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#1
第120回国会 法務委員会 第5号
平成三年四月二日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     中野 鉄造君     鶴岡  洋君
     山田耕三郎君     中村 鋭一君
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     中村 鋭一君     山田耕三郎君
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     鶴岡  洋君     中野 鉄造君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                中西 一郎君
                山本 富雄君
                久保田真苗君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   島田 仁郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       法務大臣官房審
       議官       東條伸一郎君
       自治省行政局行
       政課長      岩崎 忠夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に中野鉄造君を指名いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(矢原秀男君) 次に、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○北村哲男君 北村でございます。
 まず最初に、大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改正案は罰金・科料等の額の改定に限定して、これに関する手続的な整備を行おうとしておりますけれども、罰金などの財産刑につきましてはこの額の引き上げとともに幾つかの重要な問題があると思います。単に額の改定だけをもって足れりとするのではなくて、これは既に法制審に対する諮問三十八号のなお書きというところにありましたように、「財産刑をめぐる基本問題について」と題する文書が出ておりますけれども、この基本問題については今後どのような方向で検討しておられるのか、そういう問題を含めて今回の改正案の基本的な姿勢についてお伺いしたいと存じます。
#6
○国務大臣(左藤恵君) 今回の改正は、昭和四十七年以降の経済事情の変動などにかんがみまして、刑法その他の刑罰法規に定める罰金及び科料の額を現在の経済事情に適合したものに改定しようとするものでございますが、今御指摘ございましたように、財産刑をめぐる基本問題のことにつきましては、法制審議会に対しまして審議、検討を現在お願いいたしておるところでございまして、法務省といたしましてはこの検討結果等を踏まえまして、刑法を含め法改正をすべきであると認められる事項につきましてはできるだけ早く改正を図っていきたい、このように考えておるところでございます。
#7
○北村哲男君 もう一点大臣に、罰金刑というものをどうとらえておるかということなのですけれども、罰金刑は財産刑でありますが、懲役刑などの自由刑との比較の問題があります。近代刑法の中心的な思想は自由刑であって、国の秩序を乱した者は命を奪いあるいは身体を拘束して自由を奪うという報復的なものでありましたけれども、近時、その自由刑のあり方をめぐって拘禁中の処遇の問題とかあるいは人権保障の問題あるいは短期自由刑の弊害、すなわち短期間入獄しても悪いことだけ覚えて更生には役立たないとか、あるいは留置施設に係る費用だとかあるいはそれに関係する人の問題とかということから、特別の重罪以外は罰金で賄った方がよいのではないかという考えがイギリスとかアメリカを中心にして起こっておるあるいは考えられておる。恐らくまた、ECの統合なんかでも同じような思想が中心になってくると思われますけれども、我が国においても、御存じのように、拘禁四法についても拘置所と人権という点からの見直しが叫ばれております。
 こういうふうな観点から見て、罰金刑中心の刑法というものについてのお考えを、詳しいことは結構でございますけれども、どういうふうにとらえておられるのか、大臣の御意見を伺いたいと存じます。
#8
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのとおり、確かに短期自由刑というもののいろいろな弊害もあります。そうしたものを回避する手段といたしまして罰金刑の存在価値というものが今見直されなければならないといいますか、見直されておるということはそのとおりであると思いますし、英米におきましてもその背景として過剰拘禁というような問題があったというふうに聞いております。
 こうしたこともございまして、この問題につきましては現在法制審議会に対しまして財産刑をめぐる基本問題ということについての御審議、御検討をお願いしておりまして、短期自由刑にかわるものとしての罰金刑の存在価値あるいは機能、そ
ういったものにつきまして十分検討がこの法制審議会でもしていただけるものだと、このように考えております。我々といたしましては、そうした結果を踏まえまして所要の施策を講じていきたい、このように考えておるところでございます。
#9
○北村哲男君 どうもありがとうございました。
 それでは、少し内容について入っていきたいと思うのですけれども、今回の改正で多額二・五倍ということをしておられます。しかし、寡額の方は五倍ぐらいにしておられるわけです。確かに理由説明の中では、消費者物価が二・五倍あるいは労働者賃金は三・五倍というふうなことを根拠にしておられますけれども、消費者物価と労働者賃金という二つを比較してみましても、払う側のペナルティー、いわゆる圧迫感とすれば労働者賃金の方を根拠にする方がいいような気もしますし、寡額が五倍ということも明確な理由が説明されておりません。
 さらに、これは昭和六十年度の司法統計によりますと、罰金の総数が大体二百三十八万幾ら年間にある中で、現実の罰金刑は一方以下が五十六万何がしで約二三%、あるいは三万以下が百十九万、約百二十万で五〇%を超えているということであります。この辺から見ると、額では相当下のあたりに集中しているように見えるのですけれども、そういうところから今回の多額二・五倍と寡額五倍という点についての合理的な根拠ほどの辺に置かれたのかという説明をいただきたいと存じます。
#10
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘の点は、刑法及び暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律、これは刑法等三法と申しておりますが、この刑法等三法の今回の改正の中身についてのお尋ねであろうと思います。
 御指摘のとおり、経済変動に伴いまして今回は罰金の法定額を改定させていただきたいわけでございますが、原則的には消費者物価指数をとりまして二・五倍という形をとることといたしましたが、委員御指摘のとおり、刑法等の罪のうち非常に法定刑の上限が低いもの、具体的に申し上げますと、法定刑が一万円以下のもの、二万円以下のもの、四万円以下のもの、六万円以下のもの、十万円以下のものと、これだけの類型の罪につきましては非常に上限が低いということもございますので、今回の経済変動による二・五倍というものをそのまま適用いたしますと、例えば一万円以下の罰金と定められております刑法の罪につきましては二万五千円以下、こういうことになるわけでございます。二万円につきましてはそれがやはり五万円ということになるわけでございますが、二・五倍という形で比較的上限の低い刑法等の罪について、そのままそういった形を適用いたしますと、そうでなくても今回の法律改正の主たる目的でございますところの財産刑の刑罰としての機能の低下をカバーするということ、あるいは裁判の実務においてそういった低額の罪についての判決の傾向がだんだん頭打ち現象に近づいてきつつあるということ、そういったことを是正するという目的があるわけでございますので、そういったことを是正する目的ということに照らしますと、二・五倍というのを全部その少額の方につきましても同じように掛けますと、改正をいたしましてもたちまちのうちにまた機能低下を来す、あるいは頭打ち現象を来すのではないかというようなこともございまして、結局この辺につきましては二・五倍という計算ではなくて、御指摘のとおり二・五倍以上の倍率を掛けた形になっておるわけでございます。
 そこで、形といたしましては、従来刑法では九段階に法定刑が分かれておりましたけれども、それを結局下の方、一万円以下と二万円以下の類型のものを今回十万円以下として丸めると申しますかまとめる。それから、四万円以下と六万円以下の罰金の類型のものを今回は二十万円以下にまとめる。それから、従来十万円以下とされておりましたものを三倍の三十万円以下にまとめるという形にいたしました結果、九段階の区分けが今度は七段階に縮小されたということになったわけでございます。
 そういったことで、二・五倍であるという御説明をいたしておりますけれども、ただし極めて法定刑の低い刑法等の罪につきましては、いわゆる底上げと申しますか、そういったことをやらせていただいたわけでございます。ただ、お断りいたしておきますが、それぞれの罪について一つ一つ個別に見直しをしてそういうふうにしたというのではなくて、全体をグループとしてとらえまして、それをそういった形で底上げさせていただいた、こういうことになるわけでございます。
#11
○北村哲男君 今刑事事件の約九三%が罰金刑で処理されておって、その平均が一件当たり八万五千円を超えておる。そして、それは昭和四十五年度の約二・五倍なんだということが今回の二・五倍の一つの根拠にされておるというのをほかの委員会かほかの文章で読んだんですが、この一件当たり八万五千円というのは、実際ほとんどの事件は三万円以下で処理されておるけれども、場合によって脱税犯とかなんとかというとても高額な罰金なんかを含めて八万五千円ということになるのではないか。だから、この平均額は余り根拠にならないんじゃないかというふうな気がするんですが、その点はいかがなんでしょうか。
#12
○政府委員(井嶋一友君) 今御指摘の最近における平均罰金額の倍率がそうなっているからそれを根拠にしたということではございません。
 お手元にお配りしております資料をちょっとごらんいただきたいと思いますが、資料の青紙の「六」というところの以下の表の中で、四ページの表をごらんいただきたいと思います。ここのところに「一件当たり平均罰金額年次比較表」というのがございますが、これをごらんいただきますとおわかりいただきますように、四十八年から平成元年までをとっておりますけれども、全部の罰金刑で見ますと、四十八年は平均罰金額が三万九千三百十五円でございます。これをずっと下へ参りまして、平成元年を見ますと八万八千九百十九円、こうなるわけでございまして、四十八年を指数一〇〇といたしますと、平成元年は二二六、こうなるわけでございます。これを今度は刑法犯、特別法犯というふうに詳しく申し上げますと、刑法犯につきましては四十八年が三万九千三百三円でありましたものが、平成元年では八万九千七百六円、これが指数にしますと二二八、こうなります。
 それから、御指摘のような特別法犯につきまして平均をいたしますと、おっしゃることとは逆になっておりますけれども、四十八年が一万八千九百三十円、平成元年が五万九千八百八十七円ということになりまして、指数では三一六ということで、特別法犯につきましては平均が非常に伸びておるということでございます。
 こういうことで、それがこの右の方に「消費者物価指数」と書いて表がつくってございますが、消費者物価指数は右の表で見ますと二二五というふうになっておるわけでございまして、平均罰金額の上昇の率と必ずしも一致はしておりません。それから、労働者賃金が指数でいいますと二九一、こういったことになっておりまして、平均罰金額が上昇しているということも確かにございますが、そういったことで裁判の言い渡しの中で平均罰金額が上がってきておりますということは、平均していうならばだんだん法定刑の上限に近づきつつあるといったようなことも含めた現象であるということもございまして、今回早急に変更する必要がある。それにつきましては、やはり一番貨幣価値の変動を如実に示すものとされております消費者物価指数を基礎とさせていただいた、こういうことでございます。
#13
○北村哲男君 ただいまの点は結構でございます。
 次に、改正案の中の罰金の執行猶予という点について伺いたいのですが、これは刑法二十五条の関係でございます。第一条の「第二十五条第一項中「五千円」を「五十万円」に改める。」という点がございますが、この改正の趣旨についてお伺いしたいと存じます。
#14
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。
 第一条中の「第二十五条第一項中「五千円」を「五十万円」に改める。」という規定でございますが、この二十五条一項は、御指摘のように、執行猶予の規定でございます。執行猶予の規定は、刑法典では現在五千円以下の罰金について執行猶予がつけられるということになっておりますが、これは罰金等臨時措置法の規定によりまして、現行法上は二十万円に上げられております。そして、今回の改正は委員御存じのように、罰金等臨時措置法の改正部分もございますが、できるだけ刑法典を直接改正しようという方向をとりましたものですから、もとへ戻ったというとおかしいんですが、五千円を現行の二十万円の二・五倍の五十万円まで引き上げる、つまり執行猶予を付し得る罰金の額を拡大する、こういう改正でございます。
#15
○北村哲男君 それでは、今の点でさらに罰金の執行猶予の実情ですが、これは現実にどのくらいあって、そしてどういうふうに運用し、どの程度のものが執行猶予になっているのかという実情についてお伺いしたいと思います。
 というのは、ほとんどこういう例がないんだということが言われておる。たしか一%以下であろうというふうなことを資料には載っておるんですけれども、それはまたどういうところからそうい、うふうになっているのか。そうなるとまた、執行猶予という規定そのものの存在意義というものも問われるかと思うのですけれども、その点についてもあわせて御説明をいただきたいと存じます。
#16
○説明員(東條伸一郎君) 最初に私の方から、罰金の執行猶予の言い渡しの実情について数字を申し上げたいと思います。
 先生御指摘のように、罰金につきましては執行猶予の言い渡し人員は率としては極めて低いものでございます。比較的最近の三年ほどの数字を申し上げたいと思いますが、昭和六十二年でございますが、地裁での罰金言い渡し、有罪で言い渡された人員四百五十二名で執行猶予ゼロ。簡裁の通常第一審で千百十二名に対して執行猶予がつきました者が七、略式は大層数が多いわけでございますが、百六十万六千六百四十一人の略式有罪言い渡しの中で、執行猶予がつきましたのが五ということでございますから、トータルいたしますと百六十万八千二百五名の有罪人員に対しまして十二名ということに相なります。率にいたしますと〇・〇〇一%ということでございます。
 それから六十三年でございますが、通常第一審を見ますと、地裁では三百四十二人の罰金の有罪言い渡しに対して執行猶予がつきましたのが一名、それから通常第一審である簡裁は千八名の有罪言い渡しに対しまして執行猶予が三名、略式の方は百二十九万八千三百二十九名に対しまして執行猶予が七名、トータルいたしますと百二十九万九千六百七十九人中十一名の執行猶予、これまた〇・〇〇一%。
 それから平成元年でございます。地裁の有罪が三百七十四人で執行猶予三名、通常第一審の簡裁が八百三十五名中十名、それから略式が百十九万七千五百九名中十人、トータルで百十九万八千七百十八人中二十三名、〇・〇〇二%という率にいたしますと大変低い執行猶予の言い渡しになっております。
 先生御承知のように、自由刑の言い渡しの場合ですと、三年以下の懲役刑、自由刑の場合に初度の執行猶予が付せられることになっておりますが、罪質にもよりますけれども、かなり高率の、半数以上の執行猶予率があるかと記憶いたしております。これに対しまして、罰金の執行猶予というものは極めて活用される割合が低いというのは御指摘のとおりであろうかというふうに思います。
 なぜそのような運用がなされているのか、これはなかなか軽々には言いがたいところであろうかと思いますが、先ほど来先生も御指摘のように、全体的に言い渡される罰金額が比較的低い水準のものが多い、したがってそれにさらに執行猶予を付すというようなことはなかなか考えにくいということが大きな原因であろうかと思われます。
 今後どのような運用がなされますか、罰金刑の引き上げがなされた段階で運用に多少の影響があるかどうか、これは私ども予測の限りではございませんが、ただ今回の改正の趣旨はあくまでも物価水準の変動に対応するための引き上げということで、その意味では特に重くするという意味合いが乏しいと思われますので、猶予の運用はそれほど変わらないのではないかというふうな予測はいたしております。
#17
○北村哲男君 わかりました。
 次の質問に移りますが、今回の改定について、昭和四十九年十二月に出された法制審の改正刑法草案というのがございますが、そこの罰金刑についても一番下のラインが一万円以上になっており、比較してみますと、ほぼ当時の改正草案の額に二・五倍ぐらいを掛けたものが今回の改正案になっているように見受けられますけれども、前回の改正刑法草案のいわゆる罰金刑の定め方の基準と今回の基準というのは同じ基準で定められているのですか、あるいは別の定め方をされておるのでしょうか。
#18
○政府委員(井嶋一友君) 今御指摘のように、昭和四十七年の罰臨の改正以来、十九年ぶりに今回は経済変動に見合う形で改正したいということで改正のお願いをするわけでございますが、今御指摘の改正刑法草案の検討と申しますのは、ずっと長い間やってまいりました刑法全面改正の作業の中で結実した一つの草案でございまして、それが四十九年に発表されているわけでございます。
 ここにおきます検討は、いわば今回手を触れませんでした例えば刑罰としての体刑の見直しとか個別の犯罪についての検討、それから、もちろんその当時の経済状況は勘案しておりますけれども、独自の立場における刑罰のあり方、あるいは法定刑の決め方、あるいはその金額といったようなものが出てまいっておるわけでございまして、今回お願いしておりますこの改正とは直接的にはそういった意味においてリンクをしていないというふうに御説明させていただきたいと思います。
#19
○北村哲男君 その点は後でさらに別の観点から聞くことにしまして、いわゆるダブルスタンダードの問題に入っていきたいと思います。
 これは衆議院の審議の中でも非常に中心的に審議されておる問題でありますし、またこの改正案ができる法制審の経過の中でも随分と議論になった問題であると思います。
 一つは、刑訴法六十条あるいは百九十九条一項、二百十七条については刑法等三法は三十万で、その他は当面二万円というふうにしておりますし、また刑事訴訟法二百八十四条あるいは二百八十五条あるいは三百九十条、いわゆる法廷の出頭義務等の問題につきましては刑法等三法は五十万とし、そしてそのほかでは五万ということで十倍の差があるということは、その差が大き過ぎることが明白であるわけです。もともと刑事訴訟法の原則というのは、軽微な犯罪は逮捕、勾留をされないという原則があると思います。これが、ある犯罪では三十万までは逮捕されない、あるいは勾留されない、しかしその他の犯罪では二万円までと、しかも、通常より重いとされる刑法本体系の自然犯の方については逮捕、勾留されないという限界が広く認められて、それより狭いとされる行政犯についてはより厳しくという形になっているのは、これは人権保障という刑事訴訟法の原則から見て明らかにおかしいんではないかというふうに思われます。
 特に法制審の中でも、これは一本化されるべしということが強く叫ばれて、ほぼ議論の中心になってきたと思うわけですけれども、私も同じく捜査優先の立場よりも人権尊重の立場あるいは法の正当手続という立場から、これは場合によってはいわゆるデュープロセスというか、憲法問題にもなりかねない問題ではないかと思うわけです。その点について多くの時間をかけて議論されておりますけれども、わかりやすく説明して、その辺の合理性というものを解説していただきたいと思います。
#20
○政府委員(井嶋一友君) いろいろ細かいデータで御説明するとなおよく御理解いただけると思い
ますが、私の方からはまずその経緯と概括的な物の考え方につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 今委員御指摘のとおり、逮捕、勾留が制限されます罪の基準となります罰金の額、現行は刑法等につきましては十万円、その他の罪につきましては八千円となっておるわけでございますが、それを刑法等の罪につきましては三十万円、その他の罪につきましては二万円というふうに改正を提案しているわけでございます。それから、公判の期日における出頭義務の免除に関する基準として、現在刑法等が二十万、その他の罪が二万とされておりますのを、御指摘のとおり刑法等は五十万、その他は五万というふうに改めることといたしております。
 この意味合いは、要するに刑法等の罪につきましては、法定刑が罰金・科料のみであり、かつ三十万円以下の罪については通常の勾留、逮捕の要件にプラス住居不定とかいったようなもう一つ要件がないと逮捕ができないという定めになっておる規定であることは御承知のとおりでございます。それから、公判の期日の出頭義務につきましても、その金額を基準といたしまして、それ以下の罪につきましては免除されるという規定になっておるわけでございます。
 ところで、なぜ刑訴法で例えば逮捕、勾留等につきましては一律に五百円以下の罪についてはというふうに書いておるのにかかわらず、この二つの基準つまりダブルスタンダードでやってきておるのかということの御指摘でございます。これには、結局罰金等臨時措置法を定めました昭和二十三年の制定当時の経緯までさかのぼらなければなりませんので、若干説明をいたします。
 刑法は明治四十年に制定されまして四十一年から施行しておりますが、法定刑は今日まで全然いじっていないわけでございます、特に罰金刑につきましても。したがいまして、ずっと戦前その形でまいったわけでございますが、終戦後に経済の著しい変動がございまして、刑法に定められております罰金額では到底機能しないということになりましたために、昭和二十三年に罰金等臨時措置法でとりあえず罰金の金額を引き上げようということが行われたわけでございます。そのときに、刑法等につきましては、当時五十倍という計算の倍率を定めまして、法定刑に五十倍を掛けるという形で運用をしてまいりましたが、その当時刑法等以外の行政罰則、非常に多数ございましたけれども、それらの罰則につきましては非常にたくさんあるということと、それから非常に千差万別だったということ、いろいろ法定刑の定め方も刑法等とは違いまして差異があったというようなことがございまして、なかなか二十三年の段階で統一的にこれをまとめることができなかったわけでございます。
 したがいまして、当時はとりあえず余りにも低いものは是正しようということで、二十三年のときには罰臨法で、特別法につきましては罰金の多額の上限が二千円に満たないものは二千円まで引き上げる、それから寡額の下限が千円に満たないものは千円まで引き上げるという形で統一的に整理をいたしまして、それ以外に個別の改定はしなかったわけでございます。そういったことを導入しましたために、刑事訴訟法の今のそれぞれの規定を適用する上におきましては、どうしても一本でやりますと、ほとんどの特別法の罪が結局例外といいますか、逮捕、勾留が制限される罪の方へ入るというようなこともございましたために、結局ダブルスタンダードにせざるを得ないということで、当時、刑法等の罪と特別法等の罪を分けて規定するようになった。この形でずっと戦後運用されてまいりまして実務が定着いたしましたので、結局四十七年の改正の際にも、やはり同じように当時行われていた実務のやり方をそのまま特別の変更を加えずに持ってこようとすれば、やはり同じ基準で同じ倍率でやれば実態としては同じに移行するということで、当時刑法については十万円、それからその他については八千円というような決め方をしたわけでございます。
 今回につきましても同じような意味で、刑法等で十万円以下の罰金とされております罪について制限があるわけですから、同じものを持ってこようといたしますと、十万円のグループが幾らになったか、つまりそれは三十万円になるんだということになりますから、同じように扱うためには三十万円というふうにせざるを得ない。それから、その他の罪につきましては八千円とされておりますけれども、それを今度その他の罪についての罰金の多額の下限といたします二万円、これを持ってこざるを得ないということで、やはりダブルスタンダードを引き継ぎながらそういったスライドをしたわけでございまして、そのことによりまして若干特別法につきましては制限される罪の範囲が広がります、ふえます。ふえますということは、人権保障上はむしろ要件がもう一つ加わらなければ逮捕、勾留ができないというような形で運営される特別法がふえるわけでございますから、そういった意味では、むしろ有利になるといいますか、そういった形になるんだろうと結果的に思いますけれども、いずれにいたしましても、実務の体制をそう大きく変えないという基本がございましたためにこういったダブルスタンダードをそのまま引き継いだということなのでございます。
 それではこれをどうしたら解消できるかということになりますと、もう今まで御説明したことでおわかりいただけますように、特別法の方を刑法等の罪の基準と似たようなものに近づけていけば、つまりそれを全部一体化したものとして評価して運営するような形が整いますれば、結局刑訴の原則に戻って一本化ができるのではないか。しかし、特別法をこの際全部刑法と同じような形で罰金のあり方、金額のあり方をそろえるということは極めて至難のわざでございますので、そういったことで、将来、行政罰則につきましてはできるだけ刑法等の罪の決め方と近づけるように努力はするけれども、しかしそれにはとても時間もかかりますので、やはり二重のスタンダードを設けざるを得なかった、こういうことなのでございます。
