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#1
第120回国会 本会議 第5号
平成三年一月十八日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  平成三年一月十八日
    正午開議
 一 国務大臣の演説(湾岸危機対策について)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議院運営、内閣、地方行政、法務、外務、大
  蔵、文教、社会労働、農林水産、商工、運
  輸、逓信、建設、科学技術、環境、予算及び
  決算の各常任委員長辞任の件
 議院運営委員長外十六常任委員長の選挙
 議員辞職の件
 海部内閣総理大臣の湾岸危機対策についての演
  説及び質疑
    午後零時三分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 常任委員長辞任の件
#3
○議長(櫻内義雄君) 常任委員長辞任の件につきお諮りいたします。
 議院運営委員長山下徳夫君、内閣委員長岸田文武君、地方行政委員長島村宜伸君、法務委員長小澤潔君、外務委員長柿澤弘治君、大蔵委員長衛藤征士郎君、文教委員長船田元君、社会労働委員長畑英次郎君、農林水産委員長亀井静香君、商工委員長浦野烋興君、運輸委員長田名部匡省君、逓信委員長上草義輝君、建設委員長中島衛君、科学技術委員長与謝野馨君、環境委員長戸塚進也君、予算委員長越智伊平君及び決算委員長渡辺栄一君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 常任委員長の選挙
#5
○議長(櫻内義雄君) つきましては、これより各常任委員長の選挙を行います。
#6
○佐藤敬夫君 各常任委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
#7
○議長(櫻内義雄君) 佐藤敬夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、各常任委員長を指名いたします。
        議院運営委員長 森  喜朗君
            〔拍手〕
          内閣委員長 近岡理一郎君
            〔拍手〕
        地方行政委員長 森田  一君
            〔拍手〕
          法務委員長 伊藤 公介君
            〔拍手〕
          外務委員長 牧野 隆守君
            〔拍手〕
          大蔵委員長 平沼 赳夫君
            〔拍手〕
          文教委員長 臼井日出男君
            〔拍手〕
        社会労働委員長 浜田卓二郎君
            〔拍手〕
        農林水産委員長 大原 一三君
            〔拍手〕
          商工委員長 奥田 幹生君
            〔拍手〕
          運輸委員長 亀井 善之君
            〔拍手〕
          逓信委員長 野中 広務君
            〔拍手〕
          建設委員長 桜井  新君
            〔拍手〕
        科学技術委員長 中馬 弘毅君
            〔拍手〕
          環境委員長 小杉  隆君
            〔拍手〕
          予算委員長 渡部 恒三君
            〔拍手〕
          決算委員長 渡辺 省一君
            〔拍手〕
     ――――◇―――――
 議員辞職の件
#9
○議長(櫻内義雄君) 議員稲村利幸君から辞表が提出されております。これにつきお諮りいたしたいと思います。
 まず、その辞表を朗読させます。
    〔参事朗読〕
    辞 職 願
 今般私の不徳の至すところ国民そして選挙区の
 皆様に大変御迷惑をおかけ致しました。同時に
 議会の権威を傷つけたことを深くお詫び申し上
 げます。
 ここに衆議院議員を辞職いたしたく御許可御願
 い申し上げます。
   平成参年一月八日
          衆議院議員 稲村 利幸
  衆議院議長 櫻内 義雄殿
#10
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 稲村利幸君の辞職を許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(湾岸危機対策について)
#12
○議長(櫻内義雄君) 内閣総理大臣から、湾岸危機対策について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣海部俊樹君。
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 湾岸危機に関連する重大緊急事態への対処について、政府の基本的な考え方を明らかにし、皆さんの御理解と御協力を得たいと思います。
 昨日、米、英、アラブ諸国を含む国連加盟国は、イラクのクウエートからの全面撤退とクウエート正統政府の権威回復を求める国連安保理諸決議の実現を図るため、武力の行使に踏み切りました。
 我が国は、これまで、この湾岸危機の解決にできる限りの貢献をすることが国際社会における責任であると認識し、国連安保理決議に先駆けて対イラク経済制裁措置を実施するとともに、湾岸の平和回復活動に対する総額二十億ドルの支援、周辺国に対する二十億ドル程度の支援、二千二百万ドル強に上る避難民援助を柱とする中東貢献策を決定し、着実に実施に移してまいりました。あわせて、イラクに対しても、国連安保理決議に従い、クウエートからの全面撤退を求める一連の外交的措置をとってまいりました。国際社会においても、米国とイラクの直接の外相会談や国連事務総長のイラク訪問など事態の平和的解決に向けてのあらゆる努力がぎりぎりまで行われたことは御承知のとおりでございます。
 しかるに、イラク政府は、終始安保理決議を無視し、一月十五日までの猶予期間を超えてなおクウエートの侵略と併合を続けてきました。我が国は、このようなイラクの暴挙を強く非難するとともに、本件危機を平和的に解決するための国際社会の努力が無に帰するに至ったことを深く遺憾とするものであります。
 隣国に対するイラクのあからさまな侵略と併合は、国際の平和と安全の維持に大きな責任を有する国際連合の権威に対する挑戦であり、これをこのまま見過ごすことは、我が国がその生存のためにぜひとも必要とする公正で安定した国際秩序の根幹を揺るがすものであります。また、これは、自由と民主主義を基礎とした対話と協調による新しい秩序づくりへの希望を打ち砕くものでもあります。我が国は、かかる視点に立って、安保理決議六百七十八に基づき、侵略を排除し、平和を回復するためのやむを得ざる最後の手段としてとられた今般の米国を中心とする関係諸国による武力の行使に対し、確固たる支持を表明するものであります。(拍手)
 今般の事態に際し、政府は、直ちに安全保障会議を開催し、緊急事態への対処方針を速やかに決定するとともに、その後の臨時閣議において、内閣に湾岸危機対策本部を設置し、同本部において早速、所要の対策を取りまとめ、政府が一体となって総合的かつ効果的な緊急対策を強力に推進することといたしました。
 我が国は、国際の平和と安全を回復するための関係諸国の行動に対し、国連安保理決議に従って、我が国憲法のもとでできる限りの支援を行う決意であり、既に決定した湾岸の平和回復活動に対する支援策を着実に推進するとともに、関係諸国などに対する新たな支援を行うこととしております。
 さらに、我が国は、関係国際機関とも協力して、避難民の救済のため可能な限りの援助を行うこととし、既に実施に移しつつあり、資金、物資面では、国連災害救済調整官事務所が国際社会に要請した被災民救助初動経費三千八百万ドルを速やかに拠出し、さらに毛布などの救援物資を周辺国政府の要請に応じて供与することとしております。
 また、特に、避難民の移送という人道的かつ非軍事的な分野においては、安全確保を前提として民間航空会社に要請を行うこととするとともに、ほかに方法がない場合には、必要に応じ、自衛隊輸送機の使用についてもその可能性を検討することといたしました。(拍手)
