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1991/09/10 第121回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第121回国会 本会議 第6号
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1991/09/10 第121回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第121回国会 本会議 第6号

#1
第121回国会 本会議 第6号
平成三年九月十日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成三年九月十日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)、政治資金規正法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)及び政党助成法案(内閣提出
  )の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)、政治資金規正法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)及び政党助成法案(内閣
  提出)の趣旨説明
#3
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、公職選挙法の一部を改正する法律案、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案について、趣旨の説明を求めます。自治大臣吹田ナ君。
    〔国務大臣吹田ナ君登壇〕
#4
○国務大臣(吹田ナ君) 公職選挙法の一部を改正する法律案、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案、以上三件につきまして、趣旨とその内容の概略を御説明申し上げます。
 初めに、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 この改正法律案は、選挙制度審議会の答申の趣旨に基づいて、政策本位及び政党本位の選挙を実現するため、衆議院議員の選挙について、小選挙区比例代表並立制を採用し、総定数を四百七十一人とするとともに、候補者を届け出ることができる政党の要件や政党が行う選挙運動等に関する規定を整備し、あわせて連座制の強化その他所要の改正を行おうとするものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 次に、この法律案の内容の概略につきまして御説明申し上げます。
 まず第一に、衆議院議員の選挙制度に関する事項であります。
 その一は、選挙制度の基本的仕組みとして小選挙区比例代表並立制を採用することといたしております。
 その二は、衆議院議員の定数について、総定数は四百七十一人とし、そのうち、三百人を小選挙区選出議員、百七十一人を比例代表選出議員とすることといたしております。
 その三は、選挙区等についてであります。小選挙区選出議員は、定数一人の各選挙区において選挙することとし、比例代表選出議員は、全都道府県の区域を通じて選挙することといたしております。なお、新たな小選挙区の区域を定めるに当たっては、その具体案の作成を選挙制度審議会にお願いしたところであり、審議会からいただいた「衆議院議員の選挙区の区割りについての答申」に基づき、選挙区の区域を別表で定めることといたしております。
 その四は、衆議院議員選挙区画定審議会の設置についてであります。この審議会を総理府に置くこととし、審議会は、小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し調査審議し、必要があると認めるときは、改定案を作成して内閣総理大臣に勧告することといたしております。なお、勧告は、十年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から一年以内に行うことといたしております。
 その五は、投票についてであります。小選挙区選出議員の選挙については候補者一人の氏名を、比例代表選出議員の選挙については一の名簿届け出政党等の名称または略称を記載して投票することといたしております。
 その六は、立候補についてであります。小選挙区選出議員の選挙における候補者の届け出については、所属国会議員五人以上を有すること、または直近における衆議院議員の総選挙もしくは参議院議員の通常選挙の得票率が百分の二以上であることのいずれかに該当する政党その他の政治団体が行うことができるほか、本人届け出または推薦届け出もできることといたしております。
 比例代表選出議員の選挙における候補者名簿の届け出については、小選挙区選出議員の選挙において候補者の届け出ができる政党その他の政治団体及び名簿登載者を三十五人以上有する政党その他の政治団体が行うことができることといたしております。
 なお、小選挙区選出議員の選挙において候補者の届け出ができる政党その他の政治団体は、その届け出に係る候補者を名簿登載者とすることができることといたしております。比例代表選出議員の選挙における名簿登載者の数は、この重複立候補者を除き、当該選挙において選挙すべき議員の数を超えることができないことといたしております。
 また、一定の要件に該当する政党その他の政治団体の候補者の選定の手続の届け出、名称の届け出等に関し、所要の規定を整備するほか、供託に関する規定を整備することといたしております。
 その七は、当選人についてであります。小選挙区選出議員の選挙については、有効投票の最多数を得た者をもって当選人とすることといたしております。ただし、有効投票の総数の四分の一以上の得票がなければならないとするものであります。また、比例代表選出議員の選挙については、有効投票の総数の百分の二以上の得票があった名簿届け出政党等に限り、ドント式によりその当選人の数を定めることといたしております。そして、重複立候補者で小選挙区選出議員の選挙の当選人とされたものを除き、名簿登載者のうち、当選人となるべき順位に従い、当該名簿届け出政党等の当選人の数に相当する数の名簿登載者を当選人とすることといたしております。
 その八は、再選挙等特別選挙についての規定を整備することといたしております。
 その九は、選挙運動についてであります。小選挙区選出議員の選挙においては、候補者個人のほかに、候補者届け出政党についても選挙運動を認めることといたしております。具体的には、候補者届け出政党は、原則として候補者を届け出た都道府県ごとに当該都道府県における届け出候補者の数に応じて、自動車の使用、文書図画の頒布及び掲示、新聞広告、政見放送等を行うことができることといたしております。
 また、比例代表選出議員の選挙においては、名簿届け国政党等に選挙運動を認めることとし、原則として名簿登載者の数に応じて、候補者届け国政党とほぼ同様の選挙運動を行うことができることといたしております。
 さらに、小選挙区選出議員の選挙に係る選挙運動が、この法律において許される態様において比例代表選出議員の選挙に係る選挙運動にわたること及び候補者届け出政党である名簿届け出政党等が行う比例代表選出議員の選挙に係る選挙運動が、この法律において許される態様において小選挙区選出議員の選挙に係る選挙運動にわたることを妨げないことといたしております。
 その十は、政党その他の政治団体等の衆議院議員の選挙における政治活動に関する規定を整備することといたしております。
 その十一は、選挙訴訟及び当選訴訟に関する規定を整備することといたしております。
 その十二は、候補者の選定権限の行使に関し、請託を受けて、財産上の利益を収受した者等について罰則を設けることその他罰則に関し所要の規定を整備することといたしております。
 第二に、戸別訪問の自由化に関する事項であります。
 戸別訪問に関する禁止を緩和し、衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員の選挙以外の選挙においては、選挙に関し、戸別訪問を行う者は、公職の候補者本人のほか、候補者一人につき十五人を超えてはならないことといたしております。また、衆議院小選挙区選出議員の選挙においては、候補者届け出政党は、候補者を届け出た都道府県ごとに、十五に当該都道府県における届け出候補者の数を乗じて得た数の者を従事させて、戸別訪問を行うことができることといたしております。なお、午後八時から午前八時までの間は、戸別訪問を行うことができないことといたしております。
 第三に、制裁強化に関する事項であります。
 その一は、連座制に関する事項についてでありますが、立候補予定者の親族並びに候補者及び立候補予定者の秘書を連座制の対象とするとともに、当選無効に加えて、連座裁判の確定等のときから五年間、立候補制限を科することといたしております。なお、この立候補制限については、連座制の対象となる者の行為がおとりまたは寝返りによるものであるときは、連座制は適用したいことといたしております。
 その二は、当選人等に係る刑事裁判の迅速化に関する事項についてでありますが、百日裁判の対象となる刑事訴訟については、裁判長は、第一回の公判期日前に、審理に必要と見込まれる公判期日を一括して定めなければならないことといたしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとし、衆議院議員の選挙については施行日以後初めてその期日を公示される総選挙から適用する等の経過措置を設けております。
 次に、政治資金規正法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 選挙制度審議会の答申の趣旨に基づき、政治資金制度については、政治資金と密接な関連を有する選挙制度の改革と軌を一にして、政党その他の政治団体及び公職の候補者の政治資金の公明と公正を確保するため、政治資金の調達を政党中心にするとともに、その公開性を高め、さらに政治資金についての規制の実効性を確保するなどの措置を講じようとするものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 次に、この法律案の内容の概略につきまして御説明申し上げます。
 第一は、政治資金の調達を政党中心とするための改正であります。
 その一は、選挙制度の改革に伴い、選挙や政治活動が政策本位、政党中心となりますので、政治資金の調達を政党中心とするため、企業等の団体の寄附は、原則として政党に対するものに限ることといたしております。この場合における政党は、国会議員を五人以上有する政治団体等といたしております。
 なお、経過的に、五年間に限り、政党以外の者に対して寄附ができるものとし、その限度を逓減する措置を講ずるとともに、その後も当分の間、一の政治家につき二以内の資金調達団体に限り、年間二十四万円を限度に少額の寄附ができることといたしております。
 その二は、寄附粋の区分を改め、政党に対する寄附枠を独立させるとともに、政治家個人に対する寄附は一般の政治団体に対する寄附と同一の寄附枠とし、その限度を政党に対する寄附枠の二分の一といたしております。
 第二は、政治資金の公開の強化等のための改正であります。
 その一は、政治資金パーティーについての規制であります。
 政治資金パーティーの開催は政治団体によることを原則とし、その収支の明確化を図るとともに、政治団体以外の者が一定の規模以上の政治資金パーティーを開催する場合には、その者を政治団体とみなして、事前の届け出、その収支の報告等を義務づけることといたしております。
 また、政治資金パーティーの対価の支払いに関する制限及び政治資金パーティーの対価の一定額を超える支払いをした者の氏名の公開をすることといたしております。
 なお、国及び地方公共団体の一般職の公務員等が政治資金パーティーの対価の支払い等に関与することを禁止することといたしております。
 その二は、政治資金の運用は、預貯金、公債等の確実な方法に限定することといたしております。
 その三は、政治団体の資産の状況を明らかにするため、政治団体が有する土地、建物等の不動産、取得価額が一定金額以上の動産その他有価証券などの資産を公開しなければならないことといたしております。
 その四は、政治団体と関係のある特定公職の候補者を公表するとともに、この特定公職の候補者と関係のある政治団体の収支を集計報告し、これを公表することといたしております。
 その五は、資金調達団体以外の一般の政治団体に対する寄附の公開基準を現行の年間百万円超から年間一万円超に大幅に引き下げることといたしております。
 その六は、いわゆる指定団体の数は一に限るものとするとともに、特定公職の候補者がその指定団体から受けた寄附についても、保有金として収支報告しなければならないことといたしております。
 第三は、政治資金の規制の実効性の確保のための改正であります。
 その一は、公職の候補者がその者のために政治資金の拠出を受けることができる政治団体として資金調達団体を二つ以内に限り指定することができるものとして、政治資金の拠出を受けることができる政治団体の数を制限することといたしております。
 その二は、罰則の強化であります。政治資金規正法に規定する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられた者は、公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を原則として五年間有しないことといたしております。
 また、寄附制限等の規定違反で収受し、または交付を受けた寄附に係る財産上の利益は没収し、または追徴することといたしております。さらに、企業等の団体の役職員または構成員が政治資金規正法違反をしたときは、その行為者のほか、その団体に対して刑罰を科することといたしております。
 以上のほか、政党及び政治資金団体の名称を保護するため、これらの名称と同一名称またはこれらに類似する名称を他の政治団体が使用することができないことといたしております。
 なお、この法律は、選挙制度改革と一体のものでありますので、公職選挙法の一部を改正する法律の施行の日の属する年の翌年の一月一日から施行することといたしております。
 次に、政党助成法案につきまして御説明申し上げます。
 選挙制度審議会の答申の趣旨に基づき、選挙制度及び政治資金制度の改革と軌を一にして、議会制民主主義における政党の機能の重要性にかんがみ、国が政党に対する助成を行う制度を創設することとし、これにより政党の政治活動の健全な発達を促進するとともに、その公明と公正を確保し、もって、民主政治の健全な発展に寄与しようとするものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 次に、この法律案の内容の概略につきまして御説明申し上げます。
 第一は、助成の対象となる政党についてであります。
 政党助成の対象となる政党は、国会議員を五人以上有する政治団体または国会議員を有し、かつ、直近における衆議院議員の総選挙もしくは参議院議員の通常選挙のいずれかの選挙の得票率が百分の二以上の政治団体といたしております。
 また、政党交付金を受けようとする政党は、その年の一月一日現在で、名称、主たる事務所の所在地、代表者、会計責任者、所属国会議員の氏名などを届け出ることとし、あわせて、綱領、党則等を提出することといたしております。
 なお、その年中において衆議院議員の総選挙または参議院議員の通常選挙が行われた場合も同様の届け出を行うことといたしております。
 第二は、政党交付金に関する事項であります。
 政党交付金の総額は、直近の国勢調査の確定人口に二百五十円を乗じた額を基準として予算で定めることといたしております。
 なお、この法律の施行の日から五年を経過した場合には、政党交付金の総額について、改正後の公職選挙法及び政治資金規正法の施行状況を踏まえて、政党及び公職の候補者の政治活動の状況等を勘案し、その見直しを行うものとすることといたしております。
 各政党に対して交付すべき政党交付金の額は、各政党の所属国会議員数及び国政選挙の得票数に応じて一月一日現在において算定した額とし、総選挙または通常選挙が行われた場合には再算定することといたしております。
 また、各政党に交付すべき政党交付金は、毎年、四月、七月、十月及び十二月に交付することといたしております。
 第三は、政党交付金の使途の報告及び公表等の措置であります。
 政党交付金については使途を制限したいこととし、その使途を記載した報告書を公表することと。いたしております。
 このため、政党の会計責任者は、会計帳簿を備え、政党交付金による支出等について記載するとともに、十二月三十一日現在で政党交付金の収支に関して記載した報告書を、支部から提出された支部報告書などとあわせて、自治大臣に提出しなければならないことといたしております。
 この場合において、政党の会計責任者は、政党の会計監査を行うべき者の監査意見書とともに、公認会計士などが行った監査に基づき作成した監査報告書をあわせて提出しなければならないことといたしております。
 また、報告書等については、その要旨を公表するとともに、届け出書、報告書などの関係書類は五年間保存することとし、また、何人も、五年間、これらの関係書類の閲覧を請求することができることといたしております。
 第四は、政党の解散等に関する措置であります。
 政党が合併または分割により解散する場合には、当該政党に対する政党交付金の未交付額については、当該合併により存続し、もしくは新たに設立される政党または当該分割により新たに設立される政党に対して交付することとし、当該合併または分割後は、その得票数を引き継いでいるものとして政党交付金の額を算定することといたしております。
 政党が政党の要件に該当しない政治団体になったときは、当該政党でなくなった日の属する月まで、政党交付金を月割りで交付することといたしております。
 第五は、政党交付金の返還等の措置であります。
 政党がこの法律に違反して政党交付金の交付の決定を受けた場合、政党が受けた政党交付金から政党交付金による支出を控除して残余がある場合、政党が提出すべき報告書を提出しない場合などには、交付すべき政党交付金の交付を停止し、またはその返還を命ずることができることといたしております。
 そのほか、この法律の規定に違反する行為については、所要の罰則を設けるとともに、偽りその他不正な行為により政党交付金の交付を受けた場合には、その行為者のほか、政党に対して刑罰を科することといたしております。
 なお、この法律は、選挙制度の改革と一体のものでありますので、公職選挙法の一部を改正する法律の施行の日の属する年の翌年の一月一日から施行することといたしております。
 以上が、公職選挙法の一部を改正する法律案、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案の趣旨とその内容の概略であります。
 終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出)、政治資金規正法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び政党助成法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#5
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。羽田孜君。
    〔羽田孜君登壇〕
#6
