くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第120回国会 法務委員会 第6号
平成三年四月九日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢原 秀男君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                田辺 哲夫君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                山本 富雄君
                久保田真苗君
                千葉 景子君
                八百板 正君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  左藤  恵君
   政府委員
       警察庁長官官房
       審議官      大森 義夫君
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房会
       計課長      木藤 繁夫君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省矯正局長  今岡 一容君
       法務省人権擁護
       局長       篠田 省二君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   町田  顯君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  今井  功君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   島田 仁郎君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   山田  博君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       外務省中近東ア
       フリカ局中近東
       第二課長     大木 正充君
       外務省国際連合
       局人権難民課長  角崎 利夫君
       農林水産大臣官
       房企画室長    日出 英輔君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○平成三年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成三年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成三年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (裁判所所管及び法務省所管)
○罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(矢原秀男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 去る三月二十九日、予算委員会から、本日四月九日午後の半日間、平成三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査の委嘱がありました。
 この際、本件を議題といたします。
 裁判所及び法務省関係予算につきましては、去る二月二十一日に説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○久保田真苗君 私、きょうは二つの人権問題を取り上げたいと思います。予算絡みのことですけれども、法務省では予算につきましては余り金目のものというよりは制度等の問題でございますので、そういう観点からお伺いしてまいりたいと思います。
 先日、少年法による不処分決定を受けた京都市の少年が刑事補償を求めたんですが、この刑事補償につきまして、最高裁第三小法廷が刑事補償は受けられないという決定を下したわけでございます。
 当時中学三年生であったこの少年は、平成元年二月十五日、京都市でオートバイを運転中小学生をはねて重傷を負わせ逃亡したとして京都府警に逮捕されました。家庭裁判所に送致されまして鑑別所に入れられたと思われるのですが、その後新しい加害者が名のり出たため、少年は七日間の身柄拘束後に釈放されて、その後京都家裁から非行事実は認められないと不処分を決定されたと報ぜられております。
 そこで、まず最高裁にお伺いします。
 この事件について事実関係を詳しく説明していただきたいと思います。
#4
○最高裁判所長官代理者(山田博君) お答え申し上げます。
 ただいまお話にございましたように、私どもで確かめましたところでは、平成元年の二月十五日に京都市内でバイクによるひき逃げ事故が発生しまして、その日に少年が犯人であるとして逮捕されたわけでございます。
 その翌日、十六日でございますが、勾留にかわる観護措置の請求がありまして、観護措置決定により京都少年鑑別所に収容されました。
 その後、二月の二十一日に事件が京都家裁に送致されてまいりました。業務上過失傷害、道路交通法違反保護事件という罪名でございまして、内容的にはひき逃げとバイクの無免許運転の事案でございます。
 京都家裁では即日少年に対する第一回の審判を開きまして証人の取り調べをした後、その日に少年に対する観護措置決定を取り消したわけでございます。結果的に少年は七日間の身柄拘束をされたということでございます。
#5
○久保田真苗君 御説明にありましたように、二月十六日にこの少年に対して観護措置が決定されて少年鑑別所に収容されたわけでありますけれども、二月二十一日に家庭裁判所で事件が受理され、第一回の審判が行われ、観護措置の取り消しがなされています。この少年はひき逃げ事件を認めたのでしょうか、それとも一貫して否認していたのですか、この点について伺います。
#6
○最高裁判所長官代理者(山田博君) この少年は犯行を否認していたというふうに聞いております。
#7
○久保田真苗君 三月二十八日には家裁の審判により不処分の決定がなされました。不処分の内容はいろいろあると思います。例えば非行事実がないという内容、いわば犯罪事実がなくてこれは無罪に相当するものだと思いますけれども、また微罪による不処分というのもあるかと思います。また証拠不十分による不処分もあるわけですけれども、この少年の場合、非行事実がないという不処分と報道されていますが、この点は重要なポイントだと思いますのでお答えをお願いいたします。
#8
○最高裁判所長官代理者(山田博君) 三月二十八日に審判がなされまして、不処分決定を受けたわけでございますが、この決定の趣旨は非行事実が認められないというものでございます。
#9
○久保田真苗君 非行事実が認められないという不処分であるということになりますと、少年が保護処分を受けるときには、少年及び保護者に対して保護処分の趣旨を懇切に説明し、これを十分理解させなければならないという少年審判規則があるのです。非行事実なしの不処分決定に際して、大人ほど防御能力が十分でない少年の場合に傷ついた心をいやすために十分なアフターケアが国の機関を代表する裁判官によってなされているのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
#10
○最高裁判所長官代理者(山田博君) 少年審判規則三十五条の一項は、保護処分を言い渡す場合の規定でございますけれども、不処分の場合にも当然その趣旨は生かされていると考えております。
 少年審判の手続は、申し上げるまでもなく、少年法一条によりまして少年の健全育成を図るという趣旨のものでございます。したがいまして、事件になったことが今後の健全な育成を阻害することのないようにという趣旨で、裁判官としては保護処分になる事件であれならない事件であれ、少年にふさわしい形で決定の趣旨の理解をさせ、そして必要な説明等をなしているものというふうに理解をしております。
#11
○久保田真苗君 法務省にお伺いしたいのですが、裁判官による不処分と検察官による不起訴、これは法的な性格はどういうふうに違っておりますか。
#12
○政府委員(井嶋一友君) 少年法による不処分決定の性質については、むしろ最高裁御当局が御説明になるべきかと思いますけれども、規定を御紹介いたしますと、少年法の二十三条二項という規定によって行われる処分であるというふうに私どもは理解をいたしておりまして、これは家庭裁判所が審判を開いて審理をした結果、少年を保護処分に付することができないという場合、それから少年を保護処分に付する必要がないと判断したときに行う決定であるというふうに説明されておるわけでございます。
 実際には、この大部分の場合には後で申しました少年を保護処分に付する必要がないと判断した場合に付されるのが通常のようでございまして、その場合には、結局家庭裁判所における調査や審判が行われた結果、保護的な措置により少年の要保護性が解消されたといったような判断に至ったような場合に行われるものであるというふうに説明をされておるわけでございますが、最初に御説明した保護処分に付することができないという例としては、今御紹介ございましたような非行事実が認められない場合というようなことであるというふうに説明されております。いずれにいたしましても、少年法による少年審判の手続における家庭裁判所裁判官の行う処分である、こういう法的性質があると思います。
 それに対して、お尋ねの検察官の行います不起訴処分でございますけれども、これは委員御案内のとおり、検察官は起訴、不起訴の権限を刑事訴訟法上独占をいたしておるわけでございますが、そういった観点から、刑事訴訟法では起訴便宜主義というふうに呼んでおりますけれども、検察官におきまして捜査を遂げました結果につきましても、必ず起訴しなければならないということではなくて、大幅に不起訴処分にする権限が与えられ、それによって検察官としての刑事政策的な配慮を行っておる、犯罪対策といたしまして。そういったこれは我が国の検察官にとりまして非常に重要な機能をしております処分でございます。
 この処分は、いろいろ内容的にはございますけれども、捜査をしました結果、どうしても罪とならないといったようなもの、あるいは全く嫌疑がないといったようなもの、あるいは嫌疑はないわけじゃないんだけれども、必ずしも証拠上十分でない、起訴することができないといったような処分でありますとか、あるいは鑑定しました結果、どうも責任能力がないといったようなことで起訴処分ができないというようなケース、あるいは親告罪につきまして、親告罪の告訴がないといった訴訟条件が欠缺しておる場合、その他たくさんございますけれども、そのほかに一番重要なことは、先ほど申しましたような起訴便宜主義によるいわゆる起訴猶予という処分があるわけでございまして、これが実は検察庁で行っております刑事処分のもう半分以上は起訴猶予という処分でもって刑事政策を行っておるというのが検察庁の実情でございます。
 したがいまして、結局今こうして申し上げますと、まず不処分と不起訴処分というのは根拠の規定が違います。それからまた行う主体も違います。手続も違います。目的も違います。といったようなことで、法的性格といたしましては似て非なるものと申しましょうか、とにかく全く根拠の違うかつ目的も違う処分であるというふうに理解をいたしております。
#13
○久保田真苗君 問題のこの裁判の内容なんですが、刑事補償を、この少年は身柄を拘束されたその期間に対しての補償を国に求めているわけです。したがいまして、そうした非行の事実が認められないということになりますと、これは常識で考えますと、当然国がその分を補償して一定の形を整えなければならない問題だと思うわけです。
 刑事補償法によりますと、無罪の裁判を受けた者は青年、少年を問わず抑留、拘禁による補償を受けられるということになっております。これは刑事訴訟法を通じての手続を通じる場合ですが、刑事補償法による補償は裁判所の予算から支払われるわけですね。これがまず一つの方法としてあるわけですけれども、この少年の不処分は刑事補償法の無罪の裁判には当たらないというのが今度の最高裁の決定でございまして、こういう決定がここでなされたわけです。これには各界からいろいろな御意見が既に相当出ておりまして、批判もあると思いますし、私も意見はございますけれども、今この事件として取り上げるということは申し上げないつもりでございます。
 それから、これとは別に法務省の訓令でもって被疑者補償規程というのがございますね。これは被疑者として抑留または拘禁を受けた者について不起訴にした場合、その者が罪を犯さなかったと認める十分な理由があるときは補償をすることになっています。この予算は法務省予算として計上されているわけです。
 そこで、他にもこうした少年の不処分というものがあり、その者が身柄を拘束されるということもこれまであるわけでございますから、一般的にお伺いしたいと思うんですけれども、不処分決定のうち、その者が罪を犯さなかった十分な理由があるとき、被疑者補償規程の類推適用というのは少年に対してできないものでしょうか。
#14
○政府委員(井嶋一友君) 今委員引用されました被疑者補償規程というのは、法務大臣の訓令として昭和三十二年に発効したものでございますが、御指摘のように、補償の要件といたしまして、「検察官は、被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、公訴を提起しない処分があつた場合において、その者が罪を犯さなかつたと認めるに足りる十分な事由があるときは、抑留又は拘禁による補償をするものとする。」と、こういう規定になっておりまして、この規定そのものは、先ほど御説明いたしましたように、検察官の行う不起訴処分、つまり検察官が行う公訴を提起しない処分、これについて抑留につき補償すべき事由がある場合に補償しなさいという規定でございまして、そのような立法目的でつくられた訓令でございます。事実今までそのように運用してまいっておるわけでございます。
 これは、先ほど申しましたように、起訴便宜主義といったようなことで、検察官が起訴権を独占いたしております関連において、やはり検察官が捜査をした結果、勾留をしたけれども、罪とならないあるいは嫌疑がない事実が判明したといった場合には、やはり公平の原則から補償をするのが憲法四十条の精神に照らし相当であろう、こういうことで、憲法四十条直接の規定ではございませんけれども、その趣旨を生かそうということでつくられた規定であると理解をいたしております。
 そこで、これに今のような少年審判における不処分決定事犯であり、かつ非行事実がないという理由に基づくものにつき類推適用してはいかがか、こういうことでございますけれども、お気持ちはよくわかるわけでございますけれども、法律論というか何と申しますか、先ほど申しましたように、やはり不起訴処分と不処分というのは性質が違うわけでございまして、裁判官が行われる不処分といったものを、今度は検察官がこの刑事補償法に基づいてその非行事実なしという理由も含めてある程度の審査をして、それで補償をするというようなことが許されるんだろうかということがございまして、根本的には、さっき冒頭に説明しましたように、不処分と不起訴処分というのは違いますので、どうしても類推適用という枠を乗り越えたものではないかというふうに私は考えております。したがいまして、せっかくの御指摘でございますけれども、類推適用はできないかという御質問に対しては、非常に困難である、あるいは相当でないというようなことを申し上げざるを得ないと思います。
#15
○久保田真苗君 大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、今までお聞きいただきましたように無罪の判決と不処分決定の違いというものがございまして、少年法という少年の健全育成、教育、矯正という目的を持った特別の措置が行われているわけですけれども、その特別の措置がその裏腹に持っている若干のあいまいさというものがございます。つまり、例を挙げますと、検察官の役割と裁判官の役割を一人の裁判官が行うという制度になっておりまして、そういうものの中から刑事裁判と少年審判の間に公権力によるいわゆる身柄の拘束に対する補償というものが片っ方は法律上きちんとした形で行われ、もう一方はゼロである、こういう大変な不公平があるようにどうしても私には思えるのです。私の考えでは、大人であれ少年であれ刑事訴訟法の手続によって無罪判決を受け、または嫌疑なしという検察の不起訴の場合には何らかの補償が受けられて、少年審判では実質無罪であっても補償は行われないということは余りにも不公平だと思いますが、大臣、どうお考えでしょうか。
#16
○国務大臣(左藤恵君) 今お話しのように、現行法の立場から見まして、少年審判による不処分は刑事裁判手続によります無罪とは法的な性格が少し違うのではないかということで、不処分になった少年につきまして刑事補償の対象にならないということは現行法上はやむを得ないのじゃないか、このようには考えますが、今お話がございましたように、無罪事件との比較ということになりますと、やはり論議が当然あってしかるべきような状態に今なっておると思いますので、今後少年法の改正との関係で検討していかなければならない課題ではないかと、このように考えます。
#17
○久保田真苗君 一つの検討、そして少年法の改善を考えるべき問題点だというふうに御認識をいただいていることは大変私もほっといたしますのですけれども。
 資料をいただいたのですが、資料によりますと、観護措置がとられた事件で非行がないということを理由として不処分決定がされる人数は、ここ三年間ぐらいに十九人から二十七人というふうになっております。これは比率にしますと、大体〇・一%から〇・一五%の間なんです。平成二年の一番新しいので見ますと、観護措置がとられた事件、つまり鑑別所に入った事件で一万六千七百人が記録されているのですが、そのうち不処分になったという少年が二十一人いる、こういうわけなんです。これは比率にすると少ないようにも見えますけれども、毎年十九人から二十七人程度の少年が心の傷をいやされることもなくそのまま過ぎているということでございますから、本来は非行がないという不処分がゼロであることが望ましいのですけれども、せめてこういう少年たちにはやっぱり国による補償がきちんとなされる、それはお金の多寡にかかわらず、やはりそういう手続がきちんととられるということがなければならないと思います。なぜなら、補償は国による一つの慰めでもありますし、また謝罪の意味でもあるからだと思います。ですから、決して二十人前後、三十人前後の子供の数が少ないとは申せないわけでして、人権上の問題でございますから、こういう少年たちに補償すべきだというふうに私は思うんです。
 大臣も先ほど問題点があるということはおっしゃったんですが、やはりこれは他の無罪判決の場合と同じく補償されるべきだというお考えに立っていらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。
#18
○国務大臣(左藤恵君) 確かにそういった問題点があると申しましたのは、やはり何か権衡を失するというふうなこともありますので、法的ないろんな性格の違いはありますけれども、やはりそういった意味での権衡を失するという点で検討しなければならないんじゃないか、このようなことを申し上げたわけでございます。
#19
○久保田真苗君 この件には国の責任といいますか、国と申します場合に機関が三つあるわけでございまして、それは政府であるか国会であるかあるいは裁判所であるか、そういう三権にそもそもいずれも関係があると思われるわけでございます。
 そこで、それではどこをどうしたらいいのかということなんでございますけれども、国による補償というのは一番手近なやり方では二つの方法があり得ると思うんです。その一つは、少年法の審判が裁判官による決定であるので、不処分のうち、明らかに非行事実が認められず、罪を犯していない場合には補償をする最高裁の規定をつくるという方法があるのではないかと思いますけれども、最高裁はどういうふうに解釈なさいますか。
#20
○最高裁判所長官代理者(山田博君) 仰せのとおり、最高裁判所には憲法の七十七条で規則制定権が認められているわけでございます。ただ、この対象となります事柄は限定をされておりまして、一つは訴訟に関する手続に関する事項、弁護士に関する事項、裁判所の内部規律に関する事項、それから司法事務処理に関する事項、こういう事項について規則制定権が認められているわけでございますが、仰せのような非行事実が認められないという理由で不処分になった場合の補償という問題は、訴訟に関する手続と解するのは難しゅうございますし、もちろん弁護士に関する事項、裁判所内部規律でもない。そうしますと、司法事務処理に関する事項ということに当たるかどうかというのが問題になろうかと思います。
 しかしながら、ここで規定をされております司法事務処理に関する事項というのは比較的技術的、手続的な事項でございまして、どういう場合に補償をすべきなのか、どの範囲で補償するのかというような実体的な補償の要件、範囲等に関する事項につきましては、規則制定権の対象事項には親しまない事柄ではないか、かように考えまして、私どもとしては最高裁規則で定める事項ではちょっと困難ではないだろうか、かように考えているわけでございます。
