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#1
第120回国会 社会労働委員会 第9号
平成三年四月二十三日(火曜日)
   午前十時九分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         福間 知之君
    理 事
                田代由紀男君
                前島英三郎君
                対馬 孝且君
                高桑 栄松君
    委 員
                尾辻 秀久君
                木暮 山人君
                清水嘉与子君
                田中 正巳君
                西田 吉宏君
                糸久八重子君
                菅野  壽君
               日下部禧代子君
                堀  利和君
                木庭健太郎君
                沓脱タケ子君
                乾  晴美君
                勝木 健司君
                西川  潔君
       発  議  者  対馬 孝且君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  下条進一郎君
   政府委員
       厚生大臣官房総
       務審議官     熊代 昭彦君
       厚生省保健医療
       局長       寺松  尚君
       厚生省児童家庭
       局長       土井  豊君
       厚生省援護局長  岸本 正裕君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        滝澤  朗君
   説明員
       外務省欧亜局ソ
       ヴィエト連邦課
       長        東郷 和彦君
       大蔵省主計局主
       計官       渡辺 裕泰君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○積雪又は寒冷の度が特に高い地域における指定業種関係労働者の年間を通じた雇用の確保等に関する法律案(対馬孝且君外七名発議)
    ─────────────
#2
○委員長(福間知之君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 児童手当法の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○対馬孝且君 きょうは私は、原爆被爆者の対策に対する基本的な考え方についてお伺いをいたしたいと思います。時間もきょう四十分と限られておりますので、とりわけサハリン州での遺骨の収集、慰霊の対策等についても緊急課題のように思われますので、シベリアの抑留者問題とあわせて質問申し上げたいと思います。
 まず最初に、原爆被爆者対策の考え方についてお伺いをいたします。
 政府は、原爆被爆者対策におきまして、およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命、身体、財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは国を挙げての戦争による一般の犠牲としてすべての国民がひとしく受忍をしなければならないと言って、原爆被爆者もこの犠牲を受忍しなければならないかのように言いますが、これは全く論理のすりかえだと私は思います。
 それは原子爆弾による被害の悲惨さ、障害の長期継続性、それから子孫にまで及ぼす影響を考えるときに、この原子爆弾の非人道性は何人も否定し得ないところであると思います。政府は戦争が国の存亡をかけたものであるとして、国民がひとしくこれを受忍せよと言いながら、軍人軍属に関しては国と雇用関係があるから別だと、こう言うのであります。雇用関係があるなら特別と言うなら、原爆という非人道的な兵器によって今なお苦しむ人々に対して補償するのも同様でなければならないのではありませんか。一方では戦争という超法規的な状態を強調して責任を放棄しながら、片一方では雇用関係という法律関係を持ち出して補償を行う、これが論理のすりかえじゃなくて何の論理だと言えましょうか。
 政府は、この原爆の悲惨さを認めているからこそ原爆二法と言われる特別法を制定しているのではありませんか。本件についての大臣の基本的な姿勢についてお伺いをしたいと思います。
#4
○国務大臣(下条進一郎君) 原爆被爆者の本当にお気の毒な被害につきましては、私も心からお慰めの気持ちを持っておるわけでございまして、そういう点でただいまの委員からのお尋ね、深刻な問題とまた受けとめておる次第でございます。
 原爆被爆者対策につきましては、放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲に着目いたしまして、実態に即した対策を行うというのが基本的な考え方でございます。原爆二法を中心に保健、医療、福祉の全般にわたりまして施策を講じているところでございます。
 一方、原爆被爆者援護法は、放射線による健康障害という特別の事情にない遺族に対して補償を行うことや、被爆者全員に障害の有無にかかわらず年金を支給することなどを内容とするものでありますので、一般戦災者との均衡上問題があると考えております。
 今年度におきましては、諸手当の大幅な改善を行うとともに、新たに原爆死没者の慰霊等のための諸事業を実施することといたしておりまして、今後とも原爆二法を中心とする施策の充実によりこれらの問題に対処してまいりたい、このように考えております。
#5
○対馬孝且君 今、大臣の法改正の前進的な一面もあるという趣旨の考え方でございますけれども、ここは大臣、大事に受けとめてもらいたいと思うのは、平成元年十二月五日、当委員会におきまして六会派で議員立法を提出いたしておるんです。しかも、これは可決をしているんですよ。この点は非常に重いものであるということを理解してもらわなきゃならぬと思いますよ。これは日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院、民社党・スポーツ・国民連合、参院クラブ、こういう六会派で、しかもこの措置を緊要の課題として、非人道的な問題を一日も早く解決すべきであると、こう言っているわけですから、それは法律改正で若干の前進をしたことは事実だろうけれども、基本的な問題を私聞いているんです。
 あえて私申し上げなきゃならぬのは、同じ大戦の敗戦国であった西ドイツはいち早く幅広い救済の措置を行っているんです。太平洋戦争を体験している年代の数が年々、大臣、少なくなってきていますね、もう四十五年ですから。したがって、この戦争の悲惨さが忘れ去られようとしている現状でありますが、被爆者にとっては援護法が制定されることで戦争が終わるんです。六会派の議員立法の趣旨を体して、今後の大臣としての考え方をいま一度お伺いしておきたいと思います。
#6
○国務大臣(下条進一郎君) ただいま委員からお話がございましたように、平成元年の当委員会で原爆被爆者援護法が可決されて、また本会議を通して衆議院に送られたこともよく承知いたしております。当委員会のそういう御趣旨は非常に重いものだと受けとめておるわけでございます。
#7
○対馬孝且君 ぜひ今後の取り組みを切望しておきます。
 それでは次に、原爆被災者の所得制限の撤廃問題についてお伺いしたいと思います。
 昨年の五月十五日に、厚生省の昭和六十年度原子爆弾被爆者実態調査(死没者調査)が発表されております。この調査は、戦後四十年たって初めて実施された国の調査でありますが、遅きに失したと言えるわけでありますけれども、改めて原爆の非人間性について裏づけられたと思います。
 ことしの夏でもう既に被爆後四十六年になろうとしております。世界唯一の核兵器被害国である我が国がいまだに被爆者に対して国家補償が行われないまま放置していることはまことに残念だと言わなければなりません。先ほども申しましたように、六会派、全野党の賛成多数で被爆者への国家的補償を定める原子爆弾被爆者等援護法が参議院を通過したにもかかわらず、政府は現行二法の微々たる改正でお茶を濁そうとしている態度は私は了解することはできません。
 ところで、現行の特別措置法の諸手当について、医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当を除いて所得制限が行われています。厚生省は本年度から所得制限の限度額を引き上げ、支給率を九六%から九九%に引き上げようとしておりますが、このままでやれるんなら、どうしていっそのこと所得制限を撤廃しないのか、国家補償の趣旨からいっても当然ではないかと考えますが、いかがでしょうか、お伺いします。
#8
○政府委員(寺松尚君) お答え申し上げます。
 原爆被爆者対策につきましては、平成三年度におきまして、被爆者の高齢化が大変進んでおります、それに対応いたしまして諸手当の大幅な改善を行うことといたしておりまして、所得制限の限度額の大幅な引き上げもその内容の一つでございます。
 諸手当の所得制限につきまして、被害者の障害の実態に即した対策を重点的に実施していく、こういう観点から私どもは原爆放射線による健康障害を現に有している被爆者につきまして支給されます先生御指摘の医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当については所得制限を設けていないわけでございますが、これに対しまして、先生からさらに御指摘ありました特別手当あるいは健康管理手当等につきましては、放射線障害が現にないかあるいは原爆放射線との関連が明らかでない場合につきましても支給されるという手当でございまして、一般の社会保障との均衡を考慮いたしまして所得制限を設けているところであり、ぎりぎりのところまでそれを引き上げておるわけでありますが、これを撤廃することはまだ困難なことではないかと考えております。
#9
○対馬孝且君 時間がございませんから、今の撤廃問題というのは、基本的には九九%まで出しておって、厚生省、撤廃という制度を変えることはできないと、メンツ上の問題だと私は言わざるを得ませんよ。いずれ抜本的な改正問題について後ほどまた機会を見てやりますけれども、特にその点は思い切った撤廃をするならする。何か現行制度だけに固執するというやり方は改めた方がいいと強く申し上げておきます。
 それから次に、政府が従来検討を続けてきた原爆死没者に対する弔慰についてお伺いしたいと思います。
 厚生省は死没者への弔慰表明として九千二百万円程度をつけておりますが、大騒ぎした割には大したことではないんじゃないかという私は実感を持っております。そこで、予算の中で具体的にどのような弔慰をあらわしていく考え方をお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。
#10
○政府委員(寺松尚君) それでは、先生今御質問の平成三年度におきます慰霊事業等どういうふうな弔慰のあらわし方をしておるのか、こういう御質問でございますが、私どもは原爆死没者を慰霊いたしまして、永遠の平和を祈念する、こういうことのために新たに財団法人放射線影響研究所を活用いたしまして被爆に関します調査研究啓発事業、国際交流事業を行う、こういうことといたしておるわけでございます。また、それとともに都道府県等を通じまして慰霊事業を行うほか、広島、長崎に原爆死没者慰霊等施設を建設するための施設整備検討調査費を計上いたしておりまして、できるだけ早い時期にこの検討会を発足させたい、こういうふうに考えております。
#11
○対馬孝且君 弔慰の問題について今お答えをいただきましたが、この機会に、今言った所得制限撤廃の問題と弔慰の問題をあわせて、最後に今後の取り組みの大臣の姿勢についてお伺いをしておきたいと思います。
#12
○国務大臣(下条進一郎君) ただいまのお話、二点でございますけれども、弔慰の方につきましては、政府の行っております原爆被爆者対策は放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲に着目したものでありまして、こうした特別の事情にない遺族に対しまして、弔慰金の支給を行うということは一般戦災者との均衡上問題があるというような理由から、今直ちにこれを取り上げる、個別の弔慰を行うということにはならないということを考えております。
 政府といたしましては、原爆死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するために、金品の支給といった個別弔慰措置ではなく普遍的、永続的な事業を行うことが適切である、こういうような考え方に立ちまして、原爆死没者慰霊等施設の建設につきまして、検討調査することとともに、慰霊式典への助成等の慰霊事業を実施することといたしておるわけでございます。
 それから、もう一つの先ほど来所得制限の九九%になったのをもう一〇〇%へあと一%だからというお話でございますが、このことにつきましては、政府委員から御答弁申し上げましたように、ほかとの権衡の関係もございますので、今のところ直ちにこの制限を取り払うことは考えておらないということでございます。御理解をいただきたいと思います。
#13
○対馬孝且君 ただ、先ほどの受忍者というものの基本の考え方に政府、厚生省は今なお態度が改まっていない、言葉では戦争の犠牲、原爆の被爆者に対する非人道的なものには理解すると、言葉で言っているだけであって、言葉がそうであれば制度をきちっと変える、これが本当の被爆者に対する政府の誠意ある態度だ、こう思いますけれども、時間もありませんから改めて抜本的な改正を強く求めておきます。
 次に、私はシベリアの抑留者、死亡者数の問題を含め、このたびのゴルバチョフ大統領の訪日を機にいたしまして、抑留者対策あるいは墓参の問題等を中心にしてお伺いをいたしたい、こう思います。
 まず最初に、抑留者、死亡者の数の現状についてどうなっているかということをお伺いします。御存じのように一九四五年八月九日にソ連が対日参戦をして日本降伏後、多数の日本兵あるいは一般邦人をシベリア、モンゴル各地に抑留をしたわけであります。シベリアの収容施設の大部分が粗悪で、医薬品等はもちろんのこと、十分な食糧、また防寒装備もなく、零下三十余度の酷寒の中で炭鉱、鉄道建設、森林伐採、道路建設等の重労働が強制されたことは御案内のとおりであります。多くの方々が無念の死を遂げたこともまさに我々は残
念でなりません。
 ところで、シベリア抑留者及び死亡者について厚生省がこれまで調べた結果、抑留者は私が大体把握しておるところによりますと、五十七万五千人のうち約五万五千人が死亡したとなっております。この数字は果たして正確なものなのかどうか、またどのように数を計算したのか、確たる数字を確認しておきたいと思います。いかがですか、この点。
#14
○政府委員(岸本正裕君) ソ連に抑留された方々は、昭和二十一年以降逐次日本に帰還されたわけでございます。復員を担当しておりました官公署がこれらの帰還者からソ連邦内におきます情報をいろいろとお伺いをした。それからまた、日本国内におきましては、留守家族からの未帰還者の届けというものが出されまして、そういうものをもとにしまして推計をした数字が、ただいま先生おっしゃいましたように、抑留中死亡者数は約五万五千人である、こういうことでございます。
 どの程度正確かということでございますけれども、これはそういうことで事情から推計をしたものでございますので、かなり正確であるとは思いますけれども、完全であるとは思っておりません。
#15
○対馬孝且君 そこで私は、今回ゴルバチョフ大統領の訪日によって三万六千人の名簿がもたらされたということが報道されております。こういう方々の名簿を外務大臣同士で交わされたということでございますけれども、外務省から名簿の確認をして、遺家族の方々に対して一日も早く知らせてやるということは当面の当然の対策ではないか、こう思っておるわけであります。遺族からの問い合わせも私のところに電話が参っておりますが、一つは名簿の公開、第二は遺族の特定、通知、問い合わせに対する今後の体制としてどういう具体的な行動計画、スケジュールを持って対応しようとしているのか、厚生省の対応についてお伺いをいたしたいと思います。
#16
○政府委員(岸本正裕君) 先日、ゴルバチョフ大統領訪日に伴いまして抑留中死亡者の名簿が外務大臣に手渡されまして、ただいま厚生省がそれを引き受けているところでございます。厚生省といたしましては、ソ連抑留中死亡者の名簿につきましては、現在名簿の翻訳作業を行っているところでございます。翻訳終了後、御遺族のプライバシーにも配慮しつつ速やかに名簿を公開したいというふうに考えております。また、当局の保管資料と照合することによりまして名簿記載の本人を特定いたしまして、特定ができました方々につきましては、都道府県を通じて御遺族に対して名簿の記載内容をお知らせするというふうに考えております。
#17
○対馬孝且君 ぜひできるだけ早く遺族のもとにお知らせをして、遺族の方々の要望にこたえることが行政の最大の当面の課題であるということで、早期に実現されることを切望しておきます。
 いま一つの問題は、昨年六月に我が国で開かれましたシベリア抑留をめぐるシンポジウムがございました。このときソビエト側の極東研究所長でありますキリチェンコ氏は一九四九年の時点で墓地の数が三百四十一カ所あった、埋葬者は三万四千四百二十二人であり、その後一九五九年には百七十八カ所の墓地が閉鎖されたと述べております。閉鎖された百七十八カ所の墓地はその後工場用地などに化したためにほとんどなくなってしまった、こういう問題がソビエトの極東研究所長によって指摘をされているのであります。この墓地に埋葬された人たちは約八千六百人、そのときにそう言っております。
 この方々の遺族の墓参が不可能になっている現状でありますが、シベリア抑留後相当な時間を経過しているわけでございまして、もはや墓がなくなってしまった事態などを考えますと、私は今なお不明な遺族の方々の気持ちは本当にやるせない気持ちではないかと、こう思うんであります。今度の日ソ共同声明においても、墓参を行う場合には、当該他方の国の政府は墓参の実施のための必要な便宜を与えることを合意をいたしたと聞いております。
 とにかく政府は、早急に墓地の状況を把握し、遺族の方々の速やかな墓参及び遺骨収集の実現をすべきだと思うのでありますが、政府の対応についてお伺いをしておきたいと思います。
#18
○政府委員(岸本正裕君) 先生今御指摘になりましたような抑留地死亡者の埋葬地が地域開発、工場建設等のために破壊をされたというようなことが新聞報道されておりまして、私どもそれはそういう限りで承知をしておりますけれども、ソ連政府から公式に聞いているということはございません。厚生省は先ほど申し上げました抑留中死没者の名簿とともにソ連政府から墓地資料も受け取っているわけでございます。ただいま墓地資料の内容を検討を始めているところでございます。御指摘のような事実があるかどうか、その状況について確認をしていきたい、こう考えております。
 もし先生おっしゃるような場合につきましては、埋葬地がなくなってしまった、今後遺骨収集等が不可能である、こういうことでございまするから、これは遺族のお気持ち等も十分踏まえつつ今後どのような慰霊事業が実施できるか、そういうことを検討してまいりたいと考えております。
#19
○対馬孝且君 しかし、考え方はわかりましたけれども、例えば第一次の収集のめどを大体いつごろにしているのかとか、そういう具体的なスケジュールが私必要だと思いますよ。
 私も一九八六年にサハリン州に行っています。昔の敷香というところですが、本斗、あの付近にずっと行ってまいりました。確かにそういうことを現地に行ったときも報告されておりました。だからもう年数がたっているだけに、去年我が北海道は調査団を出しておりますので、その問題は後で触れますけれども、早くやらないと墓地がもうなくなってしまっているという大変な現状を深刻に受けとめていただいて対応してもらいたいと思います。
 次に、サハリン州の遺骨、遺品の収集等の調査計画についてお伺いしたいと思います。
 私は微力でありますけれども、社会党の北海道の委員長をやっておるのでありますが、昨年八月の十四日から二十三日までサハリン州の旧日本兵の遺骨収集調査団を出しました。これはソビエトのコムソモールサハリン州委員会の皆さんと我が北海道から十三名出しまして、かつて気屯というところと古屯という大激戦地になったところでありますが、幸いこのときの激戦に参加した生き残りの元歩兵一二五連隊陸軍少尉村上健介さんの御協力をいただきまして調査を成功させていただきました。
 これ
は遺族の方々から一日も早くサハリン州の遺骨収集をしてもらいたい、遺品の収集をしてもらいたい、こういう要望が非常に高まりましたので、実は調査団を派遣いたしました。これは援護局長に出していますけれども、かつての村上少尉の報告書を私は本当に涙ながらに読ませていただきました。
 あの大激戦の場に行ったときに想像に絶するものがあったというのはどういうことかといいますと、全部ツンドラ地帯でありまして、そしてタコつぼ作戦、私も軍隊へ一年八カ月行きまして、歩兵ですからよくわかるのでありますが、タコつぼ作戦というのは穴を掘って体を隠す、そして戦車が来た場合には破甲爆雷という爆雷を抱えて戦車にまともに突っ込んでいくという、私も訓練を半年やりましたが、そのことをそのまま実戦されたというのがサハリンにおける、地域は気屯、古屯という場所でございますけれども、これは敷香から約六十キロ近くのところでございます。
 この状態で調査団が行きまして、タコつぼなどを調べ、調査団としてはえらい苦労したようであります。しかも不発弾があって地雷が残っている、今なお四十年たってもまだ火薬は生きているわけです。ただ手ぶらでは行けないということで、コムソモールの青年の協力もいただきまして、探知器を持ってずっとツンドラ地帯を探ったという報告が出ていますが、私も帰ってから報告を聞きました。結果的には四柱遺骨が収集されまして、当
時の飯ごうであるとか食器であるとか、こういうものも発見をされました。帰ってきて慰霊を行い、援護局長に協力していただいて千鳥ガ淵の無名戦士の墓に納骨をさせていただきました。
 こういう実態をちょっと考えてみますと、私はあえて聞きたいのは、厚生省もその後調査団を出していますけれども、何といってもサハリン州における遺骨の収集あるいは遺品の収集という発掘計画、これは政府として当面最大の課題として取り組むべきである。私はこの報告書を読みながら本当に涙ながらに決意を、何とかこたえてやるべきだなと意欲に燃えたのはこのことでありますが、そういう実施計画がありましたらお伺いをしたい、こう思います。
#20
○政府委員(岸本正裕君) 樺太におきます遺骨収集につきましては、昨年五月にソ連政府の原則的合意を初めて取りつけたわけでございまして、ソ連側が収集した樺太の旧国境付近の遺骨十六柱並びに北千島の旧占守島の遺骨七柱の引き取りを厚生省として九月に行ったところでございます。その際、樺太での現地調査及びサハリン州政府関係者との打ち合わせも実施をいたしました。
 平成三年度におきましては、平成二年度に実施をいたしましたこの打ち合わせと当方が行いました現地調査の実績を踏まえまして、また戦友、関係者等々の情報をもとにいたしまして、戦後初めてとなる樺太における遺骨収集を夏ごろに実施したいというふうに考えております。
#21
○対馬孝且君 厚生省も、私は政府として考え方はわかりますが、コムソモールサハリン州委員会の要請が私のところに来て、厚生省にも要請しているんだけれども、むしろこの点を私は配慮すべきだと思いますよ。コムソモール青年委員会の議長からは私のところへ来ているのでありますが、そっくりそのまま厚生省にも出しているのでありますけれども、調査する場合の機材、器具、これが非常にソビエト側が不足している。例えば端的な話でいいますと、先ほども出ましたけれども、金属の探知器だとか、それからいわゆる携帯用のディーゼル発電機だとか、それからポータブル無線機、五キロ範囲内とか、あるいはビデオカメラだとか、こういうのが非常に現状のソビエトでは不足している。そのため遺品あるいは遺骨の収集が困難をきわめているということもこれありまして、調査ももちろんのことだけれども、むしろ我が国が器具その他援助することによって遺骨の収集あるいは遺品が早期に発見をされる、こういう問題も切実な要望として昨年の十一月十五日に私のところに来まして、その後厚生省の方に実は出していますけれども、こういう取り組みもあわせてぜひ実現をしてもらいたい、こういうふうに考えます。
 それから私もサハリン州へ行っておりますけれども、一次計画としてはどの程度のことを考えているのか、二次としてはどの程度考えるのかというような、もうちょっと具体的な、局長、北海道の道民の皆さん、その遺族の皆さんから率直に言って強い要請書が来ているんですよ。この調査団には亡くなった父とか兄貴とかの遺族、そういう方々が全部行っているんですよ。しかも自費で行ったんですよ。そういう現状を考えた場合、もうちょっと具体的な計画を積極的に示してもらいたいし、また今言った機材、器具、こういうものに対しても政府は積極的に対応をとるべきではないかと考えますが、いかがですか。
#22
○政府委員(岸本正裕君) 樺太におきます遺骨収集というものは、南方地域におけるそれとまた違った意味で難しさがあるということを認識いたしております。
 昨年九月に派遣をいたしました樺太戦没者遺骨調査引き取り、このときに事前調査もしたというふうに申し上げたわけでございますが、そのような経験も踏まえまして、樺太の遺骨収集の実施に当たりましては、実施地域の実情を把握するための事前の調査団を派遣してしっかりと調査をする必要があるだろう。そして先生おっしゃいますように、そのときの経験から、地雷とか手りゅう弾とか、こういうものがありますので、金属探知器というものが必要である。また非常に山野、道路等の事情が悪いものですから、四輪駆動車というようなものがぜひ必要であるとか等々のいろいろな知識を得てきているわけでございます。そういうような必要な機材の調達、こういうものをどうするかということも含めまして今計画を考えている、こういうふうに考えているところでございます。
#23
○対馬孝且君 大臣、今私が訴えた、局長とやりとりしましたけれども、大臣として、今私が申し上げましたサハリン州の遺骨収集、また遺品の収集に対してもっと積極的に、また具体的に取り組んでもらいたいし、また先ほど具体的に私申しましたが、こういう厳しい困難な地帯であるだけに、大臣の今後の取り組みを一層努力してもらいたいという点で所見をお伺いしたいと思います。
#24
○国務大臣(下条進一郎君) 対馬委員御自身がサハリンに行かれまして向こうで現地を見られ、そして極めて状況の悪い中で今後どのように遺骨の収集を続けていったらいいかということについて大変貴重な御意見を拝聴いたしました。十分その御趣旨を踏まえながら今後対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
 樺太におきます戦没者の遺骨収集は従来ソ連政府の同意が得られず、実施できなかったのでございますけれども、昨年九月初めてソ連側の収集した遺骨の引き取りが実現したところであります。昨年の戦没者遺骨の引き取りとあわせまして実施いたしました現地調査の結果を踏まえまして早急にソ連政府と交渉いたし、本年夏ごろには実施できるよう努力してまいりたい、このように考えております。
#25
○対馬孝且君 時間も迫ってきましたので、最後に一問だけ申し上げたいと思います。
 遺骨収集団の編成は、例えば戦友会あるいは遺族会という方々が参加をするのでありますけれども、参加者が非常に高齢になってきたという、これ先ほど私は村上少尉のお話をしましたが、この方も私に言っておりました、もう高年齢ではとてもじゃないけれども遺骨収集は難しくなってきたと。それは単なる平地を歩くんじゃないんですから、ツンドラ地帯を歩き、あるいはタコつぼに入り、あるいは灌木地帯にずっと入っていくという、こういう状態ですから。
 そこで、お伺いするんでありますが、現在政府はこの参加旅費等につきまして三分の二の補助、参加者の負担が大き過ぎるのではないかという意見もございますけれども、不幸にして亡くなられた方々の遺骨収集は国の責任で、また国の事業としても行うべきである、こう私は考えます。したがって前例にとらわれず、政府の全額負担ということもこの段階では検討すべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
#26
○政府委員(岸本正裕君) 先生御承知のように、遺骨収集事業は昭和四十八年から遺族会や戦友団体の御協力を得て実施をしてきているところでございまして、樺太地域におきます遺骨収集につきましても、これまで実施をしてまいりました南方地域の遺骨収集と同様に、当時の事情を知る戦友の方々や関係御遺族の御協力を得ることは必要であるというふうに考えております。
 これらの協力者の方々に対しましての補助金でございますが、従来からの経緯や財政事情等からも、現行の補助金制度の三分の二の補助率を変更いたしまして全額国庫負担とするということは極めて困難であると考えておりますけれども、派遣事業全体の費用の軽減に努めるとかいうこと、いろいろ考えまして、民間協力者の負担が少しでも軽減できるような方策について研究してみたいというふうに考えております。
#27
○対馬孝且君 今局長からございましたように、基本的に三分の二を変えるというのは難しいとしてもということですが、例えば南方地帯とシベリアと画一的に物を見るというのは現実の実態として違うんですから、そういう意味では民間レベルのボランティア的参加、去年は我々の調査団にはみずから実費を出して自分の父、自分の兄貴に対して遺骨を早く引き取りたい、こういう一念で
やった、そのためには相当の、先ほども言ったようにホテルもないところもある、民家に泊まるとか、これ全部自費で出して、そうやった経緯もあるし、それから探知器だって借りていったんですよ、わざわざこっちから持っていったんですよ。こういう輸送の問題だとか、大変な苦労しているわけだ。
 そういう点では、今答えあったけれども、三分の二をすぐ変えられないとしても、そういう実態に伴って国が手だてをするということを研究するということですから、いま一歩このことについて研究から対策に実現するように努力していただきたいということを、最後に大臣にお伺いして、私の質問を終わりたい、こう思います。
#28
○国務大臣(下条進一郎君) 非常に困難な状況の中での遺骨収集ということは今の委員からのるるお話しの中にも出ておりますし、また厚生省といたしましてもそういう状況を把握いたしております。したがいまして、遺骨収集が今後速やかに促進できますように、また費用負担の問題につきましては、原則論は原則論といたしまして、負担が御本人にどのように軽減して済むかということの方策なども研究をしてまいりたいと思っております。
#29
○対馬孝且君 終わります。
#30
○糸久八重子君 児童手当法の一部を改正する法律案の審議に際しまして、まず大臣の基本的な児童観と申しましょうか子育て観と申しましょうか、それについてお伺いをさせていただきます。
#31
○国務大臣(下条進一郎君) 子供さんの問題についての基本的な考え方だと思いますが、子育ては基本的には個人や家庭の役割でありまして、それぞれの御家庭において愛情を持って行われるものである、このように考えておりますが、同時に次代の社会の担い手を育てるという意味では社会全体の貢献でもあり、社会全体の問題として考えなければならない重要なものだと認識いたしております。
 女性の社会進出や都市化の進展、出生率の低下など、近年子供を取り巻く環境が大きく変化いたしておりまして、こうした中で若い人々が安心して家庭を築き、子育てにより大きな喜びや楽しみを感じられる社会の実現に向けまして、それぞれの御家庭における子育てに対しまして社会的支援を行っていくことが極めて重要である、このように考えております。
#32
○糸久八重子君 今回の改正は、特別給付の期限切れということだけではなくて、一九八五年改正の際に、制度全般に関して検討を加え、必要な措置が講ぜられるべきものとされておりましたが、どこに重点を置きまして本改正案を作成されたのでしょうか。
#33
○政府委員(土井豊君) ただいま先生お話のございましたような経緯で私どもとしても相当前から今回の改正に取り組むんでまいりましたが、最近における子供を取り巻く諸状況の変化を踏まえまして、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりの重要な柱として今回の改正を位置づけいたしております。
 考え方の基本といたしましては、昨年十二月、中央児童福祉審議会から意見具申をちょうだいいたしまして、その中に示されているとおり「世代間における社会的な扶養及び経済的な支援の必要性の高い児童養育家庭に対する育児支援の強化」、そのような考え方に立って、我が国の実情に即した形の児童手当制度の改正内容を取りまとめた次第でございます。
#34
○糸久八重子君 児童手当の目的は、法の第一条にありますように、将来の社会を担う子供の健全な育成と家庭生活の安定にあります。この法の趣旨を踏まえるならば、児童手当の支給対象と支給期間は児童福祉と社会保障の考え方でなければならないはずなのですが、この点についての御見解はいかがでしょうか。
#35
○政府委員(土井豊君) 児童福祉法におきましては、児童の定義規定として十八歳末満という年齢の規定がございます。そういう意味では、今回支給対象の児童の年齢との間に大きな開きがあるという点は事実でございます。ただ私どもといたしましては、今日における我が国の社会経済状況のもとでどのような改正内容をまとめるかという点におきまして、まず支給対象を第一子にぜひ拡大いたしたい。今まで毎年生まれる約四割強の子供に当たります第一子が支給対象になっていないという点をやはり一番重要な課題というふうに考えました。
