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#1
第120回国会 農林水産委員会 第5号
平成三年三月二十八日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     大渕 絹子君     野別 隆俊君
     猪木 寛至君     橋本孝一郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉川  博君
    理 事
                青木 幹雄君
                北  修二君
                谷本  巍君
                細谷 昭雄君
                井上 哲夫君
    委 員
                大浜 方栄君
                鎌田 要人君
                熊谷太三郎君
                鈴木 貞敏君
                高木 正明君
                成瀬 守重君
                初村滝一郎君
                星野 朋市君
                本村 和喜君
                野別 隆俊君
                三上 隆雄君
                村沢  牧君
                猪熊 重二君
                刈田 貞子君
                林  紀子君
                橋本孝一郎君
                喜屋武眞榮君
   政府委員
       農林水産省構造
       改善局長     片桐 久雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡  光君
   参考人
       宮城県志波姫町
       長        鈴木源次郎君
       長崎県諫早市長  野田あきら君
       東京大学農学部
       教授       今村奈良臣君
       佐賀県土地改良
       事業団体連合会
       会長       正木 裕美君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○土地改良法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(吉川博君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十七日、大渕絹子君が委員を辞任され、その補欠として野別隆俊君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(吉川博君) 土地改良法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして、お手元の名簿にございます参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところを本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 土地改良法等の一部を改正する法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の本法律案の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。
 御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十分以内とし、その順序は、鈴木参考人、野田参考人、今村参考人、正木参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、鈴木参考人からお願いをいたします。鈴木参考人。
#4
○参考人(鈴木源次郎君) 私は、宮城県志波姫町長の鈴木源次郎でございます。
 参議院の先生方におかれましては、農業農村の振興発展のために格別の御努力をいただいておりまして、心から敬意をささげ、深く感謝を申し上げるところであります。
 本日は、今審査されております土地改良法等の一部を改正する法律案に関し私の考え方を申し上げる機会を賜りまして、まことに光栄に存じ、ありがたい次第でございます。
 まず、私の町及び私が会長をしております十五町村の共同事業である迫川上流農業水利事業について御理解をいただくとともに、このことは、私がそして私どもが土地改良事業についてどのように認識し、どのように本事業が農業農村振興はもちろん国土保全上重要であるかということを御理解いただくことにも通じようかと存じまして、その概略を申し上げる次第でございます。
 私の町志波姫は、仙台市の北約六十キロ、国道四号線が町の西の端をかすめ、昨年三月、誘致開業いたしました東北新幹線くりこま高原駅が所在する宮城県北部地域のほぼ真ん中に位置する町でございます。地勢は広濶平たんで、総面積三千百ヘクタール、そのうち七〇%に及びます二千ヘクタールが水田という典型的水稲単作地帯でございます。十二万俵程度の売り渡し米を行うわけでありますが、その全量はササニシキで、しかも一等米一〇〇%での出荷を八年間も今続けている良質米の本場でございます。私の町を含む迫川上流一帯は、奥羽山脈の秀峰であります栗駒山直下のすそ野で、一六〇〇年代に伊達藩が三本の迫川の上流部から用水路を開削し、それぞれの沿岸平地を潤して近世農村社会を構成させたもので、自来、良質米産地として農村の発展が図られてきた地域でございます。
 戦後の農業基盤整備、土地改良については、私の町志波姫では、昭和二十六年、当時、村という呼称でございました志波姫の私は村長に選ばれたのでありますが、九〇%が未整理地という状況でございましたので、この耕地整理を進めることが戦後復興の基本だと、かように存じまして、全村を一区域とする土地改良区を設立し、経常費と幹線農道に補助をして、十アール区画の整備を進めたのであります。
 その後、昭和四十一年からは、土地改良区なしで、町行政対応によります県営圃場整備事業によって三十アール区画の再整備を進めました。昭和六十三年、おかげさまで八〇%の千六百ヘクタールが完工いたしました。この完工記念塔が、今新幹線駅前の直径十メートルの大水車でございます。そして、その水車を取り巻く十ヘクタールのカリヨンフラワー農園をも整備いたしました。
 迫川上流地域の水源は、現在北上川水系の迫川とその支流の河川水及び上流の花山、栗駒両ダムの貯留水でありますが、前述しました藩制初期に開削した八本のそれぞれ十ないし二十数キロメー
トルに及ぶ基幹用水路による取水及び昭和初期に設置した揚水機によって補完をしております。近年、用水路も老朽荒廃をし、かつ水量不足もございますので、直接受益九町、一万九百ヘクタール、間接受益六町村が、町村連合の申請をいたしまして、昭和五十三年から国営農業水利事業、附帯県営事業を進めていただいておるところでございます。国営では、二つのダム、五つの頭首工、二つの揚水機、七本で五十二キロメートルに及ぶ用水路、総事業費約七百九十億円、附帯県営は約百四十億円という大事業でございます。
 私ども直接受益する九町は、国営事業分の受益者負担について、その全額を町負担とすることとしておるところであります。ダムにつきましては、三五%ほどが治水分でございます。
 さて、私どもの農村は、近年までの等質性社会から急激に兼業化、混住化が進む多様な社会に変革してまいっております。しかしながら、底流として一貫するものは、大地のぬくもり、清冽な水に彩られた定住の地としての安らぎを与えるふるさとであるということであります。母である大地、父である水、生命ある者のすべてにとって、まして人間にとって、昨今農地は、食糧生産の場である以上にと言っていいほどに緑地の保全、治水、景観形成等国土の健康な保全上の価値が積極的に評価されてまいりましたことは慶賀にたえないところであります。
 私は、農業農村の戦後復興を先ほど申し上げましたように直接推進をした際における実践と、間もなく健康を害しまして離村をいたしまして、五十四年に二十四年ぶりに遠く離れた稼ぎ先から戻りまして再び村づくりの先導役として、今、混住化の進行、多様な健康食品志向、快適な定住圏への願い等から、御審査中の土地改良法等の一部改正案について若干の意見を申し上げます。
 土地改良事業は、地域の定住圏づくり、国民的資産としての自然条件の調整整備、個人的資産のレベルアップ等の諸要素がまさに混在したものでございます。
 一般的に、基幹用排水路は中小の一級河川に比してその規模、地域における住民生活上の効用、アメニティーとしての役割等々においてまさるとも劣らないものでありまして、幹線農道は優に一級町道並みかそれ以上に多面的に活用をされているところであります。こうした事実に基づいて私はヒューマンライフの定住圏を目指しておるわけでありますが、そのアメニティーづくりであるとの認識から、国営事業の受益者負担の全額、県営事業についても用排水事業分はその全額、農道事業については幹線及び集落道について町が直接受益者であるという認識に立って負担をいたしているところであります。
 大変僣越で恐縮でございますが、年齢も年齢でございますのでお許しをいただきまして先生方にお願いをいたしたいのは、国の補助事業は各省庁にまたがりまして数多くございます。県及び市町村の行政対応でそれぞれの個性、特質にゆだね、あるいはまた零細で事務処理経費がその大半を占めてしまうという結果を招くものも少なくございません。水と大地のよりいい結合を図り、国土基盤のレベルアップを進めるために、土地改良事業の基幹的事業分野における国の負担率をさらに引き上げていただきたいものとお願いを申し上げるのであります。
 土地改良事業における市町村の負担の明確化ということはまことに望ましいことと存じます。さらに、多様な価値の適正な評価推算によりますところのガイドラインの設定、さらにまたこれを裏づける地方財政措置をあわせ行われることを御期待を申し上げているのであります。
 土地改良区及び連合会の組合員以外の理事定数の拡大も図られようとしておりますが、これまた既に申し上げましたように、地域の総合的な基盤整備という立場からまことに望ましいものとして歓迎を申し上げるところであります。
 本改正案が一日も早く成立いたしまして、土地改良事業がさらに積極的に推進して農業農村の活性化が図られますことをお願いして、私の陳述を終わらせていただきます。まとこにありがとうございます。
#5
○委員長(吉川博君) ありがとうございました。
 それでは、次に野田参考人にお願いいたします。野田参考人。
#6
○参考人(野田あきら君) 長崎県の諫早市長をしております野田あきらでございます。
 参議院農林水産委員会の先生方には日ごろより農林水産業の諸政策を推進されておられることにつきまして深く敬意を表し、また、本日は、ただいま本委員会に付託されております土地改良法の一部改正法案につきまして私の意見を申し上げる機会を与えていただき、大変ありがたいことであり、深く感謝を申し上げる次第でございます。
 まず、意見を申し述べます前に私の市の概況を申し述べたいと存じます。
 昭和十五年九月に一町六カ村が合併して誕生しました諫早市は、有明海、橘湾、大村湾の三つの海に面し、くびれた地勢の中に長崎県の中央部に位置して、四方に延びる百四十五キロ平方メートルの行政区域と約九万一千の住民が住む交通の要衝的な中都市であります。美しくそびえる多良岳に源を発します一級河川の本明川等が丘陵や市街地を通り、広い干拓平野に流れ有明海に注ぐ自然美豊かな町でもございます。
 昭和三十二年に、死者五百三十九名を出す諫早大水害が発生いたしましたが、その復興後の昭和四十四年に団体の開催、西諫早ニュータウンの形成、諫早中核工業団地の造成等を約十五年間に受け持って、長崎県の中で人口増加傾向が続いており、新しい時代に対応できる基盤を整備して県央の中核都市として均衡的な発展を続けねばならぬと考えております。
 土地利用の状況を言いますと、市全体の面積一万四千五百ヘクタールのうち農地が三千五百ヘクタール、森林原野が六千百八十ヘクタール。農地のうち田が二千百九十ヘクタールで多半が干拓地であります。
 農家戸数は二千九百七十六戸、農家人口は一万三千三百三十七人となっており、市人口の約一四・七%になります。農家戸数は年々減少し、六十歳代を中心とする専業農家は四百八十七戸で農家のうちの一六・四%と少なく、納税申告できる営農中核農家は約百戸であります。
 さて、このたびその改正案が付託されております土地改良法につきましては、農業生産の基盤整備とともに、農村集落を主体とする地域整備を進める上で国土利用法で考える土地利用計画を市町村がどう考え対処するか、大変重要な意味合いを持つものと考えております。
