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#1
第120回国会 法務委員会 第4号
平成三年三月二十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月七日
    辞任         補欠選任
     高井 和伸君     山田耕三郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                田辺 哲夫君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                山本 富雄君
                久保田真苗君
                千葉 景子君
                八百板 正君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省矯正局長
       事務代理     堀   雄君
       法務省保護局長  佐藤 勲平君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   金谷 利廣君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   泉  徳治君
       最高裁判所事務
       総局民事局長兼
       最高裁判所事務
       総局行政局長   今井  功君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   島田 仁郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    石附  弘君
       外務省国際連合
       局人権難民課長  角崎 利夫君
       文部省初等中等
       教育局高等学校
       課長       辻村 哲夫君
       厚生省社会局保
       護課長      炭谷  茂君
       労働省労働基準
       局補償課長    出村 能延君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (当面の法務行政に関する件)
○罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る七日、高井和伸君が委員を辞任され、その補欠として山田耕三郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(矢原秀男君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。
#4
○国務大臣(左藤恵君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を五人増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において、高等裁判所における工業所有権関係事件並びに地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を六十五人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十八人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#5
○委員長(矢原秀男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○千葉景子君 きょうは、まず裁判所職員定員法について何点か御質問させていただきたいと思います。
 この裁判所職員定員法というのは、毎年審議をさせていただいている法律でございまして、その都度各部署についての定員の増加あるいは減員について審議をさせていただいているわけなんですけれども、どうも毎回その都度少しずつふえたり減ったりということで、もう少し何と言うんでしょうか、長期的な展望とかあるいは適正な人員配置、その全体像みたいなものが見えてこないものだろうかということを常々考えているところなんです。ただ、事件数の増減とかあるいはまた事件内容の変化などございますから、一概にこれが適正であり、こうでなくてはならないということを決めるのもなかなか難しいところかと思いますけれども、そんなところもちょっと頭に置きながら、何点かお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
 今回の第一点というのは、裁判官の員数の増加ということで、判事補について五名増加をすると
いうことでございます。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るためということなんですけれども、地裁の民事訴訟事件の適正迅速な処理というのは、これはもっともというか、何ら否定をすることもなく当然のことでございまして、増減とは別に当然あるべき姿だというふうに思うんです。今回それが特に五名ということになっているわけなんですけれども、ちょっと実情から見てみますと、例えば現在の地裁の民事訴訟事件ですが、これをいただいた資料から見ますと、平成元年で十一万七千四百八十三件、それからその他の年の大体の数を見てみますと、ほぼ十一万から十二万件ぐらいの数になっているのではないかというふうに思うんです。そして、平均審理期間が平成元年で十二・四カ月、約一年。これも大体一年前後というのが平均の審理期間ではないかというふうに思うんです。
 こういう現状と、それから適正迅速な処理ということを考えてみますと、一体適正迅速というのは――適正の部分はちょっとあれとしましても、迅速といいましても一体これはどの程度、じゃ今のこの一年前後というのがどうなんだ、あるいは何カ月に減れば迅速と言えるのかというのも難しいと思いますが、今回もできれば迅速な処理をしようということで、五名ではございますけれども増加の方向にしているということですので、この辺の今後の展望というんでしょうか、適正迅速という意味の内容ですけれども、どんな方向に考えていらっしゃるのか、ちょっとその辺についてまずお聞きしたいと思います。
#7
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 大変難しいお尋ねでございまして、審理期間につきましては委員の御指摘のとおりのような数字になっております。しかし、これも争いのない事件も含めての平均審理期間でございまして、争いのある、いわゆる対席判決の事件となりますと、やはりその倍ぐらいのところを要しております。一件一件どのくらいがいいかということは非常にこれは判定しにくうございまして、事件の中には当然いろいろと争点がたくさんあって、審理に相当の日数を要するという事件もございますし、またうまく合理的な訴訟運営をすれば二、三回で判決に至るという事件もございます。
 そういった点から、どの辺をもっていい数字であるかということはすぐにはお答えできないわけでございますが、委員も御承知のとおり、今民事訴訟の運営の改善ということにつきましては裁判所も大変力を注いでおるところでございます。また、弁護士会等にもお願いいたしまして、訴訟関係人の協力を得て、これからは今までのような期日と期日の間が長く、あるいは証拠調べも小刻みに五月雨的に行うというような審理の形態を何とか改めて、法廷をもう少し口頭弁論主義本来の精神を生かした形で運用したいということで一生懸命努力しておるところでございます。
 そういう形で、具体的な数字では申し上げられないのですが、審理期間をもっとより一層短縮するような形で審理を運びたい、こう考えておるところでございます。
#8
○千葉景子君 やはり弁論主義の実を上げるということになりますと、一人の裁判官が大量の手持ちの事件を抱えるということになりますと、これはなかなか難しい部分もあろうかというふうに思うんです。そういう意味で、やはり少しずつでも裁判官の数をふやしていくという方向は当然とられてしかるべきだというふうに思うんですが、今回は判事補の五人増加、判事については今回は特にございませんけれども、どんなふうにお考えか。これはふやそうといっても資格の問題もございますし、すぐにふやせばその員数が充足されるというわけにもなかなかいかないところだと思いますけれども、判事補を今回は五人ですが、今後の展望あるいは判事についての今後の見通し、考え方などがございましたらばお教えいただきたいと思います。
#9
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 訴訟の審理の充実強化を図るためには、特例以上の判事補あるいは判事の増員をもって充てるのが本筋でございます。判事補は何分、合議の一員となることはできますが、普通の事件を一人で裁判することはできないわけでございますので、特例以上の判事補あるいは判事の増員をすべきではございます。しかし、最近最高裁判所といたしましては、弁護士からの判事任官ということも弁護士会の方に積極的に働きかけてはおりますが、そして、それに応じていただいている数も若干は出ておるのでございますが、現実の問題としてはそれに多くを望むことはできないということでございます。
 そんなところから、将来特例以上の戦力になる裁判官をふやすには、現実の問題としては司法修習生から判事補になるところをふやしまして、それの五年の経過あるいは十年の経過を持って戦力になる裁判官をふやすということで臨まざるを得ないわけでございます。そんなところから、かつても九年余り判事補を増員し、その後続けて九年間判事を増員したということで対処いたしたわけでございまして、今回も基本的には同じ考え方に立っておりまして、本来は一人前の戦力である裁判官をふやすべきではあるが、まず判事補の方をふやしていくという構想でございます。
 それとともに、最近の民事裁判の審理の進め方等を見ておりますと、やはり判事補自体がいろいろ活躍いたしまして、それによって審理が相当速やかに運ぶという形のところもございますので、将来の戦力という含みではございますが、判事補五人の手当てをしていただくことによっても相当程度の改善はできる。そういったところから、昨年までは簡易裁判所判事の増員を三年続けてお願いしたわけでございますが、またことしから地家裁の裁判の充実ということを頭に置きまして、判事補の増員という計画に入ったというところでございます。
#10
○千葉景子君 多分、そうなりますと今後も判事補を増加をしながら養成をしていくといいますか、判事の数がふえるような下準備をさらにされていくということになろうかというふうに思いますが、やはり迅速な処理ということを実現するために、私どももこういう増員についてはぜひ考えていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから第二点目としては、今回は裁判官以外の裁判所の職員について増減がございます。
 一つは、高等裁判所における工業所有権関係の事件、これについて適正迅速な処理を図ろうということで調査官二名という増員でございます。これも、裁判官の問題と同じように、大変二名というのはささやかなような感じもしないではございませんで、この事件の処理について二名というのは、今回は二名だけれども今後もう少し充実していきたいという方向にあるのか、あるいは二名の増員で当分は何とか対処できるだろうということなのか。その辺のやはり見通しといいますか、現状というのはどうなんでしょう。
#11
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 工業所有権関係の調査官二名の増員というのは少ないのではないかという御指摘でございますが、工業所有権関係の調査官の現在員は十五人という非常に現在でも少ない数でございます。また事件数自体も、この法律案関係資料の最後の二十六ページに事件数を登載していただきましたが、非常に事件数も少のうございます。あわせて、調査官の増員ということになりますと、特許庁等の外部からの出向をお願いするわけでございまして、その辺の給源の関係もございまして今回二名の増員ということにさせていただいたわけでございます。
 将来どうしていくかということについて、今ここで数字をもって示せる具体的な計画はないのでございますが、ただ、最近の趨勢にかんがみますと、特許庁の方で審査体制を強化されておられるというようなところがございますので、今後必要に応じて工業所有権関係事件の調査官につきましても適時の人的手当てを行えるように、特許庁の事件処理体制の状況とかあるいは工業所有権関係の事件数の動向などを注意深く見て必要な対応は速やかにしなければならない、こう考えております。
#12
○千葉景子君 今回は工業所有権関係の事件について少し体制を強化しようということなんですけれども、それ以外にも、特殊事件といいましょうか、専門事件と言われるようなものがございます。そういう部分についての処理の体制、例えば調査官を専門的分野でふやすとかあるいは体制を考えるとか、そういうことは何か計画をされているとか検討をされているとかいうことはございますのですか。
#13
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 調査官といたしましては、工業所有権関係以外にも租税関係の調査官、これは五人おります。あるいは海難審判関係、あるいは建築関係、それぞれ一人の調査官を抱えております。これらにつきましては、さしあたっては増員の必要はない、こう考えておるのでございますが、ただ、これらの専門分野につきましても、これからも下級裁の意見もよく聞き、また事件数の動向を見て検討する姿勢は常に保っていなければならない、こう考えておるところでございます。
#14
○千葉景子君 この高裁の工業所有権それから地裁の事件処理のために増員ということの反面、これはこのところそういう傾向にあろうかと思うんですが、司法行政事務の簡素化ということで、今回は三十七人の減員ということになっています。
 これは、お聞きするところによりますと、例えばタイピストの方ですとかそれから浄書の仕事とか、こういう部分が機械化をされたりOA化されるというようなことで順次減員になっているということでございます。それから技能労務関係ですね、印刷とかそういうところも減員となってくるわけですけれども、これは現在でも徐々に減員をされてますが、現実にはまだかなりの数のその仕事に携わっている方がいらっしゃるわけですね、定員としても。ここの部分は今後はどうなんでしょうか、順次減員をしてもう相当の部分がほかの職務に転換をされていくとか、今後もその減員というのは相当の割合で続けていくことになるんでしょうか。
#15