 それからまた、支給金額につきましても、相当長い期間据え置かれていたというようなことから、経済的にある程度価値のある額にしたいというようなことから、今御指摘の年齢の問題につきましては、中央児童福祉審議会の中でもいろんな御意見がございましたが、最終的に御提案申し上げているような内容で妥当であるというような御意見をちょうだいいたしまして、それに基づいて御提案をした次第でございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#36
○糸久八重子君 前回の改正の際に、私は子供の扶養はもはや家庭にのみ責任を押しつけるのでは済まない、高齢者と同じ程度にまで社会的扶養を拡大していく必要があるのではないかと問題提起をいたしました。高齢化の進展、とりわけ出生率の大幅な低下等の状況を見れば、次の世代を担う社会の宝として、これも大臣ただいまおっしゃいましたけれども、社会全体で子供とその家庭を支えていく必要性はますます重要になってきていると思います。
 そこで、先ほど子育て観というところでお伺いをいたしましたけれども、子供の社会的な扶養という部分につきまして、もう一度大臣から御見解をいただきたいと存じます。
#37
○国務大臣(下条進一郎君) 昨年の十二月十八日に中央児童福祉審議会で考え方の基本をお示しいただいております。その基本的な考え方が私はやはり我々の考えの非常に大事な線に沿っておる、このように解釈しておるわけでございますが、子供の扶養、すなわち養育費の負担のあり方につきましては、子育てが基本的には個人や家庭の役割であるものの、同時に社会全体に対する貢献という側面を有している、この面が大変大事であるということと、また次に、公的年金制度等の社会保障制度を通じ高齢者世代の扶養に関しましては社会的扶養が一般的な姿になっており、このような世代と世代が相互に支え合う社会においては高齢者の社会的扶養のみならず子供の扶養に対する配慮も求められるというような考え方がございます。これを踏まえまして、家族内の扶養を基本としつつも、児童手当制度を初めとする社会的な経済支援の充実が求められている、このように認識いたしておるわけでございます。
#38
○糸久八重子君 子供の社会的扶養に対する要請がますます高まっている現在でありますけれども、児童手当の果たす役割も本来それに即して大きくなくてはならないはずでございます。その意味から、今回の第一子からの支給拡大はもう遅過ぎた、そういう嫌いはありますが、支給額にしても十分なものとは言えないわけでございます。まして支給期間を三歳未満、これまでの半分にした、そこまで引き下げたのはどうしても承服できないわけでございますけれども、一体どうしてそういう三歳未満という形にまで引き下げてしまったのか、その辺の御見解をお伺いしたいと思います。
#39
○政府委員(土井豊君) 御指摘の支給期間の三歳未満の問題についてでございますが、中央児童福祉審議会における意見具申の中におきましても、子の三歳未満の時期は、一つは人間形成の基礎となる極めて重要な時期であること、二つ目には育児に手がかかり生活上の制約が大きいことや、また親の年齢も若くて収入が低い時期と考えられますことから経済的な負担も相対的に大きい、そういうことを考えまして、三歳未満に重点化をするという考え方を採用した次第でございます。
 あわせまして、今お話がございました制度改革の内容を第一子問題あるいは支給金額といったようなものもあわせて全体として充実しようという考え方の中においてでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#40
○糸久八重子君 子供の扶養という面では経済的な扶養というのは非常に大きな意味を持っております。厚生省の調査によっても、子供は三人欲しいと希望する御夫婦は非常に多いんです、特に女性ですね。非常に多いのですけれども、実際には一人ないし二人しか持たないという人が今多くなっておりまして、出生率一・五七という形になっているわけですけれども、その理由はやはり子育てにかかる経済的な理由をまず第一に挙げております。大臣、そういう子育てに対する経済的援助として、現在の育児手当の額で十分であると、そのようにお考えですか。
#41
○国務大臣(下条進一郎君) 児童手当の改正につきまして、どの年齢の世代の方々が一番大変かどうか、これはどの世代でも大変でございます。結婚されたばかりの方が赤ちゃんをおつくりになるときも、これまた大変でございますし、また、子供さんが大きくなっていくに従っていろいろなあれもかかりますけれども、相対的に最も支える力がまだ弱い時代の、共働きをされても御夫婦の給料の合計が非常に低い段階での負担というものは一番大きいんではないかということで、現行の児童手当の月額が第二子に二千五百円、第三子に五千円でありましたのを、この五千円の水準は昭和五十年以来据え置かれておりましたので、これはもうどうしても改正しなくてはならないということで、これをまず引き上げることにいたしたわけでございます。
 今回の改正案では、御承知のように、昭和五十年以降の諸事情を総合勘案いたしまして支給額を倍増し、そして第一子から支給をするということにして手当てをしたわけでございますし、三子からは一万円ということに相なって、それを拡大したわけで、一番経済的に大変な若い時代の、しかも子育ての一番手のかかるところに重点的にこのように手当てをいたしました。現時点においては妥当な線ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
#42
○糸久八重子君 児童手当が将来の社会の担い手となる子供を社会の子として健全な子育てが行われるよう社会全体で責任を負っていくという制度とするならば、支給期間を三歳未満に短縮するということは、あらゆる角度から考察しても、とても承服できないところでございます。
 一九七二年一月に本制度が発足いたしましたけれども、そのときの児童手当の設立の趣旨というのは一体何だったでしょうか。
#43
○政府委員(土井豊君) 制度発足時におけるこの制度の趣旨、目的についてでございますが、児童手当の支給によりまして児童を養育する家庭の生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全育成及び資質の向上に資するということを趣旨、目的としているものでございます。
 なお、御案内のとおり、我が国におきまして児童手当制度がおくれてスタートをしたわけでございますけれども、その際の議論としては、いろんな他の児童福祉施策面の諸問題、所得保障施策との関連あるいは人口政策、賃金政策等々の議論がございましたが、基本的な目的につきましてはただいま申し上げましたような形で規定をされております。
#44
○糸久八重子君 児童扶養家庭の生活安定、そして児童の健全育成という設立の趣旨だったわけでありますけれども、その二点から考えても今度の改正については承服できないわけですね。
 というのは、まず三歳未満支給では生活の安定、つまり所得保障になるのかどうかということが一つですね。それからもう一つは、児童の健全育成の意味では、むしろ三歳以上の児童が親離れをするときこそ児童の健全育成ということについては発揮されるのではないか、そう思うんですけれども、そういう意味からいっても、三歳未満の支給ということについては全く承服できないんですね。その辺についてもう一度御見解を伺わせてください。
#45
○政府委員(土井豊君) おっしゃるとおり、子供にかかる経費でございますけれども、中学校、高等学校と進むにつれて一カ月の経費は大きくなっていると思います。塾に通ったり、いろいろしております。そういう点では、子供が親離れをするような時期から後がまた大変だという御意見は、そういう点は私もそのとおりだと思います。
 ただ一方で、親の収入という面を考えますと、例えば若い御夫婦が子供が生まれたということで、いわゆるお母さんがお仕事をやめるというケースがございます。いわゆるM字型カーブと言われる女性の雇用形態というようなものを考えてみますと、いい悪いは別として、実態として仕事をやめられて家庭でしばらくは子育てに専念されるというケースがございます。そういう場合に、例えば夫婦共働きで三十数万円の収入があった、ところが赤ちゃんが生まれて共働きができなくなって、それが二十数万円になるというような実態的な問題、それからまたもう一つは日本の賃金体系、これは御案内のとおり年功序列ということになっておりまして、子供が大きくなる四十歳代というのは比較的若い時代に比べて相当給料が高くなっている、あるいはまたお母さんも仕事に復帰できるといったようないろんな両面もあろうかと思いまして、いろんな御意見があることは私どもも承知しておりますけれども、そこら辺を踏まえて中央児童福祉審議会の中でいろんな角度から御議論をいただき、今日御提案申し上げているような案が一番妥当であろうというような考え方に立ち至ったわけでございまして、その間の事情につきまして御理解を賜りたいと存じます。
#46
○糸久八重子君 今M字型カーブの問題が出ましたけれども、出産、育児で仕事をやめざるを得ない実態というのがありますから、それを今私たちここの社会労働委員会で育児休業法をつくっていこうということで労働省と現在論議を交わしているところでございますけれども、とにかく国を挙げて育児と仕事の両立支援策を今行っていこうとしているんですね。女性の就業率が小さな子供を育てている間は非常に低いというような、そういうことを理由にして三歳未満を重点化するというのは少々おかしいのではないか、そう私は思います。
 一九八九年の総務庁統計局の労働力調査によりますと、末っ子の年齢が六歳までの妻の就業率、これも四七%と非常に低くなっておりまして、末っ子が七歳以上の母親の六割強は働いているのと比べますと就業率が低いということが明白になっているわけでございます。
 また、三歳未満というのは人間形成の基礎となる大事な時期だから育児に手がかかる時期だということもおっしゃられましたけれども、それと経済的な支援の必要性とは必ずしも重ならないと思います。衣食住とか、また教育費、それをとってみても、子供の養育費がかさんでくるのは、先ほども申し上げましたけれども、むしろ大きくなってからなんですね。子育てに対する経済的援助という意味からも三歳未満に切り下げる理由はない、私はそう思います。それらを踏まえて、もう一度御見解を聞かせてください。
#47
○政府委員(土井豊君) 今回、制度の改正内容を固めるに当たりまして、先ほど来申し上げておりますとおり、全体としてどういう制度にするかという場合に、まず第一子に拡大いたしたいという点が非常に大きなウエートを占めていたと思います。それは世代間の扶養、助け合いというような面を非常に重視しているという考え方のあらわれだと思います。
 それから、金額の問題、年齢の問題を含めまして、全体としてどのような財源規模の中で今回の制度改正を実現できるかといったような一面も現実問題としては無視できない一面としてございました。そういう意味で、私どもいろんな形で御議論をいただき、御意見をちょうだいして今回御提案申し上げているような内容でまとめたわけでございますけれども、それと同時に、審議会の中でもいろんな意見もございまして、残された問題ということで宿題をちょうだいしているような状況でございます。
 御指摘の点もそういう中の重要な要素であると私ども認識しておりまして、確かにそういう意味
ではいろんな御意見が出るということも理解できます。ただ、そういう点につきましては、御指摘をいただいているような残された宿題というような受けとめ方もひとつしておるものですから、その間の事情も御了解を賜りたいと存じます。
#48
○糸久八重子君 子の養育が家計負担となるのは満三歳未満ではないということが国民生活白書の中にもあらわれているんですね。これを見ますと、ライフサイクルの余裕曲線は一番上の子供、長子誕生の三十歳代から四十歳前半までと非常に高いわけでして、四十歳代後半からだんだんだんだん低下をし始めまして五十歳半ばから後半にかけて最低となる。最近の進学率の上昇等は教育費の負担増となって家計に重くのしかかっているわけです。したがいまして、満三歳未満という支給対象年齢の改正というのは生活の実態を少しも考えていないということを言わなければならないと思うのですね。その辺の教育費の負担増等々の関係からの御見解はいかがでしょうか。
#49
○政府委員(土井豊君) 児童を養育する家庭に対する生活支援という点では、確かに教育費負担が実態として大きくなっているではないかという点はあろうかと思います。ただ、親の所得という面を勘案いたしますと、やはり第一子の誕生するような三十歳前後の時期というのは今度は収入の面でも非常に少ない。それからまた、先ほど来育児休業制度の絡みで御指摘ございましたけれども、実態として見ると両親のうちのどちらかがしばらくは子育てのために家庭に戻るというような側面もございまして、そういう意味では、従来得られていた収入が減るという意味で私ども赤ちゃんが生まれた最初の時期というのが一番大変なんではないだろうかという考え方に立っておる次第でございます。
#50
○糸久八重子君 子育て時期に大変な家計の負担がかかるからという目的で児童手当を三歳未満ということに重点的に考えたと、そう言うならば、ここの厚生省関係の論議ではないんですけれども、私どもがただいま論議をしております育児休業の場合も、仕事を休んで家庭にいる場合に非常に家計的な負担になるから、そういう部分では所得保障も何としても大事なのではないかと、そのように私たちは主張しておるわけですね。そういう部分ではこの児童手当の三歳未満の支給という厚生省の考え方と私どもは一致している、そういうふうに考えるわけですけれども、それはさておきまして、私どもは児童手当というのは義務教育終了前までは最低限もう支給すべきであると思いますし、さらに現在の進学率等を踏まえていきますと、どうしてもこれは延長をさせていかなければならないなというようなことも考えておりますけれども、それが本来の姿ではないかなというふうに思います。
 視点を変えてお伺いしますけれども、いわゆる児童の定義、これはどういうことになっておりますか。
#51
○政府委員(土井豊君) 児童手当法の三条に定義規定というものが設けられておりまして、「この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。」、そのような定義規定を設けているところでございます。
#52
○糸久八重子君 児童福祉法の四条にも、児童とは満十八歳に満たない者をいい、児童は次のように分ける。乳児は満一歳に満たない者、幼児は満一歳から小学校就学の始期に達するまでの者、少年は小学校就学始期から満十八歳に達するまでという、これがいわゆる児童という定義なんですね。
 これはこの前の改正のときにも私申し上げたんですけれども、児童という定義が法律によっていろいろあるわけですね。例えばこの児童手当の児童は今度の改正案で言いますと満三歳までを児童ということでしょう。それから児童扶養手当の場合の児童は何歳とか、いろいろあるわけですね。そこで、法律の用語なんですから、そういう場合の児童というのは十八歳までだときちっと規定をしていくべきものが本来の姿だと思うんですけれども、そういうことから考えますと、児童福祉法に規定されているように、支給対象も十八歳未満の者というふうにすべきであるというのが原則だと思うんですね。
 諸外国の児童手当の支給対象、ちょっと調べてみましたが、これは十六歳末満ですけれども、学生についてはドイツが二十七歳未満、スウェーデンやフランスは二十歳、イギリスも十九歳未満とさらに延長して支給しておるわけです。改正するごとに、制度の前進ならばわかるんですけれども後退に次ぐ後退なんですね、日本の児童手当というのは。福祉の面でも社会保障の面でも、その意味はもうますます改正するたびに薄れていくばかりというのが児童手当の姿ではないか、そう私は思います。
 前回の審議の際に、支給対象児童拡大のためにやむを得ない措置として義務教育終了時から就学前にしたと、これはこの前の改正のときですよ。少なくとも家庭の児童の養育に対する援助ならば、どんなに短くとも義務教育終了時までがあるべき姿と考えているから、将来はそういう方向に向かって改善を図るべきだと、そう政府は答弁をしていらっしゃるんですね。児童手当という以上やはり本来十八歳までを対象とするのが、何回も申しますけれども、本当ですね。それなのに二歳までしか手当を出さないというのは一体どういうことなのか。どう考えてもこれはおかしい。政府が言うように二歳までを支給期間として切り下げるならばこれはもうもはや児童手当の性格ではなくて乳幼児手当でしかないではないか、そう思うんですけれども、そういう意味でもう一度御見解を聞かせてください。
#53
○政府委員(土井豊君) 児童の定義が十八歳末満ということはこれは児童福祉法の中にも明記されておりますし、児童関係の幾つかの法律でそのような取り扱いにもなっております。ただ、児童手当につきましては支給対象児童という形で年齢を三歳未満という形で今回御提案を申し上げている次第でございます。
 今お話がございましたように、確かに年齢が下がってきているではないかというのは、事実としてそのような内容で御提案をしている次第でございますので弁明は申し上げませんが、ただ、日本の児童手当制度はスタートの時期は三番目の子供からということになっておりまして、毎年生まれる子供の大体一八%ぐらいが三番目以降の子供でございます。それから第二子が約三八、九%、四割弱ぐらいのウエートを占めております。それで第一子が四三%ぐらいになっております。これまでの制度というのは毎年生まれる子供の中の約四割強の子供たちが対象からずれているという面がございました。したがって、第二番目の子供から後が長い期間もらえるというような仕組みでありました。
 今回、その期間もそのままにしてさらに第一子に拡大できないかというのは一つの望ましい姿としてはあり得ると思いますけれども、全体として制度をどのような形で構築するかという議論の際に、やはり現実的な形の議論ということを考えますと、全体としては今回は給付総額三割増という形で私どもの認識としては充実をしたというふうに考えておりますけれども、いろいろ御指摘をいただいている問題点も残されているという認識でございまして、そういう意味では確かに前回答弁と食い違うところもあろうと思いますけれども、今日的な現実的な姿の改革案としてはそのような趣旨でございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#54
○糸久八重子君 先ほどもお伺いいたしましたが、法の目的の中に「児童の健全な育成」ということが書かれてある。そこから考えてみますと、十八歳までの児童を持つ家庭の六分の一以下を対象に三年間だけ月額五千円とか一万円を支給するということなんですが、それを考えると、どこに児童の健全育成という部分があるのかなということを考えるわけです。
 制度発足当時の概念からいいますと、児童の養育費の二分の一程度を児童手当で出すという思想であったわけです。厚生省は衆議院の審議の際に五千円、一万円という額であたかも養育費の二分
の一程度はフォローできているというような考えを示していらっしゃったわけですけれども、発足当時の理念はまさに義務教育就学前の児童の養育費の二分の一を考えていたはずだと思うのですね。間違っても二歳までの養育費の二分の一で足りるとしていたはずではないと思うんですけれども、その辺のところはいかがでしょうね。
#55
○政府委員(土井豊君) 家庭の児童養育のための経済的支援というものにつきまして、どういう考え方で支給金額を定めるかという場合に、昭和四十六年ごろ今お話がございましたとおり調べまして、養育にかかる経費のおおむね二分の一程度という金額を設定して御提案申し上げたという経緯はございます。
 今回、私ども御提案申し上げているような内容で案を取りまとめましたけれども、その際支給金額につきましては、一つには昭和五十年に、現行の第三子以降でございますけれども、五千円という金額が設定されたということを前提にしまして、その後約十五年間における経済情勢の変化というようなものを勘案いたしました。それと同時に、一方では最近における養育の実態がどうなっているかということも、これは民間の会社のデータでございますけれども参考にしまして、それに基づいて金額を定めたということではなくて、五十年以降の経済変動に伴って、設定された金額が妥当であるかどうかということを見るために、それを勘案しながら金額を定めていったというような経緯でございます。ただ、その場合に年齢の問題、これは三歳未満ということで、小さい子供さんにかかる養育経費ということを参考にしたというのが事実でございます。
#56
○糸久八重子君 支給期間の三歳未満ということは、先ほどもくどく大変承服できないと申し上げたんですけれども、ただいまの金額の面についても今回の改正では全く不十分だと思います。将来的な金額の引き上げについてどう考えていらっしゃるのか、その辺の御見解をお伺いしたいし、また児童手当が子供の養育費の一定水準を担保するという考え方からすれば、児童手当にも物価スライド制を導入してしかるべきだと思うのですけれども、その両方について御見解を賜りたいと思います。
#57
○政府委員(土井豊君) 現行の児童手当法六条の二項の中に、六条というのは「児童手当の額」の規定でございますが、「前項の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられ」るべきであるという規定がございます。したがって、いろんな経済情勢が大きく変わるというような場合には速やかな対処が法律上も求められているというふうに考えております。
 ただ、それでは物価スライドといったような他の年金等の中に導入されている諸制度でございますが、そういったものについてどうかということでございますけれども、年金における社会保険のシステムの中での一つの仕組みというものをそのまま児童手当の金額に当てはめることができるかどうかという問題があるのではないかと思います。ただ、今後社会経済情勢の推移にどういうふうに対応していけばいいかということを考える場合に、制度全般に関する将来の検討の中におきまして、今御指摘がありました物価スライド制というものも検討課題の一つであると私どもは認識をしている次第でございます。
#58
○糸久八重子君 スライド制については検討課題の一つだ、そうおっしゃいましたが、お年寄りの医療費の自己負担についてまでスライド制の導入を今回提案をしているようですが、それなのに児童手当について物価スライド制は早い時期に、お年寄りがそうだったからこっちもそうだという意味ではないんですよ、そうじゃないんだけれども、この問題については物価スライド制というのは当たり前ではないか、そのように思うところでございます。
 次に、第一子から支給することで、厚生省は、従来の子供を多く産むという多子奨励的な意味合いというのはなくなったのでしょうか。どうなんでしょう、その辺のところは。
#59
○政府委員(土井豊君) 児童手当につきましては、私どもは多子奨励という意味ではなく、また出生率の向上といったような問題とは切り離した児童手当のあり方というものを考えてきたつもりでございます。今回第一子を第二子と同額にしておりますので、今先生御指摘のような意味では結果としてそれをどう評価するかという面から見た場合に意味が薄れたという見方も成り立つのではないかと思います。
#60
○糸久八重子君 第三子以降の額を一子、二子の倍額とするというその理由は一体何なのか。家計調査から見ても一人当たりの養育費はむしろ子供の数の少ない方が割高になるんですね。養育費の二分の一程度を支給するというその思想からいいましても、むしろ第三子以降に比べまして一子、二子の金額が少ないというのはおかしいのではないか。一子、二子ともに一万円に引き上げるのが相当だと思うのですけれども、その辺の御見解はいかがですか。
#61
○政府委員(土井豊君) 児童手当制度ができてから約二十年になりますけれども、歴史的、経過的なものが基本にはあろうかと思います。当初三子からスタートをして第二子に昭和六十年の国会で御審議をいただいて改正、拡大をしたわけでございますが、その際、第二子につきましては第三子以降の二分の一の金額ということにいたしました。
 それで、今回第一子をどうするかという議論の場合には、私どもは第一子、第二子同額という考え方をとったわけでございますが、経過的に第三子から制度がスタートをして第三子中心に十数年間制度が運営されてきた、第二子を入れるときに第二子の金額というのは第三子以降の二分の一にしたというような経過から必ずしも合理的じゃないという御意見はあろうかと思います。子供にかかる経費ということになれば一子から順番に、一子を一番多くして逆に少なくしてもいいじゃないかという議論、同額にすればいいじゃないかといういろんな議論があると思いますけれども、従来からの経緯を踏まえて、それを前提にして新しい金額を設定したということでございますので、この間の事情につきまして御理解を賜りたいと存じます。
#62
○糸久八重子君 それでは次に、児童手当支給の予算とその実績についてお伺いをしたいと思いますが、最近五年間の予算上の給付総額とその実績についてお伺いします。
#63
○政府委員(土井豊君) まず給付実績でございますけれども、昭和六十年以降を申し上げますと、昭和六十年千五百八十九億、六十一年千六百四億、六十二年千五百五十六億円、六十三年千四百八十五億円、平成元年千四百五十二億円となっております。これは給付総額でございますが、このうち公務員分というのは、それぞれ三千余の地方団体、それから国の場合には各省庁がそれぞれ自分のところの給付額を予算計上しているという点で、予算についてはちょっと全体的な数字がございません。
 そこで、まことに恐縮でございますが、一般会計の国庫負担額という、本来給付に対する国庫負担額というもので経緯を申しますと、昭和六十年六百四十七億、六十一年六百七億、六十二年五百六十二億、六十三年三百九十四億、平成元年三百五十九億、こんな姿に相なっているところでございます。
#64
○糸久八重子君 予算に比べて実績の方が伸びておらないんですけれども、この原因は何ですか。
#65
○政府委員(土井豊君) 一つは、やはり昭和五十年以降支給金額が据え置かれていたという事情があると思います。それからもう一つは、生まれる子供の数の減少ということがあるのではないかと思います。私どもその二つの要素から結果として毎年少しずつ支給金額が減少傾向を今日までたどってきたというふうに考えております。
#66
○糸久八重子君 確かに、子供が大変な勢いで減少しております。児童手当の給付総額も一九八〇
年をピークに年々減少の一途をたどっておるわけですが、今回一子にまで拡大をして手当額を引き上げたことで給付総額はどのぐらいになりますか。
#67
○政府委員(土井豊君) 平年度ベースで申しますと約三割増の千九百億円というふうに給付総額を推計しております。
#68
○糸久八重子君 一千四百億円が一千九百億円にまでなったということなんですね。
 これまでの支給実績を見てみますと、児童手当に対する国庫負担、これは一九八〇年度以降はもうどんどん減っている。一九八〇年度には七百四十七億円であった国庫負担が一九八九年度には二百九十九億円ともう半分以下にまで低下してしまっています。
 一方、事業主の拠出金は一貫して増加の一途をたどっております。一九七二年度に百十六億円であった拠出金が一九八〇年には五百五億円、平成元年度には七百九十六億円にまで達しているわけですが、それらを見ますと、これまでの児童手当の流れというのは一貫して国庫負担の減少と、その責任の事業主負担への転嫁であった、そういうふうに言えるのではないかと思いますが、その辺の御見解はいかがですか。
#69
○政府委員(土井豊君) 児童手当制度につきましては、御案内のとおり過去におきましてさまざまな議論がございました。大変厳しい国の財政状況のもとで、児童手当の問題につきましては必ずしも積極的な評価というものが得られなかったというような側面もあったように理解をしております。社会保障制度全体の給付のあり方を見直す中で児童手当もやはり、ただいまお話がございましたが、昭和五十六年度に現行の特例給付というのを導入するという制度改革が行われました。それの内容といたしましては、サラリーマンと自営業者別々の所得制限、一般の所得制限の上乗せ所得制限というものを設けまして、その間に入る子供たちにつきましては事業主が一〇〇%財源負担をするという仕組みの変更がございました。その結果として、昭和五十五年度と現在とを比較すると国庫が減って事業主がふえているというような財源負担の変化が生じているというふうに考えております。
 ただ、今回の改正におきましては、そのような負担割合の変更というものは行っておりませんので、したがいまして現行の負担に対してそれぞれ三割程度の負担増というものをお願いするという形で設計をいたしているところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#70
○糸久八重子君 今回の改正で国庫負担も三割程度増額すると、そうおっしゃっておりますけれども、肝心の千九百億円が既に過去の児童数を前提とした架空なものではないか、今回の改正が即国庫負担の増額ということにつながるとはとても理解できないわけです。
 諸外国の例においてもドイツ、スウェーデン、イギリス、ここは児童手当は全額国庫負担で行われておりますね。児童の健全育成という観点から考えましても、我が国でも児童手当というのは全額国庫負担で行うのが本来の姿ではないか、また行うべきである、そう思いますが、その辺の御見解は大臣いかがですか。
#71
○国務大臣(下条進一郎君) 先ほど来政府委員から御説明申し上げましたように、この物の考え方はお手伝いをするという立場に立っておるわけでございます。児童を大事にしていくということはその親御さん、御家庭の一つの大きな責務であると同時に、また先ほど私が御説明いたしましたように、社会的な立場からお年寄りを国民全体で大事にしていくのと同じように、お子さんも国家的な立場からこれを大事にしていくという考え方に立っておるわけでございまして、この点で私たちが児童手当を考えていくということでございます。
 その児童手当の中でのただいまの国庫負担の問題でございますけれども、これはもうるる御説明申し上げましたように、児童の負担がそれぞれの御家庭において一番重くのしかかる時期をいつに見るかという見地から、これは御意見若干異なるかもしれませんけれども、私の方といたしましては重点的に三歳未満に絞りまして今回の改正をお願いしておりますし、またその場合の児童手当の金額の決定に対しましては、従来の考え方から過去の資料をもとといたしまして、それのそれぞれの倍額の金額二千五百円を五千円に、五千円を一万円に、こういうような考え方で、これが適当であろうという形で決めておりますので、全額国庫負担という考えには現在は立っておらないことを御理解いただきたい、このようにお願いする次第でございます。
#72
○糸久八重子君 我が国の社会保障給付費に占める家族手当の構成比、これは〇・六%、フランスの一〇・八、イギリスの七・二と比べまして余りにも貧弱であると言わざるを得ません。児童手当の抜本的な充実というのは当然真っ先に取り組むべき課題であると考えますけれども、さらに諸外国ではこれに限らず育児休業中の所得保障としての両親手当とか、それから養育親手当、それから住宅手当など幅広い観点から家族への援助を行っているわけでございます。とりわけスウェーデンでは家族政策を国政の重要な柱の一つとして掲げまして、家族の側に出産、育児の選択をゆだね、国は出産、育児に関する多様な選択肢を整備していくことですべての家族を援助していくという方策をとっているわけですね。我が国の児童手当制度と、それから子供と家族に対する総合的な施策の充実についてもう一度厚生大臣の御見解を賜りたいと存じます。
#73
○国務大臣(下条進一郎君) 子供を大事にするための条件をいかに整えるかということだと思いますけれども、最近の女性の社会進出、出生率の低下、子供と家庭を取り巻く環境の変化を踏まえまして、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりが一層大切になってきております。このため、内閣におきましても、関係十四省庁から成る健やかに子供を生み育てる環境づくりに関する関係省庁連絡会議が去る一月二十三日に、安心して子供を産める環境づくりに向けた総合的な対策を内容とする報告を取りまとめたところでございます。
 また、厚生省におきましては、平成三年度予算では児童手当の充実、多様な要請にこたえるきめ細かな保育サービスの実施、また新たに子どもと家庭一一〇番事業の拡充等々の計画を盛り込んで総合的に対策を進めることにいたしたところでございます。
 今後につきましても、家族がともに過ごす生活時間の確保あるいはまた職業生活と家庭生活の両立の支援、これは労働時間の短縮等の問題に関連いたします。また、住環境の整備など関係省庁とも連携をとりながら、総合的な視点から安心して子供を産み育てることのできる環境づくりの推進に一層努力を続けてまいりたい、このように考えているわけでございます。
#74
○糸久八重子君 子供を健やかに生み育てるための関係省庁連絡会議のお話を今大臣なさいましたが、厚生省は子供が健やかに生まれ育つための環境づくり推進会議を省内に設置をする、そして出生率の低下の要因とか影響の分析を行って対応策を検討し、政府の連絡会議に反映させることを決めて、そして昨年の十一月ごろまでにその中間報告をまとめて、可能な施策から予算に盛り込む方針を決めた、そう聞いておるのですけれども、その報告は出たのでしょうか。それから今年度予算に盛り込んだ施策というのはあるのかどうか、その辺をお伺いいたします。
#75