 我が国は、イラク政府が、国際社会の一致した意思を尊重し、直ちにすべての関連安保理決議を受諾するよう強く求めるものであります。我が国としては、湾岸地域における戦闘行為が早期に終結し、我が国が原油輸入の七割以上を依存している中東において、永続性のある平和と安定が一日も速やかに達成されることを強く望むものであります。(拍手)
 政府としては、湾岸や周辺地域に在留する邦人や周辺海域を航行する船舶の安全に万全を期すべく既に所要の措置をとってきておりますが、今般の情勢の展開により不測の事態が生ずることのないよう、邦人などの保護のため引き続き可能なあらゆる手段を尽くしてまいります。また、内外におけるハイジャックなどの緊急事態の発生があり得ることに備え、その防止のための必要な措置をとっているところであります。
 また、政府は、国際協調のもとで、日本経済への悪影響を最小限に抑止し、国民生活の安定に努力をしてまいります。幸い、過去二回の石油危機時に比べ、我が国経済の石油に対する依存度が大きく低下しており、また、我が国の百四十二日分の石油備蓄を国際的にも連携をとりながら機動的に活用することにより、当面、国内の石油需給、ひいては国民生活に大きな影響を与えることはないと判断しております。石油のほか国民生活に関係の深い物資の需給や価格についても、調査、監視に努めるとともに、的確な情報を迅速に提供してまいります。国民の皆さんにおかれましても、
より一層の省エネルギーへの努力や冷静な行動をお願いいたします。
 政府は、以上の政策が、我が国の国益にかない、かつ国際協調のもとに恒久の平和を希求する我が国憲法の理念にも合致するものであると確信し、皆さんの御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(湾岸危機対策について)に対
  する質疑
#14
○議長(櫻内義雄君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。土井たか子君。
    〔土井たか子君登壇〕
#15
○土井たか子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、中東湾岸における戦争状態について、一刻も早く終息させなければならないという立場に立って、総理に対し、我が国の認識と今後の対応策について緊急質問をいたします。(拍手)
 十七日にアメリカを中心とする多国籍軍がイラク全土を爆撃し、ついに戦闘が開始されました。そして、きょうはイスラエルへイラクのミサイルが撃ち込まれ、戦火が拡大され、一段と深刻な事態を迎えました。このまま手をこまねいていれば、中東は取り返しのつかない大混乱に陥り、世界は大きな不幸を招くことになるでしょう。こんなことが起きないために、私は、微力でございますが、いても立ってもおられず、イラクへ出かけてサダム・フセイン大統領に会って、クウエートからの撤退が平和的解決であることを強く繰り返し繰り返し話した直後だけに、何と悲しく無念なことでしょうか。(拍手)
 私は、フセイン大統領に過去の日本の悲惨な侵略戦争の反省と、広島、長崎の残酷な教訓から、平和憲法の大切さを懸命に心を込めて話しました。フセイン大統領は、二年前までのイラク・イラン戦争を語り、四十六年前の戦争に比べて、今後の戦争の核兵器やミサイルや化学兵器の悲惨さははかり知れないとわかっていたのにもかかわらず、なぜ撤兵ができなかったのか。男性は、戦場で命を落とすのは一度、しかし女性は、夫を失い、子供を失い、そのために幾たび悲しみと苦しみを味わうことかとフセイン大統領は語りました。その大統領がどうして撤兵の決断ができなかったのか、何ともやりきれません。戦争にしてはいけないということについては、はっきりそのように思っていると言い、平和への道を開きたいという気持ちを披瀝しているフセイン大統領は、撤退についてはするともしないとも答えず、アラブの大義を述べるイラクに対して武力行使以外にとるべき道はなかったのでしょうか。
 国連のデクエヤル事務総長は、記者団の質問に、何と言ったらいいのかと戸惑いながら、「私、各国そして多くの人々の努力にもかかわらず私たちは戦争に直面した。開戦から一時間半たったこの時点でも、何が起こっているのか、私はよく知らされていない。深い悲しみを表明するだけだ。戦争の始まりを残念に思う。」と答えておられます。デクエヤル事務総長と時を同じくしてバグダッドを訪問し、フセイン大統領にクウエートからの全面的撤退を直接要求した私の気持ちは、何としても戦争を食いとめなくてはならないという願いと祈りであっただけに、国連事務総長の言葉に万感迫る思いでございます。(拍手)
 私は、ブッシュ大統領が武力行使を決断するに至るまでの苦悩を想像しないわけではありませんが、それならば、なぜアメリカとイラクの直接対話がわずか一回しか持たれなかったのか、しかも、大統領が呼びかけた両国外相会議のチャンスを対話ではなく最後通告の場にしてしまったのか、残念でなりません。フセイン大統領の暴挙に対して経済制裁を初めとする非軍事的手段によって反省を求める、そうして一月十五日以後もぎりぎりまで、和平交渉のテーブルを求めてあらゆる可能性を探るという平和解決の道を真剣に追求できなかったことが悔やまれてなりません。(拍手)
 また、国連の決議において行われた多国籍軍の武力行使から一時間半たっても国連事務総長は何も知らされていないという軍事優先の事実を私たちはどう考えたらよいのでしょうか。
 申し上げるまでもありませんが、今日の中東湾岸地域の第一の原因は、イラクによるクウエート侵攻とその併合にあります。したがって、国際世論がイラクのクウエートからの無条件完全撤退を求め、それを実施させることは、ポスト冷戦における新しい国際秩序をつくる上で不可欠の条件でございます。しかし、そうであればこそ、武力によらない平和的な解決のために国際連帯を強めるための粘り強い努力が期待されたと信じます。しかし、十五日までの国連事務総長を初めとする多くの国、多くの人々の努力は生かされることがありませんでした。そして、戦争が始まってしまったのであります。何とも無念でなりません。
 期待したデクエヤル事務総長の十五日ぎりぎりの努力も効を奏さず、ついに最悪の状況になりました。事務総長や国連や多くの国の努力は、しかし、これで終わったのではありません。新しい最初のページが始まったのです。戦争のページを次から次へ繰られることをだれが望んでいるでしょうか。十五日から始まった新しい努力は、さらなる和平への努力であります。節目節目のあらゆる機会にイラクのクウエートからの撤退を呼びかけ、戦闘を終結させるよう、フセイン大統領に説得を続けることであります。緊急な努力は、戦闘を広げず、停戦を実施することであって、イラクに撤退のチャンスをつくることでなければなりません。
 海部総理のなさるべきことは、アメリカの武力行使に確固たる支持を表明することではなく、国連に戦闘不拡大と停戦への努力を呼びかけることではありませんか。(拍手)総理の和平へ向けてど
のような努力をなさる御用意があるのかを知りたいのであります。
 こうなった以上、国連は、国連決議がイラク軍のクウエートからの撤兵とクウエートの主権の回復にあることを再確認し、それ以上の戦争目標の拡大は絶対に避けるべきであります。そのことを基本に、停戦と和平交渉をあらゆるチャンネルで進めることが必要であります。
 私は、その立場に立って、この際総理に対してお尋ねいたします。
 その第一は、海部総理は、今回のアメリカを中心とする多国籍軍の武力行使に確固たる支持を表明されました。その支持は無条件で全面的なものかどうかという点をお尋ねしておかなくてはなりません。
 なぜなら、多国籍軍の軍事行動が今や国連決議を超えて、イラクを根幹から壊滅させることに戦争目標が拡大しているからであります。戦争は、ベトナムでもアフガニスタンでも、当初の目的から限りなくエスカレートするものであります。その意味から、平和憲法を持つ日本は、これ以上戦争が拡大しないよう湾岸戦争の即時停戦を呼びかけるとともに、国連安全保障理事会の緊急討議と国連総会の開催を働きかけるべきだと考えますが、いかがお考えか、御答弁をいただきたいと存じます。(拍手)
 次に、こうした事態に対応する日本の政治の基本姿勢についてお伺いいたします。
 政府は、既にアメリカに対して、多国籍軍への追加支援を行うことを約束いたしました。そして、そのための財源の捻出については、増税など国民の協力を求めると述べておられます。多国籍軍への財政支援は、国際紛争を解決する手段として武力の行使は永久に放棄するという憲法に基づく国家原則を根本から覆すものであり、いわんや、武器弾薬などの調達、輸送を含め特に制限しないと言うに至っては、憲法をないがしろにするものと言わざるを得ません。
