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#1
第120回国会 本会議 第23号
平成三年四月十一日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十四号
  平成三年四月十一日
    正午開議
 第一 日本開発銀行法等の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第二 国民金融公庫法及び沖縄振興開発金融公
    庫法の一部を改正する法律案(内閣提出
    )
 第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの
    加盟に伴う措置に関する法律の一部を改
    正する法律案(内閣提出)
 第四 外国為替及び外国貿易管理法の一部を改
    正する法律案(内閣提出)
 第五 生産緑地法の一部を改正する法律案(内
    閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 平成三年度一般会計予算外二件両院協議会協議
  委員の選挙
 平成三年度一般会計予算外二件両院制議会協議
  委員議長の報告
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改
  正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 日程第一 日本開発銀行法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第二 国民金融公庫法及び沖縄振興開発金
  融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出
  )
 日程第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行
  への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改
  正する法律案(内閣提出)
 日程第四 外国為替及び外国貿易管理法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第五 生産緑地法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
    午後零時十二分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(櫻内義雄君) 本日、参議院から、平成三年度一般会計予算、平成三年度特別会計予算、平成三年度政府関係機関予算はいずれも否決した旨の通知を受領するとともに、返付を受けました。よって、国会法第八十五条第一項により、本院は、平成三年度一般会計予算外二案について両院協議会を求めなければなりません。
     ――――◇―――――
 平成三年度一般会計予算外二件両院協議会協
  議委員の選挙
#4
○議長(櫻内義雄君) つきましては、これより両院協議会協議委員の選挙を行います。
#5
○北村直人君 両院協議会協議委員の選挙は、その手続を省略して、議長において直ちに指名されることを望みます。
#6
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、協議委員は議長において指名するに決しました。直ちに指名いたします。平成三年度一般会計予算外二件両院協議会協議
 委員
      渡部 恒三君    増岡 博之君
      近藤 鉄雄君    大石 千八君
      鹿野 道彦君    二階 俊博君
      谷川 和穗君    中島源太郎君
      与謝野 馨君    中村正三郎君
 ただいま指名いたしました協議委員諸君は、直ちに議長応接室に御参集の上、議長、副議長各一名を互選されることを望みます。
     ――――◇―――――
#8
○議長(櫻内義雄君) この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十二分開議
#9
○議長(櫻内義雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 平成三年度一般会計予算外二件両院協議会協
  議委員議長の報告
#10
○議長(櫻内義雄君) 平成三年度一般会計予算外二件両院協議会協議委員議長から報告書が提出されました。よって、この際、協議委員議長の報告を求めます。渡部恒三君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔渡部恒三君登壇〕
#11
○渡部恒三君 平成三年度一般会計予算外二件両院協議会の経過及び結果を御報告いたします。
 平成三年度一般会計予算、平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算は、御承知のように去る三月十四日衆議院において原案のとおり可決され、本十一日参議院において否決されましたため、両院協議会を開くこととなったものであります。
 両院協議会協議委員は、先ほどの本会議において議長より指名されました後、直ちに協議委員議長、副議長の互選を行いました。その結果、議長には私が、副議長には増岡博之君が当選いたしました。
 引き続き、両院協議室に両院の協議委員が参集いたしまして、くじにより、衆議院側において議長を務めることになりました。
 両院協議会においては、平成三年度一般会計予算外二案について、まず最初に、衆議院側から可決した趣旨について説明を聴取し、続いて、参議院側から否決した趣旨について説明を聴取した後、防衛関係費、社会保障関係費、公共事業関係費、税収見積もり、国民負担率、消費税及び財政再建等について各協議委員から意見が述べられ、協議が行われましたが、意見の一致を見るに至らず、両院協議会としては、成案を得るに至らなかったものとして、これを各議院にそれぞれ報告することとし、両院協議会は終了いたしました。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
#12
○議長(櫻内義雄君) ただいま両院協議会協議委員議長から報告されましたとおり、平成三年度一般会計予算外二菜につきましては、両院の意見が一致いたしませんので、憲法第六十条第二項により、本院の議決が国会の議決となりました。(拍手)
     ――――◇―――――
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙
#13
○議長(櫻内義雄君) 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙を行います。
#14
○北村直人君 国土開発幹線自動車道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
#15
○議長(櫻内義雄君) 北村直人君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 議長は、国土開発幹線自動車道建設審議会委員に小渕恵三君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#17
○議長(櫻内義雄君) お諮りいたします。
 参議院から、内閣提出、罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して、右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
    ―――――――――――――
 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を
  改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
#19
○議長(櫻内義雄君) 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改
  正する法律案の参議院回付案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#20