○政府委員(土井豊君) まず、厚生省内に設けられました推進会議、何回かそれぞれの分野について議論、検討をいたしておりまして、ただいまお話がありました出生率低下の要因分析を前提にしながら、女性の就労と子育ての両立支援あるいは子育てについての相談支援体制あるいは母子保健等の保健医療サービス、そういった分野を中心に現在取りまとめの最終段階になっておりまして、若干予定よりはおくれております。
 一方、内閣の方は一月の下旬に取りまとめを、これは柱立てでございますけれども、各省が取り
組むべきテーマとして幾つかの問題が提起されておりまして、住宅、教育、雇用問題あるいは厚生省で言いますと保育あるいは児童手当の問題等々がその中に盛り込まれております。
 私どもとしては、今申しました省内における推進会議、それから内閣での連絡会議、そういったものにおけるまだ議論の過程ではございましたが、最大限昨年暮れの予算編成の際に、それぞれ個別になりますけれども、できる限りの努力をして予算に取り組んだつもりでございます。
#76
○糸久八重子君 出生率の低下の問題で一つお伺いいたします。
 昨年の夏に、一九八九年の合計特殊出生率が一・五七、それが出て以来本当にこの問題については多くの議論がございます。しかし、この低下傾向というのは今日初めて起こった問題ではないと思います。
 前回の児童手当制度改正の審議の際にも衆参両院において、「出生数の動向等を勘案し、長期的展望に立って、将来における児童手当制度の位置づけ及び国民の費用負担の在り方について、可及的速やかに明確な基本方針を示し、国民的合意の形成を図ること。」と附帯決議がなされておりますが、政府はこの出生率の動向をどのように勘案し、またどのような基本方針に立って今度の児童手当の改正に踏み切ったのですか。
#77
○政府委員(土井豊君) 出生率の問題についてでございますが、平成元年一・五七と史上最低を記録したということでございます。前回の昭和六十年の国勢調査に基づく人口問題研の推計、これが一定の出生率の回復ということを想定をした形で中間推計を出しておりますけれども、その想定に比べても相当低くなっているというような現状だと認識をしております。
 私ども出生率の問題というものは、個々人の、個々の夫婦の考え方の問題でありまして、行政としてはそこまではタッチできないだろうというような気持ちでおります。ただ、安心して子供を産み育てる環境づくり、これは私ども精いっぱい頑張る必要があろうということで、先ほど来申し上げているように関係各省庁寄り寄り集まりまして努力をしているところでございます。私ども児童手当もその一つの重要な柱であるというふうに位置づけをしまして、今回御提案を申し上げた次第でございます。
#78
○糸久八重子君 冒頭、大臣が子育てに対して大きな喜びを持たせるようという御発言をなさいましたが、子供を産み育てる意味について、先進諸国ではイギリスやフランスでは七〇%以上の人たちが子育ては楽しいとしているんですね。しかし我が国では次の社会の担い手をつくるとする者が大体六一・七%、そうなりまして子育てというのは楽しいという状況ではないんですね。だから、子育てを楽しいようにするためにはもろもろの施策を考えていかなければ、子育ては楽しいという状況ではなくて子育ては苦しみになっちゃいますから、そういうこともよくこれからも勘案していっていただきたい、そのように思います。
 さて、最後になりますが、衆議院で児童手当法についての見直し規定が設けられました。この見直しの時期やめどについてお伺いをしたいわけですが、衆議院ではこの時期について、「経過措置終了後最も早い時期に」と厚生大臣は答弁をなさっていらっしゃいますが、経過措置は一体いつ終了するのでしょうか。
#79
○国務大臣(下条進一郎君) 今委員お尋ねのとおりに、この問題につきまして衆議院の段階でもお尋ねがございましてお答えしたわけでございます。
 この経過措置終了という時期は事実関係の問題でありますが、第一子及び第二子以降の支給期間が三歳未満となるのは平成六年一月からであるということから、経過措置が終了する時期は三年後ということに解釈されるわけでございます。
#80
○糸久八重子君 ただいま大臣から御答弁いただきましたけれども、私といたしましては、見直しは三年後と理解させていただきます。
 さて、いろいろ論議をしてまいりましたけれども、児童を次代を担う社会の子という観点から見れば、すべての子の権利として公平に生育期間中には児童手当を支給するのが当然だと、そしてその費用負担は全額国庫負担であることが原則であるということを私は申し上げまして質問を終わりますが、もう一度最後に大臣の御見解を賜りたいと思います。
#81
○国務大臣(下条進一郎君) 児童の健やかに生まれ育つ環境づくり、これが今の議論の中での最も大事なポイントだと思います。その認識は全く委員と私も同じでございます。
 その関係でいろいろな環境づくりをしていかなければならない、その環境の条件の一つに児童手当の改善がございまして、その考え方はるる御説明申し上げたようなことでございますので、ぜひ御理解をいただきたい、このようにお願いする次第でございます。
#82
○糸久八重子君 終わります。
#83
○委員長(福間知之君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十一分休憩
     ─────・─────
   午後零時三十三分開会
#84
○委員長(福間知之君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、児童手当法の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#85
○日下部禧代子君 それでは、まず遺族援護法案に対する質問をさせていただきます。
 戦争による傷病者の妻たちというのは戦後大変な御苦労をなされてきたことと思われます。この方々が戦後四十五年たちましてお年をとられていらっしゃっていることは御承知のとおりでございますが、この対象者の高齢化に伴って援護事業もきめ細かく内容の充実したものにならなければならないというふうに思いますけれども、厚生省の平成三年度における援護事業の内容を御説明いただきたいと思います。特に、前年との比較に対してどの点が高齢化に対応したものであるかということに焦点を当てていただきたいと思います。
 それと同時に、今回の戦傷病者等の妻に対する特別給付金法の一部改正におきまして、基準日の変更を行って新たに十五万円、五年償還の国債を支給することとなっておりますが、この五年償還をもう少し短期の国債にできなかったのでございましょうか。その点もあわせてまずお尋ねいたします。
#86
○政府委員(岸本正裕君) 戦傷病者等の妻に対する援護措置でございますけれども、戦傷病者の妻に限らず、戦争の被害を受けた方々は皆年々高齢化をしていくわけでございます。戦傷病者の妻も当然同じように高齢化をしていくわけでございまして、援護措置について高齢化に着目をした仕組みということは特段にはないわけでございますけれども、今年度から今法案審議でお願いをしております援護法におきましては、年金の額を恩給の改善に準じまして平成三年四月から増額をお願いする。
 それともう一つは、戦傷病者等の妻に対します特別給付金支給法の一部改正をお願いいたしまして、戦傷病者等の妻に対する特別給付金を二つの点で範囲の拡大をお願いしているわけでございます。一つは基準日の変更でございまして、前回の基準日の後、平成三年四月一日までの間に戦傷病者の妻となった者に対して十五万円、五年償還の国債を支給するというもの。また第二点目は、五十八年四月一日から六十一年九月三十日までの間に戦傷病者等である夫が平病死した妻に対して五万円、五年償還の国債を支給するというものでございます。
 先生のおっしゃることを私が今理解しているところでは、この特別給付金のいわば基準日の変更
ということは、通常の例でございますと十年後にこの法律の改正をするということであったわけでございますけれども、いわば飛び乗りの形で高齢化に対応をして五年早くこのような改正をするというふうに言えなくもない、こういうふうに考えているところでございます。
 それから、特に高齢化をしてきているのであるから、国債の償還というものを五年と言わずに速やかにやってはどうか、こういう御趣旨の御指摘があったわけでございますけれども、厚生省が所管しております各種の特別給付金の支給制度というものは、従来から原則として十年間または五年間で償還する国債を支給するというものでございます。戦傷病者等の妻に対します特別給付金をこのような方法によりまして支給いたしておりますのは、国債として一定期間継続して定期的に償還を行うということによりまして、これらの方々に引き続き国から特別の配慮を受けているという実感を持っていただきたいという考えからでございます。
 今回の改正におきまして、この特別給付金を五年償還の国債といたしましたのはこのような理由によるものでございまして、御指摘のようにもっと短くとかまたは一度にというようなことはこの制度になじまないのではないかというふうに考えております。
#87
○日下部禧代子君 いずれにいたしましても、戦争による犠牲者ということでございますから、その点を考慮しまして温かい、そしてきめ細かい内容の事業を進めていただきたいということをお願いいたしまして、以上質問を終わらせていただきます。
 次に、中国帰国孤児の問題に関して御質問いたします。
 厚生省が昭和六十二年に実施いたしました中国帰国孤児生活実態調査というのを拝見いたしますと、就業している方は六割弱しかいらっしゃらないわけです。また、帰国後五年以上経過してもなお二三%の世帯が生活保護を受けている。そのうちの五三・一%が就労している世帯であるという結果も出ております。就労してもなお生活保護を受けているということは、その給与が低いということだろうというふうに思いますが、この点に関しまして、この実態調査をどのように分析なさって、そしてそれに対してどのように対策を立てていらっしゃるのでしょうか、お伺いいたします。
#88
○政府委員(岸本正裕君) 先生おっしゃるとおり、中国帰国孤児生活実態調査の結果によりますと、帰国直後はほぼ全世帯が生活保護の適用を受けているわけでございますが、次第に自立いたしまして、帰国三年後では五六%の世帯が生活保護から脱却をしている、こういうことでございます。しかし、中には帰国孤児世帯の中で帰国後相当期間を経過しておりましても、なお生活保護から脱却できずに自立に至らない世帯も少なくないことは御指摘のとおりでございます。そのために孤児世帯が就労意欲を持ち、早期就労をするということで従来から定着促進センターにおきましていろいろな就労相談、就労指導、こういうことを行ってきたわけでございます。孤児は今まで長い間文化、生活習慣等が異なる異郷といいましょうか、異なる中国で生活をしてこられて、日本に帰ってきて急になじむというのはなかなか難しい問題でございますから、私ども、この孤児の生活指導、それから日本語の指導、就労の指導、このようなことに携わる方々がこのような文化、生活習慣等の違いを正しく理解した上で指導をしていくということが非常に大事だと思っておりまして、そういうことから専門家によってこの指導のマニュアルをつくっていただこうと考えているわけでございます。このようなことで、きめ細かく、孤児の気持ちに沿ったような就労指導をしていく、こういうことで就労の実績を上げていきたいと考えております。また、労働省の御協力も得まして、雇用主の帰国孤児への理解と協力を求める、そういうことで職場の開拓も行っていきたいということでございまして、就労の実は徐々にではありますが上がっているというふうに考えております。
#89
○日下部禧代子君 今の御答弁によりますと、さまざまな対策としてのメニューはそろえられていきつつあるようには思うんですけれども、例えば日本語の問題にいたしましても、言葉ができないということは基本的に生活に対する不安ということがそこから出発するわけでございますね。ですから、日本語をどのように習得することが早くできるようになるかというふうなことも含めまして、本当に親身な対策、対応をしていただきたいということをお願いいたしまして、この件に関する質問を終わります。ありがとうございました。
 次に、児童手当法の一部を改正する法律案につきましての質問に移らせていただきます。
 我が国の児童手当制度というのは昭和四十七年に発足してから約二十年になります。制度発足当時の社会保障制度審議会の答申によりますと、児童手当制度は「将来飛躍的に発展させなければ本来の目的を達成できない。」と指摘しております。しかしながら、その間支給対象児童の拡大はございましたが、支給期間は義務教育終了前というのから義務教育就学前になりまして、それから今回は三歳未満というふうにだんだんと狭められております。また、給付額は昭和五十年以来ずっと据え置かれてまいりました。また、給付総額も昭和五十四年に千七百八十四億円というのをピークにいたしまして年々減少して、平成元年度には千四百五十億円ということになっております。また、所得制限も昭和五十七年から強化されております。
 こういうことを含めまして、さらにまた今回の改正案を含めまして、先ほど申し上げました児童手当発足当時の社会保障制度審議会の答申に盛られております目的、趣旨というものが生かされているのかどうか、どのように大臣はお考えになりますのか、御答弁をまずいただきたいと思います。
#90
○政府委員(土井豊君) 昭和四十七年に児童手当制度がスタートをいたしましたが、今お話がございましたように、将来大きく成長させたいという考え方のもとに第三子以降、義務教育終了までという形でスタートをいたしました。
 ただ、その際にも議論になりましたけれども、我が国の場合に児童手当のお手本になりましたヨーロッパ諸国と比べますと、賃金構造の違いといったようなものが構造的にあるという問題、それから税制の問題等々がございまして、当初そのような気持ちでスタートをしましたけれども、現実にはなかなかそういった社会経済の構造というような中で児童手当に対する評価が比較的得られなかったというようなことがあったのではないかと思っております。そういうことから、今日に至るまでいろんな形でヨーロッパの諸国に比べると制限されたような形に相なっているわけでございまして、今回私どもいろんな形で努力をいたしまして御提案申し上げているような内容でぜひお願いをいたしたいという気持ちでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#91
○日下部禧代子君 それでは改めて伺いますが、児童手当制度の目的、趣旨というものは何でございましょうか。これは再々御質問が出ていると思いますが、もう一度確認させていただきたいと思います。
#92
○国務大臣(下条進一郎君) 児童手当の制度の目的はいかん、こういうお尋ねでございます。これは児童手当法の第一条に「目的」として規定されておりまして、児童を養育している者に児童手当を支給するということによりまして、家庭における生活の安定に寄与するとともに次代の社会を担う児童の健全な育成と、それから資質の向上に資することを目的とする、この趣旨でございます。
#93
○日下部禧代子君 昭和五十五年の中央児童審議会の意見具申では、「老人扶養は年金等によりかなり社会化されているが、このような社会的扶養が円滑に維持されていくためには、将来の社会の担い手である児童を「社会の子」として社会的に配慮していくことが当然必要となる。」と述べて、児童を社会の子と位置づけておりますが、この認識は厚生省は現在でも変わっておりませんでしょうか、大臣にお尋ねいたします。
#94
○国務大臣(下条進一郎君) 変わっておりません。
#95
○日下部禧代子君 今回の改正案におきまして、その主要な改正点というのは、支給対象を第一子から、現行の支給額を倍額にする、そして支給期間というのを三歳未満というふうになっておりますが、これは午前中の糸久議員の御質問にもございました児童手当法では、「「児童」とは、十八歳に満たない者」と定義されているにもかかわらず三歳未満というふうなことになっております。その三歳未満というふうになった理由として、午前中では挙げられましたものが、三歳未満が人間形成の重大な時期である、そして手がかかる、あるいは親の年齢が低いので経済的理由だというふうな御答弁がございました。また、糸久議員の方から、経済的支援の必要性が高いのはむしろ幼稚園児とか就学児童を持つ家庭であるというふうな御質問がございましたが、この三歳未満に限定したことに関連してもう一つお尋ねしたいと思います。
 支給対象児童は、平成元年度事業実績で三百八十五万人から二百七十万人に大幅に減少する、これは衆議院の社会労働委員会におきましての御答弁の中にございました。こうなりますと、少なくとも現行の義務教育就学前という線を維持すべきだというふうにはお思いにならないのでしょうか。維持できない理由というのはどういうことでございましょうか。
#96
○政府委員(土井豊君) ただいまお話にありましたとおり、支給対象児童が減少いたします。非常に恐縮でございますが、図形的に申しますと、大体六割弱の子供が長い期間、これは縦長の支給対象でございます。今度はまあ子供全部を第一子から対象にしましたので横長、横に広がりまして支給期間が短いということで縦の矩形が横の矩形になるようなそんな違いがございます。その大きな違いは第一子に拡大するという問題と年齢の問題ということでございます。その総面積は今回三割ぐらいふえるという中身でございます。非常に不十分な説明ですけれども、そんな考え方で今回の改正内容を固めた次第でございます。
#97
○日下部禧代子君 そういたしますと、三歳未満という年齢制限というのは、なぜ三歳未満かということに関連いたしまして、今私がお尋ねいたしました義務教育就学前の線をなぜ維持できないのかということに関しては答えがないように思うんですけれども、もう一度お願いいたします。
#98
○政府委員(土井豊君) 大変失礼いたしました。
 私ども今回の改正内容を検討するに当たりまして、中央児童福祉審議会におきまして、一年余にわたりましていろいろ御議論をいただきました。いろんな立場の方々の委員にも入っていただきまして、各方面の議論をしたわけでございますが、最終的に昨年十二月に今回御提案しているような意見具申をちょうだいしまして、それに基づいて案を取りまとめしたわけでございます。その場合、確かに今御指摘の年齢の問題というのは議論がございました。意見具申の中にもそういった意見があったということは付記しております。
 これらの問題につきましては、全体として申し上げますと、現実的な改正内容というものはお金を伴う内容でございますので、金を出す側、具体的には税金あるいは事業主の拠出金というものの協力を得ながら制度を実施するという仕組みになっております。そういう前提のもとに、現実的な形でどういう案がつくれるかということで御提案しているような案をまとめた次第でございます。
 したがいまして、そういう意味では中央児童福祉審議会からも残された問題という形で、私どもも宿題として幾つかの将来における制度のあり方というものは残された形に相なっておる次第でございます。
#99
○日下部禧代子君 今お答えの中にもございましたし、また午前中の糸久委員の御質問に対する御弁の中にもございましたが、いわゆる現実的、今日的な改革ということで三歳未満ということになった、そしてその中には財源規模の問題もあるというふうに御答弁ございましたように記憶しておりますが、一言で申しますと、要するに給付の引き上げ、年齢の問題も含めまして、財源、財政上の理由というのが一番大きいというふうにとらえていいのでございましょうか。財源があれば年齢を三歳に限定するということはなかったというふうにとらえてよろしいのでございましょうか。
#100
○政府委員(土井豊君) ヨーロッパ諸国との比較において今回の改正内容はいろいろ問題があるじゃないかという御指摘をこの案を固めた以降各方面からちょうだいしております。私ども日本の社会経済構造というものとヨーロッパの児童手当の関連における比較でございますけれども、比較をいたしますと、賃金構造の問題、それから税制面における扶養控除の問題、この二つが大きな違いがあるんではないだろうかというふうに思っております。
 したがいまして、国庫あるいは地方団体、経済界、拠出金その他の財源をちょうだいして運営しているわけでございますけれども、その場合にそういった他のいろんな事情の中でどう考えればいいのかという問題も全体的な仕組みとして当然議論として存するわけでございまして、そういう中で、今回の改正内容が最も今日は妥当であろうということで、問題は残るけれども最も妥当であろうということでこの案を固めたような経緯になっております。したがいまして、そういう意味では、財源問題というのは無視できませんけれども、単に財源自体というよりかもう少し周辺における幾つかの日本の社会構造、そういったものの関連における財源問題というふうにお考えいただきたいと存じます。
#101
○日下部禧代子君 財源問題だけではない、財源問題は大きな理由ではあるというふうにはお認めになるわけでございますか。
#102
○政府委員(土井豊君) 一つの理由であると考えておりますけれども、今申しましたように、幾つかの絡みがあるということを申し上げた次第でございます。
#103
○日下部禧代子君 では、次の質問に移ります。
 給付額の問題におきましても、やはりこれは午前中糸久議員が御質問なさいました。今回、給付が第一子から、そして給付額も二倍になるということでございますが、給付額の設定の基準というものについて少しお尋ねしてみたいというふうに思います。
 制度の発足当時は養育費の二分の一の水準で決定されたというふうに承知しておりますが、では、今回第三子の場合一万円というふうに設定されておりますが、これは何を基準にして、またどのような統計を根拠にして設定されたものなのか、その点について御説明いただきたいと思います。
#104
○政府委員(土井豊君) 第三子の五千円の金額が設定されましたのが昭和五十年でございます。その後今日における経済情勢の変化というものをいろんな形で推計をいたしました。消費者物価で推計をいたしますと約六〇%のアップになっております。一方、総理府の家計調査をもとにして推計をいたしますと約倍になります。ちょっと数字を今手元に持っておりませんが、一九七か八というような指数が出ておりました。
 私どもといたしましては、総理府の家計支出というものを基準に、昭和五十年と今日との伸び率というものを求めまして、それに基づいて一万円という金額を推計したということでございます。その金額で現在法案をお願いしているところでございます。
#105
○日下部禧代子君 ただいま基準を家計支出の額に置かれたというふうにお答えいただきましたけれども、直接に児童の養育費の水準ということに関しましてはいかがでございましょうか。
#106
○政府委員(土井豊君) 先ほどお話がございましたが、制度発足時に、幾らの金額にするかという場合に、おおむね子供にかかっている経費の二分の一程度ということを基準に置いて制度創設時の金額が設定されたという経緯がございます。今回は、ただいま申しましたように、家計消費支出の伸び率というものを基準に置いて一万円という金額を算定いたしましたが、その一万円が妥当であ
るかどうかという場合に、最近における児童養育費の実態というものを見てみまして、私どもの手元として一番新しいのは、平成二年のピジョン株式会社「赤ちゃんとお母さんの白書」というものがございますが、その中に子供一人の月の支出平均額でございますが、二万三千九百円、それからその一年前でございますけれども、野村證券の「家計と子育て費用調査」、これは食費を除いておりますけれども、乳幼児一万三百円という数字が出ております。これに、これは二つの統計をくっつけて非常に恐縮でございますが、先ほど申しましたピジョンの食費の関係、これが約八千二十五円という金額になっておりまして、今の野村證券の調査に合計をしますと二万円弱になる。したがって、おおむね二万円前後というのが一カ月当たりの支出金額であろうということで、一万円の金額というものはそれに比べて大体二分の一程度にほぼなるんではないかということも参考にしながら、一万円の金額というものを決めたというような経緯でございます。
#107
○日下部禧代子君 例えば老齢基礎年金とか生活保護その他の給付というのは総理府等の政府の調査に基づく基準設定がなされております。厚生省が平成元年度になさいました全国家庭児童調査を拝見いたしましたが、養育費調査というのは実施されていないように拝見しております。ただいまピジョン株式会社の調査を引用なさいましたけれども、民間の企業の調査というのを格を低く見るというわけではございませんけれども、国として養育費調査というものをきちんとなされて、それを支給額の基準ということで明確にすべきではないかというふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。
#108
○政府委員(土井豊君) 御指摘のとおり、国が直接養育費の調査というものを最近においてやっておりません。そういう意味では、そういう必要性は私どもあろうと思いますので、将来検討してみたいと思います。
 ただ、児童手当の金額をそのような調査に基づいてそれの一定割合というような考え方がよろしいのか、あるいは午前中の御意見にもございましたように、物価スライドというような考え方がよろしいのか、あるいはそれ以外の方法もあり得るのかといったような点については、よく私どもの審議会の中でも御議論をいただく必要があろうというふうに思っております。いずれにいたしましても、常に養育費の実態がどんなぐあいになっているかということは私ども把握するのに努力をしてまいりたいと思っております。
#109
○日下部禧代子君 基準になるもの、基礎になる統計資料、そういったものが明確でない場合にはどうしても国の財政の状況とか事業主の拠出の状況、そういったものによって金額が左右されかねないとも考えられます。したがって、国としてきちんとした、どのくらい子供の養育に費用がかかるのかという調査はぜひ行っていただきたいというふうに要望いたします。
 さて、先ほどからも出ておりましたけれども、他の国々のことについて少しお答えをいただきたいと思います。
 西欧あるいは北欧の国の中での主要国、例えばドイツ、これは今西ドイツとは言いませんけれども、西ドイツの場合で結構でございます。それからスウェーデン、イギリス、フランス、そういった国々の児童手当制度について、まず年齢の上限、つまり支給期間でございますね、それから財源、所得制限の有無、児童手当の支給費用の社会保障に占める割合、家族手当でなく児童手当の支給費用の社会保障に占める割合についてお尋ねいたします。
#110
○政府委員(土井豊君) ヨーロッパにおける主要国の児童手当制度でございます。
 まず、支給年齢でございますが、西ドイツにおきましては十六歳未満ということになっております。学生の場合は二十七歳未満と延長するということになっております。スウェーデンは同じく十六歳未満ということで、学生は二十歳まで。それからイギリスは十六歳未満、全日制教育を受けている場合は十九歳未満。それからフランスでございますが、十六歳未満、学生は二十歳未満ということに相なっております。
 財源でございますが、西ドイツ、スウェーデン、イギリスは全額国庫負担でございます。フランスは事業主が支払い賃金の七%、それから自営業者拠出金、これは所得の七%というものを拠出する、この財源でやっております。それからなお、御案内だと思いますが、その場合にスウェーデン、イギリスにおいては税制の扶養控除を廃止して、それをこの児童手当の財源に振り向けたという経緯がございます。西ドイツも同じように財源振りかえをやりましたが、その後復活しているという経緯に相なっております。
 それから、所得制限でございますが、ございますのは西ドイツだけでございまして、第二子以降所得により段階的に減額をするといった所得制限がございます。
 それから、社会保障給付費に占める割合でございますけれども、これは今手元にある一九八六年のちょっと古い数字でございますが、社会保障給付費を分母として児童手当の給付額を割りました率でございますが、イギリス六・六七%、フランス九・四一%、西ドイツ三・一二%、スウェーデン一二・五%、そんな割合になっております。
#111
○日下部禧代子君 日本の場合には、特に最後の児童手当の社会保障に占める割合はどのようになっておりますか。
#112
○政府委員(土井豊君) 〇・四二%でございます。
#113
○日下部禧代子君 ありがとうございました。
 今御答弁いただきましたように、他の今例として挙げてくださいました西欧あるいは北欧の国々におきましての支給期間のほとんどが十六歳未満、学生になりますと二十七歳というような場合もあるわけでございます。また、所得制限は西ドイツを除いてほとんどないということでございますし、また児童手当の支給費の社会保障に占める割合も日本はまだ格段に低いわけでございます。
 また、児童手当の導入時期におきましても、午前中にも御答弁の中にございましたけれども、日本は非常に低いわけでございます。まず最初に導入されたのがたしかニュージーランドで一九二九年というふうに記憶しておりますが、フランスも一九三二年、つまり戦前からでございます。イギリス、スウェーデン、いずれもこれは一九四六年から四八年の間に設立されているのに対しまして、日本は一九七二年つまり昭和四十七年ということでございます。その当時、世界の六十を超える国でもう就学年齢までの支給を開始していたというふうに、一言で言えば国際水準から児童手当制度というのは非常におくれている、そういうふうに言ってもいいのではないかというふうに思うわけです。経済大国と言われている日本でございますのに、西欧あるいは北欧並みの児童手当の給付がなぜ行えないのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。
 そしてまた、財源はフランスを除きまして全部国庫負担でございますが、この点も加えまして御答弁をいただきたいと思います。
#114
○政府委員(土井豊君) 確かに、お話のとおり日本の仕組みとヨーロッパ主要国における仕組みの間には隔たりがございます。ただ、スウェーデンにおきましては、この児童手当を発足する際に税制の扶養控除を廃止しまして、その財源を用いて児童手当を給付するという振りかえが行われております。それからイギリスもまた児童手当を第一子に対象拡大をする際に、同じく所得税における扶養控除を廃止して、その財源を振りかえるという形にしております。それからフランスはまた自営業者を含めて賃金の七%、所得の七%の拠出金をちょうだいする、それを財源として給付を行うという形にしております。
 したがいまして、児童手当をどう考えるかというときには、やはり日本における財源をどう考えればいいのかという問題をあわせて考える必要があるのではないか。給付内容だけを見ると確かに大きな違いがあるけれども、そういう財源をどういうふうな形で措置をしたかというもう一つの側
面をあわせて、どういう形が日本にとって一番いいのかという議論ではないかと私ども考えております。
#115
○日下部禧代子君 じゃ、どの辺のところが違うわけでございましょうか、日本の場合、おっしゃってください。
#116
○政府委員(土井豊君) 給付の方でございますか。
#117
○日下部禧代子君 今の御質問というのは、日本独自の事情があるというふうに承りましたけれども、どの辺が日本独自の事情でございましょうか。
#118
○政府委員(土井豊君) 私が申し上げましたのは、ヨーロッパの主要国においては、そのような形で別の財源を手当てをして児童手当にそれを充当するというようなプロセスがあったということを申し上げた次第でございます。一方、我が国におきましては、それでは税制における扶養控除の問題どうしたらいいか、議論としてはこれはかつて中央児童福祉審議会からも問題提起をいたしました。しかしながら、結果として見ると、税制の問題というのはある意味では我が国の社会におきまして基盤的な一つの重要な要素ということで、児童手当とはおのずから別の性格を持つ制度ということで、そのような議論は進展をしなかったという経緯がございます。
 それからもう一つは、賃金構造の問題、これは事業主の拠出の場合の関連にならうかと思いますけれども、ヨーロッパの諸国におきましては、これは先生の方がよく御案内でございますけれども、家族に着目した賃金構造というのが普通はないようでございます。そういう意味で、日本の場合は大体配偶者を含めまして平均すると一万数千円、労働省の統計によりますと家族手当を賃金の中に織り込んでいる。そういう違いで、賃金で家族手当を出し、かつ児童手当のための拠出金をふやすというのは、何といいますか、ある意味ではダブっているじゃないかというような一面もありまして、そういう面についての社会全体のコンセンサスと申しましょうか、そういったものがなかなか形成されにくかったというのが今日までの事情ではなかったかというふうに認識をしております。
#119
○日下部禧代子君 今賃金構造ということの違いをお挙げになりましたけれども、その賃金構造の違いの中でも家族手当ということをおっしゃいました。
 それでは、我が国におきます企業のいわゆる家族手当の実施状況についてお尋ねしてみたいと思います。
 企業規模別の実施状況について、これ簡単に制度があるかないか。規模別の実施状況といいますと、まず千人以上、それからまたその次に百人から九百九十九人、それから三十人から九十九人、そういった規模別における企業の家族手当の有無ということと、それから児童に支払われる手当額一人当たり、それぞれの規模におきまして平均の手当額をお願いいたします。
#120
○政府委員(土井豊君) まず、従業員規模別の採用企業の割合でございますが、千人以上九〇・〇%、百人から九百九十九人までの間八二・〇%、三十人から九十九人までの間七一・一%、平均をいたしますと七四・五%という状況になっております。なお、三十人未満のところは統計がちょっと私どもございません。
 それから、支給金額でございますけれども、これは平均で申しますと配偶者につきましては七千二百円、十八歳未満の第一子二千八百円ということになっておりますが、規模別に先ほどの三つの段階で申しますと、千人以上のところが一万三千九百円と四千六百円、百人から九百九十九人までのところが八千七百円と三千円、三十人から九十九人のところが六千三百円と二千七百円。大きい金額が配偶者で小さい金額が子供でございます。そんな状況でございます。
