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#1
第120回国会 予算委員会第二分科会 第3号
平成三年三月十三日(水曜日)
    午前十時開議
 出席分科員
   主 査 林  義郎君
      倉成  正君    穂積 良行君
      増岡 博之君    小澤 克介君
      串原 義直君    佐藤 恒晴君
      竹内  猛君    土肥 隆一君
      和田 貞夫君    二見 伸明君
      冬柴 鐵三君
   兼務 沢田  広君 兼務 渋谷  修君
   兼務 細川 律夫君 兼務 山中 末治君
   兼務 鳥居 一雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 左藤  恵君
        大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 堀田  力君
        法務大臣官房会
        計課長     木藤 繁夫君
        法務省民事局長 清水  湛君
        法務省刑事局長 井嶋 一友君
        法務省保護局長 佐藤 勲平君
        法務省人権擁護
        局長      篠田 省二君
        法務省入国管理
        局長      股野 景親君
        大蔵大臣官房会
        計課長     目崎 八郎君
        大蔵省主計局次
        長       田波 耕治君
        大蔵省理財局次
        長       田中  寿君
        大蔵省銀行局長 土田 正顕君
        国税庁間税部長 坂本 導聰君
 分科員外の出席者
        国土庁大都市圏
        整備局筑波研究
        学園都市建設推
        進室長     羽生 洋治君
        大蔵省主計局主
        計官      浜中秀一郎君
        大蔵省主計局主
        計官      太田 省三君
        厚生大臣官房政
        策課長     佐野 利昭君
        厚生省保健医療
        局整備課長   水田 邦雄君
        厚生省社会局保
        護課長     炭谷  茂君
        社会保険庁総務
        部経理課長   福田 孝雄君
        労働省職業安定
        局雇用政策課長 野寺 康幸君
        予算委員会調査
        室長      多田 俊幸君
    ─────────────
分科員の異動
三月十三日
 辞任         補欠選任
  串原 義直君     小澤 克介君
  佐藤 敬治君     関  晴正君
  冬柴 鐵三君     藤原 房雄君
  正森 成二君     児玉 健次君
同日
 辞任         補欠選任
  小澤 克介君     和田 貞夫君
  関  晴正君     永井 孝信君
  藤原 房雄君     冬柴 鐵三君
  児玉 健次君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  永井 孝信君     土肥 隆一君
  和田 貞夫君     竹内  猛君
  冬柴 鐵三君     二見 伸明君
  小沢 和秋君     辻  第一君
同日
 辞任         補欠選任
  竹内  猛君     佐藤 恒晴君
  土肥 隆一君     秋葉 忠利君
  二見 伸明君     近江巳記夫君
  辻  第一君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  秋葉 忠利君     佐藤 敬治君
  佐藤 恒晴君     和田 貞夫君
  近江巳記夫君     宮地 正介君
  吉井 英勝君     正森 成二君
同日
 辞任         補欠選任
  和田 貞夫君     串原 義直君
  宮地 正介君     竹内 勝彦君
同日
 辞任         補欠選任
  竹内 勝彦君     冬柴 鐵三君
同日
 第一分科員鳥居一雄君、第三分科員細川律夫君
 、第六分科員渋谷修君、山中末治君及び第八分
 科員沢田広君が本分科兼務となった。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 平成三年度一般会計予算
 平成三年度特別会計予算
 平成三年度政府関係機関予算(法務省及び大蔵省所管)
     ────◇─────
#2
○串原主査代理 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。
 主査所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。
 平成三年度一般会計予算、平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算中法務省所管について政府から説明を聴取いたします。左藤法務大臣。
#3
○左藤国務大臣 平成三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 法務省は、法秩序の確保並びに国民の権利保全等国の基盤的業務を遂行し、適正円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。
 法務省所管の一般会計予算額は、四千八百六億六百万円、登記特別会計予算額は、一千三百六十一億二千八百万円、うち、一般会計からの繰入額六百五十五億三千二百万円でありまして、その純計額は、五千五百十二億二百万円となっております。
 この純計額を平成二年度補正後予算額と比較いたしますと、二百三十九億二千万円の増額となり、増加率にいたしまして四・五%となっております。
 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 なお、時間の関係もありますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。
#4
○串原主査代理 この際、お諮りいたします。
 ただいま左藤法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○串原主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ─────────────
   平成三年度法務省所管予定経費要求説明書
 平成三年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は、四千八百六億六百万円であり、登記特別会計予算額は、一千三百六十一億二千八百万円でありまして、その純計額は、五千五百十二億二百万円となっております。
 この純計額を平成二年度補正後予算額五千二百七十二億八千二百万円と比較しますと、二百三十九億二千万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について、御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、前年度定員に比較いたしますと純増七十六人となっております。
 平成三年度の増員は、新規四百六十七人と部門間配置転換による振替増員三十四人とを合わせ、合計五百一人となっております。
 その内容を申し上げますと、
 一 検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、百六人
 二 法務局における登記事件、訟務事件及び人権擁護関係の事件に対処するため、登記特別会計の百六十二人を含め、百六十七人
 三 刑務所における保安体制、分類体制及び医療体制の充実を図るため、百十一人
 四 少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、四十四人
 五 保護観察活動等の充実を図るため、十八人
 六 出入国審査及び在留資格審査等の業務の充実を図るため、四十八人
 七 公安調査活動の充実強化を図るため、五人
 八 法務本省における出入国管理政策等の充実強化のため、二人
となっております。
 他方、減員は、昭和六十一年八月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第七次)の実施について」による平成三年度定員削減分として四百二十五人を削減することとなっております。
 次に、主な事項の経費につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計では、
 一 刑事事件の処理等検察活動に要する経費として、四十一億四千四百万円
 二 刑務所等矯正施設における被収容者の衣食、医療、教育及び作業等に要する経費として、二百七十八億九千七百万円
 三 保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として、五十一億三千五百万円
 四 出入国の管理及び難民の認定等に要する経費並びに在留外国人の登録等に要する経費として、五十四億三千万円
 五 破壊活動防止のための公安調査活動に要する経費として、二十四億七千八百万円
 六 施設費としましては、老朽・狭あい化が著しい基幹の大行刑施設、拘置支所の継続整備及び入国管理局関係施設を含めた法務省の庁舎、施設の整備に要する経費として、百五十一億八千五百万円
をそれぞれ計上しております。
 次に、登記特別会計について御説明申し上げます。
 登記特別会計の歳入予算は、一千四百二十七億五千五百万円歳出予算は、一千三百六十一億二千八百万円でありまして、歳出の主な内容といたしましては、登記事務のコンピュータ化計画を推進するとともに登記事件を適正、迅速に処理するための事務取扱費として、一千二百五十億三千六百万円を計上し、ほかに、登記所等の施設の整備に要する経費として、九十六億五千七百万円を計上しております。
 以上、法務省関係の平成三年度予定経費要求の内容について、その概要を御説明申し上げました。
    ─────────────
#6
○串原主査代理 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。
    ─────────────
#7
○串原主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いをいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
#8
○小澤(克)分科員 法務省に対して、人権擁護行政について、特に部落差別問題について、その現状あるいはその対応等について伺いたいと思います。順次お尋ねいたします。
 まず最初に、最近の部落差別事件の特徴あるいは傾向をどのように認識しておられるか、お願いいたします。
#9
○篠田政府委員 法務省の人権擁護機関が取り扱った同和問題に関する人権侵犯事件数から見てまいりますと、差別事件が増加しているという傾向は特には見られません。その内容から見ましても、結婚差別、就職差別といった人生の岐路における重大な差別事件、そういう事件も減少傾向にございます。しかし、一部にはいまだにいわれのない差別意識に基づく結婚差別あるいは就職差別といった事案も見られますので、今後とも、差別事件が発生したときには積極的に対処し、啓発を行ってまいりたいと考えております。
 なお、差別事象全体の中では、差別落書き、差別言動がかなり多いというのが一般的な傾向でございます。
#10
○小澤(克)分科員 減少傾向にあるとはいえ、なお根強いものがある。しかも結婚あるいは就職といった人生の非常に大きな分かれ目での、したがってまた差別を受ける者にとって極めて打撃の大きい事柄に関してなお根強いものがあるというお話かと思います。いろいろ御努力はいただいているのだろうと思いますけれども、残念なことだろうと思います。
 そこで、さらにお尋ねしますが、今年度は無理かと思いますので八九年で結構でございますが、法務省あるいは法務局が情報収集として扱った部落差別事件の事件数、あるいは人権侵犯と認定されたものが総数でどのくらいあったか、教えていただきたいと思います。
#11
○篠田政府委員 平成元年度におきます法務局、地方法務局が取り扱った同和問題に関する情報収集事案は六百六十四件でございます。
 それから、人権侵犯事件として受理したものは三十二件でございます。
#12
○小澤(克)分科員 この侵犯事件として受理されたものについての処理の中身、内訳がわかりますでしょうか。告発からいろいろあるかと思いますが。
#13
○篠田政府委員 その処理結果は、まだ集計が出ておりません。
#14
○小澤(克)分科員 それでは、やむを得ませんので、次の質問に移ります。
 これらの事件数、特に情報として立件されたものの中で、文部省あるいは労働省、それからまた郵政関係で掌握されたもの、こういったものが含まれておりますでしょうか。また含まれていれば、その件数について教えてください。
#15
○篠田政府委員 委員御指摘の観点からの統計はとっておりませんので、その数字はちょっとお答えできないわけでございますが、ただ就職差別という観点からは数字が出ております。
 就職差別につきましては、人権侵犯一件、情報収集事案八件でございます。
#16
○小澤(克)分科員 文部省関係と私が表現しましたのは、簡単に言えば学校現場における差別事象ということでございます。これは生徒さんに対する差別的言動とかあるいは先生にかかわるものとか、さらには学校現場における悪質な落書き等、いろいろな類型があろうかと思いますけれども、このような観点からの把握はしておられないのでしょうか。
#17
○篠田政府委員 私どもで分類しておりますのは、結婚に関するものそれから就職に関するもの、近隣交際いわゆる村八分的なもの、それから差別言辞等、それから差別落書き、差別文書、その他、こういう分類で統計をとっておりまして、特に同和問題に関して学校関係という面からは統計をとっておりません。
#18
○小澤(克)分科員 それから郵政省関係といいますか、特に最近、通信手段を用いた差別事象というのが非常に目立っているといいますか、しかも極めて悪質なものが頻発しているということも聞いておりますが、このようなものについては把握しておられませんでしょうか。
#19
○篠田政府委員 大きい事件といたしましては、いわゆるパケット通信事件というのがございます。これは目下鋭意関係法務局におきまして情報を収集中でございます。
 それで、通信を使用した事例という角度からは、やはり統計をとっておりません。
#20
○小澤(克)分科員 それぞれについて伺いたいんですが、時間の関係もございますので後回しにしたいと思います。
 そこで、先ほど八九年の情報数あるいは人権侵犯数について、総数を教えていただいたのですが、これは都道府県別にわかりますか。全部というわけにはいきませんので、代表的なところとして大阪府、広島県、福岡県、これらについて明らかにしてください。
#21
○篠田政府委員 平成元年度におきます法務局、地方法務局で受理した人権侵犯事件数は、大阪管内が侵犯事件三件、広島管内が侵犯事件二件、それから福岡管内が侵犯事件二件でございます。
 それから、情報収集事案の数といたしましては、大阪管内が三百五十五件、広島管内が二十二件、福岡管内が七件でございます。
#22
○小澤(克)分科員 情報数について大阪と、それから広島、福岡で大きな隔たりがあることについて疑問なしとしないわけでございます。もちろん人口の違い等もありましょうけれども、それにしてもけた違いに違うというのはどうしてこういうことになるのだろうかと思うわけでございます。これはどういうふうに認識しておられますか。
#23
○篠田政府委員 さまざまな原因が考えられると思いますけれども、一番大きな点につきましては、大阪管内では差別落書きと差別文書が非常に多いということでございます。
 まず差別落書きについて申し上げますと、大阪管内での情報収集の件数が二百二十二件、それに対しまして広島局は四件、福岡局はゼロ。それから、いわゆる差別文書につきましても、大阪局が情報収集事案四十四件、広島局は三件、福岡局は一件、そういうような事情でございまして、差別落書きとそれから匿名の差別文書、そういった件数が大阪では際立って多い、これが一つの原因だというふうに認識しております。
#24
○小澤(克)分科員 これは大阪で特に落書きそれから文書が多いというのはどうしてなんでしょうか。その原因についてどのように考えておられますか。
#25
○篠田政府委員 差別落書き、差別文書、匿名でございまして行為者がなかなか把握できないわけでございます。したがって、その原因を突きとめることができませんけれども、これは全く個人的な推測になってしまうのですけれども、やはり大阪はいろいろな各地から集まってくる人がいる、それに対して広島、福岡では土地の人が多い、そういった関係からよそから来た人が、あるいは気軽にと言うと語弊がありますけれども、やはり地元であると落書きしにくいけれどもよそから来たから落書きしやすい、そういったような風土もあるのではないか、これは推測でございます。
#26
○小澤(克)分科員 この情報収集というのは何らかの端緒があって調査に入るのだろうと思いますが、これはどういったことから最初に把握するわけなんでしょうか。
#27
○篠田政府委員 端緒といたしましては当事者からの申告あるいは人権相談、それから新聞、雑誌等の出版物の記事、放送、そういったようなあらゆる機会をとらえて積極的に情報収集に当たっております。それから人権擁護委員からの通報というのも相当数ございます。
#28
○小澤(克)分科員 差別される側で、解放同盟といった団体があるのは言うまでもないことですけれども、それらの方でも当然どのような差別事象があったか掌握をし、あるいは統計をとっているわけでございますけれども、こちらの数字で言えば、例えば広島はこの八九年で百三件、福岡は百四十五件、大阪とは三分の一ほどですけれども、そんなにけた違いに少なくはないという認識を持っているわけです。このことからいたしますと、情報収集について広島、福岡等ではやや積極性に欠けるのではないだろうかというふうに思わざるを得ないわけでございます。
 この情報収集については、どのような方針といいますか態度で法務局、人権擁護局は臨んでおられるのでしょうか。
#29
○篠田政府委員 申告とか情報等によりまして事件の端緒を得た場合には、人権侵犯事件調査処理規程にのっとりまして積極的に取り組んでいく、そういう方針で臨んでおります。担当者及び人権擁護委員は差別意識を根絶するための啓発活動について自覚と熱意を持って当たっているということでございます。
#30
○小澤(克)分科員 人権侵犯事件調査処理規程というのがございますね。これは法務省の人権調査訓令でしょうか、これによりますと、その第四条に「情報の収集」というのがございまして、「情報の収集は、新聞、雑誌等の出版物の記事、放送その他のものから行うものとし、進んで事件の端緒を得ることに努めなければならない。」こうなっております。この進んで事件の端緒を得ることに努めるというのは、具体的にどんなふうに行動しておられるのでしょうか。
#31
○篠田政府委員 これは抽象的になりますけれども、積極的に取り組む姿勢をもちまして情熱を持って常にアンテナを張っている、そういう心がけで臨んでいるということでございます。
#32
○小澤(克)分科員 そうすると、これは心構えの問題であって、基本的にはその被害者からの申告等を待って立件する、こういうことになりましょうか。
#33
○篠田政府委員 待っているということではなくて、それは申告があれば確実にわかるわけでございますけれども、申告がなくても取り組んでいくということでございます。
#34
○小澤(克)分科員 運動側で把握している数字とちょっと隔たりがあり過ぎるのです。例えば広島に関しては、運動側で把握している情報数百三件に対して法務局でつかんでおられるのが二十二件、福岡に至っては百四十五件に対してたったの七件、このような格差はちょっと看過し得ないものがあるのではなかろうかと思うわけです。この第四条の趣旨が十分生かされてないのではなかろうか、特に広島、福岡においては十分に積極的にこの情報を収集し、それを集約するという姿勢に欠けるのではないだろうかと思わざるを得ないわけでございます。
 どうなんでしょうか。人的にはどの程度の人たちがこの問題に対応できる体制になっているのでしょうか。――すぐつかめなければいいです、時間がないですから。
 数字がつかめないようですので、時間の制約がございますのでその点はまたいつかの機会にさせていただきまして、次に進みます。
 それで、今情報数についてお尋ねをしたのですが、次に人権侵犯というものの数ですけれども、これは情報件数に比べて極めて少なくなっておりますね。大阪で言えば三百五十五件に対して三件。これはどうしてこんなに結果的に少なくなるのか。あるいは例が非常に少ないわけでございますから、これらの概要を、もちろんプライバシーに触れない、差し支えない範囲で紹介していただきたいと思います。
#35
○篠田政府委員 まず、先ほどの数字でございますけれども、人権擁護局の人権擁護を担当しております職員が十五名、それから法務局、地方法務局で人権擁護を担当しております職員が二百七名、これは人権擁護専属でやっております、それから法務局の支局の職員は兼務でやっておりますけれども、人権も担当している職員が千七十六名、合計千二百九十八名でございます。そのほかに約一万三千名の人権擁護委員が人権擁護行政に携わっている、そういうことでございます。
 それから、ただいまの御質問でございますが、ごく概略についてしか述べられませんけれども、結婚差別の代表的な例といたしましては、結婚の相手方が同和地区出身者であるかどうかという身元調査の依頼を受けた興信所が、知り合いの行政書士の印鑑を偽造し、その資格、氏名を詐称して不正に交付を受けた戸籍謄本等によって調査した結果、やはり結婚の相手方が同和出身者である、そういう報告をしたために結婚が破談になった、そういったような事例。
 それから、その被害者である男性と女性の結婚に際して、女性の父親が、相手の男性が同和地区出身者であるというようなことを理由に結婚に反対したという事案につきまして、法務局でいろいろと説諭した結果、女性の父親が結婚に同意するに至り、ハッピーエンドに終わった、そういうケースもございます。
 それから、タクシー会社に勤務していた運転手とその運行管理補助者との間の意見の対立から、十数名の運転手が退職してほかの会社に就職を希望したときに、その連行管理補助者が再就職を阻止するために同業者に対して「同和人、不良運転手は業界から追放しよう」というような文書を発送した、そういったような事案などがございます。
#36
○小澤(克)分科員 今のを聞いておりますと、このような全くいわれのない差別がなおこの現代にある。しかも、そういう差別する者だけではなくて、例えば興信所などがこれを商売として、いわば差別を食い物にしているというような実態がなおあるということで本当に暗たんたる気持ちがするわけでございます。
 この情報件数が非常に多い中で、侵犯とされるものが非常に少ないのですけれども、何をもって侵犯事件と認定するのか。その基準はどこにあるのでしょうか。
#37
○篠田政府委員 人権侵犯の疑いのある事案につきましては、事実があるかどうか、それからその結果に基づいて事案に応ずる適切な措置を講ずるとともに、関係者に人権思想を啓発し、そのことによって人権の擁護を図るという目的でやっておりますけれども、そういった目的に照らして個別啓発に適する事案かどうかを判断して人権侵犯事件として対応しているわけでございます。
 もう少し具体的に申し上げますと、いわゆる実行者それから相手方、これが両方とも特定している場合は人権侵犯事件として立件するという方向になるわけでございますが、どちらかが不特定ということになりますと個別啓発に適さない、そういったことで特に差別落書き、それから差別文書といった匿名のものでございますと行為者がはっきりしない、そういったことで個別啓発に適さないという関係から情報収集事案の数が多くなって人権侵犯事件の数は少ない、そういうことになっております。
#38
○小澤(克)分科員 個別啓発に適するか否かというメルクマールで判断されるということでございました。
 そういたしますと、特定できないという場合はこれはどうにもしようがないのはわかりますけれども、特定できたけれども個別啓発に適するか適さないかということは、結局啓発の対象となるべき、つまりその差別的言動のあった者に対して差別意図があったかどうか、そのような意図をなくさせるということに適するかどうか、こういうことではなかろうかと思うわけでございます。
 そうすると、逆に言えば、必ずしも差別的な意図ではなく、無意識のうちに言ってしまったとか比喩的に言ったのだとかいうようなケース、恐らく一〇〇%そういう弁解をまずするのだろうと思いますけれども、それ以上に、差別意識があったというふうになかなか言いにくいために人権侵犯ということには至らないケースもいろいろあろうかと思います。そのようなものとして処理されたものというのは、八九年でどのくらいになりますでしょうか。総数で結構でございます。
#39
○篠田政府委員 差別の意図があったかなかったかという点で区別した上での統計というのは把握しておりません。
 その理由といたしましては、今御質問にもございましたように、本当に差別の意図があってもそれを否認する人がかなり多いといった事情もありまして、その限界が微妙であるということが一つございます。
 それから今の点ですけれども、仮に意図がなくて行ったというケースにつきましても、人権侵犯とは扱わないにしてもやはり差別についての認識が不十分である、そういった点で認識を深めるという観点からそういう事案につきましても啓発は行っているわけでございます。
#40
○小澤(克)分科員 なお、この調査について協力が得られないケースというのがあるというふうに聞いておりますけれども、この非協力者というのがどのくらいに上るものなのだろうか。これは八九年度に限らず、その実態を少し明らかにしていただきたいと思います。
#41
○篠田政府委員 御承知のように、人権擁護機関の事件調査というのは任意の協力を得て行うわけでございます。しかし、任意だとは言ってもほとんどの事件についてはその調査協力を得ているところでございます。ごくまれに協力しない者があるという程度でございますが、ただその数字については特に統計はとっておりません。
#42
○小澤(克)分科員 お尋ねしたいことがいっぱいあるのですけれども、時間が迫ってまいりました。
 最後になろうかと思いますが、これらの事件について人権侵犯事件であると認定されて、それについて法務省の方で適切な処理がなされるわけでございますが、その中で勧告というのがございます。この勧告は勧告文という形でその差別的行為のあった者に対してまさに勧告するわけでございますけれども、この文章が私ちょっと腑に落ちない点がございます。いろいろ事実を記載し、それから理由を記載し、最後に勧告ということによって締めくくられるわけですけれども、この勧告の文章が大体どれもステレオタイプといいますかパターン化されております。「よって、貴殿におかれては、かかる行為の不当性を深く認識して強く自戒するとともに同和問題の理解を高め、差別意識を完全に払拭し、今後、部落差別にわたる行為のないよう特段の配慮をされたく勧告する。」こうなっております。「意識を払拭し、」まではまことにそのとおりだと思うのですけれども、「今後、部落差別にわたる行為のないよう特段の配慮をされたく勧告する。」この表現はどうもぴんとこないわけでございます。配慮せよということは、何か余り表に出ないように気をつけなさいというようにもとられかねませんし、差別意識が完全に払拭されれば当然部落差別にわたる行為が出るはずがないわけでございますので、例えば部落差別意識を完全に払拭し、そのことによって今後部落差別にわたる行為があり得ないようにしなさい、こういうふうに言うべきではないだろうかと思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。これでは勧告を受けた側が、まあこの程度か、では今後表だけ気をつければいいんだなというように思われかねないのではないかと危倶するのでございますが、いかがでしょうか。
 時間が参りましたので、これをもっておしまいにしたいと思います。
#43
○篠田政府委員 「特段の配慮を」という文言を用いた勧告文がございますけれども、これは人権侵犯をした者に今後負うべき責務を指摘したものでございまして、委員御指摘のような誤解を与えることはないというふうに認識しております。
#44
○小澤(克)分科員 わかりました。
#45
○串原主査代理 これにて小澤克介君の質疑は終了いたしました。
 次に、鳥居一雄君。
#46
○鳥居分科員 外国人労働者の問題につきまして、順次お伺いをしてまいりたいと思います。
 これからの展望を思いますときに、高齢化、情報化、国際化、こう言われて久しいわけです。法務省にとって、国際化というのはどういうふうに受けとめられておるのだろうか。
 例えば帰化をしたい、こういう地元に一つの事案がありまして、私がお世話をいたしました。奥さんがいわゆる在留許可がある外国人である。ふだんの生活上何の支障もない、しかし帰化の手続をとるけれども非常に困難で今日に至った、子供さんが一部上場企業に入社が決まった、この段階になって改めて切迫した気持ちで帰化の手続をとる、ところがはかばかしく動かない。これはどういうことなんだろうと思って調べてみましたら、太政官令以来、純血性を守るという精神の中で、なるべくできないような仕組みが伝統的に受け継がれてきているんだな、私なりにそういうふうに受けとめました。
 これは一例なんですけれども、国際化の時代に法務省としてはどういう基本的な対応をされるのか、まずお考えを伺いたいと思うのです。
#47
○股野政府委員 国際化の時代における法務省の役割についてのお尋ねでございます。
 私どもの入国管理局で所掌しております事項としては、外国人として日本に滞在しておられる方、あるいは日本に入国される方たちについての対応が我々の課題になるわけでございまして、ただいまの委員御提起の帰化という問題が発生するその前段階の状況が、私ども入管局の対応になるわけでございます。
 現在日本に外国から入国される方々の数も年々増しておる、また日本に在留しておられる外国人の方々も増しておるという状況、そしてまた日本の方々が諸外国に数多くおいでになっておる、すなわち国際交流が非常に幅広く展開されておるという状況の中で、外国人の方々の日本における生活、在留ということが安定した状況で営むことができるようにということを、私ども入管行政としては主眼と心得て、日々の仕事に取り組んでいるところでございます。