 土地改良事業は、基本的に圃場区画の大型化、用排水施設・農道の整備、農用地の開発、土壌の改良など農業経営の基盤となる土地、水資源の整備をさらに進めて敵地適産の産地形成と農家所得の増大、農作業労働時間の短縮、水管理の合理化等を図るものであり、その時代に対応させて我が国の農耕民族的社会秩序と国土保全、治山治水の発展にも大きく寄与してきたと高く評価しているところでございます。
 特に、戦後の地域復興が農地改革によって耕作者自身の営農意識を高め、集落意識を促進し、地域の治水、交通、環境の面で改善整備が農業者自身の努力によってなされ、自然生活環境の保全の恩恵に浴していることに今気づくべきと考えております。
 諫早市内で行っている農道整備事業は、県で行っている農免農道、広域農道と市が補助を受けて行っている団体営農道がございますが、これは農作業のためだけでなく農業集落等の住民生活の道路あるいは地域振興のための産業道路として不可欠なものとして市が考え、申請し、一着手され、今後重要な役割を果たす市の道路計画の一環として持っており、将来市道編入の必要性が強いものもあります。
 また、湛水防除事業、排水対策特別事業も、その起因性でなくて下流となっている農業地域で治水上対応せざるを得ない国土保全、土地利用計画上の市の切り札的事業であり、その利益は上流にも及ぶものと考えております。
 長年の念願がかない、現在着工の運びとなりました諫早湾干拓事業は、地域防災と新しい時代に対応する総合的な地域浮揚策として地域全体が計画化できる不可欠のものと存じております。このように認識しております私といたしまして法律改正に対し所見を申し述べます。
 まず、第一に指摘しておきたいのは、末端の行政機関としての市町村は、土地利用計画を持ち、その計画の中で農地を土地改良事業によって時代に適応させる実施の中心的な立場にあると認識し、その責務を果たすべきと考えております。今回の改正の主眼が国営及び都道府県営の土地改良事業について、事業費の一部を原則として市町村にも負担させることができることにすることでありますが、今までなぜ規定していなかったかの理由は、土地政策上の権限上の問題からか、あるいは財政問題であったかと考えます。
 本来、土地は公共の福祉に反しない限りその所有権を認められ、利用する権利があると考え、農地は農業者が耕作し、営農するためその所有権と耕作権を一体化させたと認識しており、国土利用の観点から公共の福祉に反することになる行為は、土地を自然資源として大切な財産的な伝承意識も持たずに、利殖的に財物的換価価値の対象と考える者によって常に乱されていると考え、地形地勢を熟知している、不在地主のいない農業者と末端行政機関の市町村が、その意思、利用形態を第一義的に決定することが大切であると考えております。
 その考え方から、農免農道事業におきましても、湛水防徐事業におきましても、当市においては農家より負担金を取っておりません。市として土地利用計画上から交通、治水などの利益が市全体に及ぶと考え、公共の福祉の増進に資する公共的責務とその負担を考えているからであります。
 第二に申し上げたいのは、市町村の義務と明定する上は、財政措置について地方税法上または交付税算定基準上から、できるだけ配慮をしていただきたいということであります。それは固定資産税、都市計画税が地価を基準にして、地価が取引上の換価価値によって決められ、土地の資源的保全努力を評価しないので、その保全する費用、改良維持する経費と時点的に反比例することにもなってしまうからであります。農地が宅地化された場合、そしてその所有が農業者以外になった場合は、再び農用地に還元することはできない土壌破壊を伴います。土地は常に改良されるべきであって、改悪あるいは復元できないような廃地となるような短絡的な考え方でこれを取り扱うべきではなく、その責務は市町村の固有的な能力、権限、費用負担の可否にかかっておると感じます。
 第三に申し上げたいことは、土地改良事業の現代における営農上の多面的な性格を活用した事業をどんどん発足させていただきたいと思っております。
 土地改良事業は、先ほどから申し上げておりますように、農村地域というより潤いのある住民生活を維持するために大変重要な役割を果たしております。都会と田舎と考えた時代は去って、文化情報を受発信するところが都市であり、都市に自然景観的な居住環境が保持されない場合は、個性も魅力もない働き場所と気づくような次の世代が必ず到来すると予測しますので、従来その点を余り強調せずに、農業生産上の農業者の問題としてのみ俎上されてきたことを反省もしなければならないと存じます。
 昨年発足しました中山間地域活性化総合整備事業あるいは本年度発足しました集落環境整備事業などは、農業者と消費者とを区分することでなく、地域住民の居住形態を衣食住から一体的にとらえてくれた地域活性化計画という感じで、非常に期待をいたしております。
 諫早市におきましては、この四月から農林水産部の中に農村整備課を設置いたし、市内の農村地域、これは純粋の農業地域に限らず、農業者と自然環境を愛する人々が地域の複合的な新しい文化創造の場を創出する施策をモデル的に計画的に実施しようと考えているからでございます。
 その他の改正点につきましては、適切な改正と考えております。
 最後に、農村地域の活性化に大変有意義である本改正法案が一日も早く国会で審議され、国、県及び市町村が一体となって土地を見直し、大切にして各種事業がその責任と分担の明確な区分のもとに進展されますよう期待をし、私の意見発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#7
○委員長(吉川博君) ありがとうございました。
 それでは、次に今村参考人にお願いいたします。今村参考人。
#8
○参考人(今村奈良臣君) 東京大学の今村でございます。
 第百二十回国会に上程されました土地改良法等の一部を改正する法律案についての参考人としての意見を述べようということでございますので、以下述べたいと思います。
 ただし、きょう参考人の名簿を拝見いたしますと、私以外は現場でさまざまの御苦労あるいは御経験をされている方が主でございますので、私はどちらかというと包括的な意見をこれから述べてみたい、こういうふうに考えております。
 今回の改正法律案の内容は五点にわたっております。これは私からくどくど申し上げる必要もないんですが、土地改良事業費の市町村負担の明確化というふうな問題あるいは換地制度の改善というふうな問題、それから土地改良施設の更新事業の実施手続の整備の問題、それから土地改良区あるいは土地改良事業団体連合会の運営等に関する規定の整備、特に理事の性格規定についての改正、それから市町村特別申請事業における都道府県が負担金を徴収できる者の拡大を考えるというふうな五点にわたっております。
 総論的に結論から申し上げますと、このいずれの諸点も時宜を得た、あるいは別の表現ですればやや遅きに失したという形容詞もつけてもいいかと思いますが、いずれも私は時宜を得た適切な改正提案であろうというふうに考えております。
 さて、そこで少しその根拠を私なりに述べてみたいと思います。
 御承知のように、土地改良法は昭和二十四年に制定されまして、それに基づいて土地改良事業は今日推進されてきているわけですけれども、一言で言いますと、農業基盤の整備あるいは開発といったようなことを通じて農業の生産性の向上あるいは農業の構造改善等に資するというふうな目的のもとで日本の農政の基本的な部分にずっと長い間やはり位置づけられてまいりました。予算上においても、ほぼ三分の一ないしは時代によっては半分近くの予算がこれに割かれてきたという量的な側面から見ても非常に重視されるということでございます。
 なぜそうであったかという点は最後に述べますけれども、しかし、こういうふうに推進されてきた土地改良事業でございますけれども、農村地域の都市化の進展あるいは混住化の進展、兼業化、高齢化といったような農村の構成員の異質化が非常にさまざまな問題をもたらしてきております。と同時に、事業工期の長期化あるいは事業費の増高、農家負担金の増大といったような問題、それがひいては農家の償還金の増大ということで、農村地域では非常に大きな社会問題になってきております。
 こういうことを背景としまして、土地改良事業への農家の積極的な参加意欲が低下してくる、それから農家間における参加意欲の格差が大きくなってきている、農家間で意見の違いが出てきているというふうに一言で言ってもいいかもしれません。つまり地域全体における合意形成の低下ということがございます。地域全体における合意形成ということは、日本の土地改良事業がほかの諸国に比べて非常に違っているところでございます。御承知のように、申請主義をとりながら、同時に三分の二以上の合意ということが法律でも示されておりますが、事実上は、特に面工事においては一〇〇%同意というふうなことが前提になっている。これは日本の非常に特徴でございます。私は、アメリカなどの例えば土地改良などといろいろ比較してこれまで研究してきておりますけれども、非常にこの点が特徴でございます。
 しかし、そういうさまざまな問題に対処しながら、農政としても、昭和六十年代に入りますと、さまざまな対応策を講じてきていることは私も承知しております。そういう中で、今回特に事業による受益の限度においてその費用の一部を市町村に負担させることができるということを明確化したということは、非常にこれは重要な改正点であるかと思います。事実、これまで市町村によってはさまざまな事業費負担をやってまいりました。ただ、それが制度化されていなかった、明確化されていなかったということでいろんな地域ごとの格差、差別といったようなことが実際上は起こっておりまして、こういうことを制度化することを明確化することによって新しい方向が生み出されるんではないかというふうに考えるわけであります。
 と同時に、先ほど申し上げましたように、土地改良事業というのは、農業の構造改善や生産性向上にかかわるだけではなくて、計画的な土地利用だとか水利用の推進に大いに寄与いたしております。さらに、国土の防災、保全、自然環境の保全、地域経済の振興、地域環境の改善というふうなさまざまな機能を持っております。
 これは一括していいますと、公益的機能の重視ということになるかと思いますが、この観点はますます今後重視されていかなければならないというふうに考えております。にもかかわらず、これまでは原則的には国、県、受益者の三者による負担ということにされておりましたが、この中に市町村等地域公共団体の負担を明確化するということによって、受益者の負担の軽減という問題とあわせて地域の土地改良施設の持っている公益的機能を重視していくという方向を打ち出したことは大変喜ぶべきことではないかというふうに私は考えております。
 ただ、ここで問題になりますのは、それに伴う地方財政措置をよりしっかりとっていかなくてはならないのではないか。これは恐らく今後予算上の措置その他で問題になってくると思いますけれども、大蔵省、自治省等の関係官庁と協議をしながらこの改善、確保ということを望みたいというふうに考えております。とりわけこれから土地改良事業を重視しなくてはならないのは中山間地帯でございます。中山間地帯は財政力が非常に低い市町村が多うございます。こういうこともとりわけ考えてその施策を講じていただきたいというふうに思っております。
 それからさらに、換地制度にかかわることでございますけれども、これにつきましては、もう時間がございませんので詳細は申し上げませんけれども、問題は、中核農家あるいは担い手農家の育成にこれを結びつけていくということと大いにかかわってまいります。次代を背負う若者の農業への参入が非常に激減してきております。いろんな形でその努力を私なりにもやっております。例えば農林水産省の大きな肝いりで二十一世紀村づくり塾というふうな運動を、私も副塾長をさせられておりまして、全国的に今日進めております。県レベルだけではなくて市町村レベルでも、恐らく全国農村市町村の一割ぐらいにはもう農民塾、農村塾といったようなものが行き渡りつつあるのではないかと思いますが、こういうことを通じながら、次代を背負っていく、あるいは二十一世紀の日本農業を背負っていく若者を大いに育てていかなくてはならない、そういうことと大いにかかわりがあるかと存じます。
 それから、時間がないのですべての点にわたって述べられませんけれども、土地改良区あるいは事業団体連合会の運営にかかわることでございます。特に、論点は、理事を組合員以外から選出する、この部分をふやすということでございます。農村の実態を私なりに把握してみますと、利用権設定等で事実上離農せざるを得なくなった、しかし、学識経験者といいましょうか、さまざまな事情に通じている、こういう経験豊富な方々がおられます。そういう人たちを組合員資格がなくても入れていくようなことが必要だし、それからまた土地改良施設の維持管理という点では、非常に特殊な技術、長年経験を持っておる方々もおられます。こういう方も大いに入れられていった方がいいんじゃないでしょうか。この点についても賛成したい、大いに推進していただきたいというふうに考えるわけであります。