#121
○日下部禧代子君 どうもありがとうございます。
 今伺いますと、まず第一に、この実施状況を拝見しておりますと、規模が千人以上というのが九〇%であるのに対しまして、規模が三十人から九十九人というところでは七〇%ぐらい、つまり規模の小さいところでは家族手当のない事業所が三割もあるというふうにとらえられると思います。百人未満で働く雇用者というのは、全雇用に占める割合というのはかなり、半分ぐらいと言ってもいいんじゃないかというふうにも思うわけでございますが、したがって、すべての雇用者が家族手当をもらっているということにはならないということになると思います。
 それからまた、今手当額をおっしゃっていただきましたけれども、千人以上の規模の企業に勤めている方と三十人から九十九人という規模の企業に勤めている方ではかなりの格差がございます。さらにまた、共働きの場合には、扶養義務者としての男性には子供の手当が支給されるのに対して女性には支給されないというふうなこともございまして、日本の家族手当というのは社会的な不公平というものが存在すると言っても過言ではないというふうに思うわけでございますが、企業の家族手当というものは児童手当の代替にはなり得ないというふうに私は思いますが、いかがでございましょうか。
#122
○政府委員(土井豊君) 企業における家族手当につきましては、今先生御指摘のとおりの実態になっておりますので、これは代替になるという考え方は私どももとっておりません。ただ、児童手当の制度を今後どうしたらいいかということを考える場合には、このような形であれ、しかし大多数の企業で採用されているという実態も実態でございますので、こういうこととあわせて考える必要があるであろう、そういう意味で、私どもこの推移がどうなるかということは常に考えながら、児童手当のあり方というものを将来においても考える必要があるんではないかというふうに思っているところでございます。
#123
○日下部禧代子君 企業がそれぞれの企業の方針におきまして被用者の児童に対しまして手当を支給するということは、これはいわば福利厚生というふうにも見られるわけでございまして、いわば当然と言ってもいいかもわかりません。しかし、先ほど大臣も御答弁くださいましたように、児童を「社会の子」であるというふうにお考えになる以上、現在企業の負担は増加し、そして一方国家負担というのは減少している。これは午前中の糸久議員の御質問にもございました。したがいまして、そういうことを考えますと、児童手当制度における国の責任というものをどのようにおとらえになっていらっしゃるのか、その点大臣に御答弁いただきたいというふうに思います。
#124
○政府委員(土井豊君) 先ほど「社会の子」という、昭和五十五年の中児審の答申であったかと思います。今回は世代間の助け合いという形で、子供の社会的な扶養を努力していこうという考え方が十二月に示されているところでございます。私どもはある意味では国、地方団体、事業主、それぞれの立場で子供の養育について応分の責任を果たしていこうという考え方がその中に示されていると理解をしております。しかし一方で子供を育てるということは、基本的には家庭の責任というものを否定しているわけじゃなくて、あくまでそういう意味では社会の子供という形で支援をしていこうという考え方であって、全面的に児童手当でそれを見るという考え方はとっていないところでございます。
 したがいまして、どの程度まで支援をすればいいのかという議論はあろうかと思いますけれども、今回、今日の段階において精いっぱいの努力をして現在御提案申し上げているような案を固めた次第でございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#125
○日下部禧代子君 大臣はこの点どのようにお考えでいらっしゃいますか。
#126
○国務大臣(下条進一郎君) ただいま政府委員からお答え申し上げましたように、今回の改正は従来からの経緯を踏まえた上で、客観的な情勢の変化を盛り込んで改正に踏み切った次第でございます。
 その背景は、既に先ほどお話し申し上げましたように、児童が御家庭の中の大事な宝であるばか
りでなく、社会における次世代を担う大きな後続の強力な要素であるというような立場から、社会的に高齢の方々を支え、また新しく生まれてこられる児童を大事にしていくという制度を築き上げていくという見地から、我々はこのような児童手当の制度をしっかりしたものにしていこうという観点でやっているわけでございます。
 ただ、いろいろ御意見がある中での国の立場の問題でございますけれども、これは御承知のように、国の負担は今回の改正で平年度化いたしますと約三割、総額の予算額がふえることになるわけでございます。一方また、民間の企業にも御協力をお願いしている分もございますので、今回の改正のように第一子、第二、第三子に焦点を当てながら、しかも三歳未満の最も御家庭で御負担のふえる時期に幾ばくかの御支援の気持ちをあらわすということで重点的に今回の形の改正をお願いするということに相なった次第でございます。
#127
○日下部禧代子君 北欧、西欧との違いということの中におきまして、もう一つ税制についての問題をおっしゃったと思いますが、税制における扶養控除の問題についてお尋ね申し上げたいと思います。
 これは、児童手当制度が創設された当時の厚生事務次官でいらしたと思いますが、坂元貞一郎さんがお書きになりました「児童手当法の解説」というものによりますと、「扶養控除は、児童養育費の負担軽減をねらいとするものではなく、扶養者数の相違により担税能力に格差が生ずることを均衡化しようとすることに着目する税制体系の内部の配慮と考えられるので、両者は関係がないものとして観念された」というふうにされておりますが、児童手当制度の創設当時はこのように考えられていたというふうに私は受けとめております。
 また、昭和五十五年の意見具申では、先ほど私引用させていただきましたが、「児童扶養控除は、基礎控除などの人的控除とあわせて各家庭の家族構成に応じ、基礎的生計費には所得税を課さないという観点から設けられたものであり、この児童扶養控除と児童手当は、政策体系上それぞれ独立したものである。」というふうになっておりますが、このように扶養手当制度と児童手当制度とでは趣旨が異なるものではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
#128
○政府委員(土井豊君) ただいまの二つの制度の性格についてはおっしゃるとおりだと思います。私もそのように思います。
 ただ、先ほどちょっと申し上げましたのは、ヨーロッパの幾つかの国における現実の経緯というものはこういうような選択を行ったという意味で、スウェーデンなりイギリスの事例を申し上げた次第でございます。児童手当制度、税制における扶養控除、それぞれその性格、目的というものは私もあろうと思っております。
#129
○日下部禧代子君 また、超過累進課税では、減税額というのは所得が高くなればなるほどメリットがあるわけでございます。したがって、扶養控除制度による税の軽減額というのは逆進的だというふうにとらえていいというふうに思うわけでございます。また、課税最低限以下の低所得者というのには何らメリットもないわけでございます。したがって、税の扶養控除制度というのは、児童手当制度にかわるものとみなすというのは非常に無理があるのではないかというふうに思われますが、いかがでございましょうか。
#130
○政府委員(土井豊君) 二つの制度の比較論では今おっしゃるようなメカニズムであると私も思います。ただ、問題として申し上げておりますのは、財源問題というような観点で物事の選択を行う場合にはどうしたらいいのかといったような議論というものは将来においてあり得る議論の一つであろうというふうに考えておる次第でございます。
#131
○日下部禧代子君 また、昭和五十五年の中央児童福祉審議会の意見具申を引用させていただきます。そこで、所得制限は、「すべての児童を「社会の子」としてとらえていることからして、原則としてこれを行うべきではない。」というふうに述べております。
 先ほど厚生大臣は、「社会の子」であるという昭和五十五年の意見具申について今も変わりはないというふうにお答えいただきましたけれども、この考え方をどのように今受けとめていらっしゃるのでしょうか。この所得制限と「社会の子」との関係におきましてお答えをいただきたいと思います。
#132
○政府委員(土井豊君) 確かに基本的には「社会の子」という形ですべての子供を対象にするという制度が理想的な姿としては考えられるのではないかと思いますが、ただ現実には限られた財源をどのような形で最も必要性の高いところに、そして最も効率というと語弊がございますけれどもそういうところに、というのが所得制限の存在するいわれであろうと思います。そういう意味で今日の時点においては、所得制限というものは私は必要な仕組みであるというふうに認識しているところでございます。
#133
○日下部禧代子君 ところで、今回の改正におきまして附則の第五条を削除しておりますが、どのような理由でございましょうか。
#134
○政府委員(土井豊君) 附則第五条は、老齢福祉年金における所得制限を「勘案して」という、所得制限を設ける場合の考え方を示しております。これは昭和五十七年にこの附則が設けられましたが、そのときは老齢福祉年金の所得制限を「基準として」という言葉になっておりました。六十年改正で「勘案して」ということになりまして、今回落としたという経緯でございます。
 それは、今回支給対象を第一子に拡大するということで親の年齢構成、所得の構成というものが従来とある程度変わってくる可能性があるだろうということで、私どもどのような所得制限が改正法を国会でお認めいただいた場合に適切であるかということについて、ある程度実態を把握しながら新しい所得制限の設定をしたいという考え方でおります。
 したがいまして、とりあえず平成三年度におきましては、所得制限据え置きという形で予算上処理をしておりまして、今回の改正後の所得分布というものをある程度調べた上で適切なる所得制限を設定したいという考え方でございます。したがって、所得制限については今後児童手当制度の中でどういう所得制限がいいかという観点で考えてまいりたいということでございます。
#135
○日下部禧代子君 衆議院の質疑を見ますと、厚生省はこれまでの支給割合実績を大体八〇%、その線を維持するというふうに答えていらっしゃいますが、そのとおりだと認識してよろしゅうございましょうか。
#136
○政府委員(土井豊君) 所得制限による結果としての支給実績でございますが、自首業者とサラリーマンで若干異なるという推計になっておりますが、七〇%台から八〇%ぐらいの間になるのではないかと思っております。私ども現在支給している実績を維持してまいりたいということを基本に置きまして、今後所得制限の検討の際にはそういう考え方で対応してまいりたいというふうに思っております。
#137
○日下部禧代子君 今回第一子から児童手当を支給することになりましたが、この支給対象児童を持つ家庭の所得分布というのは、全体として親が若いということですから収入が低いということで下方移動するということになるというふうに思います。
 そこで、支給割合を維持するということになると、これは所得制限を強化するということにつながるという心配もあるわけでございますが、実際には支給額を引き上げた、あるいはまた第一子からというふうに対象児童を拡大したということになっておりますが、所得制限が強化されるというふうな結果にはならないのでございましょうか。その点お答えいただきたいと思います。
#138
○政府委員(土井豊君) ただいま御指摘がありましたとおり、親の年齢が若干若くなるものですから、そういう意味では所得が低くなるという要素がございます。一方、毎年ベースアップという形で賃金が若干ずつ上がっておりますので、そこら
辺の相対関係がどうなっているかというあたりを私どももよく新しい対象者につきまして実態を把握した上で、先ほど申しました考え方に基づきまして適切な所得制限を設定してまいりたいということでございます。結果として低くなるか横ばいになるか、若干上がるかというあたりはその兼ね合いだろうと思っております。
#139
○日下部禧代子君 政令によって所得制限というのはかなり変えることができるわけでございますが、その点どのようにとらえればよろしいのでございましょうか。
#140
○政府委員(土井豊君) ただいまいろいろ御指摘をいただいておりますけれども、形式的には政令によって定めるということになっておりますけれども、その定める考え方の基本は何ぞやというところだろうと思います。
 私どもこれまでの支給実績を維持するという考え方を基本にしており、恣意的に所得制限を定めるというものではない。そういことではなくて、これまでの実績をよく勘案しながら適切な所得制限を定めていく、そういうことであろうと認識をしております。
#141
○日下部禧代子君 これまでの私の質疑あるいは午前中の糸久議員の質疑ということを通しまして、我が国の児童手当制度というのは、国際的に見て、各国の事情というのはさまざまな違いがございます、しかしながら、制度の導入の時期が非常に大きくおくれているということばかりではなくて、今回の改正が行われたということはございますけれども、支給対象児童の年齢が国際的に見て非常に低い。二十歳を超えている国もあるにもかかわらず三歳未満であるということ、これはちょっと比較にならない。幾ら国の事情が違っても比較にならないぐらいの低さだろうというふうに思います。そしてまた、国庫負担というのは減少の一途をたどっているということがございます。児童というものを次の世代を担う「社会の子」という視点でとらえるとすると、児童手当というのは国としての当然の人的資源への投資と言ってもいいんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 日本では出産とか育児、老親の介護といったものを私的なことというふうにみなす、そういう伝統、考え方が非常に今でも根強いわけでございますが、今日の家族の置かれている状況ということから見ますと、子供の問題、そして老親の介護問題、いずれにいたしましても、社会的に負担する施策というものが講じられなければ家族が破綻する、家族崩壊ということにもなりかねないという現状はもうよく御承知のとおりだというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、そういう現状から、今後この児童手当というものをいわゆる社会保障としてどのように位置づけられるのか。また、国の責任、国の役割というものをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。二十一世紀へ向けてのビジョンをお聞かせいただきたと思います。大臣にお願いいたします。
#142
○国務大臣(下条進一郎君) 二十一世紀に向けましては、御承知のようにかなり速いテンポで高齢化が進むということが想定されております。
 したがいまして、高齢化社会への対応としてゴールドプランをお願いし、既にもう二年目に入っておるわけでございまして、その線で充実を図っていく施策を今続けておるわけでございます。一方、その後に続く若い方、そしてまた若い方の後に続く乳児の出生率が大変に最近低下しておりまして、御承知のように公式の発表の平成元年度の統計では一・五七という出生率になっておりまして、先行きかなり懸念されておるということでございます。
 そういう見地から、先ほど来申し上げておりまように、我々の社会は高齢の方々を十分に支えていくと同時に、後に続く赤ちゃんが健やかに生まれ育つような環境づくりを各家庭の力だけではよく、社会的な力でこの方々にお手伝いをしていくという社会づくりが必要である、こう考えておわけでございます。
 その中で、先ほど来御議論のありました児童の問題をいかにとらえ、そしてまた御家庭の御負担の最もかかりやすい時期に集中的に児童手当を改定いたしまして、少しでもお役に立てるような条件をつくっていこう、こういうことで今回の改正をお願いしているわけでございます。もちろん児童手当を改正するだけで十分とは決して申しませんので、先ほど来お話を申し上げておりますように、審議会等々の答申を踏まえて子育ての環境づくりを十分に整えながら、この大きな課題を解決していくように厚生省といたしましてもこれから全力を挙げて努力してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
#143
○日下部禧代子君 どうもありがとうございました。
 終わります。
#144
○高桑栄松君 それでは最初に、戦傷病者等援護法に関連した質問をさせていただきます。
 最初に、サハリン残留者のことを伺いたいんですけれども、厚生省は現地で面接調査などを行っておられるようでありますので、抑留者の数字、実情について把握しておられると思いますが、その実情を述べていただきたいと思います。
#145
○政府委員(岸本正裕君) お答え申し上げます。
 厚生省が把握しております樺太地域における未帰還者及び自己意思残留者の数は、平成三年一月一日現在でそれぞれ百二十人及び百五十一人であり、合計では二百七十一人というふうになってございます。
#146
○高桑栄松君 面接をしておられたというふうに聞いておりますが、何名ですか。
#147
○政府委員(岸本正裕君) 面接は皆さんに声をかけたんでございますが、四カ所の会場にお越しいただいた方が、合計で百七人でございます。
#148
○高桑栄松君 そうすると、その残が百六十何名かおられるようであります。
 私は、実はこの二月十一日から十三日までサハリン友好議連でサハリンに行ってまいりましたんで、いろいろ現地の方のお話も承ってまいりましたが、その中にやはり朝鮮、韓国人の方々が二千七百人ぐらいとかと資料にありましたが、そういう方々がおられるわけで、そういう方々に対しても我が国として調査を行っているんでしょうか、どうでしょう。
#149
○政府委員(岸本正裕君) 厚生省としては調査を行っておりません。
#150
○高桑栄松君 まず、日本人の残留者についてのちゃんとした調査で数字的な面でも把握しておいてもらいたい。韓国、朝鮮人の方々についてもできるなら調査をしてあげる必要があるのではないかなと私は考えます。
 その次に、集団一時帰国について現地の方々は大変期待を寄せておりましたんで、今度五月の三日でしたか、第三回目の集団帰国が予定されているというふうになっておりますが、そうすると、第一回、第二回と第三回でいつ、何人ぐらい、それから男女の比率ではどんなぐあいで帰国をしておられるんでしょうか。
#151
○政府委員(岸本正裕君) 今、先生のお話にございました第三回目が、平成三年の五月三日から五月十六日までが予定されております。
 初めからで申し上げますと、第一回目が平成二年の五月二十八日から六月十一日でございまして、男三人女九人、合計十二人でございました。第二回目は平成二年九月の五日から九月の十九日まで一時帰国されまして、男七人、女二十三人、合計で三十人でございます。もう間もなく参ります五月三日から五月十六日の第三回目は、予定でございますが、男十二人、女七十五人、両方合わせまして八十七人という規模を予定されております。
 今までの合計でございますと、第一回目と第二回目で男性が十人、女性が三十二人、合計で四十二人ということになっております。
#152
○高桑栄松君 今のを伺っておりますと、それは日ソ関係、国交関係の問題でできなかったことはよくわかりますが、敗戦後もう大変な年数、四十五年たっております。私たちも千歳空港から直行便で参りましたけれども、初めての直行便だった
と思うのですが、一時間弱ぐらいで行くんです。
 それで行ってみまして、北海道人会の方と会うと、北海道知事が参りましたのでそういうことで行きましたら、北海道人がほとんど大部分なんですが、もう日本人会であるということでございました。北海道が中心で東北、関東の方々が若干おられるという状況だったと思います。各地から今のお話にあるように女性がほとんど大部分で、百人近く集まられたかなと私思いましたが、一人一人がほんの一、二分間ずつあいさつというかお話をされました。もう私たちと会っただけで涙になって声が出ないという方々もたくさんおられました。
 やはり厳しい現実があると思いました。ですから、女性が多かったというのは多分韓国人あるいは朝鮮人の方と結婚しておられて、そういう状況下でそのままおられる方が多いんではないか、こんなふうに私は推測をいたしましたが、何せ日本に一遍でも帰ってみたいという人がたくさん希望しておられて、一遍行ったというので感激してそのことを語っておられた人もおりました。
 しかし四十五年の歳月の中で、親と別れた人は親戚がどういう人でどこにいるかなんてさっぱりわからない。ようやくこの間調べてもらって行ってみたら、九十何歳の父親が何週間か前に亡くなった後であった。なるほど四十五年たてばそういう年齢になりますので、これはもう大変なことだなと思いました。
 そこで言われたこともございまして、身寄りがなければ日本に帰るといっても受け入れる対象がないわけでしょうから、身寄り探しを個人的に頼んだりしておったようですけれども、身寄り探しにマスコミなんかをお願いして公開的なそういうことができないだろうか、そういったことを希望しておられましたが、いかがでしょうね。
#153
○政府委員(岸本正裕君) 厚生省といたしましては、従来からサハリンに残留しておられます邦人につきまして、本人から身元の確認調査の希望があった場合には、各都道府県に対しまして照会を行うというようなこと等によりまして身元確認をしてきております。現時点におきまして御指摘のような公開調査を行う必要性は乏しいのではないかというふうに考えております。
 一番大きな要因といたしましては、これは中国の残留孤児と事情が少し違っておりまして、サハリンの残留邦人につきましては、各人が身元を確認するような資料とか情報を相当有しているということが多い、こういうような事情でございます。
#154
○高桑栄松君 いろいろとお一人お一人の事情があるようで、新聞によりますとシベリアの方で受刑されたので日本に帰るのが恥ずかしい、それでそのまま残った人が樺太にいると、何か新聞なんかですけれども出ておったりして、いろんなケースがあったようであります。プライバシーの問題もあり、いろいろあろうと思いますが、できるだけ現地の要望にもこたえて身元調査というか身寄りを調べてあげないと、年月がたちますともうだんだん身寄りがわからなくなるし、アウトになってしまうんじゃないかと思うんです。
 そこで、集団帰国の人数を聞いておりますと、残留日本人のもう本当の一部分にしかすぎないのではないか。今度ゴルバチョフさんが見えて、少なくとも日ソの間に雪解けが見えるようでありますから、この際厚生省としてもしっかりサハリン残留の日本人の方々のために帰国の便宜をいろいろと図ってあげてほしいなと、こう思います。
 これについて大臣に承りたいと思うのですが、もうできるだけ早い機会に集団一時帰国に対する何らかの手を差し伸べていただきたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
#155
○国務大臣(下条進一郎君) 樺太残留邦人の一時帰国につきましては、先ほどお話が出ておりましたように、昭和六十三年十二月に帰国援護制度を創設して以来、現在までに既に五十八名がこの制度を利用して一時帰国をしておるわけでございます。さらに、これも先ほど政府委員からお話が出ましたように、来月三日からの予定で八十七名が一時帰国する予定になっております。
 厚生省といたしましては、一時帰国希望者からの要望を踏まえまして、本年度から国費による一時帰国者に対する滞在費の支給を開始したところでありますが、今後も制度の円滑な実施に努めてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
#156
○高桑栄松君 大臣、しっかりひとつお願いいたしたいと思います。
 それでは、また現地で私が承ったことでありますけれども、友好議連の中でドクターは私と衆議院の代議士の方お一人の二人でございましたが、北海道医師会からも医者が一人行きましてドクターは三名でございまして、ちょうど私が年長のゆえか、日本人側の座長みたいなことで医療部門でサハリンのお話を承ったわけであります。その二、三を紹介いたしまして、これは最初に外務省の問題のようですから外務省にまずお伺いし、それに対する厚生省のコメントをお願いしたいなと思うんです。
 新聞等で御承知のように、やけどでコンスタンチン君というのが札幌へ来て札幌医科大学で手術を受けた。非常にうまくいったということでありまして、また二番手が金沢医大だったですか行ったりしていますね。余りやけどが多いのでどういうわけだろうかと思ったんですけれども、要するに安全管理がまずいようであります。それはそれとしまして、医療に対する日本への期待というのは非常に大きいということを感じました。
 これから述べますのは、幾つかありますけれども、基本的にはソビエトの医学が日本よりはるかにおくれているとは私は思っておりません。例えばモスクワに行ったら日本と対等である、先進国の第一級の国でございますから医学的なしベルで相違はない。ただし、旧樺太になりますとモスクワからは何千キロと離れておりましてもうどうにも、途中はシベリアですから中継基地がないようなわけで、ほとんど文明、文化、そういったものはモスクワからは非常におくれて到着をするということだろうと思うんです。官吏で来ておられる方々は、これは言っていいかどうかわかりませんが、私の印象として聞いていただければいいと思います。みんなモスクワを見ておりまして樺太は見ていない。もう出稼ぎ的精神で何とか成績を上げて帰ればいいという、どこの国でもありそうなお話ではございますが、樺太はさらにこのモスクワから遠隔の地であって、僻地なんというものじゃございませんね。僻地の僻地の僻地の僻地みたいなところでございますから、その意味で医療の器具とか器材とかそういったものが非常に劣っている、私はそういうふうに理解いたしました。
 それで、最初に言われましたのが、小児科の病院長が人工透析器をぜひ二台欲しい、こう言ったんです。そしてやりとりしている間に市立病院の院長がうちへももっと内容のいいものが一合欲しい、こう言うので、全サハリンで一体どれぐらいの人工透析器があるかといったら一台しかないというんですね。もう問題にならないわけです。それで、あと三台くれということでございましたが、話を聞くと外貨がないから何とかしてくれということであります。何とかしてくれといったって外貨がなくて何とかというのはどういうことかと思いますわね。外貨は考えれば幾らでもあるわけでございまして、殊に樺太近辺、北海道近辺には大変有力な外貨資源がございますから、いろいろなことがあると思うんです。ですから、そういうことで、簡単に私たちの方もイエスとは言えませんが、一応検討いたしましょうということで帰ってきたわけです。
 それで、人工透析器のようなものを言われたときに、言われたのは三台でありますが、問題にはならぬと思うんです。今日本では私がこの間勉強のために行ってみた病院だけでもう二十台ぐらいちゃんとあるんです。大きな病院ですと何十台も持っているという状況でございますので、七十万ぐらいの人口もあるサハリンで、ユジノサハリンスクが十七、八万でしたか、そんなところで一台というのは考えられないわけです。ですから、急性腎不全とかあるいはそういった慢性のものでも
人工透析をしなければ、日本なら透析で助かるのをみすみすアワトになっていくというのが常識なわけでありますが、こういうときに、もしやるとすればどういうことになるんでしょうか、外務省の方にまずお伺いいたします。
#157
○説明員(東郷和彦君) ゴルバチョフ大統領の来日の前から御指摘の問題に関しましては、外務省としては二つの観点から努力してまいったというふうに考えております。
 一つは、ソ連との間で人道的な観点での支援ということで、昨年の十二月に、このときは食糧とそれから医薬品という分野で日本政府としてのソ連国民に対する気持ちというものを伝えたいということで一定の措置をとったわけでございます。なかんずく、その中では赤十字社連盟に五億円の資金を供与いたしまして、赤十字社連盟より日本赤十字を通じまして今サハリンを含めまして医薬品の供与というものを行っている最中でございます。
 それからサハリンとの関連では、特に今後の日ソ間の交流とそれから相互理解の深化という観点から、サハリンとのいろんな形での交流が非常に大事であろうというふうに私どもも考えまして、昨年の十一月に非常に小人数ではございましたけれども、初めての政府の交流ミッションというのを派遣し、それからことしになりましてからは文化行事の開催等、いろんな形での交流、相互理解の深化ということに努力してまいったつもりでございます。
 御指摘のように、今般、ゴルバチョフ大統領の訪日が終了いたしまして、それではこれからどうするのかということでいろいろな課題があるのではないかと思います。サハリンとの医療品、器材に関する協力というのは、そういう意味で一つの重要な御示唆として承りまして、政府として何ができるかということは、これからいろいろな政府の予算、それから日ソ関係の動向等を踏まえながら検討させていただきたいと思います。ただいま現在、どういう枠組みで何ができるかというお答えは今の時点ではまだ持ち合わせておりません。
#158
○高桑栄松君 若干、私の方から補足いたしますと、人工透析器については国が考えてもらうのが一番でありますが、そうでない場合どうするかというのも私たちは検討してまいりましたが、それはそれとしまして、だんだんわかってまいりましたのは、人工透析器は透析器を上げればいいというものではない。ちなみに正価で一台六百万円、それに附属で二十チャンネルという、二十人一緒にやれるものが千二百万円というので、附属品の方が高いようなわけであります。そしてランニングコストは一回その人に使うだけで日本円で一万二千円かかる、これは実費であります。
 そういったことを考えますと、人工透析器を一合やればいいというのではない。もちろんドクターが責任を持つわけですが、しかも技術者、日本で言うと医療工学士という制度がありますけれどもこの医療工学士のようなトレーニングを受けた人でないと任せられない、これは三年コースでありますから、とてもじゃないが半年ぐらいの訓練では難しいのではなかろうか、こういったことであります。なるほど一人一人の患者について血液を分析をしながら、これが足りないからこれを入れておくとか、これが多いからこれだけをとらなきゃだめだとか、非常に微妙なコントロールをしないと、ほうっておいたらいいということではないということがよくわかりましてね、これは並み大抵でないなと。
 ただ、私たち三人のドクターは専門家ではございませんでしたが、人間のテクニシャンとドクター、あるいは看護婦さんのトレーニングが要るということは言ってあります。仮に器械をやるとしても、それはそのもので済みますから、それで終わりだろう。これは仮にやってもいいかなというのがあったんです。しかし、人間のトレーニングは向こうのお金で来てくれと。やけどは札幌医科大学が知事の権限で全額を持ちましたが、簡単に申しますと、やけどだけで一日ICUを使って三十万ぐらいかかりますから、一カ月で一千万かかっているわけです。これは札幌医科大学が持ったわけです。ですから、私は北大に、国は予算を伴うものはだめだというわけですから、せめてトレーニングぐらいは引き受けてくれるかと、時間を割けばいいと、それはできますと、こういうぐあいな話は私は個人ではやってまいりました。
   〔委員長退席、理事対馬孝且君着席〕
 それで、先方は人間のトレーニングには自費で送る、それはその場で相談をして、副知事でございましたが、我々に対しては答弁はそう言っていました。人を送るのは実費で自分たちで出せるからということでございました。
 しかし、今申しましたように、要員の確保、それから毎日毎日の保守管理が日本ではメーカーが行って見ていると言っておりますので、その病院の方々がやるというのはちょっと難しいのじゃないか。例えば千歳とユジノサハリンスクに定期便があれば一時間以内で行きますから、そういうことがないとメーカーがしょっちゅう巡回するということはできないわけだし、大変なことだなと思ったんです。薬剤は全部使い捨てで、一日一人一万二千円ということでありますから、この後のお話にも若干関連をいたしますが、こういったことを厚生省はどうお考えでしょうかね。
#159
○政府委員(熊代昭彦君) ただいま外務省からもお答えがございましたように、サハリンを含みますソ連への支援につきましては、政府全体で対応すべき問題ということでございまして、外務省を中心に検討をいたしているという状況でございます。
 ただいまお話しございましたような、医療協力の要請が外交ルートを通じましてございました場合、政府としての態度が決まりまして協力すべしというようなことがございますれば、外務省と協議の上、厚生省といたしましてもどのような協力ができるか積極的に検討はいたしたい、このように考えております。
#160
○高桑栄松君 実は、去る四月三日に、今のユジノサハリンスクの市立病院長とか小児科病院長とか医療担当のしかるべき上の方々が札幌においでになることになっておりまして、私も待機しておったら、ゴルバチョフさんが来るというためにかどうか知りませんが、キャンセルになりまして、そして再度通知が来たのによりますと、あさって二十五日に札幌に来ると、私に来て説明してくれということでございましたが、残念ながら国会で私も質問に立ったりいろんなことがありましてとても行けませんので、本日の委員会でこの問題については質問をするということだけは向こうに申し送ってあります。それで、今の御答弁がそのまま向こうにはある意味では答弁になるかと思っているわけです。