○最高裁判所長宮代理者(金谷利廣君) 毎年度そうでございますが、今回の三十七人のこの定員削減は政府の第七次定員削減計画に協力しての減員でございます。裁判所は政府の定員削減計画に拘束されるものではございませんが、裁判部門は別といたしまして、司法行政部門というのは他の省庁と同性質のものとも言える、そういったところから簡素化、能率化を図っていく余地があるというところでこの定員削減に協力しているわけでございます。
 この内容は、委員から御指摘いただきましたとおり、基本的にはタイピストと技能労務職員でございます。タイピストの方は、ワープロを初めとしますOA機器の導入によりましてタイピストの浄書に回さなくてもいい文書がふえております。あるいは、ワープロ、複写機その他の機械の導入あるいは事務の簡素化、合理化ということで文書を減らすということもどんどん進んでおります。そういったところから、ここのところ例年タイピストで定員削減計画に対する協力部分を受ける。あるいは、技能労務職員の方につきましては、これは庁舎の維持管理業務の一部を民間に委託するという形をとることができるものでございます。そういったところからこういうタイピスト、技能労務職員ということで定員削減を受けているわけでございます。
 ことしで第七次削減計画が終わるわけでございまして、今後のことはまたそういう協力要請があって検討するということになりますが、もし受けるとすれば、基本的にはこういったOA化によって事務の減ってくるタイピスト、あるいは民間委託等の可能な庁舎の維持管理業務の技能労務職あるいは印刷工、そういったところで受けるのが基本的な流れになるだろう、こう見ております。
#16
○千葉景子君 ところで、今回は定員の増加ということによって裁判の適正迅速な処理を図る条件をつくっていこうということの法律でございますけれども、もう一方でこういう人的、物的な部分を充実して裁判内容を深めていくということが必要だと思うんです。国民の裁判を受ける権利という意味から考えますと、もう一方で民主的な司法という意味では国民が司法に関心を持ち、あるいは審理に納得をし、民主的な手法でそこに国民が参加をするというような部分にも関心を持っていかなければいけないのではないかなというふうに思うんです。
 この国民の司法参加といいますか、司法の民主化というような部分については大変最近さまざまな意見も出され、あるいは検討も加えられているというふうに言えるのではないかというふうに思います。例えば、我が国で現在とられているこういう部分の制度として考えますと、調停なども一つの形かと思いますし、あるいは参与員の制度であるとか検察審査会、それから最高裁判所裁判官の国民審査、これなどもやはり一つの形であろうかと思います。それから、これが若干最近話題になっているようですけれども、司法委員の制度、こういう幾つかの制度を通じて民主的な司法、あるいは国民の司法参加というようなことが担保されているように思われます。最高裁でも、何回かお尋ねをさせていただきましたけれども、陪審制とかあるいは参審制の問題について研究をなさっているということも聞いているところでございます。ぜひこういう部分についても今後さらに研究や検討を深めていただきたいというふうに思っているところなんです。
 そこで、今回ちょうど司法委員の制度というのが改めて注目までいくかどうかわかりませんけれども、若干指摘をされていることなどもありますので、ちょっと何点か国民の司法参加という意味でお聞きをしておきたいというふうに思うんです。その中で、国民審査の問題について、私は昨年アメリカで司法関係のちょっと様子を見る機会があったのですが、裁判官の任免にかかわりますときに、アメリカの国会では聴聞会のような形で裁判官任免についてのさまざまな議論をしているというような姿も拝見をいたしました。これは歴史とか制度の違いがありますのでなかなか難しい面はあろうかと思いますけれども、これは内閣の任命にかかわる問題ですので、裁判所や法務省に直接お聞きすることではないかと思いますのであれしますが、そういう中で非常に司法に対する国民の関心とかあるいはチェック機能というのが働いていくということも言えるんじゃないかと思うんです。
 この問題はちょっとおきますが、そういう中で例えば検察審査会、これなどは広くどんな国民でも参加の機会にめぐり会えるといいますか、めぐってくる可能性があるという意味では大変開かれた制度でもあろうかというふうに思うんです。改めて今回検察審査会についていろいろ資料などをいただいてみたんですけれども、これを見ますと国民の裁判とか検察に対する率直な考え方とかあるいは思いみたいなものが出てくるんじゃないかなという気がいたします。例えば、審査事件としては業務上過失の事件がほぼ例年一位を占めている。これは交通事故などに絡んで被害者の方々が訴え出ているというケースも多いのかなという感じがいたしますし、それから、年によってさまざまな事件があるようですけれども、大体入ってくるのが職権乱用とかあるいは公選法違反とか、こういう事件がよく検察審査会にかかっているということがうかがえるわけです。
 これは非常に特殊な部分ですので、たまたま起こった事件とか、この制度をよく知っておられてどうも腹立つから訴えてみようというときもあろうかと思うんですけれども、ただ、こういうのを見ますと、社会的な問題とかあるいは社会の公平とか公正さ、こういうものについてはかなり敏感なものを持っているのではないかなという感じがするわけです。そういう意味では、この検察審査会というものの持つ意義は大変重要であるし、かなりいい機能というものをつくれる余地があろうかというふうに思うんです。そういう意味では、この中で、起訴相当であるとか不起訴相当と議決されるものの数というのはそんなには多くはない
んですけれども、やっぱりこういうところに公正であってほしいとか、こういうところには厳しい目を向けておいてほしいという気持ちがあらわれているのではないかなというふうに思います。
 そういう意味で、この検察審査会の制度について、これは裁判所の管轄として行われているわけなのですが、裁判所としてはこの制度についてどんなふうにお考えなのか、今後もう少し国民にわかるようにしていこうとお考えなのかどうか、その辺の御認識をお尋ねしたい。それから法務省の方も、こういうものから出てきます国民の意識とか考え方というものを率直に受けとめていく必要というものがあろうかと思うんですけれども、その辺の考え方をお尋ねしたいというふうに思います。
#17
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) それでは、まず裁判所の方からお答えしたいと思います。
 検察審査会制度でありますが、ただいま委員も御指摘のとおり、国民が刑事司法に参加する画期的な制度ということで昭和二十三年七月に発足して以来四十有余年になるわけでございますけれども、この間にあって着実に国民の間に根をおろしてまいり、今日までよくその使命を果たしてきたというふうに私どもは考えております。裁判所といたしましてこの制度の維持、運営に当たる者といたしましては、この制度がさらに一層広く国民に知られまして、より深く社会に根をおろし、国民の期待にさらに十分こたえることができますように一層努力してまいりたいと思っております。
 特に、この検審制度につきましてはやはり国民の間に十分よく知られるべく広報活動が必要だというふうに認識しておりますので、今後とも制度の広報活動につきましては十分意を用いて力を注いでまいりたいと思っております。
#18
○政府委員(井嶋一友君) 検察審査会制度につきましては、委員仰せのとおり、国民の司法参加といったものの一環として重要な制度であり、戦後二十三年に発足以来着実にその司法制度の中に、特に刑事手続の中に定着しているものだというふうに認識をしておるわけでございます。やはり公訴権の独占的行使を行っております検察官の行います処分、特に不起訴処分についてこういった民意を反映する、そしてより一層の適正化を図るというこの制度は我が国独自の制度でございますけれども、非常に画期的な制度であるというふうに考えております。委員仰せのとおり、発足以来それほどの事件数ではないのでありますけれども、そういった議決をいただいた事件の中ではやはりそれなりの再起訴事件といったものもあるわけでございまして、そういったものの果たします役割といったものを考えまして、検察といたしましても常にそういった制度の存在を十分認識しながら事件の処理に適正を期しておるということでございます。
 ただ、平成二年に行いました国民の世論調査によりましても、これは検察審査会制度を知っておるかというアンケートでございますが、前回の調査から比べますと一〇%程度上がりましたけれども、まだ三〇%程度の知名度であるというふうに世論調査結果が出ておるわけでございまして、こういったものをもう少し上げる努力をする必要があるだろう。今裁判所がおっしゃったような広報の充実といったことが一つ重要な要素であろうと考えておりますが、これにつきましては第一義的には裁判所がおやりになることではございましょうけれども、検察庁も十分協力してやらなきゃならないという認識でございまして、既に庁舎内の待合室等にこういった制度の仕組みを書いた看板でございますとか、あるいは裁判所がおつくりになったパンフレット等を置いておいて広報に努めるといったようなことは従来からもやっておるわけでございまして、これからもそういった点については充実をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
#19
○千葉景子君 なかなかこういう制度は、いざとなって何か訴え出るところはないだろうかというときにようやっと気がつくとか、あるいは逆に言えば検察審査会からあなたが任命をされましたということで通知が来てこれまたびっくりするとか、そういうことが大体の姿ではなかろうかなというふうに思うんですけれども、やはりこういうものが適切に利用されることによって司法の民主化ということも一つの分野として実現されるだろうというふうに思いますので、ぜひまた今後も充実に努めていただきたいというふうに思います。
 幾つかこの検察審査会の中で不起訴不当、起訴相当というような議決があったり審査をされた事件の内容などを見ますと、例えば航空機の事件でございますとか、あるいは文化財の保護に関する問題であるとか、あるいは業務上横領、公的な部分の不正な捜査の事件であるとか、あるいは例えば核燃料とか、いわゆる核にかかわる問題であるとか、あるいは大きなホテルの火災とか、あるいは増収賄の事件であるとか、やはり非常に社会的に、これには厳格にとか、影響も大きいからということで審理をされて結論が出るという部分が多いように思うんですね。そういう意味では、先ほど申しましたように、どうしても腹立つから審査を受けようという部分もあろうかと思いますけれども、やっぱりこれが実際に機能しているのはそういう社会的な公正さを求めるような部分で判断が加えられているということも言えようかと思いますので、ぜひ今後のこの制度の充実、そして運用について適切な処理を図っていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つは司法委員制度、これについても今回私もまた改めて勉強をさせていただいた部分なのでございますけれども、ちょうど日弁連が民事訴訟の改正に向けてこういう点についても検討してみたらどうだろうかということで出されました中にも、一つは国民の司法参加とその制度化、それから司法委員制度の充実といいますか、あるいは地裁の段階でも導入をしてみるなどを検討したらどうか、こういう問題提起の段階だろうと思いますけれども、こういうことが言われております。これも、なかなかこれは知られていない制度ではなかろうかなというふうに思いますので、概括でよろしいですので簡単にちょっとこの制度がどういうものかということを御説明いただけますでしょうか。
#20
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 司法委員の制度は、御指摘のように、国民の司法参加ということで民事の手続では非常に重要な地位を占めている制度だと思われます。これも今次大戦後の司法改革の一つということで設けられた制度でございまして、委員御承知のとおりでございますが、簡易裁判所の民事裁判につきまして民間の良識を反映させるために民間の有識者から選ばれました司法委員が例えば和解を補助したり、審理に立ち会って意見を述べたりする、こういう制度でございます。
 現在、司法委員の数でございますが、これは司法委員候補者ということでございますが、大体五千五百人程度ということでございます。それで現在、司法委員が関与した事件がどの程度あるかということでございますが、これは平成二年度、昨年でございます。これはまだ正確な集計はできておりませんので概数ということでお聞きいただきたいのでございますが、簡易裁判所の事件の中で約一万三千件程度関与しておるということでございまして、簡易裁判所の全事件の割合にいたしますと約一三%ぐらいを司法委員が関与して処理をされておるということでございます。それから、簡易裁判所の事件の中には欠席判決という争いのない事件があるわけでございますが、これを除きます事件に対する割合を申し上げますと約二二%という数になっておりまして、かなり活用はされておるのではないかというふうに考えております。
#21
○千葉景子君 この簡裁での司法委員制度ですけれども、今は大体資料などからも、それからお聞きするところからも和解への関与というのがほとんどのケースではなかろうかというふうに思うんですね。これは裁判の効率化とか、先ほど問題が出ておりますけれども、やはり迅速な裁判を進め
るという意味では裁判官だけが全部を処理するのではなくて、こういう司法委員によって和解がまた別な形で進められるということは非常に意味があるだろうと思いますし、それから当事者にとってもまた逆に時間をとって話を聞いてもらえるというようなこともあり、そういう意味での機能というのはそれなりに果たしているのではなかろうかというふうに思うんですね。
 現在はどういう例えば事件などに司法委員が関与している部分が多いのかどうか、ちょっとその辺をお聞きしたいんです。それはやはりこれからは専門的な部分、知識とかそういうものがどうしても必要になったり、法律的な素養といいますか知識、こういうものがないとなかなか和解などでも難しいという部分もあろうかと思うんですけれども、その辺は現在はどうでしょうか、どんな種類の事件に関与している場合が多いのか、あるいはそういう専門的な知識などの面で問題点などはないのかどうかお尋ねしたいと思います。
#22
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 司法委員の関与した事件でございますが、こういう事件に特に司法委員を使っておるということはございません。簡易裁判所事件一般についてということでございます。ただ、簡易裁判所の事件の中にも、今御指摘のように、専門的な知識を要する事件、例えば土地の問題であるとかあるいは医療関係の事件というようなことがございます。そのようなことでございますので、司法委員にもできる限りそういう意味での専門的な知識をお持ちの方というのも登用したいというふうに考えておるわけでございます。
