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#1
第120回国会 法務委員会 第3号
平成三年三月七日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十一日
    辞任         補欠選任
     井上 章平君     斎藤 十朗君
     真島 一男君     山本 富雄君
     高井 和伸君     山田耕三郎君
 二月二十五日
    辞任         補欠選任
     井上  裕君     田辺 哲夫君
 三月六日
    辞任         補欠選任
     山田耕三郎君     高井 和伸君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                久保田真苗君
                千葉 景子君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                高井 和伸君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省矯正局長
       事務代理     堀   雄君
       法務省保護局長  佐藤 勲平君
       法務省訟務局長  加藤 和夫君
       法務省人権擁護
       局長       篠田 省二君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   金谷 利廣君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   山田  博君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁長官官房
       審議官      横尾 敏夫君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    石附  弘君
       警察庁警備局公
       安第二課     中村 正則君
       外務大臣官房外
       務参事官     小西 正樹君
       文部省初等中等
       教育局中学校課
       長        福島 忠彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る二月二十一日、井上章平君及び真島一男君が、また二十五日、井上裕君がそれぞれ委員を辞任され、その補欠として斎藤十朗君、山本富雄君及び田辺哲夫君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(矢原秀男君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○久保田真苗君 前回、法務大臣の所信表明をいただいたわけでございます。この所信表明を伺いまして、非常に国際化の重要な時期に、法務行政に期待するところが当然多くあるべきだと思っております。私、きょうは常日ごろから法務行政に対して抱いております一つ二つ問題点を指摘しまして、特に人権行政について大臣の御注意を喚起しておきたいと思うわけです。
 この人権行政につきましては、所信表明の民事の中でこんなことを挙げておられます。人権擁護行政に努めているところだけれども、中でも、我が国社会の国際化に伴う人権問題、部落差別を初めとするもろもろの差別問題、子供をめぐるいじめ、体罰等についてというふうなことをお挙げになって、緊密な連絡を関係省庁ととりながら充実していくと、こういう所信がございます。私は、この人権行政につきまして、特に国際化の中で、ぜひ法務省に懸命に取り組んでいただかなきゃならない問題があると思うわけです。
 その一つは、人種差別の問題なんです。これは人種差別撤廃条約という国連の条約がございまして、これについてもう長い間問題にされている。これは国内の団体によっても、また国会においても取り上げられているわけです。日本におきましては、初め部落差別の問題というようなことから、非常に部落関係団体からの要求が多かったわけでございます。日本におきまして、人権に関してはいわゆる地名総鑑というようなことで、ひところ大変問題にされました。これは就職を妨害する、結婚を妨害する、そのための根拠になる地名総鑑を会社などに、こういう同和地区の一覧表などを売りまして、そしてそれを助長しているというこういう悪質な仕事でございました。これに伴っていろいろ傷害事件なども起こっておりますし、またアイヌ民族それから在日外国人についても同様の要求があるわけでございます。
 今非常に日本は国際化の波に洗われている状況でございまして、特に外交の面では日本が南と北のかけ橋になるというようなことを願ってきております。そこへもってきて最近は外国人の就労、これは外国人登録が一口百万と言われるわけですけれども、それに加えまして、いわゆる不法就労というようなものも含めまして外国人の就労なども急増しているわけです。私は、きょうは不法就労の問題に立ち入る余裕はございませんけれども、そういう中でやはりこれはお金だけではおさまらない、心の問題というのが本当に大丈夫なのだろうかということを思うわけです。
 これにつきましては、大臣もよく御存じのとおり、主要な閣僚からも人種差別的発言というものがたびたび指摘されるわけでございます。それは例えば知能指数の問題でございますとか、あるいは日本へ来た外国人女性の問題、これは色街に働くというような方たちの問題をとらえて、「悪貨は良貨を駆逐する」といったような発言がございまして、その都度外国のこれに該当するような団体を初め、外国の世論を刺激しているというようなことがございます。
 しかし、これは閣僚は重要な公職にある方々で
ございますから、当然その発言が公的に問題にされなければならないと思いますけれども、では一般の側を見たときにどうかといいますと、やはり例えば大韓航空機事件に関連して非常に弱い立場の朝鮮人女子生徒への暴行、それから外国人でここで就労している方たちへの暴行事件あるいはアパートなどを探すのに妨害が入ったというようなことも時々報道されるわけでございまして、私は非常に残念なことだと思っております。日本人には人種差別の観念がないのか、あるいは弱者、アフリカ人、アジア人、そういった少数者へのいろいろなべっ視とか反感というようなものも少ないとは言えないのではないかと思うわけです。
 そこで、大臣にその御認識を伺いまして、こういうものにどう対処されるのかという御決意を伺いたいと思います。
#5
○国務大臣(左藤恵君) すべての人間は平等であって、ひとしくその人権が尊重されなければならない、これがもうあくまで基本であろう、こう考えます。そういう意味で、外国人の人権も当然ひとしく尊重されなければならないという考えに立たなければならないと我々は考えております。
 そして、この法務省という仕事の面から見ましても、これは従来から人権尊重の立場でいろいろの啓発活動、そういったものを実施してまいりましたけれども、今後ともそういった差別の根絶とか、あるいは外国人の人権の確保というために啓発という努力を一層力を入れてやっていかなければならない、このように考えているところでございます。
#6
○久保田真苗君 それで、人種差別撤廃条約の問題なんですが、これは一九六五年に国連総会で採択されております。そして、一九六九年に二十七カ国が加盟しまして発効しているのですね。日本では、一九七〇年に市川房枝議員が当時初めに取り上げられましてからさまざまの野党がこれを国会で質疑しまして、一日も早い加盟をと願ってきたものなんです。
 現在、九一年二月現在ですけれども、世界百五十九カ国の国連加盟国のうち百二十八カ国がもう加盟しているという状況でございまして、私議事録をずっと見たことがあるのですが、採択されて以来、歴代の総理も外務大臣も、早期加盟、懸命の努力ということを言ってこられたのです。しかし、国内法の整備に手間取って既に採択以来二十六年が経過しているわけでございます。世界の主要国の中での未加盟国、これに加盟してないのはもう日本とアメリカぐらいになってしまいました。しかし、アメリカにつきましてはそれぞれの州の承認が必要だという特別の手続がございます。してみますと、政府が主導権を持って何とかこれを批准していくということは、日本にはさらに強く求められることだと思います。
 それで私が伺いたいのは、一体これはどこまで検討が進んでおられるのか。今までの国会の論議で見ますと、これについては、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、この大原則を受け入れる、人種差別をしないんだという大原則を受け入れるということにおいてはどちらの省庁も御異議がないと思うのですが、この点はいかがですか。法務省、外務省に伺います。
#7
○説明員(小西正樹君) 政府といたしましては、この条約の趣旨にかんがみ、できるだけ早期に締結すべく作業中でございまして、この条約に規定する処罰義務と表現の自由等、憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整するかというような困難な問題がございますので、この点を含めまして現在検討中でございます。
#8
○政府委員(井嶋一友君) 今御説明がございましたように、この条約の一番問題点は刑事罰則の創設を義務づけられておる点でございます。委員既に御案内のとおり、条約の四条(a)項、(b)項におきまして六項目にわたる事項、例えば人種的優越、憎悪に基づく思想の流布といったようなことでございますとか、人種差別の扇動といったようなことでございますとか、六項目にわたる犯罪の規定の創設を義務づけておるわけでございますが、憲法十九条あるいは二十一条あるいは三十一条といった我が国の基本的人権にかかわる憲法の各規定、つまり憲法秩序との関連におきましてこれらの犯罪処罰規定がストレートに置けるのかという点が大変困難な問題でございまして、それを中心にいたしまして現在まで検討を続けられてきておるわけでございます。
 目的といたしましては、今説明がございましたとおり、できるだけ早期の批准を図るべきものであるという認識においては変わらないわけでございまして、今後もさらに鋭意検討を続けてまいってどういった方法があるのかということを探求してまいりたいと考えておるわけでございます。
#9
○久保田真苗君 恐らく、私はもう結論が出ていると思うのです。両省の間のすり合わせ、詰め、そういったものについての結論は解釈の上では十分おわかりになっていることだと思うのですね。そうしますと、どちらがどれだけのことをやるかということだと思うのです。つまり、新規立法するのか国内法を改正するのか、あるいは条約を批准するときに一定の留保なり解釈宣言なりをつけるのかどうかということなんです。この点についてこういうふうにしておりましても、いつまでたっても結論が得られないということでございますと、これは永久に批准されない条約になると思うのです。
 私、今の時点でこの人種差別撤廃条約を批准するということは、積年にわたる日本の態度というものを一番わかりやすく表明することになると思いますし、また、こういった基本的な問題について条約という形でその大原則をはっきりさせ、それを法務行政なり外交なりの基礎にして広く国民にも周知していく、啓蒙していくというその根拠を今立てて、この外国人が流入している中での人権問題それから就労に関して公正な権利や労働条件が守られるのかどうかという問題について一つの大原則を立てるべき時期だと思うのです。それは外国人の権利の問題ばかりではなくて、日本にとってそれは非常にいいことだし、自分の心を締め直してこれによって進めるという大方針をひとつ私は、外務省、法務省の間で立てていただきたい、そう思うわけでございます。
 それで、外務省としては非常に困難な問題があるということなんですが、少なくとも自由主義国であるところの先進国はほとんどこの問題を乗り越えてきているのです。今法務省が言われましたような条約の四条、つまり言論の自由あるいは表現の自由、そういった問題にかかわる問題点を乗り越えてきたと思うのです。どういうふうに乗り越えてきたのか、あるいは外務省としてはぎりぎりまで詰めたときに条約に一定の留保とか解釈宣言とかの対応をしてでもこれを批准するというそういう所信がおありなのかどうか、そこを伺いたいと思います。
#10
○説明員(小西正樹君) 人種差別の取り締まりの対応は、各国ごとに事情や法体系が異なっておりますために一様ではございません。多くの主要先進国では既存の法律の一部を改正するとか、また人種差別を禁止することを目的とする法律を制定する、こういったことによって対応しております。例えば、新規に人種差別処罰立法を制定した国としては英国、フランス、イタリア、ニュージーランド等がございます。また、既存の刑法改正によった国としてはドイツ、オランダ、ノルウェー等がございます。我が国としましては、これらの例も参考にする必要はございますが、我が国固有の事情を勘案して、どのような処罰立法が必要かつ適当であるかということを判断する必要があるわけでございまして、これらの諸国と我が国とを同一に論ずることは必ずしも適当ではないと考えてございます。
 また、先生御指摘の留保に関する点でございますが、この点につきましては私ども先ほど申し上げましたとおり、この条約の第四条に定めます処罰義務という点につきまして、表現の自由等、我が国憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整するかという困難な問題を含めまして検討しております。
 一般論でございますけれども、条約の重要な部
分について締約国の義務を履行するために必要な手当てを行わないでこれを留保して締結するということは私どもとしてはぜひとも避けたい、避けるべきであるというふうに考えております。
#11
○久保田真苗君 それでは法務省は、今外務省が言われたような特殊な問題があって、そして必ずしも外国と同様にいかないと。そういたしますと、これが例えば大体どの見当のところなら法務省は処罰規定とかそういったものが可能とお考えになるのか、その辺細かいことは結構ですけれども、どの辺なのかということをおっしゃっていただけますか。