#21
○北村哲男君 そこで、法律の中に「当分の間、」という言葉が出てきておりますけれども、今おっしゃったことはその「当分の間、」ということに関係するわけですね。その「当分の間、」について、それは将来というお話がありましたけれども、一体どういうふうにとらえればよろしいのか、お伺いいたします。
#22
○政府委員(井嶋一友君) 実は、この「当分の間、」という規定は罰金等臨時措置法の四条の規定に入っておりました。それで、二十三年あるいは四十七年の際に、先ほど申しましたように、これは当面のものだ、暫定的なものだ、一緒になれば一本化できるんだ、こういうようなことで当面という言葉が入っておりましたが、今回、罰臨法を改正いたしまして刑事訴訟法にこの規定を持ってきたわけでございます。そこで、同じような考え方で、先ほど説明いたしましたように、特別法が一本化できるといったようなことの成就いたしますまで当分の間、これはこういう形で置かざるを得ないということを表明するために「当分の間、」という規定をそのまま持ってまいったわけでございます。
 それじゃ、いつごろまでにできるのか、こういうことでございます。先ほどちょっと御説明いたしましたけれども、結局特別法の罰則を刑法の罰則のあり方と基本的に近づけていかなければできないということでございます。
 じゃ、特別法の罰則をどういうふうに改定していくのかということでございますが、特別法の罰則というのは、今ざっと申し上げましても二千五百幾らの、項別で考えました場合に二千五百余の数の罰則があるわけでございます。しかも、これは各省がそれぞれ持っておるわけでございますから、それを改正される都度に、私どもは罰則審査ということでできるだけ私どものスタンダードに合わせながら各省の特別法を改正してきておりまして、今までそういった努力をしてまいっております。これからもそういった形で努力をしていき
たいと思いますけれども、遺憾ながら改正が行われない特別法につきましては、そういったチャンスがございませんのでなかなかできない。しかし、できるだけそういったことを早急にやる必要があるということで、現在法制審議会刑事法部会の財産刑検討小委員会おきましてこの問題を検討していただいております。そこで行政罰則の罰金の整理の仕方といった大きな大綱みたいなものをお示しいただけますならば、それに従って各省が持っております特別法をできるだけそういった大綱に沿うような形で整理をしていくことが可能なのではないか。そうなれば、刑法等の法定刑とそういったものとがある程度近づきますので、その段階で一体化ができるのかな、こういうふうに考えておるわけでございます。
 いつまでにということはなかなか難しゅうございますけれども、少なくとも検討小委員会の結論は二年以内には何とか出そうということで努力しておるわけでございますので、その結果を見ました上で検討してまいりたい。もちろん、その間に、各省が持ってまいります罰則審査につきましてはできるだけ私が申しましたような線で統一的に改定できるように努力をしていきたい、このように思っております。
#23
○北村哲男君 衆議院でもたしか二年ぐらいと言われましたし、ただいまも二年と。今までから考えたら大変なスピードで、大いに期待するところであります。
 ところで、このダブルスタンダードの問題で、刑訴六十条等の逮捕、勾留の問題とそれから刑訴二百八十四条の法廷への出頭義務の問題は、若干性格が違うような感じがします。片や人権保障の問題でありますが、出頭義務等の問題については特にそういう問題もないような感じがするのですが、その出頭義務あるいは免除の点につきまして今回の改正によってどのぐらいの範囲でどの程度の適用が拡大されるのかという点についてお調べいただいたと思うのですが、御説明をいただきたいと思います。
#24
○政府委員(井嶋一友君) 今の御質問については審議官に答弁をさせますが、私が今御説明いたしました中で、罰金等臨時措置法の「当分の間、」の規定は四条にあると申し上げたわけでございますが、失礼いたしました、一条でございますので、訂正させていただきます。
#25
○説明員(東條伸一郎君) 出頭義務の免除の限界罰金額の対象となる罰則でございますが、まず現在は、刑法ほか二法につきましては二十万円で、それ以外の罪につきましては二万円という線が引かれております。刑法ほか二法の罪は、非常に数は少のうございまして、条項数でいきますと騒擾の附和随行を初めといたしまして十一でございますか、その程度の数になります。それから、それ以外の罪につきましては、数が現在でも相当多うございます。百七十九、現在私どもで把握いたしております。これを今度の改正で引き上げることになるわけですが、刑法等の罪は、それぞれ同じ基準でスライドして罰金額が上がってまいりますので、その範囲に変動はございません。したがいまして、特別法の方が二万円から五万円にまで上がりますので、そこにどれだけの罰則が入ってくるかということでございますが、条項ベースで申し上げますと二十七という数字になっております。
#26
○北村哲男君 今、数を言われたのですが、数だけではちょっとイメージがわかないんですが、例えばどういう犯罪が入るんでしょうか、わかりやすいものについて御説明をお願いいたします。
#27
○説明員(東條伸一郎君) 手元にちょっと構成要件まで書いたデータはございませんので、恐縮でございますが、法律名で申し上げさせていただきたいと思います。
 要するに今度二万円を超えまして五万円以下の罪が新たにその範囲に入ってくるということでございますが、船舶法の罪あるいは国税犯則取締法の十九条ノ二の罰則、それから船舶安全法二十一条以下、そういった罪がこれに当たるということでございます。
#28
○北村哲男君 それでは、次の質問に入ります。
 今回の法律の提案理由説明におきまして、基本的には額の改定をする、あわせて「これに関連する手続的な整備を行おうとする」というふうに提案理由説明では言っておられます。それで、「これに関連する手続的な整備」のことでございますが、先般いわゆる刑法七十条二項の問題で、すなわち一銭に満たない金額は切り捨てるという規定が残っておるのはおかしいではないかということが問題になったのですが、それに関して刑事局の方から、「今回の改正において、刑法七十条二項に関する手当てを見送った理由について」という文書をいただきました。その中では、やはり今回の改正は「法定刑を引き上げ、これに関連する範囲で手続上の基準金額を改めようとするもの」というふうに、さらに関連する手続的な整備についての内容を詳しく言っておられます。
 そういうところから見まして、今回の改正で、刑訴二十八条を、これは今度の改正法の五条になりますが、刑訴二十八条の改正を、これは「刑法」の下に「(明治四十年法律第四十五号)」を加え、「乃至」という漢字を「から」というふうに改める、「あたる」というのを漢字の「当たる」に改めるというふうにしているわけですが、これは刑事局のおっしゃっている「これに関連する範囲で手続法上の基準金額を改めよう」ということと何ら関係ないように思えるんですけれども、この条文はどういうふうに改正の趣旨と関係があるのですか。その点についての説明をいただきたいと思います。
#29
○説明員(東條伸一郎君) 今回の法律案の第五条のところで刑事訴訟法の改正を行う条項をまとめております。
 ただいま御指摘のように、その第一番目のところは刑事訴訟法の二十八条中の「刑法」の下に法律番号を入れる改正と「乃至」の文字を「から」と、それから「あたる」を「当たる」に改めるという改正案になっております。先生御指摘のとおり、刑訴法二十八条というのは今回の罰金の額等の引き上げを図ろうとする法律の本来の趣旨とは関係ない規定でございます。
 そこで、なぜこのようなことをいたしましたかということについてやや技術的な問題でございますので私の方から説明させていただきたいと思いますが、法律の一部改正を行いますときに、その都度現代の用字、用語に合致したものに書きかえて、最終的には全体を整理するという方針が従来からとられております。そして、これは原則的には、実質的改正に伴いまして項単位で行うのが原則のようでございます。そして法律番号といわゆるルビという問題につきましては、その当該法律の一番初めに出てきたところでこれを改めるという方針が慣例としてとられているということでございます。
 そこで今回の刑訴法の改正を見てみますと、先ほど来問題となっております刑事訴訟法の六十条の三項のところに「刑法」という言葉が出てまいります。この「刑法」の下に法律番号を入れるということをやるわけでございますが、今申し上げましたように、その法律番号の部分は当該法律で一番最初に同じ法律の名前が出てきたところで入れろという位組みになっているようでございまして、そういたしますと二十八条のところに実は一番最初に「刑法」という言葉が出てきてしまうということで、ここに「(明治四十年法律第四十五号)」という括弧書きを入れた。そしてこの括弧書きを入れますと、その二十八条のところの一部だけを変えるわけにもいかないということで、まことに形式的な話になりますが、「乃至第四十一条」を「から第四十一条」、「あたる」を「当たる」に改める、こういう改正をしたということでございます。
#30
○北村哲男君 いずれにしろ、この五条の刑訴法二十八条の改正と、また次の五十八条も、これは単にルビを書いて、それから「虞」という難しい漢字を平仮名に変えたということで、これは趣旨説明、理由説明とは全く関係ないことでございますね。
#31
○説明員(東條伸一郎君) 御指摘のように、これは形式的な法整備のための改正でございます。
#32
○北村哲男君 ところで、そうしますと非常にこれだけ唐突に出てきますとわかりにくいのですけれども、大体の基準といいますか――というのは漢字で「当たる」という言葉は法律用語でしょっちゅう出てくるんですけれども、これは次の各号に当たるというふうな言い方と、それからもう一つは殺人罪に当たるというふうな言い方両方あるんですけれども、それを区別することなく両方とも「当」ということに全部統一していこうということなんでしょうか。
#33
○説明員(東條伸一郎君) これも非常に形式的、技術的な話でございますが、今御指摘のように、「あたる」という平仮名は大体内容にかかわらず「当たる」に変えるということになっているようでございます。
#34
○北村哲男君 次の五十八条で「左の」というのを「次の」というのに改めておりますけれども、これはやはり常に今度は「左の」というのを「次の」に変更されることになりますか。
#35
○説明員(東條伸一郎君) 御指摘のとおり、「左の」という言葉は「次の」に直すということにいたしておるところでございます。
#36
○北村哲男君 その次のページ、刑訴法八十九条の中の「禁錮」を「禁錮(こ)」、「錮」という字を「錮(こ)」というふうに書いてあります、それから「あたる」を「当たる」に改めておりますけれども「この八十九条を見ますと、これは確かに八十九条の一号は、「禁錮にあたる罪を」の「あたる」という言葉を「当たる」に直し、「禁錮」という言葉は難しいから「禁錮(こ)」というふうになるのですが、その右の本文の方に「保釈の請求があったときは、左の場合を除いては、これを許さなければならない。」ということで「左」とあるのですけれども、これは当然そういうふうに直されたのであれば五十八条と同じように「次の」というふうに直さなくてはいけないと思うのですが、これはどうして直っていないのでしょうか、細かいことで恐縮ですけれども。
#37
○説明員(東條伸一郎君) 大変技術的なことで恐縮でございますが、この八十九条の一号の「禁錮」を「禁錮(こ)」に改めなければならないという理由からまず御説明させていただきたいと思いますが、これはずっと後ろの方に出てまいります二百八十五条の二項の規定が先ほど来問題となっております出頭義務の規定でございます。この「五千円」について今回括弧書きをつけまして二段階の改正を行う、そこに「禁錮」という言葉が出てまいりますものですから、その言葉がルビの関係で一番最初に出てくるのはどこかということをずっとさかのぼって探してまいりますと八十九条の一号というところに出てまいります。一号にルビで、この「禁錮」の「錮」のわきに「こ」というルビを振るわけでございますが、ルビを振る改正はできるだけ最小限の範囲でそれに伴う必要なものを行うというこれは原則をとっておるようでございまして、したがいまして、同じ号中の「にあたる」という言葉については「当たる」と変えざるを得ないけれども、号とは関係のない本文の部分はこれは変えないんだ。
 こういうことで、それが一つの法律の改正に当たっての方針であるということでございましたので、確かに御指摘のように、八十九条の場合には「左の」を「次の」に直さずにそのままにしておって、五十八条の方は「左の」を「次の」に直しているというのはおかしいということでございますが、五十八条の方はこの本文の方に、「勾引」のところの「勾」というところにまずルビを振るものですから、そうしますと同じ文章の中にある「左」という言葉を「次の」に変えざるを得ないということで変えた。こういう大変ややこしい経緯でこうなっておるということでございます。
#38
○北村哲男君 細かいことなのでこれぐらいにしたいと思うのですが、これはそうしますと、その項と号の場合は、項と号は条文としては一体となすというふうな考え方があると思うのですけれども、それはもう別々というのが今の方針ということになるのですか。
#39
○説明員(東條伸一郎君) おっしゃいますように、例えば第一項第何号という場合に、全体としてその項ということでそこに出てくる場合には、項内のものは一つ直せばそれに伴ってほかのものもすべて直すというのが一応の原則のようでございますが、ただルビその他の非常に形式的な改正の場合はさらに単位を限って号で見るのだというやり方をとっているよるでございます。
 本件の場合にはルビから出てきた問題、「錮」という言葉から始まった問題ということで、八十九条の場合は最小限の号でとめたというふうに理解いたしております。
#40
○北村哲男君 もう一点、実は今はまだ審議されておらないのですが、法務省から出されたいわゆる入管特例法案をこの次に審議される予定なんですけれども、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法案、その九条を見ますと「禁錮(こ)」という言葉が一号、二号、三号、四号とたくさん出てくるのですけれども、そのすべてにルビが「禁錮(こ)」と振ってあるのです。これは今言われた最初のところへ振るという原則と反するような気がするのですけれども、それはどういうことになるのでしょうか。
#41
○説明員(東條伸一郎君) ただいまちょっと手元にその法律を持っておりませんものですから、後刻検討いたしましてお答えいたしたいと思います。
#42
○北村哲男君 そうすると、事実この間いただいたものだから見ましたら同じようについているのですけれども、これは今まで言われた最初のところにつけるという原則からいうと間違いであるということになるのか、あるいはこれはどうでもいいということになるのか、それはどういうお考えでしょうか。
#43
○説明員(東條伸一郎君) 先ほど来御説明しておりますようなやり方が私どもとしては原則であるというふうにこの法律案を作成いたしますときに説明を受けまして、そういう方針で必要最小限度の法律番号の挿入ですとか言葉についてルビをつけるあるいは文字を改めるという改正をいたしたというふうに御理解いただきたいと思います。
#44
○北村哲男君 済みません、今ちょっとよく聞こえなかったのですが、もう一度お願いします。
#45
○説明員(東條伸一郎君) 入管特例法案の場合に、もう一度私その条文がその原則に合っているのかどうか確認をいたしたいと思いますが、先ほど来御説明申し上げておりますように、このような改正を行うときに原則は項単位である、ただ項単位の中で特に形式的なものについては号に限ってルビ等を付すというやり方をしている。今回の刑法の方はそういう方針で統一して行ったわけであります。
 ただ、例えば原則項単位というときに、項の中のものを全部ルビを振ってしまうというやり方、同じ項であればそこに何号か、幾つかの号があらわれてきて一つの号に「禁錮」という言葉が出たときに、同じ項じゃないかということで、例えば八十九条ですと二号にも三号にも「禁錮」という言葉が出てまいります。ここにはルビを振っておりません。二号、三号の方にはルビを振っておりませんが、そういう改正のやり方をとるという場合も可能であろうと思います。これはそこまでぎりぎり厳格な原則があるかどうか私は言い切る自信はございませんが、そういう方針をとられる場合もあるのではないかと思います。
#46
○北村哲男君 もう一点、刑訴二十八条の問題についてお伺いします。
 刑訴二十八条は、刑法三十九条ないし四十一条、すなわち意思能力のない場合でも刑罰の適用を受ける場合の規定であります。現在この規定の適用を受ける罪、すなわち心神喪失とかいん唖者あるいは十四歳末満の者が行った行為でも刑事罰に処すことのできる罪は現実にあるのでしょうか。
#47
○説明員(東條伸一郎君) 刑事訴訟法二十八条が現に対象としているような実体法規が存在するかというお尋ねであろうかと思います。
 御指摘のように、刑法の三十九条から四十一条
の部分、これは責任能力に関する規定でございます。三十九条が心神喪失及び心神耗弱の規定であり、四十条がいん唖者の責任能力に関する規定であり、四十一条は未成年者の責任能力を定めた規定でございます。このような規定が排除されるような法律があるかということでございます。実はこの刑事訴訟法をつくりました当時は、先生も御承知のように、主として専売関係の法律等でこの責任能力に関する規定を全面的に適用しないあるいは一部適用しないという法律がございました。その後、昭和五十九年の法改正によりましてこれらの専売法規が廃止されました。例えば、たばこ専売法が廃止されましてたばこ事業法という法律にかわりまして、このような規定を現在持っている法律は私どもが調べた限りではございません。
#48
○北村哲男君 現在ないにもかかわらず、これを残して、しかもあえて字句の訂正をされる。字句の訂正については先ほどわかりました。もし現在これがないとするならば、あるいはそして、新しくできたたばこ事業法の中に何か経過規定があるようですけれども、これはたばこ事業法のたしか附則十三条で、「この法律の施行後においても、なおかつその効力を有する。」、すなわち――失礼しました、ちょっとこれが当たるかどうかわかりませんが、たばこ事業法が廃止されたならばこの二十八条についてもやはり同様にもう必要ないわけですから廃止するなり、あるいは何かの形で効力が存続するのであれば経過規定の方に移してしまう方が先決ではないのだろうかと思うのですけれども、その辺はなぜ不用のものをこのまま残しておるのかという点についてお伺いしたいと思います。
#49
○説明員(東條伸一郎君) 先生御指摘のように、、たばこ専売法からたばこ事業法の規定にかわりますときに、まずたばこ事業法の附則二十四条で「施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」という一般的な罰則に関する経過規定が置かれております。したがいまして、このたばこ事業法によるたばこ専売法の廃止前に行われましたたばこ専売法違反の事件につきましては従前どおりの刑の適用がございますので、その手続に当たっても二十八条は当分の間必要である、こういうことに相なります。
 それから、先ほど御指摘のたばこ事業法の附則の十三条は、これは非常に技術的な規定でございますけれども、小売人の相続人の届け出義務に関する規定で、これは従来どおりこのたばこ専売法の三十三条の規定、それに係る罰則も含んでその後も効力を有するということでございますので、非常に観念論的ではございますが、まだ現在も法律として実はまだ旧法三十三条の規定が残っていると理解されるわけでございます。
 そういう意味合いにおきまして、その時期に一気に二十八条の問題を恐らくさわらないということになったことが一つであろうと思いますが、より基本的には刑事手続の基本法でございます刑事訴訟法、これを改正するというときに二十八条がその対象とする実体規定が現段階では存在しない。このような実体規定を将来置くような罰則規定が設けられるかどうか、これは責任能力に関する規定の適用を排除するような罰則でございますから、実はかなり古いタイプといいますか、罰則の体系では古いタイプで、これから新しくこういう罰則が出てくるかどうか、これはなかなか予測が難しい。むしろ、私個人的にはそういう罰則はもはやできないのではないか、こういう理解をしております。
 いずれにしても、そのような見通しの上は立ちまして、手続法としてこれを改めるかどうか、刑事訴訟法の改正問題の中で検討していくべき一つの問題であろうかと思っております。そういういきさつで現在なお法律の条文上は残っている、こういうことでございます。
#50
○北村哲男君 御説明はわかるのですが、しかし、この二十八条というのは本来、旧専売法が廃止されたときにあわせて廃止されて、もし必要であるならば経過措置として附則か何かに規定されるべき性格のものではないかと思うのですけれども、その辺はどうなのでしょうか。
#51
○説明員(東條伸一郎君) 繰り返しになって大変恐縮ですが、そのときにいわゆる実体法の一つである専売関係法律の廃止で、それがいわば最後の規定であるために、最後の規定といいますか、そのような規定は実はほかにも、税法にも昔はあったわけでございますが、それがだんだん姿を消してまいりまして、最終的には専売関係の法律で姿を消すに至った。それが現段階では最後であるから、それではそれに対応する手続規定の二十八条も命運をともにするといいますか、経過規定を残して一緒に姿を消していくべきであると判断するかどうか。これは将来の見込みというものも踏まえまして一つの判断事項であろうと思います。一つは、刑事訴訟法は刑事訴訟法として一括して将来の整理の際にこの問題も考えようということがございましたけれども、もう一つは、やはり専売のためだけの規定という性格が非常にはっきりしておりますと、専売関係の法律を廃止するときにこれも廃止される。ところが、これは一般規定でございますので、なかなかそういう対応関係が法律上決めかねるという問題があったということで、今御指摘のような措置はとらなかったというふうに考えております。
#52
○北村哲男君 もう一点、刑法七十条二項の点について聞いておきたいのですけれども、これが先ほど申しました刑事局から出された説明書であります。第一点については今回は改定だけだと、二番目はポリシーの問題を含むから、すなわち政策問題を含むから今回は七十条二項にさわらなかったのだというふうに御説明をされておりますが、先ほど申しました四十九年十二月に出された法制審議会の改正刑法草案を見ますと、これは同じく七十条二項に該当する規定があります。それは改正草案の五十三条でありますけれども、「軽減による端数の切捨」という条項がありまして、「懲役、禁固又は拘留の軽減によつて一日に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる。」という一項がありまして二項はございません。それについての解説、説明を見ますと、「本条は、自由刑の軽減によって一日未満の端数が生じた場合に関する規定であり、現行法第七〇条第一項と同趣旨である。なお、現行法には、罰金及び科料についても同様の規定があるが、改正案による罰金及び科料については、二回の軽減をしても少額の端数を生ずることがないので、この点に関する規定は設けないことにした。」というふうに明確に書いてあります。
 そうしますと、今までの経過のいろんな文章すなわち補足的意見というもの、あるいは弁護士会に出された懇談会の資料を見ますと確かに問題になっておりまして、これを十円にするか一円にするかという問題があったようであります。しかし、今回の改正を見ますと、この改正草案でもはっきり言っておるように、どう考えても端数を生ずることがないので必要がないことは明らかであると思うのですが、その点について、既に政策問題ではないのじゃないかというふうに考えますけれども、特に刑法改正草案との関係ではどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと存じます。
#53
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘の刑法七十条二項の規定は、一項におきまして体刑につきまして、二項におきまして財産刑につきまして減軽をする場合に生じます端数の処理に関して規定をしておるわけでございます。これは規定上一銭という現在貨幣として通用しない金額が出てまいりますために、一見極めてナンセンスであり、また、実務上、一銭に満たざる端数が出てくるということはないという意味におきましては、おっしゃるとおり、これは無用の規定ではないか、こういうことになろうかと思います。そしてまた、今御指摘のように、昭和四十九年の改正刑法草案におきましては、体刑についてのみ端数処理の規定を置きまして、財産刑につきましては端数の生ずる余地がないという考え方でこれを削除した、こういうふうに説明されておるわけでございます。
 しかしながら、私どもは今回の法律案をつくります過程におきまして日弁連とも協議をいたした
わけでございますけれども、どのような考え方によってこれを整理しなかったかということを御説明させていただきたいと思いますが、要するに、財産刑の軽減をいたします場合は、現行刑法のシステムでやりますと二回半減できるという半減主義をとっておるわけでございますので、罰金につきましては上限額及び下限額につきましてそれぞれ二分の一いたしまして、処断刑の範囲を決めましてその中で宣告刑を決める、こういう手続をとります。したがいまして、罰金につきましては上限と下限を二回ずつ半分にするわけですけれども、科料につきましては科料の多額を二分の一にする、こういう定めになっておるわけでございます。刑法にございますこの意味合いというのは、現在の科料の多額というものが二十円未満となっておるわけでございますけれども、極めて少額でございますが、未満というのをどのように考えるかは別といたしまして、とにかく二回半減主義をとる場合に一銭以下の端数が出る場合があるということでこういう規定が置かれたわけでございます。この精神は、今後も財産刑の軽減を行います場合に端数が出た場合にはやはりこの精神で切り捨てるというまず哲学が必要だろうと思います。