 そのような事件につきましては、和解だけではなくて審理について意見を述べるというようなことにも司法委員を活用しなければいけない、現在はおっしゃるように和解の補助ということが非常に多いわけでございますけれども、もう一つの役割である審理について意見を述べるということにつきましても今後は活用していかなければならない、このように考えております。
#23
○千葉景子君 これも国民の司法参加の一つの形として十分に利用できるし、それから現在でも簡裁の場合に欠席裁判を除くと二二%ということですから、かなり機能しているのではなかろうかというふうに思うんですね。
 ただ、先ほど言いましたように、専門的な知識を持った方が参加をするということと、それからごく普通の市民の考えあるいは判断基準なりを、少し盛り込んでいくという両面をどのように調和させていくかというのも、これはなかなか難しいところがあろうかというふうに思うんです。今後この制度については、地裁での導入とか、あるいはさらに先ほど言いましたように、和解ばかりではなくて審理への立ち会いとか、そういう部分でも、進む方向にいくんでしょうか。それとも、この司法委員の制度だけではなくて、もう少し、ほかの制度等も含めて総合的に国民参加ということを実現していく方向なのか。その辺についてのお考えみたいなものはございますでしょうか。
#24
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 現在の司法委員制度は、先ほど申しましたように、簡易裁判所におきまして和解の補助、それから審理への関与ということでございます。これについては、今後ともこれを活用していきたいというのが裁判所の考えでございます。
 それから、この制度をまたそれ以外に拡充していくかどうかということにつきましては、これはいろんなことを考えなければいけませんので、今直ちにどちらの方向だということはちょっと申し上げにくいということでお許しいただきたいと思います。
#25
○千葉景子君 これは一応民訴の規定の問題ですので、拡充とかまた制度を変えていくということになれば法改正などの問題も出てこようかと思いますので、一概にすぐに結論が出ない問題かと思いますけれども、やはり現在研究をなさっていらっしゃると思いますが、陪審とか参審とかこういう問題も、これも一朝一夕にきょうあしたということにもなりません。そういう意味では、こういう部分などからさらに国民の意識を喚起していく、関心を大きくしていく、そういうことを通じてまた陪審や参審などへの道を開いていくということもぜひ考えていただきたいというふうに思っているところでございます。
 最後になりますけれども、きょうは検察審査会と司法委員制度の問題についてちょっとお尋ねしたんですが、このように今国民の司法参加、司法の民主的な運営というものは、迅速な処理、適正な処理と同時に非常にやはり求められている部分ではなかろうかというふうに思うんですね。そういう意味では、裁判所におかれましてもそういう部分について研究を早めていただくということも必要かと思いますが、そういうものを受けとめて、法務省でもそういう部分に協力をし、あるいはそういう国民的な意識を十分に認識をしていただくということが必要じゃないかと思います。
 最後に、大臣にこの国民の司法参加あるいは司法の民主化という問題についての基本的なお考えをお聞きしまして、終わりにしたいというふうに思います。
#26
○国務大臣(左藤恵君) お話しのとおり、国民が司法に参加する制度など、国民が司法に近づけるようにするという動き、これは大切なことだと思います。より身近なものになることは、そういった意味で我々としても十分考えていかなければならない問題で、国民の意見に注意を払いながら、また裁判所の方のいろんな積極的なそういったものに対する対処に我々も関心を持って対応していきたい、このように考えているところでございます。
#27
○千葉景子君 終わります。
#28
○北村哲男君 私は、まず法案についての質問から始めたいと思います。
 実は、昨年初めてこの裁判所職員定員法の改正法案の審議に参加をしました。それでとても奇異に感じたのは、わずか数名の裁判官あるいは職員の増員ということをどうしてわざわざこうした手数をかけて国会で審議をしなきゃならないかということでございます。特に行政庁の総定員法との関係で、一定の大まかな計画に基づいて定員の上限を定めてそのもとで予算措置をとって、後は内部の運用で毎年の増減を決めていくという方式をとることはできないんだろうか、そういう質問をしてみました。これはまた、既に私だけではなくて、議事録を繰ってみますと、その前の年には千葉委員が同じような質問をしておられますし、また今回の衆議院でも小森委員の方から同様な質問がなされております。
 これに対して裁判所側は、できればそういう方法をとりたいんだということで法務省とも協議をして研究しているというお答えがあります。そしてまた、しかしそれができない理由として、行政庁は各省庁を全体としてにらんでいるのに対して、裁判所は単一の官庁である。したがって、こちらの需要が上がってこちらの需要が下がったというような要素が比較的起こりにくいんだということで、総定員法のような形はとりにくい。あるいは、判事とか判事補とかあるいは簡裁判事というふうな区分があることも融通性に欠けるんだというふうに言われております。それにしても、今のようなやり方がむだが多いということは承知しておられて、一生懸命考えていきたいというふうに毎度のように言っておられます。
 この一生懸命に考えておられるということは、改善の必要ありと裁判所は本当に考えておられるんだと思いますけれども、あるいはこれがもう私の経験でも、三度、二年間続いて同じことをお答えになっているということは、この法律ができてからもう恐らく相当長い間かかっておられて、常にそういうことが問題にされ同じようなお答えをしてこられているように感じるんですけれども、一体どの程度までその改善が考えておられるのか。その内容と今後の方向づけを少し本腰を入れてこれからも研究願いたいんですが、今のところどの辺までやっておられるのかということをお聞きしたいと思います。
#29
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 裁判所に
おけるそういう総定員法的な検討の必要性あるいはそれの難しさについて、北村委員十分御理解いただいているところでございますので詳しくは申し上げないのでございますが、先ほども御指摘のとおり、一昨年は千葉委員の方から、昨年は北村委員の方から総定員法的なものを考えたらどうかという御指摘をいただきました。私どもの方としましても、非常に検討に値することですので一生懸命やりたい、こうお答え申し上げたということがございます。
 その後私どもの方では、最高裁の方では総務局でございますが、法務省の担当部署との間で、こういう裁判所の職員について総定員法的なものを取り入れる上でのいろいろな問題点というものを検討しようということで勉強会を開いております。いろいろ忙しいところで時には狂ったりもいたしますが、二カ月に一回程度のペースでこれまで数回にわたり勉強会をいたしました。定員法の沿革だとか、あるいは各種公務員の定員の定め方、あるいは行政機関の総定員法制定の背景等について勉強いたしましたし、また外国への留学者を通じまして諸外国の立法形式を現在調査しているところでございます。
 また一方では、この総定員法的なものをもし裁判所に取り入れるとなりますと、お話にも出ておりますとおり、何をもって数を定めるかというところが非常に難しいところでございまして、理念をどこに求めるかというところが難しいのでございますが、さしあたり常識的に考えられるところとしては、到達可能なある審理形態を頭に置きまして、そのもとでどのくらいの数の裁判官あるいは裁判所職員が要るだろうかというそういう中期的な目標計画を設定して、その数を総定員法的な中で掲げていただく、あとは予算の中でその計画に近づいていく、こういった構想がごく常識的に考えられるわけでございます。
 しかし、必要な中期的な目標としての裁判官の数の設定というのがこれまた非常に難しいところでございまして、いろいろ努力はしておるのでございますが、事件数の増減の波が激しいとか、あるいは裁判所の事件というのは大小さまざまな事件がございます。また、多種多様な事件がございます。訴訟事件でも非常に長期にかかるものから簡単に済む事件までいろいろございまして、そういう面での測定の難しさということを先般も申し上げました。また、現在民事訴訟の運営改善あるいは訴訟法改正の検討が行われておるわけですが、そのあるべき審理形態に至るにはこれはやはり訴訟関係、特に弁護士さんの御協力をいただかなきゃならないわけでございまして、そのあたりがこれからの審理の形の形態がどのくらいのところで望ましい、到達可能な中期的な目標にたどりつけるかという算定も難しゅうございまして、そういった事情とか、それから御承知のとおりの司法試験改革、これに伴います裁判官の給源の見通しというような要素もございまして、大変申しわけないんですが、まだ具体的なところまで至っていない、もうしばらく時間をちょうだいしたいというところでございます。
#30
○北村哲男君 いろいろと難しいことはわかるんですけれども、これは私どもとしまして積極的に考えていいことなのか、あるいは今までの感触でどうもだめだと、今までどおりでしかやむを得ないんだというふうな考えでいった方がいいのか、その辺、私どももこれからまた起こったときに、もうこんな質問やめたというふうに考えることもできるし、あるいはもうちょっとしつこく一緒にやっていこうという考えもとれると思うんですけれども、それは積極的に考えてよろしいのでございましょうか。
#31
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 私どもといたしましては、この問題は国会の審議権というところとも関係するものでございますので、毎回、毎年こういう定員法の審査ということで裁判所全般の問題についていろいろ御質問いただいて御理解いただくという面ではありがたい面もございます。そういった面での国会の審議権の関係もございますので、委員の先生方の御理解、御協力がいただければぜひこういう総定員法的な方向で進みたいということで積極的な姿勢で検討させていただいております。
#32
○北村哲男君 わかりました。
 次に、この法案は日切れ法案としての扱いをしておられますけれども、もしこの法案が年度内に成立しないとしますと、ここの判事補の五名の増員あるいは職員の二十八人の増員、これは一体どういうふうになるんでしょうか。
#33
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 私ども、これは日切れ法案的扱いをお願いしているわけでございますが、基本的な理由は、裁判官を例にとって申し上げますと、修習生から判事補になるのは四月十日前後の時期に判事補になるわけでございます。そういったところで裁判官を志望している者で裁判官にできる者を全員そろって裁判官にしたい。あるいは事務官につきましても、おくれて少しずれるよりも、一斉に四月一日付で採用できる者は足並みそろえて採用したい。せっかくの人生の門出でございますので、人からおくれてなったという形でなく一斉に採用したいということが具体的な理由の基本でございます。もちろん、こうして御理解いただき、また私ども努力をいたしまして認められた審理充実の体制というものを一日も早く実現したいということが根底にございますが、少し具体的なところで申し上げますれば、そろって一斉に任命したいということが基本でございます。
#34
○北村哲男君 ということは、まあ成立しなければ別ですが、もしこれが五月とか六月になると、ことし採用予定の、例えば百人採用されるとしますと、そのうち五名だけは、成績の悪い順かいい順かわかりませんけれども、どなたか五名だけはこの法律が成立するまでは採用されないということになるんでしょうか。
#35
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 一般的に言えばそういう可能性があるということでございます。そのときのあきぐあい、あるいは判事補の任官希望者の数にもよりますが、基本的には四月の時点でいっぱいいっぱい埋めるという見込みのもとにこういう定員法改正をお願いしておるわけでございますので、おっしゃるとおり、ほとんどの者は四月になれるけれども、一部の者がおくれるという事態が発生するということでございます。
#36
○北村哲男君 結構です。
 次に、私の昨年の質問に関連するんですけれども、今回の法案で判事補の定員を六百三名を五人ふやして六百八名にするということですが、私が昨年同じ法案審査の際に、昨年の場合は判事補がここしばらく据え置かれていたわけですけれども、その理由を尋ねたところ、裁判所側は、昭和四十五年から五十三年までの間はまず判事補を増員して七十六人の増員を認めていただき、この増加を基盤として判事の増員を図ってきたところ、今までに一応判事の充員の方はほぼ限界に近づいたというお答えがありました。そのときに、来年度からは判事補の定員をふやすということは一言も言っておられなかったんですけれども、それが今年度から判事補の増員要求が突然出されたというふうに見えるんですが、その関係について御説明をお願いしたいと思います。
#37
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 昨年そういうお尋ねございまして、私の方で答弁させていただいたところなんですが、先ほども千葉委員からのお尋ねに少し申し上げさせていただいたわけですが、判事補を九年にわたりまして、昭和四十五年から五十三年増員した。それが任官して十年たちますと判事になります。そういったところから今度はそれが十年たった後には判事の方の受け皿を広げなきゃならない。そういうことで判事補を九年増員し、それを基盤としましてその次は五十四年から六十二年までの間に判事の枠を広げるということで対応させていただいた。そこで一応最初の五十三年までの判事補の増員に伴う判事の受け皿の拡張ということは終わったということを申し上げたわけでございます。
 そして、簡裁適配あるいはそこでいろいろ出て
まいりました簡裁の充実といったところから簡易裁判所判事の増員ということに切りかえまして、三年間簡裁判事の増員を認めていただいたわけですが、今回の資料にも出ておりますとおり、幸いと申しますか、簡裁の事件は大きな山を越した形になっておりまして、この統計で見ましても、民事訴訟事件では、昭和五十九年で二十二万四千件、数字は出ておりませんが、六十年には二十三万件余りあった事件が平成元年では十一万三千件、こういうふうに減ってきております。そうした簡裁の事件の減傾向を踏まえまして、簡裁判事の増員を継続するよりも、むしろ民事訴訟の運営改善が強く叫ばれている状況のもとで、また地裁の事件を頭に置き、あるいは家裁にも使える裁判官、すなわち判事補の増員に切りかえる方がよい、こう判断させていただきまして、ことしは判事補に切りかえさせていただいたわけでございます。