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 日本開発銀行法等の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第二 国民金融公庫法及び沖縄振興開発
  金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 日程第三 国際通貨基金及び国際復興開発銀
  行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 外国為替及び外国貿易管理法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
#22
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、日本開発銀行法等の一部を改正する法律案、日程第二、国民金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案、日程第三、国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、日程第四、外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼赳夫君。
    ―――――――――――――
 日本開発銀行法等の一部を改正する法律案及び
  同報告書
 国民金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の
  一部を改正する法律案及び同報告書
 国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に
  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律
  案及び同報告書
 外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する
  法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔平沼赳夫君登壇〕
#23
○平沼赳夫君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 初めに、日本開発銀行法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 日本開発銀行は、原則として設備の取得者に対して融資を行っておりますが、この法律案は、社会資本の整備に係る事業につきましては、完成後、譲渡することを予定して整備を行う場合であっても融資が可能とするとともに、同行の債券による資金の調達について、外国において円建ての債券を発行し得ることにしております。
 また、日本開発銀行等による、社会資本整備の促進のためのNTT株式売り払い収入の活用による無利子貸付制度について、制度を拡充し、その対象事業に準ずる事業に対し、国からの無利子の貸付金を財源の一部として低利の貸し付けを行うことができることにするものであります。
 次に、国民金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、現在、国民金融公庫等において行っている進学資金貸付制度を教育資金貸付制度に改正し、進学時だけでなく、在学中に必要となる資金も貸し付けることができるようにするものであります。
 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、国際通貨基金の第九次増資に伴い、我が国が同基金に対する出資額の増額に応ずるための措置を講ずるもので、その内容は、政府が同基金に出資することができる金額の範囲を、現行の四十二億二千三百三十万特別引き出し権から八十二億四千百五十万特別引き出し権に引き上げる等、所要の改正を行うものであります。
 次に、外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、国際的な資本交流の一層の円滑化を図る等の観点から、対内直接投資及び技術導入に関する外国為替及び外国貿易管理法上の手続をより開放的で、かつ透明なものとするため、現行の事前届け出制を原則として事後報告制に改めるとともに、事前届け出に係る取り扱いの基準の明確化を図る等、所要の措置を講ずるものであります。
 以上の四法律案につきましては、四月九日橋本大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、直ちに質疑に入り、質疑終了後、順次採決いたしましたところ、日本開発銀行法等の一部を改正する法律案、国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案については多数をもって、国民金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案については全会一致をもって、それぞれ原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(櫻内義雄君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一、第三及び第四の三案を一括して採決いたします。
 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕    
#25
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第二につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 生産緑地法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
#27
○議長(櫻内義雄君) 日程第五、生産緑地法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長桜井新君。
    ―――――――――――――
 生産緑地法の一部を改正する法律案及び同報告
  書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔桜井新君登壇〕
#28
○桜井新君 ただいま議題となりました生産緑地法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、市街化区域内において適正に管理されている農地等の計画的な保全を図ることにより、農林漁業と調和した良好な都市環境の形成に資するため、生産緑地地区の面積要件を五百平方メートル以上に引き下げるとともに、生産緑地の買い取り申し出ができる期間の開始時期を指定後三十年に延長するなど所要の措置を講じようとするものであります。
 本案は、去る二月二十五日本委員会に付託され、三月八日大塚建設大臣から提案理由の説明を聴取し、四月九日質疑を終了いたしましたところ、日本共産党の辻第一君から修正案が提出され、採決の結果、修正案は少数をもって否決され、原案は多数をもって可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対しては、六項目の附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#30
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明
#31
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、老人保健法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣下条進一郎君。
    〔国務大臣下条進一郎君登壇〕
#32
○国務大臣(下条進一郎君) 老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 本格的な高齢社会に向けて、国民が健やかで安心して老後の生活を送ることができるよう、お年寄りの保健、医療、福祉全般にわたる施策の充実を図っていくことが重要な課題となっております。
 このため、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定し、その推進を図っているところでありますが、老人保健の分野においても介護に関する総合的な体制づくりを行うとともに、老人人口の増加に伴い老人医療費の増大が見込まれる中で、国や地方も、お年寄り自身も、制度を支える現役世代も、その費用の負担を適切に分かち合い、制度の長期的安定を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、老人訪問看護制度の創設であります。