 総理、この際国民に対して、多国籍軍に対する追加支出の金額、その内容、そして財源調達の方法を具体的にお示しいただきたいと存じます。いかがですか。
 第三にお尋ねしたいことは、避難民の救援のために自衛隊機の使用を検討しているという点についてであります。
 前国会で自衛隊の海外派兵に道を開く国連平和協力法が廃案になったのは、世論の力によるものであり、平和憲法に対する国民の熱い思いでございます。この国民世論を無視し、どさくさに紛れて自衛隊の海外派兵を強行することは絶対許されません。侵略戦争によって被害を受けたアジアの人々が日本の軍事力に脅威を持っていることを考えるならば、このような行動は、日本外交の基本であるアジアの諸国民との信頼関係を損ないこそすれ、本当の国際協調の道にはなり得ません。
 私は、自衛隊機の使用とその海外派兵にあくまでも反対し、避難民の救援や民生の安定については、各種国際機関の要請に基づき国連機関を通じて行うことが昨年の国会における国民の合意であったことを強調しておきたいと存じます。(拍手)
 第四には、湾岸戦争がもたらす国民生活への影響についてでございます。
 もし戦争が長期化し、油田の破壊などが現実の問題になったとき、石油の高騰と便乗値上げ等について十分な対策が必要であります。このような事態に的確に対応するために政府は勇断を持って当たり、石油の備蓄制度の適正運用を初め、関係業界などへの的確な指導と協力要請を行うべきことは当然のことであります。また、油田の破壊に伴う環境汚染が、人類はもとより、地球上のあらゆる生物の生存そのものにはかり知れない影響と被害を及ぼすことを懸念し、そのためにも、戦争の不拡大と即時停戦を強く求める次第でございます。
 最後に、私は、日本政府が和平への機会を積極的に求め、戦争の早期終結に向けて最大限の努力を払うことを重ねて望みたいと思います。
 中東と日本との関係を振り返りますと、日本は、米ソ両国を含む欧米諸国と違い、この地域で歴史的に植民地主義的、帝国主義的な行動をとったことはありません。また、最近のことに限ってみても、米ソ英仏などの諸国のように、武器供与などによってイラクが軍事国家になるについて手をかしてきたわけでもありません。さらに、パレスチナ問題についても、日本は、イスラエルの占領地撤退を求めた国連安保理決議二百四十二号、また、国連決議三百三十八号を支持した経緯もあるのであります。一方で、日本が第二次大戦後一貫して米国との友好を第一としてきたことも世界周知のことであります。
 このように見るとき、日本は、先進諸国の中で、今回の湾岸戦争に関して和平へのイニシアチブをとることのできる資格を持つほとんど唯一の国と申せるのであります。(拍手)
 政府は、これ以上不幸な戦争に手を汚すことなく、世界の人々が心から願う平和の追求に力を尽くすべきであります。そのことを強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 土井委員長にお答えをいたします。
 国連の決議というのは、イラクのクウエートに対する侵略と併合ということが、これは国際社会の総意に対する平和の破壊者である、だから、国連はイラクに対して、このことを厳しく反省をして、クウエートからの撤兵ということを再三求め続けてきたわけであります。イラクがクウエートから撤兵をしないということは、それは国連決議を守らないという態度表明になります。クウエートの占領されておるというこの事態は、どのよう
なことがあっても許されるべきことではございません。(拍手)
 私は、再三にわたって、国連決議を守り、イラクがクウエートから撤兵することが、この局面を打開して平和的な中東の恒久和平に対する話し合いに入ることのできる道だということを何度も強く申し上げましたし、イラクの副首相にも伝えてあるし、フセイン大統領にも私の親書を直接伝えるなどして努力をしましたし、また国連においては、アメリカの大統領の演説やフランスの大統領の提案や、さらに最後は、国連事務総長のあのぎりぎりの努力を通じて、最後に国連のアピールまで出されましたけれども、それに対してイラクがいささかの反省も示さず、五カ月以上にわたってクウエートの侵略、併合というこの事実に対して何の態度も示さなかった、撤兵をして、クウエートの正統政府の復帰を求める国際世論も認めなかったわけであります。
 肝心なことは、こちらもこうだがこちらもこうだ、どっちもどっちだという物言いではなくて、国際社会の総意に反して平和の破壊者だと名指しをされた人の行為が、イラクのクウエートに対する侵略がこの問題の根源にあるんだということを、私は、強く認めていかなければならないと思うのであります。(拍手)
 国連の決議というのは、今度の国連決議六百七十八号においても、あらゆる努力の後でのやむを得ない最後の行為としてとられる措置でありますから、私は、これに対して確固たる支持を表明したわけであります。(拍手)こういったあらゆる国の行った外交的努力というものをどうぞお認めを願わなければならないと思います。
 また、湾岸の平和回復活動に対しては、日本としては引き続きこれは協力をしていくべきだ、それは平和回復のための努力は大切でありますから、国際社会の責任ある一員として黙ってこれを見逃してしまうことは、新しい世界の秩序づくりにとって極めてよくない影響が起こるわけでありますから、私は、新しい世界の秩序というものは自由を守り、公正な、適正な平和が築かれることが大切だと確信しておりますから、原状に回復することがまず優先である、そのために日本としてはできる限りの協力をするのは国際社会における責任であると考えております。(拍手)現在、その金額、財源等については政府で財政当局とともに検討中でございます。
 また、自衛隊の問題についてお触れになりましたけれども、これは委員長もおっしゃったとおり、国際機関の要請を受けて避難民の救助、避難民の輸送、避難民対策を日本はやろうと決意をして、三千八百万ドルという最初の要求もすべて受けたわけでありますし、これは国連機関の要請を受けて行った拠出でございます。また、国際事務局もこの場合において飛行機の提供による輸送等も強く求めております。私は、民間航空にお願いをしてこれをすべきであるということを第一に考えてまいりましたし、また、きょうまでいろいろな状況を踏まえて行ってもらった経緯等もありましたけれども、極めて難しいいろいろな状況等を考えると、人道的な立場に立って避難民を輸送するということを、これは全く非軍事的な行為でありますから、人道的な行為として自衛隊の輸送機を使用することが可能かどうかの検討をしておるわけでありますから、これは海外派兵とは分けて考えたいという立場に立って、あくまで人道的な面で検討をしております。
 また、日本はきょうまでも、中東と日本との関係を顧みていろいろと努力もしてまいりました。また、私は、九月の国連でのブッシュ大統領の演説やミッテラン大統領の演説等の中にある中東和平の問題についても、日本も、国連決議二百四十二号、三百三十八号等、中東の恒久和平ということについての基本的な立場はきょうまでも明確にしてまいり、中東和平が大切だということも再三申し上げてきました。
 そのためにも、今、力でもって一国を抑えたというこの暴挙、この緊張状態の局面を変えて、冷静な話し合いのできるような雰囲気をつくることが今世界に求められておる最も緊要な、最も大切なことであると考えておりますので、私は改めてこの場から、今からでも遅くありませんから、イラクのフセイン大統領がこの国際世論にこたえて、我々の要求を聞き入れて、直ちにクウエートからの撤兵を決意し、宣言することを強く求めて、お答えとさせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(櫻内義雄君) 西岡武夫君。
    〔西岡武夫君登壇〕
#18
○西岡武夫君 私は、自由民主党を代表し、多国籍軍によるイラクに対する武力行使問題について質問いたします。
 昨十七日、国連を中心とする全世界を挙げての懸命の努力と平和を希求する諸国民の熱い願いもむなしく、ついに湾岸戦争の勃発という余りにも不幸な事態を迎えるに至りました。
 武力行使、そうしてこれによってとうとい人命が失われるという事態は、悲しい、極めて遺憾な出来事と言わなければなりません。しかしながら、一方において、今回の事態を招くに至った経緯を深く洞察し、このたびの湾岸戦争の本質を見失ってはならないと確信するものであります。