#38
○北村哲男君 経過はわかりました。
 ところで、ことしの研修所の修習は終了されたのか予定なのかはっきりしませんけれども、この判事補の志望者、希望者と、それから採用が決定されたのは何人ぐらいか、もしわかりましたら。
#39
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ことし司法研修所の修習を終了いたします修習生は、四十三期生でございますけれども、五百六名卒業する予定でございます。そのうち、現在のところ判事補の志望をいたしております者は九十四名おります。そのほかに簡裁判事または判事補を希望しておる者が一人、それから簡裁判事を希望している者が一人で、合計九十六名の者が希望しているわけでございます。
 これまで、過去におきまして最高の任官がございましたのが昭和二十五年の二期生でございまして、これは百六名ございましたが、それに次ぐものでございまして、九十名を超えますのは二回目、四十年ぶりということで私ども大変喜んでいる次第でございます。
#40
○北村哲男君 それは志望者でありまして、いわゆる採用を決定したというのはまだなんでしょうか。
#41
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 大変失礼いたしました。
 これらの採用者につきまして、今週の末に採用面接をいたしまして、四月九日にそのうちの採用者につきましては判事補の発令をする、こういう予定にいたしております。そういうことですので、まだ採用者の数というものは確定していないわけでございます。
#42
○北村哲男君 この法律との関係なんですけれども、四月九日発令というのは、この法律が通った後に決める関連はどういうことになるんですか。判事補の五名の増員ということと志望者の九十四人、とても多いんですけれども、人数の関係がありますから、この法律が通った暁に決めるのか、あるいはそれは関係がないんですか。ちょっとその辺がはっきりしないんです。関係なしに、通ろうと通るまいと、この方々の成績によって、成績がよくて、しかも品行方正であるなら全員採用するというふうになるんでしょうか。
#43
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 先ほど総務局長からも申しましたように、私どもが現在お願いしております定員増、五名の増員が認められましたら、先ほど申しました希望者の採用が可能になるという状況でございますので、これは法律をお通しいただくということを前提にして採用が可能になる、こういう状況でございます。
#44
○北村哲男君 ちょっとよくわからないんですけれども、じゃ逆にこういう質問をしましょう。私の方が認識が浅いからかもしれませんが、ことしは非常に裁判官の志望者が多いから――これは望ましいことかもしれませんけれども、多いから判事補をふやす法改正案を提出したというふうな関連はあるんですか。
#45
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 先ほど来申し上げておりますとおり、毎年毎年小刻みという御批判はあるんですが、五名程度の数を増員するに当たりましては、広げた枠が埋まるかどうかという見通しを当然考えておりまして、判事補の志望者の数が非常に少ないというようなもとでは枠を広げていただいてもどうせ返す予算をちょうだいするだけだというふうな形になりますので、広げた枠が埋まるだろうかと、その辺の給源の状況を見ながら数を決めさせていただいておるわけでございます。
#46
○北村哲男君 しつこいようですけれども、判事志望者が確定するのは時期的にいつごろなのか、それとこの改正案を最終的に確定されるのは大体いつごろなのか。というのは、志望者の数を見てこの法案をおつくりになるのか、あるいは法案は法案として、裁判所の適正な配置といいますか、業務の内容を見てこれくらい必要だというふうに考えてつくられて、それはそれとしてことしは判事補がとても多かった、あるいは少なかったということをやるのか、その関連性ですね。あるいは直接関係あるのか、その辺はいかがなんでしょうか。
#47
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) これは、増員を必要とするその必要性の強さとの兼ね合いという面もございますが、正確にその年の判事補希望者が出るというのはむしろ年末に近いところでございまして、その前に八月の時点で予算要求いたしますので、正確な数はもちろん予算要求時点では出ていないわけでございます。しかし、その辺の来年どのくらいになりそうかということは極力予測いたしまして、そういったことも考慮いたします。来年全員埋まらないけれども、これは再来年あたりで埋まるだろうというような数ですと、若干埋まらなくても必要性の強い場合には増員要求をさせていただくということもございます。
#48
○北村哲男君 まあ大体わかりました。
 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、裁判所から出された資料を見ますと、簡裁から高裁までの裁判所の民事、刑事の新受件数がいずれも横ばいまたは減少傾向に最近あるわけですけれども、それに関して判事を初め職員数のあり方についてお聞きするんですが、今までもお答えの中にあるかとは思いますけれども、ことしについては判事を初め職員数は現状のままで判事補のみ五名の増員要求されるということの合理的な根拠というものについて、もう一回簡単に御説明願いたいと思います。
#49
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 五名につきましてその根拠というお尋ねでございますが、率直に申し上げさせていただきますが、判事補の増員要求が五名でなければならないという正確な根拠というものはございません。これは基本的にも、先ほど申し上げました現在の民事訴訟法の運営改善のもとにおいて陣容を強化する必要がある、一挙に判事あるいは特例以上の判事補ということの増員の手当てということをしても給源の状況から難しい、やはり長期的な計画ということになるわけでございますが、将来の戦力となる裁判官を増員するには判事補から増員し、そして修習生から判事補への志望者の状況等を見ながらことしは五人程度ということにさせていただいたわけでございます。
 なお、一般職の関係では、それに伴う書記官等の手当ても今回の法案でお願いしているところでございます。
#50
○北村哲男君 先ほど私、質問で少し間違えて、職員数は現状のままというふうに言いましたけれども、職員についてもプラス二十八名ということで、今のような御説明で了解しておきます。
 次に、資料十九ページに関してですが、この中で事務官数が過員百九十七名というとても大幅な過員、そのほかはほとんど欠員なんですけれども事務官だけが異常な過員を示しておるんです。これは定員法との関係ではどういう見方をするのかということの御説明を願いたいと思います。
#51
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 十九ページの資料では、事務官の過員が百九十七という数字が出ております。平成二年十二月一日現在の過員数でございます。裁判所の事務官は、言いますれば裁判所書記官の給源でございまして、事務官
のうちで試験に通りました者を書記官研修所というところで一年または二年かけて養成するわけでございます。そこに入ります数が十二月時点では約三百いるわけでございますが、その分の二百名前後のところが過員という形であらわれておるというふうに御理解いただければいいのではないかと思います。
 定員法の上では、裁判官のように判事、判事補、簡裁判事という区分がございませんで、裁判官以外の職員の数ということで計上されておるわけでございまして、その辺の割り振りの中で、私たちの方はこの書記官研修所で研修を受けてすぐに、一年あるいは二年たって書記官になるであろう者を、このぐらいの限度で過員の扱いで割り振っておるということでございます。もちろん、その他の官職に生じる欠員との見合いになっておりまして、行(一)職員全体で見ました場合は定員をオーバーすることがないという形になっております。
#52
○北村哲男君 書記官の退職者の数が昨年ピークを迎えて、最大限三年の期間で再雇用しようというふうに言われておったようですけれども、書記官について近い将来また欠員を生ずるのは確実だとも一方言われておりますけれども、その辺との関係はどういうふうにお考えなんでしょうか。
#53
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 書記官の大量退職期を迎えました時点で書記官の補充をどうするかということを検討いたしまして、そういう中でそれまでよりも書記官研修所に入れる人員あるいは書記官任用試験で採用する人員をふやすということにしたわけでございまして、そういったことで何とか事件処理に支障を生じないように対応できたわけでございます。そのピークを越えましたので、またこれからの退職者数の予測をもとに書記官研修所に入れる人員をどのくらいにすればよいのか、あるいは任用試験で書記官になる者の数をどうすればいいか、あるいは再任用する者の数をどうすればいいかということを逐年検討していくということでございます。
#54
○北村哲男君 もう一つ、十九ページの上から二番目に裁判所調査官の欠員十五名というところがございますが、これは最高裁の調査官のことなんでしょうか。
#55
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 御指摘のとおり、欠員がございます調査官は最高裁判所の調査官でございます。最高裁判所の場合の調査官の仕事と申しますのは法律審におきます法律関係の調査でございますので、現在下級審の裁判官をもって充てております。この十五名につきましては裁判官をもって充てることができるというポストでございまして、その関係で欠員になっているわけでございます。
#56
○北村哲男君 そうすると、これは判事の区分に入る人たちではなくて、調査官のときにはこちらのいわゆる職員の方に入れてしまう感じになるわけですか。
#57
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 定員上は裁判所調査官という定員で設けられているわけでございますけれども、実際上は下級審の裁判官の身分を持ったままそこに充てられているということでございまして、ちょっとそこのところがややこしいわけでございますが、定員上は裁判所調査官で、実際に働いている者は下級審の身分を持ったままということで、現在働いております調査官は下級審の定員の中に入っている、こういうことでございます。
#58
○北村哲男君 そうすると、いわゆる定員の関係では重複になるのですか。調査官として十五の枠があって、しかも判事として千三百何十人かの枠の中に入っておるということで重複になりませんでしょうか。
#59
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 重複にはならないわけでございまして、この十五につきましてはもちろん下級審の裁判官以外の者で充てることも可能であるという数でございます。したがって、この十五名を判事補以外から充てるということも可能は可能だということで、定員としては重複にはなっていないわけでございます。現実問題としては、先ほど申しましたような形になっているということでございます。
#60
○北村哲男君 わかりました。
 次に、資料十五ページの裁判所事務官の項なんですが、この中に「浄書事務の簡素化、能率化」とありますけれども、この浄書事務の内容はどういうものなのか、それからどういうふうに簡素化をしておるのかということについて説明を願いたいと思います。
#61
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 「浄書事務の簡素化、能率化」と申しますのはちょっとわかりにくい表現で申しわけございませんが、平たく言えばタイピストの削減ということでございます。ワープロ化に伴いましてタイピストによる浄書の量が減少できるということで、ワープロを導入いたしましてそれによる削減、あるいはできるだけ司法行政関係の文書、むだな文書をつくらないとか、そういう司法行政関係の報告文書等の簡素化によってタイピストの必要な人員を削減する、こういうことでございます。
#62
○北村哲男君 次の質問に移ります。
 今民事訴訟法の改正の動きがありますけれども、この民事訴訟法改正の動きは、聞くところによると大体五年ぐらいをめどに改正をしていこうというふうに聞いておるんです。その動きとこの定員法の絡みなんですけれども、今回の定員法の改正はわずかの人数ですが、その関係はどういうふうに関係していくのかという点についての御説明をお願いしたいと思います。
#63
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 御承知のとおり、現在民事訴訟法の改正が検討されておるわけでございます。またもう一方の面では、民事訴訟の運営の改善ということで法改正を待たないでも改めるところは改める、これは一連の流れになろうかと思いますが、そういった民事訴訟法をより充実させ、より迅速に裁判するという形に進むということを大きく念頭に置きまして、今回の判事補の増員ということをしているわけでございます。
 民事訴訟法の改正あるいは民事訴訟法の運営の改善によって、平均的にはどの程度の審理期間で事件が処理できるようになるかという見通しが確かに必要なのでございますが、そのあたりのところにつきましては先ほど千葉委員にお答え申し上げましたとおり、正確な数をはじき出しているわけではございませんが、やはり裁判所の都合による審理期間の長期化ということができるだけないよう、あるいはもう少し裁判官もゆとりを持った形で審理に臨めるという体制をつくりたいということが基盤になりまして、今回の判事補の増員ということを行っているわけでございます。
#64
○北村哲男君 終わります。
#65
○中野鉄造君 裁判所職員定員法の改正法案については、先ほど来同僚議員から種々御質問があっておりますので重複を避けてお尋ねいたしますが、先ほどから言われておりますように、今回の改正案では判事補の増員だけで、しかもそれがわずか五名である、こうなっております。