○羽田孜君 政治改革三法案の国会上程に当たりまして、自由民主党を代表して、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
 さて、私は、我が党の選挙制度調査会の責任者について以来、実に多くの国民の皆様と話し合いをさせていただく機会を得ました。あるときは皆様と一緒に公開討論会、またあるときは少数の会合で文字どおりひざを突き合わせながら、そして時によっては路上で声をかけられ、そのまま立ち話ということもありました。もちろん、たくさんの丁寧な手紙も寄せられているところであります。
 こうした皆様のお考えは、もちろん十人十色、各人各様であります。しかしながら、動機は多様であっても、結論はいつもたった一つでありました。日本の政治はもっとしっかりしてほしい、政治家は我々の信頼に足る振る舞いをしてほしい、延々と続いた議論も、最後はこれに尽きるのであります。残念ながら、ごく普通の方々が抱いている政治に対する印象とはこのようなものであり、あるいはそれの証左なのか、国民の政治離れは近年ますます進む一方であります。さきの統一地方選挙では、政治を志す人々自体が減っていることが如実に示されております。
 政治が不在で国家が成り立つことなど到底あり得ません。しかし、政治が国家を乱すことは幾らでもその例があるところであります。庶民は言うに言えないもどかしい願いを、政治よ、しっかりしろ、政治家よ、襟を正せという短い言葉の中に込めているのではないでしょうか。政治家としてこの声に責任を持ってこたえること、それが政治改革であります。
 そのような政治に対する信頼感の喪失、これは何が原因で生じておるのでありましょうか。我々はこの点をここ三年近くにわたり謙虚かつ徹底的に追求してまいりました。
 そして、政治不信の背景をなす五つの要素に突き当たったのであります。第一は、政治家個々人の倫理的問題、第二は、膨大な政治資金とその不透明さ、第三は、不合理な議員定数と選挙制度、第四は、わかりにくく非能率な国会のあり方、第五は、派閥政治の横行であります。これらの一つ一つが、国民の皆様の心にいろいろな形で政治への不信感をもたらしているのであります。
 したがって、政治改革とはこれら全体を根元から改善することにほかなりません。部分的手直しては、やがてその改善されたかに見えた部分も再びもとのもくあみになることは目に見えているからであります。
 この際、我々が現行選挙制度の抜本改革を糸口に政治の全体的な改革に着手しようとしておりますことは、次に申し述べますように、選挙制度こそが政治活動のあり方を決定的に左右するものとの認識を基本としているからであります。
 このたびの選挙制度の抜本改革に対し、政治改革を選挙制度の問題にすりかえるものだ、あるいはまた、現行中選挙区制のもとで総定数を削減し、一票の価値の格差是正を行うべきだといった意見があることは承知しております。しかし、本当にそうでしょうか。
 今日、我が国政治の弊害として内外から指摘されている種々の問題は、一つの選挙区で三人、四人、五人等の複数議員を選挙するため、政権を単独で担おうとする政党は、与野党を問わず必ず定数の半分以上の当選者を出さなければならないという宿命を持つ現行中選挙区制にほとんどすべてが起因しているのであります。候補者の間では、政策論争よりも後援会の拡大競争、サービス競争が行われ、そのために政治資金が水膨れ的に必要となります。当選のためには背に腹はかえられないことから、倫理も逸脱しからであります。候補者には党のかわりに派閥が後押しし、派閥政治発生の素地を許しています。そして何よりも、選挙が終われば無所属候補の入党により与野党の勢力比がほとんど前と変わらず、このことが国会の緊張感をそいで、有権者の間に、どうせ一票で政治は変えられない、政治は永田町内の駆け引きで決まるという無力感を生む原因ともなっているのであります。
 また、中選挙区制のままの総定数削減、格差是正が言われますが、例えば八増・七減という国民の批判にさらされた定数是正ですらどれほど困難であったかを思い起こしても、言うべくして行うほかたしというのが現実であります。今回、もし昭和六十一年の国会決議をもとに定数是正を行うとすれば、膨大な数の選挙区を動かさなくてはなりませんし、万一それができたとしても、違憲状態を解消するのみで、中選挙区制に起因する弊害は全く除去できず、政治に対して国民が望む、政治と金の関係を正すべきだ、国会審議を機能的に、わかりやすくすべきだ、派閥の争いより政策論をしてほしい等にこたえることはできません。定数是正は当然の前提条件であって、政治改革ということではないのであります。
 現行中選挙区制であっても、まだ手直しをしたり議員が自覚することで弊害を改善できるとの意見もあります。しかし、先ほどからこの問題について皆さんに問いかけているのは、我々みずから反省し新しいものを求めようとしておる。しかし、諸君のやじは、残念ですけれども、社会党そのほかの政党が何をしてきたのか、このことについては何の反省もないのであります。(拍手)しかし、我々は、過去にあって政治倫理綱領を制定し、行為規範もつくりました。公職選挙法、政治資金規正法の改正も数次にわたり実施してまいりました。しかし、その実効は顕著にあらわれることなく、今日まさに限界に来ておると申し上げることが至当であろうと考えるのであります。
 我々は、単に投票価値の格差是正が困難だから選挙制度を改めようと申しているのではありません。戦後半世紀近くを過ぎ、地元などの部分単位の利益を補ってきた現行中選挙区制は今その役割を終え、次の半世紀への踏み台となる新しい制度が必要であるとの判断に基づいてこのたびの改革を目指しているのであります。
 申し上げるまでもなく、衆議院議員選挙の意義は政権の選択にあります。政党が選挙で掲げる政権構想や政策の体系を国民が選択することにより政権がつくられ、あるいは審判の結果によっては政権が交代するのが本来の姿であります。それゆえに国民に信を問うという解散もあるのであります。しかし、前にも述べましたように、今の仕組みでは、政権を担おうとする政党は、一つの選挙区で複数の候補者を立てざるを得ず、そのために、政策以外の要素である人物の売り込みやサービスの提供によって多くの当選者を生み出さざるを得ません。これで果たして政権選択の意義が発揮されていると言えるのでありましょうか。逆に言えば、一人一党式の選挙のままで、議院内閣制の前提である政党政治が真に国民全体に責任を負って機能し得ると言えるのでありましょうか。
 海部総理、ここで、総理御自身の経験等に照らし、現行の中選挙区制についてどう考えておられるのか、忌憚のない御意見を承りたいと存じます。
 そこで、このたびの政治改革三法案でありますが、これらは一つの考え方のもと、相互に関係し合っている法案であり、個別の法案として存立し得る内容のものではないと考えます。中選挙区制という構造が、政策論争よりもサービス競争、個人への無理な資金調達の強制、政権交代の展望を欠くがゆえの緩んだ政治土壌等の弊害を近年とみに表面化させていることを考えると、やはり制度改革をもって克服する以外にないと信ずるのであります。(拍手)
 すなわち、小選挙区比例代表並立制を導入する公職選挙法の一部を改正する法律案は、各党が一つの選挙区に一人の候補者を立てることによって、選挙をその本来のあり方である、責任を明確にする政党間の政策論争本位の競争に改めることが目的であります。これに伴い選挙運動は政党を中心とし、これと相まって選挙の腐敗行為に対する制裁強化をも図るものであります。
 しかし、この制度改革によって、有権者の選択の自由がなくなる、死票が多くなる、本当に金がかからなくなるのか、選挙区が小さくなることでサービスが激化し、真の政治活動ができなくなるのではないか、政権交代の可能性を確保するのならば完全小選挙区制であるべきである、権力は腐敗する、無所属候補者こそが腐敗を防止する、多極分散の時代に、議員の一極集中となる区割りは逆行である、中選挙区制こそ身分や経歴にかかわらず自由に立候補でき、人材の発掘ができるのではないか、五〇%前後の得票となると人気取りの政策競争が横行し、国民の痛みを伴う諸改革に取り組めなくなる、大物の輩出が困難になる、区長、都議、区議より選挙区が小さくなり、国会議員の権威が存在しなくなる、政権交代の可能性と言うが、今の野党に国を任せる力量があろうか等々の疑念や意見があるところでありますが、総理または自治大臣の御見解を伺わせていただきたいと思うのであります。
 ところで、政治改革が国民の強い声として具体的に浮き彫りになったのはリクルート事件でありました。この事件で世論は、端的に言うならば、政治と金の関係は一般常識では考えられないという非難一色であったのであります。
 国民も政策の普及、声の吸収のためのコストは認めております。しかし、その額の膨大さが問題であります。先進各国と比較しても、日常活動及び選挙費用とも数十倍とか言われるようになると黙視できないということであり、その政治資金の総額が、地方と合わせて三千億円を超える膨大な金額であることは、諸外国からも異常とまで指摘されており……(発言する者あり)ですから、改革をしようとしておるんです。一体どのように集金するのか、その企業、団体、組合等に対し真に中立公正が保たれるのかと問われたとき、背筋に寒さを覚えるのであります。今、国際社会からもこの点につき特に不信の目が向けられていることを知らなければならないと思います。
 今回提案の政治資金規正法の一部を改正する法律案は、政党中心の選挙制度に呼応して、企業等の団体寄附は政治家個人から政党に限定していくことを眼目とし、同時に、政治資金パーティー収支の明確化、寄附者の公開基準の大幅引き下げ等による政治資金のガラス張り化を図り、違反に対しては公民権の停止等罰則を強化するほか、あわせて連座制の強化、裁判の迅速化等、腐敗防止法とも言うべき公職選挙法の改正も行っておりますが、この改正案についても幾つかの疑問と指摘があるところであります。企業献金は政党にシフトするというが、企業と政党の癒着は起こらないのか、政治資金の規制は陰にこもる結果にならないか、かえって限度枠を広げる方が現実的等の意見がありますが、総理または自治大臣の御見解をお示しいただきたい。
 さらに、政党助成法案については、議会制民主主義が当然に前提としている政党の公的性格からも、その機能が政党中心の選挙制度になれば格段に高まることから、個人を規制し政党に政治資金を集めるという政治資金規正法の強化の一方で、必要な資金を政党に対し公費で助成し、これをもって活動を支援しようというものであります。
 この点については、公的助成の導入は、公権力が入り、政治活動の自由を阻害するおそれはないか、国民の税金で行われるが、納得されるだろうか、補助が受けられる政党要件を得票の二%と定めたのは結社の自由に触れないか等の指摘がたされているところであり、以上についても御答弁を願いたい。
 以上のように、三法案は、選挙と日常政治活動を通じて政党政治を確立し、議会制民主主義の健全な発展を図り、政治に対する国民の信頼をいただこうという共通の考えに基づく措置でありますから、三法一体が原則でなければなりません。
 しかし、これに対し、制度は制度、金は金、助成は助成で分離して、できるものからやるべきなどの一部論調がありますが、諸外国と比しても法外に金のかかる制度の根本を断ち切ることが必要で、そのことを前提として政治資金も規制できるのであり、これらをなし得るとき初めて公的助成についての国民の理解が得られるものと信ずるところでありますが、この点につきましても、総理のお答えをいただきたいと思います。(拍手)。さて、小選挙区比例代表並立制の制度自体の意義を申し上げるならば、小選挙区制の特性である安定した。責任の明確な政権の形成と、全国集計による比例代表制の特性である少数意見の議席への反映という、選挙の二つの大事な目標をともに満たす案で、本案をまとめるに当たり世界各国の制度をつぶさに検証した上での採用でありまして、これはまさに人知の最高の制度であろうと今私どもは考えております。(拍手)
 よく、四割の得票率で八割の議席獲得をねらった自民党の党利党略だと悪意の宣伝がなされることがあります。ならば、野党の皆さんはなぜ反自由民主党の六割の得票率を結集して九割の議席を占めることのために本当の努力を今までもしなかったのでしょうか。(拍手)私は、そのように反論申し上げたい。我が党が仮に永久政権をねらっているとしたら、現行選挙制度こそが今日までの実績からもほるかにその可能性が高いのであります。我々が目的としているのは、停滞している今日の政治状況を打破し、国会に活力を生み出し、制度疲労を来した現行制度の改革を行い、政治に信頼を取り戻すところにあるのであります。(拍手)
 現に、去る大規模な世論調査によりますと、八六%の人が政界再編成を望んでおりました。そして六二%の人が、今の中選挙区ではだめである、新しい選挙制度にしたさい、これが六二%の声であるということ。やっぱり皆さんも謙虚にこのことに耳をかすべきであろうと思います。(拍手)
 これらの点につきまして、総理の御見解もお聞かせをいただきたいと思います。
 この改革では、政権交代可能の土壌が培われると考えますが、一人を選ぶ制度ですから、有権者の一票が万年与党、万年野党の政治を一変させる力を持つのであります。その互いの緊張感を背景に、もはや候補者も政党も、部分的な声だけでなく、各党が地方組織を充実することに努め、幅広い層の政策要望を十分に吸収し、内外の重要課題に卓越した先見性を示すことになりましょう。その努力を怠らない政党だけが真に国民の信頼をから得ることができ、政権を担う政党にふさわしいと評価されるのでありましょう。
 我が党は、政治改革に当たって、三法案は改革のエンジン部分と位置づけ、このほか、冒頭申し上げた政治不信の五つの要素を払拭する努力に全力を傾注しておるところであります。
 まず、政治倫理については、政治倫理確立のための国会議員等の資産等の公開に関する法律案、これをまとめ、議会制度協議会に提案し、実現に向けて各党の皆さんに審議をお願いしてまいったところであります。
 国会改革の問題は、国会から国の行く先や顔が見えてこないという国の内外からの批判の声にこたえるために、我々が直ちに取り組むべき課題であります。消費税国会にしても、何ゆえ税制の改革が必要なのか、必要でないのか、論議の過程からなかなか見えてこない、これが国民の声でありました。昨年の八月二日のイラクのクウエート侵攻についても、直ちに国会が召集され、状況の分析や、日本はどのように行動すべきか議論されるべきでありましたが、二カ月経過した臨時国会まで開会されなかったのは一体なぜなのか。また、内外のもろもろの重要な問題に関して、国民の代表である国会から議論を通じての示唆がなされないことにより、行政も適切な施策を、しかも敏速にとり得ないことに対するいら立ちが多々あります。何ができ、何をどのように実施をすべきなのか、もっと活発に議論がされるような改革が国民から要請されているのであります。湾岸戦争に臨む際のアメリカの議会、クーデターが起きたときのソ連邦の議会、その双方の対応ぶりを比較したとき、両者の差は歴然としていたのであります。
 また、国会決議等に見られる我が国の全会一致方式についても、実は問われているところであります。民主主義の基本は、多数決で決することにありますが、可一選挙区から複数が選ばれる現状にあっては、白黒をはっきりさせることを嫌うのが現実であります。これは、波風を起こさないという我が国特有の知恵であって、何も政治の場だけの現象ではないとの君もありますが、もはやこの方式が激変の時代。に通用しなくなっていることも真剣に考え、対処していかなければならないと思います。
 以上から、この激変、転換の時代に国会は機能しているのかとの国民の手厳しい批判にどうこたえるか。今、国の心臓部である国会を権威ある言論の府に改革していくことは急務の問題でありましょう。
 なお、我々の長年の懸案でございました。国会の一月召集が実現されようとしております。これについては、財政当局に予算編成をなるべく暮れの早いうちにやはり済ませてもらう協力も必要であります。また、国会の傍聴席を全国に広げようとの国会中継専用テレビジョン、これについても、今、議院運営委員会の各党の皆様方によってこの問題が議論をされておること、これは私は評価すべきであろうと考えております。
 さらに、我々は、我が党自身について、その運営、組織の根本にまでさかのぼって子細な検討を加え、より民主的で公正の理念に貫かれた。国民に親しまれる近代政党に脱皮させるための抜本的かつ全体的改革案を既に党議として定めているところであります。また、地方分権は、一極集中を排除するという国是とも言うべきものであり、新しい制度を真に定着させるためにも欠かすことのできない施策で、地方と国の役割の分担を明確にしていき、あわせて、地方議会の選挙についても、地方の現状と国会議員の選挙との整合性を求めながら検討を進めなければなりません。その上に立った地方自治の確立も確認しておるところであります。
 なお、現行の二院制についても、国民からもそのあり方について厳しい批判があるのが事実であり、一院にすべきとの極論さえあります。内閣は、参議院の制度改革についても選挙制度審議会に諮問し、答申もいただいたのでありますが、このたびは、制度改革には触れられておりません。多くの識者の意見としては、参議院の本来の性格である衆議院の補完、抑制、均衡の役割を生かすため、政党とできるだけ距離を置き、また、過酷な選挙運動をせずとも議席を得られるようた制度を採用すべきとのことであります。しかし、このたびの答申のまま実行するならば、ほぼかつての銭酷区、残酷区となってしまうとの懸念から見合わせることとし、我が党としても鋭意検討を進めているところであります。車の両輪である参議院の制度も一日も早く結論を得るべきでありましょう。
 以上申し上げた点につきましても、総理の御見解を承りたいと思います。
 終わりに、今国会では、証券・金融等についてそのあり方が問われています。しかし、このことは単に一金融界のみの問題ではなく、戦後から今日まで我が国の繁栄を築く間にありまして、各界でももたれ合い、なれ合い、黙認等の形で慣行として当然視されてきた点が多々あったことは否めない事実であろうと思います。しかし、経済大国となった今日、透明性や国際慣行に合った経済社会運営が求められていると申し上げて過言ではないと思います。(発言する者あり)無責任ということじゃありません。そういった問題をみんなで考えなければならぬ。なぜ、あなた方は政権をとって我が党を阻止することができなかったのですか。(拍手)
 そういう中で、苦しくとも正すべきは正し、国民はもとより、広く世界にも理解される制度をつくり上げるべきであろうと考えます。これをなし遂げた上で、堂々と胸を張り、真の豊か、な国民生活と、世界にも理解され、信頼され、そして貢献する日本を築いていくことが今求められているのだと思います。その意味で、この今日の不幸な出来事を次のステップヘ生かすべきであろうと信じます。
 私たちは、近年、国家として必要であっても国民一人一人にとってはきつい消費税の導入をお願いしてまいりました。農業者の皆さんには、国際化が進む中で、牛肉・かんきつ類の自由化や支持価格の引き下げをお願いしてまいりました。商業に携わる皆さんには、大店舗法の改正等をお願いしてまいりました。このほか多くの皆様に、時代の要請に基づき、痛みの伴う改革をお願いしてきたところであり、これからもさらに多くの変革に際し、国民の皆様の御協力をお願いしていかなければなりません。長い歴史を持った慣習を切りかえること、既得権を失うことは困難と痛みを伴います。しかし、時代の変化にこたえ、変えていかなければならないとの観点から、苦悩の末に決断してお願いをしてまいったところであります。
 かつて、昭和三十一年当時、審議され廃案となった制度改革とは、その背景も環境も大きく変化しております。このたびの第八次選挙制度審議会も、当時と異なり、常に冷静に、公正な討論をもとに答申されたものであり、これを受けた我が党も、ひとり党利党略に走ることなく常に配慮し、議会制民主主義のいかにあるべきかを真摯に問い続けてまいりました。
