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1990/11/05 第119回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第119回国会 国際連合平和協力に関する特別委員会 第8号
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1990/11/05 第119回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第119回国会 国際連合平和協力に関する特別委員会 第8号

#1
第119回国会 国際連合平和協力に関する特別委員会 第8号
平成二年十一月五日(月曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 加藤 紘一君
   理事 高村 正彦君 理事 西田  司君
   理事 浜田卓二郎君 理事 宮下 創平君
   理事 山崎  拓君 理事 池端 清一君
   理事 上原 康助君 理事 高沢 寅男君
   理事 日笠 勝之君
      赤城 徳彦君    井奥 貞雄君
      井出 正一君    石井  一君
      植竹 繁雄君    岡田 克也君
      奥田 幹生君    古賀  誠君
      自見庄三郎君    杉浦 正健君
      鈴木 宗男君    園田 博之君
      近岡理一郎君    中川 昭一君
      中村正三郎君    中山 正暉君
      鳩山 邦夫君    浜田 幸一君
      林  大幹君    町村 信孝君
      三原 朝彦君    渡辺 省一君
      石橋 大吉君   宇都宮真由美君
      上田 利正君    小澤 克介君
      大木 正吾君    岡田 利春君
      川崎 寛治君    五島 正規君
      左近 正男君    水田  稔君
      和田 静夫君    東  祥三君
      井上 義久君    遠藤 乙彦君
      冬柴 鐵三君    山口那津男君
      小沢 和秋君    児玉 健次君
      菅野 悦子君    東中 光雄君
      高木 義明君    和田 一仁君
      楢崎弥之助君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  海部 俊樹君
        法 務 大 臣 梶山 静六君
        外 務 大 臣 中山 太郎君
        大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君
        厚 生 大 臣 津島 雄二君
        運 輸 大 臣 大野  明君
        郵 政 大 臣 深谷 隆司君
        労 働 大 臣 塚原 俊平君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長     奥田 敬和君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 石川 要三君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 工藤 敦夫君
        内閣法制局第一
        部長      大森 政輔君
        内閣法制局第三
        部長      津野  修君
        警察庁長官官房
        長       浅野信二郎君
        警察庁警務局長 仁平 圀雄君
        防衛庁参事官  内田 勝久君
        防衛庁参事官  玉木  武君
        防衛庁長官官房
        長       日吉  章君
        防衛庁教育訓練
        局長      坪井 龍文君
        防衛庁人事局長 村田 直昭君
        防衛庁装備局長 関   收君
        防衛施設庁総務
        部長      箭内慶次郎君
        防衛施設庁施設
        部長      大原 重信君
        防衛施設庁建設
        部長      黒目 元雄君
        防衛施設庁労務
        部長      竹下  昭君
        法務省入国管理
        局長      股野 景親君
        外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君
        外務大臣官房領
        事移住部長   久米 邦貞君
        外務省北米局長 松浦晃一郎君
        外務省欧亜局長 兵藤 長雄君
        外務省中近東ア
        フリカ局長   渡辺  允君
        外務省条約局長 柳井 俊二君
        外務省国際連合
        局長      赤尾 信敏君
        大蔵省主計局次
        長       藤井  威君
        大蔵省国際金融
        局長      千野 忠男君
        厚生大臣官房総
        務審議官    熊代 昭彦君
        厚生省健康政策
        局長      長谷川慧重君
        厚生省保健医療
        局長      寺松  尚君
        厚生省社会局長 長尾 立子君
        運輸省国際運輸
        ・観光局長   寺嶋  潔君
        海上保安庁長官 丹羽  晟君
        海上保安庁警備
        救難監     赤澤 壽男君
