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1990/10/18 第119回国会 参議院 参議院会議録情報 第119回国会 本会議 第3号
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1990/10/18 第119回国会 参議院

参議院会議録情報 第119回国会 本会議 第3号

#1
第119回国会 本会議 第3号
平成二年十月十八日(木曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  平成二年十月十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国家公務員等の任命に関する件
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
 この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
 内閣から、臨時行政改革推進審議会委員に芦田甚之助君、磯村尚徳君、宇野收君、小林陽太郎君、鈴木永二君、高原須美子君、長岡實君、真柄栄吉君及び山本壮一郎君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#4
○議長(土屋義彦君) 過半数と認めます。
 よって、これに同意することに決しました。
     ─────・─────
#5
○議長(土屋義彦君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。広中和歌子君。
   〔広中和歌子君登壇、拍手〕
#6
○広中和歌子君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の所信に対して質問させていただきます。
 五年前、ソ連で始まったペレストロイカのさざ波は、次第に大きな自由化へのうねりとなって東ヨーロッパ諸国に押し寄せ、ハンガリー、東ドイツ、ルーマニア等に改革のあらしが吹き荒れました。そして、ついに昨年末、東西冷戦の象徴と言われたベルリンの壁の崩壊に至りました。そうした自由化と呼応するかのように、EC統合は着々と進み、米ソの対話、軍縮交渉が始まり、地球環境問題が大きくクローズアップされるようになりました。
 薄い大気に覆われ、微妙な自然界の営みのバランスの上に成り立つこの地球を、健全な形で二十一世紀に残すことこそ人類の直面する最大の課題であるといった問題意識が高まりましたが、それはあたかも、歴史始まって以来、戦争のない時代がなかった人間社会が、環境汚染という共通の敵を見出すことによって、世界はついに平和共存、協調の世紀に入ろうとしているのだという希望を抱かせたものでした。
 こうした平和への希望が、甘くもはかないものとして荒々しく破られたのがこのたびの八月二日のイラク軍によるクウェート侵攻でした。予期せぬことだっただけに世界じゅうが驚きましたが、イラクの侵略を不法とする国連安全保障理事会での決議がなされ、イラクへの経済封鎖による制裁決議に続き、アメリカ・ブッシュ大統領の主導でペルシャ湾岸での海上封鎖、そしてサウジへの出兵が始まり、以来、イラク対アメリカを中心とする多国籍軍との間に緊張が高まっております。
 このように突然訪れた危機に対し総理のとられた最初の御決断、イラクへの経済封鎖は、いかなる理由があるにせよ一国が他国を武力で侵略することが許されてはならないという国際秩序の大原則に立ってのものであり、敬意を表します。
 しかしながら、その後の日本側のいわゆる中東貢献策は、またしてもアメリカの顔色をうかがいながらの小出し、後手に回る対応であり、総理並びに政府のこうした緊急事態での危機管理そのものに危惧の念を抱かざるを得ないのです。そしてまた、こうした対応の背後にある基本理念、つまりいかなる理念のもとに最初は十億ドル、おくれて三十億ドル、計四十億ドルの支援をし、また国連平和協力法の制定を目指していられるのか、お伺いしなければなりません。
 日本は、平和憲法の制約から軍事面の協力はできないとし、戦後一貫して紛争地域へのかかわりを避けてきましたが、今回多国籍軍への二十億ドル資金援助など、積極的に参加しようとする理由は何ですか。多国籍軍は国連軍とは違います。総理は多国籍軍の位置づけについてどう認識していられますか。明らかに国連軍ではない多国籍軍への資金援助を含む後方支援は、憲法で禁じられている集団的自衛権の行使に当たるのではありませんか。改めて、平和国家日本、世界に貢献する日本の基本理念とは何かをお伺いいたします。
 確かに、我が国は中東地域に原油の七割を依存し、国益の点からも、同盟国アメリカへの配慮からも多国籍軍に協力することが望ましいということはありましょう。しかし、今後類似した地域紛争が他の地域にも続発する可能性が少なからずあることが予想されるだけに、何らかの行動規範と歯どめが必要です。四十億ドルの貢献のうち、今回の中東危機で経済的打撃を受けた国々への経済援助や難民輸送のためにとられた輸送機の派遣等は評価いたします。
 一部で、日本は金だけ出して血や汗を流そうとしないということで米国の中に日本への不満が高まっているという報道がなされ、それでは世界に通用しないという議論がもっともらしく日本国内で持ち上がりましたが、そうした議論に便乗して憲法改正、自衛隊派兵へと導く一部の世論誘導に対しては、はっきりと警戒の態度を示すべきだと思います。
 今回の危機を契機に、政府は国連協力への体制整備の一環として国連平和協力法を提案しようとしております。
 その目的とするところは、国連決議に基づき、それを実効あらしめるための諸活動の支援となっていますが、諸活動の定義と範囲が余りにもあいまいです。政府の構想ではその中核的活動は当然自衛隊が担うことになっており、一たび紛争地域へ自衛隊が派遣されるならば、事実上の海外派兵の道を開くのではないかと危惧いたしますが、この点について御見解はいかがですか。もし、国連に協力するなら、むしろ国連平和維持軍、PKOへの協力の形を真剣に模索し、時間をかけて検討すべきだと思いますが、いかがですか。
 中東貢献の四十億ドルについてですが、日本はいつもお金で解決すると簡単に言われがちですが、このお金は国民の汗と知恵の結晶たる税金です。しかも、現在の状況のもとでは、経済封鎖で大きな打撃を受けている周辺諸国への援助こそ必要であり、日本ができ得る、そして平和国家日本にふさわしい貢献です。
 このたびの日本の貢献に対してアメリカ人の中で不満を表明した人が多数であった理由は、主としてタイミングと出し方の問題です。ロンドン・エコノミスト誌によれば、日本の協力への態度表明が余りにもおくれ、四十億ドルに至るまでのうろたえぶりが記憶に焼きついているからです。
 このたびの意思決定に、外国人ならずとも当の日本人の多くが、一体政府は何をしているのかといういら立ちを感じたはずですが、こうした危機に対処する機構はあるのでしょうか。もしあるとしたら、その機構は今回活用され、十分に機能したのでしょうか。そして、将来起こり得る危機に対して管理体制は十分整備されているのか、お伺いいたします。
 現在、多くの邦人が海外で働いていますが、今度のような危機に直面した際、邦人の安全確保についての対策、救出作戦などの意思決定、責任の所在はどこですか、お伺いいたします。
 万一、緊張の高まる中東で軍事衝突が起きた場合、邦人救出の手段は検討されておりますか、総理の御見解を伺います。
 さて、人質の問題ですが、イラクのクウェート侵攻以来、私も心を痛めてまいりました。国会は休会中。この問題に対する政府の対応にも歯がゆい思いでした。国会議員の一人である以上、自分に何ができるかを考え、行動すべきだと思い、私はフセイン大統領に人質解放を求める女性議員のネットワークをつくることを考えました。世界平和婦人議員連盟の総会が九月二十四日からアフリカのジンバブエで開かれることを聞き、まず日本の女性国会議員の皆さんからフセイン大統領あてのアピールに署名をお願いすることにいたしました。四十六名全員の御協力をいただき、本当にありがたく思っております。
 それを携えジンバブエに飛びました。総会では、人質解放の決議を全会一致で採択していただき、かつ出席した女性議員たちに署名をいただきました。中にはアピールのコピーを持ち帰り、それぞれの国で署名運動を広げることを約束してくださる方もございました。単身イラク入りをしたのは九月三十日、正直言って心細かったのですが、現地ではサレハ国会議長を通じてこのアピール文をフセイン大統領に渡していただくことができました。
 今回イラクでお目にかかった邦人の方々の不安な日々を思うとき、ヨルダン、イラクなど危険地域を重点的に在外公館の充実と領事移住部の拡充をしていただくことが必要だと思いますが、外務大臣の御見解を伺います。
 現在、在留邦人の皆さんの食糧、医療についての状況が悪化し、さらに送金が禁じられているため、現地職員への給料、家賃の支払いに困っていると訴えられています。事実関係とその対応について、外務大臣、大蔵大臣にお伺いいたします。
 海部内閣は、人質解放にもっと多様なチャンネルを通して交渉すべきではないでしょうか。例えば、女性特使の派遣はいかがでしょうか。ジンバブエでお目にかかったスペインの女性議員は、一たん帰国後、特使としてイラク入りをし、同胞十五名の人質釈放に成功したという報告を受けました。
 これまで、女性は戦争のもたらす悲惨さにただひたすら黙って耐えるだけでした。子供を生み、慈しみ育てたのは戦場に送るためではないという心からの叫びを政治の場に反映さすことができませんでした。しかし、今は違います。世界じゅうに女性議員が誕生し、公の場で平和について積極的に発言することができるようになったのです。紛争の平和的解決と人質解放のために、総理、超党派による女性特使派遣の御決断をお願いいたします。
 総理、総理は今回中東五カ国の旅をなさいましたが、その目的は一体何だったのでしょうか。失礼ですが、手土産にお金を配って歩くことなら現地の大使で十分なはずです。我々日本人には理解しがたい遠い中近東の世界を身をもって感じ、直接アラブの人々の気持ち、考え方に触れること、そして周辺アラブ諸国の考えている中東安定策を聞き出すことです。そして、平和的解決のための糸口をつかむことだと思います。
 総理は、イラクと空路による道が開かれている唯一の国、ヨルダンの首都アンマンに立ち寄られましたが、イラクには行こうとなさいませんでした。そのかわり、イラク側からラマダン第一副首相がアンマンに来て総理との会見が実現されました。こうしたあちら側からの接近は、少なくとも停戦への調停を求めるイラク側からのシグナルではないかと考えるのは考え過ぎでしょうか。通訳を入れての短い一時間ほどの会談だったと伺っていますが、人質の身の安全の保証を取りつけてくださいましたか。
 イラクの在留邦人たちは、総理が多国籍軍への貢献策を次々と打ち出すたびにアリ地獄のような苦境に陥っていくと訴えています。国連側の主張を繰り返す時間があったのなら、イラク側の立場を聞き、妥協点を探り、フセイン大統領に名誉ある撤退の花道をつくることこそ我が国独自の平和への貢献ではありませんか。
 幸い、日本は、過去アラブと戦ったこともなく、戦後良好な経済関係で推移してまいりました。アラブの国々の中には西欧諸国に対して歴史的に複雑かつ屈折した感情を持つ国が少なくない中で、日本は平和への仲介者となり得る国だと期待されているのです。ラマダン第一副首相との会談で、対話の道を残したと報道されていますが、具体的にどういう行動を始められたのですか。総理御自身は、平和的解決の道を探るためイラクを訪問なさるおつもりですか。
 イラクがクウェートに対して行った侵略行為は国際法上断固許されるべきではありませんし、ましてや民間人を拘束し、人間の盾として工場や軍事施設に配備されているということが事実だとしたら、人道上許されることではありません。しかし、そうしたイラクの行為に対する抗議とは別に、現実にこの中東地域が再び戦場となり、多くの人命が失われ、大きく戦費がかさむことを何としてでも避けなければなりません。
 アメリカを中心とする二十万に及ぶ多国籍軍がアラブの土地に存在すること自体、一部アラブの国々の中に反発があり、仮に偶発的にせよ戦争という事態になれば、アラブ全体を巻き込み世界戦争に拡大する可能性があります。中近東がパレスチナという複雑な問題を抱えていることをよもや総理はお忘れではないでしょう。第三次大戦は核兵器と化学兵器使用の危険をはらんでおります。その結果は大量の死傷者、経済恐慌、そして地球環境の破壊です。
 米国の著名な歴史学者アーサー・シュレシンジャー氏は、十月二日のアメリカの新聞ウォール・ストリート・ジャーナルの中で、今回の中東危機におけるブッシュ大統領の決断、指導力を外交的勝利と一応評価していますが、その後のサウジへの軍事力増強と対決姿勢には批判的で、アメリカ人の若者の血一滴たりともクウェート国王のために、あるいは石油の値段を二十ドル以下に引き下げるために使われてはならないと訴えています。そして、アメリカ人には理解しがたい中近東問題はアラブ自身が話し合いでアラブ的解決をするべきだと言っています。
 三週間ほど前、フランスのミッテラン大統領の四つの提案に対してイラクも一応歓迎しているとき、ただ日本がアメリカの表向きの外交スタンスに従うことは将来に禍根を残すでしょう。総理は中東危機の平和的解決の見通しについてアメリカ側ブッシュ大統領と十分に話し合い、了解し合っているのでしょうか、お伺いいたします。その上で、日本独自で、長期的視点に立ち、世界の秩序を確立し、子や孫の時代によりよい地球を残すため、国際的な貢献を考えるべきです。
 私は、このたびのアフリカ、中近東への旅を通して、世界には終戦直後の日本あるいはそれ以上に貧しい暮らしをしている国々、人々があり、こうした貧困が世界を不安定にしている大きな原因でもあることを実感いたしました。貧困は戦争に次いで環境問題の最大のガンです。そして、環境の悪化はいずれ人類の滅亡につながります。
 さて、日本にできる貢献策についてですが、地球の平和と環境を主張いたします。
 まず、予算として、ODAとは別枠にそのこ倍の額を毎年計上し、このたびのような紛争時には被害をこうむった国々を非軍事的な形で支援し、危機のない安定した時期にはその予算を貧困の解消と環境保全のための技術や設備の供与に使うという提案です。今後、具体的に、いつ、何に、どれだけ、どういう形で支出するかなどについて決定できる体制を整えることが必要です。大切なことは、予算の裏づけがあり、緊急時にも速やかに意思決定ができる機構が存在することです。
 その予算はODAの二倍と提案しましたが、ODAは現在GNP比の〇・三二%ですから、その二倍となると世界への貢献費は合わせてGNP比一%となり、現在、日本の軍事費とほぼ同額になります。この金額は一見大きいようですが、仮に十年間続けるとして、アメリカに約束した日米構造協議の最終報告に示された公共投資十年間分、四百三十兆円の一割でございます。世界平和と安全への公共投資という視点に立ってこうした思い切った額を日本が世界のために毎年使っているという実績があれば、仮に日本が軍事面で貢献しないと批判する人がいても、それは少数意見となって消えていくでしょう。
 日本は西側の一員でありますが、サミットに入っている中で唯一の非西欧の国です。その背後にはアジア、アフリカ、中東の視線があることを忘れてはならないと思います。こうした日本の毅然たる平和へのコミットメントこそ、世界で評価され、日本の後に続く国々があることを確信いたします。
 さて、平和憲法を守りつつ日本の安全を保障する道には、外からの侵略に対しては自衛のための自衛隊と日米安全保障条約がございますが、それより何より大切なのは、近隣諸国と友好な関係をつくり、保つことであることは申すまでもありません。
 米ソを中心とする東西冷戦構造が解消した今、北朝鮮との一日も早い国交回復が望まれますが、このたび、自民党の金丸氏、社会党の田邊氏などのイニシアチブで北朝鮮との対話が始まったことは大いに歓迎すべきことです。その結果、新しい国交樹立のために自民党、社会党そして北朝鮮の労働党の三党による共同宣言の署名がなされましたが、政府としてはこの宣言文に明記されている項目についてどう解釈されているか、お伺いいたします。また、こうした議員外交によって日朝関係の障害が大きく取り除かれ、前進したと受けとめられるのか、今後の国交樹立へ向けてのプロセスを外務大臣と総理大臣にお伺いいたします。
 次に、他の国々に比べ、ソ連と日本との関係改善、平和条約締結がおくれている理由は何なのか、お伺いいたします。
 日本にとって、北方四島の返還は、国際法上の原則にのっとってもぜひ実現されなければなりません。しかし、現在、ソ連が自由主義経済への脱皮、産みの苦しみのさなかにあり、かつ国内の民族問題に悩まされていることを配慮すれば、我が、国政府は従来の政経不可分の原則についてもっと柔軟な対応をすべきではありませんか。正常な国交回復を目指すため、ソ連を金融、経済、技術面などでもっと支援し、官民ともに信頼と友好な関係を醸成することが品位ある外交と言えるのではないでしょうか。外務大臣のお考えをお伺いいたします。また総理に、ソ連との平和条約に向けての御決意を伺います。