 今日、刑事事件はともかくとして、民事、家事等の事件については裁判官一人当たりの事件担当量がふえておる、こういうように承知しております。最近刑事事件は横ばい状態である、むしろいささか微減であるというようなことも聞いておりますけれども、しかしそれにしてもやはり行政訴訟あるいは民事訴訟というのはかなりの数ふえております。
 聞くところによりますと、最近の東京地裁の例をとりますと、そういうことが背景にあるからかどうかと思うんですけれども、和解という形で終わっているというようなことが非常に多いように聞いております。これはやはり先ほどから言われておりますように、裁判官の数も少ない、また判決書きということになると相当な時間を要するというようなところから、強制的ということではないでしょうけれども、意図的にといったような形で和解勧告がなされている、その数は今や東京地裁の場合六〇%ですね。そういうようなことも聞いておりまして、関係者の間ではそうしたことはもう常識的な周知の事実としてだんだんこれは恒
常化していくんじゃないかというようなことさえも言われているわけです。
 私は、和解が決して悪いとは申しませんけれども、やはりオーソドックスに判決で事件を解決し、かつ訴訟事件のたまるということを防止しようとすれば、判事補だけではなくて、判事を含めた裁判官のかなりの増員があって当然じゃないのか、こう思うんですが、この点いかがでしょう。
#66
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 和解の運用の実情について申し上げたいと思います。
 最近、民事裁判につきましては、裁判所の方では民事訴訟の運営改善ということで口頭弁論を活性化するということを試みております。具体的にどういうことかと申しますと、今までは五月雨式弁論と申しまして、一カ月に一回程度法廷にあらわれまして法廷で書面の交換をするといった程度で、なかなか口頭による議論というのがされなかったという嫌いがあったわけでございます。それにつきましては、やはり民事訴訟法の原則から見るとおかしいのではないかというような批判もございまして、なるべく当事者双方が例えば書証等を目の前にしまして口頭で議論を闘わせる、このようなことをいたしまして争点をできるだけ早く明らかにしよう、こういうようなことをやっておるわけでございます。そのようなことをいたしますと、おのずから両当事者の間で事件の帰趨というようなものが見えてくるという事例が多いわけでございます。このようなことも和解が最近多くなってきた一つの原因ではないかと思います。
 ただ、裁判官が具体的な事件を処理するに当たりまして、まず第一に考えますのは、その事件がどのようなことで解決を見るのが最もこの事件の解決にふさわしいのかということを考えるわけでございます。そういたしますと、その事案に応じまして、例えば原告の言い分にもある程度の理由があるけれども、しかし被告の言い分にも全く無視できないところもあるという事案があるわけでございます。ただ、これを判決で解決いたしますとしますと、これは法律に従ってオール・オア・ナッシング、一〇〇かゼロかということでございます。ただ、そのようなことにいたしますと、具体的な事案について、その事案の具体的な妥当性という点からいきますと必ずしも妥当でないというような事案もかなりあるわけでございます。そのような事案につきましては、その事案にふさわしい解決を当事者に勧めるというのが一つの考え方でございます。和解を勧める理由としては、一つはそのようなことがあろうかと思います。
 また、民事裁判でございますので、これは基本的には当事者の間におきます私的な権利の争いでございますので、和解で当事者の間のお互いの合意による解決ということができますれば、それはそれとして一つのいい解決の方法ではないかという考えもございます。そのような理由から裁判官は和解を勧めておるわけでございますが、ただ、当事者がどうしても判決をしてほしいという事件、これはもちろん判決をしなければいけませんし、そういう事件を強引に和解に持っていくということは決してあってはならないことであろうというふうに考えておるわけでございます。
 いろいろ申しましたが、結局のところは、具体的な事案に即しましてその事件の具体的な解決を図るために和解をしておるということであります。決して判決をするのが大変だから和解をするというようなことはないものだと考えておるわけでございます。中には、和解をする方が判決で処理するよりも何倍も手間がかかるというような事件もあるわけでございまして、そのような事情も御理解をいただきたいと思います。
 もちろん、今委員がおっしゃいましたように、和解につきましてもいろいろ批判があるということはいろいろな文献で私どもも承知をしております。具体的な個々の事件の処理でございますから、それがどうこうということを私どもが申し上げるわけにもいきませんけれども、各現場の第一線でやっておられる裁判官はそのような批判についても謙虚に耳を傾けて、どのようにすればいい事件の解決ができるかということで日夜努力しておるというのが実情でございます。
#67
○中野鉄造君 次に、司法行政上の人員配置と予算関係についてお尋ねします。
 前回のこの委員会でも取り上げました人事訴訟事件、これでは人事訴訟手続法によって職権探知主義の訴訟構造となっておりまして、裁判所が実体的真実を解明、確定の上で判決をすることになっております。いわば裁判所が全責任をもって事案を解明した上で判決をするということなんですね。したがって、一般の民事事件のように、民事訴訟法の弁論主義の訴訟構造のもとで訴訟当事者に事案解明の責任があって、裁判所にとって訴訟処理の負担が比較的に軽い民事とはちょっと異なりまして、人事訴訟事件はそういう点が違うわけですね。
 ところが、人員配置、予算配分について考えた場合に、現実には一般の民事事件も人事訴訟事件も同じレベルにおいて考えられておる。そういうところを配慮して予算配分だとか人員配置をしているようには見られないんですけれども、やはり人事訴訟事件等の職権探知主義をとる裁判の充実のためにも、裁判官及び裁判官以外の職員の増員をなすべきじゃないのかなと思うんです。例えば、家庭裁判所の家事事件や地方裁判所の非訟事件も職権探知主義をとっておりますが、人手が要る点ではこれは共通であると思うんですけれども、そこのところをお尋ねいたしたいと思うんです。時間がありませんので、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。
#68
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 私ども増員をお願いいたします場合には、確かに、どの部にどういう事件があり、あるいはどの裁判所にどういう事件があるかということも考えますが、全体的に全国的な事件数の増減ということを基本にいたしております。そういったところで、人事訴訟事件の負担が重いということも頭に置きながら、全体としての事件数がこの程度であればこの程度の増員の手当てでやっていけるというところを見ております。
 もちろん、個々の裁判所における、例えば人事訴訟が重いとかあるいは人事訴訟に手間がかかるということはそれぞれの裁判所で見ておりまして、裁判所内部の事務分配の調整というところで、暇なところから忙しいところへ人を移すということを比較的きめ細かくそれぞれの裁判所でも行っておりますし、また私ども最高裁判所事務当局の方といたしましても、比較的暇な裁判所から比較的忙しい裁判所へ人を移す、そういう内部的な調整ということを毎年きめ細かく努力しているところでございます。
#69
○中野鉄造君 次に、人事訴訟手続法について私の理解が間違っているかどうか、その点お尋ねします。いわば確認の意味でお尋ねするわけですので、それに対して間違っているのかいないのか、そこのところだけをひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思うんです。
 人事訴訟手続法が、先ほどから申しておりますように、職権探知主義をとって弁論主義をとっていない。つまりその理由というのは、身分関係の真実確定ということが公共性あるいは公益性の強いものであって、訴訟当事者の主張だとか立証だけを基本にして判決をする民事訴訟法の弁論主義ではこれは不十分である、実体的真実の解明、確定のためには裁判所に全責任を持たせる職権探知主義をとる必要があるからである、私はこういうように理解しておりますが、これは間違っておりませんか。
#70
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおりでございまして、人事訴訟の対象が身分関係という公益に関する事項である、対世的に画一的な解決を図る必要がある、こういうことから裁判所が職権をもって証拠調べをし、かつ当事者が提出しない事実、つまり当事者が主張しない事実をしんしゃくして公正妥当な判決をする、こういうことになっているわけでございます。仰せのとおりでございます。
#71
○中野鉄造君 それでいま一つ、人事訴訟手続法は実体的真実の確定を前提としている。だからこ
そ、それを前提として身分関係の安定を図る必要がある。判決の効力を訴訟当事者以外の第三者にも及ぼしておる。また第三者に及ぼす必要がある。だからこそ、十八条一項の判決の効力が訴訟当事者以外の第三者にも及ぶ、いわゆる対世効の規定はそういうような理由から存在するのであると私は理解いたしますが、間違いはございませんか。
#72
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおりでございまして、身分関係の画一性、安定性の確保のためにその効果の範囲を拡張する必要がある。またそのためには、手続的にも実体的真実発見のための手当てが必要である。職権探知とかあるいは弁論主義の適用除外というような制度が認められているということでございます。
#73
○中野鉄造君 そういうことであれば、その判決よりも前に訴訟に参加させる規定を設ける。前委員会でも申しましたように、今はそれがないわけですけれども、そういう参加させる規定を設けるということは実体的真実発見のためにもまたその第三者の保護のためにもこれは非常に重要なことではないかと思うんですが、いかがですか。
#74
○政府委員(清水湛君) 第三者が訴訟に参加をする道がないというお尋ねでございますが、これは実は現行法上あるわけでございまして、第三者が民事訴訟法の規定に基づきまして補助参加をするということができるわけでございます。例えば、検察官を被告とするいろんな認知の訴え等が提起をされておるというような場合には、第三者はその権利を保護するという見地から検察官の方に補助参加をして訴訟を遂行することができる、こういうことになるわけでございます。ただ、現在の人事訴訟手続上裁判所が職権をもって第三者を訴訟に参加させるというような制度はございませんけれども、参加しようと思えばいつでも利害関係のある第三者は参加をすることができるわけでございます。
#75
○中野鉄造君 今お答えになったのは、いわゆるこれは依命通達で補助参加ということがあるということをおっしゃっているんですけれども、しかしそれは単なる通達であって法律ではもちろんありませんので何の拘束力もない。したがって、別の面から言えば、これは刑事、行政訴訟に見られるような第三者の保護にはこれはならないわけなんです。あえて言うならば、事務的、糊塗的、単なる事実にすぎない、何の拘束力もない。したがって、第三者の保護には全然ならない、こういうことが言えるんじゃないかと思うんです。
 また、判決の効力が訴訟当事者以外の第三者に及ぶ訴訟法としては、この人事訴訟手続法のほかに行政事件訴訟法と刑事訴訟法の特別法、すなわち刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法というのがありますが、それらの法律ではその第三者には当該訴訟に参加できる機会が与えられるようになっておりまして、こういうような規定がほかの訴訟法にはある。その立法理由というのは何でしょう。
#76
○政府委員(清水湛君) 民事訴訟法におきまして、訴訟の結果について利害の関係を有する第三者が補助参加をすることができるというのは、これは民事訴訟法第六十四条の規定に基づくものでございます。人事訴訟手続法は民事訴訟法の特別法でございますので、特段の規定がない限り民事訴訟法の規定が適用される、こういうことになろうかと思います。
 先ほど御指摘の検察官が現在通達に基づいて行っております通知というのは、この第六十四条の規定による補助参加の機会を逸することのないように、いわば注意を喚起するという意味においてさような通知がされているものと私どもは理解をしているところでございます。
 ただ、御指摘のように、補助参加人として参加をするというんじゃなくて第三者として訴訟に参加をするという規定は、現在のところ人事訴訟にはないわけでございます。行政事件訴訟法には二十二条の第一項で第三者の訴訟参加の規定がございます。これは特に行政事件訴訟、特に抗告訴訟におきましては被告は当該処分をした行政庁である、つまり行政庁を被告として訴訟を起こすわけでありますけれども、問題となっている法律関係の実質的な当事者が必ずしも訴訟上の当事者とならない場合が多いわけでございます。
 例えば、土地収用なんかの例を考えてみますと、収用委員会が収用の裁決をするということがありますと、それに対して土地の所有者が収用裁決の取り消し訴訟を起こす、こういうようなことが考えられます。しかしながら、この場合に実質的に利害関係を持つのは土地を収用していただいてそこでいろんな事業をしようとする起業者でございます。そういう起業者が実質的には当事者であるということから、形の上では行政庁を相手取って裁決の取り消し訴訟を起こすというような形になるわけでございますけれども、実質的な当事者として別に起業者がおりますので起業者が第三者として訴訟に参加をする、こういうようなことを認める必要がある、こういうことから行政事件訴訟法の規定が設けられたものというふうに私どもは考えているわけでございます。
 したがいまして、行政事件訴訟における第三者参加の第三者についてはその範囲はおのずから明確になっているわけでございますけれども、これに対しまして仮に人事訴訟においてこのような制度を認めるということとなりますと、相続関係とか扶養関係等いろんな場合を考えて相当慎重な配慮をしていかなければならない、こういうふうに思われるところでございます。
#77
○中野鉄造君 補助参加というのはいわば注意喚起である、こういうようにさっきおっしゃいましたね。それで、それはそれとして、いずれにしても、とにかく先に参りますけれども、人事訴訟法にあってはこの第三者の参加は法律的には今認められていないわけなんです。行政あるいは刑事、こういう点では認められておる。その理由というのは、やはりこれは第三者の財産権等の権利保護のためということにほかならないと私は思うんです。