        郵政大臣官房長 木下 昌浩君
        郵政省通信政策
        局長      白井  太君
        郵政省電気通信
        局長      森本 哲夫君
        郵政省放送行政
        局長      桑野扶美雄君
        労働大臣官房長 齋藤 邦彦君
        労働省労政局長 清水 傳雄君
        労働省職業安定
        局長      若林 之矩君
        自治省行政局公
        務員部長    滝   実君
        消防庁長官   木村  仁君
 委員外の出席者
        国際連合平和協
        力に関する特別
        委員会調査室長 石田 俊昭君
    ─────────────
委員の異動
十一月五日
 辞任         補欠選任
  野中 広務君     井奥 貞雄君
  三原 朝彦君     赤城 徳彦君
  和田 静夫君     五島 正規君
  遠藤 乙彦君     東  祥三君
  古堅 実吉君     東中 光雄君
  和田 一仁君     高木 義明君
同日
 辞任         補欠選任
  赤城 徳彦君     三原 朝彦君
  井奥 貞雄君     岡田 克也君
  五島 正規君     和田 静夫君
  東  祥三君     遠藤 乙彦君
  東中 光雄君     小沢 和秋君
  高木 義明君     和田 一仁君
同日
 辞任         補欠選任
  岡田 克也君     野中 広務君
  小沢 和秋君     菅野 悦子君
    ─────────────
十一月一日
 国際連合平和協力法案の撤回に関する請願(小沢和秋君紹介)(第四一九号)
 同(金子満広君紹介)(第四二〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第四二一号)
 同(児玉健次君紹介)(第四二二号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第四二三号)
 同(菅野悦子君紹介)(第四二四号)
 同(鈴木喜久子君紹介)(第四二五号)
 同(辻第一君紹介)(第四二六号)
 同(寺前巖君紹介)(第四二七号)
 同(東中光雄君紹介)(第四二八号)
 同(不破哲三君紹介)(第四二九号)
 同(藤田スミ君紹介)(第四三〇号)
 同(古堅実吉君紹介)(第四三一号)
 同(正森成二君紹介)(第四三二号)
 同(三浦久君紹介)(第四三三号)
 同(山原健二郎君紹介)(第四三四号)
 同(吉井英勝君紹介)(第四三五号)
 同(緒方克陽君紹介)(第五三三号)
 同(常松裕志君紹介)(第五三四号)
 同(伊東秀子君紹介)(第六六四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六六五号)
 同(金子満広君紹介)(第六六六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六六七号)
 同(児玉健次君紹介)(第六六八号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第六六九号)
 同(菅野悦子君紹介)(第六七〇号)
 同(鈴木喜久子君紹介)(第六七一号)
 同(鈴木久君紹介)(第六七二号)
 同(高沢寅男君紹介)(第六七三号)
 同(辻第一君紹介)(第六七四号)
 同(寺前巖君紹介)(第六七五号)
 同(野坂浩賢君紹介)(第六七六号)
 同(東中光雄君紹介)(第六七七号)
 同(不破哲三君紹介)(第六七八号)
 向(藤田スミ君紹介)(第六七九号)
 同(古堅実吉君紹介)(第六八〇号)
 同(正森成二君紹介)(第六八一号)
 同(三浦久君紹介)(第六八二号)
 同(山原健二郎君紹介)(第六八三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六八四号)
同月二日
 国際連合平和協力法案の撤回に関する請願(小沢和秋君紹介)(第七九〇号)
 同(緒方克陽君紹介)(第七九一号)
 同(岡崎トミ子君紹介)(第七九二号)
 同(金子満広君紹介)(第七九三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第七九四号)
 同(児玉健次君紹介)(第七九五号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第七九六号)
 同(菅野悦子君紹介)(第七九七号)
 同外一件(鈴木喜久子君紹介)(第七九八号)
 同(辻第一君紹介)(第七九九号)
 同(常松裕志君紹介)(第八〇〇号)
 同(寺前巖君紹介)(第八〇一号)
 同(外口玉子君紹介)(第八〇二号)
 同(長谷百合子君紹介)(第八〇三号)
 同外一件(日野市朗君紹介)(第八〇四号)
 同(東中光雄君紹介)(第八〇五号)
 同(不破哲三君紹介)(第八〇六号)
 同(藤田スミ君紹介)(第八〇七号)
 同(古堅実吉君紹介)(第八〇八号)
 同(正森成二君紹介)(第八〇九号)
 同(三浦久君紹介)(第八一〇号)
 同(山原健二郎君紹介)(第八一一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第八一二号)
同月五日
 国際連合平和協力法案の撤回に関する請願(伊藤茂君紹介)(第一〇〇六号)
 同(小川信君紹介)(第一〇〇七号)
 同(岡崎トミ子君紹介)(第一〇〇八号)
 同(菅直人君紹介)(第一〇〇九号)
 同(串原義直君紹介)(第一〇一〇号)
 同外三件(鈴木喜久子君紹介)(第一〇一一号)
 同(高沢寅男君紹介)(第一〇一二号)
 同(外口玉子君紹介)(第一〇一三号)
 同外一件(長谷百合子君紹介)(第一〇一四号)