 心身の機能の低下した状態にある在宅のお年寄りに対する総合的なケアの体制を整備するため、在宅のお年寄りが都道府県知事の指定する老人訪問看護事業を行う者から看護サービスを受けたときには、老人訪問看護療養費を支給する制度を導入することとしております。
 第二は、国及び地方公共団体の負担割合の拡大であります。
 現在、国及び地方公共団体は、老人医療に要する費用の三割を負担しておりますが、今後の老人問題の中心的課題である介護の重要性にかんがみ、介護に着目して公費負担を拡充することとし、老人保健施設の療養費及び特例許可老人病院のうち政令で定める看護・介護体制の整った病院に係る入院医療費については、その割合を五割に引き上げることとしております。
 第三は、一部負担の見直しであります。
 現在、一部負担の額は、外来の場合一月八百円、入院の場合一日四百円となっております。これにつきましては、老人と現役世代との負担の均衡、他施設や在宅の老人との負担の均衡、前回改定以来四年以上経過していること、高齢者の生活実態等を勘案し、定額負担制を維持しつつ必要な受診を抑制しない範囲でこれを改めることとし、外来については一月千円に、入院については一日八百円に改定することとしております。
 また、将来にわたり、老人医療費に占める一部負担の水準を維持して老人と現役世代との間の負担の公平が確保されるよう、外来、入院それぞれ、一件当たり外来医療費及び一日当たり入院医療費の変動率をもとに算定した額が一定額以上の場合には、一部負担の額が改定される仕組みを法定することとしております。
 さらに、初老期痴呆により痴呆の状態にある方も老人保健施設を利用できることとし、この場合の療養費の支給に関する規定を整備するため、健康保険法等の改正を行うこととしております。
 以上のほか、老人の心身の特性に応じた医療サービスの提供が行われるよう、看護の方法や介護用具の研究開発に努めること、また、医療の質の評価方法の研究に努めること、医療に要する費用の額の算定のあり方についての検討等を行うこと、病院における付添看護に関する施策の推進に努めること等についての規定を設けることとしております。
 なお、この法律の施行期日は、本年七月一日としておりますが、老人訪問看護制度に関する事項、老人保健施設の利用者の拡大に関する事項等は平成四年一月一日、その他の事項は公布の日としております。
 以上が老人保健法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明に対する質疑
#33
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。伊東秀子君。
    〔伊東秀子君登壇〕
#34
○伊東秀子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 政府は、医療費増加に伴う老人保健制度の財政上の安定のため、費用負担の変更を中心とした今回の改正案を打ち出しています。しかし、残念ながらこの中には、国民が安心して生活できる老人医療の展望は全く見出せません。
 老人保健審議会は、一九八九年十二月、「老人保健制度の見直しに関する中間意見」を取りまとめ、幾つかの点について改革と改善の方向性を示しました。その中で、公費負担の拡大に向けて早期に対処する必要があると明言し、生活の質の確保を老人医療の基本理念として打ち出しています。
 この基本理念に照らし、現在の高齢者の保健と医療の実態はどうなっているか、現状の矛盾や問題点をどのように改善するめかについて、今回の改正案は何ら国民に具体的に示しておりません。そして、高齢者への負担増を持ち出しているのです。費用負担を論ずる前には必ず、まず現在の老人医療が国民の必要にこたえているかどうか、目指すべき将来の展望とそれに至るプロセスを国民に明らかにすることこそ先決です。
 総理府の世論調査においても、中高年の国民の八割以上が、将来への不安として老後の健康や医療、介護の問題を挙げています。万一寝たきりになったら、老人性痴呆症になったら、一体自分の介護はだれがしてくれるのだろうか、こんな不安を抱いていない国民は皆無です。こうした国民の不安にこたえるためには、政府はまず現状の問題点を精査し、改善の方向性と将来の展望を明示する中で、それにかかる費用負担を国民に明示すべきです。こうした展望を示してこそ、国民は受ける給付との関係から、負担についても前向きに検討することができるのです。
 そこで、総理にお尋ねします。
 老人医療の充実は高齢者福祉政策の基本です。高齢化に伴う心身の機能低下は人間だれもが避けられないものであり、老人医療も、本来公費負担による保健、福祉と密接不可分な関係にあります。したがって、老人保健制度も、公費が主、保険が従のシステムをとるべきです。七割を保険者が拠出し、三割が公費負担という現在の構造こそ問題であり、老人保健制度における国の政策の貧困さを示しています。本格的高齢化社会の到来を前にして、老人保健制度における公的責任について、総理の明快な御所信をお伺いいたします。(拍手)
 一昨年、政府は、在宅福祉を中心としたゴールドプランを打ち出しました。老人医療が本来持つ福祉的性格を考えるとき、何ゆえに政府は老人医療についてゴールドプランから除外したのか、国と自治体の責任を明確にした高齢者保健医療のゴールドプランを打ち出すべきだと考えますが、その点について総理のお考えを伺います。
 さらにまた、介護体制の充実を真剣に考えるのであれば、一般病院、精神病院、老人病院をも含めた医療の質、看護・介護水準の引き上げについて、具体的改善の方向性を示すべきだと考えます。これらの段階的改善策についてお答え願います。
 最後に、今回新設予定の訪問看護制度を含め、看護や介護の充実のためには早急なマンパワーの確保と充実が必要です。社会党は、高齢化に伴う保健、医療、福祉マンパワー確保のための緊急方策として、給与水準の引き上げや労働時間の短縮、労働環境、福利厚生の改善を主たる内容とする特別立法、人材確保法の早期制定の必要を訴えております。これに対する総理の御所見を伺います。
 さらにまた、これまでの医療法による病院の法定人員及び診療報酬体系における職員配置基準を抜本的に改善し、看護や介護に対する評価を高くしたものに改めること、また、ホームヘルパーや社会福祉施設職員について、措置費の体系など条件の早期改善が必要と考えます。これらに対する所信をあわせてお答えください。(拍手)
 次に、改正案の具体的部分について伺います。
 まず、公費負担割合の引き上げについて。政府は今回、従来の三割の公費負担を五割に引き上げる対象として、老人保健施設の療養費と、特例許可病院のうち介護力強化病院、基準看護承認病院の医療費のみに限定しました。介護に着目して対象を限定したため、今回の改正案で公費負担割合が引き上げられるのは、老人医療費の一部にすぎず、およそ老人医療費全体への引き上げからはほど遠いものとなっております。高齢者の負担が増加して、公費負担の引き上げ幅が全く不十分な今回の改正案は、本来の老人医療のあり方に逆行するものであり、到底国民は納得できません。老人医療の本質が個人の努力ではどうしようもない生理的機能低下によるものである以上、国の責任と負担を第一義とするべきと考えるからです。
 そこで、大臣にお伺いいたします。
 今回の改正により老人医療費に占める公費負担割合は幾らとなるか。ゴールドプラン達成時の平成十一年度にはそれはどう変化するか。本来、公費負担割合の引き上げは老人医療費総額を対象とするべきと考えますが、引き上げ対象を老人医療費全体に拡大していく将来の展望について、具体的な段階的施策をお示しください。
 二番目に、患者の一部負担引き上げについてでございます。
 政府は、今回の改正により、老人医療費合計に占める一部負担比率を現在の三・二%から五%程度まで引き上げを図ったと言っております。患者の一部負担については、医療サービスの質の改善や公費負担の拡大とあわせて、総合的観点から考えられなければなりません。特に、今回の引き上げは、入院費の倍増など高齢者の生活実態への考慮が余りにもなされておりません。