 ところで、じゃ端数といったものがどういう形で出てくるのかということでございますが、これを現在の貨幣の価値あるいはこれから将来、我々が財産刑検討小委員会で検討いたしております財産刑のあり方といったものの将来像、そういったものを考えてまいりますと、まず罰金刑と科料刑をどのように扱うか、あるいは科料刑をなくすのかといったような議論がまず起こるわけでございます。結局そこで罰金なり科料刑のあり方というものが決まりまして、財産刑の金額のあり方が決まります。そうして、それにつきまして現在と同じような減軽の仕方をやるのであるとすれば、当然財産刑を割ってまいるわけですから、どこに基準を置くかという問題はございますけれども、端数というのは大体常に生じるはずなのでございます。ただ、そこで端数を一円以下というふうに決めてしまえば恐らく起こり得ないだろう。しかし、例えば千円以下は切り捨てるという政策をとるといたしますれば、これは端数というのは恐らく出てくるだろうと思います。
 したがって、この端数の切り捨ての基準となる金額といったものをどのように定めるかということが、実は私どもにとりましては財産刑の将来のあり方を決める場において決まる哲学とリンクしてくる、このように考えておるわけでございます。したがいまして、一円とするのか十円とするのか百円以下とするのかあるいは千円以下とするのかということにつきましては、実は決めかねておるわけでございます。刑法改正草案におきましては端数がないというふうに考えておりますので、一体端数の基準をどこと考えたかということがはっきりしないわけでございます。しかしながら、御案内のとおり、この改正刑法草案の前のもの、つまり昭和三十六年に発表いたしました改正刑法準備草案におきましては、実は「刑の軽減によって一日又は十円に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる。」という規定を置いておりまして、このときには十円を切り捨ての基準にしようという政策がとられているわけでございます。
 私どもは、そういった経過も検討過程で踏まえまして、実は平成元年に日弁連と協議をいたしました際に、案といたしましてこの七十条二項の一銭を十円に改めるという案を示したことがございます。それで議論をしたこともございます。しかしながら、結局そういった今まで申しましたような将来の財産刑のあり方とその金額の決め方、それによって端数切り捨ての基準をいかなる額にするかということとリンクしてまいるという考え方から、今回は非常に何か適用のない、しかも法文美学上一銭といったようなものが出てくるというのはまことに奇異だという御指摘はわかるわけでございますけれども、この財産刑検討小委員会にゆだねておる間なお置かせていただきたい。その上で財産刑小委員会の結論が出ました場合に、私先ほど来申しておりますような政策を決めまして、そしてこの改正をいたしたい。今の段階では一項が体刑の軽減の仕方、二項が財産刑の軽減の仕方といったものを定めておる、その哲学というか基本的な考え方を示しておるんだという意味合いにおいて意味を持たせていただきたい、このように考えておるわけでございます。
#54
○北村哲男君 この問題については幾つかあると思いますが、私はこの程度にしておきたいと思います。
 次に、やはり改正条項の地方自治法に関する問題でございます。
 地方自治法の一部改正で定める罰金額の最高限度を百万円としておりますけれども、地方自治法十四条五項はその条例によって定められる罰金を従来は十万円以下としております。それと今回の刑法改正の原則二・五倍とは随分かけ離れておりますけれども、その理由、根拠というもの。確かに地方自治法の制定が昭和二十二年ということを見ると、逆に今度は十倍では安過ぎるのではないかということも考えられる。その点についてほどのような立場に立っておられるのかということをまずお伺いしたいと存じます。
#55
○説明員(岩崎忠夫君) 今回、条例におきます罰金刑の上限額を十万円から百万円に引き上げることとしているわけでございますが、これは条例におきます罰金刑の上限額が、先生御案内のとおり、昭和二十二年以来十万円で据え置かれてきました経緯も考慮いたしまして、その間の経済事情の変動等にかんがみましてこれを百万円に引き上げるということにいたしたものでございます。昭和二十三年の罰金等臨時措置法で十万円以下とされておりました刑法の罰金刑の多額が昭和四十七年改正では四十万円以下とされまして、さらに今回の改正により百万円以下とされていることともこれは均衡がとれているものというように考えているところでございます。
 なお、罰金刑につきましては、消費者物価指数の推移等の経済変動も考慮して改正が行われているものと承知いたしておるわけでございますが、消費者物価指数について見ますれば、平成元年は昭和二十二年の約十七倍になっているわけでございまして、条例におきます罰金刑の上限額の引き上げ額は、これを若干圧縮して百万円といたしているものでございます。
#56
○北村哲男君 条例罰則というのは具体的にどのようなものがあるのか、その点について御説明いただきたいと思います。
#57
○説明員(岩崎忠夫君) 地方自治法十四条の五項では、地方団体は、条例に違反した者に対して、十万円以下の罰金あるいは二年以下の懲役もしくは禁錮、拘留、科料または没収の刑を科する旨の規定を設けることができるとされているわけでございますが、罰金刑を有している条例で例えば東京都について例をとってみますと、東京都のフグの取扱規制条例でフグ調理師以外の者がフグを取り扱った場合に十万円以下の罰金を科するとか、あるいは東京都公害防止条例で改善命令違反、計画変更命令違反をした者について罰金刑を科するとか、こういったようなものがあるわけでございます。
#58
○北村哲男君 今まで十万円ということで済んでおったものを一挙に百万円にすると、随分基準が変わってきて手直しの必要も生ずるかと思うのですけれども、その基準はどういうところに置こうとしておられるのか、また当面どういう手直しを準備されておるのかという点はいかがでしょうか。
#59
○説明員(岩崎忠夫君) 私ども、条例におきます罰金刑の上限額が十万円から百万円に引き上げられたからといいまして、直ちに現在の条例におきます罰金刑の多額が一律に十倍に引き上げられるものではないというように考えているわけであります。
 条例におきます罰金刑の多額の実際の引き上げでございますけれども、これは経済変動等も考慮いたしまして、各地方公共団体におきましてみず
から妥当な範囲で行われるべきものというふうに考えておるわけでございます。すなわち、今回の法律の改正に伴います条例におきます罰金刑の改正につきましては、個々具体的な条例につきまして地方公共団体自身が条例の性質でありますとか他の類似の国の法律におきます刑罰との均衡などを勘案しながら、みずからの判断におきまして自主的に判断して決めることになるものと考えているわけでございまして、私ども国の側におきまして一定の基準を定めたり、あるいはこうしたらどうだろうかというような方針を指し示すようなことは考えておりません。これまでもそういったことはいたしておらない次第でございます。
#60
○北村哲男君 それにしましても、一挙に百万円となりますと、やはり恐慌を来すというのもおかしいのですけれども、イメージとしては百万円かという感じが受ける側としてはあると思うのですが、これからの作業といいますか、あるいはどういうふうにしていくべきかというふうな方針というふうなものをお持ちなのですか。
#61
○説明員(岩崎忠夫君) 私ども、今回条例におきます罰金刑の多額等の改正が行われた趣旨は地方団体にその旨を周知徹底いたしたいと思いますが、そもそも地方自治法十四条の五項によりまして、地方団体の条例に対して罰則につきましては包括的に委任がされておる、あるいは憲法の地方自治の本旨からいたしましても、地方の実情に即してそれぞれの判断と責任において条例に罰則を定め得る、こういうことにされていることから見ましても、私どもがこれについて具体的な指示を与えることは必ずしも適当ではないものと考えておるわけでございます。ただ、こういうような内容の改正が行われた趣旨、そういった内容については地方団体によく周知の徹底を図ってまいりたいというように考えておる次第でございます。
#62
○北村哲男君 それでは、地方自治法の問題については結構でございます。
 次に、刑訴四百六十一条の問題でありますが、略式手続の問題についてお伺いしたいと思います。
 これを最高五十万円にするということになりますと、略式裁判を受ける率というか数が飛躍的にふえるのではないかと考えます。というのは、略式命令にはその制度の制定当時は裁判を受ける正当手続の保障という点から憲法上の問題すらあったこともありました。しかし、少額の事件ということで大きな問題にならなかったという経緯もありますし、また非常に効率的であるということで便利にされておる。今回五十万円にまで額が上がると再びその手続上の保障の問題が浮上してくるのではないかという問題が一つあります。まずその点について、五十万円に上がることによって略式裁判を受ける率が非常に上がる可能性がある、そこで手続問題が再び浮上する可能性はないのか、その辺の議論はなかったのかという点についてお伺いしたいと思います。
#63
○政府委員(井嶋一友君) 略式命令の手続につきましては、委員既に十分御案内のとおり、まず被疑者がこれに応じるというのが前提となりまして、出た命令に対しましては十四日以内に正式裁判ができるということもございます。それから、事件の性質上、略式命令手続ではだめであるという裁判所の判断によっては当然正式裁判になるといったような形で、手続自体としては一つの刑事訴訟法上の訴訟経済をその当事者との合意の上で追求していこうという制度でございますから、これはこれなりに保障的な面は制度としてはカバーされておると思います。
 そこで、ただ現在の二十万円が五十万円に上がるということによりましてふえるんじゃないか、こういう御指摘なのでございますが、実はこれは若干統計的な説明をさせていただきたいと思います。
 つまり、前回の昭和四十七年の罰臨法の改正の際には、この略式命令を出し得る限度額は五万円だったものが二十万円に上がったわけでございます。このときに四倍にいたしておるわけでございますが、この五万円から二十万円に引き上げました当時に、それでは改正前と改正後において全起訴件数に占める略式請求事件の割合が変わったかと、こういう統計がございます。それを御披露申し上げますと、四十七年に改正をしたわけでございますのでその前を申しますと、例えば昭和四十五年はその利用率が九三・七%でございます。四十六年が九四・三%でございました。改正をいたしました四十七年の年は九四・七%でございました。それが四十八年には九五・二%、四十九年には九五・五%であります。さらに五十年では九四・三%、五十一年は九四・五%、こういったことで四十七年の九四・七%から翌年一%程度上がったこともございますけれども、大体数年間九四%台で定着してきておるということでございますので、私どもは今回の改正におきましても従来の統計と同様に、それほど大きな変動は来さないだろうというふうに考えておるわけでございまして、そういった意味におきまして、まず制度上の保障がきちっとあるんだということと、それから大きな変動を来さない過去の実績があるということから、特段の懸念を持たないというふうな説明になるわけでございます。
#64
○北村哲男君 この略式手続について、交通事故の即決裁判がございますですね、ああいうものと同じように裁判手続にのっけた方がいいのじゃないかというふうな議論は経過の中ではあったのでしょうか。
#65
○政府委員(井嶋一友君) 法制審議会におきましてそういった議論もございましたけれども、今言ったような統計的な説明資料もお出しいたしまして、また運営の実態もよく御存じでございまして、特段異論が出たということはなかったように思います。
#66
○北村哲男君 それから、この略式手続はいわゆるダブルスタンダードの問題はないのですね。これは特に説明の必要はないのですか。ここで統一基準であるのだからほかの、特に出頭義務の免除とか逮捕、勾留とか、そういう関係、ちょっと私も整理ができていないのですが、単にこれは関係ない、一本でいいのだよというだけでいいのか、あるいは一つのこれが何かの解決の出発点になるようなことでもあるのでしょうか。その辺はどうでしょう。
#67
○政府委員(井嶋一友君) そういった御指摘まで私自身は深く検討したというわけではございませんけれども、考えてみますと、先ほど申しましたように、逮捕、勾留の関係あるいは出頭義務免除の関係のダブルスタンダードの問題というのは、昭和二十三年につくりました罰臨法の制定の形を受けてどうしてもそれを踏襲せざるを得ないというものがあったと言わざるを得ない。ところが、この略式手続の限度額と申しますか、これにつきましては、そういった当初からの、つまり一本で規定されてくる形がございましたために、結局、形式論でございますけれどもそういったことになっていないのではないかというふうに今考えるわけでございます。
#68
○北村哲男君 次の質問に移りますが、命令の罰金の最高限度、これは罰金等臨時措置法五条の関係ですが、これを二万円とするのは額が少な過ぎるんではないかという議論があるようなんですけれども、その辺についてはどのように考え、そしてどの程度の問題になったのか、そして、今のお考えについてはどうなっているのかお聞きしたいと思います。
#69
○説明員(東條伸一郎君) 今回の法律案の罰金等臨時措置法の一部の改正部分、六条でございますが、ただいま先生御指摘のように、刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律以外の罪につきましては、現在八千円に満たない罰金のものを一律に八千円に引き上げるといたしておりますところを、その八千円を二万円に改める。それからなお、寡額が四千円に満たないものをというところを一万円といたしまして、つまり一万円に寡額が満たない罰金のものは一万円に引き上げる、こういうことをいたしました上で、現行法の第五条の部分、新法で申しますとこの条文が移りまして第三条になりますが、命令で罰則を委任している場合の委任の限度額が八
千円に満たないものを現在は八千円まで引き上げる、これを二万円まで引き上げるという改正案でございます。
 そこで、まず基本的には刑法ほか二法の罰金につきまして、二万円に満たないものだけを二万円に引き上げるということが基礎にあるわけでございます。その部分につきまして、もう少し高く引き上げたらどうかということも考えましたし、あるいはもう少し統一できないかということも考えましたので、その経緯について若干御説明を申し上げたいと思います。
 刑法ほか二法の行政罰則の現状につきましては、先ほども局長の方から申し上げましたように、昨年の四月の数字でございますけれども、条項ベースで二千五百、それから制定年次も明治十年代からずっとばらばらと制定されてきております。
 内容を見ましても、八千円未満の罰金寡額を定めているような、つまり現在でも八千円まで引き上げておるような非常に低いものから、一番高いものは一千万円という罰金を定める罪まで、非常に広範囲にまたがっておりまして、まずこれらの罰則を一律に全部二・五倍にしてしまうということは、これは到底とり得ない措置である。そこで、今度はこれらの不統一な罰則を何とか一つの基準を設けてこの際整理できないかということも検討いたしましたが、これは正直申し上げまして、一つ一つの罰則を書き出しましてその構成要件、保護法益とそれから罰金の程度というものを対照表をつくっていくという作業を行ったわけでございますが、これまた非常にばらばらでございます。そして、それはそれぞれ、先ほど来申し上げておりますように、所管の行政庁の方針ということもございまして、法務省で一つの方針を出すのもなかなか大変な部分があるということで、これも残念ながら見送らざるを得ない。
 そういたしますと、それでは現在の八千円を二万円に改めるのではなくて、例えば八千円を十万円とか五万円とかというところまで改め、それに伴つて委任命令の方も八千円を二万円に改めるのではなくて、同じように五万円なり十万円まで改めるという考え方はとれないのかどうかということも実は検討いたしました。弁護士会との協議の際にも、例えば十万円まで引き上げてみてはどうだろうかというようなことも協議した記憶がございますが、今申し上げたような非常に多岐にわたる罰則を、その内容を無視いたしまして全部一律に例えば十万円まで、最低限に満たないものは全部十万円まで引き上げるというのはいかにもドラスチックといいますか乱暴な感じがするというようなことで、やはりここは物価水準の変動に伴うミニマムの、八千円というものをその二・五倍ということで二万円にとどめて、あとのものは個別の見直しに譲らざるを得ないという結論に達したわけでございます。
 それを受けまして、先ほど御指摘の委任命令の方の引き上げの部分も八千円から二万円に改める案を作成したということでございます。
#70
○北村哲男君 この罰金等臨時措置法五条によって罰金を命令に委任している法律はどのようなものがあるでしょうか。
#71
○説明員(東條伸一郎君) 命令で、これは例えばでございますが、例を申し上げますと、千円以下の罰金を設けることを委任している法律といたしまして、これは千円でございますから現在は八千円ということになりますが、船舶法二十一条の規定、これは明治三十二年の法律でございます。それから二百円以下、これまた八千円まで上がっているわけでございますが、委任しているものとして砂防法、これは明治三十年の法律でございますが、そういうような法律がございます。これらが現在八千円まで上がりまして、今度はこれがまた二万円まで上がってくるということになります。
#72
○北村哲男君 何か資料によると、実際その法律は適用されておらない、動いてない法律であるとも聞いておるのですけれども、そういうことなのでしょうか。
#73
○政府委員(井嶋一友君) 個々の行政罰則につきまして運用の実績あるいは実態といったものを全部手元に調査しておるわけではございませんので、今ここで実績があるかという御指摘につきましては的確なお答えができかねるわけでございますけれども、先ほど来申しておりますとおり、行政罰則というのはそれぞれの所管の行政官庁がそれぞれの行政目的を達成するためにつくっておる法律であり、その他その行政目的を達成するための手段として罰則を定めておるという関係になるものでございますから、実績があるかないかということによって、私どもの立場から、もうこれはおやめなさいというような立場ではないことは御理解いただけると思います。
 ただ、先ほど申しましたように、例えば今の砂防法なら砂防法のどこかの改正が持ち込まれたような場合に、そういったことでこれはもう要らぬのじゃないかということであれば、いわゆる行政罰則の非犯罪化といった、我々の将来の検討テーマとなっておりますその部分でいろいろ示唆を申し上げるといったようなことが可能なのではないかと思うわけでございます。
#74
○北村哲男君 手元に法制審議会刑事法部会報告書というのがございまして、これは九〇年の十月九日の日弁連会長あてのものなのですけれども、この中に、今の問題で、船舶法の千円以下の問題、砂防法の二百円以下の問題の二つが現在ある、しかしこれは実際に適用されてない法律であるというふうな御説明がありますもので、実際これは一体意味をなしているのだろうか、実際運用をされているのだろうかという意味でお聞きしたわけでございます。
 次に、罰金と反則金との問題、交通違反の通告制度の問題についてお伺いしたいと思います。
 まず、反則金の限度額は最低四千円というふうに定められておりまして、そのほかに六千円とか八千円というものがあります。これらの反則金を、交通違反を起こして警察署長から告知されながら不服で不納付の場合は、これは刑事手続に移行するわけですけれども、その刑事裁判においては、有罪の場合は罰金として原則としてその告知された反則金と同額のものを言い渡すことが通例となっております。しかし、今回の改正によって反則金の最低額を一万円まで上げるとかというふうな措置はとってないようなのですけれども、その辺の矛盾ほどのように解決をされる御予定なのでしょうか。
#75
○説明員(東條伸一郎君) 御指摘のように、今回の改正で罰金の寡額が一万円になるわけでございます。反則金制度の従来の運用は、先生今御指摘のとおり、反則金不納付事件につきましては、不納付に係る反則金と同額の罰金、あるいは法律の定め方によりましては科料というものを裁判手続によって言い渡すというやり方をいたしていたようでございます。そこで、今回の改正で罰金寡額を一万円といたしますと、いわゆる酌量減軽をいたしましても、罰金の場合は寡額の半分に下がるので五千円ということになります。
 一方、道路交通法の百二十五条第三項に基づき定められております別表の反則金の限度額の最低が四千円ということになっており、また同項の規定に基づく政令によって定められている反則金の最低額が三千円ということでございますので、ただいま申し上げましたような不納付事件における科刑の実情を前提といたしますと、施行令の改正によって反則金の最低額を少なくとも五千円まで引き上げるなどの手当てが必要になってくるわけでございます。この点につきましては、現在道路交通法を所管しております警察庁に対しまして検討方を依頼いたしまして、同庁において現在具体的に検討をしておられると聞いております。
 つまり、一つは法律の方の改正を行いまして、法定刑の中に選択肢として罰金のほかに科料を加えるという形が一つの方向として考えられます。もう一つの方向は、施行令による別表の金額を改めまして、先ほど申し上げたような最低金額を酌量減軽で賄える五千円とする、法律の方は罰金のままにしておくという二つの選択肢が可能であろう。警察庁の方ではその両方について検討をしておられる、むしろ施行令の方向で考えておられる
というふうに聞いております。
#76
○北村哲男君 この法律が通ると緊急な課題になるわけですから、これはもうほぼ同時ぐらいに進めていくという形になるのでしょうか。
#77
○説明員(東條伸一郎君) 御指摘のとおり、この法律が仮に成立するということになりましたら、これと合わせてこの道交法の部分、整合性を持った措置がとられなければならないということでございます。ほぼ、ほぼといいますか、それに間に合うように手当てをするというふうに聞いております。
#78
○北村哲男君 この反則金ですが、理屈上の問題で恐縮なのですけれども、これがまたとても中途半端な性格で、今言われたように、反則金を警察署長から告知されて、それが不服であればそのまま判決として罰金として刑罰になるわけですね。だから内容が同じものであっても、反則金と刑罰とは全く違うものなのですけれども、反則金の性格についてどういうふうにお考えなのか。ことわざ的には国家と行為者の和解であるというふうなこともありますけれども、その辺の説明をちょっとしていただきたいと存じます。
#79
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。
 ただいま先生が御指摘のように、反則制度というのは、御承知のように、間接国税等でとられております通告処分の制度に倣って導入された経緯があったようでございます。通告処分につきましては、最高裁の判例でございますが、一種の国と行為者との間の私和であるという説明といいますか、判示があったように私記憶しております。
 いずれにいたしましても、一つの行政上の措置と申しますか、行政上の制裁でございまして、刑事罰である罰金あるいは科料とは本質を異にする。同一の行為を行いましてこれを反則金処理をいたしましてそれを不納付にいたしますと、刑事手続に回るというのが現在の仕組みでございまして、これの合理性等につきましては、御承知のように、反則金制度を導入いたしますときに国会でも大変な議論をしていただいたというふうに記憶いたしております。
 ただ、先生が今御指摘のように、そもそも行政上の制裁である反則金を科すような行為、これを手続的に場合によっては刑事罰を科するというのはある意味ではおかしいのではないかという反省をその後の運用を通じて私どもも抱いているところでございまして、実はこの反則制度を行政手続として一貫して行う、つまり刑事手続と反則制度というものは別建てのものにするという仕組みは考えられないであろうかということを、現在の財産刑のありようを考える中で行政罰則の整理ということを考えておりますが、その行政罰則の数的には非常に多くの部分を占めております道路交通法違反という問題につきまして、これを反則制度だけで賄えないんだろうかということ、これは特に裁判を受ける権利をどのように保障していくかということにかかってくるんだろうと思います。そこの制度的な仕組みがうまく考えられないかどうかということを含めて、現在反則金のあり方、それと刑罰との関係というものについて再度考える時期に来ているというふうに認識いたしております。
#80
○北村哲男君 午前中はこれで終わりたいと思います。
#81
○委員長(矢原秀男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時七分開会
#82
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#83
○北村哲男君 質問を続けたいと思います。
 罰金の問題につきましては、午前中額の引き上げの問題についてはいろいろ多くの説明を受けましたが、なおそのほか罰金制度そのものについても問題が多くあります。特に諮問三十八号のなお書きの中で、罰金刑を含む財産刑をめぐる基本問題として多くの問題が挙げられておりますが、それらの問題についてどのように審議されておるのか、あるいは今後の方向について若干聞いていきたいと思います。
 まず、罰金の延納制あるいは分納制についてであります。
