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1991/09/06 第121回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第3号
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1991/09/06 第121回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第121回国会 法務委員会 第3号

#1
第121回国会 法務委員会 第3号
平成三年九月六日(金曜日)
    午前十時七分開議
出席委員
  委員長 伊藤 公介君
   理事 太田 誠一君 理事 田辺 広雄君
   理事 星野 行男君 理事 山口 俊一君
   理事 小森 龍邦君 理事 鈴木喜久子君
   理事 冬柴 鐵三君
      赤城 徳彦君    奥野 誠亮君
      片岡 武司君    武部  勤君
      中島源太郎君    小澤 克介君
      岡崎 宏美君    清水  勇君
      高沢 寅男君    倉田 栄喜君
      中村  巖君    木島日出夫君
      神田  厚君    中野 寛成君
      徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 左藤  恵君
 出席政府委員
        法務政務次官  吉川 芳男君
        法務大臣官房長 堀田  力君
        法務大臣官房審 永井 紀昭君
        議官
        法務省民事局長 清水  湛君
        法務省人権擁護 篠田 省二君
        局長
 委員外の出席者
        総務庁長官官房
        地域改善対策室 荒賀 泰太君
        長
        法務省民事局参 寺田 逸郎君
        事官
        外務大臣官房儀 小林 包昭君
        典官
        大蔵省主税局税 尾原 榮夫君
        制第一課長
        文化庁文化部宗 梶野 愼一君
        務課長
        建設省都市局都 林  桂一君
        市計画課長
        建設省住宅局住
        宅・都市整備公 照井 利明君
        団監理官
        建設省住宅居住 川村 良典君
        宅政策課長
        建設省住宅局民 石井 正弘君
        間住宅課長
        建設省住宅局建 梅野捷一郎君
        築指導課長
        最高裁判所事務
        総局民事局長  今井  功君
        兼最高裁判所事
        務総局行政局長
        法務委員会調査 小柳 泰治君
        室長
    ―――――――――――――
委員の異動
九月六日
辞任          補欠選任
  江崎 真澄君     片岡 武司君
  渡辺美智雄君     武部  勤君
  中野 寛成君     神田  厚君
同日
辞任          補欠選任
  片岡 武司君     江崎 真澄君
  武部  勤君     渡辺美智雄君
  神田  厚君     中野 寛成君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 借地借家法案(内閣提出、第百二十回国会閣法
 第八二号)
 民事調停法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、第百二十回国会閣法第八三号)
     ――――◇―――――
#2
○伊藤委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所今井民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#4
○伊藤委員長 第百二十回国会、内閣提出、借地借家法案及び民事調停法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口俊一君。
#5
○山口(俊)委員 大変大事な借地借家法という法案につきまして質疑をさせていただくわけでありますが、実は最初、当法務委員会に所属をさせていただきまして大変戸惑いを覚えておったわけであります。というのは、私は県議会でいろいろやっておりましたけれども、法律というものに全く素人でありまして、まさに門外漢というふうなことで、当初いろいろな用語を覚えるのに非常に苦慮いたしました。実は今回の質問に当たりましていろいろ勉強するときにも、いろいろな難しい用語がいっぱい出てまいりまして、これは恐れ入ったぞというふうな感じにもなったわけでありますが、ただ、申し上げておきたいのは、法律というのは特定の専門家の方だけのものではないというふうに思うわけでありまして、そうした観点から、今回の借地・借家法の改正につきましても、いわゆる平仮名、現代語に変えていくというふうなこともあろうかと思うわけであります。ともかくいろいろ陳腐な質問もあろうかと思いますけれども、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
 ただ、素人であるだけに、いわゆる普通の感覚といいますか、普通のそこら辺の人が考えるような一つの感じ方の質問もまたできようかと思いますので、御答弁の方もできるだけやさしい言葉でお願いを申し上げたいと、最初にお願いをいたしておく次第でございます。
 さて、この借地借家法につきましては、もう既にさきの国会からいろいろと議論がなされておるわけでありまして、言うまでもなく、お話しのとおり、いわゆる社会生活に及ぼす影響が大変大なるものがあるというふうな大事な質問であります。これまで当委員会におきましても、既に二回にわたりましてさまざまな角度からこの法律案に対する問題が提起され、慎重な討議がなされてまいりました。しかも去る四日には、専門家や利害当事者を含む八人の公述人の皆さん方からも御意見を聞く機会もあったわけであります。
 そうした一連の議論あるいは御意見を通して思うわけでありますが、その印象では、今回の法改正に関しましては、法案自体として旧来の権利関係といいますか、現行法ですけれども、そうした権利関係を尊重しながら、しかもこれからの社会経済情勢に適合した新しい法律関係を認めていこうというものであることにつきましては、かなり共通の認識もできつつあるのではないかと思うわけであります。ただ問題は、そのような理解が社会的にそしてもちろん当事者間にも徹底をされないと、非常に危険の生ずるおそれもあるということでもあろうかと思います。そのあたりからそれぞれの評価の違いが出てくるといったこともあろうかと思うわけであります。そのような観点から、以下質問を申し上げていきたいと思う次第でございます。
 まず、今回の改正は、いわゆる貸し主の立場を強化して地上げを促進するようになってしまう、
また地上げに法的根拠を与えることになる云々という新聞報道等が見られるわけでありますけれども、これに関してどのようなお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。
#6
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、貸し主の立場を強化して地上げを促進するための法改正であるかのごとき記事が一部の新聞に出されておるということを私聞いておるわけでございますが、結論から申しますと、全くそのような事実はない、誤解であるというふうに私どもは考えているわけでございます。これまでもたびたび説明をしてまいりましたように、借地法、借家法は地主、家主あるいは借地人、借家人の権利関係を合理的に調整しながら、しかし、生活の基盤である借地・借家に住む借地人、借家人の権利が安定的に保護されるということをねらいとしてこの法律は制定されてきたわけでございまして、そういう借地人、借家人の権利を保護し、その安定を図るというような借地・借家法の趣旨というのは、今回の法改正においても全く変わっていないわけでございます。私どもといたしましては、そういう基本的な前提のもとに現在の借地・借家法、特に借地法でございますけれども、現在の社会経済情勢にマッチしない部分がある、新しい需要に対応し切れない部分がある、そういうような点から、現在の社会経済情勢に適合するような形に改めて、より利用しやすい借地・借家関係というものを考える、こういう形で今回の法改正をお願いしているわけでございます。
 先日の各公述人の御意見の中にも、例えば現実の問題として非常にひどい地主あるいは家主がいて、嫌がらせをして地上げを図る、こういうようなことが行われておるのだというお話がございました。私ども確かにそういうような事実も聞いておりますし、いろいろな訴訟のケースなんかを見ますと、確かにそのようなケースもあるというふうに承知しているわけでございまして、そういうことが現行法のもとでも行われておることは非常に残念なことであり、そのことについては現行法の趣旨をさらに徹底して、これは弁護士会その他関係方面にもお願いしなければならないことでございますけれども、さらに徹底をするとともに、そういう誤解に基づく権利の不当な侵害が生じないように、これはこれで、法改正とは別に私ども真剣に対応していかなければならないと思いますが、法律改正の趣旨自体については、先生御指摘のとおり、そういうこととは全く関係ない事柄であるというふうに考えているところでございます。
#7
○山口(俊)委員 今いろいろと御答弁いただきましたけれども、社会のいろいろな状態に適合、適応していく云々とか、あるいはまたその関係を安定させる役目もあるのだというお話もございました。
 考えてみますと、もちろん一側面ですけれども、いわゆる地上げというのは当事者間の閉塞状態から発生する面も一部あろうかと思うわけであります。そのような面から考えますとおっしゃるとおりでもあろうかという感じはいたしますけれども、ただ、誤解に基づくトラブルというのは既にあるわけですし、今後の法改正によってまた増加をするおそれもある。このことに関しましてはまた後ほどお伺いいたしますけれども、いずれにしても、ともかく賛成あるいは反対云々を考えてみましても、内容の理解にはそれほど違いがないのじゃないかと思うにもかかわらず評価が大きく食い違ってくるというのが、今回の改正の大きな眼目の一つであります正当事由条項の改正であろうかと思うわけであります。この正当事由というのも、正当な理由にした方がいいのじゃないかと思いますけれども、ともかくこの正当事由条項、これについてお伺いをいたしたいわけであります。
 御承知のとおり、現行法では地主みずから、みずからというのがあるわけですけれども、みずからが土地を使用することを必要とする場合その他正当事由がある場合に限るということが明言をされております。ある意味で極めて不親切で、木で鼻をくくったような一つの文言であるわけであります。今回いま少し具体的になされるようなことも聞いておるわけでありますが、その正当事由の改正をする趣旨についてお伺いいたしたいと思います。
#8
○清水(湛)政府委員 先生御指摘のように、現行法では地主がみずから使用を必要とする場合その他正当な事由がある場合というふうに規定しているわけでございます。こういうような、その条文を読んだだけではよくわからないという規定を現代語化して口語化するという場合には、もっと具体的にその意味、内容を明らかにする必要があるだろう、一般国民が読んでもわかるような条文にする必要があるだろう、こういうことがまず第一点でございます。その場合に、ではどういう内容で明らかにするのかということになりますと、現行法の解釈として判例が数十年にわたって積み重ねてまいりました正当事由判断についての各種の基準がございますので、そういうものについて主要な基準を漏れなく記載するということがやはり正しい態度であろう、こういうことから今回の正当事由の規定の改正をお願いしているわけでございます。
 それからもう一つ、これは単なる危惧かもしれませんけれども、昭和十六年に正当事由条項が設けられましたときに、地主がみずから使用を必要とする場合その他正当事由とございましたために、一つの解釈として、借地人側にその土地を使用する必要性があっても地主側にとにかくその土地を使用する必要性があるならば、その程度が借地人より低い場合であっても地主が使う必要があるのだということさえ言えば、それはすなわち更新拒絶の理由になるという解釈が一部に行われ、あるいはそういうことを主張する方々もおられたわけでございます。文字どおり言えばそういう解釈も可能なわけでございますけれども、あるいはそういった解釈に加担するのではないかなと思われるような判例もないわけではございませんけれども、昭和三十年代あるいは四十年代から、いやそれは地主の自己使用の必要性だけを考えればいいということではないのだ、借地人の使用の必要性というものを考えて総合的に判断すべきだという考え方が出てまいりまして、そういう意味では、現在の自己使用の必要性その他の正当事由という規定を判例によって、一部の立場の方から見ますといわば修正をしてきたというような評価も実は成り立つわけでございます。
 そういう状況を踏まえまして、もし、今回改正をお願いする場合に全く同じ条文、つまり正当事由の中身を明らかにしないで現在ある条文と同じ条文を法律の中に置いた場合には、やはり昭和十六年制定当初と同じような、地主に有利な解釈があるいは展開される可能性もあり得るということも一部から指摘がありまして、この正当事由についての条文を現代語で書きおろすという場合には、現在行われておる解釈あるいは判例に示されている解釈というものを正しく条文の上に示す必要がある、そうしないと、かえっていろいろな意味での混乱が生ずるおそれがある、こういうことから私どもは、最終的に正当事由に関する規定を、これまでの判例等によって集積された理論と一致するような形でこの条文を定めたということになるわけでございます。これによりまして、一般の方々が正当事由というのは何であろうかということで借地借家法を読んでみれば、一応今までの判例の考え方とかあるいは学者が言っている考え方というものはそこに集約されておりますので、理解しやすいということにもなろうかというふうに考えている次第でございます。
#9
○山口(俊)委員 今いろいろお話をいただきました。さきの国会で我が党の星野委員の方からもたしか御質問させていただいておったと思うのですけれども、今回、判例によって集積された考え方をここにあらわしたんだということであろうかと思うわけです。私もそのように聞いておりました。
 ただ、今回の法改正の底流に流れる一つの考え方のあらわれでもあろうというふうには理解をいたしておるわけでありますけれども、それに関連して、当初改正要綱試案が出てきたときには、この正当事由については若干違う項目もあったわけです。御案内の「土地の存する地域の状況」云々というふうなものがございました。これが今回の改正案には規定をされておらないということでありますけれども、このことについてその理由をお伺いいたしたいと思います。
#10
○清水(湛)政府委員 当該土地あるいは建物が存する周辺の地域の事情というものを正当事由の一判断要素にすべきであるという御意見、私どもが「借地・借家法改正に関する問題点」というものを各方面に示しまして各方面から幅広く意見を求めた段階におきまして、そういうような御意見が非常に強く主張されたということも事実でございます。借地・借家法が、ある意味におきましては都市再開発の妨げになっておるんだというようなことをお考えになっている方もあるわけでありまして、主としてそういう方々から、当該土地の存する地域の状況というものを考えて、例えば周辺が大体高層化しているなら地主もやはりそういう土地を利用して高層建物を建てる必要があるのだから、そういうことも正当事由とすべきだというお考えに基づくものであろうと思います。
 しかしながら、そういうような考え方につきましては、周辺の地域の状況もさることながら、借地借家法というのは、具体的にそこに住んでいる借地人、借家人と貸し手の間の権利関係の合理的な調整ということでございまして、その人が住んでいる町をどういうふうに高度に利用し、有効に利用していくかということは、これは土地区画整理とか土地収用とかそういう別個の公共政策立法によって考えるべき問題でございまして、借地借家法で考えるべき問題ではない、こういうような観点から、独立の正当事由判断要素として当該土地・建物の存する地域の状況というようなものを入れるのは適当ではないということになりまして、最終的に現在お願いしておりますようなものになったわけでございます。
#11
○山口(俊)委員 ともかくこの法案にそういう考え方を盛り込むのはよくないというお考えで、実は私も賛成なわけであります。いわゆる「土地の存する地域の状況」という項目に対する危惧は相当あったわけですね。当初、要綱試案が出たときのマスコミのさまざまな反応を見てみますと、これによって都市開発のための地上げがさらに誘発されるのではないかという論調がほとんどでありました。そういった意味でその項目をなくしたことは一応評価をしておるわけでありまして、御答弁、了解をいたすわけであります。
 同時に、今回の改正に当たりまして借地・借家に絡むさまざまな実情といいますか、トラブルのいろいろな実情も十分調査をし、検討をされておいでだと思うわけでありますが、その借地・借家関係の当事者には従来どのようなトラブルが発生してきたのか、どのようなトラブルが多いのか、お聞かせをいただきたいと思います。
#12
○清水(湛)政府委員 借地・借家関係というのは御承知のように、一般的に借地・借家関係と一口で申しほすけれども、具体的な地主さん、具体的な借地人、具体的な家主さん、具体的な借家人という方々のそれぞれの全く個別の立場によって非常に事情が違ってまいりますし、極めて個別性の強い法律関係だと言われているわけでございます。
 そういうものの中で一般的にどういったトラブルが多いかということでございますけれども、借地の場合について見ますと、非常に円満にいっている借地関係が多いわけでありますけれども、たまたまトラブルが起きたという場合の、そのトラブルの中で比較的多いのが地代の改定をめぐるトラブルである、借地をめぐるトラブルのほぼ半数近くを占めておるというような調査結果もあるわけでございます。その次に多いのが期間満了の際における契約の更新。更新するのか、あるいは正当事由があるから更新を拒絶するのかというような更新をめぐるトラブル、あるいは更新料をいかにするかというようなものを含めまして、そういうようなトラブルがある。地代の関係が全体のトラブルの中で四十数%でございますけれども、更新をめぐるトラブルは二〇%前後。それからもう一つは、借地人の方で建物の増改築をする、それに対して地主がクレームをつけるというようなことでトラブルになるというのが全体のトラブルの中で一〇%前後を占めるということで、地代、更新、建物の増改築、こういうものが大体主要なものであろうかと思います。そのほかに、例えば借地人が地代を支払わないというようなことから、契約が解除されるということになりまして争いになるというケースもあるわけでございます。そういうものも当然ありますけれども、主要なものは、その三つが典型的に日常的に起こっているということが言えようかと思います。
 それから、借家につきましては、最も多いのが明け渡しをめぐるものでございまして、トラブルの全体の中で約三分の一はこの明け渡しをめぐるものである。借家については二十年とか三十年という長期の期間はございませんで、契約で二年とか三年という期間を定めることが可能でございますので、期間満了の際の明け渡しをめぐるトラブルが比較的多い。それから家賃の改定。これは長期に住んでおられる方々が主なものでございますけれども、借家をめぐるトラブルのうちの二〇%ぐらいは家賃をめぐるトラブルである。それから、雨漏りがするとか、あるいはそういう建物の修繕をだれがするんだというようなことをめぐってのトラブルが全体のトラブルの中で一二%くらいのものになっているというような調査結果があるわけでございます。
#13
○山口(俊)委員 借地に関しては、地代改定のときのトラブルが四十数%、更新をめぐるトラブルが二十数%、借家に関しては、明け渡し、そして家賃の改定というふうな順番というようなことでありますが、現在ある当事者間のトラブルのうち、明け渡しをめぐるものが相当多いようであります。しかも、この法律改正が話題になり始めてから増加の傾向にあるというふうな話も聞いておるわけでありますが、このような当事者にとって今回の正当事由の改正は果たしてどのような意味があるのかお伺いをいたしたいわけであります。果たしてそうしたもののトラブルの解決にプラスになるのかというふうなことであります。
#14
○清水(湛)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、今回の正当事由に関する改正規定は、現行法の解釈、運用についての判例理論をそのまま法文化したものでございますので、実質その前後についての違いはない、こういうふうに考えているわけでございます。それでもしかし、法文の形が違いますので、いや不利益になるんじゃないか、いやどうなんだという不安を持たれる方があるというようなことでございまして、借地・借家関係は生活の基盤でございますから、私どもはそういうのは単なる杞憂であるということで御説明申し上げるわけでございますけれども、不安もあるというようなことから、既存の借地・借家関係につきましては、この正当事由についての改正規定も、では適用しないことにいたしましょうということにいたしたわけでございます。
 ですから、現在いろいろ心配されている方につきましては、形の上では現行法がそのまま適用されますので、全く不安に感じられる必要はない。中に、新しい正当事由に関する規定が裁判官に心理的な影響を与えて、借地人、借家人が不利になるのではないかというような御心配をなさる方がおりますけれども、私どもは、このことにつきましては、これは裁判官がごらんになりましても、あるいは弁護士の方がごらんになりましても、正当事由に関する規定はこれまでの判例理論をそのまま法文化したものであって、特に実質的な差異はないというふうにどなたも評価していただけるというものでございますので、決してそういう御心配はない。むしろ、そういう不安な心理が一部に起こっていることを利用していろいろな悪質な行為をするというようなことがもし行われておるということになりますと、法律以前の問題でございますけれども、それは何とか防止ができるような形でのPRというものも考えていきたいと思っておるところでございます。
#15
○山口(俊)委員 いろいろな判例の積み上げというふうなこともあろうと思いますし、やはり今回の改正というのはいろいろな現状に即した改正であるわけでありますので、ある意味では、混乱とかそうしたものを追認するだけであると問題ですけれども、そういうような実情に即した調整ということも必要でありますので御期待をいたしておる次第でありますけれども、お伺いをいたしますと、明け渡しとともにトラブルが多いのが地代家賃の値上げをめぐる問題であるというふうなお答えでございました。
 そこで、この問題についてお伺いをいたしたいわけでありますが、地代家賃の定め方について一律の基準を示すことができないだろうかということが第一点。第二点が、物価スライド条項のような地代改定特約というふうなのは果たして有効なのかどうかということについてお伺いをいたします。
#16
○清水(湛)政府委員 地代家賃をめぐる紛争というのは非常に多いわけでございまして、そういうものを一律の基準で決めるということができれば私どももこれは非常にいいことではないかなというふうに思うのでございます。ただしかし、地代家賃につきましては、それぞれの借地・借家が、場所的にも人的にも極めて個性的なものでございまして、全く同じものが二つない、こういう状況のものでございますから、どうも一律にはなかなかいかないということもあるようでございます。
 そこで、例えば地代家賃の決め方について、不動産鑑定士あるいは地価公示法なんかに定めております土地鑑定委員会、そういうようなところで合理的な不動産鑑定評価基準というようなものを、不動産の価格のみならず地代家賃の決め方についてもいろいろな基準を示しておられるようでございますけれども、例えば、難しいのですけれども、利回り法とか差額配分法とかスライド法とかあるいは賃貸事例比較法とか、いろいろな考え方があるようでございます。そういうものの中でできるだけ合理的なものを選んでやっていくということに結果においてならざるを得ないのではないか。私どものお願いしております借地借家法の関係で申しますと十一条でございますけれども、これは、一たん当事者の合意で決めた地代につきまして、その後公租公課が値上がりをするとか、あるいは土地の価格が上がるとか、あるいは近隣の地代が値上がりをするとか、非常に物価の水準が変わってきたというような経済事情の変更があればそういうものを考慮して新しい地代の増減を請求することができる、こういうような規定になっているわけでございますが、そういうような規定を踏まえて、やはりそれぞれのケースにおいて、最終的には当事者の合意でございますけれども、調停あるいは裁判等の過程において合理的にお決めいただくということに現在ではならざるを得ないのではないかなというふうに思っています。
 そこで、先生の御指摘のような一つの工夫といたしまして、例えば今までの現実に行われて、いる契約の中でも、物価にスライドして、例えば総理府で発表する消費者物価の上昇指数というものがあるわけでございますけれども、そういう指数に応じて地代を値上げするとか、あるいは固定資産税とか都市計画税というものが増額されればその増額分は当然に地代にオンされる、あるいは固定資産税と都市計画税の増減率によるとか、いろいろなことを工夫して契約の中に定めておるというようなケースがございます。こういうようなスライド条項というような地代改定特約につきましては、いろいろ現在の裁判例でも分かれている面があるわけでありますけれども、基本的には十一条一項が予定している事情の変更を示す指標として相当なものであればこれは有効であるということになるわけでございますけれども、そのスライド条項を形式的に適用した結果、どうも周辺と比較しておかしな状況になってくる、出た結論がどうも余りにも相当とは言えないというようなことになってまいりますと、そういうスライド条項というのはその分においては効力が否定されるというようなことにならざるを得ない、どうも今までの判例の方向から申しますとそういうことでございまして、私どももそういうことではないかというふうに考えております。したがいまして、その結果出る結論が合理性のある妥当なものであるというようなものにつきましては、スライド条項というものも、これはまた決め方によることではございますけれども、意義ある方法であるというふうに思っております。
#17
○山口(俊)委員 ただいま意義のあるというふうなお話もありましたけれども、実は私も地元の方で若干土地を借りて上にいろいろ建てておるわけですけれども、地主さんと私の方と、田舎ですから値上げの件についてお互いが何となく言い出しにくい、そういった点もあるわけでありまして、今後、ここら辺の問題、非常にトラブルの多い問題でありますので、十分御検討のほどをお願いいたしたいと思うわけであります。
 今回の改正ですけれども、借地についてのいろいろな改正というのは、先ほども申し上げましたけれども、それが社会情勢にマッチをしておらない、十分な対応ができておらないところを改める点にあるというふうに思うわけでありますが一そうした点でまたちょっと観点を変えてお伺いをいたしていきたいと思うわけです。
 借地の供給の現状は果たしてどうなのかというふうなことでありますけれども、まずこれについてお伺いいたします。
#18
○清水(湛)政府委員 これは、細かい統計は国土庁あるいは建設省の方でお持ちのものでございますけれども、一戸建ての持ち家敷地の約一割、これは約二百万戸でございますが、それから商業用ビル用地の約三割が借地であるというふうに言われております。この割合は、昭和四十年代半ばにおきましては、それぞれ約二割、約三割五分、こういうことでございまして、昭和四十年代には、一戸建て等の持ち家の敷地の借地割合というもの、あるいは商業用ビルの用地の借地割合というものは非常に高かったのでございますけれども、近年においてはそれが非常に減少してきておる、こういう状況にあるというふうに私どもは認識しております。
#19
○山口(俊)委員 ただいま、ともかく昭和四十年代と比べてみますとかなり減少しておる、二割から一割、三割五分から三割程度に減少しておるというふうなお話でありますけれども、今回の改正はやはり土地政策との絡みも若干あろうかと思うわけでありますが、こうした借地の供給の減少というふうなことを法務省としてはどのようにお考えになっておられるのか、これもお伺いをいたします。
#20
○清水(湛)政府委員 借地の供給の減少の背景には住宅金融制度あるいは国の基本的な土地政策、その他もろもろの要因があろうかと思いますが、一つの原因として指摘されておりますところは、借地法の規制が非常に硬直化しておる、そのために土地所有者の間に、とにかく土地を一たん貸すとなかなか返してもらえない、例えば十年なら十年たてば返しますという約束を信用して貸したところ、さて十年が来たらもう全然返そうともしてくれないというようなことがしばしばトラブルとして起こるわけでございますけれども、そういうようなことから土地を一たん貸すとなかなか返してもらえないという認識が広まりまして、それが借地供給の減少の一つの原因。さらには、そういうことで返してもらえないということになりますと、最初の段階で高額の権利金を取ってしまう、そして半ば早期返還はあきらめる。こういうふうな、貸さないか、あるいは高額の権利金を取るかというようなことになってまいりまして、次第に借地供給が減少してきたんだという指摘もあるわけでございまして、私どもも、それが全体の原因のどの程度の割合であるかということは正確に申し上げることができませんけれども、それが一因であることは否定しがたいことだと考えているわけでございます。
#21
○山口(俊)委員 お話しのとおりであろうと思うわけであります。貸すとなかなか返してくれない、そうした現状があるものですから権利金をかなり高額に取ってしまう、この議論は既にあったわけでありますけれども、こうしたことも今回の法改正の大きな根拠であろうと思うわけです。それがまたいわゆる借り主と貸し主、その一つの相対的な地位といいますか、それがかつての法律をつくったときの大正十年あるいは昭和十六年の改正あたりと社会情勢が大きく違う点の一つであろうと思うわけであります。
 先ほども申し上げましたように、ともかく借地・借家法の今回の改正と土地政策の関連いかんということでありますけれども、今回の改正によって土地の適正な利用及び優良な賃貸住宅の供給促進が果たして図られるのか、先ほどもお話がありましたいわゆる貸し渋りというものが果たして解消できていくのかどうかといった点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
#22
○清水(湛)政府委員 借地・借家法は、先ほど申し上げましたように、地主と借地人、家主と借家人両者の権利関係の合理的な調整を目的とするものでございまして、今回の改正もその範囲を出ないものでございます。しかし、例えば定期借地権制度の創設に見られますように、借地・借家に対する多様化した需要にこたえるための制度というものが実現されますと、これを利用して借地に踏み切るというような方々も出てまいるのではないか。また、そういうものを利用して賃貸マンション等を建設するということも可能になってくるのではないかというようなことが考えられるわけでございまして、今回の法改正が直接の住宅供給促進ということを政策目的に掲げた法改正ではございませんけれども、まさにそういうものの基礎である借地関係、借家関係というものが合理化されることによりまして、それをベースにした土地の適正な利用とかあるいは優良な賃貸住宅の供給に寄与していくことになるのではないかと私どもは考えているところでございます。
#23
○山口(俊)委員 土地政策というものはやはりより広範な総合的な対策が必要であろうかと思いますけれども、ただ、今回の改正がそうした一連の土地対策と整合性を持って、しかもその一助となるというふうなことも大変大事であろうかと思いますのでお伺いをしたわけですが、今御答弁の中にもございました定期借地権ということについて次にお伺いしたいと思います。
 この定期借地権の制度を導入した趣旨はもちろん社会情勢のさまざまな変化に対応するものと考えられるわけでありますが、そのように考えてよいのかどうか、さらにまたこの定期借地権にはどのような利用が想定をされていくのか、さらにこの定期借地権には実際に果たして十分な需要があるのかどうか、同時にまたこのような制度を導入、することによってどのような効果が期待できるのか、定期借地権につきまして一括して御質問いたしますので、お願いをいたします。
#24
○清水(湛)政府委員 定期借地権の制度を導入した趣旨については、先生今お話がございましたけれども、全く先生のお話のとおりの趣旨でこれを導入したわけでございます。
 現行法の借地権についての規制が画一的である、これは何回も申し上げていることでございますけれども、正当事由がないと契約の更新を拒絶することができないということで、実質的にはほとんど半永久的に土地は返ってこない、こういうような状況になっているのが実情でございます。そこで、土地を借りたい者の中には、そんなに。長期でなくてもいいけれどもこの期間だけは間違いなく借りたい、あるいはこの期間だけ貸してもらえばあとは間違いなく返すというような需要も実はあるわけでございます。今でも当事者間で実は紳士協定でそういうような協定を結んでいる方がおられるわけであります。しかし、この協定は借地法上強行法規規定違反でございまして、無効でございまして、いざ裁判所で争われますとその紳士協定の効力を主張することはできません。これが現行法の制度でございます。そういうような実情を踏まえまして現実の実態を考えますと、一定の限度の範囲内でそういうものを制度化してそういう需要にこたえるということは借地法、借家法を所管している法務省としても当然考えなければならないことだ、こういうことが今回の定期借地権制度の創設の背景にあるわけでございます。
 この制度については大方の御賛同をいただいているというふうに考えておりますけれども、では、こういう定期借地権がどのような形で利用されるかという御質問でございますので、この点について簡単に申し上げますと、定期借地権につきましては御承知のように三種類のものがございまして、一つは事業用借地権と申しまして、事業目的で、期間も十年以上二十年以下、二十年を超えるような事業用定期借地権というものは認めない、こういうことになっているわけでございます。これは、最近の郊外の外食店舗とか量販店とかあるいは遊技場といった事業のために利用が相当見込まれるのではないかというような指摘もあるようでございます。これらの事業にありましては、その店舗の展開、その陳腐化の速さからそれほど長期にわたってそういう建物を存続させる必要がない、また逆に、店舗の進出に当たりましてそんなに高い権利金を払ってやるということになりますと最初の投資が大変な金額になりますので、安い権利金で短期間だけ借りる、こういうようなことが非常に大きなメリットになると言われているわけでございまして、この利用も相当見込まれると思います。
 それから、五十年以上の定期借地権と三十年以上で建物譲渡特約付借地権という場合には、これは事業用という限定はございませんけれども、例えば現在、住宅・都市整備公団あたりで五十年以上の期間を決めまして、そこに賃貸住宅をたくさんづくりまして公団住宅として貸しているということを現にやっているわけでございます。住宅公団の場合にはこれは紳士協定を守るでしょうから、安心して五十年たてばあるいは六十年たてば返してもらえるということになろうかと思いますけれども、住宅公団でなくても、民間の業者がそういう五十年以上の定期借地権を設定してマンションを建てて他に貸すということも、これは今度は法律できちんと保障された形でできるということになりますので、そういうような利用が見込まれるのではないか、あるいは建物譲渡特約付借地権につきましても、やはり賃貸マンションとかオフィスビルとか分譲住宅というようなものを目的とする形でこれらの定期借地権というものが活用されるのではないかというふうに私ども予想しているわけでございまして、具体的にどの程度出てくるかということになりますと、ちょっと予測しがたい要素がありますけれども、そういう意味での利用をすることについての法的ベースが与えられた。その法的ベースを与えることによってこれからの住宅供給とかそういうものの促進に役立つというふうに考えているところでございます。
#25
○山口(俊)委員 いろいろお答えをい。ただきましたけれども、私もある意味でこの定期借地権というのは今回の改正の目玉ではないかというふうな気持ちもいたしておりまして、これが十分機能を果たし得るように御期待をさせていただきたいと思うわけであります。
 これまで聞いたところによりますと、今次の改正につきましては相当バランスのとれたもののようにも思えるわけでありますが、にもかかわらず、最初に申し上げましたようにその評価にはかなり差があるわけであります。特に貸し手と借り手という当事者からの批判が激しい面もあるわけですけれども、実はこのような当事者による批判というのは、制度を変えるときには必ず出てくるわけでありまして、しかも、それぞれの利害、計算の上に立ったものが大変多い。変な例えですけれども、今回国会に提案をされております政治改革、あれもちょっとそういうふうな感じがするわけです。ですから、そうした批判もそれなりに割り引いて考えていっていいのではないかというふうにも思っておりますけれども、ただ、その中でも必ずしもそうでない批判も確かにマスコミを中心にあるわけでありまして、そのような批判についてどのようにお考えになっておられるのかを次にお伺いをいたします。
 最初に第一点として、いわゆる普通借地権の更新後の期間を今回十年というふうにするわけですけれども、これはいろいろ御批判もありました。その内容は申し上げませんけれども、これは短過ぎるのではないかというふうなことが第一点であります。
 第二点としては、今もお話がございました正当事由についての改正、これはいろいろな判例の積み重ねというお話がございました。ということは、実質が変わらないというふうなことであれば、かえって混乱を生ぜしめる弊害の方が大きいのではないかという御批判がございます。これについて。
 第三点が、契約の更新時に、新法の適用がある普通借地権とか定期借地権への切りかえが強要されるのではないかという御心配もございます。この点につきまして。
 第四点が、定期借地権は事業用に利用されて住宅の供給にはつながってこないのではないか。先ほどお話もございましたそういった心配もあるわけであります。
 そして第五点として、市販の契約書による合意によって調停条項による裁定が強行されてしまうのではないかという御心配もあるようであります。
 以上五点、いろいろな批判、ほかにもありますけれども、特に私もなるほどと思う批判でありますので、お答えをいただきたいと思います。
#26
○清水(湛)政府委員 まとめてお答えいたしたいと思います。
 まず第一点の、普通借地権の更新後の期間を十年とするのは短過ぎるのではないかという御指摘でございます。
 この期間を十年といたしました趣旨は、現行法では普通建物の借地権については二十年、堅固のものについては三十年ということになっているわけでございますけれども、普通の借地人を想定した場合の借地契約というのは実質的にはほとんど全部二十年になっておるのが実情でございます。二十年という借地権の存続期間を前提として二十年、二十年、二十年と、二十年目、四十年目、六十年目という形で正当事由の有無を判断することになるわけでございます。三十年というのもございますけれども、これは大体ビルとか堅固の建物の問題でございますので、ちょっと横に置いて考えたいと思います。
 そういうような借地権でございますけれども、建物の態様とかそういうものを考えまして、借地権の存続期間は一律に三十年である、木造も二十年ではなくて三十年というふうに基本的な期間を限定いたしまして、三十年は貸す。しかし、三十年たったら、地主の正当事由というものがあればやはりこれは基本的には地主の方に返すことになるわけですけれども、その正当事由があるかないかの判断を、三十年という期間はとにかく保障するわけですから、その後十年刻みで正当事由があるかどうかという判断をするということはやはり公平ではないのか。正当事由があれば土地を返してもらえるのですけれども、二十年たって、それが次に四十年目になって、その次に六十年目にならないと判断してもらえないということでは地主側の事情を借地関係に反映することができない、こういうようなことがございまして、地主、借地人の間の権利関係の合理的な調整、公平な調整という観点から十年というふうにさせていただいたわけでございます。
 ただ、十年としていただきましたけれども、これは先ほども申し上げましたけれども、正当事由が必要でございますから、正当事由がなければ十年、十年、十年と次々と、結果的には半永久的に続くこともあるということは現行法と変わらないわけでございまして、そのことについては御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 それから正当事由についての改正は、実質が変わりないというのであれば混乱を生ぜしめる弊害の方が大きいのではないかという御指摘、現実にはこういう批判もあるわけでございます。
 このことにつきましては、先般来申し上げておりますが、判例理論をそのまま法文化したものであるということで申し上げているわけでございますが、例えば仮にこの批判を正当として、では、正当事由に関する規定を現行法どおり自己使用の必要性その他の正当事由という条文のままにしたら、逆にどういう解釈が起こってくるのかということでございます。
 先ほども申し上げましたように、昭和十六年改正の当時におきましては地主側に相当有利な解釈が行われました。つまり、地主の方に自己使用の必要性があればそれはもう返してもらえるんだというようなことすら言われた時代があるわけでございます。しかし、昭和三十年代あるいは四十年代の判例の集積によりまして、貸し主側だけの自己使用ということではないんだ、借り主の方の必要性とかそういうものを総合勘案して、こういうことも判断し、こういうことも判断して総合的に正当事由というものは判断するんだということで、やっと判例というかそういう解釈理論というのが安定してまいったわけでございます。地主側からいたしますと、現在の正当事由の規定を離れた正当事由判例理論が形成されているということになるのかもしれませんけれども、私どもは必ずしもそう考えているわけではございませんが、そういうような問題提起がございます。
 そういう状況で、これは新しく条文を書きおろすわけでございますから、現在の時点で同じような条文を仮に書いたといたしますと、一つの立場をとる方々は、貸し主側に有利な解釈論を展開する口実を与えることにもなってしまう、そういう心配も実は立案の段階では指摘されたおけでございまして、そういうことも踏まえまして、もし書くとすれば、しかも一般国民にわかりやすい形で書くとすれば、今の判例理論が到達したところの主要な要素はすべて網羅するという形で条文は書かざるを得ないということで、前々から申しておりますように、判例理論を集約した形で条文をお願いしたわけでございまして、決して混乱を生ぜしめることにはならないというふうに私どもは考えているわけでございます。
 ただ、あるいは誤解をされて、そのことで不安に感じられる方がある、あるいはそういう不安に乗じてけしからぬ行為をする方があるとすればこれは非常に残念なことでございますので、私どもは、その趣旨につきましては十分に御理解をしていただけるように、無用な混乱が生ずることがないように努力をしてまいりたいと考えております。
 それから三番目の、契約の更新時に新法の適用がある普通借地権に強制されるのではないか、こういう批判でございますけれども、これは既存の借地・借家関係については適用はございませんということをはっきり言っておるわけでございますから、借地人、借家人としてはそういう地主の要求に対しては断固として断ればよろしいわけでございまして、決してそれに応ずる必要はございません。このことはあらゆる機会を通じて、私ども、現在の借地人、借家人の方に御理解をしていただきたい。地主の要求に応ずる必要は全くないわけでございます。あるいは地主の脅迫あるいは不当な利益誘導に惑わされて今までの契約を捨てて新しい契約に切りかえるということがないとは言えないかもしれませんけれども、そういうものにつきましては、もし裁判所の争いになりますと、その切りかえをした事情等を詳細に判断して、そういう切りかえは無効であるということに多くの場合はなるであろうというふうに私どもは考えているところでございます。既存の借地・借家契約には新しい法律の規定は適用しないという形で私どもは不安を除去したつもりでございますので、そのことについて十分御理解を賜りたいと思います。
