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1990/11/02 第119回国会 参議院 参議院会議録情報 第119回国会 環境特別委員会 第2号
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1990/11/02 第119回国会 参議院

参議院会議録情報 第119回国会 環境特別委員会 第2号

#1
第119回国会 環境特別委員会 第2号
平成二年十一月二日(金曜日)
   午前十時三十分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二日
    辞任         補欠選任
     松前 達郎君     大渕 絹子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         上野 雄文君
    理 事
                松浦 孝治君
                森山 眞弓君
                田渕 勲二君
                広中和歌子君
    委 員
                井上 章平君
                石川  弘君
                石渡 清元君
                山東 昭子君
                須藤良太郎君
                大渕 絹子君
                清水 澄子君
                篠崎 年子君
                山田 健一君
                高桑 栄松君
                沓脱タケ子君
                中村 鋭一君
                山田  勇君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  北川 石松君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        森  仁美君
       環境庁企画調整
       局長       山内 豊徳君
       環境庁企画調整
       局環境保健部長  柳沢健一郎君
       環境庁自然保護
       局長       渡辺  修君
       環境庁大気保全
       局長       古市 圭治君
       環境庁水質保全
       局長       武智 敏夫君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        宅間 圭輔君
   説明員
       厚生省生活衛生
       局食品保健課長  野村  瞭君
       水産庁振興部振
       興課長      海老沢志朗君
       水産庁研究部漁
       場保全課長    吉崎  清君
       通商産業省立地
       公害局環境政策
       課長       若杉 隆平君
       運輸省港湾局計
       画課長      堀井 修身君
       建設省河川局治
       水課長      日野 峻栄君
       建設省河川局開
       発課長      豊田 高司君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
 (派遣委員の報告)
 (水俣病訴訟の和解勧告と国の対応に関する件)
 (水俣病被害に対する救済の在り方に関する件)
 (長良川河口堰建設問題に関する件)
 (高知県夜須町におけるリゾート開発に関する件)
 (地球温暖化防止行動計画に関する件)
 (熊本県球磨川における砂利採取問題に関する件)
 (琵琶湖における水質汚濁問題に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(上野雄文君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、松前達郎君が委員を辞任され、その補欠として大渕絹子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(上野雄文君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。
 まず、去る九月、当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。森山眞弓君。
#4
○森山眞弓君 委員派遣の報告を申し上げます。
 去る九月十八日から二十日までの三日間、湖沼水質保全、自然保護及び公害対策等に関する実情調査のため、上野委員長、広中理事、石川、石渡、須藤、山崎、山田各委員と私、森山の八名で、秋田県、岩手県へ行ってまいりました。
 日程の第一日は、秋田県庁において秋田県の自然環境及び生活環境の状況と施策についての概況を聴取いたしました。その後、八郎湖の水質保全対策の状況を視察いたしました。
 第二日は、田沢湖抱返り県立自然公園、玉川源流部の原生ブナ林を視察した後、十和田八幡平国立公園を訪れ、八幡平ビジターセンターで公園の概要を聴取しました。その後、岩手県に入り、旧松尾鉱山新中和処理施設を視察いたしました。
 第三日は、岩手山麓国民休暇村において岩手県の環境行政の概況を聴取いたしました。あわせて国民休暇村関係の説明を聴取し、施設の視察を行いました。
 以下、これら調査事項のうち主要な点について報告いたします。
 まず、湖沼の水質保全の状況について申し上げます。
 かつての八郎潟は、海と通じた汽水湖で、琵琶湖に次ぐ我が国第二の面積を有する湖でありましたが、国営八郎潟干拓事業により、昭和五十二年、八郎潟は干拓地として造成され、残りの水面が調整池、東部承水路、西部承水路として生まれ変わり、今ではこれらを総称して八郎湖として呼ばれています。
 しかし、防潮水門によって閉鎖された八郎湖は、やがて淡水化され、周辺の生活排水や農地排水等からの窒素、燐等の流入によって富栄養化が進み、アオコが発生するなど水質の悪化が見られるようになってきております。
 八郎湖の水質の状況は、平成元年度においてはCODで十一ミリグラム・パー・リットルと環境基準の三ミリグラム・パー・リットルを大きく上回っております。また、全窒素、全燐も極めて高濃度となっておりますが、その大きな原因は干拓地の土壌から出る汚濁物質が八郎湖に流入するためと考えられております。
 県当局としては、八郎湖水質汚濁機構解明のための調査を実施するとともに、本年四月には学識経験者で構成する八郎湖技術検討委員会を設置しまして、水質浄化対策を検討しているところであります。
 一方、田沢湖は、周囲二十キロメートルの典型的なカルデラ湖で、瑠璃色の湖面に周りの山々を映した美しい湖であり、その水質の状況はCODで〇・五ミリグラム・パー・リットル以下の貧栄養湖であります。また、pH四・六程度の酸性湖でもあり、そのため、かつてすんでいたクニマスや水草は死滅したと言われております。田沢湖の酸性化は玉川の酸性水が電源開発のため流入したもの
でありますが、現在は玉川上流に建設省が設けた中和施設による水質改善対策を国、県等関係者が実施しているとのことであります。
 次に、玉川源流部及び十和田八幡平国立公園の自然保護の状況について申し上げます。
 玉川源流部のブナ林は秋田県田沢湖町北東部に位置する広大なブナの原生林であります。豊かなブナの原生林を含むこの地域は、林野庁の森林生態系保護地域の候補地ともなっており、平成二年度中に葛根田川流域とともに地域指定される予定であります。森林生態系保護地域の設定は、自然環境の保全や動植物の保護等に対する国民の意識が高まる中で新たな森林行政の方向を示したものであり、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝子資源の保存等に役立てるために設定されるものであります。
 玉川源流部の森林は、すべて樹齢百六十五年以上の天然林であり、総蓄積は約四十七万立方メートル、その四一%が針葉樹、五九%が広葉樹と言われています。植生としては、チシマザサ・ブナ群落やオオシラビソ群落が広く分布するほか、尾根筋にはハイマツ等が分布しています。また、ツキノワグマ等の哺乳類、ホシガラス等の鳥類等貴重な野生動物が生息するところでもあります。
 十和田八幡平国立公園は、十和田湖を含む十和田地域と八幡平地域とから成り、総面積八万五千ヘクタールの我が国を代表する国立公園の一つであります。今回、私たちが訪れました八幡平地域は、秋田県と岩手県にまたがる四万ヘクタールの地域で、溶岩でできたアスピーテ火山やトロイデ火山等各種の火山のほか、火口湖、火口原湖など多様な火山地形が散在しており、また温泉活動も活発で強酸性の温泉が多くあります。また、八幡平一帯の植生は、ブナやダケカンバ、アオモリトドマツ等の群落が広く分布し、その間の沼や湿原には高層湿原群落もあります。利用者数は年々増加の傾向にあり、平成元年は五百九十万人以上の人がこの地を訪れたとのことです。
 今回、現地に行き、樹齢二百五十年とも言われる日本を代表する広葉樹のブナ林を初め八幡平一帯の自然を間近に見て、そのすばらしさに感動すると同時に、この豊かな森林生態系を次世代に伝えていくことは私たちの世代に課せられた責務であると感じました。
 次に、旧松尾鉱山の鉱害防止事業について申し上げます。
 旧松尾鉱山は、明治十五年以来硫黄や硫化鉄を産出していましたが、経営の悪化に伴い昭和四十七年閉山いたしました。しかし、その後も廃坑からは鉄分や有害物質の砒素を大量に含んだpH二程度の強酸性水が排出され、この水が流入した北上川の水質汚濁が社会問題となりました。その対策として、国は昭和五十一年、強酸性水を炭酸カルシウムで中和し、水質環境を改善するための中和処理施設を新たに建設することを決めました。この新中和処理施設の建設は、岩手県が通商産業省の補助を受けて昭和五十二年に建設工事に着手し、昭和五十六年に完成しました。その後、この施設の維持管理の業務は、岩手県の委託を受けて金属鉱業事業団が実施しております。
 中和処理場は、年じゅう休むことなく二十四時間体制で年間およそ九百万立方メートルの坑廃水を中和処理しており、砒素の除去も同時に行っているということであります。そして、中和処理された水は最終的に赤川に放流され、分離された砒素等重金属を含む汚泥は貯泥ダムに堆積管理されております。
 また、当地では、中和処理のほかにも堆積物の崩壊、流出防止、雨水等の坑内への浸透、流入を防止するための発生源対策工事として、露天掘り跡の埋め戻しや堆積物への覆土、植栽工事などが実施されておりました。
 なお、当施設では、坑廃水は半永久的に排出されるものであり、それに対応した設備の更新問題、坑道の陥没の危険性、維持管理費用の負担問題などの課題が指摘されており、終わりなき鉱害防止対策事業の困難さを痛感いたしました。
 最後に、秋田県、岩手県及び八郎湖水質対策連絡協議会から要望書をいただいております。これらを会議録の末尾に掲載していただきたく、委員長のお取り計らいをお願いいたします。
 以上、報告を終わります。
#5
○委員長(上野雄文君) これをもって派遣委員の報告は終了いたしました。
 なお、ただいま森山君の報告中、御要望のありました秋田県、岩手県及び八郎湖水質対策連絡協議会からの要望書につきましては、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(上野雄文君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
    ─────────────
#7
○委員長(上野雄文君) これより公害及び環境保全対策樹立に関する調査について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#8
○篠崎年子君 日本の四大公害病だと言われておりました新潟水俣病、四日市大気汚染、イタイイタイ病、そして水俣病、この四つのうちの三つは判決が出まして和解も済んでおりますけれども、今回、水俣病裁判につきまして四つの裁判所が次々に和解の勧告を出しました。それに対しまして、原告側とそれから被告の県とチッソ株式会社はそれぞれこの和解のテーブルに着くことを承知いたしましたけれども、国だけがこれを拒否しております。このことにつきまして、まず長官にお尋ねをいたしたいと思います。
 各地の裁判所に提訴している原告の数は二千名を超え、熊本地裁に提訴した千二百名の原告のうち既に九十名が死亡しているという状況でございます。こういう中にありまして、九月二十八日に東京地裁、十月四日に熊本地裁、十月十二日に福岡高裁、十月十八日に福岡地裁が続けていずれも勧告を出しております。これに対しまして、先ほど申しましたように、三者はこれを受け入れましたけれども、国だけが和解のテーブルに着くことを拒否しているわけですが、このことにつきまして長官はどのような見解をお持ちなのか。長官の見解は書類としてここにいただいてはおりますけれども、長官のお口から、なぜ国が今和解のテーブルに着けないのかということについてお考えをお示しいただきたいと思います。
#9
○国務大臣(北川石松君) ただいまの篠崎委員の御質問でございますが、水俣病問題につきましては、公害健康被害の補償等に関する法律によりまして、現在二千九百二十五名の患者の方々をそれぞれ認定いたしまして、公正な救済を進めてきたところでございます。ただ、ただいま御指摘のように、四つの和解勧告を受けまして、認定されていない方々に対する国の賠償ということもまた考えなくてはならない。このようなことを考えますときに、国は賠償責任がないこと、国の水俣病の判断条件は適切なものであることを国としては主張いたしておりまするが、これらの争点を踏まえまして現在七十五名の判決を裁判所に求めておるところでございまして、この判決をいただいた上で判断していきたいと考えております。
 この意味におきまして、現時点におきましては和解勧告に応ずることは困難であるということを申し上げた次第でございます。
#10
○篠崎年子君 今の長官の御答弁の中で、七十五名の判決が出た段階で国としては考えていきたいということでございますね。このことについては後でまた質問したいと思いますけれども、そうしますと、今、国の見解を出されました、「水俣病訴訟に関する国の見解について」というこの文章ですね。これを出されるまでの間に、環境庁がそれぞれ関係をする厚生省あるいは農林水産省、通商産業省に働きかけて閣僚会議を持たれたと思うんですけれども、その閣僚会議の席上ではどのようなお話し合いがなされたのでしょうか。
#11
○政府委員(山内豊徳君) 経緯にも関係しますので私から御答弁をお許しいただきたいと思います。
 四省庁でまとめさせていただきました国の見解
は、先週の二十六日付でまとまったものでございますが、これは裁判の上で被告となっております環境庁を含めての四つの役所の責任でまとめたものでございます。もちろん、訴訟に関することでございますから、法務省にも十分逐一御相談してまとめたものでございます。それを今先生がお話しのございました水俣病に関する関係閣僚会議の場に、私から報告させていただいたものでございます。
 この報告については、もちろん閣僚会議で御聴取をいただいたわけでございますが、今先生の御質問の中に、閣僚会議でこの見解を決めたのではないかというふうに私ちょっと受け取らさせていただいたような表現がございますが、そこはちょっと切り離してお考えをいただきたいと思います。もし四省庁の取りまとめの経過であれば私からその経緯はもう少し詳しく説明させていただきたいと思いますが、今申しましたように、関係閣僚会議では、この四つの役所でまとめた国の訴訟に関する見解を聴取していただいたということでございます。
 もう一つは、その同じ閣僚会議の席で、環境庁長官、私どもの大臣から、水俣病の認定を受けていないけれども御自分では水俣病に罹患しているんじゃないかという健康不安を抱いていらっしゃる方が少なからずあるということ、それに対する健康不安の解消策について環境庁として所要の方策の検討を進めたいということを閣僚会議の場で御発言いただきまして、これについては特に閣僚会議で申し合わせたとか決議したということではございませんが、御列席の閣僚会議の御理解をいただいて、これから環境庁としてその健康不安解消策の立案と申しますか方策づくりを始めなければならない、始めたいと思っている段階でございます。
#12
○篠崎年子君 そうしますと、今の御答弁の中にありましたように、環境庁としてはこれからも水俣病についてはいろいろなことを考えていかなくちゃいけない、そういうことだと思いますけれども、この「水俣病訴訟に関する国の見解について」という一番初めのところに、責任論、病像論において大きな隔たりがある、こう述べられておりますね。これらに関する当事者双方の主張には大きな隔たりがある、こういうことになっているようですけれども、大きな隔たりというのは一体どういうことなんでしょうか。
#13
○政府委員(山内豊徳君) 今御指摘のように、二十六日付でまとめさせていただきました四省庁の見解の中に、大きく分けて、国の責任論、それからもう一つは、訴えていらっしゃる原告の方々が水俣病の患者さんであるかどうかという病気に関する判断、病像論について双方の主張に隔たりがあるということでございますが、これは私は、わかりやすく申し上げますと、主張に大きな違いがあるというふうに御理解いただきたいと思います。
 まず、国の責任論につきましては、訴えておられる原告の方々は、各省の関係法規が幾つかに分かれておりますが、またそれぞれの意味合いが少し違った点がございますが、それぞれの法規の発動について国に権限の不行使と申しますか、権限を使わないことの落ち度があったという点を主張なさっていらっしゃいますが、国側としては、この点は、それぞれの法規の趣旨、目的、あるいは当時の監督行政庁が知り得た知見に照らして発動しなかったことには落ち度はないという主張をしているわけでございますから、その意味では、国の責任があるかないかという意味での主張の隔たりということでございます。
 それから、もう一つの争点となっております訴えておられる原告の方々が水俣病の患者さんであるかどうか、水俣病による被害を受けた方であるかにつきましても、私どもは、先ほど大臣が申し上げました現行の公害健康被害の補償等に関する法律によって認定していることは、医学に基礎を置いた適切な病気についての判断であると主張し、考えておるわけでございますが、訴えていらっしゃる方は、そうではない、その判断基準で認定を受けないものでもこれは水俣病の病気であるという、そういうことで御主張なさっているわけでございますので、いわば責任があるかないか、病気にかかっていらっしゃるかいらっしゃらないかという主張の大きな隔たりということを冒頭にまとめさせていただいた次第でございます。
#14
○篠崎年子君 そうしますと、まとめて言いますと、すなわち国の責任論と、それから一つは水俣病の病像についてということで大きな隔たりがあるということでございますね。
 そこで、まず病像論についてお尋ねをしたいと思いますけれども、今もお話がありましたように、水俣病につきましては、それを認定する場合の一つの基準があると思うんですね。先般の百十八国会の環境委員会の中でもこのことについてはいろいろ議論をしたところでございますけれども、国としては、水俣病の病像論という場合にはどういうものを考えていらっしゃるのですか。
#15
○政府委員(柳沢健一郎君) 国の方の水俣病に関します判断基準といたしましては、昭和四十六年の事務次官通知あるいは五十二年の環境保健部長通知等の中でもって水俣病として判断するための判断条件が詳しく述べられているわけでございます。国の方では、その判断条件に基づいて各県の認定審査会が水俣病であるかないかということを判断するというふうに考えております。
#16
○篠崎年子君 大変簡単な御説明でしたので、ちょっとわからないところもあったんですけれども。
 今度、東京地裁が勧告を出しました。そこの中に、病像論のことついてだろうと思うんですけれども、こういうくだりがあるわけですね。
 そもそもの出発点において既に当事者間の見解の対立が顕著である。どのような症状があればどの程度水俣病の蓋然性があるものと判断できるかという問題は、現在の医学的知見に照らし冷静かつ科学的に判断されるべき問題であり、対象者の症状が比較的軽度になっていくにつれ、最終的に正常人又は類似症候をもつ他の疾患との鑑別が困難になっている
というふうに言っております。
 初めのうちは大変劇症の方々が多かった。しかし、長い年月、既にもう三十四年以上経過しているわけですから、少し症状が薄れた方もあるかもしれませんし、あるいは外見だけでは見ることができないかもしれません。しかし、そういう場合にでも、自分は水俣病ではないだろうかと思っている人たちにとっては、自分の今までの生活歴、どこに住んでいたかとか、あるいはどういうものを食べていたかとか、長い間そこに住まっていたかとか、そういう生活歴について考えてみた場合に、やはり自分は水俣病ではないだろうか、こういうふうに思われるのが当然ではないだろうかと思うわけですね。