 厚生省の最新の国民生活基礎調査によれば、年間所得三百万未満の高齢者世帯が約八割を占めており、公的年金や恩給のみで生計を立てている世帯が約五割となっております。老齢基礎年金受給者の平均月額が三万一千五百七十二円であることを考えれば、月額二万四千円の負担は、年金のおよそ八割を占めることになります。高齢者が病気にかかる割合、とりわけ入院率は高く、入院期間も長くなっております。その上、入院のとき必ず支払わなければならないおむつ代や雑費、付添看護料等を含め、保険外負担は、厚生省発表でも月額平均二万二千五百円と高額です。実際の保険外負担はこれよりも高く、現在でも、老人が入院した場合十万円前後の支払いを余儀なくされているのが実情でございます。そこで、大臣にお伺いいたします。
 問題の多いこれらの保険外負担については本来解消を図るべきものと考えますが、政府の今後の検討の方向性についてお示しください。
 一般に、老人は合併症など複数の病気を持つケースが多く、早期治療が最も大切です。現在でも、高齢者の有病率と受診率の比率は三対一となっており、受診が抑制されている中で、今回の大幅な引き上げは、より一層高齢者の受診を抑制し、病気を重くすることにつながりかねません。一部負担の引き上げについては金額の見直しが必要であると考えますが、政府の見解を示してください。
 三番目は、一部負担額のスライド制導入についてでございます。
 改正案の大きな問題点は、患者の一部負担額につき医療費スライド制を新たに設けた点です。従来、一部負担額を改定する場合には、法律の改正により行ってまいりました。一部負担の引き上げにプラスされた今回の自動スライド制導入は、経済的不安の大きい高齢者の生活実態を無視し、患者にとってわかりやすい明白な費用という観点からいっても問題です。給付はともかく、国民負担についての自動スライド制導入について、およそまだ国民的合意はできておりません。今回のスライド制導入が、将来社会保険料や初診料、あるいはさまざまな施設の利用費などその他の負担にも波及する危険性が高いことを考えれば、医療費スライド制導入は到底認めることはできません。このように問題の多いスライド制を、なぜ負担カの乏しい高齢者の自己負担から開始したのかも理解に苦しむところでございます。(拍手)
 以上の諸点について、大臣の明快な御答弁を求めます。
 最後に、老いに対して暗いマイナスイメージを与えているのは、政府の医療、福祉政策の貧困さと高齢者切り捨ての政策によるものです。訪問看護制度の創設など一定の評価すべき点もあるとはいえ、今回の老人保健法の改正案もやはりその延長線上にあると私は考えます。
 以上のように、積極的提案も含めて幾つかの問題点を指摘いたしました。政府は、公的負担の引き上げ、一部負担額、スライド制導入の三点について大幅な修正に応ずる用意があるかどうか、総理の見解を明らかにしてください。
 本来歓迎すべき長寿社会の到来に向けて、国民が最後まで人としての喜びと誇りを持って生活できる、そんな政府の高齢者医療政策の充実を望み、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#35
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 伊東議員にお答えをいたします。
 現在の老人保健制度は、社会保険方式を基本としつつも、公費負担は既に相当の水準で行っておるところでありますが、今回の見直しに当たっては、介護の重要性にかんがみ、老人医療費の中で介護的要素の強い部分に対する公費負担割合を引き上げる措置を講じておるところであります。「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランを政府は策定するとともに、老人福祉法などの改正を行って、平成五年度から各自治体において保健福祉計画を策定し、国でもこれを支援し、老人訪問看護制度など新しい施策も盛り込むことによって、御指摘の趣旨である保健、医療、福祉にわたる総合的な施策の展開が図られるものと考えております。
 また、病院における介護体制の充実については、昨年の診療報酬改定におきましても看護や介護に重点を置いたところであります。
 また、老人医療におけるサービスの質に関する評価方法の研究の推進を図るとともに、人材確保については、御指摘のとおり必要性は高まってきております。このため、処遇改善、就業の促進、養成力の充実強化、イメージアップなど総合附に施策を展開して、保健、医療、福祉マンパワーの確保に努めてまいりたいと考えておりますし、適切な配置が行われるようにもちろん配慮もいたします。いずれにしても、病院における看護・介護のあり方については、今後とも十分に検討をしてまいりたいと考えております。
 ホームヘルパーや社会福祉施設職員の処遇につきましては、従来よりその改善には意を用いてまいりましたが、平成三年度では、ホームヘルパーについては手当額の引き上げ、活動費の増額、福祉施設職員の方については、施設の運営費である措置費において労働時間の短縮や主任寮母制度の創設などの措置をとり、改善を図ることといたしております。
 今回の老人保健法改正は、健やかで安心できる老後生活を確保するためのものであり、地域における総合的な介護システムづくり、現役世代の負担軽減による老人保健制度の長期的安定を図ろうとするものであります。この改正に盛り込まれた内容は、政府としましてはいずれも緊急に取り組む必要のあるものと考えており、内容も最善であると考えておりますので、関係委員会において速やかに十分な御審議をいただきますようお願い申し上げる次第であります。
 残余については、担当大臣から御答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣下条進一郎君登壇〕
#36
○国務大臣(下条進一郎君) 伊東議員にお答えいたします。
 総理から全体の御答弁がございましたが、個々の問題につきまして御答弁を申し上げます。
 今回の改正により、老人医療費に占める公費負担割合は幾らとなるか、こういう御覧周が第一点でございます。
 現在、老人医療費については、その給付費の三〇%を公費負担しておりますが、今回の改正によりまして、この公費負担割合は一・二%増加いたしまして、また、金額にいたしまして、いずれも満年度ベースでありますけれども七百五十億ふえまして、結果的にはその割合は三一・二%程度になるものと見込んでおります。
 次の御質問でございますが、次は、ゴールドプラン達成時の平成十一年度には老人医療費に占める公費負担割合はどう変化するかという御質問だと思います。
 将来の公費負担割合につきましては、不確定な要素も多く、一概に申し上げることは困難ではないかと思います。しかし、今回公費負担拡大の対象としております老人保健施設につきましては、今後大幅な整備を図ることとしており、また、介護体制の整った老人病院につきましてもその普及を図ることとしておりますので、今後これらの施設の整備普及に伴い、結果としては公費額はふえていくものと見込んでおります。
 第三問は、本来公費負担割合の引き上げは老人医療費総額を対象とすべきと考えるが、引き上げ対象を老人医療費全体に拡大していく将来の展望について具体的に示せ、こういうお話でございます。
 現在の老人保健制度では、老人医療に対する公費負担割合は既に実質的には相当の水準に達しておりまして、また、税財源から充当されている公費割合を一律に引き上げるよう制度を改正することは不適当ではないかと考えております。
 今回の改正では、このような考え方を基本としつつ、あわせて、国庫助成措置の拡充により、現役世代の負担が約二千六百億円、健保組合等の場合では被保険者一人当たり年間六千六百円軽減し、こうしたことを通じて老人保健制度の将来にわたる運営の安定化が図られるものと考えております。
 次が、保険外負担については本来解消すべきものと考えるが、どう検討しておるか、その方向はどうか、こういう御質問でございます。
 いわゆる保険外負担の問題につきましては、従来から不適当な負担の是正に努めてきておりまして、例えば差額ベッドにつきましては、三人室以上の差額ベッドの解消を指示しております。また、付添看護につきましては、入院医療管理承認病院や老人保健施設など付添看護を必要としない施設の普及を今図っております。このほか、お世話料などあいまいな名目での徴収を行わないように指導をいたしております。これらを通じまして、今のような方向をさらに推進するようにいたしております。今後ともこの是正のため、さらに一層努力してまいる所存でございます。
 次が、一般に老人は合併症など複数の病気を持つケースが多く、早期治療が最も大切である、いろいろな問題があるのでこの一部負担の引き上げについては額の見直しが必要と考えるがどうかというお尋ねでございます。