 それから、市販の契約書による合意によって調停条項による調停の押しつけがされるのではないかという御指摘でございますが、私どももこの調停条項による裁定の制度、これにつきましての合意そのものは調停の申し立て前にされた合意でもいいということは考えているわけでございます。しかしながら、調停条項による裁定の制度というのは、あくまでも調停を前提とする、つまり話し合いをして、何回も何回も調停委員会において話し合いをして、やはり話し合いでは当事者のメンツその他があって一致点に至らない、しかし調停委員会でそういう調停裁定条項を示せばそれに従うということが認められる場合にこういうことを行うわけでございまして、当然のことながら、調停委員会はこういう調停条項による裁定をする際には、両当事者から、果たしてその合意が本心に基づくものであるのかどうか、どういうわけでこういう合意をしたのか、今回その合意に基づいてこういう調停条項による裁定をするけれどもそれでもよいのか、こういう意思確認は当然するわけでございまして、現行法の鉱害調停あるいは商事調停においても現にそういうような解釈、運用がされているわけでございます。ですから、基本的にそういう調停条項による裁定をする際には本人の意思確認をする、そのときに本人が、形式的には書面でそういう合意をしておりますけれども私はもうそれに従う意思がない、一種の撤回的な行為をいたしますと、もはや調停委員会はそういう調停条項による裁定はできませんので、決して調停による押しつけということにはならないというふうに私どもは考えているわけでございます。その点についての危惧は全くないというふうに思うわけでございます。そういうふうに考えております。
 御質問で、もし落とした点がございましたら後ほど答弁いたします。
 以上でございます。
#27
○山口(俊)委員 まとめて御質問したわけですけれども、ともかくいろいろな批判にそれぞれ今お答えをいただいたわけです。それはそれで、こうして直接お話を聞きますと、ある程度いろいろな。批判も、私自身が持っておった疑問につきましても納得がいくわけでありますけれども、さて家に帰って、いろいろな機会でこうした批判の新聞等々が目に入りますとまた不安にもなってくるわけでありまして、恐らくそれが一般の方々の素直な感覚じゃないかというふうな気持ちもするわけであります。やはり十分な理解をもっと得ていく必要があるんじゃないか、一誤解のあるままでこの新しい法律が施行されますと大変混乱をするおそれもあるわけであります。
 そこで、広く社会的な理解を徹底をするためにも、この改正の趣旨の広報というのは今御努力をなさっておられるわけでありますけれども、同時に、紛争解決のためにもっと努力をしていく必要もあるんじゃないか。法務省自体で何かをやるというのは大変難しいであろうと思いますので、例えば今もありますけれども地方自治体の相談窓口、いわゆるトラブル一一〇番というふうな面からも、より充実するように働きかけていただきたい、これはお願いをいたしておくわけであります。同時に、いろいろ土地対策的な面からも、各省庁それぞれ若干のニュアンスの違いがあるような話も聞いております。そうした意味から、せっかく大臣もお見えでありますので、大臣も閣議とかいろいろな機会で積極的に発言をお願いをいたしたい、これもお願いをいたしておきたいと思います。
 もう時間もありませんし、せっかく大臣、何もお答えにならないままでは申しわけもございませんので、一つだけ最後に締めという意味でお伺いをいたしたいわけであります。
 ともかく、この施行がちゃんとできて、その後、法律が十分機能した場合に大変よい結果が生まれるのではないかと実は私も質疑を通じて感じておるわけでございますけれども、最後に、今回のこの改正の趣旨、そしてその成果といいますか一そうしたものに対する決意のほどを大臣からいま一度お伺いをして締めくくっていただきたいと思います。
#28
○左藤国務大臣 まず最初に、先ほどのお尋ねの中で、こうした改正内容につきまして十分広報に努力するということでありましたが、特に関係の官庁とも十分協議をいたしましてそうしたところのそごがないようにして、この広報の実をあらしめなければならない、このように考えているところでございます。
 次に、私に対してのお尋ねとしまして、今回のこの法案の改正の趣旨といったものはどこにあるのだということを締めくくりとしてお話をするようにということでございますが、現行の借地・借家法が借地・借家をする需要の多様化と申しますか、そうした社会経済情勢の変化に対応し切れないものになっておるという点に着目しまして、特に借地・借家の存続を画一的に規定しているということは貸そうとする者にとっても借りようとする者にとっても障害になっているという点が基本的な認識でありまして、そういった点を少しでもなくしていこうということから今回の改正というものに取り組んでおるわけでありまして、そのために定期借地権とか期限つきの借家といった新しい類型の借地・借家関係を導入する、そして存続期間とか更新等につきましても当事者間の調整をより公平かつ合理的にしようというのが今回の改正の中心的な課題である、このように考えているところでございます。
#29
○山口(俊)委員 素人っぽい質問に懇切丁寧にお答えをいただきまして感謝をいたしております。
 以上で終わります。ありがとうございました。
#30
○伊藤委員長 赤城徳彦君。
#31
○赤城委員 引き続きまして御質問をさせていただきます。
 先ほど山口委員から最初に御指摘がありました一ように、法律というものは決して一部の専門家のためにあるわけではございませんで、特にこの借地借家法、大変多くの貸し生あるいは借り主がかかわってくる、しかも生活にかかわってくるわけでございます。これは社会的にも経済的にも大変大きな影響を持つ基本法ともいうべき法律でございますので、私もその基本的な部分について御質問させていただきたいと思います。
    〔委員長退席、田辺(広)委員長代理着席〕
 まず最初に、借地・借家法の役割といいますか、その守るべき保護法益といったものについてでございますけれども、この法律は大正十年にできまして、当時、明治の末から大正の初めにかけましては地価が大変高騰していた。土地、建物の利用者が追い立てられる、そんな実情があった。そこで借り主の方の一定の権利を保障して、土地、建物の利用関係を安定させなければいけない、そういう意味でできた。本来の民法の契約自由という原則に対して、生活原理とか弱者保護、そういった形で民法の契約自由というものを修正していく、そういう社会的な意味づけがあったのではないかな。
 そこで今日の状況を見てみますと、バブル経済によりまして地価が非常に高騰した。あのときに地上げが横行して、ごく一般の市民が、借りていた家を追い出される、あるいは暴力的な行為、おどし、そういったもので追い立てられていった。そういうふうな実情を聞くにつけて、昨今いろいろなニーズの変化、時代の変化があると言われますけれども、今なお借地・借家法というものが、社会的に経済的に弱い立場にある人、そういう人たちにハンディを与える、貸す側、借りる側の権利のバランスをとっていかなければいけない、そういう意義づけ、土地・建物の安定した利用を図っていかなければいけない、そういう一番基本的な本質部分、それは今でもなお変わらないのではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
#32
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 全く御指摘のとおりでございまして、現在の借地・借家法というのが借地人あるいは借家人の権利の保護、その安定的な形での権利の存続、こういうものを基本的な要素にしておるということでございまして、今回の借地借家法案は、基本的にはそういうスタンスというのは全く変わっていない、こういうことでございます。例えば借地権とか借家権の対抗要件あるいは存続あるいはその更新についての正当事由、そういう基本的な枠組みは全く変えておらないわけでございます。
 ただしかし、大正十年の借地・借家法の制定あるいは昭和十六年の正当事由条項という重要な改正がございましたけれども、その後、社会経済情勢が大きく変わってきたという、特に土地の利用につきましていろんな多様なニーズが出てきたということから、基本は全く変えることなくそういう新しいニーズに対応することができるような手当てをする、こういう意味で、今回の借地法、借家法、これは一本化して借地借家法という形でお願いしておりますけれども、そういうことでお願いしているところでございまして、御指摘のとおりだというふうに考えておるところでございます。
#33
○赤城委員 借地借家法の貸し主、借り主の権利関係の安定を図っていかなければいけない、一番基本的な部分に変更はないんだというお答えでございまして、安心をいたしました。
 その上で、最近は貸す側、借りる側、それぞれいろいろなニーズが出てきた。それに対応して、大分古い法律になりましたので、直すべきところは直し、追加するところは追加するということで改正をしていかなければいけないというお話でございましたけれども、そのニーズの変化ですね。
 貸す側にとってのニーズの変化というのは割とわかりやすいと思うんです。例えばこの土地をいずれ十年後に開発したいというふうに思っていて、その間ただ遊ばせておくんじゃもったいないので、十年間を限って例えばレストランとかパチンコ屋さんとか何かに貸したい、そういうふうなニーズ。それから、今度北海道に転勤になるんだけれども転勤は二年間なんだ、その二年間の間だけほかの人にそこの家に住んでいてもらいたい、二年たったら返してほしい、そういうふうな貸す側の方のニーズというのは割とわかりやすいのですけれども、借り主にとってどのような事情の変化、ニーズの変化があるのかなということであります。
 借り主の方にとりまして、一定の期間だけ借りたい、こういうふうなニーズ、確かに転勤の場合、例えば北海道へ行って二年間だけどこかの家を借りたいという場合ははっきりしていると思うんですけれども、ごく一般的な場合は、期間がはっきりしている、これだけの期間借りたいというふうな場合というのはむしろ少ないんじゃないかな。例えば何年間でこの家はもう出ようと思っていたんだ、単身赴任でどこかへ行ぐんで。ところが家族ができて子供も生まれて、家族はそこへ残していかなきゃならない、もう少しそこを借りたいな、そういうふうな事情の変更といいますかがあって、むしろ、いついつまで借りるというよりも、さらに延ばしたいときは延ばせるというフリーハンドを残しておきたいな、そういうふうなニーズも多いんじゃないかな。
 それから、借り主にとっての利益というのは、直接借り主にとっての利益といいますよりも、貸し主の方が貸しやすくなったんで供給がふえてくるんではないか、あるいは貸しやすくなったんで権利金を余り取らなくても貸してくれるようになるんじゃないかな、そういう反射的な効果といいますか、期待的利益といいますか、そういうものを受けるだけではないのかな。
 一体、借り主にとってどういうニーズの変化があって、借りる側が直接どういうメリットを受けるのか、そういう点についてお尋ねしたいと思います。
#34
○清水(湛)政府委員 まず最初に申し上げておきたいことは、基本的に借地・借家法というのは、借り主の権利の保護と申しますか、その安定的な権利の状態を確保する、こういう基本理念に基づいて制定されているものでございまして、そのことについては全く変わりはないということでございます。特に借家につきましては、今回は期限つきの借家制度を導入しておりますけれども、基本的には変えてはいない、こういう結果になっているわけでございます。
 ところで、借地につきましては、現行法は一律の規制しかしていないわけでございますけれども、そういう基本的な借地関係のほかに、例えば特にこれは定期借地権について言えることでございますけれども、借りる方の立場から見ましても十年なら十年、二十年なら二十年そこで事業をする、その間だけ貸してもらえばいいということで借りたい、そのかわり権利金は非常に安くしてほしいという要請がある。つまり、初期における経費投資というものをできるだけ、土地の権利金とかそういうものじゃなくて施設の方に回したいというようなことを考えて、権利金を安くしてそのかわり期間は短くてそこで商売をしたい、こういうような現実のニーズがあるわけでございますけれども、それに対しまして現行法ではそういう特約をいたしましても無効である。つまり、貸し主の方としては、なるほど十年なら十年、二十年なら二十年たったら返してもらえるという特約をしても現行法ではこれは無効でございまして、そういう約束で貸しても、いざ二十年たつと、私の方はまだ商売を続けていくから返さないと言えば、これは裁判所へ訴えても返してもらえない、こういうことになるわけでございます。
 ですから、貸し主の方からも安心して貸せる、借り主の方でも、もちろん約束は守らなければならないし、そのかわり権利金なんかも安くて初期投資もこれは少なくて済む、それで商売の方に資本も回せる、こういうようなメリットが双方にあるという場合があるわけでございます。そういうものは普通の住宅地ではちょっと考えられないことでございまして、事業用ということに当然なるわけでございますが、そういう意味での典型的には事業用の定期借地権というようなものがやはり必要だ。現行法ではこれは一種の紳士約束、お互いの信頼でやっているわけでございますけれども、いつまでも、二十年もその信頼が続くということはないということになってまいりますと、いざ最後になってくると訴訟になって大変なトラブルになるというようなこともあるわけでございまして、そういうような借りる側の事情あるいは貸し主側も安心して貸せるというようなこと、そういうものをやはり法律的に整備をする必要があるのではないか、こういうようなことから定期借地権制度というようなものを考えた。
 借家につきましても、ですからこの期限つき借家というのは、後でまた細かいお話が出るかと思いますけれども、非常に厳格な要件のもとにいわば例外的に認められているわけでございますが、転勤等によって家をあけたい、しかし現行法ではそれを人に貸しますと、帰ってまいりましてもやれ正当事由があるとかないとかということでトラブルになって、最後には訴訟ざたになってくる、こういうことになるのがある意味においては目に見えているという実情でございますので、結局その場合空き家にしておくとかあるいはただで貸しておく、賃貸借には出さないというような、まあただで貸しておくというような現象が起こってくる。その間、家の管理をどうするんだというような問題も起こってくるというようなことでございまして、一定の厳しい要件のもとでございますけれども、戻ってきたら必ず、一定の期間が来たら必ず返してもらえるというようなものもやはりつくらないと貸す方も困るし、借りる方もちろん三年なら三年たったら返すという前提で借りるわけですから、それを前提としてのいろいろな行動ができるということになるわけで、法律関係を明確にする、借り主、貸し主の法律関係にバラエティーを持たせて、かつ、その法律関係を明確にするということによっていろいろなニーズにこたえることができるのではないか、こういうふうに実は考えているわけでございます。
#35
○赤城委員 なるほど事業用の用地を例えば十年、二十年、期限を限って借りたい、そういうふうなニーズが出てまいる、こういうことは十分予想されるわけでございます。そのときに権利金が安くなるかどうか、ここが非常に決め手ではないかな。これはこの法律が施行されて、その運用を見ていかなきゃいけない。権利金というのは貸し主の側が決めるというふうに、どうしても貸し主が強くなっているんじゃないかなと思うので、そこら辺はぜひうまく運用がいくように。それから一般の宅地の場合、これは一般定期借地権ということで五十年という非常に長い期間でございますので、果たして、五十年の定期だからやはり権利金はちょっと安くてもいいよ、こういうふうに言ってくれるかどうか、そこら辺も見守っていきたいというふうに思います。
 そこで、次の質問になるわけなんですけれども、この改正が施行されてもやはり守られるべき従来からの弱い立場にある借り主、借地・借家人というのはあるわけでございまして、そういう保護されるべき借地・借家人に対しては従前の社会法的な規定が適用される。一方、最近出てきました事業用の用地、あるいはデベロッパーが借りたい、そういうふうな需要、ニーズ、それはほとんど対等の経済主体としての関係にあるわけで、これはむしろ当事者の意思を尊重した契約自由により近いような市民法的な関係で規律する。そういう線引きといいますか、それがはっきりしていればいいのですけれども、今度の改正法というのは、保護されるべき従来の個々の借地・借家人に対してもあるいは事業者、デベロッパーみたいなものに対しても一律に適用される。そこら辺がちょっと問題になるのじゃないかな。
 聞くところによりますと、欧米では事業用の借家と居住用の借家と分けて規律している、そういう例があると聞いておりますけれども、我が国でそういうふうな方法をとれないのかなと思いますが、いかがでしょうか。
#36
○清水(湛)政府委員 借地・借家法、現行法はこれはある意味でそういう区別をしておりませんで、一律に借地・借家人の権利を保護し、その長期安定化を図る、こういうことになっておるわけでございまして、このことは基本的に今回の改正法においても全く変わっていない、こういうことが言えるわけでございます。
 こういう議論がされる過程の中で、それは事業用と居住用というのは何も同じように保護する必要はないのじゃないか、同じような保護というのはちょっと適当な言葉ではないかもしれませんけれども、同じような形での保護は必ずしも必要ではないのではないかというような議論が出まして、欧米に倣って、特に借家についてでございますけれども、事業用の借家と居住用の借家については分けたらどうか。それで、居住用の借家については欧米でも一般の事業用の借家と違ってかなりの保護が与えられておる、事業用の借家については、これは完全に契約自由の原則の領域に置かれておるというようなことがあるわけでございます。そういうようなことから、今回の法案を作成するに至るまでの過程におきましては、そういう制度を日本でも導入すべきだというような意見が一部にございました。
 しかしながら、これにつきましては、日本ではまだ事業用と居住用という、特に小さな事業を家族的に営んでおるというような中小企業というような場面で考えますと、そういうものを完全な形で切り離した形で考えるのは非常に難しいのじゃないか、あるいはまた、これは力関係にもよることかもしれませんけれども、実際は居住用の賃貸借なのに事業用を仮装して契約自由の原則の分野でいろいろなことをするというようなことも考えられるということ、つまり事業用の法規制が居住用の法規制に悪影響を与えるおそれがあるというようなことから、時期尚早であるということで、最終的には採用されなかった考え方でございます。
 そういう先生御指摘のような外国立法例を踏まえた御意見も我が国内にはあるということは、まさに御指摘のとおりだというふうに承知いたしております。
#37
○赤城委員 日本においては、例えば八百屋さんの二階に住んでいる、居住用、事業用が判然としない、こういう例もあろうかと思います。ただ、本来事業用の規定であるべきものが、居住用の分野、そういうところまで踏み込んできてしまう、そういう問題はやはりぬぐい切れないのではないかな。むしろ事業用というものの要件をはっきりさせて、それを取り出していく、そんな方法もあるのではないかなと思いますけれども、これはさらに将来的な課題として検討いただければと思います。
 次に、先ほど山口委員からも正当事由ということについて御質問がありました。この正当事由の中に「財産上の給付をする旨の申出」、こういうのがございます。要するに立ち退き料の問題でありますけれども、これをなぜ規定したのか。これを規定することによって、かえって、これまでは円満に解決されていたのに、今度は立ち退き料を払えば出ていってくれるんだ、立ち退き料を出すから出ていけ、そういうことで新たな紛争の種になるんじゃないかなということも危惧されるわけです。
 先ほどお答えの中に、この正当事由は今まで判例で積み上げてきたものを織り込んだだけです、こういうお話でございました。もしこれまでも判例でそうやってやられていたのであれば、あえてここで正当事由に規定をしなくてもいいんではないか、それを規定することによってかえって紛争の種になるんじゃないかな。
 逆のことも考えられるわけであります。この規定を明確化しただけであれば、判例で積み上げられてきたことを法文上明確にするという意味であれば、逆に今までの契約関係にも適用していいんじゃないか。要するに今まで契約されたものにはそういう規定がなくて、新しい契約にはその規定がある、それによる混乱というのが非常に大きいんではないかなと思うのです。
 なぜこういう規定が必要なのか、これを既存の契約になぜ適用しないのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
#38
○清水(湛)政府委員 借地借家法の一番の問題点は、正当事由条項をどういうふうに理解するかということでございまして、このことについては昭和十六年の法制定当時、あるいはその後の判例あるいは学説でさまざまな議論が展開されてまいったところでございます。今回の法改正におきましては、その正当事由の主要判断要素あるいは副次的な判断要素というものを法文の中に網羅をした。重要なものを網羅をしたという形になっております。
 まず、なぜそういうことにしたかということでございますけれども、一つには、新しい口語体で法律を書きおろす以上、法文を読んで、法律で言う正当事由というのは何であるかということを一般の国民の方々が法文を読んで理解できる、こういうふうにすることがやはり一つの務めであろう。
 それからもう一つには、昭和十六年の正当事由である自己使用の必要性その他正当事由という言葉の解釈については、制定当時にはいろいろな議論があったわけでございます。つまり、例えば貸し主の方に、地主の方に使用を必要とする事情さえあれば、仮に借り主の方で使用を必要とする事情があってもそれはもうそれだけで返してもらえるんだというような議論をなす人もいたわけでございまして、それが昭和二十年代の住宅難、宅地難というものを背景に、やはり両者の公平な事情をしんしゃくして最終的には裁判所が決するんだ、こういうことになりまして、そういうことの中でいろいろな正当事由判断要素というものが出てまいりましたので、それをきちんとした形で法文の中に書き込むことが今後の借地・借家関係をめぐる正当事由をめぐる紛争にも大いに役に立つことではないかというふうに考えられたわけでございます。
 それで、正当事由の判断要素として、例えば財産上の給付、この規定をこの現行法の規定から取ってしまうというようなことになりますと、現在、正当事由の解釈として財産上の給付というものが正当事由を補完する理由として認められるという判例解釈があるわけでございますけれども、場合によっては今度はそういうものではだめなんだというような議論も、新しい条文を前提とした議論というものはまた新しい解釈を生みますから、そこでまたいろいろな議論が出てくる余地というものは十分あるわけでございますけれども、財産上の給付をめぐる従来の判例理論というものを見ますと、借地人にとりましても借家人にとり
ましても、地主、家主にとりましても、ある程度財産上の給付ということをすることによって当事者が円満に解決するという例も多々あるわけでございますから、そういう正当事由の運用の実態というものを踏まえますと、やはり正当事由についての条文を法文に明記するということになりますと、財産上の給付についての規定を落とすということはかえって非常に難しい問題を残すのではないかというような危惧がされたわけでございます。そういうことから、現在の判例の理論を集約した形で正当事由規定を置いた。逆に言うと、現行法をそのまま残すとかえって地主に有利な解釈を生むという可能性すら持っているという危惧があるという指摘もあったということを踏まえての話でございます。そういうことから正当事由条文を書いたわけでございます。
 そこで問題は、そういうことであるならば現在の借地・借家関係にもそのまま適用すればいいじゃないか、全く理論的に考えますとそのとおりだと私どもも実は考えるわけでございます。現に法制審議会の諸先生方は、一致して、正当事由に関する新しい規定は既存の借地・借家関係に適用してもちっとも現在の借地・借家人の不利益になることはないという趣旨で答申をされたわけでございます。しかしながら、こういうことを書かれることによって現在の借地・借家人が不利益になるのではないかというようないろいろな不安が出てきておるという御指摘がございまして、確かにそういうような不安を持っておられる方もあるということでございますので、これはやはり条文の形も違うということから、法律案を作成する段階で、これは法制審議会の答申とは明白に食い違うところでございますけれども、既存の借地・借家関係については正当事由に関する規定は適用しないということにいたしました。しかし、実質的にはそれで違いが生ずると私は思いませんけれども、そのことによって従来の、現に借地人、借家人である方々の不安が一掃されるということであればそれも一つの立法政策であるというふうに思いまして、このような案で御審議をお願いをすることにいたした次第でございます。
    〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕
#39
○赤城委員 確かに、従前の契約関係とそれから新しい契約関係、実質は全く変わらないわけでありますけれども、法文、ここに出てくる文言が違うとやはり何か違うんじゃないかな。どっちに有利かどっちに不利かわからないですけれども、かえってそういう不安を生ぜしめないかな。今回の法改正に当たって、今まで契約関係にある人は全く変わらないんですよ、心配しないでください、そのことを強調する余り、そこら辺の改正前後の契約のずれというものがかえって出てきたんじゃないかな。ですから、今回法改正に当たって、今までのものは変わらないんですよということをすっぱり割り切り過ぎたんじゃないかな。
 そういう例がほかにも、借地権の存続期間、最初は三十年、その後は更新は十年、こうなりますけれども、既往の契約は、堅固なものは三十年、三十年、ずっと三十年で残っていく。今までのものは変わりませんよと言ったために、二本立てで併存してしまうという問題も残ってくるわけでございまして、そこら辺はまた検討いただきたいと思うのですけれども、いずれにしても新しい法律で、今まで旧法はちょっと舌足らずのところがあったのじゃないかなと思うわけですけれども、そういう部分を判例で積み上げてきたものをつけ足してよりいいものにしていく、完全なものにしでいく、これは大事なことだと思います。
 ほかにも新法が判例で積み上げてきたものを取り込んでいるものがあると聞いておりますけれども、具体的にはどんなものがあるか、お尋ねしたいと思います。
#40
○清水(湛)政府委員 細かいところになりますけれども、正当事由のほかに、例えば建物の滅失というのは一体みずから取り壊した場合を含むとか含まないとかいうような議論があったわけでございますけれども、建物の滅失の中にみずから取り壊した場合も含めるとか、あるいは、地代家賃の判定の要素として経済的事情の変動というようなことも判例で言われているわけでございますけれども、そういう要素も法文の中に明記したというようなこと、そういうような点があるわけでございます。
#41
○赤城委員 よくわかりました。
 次の質問でございますけれども、今度賃貸人の不在期間の建物賃貸借の特例というものが設けられたわけなんですけれども、これの趣旨と、それから一定の期間というふうにされていますけれども、この一定の期間が賃貸する時点で確定しなければならないのかという点。それから、転勤とか療養その他の事情とございますけれども、その他の事情というのは例えばどんなものがあるのか、一括してお尋ねいたします。
#42
○清水(湛)政府委員 転勤等の事情によりまして建物所有者が一定期間その建物に住むことができないという場合には、その期間だけ建物を貸して、そして転勤が終わったらまた返してもらえる、こういうようにしていただきたいということが勤労者層を中心として大変要望されていたところでございます。
 しかしながら、そういうことで一定の期間だけに限って、つまり更新を認めない賃貸借関係を認めるということになりますと、あるいはそれが乱用されるというようなこともありますので、そういう確定期限の建物賃貸借につきましては、法文上、転勤とか療養とか親族の介護その他、本人の意思を超えたやむを得ない事情がある、そういうような非常に限定的な事情があるということ、その事情によって建物を生活の本拠として使用することができない期間が一定期間あるというようなこと、そういうような条件を定めまして、賃貸借期間を二足の期間とする期限つきの借家契約というものを認めることにしたわけでございます。
 この場合、一定の期間というのは、これからの将来の話ですから、例えば転勤がちょうど三年になる、場合によっては四年になるということもあるということはあるかもしれませんけれども、そういうある程度の幅のある期間内で確定的に、例えば三年か四年になるかもしれないけれども三年なら三年というふうに、あるいは三年半なら三年半という形で確定の期限を決めてその賃貸借契約をする、こういうことになるわけでございます。現実にはそれが三年半ではなくて三年目に帰ってくるということもあるかもしれませんけれども、その半年はそれはもう我慢していただくということにならざるを得ないということになろうかと思います。
 また、そのほかに、転勤等以外のやむを得ない事情というものとしてどういう例が具体的にあるかということでございますけれども、例えば転勤ではないけれども一定の期間海外留学をする。留学をする人が自分の持ち家を持っているかどうかというのは問題かもしれませんけれども、海外にいろいろな留学をするというようなこと、あるいは定年に備えて勤務地がち離れた自分の生まれ故郷に持ち家を取得したけれども、定年まではそこには住めないというような事情もやむ得ない事情というようなものに入ってくる場合があり得ようかな、こういうふうなこどを考えているわけでございます。
#43
○赤城委員 時間が参りましたので終わりますけれども、既存の契約と新しい契約との適用関係とか、事業用、居住用の関係、いろいろ混乱が予想されるのですけれども、仮にも借りる側にとってこれが改正されたために不利になったということのを、いようにぜひお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
#44
○伊藤委員長 御苦労さまでした。星野行男君。
#45
○星野委員 私は、さきの第百二十通常国会で借地借家法案につきまして質問をさせていただきました。また、今ほど山口委員、赤城委員からそれぞれ借地借家法について御質問もございましたので、本日は民事調停法の一部改正案につきまして御質問を申し上げたいと存じます。
 本改正案の提案理由につきましては、地代家賃の改定をめぐる紛争の解決を直ちに通常の民事訴訟手続によらしめることは、迅速さに欠けるなど必ずしも適当ではない、したがって、民事調停法の一部改正によって、地代家賃の改定をめぐる紛争を調停手続を活用することによって迅速かつ適正に解決することを促そうとするものであるとされております。
 そこで、順次御質問を申し上げたいと存じますが、まず貸し生あるいは地主、家主の方から地代家賃の増額の要求があり、借りている側でこれが納得できないというような場合には、一般的に供託をする、従前の地代家賃額を供託する、こういうことになるわけでありますが、現在この供託の件数は年間どのくらいございましょうか、お伺いいたします。
#46
○清水(湛)政府委員 地代家賃の弁済供託事件の数でございますが、これは地代家賃という明確な区分ではやっておりません。若干推定が入りますが、平成元年には約四十九万件ということでございます。大体ここ数年間この程度の数で推移をしておる。しかもこれは毎月供託をするという前提をとりますと、当事者の数としてはその十二分の一ということになるのではないか、これも推計でございます。
#47
○星野委員 次に、地代家賃の改定をめぐる紛争につきまして調停の申し立てあるいは本裁判の請求があるわけでありますが、年間調停申し立ての受理件数あるいは本訴の受理件数は大体どのくらいになりますか。あるいは、調停が不調になりまして本訴に移行する調停事件の割合はどのくらいかお聞かせいただきたいと思います。
#48
○今井最高裁判所長官代理者 まず新受件数について申し上げたいと思いますが、平成二年度の受件数でございます。地代家賃の増減額請求事件、平成二年度でいきますと、訴訟では千九百六十六件ということになっております。それから調停の方でございますが、調停は千八百三十一件、こういうことになっております。
 それから調停が終わりましてそれが不調になって訴訟になったのはどれぐらいか、こういうお尋ねでございます。実はこれにつきましては、調停が不調になった後の追跡調査ということは行っておらないものですから正確な統計はございませんけれども、調停の成立率というところから推定。して申し上げたいということでございます。
 この調停の成立率でございますが、地代家賃について特に調べたものはございませんが、宅地・建物についての調停というのはございます。その事件で調停が成立するのは五二・三%という率になっております。約半分でございます。それから不成立、調停ができなかった。これが二六・九%、大体四分の一ということになっております。それから調停をやったけれども途中で調停手続をやめたという取り下げでございますが、これが大体一九・七%、約二割、こういうことでございます。
 したがいまして、訴訟に行きますのは、今申し上げた不成立、それから取り下げ両方合わせまして約四五、六%ということになりますが、そのうち幾らが回るかというのは、実は申しわけないのですが、そういう統計はございません。中には調律ができなかったのであきらめたというのもございましょうし、いややはり調停ができなかったから訴訟に行ったというのもあるであろう、こういうことでございます。
#49
○星野委員 そこで、地代家賃の紛争をめぐる裁判についてでございますが、訴えの提起から判決の確定まで、平均大体どのくらいの期間かかっているものでございましょうか。
#50
○今井最高裁判所長官代理者 訴訟の審理期間でございます。これも平成二年度の数字で申し上げたいと思います。
 実は、私どもの統計で地代家賃の改定事件のみについては統計をとっておらないものですからこれもやや推定になって申しわけないのですが、裁判所の方の統計では、その他の金銭を目的とする訴えという項目がございます。その他の金銭というのは何かと申しますと、例えば貸し金だとか売買代金とか損害賠償という非常に典型的なものでございまして、それ以外の金銭を目的とする訴えということでございます。地代家賃もそういうことになります。
 それでいきますと、簡易裁判所の事件では平均審理期間が三・五カ月ということであります。それから地方裁判所の事件では十一・七カ月、こういうことになっております。もっともこれは欠席判決も含めた事件でございまして、対席判決、いわゆる当事者が争った事件、恐らく地代家賃の事件は争った事件が多いと思いますが、それを申し。上げますと、簡易裁判所の場合は七・二カ月、それから地方裁判所の場合は十八・二カ月というふうになっております。これは第一審ということでございます。
 それがどの程度控訴されるかということはちょっと統計もございませんのでわかりませんけれども、第一審だけでもこれだけの時間がかかっておるということでございます。
#51
○星野委員 私も実は弁護士実務を十年ほどやりましておよそのことはわかっているつもりでありますが、地代家賃の改定、普通は増額の問題でありますが一審で判決が確定しなくて控訴するというようなケースも結構あって、まあ二年、三年あるいは長いのはもっとかかるというふうに承知をいたしております。いずれにしても、地代家賃の紛争が現行制度のもとでそういう長い期間がかかっているということは、借り主の方ではその間地代家賃の額を供託するという厄介な手続をしなければならないということで、これは借り主、貸し主どちらにとりましても好ましいことではない、そう思うわけであります。いずれにしても、地代家賃の改定をめぐる紛争をできるだけ迅速に解決する必要があるということはよくわかるわけであります。
 ところで、本改正案は、このような地代家賃の紛争を迅速かつ適正に解決することを促すために、調停前置主義と調停手続における仲裁的な手続を採用いたしているわけであります。すなわち、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、申し立てにより事件の解決のために適当な調停条項を定めることができるものとし、この調停条項を調書に記載したときは調停が成立したものとみなして、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有するものとする、こういうことになるわけであります。
 そこで第一に、現行の民事調停法の手続とその効果及び運用の実際あるいは実態と申しましょうか、そういうことについて御説明をいただきたいと思います。
#52
○今井最高裁判所長官代理者 現行の民事調停の実際ということでございます。
 もう委員つとに御承知のとおりでございますけれども、御質問でございますから申し上げますが、民事調停の申し立てがございますと、裁判所の方では調停委員会というものを構成するわけでございます。これは裁判官一人と調停委員が普通は二人ということでございます。いろいろな調停委員がおられますので、それぞれの事件にふさわしい調停委員を選ぶ、例えばこういう地代家賃の問題でございますと、例えば不動産鑑定士というような専門的な知識を持っておる調停委員をできるだけ選ぶようにするということでございます。
 そういたしまして当事者を呼び出すわけでございます。その上で当事者からいろいろ事情を聞く、従前の経過を聞く。それからいろいろな書証でございますが、契約書だとか従前の家賃の増額の経過というものを聞くわけでございます。場合によっては鑑定のような証拠調べもやる。そういうことでいろいろ事実を調査しまして、その上で事実がわかりましたら当事者の希望も聞きまして、調停委員会、裁判官、調停委員三人で合議をしまして調停案をつくる。
 それから説得という段階でございます。当事者に対してこの案ではどうだろうかということでいろいろ協議をして説得をするわけでございます。そこで説得ができれば調停が成立ということでございます。それが先ほど申し上げました五二・三%という数字になっておるわけで、成立いたしますとこれで円満解決。この調停が成立しまして、それを調書というようにつくりますと判決と同じ効力があるということで、もう争いがなくなる、こういうことでございます。
 それから、残念ながら説得に努めたけれども合意に至らなかったという不成立、あるいは当事者が最後までやらなくても調停の手続はこれでおしまいにしましょうといって取り下げをするような、場合もございます。そのような場合には調停手続としてはもうそれではおしまいになるのです。
 ただ、若干ございますのが、民事調停法の十七条に「調停に代わる決定」という制度がございまして、これは非常に数は少ないのですけれども、調停委員会がこれでいいだろうといった場合にはこういう調停にしなさいという「調停に代わる決定」という制度がございます。ただこれは、そういう決定をしましても当事者が自分の方は異議があるということで異議を申しますと、それで効力がなくなってしまうという非常に弱いものでございます。そういうことで調停はだめになる、こういうことでございます。
 それから、そのほかに今問題になっております調停委員会が調停条項を定めるという制度がございます。これは現在は商事調停及び鉱害調停に限って認められておる、こういうことでございます。
 それで、その調停につきましてどれぐらい時間がかかっておるかということも申し上げたいと思います。
 宅地・建物調停につきまして、平成二年度の平均審理期間でございますが、調停では平均で六・四カ月、約半年、こういうことになっております。
#53
○星野委員 この民事調停制度、現在の制度におきましては合意が成立しない限り調停による紛争解決ができないわけでありますし、先ほどお話がありましたように調停の成立する割合が五二・三%ということで、しかも調停には相当の期間かかる、こういうことでございますが、結局現在の制度のもとでは、調停が不調になった場合改めて本裁判に移行する、本訴を提起するというケースも正確ではありませんけれどもかなりの数に上っている、こういうふうになっているわけであります。したがってそういうケースにおきましては、調停を先にやったけれども結局は本裁判にかかりまして、調停の期間だけ紛争の解決が長引く、こういうことにもなるわけであります。いずれにしても、そういうことでありますので本改正案では地代・家賃の紛争を迅速に解決するために仲裁的な手続を採用したものと考えるわけでありますが、当事者が紛争を解決するために、この改正案が成立した場合にまず調停申し立てをする、こういうことになるわけであります。
 そこで、第一次的には調停委員会で当事者間に話し合いがつくように鋭意努力をされることになるのだろうと思うわけでありまして、第一次的には調停委員会の調停によってそういう紛争が解決されることが想定されますし、あるいはそれが望ましい、こう思うわけであります。したがって、改正案に言うところの当事者間の「調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意」というのは、理論的には、第一次的な調停委員会の努力にもかかわらず、当事者間に合意が成立しないとか合意が適当でないということが書いてありますけれども、そういう場合に初めて当事者間の調停条項に服する旨の合意が必要になってくる、そういうふうに解釈をするのが素直だろう、そう思うわけであります。また、そうしなければ調停委員会の本来の調停の努力が意味がないということになるわけでありまして、民事の紛争というのは当事者間の話し合いよって、あるいは合意によって解決することが好ましい、こういう民事調停の制度のいい面が失われてくる、こういうことにもなろうかと思うわけであります。
 したがって、この「調停条項に服する旨の書面による合意」というのは、そういう段階でやはり当事者間から改めて取りつけるということが適当ではないのか、こういう気がするわけであります。同時に、何年か何十年か前の契約時点における市販の印刷した文書にそういう合意条項があったとしても、調停係属後の当事者を拘束する効力はないのではないか、そんな気がするわけでありますが、この点はいかがでありましょうか。
 あわせて、「申立てにより」とありますが、その申し立てはどの段階で、どういう手続によるものでありましょうか、お答えをいただきたいと思います。
#54
○清水(湛)政府委員 この当事者間に合意が成立する見込みがない場合、または成立した合意が相当でないと認める場合には、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、申し立てにより調停委員会が一種の仲裁的な調停条項を定めて、それに服する、こういうことになるわけでございます。
 もちろんこの合意というのは、そういう調停委員会の調停条項に服する合意というのは、調停委員会がそういう調停条項を示す段階において有効に存在していなければならない、こういうことに当然のことながらなるわけでございます。現行法の類似の商事調停、鉱害調停におきましても、そういう趣旨から、調停委員会はこういう仲裁的な調停をする際には当事者を尋問しなければならない。なぜ、どういう事情でこういう合意をするに至ったのかというような、合意をするに至った理由、その事情、背景等について審尋をして、最終的にこの仲裁的な調停をするのが相当であるということであればそこで初めてする、こういう形になっているわけでございます。
 私どもといたしましては、最終的なこういう裁定による調停をする段階において当事者の意思の再チェックが当然にされるという前提のもとに、具体的な、例えばこの当事者の合意というのは調停申し立て前のものであってもそれは合意としてよろしいでしょう、こういう趣旨のことを従来から考えているわけでございます。例えば借地契約、これは既存のものについてはこういう制度がございませんので、これから借地契約を締結するというような場合にそういうことを定型文言で書くというようなことが出てくるのかもしれませんけれども、それが本当に当事者の真意に基づくものであれば、それは調停申し立て前の合意であっても有効ということは理論的に出てくるかと思います。
 しかしながら現実の問題としては、あるいは理論的な問題としてもそうでありますけれども、現実的に調停の申し立てがされて、そしていよいよ、十分に話をしたけれども最後にはやはり調停委員会で裁定をしてください、こういうことが当事者の意思としてないということになりますと、これは一種の合意の撤回と見るか、あるいは、いろいろな見方はあろうかと思いますけれども、調停委員会としてはそういう裁定はできない、こういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、当事者の意思は十分に尊重される、こういうふうに思っております。
#55
○今井最高裁判所長官代理者 調停の運用の実際にもかかわりますので、裁判所ではどういうふうになるかということを申し上げたいと思います。
 調停では、先ほど申しましたように、調停案をつくりまして当事者をいろいろ説得するということでございます。ただ、説得をしましたけれども、非常にいいところまではいったけれどもまだもうちょっとのところで調停合意が成立しないという例がございます。そのようなときに、せっかく調停でいろいろ努力をしたということで当事者双方ともこの調停の手続をむだにしたくないというような場合がございまして、その場合にこのような裁定の制度というのが使われるのではないかと思います。
 具体的な手続としましては、こういう調停条項を定めてほしいという申し立てがございますと、現在の商事調停では最高裁判所の規則で当事者を審尋しなければならない、どういう規定がございます。もし法律ができますと、今度の賃料の事件につきましても同じような規定を最高裁判所規則で設けることになろうかと思いますけれども、そこで当事者双方に調停条項を決めようと思うけれどもどうかということを聞きまして、その際に当事者の希望も聞きます。あるいは合意があると言っているけれども本当に合意があるのかどうかというようなことを聞きまして、その上で当事者がぜひそういうふうに決めてほしいといった場合にこのような調停条項が定められるであろうというふうに考えておるわけでございます。