 イギリスやアメリカなどでは罰金刑の重要性とそれから有用性が叫ばれておるということは午前中も申しました。その重要な政策課題として、特にアメリカにおいては四つの柱が政策課題として挙げられております。一つは、罰金刑を科す基準を抜本的に考え直すこと。二つは、罰金刑のレベルを大幅に上げること。三つは、罰金刑の徴収手続を大幅に改善すること。四つは、罰金刑の支払いをできる限り有効に行えるよう手段を考えること。こういうふうなことが政策課題として挙げられているということは御存じと思います。その一、二の問題については、午前中の質疑もありますからさておきまして、三、四、特に徴収手続とそれから支払いをどういうふうにしていくかという問題、特に延納制、分納制について我が国ではこれが有効にあるいは適切に行われているかどうか、あるいは改善の余地ありとするのかという問題。それから、これらの延納制、分納制については法定化はされておらないけれども、それについてする必要があるのかどうか。それから、現実に罰金というのは納入がどの程度されておるのか納入率の問題を含めて、今後の方向性を御説明願いたいと存じます。
#84
○政府委員(井嶋一友君) それでは、今御指摘の点につきましてお答えいたします。
 この罰金の徴収をいかに効率的に行うかということの重要性につきましては、今委員御指摘のとおりでございまして、有効に適正に、せっかく科せられた罰金でございますので、それを徴収するということについての重要性は科すると同様に重要であると思っておるわけでございます。
 そこで、刑法全面改正を検討いたしました法制審議会におきましても十分御指摘のような点、つまり徴収手続の合理化、特に分納、延納につきまして議論をいたしまして、現在は検察官の事実上の裁量ということで行っておりますものをもう少し制度化してはどうか、こういう検討をしたわけでございます。
 しかしながら、結論的に申しますと、そういった制度を制度として構築いたしますと、もう延納、分納の申し立て件数がとにかく圧倒的にふえたりいたしましてかえって徴収事務が混乱する。あるいは延納、分納を制度化いたしましたら、その場合には制度上法律で許可するという形をとらざるを得ないと思いますが、それにつきましては前提としていろいろな調査行為をしなきゃならない。そういったことが果たしてできるだろうか、あるいは妥当だろうかといったような問題、そういった問題が片方に指摘をされまして、結局現在検察官が裁量によって行っております実務の運用を是認していった方がいいといったようなお考えでこの改正草案には盛られるに至らなかった事情がございます。
 そこで、現在延納とか分納はどのようにしておるかということでございますけれども、検察官が申し立てを受けまして妥当だと認められる場合には延納、分納を認めるという形で、できるだけ摩擦を避けて財産刑の徴収を完遂したい、こういうスタンスで実務を運用いたしておりまして、それなりに機能しておると思います。数字的には後ほど審議官から御説明をいたしますが、言われているほど多くはございませんけれども、やはり分納、延納の申し立てによって当該被告人の要望を満たしたというようなケースはそれなりにあるというふうに承知をいたしております。
#85
○説明員(東條伸一郎君) 補足的に罰金刑の執行の状況について若干数字を申し上げたいと思います。
 罰金刑は、御承知のように、非常にたくさんの
件数が言い渡されまして年間の執行件数も大変多くなっております。例えば平成元年度の件数を見ますと、全体で百二十三万四千七百九十六件徴収をいたしておりますが、そのうちの分納は九千三百五十六件ということで、率にすると〇・七六%程度でございます。延納も、今局長から御説明申し上げましたように、納付義務者の申し出がございますと、できるだけ納付義務者の資力の範囲内で納付をしてもらうという方針でやっておりますためにその取り扱いを認めておりますが、延納件数は統計上ちょっと数字が出てまいりません。個別の調査もいたしておりませんので現在数字的には把握をいたしておりません。
 それで、罰金の執行率でございますが、これは各地方検察庁においてそれぞれ執行いたしておりますが、それぞれ若干の凹凸はございますけれども、大体九十数%ぐらいの執行率であるというふうに私は承知いたしております。
#86
○北村哲男君 この法制化ということについて、実際に今考えておられるのかどうかお尋ねしたいと思います。
#87
○政府委員(井嶋一友君) 法制審議会に諮問いたしましたなお書きによりまして、中長期的な財産刑をめぐる基本問題を引き続き検討していただくことになっておるということは午前中申し上げておりますが、その財産刑検討小委員会の中で徴収手続の合理化ということが大きな柱として挙がっておりまして、今御指摘のような延納、分納を含めた徴収手続のあり方、例えば相手方の資産状態を調査する権限を与えるか与えないかといったような問題も含めました手続の合理化の検討は大きな柱となっておるわけでございますので、検討小委員会の検討結果が出ました暁には改正すべきものは改正してまいりたいと考えておるわけでございます。
#88
○北村哲男君 ただいまの罰金の執行率と関連するのですけれども、労役場留置という問題がございます。今回の罰金の額の改正について、額が大幅にふえることによって労役場留置の問題もクローズアップされるのではないかと考えるわけですけれども、まず刑法十八条の「罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上二年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス」という規定がございます。この「能ハサル者」というのは、最初から払えない、資力のない者を言うと思うのですけれども、ただ実務上はたしか実際払わなかった人も労役場留置の対象になるのじゃないかと思うのですが、その辺は先ほどの執行率は九十何%で残りの人たちは結局労役場留置という形になるのかどうか、その辺をちょっと整理してお答え願いたいと思います。
#89
○説明員(東條伸一郎君) 罰金の執行の場合に、先ほど御説明申し上げましたように、九十数%の数字は現金その他で現実に納付があったというふうに見ていただいていい数字だと思います。
 そのほかの数字は一体どういう数字かと申しますと、一つは労役場留置、それからもう一つが徴収不能というものがございます。徴収不能は、例えば法人に対する罰金刑の場合には法人の資産がなければ事実上徴収不能になります。それから個人に対する罰金でも、例えば納付義務者がもう長期間行方不明であるということになりますと、労役場留置もいたすこともできませんし、それから執行もできない。執行不能決定をするというような執行不能という類型があるわけでございます。そういうものが残余のパーセンテージといいますか、そういうことになるかと思います。
#90
○北村哲男君 刑法十八条「罰金ヲ完納スルコト能ハサル者」として労役場に留置される人たちというのは現実にどのくらいの数がいるのか御説明願えますか。
#91
○説明員(東條伸一郎君) 労役場留置の件数といいますか人数といいますか、これはいろいろな御説明の仕方があろうかと思います。一日当たり大体どのぐらい労役場というところに人が入っているのかということでまず例を申し上げたいと思いますが、平成元年の末日、つまり平成元年十二月三十一日、年末でございますが、労役場に入っておりました人が百二十一人、こういう数字でございます。
 それから、逆に年間に一体どのぐらい労役場留置処分がなされているかということを、これを数字で申し上げてみたいと思います。余り細かい数字を並べますのも差し控えさせていただきたいと思いますが、近年で申し上げますと、昭和六十二年でこれは二千二百七十九件。それから六十三年が二千六十一件、平成元年が千四百五十四件というような数字でございます。
 それから、先ほど罰金額の引き上げがありましたときに、労役場留置にどのように影響があるかということも若干お尋ねであったと思います。この点につきまして数字で申し上げてみたいと思いますが、昭和四十七年、この年に前回の罰金等臨時措置法の改正がございまして、刑法等の罰金額が四倍に引き上がった年でございます。そこで、その前後を見てみたいと思いますが、昭和四十六年が三千十四件、その次の四十七年が二千七百六十六件、四十八年が二千七百六十八件、四十九年二千四百六十八件というようなことで、それほど有意的な際立った差異はありません。
 もっとも、先生御承知のように、罰金の執行というのは確定判決の後相当時間がたったというところで執行を開始されますので、必ずしも法改正による影響がどこら辺で出てくるかということは微妙な問題があるかと思いますが、その後の数字を見ましても一時期、五十一年に三千六件という数字が出ましたが、五十四年からまた二千四百件台に落ちて、その後は二千四百件から三千件の間を上下し、六十二年の二千二百七十九件以後平成元年まで下がっているというような状況でございます。
 最近は、これは私の実感ということでお聞き取り願いたいのでございますが、要するに現金収入の機会が特に都市を中心としまして非常にふえております。したがいまして、払う気になれば払える、ちょっと働けば罰金程度は稼ぎ出せるという状況ではないか。したがって、労役場留置というものもかなり減ってきているという感じは持っております。
#92
○北村哲男君 この労役場留置とそれから罰金の支払い状況、あるいは収監状況等の関連ですけれども、この十八条によりますと実際に完納しない者ではなくて、「完納スルコト能ハサル」という条項になっておりまして、これは実際に罰金刑を科せられてもお金がない、無資力者を対象としておるわけですけれども、この場合に現実にどのような資産調査を行っておられるのか、だれがどのようにそれを行うのか、そしてその実効性は現実に上がっているのかという問題。それから徴収係の事務官の不足のために無資力者の確認を十分に行わずに、またその強制執行を行わずに収監状を発付しているという報告も見られるようですけれども、その実態はどういうことなんでしょうか。例えば不動産の所有の調査などを現実に行いながらやっているのか、そういう実務的な実態をわかりやすく御説明願いたいと思います。
#93
○説明員(東條伸一郎君) まず法制面から申し上げますと、先生御承知のように、刑の執行段階に入りますとこれは検察官の命令で検察事務官が執行の手続を行うわけでございますが、捜査段階あるいは公判段階と比べますと、手続的に明確な権限というものが実は検察庁の職員等に与えられておりません。したがいまして、すべて事実上の任意の調査ということになると思います。その段階でそれではどのような調査をしているのかということは、これはケース・バイ・ケースでそれぞれ担当職員が工夫をしながら調査をしているところであろうかと思います。
 したがいまして、一概に例えば不動産の調査をどのように行っているかというようなことでは申し上げられないと思いますし、通常の額の罰金でございますと不動産を処分しなければ払えないほどの罰金というのは余りないわけでございます。そういうものが必要になってくるのは、例えば法人税法とか所得税法といった罰金の額が場合によっては一億円というものを超えるような非常に多額の罰金が科せられた場合、これは場合によって
はそういうものを換金していただかないと罰金を納めていただけない場合もあるかと思いますが、労役場留置が問題になりますような多くの場合には、恐らく調査といたしましても勤め先がどういうところであるか、どのぐらいの収入があるんだろうかというようなことを任意に捕捉しながら当事者に連絡をとって、早く支払うようにという説得を続けて払っていただいているというのが実情ではないかと私は思っております。
#94
○北村哲男君 労役場留置に関しては手続的なことはよろしいのですが、一体、労役場留置というのはどういうものだということがなかなかわかりにくいと思うのですけれども、これは監獄法、すなわち留置施設法案等で今大変問題になっておる監獄法、明治四十一年の法律ですけれども、その八条に「労役場及ビ監置場ハ之ヲ監獄ニ附設ス」という規定がございます。そして、その後にいろいろやっていること、そして労役って一体何だというふうに言いますと、やはり懲役刑と同じことだというふうな説明もなされているわけです。そうすると労役場留置といったって、中身は要するに今の監獄法に基づいて同じ人が同じ管理をし、同じ労働をさせるという形で懲役と実態は変わらないということは言えるのじゃないでしょうか。
#95
○説明員(東條伸一郎君) 先生がさっき御指摘のように、監獄法の第八条に「労役場及ビ監置場ハ之ヲ監獄ニ附設ス」とありまして、第九条に「本法中別段ノ規定アルモノヲ除く外」、「懲役囚ニ適用ス可キ規定ハ労役場留置ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス」という法制になっております。そして、法制上の話を若干続けさせていただきますと、法制上は監獄法の三十三条で、労役場留置の言い渡たしを受けた者の衣類などは自弁ができるという規定と、あとは規則のこれも三十三条で、労役上留置の言い渡しを受けた人と受刑者とは同一の監房や工場に入れてはいけない、こういう規定がある、こういうことが法制上の違いということになっております。
 実は、私個人的な話でございますが、今回の罰金刑の改正で労役場の問題も大きな問題の一つであるということで、各地の施設を見学させていただくときに労役場留置の状況も拝見いたしておりますが、その経験を踏まえまして若干補足的に実情を申し上げますと、労役場という固有の施設を常に持っているという監獄は、労役場留置者の人数が少ないものですからございませんので、結局労役場留置の対象者が出たときに監房の一角を労役場という形にして、そこで原則として独居拘禁で、仕事の内容は短期間で分類等の手続もとれませんものですから、事実上非常に単純な作業を独居でしてもらっているというのが実情のようでございます。
 ただ、先生御承知のように、労役場留置者の中には懲役刑等の自由刑の受刑者で罰金刑を受けて、未払いで支払う能力がない者がございます。こういう人間につきましては、懲役刑の執行の過程で懲役刑の仮釈等の関係で執行順序を変更いたしまして、労役場の執行をいたすことがございます。いわゆる資格変更と申しますが、このような場合には本人の希望がございますと、従来の労働を続けていたいということですと工場に出没を認めて、ただしその場合も工場内の配置等は先ほどのように懲役者と一緒には処遇しないという規則でございますので、その精神を生かすために配置等に留意をしておりますが、昼間は工場に出て夜は雑居ではなくて独居に切りかわるという処遇をしているというふうに見てまいりました。
#96
○北村哲男君 ただいま説明ありましたけれども、何かイメージとしてはほとんど同じ。それにしても同じ監獄の中に一画だけ設けて同じようなことをさせる、しかも併科の自由刑と一緒にした場合は先に労役場、そしてそのまま続けて自由刑でやっていくという形で、余り違いないような気がするんです。そうすると罰金の代替措置としての労役場留置、それになってくると実際は今までございました自由刑とほぼ似ているということですね。やはり懲役刑についての問題点が同じく当てはまるような気がします。
 そこで、労役場留置のあり方の問題として基本問題にもありますように、社会奉仕命令制度の導入はどうだということも言われておるわけですけれども、そういう方向についてはどの程度その必要性を認識して検討しておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
#97
○政府委員(井嶋一友君) ただいま委員御指摘のように、本来自由刑の代替刑のような性質を持っておる財産刑である罰金を払えないからといってまた身柄を入れるというのは矛盾じゃないか、こういう御指摘でございますが、それは確かにそういった矛盾があるということはつとに指摘をされておりまして、短期自由刑の弊害と同様に労役場留置の制度はおかしいという御意見があることはよく承知をいたしております。
 そこで、刑法全面改正作業におきましてもいろいろ議論がなされました。しかし、一応形としては現在の制度を残すというのが草案のスタンスでございますけれども、現在さらにそういった声も高まってまいっておりますので、私どもは今回の法制審議会に対する諮問の中で中長期的課題としてこの問題も提起をいたしておりまして、重要な柱の一つとされておるわけでございます。
 そこで、当面どういった制度が考えられるのかということが、実は西欧の一部の国で行われております社会奉仕命令制度というものの導入いかんと、こういう問題であるわけでございます。社会奉仕命令はどういうものかと申しますと、これは一九七二年にイギリスにおいて最初に導入されたものでございますけれども、要するにこれは本来的には拘禁刑にかえて社会内処遇の一つの形態として行うというものとしてイギリスで導入されたものでございます。その後アメリカ、ドイツにおきましても採用されておるようでございますが、この社会奉仕命令の労働の中身と申しますのは、例えばイギリスにおいて実施されておるのを見ますと、病院の職員あるいは患者の手助けをする、あるいは史跡とか道路といったようなところの清掃をする、あるいは玩具とか家具などの製造をする、こういったような労働を一定の期間を定めて、種類を定めて、保護観察官が監督をしながら無報酬でやらせる、こういう制度をいうわけでございます。これを、先ほど申しましたように、拘禁刑の代替ということではなくてむしろ財産刑の代替である労役場留置にかえるものとして導入できないだろうかという観点から私どもは検討課題としておるわけでございます。
 ただ、この問題につきましてもいろいろ調べてみますと、やはりそれなりに弊害もあるということも聞いておるわけでございますので、そういったものを十分踏まえながらこの検討小委員会において結論を出していただきたいということにしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、委員先ほど来御指摘の労役場留置の問題点につきましては十分認識をいたしておりますので、早急な検討が期待されるということでございます。
#98
○北村哲男君 もう一点、労役場留置の問題で、刑法十八条の一項に「罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上二年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス」という規定がございますけれども、二年を限度としていることで、例えば脱税かなんかで十億円の罰金刑を受けた人は二年以上労役場に留置するわけにいかないとすると、二年で割っても一日三百万ぐらいの計算になるわけですね。片や、十万円の罰金を払えない者も何日かに分けて入るわけで、それじゃ一日で済むかというと必ずしも済まない。一日何千円かで何日か入るわけですね。そうすると、お金持ちのすごい人は一日三百万円も消していけるのかという非常に素朴な矛盾を感じるのですけれども、その辺はどういうふうに御説明をされるか、あるいはどのように考えておられるのでしょうか。
#99
○政府委員(井嶋一友君) 確かに御指摘のとおり、罰金額が非常に高い場合に二年以内で割りますとそういうアンバランスが出るということは事実でございまして、現実に実務でそういうことは起こっております。そこで、そういったものがや
はりこの労役場留置制度の問題点の一つであるという認識もいたしておるわけでございますので、そういったものも含めて検討課題であるというふうに申し上げておきます。
#100
○北村哲男君 ついでですが、高い額は確かに割って最高になるのですけれども、低いあたりは大体一日どのくらいで計算して、換算して労役場に留置をしておられるのでしょうか。
#101
○政府委員(井嶋一友君) 裁判の言い渡しにおける大体の傾向を見ますと、平均的には一日二千円という額でございまして、大体普通それでいけるはずでございます。特別に高いものだけが今御指摘のようなことが起こるわけでございます。
#102
○北村哲男君 次に、今後の問題として重要な問題を幾つかお聞きしておきたいと思います。
 まず、短期自由刑の弊害ということは先ほども私述べさせていただいたのですけれども、短期自由刑を廃止してすべて罰金刑にしたらどうだというふうな考え方があります。恐らく法制審でも議論されていると思います。また、少なくとも短期自由刑については罰金刑を必ず選択できるように刑法の総則において規定を設けたらどうだというふうな議論もあると思いますけれども、この辺はどういうふうな方向で解決をしようとしておられるわけですか。
#103
○政府委員(井嶋一友君) 委員御指摘のように、刑法全面改正を検討いたしました法制審議会刑事法部会におきまして、草案の中に御指摘のような制度を導入してはどうかという議論があったことは事実でございます。つまり、短期自由刑の弊害を除去するといったような趣旨で、例えば短期の懲役または禁錮を言い渡すべき場合でも情状が軽く自由刑を科するのが適当でないと認められるときには自由刑にかえて罰金を言い渡すことができる、こういったような条文を置いてはどうか、こういう議論でありました。確かに、短期自由刑の弊害を除去するという点では一つのユニークな考え方でありますけれども、結局この議論は、根本的には裁判官が判決を下す際に、法定刑としては自由刑が決まっているのに裁判官の判断だけで罰金刑を言い渡すことができるというような形をとるということは、いわば罪刑法定主義という非常にかた苦しい理屈でございますが、そういったものとの関連でいかがなものであろうか、あるいはそういった制度を一般的な総則規定に置きましてそういう形がとれることを可能といたしますれば、場合によっては私ども検察官としての、原告官としての立場から申し上げればいわゆる裁判の寛刑化を来すのではないかといったような議論とかいろいろございまして、結局反対意見が多かったものですからこの制度はとれないということで草案には規定されていないわけでございます。
 ただ、御指摘のように、短期自由刑の弊害との絡みで財産刑を刑罰の位置づけの中でどのように考えていくかということが非常に重要な課題でございますので、先ほど来申しておりますけれども、その検討小委員会の重要な検討課題の一つになっておるということでございます。いずれ早晩、その辺につきましては検討結果が示されるわけでございますが、その辺で示された哲学などが是認できるものであればそういった方向へ進んでいくのではないかというふうに考えております。
#104
○北村哲男君 それに関連して、実務的にとても問題になっていることがあります。というのは公務執行妨害罪には罰金刑がないわけですね。あるいは財産犯にもないわけです。これは今までの刑法体系の中ではそういうふうになっているのですが、特に公務執行妨害については、公務員あるいは学校の先生あたりが酔っぱらってちょっとお巡りさんをこづいた、それだけで公務執行妨害になって罰金刑にならずに懲役刑になる、そうしたら必定的に公務員法によって解雇されるというとても実務的に面倒というかかわいそうな事案、簡単な事案でも救うことができないという矛盾が実務的に起こっている。財産犯についてもやはり同じように罰金刑を新設したらどうだろうかということがかなり叫ばれておるし、現実に必要だと思うのですけれども、それについては今後の方向性として、特に公務執行妨害についてはどのようにお考えでしょうか。
#105
○政府委員(井嶋一友君) 今御指摘の公務執行妨害罪と財産犯に罰金刑を選択刑として加えてはどうか、こういう御議論は法制審議会の今回の審議の中でもございました。日弁連からおいでの委員が特にそういう主張をされて議論されておるわけでございますが、結論的に申し上げますと、けさほど来説明しておりますように、今回の刑法等の一部改正は経済変動に伴う法定刑の引き上げに限りたい、こういう大前提を置きましたために、これは個別の犯罪についてそれぞれ見直しというようなスタンスになるわけでありますが、その見直しの一環として公務執行妨害あるいは財産犯に罰金刑をつけ加えるという議論は将来の課題ではないのかということになりまして、結局先ほど申しました検討小委員会の議題になっておるわけでございますが、この二つの罪名につきまして特に法制審議会の中で議論がございましたので、この二つの罪名を挙げまして検討課題にしておる。その他財産刑一般のあり方というのはあるわけですけれども、特にその二つを指摘いたしまして検討課題にしておるわけでございまして、いずれこれにつきましても結論を得たいと思っております。
 公務執行妨害につきましては、確かに法定刑が三年以下の懲役または禁錮ということでございますので、実務的に委員おっしゃるような軽微な事案の場合にも体刑求刑しかできないといった問題があるということは御指摘のとおりでございますが、実務的にはそういった場合には必ずしも起訴しなくてもいいというやり方もあるわけでございますので、現在の法制下におきましてはその事件の実態に応じて処理をするということで、私たちが適正に対応しておるわけでございますけれども、将来の問題といたしましては御指摘のような点がございますので、鋭意これからも検討を続けてまいりたいと思っております。
#106
○北村哲男君 この財産刑をめぐる基本問題ということで今さまざまいろんなことを説明していただきました。これは幾つかの大きな論点があるのですが、大体どのくらいをめどにまとめ上げて、これはまた刑法の大改正につながる問題にもなると思うのですけれども、どういうふうにこれからの問題を考えるわけですか。
#107
○政府委員(井嶋一友君) 実は、検討小委員会は十数名の委員の方でお願いをしております。ここにおります東條審議官もその委員の一人でございますので、あるいは東條審議官が御説明すべきかもしれませんが、前回の小委員会におきまして今後のスケジュールといったものをある程度決めよう、あるいはどういう議題から入っていくかということを決めようということがございまして、その際おおむね二年をめどに検討課題についての結論を出せるものは出そうというようなスタンスで作業を始めていただくことになっております。
 もちろんすべての問題が二年で解決するということはありませんけれども、今申しましたようないろいろな問題の優先順位といったものも各委員十分御承知でございますし、また私どももそういった立場で事務当局としてフォローしてまいるわけでございますから、優先度の高いいろいろな問題点についてもし結論が出ればその段階で可及的速やかにさらなる刑法の改正を考えていくという段取りではないか、このように思っておるわけでございます。
#108
○北村哲男君 最後の質問になりますが、直接今回の額の改定ではないのですけれども、日米構造協議、去年おととしあたりから続いておるのです。この中で談合罪の罰条が軽過ぎるという指摘、あるいは独禁法の罰条が軽過ぎるということで指摘を受けていると思うのですが、これについてはほかの問題、例えば民事訴訟費用の問題なんかはアメリカから指摘を受けたらすぐに値下げをするとか額を下げるとかという非常に早い対応がほかではなされておるわけですけれども、この談合罪とか独禁法についてはこれはすぐに対応されようとしておるわけですか、あるいはどのような方向で考えておられるのでしょうか。