 同外一件(日野市朗君紹介)(第一〇一五号)
 同(伊藤茂君紹介)(第一〇八一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一〇八二号)
 同(金子満広君紹介)(第一〇八三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一〇八四号)
 同(児玉健次君紹介)(第一〇八五号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第一〇八六号)
 同(菅野悦子君紹介)(第一〇八七号)
 同(辻第一君紹介)(第一〇八八号)
 同(寺前巖君紹介)(第一〇八九号)
 同(楢崎弥之助君紹介)(第一〇九〇号)
 同(東中光雄君紹介)(第一〇九一号)
 同(不破哲三君紹介)(第一〇九二号)
 同(藤田スミ君紹介)(第一〇九三号)
 同(古堅実吉君紹介)(第一〇九四号)
 同(正森成二君紹介)(第一〇九五号)
 同(三浦久君紹介)(第一〇九六号)
 同(山原健二郎君紹介)(第一〇九七号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一〇九八号)
 国際連合平和協力法案の廃案に関する請願(岩垂寿喜男君紹介)(第一〇一六号)
 同(鈴木喜久子君紹介)(第一〇一七号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
十一月五日
 国連平和協力法の制定反対に関する陳情書外十三件(長野県上伊那郡南箕輪村九一一〇臼井茂外十三名)(第一二七号)
 国連平和協力法の撤回に関する陳情書外一件(東京都港区芝公園一の五の二五島村夏実外一名)(第一二八号)
は本委員会に参考送付された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 国際連合平和協力法案(内閣提出第一号)
 派遣委員からの報告聴取
     ────◇─────
#2
○加藤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国際連合平和協力法案を議題といたします。
 この際、去る一日及び二日、本案審査のため北海道及び沖縄県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員から報告を求めます。第一班西田司君。
#3
○西田委員 第一班、北海道班の派遣委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、加藤紘一委員長を団長として、浜田卓二郎君、池端清一君、高沢寅男君、井出正一君、中川昭一君、山口那津男君、和田一仁君と私、西田司の九名で、現地において、委員町村信孝君が参加されました。また、このほか、藤原房雄議員が現地において出席されました。
 会議は、ホテルニューオータニ札幌において開催し、現地各界の意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の国際連合平和協力法案について意見を聴取し、これに対して各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、弁護士山根喬君、弁護士浅野元広君、協同組合日専連札幌会理事長杉岡幸三郎君、弁護士越前屋民雄君、株式会社自由広報センター社長大場信吾君、北海道大学法学部助教授山口二郎君の六名でありました。
 その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、本案に賛成の立場からの意見としては、日本の国際的立場を自覚し、国際平和の維持、紛争の解決に対し、日本は憲法の枠内で何らかの協力をすべきであること、国連の国際平和維持のための努力に協力するため資金援助だけでなく人的協力も求められているが、一切できないとなれば日本は国際社会から孤立してしまうこと、米軍等の中東派遣はイラクの侵攻拡大を阻止した有効な措置であり、米国の要請があるなしにかかわらず、憲法の許容する範囲内の支援は日本の当然の責務であること、この問題を戦争か平和かの観点でとらえるのは間違いであり、平和を維持するために日本は何をなすべきかを論議すべきで、本案はその点を明確にしており、評価できること等が挙げられました。
 このほか、アジアでも紛争が起こる可能性は否定できず、湾岸危機への協力は将来の我が国の安全に対する担保となること、イラクにより現在出国を制限されている邦人の救出について万全の措置を講ずるとともに、生活必需品の補給等できる限りの努力をすること等の意見が表明されました。
 また、本案に反対の立場からの意見としては、本案は憲法九条に違反し、自衛隊の海外派遣に道を開くおそれがあること、国際紛争解決への協力は非軍事面に限定すべきであり、憲法解釈を変更してまで自衛隊を海外に派遣すべき理由がないこと、本案では、平和協力隊の協力対象、協力業務の内容等について大幅な裁量権を行政府に与えており、拡大解釈のおそれがあること、国民にとって重大な法案にもかかわらず国民各層の間で十分な議論をする余裕が与えられておらず、国民的合意が形成されていないこと等が挙げられました。
 このほか、本案は、今後の国際秩序の形成、取り組み方の前例となるべきであるが、外交、安全保障政策の基本的理念を欠いていること、日本の軍事大国化を憂慮しているアジア諸国に対する配慮を欠いていること等の意見が表明されました。