#56
○星野委員 先ほどの山口委員の御質問についても、その調停条項に服する、要するに仲裁にお任せするということについては当事者の意思を確認するというお話がございましたし、また、今ほどの御答弁にも審尋ということが具体的に示されたわけでございますが、この法文に、当事者間の調停条項に服する旨の書面による合意、わざわざ書面による合意とうたっている以上、今お話しの、調停を一生懸命やってみたけれどもなかなか話がつかないが、もう少しのところで話がつきそうだ、それは結局当事者間から任せてもらって調停委員会で裁定を下す、そういうことによって紛争を早期に終結をさせる、こういうことがベターだ、それはそれで結構だと思うのですけれども、それならばやはり当事者からその調停条項に従いますというような書面をとることは簡単なことですから、この法文にある当事者間の書面による合意というのはその段階で改めてとった方が、その復そういう調停委員会に任せたことはないんだというような、仮にそういうふうな異議申し立てというか争いが起きないとも限らないわけでありますから、そういう争いを防ぐためにもそこできちっと書面で当事者の意思を確認した方がよりベターだ、こう思うわけでありますが、いかがですか。
#57
○清水(湛)政府委員 私ども立案の段階におきましては、結局この調停条項による調停というのは、いわゆる仲裁とは違いまして、互譲の精神に基づく話し合いがある、こういうことをまず前提として、話し合いがつかないから最終的にこの調停条項による調停というものをするんだ、こういうことになるわけでございますから、その段階で当然に当事者の意思確認、調停条項に服するかどうかということの意思確認はするという前提で、実は先生御指摘のように、調停申し立て後の書面に何も限定する必要はないのではないかというようなことを考えたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういうことをする段階にはやはり当事者を審尋してその意思を確認するということが必要でございますので、先生御指摘のような形に、つまり調停申し立て後の合意書面に限定するというふうにいたしましても実質は変わらないのではないかというふうには考えております。
#58
○星野委員 そうすると、くどいようでありますが、ここに言う書面による合意というのは、当初の借地契約書あるいは借家契約書、そういう契約書の中に、紛争が生じた場合調停委員会の調停条項に服するというようなことが書いてある場合も指すわけでありますか。
#59
○清水(湛)政府委員 形式的には私ども指すという、この合意の書面に含まれるという解釈をしているわけでございますけれども、しかしそれは調停の申し立てがあって各種の調停が費やされて、いよいよ、では調停条項によるいわば裁定をしようという段階で当事者を審尋するわけでございますが、この審尋の規定は当然本件についても同じような規定を置くことを考えているわけでございますけれども、その段階で当事者の意思はチェックされるということを前提にしたわけでございます。
 しかし、多くの場合、この借地契約あるいは借家契約にいわば例文的にその種のものが書き込まれていて契約書に判こを押しているというような場合には、いわゆる例文解釈としてその効力が否定されるというような例もあるわけでございまして、そういうことであるならかえって法律関係が明確になるということもそれは十分考えられることでございまして、調停申し立て後に作成した書面に限定してもいいんではないかという御指摘はそれなりに非常に理由がある考え方ではないかなというふうには私は今のところ考えております。
#60
○星野委員 大体手続もわかりますし、また審尋によって当事者の意思を確認するというような御説明もそれはそれで子とするわけでありますが、そのあたり慎重な御配慮が必要ではないか、そう思うわけであります。
 いま一点、先般の当委員会の中で、この改正案による言うなれば仲裁的なことによって紛争の早期解決を図るということは当事者の裁判を受ける権利を奪うことになりはせぬか、こういうお話もあったわけでありますが、しかし、この調停条項に服する旨の合意がなければ、しかもまだ、当事者間に合意が成立しなければ当然調停は不調ということになるんだろうと私は思います。そうなった場合は、いずれにしても当事者は本裁判を受けようと思えば訴えの提起をすればいいわけで、その権利まで奪うものではない、そう思うわけでありますが、その点いかがでございましょうか。
#61
○清水(湛)政府委員 真の意味での合意がないのにこの裁定がされたということになりますと、これは私どもは当然無効であるというふうに考えております。それから、その合意をしないということもこれは当然自由でございまして、この合意がなければ調停不調ということで本来の訴訟手続に戻るということになるわけでございますから、決してこれが憲法違反だとかなんとかということにはならないというふうに考えております。
#62
○星野委員 わかりました。
 いずれにしても、この民事調停法の一部を改正する法律案によって地代家賃の紛争を早期にしかも適正な解決を図ろう、こういうことでありまして、これはぜひ成立をさせなければならない、そう考えるわけでありますが、運用に当たりましては、今申し上げたような危惧のないように慎重な配慮を、また最高裁判所の規則等でお定めいただけるようお願いをいたします。
 以上であります。終わります。
#63
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
 午後一時十八分に再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十八分開議
#64
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後一時十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
#65
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小森龍邦君。
#66
○小森委員 先般に続きまして質問をさせていただきます。
 先日公聴会が行われまして、数々の参考になる御意見を賜りました。そこで、その際出てまいりました全国貸地貸家協会事務局長の藤井公述人のお話の中にありましたことで、この際民事局から承っておきたいと思いますから、お尋ねをしたいと思います。
 それは、一九四一年、昭和十六年に正当事由なるものが法律に明記をされました。その法律の改正の審議が行われておるときにいろいろな項目が正当事由ということで言われたようでありまして、自己使用というのはもちろんでありますが、土地の現状変更とか自己の家族、親族が使用する場合は正当事由の中に入るということの提案の説明があったが、その後の司法判断は判例としてはそうなっていない、まことに残念だという意味のお話がございました。
 それは立場によってそれが残念ということになるわけでございますが、私がお尋ねしたい向きは、つまり、この立法を意図された法務省民事局の考えと、それからその法律というものをもとにして司法の判断をする裁判所の判決の内容というものがどうして食い違うのであろうか、その辺のところをちょっとお尋ねいたしたいと思います。
    〔委員長退席、星野委員長代理着席〕
#67
○清水(湛)政府委員 昭和十六年に、自己使用の
必要性その他正当事由がないと借地契約の更新を拒むことができない、こういう規定が入ったわけでございます。時あたかも、大正十年に借地法が制定されましてその際借地権の最低存続期間は二十年とされたわけでございますが、昭和十六年がちょうどその二十年の時期に当たる。二十年ということで制定された借地契約が、さらに存続すべきかどうかということがその時期に問題になりまして、結局正当事由がなければということで、昭和十六年の改正が借地人を保護するためにされたということになるわけでございます。
 その際、自己使用の必要性その他の正当事由というものにつきましては、文字どおり貸し主の方で自分で使用する必要性というものがあれば、借地人の方にそのような必要性が同時に存在してもその土地は正当事由があるということで返してもらえるというような解釈がある意味においては行われたというようなことも聞いているわけでございます。しかしながらその後、借地関係あるいは借家関係というようなものについていろいろな戦後の住宅難と。いうようなものも大きな影響を与えたというふうに思いますけれども、基本的にはやはり、正当事由があるかどうかということを基本にして判断すべきだということになり、正当事由というのは一体何であるのか、それはやはり借地人、借家人の相互の事情を総合的に勘案してその有無を決定すべきだというふうに判例の動きがなってきたわけでございまして、そういう考え方は現在においては定着をしておるというふうに私どもは思うわけでございます。
 その昭和十六年当時の立法の考え方と現実の運用が違うのではないかというような御指摘もある意味においては可能な面もあろうかと思いますが、しかしながらやはり借地・借家関係というような継続的な法律関係、そこに居住をしている人の生活にかかわる最も基本的な法律関係というような観点から考えてみますと、判例理論で形成されたような正当事由の考え方というものがやはり本来法律が予定しておる正当事由であるというふうにも私どもは考えられるのではないかというふうに思っているところでございます。
#68
○小森委員 そのときの事情によってそうなるという御説明でございますが、事実の問題として、当時の民事局長は正当事由ということについて、先ほど全国貸地貸家協会事務局長の藤井公述人が列挙されたような、例えば自己の家族、親族が使用する場合も正当事由だと言ったのに判例はそうなっていないという公述がございましたが、どのようなことを当時の民事局長は提案説明の際に言われたか、ひとつ項目だけ挙げていただけませんでしょうか。
#69
○清水(湛)政府委員 当時の立案担当者と申しますか、当時の民事局長の考えと申しますか、私どもが承知している範囲内であればでございますが、自己使用の必要がある場合であれば更新拒絶等は有効であるというふうに解していたというふうに言われているわけでございます。
 なお、正当事由のある場合の例といたしましては、賃料の断続的な不払いがある場合、あるいは土地の現状変更のような用法違反の場合、無断譲渡があった場合、貸借人が破産した場合などが挙げられ、そういうような事情がある場合にはやはり正当事由があるということで返還要求をすることができるというような解釈がされておったというふうに理解しております。
#70
○小森委員 自己の家族、親族などの使用ということをもし正当事由に認めれば、いろいろ理屈がついてだんだんこの正当事由の幅が広くなって、現に借りてそこに住んでいる人は追い立てられる、非常に不利益な目に遭うことになるわけですが、この間の公述人のお話を聞いておりますとそこまでのことを言われておるのですが、そんなことは当時の民事局長は説明のときに言われてないのでしょうか。
#71
○清水(湛)政府委員 当時の民事局長の説明あるいは国会の審議録を見ましても、絶対的に貸し主側だけの事情でいいんだというふうには必ずしも言っているわけではございませんで、そういう意味で当時の立法事務担当者が正当事由についてどう考えたかということは、必ずしも断定的にこうであるということは言いがたいような面があるように思います。
#72
○小森委員 私が尋ねたことにストレートに答えていただきたいと思うのですが、いかなる場合だって片方だけの事由ということではいかぬというのはそれは常識のことなんで、恐らく当時の民事局長もそういうことは言われておると思うけれども、つまり正当事由の一つの項目として自己の家族あるいは親族が使用する場合も正当なんだということになると、自己ということが血縁関係者のところまで広がりますから、それで借りておる者は不安定な思いをしなければならぬということになるわけですから、そんなことを言っているのか言っていないのか、これを御答弁いただきたいと思います。
#73
○清水(湛)政府委員 自己の家族とか親族に使用させる必要がある場合というのは、その他の事情と総合的に勘案してそういうものが判断の一要素にはなり得る、それだけで、つまり家族とか親族に使用させる必要があるということだけで自己使用の必要性というものには当然にはならない、こういうようなお考えではなかったかというふうに理解しております。
#74
○小森委員 そうすると、ちょっと話の前提が、余りにも主観的な公述をされておるということになるのですが、もう一度念を押したいと思いますが、藤井公述人が言われたことは判例と提案説明とが残念ながら食い違っていたという意味のことを言われたので、それは現在の民事局長とすれば当たっていないと思われますか。
#75
○清水(湛)政府委員 自己使用の必要性その他正当事由という解釈につきまして、それは貸し主側の自己使用の必要性があればもうそれだけで足るのだというような考え方が立法当初あり、そういう立場に立つ方もおられたというのは事実でございます。そういう方から見ますと、現在の判例あるいは学説の動向というのは変わっているというふうに言うことができるわけでございます。
 立案当時、当時の民事局長としてどういうふうに考え、その後それがどういうふうに修正されたかということは必ずしも明確に申し上げることはできませんけれども、少なくとも立案の当初、あるいは当時の立案当局の関係者として、やはり文字どおり自己使用の必要性というものをかなり重視して考えていたということが言えるのではないか。ただ、その後いろいろな判例あるいは考え方の変化というものがございまして、双方の事情を総合勘案してこの正当事由の判断をするということで、これがもう現在定着をしているということになったということではないかというふうに考えております。
#76
○小森委員 ある程度変わったということはお認めになったように思うのです。私は変わるのが事柄の成り行きとして当然だと思うのですが、そう変わるということになると、現在のものもまた多少変わる、現在提案しておるものも多少変わる可能性をあらかじめ想定しておかなければならぬということになろうと思うのですね。
 これはまた後ほどほかの問題で質問を重ねたいと思いますが、裁判所の方は、今の私の質問を聞いておいていただいて、やはり法律で決めるときの国会の審議の状況より少し判例は時代がたつに従って変わってきた。こういうふうな認識をお持ちでしょうか、どうでしょうか。
#77
○今井最高裁判所長官代理者 非常に難しい質問でございますけれども、物の本によりますと、今法務省の民事局長を言われましたように、当時と今の判例の帰するところとは若干は違っておるというふうに私どもも認識をしております。
#78
○小森委員 そうなりますと、結局何が一番心配になってくるか、午前中もこれからの運用をひとつうまくやってもらいたいという自民党の各委員の質問の発言がございましたが、現行の法律が、文面をつつかなくても時代とともに時代の状況に合ったように司法判断が次第に発展するといいますか、変わっていくわけでありますが、今回のように同じだ同じだと言いながら文言をたくさん加えると、私は変わり方がうんとひどくなって大変心配な事態が生まれるのではないか、こういう気持ちがあるのです。つまり、判例の中身を文章表現しただけだ、こう言われておるわけですが、現在の判例は、先ほど一九四一年の審議の際に民事局長が言われたことよりも離れておるが、今度書き込みますと、心配しておりますように、借地人とか借家人の立場からいうと余計に自分たちに不利にその文言をうまく利用してというか、変わるのではないか、こういう心配があるわけですが、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
#79
○清水(湛)政府委員 私どもといたしましては、今回の改正案でお願いしております正当事由に関する規定というのは、地主、借地人の間の法律関係を公正、公平、妥当に律するという観点からされておるというふうに考えているわけでございます。
 恐らく、沿革的に考えてみますと、大正十年の借地法、これは借家法についてもそうでございますけれども、存続期間についての最低期間の保証、つまり借地については最低二十年以上はなければならぬということは明記いたしましたけれども、ちょうど二十年の時期が来る早い施行地域の地区についてでございますが、二十年の時期が来る昭和十六年前後、そういうときになりまして、借地権を一体どういうふうにしたらよいかということが当然のことながら議論になったわけでございます。その時点における借地人の地位というのは、期間が満了すれば原則としてその土地を明け渡すということが前提になっていたと思うわけでございますけれども、それを制限するという意味で、これは非常に強い制限立法だと私は思いますけれども、地主側に自己使用の必要性その他正当事由がなければ明け渡しを求めることはできない、こういうふうにいたしたわけでございまして、当時の立法の流れから見ますと、地主側の事情も強く考慮して昭和十六年の法律がつくられたというふうに言えるのではないかと思います。
 しかしながら、法律制定後あるいは戦後の住宅難というものを反映いたしまして、借地関係、借家関係もそうでございますけれども、長期にわたって継続的に続く法律関係につきましては、一方側の事情だけを考えるというのではなくて、貸し主の側、借り主の側、その事情を公平に考えて正当事由を判断すべきだ、こういうふうになってきたのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 そういう公平な判断の要素として、判例が幾つか挙げておるものを今回の法律改正条文としてお願いしているわけでございまして、これまでの借地関係、借家関係の紛争の経緯に照らしまして、およそ両当事者を公平に律するための要素を正当事由条項の条文の中に取り入れておる、私どもはこういうふうに思うわけでございまして、昭和十六年改正は、それまである意味においては当然期間が満了すれば返せるという前提で、貸し主側の権利を制限するという意味での条項でございましたが、戦後における長年の借地関係、借家関係というものを踏まえて両当事者に公平な形での正当事由条項を置く、こういうことでこの規定が置かれたものであるというふうに申し上げて差し支えないと思うわけでございます。
#80
○小森委員 それでは、話を法文のところへ戻しまして、借地契約の更新拒絶の要件、つまり正当事由と言われるものがここに列挙されております。「借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする」ということは、これは自己使用ですから極めて明快であります。その次に「借地に関する従前の経過」というのがございますが、それはどういうことを想定した文言でしょうか。
#81
○永井政府委員 お答えいたします。
 この「借地に関する従前の経過」といいますのは、賃貸借契約がどういう理由で始められたか、どういう関係者の間で始められたかということ、法律ではありませんけれども、いわゆる権利金等が払われていたのか、あるいはそのときの地代がどうであったか、またその後地代はどのように上げられてきたか、あるいは更新がされていたのか、あるいは途中で双方の間でどんなようなトラブルがあったとか、そういったような事情が判例の上で相当考慮されている。ただし、あくまで補完的でございますが、考慮されているケースが見られるというところから、「借地に関する従前の経過」、こういう言葉が入っているわけでございます。
#82
○小森委員 では続いて、その次にある「土地の利用状況」というのはどういうことを意味しましょうか。
#83
○永井政府委員 これも判例上補完的な事情として考察されておりますが、当該土地が現実に、例えば木造家屋が建っているのか、あるいは堅固な建物が建っているのか、あるいはこれを現実に借りている側がみずから使っているのか、あるいは第三者に貸していわば収益を上げているといいますか賃料を逆に取っているとか、そういったような現実にその土地をどのように利用しているかということも判例上考慮されている、こういう状況を指しているものでございます。
#84
○小森委員 そうすると、例えば今日の時点で物を考えたときに、平家建ての木造であって周囲にビルが林立した。状況が変わったのだからと言ってその「土地の利用状況」というものを拡大解釈して、みずからのこの利用、みずからというか借地人の利用状況が変わったということではなくて、周囲の状況が変わったということによってこの「土地の利用状況」という言葉が使われるおそれはございませんでしょうか。
#85
○永井政府委員 周囲の利用状況が急激に変化したということが全く考慮されないかというと、これはある付随的な事情のさらに付随的事情ということで考慮されている例もあるようでございます。
 例えば判例におきましては、非常に駅前の繁華街で、そこだけがぽつんと木造建物で残されている、それで固定資産税にも満たない賃料が払われている、さらに自己使用の必要性がさほど大きいとは思われないといういろいろな考慮がされて、ある一定の立ち退き料も含めてこれを認めた例もあります。
 ただ、これも基本的には、ほかの判例でもそうですが、たまたまその環境が非常に変わったといいましても、あくまで借り主側がそこをやはり使用する必要性が非常に強いという場合には、周りの環境が変わったからといって直ちにこれは明け渡すということはしておりません。現に判例の中にも、ビルを建てたいのだけれどもという貸し主の要望に対しまして、しかも相当な立ち退き料を提供すると言っても、借り主側では長期間居住している、また生活状況その他を見ましても必ずしも他に住む場所がない、こういったような使用の必要性が借り主に強い場合は、そういう場合には貸し主側の正当事由はなし、こういうことにしておるケースもあるわけでございます。
 だから、基本的にはやはり使用の必要性ということを中心にした上で、場合によればそういうことも付随的な事情のさらに付随的事情といいましょうか、そういったようなレベルの問題として若干判例の中にも視点に入っているケースもあるという程度でございます。
#86
○小森委員 これが、お年寄りが生活をしておられてもう行き場がないという場合も、もう自分では次を探してどうするとかこうするとかということにならない、年をとって非常に体が弱っておるけれども小さな果物屋をやっておるとか、そういう小商売をやっておるという場合に周囲にそういう建物が建つ。そうすると、現在の日本の状況では、これは裁判に至って公平な判断をしてもらうというに至るまでに、こういうことを書いておると、法律にもこうあるんだから、おばあさん、あんたもう出なきゃいかぬよ、往生じなさいという形の、要するに民間人の話、それも穏便な話ならよいけれども、地上げ屋などが入ってきてそういうことを言うと、もうこれは年寄りなんかひとたまりもないのですね。したがって、先ほど答弁がご
ざいましたけれども、これは付随をしたもう一つ付随をした判断材料なんだと答弁されましたけれども、そのことによって致命的な重荷を背負わねばならぬ者も出てくるわけなので、結局これは、日本の社会というものの不合理な社会的風潮というものがどの程度ぎれいになっておるかということとの関係において法律を意図された人の気持ちは通ったり通らなんだりする問題だと思うので、私はこれは極めて不明瞭な問題だと思いますがね。その点について再度お尋ねします。
#87
○清水(湛)政府委員 これは正当事由の問題でございますけれども、先ほど先生御指摘の周辺の土地の利用の状況というのは、この今回審議をお願いしております借地法の関係で申しますと、第六条の規定にはそういう要素は入ってないわけでございます。
 それで、法案をつくりますいろいろな審議の過程では、周辺の土地の利用状況というのもいわゆる正当事由を判断する場合の判断事項として法律に明記すべきである、こういうような御議論もございましたけれども、それは当該土地の利用とは直接関係のないことであるということで、周辺の土地の利用の状況というのは法文からは落とされているわけでございます。したがいまして、基本的には周辺の土地の利用状況がどうなったかということによってそれが直ちに正当事由の有無に影響するということはないと私どもは考えているわけでございます。先ほど審議官の方から答えましたのは、当該借地の利用の状況のいわばバックグラウンドとして周辺の土地の利用状況というものが判断されることはあり得るとしても、それは独立した判断要素ではない、こういうことを申し上げたわけでございます。
 それで、もちろんこの借地借家法における正当事由の判断というのは、言葉の問題というよりか周辺の状況を総合的に判断するということでございますので、周辺が全部ビル化しているのにそこに非常にみすばらしい家があるという場合にどうなんだというふうに具体的な例を出されるといささか返答しがたいような場合もあろうかと思いますけれども、基本的には、そういう周辺の土地の利用状況というのはあくまでも本来その土地の利用状況を判断する一つの事情として考慮されるにとどまる、こういうことで御理解いただきたいと思うわけでございます。
#88
○小森委員 正当事由の一番根本になる土地の使用、自己使用ということが一番に書かれておりまして、今度はその次に「借地に関する従前の経過」というのがあって、「借地に関する従前の経過」のあたりから、これはもう従前の経過でありますから、借地人と、つまり土地を借りておる者と貸しておる者とのこれは相互関係がその経過ということになるわけですね、相互の関係が。それで、そういうものが前段に一つ挟まって、それで「土地の利用状況」と入ると、土地を利用しておる、借りておる者の利用状況とだけは文章では読み切れない。つまり、この法案をつくるに当たっていろいろ前段において周辺の土地の利用状況というものを削ったという経過は今聞きまして、それはまあ削ってもらわなければならぬのですけれども、それならばもう少し物の書きようがあるのじゃないでしょうかね。明確にしておかないとこれは幾らでも利用されるところだと思います。特にお年寄りが、法律でこうなっておるよ、こう言われたら、はあはあもうぼちぼちこれは出なければいけぬのかなあということで、つまり、自分の権利を主張することなく妥協してしまう、こういうことになって、世の中はまことに土地を借りておる者にとって不安定な状況が生まれてくる、こう思うのですけれどもね、いかがでしょうか。
    〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
#89
○清水(湛)政府委員 土地の利用状況というのは、借地権者がそこでどういう建物を建ててその土地をどの程度利用しておるのか、こういうことでございまして、周辺の土地の状況ということとはかかわりが基本的にはないわけでございます。直接にはない。
 ただ、先生御指摘のお年寄りの問題ということになりますと、お年寄りがもうそこにしか住めない、そこしか他に行くところがないというのが大部分でございますので、それはむしろ土地の利用状況というよりか、土地の使用を必要とする事情、つまり基本的な判断要素、そちらの方で多くのお年寄りは保護される。まさにそこにしか住めないということでございますから、基本的な土地の使用を必要とする事情で救われるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
#90
○小森委員 ここにこだわるようですけれども、結局この土地の科用状況というものが、周辺がビル化されて、しかしそこに昔から住んでおる。一人のお年寄りは自分が死ぬるまで生涯ここにおりたい、しかもいごいご動ける間は小商売もしておるということで、今民事局長が言われたことでは、立法者の意図というか、この法律を提案された人の意図はそうだろうと私は思うのだけれども、裁判所の判断も少しは時代の状況によってずれるわけですね。そのずれるときに弱者を守る方へずれてくれればよいわけなんですけれども、この法律案が出されてきておる状況は、やはり開発ということにかなり重点を置いておるように私は思うのです。つまり、どういうか、立ち退きをせざるを得ない条件というものをつくろう、こういう隠された意図というものがあるように思えてならないのであります。
 それは要するに、法務省が出されておるPR用の宣伝誌ですね。これはこの間民事局長は否定をされたのですけれども、「貸しやすく借りやすい借地・借家関係を」というタイトルが載っておりますけれども、これで貸しやすくなるとか借りやすくなるとかいうようなことを主にねらっておるのじゃありませんとこの間答弁されたけれども、主にねらってないものをどうしてこういうPRへ一番大きいタイトルに書くのかということになるので、その点は、法案を審議する者とすればこれは十分に疑うに足りる、つまり、これこそこの法案提案の経過の中に法務省の隠された意図があるように思うのですがね。
#91
○清水(湛)政府委員 誉言葉を返すようで恐縮でございますが、私どもといたしましては、借地・借家人の権利を保護するという借地・借家法の制定時の事情、その権利の安定を図る、こういう借地借家法の基本的な立場、そういうものについては現行法と一切変わるところはないというふうに考えております。
 ただ、社会経済情勢の変動に応じまして堅固、非堅固の区別をなくすとか、あるいは正当事由というものについて現行法は余りにも簡明で、あれを文字どおり解釈するとどうも地主、家主の方に有利な解釈さえ生みかねないという問題があるわけでございます。しかしながら、戦後積み重ねられた判例理論というものほかなり固まっておるわけでございまして、そういうものをきちんと新しいわかりやすい口語体の法律で書き直すということを前提にする、と同時に、新しい社会経済情勢の変化に対応した形での新しいタイプの借地・借家関係というものもまた考えるということでこの法律案の御審議をお願いしているわけでございまして、決して借家人あるいは借地人が現行法以上に不利になるということは私どもとしては全く考えていないわけでございます。
 ただ、そういう不安を訴える方がございますので、それならば現在借地人、借家人である方については新法の規定、これは借家については新法の規定というのはほとんどないわけでございますけれども、規定は適用しないという形でそういう不安を除却することをも配慮しておる、こういうことでございまして、その点については御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#92
○小森委員 それで、この第六条の四番目の「明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮してこというのがまたその後につくわけでありますが、「土地の利用状況」ということで、幾ら周辺の事情というものを頭に入れないといったところで、物事というものは相互の関係でお互いを判断するわけです
からね。相互の関係というのは、付近、周辺の市街地の状況というものも、幾ら無視せよといったところでそれはやはり無視できないわけなんであって、そういうものがあって、これは出る方があの町がきれいになるなというような状況のところへもっていって、今度は財産上の給付をする旨の申し出があったことを考慮してということになると、余計のこと無権利な、時代の動きが余りよく頭におさまっていない、さりとて自分がここから積極的に何をしようと思ってももう年をとっているからできないというような人に対しては、これは自分がそこにおることが大変な社会的な不正義なのかな、こういう錯覚を持つし、また財産上の給付ということになると、えてしてこれは暴力団が介入をしてきて、おまえ、これだけ金をやりよるのになぜ出ないかというようなことになるおそれがあるわけなんですね。こういうふうなことが追っかけ明文化されますと、やはり借地・借家人の権利関係というよりは開発ということを重点に置いておる、私はそう思うのですけれどもね。
 もう一つこれに関連して申し上げますけれども、では、こういう財産上の給付などを明文化して、特別に例えば暴力団なんかが介入できないような措置を政府がこのことに関連して講じたのかというと、それは遅々たるもので、これは実際はとても間に合わないのです。警察が目を光らせたところで間に合わないのであります。そうなるとますます、権利関係というよりは、むしろ権利関係は侵害をされて開発しやすいように、つまり金を持った者がその土地を取り返すか、あるいは金を持った者に土地を所有権者が譲り渡して、そして現在貸しておる者よりもはるかによい条件というものを獲得するために開発の方へぐっと流れていく。すると、やはりこの借地借家法というのは開発本位ということになるんじゃないですかな。
#93
○清水(湛)政府委員 ちょっとお言葉を返すようでまことに恐縮でございますけれども、私どもは、借地借家法というのは民事法であり、借地・借家人という私人間の権利関係を公正、公平に合理的に調整する、こういうことが目的であり、直接開発行為だとかそういうことを目的とし、これを意図した法律ではない、こういうふうに理解しているわけでございまして、現実に私どもは民事局でこの法案を扱っているわけでございますが、法務省にはそういう開発関係の専門家はだれもいないというのが実情でございます。
 借地法で申しますと、この第六条の正当事由に関する規定というのは、これまで判例が集積してきて、まさに借地人と地主の権利関係を公正、公平に調整するという見地からいろいろな要素を判例で積み重ねてきたわけでございますが、そういう長年にわたってきたものをいわば明文化したというものでございまして、開発行為を助成するというようなことは全く考えていないわけでございます。そういう意味で、開発行為を促進するというようなことが隠された意図にあるというようなことは毛頭ございませんので、そこのところは御理解を賜りたいと思う次第でございます。
#94
○小森委員 今までは、財産上の給仕というのは、裁判官がいろいろな事情を判断をしてそういうことも織り込まれる場合もあるわけですね。しかし今度は、一たび条文の中にきちっと書き込まれたら、前よりはインパクトがあると私は思いますね。
 これはちょっと話が違いますけれども、ある死刑制度に反対の最高裁の裁判官をされた方が話をされておるのを私聞いたことがありますけれども、私は――私はというのはその裁判官は、死刑制度は反対だ、反対だけれども死刑制度というものが刑法の中に明文化してあれば、これこれの犯罪は死刑だ、こうなれば、反対だけれどもその法を適用せざるを得ない、だからこれは制度的に廃止する以外にないという意味のことを言われたときに、非常に私は法律というものの持つ客観的な一つの力というものを感じたことがあるのですが、こうなるとほぼ義務的にこれを考えるんじゃないですかな。そうすると、おお、ああいう条文があるし、財産上の給付を申し出よう。土地の所有権者が借地人から土地を取り返したいが、自分は金が余りない。デベロッパーに頼んで、そして、これを取り返したら幾らで買うてくれるか、それは幾らでも出すからやってみなさい、現実にはそういうことになって、つまり開発本位になって権利というものがむしばまれるということを私は言うのです。
 限りなくこういうことを言ってもしょうがないから、このことについてもう少し立場を変えた質問をいたしますが、財産上の給付をするということで金を出すでしょう。これは権利金の問題や更新料の問題とも関係しますけれども、そのことが要するに土地の正常な値段を保つことにならない。財産上の給付をしてもそれはもう裁判官がよほど総合的に判断をしてそこを少し計算に入れてくれるかどうかというぐらいだったら、金を出すということの発想は明文化されておるときよりは抑制されると思いますけれども、明文化されておりますと、最終的にはそれで解決すればよいということになって、やはり財力のある者が自分の意のままに開発を進めていくことができる、こういうことになりますので、これは、つまり更新料の問題とかあるいは権利金の問題とか、日本の経済にもよからぬ影響を与えると私は思いますよ。これはどうでしょうか。
#95
○清水(湛)政府委員 この正当事由に関する規定は従来の長年にわたる判例なんかの集積をいわば集約したものでございまして、財産上の給付についても、土地使用の必要性を補完する補完的な事由として従来裁判例あるいは実務において行われてきたものでございます。そこで、そういうものを条文の上から落とすということになりますと、それではこの正当事由に関する条文が現在の判例で集積されたものをすべて要領よく書き込むという趣旨からこの財産上の給付の問題が落ちてしまう、こういうことになりまして、やはり問題がある、こういうふうに思うわけでございます。
 ただしかし、判例で言われている財産上の給付というのは金さえ払えばすべてそれで済むというものではございませんで、あくまでもまず補完的なものである。いろんな事情があってそれをやはり、ちょっとまあ例えば貸し主側には事情がある、それを財産上の給付で補完するというようなことが行われておる。これは判例で認められているわけでございます。そういうような補完的なものであるということ。それから、現実の裁判の運用におきましては借地人の方でも、その財産上の給付額いかんにもよるけれども、その給付額いかんによっては明け渡しに応ずるというようなこともあるわけでございまして、裁判実務の運用におきましては、そういうような意向が借地人の方にあるかどうかというようなことも考慮しながら裁判所は財産上の給付額を決めるというようなことも行われているわけでございまして、そういうことでございますと、正当事由の判断要件としてやはりこの財産上の給付に関する条項は重要な条項として置かざるを得ない。これを欠きますとむしろ現在積み重ねてきた正当事由についての考え方の一部が欠落するということにもなってまいりまして、それはそれでまたいろんな解釈論を生み、混乱を生じさせるおそれがあるというふうにも考える次第でございます。
#96
○小森委員 やはりそうなると財産上の給付を受ける者にも余りよい影響を与えないし、いずれにしても、経済本位といいますか、地獄のさたも金詮議みたいな格好になって、本当の土地の使用とかというような目的からだんだんずれてくるということを私は心配するのです。もうせいぜい我慢できるのは、今裁判所がそういうことを、明文にはないが、さまざまな問題の中のほんの最終的に判断をする材料として判断材料とされるということについてはわかりますけれども、こうして三項目か四項目しかないところへ財産の給付というようなことを出すということは、私はこれはやはり日本の将来のためによくないのではないか。また、地価の抑制というようなことからいってもよくないのではないかというふうに思うわけです。こればかり言っておってもいけませんから、私らの考えはそういうことだということをひとつ理解を
しておいてほしいと思います。
 それから、今連絡がありまして二時三十分に本会議が始まるようでありますので、もうわずかしかございませんが、質問だけでもひとつ項目を起こしておきましょう。
 それは、次に第二十八条であります。今度は建物の場合でありますが、第二十八条のやはりこれは更新拒絶の要件でありますが、「建物の賃貸人及び貸借人が建物の使用又は収益を必要とする事情のほかこつまり「使用又は収益」というのが、ちょうど土地のことについては自己使用に当たるところへ書かれております。建物の使用ということはわかりますが、収益というのはどういう意味を持つのか、この点について御説明いただきたいと思います。
#97
○永井政府委員 「建物の使用又は収益」という言葉がここで使われておりますが、実は民法の賃貸借の規定のところには「使用文ハ収益」という用語が使われております。従来の借家法も、一般的に建物の賃貸借につきましては「使用文ハ収益」という用語を使用しております。そういう関係から「使用又は収益」という言葉をここで規定しているわけです。
 ただ、委員御指摘のとおり、確かに収益――建物で収益を上げるというのは何かというと、端的に言いますと、家を貸し主から借りてそれを実は自分で使わないで第三者に又貸しをしてといいますか、そこから賃料を上げるというような形態の場合が収益というような言葉になるかもしれません。もちろん、そこで自分が居住して使用して、そこでお店屋を入れまして収益を上げるという場合もあると思います。これは、民法の「使用文ハ収益」という言葉が、不動産の場合にはどうも収益を上げる以上は使用が当然入っていることであって、収益という言葉を使わなくても使用という言葉を使えばそれで十分ではないか、こういう考え方もあろうかと思います。ここに「使用又は収益」と言葉が入っておりますが、民法及び従来の借家法の言葉を踏襲したものであって、実質的には使用という言葉でも足りるのではないかという考え方もあろうかと思います。
#98
○伊藤委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後二時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十九分開議
#99
○伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小森龍邦君。
#100
○小森委員 先ほどの御答弁によりまして、「使用又は収益」というところが、提案者側も、必ずしも収益という言葉がなければここは意味を表現することができないわけではないというような、私はそういう答弁として受けとめたのでありますが、つまりこの二十八条の条文の「建物の使用又は収益を必要とする事情」という、その「使用又は収益を必要とする」の、これに係る主語というのはどうなりますか。
#101
○永井政府委員 第二十八条の冒頭に、「建物の賃貸人及び貸借人が建物の使用又は収益を必要とする事情」、こういうふうに記載してありますので、「建物の使用又は収益を必要とする」という言葉の主語は、「建物の賃貸人及び貸借人」、こういうふうになろうかと思います。
#102
○小森委員 そうすると、貸す者、貸してもらった者という意味になると思いますので、なおさらのこと、この収益というのは実にあいまいといいますか、判断を誤らせる。つまり、貸しておる者が使用というのはわかりますけれども、今度収益ということになると、いや、わしはあれを返してもらって、そしてこういうもうけをしたいというようなことが前面へ出てきますと、さらに借りておる方の側は追い込まれる、こういうことになりますので、この点につきましては、あえてこういう収益という言葉を書くことによってその意味が一段と強くなると思いますが、これはしかるべくひとつ、この審議の過程、審議のプロセスにおいて、法務省の方で善処される必要があるのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
#103
○清水(湛)政府委員 借家法と借地法というように法律が別でございまして、借地権の方は地上権と賃借権、借家権の方は賃借権だけということになっているわけでございますが、法律は州立てであるということと、それから、そういう権利の性格が二様であるということから、民法の賃貸借の規定を借家法の方の規定は色濃く受け継いでおる、こういうような要素がございまして、ある意味においてはそういう表現の違いが生じたのかなと。借地法はむしろ地上権の規定を中心に考えたということで、さて、これを一つの法律にしてみますと、借家だけについて使用または収益というよう宣言葉を使い、借地の方については使用という言葉だけを使うというのはいささか不統一ではないか、意味の違いがあるのかと。いうふうな御指摘を受けますと、私どもとしては、実質的にはそういうような違いはないのではないか、使用または収益といっても、使用といっても、それほどそこに実質的な違いはないのではないかというふうには考えられるように思います。
#104
○小森委員 言葉の使い方が非常に不統一、同じ法律の中で不統一ということになりますと、きちっと整理をしておくことが必要だ、こう思うのですが、先ほど私がお尋ねをしたのは、この際、整理をされる気持ちがあるかどうかということなんでありまして、せめてこの審議が行われておる間に、よく考えてみますというぐらいの答弁はあってもよいのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
#105
○清水(湛)政府委員 よく考えてみたいと思います。
#106
○小森委員 それから、先ほどのことと同じようなことになるのですけれども、「財産上の給付をする旨の申出」ということにつきましては、さっき私がるる申し上げたような危惧を持っておりますので、それは重ねて私の方の気持ちを申し上げておきたいと思います。
 第二十二条に帰りまして定期借地権の問題でありますが、その第二十二条の末尾に「この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。」公正証書というのはわかりますが、「公正証書による等」、この「等」は何を意味するのでしょうか。
#107
○清水(湛)政府委員 この二十二条の定期借地権は、存続期間を五十年以上とするものでございまして、非常に長期でございます。その間に関係者の一方が死亡するとかあるいは双方が死亡するというようなことも起こり得るわけでございまして、公正証書というような、これは公の機関におきましてその証書が保存されるというようなものできちんとした契約をしていただき、後日の紛争を防止するということが私ども望ましいと考えたわけでございますが、すべての国民の間に公正証書という言葉でこの二十二条の契約について要求するのは、まだその段階までには至っていないのではないかというようなことから、公正証書によるのが望ましいという気持ちをあらわすと同時に、できるだけそれに近い書面でこの契約をして後日の紛争を防止していただくのが望ましい。例えば弁護士さんの関与した証書とか何か、そういったきちんとした書面でやるのが望ましいという気持ちを込めまして「公正証書による等」という表現にさせていただいたわけでございます。
#108