 最後になりますが、今日、皆さんいろいろの機会にお聞きになるかと思いますが、サステーナブルということが、これは英語でサステーナブルというのは持続的という意味なんですが、だからサステーナブル・アグリカルチュラル・デベロプメントあるいはサステーナブルアグリカルチャーという言葉をよく耳にされると思いますが、持続的農業発展というふうな課題が世界史的な今日の展望の中で、あるいは地球環境の保全というふうなこととのかかわりで今日提起されております。私、日本の稲作農業あるいはかんがい稲作農業というのは非常に歴史的にサステーナブルであるというふうに考えております。ただ、今日だんだんそれがサステーナブルでなくなりつつあるということも他方で深く憂慮しております。実は、ことしの八月二十二日から二十九日にかけまして八日間にわたって、このサステーナブル・アグリカルチュラル・デベロプメントというのをメーンテーマにして、第二十一回国際農業経済学会議世界大会というのが東京の新宿で行われます。その委員長が皆さん御承知の農政審議会の前会長の川野重任先生であります。私が副委員長、事実上の総責任者をさせられております。世界八十三カ国から七百五十人ほど出てまいります。各国のオピニオンリーダーでございます。こういう方々にぜひ日本農業を理解していただき、日本についての理解が非常に浅いということもありまして、理解していただき、その上で日本農業の持っている歴史的な意義あるいはこれからの展望という点で大いに議論を交わして日本の評価をいたただきたい、そういうことにつきましても、きょうおいでの先生方にもぜひ御尽力、御援助いただければありがたいということを考えております。ちょっと最後は宣伝めきましたけれども、日本農業の、あるいは土地改良事業の持っているサステーナビリティという点についてぜひ世界に知らせていただきたい。と同時に、日本の中でもこの点を大いに推進していただきたい、こう私考えております。
 ちょっと長くなりましたが、以上で意見の開陳を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#9
○委員長(吉川博君) ありがとうございました。
 それでは次に、正木参考人にお願いいたします。正木参考人。
#10
○参考人(正木裕美君) 私は、佐賀県土地改良事業団体連合会の会長の正木でございます。
 このたび、土地改良法改正の御審議に当たりまして意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じまして感謝を申し上げる次第でございます。
 今回、改正の御審議をいただいております事項につきましては、当院事務局からお送りいただいた資料を拝見しますと、私たちが土地改良事業を推進するに当たりましてかねがね支障になっている問題について何らかの道を開いていただきたいとその都度お願いをしてまいっておった点がほとんど的確にとらえられているようで大変時宜に適したありがたい御措置であると喜ばしく感謝を申し上げるところでございます。
 戦後の目覚ましい経済成長に伴って国際社会における我が国の責務も非常に強く要求されるようになってまいりました。このことが農業部門においては次々に国境措置が取り払われるということになりまして、大詰めを迎えたガット・ウルグアイ・ラウンドの帰趨いかんでは最後のとりでであります米についても予断を許されない情勢に立ち至っているものと考えられます。このため多くの農家は先行きに言い知れない不安を抱いておりまして、土地改良事業のような長期的な資本投資に対しまして極めて消極的になってきているのが実態でございます。やらねばなるまい、やったがいいということはわかっておりますけれども、農業所得の中で借金が返せなくなるのではないかとちゅうちょしている状況でございます。
 土地改良事業と呼んでいますこの農業土木の仕事は、農業という産業が大自然の恩恵をできるだけ享受しやすいように、また自然の気まぐれの部分をできるだけ和らげて恩恵に導くようにする、いわば自然界と人間の産業活動のかけ橋の役目を担った事業であると考えております。また、そうであるだけに自然を損なわないように、むしろ積極的に自然を守り育てる配慮が大切と考えて長年これと取り組んでまいったのでございます。最近むだな投資とか今やもう必要が疑わしい事業といった蒙昧の批判が一部に見られますが、私は国際化、開放経済化の進む中で、我が国の農業に現在求められています生産性の高い農業を展開するための土地改良事業は大前提であると考えております。現に私の住む佐賀県でも、大臣賞、日本農業賞あるいは朝日農業賞という、そのような大賞を受賞し、現在も活発に活動している集団はすべて基盤整備済みの地区でございまして、またすぐれた個別経営者のほとんどが条件整備の整った地区の経営者でもございます。
 今日、我が国の農業に最も強く求められていることは、外圧にもめげない強い体質を備えて、良質安価な農産物を安定的に供給することであります。このため、特に最近のように、環境問題で二酸化炭素等の温暖化ガスが増加するというような問題を一つ取り上げてみましても、これを抑制するためにはどうしても経済発展の抑制をしなきゃならないというような難しい問題がございまして、世界各国とも総論賛成各論反対というようなことでなかなか意見がまとまっておりませず、大変危惧しておるわけでございます。予測されております情報によりますと、この温暖化が確実に進みますと二十一世紀当初には間もなく地球の温度が上がるということが予測されておりまして、現在世界の穀倉地帯であります中緯度地区のアメリカやあるいは東欧、西欧等の穀倉地帯の作付が非常に激減するであろうというような予想がされておりまして、大量に外国からの輸入に依存しております我が国の実情を考えますと、今のうちにしっかり土地生産性、労働生産性を高める基盤整備をやっておかないとそのときになってにっちもさっちもいかなくなるのではないかということを恐れておるわけでございます。
 土地改良事業は、個人の農地を整備するという圃場整備事業でさえ、それまで曲がりくねった細い里道しかなかったところに大型機械も通れる農道が四通八達するわけでございまして、農作業車以外の車両も早速利用しますし、地方道の補完的な効果を発揮することができるわけでございます。また、圃場整備によって整備された用水路は集落の防火用水や雑用水にも利用されますし、かんがい用水は地下水を涵養し緑を育て、水田は表土の流亡を防ぎ洪水を調節し、一時貯水池の効用を果たします。これから還元される排水は河川の急激な流況の変動緩和の役割を果たしておりますし、排水路は出水時に農地排水だけでなくて地域排水の主役となります。また、最近混住化の進んでおります集落や周辺市街地の家庭雑排水の排水路も兼ねるなど、その公益的な効用は極めて大きいものがございます。
 農家は、この土地改良施設を利用してこれまで農産物を栽培し販売して生活を支えてきたのでありますが、最近のように米の消費減退に伴って転作作物は過剰ぎみに市場競争の場にさらされて、価格が伸びませず、米価も抑制ないしは引き下げという形でありますだけに、その公益性の負担までこれまでのように農家に負担させるに忍びないということで、佐賀の場合でも県下のほとんど全市町村が応分の助成を行っているのが実態であります。しかしながら、これまでその市町村の助成はいわゆるやみ助成でありました関係上、地方交付税以外ほとんどほかに収入のない地方自治体にとりましては、財政圧迫の大きな因子となっております。このたびの改正によりましてこの地方財政措置に対して御配慮いただける道が開けますことは、自治体にとりましても一大朗報であろうというふうに存ずるところでございます。
 なお、国営市町村特別申請事業で現在施行中の筑後川下流土地改良事業は、受益地が福岡、佐賀両県にまたがる約五万四千ヘクタールのかんがい排水事業でございますが、一部の施行を水資源開発公団が継承した部分について他の国営事業と同様の御配慮をいただいていることに感謝を申し上げます。また、この国営の市町村特別申請事業の場合には、関連土地改良事業を起こすことによってその際に三分の二以上の同意をとって負担金を徴収するというような仕組みになっておりますけれども、既に圃場整備等が先行しまして関連事業がそこに張りつかない部分があるし、また関連事業の成立する部分がございまして、なかなか負担金徴収でこれが公平にしにくいという難しい面がございましたけれども、今回関連管理事業というものを法改正の中で考えていただいておるようでございまして、これで私も安堵したわけでございます。
 さらに、土地改良区の役員構成につきましては、農民年金をいただくようになりますとこれは農家でなくなるということで、従来土地改良区の役員をしておった方が員外にならざるを得ぬというような面もございまして、今回その役員構成を改正していただくということも大変助かるんではなかろうかと思いますし、また、創設換地に農地保有合理化法人が関与できる道を開いていただいたことも、まことに時宜に適した御処置というふうに考えております。
 最後に、私が現在専任いたしております土地改良事業団体連合会は、これまで国県営土地改良事業の設計、測量等の受託等につきましては、その地区の団体営事業との関連性から法第百十一条の九第五号の、その他目的達成に必要な業務ということで実施してきたところでございますが、しかしながら、近年は土地改良施設の大規模化等から団体営事業に比べて国県営事業のウエートが非常に増してきておりまして、それが実情でございまして、今回の改正によりまして連合会が国県営事業に対してもより積極的に一体的に参加していける体制となりましたことで連合会の会員の要請に十分こたえられるようになるんじゃなかろうかというふうに考えております。何とぞ、よろしくお願いを申し上げます。
#11
○委員長(吉川博君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
 それでは、これより参考人の方々に対して質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#12
○村沢牧君 社会党の村沢牧であります。参考人の皆さん方には、本日貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。今後の審議の参考にさせてもらいたいというふうに思います。
 まず鈴木参考人、野田参考人にお伺いしたいのでありますが、第三次の土地改良長期計画は、昭和五十八年から平成四年まで十カ年の計画で進んだわけです。平成三年、九年目に入りますけれども、事業費ベースでは五〇%強、面積ベースでは四割に達しておらないというのが全国的な現況であります。このことは国の投資額が低い、一口に言えばそういうことでありますけれども、このことが象徴しておりますように、皆さん方は大変努力をされて、今までお話がございましたように多くの事業をやっていただいておるところでありますが、土地改良の工期が長期化するんではないか、このことを心配するわけであります。このことによって地域のもろもろの計画、事業費の上昇、あるいはまた負担の上昇等になってくるわけでありますが、両参考人の地域においてはそのようなことがなくて、今までやった事業、現在やっている事業が計画どおりに進んでいらっしゃるのかどうか、そのことについてまずお聞きをしたいと思います。
#13
○参考人(鈴木源次郎君) ただいまの御質問にお答えをさせていただきますが、御説にございましたが、実は事業の進度が大変おくれて、そのためにいろいろな地域計画やら、あるいはまた負担の問題での困難はどうとかということですが、まさに御説のとおりでございます。
 事業の進度が当初に定めました計画年次、いわゆる工期がおくれますことから、当然のこととしてそれぞれに関連するその他の事業にも悪影響が及んでおりますし、さらにまた、それぞれ受益負担における金利上昇という問題等が伴ってまいります。このことは否めません。そういう観点もございます。同時にまた、今農業予算についてのお話がございましたが、私は土地改良事業における予算はひとり農業予算という格付の中にも問題があるとさえ存じておりまして、それを先ほど申し上げたわけであります。したがって、そういう点もひとつぜひ改善を進めていただきたい、こう存じております。
#14
○参考人(野田あきら君) 私の諫早市ももっと早く進捗をさせてほしいという考えを持っております。それは現在まあまあというか半分ぐらいの程度です。その原因は那辺にあるかという点につきましては、やはり意識の改革といいますか、行政体あるいは農業者ももう少し新しい農業に対する基盤整備についてお互いに理解し合うことが必要だと思っております。
 あとは予算をどのようにふやしていただけるかということであって、先ほど申し上げましたように、農家負担でするということでなくて、地域を整備するという観点に立って市町村が第一義的に発言し、誘導して、措置して、将来の農業経営に資するというふうに考えるべきだと思っております。以上でございます。