 次いで、各委員から、陳述者に対し、本案不成立の場合の国際社会に与える影響、今回の中東紛争に米軍が出動しなかった場合の情勢の推移、国連の機能及び平和協力隊の後方支援についての認識、総合的な憲法判断から見た自衛隊参加の可否、多国籍軍がイラクの侵攻拡大を阻止したことに対する評価、今後の日本の安全保障及び対米関係への配慮を優先させた政府の中東問題への対応、自衛隊員が海外派遣を拒否した場合の罰則の適用、本案の作成過程及び国会審議に対する所見、後方支援が武力行使と一体であるとの憲法解釈の判断基準及び国際的貢献の体制整備についての考え方、経済支援の効果と負担の限度、長期的視点での対応策等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第一班の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会の会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く謝意を表し、報告を終わります。
#4
○加藤委員長 次に、第二班山崎拓君。
#5
○山崎委員 第二班、沖縄班の派遣委員を代表して、その概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、高村正彦君、宮下創平君、日笠勝之君、自見庄三郎君、三原朝彦君、大木正吾君、川崎寛治君、児玉健次君と私、山崎拓の九名で、現地において、委員上原康助君及び古堅実吉君が参加されました。また、このほか、仲村正治議員、玉城栄一議員が出席されました。
 会議は、沖縄ハーバービューホテルにおいて開催し、現地各界の意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の国際連合平和協力法案について意見を聴取し、これに対して各委員より熱心な質疑が行われました。
 意見陳述者は、沖縄県経営者協会副会長・専務理事宮城豊君、沖縄大学学長佐久川政一君、沖縄県議会議員・弁護士仲松昌彦君、沖縄国際大学法学部教授緑間栄君、弁護士知花孝弘君、元教諭・ひめゆり平和祈念資料館運営委員宮城喜久子君の六名でありました。
 その陳述内容につきましてごく簡単に申し上げますと、本案に反対の立場からの意見が多く、自衛隊を平和協力隊に参加させることは、我が国の専守防衛を基本とする防衛政策を大きく転換し、自衛隊の海外派兵に道を開くものであり、このような政策転換は国民的コンセンサスを得られていないこと、また、国際平和を確保し、維持するために我が国が貢献をすることは当然であるが、貢献の方法は政府開発援助、技術援助及び海外青年協力隊の活動の充実等の非軍事的施策によって行われるべきであること等が挙げられました。
 このほか、本案の作成が余りにも拙速であり、内容の未消化、不明瞭な部分が多過ぎる等の意見が表明されました。
 また、本案に賛成の立場からの意見としては、イラクのクウェート侵攻によって破壊された国際の秩序と平和を回復するための協力は、平和維持のためできる限りの貢献をするという我が国の基本姿勢に合致するものであること、国際連合平和協力隊は、国連決議に基づいて海外に派遣され、武力行使は一切行わず、憲法の枠内で国際協力活動を行うことを目的にしたものであり、本案を成立させることは必要であるが、自衛隊等の平和協力隊への参加が国民多数の賛意を得られないのであれば、自衛隊等の参加を再検討する必要があること等の意見が挙げられました。
 このほか、退職自衛隊員が参加する国際平和・維持活動部隊を新たに創設するのも一案ではないか等の意見が述べられました。
 次いで、各委員から、陳述者に対し、冷戦後の世界情勢に対する認識、イラクの侵略行動に対する認識、米国がイラクの侵攻拡大を阻止したことに対する評価、中東危機に対する緊急に必要な我が国の貢献策についての考え方、自衛隊の参加を認めない国連を中心とした平和維持活動に協力するための新規立法の考えに対する賛否、自衛隊の国連平和維持活動等への参加と憲法第九条との関係等について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。
 以上が第二班の概要でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。
 なお、速記録ができましたら、本委員会の会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め多数の方々に御協力をいただきました。ここに深く謝意を表し、御報告を終わります。
#6
○加藤委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
 お諮りいたします。
 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参考掲載することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ─────────────
    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
#8
○加藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田利正君。
#9
○上田(利)委員 まず最初に、中東湾岸へ協力隊を派遣する場合、本法案の十七条の「実施計画」、これによりまして内容を具体化するということになっております。理事会等におきましても、この実施計画の内容は政令などと一緒に出すということになっておりますが、まだ出ておりませんから、そういう点からお尋ねをいたしますが、この業務内容の具体的な中身といたしまして、十七条の第二項イの項の「海外派遣に係る平和協力業務の内容」の中で考えられる通信業務、これはどのようなものか、まずお尋ねをいたします。
#10
○柳井政府委員 お答え申し上げます。
 通信の協力といたしましてはいろいろあると存じますが、この国連平和協力法案第三条二号のニに言う「通信」の協力といたしましては、具体的には御指摘のとおり業務計画の中で決めていくわけでございますけれども、例えば停戦の監視でございますとか、あるいは選挙監視の際に通信事情の劣悪な場所でいろいろ協力事業を行うということが想定されますので、そのような状況のもとにおきましてその集落間の通信に協力するというようなことを考えております。