○小森委員 そうすると、公正証書ということになればこれはきちっと法律的に定まった。言うなれば当事者以外の者が証明をするという形になるわけですが、弁護士でもよい。そうすると、もっと拡大して第三者が、例えば契約なら契約の書類の中によく民間的に立会人という名前を書いて記入、判こを押しておる場合がありますが、そういう場合をもこれは想定しているわけですか。
#109
○清水(湛)政府委員 そういう書面でもよろしいと申しますか、この二十二条に規定する「書面」に該当する、こういうふうに考えております。
#110
○小森委員 それは国民にはどういう形でわからせますか。
#111
○清水(湛)政府委員 この五十年以上の存続期間の定期借地権というのは、先ほど来も議論が出ておりましたように、住宅・都市整備公団とかそういうようなところが現に紳士協定のもとに使っているわけでございますが、あるいはこの法律制定後もそういったところが主として使うということかもしれませんが、私どもといたしましては、こういう長期の借地権であるから、これを契約する際には十分によく理解した上でこのような契約をするように、いろいろな形での周知、PR措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
#112
○小森委員 この点についてはぜひ国民の間に周知徹底するように、関係者、法律実務者とかいろいろな形でひとつ周知徹底をさせていただいて、この書類のないために思いが違ったということであっては、公平にその権利が守られるということになりませんので、その点はぜひひとつ徹底するような手だてを講じておいていただきたいと要望しておきます。
 それから、「借地条件の変更等」という第三節、十七条に関係いたしまして字句のことについてお尋ねをしたいと思います。
 第十七条に目立つ文言といたしまして、例えば「土地の通常の利用上相当とすべき増改築」とかですね、あるいは「他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。」とかですね、簡単に申しますと、これ、「相当」とは何ぞや、こういう疑念がわいてくるわけであります。
 法律は、特に人々の権利にかかわる条文というものは、厳密過ぎるほど定量性が貫かれていなければならないと思います。読みようによったら、あるいは考えようによったら判断する者次第ではどうにでもなるというようなことではいかぬわけでありますから、この抽象的な「相当とすべき」という、これは法律的にあちこち使われておるんだろうと思いますけれども、この際、その文言につきましてこの法律に則した解釈をひとつ聞かしていただきたいと思います。
#113
○清水(湛)政府委員 御指摘のように、例えば十七条で「相当とすべき」とか、そういうような表現がございまして、そのほかにも若干のそういういわば一種の包括的な規定がございます。しかし、このような、抽象的な規定といえば抽象的なことでございますが、例えば先生御指摘の十七条を見ますと、四項の方で、「裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。」というような考慮事項の規定もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、現実に非常に複雑なあるいは多様な形態を持っております個人個人の間の法律関係、そういうものが実情に即しまして妥当な法律関係になるようにという趣旨で、このような、ある意味においては概括的な規定が置かれておるというふうに思うわけでございます。
 特に、十七条につきましては、裁判所はこういう申し立てに基づきましていろいろな裁判をするわけでありますけれども、鑑定委員会の意見を聞くというような規定が十七条の六項にもあるわけでございまして、やはり具体的な事案の実情に適した最も適切な裁判をするために、ある意味においてこのような概括的な規定がかえって意味があるというようなことも言えるのではないかというふうに考える次第でございます。
#114
○小森委員 こういう法律上の文言というものは、それが正しく合理性のある、つまり「相当とすべき」ということに該当するかどうかというのは、これも私が声をからして言っておる。つまりすぐれて人々の合理的な判断力、その合理というのは、我々は犬や猫ではございませんから、人間でありますので、人間が生存をしていくという大変大事な観点に立っての合理でなければならぬ。
 そうなりますと、これはもう以前から私は言っておるのでありますが、要するに今回の審議をしております法律との関係からいきますと、例えば定期借地権というようなのは、一面非常に時代の要請にこたえたようであって、またやりようによっては、本来通常の借地契約で結ぶべきものが次第にそちらの方向にうまく誘導される。相手側は、というのは借りる方が、非常に急いでおるとかあるいは事情をよく知らないとかというようなことで、通常の借地権で契約をしなければならぬところを、言葉は少し悪いかもわかりませんが、ごまかされて定期借地権の方に引っ張り込まれるとか、あるいは借家の場合も、なるほど期限つき借家制度というものも時代のニーズに一面その要請にこたえておると思いますが、その場合もそういうところへのみ引きずり込まれるとか、そういうふうな、しかも更新が十年で短くなったということがありますので、そういう方向に引っ張り込まれる可能性が今度は非常に大きくなってきた。こういうことで私は心配をしておるわけなんでありますが、日本人の人権意識というのが、憲法にもそこのところを大事だということで指摘されておりまして、国民の不断の努力だ、こういうことが規定されております。国民の人権感覚というものが成長し、社会的に成熟しなければ、これは本当の目的を果たせることはできない、別に悪い方向へずれていくということになると思います。
 前々から聞いておりますけれども、なかなか私答弁が立派だなと思って聞いたことないのでありますが、人権擁護局長、あなたは、こういうふうに複雑に絡む経済的な関係とて、すべて人間の合理的な人権感覚がなければ法の目的どおりに物事が達成されないのでありますけれども、今日の時点で、この法律に関しての努力というよりは、人権擁護行政全般を受け持つ人権擁護局長としてどういうお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
#115
○篠田政府委員 憲法が基本的人権の尊重を重大な柱の一つとしていることは言うまでもないところでございます。その日本国憲法が施行されましてから既に四十数年になるわけでございますが、一般的には人権意識というのは高まってきているというふうに認識しております。
 しかしながら、一部には、自分の権利を主張する余り他人の権利を顧みないとか、そういった風潮もございますし、それからまた残念なことに、誤ったいわれなき因襲に基づく差別意識、そういったようなものもまだ残っている。そういった点につきましては、今後そういったものを除去していかなければならない、そういうふうに考えております。
#116
○小森委員 この人権意識というのを、先ほどの答弁によりますと、誤った権利要求のような言い方をされておるのでありますが、例えば、先般来、証券・金融の問題をめぐりまして国会が審議をしておりまして、証人を喚問いたしました。
    〔委員長退席、山口(俊)委員長代理着席〕
これは、テレビの画像が静止画像であるということで、国会の審議の模様を知りたいと思っている国民からはごうごうたる非難が出てきておるのであります。ところが、あれを静止画面にしたということは、証人として出てくる人の人権を守らねばならぬという理屈がついているわけですね。物事もう逆になってしまっておるのであります。あそこらへ出てくる人は非常に影響力の大きい人でありまして、何でも聞いてみると、まことに堂々たる答弁をされたようであります。その人が恥ずかしかるからというような意味があるのか何か知りませんけれども、物事が、人権擁護局長に考えてもらわなければならぬことは、逆に逆に考えるというのがこれまた我が国の人権感覚の未成熟な、もっと極端宣言い方をすると、へ理屈をこねて、人権の名のもとに多くの国民の知る権利というものを無視しておるのであります。もしあれが正当ならば、アメリカはちゃんと画像を映してやっておるし、隣の韓国も画像を映してやっておるし、韓国やアメリカは人権を侵害しておるのかということになるわけでありますから、くれぐれも人権擁護局長は、我が国の人権擁護行政の一番中心部分なんでありますから、そこが人権に対する一番進んだ物の考え方を持ってもらわなければ、ここらのこの条文が幾らいろいろな配慮があっても、それとは逆の副作用というものが出てくることになると思うのですね。この間の公述人の方が言われる、私は複数の方が言われたと思います、副作用ということを言われましたね。こういういろいろな条文ができても、副作用というのは、合理的な感覚で、人権感覚に根差した一定の能力を国民が持っていなかったら、大変心配をして意見を述べられた公述人の副作用、副作用によって物事が悪くなるということが当たるようになってくると思うのですね。
 それで、人権擁護局長、もっと本当に人権を守らねばならぬ立場というものにスイッチを切りかえてもらわれないですか。さっきの最初の前段は、これは大分、守らねばならぬ人の人権でなしに、日ごろ人権を踏みにじりよる立場の者の人権ということを問題にされたように思いますよ。いかがですか。
#117
○篠田政府委員 ただいまの国会における証人喚問の問題の御質問ございましたけれども、その点につきましては国会でお決めになったことでございますので私から論評するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、何が合理的であるのか、何が真に人権を守るべきものであるのか、そういった点につきましては、我々としても真剣にそれを受けとめて考えてまいりたいと思います。
#118
○小森委員 本論がそこではないので、審議の途中で挟んだことでありますから、もう少しいろいろな材料を出しながらそこのところ詰めたいですけれども、ついうっかりすると時間がなくなってしまいますので、やむなく割愛をしなければならぬと思います。
 ついでのことながら、総務庁の方にお尋ねをしたいと思います。
 いわれなき封建的な差別を受ける者がいるという意味のことを、一つの例示として先ほど人権擁護局長は話されましたが、現在地域改善対策協議会でいろいろなことが議論されております。その中には住宅問題というのも、どれくらいの事業が残ってどうなっておるかということも大変大きな問題であろうと思うし、また、被差別部落の土地所有関係というものもこれは一段と差がついておる。日本の国民の一般的な平均と比べてみると大変差がついておると思うので、そこを一々きょう聞くわけにはいきませんが、総務庁とすれば、先般来、問題が残っておる限りはやるんだということを総務庁長官も総理大臣も予算委員会で言われておったようであります。今、地域改善対策協議会は一体どういうところまで作業が進んでおるのか、この際にひとつお尋ねしておきたいと思います。
#119
○荒賀説明員 地対財特法の最終年度を迎えておりまして、政府といたしまして、地対財特法に基づく事業につきましては、国と地方公共団体が一体となって事業の推進に最大限の努力をいたしておるところでございます。しかしながら、この事業計画の見直しでございますとかあるいは地元調整の難航等によりまして、当初どおり事業の進捗が図られないというものもあるわけでございます。そういった問題につきましては、現在、事業実施省庁におきましてその進捗状況の精査に努めておるわけでございますが、私どもは関係省庁とよく相談をしてまいりたいというふうに考えております。
 地対協でございますが、昨年の十二月に審議を開始いただいておるわけでございますが、過去十回開催をいたしておりまして、この地域改善対策の一般対策への円滑な移行についてどのように考えるかということで、これは関係方面から幅広く御意見を伺って今審議を進められておるところでございます。夏の段階、七月の段階におきましては会長談話というものを出していただきまして、その点について、私ども総務庁としてもそれを踏まえて今後関係省庁と連絡をとりながら進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、九月に入りまして、今後の審議日程につきまして、まだ、今月総会が開かれる予定でございますけれども、十二月の意見具申に向けて精力的に審議が進められるものというふうに理解をいたしておるところでございます。
#120
○小森委員 概算要求の段階まで来て、まことに苦肉の策で会長談話という形でその場を何とか切り抜けなければならないということは、これは事務当局の、総務庁地対室の動きというものが本当に性根を入れてやっておるということにはならない、私はそう思っています。
 きょう、私の質問の時間配分の関係で途中がああいう形になって、とぎれとぎれになってしまって多少ロスの部分が出ておるのでありますが、余り時間もありませんから、本当は、あなた方が本気になれない理由というのは、事をさかのぼれば八六年地対協のあの部会報告とか意見具申のまことに人権無視の内容の中にある、こう思っておりまして、これはまた機会を改めて徹底的な議論をしたいと思っておりますが、当事者たる我々はそういう気持ちを持っておるということを、地対室長、ぜひひとつ頭の中に入れておいていただきたいと思います。
 それに加えまして、先般もちょっと中途半端になりましたが、この人権問題の我が国における具体的な重大な問題である同和問題に対して、閣僚とかあるいは局長クラスが言葉の使い方も実は明確でない、まちまちである。これはよく総務庁の方から伝えておいてもらいたいということをこの間のこの委員会の審議で申しましたが、例えば文部大臣はどういう言い方をしておるかというと、なぜストレートに同和地区の高校生とか大学生とかという言葉が使えないのか、どうも不思議でかなわぬのでありますが、進学率の問題は、対象地域の同和関係者の子弟、こういう言葉を文部大臣は使っておるわけです。それから、坂元初等中等局長はどういう言葉を使っておるかというと、各地域の同和推進対策地域という言葉を使っておるんですね。だから、行政的に物を考えていく上で、もし借地・借家の問題なんかで、先ほど私は収益という言葉についてもいろいろ議論をいたしましたが、こんな使い方をしたら全然行政能力を疑われるのです。それは、人権擁護局長はあんなことを言っているけれども、これはこの問題を本気で考えてない証拠だ。だから、年々予算を計上してある程度のことをやっても予算を組んだだけの効果が上がらない、こういう形になっておると思うのであります。
 労働大臣はどう言っておるかというと、同和、いわゆる住民関係、こんなことで意味が通じますか。これもよく伝えておいてくださいよ。それから、自治大臣は、私もおかしいなと思ったんだけれども、あの人がいつかの委員会で答弁しておるのを読んでみると、私が村長や町長をしておった時代にいわゆる指定地域に入っておりました。こう言うのです。あの人が村長や町長をしておるときには法律がなかったんだから、指定地域というのはないのです。いつから指定されたのか。それを指定地域と呼ぶのが妥当かどうかということさえよくわかってないのですね。そういうよくわかってない者がみんな寄って相談をして政治を動かすということになったら、この問題の解決というものがまともに動くわけがないのであります。総務庁として、それを担当されておる窓口というか、概括する、総括する立場でありますから、よくひとつ関係閣僚あるいは局長クラスに話して、言葉の使い方からまず正確な使い方をして、そして真剣な討議をしてもらいたい。これは伝えておいていただきたいと思います。
 さて、それではもとへ戻りたいと思います。
 次に、調停前置主義の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
 これは概略のところ、書面による合意のあるときは、その決定によりそれは紛争の最終的なものとなる、こういう意味でございますが、この調停前置主義で、合意というものが中に狭まるとはいうものの、この規定というものが、先般来ちょっと私の方から質問のはなを出しておきましたけれども、憲法第三十二条、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」という条項とか、あるいはそれと概念的には関係すると思いますが、第七十六条の「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」だから要するに、憲法第八十二条に言う「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」ということや、七十七条の「最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。」というような、一連のこのいわば憲法事項ですね、国民の権利に関する憲法事項というものと関係していぎさか軽はずみなことになっておるのではないか、こういうふうに思いますが、その辺をどういうふうにお考えでしょうか。
#121
○清水(湛)政府委員 調停というのは、当事者間で話し合いがつけば、それが相当であるときには調停調書に記載して調停成立ということになるわけでございますが、調停で何回も調停をいたしまして話し合いがつかないというような場合に、当事者が、当事者間での話し合いはつかないけれども調停委員会で裁定をしてくれればそれに従います、こういうことを申し出た場合に、この調停条項による裁定をする、こういうことになっているわけでございます。
 もちろん、こういうようなことをする前提としては、先ほどもちょっと議論ございましたけれども、当事者間にそういう裁定に服するという合意が必要でございますが、その合意はあくまでもそういう調停委員会が調停条項による裁定をする段階において有効、適法に存在しなければならない、こういうことになるわけでございますから、調停委員会といたしましては、現行法のこの鉱害調停あるいは商事調停についてもしかりでございますけれども、当事者を審尋いたしましてその意思を確認する、こういうようなことをいたした上で、さらにかつ調停委員会が適当な調停条項を示せば当事者がそれに服する、こういう判断をした上でいわば調停条項、による裁定をするわけでございます。
 この点が、例えば仲裁契約というのは、お互いに仲裁の契約をいたしまして、それに基づいて仲裁人が一方的に仲裁の判断をするというのとかなり性格が異なるというふうに私どもは考えておるわけでございます。基本的に当事者が調停委員会の示した調停条項に服する、こういう有効な合意が前提として存在するということでございますから、これは憲法三十一条の手続保障規定等に違反するものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#122
○小森委員 この合意というものが、書面で形式を整えておるということと事実腹の底から合意をしたということとの間には、相当のずれが私は現実にはあると思うんです。これが要するにこの近代合理社会における市民というものの成熟度の問題だと思うんです。これまた私は、全般的には人権擁護局長なんかに非常に深い関係があると思うんですね。その合意というのが、例えばあらかじめもし紛争が起きたときには調停前置主義になっておるし、調停に従いましょうねというような意味のことを書いてあって、それがわからずに判を押しておった。しかしそれは書類だから直ちに無効ということにするためにはかなりな議論が必要で、むしろどっちかというと有効ということの方が私は多いと思うんです。これは先ほど来の、先ほど来というのは午前中だったと思いますけれども、民事局長の答弁を聞いておって、ああやっぱし我々が心配しておることがずばりだなと思ったんです。
 そこで、これにどういう歯どめをかけるかということが問題ですね。確かに迅速にやらねばならぬということでは合理性があります。この資料としていただいております法務省から出してもらっておりますものを読んでみると相当の件数に及んでおるので、迅速にやる、しかも簡便な方法でやるということはこれはまあ非常に結構なことなんでありますが、しかしその迅速に簡便にというプロセスの中で、全く意に沿わない、いやそういうつもりではなかったんだけれども、判を押しておるんなら仕方がないと言って泣き寝入りになるようなことが起きたのではこれはどうにもならないので、したがって合意というのをどういうふうに確実で客観的で、しかも当事者同士が納得をした状況に持っていくかということがポイントだと思うんです。その点についてこのままでは実にあいまいだと思いますが、何か、審議の過程を通じてこうやればよいというようなことを思い当たることございませんか。
    〔山口(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
#123
○清水(湛)政府委員 現在、この今回お願いしております合意による調停条項による調停制度と全く同じものとして、民事調停法で商事調停というものとそれから鉱害調停というような制度がございます。今回の地代、家賃という限定されたものでございますけれども、その紛争についても同じような調停制度を導入しようということでこの法案に盛り込んでいるわけでございます。この商事調停あるいは鉱害調停におきましても当事者の書面による合意が前提でございますけれども、調停委員会はさらに、このいわば一種の裁定による調理をする際には当事者を審尋いたしまして、本当にそういう合意がされたのかどうか、合意によって調停委員会が裁定による調停をしても本当に従う意思があるのかないのか、こういうことについての審尋をし、本人意思をいわば確認をしてこの調停をする、調停条項を示しでこれによる調停を成立させるということになっているわけでございます。したがいまして、当然のことながら、私どものこの法案を作成する段階におきましては、最高裁判所規則、現在商事調停あるいは鉱害調停について規定されております最高裁判所規則による当事者の審尋規定、こういうものは当然この今回の地代、家賃紛争に係る調停についても置かなければならないというふうに考えていたわけでございます。
 ただ、先般来議論になっておりますけれども、この合意を調停申し立て前にするということも私どもは当然これは排除されるということにはならないという考え方で今のところいるわけでございますが、いずれにしても、そういう調停条項による裁定をする際に調停委員会はさらに改めて再確認的な審尋をするわけでございますので、基本的にはその時点において意思が明確にされる、当事者がそういう合意をしたということが明確に確認されるということが保障されるということであれば最小限の要件は満たされる、こういうふうに考えている次第でございます。
#124
○小森委員 これは先ほど民事局長の方があっさり答えられましたが、私は大変なこれは憲法事項であると思っておるのです。このいわゆる調停前置主義というものを差し込むということは、極めて深い、憲法にかかわるというだけでなくて、つまり憲法事項、裁判ですからね。その最終的な裁判が閉ざされるかどうかという問題でありますから、憲法事項だと思っておるわけです。その憲法事項ということになれば、調停が始まる以前の、ひどいのになるとはるかかなたの忘れておったときの合意書みたいなものも問題になってくると思うのでありますが、調停に応ずるということは何とかして合意に達したいという気持ちがあってのことなんでありますから、それを初めの文書とか、初めごろにちょっとどうですか、合意しますか言うたら、いやいや、わしは合意をせぬつもりで調停に来ておるというようなことを言う人はほとんどいないので、本当の意味で合意ということがどういう効果をもたらすかということがわかって、合意という文書なりそれに対する返事なりするということが想定できないですね。よほどよく知った人でないと想定できないですね。そういう意味で私は非常に心配をするわけであります。
 これは憲法事項であるということを考えると、やはりきちっとこのたびの改正の法文の中に、そのところを二重にも三重にも、どうしてもそこの真の意味の合意というものを確かに取りつけておるということを調停委員会構成メンバーが証明できるようなその歯どめが私はここに必要ではないか、こう思うのであります。今のところ、どうも民事局長の答弁を聞いておると、非常に大事なこの憲法事項にかかわるような問題について、軽いタッチで私はここのところを説明されておるように思うわけですね。もう少しずっしりと重いものだという観点で御答弁いただきたいと思うのです。
#125
○清水(湛)政府委員 私ども決して軽い意味で申し上げているわけではございませんで、調停委員会が定める調停条項によって調停を成立させるという合意は、そういう形での調停条項を成立させる段階において有効に存在しなければならない。したがって、そのことについて調停委員会は当然確認しなければならない。
 ただ、合意の時期については、書面による合意をいつするかということについては、それは調停申し立て後にそういう書面による合意がされるというふうに何も限定をする必要はないのではないかということで、実は現在の商事調停、鉱業調停がそうなっているものですから、それに従ってそういう形にしたということになるわけでございます。あくまでも当事者が調停委員会の調停に服しますよという明確な意思がその段階において明らかにされていることが必要だ。
 それをもっと制度的にきちんとした形で担保せよという恐らく御指摘だと思いますけれども、日弁連の私どもに寄せられた立案の段階における意見では、こういった形でのいわば調停条項による裁定制度というのは結構なんだけれども、その前提となる合意については、調停手続が開始された後、つまり調停の申し立てがあった後にその文書が作成されることが必要なのではないかという御意見がございました。それに対しましては、いわばそういう裁定による調停を成立させる段階においてそういう合意が確認されればいいのではないかということで私どもは考えたわけでございますが、さらにそれを制度的にきちんとした形で保証すべきだというのが恐らく委員の御真意だというふうに思いますが、それも一つの大変よい考え方ではないかなというふうには思うわけでございます。
#126
○小森委員 よい考えと言って褒めてもらったり客観的な評価だけではいかぬので、あなたがこの問題に対する行政の大変な当事者なんでありますから、私はもう一度私の意のあるところを申し述べてみたいと思いますが、調停委員というのは、裁判官が一人加わられて法律的な整合性というものの目配りをしながらほかの人も入ってやられるのだろうと思いますけれども、俗っぽい言い方をしますと、調停委員というのはその地域の、その裁判所の管轄内という意味ですが、地域の有力者といいますか、あるいは少し俗っぽい言い方をすると顔役といいますかな、そういう人がどうしてもなられるんですね。そうすると、その顔色を見て、いや困ったものだ、この人には逆らわれず、どうやるじゃろうかというような気持ちを持ちながら、あなたはよいんですな、合意するんですな、こう言われたら、へいへいそうです、合意しますというようなことになって引きずり込まれるんですね。だから、ここで問題にしなければならぬのは、調停委員会というものそのものをくくるといいますか、調停委員会そのものに対する義務づけをするというか、つまりそういうものがあって初めて――しかも審理が始まって、むしろその審理の結論の出る、調停の結論の出る直前ぐらいにその調停委員会がそのことを義務的にきちっと合意があるかないかを確かめる。しかもそれが憲法事項でありますから、他へ余り委任してはいけないと思うのです。これは、最高裁の規則と法律とがどういう効力を持ってどちらがあれなのかというような議論も法律論としてはあるようでありますが、私は、国民の一般的理解は、法律によってそこのところを制度的にちゃんとくくっておく方が国民とすれば納得がいくんじゃないか、こう思いますので、私の方は極めて具体的な提案じみた。法律でくくれないか。
 これはもう、相手が法務省さんでありますから私が言うのは釈迦に説法だと思うけれども、近代の合理性というのはヨーロッパが模範でありますけれども、我々はヨーロッパの市民革命なんかから学ぶのでありますけれども、結局いかにして力ある者の、権力側の恣意を牽制するか、これがもう法律の持っておる最大の任務だと思うんですね。力の弱い者を牽制したって、力の弱い者は牽制されなくたって牽制されっ放しなんでありますから、だからそこのところはひとつ思い切って法務省も考え直していただいて、確実な上に確実なことをしてもらうことが必要なのではないか、こう思うのでありますが、再度ひとつ色よい御答弁をいただきたいと思います。
#127
○清水(湛)政府委員 調停委員会が定める調停条項によって調停をある意味においては一方的に成立させるという制度でございますが、その前提として当事者の合意が必要である。合意が必要であるということは、これは昔々そういう合意をしたことがあるという書面を出せばいいということではございませんで、法律がこういったことを言っている趣旨は、そういう調停委員会が裁定によるいわば調停をする際にその合意が有効に存在していなければならないということを法律は当然のこととして規定しているというふうに私どもは理解するわけでございます。それで、調停というのは裁定によるいわば強制的な調停をするということが本来の目的ではございませんで、民事調停法全体の趣旨が、当事者が十分に話し合って、そしていろいろメンツの関係でうまく話がつかないけれども例えば調停委員会が中をとってこういうふうに言ってくれればお互いに従いますよ、こういう意味での合意でございますので、したがいまして、そういう全体の流れを踏まえ調停委員会が調停条項を示して調停を成立させる際に、当事者がそういう合意を自主的に、なおかつ有効なものとして保持しているかどうかということは当然確認しなければならない、これは法律の解釈から出てくるところだと私どもは思うわけでございます。そういう意味で、現在の商事調停、鉱害調停におきましても、そのような当事者の合意の真意を確認するためにあらかじめ当事者を審尋しなければならないというふうにしているわけでございます。
 ただ先生おっしゃるように、例えば借地契約を締結するときに契約書にそういうことが書いてあって判こを押した。それで形式的に合意が成立しているじゃないかというようなことでこの合意の有無が争いになるというようなことは、ある意味におきましては無用な紛争を生むということにもなりかねませんので、あるいはその合意の時期について何らかの規制を加えるということは考えられる措置ではないかというふうに考えておるところでございます。
#128
○小森委員 民事局長の答弁が大分和らいだ答弁になったように思います。
 それで、先ほどの話にちょっと返りまして、結局、衆議院本会議なんかでも海部総理が同和問題について、あの人何回も憲法第十四条の条文を引き合いに出しまして、十四条とは言わないけれども、すべて国民は法のもとに平等であると。そこで「人権、信条、性別、社会的身分又は門地によりこというあの言葉を引用して、だからこれは一生懸命やるんですということを本会議でもよく答弁をしますが、つまり総理は、これは憲法事項だということを言っているんですね。憲法事項だと言っているんだけれども、総務庁なんかがやっておる細かい経過がわからぬから抽象論で逃げておるというか、抽象論でお茶を濁しておるわけです。そこには、実際やっておることと憲法の条文を引き合いに出して答弁することとは物すごい開きがあるわけですね。
 だから民事局長も、私が憲法事項だ憲法事項だと言っておるのは、裁判を受ける権利と究極において関係があるわけで、しかも、私は法律の専門家じゃなくて大ざっぱな、社会運動から人間の権利ということをずっと考えてきた人間なんですが、私ら余り調べる能力ないですけれども、ばらばらっと調べても、要するにこういった関係の調停というものが最終的なものになるということは憲法違反だという判例もあるようですね。それは多数意見か少数意見かわからぬけれども、そういうものがあるようです。だから、これは国民の権利にかかわる問題だから、余計に余計に権利を守っておって、権利の守り過ぎということはないのですからね。先ほど少し和らいだような答弁が出ましたことを、なお問題の結論が出るまでには数日あると思いますので、ひとつ十分にお考えをしておいていただきたい、かように思います。
 それから次に、この資料のことにつきましてちょっとお尋ねをしてみたいと思いますが、これは考えによれば当てっけみたいな質問だと受け取られるかもしれませんけれども、私にとってはこれは非常に大事な問題であります。
 この資料の一番最後の辺に調停新受事件数というのが載っております。これは昭和でいうと三十五年からずっと書いて、六十三といって、平成元年となっているわけですね。平成元年という年は、わずかの日付ではあるにしても、これは途中ですね、年間の途中ですね。この昭和でいう、六十三年だから一九八八年ですね――面倒くさくていけぬのですよ、これ。私らはこれ何年か、いつも換算できない。昭和と西暦は二十五を足せばええということをずっと長らくかかってようようインプットしたら、今度はどういうふうにしたらええかわからぬようになる。だからざっくばらんなところでは、それは西暦でいったら何年ですかなと言って問い直すんですけれども、しかしこれは、昭和六十三年と平成元年との間はあるんでしょう。六十三年の次が直ちに平成元年じゃないでしょう。この点ちょっと答えてみてください。
#129
○清水(湛)政府委員 これは六十三年の次に六十四年、あれは何日まででしたか、六十四年一月、ちょっと日付を忘れましたけれども、それまでの分を含んで平成元年、こういうふうに便宜表示しておる、こういう趣旨でございます。
#130
○小森委員 そうすると、念を押しますが、これは平成元年の中に平成元年でない数日が入っておるということですか。
#131
○清水(湛)政府委員 入っているというふうにお答えいたします。
#132
○小森委員 念を押すようですけれども、それは間違いないですね。それは入っておっても数字はさほど違わないと思いますけれども、数日のことだから。一週間ほどだけれども、実際に役所が仕事をやったのはほんの二、三日ぐらいだから、受けつけるといったってわずかだと思いますけれども、本当に入っていますね。
#133
○清水(湛)政府委員 これは最高裁の司法統計年報を引用しておりますので、責任のあるお答えということにはなりませんけれども、もし平成元年だけであって、昭和六十四年の一月一日から一月何日がまでの分が抜けているということであれば、また後日訂正させていただきたいと思いますが、昭和六十四年一月分の何ほどかは入っているというふうに今のところは理解しておるということで答弁させていただきたいと思います。
#134
○小森委員 それは違いがあってもわずかだから、大勢を判断する上ではこれは資料の価値はあると思います。ただ私が言いたいのは、この統計を出すについても余りにも元号に肩を持ち過ぎて、そして、いやもう数日のことだから跳んでもええわというような感じで物が処理されるということが、私は厳密さを、このことでは大勢はわかるからよいようなものの、ほかのときに過ちを犯すのではないかというふうに思っておるわけであります。
 そこで法務大臣にちょっとお尋ねをしますが、元号というのは、私らはこんなものない方がよいと思うのですけれども、しかし必要だと思う人は使ってもよいわけですが、天皇が死んだとか生まれたとか、でなくて即位か、天皇の即位がもとになって年を言いあらわすということで、これはいろいろ解釈がありますけれども、憲法上は天皇は世襲でありますから、簡単に言ったら身分制ですね、身分制。もっと極端な言い方をすると、これは身分差別ですね。
 その身分差別の問題ということに私らは思いが至るのですが、この間法務大臣が私人の資格で参られたという靖国神社に天皇家の紋がありますね。普通の人は菊の御紋と言っておるが、私は御はつけとうない、菊の紋ですね。これは身分制というものとかかわるものであるが、しかし、憲法は象徴として認めておるから存在そのものは邪魔を食ったりなんか、あの憲法が存在する限りはそれはやるべきでないと思いますけれども、余りにもそういうものを誇張し過ぎる嫌いがあると思うのですが、法務大臣はこの間参られてあれを見られて、どういうお感じだったですか。
#135
○左藤国務大臣 まず、元号の問題をいろいろお話がありましたが、現在、元号法という法律に基づいてやっておられる。そしてまた、これは日本の歴史的なことから見ましてもずっと続いてきた一つの伝統でもあるわけでありますが、法的な根拠というものがあって昭和から平成というふうな形になった。私はそのように理解をいたしております。
 それから、靖国神社の中に菊の御紋があるということをどう思うか、こういうお話でございます。これは天皇家の一つの象徴であるということがあって、それをいただいたといいますか、そういう形で明治の時代にこうした靖国神社が設けられて、そしてそこにそういった象徴が置かれているということであって、今日そのまま続けられておる、それが一つの国民の皆さんの理解の中で現在そういうふうなことが行われておる、こういうように私は理解をいたしております。
#136
○小森委員 きょうは文部省の関係の文化庁からもおいでをいただいておりますので、なぜこういう借地・借家法のときにそういうことを関連してお尋ねをするかというと、やはり徹底した合理精神というものが国民の間になければ、一面合理的な法律が仮にできたとしても、それを運用し切る国民的能力というものが欠けるんですね。そういう意味でお尋ねをするのですが、今法務大臣にお尋ねをしたことについて、つまり信教の自由というような関係から、象徴天皇の紋どころがあそこにあるということをどういうふうに御理解いただいておるか。言うまでもなく、信教の自由は国民の基本的な人権の問題であるし、ここが正しく定着するということは、ほかの問題をも合理的に解決する国民的能力にかかわってくると思いますので、お尋ねをしたいと思います。
#137
○梶野説明員 御指摘の点につきまして、まず、靖国神社が菊の御紋章を現在使用している経緯につきましてでございますが、これは明治七年の太政官達によりまして、官幣社は社殿の装飾、社頭の幕、ちょうちんに限りまして菊の御紋章の使用が許されたわけでございますが、明治十二年に別格官幣社となりました靖国神社もこの太政官達によりまして菊の御紋章を使用し、現在に至っているということと承知しております。
 ただいまの御指摘の件に関しましては、宗教法人法というのがございまして、靖国神社もこれにのっとった法人であるわけでございますが、その意味では数多くある宗教法人の一つということでございますけれども、宗教法人法は、憲法で定めます信教の自由や政教分離の原則にのっとりまして、宗教法人の設立や管理運営につきましては、できる限り行政庁の関与を少なくいたしまして宗教上の事項への関与を厳しく排除しておりまして、宗教法人の管理運営は自主的、自律的に行われることを原則としているわけでございます。したがいまして、御指摘の、どのような紋章を定めたりあるいは使用するかにつきましては、個々の宗教法人の自主的な判断にゆだねられているところと考えております。
#138
○小森委員 以前こういうことに対する政府側の答弁をあらかじめ届けていただいておりますので、私も大体それはわかるのですが、以前は恐れ多いから使うな、こういう法律がありまして、私の近所のお寺さんが、あの菊の枚数は少し少なかったと思うけれども、間違われるということでベニヤ板を張らされたのを私子供のときに知っております。それは不敬罪になるとかそういうような意味でやったのでしょうけれども、今日になってみれば、逆にそれをどうぞ御自由にという言い方になって、つまり昔ながらのことを存続させよう、だから何にもしないことによって存続させようという見え見えの意思というものを私は読み取ることができるのであります。
 それで、結局私らは、こういう意識というのを広く一般に広がっている社会意識、こう言っておるわけです。その社会意識の中に国民の不合理な感覚というものがずうっとあれば、何をやったって合理的に物の解決はできない。日米構造協議も、アメリカはアメリカの国益をもって言うとるんだけれども、表向きは日本の不合理性をついておると思うのですね。それで外交だって押されぎみになると私は思うのですね。だから、やはりしっかりした合理的な感覚、人権思想に基づいた合理的な感覚を定着させるように、殊に文部省、文化庁というのは文化が問題なんでありますから、ひとつ配慮をしていただきたいということを要望として申し上げておきたいと思います。
 それから、外務省の方へは、在外公館にやはり菊の紋を使っておりますが、そのことについてはどういうお考えでしょうか。
#139
○小林説明員 お答えいたします。
 外務省が在外公館の門灯等に菊の紋章を使用していることは御指摘のとおりでございます。これは、在外公館の門灯等に自国を示す何らかの紋章を用いることが国際慣行となっており、我が国は従来から菊の紋章を使用してきたため、これが国際的にも広く知られているという事情があるためでございます。
#140
○小森委員 以前日本の軍隊、特に海軍の軍艦のへさきに紋がついておりましたが、きのう聞いてみたら、桜にいかりと変えておるようですね。やはり時代の推移に基づいていろいろなマークというのを変えておるわけでありますから、なるべく象徴天皇を、私はある程度もてあそんでおるような感じがしますけれども、もてあそぶというのでなくて、象徴天皇は国民みんなから、象徴である限りにおいて敵対的な感情とか嫌悪感を持たれぬようにする方が私は憲法の精神に合うのではないか、こういうように思っておりますので、この機会に、合理的な感覚ということで申し述べたわけでありますので、ひとつ御理解をいただきたい、かように思います。
 そこで、いよいよ時間が参りましたので、私の方からこの借地借家法についていろいろ懸念するところを指摘をさせてもらいました。まだ若干の質問の時間がありますので、私もあるいはもう一度わずかの時間でも質問に立つかもしれませんし、また、我が党の他の委員が立たれることはもちろんでありますが、どうぞひとつ、きょうのいろいろ申し上げましたことでお考えをいただく点はお考えをいただいて、時代のニーズにこたえたものを、みんなが余り心配せずに生かされるようなものに最終的な結論を得たいと強く願っておりますので、再度努力する点があろうと思いますからひとつ御尽力いただきたいということを締めくくりとして、私の質問を終わらせていただきます。
#141
○伊藤委員長 倉田栄喜君。
#142
○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。
 本法案につきましては、我が党内にもなお反対意見を述べられる方もおりますし、また、我が党の支持基盤の方々からも非常に多くの意見が寄せられております。政策判断としてこの新法をどういうふうに評価するかということももちろんありますけれども、政党としてその支持基盤の方々の声もしっかりと代表しなければいけないと私常々思っておりますので、きょうは傍聴にも多くの方がお見えになっておられますけれども、その方々にもはっきりとわかりやすくひとつきちんとした御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。実際私のところにも、本法が、この新法というものが成立してしまったら、現在借地の上に建っている自分の家というのを追い出されてしまうのではないか、こういう危惧の念を切々と訴えたはがきが参っております。そういう方々の気持ちに、そういうことはないのですよ、新法はそういうことまで予定しているのかどうかということも含めてお答えをいただきたい、そう思います。
 私は、その観点から、まず新法の理念について、それから現行法の効力というものについて、さらに新法の内容について、そして新法といわば現行法が併存するような形になりますけれども、この点について、時間がありますれば民事調停法、それからいわゆる地上げの問題についてもお伺いをしたいと思います。
 そこで、まず最初に本法の提案理由でございますけれども、提案理由の説明に、「より利用しやすい借地・借家関係を実現」、こういうふうに書いてございます。そこでまず第一点でございますが、現行法では利用しにくいのかどうか、どのような点がどうして利用しにくいのか、この点について大臣、前の御答弁の中で、借地・借家関係の改善を図る、現行法の不都合な点は幾つかあると思う、このようにお答えでございますので、冒頭、大臣からこの点についてお答えをいただきたいと思います。
#143
○左藤国務大臣 今回の改正の一つのねらいといたしまして、社会経済情勢、これの変化に見合った合理的な借地・借家制度を創設したい、こういうことがあるわけであります。定期借地権制度とか確定期限つきの建物賃貸借といった新たな類型の借地・借家関係は契約で定めた期間で関係が終了するという形のものでありまして、そういう点で貸し主にとっても貸しやすいし、また借り主にとっても、先ほど来お話がありましたが、低額の権利金で借りることができる、こういった借りやすいもの、そういうことが考えられるんではないか、このように思うわけであります。また、存続期間の合理化、それから正当事由の明確化というようなことにつきましても、借地・借家関係の利用の円滑化が図られるんじゃないか、こういうことを願っての今回の改正である、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
#144
○倉田委員 重ねて大臣に恐縮でございますが、その現行法の不都合な点というのは、大臣はどのように御認識でございますか。
#145
○左藤国務大臣 今日の経済社会流動性といいますか、非常に展開が速い時代におきまして、そうしたことについて余りにも固定し過ぎたような関係というものが続いていくということが、それでいいんだろうか、こういう点も一つあるんじゃなかろうか、このように考える。不都合と言われるのはそういう意味での、先ほど御説明申し上げましたような新しい類型のものを必要とする時代になっておるにもかかわらず、そうしたものに適合できてないんじゃないか、そういう点が私は不都合じゃなかろうか、このように考えます。
#146