#109
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、日米構造協議におきまして不公正取引の是正といったような観点から我が国の独禁法の制度運用のあり方といったものがテーマになっておるわけでございますが、実はその中でテーマとなりました罰則の強化、運用の厳重化といったようなテーマは私どもが今回の罰金の引き上げを検討し始めた後に出てまいった議論でございまして、具体的には刑法の談合罪につきましてもアメリカ側は日米協議の中で談合罪の法定刑をもっと上げるべきだという主張をしたわけでございますけれども、既にその際には私どもは今回提案しておりますこの改正作業に着手をしておったわけでございますので、たまたま一致をいたしました。そこで談合罪につきましては、現在そういった法定刑の引き上げについて検討しておるんだという御説明をしておるわけでございます。
 それから、独禁法そのものの罰則の強化あるいは課徴金の引き上げといったようなものも議論になったわけでございますが、これは公正取引委員会の方の所管の法律でございますから私から申し上げる立場にはございませんけれども、これは日米構造協議を受けていろいろ真剣な検討がなされてきておるということで、過般課徴金の引き上げの法律を提出されたというふうに聞いておりますが、引き続き独禁法の罰則の強化につきまして検討をしておられるというふうに聞いておるわけでございます。
#110
○北村哲男君 終わります。
#111
○中野鉄造君 私は、本案質疑に入る前に一言法務省当局の委員会対策といいますか、国会対策と申しましょうか、それについてお伺いいたします。
 委員会において委員が質疑なりあるいは修正を含む各種動議を提出する場合に、あらかじめどのような内容の質疑であるか、そういったようなことを尋ねて、そしてその対応についていろいろと準備、努力されるのがどの委員会においてもこれは通常のことでございます。そうした場合において、私が今まで経験したほかの委員会での政府当局の対応は、あくまでもその質疑の内容や動議内容を把握するにとどまって、それ以上のことは委員長を初め理事会にゆだねるなり、あるいは問題によっては政党政治でございますから各党の国対レベルで話し合う、そういったような対応を行っているわけですが、これに対して法務省の対応というものを御説明いただきたいと思います。
#112
○政府委員(井嶋一友君) 委員御指摘のとおり、提案いたしました法律案に対する国会の御質疑あるいは修正といったような動議の問題はすべて国会の権限に属することでございますから、私どもがそれをとやかくする立場にはないわけでございます。例えば、そういった修正といったようなお話があるというようなことを漏れ聞きました場合に、どのような趣旨か、あるいはどのように説明するのかというようなことをお聞きになる場合、あるいは御説明しなければならない場合もあるのではないかと思っておりまして、あくまで私どもの立場の説明をさせていただくというスタンスで御説明をすることはございます。しかし、それは国会の権限をもちろん尊重した上での話でございまして、そういった立場であることを御理解いただきたいと思います。
#113
○中野鉄造君 今刑事局長はそういう御答弁をなさいましたけれども、実際そうじゃないんですよ、法務省は。
 具体的に私の方から申し上げますと、先月二十五日、本法案に対する説明のためにおたくの方から参事官が私の部屋を訪ねてきました。その際に、私が本法案にかかわる刑法第七十条の二項について指摘をし、修正案提出をほのめかすや、そうしたらもうやにわに取ってつけたように、この七十条二項に関する手当てを見送った理由を正当づけようとして、手分けして波状的に関係の諸先生方を訪ねて回っております。もちろん私のところにも審議官が見えました。それが先月の二十六日の日。そしてその際、このことについてはもう三者協議は決まったことであるから、それが国会で覆されるようなことがあったとしたならばまことに面目がつぶれるから何とかこれはひとつ不問に付してもらいたいと言わんばかりのそういうふうなことを盛んに言われる。そうして二十八日の十一時からの理事懇の席上でも、官房長から七十条二項を残した理由を無理にこじつけたそういう説明がありました。午前中の刑事局長の答弁を聞いておっても全く同じです。
 そしてその後、私を除く各会派の理事の先生方のところへは、「刑法七十条二項に関する手当てを見送った理由」というこういう刷り物、それと資料説明書として「補足的説明事項」という二つ目のこの資料、こういう二つの刷り物を配付しております。ところが私のところだけにはこれを持ってこずじまいです。
 ところが、きのう私がたまたま同僚の理事の先生のところをお訪ねした際に、そういうものが配られている、私のところだけには来てないということがわかった。それで、その同僚の理事の先生にわざわざみずからコピーしてもらってそれをいただいてきたんです。そして、私がこのことについて怒っているということを知るや、昨日の午後になって審議官が初めてこの二つの中の一つだけの資料を私のところに持ってきました。
 なぜに私だけを除外するのですか。
#114
○政府委員(井嶋一友君) 今委員るる述べられました経緯につきましては、そのような経過があったということは大体そうなんだろうと私思いますから、その点については異論を申し上げるわけじゃございませんけれども、先ほど申しましたように修正というようなお話、方向性が出たということで、私どもの立場として御説明をする必要があるということで各党の先生方に御説明をいたしました。その際に、その説明の便宜上つくりました紙を置いてまいったケースもございます。持ち帰ったケースもあるようでございますけれども、いずれにいたしましても、御理解いただけるように文書をお渡ししたことは事実でございます。
 ただ、中野委員にだけおくれたという御指摘でございますが、その点はどういう経緯でそうなったのか、あるいは先生とお目にかかる時間がずれ込んだのか、それはともかくといたしまして、中野委員にそれをお渡ししない、あるいはお見せしない、あるいは御説明しないといったような考え方が我々の方にあるわけではございませんので、十分その点は御理解いただきたいと思います。
#115
○中野鉄造君 私も委員長を抱えている理事です。私のところが留守だったからとか何とか、そんな言いわけは通りませんよ。
 また、刑事局長、あなたは私がこの七十条の二項でごたごた言っているということは当然御存じだったはずなんです。にもかかわらず、政府委員でもない参事官は参りました、審議官も来ました、しかし本法案の直接の当事者である刑事局長はついに私のところに一回も来ませんでした。何も議員ごときに局長が頭を下げに行く必要はない、そう思ったんですか。
#116
○政府委員(井嶋一友君) 大変厳しい御指摘でございますが、私がこの法案の責任者といたしまして中野委員にお目にかかる必要があることは十分わかっておりました。ただ、アポイントをとらせていただきます過程におきまして、私も他の委員会に、特に予算委員会がございますために予算委員会に呼ばれるということが多々ございまして、結局先生のアポイントと私のあいているところが合致しなかったということでございまして、私といたしましては、委員に直接お目にかかって私たちの立場を御説明する機会をぜひ得なければならないと思っておったわけでございます。その点につきましては、結果的にはお目にかかれなかったことは事実でございますから、それがいけないというお話でございますればおわびをいたしますけれども、決して先生を無視したというようなことではございませんで、たまたま私の日程と先生の日程とが合わないということが間々あったということで、審議官に代行してもらったというのが実情でございます。
#117
○中野鉄造君 どうも釈然としませんね、あなたのお話聞いていると。それがいけないということ
であればどうのこうの――いけないということでなかったらそれが当然なんですか。そう言いたくなりますよ、言葉じりをとるつもりはないけれども。
 当初、先月の二十五日に法務省の担当参事官が本法案の説明のために私の部屋に参りました。刑法第七十条第二項の問題に関して、このことについて私が、今日の国民生活に全くなじまない何銭といったような、こういうような不用な部分についてはなぜ残さなければならないのかと、こう聞いたときに、彼いわく、それは与党のある先生が、ある議員が、わしの目の黒い間はこれこれの法文は削除しないで残しておいてくれと、こういうようなことをおっしゃるからと、こういうものはほかにも幾らもありますよと、こう言いました。そこで私が、そんなばかなことがあってあなたはいいと思っているのかと、こう言いましたところ、彼は、確かにそれはよくないことだと思いますけれども、実はそれが現実でございますと、こうはっきり言いました。このことについては秘書も聞いております。一緒に随行してきた事務官も聞いております。
 私が法律の専門家でないことを知っての非常にふざけた、不穏当な発言であると私は思いますが、そこで私は聞きたい。こういう不備のまま幾らでも放置されていると、こう言いましたけれども、じゃそういう法律の名称をひとつどういう条文があるのか挙げてもらいたい。また、国会の立法権を無視して、わしの目の黒いうちは云々と、そういう不届きなことを言った与党の議員がいると言ったんですから、それがだれなのか。何の根拠もなくそういうようなことを言ったとすれば、余りにも人を愚弄した、あるいは脅迫した言葉であって、これはかつまた自民党の先生方の名誉にもかかわることじゃないかと思うんですが、どうですか。
#118
○政府委員(井嶋一友君) 今委員からお聞きいたしました我が方の担当官の申したことというのは、これはもうここで言ったのか言わないのかといったようなことを申し上げてもせんないことでございますから申し上げませんけれども、私どもの局の職員は国会の機能も、また立法に至るいろいろな手続につきましても十分承知をしておる者ばかりであるはずでございますので、そういった先生に受け取られるような形で申し上げることは万々ないと私は思いますけれども、しかしそういうふうに委員がお受け取りになるということがあったとすれば、これはまことに遺憾なことであるというふうに私は思います。
 それで、今御指摘の刑法七十条二項の問題についてその与党の先生がとやかくを言われたというようなことは、まず極めて技術的な法律でございますので恐らくあり得ないと私は思いますけれども、あるいは一つ考えられることとして申し上げるとすれば、これは例の尊属殺を規定いたしました刑法二百条の問題を頭に置いていたかもしれない、こう思うわけでございます。
 これはどういうことかと申しますと、委員御案内のとおり、昭和四十八年に最高裁の大法廷が刑法二百条が違憲であるという判決をしたわけでございますが、そういたしますと政府といたしましてはこの二百条の規定は直ちに削除しなきゃならないわけでございます。ただ、そのときの判決の理由の中には、直ちにそれを削除しろという理由のほかに、法定刑が死刑と無期しかないから重過ぎる、もっと合理的な法定刑にしなさいという意見もございまして、立法政策としてどちらをとるかということが検討課題になった問題でございます。その際に、我が方は二百条を削除しますという案を出そうとしたわけでございますが、やはりこれは国の忠孝のもと、あるいは親子の倫理の問題といったようなことに絡むのであるから、この条文について削除というのは反対であるというのが与党のお立場でございました。そこで、今日に至るまでこれが出せないという状況になっておるわけでございます。
 これは言ってみれば、法律ではございますけれども実務では適用しない規定でございますから、そういった意味では御指摘の問題とあるいは一致するのかもしれないと思いますけれども、いずれにいたしましても、私どもは委員の権限なりあるいは委員のお立場なりを故意に損なったり、あるいは委員と故意に何と申しますか、アプローチしないようにするといったような態度をとったつもりは毛頭ないわけでございまして、いろんな行きがかりのそごでそういったことがあったとすれば、本当に先ほど申しましたようにおわびを申し上げるわけでございますが、ひとつそういったことで私どもの今回の法律案の提案及び特に七十条二項についての説明につきましては十分御理解をいただきたい、このように思うわけでございます。
#119
○中野鉄造君 委員がそういうように受け取られたかもしれないなんてね。何かそういう意味のことを言ったからそういうように私が受け取って、そしてそれで、ここで物を言っているんじゃないんですよ。私がここで先ほど申しましたように、明確にそのものずばり言ったんだから。あなたは尊属殺のことを言ったけれども、そのくらいのことは私だって知っていますよ。そのことを言っているんじゃないんです。ほかにも幾らもあると言ったんだから、複数。そうしてしかも、そういうようなふらちなことを言った与党の議員がいる、だからいたし方なく六法全書に残しているんだと、こう言ったんだから。それを言っているんです。
 それで、同じ法務省の中でですよ、この数日前から慌ててもっともらしいいろんな理由をつけて七十条二項を残したわけを説明しています。しかし、今申しますように、今から一週間ばかり前の先月二十五日に初めて私のところに来たときには、まるで今申しましたようなふざけた、人を食ったような、子供だましみたいなそういう説明をしたんですよ、同じ法務省の人間が。
 大臣、どうでしょう。
#120
○国務大臣(左藤恵君) これはいろいろ御説明を申し上げるときに、何かそういうことで行き違いとかあるいはまた結果的に失礼なことをしたということになったんじゃないか。そういうことで先生が大変お怒りになり、またそうした感じをお持ちいただいたんじゃないか、こう思います。要は、この法案のことにつきまして何とか御理解をいただきたいということで、そういうことでやったんじゃないかと思いますが、そういった点につきまして、私はやはり法案に対することにつきましての先生の御意見をもっと素直に受けとめて伺って帰らなければならなかったんじゃないか、このように思います。
#121
○中野鉄造君 こういうことは、何かの手違いでありましただとかなんとかというような問題じゃないんです。この間から私が言っているように、各省庁の中で法務省というところはたぐいなき権威主義、官僚主義、教条的で人を小ばかにしたような、そういう証左ではないかと思うんです、今度のことは。せっかくの大臣のお言葉ではございますけれども、私はそれで了とするわけにはなかなかまいりません。
 しかし、こんなことばかりで時間をとるわけにもまいりませんので早速本論に入ります。
 午前中からいろいろ質問は聞いておりました。この七十条第二項の取り扱いについても質問されましたけれども、これが取り扱いについて私は三通りの方法があるんじゃないかと思うんです。この七十条二項を削る案、あるいは七十条二項の中の「一銭」をX円といったような、あるいは百円とか、そういうものに改めるという案、あるいは七十条二項を改正しないで現在のままに放置しておくという案、この三つじゃなかろうかと思うんです。
 ところで、今申しました三つの案のいわゆる三番目の放置案ですが、日本国における通貨基本法とも言うべき通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の第二条第一項にこの三つ目の案をそのまま適用するとすれば、これは違背することになるんじゃないか、私はこう思います。この通貨法と
いうのは日本国において通用する通貨の単位の最低を円としておりまして、銭だとか厘というものは通貨として認めておりませんね。そして、現在の日本国における法律はすべてお金を条文上で規定する場合には通貨基本法とも言うべきこの法律に従って円単位でこれは規定しておりまして、これは国税通則法でも登録免許税法でも酒税法その他いろいろなものでも銭だとか厘単位で規定している法律は一つもありません。
 したがいまして、日本国における全法体系統一の面からも、私が申しました三つの案の三番目のこのまま放置しておくということはこれは採用できないものと私は思います。法務省はそうした今申しましたような通貨の法律を尊重しないで無視されるつもりなのか。なお、もしその現行法律で一銭とか一厘を一万円あるいは十万円、百万円と同列で通貨として書いてある法律があるとするならば、それを言っていただきたいと思います。
#122
○政府委員(井嶋一友君) 刑法七十条二項につきましての問題でございますが、確かに一銭以下は切り捨てるという規定は、現在の通貨を前提といたします場合、実務的に全く適用の余地がない規定であるということは仰せのとおりでございます。これをどのように整理をするかという方法につきまして今委員三点申されましたが、まさにそのとおりでございます。
 そこで、私ども先ほど来御説明いたしますように、財産刑の将来像といったものを検討する間、とにかく現在の形を残させていただきたい。その結果において、場合によっては削除もあり得るし、場合によっては何円以下切り捨てるという、X円と先ほどおっしゃいましたが、そういった形に姿を変えることもあり得るんだ、こういうことをお願いしておるわけであります。
 そこで、そういったこのまま置いておく案につきまして、今委員が、通貨等の法律上そういったものは違法ではないか、こういう御指摘でございます。確かに、この通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律によりますれば、現在の通用貨幣は一円以上でございまして、それの整数倍の通貨しか出ておらぬわけでございます。したがいまして、そういった意味では円以下というものは本来通貨としてはあり得ないということは御指摘のとおりでございますが、同法に書いてございますように、通貨の計算単位といたしましては銭及び厘をまだ使うことができるという規定があるわけでございまして、現実には、例えば利息でありますとか公定歩合でありますとかいうところで実質的には銭も厘も今使われておるということはあるわけでございます。
 それから、先ほど銭という単位を残した法律はないという仰せでございますけれども、実は総務庁のコンピューターで検索をいたしますと、それなりに銭という字を残しております法律はございます。そして、趣旨はおっしゃるように一銭以下をどうするこうするといったことではないわけでございますが、銭という字がある法律が残っておるということにつきましては現実にあるわけでございます。例えば代表的なものを申しますと、一般職の職員の給与等に関する法律というのがございますけれども、これの超勤手当の割り増し賃金等の給与計算において円未満の端数が生じた場合には、五十銭未満の端数は切り捨て、五十銭以上一円未満の端数は一円に切り上げるという規定がございます。それからさらに、公職選挙法施行令におきましては、御案内だと思いますけれども、ビラの作成費用の公負担につきまして、ビラの枚数が五万枚以下のときは一枚当たり六円十八銭までとするといったような定めがございまして、銭という文字を使った法律というのはまだ残っておることは事実としてあるわけでございます、計算単位として認められておるわけでございますから。
 ただ、そうは申しましても、刑法七十条二項の一銭未満の端数というこの問題は使えるか使えないかという問題ではなくて、通貨自体もうないわけでございますから、そういった意味で、実務的には適用をすべき余地はないという意味におきましては委員おっしゃるとおり、いわば死文化したものであるということはそのとおりであるというふうに認めておるわけでございます。ただ、それをそのまま放置することが違法だという御指摘であるとすれば、今私が申しましたようなことで若干まだそういったものが残っておるということを申し上げさせていただき、そして財産刑小委員会の検討結果を見てその上でこれについては迅速に対応したい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#123
○中野鉄造君 今おっしゃいましたけれども、それは計算上ではありますよ、銭というのは。だけど銭というお金は今は通用しないんです。六法全書に書かれている銭というのが――六法全書というのは法曹界の人たちだけのためにあるものじゃないはずなんです。国民が見るんですよ。銭というようなものが六法全書を開いたときにあった、通貨法ではそういうものはない、どうなっているんだ、こう思うのが当たり前じゃないですか。
 午前中の同僚議員の質問の中に、直近の法制審議会の中でもこれは削除すべきだということが述べられているが、それに対してどういうような見解を持っているかというような意味の質問があってましたね。それに対して刑事局長は、法制審議会の結論が出るまで残しておきたいといったような、何か哲学がどうだとかこうだとか、どういう哲学だか私は理解に苦しむんですが、そういうことまでおっしゃった。ところが、私が冒頭にいろいろ申しましたように、参事官だとか審議官が入れかわりお見えになった、そのときにはこれはいずれ削りますと、こう言いました。刑事局長は法制審議会の結論を見てからと、こうおっしゃる。どっちが本当ですか。
#124
○政府委員(井嶋一友君) これは言葉の問題ですからどういった趣旨で申したかわかりませんが、私先ほど来申しておりますとおり、七十条二項の手当てのやり方といたしましては、削除をするか、あるいは端数切り捨ての金額を定めるか、そのどちらかであるというふうに思っております。したがいまして、そういった意味で現在の一銭以下は切り捨てるという規定はもちろん削除になるわけでございますが、その結果によって削除をすることになるのか、あるいは端数切り捨てのルールを残しましてその端数切り捨ての基準金額を新たに定めるということになるのか、いずれかでありまして、これは申し上げていることは同じことを申し上げておるはずでございます。
#125
○中野鉄造君 先ほどからちょっと一銭とかなんとかという、しきりに刑事局長はほかにもこういうのがあるとかおっしゃっていますけれども、今も申しましたように、計算方法としてあるんですが一銭としての通貨はないんでしょう。ないでしょう。であるならば、仮に法務省がおっしゃっているように二年後に結論を出す、そしてその時点で削ると言われるのであるならば、少なくとも今は七十条二項の「一銭」という条文はこれは削っておく必要があると私は思います。一銭という通貨がないということはこれは明らかなんだから、今も言ったように。その点どうですか。
 そして、もし仮に二年後に法制審議会あたりで小数切り捨てといったようなそういう結論が出たとすれば、その際に改めて七十条二項の条文を新設する、こういうようにするのが筋じゃないですか。
#126
○政府委員(井嶋一友君) それはけさほども申し上げたとおりでございまして、確かにそういった委員のおっしゃるような選択肢も私は否定をいたしておりません。ですから、この際は適用がされないのだから削除する、将来検討した結果また端数切り捨ての問題を規定する必要があるということになれば置けばいいと、まさにそういう考え方は成り立つわけでございまして、私はそれは決して否定はいたしておりません。
 ただ、私どもが御説明申し上げていること、私どもが考えて本法案にはそういう手当てをせずに出した理由ということを説明しろという仰せでございますから私たちの立場を申し上げるわけでございまして、それは確かに死文化しておるといえ
ば死文化しておるわけでございますけれども、当面、検討結果が近い将来出るわけでございまして、その際に削除してしまうのか、その金額を変えるということで手当てをするのかが決まるのでございますから、それまでの間、少なくとも違法でない限りは置かせていただきたいということで今回の改正を見送ることとしたという御説明を申し上げているわけでございまして、委員がおっしゃるような手法を私どもはできませんと申し上げているわけじゃないわけでございます。
#127
○中野鉄造君 私は、再度この通貨というものはまりませんねということを聞いた。局長もそれはないと、こうおっしゃった。
 だから改めてお尋ねしますが、法務省は日本国の法律を尊重、遵守する気持ちがあるのかなと私は疑いたくなります。あるとするならば、なぜに通貨に関する基本法とも言うべき通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律を尊重し遵守しないのか。本改正案はまさに刑法典の金額を検討して改正しよう、こういうものなんじゃないですか。まさにその機会なのに、今こそが。それなのに、ほかの金額は見直しつつも、七十条二項の「一銭」というものを放置するということは、これは刑法という法律を見て通貨基本法を無視したものであると言わざるを得ないんですけれども、どうですか。
#128
○政府委員(井嶋一友君) 先ほど来申し上げておりますとおり、委員の御主張あるいはお立場というものは私は十分わかっております。ですから、その点についてそうではありませんと申し上げているわけでは決してございません。
 ただ、私たちが見送りました理由といったことで申し上げておるわけでございますが、先ほど来申し上げましたことに一つここで加えさせていただきますならば、七十条二項の規定と申しますのは、一項におきまして体刑を半減主義で割っていく場合に一日以下の端数が出る、これをどういうふうに扱うかという問題を書いてございます。二項につきましては、今その規定の精神は、財産刑について半減主義で割っていくと端数が出るかもしらぬ、だから一定の端数以下は切り捨てるんだという基本が書かれている。つまりそういったことで書いてあるわけでございますが、この七十条二項の規定というのは、実は裁判官が判決をする場合にまず処断刑というものを出さなきゃならない、その処断刑を出すのに、幾らから幾らまでの処断刑を出すかという計算をする上においてこれを使うわけでございまして、その中で宣告する刑を、言い渡しする刑を決めるわけでございますから、そういう処断刑を決めるという、裁判の判決をつくります過程において適用される条文であります。
 ところが今回の法律改正は、何度も申し上げますように、経済変動に伴いまして罰金の法定刑の金額を改正させていただきたい、こういう趣旨でございまして、そのために法律の頭に「罰金の額等の引上げ」ということをわざわざうたっておるわけでございますから、そういった法律の目的、趣旨に照らしますと、今申しましたように、裁判官が判決をする際の処断刑を計算上頭の中で出すための規定というものはこの際やはり若干今回の法律改正の目的からはみ出すんじゃないかということも実は考えたわけでございまして、先ほど来申しますような将来にひとつ検討をゆだねたいという問題と今申した問題二つで結局見送ることにした、こういう御説明をさせていただきたいと思います。