#11
○上田(利)委員 そうしますと、自衛隊の通信部隊は行かないのだということで確認しておってよろしゅうございますね。
#12
○柳井政府委員 先ほど申し上げましたのは、平和協力隊の協力業務の一環といたしまして、通信の分野でどのようなことが考えられるかということで例示を差し上げたわけでございますが、自衛隊もこの協力隊の一部として参加をしていただきますので、必要に応じて自衛隊からの参加を得て協力隊員として通信業務に従事していただくということも考えられる次第でございます。
#13
○上田(利)委員 条約局長、そういうことになりますと、私が聞いておりますのは、中東の湾岸へ協力隊を派遣するかどうかという中で業務計画を聞きましたところ、その中の通信業務というのについては、停戦監視であるとかまあさまざまあるけれども、主として停戦監視であるとか、あるいは先月の二十五日でしょうか公明党の二見委員に答えた中では選挙管理であるとかということをお答えになっておるのでございます。先ほども同じようでございますけれども……。
 そうなりますと、自衛隊が出るということになりますと、言うならば湾岸地域における紛争に自衛隊が出ていくということになるわけでございますから、これが停戦監視とかそういうことにかかわりはないわけでございまして、これから紛争が起きようとしておる、こういう中で自衛隊の通信隊が出るということは、明らかに、いわゆる後方と言いますけれども、戦闘に通信という部分で言うならばこれは参加をしていくということになりませんか。
#14
○柳井政府委員 先ほどはこの法案の十七条の業務計画との関連でお尋ねございましたので、一例として停戦監視等のことを挙げさせていただいたわけでございます。
 ただいまの御質問の中で、自衛隊が湾岸危機において、恐らく多国籍軍のことを念頭に御質問になっていると思いますが、そのような活動に参加をするのではないかという御指摘だろうと思います。
 その点につきましては、多国籍軍との関係でどのような通信があり得るかということを私今、十分に申し上げるほどのデータを持っておりませんです。また、どのようなことを念頭に置いておられるか十分承知しておりませんけれども、仮に多国籍軍を構成する外国の部隊の一部と他の部隊との間の通信を行うというようなことでございましたならば、そのような通信というのは各国の部隊にとって非常に機微なものでございますので、このような活動を平和協力隊を含めて外部の者に依存するというようなことはちょっと考えられないことであろうと思います。したがいまして、自衛隊が平和協力隊に参加する場合におきましても、そのようなことを自衛隊にお願いするというようなことは考えておらない次第でございます。
#15
○上田(利)委員 条約局長、あなた、私の質問に的確に答えていないからだめなんです。細かい問題は後で聞く予定でございますから。
 郵政大臣、「平和協力業務」という中で、「通信」にはどのような通信がございましょうか、所管官庁大臣としてちょっとお答え願いたいと思います。
#16
○深谷国務大臣 郵政省といたしましては、この法律が成立した場合に成立した法律に従って具体的な平和協力をするわけでございますが、その業務の実施計画というのが具体的に出てまいりませんと、今それを想定して画一的にあるいは一般的にお答えするということはちょっと困難であると思っております。
#17
○上田(利)委員 郵政大臣は、国内通信、国際通信もKDDあるいは第二KDDの関係もございますから、所管ですからその辺はわかっていると思いましたけれども、どうも残念な状況で、全然わからないと。
 一応これは後で触れますけれども、時間の関係で横に置きまして、それならば防衛庁長官にお聞きをした方がいいか外務大臣か、どちらかでございますけれども、自衛隊法第百四条は電気通信設備の利用等に関する条項を定めております。すなわち、防衛庁長官は、自衛隊法第七十六条、これは七十六条というのは防衛の出動でございます。防衛出動に出るというのが自衛隊法七十六条にございますけれども、この七十六条第一項の規定によりまして「出動を命ぜられた自衛隊の任務遂行上必要があると認める場合には、緊急を要する通信を確保するため、郵政大臣に対し、電気通信事業法」に規定する電気通信事業者の有するところの電気通信設備を優先的に利用することができる、こういうことになっておりまして、郵政大臣は、これを受けて「前項の要求があったときは、その要求に沿うように適当な措置をとるものとする。」こう郵政大臣はやらなければならない任務があるわけでございます。この場合、言うならば自衛隊法百四条によって電気通信設備の優先利用ができるのですが、それはあくまでも七十六条だ、自衛隊の出動だということに限られておりまして、お聞きするのは、それ以外に利用または行える通信というのが防衛庁長官、ありましょうか。
#18
○石川国務大臣 官房長から法の運用につきまして回答させます。
#19
○日吉政府委員 法律適用の問題でございますから、私からお答えさせていただきます。
 自衛隊法第百四条の電気通信の設備の利用等は、ただいま委員御指摘のように、防衛出動を命ぜられた自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合に限られるものでございます。しかるに、平和協力隊の行います平和協力業務に参加している自衛隊の部隊等は、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において当該平和協力業務に参加するものでございます。したがいまして、平和協力業務に参加している自衛隊の部隊等につきましては、そのことをもって自衛隊法第百四条を適用することはできないのではないか、かようは考えております。
#20
○上田(利)委員 外務大臣、どうですか。
#21