○倉田委員 そこでお伺いをしたいと思うんですが、現行法と今提出をされております新法といいますか、改正法といいますか、その立法理念あるいは立法趣旨というものに違いはあるのかどうか。現行法の最も大切な理念は何なのか、この点、新法ではどうな焦るのか。重ねて恐縮ですが、改正の最も大切な趣旨は何なのか、これをお答えいただきたいと思うんですが、いろいろ長くお答えいただくと非常にわかりにくくて、どの点がポイントなのか、後で読んでもあるいは傍聴席の方がお聞きになっても非常に困ると思うのですね。だから、いわゆるポイントというところを、要点、簡潔にお答えいただきたい、このように思います。
#147
○清水(湛)政府委員 今回の借地借家法案は、契約当事者間の実質的な公平を確保するための措置を講ずるということを目的とするものでございまして、これはこれまでの借地法、借家法と全く理念としては異なるところがない、こういうことでございます。借地・借家法は借地・借家人の権利を保護してその権利の安定的な存続を図る、こういうことを目的とするものでございます。その目的は今回の改正法においても全く変わるところがございません。先ほど大臣がお答えになりましたように、新しい時代の変化に応じましてそれに適合するような形での定期借地権というような新しい制度は導入しておりますけれども、基本的な変更はない、こういうことで御理解いただきたいと思います。
#148
○倉田委員 先ほど大臣からも御答弁いただいたわけですけれども、貸す方、借りる方、それぞれの立場から今回の新法というのがより利用しやすくなっているんだと。それは具体的にはどういうことですか。
#149
○清水(湛)政府委員 典型的には、借地について申しますと、定期借地権制度の創設というようなこと、それから、正当事由、その実質的な意味、効果は違わないわけでございますけれども、正当事由というものの意義がいわば一般の方々が読んでも理解できるような形できちんと整理されたということ、そのほか、借地権の存続期間についても合理化が図られたというようなことが言えようかと思います。
 借家については基本的な改正はないわけでございますけれども、正当事由をきちんと明確化して一般の方が読んでもわかるようにしたということのほかは、いわゆる期限つき借家制度というものを新規に導入したということで、その他の基本的な変更はない、こういうふうに申し上げて差し支えないと思います。
#150
○倉田委員 新法につきまして、この新法というのは借りる方、借り主ですね、借り主の方のメリットというものは何もないではないか、いわばデメリットばかりではないか、こんな声が結構私のところにも届けられるのですね。
 それで、局長に改めてお伺いしたいのですけれども、本法において借りる側、借り主の方においてのメリットというのは何なのか。また、新法について強い反対の意見もあるわけでありますから、反対の方々は新法が施行されることによるデメリットというものを非常に心配をされておられる。わけですから、そのデメリットというのはどんなふうに認識をしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
#151
○清水(湛)政府委員 メリット、デメリットというお尋ねでございますが、まず、現に借地人、借家人である方々については、この存続期間の規定とかあるいは更新に関する規定、そういうものは適用されませんでこれまでどおりの取り扱いを受けることになりますので、メリット、デメリットということは問題にはならない、こういうふうに基本的に思います。
 それから、借地・借家関係の将来ということを考えますと、新しい借地借家法が施行されれば地主の方でも、貸しやすく借りやすいというのは少し通俗的な表現でございますけれども、新しいメニューが用意されますので、それに従って借地に出す、これを借りようとする借地人の方でも、例えば定期借地権などでございますと低額な権利金等で借り受けることができる、こういうようなことで良質な借地の供給の促進が促せる。そういう意味で、貸す方も借りる方もそういう意味ではメリットが出てくる、こういうことになろうかと思うわけでございます。
 存続期間とか更新の規定等については新旧そういう意味で分かれるわけでございますけれども、それ以外でも、例えば現にそれ以外の基本的な規定は現存する借地・借家関係にも適用されるわけでございますけれども、個々的に見ますと、いろいろな法律関係がきちんと明確にされている。例えば建物が滅失した場合に、建物保護法による対抗力というのは建物が滅失するとなくなってしまうのでありますけれども、それじゃ大変だというので、一定の期間、借地権の対抗力の存続を認めるとか、いろいろな権利関係の合理化を図っておりますので、そういう意味ではいろいろなメリットがあると言って差し支えない、借地人、借家人にもメリットがあると言って差し支えないのではないか。
#152
○倉田委員 お答えですと、現在契約されている借り主の方々においては余りデメリットというのはそんなに心配しなくてもいいのではないか、こんなお答えのようですけれども、そうしますと局長は、やはり強い反対意見があることも御承知だろうとは思うのですけれども、どうしてその強い反対意見があるのかということについてはいかがお考えですか。
#153
○清水(湛)政府委員 私どもは、借地借家法というのはどちらに有利にどちらに不利にということではございませんで、借地人、借家人、家主、地主の双方の権利関係を合理的に公正、妥当に調整をするという法律でございます。ですから、法律改正をしたことによってどっちかが不利に扱われるとかなんとかということはおよそ実は考えていないわけでございます。しかしながら、法律の規定が変わるということによりまして、例えば借地人が追い立てられやすくなるとか借家人は追い出されやすくなるというようないわば誤った情報を与えて不安に陥らせるというような現象が必ずしもないわけではないと思うのでございます。そういう意味で、私どもの御審議をお願いしております借地借家法案についても正しい理解が行き渡っていないためにそういうことが起こったのではないかと思いますけれども、基本的には私どもとしてはそのように考えているわけでございます。
#154
○倉田委員 いわば、全部が全部は別として、誤った情報によるものではないのか、こんな御答弁なのかもしれませんけれども、本当に新法に対する反対が誤った情報による反対なのかどうか、きちんとした反対理由があるのではなかろうか、こういうことからもちょっとお聞きをしておきたいのですけれども、この提案理由説明の中に、「より公平なものとする」、こういうふうなことがございます。その「より」ということはどういうことですか。現行法というのはいわゆる新法に比較して不公平なんでしょうか。どの点がその「より」という、言葉じりをとらえて恐縮でございますけれども、まずそこからちょっとお答えいただきましょうか。
#155
○清水(湛)政府委員 例えば提案理由説明のところで、借地・借家法というのは大正十年に制定されて、昭和十六年に改正されたものでございますけれども、その後基本的な枠組みは変わらず、その間社会経済情勢の大きな変化があった。そういう中での土地、建物の利用に対する需要の多様化に対応し切れない状況になっている、こういう現状認識のもとにこの改正法案を提案する、こういうことにいたしておるわけでございます。「現行法の基本的な枠組みである借地権の存続期間、借地・借家契約の更新等の仕組みを見直してより公平なものとするほか、新しい類型の借地・借家関係を創設するなどの改善を図ろうとするもの」というふうにこの提案理由で述べているわけでございます。
 そこの中でも言っております、例えば借地権の存続期間でございますが、これは例えばの話でございますが、現行法ですと堅固、非堅固により三十年、二十年というような区別があり、その後の更新期間も三十年、二十年という形で更新されていくというような実情がございます。こういうようなことが今の社会経済情勢に照らして適当であるかどうかというような面からの検討が加えられまして、堅固、非堅固の区別をなくして基本的には三十年の期間とする、三十年間保障する、しかしその後はやはり地主側、貸し主側の事情の変化あるいは借り主側の事情の変化というものを、これだけ時代の変化が激しい時代でございますから、できるだけ公平に借地関係の存続関係に反映させる必要があるということで、更新期間を十年、こういうふうにいたしたわけでございます。そういうそれぞれの時代の激しい変化の流れというものを公平な形で借地・借家関係に反映させる、そういう意味ではより公平な借地関係になるのではないか、こういうような意味で「より公平」というような言葉を使っているわけでございます。そういう意味で申し上げたということでございます。ただしかし、存続期間に対する規定は既存の借地・借家関係については適用ございませんので、その意味では二本立てになる、こういうことになるわけでございます。
#156
○倉田委員 今局長の御答弁ですと、いわば現行法というのが更新においてある意味では何回も繰り返されていくのが基本になっている、それはやはり時代の情勢等々変化を考えると不公平なのではないのか、こういうふうな認識があるということでございますか。
#157
○清水(湛)政府委員 公平か不公平かということになりますとちょっと言葉が問題でございますけれども、少なくとも借地関係というものを考えますと、正当事由があれば解消されるということになっているわけですが、現行法ですと、堅固の建物の所有を目的とするものでございますれば基本的には三十年、三十年、三十年と、三十年ごとに正当事由の有無を判断するということになる。木造でございますと現実には二十年、二十年という形でその正当事由の有無を判断するということになっているわけですが、ややそれでは硬直に過ぎるのではないか、これだけ時代、社会の変化が激しい、家族構成の変化も激しい、こういうような状況でございますと、およそ建物を建てるために土地を貸すわけでございますから、基本的な存続期間は二十年というのじゃなくて三十年は必要だろう、しかしその後の事情の変化というのはやはりできるだけ公平に借地関係の存続に反映させられてしかるべきである、こういうような観点から更新期間は十年というようにいたしたわけでございます。そういう意味では現在の借地権の存続期間、更新後の期間というのはやや硬直に過ぎるのではないか、こういうような認識があるということは御指摘のとおりでございます。
#158
○倉田委員 当委員会の審議の中で大臣が、借り主の権利が弱まるということはしてはならないし、またそれは考えていない、こういうふうな御答弁があるわけでございます。そうしますと、ちょっとこだわるようですけれども、今の局長の御発言とこの大臣の御答弁ということにちゃんと整合性があるのかどうか。
 また、議論の中で、現行法はいわゆる社会立法、そういう法律ではないのか、弱い立場というものを保護するというこの現行法の趣旨というものが、一番最初に全然変わりはございません、こういうふうな御答弁をいただきましたけれども、やはり「より公平」にというふうに、その「より」の部分を少し御説明いただきましたけれども、変わっていくということはここに変化があっているんではないですか。
#159
○清水(湛)政府委員 私は存続期間の例を取り上げて申し上げました。確かに三十年、三十年という形で更新していくもの、あるいは二十年、二十年という形で更新していくものが、今度は三十年プラス十年、十年、十年という形で更新していくことになりますので、単純に数字計算をしますと、それだけ正当事由があるかどうかということをチェックする機会がふえるという意味において一見これまでより借地人が不利になるのではないかというような御疑問が出てくることは、私ども理解できないわけではございません。ただしかし、それはあくまでも借地人、あるいは借家人についてもしかりでございますけれども、借地人の権利を保護し、その長期安定を図るという借地法、これは現在の借地法でございますが、この立法の精神というものはこれは変えることなく、つまり正当事由という条項による歯どめというものは変えることなく、ただ、その正当事由その間の貸し主側、借り主側の事情の変化というものをできるだけ公平に借地関係の存続に反映させるということが必要なのではないか。
 つまり、正当事由を弱めるとか強めるということになりますと、どっちかの方を強く保護し、弱くするということになるわけでありますけれども、正当事由自体については何らの強さの変更を加えていない。ただ、時代の変化というものに応じまして、貸し主側に生じた事情、借り主側に生じた事情というようなものをチェックする、そういう機会をふやすということだけでございまして、むしろそれは合理的なものであって、公平とか不公平というような、あるいは強化するとか弱化するとかというような問題ではないのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
#160
○倉田委員 この問題、議論すれば切りがないんでしょうけれども、時間の関係もありますので次に移りたいと思います。いわゆる現行法の効力というものについてちょっとお伺いをしたいと思うんです。
 いわゆる現在成立している契約関係の効力、それから新法の現在の契約関係に対する影響、これについては、試案の段階からすれば、提出されている新法というのは従来の例によるということで基本的には影響はない、こういうふうに理解しておりますし、これは試案の段階から見れば大きな進展だというふうには考えておるわけでございます。
 そこで、法務省民事局からパンフが出されております。一、二、三、四と項目があるわけですけれども、このパンフの一の項目に、新しい法律は適用されませんよ、こういうふうに基本的に書いてございます。ところが附則の方の四条を見ますと、「この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。」本文の方はこのようになっているわけですね。ただし、書きあるいは各附則の特別法によって排除されていく。
 そうしますと、例えば附則四条の本文によって新法が適用される条項というものにはどんなものがあるのか。例えば十七条みたいなのは適用されるのではないのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
#161
○永井政府委員 附則の第四条の本文で新法が適用される事項につきまして、代表的なものはまず十条二項で、建物滅失後の借地権の対抗力でございます。これは、既存の借地でも新法施行後に建物が滅失した場合には適用するという、これは附則八条にもありますが、この場合の借地権の対抗力を新法で適用するという考え方でございます。
 それから、十七条一項の借地条件の変更という点、変更の裁判は新法が適用される。ただし、附則十条でこの点につきましては「この法律の施行前にした申立てに係る借地条件の変更の事件については、なお従前の例による。」というような、ちょっとこれは申し立ての日時によりまして新法、旧法の扱いを変えております。
 そのほか、新法の三十五条の建物貸借人の保護という規定は、これも新法が適用されるという考え方でございます。なお、この点につきましても附則十四条で、既存の借地権でも存続期間の満了時が新法施行の日から一年より後の場合には適用するというふうに、これも保護規定の方はそういうふうにしております。
 それからなお、最も基本的なことでございますが、一般的に新法の四十一条以下の裁判手続につきましては、これは原則的には新法を適用する、こういう考え方でございます。
#162
○倉田委員 同じくこのパンフの二項目について、「貸主から「新しい法律ができたら新しい法律が適用されることにする」との約束をしようと言われても、それに応じる必要はありませんし、そのような約束をしてしまったとしても、その約束には、効力はありません。」このように説明をしてあるわけですけれども、その約束に効力はない、その効力がないと考えられる根拠についてお伺いしたいと思います。
#163
○清水(湛)政府委員 このパンフで、「すでにされている貸し借りには新しい法律は適用されずこという、いささかオーバーな書き方をしておりますけれども、基本的には借地権の存続期間、それから更新後の期間、それから更新されるについての正当事由に関する規定、そういうものについては適用がない、こういう意味でございまして、それがこのパンフの一の方で、「これまでどおりの法律の適用により契約は更新されていき、貸主が更新を拒絶しやすくなるということは一切ありません。」このことで具体的に中身を書いているわけでございます。
 そこで今度は、この二項で問題とした問題意識は、更新後の存続期間あるいは更新を拒絶する正当事由に関する規定、これは実質的な中身は同じじゃないかという議論がございますけれども、形式的には新法の正当事由に関する規定と旧法の正当事由に関する規定、形の上の根拠は違うわけでございますが、そういうような実質的な借地権の存続あるいは更新というようなものにつきまして当事者が新法の規定を適用するという約束をしても、それは形式的に見て借地人に不利益な約束であるということで無効である。つまり、更新後の存続期間は、旧法ですと、もし存続期間が原則二
十年のものでございますれば二十年、二十年という形で更新していく。新法では更新期間は十年ということになるわけでございますが、新法の規定によって更新後の期間は十年であるというふうにいたしましても、それは要するに強行法規に反するという規定の適用によりまして、形式的に不利益な形になりますのでその効力は生じない、こういうふうに理解いたしておるわけでございます。
#164
○倉田委員 当委員会の前の御議論の中で、効力は生じない、無効なんだということについて、いわばそれは真意でないから無効なんだ、例えば真意であり得るような合理的、客観的な事情があればそれは有効となり得ることもあるのだ、こういうことでございますね。それは間違いないですか。
#165
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 恐らく既存の契約を前提として、その契約に適用される法律関係は新法のものにいたしましょう、例えば更新後の存続期間は今後十年といたしますというような契約は、これは私どもは無効である。
 ただ、そこでもう一つ問題が出てまいりますのは、既存の借地契約は合意解約をいたしましょうとそこで一たん合意で既存の借地関係は消滅させてしまいまして、今度は新法の規定に基づいて契約をするということになりますと、新法の規定がずっとそのまま適用されていくということになります。
 その際に私ども申し上げましたのは、借地人の方で合理的な理由もなしに、少なくとも存続期間については新法とは旧法はかなり違うわけでございますので、それを合理的な理由もなしに旧借地契約を解約するということはないんじゃないか、よほど世人を納得させることができるような理由があって初めて合意解約をして、そこで新法に切りかえるというようなことがあるとするならば、それはそこまで法律で禁止することはできません、それはやはり有効と言わざるを得ないでしょう、こういう意味で申し上げたわけでございまして、合理的に考えた場合にそのようなことが果たしてあり得るのかどうか、客観的に見てそういうふうに認められることがあり得るのかどうかということになりますと相当問題ではないか、こういう趣旨で申し上げたように記憶いたしております。
#166
○倉田委員 そうしますと、今のお答えというのは、真意で判断をするというのは、いわば現在ある契約関係を合意解約した上で、なおかつ新しい契約関係を結んで、そこに客観的に合理的な事情があれば、真意と認められれば有効となり得る場合もある、こういうことでございますね。その点はちょっと確認のお返事をいただいて、そうしますと、例えば先ほど私が無効というのはどういう根拠なのかとお聞きしましたのは、現行の契約を前提にして例えば更新期間については十年にいたしましょう、二十年にいたしましょう、あるいは正当事由とかいろいろの項目の中に、現行法というのは、借り主に不利な項目は強行法規として九条で無効になっているわけですね。それは、新法が施行されたとしても、なおかつ、個々に現行法下において借り主に不利益な項目が約束されたとしても、それは強行法規違反として無効になるのかどうか、その点を確認をしたいと思います。
#167
○清水(湛)政府委員 存続期間に影響を及ぼす特約でございまして、これは借地人に不利な特約は無効とするという、現行法にもその種の規定がございますし、それに対応する規定を新法案の中にも設けておりますので、その規定違反ということでその効力は生じないということになろうかと思います。
#168
○倉田委員 確認いたしますけれども、現行契約を前提として個々の契約関係において、現行法あるいは新法に――現行法ですね、現在の契約関係において強行法規に違反するものは、それは強行法規違反として無効だ、こういうことでございますか。
#169
○清水(湛)政府委員 仰せのとおりだと考えております。
#170
○倉田委員 そういたしますと、このパンフの三項目の中に、「一定の要件があれば「契約の更新がなく、約束の期間で終了する」特別の貸し借りの契約をすることができるようになります。」こう説明をしてあるわけですけれども、これはいわば現行契約における強行法規に反して、本来ならば無効になるのではなかろうかという疑念を私は持つわけですけれども、その疑念とこのパンフ三の説明というのはどういうふうになるわけでしょうか。
#171
○清水(湛)政府委員 これはつまり、更新しないという形での借地権を三種類この新しい法律案では認め、借家については更新しない期限つき借家契約というものを認めておりますが、これは全くこの新しい法律で認められたということでございますから、今まではそういう契約は実はできませんし、仮にしていましても更新しないという部分については無効であるということになろうかと思いますけれども、今後新しい法律ができまして、それに基づいてするということについては適法な行為であるということに当然なろうかと思います。
#172
○倉田委員 そうすると、もうちょっと確認をさせていただきたいのですけれども、現在例えば建物あるいは借家、家を借りておる現行の契約関係があるわけでございますね。そこで、貸し主の方にいわゆる転勤あるいはそこに帰ってくるという特別の事情が出てきた。その場合には、新法におけるいわゆる新しい、更新のない借家権というのですか、そういうこととして、現在の契約関係は合意解約をして、そしてさらに今度は更新のない新しい借家関係の契約をいたします、新法による契約をいたしましょう、それは有効だということになるわけですね。
#173
○清水(湛)政府委員 まず、現在借家契約がある。たまたま遠方に転勤するので、三年間なら三年間という契約で現在借家にいたしておる。その三年が来ないうちに新法の規定が施行されたというようなことがあった場合に、いやもともとこれは転勤という事情があるために貸したのだからこの借家契約は更新はしないんだということ、これはちょっと言えないのじゃないかと思います。期限つき借家契約というのは、あくまでも新法が施行された後に新たに初めて契約される借家について有効に成立し得るということになるわけでございます。
 そこで、先生の御指摘は恐らく、転勤だからということで家を貸しておった、そういう状況で新法が施行された。そこで今度は新法施行後に改めて家主が借家人のところに行って、これは転勤のためにやむを得ず貸した契約だから今までの契約を一たん解約して改めて転勤目的の期限つきの借家契約にし直してもらいたい、こういうようなことを言うことができるかどうかということがまず問題になると思うのでありますけれども、これは当然にそういうことを言うことはできないということになるわけでございます。やはり本当の意味において真意に基づいて合意解約がされるということが仮にあるとすれば、合意に基づく解約というのはあり得るのかもしれませんけれども、恐らく、借家人が自分の権利の保全を考える限りにはそういう合意で解約をするということは普通にはないのじゃないか、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
#174
○倉田委員 ちょっともう一回確認をさせていただきたいわけですけれども、現在の契約関係について強行法規に反するような契約を個々にやることは強行法規に反して無効だ、こういうことでございましたから、例えば建物の朽廃による消滅、これは附則五条でございますね。それから更新期間、附則六条にあります。それから、あと七条から十四条を一つ一つ、この部分については新法が施行された後はこれでいきましょう、これは強行法規違反だから無効だ、こういうふうに考えてよろしいわけですか。
#175
○永井政府委員 委員仰せのとおり第十六条に強行規定がございまして、十条、十三条、十四条の規定に反するものは無効、こういうふうに規定して
ございます。
#176
○倉田委員 はい、了解いたしました。
 そこで、もう一度一に戻りますけれども、借り主の権利が相続をされたり譲渡されたりした場合でも変わらない、こういう説明があるわけですけれども、これは貸借人の権利が譲渡された場合を言ってあるわけですね。逆に賃貸人の地位が譲渡された場合についてはどうなのか、この点についてもお答えを願いたいと思います。
#177
○永井政府委員 委員仰せのとおりでございまして、新法は適用されません。
#178
○倉田委員 新法を適用されないというのは、賃貸人の方が譲渡されたとしても権利関係は変わらないということですね。つまり貸し主が新しくなるわけだけれども、その貸し主に対しても、いわゆる当事者が変更するわけですから、本来ならば新しい契約ではないかと思える部分もあるわけだけれども、従来の契約関係のとおりである、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
#179
○清水(湛)政府委員 要するに、貸借人がかわりましても賃貸人がかわりましても借地関係はその同一性を持って移転するということでございまして、旧法下の借地関係ということで新法が適用されない、新法の更新等に関する規定が適用されないということでございますと、先生仰せのとおりでございます。
#180
○倉田委員 それでは、次に新法の内容についてちょっと細かくお尋ねをしたいと思うのですが、更新期間が基本的に十年とされている。結果として十年ごとに更新料を請求されるようなことになるのではないか、この点私心配するわけですけれども、この点は法務省としてはいかがお考えでしょうか。
#181
○清水(湛)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、更新後の借地権の期間を原則として十年としたのは、当事者間におけるいろいろな事情の変更というようなものを実情に即してより適切に反映させるということを目的とするものでございます。したがいまして、十年ごとに借地関係の存続の有無を判断する機会を設けるといたしましても、しかし先ほど申し上げましたとおり、現行法と同様、正当事由が存在する必要があるということにおいては変わりがないわけでございまして、借り主のお立場は従来どおり保護されるというふうに私どもは考えております。
#182
○倉田委員 お聞きしましたのは、十年ごとにいわば契約更新機会がめぐるわけですから、そのたびごとに更新料を請求されるようなことになるのではなかろうかと心配するわけですけれども、この点についてどうお考えかということです。
#183
○清水(湛)政府委員 借り主の方で地主さんと円満にやっていこうということを考えまして、十年の期間の機会到来ごとに余りがたがたしないですんなりとというようなことを考えて更新料を払うというようなことが、現実の社会でこれまでも行われておるということを私ども承知しておるわけでございますが、恐らく先生の御指摘は、今までは二十年ごとであったものが今度は十年ごとになるんじゃないか、そのたびに更新料をたくさん取られるんじゃないかというような御心配だろうと思います。
 そういうことが全くないというふうに私は断言する自信はございませんけれども、ある意味におきましては、十年間の更新期間であるということを前提としてもし更新料を支払うとすればその額が出てくるというわけでございまして、更新料の額も必要なら低額になるわけでございまして、その辺の両者の関係というものは若干微妙なものがあると思いますけれども、基本的に借り主に、つまり貸している方に正当事由がなければ堂々と断れるということにおいては、現行法も存続期間が十年とされた場合もこれは変わりがないということについての明確な認識をやはり借地人の方に持っていただくことが大事なことであるというふうに考えております。
#184
○倉田委員 いろいろお答えいただくと、やはり私の頭の中も混乱してしまって何がポイントなのかわからなくなりますので、ポイントだけお答えを願いたいのですが、今お答えいただいた点は、これからもし新法が成立した場合、その中で非常に大切な部分になるんだと思うのですね。いわば更新の期間が十年となることによって、今局長、本来いわゆる更新料は安くなるべきではないか、こんなお答えをいただいたわけですけれども、それは安くなるべきである、また実際に安くなっていくべきである、こういうふうにお聞きしていいかどうか
 それから、一番根本のところにさかのぼってもう一度確認をしておきたいわけですけれども、先ほど、いわゆるうまくやりたいために何となく更新料が支払われていくというような現実があることはあるわけだけれども、本来ならば更新料の支払い義務は法律上あるのかないのか、この点についてもきちっとお答えをいただいておきたいと思います。
#185
○清水(湛)政府委員 更新料の支払い義務はないというふうに私どもは考えております。
#186
○倉田委員 更新料の支払い義務というのはないんだ、そういうことですね。しかし、もし現実に円満にやるために払われるような場合があるとしてもそれは安くなるべきである、こうお聞きしてよろしいですか。
#187
○清水(湛)政府委員 更新料というのは事実上の慣行として行われておる、つまり更新の機会に地主と借地人の関係を今後も円満に続けていくということのためにそういった名目で金銭の授受が行われておる、あくまでも任意の合意に基づいてその種のものが行われておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
 そういう状況でございますので、そもそも更新料が安くなるべきであるとか高くなるべきであるというような議論をするのがあるいはおかしいのかもしれませんけれども、少なくとも今後、更新後の期間は十年ということになっております。現行法ですと二十年となるのが普通でございますけれども、十年ということになるわけでございますから、そういうことは経済法則の原則に従えば当然それに応じた影響があってしかるべきであろう、こういう意味で私は更新料というのは安くなるのだろうというふうに申し上げておるわけでございます。
#188
○倉田委員 そうすると、まず確認ですが、基本的には、現行法下における更新料、それから新法下における更新料、これは支払い義務がなくて、経済事情はあるかもしれないけれども、その取り扱いについては余り変わらないということですか、違いがあるということですか。
#189
○清水(湛)政府委員 法律的な理論の面でやられておるというよりか、そういう経済的な側面で、お互いに話し合いでやられておる分野の問題でございますので、一律にこうあるべき、あるいはこうなるというようなことを申し上げることはできませんが、やはり存続期間が影響するということにはなるのではないか、こういうふうに思っております。
#190
○倉田委員 それから、いわゆる現行法では基本的には更新が繰り返されていく、これが基本になっているというふうに考えるわけですけれども、新法の場合は、例えば建物の滅失とかそれから期間後は原則として借地権というのは消滅をしていく、こういうふうになっているのではないかと私は理解します。そうしますと、期間満了後における更新あるいは建物の消滅ということに関して基本的に考え方が変わっているのではないか、こういうふうにも思えるわけですけれども、変わっているんだとすればその理由はどういうことですか。
#191
○寺田説明員 現行法と新法案でございますが、これで存続期間の問題あるいは建物が減失した場合の問題におきまして更新前と更新後でどう変わったかということは、これは昭和六十年代の検討から実はさまざまな変遷をたどってきたわけでございます。
 一番最初の検討課題の場合には、最初の存続期間は相当強固に保護し、更新後は期間が定めのないものとして扱うというように、かなりドラスチックな解決をしていたわけでございます。ただ現在の案は、現行法では十年という期間が設定されておりませんで二十年または三十年という期間でございますので、土地所有者の方にその二十年ないし三十年の間に正当事由が備わっても取り返しかできない、それは不公平ではないかという考えで、もう少し正当事由の存否による権利調整の機会を多く与えようということで十年になったという経緯がございます。しかしながら、これは当初の案に比べますと相当に借り主の方の権利の安定というのを考慮しておりますし、しかも、最初の案と異なりまして正当事由につきましては何ら変更がございませんので、結果的には現在と大差ないという考えております。
 建物の滅失についての考え方は、現在の法律では建物の滅失という際に期間が延長するかあるいはそのまま続いて本来の期間で終了するかの二つのチョイスがございますが、その差は、土地所有者の方で異議を言うかどうかということでございます。ところが新しい法律は、更新後におきましては建物が滅失した際にも両当事者の権利関係としては調整すべきタイミングに来ておるということで、調整の機会をまさにその時点に置いているということから、建物が滅失した場合の法律関係を新たに八条を起こしましてやや変えているところがございます。これは更新後の法律関係を現在と比べまして借り手に対して弱くするということではございませんで、先ほどの、期間を二十年ないし三十年を十年にしたということと並びまして、そのまさに一番いいタイミングで両者の権相関係を調整する、権利関係の調整の機会をふやしたという考え方にのっとっているものでございます。
#192
○倉田委員 まだ実は質問の項目が大分残っているものですから、恐縮ですが要点のところだけをお答えいただきたいと思うんです。
 十条の二項についてちょっとお伺いいたしますが、いわゆる建物が消滅した場合の、工事をできるようになった。この工事に「ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。」二年間のうちに建物を建てて登記をしてしまわないとだめですよ、こういう規定になっているんですが、例えば火事なんかで不慮に建物がなくなってしまった場合、資金手当てとか何だとかかんだとか、果たして二年内に建物を建てて登記までできるのかどうか、こういう不安があるわけですけれども、これを二年とされた根拠というのはどういうことでございますか。
#193
○寺田説明員 この期間をどうするかはなかなか難しい問題でございまして、今まさに御指摘ございましたように、実際問題としてさまざまな手当てが必要になります。ただ私どもは、この規定というのは両当事者のバランスをとりまして、それほど長い期間をまた設定いたしますと第三者に対しても問題が生じてくるということから、必要最小限のものといたしております。
 基本的には、この二年というのは、私どもが建築の専門家に伺いましたところでは、例えば鉄筋コンクリートづくりの住宅では十四カ月ないし十七カ月程度の期間が通常考えられておりますし、木造の建物では十八週というのが建物を建てる期間としては十分なものだというように聞いているわけでございます。このような期間を参照しながらこの二年という期間を設定したわけでございます。
#194
○倉田委員 次に、新法第十七条ですが、この中に「法令による土地利用の規制の変更」とございます。現行法は借地法の第八条ノ二が対応すると思うのですが、ここに対応する部分は「防火地域ノ指定」、こういう文言であろうと思います。この現行法の八条ノ二の「防火地域ノ指定」が「法令による土地利用の規制」と変更された理由は何なのか、そして、この規定により借地条件の変更は容易になるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
#195
○寺田説明員 まず、現行法におきましては、基本的な存続期間の定めといたしまして堅固な建物と堅固でない建物、まあコンクリートの建物と木造の建物どお考えになればよろしいわけでございますが、これとの間に差がございます。したがいまして、現行法は堅固でない建物を建てている場合に堅固な建物を建てるのが相当となった場合、この事情の変更の例として「防火地域ノ指定」を挙げているわけでございます。しかしながら、この法案におきましては、基本的に堅固な建物と堅固でない建物というものの存続期間の点における取り扱いの差というものを廃止いたしました。両者あわせて最初の存続期間三十年、更新後十年ということになったのは御承知のとおりでございますが、このようなことでございますので、「防火地域ノ指定」ということでは、堅固、非堅固の対応との関係では意味がなくなる。したがいまして、より広く「借地条件の変更」ということにしたわけでございますが、その関係で土地利用の規制その他の条件、事情の変更を示す指標のようなものを新たに掲げたわけでございまして、一般的に申し上げれば、「借地条件の変更」の範囲が広がったというようにお考えいただければと思います。
#196
○倉田委員 それから、先ほども議論ありましたけれども、いわゆる二十八条の更新拒絶のところですね。「使用又は収益」の部分でございますけれども、これは現行法の借家法で見れば「建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合」と、ここには「使用」と書いてあって収益とは入れてない。私もこの点はぜひ、いろいろな誤解も招きやすいこともありますので、「収益」のところについてはぜひ御検討をいただきたい、こういうふうに思います。また、これも議論をされてきているところでありますけれども、いわゆる正当事由の主と従、補強的な部分と主の部分でございますけれども、そこの部分もきちっとしていただきたい。
 そこを確認する意味でもう一度、例えば「ほか」以降の部分はあくまでも補強的な部分だ、こういうふうにお答えいただいておるわけですけれども、この「建物の使用又は収益を必要とする事情」、ここがいわばイーブンの場合、対等な場合に、いわゆる補強的な部分が考慮されてくるのか。この辺の関係は、補強的と言われる以上どういうふうにお考えでしょうか。
#197
○永井政府委員 基本的には、主たる要素でございます当事者が土地・建物、この場合は建物でございますが、建物の使用を必要とする事情ということが中心になりますので、この間に余り差がない場合に従たる要素であります他の要素が考慮される、こういうことになろうかと思います。もっとも、完全にイーブンであるかどうかというのはなかなか難しゅうございますから、基本的には余り差がないというような状況の場合と考えております。
#198
○倉田委員 それから、定期借地権についてもちょっとお伺いしたいわけですけれども、定期借地権の場合、定期借地権終了時に存在をする建物の方のいわゆる借家人の保護は、いわば第三十五条のみみたいに思えるわけですね。そうしますと、例えば貸しビル業者等が子会社をつくる、それで定期期間が終了をすればそのテナントの人たちを追い出す、こういうことが非常に懸念をされるわけですけれども、これを例えば期間が来たら出ていってもらう、また新たに貸して期間が来たら出ていってもらう、こういうことを繰り返すような事態が生ずるとすればおかしいんじゃないかと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
#199
○寺田説明員 今御指摘の点は借地と借家の競合する問題で大変難しい問題の一つでございまして、公聴会でも現に建物・土地を借りておられる方のお一人が、この問題が現在の借地・借家法制の一つの問題点として挙げられたというところは御承知のとおりでございます。私どももかねてからこのような問題というのは一つ大きな問題だというふうに考えておりまして、その対策といたしまして三十五条という条文を新たに起こしたわけでございます。
 ただそのほかに、今御指摘のように、実際には同一人と見られるようなケースで、しかしながら法人格としては別のものがちょうど借地を利用してその上に建物を建ててだれかに貸すということになりますと、借地の権原がなくなりますと借家人は占有権原がございませんので出ていかなければならないというケースがございます。これは定期借地権に限らず、一般的に現在の借地法の問題としても考えられるわけでございまして、期間の満了あるいは形式的な債務不履行を起こすことによって借家人を追い出すことは不可能ではないという状況にございます。ただ、こういうものは地主と借地人との間にある種の了解がありまして、両者が法の潜脱をするために一体となって行うというような事情があるような場合には、法律的には権利乱用あるいは別の法理さまざまございますが、何らかの形でその借家人の立ち退き請求というものが否定されるということも理論上は考えられるわけでございます。
#200
○倉田委員 続きまして、事業用借地権についてお伺いしたいわけですけれども、これは「専ら事業の用に供する建物」、括弧書きで「居住の用に供するものを除く。」というふうに書いてあるわけですね。
 この点について、例えば「専ら」というのは基本的にはどういうことなのか。一階が事業で二階が住居の場合、あるいは二階に従業員さんが住んでおられる場合、三番目に、では当直の場合はどうなのか。
 それから、まとめて質問させていただきますが、同一敷地内に前が店舗で後ろが寮、こういう場合はどうなのか。この点についてお答えいただきたいと思います。
#201
○寺田説明員 おっしゃるとおり、事業用の借地にございましても、事業用と申しましてもさまざまなものがございまして、中にはマンション業者というようなものもございます。そのマンション業者の中には、もちろん貸しマンション業者がございまして、こういうような業者がこの事業用のものを利用いたしまして建物を建てまして、それを第三者に貸すということになりますと、十年ないし二十年という期間はこういうような居住用の建物をつくるのには甚だ適当でない、そういうものを法律としては想定していないというところでございますので、こういうようなものを括弧書きで除いているわけでございます。
 「専ら」ということの解釈でございますが、これは居住用の要素があるというものを除くということになります。したがいまして、例えば今挙げられました例でございますと、寮が一部ついているというケースでございますとか、社宅がついているケースでございますとか、あるいは恒常的に寝泊まりに利用されている施設がかなり確定的なものとして設置されている、こういうようなものになりますと、この事業用の定期借地権の利用の対象からは外れる。ただし、仮の宿泊所のようなもので、全体といたしまして、例えばパチンコ屋さんの後ろに警備の人の仮眠室があるというような程度でございますと、これは認められるのではないかというように理解してございます。
#202
○倉田委員 事業用借地権についてはいろいろな規定が排除されるわけで、二項に「公正証書によってしなければならない。」私は、第三者に対する公示機能という観点から考えれば、ここは本当は登記の方がよかったのじゃなかろうかと思うのですが、登記にできなかった理由というのはあるわけでしょうか。
#203
○寺田説明員 この事業用の借地権と申しますのは、私どもが二十二条あるいは二十三条の定期借地権を考えている場合には、普通の借地権とどちらが地主さんにとりまして有利だということがそれほどないというようにバランスがとれたものだと考えておりますけれども、他方、事業用の借地権というものは、期間も短く、かつ定期であるというところから、他のものに比べますと有利であるという側面がございます。したがいまして、一種の乱用というものが懸念されるわけでございまして、そういう意味では、本当に事業用だということを明らかにして契約をしていただく。また、局長からも御答弁申し上げましたように、もちろん二十二条の借地権においても公正証書が望ましいわけでございますけれども、二十四条の定期借地権におきましては、いわば相手が事業者だということで、仮に公正証書を要求することになっても過大の負担ということにはならないだろうということから公正証書にいたしている、そういう趣旨でございまして、決して公示機能というものをねらった。わけではございません。ただ、後々の代まで当事者間では契約の内容が明らかになっているということでございます。
 ところで、ではなぜ登記を公示機能として残さなかったかということは、これも非常に難しい問題で私ども慎重に検討したわけでございますけれども、そもそもまず、借地権に登記というものが現在の仕組みでは余りなじみがないところでございます。第二に、登記手続上の問題として考えた場合に、登記をすることによりまして有利になりますのは実は貸し手の方でございます。しかしながら登記手続上は権利者というのは借り手だということになりまして、そこのそごがございましてなかなか登記手続上も難しい問題がございます。また、一般的に申しますと、いかに弱い権利でございましても、例えば使用借権というようなものが土地利用の根拠として用いられている場合にも、決して公示があるわけではございません。したがいまして私どもは、公示というのは、必要な場面も出てこようけれども、どうも一般的にこの制度に適用していくのは少し無理があるのではないか、このように考えたわけでございます。
#204
○倉田委員 新法の内容についてまだ二、三質問が残っているのですが、実は建設省の方にも公団住宅等の関係で来ていただいておりますので、時間の関係でそちらをちょっと先にやらせていただきたいと思うのです。
 いわば、公団の住宅等にお住まいの方々がこの新法に対して非常に不安を持っておられる。そこでお伺いをしたいわけですけれども、いわゆる公団住宅あるいは地方自治体の県営、市営、町営の住宅等に関して新法が適用される部分について、現在入居しておられる方々と新法で契約しておられる方々と、この権利関係に違いはあるのかどうか、この点をまず一点お伺いしたいと思います。