 あと二つほど言われていることがございまして、細かいのはやめますけれども、大きな面で一つ言うと、病院の建設を合弁事業でできないか、そのときにドクターとそれから医療の技師を派遣してもらえないか、全部じゃないと思いますが、何人か応援をしてくれないか、こういったことがあるんですが、こんなのは外務省はどんなふうにお考えになるでしょうか。
#161
○説明員(東郷和彦君) 御指摘の点を含めまして、具体的にどういうことをやることが適切であろうかという点につきましては、これからじっくり考えさせていただければというふうに考えております。
#162
○高桑栄松君 厚生省、どうでしょう。
#163
○政府委員(熊代昭彦君) 外務省を中心にいたしまして政府の態度が決まりますれば、厚生省といたしましても、その線に沿いまして積極的に努力いたしたい、そのように考えております。
#164
○高桑栄松君 それから、医学交流のことなんですが、いろんなことを言われまして、泥炭浴の立派な温泉浴のようなところがあって大変評判がいいから日本もぜひ来てくれ、その交代にこっちも何かもらいたいみたいなお話でございました。
 そういうことで医学交流ということですが、これちょっと記録に残るとまずいかなとは思いますけれども、私個人の考えでは、サハリン自身に関
しては我々医学関係者あるいは医師が出かけていってメリットは私はないと思うんです。しかし、日ソ関係だとか将来の外交関係、二国間のことをいろいろ考えて、サハリンはもう北海道、日本を頼るしか私はないと思うんです、距離的にとにかくモスクワからはるかに遠いんですから。日本はもう本当に大事な隣国だろうと思いますので、そういう意味で国が国際感覚で何とかするというのであれば、我々は応援しなければいけないのではなかろうか。我々と申し上げたのは、例えば北海道医師会なんかも大分一生懸命に考えておるようでありますが、我が国としてこれをやる必要があるのかどうかなと、私は隣国としてそんな気持ちの方が強いですけれども、外務省はいかがですか。
#165
○説明員(東郷和彦君) 累次申し上げておりますように、具体的なことはこれからじっくり考えてまいりたいということでございますが、一、二私の今の時点での考えを申し上げさせていただければ、まず先ほど申しましたように、サハリンを一つの舞台といたしまして日ソ間のいろんな形の交流が進んでいくということ自体は大変いいことではないかというふうに考えておるわけでございます。その中でなかんずく、例えば医学というような分野でのいろんな形の人的交流が進んでいくということは大変結構な、結構というか国としてもそのこと自体は望ましいお話ではないかというふうに考えておりますし、そういう意味で民間の方々のいろいろな積極的な発意というものが、例えばこの前のコースチャ坊やを受け入れたというようなことを含めまして非常に望ましいことではないかというふうには思っております。
 他方、それでは国としましてそれに対して具体的にどういう措置をとるのかということにつきましては、これは国の全体の予算等を含めましての枠組みの中でこれから考えていかなくてはいけないことかと思います。一つ、今回ゴルバチョフ大統領の来日を機会といたしまして、ソ連政府との間でいわゆる技術的支援に関する協定というのを締結いたしました。これはある程度の予算措置を伴いまして、そういういわゆるペレストロイカに対する技術的な支援という観点で人の往来をやろうという協定でございます。
 ちょっととりあえずの印象では、そういう意味での純粋の医療技術に関する交流というのはこの協定の対象にはなっていないような気がいたしますけれども、そういうような協定を一つ政府間で結んでいるということもございますし、そういうものを一つの実際の政府間交流の枠組みとして、私どもはまさにゴルバチョフ大統領の訪日後にその実施をこれから始めようというところでございますので、そういう基礎も踏まえながら御指摘の点も検討させていただきたいというふうに思っております。
#166
○高桑栄松君 人的交流等について厚生省はいかがですか。お考えをどうぞ。
#167
○政府委員(熊代昭彦君) 繰り返し申し上げているところでございますが、基本的に国としての方向を定めるというのが第一義でございますので、外務省を中心にその方向を定めるということでともに努力していきたいと思いますが、人的交流を積極的に促進すべしという国としての方針が決まれば、その線に沿いまして積極的にやりたいというふうに考えております。
#168
○高桑栄松君 残留日本人の方々が非常に不安に思っているのは、病気のときに日本と同じレベルの治療を受けられないかということであったようです。ですから、私が今申し上げた日ソ間の交流ということは、数は少ないけれども日本人残留者の方の希望も考慮しながら、ひとつ十分に前向きというか積極的にお考えいただきたいな、こういう希望を述べさせていただきます。
 次のもう一つのテーマでございますが、現地の方々の声の中に、だんだん年はとってきたし老人ホームをつくってもらえないか、こういう話がございまして、もうとにかくお金のかかることは、私は医者でございましたので、医療関係以外のことは一切わかりませんがということで帰ってまいりましたが、老人ホームの建設というふうなのは、これはやっぱり外務省ですね。どうぞひとつ。
#169
○説明員(東郷和彦君) そういう老人ホームの建設のような、日本政府として具体的ないわゆる建設にかかわるようなそういう問題につきましては、先ほど来累次申し上げておりますように、ゴルバチョフ大統領来日後の新しい情勢のもとで何をすることが適切かつ可能かという観点から私どもとしては検討したいということで、ただいま現在具体的な答えを持ち合わせておりません。
#170
○高桑栄松君 どうもありがとうございました。
 厚生省も老人ホームというと顔を出していただくんだろうかと思いますが、お考えはいかがですか。
#171
○政府委員(熊代昭彦君) 先ほど申し上げました医療協力の件と同様でございますが、老人ホームというのは極めて具体的な案件ではございますが、そういうことを一応捨象いたしまして、そういう方面でのソ連国家に対する援助でございますから、そういう細かい援助が果たして可能であるかどうかというのは問題があると思いますけれども、外務省を中心にしまして検討いたしまして、先ほど御説明ございました枠組みの中でそういうことが可能である、しかもやるべしという御結論が下りますれば、厚生省としては積極的に協力いたしたいと思っております。
#172
○高桑栄松君 先ほど申し上げましたように、ぜひ積極的に進めていただきたい。同時に外務省の方かどうか、直行便だとか連絡の方法というのはなければ困りますので、今ですとハバロフスク経由で行っているようでありますから大変な日にちがかかっております。その辺ひとつ積極的にお考えいただいた方がいい、こう思います。
 次に、シベリア抑留者のことについてちょっと質問させていただきますが、これも今度ゴルバチョフ大統領が見えて両国政府間での協定がいろいろ結ばれたということで、これからということのようでありますけれども、次第に実情が明確になってくるわけでございますが、抑留者あるいは死亡者、帰還者等の数字が幾つかの資料によるともう大変まちまちでございまして、日本政府は抑留者五十七万五千、死亡五万五千と言っているし、キリチェンコ東洋学研究所の部長さんは捕虜五十九万四千人、死亡者八万三千五百九十一とか、ウラジミール・ガリツキー国防省研究員は捕虜が六十三万九千、死亡者は六万二千、こうなっております。実情といっても今の段階でお困りなんだろうと思いますが、どの辺が一番信頼に足る数字であるか、厚生省教えてください。
#173
○政府委員(岸本正裕君) 私ども厚生省が把握しております数字は、一つはソ連に抑留された方々が昭和二十一年以降逐次日本に帰ってこられた、そういう方々から事情をお伺いしていろいろと推計をいたしました。またもう一つは、日本にいらっしゃいます留守家族の方々からまだ帰ってこないということで、未帰還者の調査依頼といいましょうか届けが出されたわけでございまして、そういうものをまた逆の面から、そういう数字と帰還者からの情報とを突き合わせて推計をしたということでございまして、先ほど先生おっしゃいましたように、シベリア抑留者数は約五十七万五千人でございます。そのうちの死亡者は五万五千人であろう、こういうように推計をいたしております。
 いろいろな数字がございますので、私もどれが絶対正しいんだということは申し上げられないんでございますけれども、厚生省といたしましては、このようにして推計をした数字でございますので、実情とそれほど大きな違いはないのではないかというふうに考えております。
   〔理事対馬孝且君退席、委員長着席〕
#174
○高桑栄松君 これはもう全く私は根拠がなくて申し上げるんですが、五味川純平さんの「人間の条件」という何部作かの本を読んだときの印象で、どうも極寒、強制労働下で少なくとも何十万人か、十万人かそれ以上の人がシベリアで死んでいったように私は受け取ったんです。だから五万とか七万とかというのは、私はもっとキャッチできなかったものがあったんでなかろうか、こんなふう
に思うんですね。あれは一つの小説ですが、全く史実のないものを書いたんじゃない、こう思うんです。
 ですから、そういう意味で両国間のいろんな協定の中でしっかり実情を把握することがまず第一ではないか、こんなふうに思います。そして死亡者がわかり次第それは速やかに、名簿が来ておる分だけでも早く遺族にお渡しをして、何というか覚悟のほどを固めていただくことになるでしょうし、墓参なり遺品のことなりが出てくると思います。
 そこで、今度の協定の中でありましたのに、外務省に伺いますけれども、捕虜収容所にある日本人捕虜であった方々の所持品とか遺品を日本政府または日本政府が指定する団体に引き渡すと書いてありますが、日本政府はいいが、日本政府の指定する団体というのはどういう団体なんでしょうか。
#175
○説明員(東郷和彦君) 御指摘のように、今般締結されました捕虜収容所に収容されていた者に関する協定の第一条五に、「捕虜収容所に収容されていた日本国民の所持品のうち、ソヴィエト社会主義共和国連邦の公の機関により保有されているもの及び将来見いだされるものを、日本国政府又は同政府が指定する団体に対して引き渡すこと。」という規定がございます。
 これにつきましては、つまりこの団体につきましては、現在国内関係省庁で検討中でございまして、これからソ連側から引き渡されることとなります所持品の量、それから種類、それから引き渡し方法、こういう点をまず日ソ間で確認ないし確定いたしまして、その段階で必要に応じましてこの団体を指定するということを考えております。
#176
○高桑栄松君 時間になったようですので、急いでもう一問外務省にお伺いしますが、前例によりますと、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN、東南アジア諸国、米国等では捕虜になった方々が強制労働させられたときの労働証明書が出ると日本政府が補償しているという前例があるというふうに聞いておりますけれども、シベリア抑留についてもソ連が労働証明書を発行すれば、これは日本政府が補償をすることになりますね、どうでしょう。
#177
○説明員(東郷和彦君) 仮の問題としまして、ソ連政府が労働証明書を発給した場合に、これにどういうふうに対応するかということは、これは日本政府で判断される問題でございますが、国際法上の観点で申し上げれば、その労働証明書に基づいて補償する義務というものは日本という国は負っておらないということを外務省の所掌との関連で申し上げたいと思います。
#178
○高桑栄松君 でも、今前例があるというふうに私は承っているんですけれども。
#179
○説明員(東郷和彦君) 今申し上げましたのは、国際法上の観点から日本政府としての補償の義務というものは発生しないということを申し上げたわけでございます。
#180
○高桑栄松君 それじゃ、時間になりましたので。
#181
○委員長(福間知之君) 午後三時まで休憩いたします。
   午後二時十六分休憩
     ─────・─────
   午前三時三十一分開会
#182
○委員長(福間知之君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、児童手当法の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#183
○高桑栄松君 それでは、私は次に児童手当法の改正案について質問をさせていただきます。
 既に同僚委員がいろいろ御質問をされまして明らかになっている点と私の指摘しておきたい点をあわせてちょっとサマライズさせていただきますが、まとめさせていただきますが、まず支給年齢は一番最初五歳未満、昭和四十六年ですか、五歳未満というところから始まって、四十九年から六十年までは義務教育終了時、それから六十一年以降は就学前、そして今度は満三歳になろうというわけであります。
 次は給付額でありますけれども、給付額は昭和五十年以来はベースアップがない。これはこの十六年間で物価にスライドすれば約二倍になっているというお話が先ほどございました。それから、国庫負担は昭和五十四年をピークにいたしましてだんだん少なくなってきておりますし、また事業主の拠出金はどんどん増加している。給付総額は今の昭和五十四年をピークにいたしますけれども、ほぼ千四、五百億というところに定着をしてきている、同じレベルであるという理解ができたわけでございます。したがいまして、今度の法改正によって、もし試算をしてみても千四百五十二億でしたか、それが千九百億になるといいましても、これはほとんどが拠出金の増によるものであるということがわかったかと思うわけです。
 そこで私が伺いたいのは、まずILOの第百二号という条約でありますけれども、この条約を批准している国は現在何カ国あるかということと、それから児童手当法に匹敵する家族給付の部門を受諾している国は何カ国に及んでいるか、そして日本はどうか、これについてお答えいただきたいと思います。
#184
○政府委員(土井豊君) ILO百二号条約の批准国でございますが、現在三十二カ国がいたしております。そのうち家族給付部門の義務を受諾している国は二十二カ国でございます。なお、日本につきましては、批准はいたしておりますけれども、家族給付部門の義務についてはこれを保留しているという状況になっております。
#185
○高桑栄松君 このILO第百二号の給付事由というのを見ますと、そこには子とは義務教育終了年齢または十五歳未満と、こうなっているわけで、昭和五十年に我が国が取り入れたときはこの条項のとおりであった、こういうふうに理解しておりますが、それでよろしいわけですね。
#186
○政府委員(土井豊君) 私どももそのようになっているというふうに理解しております。
#187
○高桑栄松君 先ほども同僚議員の質問にございましたけれども、昭和六十年の六月の参議院社労委員会で公明党の中野議員の質問に対して政府は、義務教育終了時までをあるべき姿と考えている、こういうふうに答弁をしておられます。これもそれでよろしいですね。
#188
○政府委員(土井豊君) まことに申しわけありませんが、ただいまちょっと私そこのところを存じ上げておりませんので、保留させていただきたいと思います。
#189
○高桑栄松君 いや、それはここに実はございますが、そういうふうに書いてございます。
 つまり政府としては、あのときに、昭和六十一年ですが、十五歳というのを六歳に下げようとしたときに、あるべき姿はやはり十五歳だと、義務教育終了時までを目指すのがあるべき姿だと考えていると、まことにそのとおりだと思うんです。
 そういたしますと、先ほどのILO百二号の児童手当に匹敵する家族給付のところですが、この十五歳未満というのは、日本はそのつもりでずっときていた。今度満三歳に下げるというのは大変格差が大きくなったというふうに言えるわけでございます。
 それからもう一つは、給付総額をILOがリコメンドしている、指示しているというのか、基準にしている計算方式によりまして試算をすると、一兆一千億円になるということでございまして、これはことしの三月十五日の衆議院社労委員会で公明党の石田委員の質問に、政府の答弁がそうなっております。
 そうすると、今度の試算でいけば千九百億と言っておられるわけですね。千九百億と一兆一千億というと、何かほとんどけたが一つ違うので、非常に大きな違いがある。そうすると、我が国が批准はしているが家族給付の部門を受諾していないということでしたが、受諾する方向で考えてお
られるのかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。
#190
○政府委員(土井豊君) ただいま御指摘の点でございますけれども、百二号条約の四十四条に規定がございまして、賃金の一・五%に十五歳未満の子供の人数を掛ける、これが基準額になっております。その金額が約一兆一千億円というふうに推計をいたしております。それに対しまして、現在の児童手当の給付規模は、現在御提案している改正法が平年度化した場合に千九百億円と、約五倍半ぐらいの開きがあるという状況でございます。そういう意味で、私どもこの点については大変難しい問題であると思っております。
 なお、批准をしている国で、しかも家族給付についても受諾をしているという国は、主としてヨーロッパの児童手当制度等先ほど来いろいろお話がございましたけれども、そのような国が大勢を占めているというふうに考えておりまして、繰り返し恐縮でございますけれども、税制の問題とかあるいは家族手当の問題等々の絡みをどう考えていくかというような全体的な問題も背景としてはあるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#191
○高桑栄松君 私がいただきました資料を見ましても、経済大国日本が受諾できないというのは極めて情けないのではないか。大国どころか小国も入っているわけですね、二十二カ国というと相当数の国が入っておりますので。ですから、これが受諾できないという理由が二つあるんじゃないか。つまり満三歳と満十五歳というのは非常に大きな違いがある、これが一つ。もう一つは、もしそのとおり試算をすれば、一兆一千億が千九百億である、こういうことではもう受諾しようにも余りにも遠い遠い山の上みたいなもので、望むべくもないのではないのがなという気がいたします。ですから、受諾をしない方向にあるとすれば、現代国家のというか、そういうスタイルからはだんだん遠ざかっていくのではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうね。
#192
○政府委員(土井豊君) 先進国の中ではアメリカ合衆国が受諾をしていないという、これはたしか批准もしていなかったと思いますけれども、そのような状況になっております。我が国について現在の児童手当の給付規模ではとても追いつかぬじゃないかという隔たりというのは、私どももそのような状況になっている、その現実を踏まえて、先ほど大変困難であるというふうに考えていると申し上げた次第でございますけれども、その背景として社会経済の中に児童手当の関連でいつも議論になる幾つかの問題点があるんではないかということを申し上げている次第でございます。確かに御指摘のような点もあろうかと思いますけれども、その間の事情につきまして御理解を賜りたいと存じます。
#193
○高桑栄松君 私は、今まで三歳だったのを六歳にというのじゃなくて、十五歳だったのを六歳にし、そして三歳にするというところが問題であると申し上げたんで、今までどおりでなぜやらなかったのかということを指摘しておきたいと思ったわけです。
 次の質問に入りますと、附則の第五条でしたか、老齢福祉年金の所得制限並みという所得制限がついておったわけですが、これを今度削るということについて伺いたいんですが、これを削るというのはなぜかということなんです。
#194
○政府委員(土井豊君) 当初、老齢福祉年金の所得制限を基準として児童手当の所得制限を定めるという規定が導入されましたのは昭和五十七年の特例給付を導入した時点でございました。その後昭和六十年の改正の際に第二子に拡大すると同時に、年齢につきまして学校に入るまでというときには、その「基準として」というのを「勘案して」というふうに直しました。今回、それを削除いたしました。
 その考え方でございますけれども、親の所得をどう見るかということにつきましていろいろ御議論ございますけれども、今回の改正案では年齢を三歳未満に重点化をするという前提で改正内容を固めておりますので、その場合に、親の収入というものを老齢福祉年金の所得制限を勘案するという基準でいいのかどうかという新しい問題が出るであろう。私どもとしては、受給対象の親の収入をベースにして従来から実績として支給割合というものがある程度固まっておりますけれども、それを維持するための所得制限というものを新しい対象者につきましてある程度実態を把握して取り組んでまいりたい、そのような考え方から児童手当制度としての所得制限を今後は定めていきたい、そういうふうに考えた次第でございます。
#195
○高桑栄松君 経過措置の場合どうなるのかというのがありますが、先ほどの同僚委員の質問の中で出ておりましたけれども、給付対象者のパーセント、七割とか八割とかという話が出ていました。これは注文というか私の考えを申し上げますと、これは一種の福祉なわけでございまして、したがいまして一つは福祉というものは人口の中のパーセントでやるのではなくて、生活水準がかかわっているわけでありまして、生活水準にかかわるのだから、何%で対象者を絞りたいという考え方を持つとすれば、第一子を入れれば対象者はふえますから、そうすると所得制限を下げることになるのではないか。先ほど同僚委員の質問のとおりのことが出てくると私は思うんです。
 したがいまして、だからそういうのではないということと、もう一つは生活水準にかかわるとすれば、三歳未満までということになるとどう考えても若くて、したがって収入の少ない階層になりますから、その意味で私は所得制限というものが厳しくなることを恐れているものでありますが、いかがですか。
#196
○政府委員(土井豊君) 現在、今回の対象の親たちの所得の分布がどうなっているか私どもも掌握しておりませんので、新しく法律をお認めいただいた場合には、新しい対象者を中心にある程度実態を把握しながら適切な所得制限を設定してまいりたいと考えておりますけれども、その場合に私どもとしては従来の支給実績というものを確保していくという観点からの所得制限を設定したいという考え方でおります。したがって、その所得制限が適切かどうかという議論はあろうかと思いますけれども、あくまで支給率維持というような考え方を基本に置いて適切な所得制限をとりたい。それが結果として数字が上がるか横ばいか下がるかというのは、もう少し時間をかしていただきたいというふうに思っております。
#197
○高桑栄松君 それでは、時間も大分もう縮まってまいりましたので、大臣にお伺いをしたいと思います。
 まず、見直し条項がついているわけですけれども、これは経過措置終了時点、つまり三年後において見直すというふうに理解をしておりますけれども、大臣のお考えをお聞きしたい。
 もう一つ、三歳未満に年齢を下げたということは、先ほど申し上げましたILOの第百二号でわかりますように、児童手当に関しては非常に後退をしていることを意味しております。これについて経過措置はどういうふうになるのか。この二点をお伺いしたいと思ます。
#198
○国務大臣(下条進一郎君) この見直しの規定についてのお尋ねが第一点でございますが、ただいまの情勢では見直しの時期を具体的に申し上げることはまだできないわけでございます。ただ厚生省といたしましては、御意見の趣旨も踏まえまして今後の社会経済情勢の推移等を見る必要がありますので、経過措置三年でございますが、その経過措置終了後最も早い時期に必要な見直し等の検討を行うよう最大限の努力をする所存でございます。
 それから第二点の三歳未満という問題についてでございますが、これはILOとの関係ということはちょっと直接つながらないのではないかと思いますが、私たちの方では従来の児童手当の考え方についてこの時期に見直すということの中で支給年齢を三歳未満にいたしまして、そのかわりにと申しますか、さらにそういう形で第一子からの支給、さらにまた支給の金額を倍増するという形
で重点的に乳児また児童の小さいころの御家庭に御支援の総力を挙げる、こういうことで改正に取り組んだ次第でございます。
#199
○高桑栄松君 私は三年後のできるだけ早くというよりも三年後には見直してもらいたいということを強く要望いたしまして、せっかく質問通告しておりますので、母子保健のことを一、二伺いたいと思います。
 母子保健については、時間がございませんので、まず大臣に最初にお伺いしたいと思いますが、保健サービスの一貫性ということについて、母子保健は母子健康手帳というものがあります。老人には老人健康手帳というものがあります。その中間は学校保健があり、それから健康保険があるわけでありますが、これらを念頭に置くと生涯健康管理ということが念頭に浮かんでくるわけでございまして、そういう生涯健康管理システムについて厚生省、大臣はどのように認識しておられるか、お考えを持っておられるか伺いたいと思います。
#200
○国務大臣(下条進一郎君) 人生八十年、この長い期間に当たりまして、生涯にわたる一貫した健康管理のあり方について取り組んでいくことは非常に重要な課題だと考えております。その人生八十年代のその時代に当たりまして、生涯にわたる一貫した健康管理のあり方については我々は真剣に取り組んでいく所存でございます。
 特に母子保健のお話がございましたが、母子保健は生涯にわたる健康づくりの基礎とも言えることでありますので、これをスタートにいたしまして、老人保健等全体を見通した施策の整合性や一貫性に十分配慮しながらこれら制度の充実を図ってまいりたい、このように考えております。
#201
○高桑栄松君 それでは時間になりましたので、もう一問だけせっかくですから質問したいと思います。
 母子健康診査の充実ということで、私のいただきました資料を見ますと、厚生省が推奨しておられるのは、妊婦健診では分娩までの間で大体十二回くらい健診を受けた方がいい、乳児健診は五回、それからあと就学前まで毎年一回ずっということで五回ということになろうかと思いますが、その間妊婦の健診の公費負担は何回分であるか、乳児についてはいかがであるか、あるいは乳児から今度就学までの期間の公費負担は何回分でしょうか。これちょっと伺います。
#202
○政府委員(土井豊君) 妊産婦につきましては二回でございます。それから、乳児につきましては乳児期に二回やる受診券を母子手帳に入れております。その後は一歳半健診、三歳児健診ということに相なっております。なお、学校に入る前には文部省サイドでの健診が予定をされております。
#203
○高桑栄松君 今お伺いしたとおりでございまして、厚生省が推奨している回数から見ると大分回数は少ない。私は、母子保健というものがこれからの日本の将来を担っていく子供たちも含めまして、母親はまた大事でございますし、こういったことで自己負担をなるべく減らすように、厚生省としてもできる限り公費負担の回数をふやすような予算上の措置を希望いたしまして、お答えをいただいて質問を終わらせていただきます。
#204
○政府委員(土井豊君) ただいまの御指摘の点についてでございますが、私どももよく専門家の先生方の御意見をお聞きしながら今後とも取り組んでまいりたいと存じます。
#205
○沓脱タケ子君 児童手当法案についてお伺いをいたします。
 我が国の児童手当制度というのは、主要諸外国から大分おくれまして世界で六十三番目、一九七二年にやっとスタートいたしました。その後うまく育つのではなしに、一貫して改悪の方向への見直しの標的にされてきた。とりわけ臨調行革以後は改廃も含めて検討という大変ひどいことになって、どんどん改悪をしていくターゲットとしてさらされてまいりました。そういう結果が実際には十五歳未満が就学前になり、さらに今度は三歳未満にというふうになってきているわけです。
 そういう結果をずっと見てまいりますと、臨調第一次答申、その当時に比べまして国庫負担というのは二分の一以下どころじゃなしに四割足らずというところまで減額をされてきている。そういう中でさらされておった児童手当ですから、国民の中では今回の改正については一定の期待が持たれておりました。というのは、内容が第一子から支給する、金額は二倍にするという原案だというので、これは大いに期待を持たれていたわけですが、対象児童は三歳未満ということで、それじゃ児童手当じゃなくて育児手当じゃないかということが言われるように、国民の期待を大きく裏切ったと思うのでございます。諸外国を見てまいりましても、三歳未満というような国はどこにもないですね。皆さんがおっしゃるように、世界第二位の経済大国でよくもこんな三歳未満というのを出して恥ずかしくもないんだなと思うわけです。
 大臣、各委員からこもごも御要望になって質疑がされておりますように、せっかく改正をなさるんなら経済大国にふさわしい姿にぜひ早急に改善をするべきだと思うのですけれども、その点はどうですか。これは年齢ですよ。
#206
○国務大臣(下条進一郎君) 三歳未満のところに改正することにつきましては、先ほど来各委員からお尋ねがございましてお答え申し上げましたように、今回の改正制度におきましては、中央児童福祉審議会の提言を踏まえまして、三歳未満の時期は人間形成の基礎となる極めて重要な時期であるということと、育児に手がかかり生活上の制約が大きいことや、親の年齢も若く収入が低い時期と考えられることから経済的な負担も相対的に大きいことを考慮いたしまして、支給期間を三歳未満に重点化することにしたものでありまして、今回の改正案は妥当なものと判断いたしておるわけでございます。
 支給期間のあり方については、今後児童手当制度の目的を踏まえまして、社会経済情勢の変化あるいはその推移、制度改正の効果等を勘案いたしまして、給付内容及び費用負担のあり方を含め制度全般に関しまして検討する中で今後取り上げてまいりたい、このように考えております。
#207
○沓脱タケ子君 そういうふうにおっしゃるなら、社会保障制度審では、今回の改正の対象が第一子以降にまで拡大したことは懸案の解決であり云々で理解できるが、他方で支給期間を三歳未満までに限定したことなどには問題が残るという点が明確に指摘をされていると思います。
 ちょっとお伺いをいたしたいのは、衆議院修正で参りました第八条の「検討」の項、これなかなか難しいですね。意味を酌み取るのが大変困難なんです。「児童手当法による児童手当制度については、児童手当制度の目的を踏まえ、この法律の施行後における児童手当制度の実施状況、社会経済情勢の推移等を勘案し、給付及び費用負担の在り方を含め、その全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする。」、なかなか難しいですね。何を言うているのかようわからぬのですけれども、時間の都合があるので逐一お聞きをするわけにはまいりませんが、しかし今も言われた「必要な見直し等の措置を講ぜられるべきものとする。」という点で、今さきの質問者への御答弁でもありましたように、経過措置を三年して、その終了後三年以後に時期は見直しをするというんですね。見直しの内容は何ですか、ちょっとそれを伺いたい。
#208
○政府委員(土井豊君) 第八条の修正にかかわる事項でございますが、私どもとしては言葉どおり理解をさせていただいております。したがいまして、見直しの内容でございますけれども、「給付及び費用負担の在り方を含め、その全般」ということが対象になるのであろうというふうに理解をいたしております。
 個別的には、個々の問題として御指摘をいただいて、検討課題というふうに私ども認識しておりますというふうにお答えしているような事項がかなりあったと思いますけれども、そういったものが対象としてなるのであろうというふうに理解をしております。
#209
○沓脱タケ子君 ちょっとこれで細かく聞きたいんですが、時間の推移がありますので。
 「必要な見直し」というのは時期だけじゃなくて中身でしょう。給付年齢を引き上げるということもその見直しの要件に入っているのか。あるいは支給金額の見直しというのは、あなたのところの見直しは改悪もあるけれども、支給金額の改善も見直しの中に含まれているのか、その点をちょっと伺っておきたい。
#210
○政府委員(土井豊君) ただいま御指摘の点は、いずれも検討課題の一つであるというふうに考えております。
#211
○沓脱タケ子君 じゃ、まさか三歳未満をさらに切り下げるというような見直しはないでしょうね、念のために。
#212
○政府委員(土井豊君) いろんな御論議の経緯を十分踏まえて私どもは検討に取り組むということを申し上げておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
#213
○沓脱タケ子君 それでは手当額を倍にした。これは給付というのちょっと気になるんですけれどもね。給付というのは何でかなと思うんで聞きたいんだけれども時間がないからやめますが、だって給付というようなものないですからね、児童手当の中に。
 手当額を今回倍にしたというのは、実質倍になったのかという点ですね。これは昭和五十年以降の国民の消費支出というのは倍になっておりますね。だからせいぜい二倍になったというのは、昭和五十年の水準に国民消費支出を掛けたらもとへ戻ったということで、実質二倍にしたということにはならないわけですね。どうですか。
#214
○政府委員(土井豊君) 昭和五十年を基準にして考えますと、物価は六割ふえておりますので、消費者物価でやると八千円という金額が計算上出てまいります。一方、国民の消費支出につきましては、家計支出ベースですけれども、いろんな消費の実質的な向上というようなものがありますので、これが二倍になっているという状況でございます。
 したがって、私ども実質倍にしたという言い方は申し上げておりませんけれども、金額を倍にした、その考え方は、消費支出の向上に見合ったその間の倍率を使ったというような内容でございますので、御理解を賜りたいと存じます。
#215