 それを、今もお話がありましたように、昭和四十六年の通達、このときにはもうとにかく疑わしきものは水俣病にしてやろうではないか、こういう通達ではなかったかと思うんですけれども、五十二年以降になりましてから、二つ以上の症状が重なっていなければというふうに少し基準が厳しくなってきたんじゃないか。そのころから水俣病の認定患者というものが非常に少なくなってきている状況を考えますときに、私は、この水俣病の病像論についてやはり環境庁としてもう少し考え直すべきときではないだろうかと思うのですが、お考えはいかがでしょうか。
#17
○政府委員(山内豊徳君) まず私から、九月二十八日の東京地裁の和解勧告において裁判所の方で医学の判断基準についてお触れになったことに関して御答弁させていただきたいと思います。
 確かに、今お読み上げになりましたように、両方に見解の対立が顕著であるということをお認めの上で、かつまた対象者の症状が比較的軽度になっていくにつれて、なかなか正常人とか類似症候を持つ他の疾患、水俣病でない病気との鑑別が困難になっていることは理解できると。これは、私どもは国の主張をお認めいただいている面があるんじゃないかと思って読ませていただいているのでございます。
 ただ私ども、それに続きまして、裁判所がでは
どういう鑑別判断をすべきかという点については実はこの勧告ではお触れになっていないわけで、これはもう当然のことだと思います。非常に中立的なお立場で裁判官が和解を勧告なさった文章でございますから当然だと思いますが、その点については、「どこかの時点でその時点における医学的、科学的知見を冷静にみつめつつ、話し合いによる解決を図るほかはないように思われる。」と言っていらっしゃるわけでございます。これは判決じゃございませんから、一字一句を今議論してもかえって当たらないのかと思いますが、そのあたりが実は私どもは、国の見解でもお示しいたしましたように、水俣病にかかっていらっしゃるかいらっしゃらないかという判断は、医学的根拠を離れて当事者の交渉とか話し合いによって、何か中間的なところといいますか、基準を設け得るといった性格ではないのではないかと。これは、単に私どもが訴訟において主張しているだけではなくて、医学界の重立った方に御相談しましても、医学の考えとしてそこは話し合いで医学の根拠を離れた基準というわけにいかないというのが私どもの理解する医学の通説になっておるわけでございます。
 このことを裁判所としてはおわかりだからこそ、さらに続けて、「当裁判所としては、」「水俣病研究に携わってきた科学者が紛争の解決のために英知を示すことを期待するものである。」とは言っていらっしゃるのでございますが、私どもがこの判断基準の、今部長が御答弁申し上げましたようないろんな経緯の中で、いろんな専門家の御意見をいただきながら今日まで来た中では、そういった今の判断基準と別のといいますか、違った中間的な基準の議論はいただいていないわけでございます。
 この点、引き続きまして環境保健部長の方から御答弁をお許しいただきたいと思います。
#18
○政府委員(柳沢健一郎君) その判断基準でございますけれども、五十二年の環境保健部長通知の後、昭和六十年に医学の専門家に集まってもらいまして、さらに再度そこで確かめているわけでございます。そして、この環境庁の判断基準というものが正しいといういわばお墨つきをいただいているわけでございます。
 現在、御指摘のように、水俣病の患者さんというのは初期のように非常に典型的な急性、劇症型の患者さんというのは少なくなってきておるのは事実でございます。そういうことに対応いたしまして、認定審査会の審査も、水俣病であるか水俣病でないかというぎりぎりのところでもって判断している、もうこれ以上緩めたら水俣病でなくなるというところでもって水俣病であるか水俣病でないかということを判断しているわけでございます。そのようなことでございますので、私どもといたしましては、現行の判断基準が正しいというふうに考えておるところでございます。
#19
○篠崎年子君 いろいろな症状が出てくるかと思いますね。例えば年をとってまいりますと、視野も狭くなってくる人もいるでしょうし、手が震える人もいるでしょうし、あるいは歩行困難な人も出てくるかもしれません。しかし、一つの地域に長く住んでいて、そして水俣の魚をたくさん食べていた、そういったような過去の生活歴がある人の中にそういう症状があらわれてきているとすれば、それはやはり水俣病と認定してあげるべきではないだろうかと私たちは思うのですけれどもね。その辺は皆様方との大変考えの違いで平行線をたどっているような気がしますけれども、やはりそこらあたりのところを国としても考えていただかなければいけないんじゃないだろうかと思うわけです。
 そこで、続けまして、同じ熊本地裁の勧告の中にこういう文があるわけです。六ページの上の段の終わりの方ですけれども、
  ここで、我々は、水俣病の病像解明に多大の貢献をなし、最後まで水俣病の認定は症状の組み合わせが必要であると厳格に主張されていた学者の方が、ごく初期の論文ではあるが、水俣病患者の診断の実際に当たって「これらの例で水俣病と診断しないならば、果たして何と診断できるか疑問であり、不明の神経疾患とするには数が多すぎると思う。」
こういう論文を書かれているわけですね。それは非常に初期のころですけれどもね。しかし、やはり学者の方がそういうふうに考えていらっしゃるということは、先ほども申しましたように、くどいようですけれども、ある一つの地域にそういう症状の方が集中をしている。しかも、その時期は何十年という長い期間ではなくて、ある一定の短い期間の中にそういう症状の人があらわれたんだと。それが今、日数がたって少し薄れてきてはいるけれどもということを考えますと、そのときに住んでいた人々の生活歴等を考えた場合には、少し病像が薄れてきているとはしても、やはり水俣病に認定すべきではないだろうかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
#20
○政府委員(山内豊徳君) 今先生が御指摘になりました熊本地裁の十月四日付の和解勧告の文章の二の中の件でございますが、これは実は私もあの勧告をいただいた際よく読みまして、かつ引用されている医学論文も全文読ましていただきましたが、率直に申し上げますと、この部分は少し私は引用が不適切ではないかと思っております。
 と申しますのは、今も先生おっしゃいましたように、かぎ括弧で引用してある「これらの例で水俣病と診断しないならば、」と言いますと、この文脈の中では認定から外れている人、棄却されている人のことを触れているように読み取れるわけでございますが、この論文は、もう亡くなられました椿教授という方の論文であることはほぼ明らかでございますが、その論文の原文を読みますと、まずこのくだりで椿教授が言っておられる、頭の中に置いておられるのは、「最近新潟で認定された水俣病患者のうち、」のことでございます。そういう方のうちに、いろんな症状の組み合わせがほかの地区と比べると少し違うと。ほかのところでは数%、一〇%あるんだけれども、新潟で水俣病と認定された患者さんの場合は、例えば言語障害の併存率が少ないとか、そういう問題があるということが書いてありまして、その次の文章でございますが、「われわれが水俣病を過剰診断しているのではないかという不安もあるが、」という文章がありまして、「これらの例で水俣病と診断しないならば果たして何と」というくだりでございます。
 つまり、先生が公健法の運用として、先生個人というよりもこれは新潟県の審査会になりますが、認定している患者さんの中に症候群の組み合わせが少ない方がいらっしゃるけれども、そういう方をじゃ取り込み過ぎたんだろうか、過剰に診断したんだろうかという不安もあるが、しかし椿教授が認定なさったように、この方々を水俣病だと判断しないならば何とすべきだということを言っておられるわけでございますので、この論文で病像論について原因不明と放置するには余りにも大きな現実があるということとはつながらないと私は思っております。その意味で、このかぎ括弧の中に囲まれました引用は不適切ではないかと考えております。
#21
○篠崎年子君 あなたは不適切だというふうにとられますけれども、私どもが考えてみますと、やはりこのことについては水俣病にかかわる大変根幹的な問題ではないだろうかと思って、ちょっと私は承服いたしかねるわけです。
 ところで、水俣病の病像につきまして皆さんが認定をする認定をしない、そういうことで争いが起こっているわけですけれども、こういう一つの文章があるわけなんです。ちょっと時間をとりますけれども、読み上げさせていただきたいと思います。これは東京訴訟の出水原告団の団長の宇藤さんという方の話なんです。
  私たちは、なぜ、東京の裁判に立ち上がらなければならなかったのでしょうか。
  私たちは、昭和三四、五年ころから水俣病の症状に苦しめられてきました。四六時中、たえまなく続く手足のしびれ、痛み、けいれん、頭痛、足のふらつきなどに苦しんできました。
  私は漁をするのが生きがいでした。しかし、手足のしびれ、足のふらつきなどのため、うたせ漁もできなくなりました。そして、生活のため、やむなく、関東に出稼ぎに出ました。でも、仕事が人並みにできず、何度も辛い思いをしました。
  今、漁に出ても、一人前ではありません。
私は家内と一緒に生活をして、一緒に同じものを食べてきているんだと。その人が
 家内と一緒に認定申請をしましたが、家内は認定されたのに、私は棄却されました。今でも保留中です。同じ物を食べ同じ症状に苦しんでいるのに、です。
  私たちは、認定された人たちと同じ被害を受けています。自分がまちがいなく水俣病だと思うから、認定申請をくりかえしてきたのです。
 ところが申請しても認められないことから、ある人からはにせ患者だとか、そんなにまでしてお金が欲しいのかと中傷されます。しかし、私は裁判を続けたいと思います。私のこの願いは日がたつにつれて出水の人たちにも理解をされてきましたという切々たる訴えがあるわけです。
 この中にありますのは一つの例ですけれども、このように同じように生活をしていながら、一方では認定患者になり一方では認定が却下されている、こういう状況があるからこそ今水俣病の人たちは訴訟に入ったわけです。そして、その訴訟の中で自分たちがこういうふうに苦しんでいるんだということを訴えてきているわけなんですね。決してお金が欲しいとかなんとかいうことではないと思います。
 また、ある方のお話の中でも、私たちは決してお金が欲しいのではありません。もう年をとってまいりました。あと命も長くないと思います。ですからお墓に着物を着せていただいても何にもなりません。生きているうちに国からの補償を得たい、認定を得たい、それが私たちの願いなんです。こういうことを訴えられているわけですね。
 このことについて考えますと、皆さんは確かに科学的な専門家でもいらっしゃるでしょうし、その道の専門家かもしれません。しかし、皆さん方の心の底に一片の人間愛というものがあれば、人間愛だけで国の政治をしていったらお金が幾らあっても足りないとおっしゃるかもしれませんけれども、中東に四十億ドルというものをさっと出せる、そういったようなお金があるならば、なぜ自分の足元で苦しんでいる人たちにそのお金を出さないのか。私たちはそういうことが非常に今の日本の国の中で残念なことの一つだと思うんですけれども、再度皆さんのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#22
○政府委員(柳沢健一郎君) 今先生から切々としたお話を承ったのでございますけれども、確かにそういう方がある神経症状を持って苦しんでおられるということにつきましては十分理解するわけでございますけれども、一方、先生にぜひ御理解いただきたいのは、同じうちに住んでいて全く同じものを食べても同じように発病しないというのがこれが一般的な中毒、あるいは水銀中毒も含めましてそういったようなことの宿命といいますか、それも事実でございます。同じものを食べたから一〇〇%同じように発病するということでないということにつきましても御理解をいただければというふうに考えております。
#23
○篠崎年子君 大変おかしなことをおっしゃると思うんですね。私は、その人は症状が出ていないとは言っていないんですよ。同じようにしびれがある、足のふらつきがある、そういったようなことなのに、奥さんと一緒に申請をしたけれども、奥さんは認定されて自分は却下された。例えば、ちょっとこれ話を聞いたんですけれども、同じような家庭生活をしている人がしょうちゅうを飲んだと。しょうちゅうを飲んだけれども、一方の人はすぐに酔っぱらってしまって一方の人は余り酔っぱらわなかった。今のお話はちょうどそれと同じように、同じように水銀が体の中に入ったけれども、一方は水銀に強かったから水俣病にならなくて一方は水銀に弱かったから水俣病になったんだと、そんなふうに受け取られるような今のお話で、私は承服しかねますけれども、どうでしょう。
#24
○政府委員(柳沢健一郎君) 各県にございます認定審査会は、先生が御指摘になったようなそういう症状でありますとか、あるいは申請してこられる方々の疫学的な、魚をどのくらい食べたとかいうようなそういうことを十分に勘案した上で、豊富な学識と豊かな経験の専門家が判断して最終的に水俣病であるかないかということの判断をするということで御理解をいただきたいと思います。
#25
○篠崎年子君 このことについていつまでもこだわっているわけにいきませんので先に進みたいと思いますけれども、今豊富な学識と豊かな経験とというふうにおっしゃいましたね。学識にもいろいろあると思うんです。学者の方々の中にも、例えば今の国連平和協力法案について学者の方の御意見を聞いても、いやそれは憲法違反にならないよという人がいる一方で、絶対に憲法違反だからこれを許してはならないというふうに学識経験者の中にもやっぱり二つの考え方があるわけですから、その二つの考え方をどういうふうに話し合って決めていくかということが大事であって、学識経験者が言うことだからすなわちそれはいつでも正しいとは言えないと思います。
 次に、責任論に入っていきたいと思いますけれども、先ほどのお話の中で、国の見解では、この場合の国の責任は国民の福祉の向上に努めるという国の行政上の責務とは性格を異にするもので、規制権限の根拠はなく、この件についての賠償責任はないと考えているというふうに書かれておりますけれども、本当にこのことで原告を納得させることができるとお考えになりますか。
#26
○政府委員(山内豊徳君) 今先生がお読みになりましたところは、今訴訟で争われている国の責任とは何であるかということを国の立場でできるだけわかりやすく御理解いただこうと思って書かれた文章でございます。したがって、普通国の責任といいますと、単に国家賠償法でお金を払う賠償責任だけではなくて、いろいろの行政を進めていく政策的な責務を持った国という言葉で責任とおっしゃる方もありますので、この訴訟で議論になっているのは、そのような国民の福祉の向上に努めるというそういう性格の行政上の責務を責任といって私どもが説明しているんじゃなくて、国家賠償法上の賠償、お金を支払う、そういう法的な責任のことを今ここで申し上げているんですということをわかりやすく説明したつもりでございまして、できるだけ多くの方にその点を御理解いただきたいと思ってまとめたつもりでございます。
#27
○篠崎年子君 第三次訴訟の熊本地裁の昭和六十二年三月三十日の判決、それからなお東京高裁の昭和五十二年六月十四日の判決、これは刑事判決だと思いますけれども、この中で、「各種の取締法令を発動することによって、」、ちょっと中略いたしますが、「被害の拡大を防止することができたであろうと考えられるのに、何らそのような措置に出た事績がみられないのは、まことに残念であり、行政、検察の怠慢として非難されてもやむを得ないし、この意味において、国、県は水俣病に対して一半の責任があるといっても過言ではない。」というふうに書かれているわけです。
 そこで、お尋ねをいたしたいと思いますけれども、昭和三十二年七月二十四日、熊本県が設置しました水俣奇病対策連絡会がその当時の厚生省に対しまして照会を出しているわけですね。それは、水俣湾内産の魚介類は食品衛生法四条二号に言う有毒なまたは有害な物質が含まれ、または付着しているものに該当する旨の知事告示をしようとしております。そこで厚生省にお伺いをいたしますが、これでよろしいかと、こういう文書を出しているわけですね。これに対しまして、厚生省はどのような答弁書を回答されたのでしょうか。
#28
○説明員(野村瞭君) お答えを申し上げます。
 先生御指摘になりましたように、昭和三十二年八月でございますが、熊本県から水俣湾の魚介類につきまして、食品衛生法第四条第二号の規定に
該当するものとして強制措置等がとれないかという趣旨の照会を厚生省が受けているところでございますが、これに対しまして、厚生省でも慎重に検討をいたしました結果、同年の九月でございますが、当時水俣病の原因物質が不明であったこと、また有害魚種、その漁獲場所等の特定等が困難であったことなどから、食品衛生法に基づく強制的な措置をとることは困難であるという趣旨の回答をいたしておりますが、同時に、危険性が疑われる魚介類の摂食は避けるべきであるという考え方から、熊本県に対しまして水俣湾の魚介類の摂食が行われないよう行政指導を継続することを回答通知の上で申しておるところでございます。
#29
○篠崎年子君 大変前後矛盾している御回答ではなかったかと思うんですね。初めの方では、「水俣湾内特定地域の魚介類を摂食することは、原因不明の中枢神経系疾患を発生する虞があるので、今後とも摂食されないように指導されたい。」というのは一項目ですね。そして二項目目には、「然し、水俣湾内特定」と、今おっしゃったようなことで「食品衛生法第四条第二号を適用することはできないものと考える。」、こういうことになっているから、これは一と二とは矛盾しているんじゃないでしょうか。
#30
○説明員(野村瞭君) 私どもは、その危険性について一定程度の疑わしさはあるということで、行政指導をその以前から熊本県に対して行ってきたわけでございますが、強制措置をとるほどの根拠、理由はないという判断でございまして、そういう意味からいいまして、先生御指摘になりましたような矛盾はないというように考えております。
#31
○篠崎年子君 では、そのときに厚生省の方々は何人水俣の方の状況を視察においでになったんですか。
#32
○説明員(野村瞭君) 突然の御質問でございまして、当時の状況についてただいまここにお答えできるだけの資料を持ち合わせておりませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
#33
○篠崎年子君 御勘弁いただきたいと言われましたけれども、ちょっと勘弁するわけにもいきませんので調べてみていただけませんか。
#34
○説明員(野村瞭君) 御指摘の点につきまして調べさしていただきます。
#35
○篠崎年子君 じゃ、突然で申しわけありませんが、長官は水俣においでになったことございますか。
#36
○国務大臣(北川石松君) まだ行っておりません。
#37
○篠崎年子君 突然、事前の通告をしておりませんでしたのであれですけれども、その当時の新聞などはごらんになっていたと思うんですね。新聞にどんなふうな記事が出ていたかということぐらいは皆さん御存じでしょう。どなたか御答弁いただきたいと思います。
#38
○政府委員(山内豊徳君) 今先生がおっしゃいました新聞報道というのは、当時水俣病はたしか奇病と言われていたと思いますが、それに関する食品衛生上の国と県のやりとりに関する報道でございますれば、ちょっと私は具体的にその記事を今念頭に置くほどは記憶していないのでございます。
#39
○篠崎年子君 今私が申し上げましたのは国と県とのやりとりではなくて、その当時の水俣ではいろんな状況が生まれているわけですね。それが新聞に報道されているんですけれども、その当時の状況は御存じでしょうかとお尋ねしたわけなんです。
#40
○政府委員(山内豊徳君) その時点での報道については、私はちょっとじかに拝見したり記憶に残っていることはございません。
#41
○篠崎年子君 私との年齢の開きが大きいので御存じないかもしれませんけれども、私はその当時長崎県の佐世保に住んでおりまして、熊本県のすぐそばでしたから新聞を見ておりました。
 まず初めに出てきたのは、水俣で何かおかしな病気がはやっていると。例えば猫が道端で踊っている、あるいは猫が自殺するんじゃないか、海の中に飛び込んでいる、そういったような猫の狂い死にということが先に出てきたわけですね。その当時、だから熊本県の衛生課の人がちょっとおかしいということでいろいろ調べ出して、それから事が起こったわけですけれども、初めのうちは猫ですね。それからそういう飼料を食べる、魚類を食べる豚とか犬とかというものになったんですけれども、そのうちに今度は人間が歩きながら突然に足がしびれて歩けなくなってくるとかなんとかいって、水俣の辺ではそれこそ大恐慌を来したということが新聞に大きく報道されていたわけです。これは昭和二十七、八年ごろだったと思いますので、ここにいらっしゃる皆さん方は既にもう成人に達していらっしゃるころだから、政治にきょう携わっているあるいは行政に携わっている方々はそれを十分ごらんになっていたんじゃないだろうかと思うのですが、さっきのお話の中でそんなもの見たこともないというふうにおっしゃるので、大変残念でならないわけです。