 老人の一部負担につきましては、現役世代と老人の負担の均衡、在宅療養や他の施設との均衡等を勘案いたしまして見直しを行うこととしておりますが、前回改正から御承知のようにもう四年以上経過しておりますことや、老人の消費支出の状況から見ましても、無理のない範囲での改定であり、これにより必要な受診が抑制されることはないのではないかと考えております。次の御質問は、患者の一部負担額の医療費スライド制は、経済的不安の大きい高齢者の生活実態を無視しておる、したがって、この医療費スライド制導入は到底認められないがどうだ、こういう御質問でございます。今回の一部負担の見直しにおきましては、お年寄りにとってわかりやすい定額負担方式を維持しておりますが、その方式では、老人医療費全体に占める一部負担の割合が逐年低下してまいりまして、現役世代の負担がその分自動的に増大するという矛盾が生じてくるわけでございます。このため、老人医療費に占める一部負担の水準を維持いたしまして、将来にわたり現役世代とお年寄りの負担の公平が確保されるよう、医療費の伸びに合わせて一部負担の額を改定する仕組みを導入することとしたものでありまして、必要なものであると考えております。以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○議長(櫻内義雄君) 大野由利子君。
    〔大野由利子君登壇〕
#38
○大野由利子君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま提案されました老人保健法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に質問を行います。
 最近、老人性痴呆疾患に関する厚生省の研究班が重大な発表を行いました。それによると、老人性痴呆疾患の患者数は、平成二年度において、入院、入所が約二十八万三千人、在宅患者が約七十三万九千人、合計は百万人を上回り、平成十二年には約百五十万人になるとしております。これはこれまでの推計を大きく上回るものであり、これまでの政府の老人医療や介護政策の見直しを迫る重要な内容を持っております。
 こうした状況の中で、我が国の老人医療や介護は依然として後進国たる状況を示しております。寝たきりの妻を看病に疲れ果てた夫が殺害とか、老いた母親の介護に疲れ果てた娘が母を殺して、みずからは自殺というような悲しい事件が後を絶ちません。核家族化が進む中で、介護をする側の子供や配偶者が既に六十代、七十代となり、老人が老人を介護するという二階建て現象が急増し、共倒れの悲劇をさらに増幅しかねない状況となっております。
 入院させようとしても病院は老人でいっぱい、やっと入院できても何人もの雑居部屋に押し込められ、カーテンで仕切ってはあっても、排せつのときの音もにおいも筒抜け、看護婦や介護人が少ないがゆえに、寝かせきりやベッドヘの縛りつけ、そして薬づけ等、経済大国たる我が国にふさわしからざる老人医療の実態です。どのような老人医療のおくれは、政府のこれまでの老人福祉の軽視と、近年の厳しい医療費抑制収策がもたらしたものと言っても過言ではありません。我が国が三十年後には人口の四分の一が六十五蔵以上の老人となり、三人で一人の老人を支えるという高齢化社会危機論がまかり通り、政府は老人医療費の抑制に躍起になっております。しかし、労働省の試算によると、今後ますます女性や高齢者の就労人口が増加し、労働している人が労働していない人を扶養する比率はほとんど変わりがないと言われております。また、OECDの一九八九年の資料によれば、我が国の一人当たりの医療費は、先進国二十四カ国中十四番目という極めて低い水準にあり、医療に対する公的投資が極めて不十分であることは歴然としております。医療費の抑制が看護婦やリハビリなど医療従事者の不足を生み、介護カ不足が諸外国の平均三倍以上もの長期入院につながり、結果的に医療費を必要以上に押し上げるという悪循環をもたらしている現実を政府は深く認識をすべきであります。政府の御意見番である小山路男老人保健審議会会長も、果たして医療費が安いことがいいことなのかという問題もある、汚いベッドで大勢詰め込んでいる病院もある、野戦病院ではないのだから、もう少し人間らしく過ごせる医療資源の配分万法があると思う、経済大国にしては病院を初め医療全体のレベルは低いと述べていることを、政府は深く肝に銘じるべきであります。(拍手)
 こうした老人医療の現実に立って、二、三の基本的問題について、提案も含め総理にお伺いいたします。
 第一は、政府の老人医療、介護政策の実施によって受けられるサービスの具体的目標を明確にすべきであります。マクロ的な供給目標のみならず、それによって一人一人の要介護者がどのような医療、介護サービスを受けられるようになるのか、また、それをいつまでに達成するのかなと、具体的目標を示していただきたいと思います。
 第二に、これから二十一世紀の高齢化社会を支えるものは、看護婦等のマンパワーであります。これなしには、ゴールドプランも含めて、絵にかいたもちになってしまいます。マンパワーの確保は、思い切った待遇と労働条件の改善なしには困難であり、このための対策をどのように講ずるのか、診療報酬の改善も含め明確にすべきであります。
 第三に、老人医療、老人福祉の充実のためには、総合的な施策が必要であることは言うまでもありません。家族介護者の負担軽減のための介護休暇と介護手当、そして、高齢者や障害者の自立を助ける介護福祉機器の開発と普及などについて、政府はどう対応するのか。
 以上三点について、総理の御所見をお伺いいたします。
 次に、老人保健法の一部改正案の具体的内容について、厚生大臣にお尋ねいたします。
 今回の改正案は、老人保健制度に対する多くの国民の期待を裏切った内容になっております。
 第一に、お年寄りの負担について、入院が現行の四百円から八百円へと二倍、外来が八百円から千円へと約二五%も引き上げる内容になっています。政府は、果たしてお年寄りの医療費の実際の負担を正確に把握しているのでありましょうか。政府の調査によれば、一部負担のほかに、おむつ代等の保険外負担が一カ月二万二千五百円となっていますが、実際は、首都圏では十万円前後かかっているというのが現場の関係者の証言であります。その他差額ベッド代や付添看護料を含めると、相当の負担になっていると見なければなりません。高齢者の所得が多少向上しているとはいえ、お年寄りの主な収入源である年金額が、国民年金は平均月三万円前後にすぎない現状から考えると、この引き上げ案は極めて問題であると言わざるを得ません。お年寄りに過酷な負担を強いる一部負担の引き上げは即時撤回すべきであると思いますが、厚生大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 また、一部負担のスライド制導入については、お年寄りの生活実態とかけ離れて際限なく引き上げられる可能性があるので容認できません。
 第二に、老人保健制度に対する公費負担の拡充についてであります。
 我が党は、老人保健制度に対し、その安定と民間保険組合への過度の依存をなくすために五割の公費負担を主張してきましたが、その五割公費負担が介護力を強化した一部の老人病院と老人保健施設にのみ限定されたことは、大きな問題であり、政府の老人保健制度の充実に対する姿勢そのものが問われると言わざるを得ません。お年寄りの負担増が約千二百億円であるのに対し、公費負担増は七百五十億円しかなく、一部負担を除いた公費負担の割合も、現行の三〇%から三一・二%に、将来的にも三五%程度にしかならないのであります。しかも、政府の国庫負担は、現行より八十億円も軽減する仕組みになっております。これで果たして老人医療が充実するのか、まことに疑問であります。現在の老人医療の質的転換を図り、かつ老人保健制度の安定を図るためにも、公費拡充の対象の枠を一般病院等にも拡大するとともに、新設する老人訪問看護制度に対しても五割公費負担を行うべきであると思いますが、御所見をお伺いいたします。
 第三に、老人訪問看護制度の創設についてであります。
 これは、内容と普及の度合いによっては、現在寝たきり老人等を抱える家庭に幾ばくかの光明を与えるものであると思われます。しかし、在宅寝たきり老人約二十二万人、在宅痴呆老人約七十四万人のうち、どれだけの方々が恩恵を受け、かつどれだけの看護サービスを受けられるのでしょうか。厚生省が予定している潜在看護婦などを活用しての約二万人程度では、十分なサービスが期待できない上、現在のような安い訪問看護料では人を集めることは困難であり、事業としても成立するかどうか、利用者が支払う利用料という名の一部負担がどの程度になるのかを含め、明確な御答弁をいただきたいと思います。