○沓脱タケ子君 実質倍にしたということじゃなしに、金額を倍にした。わかりました。
 児童手当制度基本問題研究会ではこのように書いてありますね。「支給額の水準については、当初、児童の養育に係る費用の半分程度を手当として支給するとの考え方に基づき、」発足した。そういう方向であったんですから、当然そういうふうな方針を貫くべきではなかったのかなと思うんですが、それはどうですか、昭和五十年以来十六、七年にわたって据え置かれているという点では。そういうことはこの十六、七年にわたって勘案しなかったんですか。
#216
○政府委員(土井豊君) 児童手当制度を創設する段階では、御指摘のとおり養育費の二分の一程度ということで支給金額を定めたという経緯がございます。その法律におきまして、著しい経済変動があった場合には金額の手直しをすべしというような規定が法律の中に盛り込まれております。したがってそのような状況があれば当然金額の手直しということが必要であろうというふうに思っております。昭和五十年までは何回か金額の手直しがございましたが、その後今日に至るまで据え置かれていたという経緯もございます。
 そういう意味で、私どもその間のいろんな状況の変化というものを勘案して今回御提案しているような金額をお願いしたという経緯でございますので、常に養育費の二分の一ということをフォローして、それによってやっていくという考え方を今日の時点までとってきたというものではございませんので、御理解を賜りたいと思います。
#217
○沓脱タケ子君 養育費の二分の一程度のものを手当としてということで、始まるときというのは原則を立てていると思うんですね。そういうことでいくなら、これはもう既に何回も言われておりますように、実際児童の養育にはピジョン株式会社の資料というのが盛んに引用されていますけれども、これによりますと乳児一人一カ月二万三千九百五十七円というのがはじき出されてますね、これは大都市周辺ですがね。そうなったら、二分の一といえば一万二千円弱になるんですよね。
 本来、第一子からこういう手当を出すのが当たり前ではないのかなと思うんですが、そういう今日のギャップ、第一子今度五千円になるんですね。大分金額のギャップがありますが、それはどういうふうに考えたらいいんですか。
#218
○政府委員(土井豊君) まず一万円につきましては、ぴたりじゃありませんけれども、おおむね今おっしゃられました金額の二分の一程度にはなっているだろうというふうに私ども考えております。ただ、積算は先ほど言いましたような考え方でやりました。
 それから一方、六十年に第二子を支給対象に加えるというときに、第二子の支給金額の設定として第三子の二分の一という金額で二千五百円という金額を設定しまして、そういう形で第三子の二分の一という金額を設定いたしましたものですから、今回の手直しをするに当たりましては第三子を一万円、第二子につきましてはその倍率で五千円という金額を設定いたしました。新しく対象になる第一子を幾らにするかという問題はございますが、第二子と同額にするというような考え方で五千円、五千円、一万円というような金額を御提案申し上げている次第でございます。
#219
○沓脱タケ子君 第一子と第二子と養育費が半分で済むというようなことは考えられないですね。たまたまそういうふうに事務上そうなさったということでしか理解できないですね。だって、第三子の半分で第二子や第一子が養育できるなんというようなことは具体的にはないですから、ちょっと実情に合わないと思います。
 そこで、この手当は今度はいつ上げますか。何しろ昭和五十年に第三子五千円にして十六年も七年も据え置きにしてきたわけですから、この次はいつごろ上げるのかということがはっきりしませんと、これはまた十五年も六年も据え置かれるのと違うかということで国民の方は不安になりますよ。どうですか。
#220
○政府委員(土井豊君) 児童手当の支給金額の今後の問題でございますけれども、給付のあり方につきましては財源問題とも現実には密接に関連をする問題でございますので、現段階におきまして具体的に今度はいつ上げるという時期を明らかにすることは困難であるというふうに考えております。今後ともいろんな諸情勢を踏まえながら検討してまいりたいと思います。
#221
○沓脱タケ子君 またほっておいたら十五年もということにならぬようにしてもらいたいんですが、そういうことにしないためには、各委員からも御指摘があったように、物価スライド制の導入をせめておやりになれば、そういう十五年も十七年も放置したという非難をされる、そしりを免れることができるんですが、それはどうなんですか。
#222
○政府委員(土井豊君) 物価スライドの問題でございますけれども、年金などのように社会保険システムの中で運用している場合にはそのような考え方を基本に置かれておりますけれども、制度の違いということで、物価スライドがいいのかどうかという点については議論する余地があるんであろうと思っております。
 ただ、先ほど来申し上げておりますとおり、今後の経済情勢の推移に応じまして、制度全般に関する検討の中でただいま御指摘の点も検討課題の一つとして取り上げてまいりたいというふうに考えております。
#223
○沓脱タケ子君 次に、所得制限の問題について伺います。
 これも各委員から既に御指摘がございましたから簡潔にしたいと思うんですが、今回の改正では、前回の改正のときに入れられた制度の見直し規定と、所得制限について老齢福祉年金と横並びで行うという規定が削除されましたね。
 そこで、ちょっと基本的な点をお聞きしておきたいんですが、所得制限のかんぬきを外すという
ことになるんですが、それを外してもいわゆる支給率というのは従来の支給率を維持するという考え方なのかどうか、その辺を先に聞いておきたい。
#224
○政府委員(土井豊君) 御指摘がありましたような支給率維持という考え方に基づいて、今後における所得制限の水準を決めてまいりたいというふうに考えております。
#225
○沓脱タケ子君 維持するということなんだけれども、例えば所得制限の金額をどうするんですかね。私ちょっと不安だなと思っておりますのは、平成二年の非被用者の所得制限は六人世帯で四百三十三万九千円ですね。だから、ことしはどうするのか。お聞きしたら、去年もことしも同じ率でいくんだということなんですが、そうですか。支給率を下げないという立場をお述べになっておられるんですが、そういう意味ですか。
#226
○政府委員(土井豊君) 平成三年度におきましては、制度の見直しが行われる最初の年でありますので、今後の所得制限がどうなるかという見きわめがつかないという時期でもありますので、据え置きということで予算上セットをいたしております。今後実態を把握しまして、先ほど来言っているような水準の所得制限を設定してまいりたいというふうに考えております。
#227
○沓脱タケ子君 その点は各委員からも既に御指摘があったように、非常に不安が残ると思うんですね。特に子供の数が減っていますよね。該当者が三百八十五万人ですね。それがちょうどこの制度の完成時は二百七十万ぐらいになるでしょう。いつも財政の都合都合とおっしゃるけれども、支給の人数を減らそうかと思ったら、所得制限かげんしたらどないでも減らせられるんですね、パイに合わせることができる。そういうことにしたいというのは非常に国民に対する不安を広げるやり方だと思うんです。
 この点は、新制度だから去年と同様にいたしましたとおっしゃるけれども、例えば水準から見たら去年だって春闘でいわゆるベースアップというのは五・九四%上がっているんですよ。その分がことしの制度のところに乗っていなかったら同水準というふうに考えられない。その部分だけは切り捨てられるということになるわけですからね。その辺は細かいような話だけれども、実際にはそういう影響が出てきますので、とにかく所得制限を下げていって支給率を下げるというやり方はやらないという点ははっきりしておいてほしいですね。
#228
○政府委員(土井豊君) 所得制限の設定水準でございますけれども、私どもは支給率を維持していくという考え方を基本に新しい金額を設定したいということを申し上げておりますので、今御懸念になりましたようなことにはならないというふうに考えております。
#229
○沓脱タケ子君 支給率はいずれにしても維持していくという点はきちんとやるんだということですね。それじゃ、それはそう伺っておきます。
 時間がありませんので、私は各委員からも鋭く指摘をされておりますように、諸外国の例に見られるように、義務教育終了前まではせめて支給する制度にするということ、当面の措置として現行の義務教育就学前までは、せっかく対象を広げるんだからせめてそういうことにするべきだと思うんです。手当金額でも十五年も十七年もほっといたと言われぬで済むように物価スライド制の導入というのはぜひやらなきゃいけないんじゃないかと思いますし、今お伺いしましたような所得制限によって支給対象が左右されるというようなやり方じゃなくて、きちんと一定の支給率というのは維持するべきだと思うんです。
 各委員からも既に指摘されておりますように、私も思いますが、児童が「社会の子」として本当に位置づけられるならば、所得制限なんてなものは本来なくて当たり前なんですね。今制度があるからたまたまそのことで申し上げておりますが、本来なくて当たり前のようなものを、できるだけなくしていって支給率を維持するという立場をぜひおとりいただきたい。そのことをお願いしておきたいと思いますが、一言。
#230
○政府委員(土井豊君) 所得制限を本来ないような形でというお話でございますが、私ども責任者として申し上げますと、所得制限というのはやはり必要であるというふうに考えておりますので、所得制限のあり方については先ほど来申し上げておりますけれども、所得制限自体については必要であるという認識の違いがございます。
#231
○沓脱タケ子君 それじゃ、残った時間をもう少しいただきまして、児童手当法に関する福祉施設事業についてお伺いをしたいと思います。
 この中で、放課後児童の対策事業、いわゆる学童保育対策というのですか、厚生省は児童クラブとおっしゃるんですか、こういう事業がございますが、これについて質問をしたいと思うんです。
 学童保育というのは、これは要するに保育所の学童版みたいなものだと思いますが、厚生省からいただいた児童対策の概要を拝見してもほぼそういうことですね。それでいいですか、理解は。よろしゅうございますか、一言言うてもらいましょうか。
#232
○政府委員(土井豊君) 新年度から放課後児童対策というような立て方で低学年児童に対する放課後のお世話をしよう、これは両親が共働きというようなことで家庭にいないというような状態もふえておりますので、そういう施策に力を入れたいという考えで新年度予算も計上した次第でございます。
#233
○沓脱タケ子君 学童保育の制度化の運動の歴史というのはもう二十年以上になるんですね。「ランドセルゆれて」という、これは大阪の学童保育二十年というこんな本ができているんですね。全国学童保育協議会という全国組織もありまして、そこではこういう月刊誌「学童ほいく」というんですが、約四万部発行されているんですね。
 実は非常に強い御要望がありまして、そういう要望を背景にして私が学童保育の制度化を厚生省にお願いをしたのは、考えてみますと昭和四十九年ですよ。今から十七年前の当委員会でも予算委員会でもお願いをしたんですが、当時の厚生大臣は齋藤邦吉氏でした。都市児童健全育成事業としてスタートしたのがその二年後なんですね。ですから昭和五十一年、一九七六年。
 それで大臣、御出身の長野県にも学童クラブというのは百七クラブあります。学童クラブが児童のどんな健全育成化に役立っているかということは、詳しく言うと時間がないんですが、ごく一部を紹介をいたしますが、例えば随分子供たちは放課後を含めて行事をやっているんですね。
 年間の節目となる行事では、キャンプからクラブ祭り、クリスマス会、お別れ会。日常活動の中では、キックベース大会、竹馬大会、こま大会、ぽかんすい大会。市内の学童全体で取り組む行事では、子供祭りだとかたこ揚げ大会。その他お誕生祝いとか母の日、父の日、七夕、ひな祭り等をやっているんです。
 これは御紹介の時間がありませんけれども、子供たちの感想、喜び、それから親たちの啓発というのは非常にはっきりしてきているんですね。というのは、子供たちが年齢の上下の子供たちと接触をする、そして指導員が子供たちのためにいろいろと苦労をし、親との連携をとるというふうなことで、具体的に読み上げたら非常によくわかっていただけるんですが、そういう点では児童の健全育成に大変役立っていると思うんです。
 ところが、この学童保育ですが、指導員が本当に安い給料で父母と協力して、何よりも子供のために、子供の成長のためにと運営をずっと続けたこの二十年なんですね。私は大臣、こういうことが全国でやられているわけですけれども、こういう学童クラブの事業についてひとつ御理解をいただき、少なくとも厚生省は実態をつかまれる必要があるのじゃないか。正確な施策を進めていく上でも実態をつかまないではせっかくの施策がもったいないなと率直に思いますが、実態をつかんでもらいたいと思いますが、そういうことのお考えありますか。
#234
○国務大臣(下条進一郎君) 子供は先ほど来お話がありますように、非常に少なくなっておる。し
たがって、家の中で兄弟で遊ぶということもだんだんなくなっているということからいいまして、学童保育の重要性、これはもう委員の御指摘のとおりでございます。
 実態につきましては、一応私の方にも全国の状況をとりました資料もございますけれども、今お話しのように、今後ともその発達を図るように助長を進めてまいりたいと思っておりまして、予算では全体では十億一千八百万円という金額を三年度に入れておりまして、前年度に比べまして約二倍の金額にふやしたところでございますので、今後もこの面については大いに力を注いでまいりたい、このように考えております。
#235
○沓脱タケ子君 実態調査を一遍してくれますね。これ後で結構ですが、時間の都合があるから。
 今大臣がおっしゃったように、学童クラブ事業に本年度から非常勤の指導員の一名分の人件費が補助をされるということになったということで、これは関係者も父母も大変ありがたく喜んでおられます。ところが、概要を拝見して思ったんですが、一カ所当たりの事業費が二百六万円なんです。これではちょっと運営できないなと思うんです。私は大阪の実例などを若干調べてみましたけれども、一カ所当たり安くやっているところでも二百七、八十万、ちょっと高くついているところでは三百四十万あるいは七百三十一万というふうな、もう細かく申し上げませんけれども、そういう点で二百万ではちょっと足りないんじゃないかなという点が一つなんです。とりわけ公的施設を使えないで民間の家を借りてやっているというのは、大都市特に大阪市なんか非常に多いんですが、家賃だけで十五万もするというふうな状況で、運営費が二百万円ではこれはもう大変なことなんで、一カ所二百万というのをもっと実態に事業費というのは近づけてもらいたいなということが一つです。
 それからもう一つは、補助対象なんですが、二千九百六十六クラブということになっているようですけれども、実際とはちょっとかけ離れているんじゃないか。今全国で、私ども全国学童保育連絡協議会の調査を聞きますと、七千カ所を上回る学童クラブになっております。そういうことで、これらに対してはほとんど自治体がいろんな形で補助をして何とか運営をしているということになっておりますので、ひとつ大臣、御理解を賜りまして、一カ所ずつの運営費二百万をひとつ上げてほしいな、もう一つは補助対象を二千九百カ所じゃなしに、実態を御調査いただいて、七千カ所全部に行き渡るようにふやしていただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。
#236
○政府委員(土井豊君) ただいまの御指摘の内容はそのとおりでございます。
 私ども従来はボランティアの方々の御協力をいただいてということで人件費補助をしておりませんでしたが、今回は非常勤の指導員一名分という人件費も補助対象に加えようという形で、従来の約七十七万円から二百六万円というふうに事業費の規模も大きく引き上げたつもりでございます。また、補助対象でございますけれども、従来は一クラブ三十人という規模のもの以上のものを補助対象にする、今回は二十人以上と、これも基準を緩和したところでございます。
 御指摘がありましたように、大変大切な事業であるというふうに考えておりますので、よく市町村からいろんな実情を私どもも聞きまして、今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。
#237
○委員長(福間知之君) 沓脱君、時間が迫っていますので、短く願います。
#238
○沓脱タケ子君 戦傷病者援護法をちょっと一言と思っていたんですが、時間になりましたので、きょうは終わります。
#239
○乾晴美君 私は、援護法の方から先に質問させていただきます。
 中国孤児の帰国後、就職なさっておりましたけれども、何らかの理由でやめられた方々がいらっしゃるわけなんですが、就労しない理由というのが「病気のため」というのが三五・七%、「日本語が十分にできないから」とおっしゃる方が三一・四%というようなことです。
 就職を全然しなかったという人は非常に少ないようですけれども、今まで帰国後就職しなかった方々の理由の中にも、「日本語が十分にできない」という方が五四・九%、そして「病気のため」という方が一九・三%、「できる仕事がない」という方が八・二%だということですけれども、そのどちらも、就職していたけれども離職した人も就職してない人も、日本語が話せないということが非常に大きな原因になっているというように考えるわけです。
 それで、ちょっとお尋ねするわけなんですが、日本語教室というのは全国でどれぐらいあるかということを聞いてみたいと思います。それには授業料が要るのか、民間でやっているのか、いわゆる公のものなのかということも聞かせていただきたいと思います。
#240
○政府委員(岸本正裕君) 先生のお尋ねでございますけれども、日本語教室が全国でどのくらいあるかということについて、私ども今把握をいたしておりません。
#241
○乾晴美君 帰国された方々が日本語を習得するときに、語学教材といいましょうか、テープレコーダーとかカセットだとか学習書というようなものを配付してあげるとかというようなことはしているんでしょうか。
#242
○政府委員(岸本正裕君) 先生御承知と思いますが、孤児が肉親捜しで訪日調査をいたしました際には、テープつきの日本語教材とラジオカセットを贈呈しているわけでございます。そして中国に帰ってから、中国在住中から日本語の学習をしてほしいという気持ちで贈っているわけでございます。
#243
○乾晴美君 日本語教室が全国でどれぐらいあるかわからないとおっしゃるわけなんですが、日本語のそういう学習のためのいわゆる学習する側の方と、それからまた指導する側の方の国の対応はどうなっていますでしょうか。
#244
○政府委員(岸本正裕君) 日本語教室というのは外国人がたくさん日本にも参っておりますし、いろいろの方が日本語を学んでいると思いますので、私ども把握しておりませんけれども、中国からの帰国孤児並びにその世帯が日本に定住をする、その場合に今先生おっしゃるとおり自立のための基礎的な要件として日本語の習得というのは非常に大事なことであると思っています。
 今申し上げましたように、訪日調査をした際にテープとカセットをお贈りしているわけでございますが、孤児が帰国した場合には、まず全国にあります定着促進センターに滞在するわけでございますが、ここで四カ月間集中的に日本語の習得のための研修を行っているわけでございます。さらに四カ月たって、修了後におきましてはそれぞれの定着地に行きまして、そこで自立研修センター等への通所によりまして八カ月間の日本語研修を行うということにいたしているわけでございます。
 このように帰国後一年間を通じまして日本語指導、日本語教育を行うことによりまして帰国孤児等の早期日本語習得を図っております。これによりまして約半数の方々が帰国後一年で買い物をしたり交通機関、郵便局、銀行等々におきまして日本語での会話で自分一人で用を済ませることができるようになっているわけでございます。
#245
○乾晴美君 それじゃ指導している側の方の対応はどうなっていますでしょうか、指導者。
#246
○政府委員(岸本正裕君) 定着促進センターでは日本語を教える専門家がおりまして、そこで先生として、そういういろいろなグループに分けまして、年齢別とか能力別に分けまして四カ月の集中的な勉強をしているわけでございます。また、地域に入りましてからは、自立研修センターで通所によりまして自立指導員等が中心になって日本語の研修を行っているわけでございます。
 この日本語の教育の仕方というものは、中国で長い間暮らして生活をしてきて日本に来たというような、生活習慣とか文化、そういうものの違い
を正しく理解をした人が教えるということが必要だと思っております。私どもはそういう意味でこの研修センター等でのいわゆる日本語の講師、こういう方々のそういう面での資質を向上するということから専門家にいろんなマニュアルの作成を頼んだりいたしまして、それをもとにして研修会等をやっているところでございます。
#247
○乾晴美君 よくわかりました。
 それでは、次の問題に移らせていただきますが、政府が昨年七月にサハリンの残留邦人の現地調査をなさったということで、その際四カ所で面接をされたと先ほどおっしゃっていましたけれども、そこの人たちは一時帰国をほとんどの方が希望されたということなんですが、その方々の一時帰国の状況はどういうふうになっていますでしょうか。
#248
○政府委員(岸本正裕君) 昨年七月に樺太残留邦人の調査におきまして、百七人の方々と面接調査を実施いたしたわけでございます。このうち一時帰国を希望した方は百名でございました。これらの方のうち平成二年度までに一時帰国をした方は、これらの方に絞りますと三十四名ということでございます。
 本年五月三日に集団一時帰国をする予定がございまして、これは八十七名でございますけれども、そのうち先ほどの面接調査をして希望した方々は三十二名入っているということになりまして、それを合わせますと六十六名一時帰国をされるということになります。
#249
○乾晴美君 一日も早く希望された方が全員こちらへ来れるように御配慮を願いたいと思います。
 今後、政府は再度サハリンでの現地調査をなさいます御予定がありますでしょうか。
#250
○政府委員(岸本正裕君) 昨年七月に現地調査を行いましたときに、サハリン州当局及び訪問した四カ所の市当局に対しまして、現地調査の実施期間中に調査会場においでいただけなかった邦人の方々に対しまして、申し出があった場合にはサハリン州当局及び訪問した各市の当局に調査票を託してまいりました。それに記入をしていただいた上で厚生省まで送付されるように依頼をしたところでございます。本年三月までに既に十七名分の調査票が私の方に届いております。
 また、調査会場に来場された邦人の方々に対しましても伝言で、他のきょう来れなかった方々にもこの旨を伝えてほしいというような依頼をしておりますので、今後さらに現地調査を実施する必要は今のところないと思っております。
#251
○乾晴美君 はい、よくわかりました。
 ちょっと時間の関係で、私次に児童手当法の方に移らせていただきたいと思います。
 午前中から皆さん、各委員がおっしゃいましたけれども、私も児童手当というのが第一子から支給されるというのは非常に評価したいなと思うわけなんですけれども、三歳未満に支給範囲が狭められたというのは納得できぬなというふうに思います。子供の養育に本当にお金がかかるのは三歳未満でなくて学校へ行き出してからも随分かかるのではないかということで、子供を持つ家庭にとって何が本当に必要なのかということを考えての施策であるならば、親のニーズからも合ってないのではないかなというように思います。児童養育家庭の生活の安定を図り、児童の健全育成、資質の向上に資するという制度の本来の目的からいえば、西洋諸国並みに義務教育が終了するまで児童手当を支給すべきだと、それがだめならせめて現行の小学校の就学前までにしなきゃいけないというふうに私も思っています。
 今までは厚生省の方ばかりにお伺いをしているみたいなので、私は今度大蔵省の立場からどうなのかということをお聞きしてみたいと思うんですね。
 児童手当のあり方は財源とも関係あるということは私もわかりますけれども、これまでの制度の推移を見てみますと、現行の五千円というのは昭和五十年以降据え置かれておったということで給付の総額も一千五百億円程度とほとんど変化していないというわけで、特に国庫負担の状況を見ますと、先ほど同僚議員が言いましたように、かなり減少してきているではないか。この国庫負担の推移がどうであったかということと、国庫負担が減少しているその反面に事業主の方の負担が増大している、こういったことについて大蔵省はどのような御見解を持っておられるか、お聞きしてみたいと思います。
#252
○説明員(渡辺裕泰君) 児童手当に対する国庫負担の額でございますが、通常公務員に係る部分を除いて御説明をしておりますので、そのベースの実績でまず計数を申し上げたいと思います。
 国庫負担の額は制度創設時の四十六年度の二十億円からスタートをいたしておりまして、経過措置等の関係から四十七年度に百八十二億円、四十八年度三百十五億円、四十九年度四百四十五億円と増加を続けまして、五十五年度にはピークの七百四十七億円になっておりますが、その後は減少に転じまして、直近の実績でございます平成元年度には二百九十九億円となっております。
 五十六年度以降国庫負担が減少した理由は何かというお尋ねでございますが、大まかに申し上げますと次のようなことかと思っております。
 第一に、オイルショックの発生後、御承知のとおり社会経済情勢が急激に変化いたします中で、国の財政も赤字公債に大幅に依存せざるを得ないという状況になったわけでございます。その中で行政改革の必要性というのが叫ばれてきたわけでございます。このような中で、臨時行政調査会から児童手当については公費負担に係る支給を低所得世帯に限定する等、制度の抜本的見直しを行うべしと、そういうような答申が出まして、これに沿って所得制限を強化いたします一方で、この所得制限によりまして受給できない方々に対しまして、特例給付を実施するというような一連の制度改正が行われたわけでございます。これらの制度改正が国庫負担減少の理由の一つというふうに考えております。
 第二は、出生数の減少、子供さんの減少ということかと思っております。
 第三は、自営業者の方とそれからサラリーマンの方の比率が変わったことだというふうに考えております。すなわち、国庫負担が相対的に高い自営業者の方が減少いたします一方で、国庫負担が相対的には低いサラリーマンの方が増加してきたことというのが三つ目の原因かと思っております。
 以上、大変大まかでございますが、減少の理由を申し上げました。
#253
○乾晴美君 税制のことまで言っていたら大変時間がかかると思いますけれども、私はもともとこのサラリーマンと農家の方々との税の取り方というか、二本立てになっているというところにも疑問を抱いているわけなんですが、次に進ませていただきたいと思います。
 これも大蔵省にお聞きしたいと思います。今後急速に高齢化が進む中で、次代の我が国の社会を担う児童を健全に育成していくということは極めて重要な問題であるということで、児童の養育費を社会的に分担し、児童養育家庭に対して経済的な支援を行うという児童手当の役割というのは今後ますます重要になってくると思います。今後さらに児童手当の充実に向けての努力というものを私は行っていってほしいと思うわけなんですが、財政当局としては児童手当の充実についてはどのようにお考えでしょうか。
#254
○説明員(渡辺裕泰君) 今後児童手当についてはどう対応していくのかというお尋ねでございますが、あるいは厚生省からお答えした方がよろしいのかと思いますが、財政当局としての考え方を申し上げたいと思います。
 私どもといたしましては、今後の財政状況全体の推移を見ながら、その中で社会保障予算全体をどうしていくか、特に先生おっしゃいました今後高齢化社会に向かっていくわけでございますが、その中で国民負担率がある程度上昇せざるを得ないという状況にございます。上昇せざるを得ないわけでございますが、どうしたら社会の活力を損なわない程度にとどめ得るかということが社会保障予算全体を考える上での基本かと思っておりま
す。
 その中で、児童手当制度等の児童福祉施策につきましては、今回の児童手当制度の制度改正の効果を見た上で、他の社会保障施策との関連でどういう優先度をつけるかというような見地から適切に対応してまいりたいと思っております。
 いずれにいたしましても、今後とも厚生省とよく御相談をいたしながらやってまいりたいと考えております。
#255
○乾晴美君 ありがとうございました。
 それでは、今度厚生省の方にお伺いするわけなんですが、午前中から問題になっておりました支給期間のあり方とか、それから支給額の問題、それから所得制限のことなんですけれども、徳島県に麻植郡鴨島町というところがあるんですが、そこに私の友達が住んでおりまして、お子さんが三人いらっしゃいます。どんなぐあいかこの間帰りましたときにお聞きしましたら、そこの一番下のお子さんが六カ月なんです。その方がエンゼルという保育所に通っているんですが、一カ月で四万六千円要るというわけで、ここで零歳から二歳までの間に給食とかおやつ代が入るとまたこれにプラス一万円要るようになってくる。現在は六カ月ですからその一万円は要らないんですが四万六千円。下から二番目の子は三歳なんですけれども、この子は四万一千円、それにおやつ代と給食費がまた一万円要るので合計五万一千円要っている。一番上のお子さんがめぐみ幼稚園というところへ行っておりまして、これがまた三万四千円要るということです。これ全部足しますと十三万一千円要る、こういうことなんですね。やがてその下の子がもう少し大きくなってくると十四万一千円払わなければならないということなんで大変だと思うんですね。
 育児休業法案の方も所得保障はやらないというようなことやってますし、この児童手当の方も非常に低いところで抑えられているというようなことで、期間もそれから支給額についても再検討を行っていただきたい。制度本来の趣旨が生かされるような形で制度を見直していただけないかなというようなことで、基本的な考え方というのを大臣から伺いたいと思います。
#256
○国務大臣(下条進一郎君) 基本的な考え方は先ほど来申し上げておりますように、今児童が出生率の低下に伴いまして非常に少なくなっておる。しかし、社会を構成していくのはお年寄りも大事でございますし、また若い方も大事であるし、後へ続く赤ちゃんも大事である。そういうことでございますので、この出生率の低下ということも社会構成の中から考えれば、我々としては非常に大きな問題としてこれに対処していかなきゃならない。そういう中で、生まれてこられる赤ちゃんが健やかに生まれ健やかに育つという環境をつくり上げていくというのが全体的に考えて一番の基本になっておるわけでございます。
 その条件を整える一つといたしまして今御提案申し上げておりますのが児童手当の改正でございます。これだけで+分であるということは申しません。しかし児童手当法の目的に書いてありますように、児童手当が健全な赤ちゃんの育成、資質の向上等に寄与することを念願しながらこのような制度を導入しているわけでございまして、いろいろな各般の情勢からどこに重点を置いてこの制度を見直すかということを考えました場合に、御両親が若くして、あるいはまた所得ももともと少ないにかかわらず、今核家族でございますから、奥様が赤ちゃんを産んだことによって職を離れるというような場合も出てまいりますので、そういう点などを考えますと生計の中では一番影響を受けやすい、また影響の度合いが高い、そういうことで三歳未満の御家庭に重点的にこの制度を拡充していこうということで改正をいたした次第でございます。
 趣旨はそういうことでございますので、どうぞよろしく御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#257
○乾晴美君 健やかに生まれ育って、健全な子供を育成していくために児童手当も大事だということなんですが、私また視点変えまして、健やかに生まれ育っていく、そのためには保育サービスというそちらの方の充実も大事ではないかというように思うわけです。
 今回の児童手当制度の改正に伴って、福祉施設の事業として新しい保育サービスを実施されているというようにしていますけれども、その内容と予算額はどうなっているんでしょうか。
#258
○政府委員(土井豊君) 新しい保育サービスは二つございまして、一つは夜十時ぐらいまで地域保育所をオープンする。これは一定の人数ということで、八時以降六人ぐらい子供が集まればそれを認めていこうということにいたしております。
 その予算額でございますけれども、ことしの年度後半ということで考えておりますが、四億五百万円という予算額を考えております。なお一カ所当たりの金額につきましては、保育所一カ所当たり、これは平年度ベースでございますが、五百三十九万四千円の手当てをするというふうに考えております。
 もう一つは、企業委託型保育サービスというものでございまして、これは深夜とか休日における企業の中につくる保育施設を社会福祉法人が運営を受託するということを新しくやろうということにいたしておりまして、この場合に社会福祉法人が受託のために相当の準備経費がかかりますけれども、それに着目した助成を国としてやろうというような二つの内容の新しい保育サービスを計上しております。
 なお、後者の方の予算額でございますけれども、一億五千万円、これは八十二カ所分ということでございまして、ちょっと内訳でございますが、一社会福祉法人当て百数十万円程度の補助額というふうに予定をいたしております。
#259
○乾晴美君 児童手当の福祉施設事業というのは事業主の拠出金を財源にして実施されているというように思うわけなんですが、今回の新しい保育サービスを児童手当の福祉施設で実施するということが適当としたその理由をお聞かせいただきたいと思います。