 次に、内政問題としてぜひお伺いしたいことがございます。
 今後、中東貢献に向け、さらには地球の平和、環境、貧困の解消のために多額の貢献を国民に求める場合、中には、自分たちには豊かさの実感がない、他の国を助けるゆとりなどないという意見もあります。もし日本人の中に豊かさの実感がないという人が多いとしたら、それは主として土地政策、流通機構、許認可行政や補助金制度など、多くは政治、行政上の問題であると思います。
 国民が豊かさの実感がないと訴える理由の第一に土地住宅問題があります。
 現在、その対策の一つとして政府の税制調査会土地小委員会で審議されている新土地保有税には、財界や、都市に土地を保有している地主、そして与党の中からの反発が強いと予想されております。土地の供給を促し、地価を下げるためには、私権の制限を含む都市計画の実施とともに税制上の断固たる対応が必要です。新土地保有税の導入、その時期について大蔵大臣の御見解と御決意をお伺いいたします。
 地価高騰の原因の一つとして首都圏への集中があり、特に東京への一極集中への対応のおくれを見過ごすわけにはいきません。国会としても、このような地価高騰をもたらした原因についてこれまで十分な対策をとってこなかったことを深く反省し、国会がみずから国民に夢のある土地政策を提言しなければならないと思います。その一つとして、国会議員みずからが率先して国会の移転を図ることにより東京への一極集中を緩和すべきだという動きがあり、国会議員で構成されている新首都問題懇談会でも国会移転への機運が高まっています。
 私も国会移転について関心を持つ議員の一人ですが、新しい国会を中心とする新都の建設は、二十一世紀の国家的大プロジェクトとして、今内外から求められている内需拡大にも役立ちます。国会の移転に伴い、議院内閣制のもとでは当然行政機関の移転が伴いますが、新都移転を契機に各省庁、企業などに多極分散へのインセンティブも高まることと思います。この新都では、土地基本法の理念でうたわれている土地利用計画が無理でない形で実行されるはずです。そして、新都を中心として地方都市へ向けての新たな交通網などの基盤づくりがなされ、国土の活性化に寄与することでしょう。
 一方、東京は国際情報文化都市として、適正規模を守りつつ、住みよい大都会として立派に存続し続けると確信します。もちろん、これはきょうあすに実行するということではなく、十年、二十年のスパンで二十一世紀をにらんでのことですので、今東京に土地を持ち、子供が学校に通っている方などは影響がないはずです。かつて唐の長安を模して平安京、今の京都がつくられましたが、二十一世紀に向けて都市計画に基づく新都がつくられるならば、実に千二百年ぶりの快挙となりましょう。必ずや豊かな日本にふさわしい理想の都市が出現するのではないかと期待しております。
 今後、政府としても新都建設に前向きな対応をお願いし、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(海部俊樹君) 広中議員にお答えをいたします。
 イラクのクウェート侵攻及びその併合は、国連憲章、日本国憲法の理念を否定する明白な平和破壊行為でありますから、国際社会の平和と秩序を守る能力が今試されていると言っても過言ではありません。私は、真に平和で豊かな国際社会をつくり出していくために、我が国は積極的に貢献する必要がある。そもそも平和というものは、国際社会を構成している各国が互いに力を合わせて協力しながら獲得し、守り抜いていくものであると考えております。
 そういう見地に立って、国連を中心として各国がイラクによる軍事行動の拡大の抑止及びイラク経済制裁措置の実効性確保のために兵員、艦船等を湾岸地域に展開したものがいわゆる多国籍軍であると位置づけており、どのように認識しておるかというお尋ねに対しては、これはこれ以上の平和の破壊を防ぐために湾岸の平和と安定の回復を目的とするものであると、こう認識をいたしており、これはあくまで国連の安全保障理事会の決議に基づいておるものでありますから、その考え方に立っての多国籍軍の行為というものに私は協力をしていこうと考えております。
 集団的自衛権を含めて、およそ自衛権というものは国家による実力の行使に係る概念であると考えております。我が国がこのような目的で展開をしておる多国籍軍の支援のために、これは世界の平和回復への努力の支援でありますから、資金を支出することは、実力の行使に当たらず、我が国憲法九条の解釈上認められない集団的自衛権の行使には当たらないと考えます。
 国際社会の重要な担い手となった我が国は、みずからの役割と責任を自覚し、新しい国際秩序づくりのため世界に積極的に貢献していくことが重要でありまして、従来より国際協力構想を強力に推進してきたところでありますが、平和を守る責任を果たしていくとの決意のあらわれであって、私は、平和国家というものは、平和の破壊や武力による侵略に対しては皆が志を合わせてこれを排除するような努力をしなければならないと考えるのであります。
 そういった意味で、国際の平和と安全の秩序を主な目的とする国連が、経済制裁を実効あらしめるためにいろいろな決議を行い、それに従う国連多国籍軍の行動は、平和のための抑止力であると私は考えておるものであります。我が国は、これまでも、御指摘になった平和維持活動に対し、資金面で重要な協力を行うとともに、軍事監視団への政務官の派遣とか選挙監視要員の派遣など要員派遣面でも着実に協力を推進してまいりましたが、停戦監視、輸送、通信、医療など協力の幅を広げ、一層積極的に国連の平和維持活動に貢献してまいりたいと考えております。
 今回提案をしておる国連平和協力法に基づく国連平和協力隊の海外派遣等の協力は、武力による威嚇または武力の行使に当たる行為は行わないという憲法の基本原則の枠内で行うのが前提でありまして、原則非武装、自衛隊の戦闘部隊を出すのではありません。したがって、海外派兵への道を開くとの御指摘は当たらず、国連決議の趣旨を踏まえて、そのための各国の出す維持隊に対して、平和協力隊がその文民統制の枠内において行われているということについて、どうぞ御理解を賜りたいと思うのであります。
 重大な突発的な案件に対しては、政府が一体となってこれに対処をしていく方針でございます。安全保障会議にももちろん討議に付しましたが、しかし、事は政府を挙げて受けとめ対処しなければならぬ問題であると考えており、今回のイラクの事案に対しても政府が一体となって今日まで対処をしてまいりました。
 今次イラクのクウェート侵攻に当たって、邦人の安全確保に関しましても、政府が一体となり、外務省に対策本部を置き、内閣総理大臣のもとで政府がこれに対処をしてまいりました。今後の事態の進展については、分析を行い、その際の邦人保護策について万全を期していく考えであります。
 超党派女性特使の問題についてもお触れをいただきました。
 国際社会が引き続き一致団結した努力を続けていくことによって問題を根本的に解決し、日本人を含めすべての外国人の拘束状態や人質状態が一刻も早く解決されるということが最も重要な問題でありますが、先般の中東五カ国訪問の途次、私はイラクのラマダン第一副首相とも会談をし、我が国の基本的立場を明確に伝えると同時に、問題を基本的に片づけることが大切であって、クウェートからの撤兵、クウェートの政府の復帰同時に、すべての人質状態に置かれた外国人の釈放について決断をできるのはイラクであり、クウェート侵攻を行ったのもイラクであり、イラクが今この世界じゅうの懸念をどう片づけるのか。危機が安定化したとも言われる、危機が不安定の中で長期化したとも言われる、いろいろ言われますけれども、いずれにしろ、解決されない限り深い懸念があり、この解決は粘り強い話し合いによって平和的に解決されなければならぬということを私はラマダン副首相に強く主張いたしました。今この局面の打開を行うことのできる、第一のきっかけができるのはイラクそのものでありますから、イラクの副首相に強く申し上げました。
 広中議員御自身、私の訪問と前後してイラクへ赴かれ、いろいろお立場に立ってのお話し合いをされ、その成果等についてもお手紙を私はいただきました。率直に御苦労さまでございましたと敬意を表します。しかし、その他の方々もいろいろおいでをいただいておりますが、お話しをいただいておりますが、イラクの態度は依然として変わっておりません。私は、イラクに対して、さらに政治的な対話の道を続け、あらゆる努力をこの中に傾注して、今後のイラクと我が国との問題についても政治的対話の道は閉ざすものではなく、粘り強く話し合いを続けていこうということをイラク側にも申し上げましたし、イラクもそのことについては賛成を表明いたしました。
 御指摘の中にあったミッテラン大統領の提案にしろ、あるいはブッシュの国連におけるアメリカ大統領としての演説にしろ、ともにイラクの無条件撤退がこの問題解決の第一歩だということを明確に表明いたしております。そうして、その第一歩が行われた後においては、イラク・クウェート紛争やアラブ・イスラエル紛争の解決などさまざまな機会をもたらすことができる、中東問題解決へのそれが第一歩だということば両方の提案の中にもそれぞれ入っておるわけであり、私もその立場には立つところから、日本としてはかねてから中東の問題解決のためには国連決議二百四十二号に従っての解決を主張しておるものであり、現在のこの極めて危機的な全く異質な状態を一日も早く局面を転回して粘り強くこのような根本和平に関する話し合いができるように申し上げると同時に、そういった決断があるなれば、局面打開ができるなれば、国連決議に従った行動をイラクが決断されるなれば、その後におけるイラクと日本との関係の再構築についても私どもはお話し合いを続けていく用意があるということも私の立場として申し上げてきたのであります。
 いずれにしても、イラクの決断を強く求めながら粘り強く交渉を続けていきたいと考えております。
 湾岸危機の平和解決についてアメリカと話し合ったかというお尋ねでありますが、私は、国際社会が今回の事態の公正かつ平和的解決を粘り強く追求することが重要である、こう考えております。短気を起こしてはいけません。米国とは、本問題についていろいろなしベルで常に連絡をとり、話し合いはいたしております。ニューヨークにおける日米首脳会談でも、経済制裁を続け、イラクに国際ルールを守らせるべきこと、それが平和的解決につながる、そのための努力が大切だということをブッシュ大統領とも話し合って、共通の認識を得ておるものであります。
 日朝間の問題にもお触れになりましたが、我が国はこれまで北朝鮮に対して前提条件なしの政府間対話を呼びかけてまいりました。国交正常化に向けた交渉にできるだけ応じることといたします。その時期、具体的なプロセスについては現在検討中であります。いずれにしましても、このような交渉は、朝鮮半島情勢全体を視野に入れて、同半島の緊張緩和、平和及び安定に資する形で、韓国、米国など関係諸国とも緊密に連絡をしながら進めてまいる所存であります。
 ソ連との平和条約締結について、戦後最大の懸案であるという認識は一致しております。私は、この問題を解決することこそ日ソ関係全体を均衡のとれた形で拡大させることになると考え、その抜本的な改善、正常化を図るというのが我が国の基本的な考えであります。明年四月のゴルバチョフ大統領訪日を日ソ関係抜本的改善の重要な契機として、質的に新しい段階に入ることを強く期待し、今後日ソ交渉で北方四島一括返還の実現に向けてこれまで以上に強力に交渉していく所存であり、そのためにも来日されるゴルバチョフ大統領に対しては高い次元に立っての決断を強く求めたいと考えております。
 今後、政府として東京一極集中を是正するためどうするか。やはり首都機能の移転問題も重要でありますし、御指摘のような政治行政機能、経済機能の相互関係の中で国会の移転という御議論もただいま超党派の議員の懇談会で御議論されておることに私は非常に注目をさせていただいております。あらゆる施策をこれに充て、前向きの対応を行っていきたいと考えております。
 残余の御質問につきましては関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(中山太郎君) まず最初に、ヨルダン、イラク等の危険地域の在外邦人、たくさんおられるわけでございますけれども、今般のような危機に直面した場合に、在外邦人の安全の確保というものに対して議員が大変御心配をいただいていることを拝聴いたしました。
 今回の湾岸情勢の危機につきましては、在外邦人がクウェートにおられてクウェートからどのようにして脱出をされるか、また、イラクの在留邦人の安全をどう確保するかということにつきましては、外務省の領事移住部で随分、二十四時間体制で努力をいたしております。
 しかし、私も先般中東五カ国を訪問いたしました際に、この日本が国際化をするにつれて、これからいろいろと日本の各種の企業の方々が多く世界の各国でその地のあるいは企業へ、あるいは学校等で教職につかれる方も出てこられます。その方々の地域が紛争地域に入った場合に一番大きな問題は、正しい情報がその方々にどのようにして届くかということが一番重大な問題だということを、私は今回の五カ国訪問で十分認識をいたしました。
 帰国後、直ちにNHKを呼びまして、NHKがやっておりますラジオ日本、これで一日三時間放送をいたしておりましたが、これを十一時間半に放送時間を延ばしまして、アラビア語と日本語で日本からの情報を発信させたようなことでございまして、NHKは大変この点について協力をしてくれているわけでありますけれども、これから将来の在外邦人の安全のための情報伝達手段としては、日本の国際放送を一層充実することが極めて重要であるという認識を今回確認したようなことでございます。このようなことで、私どもは邦人の保護、これについて今後一層外務省の機構、機能を充実しなければならないと考えております。
 また、イラクの在留邦人の生活状況に対して、極めて混乱している現地の状況の中で、大使館も十分接触をしながら私どもの本省に対して報告をいたしてきております。個々の具体的なケースにつきましてはいろいろと相談をいたしておりますけれども、在留邦人の食糧の確保は、在イラクの日本企業の各社におきましてもかなり長期の備蓄が行われております。最悪の場合になりましても、大使館では十分な食糧の確保がなされておりますから、その点につきましては不安がないという認識を持っております。
 次に、日本にできる貢献策として、ODAとは別枠にその二倍の予算を計上して、貧困の解消、環境保全のために平和環境基金を創設したらどうかという御意見がございました。
 地球の環境問題、貧困の解決は国際社会の重大な課題でございます。日本政府は三年間に三千億円の環境保全の予算を組んで各国に協力をいたしております。また、地球環境の保全の問題につきましても、国際機関であるUNEPに対して今年度七百五十万ドルの拠出をいたしまして、世界の第二位であります。このようにして、国民の納めていただいた税金も国際環境の確保、そのようなために使われていることをこの機会に御紹介をさせていただきたいと思います。
 なお、先般、総理の御答弁の中で北朝鮮との国交の修復問題については既にお触れになりましたので、この点につきましては重複を避けさせていただきたいと思います。
 日ソの正常な国交回復のために、ソ連を金融と経済、技術面でもっと支援して官民ともに信頼、友好な関係を醸成することが大切ではないかという御指摘でございますが、極めて重要な御指摘であろうと思います。
 ソ連との関係につきましては、戦後最大の懸案であります北方領土問題を解決して平和条約を締結するということが日本国民の大きな願望であります。このようなことで日ソの関係をこれから一層改善していくということで、私ども、先般シェワルナゼ外相の訪日の際に日ソの外相会談で十分話し合いをいたしました。その節に私どもの方から、従来行われております平和条約作業グループのほかに政策企画会議なるものを二国間でつくることも合意を見たわけでございます。このようなことで双方の外務大臣協議が行われた際に、この十二月十日から二十日の間に日ソの外相会談をモスクワで開くことに決定をいたしました。それまでの間、ただいま御報告を申し上げましたように、両国間でつくられております平和条約作業グループあるいは政策企画会議というものを事務レベルでやりまして、私ども日ソ外相会談において、明年予定されておりますゴルバチョフ大統領の訪日に向けて、いろいろと両国間にある問題を解決するために双方が熱意を持って努力することを合意したことでございます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(橋本龍太郎君) 広中議員から私に与えられました御質問は2つであります。
 一つは、イラクの現地における給与、家賃の支払い等についての事実関係ということであります。
 イラクの在留邦人が現地の流動的な情勢の中でさまざまな困難に直面しておられることは、十分私どもも承知をいたしております。そして、大蔵省といたしましては、人道上の見地から、在イラクの邦人向けの合理的な範囲内での生活費の送金については認める考え方をとっております。