#21
○久保田真苗君 それは最高裁の規則の解釈として既に定立されているものですか。
#22
○最高裁判所長官代理者(山田博君) ただいま申し上けました考え方は、従来最高裁としてといいますよりも、一般的に最高裁規則の対象事項は何かという概念的な考え方に基づいて一応の私の考えを申し述べたわけでございます。
#23
○久保田真苗君 もう一つの方法は、法務省がこうした少年審判に対して刑事補償法または被疑者補償規程を改めるということだと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
#24
○政府委員(井嶋一友君) まず、先ほど被疑者補償規程の性質と申しますか、それにつきましては御説明いたしましたので、そちらから先に申し上げたいと思いますけれども、検察官の行います不起訴処分と家庭裁判所の行います不処分決定とがどうしても性質が違うということがございます以上、まずそれを法律的に乗り越えられない制度の違いがあるということでございます以上、やはり大臣の訓令として、検察官が守るべき訓令として定められております被疑者補償規程というものをいじって、裁判官がなさる不処分決定についてこれを取り込んで、検察官のこの規程で補償しろというような改正をいたしますのはやはり無理ではないだろうかというふうに考えております。
 それで、ちょっと先ほど類推適用すべきではないかという御質問の際に私間違ったことを申したようでございますのでちょっと訂正させていただきますが、裁判官のした不処分決定に関して検察官が補償云々するのはおかしいというときに、私は本来被疑者補償規程でと申し上げるべきところを刑事補償法でというふうに申し上げたそうでございまして、その分間違いでございますので訂正いたします。
 そこで、補償規程を改正するということは困難ではないかというふうに考えております。
 そこで、あと残りますのは刑事補償法でございます。まさに私は、これが物事の性質に対応するものとして、いわばこれを何とかする必要があるというふうに考えるのが筋じゃないかなというふうに考えております。少年審判につきましては、性質ももう既に委員よく御存じのとおりでございますけれども、いわゆる成人の刑事事件あるいは少年の刑事事件におきますその手続構造と申しますのは、御承知のとおり、刑事訴訟法によりまして検察官と弁護人が両当事者となりまして、証拠を出し合って物事の黒白を争うという手続を進行した結果、裁判官が事実を認定して有罪、無罪を決める。そして、しかもその手続は三番まで両当事者に上訴する権利が認められている。しかしその後で確定したものについては、一事不再理ということで既判力があるということ。そういうようなことで、いわゆる当事者構造と申しますけれども、当事者構造の中で確定いたしました無罪という非常に重い事実、これに対しては国として補償すべきであるというのが刑事補償法の考え方でありまして、これを性質の違う少年に関する保護処分について適用することの可否が今回最高裁で論議された。その結果、最高裁では、やはり刑事補償法の解釈ではそれは難しい、こういう御決定があったという理解でございます。
 そうしますと、結局少年審判はどういうことが行われているのかと申しますと、御案内のとおり、物事の黒白を争う手続ではございませんで、少年の非行あるいは少年の虞犯性あるいは触法少年といったような少年の保護を目的とした手続が家庭裁判所裁判官の職権的な調査権をもとにして保護処分、国親的保護処分として手続が進められるという形でございますので、全く当事者構造をとっていない。したがいまして、物事の黒白というものが両当事者が出て争うという形では行われておりませんので、大ざっぱと言ったら非常に問題がございますけれども、要するに両当事者が責任を持って主張し合った中での結果ではないという意味においては刑事手続とは違うという面がございます。かつまた、保護処分につきましては、検察官は当事者として関与できません。少年は付添人をつけることはできます。専ら少年の側からのいろんな問題はございまして、請求はできますけれども、要するに裁判官の職権的審査を受ける、こういう構造になっております。そして、かつ少年だけが抗告できる、こういう形になっております。そして、かつまたいわゆる一事不再理というものはございません。そういうようなことで考えますと、結局少年の保護処分の性質がそうである以上は刑事補償法が適用される余地はないという裁判所の決定はやむを得ないだろう、こう思うわけでございます。
 そこで、少年につきましてはどうしたらいいのかということでございますけれども、委員御案内のとおり、少年法の改正の問題といたしまして法制審議会に諮問をいたしました結果、五十二年に中間答申を得ておるわけでございますけれども、それによりますれば、要するに、少年審判手続において少年の権利関係の規定が必ずしも十分でない。それをもっときちっと整備しろという御指摘がある一方で、やはりある程度検察官にも公益の代表者という意味で関与させて、ある程度審判に協力することをさせてはどうか。あるいは特に問題になると思いますが、非行事実があるかないかというような問題のときには特にそういった意味合いが強いだろう。そして、かつまたそういうことで決まった決定については、あるいは抗告といったことも検察官に認めてもいいんじゃないかというようなことで、そういう少年に対する権利保護をもっと高める。他方、公益的な見地からもうちょっと検察官に関与させてはどうかというような、両方をもう少し取り込んだ形で改正をすれば、少年についても若干刑事手続的なものが入るわけでございますけれども、より細密なことができるのかもしれないといった意味で中間答申が出ておるわけでございます。
 そして、かつまたこの答申の中ではそういったことを受けて、少年については、不開始決定あるいは不処分決定ということじゃなくて、非行事実がなかったという決定主文をつくるようにすべきだと、こういうことも言われているわけでございます。そうしますと、そういった決定があった場合には、今度はそういう改正が行われましたら、憲法の言う無罪の裁判といったものにより類似するというか形が出てくるのではないかということでございますので、そういった意味合いにおきまして、少年法の手続を改正するという中間答申の線を何とか実現していけば、あるいは少年に関する補償といったものも可能にはなるのかなというふうに考えております。事実中間答申の理由書の中にはそういったことも書いてございます。
 私どもはそういったことを踏まえて少年法の改正を何とか実現いたしたいと考えておりますが、こういう機会でございますから、さらにその検討を深めてまいりたい、このように思っているわけでございます。
#25
○久保田真苗君 少年法の改正につきましては、いろいろ御論議が世上あると思います。また、その中でしかできないということでございますと、そうしたことが実現されるかもしれないというのは、一体スケジュールはどういうふうになっているのか伺いたいと思います。
#26
○政府委員(井嶋一友君) 五十二年の中間答申に関しましては、若干各界に異論があることは事実でございますので今日まで時間がかかっておりますのと、それから当時の少年犯罪のあるいは少年非行の状況と最近は著しく変わってまいりましたということもございまして、当時、いわゆるアオネンと申しておりますけれども、青年、十八歳以上の少年の凶悪犯罪が非常に多発したときの改正諮問でございましたから、そういった状況と比べますと大分変わってまっておるということもございまして、大分といいますか著しく変わっておりますので、したがいまして、現在のような少年非行のあり方に対して少年法をどのように改正するかというのは実はひとつ新しい問題として考えなければいかぬのかなということも考えるわけでございます。いずれにいたしましても、中間答申の線につきましてはそういった前提も変わってきておることと、検察官関与といったような部分で若干異論があるというようなこともございまして作業が進捗いたしておりません。
 今回最高裁で補償という観点から、少年法、少年審判手続の問題が提起されたわけでございますので、そういった意味で、ひとつ新たな気持ちでこの問題を検討しないといかぬのかなと、私はこの前の裁判所の結果を見た上で考えたわけでございますが、ここでまだ今現在スケジュールといったようなものを申し上げる段階ではございませんけれども、私の気持ちといたしましては、できるだけ早く検討をして問題を解決せぬといかぬのかなと思っておるわけでございます。
#27
○久保田真苗君 少年法の改正については大きな論議が巻き起こるだろうと思います。私は、それまでの間にでも、ほかにも類似の少年が拘置されて不処分というケースがございますので、何とかそれをこの世の中の常識というものに照らしてこれを補償していただくわけにはいかないかと思うわけなんですけれども、先ほどおっしゃいましたような幾つかの方法というものはそれなりの適用の実績があるということなんでしょうけれども、私は、これは何年も何年も待たせるというのではなくて、やっぱりどこかに一つの、何といいますか、役所なり裁判所なりそういったところでの柔軟な適用というものによって解決できる、このことが補償されるということを願っているわけでございます。
 さらにお尋ねしたいと思いますのは、少年法の改正というようなものが審議会でも取り上げられているということになりますと、やはりここで子供の権利条約というのがクローズアップされてまいります。政府は早ければこの国会でと言っていらしたんですね。遅くも次の通常国会までには子供の権利条約を国会に提出して批准に至るというふうなことを答弁しておられたと思うんですが、法務省所管の法律でこの条約批准に伴って改正を検討しなければならないという法律があるならば、この際教えておいていただきたい、こう思います。
#28
○政府委員(堀田力君) この条約の早期批准に向けまして鋭意努力いたしておるわけでございまして、ただ非常に骨太な条文でございますので、技術的な点で抵触するのかどうか、そういう問題点が幾つかございました。それぞれにつきまして所管の法務省各局、外務省と協力いたしまして詰めてまいりました結果、現在ではそれぞれの問題点について法改正までは必要はないというところまでの結論は得ております。そういう状況でございます。
#29
○久保田真苗君 それでは次に、難民の問題について伺いたいと思います。
 難民の問題が大変クローズアップされて関心を集めています。それはイラク北部のクルド人難民の問題ですが、政府に攻撃を受け、あるいは攻撃を恐れて大量にイラン、トルコの国境を越えて避難しているということを聞いております。これは四月五日夕方の国連安全保障理事会でもこうしたクルド人の抑圧というものが平和それから安全保障の面から非常に問題であると非難されて、そしてクルド人自治区への抑圧を中止するようにという決議が採択されましたですね。この難民が受けているいろんな苦難とか、それからどのくらいの人がイラン、トルコに流入しているのかにつきまして、場合によっては百万を超えたりあるいは千人単位であったりいろいろな報道がありますけれども、非常に大量の人が国境へ押し寄せてきて、せっかく停戦決議がイラクに受け入れられて停戦だとなってほっとしたのもつかの間、まさに紛争中よりもさらにひどい大量の難民問題が発生していると見られるわけです。
 そこで外務省に伺いますが、国境内外の避難民数とか、どんな攻撃を受けているかとか、死傷の状況はどうかとか、それから緊急援助はどんなふうに必要とされているかとか、そういったことについて把握していらっしゃる一番新しい事実をお聞かせいただきたいと思います。
#30
○説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。
 四月七日現在、イラン外務省の報道によれば、約七十万人のクルド人を中心とする避難民がイラン国境へ流入したということでございます。他方、トルコにつきましては、トルコ外務省の発表によれば、トルコに流入したクルド人避難民数は約一万一千人でございます。さらに、国境付近に二十五万人以上がトルコ入りの機会をうかがっておる状況というふうに承知しております。
 また、イラン及びトルコ両国とイラクとの国境地帯におきましては、地雷が敷設されていたり、イラク政府軍によります爆撃によって負傷者が出たり、山岳地帯であるために飢えと寒さのために死亡者が出ているというような報道にも接しております。
 どういう物資が必要かということにつきましては、国連方面からの情報によれば、食糧、テント、毛布、医薬品等でございます。
#31
○久保田真苗君 それで、トルコは一時もう受け入れられないから国境を閉鎖するということが言われて、そしてまたその後開かざるを得なかったというようなことも聞いていますし、イランが、余りたくさん入ってきたので、もうこれ以上受け入れることは不可能だ、それだけの準備、態勢がないと言っているということですが、国境の状況は今どうなっておりますでしょうか。
#32
○説明員(角崎利夫君) 国境の状況につきましては、刻々状況が変わっておりますので、必ずしも現時点でということにつきましては正しいかどうかわかりませんが、我々が得ております最新の情報によれば、トルコはまだ完全には国境は開いておりません。イランにつきましては、七十万の大量の避難民が数日のうちに入ってきたことからわかるように、開かれていたというふうに判断されます。
#33
○久保田真苗君 これは難民高等弁務官事務所の日本駐在事務所からちょっと伺った話なんですけれども、二、三週間前にイラクにフランスの国境なき医師団が入って、クルド難民に同行してずっとその様子を目撃していったけれども、その方たちの送ってきている情報によれば、政府の攻撃にナパーム弾とかあるいは細菌弾なども使われていると見られるという、そういう情報があるんですが、外務省の方はこの辺のことを把握しておられますでしょうか。事実はどうでしょうか。
#34
○説明員(角崎利夫君) そのような報道があるということは承知しておりますが、事実の確認までには至っておりません。
#35
○久保田真苗君 それで、事実の確認といいますか、政府としては、ベーカー長官がトルコ国境を視察しておられますね、あそこはいらしたけれども、しかしイランの方にはなかなか難しい、そういう状況なんです。情報は聞いているけれども確認には至らないということなんですけれども、たしかアメリカからの要請もあって、中山外務大臣がイランに行かれるというお話を伺っておりますが、イランにはいつおいでになることになっていましたでしょうか。
#36
○説明員(大木正充君) お答えいたします。
 イランと日本との関係は伝統的に友好的な関係がございまして、これまでもイラン側からぜひ外務大臣にイランへ来てほしいという話もございまして、我々はなるべく早く中山大臣にイランへ行っていただくべく準備しておりますが、現在のところ最終的日程は確定しておりません。
#37
○久保田真苗君 アメリカが行かれないということであれば、まさに友好関係を保ってきた日本の外務省がイラン国境のこの七十万もあると言われるすごい難民問題を調査にいらっしゃる、早急に政府の高官を送って調査するという予定はあるんですか。
#38
○説明員(大木正充君) お答えいたします。
 イラクからトルコ及びイランへ流出しているクルド人を中心とする避難民の支援の問題というのは、国際的にも大切な問題と認識しておりまして、我が政府としてもトルコ、イラン政府、それからUNDRO等の関係国際機関の対応を踏まえつつできるだけの支援を行う所存であります。その関連で、関係国とも話をしておりまして、関係国の感触をも踏まえつつ、御指摘のイラン国境への視察等も含め、何ができるか検討していくという所存でございます。
#39
○久保田真苗君 大体難民高等弁務官事務所、UNDRO等からの要請ももうはっきり入っていると思うんですよ。それの中身はどうなっているんですか。
#40
○説明員(角崎利夫君) 御指摘のとおり、四月五日にUNDROを中心とします関係の人道国際機関会合がジュネーブで開催されまして、これらクルド人を中心とします避難民に国連機関としても全力を尽くして救済の手を差し伸べるということが確認されました。国連機関はUNDROを通じて避難民救済のために一億三千七百万ドルのアピールを発表いたし、各国政府に資金協力を要請したところでございます。
#41
○久保田真苗君 それで、日本政府の対応と、それから今までにそういう対応を発表した主要国の救援、そういったものについての報告をお願いします。
#42
○説明員(角崎利夫君) 五日のUNDROからの要請を受けまして、政府としましては六日に、クルド人を中心とする避難民救済のために、とりあえず一千万ドルの資金協力を実施することを決定したところでございます。
 他の主要国の資金協力ぶりでございますが、ECが約六百十万ドル、英国が約三千七百万ドル、米国が一千万ドルを上限として緊急難民援助基金の使用を許可したということでございます。
#43
○久保田真苗君 新聞の報道によりますと、UNDROに既に拠出したもののうち一千万ドルをクルドに充てる、そしてそのほかに二百万ドル出すというふうに読めたんですけれども、それは違っているんでしょうか。
#44
○説明員(角崎利夫君) 六日の日に決定いたしました一千万ドルにつきましては、UNDROに既に出しております三千八百万ドルのうちの留保分の中から回すということでございます。新聞等で報じられておりました二百万ドルということにつきましては、政府としては承知いたしておりません。
#45
○久保田真苗君 なるほど。そうすると、今回改めて出すお金はまだ何もないということなんですね。だけれども、これは今まで紛争中に約四十万人の避難民が出ることも予想してやっていたうち、余っているというのなら、それは回すのは結構だと思うんですけれども、しかし各国が出すお金一億三千七百万ドル本体として出していくものに対して足りているのかどうかということはわかっていますか。
 それからさっき私がお伺いした、なぜイラン国境へ外務省の高官を派遣して早く実態を調べないのか。もうベーカー長官はトルコ国境で幾つもキャンプを視察しているということですよね。アメリカが行かれないのなら、なぜ日本が出さないのか。日本はイランとは他の国以上にまあまあましな関係があったと思いますので、なぜそれを早くして私たちにも報告してもらえないのか。それを早くやってもらいたいと思うし、そういう予定がないかと伺ったんだけれども、どうもそこにはお触れにならないんですが、何とかならないんでしょうか。もしいらっしゃるあれがあるんだったら、はっきり早くそういうふうに発表する方がいいに決まっているんですよ。いつまでもいつまでも決心しないような感じは大変よくないと思うんです。今の二つについてお答えいただきます。
#46
○説明員(角崎利夫君) UNDROが出しました一億三千七百万ドルのアピールに現在各国がこたえて拠出をし始めたばかりでございます。したがいまして、現時点でそのうちのどれぐらい集まるかにつきまして推測することは困難かと思います。日本政府といたしましても、今後現地のニーズでございますとか、避難民の発生状況、関係政府、関係国際機関からの要請等を踏まえまして追加的な支援についても検討してまいりたいというふうに考えております。
#47
○説明員(大木正充君) 今お話がありました二つ目の点についてお答えいたします。
 イラン側との間では今回のクルド避難民の問題について話し合いをしておりまして、イラン側からは八日に食糧とか医薬品、それから毛布、テント等が必要だという要請がありましたので、我が方としてもこの要請に前向きに対応を検討しておるところでございます。そして、この関連でいかなる人が行けるかということについても、今前向きに検討しているところでございます。
#48
○久保田真苗君 検討という言葉が当てはまる問題と当てはまらない問題とあるんですよね。だから、私はもう即刻行っていただきたいと思うんです。何しろ今まで予想していなかったような大量流出がどうもあるらしい、そしてその状態も死者なども出て相当悲惨なものであるらしいということから、やっぱりアジアの国として一刻も早く駆けつけるのが筋だと思うんですね。よろしくお願いします。
 大臣にここでお伺いしたいのですけれども、これの人権問題の方から法務省にもう一つ肩入れをお願いできないかということなんですね。もちろん、外務省はいろいろな窓口あるいは外交のラインとして真っ先に活動すべきなんですけれども、しかし外務省にすべての専門家がいらっしゃるわけでもないし、実質的な仕事はすべて他の官庁がやっていると言っても過言ではないわけですから、人権とか人道上の問題についてはぜひとも法務省の肩入れをお願いしたいというのが私のこれを取り上げた理由なんです。
 それで、その中でも幾つかの問題がありますので大臣のお考えを伺ってみたいと思うんですが、安全保障理事会の中で、クルド難民の問題に触れることは、あれはイラクの住民なんだから内政干渉になるんだという意見もあったやに伺うんです。しかし、確かにイラクの住民であるかもしれないけれども、事態がこういうふうに大きくなってまいりまして、あの決議は多数で採択されたわけです。これは大量の難民問題、避難民問題というのが、ただ国境を接しているということでその隣々の国、トルコ、イランといったような国にどうっと流れ込んで、それはまあ大変なパニックだと思います、受け入れなければならない方は。そして難民条約、議定書等もあることであり、それをむげに拒否するということもまた国際世論の糾弾を浴びるもとになるわけでございます。しかし、こういう難民を受け入れざるを得ない隣の国というのは、まさに金持ち国というよりは途上国に類するところが多うございまして、それだけでも地域に大きな不安定がもたらされるわけです。