#12
○政府委員(井嶋一友君) 長い間の検討を深めてまいりました過程におきまして、各国における対応につきましても私どもは勉強しておるわけでございますが、まずその前に、委員御案内のとおり、四条には前文がございまして、前文では各国の憲法秩序と申しますか、そういったものとの整合性の中において立法すべしというようなことが書いてあるわけでございますけれども、そういったことを受けておるのだと思いますが、主要各国の立法を見ますと、解釈宣言が付されておったり、あるいは必ずしもすべての規定が満足されるような、つまり条約のすべての規定が満足されるような法整備がされていないとかいったような実態があることもよく承知をしておりまして、それぞれの国がそれぞれの憲法秩序の中で考えられることに対応しているんだということはよくわかっておるわけでございます。
 しかし、それはまた一つの行き方かもしれませんけれども、これは私の若干個人的な考えかもしれませんが、他方、条約が求めております義務というのはもっと大きな義務があるわけでございますから、それを全うできるぎりぎりまでを追求するというのも一つの考え方だと思うわけでございまして、その辺のところを考えますと、果たしてどういった形の立法があり得るのかといったことが大事な問題だと思っておるわけでございます。
 今どういう方向かということを示せとおっしゃいますけれども、その辺がなかなか示せないところが実は検討にかかっておるポイントでございまして、その辺につきまして私どもは部内でさらに検討を続け、場合によっては若干外部の方々の御意見なども承るという方法なども考えながら検討をさらに続けてまいりたいというふうに思っておるわけでございまして、具体的な方向を言えということにつきましては御勘弁いただきたいと思うわけでございます。
#13
○久保田真苗君 しかし、市川房枝議員から実に二十年なんですね。幾ら何でもこれではちょっと私どもこの国際化の時代に引っ込みがつかないのですよ。
 そういたしますと、ぎりぎり詰める、具体的なことは言えないとおっしゃるのですが、ある程度具体的に論議を展開する状態にしていただかなければこの問題は進まない。外務省の方も留保や解釈宣言は避けたいんだと。それは、日本がそういうものを避けてきたというそのこと自体は私は必ずしも悪いことではないと思うのですけれども、でも、国際条約の中にはある部分そうせざるを得ない、それでも大原則を受け入れる方がいいという状況があり得ると思うのですね。それは頭からできないんだということになりますと、もうこの条約は批准しないんだと、つまり、実は積極的と見えた外務省の方がこの条約の妨げになっているんじゃないかという疑いを私は持つわけです。
 私は、それはそういう留保、宣言をしないで済めばそれにこしたことはないのですけれども、しかし、そういうことを考えなければならない場合もあるのじゃないか、そこに両省の接点があるのであれば、今度はどうしてもできないというそのポイント、私はこれは時々続けたいと思うことなので、ぎりぎりの接点、そしてどちらがどうなるのかというそのポイントをどうしてもわかりたいと思うので、ぜひ両者のすり合わせをしっかりとお願いしたい、こう思うわけです。
 それで、大臣どうでしょう。これは本当に、ただあらゆる形態の人種的差別を撤廃するということ自体については大臣は何も御異議がおありにならないだろうと思いますけれども、だといたしますと、こういったものに日本が加盟をすればそれはやはり政治全体に対していい影響を与えるんだと私は思うのです。そういうものを誠実に守っていくというその政治の姿勢ができると思うのですね。一部のそういうすり合わせの問題についてはともかくとしまして、そこのところをもう二歩も三歩も進めていただく、そしてわかるような説明をしていただく、そして前向きの対応をしていただく、このことを私、大臣のおいでになるうちに大きく前進させていただきたいと思うのですが、御所信はいかがでしょうか。
#14
○国務大臣(左藤恵君) おっしゃることよく理解できるわけでありますけれども、内部的なといいますか、国内的なすり合わせというようなものが十分できていないのに、ただ署名する、批准するというふうなことをやるというわけにはいきませんし、やはりそういった国内の中の体制をきちっとしたものにして、そしてそれからそういうものに積極的に取り組むべきであるということは、そうではないかと思います。
 ただ、今お話のございましたように、なかなか難しい問題であって、余り前進しておらぬじゃないかと、国内的な憲法の問題、特に三十一条の問題だとか、そういったことにつきまして、あるいはまたそういう意味から申しますと、言論、表現の自由の問題とか、そういった点についての論議を十分やるときにつきまして法務省あるいは外務省それぞれ別々にやっているとかというようなことではなくて、もう少しその点を連絡をよくした形で内部の調整というものを進めていくという努力をして、その上で私はやはりこの条約の批准という問題に取り組むべきではなかろうか、このように考えます。
#15
○久保田真苗君 もう一つ、人権にかかわる問題がございます。それは女性に非常に関係がある問題なんですけれども、いわゆる夫婦の間の名前、姓ですね、姓を同姓にするか別姓にするか、その選択ができるようにしてほしいという要望がたくさんございまして、請願などもございますので、大臣も御承知だと思うんです。
 これにつきまして法務省に伺いたいのは、最近法制審議会の身分法小委員会の中で、この問題を含めてだと思いますが、婚姻にかかわるいろいろな法律の洗い直しをやっていこうということが決まったというふうに伺っているのです。身分法小委員会の審議とか決まった事項がありましたら、それについてこの問題を含めて御説明ください。
#16
○政府委員(清水湛君) 法制審議会の民法部会身分法小委員会におきましては、昭和六十年に例の特別養子に関する調査審議を終えまして、これは立法化されたところでございます。その後、どういう方向で親族、相続法についての調査審議を進めるかというようなことで研究、検討をしてまいったわけでございます。
 そういうことの経過の中で、本年の一月二十九日に開催されました身分法小委員会におきましては、今後の検討課題として民法中の婚姻及び離婚に関する規定全般の見直しをまず行おうということになったわけでございます。親族、相続の問題につきましては、扶養の問題だとかあるいは相続の問題、親子関係の問題等いろいろな問題があるわけでございますけれども、そういう多岐にわたる問題の中でとりあえず婚姻及び離婚に関する規定から手をつけよう、こういうことになったわけでございます。
 この夫婦別姓の問題につきましては、御指摘のとおり、現行法ですと婚姻の際に夫婦の合意によって夫の氏にするか妻の氏にするか、いずれか一方を選ばなければならないということになっているわけでございます。こういうような制度につきまして、これを選択的に夫婦それぞれ婚姻前の氏のままでもよろしいというような制度を採用すべきであるというような御意見が各方面にあるということも私ども十分に承知しているわけでございまして、そういうような状況につきましても一月二十九日の小委員会におきましてそういうこと
が話題になったわけでございます。したがいまして、この小委員会における今後の検討作業においては、夫婦別姓制度の問題点も含めまして婚姻あるいは離婚に関する問題が議論されるものというふうに私どもは考えているところでございます。
#17
○久保田真苗君 夫婦別姓、同姓、選択制の問題、こういった問題のほかにどんな項目が挙がっていましたか。
#18
○政府委員(清水湛君) いろいろ細かい問題がたくさんあるわけでございますけれども、例えば最近の話題の関係で申しますと婚姻年齢の問題。現在、男は十八歳以上、女は十六歳以上、こういうことになっているわけでございますけれども、これが合理的なものかどうかというような問題。
 それから、女性につきましては離婚後、法律上離婚した後という意味でございますけれども、離婚後半年間は再婚をすることができないという規定になっております。いわゆる待婚期間の規定がございます。これは、その間に生まれた子供が前夫の子であるかあるいは離婚後に婚姻した夫の子であるかということがわからないというような状況が生ずるということを前提にした規定でございますけれども、こういうような待婚期間に関する規定が合理的であるかどうかというような問題、こういう問題も指摘されているわけでございます。
 それから、離婚の方で申しますと、いわゆる離婚原因についての有責主義、つまり離婚原因について有責の夫の離婚請求が認められるかどうかというような非常に難しい問題があるわけでございますけれども、そういったような離婚原因についての見直しというような問題点の指摘もされているわけでございます。
 ただ、非常にこの問題は難しい問題ですから、検討の結果何らかの法改正というような結論が出てくるのかどうか、これは現段階では何とも申し上げることはできませんけれども、いずれにいたしましても、各方面においてこの婚姻あるいは離婚について指摘されている問題点を網羅的に整備しまして、そしてこれからの議論の材料としていく。そういうことの中で、ある時期が来ましたら中間案みたいなものをつくりまして、これをオープンにしまして一般社会の御意見を仰ぐというようなこともこれからの手順としては考えている、こういうことになっているわけでございます。
#19
○久保田真苗君 婚姻、離婚関係を優先して取り扱っていく、その中でこの姓の問題も取り扱っていく、そのことについてはよくわかりました。
 それで、今女性が働きやすい環境ということを非常に政府は取り上げてきつつあると思うのですね。こういった婚姻関係の問題も、国際婦人年あるいは国連婦人の十年の中で法務省は婚氏続称とそれから配偶者の遺産相続における配分の増加というような問題を既に極めて早くお取り上げいただいたと思うのです。ですけれども、何しろこの関係は非常に範囲が広いのでまだ今も残っている問題はある、そういう状態ですね。特にこれは非常に苦痛を生んでいるのが、民法七百五十条で言うところの結婚したら夫か妻かいずれか一つの姓に統一しなきゃならないということがございまして、これをしませんと婚姻届も受理されないという状態なんです。
 それで、今どういう状況が起こっているかといいますと、どっちの姓にしてもいいんですけれども、実態は圧倒的に女性が姓を変えるということになっているわけですね。そして、婦人の職業活動が非常に進んでいる結果いろんな問題が起こってくるわけです。自分が今までやってきた名前で職業が続けられないということは非常に不利益でもあるということなんです。
 その不利益の問題が一つありまして、もう一つは、やっぱり自分の氏名というものを強制的に失わされるということなんです。これは少数の男性にも当てはまっている状況でして、男性の方にもぜひ自分の姓を婚姻によって変えなければならないということがどうかということをお考えいただきたいと思うんですけれども、逃れる道は二つしかないんです。
 その一つは、姓を戸籍上変えた方の一方が通称を使うということなんです。実際問題として、これは二重人格といいますか、旧姓で呼ばれる、自分はそうしたいけれどもまた夫の姓で呼ばれるということが起こりまして、日常生活が非常に煩雑になっている、詳しく言う時間はありませんけれども。それから、二番目の逃れる道は婚姻届を出さないということなんです。つまり、法律的に婚姻しない、そういう人もふえています。これは、もし法務省が、嫌な人は事実婚でいけばいいじゃないか、何も法律で登録する必要ないんだと、そういうお考えなんだったらそれはまた話は別です。ですけれども、それは国際条約の面から見てもそういうことを奨励するとは毛頭考えられない。だとすれば、このさまざまの苦痛と不利益、これを取り除いていただかなければならないと思うのです。通称を使っていましても、その通称を職場で禁じられているというような場合には、結婚を会社に内密にしておくとか、それから一たんは結婚したけれども、別れるつもりは毛頭ないんだけれども形式の上で離婚届を出す、そういういろんな苦労をみんなしているわけです。
 これはひとつ、ぜひ大臣にも御研究いただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
#20
○国務大臣(左藤恵君) いろいろそうしたお話のような点が問題たくさんあるわけでありますが、先ほど局長からお答え申し上げましたように、現在法制審議会で民法の規定の見直しが進められているわけでありまして、その作業の中でこの夫婦の氏姓のあり方につきましても審議されることになっております。非常に重要な問題でありますから、当面法制審議会の審議を注意深く見守りまして、その結果によって私どもこの問題についての解決を図っていきたい、このように考えております。
#21
○久保田真苗君 もう一つのポイントとして、人格権の問題があるのですね。
 これは最近のことです。最高裁の判例があるのですけれども、これはNHKが朝鮮の方の氏名を、それを知っていて日本語読みをした。そういう習慣が日本にはありました。それで、直してもらえないから自分の氏名を朝鮮語読みで読んでほしいという裁判を起こして最高裁で判示を得ているわけです。
 最高裁はそのときに、氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格であって、人格権の一内容を構成するものというべきであるというふうに判示しているのです。ですから、姓というものが人格権の一部であるという、こういう朝鮮の方のこの例に対してはこういう判示が行われている。
 しかし一方で、二十年三十年使ってきた自分の姓を保持したい、それは全部の人がそう思うわけではないけれども、そう思う人が強くそう思うときにその氏名を守る権利、人格権の一部であるところの権利を法律が禁じている。それは、この国会が戦後の民法の改正によってそこまで改正をしたんだけれども、その部分はそういう昔の風習が残ってしまっている。この国会がつくった法律ですから、私は政府が悪いとかそういうことを言うつもりはありませんけれども、しかしあれからもう五十年になんなんとしているそういう時期において、いろんな判例というものを尊重してこれを促進していただきたい。ともかく困る人は非常に困っているんだから促進していただきたい。そういうことを優先的に取り上げていただきたいということを大臣にお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