 しかしながら、現状を申し上げますと、イラク側の銀行が、イラクに対して資産凍結を行っております国からの送金について、その資金の引き出しに応じておりません。また、九月下旬以降イラク政府はイラク国内にあります制裁実施国の資産を凍結いたしておりまして、在イラク邦人の既存の預金の引き出しが不可能になっている状況であります。このような状況の中で、大蔵省といたしましては、外交ルートを通じてイラクに対し預金の凍結の解除を求めるなどの努力をいたしておるところでございます。
 また、もう一点は土地税制の関連でございます。
 土地税制につきましては、現在税制調査会の土地税制小委員会におきまして、土地という資産に対する負担の公平適正の確保を図り、あわせて土地政策に資するという観点から、その総合的な見直しについて検討が進められております。同小委員会は、既に十九回にわたり審議を重ねてきておられ、これまでに土地税制の改革の具体的方向につきまして大筋の集約を得まして、現在報告の起草段階に入っておると伺っております。また、税制問題等に関する両院合同協議会の専門者会議土地税制検討小委員会におきましても検討が行われておるところであります。
 税制調査会の御審議におきましては、保有課税については、土地の資産価値に応じた負担を求める必要があることには大方の賛同が得られ、その場合の具体的な考え方としては、国税としての一般的な土地保有税を創設する必要があるという点でほぼ集約されていると伺っております。いずれにせよ、土地保有課税のあり方をどう考えるかが今回の土地税制の見直しにおける大きなポイントの一つでありまして、今まさにそのための御審議が取りまとめの段階でありますことから、いましばらくその様子を見守ってまいりたいと考えております。
 政府としては、近々取りまとめが行われる予定であります税制調査会の答申を踏まえ、土地税制改革のための所要の法律案を次期の通常国会に提出することにしたい、そのように考えております。(拍手)
#10
○議長(土屋義彦君) 答弁の補足があります。中山外務大臣。
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(中山太郎君) 平和環境基金につきましては、せっかくの御意見でございます、外務省としても研究をさせていただきたいと思います。(拍手)
    ─────────────
#12
○議長(土屋義彦君) 立木洋君。
   〔立木洋君登壇、拍手〕
#13
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、まず、今日の緊急問題であるイラク問題への対応について総理に質問をいたします。
 質問に先立ちまして、昨日の我が党の不破委員長の質問に対する総理の答弁は、まともに答えるものではなく、極めて遺憾であります。答弁は誠意を持って、質問に対し正確に答えるように最初に要求しておきます。
 では、まず第一に、政府がこのイラク問題を利用して、国の最高法規である日本国憲法の解釈を変え、自衛隊の海外派兵を図ろうとすることは絶対に許せないことです。
 総理は、国連の集団安全保障機能発動のための国連軍がつくられるとき、集団自衛権と集団安全保障は区別されるとして、現憲法下でのそれへの自衛隊派兵の検討を指示したと報道されています。これは重大な問題であります。今日の状況を真剣に考えるならば、たとえ国連を通したとしてでも、武力の行使、戦争の事態は決して望ましいものではありません。今、百万に上るイラク軍と大量の米軍などいわゆる多国籍軍が中東湾岸地域で対峙するという一触即発の事態にあり、もし軍事力を行使するならば、それは大戦争となり、世界経済が大打撃を受けることは必至となるからであります。
 米軍の中東派兵は、当初はサウジなどとの合意により防衛のためと称するものでしたが、今日はその規模においても、目的、ねらいについてもかつての言明の枠を大幅に超え、ブッシュ米大統領は米軍の中東軍事行動は必ずしも国連の枠内で行われるものではないと述べているのであります。こうして米軍は必要な限り中東への駐留を維持し、バグダッド攻撃をも射程に入れております。またイラク軍も、攻撃があれば化学兵器を含めあらゆる兵器を使用し、全油田を破壊すると公言いたしております。
 こうした大軍の衝突は、かつて長期にわたる悲惨なベトナム戦を想起するまでもなく人類にとっての重大事であり、絶対に避けなければなりません。そのため、今日、国連憲章第四十一条に基づく非軍事制裁による努力の強化にこそ全力を尽くすことが求められているのであります。ところが、国連自体が戦争の当事者になるという全く望ましくない軍事制裁の事態を想定して、国連軍ができたならばそれへの参加は集団安全保障として憲法上可能などと言うこと自体が大問題ではありませんか。
 昨日、海部総理は、これを研究していると答弁し、その内容を国民の前に明らかにすることを避けました。がしかし、このような将来の想定を総理や自民党首脳が今持ち出して研究するという本心とそのねらいは、集団安全保障の理念を持ち出すことで今の中東貢献策での自衛隊の派遣なんかは当然のことだと思わせる政治的な雰囲気をつくるためではないんでしょうか。明確に答弁をしていただきたいのであります。
 第二の問題は、アメリカの要請によって多国籍軍への自衛隊の参加、協力ができる道を開こうとしている点にあります。
 米軍への事実上の後方支援行為である自衛隊の派遣は何らの国連決議にも基づかないもので、経済制裁の徹底によって平和的に解決するということではなく、逆に危険な米軍の作戦行動に結びつくことになります。
 総理は、自衛隊の多国籍軍への参加は考えていないと述べていますが、しかし、いわゆる協力法の第一条目的では「国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国際連合平和維持活動その他の活動に対し適切かつ迅速な協力を行う」と規定しています。ここで言われている「その他の活動」とは、協力法第三条の定義では「国連決議の実効性を確保するため」ということで国連決議の枠外の活動や国連加盟国その他の国の活動まで含めているように、まさに現在の多国籍軍の活動そのものではありませんか。しかも、自衛隊員を協力隊員と併任として、部隊として派遣するとしています。このことは、自衛隊の装備の利用を可能とするものであることば明白であります。総理がいかに武力の行使に当たるものではないと述べても、この自衛隊の派遣は国際的にだれが見ても武力の威嚇を伴う軍隊の派遣であり、戦禍に巻き込まれることは不可避であります。
 先ほど、総理は答弁の中で国連多国籍軍ということを言われましたが、国連多国籍軍とは一体何ですか。多国籍軍が国連のどの決議でその制定が決められたのか、明確にしていただきたい。多国籍軍との関係について、これまでのあいまいな内容の繰り返しではなく、明確な答弁を求めるものであります。
 第三の問題は、対米追随についてであります。
 国連の決定したものでもない米軍中心の軍隊への支援に対して、いわゆるブッシュホンで直ちに十億ドルを決め、ブレイディ特使の来日でさらに倍増させましたが、これはツーリトル、ツーレートなどというものではなく、全くの誤りであります。イギリスを初め西欧諸国の報道でも、アメリカに追随する日本と報道されている状態であり、政府の言う世界の要請などというのは、結局はアメリカの言うことだけを重視するという自主性のない対米追随ではございませんか。
 人員の派遣についても、もとより国連から中東への自衛隊の派遣要請など一切ありません。去る九月二十九日、ブッシュ米大統領が自衛隊の海外出動を総理に要請し、それに同意したものと報道され、あなたは否定をいたしましたが、ブッシュ米大統領からは平和協力隊を含め人員派遣の要請が全くなかったのでしょうか、はっきりと答えていただきたい。
 言うまでもなく、日本国憲法は「国際紛争を解決する手段として」「武力による威嚇又は武力の行使」を永久に放棄し、一切の戦力の保持を禁じています。まさに、イラクのクウェートに対する侵略と併合が絶対に許されるべきでないことは明白でありますが、これは国際紛争そのものであります。これを、国際情勢の変化や、イラクの侵略という紛争の性格によって、国際紛争ではないとでも言うのでしょうか。このようなごまかしで憲法の解釈を変え得るとするならば、それはまさに日本のかえがたい歴史として世界大戦の真剣な反省の中から生まれた憲法の平和的条項の重みを忘却するものであります。また、日本の国連に対する協力は軍事的協力の義務は負わないことを明確にした歴史的事実をも無視するものではありませんか。
 さらに、一九五四年本院では、どのような名目、形態によるものであれ自衛隊の海外派遣を禁止した決議を採択いたしております。総理は、本会議の決議は尊重する必要がないとでも言うのでしょうか。
 我が党は、日本の進路にとって重大な危機をもたらす国連平和協力法案の撤回を強く求めるものであります。
 次に、消費税の問題であります。
 国民の猛反対を無視して消費税が実施されてから一年半が経過しました。この間、消費税は定着どころか、経済企画庁の外郭団体の委嘱調査でも、はっきりと廃止を求めているものが四七%で、見直しや存続を求めるものを六%も上回り、消費税の廃止を求める声は根強く存在しているのであります。
 我が党は、両院税制協議会において、再三にわたって、今般の税制改革が国民生活にどのような影響を及ぼしたかを検証するために、実施後一年半の実績に立った客観的資料の提出を求めていましたが、政府も自民党もまともにこれにこたえようとはしておりません。正確に公正にまじめに検討しようとするならば、当然資料は提出されるべきではありませんか。
 我が党の試算によれば、消費税の負担は一世帯平均で年十万円以上、しかも低所得者ほど負担が重い逆進税制であることは明白であります。消費税転嫁の名目などでこの一年間物価への影響も深刻で、三・五三%と政府見通しの一・二%を大幅に上回っております。大企業の法人税率は過去四年間に三段階に分け四三・三%が三七・五%に引き下げられただけでなく、年二回納付する消費税の納期までの自由な運用益はNTTで二十六億円にもなるという状態です。まさに政府自身が認めた消費税の九つの懸念のどの一つも解決されていません。この事態を総理はどう考えているのでしょうか。
 政府は導入に際し高齢化社会に備えるなどの理由を挙げましたが、それは全く口実にすぎず、根本は、今年度軍事費が前年比六・四%増、来年度の概算要求は五・八%増、さらに中東出兵の米軍などへの二十億ドルの支援、在日米軍駐留経費の負担増に応じる態度などに見られるように、米側の圧力による軍備増強にあることは明白ではないでしょうか。さらに、日米構造協議に基づく四百三十兆円に上る公共投資の公約など我が国財政を無視した歳出の先取りは、必ず我が国財政を破綻させ、消費税の税率の大幅引き上げとなって国民にしわ寄せされることは既に明らかであります。したがって、このような消費税はきっぱりと廃止するのが当然であります。
 次に、今日、ウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉は十二月上旬の最終報告に向け重大な局面を迎えております。総理は、所信表明演説の中で、米の問題については「国会における決議などの趣旨を体し、国内産で自給する」と述べていますが、当然のことです。既に、全国で六割に上る市町村議会及び三十二の道府県議会では米の市場開放阻止の決議や陳情を採択しております。
 ところで、武藤通産大臣は、この間、たび重なる国会決議の見直しを求める発言を繰り返しているばかりか、さきにカナダで行われた四極通商会議の際、ベーカー米国務長官に日本は政治的に柔軟性を示す必要があるとの趣旨の発言をしたとして大きな問題になりました。政府は、十二月の最終報告に向け政治決着を図ろうとしているのではないですか。そうでないのなら、ウルグアイ・ラウンドにおいて政治決着をせず、改めて国会決議を守り米の輸入自由化阻止のために全力を尽くすと明言するよう求めるものであります。
 次に、緊急な解決が求められている土地問題について質問をいたします。
 九月十九日に国土庁が発表した都道府県基準地価格では、住宅地の地価上昇率は過去最高となり、固定資産税評価額は全国の平均で二八・五%の上昇、とりわけ三大都市圏、政令指定都市は五八・一%という異常なものであります。これによる来年以降の固定資産税は大増税となり、都市計画税の増税、国保料や保育料の値上げ、地代、家賃の引き上げにもはね返り、都市住民の生活と営業は大打撃を受けます。また、マイホームの夢は断たれ、住みなれた土地を追い出されることは明白であります。土地の買い占め、投機に狂奔し、その資金を提供してきたこの地価高騰の元凶をこそ厳重に規制すべきであります。
 このことに関連して、第一に、緊急措置として、固定資産税負担は既に耐えがたい水準となっており、来年の評価がえを全面中止すべきであります。
 第二に、緑と防災は都市住民のすべての願いであり、都市農地は長期営農継続農地制度を存続し、農地を都市計画に位置づけ、営農意思を無視した宅地並み課税強化はやめるよう要求します。
 第三に、政府が検討している新土地保有税は抜本的に再検討し、住宅はもとより、中小企業、商店、都市農地などを対象から明確に除外すべきであります。
 以上、明確な答弁を求めるものであります。
 公害の原点とも言われる水俣病が公式確認されてから三十四年がたちました。東京地裁や熊本地裁、さらに福岡高裁と相次いで被害者の早期救済のための和解を勧告いたしております。行政上の救済措置が機能せず、多数の水俣病患者が放置されているからこそ司法救済を求めたのですが、これを総理はどう考えるのですか。その裁判所が、判決では時間がかかり過ぎて救済にならないからと判断したからこそ、国の責任についても触れながら和解を勧告したのです。これを拒否することは、被害者は救済されずに死ねということと等しくなるではありませんか。熊本県、チッソも受け入れを表明しているのに、国だけが冷酷な態度をとり続けているのは絶対に許せないのであります。今すぐ和解勧告に応じることを強く要求いたします。
 最後に、政治改革と称する政治改悪の計画について質問をいたします。
 現在、政府・自民党が打ち出している政治改革なるものは、選挙制度審議会に自民党の政治改革大綱どおりの答申をさせ、公平な第三者機関の装いのもとで、実際は自民党の一党支配をねらう小選挙区制の導入、憲法違反の政党法制定などを強行しようとするものであります。参議院では推薦制を採用して、第三者機関なるものに議員の選定をゆだねることによって参議院を国権の最高機関の地位から引きずりおろし、自民党政府の意のままになる諮問機関に変えようとすることまでもくろんでおります。これはまさに主権在民、議会制民主主義の根本を形骸化させる暴挙と言わなければなりません。
 選挙制度の改革は、小選挙区制の導入を直ちにやめ、民意の公正な反映を実現し、選挙権の平等を保障することが最大の課題であります。総理の見解を伺いたい。
 リクルート疑惑関係政治家の真相究明と政治的責任の追及も依然として重要であります。
 とりわけ本院は、前国会で、郵政大臣の「態度はまことに遺憾」とし、「我々は、同君及び内閣に対し猛省を促し、引き続き全容解明と資料の提出等を求める」とする予算委員長見解が出されております。今日でも、国際航業事件に関連する政治家の問題や、NTTの真藤前会長に対する有罪判決などでのわいろ性が明確にされていることなどと関連して、政治家の政治的道義的責任の究明が改めて国政の重大な問題になっております。総理が本当に政治改革を行うというのであるならば、企業、団体献金を禁止することを初め、金権政治の根源をこそ正すべきではありませんか。
 総理は、リクルート疑獄に対する国民の厳しい批判に一体どうこたえようとしてきたのか、これからどうこたえるのか、明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
     ─────・─────
#14
○議長(土屋義彦君) 御紹介いたします。
 本院の招待により来日されましたシンガポール共和国国会議長タン・スー・クーン閣下の御一行がただいま貴賓席にお見えになっております。
 ここに、諸君とともに心からなる歓迎の意を表します。
   〔総員起立、拍手〕
     ─────・─────
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(海部俊樹君) 立木議員にお答えをいたします。
 集団安全保障に関する国連憲章第七章の規定に基づく国連軍ができた場合の国連軍への協力のあり方につきましては、これは将来の問題として研究を行っておりますが、内容は具体的に特定しておらず、いずれにせよ集団的自衛権に関する憲法解釈の変更は考えてはおりません。