 さらに、もし新法が成立した場合に、いわゆる入居契約書みたいなものがあるはずだと思うのですけれども、この契約書の定型というのですか、契約書の書式というのは新しくつくられるおつもりなのかどうか、あるいは従来と全く同じなのか。借りておられる側にとってみれば一新法が成立したとしてもその権利関係あるいは契約書の内容も現在と全く変わりありませんということであれば大分御心配はなくなると思うのですが、その点いかがでございますか。
#205
○照井説明員 お答え申し上げます。
 今回の借地借家法の中での借家関係の内容につきましては、もう私から改めて申し上げるまでもなく、現在の借家契約の型、タイプに加えまして新たに確定期限で終了いたします借家契約の形を加えるという点のほかは、現行の借家法と基本的な仕組みに変わりはないというふうに認識しております。一般的に公団が新たな形の契約を選択するということは考えられがたいわけでございまして、したがいまして、旧法適用者と新法適用者との間で契約が異なるとかあるいはいろいろな取り扱いが異なるというようなことはないと考えております。
 なお、公団からも、現行の賃貸借契約書の書式をこの借地借家法の成立に伴って変更する予定はないと聞いております。
#206
○倉田委員 例えば、公団住宅等にお住まいの方々が心配をしておられるのは、新法が適用されますと家賃の値上付につながるのではないか、あるいはその家賃の値上げが高家賃化、高い家賃になっていくのではないか、あるいは、現在の公団住宅あるいは公営の住宅等に関しては取り壊し時期というか、もう相当年数のたっているものも多いと思いますが、これが取り壊し促進につながっていくのではないかということを危惧されておられるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
#207
○照井説明員 今回の法案の中で、公団住宅の家賃改定とか、あるいは、おっしゃいますように非常に古い三十年代住宅を中心に建てかえを進めておるわけでございますけれども、その建てかえに関連いたしますのは、二十八条の建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件、いわゆる正当事由の条項と、第三十二条の借賃増減請求権の二点であろうかと思います。
 これらにつきましては、現行の借家法におきます正当事由あるいは借賃増減請求権の実務上の取り扱いとは異なるものではないと認識しておりまして、私どもといたしましては、公団住宅の現在の家賃改定のやり方あるいは建てかえの進め方につきましてこの借地借家法案の成立に伴って変更する必要はないと考えております。
 なお、公団からも、現行の家賃改定ルールあるいは建てかえの進め方について、この借地借家法案の成立に伴って変更する予定はないと聞いております。
#208
○倉田委員 重要な点ですので確認させていただきたいと思いますが、いわゆる現在契約されておられる方々も、新法で仮に契約される方々も、書式等々、何ら権利関係その他の取り扱いについて変わらない、そういうことでいいわけですね。
#209
○照井説明員 おっしゃるとおりでございます。
#210
○倉田委員 大分時間も詰まってまいりましたので、あとは借地・借家の方にちょっと戻らせていただきたいのですが、いわゆる新しい借家法では、取り壊し予定の建物あるいは転勤等の事情で更新がない契約関係、こういうのが予定されているわけですけれども、例えば取り壊し予定であるとか転勤であるとかということについて、事情が変わった、あるいは貸し主の方で脱法する趣旨でこれは近々取り壊し予定だからすぐ出ていってもらうよ、そういうことで実は契約したんだけれどもそれを繰り返す、結局は取り壊ししないあるいは転勤して帰ってこない、こういうふうな事情がある場合については、これほどんなふうに取り扱えばよろしいのですか。
#211
○寺田説明員 この三十八条、三十九条の建物賃貸借につきましては、要件がございます。その要件を欠く場合には無効でございまして、さかのぼって普通借家権、普通建物賃貸借というようにみなされるということになります。
#212
○倉田委員 それからもう一点、第三十二条に「その他の経済事情の変動」というのが新しく規定されているわけです。これは恐らく新法が適用されることになると思うのですが、「その他の経済事情の変動」ということが入ることによって値上げが容易になるのではないのか、こういう危惧もあるわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
#213
○寺田説明員 御承知のように、地代家賃を算定するのにはさまざまな手法がございますが、基本的には考え方としてやはり一定のコストというものを考えざるを得ません。土地の場合にはそれは一つは土地そのものの価格ということに反映しておりますけれども、しかし、そのほかに諸物価がコストになるということは否定できません。このような趣旨で「経済事情の変動」というのをここへ加えるわけでございまして、これは現在も判例によって認められているということはお認めいただけるのではないかというふうに考えるわけでございます。むしろ、現行法のままでは地価あるいは租税というものが不当に強調される。どちらかというと物価というのはむしろ現在においては地代家賃を下げる要因として働き、またそれが合理的な側面もあるということをここでは強調させていただきたいと思う次第でございます。
#214
○倉田委員 次に、民事調停法をちょっとお聞きしたかったのですけれども、質問の時間がもうなくなってしまいました。そこで、民事調停についてはいろいろ議論がなされておりますが、この点について一点だけ。
 例えば調停に服する旨の文言があったとしても、後からもうやめたい、この条項というのは取り消したいあるいは撤回したい、こういうことはできるでしょうか。
 それから、調停に服する旨の文言についても、多くの方々はこの調停に服する旨の文言があって調停条項が示されれば、いわゆる異議申し立てというか次に争うことがないということを御存じない方が多いと思うのですけれども、調停に服する旨の文言、これが具体的にはどの程度まで書いてあればそれは調停に服する旨の文言なのかどうか、この二点。
 それから、時間が来ましたので最後に大臣に。
 実は、いわゆる地上げの問題でございますけれども、非常に悪質な地上げのことによって嫌がらせを受けたり、非常に強行に地上げをされるということが現行法下でもいっぱい、種々公述人のお話の中にもありましたけれども、困っておられる方がおられるわけです。新法ができた場合、誤解のもとにそれにさらに拍車がかかることも予想されるわけであって、この地上げの取り締まりあるいは抑制、不当なものに関してきちっとした対策あるいは断固たる態度で臨まなければいけないと思うわけですけれども、大臣にこの点について御所見をお伺いして、最初の二点お答えいただいてから最後に大臣お答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#215
○清水(湛)政府委員 最初にお答えいたします。
 調停条項による調停の制度でございますが、これは書面による合意が必要だということになっております。もともとこの調停条項による裁定の制度は調停成立のための一つの方法として設けられたものでございまして、基本的には調停手続による当事者の互譲が行われ、そのためにいろいろな説得が繰り返される、こういうのを経まして、最終的にもし調停委員会においてそういう調停条項を示せばそれに当事者が服する、こういう形でもし当事者が合意しているならばそれによって紛争を解決しようという趣旨でございますから、仮に調停申し立て前の書面にそういうような合意が書いてありましても、調停委員会においてそういう調停条項による裁定をする際に再度確認して、そのような合意はもう今維持してない、それを撤回という言葉で言うのが訴訟行為という面から適当であるかどうかちょっと問題はあるかもしれませんけれども、いわばそういう意味での意思撤回というものはこれは認めなければならない。それを確認する手段として当事者を審尋するというようなことを現在の制度でも保障しているわけでございますが、そういう形で当事者の意に染まない調停をするということは調停制度の趣旨からいってこれは明らかにできないというふうに私どもは考えております。
 それから、そういう書面による合意というのは、やはり当事者が調停委員会の示した調停条項に服するということが明確に示されるものでなければならないということでございまして、調停委員会がそういった形での調停をする段階でつくられた書面ということであれはこれはもう一番確実な書面だということは言えるかもしれませんけれども、私ども現在の考え方としては、それは調停申し立て前につくられた書面でもまあいいけれどもその意思が明確にされていることが必要だ、なおかつその上に、調停委員会としてはそういう当事者を審尋してその真意を確認するという手続を経た上でこのような制度を運用するというふうに考えているわけでございます。
#216
○左藤国務大臣 この法案におきまして、一新法の借地・借家の更新それから更新後の法律関係、こうした規定というのは一切既存の借地・借家関係には適用しないということは法律自体がそのことを明記しておるわけでございまして、新法になりましても既存の借地・借家関係は従来とは変わることはないわけであります。それを曲解してと申しますかねじ曲げてと申し上げていいのかもしれませんが、相手方との交渉を有利に運ぼうというようなことでそうしたものが出てくるということはまことに遺憾なことでございますし、これまでにも御説明申し上げたと思いますが、法案の趣旨、内容をわかりやすくつくったパンフレットなりリーフレット、そういったものを広報活動として積極的に配っていく、そうしたことも行って、今後ともあらゆる機会をとらえましてこの法律案の趣旨それから内容を国民の方々に十分理解していただくように、そしていやしくもそうした無用の混乱が生ずることのないようにあらゆる面で努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
#217
○倉田委員 いわゆる地上げに関しては断固たる抑制措置をとっていただくし、それから悪質なものについてはきちんと対応していただく、こういうふうにお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#218
○伊藤委員長 鈴木喜久子君。
#219
○鈴木(喜)委員 前回質問いたしました続きですが、いろいろと少しずつ重複するところがあるかもしれませんけれども、お許しください。
 まず、見通しといいますか、この法律が改正されますと一体借地・借家の供給ということに本当につながっていくのか、そこに活性化される部分があるのだろうかということについて、見通しを大臣から伺いたいと思います。
 続いて、その見通しについて、建設省の方は民間の賃貸がふえるのじゃないかという期待を持っていると言われているのですけれども、そのあたりの見通しの根拠等も含めまして、大臣と建設省の方からも伺いたいと思います。
#220
○左藤国務大臣 借地・借家法の改正がより合理的な当事者の関係の確立というものを目指すものであるわけでございまして、宅地なり住宅の供給を直接の目的とするものではありませんけれども、例えば、定期借地権の制度の創設といったものに見られますように、借地・借家に対します多様化した需要にこたえよう、そういうための施策が実現されて、そして借地・借家法制が当事者にとりましても合理的なものに改められる、そういうことによってこれからの利用を望んでおられる多くの方々の期待にこたえられるのではないか、その結果、貸し地なり貸し家の供給というものが増大していく、このように期待をしておるところでございます。
#221
○石井説明員 お答え申し上げます。
 今回の改正におきましては、定期借地権あるいは確定期限つき借家の特例といったものが導入されようとしているわけでございますが、これらの制度は借地・借家ニーズの多様化にこたえるものであるというふうに理解しております。こういった新しい制度の導入によりまして賃貸人の土地及び建物の返還に係る不安といったものが解消されることによりまして、賃貸住宅を含めた住宅あるいは宅地の供給の促進に資することになるものであろうというふうに建設省としても理解をいたしておるところでございます。
#222
○鈴木(喜)委員 建設省も、それから法務省もそういう期待と確信を持っておっしゃっているのかもしれません。しかし、この立法をされるときに、随分長いこともかかってなされています。その中で、本当に借りている人たち、民間人、そういう人たちからアンケートをとったり、意見を聴取したりすることがどのくらいあったのでしょうか。立法の過程のことについて、やはり少し法務省の方からも伺いたいと思います。
#223
○清水(湛)政府委員 借地・借家法の改正作業は昭和六十年から法制審議会で始めたわけでございますけれども、この審議会でいろいろなことを議論した結果をまず借地・借家法の改正の問題点という形で一般に公開いたしまして、広く各方面の意見を求めたわけでございます。借地・借家人の組合の方々にも意見を求めましたし、いわば地主、家主さんの団体にも意見を求めたし、各地の弁護士会、それから不動産業関係業界、あるいは各行政庁、そういったいろいろな団体にオープンに、公平に意見照会をいたしました。その結果、例えば非常に都市再開発を主要に考える団体からはかなり強い意見が出てまいりますし、他方また、借地・借家人を保護するということを目的とする団体からはそれに対応したさまざまな意見もまた出てまいる。こういうような各方面の意見を採取しながら一応その取りまとめとしての要綱試案というようなものをつくりまして、これもまた各方面にオープンにいたしましてそれについての意見を求めるということでございまして、この借地・借家法の改正につきましては、私どもとしては、いわばあらゆる方面の御意見を参考にしながら、法制審議会においてオープンに、公正公平に審議を進めてきた、こういう確信があるところでございます。
#224
○鈴木(喜)委員 今法務省にお伺いいたしますと、これをつくるに当たって、この法律が本当にいいか悪いか、要するにいろいろな利益の立場の違う人たちの意見を聴取しながら、その利益の較量といいますか、双方にいいようにしようという御努力をされているというそのありさまはよくわかるのです。しかし、法律というのは生きているもので、そういういい法律であるかどうかということとともに、本当にその法律にのっとって使ってみようかな、この法律があるんだから例えば土地を貸してみようかな、家を建てて貸してみようかな、そして借りるのはいいことだなというふうに思うかどうかというのは、団体の人たちとかそういう人たちではなくて、本当にごく一般の一人一人の国民の声ではないかというふうに思うのです。
 そして、見通しというのはやはりそういうところですから、例えばよく政府などでやっております、こうなったならば、例えば私は土地があるのならば貸そうと思うとか借りたいと思うとか、どのくらいの値段であったならば、例えば初めに権利金というのがこんなではとても借りられないけれどもこのくらいだったら借りられるだろうし、この法律になればそれだけ権利金も安くなるのかなというような期待があるかどうか、そういったことは一人一人のというか、非常にたくさんの人からの、いろいろな団体たくさんからということももちろん必要ですし、その御努力も非常によくわかります。そういうこととともに、法律というものからは日ごろ無縁な人たち、これまでの借地・借家法がどういうものかということにそれほど関心のない人たちも含めて、そういう人たちからの意見というものを聞く。そういった態度というのがどこの省庁にも限らずあると思うのですけれども、特に法務省というところは、なかなか私たち庶民は敷居が高くて、そこで何かすぐに気軽に物を言ったりするようなお役所とは違うような気がします。そういうところでそういった御努力といいますか、こういうことをやるとこうなるよという国民の期待というか意思というか、そういうものを仮にでも少しでも採用されてやったことがおありかどうか、もう一度だけ伺います。
#225
○清水(湛)政府委員 法務省の、特に私どもの所管で申しますと、民事に関する法律を所管しているわけでございまして、借地・借家法の問題もございますし、それから例えば最近非常に大きな問題になっております夫婦別姓の問題だとか再婚、待婚期間の問題だとかあるいは離婚理由の問題だとか、そういうようないわば国民一人一人、庶民一人一人の生活にかかわる法律問題というのを法務省は、私どものところでは所管しているわけでございます。
 そういうような観点から、借地・借家法の改正をするに当たりましても、本当に幅広く大勢の方々の御意見を伺う必要があるとともに、これは先生もよく御存じだと思いますけれども、借地・借家というのは、一般的に法律論でかくかくしかじかと、こういう形で規制をするということが必要であると同時に、すぐれて個別の事案でございまして、いわばそれぞれの、個人個人の借地関係、借家関係というものが、人が違うことによってすべて違ってくる、こういう非常に個性の強いものと申しますか、個別性の強いものでございます。したがいまして私どもといたしましては、裁判所がいろいろな事件の処理を通じて、あるいは弁護士会がいろいろな事件の委任を受けて、その処理の中で御経験になったこと、そういうようなものも逐一この審議の過程に反映させていただくというようなこともしているわけでございまして、国民の一人一人に御意見を伺うというわけにはまい
りませんけれども、この借地・借家法の改正についてはおよそ関係する人たちの意見は直接に、あるいは弁護士さん、あるいは裁判官というものを通じて十分に反映させることができたのではないか。
 そういう意味におきましては、先日の公述人の方々の御意見にもございましたように、いわば都市再開発を考えているような方から見ると不満であるというような面も指摘されたことがあるわけでございますけれども、いろいろな方々の意見を聞き、かつ借地借家法が当事者間の権利関係を公平妥当に調整するための法律である、こういう基本理念を失うことなく今回の改正案を最終的に取りまとめたものであるということについて御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#226
○鈴木(喜)委員 公平、妥当なものを図っていくためにつくった、当事者間のものをつくった、そこのところは大分たくさん伺いましたのでよくわかるのです。要するに実効性のあるといいますか、その実効性の中の一つは、当事者間で紛争が起こる場合または契約をする場合に、公正なものを図りそれなりに今の時代のニーズに合ったものにしていこうというそのお気持ちも、また御努力もわかるのです。しかし、もう一つの実効性ですね。要するに、民間の賃貸がふえていってそれによってある程度住宅の供給というものが促されていくんじゃないか、その点での効果というものについておりにも調査がなさ過ぎるのではないかというふうに私は言っているわけです。こういうものをつくったらどうだろうか、これはいいか悪いかみんなから聞くという、その点では本当によくおやりになっていらっしゃると私思いますけれども、これがもし目的がそういうことにないのなら、住宅を貸したりなんかするそういった取引の活性化を図るという目的がないのなら、もうそれで十分だと私も思うのですけれども、そうではない、建設省もそういうふうに期待をしているということになりますと、そういった目的というのは入っているとすると、その点ではちょっと欠けているのではないかな。特に私はこの全体を見て、自分が貸そうと思うときに、この法律になったから特に貸そうかなという気にはなかなかなれないのではないかというふうに思いますし、また借りるのに、それなら借りやすくなってよかったなという感覚もまたないのではないか。その効果の点が余り期待できないということを申し上げたわけです。
 それで、例えばここで、総務庁は住宅統計調査というものをとっている、そういうことから、だんだんと借地というものが減ってきてしまって、五割から二割以下にこの二十年間で減っているという現実はある。ここまでは見えるのですね。だからふやすのにどうするかというところの分析になると、建設省も余りやっていなくて、ただ正当事由が余り狭いかなとかいうような分析を御自分の中でされているだけであるという。国民の生活にじかにかかわる問題なんですから、そういった点でもっとじかに国民からの声を聞くシステムといいますか、そういうものも取り入れて、こういうところにそういったグラフの一つも出るような形でしていただけたらよかったなというふうに思います。
 それで、この問題はきょうは一つ一つ条文に当たってお聞きしていきたいと思うのですけれども、もうあと少しだけ大ざっぱなところで、大ざっぱというか総括的なことで伺いたいと思うのですが、この問題を合言いましたような形で実効性を持たせるということを考えていきますと、都市計画とか住宅政策とか、そういったものと完全に合致した完全な施策というものが必要となると思うのです。
 例えば税金の問題にしましても、相続税という問題があって、だれも地主は売りたくもないけれども、だれもそんなことをして追い立てたりなんかしたくはないけれども、相続税が高くてどうしても売らざるを得ない。また、相続の問題というのも、このごろは皆さん、一人の人に、長子に相続するということではなくて、どの相続人も、例えば複数の相続人がいれば全部同様の権利を主張する、もちろん権利があるわけですから主張するのですけれども、そうすると、一個しかない不動産をどうやって分けるかといったら、これは売り払って、そしてそのお金を分けるよりほかほとんど分け方がないという状況があります。こういった相続税の問題でありますとか、またお年寄りや低所得者の方々の住まいについては一体どういうことを、この借家法の中にまで考えていくわけにはいかないけれども、そういった問題もどういうふうに対応していったらいいかということも考えなければ、先ほど公団住宅についての配慮というものについてどうかというお尋ねもありました、そういったこともかかわりがなければいけないとは思います。
 ですから、建設省ばかりでなく大蔵省の、特に税金の方の関係での国税でありますとか、それから厚生省でありますとか、そういうところとの連携なり、立法に際しての意見の交換なり、そういったものはなされていたのでしょうか。
#227
○清水(湛)政府委員 借地借家法というのは、広い意味で政府の土地政策、住宅政策の一環である、こういう認識は私ども持っているわけでございます。ただしかし、直接に、例えば老人問題だとかあるいは住宅を大量に供給するというような、これは本来建設省なり厚生省が取り扱われている問題でございますけれども、そういうものを直接の目的とするものではない。ただしかし、先生御指摘のように、人間が住まいに住むというのは最も基本的な人間生存の要件でございますから、そういう基本的な要件についての法律関係というものが合理化されて現在の社会経済情勢に適合するようなものになっておりませんと、それを前提として政府が各種の住宅供給政策、土地政策を進めようといたしましても、個人と個人の関係が基本的にぐらついてしまう、こういうことに私どもはなるのではないかというふうに思うわけでございます。
 そういう意味におきまして、まず最小単位である個人と個人との住宅の利用関係、土地の利用関係というものをきちんと整理して、その上、これを踏まえて、あるいは建設省、あるいは厚生省というようなところにおきましていろんな住宅政策、福祉政策を展開きしていただくということはあるいは必要である、こういうふうに思っているわけでございます。
 したがいまして、私ども、この借地借家法の審議の過程におきましては、これは建設省が住宅政策に一番関係するところでございますから、建設省が今後住宅政策を進めるに当たって、その基本あるいはベースにある借地・借家関係というのはどういうふうに固められるかというものは一番建設省が関心があるところでございましょうから、建設省には十分に私ども御相談に乗っていただいているわけでございます。
 大蔵省の面におきましても、今度例えば定期借地権というようなものが新たに生まれますので、そういうものは一体税法上どういう評価になるのかということについては大蔵省は当然御関心があるわけでございまして、事務的にはそういうことで大蔵省にもお話を申し上げておるというようなことでございます。
 厚生省の老人問題というようなことにつきましては、これは先生も先ほど言われましたように、借地借家法直接の問題ではございませんので、むしろ借地借家法というものを現代の社会経済生活にきちっと合うものにまず私ども整理させていただいて、これを踏まえて厚生省でいろんな政策を御検討願うことになるであろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
#228
○鈴木(喜)委員 そこで、建設省の方に伺いたいのです。
 今、事前にいろいろとこういう法律をつくるに際しましても建設省とは緊密な連絡をとりつつつくり上げてきた法律であるというお話でありますし、借地・借家が改正されるから、だから直接こういう施策をとるということではないということと思いますけれども、一体どういった都市計画を持ち、この法律が改正されて、そしてこの法律の中だけで律し切れない部分が出てきたときに、こういった人たちにどういった形で全体公共住宅というような供給の面からフォローしていかれるのか、また全体の都市計画というものはどのようになされていこうと現在考えておられるのか。都市計画、住宅政策それぞれの面から建設省の方にお答えいただきたいと思います。
#229
○林説明員 都市計画の見直しにつきましては、現在、都市計画中央審議会において種々検討が進められております。八月の八日に同審議会の計画制度部会から中間報告も出されておるところでございます。
 中間報告の中では、先生の御指摘に関します部分としましては、例えば土地の有効高度利用の要請が特に強い地域において住宅供給等に資する優良な計画が策定されれば容積率を思い切って上乗せする、しかし計画ができるまでの間は現状のままで一時的に容積率を凍結するような制度を創設するといったようなこと、あるいは用途地域に関連しまして、主として地価負担力の比較的弱い住居系土地利用の保護を図るために用途地域を細分化していく等の提案がなされているわけでございます。
 これはあくまでも中間報告ということでございますので、今後同審議会における検討がなされるわけでございますが、その検討を踏まえまして必要な制度の見直しを行うこととしておるわけでございます。ただし、今回の借地・借家法の改正と直接関連していくというものではないというふうには考えておりますが、必要な制度の見直しも行うことにしていきたいというふうに考えているところでございます。
#230
○川村説明員 お答え申し上げます。
 国民の住居を確保していくというのは大変大きな問題でございまして、総合的な住宅政策の展開が私ども必要だと思っております。特に、大都市地域につきましては、借家世帯の居住水準が低いことあるいは地価の高騰によりまして良質な賃貸住宅への需要が高まることが予想されておりまして、私どもといたしましても、良質な賃貸住宅の供給を促進していくことが大変重要だというふうに考えているわけでございます。
 このため、平成三年度からスタートいたしました第六期の住宅建設五カ年計画に基づきまして、特に市場において不足をいたしております三人から五人の標準世帯向けの賃貸住宅の供給に重点を置くことといたしまして、公営住宅あるいは公団住宅といった公共賃貸住宅の的確な供給、さらにはまた融資、税制などによりまして優良な民間賃貸住宅の供給などに努力をいたしまして、積極的にこれらの施策を推進していきたいと考えておるところでございます。
#231
○鈴木(喜)委員 伺ったのですけれども、何か非常に具体的ではない、わからないのですよね。今この借地・借家法が改正されるということは非常に具体的に内容が変わるのだ、こういうふうな内容でこうなるのだということがあるのですけれども、建設省の言われているのは、何か立派なことをやりますよ、皆さんのためになるような住宅をつくります、そうおっしゃっているということぐらいしか私にはなかなか理解ができない。具体的に何をやるかということの中で最初に言われました、いわゆるそれはダウンゾーニングとかいう問題のところでしょうか、そういうふうなことをおっしゃった部分なのでしょうか。要するに、民間の住宅をたくさん建てさせよう、そういうための方式を取り入れようということをおっしゃったということなのでしょうか。
 それからもう一つの方も、何かいろいろなものをたくさんつくりますというふうなことをおっしゃっているのですけれども、具体的ではない。もうちょっと具体的なものが出てこないかなというふうに私思うのです。七月九日の毎日新聞には、身障者とか一人親家庭に対して借り上げ賃貸住宅、そういうふうなものをつくっていこう、家賃補助制度を建設省がやっていこう、来年度からこのような形をしていこうというのを出されたといった記事が載っておりますけれども、こういったものはどうなのでしょうか。そしてまた、そういうものによって一体恩恵をこうむる人がどのくらい出てくるということなのでしょうか。
#232
○林説明員 中間報告の中では、御質問の点のうち、例えば「容積率規制の活用による土地の有効・高度利用の促進」というところで、東京の山手線内側の地域のように土地の有効・高度利用の要請が特に強い大都市の一定の地域においても、現況では有効・高度利用は十分に行われてないという実態があるわけでございますが、こういったような現状にかんがみまして、このような地域で住宅供給等に資する優良な計画が策定されれば容積率を思い切って上乗せをすることにする、逆に、計画ができるまでの間は現状の水準で凍結していく、いわゆるばら建ちの開発を抑制するといったような制度を創設する必要があるという提言でございます。この制度のねらいは、住民の話し合いの中で土地の有効・高度利用が図られるような優良計画の策定を推進する状況をつくり出していきたいというようなねらいがあるというふうに認識しているところでございます。
 また、用途地域の見直しに関しましては、大都市等を中心にしました近年の地価高騰を背景にしまして、地価負担力の比較的弱い住居系の土地利用が商業、業務系の土地利用に圧迫されているという現状があるわけでございます。したがいまして、そういう地域でも住宅の確保に資するような方向でよりきめの細かい用途規制が行えるように、用途地域の規制の内容を細分化して見直しをしていこうということでございます。
#233
○鈴木(喜)委員 容積率をアップするということを中心に建設省はどうも考えておられる。要するに、山手線の中のようなところには背の高い建物を建てて容積率をアップしよう、住宅にするためだったらそれをさせよう、そうでない限りは今のままに置いておくよ、そういう思い切った形で上に乗っけていく、そういうふうな形を民間の人たちに、そして背の高い建物を建てて上の方を住宅にさせよう、そういう意図が非常に明確にわかるわけです。これと、今の借地法改正の場合の問題にしても正当事由というところに、私たちは考えがどうしてもいくわけです。
 今土地を貸して、そこに家を建ててもらって住んでいる人がいる。こういった借地で二階建てとか三階建てでやっている。余り有効な土地だというふうには建設省の人は見ないかもしれない。有効な土地利用ではない、ああもったいない、ここに建てればずっと立派な良好な住宅が幾らでもできるのにというところで見ておられるところがあるという場合に、この地主さんが今回こういった改正があったときに、この法律の改正というのが昭和六十年に考えられたときの一番初めの目的に戻ります、そうしたところの人を何としてもそこの土地を有効利用させるために立ち退くなりまたはその中の一つに住んでもらう形で土地を有効利用しようじゃないか、こういう形がどうしても見えてくる。そのときに借地・借家法の改正というものが何らかの今までとは違った効果をもたらしてくるのじゃないか、私たちはそこが一番関心があり、おそれている、危惧している点であるわけです。
 この点について、最初の六十年のときの計画から見れば、その点については正当事由の中ではそういうものがなくなって文言がなくなった、これまでの判例というものを固めただけのものだというふうにたびたび法務省の方がおっしゃっているわけですけれども、その点についてもう一度伺いたいのです。建設省の方のねらわれていることと法務省のねらわれていることと、この法律の改正をめぐって対立するものがあるのじゃないかという点なのですが、法務省に伺いたいと思います。
#234
○清水(湛)政府委員 借地・借家法の中で正当事由条項というのが非常に重要な規定でございまして、これをめぐって、先生も御承知のように、もう大変な、判例も集積されあるいは論文もたくさん書かれておるというような状況でございます。そういうような観点から、借地・借家法の改正についてこの問題を提起した段階で、いわゆるデベロッパーと言われるような方々から借地・借家法の正当事由の中にいわば公共目的みたいな要素を入れるというような考え方が提示された時代もございます。そういうような意見が述べられたということもあるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、繰り返し述べておりますように、借地・借家法というのは、借地人と地主、家主と借家人という個人個人の貸し借り関係における法律関係を合理的に調整するものである、妥当、公平に調整するものでございまして、都市再開発とかあるいは土地の高度利用というような公的な目的をその中に絡ませるということは、これは適当ではないというふうに考えられるわけでございます。公的な高度利用というようなことでございますと、それは土地収用法とかいろいろな建設関係の法規によって事業を展開するということであるべきであって、それを個人の法律関係の中に持ち込んでそういったような公益的目的を達するということは、これはとてもできないことだ、これは借地・借家法というものの法的性格を考えますと容易に理解できるところではないかと思うわけでございます。
 そういうような観点から、いろいろ借地・借家法改正に対する期待が各方面から自由に述べられました中には、そういう公益的な要素を強調する御意見もございましたけれども、法制審議会において審議を重ねる過程の中におきまして、借地・借家法というものの法的な位置づけというものが正確に認識され、結局、借地・借家法についての従来の判例理論を集約するということで落ちついた、それで、このことについては現在関係方面において異論はない、こういうふうに思っているわけでございます。
 そういうようなことでございましたために、法制審議会の諸先生方は一致して、この正当事由に関する条文は従来の判例を整理、集約したものであるから、既存の借地・借家関係に適用しても、ちっとも借地人に不利だとか借家人に不利だということにはならないのではないか、こういう立場でございましたけれども、これはいろいろ不安を与える要素もあるというような御指摘もございまして、立法の段階で正当事由に関する規定については御承知のようなことになりましたけれども、基本的には、そういう私人間の法律関係の合理的な、かつ公平な調整という点において、改正法も改正前も全くその点については変わっていないと御理解いただきたいと思うところでございます。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
#235
○鈴木(喜)委員 その善言葉どおりだと受け取って信じていきたいというふうに思います。
 ただ、この問題のときに、信じていきたいのですけれども、結局のところでは、先ほども何回も出てきて、またこれ蒸し返しになりますけれども、合意による切りかえの問題ということが一つやはり絡んできますですね。もちろん新法になっても何ら変わらないとおっしゃっていますから、その点で変わりはないかもしれませんけれども、合意による切りかえによって従来の権利とは全く変わらないよと言いながら、合意合意と言いながらいつの間にか新法に切りかわっていくんじゃないか、そしてそこから、先ほど建設省の方が期待されているように、民間のいろいろな土地の有効利用ということが盛んになり、そして住宅の供給というものがこの都会の中心においてもなされていくのじゃないかという要望ですね、それに近づけるということが出てくるのじゃないだろうか、この点が一番やはり何といっても不安のある点であります。
 この合意による切りかえというのは、合意ですから、一遍前の法律はやめましょうね、それからまた今度は新法の方でということを何らかの形でするわけですから、それぞれそういうことは承知の上でやることなんですけれども、その場合に何かしら歯どめになるような形式、こういったものが一般に、例えば印刷された新しい賃貸借契約書の中に既にそういう文言が印刷済みになっているというようなことだと、これはすっすっと判こを押してしまう。これは前からありましたけれども、そういったことなどはないように、または何とかその点で、切りかえをするということについての有効な歯どめみたいなものは、法務省の方では考えてはおられないでしょうか。
#236
○清水(湛)政府委員 既存の借地・借家関係には新法の更新及び更新後の法律関係に関する規定が適用されないということは、これはもう法律で明確にされていることでございます。それで、既存の関係には従来の法律が適用されるということをまず国民の方々に十分に理解をしていただくことが重要と考えておりまして、このための広報については十分にいたしたいと思うわけでございます。
 ただ、そういうことを前提といたしまして、特にこれは更新後の存続期間に係る問題だと思いますけれども、本当の意味で当事者が自由に考えて、十分に考えて、いわば従前の契約を解消して新法の規定による新しい借地契約を結ぶということは、それは観念論としては私あり得ることだというふうには思いますけれども、現実論として、それによって形式的に借地人は不利になるわけでざいますから、およそ新しい法律の趣旨、特にこの新法は更新等に関する規定は旧法下の借地権には適用されないのだということをよく理解しておりますならば、およそ合理的に人間が行動するという前提をとりますと、無意味に、意味なく既存の契約を解約して新しい契約に切りかえるということは普通は私は考えられないと、そこに何らかの財産上の寄附その他があってその利益考慮の上でやるということはそれはあるかもしれませんけれども、普通はそういうことはないと思うわけでございます。もしそれが借地人のいろいろな無知とか軽率とかそういうものに乗じて行われたということでございますと、それはやはり信義に反するものではございますし、実質的にはやはり借地人に不利な特約をしたという意味で、合意解約及び新法の規定による借地契約設定、これが効力が認められない、こういうことになってくるのではないか。また、具体的にどういう事情があればそういうことになるかということについては、個々のケースについて判断しなければならないと思う次第でございます。
#237
○鈴木(喜)委員 今のところでちょっと一つだけ伺いたいのです。
 経過規定の中に出てくると思うのですけれども、ちょっと初め飛びますけれども関連して聞いてしまいますが、附則の二条では、従来の借地・借家法はなくなると。これはなくなる、廃止するわけですね。それで、その後で更新になりますと従前の規定によるというふうなのが六条に出てくることになるわけですね。そのときにはどういう形で、今ある現行の借地法がそのまま残って、要するに廃止されないで残ってその人たちにはいわば二本立てでいくということなんですか。いわば二本立てで二つの法律がある時期あって、既存の法律でいきたいよという人は現在の法律のままでずっといくという意味なのですか。それとも、一遍消滅してしまっているけれども現在の法律の中でいろいろな点について変わりのない点だけが生き残るといいますか、そういうものになるのですか。ちょっとその点について私、解釈がよくわかりませんので、お聞きしておきたいと思います。
#238
○寺田説明員 第一回目の審議の際にも実はこの経過規定が非常に読みづらい、おわかりになりにくいという御指摘もございましたので、この際改めて、少し長くなりますが御説明させていただきます。
 法律、この場合には法律は新法でございますので、古い法律は廃止するということにならざるを得ないわけでございます。その意味で改正とは異なるわけでございますが、その場合に「従前の例による。」というのが幾つか表現としてございますが、これは旧法令の規定を適用するということをそのまま意味するというように御理解いただいて差し支えないと思うわけでございます。
 さて、旧法令、廃止された法令と新法令の関係がどのように規律されているかといいますと、第四条をまずごらんいただきますと経過措置の原則がございまして、法律の規定が「特別の定めがある場合を除きこ「施行前に生じた事項にも適用する。」ということでございますので、原則としてはこの法律の考え方、他の法律もほとんどすべて同じなのでございますけれども、一応全部の事項にすべての新しい法律の規定を適用するというのを原則とするという形にいたしております。
 その例外が二種類ございまして、それは、そこのただし書きと五条、六条、七条という個々の規定と、二種類に分かれるわけでございます。
 ただし書きの方は、既に生じた効力を妨げないということでございまして、これは事項ごとに考えるわけでございますが、前回も、例えば最初の存続期間についてはどちらが適用になるのかという御質問がございましたけれども、最初の存続期間というのは、この法律が施行された際に、設定された借地権につきましては既にその段階で何年と決まっているわけでございます。これは場合によっては六十年であり、あるいは、例えば十年のようなものを定めると、それが無効になって三十年になるという、その効力は既にもう生じている、これをただし書きで読むわけでございます。
 このほかに、五条、六条、七条と以下ずっとございますのは、新法の適用がある、それは、施行後に当然あるのだけれども、しかし特にそのものを除くという規定があるわけでございまして、例えば更新一つをとってみましても、新法の施行前に更新があれば、それは当然今のただし書きによって更新により定まる期間、例えば現行の二十年、三十年というのはそのままそのただし書きの効力によって定まるわけでございます。これに対しまして、施行後に更新がありますと、六条に参りまして、それは本来なら新しい法律の原則に定まるという四条の本文でいきそうでございますが、特に規定を置いて、それは「なお従前の例による。」ということで、旧法が適用になりますよということを定めているわけでございます。同様のことが五条、六条、七条以下ずっと規定されています。これが特別の規定に当たる、こういうことになりまして、事項ごとに定めているわけでございます。
 ここで定めてない事項につきましては、すべて旧来の借地権につきましても新法が施行されるということは否定できません。しかし、よくごらんいただきますとおわかりになりますように、例えばそれはどういう事項かと申しますと、対抗力がそうでございますが、土地の上に建物が建っている、それに登記が既にされている、それは新しい法律になるとどうなりますかというと、新法が適用されて新法の十条の一項というものが適用されます。しかしながら、これは旧来の建物保護法の一条と規定は全く同じでございますので、新法を適用しても全く何の変更もございません。これに対しまして、更新の規定あるいは正当事由の規定というのは、形式的には旧来の規定と異なりますので、それをどうするかというのを五条以下に一々規定している、こういう格好になるわけでございます。
#239
○鈴木(喜)委員 何だかますますわからなくなってきちゃったような気もしますけれども、非常に難しい複雑な決め方のような気がします。一遍消えてしまって、経過措置の原則というところに定まっている五条、六条、七条というようなところだけが、もとの、今ある現行のその条項がまだ生き延びているというか生き返って、そこの部分だけが適用があるということになるのだろうと思いますけれども、こうなりますと、例えば「従前の例による。」という更新、また正当事由そういったものも残っていくのでしょうか。また、判例も残るのですか。
#240
○清水(湛)政府委員 旧法は二条で廃止されるわけでございますけれども、五条、六条、七条等の規定におきまして、例えば「その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。」あるいは六条で「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」同じような規定が第七条にあるわけでございますけれども、その「従前の例による。」という限度において旧法の規定が、生き返るという表現をするのが適当かどうか問題でございますけれども、なお効力を有する規定として適用される、こういうふうに私どもは解釈しているわけでございます。
 そこで、例えば正当事由についてのお尋ねでございますが、この六条で「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」ということでございますので、更新に関するものとしては、更新するかどうかの事由の問題、つまり正当事由の問題、それから更新後の存続期間が何年になるかという問題、そういう問題については旧法の規定によって処理いたします、こういうことになります。
 そこでさらに、今度は旧法の規定についての判例の効力はどうなるのかということでございますが、旧法の規定が適用されるということになりますと、それはそれについての判例も当然そのままの形で意味を持つ、こういうふうに考えているわけでございます。
#241
○鈴木(喜)委員 それで、新法の方の今の正当事由のところを見ますと、ここにいろいろな条件が書いてあります。先ほど来何回も言われていますが、この規定というのはほとんど今現在の法律と判例というものを集約したものであって何ら変わりはないのだというのですけれども、これは変わりがあるということをみずからお認めになることになるわけですか。
#242