#129
○中野鉄造君 あなたが七十条の二項は今回の刑法改正から若干外れるなと、こういうことを言われるのであれば、じゃこれから先に質問しようと思っていました二十八条だとか五十八条だとか八十九条だとか、こういうようなものは振り仮名を振るだとか、あるいは漢字を平仮名に直すだとか、およそ刑法そのものには――若干ずれるどころか関係ないと言ってもいいくらいのものじゃないですか。
 私重ねて言いますけれども、刑法というものは刑罰基本法としてほかの多くの刑罰法規の基本とこれはなるものなんですね。それと同時に、通貨の基本法としての性質が刑法にこれはあって、そして一銭と書いてあればそれも通貨として日本国内で扱われるのか、こういうことになる。言いかえれば、通貨法としては刑法が優位法なのか、さきに申した法律が優位法なのか、ここのところをお尋ねしたいと思います。
#130
○政府委員(井嶋一友君) まず委員冒頭に申されましたように、二十八条とか五十八条とかといったいろいろな改正を今回行っておるという点につきましては、午前中の北村委員の御質疑にお答えをいたしておりますとおり、これは法律を一部改正する場合に、法制局的観点から直すべき、手当てをすべきものとして定められておること、そういったことを形式的に行わざるを得ないという観点から行ったものでございます。
 しかし、七十条二項の問題は、先ほど来御説明いたしますように、私どもといたしましてはそういう政策判断を先に延ばさせていただきたいという趣旨でございまして、それは若干法律の趣旨から外れるということを申しましたけれども、決してそういう法律の趣旨から外れる形式的な改正をしたということとは直接的には関係ないというふうに私どもは思っております。
 それからもう一つでございますが、通貨法と刑法の優位性ということをおっしゃいましたけれども、これはもう同じ法律でございますから優劣はございませんで全く同じ立場において規定されておるものであるというふうに考えております。
#131
○中野鉄造君 あなた方法務省は、今回の改正目的は法定刑に関するものの改正であって処断刑に関するものの改正ではないから七十条二項は今のまま置いておいてもいい、こういう考えのように私にはうかがわれますけれども、国民から見れば法定刑であろうと処断刑であろうとお金を強制的に召し上げられるわけなんですからね。そういう点においてまさに経済事情の変化による改正にこれはほかならないわけなんですよ、さっきから何回も言っておるように。法定刑の改正が目的であって処断刑の改正は目的外である、こういったような考えは国民にとってはこれはもうまことに詭弁としてしか映らない。なぜ法務省はもっと素直に、通貨基本法を尊重しなかったことから手落ちがあったと言えないのか、私はそこをつきたいんです。
#132
○政府委員(井嶋一友君) 委員が力説されることは理解はできるわけでございますけれども、私どもは今回の法律を出しました過程で検討いたしました物の考え方を御説明する以外にこの場合にはもう方法がないわけでございまして、今まで申しました物の考え方で立案をしておるわけでございますので、それを繰り返し申し上げる以外に方法はないわけでございます。
 先ほど説明いたしましたので御理解いただいておると思いますが、刑法改正草案では確かに削除をいたしておりますけれども、三十六年の準備草案におきましては十円に改めるということを考えておりまして、私たち立案の過程でそういうことも実は検討した経緯がございます。ございますが、それも含めてやはり将来に問題を先送りしようということにしたわけでございまして、これはもうそういった説明を何度も申し上げる以外にないわけでございます。何度も申しますけれども、委員のおっしゃるような選択肢が全くあり得ない、成立し得ないと申し上げているわけではないことも御理解いただきたいと思います。
#133
○中野鉄造君 では、あなた方はこの件について衆議院では説明をされたんですか。
#134
○政府委員(井嶋一友君) 衆議院法務委員会における御質疑におきましては、この問題は提起されませんでした。
#135
○中野鉄造君 同じお金の問題で、質問をされなかったからこれに非常にかかわりのあるものがあるけれどもこのことは黙って何もそれには触れなかった、これは極めて不親切じゃないですか。
 それはさておいて、先ほど私申しましたように二十八条、五十八条、八十九条の改正、こういうものは罰金等の引き上げ等とは全く無関係な条文
であります。しかし、その改正の理由は立法技術上の観点からの整合性を保つためのものであろうと思うんですけれども、間違いございませんか。
#136
○政府委員(井嶋一友君) 法制局が専権的にそういったことを行っておるわけでございますが、法律を改正する都度そういったルールに従って法律の中身を改定していくということをやっておるというふうに理解をいたしております。
#137
○中野鉄造君 そうであるとするならば、法律と法律の整合性を保つためにも一銭の改正をこれはすべきじゃないですか。立法技術上の整合性はできている。しかし法律と法律との整合性ができない理由はないと私は思うんですが、いかがですか。
#138
○政府委員(井嶋一友君) 何度も同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、そういう立法技術上の形式的な見直しというものとそれから今回一銭と書いてあるものを形式的に見直して削除するということとは違うわけでございまして、この規定は私どもは政策的な判断を先にゆだねるということで残すということにしたわけでございまして、これを形式論理で、法制局の立場でこれを削除するということは恐らくできなかったと思います。
#139
○中野鉄造君 それなら矢原委員長、今までの質疑のやりとりはお聞きになったとおりでして、ほかの委員の先生方もお聞きになったとおりでございまして、この七十条の第二項を将来何らかの立法措置を講ずるとしても、そのときのために今は残しておかなければならないという明確な理由は全くないわけなんです。法律は国民のためにこそあるものなんです。さっきから申しているとおりです。したがって、こういう不備、あるいは欠陥のある法案をこのまま審議続行するわけにはまいりません。
 したがって、私は残余の質問を残して、この際委員長にお願い申し上げますが、ここで暫時休憩を宣していただいて、まずこれが審議を継続するための大前提として今国会における採決を見合わせるなり修正をするなり、いずれかの方法を理事会でお諮りいただくよう要求いたします。
#140
○委員長(矢原秀男君) 速記をとめてください。
   〔午後二時三十四分速記中止〕
   〔午後二時五十九分速記開始〕
#141
○委員長(矢原秀男君) 速記を起こしてください。
#142
○中野鉄造君 今回の改正では、従来のように罰金等臨時措置法を改正するという方法によらずに刑法等の各罰条を直接改正する方式を採用しておりますが、なぜ従来と違った方式をとっているんですか。
#143
○政府委員(井嶋一友君) 今回のように罰金額の改定を行います方法といたしまして、委員御指摘のように、四十七年に行いましたような手法、つまり罰金等臨時措置法を改正して改める方法と、それからもう一つは、今回のように刑法各条を改める形と二つの選択肢があったわけでございます。この点につきましては法制審議会においていろいろ議論がございまして、特に学者及び日弁連の委員を中心といたしまして、実務的に罰臨と刑法を見比べながら法定刑を出すというのは大変なことだから、できるだけ刑法改正という方法によってほしいという強い希望が出されました。
 そこで、法制審議会におきましてそういう強い要望を表明されましたので、私ども答申をいただきました後に、立案をする過程におきましてそういった方向を何とか実現をしたいということで法制局とも協議をいたしながら検討を進めまして、結局、今回お出ししたような形で、これはもう明治四十年に制定以来初めて法定刑の罰金額を改めるということを完結することができたわけでございまして、このことを法制審議会に報告をいたしまして、各委員もそれでよかったというお言葉があったわけでございまして、そういった意味では今回罰臨の、臨時的な意味での措置をやめて刑法という本体で改めていくという形をとったという点に画期的なところがあるわけでございます。
#144
○中野鉄造君 そこで、罰金の法定刑が自然人に対する場合と法人に対する場合と同一なのかどうか、これは合理的なのか、ここのところをお尋ねします。
#145
○政府委員(井嶋一友君) 法人の処罰につきましては、委員御案内のとおり、両罰規定という考え方によりまして法人の代表者あるいは代理人が法人の業務に関して法律に触れる行為を行った場合には当該行為者を罰するほか法人を罰しますと、こういうのが両罰規定でございますが、そういうふうに犯罪の行為者と法人の処罰とがリンクしております形が現在の両罰規定の考え方でございまして、現在刑事法の分野におきましては法人の処罰はそういう形で運営をされておるわけでございます。
 その点につきましては、最近のような経済活動の著しい変化等を見ますと法人自体の処罰をもっと高める必要がある、つまり言いかえれば、そういう両罰規定の行為者処罰と法人者処罰のリンクを切り離して別に行為者は行為者、法人は法人ということでもっと高い金額の罰金を設定すべきではないかといったような議論もあるわけでございまして、非常にこれから、現在から将来にかけての財産刑のあり方として大変重要な問題であると考えております。そこでこの問題も財産刑検討小委員会の重要な検討の柱として提起されておりまして、現在この問題もその切り離しの可否といったような点を中心として議論が行われていく予定になっております。
#146
○中野鉄造君 そこで、少年に対する罰金刑なんですが、少年に対して罰金刑を科す場合の意義についてお尋ねしたいと思うんです。
 刑事処分であるから保護処分よりも重い処分と考えられますけれども、果たしてそうなのか。また、その少年が罰金刑を科されることになると、経済的苦痛は成人一般の場合と比べてまた異質な面もあろうかと思うんですけれども、その点いかがですか。
#147
○政府委員(井嶋一友君) 御承知のとおり、少年に罰金を科す場合はこれは刑事手続として罰金を科すわけでございますので、いわゆる家庭裁判所を通ります保護処分とはルートが違うということになるわけでございまして、刑事手続におきます少年の処罰の大部分はこの保護処分ということで行われております。他方、刑事処分としての罰金を科すケースというのは正確には今ちょっとデータを持っておりませんけれども、私の考えますところでは大部分が交通関係事犯による罰金であろうと思います。
 ところで、少年に罰金を科しました場合でも結局少年が無職あるいは有職であってもそれほどお金を取るわけでもございませんから、結局罰金を科しましても親がかわって払うというようなのが実態のようでございまして、少年に対する罰金の意味合いというのは委員御指摘のとおり問題があろうかと思います。
 それに対しまして成人につきましては、もう罰金を科しまして罰金が払えない場合は、先ほど申したような労役場留置という形で身をもって払うわけでございますから、結局成人に対しましては罰金の刑事罰としての痛みというものはそれなりにあるわけでございますが、少年に対しましては今言ったように結局親が払うといった形になったりするものですから、そしてかつまた、少年法におきましては少年に対しては労役場留置という換刑処分ができないこととなっておりますので、したがって少年が罰金を支払わない場合には結局親か何かを説得して払っていただくということになるものですから、少年に対して罰金を科すことの意味合いはいかがなものかという点は委員御指摘のとおり問題があるわけでございます。
 しかし、現在そういった形で罰金を科しております意味合いというのをあえて申し上げれば、やはり刑罰として裁判所で罰金刑を言い渡されたという意味合いを少年が次の再犯を抑止するためにいかに活用してくれるかという点に重点があるのかなというような感じを持っております。ただ、御指摘のような問題もございますので、少年に対する罰金刑のあり方といったものもやはり将来の検討課題であるというふうに思います。
#148
○中野鉄造君 終わります。
#149
○橋本敦君 それでは続きまして、私からも罰金刑の問題に関連をして質問をしたいと思います。
 午前中も議論があったんですが、選択刑として罰金刑を追加すべき幾つかの罪種があるのではないかという議論があるわけですね。その点で公務執行妨害罪等の例を出されたわけですが、大体どういった方向の議論が今なされておるんでしょうか。
#150
○政府委員(井嶋一友君) 法制審議会の場面におきましては、公妨とそれから財産犯一般について選択刑として罰金を追加すべきである、こういう議論でございます。その点を検討小委員会の方へ持ち込んでおるわけでございまして、これから議論が始まりますのでまだ細かい議論は始まっておりませんけれども、日弁連の要求もございますので優先的にその問題を取り上げるということを考えております。ただ、その二つの罪だけじゃなくてもう少し広い意味でほかの罪についての財産刑のあり方ということもやはり検討しなければならないのじゃないかということが指摘をされますので、そういった中において特にこの二つをまずクローズアップしてやろうじゃないか、こういうようなスタンスで検討が始まるものだというふうに聞いております。
#151
○橋本敦君 それは方向づけとしてわかりましたが、罰金という刑罰をどう考えるかという議論もまた一方にあるわけで、例えば罰金の非刑法化といいますか、罰金を行政罰的性格にしてしまったらどうかというような議論も一方にあるわけですね。それはまさに罰金の性格の変更ということにもなるわけですが、ここらあたりの議論はどのようなぐあいでしょうか。
#152
○政府委員(井嶋一友君) 財産刑のあり方の将来像というのはいろいろの面において検討する要素があると思います。まず短期自由刑にかわる刑としての財産刑のあり方という一つの検討方法があるだろうと思います。したがって、少額罰金は余り意味があるのかないのかといった議論につながってまいるかもしれませんが、他方、特別法を中心といたしまして余りにも罰則がたくさんございますので、罰則の適正化という観点から主としてその特別法の罰金刑のあり方といったものが議論されております。その中では適正化ということで本来の罪と罰とがバランスとれているかという観点からの見直しもございますが、他方余りにもマイナーなものに刑事罰としての罰金を科すあるいは科料を科すというようなことがいいのかというつまり非犯罪化の方向での議論というのもあるわけでございまして、財産刑としてのあり方という議論は今申しましたようにいろいろな方向を向いた議論が総合的に行われていくものだ、このように考えております。
#153
○橋本敦君 そういった局長がおっしゃるような多方面総合的な検討というのがこれを機会に大いに進むことを私も期待をしているわけですが、さしあたってそういう議論とは別に今度は罰金の額の引き上げが行われたことになるわけであります。
 総務庁の現行法令検索システムを利用して調べてみたところ、一九九〇年四月現在で罰金刑を定めた法令数は七百二十、罰則数は二千五百五十六、こうなっておりますが、今回の法案によります罰金の引き上げは刑法その他幾つかの法律に定められた罰金のみ関係するわけですから全部というわけにいかない。ただ、特別法中非常に大きなウエートを占めるのが道交法ですね。罰金の実に八一%が道交法違反だと言われておりますが、こういう実情は間違いございませんか。
#154
○政府委員(井嶋一友君) 罰金の現在の刑罰における意味合いというのは非常に高いわけでございまして、いろいろの資料をお手元に資料としてお配りいたしておりますけれども、例えば刑事の確定裁判を受けた者の中で罰金を受けた者の率というのは九五%でしたでしょうか、ちょっとはっきりいたしませんが、とにかく大変な数でございます。その中で交通関係事犯、刑法上の業務上過失致死傷と道交法関係が圧倒的に多いということも御指摘のとおりでございまして、正確に八十何%ということが正しいかどうかわかりませんが、大体そんな感じに御理解いただいて結構だと思います。
#155
○橋本敦君 それについては、道交法は二年前に罰金を二倍にしておりますから当面これの改正はないのではないかと思っておりますが、この点はそういうことでよろしいわけですか。
#156
○政府委員(井嶋一友君) 道交法につきましては警察庁が所管しております法律でございますから、その改正の動向は正確には把握はいたしておりませんけれども、特別法一般ということで申し上げますならば、先ほど来申しましたように今回は刑法等の罪についてこういう対応をさせていただく、その他の行政法については一応ミニマムの手当てだけさせていただく、その他はそれぞれの特別法の改正の中においてできるだけ刑法等の罰金の尺度に合うような形に近づけていただきたいといったことを申し上げておるわけでございますので、そういった観点でこれから特別法の方が整理をされていくものだと思います。
 ただ、特別法というのは、もう申し上げるまでもございませんけれども、それぞれ法律がそれぞれ規制する目的を持っておりますので、同じ類型だからといって同じ罰金でなきゃいけないということはないわけでございますから、そういった意味で所管している各省庁の意向を十分考えながらやってまいるということでございますので、必ずしもすべてが重くなっていくということではないだろうとは思っておりますけれども、そういった改められる形になっていくんじゃないかというふうに思います。道交法についてはちょっとお答えはできません。
#157
○橋本敦君 先ほども議論がありましたが、罰金不納付とそれからそれの罰金というような関係での整合性とかミニマムな調整というのはこれはあり得ると思うんですが、一般的に今度の刑法で罰金額が引き上げられたということから全体として重罰化に進む傾向というのを安易に進めてはならないというふうに私は思っているわけですが、そういう立場で今質問をしたわけでございます。したがって、局長おっしゃるように、特別法のそれぞれの本来的な目的の範囲内において、一方ではやはり適正な人権との関係からも検討はしてもらいたいというふうに考えておるわけであります。
 ところで、今度の引き上げについて法務省は、最初の作業としては二百万円から十万円までの七段階というのを考えておられたのではないでしょうか。
#158
○説明員(東條伸一郎君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、私ども刑事局の参事官室がこの立法を担当いたしましたが、参事官室の当初の試案の段階では、現在の案では二百五十万円となっておりますが、現行法で百万円となっております部分を二百万円と、以下は現在御審議をお願いしております法律と同じ体系でございますが、そういうことで試案を作成した経緯がございます。
#159
○橋本敦君 二百五十万になったということに私はあえて反対という立場で聞くんじゃないんですが、これが当初の二百万が二百五十万になったのは先ほども議論がありましたが、日米構造協議の関係で談合罪の罰金刑を重くしてもらいたいというようなアメリカ側の意見がありまして、そういうことも含めて検討してその結果二百五十万ということになった、こういうプロセスがあるのではないんですか。
#160
○説明員(東條伸一郎君) 日米構造協議の経緯につきましては、先ほど刑事局長の方から申し上げておりますが、参事官室試案の二百万円を二百五十万円に修正いたしました経緯は、実は結果的には何か一致したような形でございますけれども、全く違ったものでございます。
 当初私ども、若干お時間をいただきまして御説明させていただきますと、一番高い罰金額を二百万円といたしましたのは、私ども実務家の量刑感覚といたしまして、二百万円もの罰金を求刑する事案というものが考えられるときは恐らく選択刑
としてつけられている懲役刑が選択される場合が多いのではないか、余り高くしても意味がないというような考慮もございました。そういうことで一応二百万円としてみてはどうかなということで試案を作成して各方面の御意見を事実上伺っていたわけでございます。しかし、各方面から何でこの一番重い罪だけ二・五倍にならないのだ、実務感覚というのはわかるけれども、実務でもそういう罰金が必要な場合もあるかもしれない、そういうことも含めてここは整合性といいますか、二・五倍ということで特に不都合もないのであるからそのようにしたらどうかという意見が圧倒的に強うございまして、それで私どももそれでは二百五十万円ということでさせていただこうということにいたしたわけでございまして、そのことと先ほど御指摘の日米構造協議における談合罪の罰金の引き上げという問題とは直接にはかかわりはないことでございました。
#161
○橋本敦君 それはそう伺っておきましょう。ただ、御存じのように、新聞の報道では出ておるということがありますので聞いておいた、こういうことであります。
 ところで、労役場留置問題に次に話を移してまいりたいと思うのでありますが、実際労役場留置がどれくらい行われているかということについて先ほど審議官から件数の御答弁がございました。平成元年十二月末日で実際に入っている人が百二十一人、それから年間の処分件数が昭和六十二年二千二百七十九件、六十三年二千六十一件、平成元年で一千四百五十四件ということですが、大体二千件というペースで推移しているというように見ていいと思います。それぞれいろんな事情があると思うんですが、労役場留置という処分を受けた事情について特に調べたものがありますか。
   〔委員長退席、理事北村哲男君着席〕
#162
○説明員(東條伸一郎君) 先生のお話は個別に労役場留置をするに至ったケーススタディーといいますか、そういうものは私どもの現在の手持ちの資料ではございません。
#163
○橋本敦君 しかし、実際労役場留置するときになぜ支払わないのかというのは一応聞くんでしょうね。だから、そういう意味で非常に貧しくて失業しておって払えないという事情もあれば、その他怠けておるか何か知りませんが、いろんな事情もあると思うんです。だから私は、将来との関係においてそういった事情についても法務省として一応スタディーをなさっておかれることをこの機会にどこかで検討していただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
#164
○政府委員(井嶋一友君) 実際に実務を扱っております担当の職員であれば即座にここでお答えできたと思いますが、そういった感覚なり対応なりを資料化したものがございませんので御説明ができませんでした。しかしながら、中には一たん入りましてもたちまち例えば親戚の人が持ってくるとかなんとかいうことで途中で出ていっちゃう人もおりまして、何かちょっともう少し調べればというようなものもあるように思います。他方、本人が言わない限りわかりませんので、本人が入れられてびっくりして頼んで歩くというようなこともあるようでございますので、どこまで突きつめて入れる前に調査をするのが正しいのかよくわかりませんけれども、少なくとも本人に十分確かめて、払えないから労役でいきますということを確認する儀式は必ずしも要求されておりませんが、そういった感覚で実務は運用されているんだろうというふうに思っております。ただ将来の問題として、そういった現実の問題を検討しながら対応していけという御趣旨はごもっともだと思っております。
#165
○橋本敦君 私は、この質問をしますのは二つの理由がありまして、一つは先ほど刑事局長も御答弁になっておりますように、労役場留置制度というのが結局は短期自由刑の弊害をなくそうという本来のことを逆行させて、再び短期自由刑にかえてしまうという背離現象がどうしてもあるということが一つありますね。ですから、できるだけこれを回避する方がよい、こういうことですね。
 そういたしますと、払えない、あるいはなぜ労役場留置になるかという事情の検討の中で、そうならない処置を、今局長おっしゃったように、親戚に頼んでごらんなさいというアドバイスもあるかもしれませんが、そういうこともやはり必要な場合も出てくると思うんですね。そういう点を考えますと、この労役場留置を避けるためにも、また一般的にそこまでいかなくても支払いやすい条件をつくってやるためにも、先ほども議論されました分納の問題あるいは支払い猶予の問題、こういった問題を制度化するということについて積極的にもっと検討するということはよいことではないかという気がいたします。
   〔理事北村哲男君退席、委員長着席〕
 この点については現状はどうかということになりますと、現状の実務では、延納、分納は検察庁法三十二条に基づいて定められている徴収事務規定というのがあるんですか、これの納付延期の許可制を活用する、あるいは一部納付許可の制度で実施する、こういうようになっていると伺っておりますが、間違いございませんか。
#166
○政府委員(井嶋一友君) 法律レベルにおきましては、この延納、分納という規定を置いておらないわけでございますけれども、先ほど申しましたように検察官の裁量で認めるということをやっておりまして、その手続の規定といたしまして御指摘のような規定を持っておりまして、一部納付の申し出というのと納付延期の申し出という二つの手続を一応定めてはおります。
#167
○橋本敦君 これの利用といいますか、検察庁への申し立てで分納あるいは一部納付許可を受けている件数というのは年間どれぐらいございますか、最近のところでわかりますか。
#168
○政府委員(井嶋一友君) これは検察の統計でございますが、例えば六十三年度におきまして罰金の執行件数、これはつまり徴収件数でございますけれども、執行件数のトータルが百二十四万三千件余りでございますが、その中で分納によって執行されたものが一万一千二百十四件。それから平成元年度におきましては、執行件数が百二十三万三千三百三十二件でございますが、これに対しまして分納で執行したものが九千三百五十六件。これはいずれも外数でございます。
#169
○橋本敦君 そういたしますと、約一%ぐらい、こういうことになるんでしょうか。だから、やはりそれなりに利用されているということはわかりました。