 この間、野党の皆さんとも公式、非公式を問わず改革について議論してきたところで、殊に本年三月から五月にかけて、石井一委員長のもとでの公職選挙法特別委員会にあっては、各党の皆さんからも、定数是正のみで今求められている政治改革にこたえることができるのか、政治資金規正法の改正その他により、中選挙区制の中でのもろもろの問題にこたえることができるのかを議論してまいりました。各党とも今日の選挙制度の疲労は認められております。制度そのものを改めるべきであるとの声がほとんどであったのであります。ただ……(発言する者あり、拍手)お聞きなさい。中には、まず定数是正をやりましょう、しかる後に選挙制度を。否、単に定数是正をやることは大幅なものとなり、困難である、よしんばやったとしても、制度疲労に加え、合区、分区等によりさらに厳しいものが残されることになり、何よりも政治の全体的な改革にはつながらないため、今こそ制度改革をすべきである等の声も強くあったわけであります。
 その日から今日まで検討の日は十分あったと考えます。改革に対する意欲と責任をお持ちであるならば、具体的な改革案を今国会に提出すべきであろうということを私は皆様に期待をいたしたいのであります。(拍手)
 さきにも申し上げたとおり、制度改革は他の法律とは異なり、民主主義の土俵づくりであります。このことからも、単に内閣と議員との議論のみではなくて、石井委員会で実現された議員間における活発かつ建設的な議論が望まれるところであります。
 改革は常に痛みを伴うものであります。国民の皆さんにはさきに申し上げましたように多くの改革をお願いしているとき、言を左右にしてみずからの改革を怠ることは許されません。もしそのようなことがあるとするならば、政治不信はさらに高まり、予測し得ない事態も恐れなければならないと考えます。主権在民の日本、国民の代表は国会であります。その国会を構成する議員みずからが率先して改革に当たることこそ、国民の期待にこたえる緊急かつ重大な我々の使命であろうと考えるところであります。(拍手)
 このたびの改革は、明治の志士たちが近代国家日本をつくるため、みずからの血を流し実現した版籍奉還の挙にも等しいと考えるのであります。同僚議員の皆さん、つらくとも苦しくとも、意欲を持って改革をなし遂げようではありませんか。そこに新たな活力がみたぎり、改革した制度による新しい国会から、新しい日本の国、国際社会から信頼される日本の国、子供や孫たちが真に誇りの持てる日本の国がつくられるのだと私は信じます。その第一歩として、政府がただいま提案されました三法につきまして、ただやじることなく、本当に真摯に議員の皆さん方が取り組んでいただき、議論をし、そして新しい道を見つけていただきますことを私は心から皆様方にお訴えをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 羽田議員にお答えをいたします。
 貴重な御意見と、そして御質問をいただきました。さすが自由民主党の選挙制度調査会長としての御経験から、自由民主党が平成元年の五月、厳しい反省に立って世に問うた政治改革大綱を基本にして、新しい政治改革、また政治のあり方についてのお尋ねがございました。率直にお答えを申し上げます。
 第一に、私は、基本的には政治の目標は国の安全保障と国民生活の安定、向上にある、こう思っております。羽田議員と同じように私も、国民対話集会やいろいろな選挙応援などに行ったときに、皆さんに呼びとめられて言われたこともございました。政策の方向はいいけれども、姿勢をもう少し何とかしてくれないかという率直なお声も聞きました。
 私は、それらの問題を考えるときに、やはり国民の皆さんの信頼の中で動いていくべき民主政治でありますから、いけないところは率直に反省もする、いいところは自信を持って続けていく、今日の政権政党としての光の面と影の面を区別をして私どもは取り組まなければならない。その意味で、どん底から出発した海部内閣ではありましたが、先輩皆さんがお決めいただいた政治改革大綱の精神を私も心から同感をし、共鳴をし、不退転の決意でその実現に取り組んできたわけであります。
 今日、今羽田議員もおっしゃったように、政治改革というのは区割りの問題だけではありません。その前に、まず政治倫理の確立の問題があり、また政治倫理確立のためには、自由民主党は衆議院に政治倫理確立のための国会議員の資産公開の法律も提起をしてあるのです。また、自由民主党自体で、党所属国会議員の倫理綱領を党大会で決めて、みずから厳しい戒めも自由民主党はいたしました。党紀委員会の組織も変えて、党紀も厳しくするように、そのような努力をいたしました。また、昨年二月の衆議院選挙のとき以来、公職選挙法の一部改正も議会の協力を得て通り、政治家の出と入りの中で寄附や出す方については一応の改正もいたしました。
 けれども、よく考えてみると、物事の根本に手がついていない。一皆さん、議会制民主主義というのは、一言で政党政治と言われます。政党政治というのは、主義主張、志をともにする人がおのおの集まって、我々の政権が国民のためにこのような政策をするというときは、選挙を通じて政権の獲得を目指し、政権を獲得して、最初に申し上げた国の安全と国民生活の安定のためにみずからの政策をそのまま行うということが、政党政治の願いであり、目標ではないでしょうか。(拍手)
 そういう角度からいきますと、私が選挙制度審議会からいただいた答申の中にいろいろ詳しく書いてありますけれども、やはり政党政治であるべきである。今はややもすると個人中心で、余りにもいろいろなことが個人の責任の上で行われる。日常活動も選挙活動もそうでありますから、私は、この際、国民の皆さんの前で本当の意味の政策論争のできる選挙の仕組み、本当の意味の政策努力、政党中心の活動ができるような政党政治を打ち立てていくことが、新しい時代に即応する日本の政治の活力になるものと信じて疑わないのであります。(拍手)
 そして、このことは単に自由民主党のためのみに言っておるのではなくて、選挙制度審議会の答申を読んでみてください。百三十の選挙区の中で、きょうまで複数の候補者をいつも立て続けでやってきた自由民主党の率直な反省からいって、大切な場面で政策が姿を消すということは、本来政党が行うべき組織活動や政党が行うべき政策広報宣伝活動を個人がやらなければならないというところに、ややもすると大事な場面で政策本位の争いが姿を消して、必要以上にお金のかかるような状況になってきたのではなかろうかということであります。
 また、今回の小選挙区制は、自民党が永久政権をねらう党利党略とおっしゃいますが、それはとんでもない間違いであります。私は率直に言いますけれども、選挙制度審議会の御議論や答申をいただいたときに、今のままの制度では政権交代の現実的可能性がないから政治から緊張感が薄れていく、政権交代の可能性の出るような選挙の仕組みも必要だということを指摘されたときに、私は自由民主党の総裁としては、率直に言って極めて厳しい気持ちでこれを受けとめざるを得ませんでした。
 例えば一昨年の参議院選挙の後の得票率を見たって、NHKを初めいろいろな新聞が一昨年の参議院並みの得票でこの制度で割り振ったらどうなるかというあのシミュレーションを発表しましたが、各社によって上下はありましたけれども、すべて社会党の数が多く、自民党の数が少なく発表されたあの現実を見ると、我々はしっかりしなければならぬなということを逆に思ったことでありまして、初めから何もできない、できないと決めてかかるのは、私は、その意味で、羽田議員が言われたことの方がはるかに的を射た。長い目盛りの、高い次元の御議論であったということを率直にお答えをさせていただきたいと思うのであります。(拍手)
 政権交代の抽象的可能性が出てくるということは、政党間の政策の歩み寄りも行うことであります。私は、それが日本の議会政治のために大切なことであると考えております。
 なお、羽田議員は私に、今回提出した三法案のほかに、資産公開法案、国会改革、党改革、地方分権の確立をも進めることが大切だとお尋ねになりました。私も全く同感でございますし、また、一月の国会召集の取り決めを各党でおやりいただいたことも、それに向かって一歩前進であったという、こういう評価もいたしております。
 同時に、政治倫理のことをおっしゃるなれば、どうぞ、自民党からも出しております政治倫理確立のための国会議員の資産公開の法律について、与野党の適切な御議論も賜りたいと思いますし、また地方分権の問題についても、やはり新しい飛躍をする上においては、国と地方の責任分担、役割分担ということを明確にし、国会は国政に、地方議会は住民に身近な地方の活性化に、おのおの全力を挙げて取り組むことができるようなシステムづくり、御意見に私も全く同感でありますから、今後とも、与党の協力も得ながら、この作業を進めていきたいと考えております。
 なお、参議院の制度について、一日も早く結論を得るべきであるとの御指摘がございました。望ましい参議院選挙制度の具体案づくりに向けて、各党におかれてもいろいろた御議論があるところと思料いたしております。引き続き御議論が重なることを、また、政府としては、そのような議論の動向を踏まえたがら、成案化について努力を続けてまいりたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣吹田ナ君登壇〕
#8
○国務大臣(吹田ナ君) 羽田先生に、私に対する御質問に対し、あるいは残余に対して、お答えをさしていただきます。
 小選挙区比例代表並立制について、いろいろな問題で指摘がありましたが、これにつきましては、有権者の選択の自由がなくなるというような点については、選挙本来の政策によって争われるべきものであると考えておりますし、小選挙区制では各党が一人の候補者を立てて争うことになりますので、有権者は各党の政策と候補者とを比べながら自由に選択できることになり、有権者にとってもわかりやすい、政策中心の選挙になるものと思っております。
 また、二番目には、死票が多くたるのでは北いかということについての御意見がありました。
 これにつきましては、多いということは多数の別の意見、批判があるということになりますので、当選人もこのことを十分に踏まえて、緊張感を持って行動するということになりましょうし、いたずらに死票としてのみ考えるべきではないというふうに思っておりますが、また今回は、改正法案では小選挙区制、比例代表制を並立さしておるということで、少数意見も選挙に反映されやすいようにいたしておるわけであります。したがいまして、死票という点につきましては十分カバーできるのではないかというふうに考えておるわけであります。
 あるいはまた、三番目にお問いになりました小選挙区制になれば金がかかる、またサービス競争が激化するというような御意見も一面であるではないかということもございました。
 この制度を導入すれば、日常の政治活動や選挙が政党中心になることによって、政治家個人の負担は減ることになるでありましょうし、現在のように、候補者同士の個人的なサービス競争や、それに伴う支出の増大は避けることができると思います。
 四番目に、政権交代の可能性ということにつきましては、ただいま総理もお話しになりましたが、一般的に、小選挙区制は、民意の変化は鋭敏に議席数の変化をもたらすと言われておりますので、完全な小選挙区制の方が政権交代が起こりやすいということは言えましょうけれども、少数意見の国政への反映にも配慮して、比例代表制との並立制を提案しておるところであります。
 五番目のお問いでありました立候補制度、候補者の選定に関連してでありますが、改正法案では無所属立候補もできることになっておりますが、やはり衆議院議員の選挙は、政権の獲得、政策の実現を目指して、政党間の政策の争いを中心として行われるものである、こういうふうに思っております。
 また、候補者については、要は選出される議員が国政を担うにふさわしい人格であるかどうか、識見を有するか否かでありますので、政策本位、政党本位の選挙制度のもとにおいては、各政党もそのような観点から一人の候補者を選定することになりましょうし、有権者もそのような目で各政党の候補者を選択を行うことになるでありましょうから、新人が出にくくなるとか、大物の輩出が困難になるとか、選挙区が狭くなって国会議員の権威が失われるというようなことには結びつかないものであるというふうに私は考えております。
 次に、六番目のお問いでありました。多極分散の時代なのに議員が一極集中にたるというような点については、政府としては、この方面の御意見を踏まえて、各方面から御意見をずっと集めております。人口の比例という答申の考え方に準拠しつつも、まず都道府県に一人ずつを配分することによって、人口の少ない県に対して定数配分上配慮したところであります。
 七番目の御質問でありました。人気取り政策の競争が横行するのではないかというような懸念につきましては、政党が中心となりますので、国全体の立場に立った政策を立案し、有権者に示して信を問うことになります。その実現に責任を持つ意味から、安易な人気取り政策競争をするようなことはかえって難しくなるんではないかというふうに思っておりますから、私は、その御心配はないものだと考えておるわけであります。
 次に、政治資金制度の問題についての御意見がありました。
 国民の政治に対する信頼を確立するためには、いわゆる政治活動に充てるお金、あるいは選挙に必要な資金の集め方あるいは使い方の仕組みを見直さなければなりません。このような政治資金をめぐる問題を根本的に解決するためには、選挙あるいは政治活動のやりやすい方法で、大部分の政治家の個人の責任で対処しなければならないという現行の選挙制度を改めて、政策本位、政党本位の仕組みに直す必要がある、私はこのように思っておるわけであります。
 今回の政治資金制度の改革は、このような選挙制度の改革にあわせて、政治資金の調達を政党中心にするとともに、その公開性を高め、規制の実効性を確保することといたしておるわけであります。
 次の質問は、企業と政党との癒着が起こらないかということについての御意見でありました。
 企業等の団体の寄附を受けることができる政党は、その政策について国民の支持を得る必要があり、また、常に国民の監視と批判のもとに置かれておりますので、企業との癒着は生じないようにたってくると考えております。企業献金をやめて個人献金とすべきではないかという御意見でありますが、企業等の団体も政治活動の自由を持っております。企業等の団体の寄附をよくないものと決めてかかることはいかがであろうかと思っております。
 今回は、選挙制度の改革により選挙や政治活動が政党中心になりますので、企業等の団体の寄附は原則として政党に対するものに限るとしたものであります。原則としてですよ。政治資金の規制よりも限度額を広げる方が現実的ではないかという御意見もありましたが、政治と金をめぐる問題を解決し、政治に対する国民の信頼を確立するためには、金のかからない政策本位、政党本位の制度をとる必要があります。現在のように日常の政治活動や選挙の場合の活動費について、政治家個人がその大部分を賄わざるを得ない制度を続ける限り、政治資金の膨張をとめることは困難ではないでしょうか。限度額を引き上げることはこのような現状を追認することになりかねませんので、したがって、制度面においても政党本位のものとして選挙制度の改革を行うとともに、政治資金制度の改革をぜひとも実行して、こうしたことはいたさないということにしようと考えております。
 最後に、政党助成法であります。
 政党助成は政党活動への公権力の介入にはならないかというような点についてのお尋ねでありました。議会制民主主義のもとにおいて、国が政党の政治活動を尊重することは当然であります。政党交付金の使途は制限することなく政党の自覚と責任にゆだねるとともに、その収支の報告も政党みずからが行うこととし、その公表を通じて国民の監視と批判にゆだねる仕組みとしております。政党助成は、政党に対する公権力の介入になるものでは私はないというふうに考えております。
 次に、政党助成についての国民の納得が得られるかという点でありますが、現在のように政治家個人が選挙や政治活動の大部分をみずから賄わなければならない状況下では、国民の理解を得ることは困難だと考えますが、選挙制度や政治資金制度の改革によって、選挙や政治活動が個人中心から政党中心のものとなり、あわせて連座制の強化など選挙の腐敗行為に対する制裁の強化等も行われますので、国民の理解が得られ、環境が整備されるものと考えております。
 政党助成の対象となる政党の要件と結社の自由との関係についてはどうだという御意見でありましたが、国民の支持を反映する客観的な基準である一定の国会議員の数と得票数を満たす限り、いずれの政党も政党交付金の交付対象となりますので、言うまでもなく憲法上の結社の自由に触れるものではない、かように考えておる次第であります。
 以上であります。(拍手)
#9
○議長(櫻内義雄君) 日野市朗君。
    〔日野市朗君登壇〕
#10
○日野市朗君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、この質問をいたします。
 やっと政治改革であります。本来なら、この国会は政治改革国会のはずでありました。しかし、今この壇上に立って議場を見回しますと、議場全体が白けたような感じがいたします。現に出席者もかなり減ってきたようであります。人によっては、政治改革三法案は廃案との予想を立てているようであります。
 総理は、政治改革について事あるごとに、内閣の命運をかけてとか、不退転の決意でとか、全力を挙げて政治改革法案の成立を図ると述べてこられました。恐らく総理の胸中には、三法案が成立し、新たな政治秩序が打ち立てられた中での我が国を導いていく構想が抱かれていると思います。同時に、政治改革は、総理の公約であったでありましょうし、国会議員である我々の公約でもあるのです。さらに、我々の強い願望である、このことも御承知おきをいただきたいと思います。
 しかし、あなたは、我々国会議員の願うところが何であるかについて的確な洞察を欠き、多くの同僚議員たちの意向とはかけ離れた三法案を提出したのであります。もし、三法案が成立しなかった場合、あなたの構想は無に帰するでありましょうし、我々の願望もまた裏切られることになります。その場合のあなたの出処進退はどのようなものになるのでありましょうか。
 三法案の不成立は、高い蓋然性を持って予測されています。もはやそれは単なる仮定の問題ではありません。あなたがどのように法案成立に努力するかではなく、法案が成立せず、あなたの構想が崩れ去り、国民や同僚国会議員たちの願望が裏切られるとき、あなたはどうされるのかを伺います。
 我々は今、二つの非常に重い要請にこたえなければなりません。一つは、最高裁判所が違憲状態と言う定数の是正であり、もう一つは、政治、選挙の腐敗を排除するための制度の確立てあります。この二つの課題こそが、まさに緊急を要する政治改革の課題なのであります。小選挙区制度の導入だとは、むしろ逆に、国家百年の大計として、十分な納得を求めて、時間をかけて各党間での論議にまつべきものではありませんか。
 まず、定数是正について伺いますが、定数是正がなされなかった場合、衆議院の総選挙は行えるのでしょうか。いかがでありましょう。私は、最高裁判所が違憲状態と言う一票の重さの格差を抱えたままで総選挙はできないものと考えます。
 最高裁判所は、前回の判決においては賢明にも選挙の無効を宣することはお避けになりました。しかし、また同様の状態で選挙が行われた場合に最高裁がどのような判決をされるかは、予断の限りではありません。定数是正はいわば焦眉の急の政治問題なのであります。