#48
○鳥居分科員 最近の情勢は、中小企業が人手不足で非常に困った状況の中にありますね。これは労働行政の上から数字の上で出てきている状況だと思います。
 それで、単純労働者を認めるのかあるいは排除か、こういうこれまでの議論が、賛否両論に分かれて今日まで続いております。なお進行中だと思います。総理府の六十三年の世論調査によりますと、単純労働を受け入れてよい、こういうものが五二%、受け入れない方がいいとするものが二四%。この世論調査を見る限りでも、単純労働に対する考え方というのは、ある程度時代の流れを酌んで、もう認めざるを得ないところに来ているのではないのか。
 もちろん今日までの経過の中で、単純労働については認めないということで、昭和四十二年の閣議以来、単純労働者は認めない、受け入れない、今日に至っても受け入れない方向、不法就労である、こういう位置づけだと思うのですね。もし認める立場であれば、国内に社会問題を引き起こすような不法在留者によるさまざまな犯罪というものは未然に防止できるのじゃないだろうか、こういう観点から考えた場合にも、条件整備が必要だと思います。しかし、さまざまな条件整備をするとして、認める立場で対応を考えた方が合理的ではないのか、こう思えてならないのですが、法務省の立場は、入管、人権を擁護する立場、二面性がおありだろうと思うのですが、いかがなものでしょうか。
#49
○股野政府委員 御指摘のように、日本に来られる外国人の方々が、私先ほど申し上げましたように、安定した地位をきちんと持って、そして生活されるということが大事だろうと思います。例えば法違反というような状況、これは本来非常に不安定な状況になるわけで、そういうことは望ましくない。したがって、それのための適正な対処ぶりということが必要であろうと思います。
 そういう問題に関連して、ただいま御提起のいわゆる外国人労働者の問題については、政府全体で現在取り組んでいるところでございます。この問題につきましては、かねて委員御高承のとおり、政府部内あるいは国内の幅広い論議がございます。その中で私どもとしては、この問題について国内でおよそ国民的な合意というものがある、その範囲においてきちんと対応していくということが適切な対応の仕方であろう、こう考えておるところでございます。
 そこで、国内でおよそ国民的合意がある範囲と申しますと、現在の段階では、いわゆる専門的な技術、技能、知識等を持っておられる方たちは幅広く受け入れよう、これについてはおよその国民的な合意というものがあると考えられます。他方、それ以外の方々、特に特定の経験、技術というようなものを持っておられない、いわゆる単純労働者というカテゴリーに属される方々につきましては、依然国内での議論も分かれております。特にこの問題につきましては、労働市場の問題ももちろんございますけれども、同時に、日本の国内における経済産業構造上の問題あるいは不況時における失業者発生の問題、さらには、こういう方たちが日本におられるということについての社会的、行政的コストの問題、さらに生活習慣等の違いから来る摩擦の発生の問題等々いろいろございまして、こういう問題について議論を重ねていく必要が依然あるという状況でございますので、そういう状況を踏まえますと、この単純労働者の問題については慎重になお議論を重ねていく必要があるということを考えている次第でございます。
#50
○鳥居分科員 平成二年六月改正入管法の施行、この改正点を見たわけですけれども、不法滞在者対策というのはこれで完壁ですか。実際に、現状はどうなっていますか。
#51
○股野政府委員 改正入管法におきまして、不法就労という問題についての対応策を法的にも整備するということが一つの重要なポイントであったという点は、委員御指摘のとおりであります。
 これについての重要な法改正を行いまして、昨年来の状況を見ておりますと、基本的に不法就労に関する問題としては、国際的な背景というものがございます。すなわち、日本と近隣諸国等を初めとする発展途上国との間の経済格差の存在等の問題がありまして、こういう問題も念頭に置き、また日本における各般の要因というもの、例えばその中にはブローカーの存在といった問題もございます。こういった問題をいろいろ念頭に置いて対応していくのが、この不法就労に対する対応策として大事なところだろうと思っております。そこで、法的には昨年の法改正で、例えば今申し上げましたブローカー等に対する対応策をきちんとするという意味において、不法就労助長罪という新たな規定を設け、これについての実施を現在行っておりますが、これは相応の効果を上げておると考えております。
 しかし、同時に、今申し上げました各種の要因がこの問題には関連いたしますので、適切な入国審査あるいは国内における日常の法違反に対する取り締まり活動をきちんとすること、こういうこともあわせて行う、そういう意味でいろいろな努力を重ね合わせていくということが必要だろうと思いますが、改正入管法の規定は相応の効果を上げていると考えております。
#52
○鳥居分科員 不法滞在者というのはどうなっていますか。要するに、不法でありながら、現に日本国内にいるわけですね。そして起きてくるさまざまな出来事があるわけです。病気になる、あるいは死亡する。だから、まずどういう状況か。それから、病気になった、亡くなった、こういうときにだれが一体責任を持つのか。これは領事館なのか、地方自治体なのか、あるいは国なのか。いずれにしても対応をしなければならないわけですけれども、どういうふうにお考えですか。
#53
○股野政府委員 御指摘の不法滞在者、これは入管法所定の在留期間を超えて在留しておるという意味での、入管法違反者でございます。他方、しかしこういう方々が日本国内におられるという現実のもとで、その方たちの人権に対する配慮というものも、当然なければならないと考えております。
 そこで、入管当局といたしましては、法違反状態を是正するという必要がございますので、そういう観点からする法手続はきちんととる、またそのための関係各省との御協力もさせていただくということでございます。しかし、その入管法違反の状況を是正する過程におきましても、人権に対する配慮はきちんとしなければならない。そこで、ただいま委員御指摘の、例えば労災があるときにはその労災に対する対応はきちんとなされるべきであり、そのために必要な時間を入管当局としても、例えば入管法の法手続の中で設けるといった配慮をいたしておるところでございます。
#54
○佐野説明員 病気になった方々の場合のお尋ねでございましたが、大変申しわけございませんが、現在の我が国の法令上は、御承知のように適法に日本に在住される方につきましては、これは国籍を問わず、内外人平等の原則に従いまして、日本の各種社会保障法令の適用を受けられるわけでございますけれども、不法滞在あるいは不法入国という形でお入りになった方につきましては、それが判明いたしますと、出入国管理及び難民認定法等の手続に基づきまして、強制退去等の手続をとられることになるのではないかと承知いたしております。そのような形からいたしますと、そういう不法滞在あるいは不法入国という形になっている方々を対象にしまして医療保障の制度を別個の法体系でつくることは、極めて困難な状態ではなかろうか、こう思っております。
#55
○鳥居分科員 労災の立場で救済ができるのでしょうか。労働省、見えていますね。
#56
○野寺説明員 労災保険は、保険の仕組みが事業主負担によります保険料で賄っております。したがいまして、本人が不法であるかどうかを問わず、事業主がそれを使っている、そして事故が起こったということにつきまして、事業主の責任でこれを負担するという制度でございます。したがいまして、不法就労者である外国人にも、事故があれば適用することになるわけでございます。
#57
○鳥居分科員 だから、入管法違反であることはけしからぬ事実だと思いますが、しかし、人権は尊重しなければならない、労働災害の面からは救済ができる、しかし厚生省の、いわゆる疾病に関しては見て見ないふりをする、こういう状況ですね。
 明治にできた、いわゆる行き倒れ取扱法という法律がありますね、行旅病人及行旅死亡人取扱法。これは外国人、今一つの例として不法滞在者、まあ法的には不法という立場かもしれませんが、そういう不幸な事態になったときのこの法律のかかわり、これはどういうふうに考えたらいいですか。
#58
○炭谷説明員 行旅病人取扱法は、今先生御指摘のように明治三十二年にできた大変古い法律でございます。この法律の対象にいたしております行旅病人という範囲につきましては、旅行中にいわゆる行き倒れになったという病気の人に対して、他に助ける人がいないという場合を対象にしておるわけでございまして、先生御指摘のような外国人に対しても適用になろうかと思いますけれども、ただ、範囲が非常に狭うございますので、一般的な不法労働者の医療問題の解決にはつながらないのじゃないだろうかと思います。
#59
○鳥居分科員 都立病院が東京都内にありますね。全部で七カ所というお話ですが、都立病院で取り扱った――医師法からいって、人道上診療しないわけにいきません。単純労働者だからという差別は医療の場合にはない。これをやる。しかし医療費の負担ができない。健康保険がないために本人全額負担。そういう中で病院がしわ寄せを受けているわけですよ。都立病院だけで焦げつきが三千万円を超えたそうですね。だから、こういう実態をいつまでも放置できないだろうと思うわけです。何らかの手だてをとる必要があるのではないか。
 三カ月以上滞在という、いわゆる一定期間滞在する方の健康保険というのはあるのだろうと思いますが、短期滞在、不法という形にしている間は、こういう制度をつくったとしても対象にはなり得ないのだろうと思うのですが、合法的に滞在をされている短期の方、この皆さんに医療の上で制度をつくるべきじゃないですか。現在ないですね。
#60
○佐野説明員 御指摘の点は、国民健康保険の適用が現在一年になっているという点につきまして、三カ月程度の在留でも適用したらどうかという御指摘ではなかろうかと思います。
 御承知のように社会保険の制度は、相互扶助の精神で、助け合いといいますか、保険料を納め、あるいは税金を納めて、その人たちの中で事故が生じた場合にお支払いをするという形の制度でございますので、やはり一定の生活の根拠を置いて、そこで滞在をするというような形の実績を持たないと、そこで対象にするのは非常に難しかろうかと思うわけでございます。これを、現在でありますと、例えば住民税の納税義務などが生じますのも一年間の居住要件というようなこともございますので、現在は一年の居住要件を課しているわけでございますけれども、これも、一年を超えるということが見込まれておれば、別に一年以内であっても適用はいたしているわけでございますので、実態といたしまして、例えば三カ月くらいのビザでお見えになったケースでありましても、例えば研修だとか就学などであっても、それが研修カリキュラムや何かで一年を超えるような滞在になるということが明確に見込まれる場合は、適用の対象にいたしております。
 そういう面からいいますと、先生の御懸念のような対象者はこれでほぼ救われるのではなかろうか、やはり問題は、不法就労というような形でそもそも法に入ってこないような方々の問題ではなかろうかというふうに感じるわけでございます。
#61
○鳥居分科員 それは健康保険の問題ですね。
 それから生活保護という立場で、何とかならないものなんだろうか。自治体はこれまで、生活保護の面から、滞在している非常に貧困な外国人に対する手だてをとってきているわけです。ところが、ある時点で厚生省がこれはまかりならぬということで、生活保護、生活保障という面からは今できてない状況なんですね。これはどういうことなんですか。
#62
○炭谷説明員 生活保護につきましては、法律上は日本国民ということになっておりますけれども、予算措置におきまして、日本国民と同様な生活形態をとっていらっしゃる、永住者などの方々に対しましては適用しているところでございます。しかしながら、生活保護の目的でございます最低生活の保障、または自立の助長を目的とするという制度でございますから、観光ビザで入国して就労されているというような方につきましては、このような目的と矛盾するわけでございますので、生活保護の適用はないものと考えております。
 また、生活保護の原理原則でございます、補足性の原理というものがございます。まず生活保護を受けるに当たっては資産、扶養を求める、また、稼働能力のある人は稼働能力の活用を求めるという、補足性の原理があるわけでございますので、一般的にこのような外国人の方々に対してこのようなことを求めることは事実上極めて難しいのじゃないだろうかということで、生活保護の適用をしておらないわけでございます。
 このような方針は、生活保護制度の目的、趣旨からくるわけでございまして、発足以来の方針でございまして、最近になってこの方針を変えたというものではございません。
#63
○鳥居分科員 ちょっと別な角度から伺いたいと思うのです。
 昨年末国連で外国人労働者権利保護条約、これが成立をいたしました。我が国のとった立場は消極的賛成、反対したりボイコットしたり、そういうのはなかったそうですけれども、まず認めざるを得ないという立場だったのだろうと思うのです。
 内容は、外国人労働者に対してその国の国民と同等の労働条件あるいは社会保障を認めようとするねらい、それが主な内容で、国内の状況を考えますと、この新条約がねらいとするもの、これとかなりの面で対立をしているわけです。厚生省としてはこの新条約をどういうふうに受けとめていますか。
#64
○佐野説明員 条約につきましては、本来外務省の方の所管に属しますから、私どもの方でお答えするのは非常に難しいわけでございますけれども、御承知のように、この条約が国連で採択されましたときに、日本はこの条約につきまして特別に賛成をしているわけではございませんけれども、反対もしなかったということで、その立場説明というものを行っておりまして、その中では、条約は各国が、特に労働者の送り出し国のみならず、その受け入れ国にも受け入れられるような、現実的弾力的な内容であるべきであるということをお願いをいたしております。したがいまして、現在のこの条約で出ております内容そのままで私どもの国内法を改正したりなんかしてやることは、なかなか難しいのではなかろうかと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、これは政府全体で、外務省を中心といたしましてですけれども、その内容を十分慎重に検討する必要があると考えておるわけでございます。
#65
○鳥居分科員 国際化の時代にふさわしい経済大国日本、こういう責務が各方面で検討されなければならない課題だと思うわけです。ぜひ充実を期し、新条約の方向に沿った国内法整備ができるように御努力いただきたいと思うのです。
 それで、改正入管法のときに、出入国管理基本計画を早急にまとめたい、こういう、言ってみれば基本方針に当たるものだと思うのですが、これはどうなっていますか、最後にお伺いしたいと思います。
#66
○股野政府委員 委員御指摘の出入国管理基本計画につきましては、昨年の六月一日施行の改正入管法の中で規定が設けられたということはおっしゃったとおりでございまして、その入管法の中にもこの計画の定めるべき事項ということが記されておりますが、その一つに「本邦に入国し、在留する外国人の状況に関する事項」ということがございます。これが一つのポイントになりますので、私どもとしては、改正入管法が去年の六月から施行されまして、それ以降の外国人の入国及び在留の状況というものをしっかり把握するということがまず基礎で必要だろうと思いまして、それには相応の期間を置く必要があると考えております。それからまた、この計画を策定するについて、広く国内各界の御意見もちょうだいするということにいたしておりますので、そのためにも一定の時間をいただきたいところでございます。
 そういうことを総合いたしまして、私ども、出入国管理基本計画は、改正入管法施行後およそ一年くらいの期間で外国人の入国、在留の状況がどうなっているかということをまず把握する、それの上で各界の御意見も伺った上での計画策定、こういうことになりますので、おのずとそういう時間をかけさせていただいている、それを踏まえまして本年の秋ごろには本計画を策定、公表させていただきたいということで作業中でございます。
#67
○鳥居分科員 終わります。
#68
○串原主査代理 これにて鳥居一雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、沢田広君。
#69
○沢田分科員 続いてで御苦労でございますが、大臣、今も話が出ておりましたけれども、外国人労働者問題に対しては外務省にも聞きました、それから労働省にも前に聞きまして、どうも消極的である、果たしてこれで日本の人たちが外国へ行ったときにどういうふうに待遇されるであろうか、こういうふうに考えるのであります。
 この辺で、人手不足というものも非常に深刻ですから、日本も国際社会の中での立場ということで、ある程度この人手不足を解消しませんと、経済的にも非常に重大なものになりかねない、そういう危惧を持たざるを得ない状況に来ていると思うのです。大臣、その点、どのように認識されておられるか、我々はある程度緩和してほしいと切望するわけですが、いかがでしょうか。
#70
○左藤国務大臣 外国人労働者の入国の問題につきましては、昨年、研修その他の段階の幅、いろいろな業種の幅、そういったものを広げたり、いろいろ努力をいたしております。
 しかし、一般的に、単純労働者の受け入れの問題につきましては、これは、今お話がありましたように、経済社会の全般にいろいろな意味で影響を及ぼすところが大きいわけでして、これは国としての対応を決めていく問題につきまして、我々として、消極的ではなくて、また、そうした関連のところを十分詰めてやっていかなければならない問題であり、もちろん法務省としても引き続きこの問題は検討していくべきものだ、このように考えております。
#71
○沢田分科員 一つは、単純労働者と言われますが、今第一次産業三百四十六万ぐらい、第二次産業千三百万ぐらい、第三次産業が三千三百万人という人口構成なのです。これは生産なき消費の国になれば、国自身が滅びてしまうのです。ですから、これからは第一次産業なり第二次産業が活性化され、成長率を高めていかなければならぬ、そういう経済的な要請があるということは御理解いただいていると思うのです。
 そこで、特定の技術者という名前で中国から来ておられる方々の働いている場所を、私も先般見学しました。実際にその働いているところを見ました、パンをつくっておられる職場とプレスをやっておる職場を。向こうの大学を卒業して来ているのですが、言葉が余り通じない、非常に苦痛であるということでした。しかしそれにしても、そういう研修生を入れておりますが、一般の労働でも、その一般の労働に格差があると私は思うのですね、向こうの一般の労働と日本の労働とは。同じ掃除機を使ったって、片方は機械を使うのだし、片方はほうきを使うのですから、これは全然次元が違うのです。日本で言う一般単純労働者、言うならば第二次産業だって、ビールをつくるといったって単純労働者ですね、一つところしか見ていないのですから。後は一生懸命ボタンを押しているだけであるし、詰め込みは詰め込みだけでボタンを押しているだけですから。ある意味においては自動車をつくるのだって単純労働ですね。ですから、そういう言葉で、何かそれが技術であるがごとく称するということは、私は余り的確な意味ではないと思うのですね、分業社会になってしまっているわけですから。そういう意味において、今後もう一回それは考えていただく必要があるのではないか。皆さんもそういう現場を見てみたらいいと思うのですよ。何が単純で何が技術なのか。今すべてできているものをそのままでやっていけば、自然に自動車だってどんどんつくられていっているわけですからね。どこが技術でどこが単純か、言えたら言ってみていただきたいのです。
    〔串原主査代理退席、主査着席〕
#72
○股野政府委員 委員御指摘の、何が技術で何が単純かという点、これは私どもは入管法上の規定の運用という形でとらえておりまして、結局、入管法上現在在留資格を認めているという人たち、これは一定の技術、技能等を有している人たちが入っているということでございますので、在留資格に該当しない範囲になってまいりますと、まず一定の技術、技能という点で問題がありと考えられるという意味で、現在、在留資格の点で区別しているというのが事実でございます。
 それからもう一つ、先生の、確かに実務研修ということになりますと、これはかなり実際の現場で仕事をしながら技術を身につけるという要素があるというのは事実でございますので、その点については、その実務研修の中身は十分正確に把握する必要があると我々は思っておりますけれども、ただ、これが報酬目当てであってはいけない、実務研修はあくまで技術を身につけることが目的である、そういう形での区別をさせていただいているところでございます。
#73
○沢田分科員 これが主体の質問ではなかったのですが、前の人がそう言っていましたから、今まで私も平素思っていたから。
 だから、単純とか技術と言うけれども、今のこの分業社会における機械産業は、言うならばすべてが単純になってきている。あなた方の仕事自身もだんだんと、例えば登記所で謄本を出すのは、言うなら技術なんてない、写してそのまま出すだけで、一つの単純労働になってきてしまった。そこに知恵を生かすとかテクニックを必要とするということにはならない。その点ひとつ今後、余りこれで長くはやっていませんが、それが今度は報復手段になって返ってくることをおそれて私は言っているわけです。日本は鎖国をしている、我々は貧しくて死んでいる、日本は優雅に暮らしている、それだけ日本はいじめた、前は戦争でいじめたけれども今度は経済でいじめた、こういうことで、今度日本人が外国に行ったときに、石を投げられたり盗人に遭ったりということで報復が行われるから、その辺のことはよく考えて対応してほしい、こういう意味で言っているわけです。今後善処してください。余りかたくなにやっていると、清流には魚すまず、こういう言葉もあるくらいですから、その辺は十分に時代の要請にこたえてもらいたいと思います。
 次に、もう一つは、大臣は知らないと思うのですが、まだ法務省の管轄ではワープロではないのですよ。タイプを打っていまして、これは何をやっているのだ。テーブルもソ連か中国へ、中国でもないのですが、行ったみたいに木のテーブルを使っていまして、大臣のときくらいじゃないですか。ワープロを使わないでタイプを打ってやっているのですよ。今の近代化に能率の悪いことはわかるでしょう。今もうなくなりましたか。まだ残っているらしいじゃないですか。
#74
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 この問題につきましては、昨年先生の方から御指摘がございまして、私ども、登記事務用のタイプライターをワープロに切りかえつつあるということを申し上げたわけでございますけれども、この登記事務用タイプライターにつきましては、昭和六十三年度から登記事務用として特別に開発をいたしました登記専用のワープロというのがあるわけでございますが、そのワープロへの切りかえを図っているところでございます。
 平成二年度におきましては、新規に三百六十台の専用ワープロを導入いたしまして、これはタイプライター五百二十三台に相当する能力を持つということでございますが、平成二年度といたしまして新規に三百六十台の専用ワープロを導入したところでございます。
 まだ相当数のいわゆる旧来の登記専用タイプライターというものが残っておりますけれども、これらにつきましては、逐次、その更新期限が来ましたときに専用ワープロに切りかえるという計画を立てておりまして、ここ四、五年のうちには全部ワープロに切りかわるという計画でございます。何分にも、登記所で使われているタイプライターは、現在でも合計で二千数百台というような膨大な数に上がっておりますので、これを計画的に毎年数百台ずつ切りかえていく、こういうようなことで現在進めているところでございます。
#75
○沢田分科員 これだけの時代になってまだこうやってタイプを打っているというのだから、人件費の方がどれだけ高くなってしまっているかわからないですよ。大臣も、そういうのがまさか自分の足元にあるとは思っていなかったでしょう。とにかく旧態依然として、刑務所も旧態依然で、明治天皇が座るようなテーブルに所長が座っていますが、とにかくそれがいいとは私は思わないんで、今のようなテンポで――そんなものは一挙にやったってたかが知れてるんじゃないですか。もう少し近代化を図っていくべきだろうと思います。登記所も、前は時間がかかってしようがなかったのですが、このごろはファックスができた。これからはファックスをもっと利用したらどうかと思うのです。それもまだできてないでしょう。法務省と各裁判所、各法務局、そういうところのファックス交流はどの程度の交流になっていますか。
#76
○清水(湛)政府委員 細かい数字は本日手元に持ち合わせておりませんけれども、ファックスにつきましても、登記所間の連絡あるいは本省と各法務局、登記所間との連絡等について最近は大いに活用されている状況にございます。全国的に完全にまだ整備されているという状況ではございませんが、相当のスピードで入っていつつある、こういう状況であると申し上げられるかと思います。
#77
○沢田分科員 だから法務省は古いと言われるし、時間ばかりかかってだめだ、こういう非難が出てくるわけであります。これで二年だから、ことしぐらいは完全になりましたという答えが出てくるかと思ったのですけれども、あと二、三年もかかるような、宇宙衛星が飛ぶ時代になって、裁判所だけがこんなに、法務省関係がこんなにおくれているなんて、全くよく勤めてるなと思うくらいですよ。こうやって、肩が痛くなると言って女の子は打っているのですよ。僕が行ったときにも、いや、これだけは参りましたと言って内緒でこぼしていましたよ。偉い人がいるときは何も言わなかったですが、こういう機械があるのに、一つずつ、一字ずつ拾って打っているのですから。せめて大臣のいるうちに全部なくしちゃってください、こんなものはたかが知れてる金ですしね。九十億ドルに比べたらまさにはした金なんだから。円高と円安で変わってしまうかもしれないけれども、とにかくそれくらい出せる金ですから、それは対応してください。
 それからもう一つは、大臣、これは大変大きな課題なんですが、この一、二年に土地が暴騰したというのは、認識の問題なんですけれども、言うならば、これは資本主義の一番悪いところなのかもしれぬが、構造的な犯罪だと私は思うのです、国民が主人公という立場に立って見れば。この土地のべらぼうな値上がりによって国民はえらい迷惑を受けたわけです、住む家はなしというような格好になって。これは我々も含めて、政治に携わる者が襟を正して反省しなければならぬことだと思うのです。だから、本当はだれか一人反省して罪を背負うということは必要な要件なんじゃないか。こういうことは二度としてはいかぬぞ、こういう教訓を歴史の中につくっていく必要があると思うのです。特に経済犯罪なんというものには、別件では、別件というのは一つ一つ単独の問題では取り上げておりますが、こう構造的になってきてしまうと、つかみどころがないからだめなんだということになるのかもしれませんが、これは金利が下がっていた、それから投資意欲が多かった、そういういろいろな条件で今日のような問題を、バブル現象を起こしたということであって、これは法務省としても、言うならまあ政府を含めての犯罪である、法務大臣は腹を切ってやめるというぐらいに――別に本当の腹を切るというのじゃないですよ。とにかくやめる、そのくらいな責任を国民の前に示していくことが必要であったのではないかというふうに思うのです。大臣なんというのは何回もやっていますから、やめたってまた戻ればいいのですから、そのくらいはやはりきちっとけじめをつけていくことが僕は必要なことじゃないかと思うのです。そうでないと国民は、今度のようなことはだれの責任だということになったときに、だれも責任がなくあいまいに済まされていくということになると、罪の意識がだんだんなくなっていく、こういうことにもつながるわけですから、政府は本当に、全体的には申しわけなかった――申しわけなかったと言うのも言いにくいかもしれぬが、とにかくこういうことになっちゃったことは、複合的であるにせよ経済犯罪の一つである。だから、だれかが責任を負う、このぐらいの姿勢はあってしかるべきだ、国民を相手にして物を見れば私はそうなるのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
#78
○井嶋政府委員 今委員仰せのお話は、政治的な意味合いでのお話というふうに私は承るわけでございまして、もう委員御案内のとおり、我が国ではやはりおっしゃるように、犯罪ということで取り締まれというお話であれば、これは罪刑法定主義という憲法上の原則があるわけでございますから、今委員がおっしゃるような構成要件のもとに刑罰を科すという法律がない以上は、これはもう検察といえどもいかんともしがたいということであるわけでございます。
 そういうメカニズムの中で、いや、検察はこの経済事情のそういったいわゆるバブル現象と言われているようなものに対してどう対処しているのかという点について御説明申し上げますとすれば、やはり経済活動に関するいろいろな規制がございます。税法もございます。あるいは証券取引法もございます。土地取引をめぐる詐欺ということになれば刑法の詐欺罪もございます。あるいは金融関係の役職員の不正ということになりますと商法上の特別背任とかいったような規定もございます。そういったことで、経済活動に関する規制の法律はそれなりに政府としてはいろいろ整備をいたしておる。そういったものの中で、やはり今のバブル現象を細かく分析していくとそういうものにひっかかるということになれば、それを適用して厳正に対処するということになるのではないか、こう思うわけでございます。検察も今まで、最近においていろいろやっておりますようないわゆるバブル現象と言われるものの範疇の中で、そういった法規を活用して摘発に努め、国民の期待にこたえるように頑張っておるということであることは、委員も御理解いただけると思うわけでございます。これからもバブル経済、そういった御指摘に対応して検察が、あるいは政府がどのように対応するかということは、そういった法的整備の問題とそれを運用する問題、二つの問題があろうかと思いますけれども、いろいろその状況を見ながら対応していくことではないかと思うわけでございます。
#79