 それで、ただ内政干渉といって国連が手をこまねいているというわけにはもはやいかなくなったのではないかというふうに私は思うわけです。それで、緊急の援助はもちろんでございます。難民高等弁務官に日本の緒方先生も就任されましたことでございますし、そうした直接の救援をやっていくということはもちろんなんですけれども、そのほかに難民を大量に発生させている原因となっているいろんな迫害、抑圧、それから武力行使、そういったものをとめる方法が人権上非常に重要だと思うわけです。
 こうした地域紛争の問題、そこから起こってくる難民の問題について、法務大臣としてはどんなふうなお心を持っておられるか、お聞かせください。
#49
○国務大臣(左藤恵君) お話しのような地域紛争解決という問題が今非常に大きな国際的な問題になっている。新しい秩序形成を目指して国連それから関係諸国皆努力をしておられるわけでありますが、日本としてもそうした国際的な問題として、第一線的には外務省等がやはり考えていただかなければならない問題でありますけれども、法務省といたしましては難民条約というものがあるわけでありまして、難民条約を批准しております立場というのは、やはり国際協調と人権の尊重という問題ではないか、こう考えます。
 そういう観点から、こうした問題につきまして外務省がいろいろやられますときに、法務省としても密接に連携をとって、こうしたものの解決について積極的にお役に立つように努力をしていかなければならないのじゃないか、このように考えておるところでございます。
#50
○久保田真苗君 積極的にお取り組みいただけるのでございますけれども、これはクルド難民に限らない問題だと思います。今世界には地域紛争が百三十以上とも百五十とも言われるんですけれども非常にふえてまいりまして、その最終の結果だれが一番つらいところを受けるかというと、やはり難民問題が非常に大きいと思うんですね。それが大きな後遺症になって後々まで不安定をもたらしているということも事実だと思うんです。東西の冷戦というのはやっと終結したというところへ来ているわけですけれども、既に重点は地域紛争に移ってきていると見られて、その中でブッシュさんも言われたような新秩序、新しい世界秩序が模索されてきている非常に大事な場面だと思うんですね。
 私、この難民問題というのはもはや個別の国の対応できる限界がはっきり見えてきている問題だと思います。そして、例えばインドシナ難民につきましても、戦乱で追われてきた難民を近隣国が受け入れるについてはやっぱりバードンシェアリングだということが言われて、バードンシェアリングをやるから受け入れてくださいよというお話でやっとあの近隣のタイとかインドシナの周辺国が受け入れたということもございまして、まさにこれはバードンシェアリングなんでございますけれども、それを仲介していくあるいはそれを調整していくような国連とかそれから人道的な国際機関ですね、赤十字、IOM、移民機関とかいったようなところも次から次へ起こってくる問題で非常に対症療法に追われております。難民条約や議定書があるんですけれども、その権限もそれから人員も財政も余りにも限られているんですね。
 それで、私はこの地域紛争を見る場合に、今度停戦になりました、賠償です、それから軍備の制限です、そしてフセインはそのまま政権にあって無事でございますと、これで終わって、そして難民の方はこれから長く苦しむという、このまことに不合理な状態を考えますと、やっぱり地域紛争、こういったもののあり方を、従来の国際法上のいろいろな人道的な諸要請、それに加えてぜひ難民の問題、その人道的な、人権的な問題をひとつ取り上げていただいて、もともとその役目を持っていらっしゃるのが法務省ですから、何か新しい政策の中で国際協力にかかわる例えば人権オブザーバーといったような、難民キャンプで人権の監視をするといったような、そういったことも考えられていいのではないか。これは私が何も発明したわけじゃございませんで、既にカンボジアの和平提案につきまして常任理事国が持ち出している案の中にはそういった人権モニターのようた役割もあるというふうに伺っているのでございます。
 そうしますと、これはまさにアジアの近間の問題でございます。またクルド難民につきましても、実に人権の見地からそれを見張って世界に報道していくというそういう役割、国際世論によってそういう残虐行為を未然に防いでいくというそういう役割、そういう役割をぜひやっていただきたいと思いますので、私は外務省にはそういう提案を強く支持し、また日本からもいい知恵を提案していただきたいと思うし、だけど実際にそういうことに当たっていただくのは法務省だと思うので、法務省からもそれを強くバックアップしてひとつ人権擁護制度を紛争地へ輸出していくというような、そういう新政策が立てられないか、大臣の御所感を伺ってみたいと思います。
#51
○国務大臣(左藤恵君) 大変大事な問題でありますし、そしてまた今国連におきます、地球といいますか全世界的に一番そうした解決を急がなければならない問題の一つが難民問題であろうと思いますので、そうした見地から法務省も、外務省と連絡はとらなければなりませんけれども、そういうことについて積極的に私は対処していくべきものであろう、考えていかなければならない問題である、このように思います。
#52
○久保田真苗君 よろしくお願いしまして、次に日本の難民問題、ボートピープル等について伺っていきたいと思います。主として法務省への御質問になるかと思います。
 ここ三年間の我が国への難民の流入状況について御説明いただきたいと思うんです。特にひところ大変大騒ぎになりましたボートピープル、それから海外キャンプでの滞在者、それから留学生等から申請をする者、そういったいろんな種類があると思いますけれども、その状況と、それからボートピープルのうちひところ大分報道されました偽装難民というのがあるようで、その数についても明らかにしていただきたいと思います。
#53
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から最近三年間の状況についてのお尋ねがございましたので、最近三年間のことについて御報告を申し上げてみますと、まず基本的に今御指摘になりました難民の流入状況というものは、日本の場合にはインドシナ難民がボートピープルとして日本に来られるという形が一番多いという状況がございます。これについて見させていただきますと、最近三年間、すなわち昭和六十三年、それから平成元年、平成二年、この三年間を合計いたしましてボートピープルとして日本に到着をした人の数は四千九十一名という数になっております。ただ、これはただいま委員御指摘のとおり、平成元年にこのボートピープルの中に中国からインドシナ難民であるということを称して日本に到着した人たちが非常に多くの数含まれておりまして、この方たちについて、これを我々仮にいわゆる偽装難民と言っておりますが、こういう人たちが、ただいまの三年間の四千九十一名到着したボートピープルの中で、私どもの調査では二千八百四十四名の方がいわゆる偽装難民に当たる、こういうふうに判断をしているところでございます。
 他方、日本でインドシナ難民として、ボートピープルとして到着された方々、さらにはボートピープルとして既に日本に到着されている方々の近親者等が海外のキャンプで滞在をしておる、こういう方たちについても日本は日本での定住の道を開いているわけでございます。そこで、最近の三年間でボートピープルと、それからボートピープルで既に日本に入ってきておられる方々の近親者として海外のキャンプで滞在している方々等を受け入れてきた、それを日本で定住をしていただくということで定住の形で受け入れてきた数が、先ほどの昭和六十三年から平成二年にかけての三年間で見てみますと、千六百九十五名の方を日本での定住者として受け入れているということになります。
 それを年別に見てみますと、昭和六十三年で五百名、そのうち海外キャンプから受け入れた方が百九十三名、平成元年で定住者として受け入れた方が四百六十一名、うち海外キャンプから受け入れた方が百九十四名、それから平成二年で定住を受け入れた方が七百三十四名で、うち海外のキャンプから受け入れた方が三百二十一名、このぐらいの割合になっております。
 それから、元留学生の御指摘もございましたのですが、インドシナにおける政変前の状況で日本に入っておられた留学生の方がそのまま日本に定住されたというケースが確かにございまして、その数は以前には七百四十二名ぐらいの方がおられたわけでございますが、最近はこういうカテゴリーの方々はおられません。大体そういう状況になっております。
#54
○久保田真苗君 ひところボートピープルが海賊にやられたり、また婦女暴行といったような大変悲惨な被害を受けたということを聞いたんですが、最近はそういう情報はなくなりましたですか。
#55
○政府委員(股野景親君) インドシナからのボートピープルにつきまして、国際的にこの方たちの問題を、これはベトナム等のインドシナの国も含めて適切な解決策を見出す努力が必要であるということから、平成元年にジュネーブでこの問題についての国際会議が開かれた経緯がございました。そのときに、包括行動計画というもので全体的にこの問題に対処しようということがございました。ちょうどその開かれておりました年にはかなりの数のインドシナからのボートピープルの流出があったわけでございますが、その後流出の数はかなり減少傾向に向かっております。
 ただいま委員御指摘のとおり、この方たちが大変御難儀な目に遭っておられて、そしてボートで脱出する途中でいろいろな苦難があるということは我々も聞いているところでございますが、そういう状況というのはまだなくなったとは言えないであろうかと思いますが、全体としてのボートピープルが流出する数が減っている方向にありますので、その中ではそういう不幸な事件という数もおのずと減っている傾向にあろうかと思います。
#56
○久保田真苗君 偽装難民の引き取り問題について中国と随分御折衝になりましたですね。それで、最後に残ってしまったのがベトナム国籍を持っていて中国の中に住んでいたと認められるいわゆる華僑農場にいた人の問題で、これがなかなか長く交渉されたんですけれども、そのお話し合いというのは結局完全に話がついたんでしょうか。どうなっていますでしょうか。
#57
○説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。
 いわゆる偽装難民二千八百四十四名につきましては、中国への送還につき鋭意外交的な努力を行いました結果、これまで五回にわたりまして千七百七十八名の送還の実現を見ましたが、先生御指摘のとおり、なお一千余名を大村入国者収容所において収容しておるところでございます。これら一千余名につきまして中国政府との交渉を経まして本年の一月末に、既に中国に定住していたインドシナ難民に該当すると認められた者を中国が引き取るということで基本的に決着を見ました。今回、決着に基づきまして中国側と協力しつつ未送還者の大部分の引き取りが行われるように取り計らう考えでございます。
#58
○久保田真苗君 ベトナム難民と認められた約百人分は日本が引き取るというお話じゃなかったんですか。それは条約難民として、いわゆるステータスのある難民として引き取られたのかどうか。
#59
○政府委員(股野景親君) 今外務省側からこの点について中国側とのお話し合いの状況を御説明申し上げましたが、この具体的な数については現在まだ中国側とのお話し合いが進んでいる段階でございます。したがって、どういう数になるのかという点についてなお折衝がありますので、その数についてはまだ決まっていない点がございます。この方たちが仮にどういう状況になるかまだはっきり予測ができないわけでございますが、少なくとも今の状況では、中国側がインドシナから中国に移ってきた人たちであると言っている人たちについて、いわゆる難民というような状況、つまり難民条約にいう難民でございますね、という状況が今まだ問題として提起されているところには至っておりません。
 そこで、基本的にはまず中国側とのお話し合いをまとめた上で、そのお話し合いの結果を見てまた日本側としての対応ぶりを考えるということにさせていただくことにしております。
#60
○久保田真苗君 もう少しどういう条件なら条約難民としてというふうに言っていらっしゃるのか伺いたいんですけれども、ちょっと先を急ぎますので、それはまた教えてください。
 法務省の予算なんですけれども、この出入国管理業務の予算が去年と比較して二億六百万円減額になっております。これは難民が少なくなったということのようなんですが、難民関係の予算は実質的には約十七億三千万円の増だということなので、そうだとすると、難民関係の予算は昨年に比べて二十億円ぐらい減ということになるんですか。
 だけれども、大村収容所、一時レセプションセンターですね、あそこでは大分待遇がひどいということも言われておりまして、例えば建物が簡易プレハブで夏は暑く冬は寒い、あるいは運動場や娯楽設備がないとか、それから食事がお弁当屋さんの差し入れで非常に冷たいとか、そういうことがよく言われております。もともと法務省の予算は少ない予算なんでして、その予算をそのときそのときで減額してしまうというよりは、やっぱり待遇改善――非常に大変な事情で来られて、一時収容所ですからずっといらっしゃるわけではないけれども、しかしそこでの生活が人間に値する、そして日本に悪くない印象も持ち得るという、そういう待遇向上を図ったらどんなものかと思うんですけれども、予算の実態と、それから減額のかわりに少しでもそのひどい施設をよくするというところへ使えないものかどうか、伺いたいと思います。
#61
○政府委員(股野景親君) 難民関係の予算につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、いわゆる偽装難民関係の予算が含まれておりまして、この偽装難民問題が一番深刻になりましたのが平成元年でございます。そして、中国側との折衝を経て平成二年に五回にわたっての送還ということがございまして、その間にこれらの方々を大村で収容していくというための一時的な措置をとる必要がございました。そこでその数がかなりの規模に上りました関係上、平成二年の予算というものは人数的に大きな規模になりましたので、その分が大きな比重を占めておった。それが平成二年じゅうにただいま申し上げましたようにかなりの方が送還をされましたので、その分、量的な点での当然のことながら予算が減るということがあったわけでございますので、それは一時的に非常に額が多かったものがその後の正常化に伴ってそこは予算がおのずと必要な額に改められたということでございます。
 他方、今委員御指摘の、それでは大村における収容状況というものを少しでも改善することに努力をすべきであろうという御指摘は、これは我々もまさにその点を十分念頭に置いて対処させていただいているところでございます。何分にも送還を間近に控えたという一時的な滞在者でおられますので、恒久的な施設をつくるということにはおのずと問題がございますのですが、しかし、暫定的な施設であっても、その中でできるだけのことはしなければいけない。特に健康、医療面についての配慮ということはきちんと尽くさなければいけませんし、また収容、滞在がある程度続きますとおのずと精神的な負担というものも出てまいりますので、その面からの対応ということも考えなければいけない。こういう点については、それなりに予算面で関係当局から配慮をいただいているところでございますが、ただいま委員御指摘の点は、今後についても十分念頭に置いて対処をさせていただきたいと存じております。
#62
○久保田真苗君 難民の認定手続なんですけれども、いろいろ本などを読みますと、日本の認定手続はどうも厳し過ぎるのではないかというような批判があります。これは欧米主要国と比較して厳格過ぎるのではないかということがあるんですが、やっぱり日本の受け入れている数は知れたものでして、枠が一万人、その枠いっぱいにまでまだいっていないというような状況は、数が少ないだけに厳し過ぎるというような批判があることもまた問題ではないかと思うわけです。
 そういたしますと、現在見ますところの認定者の数の二・五倍に上る不認定者、こんなにもある。そして入管難民認定法を見ますと、やはり難民であるといういろんな条件の立証責任が本人にあるんだろうと思います。そうしますと、難民として逃れてくるような人に証拠をもってその立証をせよということは非常に現実に即さないやり方ではないかと思うんですけれども、認定の実施状況についてどういう考えでやっていらっしゃるのか、厳し過ぎるんじゃないかという批判にどうこたえられるかおっしゃってください。
#63
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘の問題については二つの側面があると思います。
 第一には、先生がただいま御指摘になりました一万人という定住枠につきましては、これはインドシナから来られる方々、いわゆるインドシナ難民の日本における定住受け入れについて日本政府として設定した一つの受け入れの計画でございます。これは現在まだ一万人に達していないという意味で、今後まだ受け入れを行うという余地があるわけでございます。これはまたそれぞれこの問題につきまして、かつてこの問題について行われました国際連合の決議以来日本政府がとっております累次の措置に基づいて受け入れを引き続きこれは行っていくという点での努力をいたしておりまして、この面では日本も日本なりの一つの貢献をやはりいたしておると考えております。
 他方、もう一つの側面は、いわゆる難民条約に基づいて認定をするところの難民、通常政治難民と言われる方々の問題でございまして、委員御指摘の点は、日本が難民条約に加盟してから申請があった場合に、認定を受けた人の数と不認定となった人の数を見てみると、不認定となった人の数が多い、認定となった数につきましてもかなり小さい数ではないか、こういう御指摘であろうかと思います。
 私ども今までこの問題については、基本的にこれは難民条約の適用の問題としてとらえております。
 いわゆる出入国管理及び難民認定法で定められております手続も難民条約に基づく内容を日本の法律に書き込んだ内容でございます。その適用の仕方を見ますと、これは確かに数という点で見れば、相対的に申請者が世界のほかの地域に比べれば日本で難民認定申請を行う方が数が少ないということも一つ背景にあろうかと思いますが、手続そのものにつきましては、これは難民条約に基づいた現在の出入国管理及び難民認定法の運用に当たっては適正に行っておると考えておるところでございまして、その段取りそれからその過程の中でのいろいろな調査が必要になってまいります。
 委員御指摘のとおり、御本人からいろいろ御説明を伺う必要がございますが、他方当局としましても、これは我が国の例えば在外公館に協力を依頼しまして、申請者が言われるような迫害の状況が本当にその方の本国であるのかという点をやはり綿密に調べさせていただいておりますし、また必ずしも御自分で十分に資料を持っておられないということも当然あるわけでございますので、その場合にはそれを補完するようなものを我々なりに当局の側で調査させていただくということも手だてを尽くしているわけでございます。
 そういう意味で、ほかの諸国に比べて我が国の認定の手続が特に厳しいということはないと考えておりますが、今後とも十分な判断ということに必要な手続ということは、これはぜひしなければならない。そういう意味において、難民認定手続というものを入管局としても、法務省としても非常に重視しておるということでございます。
#64
○久保田真苗君 認定の公正さというためにも一つ改めた方がいいと思うことがあるんですね。それは法務大臣が大変認定権、一切の裁量権をお持ちでして、そのことは結構なんでございますけれども、初めの認定ではねられる、だめだと。そのときに再審ができるわけですね。もう一回審査をお願いできる。そのときの取り扱い部局も同じ法務省の入管局で、そして決定者は二度とも法務大臣というふうになるんですね。これはやっぱり批判されるところだと思うんです。
 なぜなら、一つの役所がだめだと言ったことに対してもう一回アピールをして控訴をしていく。そのときに、また同じところがやって同じ大臣が判こを押す、こういうことですと再審というものの意義が疑われるわけですね。大体諸外国でもその辺を分けているところも多いわけですし、日本の場合も初めに一時庇護のために入国を許可する、入れるかどうかというその段階で入国審査官がそれをおやりになる。その段階ではHCRの駐在事務所の係官がそこへ一緒に立ち会うと聞いているんですね。
 私一つ伺いたいのは、そのHCRの方の意見というものが法務省の見解と違ったときに十分尊重されて取り入れられているのかということが一つなんです。
 もう一つは、これは認定の場合には立ち会いはまだ認められていないんですね。だけれども、認定のどこかの段階で、初めの段階でか再審の段階でかどっちかでそういったHCRのような第三者を入れて公正さを期するというふうに少し制度をまともなものにできないものか、その二つの点をお伺いしたいと思います。