○中山国務大臣 自衛隊法に定めるいわゆる防衛出動等に関しましては、この平和協力隊法のいわゆる目的と全くそれが違うという認識を持っております。
#22
○上田(利)委員 そうしますと、条約局長が答弁しましたが、私は冒頭通信業務の中にはどういうものがあるかということで申しましたら、停戦監視であるとかあるいはその他選挙管理であるとか、さまざまなものがありますよということで答弁がなされました。それならば自衛隊の通信隊というものは行くことはないんだなと言ったら、いや、行くこともあります、こう言ったのですが、今の答弁が食い違ってどうにもならぬじゃないですか、外務大臣。防衛出動でなければ使えないのでしょう、百四条でなければ。これは、防衛出動は、自衛隊が専守防衛ということに限られておりますから、したがって、その中で出動を命じたときには、郵政大臣に対して通信を緊急に、あるいはその通信の設備を緊急に使うことができるということに限られているわけでしょう、自衛隊法第百四条は。それを、海外へ行って自衛隊が通信業務を行うなどということはできないじゃないですか、今の答弁でいけば。食い違っているじゃないですか、柳井条約局長と。はっきりしてください、これは。
#23
○日吉政府委員 条約局長から御答弁申し上げましたことと私の答弁とは食い違いがございません。
 と申しますのは、百四条は、委員も既に御案内のように、これは防衛庁の通信設備を利用することを決めているのではございませんで、その他の電気通信設備の利用につきまして定めたものでございまして、したがいまして、それらを利用する場合には防衛出動の場合に限られているということでございまして、今回、平和協力業務におきまして、防衛庁独自の通信設備を活用することによりまして平和協力業務に参加するということは可能でございます。
#24
○上田(利)委員 防衛庁独自の通信というのはどういうものがございますか。それを言ってください。
#25
○日吉政府委員 防衛庁にはそれぞれ師団、方面隊等に通信部隊がございまして、それらにつきましては、例えば、親通信所からある程度離れた通信所の間を回線を確保いたしまして通信を行うというようなことができ得るような装備を自前で持ってございます。
#26
○上田(利)委員 それは国内の問題でございましょう。私が当初から聞いているのは、中東湾岸への協力隊を派遣した場合ということで、十七条の実施計画に含まれる業務内容の中で通信業務というものはどういうものがあるかということを言ってきたのです。それじゃ、ペルシャ湾にどういう回線があってどういうものを使えるのか、はっきり言ってくれ、これは。何を自衛隊が持っているのか、ペルシャ湾にあるいはサウジに。
#27
○日吉政府委員 私どもは、私ども自身が固有で持っております装備を持っていきましてそれを利用しよう、かように考えております。その場合に、相手国領土内におきまして相手国内の法制上了承を得る、あるいはお許しを得るというような手続が要る場合があるのかもしれませんけれども、この点は外交ルートを通じまして措置がとられるというように私どもは考えております。
#28
○上田(利)委員 今の官房長の答弁ですけれども、それは、自衛隊が海外へ協力隊という形で派遣をされた中でその通信をどうするかということについてはありましょう、後で聞く予定でもございましたけれども。今言っておりますのは、我が国におきまして、例えば紛争地域であるところの中東へ回線を、持っている回線があるか、こう聞いているのです。ないでしょう、それは。ありますか、それは。はっきりしてください。
#29
○柳井政府委員 自衛隊法そのものの解釈につきましては防衛庁の方から御答弁ございましたし、今後必要があればまたお願いしたいと思いますが、御承知のとおりこの法案との関係につきましては、附則の第四条におきまして自衛隊法の一部を改正するわけでございます。
 この附則の四条による自衛隊法の改正によりまして、新たに第百条の六というものがつけ加わるわけでございますけれども、ここにおきましては、「長官は、」防衛庁長官は「国際連合平和協力本部長から国際連合平和協力法第二十二条第一項の規定による要請があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、国際連合平和協力隊が行う同法第三条第二号に規定する平和協力業務に部隊等又は隊員を参加させることができる。」という新たな任務がつけ加わっているわけでございまして、この任務によって通信部隊を含めまして自衛隊の部隊等を派遣していただくということでございます。
#30
○上田(利)委員 そんなことは聞いていないのですよ。それを言うのだったら、きのう、休みは二日ありましたからもうきのうじゃございませんけれども、先日来、共産党の正森委員が、この附則の中で百条の五へさらに六を追加しようということ、これは自衛隊法第三条でやらなければならぬじゃないか、このことを主張しましたけれども、それは結諭が出ておりませんが、事通信にかかわりましては、そうおっしゃるのだったら、言うならば自衛隊法七十六条、これは自衛隊の出動でございます、そして通信を確保しなければならぬということになるのです。その通信を確保するに当たって、国内通信あるいは国際条約に基づく通信以外に本当に協力隊として海外で通信を、これを確保しなければならぬということであるならば、自衛隊法七十六条の中に明確に入れなければできないでしょう、これは。附則などというところの中で百条の五へさらに一つつけ加えて、自衛隊も協力隊として海外に言うならば出動すること、派遣することができるなどということにならないでしょう、通信に限っては。この辺はどうでしょうか、外務大臣。
#31
○日吉政府委員 お答え申し上げます。