○沢田分科員 私は、政治的な責任という意味で言っているわけです。それは、個々にこれを立証するのはなかなか難しいわけですから、では、何の罪になるか、刑罰になるかということになると、それは難しいので、結果的には政治責任を、これは選挙によって審判を仰ぐということに最後はなるのでしょうけれども、だけれども、これで今解散するかといったってそうはいかぬでしょうし、定数是正が終わらないうちにはどうにもならぬというあれもあるわけです。
 ただ、こういう事態を起こしたときに、どこかで国民に対して責任を負っていく姿勢というものを、ここらかあるいはどこかで示さなければ、これはやはり政治不信というものを助長することになりかねないということは、これは大臣、いわゆる政治論として、法律を守る立場にある大臣として考えてみていただきたいというふうに思うのですね。これは総理大臣への質問だと思うのですよ。だけれども、何も総理大臣だけでもないし、まあ、こういう時代になったら二代目になっちゃっているんでしょうから、全体的にどこかでけじめをつけていくことは必要だというふうに思うのですね。
 それから、時間がないですからもう一つ。
 九十億ドル、憲法すれすれのようなああいうものを決定したときには、どちらとも言いませんけれども、そういう危ない剣の刃渡りみたいなことをやったときは、やはり総理大臣もやめて、国民にけじめをつけていく姿勢が必要だと思うのですよ。これはもう憲法を守るか守らないか、世界のためにやむを得なかったにしろ、そういうものを強引に決めていったときには総理大臣はやめていく、こういうことのルールをつくっていくことも――東条みたいな者が出てきて力だけを背景にしたら、ハードルをどんどん越えていってしまうおそれがある。だから、そういう線上に来たときに決断をした総理はやはり引退、引退というのは、まあとりあえずやめて、そして、そういうことはやってはいけない、そういう教訓を歴史の中につくっていくということが我が国は必要だ。これもあわせて大臣、総理大臣の見解まで聞くわけじゃありませんが、とりあえず法を守る立場においての立場で御見解を承りたい。
#80
○左藤国務大臣 今お話しのように、あくまで犯罪とかそういった見地からいうなら、罪刑法定主義の立場で法で定められたものについて、それが犯罪であるかどうかということの論議をされるべきことであります。今先生のお話のような政治的な判断の問題につきましては、政治的な責任としてどういった形でとるかということについては、そのときの政治情勢、またいろいろな問題で判断されるべきものである、このように私は考えております。
 今お話の地価が急騰した要因がどういったことにあるのかというふうなことについても、一つの選挙なら選挙というふうなものによっての国民による判断というものが政治的な責任をとる一つの道であろうか、このように思います。
#81
○沢田分科員 私は政治的な話で、政治の責任の分野を言ったわけですが、今の刑事局長さんのお話では、刑事事件としては、イトマンの問題を初め、光進から何からずらずらたくさんあるわけですね。我々はマスコミを通じて知る程度にしかすぎないのでありますが、やはり国民の声として、こういうものを許しておいていいのかということで、リクルートも同じでありますが、そういう声が非常に強いということはおわかりでしょうな。その点どうですか。
 皆さんの職業というのは、日陰者なんて言っちゃ悪いですけれども、世間をはばかって生活していかなければならぬという生活なんですね。裁判の人もそうなんですが、飲み屋へ行っても気を使う、宴会へ行っても気を使う、うちにいても気を使う、こういうぐあいに、身を律するのに恐らく毎日毎日苦労して生活して、ウイスキーを飲むのも気を使っているのじゃないか、しょうちゅう飲もうかというふうに考えているのだろうと思うのですね。そういう生活をしておられる方々が、皆さんみたいにベテランになってしまうといいのですが、それまでの間恐らく相当窮屈な思いをしたのじゃないかという気がするのですが、その辺はあなたの人生体験としてどうですか。
#82
○井嶋政府委員 司法に属する者は他の人たちの非違をただすという立場にあるわけでございますから、おのずから志操を堅固にして、襟を正して行動しなければならないことはおっしゃるとおりかもしれませんけれども、なってみればそんなかた苦しいものではなくて、むしろ本当に自由闊達に、思う存分そういった生活をしておりまして、おっしゃるような危惧はございません。ただ、あくまで羽目を外すことはできないということだけは事実でございます。しかし、これはどういう世界におられる皆さんであっても同じことじゃないかと思うわけでございます。
#83
○沢田分科員 ばかに遠慮して言いますが、下の人は必ずしもそんなことを言ってないのです。出張したって、旅費はあなたの出張とこんなに差がある。随行ではうんと楽だけれども、下の方の人が行ったら、泊まるのもビジネスホテルに泊まらなければだめだ、ごちそうにもなれない、こういうことも現実にはあるわけです。だから、あなたの今の給料、あなたの今の出張旅費で歩ける部下ばかりいるんじゃないということは、今旅費を払っている、それでは随分苦しいだろうと思うでしょう。大体払っているのを見てないでしょう。今一番下の人が行く場合に、一泊二日で幾らもらえるか、見当つきますか。
#84
○井嶋政府委員 詳細な金額までは記憶をいたしておりませんけれども、これは何も司法官に限らない、一般公務員全体の問題であると思います。そういった中で、近時、随分いろいろ待遇も順次改善されてきておるというふうに私は認識しております。ただ、おっしゃるとおり、相対的に、高級になればそういう気分になるということはあるのかもしれません。しかし、全体の奉仕者としての立場ということで、その中で全体のレベルアップを財政当局は考えておるわけでございますから、それはそれなりにきちっとした整理がされておるのだというふうに思っております。
#85
○沢田分科員 これは大臣、今の旅費規程は昔の勅任、高等というように六段階に分かれています。会計検査院であるとか検察の出張、そういう人たちについては上下の差が非常に厳しいのですね。ですから、会計検査院にはこのごろ出張手当を出すようになった。今までは向こうへ行ってごちそうになってしまって、向こうへ行ってただで泊まっていたから、けしからぬ、こういうことになっていたわけですね。ですから、地元は地元で大変なんですよ。交際費なんというのは税務署も持ってないし、学校も持ってない、それから警察署も持ってない。そういうのは上の連中しか持ってないわけですから、そういうものが出ていかない仕組みの中に生きているということを考えて、旅費などの面については、いじけないように、くじけないように、ちゃんとしたものにしていかないと、今一時はとまっていますが、えてしてまたもとに戻ってしまうということになりかねないわけですから、それは十分配慮してやってもらいたいと思うのですよ。やることだけはやってもらうし、してもらうことはしてもらう、こういうことが必要だ。今局長クラスになると優雅になってしまっているから、優雅とまでは言えるかどうか、とにかく優雅になってしまっているから、昔のことは忘れてしまっているのですが、本当に若い人は苦労しているんだということをひとつ大臣も記憶にとどめて、捜査は同じなんだから、局長が捜査したって下の者がしたって同じ苦労なんですから、それは押しなべて平均化するように配慮してほしいと思う。
 大臣、もう一つ。この前質問したときに、印鑑は要らないと、日本も判こを押すのはもうやめようと。判こをなくして一番困るのは役所だというのです。代理で、いないから判こ押しておいてくれとか、それで済んでしまう。局長、そうでしょう。ところがサインとなると、自分でサインしなくてはならないから、どうしても余計仕事がふえる。それは合理化すればいいのであって、やはり日本も署名で用が足りる、契約書であろうと何であろうと、一々サインはどうしようと構いませんから、そういう制度に切りかえていく。判こを使うのは日本だけなんですね。これは字を知らない国の風習が今日残っているのです。自分のものが書けないから、かわりのもので押してやろう。中国だって今やっていない。そういう状況で、日本だけが古臭い判こを押している。便利でもあるときはあるのですね。二日分ぐらい出勤簿に押してしまうというのは判この方がずっと楽かもしれぬ。これは冗談で言っているのですが、署名だって書く気なら書けるのですから、サインすればいいのですから、そういう意味においては、サインに切りかえていくということをどこからか進めてもらいたいですね。小切手も全部サインならサインでやっている。外国へ行けば、みんなそれで済んでいるのですからね。大臣、そういうことをどこかからスタートしてもらいたいと思うのです。この前言って、やりますと言ってちっともやらないのです。それで、もう一回お答えをいただいて、二分ぐらい余っていますが、もう一つだけ。
#86
○清水(湛)政府委員 印鑑の問題でございますが、文書等を作成しました場合に、作成者の意思に基づいているということを明らかにする、あるいは作成の責任を明らかにするというようなことで判こを押すということが我が国で古くから行われているわけでございます。民事上の契約については何も判こを押さなくても署名だけでもいいわけでありますけれども、通常重要な取引ではやはり署名捺印を求めているという状況にあろうかと思います。また、役所に提出する各種の申請書、登記の申請書なんかもそうでございますけれども、これは必ず押印を求めているということになっております。やはり我が国の古くからの伝統と申しますか、慣行と申しますか、そういうものをベースに、署名でもいいとされている分野についても現実に印鑑が押されておるというような状況でございまして、これを法律的に一方的にどうするかということについてはなかなか難しい問題があろうかというふうに考えておるところでございます。
#87
○沢田分科員 だから、相続なんかも、代理で公証役場へ行って、代理の人を連れていって、それはだれだかわかりはしない、それで弁護士がついていって、署名がなければ、本人の判こだけ押せば通っていってしまう、そういうことだって判こというのはできるのです。判こだったら奥さんだって押すことも可能なんです。署名なら自分で署名するのですからはっきりわかる。だから、あなたの物の考え方では、今の近代的な時代に、ワープロでみんな打ってしまって、判こだけ押せばいいといっておったら、どんどんにせものをつくることが可能になっていくわけです。署名になればなかなかそうはいかない。あなたの局内においても、だれかを釈放するなんというのに代理で判こを押したってまかり通る。署名じゃそうはいかなくなる。だから、忙しくはなるけれども、そういう意味においては判こというもののいわゆる犯罪に使われる率というのは非常に多いのですから、やはり署名に向かって進めていくという、これは何も法務省だけじゃありませんよ、ほかの省庁においても署名で、大臣なんか決裁するときにはサインでするでしょう、判こを押さないでしょう。自分でサインをすることが一番いい証明になるのですから、やはり今こういう古いことを考えている人はかえてもらって、そして新しくやらなければだめですね。去年と同じ答えをしているようではだめだ。局長いいですか。ちゃんと直してもらうようにお願いして、終わります。
#88
○林主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。
 次に、渋谷修君。
#89
○渋谷分科員 昨年のことなんですが、土地問題の調査でドイツへ行きまして、ドイツの日程を終えて日本にまた帰ってきたんですが、その以前も何度か他の国へ出かけていったこともございますけれども、たまたまドイツから帰ってきましたときに、飛行機の中での長旅ですから背広を脱ぎまして、セーターというラフな格好で実は飛行機からおりました。そして空港から出る。出る前にもちろん手続がありますから、おりた方がたくさんおりまして、そのすぐ近くに入管の事務所がドアがあいていたものですから、そこで、声をかけようと思いまして、何人か外国人もいたのですけれども、入口から中にはもちろん入っていませんでしたが、私が中に入ろうとしましたら、私の方を全然見ませんで「ゲラウエー」ですね。大臣、この意味わかりますか。
#90
○左藤国務大臣 出ていけということだと思います。
#91
○渋谷分科員 私の翻訳ではうせろということですね。相手を見て確認もせずに、これにはびっくりしましたね。済みませんがと日本語で私が声をかけたら、あっ何ですかということで初めて話を聞いてくれましたけれども、ゲラウエーというのは入管の職員のマニュアル語の中にはあるのですか。
#92
○股野政府委員 ただいまの御指摘のようなことがあった具体的な状況について私まだ把握をいたしておりませんけれども、その状況を私どもなりに考えさせていただきますと、その事務室の中に例えば入国に関する具体的な証印等の非常に重要なものが置いてあるということから、事務室についての入室は制限させていただいております。その制限があるという状況下においてその関係の職員が、入室をしようとされている方について目で十分確認ができないで、だれかが入ろうとする気配があったということであるいはそういう意味での対応があったのではないかと想像いたしておる次第でございますけれども、ただいまのような状況がまさに本来の審査の態度ではもちろんございませんで、たまたま入室規制ということにかかわってそういうようなことが起こったのではないかと推測いたしております。
 いずれにせよ、それは本来きちんと対応をすべきものということを常日ごろ職員には心がけさせておりますので、そういう点で御不快の念をお持ちになられたということ、まことに残念でございますし、入室制限は入室制限できちんと守る必要がございますが、しかしその入室制限に該当しない方の御入室というような事態もあり得るわけでございますので、そういう点についての配慮ということもきちんとするよう指導をさせていただいているところでございます。
#93
○渋谷分科員 当時の現場を再現するわけにはいきませんから、これ以上この話は繰り返すつもりはありませんけれども、その事務所の中に私は入ろうとしたわけではなくて、外から声をかけたんですね。ドアはあいていたんです。だから声をかけて、実は私の方は、たくさん並んでいましたので、公用旅券を出しまして、早目に出してくれませんかということで相談に行ったんですけれども「ゲラウエー」だったものですから、これはえらいびっくりしたということであります。
 実は、たまたまそのことがあったという話ではなくて、どうも日本の入管の姿勢といいますか態度が、日本人だけじゃなくて外国人やあるいはもちろんジャーナリストなども含めてですが、余り評判がよくないのですね。他の国からその国を訪ねる、当然それぞれその国の手続があります。私も行きます。韓国へ行ったり、ほかの国に行きます。そこで手続を初めて経るときにその国の雰囲気がわかりますね。とても大事なところだと思うのですよ。私は入管の職員にマクドナルド精神で対応しろとは言いません。いらっしゃいませ、こんなことで仕事をやっていられませんからね。しかし、やはり最低限の対応の仕方というのはあるのじゃないでしょうか。いかがですか。
#94
○股野政府委員 御指摘のとおりだと思いますし、そういう点を十分職員もわきまえて対応すべきだと思います。
 何分にも、成田空港において最近、法に違反して入国しようとしている者の数が非常にふえているという状況がありまして、それの手口も実は大変巧妙になって、しばしば、外国の航空会社の職員の制服を着て職員通路から入国しようといったようなケースまであらわれているという点で、職員がそういう点について非常に神経質になっているということも背景にはあるんだということでございますが、しかし先生御指摘のとおり、基本的には玄関口でございます。玄関口での対応が大事であるということ、これは常日ごろ職員に申し聞かせているところでございますが、今後もなおその点は十分わきまえるよう心がけてまいりたいと存じております。
#95
○渋谷分科員 しかってばかりいないで、少しは応援演説もしなければいけないと思うのですが、今年間の外国人の日本に来る数が一体どのくらいで、それに対応する入管の職員というのは今どのくらいで、この五年くらいでいいですが、どのくらいの割合で入管の職員はふやしてもらっていますか。
#96
○股野政府委員 平成元年の統計が、現在年間の統計でございますが、外国人の入国された方が平成元年で約二百九十八万五千人という単位になっておりまして、これがその五年前でございますと二百三万六千人ぐらいという数になっております。こういう数で外国人の入国者ということを見ますと、五年前に比べて四六%ぐらいの伸びということで、特に最近の伸びが非常に激しいという状況があるのは事実でございます。
 他方、我々入管の職員もこういう状況に対応いたしまして、まず基本的に事務効率を上げる、事務の機械化を進め、また職員の機動的な配置をするというような内部での自助努力ということを第一に心がけてまいっておりまして、相応のいろいろな意味での効率を上げているところでございますが、なおどうしても人が足りぬというところについては、特に第一線に当たります地方入国管理官署に重点を置いて増員に努めてきておるということでございまして、特に平成元年から二年にかけましては五十人の増員を一挙にいただくというような、純増五十人でございます。そういうような努力をさせていただいておりまして、現在千六百五十人が地方入国管理官署の第一線で活動しているということでございます。
#97
○渋谷分科員 法務省の方でつくられた「出入国管理」というパンフレットをいただきまして、その中にも「「世界の中の日本」であるからこそ「日本の中の世界」としての外国人と上手に付き合っていきたい」、いろいろ書いてあります。こういった精神を玄関口で、やはり最初の第一印象で、非常に重要なところで働いておるわけでありますから、どうしても人手が足らなければさっき言ったようなことも起こりがちになるわけですね。ですから、やはりそういう国際化時代に対応した形での職員の数のあり方は当然要望していかなければなりませんし、また機会があれば財政当局などにも私の方からも要望していきたいと思いますが、しかし、今の状況の中で大変ではありますけれども、職員の方に窓口でのマナー、対応の仕方については改めて徹底していただくようにぜひお願いをしたいというぐあいに思います。
 それで、実は入管の仕事としてはさらに、好ましくない外国人から日本の安全や利益を守るという仕事もあるということで、不法残留者あるいは資格外の活動をしているとかいうことでの不法就労の外国人はたくさんいる。今、概算で大体どんな状況になっていますか。
#98
○股野政府委員 私ども、不法残留者という形での推計を出入国管理統計をもとに行っておりまして、不法残留者は具体的には不法就労のために残っておりますので実質不法就労者とお考えいただいていいと思いますが、不法残留者が平成二年七月一日現在で我々の推計として約十万人おったと考えております。
#99
○渋谷分科員 それで、手続についてはまた後で詳しく聞きますが、不法就労者を身柄拘束して収容する、その収容場のキャパシティーが今大体どのくらいで、現在時点でどのくらいの数の方が収容されているか、お答えいただけますか。
#100
○股野政府委員 これはまず、収容を本来的に行う施設として長崎県の大村と神奈川県の横浜に収容所がございます。この二つの収容所で定員としては三百三十七名の収容定員がございます。ただ、先生御高承のとおり、中国からのボートピープルとして来た、いわゆる偽装難民の問題がございまして、この点で大村に仮施設をさらに追加しておりまして、その仮施設でまた人を入れておりますので、大村には九百名程度収容できる仮施設が別途設けられております。さらに、各地方局におきましても、退去強制手続を行う際の収容施設が設けられておりまして、これが各地方局で合計しまして約四百三十一名の収容施設があるということでございますので、本来の施設として全国で七百六十八人、それに仮施設の大村の施設が九百人そのほかにある、こういう状況になっております。
 この施設を使って退去強制を行うということが現在恒常的に行われておりまして、そのときどきによって施設の収容状況というのは変わってまいりますが、おおむねフル回転で収容を行っているという状況でございます。
#101
○渋谷分科員 推計で十万人もの方々がいる。新たにまたこれは入ってくる。一方で、収容施設はこれだけしかない。現実にはとても、これはフル回転でやったって完全に対応するなどということは不可能な状態なんですね。ですから、入管の方の施策でこの問題を根本的に解決しようなどということは現実的にはなかなかできない。もっと言ってみれば、政治的、総合的な判断が必要になるというぐあいに私は思うのですが、きょうの私の論点はまた違う観点から実はお話を申し上げておりまして、推計で十万人もの不法就労者がいる、なぜだと思いますか。
#102
○股野政府委員 この不法就労者の問題は幾つもの要因が関連しておると思います。一つには、日本と日本の近隣地域等にある発展途上国の間にあります経済格差の問題というものがあり、そういう国際的な要因がございます。また国内では、例えば不法就労者をあっせんするようなブローカー組織の存在といったようなものもある。また、日本の一部地域等に人手不足現象といったようなものがあって、それがまた一つの要因になっている。これらいろいろな要因が関連をいたしておると思いますので、それに対する対応策もおのずといろいろな要因を考えた総合的な対応策でなければならぬと考えております。
#103
○渋谷分科員 結局アジアの中でのこれほど大きな経済格差、そして今度の中東の戦争でもそうでありますけれども、アジアの難民がたくさん行っておりましたね。クウェートなども二百数十万くらいの人口で、たしかクウェート人は八十万くらいで、あと残りはパレスチナ人やアジア系難民で占められていたわけであります。またイラクもそうですね。ほかの中東地域もそうです。昨年たまたま難民キャンプに行く機会がありましたけれども、戦争で難民キャンプからそれぞれの国に帰る、国に帰っても家もなければ働く場所もない、日本に働きに行きたいという方々も当然いるでしょう。アジアの中では、バングラデシュやパキスタンなどという国々では、それなりに教育のある方、教員の資格があったり、そういう意味での教養のある人がいろいろな方法で日本にやってくるという状況があるのですね。
 日本では、もちろんそういう経済格差の中で日本の経済発展がありますから労働力不足で、今言ったブローカーが蔓延しているというのは、それが先の原因じゃなくて、ブローカーが蔓延する背景があるからブローカーが商売になるということでありまして、そういう一つの要因がある限り外国人の流入はどうやったって完全に水際で押さえるというわけにはなかなかいかない。もちろん法律で仕事をしている方々はそれを仕方がないということで認めるというわけにはいかないでしょうけれども、私が考えますに、この問題はこの問題としてまた解決しなければならない幾つかの手法はあろうと思いますが、これから先のアジアとの関係や世界との関係を考えましたときに、そういう方々が日本に来て、日本という国に対して残念だけれども余りいいイメージを持たない、どちらかといえば悪感情を持ってそれぞれ国に帰る。となりますと、将来のアジアとの関係を考えましたときに、決していいことじゃないと思うのですね。
 自分たちが法を犯していることはもちろんよく知っているけれども、例えば日本で拘束をされたときにいろいろな問題があって差別されたり、先ほどのお話じゃありませんが、入口でゲット・アウエーはまだいい方ですが、例えば入管の収容場に入った中でいろいろな問題があったりして、そこで日本に対する悪意あるいは敵意を抱いて帰っていくということになったのでは、世界の中の日本だとかお題目を幾らうたいましても、これは決していいことではないなと私は考えるわけです。
 そこで問題は、そういう不法就労者についての収容のときですけれども、先ほど言いましたように十万人もいるわけでありますから、実際の収容の能力は非常に限られている。収容のときの判断ですが、どういう判断で、例えばどこにだれがいるという一つの特定ですね、どの時点で行って、そしてどういう方法で拘束をするのか、その辺の手続について御説明いただけますか。
#104
○股野政府委員 不法残留者の実態を正確に把握することはなかなか難しい面もございますが、入管当局自身の努力によって実態を把握する、すなわち調査活動をまめに行うということが一つございます。それからまた、いろいろな関連の動きがあって、それによりおのずと情報が入管当局にもたらされるというようなこともございます。その双方、つまり自発的な努力あるいは他からの情報の提供によってその所在が明らかにされました場合には、必要な手続をとりまして、そしてその所在をまず確かめ、違反の状態であるかどうかということを現場において、例えば外国人登録証明書あるいはパスポートといったものに照らして調べるということからスタートするわけでございます。そして法違反の状況がわかれば本人の身柄を入国管理局に連行をいたしまして、そこで改めて法違反の審査をきちんと手続を踏んで行うということになってまいります。
 ただ、最近これに関連いたしまして、入管当局が入管法の手続を行っていく場合に、その身柄を一遍拘束した後で、例えばその本人がもうその所在もはっきりしている、また帰国意思もはっきりしているというような場合に、その身柄を一時的に仮放免するというようなことも行っております。しかし、一たんとにかく調査をするということになりますと、そこはきちんとした法に沿った手続を踏ませていただいております。
#105
○渋谷分科員 その仮放免というのは、いわゆるマル特というものですか。
#106
○股野政府委員 マル特という御指摘がございましたが、仮放免というのは実はいろいろな状況がございます。例えば、退去強制手続に係りました人で、例えば家族の問題があって、家族は日本に正規に在留している外国人である、ただ、その退去強制手続に係った本人が法違反の状態である、しかしその場合、その人の身柄が、例えば本人の所在がきちんとしておって、国外に出ていく意思もはっきりしておるというようなときもございます。それからまた、先ほど申し上げました調査の段階でその所在が確認され、身柄がきちんとそこにとどまるということも確認されたような場合に、そういう仮放免の手続をとるということもございます。
 そういう意味で、実はマル特という言葉は、特定の定義をしたものではございません。ただ、入管手続上一たんその身柄を拘束の状態から一遍本人の居住しているところに戻しているような措置を、一般に総称してマル特と言うときもございます。
#107
○渋谷分科員 そのマル特ということを判断するときの責任者はどこで判断するのかということを御説明いただきたいのと、拘束の際に、例えば警察が犯罪者を捕まえるという拘束の仕方と、入管が不法就労者を捕まえる、拘束をするというのとどう違うのか。例えば何人かで、襟首をつかんで、そこで働いている雇用者にも全然関係なく、言ってみれば、人権という言葉を出したいのですけれども、そういう人権に対する配慮というのはどんなふうに行われて拘束をするのですか。
#108
○股野政府委員 まず仮放免の手続は、手続が、各地方入管局において入国警備官による違反調査の後、入国審査官による具体的な調査という、審判という過程に入ってまいりますので、その過程を踏んで仮放免措置がとられていくということでございます。そういう意味において、その法に定められた一定の手続を踏んだ上での仮放免という手続がございますのと、調査の早い段階で本人の身柄がもう非常にはっきりしている、しかも、先ほど申し上げましたように、帰国意思もはっきりし、その所在も確実であるといったような段階でありますと、正式の審判手続に入る前に一たん居所に戻っているという事実もございます。
 しかし、そういうすべての手続において、委員御指摘のような人権ということについての配慮が基本になければならないと考えております。法執行でありますから、違反の状態を是正するという意味において、その状況に強制執行の側面を持つことは事実でございますが、しかしそれはあくまで法を執行するという立場から行われることでありますので、その際でも本人の人権についての配慮は当然なさるべきことでございます。
#109
○渋谷分科員 人権の尊重というのは基本だというお話があったので、それはそれで安心いたしますけれども、そのことを徹底するマニュアルみたいなものをつくって職員には教育などしていますか。
#110
○股野政府委員 この点はまず本省から各地方局に対していろいろな形で徹底するように指導をいたしておりまして、各地方局の中におきまして地方局ごとにそれぞれの現場に対して、またこれもできる限りの機会をとらえてそれが徹底されるということに努めているところでございます。
#111
○渋谷分科員 指導の内容はまさに非常に人権にかかわる話でありますから、例えば文書になっているものがあればそういったものをもしできましたら明らかにしていただきたいというぐあいに思いますし、なければそういうマニュアルみたいなものをきちんとつくる必要があるというぐあいに思います。それぞれの入管職員の、それこそ個人差によって対応が違ったり、例えば暴力的なことが行われるというようなことも実は聞いているのですね。
 私は一月四日に西ヶ丘の収容場の方に行きまして収容されている方と面会をしてきましたけれども、そのときの話で、一月二日の夜十時ごろ収容場の中で、バングラデシュ人というぐあいに聞いておりますけれども、職員から腹をけられて嘔吐を何回かして、そのときに医者を呼ぶように同僚の人が頼んだけれども、入管職員から拒否された。もちろんその後、つい最近ですけれども私もう一度収容場の方へ視察に行ってきまして中もちょっと見てきましたから、その見てきましたことも指摘をしておきたいと思うのですけれども、そういうことは例えば事実としてあったとすれば許されることですか。
#112
○股野政府委員 先ほど来御指摘をいただいておりますように、法執行に当たっては、その法違反者に対する人権上の配慮を尽くすということが基本でございまして、これはできる限りの機会をとらえ職員に徹底しているところでございます。
 ただいま御指摘の東京入国管理局の警備部門の所在しております施設の中で問題があったのではないかというお話を伺ったことがございますので、これについては私どもも徹底して調査をいたしました。しかし、その結果として、そのときに担当の職員が何か不都合なことを行った、人権を侵害するようなことを行った、こういうことはなかったということを私どもとしては報告を受け、そのように把握をいたしております。そういう被収容者に対する配慮ということは基本でございますので、そういう人たちについて人権上問題があるようなことは一切してはならないというところでございます。
#113