 多国籍軍などへの支援は、世界の要請というのは結局はアメリカの言うことだけを重視するとこう言われますが、そうではなくて、根本になっておるこのたびのイラクのクウェート侵攻というその事実が、平和の破壊として国際社会の大義に反するとして国連の決議においても真っ向から否定されたものであります。私は、この国連が行う決議に基づきまたは国連決議の実効性を確保するために各国がイラクの軍事侵略拡大の抑止のためにまたは国連の決めた経済制裁の決議の実効性を確保するために出しておるのが多国籍軍であると考えております。
 先ほど私が国連多国籍軍と言ったとすれば、その間に今申し上げた決議に基づき以下の文字を正確に入れておく必要があったと思いますので、改めて言い直しますが、国連が行う決議に基づきまたは国連決議の実効性を確保するために各国が経済制裁の実効性を高めるための行動ですから、それは勝手ではなくて、国際社会がやろうとしたことを黙って見ておって、あのイラクの軍事侵略、併合という暴挙を仕方がないといって見逃していいとおっしゃるのでしょうか。できるだけのことを、経済制裁でイラクにその過ちを認めさせようというのが今の国際社会の願いなんではないでしょうか。許されることと許されないことをきちっと決めたならば、いけないいけないと言っておるだけでは私は逆にいけないんであって、その意味で多国籍軍に対する協力もできるように、今回、武力行使を伴わない、武力による威嚇はしないという大きな憲法の枠組みのもとで何ができるかを我々は考えておるわけであります。
 また、平和協力隊の行う海外派遣を含む平和協力業務の実施に当たりましては、その時点での国際情勢、それを十分勘案し、派遣先あるいは基本方針等について関係閣僚で構成します国連平和協力会議の諮問を経て具体的な実施計画を閣議で決定するなど、慎重な対応をその都度行うものであります。
 また、ブッシュ大統領が自衛隊の海外派遣を要請したのではないかと言われますが、全然違います。ブッシュ会談の前にこの平和協力隊法の基本骨格は既に決めておりましたし、また、日本にこのような憲法の制約がある事情は大統領はよく承知をしておりますし、その上でさらに国際的な平和維持活動に参加できるよう検討することは世界じゅうに歓迎されると思うよという一般論はありましたが、自衛隊の派遣をどうのこうのということの事実はございません。
 また、イラクのクウェート侵攻にかかわること、これは憲法に反しないかということでありますけれども、イラクのクウェート侵攻は明白な侵略行為であって、一連の国連決議がイラクによって今全く受け入れられない状態にあります。この緊張状態をつくったイラクが、国連決議の趣旨に従って、国際社会の総意に目覚めてこの状況の局面転回をすれば、いわゆる多国籍軍の活動というものもなくなるわけでありますから、私は、やっぱり問題の根本解決をするためには、平和的解決のために経済制裁の実効性を確保していくことが大切であり、その経済制裁の実効確保のためには私は平和協力隊法をお願いしておるところでございます。
 また、我が国が国連加盟に当たって、平和主義、国際協調主義、その理念を掲げる国として国連の国際の平和と安全の維持のための活動に対してできる限りの協力を行っていくということを申し出ておることばこれは当然であろうと思いますが、私は何らかの留保条件が付されておったとは考えておりません。
 また、自衛隊の海外派遣を禁止した決議、これは確かにございますが、その決議は、参議院においてその実効性というものはもちろん有権的解釈はなされるべきものと思いますが、昭和二十九年に、「自衛隊の海外出動」に関するとなっております。当時、自衛隊の戦闘部隊がそのまま海外に出ていくというようなことを想定すれば、この「出動」という言葉は十分その想定だと思うんですけれども、自衛隊が平和協力隊の行う平和協力事業に参加し、国連決議に伴い国際の平和及び安全の維持のための平和維持活動に武力行使を目的とせず武力による威嚇を考えず戦闘部隊を出さないという、こういうのは海外派兵と海外派遣という議論にその後いろいろされてきておるのではないかと私は考えております。
 また、消費税の問題についてお話しになりましたけれども、共通の土台となる客観的資料を出すべきだとのことですが、消費税の実施状況については、物価や消費の動向、転嫁の状況、あるいは本年五月に一巡した消費税の申告納付の状況など、政府としてできる限り資料を収集し、税制調査会に対し御報告するとともに、両院合同協議会、広く国民の皆さんの御議論の参考に供するなど、今日までできるだけ御報告をしてきたところであります。
 また、消費税に関する九つの懸念のどれ一つも解消されていないではないかとおっしゃいますが、導入当時から、消費税のみならず他の税制やあるいは歳出面において幅広い施策を講じ、その解消に努めてきたところでありまして、実施後の経済動向や実体取引の現状を見てみましても、物価、あるいは転嫁、あるいは事務負担等の面で懸念されていたような事態は生じていないものと認識をいたしております。私は、当初指摘された懸念は大幅な減税であるとか税制の改正その他の問題等を通じて解消されてきているものと考えております。
 きっぱりと消費税をやめろとおっしゃいますが、この税制改革は、来るべき高齢化社会を目指し、国民の重税感、不公平感をなくすること、そしてこれによってもたらされる安定的な税体系を構築したいということ、福祉社会をつくる基礎となるものと確信してお出ししたものでありますから、消費税については正しい選択であったと今も考えておりますが、消費税を含む税制問題につきましては、現在、各党間で税制問題等に関する両院合同協議会で審議が重ねられておると承っております。政府としては、この消費税の存続を前提にし、国民の全体的、長期的な利益といった高い次元から協議が行われ、一日も早く適切な合意が得られますことを心から期待いたしております。
 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、これは政府としては成功裏に終結するよう全力を挙げてまいります。
 農業交渉に関連して、米の問題については、所信表明演説で申し述べましたとおり、米及び稲作の重要性にかんがみ、国会における決議などの趣旨を体して、国内産で自給するとの基本的方針で対処してまいる考えであります。
 固定資産税についてお触れになりましたが、基準年度である平成三年度において評価の見直しを行わないとかえって不均衡と不公平を生ずることになり適当でないと考えますが、従来から税負担の増加についてはなだらかなものとなるよう所要の調整措置を講じてきており、平成三年度の評価がえにつきましても、評価がえの状況を見きわめた上で適切な対応を図ってまいる考えであります。
 また、都市農地の長期営農継続農地制度についてお触れになりましたが、これは都市計画において市街化区域農地が保全すべき農地と宅地化すべき農地とに明確に区分されることを踏まえて、土地税制の総合的な見直しの中であり方を検討すべきものと考えております。
 また、政府が検討しておる土地保有税は抜本的に再検討し、住宅、中小企業・商店、都市農地などを対象から外すべきではないか、こういうお考えでありましたが、御指摘の保有課税の問題は、公共的性格を有する資産に対する負担の適正公平の確保を図り、その総合的な見直しを今行っておるところでありまして、税制調査会の答申をいただき、政府としては土地税制改革のための所要の法案を次期通常国会に提出することにしたいと考えております。
 水俣病訴訟の和解勧告に応ずるべきではないかと御指摘もございましたが、水俣病については、公害健康被害の補償等に関する法律によりこれまでに二千九百名の患者の方々を認定し、医学を基礎として公正な救済を推進しているところであります。
 選挙制度の改正では、政府・与党は衆議院では一票制を導入し、参議院では推薦制、まさに憲法原則の主権在民、議会制民主主義の根本を形骸化させるとおっしゃいますが、選挙制度審議会からいただいた答申の趣旨を尊重し、その成案化に向けて鋭意取り組んでおるところであり、当然のことながら現行憲法を前提として改革のための具体的方策についていろいろな角度から検討を行っていると承知いたしますが、政党並びに議員の身分に関する大切な問題でありますから、各党各会派においても御議論を賜り、御理解と御協力を得ながら改革を進めてまいりますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 衆議院選挙の選挙制度の改革については、これは選挙区制度の中で衆議院議員の一票の格差を一対二未満とすることを基本原則とすることにしておりますから、投票価値の格差是正の要請にもこたえ得ることになるわけであると考えております。
 なお、リクルート疑惑関係についてお触れになりましたが、この際、企業もそして政治家も政治資金の問題については政治倫理確立を前提に考え、政治資金の調達が節度を持って行われるようにしていくことは当然であると心得ておりますし、また改革につきましては、制度審議会の答申の趣旨も、金のかからない、政策本位、政党本位の選挙や政治活動を目指し、選挙制度及び政治資金制度の改革を一体のものとして実現できるよう、その成案化に向けて鋭意取り組んでおるところであります。
 なお、リクルート事件に関する厳しい御批判に対応するためには、今後その反省の上に立って、今申し上げましたような実のある政治改革を全力を挙げて進めていくことが大切であると考えております。(拍手)
#16
○議長(土屋義彦君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時三十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時二分開議
#17
○議長(土屋義彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。磯村修君。
   〔磯村修君登壇、拍手〕
#18
○磯村修君 私は、連合参議院を代表して、海部総理の所信に対して、特に重要な中東問題について質問いたします。
 世界は今、ポスト冷戦の新しい国際秩序の形成を目指して急テンポで動いております。こうした情勢の中で突如として発生したイラクのクウェート侵攻に対して、世界の世論は国際信義と諸国民の平和と繁栄への挑戦として厳しく批判しております。この中東問題に対して我が国のとるべき道は、人道的、平和的立場を堅持して対処していくことこそが平和憲法の理念のもとでなし得る役割であると確信いたします。
 総理は、湾岸危機の発生後、西側主要国の首脳として初めて中東五カ国を歴訪し、イラク軍のクウェートからの撤退など原則論を繰り返すとともに、紛争周辺国への経済協力を表明いたしました。しかし、イラクのラマダン第一副首相との会談では、我が国は反イラク的行動をとっていると非難され、邦人の出国も拒否されました。また、イラクの人質となっている邦人からは、政府の対応に厳しい批判と不満が述べられております。
 総理は、今度の中東歴訪で具体的な和平提案をすることもなく、また人質解放の道を開くでもなく、一体歴訪のねらいと成果は何であったのか、むなしさを感じますけれども、総理御自身、歴訪についてどのように評価されているのかお伺いいたします。
 また、今後の事態の平和的解決に向け、我が国のとるべき外交は何であるかであります。特に、イラクのクウェートへの侵攻により中東情勢が緊迫の度を深めているとき、イスラエルの占領下にあります東エルサレムではイスラエル警察隊によるパレスチナ人射殺事件が発生しました。そして、イスラエルは国連の調査団派遣も拒否いたしました。この事件を契機に、イラクのクウェートからの撤退とイスラエルのパレスチナなどからの撤退がますます不可分のものとして論じられ、いわば中東問題の包括的解決を目指す動きが今後活発化していくものと考えられます。アラブの怒りと不信感は、パレスチナなどイスラエル占領地域に関する国連決議を長い間無視してきたことがアラブの西側に対する疑念をかき立てているとしております。
 我が国としては、明確な中東外交政策に基づき積極的に行動することが必要であります。これは中東の植民地主義に加担したことのない日本に対する大きな期待でもあると思いますが、総理のお考えをお聞かせください。
 次に、人質の解放について総理にお伺いいたします。
 イラクはこれまで、米国による攻撃の可能性を理由に人質の解放に応じようとしておりません。しかし、人質の解放をおくらせることば、まさに人道上の問題でもあります。万が一軍事衝突に発展すれば、人質の生命は直接の危機にさらされることになります。人質の早期救出に今どのように対処していくのかお伺いいたします。
 また、けさまでの報道によりますと、病人や高齢者の邦人数人が帰国できるということでありますけれども、人質の状況をどのように今把握しているのか、また医療品、食糧等の手当ては十分に行われているのかどうか、あわせてお伺いいたします。
 ところで、政府は、中東貢献策について、八月末、湾岸における平和回復活動に対する協力を決め、まず十億ドルの資金協力を発表いたしました。さらに九月十四日、米国の追加要請にこたえて十億ドルの追加協力を決め、さらに総額二十億ドルの経済協力を湾岸周辺諸国に対して行うことを明らかにしました。このうち、最初の十億ドルについては、湾岸平和基金を受け皿として、その資金は湾岸に駐留する多国籍軍の中核となっております米軍に流れる仕組みになっております。これは、実質的には米軍に対する資金協力でもあります。資金は米軍用の四輪駆動車、パソコン、クーラーなどの購入に使用されます。このような資金協力は、見方によっては米軍の武力行使を財政的に支えるものとして軍事的に不可欠な意味を持つものであります。それは、直接的武力行使と同様の性格のものであります。
 かかる資金協力は、経済協力という視点で見れば、軍事用途に充てられる経済協力は行わないという趣旨の国会決議にも反することになります。そして、集団的自衛権を禁止している憲法に抵触するおそれもありますが、総理の明確な答弁を求めます。
 政府が今回打ち出した中東貢献策は、米国に対する配慮のみに終始した印象が強く、米国一辺倒という国民の批判は免れません。いわば、これは対米貢献策であります。こうした印象を払拭するためにも、国連を通じてのより普遍的な協力形態に改めるべきであると思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 さらに、米国は、中東貢献策に関連して在日米軍の駐留費の負担の増加を日本側に求めているようでありますが、それには安易に応じるべきでないと考えますが、あわせてお伺いいたします。
 さて、国連平和協力法案についてであります。
 今、我が国に問われている最もふさわしい平和貢献策は何かであります。
 日本国憲法は、平和を愛する国民であることを世界に宣言しております。いわば、非軍事国家として国際社会に貢献することを誓ったのであります。この憲法の理念は我が国の過去の過ちの反省に立ったものであります。アジアの人々は過去の悪夢からまだ解放はされていないのであります。我が国が国際社会での大きな政治的役割を果たすことを制約しているのは憲法ではなく、我が国に対するアジアの人々の不信感が決定的な要因であると指摘する論調もあります。その意味でも、我が国は常にアジアの枠の中で歩み、世界での大きな政治的役割に関しては国連の中でその責任を積極的に果たしていくという原点に立つことが必要であると思います。
 この点から考えて、自衛隊参加の貢献は決して考えてはならないはずであります。また、紛争地域での武力行使は絶対にないという保証がどこにありましょうか、総理の御所見をお伺いいたします。
 自衛隊員の身分についても、あるいは資格にあっても二転三転の論議が行われましたが、それはまさにつじつま合わせであり、その根底にあるものは平和憲法をなし崩しにして自衛隊の海外派兵を既成の事実にすることにあると考えるのであります。
 自衛隊は、警察予備隊から保安隊へ、そして警備隊にその姿を変え、さらに今の自衛隊へと拡充され、近代装備を持つ軍事的組織となりました。平和協力隊にこの自衛官が参加するならば、事実上軍人の自衛官である以上、国際的に見てもそのような組織は非軍事組織とは言いがたいものであります。つまり、自衛隊とは別のもう一つの軍事組織の編成ということになり、憲法第九条に抵触することは明らかであります。総理はこの重大な問題をどうお考えになりますか、お伺いいたします。
 一九五八年七月、レバノン国連監視団の編成に際して我が国は自衛隊将校の提供申し入れを受けました。これに対して、憲法上の制約を理由に我が国はこの申し入れを固辞いたしたのであります。
 また、国連加盟申請の際、当時の岡崎勝男外務大臣名で出した声明では、日本政府はその有するあらゆる手段によって国連憲章から生まれる義務を遵守するが、日本のディスポーザル、つまり裁量にない手段を必要とする義務は負わない旨を表明したことであります。当時の西村条約局長は、一九六〇年八月の憲法調査会第三委員会で次のように説明しております。すなわち、軍事的協力、軍事的参加を必要とするような国連憲章の義務は負担しないことをはっきりいたしたのでありますと述べているのであります。
 また、参議院は一九五四年六月、自衛隊法の成立に際して、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」こととして、自衛隊の海外出動は行わないとする決議をしております。