 そこで、じや逆な面からお尋ねしますけれども、もしも第三者がそれらの訴訟に参加する機会を与えられずに、かつその第三者がそのような訴訟があることも全く知らなかったとすれば、その第三者にとってはこれはもう全く不意打ち判決というか、自己の財産権等の権利を侵害される、もう夢にも思わなかったときにいきなりこういう結論が出されてくるというようなことになるんじゃないでしょうか。
#78
○政府委員(清水湛君) 利害関係のある第三者が知らない間に人訴の判決が確定をするということもあり得ないことではないし、そういうことで争いになっている事例が現実に過去にあったわけでございます。そういう場合でございましても、先生先般の当委員会で御指摘の最高裁の判決は、その第三者がみずから再審原告として再審の申し立てをすることはできない、こういう判示をいたしたわけでございます。
 しかしながら、みずから再審原告としてではなくて検察官に補助参加をする形で再審事由を主張するということまでを否定しているわけではないと私どもは考えるわけでございまして、そういう裁判が確定した場合にその裁判に再審事由があるということでありますならばその第三者は検察官に補助参加をすると同時に再審の申し立てをするという道は残されている、つまりそのことまで最高裁の判決は否定しているものではないというふうな理解が可能であるというふうに実は考えているわけでございます。したがいまして、さきの最高裁判決の第三者として直接再審原告としての申し立て適格がないというふうに判断しました判決におきましても、これによって憲法違反の問題が生ずるというようなことは前提として考えてはいないというふうに私どもは理解しております。
 死後認知が認められて原告が新たな相続人になるというようなことになりますと、相続人の相続分が減少する、その結果憲法二十九条に違反することになるのではないかというような御指摘でございますけれども、人事訴訟において変動するのは当事者間の身分関係でございまして、その結果
として財産権に影響が生ずる場合があったといたしましても、これは憲法二十九条の問題にはならない。むしろ、再審事由があるというのであるならば補助参加をする形で再審の申し立てをする、補助参加人として再審の申し立てをするという方法による道をとるべきであろう、こういうふうに思うわけでございます。
 ただ、それでもしかし利害関係のある第三者についての権利保護が十全であるかどうかということについては、これはいろいろ御意見があるところでございますから、私どもといたしましては、そもそも補助参加をして再審の申し立てをすることができるかどうかという法律解釈論を含めまして、先生御指摘の問題について現在検討を重ねているところでございます。
#79
○中野鉄造君 先ほどから私申しておりますように、補助参加というのはあくまでもこれは法律ではないわけなんです。どこまでいっても法律じゃない。いわゆるこれは通達にすぎない。だから、そういうことではなくて、これは行政あるいは刑事訴訟と同じように、やはり第三者の保護という立場から明確に第三者の参加権というものをこれは認めるべきだ、私はこれを申し上げておるわけなんです。
 先ほど局長は再審の問題についてお答えになりましたけれども、例えば人事訴訟手続法は訴訟当事者が法定されているから法定された当事者以外の第三者に再審訴訟を認めるのは法律体系を崩しこれはだめである、こういうような趣旨の見解がおありになるようですけれども、人事訴訟手続法は民事訴訟法と同様に原告と被告にだけしか判決の効力が及ばないのかどうか。そうじゃないと私は思うんですが、どうですか。
#80
○政府委員(清水湛君) 人事訴訟に係る判決につきましては、先ほど来御説明申しておりますように、第三者にその効力は及ぶ、つまり対世的な効力がある、こういうことになっているわけでございます。そういうことでございますので非常に判決としては重要な意味と申しますか重みを持つものでございます。したがいまして、だれでもそういう訴訟を起こして対世的な効力のある判決を得ることができるということになりますと非常にかえってまた問題が生ずるということから、訴訟ごとにこれは規定は違いますけれども、訴訟の目的となっている身分関係について最も密接な関連を有する者に訴訟の遂行権を認めるという意味におきましてそういう当事者を法定しておるということになるのではないかというふうに私どもは考えているところでございます。
 さきの最高裁の判決は、もともと、もとになる再審の対象となっている訴訟の当事者適格を有しない第三者からの、みずからを当事者とする再審の申し立てについてこれを認めないというふうにしたわけでございますけれども、そこにもやはり人事訴訟における当事者法定主義と申しますか、やはり人事訴訟の判決が対世的な効力を持つということに基づく考え方が示されているのではないかというふうに思うわけでございます。
#81
○中野鉄造君 すなわち判決の効力が、先ほどから何回も言っておりますように、第三者にも及ぶ、こうなればいわばどこから考えても人事訴訟の入り口である訴えの提起段階では確かに当事者は法定されております。訴訟の出口である今度は判決の段階では当事者のみならず法定されていない第三者にも影響が及んでくる、利害が及んでくる、こういうことになりまして、出口段階では当事者法定主義というものがこれは崩れてくるのではないか、こう思うんですが、いかかですか。
#82
○政府委員(清水湛君) その辺にやはり一つの問題があるわけでございまして、判決の効力が第三者に及ぶということから、じゃその第三者が直ちにその判決について争うというか再審の申し立てをするというようなことができるというようなことになりますと、一審、二審、三審という手続構造を経て、かつ先ほど来問題になっておりますように、弁論主義を制限し職権探知という非常に丁重な手続を踏んできた判決の結果を、いわば本来その訴訟についての当事者適格を有しない第三者の申し立てによってこれを争わせるというようなことが、訴訟というものの全体のあり方から見て適当かどうか、こういうことが実は問題になるわけでございます。
 判決の効力を受ける第三者の立場だけから見ますと、あるいはこの第三者再審というような制度を大幅に認める方がいいのではないかという理論、これは確かに一つの重要な御指摘だと思いますけれども、他方ではやはり訴訟制度全体のあり方から見てこれをそう広げることが果たしていいことであるかどうか、特に民事裁判につきましては第三者再審というような制度は現在ないわけでございます。行政事件訴訟法には先ほど御説明したようにございますけれども、そういうような観点、つまり第三者の立場をどういうような形で保護するかというようなことについて、そういった意味での第三者再審というか第三者が当事者として入ってきて判決の効力を争うというようなシステムがございませんので、これを改めて今度採用するというようなことになりますと、相当各般の問題についての慎重な検討を要するのではないかというふうに思うところでございます。
#83
○中野鉄造君 私は、この人事訴訟手続法というのを必ずしも民事にはないからと、それはちょっといささかおかしいんじゃないかと思うんですが、それはさておいて、原告、被告という訴訟当事者以外の第三者にまでこの判決の効力が及ぶからには、その判決の効力を受ける第三者はやはり再審訴訟の資格があって当然だと私は思うんです。さもなければ、先ほどから申しておりますような全くの不意打ち判決で権利侵害を受けても一切不服申し立ての裁判を受けることができないことになってしまう。まさに財産権の保障を定めた憲法二十九条あるいは適正手続を保障する三十一条あるいは裁判を受ける権利を保障するところの憲法三十二条にもこれは違背してくる、こういうふうに私は思うんです。
 いろいろと答弁がありましたけれども、いずれにしても、そういうあいまいとした今の現状を明確にしていく意味からも、これ前回の委員会でも大臣にお願いをしましたように、このことをひとつ早くやってもらいたい。私から言わしむれば、これは明らかに欠陥法律であると言わざるを得ません。大臣は前委員会で、人事訴訟手続法の改正はこれは必ずやる、こういうようにお約束をしていただきましたが、しかしその際、緊急にだとか早急にだとか、こういうようなお言葉がなかったんですけれども、果たしてこれはいつごろやられるのか、もう既に検討作業に入っておられるのか、改正作業に入られたのか、大体のめどというものを大臣からお聞きいたしまして、私の質問を終わります。
#84
○国務大臣(左藤恵君) 人事訴訟におきます第三者再審の問題は、現在法制審議会で進められております民事訴訟手続の見直し作業で審議の対象とされているということは前回の法務委員会でも申し上げたんじゃないかと思いますが、先生の御指摘の前の法務委員会にございました点を踏まえまして、去る三月二十二日の民事訴訟法小委員会、ここにおきまして改めてこの問題に関します具体的な検討をお願いいたしました。立法の必要性及び立法する必要があるとされる場合のその時期の点もなるべく早くという意味で、時期の点も含めまして同部会で十分な御審議をいただきまして、これに対する適切な御答申をいただき対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
#85
○中野鉄造君 ちょっと最後に、大体いつごろになるか、それはわかりませんか。
#86
○政府委員(清水湛君) 民事訴訟法全体の見直し、全面改正作業でございますけれども、これが昨年の七月十三日に民事訴訟法部会をスタートさせまして、準備会等で検討作業を進め、ことしの三月二十二日に第一回の小委員会を開催したという経過になっております。民事訴訟法の全面改正作業でございますので問題点が多岐にわたっております。非常に重要な問題もたくさん含まれております。そういうことの中で人事訴訟についての
先生御指摘の問題は非常に重要な問題でございますので、先般の小委員会におきましても問題点を説明いたしまして小委員の先生方に御理解をいただいたところでこざいます。
 私どもといたしましては今後の審議の経過を見ながら、改正の必要があるということでこざいますと切り離せるものなら切り離してやるということもまた考えなければならない。今の段階でまことに申しわけございませんけれども、いつまでというふうにちょっとお約束できかねる状況でございますので、そこのところは御理解を賜りたいと思います。
#87
○中野鉄造君 終わります。
#88
○橋本敦君 まず、法案に即してお伺いをいたしますが、裁判所の職員の増員の問題については、裁判事務の円滑な遂行という国民的課題と同時に、裁判所の職員の皆さんの労働条件にも深くかかわる重要な問題でありますから、裁判所としては増員要求をどういうように進めていくかについては職員団体の意見もよく聞いてできる限り尊重するという立場で検討して進められるというのが当然の姿勢ではないかと思うのですが、この点いかがお考えでしょうか。
#89
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) おっしゃるとおりでございまして、職員が過重な負担にならないようにということを常に見なければならないと思っております。
#90
○橋本敦君 今回は、判事補五名、裁判所職員二十八名の純増ということですが、今指摘をした職員組合の要望との関係でいきますと極めてかけ離れておる現状があるわけですね。昨年度職員組合としては、東京、大阪、千葉、あるいは神奈川、浦和、八王子といったような大都市圏に属する実態に即して増員要求を検討して、全国総計としては一千七十八名という要求数字を出しているようですが、御存じですか。
#91
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 全司法の方から一千七十八人の増員が必要だという意見が出ていることは存じております。
#92
○橋本敦君 千七十八名と二十八名ですから大変な開きがある。だから、このことから見ても二十八名増というのは決して現状を解決するというにはまだまだ達しない数字だと言わざるを得ないと思うのですが、その点二十八名増については裁判所としては現状をいかがお考えですか。
#93
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 一般職員二十八名につきましてこれで十分かと聞かれますと、そのとおりであるというふうに申し上げることができないわけでございますが、最近における事件の傾向等を踏まえますと、二十八人というのは相当程度の改善ができる数字である、こう私たちは考えております。
#94
○橋本敦君 今までの実態を調べてみますと、高度成長に伴って七〇年代、八〇年代はずっと事件が増加いたしました。最近は横ばい傾向だというわけですけれども、言ってみればこれは高いところで横になっておるというだけで、高値安定といいますか、そういう現状だと思うのですね。
 ところが、増員の問題を八〇年に入って調べてみますと、八〇年から八四年までが純増がゼロで、八五年からようやく純増が四、九、十。八八年に二十八、八九年二十八、九〇年二十八、こうなっておるわけですね。ですから、全国的に事件数が非常に伸びていったということで、初めからそれに見合った純増というのはなかなかできていなくて、非常に事件数がふえてピークに達したようなところでようやく純増が出てくるということで、裁判所の苦労のほどもわかるわけですが、それだけに現状では今まで十分に増員されてこなかったということの負担もたまりまして、職場の労働条件の実態というのはかなり深刻な状態だというように私は言わざるを得ないと思うのです。
 例えば、全司法労働組合の残業の実態を調査した資料によりますと、職場の残業の実態では、過去一年間で残業した人は八百四十九人、二三・四%、持ち帰り仕事は三五・二%の人、残業も月四十時間を超える人が九・九%、こういう数字が出ております。これは速記官あるいは書記官の皆さんが速記録あるいは公判記録をつくる上で持ち帰り仕事ということで努力をなさっている姿もそこにあらわれているわけですが、かなりの数の残業という実態も現に存しておることは間違いないのじゃございませんか。
#95
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 今手元に超過勤務の状況についての資料がございませんが、当然考えられることでございまして、我々の方ではできるだけ忙しいところへ人を回すということをきめ細かく行っておりますが、それが事件の増加にすぐに対応して行うということができない場合もございます。若干時間のずれがございます。そういう場合に超勤で処理してもらうということも出ていることは事実でございます。
#96
○橋本敦君 そういうような職場の労働条件の実態から、別の全司法の調査によりますと、病気あるいは過労死とまでは言いませんけれども、勤務途中で亡くなるというような人があるという実態も報告されておるわけですね。例えば、実務研究員として研修所に入所中の四十歳の男性が朝トイレで倒れて亡くなられたというようなことも報告されておる。あるいは管理職の方が単身赴任中、日曜日官舎で亡くなっておって、月曜日になって初めてわかったという事例もある。さらには、一般的に年金をもらうまでに急死したり早死にをしたりするというようなことで、職員の間ではそういう実態から見て不安が募っておるということも言われておる、こういうこともあるわけですね、したがって、局長も十分とは見ていないというお話でございますので、なお一層今後とも努力をしていただきますことを特にお願いをするわけです。