 多国籍軍による昨日来の行動は、国際社会がこれまで一致団結して求めてきた、イラクのあからさまな侵略と併合によって引き起こされたクウエートからの全面撤退と、クウエート正統政府の権威回復を実現するための行動であり、この点については米国のブッシュ大統領も攻撃直後の演説で、武力行使の目的がクウエートの解放であることを明らかにしております。
 総理は、既に昨日の内閣総理大臣談話と先ほどの演説を通じて、我が国としても国際社会の責任ある一員として、今回の多国籍軍の行動を強く支
持することを国民に訴えられましたが、改めて、総理が今回の事態の展開をいかに認識されておられるか、お伺いいたしたいと存じます。
 また、イラクによるイスラエル攻撃がなされ、事態が今大きく変化しつつあると考えますが、この点についても総理の御所見をお伺いをいたしたいと存じます。
 イラクのクウエート侵攻及び併合という暴挙は、東西対立の構図が大きく変化し、冷戦時代の発想を超えて世界の歴史が平和共存の新しい秩序を求めて動き始めた時期に行われ、世界の人々の希望を真っ正面から否定するものと言えるのであります。これを既成事実化することは、決して許されるものではなく、国際社会は、国連が採択した十二回にわたる安全保障理事会の決議に象徴されるとおり、イラクの不法な行為に一致団結して対応していくとの共通の認識を有しているのであります。
 真の意味での平和は、単に戦争がないという状態を意味するのではなく、国際法違反を容認しない公正で安定した平和を意味すると私は考えます。湾岸地域における平和の破壊は、あくまで昨年八月二日のイラクによるクウエート侵攻に端を発するものであり、今回の武力行使は、安全保障理事会決議六百七十八号に基づき、侵略を排し、真の意味での平和を回復するための最後の手段として行われたものとして十分に正当化されるものであると考えます。(拍手)
 イラクのクウエート侵攻から五カ月半、特にイラクに対し平和的解決のための最後の機会を与える国連安全保障理事会決議六百七十八号の採択以来四十八日の間、国際社会は一致団結してイラクのクウエートからの撤退を求め、外交的努力を重ねてきましたが、イラクはかかる国際社会の努力、国連安全保障理事会決議を一切無視し、その違法行為を改める姿勢を見せませんでした。今回の事態の責任が一切イラク側にあることは議論の余地なく、我が国としても多国籍軍の行動を強く支持、支援すべきものと考えますが、多国籍軍の行動に対する我が国の立場につき、総理の御所信を明らかにしていただきたいと存じます。
 我が国は、既に湾岸危機の発生に際し、国際社会の重要な一員として、国際社会の正義を守るという立場から経済制裁を厳格に実施するとともに、国際社会全体の運命を左右する重要性を持ち、我が国にとって重要な原油の供給地域である湾岸地域の平和と安全を回復するために払われてきた国際的な努力に対し、輸送、物資、医療等の面で協力を行ってきたところであります。また、今回の事態によって深刻な経済的困難に直面している周辺諸国に対しても、大規模な経済協力を実施しております。
 今回の多国籍軍による武力行使に関連し、国連安全保障理事会の決議六百七十八号は、すべての国家に対し、同決議を履行するためにとられた措置に対し適切な支援を与えることを要請する旨明記しているところであります。我が国は今回の事態に際し、我が国の国際的地位に応じた責任を果たすことを強く求められ、これまで以上の貢献が必要とされていると考えるのであります。総理は、既に昨日の談話と先ほどの演説の中で、今回の国際の平和と安全を回復するための関係諸国の行動に対し、我が国として、国連安全保障理事会決議に従ってできる限りの支援を行う決意を表明されておりますが、予想される難民への救援など、我が国が今後講ずべき支援につきまして、改めて具体的にその御決意をお伺いをいたしたいと存じます。
 さらに、先ほどの国連平和協力法は、残念ながらこれは廃案となりましたが、今後の我が国の国際的貢献のあり方として、資金の援助のみでなく、人の派遣を通じた協力が必要であるという認識が得られつつあることは、政府も官房長官談話の形で既に述べられているとおりであります。しかし、ただ血の通わない、文字に書いた人という貢献だけでは問題は全く解決いたしません。日本が国際的な孤立を回避し、国際社会において名誉ある存在を維持するため、これを実効性あるものにすることが不可欠であります。そのための具体的方途はどうあるべきかにつき、総理の率直な御意見をお伺いいたしたいと存じます。
 イラクのクウエートからの撤退は今からでも決して遅くありません。今回の戦闘による被害が最小限にとどまるよう、そうして、中東において永続性のある真の平和と安定が一日も早く達成されるよう、イラク政府が国際社会の一致した意思を尊重し、直ちにすべての関連する国連の安全保障理事会の決議を受諾することが肝要と考えますが、この点に関し、引き続きイラク側に対し働きかけていくべきであると考えます。総理のお考えをお伺いをいたしたいと存じます。
 政府に対しましては、以上申し述べましたとおり、我が国の積極的な貢献を求めるとともに、今般の情勢の展開により湾岸及び周辺国に在留する邦人に不測の事態が生ずることのないよう、在留邦人の安全に引き続き万全を期し、あらゆる手段を尽くすよう強く希望するものであります。
 また、国民生活の安定に不可欠の石油の安定供給の確保と日本経済への悪影響の問題も重要な問題であります。政府としては、万一湾岸戦争が長期化する場合に備え、万全の措置を講じておくべきであり、石油の安定供給確保に全力を傾けるべきであると考えます。また、物価、個人消費、設備投資等、景気の持続的拡大の維持のための配慮も肝要であり、財政金融政策の適切な機動的な運営によって日本経済への悪影響の抑止に努めるべきであります。これら国民生活に密着した諸問題について、総理の御所信をお伺いをいたしたいと存じます。
 以上、私は、湾岸戦争に関しみずからの所信を述べ、また総理の御所信を伺ってまいりました。しかし、今私の質問を終えようとするに当たり、い
ま一つぜひともお伺いしたい問題がございます。
 それは、この危機に当たり、これに対処すべき国内体制の整備、意識革命は果たしてでき上がっているのかどうかという問題であります。私は、今こそあらゆる法制を見直し、意識革命を遂げるべき時期に来ていると考えるのであります。(拍手)
 今、中東の砂漠で命をかけて戦っている多国籍軍の青年たちは、果たして石油や国家の威信といった国益だけのためにそうしているのでしょうか。私はそうは思いません。祖国の信ずる正義と国際秩序のためであると確信をいたします。このようなときに、日本は資金を送るだけで果たしてよいのでしょうか。これで日本は国際社会において信頼され、期待にこたえ得る国家だと言えるのでありましょうか。
 我が国は、「諸国民の公正と信義に信頼して、」国の安全と生存を図ろうとしているだけに、公正で安定した国際秩序をどの国よりも必要としているのであります。(拍手)このような秩序が破壊された場合には、我が国はこれを回復するための努力に身をもって参加する立場にあると考えます。成が国こそは、「自国のことのみに専念して他国を無視」する国であってはならないのであります。
 以上、私の所信を申し述べ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 西岡議員にお答えをいたします。
 今次湾岸危機の事態をどう認識するかというお尋ねでありますが、私は、議員が申されたとおり、イラクの政府に対して国連安保理諸決議の速やかな履行を強く要請するとともに、最後まで本件危機を平和的に解決すべきだという立場に立って努力を続けてまいりました。その間、いろいろな、さまざまな外交努力が続けられたにもかかわらず、五カ月以上にも及んで、イラク政府はきょうまで何の反省もない態度を示し続けてきました。ちょうど皆さん、米ソの力による対立、対決が終わりを告げて、新しい平和を世界じゅうが協力してつくり上げていきたいという、その模索の努力のまさに始まろうとしたときに、力によっての侵略、そして併合という行動でありますから、私はこういった状況は許されるものでは断じてないと受けとめ、イラクのこの問題に対する態度を厳しく非難をしたいと思っております。
 同時に、この局面を転回してそこに初めて中東における本当の恒久平和が築かれるわけでありますから、それに対して国際社会が行っている努力、すなわち、累次にわたる国連決議を実行しませんと、世界の平和と安定というものを守っていかなければならぬという大きな責任を持っておる国際連合の権威そのものにもかかわるわけであり、また、自由と民主主義の中で生き抜いていこうとしておる我が国を初め、多くの世界の平和愛好国家の存在そのものの前提にも大きな危惧を与える問題でありますから、これの解決に当たっては、私は、やむを得ず行わなければならない国連決議の今度の軍事力の行使というものに対して、支持を強く表明しておるところであります。