 第四に、老人訪問看護事業の一員とされている理学療法士や作業療法士は、老人介護等に不可欠な存在でありますが、現在医療現場においても極めて数が少なく、在宅医療で確保することは困難な状況であります。今後どのように育成し、確保していくのか。また、訪問看護制度は、昨年スタートしたゴールドプラン十カ年計画の中のホームヘルパーや在宅介護支援センターとの連携、協力があって初めて医療と介護の整備拡充が可能となりますが、一元化への道程を明確にしていただきたいのであります。
 最後に、在宅医療を進めるに当たっての条件整備についてであります。
 御承知のように、在宅医療は、それを可能とする住宅と周辺環境の整備が相まって効果を上げ得るものであります。その条件整備なしに先進国の物まねあるいは在宅医療は安上がりとばかり進めても、効果を半減させるばかりか、住宅構造そのものがお年寄りの事故の原因となって、寝たきりやけがを再生産しかねない状況です。現在、住宅改善の低利融資や税額控除がありますが、不十分であります。東京都の江戸川区が行ってお力まずお年寄りや障害者のためのおふろやトイレの改造及び車いすで移動するための住宅改造費用を全額あるいは相当分を補助する仕組みを、国の制度としてもつくるべきであります。あるいはまた、今後の住宅設計に当たってはそうした配慮をあらかじめ行うよう法改正や指導をすべきでありますが、厚生大臣並びに建設大臣の御所見をお伺いいたします。
 以上、老人保健法の一部改正案について数点にわたって質問をいたしましたが、現代に生きる私どもの英知と努力を結集して、長寿社会を心から喜び合える社会に築いていくことを熱望し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#39
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 大野議員にお答えを申し上げます。
 明るい活力ある長寿・福祉社会を建設していくその目標は、平成元年十二月に策定しました「高齢者保健福祉推進十か年戦略」であります。ここにおいては、ホームヘルパー等在宅福祉サービスの整備、老人保健施設、特別養護老人ホーム等の施設整備など、平成十一年度までに整備すべき具体的な数字を挙げての目標を掲げて、事業の推進に努めておるところであります。
 そのため、看護婦さんたちの役割は、御指摘のとおりますます重要なものとなってきております。処遇の改善、就業の促進、養成力の拡充強化、イメージアップなど総合的に施策を推進してまいりますし、また、診療報酬における看護の取り扱いにつきましては、今後とも適切に対処をいたしてまいります。介護休暇についてお触れになりましたが、今後とも介護休暇制度の普及促進を図ってまいります。
 介護手当についてもお触れになりましたが、今回の老人保健法改正案において、訪問看護制度の創設を提案しておるところであります。介護手当については、それがどのような趣旨、目的で行われるのか、また、同居率が欧米に比べて極めて高い我が国において、その効果がどのように及ぶのかなとを慎重に見きわめながら検討すべきものと考えております。また、高齢者や障害者の自立を助ける介護福祉機器の開発と普及についてどう対処するかとお尋ねでありましたが、介護福祉機器の果たす役割は、今後ますます重要になるものと認識をいたしております。改正案においては、その研究開発の推進に努める旨を新たに規定しており、今後さらに積極的にその開発普及に取り組んでいく所存であります。
 残余は、関係大臣から御答弁いたさせます。(相手)
    〔国務大臣下条進一郎君登壇〕
#40
○国務大臣(下条進一郎君) 大野議員にお答えいたします。
 具体的な内容でございますので、個々に申し上げます。
 最初にお話がございましたのは、保険外負担と一部負担の引き上げの問題についてでございます。
 一部負担につきましては、老人と現役世代の負担の均衡、在宅療養や他の施設との負担の均衡等を考慮いたしまして見直しをし、これを実行してまいりたいということでございます。今回の見直しに際しましては、近年の年金受給の状況のみではなく、高齢者世帯の一人当たり平均所得金額や消費支出の状況等も勘案いたしておりまして、入院の場合には相当程度の日常生活の経費の節減も見込まれることもあわせて考慮すると、今回の引き上げは無理のない範囲の負担と考えております。また、御指摘のお世話料等のいわゆる保険外負担の問題につきましては、従来から不適正な負担の是正に努めてきておりますし、今後とも一層その努力を続けてまいる所存でございます。
 その次は、公費拡充の対象の枠の拡大、こういうポイントでございます。
 今回の改正においては、お年寄りの介護の要素に着目いたしまして、公費負担を拡充することとしております。具体的には、主としてお年寄りを対象として、その性格、機能、職員の配置等から見まして、お年寄りの心身の特性に応じた適切な介護が行われる施設、病院について公費負担拡大の対象としておるところでありまして、その範囲については妥当、適切なものと考えております。
 次は、老人訪問看護制度の対象者及び看護サービスの具体的な程度はどうか、こういうお尋ねでございます。
 老人訪問看護サービスにつきましては、積極的にその普及を促進していくこととしておりまして、在宅要介護老人全体の三割程度が今後この制度によるサービスを受けられるものと見込んでおります。また、訪問看護サービスの運営基準は関係審議会の意見を聞いて定めることとなっておりますが、おおむね週一回から二回程度の訪問看護が行われると考えております。
 その次が、老人訪問看護制度の看護職員の確保及び利用料の程度の問題でございます。
 老人訪問看護制度に必要な看護職員の確保につきましては、いわゆる潜在看護婦の方々の活用ということに力を注いでいきたいと考えており、ナースバンクの充実や訪問看護婦養成指導者講習会の実施等によりまして、訪問看護職員の確保に努力してまいる所存でございます。また、老人訪問看護療養費の額につきましては、中央社会保険医療協議会の意見を聞きまして、看護婦の人件費等を含めた適切な額を定め、老人訪問看護制度の円滑な実施を図ってまいりたいと考えております。利用料の額につきましては、中央社会保険医療協議会等の意見を聞いて定めることとしておりますが、老人医療の外来一部負担金の額、訪問看護の利用の状況等を勘案いたしまして、いずれにいたしましても適切な額にしたいと考えております。
 次は、理学療法士や作業療法士は在宅介護に不可欠であるが、現在、医療現場においても極めて数が少ない実情から、在宅医療で確保することは困難ではないか、その育成、確保はどうするか、こういうお尋ねでございます。
 理学療法士、作業療法士については、従来から需給計画を策定し、その養成、確保を進めているのでありますが、医療の高度化及び「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の実施など、新たな需要要因が見込まれているところであります。このため、現在、在宅療養を含め、保健、医療、福祉の諸分野にわたる理学療法士、作業療法士の需要に対応すべく需給計画の見直しを進めているところでありまして、その結果を踏まえて養成力の強化を図り、その確保に努めてまいりたいと考えております。
 次に、老人訪問看護事業を進めるに当たっては、昨年スタートしたゴールドプランの中のホームヘルパーや在宅看護支援センターとの連携、協力が不可欠と考えるが、その道程を明確にされたい、こういうお尋ねでございます。
 老人訪問看護制度は、在宅ケアの一環といたしまして、他の保健、医療、福祉施策との密接な連携のもとに提供される必要があります。このため、老人訪問看護のための運営基準の設定に当たっても、在宅介護支援センターや市町村に設置されます高齢者サービス調整チームにおきまして、在宅福祉サービスとの連携、各種サービスの総合的な調整を図り、保健、医療、福祉の確保が図られるよう十分配慮しまして、その実現のために逐年具体的に推進してまいりたいと考えております。
 次が、在宅医療を可能にするためには、現在ある住宅改善の低利融資や税額控除では不十分であり、東京都その他の例からいって、その改造のために補助する仕組みを国の制度としてつくるべきではないか、こういうお尋ねでございます。