 それで、刑法改正準備草案の段階では、これを審議の法制審の刑事法特別部会等で、罰金の言い渡しがあった場合でも犯人の資産あるいは収入その他の事情で直ちに完納が難しい場合は制度として延納または分納、これを許可するということにしてもいいのではないかという議論がなされたやに聞いておりますが、これが午前中ちょっと局長も答弁で触れられましたけれども、いろいろな実務上の困難等もあるかもしれませんが、見送られたままになっている。この点は積極的に制度化して進めていく方向の議論というのは大いにあっていいと思うんですが、いかがなものでしょうか。
#170
○政府委員(井嶋一友君) 刑法全面改正を検討いたしました法制審議会刑事法特別部会におきましては、議論の結果、当面すぐはとらないという形を採用したわけでございますが、これからの問題として御指摘のような点を検討する必要があると思っておりまして、財産刑検討小委員会の中で徴収手続の適正化、合理化といった柱で検討をお願いしておるところでございますので、これはいい制度であれば採用していくという方向に行くんだろうと思いますけれども、これから御議論が始まるわけでございますので、余り方向性を出すわけにはまいりません。
#171
○橋本敦君 そこで、労役場留置ということになった場合、そこでは実際内容はどうか、これは北村委員からも質問がありまして、事実上は労役場留置のための房だということで独房をあてがってということですが、その作業の報酬とか収益とか、この処分はどういうふうになっているんですか。
#172
○説明員(東條伸一郎君) 監獄法の施行規則でございますが、作業賞与金につきましても、その賞与金計算高の三分の一を超えざる金額を給することができるという規定が施行規則にございます。それを活用しておるわけでございますが、ただ先ほど私申し上げたことがあろうかと思いますが、作業内容がいわゆる懲役受刑者と異なりまして非常な軽作業といいますか、単純作業です。したがいまして、いわゆる作業賞与金というものも非常に低額であるということは労役場留置の一つの特徴といいますか、やむを得ない制約といえば短期間でございますのでしようがないということでございますけれども、大変いわば簡単な作業をやっておりますので、そういう意味では賞与金も大した額にはならないだろうと思います。
#173
○橋本敦君 ですから、この労役場留置ということの持つ意味は、そこで労働し、そこで得た報酬で罰金を返済するということが目的じゃないということははっきりしているわけなんですね。実際にそこで得る報酬も極めて少ない。だからそういう意味では、もう労役場留置というのはこれはまさに自由刑処分への切りかえといったような本質的な要素を持っているということにならざるを得ない。そこで外国等で議論が進んでおるようですが、自由労働による償却制度の方がいいのではないかというようなことが言われて、イギリスではコミュニティー・サービス・オーダー、いわゆる社会奉仕命令ですか、こういったことがいろいろ議論されてきた、こういう状況にあるようですね。
 だから私はそういう意味で、罰金が払えない場合、本来その人は懲役刑を科せられた人じゃないんだから、自由報償制度かあるいは社会奉仕命令に従事するというシステムか、そういったことでやはりその人の労働が懲役刑としての労働と違った社会的意味が持てるようなシステムを今後行刑の場で大いに検討すべきだというふうに思っておりますが、局長の御意見はいかがでしょうか。
#174
○政府委員(井嶋一友君) 労役場留置で入ります者と懲役囚とは法律的には区別するようにという制度は一応構築されておりますが、御指摘のとおり、その実態を見ますと、財産刑の自由刑への切りかえではないかという御指摘のような実態があることは否定できないと思います。そういった意味で、同じ労働をして奉仕するといたしましても、その中ではなくて社会内で意味のある労働をしろという御指摘は一つの御指摘として十分傾聴に値すると思っております。そういったものも含めて検討していただくような方向で、各国のそういったものの実情といったようなものも収集をしておるわけでございます。
#175
○橋本敦君 法務省として、今局長がおっしゃった各国のそういったことの実情の把握ということで、具体的に調査のために人を派遣なさるとかあるいは積極的な調査ということでいつごろまでに調査結果をまとめるかとか、そういったプロモートについての方針なりあるいはめどなり、そういったものをお立てになった上でやっていただきたいというのが私の要望なんですが、いかがでしょうか。
#176
○政府委員(井嶋一友君) 具体的なスケジュール等までまだ定めておるわけではございませんけれども、御趣旨のようなことは十分私どもといたしましても資料を収集する必要がある、このように考えております。
 なお、先ほど私ちょっと数字を申しましたときに間違ったようでございますので訂正させていただきます。
 先ほどの分納の執行件数のところでございますが、昭和六十三年度の執行件数を百二十四万三千二百九十四と申しましたが、これは正確に申しますと嘱託件数を引かなきゃなりませんので、百二十四万千七百三件だそうでございます。分納件数は先ほど申しましたように変わりません。それから、平成元年につきましても百二十三万三千三百三十二と申しましたが、百二十三万四千七百九十六ということで、これはふえます。分納件数は変わりません。率といたしましては〇・七六%であるということでございますので訂正いたします。
#177
○橋本敦君 正確な御答弁をいただきましてありがとうございました。
 そこで、外国の法制等ばかり言って恐縮ですけれども、罰金刑そのものの定め方についても外国法制で検討する余地のある問題がまだ残されていると思います。といいますのは、罰金刑というのが一つはお金持ちには罰金の与える影響度合いと苦痛が少ないが貧乏人には少額であっても厳しい、こういった罰金というものに本来つきまとってくる欠点といいますか、そういった問題点が一つあるわけです。それからもう一つは、そういうことがあると同時に、さりとて罰金の上限をなくして、一切裁判所の裁量判断で金持ちには高額の罰金が科せられるというようなことにしてしまうと、いわゆる罪刑法定主義ということとの関係で問題が出てくる、こういうことがいろいろあるんだそうです。
 そこで、ドイツやオーストリアの規定だとかノルウェーの規定だとかスイスの規定だとか見てみますと、収入、資産、家族構成、扶養義務、職業、職業上の収入、年齢及び健康、こういったことを考慮してそれで罰金額を決めるということを法自体に規定を置いているところがある。それからもう一つは、総額罰金制度じゃなくて日数罰金制度という制度を採用しているところもある。いろんな工夫があるようです。ここらあたりについて、どういうような状況が今世界的傾向なのか、検討すべき課題は何だと局長はお考えなのか、この点についての御意見を承りたいと思います。
#178
○政府委員(井嶋一友君) 罰金の量刑の問題でございますけれども、これは裁判官が個々の具体的事件について判決で言い渡すべきものでございますから、どのような判断基準を持ってやっておるかということを私この場で申し上げるのは非常に難しゅうございますけれども、やはり常識的に考えて、あるいは刑事手続、刑法、刑事法の物の考え方からいたしまして、犯行の態様でございますとか結果といったように、犯罪をめぐるいろいろな問題、それから特に個人のいろいろな事情、その中には経済的な資力の問題といったようなものも十分検討の中に入れて量刑が行われている、こう思っております。御指摘のように、お金のない方とお金のある人との間で罰金の痛みが違うではないか、不公平ではないかという御指摘については、裁判所はそういうことのないようにやはりできるだけ量刑の中で考えておるものだろうと私は推測をいたします。ただし、私が本来お答えすべきことではございません。
 ところで、そういった量刑に頼らずに、もっと客観的にそういったことをやってはどうかという制度が実はあるわけでございまして、その一つは委員御指摘のいわゆる日数罰金制の問題でございまして、ドイツとかオーストリアとかスウェーデン、デンマーク等におきまして採用をされておるというふうに聞いております。この制度につきましても学会では十分いろいろ検討されておる問題でございますが、そういったものの導入の可否といったものも今回は改めて財産刑小委員会にお諮りをしておるわけでございまして、いずれ結論が出てくるものと思っておるわけでございます。この辺になりますとまことに重要な考え方の変更であるわけでございますので、あるいは二年間で結論が出てくるかどうかという点は保証いたしかねますけれども、検討が始まるということであることを申し上げておきます。
#179
○橋本敦君 将来的な検討課題の一つとして視野に入っていくというお話でございますから、それはそれで期待もして、また議論もさせていただきたいというように思います。
 時間が参りましたので、最後の質問になるわけですけれども、先ほど刑法七十条二項の問題がいろいろ議論されまして、客観的に見ますと七十条二項が現に機能し得ない、機能する余地のない条文として存在しておるということは、これは客観的にはだれが見ても肯定せざるを得ない。だからここのところを一つの出発点にする。それは局長も異論はないということになるんではないですか。
#180
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のとおりでございまして、いわゆる適用の余地がないということ
をスタートにするというお考えは十分理解し得ることでございます。
#181
○橋本敦君 それをどう解決するかということについていろいろ議論がありまして、それはそれでまた我々は我々サイドで議論をする、こういうことになるわけですが、その問題でもう一つ伺っておきたいのは、いずれにしても中野委員がおっしゃった三つの問題があるわけですが、これをこのまま置いておくかというその問題は、長く置いておくというわけにいかないということも、これも明らかじゃないでしょうか。いかがですか。
#182
○政府委員(井嶋一友君) まことに御指摘のとおりでございまして、この財産刑小委員会の検討が約二年ぐらいの間で検討を尽くせるものは早く尽くそうというスタンスで始まりますので、そういった中で考えますれば、もし残すということになれば、あるいはまた削除して新しくつくるかどうかという検討をするとなれば、それは二年ぐらいの中で検討結果が出てくる。それを受けて考えるというようなことかなと。しかし、あるいはもっと早くそこだけ結論が出てくるようなことがあればこれは可能かもしれませんが、余り不確かなことを申し上げてもいけませんので、とにかく検討小委員会の問題であるということになるわけでございますので、それに任せたい、このように思います。
#183
○橋本敦君 局長の見解と立場はわかりましたが、現実的に意味のない規定を二年間も待たなきゃならぬのかなという議論が私どもの方にはあり得るということでございまして、積極的にいろいろと検討したいと思います。
 終わります。
#184
○山田耕三郎君 今回のこの法律案には各委員の方々の質問が特定の箇所に集中をいたしております。そういったことから、極力重複は避けてまいりたいと思いますけれども、できない場合もあるかと思います。お答えをいただきたいと思います。
 まず私は、刑法七十条の第二項に関してはもう既に同僚議員の皆さんからも御指摘があり、議論もありましたところでありますが、その論議の中で、簡単な言葉で申し上げますと、この条文は現在では死文化しておる、実際に適用されることは考えられない、その意味でこれはあってもなくても同じ条文で実害を伴わない、したがって今急いで削除する必要はないというようなこともありましたように聞き取りました。
 この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
 果たして意味のない条文は削除する必要がないのかどうかということであります。法律は国民にとってわかりやすいものであることが第一に必要なことだと思います。法律は、一般国民にとっては大変難しくどうも敬遠されがちであります。その原因として、難解な法律用語や複雑な言い回しを使っているということがよく指摘をされます。私は、それに加えて意味のない条文が六法全書に残っているということ自体も法律をわかりにくくしている原因の一つではないかとさえ思います。ある条文が生きているとか死んでいるとかいうことなどは、法律の専門家や、特に法律を勉強したという方々でない限り判断できないと思います。一般国民が六法全書を読むときに一々条文に意味はないのかどうかなどと疑ってかからなければならないとすれば、それは混迷を深めるばかりだと思います。
 そこで、お尋ねをいたしたい第一点は、今日現在でいわゆる死んでいる法律あるいは死んでいる条文というようなものが実在をしておりますのかどうか。実在しておるとすれば、例えばどれぐらいの数がありますのか。しかし、素人にわかりやすい代表的な例などをあわせて説明していただきたいと思います。
#185
○政府委員(井嶋一友君) 大変難しい御指摘でございます。法律が既に実効性を失っておるというものがあることは事実でございますから、委員御指摘のように、そういったものは国民の立場からすればすべからく早く削除すべきであるという御指摘はまことにそのとおりであろうと思います。
 ただ、現在そういった意味で適用されない法律、言い方をかえれば委員のおっしゃるような死文化した法律あるいは条文といったものがどのぐらい数があるかというお尋ねは大変難しゅうございまして、まずそんなにないというのがお答えだろうと思いますけれども、例外的にはそれぞれの法律の中に手当てができていないものとかあるいは何らかの意味で置いてあるものとかいろいろなものがあり得るのかと思います。ちょっと数を申し上げるのは非常に難しゅうございます。
 ただ、代表的なものを挙げるという仰せでございますれば、先ほどもちょっと申しましたけれども、刑法で申しますと例の尊属殺の刑法二百条の規定がございます。これは我々実務では適用しないという意味において現在機能が停止しておるのと同様だと考えていいわけでございます。これの手当てにつきましては、先ほど申しましたように、最高裁の判例を受けまして削除という方法を選択をしたわけでございますけれども、これはいろいろ価値観の相違もございまして議論が沸騰いたしまして、結局改正には現在至っておりませんので、刑法上二百条という規定は残っておりますが、実務では適用しないということでやっておる一つの例でございます。
#186
○山田耕三郎君 次に、そのような意味のない条文を残しておく必要性についてお尋ねをいたしたいと思いますが、もし将来その条文が生き返るかもしれない、あるいはその可能性があるというのであれば、その時点で改めて立法されればよいのではないか。このような要らない条文を国民のわかりやすさを犠牲にしてまで残しておくほどの強い必要性がどこにあるのか。
 今朝来の答弁にも、財産刑における軽減の将来を考えると切り捨ての額を幾らぐらいにするかの問題点が残る旨の答弁がありましたが、だからといって現在存在しない銭が権威ある基本法であります刑法に残されなければならない理由は、聞いておりましてもちょっと説得力がないように思いますのですけれども、罰金の額を現在に見合って二・五倍に変えられましたのなれば、やはりお金の単位も現在に見合ってなくするならなくする、こういう方がわかりやすいと思いますのですが、それらについてのお答えをお願いします。
#187
○政府委員(井嶋一友君) 先ほど中野委員の御質問に対しましていろいろ申し上げまして、私どもがこの改正を見送りました理由といったものを説明させていただぎましたけれども、しかし今委員御指摘のように、要らぬものはすべからく国民のためには取るべきである、こういう御指摘はもう十分わかるわけでございまして、そういった選択をとるべきであるという委員の御議論は十分拝聴に値いたしますし、十分とり得る政策であるということは申し上げることができると思います。
#188
○山田耕三郎君 これももう既に質問があり、答弁もありましたので細かくは申し上げませんけれども、特に「財産刑をめぐる基本問題について」なる文書を私たちにいただきまして、そしてこの基本問題は今後二年かけて合意の上で改正しますとのことで、刑法第七十条の第二項はどうやらこの中に入っており、その時点で改正するとのことのようにも私は受け取れました。私の同僚の弁護士資格を持ちます議員に聞けば、本件は二年くらいではなかなか結論が得られないのではないか、こういう意見もありまして、私自身も迷わされておりますわけなんです。
 今朝来の答弁にも、大体二年くらいを目標とのことでありましたが、本当に列記されております基本問題が二年くらいで決着がつくのかどうか、簡単で結構ですからお答えをいただきたい。
#189
○政府委員(井嶋一友君) 二年ぐらいで決着がつくかという御質問でございますが、財産刑検討小委員会におきまして今後どういったスケジュールで検討していこうかという委員各位のお話し合いの中で、当面二年ぐらいを目途に検討をして、例えば中間的にきちっと整理できたものはまたそれで報告しよう。さらに長引くものは長引くかもしれない。いずれにしても、当面二年ぐらいを一つ
の目途にしよう、こういうお話であるというふうに聞いておりますので、御指摘のように、その段階でいわゆる意見がまとまっておるものとまたそうでないものといろいろ整理されていくとは思いますけれども、一応目途はそういうことであるという委員会の御決定の中身を御紹介申し上げたということでございます。
#190
○山田耕三郎君 次に、罰金や科料についてですけれども、罰金や科料に処せられた方がその全額を納められないときには、いわば罰金刑の執行にかえて労役場に留置されるということになっております。これももう質問がたくさん出ております。しかし、これは懲役や禁錮と同じく身体の自由を拘束するという方法をとるものであります。したがって、この制度の根底にはお金の払えない者は体で償えという考え方が横たわっておるように思います。
 そこでお尋ねをいたしますのは、罰金刑はあくまで財産刑であるという特質を貫いて、身体の自由の拘束を伴わない方法で罰金を完納できるようにしたことの方が一番よいと思います。それはもう委員各位がお尋ねになられました。この点について御検討もなさっておるようでございますけれども、現在の時点で拘束しないで目的を達するという成果を近い将来に得られる見通しがございますのかどうか、その辺をお尋ねいたします。
#191
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、財産刑の執行が最終的にできない場合に身体の自由を拘束するという代替制度は、財産刑という刑の中身から考えましておかしいという御指摘はもっともな御意見でございます。
 そこで、先ほど来御説明しておりますように、何かそれにかわる代替的な措置はないのかということで、例えば社会奉仕命令の導入といったようなことを含めた検討をお願いしておるわけでございますが、他方、この問題は、先ほど延納とか分納とかいう議論がございましたけれども、徴収手続そのものをもっときちっといたしまして、あるいはもう少し強力な調査権を与えるとかといったようなことを加味いたしまして、できるだけ任意の徴収をもっと効果あらしめるように手続的にしていくということを他方考えていけば、あるいはこちらの身柄の拘束はしなくて済むようになるかもしれないといったようなことで、徴収手続全体についての検討がこの問題には実は絡まっておりますわけでございます。
 そういった意味で、そういった論点を整理しながら総合的に検討しているということでございますが、手続の問題でございますので、重要な基本問題ではございますけれども、それなりの期間である程度の結論は出でくるのかなというふうに思っております。
#192
○山田耕三郎君 先ほど罰金の支払えない方に対する質問のときに、どういう事例があるのか、直接窓口で担当をしておる人は知っておるでしょうけれども、局長さん自体の方では適当な事例を持っておいでにならないというような御答弁であったかと思いますのですが、なかなかやはりそれはできないと思います。けれどもそういう実態は、法律をおつくりになる立場からすればできるだけ見てやっていただきたい。
 私ごとでまことに恐縮です。長い間政治やっております。中小企業の方が経営に困られるからということで、どの都道府県にも信用保証協会というのがあります。保証人にはなってやることがありますけれども、返せないと保証人が弁済しなければなりません。そうしますと、私が保証人になると保証協会は何ぼでも貸してやってくれますんです。それに保証協会へ行きますと返せないから代位弁済をしたというお金が随分あるんですけれども、このときは保証人はどうなっているんだろうなと思ったりします。そうすると、保証人になってやった個人がやはりお金を貸してやったと。言うたら保証協会のかわりをしているようなことにもなりかねませんので、そういったお金の現場のことというのはどういうようにして処理されているのか、またやはりたまには見てやっていただきたいと思います。
 それはそうとして、その次に、罰金を支払えない場合にはどうしても労役場留置という制度をこれはもう利用せざるを現状では得ないと思いますが、その運用面についてですけれども、あくまでこの人は懲役や禁錮を受けたのとは違いますので、同じように留置はされておりましても、そのやり方には本当の懲役の刑や禁錮の刑を受けた人と違うのだといった何らかの配慮が実態としてなされておりますのかどうか、そのことについてお尋ねをいたします。
#193
○政府委員(井嶋一友君) 先ほどその点につきましては審議官から若干お答えをいたしておりますけれども、労役場留置の収容の仕方と申しますのは、もちろん懲役刑囚とは違うわけでございますので、基本的には区分けをして収容をいたしております。具体的には監獄そのものではなくて、それに附属しております労役場というものに収容することとなっております。
 そして、それらの者の処遇の中身につきましては、現在の監獄法の三十三条におきまして、労役場留置の言い渡しを受けたる者の例えば衣類とか寝具は自弁してよろしいといったようなことで受刑者とは区別をいたしておりますし、さらに監獄法施行規則の三十三条におきましては、労役場留置の言い渡しを受けたる者と受刑者とは同じ監房あるいは同じ工場で働かせてはならないということを規定しておるわけでございますので、そのように運用をしております。つまり、具体的には一つの房に独居の形で入れまして、紙細工その他の軽作業をやっておるといったのが実情であるということを聞いております。
 いずれにいたしましても、法律上そういうふうにきちっと区分けをしなきゃならないという建前になっておりますので、そのように矯正当局において処遇をしているものだというふうに考えております。
#194
○山田耕三郎君 次に、同じ罰金でも法人のことに関連をしてお尋ねをします。
 我々のように普通の人間、いわゆる自然人が罰金刑に処せられた場合と法人が罰金刑に処せられた場合との実質的な違いについてお尋ねをいたします。
 自然人が罰金を支払わないと労役場に留置をされますが、法人が罰金を支払わなかった場合はどのようになりますのか。法人の財産に対する強制執行もできない場合も起こってまいりますが、この場合ほどうなりますのか。もし徴収不能となりますと、結局悪いことをしても法人は何の処罰もされなかったということになるようにも思えますが、そのように理解をして間違いはないのですか。ちなみに、徴収不能がありますとすれば、年間何件くらいありますのか、お尋ねをいたします。
#195
○政府委員(井嶋一友君) 実は、法人の徴収に関する特別の統計といったものは検察統計上とっておりませんものですから、そういった数を申し上げることは不可能なのでございますけれども、若干説明をさせていただきます。
 平成元年度におきまする罰金の徴収不能件数、これは全体の執行件数が百二十三万四千七百九十六件であるのに対し、その中の四百五十五件となっておりまして、この率は約〇・〇四%に当たるということでございます。つまり、検察庁の職員は可能な限り徴収ができますように職務に精励しておるわけでございますが、残念ながらこの程度の徴収不能件数というのはあるわけでございます。ただ、この中では先ほど申したように、自然人と法人の区別をした統計はございません。
 ただ、そういうことでございますが、お尋ねもございましたので取り急ぎ、東京地検において平成元年で法人に対する罰金の徴収不能件数はあったかと聞きましたところ、一件あるということでございました。これは結局、委員御指摘のように、強制執行その他あらゆる手段を講じましても法人に資力がないということで徴収不能になった件数でございますが、法人につきましては御指摘のように労役場留置といったようなことができませんので、可能な限り徴収手続、徴収事務の中で
徴収ができるように努力をしておるわけでございます。
 ただ、法制的にそういった法人の罰金についての徴収不能が再三起こるようなことになっては困りますということから、将来の問題としては、例えば法人については将来の罰金を担保するために、いわゆる民事で言うところの保全手続のようなものをつくってはどうか、こういった指摘もあるわけでございまして、先ほど来御説明しております徴収手続の適正合理化といった検討の中には、そういった法人を見据えた保全手続の創設の可否といったようなことも実は含まれておるわけでございます。
#196
○山田耕三郎君 自然人と法人とでこのような違いができるということは、現状ではもういたし方がないことというように当局は考えておいでになりますのかどうか。例えば、法人には体がありませんから、死刑だとか懲役だとか禁錮という刑罰は意味がないことはもちろんでございます。そうしますと、どうしても罰金刑を活用せざるを得ないということになります。しかし、罰金刑にもただいまお尋ねをいたしましたようなことも起こり得ますのは御答弁にもありました。だとすれば、法人を処罰する方法としてより効果的で抜け道がないような方法は考えられないものかと思いますが、今一部お答えをいただきましたけれども、さらにほかにあるようでございましたら、その対応をどうしようとしていただいておりますのか、重ねてお尋ねをいたします。
#197
○政府委員(井嶋一友君) 法人につきましては、徴収の事務の現場におきまして可能な限り取れるように努力をしておりますが、しょせん努力でございますから限界もございます。といったことで、極めてパーセンテージ的には少ないのでございますが、法人についての不能が起こり得るわけでございます。それを防止するために、今は手続はございませんけれども、例えば先ほど申しました保全手続を考えるとか、それからあるいは法人に対する財産のありようの調査を検察庁の職員に調査権限を与えるというような法制を考えるといったようなこととか、そういったようなことを全体として考えながらやろう、こういった方向で検討をしておるわけでございます。