 しかし、そのように、その当時水俣では大恐慌を起こしたわけですね。そして、その原因が何であるかということがわからなかった。わからなかったけれども、やはり魚からくるということだけはわかったので、この魚の漁獲を禁止するようにしなくちゃいけないんじゃないだろうかということでこういう文書が出されたと思うんですね。ですから、残念なのはどうして国がそのときに直接そこに行って調査をされなかったのか、そしてこの指導についてもうちょっと厳しい指導ができなかったのか。何でもかんでも科学的な根拠がなければ指導ができないというのではなくて、実情を見ての指導ということもできるんではないかと思います。これはもう過ぎ去ったことですから言っても帰らないことですけれども、これから先のこともありますので、今後こういうふうな問題が起こったときには、ただ一片の法令にだけ頼ることなく、実際に御自分の目で見、考え、そして足で調べる、そういうふうなことで環境庁としてはそこに取り組んでいただきたいと思うんですけれども、これは要望です。
 次に、そういったようにして、今お話がありましたように国は責任がない責任がないと、ほども責任論の中でその当時の法令がどうだこうだとおっしゃったんですけれども、やはりその前にこれに規制をできるような法令が幾つも出ているわけでしょう。例えば水産資源保護法というのもありましたし、あるいは食品衛生法の中にもこれがある、さっき申しました。あるいは工場排水等の規制に関する法律とか、公共用水城の水質の保全に関する法律とかというのがやはり昭和二十六年から三十三年にかけて公布されているわけですね。ですから、こういうところをそのときにどうして使えなかったのかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
#42
○説明員(吉崎清君) 水俣病訴訟におきます原告の主張は、水産庁は機関委任事務である漁業法、水産資源保護法及び県漁業調整規則に基づき漁業権の取り消し等による漁獲禁止、工場の排水規制などの措置を熊本県知事がとるよう適切な指導、監督を行うべきであった。それにもかかわらず水産庁はこれを怠り、原告らを水俣病に罹患せしめたのであるから国家賠償法により賠償責任を負うというものであります。
 水産庁としましては、次の理由から両法の発動はできなかったと考えております。
 一つは、漁業法による漁業権の取り消し等の権限が行使できますのは、漁業調整等に必要な場合に限られておりまして、人の健康障害を防止する目的では行使できません。もう一つは、水産資源保護法及び県漁業調整規則に基づく排水規制等の権限につきましては、水産資源の保護、培養を目的とするものでありまして、健康障害の防止のために行使できるものではございません。
 以上でございます。
#43
○政府委員(武智敏夫君) 私からは旧公共用水域の水質の保全に関する法律についての責任論についてお答えいたしたいと思います。
 当時の水質保全行政でございます。三十一年ごろから三十四年ぐらいが訴訟では問題になっておるわけでございますが、当時はまだ経済企画庁が
所管しておったわけでございますが、環境庁が四十六年にできた際に引き継いだものでございます。その中におきまして、原告といたしましては、各訴訟におきまして国、当時の経済企画庁でございますが、三十四年十一月ごろまでにこの水質保全法に基づきまして水俣湾水域を指定水域に指定し、同水域における水銀に関する水質基準を設定して排水規制を行うべきであった、にもかかわらずやらなかったことは法規の不行使による違法であって、したがって国家賠償法に基づく損害賠償責任があるというのが原告団の主張でございます。
 これに対しまして、環境庁といたしまして当時、昭和三十四年当時でございますが、まず一つは、先ほど来お話が出ておりますように、水俣病の原因物質、当時いろんな説があったようでございます。一つは、ある種の有機水銀説というのが熊本大学から出されておったわけでございますが、そのほかセレンの説ですとかあるいはタリウムの説とかいろんな説が提唱されておりまして、原因物質が当時としてはいまだ確定してなかったということが一つでございます。それからもう一つは、この水質保全法と申しますのは、水質保全に関する我が国で初めての法律でございましたし、この法律が施行されましたのは三十四年三月でございます。原告団は三十四年十一月ごろまでにはすべきであったという議論でございますけれども、当時法律が施行された直後でございまして、新たに規制すべき水域の指定なりあるいは水質基準の設定等について全国的な調査検討を進めておる状況であったというようなことから、現実的には規制できなかったわけでございまして、そういう二つの理由等から損害賠償責任はないというふうに考えておるところでございます。
#44
○説明員(若杉隆平君) ただいまの御質問に補足的に説明をさせていただきます。
 通産省の関連に関しましては、法律的には工場排水等の規制に関する法律に基づく規制権限を行使すべきだったのではないかという原告からの主張でございますけれども、今ほどの水質保全局長からの御説明と関連するわけではございますが、この工場排水規制法につきましては、工場排水等を政令で定める特定の施設から排出するときの施設の設置及び処理方法を規制するものということで、昭和三十四年から施行されているものでございます。この場合、対象とされます排出先の水域につきましては、今ほど水質保全局長から御説明ありました水質保全法で定めます指定水域とされておりまして、またその際の水質基準は同じく水質保全法で定められていることになっているわけでございます。
 このように、当時通産大臣が法施行に責任を有しております工場排水規制法の不知火海沿岸地域への適用につきましては、水質保全法の手続を経て行われるという仕組みになっていたわけでございますが、本件の不知火海沿岸が水質保全法の指定水域に指定されたのは、水質基準が設定された昭和四十四年になるわけでございます。
 以上の事情がございまして、工場排水規制法の権限の不行使につきましての国の行政責任ということについては、我々通産省としましては当時の行政責任はなかったというふうに考えている次第でございます。
#45
○篠崎年子君 日本の国にはたくさんの法律ができております。また、政令等もできているわけですけれども、これはだれのためにつくっているのかというと、国民の生活を守るためにそういう法律があるわけですから、やはり国民の生活を守るためにその法律が使われていかなければならない。科学的な根拠とかなんとかいろいろなことがあるかと思いますけれども、やはりその法律を生かすのは皆さん方であり、また私たちでありますので、今後も、今お話がありましたように、漁業関係法規でもあるいは水産庁の関係の法規でも水質保全の法規でも、その当時はまだできていなかったとか、あるいは十分な資料を得られないならばそれを簡単に施行することはできない、あるいはそれを当てはめることはできないんだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、やはりそこのところに例えば一人の人の死亡であったにしても、その死亡がおかしいと思ったならばそれを徹底的に究明して今後再びそういう過ちを犯さないようにしなければならない、そういったように法律を使っていただきたいものだと思うわけです。
 次に、認定制度のことについてお尋ねをしたいと思います。
 この認定制度については、先般の百十八国会の中でも論議をいたしましたように、ここ五年間でわずかに五名しか認定されていないというような状況で、認定制度はもう今その機能をなしていないのではないかというふうに思っているわけです。国は今後、あれの中で「現時点において」という言葉が入っておりましたね。「現時点において」ということは、これから先どういうふうに状況が変わっていけば訴訟の和解のテーブルに着くか、あるいは国としての何らかの施策をするかということについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
#46
○政府委員(山内豊徳君) 私ども初めに東京地裁からの勧告を九月二十八日にいただいたわけでございますが、東京地裁の裁判は御案内と思いますけれども、昨年十二月に七十五名の方の患者の審理についてはこれを結審して、その勧告文の中にも、現在判決言い渡しに向けて鋭意準備中であるということも裁判所で触れていらっしゃるわけでございます。私どもとしましては、先ほど先生が引用なさいました熊本地裁での熊本三次訴訟の一審判決が、実は国の責任について私どもの主張をほとんど取り入れていただけず、私どもとしてはどうしても承服しがたい国の責任論の判決でございましたので、そのことが福岡高裁への控訴の理由でもあったわけでございます。そういう経緯もございましたので、東京地裁では私どもとしましてもさらに入念に主張したり弁論したりしておりましたものですから、ぜひ結審して準備中とおっしゃる判決はいただきたい。その意味で、現時点においては応じかねるということを環境庁として申し上げてはございます。
 ただこれは、じゃ逆に判決が出ればすべてそれに一切委ねて従うのかとおっしゃるのであれば、それはやはりその判決の内容を見て判断させていただかざるを得ないのでございますけれども、私どもとしましては、国の責任論、それから二番目の病像論につきましても十分に主張した裁判でございますので、判決という形での司法的な御判断をぜひいただきたい。その判断を見させていただいて、我々として判断していくことは何かをまた検討していきたいという意味で、それをぜひお出しいただきたいと期待している。このことは、先ほど来言っております二十六日付の四省庁の国の見解でもその意味で申し上げているつもりでございます。
#47
○篠崎年子君 それでは再度お尋ねしますけれども、ちょっとよくわからないところがあったんでお尋ねしたいんですけれども、東京地裁の七十五名の方の判決が出ればその時点で考えるというふうに受けとめてよろしいですか。
#48
○政府委員(山内豊徳君) 今申しましたように、その判決をいただいて内容を十分見させていただいて、どのような対応があり得るかについて検討していきたい、そう考えておるわけでございます。
#49
○篠崎年子君 そうすると、その判決は大体いつごろ出るとお思いになりますか。
#50
○政府委員(山内豊徳君) 今申しましたように結審していただいたのが昨年十二月でございますので、これは別に決まりがあるわけではございませんけれども、一年あるいは一年何カ月かでいただけるのが従来の裁判の進行の例でございますので、私どもとしましては、何月に期待するということは私どもの立場で申し上げるのはいかがかと思いますが、昨年十二月以来、十二月になれば一年を経過するという意味でそれにおくれても何カ月かという範囲内にいただけるんじゃないか、そういう期待と申しますか、従来のほかの裁判の例なども参照してそういう時点を期待させていただいているところでございます。
#51
○篠崎年子君 水俣病訴訟の和解勧告について出されている文の中に、これは熊本地裁ですけれども、こういったようにして第二陣、第三陣と訴訟がされている。それでその地裁の中で判決を出します。ところが、その判決がその地裁の判決だけで終われば――今もおっしゃったように、東京地裁の判決、七十五名の判決が出たその時点で考えるとおっしゃるけれども、しかし、それで承服はいたしかねるというのでまた高裁に持っていく。高裁でまた判決が出たら、いや、やはりこれは不服でございますからもう一つ最高裁まで持っていきたいと思いますということにならないという保証はないわけですから、これはいつまでたっても切りがないということではないでしょうか。
 そこで、四つの裁判所が、もうこれ以上待てないという患者の声を聞いてくださいと。私たちはもう高齢化してまいりました、そこで今のような裁判を続けているといつまでたってもその裁判に切りがない。確かにおっしゃっているように、それぞれの人々は裁判が第一次裁判が不服であれば次の段階へ申し出るという権利はみんな持っているわけですから、それは行使するということにはなるかと思いますけれども、しかし、そんなことをしていてはもう間に合わないのではないか。というのは、もう水俣病が公式に発見されてから既に三分の一世紀、三十四年が過ぎているわけです。その前々から考えてまいりますと、もう半世紀近くの問題になってきている。このことについて日本の国がその裁判一つに決着がつけられない。しかも裁判所が和解の勧告をするのに、その和解の席に国だけが着こうとしないということについて、今の国のこういったような姿勢に対して私は大変残念でならないわけです。
 そこで、前の責任論のところでちょっと言い損なったんですけれども、歴代の環境庁長官、こういうことについて今までも再々この国会の中で論議があったと思うんです。その場合に、政治的責任はどういうふうにお考えになりますか、もうこうなってくると政治的責任において解決するよりほかにないではありませんかという御質問があったと思うんです。それにつきまして昭和四十六年の大石武一長官は、早期に十分な手を差し伸べ得なかったことに政府は責任を痛感しております、こういうふうに答えていらっしゃるわけです。それから昭和五十二年の石原慎太郎環境庁長官は、対策が後手後手に回った行政にも一種の不作為の責任があると思います、こういうふうに答弁をされているわけなんです。
 そういうことを考えてみますと、もう発生から三十四年たった今日、しかも四つの裁判所が続いて勧告を出している。そしてその勧告の中には、原告の皆さんが、被害者の皆さんが年をとってきて、高齢化してきてもうこれ以上私たちは待ち切れないのです、さっきも申しましたように、墓に布団を着せていただいてもありがたくありません、こういうことを言っているのを考えてまいりますと、ここでやはり環境庁として重大な決意をしていただく時期ではないだろうかと思うのですけれども、長官のお考えはいかがでしょうか。
#52
○政府委員(山内豊徳君) 大臣の御答弁の前に、ちょっと経緯だけ私から説明をさせていただきたいと思います。
 水俣病の発生につきましては、先生もおっしゃいますように三十一年でしたか、保健所において報告されたということがきっかけでございます。その意味では、病気の問題が先生おっしゃいますように地元で問題になり始めて少なくとも三十四年たったのは全く事実でございますが、私ども国に損害賠償責任があるのではないか、ありとして裁判で訴えられた初めての事件は、実は昭和五十五年でございます。それまでにもちろん、これをめぐりましてはチッソという企業の責任をどう考えるかという点で昭和四十年代にも裁判があったことは事実でございますが、国家賠償責任の請求は五十五年に提起されたのが初めてで、その後五十六年あるいは五十九年、六十三年に至るまで幾つかの訴訟がかけられているわけでございます。
 その意味で、私ども先ほどの熊本三次訴訟の判決もございますけれども、国の責任については、基本的にはこれからのことも含めまして国の行政のあり方の根幹にもかかわりますので、ぜひ判決の形での御判断をいただきたいということで、五十五年以来の国家賠償請求事件に一生懸命対応してきたわけでございます。その前提で、今の両大臣の御発言は国家賠償責任を訴える前の御発言であることを前提にいたしましてこの間の経緯を御理解いただきたいと思います。
#53
○篠崎年子君 長官の御発言の前にもう一つだけ伺わせていただきたいことがあるわけです。
 それは、水俣病につきましては現在大人の人たちはもちろんですけれども、生まれる前の何にも責任がなかった子供まで水俣病になって苦しんでいる。そういう人たちが今成人に達してきているわけですね。その胎児性水俣病の皆さんにつきましても、これから考えなければならない問題があるんじゃないかと思うんです。
 ここに、やはり原告の方のお話がちょっと出ているんですが、主人は漁師で漁に出ておりました、いつも私は元気な子供が生まれるようにと思ってたくさんお魚を食べておりました。ところが生まれてきた子供が胎児性の水俣病でした。そして今でも夫も、私も、そして子供も水俣病で苦しんでいるのです。このことについて私たちは何とかして皆さん方に救済していただきたいと訴えているところです、こういうふうな話をされているわけなんですね。
 こういったような一連のことを考えてまいりました場合に、今局長の方から、それはその時期が何とかかんとかというお話がありましたけれども、私はそういうことを抜きにして、やはりここで環境庁としての重大な決意を長官にお願い申し上げたいと思うんです。
#54
○国務大臣(北川石松君) 篠崎委員のたびたびの御質問の中でいろいろのことを聞かせていただきました。公害問題の意識が低いときに起きた原因不明の、当時は原因不明の難病にいたしましても、いろいろの今日までの過程を見ますときに、環境庁としてはそういう患者を救うということが使命であろうと私は思っております。
 ただ、このことを教訓にいたしまして今後このようなことは起きないように努力をしなくちゃいけない、そのことを踏まえまして私たちの責務というものを今後どのような形であらわすかということは、今後課せられた大きな責任であると同時に形づけをすることを考えなくちゃいけない、このように私は考えております。
#55
○篠崎年子君 最後にもう一つ。
 そうしますと、今お話がありましたように、確かにどのような形でかやりたいとおっしゃっておりますね。その形を何かの形であらわしていただきたいというのが皆さんの願いだろうと思うんてす。ですからその形を、いろいろな法律等に縛られるところもあるかもしれませんけれども、超法規的な考え方でもって今ここで何かできないかということではどうでしょう。例えば水俣病の患者の方々に対しましてお見舞い金を出すとかなんとかといったようなことも考えられないこともないと思うんですけれども。突然に申しましたので、御答弁はいただきたいのですが、お考えだけでも承らせていただければと思います。
#56
○国務大臣(北川石松君) 今の時点で、先ほども申しましたように判決もありいろいろございますが、今見舞い金という形でこれを処してしまうことは私は軽率であろうと考えております。ただ、このことについて前向きの姿勢で環境庁が当たらなくちゃならぬということは私は今痛切に感じております。
#57
○篠崎年子君 ありがとうございました。
 終わります。
#58
○清水澄子君 今篠崎委員がいろいろ質問いたしましたけれども、私もまず最初に、水俣病裁判の和解勧告を政府が一日も早く受け入れるべきであるという立場から質問したいと思います。
 それはもうだれしもおわかりと思いますけれども、今回の東京地裁を初め四つの裁判所が和解を勧告いたしました裁判の流れは、すべて一つの方
向で一致しておると思います。それは水俣病が公式に発見をされてから三十四年もたっているということ。それから被害者が非常に高齢化している。だから裁判中でも死亡者が後を絶たない。そしてまた、いかに医学的な論議を幾ら繰り返していてもそれは永久に終わらないであろう。そしてまた、既存の認定制度ですね、こういう制度だけで水俣病の紛争解決を図ることには限界があるということです。そしてそういう中で、これだけ多くの被害者を生んだ日本の歴史上類例のない水俣病がいまだに解決されていないということは非常に悲しむべきことである。こういう言葉はやはり私は日本じゅうの多くの人たちの胸を打ったと思うわけです。
 そしてさらに、病像や国の責任については双方の意見に対立がたとえあっても、生きているうちに救済してほしいという被害者の声に耳を傾けて、そして早期解決のために当事者が話し合いのテーブルに着く以外に道はないのではないか。私は、この勧告というのは人道的な見地から、そしてまた非常に道義的な立場からあえて勧告されたものであるというふうに受けとめております。私はこれは非常に正当な勧告だと思っております。ですから、全国の各中央紙、地方紙の新聞の論調を見ましても、こぞってこの勧告を支持する論調である。こういうことも非常に珍しいことだと思います。そこには、みんなが、私たちが二度とこういうことを犯してはならない、しかしそのことを反省するならば、やはり被害者を一日も早く救済しなければならないという考え方が国民世論となって一致しているんだと思います。
 熊本県も、チッソもこれを受諾いたしました。しかし、国がそれを拒否いたしましたとき、私は環境委員の一人として、本当にもう涙が出るほど苦しい思いをいたしました。環境委員として、私どもも今当選したのだから責任がないとは言えません。今この環境委員会としてどういう結論を出すかということで政府とともに一緒に苦しまなきゃなりませんし、そのためにこそ私たちはきょうの委員会で本当に勇断を持って、環境庁がいつも言っていらっしゃる、人に優しい環境というのがキャッチフレーズじゃございませんか。その人に優しい環境づくりというのがこれほど人に厳しくこれほど環境に対して怠慢であるということは非常に矛盾どころか、日本の環境行政の本当に何といいますか、本音をあらわしているようで私はとても我慢ができません。
 私はここで、今までもお答えは伺いましたけれども、大臣はこれら一連の和解勧告の中に貫かれているこの考え方、それを人間北川長官としてどうお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