 ただ、この問題についても、私は世界において武力行使を絶対悪しておったのでは侵略者から平和を守ることはできないという、平和と国際秩序を守るためには万やむを得ず武力を行使しなければならない場合があるということを湾岸の緊急事態は明確に問題提起をしておる、(発言する者あり)それを国連の総意として決議がなされたんだこいうことを、あなたも厳しく知るべきであります。
 また、今後はこういった多くの国々の平和回復への努力について、日本は、西岡議員のここでの御議論のようなそういった考え方の中で、ともに協調をし、日本も応分の責任を果たしながら、平和回復への努力をでき得る限り続けていかなければならないと考え、昨日談話を発表し、本日ここで現状の御報告をし、決意を申し上げた次第であります。今からでも遅くないとおっしゃいましたが、私もその言葉をもう一遍繰り返して、イラク政府に対して、国際社会の一致した意見を尊重して、直ちに国連の安保理決議を受けてクウエートから撤兵するという局面転回への第一歩の決断をすべきであるということを、ここで強く訴える次第でございます。(拍手)石油対策については、御指摘のように、我が国は中東地域から全石油輸入量の七〇%を輸入しております。これは今後戦闘行為が長期化した場合には、国民生活や経済活動にも影響してくることが懸念されます。我が国は、現在は百四十二日分の石油備蓄を有しており、政府も、国際エネルギー機関を通じた国際協調のもとで備蓄義務量を引き下げ、機動的活用を図るなど、国民生活あるいは国民経済に対して悪影響を最小限のものにとどめていくように、御指摘のごとく遺漏なきような対応をしていきたいと考え、今朝も関係閣僚会議を行っていろいろ対応をした次第でございます。
 また、最後にお触れになりました問題について、私は、やはり日本国憲法の前文の世界の平和、各国の公正、信義に信頼して生存を決意しておるわけであります。そういった世界の情勢そのものが今月によって奪われておるというこの事実を見るときに、世界の国々ができる限りの協力をしながら、この事態が一日も早く平和回復が実現するようにでき得る限りの努力をすべきであるという御指摘を、私も全く同感でありますということを申し上げてお答えにかえさせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(櫻内義雄君) 石田幸四郎君。
    〔石田幸四郎君登壇〕
#21
○石田幸四郎君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました海部総理の湾岸危機対応についての演説に対し、私の見解を表明するとともに、総理に緊急に若干の質問を行うものであります。
 イラクに対する多国籍軍の武力行動によって昨日戦闘が開始されたことは、まことに残念であると言わざるを得ません。また本日、イラク・イスラエルの間でも戦闘が開始され、戦火が拡大されつつあることが報道をされております。
 平和的解決という全世界の強い願望にもかかわらず、イラクは、十五日に提案されたデクエヤル国連事務総長の和平提案をも無視し、武力衝突を招来させたことは、まことに悲しむべきことであり、遺憾のきわみであります。
 我々は、戦争を欲するものではありません。また、世界のいずれの国々も、だれ人も、武力による解決を望むものはありません。戦闘の拡大、長期化は多大な犠牲と被害をもたらすことは必至であり、私は、この戦闘が早期に終結され、速やかに和平交渉が行われ、平和的な解決が図られることを強く要求するものであります。
 総理は、しかるべき早い時点において、イラク政府に安保理の決議を受諾するよう要求し、あらゆる平和的外交努力を行うとともに、関係諸国並びに国連に対し和平実現を働きかけるべきであると思います。総理の見解を承りたいと思います。
 総理は、戦闘行動の展開、その終結の見通しについてどう見ているのか、また、イラクのクウエートからの撤退もしくはその表明を条件に停戦を積極的に呼びかけるべきだと思うのでありますが、その意思がありや否や、お伺いをするものであります。
 今日、戦闘という事態に至ったのは、イラク政府がクウエートへの武力侵攻を行い、国連での再三にわたる決議を全く受け入れようとせず、さらに国連事務総長の調停、説得などにも応じなかったことによるものであることは明らかであります。
 私は、米軍の行動が余りにも性急に過ぎ、平和的解決の余地も残されていたのではないかとも思うのであります。しかしながら、国際世論や国連決議等に全く耳をかさないイラク政府のかたくなな姿勢や、全く反省を示さない姿勢から、多国籍軍の今回の武力行使を、平和を願う心情において、極めて残念であり無念であるというそういう心情において、全面的に支持することはできないとしても、国際社会の現状において、国際的な公正と平和の回復のためにやむを得ないものと考えるものであります。(拍手)
 しかし、同時に、武力の行使や制圧によって中東危機の本質的な問題の解決を図ることは困難であることを十分に認識する必要があります。したがって、速やかに対話と交渉による中東の包括的な平和への道を開かなければならないと思うのであります。
 政府は、今回の多国籍軍の行動に対しいち早く全面的な支持を表明し、でき得る限りの支援を行うことを明らかにいたしましたが、支援を行うに当たっては、あくまでも平和憲法や従来の我が国の平和原則を逸脱するようなことがあってはなりません。
 石油資源の大部分を中東諸国に依存し、また、経済大国として国際的な役割を求められている我が国が、今回の事態に対してどのような対応を示すか、世界の各国が重大な関心を持っていることは言うまでもありません。私は、我が国が一国だけの平和や繁栄、安泰を図るだけでよしとするような姿勢が許される国際的世論、国際環境ではないと思うのであります。我が国の平和親、国家のあり方、国際感覚が問われていると言っても過言ではありません。しかも、平和国家としての対応、協力を行う必要があることを十分に認識すべきであります。
 我が党は、今後、事態の推移によっては、ある程度の追加支援を、財政的支援を検討せざるを得ないと考えておりますが、無原則な支援を行うべきでないことを強く指摘いたしたいのであります。停戦は早く、援助は長くを自覚しなければならないでありましょう。しかし、特に武器弾薬などへの資金供与には強く反対をするものであります。
 もし追加支援を行うとしても、十分に国会の議論を経て、国民の理解を前提にすることは当然であります。また、支出に当たっては、多国籍軍にストレートに提供すべきではなく、従来どおりGCCへの拠出とし、使途につきましても難民、医療などの人道面に限るべきであると思うのでありますが、総理の見解を伺うものであります。
 財政支援を行うとしても、その財源は極めて厳しいものがありますが、総理はどの程度の規模の追加支援が必要であると考えているのか。
 財源対策としては、赤字国債を考えておられるのか、あるいは伝えられるような石油関係諸税の増税を考えているのか、どのような方途であるかを明らかにしていただきたいと思うのであります。
 さらに、第二次補正予算の提出を考えているのかもあわせて伺っておきたいと存じます。
 私は、今回のこの事態に対して我が国の対応に当たっては、さきの中東国会における議論を十分に踏まえるべきであると思うのであります。この論議の結論は、自衛隊は海外に派遣しないという明確なものであったことは総理も十分御存じであったはずであります。先ほどの総理の演説を伺っていますと、民間航空会社に要請を行うが、他に方法がない場合には自衛隊機の使用について検討するとしていますけれども、この問題は今も申し上げたように、前国会で、自衛隊は派遣すべきでないという議論の結果から国連平和協力法案
が廃案になったその経緯を見ても、自衛隊機の使用など自衛隊の海外派遣につながるそのような措置は一切行うべきではありません。(拍手)この点は、前国会の議論を踏まえて、総理は国民の前に明らかにする責任があると思います。また、総理はどのような人的協力を考えておられるのかもあわせて伺いたいのであります。
 今回の事態によって、石油価格の急騰、需給関係への不安などによって我が国並びに世界経済への影響が強く懸念されるのであります。総理は、国民生活への影響をどう考えておられるのか、特に便乗値上ぼ、買い占め、売り惜しみといりたような行為の防止対策を早急に立てるべきでありますが、見解を承っておきたいと思います。