 総理は、だからこそ公職選挙法改正案を国会に提出したのだと言われるでありましょう。しかし、現下の政治状況を見るならば、公選法改正案が容易に衆議院を通過できるものと考える者はおりません。野党はこぞってこの法案に反対し、与党内部にあっても無視すべからざる数の反対者がおられると仄聞をいたします。(拍手)このような状況にあって、このような法案の成立に固執することはいかがなものでありましょうか。公選法改正案が成立するにしてもしないにしても、我が国の政治に大きな禍根を残すことは避けられないと思います。
 政治は合意の形成をもって旨とすべきであります。速やかに現行中選挙区を基本として定数是正を行うのが得策ではないでしょうか。現行選挙区を中心にしての定数是正であれば、各議員の地盤は新旧の選挙区でそう大きく変更を加えられることがたく、合意形成はより容易であると考えますが、総理はいかがお考えでありましょう。
 もし総理があくまでもこの法案に固執し、国会での論争が行われ、法案不成立という事態に立ち至れば、各議員は、今国会におけるそれぞれの態度によって将来ともみずから拘束されることになりましょう。そういうことになれば、定数是正などいつになったら実現できるのか見当もつきません。その結果もたらされる政治の混乱は目を覆うばかりでありましょう。総理は今そのような危険な道を歩んでいるのであります。あなたが今なされるべきことは、中選挙区のもとに選挙区についての合意形成を図られることであると考えます。あなたのお考えをお示しください。
 私が非常に奇異の念を持っているのは、今日までの政治改革の論議の中で、中選挙区制の中での定数是正の論議が全く欠落していることであります。本院の公職選挙法特別委員会などでなぜこの論議をしないのかは何度も論議になりました。そこでの自民党の関係者の答えはいつも、非常に困難である、できないというものでありました。しかし、やってみもせずにできないと決めつけてしまうことはおかしい。まず緊急課題である定数是正をするために、中選挙区での選挙区の区割りや定員の問題についての論議をなぜ試みなかったのでありましょうか。私も同僚議員たちも国会に議席を持つ身であります。定数是正について痛みを伴うことは皆覚悟しているはずであります。それにもかかわらず、困難である、不可能であるとしてその論議を避けたのは、議員たちに対して失礼とはお考えになりませんか。これからでも中選挙区での定数是正の論議をしていただきたいと思います。
 幸い我が党は、公選法改正案を作成しております。もちろん中選挙区制を維持し、区割り案も定員も定めてあります。御参照ください。党内合意も得であります。我が党内にもこれをめぐっての議論がいろいろなかったわけではありません。しかし、合意は得られたのであります。やればやれることの証左ではありませんか。意欲のない者にはできないというだけのことであります。総理、まず中選挙区での定数是正を図り、政治の混乱を回避し、しかる後に与野党でよりよい選挙制度を検討しようではありませんか。いかがですか。そうすることが第百四回国会における本会議での衆議院議員の定数是正に関する決議の趣旨に沿うことになろうかと思いますが、総理はどのようにお考えでありますか。
 政府の公選法改正案は、小選挙区比例代表並立制をとっていますが、これは余りにも問題の多い制度であります。ちょっとその沿革を振り返ってみましょう。
 最高裁の違憲判決が出されてから、昭和六十年十二月、衆議院の坂田議長は議長見解を示しました。その中には、小選挙区はとらないことをうたっています。この見解を受けて、翌年二月には、与野党国会対策委員長会談で議長見解についての各党確認事項が合意され、その中でも、小選挙区はとらないこととされました。そして前に述べた本会議決議に至ったのであります。こうして見ると、政府の公選法改正案は、国会の公式に表明された意向に真っ向から反するものでありますが、総理はこれをどのように理解しておられますか、お聞かせください。
 国会は小選挙区制なしの定数是正に向かって動いていました。自民党もその線で動いていたのであります。私の理解するところでは、自民党も小選挙区制は中長期の課題として、定数の抜本是正を言っていだのであります。ところが、平成元年五月に自民党政治改革大綱が示されて、その中で中選挙区制度の否定論が叫ばれることになりました。つまり、自民党が政治資金の調達を強いられるのも、政治改革の主要課題の多くも、中選挙区制度の罪だと言うのであります。そして同年六月には、早くも第八次選挙制度審議会に「選挙制度及び政治資金制度の根本的改革のための方策を具体的に示されたい」との諮問をして、選挙制度審議会は自民党の意向に沿った答申をしました。
 しかし、これはおかしい。政治資金がかかるの。で困るなら、政治資金を抑える努力をすべきであります。大体、我が党の議員は、そんなに政治資金の調達を強いられてもいなければ、そんなに政治資金を使ってもおりません。自民党の内部事情を一般化されて我が党にも当てはめられるのは、迷惑至極なのであります。(拍手)
 さらに奇妙なことが起きました。自民党はこの答申をいじくり回し、答申では総定数五百人程度、その六割を小選挙区定数、四割は比例代表定数とされていたものを、総定数四百七十一、小選挙区定数を三百、比例代表定数を百七十一と変更いたしました。
 私が全く理解に苦しむのは、自民党がこれを政府に投げ返し、選挙制度審議会が政府の求めによって区割り案を作成したことであります。本来なら、選挙制度審議会は怒らなければならない、答申が変更されたのですから。この作業を審議会がしたことについて、その答申には理由が書いてあります。しかし、私は、それを言いわけとしか思えないのであります。
 そこで、総理、あなたはなぜ最初の諮問に当たって区割りまでを諮問に含めなかったのでありますか。答申の内容を変更した後、なぜさらに区割り案を審議会に諮問したのですか。こうした一連の過程を見ていると、私には、初めに小選挙区比例代表並立制ありきであったとしか思えないのであります。(拍手)
 自民党政権の先行きに危機感を持った自民党は、国会の意向を無視して、選挙制度審議会の権威を利用し、まず小選挙区比例代表並立制の導入の答申を出させて、それをさらに自民党に有利なように変更を加え、その結果をもとに、選挙区の区割りを審議会の権威を利用して行わしめたものと考えられるのであります。恐らく、余りにも自民党に有利な小選挙区比例代表並立制を、それまでのいきさつからして、自民党としては出しにくかったのでありましょう。また、区割りを自民党内部の議論で決めることは困難と見て、審議会にこれをやらせたのでありましょう。こうすることによって、総理は、自己に対する非難と党内外からの責任追及を免れようとしたのではありませんか。違いますか、総理。
 小選挙区比例代表並立制を取り入れたこの法案ができるまでに、自民党の内部で激しい議論があり、現在もあることを私は知っております。それだけのことをやりながら、なぜこの法案が自民党から議員提案として出てこなかったのか、私は非常に不思議に思います。
 今羽田議員は、いろいろなところと話し合いをした。こうおっしゃいました。しかし、この主張点は、私を納得させることはできません。話し合いをしたというのであれば、何で国会における各党との話し合いをしなかったのですか。この点は、私、全く納得のいかないところであります。
 政治改革三法案は、まさに議員たちの身分や政党の消長に深くかかわります。議員たちの手によって提案されるにふさわしい法案であり、むしろ、行政庁の提案にはふさわしくないものと私は考えますが、総理はどのようにお考えになりますか。(拍手)
 小選挙区比例代表並立制では、小選挙区で自民党が圧倒的に議席を獲得すると言われています。膨大な死票が出ます。民意をくみ上げるための選挙にあって、この欠陥は耐えがたいものであります。そのような議会による政治は民意による政治、つまり民主主義とは言わたいのであります。この欠陥を総理はどう正されるおつもりでありましょう。
 この死票について自治大臣は、当選者が少数意見をも考慮する、だから心配ないのだ、このようにおっしゃいました。全く変な話であります。当選者にとって大切なのは、自分を支持した多数の声なのであります。この点については、さらに自治大臣にお伺いしたいと思いますが、いかがでございますか。(拍手)
 我が国の社会は、よくコンセンサス社会である、こう言われております。みんなの話し合いによって合意を求めて、その上に立って運営されるという伝統が日本の社会にはあります。そして、その伝統は、国会の中でも生きてまいりました。国民の意思は、与野党の話し合いによって国会の中で取りまとめられてきたのであります。少数者の意見も野党の手で国会に反映されてきましたが、私は、この小選挙区比例代表並立制では、この伝統の失われることを恐れるのであります。総理は、そういう問題があるから比例代表制を加味したのだと言われるでありましょう。それならば、比例代表の議員数は、なぜ小選挙区議員数と少なくとも同数にしなかったのでありましょうか。自民党が小選挙区で八〇%の議席数を得て、比例代表で四〇%の議席数をとったとしたら、自民党は国民の支持を得られたことになるのでありますか。選挙の得票率と議席数との間には、三乗の法則と呼ばれる広く認められた法則性があります。それによれば、との設問は決して架空のものではありません。いかがでございましょう。
 小選挙区比例代表並立制によれば、衆議院は二つの異質の選挙で選ばれた異質の議員たちで構成されることになります。我が国の参議院はそのような構成でありますが、参議院の場合は、衆議院のチェック機能の役割でありますし、独自の歴史がありますから、まあいいでしょう。しかし、それを除けば、一つの院が異質の議員で構成されるのは世界に例の極めて少ない奇妙な制度なのであります。
 このような国の一つに韓国がありますが、韓国の議員たち何人かと私はこの間懇談をする機会を持ちました。彼らは、全国区は天国区、地方区は地獄区と言っておりました。我が国の第一院である衆議院がこうした形態をとっていいのでありましょうか。
 総理、小選挙区比例代表並立制は、国会の申し合わせの信を破り、政治改革に名をかりて、選挙制度審議会を下請として、自民党に一方的に有利な奇妙きてれつた制度を導入しようとする党利党略の所産であると思いますが、いかがでありましょうか。(拍手)
 先ほどは、総理は、前回の参議院選挙の得票数をもとにしたシミュレーションの話をされて、政権の交代があり得るかのごとくおっしゃいましたが、あのシミュレーションは大体基盤が違うのです。参議院ということになれば一つの県単位、つまり大きな単位での投票数を予定して行われる。しかし、小選挙区ということになる、と、選挙の行われる選挙区の範囲は非常に狭くなります。そういうところの得票数をもとにしてシミュレーションを行うことが大体間違っていると私は指摘をしておきたいと思います。あなたのお考え、いかがでございましょうか。
 次に、政治改革とは本来何を改革しようとしたものかについて考えてみたいと思います。
 言うまでもありません。腐敗した政治、腐敗した選挙を一掃することを目的とし、政治を改革しようとするものなのであります。
 古来、政治と金が結びついたときはろくなことは起こりませんでした。疑獄、汚職、不祥事はいつの世にもありました。しかし、近時におけるその頻発のさま、規模の大きさは刮目すべきものがあります。だが、さらに問題なのは、政治や選挙に金がかかるのを当然視する風潮が行き渡っていることであります。このような風潮の中で、ある者は利益を求めて政治家を志します。選挙にかかる莫大な金は投資と心得ているのであります。ある者は利益を求めて政治家に群がります。このような人間たちをあなた方は身辺に見ておりませんか。見ていないと言われる方がおられたら、幸せな方であります。
 しかし、国民は知っています。工事入札の指名を受けるために、自民党の政治家に頼めば効果があることも、謝礼はどのくらいであるかも、金融のあっせんがあればリベートが払われることも、どの政治家がどのあたりに顔がきくかということもみんな知っています。与して国民は、まともなルールがねじ曲げられていることに怒りを覚えているのであります。まともなルールが通用しなくなった社会は崩壊の道を進んでいくのは自明の理であります。
 折しも、九月六日の各新聞の朝刊は、政治資金収支報告の記事で埋まりました。それによると、自民党が中央で集めた政治資金は、本部で三百八億四千三百五十九万円、各派閥が集めたもの七十八億七千八百八十六万円、締めて三百八十七億二千二百四十五万円とされています。これにさらに地方分が上積みされ、自民党議員が個々に集めたものを合算すると、さて、自民党に集まった政治資金は一体どのくらいになるのか。それに、吹田自治大臣や大塚建設大臣のように企業から秘書を派遣してもらっているのも、自動車や事務所を提供されているものも算入されなければならないでありましょう。
 この際、両大臣に伺います。
 両大臣が企業から秘書を派遣してもらい、当該秘書の給与は企業が支払っていたとのことでありますが、この点、両大臣もしくはその政治資金団体である後援会の収支報告はどうなっておりますか。収支報告がどうなっているかを含めて両大臣の弁明を伺います。(拍手)
 特に、吹田自治大臣は政治改革三法案を所管する大臣であります。国民にいささかの疑問をも持たれない政治資金制度をつくるための政治資金規正法をつくろうと努力しているさなかで、あなたがその所管大臣としてその任にあることはふさわしくないのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。(拍手)大臣の職を辞するお考えはございませんか。
 さきに述べた昨年の政治資金収支報告書によりますと、国民政治協会が百二十八億五千五百四十万円の収入を上げている。これは全部自民党に行く金であります。国民政治協会への献金者を見ますと、全部法人、つまり商売人であります。このような法人活動の究極の目的は、言うまでもなく営利の追求であります。営利追求者が政治に接近し、大量の政治資金を政権政党に献金するという構図はそら恐しいものではありませんか。(拍手)現に、ロッキード事件やリクルート事件を初めとする汚職事件は、このような土壌から発生したのであります。この自民党と企業の関係は、国民の疑惑を招くばかりでなく、現実の弊害を生み出しています。
 総理は、こうした自民党と企業の関係を正当なものとお考えでありましょうか。企業が献金する目的は何だとお考えでありましょうか。お答えに当たっては、企業にも政治活動の自由があるとか、献金の目的は自由社会を守るためなどとは言わないでください。企業には選挙権も被選挙権もないのです。企業の実体は、つまるところ株であります。株主が個人として政治活動をすればいいのです。定款に企業献金をすることを目的としている企業もないでありましょう。自由社会を守るためというなら、党にだけ献金すればいいのです。しかし、派閥にも個人にも献金されていることを説明はできないのではないですか。
 近ごろの企業献金はさらに趣を変えているようであります。自民党の経理局長がこう言っています。最近の若い経営者は実利を求めて、党へよりも議員に直接渡したがる。おわかりですか。企業が個別の政策課題にまで実利を求めて献金をしているのであります。こうなったらもう汚職と紙一重というよりは、知られざる汚職が数多く行われていると推測されますが、いかがでありましょう。(拍手)総理はこのことをどう思われますか。特にあなたはリクルート社から献金を受けられたと言われている方であります。御自身をも振り返ってみて、お考えをお聞かせください。
 政治の腐敗、選挙の腐敗が国民の政治不信を招いている。それらの腐敗を一掃するための制度を確立することが政治改革の課題であります。私は、企業献金こそがこれらの腐敗を招いたものだと考えます。企業献金こそが諸悪の根源であり、これを禁止することが政治改革のための第一歩とされるべきではありませんか。総理のお考えをお示しいただきたいと思います。(拍手)
 先ほど私は、羽田さんの質問を聞いていて非常に気になりました。羽田さんは、企業からの献金を既得権として守ろうという姿勢が強い。我々は、政治は清潔なものでなければならない、限りなく清潔なものでなければならぬと考えるのでありますが、羽田さんの政治の清潔さを言う場合と、我々の政治の清潔さを言う場合、どうも次元が違うようだ感じがしてなりません。(拍手)
 政府は政党助成法を提案し、政党に対し政党交付金による助成をしようとしています。私も、この考え方を一概に否定しようとは思っておりません。しかし、そのためには幾つかのハードルを越えなければなりません。
 そこで伺いますが、政党が国民の血税の中から交付金を受けられるとしたら、その根拠は何でありますか。私は、政党が当然に交付金を受ける根拠があるとは考えておりません。根拠があるとすれば、それは政党が国民に清廉な政治を約束し、他からは政治の清廉性を疑われるような資金を受け取らないという制度的保証を打ち立てることによってのみ、それは可能になると思います。そうでなければ、とても恥ずかしくて交付金など受け取ることはできないではありませんか。
 この際、政治資金規正法案では企業その他の団体献金を禁止し、政治資金規正法案と政党助成法案の二法案の成立を図られるお考えはありませんか。正しいものはまずやるべきなのであります。三法一体というような考え方はこの際捨てて、公職選挙法の改正案についてはみんなでなお話し合いをいたしましょう。そして、まず政治の腐敗を正す政治資金規正法案と政党助成法案、この二法案について検討をしようではありませんか。何しろ政治改革の第一の課題は政治、選挙の清廉性の回復なのでありますから。
 現在の政治の状況を見れば、自民党は、巨大な城において財界という自民党警護隊に守られ、暖衣飽食してうつつを忘れ、一万野党は、ばらばらに小城に立てこもっていて協力し合うこともなく、清く、貧しく、力なく、おのが身をかこつのみであります。
 このような政治自体が国民の支持を受けられるとは思いません。議員一人一人が清く身を持し、研さんを怠らず、国民の負託にこたえることが真の政治改革でありましょう。改革をなすはおのれにありであります。
 終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 日野議員にお答えをいたします。
 私は、今回のこの三法案というのは、我々の念願とする活力のある政党政治をつくり出して、政策本位、政党本位の政治活動、選挙制度をつくり出していくために必要なものであると確信をいたしております。今回提案いたしました三法案は、これは十分な御審議をいただき、御協力を得、御理解をいただき、ぜひとも成立をさせていただきたいと、私は最善の努力を尽くす考えております。日野議員も、我々の願望と言われる政治改革ともおっしゃいました。どうか御理解と御協力をお願い申し上げておきます。
 定数是正と解散・総選挙の問題について触れられましたが、これは法律論としてお答えしますけれども、衆議院の解散権というのは、憲法上、国政の重大な局面において民意を問う手段として内閣に与えられた重大な権限であります。いかなる場合に衆議院を解散するかは、内閣がその政治的責任において決めるべきものであると考えております。御指摘の衆議院議員の定数是正が行われたい間においても、解散権の行使が法律的に制約されることはないと内閣は考えております。
 また、定数是正の問題について御議論がございました。中選挙区制の争いの中でいろいろな問題が出てきておるわけでありますから、私は局面を打開するためにこの三法案をお願いをしておるわけでありまして、先ほど日野議員のお言葉をとらえるわけではありませんけれども、御議論の中で、やってみもせずにできないと言うのはおかしい、自民党は失礼ではないかという趣旨の御発言をたさいましたが、どうか政治改革というものの三法案を提案してお願いをしておるのですから、これをやってみもしないでだめだだめだとおっしゃるのはおかしいということを、そのままお返しをさせていただきたいと思います。(拍手)