#59
○国務大臣(北川石松君) ただいまの清水委員の非常に厳しい御質問を受けながら、私は、裁判所がそれぞれの考えから勧告を出されたと思っております。このことの重みは、国としても水俣病問題の早期解決に努力しなくちゃいけない、このように考えております。
 ただ、裁判で争われている点につきましては、やはり法に基づく国の行政のあり方の筋を通したい、こういうことも考えておりまして、現時点では受け入れられないということを表明した次第でございます。
#60
○清水澄子君 そしてなお、十月十二日に勧告の出されました福岡高裁の勧告の中には、国、県の責任についても一定の考え方が示されております。
 この中で、篠崎委員も質問いたしましたけれども、過去に行政がもっと早くこの状況に対応していればもっと被害を少なくできたかもしれないという行政責任の一端を指摘されていると思います。
 それは、例えば今一例を挙げれば、熊本県が設置しました水俣奇病対策連絡会が昭和三十二年、水俣病が発生したその翌年に、水俣湾の中の魚介類は食品衛生法四条二号によって、有毒な、または有害な物質が含まれ、または附着しているものに該当するという、こういうことで魚介類の漁獲と販売の禁止を行おうとしましたときに、これに対して厚生省は、この地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないと。このお答えは今皆さん方がそちらからお答えになっているのと同じ態度でございますけれども、このときにそういう疑わしきことは速やかにまず漁獲と販売を禁止しようという措置をとっておられたならば、私は、ここでもってこんなに大きな被害が出なかったんじゃないかと思います。厚生省は熊本県のこの法に対する適用を否定しましたけれども、そのことの事実は厚生省はお認めになりますか。
#61
○説明員(野村瞭君) 先ほど篠崎委員の御質問にお答えしたとおりでございますが、当時の状況として強制措置に踏み切る根拠はなかったということでございます。ただし、やはり国民の健康と生命を守るという立場から、漁獲禁止及び販売停止等の行政指導を継続的に行うよう熊本県の方に指示したということでございます。
#62
○清水澄子君 このときに今申し上げたような法的な措置を勇断を持って行っていたならば、今日のような被害をもっと食いとめられたのではないか、そういうふうにはお考えになるでしょうか。
#63
○説明員(野村瞭君) お答え申し上げます。
 そのときにそのような措置をとっていればこのように被害の拡大が生じなかったのではないかということでございますが、現時点から当時の状況を振り返ればそういうことも考えられるかもしれませんが、当時の状況としてそういうことを想定できなかったということではないかと思います。
#64
○清水澄子君 もっと人間的になっていただきたいですね。皆さんの顔引きつっていますよ。それは何というのか、本当に素直な、本当にそうしたらよかったなという思いとそうできなかったというこの乖離はわかるわけです、私も。けれども、ここでやはりあれをちゃんと処理しておけばよかったと、そういうふうな人間的な答えが私は欲しいと思います。
 次に、環境庁に伺いたいと思いますが、先ほども水俣病であるかないかということを医学的見地から認定することが大変難しい、こういうことを何度も繰り返しておられました。しかし、水俣病は我が国の公害、そして環境行政の原点の一つであると思います。そして、水俣病の被害者は、産業発展ということが大変恐ろしい公害というものを誘発するということをここで私たちに気づかせてくれた。そういう意味では本当にとうとい犠牲者にほかならないと思うわけです。そういう原点となった水俣病被害者をどう救済していくのか、それが本来行政の基本的な姿勢でなければならないと私は思うわけです。
 それにもかかわりませず、昭和四十六年に環境庁事務次官通知で認定基準を出された、このときの認定基準は非常に常識的な範囲をお示しになったと私どもは思うんです。ところが、すぐ昭和五十二年に出された環境保健部長の通知で、どういう条件とどういう条件がそろっていなければ認定患者にしないという線引きを非常に厳しくなさいました。このときから棄却者が非常にふえていると思うんですけれども、五十二年に出された通知以来どのような申請者の数があり、どのように認定の数が減り棄却者の方がふえているかということをお示しいただきたいと思います。
#65
○政府委員(柳沢健一郎君) 環境庁といたしましては、水俣病の被害者の救済ということにつきましては、対象者は医学を基礎といたしまして水俣病と判断し得るものを対象とすべきであるというふうに考えているわけでございます。このような観点から公建法の認定につきましては、これまでの医学的知見に基づきまして水俣病とみなし得るぎりぎりの線で行うことといたしまして、ただいま先生からもお話ございましたように、昭和五十二年の環境保健部長通知により判断条件を設定したわけでございます。
 これは先ほども申し上げましたけれども、昭和六十年の専門家会議におきましてもこの判断状況が適正とされているところでございますけれども、また、先ほどのお話にございました四十六年
の事務次官通知と五十二年の環境保健部長通知がそれに比べて厳しくなったんではないかというようなお話もございましたけれども、四十六年の事務次官通知は対象者が水俣病に罹患しているか否かについての認定要件を示したものでございまして、水俣病が否定できないと医学的根拠をもって判断し得るぎりぎりのレベルまで救済するという考え方を示したものでございます。五十二年の通知は四十六年通知よりも厳しくなったということはないわけでございます。
 なお、処分件数でございますけれども、昭和五十年代以降の処分件数ということになりますと、例えば昭和五十二年度で見ますると、六百九十一人を処分している中でもって認定している方は二百五十五人、これが昭和五十二年度の数でございます。以降昭和五十三年度では百八十二人、それから五十四年度では百四十五人、いずれも認定しているわけでございまして、五十年代の後半になります昭和五十五年度七十二名、五十六年度七十七人、五十七年度九十六人、五十八年度七十一人、五十九年度六十九人、六十年度五十四人というふうに認定をいたしているところでございます。
#66
○清水澄子君 質問の内容に答えていただきたいんです。認定していますというなら一人でも認定していますという答えになるでしょう。そうじゃなくて、申請者が何人で、それに対して認定者は何人で、棄却した数がどう移動しているかということをお聞きしました。資料を持っておりますからお聞きしなくていいんですけれども、それは明らかに最初の環境庁事務次官の通知を出されたときには、申請者数に対して棄却者数よりも認定者数が非常に多かったんです。ところが、環境保健部長通知から認定者数よりも棄却者数の方がどんどんふえていくわけですね。ですから、その数字は、もう今時間がございませんから、その事実を私はちゃんと認識していただきたかったわけです。このことでもやはり認定患者を切り捨てた、制限をした、線引きをしたと言われる根拠が数字の上に明確にあらわれておるわけです。
 このことから、認定されなかった人たちと認定された人たちの間に非常に大きな対応の格差が生まれましたし、それから認定されなかった皆さん方が裁判で闘わざるを得ないという状況が生まれたと思います。しかも、患者たちには、行政に対する不信感をこのときからも非常に大きくつくってしまった。この事実は、私は環境庁は率直に認めるべきであると思うんです。そういう意味で、行政責任という中で、環境庁はここの時点においても大きな一つの問題点があったと私は思います。
 先ほど篠崎さんの答えでも非常に反論されておりましたけれども、このときにも、この線引きをなさるときに、幾つかの症状がなければならないとわざわざそういうことをおつけになりましたけれども、病気の症状というのは、一つの典型症状に合わせてそれぞれ個人のいろんな状態が違い、生活環境が違う、そういう状況を一つの規格に合わせるということはできないと思います。これは水俣病だけの問題じゃありません。すべての病気ということとか、その人間が健康の障害で非常に苦しんでいるときに、一つのパターンではかるということは不可能なことです。
 ですから、一九九〇年、ことしの五月二十八日にも、環境庁委託調査研究班の重松委員長がはっきりおっしゃっています。
  学問に忠実なのが能じゃない。薬害のスモンの場合は、診断書を信用して、手続きをうんと簡単にした。これで九九%は解決したと思う。公害病かどうかの区別がつかないというけど、例えば喘息(ぜんそく)だって、原因を細かく区別することはできない。全く歯止めがなくなるのも困るが、厳密な医学論議だけでは、被害者救済が遅れてしまう。
 認定問題の前に、患者救済という原点の視点が欠けているのではないか。疑わしきは救済していくという姿勢が大切なのである。とにかく、被害を受けた人たちを一日も早く掌握して、フォローアップしていく必要があるのだ。これはことしの五月二十八日、環境庁が委託されている調査研究班の委員長のお言葉であるわけです。
 こういうことを繰り返しこの委員会でも私どもは質問し、意見を表明してまいりましたけれども、どうしても皆さん方はメンツにこだわっておられる。そして、人間の病気とかこういう環境の公害の問題を法的に解決しようと。これは大変難しいことであると思います。しかし、今回和解勧告の対象になりましたのは、未認定患者であるわけです。この人たちをどう救済するのか。この人たちの救済なくして水俣病は終わらないと思いますけれども、どうしても判決が出なければ行政責任のこれまでの存在というものを絶対にお認めにならないのかどうか、ぜひお答えいただきたいと思います。
#67
○政府委員(柳沢健一郎君) まず、先ほど先生がおっしゃっていました五十二年の通知以降、棄却者数が多くなったのは、その五十二年の通知が非常に厳しくなったからということに関しましては、私どもはそのように理解しておりません。制度の拡充等に伴いまして認定申請をしてこられる方々が大変増大してきた。それに伴って認定される方もふえたし、それからその逆に認定されない方もふえてきた、そういうことであろうというふうに考えておるところでございます。
 それから単一症状のみでもって水俣病であるかないかという問題につきましては、昭和六十年の専門家会議におきましてもいろいろ検討されております。その場合にも、単一症状、感覚障害、しびれ等の症状のみでもって水俣病であるとするには、現時点においては医学的に実証されていないというのが専門家会議の報告でもってはっきり明らかにされているところでございます。
 それから救済措置の問題が提起されたわけでございますけれども、これは水俣病患者を救済するという意味ではなくて、患者さんに対する救済措置とは別ではございますけれども、水俣病が多発した地域の住民のうちには、水俣病と認定されていないけれども水俣病に罹患しているのではないかと御本人が健康不安を訴える方々が少なくないということにかんがみまして、こうした地域住民の健康不安の解消を図る等の見地から所要の方策について検討を進めているところでございます。
#68
○清水澄子君 ことしの六月二十日の環境特別委員会におきまして水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の審議の後、私たちはここで全員一致で附帯決議を採択いたしました。その附帯決議には「水俣病患者の早期救済が緊急の課題であることにかんがみ、救済すべきは速やかに救済するよう努めること。」ということ、それから「昭和五十一年十二月の熊本地裁の確定判決の趣旨を踏まえ、不作為違法状態を速やかに解消すること。」、こういうことを私たちは決議しております。
 当時の水俣病に関係していた省庁というのは、確かに厚生省であり通産省であり農水省で、そして環境庁は後からかかわるようになったと思います。しかし、水俣病に対しまして責任を持つこれらの省に、環境庁は何とか積極的に和解勧告に応ずるようにこの四つの省に働きかけ、まとめていくという意思はございませんか。長官にお尋ねいたします。
#69
○政府委員(山内豊徳君) 事実関係ということで私から御答弁さしていただきたいのでございますが、まず先ほど来、十月二十六日付の見解でも示されております四つの省庁は被告とされているわけでございますが、今そういった省庁の国家賠償責任の議論について環境庁として一つのまとめのとり方があるのではないかという御趣旨だと思いますけれども、これはやはりそれぞれの役所が責任を持って運営しておられる食品衛生行政であり、あるいは水産資源保護行政のあり方の基本にかかわるものでございますので、被告の国として訴えられている国家賠償責任の問題につきましては、環境行政の立場からこれを取りまとめるとか、あるいは方向づけをすることはとり得ないのではないかというふうに私どもとしては考えている次第でございます。
#70
○清水澄子君 全然すれ違いで残念ですけれども、
これは永久に残っていくでしょう。この対立というのはどちらが正義であるかということは、聞いていればだれでもわかると思います。
 そこで、今回、裁判所が本当にこれを判決としていたならば行政責任の存在に非常に厳しい結果となったであろうということはだれしも予測されるわけです。ですから、ここに水俣病の解決に向けては司法は和解というものを提案したんだろうと思います。私は、こういう過去の過ちに目を閉ざす者は結局現在も見えなくなる。ましてや展望を見出すことができないという有名な言葉を思い出しております。私は、環境行政というのは何よりも人権を重んずるという立場を最優先して、他の省庁に対してそれらの調整を図り、または提言をしていく、そういう省庁だと思っているわけです。地球環境を大切にするということで、ことしは地球環境部までもおつくりなんですけれども、私たちは、地球環境を大切にするということは、公害の原点でありました水俣病問題の解決をまずやることからそれは出発できるだろうと思います。
 私は、長官がまだ水俣には行っておられないと伺いましたけれども、ぜひ現地に赴かれまして、そして水俣病の発生、拡大、その救済の決定的立ちおくれの実態を再度御調査なさることをお勧めしたいと思います。そして、被害者と、地域住民とじかにお会いになって、非常に立場はつらくてもそこで直接訴えに耳を傾けられる、そういう中から早期的な解決の決断をしていただくことを私はあえてお願いしたいと思います。これはぜひ長官、現地へ行っていただきたいのですが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
#71
○国務大臣(北川石松君) ただいまの清水委員の、水俣地域へ、現地へ行け、こういうお勧めでございます。
 先ほど篠崎委員にまだ行っておりませんとお答え申し上げました。事実上まだ行かなかったのは、私も水俣へ行きたい、見に行かなきゃいけないという気持ちを持っております。昨日も各関係の水俣に関する代表の方とお会いいたしました。その中で、一遍水俣へ来い、こういうところの要請も受けておりますので、時期を見てそして速やかにその日程をつくらなくちゃいかぬ、このように思うております。それでございますので、先ほど篠崎委員にもまだ行っておりませんとただ一言で申し上げましたが、そういう時期をつくり上げて水俣の皆さんにもお会いしなくちゃいかぬ、こういう思いをいたしております。
#72
○清水澄子君 私は環境委員会の委員といたしまして、水俣病の裁判の和解勧告に一日も早く応じて、そして被害者を救済しなければならないという共同の責任を感じている一人でございます。そこで私は、この委員会の責任において水俣病問題の早期解決に関する決議を採択されるようここに委員長に提案したいと思います。
#73
○委員長(上野雄文君) けさの理事会で今後とも協議することになっておりますから、引き続き各会派で協議をしていただきたいと思います。
#74
○清水澄子君 それじゃ水俣の問題は終わります。 次に、長良川河口ぜき建設についてお尋ねいたします。
 去る十月二十八日に環境庁長官は河口ぜきの建設が行われた芦田川を視察されたということを私は新聞で見ました。そこで、芦田川を視察されて、水質悪化を含めた環境影響についてどのようにお感じになったか、御感想を伺いたいと思います。
#75
○国務大臣(北川石松君) 委員御指摘のように、過日、芦田川を見てまいりました。今長良川河口ぜきがいろんな角度から非常に問題視されております。そこで、河口ぜきをつくっておる芦田川をみずからの職責上一度見る必要があると感じて見てまいりました。
 見た感想はということでございますが、河口でせきをつくりますと必然的に水の流れをとめてしまいますので、やはりその水質を悪化し、魚類の生息に好ましくない結果が出ておるということを判定してまいりました。
 以上でございます。
#76
○清水澄子君 そこで、今御承知のように、長良川の河口ぜき建設に対しまして、もう本体の工事が始まっているわけですけれども、地元の長島町の皆さん方は洪水のおそれがあるという大変大きな不安を持っていらっしゃいます。しかし、そこのところは私はちょっときょうは外しまして、一方でこの建設が川の自然環境や生態系に大きな影響を及ぼすということで、非常にさまざまな、漁協も反対しておりますし、それから自然保護団体、市民グループ、学者、研究者、いろんな人たちが今反対の声を上げておるわけです。特に最近、自然保護協会の特別委員会の皆さんが、この建設計画を一時中止して、そして、二十年前に、それも水産資源となる魚類だけを調査したようなそういう調査ではなくて、もう一度アセスをやり直すべきだという意見を建設省やまた環境庁にもそれを提起していると思いますけれども、それに対して建設省の方は、それはもう十分調査を行ったということを繰り返し言っております。しかし、その内容はほとんど科学的な根拠がないわけですね。ですからまた、自然保護協会も再度建設省の報告書を批判する、こういうことが行われておりまして、最近では日本魚類学会とかまた日本陸水学会などからも、このままでは生態系、水域の環境に大きな影響を及ぼすということで同じような意見書が出されていると思います。
 そこで、こういう専門研究者たちの意見に対して、これは建設省の意見と真っ向から対立しているんですけれども、環境庁はそういう対立を解消するために、環境、自然を守るという環境行政としてこの問題にどう介入しようとされているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
#77
○政府委員(渡辺修君) 基本的に、事業を実施する場合の環境影響に関します調査といいますものは、事業を行う者の責任で実施されるべきものだと私どもは考えております。
 長良川河口ぜき事業につきましては、事業者は建設省及び水資源開発公団ということでございまして、それらの事業者によって調査、検討がこれまでも加えられ行われてきたところでございます。
 環境庁といたしましては、その調査、検討の結果を十分把握し、私どもとして検討していこう。そして、もし不十分な点がございますれば、必要な調査、追加調査を求めるということをしていきたいと考えております。
#78
○清水澄子君 今大臣の方も河口ぜきをつくられたところは非常に水質が悪化しているという事実を指摘なさいましたけれども、建設省の報告では水質は全く悪化しないと述べているわけです。自然保護協会の意見書や研究者の意見は、水質悪化を非常に心配しているわけですね。ですから、建設省はどのような論拠に基づいて水質には影響がないと断定できるのかというところをお答えください。建設省の方いらっしゃいますか。
#79
○説明員(豊田高司君) 長良川河口ぜきの建設につきましては、その治水、利水上の緊急性、必要性から地域にとって大変大事な事業であるというふうに認識しておるところでございまして、事業を進めるに当たりましては環境保全に十分留意し、地元と密接な連絡をとりながら事業を進めていくという建設的な立場から工事の進捗を図っているところでございます。
 先ほど先生から御指摘ございましたせきをつくれば水質が悪くなるのではないかという御質問でございますが、芦田川河口ぜきと長良川河口ぜきではその流域面積、雨の降り方、水の出方、あるいは現在の水質、将来の水質の状況、下水道の整備状況等々を検討しました結果、長良川につきましては将来とも水質は悪くならないという結論に達したものでございます。このことにつきましては、去る十月十二日に環境保全対策を含めまして総合的な報告書を取りまとめまして、長良川沿川の市町村の皆さんに対しまして順次説明を行ってまいって理解を深めておるところでございます。これに対しまして、自然保護協会、日本陸水学会、日本魚類学会からいろいろな疑問が出されておるところでございますが、今回の報告書は、基本的に
はそれらの疑問にお答えしているものと考えておるところでございます。
 なお、従来からいろいろな御質問に対しまして、あるいは御疑問に対しましては、いろんな広報活動や公開討論あるいはシンポジウム等の場を通じまして広く説明を行っているところでございまして、今後とも本事業の重要性にかんがみまして地元と密接な連携を保ちつつ、環境保全にも十分配慮して事業の進捗に努めてまいりたい、このように考えております。
#80
