#199
○橋本敦君 そう言ってもだめですよ。法務省自身がこれを書くことは正当事由の緩和に資すると、こう言っているんだから、まさに要件緩和になっている。被害を受けるのは借地人、借家人ですよ。
 そこで、最後に私は指摘をしますが、こういったことが今後の問題としても非常に重大なのは、法務省が出したこの問題点についていろいろ意見が返ってきたその意見が「各界意見の分析」というところで出ていますね。この中で、中立的団体ということで裁判所の意見を書いてある。裁判所はどう言っているか。正当事由の内容の明確化についてこう言っていますよ、多数意見。「例示が「自己使用」の必要だけでは判例で拡大するにも限度があり、その他の貸主側の事情を考慮できることの足がかりが必要こと、こう言っているん。です、裁判所は。こういう意見がありますよ。
 だから、裁判官の多数も私が指摘したように、現行法でさえ土地の高度利用や地域開発ということに引きずられて、正当事由を緩やかにして明け渡しを認める傾向にある中で、今度の改正については正当事由の要素を変えてくれ、今の現行法では貸し主側の事情を考慮することの足がかりが十分でないんだ、ここまで書いてある。こういうような状況のときに、正当事由の緩和ということが出て一体どうなりますか。将来借地人、借家人の不安というものは重大な問題になりますよ。
 そういうことがあるので、私は質問の最後として、こういった正当事由の要件、範囲の拡大緩和につながる、あなた方の言葉で言えば硬直的な法律関係の改善という言葉でこういうことをやるのはやめろと、こういう法律は許されない、削除するなら削除せよということを要求して、私の質問を終わらせていただきます。
#200
○政府委員(清水湛君) 現在の法律で、貸し主がみずから使用を必要とする場合その他の正当事由ということになるわけでございますが、この文言を文字どおり解釈しますと、貸し主がみずから使用する必要があれば正当事由がある、こういうことになるわけでございます。そこで、そういう文言どおりの解釈では不公平ではないかということでいろんな判例は苦労して貸し主、借り主双方の事情とか、あるいは今回の法律で掲げておりますようないろんな要素を掲げてこの裁判の運用をしてきたわけでございます。
 そういう裁判の判例の中には、私ども法案の中身としておるところよりはややはみ出しておるものもございますし、あるいはこの法律案をつくる段階においていろんな立場の方々からいろんな意見があったとかそういうこともあるわけでございますけれども、最後に到達した結論は、現在の裁判実務の中で確立しておるというふうに考えられる要素を抜き出して書き出す。それに新たなプラスもしなければマイナスもしない。そうしないと、結局また改めて正当事由をめぐる議論が起こることになる、こういうことでこのような法案にしたわけでございまして、やや物事を見る立場というのが違うのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
#201
○橋本敦君 次回に譲ります。
#202
○紀平悌子君 本日の審議の最後の質問者でございます。
 本来ならば、大分に御審議が深まってまいりましたので、先へ先へと私も深めなければならないのだと思いますけれども、一昨日そして今日の御議論の中でどうしても私の胸から離れませんのは、一般の普通に暮らしていると活者とそれから法案との乖離でございます。それで、少しもとに戻らせていただいて恐縮でございますけれども、法制審議会についていささか質問をさせていただきたいと思います。
 昭和六十年から今回の改正についての御検討が法制審議会で行われてきたというこどは前回からの御答弁で明らかであるところですが、私が思いますのに、法制審議会の構成メンバーはどのようになってきたかということを再度お伺いしたいわけでございます。改正によって不利益をこうむる可能性があるかもしれない借り主の方の意見が十分反映できるような構成でしたでしょうか。
 第一に伺いたいことは、法制審の構成はどんな分野から何名、そして総数何名であるかということ。それから第二番目には、委員の選任の方法、基準。例えばどんな職種の中から、あるいは収入層ということをお考えになっていらっしゃるか。それから、大変失礼な言い分かもしれませんが、委員の中で借地・借家人とそれから自己所有の住宅の居住者との比率というか、それはどんなふうになっておりますか。大変卑近な御質問のようでございますけれども、お願いいたします。
#203
○政府委員(濱崎恭生君) まず、女性委員の数及び比率の点について申し上げます。