#65
○政府委員(股野景親君) ただいまの申請の手続とそれから異議申し立ての手続につきまして、最終的には法務大臣の御判断があるということは事実でございますが、他方、その二つの手続を法務省内で取り扱う場合にはこれは二つ完全に分けておりまして、担当する人間、担当する部署というものも分けておりまして、別々の手続で行い、それによって異議申し立てについての手続が最初の申請の手続とは別個の手続として別個の人間によって判断をしていくという手続をとっております。そういう点での異議申し立てについての公平性ということに我々として十分留意をいたしておるわけでございますが、なお御指摘のような点について、その手続の運用に当たってはいろいろやはり我々なりに十分考えていかなきゃならぬ点はあろうかと思います。
 それから、もう一つのUNHCRとの関係でございますが、このUNHCRは我々にとっても大変大事な協力機関でございまして、まず難民認定の手続につきまして、当然のことながらUNHCRには長年の経験がございますので、法務省入国管理局といたしましても、随時UNHCR側のエキスパートとの意見交換、情報交換という機会を持ちまして、日本の法務省が行う難民認定手続というものが国際的な一つの標準あるいは一般的な慣行というものと十分歩調の合ったものにするということに常々心がけております。また、個別の申請につきましては、その都度UNHCRにそういう問題があるという点は通報をいたしまして、そしてその点でUNHCR側にも問題の所在を知ってもらっているわけでございます。
 個々の申請手続について、立ち会いということはこれは我々は現在そのところまではまだしていないということはございますが、しかしながら、先ほど申し上げましたようないろいろな判断基準あるいは関連する情報ということについては、UNHCR側と緊密な連絡を取りながら、我々の判断の中にそういうものが、つまりUNHCR側の判断なり経験なりというものが十分取り入れられるように配慮しているところでございます。
 別途スクリーニングの制度について、いわゆるボートピープルが日本に来ました場合にこれを新しくスクリーニングをして難民性の判定についてより慎重に行うということを平成元年の九月から始めているわけでございますが、これについてはUNHCR側の実際のスクリーニングプロセスの中に参加をいただいておりまして、そういう意味でのUNHCR側の参加も我々のいろいろな手続の中には既にいただいているところでございます。そういう意味で、UNHCRは非常に大事な機関と思っております。今後も我々としてさらに研究すべき点があれば、これは引き続き我々としての検討課題として考えてまいりたいと存じます。
#66
○久保田真苗君 じゃ、一言だけ。
 違う人がやっています、あるいは違う部署がやっています、これは何にも制度上あらわれていないんですよ。だから、全く同じところがやっていると見られても仕方がないんです。もっと目に見えるような形で初審、再審、それが客観的に非常に公正な立場にあるということを制度上はっきりした方がいいと思うんですね。これから難民問題はますます重要になってくるというときに、やっぱり私は外国の人から日本の制度はちょっとおかしいと言われない方がいいと思うんです。ですから、それは目に見える形で違う責任者が担当しているんだということがはっきりするようにぜひお願いいたします。
#67
○中西一郎君 約三十分時間をいただいておるのでございますが、法律と事実というものの関係がうまく適合しておる必要があると思うんですが、そんなことを念頭に置きながら、幾つか問題提起でもあり、また疑問を開陳してみたいと思うんです。
 一つは当法務委員会、いろいろ議論がこれからも行われるでしょうが、現在、拘禁二法を提案されておるんですけれども、数年かかってまだらちが明かないという現状のままで、八十年前の、もっと前ですか、明治四十一年制定の法律が生きている。それで実態に合っていない。そこで私法務委員ではあるんですけれども、見ていますと片っ方に権力側というのがあって、片っ方に非権力側というのがありまして、何か相当距離がありましてお互いににらみ合っていて、言いたいことはお互いに言っているんですけれども、歩み寄りというのがなかなかできない。衆議院は自民党多数なんだろうから何か場合によってはすっと通ってくるのかとも思いますけれども、こっちへ来るとねじれているんですからね。そこで、現行法のままでずっと後までいっていいんだろうか。
 具体的に申し上げますが、看守さんがつかないで外へ出ていって勤務ができるとか外泊ができるとか新しいことも入っているらしい。そのほか書籍の問題、新聞の問題、宗教上の礼拝ですか、面会とか手紙の問題、いろんな面で改善点が考えられている。人権擁護ということで大分そっちの方へ近づいている。
 ところが、片っ方は、具体的に言うとおかしいんですが、日弁連、これ新聞に出ていますから申し上げるんですけれども、何かこういうことが書いてあるんですね。これから十年以内に警察留置場を被勾留者を収容する施設に代用する制度、代用監獄ですか、これをやめてしまえ、こういう話です。今ある小菅なら小菅をどうするんでしょうか、もっと東京の真ん中へ持ってこいというのかもしれません。それから、ここのところがまた疑問なんですが、刑事訴訟法の十日とか二十日とかいう期限がございますね。これもどうするのか私わかりませんが、今の警察の拘置所を使わないで刑事施設に入れてしまって、そこへ検事さんが通うんでしょうかね。時間もかかるし、十日や二十日ではらちが明かない。三月も四月もおってもらう。おる方にしますと、片っ方では十日、二十日で済んだのが、今度は三月、四月かかっちゃうというようなことにもなりかねない。一体どっちがいいんだという問題もあります。
 そういうことを考えますと、両方に対峙しているんでなしに、中にだれが入るのか知りません。きょうは私自民党の政審会長にもこのことをちょっと相談してきたんですが、各党一緒になってもいいんですけれども、仲介役といいますか、だれかが中に入って、もう八十一年もたっているんですから、ほどほどのところで決着をつけるというような努力を、これはだれがするかということになるとまた難しいんですけれども、だれかがしないとこのままでいっちゃうと思うんですね。これもおかしい。
 これは法律新聞ですけれども、日弁連でおっしゃっていることが数項目書いてあります、一々申し上げませんが。このことは確かに政府側の案では触れていない点が大分あるんですが、十年なんて言わないで、例えば五年以内にできるだけ歩み寄って何とかしましょうというような附帯決議をつくるとか、両方とも誠意を持って努力するとか。
 今までこれ何年かかったんですか、八年か何年かかかっているんですけれども、こういうことでないことを我々が考える義務があると思うんですけれども、政府としてはどういう感触で現在おられるんでしょうか。いつごろになるのかどうかわかりませんが、どうなんですか。
#68
○政府委員(今岡一容君) この刑事施設法案は、最初に国会に提出させていただきましたのがたしか昭和五十七年でございます。今度三度目の提出をさせていただいたということになるわけです。何しろ今御指摘いただきましたように、現行監獄法は八十数年も前の法律でございまして、物の考え方といいますか基本にある考え方は、現在のような人権思想というようなものが実はまだ入っておりません。そしてまた、やはり監獄は閉鎖して社会から隔離しておくべきだというような基本的な考え方がございますから、外部との面会とか手紙のやりとりといったような問題についても、これは所長の裁量でいろいろやるというような法制になっているわけでございます。
 基本がそういう状況でございますから、現在の状態においては非常に古くてたえ切れないということで、刑事施設法案の成立を私どもは願っているわけでございますが、やはりこれに対しましていろいろ日弁連あるいは野党の方からは反対の御意見が出ております。代用監獄問題がその中心でございますけれども、そのほかにも弁護人と中の被収容者との接見交通の問題でございますとかいろいろございますし、また最近では、日弁連の方では国際準則等との関係で見てもかなり問題があるというふうな主張もなさっております。しかし、これまでの経緯を見ますと、反対される最大の問題は何かといえば代用監獄の問題ではないか。要するに、今も委員御指摘のありましたように、代用監獄の全廃ということを主張しておられるわけでございます。
 他方、私どもは法制審議会の答申を受けましてこの法案を立案しているわけでありまして、法制審議会におきましてはこの代用監獄問題については大変熱心に、しかもこれは弁護士会の代表の委員も加わった形で御審議いただきまして、廃止すべきかどうか、どういう形で運用するかという点について御審議がありました。その結果、制度的な改善を加えて存続させる、しかしやはり代用監獄を利用するという運用は漸次減少していくのだというような、いわゆる漸減条項、こういうものも出されて答申をいただいたわけでございます。
 私どもはそういう方針に沿って法案を出しているところでございますから、ぜひひとつ法制審議会で十分現実的な問題、法律的な問題も検討されて出された結論の線に沿って御理解を得たいというふうに考えております。
#69
○中西一郎君 十五時十一分までといいますので、次の問題に入りますけれども、この問題は、私法務委員を当分やらせていただけるはずなので、時々また具体的な問題も踏まえまして時間をいただきたいと思いますが、きょうはこの程度にいたしたいと思います。
 それから次は、これは法務行政と直接関係があるとは幾ら私が心臓強くても言えないんですけれども、一番初め法律と事実との関係と申し上げましたが、結論からいいますと、ペレストロイカとかベルリンの壁の崩壊とかいろいろある。自由と民主主義の勝利だ、こう言われていますが、むしろそういうような点で間違いではなかったとも言えましょう。ただ、私に言わせていただければ、人間というのは私も含めて余り利口じゃない、皆さん利口かもしらぬが。
 そこで、今考えていることは環境の問題なんですけれども、二千年前からといいましょうか、ギリシャ以来というかローマ法といいますか、人間と人間あるいは人格と人格、国と国、そういったかかわり合いについての法律というのはあるわけです。ところが、今ここの現時点でいろんな世界、地球を考えてみますと、自然と人間とのかかわりというのが法律の体系に入ってきていいんではないかという感じかするんです。
 というのは、人と人とのかかわり合いはもちろん大事である。あえて憲法で言いますと、前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する」云々と書いてある。人間相互の関係だけでこれからの人間社会というのはうまく運営される、成り立っていくものなんだろうか。自然を破壊しながら人間だけうまくいくということはあり得ない。
 そういう意味で、環境といいますかエコロジーというものを憲法の中で位置づけて、この位置づけ方も難しいでしょう、擬人的に人格権を認めるというわけにもいかぬという説もあるかもわかりません。あるいは認めろという説もあるかもしらぬ。しかし、少なくとも自然というものを尊重しろとか、ともに生きているんだということを自覚しろとか、考え方はいろいろあると思います。そういうことで、これは日本の憲法だけじゃないんですけれども、少なくとも我が国から何か言い出して、各国がそういうことを念頭に置いて国政を動かしませんと、環境サミットなんか何回もやっていますけれども、何かやっぱり経済は経済で走っていって汚染物質はどんどんふえて環境が悪くなって、片一方環境対策だ調査しろ、そして科学的な何か知見を積んでなんというのんきなことを言っているんですけれども、それで間に合うんだろうかというようなことが気にかかるわけでございます。
 そういう意味で、これは法務大臣に聞くのも、国務大臣でもおられるんだけれども、ちょっとおかしいしという感じはするんですが、そういうことがこれから問題になるような時代になってきているんではないかという予感がするんですけれども、そういう予感は大臣ございませんか。
#70
○国務大臣(左藤恵君) 大変難しい問題でございますし、今お話ありましたけれども、これは私の所管する問題でないとも思いますが、御意見は御意見として承っておきたいとは思います。何かそういった問題についての時代の変遷というようなものについては真剣に考えていかなければならない問題は含んでいるというような感じはいたしますけれども、それをどういうふうにこれから取り扱っていいのか、ちょっと今私の方から何か申し上げるような準備がございません。
#71
○中西一郎君 これは先ほど申し上げましたが、参議院の自民党の政審にはこういうことをおしゃべりするよと言ってあるんですけれども、といって自民党を代表してやっていいよというお許しはいただいていません。全く私の個人的なあれですから。しかし、これは子供たちとかあるいは大勢の女性の方々、母の予備軍ですよ、そういった方たちは何か今のこの世の中はちょっと狂っているんじゃないかというふうに思っておる気配がある。そういうことも我々視野に入れる必要があるんじゃないかなということを考えまして、あえて貴重な時間をいただいたのでございます。これはそう繰り返し法務委員会で言うわけにいかぬと思いますけれども、また機会がありましたら、お許しいただければ少し具体的に申し上げることもあろうかと思います。
 その次は、これまたいささかとっぴなんですけれども、きょうは農林水産省から官房企画室長に来てもらっているんですが、十一分まであなたにこっちへ座ってもらわなきゃいかぬのです。
 これも初めに法律と事実との関係と申し上げましたが、今の食管法もおかしいといえばおかしいし、農業基本法もおかしいといえばおかしい。今環境と申し上げましたが、アメリカでもヨーロッパでも環境保全型農業を確立しようという非常に大きな流れがあるんですよ。そのことがアメリカでも起こっておるんですけれども、アメリカの九〇年農業法が去年十二月成立しました。これの報道がありました。ありましたけれども、アメリカの報道というのは大体米買え米買えという話でして、アメリカの中でそういった環境保全型農業についての新しい立法が行われた。化学肥料を使うのをやめていこうとか、農薬を使うのをやめていこうとか、地下水をもっときれいにしようとか、畜産のえさまで汚染された水は入れちゃいけないとか、あるいはトウモロコシが汚染されておればそれをえさにした畜産物には有機農産物のラベルは張らせないとか、非常に厳しいものができているんです。そういう情報は日本へ来ません。したがって、日本のマスコミもそういうことを言わないんですけれども、そこに我々が今持っておる法体系と事実の間に物すごいギャップがある。
 私、今官房企画室長と申し上げたんだけれども、何か呼び捨てみたいで恐縮なんですが、三十年前に私あのいすに座っていましたので、きょうは日出君に来てもらって、その辺、余り時間がないけれども、現在どういうふうにお考えなのかということを聞かせていただければありがたいんです。
 なお、それに関連して、世界の食糧事情というのか、人口問題というんですかね、今五十三億人いますけれども、非常に簡単に言います。みんながアメリカ人並みに食べると十一億人しか養えないというんです、計算上。みんなが日本人並みに食べると三十六億人だというんです。我々ちょっと食べ過ぎなんです。インド人並み、これは飢えすれすれの人がいますから、インド人並みだと七十八億人が養えるんだそうです。他方、耕地面積は余りふえていません。むしろ減っています。そこへ異常気象があるでしょう。カリフォルニアは干ばつですしね。これもう常襲的ですよ。そういうことを考えると、食べ物は外国にあるんだと、いつでも買えるんだというふうに思わさせられておる日本というのは一体どういうことなんだという疑問があるんですね。そういうことも含めてお答えいただければありがたい。
#72
○説明員(日出英輔君) 先生の方から大変格調の高いお話を私も伺ったわけでございますが、先生のお話にもございますように、アメリカあるいはヨーロッパで農業に対する物の考え方が大変大きく流れが変わってきておるという実感をいたします。
 お話がありましたように、生産性が高いという農業だけを追い求めるんではなくて、むしろ環境に合ったような環境保全型とでも言いますそういう農業が非常に大事だというような、そういう流れがはっきりしてきているというのは、先生先ほどお話しになりましたアメリカの九〇年農業法でも出ておりますし、ECでも近年そういう議論をされていること、私どもよく承知をしておるわけでございます。アメリカあるいはECで地下水汚染でありますとか、土壌の流亡でありますとか、こういったものが健康被害とも関連されて今問題になっておりますが、日本では欧米と違いまして、例えば雨が多いといったようなことがあったり、あるいは水田農業が中心ということで、こういった農業に伴います地下水汚染のような問題は今のところ出ておりませんが、大変気をつけていかなきゃいかぬ問題だと思っておるわけでございます。
 さはさりながら、今お話のような世界的に環境の保全を重視した農業ということが言われ始めておりますので、私どもの方も一般的にはそういう問題がなかなか出ない農業の形態になっているとは思いますけれども、具体的にやはり肥料をやり過ぎないとか農薬を投入し過ぎないとか、こういったような世界で環境保全といったことを重視した事業も実は平成二年度から既に行っているところでございます。こういう問題は具体的に作物ごと、地域ごとにいろいろ実証し、いろいろやっていきませんと、言葉だけでの環境保全型農業というわけにもいきませんので、さらに今後とも具体的に技術の開発でありますとか、現地での実証といったようなことを通じまして、我が国の気候、風土に合ったようなそういう環境と調和した農業の展開ということを図ってまいりたいと思っております。
 残念なことに、こういった九〇年農業法の流れその他が、今のガット・ウルグアイ・ラウンド関係でいいますと、生産性が高い、あるいは価格が安いということだけで一般に言われているように思いますけれども、他方、国民の各層でこういった環境の問題を非常に重視したことについていろいろ言われていることについては、私ども一つの御支援と思いまして、今後の農業政策のあり方についてこれを反映していきたいというふうに考えている次第でございます。
#73
○中西一郎君 諸先生方にはなぜ中西はこんなことを言うんだろうかという御疑問がまだお残りかと思います。ということは、環境と申し上げましたが、日本の環境庁に対しては私何年か前からこの問題指摘しているんですけれども、環境庁はなかなか食べ物と環境というふうには結びつけてくれないんですよ。非常に簡単に申し上げますと、ポストハーベストとこう言っていますが、収穫後に農薬ということですね。あれはポイズンですからね、毒です。それをがばがばかけて、それで日本に来るまでにカビが生えない、病気が出ない、虫が出ないというふうに処理して、それで我々の口に入っているわけです。幾つかの実験がありますけれども、向こうの小麦粉にコクゾウムシを落としますと、コクゾウムシは大体三日ぐらいで死にます。豪州産でも同じです。
 ところが、これまたガットで安い方がいいと言うんだな、それとか貿易自由化がいいと言うんでしょうか、そういう柱がありまして、そういったポイズンの残留基準というのは低い方がいいというので、アメリカは物すごい圧力を今かけているんです。アメリカの環境団体の中でも反対するのがいます。我々も反対しているんですがね、何人かで。それで敷居を高くしますと、今度は非関税障壁だと言ってまた怒るわけですよ。向こうに怒られると何か日本というのはぐにゃっとするのよね。これは何も食べ物だけじゃないんで、その辺が何といいますか、よく探ってみれば、アメリカはそういうふうに言ってきますけれども、例えばこの間の幕張の件でも、アメリカの米作農民に対する侮辱であると言って向こうは怒りましたね。ところが、向こうの米作農民は何も日本に米買ってくれなんて言ってないんです。言っているのは精米業者ですからね、輸出業者です。それはストックの値が上がるだろうし、いいんでしょうけれども。ところが、本当に日本が米買うなんて言いますと、恐らく世界じゅうの米の値段上がりますからね。途上国の人、貧しい人は大体米を食っています。米の値段上げたのはだれだ、日本人だ、こうなりますからね、うっかり乗れない。ところが、それにまた日本人の何人か乗せられているわけですよ。情報不足ですね、これ。
 そういう意味で、これでやめますが、要するに、法というものは事実をしっかり踏まえてやらないと宙に浮いちゃう。
 そこで最後に、前に戻りますが、拘禁二法もそういったような観点で我々力を合わせて、何といいますか、お互いにすり合わせをしていくべき段階がそう遠くないんではないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。
#74