#15
○村沢牧君 ありがとうございました。
 続いて、鈴木参考人にお伺いいたしますが、今まで長い間御努力されまして、特に昭和六十三年度までは八〇%の工事が完工したというふうにお話がございまして、心から敬意を申し上げます。
 そこで、この借入金の償還についてでありますが、農水省は昨年ですか、土地改良負担の軽減化を図るために平準化方式を出していますね、利子補給をしましょうというようなことを出していますが、一つは、そうしたことが現実に使われているかどうかということ。
 もう一点は、国営についてもかなりの予算がかかるようでありますが、全額町負担ということになっておるというお話があったわけでありますけれども、法改正では市町村負担の明確化を図ること、そのことはいいわけでありますが、法律は市町村の利益を受ける限度として事業費の一部を負担することになっております。しかし、この利益を受ける限度というのがなかなか現地へ行くとそんなに簡単に出てくるものではないと思いますが、今まで御負担をなさっていることは利益を受ける限度でやっているのか、それとも農家負担が大変だから町村が持ちましょうということでおやりになっておられるのかをお聞きしたいというふうに思います。
 同時に、これはガイドラインをつくって負担をしてもらうということで、農水省は、例えば国営については、一般施設については市町村は八%だとか、県営圃場整備については一〇%というガイドラインをつくっています。全額負担となればこれよりはるかに多いわけですけれども、こういうガイドラインでいいのかどうか。ガイドライン以上に負担をなさったことについては地方財政法上も検討しなきゃならないというふうに思うんですけれども、こういうガイドラインで、今お話があったように全額負担をしている市町村がそれでよろしいのかどうかということをちょっとお聞きをしたいというふうに思うわけであります。
 したがって、御説明がありましたような国の負担率を引き上げることは、その御要求は当然のことだというふうに思いますけれども、なおまた、今度の法改正によって市町村に負担をさせることができるのは、市町村の合意を得て県が決める、県議会の議決を経て決めるんだということになっていますけれども、その辺についてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
#16
○参考人(鈴木源次郎君) ただいま二つの御質問と受けとめさせていただきますが、まず第一点の私どもの八〇%完了した圃場整備、これのいわゆる農家負担、事業費の二二%相当額ということですが、これは私の方の町では土地改良区なしでとさきに御説明申し上げましたように、昭和四十一年からは土地改良区を擁しないで町行政が直接整備課を置いて、実質上の理事長は町長が理事長職を行うという形で行っております。
 そして、その場合の、いわゆる土地改良区の理事に相当する役員として町議会議員の代表数名、農協の理事から数名、農業委員会、農業共済組合、それから一般のいわゆる農家代表若干名、こういった構成で実は対応してまいりまして、これは町としては直接借りられませんので、町長である私が借用人になりまして、農協を通して農林中央金庫の金をお借りして償還を現在しておるわけでありますが、これについては実は今お話がありました償還の平準化という対応にはなっておりませんので、現在その計画に従って償還を続けております。町が農家からそれぞれ面積に応ずる所定の償還負担金を徴収しております。先ほど申し上げましたように幹線農道、それから基幹用水路部分について、町が議会とその協議会で定めましたものについては町財政が負担をしてそれを合わせて償還する、こうなっております。
 それから第二点の国営について私どもの九町は全額負担、こういうことでございますが、これはまだ償還に入っておりません。実は明年から部分償還制度も同時に走らせてもらいますので、これは私どもの地域の国営事業は特別型でございますので財政投融資の金利がかかります。そのために工期も短くて済むわけでございますが、これについては明年以降この恩恵を受ける。
 それから、財政負担が大変であることは当然でありますが、それではどの程度かと申し上げますと、九町の負担は、先ほど申し上げました七百九十億円に及ぶ予定の事業でございますが、ピーク時においてその町財政の一般会計の四%になる町が最も多い。普通の町村で三%、私どもの町は大体四%程度の最も大きい方でございますが、それから面積の少ないところは二%、一%とございます。そういった程度の負担でございます。
 したがいまして、先ほど申し上げましたように、それぞれの町村行政の中におけるこれはもう理念の問題でもあるんですが、俗に言います上物を調整する、上物はもっと快適な地域環境が整備された後で子孫が稼いでつくれ、そういう認識を持つことによって十分に住民も納得をしてもらえる、こういう考え方に立って進めております。
 同時に、この際大変私ども感謝しておりますのは、明年から始まります、ほかにも県内にございますが、国営事業の負担の平準化あるいは部分償還制度等によりまして大変負担が軽くなってまいるんですが、そのほかに昨年県もやはり思い切った地域アメニティーの整備という観点からてこ入れをするということになりまして、県負担も従来にないほど深くしていただきましたので、先ほど申し上げたような負担率で済む。これがもしなかったら九%、一〇%の負担であった。国のそういう制度と県のそういう思い切った方法がなければ恐らく九%程度の負担であったものが、部分償還制度それから平準化制度、そういった諸制度と県の負担増加をあわせましたおかげでそういうことになりましたということを申し上げます。
#17
○村沢牧君 野田参考人に重ねてお伺いいたしますが、市町村が負担をした分について交付税で財政措置を講ずる、それは事業費の一定部分に対して一定割合でやるというんですね。そうなると市で全部負担をしたから全部交付税の中に入れるという、財政需要額の中に入れるというわけにはいかないような形になってくるのではないかというように思いますが、その辺はどういうようにお考えになっていらっしゃるのか。その影響はどうなのか。
 それから、先ほど参考人は団体営についてもちょっとお触れになったんですけれども、団体営については今度の法律で何らの措置もしていないわけですね。国営あるいは県営等ならこういう措置をとる。団体営もかなりあるんですが、この団体営に対する措置はどうすべきと思われるか。
 それから、またお話もありましたように、これからの土地改良で中山間地域の、市長さんのところに中山間地域があるかどうか私知りませんけれども、それをやっぱりどうするかということは重要な課題だというふうなお話もちょっとあったんですが、その辺についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか。なおまた、この中山間地については今村参考人にも後ほどお伺いしたいというふうに思いますが、以上三点についてお伺いしたいと思います。
#18
○参考人(野田あきら君) 負担の割合が一定部分あるいは一定割合であるというような御意見でございますが、その点につきましては、私は土地利用という観点から考えると、そこに住む人が、あるいは末端の市町村の意見が第一義的に採用されるべきである、土地というものはそういうものではなかろうかなと思っております。そして農地のある部分的、局部的なものでとらえることでなくて、先ほど受益限度というお話もございましたけれども、どういうものが受益であるかという点については、公共の福祉を増進するという意味においての大きな眼で見ないと、農業用水の問題も同じことでございます、利水と用水の違いもそこにあるわけでございます。
 したがって特に農地を保全する場合に、自然環境を保って三代百年にわたって保持しなければその農用地は保全できません。私はそう思っております。したがいまして、その割合については、末端の市町村としては割合の財源的なものを全部いただくことがそれは一番いいわけでございます。その点につきましては、割合が少ないから多いからという点におきましては、財政上の絡みというものを国会でよく御審議をしていただきたいというふうには思います。ただ、その点について割合が少ないから土地利用の発言権を小さくせざるを得ないかという点については、非常に私としては主張せざるを得ないというふうに思っております。
 それから団体営についてということでございますけれども、私は団体営というのは同じことではなかろうかなと思っております。土地利用の観点から見て農家負担であるというふうに局限的に考えるのはいかぬ。やはり大きな目で見てとらまえていかないと、農家の生産性から見て、先ほど申し上げましたように百年もたせるような行為が必要でございますから、減価償却は成り立たないと思っております。そういう点において末端の市町村がやはり介入して補助すべきである、これは物の考え方といいますか私の信念でございます。
 それから中山間地域の問題でございますが、これは多面活用が生じます。したがいまして、この部分についてはやはり利用と所有の問題がいろいろ挟まってくると思います。したがって通常で言われるところの宅地化する部分もあろうかと思います。このものを農業経営上必要であるか否かという、言うならば農家経営あるいは農地の保全を大局的に見る場合の局部的なものとしてとらまえるべきであって、生産者と消費者が相対立するような住む場をお互いがつくらないようにすることが非常に住みやすい土地利用になろうかと思っております。
 以上でございます。
#19
○村沢牧君 次に今村参考人にお伺いいたします。
 先生の著書も読ませてもらったこともございますけれども、土地改良事業の農家の負担というものについてどのように基本的に考えたらよろしいのか。例えば今お話しがありましたように、農業だけじゃなくて混住化社会になってきて、いろいろな社会になってまいりますね。ある町村へ行くと償還金は米一俵だと、一俵分は農家に負担してもらってあとは町村で持ちましょうということになる。農家の負担というのは先生の基本的な考え方からいってどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
 それからもう一つは、先ほど申し上げました中山間地の土地改良に対してどうあるべきか。
 もう一つは、先生、先ほど換地制度についてお話があったわけでありますが、この法律の中においても農地保有合理化法人、この役割にある程度期待をしているわけですね。先生の著書にもありますように、農地保有合理化法人というのは県段階にほとんどあるようなことであって、末端の市町村レベルにはないわけですね。もっとやっぱり身近なところに、そして農業をやらない人から土地を買い上げて、やる人に譲渡しましょう、あるいは農地を何とかとか、そういう末端のところにそうしたものをつくる必要があるんではないか。ところが農水省はなかなか法人化は認めない、認めないというわけにはいかぬだろうけれども、そういう傾向にあるようですけれども、先生はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
#20
○参考人(今村奈良臣君) 後の方から申し上げます。
 農地保有合理化法人の問題、御承知のように法律上は市町村、農協など、もちろん公益法人もやれるわけなんですけれども、近年例えば農協で農地保有合理化法人資格を持つ組合が多くなってまいりました。私はもう何年か前からそういうことをいろいろの機会に審議会その他で主張してまいりまして、一定の条件を満たさない農協ではこれはまずいものですから、それは当然のことなんですが、一定の条件を満たす農協についてはだんだん広がってきております。私どもの教室でも若い助手、大学院の学生を組織してこの調査を現在行っておりますけれども、非常に活発にやるようになりつつあります。
 例えば愛知県に安城市がございますが、安城市農協では農地保有合理化法人資格を持ちながら数百ヘクタールの利用権設定その他土地利用調整について取り組んでおる事例が出てきております。漸次こういう方向にいくんではなかろうかというふうに考えております。もちろん農協については所有権の売買ということは権限を与えられていないわけですけれども、こういう貸借、利用権設定等々を通じながら所有、利用調整を進めていくことをやらない限り、なかなか次代を背負う経営者は育っていかないというふうに私考えております。もちろん個別経営だけではなくて集団的な経営、協業経営といったようなものも当然その中に含まれているわけです。そういう方向で新しい構造改革を現場でやっていくことが必要だろう、こういうふうに考えております。