 法制審議会自体、俗に総会と呼んでおりますが、そちらの委員の数は現在二十七名でございますが、そのうち女性委員は二名でございます。それから、民法部会の委員は現在三十二名でございますが、そのうち女性委員は三名でいらっしゃいます。
 次に、法制審議会委員あるいは部会委員の選任の基準についてお尋ねでございましたけれども、御案内のとおり法制審議会は法務大臣の諮問に応じて民事法、刑事法その他法務に関する基本的事項について調査審議をするということを目的としておりまして、実質においてこういった基本的な法律についての立案準備としての機関の性格を有するものと考えております。
 すなわち、こういった基本的な法律は広く国民一般の権利義務あるいは秩序といったものに重大な影響を及ぼすものでございますので、当該分野におけるすぐれた専門家に多数加わっていただいて、慎重かつ周到な検討在行う必要があるということから、法務省の担当者だけで立案準備をするということではなくて、そういった専門家と法務省の所管事務のスタッフが一体となって立案に当たろうということでございます。したがいまして、その性格は行政の運用に一般国民の声を反映させるということを目的とする多くの行政機関の審議会とは異なった性格を有するものというふうに考えております。そういうことで、法制審議会の委員の選任の基準といたしましては、そういった基本法に関する学界の権威の方々、あるいはそういった紛争に直接関与している法律実務家の方々、それからその他の一般学識経験者及び法務省その他の関係官庁の担当者、そういった方々を選任しているところでございます。
 次に、委員御指摘の収入層がどうであるか、借地・借家人の比率がどうであるか、お住まいが自己所有であるか借地・借家であるかといった個人的な情報については一切私ども承知しておりません。
#204
○紀平悌子君 女性委員につきましては、先取りしてお答えいただきましてありがとうございます。
 私申し上げましたのは、私が立つと女性の立場で聞くんだろうというふうにおぼしめしたと思うので結構でございますけれども、私の知る限りでは、亡くなられました長谷川法務大臣が、本当に審議会には女性の委員が少ないから法制審には特に女性を入れたい、女性の声も反映させたいというお約束をされて、その後大変残念なことにお亡くなりになりましたけれども、そのお約束は果たされておりますでしょうか。特に女性のことをおっしゃってくださったのでお伺いいたします。
#205
○政府委員(濱崎恭生君) 前回、四月九日の当法務委員会において御質問をいただきましたが、その委員の御指摘をも踏まえまして早急に法制審議会委員の職にふさわしい女性の方の人選を進めまして、本年五月二十一日付で法制審議会の委員に新たに一名の女性の方を任命したところでございます。その結果、先ほど申し上げましたように、現在女性委員が二名ということになっているわけでございます。
#206
○紀平悌子君 ちょっと口頭でお聞きしましただけでは頭に入らない点もございますので、法制審全体の名簿を後ほどちょうだいできますでしょうか。
#207
○政府委員(濱崎恭生君) 法制審総会のメンバーにつきましては、先生のお手元にお届けすることができると存じます。
#208
○紀平悌子君 総理府の婦人問題担当室からお伺いしたいんですが、担当室は一九七五年以来の婦人問題解決のための施策の推進で関係各省のセンターの役割を果たしてこられまして、大変ご苦労さまに存じております。
 これまでに政府の政策決定参加、あるいは婦人に対する不利な法律その他、あるいは憲法に違背するような問題の解決ということで、相続の問題とか国籍法の改正ですとかあるいは女子差別撤廃条約の批准の推進など多々特別活動を行ってきていただいたわけでございますが、一九七七年閣議決定で政策決定参加に関する特別活動が設定されておりますし、そして現在の二〇〇〇年に向けての行動計画の中でこれが引き継がれておりまして、その点の目標設定がされております。それとその法制審の現在の状況との関係、つまり達成度は、一九七五年からことしで十六年たっているわけですけれども、どのように見ていらっしゃいますか。そして、推進本部では今後推進のためのどんな勧告を行っていかれますでしょうか、お伺いしたいと思います。
#209
○説明員(堀内光子君) お答え申し上げます。
 先生の御指摘がございました婦人問題企画推進本部といたしましては、現在、昭和六十二年度に策定いたしました西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画、先般五月三十日に第一次改定が行われたところでございますけれども、これに基づきまして各般の婦人施策を推進してまいっているところでございます。御指摘のございました法制の整備、それから政策・方針決定への女性の参画ということを進めてまいっておるわけでございますが、その中で国の審議会等委員の女性の割合につきましては、今回改定の計画におきまして、今後およそ五年間に一五%とするという目標を目指すこととしたところでございまして、この目標達成のために今後一層努力したいというふうに思っているところでございます。