○清水(湛)政府委員 第六条、これは借地の場合でございますけれども、旧法についての、旧法というよりまだこれは旧法になっていませんけれども、現行法についての判例理論というものをまとめ上げたものでございます。それで先生の御質問は、それなら何も、そのまま新法を適用すればいいじゃないか、わざわざ適用しないというふうにしたのはむしろ新しい六条の規定が内容の変更を受けているからではないのか、恐らくこういう御指摘だろうと思います。
 形式論としてはそういう理論は成り立つわけでございますけれども、この点につきましては、私ども前々から申し上げておりますように、現行法の解釈として判例が積み上げてきたもの、現行法を文理的に、条文的に解釈しますと、あるいは地主の方に有利な解釈が出てくる、文理上の解釈をしますとそういうことになるという可能性があるわけですが、判例が地主、借地人の公平という観点から積み上げてきた判例理論というものがあるわけでございまして、これを集約する。そういうことでございますから、これはそのまま新しい借地・借家関係、つまり新法施行後の新しい借地・借家関係だけじゃなくて、旧法の借地・借家関係についても新法施行後当然適用していいんじゃないか、こういうことが当然考えられるわけでございまして、法制審議会の答申においても実はそういうことになっているわけでございます。法制審議会一致してそういう考え方でございました。
 しかしながら、少なくとも規定の体裁ぶりではもう違っているということは間違いございませんし、またこの新しい六条の規定を見て、何か変わるんじゃないか、どこか変わるんじゃないかというような御心配を既存の借地人あるいは借家人の方がされる、こういうことでございましたので、事はそういう方々の生存の基本である住にかかわる問題でございますから、そういう不安が生ずるということはこれは適当ではない。私どもの目から見ますと適用しても変わりはないんだがなというふうに思うのでございますけれども、そういう御心配があるということであるならば、この際、法制審議会の答申には反することになるけれども、既存の借地・借家関係については従来の規定あるいは従来の判例理論で処していただくということに形式的にはさせていただいたわけでございます。そうだからといって、この第六条の新しい規定が内容的に変わったものであるということではないということは、ぜひこれは御理解いただきたいと思うわけでございます。
#243
○鈴木(喜)委員 何か変わったような変わらないようなという、非常にわかりにくいお話だったというふうに思いますけれども、しかし、ここで条文上の文言が変わっている、やはりそれだけではないものが何かしら感じられもということじゃないかと思います。
 逐条でやっていくときにまた出てくるかなと思うのですが、特に、まず「土地の使用を必要とする事情」というところに自分で使用するという自己使用という言葉がない点、それから「事情のほかこということでそこまでを第一の主として、そこから「借地に関する従前の経過」というところ以下を従というふうに考えるかどうかということが文言上はっきりしない点、そしてその後もう一つ、「土地の利用状況」ということの中に、利用状況というのは一体どういうことなのであろうかという点、こういったことがどうしてもやはり従前とは違うんじゃないだろうかということの大きな理由になってくると思うのです。
 今の点ですね、自己使用という言葉の点と土地の利用という点、それから主と往の観点について、もう少し明確な文言上の整理というものはできないものでしょうか。
#244
○永井政府委員 現在の法律では第四条で「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合」という、こういう表現があります。「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合」というこの事由は、前回も御説明いたしましたように当時の解釈としてはこれは絶対的な事由でございまして、これさえあればよろしい、これでもう既にいわば正当事由があるという、こういう解釈が最初されたわけでございます。
 ところが実際の判例では、双方が土地の使用を必要とする事情という中には、必ずしもみずからということだけではなくて、親族等も含んだり、あるいは必ずしも直接いわゆる法律的な親族ではなくても長く同居している人たちを含んでいる、こういう解釈がされてきたわけでございます。要するに、現在の判例では双方、借り主、貸し主双方の側といいますか、そういった側の使用を必要とする事情を総合判断をしなさい、こういう解釈になってきているわけでございます。だから、現在のように、文理上は「自ラ」ということで貸し主がみずから使用するということだけでもう正当事由がありという判断ではないというところが違ってきているわけでございますので、あえてみずからということで限定する必要はない。要するに双方のそれぞれの側で使用する必要があるかどうかということを中心にしなさいということになっているわけでございます。
 それから、「土地の使用を必要とする事情のほかこということで、まず主たる要素を挙げて、「のほかこということで従たる要素を挙げているというこの書き方は、すぐれて法制局的なといいますか、条文の書き方の問題だと思います。もちろん、非常に細かく、第一次的に云々というような書き方とか第二次的に云々、こういう書き方だってあり得るかもしれませんが、これは極めて法制局流な、いわば表現の一つのやり方として、何々のほかということにしなければ、何々の事情及び何々という羅列をしただけではこれは全く同列に見えるということから、「のほかこという表現で主、徒を示した、そういうことになっているわけでございます。
 もう一つ、「土地の利用状況」は、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、この土地がたれが現実に使っているか、あるいはどのような利用の仕方をしているかという客観的な事実を中心としたものでございます。これは判例等でもいろいろ現実に補完的な要素として考慮されているわけでございまして、その使い方が実際に、何といいましょうか、非常に木造で老朽化しているかというような状況も補完的な意味では考慮されたり、あるいはこれは新築して間もないとか、あるいは堅固な建物であるかどうか、こういう物理的な状況も相当重視されているということもございます。
#245
○鈴木(喜)委員 「土地の利用状況」の中に、もう一つ伺っておきたいのですが、今おっしゃった老朽化している、大分老朽化しているからもう住めなくなってしまうだろうという理由のほかに、有効に利用していないという利用状況というのは入るのですか。
#246
○永井政府委員 判例の中に確かにそういう例もございます。本人みずから使っていないというそういう例が、まさに使っていないということでございまして、それは実ははね返って使用の必要性のところで判断されているのかどうかもわかりませんが、そういう例もございます。事案によりましては相当老朽化しているという事案も幾つか散見はされます。補完的に判断要素の一つとなっているようでございます。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
#247
○鈴木(喜)委員 私が伺いましたのは、「土地の利用状況」というのですから土地なんですよね、土地の利用状況。土地をどのように使うかというのは、畑にして耕したり、家を建てたりという利用状況のことを言っているわけです。その利用ということで、家を建てるのがもちろんこの借地法の目的ですから、家を建ててそこに住んだりなんかするわけですけれども、その家の建て方ですよね。これだけの面積のところに、容積率、今アップだということで、ばあっと建つはずのものが、そんなに利用してなくて平屋建てが建って広い庭がある、こういうのを利用状況というのはどうしますか。または、余り手入れがよくなくて草ぼうぼうの庭になっている、近所からもちょっと迷惑が来るというような形で余り管理のよくない空き地がたくさん貸し地の中にある、そういうようなのも利用状況と言うのですか。
#248
○清水(湛)政府委員 個別の事案でございますので、そのことだけをとらえて利用状況と言うかどうか。例えば、たしか判例にもあったかと思いますけれども、借地人がその土地を倉庫として利用している、商売は別のところでやっている。主要な倉庫はその土地ではなくて別のところに収納されている。そこには倉庫らしいものがあるけれども、ほとんど実質的に有効な機能を果たしていない。こういうような事例につきまして、土地の利用状況ということを一つの問題として挙げるというようなケースはございます。これは、そうなってまいりますとむしろそもそも使用の必要性がないんじゃないかというようなことにもなってくることがあろ、つかと思います。そういう意味で、個別の事案で土地をその人が本当に必要として、その必要のために合理的な形で利用しているかどうかというようなことがやはり一つの重要な判断要素になる。
 そこでしかし、個別にいろいろ、立派な庭を持っているのはどうかとか、あるいは草ぼうぼうで本当に隅だけちょこっと使っているという場合はどうかとか、いろいろなケースがあろうかと思いますけれども、ケースケースによってはそういう点で補完的に正当事由はない、あるいは正当事由があるというような形で判断されることにもなろうかというふうに思うわけでございます。
#249
○鈴木(喜)委員 ですからだんだん不安になってくるわけですよ。「土地の利用状況」というのの中で、ほとんどの場合には「土地の使用を必要とする事情」の方にいってしまって解釈をする場合もある。そういうのをどんどん「土地の使用を必要とする事情」の方に入れていくとすると、利用状況というのは、残ってくるのは何かというと、社会的な必要性というものが残ってきちゃうような気がして、非常にその点が私にとっては不安でなりません。
 この点につきまして、現在使われています法律とこの六条のような形での場合の正当の事由ということと、裁判所の方でこれを裁判で判断される場合に、裁判官の方は胸のうちではどちらでも全く同じような形でしんしゃくされて判決をされるというものなのかどうか、裁判所に伺いたいと思います。
#250
○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 裁判所の判断は、御承知のとおり、個別具体的な事件が来まして、そのときにその具体的な事件の事実に即しまして法律を解釈する、こういうことでございますので、一般論としてどうかと言われましてもなかなか私の方としてはお答えしにくいわけでございますが、一般論でございますが、法律の解釈をするに当たりましては、立法当時の事情、特にこういう国会の御論議というようなものも十分参考にしまして、裁判官としては自分が正しいと思われる解釈をするということでございます。
#251
○鈴木(喜)委員 わかりました。では、その次にいかせていただきます。
 ちょっと用語の問題で、二条から見たいのですけれども、今までない用語として、二条から出てくる「借地権設定者」という言葉ですね。これまでは所有者、賃貸人というような形で言っていたと思うのですけれども、この設定者というのは、どうしてこういう言葉を使ったのかということと、それから、二十六条のところで、これは前にも問題にされたと思うのですけれども、「使用」でなく「使用」「収益」というように「収益」をくっつけられているということ、この二つは用語の問題に尽きるのか、それとも中身に何か違いがあるのか、ちょっとその点を伺いたいと思います。
#252
○寺田説明員 言葉の問題ですので私から御説明させていただきます。
 現行法では、御承知のように、借地関係におきましては土地の所有者が借地権者化貸す、こういう格好になっております。しかしながら、土地の賃貸借を考えてみますとおわかりになりますように、これは土地の所有者が貸すということに限りません。土地の所有者がだれかに土地を貸す、その人からまた土地を借りるというケースがあるわけでございますが、その二番目のいわば転貸借に当たる部分でございますけれども、これもやはり借地であることに変わりはなく、現行法におきましても実は「土地所有者」「借地権者」と書いてございますが、実際は転貸借におきましても、それをあたかも土地の所有者が貸し主で借地権者が借り主というように読みかえてこれを適用しているわけでございます。
 ところで、この法律をつくるに当たりましては、やはり現代語化という観点から、より正確にわかりやすい表現をとるというわけでございまして、改めてここで書くのに土地所有者というふうに書きますと、一般の方々はやはりこれは土地の所有者そのものだと思ってしまうというような危険がございます。また、転貸借も別の関係で、細かく御説明申し上げませんが、ほかの法律関係で登場する場合がありまして、紛らわしいというようなことからあえて「借地権設定者」と「借地権者」というようにしたものでございます。
 第二に、使用、収益の問題でございますが、これも借地と借家で多少表現が違うのは、以前局長の方から御説明申し上げたところでございまして、現行法におきましては、借地では「使用」のみ、借家では「使用文ハ収益」ということになっております。しかしながら、本来はこの借家部分におきましては民法の「使用文ハ収益」、これは厳密に使用と収益がそれぞれあって、収益でありながら使用を伴わないものというのはおよそあり得ないということもまた御説明申し上げたと思いますが、そういう現実の問題は別にいたしまして、民法としては概念としては一応使用、収益ということになっておりますので、この借家部分におきましては、その民法の賃貸借、あるいは現行法との整合性ということも考慮いたしまして「使用又は収益」にしたわけでございます。
 ところで、現行法の正当事由の場面におきましては「使用」を用いておりますが、これは先ほど審議官の方から御説明申し上げましたとおり、一種の絶対的な正当事由を規定するということで収益的側面をあえて書かなくても構わないという判断であったかと思います。ただ、今回の場合は、使用する場合というのではなくて、使用する事情ということで一事情として考慮する、その考慮する要素をすべて挙げるのであれば、本来、民法に立ち戻りまして使用、収益と両方書くのが正しいのではないか、このような見地から使用、収益をすべての借家の部分に用いたわけでございます。
#253
○鈴木(喜)委員 それではその次に、三条と四条の年限のところを聞きたいのですけれども、普通の賃貸借について一律に三十年というふうにされた。これは堅固な建物と非堅固に分けること自身が現在の建築上では非常に無意味になっているところがあって、三十年というふうにされたというようなことがあるのですけれども、そのほかの意味はないのかどうかということ。
 それから、その後、更新後の存続期間を十年とされたということについては、十年とした場合に、通常入れられています、更新の際に更新料的な支払いというものがなされることが事実上多いわけですけれども、その回数がふえるじゃないか。だから半分になるか。今までだったら一応二十年ぐらいでいくとすると、その半分に更新料がなっていくかというと、事実上そうはならないのではないかという点で、十年にされたことの意味と、その両方を伺いたいと思います。
#254
○寺田説明員 まず、存続期間の、当初の存続期間を三十年といたしました。これは二つの意味がございまして、一つはまさに今御指摘にありましたとおり、堅固な建物と堅固でない建物と差を廃止して、両方同じに扱うということでございます。第二は、現行法との違いをごらんいただきますとよくおわかりになると思いますが、現行法では、存続期間の定めがないものと存続期間の定めがあるものということを二つ分けまして、後の場合に存続期間として最低の期間は何年か、すなわちそれ以下の契約をしても無効である、そういう期間は何年かという規制を別にいたしております。この規制を、しかし今回の場合は合わせたという意味が第二の点でございまして、それをすべて三十年にした。
 これは、現在では余り存続期間の定めを最初にしないという契約が、私どもでも調べてまいりましたけれども、そんなにございません。また、正当事由条項が実は昭和十六年以後導入されたということに伴いまして、当初の期間を非常に長くする、これはそもそも大正十年に六十年にした際には、建物の耐用年数の非常に行き着くところというようなところを考慮したというようなところもございますけれども、そういうような考慮は必要なく、最短期間を今よりは十年引き上げて三十年にいたします関係で、一応の安定した期間ということがいえるということから、これに存続期間の定めがないのも合わせて、原則としてすべて三十年ということでよろしいのではないかということで三十年にいたしまして、この面につきましてはいろいろな御議論がございましたけれども、大方御異論のないところでございました。
 第二は、更新後の存続期間を十年にした点でございますが、これは再三御説明申し上げておりますとおり、正当事由の存否の判断時期というものをより的確にして、当事者間の実情に応じた解決を図ろうというところでございますけれども、御指摘のように、これまでも更新料の払う機会がふえるのではないかというような御批判もございました。
 これも再三こちらから申し上げておりますので長くは申しませんが、更新料というものはもともと支払い義務がそれ自体としてはないというものでございます。したがいまして、私どもは、幾ら更新料を払うあるいは幾ら払うべきであるということにつきまして、法律としては全く無色であると言わざるを得ないわけでございます。ただ、実情として、更新の時期に何らかの金銭を支払う、これは一部の地域に慣行として見られるわけでございますが、そういう慣行のある地域では回数はふえるということは考えられないわけではないことになるわけでございますけれども、他方、その金額というようなところには当然、期間が短くなったというようなところが反映するだろうというようには考えております。
#255
○鈴木(喜)委員 この点は、これから借り主が非常に不安に思うところだと思います。そして、更新料を支払う義務が法的にはないんだ、無色であるというふうに言われるのですが、判例では、それが契約書の中にうたってある場合には一応請求権ありという判例になっていると思うのですけれども、この点については新法も同じように考えられるのか、それともそれは旧法だけに引き継がれる判例としてあるのでしょうか。
#256
○寺田説明員 結論から申しますと、この点についても何ら変更するところではございません。
 更新料というのは、おっしゃるとおり、確立した判例と申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、合意があれば原則としてはその合意の効力が認められるという形で支払い義務が認められる場合があるというのは御指摘のとおりでございまして、その扱いは、その合意の有効性を判断するという基準に多少の変更があり得るということも考えられないわけではないのでございますけれども、その合意についての一般の考え方そのものがこの改正によって何ら変更は受けないというように考えております。
#257
○鈴木(喜)委員 ここで、更新料を支払わなければならないということで、借地権者に非常に不利なものとして、そういうふうな形として「無効とする。」というふうにあります。
 これは現行法上でも当然そうですけれども、それでも判例によって一応その合意があればそれは有効だということで、それの更新料の請求というものができるということが言われている判例があるわけですけれども、何ら変わりない、この新法におきましても変わりがないというのは、この「不利なものは、無効とする。」ということについて、そういう合意、更新料の支払いというものの特約はそのまま一応生きるというふうにとってしまっていいのですか。
#258
○寺田説明員 私は先ほど申しましたように、現在の判例で更新料の合意を原則としては有効にしているわけでございます。ただ、これはもちろん確立した判例ではございませんが。しかしながら、これが常にどんな場合にでも有効かどうかというのは具体的な更新料、例えばこれは更新料の額そのものにもよるわけでございまして、これが余りにひどいケースになりますと、無効になるという可能性が排除されているわけでは全然ございません。そういう意味では、その状況は全く変わらないということでございます。
#259
○鈴木(喜)委員 では、要するにこの点については新法になりましても、それから現行法になりましても、これは変わりがないというふうに理解をさせていただきます。
 その次に、五条の契約の更新のところでございますけれども、ここでは法定更新がやはり決められているわけですね。最初のところ、ずっと長い条文がたしか一、二、三ぐらいになっていたと思うのですけれども。この場合には建物のある場合に限っては「従前の契約と同一の条件で」ということが書いてあります。この「従前の契約と同一の条件で」というのは、期間だけが違うというふうに考えればいいわけですか。
#260
○寺田説明員 この「同一の条件で」というのをどこまで見るか、すなわち、例えば担保が付されている場合に、その担保が有効かどうかというような点で解釈上争いがあることは御承知のとおりでございますが、私どもとしましては、この関係は、法律自体としては、存続期間を除く期間については条件については同一だというように定まっているという以外に申し上げられないわけでございます。あとは解釈の問題になるわけでございます。
#261
○鈴木(喜)委員 それでは、六条は先ほどちょっと伺いましたので、七条、八条のところで伺います。
 現行法では、新築というのは言葉上ではたしか入っていなくて、増改築を拡大して新築も入れて考えるんだと思っていたのですけれども、今回はその新築の部分についていろいろな特別な条文を書いておられるように思いますけれども、その点について、新築、それからそうでない部分の関係についてちょっと教えていただきたいと思います。
#262
○寺田説明員 この法案の七条は現行法の七条と同様でございまして、存続期間の途中で建物が壊れまして、その建物が壊れた跡に再築するという場合の規定でございます。したがいまして、新築ということは観念としては登場しないわけでございます。
#263
○鈴木(喜)委員 壊れてしまって再築する場合はもちろんそうなんで、新築といいますのは更地に建てるということ、新築という概念で言えばそうなると思いますけれども、七条の括弧の中では「取壊しを含む。」と書いてあるのですね。「借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。」と。要するに、建物の滅失といってもただ倒れちゃうのじゃなくて、今あるのがぼろくなったからそれをきれいに取り壊して、そこにもう一回新しく建て直すという、そういう意味でのそれは、増築、改築ではなくて新築というのじゃないか、そういうことを私、申し上げたのですけれども。
#264
○寺田説明員 大変失礼いたしました。
 この七条は、制定当初は、滅失ということは基本的には本人が取り壊すごとではないと。つまり、第三者あるいは外部的な要因で壊れることを予定していたわけでございます。しかし、御承知のように、その後、裁判例によりますと、本人が取り壊した場合と外部的な要因によって取り壊された場合とでその後の期間の延長について差異を設けるのは不合理である、こういうような解釈になりまして、このように本人による取り壊しを含むという解釈が現実に現行法の七条の解釈としてされております。
 したがいまして、ここはそういう判例の動きを取り込んだわけでございまして、そういう意味では、現代語化に伴いまして正当事由の条文を書き改めたということと全く性格を同一にするものでございます。
#265
○鈴木(喜)委員 この場合には、例えば新築をするというときに、借地権設定者に対してその承諾を求めるという、設定者の承諾があるかないか、異議を述べるか述べないかということはもちろんありますけれども、そうじゃなくて、承諾を得ないでする場合と承諾を得た場合とという違いと、それから増改築の場合の十七条にあります裁判所による「承諾に代わる許可」、この規定については新築には適用がないのでしょうか。
#266
○寺田説明員 また非常に込み入った説明になりましてまことに恐縮でございますが、少し長く説明させていただきます。
 まず現行法の七条がそのまま新法の七条に基本的にはなったわけでございますが、一つ違いがございまして、それは形の上では、現行法では異議があるのに築造したという土地所有者の異議の有無でその後の法律関係を変えているのに対しまして、この新法では承諾の有無で変えているわけでございます。
 しかしながら、その本当の意味はその次の二項にございまして、その承諾というもののみなし規定がございます。そのみなし規定はどういうものかと申しますと、借地権者の方から通知をして、その通知に対して何らの応答がないときは承諾があったものとみなすということになるわけで、ここで本当の意味が出てくるわけでございまして、これをトータルに見ますと、今まででございますと借りている側はもちろん明示の承諾をとるというこどもあり得るわけで、その場合には異議が述べられないということに社会事象上は当然なるわけでございますけれども、新法においては、当然のことながら、法律上まず承諾をとれば問題がない。次に、承諾をとるということを、相手からの明示の承諾は必要がなくて、二項で通知をしたのに相手が何も言わないというと承諾になるということでございます。二項をよくごらんいただきますとおわかりになりますように、その通知というのは、二カ月後に応答がないと承諾とみなされます。したがいまして、現行法と異なりまして、遅滞なき異議があったかどうかで争いが生ずるということが余りなくなる。つまり、通知があれば応答の有無が期待され、二カ月後に応答がなければ承諾があったものと法律上みなしてしまうわけですから、その後借地権者の方で安心して建物が建てられるということで、紛争の事前的な抑制ということに役立つのではないかというように考えております。
 もう一つ、十七条の関係、増改築でございますけれども、この十七条は現行法の八条ノ二と全く変わりございませんで、現行法の八条ノ二の解釈そのままでございますが、現行法の八条ノ二の増改築、これの二項でございますけれども、これは一応全く建物を壊して新しい建物を建てる場合にも当然適用があるというように解されていると考えております。
#267
○鈴木(喜)委員 ちょっとよくわからなかったのですけれども、要するに新築ということについて、従前から現行でやられている滅失ということとは別に、故意に壊して故意に建てるやつ、そういうのもこの七条の中に入ってくる、七条、八条のあたりのところに入ってくるということになりますと、ここでずっと滅失というのはそういう概念でとらえているらしいので、そうすると、今までの増改築というところに新築の場合を拡張して解釈するということは今度の法律ではなくて、新築の場合には、七条、八条で律しられるというふうに考えていいのですかというのが私の最初の質問であったわけです。その点についてもう一度確認をしていただきたいと思います。
 それと、八条の四項という規定が何を言っているかわからないというのがあるので、ついでですので、簡単に、明快にこれをちょっと一口でお答えいただけると大変ありがたいと思います。
#268
○寺田説明員 八条四項の規定をまず御説明申し上げます。
 八条四項というのは、八条の二項から御説明しないとちょっとおわかりになりにくいので、八条二項から説明させていただきますが、八条二項におきましては、更新後は、承諾を得ないで建物を勝手に取り壊してその後新しい建物を建てますと、貸し主、土地所有者の方に解約権が出る、こういう規定でございます。
 これに対しまして、四項は、そのような解約をお互いにしないという約束をすることができるかどうかということでございます。一般的に申しまして、そのような、途中で建物がどうなるにせよ、期間自体を保証してその間は解約をしないというものは有効だというように理解されます。
 ただ問題は、御承知のように、現行の借地法は強行規定でございまして、新法もこれと同様でございますので、土地所有者の側には解約権を留保しておきながら借地権者の場合は解約をすることはできないというようなことになりますと、これは当事者の公平を欠くということでございまして、したがって、借地権者の解約権を奪うのは、土地所有者が解約権をみずから放棄している、そういうような場合にだけ許されるということで当事者のバランスをとっている、こういう規定でございます。
#269
○鈴木(喜)委員 要するに、私わかりませんから、もし間違っていたらもう一回だけ御指摘いただきたいのですけれども、新法になりますと、契約の期間中に新築をする場合には、仮にそれを貸し主に無断でも建ててしまって構わない。ただ、遅滞なく二カ月以内に貸し主の方から何か異議があった場合には、その場合にはどうなるかというと、「この限りでない。」ということでちょっとよくわからないのですけれども、要するに、期間内は建てていても文句はないけれども、期間が二十年なら二十年たったときに、それから先更新後にでも通知をすれば足りますよということなんでしょうか。
 まず、これがちょっとよくわからないのですけれども、更新後に通知すればそれでもいいのか。貸し主の異議というのは一体どういう意味合いを持つことになるのか。その後で、解約申し入れについては更新後だということでわかるのですけれども、ちょっとその辺がわからないということと、それから、裁判所にその承諾にかわるべき許可みたいなものは、新築に関してはもう適用がないということでいいのでしょうか。
#270
○寺田説明員 まず最初の御質問でございますけれども、これは基本的には現行法と余り違いがない、更新前の期間、三十年の期間が原則でございますが、この三十年の期間には余り変わりがないものと御承知いただければ、よく理解していただけると思います。すなわち、現行法は、建物を壊す、あるいは建物が壊れるという場合に、土地所有者が異議を言えば本来の期間、三十年の終わりの期間で期間が終わります。しかしながら、土地所有者が異議を言わなければ、これは現行法の七条でございますけれども、さらにそこから二十年ないし三十年の期間が延びる、こういうことになっております。
 新法も基本的には土地所有者に文句がない場合にはそこからさらに二十年延びるという点でございまして、文句があれば本来どおりの期間、三十年の期間、こういうことにおいては全く変わりないわけです。
 ただ、技術的に、その異議がないという点を承諾と言いまして、そのかわり承諾とみなす条文を新たに設定して、通知を出してその間に異議がなければ承諾、こういう二重のテクニックを使っているので、全くテクニカルな面で違いますけれども、基本構造は変わっていない、こう御理解いただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 第二の点でございますが、これは実は更新前と更新後でやや変わるわけでございますけれども、更新前につきましては、従前の増改築禁止の特約がございましたら、それはまず増改築禁止の特約に当たるか当たらないかという判断がある。これは現行法も、新法も全く変わりがございません。
 これに対しまして、更新後の場合には、先ほど御説明申しました八条の二項がございますので、増改築の禁止の特約があろうとなかろうと、勝手に建物を建ててしまいますと、解約のおそれがあります。したがいまして、地主、土地所有者の承諾を得ておかないと危ないということになりますが、そういう場合に備えた規定として新たに十八条という規定を設けまして、その場合には裁判所が土地所有者の承諾にかわる許可を出す、その許可を出すかどうかということはいろいろな事情を考慮して決める、こういうことになっているわけでございまして、現行法とそれほど違いはないというように御理解いただきたいと思います。
#271
○鈴木(喜)委員 済みません。くどいようで申しわけないのですが、もう一回だけ聞かしていただきますけれども、増改築はよくわかります。そのとおり現行と変わりない。新築についてだけ変わるということでいいのですね。違うのですか。それとも、新築も変わらないのですか。
#272
○寺田説明員 現行法の解釈のもとで、全く新しくつくりかえるというのも、ここで建物を取り壊して建て直すということに入っておりますので、全く変わりがないと御理解いただきたいと思います。
#273
○鈴木(喜)委員 ちょっと納得いかないけれども、もう一回うちへ帰ってよく考えてみますから、その後で個別的に教えていただくことにいたします。
 それではもう一つ、定期借地権の部分でございますけれども、これ、三つの類型があるわけですけれども、これをつくられた目的は、もう何回も、いろいろと多彩なニーズに合わせてということでできたものだと、一つの本改正の目玉のように言われているところだと思いますけれども、この問題について幾つかやはり疑問になるところがありますので、それをちょっと、目的をお知らせいただきたいのと同時に、問題点を申し上げますから、そこについてお話しをいただきたいと思います。
 一つは、初めの二十三条の建物譲渡特約付借地権と言われているものについては、これはこういう規定をつくりましても、やはり権利金をもらわなければというふうに貸し主の方が思うのじゃないか、そういう可能性というのが多いのではないかという点が、やはり権利金を取られて、借りる方の側としては余りいいメリットがないのではないかということ――失礼いたしました、二十二条の定期借地権の場合です。これは公正証書にするわけでございますけれども、その場合に、これは延長がないけれども、五十年という長い期間をやるわけですから、その権利金を取られるのではないかということです。
 それから、二十三条の建物譲渡つきの借地権の場合には、その買い取り価格の算定とか、そこに住んでいる借家人の地位をどのような形で保護していったらいいのかということ。それからもう一つは、よく言われていますけれども、建物が、要するに時価で買い取るというと、そのときにもうめちゃめちゃに、ただみたいになってしまうような建物でいいじゃないかという意味で、非常に粗悪な建物が建ってしまうのではないかということで、その譲渡特約付借地権には三つぐらい問題点があるんじゃないかということ。
 それから、二十四条の事業用の借地権については、先ほども問題になりましたけれども、要するに借りる人の範囲というのが非常に不特定でありますから、一体どうやってこれを歯どめをかけていったらいいんだろうか。それから、借家人の、やはり同様にそこを借りた人の地位というものをどのようにするかということで、もう一度お話を伺いたいと思います。
#274
○清水(湛)政府委員 まず、二十二条の定期借地権でございますけれども、存続期間を五十年以上というふうにしております。その際、権利金の授受がどういう形で行われるかということは私ども必ずしも容易に予測しがたいわけでございますけれども、少なくとも今の権利金の授受の実態というのが、土地を一たん貸すと、まあ半永久的に返ってこないという認識のもとに、例えば土地の価格の九割とかあるいはそれに近い価格の権利金の授受をするというようなこと、つまり半永久的に返ってこないというようなものと比較いたしますと、これはもう契約で定めた五十年、あるいは六十年という定めもあるかもしれませんけれども、少なくともその期間が到来いたしますと間違いなくその土地は返されるということが法律上は保障されておりますので、一般的には半永久的に戻ってこないだろうという認識のもとに授受される権利金よりか低額のものになるであろう、こういうふうに考えているわけでございます。
 それから二十三条の建物譲渡特約付借地権でございますけれども、これは三十年以上ということでございますが、この三十年の期間あるいは契約で定めた期間が経過すればその建物は地主の方に移る、こういうことになるわけでございます。そういうようなことから粗悪な建物を建てるということになるのではないかというような御疑問でございますけれども、この点につきましては、必ずしもそういうことにはならないのでは、ないか。やはり、建物が地主の方に移るという場合の対価というものをどういうふうに決めるかということにもよることでございまして、その辺につきましては、やはり一定の経済原則というものが働くことになると思いますけれども、そのために非常に劣悪な建物がつくられるということには必ずしもならないのではないかというふうに思うわけでございます。
 それから二十四条の事業用借地権でございますけれども、これは「専ら事業の用に供する建物」ということになっておるわけでございまして、存続期間も十年以上二十年以下ということでございます。郊外型のレストランとかあるいはファストフードの店というようなものが一つの例示として挙げられているわけでございまして、そういうところでは、少なくとも二十年以内の期間で一定の収益を上げてその後は土地を所有者に返すという前提で、これは建物の所有権も含めて土地の所有者に返すという前提ではございませんから、そういう短期間の事業目的に適した形で建物がつくられるということになろうかと思います。しかも事業目的という限定があり、しかもそのことがちゃんと担保されるように、公正証書できちんとその契約関係を認識してそういうことをしなければならないということになっておりますので、おのずからこの事業用の定期借地権というものを利用する人たちはまさに事業者に限定されてくる、こういうふうに考えております。
#275
○鈴木(喜)委員 一つ抜けていましたのは、そこに借家人が住む場合があるだろうと思うのです。例えば譲渡つきの借地権の場合でも、それから事業用の借地権の場合でも、そこに住む人たちがその時期になりましたときにちょうど出ていくということについては、たしか、その一年未満か何かに、知らなかったとか知っているとかいうような条項があったと思うのですけれども、もしそういうことがあった場合に借家人の保護に非常に欠けるので、知っていて入ったから出なくちゃいけないんだよと言われればそれまでかもしれませんけれども、借家人の保護という点からいきますと非常に問題があるのではないかという点でございます。
 それからもう一つが、これは建物の賃貸借の場合の、例えば転勤や何かの場合の不在期間の賃貸借でありますとか、取り壊し予定の建物の賃貸借の場合にも共通することになると思うのですけれども、こういうのにもし反するというか、そういうことがないのにこれで貸してしまった場合は無効でございますというようなお答えが先ほどもあったと思うのですけれども、そういうときに無効か無効じゃないか生言ったって、もうそれは済んでしまって出てしまった後の問題でございますから、賃料を返せとかそういう請求か何かができるというような意味で無効だということになるのでしょうか。ちょっと、悪用された場合の後始末といいますか、そういう問題で、無効だと言われてもいたし方がないんじゃないかと思うのですけれども。
#276
○寺田説明員 最初の問題でございますけれども、これは先ほどもちょっと触れましたけれども、新たに借家部分に三十五条という規定を設けまして、借地上の建物の貸借人は善意であれば最大一年の保護を受けるということにいたしております。これは四日の公述人の方の御指摘もありましたように、借地上の借家に対する保護というのが現在ちょっと薄過ぎるという問題意識に基づくものでございまして、特に定期借地権に限らず一般の借地にも適用がある場合でございます。したがいまして、現在、一般の借地で期間の満了によって借家人が占有権限を失って立ち退きを求められるわけでございますが、その場合もこの条項で同様に保護されるということになります。これは現在の借家人の保護をむしろ広げたというように御理解いただければと思います。
 第二の、三十八条、三十九条の違反があった場合の効果でございますが、これは、このような賃貸借の特例部分が無効になるわけでございますので、これは普通の建物賃貸借になるということになるわけでございます。
#277
○鈴木(喜)委員 契約をしている途中でそのことがわかって、転勤なんというのはうそだったんじゃないかとか、取り壊しの目的なんてうそだったんじゃないかということがわかった場合には、これは通常の賃貸借になりますということで、それについて借りた人は、そこに入った人は、ずっとそれは通常の賃貸借であって期間が来たってそういうのは関係ないんだと言って頑張ることができるのですけれども、実際そういうことは少なくて、その人はある期間いて、それで出ていっちゃった後で、壊さないじゃないのということがわかるのが普通じゃないかということを私申し上げたのです。そのときになってからもう一回そこに入るということは、もう出ていっちゃってほかの人が入っているのを押し出してもう一回入るということは、これはちょっとそういうふうな回復をするということは多分できないだろう。だから、一体どういう形で、その無効でございますというのはよくわかるのですけれども、その点について、出ていかされてしまった人の救済まで考えると余りできないではないですか。ですから、そういった初めのところでうそをつかれたらどうなのですかという問題について、単に無効であるからということでは問題が済まないのではないかというのが私の疑問の点でございます。
 もう一度その点をお聞かせいただきたいと思います。
#278
○清水(湛)政府委員 お尋ねの事案というのは、例えば期限つきの建物賃貸借がその適例が、それからまた、取り壊し予定の建物の賃貸借というものが適例かと思います。
 先ほども御答弁申し上げましたとおり、期限つきの、つまり転勤等に伴う確定期限の建物賃貸借契約、これは要件を非常に厳格に絞っているわけでございまして、しかも、後日それが争いにならないように、そういう事情を記載した書面でしなければならないという縛りをかけまして乱用を防止しようということにいたしているわけでございます。
 それにもかかわらず、いわば法律で要求しております書面にうその事実を書いて、現実にはそういうことではないということでございますと、それは、そういう特約は無効でございまして、仮にその契約で定めました期間が来ましても、正当事由を主張してそこにそのまま居住することができるわけでございます。そういうようなことを、いわばだました形でいろいろ借家人の負担において出したということになりますと、そこに一種の不法行為と申しますか、債務不履行を構成しますか、どういう構成が可能がよく考えてみる必要があると思いますけれども、何らかの損害賠償義務というものが観念論、法律論としてはやはり出てくるのじゃないだろうかということになるわけでございます。そのために余計な出費を強いられた、たまたまどこかへ出ていく予定があったということであると話は別かもしれませんけれども、そのために余計な出費を強いられた、つまり、だました行為によって余計な出費を強いられたということになりますどそういう問題が生じてこようかと思うわけでございます。
 同じように、取り壊し予定の建物の賃貸借につきましても、本来取り壊し予定でないのに取り壊し予定だと言って貸して、一定の期間が来たら追い出してしまう、しかし、実はそうじゃなくて、またほかの貸借人を入れている、こういうこともあろうかと思います。これはやはり、そういうのは一種の、法律で許されざる行為をしたということになりまして、そのために特に不必要な出費を強いられたということになりますと、そこに何らかの不法行為が成立する余地がある。具体的に、その金額がどういう場合にどの金額になるのかということは私わかりませんけれども、少なくとも、だます行為によって余計な出費を強いられたということが出てまいりますと、法律上の責任を問い得る場合もあり得るであろうというふうに思う次第でございます。
#279
○鈴木(喜)委員 ですから、お互いにそれを通謀し合ってやったような場合にはナンセンスな話になりますけれども、要するに一つの抜け道になるのではないかというような気がしてなりません。
 例えば、これは二十五条とか四十条の一時使用ですけれども、これは現行にももちろんあるのですけれども、一時使用ということは、今度は、こういうのをとりますと非常に限定的な解釈で一時使用が出てきます。しかし、現在脱法的に行われている一時使用というものは、本来の解釈とはもっと違って、本当に、今の転勤の間というようなことも、本来はいけなくても、それを含んでしまって一時使用ということで借地法の適用とか借家法の適用なくしてやろうというようなこととか、または即決和解を組みまして、それぞれのところで、もう立ち退きだという形をとってでも、二年間というものを、ちょうど契約期間いると同じように脱法的な行動をするというのと同様にというか、もっとそれが楽に、そんな裁判所まで行って即決和解まで組んでというようなことではなくてもっと楽に、そういう潜脱するというか、お互いに、だからこれはもう二年でやっちゃおうというような形でやることが出てくるのじゃないか、そのおそれが何か感じられてなりません。この点も、運用とかそういうことを考えられるとすれば、もう少し厳しいチェックが必要なのではないかというふうに思います。
 一時使用については一言で結構でございます。定義ですが、ちょっとこの条項の中にも一時使用の具体的な形が書いてあったと思うのですけれども、「臨時設備の設置その他」というふうな形で、臨時設備の設置というように一時使用の一つの例示が出ているのですけれども、これはこれのほかに「その他」というところにはいろいろあるでしょうから、一応ちょっとその定義づけを伺っておきたいと思ます。
#280
○清水(湛)政府委員 この一時使用というものに該当するのかどうかということにつきましては、裁判例にもございますし、えてして、一時使用の賃貸借契約があったから借地法の適用はないという主張が間々されるというような訴訟事件も少なくないわけでございます。しかし、そういう乱用的な主張というのは、これはいろいろな借地関係でも常にあるわけでございますけれども、基本的にやはり本当の意味での一時使用ということでございますと、これは現行法にもあることでございますが、一般的な借地法の規制に服させるということはこれはもう適当ではない、こういうことに当然のことながらなるわけでございます。