○渋谷分科員 収容場の中でもそうですが、あるいは取り調べのときもそうですけれども、外国人と入管の職員と、この両者しかいないのですね。ですから事実の確かめようがないのです。ましてやその人は国に帰ってしまう。後、事実関係の確認のしょうがないのですね。その後ボランティアの人がその国に行きましてもう一度その人の話を聞いて確認をして帰ってきて私は聞いておるのです。自由の身になればそれなりの事実を言うこともできるわけですね。つまり人権ということで言えば、そういう外国人のいわば人権が守られるための第三者という形で、例えば収容所の中にも入れるし、あるいは取り調べのときも同席ができる、それは弁護士でもいいです、そういう配慮というのは、大臣、考えられませんか。
#114
○股野政府委員 まず、収容所の中における処遇につきまして、これは必ず複数の職員がその処遇に当たるということをもって、例えばその収容所の中で秩序を乱すような行動も間々ございます、そういったような場合にも職員が単独で行動することのないように複数の職員が当たることによって人権上の問題を生じないという配慮をいたしておるところでございます。また、各種の取り調べにおきましても、その際に職員ができる限り個々の面接についてはそれは一対一の質問がございますが、しかしその場所についての配慮等でそれが密室でそういうようなことが行われるということを避けるように、私どもとして配慮しているところでございます。
 今後につきましては、当然これはいろいろな手続を踏んでいく中で関係者等の意見も私ども参考にさせていただいているところがございますので、そういう点について人権上の配慮ということは私ども今後とも十分考えていきたいと思っております。
#115
○渋谷分科員 もう時間がありませんので、収容場を見てきましたから、具体的に改善すべき点をこの場で御指摘をして、さらに大臣、これは取り締まる側の総元締めという立場ではなくて、政治家という立場でぜひひとつ検討してもらいたいことがあります。提案すべきことが幾つかあります。ゆっくり申し上げますから、それについて後で御答弁をいただくということでお願いをしたいと思います。
 まず行きまして入管の方と話をしまして、普通の会話の中で連中という言葉が出てくるのですね。主語が連中なのですよ、外国人は。連中という言葉は、普通常識の世界じゃ余りいい言葉として使われませんね。あの連中とかいう、つるんで歩いている連中とかね。話し言葉の中にそういう言葉が出てくるということは差別意識がどうしてもあるのじゃないかというぐあいに思わざるを得ないのですね。それとも入管職員のマニュアルの中には、連中というのは普通に外国人を指す主語として使われているということで理解すればいいのかどうか。やはりこういった点は先ほど言ったようにきちんとマニュアルをつくって、外国人の人権ということで考えればその辺はきちんと正すべきところがあるのではないかなというぐあいに思います。
 収容場内を視察いたしました。シャワー室を見ましたら、板のすのこが敷いてありまして、細いくぎですけれども、私が眼鏡を外して入ったらまず踏んでしまいますね。これが一本や二本じゃないのです。全部くぎが浮いているのです。これはその場ですぐ直すように言ってきましたけれども、こういったことが放置されているのです、大臣。
 あるいはいろいろな人たちからの声を聞きまして、あそこはマットがないですね。毛布だけです。床にそのまま毛布で寝ているのじゃないでしょうか、畳でね。それで、畳一畳です。我々の使っている畳一畳よりも狭いです。そこに一人ずつ寝ていて、八人ぐらい同じ部屋で寝ているわけですね。何も八人部屋だから八人にするということじゃなくて、もう少しスペースとしては、例えば六人にするとかそういうスペースを持たせるということが必要なのではないかなというぐあいに思いますし、それから寝具類については今どきリネンサプライでやればあっという間にクリーニングできるのですから、そういう毛布なんかでも清潔なものを与えるという必要があると思うのですね。後から入った人が毛布が臭かったとか異様なにおいがしたとかという指摘もあるのです。こういったことはぜひ改善してもらいたいというぐあいに思います。
 それからポットを出していますけれども、お湯はいつでも飲めるように出していますが、これは十時で打ち切りですか。その後も別に安全性に問題なければ、夜でも飲めるように配慮をするべきだろうというぐあいに思います。
 それから食事の量、個人差はいろいろありますけれども、大臣、一日の食事の費用が八百十五円なのですよ。もちろん予算の問題もありますよ。朝昼晩ということでいえば、いる間はそんなに長い時間ではないかもしれませんけれども、やはりこういった食事の面も改善をしてもらうように力をしてもらいたいというぐあいに思います
 それから、収容されている人が出国までの説明をきちんと受けてないのですね。だから、中にいて非常に不安を持っている方々がいらっしゃる。これについては、英語がわかれば英語でいいですけれども、それぞれの母国語できちんとわかるような対応というのが必要ではないかなというぐあいに思いました。
 これらについては改善すべき点としてぜひ早急に取り組んでもらいたいということと、先ほど言いました点で、第三者を入れるということはこれからの検討課題。つまりそういうことで第三者を入れれば人権問題がどうこう言われることがないわけですね。それから本人が外に電話をかけるときに、そんなに自由にはできません。収容場の中ですから一定の制限はあっても、本人がそれなりに自由に外に電話をかけられるようにした方がいいんではないかなというぐあいに思います。
 先ほど言いました政治家としての提案ということですが、実際に今外にいて働いている人たちに人権上のいろいろな問題がありますね。そういうことについて配慮するというのは難しいです。だけれども、捕まった後に未払いの賃金があるとか労災の問題が残っているとか、つまり、働いている場所で経営者側の責任が問われている部分があるわけですね。言ってみれば日本の国に対する印象、悪感情を持って帰る、金も持たずに帰る。借金背負って来ているわけですからね。こういうことについては大臣、収容所の中にカウンセラーかこういったことの相談に応ずる機関みたいなものを、これは法務省だけではできないでしょうけれども、そういうことを考える必要があるんじゃないか。今ボランティアがそれに対応しています。
 そうじゃなくて、きちんと国がカウンセラーを置いて、そういう問題については国が動けば未払いの賃金ぐらいはすぐ持ってこれるわけですから、そういう意味での配慮をしてやることで外国人が少しでも日本に対して悪感情を残さずに帰る。帰っても、日本では働けなかったけれども、しかし日本に対してはその意味では敵意とかそういうものを持たないで我々とこれから将来長い間つき合っていける、そういう意味での御努力をぜひお願いしたいと思うのです。
 今申し上げました改善するかどうかということと第三者を入れるということについてどうか。最後はひとつ大臣の判断をいただいて私の質問を終わります。
#116
○股野政府委員 まず収容所の中の処遇の問題それから職員の言葉遣いの問題等について御指摘をいただきました。これらについて、特に言葉遣いの問題というのはもう基本でございますしきちんとするように、今までも努力をしてまいりましたが、不徹底な点がありましたらさらに徹底をさせていただきたいと思います。
 また、個々の処遇の問題につきましてはできる限りの改善はしてまいりたいと思っておりますが、他方、この方たちは外国人でおられるということについての配慮はこれまでもいろいろな意味でしておりまして、そういう点で、この外国人の方々の所内の処遇ということは、入管法は違反でございますが、しかし、それらの点については相当程度の大幅な自由を認めるという対応にさせてきているという点もひとつ御了解願いたいと思います。
 それから、御本人からのいろいろな申し出、例えば前の雇用者の未払い賃金があるというような問題、これは当然私どもも真剣に対応すべきでございますので、そういった点は本人からの申し出を職員がきちんと受けとめて、例えば退去強制手続についても未払い賃金を確保するまでの時間をきちんととるという配慮もする等々のことは既に現実に励行いたしておりますが、こういう点も一層徹底させてまいりたいと思います。個別の事項がいろいろございましたので、既に十分配慮している点もございますが、今後についてなお改善できる点はいろいろまた考えてまいりたいと思っております。
#117
○左藤国務大臣 今局長の方から御説明申し上げましたが、一つは東京入管局の方から西ヶ丘の方ですか、そちらの方に移したこともありましてまだ十分設備だとかいろいろな点で配慮ができてない点もあろうかと思いますが、その点はこれからも努力していかなければならない、こう思います。一般的に、今お話がありましたように急激にこういった人がふえたこともありますので、そうした点で確かにそういった点の配慮がおくれている点があろうかと思いますので改善さしていきたい、このように思っております。
#118
○渋谷分科員 終わります。
#119
○林主査 これにて渋谷修君の質疑は終了いたしました。
 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ────◇─────
    午後一時三十分開議
#120
○串原主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 法務省所管について質疑を続行いたします。二見伸明君。
#121
○二見分科員 私は、死刑廃止について、死刑は人間の尊厳、人間の権利の否定であるという基本的な理念から、死刑は廃止されるべきであるという立場で二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 最初に、日本の現状でございますけれども、現在死刑判決が確定して収監されている、いわゆる死刑囚は何人いるのか、数字をお示しいただきたいと思います。
#122
○井嶋政府委員 本日現在で四十七名でございます。
#123
○二見分科員 これらの者は、死刑判決確定後現在まで、どのくらいの期間拘置されているのか。最長期の者、最短期の者、また平均的な期間というのはどうなっておりますか、お示しいただきたいと思います。
#124
○井嶋政府委員 ちょっと手元に最短期あるいは個別の記録を持っておりませんので、申しわけございませんが、最近五年間で死刑を執行いたしました者が平均どのくらいいたかという数で申しますと、約七年六月くらいでございました。もちろん、最近判決が確定して入った者、それからもっと前から入った者とありますから、判決の前後によりましてもちろん在監期間が長短があるわけでございますが、そのデータは現在ちょっと持っておりませんので、お答えできません。
#125
○二見分科員 私の方の調べでは、最近の確定から執行までの平均期間は八年から十年くらいというふうになっておりますけれども、もしそのとおりでよろしければ後ほど、後で結構でございます。この数字が違っておる場合には、後でお示しいただきたいと思います。
 死刑を法定している犯罪、これは一般刑法犯で十三、特別刑法犯で五罪、全部で十八ですね。例えば内乱罪の首魁だとか外患誘致罪、外患援助罪等々一般刑法犯が十三、特別刑法犯が五つでございますけれども、これらの法定犯罪のうち、すべての犯罪に対し同じ程度に死刑が宣告されているわけではないと思う。最近二、三十年間の傾向で結構でございますけれども、どのような犯罪について死刑宣告が多くなされているのか。また全く、あるいはほとんど死刑宣告がされていない犯罪もあるのではないかと思いますけれども、それもお示しいただきたいと思います。
#126
○井嶋政府委員 それでは、昭和四十五年から平成元年までの二十年間ということで調べました結果を御説明申し上げます。
 統計によっておるわけでございますが、初めにお断りしておきますが、一人の被告人が死刑に当たる犯罪を幾つかやった場合、併合罪みたいな形でやった場合に、統計上主たる罪名ということで一つでとるものですから、個別に全部当たらなければどれだけの罪名を持っているかということが正確に出ないという点では、これから申し上げる数字は若干のそういう緻密性、細密性の点で問題がありますが、一応四十五年から平成元年までの二十年間で、これは一審の言い渡しです、一審において死刑を言い渡された者の総数は百二十二名でございます。そのうち、今申しましたように統計上主たる罪名として整理されておりますが、殺人罪が五十九、それから強盗致死罪が五十九、それから建造物放火が一、その他の罪名三、その他というのは爆発物取締罰則でございます。
 それから、逆に適用されていない罪名ということでございますが、こういったことで統計上こうなるわけで、ほとんどの者が刑法の殺人あるいは強盗致死という罪名を持っておるのが多いということで、なお若干子細に見ましても、結局これにプラスされるのが放火罪あるいはごくまれに爆発物があるというようなことで、他の、今お示しになりました刑法十三、特別法五つという罪名の関係からいえば、今申し上げました以外は逆に言えばほとんど適用がないということだと思います。
#127
○二見分科員 そうですね。例えば外患誘致罪は制定以来全く適用がないですね。それから現住建造物侵害罪、水道毒物混入罪もほとんど適用がないというふうに記憶いたしております。そうすると、明治四十年現行刑法制定以来全く適用されていないものもある。それからほとんど適用されていないものもある。そのために、昭和四十九年の改正刑法草案では、死刑犯罪を七種類に減らしてはどうかという案が示されましたね。このことについては、これは私は、むしろ死刑を廃止する方向への一つの大きなステップではないかなというふうに思うわけですけれども、そうした七種類に減らそうという刑法草案の考え方については、法務省はどういうふうにお考えになりますか。
#128
○井嶋政府委員 今委員御指摘のように、刑法全面改正作業の際の法制審議会におきまして、死刑の存置について議論がなされております。しかし、その当時はまだ凶悪な犯罪が後を絶たなかった、それから当時のいわゆる世論調査によりますと、死刑制度の存置を可とする者、賛成する者が七〇%あったというような、国民の死刑存置の希望と申しますか、意思、そういった状況にかんがみまして、直ちに死刑を廃止することは適当でないという意見が結局大勢を占めたわけでございますので、死刑は存置することとなったわけでございますが、御指摘のように、存置をするとしても適用はなるべく制限していくのがよいという議論がありまして、結局草案におきましては、現在の十八の罪から、実はこれは先ほど委員は七とおっしゃいましたけれども、私どもの整理では八になるわけでございますが、八罪種に限るということにされました。さらに、死刑の適用は特に慎重でなければならないという量刑上の指針を新たに規定するといったようなことも決められております。そういったことで、草案の検討の結果は、罪種の限定、それから量刑上慎重に扱え、こういったようなことで、方向としてはおっしゃるような方向に整理されたものでございます。
 ただ、これはあくまで草案でございまして、現在こういったものを土台にして刑法全面改正作業を法務省として検討しておるわけでございますが、私どもといたしましては、このような改正草案の答申に至りました経緯、考え方、こういったものも十分尊重いたしまして、あとは今後の国民世論の動向といったようなことも注意を払いながら適切な対処をしなければならないということで、現在考えておるわけでございます。
#129
○二見分科員 世論の賛成も七割あったというお話ですけれども、たしかこれは平成元年にも総理府で調査しておりますね。私はこの調査の仕方、いろいろ問題があるのではないかなというふうに考えております。
 例えば、最近二十年間の司法統計によりますと、殺人、強盗、強姦、放火の犯罪数は、昭和四十五年が一万一千四百二十三件、昭和五十五年が八千五百十六件、平成元年は五千八百九十九件と、犯罪件数は減っておりますね。ところが総理府はどういう調査をやったかというと、質問の八番でこう言っているのです。「人殺しなどの凶悪犯罪は増えていると思うか。」調べられたってわからないから、思う。九番になると「死刑という刑罰をなくしてしまうと悪質な犯罪が増えると思うか。」もう調査されている方は最初から間違っているわけなんだ、事実関係を。凶悪犯罪が減ってきているというのじゃなくて、ふえてきているという認識を持っている。テレビでいろいろな凶悪犯罪が報道されますから、それだけが印象にあって、ふえているなという実感を持って、統計的には減っているにもかかわらず、それで「人殺しなどの凶悪犯罪は増えていると思うか。」イエス、こう言う。「死刑という刑罰をなくしてしまうと悪質な犯罪が増えると思うか。」当然イエスと、こういう答えになっている。それで質問十番では、「今日本で、どんな場合でも死刑を廃止しようという意見にあなたは賛成ですか反対ですか。」これは反対になるに決まっているんだ。こういう設問で誘導してくれば、死刑は廃止しない方がいいという意見が七割も八割も占めるのは、これは当たり前なのです。ですから、私は総理府のこの統計のやり方は全く当てにならないし、こんなものを当てにして、こんなものを対象にして世論が死刑を望んでいるからという発想で、死刑について真っ正面から取り組まないということになると、私はそれは大変問題だと思うのですけれども、その点についていかがですか。
#130
○井嶋政府委員 世論調査は、総理府にお願いいたしまして、総理府の統計局でしょうか、専門的な立場で、設問その他の客観性なども一応経験上十分検討しておやりになっておるというふうに私は信頼をしておるわけでございます。先ほど国民の感情が誘導されているとおっしゃいましたが、確かに統計的には殺人といったような凶悪犯が数は減ってきておるといったようなことがあるかもしれませんが、逆に最近いろいろ出てまいりますいわゆる極端に凶悪な事件と申しますか、やはり国民感情にとって大変だ、大変に重くひどいことだと感じるような事件が減っていないということはまた事実だと思うのでございまして、その辺のところも加味された形が出ておるのかなと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、私たちはこれだけが客観的なデータであるとは思いませんけれども、一つの重要な資料だというふうに考えておることは間違いございません。
#131
○二見分科員 私は、死刑という制度があるから犯罪が減るなんて思っておりません。それは全く関係ないのだ、むしろ世界の大勢は死刑は廃止の方向に動いているということを、私たちは認識しなければならぬと思うのです。
 まあそれはそれといたしまして、この統計によりますと、死刑は昔は、明治の時代は九百人とか七百人とかあるいは四百人とか、かなりすごい死刑執行された人の数がありましたけれども、最近はそうではありませんね。平成元年は一人だし、その前六十三年は二人、六十二年は二人、ここのところ一人ないし二人という死刑の執行状況ですね。これはいろいろな理由があるのだろうと思うのだけれども、これは死刑を法定している犯罪の件数も同じように減少してきているからと考えてよろしいでしょうか。
#132
○井嶋政府委員 その前に、今委員がおっしゃいました数がちょっと極端に違いますので申し上げておきますが、明治時代に九百とか四百というお話がございましたが、明治十五年に刑法が施行されまして以来、明治年代で一番多かったのが一年間に百五十台でございまして、これはしかも一審の言い渡し件数でございます。それで、明治時代の平均をとりますと六十六でございます。ついでに申しますと、大正時代におきましては平均で見ますと四十三人、それから昭和の終戦まで、これですと平均で二十三、戦後につきましては一時期百人台に上がったこともありますが、おおむね減ってまいりまして、四十四年以降は一、二の例外を除き一けたになってきた、こういうのが全体の傾向でございますので、まず訂正させていただきたいと思います。もっとも、これは先ほど申しましたように、第一審の言い渡し件数でございますので、その後上訴審で確定しているかどうかという点で、若干これから減ってくるということはあると思います。
 その上でお答えいたしますが、減少している原因は何かということだと思いますけれども、これはやはり、結局死刑が定められているような極端に凶悪な犯罪が減少してきておるということが最も大きなファクターであろうというふうに考えております。
#133
○二見分科員 それから、世界の死刑の存廃の状況についてちょっとお教えいただきたいと思いますけれども、現在世界各国で死刑制度を持っているところとやめてしまったところとありますね。これはどういうふうになりますか。
#134
○井嶋政府委員 国連の経済社会理事会の決議によりまして、国連事務総長は、五年ごとに世界各国における死刑状況を報告することになっております。一番最近出ました報告は、一九九〇年に出されたものでございます。この一九九〇年の国連事務総長の報告によりますれば、すべての犯罪について死刑を廃止している国または地域、これは三十八でございます。それから、軍法等による犯罪あるいは戦時犯罪等による例外を除いて、通常の犯罪について死刑を廃止している国または地域は十七ございます。それから、通常の犯罪について死刑を存置しているものの、過去十年以上にわたって実際に執行していないという国または地域が三十でございます。通常の犯罪について死刑制度を存置し、かつ適用している国または地域は、現在九十一という数になっております。
#135
○二見分科員 私の方の資料とちょっと数字が違いますけれども、それは大きな問題ではありません。私の方では、死刑を全面的に廃止した国は四十二となっておる。これは統一ドイツを一つにまとめましたので、四十二となっている。それから、通常犯罪についてのみ死刑を廃止している国は十七、事実上死刑を廃止している国は二十五になっています。それは、数字の違いはそれほど大きな問題ではないと思います。
 それで、死刑を持っているところは九十一ですね。しかし、アメリカの中では州によっては死刑を廃止しているところもありますね。そういうことになりますと、死刑を廃止している国というのは数はかなり多いのではないか。ポルトガル、フランス、統一ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、ノルウェー、皆死刑を廃止しております。私は、これはこれから我が国が考えていかなければならない大きな一つの流れだと思っておりますけれども、この点について、法務省はこれからもあくまでも死刑にこだわっていくわけですか。
#136
○井嶋政府委員 一つの国の死刑制度を含めた犯罪対策と申しますか犯罪に対する政策というのは、まずその国が責任を持って定めるべきものだというのは基本だろうと思います。したがいまして、その国の中における犯罪情勢の推移でございますとか、その他もろもろの要素について検討するというのがまず第一義的な立場だろうと思いますが、他方、今日のような近代的な社会になったわけでございますから、やはり諸外国における動きといったようなものも無視はできないし、また、そういったものを背景にして、いろいろ条約的なものあるいはそういった取り決め的なものが行われるような趨勢になってきておるわけでございますから、そういったものを無視することはできない。しかし、やはり主体的に決めるのはその国の政府あるいは国民だと考えております。
#137
○二見分科員 それはそのとおりだと私も思います。ただ、この趨勢はこれからの日本の死刑制度を考える場合の大きな参考にやはりしていく必要があるのではないかと思います。
 それで、昭和五十四年にいわゆる国際人権規約B規約を日本は批准をいたしておりますね。その規約の六条の六では「この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。」こう書いてありますね。それから、平成元年十二月十五日に国連の総会で採択された、通常死刑廃止条約と呼ばれているものがありますね。この前文はどういうふうに書いてあるかというと「市民的及び政治的権利に関する国際規約第六条が、その望ましさを強く示唆する文言で死刑の廃止に言及していることに留意し、あらゆる死刑廃止措置が、生命に対する権利を享受するにあたって前進とみなされるべきことを確信し、ここに、死刑を廃止するための国際的誓約を行うことを望み、次のとおり協定した。」こう書いてあります。日本が批准している国際人権規約B規約の六条の六項というのは死刑廃止を促進すべきものだというふうに私は理解いたしておりますけれども、これについての政府の御見解はいかがですか。
#138
○井嶋政府委員 国際人権B規約第六条第六項には、今委員御指摘のような規定がございます。しかし、この第六条の第四項あるいは第五項をごらんいただきますとおわかりのように、第四項では「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。」あるいは五項では「死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、」といった規定があるわけでございまして、このB規約の六条自体が死刑制度の存置を、そういう規定を置いている以上は積極的に容認しているように読める、四項とか五項とかにそういう死刑について云々している以上は、そういった規約自体が死刑制度の存在を容認しているかのごとき印象を与えますので、六項でそうではありませんよと、何もB規約は促進を言っているわけじゃありませんよと、しかしそういう制度を持っている国があるのだから、それに対してはきちっとこう言っておきますよと、こういう感覚で書かれたものだというふうに、六項は理解しておるわけであります。
#139
○二見分科員 私も同じ理解です。ですから、第六条の一では「すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。」これが一番大事なところなのだろうと思います。ただ、それぞれの国によっては死刑制度を残しているところもあるから四や五でこういう言い方をしているわけで、ねらい、考えているのは、死刑というものは決して好ましいものではない、むしろ廃止すべきだという考え方がにじみ出ているのではないか。それが、いわゆる死刑廃止条約の前文にその気持ちが強くにじみ出ているのではないかというふうに私は理解しているのです。ところが、たしか日本はこれは反対したんじゃなかったですか。どうですか。
#140
○井嶋政府委員 今委員が死刑条約とおっしゃいましたが、正確な名前、タイトルを申し上げますと、国際人権B規約第二選択議定書というものでございます。この選択議定書の採決が平成元年の十二月に国連で行われておりますが、その際、我が国政府は反対投票を行っております。
#141
○二見分科員 やはりそれは、先ほど国民の世論がそうだからということでおっしゃられましたけれども、国民の世論というものを背景にして反対論をとられたのですか。
#142
○井嶋政府委員 この採決の際に反対いたしましたが、念のために投票の内容を申し上げますと、賛成が五十九、反対が二十六、棄権が四十八、欠席が二十四という数になっております。
 そこで、反対をしました理由でございますが、先ほどちょっと申し上げましたけれども、まず第一には、死刑の廃止問題というのは、結局基本的には各国において、当該の国の国民感情、犯罪態様あるいは刑事政策といったようなことを踏まえて慎重に検討されるべきものであって、国際機関というようなフォーラムの中で一義的に是非を決定すべきものではない。なおかつ、国際社会におきまして、死刑の存続及び廃止につきましては各国の態度が区々に分かれておって、必ずしもまだ国際コンセンサスとして死刑廃止といったものにまとまっていないということがまず第一の理由。
 第二の理由につきましては、この採択されました議定書案についての人権委員会における討議が非常に不十分であって、そういった各国の主張が十分に取り入れられていないといったような技術的なこと、こういったようなことを理由に反対投票をしたということを聞いております。
 こういったお答えを、本来外務省がすべきことでございますが、本日は私がかわって外務省から聞いたことを申し上げておるわけでございます。
#143
○二見分科員 あと五分でございますからはしょって申し上げますけれども、私は、犯罪抑止力という観点から考えても、死刑制度があるから犯罪が抑止されるのだということにはならないのではないかと思っております。だから、犯罪抑止力という観点からでも、私は死刑は廃止してもいいのではないかと思います。
 また、いろいろ国民の感情もあるというお話でございましたけれども、これは、一九七二年六月二十九日、アメリカ連邦最高裁判所のマーシャル判事は、死刑違憲判決に際し、「アメリカ国民多くは、死刑がなければ応報感情を満足し得ないような品位の基準ではないと信ずる」と。これは、大変厳しいというか、非常にアメリカ人に対する心からの尊敬を持った認識だと私は思うのです。凶悪犯罪があるから殺してしまえ、死刑だ、そんなやつは、その感情を日本人が今でも持っているとすれば、それは応報感情を満足しなければだめだ、人殺しには人殺しだ、何だと。日本人は非常に低い品位の国民性だということにも私はなりかねないのだと思います。私は、国民世論をむしろ、死刑なんてこんな野蛮なことはやめるんだという方向にこれから誘導していくことが我々の役目ではないだろうかと思うのですけれども、局長、いかがですか。
#144
○井嶋政府委員 もう委員御案内のとおり、刑罰の本質としていわゆる教育刑と応報刑ということがあるわけでございまして、近代行刑の思想というのは教育刑的な方向へ来ておることは間違いございませんが、事死刑ということに関しますと、これはどう説明いたしましても応報刑的な色彩以外に説明のしようがないということでございます。
 そういった観点から、やはり国民の感情が応報刑的な死刑制度を残してほしいと言っている、その気持ちというのを今委員は国民の民度の高い低いでおっしゃいますけれども、私は、必ずしも民度が高いとか低いとかいう問題ではないと思います。やはり国民が犯罪というものに対して、どういうふうにすれば犯罪が抑止されるかということについて真剣に考えているということ自体は、決して民度の問題ではないと思うわけでありまして、やはり私たちがやっておりますことは日本の刑事政策でありますから、日本の国民が犯罪の発生に対してどのように刑罰の効果を期待しているかということを、私どもとしては第一義的に置かなければならぬのではないかというのが基本的立場でございまして、アメリカにはアメリカの国民の感情があるだろうということでございます。ただ、そうは申しましても、先ほど申しましたような世界各国の趨勢を決して無視するといったことを申し上げているわけではございません。
#145
○二見分科員 それは私も、凶悪犯罪を見ますと、こんなやつは死刑にしてやれという個人的感情を全く持たないわけではありません。そんな立派な気持ちを持っているわけではないけれども、しかし冷静になると、やはり死刑はまずいという気持ちになります。