 したがいまして、今日のこの政治の混乱を救うために、公職選挙法の特別委員会のこともお話に出ましたが、社会党の皆さん方の中から出ておるいろいろなお話をどうか具体的な案としてお示しをいただきますことをお願い申し上げるとともに、定数是正に関していろいろお尋ねになりましたが、やはり区割りをなぜ初めから審議会に頼まなかったかとおっしゃいますけれども、審議会にゆだねますのは、この抜本的改正がどうであったかということをまずお聞きしたのです。自由民主党の方では、政治改革大綱で基本は決めておりました。その答申の中で、区割り案も審議会が決めるとなったのであります。もし区割り案まで政府やあるいは自民党で決めたとするなれば、それは自分たちの手前勝手ではないかという御批判を受けることは、これは当然のことでありますから、第三者機関にゆだねるという政治改革基本要綱に従ってゆだねたわけであり、審議会からもそのような答申を受けた次第でありますから、どうかこれは御理解をいただきたいと思います。
 また、並立制における死票の問題を言われましたけれども、これは別の意見もあり、批判があるということでありまして、当選した人もこのことは十分にわきまえてその後の行動をすることになるわけですから、いたずらに死票としてのみ考えるべきではないと思いますし、また並立制は^小選挙区制に比例代表制を加味することによって少数勢力も議席が確保できるようにしようとするものでありますから、小選挙区制の問題点を緩和できるものであると政府は考えて提案をしております。
 また、並立制の趣旨というもの、これは、小選挙区定数の総数が多いほど都道府県の間、ひいては選挙区の間の人口の均衡が図りやすいという定数配分の均衡化の見地から、改正法案においては三百に対し比例代表百七十一としたところであります。また、政権の選択についての国民の意思が明確な形で示される小選挙区選挙と多様な民意をそのまま反映する比例代表選挙の二つの選挙によって議員を選ぼうとするものであり、この二つの選挙を組み合わせることによってさまざまな民意を的確に反映でき、選挙全体の結果が反映し、国民に選択されることができると、私はこう考えておるわけであります。
 また、小選挙区制のシミュレーションについて、いろいろ勝手過ぎるとおっしゃいましたが、あれは私は、冒頭に申し上げたように、幾つかの報道機関の参議院選挙のときの得票をもとに今回のこれに従って割ったらこのようになるという、その結果を見て私が愕然としたということを率直にここで申し上げた次第でございます。
 また、自民党に一方的な有利、そうした制度を導入しようとするのではないかと言われますが、審議会の答申にも、それでは緊張感を欠き、議会政治のねらいである政権の抽象的な交代すら否定されてしまうのではいけないから、もっとこのような政権交代の可能性も選挙制度の中で求めるべきであるという、そういった考え方が浮き彫りになっておることも御理解をいただきたいと思います。
 なお、企業献金の問題につきましては、党は党費等の自主財源に加えて皆さんに政治資金の拠出を広く求めておりますから、企業も一つの社会的存在として法律に許された範囲内において節度を持って行われるべきものは当然であり、私も多くの企業から資金を受けましたけれども、今後これがますます多くなっていくということが、国民の皆さんとの間の関係を資金を通じて透明にするために、原則として団体やあるいは法人の献金をやめて、政治資金の調達は団体、企業からは政党中心にしていこう、透明度を高めていこうというものでありますから、御理解をいただきたいと思うわけであります。
 また、政党交付金の根拠については、政党の政治活動が国家意思の形成に寄与し、公的性格を有することなどから、諸外国等の現状等を踏まえ、また、政党活動の健全な発達を促進するためにこれを創設しようとしておるものであります。
 最後に、公職選挙法は撤回して、政治資金規正法案と政党助成法案の成立を図る考えはないかと仰ぎれましたが、私は何回も申しているように、今度の政治改革は三法案を一緒にして制度、仕組みの根源まで触れていかないと、個人の倫理だけとかあるいは政党助成法だけでは、これは根本的に片づく問題ではなく、あくまで政党本位、政策本位の議会政治を打ち立てていきたい、個人中心から政党本位の政党政治に変えていきたい、こういう願いから提案しておる三法案でございますから、御理解をいただきたいと思います。
 残余の問題については、関係大臣から答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣吹田ナ君登壇〕
#12
○国務大臣(吹田ナ君) 先ほど私が答弁をいたしました中に、今、日野先生のお話がありました。小選挙区制ということになりますと死票がたくさん出るではないかということについての御意見がありました。それは確かに死票は出ます。いずれの選挙の場合でも死票をなくすることはできません。ですから、それは出ることは間違いありません。(発言する者あり)静かに聞いてください、御本人に聞こえないでしょうから。
 ですから、少なくとも連立のこうした問題の場合に、小選挙区という問題を取り上げる限り、各地域の意見というものは確かに大幅に吸収できます。各地域の意見のどこに大きな意見があるかということだけは、これはもう小選挙区制であれば最もはっきりとあらわれてくるわけであります。しかし、その他の票につきましては、死票になるという問題については、そのためにいわゆる比例制というものもここに加味して、ここででき得るだけの、小さい意見もあるいは小党の意見もこれを取り入れようということで、これを並立さして出しているわけであります。ですから、どうぞそういう面で、小選挙区比例代表の並立制というのはそういう意味に解釈してもらわないと、死票が一切出ないように云々という話はなかなかこれは困難な問題ですから、御理解を願いたいわけであります。
 それから、最も私としては大事な問題としてお答えをさしてもらわなきゃならぬことは、私のことであります。政治と金をめぐる問題は根本的に改めるべきであるというこの政治改革を行おうとしておるときに、私の関係する企業の税金の取り扱いをめぐって、報道されているような事態となったことはまことに遺憾であります。申しわけないと思っております。
 事実関係といたしましては……(発言する者あり)静かに聞いてください。
#13
○議長(櫻内義雄君) 静粛に願います。
#14
○国務大臣(吹田ナ君)(続) 私が設立し、関与した会社の社員が仕事の合間に自主的に後援会活動を手伝ってくれていたが、今年の税務調査で、六人の社員の給与については会社の経費としては認めもれないという指摘を受けたわけであります。しかしながら、過去の税務調査では特に指摘を受けたことはなかったわけでありまして、私は、この問題については十分理解されておるというふうに考えていたわけであります。しかしながら、今回こうした指摘を受けたものですから、直ちにこれを訂正することを指示いたしました。 このような事情をひとつ皆さん方にも御理解を願いたいじ、収支の報告の、記載されていないが、これを機会に後援会と会社との関係をきっちりと見直し、収支報告の関係も明確にするように指示いたしておるわけであります。今後、私としては、関係者ともども今回の件を厳に肝に銘じていくつもりであります。
 また、政治と金をめぐり、国民の信頼を回復するために政治改革に取り組んでおる自治大臣として、このことを厳しく受けとめ、これだけに責任を果たすべく最大限の努力をしていく覚悟であります。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣大塚雄司君登壇〕
#15
○国務大臣(大塚雄司君) お答え申し上げます。
 このたび日野議員からこのような御質問をいただき、御指摘をいただきましたことは、まことに遺憾でございまして、恐縮をいたしております。政治資金の収支報告につきましては、自治大臣同様、修正をした分につきまして的確に処理をするように指示をいたしておるところでございます。
 ただいま議員から、弁明をせよということでございますので、若干お聞き取りをいただきたいと存じます。
 その企業である会社は、昭和三十七年に私が中心になって創立をしたものでございます。当時、オリンピックが日本にやってくるということで、私の居住する青山通りは二十二メートルから四十メートルに道路が広がることになりました。そのときの沿線の商店街や住んでいる方々は立ち退きを余儀なくされ、反対の運動も大変盛り上がったところでありましたが、後背地の方々と前面の方々と力を合わせて敷地を大型にしてビルを建て、そして、公団の住宅を上に乗せ、住宅政策に資するとともに商店街の繁栄を図ろうという私の計画を地元の皆様にお願いをいたしまして、既に四つの共同建築をいたしました。
 我が国の共同建築の手法については、そのほとんどが区分所有でございますけれども、法人によってこの仕事をはかどらせようという私の指導に対しまして、全国からいろいろとお問い合わせがありましたり、いろいろ御要望がございまして、自乗、全国を飛び歩くようなコンサルタント業務をいたしたわけでございます。そのころは、秘書である者とあるいは所員である者と一緒に混在をしておりましたが、会社を創立しまして身分の確保をし、社員といたしたわけでございます。
 その後、私は東京都議会に出てまいりました。都議会の秘書として社員が任に当たることになりまして、自乗、国会に出るまで、社長は昭和五十年にやめましたが、私の事務所は今日におきましても、全国の商店街の方々が共同建築の手法についていろいろ御相談に来られることがございます。したがいまして、今会社の顧問をいたしておりますけれども、そんなことから、社員と秘書が兼任をするということが続きました。
 しかし、今回閣僚になりまして、資産公開をいたしましたときに御指摘がございましたので、会社の社長に、自主的に国税当局と相談をして御指導をいただくように指示をいたしたところでございまして、それに伴いまして修正申告をさせていただいた次第でございます。
 以上でございますが、私としては二つの反省をいたしております。
 一つは、社員といえども、あるいはまた秘書といえども、やはり働く場を持っている若い者にしてみますれば、私の政治資金だけで賄う秘書であったり、あるいはポケットマネーで払うような秘書でございますと身分の安定を欠くものですから、ついつい、本人たちも、できれば会社の身分で、秘書の仕事もやるけれども会社の仕事もしっかりやるからそのようにしてほしいという要請をそのまま私が甘く判断をしたことは、一つの反省点でございます。
 もう一つは、せんだっても建設委員会で鈴木委員から御指摘がございました。国会の秘書は二人しか認められておりません、三人目をつくるのに本当に苦労をしているというお話を承りましたが、私自身も何人かの私設秘書も抱えておるわけですが、もしも私が身分を失えば、その秘書たちは路頭に迷うわけでございます。国民健康保険とあるいは国民年金だけで賄っておりますということは、大変働く者に対しても不安を与えておりますことから、ついそのような処理をいたしたことは反省をいたしておるところでございます。
 私は政治改革の担当ではございませんが、この国会に臨むに当たりまして、私も国民の皆様方から信頼がいただけるように、深い反省の上に立ちまして最大限の努力をしてまいることを、ここにお誓いをしたいと存じます。
 以上でございます。(拍手)
#16
○議長(櫻内義雄君) 矢追秀彦君。
    〔矢追秀彦君登壇〕
#17
○矢追秀彦君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました政治改革三法案について、海部総理に質問をいたすものであります。
 総理、あなたは平成元年十月、総理に就任された最初の所信表明において、「清新の気に貫かれた信頼の政治こそ、私の理想とする政治の姿であります。さらに、政治家一人一人が高い政治倫理を確立することはもとより、ガラス張りで金のかからない政治活動や政策中心の選挙を実現するという、根本にさかのぼった改革を大胆に実行していかなければなりません。」と、政治改革の決意を披瀝し、平成二年十一月の国会開設百年を目標に実現すると明言されました。
 さらに、平成二年三月には、「リクルート事件の反省の上に立って、政治倫理を確立するとともに、金のかからない政治活動や政策中心の選挙の実現など実のある政治改革を全力を挙げて進めてまいります。」と述べられ、また本年一月には、「まず何よりも政治倫理を確立することが重要であります。それとともに、政治や選挙の仕組みそのものを改め、政治資金の透明性を確保し、金のかからない政党本位、政策中心の政治や選挙を実現していくことが必要であります。」と、同趣旨の発言を繰り返されました。そして、去る八月の所信表明では、「私は、就任以来、政治改革の実現こそが時代から託された使命と考え、不退転の決意で取り組んでまいりました。」と述べておられます。しかしながら、総理は決意を披瀝するのみであって、何ら政治改革の実現を見ておりません。
 会期末まであと二十四日、全野党が反対し、しかも自民党内にも強い反対があり、また、自民党の有力者が、次期総選挙は中選挙区制で行うと明言をされている状況のもとでは、衆議院段階で審議未了、廃案が決定的とも予想されている状態にあります。総理の、ただメンツにこだわり審議を強行しようとする態度には、私は納得がいきません。法案が提出され、少しの審議でも行われれば、総理の責任が果たされるとでも考えておられるのか。もしそうであるとするならば、政治改革、特に選挙法は憲法に次ぐ重要な法律と至言われているだけに、事は重大であります。総理、今回提出されている三法案が不成立に終わった場合、その政治責任をどうとられるのか、明らかにされたい。リクルート事件の反省を忘れ、金権腐敗政治の転換を図ることなく、その原因を選挙制度に転嫁している政治姿勢は、到底許されるものではありません。小選挙区制の導入がどうして政治改革でありましょうか。私は、政治改革の名に値しないばかりか、政治改悪であると申し上げざるを得ません。(拍手)
 総理、あなたは、政治改革の第一歩は政治倫理の確立にあることを強調されております。私も全く同感であります。しかしながら、政治倫理の確立が叫ばれて久しいにもかかわらず、依然として汚職や疑惑が後を絶たないのは一体どこにその原因があるのでしょうか。私は、日本の社会の構図が、政界と財界と官界の三者の癒着、腐敗構造にあるものと指摘せざるを得ないのであります。過去の汚職はすべてこの構図にあると言っても過言ではありません。今回の証券・金融不祥事件において、改めて政官財の癒着構造、不公正ぶりが明らかになりました。この問題は政治改革問題とは別個の問題でなく、この両者の根底には深いかかわり合いを持つものであり、したがって、政治改革が緊急かつ必要なものとなってきたと言うべきであります。
 あの世間を騒がせたロッキード事件の反省から、昭和六十年にはようやく政治倫理綱領と行為規範が議決され、国会法改正により政治倫理審査会が衆参両議院に設置されることになりましたが、野党が申し立て書を提出したにもかかわらず、自民党の反対でいまだ政治倫理審査会は一度も開かれたことはありません。また、行為規範において定められている議長への届け出については、氏名の公開はもちろん、届け出の有無についても公表されないという状況では、全く政治倫理の確立に不熱心とのそしりを免れることはできません。
 総理、政治倫理の確立はどうしてやるのですか。一番大事な政治倫理の確立を解決せずに、金権腐敗政治が選挙制度に原因があるとすりかえて今回の三法案の提出になったとするならば、それは本末転倒であり、総理自身の今までの言動からは全く不可解、自話相違も甚だしいのであります。
 政治倫理確立のためには、欧米において既に実証済みであるイギリスの腐敗防止法、アメリカの政府倫理法のような政治倫理法の制定こそ急務であります。既に野党四党が平成元年五月に提案した政治倫理法こそ論議をし、これの成立に努力すべきであります。
 総理、あなたは議会の子と言われた三木元首相のまな弟子を任じておられるならば、遺言とも言うべき三木私案をどうして実現しようとはされないのですか。野党四党の政治倫理法は三木私案を参考にしたものです。なぜやらないのですか。それとも今の政治倫理綱領と行為規範と政治倫理審査会で十分対応できるとお考えなのですか。最も重要な、そして早急にやらなければならないことに目をつむり、政治改革に熱心に取り組んできた。不退転の決意とか言われても、国民が聞けば、そらぞらしいとしか聞こえません。まず最初に政治倫理法の制定を決断されませんか。お伺いしたい。
 次に、選挙制度の改革について伺います。
 今回、政府が導入しようとしている小選挙区比例代表並立制は、本質的には小選挙区制であります。比例代表制を並立させることによって、少数政党の意見を国会に反映できるとめことでありますが、わずか百七十一議席の中の比例配分であり、明らかに少数政党の切り捨てであります。今日の多党化された日本の政治状況にあって、民意を議席に的確に反映したものとは到底言えません。(拍手)
 総理は、所信表明において「わかりやすく公正な政治を確立し、その負託にこたえていくことが政治の原点」であると述べられていますが、このわかりやすい公正な政治が、すなわち小選挙区制の導入にあるとするならば、考え違いも甚だしいと言わざるを得ません。
 さきの選挙での支持率を使ってのマスコミ各社の試算によれば、自民党は四割台の得票率で八割程度もの議席を確保し、逆に野党は、五割台の支持率でわずか二割台の議席しか得ることができません。これは、つくられた多数派を意図的につくり上げるものであります。その結果、自民党は一党支配を続け、さらに三分の二以上の議席を衆議院において獲得することになり、参議院における現在の逆転状況にもかかわらず、あらゆる法案を通過成立させることができるという、まさに自民党の党利党略そのものではありませんか。(拍手)
 総理、あなたは初の昭和生まれの総理であります。にもかかわらず、今、古めかしい過去に葬り去られた遺物をまた復活させようとしている思考力を疑います。今世界は大きく動いています。七十四年間続いたソ連共産党の一党支配は、音を立てて崩れています。このことは、自由と議会制民主主義が人類普遍の原理であることを改めて実証されたものと言えましょう。一党支配を目指すこの制度は公正と言えるでしょうか。民意の的確な議席への反映こそが公正な選挙制度ではないのでしょうか。(拍手)総理の言う公正な政治の定義、基準とは何か、具体的に明快にお答えいただきたい。
 次に、金のかからない選挙を強調されていますが、小選挙区制によって金がかからないという保証は全くありません。小選挙区制は既に帝国議会において、多くの弊害が指摘され、その反省の中から大正十四年には小選挙区制を廃止したごとによっても明らかであります。このときの第五十回帝国議会における選挙法改正理由書の中に、「小選挙区制に在りては選挙競争区域狭小となるが為に選挙運動余りに周密激甚となりて動もすれば之に伴う種々の弊害を誘起するの虞多く又候補者の濫立を促すの感あり」、また、「小選挙区制に於ては選挙費用を減少せしたるの利ありとの説あるも従来の実績を見るに必ずしも然りと云うことを得ず」と明確に弊害を述べております。
 以上述べたごとく、歴史の上から、小選挙区制の方がはるかに金がかかることは明々白々であります。さらに、よく引き合いに出される奄美群島区の実態から見ても明らかであります。小選挙区一制を導入すれば選挙に金がかからなくなるという総理の主張とは全く逆の結果になっているのであります。
 去る五日、自治省から発表された平成二年の政治資金収支報告書を見ても、億単位の政治資金を集め、そのほとんどを政治活動に投入していたという実態が報告されています。選挙は金がかかるのではなく、金をかけているのが実情であります。決して制度上の問題ではありません。この点は、総理のお考えにどうしても承服することはできません。
 イギリスの歴史家アクトンは、「権力は腐敗しやすく、絶対的権力は、絶対的に腐敗する。」またセネカは、「大きな権力を持つ人は、その権力を軽く使うべきである。」これら先哲の言葉を名演説家と言われる総理は百も承知のことと思います。一党独裁、しかも金権選挙によってつくられた政権は必ず腐敗することは歴史の語るところであります。