○清水澄子君 問題を指摘されているからお尋ねしているのでありまして、全く問題がありませんとおっしゃるのは、日本の行政というのは、何か市民とか、環境をともにつくり出していくとか、その地域住民がどういう気持ちで問題視しているかということについて本当に意に介さないというところがある。私は環境のところだけぐらいはちゃんとなりたいと思うんです。建設省の方ですから、建設省というのは一番態度が横柄なんです、とても高圧的で秘密主義で。ですけれども、これは環境と非常に深くかかわることですし、それほど確信がおありであったならばもっと子細な資料をお出しいただくことをここで私は要求しておきます。
 時間がございませんので次に進みますけれども、今、利根川とかたくさんの建設済みの河口ぜきがあります。ですから、環境庁はぜひそこの環境影響の後のモニタリングをなさるように私は要求したいと思うわけです。そういう中で、いろんな建設前の建設省の予測どおりに、本当に水質や底質や魚介類にそういう影響が全くなかったかどうか、そういうことをぜひ調査していただきたいと思います。そのことが事業者と建設に反対する専門家の皆さんとか住民の皆さんとの間の意見の対立を解く一つのかぎになるだろうと思います。そして、それはまた同時に、これまでの環境行政とか河川行政でよかったのかという、私たちが大きくこれからのあり方を考える、そういう資料にもなると思います。
 そこで、ただわかりましたというお答えにならないためにも、私はぜひ補正予算を組んで直ちにこれを実行していただきますことをお願いしたいと思いますし、環境庁は環境保全の独自の立場から長良川の多くの人々の疑問に答えるための調査をなさる。そのためには、建設省に一時建設を中断していただく、そういう対応をしていただきたいと思いますが、これも長官のお考えを伺いたいと思います。
#81
○政府委員(武智敏夫君) 今までの建設省とのやりとりにつきまして、若干説明させていただきたいと思います。
 我々としましても、長良川の河口ぜきの設置によりまして環境に及ぼす影響がかなり懸念されるという認識を持っております。したがいまして、既に建設省とも話し合いの場は数回持っておるわけでございまして、先般出ました建設省の報告につきましても既に説明を聞いております。聞いておりますけれども、先生御指摘のように、例えば類似のせきにおいて著しい水質悪化が見られていないことから、恐らく長良川についても問題ないというような部分があるわけでございますが、我々それについては必ずしも十分理解しがたいというところもございますので、そのあたりにつきましてさらに追加的質問をいたしております。
 水質保全の観点あるいは自然保護の観点あるいは河道のしゅんせつの観点、いろんな部面があるわけでございますが、例えば水質保全の観点につきましたら特に渇水時の問題ですとか、あるいは先ほど大臣から言いました芦田川につきましては、いろいろせきの構造なり周辺の事情が違いますので、直ちにそちらが汚れておるからストレートに同じであるというふうには言えないと思いますが、そのあたりにつきまして建設省にさらに追加的な要請をいたしておるわけでございます。これらにつきまして随時今後とも建設省と相談いたしまして、必要な場合には環境上の配慮を求めていくという態度でやっておるつもりでございます。
#82
○清水澄子君 次に話を移します。
 高知県夜須町の大手の浜ですね、手結マリーナ計画というのが今行われているわけですけれども、これにつきましてもまた非常に現地でいろんな問題が指摘されております。これは運輸省になるわけですけれども、このマリーナの建設に当たって県の担当者は、これは海に建てるわけだから陸地のアセスは必要がない、そういうことを申しておるわけですけれども、マリーナというのは陸、いわゆる浜、海岸の埋め立てと、そして海面の埋め立てと防波堤の建設の三つが一体となったものであって、この県当局の考え方というのは非常に問題があると思いますけれども、運輸省はこれをどうお考えになっているか。
 それからもう一つは、これに対しましても日本自然保護協会が、マリーナの建設に問題がないとするのであれば、その科学的根拠を明らかにしてくださいということを言っているわけですけれども、この地域に対しましても運輸省はもっと県に対して本当にデータを要求しているのかどうか、この点です。
 そして、さらに三つ目には、あの地域は非常に珍しい自然海岸であるわけですけれども、この手結マリーナはあそこの場所でなければならないのか、それをしなければ国の補助対象計画として認められないのかどうか。この三点について運輸省にお聞きしたいと思います。
#83
○説明員(堀井修身君) 三点ほど御質問がございましたので、お答えをいたします。
 今御指摘がございました高知県の夜須町の地先にございます手結港と申しますのは地方港湾でございまして、港湾管理者は高知県でございます。港湾の計画の作成なりあるいは事業の実施といったものにつきましては、基本的に港湾管理者でありますところの高知県が実施するということになっておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては基本的には県知事の御判断を尊重していくというのが基本的なスタンスでございます。
 二点目に御指摘ございました自然保護協会等からの御指摘があるということでございますが、私どもの方に自然保護協会の方から御指摘がありましたのはついせんだってでございます。私どももどのような御指摘かということについて現在勉強しておるということでございます。
 それからマリーナの場所について代替地はないのかという御指摘でございますけれども、県の方ではいろいろな場所を選定され、いろいろな評価をされたということでございます。詳しくは私どももまだ承知しておらない面もございますけれども、例えば波が荒いとか、あるいは良好な養殖の海面があるとか、あるいは海浜に影響があるとか、さまざまな評価をされて現在の場所に決められたというふうに聞いてございます。ただ、いろんな御指摘がございますけれども、特に例えばサンゴの問題でありますとか、こういうことに配慮いたしまして二回ほど計画を変更されておるようでございまして、こういった自然環境と調和ができるマリーナの計画になっておるというふうに県の方では判断されておるというふうに聞いてございます。
#84
○清水澄子君 一つだけお願いいたします。
 私もあの地域にサンゴが生息しているとは本当に知りませんでしたけれども、やはり自然というのは本当に神秘なものだと思います。この地域ではサンゴが絶滅するんじゃないかという心配、そしてさらにたくさんの、例えば……
#85
○委員長(上野雄文君) 時間ですから簡単に。
#86
○清水澄子君 アカウミガメというのは世界の中で日本周辺でしか産卵できないというそういうふうな場所になっていて、ここの地域にちょうど産卵に来ているという、こういうことも考えまして、この地域でマリーナ計画をするときには、いろんな珍しい、絶滅に瀕した動植物、魚介そしてサンゴ、そういうものが非常にたくさんあるというふうに研究者たちの間で今明らかにされつつありますから、ぜひ環境庁は、この際独自にこの地域を調査されて、そして県には適切な指導をし、運輸
省にも問題の提起をしていただくことをお願いしまして質問を終わりたいと思います。
#87
○委員長(上野雄文君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時十七分開会
#88
○委員長(上野雄文君) ただいまから環境特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#89
○広中和歌子君 ジュネーブで十月二十九日から第二回世界気候会議が開催されております。そのことについて若干お伺いしたいと思います。
 この会議におきましては、前半は世界各国の科学者約六百人が参加して専門家会議が開かれ、後半は約百カ国からの閣僚が参加して、そして宣言文が出されることになっているようですけれども、政府といたしましてはどのようなメンバーでこの会議に臨もうとしていらっしゃいますか。
#90
○政府委員(山内豊徳君) 今お尋ねの第二回世界気候会議は、御案内のように、IPCCの報告書などを踏まえまして、これからの世界の地球温暖化防止の枠組み条約の交渉に向けて国際的な取り組みの基本を方向づけようとする非常に重要な会議と理解しております。
 おっしゃるように参加国は百カ国を超えるだろうということは現地からも聞いておるわけでございますが、我が国といたしまして、閣僚レベル会合ではございますが、環境庁長官の出席を大変私どもとしては重要なことと考えておりますが、諸般の情勢を踏まえて現在引き続き調整中という段階でございます。私どもの地球環境部長などは一般メンバーとして当然現地に既に事前に赴いておるところでございますが、政府としての代表の決定につきましては、現在調整中の段階であるとして御理解いただきたいと思います。
#91
○広中和歌子君 各省庁から大体どのくらいの参加者なんでしょうか。
#92
○政府委員(山内豊徳君) これは世界気候会議ということもございますので、例えば運輸省からは気象庁の長官が出席の予定でございますし、関係省庁からは局長級の出席も予定されておりますが、今申しましたように、政府の代表自体についての決定は調整中という段階でございます。
#93
○広中和歌子君 いえ、総員でございます。
#94
○委員長(上野雄文君) 総勢何ぼかということで、代表のことを聞いているんじゃないんですよ。
#95
○政府委員(山内豊徳君) 技術会合の方がちょっとこれはかなり多岐でございますので、閣僚会議の日程に現地に赴く者は、外務省その他を入れますと十名は下らないと考えております。
#96
○広中和歌子君 それでは長官は御出席になりますでしょうか。
#97
○国務大臣(北川石松君) 国会のお許しを得れば、たとえ一日でも出席いたしたい希望を持っております。
#98
○広中和歌子君 お許しが出ないというようなことがあり得るのでしょうか。
#99
○国務大臣(北川石松君) いろいろの事情を踏まえまして、今局長が申し述べましたように、調整中であるということでございます。
#100
○広中和歌子君 当委員会のメンバーといたしまして強力に御出席をお願いしたい、そういうふうに思います。イギリスでもサッチャー首相、イタリアの首相も出ていらっしゃいますしフランスも、各国のトップの方が出ていらっしゃるので、北川長官もぜひ御出席いただきますように、そして諸般の事情とおっしゃいますけれども、それをクリアなさいますように心からお願いします。
 それで、この会議の目的でございますが、ちょっと一部触れられましたけれども、もう一度御説明いただけませんか。
#101
○政府委員(山内豊徳君) この会議は第二回ということで、約十年前に第一回の世界気候会議が開かれまして、その際は国際的な気象計画といいますか、いわゆる気候、気象に関する専門的な取り進め方を決めるという会合でございましたが、その後、御案内のように、二酸化炭素を中心とします地球温暖化をもたらす温室効果ガスの問題が非常に国際的な問題になりましたために、一九八八年でございますか、IPCC、政府間の気候変動に関する専門家のパネルがつくられまして、これが約二年近く時間をかけまして、産業革命以来の世界のといいますか、地球上の大気のCO2の濃度につきましての見通しとか、それがもしある一定の濃度で上昇するならばいろんな気候変動が起こるために、どういう対応を考えなきゃいけないかということをある意味では技術的な見地から議論されたわけでございます。その結果は、御案内と思いますが、去る八月末の時点で第一回アセスメントレポートとして発表されたりしたわけでございます。
 そうなりますと、そういった科学的な知見がある程度まとまってまいりますと、それを防止するためには先進国あるいは発展途上国を含めましていかなる対策を今後講じていかなきゃならないかということが次の課題になるわけでございますが、今申しましたIPCCでの議論あるいはその他の議論も踏まえて、今先生もおっしゃいました今回のジュネーブでの世界気候会議の前半の科学・技術的な会合におきまして、その辺についての議論がきょう現在始まっているはずでございます。
 この機会に主催者である世界気象機構、WMOと国連の環境計画いわゆるUNEPがあえて閣僚級会議をスケジュールに入れましたのは、実は今申しましたように、そういった知見が得られた場合に国際社会においてどのような対策を国際的に講じていくことが必要かという議論がどうしても次のスケジュールになるわけでございまして、そのことについて閣僚級の会議を持ってこれからの対応を議論していこうというわけでございます。
 これからの対応というのは、具体的に言いますと、御案内かと思いますが、何か国際条約の枠組み条約のようなものをつくる必要があるのではないかということで、実はその枠組み条約の交渉の日程も、来年の二月には場所をアメリカということで行われるということもあらかじめ決まっておりますので、いわばそういったIPCCあるいは気象会議の科学・技術会議の専門的な知見を大きな国際機構の枠組みづくりにつなぐ契機となる閣僚会議というふうに私どもは理解しております。
#102
○広中和歌子君 どうもありがとうございました。
 この会議に臨む日本の姿勢でございますけれども、どういうものでしょうか。
#103
○政府委員(山内豊徳君) 実は過般のIPCCの会議に私たまたま出席させていただいたのでございますが、その席でもそうでございましたが、科学的な知見をまとめる会議とは言いながら、例えば石油を産出している国の代表の考え方、あるいは海面上一メートルしか土地の高さがない海洋国家の代表の考え方、あるいは森林をある程度資源にしなければ貿易上やっていけない国、いろんな方々の御意見がございます。率直に申し上げまして、科学的知見を取りまとめるだけではなかなか尽くせない議論がIPCCでも闘わされたわけでございます。そうなりますと、当然、今申しましたように、これからの国際的な大きな枠組み条約をつくるつなぎになる、それをはっきりと方向づける閣僚会議でございますので、私自身は、恐らくこの閣僚会議でもいろんな国のいろんな考え方の議論が出てくると思います。
 我が日本としては過般、六月以来、地球環境保全に関する関係閣僚会議で作業をさせていただきました日本としての地球温暖化防止行動計画をこの前の閣僚会議で申し合わせて確定したわけでございます。これはもしあと時間があれば申し上げたいと思いますが、内容的には先進国の中ではいわば優等生と考えられておる日本のCO2を中心とする排出をふやさない対策をさらにはっきり十年間の目標をつくって打ち出したわけでございますので、いわば閣僚会議にそういった日本のごく最近まと
めました温暖化防止行動計画を持ち込んで、日本はこういうことをやりますよ、少なくとも先進国としてはいかがでございますかということを強く働きかける。後進国、発展途上国にとってはまたいろんな別の問題がございますから、これはまたこれで先進国としていろんな役割を決めなきゃいけないわけでございますが、やはり一つには、日本で各省の大変な努力で決めることのできました温暖化防上行動計画をみずから国際社会に、閣僚会議に紹介して、かたがた先進国の努力の大きな方向に私どもとしましても力づけをしたいというような感じでおります。
#104
○広中和歌子君 大変評価させていただきたいんですけれども、日本の行動計画の中身でございますが、二〇〇〇年までにCO2排出を一九九〇年のレベルにとどめる、そういうふうになっておりますよね。これは一人当たりの排出なんでしょうか、それとも総量なんでしょうか。
#105
○政府委員(山内豊徳君) 今申しました日本の地球温暖化防止行動計画の目標というところ、特にCO2、二酸化炭素の目標につきましては二項に分けて記述しております。
 その一項は、今先生がおっしゃいましたように、大体一九九〇年レベルの日本国民一人当たりのCO2の排出量を何とかこの行動計画に盛り込んだいろんな施策を講じることで同じレベル、これは私ども安定化と申し上げておりますが、一人当たりのCO2の発生量を安定化させるということを目標の第一項にしております。その第二項において、この第一項の措置と相まって新エネルギー、夢のようなエネルギーじゃなくて、太陽光とか水素利用の燃料電池などを含めましてですが、そういった新エネルギーを含めたいろんな技術革新に進展があるならば、さらにそれを一人当たりで安定化させるだけじゃなくてトータルの、日本の国が排出するCO2についてもおおむね一九九〇年レベルに二〇〇〇年において安定化させるように努めるという目標の二つを掲げておるわけでございます。
 これはやはり第一項、第二項にわたる目標として、トータルで日本におけるCO2の排出量を何とか安定化に、これは大変な努力を要しますが、官民挙げての努力も含めてやっていきたいというのがこの前決まりました行動計画の目標でございます。
#106
○広中和歌子君 人口というのが増加しておりますよね。まだ当分、西暦二〇〇〇年以降も人口が増加するわけですけれども、そういたしますと、この一人当たりの排出量を安定化さすということは総量においては増加するということで、二段階という御説明をいただいたわけですけれども、ちょっと手ぬるいんじゃないかというような気がいたしますが、その点と、それから、時間もございませんので簡単に、非常にいい御答弁をいただいていますのでゆっくり伺いたいわけですが、しかし簡単にお願いしたいのは、先進主要諸国がその排出抑制のために共通の努力を行うことを前提として日本も努力するというふうに、ちょっと前提条件をつけた努力目標というふうになっているのが大変に気にかかるところなんですけれども、その点、今度は大臣、お願いいたします。
#107
○国務大臣(北川石松君) ただいま広中委員から世界の会議において日本のCO2対策が九〇年か一人当たりか非常にあいまいじゃないかという御指摘じゃないかと思うんですけれども、去る十月二十三日、この気候会議の日本の態度を決定しなくちゃいけないということで関係閣僚会議を開きました。通産省を初め運輸省、いろんなところに御意見がありましたが、一九九〇年レベルで二〇〇〇年に安定さすというこの基本線を踏まえて世界の気候会議に出席をするということを閣僚会議で御同意を得た次第でございます。
 なお、今一人当たりを申されますと、この上昇度を見ますと容易じゃございません。しかし、私はきのう、やはり自動車の排出するCO2の地球温暖化に及ぼす影響の太なるを感じまして、日産自動車に参りました。どうしてもこれの対策のための燃費とかいろんなものの技術の開発、研究をしてほしいということを要請すると同時に、自分の目で見てまいりました。ある面ではやはり一般的な抑止ということも考えていただきながら九〇年レベルでこれを安定化させなくちゃいけない、こういうふうに考えておる次第でございます。
#108
○広中和歌子君 このたびの気候会議の宣言文、それが今後の温暖化防止条約に非常に影響を与えると思うわけでございますけれども、宣言文の概要というのが何か新聞によりますと出ているわけですね。その内容は、二〇〇〇年までに一九九〇年のレベルに保つ。これは日本は同意できるわけですよね。しかしながら、さらに一歩進めて二〇〇五年までに、つまり今から十五年先に二〇%削減というふうにうたっているわけですが、日本の行動計画と宣言文との間に乖離が出た場合に、環境庁長官あるいは、環境庁長官に出ていただきたいわけですけれども、環境庁長官はどのような意思表示を会議でなさるおつもりですか。
#109
○国務大臣(北川石松君) 私は、これは率直に申しまして、世界の各国、EC、アメリカ、日本を含めた先進国と発展途上国、この間にいろんな意見が出ると思っております。今御指摘のように、二〇〇〇年、二〇〇五年、二〇一〇年の間に各国の国益を踏まえての意見がやはり多士済々になってくると思います。そういうようなことを思いますと、これは過ぎ去りしことですが、ロンドンにおけるところのフロンの対策につきまして、地球のオゾン層を守るための、そのときにも、一九九三年にアメリカは三五%抑制すると、こう言った。ECは五〇%ぐらいです。私がいろんな事情を踏まえて二〇%説を出した途端にけんけんがくがくになりました。そのときに私は、日本はこの会議に臨むに実施できないことは言わない、二〇%は三年のうちだと、こういうことを言った。しかし、一九九七年にECは一〇〇%行っておる、アメリカは八五%。日本は八五%、二〇〇〇年に一〇〇%、こういう案を出したときに、ECは九七年に一〇〇%行っておる。しかし、日本は九六年に一〇〇%、全廃するだけの技術と経済力と英知を持っておる。しかしながら、中小企業に思いをいたすと、二〇〇〇年が全廃の線であるということを申し上げたい、こういうことを言ったのを今思い出しておりまして、やはり各国のいろんな意見が出てまいるときに、私は真心を持ってでき上がることとでき上がらぬことの区別をしながら対応することが大事な会議じゃないか、こういう思いをいたします。
 以上でございます。
#110
○広中和歌子君 日本はこれからの地球規模の環境においてリーダーシップを持つだけの知恵も技術もあるというふうに自負している国ではなかろうかと私は期待しているわけですけれども、そういう中で、ぜひ御出席になり前向きの態度を表明していただきたい、御意見を言っていただきたい、そういうふうにお願いする次第でございます。
 次に、既に同僚議員から多くお触れになりましたけれども、水俣問題について質問させていただきます。