 再三お答え申し上げておりますように、自衛隊法第七十六条といいますのは防衛出動に関する規定でございまして、今回は自衛隊法の百条の六によりまして平和協力隊に参加する任務に従事するということでございますので、この場合には七十六条に基づきます百四条の規定の適用はないわけでございます。したがいまして、七十六条の適用がないことはもちろんのこと、百四条の適用もない、かように考えております。
#32
○上田(利)委員 そういうことになりますと、この自衛隊法百四条というのは何だということなのです。自衛隊が出動すればそれでいいのです、出動して自分の持っている回線やその他を使うというのだったら、何も郵政大臣のいわゆる許可を得て、そして既存の、言うならば電気通信業務あるいは電気通信設備、これを緊急に使わなくてもいいじゃないですか。国内でそういう形になっている以上は、今まで国外でもないのですよ、国外で。緊急に自衛隊が使ったということがございますか、緊急に。だから、平和協力業務だからできる、できる、できると言うけれども、それならばその明文を自衛隊法に明らかにしなければならぬじゃないか、あるいはこの国際電気通信条約との関連の中でも明らかにしていかなきゃならぬじゃないか、こう言っているのですよ。
 これは水かけ論になって、官房長はだめだ、逃げてばかりいてだめなんだよな、あなたは。自衛隊が自衛隊の回線を使うのだったら、何も私も質問をいたしません。自衛隊がすべて国内においても自分の、自衛隊の通信施設を全部使って、いわゆる公衆電気通信法あるいは電気通信事業にかかわるものはやらないんだということならいいのですけれども、それが海外へ行くわけでございますから、この辺は一応きょうの段階では私、委員長、ちょっと時間の関係で留保しておきます。
#33
○加藤委員長 いや、留保する問題点ではないと思いますが。
#34
○上田(利)委員 じゃ、はっきりしてくれ。
#35
○日吉政府委員 お答え申し上げます。
 自衛隊法第七十六条は、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛するために防衛出動が内閣総理大臣から国会の承認を得て発せられるということでございます。したがいまして、今回の場合は七十六条には該当しないということでございます。したがいまして、百四条の適用もないということでございます。
 なお、現在の自衛隊の通信装備の能力から申しますと、例えば海外に出ております自衛艦、船の方の自衛艦でございますが、これとの間では短波あるいは衛星通信等を通じまして十分に交信可能になっておりますし、現実に交信をいたしております。
#36
○上田(利)委員 それならばお聞きをしますけれども、これは国際電気通信条約に基づいておるのでございますけれども、自衛隊法百四条と国際電気通信条約との関係はどうなっていますか、郵政大臣。
#37
○深谷国務大臣 自衛隊法百四条というのは、一定の条件のもとに防衛庁長官が緊急通信確保のために電気通信設備の優先的利用に関して郵政大臣に必要な措置をとることを求めることができる、こうなっているわけであります。これに直接かかわる国際電気通信条約の規定というのは特にございません。
#38
○上田(利)委員 それでは、国際電気通信条約で軍事と人命、これはどららが優先するということになりましょうか、郵政大臣。
#39
○深谷国務大臣 人命に関する通信については、国際電気通信条約第二十五条あるいは第三十六条に規定がございます。他方、軍用無線設備に関しては、同条約第三十八条1において、「連合員は、その陸軍、海軍及び空軍の軍用無線設備について、完全な自由を保有する。」との規定がございます。したがいまして、これらの条文は別のことを規定しているのでございまして、軍事とあるいは人命のいずれが優先するという中身ではございません。
#40
○上田(利)委員 それでは、今郵政大臣からお話がございましたけれども、あくまでも国際電気通信条約は第二十五条、人命の安全あるいはこれに関する電気通信の優先順位ということで、明らかに絶対優先順位ということになっているのです。ただ、軍事のものにつきましても御指摘のように三十八条の中でございます。それは「国防機関の設備」ということの中で「海軍及び空軍の軍用無線設備について、完全な自由を保有する。」とありまして、自衛隊は完全な言うならば海外派兵として行くのかどうなのか、これを外務大臣。それならばわかりますけれどもね。
#41
○柳井政府委員 自衛隊が国際法上軍隊として取り扱われるということは今までいろいろな機会に御答弁申し上げたとおりでございまして、電気通信等の国際条約等におきましてもそのような取り扱いがなされるわけでございます。ただ、このような国際的に見た軍隊の属性ということが認められるということと自衛隊がどのような形で海外に派遣されるかということとは、一応別な問題であろうと思います。
 御承知のとおり、この法案におきましては武力の行使等を伴わない形で自衛隊が平和協力隊の一部として海外に派遣されるということでございまして、そのような場合にもこの電気通信条約に定められたようなことの適用はあるわけでございますが、しかし逆にそれを、適用があるからといって海外派兵になるという関係ではないと思います。
#42
○上田(利)委員 答弁がちぐはぐになってだめなんですけれども、郵政大臣は、国際電気通信条約については人命尊重が優先かどうかと聞きましたら、人命優先ありますと、ちょっとトーンが落ちましたけれども、この条約二十五条によりますと最優先とあるのです。そして、いわゆる軍事にも使えるかということになったら、三十八条で軍事にも使えますと言って、この三十八条は今申しましたように明らかに、「連合員は、その陸軍、海軍及び空軍の軍用無線設備について、完全な自由を保有する。」といういわゆる三十八条の第一号、これは郵政大臣が答弁しました。こういうことで使えるということになれば、平和協力隊でなくて明らかに自衛隊は軍隊として、言うならば三十八条の「国防機関の設備」という形の中でこれはやるということになりますね。そうなれば、これは憲法上からいって海外派兵になるでしょう。この通信上からいえば、そういうことに明確になるんじゃないか、こう聞いているのですよ。これをぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言っていてはわからないじゃないですか。そうであるとか、そうでないとか。