 総理、重ねて申し上げます。どうして小選挙区制なら金がかからたくたるのか、納得のいく答弁を求めます。(拍手)
 さらに、選挙制度と金の問題について角度を変えてお伺いいたします。
 総理は、中選挙区制について、「複数候補者を必要とするこの制度においては、主義、主張の同じくする候補者同士が政策以外の分野で個人レベルの争いを強いられています。政策論争を離れた選挙では、政党政治の中心たるべき政策は、ともすれば大切な場面で姿を消し、有権者との個人的なつながりが重視され、その維持、拡大に莫大なエネルギーが費やされるのであります。」と述べられ、いかにも現行選挙制度に弊害があると言われていますが、この考え方には大きな誤りがあります。同一政党が複数候補を立て、同士打ちをするから金がかかるというのは、自民党の選挙のやり方であり、他の政党に当てはまるものではありません。(拍手)現に我が党も、地方自治体選挙においては、多いところでは十四名もの候補者を立てておりますが、政策本位の選挙を展開しており、同士打ちによる金のかかる選挙ではありません。他の政党も同様であると思います。
 総理、選挙に金がかかるのは、さきにも申し上げましたように、制度に理由があるのではなく、自民党の金権体質にあるのではないでしょうか。地元におけるサービス競争によるのではないでしょうか。すなわち、冠婚葬祭のおつき合いなど地盤培養をエスカレートされてきたのは、総理、あなたの率いる自民党ではありませんか。(拍手)小選挙区制になればますます地元へのサービス合戦がエスカレートすることは必至であることは、まさにさきに述べた過去の小選挙区制廃止の経過から見ても明らかであります。
 総理、このような風潮をなくすことこそ政治改革の第一歩ではありませんか。総理の御所見をお伺いしたい。
 さて、総理は、小選挙区制の導入によって二大政党政治への移行を目指しておられますが、我が国の政治は、戦後、幾多の変遷を経て今日の多党化時代を迎えたのであります。それぞれの政党は立党の原点を持ち、政策を掲げ、国民の支持を獲得してまいりました。この現状を無視し、制度を変更することによって少数政党を切り捨て、人為的に二大政党制へ無理やり移行しようとする暴挙は、国民の意思に反するものであると断ぜざるを得ません。
 総理は、欧米諸国の国々に小選挙区制があり、二大政党のもとで政権交代が行われていることをもって、日本にも導入した方がよいとのお考えのようでありますが、これは歴史と現実の誤認識から来るものであります。確かに議会制度の母と言われるイギリスは二大政党政治であり、小選挙区制であることは承知をしております。そして政権交代も行われております。しかし、それは二大政党の勢力が接近しており、また外交、防衛といった基本的な政策において大きな相違がなく、政権交代による混乱がないことによって、小選挙区制が今日まで続けられてきたのであります。
 そもそも小選挙区制の歴史は、立憲君主制のもとにあって、国王が戦費等の調達のため徴税を行うことから地域の代弁者を集めて議会がつくられ、それが団結して権利を主張するようになったもので、言うたれば立憲君主制時代の名残であります。今、平等な権利を持つ現代の民主主義の時代には適合しないものと指摘せざるを得ないのであります。
 ロンドン・エコノミストなどによりますと、イギリスは立憲君主時代から革命もなく、占領ということもなかった。このことは幸運であったが、反面、このような政治改革を行う機会がなかったということであって、それが現在のイギリス病の病根となってしまったと指摘しております。そして今、現行の小選挙区制度はイギリス世論の厳しい批判にさらされており、労働党が昨年の党大会において選挙制度の見直しを決定し、委員会をつくって比例代表制の導入を検討し始めたのであります。
 さらに、小選挙区制を採用しているカナダ、韓国などほとんどの国で選挙制度がうまく働かず、地域分断を助長している現状は、もはや小選挙区制自体が国民各層のさまざまな民意を反映できない時代おくれの制度と言わざるを得ません。総理はこのことを御承知なのか。歴史に逆行し、現実の日本の政党のあり方を無視する小選挙区制には絶対反対であります。総理、いかがでしょうか。
 以上、私は小選挙区制がいかに民意を反映しない、議会制民主主義に反するものであることを述べてまいりました。
 ここで私は、公正な政治が実現でき、多党化時代の日本の政治状況の中にあってベストの制度は、比例代表制であると主張するものであります。
 現にEC参加国のほとんどは比例代表制を採用しております。比例代表制にも多様な形態が存在していますが、公明党は、候補者の顔の見える選挙区併用制を提案しております。私は、比例代表選挙区併用制こそが民意を的確に反映し、政策中心、政党本位であり、日本の現状に最も適した選挙制度であることを重ねて主張するものであります。(拍手)
 総理、今直ちに小選挙区比例代表並立制という過去の遺物のような法案を撤回すべきであります。
 私は今、イギリスの名宰相グラッドストーンの「政治の目的は善をたすに易く、悪をなすに難き社会をつくるにあり」との言葉を思い起こすのであります。総理、二十一世紀へ向けて、公正な政治の新たなる出発をしようではありませんか。総理、いかがでしょうか。
 このほか、本法律案では、選挙区人口格差二・一五倍、格差が二倍を超える選挙区が二十七もあること、また選挙区割りのあり方については、地域の実情を全く無視したものとなっております。この点については、どうお考えになっているのか。
 また、政治資金規正法改正案については、一歩前進の面もありますが、資金集めパーティーを事実上公認していることなど、改革は不十分であります。さらに国民の税金で政党助成を行うのであれば、どうして現行法が目標としている政治資金の企業、団体からの献金を廃止して、個人献金に限るとしなかったのか、この点についても総理のお考えをお伺いしたい。
 最後に、いま一度重ねて申し上げます。総理、あなたが主張されている政治改革は、この三法案では到底実現することはできません。議会制民主主義を大きく後退させ、国民の信頼に十分こたえられない今回の三法律案には断固反対であり、速やかに勇断を持って撤回されることを強く強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 矢追議員にお答えいたします。
 今国会に提出しております政治改革関連三法案は、政治に対する国民の信頼を確固としたものにするとともに、内外に山積する課題に対して的確、機敏に対応することができるようにしたい、そういった政治の実現を目指しておるものでございます。政治というものは、政党だけのものでもありませんし、政治家のものでももちろんありません。国家国民のためにあるものであります。メンツにこだわってこの法案を出したのでもありません。政治の実現を目指すために、今はこの国会において十分に御審議をいただき、各党各会派とも今のままでいいのかという原点に立って御議論いただきながら、御協力を得て、法案の成立が図れるよう最善の努力を尽くしたいと思っておりますから、どうぞよろしく御協力をお願いしておきます。
 また、政治倫理の確立が第一だと言われましたが、私もその点はそのとおりだと思います。そうして自由民主党も、政治倫理確立のために平成元年五月には政治改革大綱をつくりました。また、議員に対しても、政治倫理確立のための政治家個人の資産公開や政治倫理確立のための行為規範の改正の問題は既に具体案を国会に提出し、御検討をいただいておると聞いております。今国会の開会前にも、この政治倫理の確立と国会改革について自由民主党としても議長にこのことを申し入れ、過日はまた、一月召集の問題等もお決めいただいたと聞いております。事柄の性質上、国会において適切な各党各会派の結論が得られますことを私は強く期待をいたすものであります。
 また、公正な政治というのは、民意の変化が敏感に議席の変化をもたらすとされる小選挙区制に比例代表制を並立させることによって、少数意見が国政の方にも十分反映できるように配慮しようとしておるものでありますから、このようなことによって、公平で公正で偏りのない政治を実現するために制度改革が必要であると考えておるわけでございます。
 また、小選挙区がかつて一時期日本で行われていたころの話として、大正十四年の普選、普通選挙法制定前後のお話もいただきました。私も、これは先人の努力の跡として率直に敬意を表してよく耳を傾けましたが、しかし、時代は変わっております。今や政党政治、政党中心の政策本位の選挙をやらなければならないという世の中の大きな移り変わりというものも視野に入れて、どのようにしたら必要以上に金のかからない選挙ができるのか、どのようにしたら本当の政党政治ができるのかということを今考えたのがこの三法案でございますから、どうぞその点も御理解をいただきたいと思いますし、また、現行中選挙区制の問題では、私は率直に、個人レベルでの争いが激しくなると、ややもすれば、政策以外の問題で、個人の責任で本来政党がやるべき仕事をやらなければならないという弊害について申し上げました。議員は今、それは自民党だけの話で、よその政党には関係ないことだとおっしゃいますが、それはいけません。政党というのは、いつの日か必ず政権をとろうという大きな志と夢があるはずじゃありませんか。だからシャドーキャビネットもできたんじゃたいですか。政権をとろうという気持ちがなかったらシャドーキャビネットはおつくりになる必要はないはずです。私はそういう意味で、我が党が体験してきた。同じ政策同士で、しかも個人の域で争うことをやめて、なるべく政策、政党本位に持っていきたいということを考えておるわけでございます。
 同時にまた、今小選挙区のイギリスや韓国の例を引いていろいろおっしゃいましたけれども、イギリスは単純小選挙区制でございました。制度を各党の代表の皆さんが御視察をいただいて、そのイギリスの選挙制度についての各党の皆さんの帰国の報告書も私はいただいてよく読ませていただきました。イギリスで、もし過半数の議席を獲得し得る政党が存在する間は改革はされないでしょう、改革があるとすれば、連立政権が二、三回続いた後でしょうという有名な教授の発言等もその中で紹介されておりました。私は、いろいろな状況があると思いますが、選挙制度はその国の歴史や文化や伝統にふさわしいものが選ばれていくのではなかろうか、こう考えております。
 したがいまして、今御意見のありました。いわゆる併用制につきましても、審議会でも、自民党の方でも、いろいろな議論のときは視野に入れて議論がなされたことはそのとおりでありますし、答申にもその理由がきちっと書いてございましたが、それは、民意をそのまま反映するという特性も持つ反面、小党分立とたり連立政権となる可能性が高い、連立政権となる場合には、政権を担当する政党が国民によって直接選択されるのではなくて、政党間の組み合わせ、交渉によって決定されてしまうというところにも一つの問題点があると答申に指摘がございました。
 また、この制度、方向を加えていきますと、いわゆる過剰定員の制度というものも理論上出てくることになりまして、それらの問題点を十分視野に踏まえた議論の結果、比例代表制と、そして並立制とをあわせるということ、それが小選挙区比例代表並立制の答申の考えでございましたから、御理解を賜りたいと思います。
 また、人口格差と区割りの問題は、審議会で、選挙区間格差は一対二未満とすることを基本原則として作業を行っていただいたと承知しております。最大格差はその結果一対二・一四六となりましたけれども、基本原則はほぼ貫かれており、改正案をお認めいただければ投票価値の格差是正の要請にこたえることができるものと考えております。
 また、政治資金規正法改正案において資金集めパーティーを公認はいたしましたけれども、極めて節度を設け、厳しい条件をつけ、公開性、透明性と限度をきちっと決めました。これによってパーティーの行き過ぎが是正され、節度あるものになっていくと私は考えておりますし、選挙制度の改革にあわせて政治資金の調達を政党本位の流れに改めていこうとしており、選挙制度及び資金制度を通じた根本的な改革にこれはつながっていくと信じております。
 なお、政党助成を行うというのであれば、現行法が目標としておる企業献金を廃止しろと御指摘がございましたが、企業献金については、これは原則として政党に限ることにし、同時にまた、こういった企業の社会的存在というものも十分考えながら、節度のある態度で臨んでいきたいと考えております。
 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
#19
○副議長(村山喜一君) 金子満広君。
    〔金子満広君登壇〕
#20
○金子満広君 私は、日本共産党を代表して、小選挙区制の導入を中心としたいわゆる政治改革三法案について質問をいたします。
 総理、今や小選挙区制に対する国民の批判は日ごとに高まっています。国民の多数の声となっていることは事実であります。今国会の開会から今日までの短い期間に、小選挙区制反対の請願署名は既に百数十万に達しています。さらに、地方議会においても次々に反対の意見書が採択されているのが現実であります。また、最近のマスコミの世論調査の結果でも、小選挙区制を支持するという声はわずかに二割台であります。しかも、すべての野党が政府提出の小選挙区制に反対し、自民党の中からも反対の声がますます大きくなっているのは、天下周知の事実であります。(拍手)
 言うまでもありませんが、選挙制度は民主主義の基本にかかわる問題であります。総理は、このような反対の世論と声をあくまでも無視して、小選挙区制を強引に押し通そうというのか。それは、総理が常々言っているところでありますが、自由と民主主義の普遍的原理ということとどのように両立するのか、この席ではっきりとお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 今、政府が提出した小選挙区制がどういうものであるかは、余りにも明らかであります。小選挙区部分で九割台をとります。そして比例代表部分を加えて四割台の得票で八割の議席を独占するということは、だれが計算しても同じなんです、これは。これが現実なんです。国民の過半数の声は死票として葬り去られることになることも明らかであります。まさに民主政治の破壊そのものと言うほかありません。(拍手)
 総理は、先月八日のこの本会議で、我が党の不破委員長の質問に対して次のように答えました。「選挙制度のよしあしをはかる最大の基準は、国民の意思が国会に正確に反映されるということ」だ、このように明確に答えました。この答弁が真実であるならば、政府提出の法案は、この答弁の立場にも根本的に反するということになるではありませんか。それとも総理は、政権党の議席占有のためならば、国民の意思が国会に正確に公正に反映されなくてもよいとでも考えているのか、改めてお伺いをいたします。(拍手)
 総理は、小選挙区制になれば金がかからないんだということを繰り返し言っております。その誤りは既に明らかであります。日本は、かつて戦前、二度にわたって小選挙区制のもとで選挙を体験をしています。そして、その選挙がいかに金権腐敗にまみれたものであったかはハ当時の政府が繰り返し繰り返し強調してきたところであります。最終的に小選挙区制を廃止して現在の中選挙区制に移行したのは大正十四年、一九二五年であります。そのときの国会の模様は今改めて各方面で議論され、検討されています。
 そういう中で、当時の加藤高明総理は、小選挙区制の害悪について厳しい指摘を行いました。次のように言っています。「近時ノ選挙ヲ実見」つまり実際に見て、「近時ノ選挙ヲ実見致シマスルニ、各種ノ悪弊百出シ、殆ド其極ニ達シタカト見ラルル程デアリマスこさらに加えて、「就中選挙費用ノ濫増」、やたらにふえることであります、「濫増ハ量モ著シキモノノーツデアリマスこのように断言をしています。そして、当時国会に提出した資料でも、都道府県を単位とする選挙制度と比べ、小選挙区制の方が一・五倍から二倍の金がかかっていることが、具体的な提出された資料の中で明らかにされています。総理はよく、それは昔の古い話だと昔話で片づけようとしていますが、これこそ現実的な問題であります。
 私は、先月二十二日の本院予算委員会でこのことを指摘し、金がかからないと言うのであれば科学的な数字を具体的に示すように求めましたが、総理は何と言ったか。「科学的な数字を比較検討して出せと言われても、ちょっとそれは困難な作業」であらざるを得ない、このような答弁であります。それにもかかわらず、繰り返し繰り返し、小選挙区というのは金がかからないんだということを述べていますが、どのようにかからないのか、空宣伝でなくて、これこれこうだということをきようは具体的にお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 言うまでもなく、選挙制度は政党や議員のためにあるのではありません。国民の意思をどのように広く正確に国政に反映するのか、ここに基本があります。これが大原則であります。この点で今やるべきことは、小選挙区制などではなくて、既に五年前の一九八六年五月に国会決議になっている、現行選挙制度のもとでの抜本的な定数是正を緊急に行うことであります。
 国会決議は次のように述べています。「選挙権の平等の確保は議会制民主政治の基本であり、選挙区別議員定数の適正な配分については、憲法の精神に則り常に配慮されなければならない。」こう述べた上で、二人区・六人区というのをなくすんだということを明記しています。現行選挙制度の堅持を前提にして定数是正を義務づけているのであります。七日の日に放映されたNHKの世論調査の結果でも、五二%、過半数が現行の中選挙区制のもとでの定数是正を要求しているのであります。まさに国民の声であります。
 ところが、総理は、一票の格差を先ほども、一対二に近づけるんだということを繰り返し答弁していますが、それは現行中選挙区制のもとでの定数是正という国会の決議とは全く違ったものであり、まさに本末転倒、このことであります。総理は、明確な国会決議を否定するのかどうか。勝手な解釈はできないはずでありますから、はりきりと答えていただきます。(拍手)
 かつて総理は、八九年十月の衆議院の本会議では、この定数是正の問題について、衆議院本会議において決議されていることであり、事柄の性質上、各党で十分御審議をいただくことが重要だと明言しているのであります。
 そこで総理、我が党を含め各野党は、既に国会決議に基づいて現行中選挙区制のもとでの一票の格差を一対二未満にする具体的区割り案を出しているのであります。審議する条件は既にできている。審議できないのは、自民党が責任を持った案を出していないからであります。なぜ総裁として自民党に責任ある案を出させないのか。よく、対案を出せ、対案を出せということがその辺で聞こえますが、案を出していないのは自民党だけではないですか。(拍手)その理由について伺います。
 次に、この際、明らかにしておかなければならない問題があります。それは、政府が政治改革を言うなら、小選挙区制などではなく、政治腐敗の根底にある企業献金にまずメスを入れるべきだということであります。
 政府が政治改革を言い出したのも、企業の出す金で政治が動かされる実態が白日のもとにさらされたあのリクルート事件がきっかけだったではありませんか。ところが、先日自治省が発表した九〇年の政治資金収支報告書を見ても、いかに企業献金が政治を動かし、国民の不信を買っているのかが浮き彫りになっています。しかも、今癒着構造の究明が大問題となりており、一大不祥事件の渦中にある四大証券及び金融不正の問題の六銀行から国民政治協会を通じて自民党に六億円を超える献金がされていることが公表されています。こんなことでどうして証券・金融、あの不祥事件、不正事件の究明ができるのか、国民は今大きな疑問を持っています。総理の答弁を求めるものであります。