 次に、中山間地域の問題でございますけれども、これは確かにこれまで土地改良事業が全般的に言えば進んでこなかった地域でございます。言うならば、中山間地域では事業計画の困難性その他あったわけですけれども、やはり中山間地域一般ではなかなかはかり切れないところが現実を見ますとございます。つまり圃場整備等々土地改良事業に積極的に取り組んでいる市町村があるかと思うとその隣では進んでいない。言うならばリーダーシップの問題等々いろいろあるんだろうと思いますが、基本的な違いは、地域の農業の活力を私五つの点で尺度をはかっているんですが、第一が情報力、第二が技術力、第三が組織力、第四が販売力、それから第五が経営力というんでしょうか経営管理力、例えば農協にしてもそれから個々の農家にしてもこの条件の違いが非常に差として出てきている。このあたりをつけていかなくちゃならない。そのためにはベースとしてやはり土地改良事業は農業の基盤ですから、それから環境維持のためにもそういうことをぜひ今後進めていかなくてはならない、こう考えております。
 それと関連するんですが、第一の御質問、これは非常に理論的に難しい問題なんですけれども、土地改良投資というのは土地所有と合体してしまう性格を持っております。つまり土地改良というのは、物理的な言い方をしますと、土地所有という概念は、もう日本は地球のずっと向こうまで行くぐらいの土地所有、底土ですね、これはあるわけですが、農業に必要なのは上の三十センチとか五十センチ、これが農業として利用すべき土地なんですね。ここをある意味では改良していくわけなんです、水田にしても畑にしても。そのために必要な例えば用水、排水路、それから農道といったようなものがつくられていく、あるいは区画形状の再整理といったようなことが行われていくわけですけれども、これを例えば全額公費でやるということになりますと土地所有の権限を非常に制限をしなくちゃならぬ、こういう問題に出くわしてまいります。これについては当然土地所有者である農民はその強力な制限を受けたならば反対するということになって、ここの関係が理論的にも非常に難しい問題を持っております。
 ただし、土地改良の事業種目によって、今言った例えば混住化というふうな中で排水事業ということになりますと農業だけの関係でございません。都市消費者世帯の雑排水なども入ってまいります。これについては土地改良区でいろいろの知恵を絞って対処して、負担を求めているというふうなこともございます。道路などもこれは農家だけの車が通るわけでございません。そういうことを含めて、時間がございませんからすべてにわたって申し上げませんけれども、例えば用水と排水といったようなものはかなり違いがある。しかし、用水というのをもう一度よく考えてみると、例えば水田の洪水調節機能というふうな観点をどれだけ入れるかによって評価の違いが非常に出てくると思うんです。そのあたりは理論的にもなかなか詰めがたい。理論的にわかったとしても、それを今度は行政的、予算的にどうやるかというような負担区分までいくと非常に難しい問題が出てまいります。この辺は一挙にはまいりませんので、私は私なりに考えがございますけれども、現実に即しながら問題を解決していく以外にないんじゃないか、こういうふうに考えております。
#21
○村沢牧君 私の持ち時間もぼつぼつ終わりになりますから、最後に正木参考人に一点だけお伺いいたします。
 土地改良区の理事は、組合員でなくてはならない者を五分の四としておったのを、今度は組合員でなくてもよろしい者を五分の二以内にするという法律改正ですけれども、現実問題として土地改良連合会におられて、各改良区でそういう必要性がうんと出ているのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
#22
○参考人(正木裕美君) 大体土地改良事業の場合は、圃場整備等をやりますときの土地改良区の理事さん方はほとんどそういう大きな問題はございませんけれども、歴史の長い昔の水利組合から土地改良区に変わってきたようなそういう農業用水を管理する土地改良区の場合は、昔から水の権利関係は非常に難しい問題がございますし、また地域的にどういう慣行があるかというような問題もございますので、やはりそれに長くかかわった理事さんがリーダーシップをとっていかれるし、とっていかれることが間違いなくやっていける理由なのでございますが、農業者年金をもらうとそれから外れるものですから、外れるとちょっと理事になりにくい。大体員外の定数を決めていないような土地改良区もたくさんございますので、その場合にもうしばらく辛抱してくれというような形で、農業者年金も取らずにそのままおられるというのが実態でございます。これは今回このように枠がふえてまいりますと、土地改良区としても安心してそういう長老の方にも一部残っていただくことができるんではなかろうかというふうに考えます。
#23
○村沢牧君 ありがとうございました。
#24
○三上隆雄君 それでは、私も社会党・護憲共同の立場で、しかもまた実際生産現場に一昨年までおった立場でそれぞれの参考人の先生方にお尋ねをいたしたいと思います。
 先ほど基調的な報告の中でそれぞれの先生方から大変適切な御意見をいただきましたけれども、まず鈴木町長さんにお願いをしたいと思います。
 それぞれ先ほどのお話の中では、町長さんも末端行政を担っているわけで、県あるいは国との関係が深い立場で、日ごろ行政の現場で抱えている問題を率直に出していないような気もするわけでありますから、せっかくの機会でありますから、実際農家に一番近い立場におられる町長さんとして今回の改正点についてもっと率直な御意見を承れれば大変幸せだな、こう思うわけであります。
 それから、改めて野田市長さんにもひとつその点をお伺いしたいと思います。
#25
○参考人(鈴木源次郎君) ただいま大変率直な御質問をいただきましたが、私が先ほど申し上げたのは別に建前ではございませんで、率直な実態を申し上げたのでありますし、その中でさらに率直にというありがたい御注文でございますが、さらに率直に申し上げるというよりも、先ほど私が既に申し上げたいわゆる地域のアメニティーという観点からもっと積極的な国の負担というものが望ましいと考えておる。しかもその財政的な裏づけは、確かに国、県、私ども町村、それぞれ財政が厳しいことは当然でございますけれども、その中において我々が知恵と工夫を凝らせば、先ほど申し上げましたように、節約できる、節減できるものというのは私どもが現場の小さな町村の経営をしている中で大変あるものでございます。
 同様に、先ほど申し上げました国の行政各般にわたるそれぞれの調整できるものを、こうした基本の問題にこそ集中的に御配慮いただきたい。そしてまた、先ほど申し上げましたように、当然のことながら、こういう場合、我々町村の負担率がやはりガイドラインによって設定されざるを得ないことは十分承知しております。そうしますと、町村の特性に応じてそのガイドラインを超える負担あるいはガイドラインに満たない負担というのは今度はなくなると存じますが、そういうことは大変好ましいことでありますし、それを超える負担をするということについては、私どもが現場において今申し上げました財政運用の経営的努力、将来展望に立った努力によってこれは解決をしていきたい、かように存じます。
 現在、既に、そうしたものがない中で、先ほど申し上げたように私どもは国営事業については一〇〇%、県営事業についてもそれぞれそれなりの努力をしておりますし、さらに団体営も町行政が直接やっておりますために、実は私の町の土地改良事業では少なくとも経常費においてすばらしい経費節減も図られていると私はいささか自負をいたしております。そういう点もよろしくお願いしたい、こう思います。
#26
○参考人(野田あきら君) 私も建前論で申し上げておるつもりは全然ございません。負担というものも絡むわけでございますけれども、土地というものは一番国民が大事にしていかなきゃいけない宝でございます。そういう意味におきまして、だれがどうするかというものはそこに住む人が児孫にまたがる大きな宝として、財産として私は維持保全をすべきだと思います。ただ、時代に適応するように改良することは必要である、これが土地改良法のゆえんであろう、起点がそこにあると思います。
 都市計画上では開発行為と言います。それは土地開発ということは利用だけで自然条件を破壊する場合も生じます。それを人工的にカバーするのが都市施設である場合もあります。河川の保全は長い農民の力によって維持されてきました。今それが失われつつある現状は本当に悲しいことであると思っております。そういう点におきまして、財政負担というものは市町村の行政体あるいは行政経営をしていく場合に本当に切実な問題でございます。
 ですから、申し上げましたように、負担が少ないときにそれでは放棄するかという点については、末端の行政体としては放棄はできない、意見はやはり主張をすべきである、そして主張すればそれを保持するものは何を優先的に行うかの問題であろうかと思いますが、私のところは幸いにしてニュータウンあるいは中核工業団地もできまして税収入が上がっております。自主財源を五〇%以上持っておりますので、それらが言うならば均衡ある市域の土地の利用を促進する意味において財源を市民から預かったと思っておりますので、
農地に投入することは当然であるというふうに思っております。
 私は、財産というものは児孫に伝えるから財産であって、自分の時代だけで考えるのは財物だと思っておりますので、土地こそ財産、そして時代に合わせる改良を行っていくべきだと思います。昔の赤道、あぜ道が今ではトラックを入れなきゃいかぬ、トラクターを入れなきゃいかぬ、その道を通行どめをしていいかという問題があるわけでございます。この点については本当にとくと考えないと土地改良というものは進みません。そういう感じがいたします。
#27
○三上隆雄君 ありがとうございました。
 そこで、もう少し突っ込んだお尋ねをしたいと思いますけれども、この法改正のガイドラインでも示されておるわけでありますけれども、むしろ私ども生産現場からの要望からいいますと、自分の所有権でない、いわゆる公共の部分の工事費の負担は今の稲作農家に対する負担としては厳しいのではないか、そう思うわけでありまして、その辺の考え方を実際生産者と一番近い立場の町長、市長さん方からお伺いしたい、こう思ったわけであります。私どもこれから国会論議の中でそれは政府と相対して議論をするわけでありますけれども、一般耕地内の用排水路についてのいわゆる自分の所有権の至らない部分についてのそれに対する負担はやはり今の農家に課すべきでないと私は思いますが、率直なその辺の村の実態と町長、市長さんみずからの考え方もこの場で御披露願いたいと思うわけであります。
#28
○参考人(鈴木源次郎君) ただいまの先生の御質問でございますが、国営事業であるいわゆる基幹的部分は、まさに国の全額負担で行うべきだというのが私の基本的な考え方であります。しかし、現実にはなかなかこれは望めないという事情もおありでしょうから、よりそれに近づける努力をお願いして、私どもが子孫に伝える、国とは言ったって同時に私どもの、そして私どもの子孫が将来にわたって生活をする場でもあるから、国の懐が厳しいのだったらそれなりに我々自身の汗を流すこともこれはやむを得ない、こういう考え方で、よりしかるべき負担率の引き上げをということを申し上げているわけです。そういうことであります。
 なお、小用排水路ですね、それぞれの田んぼに基幹用水路がありまして、その基幹用水路から枝幹線がございまして、その枝幹線から今度はそれぞれの一枚一枚の田んぼのへりを通っている水路、私は大変率直に申し上げますが、これはそれぞれのひしゃくだよと言うんです。これは残念ながらそれぞれの田んぼが自分の水がめだとすればその田んぼのへりを通っているものはそれぞれのひしゃくである。だからそれぞれの囲いごとの小用水路についてはそれぞれの農家がこれは負担して進めなさいと。同時にこの維持管理もそういう日常的努力をしてほしいと。
 しかし、それがもっと下流のずっと広い地域にわたって及ぶものについては、これは枝幹線ですから私は負担を求めておりませんし、町が努力をしておるということも申し上げます。そのことを御理解をいただきたいと存じます。
 さらに、先ほどそれぞれの俗に言う上物を整理すればということを申し上げましたが、私の町は財政力指数が〇・二七でございます。まことに厳しいものがございます。しかし、その〇・二七の中におきまして、先ほど申し上げましたようにこうした土地改良事業に対する負担をいたしましても、あるいは今後進めてまいりましても、実は十年前から既に農村では非常に珍しいと言われます四歳・五歳児二年の全児童を収容する独立園舎の、しかもふるさと農園を併置した幼稚園を経営いたしておりますし、さらにまた、いわゆる保健事業、健康維持の事業としては、働き盛りについては無料のドック健診を行ったりして、いわゆる医療費の節減を図るとか、あるいはそういう次の時代を担う幼児教育を充実するとか、そういった努力は十分に果たさせていただいているつもりでございます。