 先生御指摘の婦人の審議会への達成割合の件でございますけれども、私どもの方では、平成元年七月十日に婦人問題企画推進本部参与会から国の審議会等の女性委員の登用促進につきましての具体的な御提言をいただいているところでございまして、同日付で本部申し合わせに基づきましてなお一層の努力をするということといたしているところでございます。それに基づきまして、平成二年三月末現在では全体の国の審議会等の女性委員の割合が九%に達したというところでございます。
 私どもといたしましては、法制審議会も含めまして国の審議会等への女性委員の登用につきまして、引き続き今回の新たな目標達成に向けまして積極的に努力をしてまいりたい、担当室といたしましても目標達成のためのフォローアップを行ってまいりたいというふうに思っているところでございます。
#210
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 今お聞きのとおりでございますけれども、法務大臣に、簡単で結構でございますので御意見をお伺いしたいと思います。
 西暦二〇〇〇年に向けての女性の政策決定参加推進の政府の方針というものもあることでございますので、法務省関係の女性公務員あるいは裁判官、検事等を含め、あるいは審議会等を含め、女性の決定参加ということを本法案とも絡めてというか、非常に女性にかかわりの深い、暮らしは女性と言われておりますし、また長く生きて高齢に達して、そしていわゆる住居の問題で非常に苦労していくのも率としては女性の方が多いと思います。その観点から、今後のお見通し、御決意、具体的な計画をお答えいただきたいと思います。
#211
○国務大臣(左藤恵君) ただいまお話のございました西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画、これでもって国の政策・方針決定の過程への女性の参画拡大推進という具体的な施策を掲げていらっしゃることでもございますので、法務省として引き続いて審議会等の委員への女性の積極的な登用ということを努力してまいりたい。また、女子公務員の採用、職域の拡大ということも一層推進してまいりたいと思います。
 現在、今お話ございましたように、法制審議会は二十八人の中で二人という委員の数で七・一%でありますけれども、そのほかにも中央更生保護審査会の委員は四人のうちお一人が御婦人であり、これは比率として二五%になるわけでございますが、このほかにも矯正保護審議会の三十三人の総数の中で五人とか、法務省全体といたしましての審議会、審査会の委員は総数八十四人のうち十人、一一・九%というような数字が出ておりますが、これをさらにもっと引き上げていくような努力をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。
#212
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 特に法制審議会、これは政策決定そのものの機関のようにも私には思えますので、非常に基本的な部分でございますので、法制審議会そのものへの女性の参加の促進をお願いしたいと思います。
 次に移ります。
 先ほどからもう同僚委員が述べられておりますことの繰り返しになりますので、お答えは簡単で結構でございますが、今回、借地契約及び建物賃貸借契約の更新拒絶の条件として立ち退き料などの提供が法文化されるということになっています。前回最高裁判所の御答弁では、他の条件とあわ世総合的に検討されることになる、その補完的なものであるというふうにお答えでございまして、一応納得はいたしておりますけれども、実際的に法文に明記されるということは、立ち退き料の提供ということがこれまでよりも相対的に判断基準のウエートとして実際上は格上げされるように思われます。一般的に賃貸人に拒絶の正当事由ありと解される可能性が高くなるように思われます。
 ここでいわゆる地上げとか暴力団等の交渉が立ち退き料の提供から始まるということを考えれば、今回の法改正は借り主追い出しのためにと言うと言い過ぎるかもしれませんが、追い出しのための手段、方法を法が正当化しはしないかと懸念します。この点について、法務省はそういうことは絶対にないというふうにおっしゃっていただけますでしょうか。