○中野鉄造君 初めに、入国管理局出張所の統廃合について五点ほど私懸念と不安がございますのでお尋ねいたしますが、私の地元の福岡入管の唐津出張所あるいは伊万里出張所の統廃合は、これはもう既に決定事項である、こう聞いておりますけれども、本来出入国する船舶の乗員、乗客については、入国審査官が乗船をして、臨船等をして出入国手続を行うわけですが、出張所が廃止になった場合は、二十四時間前までとされている入港通報を受けた後、福岡あるいは佐世保まで出張してくるということになりました。従来は常駐していたため、迅速な対応をお願いすることができたわけですけれども、そういうような入港通報がおくれた場合や、あるいは予定どおり船が入港できないようなケースでの対応が非常に危惧される、こういうことも出てくるわけです。それとまた、残留手続を他県にまで出向いていかなくちゃいけない、こういうことがありますね。特に伊万里には大きな造船所がありますけれども、ここでは外国船の建造に当たっては、発注者からの検査官が七カ月から八カ月間滞在する。また、受け渡しの際には乗組員の二十数名が出入国することになるわけですけれども、これらの人たちの残留申請の変更等に支障が出てくることは、これは避けられないと思うんです。
 また同時に、地場産業や貿易港としての振興を図る上からもいろいろな影響が出てくるのではないかと思います。
 また三つ目には、御承知のように、あの付近は非常に中国あるいは北鮮、韓国、そういったようなところからの密航だとか、あるいは先ほどからお話に出ておりましたようなボートピープルというような人たちの懸念もあるわけですけれども、そういったような密航監視が不十分になるんじゃないか。
 また四番目には外航船の第一寄港地としての条件がこれは極めて悪くなっていくんじゃないか。
 そういうようなことで、要するに国際化に向けて地方の入管出張所の統廃合というものが時代の逆行になるのではないのかな、そしてさらには地元の産業振興から見てもこれは非常に影響が大きいんじゃないかな、こう思うんですけれども、ここいらについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#75
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から福岡入国管理局の唐津港及び伊万里港にありますそれぞれの出張所の統廃合問題についての御指摘を賜りました。
 まず最初に申し上げたいと存じますが、この二つの出張所の統廃合問題について、当局といたしましてはまだ結論は出しておりません。したがって、何らかの方針を決定したという事実はまだないわけでございます。これは実は私どもも大変頭の痛い問題でございます。と申しますのは、平成元年一月二十四日に行われました行政改革の実施方針に関する閣議決定におきまして、「地方入国管理局の出張所について、平成五年度末までに十五箇所を整理統合する。」、こうされておる次第でございまして、法務省入国管理局としても閣議決定を見た政府の方針でもございますので、これはどうしても達成する必要がございます。しかしながら、その達成に当たりましては、当然のことながら各出張所の業務量の推移、あるいは地元におけるいろいろな御事情、そしてまたそのほかに仮に統廃合した場合に行政サービスという点で御不自由をおかけしないようなことがきちんとほかで措置ができるかどうか等、多角的に研究しなきゃならぬと考えております。
 実態を率直に申し上げますと、確かに福岡の入国管埋局の唐津港出張所と伊万里港出張所につきましては、全国にあります海港出張所の中で業務量という点からいうと低い方にあるということは事実でございます。しかし他方、ただいま委員御指摘のように、それぞれの土地にそれぞれの御事情があり、そしてまた今後のことについても展望していかなきゃならぬという点もあろうかと思います。現在の我々の立場は、十五の出張所につきまして平成五年度末までに整理統合しなきゃならぬという課題のもとで考えますと、確かに唐津港ないしは伊万里港のうちのどちらか一つは整理統合の候補にするということを考えてみるということが一つ現状ではあるわけでございますが、しかし結論を出しているわけではございませんで、今後なおただいま委員が御指摘になられましたいろいろな要素というものも十分踏まえ、また今後の業務量の推移や展望といったものも十分考えてこれは慎重に検討していくべきもの、こう考えているところでございまして、地元側とも十分に御相談をさせていただきたいと考えております。
#76
○中野鉄造君 次に、少年事件の刑事補償について先ほど同僚議員からいろいろと質問がありましたので、私はこれはもう大きく省略いたしますが、ただ一つだけお尋ねいたします。
 先ほどの答弁では、被疑者補償規程の適用もできかねるし、また類推適用もできない、こういうような答弁があっておりましたけれども、そうなりますと、これは全く救済そのものが否定されるわけです。
 そこでお尋ねしますが、この被疑者補償規程という大臣訓令を立法化するための検討はなされたことがあるのか、また、したことがないということであれば、その理由は何なのか、その辺をお尋ねします。
#77
○政府委員(井嶋一友君) 被疑者補償規程は、先ほども御説明いたしましたように、大臣訓令として三十二年に制定されたわけでございますが、これはもちろん根拠といたしましては憲法四十条の趣旨を検察官の不起訴処分に活用しようということでございまして、そういう経緯からできたものでございます。
 今委員仰せの立法化というのは、恐らくお考えになっておりますことは、まず立法化をすることによって補償の請求権化を図れということ、それから、どういう機関に裁定をさせるかということについての合理的な一つの制度の創設、それからさらには、裁定についての不服申し立てといったようなことをきちっと整備しろ、そういったような御趣旨での立法化という御指摘なのかと思うわけでございますけれども、もしそういう御趣旨であるとするならば、この被疑者補償規程の制定いたしました経緯あるいは現在の目的といったものから考えまして、立法化は非常に難しいのかなというふうに考えるところでございます。つまり、請求権化ということを認めますといたしますと、私どもの被疑者補償規程では、罪とならないあるいは嫌疑なしといったような、つまりそういった事例に補償を適用するということを言っておるわけでありますけれども、立法化して請求権化いたしますと、いわゆる起訴猶予のような不起訴処分に対しても、事実がないとかあるとかいうような立論で請求をしてくるといったような問題がまず起こるだろうと思います。これは本来の憲法四十条の趣旨からいってもおかしいのかなという感じがいたします。
 それから、どのような機関に裁定をしてもらうかということにつきましては、恐らく検察官あるいは別の上級の検察庁といったようなことがその裁定機関になるのかもしれませんけれども、それはそれといたしまして、不服手続といったようなものを立法化することによって定めるといたしますと、結局は最終的には裁判所の司法判断というところまでいくだろう。そういうことになりますと、不起訴処分というのが、先ほど来申しておりますように、刑事訴訟法にある我が国独特の極めてユニークな制度であるこの起訴便宜主義といったものが、結局その中身において最終的に司法判断の対象となるという結果になるだろう。それもこの刑訴の精神からいってもおかしいのではないかといったようなことをあれこれ考えますと、やはり先ほど御説明いたしましたように、これは検察官の起訴便宜主義というものをある意味ではチェックするという機能として、そういう罪とならないのに勾留をしたといったような事実がはっきりした場合には、検察官が検察官の義務としておやりなさいという大臣の訓令という形で制定しておく方が刑事訴訟法の検察官の起訴便宜主義を認めている精神にマッチするんじゃないかというふうに思うわけでありまして、そういった趣旨で、せっかくの御提案でありますけれども、今直ちに立法化ということについては消極的なお答えをせざるを得ないということでございます。
#78
○中野鉄造君 それでは、この件につきましては、今後少年法のいろいろな改正の時点で御検討をいただきたいと切に要望するわけです。
 次に、刑法上の有責性を欠く理由で無罪判決を受けた者と刑事補償法についてお尋ねしますけれども、最近過去十年くらいの実績で、刑事補償のその実例と金額をお示しいただきたいと思います。
#79
○政府委員(井嶋一友君) 被疑者補償規程の補償金の予算額、執行額という観点から御説明いたします。
 昭和五十五年以来同額でございますが、予算額はこれは検察庁、検察費に入っておるわけでございますけれども、予算額は八十七万三千円でございます。執行額でありますが、六十年が十八万五千九百円、六十一年が二十万八千六百円、六十二年度が十八万円、六十三年度が二十三万一千六百円、平成元年度が二十七万円となっておりまして、以下は不用額となっているわけでございます。いずれにいたしましても、この金額は国会に決算として報告いたしております。
#80
○中野鉄造君 私の調査したところによりますと、例えば心神喪失で無罪の者に対する刑事補償決定事例として、六十一年から平成二年までが一千百六十二万二千円、こうなっておりますが、間違いございませんね。
#81
○政府委員(井嶋一友君) 今御質問を取り違えましたが、御質問は刑事補償の方の関係だと思いますので、裁判所がお答えになるべきことだと思います。
#82
○最高裁判所長官代理者(山田博君) 裁判所の刑事補償金関係の予算でございますが、私ども承知しておりますのは平成三年度の刑事補償金の予算額でございますけれども、おおむね一億一千八百万、こういうことになっております。一億一千八百三十四万余りでございます。
#83
○中野鉄造君 そこで、このことについては先ほどの少年法とはまた全く違った逆のことになりますけれども、例えば過般新宿でバスにガソリンぶっかけて、そして火をつけて大勢の人にけがをさせたりあるいは死亡者を出したというような事件がありました。また他方、あれは四国だったですか、隣家に忍び込んで女性を強姦した上で女性を殺した。そして、そういうような人が心神喪失、このバスの場合もそうですけれども、心神喪失という理由で無罪になった。これらの人が無罪判決を理由に刑事補償法に基づいて刑事補償請求をした場合、現行法のもとではこれを認めて相当の金額の刑事補償をしなくちゃいけない、こういうことになっています。しかしながら、これらの人たちは放火をして人を殺したとかあるいは強姦をして人を殺したといったような、そういう事実についてはこれは間違いないわけなんです。事実あったわけなんです。いわば構成要件該当の違法な事実がこれは存在しているわけでして、無実ではないわけなんです。言うなればこれは無実じゃなくて有実なんです。
 ところで、憲法四十条は、先ほどから言われておりますように、「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」、こういうように規定してあります。そして、この規定を受けて刑事補償法一条は、無罪の裁判を受けた者は国に対して刑事補償請求ができる、こう規定してある。憲法四十条の趣旨は、一言で言えば、無実であるにもかかわらず拘禁されていたけれども、疑いが晴れて無罪になった人に対しては国家補償をしなくちゃいけない。これは当然です。そういう趣旨であって、刑法理論では構成要件該当あるいは違法、有責、それによって犯罪成立要件ができ上がるわけですけれども、その一つである有責を欠くから、いわゆる心神喪失者であるといったようなそういう有責というものを欠くから、たとえ放火殺人、強姦殺人であってもこれは無罪であり、無罪であるからには憲法は刑事補償をしなくちゃいけない、そういうことを要求しているのでは私はないはずだと思うんです。言いかえれば、憲法四十条というのは、無実の人に対する刑事補償であって、有実の人に対する刑事補償までも要求しているのではないのじゃないかと私は思うんですが、これはどういうふうに理解されますか。
#84
○政府委員(井嶋一友君) 今委員が御指摘になりましたような凶悪な事件が客観的に存在するにかかわらず、心神喪失といったような理由で、責任能力がないということで無罪になるといったような場合に、身体拘禁に対して補償しなきゃならないというのは、委員御指摘のように、確かに常識と申しますか、そういったものに合わないという感じをお持ちになるのは十分私も理解ができるところでございます。しかしながら、憲法四十条のこれは解釈論になるかもしれませんけれども、「無罪の裁判」と書いております「無罪」というのは、委員がおっしゃるように、有責性と申しますか、そういったものの欠ける場合は含まないというふうに読むんだという御趣旨だと思いますけれども、そのような限定をもって書いてあるというふうには解釈をされておりませんのが通例であろうと思います。つまり、犯罪の成立は構成要件該当、違法、有責というまさに御指摘のとおりなのでございますけれども、その三つは同じレベルで刑法理論としては評価されておるわけでございまして、その一つが欠ければやはり罪にならない。そうすると、刑事訴訟法では無罪という裁判になる。こういうのが現在の刑事訴訟法の規定と刑法理論でございまして、憲法四十条の書いております「無罪」というのはそういった意味での無罪であるというふうに理解をされておりますので、結局結論的には、今のように有責性について欠けておるということで無罪になるケースであっても、四十条における評価ではやはりその他の無罪と同じであるということで補償の対象になるんだというふうに考えられてきておりますし、今までそのように実務は運用されてきておるわけでございます。
#85
○中野鉄造君 しかし、それは憲法の解釈ということになりましょうけれども、法律レベルの理論であって、憲法レベルでの理論ではないのではないか、私はこう思うわけです。もしも今おっしゃった三つの事項が憲法レベルの犯罪要件であるならば、刑事訴訟法二十八条が有責性を欠いても犯罪成立を前提としている法律を予定していること、つまり、これは具体的に言えば塩だとかたばこ専売法、あれを申し上げているわけですけれども、その予定されている法律の条文は憲法違反になるのかどうかという疑問がまたわいてくるわけですけれども、そこのところはどうでしょうか。
#86
○政府委員(井嶋一友君) 委員御指摘のとおり、刑事訴訟法二十八条に有責性がなくても犯罪があるという事件を予定した規定がございますので、おっしゃるようなことが考えられるわけでございます。ただ、これが憲法に違反している規定であるというふうには従来理解されておりませんので、合憲の規定であるというふうに思っておるわけでございますけれども、つまり憲法レベルでは、確かに御指摘のとおり、犯罪の成立といったものにつきましては一切要件の制限も要件の規定もしておりませんので、その辺はすべて法律レベルにゆだねております。我が国の法律では、犯罪というのはまず刑法が基本にございまして、その他たくさん特別法がございますけれども、結局それらについて刑法の総則規定が適用されるという形で規定をされておるわけでございまして、法律レベルでは構成要件該当、違法、有責ということが必要だというふうになっておるわけでございます。したがいまして、刑訴法二十八条の例がございますけれども、憲法としてはその点については何ら触れるところなく考えておるというふうに理解をせざるを得ないだろうと思っております。
#87
○中野鉄造君 結論から言えば、あながち違憲ではないと。そうしますと、刑事訴訟法、先ほど申しました塩だとかたばこの専売法の中にも予定しているように、有責性を欠いても犯罪が成立するものとして刑罰を科することは、これは当然可能であるわけですけれども、今ここで端的に申し上げたいのは、憲法四十条の無罪の解釈は憲法自身の立法趣旨から理解すべきであって、法律レベルあるいは刑法レベルの理論でもって上位規範である憲法を解釈すべきじゃないのじゃないのか。わかりやすく言えば、つまり下から上へ逆算的にこれを解釈するのはちょっとおかしいのじゃないか、私はこの思うのです。憲法四十条の無罪の解釈というのが無実による無罪であって、有実だけれども無罪、実際犯罪を犯している、犯罪行為である、だけれども無罪ということは、これは法律レベルはとにかくとしても憲法レベルでは予定していないのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
#88
○政府委員(井嶋一友君) 委員の御指摘になることはよくわかるのでございますけれども、憲法四十条の解釈論といたしまして、少なくとも無限定に、つまり下位の法律である刑法及び刑事訴訟法の規定によって無罪になるものを無限定に無罪の裁判という形で書いておるのだというふうな解釈が私は一般かと思うわけでございますので、御説は御説といたしまして、私どもは今申したような解釈により実務を実は刑事補償の裁判例もすべてそのような形で今まで運用されておるということをもう一度申し上げたいと思います。
#89
○中野鉄造君 そうしますと、現行の刑事補償法三条では、無罪判決があってもなおかつ刑事補償をしないことができる旨をこれは規定しておりますね。この規定はじゃ合憲なのか違憲なのか、こういうことになってくるのですが、いかがでしょうか。
#90
○政府委員(井嶋一友君) 今御指摘の刑事補償法の三条「補償をしないことができる場合」という規定がございます。ここにございまして、
 左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。
 一 本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有無の証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁又は有罪の裁判を受けるに至つたものと認められる場合
というのがございます。つまり、みずからの責任において虚偽の自白をしたとかといったことでそういったことが起こった場合ということでございますが、これはもちろん憲法四十条には触れないというふうに理解をいたしております。つまり、憲法四十条といえども、結局権利の乱用にわたるようなことは補償すべきでないというのが、これは憲法の恐らく公平の理念からくる理屈だと思いますが、そういったことで、わざと虚偽の自白をして捕まるようなこととか、証拠をつくるようなこととかといったようなものは、ここに書いておりますそうしたものはすべて権利の乱用だというふうに理解をいたしまして、これには補償しないことができるという規定を置いたわけでございまして、これはそういった意味で憲法四十条に触れるものではない、このように理解をいたしております。
#91
○中野鉄造君 ですから、私はこの三条の、無罪判決があってもなおかつ刑事補償をしないことができる旨の規定のところに、刑法三十九条から四十一条までに規定する理由で無罪になった場合と、こういう一項目の内容を追加することだってこれは可能じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#92
○政府委員(井嶋一友君) 先ほど来申し上げましたとおり、四十条の無罪の裁判の無罪の意味は、限定を置かないものだということが正しい解釈であるとすれば、今委員がおっしゃったように、責任阻却、責任能力がないからということで無罪になった場合を除外する規定をこの刑事補償法に置くことが憲法四十条との関係でどうなるのかという問題になるだろうと思います。今も憲法四十条の解釈として、限定がされないんだということが是認されるとすれば、補償法にそういう規定を書きますと、それはやはり憲法の趣旨に反する規定だというふうになるのではないかというふうに私どもは思います。
 実はこの点につきましては、委員も御承知かと思いますけれども経緯がございまして、昭和二十五年に刑事補償法ができます前の戦前からの旧刑事補償法には、委員御指摘のとおり四条で、「無罪」「ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付左ノ事由アルトキハ補償ヲ為サズ」という規定がございまして、そのうちの一つに、「刑法第三十九条乃至第四十一条ニ規定スル事由ニ因リ無罪又ハ免訴ノ言渡アリタルトキ」というのがございます。この規定が結局二十五年に現行の刑事補償法ができました際に削除されておるわけでございますけれども、その意味合いというのは、やはり憲法四十条という新しい刑事補償の規定が憲法上の権利として創設されたということと絡めて、やはりこの無罪の裁判という意味合いはこういった責任無能力の場合をも含めて補償する趣旨だという解釈のもとに旧法の規定を除外したのではないか、このように私どもは解釈をしておりますことを付言させていただきます。
#93
○中野鉄造君 いわゆる刑罰を科するかどうか、それと刑事補償をすることが適切かどうか、この二つは別個の観点から判断することが可能でありますし、またそうしなくちゃいけないと私は思います。つまり、心神喪失者に対しては、刑罰を科しても自己の行為の善悪がわからない人たちですから、更生の意識もこれは生じないわけですし、だからこそ刑法も三十九条一項で「心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス」と、こうなっているわけですし、この「罰セス」ということは無実で罰せずというのとは違うのであって、有実だけれども罰しない、その効果が全然ないので罰しないということだと思うんです。したがって、例えば先ほど例を挙げました放火殺人者だとか強姦殺人者だとか、そういう人たちは判決後精神病院に入院させられることになるんでしょうけれども、これに対して刑事補償は国民の税金をもって補償するものであって、それゆえに無罪判決、この無罪判決というここがちょっときょうのこの審議にはなじまないかもしれませんけれども、無罪という言葉は、一般国民の感覚からとらえるならば、何も悪いことをしていないから無罪、無実だから無罪という印象がどうしても強いわけなんです。放火、殺人とかそういったようなことは、無罪という用語はこれは本当は不適切じゃないかと思うんです。刑法上の用語どおりに忠実にこれは罰せずという判決にすべきであると思うんですけれども、きょうはあえてこのことには触れませんけれども、いずれにしても、この無罪判決のあった心神喪失者に対して国民の税金をもって刑事補償をすることが果たして絶対に必要か、あるいは国民の税金をもって刑事補償をしなければ不適切なのかという観点から私は判断すべきじゃないかと思うんです。こういうような観点から見て、無罪となった理由が心神喪失者であることによる場合とかそういう場合には刑事補償をしないことができるというようにすべきじゃないかと思うんです。