 先ほど申し上げました新幹線新駅も実は約二五%は町民が自分みずからの生活を節約した金を拠出し、また一面財政が残りを負担して実は新幹線の新駅もみずからの汗と血を流して誘致したものでございます。これについてもいささか私なりの矛盾も感ずるところもございますけれども、やはりお父さんが破産してしまった場合の息子が苦学をするのと同じだ、こういう考え方で実はJRになりましてこの駅の設置を誘致したものでございます。そういった努力も私どもはしているという現実もむしろ御理解をいただきたい、かように存じます。
#29
○参考人(野田あきら君) 農業者の負担割合の問題でございますが、それはおっしゃいますように所有の問題と利用の問題があるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私は農用地というものは、例えば二次産業における機械を油づけにして一時中止をするというような方法はとれない。土壌というものは、地耐力というものは維持して続けなくちゃいかぬと思っております。その点について農業生産品、産物の価格、農業経営の経営の収支からしますとこれほど割の合わないものはないと思っております。そこに農家の所有であるという理由をもって過重なる負担を課することはできない。これは公共団体の責務であるというふうに思っておるから申し上げている次第でございます。
 それから、権限的に言いますと国、県、市町村、こういうふうにあります。これは法律上権限が分与されておるわけでございますが、末端の市町村としましては自分の管轄する区域内のことをしますが、土地利用というものはやはり大規模的に及ぶものがございます。したがいまして、例えば諌早湾干拓事業は国の直轄事業でしていただく、それほど大きい広い範囲の土地利用の問題だろうと思っております。したがいまして、その内容のいかんによっては国の事業、県の事業あるいは市町村の事業というふうに分かれるし、その事業主体が分かれた場合において応分の負担をどうするかという点について受益の限度という、受益というものをどう見るかの問題にかかってくるというふうに思っておる次第でございます。したがいまして、ただ財政の負担ができないからということでそれを論じてしまうと、本当に子々孫々に至る場合に過ちを起こしたということになりはしないかなというふうに思うわけでございます。それほど土地というものは自然と地質に左右されると思っております。
#30
○三上隆雄君 時間も少ないわけでありますから、最後になりますけれども、正木土改連会長さんにお願いしたいと思います。
 先ほど村沢委員も質問いたしましたけれども、平準化制度が昨年から実施されまして、その利用率がどうなっているのか、そしてまた、それが土地改良区そのものについてはその平準化制度というものが有利になりますけれども、農家そのものについては直接的な軽減にはならない。ただその償還期間が長くなったというだけにすぎないわけでありますから、せっぱ詰まった農家の経済状態からいきますと、現実にその負担を少なくするようなそういう農家の要望がないのか、その利用度とその実態を簡潔に御報告いただきたいと思います。
#31
○参考人(正木裕美君) 今の平準化の御質問でございますが、この事業が発足したばかりでまだ県下全域に私どもの方で適用するまでには至っておりませんけれども、早速負担の償還が始まります佐賀県の場合には、国営の上場土地改良事業地区だとか、あるいは県営の開拓事業とかんがい排水事業をあわせてやりました大浦地区だとか、そういったような地区についてはもう既にこれを適用するように事務手続を進めておるところでございます。さらに県営事業でやりました北太良という地区もこれは十分適用できるのでございますが、地元の方がどうも事務的に面倒だ、煩雑だというようなことで一時は辞退して私の方はよろしゅうございますと、こういう話だったんですが、私の方の連合会の方からこういうメリットがあります
よということでいろいろ数字を試算して持っていきましたら、ぜひそれじゃ参加させてくれということで、農水省の方には後から駆け込み訴えのような形で入れていただいたような状況でございまして、今先生が御指摘のような、ただ償還の期限が延びるだけではないかということでございますが、そうでなくて、やはり延びた分については金利がゼロになるという問題がございますから、金額的にはかなり農家にとっては負担が軽くなるように考えられております。
 現在、試算をしておりますものでは、ちょっとこの数字を書いたものを持っておりませんので、はっきり正確には申し上げかねますけれども、通常の形で償還をするならば、例えばその地区で十五億かかるというのが今回の円滑化事業を適用すると十億で済むというような程度に、かなりの農家負担の軽減になるありがたい措置であるというふうに私は考えております。また、これは平成三年度もその適用地区を広げてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#32
○青木幹雄君 参考人の皆さんきょうは御苦労さまでございました。
 私の持ち時間が十五分、質問、答弁合わせてでございますので、一括して質問をいたしますので、参考人の皆さん三分くらいで御答弁をそれぞれお願いしたいと思います。
 まず、鈴木参考人にお尋ねをいたしますが、これは多少土地改良の法案とは別な問題でございますが、せっかく御出席をいただいておりますので、農業を理解していただく面で非常にユニークな試みを町長さんの地元で行っておられることがこの間、これは二十五日の全国紙に出ておりましたので、そのことについてお尋ねをいたします。
 これは見出しは「国内パック旅行多様化」という見出しでございまして、「田植え・稲刈り体験」。ちょっと読んでみますと、「田植えや稲刈りを通して農業に親しもうというツアーもある。JTB団体旅行上野支店が企画したパック旅行は、宮城県志波姫町の農家を訪れ、ゴールデンウイークには田植えを、十月の土、日曜には稲刈りを、実際に体験してもらう。」。そして、実際に収穫した米を宅配してくれるというサービスつきで、親子で自然に触れ合い、収穫の喜びを体験する、こういう記事が出ておりました。そして、これには、五月に参加をされた方には稲を鉢植えにして一本ずつプレゼントをされる、それから十月の土、日に行かれた方にはササニシキを十キロずつサービスされる、こういう非常にユニークな試みが出ておったわけでございます。
 今御承知のように、日米の間で米の問題がいろいろ問題になっておりますし、特に国内でも農業の実態を知らない間違った議論が非常に横行しておる現状でございますが、私は、そういう中にあって、実際に畑に入って作業をしていただく、田んぼに入って一緒になってやっていただく、こういう企画は、農協、町、旅行社あわせておやりになっておりますが、非常にいい企画だと考えてお尋ねをしておるわけでございますが、どういう動機でこういう企画をなさったのか、この企画によってどういう影響を期待していらっしゃるのか、その点についてひとつお尋ねをしたいと考えます。
 次に野田参考人にお尋ねをいたします。
 参考人はここにいらっしゃいます初村大先輩の地元だという、近所だということで非常に親しみを持ってお話を聞いたわけでございますが、今参考人陳述の中で農村の環境整備、国土保全について非常に熱心におやりになっておりまして、特に農家の負担をほとんどゼロという思い切った政策を行っておられるわけでございますが、先ほど村沢先生の質問にお答えになって、土地利用という非常に大きな観点から農家の負担をなくしていくということは当然だ、自分の信念だということをおっしゃったわけでございますが、参考人のお話の中で農業に占める人口が約一四%ということをお述べになりました。そうしますと、第二次産業、第三次産業に従事している方が大部分なわけでございますが、他産業との比較の問題、そういう対策をどうなさっておるのか、またこれは予算が伴う問題でございますから、議会なんかにはどういうふうな形で、今日まで農業を中心にして思い切った政策をやっていく上においての理解を求められておるのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
 それから今村参考人には、日本の農業経済学会の会長という非常に農業経済の重鎮でいらっしゃるわけでございますが、御承知のように農業基本法が制定されましてからことしでちょうど三十年という一つの大きな節目を迎えているわけでございますが、この農業基本法のもとにおける土地改良事業を農政上、国民経済上、どのように位置づけておられますのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
 そして最後に、正木参考人にお尋ねをいたしますが、参考人は土地改良事業団体連合会の会長として現場で努力をなさっておるわけでございますが、この土地改良事業は農村の混住化の進展等によりまして役割が非常に変化してきておりまして、国、都道府県、市町村との連携を緊密にとるということが非常に大切なことになっておりますけれども、そういう連携をどういうふうにしてお進めになっているのかお尋ねをしたいと思いますし、また時間が残れば、ひとつ土地改良全般について現場にいらっしゃる責任者としての御意見を伺えたらと考えております。
 以上でございます。
#33
○参考人(鈴木源次郎君) できるだけ簡単にお答えを申し上げます。
 交通公社との提携によります農業体験事業についての大変ありがたいお認めをいただきましたが、これは実は東京及び東京近郊におります私どもの町出身者の郷土会がございます。この郷土会の幹部の方々が、私がかねてから私の町は農業体験学習村という将来の位置づけを考えているということを申し上げてまいったこともございまして、都市、農村の交流という第一弾で交通公社関係にも若干関与されている方が積極的に交通公社さんと連携をとってくださいまして、先ごろ具体的な計画づくりが終わったところでございます。これらの方々は全部専業農家に宿泊をしまして、専業農家でいろいろ体験をする、同時にその体験するための田植えをする場所、稲刈りをする場所は、農家個々の田んぼの一部では農家が大変迷惑になりますので、農協と提携しまして特定の場所を用意しまして、そこで全部実際にやってもらう、こういうことでございますので御理解いただきたいと思います。
#34
○参考人(野田あきら君) お尋ねの議会あるいは他の経済界、産業部門への対応の影響性の問題でございます。おっしゃいますようにそのような問題はございますけれども、私のところは農業と商工業が両立していく、共存共栄の姿で町をつくるという姿勢がございますので、私きょう御意見として申し上げましたようなことを常日ごろ申し、議会にも提案しておりますが、地域全体の活性化に資する問題ということで議論を呼んでいるようなことはございません。逆に、商工会、商工会議所等におきまして売上高が上がるか下がるかという問題は、周辺の農村地域の方々の購買力が非常に左右するわけでございます。したがいまして、最近は農村における文化の水準も非常に上がってレベルアップをしておりますし、また兼業農家もふえておるという意味において理解、協調ができておるというふうに思っております。
 なお、基本的に申しますと、私は、申し上げておりますとおり、今非常に外圧による量産的な価格体系が強いられておる、この点について自然条件を保持しながら土地を守ってきた農家がかわいそうだと思っております。これを言うならばどう守ってあげるかというのは、末端の市町村としては第一線に立つべきだと思っておりますので、そのことを強く市民にも理解を求めて、また理解をしていただいておると思っております。
#35
○参考人(今村奈良臣君) 青木理事から、基本法は三十年になるが土地改良の位置づけはどうかという御質問でございますが、私はもう少し大きい観点からお答えしたいと思います。
 きょうは、まず一つ皆さんにちょっとお聞きしたいのは、日本では我田引水という言葉があります。我田引水はいいことか悪いことかというと、多分皆さんはこれは悪いことだ、日本では悪いことだ。これは私いろいろの社会階層で、役所でも財界でも、農村ではもちろんですが、圧倒的多数が反対だという考え方をお持ちなんです。なぜかということが日本の稲作農業の基本にこれやはり歴史的伝統としてかかわってくることだと思うんです。土地改良事業というのは我田引水を行わないような歴史的経験を積みながら、その上に制度として積み上げてきたものだ、こう考えているわけです。ところがアメリカでは我田引水は当然なことなんです。これは非常な違いがあるんです。だからそこで農業展開の論理がそもそも日本と例えば欧米と非常な違いがあるということをこのごろ痛感しております。
 じゃ、日本農業の展開論理は何だったのか。これから数百年さかのぼりながら今日に至るまで、それから展望を考えてみますと、端的に言いますと共、競、協、発音は同じなんでちょっとぐあいが悪いんですが、共産党の共、競争の競、それから農業協同組合の協というふうに、こういう展開論理を日本農業はたどってきたし、たどるべきだろうと私は考えております。それから同時に、それを英語で表現すると非常におもしろいんですが、最初の共はコンミューンないしコモンと言われるんですね。適訳はなかなかないんですけれども、欧米のそういう共という観念が日本と違いますもので、ないんですが、コンミューンないしはコモン。それから競争の競はコンペティションですね、当然のことながら。それから協力の協はコオペレーションなんです。つまりコンミューン、コンペティション、コオペレーション、こういう方向が私これからの、あるいはこれまでの日本農業展開の論理であるし、これからも発展の論理であろう、こう考えております。