 時間の関係で一々引用はいたしませんけれども、本年六月の衆参環境委員会で大臣は水俣病解決のために御決意をいろんなところで述べている。要約いたしますと、疑わしきは救済する、国家的にも緊急課題である、そして、一日も早く解決しなければならないという思いが強い、そういうふうに真情を吐露していらっしゃるわけですけれども、そのお気持ちは今でも変わりませんか。
#111
○国務大臣(北川石松君) 委員御指摘のとおりに、私は水俣病問題は公害の原点であるといたし、また環境行政の重要課題の一つでございます。早期解決に向けて最大の努力をする、これは私の申し述べたことに間違いございません。
#112
○広中和歌子君 さらに十月二十九日でございますけれども、水俣病関係閣僚会議の政府見解の発表後の記者会見で、大臣は「水俣病多発地域で、認定されないまま水俣病ではないかとの健康不安を訴える人が少なくない。こうした住民の健康不安の解消を図るため今後、関係省庁と地方公共団体、企業などと協議のうえ新たな方策を検討したい」
と表明されておりますが、「新たな方策」とは具体的に何か、そしていつ始められるのかお伺いいたします。
#113
○国務大臣(北川石松君) 水俣病の発生した地域の皆々さんには、あるいは自分は水俣病にかかっているのか、かかっていないのか、いろんな不安が醸し出されていることも事実でございます。その間におけるいろいろ健康不安を持っている不安定な皆々さんに対しまして、健康管理を初めいろいろな面で相談に乗り、そうしてその対策を進めたい、こういうことで、これについては関係各省庁と相談をした上で、こういうことをやりたいと思うが厚生省、各省どうだというところの案を早急につくるように今指示いたしまして、その案を作成するように努力させておるところでございます。
#114
○広中和歌子君 その早急というのはいつごろなんでございましょうか。つまり三十四年かかっている事件でございますので、デッドラインみたいなのをちょっとおっしゃっていただくわけには、期限ですね。
#115
○政府委員(山内豊徳君) 大臣が過般の閣僚会議で発言いたしました所要の方策については私どもが今鋭意検討を進めておるわけでございますが、実は健康管理のためのヘルスサービス一つをとらえましても、どういう体制で、またどういう方を対象に取り上げるかということは、これは地元の熊本県でも県議会の意見書としてそういうものを、所要の方策を進めるべきであるという御意見はいただいておるのでございますが、具体的な範囲、体制につきましてはまだ県当局としても事務的な案を決め切れない点もございます。そういう意味で、私どもは県とも相談しながら体制とか範囲を決めていかにゃいかぬと思っております。
 一方では、これは御案内かと思いますが、現在でも公害健康被害補償法の認定を棄却された方のうちに一定の神経性疾患の症状、これは水俣病ではないと私は考えておりますが、神経性疾患の症状をお持ちの方には特別医療事業といったこともやっておるわけでございます。そういうものとの調整をどう考えていくかということとか、やはりこれは国なり県の施策としてきちんとやります以上はいろいろはっきりさしたものをつくらなきゃいけないわけでございますので、大臣の指示もございましてできるだけ早くというつもりではおるのでございますが、率直に申し上げまして何カ月かかって案を決めるというふうなことを今決めかねている事情もございます。やはり県の御意向などもよく伺いながら、また関係省庁の意見も聞きながら決めざるを得ない面がございますので、そのように申し上げさしていただきたいと思います。
#116
○広中和歌子君 データに関しましては三十四年の蓄積があるわけで、それで混乱していらっしゃるのかなとも思いますけれども、ともかく一日も早く、そして今おっしゃったのではない新たな方策というものが考えられますことを期待しております。
 東京地裁を初め熊本、福岡の地裁、それから福岡高裁の和解勧告が出ましたときに、各紙の報道が、三十九社が社説で論説書いていらっしゃるわけですけれども、すべてそれは、国は和解に応ずべしという主張であったわけでございます。大臣は新聞のこうした論調、論評ですね、社説、そういうものを世論と考えられていますか、お伺いいたします。
#117
○国務大臣(北川石松君) 今委員御指摘のとおりに、三十九社によって報ぜられたいろいろの御意思は、私は世論と考えております。
#118
○広中和歌子君 では大臣、政治家として世論をどういうふうに受けとめ、そしてそれを行動にあらわしていかなくてはならないとお思いでございますか。
#119
○国務大臣(北川石松君) 世論には十分に心していかなくちゃいかぬと考えております。
#120
○広中和歌子君 ということは、和解勧告に応じていただく、和解のテーブルに着いていただくということが世論を尊重することではなかろうかと思うのでございますが、和解のテーブルに着くことを拒否なさった理由というのは何でございましょうか。大臣お願いいたします。
#121
○国務大臣(北川石松君) 世論は大切にしなくてはいけないし、仲裁は時の氏神であるということも申した一人でございます。ただ現時点におきましては、行政の筋の中で、というのは四省庁あります、その中のいろいろの行政の筋を通さなくちゃいかぬし、固めなくちゃいかぬ。そういういろいろの点におきまして現時点では和解に応じることは因難であると、こういうことを申したのであります。
#122
○広中和歌子君 患者側から見ますと、ともかく判決を待っていると、仮に東京地裁で、例えばですよ、仮にでございますけれども、敗訴するような場合には控訴をなさるかもしれない。そういったことでこれから延々と続くことを非常に恐れているわけでございますけれども、先ほど大臣は大変に心こもる水俣病の患者に対して真情を吐露してくだすったわけですが、それとちょっと矛盾するんじゃないでしょうか。
#123
○国務大臣(北川石松君) 判決が出た場合は、それに対応することは当然でございます。
 ただ私は、心が痛む、そのことはもう十分なんですが、先ほど申しました行政の筋という前面に立つ場合に、このことをやはりすっきりとしたい。(「筋って何や」と呼ぶ者あり)筋というのは、各省庁の合意というものを乱さない。そしてまた、いろいろと今までは、判決に応じる、患者の皆さんが各個にいろんな意見が出ておりましたが、きのう初めて皆さんと一堂に会して、ようやく話をさしていただきました。その席で、水俣にもやってこいということを言われました。土産はのうてもいいぞ、来いと、こういうことを言われたし、私はこの職責にある以上はやはり水俣にも飛んでいきたい、こういう思いをしながら、現時点では和解に応じないけれども、いろいろなことを勘案しながら、やはり早期解決に向かって環境庁が前向きでなくちゃならぬということは十分に考えさせてもらっております。
#124
○広中和歌子君 東京地裁では早くて六カ月後、遅くとも一年ぐらいではないかというふうに言われております。この判決で勝訴を期待されていますか。
#125
○政府委員(山内豊徳君) 先ほども御答弁申し上げたと思いますが、東京地裁の裁判は、その前に熊本地裁での三次訴訟が国の責任について私どもの主張をほとんど取り入れていただけなかった判決もございましたものですから、その後これまで以上に念を入れて十分国の責任あるいは病像論についても弁論に努めてきたつもりでございます。そういった意味で、東京地裁でいただけるであろう判決については、そういった国の主張が十分理解していただけた判決がいただけるものと期待しておりますので、今ここで先生がおっしゃったようなことを私の口から申し上げるわけではなくて、むしろ私どもは我々の主張を十分理解していただける司法判断といいますか、判決の御判断がいただけるものと期待しているところでございます。
#126
○広中和歌子君 福岡高裁の勧告文を読ませていただきましたけれども、幾つかの特徴が見られるわけです。もう既に同僚議員も触れられたことですけれども、同訴訟の争点にもなっている国、県の責任についてですけれども、行政庁が規制権限の行使について裁量権を持つことは当然といたしまして、しかし一定の要件を充足する場合には作為義務が生じる、そしてその不行使は違法となる、そういうようなことを判例とすることで行政責任を指摘しております。これがもし次の東京地裁での判決にも受け継がれるならば、これは仮定でございますけれども、少なくとも行政責任の存在に限って言えば被告に厳しい結果になる。つまり国側に厳しい結果になるのではないかと思いますが、仮に敗訴になった場合、もう一度伺いますけれども、控訴するお気持ちはありますか。それとも冷厳にこの事実をお認めになり、和解の、もう遅いですね、和解って、ともかく判決に従うおつもですか、お伺いいたします。
#127
○政府委員(山内豊徳君) 福岡高裁の和解勧告文で行政庁の権限の不行使について、「解釈が裁判例のうえで定着しつつあるということができる。」という点は私も読ませていただいております。
 それはそれとして、東京地裁の判決においてもし敗訴したらということでございますが、端的に申し上げまして、判決をいただく前からこういう判決であればこうだということを申し上げるのはいかがかと思いますが、先ほど申し上げましたように、国として国の責任論、病像論について十分に主張してきたつもりでございますので、その判決の内容において国の主張がどのように御理解いただけたかを見て判断すべき問題でございますので、今この段階でこういうものであればこうするということを申し上げる性格ではないと考えております。
#128
○広中和歌子君 つまり十分に御意見を受けとっていただけたと期待していらっしゃるわけですけれども、その結果としての判決、それを受けとめられそれに従われる、そういうふうに受けとめさせていただいてよろしいでしょうか、もう一度確認いたします。
#129
○政府委員(山内豊徳君) 私が申し上げましたのは、その段階でやっぱり判断せざるを得ない面もございますので、逆に申し上げまして、一切控訴しないということを私はここで明言する立場にはございません。
#130
○広中和歌子君 じゃ判決の前の段階に戻りまして、和解です。繰り返しになりますが、何がネックで和解が受け入れられないのか、もう一度お伺いしたいと思います。
 これも仮定の話で恐縮でございますけれども、原告側とすればさまざまなことをお願いしているわけです。つまり損害賠償とか医療費の拡大、健康管理のための年金制度、損害金の分担割合、そのようなことについてあるわけですけれども、何がネックなのでしょうか。ともかく判決を待つという御意思ですよね。それは、つまり法律上に問題があるから和解のテーブルに着かないのか、それとも別の理由があるのか、お伺いいたします。
#131
○政府委員(山内豊徳君) 先ほど来大臣からも御答弁申し上げましたように、水俣病問題については公害健康被害補償法という法律によりまして、私どもとしては二千九百余名の患者の方々を認定し、またその救済が進められていると考えておるわけでございます。この訴訟においては、認定されていない方々が水俣病による被害を受けたということで、かつまた国に賠償を求めるということで訴訟を起こしていらっしゃるわけでございます。
 私どもは、去る二十六日付の四省庁の見解でもまとめさせていただきましたように、国に損害賠償の責任があるという議論に対しては、これは私どもは、いろいろ申し上げましたところからその責任はないと考えていること。それから水俣病にかかっていらっしゃるかいらっしゃらないかの判断基準は、我々が今公健法に基づいて運営してきました判断基準が適切なものであるという前提で主張してきたわけでございます。
 したがいまして、今先生が原告側のいろんな要求内容に応じて何か問題があるのかという御質問でございましょうが、私どもは、やはりこの見解の中で申し上げましたように、このような場合に国の行政権限の不行使、不作為に責任ありという議論をされたのでは、国のいろんな行政の、これはこれからの運営も含めまして、これからの国の行政の運営においても我々としては承服しがたい。つまりそれは、ある意味では非常に国民のいろんな社会分野に行政があらかじめいろんな権限を行使しておかないと、あるいは発動の準備をしておかないと責任を問われるという意味では、これは四省庁に限らず、いろんな国の行政の運営にもかかわる問題でございます。
 そういう基本論が一つと、それからやはり、何度も申し上げるようでございますが、ある方が水俣病という病気にかかっていらっしゃるかいらっしゃらないかという判断は、医学を根拠とした、あるいは逆に言って医学の根拠を離れて、何かお話し合いで決めるという性格ではない。どちらかといいますと、そういった国の責任論、病気を認める場合の判断という、いわば行政のあり方について和解のテーブルで議論するものはこの中に我々としては持ち得ないという意味で和解に応じていないわけでございます。特に原告の方からどういう給付の請求があるからだめであって、どういう給付ならいいというものではなくて、やはり国の責任と水俣病にかかっていらっしゃるかいらっしゃらないかの判断基準の問題が和解に応じられない基本の理由でございます。
#132
○広中和歌子君 水俣病にかかっているかかかっていないかの判断基準についてはいろいろ問題もございますし、また私も御質問いたしたことがあるわけですが、死亡後解剖の結果認定されたという結果も多く出ている。そういうようなことで、私は、和解勧告というのは責任とかそうしたものを離れて、ともかくもう十分いろいろ争ったではないか、だからもう和解でもってテーブルに着いて何か結論を出そう、そういったような裁判所の気持ちではなかろうかと思います。
 もう一度長官にお伺いいたします。先ほどなぜ和解のテーブルに着けないかという御質問に対して、さまざまな関係省庁のかかわりもあるとおっしゃいましたけれども、ずばり伺います。これは和解金、お金の問題ですか。
#133
○国務大臣(北川石松君) 和解金だけの問題じゃございません。
#134
○委員長(上野雄文君) 広中君、簡単に。
#135
○広中和歌子君 もう時間なので終わりますけれども、大変きつい質問をさせていただきましたが、どうぞ和解という勧告が出たその背後の事情を十分お酌み取りの上、この問題の解決についてリーダーシップをぜひ発揮していただきたい、そういうふうに訴えさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
#136
○沓脱タケ子君 それでは、私も水俣病の和解勧告に関連してお尋ねをしたいと思います。
 公害の原点と言われるこの水俣病問題というのは、公式発表されてから三十四年の長きにわたって、行政措置でこれが救済をされずにやむなく裁判の場に持ち込まれて、今日多数の方々が救済をされないままでおるという状態というのは、被害者救済という問題、まさに人道上の問題にまでなってきているというのが今日の状態であろうと思うわけでございます。
 したがって、長官もいろいろな場で緊急課題だとおっしゃっておられますね。端的にお聞きをしておきたいと思いますのは、長官は十月三日の参議院の決算委員会でもおっしゃったですし、また記者会見でもおっしゃったし、きょうの委員会でもたびたびおっしゃっておられるんですが、東京地裁で七十五名の方々の判決をいただいた後に対応したいと、和解勧告に対して、このことを言われて現時点での和解勧告は拒否をしていらっしゃるというのが状況なんですが、私大変わかりにくいんです、そのことが。
 それで、ひとつ聞かせていただきたいと思いますのは、一体この真意は何なのかなというふうに思っているんです。結果を見て対応したいときょうは局長、午前中にもお答えになっておられましたし、今もそういうことのようでございますが、現時点では和解のテーブルには着けない、七十五人の方々の判決をいただいた後なら考えるというふうに言っておられるこの真意というのは一体何なのか、ちょっとわかりにくいんです。長官に聞きたい、どういう意味なのか。
#137
○国務大臣(北川石松君) さきの国会においても沓脱委員から、今テーブルに着いたらどうだというところの御質問を受けたのを今思い起こしております。
 先ほど来の各委員の皆さんのなぜ和解のテーブルにつかないのかという御質問も踏まえまして、やはり現時点では和解に応じられない。それは今も御指摘のように、七十五名の判決を得て対応したい、このように考えている、このことは一貫して変わりません。御承知を願います。
#138
○沓脱タケ子君 いや、その真意がわからぬと言
うている。というのは、この四省庁の国の見解の中で、「当事者双方の主張には大きな隔たりがあって、」「当事者双方が容認し得る和解の合意が得られるとは到底考えられない」というふうにお述べになっているんですが、その当事者双方の主張に大きな隔たりがあると。いや、あるから裁判が起こっているんで、こんなもの主張に隔たりがなかったら裁判で争う必要はないんで、あるからやられている。こんなのは当たり前のことなんですよね。
 わからぬと言うているのは、なぜ七十五人の判決をいただいた後に和解のテーブルに着くかどうかを決めるんやとおっしゃるのかというのは、この国の見解でもお述べになっておられるように、いわゆる国の責任論あるいは病像論、こういうものを裁判の中で随分御主張になっておられるようですが、これがどういう判決を、どういうふうに判断をされるかということを見た上でという意味なんでしょうか。真意がわからぬというのはそこなんですよ。ちょっとそれを聞かしてください。
#139
○政府委員(山内豊徳君) この四省庁見解を取りまとめた立場にございますので、私から答弁させていただきたいと思います。
 私が先ほど申し上げましたように、東京地裁において国の責任論、病像論について私どもとしては十分主張してきたつもりでございますので、今先生がおっしゃいましたように、その主張をできるだけ取り入れていただく、できるだけというか、取り入れていただける判決を期待しているわけでございます。したがって、今のままというのか、九月二十八日の東京地裁の勧告文には一切このことは触れておられません。国の責任については文字の上でも触れておられませんし、病像論につきましても、非常に難しいということは触れておられますが、どちらかに軍配を上げることは一切触れておられませんので、私どもはやはりそれについて、今まで裁判の中で鋭意主張してきたことを十分理解していただける判断をいただけるということで期待しているわけでございます。しかも昨年末に結審しているわけでございますから、その御判断をいただいて、それを見た上で、先生がおっしゃるように、いかなる対応があるかを検討したいという意味で申し上げているわけでございます。
#140
○沓脱タケ子君 東京地裁で国が、環境庁が御主張になっていることが認められるかもしれぬということを期待してその判決を待っているということですか。私はそれだから真意がわからぬと言う。裁判で行政庁、特に環境庁が出しておられる責任論あるいは病像論というふうなものは、今日まで、一番近くでは六十二年の三月三十日の熊本地裁第三次訴訟の第一陣の判決で明確にされていて、国が敗訴しているじゃないですか。もうちゃんと出ているんです。もう一遍負けたらということですか。その辺はどうですか。
#141
○政府委員(山内豊徳君) 今御引用の熊本地裁の判決につきましては、承服しがたいということで福岡高裁に控訴中であることは御存じと思います。そこで、そういった判決、一審の判決例がありましたので、東京地裁においてはその上にも、従来にも増して十分主張してきて、私どもの主張が理解されるような判決を期待しているというのが現状でございます。
#142
○沓脱タケ子君 長官、言うことないですか。いいですか。
 七十五人の判決が出たらその時点でと、主張が裁判の場で認められたらという、認められるかもしれぬと思っているんですね。一遍も出ていなかったら私その主張は理解できる、一遍も判決が出ていなかったら。何ぼ私ども素人でもそのことは理解ができます。しかし、ちゃんともう熊本地裁で明確にされて国が敗訴している。それをもう一遍負けるまでは考えさせてもらいますというようなことは、なかなか理解ができないというのはそこなんです。
 そこで、おっしゃったように国が負けたら控訴しましたね、熊本ではね。それで私、全く裁判の素人の立場で考えてみたいと思うのは、和解勧告というものの重み、これを一遍改めて考えてみたいなと実は思うんです。というのは、長官が言ったように、東京地裁の判決が出てからと言うんでしょう。その七十五人の判決が出るまででも、午前中、先ほどの論議でも明らかなように、あと数カ月、半年は十分かかる、わからぬけれどもという話ですね。七十五人だけで数カ月かかるでしょう。でも国が負けてまた熊本と同じように控訴するというようなことになったらどないなります。そうなったら二審の判決でまた三年や五年かかるんじゃないかな。素人ですからようわかりませんけれども、三年や五年かかるでしょう。それで二審の判決が今度はまた不服やというて国が控訴するというようなことになって最高裁まで持ち込まれるというたらまた五、六年かかる。そうすると、これ考えてみたら、七十五名の東京地裁の判決の問題だけでも今後十年内外待たなきゃ判決が確定しないということになるんだな。