#198
○山田耕三郎君 質問を終わります。
#199
○紀平悌子君 いつものことでございますが、一番最後に当たりますので、大変お疲れの濃くなった時分どきでございます。時間をちょうだいして、国民の司法とのかかわりという観点を主にして御質問を申し上げたいと思います。
 私は、最初にこの罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案をぱっと簡単に提案理由を拝見しましたときに、これはまことに簡単な法案だなというふうに感じたわけです。これは法律の専門家でない者はみんな一応そんなところではないかと思うのですけれども、いろいろ伺っておりますうちに、現在の刑事司法制度の上で罰金の占める役割というのは非常に大きいということがわかってまいりました。これは、先ほどからも罰金の比率が平成元年度の全事件、裁判確定人員中九四・三%でございますか、これからも罰金の持つ重要性というものが推察はできるわけです。
 今回の改正における罰金額の引き上げ方でございますが、おおむね一律の額、二・五倍増額といういわば単純な方法論によって行われていると思います。これの経緯につきましては先ほどから同僚委員がいろいろ御質問されておりますので、この方は省略させていただきますが、単純な方法論ではありますけれども、やはりそれには合理性があるはずだというふうに思います。二・五倍とすることについて、消費者物価指数いわゆるCPIがほぼそのまま基準とされております。
 実は、これは経企庁に申し上げることでございましょうが、生計上、私どもの経済、家計の負担の中心をなしております住宅ローンですとか税金だとか社会保障等の負担、こういうものが非常に大きいんですけれども、この中で、消費者物価指数の計算のときに除外をされているのは御案内のとおりだと思います。また、刑罰である以上、独自の基準というものがあってもいいんじゃないかというふうに考えます。物価と連動した引き上げ率にするということは、必ずしもこの方法でなくてもよかったんじゃないかと思います。罰金というものはあくまでも罰金ですから、まあ純粋な意味での経済というと言葉がうまくありませんけれども、経済ではないわけです。ですから、刑事政策的な額というものは一体何かということ。先ほどから哲学というお言葉もいろいろ出ておりますので、法制審の中ではこの点についてはどんなお話し合いがございましたのでしょうか、法務省にお伺いします。
#200
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、罰金刑の金額のありようにつきましては、経済指標等に頼らずに、独自の科学性を持った一つの体系的な基準を構築して、それによるべきであるということは一つの御指摘であろうと思いますけれども、そのような作業は大変なことでございまして、なかなか私ども法務省だけでなし得ることではございません。
 ところで、今回もそうでございますし、四十七年の改正のときもそうでございますけれども、結局経済変動に伴って罰金刑の機能が低下してきているから、経済の実勢に合わせて修正したいんだと、こういう御説明をしておるわけでございますが、実はそれは言い方を変えますと、財産刑というのは一つの刑罰でございまして、財産的な苦痛を与えるというところに意味合いがあるわけでございます。ところが、財産的な苦痛であると言いながら、他方において経済が繁栄をいたしましていわゆる労働者賃金あるいは消費者物価といったようなものが上がってまいりまして、その人にとっての痛みというのはもとのままの法定刑にいたしますとたんだん薄れてまいるということになるわけでございますので、皆さんが同じように例えば消費者物価が二・五倍になったというような経済の繁栄の影響を受けておられるのであるから、刑罰の痛みといったものも同じ率で上げておけば結局同じ形で刑罰としての痛みがスライドして上がるじゃないかとかこういう考え方がございまして、四十七年のときも今回もその消費者物価指数、最も貨幣価値の変動に近いものを基準といたして採用させていただいた、こういう経緯があるわけでございます。
#201
○紀平悌子君 提案理由にございます財産刑としての機能の低下、それから刑事司法の適正な運営という意味ではそれはよくわかりました。
 一方、こういうことをベテランの法務省に御質問申し上げて失礼なんですけれども、そもそも刑罰において罰金というものが占める今日的な刑事政策的な意義、下手な試験問題みたいで恐縮ですが、大変青臭い質問だと思いますけれども、罰の部分ともう一つは本人の社会復帰というか、そういう両面が刑事政策にはあるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#202
○政府委員(井嶋一友君) 刑罰というのは罪と罰があるわけでございまして、罪と罰がバランスよく規定されておりませんと刑事司法の運営は破綻を来すというのが刑事政策の基本であろうと思います。
 そこで、罰の部分の特に罰金という財産刑の罰の部分が、経済事情が変動して上がってまいりますことによって相対的に国民の意識の中に低くなってまいりますと、やはり罪と罰のバランスがそういった意味で崩れてくるということだろうと思うわけでございますので、適当な機会にやはり経済の実勢に合わせた、つまり痛みを同じような形で上げるということ、これが罪と罰という基本原理にかなったやり方だと思いますので、私どもはそういった傾向を注視しながら対応しておるわけでございまして、今回は四十七年から十九年ぶりでございますけれども、こういう形をとらせていただいたということになるわけでございます。
#203
○紀平悌子君 もう一問したいところなんですけれども、時間もございませんので、次は最高裁にお伺いしたいんです。
 今回の改正によって裁判実務というものにどの
ような影響が出るんでしょうか。できれば例を挙げて、私にわかるように御説明いただきたいと思います。
#204
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 一般論として申しますと、罰金額の法定刑が引き上げられたということで実際の事件の量刑が、急激に罰金刑の言い渡し額が上がるというようなことはまず考えられませんで、ただし徐々になだらかな形で上がっていくのではないかというふうに思われるわけでございます。
 それはなぜなれば、裁判にもある程度の連続性が必要でございますので、同種の事案につきまして従前と急激に大きく異なる刑を言い渡すということになりますと、公平の観点から問題があると言えるからであります。現に私ども昭和四十七年のときの罰金等臨時措置法の改正によりまして、罰金の法定刑がそれまでの四倍、条文額でいけば二百倍でございますが、その当時それまでの四倍に引き上げられたことがありましたわけで、そのときの状況を見てみたわけでございますけれども、統計によりますと、直ちにその改正が言い渡し金額にはね返って四倍になったというようなことはございませんで、徐々に引き上がっていったという状況がうかがわれます。
#205
○紀平悌子君 法務省にお伺いいたします。
 今回刑法の各罰則にわたる改正ですが、足かけ約十九年間でしょうか、罰金額が据え置かれてきたわけです。これは非常にそのことで御論議が重ねられてきたと思うんですけれども、十九年といえば随分長いので、今やるも前にやるも、こういうふうな形でやるんでしたらばもう少し機会が前にもあったかしらと思うんですけれども、一番の据え置かれてきた理由というのは何でございましょうか。
#206
○政府委員(井嶋一友君) 罰金額は、委員御案内のとおり、上限幾ら下限幾らというある程度の幅の中で法定刑として定められるものでございますが、四十七年にそういった法定刑の幅を含めまして当時の金額の四倍という改正をしたわけでございます。それがその後の裁判で、そういった上限と下限の中において量刑が行われていくといったことでずっと推移をしてきたわけでございますので、例えば消費者物価が二倍になったから、一・五倍になったから直ちにやらなきゃならないのかという議論はあるわけでございます。
 しかし、他方、実務のだんだん平均罰金額が高くなってまいりまして、特定の罪についてはいわゆる我々申しております頭打ち現象といったようなものが出てまいりますと、裁判としての機能に一定の影響を与えるぞということになってまいるわけでございまして、それはそれなりにやはり期間が必要になるわけでございます。そういった期間と経済の現状をにらみながらずっと検討を常時やっておりまして、前回から二十年近くなってそういった現象が出てまいりましたので今回提案をさせていただいたということでございまして、むしろ細かく次から次へ変動にフォローして上げていくべきかどうかということにつきましては、かえって逆の議論があるのではないかというふうに思うわけでございます。
#207
○紀平悌子君 中野委員の御質問にもございましたし、もうこれに対するある程度のお答えは出ているんですけれども、罰金額に関連しまして、法人の主たるものは株式会社でございますが、経済的な機能あるいは社会的な能力というんですか、自然人に比べてはるかに大きなものだと思うんですね。
 例えば、申告所得が一兆円を超えるような大企業などがございます。両罰規定のある場合、法人については罰金額の引き上げ率がもっと大幅に図られてしかるべきというふうに私も考えます。この辺が国民に法人といったものを、漠然と法人とは何かというのがすべての人に理解されているという状況でもないかもしれませんが、どうして自然人と法人が違うんだろうというような素朴な疑問を当然持たれると思うんです。先ほど両罰規定の法人を切り離して考えていくというのは既にお話としては出ているという井嶋局長のお話でございましたけれども、法務省としてはこの点はどう考えていらっしゃるんでしょうか。
#208
○政府委員(井嶋一友君) 現在の社会経済活動におきまして法人といったものが主体的に行っておるという実態は委員仰せのとおりでございまして、今までのように個人の行為と連動した形で法人を処罰するという両罰規定のあり方といったものが今日根本的に見直されなければならないということは御指摘のとおりでございます。
 そこで、先ほど申しましたように、これが検討課題になっておるわけでございますが、具体的に法務省の方向を示せというお話でございますが、私どもはむしろ切り離して、主体として活動する法人に適した、その法人の犯罪にあるいは違法行為に適合した財産刑といったものをやはり行為者とは分離した形で適用していく方が望ましい、これからの社会経済の発展をいろんな意味で規制する意味におきましてもそういったシステムの方が望ましいなということは思っておりますけれども、理論的に学理的に非常に難しい問題がいろいろございますので、そういったことをいろいろ検討しながら結論を導いてまいりたい、このように思っております。
#209
○紀平悌子君 アメリカなんかでは法人企業に対する経済的な責任というものを非常に重視しておりますね。それで、罰金額も、これは経済法の領域ではございますけれども、アメリカの証券取引法などでは法人企業に対して二百五十万ドル、三億二千五百万円以下の罰金に処せられるようにというふうになっているそうでございます。そうした改正を日本においても、日本の経済性というか、経済大国化というのはアメリカを超えるというふうに言われておりますので、非常に緊急に必要ではないかと思いますが、簡単で結構でございますが、もう一言。
#210
○政府委員(井嶋一友君) 実は、日米構造協議の場面におきましてもアメリカからそのような指摘がございました。結局、今仰せのように、経済活動としての主体である法人にそれなりの刑罰を科すということになりますれば、まずそのネックになりますのが両罰規定であるわけでございますので、その辺の理屈をまず乗り越えませんと非常に難しいというのが現在の刑罰の物の考え方でございますので、その辺からスタートさせてまいりたい、このように思っておるわけでございます。
#211
○紀平悌子君 今回の改正案で罰金の最高額が二百五十万円にまで引き上げられます。理論上は、併合罪加重という場合には二個以上の罰金はその合算額以下で処断し得る、四十八条の二項でしょうか、ということにされているようでございます。上限が懲役、禁錮のように決められていないので、処断刑がかなり高額に及ぶこともこれは実務上あり得ると考えますけれども、その点についてはどんな御検討が加えられてきたか、法務省にお伺いしたいと思います。
#212
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のように、刑法四十八条によりまして併合加重をいたします場合、罰金につきましてはその多額を合算いたすわけでございますので、二百五十万円の法定刑に当たる犯罪が併合罪として例えば二件行われたといたしますれば、トータル五百万円以下という罰金刑になるわけでございまして、その点は委員御指摘のとおりでございます。
 一見非常に高くなったように見えるわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、今回の改正は経済変動の中の消費者物価指数をとって二・五倍にしたということで全体として法定刑を引き上げたわけでございますので、そういった意味におきましては、一歩先んじていた消費者物価の上昇分に刑罰としての痛みのレベルが追いついたという段階でございますから、むしろ新しく非常に重くしたということではないわけでございまして、そういった意味合いにおきましては従来と同じ手法で併合加重するわけでございますから、特段重くなったというようなことになるはずのものではない、理屈からはそういうことになると思っております。
#213
○紀平悌子君 先ほど北村委員、そして同僚委員も罰金の納入方法についての御質問が既にござい
ました。方法論というものは、やはり実際には刑事政策的な意義というものを高めるのに非常に必要な、それがなければというものじゃないかと思うんですけれども、それについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。方法論、徴収の手続ですね。
#214
○政府委員(井嶋一友君) せっかく裁判所におきまして刑罰を言い渡しましても、徴収手続がしり抜けでございますれば何ら意味がないわけでございますので、そういった意味で徴収手続がきちっと整備されるということが重要であることは申すまでもございません。
 そういった観点で現在のシステムを検討いたしますと、例えば先ほど来申しておりますように、相手方の財産の調査権限がないとか、あるいは法人その他大きな罰金を科せられた人たちに対する保全処分といったような手続がないといったようなこととか、いろいろ手続上に隘路があるというのが現実でございます。
 ただしかし、だからといってそういったものを法制化いたしますとまたいろいろ問題だという御指摘もあるわけでございますので、その辺のところを十分検討しながら財産刑としての重要な徴収手続をきちっと整備したいというのが私たちの考えでございますが、難しい問題もございますので検討小委員会の検討を待ちたい、このように思っているわけでございます。
#215
○紀平悌子君 法務省に続いてお伺いいたします。
 先ほどからもういろいろ御説明いただいているので重ね重ねということでございますけれども、今回は一律の罰金額の最高額の引き上げというところにとどめられたという改正でございますね。現代の道徳観ですとか刑法の理念ですとか民主主義的な見方という刑法本条の罪質とそれに対応する刑罰の見直しというそういう課題はお見送りになって継続していくということです。そのことが現行法の処罰の不均衡をそのまま、罰金額についてのみではありますけれども拡大してしまったという結果になると思うんです。例えば、表現の自由との関連で疑問が非常に多いわいせつ文書等頒布罪、刑法百七十五条、これは今回の改正で罰金が最高二百五十万円になるんでしょうか。それよりはるかに公益的にも、これはその方の価値観の違いではございますけれども、と思われる集団的な暴行罪とか賭博罪ですね、賭博罪は五十万円以下、集団的暴行は三十万円以下、それから証人の威迫罪は二十万円以下ということで、これがもし通れば罪と刑ですか、罪と罰との不均衡が広がったように思われます。そんなふうに人々は感じると思うんですけれども、法務省はこの点についてどんなふうな自己評価を持っていらっしゃいますでしょうか。
#216
○政府委員(井嶋一友君) 委員の御指摘は、つまり個々の犯罪に対する刑罰のあり方を個々に見直してバランスを取り直せと、こういう御指摘になるだろうと思います。これは確かに重要なことでございまして、明治四十年に制定されました刑法の中で現在の体系が決まったわけでございますから、これが現代にそのまま適用になるかという御指摘についてはまことにそのとおりだろうと思います。
 しかしながら、これを一つ一つ見直しをいたしますということは、つまりは刑法の全面改正作業と等しいわけでございまして、現在の社会における犯罪としてのとらえ方、それの刑罰のバランスといったものを個別に見ていくわけでございますから大変な全面改正作業になるわけでございます。そこで、昭和二十三年及び昭和四十七年に罰金の臨時措置法で罰金額の手当てをいたしました際には、そういった刑法の明治四十年の基本体系を崩さずにそのまま倍率でもってスライドしていくという手法をとったわけでございまして、今回も実は全面改正的な作業をすべきであるという御指摘はわかりますけれども、とても大変でございますので、従来と同じ手法でとりあえず経済指標に合わせた刑罰としての痛みのアップをお願いしたということでございます。
 しかし、御指摘のことを検討しないわけにはいきませんので、検討小委員会で引き続きそういったことを検討しようということになっておりまして、その中で先ほど来出ております公務執行妨害罪とか財産犯といったようなものの見直しといったものが特に指摘をされておるということになっておるわけでございます。
#217
○紀平悌子君 どの部分が大いに不公平というか不均衡が広がったというふうに私は申しておりませんで、いわゆる一般的に重罰主義というものは私は余り賛成いたしておりませんので、その点全面的に見直せというような勇ましいことを今私は申し上げたつもりはないんです。ただ、罰金刑のところだけちょっと持ち上がったなという感じで、そういうことを御専門家としてどういうふうに考えられるかなということをお伺いいたしました。
 次に、地方自治法との関連でございますが、自治省にまずお伺いをしたいと思います。
 条例の罰金の上限というものが引き上げられたということで、ある事例について、それに対する罰則が条例で定められているところとそうでないところとで、処罰されたりされなかったりすることになるんじゃないかと思います。そのことは先ほど御質問の委員に対するお答えで、それは自治体にそれぞれ任せるというか、そういうふうなことにしているという御答弁をいただきましたけれども、全国的に不均衡が実際は広がる場合もあるんじゃないかなと危惧いたしますので、この点もう一回お伺いいたします。
#218
○説明員(岩崎忠夫君) 地方公共団体の条例の執行力を担保するために実際に刑罰をもって臨む必要があるのかどうかということ、また刑罰をもって臨む必要があると判断した場合にどの程度の罰金等を科するかどうかにつきましては、その条例の性質でありますとか他の類似の国の法律におきます刑罰との均衡などを勘案いたしまして、現在も地方団体が自主的に判断をしてこれを決めているものでございます。したがいまして、その結果として地方公共団体ごとに条例における罰金刑の多額等につきまして若干の相違が出てまいりますことは当然に予想されることでございまして、そのことは地方の実情に即して条例で罰金等の刑を科することができることといたしました地方自治法の規定の趣旨、さらには憲法の定める地方自治の本旨にもたがうものではないと考えているところであります。
 そこで、今回条例におきます罰金刑の上限額が十万円から百万円に引き上げられることになるわけでございますが、今回の法律改正に伴います条例におきます罰金刑の多額の実際の引き上げでございますが、これは経済変動等も十分に考慮しつつ各地方公共団体におきましてそれぞれの判断と責任におきましておのずから妥当な範囲で行われるものと考えている次第でございます。
#219
○紀平悌子君 法務省も一言このことに関してお願いいたします。
#220
○政府委員(井嶋一友君) 今自治省から御説明ございましたように、地方自治の本旨に基づいて地方自治体のそれぞれの議会が罰則の上限百万円を十分にらみながら、それぞれの犯罪についての適正な刑罰を選択し条例化されるものだというふうに期待をいたしております。
#221
○紀平悌子君 今回の改正は、あくまでも本条の罪質または罰則などの再検討などへの橋渡し的なワンステップというふうに受けとめておりますが、そのワンステップの今回の改正の実効性を法務大臣はどのように評価されておられますでしょうか。
#222
○国務大臣(左藤恵君) 今までいろいろお話がありましたとおり、今回の改正は、昭和四十七年以降の経済事情の変動などにかんがみまして、刑法その他の刑罰法規に定める罰金及び科料の額を現在の経済事情に適合したものに改めようということでございまして、罰則の抜本的な見直しということにつきましては、ただいま法制審議会に対しまして、財産刑をめぐる基本問題ということの形で審議、検討をお願いいたしておりますので、法
務省といたしましても、この検討の結果等を十分踏まえまして、今後刑法の罰則を含めて罰則全般の抜本的な見直しをしていかなければならない、このように考えているところでございます。
#223
○紀平悌子君 今回の改正が罰金額の引き上げという応報刑的な側面が強いものでございますので、次回の改正案の内容とか、それから御提出の時期についてどのようにお考えになっていらっしゃるか。先ほどからたびたびのお答えがございましたけれども、大臣もその点に一言お触れくださいますのと、それから法務省当局からも同じくお答えをいただきたいと思います。
#224
○国務大臣(左藤恵君) 刑事基本法は、常に時代の情勢に的確に対処しておらなければならない性格のものであろうと思います。そういった意味で、所要の法改正というのは時宜を失せずに行うべきものであると考えておりますので、ただいま申しましたとおり、法制審議会の検討結果を踏まえまして、刑法を含めての法改正をすべきであると認められる事項につきましてできるだけ早く改正をしていかなければならない、このように考えているところでございます。
#225
○政府委員(井嶋一友君) ただいま大臣が御答弁申し上げましたとおりでございまして、現在の社会経済情勢の変動というのは極めて目を見張るほどの激動でございまして、刑法あるいは刑事政策といったものがこういったものに的確に追随してまいるということが何よりも大事であるという認識を持っておるわけでございます。
 本日、いろいろ御質問いただきまして、いろいろ将来についての検討課題を申し述べさせていただきましたけれども、そういったものがそれなりに結論が出てまいりますれば、可及的速やかに今申しましたような方向で改正を図っていくというスタンスにつきましては、ここで改めて宣明をしておきたいと思います。
#226
○紀平悌子君 終わります。
 ありがとうございました。
#227
○委員長(矢原秀男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#228
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認めます。
    ─────────────
#229
○委員長(矢原秀男君) 次に、司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。左藤法務大臣。
#230
○国務大臣(左藤恵君) 司法試験法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 司法試験は、近年、合格までに極めて長期間を要する状況になっており、その結果、将来の法曹となる者が大学教育から離れた後長期間の画一的な受験準備を余儀なくされ、法曹実務家としての修練を開始する時期が相当遅くなっていること、法曹となるに適した人材が司法試験の受験を敬遠する傾向にあること、法曹三者のバランスよい人材確保が困難になっていることなど、法曹の後継者を適切に確保し、養成する上で、多くの問題を生じております。
 この法律案は、このような司法試験の実情にかんがみ、多様な人材の合格可能性を損なわないように配意しつつ、法曹としての資質を有するより多くの者が比較的短期間に合格することができる試験制度にするため、司法試験法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。
 第一に、合格者の決定方法に関し、司法試験管理委員会が、司法試験における受験者の合格までに要する期間の実情その他の状況に照らして必要があると認めるときは、司法試験第二次試験論文式試験の合否決定において、司法試験管理委員会規則で定めるところにより、合格者の一部について、初めて第二次試験を受けたときから一定期間内の者から定める方法によるべきものとすることができることとしております。
 第二に、司法試験第二次試験の試験科目に関し、受験者の負担を軽減するため、論文式試験及び口述試験の試験科目のうち非法律選択科目を廃止し、その試験科目を七科目から六科目に削減することとしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#231
○委員長(矢原秀男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ─────────────
#232
○委員長(矢原秀男君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 司法試験法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#233
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#234
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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