 つまり言うならば、歴史的に形成されてきた共、コンミューンですね、集落、村落を基盤にして水を治め、地域資源を管理しながら協調原理に沿って農業をやってきた。これは歴史的な日本農業の姿です。それだけではやはりいかなくなってきた。明治以降、資本主義が発達し、特に戦後大幅に農業以外の部門が発達してきました。そういう中で競争原理ということを非常に強調されるようになります。競争原理が働かなければ農業の発展はないと思います。しかし、競争原理だけですべて片づくかというと、アメリカ的な意味での競争原理だけで日本農業は片づかないんですね。新しく展望が描けない。となると、やはり競争原理を基盤に置きながらも協調原理ですね、協、これの新しい段階での協調原理を必要とするんではなかろうか、こういうふうな考え方を持っております。つまり地域資源をいかに管理しながら農業発展の方向を見定めていくかということに一言で言えば尽きるかと思います。これは生産、生活両面、当然のことながら土地利用のあり方についても当然それは含まれております。こういう方向で土地改良事業というのを非常に長い歴史的な位置づけとか、それから世界史的な視野の中で日本農業の特質を考えていく時代に来ているし、そういう観点から、もし土地改良事業というものを位置づけるとするならば位置づけるべきではなかろうか。それから日本農業の発展論もそういう中で考えるべきではなかろうか。
 きょうは時間ございませんので、この話をしますと一時間ぐらいいただければできますけれども、簡単でございますが……。
#36
○参考人(正木裕美君) ただいま青木理事さんの方から、国県営事業と市町村、そういった末端の方との連携をどういうふうにされておるかというような御質問でございましたが、土地改良事業の国営事業は最近非常に規模が大きくなっておりますが、これは特に水を扱う事業の場合には広域的な水資源開発という観点から、むだをなくしながら有効に水資源を利用するというそういう意味で広域的に取り上げるのがより合理的な場合が多くございますのでそうなっておるわけでございますが、ただ事業規模が大きいから国営事業になるし、小さくなると県営事業、もっと小さくなると団体営事業になるという性格でございまして、何も国営事業で農水省の技術者が来て仕事をやってさっと帰っていくというような形では非常に困る。やっぱり最終的には物だけ残っていくわけでございますし、その物をみんなが活用するわけですから、最末端の意見、声、希望がくみ上げられなくてはいけないというようなことで、私は県の農林部長を八年半ほどやりましたが、そのときに、国営事業といえどもこれは県営事業、団体営事業と同じレベルで考えろと、したがって国の事業所とそこいらの意見交換を十分にしなきゃいけないということで、各事業でやはり技術者の連絡協議会みたいなものを設けまして、そしてそれには市町村も参画していただくし、農業団体も参画してもらうというような形で、みんなもう思い思いの勝手な要望を出しながらそれを整理して、技術的にどういうふうに導入できるかというようなことでやってきておるわけでございまして、現在もそのようにやっておるわけです。
 それからなお、土地改良事業についての考え方ということで簡単に申し述べたいと思いますが、私は土地改良事業というのは今まで残してきた効果というのは非常に大きなものがあるし、絶対やらなくてはいけないというふうに考えておりますが、どうも最近いろいろこの土地改良事業に対してあらぬ批判を受けるような気がいたします。これを考えてみますに、どうもやはり農村の側に少し責任があるんじゃないか、若干閉鎖的になっておるために農業の実態がよく都会の人に理解してもらえないであろうというようなことで、これから行います土地改良事業については、やはり都会にも開かれた農業農村社会になるようなことを考えなくてはならないんではなかろうかというふうに考えております。幸い、今度新しいいろんな制度を農水省の方で考えていただいておりまして、水環境整備だとかいろんなそういったことを取りまぜて、もっと都会の人が農村に寄りつきやすいようにして、そして農民が働いておる、本当に農民は一生懸命やっておるわけですが、社会情勢その他で非常に厳しい面があって、それを国会の先生方のいろんな御理解で今助成がされておりますけれども、そういった助成もこれはやむを得ないなということをせめて国民全体の理解の上でやってもらえるような、そういう都市がもっと農村に近づけるような土地改良事業といいますか、農村の整備をやらなくてはいけない。これからの展開方向としてはそういうふうに考えておるところでございます。
#37
○猪熊重二君 今村参考人に二、三点お伺いしたいと思います。
 今回の改正法は、要するに土地改良事業の公益的側面ということを重視することによって、市町村に対する費用負担ということを企図しているわけです。私がお伺いしたいのは、確かに土地改良事業によって周辺地域に公益的な効果というものが非常に及ぼされるということはわかるんですが、そのことを前提にして、今回の改正法も市町村負担について、御承知のとおりだと思いますが、要するに道路法だとか港湾法だとか下水道法とか、そういうふうないわゆる一般的な公共事業における市町村負担と同様な手法で市町村に負担させているわけです。ただ、私はいわゆるそのような一般的な公共事業と土地改良事業に基づく地域社会における公益的効果というものとの間には差があるのじゃなかろうか、その差をある程度考えておかないと、土地改良法に基づく土地改良事業というもののありようというものについて間違った結論が出てくるんじゃなかろうか、こんなように考えておりますので、第一点は、いわゆるこのような公益的な効果というものと一般公共事業における公益的な効果というものの差異についてお伺いしたいと思います。
#38
○参考人(今村奈良臣君) まず最初に、公共という言葉がございます。これは英語ではパブリックという言葉を、明治時代にどなたが訳したかわからぬけれども、非常に巧みに訳した言葉なんですね。原語のパブリックというのは公という意味なんです、共はないんです。ところが、日本語になったときに不思議に共も入れちゃったわけです。共というのは共同体の共、村という意味ですね、あるいは自治的な村落という意味、それも共に入れたんです。これは非常に名訳とも言えるんですけれども、本来ならパブリック、公共事業と今日言われているのは公事業のはずなんですが、公共事業にしちゃったわけです。そこが日本の非常に大きな特徴だろうと思います。これは一つ前提です。
 もう一つ、土地改良事業とほかの道路、その他港湾とかいろいろございますが、公益的機能の差があるんじゃないかと言われたわけですが、これは受益者が特定できるか不特定多数かというところに結局帰してしまう問題ではなかろうかと思うのです。例えば、圃場整備といったようなものは特定できるわけです。区画形状できるわけです。ところが、排水といったものは非常に特定しがたい。山から流れてくるものもあるだろうし、一般の都市世帯から流れてくるものもあるだろうし、農家が耕作している水田から流れてくるものもあるだろう。こういうことが混住化あるいは兼業化、都市化というふうな中で非常に特定できがたい部分が出てきたわけです。それは例えば農道だとか、いろいろ取り上げればそういうことでございます。
 この判断をどうするかというようなことで、例えば隣の野田参考人が言われたように、市町村でかなり公共事業というふうな格好で市町村負担をやりますよというふうな、市長としての判断あるいは地域の選出議員の合意を得た上でそういうふうにされているのだろうと思います。そこのところの違いをどういうふうに判断するかということになってくると思います。従来は農村社会は同質社会だった。農民ばかりいて、ドングリの背比べでみんな同じような人で、利害をともにしていたわけですが、利害がだんだん相反する、異質化していく、こういう中で農民の異質化、それから地域の異質化というふうな両面からこういう問題が今日出てきたのだろうというふうに考えております。
 しかし、そういうときに、だからもっと広い観点から、地域資源の維持管理という広い観点で公益的機能をどういうふうに評価するか。これはもう理屈はある程度のところまでいきますけれども、現実的には政策判断をせざるを得ないことになるのではないか、こういうふうに思っております。
#39
○猪熊重二君 結局、いわゆる一般的公共事業はそのこと自体が目的であるというのに対して、土地改良事業に基づく公益的な効果というものは副次的な、反射的なものであるというふうに私は考えるんです。結局、それは法自体がそういうことになっているのだろうと思うのです。というのは、土地改良法の第一条の目的から考えても、土地改良法と書いてありますが、もっと厳密に言えば農用地改良法だと思うんです。そして、それなるがゆえに、先ほど先生もおっしゃられたように、適格者の三分の二以上の申請に基づいて初めて開始される事業なんです。それに対して、一般的公共事業はそういう性格のものじゃありません。そういうふうな観点を考えて、もし土地改良事業というものの効果というものを考えるんだとした場合に、今回の改正の方向というのは理解はできるんですが、もう少し全般的な国土全体の整備という中における位置づけというふうなものを考えてみる必要があるんじゃなかろうかと思うのです。国土利用計画法にしろ、都市部との関連部分においては都市計画法もあるでしょうし、いろんなそういうものとの関連をどのように位置づけていくか、その辺は非常に難しいと思うのですが、いかがでしょうか。
#40
○参考人(今村奈良臣君) 私ちょっと先ほどの答弁の中で直接効果か間接効果かということを落としましたけれども、その問題は当然入ってまいります。と同時に、一つ難しい問題は、日本では農業用水は商品ではないんですね。お金を出して買うということではないんです。例えばほかの国では水が商品になるわけですけれども、商品ではない。これは非常に難しい問題を含んでおりまして、つまり明治二十七年だったですか、河川法ができたときに――明治維新のときに欧米の法体系を取り入れながらやったんですが、およそ入らなかったのが慣行水利権なんですが、それを河川法にうまいこと滑り込ませるわけです。こういう知恵を日本の先人は当時持っていたわけです。その中で水は商品でない。商品であれば事は非常に簡単になってくると思うのです。だから、この辺の歴史的な問題と、それから今日非常に農村構造が変わってきた問題、かつ国土資源あるいは国土環境の保全といったようなもう一つ広い観点、こういうのを積み重ねながら、もし今後考えるべきことだとするならば、先ほど青木理事から御質問いただきました基本法三十年で、基本法というふうな中で考えていくのか、あるいはもっとでかい話で国土保全法とかいったようなもので考えていくのか、こういう観点を同時に入れながらやっていかないと、昭和二十四年にできた土地改良法の範囲では今の御質問の問題はなかなか解けていかない、こういうふうに考えております。
#41
○猪熊重二君 今度は、具体的な改正法の内容の問題の一つとして先ほど申し上げた市町村負担の問題ですが、市町村が費用負担する中に、現在の国営事業の負担の場合を考えてみますと、九十条五項で市町村が費用負担する。ただし、この場合には、現行法は市町村の当該議会の議決と同意が必要になっております。これを実質的に改正した同じ五項は、市町村議会の議決の方は消えまして同意だけは残っております。ただし、この五項の方の費用負担は、言えばさらに受益者に対する転嫁というか受益者からの徴収ということを考えているわけです。ですから、その意味では五項の費用負担というのは直接的に市町村の負担になっていないわけです。
 ところが、改正法のまさにこれが目玉である九項の新設規定によると、これらの市町村が自分で負担しなきゃならぬ金額になっているわけです。これについては都道府県が市町村の意見を聞いてということだけの要件になっております。要するに、直接自分が負担する今回改正法九項による負担金については市町村の意見を聞くだけなんです。市町村の同意も要らなければ市町村議会も極端に言えば全く無関係なんです。このような方策というものが、先ほど先生がおっしゃられたような農村地域の異質化というふうな側面から考えてみても、当該市町村の自主的な判断あるいは意思というものについて何ら考慮していないということについて、地方自治の観点から先生はどのようにお考えでしょうか、二、三分でお答えいただきたいと思います。
#42