 企業献金については、今や財界の中からさえもその本質が公然と指摘されています。日経連の諸井虔氏は、先月の新聞紙上で、「企業の立場で言えば、本来、企業にとってプラスにならないことに金を出すことは株主に対する背信行為であり、何かプラスのことをやろうとすると本質的に汚職ということになる。企業はいま背任と汚職のはざまにいるようなものだ。」と述べているのであります。これはまさに事の核心をついた真実の発言であると考えます。諸井氏といえば、日経連の政策委員であります。その財界の幹部が、企業献金は背任と汚職のはざまだと言っているのでありますから、総理は、この企業献金を背任とみなすのか、それとも汚職とみなすのか、どちらの態度をとるのか、明確に答えていただきます。(拍手)
 総理、企業献金がリクルート事件以後も大幅にふえ続けています。ところが、出されている法案では、襟を正すどころか、企業献金を温存し、拡大し、リクルート事件であれほど問題になった政治資金集めのパーティーについても、これを合法化しているのであります。
 今、政治献金が、企業の献金が大問題となっているとき――当時、三木総理は、政治資金規正法を改正して、企業・団体献金については見直しし、政治献金は個人による拠出をふやすための方策を検討することを条文に書き込みました。ところが、金権政治の反省から出発すると言いながら、海部総理はその条項をも今度は削除しているのであります。全く逆ではありませんか。企業も社会的存在などと言わないで、企業献金を続けるのか、それとも禁止するのか、明確に総理、自治大臣、答えていただきたいと思います。(拍手) 政党助成法でありますが、そこでは、まず政党とは何かを、その定義を決め、国費をそこに支出しようというものです一そもそも政党の政治資金は、それぞれの政党と党員が政策を国民に訴え、その支持のもとに個人から自主的に拠出してもらうのが原則であり、根本的な民主主義の立場であります。我が党の政治資金はこの原則にのっとっています。その努力を放棄し、企業献金を継続し、さらに国費をそこに充てるなどということは全くの邪道であります。政治献金のあり方、これを一体どう考えているのか、お答えをいただきます。(拍手)、以上、私は明確に問題点を指摘し、質問をしてまいりました。ここで改めて、民意に背き、議会制民主主義を破壊する小選挙区制、この小選挙区制を柱とする法案の撤回を強く求めて、総理の見解をただします。そして、今後一切、小選挙区制導入の火種を残すべきではありません。今やるべきことは定数是正である、このことを再度主張して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 金子議員にお答えをいたします。
 今回の政治改革関連三法案は、国民の信頼と負託にこたえる確固たる政治を新しくつくり上げていきたい。それは、議会制民主主義のもとで政党本位の、政策本位のそういった政治活動が行われるようにしていくために、選挙制度審議会の答申を踏まえて、根本的に改めるべきものを三つの法案にまとめて提案をしている次第でございます。
 おっしゃるように、私は何度も、民意が反映されることが公正な政治のために必要だということをよく言ってまいりました。小選挙区比例代表並立制は、民意の変化が敏感に議席数の変化をもたらすものとされます。比例代表制を並立させることによって、少数意見の国政への反映にも十分配慮しようとするものであり、さまざまな民意の的確な反映に寄与していくものと信じております。
 また、国会に国民の意思が反映しておればこそ、今までの選挙のたびにいろいろと仕組みについて御議論があったわけでありますから、責任ある政治が行われるために、政権が安定することなどの要請にこたえられるために、きょうまでの制度で行われてきました。そして、国民の不信である政治資金の問題を改めるために、今回は三桂案を用意したわけであります。
 小選挙区制になったら金のかからない理由を科学的にわかりやすく説明しろということでありますけれども、これは本来、政党がやるべきことを今は個人がやっておる面がたくさんあり過ぎるのではないでしょうか。例えば、政策の宣伝、政策の立案あるいは選挙区への伝達、いろいろな問題をとらえても、これは政党政治というならば、政党が行うべきものであろうと私は思うのです。そういったことがきちっとしてくると、やはり政策本位の、人物本位の討論となっていくでしょう。私は、個人が個人として今行っている政策を離れたところの競い合いやあるいは選挙区との関係構築の作業に必要以上のお金がかかっておりますから、小選挙区にすればその分がなくなっていくであろうということは、これは御理解をいただけるものだと思いますし、また、定数是正に関する問題については、あの国会決議にも定数是正に関する国会決議等が出ております。定数是正しろということがあの決議の一番大きな問題点であったと受けとめ、今回の法案の中では、原則として一対二となるように努力をいたしました。そして、その結果の御返事も審議会からいただきました。三法案を一括してお願いしておりますのは、この選挙制度の改革とあわせて、投票価値の格差是正を図ることのできる内容の法案を提出しておるということでございます。
 また、今回の証券・金融不祥事の問題については、先日来のこの議会を通じて、この不祥事件が再び起こらないように、公正な社会の理念からいって、なすべきことはなさたければならおという政府は責任を感じ、証券取引法の改正を今国会中に提出すべく努力もしておりますし、また同時に、大蔵省自身に、通達を出したにかかわらずこのようなことになったことの反省に立って、どのようにしたらいいかという検査・監督の機能強化その他も極めて精力的にただいま努力をしておるところであります。
 企業が合理的な範囲内において政治献金を行うということは、これは背任ではございません。それは最高裁判所の判例でも認められておるように、背任の問題は生じないものと承知しております。もとより特定企業との癒着を疑わしめるようなことのないように、汚職にならないように、企業等の政治献金が節度を持って行われ、受け取る我々の方も十分節度を持って戒めていかなければならないことは当然だと考えております。
 政党の資金は、政党と党員が政策活動を行う、その政党の政策活動は公的性格を有しておるわけであります。この公的性格を有しておること、これにかんがみて、政党が中心となって政党の機能や役割がより現実的に重要なものとなりますので、政党活動の健全な発達を促進するため、諸外国の状況も勘案しながら創設しようとしておるものであります。
 最後に、小選挙区関連法案疫撤回を直ちに行えということでございましたが、私どもは議会制民主主義のもとで政党政治を樹立したい、政策本位、政党中心の政治活動に切りかえたいという強い願いを持って三法案を提出しておりますので、どうぞ御審議をいただき、御理解と御協力を賜るようにお願いを申し上げておきます。
 残余の質問は、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣吹田ナ君登壇〕
#22
○国務大臣(吹田ナ君) 金子先生の御質問の中にありました。三木総理のときの改革の方向に逆らっているんではないか、いわゆる企業、団体からの政治献金を廃止したらどうだというような御意見でありましたが、この三木内閣時代のいわゆる昭和五十年の政治資金規正法の改正は、政治活動に関する寄附の量的制限、質的制限等を制度化したものでありますが、その際、企業その他の団体が行う政治献金のあり方については、文字どおり検討を加えるものとされていたと私どもは承知しておるわけであります。
 今回の政治資金制度の改革は、各界の有識者から成る選挙制度審議会において十分検討を実はされて答申されたわけであります。そういったことからいたしまして、選挙制度の改革に合わせて政治資金の調達を政党中心にする、いわゆる政治資金の公開性と規制の実効性を確保するなどの改革を行おうとしておるわけであります。
 このような政治資金制度の改革の中で、企業など団体が行う政治資金については、原則として政党に限るということにいたしておるわけでありますので、御了解を願いたいと存じます。(拍手)
#23
○副議長(村山喜一君) 米沢隆君。
    〔米沢隆君登壇〕
#24
○米沢隆君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されました政治改革三法案に対し、総理の見解をただしたいと思います。
 総理、今国民が政治改革に求めているものは何でありましょうか。端的に言って、リクルート事件で明らかになった政治と金の不明朗さを正し、政治家のみずからを律する高い倫理観と公正な政治の確立を求めているのであります。ところが、政府・自民党は、どこでどう間違ったか、自分たちの責任は棚上げして、リクルート事件は政治や選挙に金がかかり過ぎるから起きた。それは中選挙区制度がすべての元凶だと決めつけて、政治改革の焦点をすりかえ、選挙制度改革ができなければ政治改革は一歩も進まないという姿勢に終始しているのであります。
 この論理は、現行中選挙区制度のもとでは、政権を目指す政党は同一選挙区で複数の立候補者を出さねばならず、この複数の立候補が政策、政党本位の選挙を不可能とし、政策以外のサービス競争に陥り、金のかかる選挙を助長している、したがって、選挙制度を政策で争う制度に変えなければならないとするものでありますが、しかし、この論理は余りにも短絡的に過ぎる。重大な見落としかあります。このような理屈を言う前に、一体だれが何のためにそんたに金をかけているのか、金をかけるだけかけた方が有利となる選挙となっているのは、それが中選挙区制度に起因するものではなく、金をかけたい人がおり、それだけの金をかけることを可能とする政治資金のあり方が不透明なまま放置され、選挙運動の公正さを確保する制度が存在せず、明確なる選挙法違反に対しても実効ある制裁措置がなされていないなど、選挙制度以前の問題があるからではないでしょうか。総理の認識を問いたいのであります。(拍手)
 その上、政策本位の選挙の追求については、私も否定するものではありません。しかし、政策・政党本位の選挙になったら、あるいは、小選挙区にたったら、果たして金のかからない選挙になるのでしょうか。総理はどのような理由で、何を担保にそのようなことを言われるのか、しかと承っておきたいと存じます。小選挙区制にしたからといって、金がかからなくなる保証は全くないと私は考えます。
 また、参議院に比例代表選挙を導入する際の理由も、当時の全国区が金がかかり過ぎることが挙げられましたが、導入後三回の選挙を経た今日、自民党の中では、名簿登載順位の決定に関して水面下でわけのわからぬ大きな金がかかるようになっていることは周知の事実ではありませんか。(拍手)総理、本当に金のかかる選挙を助長しているのは選挙制度のためたのでしょうか、選挙制度を変えなければ政治改革は全くできないと考えているのか、見解を伺いたいと存じます。
 さて、議院内閣制下での選挙制度の果たすべき役割には、民意の公正な反映と安定した政権をつくり出すというバランスのとれた二つの役割があります。その観点から今回の政府案を見るに、民意の公正な反映は不当にも軽視され、政権の安定という名目を口実に、自党のみを有利とするゲリマンダー的制度を恥ずかしげもなく前面に押し出しているのが大きな特徴であります。小選挙区制を中心とする並立制の最大の欠陥は、だれが何と言おうとも、民意が公正に反映されない、すなわち、国民の意見が国会議席に忠実に反映されないということであります。
 小選挙区制を採用している国の最近の選挙の死票率は、イギリスでも四八・二%、カナダでも四六・六%、韓国でも五二・六%などであり、日本の昨年の総選挙の死票率二三%の倍以上となっており、民意を切り捨てる制度であることは明らかであります。(拍手)さらに、小選挙区制のモデルと言われるイギリスでは、前回総選挙で第三党である社会・自由連合は、約二三%の得票を得ているにもかかわらず、与えられた議席はわずか三%の議席でしかありません。まさしく小選挙区制度は、この死票の増大によって、大きな政党はますます大きく、小さな政党を抹殺しようとする制度であると言っても過言ではないのであります。このように不公正な制度にはイギリス国内にも多くの批判があり、ヨーロッパ議会の選挙制度を決める際には、約四割もの国会議員が小選挙区制に反対しているのであります。
 小選挙区制を中心とする並立制の第二の欠陥は、有権者の候補者選択の自由が不当に制限されるということであります。定数一名の小選挙区では、有権者は候補者を決める過程には一切参加できず、政党があらかじめ決めた一人の候補者に投票できるのみであります。現在の制度よりも有権者の候補者選択の自由は圧倒的に狭まり、この有権者の自由な選択のかわりに、選挙区の政党内における狭い範囲での候補者選定作業が有権者の声の届かないところで行われるのであります。
 明るい選挙推進協会の昨年の総選挙の実態調査によりますと、投票した理由として、どうしても当選させたい候補者がいたからとする人が二〇%、守り立てたい政党があったからとする人が一〇%となっております。有権者は、政党があらかじめ一人の候補者を決め、その人に投票するという方式よりも、選挙においてみずからの判断で候補者を幅広く選択する方式を望んでいるのであります。
 小選挙区制を中心とする並立制の第三の欠陥は、まさに小選挙区と比例代表という原理的に異なる制度を並立させたところにあり、重複立候補を認めたことにより、その矛盾を増幅させているのであります。
 あらゆるマスコミの試算は、小選挙区では自民党が八割近い議席を占めることを予測しています。しかしながら、前回の参議院選挙の比例代表区での自民党の得票率は二七・三%であり、全五十議席のうち十五議席を占めたにすぎません。前回のみならず、自民党は、旧全国区時代を含め全国を選挙区とする選挙において一回も過半数の得票率を得たことはないのであります。並立制においてこの比例代表の方で過半数を割るという結果が出たにもかかわらず、小選挙区の方で得票率の倍近い八割前後の議席を占めるという事態が起こるならば、どちらを本当の国民の意思とするのか、問題が生ずると言わざるを得ません。また、そのような政権は国民の信頼を得られない不安定な政権と言ってもいいのでありましょう。
 並立制の持つ、以上の民意の切り捨て、有権者の選択の自由を狭めること、並立させたことによる国民の意思の不明確さ等について総理はどのような見解を持たれるか、しかと承りたいと存じます。
 並立制の第四の欠陥は、小選挙区の議席の固定化を招くことであります。
 イギリスでは、全体の選挙区の四分の三の選挙区では当選する政党はあらかじめほぼ決まっており、残りの四分の一の選挙区で勝敗が争われていると言われております。小選挙区制は、多くの無風選挙区と、激烈なる選挙が行われる選挙区とに二分してしまうのであります。また、アメリカの連邦下院議員選挙の新人当選率は、過去五回、五%を下回っていると言われ、一九五五年以来、三十六年にわたり民主党優位が続いているのであります。
 これらの事例からもわかるように、小選挙区制では議員の安定した新陳代謝は望めず、政界への人材流入を妨げる効果を持つものと言わざるを得ません。
 並立制の第五の欠陥は、この制度導入の大きな理由としている政権交代の可能性が高まるどころか、野党がほとんど存在しない翼賛体制的政治状況を生み出す可能性が大きいと言わざるを得ません。自民党永久政権への道を開くものであるということであります。
 小選挙区制を中心とする制度は、あらかじめ拮抗する二つの政治勢力があり、しかもその二つの政治勢力の政策的な距離がかけ離れていないときに初めて比較的うまく機能するものでありまして、このような状況において初めて政権交代が現実のものとなるのであります。
 我が国の政治状況はこのような状況にはなっておりません。第一党と第二党の得票率は、昨年の総選挙で四六・一%対二四・四%と二倍近い開きがあります。また、その政策的距離は欧米諸国と比較にならないほど離れているのであります。さらに、イギリスのように政党の支持基盤が地方分化しておらず、ほぼ全国均一である我が国に小選挙区制を導入すれば、第一党が小選挙区の大部分を占めてしまうのは明白であり、あらゆるマスコミの試算もこのことを証明いたしております。
 日本政治のこのような現状のもとで、小選挙区制を中心とする並立制を導入するならば、小選挙区のもたらすこの議席の独占と議席の固定化が、現在の第一党である自民党の永久政権への道を開くものになることは明白であります。
 並立制の第六の欠陥は、政権の安定ということに関して誤った前提に立って立論しているということであります。その誤った前提とは、連合政権を不安定なものと断定し、単独過半数政権のみが安定しているということであります。連合政権を不安定とする見解は、今日の政治学では既に完全に否定されている見解であります。
 議会制民主政治が成功するための要件として、二党制が望ましいと考える傾向が強い原因は、限られた大国のうち、アメリカ、イギリスの二党制が安定的であり、不安定であったワイマール・ドイツ、第三・第四共和制フランス及び戦後イタリアの経験を一般化したからであります。しかし、多党制下での連合政権においても、安定的政権を継続している国は、戦後の西ドイツ、スカンジナビア諸国、ベネルックス諸国、スイスなど多くの例があります。連合政権を不安定のものと決めつけ、単独過半数政権でなければ安定した政権とならないという誤った先入観が、小選挙区制の導入の理由になっているのであります。
 しかも、現在の日本国民の意識は、望ましい政権の形態として、単独政権を望む人は一割前後しかおらず、過半数の人が連合政権を望んでいるのであります。いわば、国民は強い政府よりも相互に抑制し合う均衡ある政府を望んでいると言わなければなりません。今回の小選挙区制の導入は、このような国民の意識とも真っ向から反するものであります。
 小選挙区制の持つ議席の独占と固定化、それによる第一党永久政権化、我が国のような第一党と第二党以下の勢力分布及び政策的距離から見て、小選挙区制を導入すべき理由は全くないこと、国民は単独過半数政権よりも連合政権を望んでいること、これらの点について総理の見解を承りたいと存じます。
 最後に、今回の選挙制度改革案の提案は余りにも強権的であり、そのことは自民党内にも多くの良識的反対があることが証明いたしております。リクルート事件に端を発した今回の政治改革の結末が、自民党が現在の議席よりも再議席以上も上乗せする選挙制度の導入に終わったのでは笑い話にもなりません。衆議院定数の抜本是正をうたった昭和六十一年国会決議を無視し、党内の良識的反対を力ずくで押し切り、野党がこぞって反対する中で選挙制度改革案を提出した総理の真意を問いたいと思います。あくまで選挙制度改革と他の政治改革との一体的改革にこだわる限り、政治改革は一歩も進まず、国民の政治不信を増大させることにつながりかねません。
 この際、政治改革は、政治家の倫理確立のための政治倫理法の制定、政治腐敗防止のための連座制強化を柱とする公職選挙法改正、政治資金の透明性を高めるための政治資金規正法改正、政党・政策本位の政治を促進するための政党への公的助成制度の確立など、各党合意可能なものを優先させ、各党の意見の隔たりの大きい選挙制度改革と国民が緊急に求めている課題とは切り離し、二段階で進めるのが至当であると私たちは考えておりますが、総理の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 米沢議員にお答えを申し上げます。