 それで、まして現在二千名を超す原告がおって、そのほかに数千名の被害者がいると言われている。これ全員の解決をするということを考えたら、このテンポでいったら片がつくのが二十年、三十年かかるかもしれぬなということを私自身だって思います。しかも、今裁判中の被害者の方々、あるいは水俣の被害者全体の方々でも平均年齢は七十歳近い。裁判中に九十名の方が既に亡くなっている。だから生きているうちに救済をという被害者の悲痛な叫びと願いというのが出てきておって、これが裁判長の胸にこたえて、この客観情勢をきちんと握って和解勧告が出されたのではなかろうかと思うんですが、いかがですか、長官。
#143
○国務大臣(北川石松君) ただいま委員のおっしゃるとおり、また午前中、午後からの各委員の御指摘のように、年齢的にまた裁判の長期性を考えたときに、早期解決をしなくちゃいかぬということは私も考えております。ただ、現時点においてという言葉を再三繰り返していることを大変委員も御指摘なさるのでございますが、行政という形の上におきましてやはり七十五名の判決を待ちたい、待たなくてはいけない、このことがあるからでございます。
#144
○沓脱タケ子君 もう一遍負けぬと和解のテーブルに着けぬという話のようですけれども、和解勧告が出たという、しかも三地裁一高裁で出たということの重みというのは、水俣病の今日の状況というものをいかに深くつかんだ上での和解勧告であったかということを私自身も改めて深く胸に刻んだわけでございます。
 そこで、和解勧告の中で言われている点を一、二見ましても、これはもう皆さんよく御承知だから多く申し上げませんが、東京地裁の勧告では、「本件のような多数の被害者を生んだ歴史上類例のない規模の公害事件が公式発見後三四年以上が経過してなお未解決であることは誠に悲しむべきことであり、その早期解決のためには訴訟関係者がある時点で何らかの決断をするほかにはない」というふうにお述べになっておられます。熊本地裁で国が負けて控訴されたあの福岡高裁での和解勧告の中にも、こういうふうに言われています。多くが高齢である上、各地の裁判所に多数係属している現実にかんがみて、本件訴訟のより早期の抜本的なかつ適切妥当な解決を図るために和解を勧告する。和解の場においても裁判所が対立点について見解を表明し、調整を図る余地もある。そこまで和解勧告の中では言われているわけでございますから、まさに人道上の立場から見て一刻も放置できないという立場でこの和解勧告というのが出されたということを端的に示していると思うんです。
 時間がありませんから、私ちょっと続けて申し上げます。
 こういった三地裁一高裁の和解勧告というのがまさに今日の時点での極めて賢明な、常識的なというんですか、極めて常識的な和解勧告であったからこそ世論があれだけ大きく支持を表明したし、さっきもお話があったように、全国紙、地方紙を含めて三十九の新聞でも社説を掲げて和解勧告に応じるべきということが言われてきたというのはそこだと思うわけでございます。
 そういう中でチッソ、これは加害者ですね、直接の加害者であるチッソも、熊本県も和解のテーブルに着くと言って了承しているわけですよ。国だけが東京地裁の判決が出たらと。判決が出たってさっきの局長からの話を聞いていたらわかりませんな。判決が出たって和解のテーブルにその時点で着きますとちっとも言わぬからね。これはやっぱりその着く腹を固めてもらわぬと話にならぬと思うんですよ。私は、ここまで世論が高まり、しかも客観的な情勢では極めて常識的であり、賢明な和解勧告が出されているという中で、国だけがかたくなに和解勧告のテーブルに着かないやり方というのは、これは今や七十歳になんなんとする被害者の皆さん方が命がなくなるまで拒否するという冷酷無比なやり方なのかと言われてもしようがないと思うんですよ。長官、つらいでしょう、そう言われたら。いかがですか。――いいです、答えられなかったら、時間がありませんから。私はそう言われてもしようがないというふうに、私自身も怒りを感じます。
 それで、和解を拒否する理由として国が掲げておられる国の責任論、それから平等論、こんなものはもう既に六十二年三月の、さっきも言うたように熊本地裁の第三次訴訟の中で明確にこれは論破されています。御承知でしょう。決着済みなんだ。それがかなわぬから控訴しているんやないか。その控訴した高裁の裁判長が、これではほっておけぬから和解をしなさいと言うているんだから、これはよっぽど国は頑迷固陋だというふうに言われてもやむを得ない。
 私は細かいことを、平等論あるいは責任論についてはもう云々する時間はありません。しかし、どのように裁判の席上であれこれ言おうとも、これは事実というのは消えませんよ、事実というのは。あの昭和三十二年の二月に熊大で八匹の猫を実験した。そうしたら、三十二日目から次々みんな魚を食べて死んだ。これは現実の事実ですよ。水俣の保健所でも同じように実験したけれども、皆死んだ。早いのは一週間で死んだそうですな、発病したそうです。あるいはきょう午前中も言われておりましたが、熊本県が食品衛生法の四条二号の適用をしたいというて申請をしたのに、しかし厚生省は認めなかったという事実は――私は来てもらっていませんからおいででないかもしれません。事実は消えないというのですよ。裁判の中でどのように言い逃れというか、あるいは言い抜けをしようとも事実は消えない。そのことは肝に銘ずるべきだと私は思います。
 もう一つは、平等論だって、これ、私医者の端くれですが、十六年前に水俣へ伺いました。そこへ行って水俣病の患者さんたちに初めてお目にかかったんですが、多くの患者を診てきた医師の一人として、私は息をのむ思いをいたしました。一遍も見たことのないような胎児性水俣の方、重症の水俣病の方、こんなひどいことをと、罪とがのない人たちがこんな目に遭っていいのかと怒りを感じました。だからこそ被害者は一人残らず救済しなければならないという熱意をそのときも胸に刻んだわけでございます。
 それが、指摘をされてまいりましたように、五十二年のいわゆる保健部長通達以降、これは切り捨て法だと私どもはたびたび追及をしてまいりましたけれども、現に今日の状況になってしまっておるわけでございます。裁判の席上でも平等論は、これはもう一回じゃないですね、幾つかの裁判で既に明確に指摘をされております。
 そこで、もう時間がありませんので最後に私申し上げておきたいし見解をお聞きしたいと思うのは、六月の参議院の本委員会で、長官は水俣病の問題の解決が最優先課題だと言明をなさいました。今その最優先課題ということの実行は、和解のテーブルに着くことこそがその長官の言明に沿う唯一の道だと私は考えます。
 そういう点で、これは世論が非常に厳しいですよ。十月二十二日の毎日新聞の社説にも書いてありました。「患者救済を忘れた環境行政」という題ですよ。
  解決を図るべき役所が解決を引き延ばそうとしている。〃仲間″の自治体や企業までがホコを収めようとしているのに、独り頑張っている。なんともおかしな図だ。
  水俣病訴訟の和解勧告を拒み続ける国・環境庁のことである。
  このおかしさを同庁は自覚できないのだろうか。とすれば、一般の考え方から離れ過ぎている。
ということを毎日新聞の社説で論評していますよ。
 ですから環境庁はいつまでもかたくなな態度を続けるのじゃなくて、ここで解決を逡巡させるということになれば環境行政に対して国民の不信はますます高まるに違いありません。したがって私は、この国民の声を慎重にお酌み取りをいただいて和解のテーブルに着いて、一日も早く水俣病の被害者、患者救済のために環境庁長官として決意を固めていただきたい。心から要請をいたします。決意を伺って終わります。
#145
○国務大臣(北川石松君) 沓脱委員の水俣病に関してのいろいろの御所見を承りました。また午前中、各委員の水俣病に対するお考えの中にも、やはり早期解決に向かう、そのためには和解のテーブルに着くことが一番いいんじゃないかという御意見でございました。私もまた、過ぎし大阪府会議員時代にこのことを知ったときに、やはり悲しみを覚えた一人でございます。このことを踏まえながら、先ほど申しましたように、判決が出ますと同時に対応したい、ただいまの委員御指摘の点をよく承って頑張ってまいりたい、こう思っております。
#146
○中村鋭一君 建設省の方来ていただいていると思いますが、熊本県の球磨川の河口においての砂利採取業者の数、それから年間の砂利採取量等についてまずお答えをお願いいたします。
#147
○説明員(日野峻栄君) ただいま先生の御質問でございますが、球磨川の河口付近で砂利採取が行われてきておりました。まず、その業者の数でございますが、ここは組合になっておりまして、球磨川地区砂利協同組合という組合でございまして、そこに許可をいたしております。その構成の数でございますが、この組合は二十一社で構成されているというふうに聞いております。それから砂利採取の実績でございますが、河口付近で、九キロまでぐらいを一応河口付近といたしますと、昨年は採取の実績はございません。
 以上でございます。
#148
○中村鋭一君 私の手元にある資料では、二十一社が十一トンの大型ダンプカーで延べにして年間に一万台近く砂利を採取している、こういうことなんですね。
 そこで、実はこれは個人的なことですが、私はアユ釣りが好きでございまして、ことしの夏は三日間球磨川へアユを釣りに寄せていただきました。球磨川は日本のあらゆる河川の中で一番大型のアユが釣れる川として有名でございまして、以前は三十九センチ、最大のものは四十センチを超えた、こう言われているんです。普通アユの大きさは十七、八センチですから、三十センチを超えるアユがとれるというのは、これはもう球磨川だけなんですね。ところが、ことし私が参りましたら、三日間やりまして最大のものが二七・五センチでございました。地元の人に聞きましたら、以前から比べますとアユの大きさが全く問題にならない、小さくなった。それから漁獲量も激減してきている。どこに原因があるんだと、こう伺いましたら、一つには河口におきましての砂利採取ですね。アユは十月ごろから下り始めまして、河口で砂利床に産卵をいたします。その産卵床が今申し上げたように物すごい勢いで掘られているわけでございますから、アユが卵を産みようがないわけですね。そのために産額が激減をしている、こういうことなんです。
 水産庁来ていただいていると思うんですが、こういった河口においての砂利採取が、アユに限らずほかの魚類も含めて、産額に重大な影響を与えているということについての水産庁の見解をお教え願いたいと思います。
#149
○説明員(海老沢志朗君) ただいま先生の御指摘
の点でございますけれども、球磨川のアユの生産量が五年前に四百トン台で推移いたしましたけれども、最近のデータ、六十二年には二百トン台と半減したことは私どもも承知しております。ただ、生産量が減少した点及び先生が今御指摘になりました小型化の原因につきましては、その年の天候であるとかあるいは水温であるとか、そのときの水量であるとか河川の濁り、あるいはえさの状況、いろんな要因がございまして、先生がおっしゃるように砂利採取が主要因であるとの確証は得ておりません。
#150
○中村鋭一君 あなたは素人ですからね、魚のそういう状況については。だから私が教えますが、それはその年々の水の量だとかえさの量とかそんなものじゃないんですよ。何千年も昔から球磨川にはアユがいたんですよ。球磨川のアユはつい二十年ぐらい前までは数千年間同じぐらいの大きさのがいたんですよ。それがいなくなったというのは、当然ながら相関関係として、上流にダムができる。ダムができたために適切な量の砂が流れてこない。河口の砂を取る。アユの産卵のしょうがない。産卵のしようがないところへ掘るものですから、アユがえさにしております、アユは石についている珪藻や藍藻を好みますが、その石がないわけですから、結局えさ場も不足する。産卵もできない。それが四百トンが二百トンになったという主原因でありますから、一概に断定しかねますじゃなくて、これはもう河口の砂利採取が主原因です。そのことは認めていただきたい。
 したがって、そのことについて、河口の砂利採取等が目に余るものであれば、水産庁としても魚族保護の観点から建設省に対して適切な措置を講ずるように申し入れる用意はありますか。
#151
○説明員(海老沢志朗君) お答えいたします。
 私どももこの点につきまして、魚が、資源が減少していくというのは水産庁の立場からも好ましくないということは論をまちません。しかしながら、その原因が、確かにアユが減少した、砂利を採取している、それと本当に一義的に結びつけられるのかという点につきましては、県の方とも何度にもわたって事情聴取いたしましたけれども、県の方の立場といたしましてもそれが主原因であると確証は得ていないということでございます。
#152
○中村鋭一君 いや、だから今私が教えてあげたんですから、間違いないですよ、これは。地元の漁業組合も、何千人という釣り人も、やっぱり河口の砂利採取が原因だと認めているわけです。そんなことは常識ですよ、釣りの世界では。だからよく御相談になって指導をしていただくように、申し入れをしていただくようにお願いしておきます。
 それからもう一つ小さな原因、河口の砂利採取に比べれば小さなことかもわからぬですが、教えていただいたところによりますと、漁業法の六十五条でございます。この中で調整規則というのがありまして、その河川におきましての魚のとり方、漁法ですね、これは各県の知事の裁量の範囲内でやる、このようなことなんですが、球磨川ではガックリ漁といいましてワイヤに針をいっぱいつけまして、それで川底をかき回すわけですね。それからもう一つ、これは職漁者の方の刺し網がございまして、これ全部県知事が禁止をしているはずなんですね。刺し網は時期を設けて許可しておりますけれども、このガックリ漁、俗にゴロ引きとも素掛けとも言いますけれども、これは禁止しているにかかわらず野放しになりまして、球磨川の川底にワイヤが堆積をいたしまして、先日は釣り人が自分でその底にかかった針を外すために潜りまして、堆積しているそのワイヤに足を絡まれて水死をした、こういう事故も起きているわけなんですね。
 だからこういう点につきましても、法律に決めてあってこれは知事の裁量の範囲内であるから、ガックリ漁等の禁止漁法を犯す釣り人がいることについて我々の関知するところではないというのじゃなくて、これは熊本県に限らず各県におきましても、ひとつ水産庁はよく相談をして、禁止しているんだったらそれが徹底するように、周知徹底するようなPR等々について、監視を強めることについて各県に対して指導を強化されることを心からお願いをしておきたいと思います。
 次に、琵琶湖でございますが、琵琶湖の水質の現況ですね。これは窒素でありますとか燐酸、COD、それからオオカナダモ、コカナダモの発生の状況、アオコ、赤潮の発生の状況、これを簡略で結構ですから、十年前に滋賀県では洗剤条例ができましたけれども、それ以後のおおむねの累年のこういった水質につきましての推移を簡単に御説明をお願いいたします。
#153
○政府委員(武智敏夫君) ただいまお尋ねございました滋賀県が富栄養化防止条例を制定された以降につきまして、簡単に御報告させていただきたいと思います。
 まずCODでございますが、北湖、南湖とも五十四年度以降ほぼ横ばいということで、平成元年度におきまして少し悪くなっておるというようなことでございます。
 それから全窒素につきましては、北湖ではほぼ横ばいということでございます。南湖におきましては、五十四年度以降若干改善があったわけでございますが、最近はまた横ばいということでございます。
 それからまた全燐につきましては、北湖では五十四年度以降は環境基準を達成しておるということに対しまして、南湖の方では環境基準を上回っておるというようなことでございます。
 それからお尋ねのアオコ、オオカナダモ、コカナダモの発生状況等でございますが、淡水の赤潮につきましては、本年は大体例年と同じぐらいで五日間発生したというような状況でございますし、アオコにつきましても十二日間ということで、ほぼ例年というふうに県から報告を聞いております。それからオオカナダモとコカナダモにつきましては、滋賀県が異常繁殖した場所で刈り取りをやっておるわけでございますが、その面積が九十一ヘクタール、刈り取り量は一万三千六百五十立米ということで、例年に比べますとことしは若干多目というふうに聞いております。
#154
○中村鋭一君 今のお話を伺っておりましても、せっかく県民がみずからの良識をもちまして洗剤条例を実施いたしました。この結果、なるほどいわゆる化学洗剤、この使用は抑えられました。抑えられましたが、しかし界面活性剤、こういうものがまた新たな汚染の原因になりまして、今伺いましても十年たつのに横ばいだと、こういうことなんですね。状況は余り改善されていないように見受けられますね。
 それで私、先日、滋賀大学の調査船に乗りまして五時間ばかり南湖と北湖の各所で水を採取しまして、現実に調べてみたんです。これはもうやっぱりぐあい悪いですよ。特に南湖はえらいことになっておりますね。こういったオオカナダモとかコカナダモは外来種でございますから、悪貨が良貨を駆逐するという言葉がありますが、これ非常に生殖力が強くて繁殖力が強いものですから、在来からありますいわゆるいい型と言えばおかしいですけれども、ずっと琵琶湖にありましたいい藻がこれに負けておるわけですね。そのためにオオカナダモ、コカナダモが繁殖をしている。これはまさに琵琶湖が依然として汚れ続けているということを我々にはっきりと教えてくれている指標だと、こう思うんです。
 そこで、よほど我々はこのことについて大胆に勇気を持って取り組んでいかなければいけない、こう考えるわけでございますが、長官、今お聞きのとおりであります。下流域の皆さんは琵琶湖の水を飲んでいらっしゃいます。琵琶湖総合開発事業で今一生懸命やっております。これについては私、言い分あります。下水ばかりに力を入れて、良好な滋賀県の自然環境を守るということについて、琵琶湖総合開発事業の予算の執行の仕方について随分私は言い分はありますけれども、そういうことも含めて、ひとつ長官、琵琶湖の水質を守ることについて環境庁としてはどのようにお考えで、また、もし具体的な今長官の御計画等々があれば、下流で水を飲んでいらっしゃる長官としてもひとつ積極的な御答弁をお願い申し上げたいと
思います。
#155
○政府委員(武智敏夫君) 長官の前に、事実関係につきまして私から報告させていただきたいと思います。
 先生御承知のとおりなことでございまして、湖沼の法律に基づきまして六十二年に県が策定いたしました湖沼水質保全計画がございます。これに基づいてやっておるわけでございますが、ちょうど五年を経過いたしまして平成三年度で見直すというようなことになっておりますので、我々も県と今後、あるいは関係省庁の協力も得なきゃいかぬわけでございますが、そういうことを少し早目にやりまして、県と相談しまして、御指摘のようなことで一時改善を見たんですが、少しまた悪くなりつつあるというようなこともある面がございますので、我々としてはしっかりやっていきたいというふうに思っております。
#156
○中村鋭一君 長官ひとつ。
#157
○国務大臣(北川石松君) 中村委員の琵琶湖の水についての御指摘でございますが、私もまた先日、琵琶湖水質のあれで見てまいりました。御指摘のように南湖と北湖ではうんと違います。みずからあの水を飲んでおる一人として、やはり御指摘のように一日も早く水質をよくしていきたい。水質の研究所も置かれております。UNEPにおいて琵琶湖に湖辺を水の研究機関の用地の一つとして決定されるように今努力しておるところでございます。
#158
○中村鋭一君 長官ひとつよろしくお願いいたします。今琵琶湖は、湖について言うならば、世界じゅうの環境に携わる人たちのある意味においてはメッカとして、こういった特に環境問題の国際会議等々は割に滋賀県で行われるようになっているわけですね。ですから、世界じゅうの人たちがおいでになったときに、なるほど日本人は偉いな、環境庁はようやっているな、琵琶湖はきれいになったなと褒めていただけるようにひとつよろしくお願いしておきたいと思います。
 長良川についてお尋ねをいたします。
 芦田川を長官視察されたようでございますが、そのときの感想、これは同僚委員も伺いましたけれども、それと長良川の河口ぜきの問題についてたくさんの住民団体や自然保護団体の皆さんが重大な懸念を表明しておる、このことについてひとつお伺いをいたしたい、こう思います。まず芦田川の感想をひとつ。
#159
○国務大臣(北川石松君) 長良川河口ぜき問題がいろんな角度から問題視されておることは御指摘のとおりでございまして、私は過日、河口ぜきで一番手っ取り早く見られるのはどこだろうと思って芦田川へ飛んでまいりまして、河口ぜきを見せていただきました。漁業組合長またその場所におる所長等の御意見を全部聞かせていただきました。やはり河口においてのせきは水の滞留を呼びますし、水がとどまればそれは悪くなっていくということは現実の問題であるなと見てまいりました。ただ、芦田川と長良川は水量その他すべてにおいて趣は違うと思います。私は、やはり水をとめればそれは悪くなると思います。三尺流るれば水清しと、我々子供の時分には水が三尺流れれば還元力と復元力で清くなったんですけれども、今はなかなか三尺流れても清くならない。それほど家庭の雑排水、工場排水、いろんな中で侵されております。それをとめてしまえば、私は当然この水は腐っていく一途しかないんじゃないか、こういう思いをいたしました。
#160
○中村鋭一君 今長官は、芦田川については懸念を表明された。芦田川と長良川とは違うと、しかし川はせきとめれば水が汚れてよくない、こうおっしゃいましたが、私ちょっと論旨に矛盾があるように思うんですね。川は上から下へ流れます。長官、今せきとめれば水がよどむとおっしゃいました。三尺流れざれば水汚しですな。