#22
○国務大臣(左藤恵君) 優先的というお話でございましたけれども、我々といたしましてはそういったことで一応法制審議会の方にお願いをして御検討願っておるわけでありますから、こうした点の御審議をひとつなるべく早く出していただくように、そういった意味でのお願いを申し上げまして、我々はその結果を受けて対処していきたい、このように考えておるところでございます。
#23
○久保田真苗君 法制審の結果を法務省がお待ちになるのは当然ですけれども、大臣はその法制審にもお出になって十分そういった審議の中にもし法務省のいろいろな解釈というものがあるならば、そういうものを積極的に反映していただきたいということをお願いしますし、余り年数がかかるというようなことでは大変困るので、私どもも積極的にいろいろな案を考えていきたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
#24
○北村哲男君 北村です。
 まず、大臣にお伺いしたいのですが、私は先回の所信に対して三点ほど御質問したいと思っておりました。
 一つは、外国人の人権や差別問題についてどうお考えかということで、特に前梶山法務大臣が差別問題について非常に問題のある発言を繰り返されたために、日本の法務行政が大きく信頼を失ったということがございました。その点についてどう考えるかということですが、先ほど久保田委員の方から御質問がありましたので、この点は特にお答えいただかなくても、最大限今回については今後配慮していただくということでとどめたいと思います。
 二番目は、外国人労働者問題に対する基本的な姿勢についてでございますけれども、昨年六月一日に施行された入管法の改正について、その趣旨が徹底していなかったことと、それが罰則をもって今までの不法就労外国人が強制的に外に追い返されるというふうな状態というふうに理解されたために、六月ころに入管がパニック状態になったということがありました。そして事実上、その結果多くの外国の労働者の人たちが帰国を余儀なくされたということがありました。
 実は、私先週、ここにいらっしゃる福田宏一先生とバングラデシュの総選挙の監視に一週間行ってまいりましたのですけれども、そこでその際に、バングラデシュの政財界の人たちから言われたことは、世界の最貧国である、そして今湾岸戦争で大変不況に陥っているバングラデシュにとっては、日本が自分たちの国の労働者を締め出したことは大きな痛手である、ぜひ何らかの枠を定めて合法的にバングラデシュの労働者に働く場所を与えてほしいんだということで、その点の協力を大きく呼びかけられ、協力を要請されました。
 このアジア諸国との経済協力あるいは日本の国際貢献を進める上での一定の枠で普通の労働者、すなわち非熟練労働者の人たちを日本に受け入れる政治的な方向性について、大臣のお考えをお伺いしたいと存じます。
#25
○国務大臣(左藤恵君) 昨年、法律改正というようなものもございまして、御承知であったかと思いますが、外国人の労働者の問題につきましてかなり幅の広い改正をいたしました。そうしたことであったわけでありますけれども、専門的な技術等を有する労働者につきましては、そういった方向で可能な限り受け入れをするという方針が決まっておるわけでありますけれども、今先生がおっしやつた問題は、恐らく単純労働者についての多様な角度からの慎重な検討を要するんではないか、私はこのように思いますが、なかなかこれは単純な問題ではございませんで、我が国の経済社会全般にいろんな影響を及ぼすところがあります。そういったこともありまして、これは法務省だけでなくて労働省あるいは厚生省、それから治安の関係のところ、そういったところともいろいろ連絡をとりながら、こういった今後の方向について検討をしていかなければならない問題である、このように認識いたしておるところでございます。
#26
○北村哲男君 確かに、今のお話ある程度わかるのですけれども、これは方向性としてはある程度緩やかにあるいは積極的というふうな姿勢というふうにお伺いしてよろしいのでございましょうか。
#27
○国務大臣(左藤恵君) 昨年、そうしたことで改正をいたしましたので、その状況もよく十分見守ってやらなければならない問題で、これからさらにもう一回検討をしていくべき性格のものであろう、このように考えております。
#28
○北村哲男君 その問題はまた後に譲るにしまして、次に大臣に青少年問題あるいは子供の問題についてお伺いしたいと思います。
 昨年九月二十二日に政府が子供の権利条約というものに署名をしまして、この条約の批准に向けて今さまざまな動きが始まっております。詳しくは別の機会に譲るにしまして、一般的傾向としましては子供の権利あるいは人権を尊重するという流れはこれは日本だけでなく世界の流れでもあると思います。そういう世界の流れに対して私どもの国の体制は必ずしも十分ではないと思います。例えばつい最近、東京の綾瀬の母子強盗殺人事件で不当逮捕された三人の少年が、刑事事件では無罪に相当する不処分決定を受けたにもかかわらず刑事補償ができないという決定を下されたということが大きく新聞に報道されました。
 刑事補償法というものが少年審判を対象外にしているということは法律の形式としてはわかるのでありますけれども、それを契機としまして新聞論調などにも少年に刑事補償に相当する補償を与えるべきだということも強く言われております。これは、子供と大人を別に扱い、しかもそのために子供が権利の外に置かれた状態にしてはいけないということで、やはり少年の育成という問題は別にしまして、ある意味の青少年の心身の損害を補償することは当然であるという観点から早急に法の不備を正し、救済の道を開くべきだというふうに言われておるわけです。
 さらに別の面では、これだけではなくて、例えば少年事件につきましては附添人という制度があるのですが、これはいわゆる成人では弁護人ということになるのですけれども、成人の刑事事件については憲法三十七条三項に基づいて国選弁護人が国の費用で保障されておるにもかかわらず、少年にはこのような保障がない、こういうことはひいては少年犯罪についての冤罪を生ずる原因にもなりかねないということがあります。
 さらにまた、大臣が所信でも言及された子供をめぐるいじめだとか体罰問題もしばしば新聞紙上をにぎわしている問題であります。これらを総合して、私は子供あるいは少年については保護、育成という観点は欠かすことができないけれども、この保護、育成ということがよく作用しなくて、すなわち悪く作用して管理という形が強調されてさまざまな非人道的な効果を生み出して社会的なゆがみが生じている現状があると思います。そのほか青少年問題はいろんな面で教えれば切りがありません。
 これまた、先ほどのバングラデシュの話になって大変恐縮なんですけれども、ダッカ大学で多くの先生方と懇談する機会を持ちました。その先生の中で日本について、日本が世界に誇るべきは経済力ではなくてすばらしくまじめでかつ教育の行き届いた人的資源である、この点がとてもうらやましいのだということを言われておりました。このような世界の期待に反しないためにも、少年の人格とか人権の尊重は極めて大切なことだと思います。
 そこで、大臣は子供についての人権尊重のあり方と日本と世界に責任を果たすべき人を育成するための少年問題についてどのような方向性をお持ちなのか、それについてお伺いしたいと存じます。
#29
○国務大臣(左藤恵君) 一つは児童の権利、この問題は法務行政の基本としまして、それは法務行政を推進していく上において十分尊重されなければならない問題であり、今最初に先生お触れになりました児童の権利に関する条約、このことも現在、その批准に向けて関係省庁と協力いたしまして検討を進めておるところでございます。基本的なやはり子供の権利といいますか、そうしたものは人権の上にまたさらにそうした権利というものを配慮していかなければならない幾つかの問題を含んでおる、このように考えておりますので、そういった点について遺憾のないように努力していかなければならない、私はこのように考えております。
#30
○北村哲男君 私の方もいろいろと大きなたくさんの問題を出しましたので一つずつについてお答えをということを要求しませんが、また各論ではさらに今後一つ一つについて質疑をしていきたいと思います。
 大臣に対してはこの程度にいたしまして、次に所信でも触れられた点ですけれども、第一に訟務事件の処理についてお伺いしたいと思います。これは、具体的かつ統計的なことも出てきますので、法務当局の方でお答えいただいて結構でございます。
 まず、所信の中で訟務事件について、最近の科学技術の進歩、国民の権利意識の高揚を反映して、訟務事件が集団化、大型化、最先端の知識、技術に関連するなど、複雑、困難なものになっている。そして、全国各地の裁判所に多数の原告団を擁して提起されている傾向にある。その結果が、国の政治、行政、財政、経済に大きな影響を与えるものが少なくないという趣旨のことを述べておられます。これはまず第一に、集団化とか大型化とかそれから最先端知識という形に類型化されるような事件が多発しているというのか、あるいはそれをひっくるめてある一つの事件をとらえて集団的、大型的かつ最先端知識的というふうな意味でとらえておられるのか、それがどういうことを言っておられるのかということが一つでございます。
 もしそれが個別的なものであるならば、大型化というものはどういう事件があるのか、あるいは最先端知識的なものはどういう事件を指しておられるのかということをそれぞれ示していただきたいと思いますし、あるいは類型的に、あるいは統計的にどのくらいあるのかということ。あるいはさっき言った総合的なものと言われるんであったら、それがどのくらいどういう地域に発生しておるのかということを、ちょっと概要的に全体像を示していただきたいと思います。
#31
○政府委員(加藤和夫君) それでは、私の方から答弁させていただきます。
 訟務事件の集団化、大型化ということでございますが、これは今の御質問の、二つにお分けになりましたけれども、最初の意味でも趨勢としてもこの種の事件が全体としてふえているということが申せようかと思います。それからさらに、個別事件ということでもそういうものが非常に目立って我々の事務処理の負担にかかってきているということでございます。
 少し具体的に申し上げますと、まず航空機騒音につきまして付近の住民が空港、基地の設置管理の適法性を争っている訴訟。これは、具体的には民間空航としての福岡、羽田の各空港、あるいは軍用基地である横田、厚木、小松、嘉手納等の各基地、こういったものに係る訴訟でございます。それから二つ目に、原子力発電所の安全性審査の適法性を住民が争っている、こういう類型の訴訟でございます。これは伊方発電所、福島第二発電所、東海第二発電所、柏崎の刈羽発電所等に係る訴訟でございます。三つ目には、道路公害、都市複合大気汚染の防止措置を講ずることなどを求めている、そういう訴訟の類型がございます。これとしては、国道四十三号道路公害、西淀川公害、川崎公害、尼崎公害、名古屋南部公害等が主なものでございます。それから四つ目として、水害について河川管理責任を問う訴訟。これは有名なものとして多摩川訴訟あるいは長良川水害訴訟、こういったものでございます。それから五つ目として、薬品、医療、食品による被害の防止措置を講じなかったことの責任を問う訴訟がございます。最近大変問題になっております水俣病訴訟とか、あるいはクロロキン網膜症の訴訟、予防接種障害訴訟、筋拘縮症の訴訟、こういったものがございます。
 先端技術にかかわるものという類型としては、最たるものは先ほど申しましたいわゆる原発訴訟でございますとか、あるいは水害も最近はいろいろ防止のための技術が発達してきておりますので、これもかなり技術論争がなされております。そういったようなものが主なものでございます。
#32
○北村哲男君 今大体五つないし六つに分類されて説明していただきました。よくわかりました。
 それで、今それに対応する、訟務する国の体制なんですけれども、これは国の代理人、それぞれ裁判にかかわっていると思うのですが、その代理人の体制はどういう構造になっているのか。例えば、純粋に法務省で採用された訟務検事の方ですべて対応されているのか、あるいは裁判官の方から一時法務省に出向しておられる訟務検事で対応しておられるのか、あるいは民間の弁護士を採用しているのか。さらに、民間の場合は、例えば旧国鉄や電電公社のように公企体なんかはそれぞれが持っておられたようなこともあると思いますし、あるいは国から訟務検事が事件を受けに行かれたような場合もあると思います。あるいはさらに、純粋民間で、法律家以外の学者や各分野の専門家の方々がこの訟務に携わっておられるかどうか。この点についての概要を少しく御説明願いたいと思います。
#33
○政府委員(加藤和夫君) ただいまの件でございますが、現在訟務事務を担当しておりますいわゆる訟務検事は定数二十九名でありまして、このほかに法務事務官にも訴訟代理人として訟務事件の処理を行わせておりますが、これの数が百二十二名でございます。それから、訟務検事のうちおおよそ半数強が裁判官出身者で占められております。また、弁護士による処理が適する事件につきましては、弁護士を選任して訴訟事件の処理を行っておりますけれども、その数が現在百二十六名、こういうことでございます。
#34
○北村哲男君 それぞれ最先端の知識あるいは技術等につきましては、法律家だけではとてもではなくて処理できない問題が多いと思うのですけれども、それらの専門家の方々はどういうふうな形で訴訟に関与しておられるのでしょうか。
#35
○政府委員(加藤和夫君) 例えば原発の事件などになりますと、通産省とか科学技術庁の職員が指定代理人としてそういう省庁に対する事件を担当しているわけでございます。その中には当然、自然科学に明るい技術者ないしは専門家がおるわけでございまして、こういう者の知見を十分活用しているわけでございます。それからまた、当然のことながら第三者である学者の方にもいろいろ鑑定その他意見をいただいているわけでございます。
#36