 また、もう一つは、誤判の問題がありますね。無実だった者が死刑の判決を受けて、無罪になった、幾つかあります。これは死刑が執行されていなかったからよかったようなものだけれども、もし執行されていたならばどうなるのだろう。死刑というのは原状回復不能の刑罰、もとに戻らない。だから、これはもちろん死刑の判決を言い渡すにも慎重でなければならないし、執行も慎重でなければならないけれども、それ以前に、だから死刑はやめた方がいい、この制度はやめた方がいいと私は思っているのです。
 大臣、実は私がこの問題に大変関心を持ったのは、そういうきれいごとからだけではなくて、ある本を読んでいて、これは悪いことをやったんだから死刑になるのだ、当たり前だ、その感情がないわけではない。それでは、その死刑を執行する刑務官というのかな、その人の立場というのを読んだときに、私はぞっとしたのです。死刑の判決を下す裁判官はそれだけだ、手を汚すわけじゃない。執行命令書に判こを押すのは大臣、自分がその場に立ち会うわけじゃない。実際に刑を執行する者の立場になったら、この人たちの人権はどうなるんだろう。死刑を執行される人の人権もある、その家族の人権もある。では、その死刑を執行する刑務官の人権だってあるわけです。そうなったときに、私は死刑というものはやめた方がいいというふうに結論を下したわけなんですけれども、そういう点について御感想を伺って、質問を終わりたいと思います。
#146
○左藤国務大臣 確かに、一国の刑政の責任者という立場にある者は法務大臣になるわけでございます。そうしたことで、対国民の世論とかいろいろ問題もありますし、また、国家、社会が一つの秩序を維持していく上での問題として、そういったことをどういうふうに、死刑というものが持つ意味というものもいろいろあろうかとも思いますが、こういった問題について、今先生御指摘のようなこともあります。一方でまた、まだ国民の中にはかなり、凶悪な犯罪を犯した人は死刑を科すべきだというふうに考えている人もあるわけでありまして、そうしたことで、世論調査の結果のことについても、いろいろ問い方のことについても御批判があったわけでありますけれども、いろいろな問題がありますので、今私は、すぐにはこうした死刑を全面的に廃止するということはできないかとも思いますけれども、そういった問題について検討をしていくということは必要であろう、 このように考えます。
#147
○二見分科員 以上で終わります。
#148
○串原主査代理 これにて二見伸明君の質疑は終了いたしました。
 次に、土肥隆一君。
#149
○土肥分科員 私は、戸籍謄本のいわゆる大量不正入手事件の続発について、去年も分科会で質問いたしましたが、継続して質問させていただきます。
 実は、去年申し上げましたように、一九八九年九月でございますが、福岡県の弁護士会に所属します弁護士二名が統一請求用紙によりまして不正に大量に戸籍謄本を入手したという事件がございました。その結末は、この二名に対する福岡県弁護士会の倫理規定に基づく懲戒処分として、業務停止五カ月、そして三カ月と出ました。二名でございます。そういう事件を通しまして、私は、今後この統一請求用紙を使うことのできる弁護士あるいは司法書士、土地家屋調査士、税理士等々、統一請求用紙の扱いについては十分な指導と、そして市町村の窓口における取り扱いも厳密を期すようにということを要望いたしました。
 しかし、実はその翌年、ちょうど一年たった一九九〇年九月でございますけれども、東京で行政書士が二名、職務上の交付請求用紙を不正に使用いたしました。二カ月たちまして十一月に、佐賀県でやはり行政書士が職務上の請求用紙を興信所に横流しするという事件が起きました。
 さて、過料の申請を受けました福岡簡易裁判所は、この両弁護士に対して過料の必要なしという判定を下しましたけれども、それはどういうふうに理解したらいいのでしょうか、教えてください。
#150
○清水(湛)政府委員 私どもと申しますか、福岡法務局におきましては、そのような行為をした弁護士についても過料は処せられるべきであるという考え方のもとに所轄の簡易裁判所に通知をいたしたところでございますけれども、裁判所の方では、興信所の職員に対しましては過料の裁判をいたしましたけれども、弁護士に対してはそういう裁判をすることはできないということで過料の裁判はされなかった、こういう結末になっているわけでございます。
 どうしてそうなのかということにつきましては、その過料決定の中に理由が書いてございませんので、正確に申しますと私どもにはわからないということにならざるを得ないわけでございます。
 しかし、いろいろ考えてみますと、統一請求用紙に記載されておるのは当該弁護士でございますけれども、その用紙を利用して戸籍謄本の交付を受けたのは興信所の職員である、つまり直接弁護士が交付を受けているということにはなっていないというようなことがあるいは一つの理由になったのかな、これは全くの推測でございまして、何とも言いかねるところでございますけれども、私どもといたしましては、弁護士の方では興信所の職員がそういう請求をするということを知りながら統一請求用紙を交付したという事実がある以上、これはやはり弁護士も処罰されるべきだという考え方のもとに通知をしたわけでございますが、その点についても若干の見解の相違があったのかもしれないなというような感想は持っているわけでございます。
#151
○土肥分科員 法務省がわからない、そして推測でおっしゃるなら、私どもも推測するわけでありまして、大した事件じゃないというふうに解釈してもいいわけですね。つまり、自分では請求してないけれども、横流しをしたことはまあ間々あることだ。そういうふうに曲解してもいいでしょうか。曲解というか、解釈していいですか。
#152
○清水(湛)政府委員 そういうことは全くないわけでございまして、私どもは、弁護士についても処罰すべきだという考え方は今もって変わらないわけでございますけれども、しかし過料の裁判に対しまして法務省が不服を申し立てるということが認められておりませんので、それはそれで裁判所の判断として私どもは認めざるを得ない、尊重せざるを得ない、こういう結果になっているわけでございます。
 もちろん、このような弁護士の行為が戸籍法にストレートに構成要件的に当てはまらないということでございましても、弁護士として絶対やってはいけない行為をしたわけでございますので、所轄の弁護士会にも御通知申し上げまして、先ほど先生御指摘のとおり、弁護士会では大変厳しい懲戒処分をいたしておるという結果になっているわけでございます。
#153
○土肥分科員 弁護士さんが五カ月、三カ月という業務停止を受けたということは、いろいろな人に聞いてみますと、五カ月というと、普通の弁護士さんで大体二千万か三千万の損害になるのじゃないかというふうなお話もございました。大変重い、ある意味では非常に厳しい裁定がなされたと思いますが、しかし、じゃ興信所の二人の職員に対する過料は幾らだったのでしょうか。
#154
○清水(湛)政府委員 興信所の職員につきましては、合計で三名でございますけれども、うち一人が八万八千円、もう一人が六万八千円、もう一人が二万円の過料、こういうことになっております。どうもこの算定の根拠は、不正取得一件について二千円というような算定基準で、件数に応じて過料の額が決められておるのではないか。これも推測でございますけれども、そういうようなことになるのではないかというふうに考えております。
#155
○土肥分科員 私もそのように思います。要するに、判明した枚数掛ける二千円ということだろうというように思いますが、八万八千円とか六万八千円とか二万円というようなことになりますと、弁護士は二千万ぐらいひょっとすると損をしたんじゃないか、損というか、罰を受けたということになるわけですけれども、こういう過料をもう少し見直して、きちっと罰則に値する、あるいは犯した行為に値する罰則を与えるべきだと思いますが、これは過料の全体的な法体系を見なければならないのだろうと思いますので、私の感想としては、弁護士は非常に厳しい処罰を受けたけれども、興信所はポケットマネーで済んだというふうに感じております。
 その程度にしておきます。
 その後、私は法務省の皆さんに、とにかく関係八団体に対して指導を十分してくれというふうに申しましたが、どんな指導をなさったか教えてください。
#156
○清水(湛)政府委員 関係八団体におきましては、このような事件が起きる前から、この資格をいわば乱用して不正取得行為がないようにということで指導もし、関係八団体それぞれ、会員に対して厳格な指導をしていたところでございますが、不幸にしてこのような事件が起こってしまったわけでございます。そこで私どもといたしましては、福岡の事件が発生した直後直ちに関係団体を法務省に呼びまして、統一請求用紙のなお一層の厳正な管理方について要請いたしたところでございます。関係八団体の関係者それぞれ、事の重大性というものについてあるいは認識の浅かった方がその時点においておられたかもしれませんけれども、少なくとも福岡の事件発生直後におきまして、私ども関係団体を呼びまして厳重にこの管理方を要請するとともに、問題の重要性、重大性ということを指摘して、会員のなお一層の指導方をお願いしたところでございます。
 なおまた、先ほど先生が御指摘になりました東京において行政書士が二人、これはみずから戸籍謄本を不正取得して興信所にそれを流していたという事案、これは先般過料の通知を管轄の裁判所に対してしたところでございますが、この問題を契機といたしまして、さらに一層この八団体においては厳正な管理をする必要があるということを申し入れまして、ことしの三月以降は八団体すべてが統一請求用紙に一連の番号を付しまして、どの行政書士があるいはどの司法書士が、どの弁護士が何番から何番までの請求用紙を所持しておって、これを使用しておるということが直ちにわかるようにいたしたところでございます。こういうような一連の番号を付することによって不正取得請求が絶対起こらないようにということで、なお厳重な会員に対する指導方をお願いしているところでございます。
#157
○土肥分科員 絶対起こらないと局長おっしゃるのですが、私はもうこれから何度も起きるというふうに感じております。したがって、後で申し上げますけれども、こうした指導などではどうにもならない、統一請求用紙の位置づけをもう一遍考え直さなきゃならない、このように思っておりますが、また後で申し上げさせていただきます。
 一定の指導はなさった、そして通し番号をつけるようにという指示をなさっておられます。そういうふうにして指導もなさっておるわけでありますが、先ほど言いましたように今回またもや東京で行政書士会の事件が起きたわけであります。この事件の概要を申し上げますと長くなりますので、要するにこの行政書士二名がみずから統一請求用紙を用いまして戸籍謄本を取り寄せ、それを各興信所にファックスで送信したというわけです。それで、これは私の内部的な調査によりますと、武田という人は一千八百枚取り寄せて、そして二百九十四枚は使用してなくて一千枚は紛失したというふうに言っているのですね。紛失したというのは、この事件が発覚して、焼却ないしはどこかに捨てたということですね。それから、神田という人は千百五十枚取り寄せまして、五百枚未使用で残りがやはり紛失した、行方不明だ、こういうわけです。送付いたしました興信所の中心は大阪でございます。それから取り寄せたのもまた関西地区が中心でありまして、東京とか北海道もありますけれども、大阪、奈良、京都、兵庫などに集中しているというふうに私は理解しております。
 行政書士会はこの事件が発覚いたしましてすぐに処分をしたようでありますが、処分のその内容、それからまた法務省が独自に調査をなさって押さえた統一請求用紙はそれぞれ何枚であるか、教えてください。
#158
○清水(湛)政府委員 まず、東京の行政書士二名が戸籍謄本を不正入手したということが発覚いたしましたので、東京法務局におきまして、本人から事情を聴取するなど所要の調査をしたわけでございます。その結果、明確に証拠づけられる不正取得件数というのは、一名について十件、もう一名につき六件でございました。これらの行政書士が会から統一請求用紙を大量に購入している事実があるにもかかわらず、それらの使用の事実が確認できなかった、証拠上は確認することができなかった、こういうことになったわけでございます。そこで、裁判所に対する通知といたしましては、一人の行政書士について十件、もう一人について六件という違反件数であるということで通知したところでございます。
 また、このことに関連いたしまして東京行政書士会では、一名は社会保険労務士も兼ねている方でございますが、行政書士だけの方につきまして会員権停止六カ月という会の処分をいたしております。これは平成二年九月二十六日付でございます。それからもう一人の社会保険労務士を兼ねている方につきましては、まず行政書士会において会員権停止六カ月、それから社会保険労務士会におきまして会員権停止六カ月という会則に基づく処分をいたしておるというふうに承知いたしております。
 私どもといたしましては、なおこの会の処分のほかに行政書士法等に基づく懲戒処分というものもあり得るわけでございますので、具体的には東京都に対して、こういう過料の裁判を求める通知をしたという事実を行政書士を監督する東京都に通知をしておる、こういう状況になっているわけでございます。
    〔串原主査代理退席、主査着席〕
#159
○土肥分科員 東京都には通知なさったのですね。しておられるわけですね。
#160
○清水(湛)政府委員 通知をいたしております。
#161
○土肥分科員 まだこの両名の判決は出ていないのですね。判決というか、過料の決定は出ていない。
#162
○清水(湛)政府委員 まだ過料の決定は出ていないと承知しております。
#163
○土肥分科員 それではまだ未定ですから、恐らく福岡県弁護士会の例からいえばまた一枚二千円というようなことになれば一万二千円と二万円、こういうことになるわけでありまして、しかも行政書士会の会員規則において会員権停止六カ月というのは、私の知っている範囲ではその二人の営業上全く損害は受けないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#164
○清水(湛)政府委員 まず、過料の裁判の方で一件当たり二千円というのは、福岡の例でそういう基準でやられておるのではないかというような推測があるわけでございますけれども、福岡の場合にはこの種の違反事件が起こったいわば最初の事件だ、過料の裁判がされた恐らく最初のケースではなかったかというふうに私は記憶いたしておりますが、事の重大性、問題の重大性というようなものが私どもとしてはやはり関係者に徐々に認識されてきておるのではないか。このような裁判をするにつきましては、裁判所の方から所轄の検察庁の検察官に意見を求めるというようなことが行われるわけでございますが、検察官においては事案の重大性、事の重大性、他に及ぼす影響の大きさというようなものをよく考慮されまして適切な意見を述べていただけるものと、いわば過去の非常に少数の先例である二千円というようなものを基準にすることなく、客観的に相当な額について御意見をお述べいただけるものと私どもは期待しておるわけでございます。
#165
○土肥分科員 まあ過料といい、弁護士会は非常に厳しい倫理規定あるいは内部処分権を持っておりますけれども、その他の団体はそれぞれの監督官庁しか業務停止できないわけでありますから、そういう意味では、恐らくこの件はいわば軽い事件というふうに私は印象を受けるわけです。これは、この関係八団体だけではなくて、例えば道路公団や住宅供給公社だとか市街地再開発組合等も職務上請求することができるわけでありまして、広範な分野で戸籍謄本がいわばノーチェックで通るというふうなシステム自体が私は問題ではないかと思うのです。そうしたときに、市町村の窓口でどこまで防げるかということになりますと、これは極めて難しい問題で、膨大な戸籍謄本の請求を処理していく窓口で果たして食いとめることができるかということがあるわけでありますが、その市町村の窓口における指導は、法務省としては何かしていらっしゃるのでしょうか。
#166
○清水(湛)政府委員 その前に、私ども非常に残念なことでございますけれども、このような八資格団体と申しておりますが、本来なら戸籍謄本を請求する際にきちんとした請求の事由を、一般の人が請求する場合でございますと請求の事由を記載しなければならない。ところが、弁護士さんとか司法書士さんとか行政書士さんというのは、職務上どうしても戸籍謄本が要るということでございますので、職務上請求する場合にはそういう請求の事由を書かなくても弁護士の資格を表示すれば戸籍謄本は出しますよ、行政書士の資格を表示すれば戸籍謄本は出しますよということに法令上なっているわけでございます。もちろん、公法人とか役所、国の機関がやる場合にも同じことでございますけれども、そういうことがされている前提には、やはりそういう司法書士さんとか弁護士さんというような業務が国民の日常の社会経済生活に密接なつながりがありますので、そういう関係の事務がスムーズにいくようにということももちろん考慮されておりますとともに、その種の資格を持っておられる方は法律知識にも明るい方でございますので、よもやそのような法令違反行為はしない、十分に会員としての自覚のもとに行動をしてくださるであろう、こういう認識をもあわせ加えまして、別に請求の事由を記載しなくてもそういう方々が請求すれば出しますよという制度になっているわけでございます。ほとんどの弁護士さん、司法書士さん、行政書士さんの方々はそういう趣旨をわきまえまして、まずこういう不正な行為はやっていない、九九・九%の方はやっていないというふうに私ども認識しているわけでございますが、一部にでもあるにせよ、こういうようなことがあるということは大変残念なことだというふうに思っている次第でございます。
 何にいたしましても、とにかく再発を防止しなければならない。関係団体が本当に事の重大性に気がつきまして今非常に熱心に会員の指導を続けてくださっているわけでございますけれども、市町村の窓口におきましても、御指摘のように、いろいろな形でできるだけ不正取得の事実がないように、そういうことが行われないように留意を払うように私ども指導しているところでございます。
 ただしかし、一々身分証明書の提示を求めるとか、あるいは一々釈明を求めるというようなことはなかなかできない状況でございますので、請求者の資格について疑義があるというような場合に限りまして身分証明書の提示を求めるとか、あるいは場合によっては、行政書士でございますとその方が所属しておる行政書士会に電話で照会をするというようなことをするようにという指導をしているわけでございます。今回、一連の請求番号というものがつけられましたので、もしある特定の行政書士さんについて非常に多くの請求書が出てくるというようなことが重なりますと、あるいはそこに一つの疑義が出てくるというようなこともあり得ようかと思うわけでございます。そういう意味で、請求書に記載してある身分とか住所とか氏名に疑問があるというようなことになりますと照会をするというようなことをいたさせておるところでございます。
#167
○土肥分科員 九九%信頼して、あり得ない事件だとおっしゃいますけれども、これは私はいつも生ずる事件だという印象を持ちます。これは結局、戸籍謄本をとる側の問題でありますが、とられる側の問題はちっとも議論されていないですね。このことについてはちょっと議論が長くなりますので時間の関係で申し上げませんが、戸籍法第四十八条の証明書の請求、閲覧というところで、この統一請求用紙による請求がいわゆる閲覧に値する書類にならないということがありまして、法務省の見解としては、とられる側の閲覧はできないということになっているわけです。この点については議論が長くなりますので、きょうはもうとめたいと思います。いずれにしても、戸籍法本体をいじらないと、こういう差別問題はずっと続く、差別問題というか不正入手問題はずっと続くというわけです。
 私はある弁護士と話をしておりまして、例えば前から親しくしている顧問先があって、今度一本だけでいいから戸籍謄本をとってくれないかと言われたときに、果たしてそれはだめですよと言って断る勇気がその弁護士にあるだろうかというふうなしんみりとした話し合いをしたことがあるのです。各団体には倫理規定がありますけれども、これはやはり一人一人の関係者の良心の問題であるのですが、良心の問題というのはまた非常に行き届かない問題でありまして、そういう意味では、差別あるいは人権侵害だとかに謄本が使われたりする場合があるわけでありますので、基本的な国民の差別に対する認識を法律上もきちっとうたわなければならないのじゃないかと思うわけです。もちろん、日本国憲法は人権を重んじているし、世界人権規約等々、世界人権宣言もそうでありますけれども、あるわけですが、日本独特の差別構造を持っている部落解放について、部落解放基本法というのがあるわけであります。あるというか、提案されているわけです。想定されているわけであります。
 私は、先ほどの行政書士さんのいわゆる謄本のファックスを送った先が関西を中心にしているというようなことを考えますと、いわば部落差別に関するさまざまなやりとりがあったのではないかと推測するわけであります。あるいは違うかもしれませんけれども、どうもそのような気がしてならない。そうしたときに、日本国民がひとしく部落差別に対してこういう考えでいかなければならないという意味で、部落解放基本法の案があるわけであります。こういうものをきちっと基本法としてうたわないと、日本国民、弁護士や行政書士だけでなく、それを依頼する側の人もその認識がないといけないわけでありまして、そういう部落解放基本法のようなものを制定しない限りこういう問題の基本的な構造はなくならないと私は考えます。そうしたときに、例えば部落解放基本法の第一条では、部落問題の根本的速やかな解決のために地方公共団体、国民の責務を明らかにしております。七条では、身元調査活動の規制、雇用関係における部落差別の規制等、必要な法制上の措置を講じなければならない、こういうふうになっております。部落解放基本法の中身についてはまた議論をしなければいけないのですが、左藤大臣、部落解放基本法が、地対財特法がこの一年で切れるというときに、こういうものがないと、こういう不正入手事件はとどまるところを知らないと私は感じるのですが、御意見を伺って私の質問を終わります。
#168
○左藤国務大臣 戸籍法とか、今お話がございましたが、いろいろな関係団体の内規とか、いろいろな問題において、そうしたことについて今やっておるのは不十分だから部落解放基本法をつくれというふうなお話もあったわけでありますけれども、部落差別の解消という問題は憲法に保障された基本的人権にかかわる問題であって、そういう意味において、一層差別意識の解消というようなことに、啓発に努力をしていくべきである。基本法であります憲法がそういったことを明示しておるわけでありますから、そういう意味での特別に部落解放基本法というようなものを制定するということでなくて進めて、ねらうとでもいいますか、そのことを制定するという以上に、憲法を十分啓発していくことによって、また法の運用によってやっていくことができるのではないか、私はそういうふうに考えております。
#169
○土肥分科員 終わります。
#170
○林主査 これにて土肥隆一君の質疑は終了いたしました。
 次に、細川律夫君。
#171
○細川分科員 私は、結婚の差別についてお伺いをしたいと思います。
 御承知のように、憲法二十四条には結婚についてはこのように規定をされております。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」結婚というものは人生の第二の門出とも言われておりますし、また人生の大きな節目でもございます。個人の尊厳に基づいて男女がその二人の意思によって結ばれる、こういうことでありますけれども、しかし、この結婚に際して全く不合理な、あるいは不条理な差別の問題がございます。被差別部落に生まれたというだけで結婚できない、あるいは結婚してもいろいろな障害がございます。これらの差別についてお伺いをいたしたいと思います。
 まず最初に、結婚に関する差別事件を、ここ二、三年の間のものについて法務省の方としては把握をしているのかどうかお聞きいたします。
#172
○篠田政府委員 法務省の人権擁護機関が受理いたしました同和問題に関する人権侵犯事件のうち結婚に関するものは、昭和六十二年が十三件、昭和六十三年が八件、平成元年が五件となっております。また、人権擁護機関が取り扱った情報収集事案のうち結婚に関するものは、昭和六十二年が三十九件、昭和六十三年が三十一件、平成元年が二十八件という数字でございます。
#173
○細川分科員 今法務省の方で把握をされている事件数について、いわゆる人権侵犯事件数あるいは結婚差別の事件数の御報告がありましたけれども、これは、この同和問題に関する人権侵犯事件あるいは結婚差別事件などは、どういう形で法務省の方としては把握をされているわけですか。
#174
○篠田政府委員 法務省の人権擁護機関が事案を把握する端緒でございますけれども、それは、本人からの申し入れ、あるいは人権擁護委員からの通報、それからあとは、各新聞雑誌あるいはニュース、そういったようなことから事件を把握するように努めております。
#175
○細川分科員 私どもの方で把握をしております深刻な結婚差別事件がございます。代表的な例で、兵庫県の龍野市で起こった事件あるいはまた大阪府の貝塚市で起こった事件、また長野市で起こった事件がありますけれども、これらの事件について、先ほど報告のありました件数の中にこの三件は入っているのでしょうか。
#176
○篠田政府委員 長野市の事件は入っておりますけれども、龍野市の事件それから貝塚市の事件は、それぞれ平成二年、平成三年にこちらの方で探知しておりますので、先ほどの数字には入っておりません。
#177
○細川分科員 それではその点については後でお聞きをいたします。
 その前にお聞きをいたしますけれども、先ほど結婚差別事件について法務省の方で把握をしている事件数が報告をされましたけれども、法務省が取り組んだ事件として典型的な結婚差別事件、どういうような態様でどういうような差別があったのか、それを数件例を挙げて説明をお願いいたしたいと思います。
#178
○篠田政府委員 詳細について申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、典型的なのは、やはり結婚に際して、本人同士は結婚を考えていたにもかかわらず親戚の人たちが反対する、そういうことがあったために非常に苦労する、そういうことでございますけれども、法務局の説得によりまして同和問題についての理解が深まり、その結果、反対していた親が結婚に同意するに至ってうまく結婚するに至った、その後も親戚づき合いもしている、そういった例もございます。その反面、被害者の親族が身元調査を行ったために相手方が同和地区出身であるということが判明し、そういうことを理由にして反対があって、そのために結婚話が壊れた、そういうケースもございます。
#179
○細川分科員 抽象的な報告ですのでよくわからないところがありますけれども、それでは、先ほどの私どもが把握をしております三つの事件についてお伺いいたします。
 まず最初に、法務省の方で把握をしている事件は長野の事件というふうに申されたでしようか。
#180
○篠田政府委員 長野の事件も把握しております。
#181
○細川分科員 それでは、まず長野の事件についてお伺いしますけれども、その長野の事件に対してどういうような対応をされたのか、説明を願います。
#182
○篠田政府委員 これは終結しておりますけれども、余り具体的な内容について申し上げるのは、プライバシーの問題もあろうかと思いますので、詳しい点につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
#183
○細川分科員 どういう対応をしたかということですから、答えてください。
#184
○篠田政府委員 それも関係当事者から事情を聴取いたしまして、いろいろと説得を試みたわけでございます。
#185
○細川分科員 どういう説得をしましたか。
#186
○篠田政府委員 ちょっと、説得というのは少し言葉があれでございますけれども、まず差別の意識があったかどうか、それから破談に至った理由がどういうことであるのかということを、事実関係をいろいろと調査した結果、結局最終的には人権侵犯事件とまでは言えないけれども、同和問題についての認識が不足していたということで、関係者にいろいろと説諭をしたということでございます。
#187
○細川分科員 これは長野法務局の方で対応したと思いますけれども、専らこの二人の間で示談をするように、そういう指導をしたのではないですか。そういう報告を受けていませんか。
#188
○篠田政府委員 そういう細かい点についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
#189
○細川分科員 この事件そのものは、先ほども局長の方からは具体的な内容が報告されておりませんから、非常に抽象的な形で話しているわけなんです。法務局の方でどういう対応をしたかということは大変重要でありまして、今後どういう施策をとらなければいけないかということからも大変重要でございます。したがって、どういうふうに対応されたか、もう一度おっしゃってください。
#190
○篠田政府委員 結婚が人生の岐路における非常に重大な事柄でございまして、その点における差別というのは極めて深刻である、そういったことを十分認識した上で個々具体的な事件について適切な処理をするように極力努力をするというのが一点と、それから一般啓発として、やはり部落差別というのはいわれのない差別である、そういうことをいろいろな形で啓発してまいりたい、そう思っております。
#191
○細川分科員 大変抽象的なんですね。そういうことでは、私は部落差別あるいは結婚差別というものはなくならないのではないかというふうに思います。
 この長野の事件では、法務局の方ではその当事者に話し合い、示談で終わるようにというように専ら指導をされた、むしろ被害を受けた方の認識はそういう認識なんです。それでは、そういう指導の仕方では差別というものはなくならないだろうということで私は質問しているのです。もう一度お願いいたします。
#192
○篠田政府委員 婚姻関係については、非常に個々のケースごとにいろいろな事情があるわけでございますから、それぞれの事案に応じた対応が必要かと思いますけれども、そういった点で、必ずしも一律にやるというわけにはいかないと思います。示談が云々というお話が出ましたけれども、ケースによっては示談を勧めるということも有効なこともあると思います。
#193