○参考人(今村奈良臣君) これは現実的な問題で、なかなか私経験がないものですからわかりにくいのですが、できたら野田参考人あるいは鈴木参考人に、当事者ですからお聞きいただきたいんですが、実際上はいろいろな形で意見を聞いて同意をとられながらやられるんじゃないか、今までの経験を踏まえるとそういうふうな感じがいたしますが、具体的にはほかのそういう立場におられる方にお聞きしていただければありがたいと存じます。
#43
○猪熊重二君 ほかの参考人の方にもお伺いしたいと思うんですが、時間がありませんので、いろいろ有益なお話をお伺いしてありがとうございました。これで私の質問を終わります。
#44
○林紀子君 きょうは本当にお忙しい中を参考人の皆さんありがとうございました。
 日本共産党の林紀子と申しますが、私の質問時間は非常に限られておりますので、全部の皆様方に御質問できませんことをお許しいただきたいと思います。
 まず正木参考人にお伺いしたいと思いますが、今回の法改正で同意徴集手続というのが非常に簡素化される、三分の二の皆さんの署名、押印というのが今度は九分の四の組合員の同意を集めればいいということになるんでしょうか。これで本当に組合員の権利が十分保護されるのかどうか、そ
の辺についてどうお考えかというのをお聞かせいただきたいと思います。
#45
○参考人(正木裕美君) この土地改良事業でございますが、法的には三分の二という規制がございますけれども、実態としてはもっと多くの支持がないと事業は動きません。したがって、大体土地改良事業を起こしますときには三分の二の同意がとれないような事業は起こってこないわけでございますので、あとはやはり事務的にできるだけ簡素化していただいた方がありがたいということでございます。
#46
○林紀子君 それでは、正木参考人それから鈴木参考人に、同じような問題ですので続けてお聞きしたいと思いますけれども、まず正木参考人にお伺いしたいのは、佐賀県唐津市などの上場地区国営かんがい排水事業、先ほどお話がありましたが、工期の大幅なおくれから工事費が非常に高くなっている。償還利息の累積など地元負担は当初計画の四倍という膨大な負担増となっているということを聞いておりますけれども、今から二十年余りも前に開始してから、水田の減反やそれから特にミカン園の転廃などということもあって、受益面積が大幅に変更されるという事態も進んでいるわけですが、こうした中で上場農業に新しい転機をつくるという、この事業の目的が本当に達成されるために国にどういうことを要望されるのか、非常にがばっと大きい問題ですけれでも、その一番基本的なところをお聞かせいただけたらと思います。
 それからまた、鈴木参考人にも、先ほどお話がありました追川上流国営かんがい排水事業ですか、農家負担を一切負わせていない中で、工期の大幅なおくれによる事業費の高騰、償還利息の累積、地元負担というのは当初計画より随分大きく膨らんでいると思うわけですが、そしてまたこちらは受益面積がすべて水田なわけです。それで、水田の減反というのが進んでいる。この本来の目的を達成するためにということで国にどのようなことを御希望なさるかということをお伺いしたいと思います。
 それでは正木さんからお願いします。
#47
○参考人(正木裕美君) ただいま林先生から具体的に佐賀県の国営の上場地区の問題について御質問がございました。
 この上場地区と申しますのは、佐賀県では以前は佐賀のチベットというふうに言われておりまして、非常に生産性の低い東松浦半島一帯の台地でございます。そのために、農家の人たちは収入が低いものですから、佐賀県で一番出稼ぎ農家の多いところでございました。一番決定的なものはそこに水がないということで、作柄が非常に不安定である、それから土壌もよくないというようなことでございましたので国営事業を始めていただいたわけでございます。非常に皆さん希望に燃えてかかったのでございますが、時間が非常にかかった。それで農業情勢が刻々変わってくるというようないろんな問題が出てまいりました。もともと生産性の低いところでございましたので、着工する時点で県費のかさ上げをやっておりまして、この地区は、例えばかんがい排水事業の場合には、一般会計でスタートしたわけですが、国が六〇負担に対して県が三〇持ちまして、そして地元負担が一〇%という形でスタートをいたしました。そしてその一〇%につきましては関係市町村が全部持つということで、水についてはまず市町村までで全部持とうという形にいたしました。あとは農地開発で規模を拡大しようということでございますが、農地開発につきましてもやっぱり県費のかさ上げをするというようなことでやっておったわけでございますが、何といいましても一般の通常畑でございますので、作物をどうつくってどうやって売ったらいいかというようなところに非常に問題がございます。それに途中で最近のミカンの情勢が非常に悪くなりましたために、ミカン園の畑地かんがいまでしてやりたくないということで脱落が出てまいったわけでございます。
 今回、国の円滑化対策事業等が適用されることになりまして、これが非常に上場地区では大きな助けになっております。ありがたい制度ができたというふうに思っておりますし、今国営事業の進め方の非常に難しい面もございますので、県の方にお願いしましたら、知事さんの御英断でさらに補助のかさ上げをしていただくというようなことで、今のところはいろんな計画変更でもほとんど問題なく同意がとれて進むような状態になっております。
#48
○参考人(鈴木源次郎君) かいつまんでお答えを申し上げます。
 迫川上流地域の地元負担の問題については、今御指摘ございました工期の延伸、さらにまたその間における物価上昇、若干の工事の構造等の、実際工事を進めている中でいろいろ私ども地元としての注文もふえてまいりますので、そういったことによります増額で、大体現在、着工が昭和五十三年でございますが、五十三年当時と比べまして、あと五、六年かかるわけでございますが、五、六年後の推算工事費としては二・五倍ぐらいに工事費は膨らむ。そうしますと、私どもの地域は特別型でございますので、当然のことながら金利負担もございます。これらについては昨年から始まりました償還の平準化、あるいは工種別完了制、それから利子補給、こういったようなありがたい恩典によりまして、償還が当初計画の場合におけるよりも大体四〇%程度は低くなる。これがまず一つございます。
 それから、基幹かん排制度が入りましたので、これが実は非常に大きゅうございます。基幹かん排については、国の負担率を若干増額していただいておりますので、これが私どもの仕事の中の三分の一ほどの部分に適用されることになりましたので、これで約四〇%程度は軽くなります。
 それからさらに、県がこれと並行しまして、思い切った県費助成を昨年の九月県議会におきまして条例で定めていただきまして、これによりまして、結果として、現在の見込みとして四〇%ということであります。四〇%ということは、そもそもの工事費の増額がない場合の地元負担というものになる、こう考えていただいてよろしいかと思います。そういう状況でございます。
 そこで、結果として九町は、最高の町で年間の一般会計予算の四%、それから最も少ないところは〇・五%程度のところもございます。そういう状況であるので、これだって軽くはございませんので、国に対する要望ということでございますが、実はこの特別会計の利子負担については何とかこれはゼロにまでひとつお願いをしたい。
 さらにダムについては、特に私どもの受益負担というようなことは、少なくとも水路についてはある程度ひしゃく的な意味もございますけれども、ダムについてはこれは全く私は受益負担を何とか求めない形にまで、率直に実はお願いしたいところであります。
 以上でございます。
#49
○井上哲夫君 井上でございますが、私が尋ねたかったところはほかの委員さんが尋ねられましたので、参考人の方にきょうはお忙しいところをおいでいただいたことのお礼だけ申し上げまして終わります。ありがとうございました。
#50
○橋本孝一郎君 参考人、御苦労さまでした。
 もうほとんどダブっておりますので省略しますが、今村教授に一言お聞きしたいんですけれども、営農者問題で日本だけの事情、いろいろ国際的に違うと思いますけれども、産業構成等によって農業後継者問題というのはそれぞれ国によって事情が違うと思いますが、特に日本の場合における問題点はどこにあるのか、御指摘を二、三点お願いしたいと思います。
#51
○参考人(今村奈良臣君) 一言で申しますと、日本では農家という家の後継者はいるんですけれども、経営者の後継者がいないということなんですね。これは日本の相続慣行ということと大いにかかわるだろうと思います。アメリカでは御承知のように、親から農場を買うんです。もちろん即金で買えませんけれども、順次何年かたって買うんですけれども、買うということを通じて自分で意思決定し、職業としての農業経営者を選択するわけ
です。ところが日本ではおおむね長男が、今日でも八五%ぐらいがそうなんですが、長男が家を継ぐということで、これは必ずしも経営者とならないわけです。ここのところが一つ大きい問題だというふうに私考えております。
 時間がございませんので終わります。
#52
○橋本孝一郎君 ありがとうございました。
#53
○喜屋武眞榮君 御苦労さまでございます。せっかくの機会ですので簡単にお尋ねいたしたいと思います。
 まず、それぞれに一問ずつ。鈴木参考人に対しては、事業費の一部を市町村に負担させることについてどうお考えでしょうか。
 それから、野田参考人に対しては過疎化の現状を、簡単でようございます。
 今村参考人に対しては、自給自足の原則から、農業、工業、商業、農工商のバランスがどういう状態にあることが適切でしょうかと。
 次に正木参考人に対しては、換地事業をお進めになる前提において特に困難な問題点あるいは障害になる点をお聞かせ願いたいと思います。
#54
○参考人(鈴木源次郎君) お答えをさせていただきます。
 簡単に申し上げますと、事業費の一部市町村負担ということについては既に前にも申し上げましたが、これは負担はやむなしということであるならば、少なくとも国営事業、県営事業までに及ぶような基幹的なあるいは幹線的な部分でもございますので、これは市町村が負担をし、これを財政的に地方財政としての措置で処理されるべきものだと、かように存じております。
 しかし、先ほども申し上げましたように、私は個人の信念といたしましては、国営事業という中における基幹的な部分というものは国において全額の措置をしていただきたいものだ、こういう信念でもございます。
 以上でございます。
#55
○参考人(野田あきら君) お尋ねの過疎化の現状ということでございますが、私の市におきましては人口増加傾向を示しておりますが、過疎化の現象を示しておる地域は確かにございます。それはなぜそうなったかという点については、営農的に成り立たない、それと同時に、自然環境を保持していた、あるいは交通の利便性ができなかった、言うならば農道の整備等ができなかったという点において過疎化現象が出ておると思いますが、今の時点で振り返ってみますと、その過疎化現象が逆に中山間地域の整備に非常に魅力のある土地になってきておるということに気づくわけでございます。ここが大事なところだと思っております。
 ただ、日本全国から見ると、離島あるいは僻地と言われる点についてどのように対処するかということは、国土保全という意味におきまして、あるいは土地利用という観点におきまして先生方に大きくお考えをいただきたいというふうに思っております。
#56
○参考人(今村奈良臣君) 簡単にお答えします。
 昨年の十月、総理府世論調査などを見ますと、大体日本人の四分の三は、できる限り国内で食糧を供給するというふうなお答えをされております。こういうことを頭に置きながら、ぜひ先生方、そういう観点で農政を進めていただきたい、こういうふうに考えております。
#57
○参考人(正木裕美君) 現在、土地改良事業を進める上で一番難しい問題と申しますのは、やはり農業に対する先行きの不安感という問題がございまして、土地改良事業をやりますと、どうしても借入金等をやりますとその借金が残る。それが本当に払えるだろうかと自分の後継者がいないというような方の場合に非常に不安が伴って、そこいらにやっぱり事業の真髄といいますか、概要等を説明して理解してもらうのに骨を折っておるわけでございます。
#58
○委員長(吉川博君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑を終わります。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただき、長時間にわたり有意義な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。本委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 本日の審査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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