 金のかかる選挙を助長しているのは選挙制度のためなのか、選挙制度を変えなければ政治改革は全くできないと考えておるのかと言われましたが、私は、政治改革というのは、例えば個人の倫理観、政治家が守らなければならぬ倫理、いろいろあると思います。けれども、いろいろ努力も重ねてまいりましたけれども、個人の倫理観を訴えるだけで今の状況が変わるものかどうか、長い間自民党の中でも議論は続きました。結局、現在、議会制民主主義のもとで本当の政党政治が行われていないのではないか。個人政治が行われているところから、いろいろ必要以上のお金もかかっておるのではないか。いろいろ制度、仕組みを考えて、そしてこの選挙の制度というものを変えることが必要である、こういう結論にも達し、また、この政治倫理のことや政治資金をめぐる問題の底流には、やはり候補者個人の責任ですべて対処させなければならない制度の根本的な問題がある、こういう結論に達しておるわけでございます。
 また、小選挙区を導入して金のかからなくなる理由は何かと言われましたが、これも、この問題に答えるには、本来政党がなすべきことを、今、余りにも個人の政治家が行っておるのではないだろうか、お金集めの方も個人の責任で対処しておるのではないだろうか。もう少し政党中心の、政策本位の活動になるなれば、そういった必要以上のお金がかからなくなるのである、私はそう思っておるのです。
 また、委員ここで細かく、小選挙区を中心に死票が多くて民意が反映されにくいと御指摘になりましたが、死票の問題というのは、これはやはりそういった反対意見があるということや、あるいは当選者にとってはそのことを十分自覚して政治を行うとか、いろいろな意味にもとれる票でありますし、また、そういった小選挙区だけの持っておる問題点を幾らかでも緩和するために、比例代表制を並立させることによって少数意見の国政への反映にも十分配慮しようとし、民意の的確な反映に資する制度になっておる、私はこう考えますし、また、候補者選択の自由が制限されると御指摘でございましたが、私は、有権者の皆さんからすれば、各政党が責任を持って一人ずつ立てる候補者が政策中心の政策論争をしてくれると、その政策を聞きながら候補者を比べて自由に選択ができるわけでありますから、このことは候補者選択の自由が制限されるのではないと私は考えるわけでございます。
 また、並立制により国民の意思が不明確になるとの御指摘でありましたが、政権の選択についての国民の意思が明確な形で示される小選挙区選挙と、多様な民意をそのまま反映する比例代表選挙の二つの選挙によって議員を選ぼうとするものでありますから、この二つの選挙を組み合わせることによってさまざまな民意がより的確に反映されるものと私は考えますし、また、小選挙区の議席の固定化を招くと御指摘になりましたが、一人だけの人が固定化されるというのも、私はそうではなかろう。常に緊張状態を持った政治活動を要求されることになるわけですし、また、政策努力が有権者の期待にこたえられたい場合には、交代を余儀なくされることになるでしょうし、また、各政党からも、新人の登用などを含めて、各政党の候補者が出てこられれば、それこそ政策論争で交代が起こるわけでありますから、必ずしも、各党が立候補させられないというのならいざ知らず、立候補させられれば、必ずしも議席の固定化にはつながるものではないと考えております。
 また、自民党永久政権の道を開こうとしておるものではございません。民意が敏感に議席数の変化をもたらすとされるこの制度に入るわけでありますから、これは自民党としても政府・与党の立場で、民意に機敏に、的確に対応した政策努力をしていかなければならぬということに相なるわけでありまして、より緊張感の高い議会制民主主義の道に入っていくことになると私値思います。
 また、連合政権については、政権が国民の意思によって直接に選挙されるべきであるということが選挙制度審議会でも大いに議論になったところであります。連立政権の場合は、政権を担当する政党が国民によって直接選択されるのではなくて、政党間の交渉によって決定されてしまうという問題も審議会では指摘されておったことを申し添えさせていただきたいと思います。
 政治に対する国民の信頼を確固たるものにするために選挙制度の改革案を提出したわけでありますし、二年間にわたって、審議会でも各界の代表の皆さんが真剣な御議論をいただいたその結論でありますし、また、自由民主党においても、政治改革のためにあらゆる角度からの議論を二年間以上にわたって何回も行ってきた結論でございます。内外に山積する問題に的確に対応し得る政治を確立するためには、政治改革の実現が極めて重要な問題であると考え、特に政党本位、政策本位の選挙制度に変えていくことが議会制民主主義というものを守っていくためには大切な問題であると私は考えております。
 そのような見地から、三法案の一括しての成立をお願いしようというので、整合性を持って、一体として国会に提案をさせていただきました。どうか御理解をいただいて、これらの問題についての御審議に協力をいただき、一成立を図ることができますように、よろしくお願いをいたしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○副議長(村山喜一君) 菅直人君。
    〔菅直人君登壇〕
#27
○菅直人君 私は、進歩民主連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております政治改革関連三法案について、論点を絞って質問をさせていただきます。
 今回の政治改革は、リクルート事件が直接の契機となり、政治浄化の徹底により政治への国民的信頼を取り戻すために取り組まれたものと理解をしております。しかし、政府・自民党は、この政治改革問題を選挙区制度の問題にすりかえ、小選挙区制こそが金がかからない制度だと主張し、その導入を強行しようとしております。しかし、奄美群島区の一人区の例からも明らかなように、小選挙区であるから金がかからなくなるというのは明らかに間違っております。実際に奄美選挙区から出ている同僚議員の意見をぜひ皆さんもお聞きをいただきたいと思うところであります。
 すなわち、政治の浄化というのは、決して選挙区制度の変更によって達成できるものではなく、腐敗選挙それ自体をなくしていくための改革が必要であります。そのためには、イギリスにおいて一八八三年に設けられた腐敗防止法に匹敵をする法律を我が国でもつくって、腐敗選挙を一掃することが何よりも必要だと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。
 我が国のこれまでの法律においても、選挙違反における公民権の停止や、連座制における当選無効、さらには百日裁判などが既に規定をされてまいりました。しかし、実態はどうだったでしょうか。戦後、国会議員が一体何人これらの規定によって議席を失ったか、総理は御存じでしょうか。
 私が知る限り、公民権停止により国会議員の職を剥奪されたのはわずかに戦後一件。また、連座規定によって国会議員が任期中に当選無効になったのも、昭和三十二年、福島一区の自民党代議士の一件のみであります。しかも、この後者のケースにおいては、当該代議士が福島県知事選に出馬のために上告を取り下げたため任期中に判決が確定したものであり、最後まで争っていれば、任期中は当選無効は確定しなかったと言われております。さらに、現在、海部内閣の主要閣僚の中にも、出納責任者が買収により有罪となり連座規定に違反をしながら、判決確定が選挙から七年後であったため、当選無効による議席剥奪を受けずに済んだ人もいるということを総理は御存じでしょうか。同様に、任期が満了して再選後に選挙責任者等の有罪が確定をした例も、それ以外にも幾つか報告をされているわけであります。
 つまり、現行法の連座規定は一度として実効を上げておらず、腐敗選挙の歯どめになっていないということをこの事実が示していますけれども、総理並びに自治大臣はこの点をお認めになるんでしょうか。
 今回の公職選挙法改正案には、連座規定の強化の立場から五年間の立候補の制限が初めて盛り込まれており、このことは前進であると評価をいたしております。しかし、五年間の立候補制限では一回落選したと同じ程度の制裁であって、これで十分だとは言えません。腐敗選挙を行えば政治生命が絶たれるという原則を確立するためには、少なくとも十年間の立候補制限が必要だと考えますが、総理はいかがお考えですか。
 しかも、改正案の規定には重大な抜け道が存在をしております。つまり、改正案の規定は、あくまで連座裁判の判決が確定後の次の選挙から立候補が制限されるわけですから、再選をされていれば任期満了までは議席が維持できるという点です。そのため、例えば参議院選挙で違反をし、裁判を長引かせて、次の選挙で再選をした直後に判決が確定した場合には当選無効にもならない。しかも、任期満了までは五年以上ありますから、立候補制限も無意味になるわけであります。明らかに法の不備と思われます。
 もちろん、百日裁判で違反選挙の任期中に判決が確定すれば、当選無効と立候補制限が重なって効果を上げるわけですけれども、実際上は、被告があらゆる手段を駆使した場合には、裁判の長期化を避けることは大変困難であります。今回の改正案で公判期日の一括指定が盛り込まれておりますけれども、これも効果は不明であります。連座規定に抜け道を与えないためには、再選後であっても判決確定時には議席を剥奪できるようにすることが必要と考えますけれども、総理並びに自治大臣はいかにお考えでしょうか。
 腐敗選挙が今も後を絶たないのは、金をかけてでも当選をした者が政治的には生き残り、金をかけずにきれいな選挙をやっても、落選をすれば政治的には淘汰をされてしまうという現実、つまりは、やり得という現実があるからだというのが選挙を経験をしたこの議場におられる議員皆さんの偽らざる実感ではないでしょうか。逆に、金をかけたことが理由で議席を失い、立候補が十年も制限されれば、その人物の政治生命は間違いなくなくなるでしょう。こうなれば、だれも選挙に不法な金を使う者はなくなるはずです。つまり、やり得ではなく、金を使えば逆に損になる制度をつくることこそ、政治浄化に必要不可欠なことだと考えます。こうすれば、たとえ同じ政党から二人の候補者が同じ選挙区に出たとしても、その競争は候補者の人物の見識やその活動によって判断されると思われますけれども、総理の見解を伺いたいと思うわけであります。
 次に、選挙制度について伺いたいと思います。
 政府案では、小選挙区を主とし比例代表を従とする並立制が提案をされております。確かに選挙制度として、比例代表制と並んで小選挙区制も多くの国で採用されております。しかし、我が国の場合、与党自民党が四〇%を超える得票率を占め、野党が多数に分立をしている現状では、自民党が小選挙区制によって圧倒的に有利な結果になることは、火を見るよりも明らかであります。自民党が、例えば分裂をして政界が大きく二つのグループに再編された後の議論としてならばともかく、今の状態で小選挙区制を導入することは、野党の議席が極端に少なくなるだけであります。自民党の皆さんは、そうしたみずからの分裂による政界再編をも覚悟の上でこのことを進めようとされているのか、その皆さんの見解もあわせてお聞きをしておきたいと思うところであります。
 そういった意味で、今回の小選挙区制導入は決して国民の声を正当に反映をする選挙制度にはならない、このように考えますけれども、総理のお考えをお聞きしておきたいと思います。
 私たちは比例代表制を基本とし、個人名投票をあわせて行うドイツ型の二票制の比例代表制が望ましいと考えます。その理由は、国民の声を正確に反映すると同時に、長年我が国でなれ親しんできた個人名投票も当選者の半数の決定について生かされるからであります。この点について、総理の見解を伺いたいと思います。
 政治資金規正法の改正案についてもお伺いをします。
 この中で政治団体の資産公開が規定をされることになっております。しかし、まず何よりも必要なのは、政治家個人の資産公開ではないでしょうか。進民連所属の各議員は、十年近く前より資産公開をそれぞれ行っており、また閣僚も就任時の資産公開が定例化をしてきておりますけれども、少なくとも国会議員全員が資産公開を義務づけられる、そうした法制化が必要だと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
 また、政党助成についても、議院内閣制のもとでは、与党は官僚を立法のスタッフとしてフルに活用できるのに対し、野党は立法の専門のスタッフをほかに求めなくてはなりません。野党について特に公費によるスタッフの充実が立法府の活性化のためにも必要だと考えますが、総理はどのようにお考えになりますか。
 さて、政府・自民党は、今回提出している政治改革三法案は一体であるという考え方を示されています。しかし、先ほども述べましたように、政治浄化の問題と選挙区制度の問題は性格を異にしており、三法案一体にこだわるのは小選挙区強行の手段としか思われません。少なくとも今国会では、合意可能性のある政治浄化について与野党協議の上法制化を進め、選挙区制度については政府案を廃案の上、並立制、併用制、中選挙区制度における定数抜本是正の三案を土俵にのせて、十分時間をとって議論を進めるべきだと考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。
 最後に、私は今は亡き市川房枝先生の選挙運動を手伝ったことから政治家への道を歩み出した者でありますけれども、政治改革を生涯の目標とされた市川先生に満足してもらえるような政治改革が実現するよう、総理にも一層の努力を期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#28
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 菅議員にお答えを申し上げます。
 今回の三法案は、先ほど来申し上げておりますように、本当の意味の政党政治を確立するために、政策本位の活動ができていくように、その問題を中心に考えて提案をした三法案でございまして、これは、決してすりかえでもございませんし、また、厳しい反省に立って行っておることも率直にお認めをいただきたいと思います。
 その意味で、イギリスの一八八三年の腐敗防止法に匹敵するような改革が必要ではないか、こうおっしゃいましたが、その精神、その考え方を取り入れ、今回でも選挙制度審議会では、連座制について対象を極めて拡大するとか、あるいはまた、連座裁判確定後の五年間の立候補制限を科するとか、また、公判期日を事前に一括指定してしまって、ここでるる実例を述べられたようなことにならないように、きちっとした対応をしていこう、改正法の中にそれなりの制度、仕組みの改善も盛り込んであるわけでございます。
 また、連座制の強化ということにつきまして、再び選挙が終わった後の本人の問題についてもお触れになりましたが、連座制というのはやはり候補者本人の有責性の限界の問題とか、あるいは五年間立候補すら差しとめられるわけでありますから、有権者の意思との関連の問題とか、いろいろ今後慎重に検討しなければならないテーマであると受けとめておきます。
 また、選挙にお金がかかるということ、これはやり得ではないかということでありますが、やり得でないようにしなければならないのであって、腐敗行為に対する厳正な措置は、お金をかけてやったことはいけないことであるということを、今回の改正法案においては明確にしておるところであります。
 また、並立制は得票率が大きい自民党に圧倒的に有利であるという立場の御議論でありましたが、私は、この制度、仕組みをマスコミの皆さんがいろいろな場合を想定して分けられたときに、前回の参議院選挙の全国区における得票などをもとに試算をされると、幾らか違いはありましたけれども、自由民主党にとって極めて厳しいものもございます。政策努力については、真剣に行っていかなければならないという、与党にとっても厳しい決断であったということを、どうぞ申し上げさせていただきたいと思います。
 この制度は、多様な民意をそのまま反映するという特性を持つ反面、併用制をそのまま行いますと、小党分立となり、連立政権となる可能性が極めて高いわけです。連立政権となる場合には、政権を担当する政党が国民によって直接選択されるということではなくなってまいります。政党間の交渉によって政権というものが選択されるようになっていく、こういった問題の指摘もあり、政府の審議会ではいろいろと議論があり、このような答申になったものと私どもは受けとめております。
 また、国会議員全員の資産公開の問題につきましては、自由民主党としても、政治倫理の確立のための国会議員などの資産公開法案を提案しているほか、各党の具体的な案に基づいて既に国会において御議論をいただいておると聞いております。適切な結論が得られますこと、これを心から期待をいたします。
 最後に、野党に特に公費によるスタッフの充実をとお尋ねがありましたが、今日までも立法調査費は与野党を通じて議員に出ておると思いますけれども、今後、議員活動に対する公的助成については、国会での御議論を踏まえながら、内閣としても、国会と十分調整の上、対応してきているところでありまして、今後の国会の御議論を見守らせていただきたいと思います。
 最後に、一たん廃案にして出直すべきではないかとのことでございましたが、今回の政治倫理や政治資金をめぐる問題の底流には、候補者中心の現行選挙制度の問題がどうしても根底にあります。政党本位、政策本位の選挙制度に変えることによって政治資金の問題も解決をし、同時に公的助成制度の問題にも入っていきたいという、全体を一つとしての整合性を持って実現することが肝要と思っておりますし、今回の法律によって議論になっておる一票の投票価値の格差是正の問題についても、この改革法案には織り込んであるところでございますから、御理解の上、御協力をいただきたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣吹田ナ君登壇〕
#29
○国務大臣(吹田ナ君) 菅先生にお答えをいたします。
 現行の連座制の当選無効は効果がないと考えるがどうかというような御意見であったと思いますが、現行の連座制の当選無効は効果がないのではないかということのお尋ねについて、私は、必ずしもそうではない。当選無効の措置のみでは、裁判が長期化した場合には、解散や任期満了により連座制の適用を免れる者が出てくるということは考えられます。このために、今回の改正案におきましては、当選無効に加えまして、連座裁判の確定のときから五年間の立候補制限を科することを提案しているところであります。
 それから、最後に、腐敗選挙を行えば政治生命が断たれるという原則を確立するためにも、少なくとも十年間は立候補をできないように制限したらどうだ、こういう御意見であったと思いますが、この連座制の強化を図るために、今回の改正案では、当選無効に加えて、五年間の立候補制限を科することとしております。参議院議員を除いては、任期は四年であります。また、任期六年間である参議院議員についても、百日裁判制度や、今回の改正により公判期日の事前一括指定が行われますならば裁判も早くなると思われますので、一般的には、六年後の選挙の際に立候補制限が科せられることになろうかと存じます。したがって、立候補制限を五年間とすることでも十分制裁の実効性は確保できるものと考えておりまして、御意見の十年間とすることについては、立候補の制限が基本的人権の制約であることからも慎重な検討が必要と考えております。
 終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
#30
○北村直人君 三案の趣旨説明に対する残余の質疑は延期し、明十一日午後一時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#31
○副議長(村山喜一君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○副議長(村山喜一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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