 それに関連をして、裁判所から出されます増員要求の数が八二年からずっと十年来四十九という数で全くふえもせず減りもしてないのですね。この四十九を要求して、増員結果として八二年のころは四十六認められ、あるいは四十八認められたのが八四年と、こうありますが、四十九名増員要求して八七年からは五十三、六十七、六十七というように、増員要求なさった以上の増員が認められてくる、こういうこともあるわけですね。たくさん認められたのは結構なのですが、こういう状況なので、実態に即し、かつ増員要求を積極的になさって一層の努力をなさるのが筋ではないか。あるいはまた、努力をなさってその可能性がある問題ではないか、要求した以上に認められたりしているわけですからね。ということもありますので、今後の増員要求については一層職員組合や職場の実態も踏まえて努力をしていただくように重ねてお願いしたいのですが、いかがですか。
#97
○最高裁判所長官代理者(金谷利廣君) 私ども冒頭にも申し上げましたとおり、職員に過重な負担にならないように、あるいは事件数の増減をよく見てそれに必要な人員の手当てということをやらなければならないという姿勢で毎年毎年増員要求をしているところでございます。
 そういったところで先ほど来のようなお話が出たわけでございますが、本年度の増員について申しますと、事件の傾向といいますのは数年前をピークといたしましてむしろ減少に転じております。簡易裁判所について言いますれば、民事訴訟事件はいわば半減した状態になっております。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
あるいは地裁、簡裁の刑事訴訟については二、三割減っているというような状況もございます。確かに、一部に破産事件がふえているとかいうようなこともございますが、全体としては平成元年、二年というあたりの事件の動向というのは事件数としては伸びておりません、減っております。それにもかかわらず、私どもやはりできるだけいい形の裁判をしたいということで可能な範囲の増員の要求をしているわけでございます。
 そんなところから、前年の実績も踏まえ、事件は減っているとはいえ前年程度は確保したいというような努力をし、また当初要求の後に、例えば民事訴訟の運営改善について非常にいい風が吹いているこの際に、もう少しいい形の裁判に一挙に進みたいといったところからいろいろ追加的な事
情を説明いたしまして追加要求したり、あるいは支部の適正配置、簡裁の適正配置等をいたしました過程でなお簡裁の審理のあり方、簡裁の窓口の充実といったところにもう少し力を入れたいというようなことで追加要求いたしました。それが当初の要求よりもふえた形で認められたわけでございます。そういう要求をしたのに対しまして、財政当局の方も私たちの方の企業努力あるいは元国鉄職員等の採用を積極的にやってきた、そういったことも考慮していただき、あるいは適正配置ということでそれなりの企業努力をしているということを酌んでいただいたんだろうと思いますが、当初要求の後の追加要求が割と認められたということで、私ども増員については精いっぱいの努力をしておるわけでございます。
 ただ、私どもも職員団体からの要求ということには十分耳をかしているわけでございますが、何分出てくる数字がけたが違うと申しますか、一千人を超えておりまして、もう少しもっともな数字ならそれなりにまた考慮もさせていただけるのになという思いでございます。それにしましても職員団体の方は、根拠はわかりませんが、いろいろ各地の組合員の意見を集約して出してこられるお立場上、そういう数字が出るのもある意味では無理からぬ面もあるかとも思いながら、私たちの方の状況も御説明申し上げております。
 今後の増員につきましても、できるだけ職員の過重な負担にならないように気をつけますとともに、裁判所の内部でも、例えば東京周辺の千葉、神奈川あたりが事件がふえているということであれば、私どもの方でほかの暇なところの人員をそちらへ回すという手当てをしております。例えば、今回の増員が認められれば、千葉あたりについてある程度集中的な手当てをしたいとか、そのあたりはかなりきめ細かく見させていただいておるつもりでございます。これからもそういう姿勢でやっていきたいと思います。
#98
○橋本敦君 この問題はこの程度にしますが、けた違いだというお話ですが、けた違いには理由があるわけで、また理由もよく組合からも聞いていただくようにしましょう。
 それじゃ、次の問題に移ります。
 きょう私は、記録の保存の問題についてお伺いしたいのですが、刑事確定訴訟記録法によりまして、刑事参考記録が保存されるようになったということは、非常にいいことだと思うわけであります。
 この問題について、どういう記録を保存するかということですが、法務委員会で私の質問に答えて、当時の岡村刑事局長は、「類型的に申し上げますと、重要な判例となった裁判がなされた事件など、法令の解釈適用上特に参考となるような事件、また国政を揺るがせた事件や犯罪史上顕著な事件、あるいは重要な無罪事件、その他全国的に社会の耳目を集めた事件、こういったものなどを考えているところでございます。」と答弁されておりました。私は、こういったことを含めて歴史的、社会文化史的な意味を持つ事件の記録も保存していただくようにということを指摘して、その旨も含めて考慮してまいりたいということでございましたが、こういう方針で刑事参考記録が保存されていることは間違いございませんか。
#99
○政府委員(井嶋一友君) 前局長が答弁いたしましたような基準に基づきまして、各検察庁から指定の上申をいただきまして、本省におきまして指定をするという形で運用いたしております。
#100
○橋本敦君 具体的に伺いますが、そういたしますといわゆる日本の近代史上重要な事件となりました二・二六事件、この裁判記録はここで言う刑事参考記録として保存されるに値するものであると思いますし、現に東京地検に保存されていることは間違いございませんか。
#101
○政府委員(井嶋一友君) 委員御指摘のとおりでございます。
#102
○橋本敦君 この記録の閲覧の問題なんですけれども、裁判記録の閲覧ということになりますと、今の訴訟記録法の第四条に記録の閲覧の問題が出ておりますが、保管検察官は、請求があったときは閲覧させなければならない、これが原則である。刑事訴訟法五十三条の第一項の関係でも、閲覧させなければならないということが原則になっておる。そういう意味で、原則として閲覧させるということだというように理解してよろしいでしょうか。
#103
○政府委員(井嶋一友君) 今委員御指摘の記録法四条と申しますのは、いわゆる一般的な裁判確定記録、我々は保管記録と呼んでおりますが、保管記録の閲覧に関する規定でございまして、先ほど来御指摘の刑事参考記録というのはまた別の条文で規定しております。九条でございます。
#104
○橋本敦君 そこで、九条の問題にまいりますが、この九条の問題で法務大臣がどういう場合に許すかということになりますと、九条第一項では、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、これを保存するということ、第二項で今度は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申し出により閲覧させることができる、こうなっております。だから、この関係でいきますと、一般記録は原則として閲覧させる。この刑事参考記録になりますと、今度はそういう原則とのかかわりで考えれば、学術研究のため必要があるということが認められたら、これは原則として閲覧をさせるということになってしかるべきではありませんか。
#105
○政府委員(井嶋一友君) 九条二項で今委員御指摘のように、「申出により、刑事参考記録を閲覧させることができる。」こういうふうに書いてございまして、四条と規定の仕ぶりが違うわけでございまして、四条は閲覧請求権がある。これに対して九条は、裁量的判断を記録保管者がやる、こういう形の違いがあるわけでございます。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
 そこで、この二項に書いてございますように、「必要があると認める場合その他法務省令で定める場合」ということで、法務省令として定めておりますことを申し上げますと、「学術研究のために必要があると認める場合」、それから二が「民事上又は行政上の争訟に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合」、三が「刑事上の手続に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合」、四が「その他特に刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合」、この四つでございます。これにつきまして、記録を閲覧したいという申し出をされる方の必要性と、それからこの記録を公開することによる弊害等を比較考量いたしまして、その記録保管者が裁量的に判断をする、こういう建前で運用しているわけでございます。
#106
○橋本敦君 裁量的判断はわかりますが、その場合に私が指摘したいのは、第四条の第二項で、例えば犯人の改善、更生を著しく妨げるとか、閲覧させることが公の秩序または善良の風俗を害することとなるおそれがある場合は閲覧させないというのは、これは一般記録にありますが、刑事参考記録にはこのような制約は、この条文は援用されないんですね。したがって、裁量的判断とはいうものの、学術研究上必要があるということであれば、できるだけ閲覧させるということが、文化史的な、あるいは刑事参考記録を保存する趣旨からいっても、私は当然ではないか、こう思うのですね。とりわけ憲法八十二条にある政治犯罪については、一般記録の原則からいっても閲覧を拒否することができないという法の定めがあるわけです。
 だから、そういう観点からいっても、刑事参考記録として保存されている二・二六事件などの記録は、これは歴史的な意味で研究対象になるわけですから、現にこの問題については研究者から東京地検の方に閲覧の請求がなされておるという状況もありますので、今私が指摘したような立場からできるだけ早く閲覧に供することができるように努力をし、処置をしていただきたいということですが、いかがお考えでしょうか。
#107
○政府委員(井嶋一友君) 二・二六事件につきまして、現在東京地検に閲覧の申し出が二件ござい
まして検討中でございます。
 先ほど来も説明しておりますように、そういった判断条項を十分判断いたしまして裁量的にやるわけでございますが、ただ他方、こういった記録でございますから、やはりプライバシーと申しますか、どうしてもこれはもう条文を離れてでも基本的に保護しなきゃならない利益というものもあるわけでございますので、その辺のところでございますとか、あるいは非常に記録が膨大であるといったような事情とか、それから不起訴記録がまざっておるといった事情とかいろいろございまして、検討に時間がかかっておりますが、いずれにいたしましても、法の趣旨をよく考えまして、また、申し出者の意図も十分そんたくをいたしまして、適切に検討するものだというふうに思っておるわけでございます。
#108
○橋本敦君 今刑事局長御指摘のプライバシーの保護等という問題は確かにございます。しかし、これは訴訟記録法の第六条で、閲覧させてもらった場合に閲覧者の義務として、その閲覧記録について公の秩序または善良の風俗を害したり、関係人の名誉を傷つけたりするような行為をしてはならないということで、むしろ閲覧者に課せられた法的義務ですよ。
 ですから、裁量の判断としてはここに重点が置かれるということだけではなくて、やはり研究者に研究資料として歴史的価値あるものを閲覧させるというこの記録保存の本来の趣旨に立ち戻って、前向きの姿勢でぜひ検討していただきたい。今御指摘の点については、閲覧者に厳しく法の趣旨を説明していただくということで措置をしていただければいいのではないか。こういった意味で前向きの検討をぜひお願いしたいということですが、いかがでしょうか。
#109
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のとおり、なお申し出者との間で十分協議をいたしまして結論を出すことになるだろうと思います。
 ただ、今六条を引用されましたが、確かにそういう規定がございますので、閲覧者が義務としてそれを守っていただく必要があるわけでございますが、本件の場合は記録全体の復刻版を出版するというお考えだということでございますので、全体の復刻版となりますとプライバシーの問題でなお検討することがいろいろあるだろうということが一つのネックになっているわけでございます。
#110
○橋本敦君 それじゃ善処をお願いして、質問を終わります。
#111
○紀平悌子君 十二時も回りまして、いつも最後でございますのでお疲れのところ恐縮と存じておりますが、よろしくお願いいたします。
 きょうの裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきましては、同僚議員の御質問数々ございましたので、次の議題に行かせていただくことをお許しいただきたいと思います。
 先ほど千葉委員からもお話がるるございました検察審査会につきまして、最高裁の御見解をお伺いしたいわけでございます。
 国民の司法への参加というそのかかわりから、審査会制度につきまして国民の知識と理解ということの程度でございます。つまり、知るということはどういうことかということなんですけれども、発足以来四十二年のこの制度の中での御努力によりまして、確かに総理府の調査では昭和五十八年の二二%からかなり上がって三一%、審査会制度は知っておりますという答えが出ておりますことは確かでございます。しかし、それで知っているということになるかどうかとなりますと、一部申し上げますけれども、検察官が被疑者を裁判にかけなかった不起訴処分が正しいかどうかを審査するというその一、その二が検察庁の仕事について改善すべき点を指摘するということの役割ですが、その中の前者につきましては二六%、後者は一七%しか知らないと、中身を見ておりますとそういうことになっております。それから今度は、もしあなたが審査員に選ばれた場合ということになりますと、まことにそれは消極的でございまして、乗り気でないという方が六八%もおられて、そして乗り気だというか積極的にやりましょうという元気のいい方は五%しかない。たしかにこんなふうになっておったと思います。