○北村哲男君 今の専門的な指定代理人という方々ですけれども、これは急な質問になりますが、大体どのくらいの方々が関係しておられるのかということはわかりますでしょうか。
#37
○政府委員(加藤和夫君) その点ちょっと詳しいことを、質問通告ございませんでしたので資料ございませんが、例えば水害訴訟ですと、建設省にその関係の研究所がございますね、治水関係の、その研究所のスタッフ等が出てきております。それから、科学技術庁等でもやはりそういう技官的な専門家が関与しております。
#38
○北村哲男君 先ほどの数、訟務検事二十九名という数は大変少ないと思うのですけれども、これはそのほかの検事総数とか今度の司法試験の改正とかいろいろな問題が絡むと思いますので、今後改善せざるを得ないという問題と思います。
 それで、この所信の中で訟務事務処理体制の一層の充実強化を目指すというふうなことを言われておりますけれども、これは具体的には何をどうするのかというプログラムというものはあるのでしょうか。
#39
○政府委員(加藤和夫君) その点で主なものを申し上げますと、組織の点では現在増員を得るということは非常に困難な状況にありますので、限られた人員でいかにして効率的に適正な訟務事務の処理をしていくかということを工夫することだろうと思います。したがいまして、事件処理に必要な法律学、関係諸科学等に関する情報、あるいは資料、こういったものを収集、整備いたしまして効率的に利用できるような仕組みを工夫するとか、事件処理の方法について適正、円滑なやり方ができるように工夫すること。
 それから、専門的職員の養成のために相当専門
的な研修の体制を充実、整備するということですとか、効率的で適正な事件処理をするのに適した組織の仕組み、あり方を研究してまいることなどを考えております。
 さらに、予算の面では、厳しい財政事情の折ではございますが、各方面の御理解を得まして、適正、円滑な事務処理を行うのに必要な諸経費の確保もぜひ行いたく、とりわけコンピューター、光ディスクその他各種のOA機器等の導入、整備を図って事務能率を高めてまいりたいと考えております。
#40
○北村哲男君 ただいまのプログラムというのは、これは今年度何か具体的に予算措置を講じたり、あるいは何かの文書でそのようなものを整理をされて、一つの方向を計画書のようなものをつくったりされているということはあるのですか。
#41
○政府委員(加藤和夫君) 今年度予算でもいろいろ御配慮いただきまして、相当数のワープロが導入されました。それから、検証物等について特に必要だということでカラーコピー機も初めて今度は関係の予算をつけていただいた、大体そういったところでございます。
#42
○北村哲男君 それでは、今の訟務事件については結構でございます。
 次に、所信であらわれております登記業務についてお伺いしたいと存じます。
 まず、登記業務一般につきまして、どういう種類の登記にどういう問題点が最近の傾向としてあるのかという概略的なもの、そしてそれは、これを扱う法務省側の問題点、あるいは逆に利用する国民側の問題点という観点からお伺いしたいと思います。
 それから、言葉の問題かもしれませんが、先般の大臣の所信の中で「登記事件」という言葉を使っておられます。その前には、一般論として、登記事務が増大し、多様化しているという言い方をされながら、その直後に、特に、登記事件については、経済規模の拡大、公共事業の活発化等に伴い増加の一途をたどっておるというふうに強調されておるのは、登記事務と登記事件と区別して何か意味があるのかどうか。あわせてその点についてもお伺いしたいと思います。
#43
○政府委員(清水湛君) 登記行政の現在における問題点というお尋ねでございますが、これはもう何と申しましても戦後登記事件が大変急激に増加いたしました。
 登記には、不動産登記事件あるいは商業法人等の法人の登記という大別して二種類があるわけでございますけれども、不動産については国民の経済活動の活発化というようなことに伴いまして不動産登記事件が急激に増加する。また、会社等の法人につきましても経済活動の活発化を反映しまして会社の設立の登記等が非常にたくさんされる、こういうような状況になっているわけでございます。
 そういうような状況の中で、登記事務には登記簿に記入するという事務と、それから登記簿の謄抄本の交付というような事務、これがあるわけでございます。記入事務につきましては私ども甲号事務と呼んでおり、謄抄本等の交付等については乙号事務というふうに呼んでいるわけでございますが、特にこの乙号事務というのが非常な勢いで増加するというようなことになってまいったわけでございます。
 これに引きかえ、これの処理に当たるべき職員の数が非常に少ないというような問題、あるいは事件数が急激にふえ、登記所にいらっしゃる国民の方も大変ふえておるというような状況のもとにありながら庁舎、施設が狭隘である、窓口の整備が不十分である、したがって窓口における対応が不親切ということになりましょうか、適切な対応ができないというような意味での利用者である国民の側からもいろんな批判が実は登記行政については寄せられているわけでございます。
 そういうようなことのために、私どもといたしましては、とにかく登記事務を処理するのに必要な要員を確保する、つまり具体的には職員をふやしていただくというようなこと。それからまた、庁舎、施設の改善とか窓口の改善、あるいは登記事務に必要な能率機器を大々的に導入するというような意味での予算措置をお願いするということで、これは関係当局の御理解を得まして逐年改善されつつあるというふうに思っているところでございます。しかしながら、現状ではまだ足りない、人手も足りないというような問題もございますので、今後とも関係方面の理解を得まして増員とか予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、大臣の所信表明にございました登記事務と申します場合には、登記に関するすべての事務を指しておるというふうに私どもは考えております。これに対して登記事件というのは、申請件数についてこれを一件、二件、三件というふうに数えるわけでございますが、そういう登記の申請件数が甲号につきましても乙号につきましても事件数単位で教えますとそういうものが非常にふえておる、その結果として登記事務が非常に繁忙になっておる、こういうような関係にあるものと御了解いただきたいというふうに思います。
#44
○北村哲男君 それで、現在進行している登記コンピューター化の問題ですが、この内容と進展の状況、すなわちどういう種類の登記をどういう形にコンピューター化し、旧来のものをどのような形に改めようとしているのかという点についての御説明をお願いします。
#45
○政府委員(清水湛君) 先ほども申しましたように、登記事件が非常にふえまして登記事務が非常に繁忙化しておる、そういうようなことに対するいわば抜本的な対策といたしまして登記事務のコンピューター化というものを私ども昭和四十七年から本格的にその研究開発に努めてまいったところでございます。そして、昭和六十年の登記特別会計の創設に関連いたしまして電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律というのがつくられまして、コンピューターを用いて登記を行う制度その他の登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策を講ずることは国の責務であるというふうに法律の中に書かれたわけでございます。このような経緯を踏まえまして、昭和六十三年に不動産登記法あるいは商業登記法等の改正が行われまして、コンピューターを導入するために必要な手続法制が整備されたところでございます。
 このような法的な整備を受けまして、現在全国の登記所のコンピューター化を進めているわけでございますが、現在は不動産登記についてまずコンピューター化をするということで、不動産登記所につきまして現在コンピューターですべて登記事務が処理されているところは十七庁でございます。それから、コンピューターに移行するための作業を継続しているところが二十三庁ということでございまして、今年度末におけるコンピューター化庁は二十庁ぐらいになるのではないかというふうに推測いたしております。
 これらの登記所はいずれも繁忙登記所でございまして、そのコンピューターによって処理されている合計の土地、建物の数は約五百六十万個ということでございますが、全国の不動産の個数が総計で二億八千万個程度ということでございますので、まあ二・一%程度がコンピューターによって現在処理されておるということでございます。これも全体から見ますと、まだコンピューター化の緒についたというような状況でございますので、私どもといたしましては、法制が整備されたということもございますので、さらに積極的にその展開を図ってまいりたいというふうに考えております。
 それから商業法人登記、これは株式会社、有限会社等の登記でございますが、この登記のコンピューター化につきましては、現在東京法務局の墨田出張所におきまして実験を継続中でございます。この出張所におきましては会社の登記をすべて現在コンピューターで処理しておりますが、その経過は非常に良好であるというふうに聞いているところでございます。
#46
○北村哲男君 コンピューター化したために利用
者側にもちろんメリットもあるのですけれども、デメリットという点で、例えば従来であれば台帳を一冊見ればもう大体その地域の状況なんかがその部分だけでなくて全体がわかって、鳥瞰的といいますか、大まかな状況把握ができるようなこともあるのですけれども、コンピューター化すると個々的にしか見れないということがございます。その点について利用者側に不便というふうな指摘はどうなんでしょうか。
#47
○政府委員(清水湛君) コンピューター化されますと、とにかく職場環境なんかにつきましても、従来のように古い薄冊を使って事務をするというようなほこりっぽい環境の中で働くというようなことは全くなくなりまして、非常に清潔な環境の中で事務が処理される、しかもスピーディーで正確な謄抄本が出るということで非常に利用者からの評判がよろしいというふうに私ども考えているところでございます。
 ただ、お尋ねのように、従来ですと登記簿を閲覧する場合に一冊登記簿が全部出てまいりますので、その機会にと申しますか、ついでに全部のものを見てしまうというようなことが事実上行われているやに聞いているわけでございますが、これは実は現行法上は、自分はこの土地の登記簿を閲覧したいということで、本来ならばその土地の登記簿だけしか閲覧はできないはずでございます。そういうことでございますけれども、たまたま一冊のバインダーの中に何筆かの土地が入っておりますので、その機会に前後の土地が見られるというようなことになるわけでございます。これは、今まで事実上そういうようなことが行われていたのだけれども、実は法律的に言うといささかちょっと問題のある現象でございました。
 今度コンピューター化されますと、目的の土地については正確な情報が得られるけれども、その周辺の土地については別途また謄抄本の請求をしなければならない、こういうことになるわけでございます。そういう意味では不便になるということもあるいは言えるのかもしれませんけれども、そもそも前提としての一冊の登記簿を全部見てしまうということにむしろ問題があったというふうに私どもは考えておりますので、その辺はさように御理解いただければありがたいというふうに思う次第でございます。
#48
○北村哲男君 例えば、費用なんかはどうなりますでしょうか。かなり利用者の方にも高い請求が行くことになるんじゃないでしょうか。
#49
○政府委員(清水湛君) 昭和六十年に登記特別会計制度が導入されまして、コンピューター化経費は、いわば先ほど申しました乙号の手数料を財源として乙号事務処理対策の一環としてコンピューター化を進めているわけでございますが、そういう手数料をもってその財源に充てるというような基本的な仕組みになっているわけでございます。コンピューター化をするためには相当の経費がかかるということでございますので、手数料につきましてもそういう経費を賄うという観点から最近も値上げをさせていただいているところでございます。そういう意味では、従来より若干手数料は高くなるという面がございますけれども、私どもといたしましては、全国のコンピューター化というものを一日も早く進めて、情報化時代と言われておりますけれども、登記に関する情報を適正に、スピーディーに利用者の方々に提供するということで、手数料の値上げというようなことに対しては対応することができるのではないかというふうに考えております。
#50
○北村哲男君 今後の問題なんですが、現在が完了十七庁、進行中二十三庁というお話ですけれども、これを進めるに当たってどのぐらいの期間でほぼ終了する予定で進められているのか、また進めるについて法務省側として抱えておられる問題点、人の問題、金の問題あるいは能力の問題等があると思うのですけれども、そういう点はどういう問題を抱えておられるのでしょうか。
#51
○政府委員(清水湛君) 登記事務をコンピューターによって処理するということにいたしますためには、全国の登記所で保管する約二億八千万筆個の不動産の情報をすべてまずコンピューターに移しかえる、つまりコンピューターに入力する作業が必要でございます。この移行作業を推進するということがまず前提になるわけでございますが、これは実は膨大な事務量でございまして、そのために相当程度の要員とか予算措置が必要であるということになるわけでございます。もちろん、職員の養成だとかあるいは職員の技術、ソフトウエアの開発等いろんなものが副次的に伴うこともあり得るわけでございますけれども、基本的にはそういう必要な要員を確保し、予算を確保し、さらにはその前提としてコンピューターを入れるための建物、施設を整備する、普通の建物ではなかなか難しいという面がございますので、そういうような問題も関連して起こってくるわけでございます。
 私どもは、そういう要員の確保、予算措置、施設の整備というようなことについてこれまでもいろいろな措置を講じてきたところでございますが、今後ともこの点については関係方面の理解が得られますよう最大限の努力をいたしてまいりたいと思っております。