 このような我が国の基本姿勢は今にも通ずることであり、自衛隊の国土、領海、領空の専守防衛の任務と出動が自衛隊法によって厳格に限定されているのであります。海部内閣はなぜこれを否定し、消し去ろうとするのか。明らかに歴史の歯車を逆回転させるものであり、総理の反省を強く求めるものであります。
 私は、戦後四十五年、国民の合意により強く支えられてきた憲法の平和理念に沿い、自衛隊の海外派兵は一切認めるべきでなく、いかなる場合も自衛隊法の改正は論外であり、さきに述べました基本姿勢を厳守すべきであることを強調するものであります。無論、国連中心の平和維持活動への貢献の重要性については私も認識しております。今、ポスト冷戦時代の新しい世界秩序形成の過渡期にあります。その中で突発した今回のイラクによるクウェート侵攻の問題の解決がなくして新しい国際秩序は展望できません。我が国は、この新秩序の形成と運営のため最もふさわしい平和的貢献を行うことであります。
 この具体案として、国連の平和維持活動、いわゆるPKOに限定して、軍事的に使用しない保障のもとで財政的、物質的援助と難民の援助、そして人的な面でも自衛隊とは組織、根拠法を異にするPKOへの参加組織を新たに編成、設置して、国連の要請と相手国の同意のもとに国連の平和維持活動の一翼を担うべく派遣する体制を整備すべきであると思います。これこそ平和と安定を願う国際社会に対する我が国の重要な貢献策の一つであると考えます。総理の御意見をお聞かせください。
 ところで、国連平和協力法案は、その附則に自衛隊の平和協力隊参加を可能とする極めて重大な規定を置き、この附則によって自衛隊法を改正することとしているのでありますが、政権の維持に恋々としたこれほどこそくな手段はありません。確かに、新法の附則で他の法律の一部を改正することはこれまでにもありましたが、それは法律規定の整理あるいは内容的に軽微な改正に限られるべきであります。今回のように、自衛隊の性格を根本的に変え、憲法の、ひいては国家の根幹にかかわる基本的かつ重大な改正をただの附則で行うということば決して許されないのであります。政府は、どうしても自衛隊の任務を変えようというのであるならば、国民の目をごまかすような立法にするのではなくて、堂々と自衛隊法の改正法案として提出し、国連平和協力法案とともに国会の審議を求め、国民の判断を仰ぐべきであります。総理の答弁を求めます。
 今政府が行おうとしていることは余りにも拙速であり、その内容は平和憲法の基本にかかわる重要な問題であります。加えて、朝令暮改の様子を国民の前にさらけ出し、総理の指導性に一貫性のないことを浮き彫りにしました。これでは国政を誤ることは必至であります。海部総理は、一カ月余り前、自衛隊の海外派兵は行わないと述べられました。今総理はみずからの意思を思い起こし、自衛隊の海外派遣を撤回し、国際的貢献のための国民合意の形成に努めるべきであり、その勇気ある決断を求めるものであります。
 最後に強調しておきます。我が国は人道的、平和的立場を堅持し、国際社会での役割を果たすことこそ平和の真理と正義に通ずる唯一の道であると確信いたします。一たび中東地域が軍事衝突により戦場化すれば、世界経済に及ぼす影響もはかり知れないものがあります。国会においても、諸国民が心から願う平和と繁栄のため、超党派による平和的解決へ向けてのあらゆる努力を払う決意を内外に示すことを提案して、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(海部俊樹君) お答えをいたします。
 今回の訪問は、中東湾岸地域の五カ国の首脳及びイラクのラマダン副首相と会談をいたしましたが、私はそれぞれの首脳が今の湾岸の危機に対して深刻な憂慮の念を持っておること、同時に、今の事態がこのまま長期化すること、それを何とか防がなければならないという重大な関心を持っておること、同時に、何が原因でこの湾岸危機ができたかというと、これは明らかにイラクのクウェートという国家を侵略し併合するという平和の破壊行為でありますから、これに対して国連が決議をもって支持をした、それを平和的に解決するために経済制裁の措置を決めて、この経済制裁の措置を実効あらしめていくことが平和的解決のまず第一歩である局面打開につながるものであると、こういう考え方を私も申し述べましたし、これについては各国首脳の間において大きな立場の変化はありません。そのために大事なことは国際社会が、みんなが力を合わせてくれることだ、イラクのことはアラブだけで片づけよと言われても、アラブの内部も今意見が分かれて、そしてアラブの中では解決できないから、それは世界の国際世論で解決をしようという点について各国首脳と合意をしたというお話をしておるわけでございます。
 私は、この平和的解決の間で全外国人の自由を直ちに確保するように、公正な平和が生まれるように我が国の立場を明確にし、人質問題解決への努力を話し合ってきたところであります。特にラマダン副首相との会談においては、当面の転回はございませんでしたけれども、我が国の立場を直接伝えるとともに、今後の政治的対話の道は継続しておこう、これは両方で合意もしてまいりました。そして、日本とイラクの関係の再構築も、あるいはミッテラン大統領やブッシュ大統領が述べた和平提案のことも、あるいは日本が考えておる国連決議二四二に伴うパレスチナ問題の解決の問題についても、局面を打開して、まずそういった根本的な問題が話し合いのできる状況をつくることのできるかぎは今イラクが持っておるんですから、イラクがこの問題解決のための第一歩を踏み出すという、それがいろいろな機会を国際社会に提供するんですから、そのことを十分に考えて決断をされたいということを求めてきたわけであります。
 中東地域には、中東和平問題など未解決な重要問題が存在していることは御指摘のとおりでございますから、今回の事件、湾岸危機、これと切り離した形で根本的な公正な解決が図られなければならぬという考えを私も持っております。
 また、日本の大使館はいろいろと努力はしておりますけれども、イラクがほとんど大使館員の行動に対して邦人との面会を許しておりません。全員の状況を把握するのはその意味で極めて困難でありますけれども、それでも、手紙を届けるとか日本食を差し入れるとか薬を取り次ぐとか衣類等の差し入れ等を行うとか、いろいろ接触をして、できるだけ正確に全体の状況を把握し、同時に少しでも、一日でも早い邦人の解放、すべての外国人の人質問題の解決に向けて大使館は引き続き努力を続けていくわけであります。
 また、いわゆる多国籍軍は、武力によりクウェートに侵攻したイラクの行為に対して、国際平和及び安全の維持のため累次の安保理決議を受けてその実効性を確保するために展開しておるものでありますから、日本はこの平和回復活動に対する協力を取りまとめてまいりましたし、また、ともに武力行動に出る、実力行使をするという考え方ではありませんから、憲法九条の解釈上許されるものと考えております。
 また、国連を通じての協力に形を変えたらどうかというお話でありますが、これは国連安保理の諸決議を受けて活動しておる、そして国連決議の実効性確保のための協力であり、また国連の決議にはこれら加盟国に対して必要な協力をしてほしいということになるわけでありますから、私は国連を通しての国連決議の精神を受けての協力だと思いますし、また資金提供に当たっても、国連に平和基金の設置を働きかけたこともありますけれども、それが国連に今ないわけでありますから、湾岸平和基金に提出をするという形をとっておるところであります。
 在日米軍経費問題にもお触れになりましたが、その件は、それ自体の問題と考え、次期防策定の作業の中で引き続き検討を続けてまいりたいと思っております。
 また、アジアの一員として国連の中で果たすべき政治的役割とのことでございますが、やはり国際の平和及び安全の維持のためにはアジアの平和、アジアの安全もともに一体をなすものでありまして、私はアジアの一員として日本が国際社会に果たすべき役割の一つとしてアジアの中においても大きな役割を果たさなければならぬと考えております。
 また、この問題については、周辺諸国に対して、歴史の反省に立った日本の立場、二度と軍事大国にはならないという誓いはかたく持って変えておりませんし、また、この国連の平和維持活動その他に対して国連で決議をする場合にはこれはアジアの代表も入って決議をされておることであり、国際社会の平和、公正な平和が守られていくということはアジアの安定と平和のためにもこれは共通の利益に立つ考えでありますから、平和と安定のために今後とも我々は理解を深める努力を続けながら、日本の今決めておる基本的な考え方について十分な説明をし、理解をいただきたいと考えております。
 また、平和協力隊は自衛隊とは別のもう一つの軍事組織ということになるとおっしゃいますが、自衛隊を自衛隊として動かす、自衛隊をそのまま使うというのではなくて、目的、使命が違うわけでありますから、ですから平和協力隊として、その平和協力隊へまず入ってもらうことによって平和協力隊の指揮下に入ってもらうわけであります。そうして、軍事組織ではないということは、原則非武装で来るわけでありまして、同時にまた、派遣先や任務について特に必要とするときに小型武器を貸与することができるということを例外措置としてきちっと条文に書いておるわけでありますから、これが新たな軍事組織ということには私は当たらないと思いますし、軍事組織にしないために原則非武装で武力の行使を目的としないというところに重点を置いたものであるということをもう少し御理解いただきたい、このように思うわけであります。
 また、我が国が国連加盟に当たって何らかの留保条件を特に付したとは考えられていないわけでありまして、平和主義、国際協調主義の理念を掲げる我が国としては、国連による国際の平和と安全の維持のための活動に対しできる限りの協力を行っていくということでございます。
 そうして、御指摘の自衛隊の海外出動に関する昭和二十九年の参議院本会議の決議につきましては、その有権的解釈は参議院によりて行われるものであると思いますが、自衛隊が、今日のように、平和協力隊の行う平和協力業務に参加をして、国際の平和及び安全の維持のための平和維持活動などに協力するため海外に派遣されることがあろうということまでは想定されたものではなかったのではないかと私は考えておるのであります。
 我が国の行うにふさわしい平和的な貢献は国連の平和維持活動に限定せよとのことでございます。
 私は、国連平和維持活動その他に対して、単に資金面のみならず、要員派遣面でも協力をしていくことが重要と考えておりまして、政府としては一般のいろいろな公務員、民間の皆さんとともに自衛隊が平和協力隊として参加する道を確保することによって、平和協力法業務がさらに的確に行うことができるように、この問題をこの法案の中で任務として書いたわけであります。あくまで武力による威嚇または武力行使に当たるものではないということは、これは言うまでもありません。
 法律改正についてお触れになりましたが、この平和協力隊に自衛隊が参加するということについては、私は国連平和協力法の制定に伴いこれと一体不可分をなすものとして今この法案を提出して議論をお願いしておるわけでありますから、その附則で改正を行うということもこれは法律の改正でございますから、十分に御議論をいただきたいと考えております。(拍手)
    ─────────────
#20
○議長(土屋義彦君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#21
○田渕哲也君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表して、総理の所信表明に対し質問を行います。
 去る八月二日、イラクのクウェート侵攻という重大事件が発生しました。
 これに対する我が国政府の対応は不手際の連続です。情報収集能力の弱さや危機管理体制の不備から在留邦人の退避がおくれ、むざむざと百四十名を超える人たちが人質にとられました。また、国際協力面での貢献策の策定が遅く、かつ小出しで、四十億ドルもの多額を出しながら余り評価されないという結果を招いております。さらに、人的貢献への対応は、事件発生後七十日もたってからやっと国会で論議を始めるというのんびりぶりです。
 このような緊急非常の事態には、平素からの備えとともに、トップに立つ者の決断力とリーダーシップが強く求められますが、この点について総理ほどのような認識を持っておられるか、お伺いします。
 次に、東西冷戦の終結、ヤルタ体制の崩壊という、まさに人類の歴史的な転換点ともいうべき国際情勢の変化についてであります。
 これからの国際情勢の動きは予断を許さない面もありますが、常識的に展望できることは、第一に、複数政党による民主主義政治体制と市場原理を基本とした経済体制等が共通の価値観として世界に広がっていくことです。第二は、米ソ二大国の力が相対的に低下し、国連の役割が重要さを増すこと、その中で日本、ドイツなどがその力に応じた役割を求められることです。第三は、米ソの支配による枠組みが弱まることにより、民族主義の台頭や国境紛争が激化し、地域紛争はなくならないことなどが予想されます。
 このような世界情勢の変化の中で、イラクのクウェート侵攻が発生しました。新しい時代における国際ルールの確立という見地に立てば、今回のイラクの不法行為をどうただすかということがこれからの国際秩序のあり方を探る試金石になると言っても過言ではありません。そこで問われるのは、国際社会がその秩序維持機能を発揮できるかどうかですが、その中で我が国は何をすればよいのかということであります。
 最近、テレビで報じられた中に、日本だけでなく、もしアメリカ、イギリス、フランスなど多くの国が我が国と同じように平和外交政策をとり海外派兵をしなければ、イラクのクウェート侵攻、併合のような無法行為はだれがどのようにとめるのですかという声がありました。我々はこれにどう答えるべきでしょうか。日本は特殊な国だからできないが、アメリカやイギリスやフランスなど他の国にやってもらおうというのでは、我が国の平和主義は普遍性を持たぬことになります。また、それは国連がやるべきだというのであれば、我が国は国連憲章や国連決議による義務を果たす用意があるのかということが問われるでしょう。
 また、世界じゅうすべての国が日本のようになれば世界は平和になるという答え方もありますが、現実に世界はそのような状態になく、それゆえにイラクの侵攻も起きているのです。この現実にどう対処するかを説明でき、また、世界がみんな我が国のような平和主義になるための具体的方策とプロセスを示すことができなければ、この答えは空論にすぎません。海部総理ならばどう答えられるか、お伺いしたいと思います。
 私はここで、我が国の憲法について考えてみたいと思います。
 憲法の平和主義の理念はその前文に述べられております。それには「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と述べ、さらに「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と結んでおります。これは正義と秩序を基調とする国際平和を求め、そのための積極的な貢献を国民に要請していると見るべきですが、総理の見解はいかがですか。
 また、国連について考えてみることも必要です。国連は、東西冷戦下では米ソの拒否権の応酬で、創立時に期待されたような機能を発揮できず、無力でした。しかし、冷戦が終結し、米ソが世界秩序の維持のため協力して動く兆しが見え、国連は大きく変化しつつあります。このたびの国連総会で多くの国の代表が国連の役割への期待を表明し、またブッシュ米大統領も、国連が国際的な集団安全保障の中核的役割を果たす可能性が生まれつつあると述べております。冷戦後の新しい時代において、国連を中心とする新しい秩序を生み出す方向で各国が協力し始めているのです。
 そこで重要なことは、我が国の憲法の平和主義と国連中心主義との関係です。イラク問題をめぐる論議の中で、我が国は憲法の制約があるから国連を軸とした活動に無制限に参加することはできないということも指摘されております。
 そこで、総理にお伺いしますが、我が国憲法と国連憲章に定められた加盟国の義務の間に相入れない点があるのかないのか、あるとすればどの点かということであります。さらに具体的には、国連憲章第七章に定める侵略を鎮圧するための国連の平和強制活動に我が国が参加することは憲法に反するのか否か。また、国連の停戦監視などの平和維持活動などについてはどうか。
 さらに、国連事務総長のガイドライン報告によれば、平和維持軍は自衛のための防衛的性格の武器を装備するとあるが、この場合の自衛のための武力行使は憲法上許されるのかどうか。また、現在、中東に派遣されている多国籍軍は、国連決議を達成するためのものであっても、正規の国連軍ではありません。この場合、これに参加することはどうか、また、これに対する後方支援あるいは資金援助についてはどうか、お尋ねいたします。