#161
○国務大臣(北川石松君) 清し。
#162
○中村鋭一君 いや、三尺流れれば清し、流れなければ汚し、そういうことになるんですね。
 じゃ、この条件においては芦田川も長良川も一緒なわけでございますから、だからこれ新聞にも「長良川河口堰 環境庁長官が疑問視」、こう見出しで出ているわけです。「水質悪化の一因に」、これは長官の御意見として出ているんです。長官は、やはり長良川の河口ぜきの建設について重大な疑念を表明していらっしゃると私は受け取らせていただきたいんです。
 建設省、現在の工事の進捗状況、その前に、何のためにこれをつくることにしたんですか。あと二分しかないから簡単に。
#163
○説明員(豊田高司君) 長良川建設の目的は二つございまして、一つは治水でございます。二つ目は利水でございます。簡単にということでございますので、これは本来なら詳しく御説明申し上げて御理解を得たいところでございますが、この二つということを御説明申し上げたいと思います。
 それから進捗状況でございますが、これは六十三年三月より本体に着工いたしました。これまでの間、六十二年二月までには二十二漁業組合の同意も得て着工にこぎつけたわけでありますが、その後工事を進捗しておりまして、全部で十三本のせき柱のうち二本が現在完成しております。平成二年度にはさらに三本のせき柱を完成させる予定でございまして、事業費ベースで申し上げますと、進捗率は本年度末までに四九%、およそ半分の進捗をする予定でございます。現在、平成七年三月の完成を目途に鋭意事業を進めているところでございます。
#164
○中村鋭一君 今あなたは、目的を簡単に言えば治水と利水とおっしゃいましたね。では建設省は、最初にこの河口ぜきを建設するに当たって、周辺の良好な環境のこと、先人から我々が受け継いできた緑の山やきれいな水やあの川に群れ遊んでいる魚や、そういうことについては顧慮するところがなかった、こう理解をしてよろしいですね。
#165
○説明員(豊田高司君) 簡単に申せとおっしゃったものですから簡単に申したわけでありますが、事業着手をする以前に、昭和三十八年から約五年間、九十名の学識経験者による、専門の学者による徹底的な調査を行いました。これは長良川が大変自然環境が豊かである、特にアユ等の漁業資源についてはこの地域の住民の皆さんにとっては大変大事な資源であるという立場を中心といたしまして、その漁業資源をいかにして保全するか、その現況はどうかということを中心に、主に水中の生物環境、自然環境について徹底的に調査をした次第であります。したがいまして、その後も十分調査して現在に至っておるわけでありますので、先ほど申し上げましたように漁業組合の皆さんにも御理解をいただいて着工にこぎつけた次第であります。
#166
○委員長(上野雄文君) 時間ですから簡単に願います。
#167
○中村鋭一君 いずれにしても、私は、はっきり言います、あなたの方がこの建設に着工されたときにそれは優先順位のはるか下にあったということは絶対に否定できないと思います。おっしゃった、治水と利水ですから。そのことについて今こういう運動が起こり、環境庁長官も重大な疑念を表明しているわけでしょう。そのことはしっかりテークノートしておいていただきたいと思います。
 最後に、ほんの一言になりましたけれども、水俣病の和解勧告には環境庁は勇気を持って応じていただきたいと思います。
 我々は今、例えばサウジアラビアに展開しております米軍を中心とする多国籍軍に平和のために二十億ドルという巨額を拠出しています。しかし、現に金について言うならば、今回和解勧告に応じても、どうですか、支出する金額は二百億ぐらいじゃないですか。多国籍軍に対して我々は世界の平和のために三千億という金を出すのであれば、金額について言うならばそれぐらいのことはやったっていいじゃないですか。
 裁判官は、一つの高裁と三つの地裁で和解勧告を出したときに、それぞれの裁判官の皆さんが、もうこれ以上患者の方々を苦しめるに忍びない、そういう心証があったに違いありません。とすれば、あなた方は行政だとかメンツだとか筋だとか
法律だとか、そんなことを言っている場合じゃないということを私は言いたいんですよ。考えてみなさいよ。今、沓脱さんもおっしゃいましたね。どんどんどんどん皆さん年とっているんですよ。だったらやりなさいよ、勇気を持って。和解勧告のテーブルに着いたらどんなに国民が喝采をもってこれを迎えるか。世論の赴くところに従うのが立法府や行政府の責任じゃないですか。そのことを申し上げて私の質問を終わります。
#168
○山田勇君 水俣病の問題についてお尋ねをいたしますが、午前から午後にかけて各同僚委員がこの問題で質疑をいたしております。そこでなるべく重複を避けさせていただきます。
 この問題は、御承知のとおり、水俣病が公式に発見されてもう既に三十四年が経過しております。三十四年と一口に言いますが、一歳の子供が三十五歳になるんですから。これは当たり前のことです。この三十四年という経過については非常に私は感慨深いものがございます。
 この間、裁判を通じて、またマスコミなどで報道された水俣病の病像についても、四つの裁判所の勧告もあり、その見解もほぼ一致しているようでございます。これがばらばらならまだ少し和解のテーブルに着くのもなにかと思いますが、大体因果関係から病像からあらゆるものはほぼ一致をしている。本年九月の東京地裁、また熊本地裁、福岡高裁、福岡地裁と相次いで和解の勧告が出ております。これに国だけが話し合いのテーブルに着かない。
 今、中村同僚委員が言ったように、僕ね、局長、長官、これわかるんです。これ一つ認めればほかの公害の問題がすべて国の責任に帰するという、これは国としては重大な、また慎重に判断をすべき問題であると事柄はようわかっているんです。しかしながら、三つの地裁一つの高裁が和解のテーブルに着きなさいと言ったときには、メンツとか縄張りとかまではいきませんが、国が重大な責任を負うということであれば、これ水俣病だけではない、あらゆる公害についての国の責任というものに派生するのは、これはもう事実です。それがゆえに多少憶するところはあると思うんですがね。しかし、和解のテーブルに着くということは和解をするということにはつながらないんです。テーブルに着いてこそ初めて裁判所の和解、被害者の問題、そして国が思っている問題の接点がそこで見出されるわけです。到底のむことのできない和解条件もありましょう。だから僕は、テーブルに着くのをなぜそんなに国として恐れるのか。しかし、裁判所からこうこうしたらどうですか、弁護団の方からこう話があった、これは私とすれば困ります、のめない。それよりか特例の一つの法律を、これはもう余りにも長い三十四年ですから、ほかの公害患者認定とか疾患認定にはこれはつながりませんとか何か国としての条件をつけて、とりあえずは水俣を、長官、もうここで解決すべき年ではないかなと思います。
 アメリカの弁護人がこの間来ました。友達です。だから僕は通産省に、アメリカがかつて水俣の視察をしたことがあるという記憶があるんで、ちょっと不勉強で、国立図書館へ行けばわかるんですが、通産省にお願いをしたけれどもそういうレポートはないということなんです。先日アメリカの有名な弁護士さんが来まして、食事をしながら水俣のいろんな話をしたら、まだ解決していないのか、英語で言うたらサプライズと言うてました。びっくりした、こう言っているんですね、三十四年というので。
 局長はあらゆる法律に対して物すごく熱心に我々にも理解を求めて、何度となく局長みずから、僕ら何遍もレクチャー受けることあります。尊敬しているんです。だからね、長官、テーブルに着くということは和解に応じたということにならぬので、とりあえずは一たんテーブルに着いていろんな話し合いをされたらどうですか。そこでのめないものは国としてこれは到底容認できません、これをやるとすべてのたがが緩んでしまいます、それでは、すべてが国の責任に帰するということは到底国としては認められない、それならそれでまた最高裁まで闘うもよしとしましょう。しかし、テーブルに着かずして、これだけ言われているのに着かないというのは国民感情的に――僕は環境庁というのは少なくとも国民の側に立った月光仮面やと思うんです。いつまでたっても月光仮面来ない。スクーターも来なきゃ白いマントも見えない。これちょっと困るんです。
 だから、僕は本当に立場はわかりますよ、立場はわかります。もうそれは国会議員二十年もやれば国、政府の考えていること、それは十分わかります。わかりますが、そこを長官ひとつ、前向きというような言葉は余り使いたくありませんが、局長でも結構です、何らか一歩でも半歩でも歩んでもらうと少し解決の兆しが見えるんじゃないかなと思いますので、その辺の御決意といいましょうか、また長官の御意見なり局長のお話を承りたいと思います。
#169
○政府委員(山内豊徳君) 私から端的に申し上げさしていただきたいんでございますが、今和解のテーブルにだけは着いてはという御趣旨かと思うのでございますが、このような損害賠償責任を訴えられている裁判の中での和解でございます。それを前提といたしますと、国が何らかの国民負担による支払いをするという当事者であることを認めないでテーブルに着くということはありません。これははっきり申し上げまして、原告側もそうでなければ納得されないことは明らかでございます。その意味で責任論棚上げの和解テーブルには着けないこと。
 それからもう一つは、環境庁としましては、先ほど来申し上げておりますように、古くは昭和四十五年から施行されました公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、それを引き継ぎました四十九年から施行されました公害健康被害補償法で今、水俣病患者の救済を二千九百余名の方をやってきております。そういう国が当事者になって何か別の救済に着くということは、国として政策的な一貫性に何とも説明がつかない、それが私どもの端的なこの問題に対する考え方でございます。
#170
○山田勇君 長官、どうですか。
#171
○国務大臣(北川石松君) 局長が事務的な答弁をいたしましたが、私は現時点では応じないということを、各委員のお気持ちはわかりますが、繰り返してまいっております。今また山田委員から懇切丁寧に、今こそ着くべきじゃないか、月光仮面と言われますと、私あだ名が月光仮面でございまして、どうしたものかと思って心千々に乱れてくるような状態でございます。そういう思いの中で速やかに救済したい、このことはもう何回も繰り返しておりますように私の考えでございます。
 ただ、判決を待ったときの対応、またこの間の閣僚会議においての諸方策という中にいろいろのものを考えていることもきょうお聞きを願っておきたい、こう思っております。諸方策につきましては関係各省庁と話をして具体的な案をつくっていきたい、これは広中委員の御質問にも答えたことでございます。
 以上でございます。
#172
○山田勇君 この問題は同じことを繰り返すことになりますのでこの辺にとどめおきますが、救済というものは、被害を受けた人が生きている間に何らかの救済をするというのが真にまことの救済ではないだろうかと思います。亡くなった墓にお神酒をかけ、羽織をかけてもこれは決して救済には相ならぬと思います。それゆえに何とか一歩突っ込んだ救済措置を講じていただきまするよう格段のお願いをいたしまして、次の問題に移らせていただきます。
 次には、地球温暖化の防止対策についてお尋ねをいたします。
 政府は先ごろ地球温暖化防止行動計画を決定し、向こう二十年間の対策をまとめていますが、この対策は国民生活全般にわたっており、ひとり政府の担当者だけがその内容を理解していても何の進展もありません。一般の人々、国民全体が理解し、協力することにより成果を上げることができると考えます。そのためのPRなど政府として
の対応に万全を期していただきたいと思います。
 そこでまず、この対策の前提となる地球温暖化による影響や被害についてでありますが、この影響や被害について政府の説明によりますと、二十一世紀末には気温が約三度上昇するとか、海面が六十五センチ上昇するなど、それによって多大な社会経済的な影響があるように聞いておりますが、どうも実感としてわきません。地球が暖かくなるというのはいいではないかなどと考えている人も現にいます。日本がハワイになるのかというようなことを言うている人もおります。自然界や農業などに悪影響が出ると言われても具体性がなく、なかなか深刻に受けとめていないのが実情であると思います。温暖化防止対策についてその必要性を強調するためにも、国民全体が納得のいくような具体例などを示して説明すべきだと考えますが、その点、長官、いかがでしょうか。
#173
○政府委員(山内豊徳君) これは、過般のIPCCのレポートを読みましても、確かに平均して三度とあったり、南半球ではどう、北半球ではどうというのが学者の意見でございます。それを私が例えばわかりやすく解説しようといたしますと、必ず専門家はそれは不正解であると言いますものですからどうしても例示に困るんでございますが、今先生がおっしゃった一つの例、気温で三度上がるという話でございますが、確かに東京が鹿児島より暑くなるという、程度で言いますと、何かそのぐらいとおっしゃるかもしれませんが、ことしの暑かった夏の六週間、年平均三度でございますから、夏だけにしわ寄せになりますと、これがひょっとすると九度上がるかもしれません。そうなりますと、これは異様なことでございますので、まさに気候変動、異常気象でございますので、これはやはりゆゆしき問題と思います。
 それから先ほどもちょっと一例を申し上げましたが、太平洋にございますキリバスという国の代表などが本当に涙を流さんばかりに訴えておりましたが、国の平均標高が一・何メートルしかない。それが来世紀末まで六十五センチ、最大一メートルかもしれぬと言われますと、七万人ですか、国民みんなが、じゃ我々どこに行けばいいんだということになるわけでございますから、これは日本国内の例示もいろいろまた考えたいのでございますけれども、やはりそれ自身は本質的に人間の活動によって大気に影響を与えたことのいわば、ひとつ表現が不適切かもしれませんが、人為的な影響によるところの怖さということ、あるいは人間活動の何といいますか、許されざる面を考えますと、これはやっぱり異常なことではないかと思っております。
#174
○山田勇君 局長おっしゃるとおりでございます。だから僕は常日ごろ、この委員会でも何度も言ったように、我々人間というのは開発という名において無秩序に自然を破壊してきた。いつかその報復を受けるであろう。今報復を受けるかもわかりません。何としてもこれをとどめていかなければならない時期に差しかかったと思います。
 次に、先日、政府が決定した地球温暖化防止行動計画について伺います。
 この計画の目標、すなわち二酸化炭素の排出規制については、経済成長を妨げることなくできるだけ厳しい目標を設定するということで、政府内の調整にはかなり苦労をしたと聞いております。その調整の結果にけちをつけるつもりではありませんが、何点か正直言ってわかりにくい点がありますので、ぜひお教えいただきたいと思います。
 まず第一点は、「二酸化炭素については、先進主要諸国がその排出抑制のために共通の努力を行うことを前提に、次の目標を定める。」とありますが、これは一体どういう意味でしょうか。ほかの先進国が、例えばアメリカがその目標を立てなければ日本もやらないということなのか。もしそうだとすれば行動計画は全く無意味なものになってしまうと考えられるんですが、その点いかがでしょうか。
#175
○政府委員(山内豊徳君) 全世界で出しておりますCO2のうち日本が出しておりますパーセントは四・七%、五%弱でございます。ですから、日本だけが安定化を図っても、これはおっしゃるように世界の炭酸ガスは安定化されません。しかし、幸いなことに主な先進国ではかなり共通の努力が始まっております。特にヨーロッパにおきましては日本よりむしろ厳しい目標、日本よりといいますか、もともとが排出量の多い国でございますからドイツのように二割ぐらいカットできる国もあるわけでございますが、そういう国も始まっておりますから、そういうことをみんなで一緒にやりましょうという意思表示が前提という意味でございます。
 逆に、じゃ、どこかの国が挙げなかったらやらないかというと、全くそういうことは考えておりません。それはみんなでやろうという、みんなで手をつないでやろうということを言い出している我が国でございますから、それを言ってはぶち壊しでございますから、一切そういう考えはございません。
#176
○山田勇君 次に、この目標の設定が二段構えになっておりまして、第一に書いてある一人当たりのCO2排出量を二〇〇〇年以降現状のレベルで安定化することがあくまで目標であり、第二に書いてある総量としての現状レベルでの安定化は単なる期待の表明にすぎないともとれるんですが、この両者の関係は一体どういうふうに解釈をすればよいのか、わかりやすく御説明を願いたいと思います。
#177
○政府委員(山内豊徳君) これは先ほども御答弁申し上げたと思いますが、第一項は、この計画に盛り込まれておる施策を、広範な施策でございますけれども、着実に実行していけば十年間で一人当たりは何とか安定化できるということが第一目標でございます。同時に、それだけではやはり相ならぬということで「努める」、努力するとは書いてありますが、しかしそれも目標として、第二項も目標として、これにはしかし太陽光とか水素などの新エネルギーとかCO2固定化技術といった革新的技術の応援が必要ではございますが、それをできる限り先取り進展させて努力すること自体も目標でございます。言いかえれば、第一項、第二項にわたってこれを今回の行動計画の目標にしたわけでございますので、国際的にもそれを両方踏まえて我が国の目標であるということを説明していきたいと考えております。
#178
○山田勇君 いずれにいたしましても、二酸化炭素など温室効果ガス排出抑制目標を達成するためには、あらゆる方面での努力が必要であります。行動計画にもいろいろ対策は並べられておりますが、いずれも抽象的で、何を、いつまでに、どれだけ達成するのかはっきり出されておりません。一つ一つの項目についてそれぞれの目標、また必要な予算措置など定められているのかどうか、どういう段取りでだれが責任を持って進めていくのか、またその実施状況をどうやってチェックするのか、この点の御説明をいただきまして私の質疑を終わります。
#179
○国務大臣(北川石松君) ただいまの地球温暖化に対する御質問の中で、これはやはり国民一人一人、企業、すべてが御理解と認識をしていただいて御協力願わにゃいかぬと思っております。
 特に地球環境というものは、過日のモントリオール議定書によるオゾン層の破壊に対するフロンの規制でございますが、もう我々生きとし生けるものすべてが日光に当たると健康であり、稲の穂でも陰の方は葉だけで穂が出ません。それほど日光に当たるということは重要な健康のもとであり、オゾン層が破壊されますと、生きとし生けるものに必要なこの日光の紫外線、これが直射すると、直ちに葉は枯れてしまう、人間であればがんになる。そのことが一般にまだ全部が御理解願えていないかもわかりません。しかし、そのことを御理解願うと同時に、このフロンもまた地球温暖化の大きな要因でございます。
 特に一番大きな地球温暖化になりますと、地球のメカニズムというと言葉はちょっと十分じゃございませんが、地球の持っておる還元力、復元力、地球自体が持っておる空気も水も土も森林も海も、全部の中でこの地球が安定化し、温存されて
おる。これが暖かくなるために長年解けない雪までが解けてしまう。氷山も解けてくる。こういうことになりますと、たちまちに均衡が崩れてしまったときに、ことしでも暑うございましたが、例えば外務省の桜でも半月早く咲いておる。我々子供の時分には氷が張っておったのが張らぬようになった。これは逐次、漸次漸次地球を侵してきた。ぱっと速攻でくればぱっと対応できるけれども、これは大きな私は今の科学者の全能力をもってこれに対応しなきゃいけない。人間のどん欲な英知、どん欲な人間のわがままな英知が今日の発展を来したとするならば、これからの人間の英知、科学の知識というものをすべて、地球を守り、地球を保存するのに向けていかなければ、今委員が御指摘のように地球は滅ぶと同時に人類は滅亡する。これは原子爆弾じゃなしにもっと恐ろしいものになると思います。
 そういう意味で、地球の温暖化という恐ろしさをみんなが認識していただいて対応していただきたい。こんな願いを込め、先ほど御指摘がありましたが、アメリカの言うままに、アメリカが後ろ向きだから日本も後ろ向きということは決してございません。アメリカが出てこなけりゃアメリカも出てこさせて、アメリカを孤立さすんじゃなしに世界を挙げてこのことで取り組んでいきたい、こんな願いを持っておったということをきょう披瀝させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
#180
○委員長(上野雄文君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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