 ただしかし、二億八千万筆個で現在五百六十万筆個ということでございまして、単純に計算しますと相当の期限がまだかかるということになるわけでございますが、いわば現在はコンピューター化の緒についた段階でございますので、今後これが順調に進むということになりましても、これはしかし十年あるいは十数年はやむを得ない所要期間だと思いますけれども、その程度の期間内に全国のコンピューター化を図りたいというふうに考えている次第でございます。
#52
○北村哲男君 終わります。
#53
○中野鉄造君 私は、前回の委員会で法務大臣の所信をお聞きいたしましたけれども、しかしその中には私が最も重要で緊急を要すると思っていたことが全く含まれておりません。
 そこで、お尋ねしたいことはいろいろございますけれども、本日は時間の関係もございますし、憲法が保障する裁判を受ける権利に焦点を絞ってお尋ねをいたしたいと思います。
 それは、人事訴訟手続法の中における裁判を受ける権利についてでありますけれども、この質疑をするに当たりまして、私は少し長くなりますけれども、ここで背景説明をさせていただきたいと思います。
 我が党では、昭和六十年の五月十六日に人事訴訟手続法の一部改正法案を国会に提出いたしました。この法案提出のきっかけになったのはいわゆる次のようなことであります。
 これはある高裁での事件ですが、ある父親が亡くなった。子供は父親の全財産を相続した。ところが、この父親の死亡後に認知判決を受けたAという人物があらわれて相続財産の半分近くを要求してきました。相続人の側としては全く寝耳に水で、そのような死後認知訴訟があったなどということは全く知らずに、そのAというような人物が父親の隠し子として存在することなどあろうはずがない、そういう確信を持って、これはまさに江戸時代における天一坊的な問題提起だと確信をして、その死後認知訴訟の取り消しを求めて再審訴訟を行ったわけなんです。
 ところで、現在の人事訴訟手続法には、御承知のように、この相続人の再審訴訟を認める規定はございません。しかしながら、この相続人に再審訴訟の原告適格を認めないと、その相続人は自分の全く知らない間に確定した不服のある死後認知判決によって強制的に相続財産を持っていかれる、こういうことになりますし、これでは憲法上国民に認められた裁判を受ける権利を奪う危険性があるとして、高等裁の判決は再審を認めた行政事件訴訟法三十四条を類推適用して再審訴訟を認めたわけなんです。そこで、これは最高裁にゆだねられることになったわけなんです。
 この段階で、この事件が類推適用をもって対応はしているものの、基本的には再審訴訟をする権利が人事訴訟手続法に欠けていることはこれはもう憲法上ゆゆしき問題である、いわばこれは欠陥
法律であるとして、我が党では単独で人事訴訟手続法の一部改正法案を国会に提出いたしました。これが昭和六十年五月十六日。しかし、残念ながらこの法案は、当時この本件が最高裁判所に上告されて訴訟係属になっているので最高裁判決が出るまで待ったらいかがかというような理由から、そのときは提案理由の説明まではいったものの結果的には廃案になっております。
 こういう背景を経て、一昨年、平成元年の十一月十日に上告されていた訴訟についての最高裁の判決が出ました。その判決には、高裁判決を破棄自判して相続人は再審訴訟を起こす資格がないといういわば門前払いのような却下判決であったわけです。その結果、相続人はAという人物に相続財産の半分近くを奪われた、こういうことになりました。
 ところで、この判決文の中において最高裁判所は、人事訴訟においては真実発見のために利害関係人、つまり相続人の訴訟参加の機会を与えることが望ましいことは言うまでもない、こう述べておりまして、また一方では、不可抗力的に訴訟参加できなかったため被害をこうむるであろう利害関係人、つまり相続人に対して、人事訴訟手続法は再審訴訟を認める規定がない、したがって再審訴訟は認められないという趣旨のことを述べております。これらは最高裁判所が、人事訴訟手続法に法の不備があり、そのために国民の権利保護、権利救済に欠けるうらみがあることを暗に指摘しているわけでありまして、また、この判決を担当した最高裁判所調査官も、昨年の平成二年十二月号の「法曹時報」という書物の中の「最高裁判所判例解説」においても、本件判決は利害関係人を救済する必要性があることを認めており、かつその救済方法は立法によるべきであるという旨を明言しております。
 また、この判決に対する多くの学者の見解も、国民の権利救済のための裁判を受ける権利を認めないこの判決に批判を投げかけております。あるいはまた、その救済のための立法の必要性を説いておるわけでございますが、そういったようなことで、こういう背景を踏まえ、かつ最高裁の指摘していることを重視するがゆえに、人事訴訟手続法の改正による国民の権利保護、救済の必要性を私どもは再確認をいたしたわけでございます。
 そこで、我が党としては、平成元年十一月下旬、一昨年ですけれども、再び、一つは事前規定として、人事訴訟の当事者以外の第三者、つまり相続人でその訴訟に利害関係ある者に対して訴訟参加の機会を与えること、二つ目には、事後規定として、不可抗力的に訴訟参加ができなかった第三者で、その判決により被害をこうむる危険性のある者について再審訴訟を認めること、こういったようなことを内容とする人事訴訟手続法の一部改正案のたたき台をつくりまして、非公式に黒柳前法務委員長が理事会出席のメンバーの各先生方のお部屋にお伺いして、法務委員会提出として人事訴訟手続法の一部改正法案の御検討方をお願いしたわけなんです。
 ところが、これに対して当時の法務省のある上層幹部が、意外にもこの法案をつぶしに回ったとしか思えないような極めて不明朗な行動を各先生方に行ったということを聞いておりますが、これこそはまさに憲法で保障された議会、議員の立法権を阻害しようとする許されざる行為であると断ぜざるを得ないわけでございます。しかし、どういう人がどういうことをした、どういうことを言ったということはあえてここでは詳細は省略いたしますけれども、以上申し上げたようなことを前提として法務大臣の所信をお伺いするわけでございます。
 そこで、最初にお断りしておきますけれども、これからお尋ねをすることは極めて憲法レベルの問題でございますので、私が指名する局長以外は大臣にお答えをいただきたい、こういうように思います。
 まず第一番目に、先ほど申し上げたこの人事訴訟に関する最高裁判決では、人事訴訟手続法が訴訟当事者以外の第三者の権利保護について十全な規定になっていない旨を述べていると私は理解しておりますけれども、大臣は私と同様な理解をされるでしょうか。いかがですか。
#54
○国務大臣(左藤恵君) 今の問題につきまして、私は、やはり今お話しのように、人事訴訟につき第三者の再審を認めるかどうかということにつきましては、確かに最高裁の一つの判示といいますか、意見を述べられた点もありますので、私どもはそういった方向で検討しなければならない、国民の権利に影響するところが大きい問題である、このように考えております。
#55
○中野鉄造君 問題は、先ほどからるる申しておりますように、国民の基本的人権の問題でありますから、憲法の定める裁判を受ける権利がこれは否定されたわけなんですね。これについて、今法務大臣もお答えになりましたけれども、現行の人事訴訟手続法をこのまま放置しておくわけにはいかない、こういうようにお考えでしょうか、改めてお尋ねいたします。大臣。
#56
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、一つの裁判を受ける権利という問題につきましてお話がありました。確かに非常に大切な問題でありますので、今我々といたしましては、法制審議会においてこういった問題も含めて民事訴訟手続の全般についての見直し作業が行われておりますので、それに期待をいたしたい、このように考えております。
#57
○中野鉄造君 法制審議会の結論が出ないと腰を上げない、こういうことでしょうか。大臣。
#58
○国務大臣(左藤恵君) これはしかし、やはりこういった問題につきまして法制審議会の御審議をいただいておるわけでありますから、それを十分伺った上で判断すべきものであろう、このように考えております。
#59
○中野鉄造君 そうしますと、我々が国会で立法する、立案をする、それよりも法制審議会が優先するわけですか。大臣。
#60
○政府委員(清水湛君) 大臣がお答えする前に、今までどういう形で立法の過程で法制審議会の御意見を伺ってきたかということをちょっと事務的に申し上げたいと思います。
 法制審議会というのは戦前からある大変歴史のある審議会でございまして、法務大臣の諮問機関でございます。この中に弁護士会の代表者あるいは学者、それから裁判所の代表者というような、それぞれの法律の専門家グループの代表者に参加していただく。それから、例えば会社法でございますと、これは経済界、産業界に関係がございますので、そういうところの代表者にも参加していただく。そういうようないわば専門家の集まりでございます。
 私ども民事基本関係法についてこれを改正しようというような場合には、まずそういう法制審議会の中にお集まりいただいたいわば専門家の方に十分に調査、御審議をお願いする。そういうことの過程の中で問題点なりそういうものが明らかになりました暁には、問題点を世間に公表しまして、これについてまず一般の意見を聞く。例えば全国の弁護士会にそれぞれ照会をする、全国の裁判所に照会をする、全国の商工会議所に照会をするというような形で、それぞれの団体、国民各界各層の御意見を聞いて、それをまた法制審議会にお示しいたしまして、そのいわば専門家グループにさらに調査、御審議をお願いする。
 そういうことの中で出てまいりましたものを集約いたしまして試案というようなものをつくる。試案をさらに公表いたしまして意見を求める。こういうような手続を経まして、いわば法制審議会という各界の権威者がお集まりいただいた審議会でまず結論を出していただく。そういうものを今度は法務省という行政庁の立場で再吟味をいたしまして、今度はこれを国会に提案して、さらに国会の御審議を仰ぐ、こういうような手続をとっているわけでございます。
 決して法制審議会の方がすべてに優先するというようなことを考えているわけではございませんで、これまでも、例えば法制審議会ではそういった答申をいただきましたけれども、国会に提案す
る過程においては若干の修正を施したり、あるいは国会で法案の修正がされるというようなこともあるわけでございます。しかし、私ども法務省といたしましては、まず専門家集団の意見を十分に尊重して原案をつくりたい、こういう意味で法制審議会と、こういうことを申し上げているわけでございます。
#61
○中野鉄造君 今局長がはしなくも言ったのですけれども、あなた方の考え方の根底には常に、特に法律問題なんというのはそういうど素人が何だかんだと言う問題じゃない、我々専門家に任せなさい、そういったようなものが根底に見え隠れするんですよ。
 じゃ、国会はどういうところですか。立法府でしょう。その国会よりもまず法制審議会だとか専門家の間で、そういうところでまずいろいろと審議され、それを通らなければ国会に持ってこれない。そこでつぶされたら国会では通らない。逆に言えば、そういうことだから、先ほども申し上げたように、国会議員がいろいろ議員立法としてやってみても、それはつぶされる。そうしないと、素人の議員あたりが何だかんだ持ってきたのを取り上げるようでは法務の専門家としてのこけんにかかわるといったような、そういうものが根底にあるわけなんですよ。私が言っているのは、そういうようなことだから、本当にこの人事訴訟手続法なんてもう全く改正されない。これは明治三十一年に制定された法律そのままになっているのです。
 じゃ、聞きますけれども、刑事訴訟法の特別法というのがありますね。刑事局長、この特別法があると承知しておりますけれども、この刑事訴訟特別法が制定された、どういう理由でこの特別法というのがつくられたのですか。それから、その正式名称を教えてください。
#62
○政府委員(井嶋一友君) 御質問との関連で刑事訴訟法の特別法という御指摘でございますから、恐らくこの法律だろうと思うものを御紹介申し上げますと、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法、こういうものがございます。これは、刑事事件におきまして第三者の所有に属する物を没収することができるわけでございますが、その第三者の所有に係る物を刑事事件に関して押収する、没収する場合の手続を定めたものでございます。
 これは、昭和三十八年の法律第百三十八号で成立したものでございますが、この立法理由と申しますのは、実は昭和三十七年の十一月二十八日に最高裁判所大法廷におきまして、旧関税法違反事件に絡みまして、被告人以外の第三者の所有物の没収については、これは被告人に対する付加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するにほかならない。刑事訴訟法その他の法令において、何らかかる手続に関する規定が設けられていないから、この旧関税法の規定によって第三者の所有物を没収することは、憲法三十一条、同二十九条に違反するという判決が言い渡されました。
 これを受けまして、刑事手続におきまして、第三者所有物の没収する手続を定めませんと没収手続が行えないという重大な問題に立ち至りましたので、応急措置法といたしましてこの法律を制定した、こういう経緯でございます。
#63
○中野鉄造君 それで、今お答えになったように、救済規定がこの人事訴訟法手続法にはないわけなんです。それは言いかえれば、裁判の拒否とこれは同じでありまして、だからこそ刑事訴訟特別法では、昭和三十七年の十一月に、これは憲法違反である、憲法に違反しているというような理由からこの特別法というものが制定された。ところが、この人事訴訟手続法には、先ほども申し上げたように、今から九十年前、明治三十一年に制定された法律がそのまま欠陥法律として今も残っておる。何ら救済措置がない。裁判を受ける権利が認められなければ、国民は権利侵害があったとしても国家の保護は受けられない。これは非常に憲法上も重大な問題じゃないでしょうか。これは緊急に、早急に改正すべきだ、これはもう実に明確な問題だと私は思うのですけれども、それを法制審議会にどうのこうのと、そんな問題じゃないんじゃないんでしょうか。大臣、どうですか。