 我が国憲法の平和主義は、国際連盟規約、不戦条約、国連憲章という戦争違法化の流れの中で、戦前の日本の過ちに対する反省を踏まえて定められたものであり、それが我が国の戦後の対外姿勢を定める上で貴重な路線を敷いてきました。しかし、他方、国連による平和の維持回復活動への参加は、国際社会の公共価値の実現であり、加盟国にとって公共的義務と言わねばなりません。国連による平和維持の仕組みは、国連憲章第一条、第二条に見られるごとく、個別国家の武力行使の抑制と平和の維持回復のための共同行動の二つを組み合わせることにより機能させようとするものであります。
 その意味から、憲法の平和主義と国際的公共義務をどう調和させるかが、我が国が冷戦後の新秩序づくりにどうかかわっていくかを決める重要なポイントであります。そして、我が国が何をなすべきか何をなさざるべきかを明確にすることが必要です。この点をはっきりしないと、新しい時代という海に我が国は羅針盤なしで船出をすることになり、常に迷走を繰り返すことになりましょう。総理はこの点についてどのように考えているか、明確に答えていただきたい。
 イラク事件への対応について、国連平和協力法案がこの国会に提出されましたが、これは今までに述べたような、これからの我が国の進路についての展望をしっかり踏まえた上でその方針を決めるべきであります。もし自衛隊の派遣を必要とするならば、その前提として、それが多数の国民の支持を得ること、また法的な基盤がしっかりと確立されていること、そして自衛官が自信と誇りを持って任務を遂行できる体制をつくることが不可欠であります。そのためには、憲法の枠内ということが明白であること、シビリアンコントロールを確立すること、さらに国連との協力の枠組みが明確であること、武力行使を目的とするものでないこと等が必要と思いますが、総理の所信をお伺いします。
 次に、我が国としての平和解決への努力についてであります。
 総理は、先日、中東を歴訪された際に、イラクのクウェート侵攻後、西側首脳として初めてイラク首脳と会談をされました。話し合いが平行線をたどり、進展が見られなかったのは残念です。しかし、事態打開のための政治的な対話の継続に合意したこと、イラク側がミッテラン仏大統領の和平構想を公式に評価したことは注目に値します。まだ平和解決への道が全く閉ざされたわけではありません。総理がラマダン第一副首相との会談から得られた感触として、平和解決の可能性についてどう判断されますか。また、我が国としてそのために具体的に何をなし得ると考えられますか、総理の所信をお伺いします。
 次に、日朝関係についてであります。
 先般訪朝した自民、社会両党の代表団と朝鮮労働党の話し合いで両国の関係改善への扉が開かれたこと、また長年にわたり拘留されていた紅粉船長、栗浦機関長が解放されたことは喜ばしいことであり、衝に当たられた方々の御努力に敬意を表したいと思います。
 しかし、自社両党と朝鮮労働党が調印した共同宣言には、植民地時代だけでなく戦後四十五年間に北朝鮮が受けた損失にも謝罪し償うことが明記されておりますが、これは納得できません。戦後北朝鮮が受けた損失の内容がつまびらかではありませんが、我が国が責任を負うべきものはないと思いますが、政府の見解はいかがですか。
 また、これは政府間の交渉を拘束するものではないと言われていますが、政府の考えをお聞きしたい。
 さらに、金丸元副総理が釈明のため訪韓された際、盧泰愚大統領は、日朝の関係改善を進めるに当たって、日韓の間で十分協議を行うこと、北朝鮮が国際原子力機関の査察を受け入れること、賠償は国交正常化後に行い、しかも北朝鮮の軍事力の強化につながらないこと等々の五項目の要望を示されたが、いずれも重要なことと思います。これについて政府はどのように対処するつもりか、お伺いします。
 最後に、消費税についてであります。
 選挙の結果、いわゆる衆参ねじれ現象が生じ、野党の消費税廃止法案も自民党の見直し法案もいずれも国会で成立しない状況となりました。このような政治状況の中で、与野党がそれぞれ自説に固執するならば、この問題は一歩も進まず、現行の消費税がそのまま存続することになります。
 今の消費税には次のような重大な欠陥があります。
 その第一は、消費者が納めた税金が必ずしも全部国庫に納付されず、一部が業者の懐にとどまるといういわゆる益税が発生することです。この金額は数千億円ないし兆を超える多額に上るとも言われております。政府はその実態を明らかにしていただきたい。第二は、消費税が生活必需品にも一律にかかるため、低所得者や高齢者に厳しい逆進性を持っていることです。第三は、将来の福祉ビジョンがはっきりしないまま税率がどんどん上がるのではないかという不安です。
 民社党は、これらを改革するため、一、免税点や簡易課税制度、限界控除制度などの見直しとインボイス方式の導入を検討すること、二、食料、教育費、家賃、医薬品などを非課税にすること、三、福祉ビジョン、行革ビジョンの作成とともに、税の名称を年金福祉税などに改め、税金の使途は福祉に重点を置くことなどを骨子とする改革案を提示しました。
 今、各党がそれぞれ改革案を出し合い、本音で協議に入ることにより、現行消費税の欠陥を一日も早く取り除くことが必要です。建前にこだわり、この問題の解決を先延ばしにすることは、国民の利益と公正を守るべき国会また公党として無責任な態度と言わざるを得ません。総理並びに大蔵大臣はこれに対しどのような方針で取り組まれるのか、明確に示していただきたい。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(海部俊樹君) 田渕議員にお答えを申し上げます。
 貴重な御意見をいろいろと承りましたが、御指摘のように、平素からこのような事態に対する備えをするということと、このような事態が起こったときの決断とリーダーシップが強く求められるという点については、私もそのとおりだと考えております。
 また、イラクによる無法行為に対して、一体だれがとめるのであるかという御指摘でありました。
 イラクの今回の行為が力による無法行為であり平和の破壊だという国連の決議を受けて、ただいまはそれぞれの国が抑止をしなければならぬというので出動をし、多国籍軍を展開して、それ以上の破壊は食いとめておってくれるということ、私はこれに対して日本として許される範囲でできるだけの協力をしなければならない、と同時に、国連がこの問題について累次の決議をして、このような力による平和の破壊行為、これを既成事実化することは許してはならないという考え方に立って国際社会が行動しておるわけでありますから、安保理決議に基づく経済制裁を厳格に遵守していくこと、これを通じて公正な平和的な解決が図られていくようにしなければならない、このように考えております。
 憲法の前文では、平和主義及び国際協調主義という理想を掲げて、日本国民はそのような理想が実現されるべきことを期待しておるものであります。私は、日本国憲法の理念も、国連憲章の平和を掲げ隣人同士が力を合わせて平和を維持していこうという理念も、ともに国際平和のために同じ方向を向いて努力をしていこうという理念であると考えます。我が国がそのためにできる役割を積極的に見出しながら、それを平和的手段によって果たしていくべきものと考えております。
 憲法の定める条約締結に関する手続に従って国連憲章を締結いたしております。したがって、我が国憲法に反する国連憲章上の義務はないものと思料いたしております。
 また、国連平和協力法のもとでは、国連憲章第七章の措置を初め、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われる国連の平和維持活動その他の活動に対し、武力による威嚇または武力の行使を伴わない国連平和協力隊の派遣などの協力を行うことを想定しております。この法律のもとでは、兵力の展開を行うことは全く考えられておりません。
 国連平和協力法のもとで想定されている態様以外の協力のあり方については、これは将来の問題として研究を行っておりますが、いずれにしても、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更は考えておりません。
 また、我が国が平和維持軍に参加した場合でも自衛のための武力行使は国連事務総長のガイドライン報告によって許されるかどうかという角度からのお尋ねでありましたが、国連平和協力法案に基づく国連平和協力隊の海外派遣等の協力は武力の行使に当たる行為は行わないという基本原則の枠内で行われるのが前提でありまして、この前提を守ってまいるつもりであります。
 我が国が現在実施している中東貢献策は、いわゆる多国籍軍の中へ参加していくことは含まれておりません。
 また、我が国は、平和国家としてますます重要性の高まる国連を中心とする国際平和と安全の維持のための活動に対して憲法の枠内で積極的に参加していく必要があると考えておりまして、資金面のみならず、国連平和協力隊等を通じて要員派遣面でも協力を強化して、積極的協力をしていくことが我が国に相ふさわしい国際的な貢献であると考えております。
 また、自衛隊の参加する平和協力隊が行う平和協力業務の実施は、武力による威嚇または武力の行使に当たる行為は行わないという憲法の基本原則の枠内で行われることが前提でありますし、また、平和協力業務に従事する隊員はすべて本部長の指揮監督に一元的に服するようにしております。
 平和協力業務の実施に当たっては、基本方針や海外派遣の可否等につき国連平和協力会議の諮問を経るとともに、実施計画を閣議で決定するなど慎重に対処をしていく考えでおります。
 また、ラマダン第一副首相との会談から得た感触として平和解決の可能性をどう判断しておるのかとのお尋ねでありますが、私は、平和解決のために粘り強くお互いに努力もするが、局面を打開するのはまずイラクの決断だということをいろいろ申しました。戦争によって解決しよう、これ以上戦争を広げていくことは国際世論に反するという点についてはラマダン副首相も重々考えているということが対談の間に、言葉の端々から私は受けとめることがでぎました。お互いにそれらの問題について局面打開の努力をするとともに、恒久的な中東和平に向けて、あるいは日本とイラクとの関係について、あるいは中東の恒久的な和平樹立の問題について、ブッシュ大統領の演説やあるいはミッテラン大統領の提案等についても話はいたしました。
 いずれの場合にも、第一段階としてその解決への突破口を開くために局面を打開するのは、国連決議に従い不法な侵略行為の先から撤兵をすることである、それが現状を変えて次のステップに移っていくことのできる大きな前提だということは、これはもうブッシュ演説でも、あるいはフランスのミッテラン提案でも、あるいは私がラマダン副首相と話をしましたその全体の中にも、第一条件、原則だけはこれは曲げてはいけない。これをもし既成事実化するとすると、今後の国際秩序はどうなるかという深刻な問題が出てきます。その点について、今後粘り強く平和的解決のための交渉を続けていかなければなりませんし、政治的対話の道も閉ざしてはおりません。向こうも今後とも平和的な対話を続けていこうという希望を最後に私に表明されたわけでありますから、これはお互いにその努力をしていこうという共通の認識を得たと私は理解をいたしております。
 朝鮮労働党と調印した共同宣言の問題にもお触れになりました。
 私は、四十五年間の問題については、日朝関係が疎遠ないし不正常な関係にあって、結果として請求権問題が話し合われてこなかったことは事実として認識しております。しかし、先般なされた問題については、これは各党の共同宣言でありますから、政府に対する法的義務を有しているとは理解をいたしておりません。三党共同宣言は、政府としてはこれを理解し、同時に、いずれにせよ請求権の問題は今後日朝間で交渉を進める過程で政府としては誠意を持って解決していくべき問題であると考えます。
 なお、謝罪の問題につきましては、私も朝鮮半島の方々に対して、過去の一時期、日本の行為によって耐えがたい苦痛を与えてきたということに対する反省と謝罪の表明は既にいたしておりますが、総裁としての文書にもそれをしたためておるところであります。
 金丸元副総理が釈明のため訪韓された際、盧泰愚大統領が示した五項目に対してというお話でありますが、これは朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れて、朝鮮半島の緊張緩和、平和及び安全に資する形で韓国とも緊密に連絡をとりながら行っていこうという考えのあらわれでありまして、なお交渉に臨む具体的方針については現在検討中でありますけれども、南北対話との連携、北朝鮮が国際原子力機関と保障措置協定を締結するよう働きかけることなど、先般盧泰愚大統領が示された五項目のそれぞれについても留意をして、今後具体的方針を固めていくことになると思います。
 最後に、消費税の見直しに対してお触れになりましたが、消費税を含む税制問題については、前国会での法案処理の結果を踏まえまして、与野党がその責任を果たすとのお立場から、現在、税制問題等に関する両院合同協議会において審議が重ねられておると承っております。
 政府といたしましては、消費税の必要を踏まえながら、国民の皆さんの全体的、長期的な利益といった次元から協議が行われ、一日も早く建設的な合意が得られますことを心より期待させていただいております。
 残余の御質問につきましては関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(橋本龍太郎君) 総理から御答弁になりました消費税につきまして、私から重複を避けて御答弁を申し上げます。
 まず、御指摘になりました益税とおっしゃいますのは、簡易課税制度などの中小事業者向けの特例措置の通用を受ける事業者が、消費税導入に伴いまして三%を転嫁いたしました場合、これらの制度なかりし場合納付すべき税額と実際の納税額との差額というものを指し、その実績が幾らかと、そういう御趣旨であろうかと思います。
 しかし、これは現実にはこれらの制度の対象となります事業者のすべてが三%を転嫁しておられるわけではないことなどの事情から、その額を知ることができないという点については御理解をいただきたいと思います。
 また、所得に対する税負担の割合が逆進的であるという点につきましては、これまでもしばしば申し上げてまいりましたように、消費税に限らず、消費に負担を求めます間接税に共通する性格でありまして、この問題は、一つの税目のみを取り上げて論議をすべきではなく、所得税をも含めました税制全体、さらには社会保障制度など歳出面も含めた財政全体で判断すべきものである、そのように考えております。
 なお、消費税の税率につきましては、法律で定められているものでありますから、国会こそが税率引き上げにつきまして最大の歯どめとして機能するものでありますし、また、現内閣として消費税の税率引き上げを行う考えのないことは、総理御自身からも何回も御答弁を申し上げておるところであります。(拍手)
    ─────────────
#24
○議長(土屋義彦君) 山口哲夫君。
   〔山口哲夫君登壇、拍手〕
#25
○山口哲夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、海部総理の所信表明に対し質問をいたします。
 私は、総理の所信表明を聞き、また一年二カ月の海部政治を見詰め、海部総理の政治姿勢には三つの特徴があることを知りました。
 その第一は、言行不一致であります。総理が国民に対して述べる政治の理念と国会に提出する現実の政策は全く逆行することが多いということであります。
 総理は所信表明で、他国に脅威を与えるような軍事大国の道は歩まないと表明されました。しかし、今総理が行おうとしていることは、あなたの政治理念とは逆に、いずれもアジア諸国民に脅威を与えようとすることばかりなのであります。
 まず、国連平和協力法がそれであります。
 もちろん、イラクのクウェート侵攻は国際平和を破壊する行為として断じて許されるべきことではありません。我が国が国際連合の一員として国連決議に基づき経済制裁を行い、周辺諸国に対し難民の救済など民主対策に全力を挙げることは当然であります。しかし、自衛隊まで派遣する義務はどこにもありません。国連加盟に際し、そのことははっきりさせているところであります。今回の国連平和協力法に自衛隊の派遣を取り入れたことは、中東問題に便乗して自衛隊の海外派兵を将来にわたって固定化させようとするこそくな手段であることを糾弾しておかなければなりません。
   〔議長退席、副議長着席〕
 法案作成に至るわずかの間に、総理は自衛隊の扱いをめぐって二転三転いたしました。総理は八月二十九日の記者会見で、自衛隊を海外に派遣することは考えていないと断言されました。しかし、結果は海外派遣となりました。総理の言葉の重みと威信を大きく失墜させたのであります。
 その国連平和協力法の自衛官併任は、平和協力隊に自衛隊の組織と装備をそっくり持ち込むことになり、輸送機や補給艦の操縦、操艦も自衛官が行うことになります。したがって、これからが一番大事なところであります、万が一これら輸送機、補給艦が攻撃されるような場合は、自衛隊法第九十五条によると、自衛隊の武器、船舶、航空機などを武器を使用しても防護して、自衛隊が輸送等の任務を果たさなければならないことになるのであります。これをやらない自衛隊員は、自衛隊法違反ということになっているのであります。この場合、好むと好まざるとにかかわらず、戦闘行為に入ることは明らかであります。これが派兵でなくて何でありましょうか。したがって、憲法第九条に違反することは明らかであります。総理、どうお考えでしょうか。