 このように国民がどの程度理解しているか、知っているかという中身ですね、その意識、それから現在の検察審査制度の実情、運用、そしてPR、これについて最高裁から率直な御意見をお伺いしたいというふうに思います。
#112
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 検察審査会のことにつきましては、先ほど千葉委員にもお答えいたしましたところでございますけれども、私ども裁判所といたしまして検察審査会の充実発展のためには、何と申ましても今委員御指摘のとおり、制度の存在及び存在のみでなくその意義を広く国民の間に周知徹底させるということが一番肝要であるというふうに考えております。
 したがって、その意味で広報活動につきまして大いに力を注いでまいったところでございますが、先ほど委員から御紹介ありましたように、例えば審査員に選ばれた場合に余り乗り気でないものが非常に多いというような結果が出てまいりましたことにつきましては、私どもとしても率直に申し上げて大変残念な感じも持っておるところでございます。したがって、なおこの制度の重要性につきまして大いに広報活動に努めてまいりたいと思っております。
 現在のその広報活動の実情でございますが、主なものを若干御紹介させていただきますと、裁判所の見学者に対しましては、検審制度をもちろん説明をいたすほか、パンフレット、リーフレット等を作成したものを交付しておりますが、平成元年度一年度で見てまいりますと、裁判所の来庁者に対しまして九万五千部ほど配っておる。自治体や選管にも五十二万六千部ほど、学校やその他の各種団体には七万部というもので、かなり大量のものを交付いたしております。
 また、先ほど千葉委員の御質問の際に法務省刑事局長からお話がありましたように、当然のことながら検察庁の方にももちろん御協力いただきまして、既に検察庁等にはそういったパンフレット、リーフレット等は十分配付済みでございます。そのほか、市町村の広報紙にPRの記事を掲載してもらう、これが平成元年度単年度で千四回、それからテレビやラジオ放送が二千八回、講演会が千九百三十一回、広報用映画をつくっておりますけれども、これの上映会が一万三千二百二十四回というようなことで、平成元年の一年度でも相当数のことはやっておるわけでございます。なおかつ世論調査でそのような結果が出てきておることも踏まえまして、さらに私どもとして広報活動を充実させていくべくいろいろ検討してまいりたいと思っております。
#113
○紀平悌子君 労働省、厚生省、外務省に続けて申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 現在、不法就労外国人は改正法施行後もふえている一方だというふうに承知しております。その人々のうちの多くの方々が、きつい、危険、汚いという、いわゆる三キ労働という職場で、体調を崩したりそれから労働災害に遭う例もあるというふうに聞きます。
 労働省にお伺いしますけれども、こうした外国人労働者について医療の実態はどうなっているんでしょうか。不法就労労災の現状とか今後の対応策。
 そして厚生省には、生活保護の実態について教えていただきたいと思います。
 昨年の十二月国連が採択しました、あらゆる移住労働者の権利を保護する国際条約につきまして、日本の批准等の方針はどうなっておりますでしょうか。検討は始めておられるんでしょうか。これは外務省にお伺いしたいと思います。
 時間もございませんので、簡潔かつ中身をしっかりお願いをいたします。
#114
○説明員(出村能延君) 先生御承知のとおり、労災保険は、国内の事業場に使用されている限り、被災労働者が日本人であるか否か、あるいは不法就労者であるか否かを問わず、日本人の場合と同様に適用されるところでございます。今後ともこのような観点に立ちまして迅速適正に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
#115
○説明員(炭谷茂君) 生活保護について御説明させていただきます。
 生活保護は法律上は対象を日本人に限定いたしているわけでございますが、永住者、定住者など日本人と同様な生活を営むことのできる外国人に対しましては、予算措置により生活保護に準じた取り扱いを行っております。しかしながら、今お尋ねの外国人不法就労者につきましては、生活保護の目的は、法律に書いておりますように、最低生活の保障とその自立の助長を目的といたしており、またそれを権利としてその生活を扶助することが制度の目的でございます。
 そのような理由から、現在外国人不法就労者に対しましては生活保護の適用はできないと考えております。
#116
○説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。
 移住労働者及びその家族の権利保護に関する条約につきましては、先生御承知のとおり、昨年の十二月に国連で採択されました際、我が国はその条約の理念そのものは理解できるということで、その無投票採択に参加したわけでございますが、ただし条約の中には我が国にとりましても問題となり得べき点が多々ございまして、これらの点を含めまして十分慎重に検討する必要があり、現在締結の見通し等につき申し上げられるような状況には至っておりません。
#117
○紀平悌子君 三点についてお答えいただいたわけですけれども、これはもっと申し上げたいこと、お伺いしたいことはございますけれども、次の機会に譲らせていただきます。
 次に、警察庁にお伺いいたします。
 暴力団封じ込めの対策について全般的な御説明を簡単にいただきたいと思います。特に暴力団関係の刑事立法の動向について教えていただきたいと思います。
#118
○説明員(石附弘君) お答え申し上げます。
 現在、警察庁の刑事局におきまして暴力団対策につきましていろいろ法案を検討中でございますが、その内容につきましてはまだ案が固まっておりませんので説明を差し控えさせていただきたいと思います。
 なお、暴力団の封じ込めの対策について今まで警察庁で基本としておりますところは、まず第一に取り締まりの徹底を行う。第二に暴力団の排除活動の推進ということでございます。ところが、最近暴力団の非常に巧妙な資金源活動というものが見られるということでございまして、暴力団が有する組織の威力というものを用いて恐喝とかあるいは脅迫という犯罪にならない、そういうすれすれのところで不当な利得を得ておるというような実態、あるいは対立抗争事件の際に住民に大変な不安感を与えるというようなことで、こういう暴力団による法の盲点をついた反社会的な行動ということから国民の平穏な生活に重大な影響を与えている、このようなことを排除するために現在法制度の準備作業をしておる、こういうことでございます。
#119
○紀平悌子君 子供の権利条約でございますけれども、関連の国内法の整備の状況について文部省、外務省、法務省それぞれに簡単によろしくお願いいたします。
#120
○説明員(角崎利夫君) 児童の権利条約につきましての検討状況でございますが、現在政府部内で各条文につきまして国内法との関係、他の条約との整合性等につきまして鋭意検討を進めておるところでございます。
#121
○説明員(辻村哲夫君) 条約全体の扱いにつきましてはただいま御説明のあったとおりでございまして、文部省といたしましても、条約の批准に伴います関連につきましては今後政府内部での全体の作業の中を踏まえつつ検討してまいる所存でございますが、この条約の趣旨といたしますところは児童生徒の健全な発達のために教育を含めまして保護あるいは援助を確保しようというものと理解をしております。したがいまして、その趣旨を踏まえながら一人一人の児童生徒を大切にした教育指導あるいは学校運営が行われるようにという観点に立っての指導を学校関係にいたしておる、これが現状でございます。
#122
○政府委員(堀田力君) 法務省関係でございますけれども、この条約は健全な次世代を育成しますために非常に重要な条約であるということで精力的に検討を進めております。問題点は十点近くもございましたけれども、ほとんどが解決を見まして、あと若干の点につきまして、これも法改正までは必要ないであろう、ただ、留保宣言をしなきゃならないのかどうか、そのあたりに煮詰まってきておりまして、若干の事情聴取あるいは各国の実情等の調査が終わりますれば比較的近い時期に結論が出せるんではなかろうかというふうに考えております。
#123
○紀平悌子君 最後に、これは法務省にお伺いいたします。
 現在進行中の刑事裁判に関する件でございますが、いわゆる狭山事件です。第二次再審請求の申し立ての中の被告人の石川一雄氏についてですが、未決通算日数は十一年八カ月の長きにわたっております。また拘禁すること二十七年、刑の一応の確定からも十三年六カ月というものが経過しております。そしてまだ仮出獄の許可が出ていないという今の状況ですけれども、もちろん仮出獄を許可する権限は地方更生保護委員会にあることは承知はしておりますが、未決通算日数がこうした状況の中でなお仮出獄が決められないというケースはこれは通常のものなんでしょうか、非常に異例なケースなんでしょうか。
#124
○政府委員(佐藤勲平君) 申し上げます。
 仮出獄の許可につきましては、委員御承知のとおり刑法二十八条で要件を定めております。それによりますと、形式的要件といたしまして有期刑については刑期の三分の一、無期刑については十年経過後にその当否が判断されるということになっておりまして、その判断は委員今御指摘のとおりに、行政官庁であります地方更生保護委員会、全国八カ所に置かれておりますが、そこに属しております三人の委員で構成いたします合議体で判断をすることになっております。犯罪者予防更生法の十二条と二十九条に規定されておりますけれども、その場合、刑事施設の長からの申請を受けてその合議体で判断をするというようになっております。
 御指摘の案件につきましては、今申しました無期刑につきましての十年という刑法所定の最小限の期間は経過しております。ただ、通常この無期刑の受刑者につきましては、刑法所定の期間を経過した後も相当の期間受刑してから仮出獄というふうになっておるわけでございます。そしてまた、その審議に当たりましては、仮釈放及び保護観察等に関する規則という省令がございまして、この三十二条に仮出獄を許可するための要件がかなり詳しく定められております。その定められた要件にのっとりまして、また、ほかの無期刑受刑者との間で特に有利にもまた不利にもならないように公平な判断が行われるというふうに承知しておるところでございます。
#125
○紀平悌子君 さらにお伺いしたいことがございますが、ちょっと時間も経過しておりますようですので、これで終わらせていただきます。
#126
○委員長(矢原秀男君) 検察及び裁判の運営等に関する調査につきましては、質疑はこの程度とし、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきましては、他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#127
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議
ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#128
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#129
○委員長(矢原秀男君) 次に、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。
#130
○国務大臣(左藤恵君) 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明いたします。
 刑法その他の刑罰法規に定められた罰金及び科料の額等につきましては、昭和二十三年に制定され、同四十七年に改正された罰金等臨時措置法によることとされておりますところ、同法が改正された昭和四十七年から見ましても既に約十九年が経過し、この間、消費者物価は約二・五倍に、労働者賃金は約三・五倍に上昇しております。このような状況のもとで、刑法その他の刑罰法規に定める罰金及び科料の額等を現行のままにとどめておきますことは、これら財産刑の刑罰としての機能を低下させるばかりでなく、刑事司法の適正な運営を阻害するおそれも少なくない状況に立ち至っているのであり、罰金及び科料の額等を現在の経済事情に適合したものに改定することは緊急の課題となっているものと認められるのであります。この法律案は、以上のような事情を考慮いたしまして、刑法等に定める罰金及び科料の額等を原則的にその二・五倍に改めることとし、あわせてこれに関連する手続的な整備を行おうとするものであります。
 これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
 その一は、刑法を改正して、罰金の寡額を一万円に、科料の額を千円以上一万円未満に引き上げた上、刑法の罪について定める罰金の多額を原則的に現行の二・五倍に改定し、ただ多額が低い一部の罪に関しては多額の最下限を十万円まで引き上げるなどの措置をとることといたしております。なお、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律についても同様の手当てをすることとしております。
 その二は、刑事訴訟法を改正して、同法に定める罰金及び過料の多額を十万円に引き上げることとし、あわせて勾留及び逮捕が制限される罪の基準となる罰金の額、公判期日における被告人の出頭義務及びその免除の基準となる罰金の額並びに略式命令が許される罰金の限度額等をそれぞれ二・五倍に改定するほか、未決勾留日数に関する一日の法定通算の基準となる罰金額を四千円に引き上げることとしております。
 その三は、罰金等臨時措置法を改正して、刑法ほか二法の罪以外の罪で罰金多額が二万円に満たないものについては一律にこれを二万円に、罰金寡額が一万円に満たないものについては一律にこれを一万円に引き上げるほか、命令への罰金の委任の限度額についても二万円に引き上げるものとしております。
 最後に、条例に罰則を設ける際、定め得る罰金の最高限度につきましては、昭和二十二年以来十万円で据え置かれてきた経緯も考慮いたしまして、これを百万円に引き上げることとし、地方自治法の関係規定を改正することとしております。
 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#131
○委員長(矢原秀男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後零時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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