 住宅の増改築に要する費用につきましては、増改築後の設備が個人の所有に帰するものであること等から、国庫補助にはなじみ得ないものと考えております。厚生省といたしましては、高齢者や障害者の方々に配慮した住環境の整備を図るため、引き続き、住宅増改築資金貸付制度の充実や住宅増改築相談体制の整備等に努めてまいりたいと考えております。
 また、スライド制の問題のお尋ねがございましたけれども、これはほかの議員にもお答えいたしましたように、負担の水準を維持するという見地から、これはぜひお認めいただきたい、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣大塚雄司君登壇〕
#41
○国務大臣(大塚雄司君) 大野議員からお尋ねが二つございました。
 高齢者や障害者のためのふろ、トイレ等の住宅改造費の全額または相当分を国庫補助の制度としてはどうか、こういうお尋ねでございました。
 ただいま厚生大臣からもお答えがございましたが、建設省といたしましても、高齢者や障害者の身体機能やニーズに配慮をしながら、その居住の安定を図ることは重要な課題と認識をいたしております。このため、公営住宅におきましては、高齢者や障害者向け住宅の供給及び優先入居、既設住宅を高齢者等に配慮した構造、設備に改造する場合の費用の補助、あるいはまた住宅金融公庫におきましては、高齢者、身体障害者用設備設置工事及び住宅改良工事等に対する割り増し貸し付け等を実施しておるところでございます。特に平成三年度におきましては、公庫融資の拡充を図るとともに、今後建設する公営住宅につきましては、段差の解消や手すりの設置などのバリアフリー化を進めるとともに、中層住宅のエレベーター設置に対する補助の拡充等を行おうといたしておるところでございます。
 次に、住宅設計に当たって高齢者または障害者への配慮を義務づけする法改正や行政指導を行うべきではないかということでございますが、高齢者や障害者に対する適切な設計のあり方につきましては、障害の種別や程度がさまざまでございまして、また、建物の用途や規模などの個別の状況に応じて決める必要があるために、一律に建築基準法を改正するような義務づけを行うことにつきましては慎重に検討する必要があると考えております。しかし、従来から身体障害者に配慮した建築設計指針の普及等がありまして、常に適切な設計がなされるように建築士等の指導を行ってきたところでございます。
 今後とも、特に高齢者のための適切な設計の確保に努めてまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#42
○議長(櫻内義雄君) 柳田稔君。
    〔柳田稔君登壇〕
#43
○柳田稔君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに厚生大臣に質問いたします。
 日本の平均寿命は、男性が七十五・九一歳、女性が八十一・七七歳と、男女ともに世界一の長寿国となりました。しかし我が国は、国民が本当に長寿を心から喜べる社会となっているとは思えません。経済企画庁が本年三月に発表した調査によれば、七〇・四%の国民が自分の老後に明るい見通しを持つことはできないと答えております。老後の不安を払拭し、心身ともに快適な生活を送ることのできる社会を築くことは極めて重要な課題であり、これにこたえることは政治家の責務と信じます。
 今回提出されました老人保健法等改正案は、国民の願いに逆行し、老後に対する国民の不安をますます増大させるものであると言わざるを得ません。私は、この観点に立って、以下数点にわたり政府の所見を求めます。
 まず、公費負担率の引き上げについてですが、御案内のとおり、我が国は、世界でも例のないスピードで急速に人口高齢化への道を歩んでいます。一九九〇年には六十五歳以上の一人のお年寄りを十五歳から六十四歳までの五・八人で支えていたものが、二〇〇〇年には四人で一人を、二〇二〇年には二・五人で一人を支えていかなければなりません。
 高齢化の進行に伴い、老人医療費も、今後長期的に上昇を続けていくことが確実と見られています。昭和六十年から平成元年までの五年間に、国民所得の伸びは二二・六%でしたが、老人医療費は、これをはるかに上回る三六・六%も上昇いたしております。
 一方、老人医療費の増加は、既に被用者保険に極めて過重な負担を強いています。千八百十八ある健康保険組合の三六%に当たる六百五十四の組合は既に赤字で、その主たる要因は老人保健への拠出金にあり、このまま老人医療費が伸び続ければ、被用者保険各制度の財政基盤は根底から揺らぎ、医療保険制度そのものの崩壊につながりかねない危険性を秘めています。今後、老人医療制度を長期的に安定させ、適正な医療を確保していくためには、国の責任と負担を強化する方向での制度改革が必要不可欠です。
 政府は、消費税を導入するに当たり、高齢化社会への対応をその理由として挙げておりました。しかし、消費税が導入された後も、公費負担が一向に拡大されないのはいかなるわけによるものでしょうか。政府案では、わずかに介護部分にのみ公費負担率を三割から。五割に引き上げるとされていますが、すべての老人医療費について三割から五割に引き上げることが、今回の改正のまず前提となるべきであったと考えます。この点について総理の決断を強く求めるとともに、御見解を賜りたいと存じます。
 次に、一部負担の問題について伺います。
 政府案では、患者一部負担を外来一月八百円から千円に、入院一日当たり四百円から八百円に、それぞれ引き上げようと提案しています。またあわせて、今後の患者一部負担については、老人医療費の伸びに合わせて引き上げることのできる仕組みを導入しようとしています。私は、これらの内容には次の二つの大きな問題があると指摘せざるを得ません。
 第一は、引き上げ幅、特に入院負担の問題です。
 もちろんお金が天から降ってくるわけではありません。私は、医療費の増大という状況と世代間の負担の均衡ということを考慮すれば、適正な一部負担は行われなければならないと考えますし、それをすべて否定するつもりはありません。しかし、今回の引き上げは、お年寄りの負担能力を考えた場合、余りにも大幅です。特に、入院の負担を倍額に引き上げるというのは、入院しているお年寄りの方々にとって深刻な問題となってまいります。施設と病院との負担の公平化を図るというのが政府の考え方であると承知しておりますが、病院の場合、差額ベッドや付添看護料あるいはおむつ代といったいわゆる保険外負担が存在し、これが大きく家計を圧迫しているのが実情です。これらの改善が一向になされないままに入院費を倍増するということについては、再検討すべきであると思いますが、海部総理の御所見をお伺いいたします。
 第二は、今後、国会による審議を行うことなしに一部負担金を自動的に改定できるようにしようとしている点についてです。
 いざ病気になったとき、国民のだれもが負担可能な金額で安心して医療を受けることができるというのが社会保障としての医療政策の根幹です。そして、その負担をどのように分かち合っていくのかということを決めるのが政治の役割です。患者の一部負担金の額を、負担能力のいかんにかかわらず、老人医療費の伸びにスライドして国会のチェックもなしに引き上げていくというのは、医療保険財政のみに着目したテクノクラートの発想であり、このような政府・自民党の姿勢は、ナショナルミニマムを保障するという福祉国家建設路線をみずから放棄したものと考えざるを得ません。政府に対して、このような医療費スライドによる老人医療費の一部負担改定方式の撤回を求めます。総理の明快なる御答弁をお願いいたします。
 我が国の医療保険制度は、昭和二年発足の健康保険以来、逐次適用対象の拡大等その改善充実が図られてまいりましたが、各種制度に分立していることから、給付率や保険料負担水準など給付と負担の両面で格差が生じています。国民皆保険体制のもとで、公的な社会保障制度の基礎ともいうべき医療保険について政府が今後とも制度の確立を図っていこうとするならば、制度体系全般にわたる見直しと、これに基づく一元化を進め、すべての国民にとって公平な制度づくりを行うことが必要であります。政府は、医療保険制度の一元化についてどのような見通しを持っておられるのか。
 また、疾病構造が感染症中心から循環器疾患や糖尿病等成人病中心に移ってくる中で、病気を治療することから病気を予防することに政策の重点を移し、単なる検診だけでなく、積極的な健康増進事業の推進を図っていく必要があり、医療機関の体制も成人病の患者にふさわしいものに変革していかなければなりません。従来の治療中心主義の医療体制を改め、健康管理、健康づくり中心の医療資源の配分を進めていく必要があると考えますが、この点についての見解はいかがでしょうか。