 臨時設備の設置という例示がされているわけでございますが、よく挙げられる例といたしましては、工事現場における飯場ですね、労働者がそこに寝泊まりをする。これはあくまでも当該工事か終わればそこから引き揚げる、こういう使用目的がはっきりしておるというようなものでございまして、そういうようなものは、これは臨時設備でございますから、若干結果において長期になるということがありましても借地法の一般的規定の適用はない、こういうことになるわけでございます。そのほか、一時的な目的で土地の使用を許すというようなことが間々あるわけでございます。
 恐らく委員の御指摘は、一時使用の名において恒久的な実際上の土地の賃貸借が行われるということがあるのではないか、こういう御指摘だろうと思います。あるいは先ほどの転勤等に伴う賃貸借、あるいは取り壊し目的の建物の賃貸借等々、いろいろ弊害として悪用される事例を考えますと、いろいろな事例というものは考えられるわけでございますけれども、やはりそういうような点につきましては、借地権者なり関係者が正しくこの法律を理解していただいて、主張することができる権利はきちんとした形で主張するというような体制づくりをしていく必要があると私どもは考えているわけでございます。借地借家法がこの形で通過、成立した場合におきましては、そういうような内容のPRというようなことについても遺漏のないように配慮してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#281
○鈴木(喜)委員 時間が迫ってまいりましたけれども、民事調停法の一部改正についてですけれども、二十四条の三、調停前置はそれぞれいいところがあるといたしましても、「当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意」、これがあるときはというこの部分なんですけれども、この服する旨の書面による合意がやはりいつなされたかという時期的な問題は非常に重要な問題であると思うのです。もちろん、これを例えば契約の条項の中に入れられたら先ほどの問題よりもっとまた非常に大変だと思うのです。
 いろいろと先ほどの御説明を聞いておりましたら、いろいろ話が詰まってきた、詰まったところでちっとも進まなくなってしまったときに、これ、じゃお任せしますよという、その争いがあった後に当事者が両方で、もうここのところは調停委員会のお裁きに任せるよりこれ以上はかないから、その点は専門家にお任せしますよと言って任せるんならばまだ意味があるんですけれども、これが、調停条項に服する旨の書面というのが一体いつの時点かということでいつからでもいいということでは、ちょっと非常に危険があるのではないかというふうに思うので、その一点をお伺いしたいと思います、
#282
○清水(湛)政府委員 この調停条項に服する旨の書面による合意というものを法律が要求した趣旨は、調停委員会がいろいろ何回も調停の努力を重ねたけれども、どうも当事者間の合意という形で調停が成立する可能性はない、しかしまあ調停委員会が調停条項を示せばこの調停が成立する見込みがあるというような場合を想定しているわけでございます。そういうような観点から申しますと、調停条項に服するという合意は、少なくとも調停委員会がそういう調停条項によるいわば裁定をする時点において有効に存在しなければならないというふうに私どもは考えておるわけでございます。ですから、仮に書面につきましては、書面による合意は調停の申し立て前にされる、非常に極端なケースで、文房具屋さんで売っている借地契約書にそういう条項が印刷されていて、それに判こを押せばこの二十四条の三の合意があったことになるのではないか、こういうような議論が前にございましたけれども、形式論としてはそういう形での合意も成り立ち得る。しかし、多くの場合は例文解釈ということでその効力は否定されることになるということも考えられるということを申し上げましたけれども、私どもがその書面による合意の時期について特に申し立て後でなくてはならないというふうに、まあそういう意味にこだわらなかったのは、やはり具体的に調停の経過を経まして、さて、じゃいよいよ調停委員会による調停条項の提示による裁定をするかという段階で当事者の意思を十分に確認するということが前提とされていたということによるものでございます。そういう意味におきましては、調停委員会に対する調停の申し立て後に書面をつくれといったのと実質的には変わらないというような考え方を持っているわけでございます。
 この裁定制度は、仲裁契約と違いまして、あくまでも当事者の互譲と合意というものを前提とする調停制度の中で運用される制度でございますから、基本的に調停委員会がそういう行為をする時点において合意が適法、有効に存在する、もし仮に前に合意書なる書面が出ておりましても、撤回と申しますか、既にその気持ちがないということが調停委員会において確認された場合にはやはり調停委員会はこの規定による裁定をすべきではない、もしそれを強行するということになりますと調停無効の問題が起こり得るというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#283
○鈴木(喜)委員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、今の点ですけれども、それは裁判所、調停委員を信頼したらそういうふうになもと思うんですが、その信頼したあげくに大変いろんなことが起こってきてしまった場合には、和解と同一の効力を有するような調停条項ができるわけですから、この点についてはもう少し言葉を足していただいて、その前に服する旨の書面による合意があってもこれは一応無効である、原則無効であるということでしておいていただけば、その後に新たにした合意ということで調停の場でやるんだったらばともかく、というふうに私は思います。この点はこのままではちょっと納得するわけにはいかないと思います。
 長いこと質問させていただいて、余り質問の方もうまくいったとは自分でも思ってないので申しわけありませんが、私、この改正の中で一つ、もしそういう改正があるならば三十六条のような条項については、この中に従前と全く同じ条項が入っているわけです、相続人なしに死亡した場合は事実上の夫婦とか養親子のその賃借権というものを保障した規定があるわけですけれども、相続人がだれか、弟さんがいたりなんかしてあったような場合の内縁の妻のようなそういう人の救済という問題は、前からいろいろあるわけです。そういった問題についても一言温かい配慮があればよかったのになということを最後に申し上げまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#284
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
 木島日出夫君。
#285
○木島委員 今回の改正法案で、現行借地法と改正借地借家法で決定的に違う問題で最大のものと思われる借地権の存続期間の問題に絞って、きょう私質問したいと思います。
 既に再三の答弁にありますように、現行借地法は堅固なものと非堅固なものを分けている、契約がある場合とない場合を分けている。堅固なものは契約がなければ六十年、あれば三十年、非堅固なものは契約がなければ三十年、あれば二十年、それを全部ひっくくって一律三十年にした、大きな変化であります。
 そこで、最初にずばり法務大臣にお聞きします。改正法でこの期間を、二十年や四十年や五十年や七十年や百年という数字をとらずに三十年を選んだ根拠は何でしょうか。
#286
○左藤国務大臣 私の聞いておるところによりますと、現在の建築実務上、鉄筋コンクリートのビルであっても築造後三十年で建てかえが検討されているということが多い。そういった現実の建物の経済的な耐用年数と申しますか、そういった点から見ますと三十年という期間が、建物を持っておる、まあ建物の所有を目的とする場合に適当な期間ではないか、こういう考えで三十年ということにしたわけであります。また、現行法におきます非常に堅固な建物につきまして最短存続期間というのは三十年であるということもありまして、三十年というのは借地権の一応の安定性が確保されたと評価される期間である、こういうふうにも考えられるわけでありまして、こうした理由から当初の存続期間を三十年というふうにした、このように聞いております。
#287
○木島委員 法務大臣が当法案を当法務委員会に提案をし、そのとき借地借家法案提案理由説明を述べております。それによりますと具体的に二つの理由を挙げている。「建物の社会的・経済的耐用年数等の変化及びより適切な当事者関係の調整の要請にかんがみ、一律に当初の存続期間を三十年、更新後の存続期間を十年とすることといたしております。」
 法務省が平成元年七月十四日に発行した「借地法・借家法改正要綱試案の要点 どう変わる借地・借家法」と題する本の中にも、二十二ページでこう書いてあります。「基準を三〇年にしたのは、現在では、三〇年という期間が建物を建てるための土地の利用関係に一応の安定性を保障する期間として適当であり、一般の建物の社会的・経済的耐用年数からみても相当であると考えられたからです。」やっぱり二つの理由を挙げています。
 そのうちの一つの理由である「一般の建物の社会的・経済的耐用年数」という言葉はこの本と法務大臣の本法務委員会の提案理由説明と全く同じ言葉であります。もう一つの言葉、ちょっと今述べたように若干ニュアンスが違うんですが、この二つと伺ってよろしいですか。
#288
○清水(湛)政府委員 言葉を正確に体してということになるとちょっと神経質にならざるを得ませんが、基本的にはおっしゃるとおりであろうというふうに思っております。
#289
○木島委員 そこで、一つ聞きます。
 この法務省が出版した本の中の言葉を使います。「建物を建てるための土地の利用関係に一応の安定性を保障する期間」という言葉ですが、具体的にどういう意味でしょうか。
#290
○清水(湛)政府委員 それは恐らく、途中経過の過程でつくった要綱試案についての解説でございますね。要するに、最終の法制審議会の答申についての解説ではないと思いますが、各界に問題点を提示していろいろな御意見が各界から示された、そういう各界の御意見を集約して要綱試案というものをつくった、要綱試案を示しまして各界の御意見をさらにお伺いをする、こういう手順を経たわけでございますが、その過程の中で、要綱試案で基本的な存続期間を三十年としている案を示しているわけでございます。その中で、その時点における考え方として、建物の借地権の一応の安定性が評価される期間というものとして考えますとやはり三十年というのが適当であろう、こういう趣旨で、その解説は公式の解説ではございませんけれども、そういう趣旨のものであるというふうに理解されるわけでございます。
#291
○木島委員 要するに、借り手にとって三十年借りられれば一応いいだろうという意味でしょうか。
#292
○清水(湛)政府委員 三十年惜りられればいいという、それでいいじゃないか、こういう意味ではございません。まず基本的な最小限の期間を三十年とし、さらに必要であれば、つまり貸し主の方で正当事由等によって返還を求めるというような事由がない限り、結論として半永久的、ずっと貸されるべきものとなるということは当然のことながら予定しているわけでございまして、三十年ぐらい貸せばいいのではないかというようなことは毛頭も考えているわけではございません。
#293
○木島委員 正当事由の問題と更新後の期間の問題とを絡ませて私聞いているわけではありません。借り手にとっても一番大事な当初の借地権の存続期間が何年かという問題に絞って聞いておるわけです。
 じゃ、もう一つの側面を聞きます。
 「建物の社会的・経済的耐用年数」という言葉を、これは先ほどの私の示した本でも、本法務委員会への提出された提案理由でも全く同じ言葉を使っていますので、聞きます。「建物の社会的・経済的耐用年数」とは何でしょうか。
#294
○清水(湛)政府委員 その建物が本来の建物の用途に適する形で使用される状況ということではないかというふうに考えております。
#295
○木島委員 一般的な言葉として建物の耐用年数ということを考えるときに思いつくこととしては、物理的、自然的建物の耐用年数ということも思いつくわけであります。この言葉に使われている「社会的・経済的耐用年数」という言葉は、殊さらにその物理的耐用年数を切り離した概念でしょうか。
#296
○清水(湛)政府委員 これは言葉の問題でございますけれども、建物の定義を民法の規定に従いまして、屋根及び周壁を有し、雨露をしのぐに足りる、これが建物である、こういうのが民法の基本的な定義だというようにされているわけでございますが、そういう要件で考えますと、それは何年も、三十年ばかりでなく、五十年も六十年も建物というのは存続し得るということだろうと思います。
 ただしかし、一般的な、例えば建物が本来建てられた用途とか、それは経済的な活動に供せられるとか、そういうような中で眺めた場合の建物の平均寿命というのは大体三十年前後、木造はもっと低いわけでございますけれども、そういうような資料もあるわけでございます。もちろん、鉄筋コンクリートづくりでございましても、具体的にどういうものにするかということによりまして五十年とか六十年立派な形で存続する鉄筋コンクリートの建物というのは現にございますし、そういうものはたくさんあるわけでございますから一律に申し上げることはできませんけれども、大体鉄骨造のものが三十年前後、鉄筋コンクリート造のものについては四十年前後というような数字が出ているようでございますけれども、そういうようないろいろな数字というものを私ども参酌しまして、それから、これまで二十年、三十年というものが最低限度の借地権の存続期間だということであるというようなことも考慮いたしまして三十年という数字を出したわけでございまして、物理的ということと社会的ということの間にどの程度の乖離があるのか私ちょっと正確には申し上げられませんけれども、いわゆるそういう総合的な事情を考慮してこの法律案のような形にしたわけでございます。
#297
○木島委員 私がそれになぜこだわるかといいますと、現代の大変進んできた建築技術をもってしてつくられる、しかも堅固な建物の耐用年数なるものを考えるときに、これはもう八十年、百年使えるということを前提にしてつくられているであろうと思うわけであります。また、震災などに強いという面でも、そういう長い視野で物を考えられてつくられているだろうと思います。一般庶民が住む木造の住宅でも決して三十年でいいなんという観点で今建物はつくられていないと思うわけであります。それは勤労者にとっては一生に一回新築することができれば御の字という状況だからなおさらだと思うわけです。そこでこだわっているわけです。
 じゃそこで、現在の日本の法制度で、建築の、建物の耐用年数なる概念が扱われているのはどういう場面であるか。どうでしょうか、法務省。
#298
○清水(湛)政府委員 耐用年数というのは、いろいろな行政目的によっていろいろな耐用年数の決め方があるんだろうと思います。法務省の行政の中で建物の耐用年数を問題にするというものはございませんので、正確なことは申し上げられません。ただ、例えば税務の関係で、減価償却資産というようなものになるわけでございますから、その関係で耐用年数を決めるというようなこともございますでしょうし、あるいは、建設省の所管でございますけれども、公営住宅について耐用年数というようなものを決める、それを基準にしてそれぞれの省庁において一定の行政を遂行される、こういうことがあろうかと思います。
#299
○木島委員 そのとおりだと思うのです。私も、建築物の耐用年数ということを考えるときにやはり真っ先に思い浮かべるのは税務行政における耐用年数であろう、それが日本の国民にとっても一番身近な意味で使われる建築物の耐用年数であろうかと思います。
 そこで、きょうは私は大蔵省の税制第一課長をお呼びしております。本件、現行借地法がつくられたのが今からちょうど七十年前の大正十年でありますので、長いスタンスでお聞きいたします。
 日本において、税務上建築物の耐用年数が何年であったのか、堅固な建物の場合と非堅固な建物の場、合に分けて年次を追って変遷を御答弁願いたい。
#300
○尾原説明員 お答えいたします。
 法人税法上の法定耐用年数は、資産の物理的な寿命を基本といたしまして、技術的進歩等による経済的な陳腐化を加味して現在定められているものでございます。
 それでまず、順番が逆になりますが、現在どうなっているかと申し上げますと、構造によって区々でございます。それで、主なものといたしまして、まず……
#301
○木島委員 ちょっと、質問どおりにやっていただけますか。堅固な建物について経年的にきちっと言ってください、わかりやすく。
#302
○尾原説明員 はい。それでは大正十年当時でございますが、この当時は鉄筋コンクリート構造はございませんでした。一つのグループとして、れんがづくり、石づくり、鉄骨れんがづくりまたは石づくりというのがございまして、事務所用、住宅用とも百年でございます。
 次に木造でございますが、事務所用、住宅用とも三十五年になっております。
 その後だんだんと短くなってきた傾向がございまして、現在では、鉄骨鉄筋コンクリートづくりまたは鉄筋コンクリートづくり、事務所用六十五年、住宅用六十年。それから木造でございますが、事務所用二十六年、住宅用二十四年というふうになっております。
#303
○木島委員 その中間の法の変遷、昭和十二年の改正と昭和十七年の改正、それだけを言ってください。
#304
○尾原説明員 昭和十二年でございますが、れんがづくり、石づくりが七十年、それから鉄骨れんがづくり、それから鉄筋コンクリートでございましょうか、これが八十年。これはいずれも事務所用でございますが、木造が三十年ということになっております。
 昭和十七年でございますが、これは事務所用または住宅用とも、鉄骨鉄筋コンクリートづくり、鉄筋コンクリートづくりまたは鉄骨づくり六十年、れんがづくりまたは石づくり五十年、それから土蔵づくりまたは木造二十五年というふうになっております。
#305
○木島委員 現行の建物の耐用年数はいつからそうなりましたか。
#306
○尾原説明員 現行の年数になりましたのは昭和四十一年でございます。
#307
○木島委員 そうなるについては税制調査会に要望が出たからだと思われます。
 昭和四十一年度の税制改正に対する答申で、その耐用年数について短縮する、その理由が、どのような項目でどのような理由でなされたか、答弁してください。
#308
○尾原説明員 昭和四十一年度でございますが、「企業の体質改善の促進」というところで、「企業の内部留保の充実に資するため、昭和二十六年以来改定が行われなかった建物の耐用年数を工場用建物、倉庫等に重点を置いて一五%程度短縮する。」こういうふうになっております。
#309
○木島委員 ありがとうございました。
 その昭和四十一年度の税制改正に対する答申の今述べられたところの項目を見ますと、私か大蔵省からいただいている文書、見出しか「企業減税」となっております。中身は今述べていただいたとおりであります。
 要するに、物理的、自然的な耐用年数はもっと長い。しかし、企業の内部留保の充実に資するためという経済目的、税制上の目的のために短くするということだと伺ってよろしいでしょうか、大蔵省さん。
#310
○尾原説明員 今おっしゃられたような経緯でございますが、税法では物理的な耐用年数を基本といたしまして、経済的に、時代が変わってまいりますと、それは必ずしも物理的にどれだけ使えるかということでは税法上適当でないものでございますから、経済的な陳腐化を加味して決めているところでございます。
#311
○木島委員 そこで、本法は大正十年以来の大改正でありますから、大正十年の借地法がつくられたときの問題にさかのぼってちょっとお聞きしたいと思うのです。
 原則六十年、契約があれば三十年という取り決めだった、そういう法律がつくられたわけでありますが、実はその前の年に、大正九年にやはり当時の政府が借地法をつくろうとしたことがあったわけです。そのときに政府が考えていた存続期間が一体何年を考えていたか、これは法務大臣、民事局長、御存じでしょうか。
#312
○清水(湛)政府委員 大正十年の借地法が制定されるに至るまでにはいろいろな御議論があったということを私承知しておりますが、今ちょっとその具体的な年数を問われましても、手元に資料がございませんのでお許しいただきたいと思います。
#313
○木島委員 大正十年二月八日に当時の帝国議会の委員会で借地法、借家法の審議が行われておって、そのときに山内確三郎という司法省の民事局長がこういう答弁をしております。「昨年ノ案デハ堅固ノ建物二就テハ百年、其他ノ建物二就テハ五十年ト云フ事ニシテ居ツタノデスガ、百年ハ少シ長過ギバシナイカト云フノデ六十年迄ハ縮メマシタ」、それから同じく、本来建物がある限り借地権の存続期間を設定してもいいんだが、「如何ニモ地主二取ツチ土地利用ノ考ヘカラ、余程面白クナイ気持ガスルノデアリマス、ソコデ先ヅ大体斯ウ云フモノヲ建テサセルナラバ、六十年トシテ置ケバ、六十年二ナレバ又更新スルト云フコト・ニナルト私ハ確信シテ居リマス、」
 議事録をずっと読んでいますと、建物がある限りは借地権を認めていいだろう、そういう思想がずっと当時の司法省の答弁に出てくるわけであります。しかし、地主の利益も勘案して六十年にしようということがうかがえるわけです。
 また、その議事録の中には六十年が本則だという答弁もあるのです。それで、今ずっとこの法務委員会での審議を聞いていますと、何か堅固なものも三十年が原則のような答弁のように聞こえますが、立法上はそうじゃなかったのですね。おもしろいことを言っております。同じ山内民事局長ですが、「建物ノ構造ト云フ者ヲ墓ニシテ、其承諾ノ上デ建テサシタ建物ガ堅固テアルナラバ、理想カラ言ヘバ朽廃ニ至ル迄ト云フ事ニナリマスガモ知レナイ、併ナガラソレハ酷デアルト云フノデ、矢張人間ノ寿命ニ近キ六十年ト斯ウ云フ事二足メタこということを言って、本則六十年だった。そして、しかしまじめな契約であれば短いのも認めてあげましょうということで、こういう言葉を言っているのです。「三年デアラウガ、二十九年デアラウガ、是ハ不真面目ナ契約ト認メテこれはだめだ。三十年以上の契約期間ならまじめな契約だからそれを認めようということで、本則六十年だけれども、契約で短縮すれば三十年にしてあげましょう。これが現行借地法がつくられたときの司法省の考えであるわけです。
 先ほど私大蔵省から、現在の日本の税制が堅固な建物を一体どのくらい社会的、税法的評価をしているかという立場からお聞きしました。やはり非常に長いわけですね。それにもかかわらず、何で今借地法で基本三十年という非常に短い期間を選び出してきたか、理由がわからないわけです。この三十年で一体日本の勤労者は、自分が住まいとして使う、そのために土地を借りて二戸建ての建物を建てたい、そういう人が果たして三十年で納得するでしょうか。それからまた、更新十年ということで納得するでしょうか。
 例えば、寿命六十年という言葉を大正十年の国会の審議で司法省は言いました。今むしろ人生伸びていますね、八十年。仮に三十歳でサラリーマンが土地を借りて二戸建ての建物をつくる。そうすると、六十歳のときに、いよいよ高齢化してきたときに期限が来る、そして明け渡しを迫られる。地主からいえばチャンスが生まれる、借地人からいえば不安が生ずる。そして十年たった、七十歳になった、ほらもう一回来た、所得がだんだん少なくなってくる段階で明け渡しの圧力が一層強まる。そういう役割をこの三十年、そして更新十年というのは果たすであろうと思うわけであります軌むしろ、今勤労者住宅であろうと三千万、四千万というお金を使って居住用の建物をつくるんですから、三十年でいいだろう、四十年でいいだろう、五十年で壊そうなんという発想でうちを建てる者はいない。むしろ二世代が一緒に住む、年とって倒れた、脳溢血で倒れた、その場合には、今厚生省の方も在宅ということをしきりに言っておりますから、うちで寝たきりのお年寄りを見てそれを子供が養う。要するに建物は、しかもまだまだ四十年たっても立派な建物、三十年たっても立派な建物、そういう想定がされる日本の勤労者の土地住宅問題、そして高齢化問題、在宅福祉の問題などを勘案すると、私は法務省が言う建物の社会的、経済的耐用年数というのは、むしろもっと長く七十年くらいにしてもいいんじゃないかと思うことすらあるわけです。
 どうでしょうか、法務大臣、もう時間がありませんから、そういう二世代が同居する、あるいは老後を全うする、そういう厚生省的な発想からいくと、三十年の当初の期間、そして更新後十年、また十年というのは、居住のために建物を建てる、そのために借地をしたいという、こういう切実な日本の勤労国民の要求からすると、まことに余りにもかけ離れたと思いませんでしょうか。これは法務大臣、政策問題ですから答えてください。
#314
○清水(湛)政府委員 大正十年の借地法制定の際に、存続期間についていろいろな御議論があったということは私ども承知しているわけでございます。ただ、その際には正当事由ということが考えられていなかったわけでございます。現実に、例えば当委員会でも問題になっておりますように、木造建物については二十年という契約を普通借地法に基づいてしたわけでございますけれども、その二十年の期間が到来する昭和十六年には、これはほぼほとんど無条件に建物を、土地を明け渡す、こういうことになっているわけでございまして、その大正十年当時の存続期間の議論についても、その期間が来たら返すということが前提となった議論であるというふうにも私ども考えるわけでございます。ただ、そういう状況のもとで、昭和十六年に正当事由条項というものが入りまして、その結果として半永久的な借地関係というような観念が具体的には生まれてきてしまった、もう存続期間を決めるなんということ自体がある意味においてはナンセンス、こういうような状況になってきたわけでございます。
 そういうような状況を踏まえて、じゃあ基本的な借地権の存続期間をどうするかということを、つまり正当事由条項というものがあるという前提で私どもは考えなければならないわけでございまして、そういう際に、やはり現在の堅固な建物についての存続期間が最低三十年で、しかも実質的にはほとんどそういう三十年という期間で契約が定められているという事実、そういうもの、それから鉄筋コンクリートについての建物の耐用年数と一般の住宅用の建物について考えますとほぼその程度の三十年前後、あるいはそれよりか長いかもしれませんけれども、ある程度の耐用年数、社会的、経済的な耐用年数というようなものも考慮いたしまして、三十年という基本的な期間を保障し、かつ、正当事由条項については、大正十年になかったものを昭和十六年に追加して、それを前提として正当事由がない限りやはりいつまでも借地関係は続くのだ、こういうことを前提にし、しかし、その間における当事者間のいろいろな経済的な力の変更もございましょうし、家族構成の変化もある、こういうようなものを踏まえまして十年ごとに正当事由をチェックしようということでこの期間を定めているわけでございまして、決して借地人の地位の不安定だとかその権利を弱体化するというようなこととはかかわりのないことである、そういうものとはつながらない、こういうふうに私どもは考えておるということは御理解いただきたいと思うわけでございます。
#315
○木島委員 もう時間ですが、長答弁されましたから一言言います。そして終わります。
 大正十年の議事録をずっと読むと、当時の司法省は、期間が来たからもう出ていくということは全く想定されていない、むしろ更新されるだろうということを前提で答弁がされております。確かに正当事由が導入されたのは昭和十六年です。しかし、昭和十六年の議事録を読みますと、何で昭和十六年に正当事由が必要だったかといいますと、当時の三宅司法省の民事局長は「土地及ビ建物ノ価格ガ昂騰シ、借地借家が払底ヲ音グルニ至リマシタ為メ、借地ニ付テ申シマスト、地主ノ中ニハ其ノ土地ヲ他二利用スル必要カラ、契約ノ更新ヲ承諾シナイト云フヤウナモノモ出テ参リ」ましたので正当事由をつくるのだ。要するに想定は、更新していくだろうという想定でつくられているのです。しかし、昭和十六年ごろ土地、建物の価格が沸騰して、高騰して、予想されていなかったように地主が断るようになってきた、更新を断るようになってきた。それで調停で何とか頑張ったけれども、調停ではだめなんで、法律で正当事由が必要だったのだ、つくらなければだめなんだということをはっきり司法省は答えているわけであります。
 そのことだけ述べて、正当事由制度がつくられたから当初の契約期間が何年かなんており意味がなくなったのだというのは、全く歴史的にも現状でも通らない理屈だということを申し述べまして、私終わらせていただきます。
#316
○伊藤委員長 神田原君。
#317
○神田委員 借地借家法につきまして御質問を申し上げます。
 今回の借地・借家法の改正に対しまして、多くの借地人、借家人が反対している理由を考えまして、二つに論点を整理すべきであると私どもは考えております。
 第一は、民法の改正としての借地・借家法が変わることに対する不安、第二は、実体経済における借地人、借家人の立場が貸し手と比べ不安定であるという点でございます。当該改正法案に対する国民の理解を得るには、この二点に対して国民の不安を払拭させねばならない、こういうふうに考えております。
 まず第一の借地・借家法の改正についてでありますが、借地・借家人の多くが不信を抱いている改正点は、借地・借家関係の解消の要件である正当事由を明文化したこと、普通借地権の更新後の存続期間を原則十年としたことの二点であるというように考えております。
 そこで、まず正当事由についてでありますが、契約の更新の請求または使用の継続に対し異議を述べることができるのは、正当の事由があると認められた場合だけとされております。正当な事由を判断するに当たって考慮されるべき事項として、貸し主、借り主が土地・建物の使用を必要とする事項を主として考慮し、その他借地・借家に関する従前の経過、土地・建物の利用状況、建物の状況及び貸し主が立ち退き料を払うと申し出たときというふうに書かれております。そして、この正当事由に関する改正等は現在の取り扱いと基本的に異なるものではないとしております。
 現行の権利関係に何ら影響を与えない改正ならば、各種団体からの反対を押してまで改正する必要はないと考えられます。
 正当事由に係る改正は純然たる立法技術だけの問題なのかどうか。また、良質な住宅の供給を促進するなどの効果も現行法と全く同じなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
#318
○清水(湛)政府委員 正当事由条項についての改正の理由ということでございますが、結論的に申しますと、現行法の正当事由について積み重ねられてきた判例を具体的に法文の形で取りまとめたものである、その一語に尽きるわけでございまして、これによって借地人の方が不利益になるとかあるいは借家人の方が不利益になるというようなことは一切ないというふうに私どもは考えているわけでございます。
 それではなぜそのような判例で積み重ねられた理論を法文化することにしたか、こういうことでございますが、これまでもたびたび述べていることでございますが、一つには、現行法は自己使用、自己がみずから使用する必要性その他正当事由という規定になっているわけでございまして、仮にこの規定をそのまま今回の改正法案の中で同じように書いたらどういう反応が出るだろうかということが一つの問題点でございます。
 これは御承知のように昭和十六年にこの法律の中に入った規定でございますが、当時は文字どおり地主がみずから使用する必要性があればもうそれだけで土地は返してもらえる、こういう解釈がされていた時期があるわけでございます。そういう解釈に対しまして、戦後の住宅難、宅地難というものを背景といたしまして、いや、それは地主だけの使用の必要性ではなくて借家人、借地人の方の使用の必要性も考慮して、お互いに公平妥当な見地から正当事由の存否というものは判断すべきであるというふうに判例が徐々に変わってまいったわけでございます。そういう判例が変更される過程の中におきましては、地主の側の方々から、自己使用の必要性さえあれば正当事由として土地は返すべきではないかというような主張が控訴の理由、上告の理由として繰り返しされた経緯があるわけでございますけれども、そういうものが退けられまして、この自己使用その他の正当事由というのはこのように解釈すべきであるということで、一つの判例理論と申しますか、そういうものが打ち立てられた経緯があるわけでございます。
 そういう状況の中で、改めてまた昭和十六年と同じような条文を現在の立法でしたといたしますと、これはやはり新しい法律でございますから、新しい法律の解釈としてまた昭和十六年当時されたような地主側に有利な解釈というものを生む余地、これを私どもは否定することができないのではないかという心配が一つあったわけでございます。つまり、そういうことになりますとまた議論の蒸し返しか起こるというようなことでございまして、せっかく判例理論が地主、借地人側の立場を平等公平に考慮して打ち立ててきた指針というものがまた崩れる可能性がある、こういう心配が一つでございます。
 もう一つは、今回の借地借家法は、今までの漢字、片仮名まじりの法律と違いまして、平仮名で現代語化してわかりやすくするということになっているわけでございますが、そういうわかりやすい法律をつくるという過程の中で、みずから使用する必要性その他の正当事由というようなわずか数語で借地権が更新するかしないかというような重要な事由を法律の規定の中で片づけてしまうということはいかがなものか、やはり国民の皆さん方が法律を読んで正当事由というのはこういうことを考慮するんだということがわからないとかえって不安になるのではないか、また、立案当局といたしましても、そういう意味では責任を果たしたことにはならないのではないかというようなことがございます。
 そこで、じゃどういうふうな形で書くのかということになりますと、やはり現在の判例理論が到達したいろいろな基準というものを、重要なものについては漏れなく掲げませんと新しい法律として判例理論とのそごが生じてくるという問題がございますので、立ち退き料の申し出等の事情も含めまして正当事由についての条文を整理した、こういうことでございます。
 お尋ねのように、ある意味におきましては立法技術上の問題というふうに理解していただいてもあるいは結構かというふうに思うわけでございます。
#319
○神田委員 例えば、ジュリストに掲載されました上野芳子さんの論文によれば、品川の事例を用いて、六十歳以上の借地人が全体の六六・七%を占め、建物の明け渡しをめぐるトラブルの不安を訴える人が八〇%以上を占めております。借地人としての不安や悩みで一番多いのは、借地契約の更新についてのトラブルが五六・五%、地代の値上げが五二・五%、補償金の請求ができるとされているものの、その煩雑さにこの請求権を放棄することになりかねない等を挙げまして改正に反対をしております。
 このような不安にどういうふうにお答えになりますか。
#320
○清水(湛)政府委員 先ほど申し上げましたように、正当事由についての規定は現在の判例で到達した理論を明文化したものでございまして、そのことについて、私どもは関係者の方に十分に理解していただきたいというふうに思う次第でございます。
 借地・借家をめぐる紛争で、特に借地につきましては、更新の機会にそういう紛争が表面化するということは私どもの経験におきましても承知しているところでございまして、したがいまして、この正当事由をめぐる解釈論争というものが非常に激しく行われておるということも、また事実そのとおりでございますのですけれども、借地・借家法の改正によってさらにそのトラブルがふえるとかあるいは借地人が不利益になるというふうには考えられませんので、そのことにつきましては、そういういわば不安と申しますか心配と申しますか、それはぜひ解消していただきたい。
 より基本的に、既に現行法上ある問題というものも実はあるわけでございますが、そういうものも含めまして借地人、借家人の権利が適切妥当に保護される、こういう基本的な今回の法律改正の方針は変わっておりませんので、十分にそのことを関係する皆様方に御理解をいただきたい。そのためのPRは十分にいたしたいというふうに思っております。
#321
○神田委員 普通借地権の更新後の存続期間を十年とした点でありますが、千葉大の鎌野助教授の論文によりますれば、最初の存続期間を三十年としたことはある程度合理的である、しかし、人間のライフサイクルという視点から、三十年プラス十年プラス十年というふうにトータルで考えますと、例えば三十歳から四十歳で借地契約をした場合、六十及び七十歳、再び七十及び八十歳で正当事由の判断を行うことになります。老齢な借地人の経済面においても精神面でも多大な問題が発生されるでしょうというふうに述べ、原則として三十年プラス三十年という現行モデルを維持しつつ、例外的の十年ごとに特別事由判断の機会を与えてはどうかとしておりますが、その点はいかがでありますか。
#322
○清水(湛)政府委員 更新後の存続期間についてのお尋ねでございますけれども、繰り返し説明しているところでございますが、現行法では木造建物の場合には原則は二十年、これは契約で決めるというのが一般的な形になっておりますので原則というふうに申し上げるわけでございますが、原則二十年、それから堅固の建物ということになりますと原則三十年、こういうことになるわけでございます。住宅地用として堅固の建物の所有を目的とする借地契約というものが最近は恐らくふえているとは思いますけれども、普通、堅固な建物につきましてはビルとか、いわば商業用地の借地契約に対応されているというふうに言ってもいいかと思いますけれども、最近の状況では恐らく住宅用地についてもそういうことがあろうかと思います。そういう状況のもとで、私どもは、原則存続期間をまずいろいろな諸事情を考慮して各方面の意見を最大限に集約しました結果、原則存続期間は三十年ということにいたしまして、先生御指摘のとおり、この原則三十年につきましては各方面の大方の賛同をいただいているところでございます。
 それから、その後の十年ということにつきましても、正当事由については現行法とは変えていないわけでございまして、このようなライフサイクルの話がございましたけれども、一方では社会経済情勢の変化というものが個人の生活にもいろいろな影を落としているわけでございます。そういうような状況を的確に借地関係に反映するのが地主、借地人の相互の権利関係を公正、妥当に規律するという面においても適切ではないか、こういうことから更新後の存続期間は十年ということにいたしたわけでございまして、このことにつきましても大方の御賛同をいただいておるというふうに私どもは実は理解しているわけでございます。正当事由というものについての変更は加えられておりませんので、正当事由がある限り、逆に言うとそうしない限り借地権は続くという事態は、これは現行法もこの新しい法案においても変わるところはない、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
#323
○神田委員 第二の問題点は、実体経済における問題であります。
 仮に七十歳のお年寄りの借家を建てかえることになり立ち退くことになったとします。通常であれば立ち退き料等により次の住まいは円滑に見つけられます。もし問題があれば裁判所に提起をすればよいことになっており、法律上は完備をしております。
 裁判所で調停等を受けるのは、上野氏の論文にもありますように、一般市民にとってはかなり煩雑な行為になることが容易に予想ができますが、建設省ではこのような人に対処した窓口があるのかどうか。また、法務省においてはどうでしょうか。
#324
○石井説明員 建設省といたしましては、民営借家世帯の良好な居住水準の確保を図る、こういった観点から、トラブルのない賃貸借の確立を図ることは極めて重要だというふうに考えております。このため、建設省におきましても私ども住宅局の民間住宅課の方におきまして、民間賃貸住宅の管理の適正化を図るため、こういった賃貸住宅に係るトラブル等の相談に応じているところでございます。
#325
○清水(湛)政府委員 老人が土地を借りてそこに家を建ててお住まいになっているあるいは借家に住んでおられるということ、これからの世の中で非常に多くなっていくのではないかというふうに思います。私どもそういう場合に正当事由というものについて、例えば最終的に裁判所がどういう御判断をなさるかということは、いろいろな諸事情が絡まることでございますからすぐこうなります、ああなりますということは申し上げることはできませんけれども、少なくともそこに住んでいる方がお年寄りでほかに行くところがないということになりますと、それはもうみずから当該お年寄りがそこに住まなければならない、まさに借地を使用しなければならない必要性というのは極めて高度である、こういうふうに普通の場合はなろうかと思います。そういうことでございますから、お年寄りだから出ていけ、こういうことには当然のことながらならないというふうに思うわけでございます。
 しかしながら、その土地の利用状況等からして、どこかどうしても出ていってもらう必要があるというような場合も、それは考えられないわけではございません。例えば今回の借地法における正当事由状況の中で、立ち退き料という言葉で議論しておりますけれども、財産上の給付の申し出をするというようなことが正当事由を判断する場合の一要素になっているわけでございますが、そういったようなケースをとれば、代替家屋を提供する、こちら側にお住まいになってくださいというような形で提供する、あるいは代替家屋を購入するのに十分な立ち退き料を提供するというようなことが加わりますとまた異なった判断がされるということはあろうかと思いますけれども、年寄りがそこに住んでいるということ、そこ以外に行くところがないということでございますと、むしろ地主の方に正当事由を認めるということは甚だ困難なことになるのではないか、今の裁判実務から申しましても、そういうことが申し上げることができるのではないかというふうに思います。
#326
○神田委員 行政の窓口、例えば自治体の住宅課の中に窓口を設置するとか、特に建設省は、今回の借地・借家法の改正に伴い、ハード面の整備とともにソフト面でも行政サービスを拡充すべきであるというふうに考えておりますが、このような行政窓口をつくるとしたらどういう手法が可能でありましょうか。
#327
○石井説明員 建設省におきましては、民間賃貸住宅のトラブルといった住宅相談に応じるため、各都道府県におきまして住宅相談窓口を設置するように指導いたしているところでございますが、現在、すべての都道府県におきましてこういった相談窓口が設置されている状況にございます。
 建設省におきましては、法務省さんの方とも連携をとりまして、今回の借地・借家法の改正についての正しい知識、正しい理解が広く得られますように、地方公共団体におきます住宅相談の充実を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。
#328
○神田委員 私は、今回の当該法改正に伴い、多くの国民が不安を感じている以上、このような行政窓口は当然設置すべきであると考えております。当該法改正とセットで行うべきであるというふうに考えております。法理論上今回の法改正が適正であったとしても、民事相談である以上多くの問題点があるわけでありますから、運用においてさまざまなトラブルが予想されるような状況でもあります。
 このような住宅相談的な行政窓口を各自治体に設けるべきでありますが、例えば都道府県への通達などで積極的な指導を行う用意はございますか。
#329
○石井説明員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、現在各都道府県において住宅相談窓口が設置されているところでございます。具体的には、都道府県の住宅相談窓口におきまして今回の借地・借家法の改正に伴う住民等からのいろいろ相談があると思いますが、こういったものに適切に対応いたしますように、通達等によって指導、徹底を図ることを現在検討しているところでございます。
#330
○神田委員 家賃の問題、家賃の高騰が家計を大きく圧迫しております。例えば四月二十五日の東京都の民営家賃等に関する調査では、全部平均で七万七千円にもなり、三年間で一万円も上昇しております。
 建設省は、今回の改正で住宅供給及び地代家賃にどのような経済効果を与えると試算をしておりますか。供給、それから家賃地代等々の下がるという予想があるのかどうか。
#331
○石井説明員 第一点の、住宅供給はどの程度ふえるかという御質問でございます。
 今回新たに導入されます定期借地権及び確定期限つき借家の特例、こういったものは借地・借家ニーズの多様化にこたえるものであるというように理解しております。その結果、賃貸人の土地あるいは建物の返還にかかわるいろいろな不安が解消されることによりまして住宅の供給に資するであろうというふうに考えているところでございますが、具体的に今回の改正による住宅供給促進効果を定量的にいかがかということを把握することにつきましては困難であるというふうに考えております。
 それからもう一つ、家賃とか地代の方に与える影響はどうであるかというお話でございます。
 今申し上げましたようなことで、今回の改正によって住宅、宅地の供給に資するものであるというふうに考えているところでございますが、住宅宅地の供給が増加した場合におきます地代あるいは家賃への影響を定量的に把握することは、これまた困難なことであろうとは思いますが、一般論として申し上げますと、住宅宅地の供給の増加ということになりますと、これは地代家賃を引き下げる要素の一つになるのではないだろうかというふうに考えているところでございます。
#332
○神田委員 終わります。
#333
○伊藤委員長 御苦労さまでした。
 次回は、来る十日火曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後八時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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