 また、湾岸諸国、発展途上国への経済的な影響は深刻なものがあると予測をされるのでありますが、これに対して我が国としてでき得る限りの協力を行うべきであると思いますが、あわせて総理の見解をお伺いをいたします。
 公明党は、昨日、湾岸危機緊急対策本部を設置いたしました。我が党といたしましても、戦闘の早期終結、湾岸危機の早期解決のために全力を挙げて努力いたしたいと決意をいたしております。
 湾岸危機対策に当たっては、十分に国会の論議を踏まえ、国民の理解と支持を前提に実施すべきことを強く訴えて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 石田委員長にお答えをいたします。
 御質問の冒頭は、イラクのクウエートからの撤退を条件に停戦を呼びかけるべきである、この戦争が早期に終結され、平和的な解決が図られることを強く要求するとおっしゃいましたが、私はそのとおりだと思いますし、再三申し上げておりますように、今この場からでも遅くはないから、イラクの大統領、決断をして、局面転回のかぎを今握っておるわけでありますから、委員長も言われたとおり、クウエートから撤退をして、そして、その後にあらゆる可能性が展開してくるように努力すべきであるということは、私はそのとおりと考えます。
 九月の国連総会でのブッシュ大統領の演説もミッテラン大統領の提案も、また、ぎりぎりまで続けられた国連事務総長のアピールをつくるその内容についても、国際的公正と平和の回復のために最後の努力をしようというあらわれがあり、それに応じて対話と交渉による中東の和平を確固たるものにしていくべきものであると、私も同じような考え方を持っております。
 今回のこの多国籍軍め行動というものは、これはやはり、国際社会全体の総意を受けた者と平和の破壊者と国連から指摘をされたイラクとの問題でありますから、どちらもどちらだとかいう考え方をとったんではなく、原理原則に戻って、公正な平和的な解決を確立するために国連決議の履行というものが大前提になるのだということを私はここで、委員長と考えを同じくするものであるということを申し上げておきたいと思います。
 また、石油資源の問題につきましては、御指摘のようにいろいろな懸念が表明されております。過去二回の石油危機のときと比べると備蓄の量もふえておるから大きな影響はないのではないかと言われてもおりますが、しかし、我が国は、国際機関と国際的に協力をして、石油備蓄の問題については国際的な協議の中で決められた我が国の立場を十分に守って、国民生活や国民経済に大きな影響が及んでいかないように国際的な政策協調を実行しておるところであります。
 また、追加支援の問題について委員長は、ある程度の追加支援を検討せざるを得ないことはわかるけれども、無原則な支援を行うべきではない、そして、支出に当たってはいろいろ方途等についても十分考えるようにということでございました。ただいまどの程度のことができるのか、財政当局も加えて政府でその手段、方法等について検討を続けておりますが、委員長のただいまの御発言等も念頭に置いて対処してま小りたいと考えております。
 また、今回の事態によって石油の価格の急騰、需給関係への不安などについては万全の措置をとれということであります。政府もそのことは特に考慮いたしておりまして、既に昨日、本日と続いて担当官会議や関係閣僚会議を招集をして、特に便乗値上げとかいろいろな行為の防止対策を早急に立て、監視をし、国民生活に対応するとともに、国民の皆様にもこの場をおかりして、皆でやはりこの問題のために、例えば冷暖房の節約の問題について一層の御協力を願い、省エネルギー問題についても提起をしたところでございますが、今後とも皆様の御理解と御協力を得て、大きな混乱が起きないように万全の対策をしていきたいと考えております。
 なお、今回の避難民の輸送の問題については、国際機関の求めに応じて避難民のためのとりあえずの拠出金を国際機関に提出をし、その際には、避難民の保護や移送の問題についても国際機関の要請もございます。私は、非軍事的な人道的な立場に立って、どのような対応が可能であるか目下政府部内で検討を重ねておるところでありますが、憲法の制約に従い、前国会の論議を思い起こしつつ、議論、検討をしていく決意でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(櫻内義雄君) 不破哲三君。
    〔不破哲三君登壇〕
#24
○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、湾岸戦争の問題で海部首相に質問するものであります。
 昨年来の湾岸危機の根源がイラクのクウエート侵略にあることは言うまでもありません。日本共
産党は、平和と民族独立を願う世界のすべての人々とともに、イラクがその侵略主義を放棄し、クウエートから撤退することを強く要求するものであります。
 今日、重大なことは、このイラク問題を平和的に解決しようという努力がアメリカを中心とした多国籍軍の武力行使によって断ち切られ、湾岸戦争がついに開始されるに至ったことであります。日本でも世界でも、真剣な憂慮の声が上げられていますが、海部首相は全く反対に、アメリカなどの武力行使を全面的に支持するという態度を直ちに表明しました。一体首相は、湾岸戦争の開始というこの事態に何の憂慮も感じないのか、まず、その真意をただしたいのであります。
 この悲劇的な事態をもたらした直接の原因としては、国連事務総長の道理ある説得にも耳を傾けなかったフセイン政権のかたくなな態度とともに、みずからのシナリオに沿って戦争開始を急いだアメリカ政府にも重大な責任があることを指摘しないわけにいきません。
 設定された一月十五日の期限に先立って、戦争回避を目指す多くの努力が行われました。中でも、解決の一つの可能な展望を示すものとして重要な意味を持ったのは、安保理事会に提起されたフランス政府の提案、イラクのクウエート撤退を平和的に実現した後に、パレスチナ問題の解決に取り組むという提案でした。これは、昨年十二月の国連決議に照らしても道理のあるもので、安保理ではソ連など多くの賛成の声が上げられ、イラクの国連大使も歓迎の態度を表明しました。
 ところが、アメリカ政府は、これはイラクの立場に通じるものだとして拒否し、平和解決へのこの可能性を葬り去ってしまいました。これこそ、アメリカがその戦争計画「砂漠のあらし」作戦のシナリオどおりの発動を急いだことの端的なあらわれではありませんか。そうしたやり方で強引に戦争に持ち込んだ以上、仮にアメリカがこの戦争で軍事的成功をおさめたとしても、開戦の責任を免れることはできないし、パレスチナ問題を手つかずで放置したことが今後の国際政治の上に重い問題と矛盾を残したことは、だれも否定するわけにいかないめであります。(拍手)
 日本共産党は、この提案が討議されていたさなかに、国連安保理を構成する十五カ国に電報を送り、それを実らせる努力を要請しました。日本政府は、この重要な提案にどういう態度をとったのか、また、これを拒否したアメリカ政府の態度をどう評価しているのか、首相の明確な答弁を伺いたいのであります。
 さらに続けて言えば、国連安保理事会でこうした真剣な討議が続けられていたときに、日本政府が何をしていたかを伺いたいのであります。
 首相はこれまで、平和的解決への努力という言葉を何度も繰り返してきました。しかし、実際の行動は、どんな手段でアメリカの戦争行動を支援するか、開戦後の戦争協力の問題に専ら検討が終始したのではありませんか。特に、一月十四日、ニューヨークの安保理でフランス提案が提起されたまさにその同じ日に、政府がワシントンでのブッシュ・中山会談で、米国が武力行使に踏み切った場合には、これを全面的に支持し、多国籍軍への追加支援を行う旨の約束を行ったことは極めて重大であります。これは平和的解決に努力する者の態度ではなく、開戦を待望し、それを後押ししようとする者の態度だと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 私がもう一つ指摘したいのは、今回の米国の武力行使が世界情勢の全体に及ぼす影響であります。