 我が国は、確かに医療技術は世界一流でも、三時間待って三分診療とか冷たい給食という言葉に代表されるような、治療する側の論理が優先されがちな状況のもとで、患者サービスの質の低さに対する批判は根強いものがあり、治療を受ける側に立った医療制度の整備を進める必要があります。これに伴い、住みなれた自宅で療養生活が送れるようにするため、訪問看護、訪問リハビリテーション等の普及を図るとともに、在宅療養を支える新しい医療技術の開発促進や保険の適用等を進めていくべきであると考えます。
 以上三点について政府の方針を厚生大臣からお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、総理にお尋ねいたします。
 民社党は、昭和三十五年の結党に当たり、福祉国家の建設を目標に掲げました。当時、この我が党の目標に対して、与党からは、働かなくても食べていける怠け者の社会をつくるものだと批判され、また、他の野党からは、資本主義の延命に手をかすものだと攻撃されたのであります。ところが、現在、福祉の充実を各党ともに唱え、民社党の主張が正しかったことが立証されております。しかし、人口の高齢化がさらに進む場合、将来の社会保障は本当に約束されているのか、今国民の不安が高まっています。
 消費税の導入の論議に当たり、民社党は福祉ビジョンの提出を政府に求めました。これに対して政府は、長寿・福祉社会実現の施策の基本的考え方と目標と題する福祉ビジョンを昭和六十三年十月に国会に提出しました。政府が単年度予算主義や審議会の審議経過など種々の制約の中から福祉ビジョンを提出したことについて、我が党はこれを評価するものですが、このビジョンは、財政計画を具体的に示していないこと、年次計画が示されていないこと、介護サービスの充実についての問題認識が薄いことなどの問題があり、十分なものではありません。
 また、昨年からスタートした政府の「高齢者保健福祉推進十か年戦略」は、依然として厚生行政の範囲内にとどまっています。特に、高齢化社会に新たに必要となる財源を具体的にどう賄っていくかが明らかになっていない限り、国民の不安を解消することはできません。
 今後の高齢化社会において政府が提供する福祉サービスの水準と、それに要する費用負担のあり方を示した新たな福祉ビジョンを提示すべきであると思いますが、総理の明快な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#44
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 柳田議員にお答えを申し上げます。
 現在の老人保健制度は、社会保険方式を基本としつつも、老人医療に対する公費負担割合は既に実質的にはかなりの水準に達しておりますが、今回の改正では、老人医療の中の介護的要素に着目をして公費負担の割合を引き上げることといたしたものであります。
 また、今回の改正案による一部負担の見直しは、保険外負担の改善に取り組むこととあわせて、世代間の負担の公平の観点から、必要な受診を抑制しない範囲内で行うものでありますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
 スライド方式については、このような観点から、老人医療費に占める一部負担の割合を維持して、将来にわたりお年寄りと現役世代の間の負担の公平が確保されるようにしたものでありまして、私は、これは必要な措置であると考えております。
 また最後に、福祉国家のビジョンと費用負担のあり方について示せとのお尋ねでありましたが、政府は、これらのために、昭和六十三年十月の福祉ビジョンにおいて、今後の社会保障の基本的な考え方を明らかにし、年金、医療、福祉等について具体的に掘り下げた目標をお示ししたところであります。さらに、平成元年十二月には、いわゆるゴールドプランを策定し、高齢者の保健、福祉の分野における具体的な数値を挙げての目標を掲げて、サービスの充実に努めているところであり、また、国民の皆さんの負担については、長期的にはある程度の上昇は避けられないと考えられますが、第二次行政改革審議会答申の趣旨を踏まえ、その上昇を極力抑制すべく、今後とも、既にお示ししたビジョンに従って最大限の努力を払ってまいる考えでおります。
 残余は、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣下条進一郎君登壇〕
#45
○国務大臣(下条進一郎君) 柳田議員にお答えいたします。
 三間ございますので、順次答弁さしていただきます。
 第一問は、政府は医療保険制度の一元化についてどのような見通しを持っているかということでございます。
 今後の本格的な高齢化社会におきましても、すべての国民が安心して医療を受けられるようにするためには、医療保険制度の長期的安定を図っていくことが重要であり、このため、給付と負担の公平化が大きな課題であると考えております。
 給付と負担の公平化については、関係者間でさまざまな意見があり、これまでも関係審議会で御審議、御議論をいただいてきたところでありますが、そこでは、「当面は給付と負担の公平に向けて各制度内で所要の調整等の方策を検討し、その上で、医療保険制度の将来構想について検討を進めるべき」との御意見をいただいているのであります。
 厚生省といたしましては、これらの御意見を踏まえ、給付と負担の公平化のための地ならしを着実に進めてきておりまして、このたびの老人保健制度の見直しは、その一環として位置づけられるものと考えております。この問題につきましては、今回の老人保健制度の見直しの帰趨を見きわめつつ、幅広い角度からさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
 次は、疾病構造が感染症中心から循環器疾患や糖尿病等成人病中心に移ってくる中で、従来の治療中心主義の医療体制を改め、健康管理、健康づくり中心の医療資源の配分を進めていく必要があると考えるが、この点についてどうだ、こういうお尋ねでございます。
 近年の疾病構造の変化に対応いたしまして、従来の治療中心の医療に偏ることなく、健康づくりや疾病の予防から機能訓練に至る総合的な対策を確立する必要があると認識しております。
 このため、老人保健法に基づきまして、四十歳からの健康教育、健康診査等の保健事業を計画的に推進してきているところであります。
 また、昭和六十三年度より、生涯を通じた積極的な健康づくりを推進していくため、第二次国民健康づくり対策アクティブ80ヘルスプランを推進しております。
 さらに、老人診療報酬においても、老人の心身の特性を踏まえ、日常生活指導を充実する観点から生活指導料等の設定を行っているところであります。
 今後とも、健康の保持増進を図るための対策の充実に努めてまいります。
 最後に、住みなれた自宅で療養生活が送れるようにするためには、訪問看護、訪問リハビリテーション等の普及を図り、新しい医療技術の開発促進や保険の適用等を進めていくべきではないか、この考えを聞きたい、こういうことでございます。
 老人医療におきましては、患者の病状や療養上の必要性に応じ、できるだけ本人の希望により住みなれた地域、家庭で療養することを可能とする体制を整備することが重要であると考えております。
 このため、平成二年四月の診療報酬改定において、退院時の指導や訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション等の評価を行うとともに、今回の老人保健法の改正案においても老人訪問看護制度を創設いたしまして、在宅の寝たきり老人に対する訪問看護、訪問リハビリテーションの一層の推進を図ることといたしております。
 こうした施策とあわせて、老人の心身の特性に応じた在宅医療や看護・介護についての研究開発や在宅医療における診療報酬の評価等を行うことにより、老人が安心して家庭で療養していける環境づくりを進めてまいる所存でございます。
 以上でございます。(拍手)
#46
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#47
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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