 私はもう時間がないから、最後に大臣にお尋ねしますけれども、私ども公明党では、参議院において昭和五十一年の五月十五日に刑事補償法の一部を改正する法律案を国会に提出しております。その法案の内容は、今申し上げた刑法三十九条から四十一条までの理由で無罪判決を受けた者に対しする刑事補償までも憲法が強制するものではないとの理由に基づくものでありましたけれども、これらの者の刑事補償除外可能規定のこれは追加でありますけれども、こういったようなことを含めて、先ほど冒頭お尋ねいたしました少年法、これはちょっと足らざるもの、今聞いている刑事訴訟法のこれは過ぎたるものと、こういうように言えるんじゃないかと思うんですけれども、少年事件と刑事補償法の問題といい、心神喪失等を事由とする無罪判決を受けた者と刑事補償の問題といい、いずれもこれは刑事補償法の見直しの時期に来ているのではないかと思いますけれども、大臣、最後に所見をお尋ねいたします。
#94
○国務大臣(左藤恵君) 二つの問題をお話しでございましたけれども、今の責任無能力を理由に無罪となった者に対します憲法上の補償の義務、これはやはり憲法で私は補償の義務があるものと、このように思いますので、そのためにこの補償の対象から除外する刑事補償法を改正しろ、こういうことについては非常に困難な問題があるのではないか、私はこのように思います。確かに国民的な感情の問題から見て、また被害者の立場から見ますと、そういうことについての問題はあるというふうには私は思いますけれども、ただ、現行の刑事補償法を改正するということについては非常に困難ではないか、このように考えます。
 少年の保護事件の問題につきましては、刑事補償を認めるべきか否かにつきましては、先ほど御指摘がありました最高裁の決定のときの少数意見ですか、補足意見といいますか、その方の御指摘もありますので、そういったものを十分参考にして今後とも検討していくべきものであろう、このように考えるところでございます。
#95
○中野鉄造君 最後に一言。
 大臣、この刑事補償法の改正については非常に困難であるというお答えでございましたけれども、確かに困難であることは間違いないでしょう。現行では憲法には違反していない。しかし、今も大臣がおっしゃったように、国民側から見れば非常にこれは解せない点が多々ありますし、また被害者の身から考えても、被害者であるにもかかわらず、国民の税金をもってそういう人たちの補償までしなくちゃいかぬ、なぜだと、当然これは非常に疑問がわいてくるわけですけれども、今申しますように、困難であるとは思いますけれども、これは今後やはり見直す時期に来ているんじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
#96
○国務大臣(左藤恵君) 憲法の解釈の問題とかいうことにもなりまして、ただ、解釈でそれが全部今先生がおっしゃったようなことができるかどうか、これが非常に難しい問題だと、このように私は思います。なお、今お話がありました、どういうふうにしたらこの問題が補償の対象から外すことができるのか、困難でありましても検討は私はしていっていいのじゃないか、このように思います。
#97
○中野鉄造君 終わります。
#98
○橋本敦君 私は、国選弁護制度に関連をして質問をしたいと思います。
 まず、実態を明らかにして議論を進めたいと思いますのでお伺いをいたしますが、我が国の刑事事件の中でいわゆる国選弁護事件の占める割合が簡裁、地裁でここ近年どういう状況なのか明らかにしていただきたいと思います。
#99
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) お答えいたします。
 平成元年度における国選弁護人のついた被告人数と割合でございますが、地方裁判所では三万二千五百十七名で、割合が六一・六%、簡易裁判所では九千六十二人で、七九・三%、こういうふうになっております。
#100
○橋本敦君 今の数字で明らかなように、現在の刑事裁判制度を支える圧倒的多数の割合が国選弁護という制度によって維持をされているという実情だと言って間違いありませんね。
#101
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 仰せのとおりと存じます。
#102
○橋本敦君 そこで、国選弁護に関連をして、実費あるいは報酬、日当、そういった関係の事柄が問題になるんですが、昨年度に比べて、日弁連や私どもの要望もあり、予算としては今年度は若干増額になっていると思いますが、いかがなぐあいですか。
#103
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 昨年度に比べますと、昨年が地方裁判所三開廷報酬支給基準は六万一千五百円でございましたが、平成三年度六万五千円ということで、五・七%の増額になっております。
#104
○橋本敦君 その五・七%の増額は近年としては割合に大きく増額されたという部類にはなっておるように思うんですが、それで現在十分であろうかどうかということについてはいかが御認識ですか。
#105
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 私ども、必ずしもこれで全く十分であるということでもございませんが、まあまあこの程度であれば、一応私どもの努力は報われたという感じをしております。
#106
○橋本敦君 それはそちらの立場ででしょう。だから、そのまあまあと言うわけにいかないよということをこれから議論をしていきたいというのが主題であります。
 そこで、国選弁護ということですが、これは言うまでもありませんが、国選弁護については、いわゆる弁護士の業務に関する委任、請負、そういった初歩的、民事的関係ではない、まさに憲法的要請から来る公法的な範囲でとらえられる性質のものだというのが通説ですが、そのとおり間違いありませんか。
#107
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 委員仰せのとおり、通説はそうであると思います。
#108
○橋本敦君 したがって、その報酬、日当、実費というのはだれが責任を持つことになりますか。
#109
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 責任といえば、これは裁判所においてその報酬額を決定するわけでございますので、裁判所であるというふうに言えると思います。
#110
○橋本敦君 まさにそういう性質の仕組みになってくるわけですね。言うまでもありませんが、憲法三十七条の三項で、まさに国が人権擁護の観点から国選弁護人を必要な場合に付するという国の側の責務がある。そういうことから、今お話しのような関係において国選弁護料を国の責任でどうあるべきかということを探求していかなければならぬと、こうなるわけです。
 私はここで具体的な問題として伺うんですが、これについては裁判所の方では国選弁護人の報酬の支給基準に関する通達というのをお出しになって、一応そこで基準化されておると思いますが、そこでは内容として何と何が支給されることになっていますか。
#111
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 通達で出しております報酬の支給基準は、一応私どもとしては地方裁判所における三開廷の報酬について額を通達で示しておるわけでございます。
#112
○橋本敦君 それ以外は刑事訴訟法で三十八条という規定がございますから、その刑訴法三十八条で「旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。」、こうなっておりますから、だから今の通達では報酬基準を決めていますが、それ以外は刑事訴訟法で旅費、日当、宿泊料、これが請求できる、こうなっていることは間違いありませんね。
 そこで伺うんですけれども、ここで言う旅費というのはどういう内容のものですか。
#113
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) ここにいう旅費でございますが、これは証人の場合と同じく鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の四種類でございまして、その額の算定はおおむね国家公務員の場合と同様の方法で算出されることになっております。
#114
○橋本敦君 弁護人がこれを請求し得るのはどこからどこへ行く場合ですか。
#115
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 裁判所へ自分の事務所から出廷する場合及び出張尋問等で裁判所と一緒に出かけていって証人尋問等する、そのような場合でございます。
#116
○橋本敦君 そこで問題が一つ出てくるんですね。刑事局長も御存じのように、弁護人が事件の弁護をする場合にはいろいろな調査の必要があります。実際問題として交通事故が起こった、その交通事故の弁護をする場合は実況見分調書に基づいてやっぱり現場確認ということで現場へも行かなければなりません。あるいは被害者弁償ということであれば、遠方の被害者を訪ねていくこともあります。あるいは無罪を争う事件では、いろんなアリバイ関係の事実調査で、事件が起こった場所を含めて証人と思われる人たちが存在しているところを調査して出かけることもありますね。これは大変な努力が要るわけです。ですから、今おっしゃったように、裁判所へ出廷するための旅費ということになれば、これは例えば東京で弁護士事務所を持っていらっしゃる弁護士の皆さんにとったら、東京地裁へ行くのに旅費請求なんてほとんどないんですよ。むしろ刑事弁護で有効な尽力をするということになりますと、今言ったような調査関係も含めて調査のための交通費というのが非常に必要になってくる。しかも拘置所にいる被疑者との面会、被告人との面会という場合も、これは拘置所が遠い場合もありますから、一々電車、地下鉄という場合じゃなくて、業務の忙しい間ですからタクシーで往復するということもしょっちゅうあるわけです。そういう費用が一切請求できないというシステムは、効果的な弁護活動を支えることには余りにも不十分ではないかというのが一つの問題としてかねてから指摘をされている。
   〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕
 局長も御存じと思いますが、大阪で有名な貝塚事件というのがありまして、これは一審で有罪ですが、国選弁護人が大奮闘して綿密な調査を行って控訴審無罪ということになって無罪が確定しているわけですが、これで実際調査のために与論島まで行っているわけです。出張尋問で与論島まで行ったその出張費は出ますが、事前の調査で、そこに有力な証人があり、あるいは事実関係の調査の必要があるということで与論島まで行っても、これは弁護人の自費負担になっているんです。これは遠距離の場合ですが。そういった意味で、交通費ということを実費弁償として支給するシステムがどうしても私は検討を要する問題だというふうに思うんですが、この点どう考えられますか。
#117
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 確かに、今委員が御指摘のように、事件によりましては事前の準備に大変多額の交通費等を要する事件もございます。それで、先ほど申し上げました通常の三開廷報酬支給基準、これは一応通常の事件を想定いたしまして、そういった普通の事案で準備に要するあちこちバス代等の足代、こういった交通費等はそれに含まれておるものというふうに理解しておるわけでございますが、それ以上に特別に、今お話がありましたような遠隔地に証人がいて、かつその証人に事前にどうしても面接をしておく必要がある、あるいはまた拘置所が特に裁判所から離れた遠い場所にあってそれの往復にかなり費用がかかるというような場合でございますと、その分につきましては、裁判所の報酬支給決定におきまして十分参酌してその分はさらに加算して支払うということで私どもやっておるわけでございます。
#118
○橋本敦君 加算をして支払うというのは、日当に加算をして、日当分に含めてという意味ですか。
#119
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 日当ではございませんで、報酬にでございます。
#120
○橋本敦君 ですから、報酬に含まれるとなりますと、報酬自体がまだまだ弁護活動の報酬としては日弁連の基準からいったって基準的に低いということもあって、その低い中へ含まれてしまうということになれば、報酬自体がそういうことも含めての報酬で、一体どれだけ見てもらっているのかこれもはっきりわからないんです。必要な調査活動及び今私がお話しした必要な弁護活動の範囲で要る交通費は交通費実費として支給をするということをシステムとしてきちっとはっきりする必要がある、そういうことを言っているんです。そういうことをしませんと、今の場合ですと、これは決められたさっき答弁のあった旅費、これは請求できます。しかし、必要な調査活動に要した交通費というのはきちっとシステム化しませんと、裁判所の裁量で、お手盛りで見られているという状況があるのかないのかさえ明確でないんですよ。だから、それは弁護士の皆さんが国選弁護を受任した場合に、交通費は全部きちっと調査をして、そして取れるものはその都度領収書もつけてきちっと請求をするということで、システム的にそれは検討していくという方向で検討されますか。
#121
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 実際の運用面で申しますと、例えば国選弁護人が遠隔地に行った場合にこれこれの費用が要ったというようなことを資料として報酬の請求において出していただけば、当然裁判所の方はそれを相当分勘案して報酬の決定をすることになりますが、ただ足代としてかかった分全部について仮に例えば領収書等で請求されても、それにつきましてはその訴訟の準備のために果たして本当に必要であったか否か、そのあたりのところはやはり必要性について十分判断した上でそれなりの相当額について報酬に含めて払う、こういうことになるわけです。それが実際の現在のあり方であります。
#122
○橋本敦君 局長ね、あいまいにごまかすようなシステムはよくないというんですよ。遠隔地というけれども、その遠隔地の範囲がまず概念的にも実際的にも全くの裁量判断でしょう、決まっていないでしょう。だから、タクシーで片道千五百円、往復で三千円だって、これ遠隔地といえば遠隔地ですよ。ですから、交通費で実際に支払ったかどうかわからないというようなことを言うならば、これはまさに弁護士と裁判所との信頼関係にかかわる問題ですよ。ですから、それは請求して、その請求について検討すればいいわけですからね。また、弁護士が行ってもいないのに調査に行ったということで旅費を請求するなんということを頭から考えること自体が、私はやっぱりそれはもってのほかだと思いますよ。
 だから、そういう意味で、交通費は必要な弁護活動で実際に行っているんだから、報酬とは別途にそれ自体きちっと実費請求ができるという、それを保障していくシステム的な検討というものを今後私はやっぱりきちっとしていくことが、これは国選弁護の一つの問題を解決する上で必要だ、こう思いますね。この点について今すぐではなくても検討を要する課題として裁判所は研究する必要があると私は思いますが、どうお考えですか。
#123
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 先ほどの私の答弁若干舌足らずだったかもしれませんが、行ってもいないのに請求されるような弁護人がいるという前提ではございませんで、ただし、やはり事件事件において必要に応じて遠隔地に行って準備をするということでございますので、仮に例えば私選弁護人の場合であってもそこまではやらないような、何回も行ったりするとなると、これを国費で報酬の中に含めて賄うことが果たして妥当であるか否かという必要性の点で絞って判断をする、こういうことを申し上げたつもりでございます。
 それから、今委員が御指摘のところ、御趣旨はよくわかるわけでございまして、私どももその実務においてこの辺のところに、何というか、弁護人が真に必要な費用を支払った場合に、それを報酬の中で十分見込んで払っていくという、それにはどうしたらいいか。それにはシステムの上でもどういうふうに考えていったらいいか、そのあたりについては今後ともよく検討をしてまいりたいと思いますが、さらに交通費そのものを別途支払うことはどうかということになりますと、御承知のように法律上、先ほどおっしゃったように、旅費、日当、宿泊料及び報酬を支給するということでその支給の項目が法律で定まっておるものでございますので……
#124
○橋本敦君 だから、検討しなさいと言っている。
#125
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) ただ、そうなると立法政策の問題になりますので、裁判所としても限度があることは御理解いただきたいと思います。
#126
○橋本敦君 どっちにしても、国選弁護を担当した皆さんが必要と思われる調査、被告人面会、事実調査、証人との関係等も含めて、その趣旨と、それから使った日時、場所、一切をきちっと書いて請求をするということにして、今はシステム化されていないけれども、報酬判断の際に裁判所は十分それを考慮するということについては御異存はないわけですね。
#127
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) その点につきましては異存ございません。
#128
○橋本敦君 時間がありませんのでもう一つ伺いたいのは、謄写料の関係です。
 大阪地裁等では、必要な裁判記録の謄写は、事前に裁判所の承諾を得るような形もとりながら、裁判所が承諾する部分については謄写料が出ている、こういうようなシステムが慣行としてあるんです。全国的に見ても、必要な弁護の資料として謄写というのは、私も経験がありますが、非常に大事な内容を持ちまして、しかも多額にかかりますから、だから事件の十分な弁護のための謄写料についても、裁判所としては弁護士から、必要な範囲で謄写したいという要求があった場合は積極的に謄写料は出すという方向で一層検討を進めてほしいんですが、どうですか。
#129
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 今仰せのような方向で私ども鋭意検討を続けてまいっております。
 昨年、その点につきましては、一部否認を含む否認事件あるいは法定刑に死刑が定められているような重大事件につきましては、原則として全額の謄写料を支払う、それからその他の事件につきましても、訴訟準備のために特に必要と認められる場合にはこれを支払う、こういう取り扱いをいたしますよう全国の裁判所にお願いしたところでございますが、今後とも協議会等の機会をとらえまして、訴訟準備のために本当に必要であり、かつ支給基準の範囲内では賄い切れないような費用につきましては、それを弁護人の負担にとどめることのないよう、報酬支給決定の一層適正妥当な運用を期してまいりたいと思っております。
#130
○橋本敦君 最後に、大臣にお願いを含めた質問をしたいんですが、要するに国選弁護というのは憲法上の要請から来ている大事な我が国の司法制度の根幹の一つでございまして、そういう意味で、被告人が国選弁護によって効果的な弁護が受けられるように保障するという国の責務があるわけです。そういう被告人の人権保障の点からも、国選弁護制度の充実は、日弁連も弁護士の皆さんもかねて要求しているわけで、弁護士の利益のためというだけじゃないという側面が一つ大事な問題があるんですね。
 そういう意味で、私が指摘をした国選弁護料の報酬の今後の引き上げという課題も含めて、記録の謄写料や交通費等いろいろな問題がまだ残されておりますので、そういった諸条件の整備を進める点で、法務大臣としても一段の御尽力をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#131
○国務大臣(左藤恵君) 御指摘の問題につきましては、これを所掌いたします裁判所において適切に対応されるもの、このように思いますけれども、今お話しのように、国選弁護の運用が適正に行われることが極めて重要なことであるということを考えますので、法務大臣として協力できることがあれば、できるだけ協力させていただくという方針で臨みたいと思います。
   〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕
#132
○橋本敦君 終わります。
#133
○山田耕三郎君 私は刑務作業についてお尋ねをいたします。
 刑務所内における作業は、限られた施設、設備の利用をして、習熟の程度、年齢の異なる受刑者を対象に行うため非常な困難性を伴い、わけても今日の高度技術化された社会においては、ハイテク機器の設備にも各面からの制約もあってなかなか思うに任せないことも多いと思いながらも、あえて次の数点についてお尋ねをいたします。
 まず第一点は、矯正の目的は何よりも社会復帰に備えてであり、そのためには受刑者が将来社会復帰した際、自立した職業人となれるよう訓練される必要がありますが 復帰後どのようにこの訓練が生かされておりますのか、調査されております結果等がありましたらお示しをいただきたいと思います。
#134
○政府委員(今岡一容君) ただいま御指摘のありましたように、私どもは受刑者が社会に出た後立派に更生するということを期待しまして、作業の面でも職業訓練等に力を入れて行っているところでございます。そういうわけでございますので、当然のことながら彼らが出所した後、どのように所内で身につけた技能あるいは資格を生かして生活しているか関心があるところでございます。
 それで、これまでにもそれぞれの施設でいろいろ工夫をいたしましてお尋ねの追跡調査というようなものを試みてまいったことはございます。しかしながら、やはり出所しますと普通の社会人ということでございますので、刑務所の立場で調査をいたしますとやはり人権上の問題もございますし、それから出所後住所が変わったりしてなかなかその所在がつかめないというような問題もございます。それから、本人の自発的協力のもとに行うといいましても、現実にはそれではなかなか調査の目的が達せられないというようないろんな困難な問題がございまして、まとまった形での追跡調査ということは実のところ行えていないのが実情でございます。
 ただ、職業訓練を実施しまして所内でいろいろな技能なり資格なりを持って出ました者は、全体として見まして再入というケースは一般の場合と比べて低うございますので、その限りにおきまして出所者は何らか技能等を生かしながら社会で生活しているというふうに考えております。
#135
○山田耕三郎君 実態の調査は、お答えにありましたとおり困難だと思います。だとすれば、当局の御判断でやっぱり今の社会実態に見合った設備のところで訓練を受けてと、こういう配慮が必要になってくると思います。御承知のように、現在の産業構造はもうかつてとは大変な変わりようで、大きく転換をし、しかも複雑化いたしております。使用する機器も非常に精巧なものになっております。しかしながら、通常私たちの見ます刑務所の作業場の施設、設備等は旧態依然とした設備であり、また指導される方もそれに見合ったもののように見受けられるところが多く目につきます。この面についてはどのように配慮しておいでになりますか、また、それが本年の予算にはどのように具現をされておりますのかをお示しいただきたい。
#136
○政府委員(今岡一容君) 民間における技術革新が大変目覚ましいと申しますか、非常に日進月歩で進んでいるという実情に比べまして、御指摘のとおり、刑務所における刑務作業の実情はかなりおくれている面があることは、これは否定できないところでございます。
 私ども当局といたしましては、やはりそういった職業訓練をするにしましても、通常の刑務作業を行うにいたしましても、できる限りそういった社会の動向に近づけた線でもってやっていく必要があるというふうに考えておりまして、最近ではまず木工とか印刷等を中心にいたしまして新鋭機械、設備を導入してその充実に努めておるのが一つございます。
 それから、既に刑務所内に導入しております機械類等も相当古くなったものがございますので、こういう老朽化した機械を更新するということにつきましても計画的更新計画を立てまして、幸いこの更新計画の必要性を認めていただきまして、平成二年度から十五年計画で更新を図るということになっております。具体的に申しますと、それまでは機械、設備の更新が大体対前年比四%増ぐらいで推移していたところを、平成二年度からは大体対前年度比二三%ぐらいの大幅な伸びを認めていただいており、そういう中で今御指摘のような点の改善に努めているところでございます。
#137
○山田耕三郎君 関連をいたしまして、刑務作業賞与金の推移及び現在の金額はどのようになっておりますのか、具体的な事例で説明をしていただきたいと思います。
 今年は約二%のアップと聞いております。これは人勧や物価の値上がりと比べても多少低いような気がいたします。もちろん、刑務作業賞与金は賃金ではないことは承知をいたしておりますが、やはり励みとなり、やる気を起こさせる金額であると同時に、社会復帰のときの立ち上がり資金としても必要だと思いますけれども、この程度のことでよろしいと思っておいでになりますのかどうか、その辺のところをお答えいただきたいと思います。
#138
○政府委員(今岡一容君) 作業賞与金は、現実に支給する際には、定められました一人一時間当たりの基準額がございまして、その基準額に実際の就業時間あるいは技能の程度、作業量、作業に対する態度、意欲、いろいろな要素で評価しました上で計算をいたしまして計算高として記録し、原則としては釈放時に支給するというのが現在のやり方でございます。
 そこで私どもとしては、この作業賞与金は性格的には賃金ではございませんけれども、委員ただいま御指摘いただきましたような意味合いがあるということは私どもも十分認識しておるつもりでございまして、できるだけ可能な限りこの作業賞与金というものは増額の上更生に役立たせるようにしていきたいというふうに考えておるところでございます。例えば具体的に一、二申しますと、昭和六十三年度で申しますと、一人一月当たりの平均額三千百二円でございます。これが平成三年度は三千二百五十四円というふうにアップいたしております。年々いろいろ増額を得るように努力しているところでございます。
 それで、本年度二%アップという点について御指摘がございましたけれども、やはり基本的に作業賞与金は賃金とは性格が異なるという面が根っこにございますので、一般の賃金並みのアップというのはなかなか難しゅうございます。しかし私どもは、先ほども申しましたように、できるだけこれについての御理解をいただきながら増額を得て出所者の更生に役立たせたいというふうに努力しているところでございます。
#139
○山田耕三郎君 これはあってはならないことなんですけれども、やっぱり作業現場でのけがだとか、極端に言いますと死亡事故等はなかなか防ごうと思っても絶えることはございませんようです。作業中の死傷の手当は今年は変わっておらないようでございますが、作業中の死傷事故は年間どの程度ありますのか、またその手当額はどの程度のものなのか、実態をお示しをいただきたいと思います。
#140
○政府委員(今岡一容君) 最初に、作業上の死傷事故の発生の方からお答えいたしたいと思います。
 死傷病手当の支給の面から御説明させていただきますと、昭和六十一年度には死傷病手当の支給対象は五十二件ございました。金額にいたしますと千八百万余円になります。六十二年度は三十六件、金額にいたしまして約千二百万円弱。六十三年度はちょっと件数がふえまして四十件になりましたが、平成元年度は二十二件、金額にして九百九十七万円余。それから平成二年度で二十八件、千三十四万円余ということになっております。これは死傷手当全部ひっくるめての件数でございますが、死亡手当については、死亡事故は平成二年度に一件あっただけでございます。
 次に、死傷病手当金が本年度は前年度と変わっていないという点についてお答えさせていただきます。
 この死傷病手当金の額の決定につきましては、現在ではこれは一般の災害補償に準じてと申しますか、補償日数あるいは補償額につきましては労働基準法、労働者災害補償保険法の定めるところに準じておるわけでございますが、そういうことで平成三年度におきましては労働基準法、労働者災害補償保険法に基づく基準等について変更がございませんでしたので私どもの方も変更がなかった、こういうことになっております。
#141
○山田耕三郎君 刑務作業に関する質問の最後に左藤法務大臣にお尋ねをいたします。
 現在は御承知のとおり好景気、人手不足の状態でありますだけに受注の状況はよいようでありますが、このようなときだからこそ、多くの企業がそうでありますように、積極的に設備投資を行い、作業内容の向上による製品の高級化も図っておく必要があるように思いますが、そういったことへの取り組み方等についての左藤法務大臣の所信をお伺いいたします。
#142
○国務大臣(左藤恵君) お話しのように、最近は消費者の嗜好も非常に高級化また多様化してまいっておりますし、刑務作業製品もこれに対応しまして製品の高級化を図るという必要がある、このように考えますので、そのためには設備等の整備を図っていかなければならない。鋭意努力してまいる考えでございます。
#143
○山田耕三郎君 次は登記所及び登記業務についてお尋ねをいたします。
 登記所の窓口はどこも大変混雑をしており、そのサービスは行政のワーストスリーにランクされております。業務の増加は当然のこととして、スペースの拡大など建物や施設の拡大整備、窓口の整理要員の増員、登記相談業務の増加、犯罪防止等各般の対応が必要になります。これらの整備に関連して、以下数点についてお尋ねをいたします。
 まず第一点は、登記業務処理にコンピューターの導入が行われておりますが、現時点におけるコンピューター化の推進状況について具体的にお示しをいただきたい。
 なお、コンピューター化が完全に終わりますのはいつごろの見通しなのか、概略で結構ですからあわせてお答えをいただきたいと思います。
#144
○政府委員(清水湛君) 登記事務のコンピューター化につきましては、仰せのとおり、登記事務の繁忙対策あるいはさらにこれを迅速に処理して国民に良好なサービスを提供するという観点から鋭意法務省が進めてまいったところでございます。
 昭和六十年に登記特別会計制度の導入等を初めといたしまして各種の法改正がされてきたわけでございますが、昭和六十三年に東京法務局の板橋出張所をコンピューター化するということを手始めといたしまして、現在コンピューターで登記事務の、これは不動産登記だけでございますけれども、不動産登記事務のすべてを処理している登記所が現在十六庁、それから商業法人登記についてコンピューターで処理している登記所が一庁ということになっております。その他合計九庁におきまして現在コンピューター化のための作業を進めておる、こういう状況でございまして、いわばコンピューター稼働中の登記所及び稼働準備中の登記所を含めまして二十六庁ということになるわけでございます。
 このコンピューター化を今後どの程度の期間で完成させるのかというお尋ねでございますが、登記所の数は現在のところ全国で千百余あるわけでございまして、私どもといたしましてはその中の主要な登記所のコンピューター化というものを当面図っていくということでございまして、現在のコンピューター化庁は東京都内とか大阪とか大都市にありますかなり大規模の登記所をコンピューター化の対象としているわけでございます。
 しかしながら、登記所は全国に多数存在しておりますので、これらを今後コンピューター化していくということになりますと、経費の確保の問題あるいはコンピューター化するための作業の要員確保の問題、さらにはコンピューターを入れるということになりますと建物を新しくしなければならないというような施設の問題等いろいろございますけれども、これらの問題点を着実に克服しながら、少なくとも今後十年ないし十数年の間には全国にコンピューターのネットワークを完成させたい、こういうふうに今のところ考えているわけでございます。
#145
○山田耕三郎君 コンピューター化への移行作業を実施の庁においては、本来の仕事に加えて移行作業があるわけでございますから、コンピューターにインプットするような作業自体は外部委託されるにしても、間違いがないかの照合作業等は登記所の仕事になると思います。多忙な本来の業務を終えた後の仕事になると思いますが、何らかの特別の配慮をされておられますのか。聞きますところによりますと、OBの再雇用など人手確保を図っておられるようでございますけれども、その実態について現状をお示しいただきたいと思います。
#146
○政府委員(清水湛君) コンピューター化を進めます場合に最大の問題点は、現在紙でできております登記簿に記載されております情報をコンピューターに入力するという作業でございます。これを私どもは移行作業と言っているわけでございますけれども、この移行作業に大変な時間と労力を要するということでございます。しかも、この移行が間違った形でされますと、不動産登記はこれはもう国民にとりましては大変重要な財産にかかわるものでございますので、間違ったインプットをするということになりますと大変な御迷惑をおかけするということになるわけでございます。
 そういうような観点から、この移行作業につきましては登記簿を複写して入力原稿を作成するとかデータ入力をするとか、あるいは一次校正をする、こういうようなことにつきましては部外に委託をして、そのために必要な予算を確保するというようなことをいたしておるわけでございますが、最終的な移行作業の結果の確認と申しますか、正しく移行されたかどうかというようなことにつきましては、まず法務局のOBの方にいわば再雇用するような形で加わっていただぎまして、この方々に何回も入念に校正をしていただく、最終的には登記官がさらにそれをチェックするという形をとるわけでございますが、そういうような何度も何度もその正確性を確認して移行作業を終えるというようなことをいたしているわけでございます。
 これらの業務を行うということになりますと相当程度の要員が必要になるわけでございますが、これも増員事情が大変厳しい状況であるわけでございますけれども、法務局につきましては、これはコンピューター化ということだけではございませんけれども、登記所が全体的に非常に繁忙であるという点について御理解をいただきまして、毎年毎年純増という形でかなりの数の増員をいただいておるというようなことに加えまして、OB職員とかあるいは賃金職員の活用を含めました相当額の予算措置を講じていただいておるというところでございます。
#147
○山田耕三郎君 本年も一部の登記の手数料の値上げがされておりますけれども、値上げの理由、根拠について御説明をいただきます。
#148
○政府委員(清水湛君) 登記手数料につきましては、ことしの四月一日から謄抄本につきましては五百円のものが六百円になりました。これは実は昨年の四月に登記簿の謄抄本については六百円に値上げをする政令をもう公布したわけでございますが、経過的な措置といたしまして昨年の四月一日が五百円、ことしの四月から六百円と、こういう内容の手数料の改正になっているわけでございます。
 この登記手数料につきましては、登記特別会計における歳入の重要な部分をなしておる、つまりコンピューター化をするための主要な財源になっておるというようなこともございまして、特別会計が発足した昭和六十年の七月にはこれが四百円ということでございましたけれども、その後のコンピューター化の推進、先ほど申し上げましたようなコンピューター化の展開の経過等を踏まえ、あるいはその間の物価上昇等を踏まえまして昭和六十年の四百円を昨年の四月の時点で六百円にするのが相当であるということに判断されたわけでございますけれども、いわば急激な変化と申しますか、四百円をいきなり六百円にするというのはいろんな影響を与えるおそれもあるということで、まず一時的に五百円、そしてことしの四月から六百円、こういうふうにさせていただいた次第でございます。
#149
○山田耕三郎君 最後に左藤法務大臣にお尋ねをいたします。
 ただいま御答弁がありましたように、コンピューター化の資金に使われておるようでありますが、その理由はわからないではございません。けれども、今も御説明にありましたように、昨年度で二百円上げておくところを百円ずつ二年度に分割をなさいました。外見では連続、続いてということになっております。これもケースによりますけれども、土地神話の時代でありますのにかかわりませず、ケースによっては土地代よりも高いのではないかという声さえ聞かないでもありませんから、やっぱり値上げは節度が必要だと思いますので、この辺のところについて大臣の所信を承りたいと思います。
#150
○国務大臣(左藤恵君) 今お話がございましたように、登記手数料は登記のコンピューター化の財源でもございますから、コンピューター化を進めていくためにはどうしても必要な値上げは避けることはできませんけれども、その必要な限度を超えてみだりに値上げするようなことはしてはならない、このように考えております。節度のある方法で進めていくべきだ、このように考えます。
#151
○山田耕三郎君 終わります。
#152
○紀平悌子君 初めに、法務省にお伺いいたします。
 司法委員制度の地裁への導入の検討ということにかかわりまして、去る三月四日ですか、日弁連が一般市民の訴訟参加の一つの方法として、市民が民事訴訟の審理に加わって裁判官を補佐するという司法委員制度を地方裁判所にも導入するよう法制審議会に申し入れをしたという報道を伺いました。
 まず第一に、司法委員制度そのものについての簡単な御説明、できれば諸外国の例も少しお引きいただきたいと思います。そして、その運用の実態についてお伺いしたいと思います。
#153
○政府委員(清水湛君) まず、司法委員とは何かということでございますので私どもの方からお答えいたしますが、司法委員とは簡易裁判所の民事事件につきまして審理に立ち会って意見を述べ、あるいは和解の試みを補助する民間人を指しているわけでございます。この制度は、少額事件を取り扱う簡易裁判所において、民間人の協力を得て健全な民衆の常識と感覚を裁判に反映させるということを目的とするものだというふうに理解されているわけでございます。この司法委員という制度は我が国独自の制度だというふうに言われているわけでございまして、諸外国には司法委員に直接該当する制度はないということのようでございます。
 国民の司法参加という類似の趣旨に基づく制度といたしましては、ドイツ、フランス等における参審員の制度があると言うことができようかと思います。ドイツなどでは、参審員は労働裁判所等の特別裁判所において用いられていると言っておりまして、職業裁判官とともに審理及び裁判をする権限を有しているというふうに言われているわけでございます。
 現在の簡易裁判所における司法委員の運用の実情等につきましては、最高裁判所の方からお答えいただくのが適当かと思います。
#154
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 運用の実情につきまして裁判所の方から御説明申し上げます。
 司法委員制度につきましては、以前は非常に利用率が少なかったわけでございますが、昭和六十年ごろからだんだん活用しようという動きが出てまいりまして、現在では和解の補助を中心にいたしまして司法委員の関与の割合は年々増加してきております。昨年度、平成二年度の司法委員の関与事件数の割合でございますが、これは簡易裁判所の既済事件全体に対します割合が約一三%ということになっておるわけでございます。
#155
○紀平悌子君 御所見としてわかりましたけれども、これは非常に有効に機能しているというふうに言い切ってもよろしいくらい機能しておりますでしょうか。
#156
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 私どもとしましては有効に機能しておるというふうに考えております。ただ、この関与率というのが今のままでいいのかどうかということにつきましてはいろいろ考え方もあろうかと思いますので、これからもこの制度をさらに活用するようにということで考えておるわけでございます。
#157
○紀平悌子君 法務省にお伺いいたします。
 司法委員制度の地裁導入などがどのように検討されているか、それから取り扱いと結論の出る時期など、もしわかれば教えていただきたいと思います。
#158
○政府委員(清水湛君) 法制審議会の民事訴訟法部会は昨年七月から民事訴訟手続の見直し作業を開始したわけでございます。ちょうど裁判所制度百年を迎えたあるいは民事訴訟法自体も百年を迎えたというようなこともその背景にあろうかと思いますが、全面的に見直して利用しやすい、わかりやすい訴訟手続法にするということでこの作業を始めているわけでございます。現在、どういう問題を取り上げてどういう形で検討するかという検討事項案、つまり問題点の整理というようなことをこの作業として進めているところでございます。
 そして、その改正検討事項案の一つといたしまして、仰せの簡易裁判所に現在採用されておりますところの司法委員制度を地方裁判所にも導入してその活用を図ったらどうかというような意見が実は提出されているわけでございます。この司法委員制度の導入につきましてはかなり積極的な意見もあるようでございますが、法制審議会の民事訴訟法部会といたしましては、そういうような意見あるいは現在の簡易裁判所における運用の実情等についてもつぶさに検討いたしまして、いずれこの民事訴訟法部会としての結論を出すことになるであろうというふうに私どもは考えております。