 もちろん戦争の成り行きは単純な予想を許しません。しかし、戦争が長期化したら、多くの人命が日々に犠牲にされ、世界の経済と政治が大きな被害を受けることは確実であります。仮にアメリカが電撃的な制圧に成功したとしても、力の政策での解決に踏み出した以上、それが中東での新たな軍事体制の構築という世界平和に逆行する危険な計画と結びつくことは明白であります。現にアメリカ政府は、戦後も米軍を中東に常駐させて、これを戦後の中東新秩序の柱にする、こういった構想を既にいろいろな機会に表明しています。これはポスト冷戦どころか、米国を世界の憲兵とする新たな冷戦体制に世界を直面させるものではありませんか。いずれにしても、武力行使が生み出した事態は危険であります。首相はこうした展望をどう考えるのか、伺いたいのであります。
 日本の国民の平和の願い、世界の諸国民の願いを真剣に考えるなら、米国の行動への無条件の支援を第一義の国策とするこれまでの態度ときっぱり手を切り、アメリカなどの武力行使によって開始された危険な戦争に終止符を打ち、平和的解決の方向への局面転換を図る道を探求する、ここにあらゆる自主的な努力を尽くすべきであります。それとも政府は、多国籍軍の軍事的勝利にすべてをかけるというアメリカ追従の態度をあくまでもとり続けるつもりなのか、首相の基本姿勢を改めてただすものであります。
 しかし、首相が先ほど説明した湾岸戦争対策は、残念ながら米軍の武力行動への全面的支持をほとんど唯一の内容とするものでした。
 その第一は、多国籍軍の戦争費用を大幅に分担するということです。しかし、首相、多国籍軍とは、今日の段階では、湾岸で現に武力を行使している軍隊であります。その戦費を分担するということは、武力行使に財政面から参加することにほかなりません。これは、国際紛争の解決のために武力の行使を禁止している憲法の平和条項を真っ向から踏みにじることではありませんか。しかも政府は、昨年の臨時国会で公約した武器弾薬の購入には使わないという制限さえ投げ捨てようとしています。武力を行使する主体がアメリカなどであって、日本ではないからなどという言い逃
れば許されないのであります。憲法問題も含め、首相の明確な見解を求めるものであります。
 第二に重大なことは、政府が、難民輸送を理由として、中束の戦争地域に自衛隊機を派遣することまで検討課題としていることであります。たとえどのような口実を設けようと、熱い戦争が行われている戦争地域に自衛隊の一部が派遣されるならば、それが一つの既成事実となって、自衛隊の海外派兵への重大な突破口となることは目に見えています。
 政府は、昨年の国会で、自衛隊の海外派兵を内容とした国連平和協力法案が国民の圧倒的な反対の声を前に廃案の運命をたどったことをお忘れになったのでしょうか。湾岸戦争が開始され、世界が新たな危機的事態を迎えたからといって、そのどさくさに自衛隊の海外派兵に向かってなし崩しの風穴をあけるようなやり方は絶対に許されません。首相は、道義上、法規上のいかなる根拠をもってこの暴挙に踏み出そうというのですか。
 今、日本の国内では、そして世界では、ほかならぬイラクの侵略に怒りを燃やしている人々の間で、一刻も早くその公正な解決を求める広範な人々の間で、湾岸戦争の開始に抗議し、戦争の停止を求める平和の声が大きく広がっています。
 日本共産党は、イラクの侵略主義を糾弾しつつ、湾岸地域と世界の平和を求める多くの人々とともに、平和の願いに背くアメリカの戦争行動とその拡大を批判し、自民党政府が憲法違反の戦争協力計画を中止することを強く要求するものであります。そして、この要求の実現の沈めに、国会の内外で全力を尽くす決意を表明して、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 不破委員長にお答えを申し上げます。
 不破委員長の御質問の第一は、首相は湾岸戦争の開始というこの事態に何の憂慮も感じないのかとおっしゃいましたが、私は極めて大きな憂慮を感じております。深く憂慮を感じておるからこそ、この問題の平和解決にいろいろな努力を続けてきたわけであります。
 また、フセイン政権のかたくなな態度とともに、戦争開始を急いだアメリカ政府にも責任がある、あちらも悪いがこちらも悪いと、こういう御発言でありますけれども、そもそも湾岸の危機の原因をつくったのは、これはイラクであるというのは世界のすべてが認めるところでありますし、だからこそ国連の安保理事会も、国連が始まって以来四十五年、初めて米ソもともに参加する安全保障理事会で、平和の破壊者がここにいるという指摘をして、原則に従った決定をしたわけでありますから、私は、どっちもどっちという議論ではなくて、国際社会の原理原則に従わなかったイラクのかたくなな態度をこそ今糾弾しなければならないと思っておるわけであります。
 したがって、この問題が一月十五日という期限に従って解決されるべきことを心から強く願ったのでありますが、残念ながら、イラク側に国際社会の総意を聞き入れる決断がなかったということが極めて遺憾なことであると私は思います。
 そうして、今お話を聞いておりますと、パレスチナ問題を放棄したことがいけないとおっしゃいますが、私は、例えば九月のニューヨークの国連におけるブッシュ大統領の演説も、国連決議に従ってイラクがクウエートから撤兵をすれば、そこから中東の和平の問題やパレスチナ問題を含むアラブ、イラクの話し合いやいろいろな話し合いの場面、機会が提供されるだろうという、パレスチナ問題を次の展開の中に視点に置いた提案もなされ、ミッテラン大統領の提案もそうであり、また、十五日ぎりぎりまで行われた国連の事務総長の最後のアピール案にもそのことはきちっと書いてあるわけでありますから、このことを全部つぶそうという発想は、きょうまであらゆる方面で行われた努力の中にもきちっと視点に入っておったということでもありますし、また、日本としてもそれに対しては同感であり、私からも直接イラクのラマダン副首相に会見のとき話し、親書を大統領に伝え、またその後もフセイン大統領には、今からでも遅くないからきちっと決断をして、原理原則に従った公正な平和解決のために局面転回のための決断をすべきだということを言い続けてきたわけでありますから、私は今回も、今からでも遅くありませんから、この段階においても改めて戦闘の早期終結を強く訴えたいわけであります。
 また、国民の平和の願い、世界の諸国民の願いを真剣に考えるなれば、これはやはりイラクが侵略、併合を定着させてしまうというこの事実を放置しておくことが最も危険なことではないでしょうか。力によって現在の湾岸危機を片づけることは、力による新しい世界の体制をつくるというのではなくて、この状況を打ち砕いていくことが国際社会に、何か暗い弱肉強食につながるような現状を世界のすべての人々の道理と国際社会の協調的行動によって解決したということの方が明るい希望になるのではないでしょうか。長い目盛りで世界の公正な平和を考えていきたいと私は思っております。
 最後に、政府は、国連機関の要請を受けて、難民問題に対しても真剣に取り組んでいこうといたしております。極めて人道的な非軍事面の協力を何ができるだろうか、今いろいろな立場に立って政府で検討をいたしておるところでありますが、いずれにしても、イラクの侵略主義を糾弾しつつ、公正な原則に従った平和が回復するようにあらゆる機会を通じて国連あるいはイラクに対しても働きかけるとともに、この場をかりてももう一回改めて、今でも遅くありませんからイラクの大統領の決断による平和的解決への第一歩が踏み出されることを強く主張いたしまして、お答えにかえさせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(櫻内義雄君) 大内啓伍君。
    〔大内啓伍君登壇〕
#27
○大内啓伍君 私は、民社党を代表して、ただいまの海部総理の演説に対し、私の意見を申し述べつつ若干質問をいたします。
 世界じゅうの人々が平和への願いを込めて注視する中で、イラク軍が国際世論や国連決議を無視し続けた結果、戦闘開始という最悪の事態を迎えたことは極めて遺憾なことでございます。私は、昨日ブッシュ大統領が述べているように、この戦争が長期的にならず最少の犠牲者で済むよう強く念願し、そのための日本の積極的な外交努力をまず強く求めるものであります。
 クウエートという主権国家を、しかも罪のない国民に対して残虐の限りを尽くして武力で制圧し、これを併合するという行為は、世界平和と人権への重大な挑戦であり、いかなる理由をもってしてもこれを正当化することはできません。(拍手)これまで世界各国は、国連を中心に、アメリカのブッシュ大統領が平和への回り道と表現したごとく、十二本にわたる国連決議を採択し、これを軸として、あらゆる外交ルートを通じてイラクのクウエートからの撤退と事態の平和的解決のために努力をし続けてまいりました。撤退期限直前になって行われた米国とイラクの外相会談も、またデクエヤル国連事務総長の調停も、その努力のあかしであると言えましょう。半年間にもわたる各国の粘り強い和平努力、国連の諸決議はいずれも歴史上空前のことであり、平和的解決を望む世界世論がいかに強かったかを示すところであります。