 総理がおっしゃるように、危険なところには行かないというのであれば、自衛隊が行かねばならない必要性は全くありません。歴代自民党政権がこれだけはできないとしてまいりましたその自衛隊の海外派遣になぜ道を開かなければならないのですか。既にお隣の韓国や中国の報道機関は、これで日本は今後幾らでも海外に軍隊を派遣できる道を開くことになると指摘しているではありませんか。
 法案作成の過程で総理御自身の決意が大きく変わった理由に、ブッシュ大統領からの強い働きかけがあったとされております。九月二十九日、ニューヨークで行われた総理とブッシュ大統領との会談で一体どのようなことが話し合われたのか、明らかにしていただきたいのであります。また、アジア諸国民の危惧の念に対しどう対処されるのか、お尋ねいたします。
 一昨日、我が党の中東訪問団の矢田部団長にイラク在留邦人一同から衆参両院議員の皆様に寄せられた要請書が発表されました。この要請書には極めて重大な事柄が書かれていたのであります。すなわち、日本の医療団が難民を多く抱えるヨルダンではなくサウジアラビアに派遣されたことは、米国を主体とした多国籍軍がイラク軍と戦闘を開始することを確認しての後方支援であり、日本国政府がイラクに対する戦争に積極的に参加したととられていることであります。自衛隊員が非武装で派遣されても、米国がサウジアラビア及び湾岸に持ち込んでいる武器の取り扱いになれており、有事の際は即戦闘員となることは火を見るよりも明らかである等であります。そして、国連平和協力法案が採択されたならば、イラクは今までの親日感情とは打って変わり、対米国人以上に激しい怒りと裏切られたとの感情が高まり、我々在留邦人はいよいよアリ地獄のような苦境に陥ってしまいます。どうか国連平和協力法案の採択は何としても見合わせてくださいと切々と訴えているのであります。
 サウジアラビアに医療団を派遣した真意と、非武装の自衛隊にアメリカ軍の武器使用を要請されたときの本部長となる海部総理の指示についての見解をお伺いします。
 さらに、イラク在留邦人の食糧もあと一、二カ月よりなく、日本からの送金も不可能になっております。即刻全員の救出を必要としておりますが、どう対処するお考えなのか、お伺いします。
 なお、我が党代表団は、イラクで人質となっている在留邦人のうち、四十三人の病人のリストをラマダン第一副首相とサレハ国会議長に示し、解放を要求するとともに、特に健康状態に問題のある四名に対しては即刻解放を迫りました。サレハ議長は最大限努力すると回答されました。そのうち一人は昨夜解放され出国、残り三人も本日中に解放され出国できるようであります。政府はこの間、全くと言ってよいほど在留邦人救出の努力をしなかったのではないですか。せめて病人リストだけでも作成し、イラク側に示すべきと思うが、いかがですか。
 総理は、先般中東諸国を歴訪し、援助金のばらまき外交を展開されました。しかし、なぜか肝心のイラクにはお入りになりませんでした。なぜ入らなかったのですか。それとも入れなかったのですか。どちらですか、お答えをください。イラク在留邦人の方々は、総理が湾岸諸国を回り援助金をばらまかれたことでイラク側を刺激してしまった、在留邦人にとっては最悪の外交だった、私たちは日本政府に見放されたとも述べているではありませんか。
 今、いかにして在留邦人を解放、出国させるかが日本外交の最大の課題であります。それをなし得なかった総理の今回の外交は私は失敗であったと思いますが、あなたは失敗だったとお考えになりませんか。
 さらに、ヨルダンには主としてアジア人の避難民が四万ないし五万人おります。政府は、これまでわずか三機の航空機より送っていませんが、なぜもっと多くの航空機を回し、救出しないのですか。食糧、医薬品、衣料を大量に送らないのですか、お答えください。
 我が国は、これまで中東外交では英米とは一線を画し、独自の外交を進めてきたはずであります。したがって、中東問題解決の仲介者となるためには最も通した立場にあったはずであります。それなのに、あえてアメリカの言い分のみに耳を傾けるのみで、独自の外交路線を展開しようとしませんでした。アジアの一角で起こっているこの問題だけに、せめてアジアの外相会議を呼びかけ、問題解決に力を合わせる機会をつくるべきであったと思います。これからでも遅くはありません。アジア外相会議を招集するお気持ちはありませんか、お答えください。
 イラクには、これまで米ソが大量の武器輸出をしてまいりました。仮にそれがなかったならば、イラクはあれほどの軍事大国にはならなかったと言われております。この際、将来にわたって地域紛争といえども武力衝突を起こさせないように、国連で武器輸出禁止決議を提案するよう強く要求するものであります。総理の御所見をお聞かせください。
 アジア諸国民に脅威を与えている二つ目の問題に、次期防の策定があります。
 ことしの防衛白書は、我が党が主張し続けてきたソ連の潜在的脅威論の削除を言葉の上だけとはいえ行ったことは多とするものでありますが、東西冷戦構造が解消し、世界が軍縮の方向で努力し、アジアの軍縮も、来春日本を訪れるゴルバチョフ・ソ連大統領が大幅な軍縮を打ち出すであろうと言われております。加えて、韓ソの関係改善、米軍のアジア地域での兵力削減計画などの中で、イージス艦や空中給油機の購入等軍拡志向の次期防を策定しなければならない理由は全くありません。ソ連との間には北方領土の返還交渉と平和条約締結という大きな外交交渉を目前に控えております。この重大なときに次期防を策定することは、国際情勢の流れに逆行し、これらの交渉に水を差す結果を招くと考えられます。この際次期防の策定は中止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 北方領土返還交渉についてでありますが、既にソ連幹部の口から二島返還論が提起されるだろうと言われておりますが、仮に二島返還論が正式に提起された場合、どう対処するのですか。四島返還以外は交渉に応じられないとの態度で臨むのか、お答えください。来春にはゴルバチョフ大統領が来日し、領土問題の交渉が始まることは間違いありません。交渉に臨む総理の基本的理念についてお聞かせください。
 三つ目の問題は、大嘗祭についてであります。
 大嘗祭は、その趣旨、形式から、宗教儀式であることは政府も認めているところであります。にもかかわらず、政府が一世一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式であるとの理由で何と二十五億六千万円もの国費を支出することは断じて認めることはできません。十一月二十二、二十三日に予定されている大嘗祭は、明治四十二年に天皇制強化のためにつくられた登極令にのっとって行われようとしていることは、主権在民の憲法の精神に反し、戦前の天皇制への回帰につながります。宗教行事である大嘗祭に多額の国費を支出することは、明らかに政教分離を規定した憲法違反であります。総理は、政府自身が憲法違反を行うことに何ら疑義を感じないのか、お伺いします。
 アジア諸国民の間には、戦前、天皇の名のもとに日本に侵略された当時を思い起こし、天皇制度復活を危惧する声も多いのでありますが、どうお考えでしょうか。総理は、それは誤解であると言いたいのでしょうが、一度でも侵略を受けた国は、常に侵略した国の現状を直視しながら過去を振り返ってそのように考えるのは当然のことであります。その誤解を解くためにも大嘗祭に対する国費の支出をやめるべきであると思いますが、総理のお考えをお伺いします。
 総理の政治姿勢の第二の特徴は、重要な政治課題についての決定が常にアメリカ追随であるということであります。
 最近、日本はいつアメリカの第五十一番目の州になったのかと、あざけりの声が聞こえてまいります。独立国としてこれほどの侮辱はないと思うのは私のみではないでしょう。この責任の大部分は、総理、あなたにあるのです。
 まず、その一つは、中東の貢献策がしかりであります。八月三十日、中東貢献策として十億ドルを決定されました。しかし、アメリカ側から金額が少ないとの批判が相次いで出されるや、国会との相談もなく、九月十四日に突然三十億ドルを追加決定されました。このことは、だれが見てもアメリカの要求に押された結果と見るのは常識であります。私は金額の多寡を言っているのではありません。我が党は事の重大性から早急に国会を開くべきだと要求しましたが、国会を開こうとはせず、アメリカの要求があれば議会制民主主義を無視し独断専行で事を運ぶ、そのやり方に我慢ができないのであります。九月十三日から九月十四日早朝にかけて、首相公邸にブッシュ大統領から電話が入り、援助額についても話し合われたほか、大統領から掃海艇と給油艦の派遣が要請されたと伝わっておりますが、ブッシュ大統領との間に一体どんな会話が交わされたのか、中東貢献策として四十億ドルを決定された詳細な経過を御報告いただきたいと思います。
 中東貢献策に関連し、人事院勧告の早期完全実施についてお尋ねいたします。
 中東貢献策に四十億ドル、約五千六百億円を支出するため、人事院勧告の早期実施を危ぶむ声が一部閣僚にあると聞きます。申すまでもなく、人事院勧告制度は公務員の労働基本権剥奪の代償として実施されているものであります。いわば政府は勧告を守ることが義務であります。中東貢献策に名をかりて人事院勧告の早期実施を引き延ばすことのないように早急に閣議決定を行い、臨時国会中に補正予算を提出するよう強く要求するものであります。
 二つ目の問題は、日米構造協議の結果としての四百三十兆円に及ぶ公共投資基本計画についてであります。
 我が党は、好景気のときにこそ公共事業を増額し、おくれている社会資本整備を急ぐよう主張してきましたが、政府はそれに耳をかそうともしなかったのに、日米構造協議に際しアメリカから内需拡大を強く迫られるや、渋々四百三十兆円の公共投資を閣議決定いたしました。私は、この問題について、地方自治体と関連する諸問題に絞ってお尋ねいたします。
 過去十カ年の公共投資を見ると、地方自治体の財政負担は実に六二・四%にも達しております。すなわち、この基本計画の達成は地方財政の対策なくしては考えられません。ところが、財政困難で危険信号の出されている自治体は何と五〇・三%と過半数に達しております。特に、公共事業を必要とする過疎自治体ほど財政難に悩まされているのであります。政府は、まず、長年約束を破ってきた補助率の復元を一九七六年ではなく七四年度に戻すことを約束するとともに、すべての自治体で公共投資基本計画を着実に実行できるよう地方財政計画の抜本的見直しを行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、自治体に対し画一的な事業の押しつけはやめていただきたい。自治体にはそれぞれ人と同様に個性があり、町づくり計画も異なるのであります。公共事業の内容は、おのおのの自治体が選択できるものでなければなりません。この際、補助事業のメニューの選択制を検討してみてはいかがでしょうか。
 公共投資基本計画では、農林漁業についても「地域活性化に必要な施設整備を推進する。」とあります。例えば林業について考えるとき、いかに施設整備を図ったとしても、それだけで地域活性化が図られるものではありません。熱帯林の喪失に大きな責任がある我が国が、国内の森林資源充実に一層の取り組みをすることこそ、地球温暖化対策にも必要でありますし、過疎に悩む自治体の活性化にもつながると思います。今日、林政審議会で新たな林政の展開が審議されているとき、民有林、国有林を通じ美しい国土と貴重な資源を後世に残すため、この際、森林整備を公共投資計画で策定し、あわせて国の積極的な姿勢を示す林政の充実を盛り込むべきだと考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
 三つ目の問題は、在日駐留米軍経費の増額の問題であります。
 これまた、総理は、中東貢献策に関連して出されたアメリカの要求に対して増額を約束されたようであります。
 在日米軍経費の全額を日本側が負担すべきとのアメリカの下院決議に絡み、仮に負担しない場合は毎年五千人のアメリカ軍を引き揚げると言われました。これに対し石川防衛庁長官は、頼んでいてもらっているわけではない、どうぞお帰りくださいと発言されましたが、全く同感であります。我が国は、既に地位協定の原則を超えて思いやり予算を支出し、さらには特別協定による日本人従業員の諸手当の負担を拡大し続けてきました。さらなる負担は明らかに地位協定の空文化を進めるもので、納得できません。仮にこれ以上の負担増を図るとするならば、当然地位協定の改定が必要と思いますが、総理のお考えを伺います。
 なお、これまで思いやり予算で米軍基地内に教会を二つ建設しております。これは明らかに政教分離の憲法違反であります。米軍から建築費の返還を命ずべきだと思いますが、お答えください。
 総理の政治姿勢第三の特徴は、総理が行う公約発言は、ただ単に希望を述べているにすぎず、実現性は極めて薄いということであります。
 総理は五月十日の記者会見で、政治改革に内閣の命運をかけ不退転の決意で臨むと言明し、さらに翌十一日、自民党合同総会で、政治改革の先頭に立って前進を続けていくことは私が時代から与えられた使命であると重大に受けとめている、こうあいさつされています。よもやお忘れではないでしょう。なぜ今臨時国会に政治改革に関する法案提出をされなかったのか。選挙制度改革が間に合わないならば、政治資金規正法の改正だけでも提出すべきではないでしょうか。総理の不退転の決意とはこの程度のものなのでしょうか。
 企業献金について、我が党は廃止を主張し続けてきました。例えば企業優遇税制の一つに銀行の貸倒引当金があります。かつて大蔵省がこの改正を提起したところ、時の総理、大蔵大臣らは、銀行協会幹部のたび重なる継続要求に屈して改正できませんでした。ことしの自民党への政治献金の窓口である国民政治協会に寄せられた企業献金は、何と一位から十二位までが銀行でありました。企業と自民党政権の癒着をはっきり見せつけられた思いがいたしたのであります。国民に信頼される清潔な政治を確立するためにも、企業献金は即刻廃止すべきであります。
 最近は、パーティーにかわる文化講演会などで資金集めも始まっているようであります。国民の政治不信を解消することこそ、国会百年の記念行事と考えます。総理の、希望ではない具体的政策とその改正案の提出の時期についてお伺いいたします。
 二つ目の問題は消費税であります。
 この問題は、我が党の浜本議員が消費税廃止を前提に詳しく触れられたとおりでありますが、大幅な見直しを公約しながらその実現に全く努力をしようとしない、その姿勢があなたの特徴であることだけを指摘しておきます。
 以上、海部総理の政治姿勢を批判しながら、幾つかの政治課題について質問してまいりました。
 我々は、十年後に、世界が平和で暮らせる二十一世紀を迎えなければなりません。そのための政策を一つ一つしっかりとっくり上げていかなければならないときなのに、戦後四十五年間たゆまぬ国民の努力によって守り抜いてきた平和憲法が、今海部内閣の手によって危機にさらされようとしているのであります。殊に、自衛隊の国連軍参加は集団安全保障であり集団自衛権とは全く異なる制度であるから憲法違反ではないという憲法解釈に至っては、言語道断であります。自民党の一体どのような機関で論議されて出されたものか、具体的にお尋ねいたします。また、総理御自身のお考えはどうなのか、お答えください。
 歴代政府は、武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣する海外派遣は違憲であるとして、たとえ国連憲章に基づく国連軍であっても、目的、任務が武力行使を伴う場合の自衛隊参加は憲法上許されないとの見解をとってきたはずであります。国際情勢の変化が憲法の解釈を変えさせるのだと脆弁を弄しておりますが、国際情勢は大勢として冷戦構造の解消から平和の方向に向かっているのでありまして、このときに武力行使の目的や任務を持つ国連軍に自衛隊を参加させようなどと考えること自体、戦後四十五年間続いた平和に亀裂を生じさせるものであり、国民が断じて許すはずもありません。
 かかる国の基本にかかわる方針が、総理の所信表明にも一言も触れられずに、しかも所信表明が終わった直後に飛び出すがごときは、ただただ総理の指導性のなさにあきれるばかりであります。しかも、国連軍なるものは現実問題として編成される可能性は乏しいと外務省さえ判断しているときに、なぜこのような新たな憲法解釈が突然飛び出すのか、その真意は那辺にあるのか。自民党の議員でさえ、このような解釈はこそくで、どさくさ紛れに何でもやってしまおうとするものと嘆いておるではありませんか。総理の答弁を求めます。