#64
○国務大臣(左藤恵君) 今のお話で、政府としてこうした問題についての責任を持ったことをやろうと思えば、やはりいろんな手続の問題がありますし、そして御意見を伺うという一つの仕組みとして法制審議会があるわけでございます。したがって、憲法に言われます「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」という規定から考えて、もちろん議員立法で御提出されたものを我々当然それは真剣に討議しなければならない、そういった立場にあろうかとも思いますが、政府としてこれに対します一つの改正案といいますか、そういうものの救済案というものを出すときには、そういったやはり手続的なものを立法の過程におきまして法制審議会の御意見を伺い、また現に今御審議をいただこう、こういうことになっておるわけでございますので、そういう点について御理解をいただきたいと思います。
#65
○中野鉄造君 大臣もまた法制審議会、法制審議会と言われるのですけれども、これはもう本当に憲法上の問題なんです。私たちは立法府の議員であるわけなんですから、これはもう緊急を要する問題でございますし、何としてもひとつ早く着手をしていただきたいと思うわけです。
 これはここで改めてお尋ねしておきますけれども、議員立法で改正作業を私たちが行うとした場合に、法務省が再びつぶしにかかるようなことはないでしょうね。
#66
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 私どもといたしましては、この提案された人事訴訟手続法の一部改正案が意図している問題の提起、これは非常に重要な問題の提起だというふうに考えております。ただしかし、具体的な案文に則して、今度は、そういう法律ができ上がった状態においていろいろ波及するような問題点というものを考えますと、若干まだ検討を要する問題もあるのではないか、こういうふうに実は思うわけでございます。
 特に、従来民事訴訟法の中では認められなかった第三者再審、つまり第三者が直接当事者となって再審の請求をするというようなシステムというようなことが、今度人訴の中に、まあ人事訴訟手続法というのは民事訴訟法の特別法でございますけれども、そういうものの中に出てくるということになりますと、これは全く新しい制度でございますので、その及ぼす影響等について相当慎重に検討をする必要があるのではないか。率直に申しましてそういうようなことを考えている次第でございます。
 ただ、この議員提案でされました法律案が指摘している問題点、これは非常に重要な問題でございまして、先生先ほど冒頭に御指摘になりましたように、学者の中にもそういった第三者再審というような制度をこの際考えるべきではないかというようなことを主張される方もおるわけでございまして、現に私どもが着手しております民事訴訟法の全面的な見直し作業の中におきましても、そういった形での問題提起があるわけでございます。
 そのような次第でございますので、先ほど来大臣が御答弁申し上げておりますように、法制審議会、私は専門家集団と申し上げましたけれども、決して専門家だけでこれをやろうというわけではございませんで、法律家以外の方々も多数この法制審議会には参加しているわけでございますが、そういう方々の御意見、あるいはその意見をオープンにして一般社会の意見を聞くというふうなことも非常に慎重に丁寧にやっている審議会でございますが、そういうような審議会の中でまず御議論をいただいて、政府としてもし提案するということでありますと、あるいは政府として意見を述べるということでありますと、そういうふうな手
続もやはり踏んでみる必要があるのではないかというふうに実は考えている次第でございます。
#67
○中野鉄造君 最後にお尋ねいたしますけれども、この法務委員会で、いわゆる議員立法として成立した法律が何件ありますか。それと、大臣、これは必ずやると冒頭におっしゃいましたけれども、本当にやられますか。この二つ。
#68
○国務大臣(左藤恵君) 今申しましたとおり、法制審議会とかそういう手続の問題はございますけれども、この問題については真剣にやらなければならない問題である、このように考えておりますので、そういう過程を経て必ずやる、こういうことで持っていきたいというふうに考えております。
#69
○中野鉄造君 もう一つ、議員立法として……。
#70
○政府委員(清水湛君) 私、不勉強で、議員立法の件数というのは実は承知いたしておりません。例えば、法務省の所管の法律でございますと、昭和二十五年ないし二十六年ごろには、例えば司法書士法とか土地家屋調査士法というようなものが議員立法されたということは承知いたしておりますが、民事基本法関係で議員立法がされたというのは、私ちょっと不勉強で申しわけございませんけれども、今のところちょっと頭に浮かんでまいらないというふうに思います。
#71
○中野鉄造君 今あなたがおっしゃったように、議員立法として成立したというような法律はまずないんじゃないかと私もそう聞いております。
 そのように、事ほどさように全く議員が法律をいじくり回すなどということはちょっとおこがましいよといったような、そういうあれが見え隠れすると先ほども申しましたけれども、だから何でそうなのか、十幾つの省庁の中で法務省というのが一番権威的な官僚臭がふんぷんとしている、そういうふうなものを強く私は感じるわけなんですけれども、この際ひとつそういう点は改めてもらわなくちゃ困ると思うんです。どちらが先にこれは腰を上げるのかわかりませんけれども、私どももあなた方がこれを取り上げられるのかどうかそこいらを見つつ、それがもし遅いようであれば私どもでも議員立法に対しての取り組みを行いたいと思いますし、この問題については今後のこの委員会でも随時私は取り上げていきたい、こう思います。
 以上で終わります。
#72
○橋本敦君 三月一日の未明に長崎地方裁判所及び長崎新聞社に何者かによって銃弾が撃ち込まれるという事件が発生をしたことは御存じのとおりであります。これは一連の経緯の中で非常に重要な意味を持っている事件であります。
 長崎の本島市長が天皇に戦争責任があるという発言をしたのが六十三年十二月七日でございまして、その直後、三日後の十二月十日に長崎の右翼政治結社正気塾から長崎新聞に意見広告の申し込みがなされました。長崎新聞は慎重に検討した結果、これを断ったわけでありますが、そうしますと、二十八日にはそれを不服として意見広告を掲載せよという趣旨の民事訴訟が正気塾によって提起をされる。そして、年が明けるや一月十八日に、問題の本島市長に対する銃撃という実にゆゆしい重大な事件を正気塾の組員が起こすに至るわけであります。そして、本年の二月二十五日に問題の裁判に対して長崎地裁が正気塾の請求を棄却する判決をいたしますと、その直後の三月一日に今お話をした銃撃事件が行われるという経過になってきているわけであります。
 この経過を考えますと、今度の銃撃事件が単に建造物を壊すことだけを目的とするような単純な事件ではなくて、まさに暴力で自分の意に反する裁判所の判決を報復的に攻撃をし、あるいは意に反する判決をさせないという意図をもってなしたとしか見られない状況や、あるいは長崎新聞に対する、言論の自由に対する暴力による許しがたい攻撃という側面を持っている重大な事件として、我が国の民主政治の根幹にかかわる大問題だと言わねばならぬと思うわけであります。
 そこで、まず警察庁にお伺いしたいのは、この事件について、こういった重大な背景を含む民主主義に対する挑戦であるという、こういうような重大な事件としてこれを把握して鋭意捜査に当たってもらいたいと思うのですが、現在の警察庁の事件捜査の状況について、また考え方についてまずお聞きをしたいと思います。
#73
○説明員(石附弘君) お答えいたします。
 先般、長崎市内で発生した長崎新聞社また長崎地裁に対する銃撃事件の捜査状況についてのお尋ねでございますけれども、本件につきましては、地元長崎警察署において三月一日の早朝に事件を認知いたしまして、直ちに長崎警察署に二百六名体制の捜査本部を設置し、鋭意捜査中のところでございます。現在のところ犯人の特定には至っておりませんけれども、弾丸等の遺留品からの捜査、現場付近の聞き込み捜査等の捜査をやっております。また、けん銃使用の犯行であるということから、暴力団関係者等の関連についても捜査中でございます。
#74
○橋本敦君 犯罪の容疑としては、どういうような罪名を容疑として考えて捜査しているのですか。
#75
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 建造物損壊あるいは銃刀法違反等の容疑が考えられるところでございます。
#76
○橋本敦君 長崎地裁と長崎新聞社へ撃ち込まれた銃弾、その鑑定等が進められていると思いますが、同一けん銃だというように断定できますか。
#77
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 現在鑑定中でございまして、発言は差し控えさせていただきます。
#78
○橋本敦君 同一けん銃だというように認定されたという報道もあるので伺ったのですが、まだ結果がはっきりしていないという意味ですか。
#79
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 そのとおりでございます。
#80
○橋本敦君 私が指摘したような経過から、警察庁としては、もともとの本島市長に対する銃撃事件と全然無関係というようなことは言えない。だから、その関係についてもその視点で当然厳重な捜査を進めていくというのは、これは当然だと思いますが、いかがですか。
#81
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 警察といたしましては、いろんな可能性を含めて現在鋭意捜査に当たっているということでございます。
#82
○橋本敦君 可能性は結構ですよ。可能性は結構ですが、私が指摘した一連の事件、その経緯は決して軽視できない重要な捜査上の視点であるということは間違いないんじゃありませんか。幅広い中に入ってなきゃおかしい。
#83
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 捜査当局としては、先生御指摘のような点も含めていろんな角度からいろんな可能性を含めて捜査をしておるということでございます。
#84
○橋本敦君 それは当然だと思うんですね。
 裁判所としては、このような銃弾が裁判所に撃ち込まれたという事件は初めてだと思うのですが、いかがですか。
#85
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 裁判所に向けられた銃撃ということは、これまでにはございませんでした。
#86
○橋本敦君 それだけに重大な事態であるわけですが、裁判所としておとりになった処置はどういう処置でしたか。
#87
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 私どもも今回の事件につきましては、そもそも裁判所が銃撃されるということは、先ほども申し上げましたとおり、我が国でかつてない事件でございますし、最高裁判所といたしましてもこういう事態が発生したということは大変ゆゆしきことである、こう認識しております。大変遺憾に思っている次第でございます。
 とりあえずの対応措置としては、長崎地裁所長がコメントを発表いたしましたが、本件につきましては捜査にゆだねている、まことに遺憾であるという談話を発表したということでございます。
#88
○橋本敦君 さしあたり器物損壊で、親告罪ですから告訴をする手続をとったと聞いております
が、そうですか。
#89
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) さようでございます。
#90
○橋本敦君 罪名は建造物損壊ということで、銃砲刀剣もありますが、捜査をされているということですが、私は基本的には事件の背景や重大性を考えますと、言論を暴力で封殺しようとする憲法違反罪といえばまさにそういうような犯罪だというように重大な問題だと思っておるわけであります。
 この十二月に本島市長銃撃事件の判決をいたしました長崎地裁は、判決文の中で、健全な民主主義社会を維持するためには、思想の自由、言論・出版など表現の自由の保障が不可欠である。これらは民主主義社会の基礎をなすものであり、暴力による侵害はまさしく民主社会を根底から覆す危険を有する。言論に対する暴力は絶対に許容されるべきものではないということを裁判所判決の中で明白に述べておられるとおりであります。
 総務局長に御意見をお伺いしたいのでありますけれども、もしも正気塾なる関係者がみずから提起した裁判が請求棄却をされたということを不服として、そしてその腹いせなり裁判所に対する自分の意に沿わない判決をすることを許さぬという、そういった威迫を含めた意味でこのような犯行に及んだとしたならば、私はまさに司法権の独立に対する蛮行である、重大な問題であるということで、今お話しのようにこんな銃撃がなされたことはかつてないということでありますから、まさにそれだけになおそういう意味で重大な事件だというように思うわけであります。
 全司法労働組合は早速この問題について、「この銃撃は、右翼団体が広告掲載を求めて起こした訴訟でその請求を退ける判決が出されたことに対する報復としてなされた蛮行と推測されるが、暴力で言論を圧殺しようとするかかる行為は、絶対に容認できない。」ということで、満腔の怒りを込めて抗議の意思を表明しておるわけであります。
 私は、この際、裁判所も司法権の独立を毅然として暴力から守り抜くという決意をやはり国民の前に明確に新たにして、かかる暴力は絶対に許さないという姿勢を示すことが裁判所としても求められているように思うし、今のこの問題に対する大事な姿勢ではないかと思います。本来なら事務総長にお伺いしたいぐらいの重大な問題だと思っておるのですが、総務局長いかがでしょうか。
#91