#213
○政府委員(清水湛君) この正当事由の規定は更新拒絶の際に必要とされるわけでございますが、最終的には裁判所で判断されるということになる筋合いのものでもございます。
 今回の法案で特にこの財産上の給付について規定をいたしましたのは、現実の裁判実務におきまして立ち退き料の提供をするのはこれは法律上の義務でも何でもございませんが、現実にそういう提供の申し出がされた場合にはそれを考慮するということが行われておるということから、この正当事由の内容を明確化するという趣旨で法文化したものでございます。したがって、正当事由の実質は基本的に現行法と変わるものではございませんで、立ち退き料の提供がこれまで以上に裁判実務においても重視されるというようなことは全くないと私どもは考えているわけでございます。したがって、今回の条文によりまして不当な手段による明け渡しの強制が正当化されるというようなことには決してならないというふうに思う次第でございます。
#214
○紀平悌子君 もし正当事由の判断根拠としてこれを法文化する場合ですけれども、これについてはいかなる額を提供すれば有効な立ち退き料の提供になるのか、明確な基準を法改正時に国民にわかりやすく示す必要もあるかと思いますけれども、そういった御準備はなさるんでしょうか。
#215
○政府委員(清水湛君) 財産上の給付というのは、これまで繰り返し御答弁申し上げておりますように、ほかの事情によってだけでは正当事由が認められない、こういう場合にこれを補完するものとして考慮されるものでございますから、具体的にそれがどの程度の額になるかということは他の事情との相関関係において決まるものである、こういうことでございまして、それ自体として基準があるわけではないというわけでございます。例えば、使用の必要性が貸し主側に非常に強い、しかしちょっと足りないというような場合には、それは立ち退き料というものも相対的に安くなるでしょうし、少しだけではなくて相当足りないということになりますと、そもそもは立ち退き料で補完できるかどうかという問題は別にございますけれども、いずれにいたしましても、そういうものとの相関関係で決まる、こういうことでござい
ます。
 現実の判決におきましても、そういう事情を反映しまして命ぜられる立ち退き料の額というものほかなり区々にわたっておるのではないかというふうに思うわけでございまして、私どもといたしまして、その基準を設けるというようなことは今のところ考えてはいないということでございます。
#216
○紀平悌子君 次は最高裁にお伺いしたいんですけれども、調停前置主義についてでございます。
 今回、地代家賃増減請求事件の調停前置主義採用ということがございますけれども、民事調停法の該当部分の改正等も同時に提出されております。その趣旨については、前回他の委員に対する御答弁があったとおりと思いますが、それでは新法施行後どの程度地代・家賃関係の調停事案が増加すると見込んでおられますか。
#217
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今回、地代・家賃の改定事件について調停前置主義がとられました。それでどういうふうに事件数が推移するだろうかということであります。これは具体的には、現在調停を経ずに訴訟に来ておる事件等であります。それが今後は調停に回る、こういうことになりますので、その件数を考えたわけでございます。いろいろな要素がございますけれども、平成元年あるいは平成二年の事件数を基礎にいたしますと、大体千五、六百件調停事件がふえるのではないかというふうに思っております。
 平成二年の数字で若干申し上げますと、地代・家賃の関係の訴訟は千九百六十六件、約二千件ございます。それから、調停事件は千八百三十一件ということでございます。そういたしますと、このうちの訴訟の千九百六十六件というのが調停に回るわけでございますが、ただ、そのうちに、既に訴訟を提起した後、裁判所の方で職権で調停に回すという制度がございまして、これが三百三十六件ございますので、千九百六十六件から三百三十六件を引きますと千六百件少しということになります。これが新法によりまして調停がふえるという一応の目安にはなろうかというふうに考えております。
#218
○紀平悌子君 国土庁においで願っていると思いますのでお伺いしたいんですが、調停委員のうち不動産鑑定士などの専門知識を持っていらっしゃる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
#219
○説明員(木村誠之君) お答え申し上げます。