 後世の歴史家が海部総理を、戦後四十五年続いた平和憲法にひびを入れた平和破壊の総理と称するか、あるいは危機を迎えた平和憲法を体を張って守り抜いた総理と称するか。このままでは、あなたは将来間違いなく平和憲法にひびを入れた総理として世の糾弾を受けることになるでしょう。どうかアメリカにのみ目を向けることなく、主権者である国民の声に真剣に耳を傾けられることを強く強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(海部俊樹君) 山口議員にお答えをいたします。
 平和協力隊の自衛官が操縦するそういう輸送機、補給艦が万一攻撃されたら、この場合戦闘行為に入ることは明らかで、これは憲法違反ではないか、あるいは医療団がサウジだけ行ったのはいろいろ目的があったのではないか、こうおっしゃいますけれども、私はこの際特に申し上げさせていただきたいんですが、平和協力隊の隊員というのは原則非武装でございますから、丸腰で来てもらうわけです。そのかわり、派遣先のいろいろな状況とか職務の内容を考えますと、特に必要であるというときには、隊員にも基本的な人権があるわけでありますから、護身用ということも十分考慮しなければならないことはございます。けれども、輸送機には戦闘をするような武器は装着されておりませんし、また補給艦を見ていただいても、小銃、機関銃、散弾銃が日ごろは船内の武器庫に保管されておることはこれは事実でありますけれども、しかし小銃、けん銃、機関銃という護身用の武器が、これをもって武力による威嚇とか戦闘行動だとか、私はそうは考えないんです。これは、護身用に小型武器を特別のときは貸す、特別必要がないときは貸さないわけでありますから、初めから戦闘を予想して出すわけじゃありませんし、勇ましくそれを撃とうと思って武器を持っていくわけじゃないんですから、武力行使の目的ではないんです、平和協力の目的なんですから、どうぞ初めから我々の目的としておるところをゆがめて特別の角度からだけ物を言うことをおやめいただきたいと思いますし、また派遣するに当たっては、それぞれの国際情勢、その派遣先の状況、その地域がどうなっておるか、いろいろなことを全部慎重に判断して、協力会議で検討をし、方針を決めて閣議で決定するという慎重な対応をしてまいりますので、初めからそういう戦闘行為に巻き込まれるとか戦闘行為をさせるとかいうような考えは毛頭持っておりませんので、計画決定のときに十分御指摘に留意をして考えてまいります。
 また、医療班の問題につきましても、確かにサウジアラビアに第一弾派遣をいたしましたが、これはサウジアラビアからさらにヨルダンのキャンプにも回って、そこでいろいろと調査を進めておるわけでございます。
 私の滞在中に社会党の議員団の代表の皆さん、矢田部団長以下御連名のお手紙も私はいただきました。御好意に感謝いたします。けれども、そのお手紙に書いてあった難民キャンプの実情を私も知るべきだと思って特別機の出発の時間を延ばさせて難民キャンプへ行って見てまいりましたが、その難民キャンプに医療団の先遣隊が行っておったということは事実でございますから、調査をしておるわけでありますので、サウジだけなぜやったということはちょっとこれは事実に反しますので、ヨルダンの方にもしておるということをどうぞ御理解いただきたいと思うわけであります。
 また、自衛隊のいわゆる海外派遣というのは武力行使の目的を持たないで出すことであります。このような海外派遣は、今日までいろいろ御議論がありましたが、憲法上許されないわけではありませんし、これを現に法律によって任務を与えて海外派遣をさせておる、派兵とは明らかに違ったものであることはいろいろ理解されておるところであります。
 ですから、派兵と派遣の違いを思い、同時に武力行使の役割を伴わず、しかも現在、この国際的な世界の中で、実力によってよその国を併合して吸収して返さないという不法行為に対して国際社会がいけないと決議をして、みんなこの決議を受けてそれぞれの国が多国籍軍として展開しておってくれるわけでありますから、私は、新しい世界の秩序の中でこういったような行為を仕方がないからといって見逃してしまうのはこれは未来に対してよくありません。ですから、それな抑止しておる多国籍軍に対して日本も憲法の許される枠内でできる限りの協力をしようというのがこの法案作成の過程で私が考えた問題でございますので特に申し上げさせていただきますし、また、ニューヨークで行われた首脳会談においてブッシュ大統領は、これまでの日本の貢献策について評価をするとともに、さらに効果的に国際的な平和維持活動に参加できるよう検討しているということを聞いておるがこれは世界に歓迎されることと思うと、こう述べたわけでありまして、自衛隊をどうのこうのという具体的な話は、そのとき首脳会談では出ませんでした。これは私がここで申し上げさせていただいておきます。
 また、アジア諸国の危惧に対する問題にもお触れになりましたが、私はアジアの国々に対しては、過去の歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしない、軍事大国になって脅威を与えるようなことはしていけないという気持ちは前々から強く持っておるわけであります。しかし、この地球的な国際化時代になりますと、世界の平和と安定はアジアにも直ちに響くわけでありますから、国際社会が国際社会の大義の名においてこれは許せない平和の破壊だと決めたことに対して、しかもそれを決める国連の安保理事会には、中国も常任理事国として、他の、アジアからも二カ国が参加をしておるわけでありまして、その安保理事会の決議を受けてそれぞれの国がこれは許されないというので立ち上がっておる行動でありまして、それに武力行使を伴わないで行う協力でありますから、この平和と安定を守ることはアジアの安定にも役立つものであると私は考えておりますので、その点は法案成立の暁にはあらゆる段階を通じて十分御説明をするとともに、私はこの協力隊については慎重な態度でアジアの国々にも対処していかなければならぬと考えております。
 また、イラクの邦人救出ができなかった先般の中東外交は失敗であったと、こう仰せられますが、いろいろなお考えはあろうと思います。しかし、私は、中東五カ国の首脳とは、現状に深い憂慮の念を持ってこの危機を何とかしなければならない、平和的に解決しなきゃならぬというこの願いに立って日本も同じ立場を明確に表明するとともに、原則に従った解決をして、力による侵略、併合は許さないという国際社会の大義を国際社会が力を合わせて実現するためには、経済制裁を国際社会が力を合わせて行うことによって局面を転回するというイラクの決断を求めなきゃならぬということを共通の認識として得てまいりましたので、それは私はどうぞお認めをいただきたいと思うし、また、イラクのラマダン副首相との会談に対しては、この局面を打開することのできる直接的な決断をできるのはまさにイラクでありますから、直ちに撤兵をして、そうすれば極東の問題、世界の問題、あるいは中東の問題、今世界には片づけなければならぬ問題がたくさんあるわけでありますから、ブッシュ大統領の国連演説のように、またミッテラン大統領の提案のように、この第一原則が行われれば次にイラク・クウェート紛争の問題やパレスチナ問題の解決などについて、いろいろ国際的な解決への努力が図られる転機がもたらされるであろうということを言っておるわけでありますから、勇気を持って局面打開をするように、それがすべての問題の解決に連なる第一歩であるということを私は強く申し上げ、そのことについてもラマダン副首相とは話し合いをし共通の認識を持ち、引き続いて政治的な対話を続けていこうということで共通の認識を得てまいりました。今後ともこの窓は閉ざすことなく、平和解決に向けての努力を続けていきたいと考えております。
 次期防の策定につきましては、憲法及び専守防衛の基本的防衛政策に従うとともに、昭和五十一年の閣議決定の節度ある防衛力の整備を行うという精神を引き続き尊重してまいることは言うまでもありません。
 日ソ交渉においては、四島返還問題に政府の態度の変更はないかということでありますが、基本的に、四島返還によって領土問題を解決したい、この政府の態度に変化はございません。そして、既に明春ゴルバチョフ大統領訪日が決まっておりますから、そのときには抜本的解決へ向けての質の変わった日ソ関係を打ち立てていきたいということで、シェワルナゼ外務大臣とも話をし、共通の認識を得ておりますので、これを大切な節目と考えて努力をしていきたいと考えております。
 また、大嘗祭についてお触れになりましたが、私は、大嘗祭は皇室の行事として行われるものであり、皇位が世襲制である憲法のもとにおいて一世に一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式と考えておりますので、その儀式の挙行について国としても関心を待ち人的、物的な側面から可能にする手だてを講ずることは何ら政教分離の原則に反しないものと考えておるものであります。
 九月十四日早朝のブッシュ大統領との電話の内容と四十億ドルの中東貢献策決定の詳細を報告せよということでございますが、イラクによるクウェート侵攻、併合というあの事実、それがあってから、我が国としては積極的に国際的努力に対して貢献を行うべきものであると考えておりました。このために、情報をフォローしながら具体的貢献策を政府内部で鋭意検討を進め、中山外務大臣の中東訪問の結果をも踏まえて、八月二十九日の閣議において、輸送、物資、医療、資金面での湾岸における平和回復活動に対する協力並びに周辺国支援及び難民援助を内容とする貢献策を発表し、翌三十日、平和回復活動に対して十億ドルの協力を本年度予算において行うことを決定し、その後さらに政府部内で検討を続け、その後の中東情勢等も勘案して、政府としては、深刻な経済的損失をこうむった周辺諸国、エジプト、トルコ、ヨルダンといった国に対し総額二十億ドル程度の額の経済協力を実施すること、また、湾岸における平和回復活動に対する協力として、さきの十億ドルに加え、今後の中東情勢の推移等を見守りつつ、新たに十億ドルを限度として追加的に協力を行う用意がある旨を表明いたしました。ブッシュ大統領との電話のときにはこの内容を伝えたわけであります。
 人事院の勧告の問題についてお触れになりましたが、政府は、これまでも労働基本権制約の代償措置であるとの基本姿勢に立って対処してきたところでありまして、できる限り早期に結論を得るよう努力をいたします。
 補正予算については、税収の動向などをぎりぎりまで見きわめる必要がある現段階では、その提出時期についてはまだ申し上げられる段階ではございません。
 公共事業の事業別配分に当たりましては、それぞれの社会資本の整備状況等を踏まえ、今後の公共投資基本計画を指針として、国民生活の質の向上に重点を置いた分野にできる限り配分してまいるつもりでおります。
 森林整備についてお触れになりましたが、森林は木材生産のみならず水資源の涵養、生活環境の保全など重要な役割を果たしているところであります。今後とも森林林業施策の充実を図りつつ、森林整備を着実に推進してまいる考えでおります。
 また、補助事業のメニューの選択制については、各種公共事業について限られた財源を国民経済的見地から効果的に活用するためには、それぞれの事業について各地方団体ごとの整備水準、必要度などを個別に勘案しながら事業ごとに審査し、実施していくことが不可欠でありますので、いろいろと御意見に対しては慎重に検討をさせていただきたいと考えます。
 在日米軍経費問題につきましては、従来から、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の効果的運用を確保していく、このことは極めて重要と考えております。自主的な努力を今日までも払ってまいりました。本件は、これ自体の問題として、次期防策定の作業の中で引き続き努力をしてまいりたいと考えますが、具体的なことについては現段階でまだこれ以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
 政治改革法案の提出と企業献金の廃止についてお触れになりました。
 私は、政治に対する国民の信頼回復のためには、政治倫理の確立はもちろん大切なことであります。御指摘になった、金のかからない、政党本位の、政策本位の選挙を実現していくこと。政府としては、審議会の答申の趣旨を尊重して、選挙制度及び政治資金制度の抜本的な改革を図ることができるように、その成案化に向けてただいま鋭意取り組んでおるところであります。できるだけ早い時期に改革が実現できるように努めてまいります。
 最後に、国連平和協力法のもとでは、国連憲章第七章の措置を含め、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われる国連の平和維持活動その他に対し武力による威嚇または武力の行使を伴わない国連平和協力隊の派遣などの協力を行うことを想定しておりますが、同法のもとでは兵力の提供を行うことは考えられておりません。
 また、この協力法のもとで想定されておる態様以外の協力のあり方については、これは将来の問題として研究を行っておりますけれども、いずれにしても、集団的自衛権に関する憲法の解釈の変更は考えておりません。
 残余の御質問に関しましては関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(中山太郎君) 中東問題の解決のためにアジアの外相会議を開く必要があるんじゃないかというお話でございます。
 中東問題解決のために、この国連の決議を完全実施するために、アジアの各国が団結してやっていくことは極めて大事でございます。私は、先般の国連総会に出席しました際に、アジア各国の外務大臣と個別の会談をいたしましたが、かねて日本政府としてはアジアの外相が一堂に会することが必要であるという考え方を持っておりまして、いろいろと各国の外相と相談をしておりましたが、九月二十七日の夜、ソ連のシェワルナゼ外相を初め中国の銭外相あるいは韓国の崔外相とかベトナムのグエン・コ・タク外相、アジア各国の外相と、アメリカ、カナダ、オーストラリアの外務大臣、十五カ国が一堂に会しまして、朝鮮半島問題、中東問題あるいはカンボジア問題等を三時間にわたっていろいろと非公式に会合する機会を持ったことをこの機会に御報告申し上げておきたいと思います。
 次に、思いやり予算でございますが、我が国は、米国との間の地位協定に従いまして、すべての施設、区域をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供することといたしております。
 御指摘の教会施設は、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的として、米軍に対する施設提供の一環として、アメリカの軍人軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠とされる施設であるとの観点からこれを整備し提供しているものでございまして、宗教に対する援助、助長等を目的とするものではございません。したがいまして、本件施設の整備及び提供は憲法に違反するものでもなく、政府としては米軍より本件施設の整備に要した費用の返還を求める考えはございません。(拍手)
#28
○副議長(小山一平君) ただいま議院運営委員会の理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。
 答弁の補足があります。海部内閣総理大臣。
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(海部俊樹君) 武器輸出禁止決議の問題について申し上げますが、平和国家としての我が国の立場から、政府としましては、従来から武器輸出によって国際紛争等を助長することを回避するため、武器輸出三原則などを尊重して武器の輸出に関し厳格な対応を行ってきており、これは国際的な平和と安全の維持に大きく貢献してきたものと考えております。
 他方、武器輸出の規制に関する問題をめぐっては、各国が自衛のため必要な範囲内で行う武器調達、各地域における軍事バランスの確保といった複雑な要素が絡んでおり、非同盟諸国を初めとして多くの国が自国の安全保障の観点からこの問題には慎重に対応しております。
 かかる現状を踏まえた場合、御質問の武器禁輸決議は必ずしも支持が得られるとは考えられず、所信表明演説でも申し上げたとおり、我が国としては核、化学、生物各兵器などの大量破壊兵器やミサイルなどの国際的な不拡散体制を一層全地球的なものとし、その維持強化を図るとともに、通常兵器の輸出についても適切な抑制が行われ、一層の透明性、公開性が確保される必要があることを国際社会に訴えていくことが適当であると考えており、私も過日のニューヨーク大学の講演において、また外務大臣自身は国連演説の中でこのような考え方を表明してきておるところでございます。(拍手)
#30
○副議長(小山一平君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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