 そこで、この作業がどの程度ということでございますが、とにかくこの訴訟制度百年の歴史を踏まえて全面的な見直しをしようということで始まった作業でございまして、大体今のところ五年ぐらいの間にその全面的な検討作業を終えようというような予定で現在その作業を進めているところでございます。順調に進めば平成七年度じゅうに改正要綱の答申が得られるということになるわけでございますけれども、しかし、何分にも民事訴訟制度につきましては、手続の面のほか制度の面その他いろんな難しい問題がございますので、これらの問題についてかなり詰めた議論をしてまいりませんと、なかなか結論が出しにくいというようなことも多分あるのではないかというふうに思いますが、私どもといたしましてはできるだけ予定の期間内にこの結論が得られるように努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#159
○紀平悌子君 最高裁では、この地裁の司法委員制度についてどのような評価をされておりますでしょうか。
#160
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今法務省の方から御答弁ございましたように、現在法制審議会で審議中ということでございます。裁判所の方といたしましては、この簡易裁判所におきます現在の活用状況あるいは実績等を十分見きわめ、また法制審議会の審議の状況をも十分見守りながらいろいろな問題点について研究をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#161
○紀平悌子君 今のと少し関連いたしますけれども、最高裁では三年前から陪審制度、参審制度について外国に裁判官を派遣していらっしゃる、調査研究していらっしゃるということを伺っておりますが、ことしもそれを行われますか。また、どんな規模でその調査を行われているか。また、結論を出される時期はいつごろなんでしょうか。
#162
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) まず、御質問の欧米等への派遣の関係でございますけれども、具体的に申しますと、米国に二名、一名は二カ月という短期間でしたが、もう一名は一年半という長期間の派遣をいたしまして、本年三月既に帰国いたしました。また、英国にも一名、これは五カ月間の派遣でございます。それからまた本年の三月、ドイツに参審制度の研究ということで一名が派遣されておりまして、この方は夏に帰ってまいる予定でございます。
 それから、そういった調査を今鋭意いたしておるわけでございますけれども、この問題につきましては何分ほも問題が大きいものでございまして、刑事司法の根幹にかかわる重大問題でございますので、今後私どもとしては引き続き十分な時間をかけてじっくり慎重に検討をしてまいる必要があると考えておりますので、今のところ研究のめどといって具体的に何年先というようなことまではちょっと申し上げる段階にございませんので、お許しいただきたいと思います。
#163
○紀平悌子君 次に、民事訴訟費用の軽減につきましてお伺いしたいと思います。
 日米構造協議におきまして、米国側が日本に対して独占禁止法違反の企業への損害賠償の請求訴訟を活発化させるべきだと、その訴訟費用の減額を要求してきていると聞きますけれども、その点と、それから今回検討されている民事訴訟費用の大幅引き下げの方向性とはどういう関係にございますか。
#164
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘の関係で問題になっておりますのは、民事訴訟に要する費用としてさまざまな費用がございますけれども、その中で訴訟を提起する場合に国に納付すべき手数料、具体的には訴状に貼付すべき印紙の額の問題でございます。
 日米構造協議におきましては、御指摘のように、かねてからアメリカ側が独禁法の損害賠償訴訟の活性化のために、その手数料に限ってこれを免除するあるいは軽減する措置を講ずべきであるという主張をしておりますが、これに対しまして法務省といたしましては、公正取引委員会とも協力いたしまして検討しました結果、ほかの訴訟をさておいてその訴訟についてだけ特別の取り扱いをするということはできない、問題は民事訴訟全般の問題であるという結論に達しまして、その旨先般アメリカ側に伝えたところでございます。
 その際に、これに付随いたしまして民事訴訟一般について訴訟の目的の価額、平たく言えば請求額でございますが、これが高額に上る訴訟、その手数料につきましては、民事訴訟制度全般にかかわる問題といたしまして、アメリカ側の問題提起とは別に、かねてから関心を持っている事項であるというコメントを行ったという関係にございます。
 民事訴訟の提訴費用の額はどうあるべきかということは、これは時代の変化に応じて適切に対応していかなければならない問題でございますが、将来は請求額が何億円、何十億円といった高額な訴訟も少しずつ増加していくだろうというようなことを考えますと、アメリカ側の問題提起をまつまでもなく、そういった高額の訴訟について現在の手数料の定め方が適当であるかどうかということを考えてみなければならない、こういう認識を持っているわけでございます。
 ただ、新聞報道等ではその問題について法務省が具体的な検討に入ったというような報道がされておりますけれども、若干観測を交えた先取り記事の感がございまして、法務省としては現在そういう認識を持っているということでございまして、まだ具体的な検討作業に入っているという階段ではございません。
#165
○紀平悌子君 現行の民事訴訟費用に関しまして、裁判所と訴訟費用の決定、このかかわりについて御説明いただきたいと思います。
#166
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今法務省から説明がございましたように、訴訟を起こすにつきましては一定の申し立て手数料を裁判所に納めていただく、こういうことでございます。この手数料の額でございますが、これは民事訴訟費用等に関する法律の四条という規定がございまして、これは「民事訴訟法第二十二条第一項及び第二十三条の規定により算定する。」ということになっております。
 具体的にどうかと申しますと、民事訴訟法の二十二条一項によりますと、「裁判所法ニ依リ管轄カ訴訟ノ目的ノ価額ニ依リテ定ルトキハ其ノ価額ハ訴ヲ以テ主張スル利益ニ依リテ之ヲ算定ス」、要するに訴えをもって主張する利益により算定する、こういうことでございます。これが金銭請求ですと、それがそのものずばり訴えをもって主張する利益ということで非常に単純明快であるわけでございますが、そのほかのものにつきましてはいろいろ考えなければいけないところがございます。最終的にはその当該事件を担当する裁判官が決するということでございます。ごく大ざっぱに申しますと、例えばある物の引き渡し、ある物の所有権の確認というようなことでございますと、その所有権の物の価額というものが一つの基準になるということでありまして、具体的には最終的に個々の事件担当の裁判官がお決めになるということで御了解をいただきたいと思います。
#167
○紀平悌子君 民事訴訟費用の引き下げという一つの方向性、その方向性と逆に先ほど山田委員が御質問なさいましたけれども、法務局における土地、建物の登記簿を閲覧したり、謄本を請求したりする際に支払う登記手数料、これの大幅値上げというか、相当大幅だと思いますが、この値上げの理由については先ほど承ったように理解いたしますので、少しその先を申しますと、国、地方公共団体それから特殊法人、これらの謄本請求等については無料であるというふうに伺っているんですけれども、コンピューター化による登記事務情報処理上の付加価値というもの、それを国や公共団体は無料である、しかし国民は払っていくわけですから、そのツケというと失礼なんですが、国民の方が一手に引き受けているような感じがするんですけれども、この無料であるというところの合理性というものがあれば伺わせていただきたいと思います。
#168
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 現在、国とか地方公共団体が登記所に謄抄本を請求する場合は、これは無料ということになっているわけでございます。これはこれらの国とか地方公共団体の請求というのは非常に公益性が高い、公務を行うためにこのような請求がされているということ、あるいは官庁間で相互にお互いに協力し合う、こういうような関係にあるというようなことに加えまして、国の場合を考えてみますと、国が国の機関に手数料を払うというようなことは予算の合理的な配分という面からいきましてもいささか迂遠な方法であるということでございまして、そういうような費用は予算の配分の問題として考えられることでもあろうかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、国とか地方公共団体等の謄抄本の請求につきましては、これを無料とする扱いがもう古くより行われていたところでございます。
 他方で、この登記につきまして乙号手数料を主要な財源といたしますところの登記特別会計制度というものができましたので、そういう制度のもとでは受益者負担というような原則を徹底すれば、国もあるいは地方公共団体も一人の受益者であるからそういうような負担をすべきであるというような考え方もあるわけでございます。
 そういう面から見ますと、こういったたぐいのものも有料化すべきだというような議論も出てくるのかもしれませんけれども、しかしながら、このような登記特別会計制度を導入したからといって、国、地方公共団体等の事務の公共性、相互協力関係とかあるいは国の予算配分の合理性等というようなものを考えますと、やはり無料のままでそれなりの負担というものを考えるということも十分合理性があることではないのかというようなことも考えられるわけでございます。
 御指摘のようなそういうものも有料化すべきだというような意見もあるということは私ども十分承知しているところでございますが、現在はそのような考え方のもとで無料制度がなお存続しておるということでございます。
#169
○紀平悌子君 参考までにもしお聞かせいただければ、いわゆる無料の部分、それが手数料算入というふうなところにどのくらいの部分を占めているんでしょうか。
#170
○政府委員(清水湛君) 現在、いわゆる乙号事件と申しますが、謄抄本とかあるいは登記簿の閲覧事件で無料事件がかなりの部分を占めているわけでございます。
 ただ、この無料事件の大部分のものは実は市町村が登記簿を閲覧するという関係の事件でございまして、市町村が固定資産税の納付者を正しく把握するために毎年あるいは一定の期間を置きまして管内の登記所の登記簿をすべて閲覧しまして、固定資産課税台帳との突合をするというような作業をいたしておるわけでございます。そういうような作業をいたしますと、その登記所の登記簿をすべて見るということになりますので大変な事件数になるということになるわけでございます。
 そういう自主的な市町村との協力関係というものを、これはもうなかなか有料にするわけにはまいりませんし、あるいはそれを有料にするといたしましても、一般の閲覧と同じような有料額ということはこれは到底考えられないわけでございます。そういうような状況を考えてみますと、結局自主的に有料化することができる部分というのはごくわずかなものになってしまう。つまり謄抄本を無料の形で、閲覧ではなくて無料という形で国なり公共団体等に交付する事例というのはごくわずかでございまして、そういうものを有料化いたしましても全体の手数料収入の中で占める割合は極めて少ないのではないか。私どもの一応の試算によりますと三%から四%程度にしか当たらないのではないかというような、これも推測でございますので正確な数字は申し上げることができないのでありますけれども、ほぼその程度のものではないのかなというような感じを持っているところでございます。
#171
○紀平悌子君 最後でございますけれども、大臣にお伺いしたいと思います。
 司法行政の中への女性の政策決定参加というか、特に決定参加についてお伺いしたいと思いますが、これは新国内行動計画及び男女雇用機会均等法、これに依拠してお答えいただきたいと思いますけれども、現在、省の中での特に女性の決定参加者、つまり政策決定参加者、それはどのくらいの率でおありになりますでしょうか。
 それから法制審議会の中、これにどのくらいの女性の登用がございますでしょうか。これは亡くなられました故長谷川法務大臣の御答弁中、昨年だったと思いますけれども、審議会の女性委員を一人正規の人をふやすということをお約束されておりますので、その点も含めてお答えいただきたいと思います。
#172
○政府委員(堀田力君) 法務省の女性職員は現在五千四百名ほどおりまして、そのうち審議過程に参加しておる者の数につきましては、ちょっと事前にその御質問を承っておりませんでしたので数字が出ませんけれども、そのうち相当数が幹部まで登用されておる実情でございます。
 それから、法制審議会につきましては濱崎部長の方からお答えいたします。
#173
○政府委員(濱崎恭生君) 法制審議会のメンバーへの女性の登用の問題につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、昨年の当法務委員会において当時の長谷川大臣がお答え申し上げたところでございます。
 事務当局といたしまして、法制審議会にできるだけ女性を登用するようにという大臣の御指示を受けまして、法制審議会の委員としてふさわしい女性の方を人選し、かつ御就任をお願いする努力もしてまいりました。
 ただ、総会の委員につきましては、御就任をお願いした方が極めて多忙であるとか、ほかの審議会の委員を多数お引き受けされているとかといった理由でお引き受けいただけなかったということもございまして、現在まだ総会のメンバーは女性の方一名ということでございます。現在女性の適任者が得られるように鋭意努力を傾けているところでございますので、若干のお時間をいただきたいと存じます。
 なお、部会につきましては、昨年秋以降、例えば民法部会の委員として従来お二人でございましたのを三人にする、国際私法部会におきましては従来お一人であったのを二人にするというようなことをしておりますし、また、現在審査をお願いしております司法試験法の改正のために設置いたしました司法試験制度部会の委員にも三人の女性の委員をお願いするというようなことで女性委員の登用に努めてきているところでございまして、今後もその方向で努力してまいりたいと存じております。
#174
○国務大臣(左藤恵君) まずは公務員採用試験合格者の中から法務省の各組織にふさわしい人材を男女の別なく採用してまいって、今後ともその方針を貫いていきたい、このように考えますが、そうした採用されました女性職員につきまして、各組織で実務経験を積ませて、そして研修などに参加させて幹部候補としての育成に積極的に努めてまいりたい。
 それから、今の法制審議会の女性委員、事務当局で御説明申し上げましたけれども、早急に法制審議会委員の職にふさわしい女性の方の人選を進めまして、お引き受けいただけるように事務当局を督励していきたい、このように考えております。
#175
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 終わります。
#176
○委員長(矢原秀男君) 以上をもちまして、平成三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#177
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#178
○委員長(矢原秀男君) 次に、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する質疑は、前回既に終局しております。
 この際、本案の修正について福田宏一君から発言を求められておりますので、これを許します。福田君。
#179
○福田宏一君 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院の各会派及び各派に属しない議員紀平悌子君を代表いたしまして、ただいま議題となっております罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案に対し修正の動議を提出いたします。
 修正案の内容は、お手元に配付いたしております案文のとおりでございます。
 これより、その趣旨について御説明を申し上げます。
 本案は、刑法その他の刑罰法規に定める罰金及び科料の額等が現在の経済事情に適合せず、刑罰としての機能が低下していることにかんがみ、消費者物価の上昇率等を勘案して、罰金及び科料の額等を原則的に現行の二・五倍に引き上げるとともに、関連する手続的な整備を行おうとするものであります。
 しかしながら、本案では、刑法第七十条第二項の改正が見送られております。同条項は、罰金・科料を減軽した際に一銭未満の端数が生じた場合、これを切り捨てて処理しようとするものでありますが、改正後の刑法その他の刑罰法規において、このような事態が生ずる可能性は全くないのであります。したがって、この規定は存置しておく実益が全くないのであります。
 そこで、この修正案は、同条項を削除することにより、今回の改正に遺憾なきを期そうとするものであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上でございます。
#180
○委員長(矢原秀男君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明かにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案について採択に入ります。
 まず、福田君提出の修正案の採決を行います。 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#181
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、福田君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#182
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 北村哲男君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北村君。
#183
○北村哲男君 私は、ただいま修正議決されました罰金の額の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び連合参議院の各会派並びに各派に属しない議員紀平悌子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  罰金を含む財産刑については、法定刑の定め方、刑の量定の方法、執行の合理化等各般にわたり、更に検討を加える必要があるが、政府は特に、次の諸点について格段の努力をすべきである。
 一 罰金刑に伴う被告人間の資力並びに自然人・法人の経済力の格差から生ずる不公平を解消するため、罰金刑制度のより適正かつ合理的な見直し及びこれを補完する制度の導入について検討すること。
 二 逮捕・勾留等の限界罰金額における刑法等三法の罪とその他の罪との間の法定刑の区別を早期に解消し、一一九化を図ること。
 三 罰金が選択刑として定められていない財産犯及び公務執行妨害罪等の犯罪につき、罰金刑を選択刑として導入することを検討すること。
 四 現行刑罰制度の合理化・適正化を図るとともに、尊属殺重罰規定の見直し、刑罰法令の現代用語化等について検討すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#184
○委員長(矢原秀男君) ただいま北村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#185
○委員長(矢原秀男君) 全会一致と認めます。よって、北村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、左藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。左藤法務大臣。
#186
○国務大臣(左藤恵君) 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案につきましては、委員の皆様方に熱心に御審議いただき議決されましたことに対し心からお礼を申し上げます。
 なお、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして今後とも努力を重ねていく所存でございます。
#187
○委員長(矢原秀男君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#188
○委員長(矢原秀男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト