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#1
第120回国会 本会議 第6号
平成三年一月二十五日(金曜日)
    開 会 式
 午前十時五十九分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、参議院の調査会長、衆議院参議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午前十一時一分 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午前十一時二分 衆議院議長櫻内義雄君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百二十回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はまことにきびしいものがあります。
  このときにあたり、われわれは、わが国の現状と国際社会における立場を深く認識し、外に対しては、諸外国との相互理解と協力を一層深め、世界平和の確立に寄与するとともに、内においては、政治、経済の各般にわたり、当面する諸問題に即応する適切な施策を強力に推進し、もって国民生活の安定向上につとめなければなりません。
  ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
   おことば
  本日、第百二十回国会の開会式に臨み、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の大きな喜びであります。
  国会が、永年にわたり、世界の平和と我が国の繁栄のため、たゆみない努力を続けていることを、うれしく思います。
  ここに、国会が、当面する諸問題を審議するに当たり、国権の最高機関として、その使命を十分果たし、国民の信託にこたえることを切に希望します。
   〔一同敬礼〕
 衆議院議長は、おことば書をお受けした。
 午前十一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで、一同は式場を出た。
   午前十一時八分式を終わる
     ―――――・―――――
平成三年一月二十五日(金曜日)
   午後三時七分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  平成三年一月二十五日
   午後三時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、裁判官訴追委員等各種委員の選挙
 以下議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
 この際、
 裁判官訴追委員、
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員及び
 日本ユネスコ国内委員会委員各一名の選挙
を行います。
#4
○沓掛哲男君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#5
○稲村稔夫君 私は、ただいまの沓掛君の動議に賛成いたします。
#6
○議長(土屋義彦君) 沓掛君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、
 裁判官訴追委員に田代由紀男君を、
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員に坂野重信君を、
 また、日本ユネスコ国内委員会委員に大浜方栄君を、
それぞれ指名いたします。
     ―――――・―――――
#8
○議長(土屋義彦君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、越智国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。海部内閣総理大臣。
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(海部俊樹君) 第百二十回国会の再開に当たり、内外の情勢を展望して施政の方針を明らかにし、皆さんの御理解と御協力をいただきたいと思います。
 世界は今、二十一世紀を臨む最後の十年間を迎えました。振り返りますと、二十世紀は、二度にわたる不幸で悲惨な世界大戦を経て、最近に至るまで米ソ二大国の対立を中心とした東西冷戦構造が世界を支配していました。
 しかし、人類は今、幾多の試練を乗り越えて、輝かしい未来に向けて新たな歴史の扉を開こうとしています。世界は、米ソ関係を中心に、対立から対話と協調の時代へと着実に歩み始め、冷戦の中心的な場であった欧州では、東欧の民主化、ドイツ統一の達成を経て、パリ憲章の採択によって、対立と分断の時代に終止符を打ちました。
 このような歴史的なときに、イラクはクウェート侵略という暴挙に出たのであります。この力による不法な支配に対して、国際社会は当初から、国連の権威のもとに、たび重なる安保理決議の採択や多国籍軍の活動、国際的な経費分担などを通じて、先例のない協力関係を構築してまいりました。また、国連が示した一月十五日の期限まで、事態の平和的解決に向けて、我が国を含めあらゆる国際的努力が行われました。
 しかるに、イラクのフセイン大統領はこれらを無視し、平和的解決に向けた国際社会の努力を踏みにじったことはまことに遺憾であり、今後の国際連合を中心とする国際秩序の維持の上からも、断じてこれを許すことはできません。現在、思想、信条を超えて、二十を超える国が多国籍軍に参加し、多数の国がそれに物的、資金的援助を行っているのも、まさにこのためなのであります。国際社会で主要な地位を占めるに至った我が国が、この事態に積極的な貢献をすることは当然の責務であり、みずからなし得る努力をせず、これを怠れば国際的孤立化への道を歩むことになります。こうした道はぜひとも避けなければなりません。
 このような考え方に立って、我が国は、安保理決議六百七十八に基づき、やむを得ざる最後の手段としてとられた米国を中心とする関係諸国による武力の行使に対し、確固たる支持を表明するものであります。また、国際の平和と安全を回復するための関係諸国の行動に対し、我が国憲法のもとでできる限りの支援を行う決意であり、このため、既に決定した貢献策に加え、関係諸国が当面要する経費に充てるため、九十億ドルの新たな追加支援を行うこととしました。これは、侵略者は絶対に許さないという国際社会の正義の立場から、我が国が国際的な役割を果たしていくためにぜひとも必要なものであります。国民の皆さんにも応分の負担をお願いすることになりますが、どうか御理解と御協力をいただきたいと思います。さらに、我が国は、関係国際機関とも協力して、避難民の救済のため可能な限りの援助を行うこととし、国連の避難民救済関係機関が国際社会に要請した当面の経費全額を引き受けました。特に、避難民の本国への輸送という人道的かつ非軍事的な分野においては、安全確保を前提として我が国民間航空会社に協力を強く要請し、困難な状況のもと、承諾を得たところであります。既に、関係国際機関の具体的要請があれば、速やかに出発できる準備を整えました。なお、民間機が活用されないような状況において、人道的見地から緊急の輸送を要する場合には、必要に応じ、自衛隊の輸送機により輸送を行うことといたしました。我が国が国際社会において、人道的、非軍事的な面でこのような責任を率先して果たしていくことは、憲法の基本理念に合致するものであると確信をいたします。
 我が国は、イラク政府が、国際社会の一致した意思を尊重し、直ちにすべての安保理決議を受諾するよう強く求めるものであります。そして、湾岸地域における戦闘行為が早期に終結し、中東において永続性のある公正な平和が一日も早く達成されることを切望するものであります。
 今後こうした事態を防止していくためにも、国際の平和と安全のための国連の権威と機能を高め、各国はこれに積極的に協力していかなければなりません。前回の臨時国会における国連平和協力法案の審議や各界各層における議論を通じ、我が国が平和のために資金、物資面のみならず、人的側面においても貢献すべきであるという点については、国民の間に共通の理解が確認されたと認識しております。自民、公明、民社各党間の合意を尊重して、新たな国際協力のあり方につき、一日も早く成案を得たいと考えております。
 また、今回の事態と関連して、核、生物・化学兵器やミサイルの拡散防止を徹底し、通常兵器の輸出についても、一層の透明性、公開性を通じて適切な管理が行われることが、湾岸地域ひいては世界全体の将来の安定のために必要であると痛感しております。化学兵器禁止条約交渉の早期妥結を初め、これらの分野での国際的取り組みを強化すべく努力をしてまいります。
 アジア・太平洋地域において、緊張緩和を促進し、この地域の経済発展を一層図っていくことは重要な課題であります。この地域に残された対立や紛争を解決し、地域全体に平和と繁栄をもたらしていくために、我が国は積極的な役割を果たしていかねばなりません。
 アジア・太平洋地域の長期的な安定と繁栄を確保していくためには、ASEANを初めとした地域協力の場を通じ、対話と協力を拡大していくとともに、不安定要因である朝鮮半島問題やカンボジア問題などの解決、そして日ソ関係の抜本的改善を図っていくことが重要であると考えます。
 朝鮮半島では、南北首相級会談の開催、韓ソ国交樹立など緊張緩和に資する新たな動きが見られており、我が国としても、この流れを一層加速化させるため積極的に行動していかねばなりません。我が国の朝鮮半島政策の基本は、日韓友好協力関係の強化にあります。今般の私の韓国訪問は、在日韓国人三世問題を決着させ、日韓新時代の三原則を首脳相互で確認し成果を上げましたが、今後とも、二十一世紀に向けて未来志向の協力関係を具体化していくために努力をしてまいります。北朝鮮との関係については、国交正常化のための本会談が間もなく開始されることとなっており、今後とも朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れ、朝鮮半島の平和と安定に資する形で、韓国、米国などの関係諸国と密接な連携をとりつつ交渉を進めてまいります。
 カンボジア問題につきましては、昨年十二月、関係国の努力によりパリ会議の早期開催が合意されました。我が国は、これまでも積極的な和平努力を続けてまいりましたが、今後、カンボジア各派が残された問題に積極的に取り組むとともに、すべての関係国が和平達成後のカンボジア、ひいてはインドシナの復興も念頭に置いて、緊密に協調していくことを呼びかけたいと思います。
 ソ連のペレストロイカは、その真価が問われる重大な局面を迎えています。私は、ゴルバチョフ大統領が、人間中心の民主主義社会の建設のため、ペレストロイカを正しい方向に進めることが世界の平和と安定のために必要不可欠であると考え、これを高く評価、支持してきました。この関連で、バルト諸国において一度ならず武力が行使されるに至ったことには、深い憂慮の念を表明せざるを得ません。事態がこれ以上悪化することなく、民主的、平和的方法で解決されることを強く求めているところであります。
 このような中で日ソ関係は、本年四月に予定されるゴルバチョフ大統領の訪日を控え、戦後の日ソ交渉における最も重要な時期を迎えようとしております。日ソ関係の抜本的改善のためには、何よりも北方領土問題を解決し、平和条約を締結することが必要であります。北方領土問題の解決を棚上げしたまま経済関係のみを進めるという無原則な政経分離の方針は、国民の望むところではありません。ゴルバチョフ大統領の訪日を新しい日ソ関係構築のための突破口となる歴史的意義のあるものとすべく、私は、ゴルバチョフ大統領に最大限の努力を強く求めるものであります。私も努力を惜しむものではありません。日ソ間の戦後の時代を本当に終わらせることができるのは、勇気ある決断なのであります。
 中国との関係については、中国が諸外国との協力関係を維持発展させていくことが重要であります。中国が改革・開放政策を名実ともに推進し、また、国際社会に対し一層の建設的役割を果たすようさらなる努力を期待するとともに、我が国としては、中国との関係を重視し、その近代化努力に対してできる限りの協力をしてまいります。
 日米関係は、我が国外交の基軸であります。我が国が、アジア・太平洋地域の平和と繁栄、さらには世界全体の新しい国際秩序の構築に向けて積極的外交を展開するに当たっても、日米協力関係が確固としたものであることがとりわけ重要であります。日米両国の相互依存関係の進展を背景に、両国は今後とも難しい問題の解決を迫られる場面が増大していく可能性もあります。しかし両国は、世界の平和と繁栄に対する共通の責任を自覚し、日米構造協議のフォローアップを着実に行っていくなど二国間の共同作業を前進させていくと同時に、人類が直面するさまざまな共通課題の解決に向けて、同盟国として地球的規模で協力していく、いわゆるグローバルパートナーシップを一層強固なものとしていくことが必要であります。さきに日米親善交流基金を創設することとしたのも、両国国民の交流とコミュニケーションをさらに深めることを期待したものであります。ブッシュ大統領の訪日の機会には、二十一世紀に向けた両国の協力関係の基盤をさらに強固なものとしてまいります。
 日米関係の基礎をなす強固なきずなである日米安保体制は、我が国を初めとするアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠な枠組みであります。政府としては、今後とも日米安保体制を堅持し、その信頼性の向上を図るとともに、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならず、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、先般策定した平成三年度からの中期防衛力整備計画に沿い、引き続き効率的で節度ある防衛力の整備に努めてまいります。この計画においては、現在の中期防衛力整備計画の実施により、防衛計画の大綱に定める水準がおおむね達成される状況などを踏まえて、主要装備については、更新、近代化を基本として、隊員の生活環境や情報・通信などの各種支援機能を初めとする後方分野の一層の充実に努めることなどを基本としてまいります。なお、在日米軍経費負担問題については、日米安保体制の効果的運用を図るという観点から、新中期防衛力整備計画の中で、在日米軍の駐留支援のための新たな措置を講ずることとしております。
 日米とともに、自由、民主主義、市場経済という同様の価値観、社会制度を有する欧州諸国は、現在、ECを中心として新秩序の構築に意欲的に取り組んでいます。我が国としては、政治、経済、文化各面における関係の一層の緊密化や東欧諸国の経済再建のための協力などを通じ、このような欧州諸国との友好協力関係の強化に努めてまいります。
 国際経済面では、経済のグローバル化が一層進む中で、保護主義の圧力も依然として根強く、多角的自由貿易体制の維持強化が喫緊の課題となっております。昨年十二月のブラッセルでのウルグアイ・ラウンド閣僚会議では、最終合意が達成されず継続協議となりました。この交渉は、二十一世紀に向けて世界の経済的繁栄の枠組みを構築するという重大な役割を有しており、もしまとまらなければ、保護貿易主義の急速な台頭など世界経済に深刻な影響を与えることが予想されます。自由貿易の利益を多く享受しておる我が国としては、国際経済秩序の主要な担い手として、この交渉の成功に全力を傾注してまいります。
 我が国が、国際社会において名誉ある地位を占め、世界の尊敬と信頼を得ていくためには、地球環境、麻薬問題などの世界が心から解決を望んでいる地球的規模の人類共通の課題に率先して取り組み、それらを解決していく必要があります。また、債務累積問題など経済的社会的困難に苦しむアジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上国や、市場経済への移行という困難な課題に挑む東欧諸国に対し積極的な援助を行い、国際的にも均衡のとれた経済社会の発展に貢献してまいります。
 我が国経済は、四年を超える内需主導型の景気拡大を続けています。しかしながら最近になって、湾岸危機に起因する原油価格の不安定化や米国における景気後退の様相など不透明な状況も生じています。
 政府としては、引き続き、物価の安定を図ることを基礎としつつ、主要国の経済政策の協調にも配慮し、適切かつ機動的な経済運営に努めることにより、経済活動の自律的発展、雇用の安定、輸入の拡大などによる対外不均衡の是正、為替レートの安定を図り、もって内需を中心とした景気の拡大をできるだけ息の長いものとするよう努めてまいります。また、これらの経済運営を通じ、我が国経済を国際的に調和のとれた構造に転換してまいります。
 幸い物価は安定的に推移してきておりますが、原油価格、為替レートや労働力需給などの動向に細心の注意を払い、的確な情報を迅速に提供するとともに、便乗値上げを厳しく監視するなど、その安定に十分配慮してまいります。内外価格差問題についても、引き続きその是正、縮小を図ってまいります。
 我が国は、中東地域に原油の七割以上を依存していることから、政府としては、イラクによるクウェート侵略の国民生活や産業活動への影響をできる限り小さくするよう努力してまいりました。幸い、過去二回の石油危機時と比べ、我が国経済の石油に対する依存度が大きく低下しており、また、我が国の百四十二日分の石油備蓄を、国際協調のもと、機動的に活用することにより、当面、国内の石油需給ひいては国民生活に大きな影響を与えることはないと判断しています。しかし、今後とも、依然として脆弱な我が国のエネルギー構造に思いをいたし、原子力など石油代替エネルギーの開発・導入と徹底した省資源、省エネルギーに積極的に取り組むとともに、石油の安定供給の確保に万全を期してまいります。国民の皆さんにおかれても、より一層の省エネルギーへの努力をお願い申し上げます。
 雇用の安定と激しい環境変化に対応できる創意と活力ある中小企業の育成は、極めて重要な課題であります。このため、特に近年人手不足感が広がっている中小企業を中心に、労働力の確保、定着を図るなど中小企業施策を充実強化するとともに、高齢者や障害者の雇用就業機会の確保、職業能力開発、地域雇用対策など労働力需給不均衡の改善に努めてまいります。
 また、事業者の公正かつ自由な競争を維持、促進するため、独占禁止法違反行為に対する厳正な対処、抑止力の強化を図るとともに、独占禁止法の運用の透明性を高める施策を講じてまいります。
 平成三年度予算においては、歳出の徹底した見直しなどを行うことにより、公債発行額を可能な限り縮減し、財政の健全化に向けて新たな第一歩を踏み出しました。
 しかし、なお公債残高は平成三年度末には百六十八兆円にも達する勢いであり、我が国の財政は依然として極めて厳しい状況にあることに変わりはありません。高齢化社会においても経済社会の活力を維持し、また、国際社会において増大する責任を果たしていくためには、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことが重要であります。このため、再び特例公債を発行しないことを基本として、今後とも公債依存度の引き下げに努力を積み重ねてまいります。
 また、第二次行革審の最終答申を最大限に尊重し、国、地方を通じた行財政改革を推進するとともに、先般発足した行革審においても、国民生活重視や国際化対応などの新たな改革課題についての審議を促進するなど、引き続きこの問題と真剣に取り組んでまいります。
 また、地方財政については、その円滑な運営を期することとしています。
 消費税を含む税制問題については、国会の両院合同協議会において、消費税の必要性を踏まえつつ建設的な合意が得られることを期待しており、具体的な結論が得られれば、その趣旨に沿って誠実かつ迅速に対応してまいります。
 土地問題の根本的解決のためには、土地神話を打破し、二度と地価高騰を生じさせないことが必要であります。これまで実施してきた監視区域の運用の強化、土地関連融資の規制などの対策により、問題が深刻な東京や大阪などにおいては、地価が鎮静化傾向にあるなど、その成果の兆しが見えてきております。政府としては、さらに確実な成果を上げるべく、引き続き本問題を内政上の最重要課題として位置づけ、新たに決定した総合土地政策推進要綱に基づき、土地基本法の理念を踏まえた実効ある施策の推進に努め、需給両面にわたる総合的かつ構造的な土地対策を講じてまいります。また、税制面においても、地価税の創設を初めとして土地の保有、譲渡、取得の各段階にわたり総合的な見直しを行い、所要の法案を今国会に提出することとしております。このような取り組みにより、中堅勤労者が相応の負担で一定水準の住宅を確保し得る地価水準の実現に努めてまいります。さらに、国民が豊かさを実感できる住生活を実現するため、新たに第六期住宅建設五カ年計画を策定し、良質な住宅ストックや良好な住環境の形成を計画的に図ってまいります。
 東京一極集中を是正し、多極分散型の均衡ある国土の発展を図っていくことは、土地住宅問題の解決、豊かな国民生活の実現にも寄与する重要な課題であります。
 このため、政府としては、国の行政機関などの移転を含め、都市、産業機能の地方分散を進めるとともに、整備新幹線の計画的な建設やリニアモーターカーの実用化の推進などの交通基盤施設の充実、道路網の体系的整備や生活に密着した高度の情報・通信網の整備により、全国的な交流ネットワークの形成を進めてまいります。
 さらに、ふるさと創生を契機として機運の高まってきたみずからの創意と工夫を生かした地域づくりを進めることによって、地方の活性化を図り、住む人が地域に誇りを持ち得るふるさとづくりを推進してまいります。このため、これを支援するための強力な体制づくりと関連施策の充実に努めるとともに、私は、地域がその個性に応じ、活力の倍増を目指す地域づくりの推進を提唱します。また、北海道の総合開発と沖縄の振興開発に引き続き積極的に取り組んでまいります。災害対策や地域の実態に応じた国土の保全にも努めてまいります。
 首都機能移転問題については、さきに行われた国会の決議を受けて、政府においても有識者会議を発足させたところであり、国民的規模の議論を踏まえつつ検討を進めてまいります。
 快適で住みよい地球を実現していくためには、経済活動などを通じた地球への負担を極力少なくし、環境の保全と経済社会の安定的発展の両立を図っていくことが必要であります。そのためには、地球的規模で省資源・省エネルギー対策を推進していくとともに、廃棄物対策の強化拡充などを図ることにより、貴重な資源を大事に使う、いわばリサイクル社会を構築していく必要があります。このため、現行の廃棄物処理制度を基本的に見直すとともに、生産、流通、消費の各段階において、廃棄物の減量化や再資源化など資源の効率的利用を推進してまいります。また、地球環境問題の解決についても、国際的枠組みづくりへ我が国として主導的役割を果たしていくとともに、地球温暖化防止行動計画の着実な実施や地球再生計画の具体化、開発途上国への資金的、技術的支援などを総合的に推進してまいります。これらの施策を通じて、我々の社会を地球にやさしい環境保全型の社会に変革すべく努力してまいります。
 国民が真に豊かさを実感できる社会を建設していくためには、下水道、環境衛生、都市公園などの社会資本整備の計画的充実を図っていくことが必要不可欠であります。政府は、昨年六月、公共投資基本計画を策定し、向こう十年間の公共投資に関する枠組みと基本的な方向を取りまとめたところであり、今後は、この計画を踏まえ、快適で潤いのある生活環境の創出に向け、国民生活の質の向上に重点を置いた社会資本整備を図ることとしています。
 流通産業が良質な物品、サービスを低廉な価格で、かつ、消費者ニーズの多様化、高度化に対応して提供していくために、出店調整手続の迅速性、明確性などを確保するため大規模小売店舗法の改正などを行うとともに、消費生活に密着した魅力ある商店街、商業集積づくりのための総合的対策を講じ、小売商業の育成と新しい流通構造の構築に取り組んでまいります。
 農林水産業は、国民生活にとって最も大切な食糧の安定供給という重要な使命に加えて、地域社会の活力の維持、国土、自然環境の保全など、我が国経済社会の発展と国民生活の安定に不可欠な役割を果たしています。また、農山漁村は、個性豊かな地域文化を継承し、国民が生きる喜びを再発見できる場として重要かつ多面的な機能を有しています。
 私は、今後の農林水産行政の推進に当たっては、確固たる長期展望のもと、生産基盤の整備、先端技術の開発普及、次代を担う意欲ある後継者の育成などを図ることにより、農林漁家の皆さんが誇りと希望を持って農林水産業を営めるような環境づくり、活力に富み明るく住みよい農山漁村づくりに努めてまいります。
 なお、我が国農業の基幹である米については、米及び稲作の格別の重要性にかんがみ、国会における決議などの趣旨を体し、国内産で自給するとの基本的方針で対処してまいります。
 本格的な高齢化社会が迫って来つつある今日、出生率の低下、女性の社会進出など子供と家庭を取り巻く環境についても大きな変化が生じています。私は、子供から老人まで、長い人生を健康で生きがいと喜びを持って過ごすことのできる長寿福祉社会の構築に向け、福祉政策のさらなる展開を図ってまいります。
 このため、高齢者保健福祉推進十カ年戦略を引き続き強力に推進していくとともに、老人保健制度を見直し、老人問題の中心課題の一つである介護の体制づくり、制度の長期的安定を図ってまいります。一方、子供を持ちたい人が健やかに子供を生み育てることができるよう、児童手当制度の充実、育児休業制度の確立など総合的視点に立って必要かつ効果的な環境条件の整備に努めてまいります。また、生涯にわたり健康を確保するため、疾病の予防や難病の克服、救急医療体制の整備など良質な医療の効率的提供、麻薬・覚せい剤対策、食品の安全性対策などを積極的に推進してまいります。障害者や母子家庭の方々にも、きめ細かな対策を講じてまいります。
 我が国は、物質的には豊かな国となっていますが、物で栄え、心で滅びる国とならないよう、知育偏重でなく個性と創造性を伸ばす教育を実現し、国民が芸術文化に親しみ、みずからの手で新しい文化を創造していける基盤を確立するとともに、生涯にわたる学習機会の整備やスポーツの振興に努力してまいります。また、基礎的独創的な研究を初め学術研究の推進、宇宙、海洋や原子力の開発利用の推進などの科学技術の振興に精力的に取り組んでまいります。同時に、これら各分野における国際交流を一層推進してまいります。
 労働時間の短縮を初めとする労働環境の改善に積極的に取り組むことも大切な課題であります。このため、政府としても完全週休二日制の普及促進などの施策を講じてまいりますが、国民の皆さんや企業におかれても、ぜひ御協力いただくようにお願いをいたします。
 最近の治安情勢について見ますと、暴力団の対立抗争事件の多発、各種薬物乱用の深刻化、テロ・ゲリラの凶悪化など厳しさを増しております。治安の確保は法治国家の根幹であり、政府としては、安全な国民生活の確保に万全を期してまいります。また、最近の交通死亡事故の増加にかんがみ、交通安全の確保に努めてまいります。
 国会は昨年、開設百年を迎え、新しい世紀に第一歩を踏み出しました。この記念すべき年に、私は、信頼の政治の確立に思いも新たに取り組んでまいります。
 私は、民主主義国家においては、政治の公正さが社会の公正さの基本であり、ぜひとも政治改革を実現しなければならないと考えております。そのためには、まず何よりも政治倫理を確立することが重要であります。それとともに、政治や選挙の仕組みそのものを改め、政治資金の透明性を確保し、金のかからない政党本位、政策中心の政治や選挙を実現していくことが重要であります。政府としては、選挙制度審議会答申の趣旨を十分尊重して、選挙制度や政治資金制度の改革を一体のものとして実現し、あわせて、投票価値の平等が確保されるよう不退転の決意で取り組んでまいります。できるだけ早く成案を得て、国会において御審議いただけるよう努力してまいりますので、各党各会派の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。
 昨年は即位の礼が挙行され、名実ともに平成日本の出発の年となりました。改めて平和国家に徹することを誓うとともに、二十一世紀に向けて、自由と民主主義の価値観を大切にする国家として、また、世界、とりわけアジアの一員として平和と繁栄に責任を果たしていく決意であります。
 世界は、東西冷戦構造を乗り越え、新しい時代に着実に歩みを進めつつあり、昨年のサミットでも今世紀最後の十年は「民主主義の十年」とうたわれたように、自由と民主主義という価値観がより普遍的な原理となってきております。世界は、このように、真に地球は一つという時代に向かって新しい国際秩序、枠組みの形成を模索していますが、一方で、東西対立の陰で表面化しなかった対立や紛争が顕在化しつつあり、危険な状況も生まれています。このようなときにこそ我が国は、責任ある自由民主主義国家として、冷戦構造克服後の新たな国際秩序の樹立に向けての努力を重ね、平和の枠組みづくりを通じ、二十一世紀の世界の運命に責任を負っていかなければなりません。
 世界経済に多大な影響を及ぼす国家となった今日、国内では、だれもが豊かさを心から実感できる社会を実現していく必要があります。また、芸術、文化、スポーツなどの振興により、文化の薫り高い国家を築き上げていかなければなりません。これまで我が国は、生産や供給を重視することによって今日の産業社会をつくり上げてきましたが、その成果を維持、享受しながら、その基盤の上に立って、消費者本位、国民生活重視や内需中心の経済発展などを基本として、公正で心豊かな社会の建設に努力していこうではありませんか。
 私は、人類が二十一世紀のあけぼのを明るい希望と期待を胸に迎えることができるよう、世界全体の大きな流れやその中で我が国が置かれた立場を念頭に置き、国政に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えます。
 ここに重ねて、皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(土屋義彦君) 中山外務大臣。
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(中山太郎君) 第百二十回国会が再開されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 現在の国際社会は、まさに歴史的激動期の中にあります。社会主義諸国における経済の失敗と旧来のイデオロギーの衰退が見られ、また、自由と民主主義、市場経済の価値の再確認がなされております。東西関係は、イデオロギーに基づく対立関係から、協調を基調とする関係へと変化するに至っております。そして、対話と協力の中で、新しい国際秩序を構築するための真剣な努力が続けられております。しかし、ソ連は国内改革に着手したものの、政治、経済、社会の各分野で混乱が見られ、改革の将来はいまだ不透明であります。また、国際社会は過渡期に特有の不確実性と不安定性を内包しております。さらに、世界は、依然として国家間の対立、紛争を惹起する数々の要因を抱えており、地域紛争が発生する可能性も少なからず存在をいたしております。
 昨年八月のイラクのクウェート侵略により発生した湾岸危機は、まさにこのことを象徴的に示す事態であります。これに対し、国連安全保障理事会は、イラクのクウェートからの全面撤退を実現するために一連の決議を採択し、世界の多くの国々は、国連を中心とする強い結束のもとに、湾岸の平和と安定を回復するための幅広い協力を進めてまいりました。我が国としても、総額四十億ドルに上る中東貢献策を着実に実施に移すとともに、イラク政府最高首脳部に対し国連安保理決議の速やかな履行を繰り返し強く申し入れるなど、問題の平和的解決に向けた外交努力を尽くしてまいりました。
 しかし、イラクは終始、国連安保理決議や、デクエヤル国連事務総長のイラク訪問を含む、各国による平和的解決のための努力を無視する態度をとり続けてまいりました。今月十七日に開始された多国籍軍の武力行使は、国連安保理決議に基づいて最後の手段として行われたものであり、我が国としてもこれに対する確固たる支持を明確にしております。イラクがクウェートからの撤退をかたくなに拒否してきたために、それまでの国際社会を挙げての平和的解決のための努力が無に帰するに至ったことは極めて遺憾であります。さらに、イラクがイスラエルに対し一方的にミサイル攻撃を加えていることは、強く非難されるべきであります。
 我が国は戦後、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、みずからの安全と生存を確保することを決意いたしてまいりました。それだけに、公正で安定した国際秩序の維持は、我が国の生存のために不可欠であり、我が国としては、国際秩序を武力によって破壊しようとする試みを絶対に許すべきではありません。また、国際秩序の維持において重要な役割を果たすべき国連の権威を無視する態度を看過すべきでもありません。さらに、湾岸地域は世界の石油埋蔵量の六五%を占め、また、我が国が石油輸入の約七割を依存している重要な地域であり、その安定を確保すること自体が我が国にとって極めて重要な課題であります。
 米国を初めとして多くの国が、国内の経済困難を抱える中で、国民の犠牲と膨大な軍事支出を覚悟して多国籍軍に参加しているときに、主要先進国の中でこの地域の石油に最も依存している我が国が、憲法に従い多国籍軍の武力行使に参加しないというその立場につき、国際社会の十分な理解を得るためには、国連安保理決議の履行を確保するために、財政面の支援を初めとして、我が国としてできる限りの協力をみずから進んで行うことが極めて重要であります。我が国が経済大国であるだけに、我が国が相当の経費分担を行うことについての強い期待が国際社会に存在することも否定できない事実であります。我が国が、財政支援と我が国としてなし得る人的協力の両面での努力に十全を期さなければ、国際社会で孤立する方向にみずからを追い込んでいく可能性すらあると申し上げても過言ではありません。
 このような考えに立って、政府は、湾岸地域の平和回復活動に従事する米国を中心とする各国を支援するため、湾岸平和基金に対し新たに九十億ドルの拠出を行うことといたしました。また、国連災害救済調整官事務所が国際社会に要請した避難民救済のための初動経費三千八百万ドルの全額を引き受け、速やかに拠出をいたしましたが、今後とも避難民援助には特に意を用いてまいる考えであります。さらに、我が国の民間航空機により避難民を本国に輸送するとともに、必要に応じ自衛隊輸送機による避難民の輸送を行うための準備を進めてまいります。
 他方、我が国は湾岸の戦火が一刻も早くおさまることを強く望むものであります。そのためには、イラクのクウェートからの撤退が不可欠であり、フセイン大統領の早急な決断を強く求めるものであります。
 なお、イラクのクウェートからの撤退が実現しても、湾岸の長期的な安定を図っていくために、経済の復興、安全保障や軍備管理などの面での国際協力が必要であります。さらに、中東地域の大きな不安定要因であるパレスチナ問題の解決なくして中東地域の安定を図ることはできず、湾岸危機の解決後、国際社会がその解決のために以前にも増して努力を強化することが必要であります。我が国としても、これらの問題をめぐる国際協力のあり方についての検討を進め、関係諸国とも協力しつつ、この地域の長期的安定のために積極的に努力をしてまいります。
 今回の湾岸危機によって改めて明らかになったことは、国際の平和と安全を守る上で中心的な役割を果たし得る国は米国をおいてほかにないということであります。イラクによる国連決議の履行の期限を目前に控え私が米国を訪問したのも、このような認識に立って湾岸危機を中心に緊密な協議を行うためでありました。
 日米関係は今後とも我が国外交の基軸であります。しかし近年、米国において、対日貿易赤字の累積を背景に日本の経済力を米国にとっての脅威とみなす見方も出るに至っており、さらに今回の湾岸危機を契機として、我が国が一層の責任を果たすことを求める声が急速に高まっております。米国世論の中に見られる対日不信を克服し、また、米国政府内外に高まりつつある対日期待にこたえるため、我が国がみずからの判断において進んでその責任と役割を果たしていくことが、日米関係を将来に向かって強化していくために極めて重要であります。
 日米安保体制の信頼性の向上と円滑な運用の確保のために努力するとともに、我が国の安全にとって必要な節度ある防衛力の整備を進めていくことは、日米同盟関係を強化するための不可欠の前提であります。現行の日米安保条約は、昨年、締結三十年の節目の年を迎えました。顧みれば昭和二十七年、我が国は、当時の不安定な極東情勢の中で国の安全と復興を図るため米国との間に安全保障条約を締結し、さらに昭和三十五年、日米両国対等の立場に立って現行条約を結んだのであります。我が国が、激動する国際社会の中にあって平和を享受し、未曾有の経済的繁栄と国民生活の向上を見てきたことは、この選択が正しかったことを立証するものであります。そして今や日米安保体制は、アジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の枠組みともなっております。国際政治の変革期にあって、国連を中心とする平和維持の努力が行われていることも事実でありますが、この日米安保条約を堅持していくべき必要性についてはいささかの変化もありません。政府としては、このような認識に立って、在日米軍経費の負担について新たな措置を講ずることとし、所要の特別協定を今国会に提出して、御審議をお願いすることといたしております。
 また、日米両国が二国間のさまざまな問題を協力と共同作業の精神で着実に解決していくことが重要であります。さらに、両国が、新たな国際秩序の構築、世界経済の運営、開発途上国の経済開発や地球環境のような国境を越えたさまざまな問題についての協力を含め、政治、経済両面にわたるグローバルパートナーシップを強化していくことが重要であると考えます。そして、このような日米の協力関係の基盤となる相互理解を一層強化するため、五百億円の原資により新たに設立される日米親善交流基金をも活用し、両国国民の対話と交流を促進してまいります。
 政府としては、このような考え方に立って、本年春に予定されているブッシュ大統領の訪日を、二十一世紀に向けてより強固な日米関係を構築する機会にいたしたいと考えております。
 冷戦の終えんに至る劇的な変化は、欧州を中心としたものでありましたが、我が国が位置するアジア・太平洋地域においても、同じように好ましい変化があらわれつつあります。中ソ関係の改善、ソ連軍のカムラン湾、モンゴル等からの撤退開始、モンゴルの民主化はその例であります。また、韓国とソ連との間の国交樹立、中国とインドネシア及びシンガポールとの間の国交正常化といった動き、朝鮮半島における南北対話の進展やカンボジア和平交渉の進展などの緊張緩和へ向かう変化も見られます。我が国と北朝鮮が、国交正常化のための本会談を行うことになったことも、こうした前向きの動きの一つであることは言うまでもありません。
 朝鮮半島に対する我が国の政策の基本は、韓国との友好協力関係の強化にあります。昨年五月の盧泰愚大統領の訪日に続き、今月、海部総理が韓国を訪問し、私も同行いたしました。今回の訪韓では、長年の懸案であった在日韓国人問題について両国間で行ってきた協議の決着を見るとともに、日韓新時代の三原則が確認されるなど、二十一世紀に向けた未来志向の日韓関係を構築する上で大きな成果があったと考えております。
 北朝鮮との間では、朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れて、その緊張緩和、平和及び安定に貢献するとの姿勢で、国交正常化のための本会談に臨む方針であります。また、この交渉の機会等を通じて、北朝鮮が国際原子力機関との保障措置協定を締結するよう強く働きかけていく方針であります。
 カンボジア問題につきましては、我が国としても、カンボジア人当事者に対する働きかけを含め、包括和平の達成に向けた外交努力を一層強化してまいります。また、和平合意が達成された暁には、国連の活動に対する資金協力や要員派遣、難民や避難民の帰還に対する協力及び復興援助を積極的に行う決意であります。
 ASEAN諸国は、東アジア地域の平和と安定、さらには世界経済の発展を確保する上で重要な地位を占めております。我が国としては、ASEAN諸国との間で、この地域の経済協力のみならず、アジア・太平洋の諸問題について、対話と協力を深めていくことが重要であると認識をいたしております。
 我が国が中国との間において良好な関係を発展させていくことは、アジア・太平洋地域の平和と安定のためにも重要であります。私は、中国が改革・開放政策を推進し、国際社会に対し一層の建設的役割を果たすことを強く期待いたします。そのためにも我が国は、中国の近代化努力に対し、現在、徐々に実施に移している第三次円借款を初めとして、できる限りの協力を行ってまいります。
 また、我が国は、アジアに強い関心を向けつつある豪州、ニュージーランドとの友好協力関係を発展させてまいります。
 さらに、アジア・太平洋地域の開発途上国に対する経済協力の推進や域内の貿易及び投資の拡大に努めてまいります。
 南西アジアでは、南アジア地域協力連合を通じた域内協力を推進する動きも見られますが、他方で、カシミール問題を初めとする不安定要因があります。また、アフガニスタン問題についても、解決のための一層の努力が必要となっております。我が国としては、ネパールやバングラデシュの民主化への好ましい動きをもとらえつつ、これらの地域の安定と発展のため、できる限りの協力を行ってまいります。
 私は、今や、アジア・太平洋地域の長期的な安定を確保する方途について真剣に検討すべき時期に至っていると考えております。この地域においては、そのための道程が欧州と異なることは当然であります。なぜならば、この地域の地政学的な条件や安全保障上の環境が欧州とは大きく異なっているからであります。
 第一に、アジア・太平洋地域では、域内の多くの国が開発途上国であることもあって、各国の最大の関心事は経済発展であり、核戦争の脅威を含む軍事的な緊張の緩和を最大の関心事項としてきたこれまでの欧州とは大いに異なっております。
 第二に、従来の欧州では、NATOとワルシャワ条約機構の二極に集約された形での東西関係が存在していたのに対し、アジア・太平洋地域では、中国の存在も含めて、東西関係では律し切れないさまざまな要因があり、国際政治上の力関係が多極的であります。この地域では同盟関係は二国間のものがほとんどであり、また、各国の利害の対立及びこれに伴う脅威認識も多様であることから、全体として安全保障の構図が複雑であります。
 第三に、欧州においては、戦後の国境問題等の解決という過程を経た上で、いわゆるCSCEの作業が始められたのに対し、アジア・太平洋地域においては、依然として朝鮮半島における南北対立、カンボジア問題、日ソ間の北方領土問題などの未解決の紛争や対立が存在をしております。
 そして、第四に、欧州ではEC統合の動きを中心として、政治的にも経済的にも統合に向かう大きな流れがあるのに対して、アジア・太平洋地域では、むしろ国家、地域の政治的、社会的、文化的な多様性や経済発展段階の相違を基礎としつつ、経済的な相互依存関係が追求されております。
 このようなアジア・太平洋地域の特徴を踏まえ、その平和と安定を確保していくためには、まず、朝鮮半島における対立、カンボジア問題、北方領土問題等の未解決の紛争や対立の解決を図り、その過程を通じて、北東アジア、東南アジア等の地域ごとに、それぞれの地域の長期的な安定を図るための対話や協力関係を強化していくことが重要であります。
 より広い範囲の地域協力については、域内諸国の安定のために経済発展が重要であることにかんがみ、経済面での協力を中心に進めることが重要であります。具体的には、ASEAN、ASEAN拡大外相会議、アジア・太平洋経済協力閣僚会議、太平洋経済協力会議等の既存の枠組みを十分活用して、この地域の政治、経済両面にわたる諸問題についての対話と協力を拡大していくことがこの地域に最もふさわしい方法であると考えております。
 このような考え方に立って、我が国としては、アジア・太平洋地域の長期的な安定を確保するための方途について国際的なコンセンサスを形成すべく、各国との対話を深めてまいる方針であります。
 アジア・太平洋地域の安定と繁栄を確保する上で、日ソ関係の抜本的改善が不可欠であります。そのためにも北方四島の返還を実現し、平和条約を締結して、質的に新しい両国関係を構築することが必要であります。
 今般、私はソ連を訪問して、ゴルバチョフ大統領やベススメルトヌイフ外相と胸襟を開いて話し合いを行いました。その中で、本年四月に予定されているゴルバチョフ大統領の訪日を日ソ関係の新しい時代の到来を約束する歴史的意義のあるものとするよう、ソ連側に英断を求めるとともに、我が国としてもできる限りの努力を行う旨を強調してまいりました。
 他方、ソ連は現在複雑かつ困難な局面を迎えております。経済改革は停滞し、連邦と共和国の関係にも混乱が見られます。特に、バルト諸国において武力が行使されたことは憂慮すべき事態であり、私は今回の訪ソにおいて、その民主的、平和的解決を強く求めるとともに、我が国としては、ソ連が民主化、自由化に向けた努力を引き続き堅持することを強く期待する旨を表明いたしました。
 欧州では、昨年十一月、CSCEのパリ憲章が署名され、欧州における対立と分断の時代の終えんが宣言されるとともに、ECを中心に民主的で繁栄した安定的な欧州を建設する動きが見られます。我が国としても、この機会に欧州諸国、特にECとの間で、政治、経済、文化などの幅広い分野で対話を深め、地球的規模の問題についての協力も含めて、協力関係を一層強化するよう努力してまいる方針であります。
 また、東欧諸国の民主主義や市場経済の実現に向けた改革の成功は欧州、ひいては世界の安定に寄与するとの認識に立って、引き続き東欧の改革を積極的に支援してまいります。
 中南米では、近年、顕著な民主化の進展が見られ、また、多数の国々が市場経済に基づく真摯な改革を進めております。さらに、中米和平のための関係諸国の努力も着実に成果を上げつつあります。我が国としては、このような努力に対し、今後とも国際的な協調のもとに、一層の協力を行ってまいります。
 アフリカでも、多くの国が民主化や経済構造調整の努力を行っており、我が国としてもこのような努力を可能な限り支援してまいります。また、南アフリカのアパルトヘイト問題については、南アフリカ政府と黒人側の話し合いを通じ、平和的解決の道が開かれつつありますが、我が国としては、今後とも南アフリカ当事者との対話の拡大、南アフリカ黒人支援の強化等を通じ、このような努力を支援してまいりたいと思っております。
 世界経済は、主要国間の大幅な対外不均衡、根強い保護主義圧力などの問題を依然として抱えており、さらに、最近に至って先進国経済が減速する一方、湾岸危機の影響が懸念をされております。
 我が国は、世界第二の経済大国として、このような状況に対処し、世界経済の健全な発展を確保するために一層積極的に貢献していかなければなりません。特に、ウルグアイ・ラウンド交渉については、仮にこれが失敗するようなことになった場合の国際的悪影響にははかり知れないものがあり、我が国としては、この交渉を何としても早期に成功させるため、引き続き最大限の努力を行ってまいる方針であります。
 また、我が国としては、サミット等を通じ主要先進諸国間の政策協調を積極的に推進いたします。さらに、対外経済関係を円滑に運営するため、今後とも内需主導型の経済運営を堅持するとともに、市場アクセスの一層の改善、規制緩和を初めとする構造調整の推進などを通じて輸入拡大に努めてまいります。
 以上のような諸政策を推進していく上でも、平和のための協力、政府開発援助の拡充、国際文化交流の強化を三つの柱とする国際協力構想の一層の強化が重要であり、我が国は今後ともこのための努力を行ってまいります。また、国際社会に貢献するという同じ考え方に立って、地球環境、麻薬、国際テロ、難民、人権などの人類共通の問題の解決のための協力や、技術移転を含む科学技術面での国際的貢献を引き続き強化をしてまいります。
 平和のための協力について我が国は、従来より国連平和維持活動に対する資金協力を行うとともに、ナミビア、ニカラグア及びハイチにおける国連選挙監視団に要員を派遣してまいりました。今後さらに、国連平和維持活動に対する協力を含め、憲法の精神にのっとり、人的貢献を一層迅速かつ効果的に行うための体制を早急に整備することが重要であります。このような観点に立って、政府としては、新たな国際協力のあり方についてできる限り早い時期に成案を得たいと考えております。
 軍縮の分野におきましては、今般の湾岸危機を通じてその重要性が再認識されつつある核、化学・生物兵器及びミサイルの不拡散体制の強化や通常兵器の国際移転に関する透明性、公開性の増大などを目指す国際的な努力に、我が国としても積極的に参画してまいります。また、軍縮会議において、核実験禁止に関する議論の進展及び化学兵器包括禁止条約の採択のために、我が国としても一層の努力を行ってまいる所存であります。
 我が国の国際協力の中心は政府開発援助であります。多くの開発途上国において経済困難が一層深刻化している中で、世界の国民総生産額の一割を超える経済力を有する我が国としては、今後とも政府開発援助の拡充強化を図っていかなければなりません。このため、現在実施中の第四次中期目標に沿って、引き続き政府開発援助の着実な量的拡充、内容の改善及び援助実施体制の強化に努力するとともに、援助の効果的、効率的実施に努めてまいります。
 さらに、我が国と諸外国との間で、相互の文化の紹介や知識の交流を通じ、一層深みのある相互理解を実現すべく努力をしてまいります。また、世界の文化遺産の保存を図り、開発途上国との文化協力を推進してまいります。
 このように激動する国際情勢に的確に対応し、外交活動を行っていくためには、外交実施体制の一層の強化が必要であります。また、今般の湾岸危機を通じてその重要性が改めて認識された危機管理体制や海外における邦人の保護のための体制の強化も必要であり、これらにつき一層の努力を行ってまいる所存であります。
 我が国は今後、その持てる経済力と科学技術力を十二分に活用して、世界の平和と繁栄の確保のために進んで責任と役割を果たしていかなければなりません。そうすることによって初めて我が国は諸外国からの信頼を得ることができるのであり、この信頼なくして我が国が国際社会において名誉ある地位を占めることはできません。
 政府がこのような考え方に立って多方面にわたる外交を進めていくに当たって、国民の皆様の御理解と御協力は不可欠であります。政府といたしましても、全力を傾けて積極的な外交の推進に取り組んでまいる決意であり、国民及び議員の皆様の力強い御支援を改めてお願い申し上げる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(土屋義彦君) 橋本大蔵大臣。
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(橋本龍太郎君) 平成三年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたします。
 昨年八月のイラクによるクウェートへの侵攻以来緊迫が続いておりました湾岸情勢は、先般の国際連合安全保障理事会決議に基づく関係諸国による武力行使により、さらに重大な局面を迎えました。
 政府といたしましては、湾岸地域における戦闘行為が早期に終結し、中東において永続性のある平和と安定が一日も速やかに達成されることを強く望むものでありますが、先般、国際的平和と安全を回復するための関係諸国の行動に対し、国際連合安全保障理事会決議に従って、できるだけの支援を行う決意を表明いたしました。また、関係国際機関とも協力して、避難民の救済のため可能な限りの援助を行うこととし、既に実施に移しつつあります。さらに、国際協調のもとで、我が国経済への悪影響を最小限に抑止し、国民生活の安定に努力してまいりたいと考えております。
 ここで、特に湾岸地域における平和回復活動に対する我が国の支援に関して一言申し上げます。
 政府は、今般、我が国として国際社会におけるその地位にふさわしい支援を行うとの観点から、湾岸平和基金に対して、従来の拠出分に加え、新たに九十億ドルの資金を拠出することを決定いたしました。また、このための財源措置については、従来の特例公債によることなく、新たに臨時的な税制上の措置を講ずることを基本とし、税収が入るまでの間はつなぎのための臨時的な国債を発行することとしたいと考えております。これらの措置につきましては、今後別途、今国会に平成二年度補正予算(第二号)及び同関連法案を提出し、御審議をお願いする考えであります。かかる支援を行うことは、平和を希求する国際社会において主要な地位を占める我が国が積極的に果たすべき責務であり、これを適切に果たしていくためには、国民の皆様方に広くその負担をお願いせざるを得ません。それは痛みを伴うことでありますが、今日の国際社会の中にあって我が国国民があまねく平和を享受していることに思いをいたし、御理解と御協力を切にお願いいたす次第であります。
 次に、財政金融政策の前提となる最近の内外経済情勢について申し述べます。
 現在、我が国経済は、設備投資と個人消費を両輪として、内需を中心とした自律的拡大を続けております。物価につきましては、これまでのところ総じて安定的に推移しておりますが、労働力需給の引き締まりや不安定な原油価格の動向などもあり、今後の動向には細心の注意を払っていく必要があります。対外面では、経常収支の黒字幅が縮小を続けるなど、対外不均衡の是正は着実に進んでおります。
 国際経済情勢を見ますと、先進国においては、アメリカ、イギリス等で景気後退の様相があらわれてきており、また、湾岸情勢という不透明な要素はあるものの、これまでのところ総じて持続的な経済成長が続いております。他方、主要国間においては、着実に改善が進んでいるものの、なお対外不均衡が存在し、保護主義的な動きも引き続き根強いものがあります。累積債務問題につきましては、前進が見られるものの、なお解決に向けての努力を必要としております。ソ連・東欧諸国におきましては、困難な経済環境のもとで、引き続き市場経済への円滑な移行が大きな課題となっております。
 私は、このように激動を続ける国際情勢のもとで、世界経済の安定を確保していくため、各国が協調して対応していくことが極めて重要であると考えます。先日開催されました七カ国蔵相・中央銀行総裁会議におきましても、湾岸情勢を初めとする国際経済及び金融上の諸問題につき意見交換が行われ、改めて経済政策協調の枠組みを堅持することを確認するとともに、主要国間の協力を強化し、為替市場の動向を監視していくことが合意されたところであります。
 なお、今般の会合におきまして、私から先般の訪中の際の中国の改革・開放政策の現状等についての印象を具体的に述べたところ、各国から強い関心が寄せられておりました。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、我が国を取り巻く状況を踏まえ、これから申し述べる諸課題に取り組んでまいります。
 第一の課題は、内需を中心としたインフレなき持続的成長を確保していくことであります。
 ただいまも申し述べましたように、我が国経済は、内需主導型の自律的な成長を続けておりますが、今後の経済運営に当たっては、湾岸情勢等を注視しつつ、物価の安定を維持しながら、この状況をできる限り長期かつ安定的に持続させることが肝要であります。
 このような見地から、平成三年度予算につきましては、公債依存度の引き下げを図るなど、財政改革をさらに推進するとの考え方のもとに編成いたしました。公共投資につきましては、公共投資基本計画の初年度として着実な第一歩を踏み出すため、特に国民生活の質の向上に密接に関連する分野を中心に、社会資本の充実に努めたところであります。
 金融面では、一昨年五月以来、公定歩合が五回にわたり引き上げられるなど、内外経済のときどきの動向に応じた適切な措置がとられたところであります。今後とも、内外の諸情勢を総合的に勘案して、適切かつ機動的な金融政策の運営に努めてまいりたいと考えております。
 昨年は、一時、為替相場及び金融資本市場が不安定になる局面もありましたが、持続的な経済成長を確保する上で、これらの安定が重要であることは申し上げるまでもありません。今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図るとともに、金融資本市場の動向を十分注視し、その安定を期してまいりたいと存じます。
 第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。
 平成三年度予算におきましては、新しい中期的財政運営の目標のもとでの初年度の予算として、さらに歳出の徹底した見直し、合理化に取り組むことなどにより、公債発行額を可能な限り縮減し、公債依存度を前年度当初予算の八・四%から七・六%に低下させるなど、我が国財政の健全化に向けて新たな第一歩を踏み出すことができました。
 しかしながら、連年の公債発行により公債残高は平成三年度末には百六十八兆円にも達する勢いであり、国債費が歳出予算の二割を超えて他の政策的経費を圧迫するなど、我が国財政は依然として極めて厳しい状況にあることに変わりはありません。
 財政改革の目的は、一日も早く財政が本来の対応力を回復することにより、今後一段と進展する人口の高齢化や国際社会における我が国の責任の増大など今後の社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応し、豊かで活力のある経済社会の建設を進めていくことにあります。
 このため、今後の財政運営に当たっても、後世代に多大の負担を残さず、再び特例公債を発行しないことを基本として、公債依存度の引き下げ等により、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げることに引き続き全力を傾けてまいる所存であります。
 第三の課題は、土地税制の総合的な見直し等税制上の諸問題に適切に対応することであります。
 土地税制のあり方につきましては、昨年四月以来、税制調査会において、土地基本法の理念を踏まえ、土地に関する税負担の適正、公平を確保しつつ、あわせて土地政策に資するという観点から、保有、譲渡、取得の各段階にわたり総合的な見直しが進められてきたところであり、新しい土地保有税の創設を初めとする数々の御提言をいただきました。
 政府といたしましては、これを踏まえ、平成三年度の税制改正の一環として、土地税制の総合的な見直しを行い、既にその内容を決定いたしております。今後、早急に所要の法律案を今国会に提出し、その実現を図るべく最善の努力を傾けてまいる所存であります。
 今回の土地税制の見直しにおきましては、新たに地価税を創設することとしたほか、個人及び法人の土地譲渡益に対する課税の強化及び事業用資産の買いかえ特例等の見直しを行う一方、優良住宅地の供給等土地の有効利用に資する譲渡に係る税負担を軽減し、また、農地等に係る相続税の納税猶予制度の見直し、不動産所得に係る損失の損益通算制度の見直し等の措置を講ずることとしております。
 このうち、地価税は、公共的性格を有する資産である土地に対し、その資産としての有利性を縮減するため、土地の資産価値に応じた税負担を新たに求めるものであります。地価税の創設は、固定資産税及び特別土地保有税の見直しと相まって、土地の保有コストに対する意識を高め、土地の有効利用の促進等土地対策に資する上で極めて大きな意義を有するものと考えます。
 なお、土地問題は現下の内政上の最重要課題であり、その解決のためには、税制面のみならず、土地基本法の趣旨に沿って各般の措置が講ぜられる必要があることは申すまでもありません。
 金融機関の土地関連融資につきましては、投機的土地取引等に係る不適正な融資を排除すべく厳正に指導してきたところであり、昨年四月にはいわゆる総量規制を導入したところでありますが、公共的な使命を有する金融機関が社会的信頼を損なうことのないよう、その適正な業務運営の確保について引き続き厳正な指導に努めてまいる所存であります。
 消費税を初めとする税制上の諸問題につきましては、第百十八回国会における法案処理の結果を踏まえて設置された税制問題等に関する両院合同協議会において、引き続き協議が行われるものと承知しております。政府といたしましては、消費税の必要性を踏まえつつ、国民の全体的、長期的利益といった高い次元から協議が行われ、建設的な合意が得られることを期待いたしております。
 なお、同協議会において具体的な合意が得られれば、その趣旨に沿って誠実かつ迅速に対応してまいる所存であります。
 第四の課題は、調和ある対外経済関係の形成と世界経済発展への貢献に努めることであります。
 世界経済は、貿易や直接投資の拡大とともに相互依存関係をさらに深めつつあり、もはや、一国の経済は他国との円滑な経済関係なしには成り立たないという状況にあります。このような状況のもとで、国際社会において重要な地位を占める我が国は、調和ある対外経済関係の形成に努めるとともに、世界経済の発展のために積極的に貢献していく必要があると考えます。
 日米間の経済関係は、世界経済の安定と発展のために特に重要なものの一つと考えられます。昨年六月、日米構造問題協議の最終報告が取りまとめられましたが、その中に盛り込まれた措置は、両国の構造調整の推進に資するものであり、我が国としては国民生活の質の向上という観点からもその着実な実施に努めているところであります。
 保護主義的な動きを回避し、多角的自由貿易体制を維持強化することは、世界各国の経済発展と国民生活向上の基礎であります。このような観点から、昨年末、交渉が継続されることとなったウルグアイ・ラウンドにつきましては、その成功裏の終結に向けて、各国と協調しつつ、一層の努力を継続していくことが肝要と考えております。
 関税制度につきましては、本年度末の適用期限が到来する特恵関税制度の期限をさらに十年延長する等の措置を講ずることとしております。
 経済協力につきましては、開発途上国の自助努力を支援するため、政府開発援助の着実な拡充と資金還流措置の実施に努めているところであります。
 累積債務問題につきましては、新債務戦略を積極的に支持し、所要の協力を行っていく考えであります。
 東欧諸国につきましては、一昨年来の民主化、自由化の動きの中で、我が国としても、西側諸国の一員として相応の協力を行ってきているところであります。また、本年に設立が予定されている欧州復興開発銀行が設立された暁には、我が国としても、これに積極的に協力する所存であります。
 第五の課題は、金融資本市場の自由化、国際化を着実に進めていくことであります。
 金融資本市場の自由化、国際化は、より一層の競争原理の活用により、国民の金融に対するニーズの多様化、高度化に対応し、利用者利便の向上に資するとともに、我が国経済の効率化と発展に寄与するものであります。また、我が国市場が世界の主要金融センターの一員としての責務を果たし、世界経済の発展に貢献していく上でも大きな意義を有するものと考えられます。
 このような観点から、預金金利の一層の自由化、外国金融機関のアクセスの拡大などの措置を逐次講じ、短期金融市場、国債の発行・流通市場、先物市場の整備、拡充などに努めてまいりました。預金金利の自由化につきましては、小口定期預金金利の完全自由化に向けて着実に前進してきているほか、普通預金等流動性預金金利の自由化についても検討を進めているところであります。また、証券取引につきましては、内外の信頼をさらに深め、取引の公正性、市場の透明性を高めるため、内部者取引規制の整備、株券等の大量保有の状況に関する開示制度の導入など所要の措置を講じてまいりました。
 今後とも、信用秩序の維持、金融機関の健全性の確保等を図りつつ、我が国金融資本市場の自由化、国際化を着実に進めてまいる所存であります。
 さらに、今後の我が国の金融制度のあり方、資本市場のあり方及び保険事業のあり方等につきましては、引き続き関係各審議会において鋭意審議が進められております。
 次に、平成三年度予算の大要について御説明いたします。
 平成三年度予算は、真に必要な財政需要に適切に対応しつつ、公債依存度の引き下げを図るため、歳出の節減合理化や税外収入の確保等、歳入歳出両面にわたる見直しを行うことにより、公債発行額を可能な限り縮減することとして編成いたしました。
 歳出面につきましては、一般歳出の規模は三十七兆二千三百八十二億円となっており、これに地方交付税交付金及び国債費等を加えた一般会計予算規模は七十兆三千四百七十四億円となっております。
 国家公務員の定員につきましては、第七次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、二千四百九十九人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。
 なお、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律に基づき平成二年度まで暫定措置が講じられてきた事業に係る補助率等につきましては、改めて国、地方の財政事情、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を勘案しながら一体的、総合的な検討を行い、所要の措置を講ずることといたしました。これにつきましては、別途、国の補助金等の臨時特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 税制につきましては、平成三年度の税制改正として、土地税制の総合的な見直しのほか、住宅取得促進税制の拡充等当面の政策的要請に対応する措置を講ずるとともに、租税特別措置の整理合理化を行う等の改正を行うこととしております。
 税の執行につきましては、今後とも国民の信頼と協力を得て、一層適正、公平に実施するよう努力してまいる所存であります。
 公債発行予定額は前年度当初予算より二千五百二億円減額し、五兆三千四百三十億円となっております。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は二十三兆六千七百十六億円となります。
 財政投融資計画につきましては、社会資本の整備、住宅対策、国際社会への貢献等の政策的要請にこたえ、資金の重点的、効率的な配分に努めており、その規模は三十六兆八千五十六億円、このうち資金運用事業を除いた一般財投の規模は二十九兆一千五十六億円となっております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 公共事業関係費につきましては、物価の安定を基礎とする内需を中心とした景気の持続的拡大の維持に配慮しつつ、社会資本整備の重要性にかんがみ、着実にその拡充を図るとともに、NTT株式売り払い収入の活用による無利子貸付事業を維持することといたしております。その配分に当たっては、生活関連重点化枠などを通じて、下水道、環境衛生、公園など国民生活の質の向上に結びつく分野に重点を置くとともに、地域の実情に十分な配慮がなされるよう対処してまいる所存であります。また、住宅金融公庫における貸付限度額の引き上げ、公共賃貸住宅の供給の促進など住宅対策の拡充を図っております。なお、平成二年度末に期限の到来する八分野の五カ年計画については、おのおの新たな計画を適切に策定することといたしております。
 社会保障関係費につきましては、二十一世紀に向かって活力ある福祉社会を形成していくことが重要な課題であります。このため、給付と負担の適正化、公平化等を図ることにより、将来にわたって安定的かつ有効に機能する制度を構築していく必要があり、このような観点から老人保健制度の見直しを行うことといたしております。また、すべての国民が安心してその老後を送ることができるよう高齢者保健福祉推進十カ年戦略を着実に実施するとともに、児童が健やかに生まれ育つための総合的な環境づくりを推進するため児童手当制度の充実を図るなど、国民に身近な施策についてきめ細かな配慮を行っております。さらに、高年齢者雇用対策等の施策を推進することといたしております。
 文教及び科学振興費等につきましては、教育環境の整備、生涯学習の振興、芸術、文化、スポーツの振興などの施策の充実に努めるとともに、基礎的、創造的研究を初めとする科学技術の振興のための施策を推進することといたしております。
 中小企業対策費につきましては、大店法規制緩和等中小企業を取り巻く環境の変化に対応し、その近代化及び構造改善を促進するための施策の内容の充実を図ることといたしております。
 また、農林水産関係予算におきましても、農業を取り巻く内外の諸情勢を踏まえ、牛肉輸入自由化対策を講ずるとともに、我が国農業の産業としての自立性を高め、あわせて活力ある農村社会を建設するための施策を推進することといたしております。
 経済協力費につきましては、厳しい財政事情、第四次中期目標、他の経費とのバランス等を総合勘案し、政府開発援助予算について八・〇%増といたしており、また、その内容の改善を図る観点から、無償資金協力の増額、実施体制の充実などに配慮いたしております。
 防衛関係費につきましては、最近の国際情勢、財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、今回策定された中期防衛力整備計画に沿って、効率的で節度ある防衛力の整備に努めることといたしております。
 エネルギー対策費につきましては、地球環境保全に留意しつつ、安定的なエネルギー供給を確保するため、中長期的観点に立った総合的なエネルギー政策を着実に推進することといたしております。
 地方財政におきましては、中期的な地方財政の健全化策を講じつつ、円滑な地方財政運営のため所要の地方交付税総額を確保した上で、地方交付税の年度間調整としての特例減額等を行うことといたしております。なお、地方団体におかれましても、歳出の節減合理化をさらに推進され、より一層効率的な財源配分を行われるよう要請するものであります。
 以上、平成三年度予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
 昭和から平成に変わって三年目に入り、二十一世紀まであと十年となりました。
 一九八〇年代は、七〇年代に生じた二回の石油危機を乗り越え、我が国が国際的に飛躍した時代でありました。これからの十年は、二十一世紀を見据えて、来るべき世界にも例を見ない本格的な高齢化社会に十分対応できるだけの基礎固めをするとともに、国際社会における主要国の一員たる自覚をもって地球規模の諸課題を担っていかなければなりません。
 湾岸情勢を初めとする国際情勢は流動的でありますが、その中にあって相対的に好調を持続している我が国経済の基調を維持し、あわせて、これまで申し述べました諸課題を一歩一歩着実に実行していくことが重要であると考えます。
 国民各位の一層の御理解と御支援を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(土屋義彦君) 越智国務大臣。
   〔国務大臣越智通雄君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(越智通雄君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について、激動する平成三年の初頭に当たり、所信の一端を申し述べたいと存じます。
 去る一月十七日、アメリカ、イギリス、アラブ諸国を含む国連加盟国は、イラクに対する武力の行使に踏み切りました。我が国としては、国際の平和と安全を回復するための関係諸国の行動に対し、できる限りの支援を行うこととしており、今般、九十億ドルの新たな支援策を決定したところであります。イラクが国連安全保障理事会の決議を受け入れ、湾岸地域に一日も早く平和と安定が回復することを念願するものであります。
 政府としては、今回の事態が我が国の経済に及ぼす影響を最小限にとどめ、国民生活安定の確保に万全を期す所存であります。幸い、過去二回の石油ショックのときと比べると、我が国経済の石油に対する依存度の低下、石油備蓄の大幅な増加等が見られるところであります。政府、国民の適切な対応と相まって、国民生活に大きな影響を与えることなくこの事態を克服できるものと考えております。国民各位におかれましては、今後とも冷静な行動をお願いする次第であります。
 本年は、二十世紀最後の十年に入る節目の年であります。我が国経済は、戦後多くの困難を乗り越え、世界で有数の経済大国となってまいりました。その経済規模では名目国民総生産が四百兆円を超え、アメリカに次いで世界第二の地位を占め、また、一人当たり国民所得においても世界の最高水準にあります。
 こうした中で我が国の国際社会における責任はますます大きくなり、直面する内外の課題に真剣にこたえていくことが求められております。
 まず、国際経済面では、自由と民主主義のもとで市場経済へ向かっての大きな流れが生じており、その中で貿易、直接投資の拡大等を通じて世界経済の相互依存が強まっております。このような状況のもとで、我が国としては、経済面は言うまでもなく、技術面、文化面等幅広い分野で我が国の持てる力を世界のために積極的に活用していく必要があります。
 また、国内経済について見ますと、景気の拡大は五年目に入っておりますが、これをできる限り持続させていくとともに、高齢化社会への対応を的確に進めるなど、その成果を国民生活の豊かさへ結びつけていく必要があります。
 さらに、二十一世紀までの残された十年を貴重な期間としてとらえつつ、新世紀の我が国社会の姿についての長期的な展望のもとに、経済構造の調整に積極的に努めていく必要があります。すなわち、全国的な経済成長の陰に隠されている地域格差の問題、物価安定基調のもとで見落とされがちな内外価格差の存在、さらには、経常収支の黒字が着実に縮小する中での日米間の不均衡改善のおくれなど、長年にわたり指摘されてきている諸問題をこの際解決せねばなりません。
 すなわち、現在の我が国経済は、景気の持続的拡大と経済の構造調整という二重の課題に対し、同時に対応していくことを求められているのであります。
 私は、今こそ政府の政策努力、国民の柔軟な対応力をもとに、我が国経済社会を国際社会の中で、その地位にふさわしいより開かれたものとするとともに、生活の充実感を心から味わえるような社会につくり上げていかねばならないときと考えております。
 次に、内外の経済の現状と平成三年度の経済運営の基本方針について申し述べたいと存じます。
 まず、世界経済の動向を見ますと、各国間の政策協調が進展する中で、八年を超える息の長い拡大を続けております。このような長期にわたる各国足並みのそろった景気拡大は、戦後の世界経済の歩みを振り返ってみても希有のことであります。先進諸国では、このところアメリカ、イギリス等で景気後退の様相があらわれてきておりますが、その他の西欧諸国では、ドイツの統一が実現する中で、総じて好調な景気拡大が続いております。また、ソ連・東欧諸国は市場経済への移行に取り組む過程で、困難な経済状況の克服に努力しております。アジア・太平洋地域においてはやや鈍化が見られますものの、景気拡大が続いております。
 一方、主要国間においてはなお対外不均衡が存在し、保護主義的な動きにも根強いものがあり、また、発展途上国の中には多額の累積債務を抱える国があるなど、引き続き解決を図っていかなければならない課題が数多く残されております。
 他方、我が国経済は、個人消費や設備投資を中心とした内需主導型の景気拡大が続いており、昭和六十一年十二月以来の景気上昇は今月で五十カ月目に入っております。こうした中で、企業収益は引き続き増加しており、雇用者数は堅調に増加し、労働力需給は引き締まり基調が続いております。また、製品類等を中心に輸入が増加していることなどから、経常収支の黒字幅は縮小傾向にあります。
 これらの内外の経済動向を勘案しますと、平成二年度の実質経済成長率は、当初の見通しを上回り、五・二%程度になるものと見込まれます。
 以上のような状況を踏まえ、私は、平成三年度の経済運営に当たりましては、特に次の諸点を基本的な柱としてまいりたいと考えております。
 第一の柱は、内需を中心とした景気の持続的拡大を図ることであります。
 このため、今後とも主要国との政策協調にも配慮しつつ、為替レートの安定を図るとともに、物価の安定を基礎とし、適切かつ機動的な経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 また、我が国経済の調和ある発展のため、各地域の特性と創意を生かしつつ地域経済の振興を推進してまいります。
 公共事業については、国土の均衡ある発展に留意しつつ生活に密接に関連する事業の充実を図ってまいります。
 中小企業対策については、消費者のニーズの変化に的確に対応できる中小小売商業の育成等、創意と活力のある中小企業の育成を図ってまいります。また、雇用面においては、中小企業や地域における人材の確保、定着や女子の就業環境の整備等を積極的に推進してまいります。
 金融政策につきましては、内外の経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、今後とも適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。
 平成三年度の我が国経済は、以上のような政府の施策と民間経済の活力が相まって、引き続き対外不均衡の是正を進めながら内需を中心とした着実な拡大を実現し得るものと考えられます。この結果、平成三年度の実質経済成長率は三・八%程度になるものと見込まれます。
 第二の柱は、保護貿易主義の抑止と自由貿易体制の維持強化に向け率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化への積極的な貢献を行っていくことであります。
 このため、まず、貿易の拡大均衡による対外不均衡の着実な改善を目指して、市場アクセスの改善を図るとともに、輸入品の我が国市場への定着等に努めてまいります。
 また、投資受け入れ国との調和に配慮しながら海外直接投資の推進を図るとともに、投資の交流を通じて相互依存関係を一層深めるため、対日直接投資についてもその促進に努めてまいります。
 さらに、ウルグアイ・ラウンド交渉の成功に向けて一層の貢献を行い、交渉が成功裏に終結した後は、その成果の着実な実施に努力してまいりたいと考えております。
 日米構造問題協議の最終報告に盛り込まれました措置については、両国の構造調整の推進に資するものであり、我が国としては国民生活の質の向上という観点からもその着実な実施に努めてまいりましたが、なお一層の努力が必要であります。
 発展途上国への経済協力につきましては、我が国が世界経済の持続的発展等に貢献していく上で極めて重要な施策であり、その拡充と効果的な推進を図り、政府開発援助の第四次中期目標の達成に向けて努力するとともに、累積債務国等に対する資金還流を促進してまいります。なお、湾岸危機により経済的な困難を抱えるに至った域内周辺諸国に対しては適切な経済協力を実施すべく努めてまいります。
 さらに、相互依存関係が強まっているアジア・太平洋諸国との協力関係を強化するため、アジア・太平洋経済協力を推進するとともに、域内の経済情勢、政策課題等について対話を進めてまいります。
 東欧諸国については、各国の変革の方向や状況を見きわめつつ、適切に市場経済への円滑な移行を支援してまいります。
 地球環境については、その維持、改善が世界経済の持続的安定的発展にとって不可欠であることを認識する必要があります。我が国としては、地球環境問題についての知識、経験等を活用しつつ、国際的協調のもとに、総合的かつ長期的な観点から技術開発を推進すること等により、世界的問題の解明と解決に貢献するとともに、発展途上国への協力を進めてまいります。
 第三の柱は、物価の安定基調を維持していくことであります。
 物価の安定は、国民生活安定の基礎であり、均衡のとれた経済発展の基本条件であります。
 最近の物価の動向を見ますと、昨年九月以降、石油価格の上昇の影響が見られたものの、総じて物価は安定基調にあります。平成二年度の卸売物価は二・〇%程度の上昇、消費者物価は三・一%程度の上昇となるものと見込まれます。
 平成三年度についても、物価は引き続き安定的に推移し、卸売物価はほぼ横ばい、消費者物価は二・四%程度の上昇となるものと見込まれます。
 今後とも、原油価格、為替レート、労働力需給等の動向を十分注視しつつ、価格動向の調査、監視に努める等、物価の安定に最善の努力を尽くしてまいる所存であります。
 また、内外価格差問題につきましては、政府・与党内外価格差対策推進本部の決定に従い、着実に施策が実施されております。内外価格差の実態把握、流通についての規制緩和・独占禁止法の厳正な運用、輸入の促進等が実施されるとともに、電話料金等が引き下げられたほか、消費者への情報提供も積極的に進められております。今後とも内外価格差の是正、縮小のため各般の施策を推進してまいる所存であります。
 第四の柱は、地価の適正化、労働時間の短縮等国民生活に関連する分野を重視し、消費者の視点に十分配慮しつつ、経済構造調整を積極的に進め、国民生活の一層の充実を図っていくことであります。
 近年の地価高騰に伴い、首都圏等においては一般の勤労者の住宅取得が著しく困難になっているなど、大都市圏を中心として土地問題の解決は現下の社会的急務となっております。政府としては、土地基本法の理念のもとに、地価の適正化を図るため、大都市地域における住宅宅地供給の促進、土地税制の総合的な見直し等を速やかに実行してまいります。
 社会資本の整備につきましては、近年、その整備状況が向上してきているものの、なお立ちおくれている分野が残されております。国民生活の豊かさを実感できる経済社会の実現を図っていくためには、今後とも、社会資本の一層の充実に向け積極的、計画的に取り組んでいくことが重要であります。このため、昨年取りまとめた公共投資基本計画を指針として、二十一世紀に向け着実に社会資本整備の充実が図られるよう適切に対応してまいる所存であります。
 労働時間の短縮につきましては、国民的コンセンサスの形成と労使の自主的努力に対する指導、援助等を通じ、週四十四時間労働制等を踏まえた完全週休二日制の普及、連続休暇の普及拡大等に努めてまいります。
 消費者行政につきましては、国際化、情報化、サービス化、高齢化の進展など、消費者を取り巻く環境の変化に適切に対応しつつ、引き続き積極的に取り組んでまいります。悪質な商法による被害の防止や商品、サービスの安全性の徹底を図るとともに、消費者の選択の幅を広げ、より豊かな生活を営むことができるよう、消費者の主体的な役割を支援する観点から、国民生活センター等を通じ積極的に情報提供を行うとともに、青少年期からの消費者教育の充実に取り組んでまいります。なお、製造物責任制度については、国際化の進展に対応した制度の調和を図る観点からも、総合的な検討が必要と考えており、国民生活審議会に専門的に審議する場を設け、早急に具体的検討を進めてまいる所存であります。
 また、現下の国際石油情勢、中長期的なエネルギー需給の動向並びに地球環境問題や廃棄物処理問題等の課題に対応するとともに、限られた資源、エネルギーを有効に活用し、質の高い生活の実現を図っていくため、省資源、省エネルギー対策を積極的に推進してまいります。
 以上、我が国経済が当面する主な課題と経済運営の基本的方向について所信を申し述べました。
 これらの諸施策を進めていくに当たっては中長期的な展望が必要なことは言うまでもありません。現在、昭和六十三年に決定された経済計画「世界とともに生きる日本」に沿って内需主導型経済構造の定着を図るための諸般の施策を進めているところでありますが、さらに長期間にわたって我が国経済社会が進むべき道筋を視野に入れて経済運営を行っていくことも必要であります。こうした観点から、経済審議会二〇一〇年委員会において、我が国経済とこれを取り巻く国際環境等についての長期展望作業を進めております。
 我が国経済は円高不況を克服し、力強い成長を続けてきました。その原動力は、企業や国民が変化に対し積極的な対応を行ったことにあると考えます。しかしながら、そのような努力の成果が単なる経済の量的な拡大にとどまることがあってはなりません。国民の努力の成果を国民一人一人の生活の豊かさ、ゆとりの広がりに結びつけていかなければなりません。
 私は、個人の能力が十分に開発され、国民一人一人の個性が自由に発揮されるとともに、将来に向けての我が国の発展力の基盤が整備されていくような、豊かで潤いのある経済社会の形成を目指してまいります。
 また、米ソ二大国がそれぞれの主導的役割を果たしてきた戦後の国際経済社会構造は、今日、大きな変貌を遂げ、各国は新たな国際社会の秩序と連帯を求めて真剣に模索を続けております。その中で、経済的に大きな地位を有する我が国は、新しい枠組みの構築に向けて積極的な貢献を行っていくことが強く期待されております。そうした枠組みの形成に当たっては、自由な市場経済の原則を尊重し、保護主義の動きを排し、自由主義経済体制を堅持していくことが特に重要と考えます。
 激動する今日の世界情勢の中にあって、国際社会の持続的な発展のために価値ある貢献を行い、世界から敬愛される国家となるよう努力を傾注しようではありませんか。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
#16
○議長(土屋義彦君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(土屋義彦君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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