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 対象が何であれ、あるいは動機が何であれ、こういう銃弾を撃ち込むということは許せないことでございますが、ましてや人権を擁護し秩序を守る司法の府に対して銃撃されたということ自体、先ほども申し上げましたとおり、非常にゆゆしき問題だ、こう考えております。
 本件につきましては、犯人がだれであるか、犯行の目的がどうかという点は捜査機関の解明にゆだねているところでございますので本件に即して申し上げることはできませんが、ただいま申し上げたところから御理解いただきたいと存じます。
#92
○橋本敦君 そういう裁判所の期待にこたえても、また長崎新聞社も当然そうですし、国民の期待にこたえても捜査は徹底的に早く犯人検挙に行き着いて、こういったことを絶対に許さないということをはっきりさせていかなくちゃならない。
 そういう意味で、厳重な、しかも捜査が急いで行われることがまさに求められている今の状況でありますが、検察庁の方としても、この問題について今私が指摘したような背景、事情も含めて重大事案として警察の捜査に全面的に協力をして、犯人の早期検挙を含む事案の解明に全力を挙げてもらいたいと思いますが、刑事局長の御意見はいかがですか。
#93
○政府委員(井嶋一友君) 現に捜査中の具体的事件についてのお尋ねでございますから私からお答えいたしますが、先ほど警察からも御説明ございましたとおり、現在鋭意捜査中であるということでございます。また、先ほど来委員がるるお述べになるような背景等の関連性も含めた視野の広い捜査をする必要のある事件だということも御指摘のとおりだと思います。検察庁におきましては、当然そういったことも十分考えた上で適切に対応するものと考えておりますが、何しろまだ事案が解明されておりませんのでこれ以上のことはちょっと申し上げかねるという状況でございます。
#94
○橋本敦君 警察庁は、今のところは撃ち込まれた銃弾、これを押収してその鑑定を急いでおるということでありますが、その銃弾の鑑定からさらに犯人の特定ということに結びつくためには聞き込みを含めいろんな関係者の状況について多数の参考人からもいろいろ意見を徴する必要があると思われるわけですが、私はざっくばらんに言って、まさにこの正気塾なるものそのものが一体どういう団体かもう一遍はっきり捜査の線上に乗せて追及しなければ、あらゆる可能性なんと言っているような問題ではないという気もしますがね。この正気塾というのはどういう団体というようにつかんでおるのですか。
#95
○説明員(中村正則君) お答えいたします。
 正気塾についてどのような団体と認識しているかという御質問でございますが、正気塾は昭和五十六年六月、民族意識の高揚、あるいは北方領土早期返還等々を掲げまして結成された団体でございます。本部を長崎市に置いているほか、東京と大阪にも支部を有しております。構成員は現在約二十名と見ております。
 現在までの活動でございますが、日教組大会反対行動に出動してみたり、あるいは長崎市長糾弾街宣などを行っているほか、先ほど来委員御指摘のように、その構成員が本島長崎市長殺人未遂事件を引き起こしているということでございます。
#96
○橋本敦君 法務大臣、最後にお伺いしますが、お聞きいただきましたように、まさに早期に事実の解明及び毅然としてこの問題についての解明を警察及び検察がやって言論の自由を守らねばならぬという重大な事案で、法務大臣は当然法務大臣としての所信から、我が国の秩序ある法秩序の維持について責任をお持ちの主要な大臣でございますが、そういった大臣の責任からも、私はこういった言論弾圧に加えられる暴力は絶対許せないということを思っておりますが、この点について大臣の御見解をお伺いして質問を終わります。
#97
○国務大臣(左藤恵君) 今おっしゃったとおり、私はやはりこうした事件の重大性というものを深く考えまして、そして検察もこの不法事犯に対しては真相の解明に努力するということで、当然関係法規に照らして厳正かつ適切に処せられるものと、このように考えております。
#98
○橋本敦君 終わります。
#99
○高井和伸君 私は、前回法務大臣の所信表明の中にございました「子供をめぐるいじめ、体罰問題につきまして、法務省といたしましても、関係省庁と緊密な連絡をとりながら、一層啓発活動を充実強化してまいりたいと考えております。」というこのことに関しまして、実は私が弁護士といたしまして関与しましたいじめに関する事件に例をとりまして、いじめに対する防止についての御見解を伺いたいと思います。
 実は、この事件は、昨年、平成二年十二月二十六日に判決がございました福島地方裁判所いわき支部における判決でございまして、いじめによって自殺した佐藤清二君に係る裁判でございまして、私もその遺族の方々の代理人、原告の代理人として事件に関与しました。この事件につきましては確定もし、新聞にも報道されまして公知の事実になっているという前提の問題でございます。
 この事件で遺族の方々は何を望んで訴訟を提起されたかといいますと、こういったいじめによる自分の子供のような自殺はもう二度とないようにしてくれと、これが親の切なる願いで、そういったいじめの実態を公にしていただけないかというのが親の気持ちでございました。
 この事件は、昭和六十年の九月の秋に中学三年生の佐藤清二君という生徒がいじめによって自殺したということでございました。裁判の途中におきまして、学校側はいじめじゃないというようなことで抗弁されましたけれども、結果的には裁判
所の認定によりまして、裁判は双方控訴せずということで確定しまして、結果的にはいじめによる自殺であるということが公に確定されたという前提でございます。そういった裁判の判決につきましてはそれぞれの関係省庁にもう提示してありますし、新聞にも報道されておりますので、それを前提にいろいろどのような御感想であり、さらにどのような対応をとられたのかであり、今後どうしようかというような観点から各省庁の関係者に伺っていきたいと思います。
 この事件の判決文を引用しますと、深刻かつ重大ないじめだとか、悪質かつ重大ないじめというような言葉で述べられております。一言だけどんないじめがあったかといいますと、約十回にわたり雑草を無理に食べさせたり、たばこを立て続けに吸わしたりして嘔吐させたりした。もちろんそのほか、殴る、ける、ビニールコードでたたく、水酸化ナトリウムを背中から流す、いろいろなことが数限りなく行われているわけですが、生徒たちはこの事件があった、自殺があった段階で直ちにいじめによる自殺だということを直感的に述べておりました。
 こういった事件を防止するという側面から、まず文部省の方にお尋ねいたしますけれども、こういった事件防止のために、この裁判例を一つの契機として何らかの方策をとられたのかどうか。そして、今どのような対策を立てておられるのかどうか。この判決の感想もあれば述べてください。
#100
○説明員(福島忠彦君) 委員御指摘の今回の判決に示されました数々のいじめの事実につきましては、まことに遺憾なことだと思っております。
 私どもすべての教育関係者がいじめの問題の解消のため、今後取り組みを鋭意進めていかなければならないと痛感している次第でございます。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席)
 具体的には、学校、教育委員会、文部省それぞれの立場でやっていかなければいけませんが、学校におきましては、まずいじめの実態の早期発見に努め、いじめの根絶に向けて取り組む態勢を整えるとともに、父母や児童生徒の悩みを積極的に受けとめることのできるよう校内の相談態勢を整えるということが必要であると思っております。
 この判決後、いわき市でも小中の校長を集めまして、いじめ問題に関する小中校長会というものを開いております。それから教育委員会におきましては、それぞれの管下の学校のいじめ問題の実態把握をしましてその解決に至るよう重点的に援助、指導を行うと、そういう必要があると思います。具体的に、いわき市の教育委員会におきましても、この判決後いじめ一一〇番というような相談態勢をつくっております。
 文部省におきましては、この事件がございました昭和六十年ごろ、このころは一番いじめがひどかった時期でございまして、平成元年になりますと当時の五分の一という数、数は非常に減ってきておるわけでございますけれども、まだまだ非常に問題の多い事案もございますので、私どもとしましてはいろんな教員向けの指導資料をつくりましたり、教員研修をやったり、それから教育相談のための援助をしまして、ありとあらゆる方策をやりまして、この問題を生徒指導の最重点施策の一つとして力を入れていきたい、かように思っておる次第でございます。
#101
○高井和伸君 この判決の結論は、学校側に自殺を防止し得なかった過失があるという意味で三割強の責任を認めたという裁判でございました。この事実認定を行って判決を下した裁判所は、学校教育法の二十六条の出席停止の措置などをとることも考えなきゃいかぬ、そういう場面もある、このような意見を一般論としてこのいじめ事件の事実認定の過程において裁判官としては立論しておられます。
 この判決内容を読んでおられると思いますが、学校教育法二十六条の出席停止の措置をとるというようなこの裁判所の述べられた一般論については、どのようなお考えをお持ちですか。
#102
○説明員(福島忠彦君) 中学校は、委員御承知のように義務教育でございますので、小中学校で子供を学校に出席させないというのは、一般論としては非常に難しいのでございます。そこが高校以上の段階とは違いますけれども、余りにも悪質になって正常な教育活動が学校で行えないなど、あるいは他の子供に非常な迷惑がかかる、そういう悪質な事案に至りますればやはりこういう措置も考えざるを得ないというふうに考えております。
#103
○高井和伸君 この事案の場合、いじめをしていた方、加害者の立場というか加害者を被害者から隔離するという意味では出席停止などの強権的な措置をしないことにはこういったいじめによる自殺は防止できなかった事案だろうと私も思っております。
 そこで、学校当局としても自分の身のうちだけで余り力もないのにやり過ぎるなというような、簡単に言えばそういう立論のもとに、学校の指導の限界を超えた場合は警察や家庭裁判所に通報して対応を一緒にやれというような一般論も言っておられます。これについて学校側の御見解、そして警察、家庭裁判所の立場からどのようにお考えなのか。これは裁判所というよりは家庭裁判所の問題になろうかと思いますけれども、その点についてお尋ねします。まず、文部省から。
#104
○説明員(福島忠彦君) 学校内の事案につきましては、できる限り最終責任者である校長そしてそれぞれの第一線の教員に頑張ってやってもらいたいのが私どもの気持ちでございますが、やはりそれぞれの部門ごとに専門家という方もおられると思いますので、どうしても学校の手に負えないということになれば警察関係それから児童相談所関係、厚生省関係、法務省関係、いろんな役所でそれぞれの専門の機関がございますので、そちらに御協力いただいてやらざるを得ない場合というのも出てくると思います。
#105
○高井和伸君 そこで、警察関連で、警察としてはこういったいじめにまつわる事件をどのような対応で措置しようと一般的にお考えなのかお尋ねします。
#106
○説明員(横尾敏夫君) 警察では、学校及び関係機関等と緊密に連携するとともに、非行少年等の補導、少年保護者等からの少年相談などによりまして、いじめに関する実態の早期把握に努めております。
 いじめの問題につきましては、基本的には学校や家庭において解決されるべきものと考えており、警察がいじめの問題を認知した場合には、まず家庭、学校と連絡をとり、事態が悪化しないうちに相互に協力し合っていじめそのものの解消、解決に努めております。しかし、事案の内容が悪質なものについては、その内容に応じて被害少年の保護、加害少年の補導など、迅速かつ適正な処理に努めております。
#107
○高井和伸君 それでは、裁判所関係の方にお尋ねします。
 こういったいじめの事件が警察の方から送られてきた場合、家庭裁判所としてはどのように一般的な基準で対応しようとしているのかあるいは期待されているのか、そこらのことは裁判官の独立だとか審判官の独立だとかいろいろあるかと思いますが、司法行政上の立場からなしておられることをお尋ねします。
#108
○最高裁判所長官代理者(山田博君) こうしたいじめに関する事件につきましても、家庭裁判所の手続的な処理としては通常の事件と同じような形になるわけでございます。
 具体的に申しますと、裁判官が非行事実を確認する、そしてその上で家裁調査官に事実関係の調査を命ずる。調査官は原因や背景、事情を十分につぶさに調べまして、それに基づいて少年の再非行防止という観点で裁判官が審判を下す。こういう意味で通常の事件と同様に手続的には進むわけでありますけれども、特にいじめに関するような事件につきましては、通常の事件とはまた別に学校における日常生活の状況でありますとか、集団犯罪的に行われることが多うございますので、交友関係等についてもつぶさに検討しなければいけない。こんなことで、司法行政上一定の基準をつくってというようなことまではしておりませんけ
れども、一般的に家庭裁判所で留意されている事柄としましては、この種の事件につきましては、特に調査官の立場として学校関係との連携を密にするということにつきまして大いに意を払っているわけでございます。特に家裁の方で調べた事実関係の問題点を学校側の先生方と持ち寄りまして、十分その原因分析をしたり、これに対する適切な対応策を協議する、このような方法で一般的には処理しているものと理解をしております。
#109
○高井和伸君 それでは、法務省にお尋ねします。
 この事件は裁判所の判断によれば、いじめによって自殺した原因は、学校側に三割強、家庭側に三割弱、自殺した本人が意志が弱くてこんなことではいけないということで四割というような枠組みで判決の損害賠償額を認定しておられます。いろんな立場からこういったいじめというものは、学校だけでもできない、そして警察もある意味では受け身、裁判所もある意味では受け身。そういった相互の、生徒一人が学校だけにいるわけじゃない、家庭にもいる。そういった中でいじめによって被害を受けている生徒にとっては大変つらい立場にあるわけです。それを人に告げれば、学校の先生はそれなりに注意をしてくれるけれども、おまえ学校の先生に言いつけたなというわけでますますひどいいじめになる、そういう根の深いいじめの実態を学校側が認知できないというようなことになってしまっている。そのことが自殺になったというのがこの裁判例なんでございます。