 調停委員のうちどのぐらいの資格者がいるかということは、ちょっと恐縮でございますが、私ども把握いたしておりません。あるいは法務当局の方で把握されているかと存じますが、ただ不動産鑑定士というものを私ども国土庁の方で不動産の鑑定評価に関する法律に基づきまして登録をいたしておりまして、その合計数を申し上げますと、これは平成三年一月一日現在でございますが、全国で四千八百六十二名おります。
#220
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 不動産鑑定士の資格を持っておる調停委員の数でございますが、これは私どもの方で把握してございますが、約三百人ということでございます。
#221
○紀平悌子君 午前中の質疑の中で、調停委員にそうした知識を持っていらっしゃる方が地域的におられない場合とか、それからもし土地関係の知識についての委員の力不足というものを補われるために民事調停規則第十四条の活用等をお話しになったと思いますが、万一法案が成立いたしました場合は、調停前置主義採用の目的が損われないようにぜひお願いしたいというふうに思っております。
#222
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今、委員御指摘のとおり、この法案が成立いたしますと、賃料の関係の事件につきまして調停の役割というのは非常に大きくなるわけでございますので、そういうことに備えましていろいろな対策を講じたいというふうに考えております。
#223
○紀平悌子君 先ほどからの質問に重なることでございますが、今回の改正で自己借地権の設定のみが認められて借地権の担保化を見送ったというその理由なんですけれども、審議会における審議のあらましとともに、その理由をもう一回教えていただきたいと思います。
#224
○説明員(寺田逸郎君) 借地権の担保化、これは背景といたしましては、既に何度も出ておりますけれども、借地権が非常に高価な価値を持つ権利として現在では考えられているというところから、これを担保に入れられないというのは不都合ではないかという意見が一部に見られるわけでございます。特に、現在の最高裁の判決によりまして、建物が立っている場合にはその建物を担保に入れる。これは具体的には抵当権を設定するという手続になりますが、そういたしますと、その抵当権の効力がその抵当権のついている建物の存立根拠でありますところの借地権に及ぶ、そのことについても対抗力を有する、こういう最高裁の判決がございます。その判例によりまして現在の金融実務におきましては建物に抵当権を設定する、これによってその下の借地権の担保価値を利用する、このようにされているわけでございます。
 問題は、建物が建つ前に、すなわち借地権を設定して、さあこれから建物を建てようという際に何とかその借地権の価値を利用して金融を得られないかということでございまして、これは先ほども出ましたけれども、昭和六十年に問題点といたしまして各界の御意見を伺った際、あるいは平成元年に試案としてこれも各界の御意見を伺った際には、それぞれ一応の考え方あるいは具体的な案として提示して御意見を伺って、それについておおむね好意的な反応を社会的に得ている次第でございます。ただ、この問題は非常に難しい技術的な問題がございまして、それは現在でも、先ほどもちょっと触れましたけれども、建物と土地というのは別の不動産と観念されているところから、その間にいろいろな権利調整が必要になる場面があるわけでございますけれども、さらにこれに借地権をプラスするということになりますと、いわば建物、借地権、土地と三つの間の権利調整が必要になってくるわけでございまして、これを先ほど申しましたように、法定地上権の類推的な扱いでよろしいのかどうかということにつきまして、なお試案には疑問も大いに呈されたところでございます。
 このような技術的な問題に加えまして、なお借地権を含めましていろんな担保の問題というのはより総合的に、短期賃貸借その他の問題もございまして、こういう問題の一環として担保化を考えてみるべきではないかという意見がどちらかというと多いわけでございまして、そういう意味からもより広範囲、広いパースペクティブで問題をとらえようということでこの改正案には担保化の実現というのは見送られている、こういう次第でございます。
#225
○紀平悌子君 厚生省にお伺いいたします。
 経済的、社会的に弱い方々に関することですけれども、この借地・借家法改正にかかわって、借地・借家の使用継続の必要性が多くあると思われる生活保護世帯、お年寄りの世帯、母子家庭、病気がちの御家庭などの総数、それから借地・借家上の保護の制度、これを予算を含めてお聞かせいただきたいと思います。時間がございませんので、もし言い切れない部分というか、私ももう一つ時間が欲しいので、資料でいただく部分があっても結構でございます。
#226
○説明員(酒井英幸君) 御説明申し上げます。
 生活保護の関係を私の方から申し上げさせていただきます。
 生活保護世帯のうち借家、借間に住んでおられる世帯の数でございますけれども、平成元年の七月一日現在で見ますと、約六十四万五千世帯の保護世帯がございます。このうち約四十四万四千世帯、約七割弱でございますけれども、そういう世帯が借家あるいは借間に居住されているという状況になっております。
 これに対応します対策といたしましては、生活保護世帯につきましては一定の要件のもとに七種類ばかりの生活保護法上の扶助を行っておりまして、住まいについての問題につきましては住宅扶助という形で対応しておりますが、借地・借家に居住されている場合にはその家賃などについて、また御自宅で居住されている場合は家屋の修繕費等を住宅扶助として給付をしております。金額でございますが、平成元年度におきましては、住宅扶助として借地の方あるいは自宅の方すべて合わせまして、合わせた数字しか実はないわけでございますが、約一千四十一億円を支出しているという状況でございます。
#227
○説明員(冨岡悟君) 母子家庭についてお答え申し上げます。
 全国の母子世帯の数は、最近の調査におきましては約八十五万世帯となっております。このうち借家等に居住している御世帯は、公営、民営合わせまして約五十五万世帯、全体の六五%となっております。また、そのうち民間借家の世帯は約二十七万世帯、三二%の割合でございます。
 厚生省といたしましては、母子家庭に対しまして福祉の向上のために各種の施策を実施しておりますが、その中で各種の資金の貸付事業がございます。住宅に関しましては、住居の移転に伴いまして必要となります敷金等につきまして低利の融資を行っております。具体的には三%で融資しております。
#228
○紀平悌子君 後ほど資料をちょうだいしたいと思います。
 最後になりますけれども、もう既に新聞紙上にもいわゆる混乱というか便乗というか、そういったケースが出ておるということは同僚委員の先ほどからのお話に出ております。この法改正に便乗したと言ってもいいような追い立てなどの防止措置ということでございますが、今何か二本立てということに関して、これは混乱は生じないというふうに割り切れるかどうかということで私自身も混乱している中で考えることですが、とにかくこの法律がもし通った場合のことですが、本当に一般の方々というか私を含めてですけれども、この借地借家法に対するふだんからの理解と、それからこれから新法ができるということに対するいろんな知識も用意もない状況のままでこれが今審議され、やがて採決ということになるわけです。万一の場合、消費税のときにもとられたような方法ですけれども、不当な状況に対するモニター制度、監視機構、そして例えばいわゆる賃貸に対する一一〇番のようなそういったシステムをおつくりになって、本当に手軽で効率的で、だれでもいつでも電話をかけられる、PRとともにこういった制度をおつくりになるというふうな御用意はあるでしょうか。ぜひしていただきたいというふうに思います。
#229
○政府委員(清水湛君) 今回の改正の趣旨は、借り主の権利の保護を図るという点において現行法、といささかも変わるところはございませんし、また既存の借地・借家関係は従来の法律の規定によりこれまでどおり保護されるということは御理解をいただいているところでありますけれども、この点を曲解し、あるいは大臣のお言葉にもございましたように、あるいはねじ曲げて、改正されるという事実に便乗して借り主の追い出しを図る、不当な賃料の値上げを要求したりするというような事実があるということは大変重大なことだと私どもは認識しているわけでございます。
 法務省といたしましても、今後関係省庁とも協力いたしまして、先生の御提案の趣旨をも踏まえまして、このようなことにより借り主に不当な不利益が生ずることのないようあらゆる周知徹底措置を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#230
○紀平悌子君 質問は残っておりますが、終わります。
 ありがとうございました。
#231
○委員長(鶴岡洋君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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