○細川分科員 大変不満な答弁ですので私としてはここで議論もしたいのですけれども、時間がありませんから前に進めますけれども、この長野での事件では、被害を受けた当事者は、そのように専ら示談を勧められたということで、納得いかない面があるということでありますので、そういう点については十分留意をしながら指導はしていただきたいと思うところであります。
 それでは、兵庫県の龍野市の事件について、これについては対応はどうされたんでしょうか。
#194
○篠田政府委員 龍野市の事件については現在情報収集中でございます。
#195
○細川分科員 これは、それではいつ法務省の方はわかったんでしょうか。
#196
○篠田政府委員 昨年の三月でございます。
#197
○細川分科員 昨年の三月にわかって、今までにどういうことをされたんでしょうか。
#198
○篠田政府委員 具体的な事案でございますので、お答えは差し控えさしていただきたいと思います。
#199
○細川分科員 調査中、調査中といっても、抽象的な答えでもいいですから、この事件についてどういう対応をしているのか。ただ調査中ということでは対応にならないんじゃないかと思うのですが。具体的な人権侵犯事件ですから、どう対応しているのかきちっと答えていただきたいと思います。
#200
○篠田政府委員 先ほどお答えしましたように、具体的な事件の進行中でございますので、その点についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
#201
○細川分科員 貝塚市の事件についてはどうですか。
#202
○篠田政府委員 貝塚市の事件についても情報収集中でございます。ことしの一月に探知しております。
#203
○細川分科員 具体的な事件であるから答弁できないというふうにおっしゃいますけれども、人権侵犯事件、しかも結婚差別で、大変重要な、大事な人権侵犯事件でありますから、それじゃどういう方向でこういう問題を解決をしていくのか、どう対処していくのか、そこらあたりの道筋でも話していただけますか。
#204
○篠田政府委員 当事者本人それから関係者に接して事情を聞くということが一般的だと思いますけれども、ただ事件によりましては、関係者が法務局と接触をしたくないというようなことを申される方もあるわけでございまして、そういうときにはまた事案に応じて少し待つとか、いろいろなことを考えてやっております。
#205
○細川分科員 大阪の貝塚市の事件などは、これは本当に悪質な差別事件でありまして、相手の男性の身元を徹底的に調査をいたしまして、そのおばあさんのまたその母親までさかのぼって出生なども調査をいたしております。そして、部落の出身だということがわかりますと、無言の電話をかけてきたり、二十三通にも及びます脅迫あるいは恫喝の手紙なんかも送っております。それがその本人だけではなくて、家族、職場の同僚あるいは上司、こういうところまで手紙が行ったり、しかもその手紙の中にカッターナイフの刃を入れたり、大変悪質な嫌がらせ、あるいは差別事件なわけです。したがって、こういう事件は徹底的に調査をして、二度とこういうことが起こらないようにぜひ法務局の方でも積極的にやっていただきたいと思うのです。そうでなければ、本当に一生懸命いろいろな形で努力したとしても、後、後、絶え間なくこういう事件が起こってくると思うのです。その点どういうふうに考えておられるのかお聞かせ願います。
#206
○篠田政府委員 委員ただいま御指摘の事件は、確かにそういうことで非常に悪質であろうと考えております。したがって、極力積極的に対処してまいりたいと思っております。
#207
○細川分科員 それでは次に行きますけれども、いわゆる結婚の差別につきましては、この差別そのものを助長するというような、そういう事件が相次いでおります。差別はあってはならないということで、それぞれの形で努力も重ねているところでありますけれども、しかしまた一方で、先ほど申し上げましたようにこの差別をいわば拡大をするような、そういう人たちもいるわけでございます。
 例えば、最近問題になりましたパケット通信による部落差別の扇動あるいは部落地名総鑑による差別、これはもう前からございました。あるいは既にこの委員会でも質問があったように、例えば弁護士、行政書士を使っての戸籍の不正入手というようなものがございます。これらはいずれも結婚差別、いわゆる差別を助長、拡大するものでありますけれども、これらに対して法務省としては一体どういうように対処されていくのか、どういうふうにまたしているのか、お答え願いたいと思います。
#208
○篠田政府委員 まず、パケット通信でございますけれども、パケット通信を利用して同和地区の所在と地名あるいは同和地区住民に対する非常にひどい中傷、誹謗、そういった差別情報が流されているのがパケット通信事案でございますけれども、このような差別情報が流されるということは、人権擁護上見逃すことのできない極めて遺憾なことであるというふうに思っております。したがって、現在関係機関等とも連絡をとりながら関係法務局において情報収集に努めているところでございます。
 それから、部落地名総鑑につきましては、これは全国各地の同和地区の所在、地区名等を掲載した図書が八種類発行され、企業や興信所等が購入していた事件でございますが、法務省の人権擁護機関といたしましては、この事件を重大な人権侵犯事件として調査し、その結果関係者に対して勧告、説示等の処理を行ったところでございます。
 それから、弁護士、行政書士等による戸籍謄本等の不正入手事案につきましては、先ほどの質疑がございましたけれども、法務省といたしましては、民事局においては戸籍法違反の観点からいろいろ指導しているわけでございますけれども、人権擁護機関といたしましても、興信所が不正に入手した戸籍謄本等を利用して部落差別を意図した身元調査あるいは部落差別につながるおそれのある身元調査を行ったかどうか、そういった観点から現在関係局において調査を行っているところでございます。
#209
○細川分科員 ぜひその点は厳正に対応をしていただきたいというふうに思います。
 次に、冒頭にも申し上げましたけれども、憲法の二十四条には、結婚というものは両性の合意に基づいてのみ成立する、男女二人で結婚をするということを決めればこれで結婚できるわけなんです。しかし実際には、部落であるということで両親の反対やらあるいは親戚の反対があって結婚ができないあるいはまた結婚をしてもいろいろな困難がある、差別がある。そういう事実を考えまして、この二十四条とそれからこの差別の実態との関係について法務省の方ではどういうふうに認識をしておられるのか、見解をお聞かせ願いたいと思います。
#210
○篠田政府委員 法務省におきましては、部落差別を初めあらゆる差別は許されないという立場からこれまでも啓発活動を行ってきたところでございますが、結婚は特に人生の大きな岐路でありまして、就職と並んで非常に重要な出来事でございます。こういう時期に際しましての差別ということは非常に重大な人権侵害であるというふうに考えております。そういった見地に立って、法務省の人権擁護機関といたしましては、今後とも結婚差別あるいは就職差別等の解消のために、差別事件が発生いたしましたときには積極的に取り組んでまいりますとともに、一般啓発としても粘り強く啓発に努めてまいりたいと考えております。
#211
○細川分科員 結婚差別についての実態調査がございますけれども、その実態調査の中で、結婚の差別を受けたことがあるというふうに答えた方が三二%、差別かどうかわからないということで反対されたというのが一二・五%、合わせて四四・九%も結婚の差別を受けたというような調査結果がございます。法務省の方ではこのパーセンテージを一体どういうふうに見られるか、見解を述べていただきたいと思います。
#212
○篠田政府委員 ただいま委員御指摘のそのパーセンテージの出ている調査というのを私どもとしては直接には把握をいたしておりませんけれども、国民の間にまだ一部に根強い差別意識が残っているということは、これは間違いない事実でございますので、その解消に向けて努力してまいりたいと思っております。
#213
○細川分科員 それでは、時間が来ましたから最後の質問をしたいと思います。
 実はこれは新聞の投書欄、手紙の欄に、一九八七年五月二十一日の朝日新聞の手紙の欄に投書された方の文章でありますけれども、これをちょっと読みまして大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  私の主人も同和地区の出身です。私の場合は周囲すべてから結婚を反対され、やむなく家を出、二人だけで式を挙げました。
  昨年、子供が生まれましたが、親とは相変わらず断絶状態が続いています。どうしても許してはもらえないのです。事情を知って、去っていった友人もいます。祝福されない結婚というのは本当につらく悲しいものです。そして、私たちの子供もまた同じような苦しみを味わわなければならないのかと思うと胸がはりさけそうです。
  いわれなき差別からどんなことをしても守ってやりたい。子を思う親の心はみな同じです。その幸せを願わない親はいないでしょう。でも、主人はこうも言います。「僕は部落に生まれたことをむしろ誇りに思っている。少なくとも差別はされても絶対に差別はしないし、人間を尊重する。だから子供にもどんな目にあってもくじけず、堂々と生きていってほしい」と。
  子供にはつらい思いをさせたくない……差別なんてなくなればいい……差別のない明るい社会を願うと同時に、私が主人との結婚にふみきったとき、そうしたように子供にも何が正しいかよく考え、自分の信じた道を強く生きられる人間になってほしいと思います。
  一日も早く親と和解できるように努力し、またいつの日かふり返ったとき「この人と結婚してよかった」と思えるような夫婦、子供が「この世にお父さんとお母さんの子として生まれてきてよかった」と思えるような家庭を築いていくことが、私たちの使命だと感じています。
 こういう投書があるわけなんですけれども、このいわゆる結婚差別に対して今後どうしていかなければならないのか、大臣の所見を最後にお聞かせ願いたいと思います。
#214
○左藤国務大臣 同和問題におきまして、その実態的な差別という面ではかなり改善されたとは思いますけれども、今お話しのような結婚とか、そういったものの心理的差別と申しますか、そういう問題につきましてはまだまだ十分でない、私は、そういう点でまだまだ努力していかなければならない問題があるのじゃないかと思います。法務省としても、人権擁護の立場から、国民が同和問題に一層理解、認識を得るよう、特に心理的な差別の解消のために努力していかなければならない、このように考えております。
#215
○細川分科員 終わります。
#216
○林主査 これにて細川律夫君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。
    ─────────────
#217
○林主査 次に、大蔵省所管について審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
#218
○竹内(猛)分科員 筑波研究学園都市ができてもう二十年を過ぎておりますが、この研究学園都市に関係をする諸問題と関連をして、厚生省にもいろいろ施設の問題や、それから大蔵大臣にもちょっと聞いてもらいたいことがあります。
 そこで、筑波研究学園都市が建設をされて二十年を超しておりますけれども、今日国土庁は、この推進機関として大都市圏が中心になってやったわけですが、今この学園都市で何が問題か、そのことについて国土庁から問題点を説明してもらいたい。
#219
○羽生説明員 先生今御指摘のように、筑波につきましては、国といたしまして、従来からいろいろ積極的に整備を行ってきたところでございます。今先生御指摘の点は、当初の人口の計画に比べましてまだ人口の定着がおくれております。そういった点が一つの問題かと存じます。またハード面の整備という面から見ますと、六十年のつくば科学技術博のとき以来、大分都市の中心部の整備がなされてまいりましたけれども、都市の成熟化という観点から見ますと、まだいろいろな施設の整備がおくれている状況にある、こういうところが主な問題点かというふうに考えております。
#220
○竹内(猛)分科員 今二点にわたって問題点が指摘をされたわけですが、実際考えてみると、これをつくるときには二つの大きなポイントがあった。その第一は、東京の過密状態を筑波に研究機関を移すことによって簡素化するというか分散をする。それからもう一つは、教育大学が年じゅうストライキばかりやっているからあれはぐあいが悪い、ひとつここへ移して孤立化してやれということで筑波大学という、あの学則は前から憲法違反だ、そういう学則のもとに抑え込んでしまった。今や筑波大学は全く静かになってしまった。旧教育大学ですが、静かになった。これは目的を達した。ところが、第一の人口を移すということ、当初二十二万くらいの計画があったはずなんですね。今日、十三万七千五百五十二名という状態になっておる。
 そこで、この問題に関連をして、今言われたように定住しない、定着をしない、ここが問題ですね。なぜかということをここで問題にしなければならない。このことが一番大事だ。今から十年前、一九八〇年に、そのときには茎崎町まで入れて男女の差が五千七十二名ありました。ところが、それから五年たった段階で五千九百三十六名男が多い。今日、昨年の調査によると、男性が六千二百六十四人多い。こういうように、人口が十三万くらいのところで男性が女性よりも六千二百人も多いという市が日本にあるかどうか、それを聞きたい。
#221
○羽生説明員 今の先生の御指摘につきましては、大体つくば市と同規模の都市についていろいろ調べてみますと、先生御指摘のように、男女の人口差といいますのは大体二千人前後というようなところでございますが、つくば市のほかには、人口差が非常に大きい都市といたしましては秦野市がございまして、これが大体六千人くらいの差ではないかと思っております。
#222
○竹内(猛)分科員 そこで、ここに公務員住宅ができていますね。四地区、中心地区、竹園、並木、松代、これを合わせると七千七百五十五の公務員住宅ができている。それから、公団住宅が五百六十八だ。それから、公営住宅が四百二十。それから、NTTとか警察とかという関係のものが四百八十二。これは合計すると、九千二百二十五になる。
 そこで、ここの問題が、つまり、今の男性が女性より多いというのは、単身赴任が多いですね。年齢的に言うと、二十歳から二十四歳までが多いというのは、これは大学の学生の中に男性が多いということでしょう。ある程度まで多い。ところが、三十五から三十九、四十歳から四十四、四十五から五十、この間が男性が多い。これはまさに働き盛りの、一番子供を育てる盛りの、一番労働力を放出するところの男性が単身赴任をしなければならない。金がかかる、子供を育てていかなければならない、こういうところに問題があるように思いますけれども、これはいかがですか。
#223
○羽生説明員 今の先生の御指摘につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、ほかの同規模の都市と比較いたしまして筑波の男女の人口差が大きいということでございます。さらに、それを年齢別に見た場合には、やはり二十歳から二十四歳ぐらいで一つ大きな男女差があるということでございまして、それが、大体つくば市の場合にはその男女差の部分が非常に大きくて、約五歳分だけで三千人ぐらい男性の方が多いというふうなことになっております。こういう原因は、主に大学生の男女差ということでございまして、筑波大学等を初めとする男女の学生差というのは、それだけでも四千三百人ほどになりますので、かなりの差があるということではないかと思います。
 それから、御指摘のとおりもう一つは、四十歳から四十四歳の中年層での男性の数が多くなっているというのがもう一つの要因としてございます。これは、確かに国の試験研究機関等の単身赴任がある程度あるということの影響もあると思われます。また、その原因といたしましては、多様な教育機会がある東京への志向の強さというふうなこととか、筑波の場合、先ほど申し上げましたように都市の成熟度という観点から見ましてまだ今後整備をしていく必要がある、こういうふうなことが原因ではないかというふうに考えておりまして、そういうことで、定住環境を整えていくという観点から、今後とも本都市の育成整備を一層進めなければならないというふうに考えております。そういうことで、地元の茨城県やつくば市とも相談しながら必要な支援を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
#224
○竹内(猛)分科員 これをもっと分析すると、大きく言えば五つ、六つに分かれるのです。
 第一は、交通の問題です。首都圏と筑波との間が全く軌道がない。それは八重洲口から高速バスはあるけれども、筑波から行った場合にはおくれることも甚だしくて、全く時間が定かではないということであり、常磐線についても、それは土浦からしても荒川沖からしても十何キロという距離があって、これも大変な、つまり交通的には陸の孤島であるということが第一です。だから、交通問題は常磐新線が早くできることによって可能になるというけれども、これもこれから十年かかるのです。これは東京との関係です。
 その次の問題は、今度は学園内部は、住宅と研究所との間の距離が離れている、だから、例えば農林省の十一の機関にしてみても、それは旧谷田部町であって、住宅というのはかなり離れているのです。これは歩いていくような、それほどの状況ではない。そうすると、バスか車が必要になってくる、そうなると自家用車を持たなければならない、そうなると駐車場の問題がある、こういうことになるとなかなかこれは定着がしにくいということで、内部の問題がある。循環バスが動いていますけれども、それも朝の時間と夜の最終時間というものは制限があるから自家用車、自家用車ということになると金がかかる、こういうことになってくるのです。特別手当を幾らかもらっているけれども、これも値切られてしまった。値切っているのです。それでも出ないよりはいいけれども、そういうことがあるのです。
 それから次には、教育の問題です、高校の問題があります。今のように学閥、学歴社会というものが、これは嫌だといってもそういうふうになっている。そうすると、親はやはり幼稚園のころからこういう学校に入れてこういう大学へやってこういうことにしたいという希望を持っている。ところがあの周辺の高校というものは、土浦の一高とか茗溪とか、最近は並木高校ができたが、そこらが高校らしい高校だと言っている。ほかのものは高校の看板はあるけれども中身はだめだとこういう、こういうことを文部省に言うとしかられるかもしれないが、実際はそうなんです。だから、東京なり千葉の周辺に住居を構えて、そこでおやじさんは研究所へ、お子さんは高校へ、こうなるということで、教育の問題を考えてもらわなければならない。
 それから三つ目、今度は奥さんの仕事場だ。これが、研究所に行っても奥さんの働く場所が一体その辺にあるかといったら、これがないのです。だからどうしても東京周辺にいて、仕事をして自分の持っている能力を発揮しなければならない。最近は女性の仕事がふえてきた。あの中ではちょっとありませんね。だからそういう点で、その問題もあって居住はできない。
 次に問題になっているのが、地価が高騰しているということなんです。もうあの当時、僕らが最初にあそこに行ったときには、これはもう原野でありまして、三百坪、一反歩、これが四十万から四十五万台。いいですか、それが今坪一千万近くしている。こういうことになると、これは容易じゃない。まして土地利用計画というものが、これはなっていないから、古い地域、旧村は第一種住宅地域、ところが開発したところは第二種、商業地域だから高層建物ができる、こういうことになってくると、いよいよここには地価の問題が出てきて、とても今の公務員の給与と退職金とその他では、そこに家を建てて住むことができない。だからどうしてもそこは敬遠せざるを得ない。幾ら開発してもそこに入る者は特定の条件のある者しか入ってこない、こういうことになる。
 それからその次、定年で退職をされる技術者、学者、科学者、これは大体博士も四〇%以上が筑波研究学園にいるのですね。だから石をぶつければ一人、二人博士に当たるというぐらいに博士がいる。いろいろな博士がいます。そういうぐあいに立派な研究者がいらっしゃるのに、定年でやめられても、その方々がまだまだエネルギーが十分にあるのに、そこへ定着をして教育をし、自分の余生をそこで送るというほどの仕事場がない。それは、国立大学や公的機関ではそれが許されないから、どうしても民間の大学、研究所、こういうものがどんどん入ってきて、その人たちを雇用して、その地元に対する影響を与えていかなければできない。幸い、最近は家政短大が移ったり、それから筑波情報専門学校ができたりしてはいるけれども、まだまだそれは十分ではない。
 そういう点を考えると、これからの学園を本当に立派にしていくためには、もっともっとやらなければならない問題が多い。この点について最近、グレーター筑波とかいろんなことを言っている。つくば市も、この間行ってみると、環境に優しい都市をつくろうなんてうまいことを言っているけれども、中身は決して環境に優しくなんかない。環境に厳しい。そしてお題目は並べてはいるけれども、これはだめだ。余りいい点はつけられない、こういうふうに思っているけれども、国土庁、これは一体どうなんです。
#225
○羽生説明員 今先生からいろいろな問題で御指摘いただきましたが、例えば交通問題につきましては、東京都との都市間交通というようなものにつきましては、常磐高速バスも、かなりいろいろな利便性の向上ですとか、増便や最終便の時間帯の繰り下げ等の対策を打っていただいたところでございますし、またJRの常磐線につきましても、増発とか快速電車の増発というふうなことがいろいろなされて、徐々に便利になってきております。
 また都市内交通は、確かにつくばが自動車型の社会であるというふうなこともございまして、公共交通機関としてのバス交通というのが、路線数や連行回数という観点から見てもやや水準が不十分であるというふうな状況にございます。そういうことにつきましても、もともと需要がなかなかないというふうないろいろ厳しい点もございますけれども、関係方面と相談しながら検討を進めているところでございます。
 それから駐車場の問題につきましても、都心部の、特に中心部の集客力の高いようなところにおきます施設での不足が目立っておりまして、これもいろいろな各種の調査を現在やっておりまして、将来の需要予測を踏まえて駐車場の計画をつくっていくための調査を現在進めているところでございます。
 それから、高校等の教育機関につきましても、御指摘のように徐々にいろいろな機関が整備されてきております。今後ともできるだけの方向で努力していきたいと思っております。
 また、夫人の働き場の問題、これは全体的に地元の雇用機会というのがまだまだ十分ではないというのは、御指摘のとおりだと思います。したがいまして、女性の就業の場というのが少ないということも御指摘のとおりだと思います。そういう意味で、都心地区におきます商業業務施設の立地や民間の研究機関や研究支援業務、それからサービス業務、こういったものの導入をいろいろ図っておりますが、今後ともそういう方向でいろいろ努力していきたいと思っておるところでございます。
 それから、退職後の問題というふうなことも御指摘になりまして、これにつきましても、退職後は結局技術を生かして再就職できる場所を確保していくという観点から、先ほど御指摘のいろいろな、例えば家政短期大学等の立地とか、それから民間研究機関の立地も非常に推進してきておるところでございます。そういう観点からも、今後ともいろいろな教育機関や民間研究機関等の誘致や立地促進を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
 そこで、先生が御指摘の今後の筑波の方向ということで、そういう現状を踏まえまして、また二十一世紀に向けての常磐新線の計画や首都圏中央連絡自動車道の計画、こういったものを視野に入れました、二十一世紀に向けた筑波をどういうふうにしていくかという計画を、私ども新筑波計画というふうに呼んでおりますが、これを平成元年の五月に構想を策定いたしまして、現在、それに基づきまして、それをマスタープラン化する調査を実施いたしているところでございます。
 そういうことで、二十一世紀に向けてこれから筑波を国内外の研究開発の拠点として整備するべくいろいろ調査を行って、そういう計画づくりを行っているところでございます。
#226
○竹内(猛)分科員 筑波は国際都市であり、科学技術の都市であり、そして世界的にも珍しい都市だから、国土庁がいろいろ計画を立ててやっているけれども、結局金がなければできないということで、これは、橋本大蔵大臣、やがて総理大臣になる可能性のある人だ、この人は。世論調査をすると一番高いのだ、新聞にそういうふうに書いてある。こういう立派な都市を国際都市にするためには、少し金を惜しまないように頑張ってもらわなければ、今のものは絵にかいたモチだ、グレーター筑波なんというのは。銭がなかったら仕事にならない。どうですか、感じは。二十年たって今のような、人口が定着しないということは、これは大問題なんだ。
#227
○橋本国務大臣 これは筑波ばかりではありませんで、実は京阪奈の学研都市、さらには、例えば今回厚生省が立地を考えておられる長寿科学研究センター等、研究者の方々の地元への定着というのが常に問題になります。そして、先ほど委員の御指摘の中にもありまして、私もそのとおりだと思いながら拝聴しておりましたが、お子さんの教育機関の存在、そのレベルというのが常に問題になります。そのほかの状況はある程度他のもので代行できましても、この部分だけはどうにもなりません。これはかつて委員にも大変御心配をかけました国鉄改革のときの各地域からの配置転換に伴う移動、このときにも実は同じ問題が生じました。一番の問題は、都道府県立、公立の高等学校における年度がわり以外の時期の入学受け入れという問題でありました。ソフト面においても、私はそうした工夫をよりお願いをすることによってカバーすべき部分はあると思います。
 また、そのほかに、交通機関その他さまざまな御指摘がありましたが、要は筑波研究学園都市というものが、構想されました当時から今日までの時間の中において、例えば東京でありますとか大都市における生活環境の質的な変化が相当程度起こっており、それに比例した都市整備が行われておらない、その中に教育機関の問題もある、そのように、今伺いながら私は分析をいたしておりました。今後、恐らく国土庁としてもこうした点についていろいろ御工夫があるでありましょうし、恐らく県御当局としてもいろいろなお考えがあるでありましょう。私どももその中に入って御相談に応じていきたい、そのように思います。
#228
○竹内(猛)分科員 これは我が国が誇る国際都市であり文化都市だから、それにふさわしいものにしていくように応分の、これは陳情になっちゃうので申しわけないけれどもやってもらいたい。
 そこで、時間もなくなってきたから今度は大蔵省に質問するのですが、公務員住宅がかなりあいているんだよ。特に一戸建てがあいている。それははたから見たらわかるんだ。草が生えていて何にも使ってない。大変なものですよ、これは。それから単身のところもあいている。ああいうものがもっと活用できないかという声が一つある。
 もう一つ言いたいことは、それと関連して言いたいのは、総理官邸、国会の周辺に、筑波へ移転をした工業技術院、地質研究所、二十年もほかしてあるんだ、あれは。あそこのところを通る人たちは、一体何だこれは、これほど土地がない、高いと言っているのに国会の周辺には空き地があるじゃないか。あの車庫などもそうですよ。総理大臣官邸をつくるんなら総理大臣官邸をつくるというふうに看板でも出しておけばそれでいいけれども、二十年も三十年もああやってほかしておけば、一体何しているんだ、こうなる。この二点について。
 それからもう一つ、ついでだから、厚生省。私の町内に、これは自分の町内だ、社会保険事務所があって、本当にこれはみんなが、あれは何だ、一千平米くらいのところがあるけれどもこれは何だということですよ。もう十数年前に移って、そして今あいている。そのうちにガラスが壊れて、そこにいろいろなやつが住み込んできて何か起こったときにこれは大変なことになるから、これはやはり市に払い下げをして、住民がしっかりうまく活用できるようにしなければならない。同じように、霞ケ浦病院の送水道のところの土手も、草が生えてぼうぼうになっていてもだれも手を入れない。国有地だからといって、その周辺の者が手を入れている。こういうことについても処理は適切にやってもらいたいと思うのですけれども、いかがですか、三つ。
#229
○田中(寿)政府委員 まず第一に、筑波の公務員宿舎の空き家の問題についてお答え申し上げます。
 筑波学園都市の建設に当たりましては、研究者にふさわしい公務員宿舎を確保するということで、当時一万戸の計画が立てられましたが、研究者の移転事情でありますとかあるいは貸与希望等を十分把握しながら、逐年整備を進めてまいりまして、七千七百七十五戸を建設したわけでございます。しかしいろいろ、委員御指摘のように、現実には、移転が進みますと東京からあるいは筑波の近辺から通勤する、こういうふうな事情で、現在では空き家のあることは事実でございます。ただ、その間、国際科学技術博覧会等の開催がございましたときには、一年一カ月にわたり暫定的に使用していただくなどいたしておりますけれども、現在の空き家につきましては、科学技術庁の金属材料技術研究所が平成五年度当初に移転することになってございます。それからまた、筑波技術短期大学の人員増に伴います要望等も出てまいりまして、大体現時点では三百戸くらいの要望等がある見込みでございます。また一方では、人事異動等に伴いますある程度のバッファー等も見なければいけませんので、そういう意味では、この空き家が大幅に解消されるだろうというふうに思っております。
 それから一方、もう一つ、電総研の跡地の点についてお触れになりましたが、昭和五十五年度に移転した後、あの土地につきましては、昭和六十二年五月の閣議決定に基づきまして、あそこは総理大臣官邸用地ということになっているわけでございます。現在まで閣議決定に基づきまして官邸用地として留保しております。現在上屋が建ってございますけれども、平成三年度予算が認められますならばあそこを取り壊す予定でございますし、それからあそこの土地につきましては、官邸あるいは国会の警備のための待機所でありますとか警備車の駐車場だとか、そういう形での活用を進めてまいりたいというふうに考えております。
#230