 こういった側面から、人権擁護の立場からある意味では受け身的な家庭裁判所、警察という立場と、学校側の部分的な社会という立場から見て、トータル的にどのように対応なさろうとしているのか、その点についてお尋ねし、最後に大臣の御見解も伺っておきたいと思います。
#110
○政府委員(篠田省二君) 委員御指摘の事案につきましては、まことに遺憾な事案だと思っております。
 法務局といたしましても、この事件につきましては人権侵犯事件として調査いたしまして、その過程におきまして学校あるいは父兄それから教育委員会、そういった関係者からいろいろ事情を聴取したわけでございますけれども、その過程でやはり学校側の対応に適切でなかった点が認められるというふうに判断いたしまして、人権擁護の観点から学校当局、それから教育委員会にいろいろと説示、啓発をした次第でございます。
 いじめについて人権擁護機関としてどのように取り組んでいるかということでございますけれども、これは具体的な事件につきましては、人権侵犯の救済の申し立てあるいは人権相談という形で出てまいりますので、その都度その事件ごとに処理をいたしております。それから、そのほかに、いじめという事柄は当のいじめられる側にとっては大変な人権侵犯ということになりますので、一般啓発としていじめ、体罰の根を絶とうということでいろんなPR活動を行っているような次第でございます。
#111
○高井和伸君 最後に、法務大臣にお伺いしますが、ある意味ではこういったいじめ事件防止の総括的な責任としては内閣においては法務大臣じゃなかろうか、このように私は考えております。総合的な協議機関ないし立体的なそういった対応機関の設置も必要じゃないかと私は感想を持っておりますが、大臣の御見解はいかがでございましょうか。
#112
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのいじめの問題につきましては、一番心身が健全に育っていかなければならない時代の児童生徒の人権にかかわる問題でありまして、これを放置しておきますと新しく差別が出てくる、そういう芽ともなりかねない問題もありますので、とにかく全国の人権擁護委員の方々もおられますので、そういったところにいろいろ御協力いただきまして、積極的な啓発活動の一つとしてこの問題の解決に向けての取り組みをやっていかなければならない、今そういう立場にあるんじゃないか、このように考えます。
 今局長から申しましたように、人権相談あるいは人権侵犯事件として対処するだけでなくて、いじめの根絶でありますとか、そういった差別を起こさないような、そういう人権問題としてこの問題に積極的に取り組んでいかなければならない、このように考えております。
#113
○高井和伸君 終わります。
#114
○紀平悌子君 お昼も大分回りまして、それぞれお疲れだと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 最初に、出入国管理法関係でお尋ねをしたいと思います。法務省にお願いいたします。
 昨年の六月一日施行の出入国管理及び難民認定法改正法について、施行後九カ月を経ました。今、外国人の出入国の状況はどうなっておりますでしょうか。施行前の状況との比較もあわせて、ごく簡略で結構でございますのでお聞かせください。
#115
○政府委員(股野景親君) ただいま委員お尋ねの改正入管法施行後の外国人の出入国状況につきまして御説明申し上げます。
 改正入管法が施行されましたのが昨年の六月でございますので、その六月からの統計をとっておりますが、昨年の十一月までの六カ月間の統計が現在までに集まっております。そこで、その平成二年六月から十一月に至る六カ月間について見ますと、新規に入国した外国人の数がこの間に百五十七万四千九百四十六人となっておりまして、これは前年の同じ時期の百三十六万三千二百九人と比べまして一五・五%の増という状況になっております。
 改正入管法で新しく設けられました在留資格として、例えば人文知識・国際業務とか企業内転勤、こういったようなものがございますが、こういうものにつきましても、前年同期において同種の在留資格を持っている人に比べまして相当数ふえておるということがございますので、全体的にも、また新しい在留資格の分野においてもそれぞれ新規の入国者がふえている、こういう状況でございます。
#116
○紀平悌子君 この問題との関連で法務大臣にお伺いをしたいと思います。
 今回の湾岸戦争の勃発に際してイラク、クウェート両国からの大量の失業者が発生をいたしております。この方々に対して人道的に対応する上でも、パキスタン、イラク、クウェートその他の湾岸方面からの単純労働者の入国規制については、湾岸政治情勢安定の見地からもこれを緩和していくことが国際平和への貢献を果たす一助になるかと思います。昨年の四十億ドル、ことしの九十億ドルと、言われるままの湾岸戦争への、あるいは紛争への対策費で拠出した上、今度はまた国民的な論議を抜きにした戦後復興人的支援策などが今論じられてきております。湾岸戦争で被害のあった地域の余剰の労働力を日本が単純労働者として受け入れるといったような懐の深い施策、このようなことが国際平和あるいは貢献策の一つとして私どもに求められているというふうに考えますが、大臣いかがでございましょうか。
#117
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しの人たちが難民条約上の難民に該当する、この場合はその所要のまた保護措置をとるということにいたしております。しかしながら、一般の労働者の受け入れという形でありました場合には、先ほど御指摘になりました法律改正で専門的な技術等を有する外国人についてはこの受け入れの幅を広くしたわけでございますけれども、先ほどもお答えを申し上げましたが、いわゆる単純労働者ということになりますとなかなかこれはいろいろな問題がありますので、当面受け入れるということは非常に問題があるので慎重な検討をいたしたい、このように申し上げているところでございまして、今の段階ではこの方針により対処するつもりでございます。
 今お話しの点につきましては、そういったことで湾岸の影響の問題等いろいろたくさんの問題がありますので、そういった問題全体としてこれからどうしていくかにつきましては別途考えることにいたしまして、現段階ではそういう単純労働者
の入国を緩和するということは非常に困難である、このように考えております。
#118
○紀平悌子君 法務省にお伺いしたいのですけれども、法務大臣の御所信の中にも触れられましたけれども、出入国管理法新法のときにさまざまの論議があったことは御案内のとおりでございます。それで、近い将来に向けて出入国管理基本計画というものを秋ごろまでに策定の上で御発表というふうに伺っております。現時点まででどのような検討が行われてきましたか教えていただきたいのです。特に、中期的あるいは長期的というふうに課題別にしておられますけれども、具体的にお教えいただければありがたいと思います。
#119
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘の出入国管理基本計画につきましては、まず昨年の六月一日、改正入管法が施行されましたその後の状況というものを現在把握することに努めている次第でございますが、それも含めまして最近の外国人の入国、在留の状況というものの動向分析を行っているわけでございます。それと並行いたしまして、本計画の重点になる技術、技能等を有する外国人の方々あるいは留学生、就学生等の方々につきまして受け入れ範囲等の問題について、日本の国の全体の姿、またその中には経済的な視点も入っておりますし、またそれ以外の視点も入っておりますが、そういう総合的な視野に立って今、中長期的な観点からの検討を進めているところでございます。
 御指摘のように、本年の秋口をめどにこの計画が策定できるよう鋭意作業中でございますが、それに関連いたしまして、この法案を本委員会でも御審議いただきましたときにちょうだいいたしましたいろいろの御意見というものも踏まえまして十分の検討を行いたいと思っておりますが、特に各界の有識者から成る出入国管理政策懇談会というものを昨年の十一月に法務省において発足をさせまして、各界の有識者の方々からも御意見を聴取するというような努力を今続けているところでございます。
#120
○紀平悌子君 犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護について法務省にお伺いしたいと思います。たくさんございますが、ちょっと飛ばしまして、非行少年の問題についてお伺いします。
 豊かさの中での非行とか残虐性、粗暴化などの従来見られなかったような犯罪傾向が顕著である例が多いと聞きますけれども、こうした少年はそもそも家庭で健全な育成をなし得なかったことから犯罪行動に走る例も多いと考えられます。大臣の所信の中では、「更生保護機関による社会内処遇を一層充実強化」というふうになっておりますけれども、犯罪における少年の家庭的教育基盤の欠如というものをどんな方法で処遇上カバーしようとしておられるのか、法務省の御見解を伺いたいと思います。
#121
○政府委員(佐藤勲平君) 今御質問の更生保護機関による社会内処遇ということでございますが、それにつきましては非行少年を社会の中にあって普通の生活をさせながら、保護司の皆さんの協力を得てその立ち直りを図っておるところでございまして、ここには当然家庭というものがございます。今委員御質問の点にかかわるわけでございますが、その家庭にある少年の処遇といたしましては、例えば少年の家族からの相談に応じたり、また家庭内の問題の解決の援助をいたしたりしておるわけでございまして、これらを通じまして対象少年の立ち直りのための家庭的な教育基盤の強化に努めておるところでございます。それが一つでございます。
 あともう一つ、今申し上げましたのは個々の対象少年の改善、更生ということでございますが、それに合わせましてそのほかまだ別の活動がございまして、それは地域の婦人のボランティアであります更生保護婦人会の皆さんによる子育てなどをテーマとする地域で行われます集会、一般的にミニ集会というふうに申しておりますけれども、そのような集会の開催などによりまして、いわば家庭の養育機能の強化に努めるほか、また、少年のよい友達となってその立ち直りを助ける、これも青年のボランティアでございますけれども、BBS会員というのがございます。その皆さんの協力をいただいて少年が犯罪や非行に陥らないようにするための地域環境の浄化、それから非行防止のための地域啓発活動というものに取り組んでおるところでございます。
 これらの活動が、結局は地域社会におきます家庭の教育基盤の強化に資することになっているというふうに考えておるところでございます。私どもといたしましては、これらの方法を一層いろいろ工夫をいたしまして努力いたしたいというふうに考えておるところでございます。
#122
○紀平悌子君 法務大臣にお伺いしたいのですけれども、水俣裁判でございます。
 集団化、大型化の原告団訴訟の一つに水俣病裁判がございます。この裁判の被告はチッソ、熊本県、国ということでございますけれども、裁判所側の和解勧告による和解のテーブルにまだ国は着いておられない、それ以外は全部お着きになって、事実上の中身も少しずつ進められているという状況でございます。これは社会的にも世論の批判の非常に大きいところでございますので、福祉大国日本ということでとるべき政策は、やはり国もテーブルに着くべきだと思いますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
#123
○国務大臣(左藤恵君) 水俣病の被害者に対します救済制度といたしまして既に公害健康被害の補償等に関する法律、これに基づきまして認定制度があって、そしてこの認定制度に基づきましてさらに公正な救済が図られている、このように承知いたしております。
 各地の水俣病訴訟では、さきに公表されました国の見解のとおりに、国の法的責任の有無が問題とされておる上に、原告らが水俣病に罹患しているかどうかという点も重要な争点となっておりまして、これらは国の行政のあり方の根幹にかかわる問題であるばかりでなくて、当事者間の主張が大きく隔たっている。そういうことで、和解に応ずるのが相当でなく、また裁判所の公正な判断が何か得られないかということで、今我々の方としましては和解には応ずることができない、こういう姿勢をとっておることを御理解いただきたいと思います。
#124
○紀平悌子君 大変残念な内容の御答弁でございました。
 いま一つ、人権擁護の非常に切実に求められる領域で部落解放問題がございます。
 部落解放基本法についてもお伺いしたいと思うのですが、それは次回に譲りまして、法のもとの平等の理念の実現ということで、五年間の期限つきで昭和六十二年に定められた地対財特法、これが来年の三月三十一日で期限切れになります。国としてどのような対策をとっていくべきか、法務大臣としての基本的な御見解を伺いたいと思います。
#125
○国務大臣(左藤恵君) 昭和四十四年以来今日まで推進せられてきました施策の結果、同和地区の実態的差別につきましては改善に相当見るべきものがある、このように思われるわけでありますけれども、心理的な差別の面ではなおいろいろの問題が残されております。法務省として、国民が同和問題に正しい認識と深い理解を得るように努めて、心理的な差別を解消するためにどうしたらいいか、さらに啓発活動について粘り強く展開していきたい、このように考えておるところでございます。
#126
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#127
○理事(中野鉄造君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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