 しかし、サダム・フセイン大統領はこれらの努力をことごとく踏みにじり、したがって今日の事態を迎えたわけでありますが、その責任は挙げてイラクにあると考えます。(拍手)
 我々は今、イラクの侵略という事態に直面して、口で平和を唱えているだけでは世界の平和と安全を維持していくことはできないという国際政治の冷厳な事実を改めて思い知らされたのであります。(拍手)その意味で今回の措置は、国際的平和維持の唯一の機構である国連の権威を守り、世界の平和を回復する意味で、必要やむを得ざる措置であったと考えます。もし、イラクの侵略をこれ以上放置し、その既成事実化を認めるならば、国連は平和の破壊行為に無力であることを証明するところとなり、国連を中心とする新たな世界の平和秩序の構築は到底望むべくもありません。
 私はこの見地に立って、今後の資金協力についても、また人的支援についても、日本があとう限りの積極的な努力を行うことが、国際国家としての姿勢を世界に示し、国際社会の一員として信頼をから得る道であると確信いたします。(拍手)総理の御見解を求めます。
 以下、政府の具体的施策について、総理の明確なる御答弁を求めます。
 その第一は、財政支援の問題についてであります。
 恐らく国連はもとより、アメリカを初めとする関係各国は、日本に対し新たな財政支出を強く求めてくることは必至でありましょう。日本点前述の立場に立って、これに責任ある対応をしなければならないと存じます。政府は、今後の資金協力に当たっては、平和主義の憲法の精神を踏まえ、明確な原則を持って当たらなければならないと思いますが、総理の所見はいかがでございましょうか。言われるような安易な増税や赤字国債の発行は、これを避けるべきだと思いますが、今後の財源措置について総理のお考えをあわせて伺いたいのであります。
 第二に、難民問題への貢献であります。
 既に戦闘前の段階で、八十万人を超す難民がイラク、クウエートから避難したと伝えられておりますが、今後も発生するであろう避難民の救出のために、邦人の帰国のためとあわせて民間のチャーター機を派遣するなど、最大限の努力を行うべきであります。また、場合によっては自衛隊機の使用についても検討すべきであると思います。それはあくまでも人道的見地からの緊急措置であり、憲法の精神に反するものでは断じてありません。(拍手)これまでの経験からいいまして、内外の民間機のチャーターが極めて困難な状況の中で、国民が多額の税金を払い、現に保持している自衛隊機の使用を人道上の目的においてすらも否定することは、難民救済と言いながら、それは言うだけで実行に移されず、結果的に国民と国際社会を欺くことになることに公党は責任を感じなければならないと存じます。(拍手)もし、そうした責任を果たすために国内法に不備があるというのであれば、それを直ちに直すことが立法府の使命ではありますまいか。(拍手)総理の御所見をお伺いいたします。
 第三に、政府が既に公約していながら今まで十分実現していない医療チームの派遣についてであります。
 国際公約は絶対に守らなければなりません。民間にも一層の協力を求め、医療チームの派遣体制を早急に整備すべきであります。同時に、なお必要な場合には、人道的見地から、その道で熟達している防衛医官の派遣を検討すべきでありますが、総理にその意思があるかどうかお伺いをしたい。(拍手)
 最後に、我が国内の経済的な混乱を避けるための諸施策をこの際機動的に発動していくことが必要であります。既にとられつつある民間石油会社に対する備蓄義務の緩和は当然の措置でありますが、今後さらに緊急事態が生じた場合、国家備蓄を放出し、エネルギーの安定確保に万全を期すべきであると考えます。同時に、便乗値上げの監視など、物価安定に全力を尽くし、インフレを生じさせないようにすべきであると考えますが、これ
らの措置について政府の見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 国際社会の道義を貫き、クウエートの主権を回復するために今も戦っている多くの若者たちに思いをいたすとき、まさに我が国自身もまた血のにじむような努力をしなければならないと存じます。(拍手)私たちが以上の措置を緊急に講ずるよう要請するゆえんは、イラクを侵略国家として国際社会から追放することではなく、イラクが一刻も早くみずからの誤りを正し、国際社会の中で平和的で協力的な一員になることをこいねがう立場からのものであることをここに明らかにし、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#28
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 大内委員長にお答えを申し上げます。
 ただいま極めて率直に御意見を交えて御質問がございました。
 私は、まず最初に述べられたこと、今回の戦争というものが長期的にならずに最少の犠牲者で済むように強く望み、そのための積極的な外交努力をというお話でございますが、私も全く同感でございます。昨日も、この戦闘は不幸にして始まっても、早期にこれが終結するように、そして、最も早くそれが実現していくようにしなければならぬというのは当然のことでもあり、そのような努力を機会をとらえて政府も重ねてまいりたいと思います。
 次は、国連の権威を守り、世界の平和を回復する意味で今回の行動は必要であるということは、先ほど来申し上げておりますように、国際社会の決議と総意によって公正な平和が世界に確保されなければならぬ、そのためには、今回の問題の解決には、侵略、併合ということを行ったイラクのクウエートに対する行為を反省して撤回することがまず第一でございますから、そのような平和回復活動が行われることに対して、日本もでき得る限りの積極的な協力を行っていくことが国際国家の責任の姿である、こう考えておりますから、私は、その方針に従って今後とも対処していく考えでございます。
 第一にお尋ねになった経済支援の問題でありますが、これは現在、政府部内において、財政当局も加え、どの額でどの程度のことが準備できるのか鋭意検討しておるさなかでございますから、これは昨日の党首会談でも申し上げましたように、具体的な案がまとまりますれば国会にもお諮りをし、あるいは御協力を願わなければならぬ場面が出てくるかと思います。各党各会派の皆さんの御理解をお願いしたいわけであります。また、これは、憲法の精神を踏まえて行っていくことは御指摘のとおりでございます。政府もそう心得ております。
 また、難民問題への貢献につきましても、国際機関から難民救出のための協力を求められ、資金面の第一回の国際アピールは日本がすべて引き受けたことは既に申し上げたとおりでございますが、さらに、この移送問題についても、航空便の移送を国際事務局が求めております。私は、あらゆる場合を想定して、民間のチャーター機を派遣するなど最大の努力を行い、場合によっては、自衛隊機の使用についても検討すべきであると考えております。これはあくまで人道的見地からの措置であり、非軍事的な措置であることは、御指摘のように間違いないものでありますから、私は、こういったことについての皆様方の御理解も重ねてお願いをしたい次第でございます。
 また、医療チームの問題については、現在、対策本部で準備を進めておるところでございます。
 最後にお尋ねになった、我が国の経済的な混乱を避けるための施策を機動的に発動していけ、特に石油についての備蓄を放出すること、エネルギーの安定確保に万全を期すこと、便乗値上げの監視を行うこと、物価安定に全力を尽くせという御指摘については、これは昨日来、本日も続いて担当官会議や関係閣僚会議を開き、御指摘の諸問題を十分踏まえながら、備蓄の問題については、当面世界の国々との協調体制の中で日本に割り当てられた責務を忠実に実行するということを申し上げておりますし、また、これらの問題に関連して、石油以外の物の便乗値上げの監視やあるいは物価安定には政府を挙げて努力をしていきたいと決意をし、その行動を起こしておるところでございます。(拍手)
#29
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#30
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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