○福田説明員 今先生お話しの旧土浦社会保険事務所の跡地でございますけれども、土浦の社会保険事務所が昭和五十五年に新しい土地に移転いたしまして以来、この旧社会保険事務所につきましては現在社会保険事務所の倉庫として使用されているところでございます。土浦市のこの地域でございますが、いわゆる地価高騰地域ということに該当しておりまして、この地域につきましては、公用または公共用の用途に供することが確実と認められる場合を除いてこれを見合わせるという方針で対応しておるところでございます。したがいまして、旧土浦社会保険事務所の土地につきましては、今申し上げましたような用途の要件を満たしておれば市に売却するということも可能でございまして、現在市側ともこういう売却につきまして交渉をしておるということでございます。
#231
○水田説明員 国立霞ケ浦病院の排水溝用地の管理についてでございますけれども、この用地は現在排水溝としては使用していないということでもございますので、先生御指摘のとおり今後地元住民と病院とで十分話し合ってその管理に当たってまいりたい、そのように考えております。
#232
○竹内(猛)分科員 時間が来たからこれで終わりますけれども、大蔵大臣がいらっしゃるからちょうどいい。この機会に、そういう公有地でも何でも管理がしにくいところは誠意のある処理をしてもらわないと、政治不信ということになる。大きなところ、目立つところはどんどん払い下げをして、いろいろなことについて新聞に出るけれども、どうにもならないところは新聞にも出やしないし、だから大いに活用して、民活というのは何も別に首を切ったり機関を変えるということではなくて、そういうところを活用することが民活なんだ。民活という言葉はいい言葉だ。何しろやがて総理大臣になる橋本大蔵大臣だから、大いに頑張ってください。
 以上で終わります。
#233
○林主査 これにて竹内猛君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐藤恒晴君。
#234
○佐藤(恒)分科員 私は、非常に簡単なことを一つだけお尋ねしたいと思います。
 それはさきの大蔵委員会でもちょっと質問申し上げたわけでありますが、質問と答弁が何かかみ合わないまま終わっておりましたので、整理の意味も含めてお尋ねをしたいと思います。
 国の財政の健全化のために歳出の削減ということで努力をされてこられて、その一方で防衛費は非常に大きな伸びを例年示してきたというような状況で、昨年八月に例の湾岸危機が発生をしたわけでありますが、その湾岸危機発生に際しまして、八月末には、これに対する財政援助といいますか、十億ドルから始まりまして四十億ドルが決められたわけであります。危機がさらに戦争という状態になっていくことを通して、今回は、予想はどういうふうな予想か別にしまして早く終わっていただいて非常に幸いなんでありますが、長い期間にわたって戦争状態が続きますと我が国の財政に大きな影響を来すような事態が発生するのではないか、こう懸念をしてきたわけであります。
 そういう中で、実は戦前の会計と同じだということを申し上げるつもりは全然ございませんが、今度の九十億ドルについても、最終的な処理は平成六年までかかるわけですね。そういう意味で、年度内に支出をしたものの処理が年度をまたがってかなりの期間にわたる、これが仮にさらに長い期間戦争ということになれば大変なことであったろうという懸念を実は持っておったわけであります。
 そういうことがありまして、先日戦時特別会計について御質問を申し上げた際にやりとりがありましたけれども、私は、「法律がなくなって会計だけあって、会計は清算、赤字のままに残っている、しかし、それをどう処理するかの法律はもうなくなってしまっている、こういうことですか。法律はいつなくなったのですか。」こういう質問をしましたところが、「詳細につきましては、また調査いたしまして御報告いたしますが、清算行為がまだ赤字等を残したまま終結をしていないというふうに記憶しております。」という答弁で、こんなやりとりで実は終わっているわけであります。
 そこで、この特別会計が設置をされたものについては、その条文わずか二条でございますが、承知をいたしておりますが、昭和二十一年二月二十七日に勅令第百十号をもって七条にわたる条文がございまして、これに基づいてこの会計は処理されるもの、こういうふうに実は理解をしたわけであります。そういうことでありますけれども、この条項を読んでまいりますと、第三条の二項では、「臨時軍事費特別会計所属ノ歳入金又ハ歳出金ニシテ前項ニ規定スル日後ニ於テ其ノ収納又ハ支出若ハ支払ノ判明シタル金額ハ之ヲ其ノ判明シタル年度ノ一般会計ノ歳入又ハ歳出ニ組入レ整理スベシ」、こういう条文になっております。また、四条でもそれに類することを定めているわけでありますけれども、この会計についてはそのとおりに今日も理解して見ておいてよろしいのかどうか、まずお尋ねします。
#235
○田波政府委員 御質問の点につきまして、若干整理してお答え申し上げたいと思います。
 先生御指摘のように、臨時軍事費特別会計は昭和十二年にできたわけでございますけれども、ただいまお話がございましたように、昭和二十一年勅令第百十号によりまして、昭和二十一年二月二十八日をもって同会計を終結いたしまして決算をいたしたところでございます。このときは決算は余剰になっておりまして、百七十九億円の余剰決算を行ったところでございます。
 ところが、戦後の時期あるいは戦争中の事柄に関することでございますから、その決算を行いました後に、その決算時点では明らかでなかったいろいろな債権債務関係あるいは収入支出というものが判明してまいったところでございます。今お話がございましたように、昭和二十一年勅令第百十号におきましては、判明したときには一般会計の歳入または歳出に組み入れて整理すべしというふうになっていたことは事実でございますけれども、こういった事態を受けまして昭和二十七年法律第四十三号というのがございまして、長い法律でございますけれども、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省関係諸命令の措置に関する法律というものが制定されたわけでございます。この法律によりまして、当分の間、この特別会計に係る収入支出につきましては別途に整理し据え置くものというふうにされたところでございまして、その状態が現在も続いておるというのが法律関係であるというふうに理解しておるところでございます。
#236
○佐藤(恒)分科員 それよりちょっとさかのぼって若干触れたいと思うのですが、昭和二十二年の三月の決算委員長の報告というのは、四点にわたりましてかなり厳しい附帯決議というのを付して決算を承認しているようであります。さらに昭和二十五年五月の国会におきまして決算委員長の報告があるわけでありますが、その報告の中に審査した結果についての第三点の指摘事項として「(一)元臨時軍事費特別会計に属する歳入、歳出は、昭和二十一年勅令第百十号の規定により、昭和二十二年度一般会計の歳入歳出に繰入れて整理すべきものであるが、政府は之を一般会計の決算に附記して報告している。」現在のシステムですね。「この方法は勅令違反であり、昭和二十一年度の決算審査報告においても警告して置いたのであるから、政府は重ねて勅令違反の行為を繰返さないよう厳重に注意すべきである。もし勅令の規定が実地運用に適しないならば、須らく先ず勅令を改正するのが至当であって故意に勅令違反行為を繰返すべきでない。」さらにあとちょっと文章は続きますが、こういう指摘になっているわけであります。今昭和二十七年とおっしゃられましたけれども、この間どうしてこういう指摘のような整理ができなかったのか、あるいは勅令の改正というのができなかったのか、その経過についてもし御案内であれば教えていただきたいと思います。
#237
○田波政府委員 私、ただいま委員御指摘の決算委員長報告等につきましては手元に持ってございませんけれども、若干の推測を交えて申し上げますと、そういう形で一度決算をしたわけでございますけれども、先ほど申しましたようにその後収入支出ともいろいろな動きがあったということでございまして、そういった事態を踏まえて、まさに今委員が述べられましたような形での処理という意味におきまして昭和二十七年に法律ができたのではないかなというふうに、私、今の段階では推測をいたします。
 先ほどの昭和二十七年の法律におきましては「昭和二十五年度以降において収納又は支出若しくは支払の判明した金額については、当分の間、これを旧臨時軍事費特別会計分として別途に整理し、据え置くものとする。」ということが十条で定められておりまして、その二項におきまして、こういった異動があった場合には「内閣は、」ちょっと法律技術的には細かい言いぶりになりますけれども、そういったものを整理した「計算書を調製し、これを当該年度の一般会計の歳入歳出決算に添附して国会に提出しなければならない。」ということが法律をもって定められたところでございまして、内閣はこれに従いまして毎年、現在に至るまで処理をしてきているということでございます。
#238
○佐藤(恒)分科員 これは平成元年度の添付されている計算書でありますが、これでは昭和二十一年から昭和六十三年度まで決算額にさらに整理額という形での追加金額の記載がございます。これは昭和二十一年から六十三年度まで、こうなっておりますが、実際に異動のあったのはいつで終わっていますか。
#239
○田波政府委員 昭和二十一年度以降ほとんど毎年異動がございまして、一番最近時点は昭和四十九年度でございます。
#240
○佐藤(恒)分科員 それでは、昭和四十九年度が最後の時点ということになりますと、それからはもう十数年異動がないわけであります。この清算について、つまり決算後、今百九十七億円ぐらい赤字のままであるということでありますが、これの、決算ではなくて清算の見込みは、十数年数字が動かないという状況のもとで今後の清算は一体どういうふうにしていかれるお考えなのか。どうしてこの計算書の付記のまま十数年も過ごしてこられたのか、今問題点を整理すべきときに当たってどういう点に問題があるとお考えになってこの清算処理が進まないのか、その辺ちょっとお伺いします。
#241
○田波政府委員 昭和四十九年度におきましては約二千六百万円の歳入があったわけでございますけれども、こういった歳入の中身というものを若干詳しく申し上げますと、戦争中に例えば民間会社等に対して兵器製造契約がございました。それに従いまして前金を交付をした、あるいは材料を有償払い下げいたしました。ところがそれが、例えばの話でございますけれども、契約解除によって返ってまいりましたといったようなケースがこういった形で歳入に入ってきているわけでございます。この例でおわかりいただけますように、戦後のある意味でのいろいろな混乱のもとで、しかも旧外地あるいは戦地における国庫金の受け払いがいろいろな形で行われてきたところに関連したものの処理でございますから、今までの特別会計の債権債務の整理についてはいろいろな点で困難があるというようなことが大きな理由であって、そのために現段階では最終処理に至っていないということでございます。
#242
○佐藤(恒)分科員 私は、これを赤字を全部解消をしてそれで完全に収支を合わせて処理をしなさいとか、そういうことを申し上げているのではなくて、もう十数年も動いていないものを、しかも四十数年前のものをこれから洗い出して可能だということで処理をされておらないのか。それとも、四十数年前のことであるけれども、これこれの処理すべき事項がある、それは現実には処理しにくいけれども、収支を処理するには歳入として計上すべき問題点がこういうところにある、要すれば今これの処理に向かって作業をやっているんだ、こういうことであれば、何年であってもその処理をして、最終的にゼロに持っていって一般会計と併合するというのは私は理解できるのでありますが、十数年も動かない、しかも四十数年前のものを処理するということになったら大変なことだろうと私は同情するわけであります。細目は別にしまして、大どころではこういうところに解明すべき問題点があります。
 例えば当時の決算書及び決算審査等々の記録を見ますと、例えば不当とすべき事項が三十八件とか、警告として記載をすべきものが六件とか、注意すべきものとして十件とか、いろいろ具体的な事実が指摘されているわけですね。そういうことに基づいて追跡調査をしながら歳入の促進を図っている、こういうふうに理解をしてよろしいのでしょうか。そうだとすれば、具体的に、主なところではこういう案件を処理したいということで時間がかかっているのだという幾つかの例を示してもらいたい。
#243
○田波政府委員 これは事柄の性質上、具体的にこの案件があるから、この案件があるということが特定できればそれは追跡がかなりできるわけでございます。広い意味で戦後処理の一環というようなもので、そういう性格を持っているのではないかなというふうに思いますけれども、私どもといたしましてはまだかなり収納未済の歳入額があるというふうに考えているところでございまして、そういったものについていろいろな形で追跡ができるものについては極力やっていきたいというような気持ちは持っているところでございます。
#244
○佐藤(恒)分科員 いや、私は、例えば決算書によりますと、不当と指摘せざるを得ないものが三十八件とか今数字を申し上げましたが、それは、大蔵省所管、元陸軍省所管ということで右は陸軍被服本廠において云々、こう具体的事実がずっとあるわけですね。不当とすべきもの三十八件ですか、そういうふうに指摘があるわけですから、そういうものを整理するのに今時間がかかっているということなのか、それともそういうこと以外に、不当ではないがとにかく歳入にはなっていないということで幾つかの事項があるということなのか、そういう幾つかの、金額的にはこういうものが大きいというものを幾つか例示をしていただきたい。ただ一般的に、もし具体的に言えないということは、つまり十数年もたってもなお整理できないというのはもはや不可能なんだという状況判断をしているのか、そこら辺ちょっともう少し教えていただけませんか。
#245
○田波政府委員 戦後これだけの時間がたっているわけでございますから、なかなか完全に追跡はできないと思いますけれども、個々の具体的なケースというよりは、これは国会に御報告しておるところでございますが、例えば不用物品の売り払い代の債権がまだ残っているとか、あるいは物件売り払い代債権がある、あるいは費用弁償金の債権がある、延滞金の債権があるというような形で残っているものがあるわけでございます。委員の今の二つの分類で申しますならば、必ずしも不当事項というものに限らずに、潜在的に債権があり得るものについてまだ問題は残っているという状態かというふうに思います。
#246
○佐藤(恒)分科員 そうすると、その債務継承者が団体の場合だとか機関の場合ですと、四十数年たってなお、ある意味では債務継承することはあろうかと思いますが、個人とかあるいは個人に類似したものということになりますと、債務継承というのはもう四十数年たっていましてなかなか容易ではないだろうと思うわけでありますが、そうすると債務継承者はすべて、すべてというか大どころははっきりしているということと理解していいですか。
#247
○田波政府委員 そこのところは、これも個々のケース全部私存じ上げているわけではありませんけれども、そういった点も含めて、いろいろ最終的な解決に困難なものが多いということだろうかと思います。
#248
○佐藤(恒)分科員 要すれば困難なものが多いから、本当は大変で、これはゼロに、早く処理したいというのが本音だろうと思うのですが、きょうは会計検査院の方にはお声をかけておりませんけれども、検査院の方の指摘はいつで終わっているのでしょうか。本会計についての何か会計検査院の要すれば決算検査後の指摘というものがあると思いますが、最近では恐らくないのだろうと思うのですけれども、いつの時点で終わっているのですか。わかりませんか。
#249
○田波政府委員 ちょっと資料を持ち合わせておりません。したがって、推測で物を言うのは大変申しわけないと思いますけれども、先ほどの二十七年の法律でございますが、それでもって一般会計からは別途のものとして整理をし、据え置くものというふうにされている状態がそのときからできているわけでございますから、恐らくそれ以降、会計検査院からの御指摘はいただいていないのではないかなというふうに推測をいたしております。
#250
○佐藤(恒)分科員 そろそろ終わりたいと思いますが、大臣にお尋ねをいたしますけれども、今答弁を聞いておりまして明らかなことは、要すれば十数年来もう会計の収支は動いていない、しかも債務継承を含めて非常に困難だということが指摘をされている、しかも、当分の間据え置くものといっても、当分の間にしてはちょっと時間がたち過ぎていますよね。これは赤字がいいか悪いかという議論はここでやってもしようがないので、問題は、どういう点の債権関係が回収できないのかということを明らかにしながら本会計の整理はすべき時期に来ているのではないか、こういうふうに実は思うわけでありますけれども、大臣の今後のこの問題の処理についての御方針あるいは見解があればお尋ねをしたいと思います。
#251
○橋本国務大臣 何しろこの会計は、私が生まれる直前に生まれまして、私が小学校三年のときに廃止になり、その長ったらしい名前の今根拠法として挙げられました法律ができましたのが私が中学校在学中ということでありまして、私もこの前委員から御指摘を受けるまで特別会計が現在もまだ存在しておること自体を実は存じませんでした。
 ただ、伺っており、そしてきょうもその論議を深めていただいたわけですけれども、確かに、今次長から御答弁を申し上げましたように、この債権債務の整理が旧外地あるいは戦地における国庫金の受け払いなどに関連したものでありますから、その解決には非常に困難なものがあることは間違いないと思います。しかし、戦後四十年余を経てまだ最終処理が終わっていないということは決して好ましいものだとは思いません。先ほど次長からも申し上げましたが、他の戦後処理問題とあわせて解決していく方向でできる限り努力したい、そのように思います。
#252
○田波政府委員 先ほど委員からの御質問の一部にあったかと思いますが、臨時軍事費特別会計法、昭和十二年の法律でございますけれども、この特会法そのものは昭和二十九年の五月に大蔵省関係法令の整理に関する法律という法律の中で廃止になっているところでございます。大変失礼いたしました。
#253
○佐藤(恒)分科員 これで終わらせていただきますが、最近、財政民主主義とかいろいろそういうものが、戦前の経験に照らして決められた憲法の定めやあるいは財政法等のそういう精神を侵していく危険性があるという指摘が実はあるわけですし、大蔵省が編さんをした我が国の財政の歴史などをずっと見ていきますと、こういう戦時会計やこの会計の処理のあり方についての警鐘も実は鳴らしている書籍も大蔵省編さんの中にあるわけでありますから、そういう本を出している所管として、速やかにこの債権債務関係の内容を明らかにして、できないものはできないということを国会にきちんと報告すべきだ、こういうふうに思いますので、ひとつよろしく処理いただきたいことを要請して、終わります。
#254
○林主査 これにて佐藤恒晴君の質疑は終了いたしました。
 次に、和田貞夫君。
#255
○和田(貞)分科員 昨日の朝刊の記事を見てみますと、東京都が一月一日現在でまとめた地価動向調査結果、これは三カ月ごとにやっておるわけですが、商業地といえども住宅地といえども、調査の対象とした全地点が横ばいか下落傾向である、こういう記事が載っておるわけですね。そこで、それは金融機関に対する不動産業者に対する融資の総量規制の効果が出ておるのだ、私もそのとおりだと思うのです。規制をなお続けていけば今後もっと下落傾向が進むだろうというように分析しておる、それもそのとおりだろうと思うのです。大臣もまた過日の予算委員会におきまして、総量規制指導で銀行の融資率が前年より伸び率が下回るようになった、こうした努力は今後も続けていくんだ、もうこの三月で総量規制を指導してから一年たつわけですが、四月以降もなお続けていくんだ、こういう旨の答弁をされておるわけです。
 そこで、地価の高騰に対するところの施策、土地の値下げをさせなくてはならない、値下げをするだけでなくて土地を放出させていく、こういう土地政策というのを講じていくのが当然であるのですが、鋭意努力をされておるのですが、昨日、衆議院の本会議でようやくその地価税の法案の提案説明があった。四月の初旬からその法案の本格的な審議に移っていくわけなんですが、このこと自体が本体の土地政策の中心的な政策を担わなくてはならないのですが、これが今になった。しかし、銀行の融資に対するところの総量規制の効果が上がっていくということも事実でありますが、それだけをなお続けていって、そしてこの地価税が、きのう大臣の趣旨説明をお聞きしましたし、その内容も見せていただきましたけれども、極めて不十分である。
 土地の高騰の原因というのは、住宅を建てるために土地が欲しい、事業をやるために土地が欲しい、工場を建設するために土地が欲しい、だからその土地を取得するんだ。計画的に建設していくために土地を今なお保有しているんだということじゃなくて、最大の原因というのは、土地を投機の対象にして、そして取得し、保有し、譲渡するということを繰り返して、これはこういうふうになったわけです。しかも、その情報の提供というのは、銀行がこの土地の高騰に大きな原因をつくっているわけです。情報提供して金を貸す、また情報提供して金を貸す、このことを繰り返してきているわけです。
 にもかかわらず住宅を、これは建設省も住宅政策としてことしも七百二十万戸の住宅を供給しなければいかぬ、公営住宅や公団住宅だけでなくて、民間の住宅の提供も受けなければならないわけです。まじめにそのために土地を取得して、そしてその住宅を提供する、そういう正常な営業活動をやっておる住宅産業に、融資だけを対策としてなお続けていくと、非常にまじめな住宅産業の皆さんに迷惑をかけるんじゃないか。
 しかもこの住宅産業の中でささいな資本で、あるいは個人がやっておられる方々はもう限界に来ておるわけです。中小の業者がもう限界に来ておるわけです。片方、大きなところは、大きなところも倒産しているところがありますが、これは無理なことをしていることが原因なんです。そういうことを考えたときに、大臣の答弁あるいはきのうの朝刊の記事を見て少し疑問を持つところでございますが、まじめな住宅産業の皆さんのことやあるいは中小の不動産業者の皆さんのことを考えたときに、それでいいのかどうかということをひとつまずお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
#256
○土田政府委員 まず私から、この現在の総量規制の仕組みにつきまして、若干技術的な御説明をさせていただきます。
 現在のこの総量規制は昨年の四月から始めたものでございますが、その中では、不動産業向けの貸し出しと、住宅建設、その他建設業向けの貸し出しとは取り扱いを区別しております。御高承のとおり、不動産業向け貸し出しにつきましては、当面、その公的な宅地開発機関などに対する貸し出しは除外いたしまして、その他一般のものについて、総貸し出しの増勢、ふえる勢い以下に抑制することをめどとして各金融機関で調整を図るようにお願いをしたい、建設業向けにつきましては、この特定の計算方式を与えて、それに協力して抑制をするということではなく、その実行状況、残高の状況を報告してもらいたいというふうに区別をしているわけでございます。
 なぜこのように区別をしたかと申しますと、その背景としましては、この建設業の資金需要というのは、確かにいわば不動産取得の関係の土地関連の部分もございますけれども、そのほかに建物の建設その他諸雑費、いろいろなものもあるわけでございますので、それについて不動産業向けと同じように画一的に抑制するということを打ち出すことは適当でないということで、このように区別をしているものでございます。
 実際にこの金融を個別の業者が受けることができるかどうかというのは、これはやや個別の問題になりまして、この金融機関との従前の取引の状況がどうであったか、それからまたその個別の業者の経営の内容その他いろいろな要素が出てまいりますので、一概には申しかねるわけでございますが、私どもとしては、総量規制導入のときにも今申し上げましたような取り扱いの違いというものを設けておるわけでございます。
#257
○和田(貞)分科員 私もそういう点はわかっております。しかし、その今の言葉の中で、不動産業と住宅産業、これは区別をどうするのですか。不動産業と住宅産業、これは不動産業としての行政機関の許可をとって住宅産業をやっているわけですよ、これは法人であろうが個人であろうが。土地を取得するのは、住宅を提供するために土地を取得しているわけですね。不動産業と住宅産業と区分をしてというのはちょっと私はわかりませんね。
#258
○土田政府委員 私どもの方では一般の日銀の「調査月報」その他にありますような統計分類に注目いたしまして、不動産業と建設業の取り扱いを区分しているわけでございます。各金融機関は、それぞれにその貸し出しの状況を調査し、それから日本銀行に、統計作成の目的でございますが報告することにしてございます。そこで一応業種分類をしているものと了解をしております。
 なお、さらにさかのぼりますと、この総量規制以前に、昭和六十一年以来私どもは土地関連融資につきまして指導を繰り返してまいりました。そのときの一般的な考え方は、実需に結びつくものはこれはその資金の供給は差し支えない、ただし土地転がしその他投機につながるものは厳に抑制せられたい、こういう方向でいわば個別の、両刀遣い的な気配りを金融機関に要請してまいったわけでございます。それはそれなりに金融機関で遵守されたと思いますが、しかしながら、全体の地価動向の推移を見ますると、残念ながら、地価上昇が地方に拡散するというようなこともございまして、この程度の措置では地価鎮静の実効を上げることができなかった。
 そこで、やや非常の措置としまして、昨年の四月以来いわゆる総量規制というものを発動したわけでございますが、このような総量規制というものは、それが非常に強力な効果を持っておるものでありますだけに、永久に続けるとかそれが恒常的な姿であるというふうにはしたくないと思っております。そこで私どもも、地価の動向その他金融、経済情勢なりさらには地価安定のためのそのほかのいろいろな手段、そのいろいろな手段がどの程度整備されてくるか、そのような状況を見守りながら今後の総量規制の取り扱いを考えていきたいと思っておるところでございます。
#259
○和田(貞)分科員 土地を購入してあるいは持っておる土地をマンションを建てて賃貸住宅として振り向ける、あるいは分譲住宅に振り向ける、あるいは土地を購入して市町村の開発指導を受けて戸建て住宅を建ててそして市民に提供する、そのことを業としておる許可を受けた不動産業というのは、これは不動産業なんですか、住宅産業なんですか、どっちなんですか。
#260
○土田政府委員 個別の事例につきましては……(和田(貞)分科員「今申し上げたこと」と呼ぶ)それは、その場合に恐らくはそのどちらの要素が大きいかというようなことで判定するということになっておると思います。細目の取り扱いは、これは日本銀行の方の調査統計局あたりで定めておるものだと思っております。
#261
○和田(貞)分科員 私はそういうことじゃなくて、住宅産業なんですよ、これは。土地を買って土地をあっせんするということだけを業にしているのは、これは住宅産業じゃない、そうでしょう、大臣。土地を購入してそしてその土地を仲介をして他に譲渡するということ、この仲介をしているという、それは住宅産業じゃなくてこれはもう土地のあっせん、介在してあっせんするという純然たる不動産業ですね。しかし、不動産業の許可を取っておらなければ住宅を売ることの事業はできないのです。商売できないのです。住宅を販売するということができないわけですよ。だから、不動産業の許可を取って住宅産業を営んでおる者とおのずから異なるじゃないですか。だから私は、不動産業と住宅産業とを分けてというのは理由がわからないというのは、そこを言うているわけです。
 土地を購入してそしてその土地を投機の対象にして値上がりを待つというようなお客さんに売ったり買ったりすることをやっておる、そういう者と、大きい小さいは別として、土地を購入してその土地にマンションを建てるあるいは戸建て住宅を建てて市民に住宅を提供するという、そういう不動産業の許可を取った住宅産業と、おのずから融資の対象というものを選別する必要があるんじゃないですかということを尋ねているのです。
#262
○土田政府委員 ちょっと技術的な説明でございましたが、補足いたします。
 この現在の分類は、総務庁が定めております日本標準産業分類に準拠いたしまして、営利、非営利を問わず、その産業活動の種類を必ずいずれかの小分類業種に区分けをするというようなところからスタートをしておるものでございますが、その場合に、もちろん一つの企業がいろいろな業種を取り扱っていることはあるわけでございます。そのときには、この売上高の大きいものによるということに規則ではなっているようでございます。
 それから、御説明を続けますと、ただいまのお話でございますが、最近のいろいろな倒産事例その他を見ますると、例えばかなり手広くワンルームマンションを提供する業者であって、それがいろいろなふぐあいに陥りまして倒産したとか、いろいろな例も出ておるわけでございます。結局金融機関との関係と申しますものはなかなか一般論では申し尽くすことができませんので、その企業と金融機関との関係、その金融機関にも例えば非常にその中心となる金融機関があるのか、それともそういういわゆるメーンバンクなるものがないのかというような話、その他いろいろなことが総合しまして金融機関との取引環境、取引実績をつくるわけでございますので、一般論的にはなかなか処理できないわけでございますが、私どもは、先ほど申しましたように一応この不動産業を主力とする業者とそれから建設それから建築、販売、そういうものを主力とする業者とを区別した扱いをするというところで、いわばその辺の違いは気をつけたつもりでございます。
#263
○和田(貞)分科員 次元の何がどうでこうでという役所的な文章の解釈とかいうのじゃなくて、私がもう明確に言っているでしょう。土地の売買のあっせんをやって投機を対象にするような人に売ったり買うたりするようなことだけをやっておる、そういう純然たる不動産業と、住宅を提供するという住宅の供給を経済活動としての業としておる、そういう不動産業の許可を取った者たちと、おのずから区別をすべきだというふうに私は思うのです。建設省の住宅政策にのっとってむしろ協力している業者じゃないですか。そういう業者に融資の道をこの際開くべきじゃないかというふうに私は言っておるわけで、時間がありませんので続いて申し上げたいと思います。