#260
○政府委員(土井豊君) お話のとおり、児童手当の拠出金財源を用いまして今の新しい保育サービスの予算を計上しております。
 これは特別な就労形態でありますとか、特別な労働時間に対応するような特別のサービスという考え方で、私ども拠出金を出していただいております事業主団体ともよく協議をして、それは非常にいいことだから協力しようというお考えで御返事をちょうだいしたという経緯がございます。
 ただ、お話のとおり保育サービスというのは非常に大きな広がりを持っておりまして、これは一般会計におきましても大変力を入れている行政の一つでございまして、例えば一般会計で措置費という形で保育所に金を出しておりますけれども、これは平成二年度が二千百十一億に対しまして、平成三年度予算では二千二百九十四億という予算を計上しております。
 また、いろんな保育需要の多様化に対応する特別保育事業でございますが、これは措置費外の形でやっておりますが、四十五億に対しまして四十九億というふうに、そちらの面でも大変力を注いできているところでございますので、全体として精いっぱい頑張っているという状況を御理解賜りたいと思います。
#261
○乾晴美君 私はもっともっと公費をふやしていくべきである、いわゆる社会の子であり、社会が育てていかなきゃいけないということになれば一般会計の方ももっとふやしていくべきであるというように思います。
 先ほどの御説明の中で、現在でも保育料が高いという声があるんですけれども、それを十時ごろまでの長時間サービスをやるということなんですが、この保護者の保育料は非常に高くなるんではないか、負担が高くなり過ぎるんではないかという心配があるわけなんですけれども、保護者の負担はどれぐらいにするというようなお考えなんでしょうか。
#262
○政府委員(土井豊君) 先ほど申しましたように、
年間五百四十万円程度の経費を見込んでおりますが、このうちおおむね四分の三は国が補助する、今の児童手当勘定の中の福祉施設費として補助をする。したがって、四分の一につきまして保護者からお金をちょうだいするというふうに考えております。それは今の見通しでございますけれども、月一万一千円程度保護者からその分としてちょうだいする。したがって、その場合に昼間の保育料につきましては、先ほど御指摘がございましたが、現在の保育料の徴収基準に基づいて出していただいて、それに夜の分として上乗せをしていただくという形でありますので、これはおのづから限界があろうということで、今言った金額を予定しているところでございます。
#263
○乾晴美君 十時まで保育するということもうれしいことなんですけれども、乳幼児保育ということももう少し考えてほしいと思うわけです。
 例えば、昨年と本年と私二回にわたりまして産休明け保育について質問いたしましたんですけれども、そのいずれも産休明け早々に乳児を保育所で受け入れることについては、乳児の身体的な問題あるいは心理的、情緒的な問題から問題があるというように中央児童福祉審議会ですか、その答申を引用されてお答えいただいたと思うんですが、この審議会答申が出たのはいつなんでしょうか。
#264
○政府委員(土井豊君) 昭和四十三年十二月でございます。
#265
○乾晴美君 そしたら、この答申が出たときと現在ではもう既に二十年以上の歳月がたっておるということになっておるんで、当時幼稚園に預けられておった子供というのはもう既に成人して大人になっているということになるわけなんですが、この二十年の間に女性の就業率を初めとして、女性と子供をめぐる環境というのは非常に大きく変わってきたというように思います。それにもかかわらず、この答申でいつもお答えいただくというのはちょっと時代錯誤とまで言ったら言い過ぎるかもわからないんですが、そういうふうに思うわけです。もっと産休明けの保育の実施について思い切って検討していただくというか、実施していただくという方向にはなりませんでしょうか。
#266
○政府委員(土井豊君) 乳児保育自体につきましては、既に御案内のとおり大変力を入れておりまして、平成三年度予算では五千六百六十二カ所、六百六十一カ所対象箇所をふやしております。これは保母さんが六百六十一人ふえるというような、そういう内容のものでございます。
 したがって、乳児保育自体の努力は私ども一生懸命頑張っているつもりでございますが、ただ、乳児のうち何カ月の赤ちゃんをお世話するかという問題はかなりこれは専門的な部門もございまして、私どもいろいろ専門家にお話を聞いているんですけれども、三カ月未満の赤ちゃんの身体的な、あるいは情緒的な発達の事情というのは、確かに二十年ぐらい前の話ですけれども、その当時と今日と変わっているのかという点については必ずしもそうであるというような考え方ではなくて、いろいろ問題もあるんではないかという意見を現在でも聞いております。そういう意味で、古くて新しいようなことでございますけれども、そこの点についてはなかなか現実問題として対応が難しいんではないだろうか、そんな感じを持っております。
 ただ、一部保母さんに特別の研修を行って、産休明けの赤ちゃんを預かるというものも地域によっては若干出てまいっている、そんな状況でございます。
#267
○乾晴美君 三カ月以降はいいんだけれども、それより以前は非常に難しいということなんですが、結局現実問題として労働の実態からそぐわないために、多くの母親は一般的に劣悪なといいましょうか、無認可の保育所だとかベビーホテルに子供を預けていくということが起こっているわけなんです。ですから、そこら辺の対応も大切ではないかと思います。産休明けの保育とか乳児の延長保育というのは認めていってほしいというように私は思います。
 今回、育児休業法案が提出されて、そして勤務時間の短縮等の措置が盛り込まれておるわけなんですけれども、現実は八週間の産休、それから一時間の育児休暇というのがあるわけなんですが、それさえもなかなかとれないでいるという勤労者もいるわけなんでして、育児休業法の法制化を理由に、これがまた乳幼児保育の延長とか長時間保育の進みがとまるというようなことになったら大変だなというふうに思うわけなんでが、そこら辺の御見解を厚生大臣からお伺いしてみたいと思います。
#268
○国務大臣(下条進一郎君) そういう御心配のないように努力してまいりたいと思うわけでありますが、女性の就労形態の変化に伴う保育需要の多様化に対応いたしまして、厚生省といたしましては従来より乳児保育、延長保育等の特別保育対策の推進に努めてきたところであります。
 平成三年度におきましては、乳児保育等の特別保育対策の一層の充実を図るとともに、児童手当制度の中で一般の認可保育所において夜十時ごろまでの保育時間の延長を行う長時間保育サービスなどを新たに実施することといたしております。御承知のとおりでございます。
 今後、育児休業が法制化されても、社会経済情勢の変化等を勘案しつつ、保育事情に対応したきめの細かな保育サービスの充実に努めてまいりたいと考えております。
#269
○乾晴美君 次に、病児保育の方もお願いしたいと思うわけなんですが、病児保育の現状はどの程度把握されていらっしゃいますでしょうか。
#270
○政府委員(土井豊君) 個別の事例については若干承知をしておりますけれども、全体的な状態については把握をいたしておりません。
#271
○乾晴美君 本年度から東京都の狛江市においても、市の運営費の助成によって病児保育が始まったということが報じられておりますけれども、本来的には家庭で親の介護で安静にして養生するというか療養するということが非常に望ましいということは言うまでもないわけなんですけれども、就労において介護休暇とか介護権というのか、そういうものが保障されていない現状にあるわけですから、病児保育の検討というのはぜひ必要だというように思うんですが、いかがでしょうか。
#272
○政府委員(土井豊君) 介護休暇と今御指摘がございましたが、そのような雇用面における子育てに対する配慮というものについては大変大事な事柄であると私どもは思っております。ただ、保育所サイドの問題というものにつきましては、いろいろ私ども研究しておりますけれども、なかなか難しい問題があって限界があるのではないか、今日そんな感じでいるところでございます。
#273
○乾晴美君 私も子供二人育てたわけなんですけれども、下の子が非常に決まり切った病気で、ぜんそくというような形なんで友達にうつすとかいうんじゃないんですが、朝少しだけ苦しい、そのときでも学校を休んで看病しなきゃならぬというようなことがありまして、病原がはっきりしているような場合は預かっていただきたいなと切実に思っていたわけなんです。高齢化が進んでいく中で、現在でも保健とか医療とか福祉の総合的施策の推進が叫ばれているわけですから、児童にとってもこの問題は切実であるというふうに思います。病児保育はまさに保健、医療、福祉の総合化という観点から検討していただきたいというようにお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#274
○勝木健司君 今回の改正案につきましては、既にポイントと思われる点については相当質疑が行われておるわけであります。若干重複する点があるかもしれませんけれども、我が党としての立場を踏まえた上で具体的に幾つか御質問させていただきたいというふうに思います。
 まず第一点は、厚生省はいわゆる合計特殊出生率が平成元年に一・五七人ということで統計史上最低になったということを受けまして、子供が健やかに生まれそして育つ環境づくりをすることを当面の最重点課題とされております。また、この
調査結果から、理想とする子供数は三人なのに二人以内の家庭が多いのは、第一点は子育てにお金がかかる、第二点は育児の肉体的、精神的負担、第三点は家が狭いというのが主な要因と分析をされておりまして、この中の経済的負担を少しでも改善しようというのが目的であるというふうに聞いておるわけでありますが、現行の小学校入学前まで支給しているものを三歳未満に引き下げていく、そして支給範囲を狭めようとすることは、子供の養育に本当にお金がかかるのが果たして三歳未満であるのかどうか、そしてまた子供を持つ家庭にとって何が本当の援助になるのかということを十分考えた上での回答にはなっていないんじゃないかというふうに私は思えるのであります。
 理想子供数三人という親の四割近くが三人目をあきらめている背景には、子供を持つ効用と費用の変化があるというふうに思うわけであります。経済学では子供を持つ主な三つの効用ということで、第一点は子供を楽しむものとする消費財効用、労働力としての生産財効用、そして親の老後保障の効用が挙げられておるわけであります。現在の日本では、出産期にある有配偶女子の中で九%が老後保障の効用を挙げておりますし、また一%が生産財効用を認めているにすぎません。大半が消費財効用のみを子供の中に見出しているのであります。
 そして、これらの女性の約七割近くが子供をもう欲しくないというふうに言っておりまして、その主な理由として圧倒的に子供の教育費を挙げておるわけであります。大都市圏では住宅難、住宅ローンの負担など第二の理由を挙げているものの、国全体としては教育費の負担というものが極めて大きな出生抑制の要因を形成しているということであるわけでありますが、厚生大臣はこの結果につきましてどのようなお考えをお持ちか、まずお伺いをしたいというふうに思います。
#275
○国務大臣(下条進一郎君) 子育てがこれからの日本の社会を健全に発展させるための非常に大事な問題であることは、委員の御指摘もありますが、私も全く同感でございます。その障害になっている問題について今委員から三点の御指摘がございました。私は、それらの要素も確かに大きな障害の要因と思いますけれども、やはり世界観と申しますか人生観と申しますか、そういったものの違いも以前と今日とは若干違っておるんではないか、そういう面もあわせて考えていく必要があろう、こう思います。
 そこで、今日ではかつてのように自分の子供を労働力として使用したり、老後の世話をしてもらうということを期待することは割合に少なくなっている一方で、子供数の減少や生活水準の向上によりまして子供一人当たりにかける教育費を初めとした費用や精神的な負担も大きくなっていることは委員御指摘のとおりでございます。
 一方、子供は将来の社会の担い手であり、社会保障システムを健全に運営していくためにも子供を健やかに産み育てることが重要であります。このため、子育てに伴う負担を家庭だけに負わせるのではなくして、社会全体の問題といたしまして積極的に子育て家庭を支援するための環境づくりに努めていく必要があるのであります。こうした環境づくりを進めることによりまして、親たちにとっても子育てそのものが楽しく感じられ、子育てに精神的充実を見出せるという望ましいあり方になっていくものと考えておるわけでございます。
#276
○勝木健司君 また別の、昨年一月に厚生省が行いました児童家庭施策の充実に関する有識者調査結果によりますと、児童手当の支給期間についてでありますが、現行どおりでよいとするものが三七・六%、そして中学卒業まで支給すべきであるとするものが三五・九%、支給額を手厚くするために支給期間を例えば三歳未満に重点化してもよいというのはわずか一六・〇%にすぎなかったわけであります。
 そこで、厚生省はこの有識者調査結果をどのように受けとめられたのか。そして、この有識者調査結果にもかかわらず、なぜあえて三歳未満の引き下げに踏み切られたのか、見解をお伺いしたいというふうに思います。
#277
○政府委員(土井豊君) ただいま御指摘のとおり、有識者調査の結果につきましては、先生お話がありましたような数字が出ております。私ども、今回の有識者調査全体として、これは中央児童福祉審議会における議論の場に十分御報告申し上げまして、いろいろ御議論の参考にはしていただいた次第でございます。そうした中で、先ほど来御説明申し上げておりますけれども、今回の改正内容といたしましては、第一子に支給対象を拡大したいということを重要な課題として位置づけまして、全体として財源問題もにらみながらどのような形の答えを出せばいいかというような形で昨年十二月、意見具申をちょうだいいたしまして、御提案申し上げているような内容の案を固めた次第でございますので、全体としての御理解を賜りたいと存じます。
#278
○勝木健司君 厚生省はいろいろな答弁の中で、支給期間を経済的な支援の必要性が高い三歳未満の時期に重点化をするということで支給年齢を引き下げたことを説明いたしておられますけれども、三歳未満が最も経済的支援の必要な時期というとらえ方が本当なのか、誤っておるんじゃないか、真の意味での親のニーズに合致していないというふうに私は思うわけであります。
 支給期間を三歳未満にしたことは何のための改正だったのか。そしてまた、制度の目的からすれば制度本来の趣旨に反するものと断ぜざるを得ないなというふうに思うわけであります。実際に子供の養育費の負担が重くなる時期に児童手当の支給が打ち切られることになってしまうわけであります。こうした生活実態とのずれを厚生省は一体どのように認識されておるのかお伺いしたいというふうに思います。
#279
○政府委員(土井豊君) 確かに、子供にかかる経費という面では小さいときが一番たくさんかかるというものではないと思います。ただ、先ほど来申し上げていますとおり、子育てのために親が働けなくなるというような収入減という一面もございます。それからまた、もう一つは賃金体系における年功序列型というような要素もございます。そういう意味でプラスマイナス両面あろうかと思いますけれども、そういう意味で総合的に三歳未満が一番大変であろうというような考え方をとった次第でございます。
#280
○勝木健司君 児童手当は制度創設当初は第三子以降の児童を対象に中学を卒業するまで支給されておったわけでありまして、昭和六十年の改正で第二子以降の児童を対象に小学校就学前までとするというように改められ、さらに今回は支給対象を第一子に拡大する一方で、支給期間を三歳未満にしようとしておるわけであります。私は、これでは余りにも何か計画性のない、場当たり的ではないかというふうに思います。明確な将来ビジョンを示した上でその実現に向けて制度の充実を図るべきではないかというふうに思うわけでありますが、厚生大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
#281
○国務大臣(下条進一郎君) 今回の児童手当の改正は、将来を展望して一応我々なりのビジョンを持ちながら検討した次第でございます。
 児童がどの段階で負担になるか、これはもう金額自体をとらえれば年が大きくなるにしたがって費用がかかることは、小さいときよりは多くなることは御承知のとおりでございます。しかし、先ほど来御説明いたしておりますように、親御さんとその子供さんの関係では一番小さい赤ちゃんのとき、あるいはまだ一歳未満あるいは二歳、三歳というあたりは親御さんの所得は共働きをされる場合でもかなり低い水準でございます。しかも、赤ちゃんを産まれた後は核家族でないということもありますので、先ほど来お話がありましたように、乳児保育の制限などもありますので非常に御負担が高い、しかも場合によっては片方の方が一時仕事をやめざるを得ないという場合も起こってまいりますと、その場合の若い方の所得の中の打撃は非常に深刻なものであるということから見ま
すと、これはやはり三歳未満のところが一番大きいのではないか、このように私たちは考えております。
 今委員御指摘のように六歳ではどうだとか、あるいはそれ以上といろいろな御議論もございますけれども、その場合には共働きの条件がより整ってまいりますし、得られる所得もまたそれ相応に上がってまいりますなどを勘案いたしまして、私たちといたしましては重点的に、しかも第一子というものを今後重視いたしましてその改正を図り、少しでも健やかに生まれ育つ条件を整えるように努力してまいりたい、このように考えた次第でございます。
#282
○勝木健司君 この児童手当法は一九七一年から実施をしておられるわけでありますが、その内容は諸外国に比べて非常に立ちおくれておるように思います。そこで、この手当の額は西欧諸国などと比べて妥当な額なのかどうかをお伺いしたい。
 あわせて、我が国は理想子供数三人という親の四割近くは三人目をあきらめておるわけでありますが、出生率を回復しつつありますシンガポールでは大型児童手当として第三子以上の出生に対して二万シンガポール・ドル、日本円にして百五十七万円が与えられるケースもあるわけであります。第三子以上に対してもっと増額してみるべきだというふうに考えるわけでありますが、見解をお伺いいたしたいというふうに思います。
#283
○政府委員(土井豊君) ヨーロッパの支給金額でございますけれども、御案内のとおり第一子につきましては、日本との比較で申しますと、比較的似ているのが西ドイツでございまして、この時点での換算で四千二百六十円という金額になっております。なお、フランスは第一子は支給対象になっていません。
 それから第二子以降でございますけれども、大体ヨーロッパの国では逓増方式という国が多うございまして、一万円から二万円、スウェーデンなんかの場合にはさらにもっと大きい金額というのが支給されているところでございます。
 ただ、いろいろ御説明申し上げて恐縮でございますが、税制との関連等で日本の所得控除というのをどういうふうに換算するかといったような観点での見方もあろうかと存じております。
 次に、シンガポールでございますけれども、お話のとおりシンガポールは一九八六年出生率が非常に低下しまして、一・四二という非常に低い水準になりました。それが私どもの手元では一九八八年というのが一番新しい数字で一・九八ということに回復をいたしております。それでシンガポールの場合は中国系、マレー系、インド系という三つの民族があるようでございまして、それぞれ違いがあるようでございますが、全体としては今のような形になっております。
 なお、シンガポールでは、そのためにお話がありましたような所得税の控除というのが二万シンガポール・ドル、約百五十万円というふうに伺っておりますが、これは多分所得税の所得控除の額ではないかと思います。ちょっと私どももそこのところ詳細わかっておりません。あるいは小学校登録の優先ということで小学校へ入るときの優先的な登録という仕組みとか分娩費の補助、住宅割り当ての優先、これは子供を三人以上産んだ場合に優先割り当てをする、それから結婚した女性公務員が特別休暇をとれるとか、あるいは何といいましょうか、大学卒の男女が知り合う機会を促進するための何か集団的な交際の機会の場を提供するとか、さまざまなことをシンガポール政府としてはやっているようでございまして、これらのいろんなもろもろのものが影響して先ほど言ったような出生率の回復ということにつながったのではないかというふうに伺っておるところでございます。
#284
○勝木健司君 次に、特例給付、特例措置についてお伺いしたいというふうに思います。
 昭和五十六年の臨調答申を受けて五十七年から所得制限の強化及びサラリーマンを対象とした特例給付の支給が行われておるわけでありますが、昭和六十年の改正の際に平成三年五月までという期限つきで延長してきておるわけであります。今回の改正案では、特に期限を明示しておりませんで、「当分の間」継続することといたしておるわけでありますが、「当分の間」とした理由をまずお聞かせいただきたい。あわせて、この「当分の間」とはどのくらいの期間を考えておられるのか、お伺いしたいというふうに思います。
#285
○政府委員(土井豊君) まず、六十年改正の時点で、平成三年六月までということは昭和六十五年度ということで、そのような規定の仕方になっております。これは国の財政再建期間の完了するめどということで昭和六十五年度までということでございました。ところが、今日おかげさまで、財政状況は非常に厳しゅうございますけれども、赤字公債依存体質というものからは一応脱却しているという状況に立ち至っております。
 それから一方、特例給付の基本的な必要性というものは一定の所得制限で適用した場合に、自営業者の子供が支給を受ける割合とサラリーマンの子供が支給を受ける割合が大きく違うというものを何とか解決しようということが特例給付という考え方の基本であろうと私ども認識しております。そういう意味で今回は一定の財政再建期間完了といったようなよりどころがなくなったというような事情も考えながら「当分の間」というような規定の仕方をした次第でございます。
 なお、「当分の間」というのは、私どもとしては考え方としては今申しました実態的な問題が残ればそういった特例給付という仕掛けがあるいは必要なのではないか、いつまでにこれをやめるというような形のものではないんではないかというふうに考えている次第でございます。
#286
○勝木健司君 特例給付はもう全額事業主が負担しておるということで、特例給付を実施する結果は事業主負担というものがますますふえる一方でありまして、国庫負担が大幅に減少しているというのが実態であろうかというふうに思います。現在ほとんどの企業が家族手当を支給しておる。その上に児童手当のための二重の拠出を今現在強いられておるわけでありまして、しかもこの児童手当の実績を見てみましても一貫して事業主負担ばかりがふえ続けておるということで、国庫負担は減少の一途をたどっておるわけであります。
 諸外国におきましても、この財源につきましては全額国庫負担で賄われるのが通例じゃないかというふうに思っておるわけでありますが、児童の健全育成という児童手当の趣旨から考えても当然全額国庫負担で行うべきじゃないか。早急に特例給付のあり方を見直し、本来の費用負担に戻すべきであるというふうに考えるわけでありますけれども、厚生大臣の見解をお伺いしたいというふうに思います。
#287
○国務大臣(下条進一郎君) これは先ほど来事業主負担のことも若干触れられておりますけれども、特例給付は被用者が生計の資を事業主から支払われる賃金に専ら依存しているなど、自営業者と異なる特有な事情に着目して支給されておるものでありまして、被用者と非被用者とに共通する所得制限の限度額を定めることにより生ずる支給率の不均衡を是正する役割を果たしている、このように解釈いたしております。国の財政事情等、今日の社会経済情勢を踏まえれば、引き続き特例給付は今のところ継続するのが適当ではないか、このように考えております。
#288
○勝木健司君 児童手当制度は施行後も見直しと称して支給年齢を次々に縮小するなど後退をしているのではないかというふうに思うわけであります。今回の三歳未満への支給年齢の引き下げもその路線を引き継いだものであるように思うわけでありまして、衆議院で見直し規定が入りましたけれども、また見直しと称して後退するのではないかというふうに私どもは危惧せざるを得ません。改正時期も含めて支給期間を就学時まで回復していただくように明確にしていただきたいと思うのでありますが、厚生大臣の所見をお伺いしたいというふうに思います。
 また、先日の育児休業法案の審議におきましても、私は社会保障給付の財源のあり方を取り上げ
たわけでございます。児童手当制度が今日までなかなか定着してこなかった背景の一つには、財源負担の問題があるというふうに考えられます。三年後の児童手当制度の見直しの際には、今申し上げました趣旨を踏まえて制度の見直しを図っていただきたいというふうに思うわけでありますが、あわせて御見解をお伺いいたしたいというふうに思います。
#289
○国務大臣(下条進一郎君) 今回の改正は、御承知のように調整期間を置いております。そして平年度化するまでの間、各年のなだらかな、衝撃を緩和する措置を講じておりまして、それに要る年限が約三カ年かかる、こういうことでございます。したがいまして、その間における今回の改正がどのように受けとめられ、またどのような形で浸透していくか、またあるいはそれに伴うところのいろいろな問題点がどのように出てくるかということを、我々は今の三年を超えたところのなるべく早い時期に見直すということをこの間の改正で決めていただいたわけでございます、衆議院の段階で。その中で私たちは、一番大きなことはやはり給付がどうあるべきか、あるいは拠出がそれに伴ってどうあるべきか、さらにまた今御指摘の支給年齢の問題等を総合的にその時点で再検討いたしましてこの制度の充実を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
#290
○勝木健司君 次に、もう一つの法案について若干質問させていただきたいというふうに思います。
 このたびソ連の元首として初めてゴルバチョフ大統領が我が国を訪問されたわけでありまして、今後の日ソ関係に新たな段階がもたらされたものと私たちも理解をいたしておりますが、こうした状況のもとで、これまで日ソ両国間のわだかまりとなっておりましたシベリア抑留中の死亡者問題についてもその解決に向け日ソ両国で十八日深夜に合意がなされたところであります。その協定調印式において抑留中死亡者名簿が引き渡されるなど一定の前進が見られたことは、関係遺族のお気持ちを考えるとまことに喜ばしいことであります。
 そこで、このシベリア抑留中死亡者名簿については御遺族からも強い関心が寄せられていることと思いますが、こうした御遺族の心情を踏まえ名簿を扱っていく必要があるというふうに思います。名簿の翻訳作業、そして名簿の照合などの作業が今後必要になってくるというふうに思いますが、厚生省としてどう取り組んでいこうとしておられるのか、いつごろをめどに遺族に伝えることができるのかを含めてお考えをお聞きしたいというふうに思います。
#291
○政府委員(岸本正裕君) 今回ソ連側から提出をされましたシベリア抑留中の死亡者名簿につきましては、私ども早速翻訳作業に取りかかったわけでございますが、コピーの状態が混乱をしているというような中身もございますので、今確たる時期を区切って申し上げるということができかねるわけでございますけれども、おおよそのめどといたしましては、五月の中旬ぐらいまでに翻訳作業を終了いたしたい。そして引き続きまして、当局保管の資料との照合を行いまして、名簿記載者の本人の特定ができましたものにつきましては、これも恐らく本年の暮れぐらいになるかと思いますけれども、都道府県別の名簿を作成いたしたいと思っております。そして御遺族に対しましては、都道府県別の名簿をもとにしまして、都道府県を通じまして名簿の記載内容をお知らせするということにいたしたいと考えております。
#292
○勝木健司君 この名簿はこれまでの戦後処理なり援護行政に対してどのような影響といいますか、効力を有するのかお伺いをいたしたいというふうに思います。
 例えばこの名簿が効力を有することになりますと、今まで行った補償を訂正したり、新たに補償をするというふうな問題が生ずるのでありますか、その他どのような問題が考えられるのかお伺いをいたしたいというふうに思います。
#293
○政府委員(岸本正裕君) シベリアの抑留中に死亡した方々につきましては、恩給法、援護法等によりまして従来から遺族年金等を支給しているところでございます。これらの制度が私ども十分に周知をされているだろう、十分と言えなくても相当に周知をされていると思っておりますので、今回ソ連側から提出を受けましたこの名簿によりまして新たに相当数の対象者の適用漏れ、こういうものが出てくるというふうには考えていないところでございます。
 ただ、仮に御指摘のような適用漏れというようなものが確認をされましたときには、その遺族からの申請を待ちまして、他の死亡者の場合と同様に援護法の適用をしていきたいと考えております。
#294
○勝木健司君 大臣にお伺いをしたいというふうに思いますが、今回のゴルバチョフ大統領の訪日によりもたらされましたこのような新しい状況を踏まえまして、遺骨の収集とかあるいは墓参に今後どのように取り組む方針でありますか。また、遺族の方も大変高齢化しているというふうに思われますので、迅速な対応が求められてくるというふうに思いますが、厚生大臣の決意のほどもあわせましてお伺いしたいというふうに思います。
#295
○国務大臣(下条進一郎君) シベリア抑留中の死亡者名簿の引き渡しが委員御指摘のように最近行われました。また遺骨収集、墓参等のシベリア抑留中死亡者問題については、これまで日ソ両国間において大きなわだかまりとなっておりまして、人道上の見地からも早期に解決すべきとの立場から、従来よりソ連政府に強く働きかけてきたところでありますが、このたび日ソ両国政府間でこれらの問題の処理に関する基本的な枠組みについての協定が先日締結されまして、また抑留中死亡者に関する名簿及び埋葬地資料の提供があったところであります。ただ、この資料は今政府委員から御説明いたしましたように、非常に雑なコピーでございまして、また中にドイツ人の名前も入っていたりするというふうな、整理がまだ十分でございませんので、翻訳をし整理をするということで全力を挙げて今整えるようにやっておるわけでございます。
 これによりまして、これまで必ずしも順調に処理されていなかったシベリア抑留中死亡者問題の解決に向け前進があったと受けとめております。これを機会に、関係御遺族の心情を十分に踏まえまして、本問題の解決に向けさらに真剣に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
#296
○勝木健司君 余り時間もありませんけれども、次に、中国残留孤児対策についても触れてみたいというふうに思います。
 私自身も中国の大連の出身でありますので、中国残留孤児の問題は他人ごととは思えないわけでありまして、こういう立場で例年質問をさせていただいておるわけでありますが、帰国孤児の定着自立の支援策とか、あるいは経済的な意味での支援はもちろんのことでありますけれども、いわばソフトの面、心の問題について厚生省としてどのような取り組みを現在されておるのか、また今後されていくのかお伺いしたいというふうに思います。
#297
○政府委員(岸本正裕君) 今、帰国孤児世帯の定着自立を促進するためには、定着促進センター及び自立研修センターによりまして一年間の自立支援体制をとっているわけでございます。ここでは、日本語教育と生活指導、就労指導、これが三本柱であるというふうに考えておるわけでございまして、そのための指導内容の充実につきましては、先生今御指摘になりましたようないろいろな生活習慣、文化の違いから来るギャップを埋める心の問題を視野に入れた対応策を考えていかなければいけないというふうに考えております。
 それで、具体的に幾つか申し上げますと、定着促進センター及び自立研修センターの職員を対象といたしまして、平成二年度から、精神保健の専門家の研究成果を踏まえまして適切な指導方法の研修会を実施しているところでございます。
 またそのほかに、このような生活環境が大きく
変わった、こういう方々の特性もよく理解した上で効果的な指導や接遇を行うということが必要でございます。そのために孤児やその家族に対する指導は、日本語の指導、就職の指導、それからソーシャルケースワーク等々につきまして指導のマニュアルを作成しているところでございます。
 また、平成三年度からは全国四カ所で、特に自立困難なケースというものがあるわけでございますけれども、こういう自立困難なケースの方々につきましては、都道府県とか福祉事務所等のほかに、必要に応じて心理学でございますとか精神医学等の専門家も支えて、一体となって個別の問題の解決を図るということにしております。そして、その結果を全国の指導を担当される関係者の方々にお示しをして自立の促進を図っていこう、こういうような事業も考えているところでございます。
#298
○勝木健司君 時間が来ましたので、終わりたいというふうに思います。
 昭和二十七年の援護法が制定以来、その給付水準が逐次改善されてきたことは非常に喜ばしいことでありますが、その一方で、戦後四十六年を経た今日でも、いまだに障害年金などの請求があるというふうに聞いております。援護法の対象者は高齢化をいたしておりますので、潜在的な受給者が速やかに請求ができますように一層の制度の周知徹底を図るべきであるというふうに思いますが、大臣の見解をお伺いして、質問を終わりたいというふうに思います。
#299