 そこで、特に中小のそのようなまじめな経済活動をやっておられる不動産業者が困っておるわけです。大きな業者は関西でも、これも今月の初めころの朝日新聞や毎日新聞に載りましたけれども、例えば野村不動産だとか大林不動産だとか近鉄不動産とかというような大手の不動産業者、これも住宅産業ですよ。これは奈良の生駒で、もう既に買った戸建て住宅の方に三千六百万円―四千万円、最高四千五百万円も返しに行っておる。そして残った分を四千五百万円あるいは四千万円値引きをして売っている。そういうことができるような大手の住宅産業、不動産業と、ささやかに地域で住民と本当に密接なつながりがあってその他域の住宅提供、開発のために協力しておる中小の住宅産業、不動産業、そういう人たちのことをこの際やはり政策の中で見直していく必要があるんじゃないかというように思うのですが、その点についてはどうですか。
#264
○土田政府委員 何分にも不動産業は大蔵省が所管しているわけではございませんので、業界の情勢をつまびらかにしない面がありますことはお許しをいただきたいと思いますが、最近の不動産業の経営の状況につきましては、それはもちろんこの地価の動向とか金利の上昇それから資金繰りの問題、その他環境条件の変化もさることでございますが、最前から申し上げておりますように個別企業の経営のあり方、それから個別企業と個別の金融機関との金融取引の結びつき、それは千差万別でございますので、一般論はなかなかできにくいと思いますし、一概にこの総量規制との因果関係を立証することも困難であろうかと思います。
 私どもはあくまでもこの土地投機につながるような、そういう土地融資を厳しく抑制するということで数年来やってまいりましたし、それが総量規制の一番の眼目であるということは申し上げるまでもございませんけれども、それを強力に実行いたしますためには、従来の経験にかんがみて一時的にせよこのような総量規制という措置をとらざるを得なかった、そのような事情も御了解いただきたいと思うわけでございます。
#265
○和田(貞)分科員 それはわかりますよ。わかりましたが、もう一年もたって今日の時点で私は言っているわけです。そういう小さな業者、これはこの世界では手形が効かぬのですよ。手形が効かなくてどうしても全部現金なんです。大きなところは先ほど申し上げたように四千万円も、四千五百万円も値引きしても商売をやっていける、小さいところはやろうと思っても銀行に金が出てこなければ商売ができぬ、そういう事情にあるということをやはりひとつわきまえてもらいたいと思うのです。しかし、この一年間、その中で我慢をし努力をし頑張ってきました。
 先ほど申し上げましたように、大手の住宅産業が、サラリーマンが一戸のマンションを買えるぐらいの莫大な額を値引きするというようなことをやるものだから、まだ下がるのじゃないかというような、消費者としてはそういう期待感を持っておる。それにかてて加えて八年前に導入されましたいわゆる金利の変動型の住宅ローン、これによって、消費者は過去に借りたところも昨年の秋の利息の値上がりによってもう一月から大変なことなんです。私は住友銀行の住宅ローンのある人の明細書を持ってきました。もう二月から利息ばかりを払って元本は全然動かない、こういうような状況になってきて、なかなか消費者が手が届かないというような事情にもなっておる。
 そういうようなことでございますので、より消費者と結びつきの強い中小の業者の皆さんが困っておる、こういう実情も十分勘案をしながら、この際ひとつ中小の不動産業の皆さんや中小の住宅産業の皆さんに目をつけて見直しをするということをぜひとも考えてもらいたいな、こういう気持ちでございますが、どうでございましょう。
#266
○土田政府委員 住宅ローンの仕組みについての御説明になりますけれども、現在銀行などが標準的に提供しております方式は、委員御指摘のような変動金利のものと、原則として途中で金利が変わらない固定金利のものと二種類がございます。借り手はそのどちらも自主的に選択することができるわけでございます。
 それで変動金利を仮に選択をしたという場合を考えてまいりますと、例えば一般の事業金融の場合でございますならば、市場金利の上昇に伴いまして利率が引き上げられた場合、直ちにそれが返済額の増加につながるわけでございます。ところが、住宅ローンは一般大衆が利用するという特別な性格のものでございますので、事業金融のように途中から返済額が突然急増するというようなことはかえって生活設計の安定につながらないであろうということで、いわばあえて借り手の保護のために返済額を五年間一定とする、そういう仕組みをとり、かつ五年目に返済額を増減する、再計算をするわけでございますが、そのときに返済額をふやす場合でありましても、新しい返済額はこれまでの一・二五倍、つまり二五%増しを上限とし、それ以上には増額をされないというように借り手の保護、それから予測可能性を与える、そういう方面に着眼をしたような仕組みをわざわざつくっているわけでございます。
 それで、実は利息の所要額そのもの自体はこれは変動金利であり、市場金利が上がりますれば利息は上がり、それから下がれば利息も減るわけでございます。そのこと自体はやむを得ないわけでございますが、仮に利息が上がり、返済額が一定でございますので、その中で元本の部分が減りまして利払いの部分がふえるといたしましても、ないしは、極端に言えば、元本の返済に充当できず利息の返済のみに充てる部分ができるという場合でありましても、いわゆる孫利子と申しますか、利子が利子を生むということにはしないような仕組みにしてございます。
 以上申し上げましたが、これは専ら資金需要者である消費者個人の借り手を保護するために、返済額が金利の変動にかかわらず一定の範囲内で安定的に推移するように仕組んでいるというものなのでございまして、その点は、固定金利型と変動金利型で一長一短がありますけれども、変動金利型をとりました中でも現在の仕組みというのは、それはそれなりに消費者に配慮したものになっていると言えるのではないかと思っております。
#267
○和田(貞)分科員 これは消費者がそういう金利のリスクというのを十分に熟知しておらぬわけですよ。だからといって消費者が自主的に固定型か変動型かということで選んでいるのじゃないのです。あのときに、銀行の文書もありますけれども、これは都市銀行が我先にということで消費者の方に出向いていって変動型に切りかえるキャンペーンをやっているのです。そういう証拠があるのです。実績があるのです。極めてひどいじゃないですか。そういうことこそ銀行局は消費者の立場に立って銀行を指導すべきなんです。もともと金利のリスクを十分予測するような力を持っておらない消費者に対して、金利の変動型の融資を銀行にさせること自体に問題があるのじゃないかというように私は思います。時間がありませんので、その点は無理をするようなそういうキャンペーン、営業活動をやらぬようにむしろ銀行に十分指導してもらいたいと私は思うわけであります。
 さらに、この機会でございますので、今日、中小の不動産業が、申し上げましたようなことで大変な事態になっておるわけでございます。それにかてて加えて、今一番心配をしておりますのは、信託銀行以外の普通の銀行、これがどうやら不動産業に手を出そうということで不動産業に新規参入を考えておる、こういうことが言われておるわけですが、これについて特に不動産業界の中小の皆さんは非常に心配をしておるわけでございます。
 経済活動を正常にしてそして消費者の皆さんに住宅をまじめに提供する、そういう方々の立場に立って、先ほど来申し上げさせていただきましたように、この際、融資の枠の緩和等を含めましてひとつこれらの人々の立場に立ってもらえないだろうかと私は非常に希望するわけでございますが、最後に大蔵大臣の方からひとつその考え方を述べていただきたいと思います。
#268
○橋本国務大臣 今委員が中小企業経営という立場から御論議をいただきましたことに対して、私は敬意を表したいと思います。
 ただ、同時に、地価高騰に歯どめをかける、歯どめをかけるだけではなくてむしろ地価を下げなければならないという要請は、私は非常に大きな国民的な要請であると思います。そうした中におきまして、あるいは今委員が御指摘になりましたような現象が一部に出ているかもしれません。こうした点については、また金融機関にもそれぞれ実態を把握しながら対応していただくようなお願いも考えなければならない時期がそろそろ来ているのかもしれませんけれども、私は、土地神話というものを一度破壊するためには、相当深刻な時期をお互いが覚悟の上で乗り切らなければその効果が上がらないと思っております。今御指摘がありましたようなことも念頭に置きながら今後の行政に当たってまいりたい、そのように考えております。
#269
○和田(貞)分科員 それでは、ひとつよろしくお願いいたしまして、終わります。
#270
○林主査 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、山中末治君。
#271
○山中(末)分科員 きょうは、橋本大蔵大臣も御出席いただいて、ありがたいと思っております。私は、限られた時間でございますので、酒類の販売等の件について御質問を申し上げたいと思います。
 まず、酒類販売の卸業、小売業という区別があるようでございますが、それぞれの業につきまして免許の付与の要件あるいはまた免許の取り消しの要件等をまずお伺いしたいと思います。
#272
○坂本(導)政府委員 お許しを得まして、若干時間をちょうだいしたいと存じます。
 今、委員お尋ねの酒類の卸売あるいは小売等の免許制度につきましては、酒税保全の観点から酒税法第九条に規定されているものでございますが、その統一的な制度運営を行うため、具体的には、酒税法の趣旨に沿って酒類販売業免許について国税庁で取り扱い要領を定めまして、これを公開して運用してございます。この取り扱い要領は、昭和六十三年十二月に行われました臨時行政改革推進審議会の答申及びこれを受けて閣議決定された規制緩和推進要綱の趣旨に沿って、一層の透明性あるいは公平性を確保するべく、平成元年六月に改正して、同年九月から実施しているというものでございます。
 お尋ねの免許の申請があった場合でございますが、今申し上げましたこの取り扱い要領に定めます免許要件に従って十分審査の上、その可否を判断するという手順でございます。
 そこで、具体的に小売業の免許につきまして申し上げますと、一つは申請者の人的要件、例えば、これは具体的には申請者が過去において酒税法に違反するようなことがなかったかどうかというようなことでございます。
 それから二番目が、小売でございますが、需給調整上の要件ということでございまして、やはり需要がどれだけあるかによって判断するわけでございますから、大都市地域におきましては千五百人に一件、あるいは中部市におきましては一千人に一件あるいはそれ以外のところでは七百五十人に一件というような透明性を確保するということをやってございます。
 それからその次、場所的要件というのもございまして、大都市あるいは中小都市につきましては、隣の酒屋さんと百メートルは離れていなければいけない、あるいはその他の地域では百五十メートル離れていなければいけない、こういうような要件がございます。
 次に、卸売業の免許でございますけれども、これは一つは申請者の人的要件がございます。人的要件と申しますのは、例えば店を、卸を開いてやっていけるかどうかということでございますから、例えば販売数量見込みが年間で大都市地域では七百二十キロリットルぐらい売れるかどうかとかいうようなことが要件となってございます。
 それからその次に、需給調整上の条件でございまして、これも過剰に免許をおろしますと、皆が互いに共倒れになるということになりますので、やはり先ほど申し上げました、例えば大都市地域における販売見込み数量七百二十キロリットルの二倍以上あれば新しい免許をもう一つおろすというような仕組みになってございます。
 そういったことで卸、小売を通じて、客観的、公明と申しますか、明白な条件をオープンにして、それに従って免許申請をしていただいているところでございます。
 それから、その次にお尋ねの免許の取り消しでございますが、これは酒税法第十四条の規定に基づきまして、具体的には酒類販売業者が偽りその他不正の行為により免許を受けた場合、あるいは国税に関する法令の規定により罰金の刑に処せられた場合等のほか、二年以上休業している、店を開いていないというような場合につきましては、税務署長は当該業者から聴聞の手続等を経まして、免許の取り消しをするということになってございます。
#273
○山中(末)分科員 それぞれ卸、小売についての付与の要件、取り消しの要件を伺ったわけですが、それで、同一人が卸と小売と両方の免許を交付されているという事実がございます。これはきょうの私の一つの問題点というところでありますが、今全国で卸と小売の両方の免許を同一人が持っているという件数といいますか、人数、どれぐらいございますか。
#274
○坂本(導)政府委員 今委員お尋ねの件でございますが、ちょっと事情がございまして、沖縄県は、復帰しますときに卸、小売問わず、何でもできるという免許だったものですから、その沖縄ということを除きまして考えますと、現在酒類販売免許総数は、本土でございますが、平成元年で十六万九千件という小売免許がございますが、そのうち卸もできるという業者数は五千六百二十七場ということでございます。
#275
○山中(末)分科員 そうすると、私の質問に対しては、全国、沖縄県を除いて五千六百二十七件、卸と小売の免許を持っておられる、こういうことでございますね。それは法律ができてずっと、双方二つの免許を同一人に与えたという経過があるのですか。
#276
○坂本(導)政府委員 実は免許は、法律上は卸、小売という区分はございませんで、条件として付すことができる、卸売に限る、あるいは小売業に限るということでございますが、昭和四十六年に酒類販売免許の一本化措置という措置を講じました。これは言ってみれば、卸、小売の条件を撤廃してしまう、両方認めてしまうというものでございます。そのねらいは、酒類販売免許制度の運用における卸売あるいは小売の区分という制度上の制約を緩和することにより、酒類流通の合理化と企業経営の効率化を図るということによって、酒類産業の近代化及び合理化に資するというねらいでやったわけでございますが、委員御指摘のように、やってみましたところ、その後における酒類をめぐります市場環境の変化の中で、弱小の卸売業者が出てくるというようなことで、逆に酒類の需給均衡維持に支障を来すというケースがかなり見られるようになりまして、そこで、逆にその措置は酒類の流通の近代化、合理化というものをむしろ阻害するという結果になっているのではないか、むしろ生販三層の健全な育成が必要ではないかということから、平成元年六月にこの扱いを変えまして、卸、小売別々に免許をおろそうではないかということにしてございます。
 したがって、卸の方が小売を欲しいという場合には、その方が小売として、先ほど申し上げましたような小売の免許要件に該当しているかどうか、あるいは小売の方が卸を欲しいといった場合は、先ほど申しました卸の免許要件に該当しているかどうか、つまり、小売を持っているから自動的に卸、卸を持っているから自動的に小売というような扱いをしないことといたしました。
#277
○山中(末)分科員 よくわかりました。
 それで、そういうことをお聞きして、その上で、実は困ったことが起こりまして、地方の中小都市でございますけれども、卸と小売との免許を同一人が持っておりますために、両方の免許を持っている人は製造元から卸で仕入れてきて、そしてそれを小売へ売れば問題ないわけですけれども、小売の免許を持っているものですから、安く売るのですね。片方は小売の免許だけしか持っていない。今のお話でも、小売が十六万九千、その中で両方持っている人が五千六百ですから、十六万余りの人が小売の免許だけしか持っていないということになりますね。
 私が知りましたその都市でもそれが出てきておりまして、名前も人数も全部わかっておるのですけれども、それは言いません。一般論としてお願いしていきたいと思いますので言いませんけれども、そういう状況が起こって、小売の方が、小売は主として一本売りですね、卸の方は、どか売りというと語弊がありますが、大量で売れる。それが小売免許を利用して、卸の免許で卸してきて小売の免許で売っている。そうすると値段的に、これはやはり小売が、仕入れてきた価格に自分のところのマージン率を掛けなければならないですね。そうすると、仕入れてきた額よりも高額で売らなければいかぬわけです。ところが卸の方は、自分のところが仕入れてきたお酒の仕入れ価格にマージンがついて、そして小売の免許を持っているから小売のマージンもつくわけでしょう、小売した場合は。そうすると、卸、小売のマージンがついてくる。ですからそこに微妙に小売価格が、卸さんの免許を持っている方の小売価格が安いですね。
 これは公取の方へも私お聞きしたのですけれども、公取の方は、仕入れ価格を下回って売った場合はこれはダンピングになるけれども、酒というのは価格が決まっていませんから、自由価格ですから、それ以外は何とも申し上げられませんということになりまして、これはえらいことだな。
 そうすると、商売というのは、同じベースに並んで、同じ土俵に上がって、そして同じ条件で自由競争するというのがこれは原則でございます。ところが、これはちょっと例が悪いかもわかりませんけれども、片方の小売の方はピストルしか持っていない、卸の方はピストルと機関銃と持っている、それでやれ、競争しろと、ちょっと例が悪いですけれども、そういうふうに私感じまして、これはちょっとまずいんじゃないかなというふうに実は思っておるわけでございますが、そのあたりのことは、今までの経過の中にお気づきされたことがあったのかどうか、簡単にひとつお願いします。
#278
○坂本(導)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、卸、小売を一括して免許をしていた時期があった、しかし、それは今の時点でやはりおかしいということで反省して、取り扱いを変えたわけでございます。したがって、今後は卸と小売というのは別々に免許をしていくということになろうかと思いますが、ただ残念なことに、既に卸、小売両方の免許を与えてしまっているものにつきましては、これは法律上の既得権でございますので、これを剥奪するというわけにはまいりませんので、そこができないことが一つの問題になっていることは事実でございます。
 それから、委員御指摘の価格の面でございますが、確かにおっしゃるように、酒類は、酒税の確保という見地もございますし、致酔性飲料ということもございますから、一定の安定した取引が行われることが必要でございますけれども、委員が引用されました公取の話にもございましたように、本来自由価格でございますので、私どもとしては、一般的に、ある特定地域の市場が著しく混乱するというような状況があればともかくとして、そうでなければ、一概に両方のマージンがあるから安くできるというのはだめよという指導は、具体的、個別にはできないということでございます。しかし、それを離れまして、一般論として、酒類の流通、卸、小売につきまして、そのマージンあるいはリベート等種々問題があることは委員御指摘のとおり事実でございますので、私どもとしても、目下関係審議会にお願いしまして勉強している最中でございます。
#279
○山中(末)分科員 御苦労なさっていることはよくわかるのです。坂本部長さんのところには直接連絡しませんでしたけれども、昨年の十月に、これは具体的な例が出てきましたので連絡したのです。それから、年末に現地へ行く用事がありましたので行きましたら、何か山中さんありましたかという話がありまして、いや別になかったですけれども、国税庁の方へは、こういう矛盾がありますからその矛盾を直すということ、何とかいい知恵ありませんかということは言っておきました。どういう方法をやってくれたのか僕はわかりませんが、何か伝え聞いたのかどうかわかりませんが、卸の人がちょっと自重してきたという話がありまして、これはいろいろと、私はそんなことをまだ外に向かっては言うておりませんけれども、小売の人には言いましたから、そういう国税庁にも言いましたということを。ちょっと自重されているという話は聞きました。
 しかし、やはりこれは商売のことでございますので、ベースを一つにして、その上で自由競争をやるならいいのですけれども、ハンディがついたものをいつまでも認めておくと、またやはりその都市にかかわらず、全国に五千六百二十七人も両方の免許を持った人がおいでになりますから、どこでどういうことが起こらぬとも限らぬ。一応今のところは、坂本部長さんの方のいろいろな御配慮があったと思うのですけれども、これは推測ですが、小康を保っていると思いますが、原則は、これは適当な方法でやはり直していかなければいかぬのではないかというふうに実は思います。
 私の考え方で極端かもわかりませんけれども、今両方の免許を持っていますから、これはいつかはそういうものが頭をもたげてくる。というのは、卸さんがいつまでももうかっていればいいのですが、やはり時代の変革等でうまくいかない場合もあるでしょう。そうするとまたもたげてきて両方の免許を使い分けというのか、今のような格好でやられる。それを小売側は非常に困っているけれども、卸は免許を持っているんだからということでやってくる、これは私は起こり得る、再発し得る、それも全国に再発する可能性があると思うのです。
 それで、これは私見でございますけれども、これは二つ持っている人に免許取り消せないとおっしゃいましたけれども、取り消しの要件には入ってないとおっしゃいましたけれども、しかしこれはそういう基本的なべースがちょっとおかしかったので、そこまで何というか予測できなかったので、昭和四十六年ですか、ですから、今気がついたら今すぐにころっというわけにはいかぬでしょうけれども、本人の希望によって卸一本でいくのか小売一本でいくのか、あるいは、本人の希望を御判断なさって、これはやはり卸の方がいいという判断されるか、これは小売の方がいいと判断されるか、そういう行政の立場もありまして、両々相まってどちらかにしていかぬと、これは本当に社会的な不公平じゃないかなと思うのです。
 大臣に出席していただいて申しわけないのですけれども、実はこういう問題があるのですよ。私は、そういうふうにして何か整理できないかな、今すぐにでなくてもいいですよ、行く先ね。さっきの答弁の中では、免許を出しているので取り消しはできないんだというお話ですけれども、これは、この考え方がいつまでも残っているとぐあい悪い。これはやはり商売ですから、いい方へ行きますから、これはやむを得ぬから、ですから、私の申し上げたようなことができないのかどうか。
 それともう一つ、再発防止ですね。それと将来は、先ほどおっしゃったのを聞いておりますと、十分に審査をして、免許の申請が出てくれば卸にふさわしいのか小売にふさわしいのかという判断をします、だから将来は二つとも出すということはないかもわからない、そういうニュアンスに聞いたのです。将来はそれでいい。それでやってもらったらいい。現在ある五千六百二十七人が再発しないように、再発というのはこういうトラブル、地元でトラブルが再発しないように何らかの形で手を打ってもらう。新しいそういうダブルの免許を取ることの防止と、今ある免許を取り消すことができなければ、現場でそういうハンディのある競争をしないようにする方法、この二つの方法を今パラレルで考えていかなければいかぬというふうに思いますので、その点について、くどいですけれども、まだちょっと時間がありますので、申しわけありませんがお考えをもう少し詳しくお願いしたいと思います。
#280
○坂本(導)政府委員 一つお断りしておきたいのでございますが、先ほど卸と小売は別々に免許をおろすと申し上げましたが、仮に卸の免許を持っている方が新たに小売の免許の申請をしてきたという場合に、これは全くアウトということじゃございませんで、ほかの小売の申請と同様に扱ってみて、妥当かどうかという判断を下すわけでございますから、その卸の方が新たに小売の免許を持つこともあり得るわけです。例えば、近隣に小売酒販店がないというような場合には、免許枠もあるという場合には、あり得るかもわかりません。したがって、別々に扱いますが、両方持つ可能性はあるということでございます。
 それから委員御指摘の過去の分でございますが、これは自主的に自分で卸だけにする、小売だけにするという御要望があれば私どもは非常にありがたいのでございますけれども、実際問題として、一たび手に入れたものを放すということはなかなかございませんので、私どもがそれを行政として指導していくということには限度があろうかなという感じがいたします。
 それからまたもう一つの問題は、やはり卸と小売では、先ほど委員の御指摘にもございましたように、大体においてロットが違うわけでございます。例えば、小売なら一升瓶一本と売りますけれども、卸なら十本ということになりますから、そういうスケールメリットというような点でおのずと価格差があるだろうと考えているわけでございまして、そういうことから物流人件費がかかるようなところは価格が高くなるし、あるいはそういうコストがかからないところは安くなるということにならざるを得ないのかなというふうに考えております。
#281
○山中(末)分科員 ちょっと私は意見が違うのですけれども、一本売りとグロス売りというような表現を使われましたけれども、私は、グロス売りであろうが一本売りであろうが小売は小売だと思うのですよ。今提起していますのは、その何本売りかということじゃなしに、卸の場合でも小売さんに売る場合には一本売りはないでしょうけれども、小売さんも十本売る場合もありますよ。ですから、これからも両方の免許を出す場合があり得るかもしれないということですが、ということになると、今卸と小売の両方の免許を持って小売さんが困っているということ、これがちょっと、まだもう一つ理解されていないんじゃないかなという感じが私はするのですよ。
 僕はやはり卸は卸、小売は小売ではっきりしていかなければいかぬ。これはもう少し時間があったら言うんですけれども、製造、卸、小売という三つの免許、あるんですよね、調べてみたら。今現地では製造の方は問題が起こってませんから出していませんけれども。それの問題もあるし、これはやはり行く末は整理していくべきじゃないかな。そして、将来も坂本部長がおっしゃったように二つとも免許を出す場合があるということになると、共通の、平等の土俵で自由競争をやるという原則が崩れてくるんじゃないか、こう思うのですけれども、大臣、質問したらいけませんか。
#282
○坂本(導)政府委員 委員の御指摘はいろいろお教えいただく点が多々あるわけでございます。例えば小売でも、店頭に一本冷えたビールを買いに来たという場合と、マンションの三階まで一ダース届けろという場合は価格差があるわけでございまして、やはりそれは必要なコストをオンして価格に乗っけているわけでございます。したがって卸も、小売も、同じ免許を持っていても、その辺はやはりおのずとコストに見合った価格ということになるのではないかなと思います。
#283
○橋本国務大臣 今間税部長から基本的な問題をお答えいたしましたが、伺っておりまして多少かみ合っていないのではないかなと思います。
 私は、委員が例示をされておりますのは、卸としての業者の立場で蔵元からお酒を受け取る、そして通常であるならばそれが小売店に行くわけでありますから、小売店はそこでまたマージンをかけて販売をされる、ところが、その卸そのものが同時に小売でありますために、その次の段階を飛ばして、言いかえれば小売分の流通経費を引いた値段で売ることができる、それが同一地域の中にあるために他の店舗との間において公平な競争が成立しない、こういうケースを述べておられると思います。
 これは私は、先ほど来間税部長が申しましたように、一つ問題なのは、既得権の発生後において新たな法律でその既得権を排除できるかという法律上の問題、また同時に、今後においても適格要件を備えた業者が、あるいは小売の免許をお持ちの方が卸の資格を新たに取得したいといわれるケース、同様に、卸の資格を持っておられる方が小売の資格を得たいといわれるケース、これは両方あり得るわけでありますけれども、その同一地域内においてなおゆとりがあれば、行政としては、これに対して適格である限りにおいて免許を付与しなければならないという問題、二つの問題点があろうかと思います。
 私、今委員の御質問を拝聴しながら、どういう対応があり得るのかな、現実問題としてその地域における非常に面倒な問題に発展する可能性がある、そう思いながら考えておりました。これは全く個人的に、今伺いながら感じたことでありますが、仮に例えば公正競争規約が結び得るんだろうか。例えば小売という資格において一定のエリアの中における同一業種の中での公正競争規約が結ばれる可能性はあるんだろうか。そういうものがもし可能であるとするならば、その業者が二重の要件をお持ちであるかどうかにかかわらず、公正競争規約によって適正な商慣行というものが維持できると思います。この辺が一つの検討点かな。しかしこれは間税部の立場、国税庁の立場でそれを業界に対して強要するあるいは要請するという性格ではなく、むしろ公正取引委員会の立場から、その商品の価値を維持するということが国民生活に資するという視点において、関係業者を指導願うことではないのかな、そんな感じを持って拝聴いたしておりました。
 以上、これは感想にとどまって恐縮でありますが、そんな印象を持っております。
#284
○山中(末)分科員 どうもありがとうございました。
 実は、公正取引委員会にも先ほど申し上げたように連絡したのですけれども、何か木で鼻をくくったようなことで、僕ももう少し勉強したらいいかなというふうにも思いましたし、今免許の交付を担当しておられる国税庁を中心にしてお話し申し上げて、私よりもいい知恵を持っておられる方の集まりですから、ですからここだけにしているのです。ほかのところへは言ってないのです。
 それで、部長さん御苦労なさって、先ほど申し上げたように現地では一応下火にはなったのです。ですからちょっと小康を保っているわけです。今大臣がおっしゃったようなことで、ははんなるほど、さすがだなと思いましたけれども、そういう方向で将来自由な競争ができるような形をぜひともつくり上げていただきたい。
 酒税というのは非常に大事な税金でございまして、これはなおざりにするわけにいきませんけれども、それを販売するという点において、御一考をお願い申し上げたい。これは要望にしておきます。御要望にしておきまして、ちょうど時間が参りました、終わらせていただきます。ありがとうございました。
#285
○林主査 これにて山中末治君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後五時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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