○国務大臣(下条進一郎君) 四十六年経過して、今なおいろいろな問題があるということは、今議員の御指摘のとおりでございまして、援護年金の受給資格者が確実に年金を請求できるように制度についての周知を図ることが重要であることは十分認識いたしております。そのため、厚生省といたしましても「民生委員児童委員のひろば」に広報記事を掲載するなど広報に努めるとともに、都道府県に対しましても会議の場等、さまざまな機会をとらえまして制度の周知を図るよう要請してきているところでございます。
 御指摘のように、対象者の高齢化が進行している状況にかんがみ、対象者が速やかに請求を行うことができるよう、今後とも制度の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。
#300
○勝木健司君 ありがとうございました。
 終わります。
#301
○西川潔君 私は、まず援護法の方からお伺いしたいと思います。
 昨年六月十二日の社会労働委員会の戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案審議の場で、私自身お伺いしたことでございますが、このときは、各党の先生方からも御質問がございました中国残留婦人の方々に対して、残留の孤児の皆さん同様温かい手を差し伸べていただきたいということをお願いしたわけですが、特に残留婦人が一時帰国される場合の滞在費を国費で負担していただきたい、こういうふうにお願いをいたしました。平成三年度の中国残留孤児等対策予算の中に新規施策として中国残留婦人等の一時帰国者滞在費という項目がございました。予算が計上されておりましたが、その内容について詳しくお聞かせいただきたいと思います。
#302
○政府委員(岸本正裕君) 従来、中国残留婦人等の一時帰国は肉親が受け入れる、そして日本での滞在中のお世話を行うということで行ってきたところでございます。戦後四十五年という時の経過によりまして、親でありますとか兄弟というような近親者がいなくなってきているとか、また在日親族の理解が得られないというようなことがございまして、在日親族以外の第三者が滞在中のお世話をする場合がふえてまいっております。
 このような状況にかんがみまして、これらの第三者が一時帰国旅費の申請手続及び日本滞在期間中のお世話をするという場合には、今年度から一時帰国する中国残留婦人等に対しまして、それぞれ二週間程度の日本国内の滞在費といたしまして十三万円を定額支給するべく予算措置をしたところでございます。これによりまして、中国残留婦人等の一時帰国が円滑に行われることを期待いたしております。
#303
○西川潔君 ありがとうございました。我々がお願いいたしましたことを早速予算に計上していただきまして、本当に感謝をいたします。
 中国残留婦人の方々は、終戦当時十三歳以上の方々でございますので、現在はもうすぐ六十歳の高齢になるわけですが、このような方々に対して心温かい施策を今後とも続けていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、大臣一言お願いいたします。
#304
○国務大臣(下条進一郎君) 残留婦人の御心情を思えば本当に心痛む思いでございまして、この各種援護施策の充実は当然図っていかなければならない、このように考えております。
 実は昨日、残留婦人の帰国を前にして、百名近い方でしたか、おそろいで私のところへおいでいただきましてお会いいたしました。いろいろとお話も承りましたけれども、余りに感動と申しますか、感きわまってほとんどの方が泣かれるばかりでございました。私も、もう何をお慰め申し上げていいか言葉を探すことに窮しまして、本当に御同情申し上げた次第でございます。
 そんなことで、先ほどお話が出ておりましたように、従来の旅費に加えて滞在費でもということで実行するように相なったわけでございます。これらの方々は終戦に伴う混乱の中で異国の地にとどまり本当に並み並みならない御苦労をされた方々ばかりでございますので、その心情を思い、帰国援護を初めとする各種援護施策について今後とも充実を図ってまいりたいと考えております。
#305
○西川潔君 ありがとうございました。我々はお願いをさせていただきましてそういうふうな予算をつけていただきまして、そして今大臣のお話もお伺いいたしまして、何かこの委員会に温かいものが流れているような気がいたします。今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは次に、児童手当の方に移らせていただきます。
 既に諸先生方からいろんな角度から御質問が出ましたが、今回支給対象を第一子に拡大したことは大変喜ばしいことです。私はもう最初これを見せていただいたときに、第一子から本当は、まだ一年生議員ではございますが、そういうふうに思いました。と申しますのは、新婚当時はどちらも収入が少なくて大変苦しいわけですから、第一子からお助けいただくと本当にうれしいのではないかなというふうに思いました。今後、三歳未満ということについてはまた問題が残ると思うんですが、ひとつよろしくお願いいたします。
 最初に、児童手当制度につきまして小さな子供を育てておられるお母さんの御意見をちょっと参考に質問させていただきたいと思います。
 一つお便りをいただいておるんですが、読まさせていただきます。
  先日第二子の児童手当の申請に市役所までいってきました。一月に生まれてすぐに申請すれば良かったのですが、すっかり忘れていて気がつくともう三月の末、慌てて市に電話をすると、三月中に申請すれば四月分から支給されるので早めに手続きをして下さいとのこと、でも受給のためには、家の近くの銀行に口座を開設しなければならなかったり、主人に会社で厚生年金加入証明を取ってきてもらったりと、一週間ほどあたふたし、申請できたのは四月に入ってから。
  結局、申請した翌月分からしか給付されないということで五月からの支給になってしまいました。数か月遅れでも気がついただけでも私はまだ良いほうで、私の周りではそのことをまったく知らず、何年も児童手当をもらい損ねた人がたくさんいます。
  母子手帳の交付の際や出生届を提出したときにでも、職員の方が一言いってくれればこんなことにはならずにすんだのに。税金の取り立てとなるとうるさい役所も、こと還付給付となると知って知らんぷりのこの態度、こんなところにも出生率低下の一因があるのではないでしょ
うか。
というお便りをいただいておるんですが、これは一主婦の御意見でございます。
 また、夫婦共働きの方の御意見では、児童手当制度のことは知っていたが、二人の収入を合わせると所得制限にひっかかると思い、手続をしなかったが、後で父母どちらか一方の所得と聞き、大変残念だったという声もございました。
 こちらに、役所に置いてありますそのパンフレットをいろいろ見せていただいたんですけれども、十分な説明をお願いしたいんです。今後児童手当を発展させていくためには、制度を国民に身近なものとして定着をさせ、制度内容について国民によく知っていただくことが私自身大事だと思います。ある自治体の広報活動を伺いますと、パンフレットが役所に常設してあり、町内の回覧板で年に一回、市政便りで年に一回のお知らせとなっているそうでございます。しかし、これだけでは制度の周知徹底を図るのは難しいのではないかと思います。
 出生届の手続と同じ窓口で同時に児童手当の申請手続が可能なところもあると聞いております。何とか手当の漏れが起こらないよう国、自治体などで積極的な広報活動を行うなど、周知徹底を図っていただくことをお願いしたいのですが、大臣いかがでしょうか。
#306
○国務大臣(下条進一郎君) 国が税金を取り立てることに熱心で、そして支給に横を向くなどということは私はないと思います。ただ、この制度、すなわち児童手当制度の内容、またその受給手続、この周知徹底について、いささかお尋ねのような面があるかもしれませんので、そういう点につきましては、これからも周知徹底を図るように、そしてまたどういう形で周知徹底をすることが具体的に受けられる資格のある方により円滑に届くかどうか、そういったことも検討しながら、これから努力をしてまいりたいと思っております。
#307
○西川潔君 よろしくお願いいたします。
 次に、出産間もないお母さんにとりまして、小さな子供を抱えて役所への往復は大変でございます。例えば、御主人が手続に行っていただくチャンスがなければ、うっかりしている間に支給期間が過ぎてしまいます。
 そこで、年金制度の第三号被保険者の場合ですと、手続をすれば忘れていた二年間はさかのぼって適用対象になるわけですが、今回の児童手当制度の場合でも、生年月日、所得は明確であるわけですから、例えば養育状況につきましても、出生証明書や税の扶養控除で明確にできると思います。申請の翌月からの支給ではなくさかのぼりまして、誕生した翌月からの支給を何とか認めてもらいたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
#308
○政府委員(土井豊君) 年金の場合は、確かに一定期間遡及するという仕組みになっております。ところが、児童手当等につきましては、申請主義というのを原則としてとっておりまして、お話がありましたとおり、申請の翌月からという支給期間に相なっております。
 これは児童手当について申しますと、住所要件、要するに、市町村も一定の割合で負担をするということから、あるいは子供に対する養育状況、それから所得の状況、そういった実際的な幾つかの条件を加味して支給を受けるというような形になっております。したがって、遡及主義という、遡及して適用するということは実務的には非常に難しいんではないかと私ども考えております。
 ただ今回、今までは生まれる子供の四割強を占める第一子の子供が支給対象から外れていたというようなそんな仕組みでございましたが、今回はその年に生まれる子供は全部支給対象になるという関係に相なるものですから、したがいまして、できますれば市町村の窓口で出生届をするというときに一緒に児童手当の申請の書類をお渡しするとかそういう工夫が実務的にも十分可能になると思っております。したがいまして、よく市町村の関係の方々と打ち合わせをしまして、そのような実務処理が可能なように最大限の努力をしてまいりたいと思います。
#309
○西川潔君 ぜひよろしくお願いいたします。
 最近では核家族化、都市化が進む中で、昔であれば大家族の中で、何かあればおばあちゃんやおじいちゃんによく聞いていたんですが、今はお母さんと赤ちゃんがマンションの一室で孤立化している場合が多いというお話も聞いております。どうやって赤ちゃんに接すればよいのか、ちょっとしたことですぐ育児に自信をなくしてしまうお母さんが多いということをよくお伺いするわけですけれども、その中で、同じ状況にある若い夫婦の体験談をお伺いしましたが、あるとき保健センター、そして保健所へ連絡をすればいろんなアドバイスが受けられるということをお伺いしたということでございます。そして早速連絡をすると、保健婦さんがお家まで来てくださったわけです。そしていろんなアドバイスをしてくださった。大変ありがたかったというお話で、その御夫婦はその後育児について何かあるごとに必ず保健センターで相談に乗ってもらっているそうでございます。
 この場合、保健所、保健センターをうまくこの方は利用なさっているわけですが、まだまだ保健所といえば本当に予防注射を打ちに行くところというようなイメージがあるわけですけれども、その保健所の機能を御存じない方が大変多いわけです。本当にこのごろの最近の保健所はいろんなことをやってくださっておられますが、そこで、保健所や保健センターを核にして、地域のお年寄りがおばあちゃん役として若いお母さんたちの相談に乗ってあげる、育児のためのおばあちゃんヘルパーのようなものを私は全国的にシステム化をしていただきたい。そして育児のネットワークをつくっていただきたい、こういうふうに提案したいんですが、いかがでしょう。
#310
○政府委員(土井豊君) 御指摘のとおり、最近若いお母さん方あるいはお父さん方を含めまして育児に大変大きな悩みを持っているという方がふえていると伺っております。
 それで、私ども特に生後一カ月ぐらいの間が、育児不安のピークがその期間に見られるというふうに専門家の方々からも伺っておりまして、私どもの中でもこれからの母子医療に関する検討会というところで専門的にどういう取り組みをしたらいいかということを勉強している最中でございます。
 しかしそれと同時に、今御指摘がありましたように、現実的な対応として保健所でありますとか母子健康センターでありますとか、あるいはもっと身近な保育所でありますとか、そういうところで育児相談を気楽にやっていただくというようなことも非常に大事である。そういう際にお年寄り、これはもう子育ての経験のある方でございますので、お年寄りとの連携のもとでそういう若い親たちの悩みを解消するというような形での工夫も大いに今後取り入れていきたいということで、今御指摘の点につきましては十分努力してまいりたいと存じます。
#311
○西川潔君 よろしくお願いいたします。
 平成元年の児童手当制度基本問題研究会報告書を私読ませていただきますと、「児童対策と高齢者対策の一体的実施」ということで、「例えば保育所に高齢者のデイ・サービスセンターを併設するなど児童に関する施設と高齢者に関する施設の連携を図っていくことも今後の検討課題の一つであろう。」とあります。
 施設の複合化の現状と将来についてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
#312
○政府委員(土井豊君) 今お話がありましたとおり、子供の施設であります保育所と、それから老人の施設であります特養とかいろんな老人のデイサービスセンターとか一緒にできないかという御指摘かと思います。
 現在の状況というのは私ども部分的にしか承知をしておりませんけれども、例えば東京都の江戸川区では保育所と養護老人ホームとデイケアセンターと特養、この四つを一緒にやっている。それから世田谷区ではおともだち保育園と特別養護老
人ホームと高齢者在宅サービスセンターというようなものを併設しているというようになっておりまして、全国的にも特に大都市地域を中心に少しずつそのような複合形態のものが進んでいるというふうに伺っております。
 将来的にこういう複合施設をどう持っていくかという点でございますけれども、土地が高くて用地取得が困難という大都市部を中心にいたしまして、私ども推進すべき施策の重要な一つであるというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、二つの施設の、二つ以上の施設になる場合もありますけれども、メリット、デメリット、いろいろあろうかと存じます。運営上の諸問題、処遇上の問題等々技術的な問題もありますけれども、そういうものを克服しながら複合施設の前進に向けて努力してまいりたいというふうに考えております。
#313
○西川潔君 今後、特別養護老人ホームやデイサービスセンターを整備していく中で、お年寄りが孫と一緒に通えるようなデイサービスセンターや老人ホームと保育園などの複合化を積極的に進めていただきたいと思います。
 また、保育園を地域に開放してお年寄りに来ていただいて、お年寄りと子供さんの世代間の交流を保育園を核にしてもって進めていただくようなことをしていただきたいと思います。例えば東京都の高齢者のための実践セミナーでは、昨年私立保育園連盟と共同で講習会を開催して三十名が受講されました。私立保育園連盟のあっせんで近くの保育所などへパートとして手伝いに行っているということをお伺いいたしました。子供たちの世話をすることでお年寄りの皆さん方が生きがいを見つけたり、子供たちの方も本当のおじいちゃんやおばあちゃんのように懐いたり、また慕う。私はこのような形で世代間の交流を深めていくことは大変すばらしいことではないかなと思いますので、伸ばしていただきたいと思います。
 次に、子供が育つ環境、特に遊び場についてお伺いしたいと思います。
 厚生省の「子どもが健やかに生まれ育つための環境づくりへの取り組み」では、遊び場、遊び仲間の減少ということが言われております。一説によりますと、子供の遊び場はこの二十年の間に十分の一から二十分の一に減少していると言われておりますが、この点、厚生省はどのように考えておられるのでしょうか。
#314
○政府委員(土井豊君) 児童が心身ともに健やかに成長するためには、今お話がありましたような遊び場、遊び環境の確保ということが非常に重要であると考えております。最近の都市化の進展の中で、結果としてそういうものがどんどん少なくなってくる、あるいは自然がどんどん減ってくるというような状況の中で、私どもは遊べる空間の確保ということを目標に、児童遊園地でありますとか、児童館でありますとか、あるいは青山にこどもの城がございますけれども、それの都道府県版、地方こどもの城というようなものにいろいろ力を入れてきておりまして、特にその中でもこども自然王国ということで、平成二年度から二カ所予算がついて、今年度も二カ所予算がついておりますけれども、そういうような自然を利用したような子供のための施設というものを今後とも計画的に進めてまいりたいというふうに思っております。
 児童館、児童遊園等については、地方団体の御協力を得ながら最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
#315
○西川潔君 総理府の調査によりますと、子供に対してどういう遊び場が欲しいかという質問をしているわけですが、男の子は圧倒的に野球のできるところ、サッカーのできる原っぱが欲しい、これが第一位でございますが、一方、女の子はちょっと違います。ウサギや牛や馬のいる牧場が欲しい、二一%です。水遊びのできる川が欲しい、一六%、レンゲやタンポポの咲く田や畑が一五・五%という結果が出ておるわけです。
 一方、厚生省の平成元年度全国家庭児童調査結果では、子供が週一回以上遊ぶ場所について、未就学の子供の場合は一位が自分の家、二位が友達の家、三位が公園、四位が車の余り通らない道路、五位が商店街やデパート、また今度は小学校四年生から六年生の場合は、同じく一位から五位を見ますと、自分の家、友達の家、車の余り通らない道路、公園、学校の校庭や体育館、こういうふうな順序になっております。子供の遊び場に対する思いと現実とではかなり隔たりがございますが、厚生省にお伺いしたいのは、今度は子供の遊び場の確保でございますけれども、いかがでしょうか。
#316
○政府委員(土井豊君) これは地域地域によりましていろんな事情が異なっていると思いますけれども、私どもも子供に優しい町づくりというようなキャッチフレーズで、地方団体にそのような趣旨での御尽力を常日ごろからお願いしているところでございます。
 その場合に、子供たちの希望も今いろいろございましたけれども、地域地域によってどういう子供を念頭に置いた遊び場づくりがいいのかというのはまたいろんな多様性があると思いまして一概には言えないと思いますけれども、できるだけその地域、町内会等の御意見を聞きながら、その地域にマッチしたような形で遊び場をふやしていくということが大変重要だと思っております。ただ、これは国が補助金を出してやるというような仕事ではございませんので、これは土地を持っている方々、会社の方々等の社会の御理解のもとに、地域ぐるみで御協力をいただきながら進めるというようなものかと思います。そういう点では、私どもも、関係団体等に協力要請をしながら、全体として進展するように努力してまいりたいというふうに考えております。
#317
○西川潔君 私、学童保育へ通っている小学生が遊びについて書いた作文を読ませていただいたんですが、この作文を読んで大変印象に残ったのは、まず狭いんですね。四畳半と六畳の部屋に三十五人の子供が通っているために、ある子供の一人は「お正月のたこづくりをしているときは体がひっつき合って立てません」と、また、ある子は公園について、「遊び道具が多過ぎて思い切り遊べません。大声を出すと近所の人にしかられます」と、こういう内容ですが、我々大人にしてみれば、いろんな道具が整っている方が子供が喜ぶんではないかなと思うところもあるんですけれども、もちろん子供の年齢によっても違うわけですが、子供たちが本当に望んでいる空間や遊び道具と我々大人の感覚とでは大変なギャップがあると感じました。
 厚生省でも児童遊園など数多くつくられておるわけですけれども、見た目の美しさや大人の発想、設計に加え、ぜひとも子供たちの意見も存分に取り上げていただきたい。地域での遊び場の整備拡充をお願いしたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。
#318
○政府委員(土井豊君) 児童遊園地等の遊び場を整備する場合には子供たちの夢をはぐくみ育てるような工夫をしろという御指摘だと思います。そのとおりだと思いますので、努力してまいりたいと思います。
#319
○西川潔君 長々と申しわけございませんでした。ぜひよろしくお願いをいたします。
 最近の子供たちは、朝から忙しい、疲れたという子供が本当に随分ふえているそうでございます。夜遅く駅の立ち食いそばでそばを食べているような塾通いの子供、朝から夜まで大変でございますが、夜電車の中なんかでも深い眠りに落ちながらしっかりかばんを抱いている子供をよく見かけるんですけれども、児童手当の精神、目的はその場だけのものではないと思いますし、その子らにとって生きていきやすい社会をつくる責任を私たちは負っていると思います。今後とも児童対策を総合的な観点から推進していただくようお願いいたしたいんですが、最後に厚生大臣の御決意をお伺いして、終わりにしたいと思います。
#320
○国務大臣(下条進一郎君) 子供の大事さ、これはもう私も何回かお答え申し上げております。しかも、なかなか出生率が上がらないということで、本当にこれは若い御両親と社会が一体となって健
やかに子供をつくり、そしてまた育てていくということが御家庭にとっても社会にとっても極めて大事なことである、このように認識しておりまして、そういう観点から、少しでも環境整備の一助になるというふうな観点から今回の児童手当の改正をお願いしているわけでございます。
 また、最近の女性の社会進出、出生率の低下等子供と家庭を取り巻く環境の変化を踏まえまして、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりが大切になっております。このため内閣におきましても、関係十四省庁から成る健やかに子供を生み育てる環境づくりに関する関係省庁連絡会議が去る一月二十三日に、子育て環境づくりに向けた総合的な対策を内容とする報告書を取りまとめたところでございます。
 厚生省におきましても、ただいまお話しいたしましたように、平成三年度予算では児童手当の充実、また多様な要請にこたえるためきめ細かな保育サービスの実施、子どもと家庭一一〇番事業の拡充など総合的に対策を盛り込んでおりまして、今後とも関係省庁とも連絡を図りながら総合的な観点から子育て環境づくりの推進に一層努力をしてまいりたいと考えております。
#321
○西川潔君 ありがとうございました。
 終わります。
#322
○委員長(福間知之君) 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
 これより両案の討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#323
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、児童手当法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 我が国の児童手当制度は、主要諸外国よりおくれて世界で六十三番目に制度化されました。世界の水準から比べても大きく立ちおくれており、本改正案はそれを補うものとは到底言えません。
 私の反対理由の第一は、児童手当の支給期間を三歳未満としたことであります。これでは児童手当というより、育児のための手当、出生促進手当的なものとなってしまいます。また、制度完成後の延べ支給児童数は、現在の三百八十五万人から二百七十万人と大幅に減少するのであります。支給年齢の大幅引き下げは、児童手当の性格を変質させるものと言わざるを得ません。
 第二は、所得制限を老齢福祉年金と横並びで行うという規定が削除され、今後所得制限をどう設定していくかは行政の裁量にゆだねられることとなり、受給人数を行政が自由に調節できるようになることであります。政府のねらいは、所得制限を厳しくして受給者数を少なくしたいというところにあります。
 第三は、現在児童手当を受給している全世帯が、今回の改正により全期間を通じての受取額が減額となることであります。政府は、八人以上の児童を養育している世帯以外は現行法に比べて増額となるとの説明をしていますが、これは制度完成後であって、提案されている経過措置では現在児童手当を受給している全世帯が損をするのであります。
 以上のように、本改正案は児童手当の性格を変質させ、現行に比べ受給者の大幅減少と減額を招くものであり容認することはできません。
 我が党は、衆議院で修正案を提出いたしましたように、当面の措置として、手当の支給期間を三歳未満からせめて義務教育就学前に延長すること、手当額の完全自動物価スライド制を導入すること、所得制限に係る特例を当分の間、継続することなどが必要と考えています。これこそ児童手当制度の充実を求めている国民の声にこたえる道だと確信いたします。この方向での充実を求めて、反対討論を終わります。
#324
○委員長(福間知之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより順次採決に入ります。
 まず、児童手当法の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#325
○委員長(福間知之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#326
○委員長(福間知之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、前島英三郎君から発言を求められておりますので、これを許します。前島君。
#327
○前島英三郎君 私は、ただいま可決されました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院、民社党・スポーツ・国民連合、参院クラブ、各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項につき、速やかに格段の努力を払うべきである。
 一、国民の生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。
 二、海外旧戦域において今なお残置されている遺骨については、相手国の協力を得て早期収集に一層の努力を払うとともに、慰霊巡拝等についてはさらに積極的に推進すること。
 三、中国残留日本人孤児等に関する情報収集について、引き続き中国政府の積極的な協力が得られるよう配慮するとともに、訪日調査により肉親が判明しなかった孤児に関する調査に最大限の努力をすること。
   また、中国及びサハリンの残留邦人の帰国援護については、今後とも積極的に推進すること。
 四、帰国孤児の定着先における自立促進を図るため、日本語教育、就職対策、住宅対策等の諸施策の総合的な実施に遺憾なきを期すること。
 五、ガス障害者に対する救済措置は、公平に行うとともにその改善に努めること。
  右決議する。
 以上であります。
#328
○委員長(福間知之君) ただいま前島君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#329
○委員長(福間知之君) 全会一致と認めます。よって、前島君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、下条厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下条厚生大臣。
#330
○国務大臣(下条進一郎君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重して努力いたす所存でございます。
#331
○委員長(福間知之君) なお、両案の審査報告書の作成につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#332
○委員長(福間知之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#333
○委員長(福間知之君) 次に、積雪又は寒冷の度が特に高い地域における指定業種関係労働者の年間を通じた雇用の確保等に関する法律案を議題といたします。
 発議者対馬孝且君から趣旨説明を聴取いたします。対馬孝且君。
#334
○対馬孝且君 ただいま議題となりました積雪又は寒冷の度が特に高い地域における指定業種関係労働者の年間を通じた雇用の確保等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 北海道を初めとする北国の冬は、温暖な地方に住んでいる人々の想像を超えるほど長くて厳しいものであります。このため、これらの地域におきましては、冬期に、積雪・寒冷などの厳しい気象条件に阻害されて建設業等の事業活動が著しく低下をし、その結果、地域経済活動の停滞、大量の季節的失業者の発生、出稼ぎの増加等さまざまな経済的、社会的問題が生じているところであります。
 例えば、北海道を例にとりますと、冬期における建設工事量は夏期の十分の一近くにまで落ち込みます。この冬期における建設活動の低下の影響は建設労働者の雇用状況に最もよくあらわれており、建設業における夏期と冬期の雇用者数の差は約十五万人にも及んでおります。この建設業における季節労働者を初め、北海道には約二十三万人の季節労働者が存在をしております。北海道の雇用労働者数が約百九十四万人と言われておりますから、北海道の雇用労働者のおよそ八人に一人が季節労働者ということになるわけであります。
 そして、これらの季節労働者は、その大半が通年雇用を希望しているにもかかわらず、冬期に失業を余儀なくされているのであって、その間、これらの人々は、雇用保険法の特例一時金の受給や預貯金の取り崩しなどによって、辛うじて生計を立てているというのが実情なのであります。なお、この特例一時金の支給額は、北海道の建設業の季節労働者に支払われているものに限ってみましても年度合計で四百億円余にも上っております。
 北海道等におけるこのような問題を解決するためには、通年雇用の確保、通年施工の促進が不可欠であります。この通年雇用、通年施工の問題は古くて新しい問題であり、これまで、雇用促進事業団法による通年雇用設備設置資金融資制度、雇用保険法による通年雇用奨励金制度、暫定措置としての冬期雇用安定奨励金、冬期技能講習助成給付金制度等種々の対応策が講じられてきたところではありますが、残念ながら十分な効果を上げているとは申せません。そこで、この際、季節労働者の職業及び生活の安定と地域経済の健全な発展を図るためには、新規立法により、通年雇用の確保、通年施工の促進のための諸施策を積極的かつ強力に推進していく必要があると考えられ、ここに本法律案を提出した次第であります。
 次に、本法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。
 まず第一に、この法律で対象とする地域は、通年雇用対策地域及び特別通年雇用対策地域の二つの地域としております。
 通年雇用対策地域は、積雪または寒冷の度が特に高いため、季節的にその地域内に所在する相当数の事業所の事業活動に支障が生ずる地域を、特別通年雇用対策地域は、通年雇用対策地域のうち、積雪または寒冷の度が著しく高いため、季節的にその地域内に所在する相当数の事業所の事業活動に著しい支障が生じ、かつ、雇用に関する状況が著しく悪化する地域を指定することとしております。
 第二に、これらの地域における建設業等の指定業種に係る事業所に雇用されている労働者等の年間を通じた雇用の確保等のため、労働大臣は、通年雇用対策指針を策定することとしております。
 第三に、通年雇用対策地域においては、指定業種に係る事業所に雇用されている労働者に関し、年間を通じた雇用の確保等の措置を講ずる事業主に対して必要な助成及び援助を行うほか、雇用促進事業団の行う資金の貸し付け、雇用促進事業団の行う施設の設置に関する特別の配慮、積雪または寒冷の度が特に高いために必要となる設備の設置または整備に要する費用等の助成等の施策を実施することとしております。
 第四に、特別通年雇用対策地域においては、通年雇用対策地域に係る施策のほか、季節的な離職を余議なくされる労働者の再雇用の促進等のための助成及び援助の措置を講ずるとともに、これらの労働者の年間を通じた雇用を促進するための職業訓練、職業紹介等の施策を実施することとしております。
 第五に、国、地方公共団体等は、公共事業の計画実施に当たって、指定業種に係る事業所において通年施工ができるように配慮するとともに、通年施工のために必要な事項に関する研究等を行うこととしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、特別通年雇用対策地域に関する施策については、この法律の施行の日から十年間を限り実施されるものとし、この期間の経過に際し、特別指定業種に係る事業所における事業活動の状況等を考慮して検討を加え、その結果に基づき必要な措置が講ぜられるべきものとしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げまして、提案理由といたします。
#335
○委員長(福間知之君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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