#43
○柳井政府委員 端的に申しまして、自衛隊の部隊が平和協力隊に参加いたします場合に、これは平和協力隊の一部になるわけでございますけれども、国際法上軍隊の地位が認められるということでございます。したがいまして、ただいまお読み上げになりました電気通信条約の中でもそのように扱われるわけでございます。しかしながら、それが派兵になるということでは毛頭ないわけでございまして、自衛隊がいかなる形で平和協力隊の一部として海外に派遣されるかというのは、これは今御審議いただいております平和協力法案の規定に従ってなされるわけでございまして、この法案のもとでは武力の行使を伴うような業務は行わないということが非常に明確になっているわけでございます。
#44
○上田(利)委員 そんなあやふやな、しかもごまかしの答弁はないと思うのですよ。一番先に聞いたでしょう、私が。いわゆる自衛隊法に基づいて自衛隊の通信隊は出ないですねと言ったら、自衛隊の通信隊も出ますよと言ったんじゃないですか。そうすれば完全に、この国際条約によっていけば、軍事に使おうとすれば、明らかに、いわゆる国際電気通信条約の三十八条に基づいて、言うならば軍力として、軍隊として、軍備として使うということになるでしょうと聞いているんじゃないですか。それ以外にないでしょう。それはすなわち派兵ではないか。派兵そのものじゃないですか。総理大臣、どうですか。
#45
○柳井政府委員 若干繰り返しになりますけれども、自衛隊が国際法上軍隊として取り扱われる、そのような地位を認められるということと、自衛隊がこの平和協力法案のもとで平和協力隊の一部としてどのような形で海外に派遣されるかということは直接関係ないわけでございまして、あくまでもこの法案のもとにおきましては武力の行使を伴うような、すなわち海外派兵というものには当たらない形で派遣されるものでございます。その点を先ほど来申し上げている次第でございます。
#46
○上田(利)委員 そういう詭弁を使っているから国民にわかりづらくなる。私が直接聞いているのは、通信の分野で聞いているのですよ。人間をどうするとか航空機をどうする、いろいろ論議がありました。きょう時点聞いているのは、通信の分野でどうかを聞いているのですよ。通信の分野では明らかに、武力を行使しません、あるいは威嚇に当たるようなことはしませんといろいろ言って、平和協力隊がどういう形で行くかということを言っておりますけれども、通信上は、これは軍隊とならなければ、いわゆる派遣先、海外でこれは国際条約に基づいてできないでしょうと言っているんだ。だから、平和協力隊はそういう兵力ではない、軍隊ではないということで、平和業務をやるんだということになれば、国際法規上においてはこれは人命救助その他を優先するということだけであって、我が国の自衛隊はこれは使えない、こういうことを言っているのです。行けば軍隊になる、これは前にも言っております。しかし、通信上の問題で言っているのであります。向こうへ行ってみればどうかではなくて、通信はもうどこでも自由にできるわけです。ここだけが通信ということではないのです。だから、国際通信条約上は、必ずこれは、これを使う場合については、もう軍隊でなければできないという第三十八条、国防機関の設備に該当するのじゃないか、こう言っておるのでありまして、総理大臣、最後にもう時間がございませんから、責任ある答弁をお願いしたいと思います。
 そのほかにインマルサットの問題も聞こうと思いましたけれども、これ、そこへ入ればよくもう外務省もわかったと思うのですが、総理、どうぞ。
#47
○海部内閣総理大臣 今、法律の枠の中でどうだという御議論をなさっておったように承りましたが、私どもは、この法律に書いてあるように、武力行使を目的とする派兵なんということは毛頭考えておりませんし、それから戦場の、現に行われておる戦闘の場所に入っていってその中で通信をやるなんということも、これは実施計画の段階でそれが適当かどうかということを十分慎重に判断しますから、そのような派兵に紛らわしいような実施計画というものは、その段階において慎重に対応いたします。我々は、そういったことを想定できにくいわけであります。
#48
○上田(利)委員 総理の答弁も、もう具体的な私の質問に答えておりません。いわゆる実施計画の具体的な問題について出ていないから、きょう聞くということを前提に私は質問しました。したがって、通信の分野におきましては、もし自衛隊が平和協力隊ということでこれを行使することになれば、必ずこれは憲法違反になる。したがって、この法案は撤回すべきであるということを強く求めまして、私の質問を終わります。
#49
○加藤委員長 次に、宇都宮真由美君。
#50
○宇都宮委員 日本社会党の宇都宮真由美でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私の立場といたしましては、当該この国連平和協力法というのは、どのように体裁を繕おうとも実質的には自衛隊の海外派遣を認めるものであり、今までの政府の見解を変えるものであるということ、そして国連の指揮下にない多国籍軍に対しても参加、関与を認めるという点でこれは集団的自衛権の行使を認めるものであるということ、この点も今までの見解を変えるものであるということ、この二点におきまして憲法九条に反する違憲の法案であるということ、それから、政策的に見ましたら、アジア諸国の感情あるいは国民の合意が得られていない、この二点から反対をいたします。そして、この法律の重要な点は、自衛隊の海外派遣を認めるということに本質があると思いますので、この点に私たちが同意できない以上、この法案は廃案にするしかない、そのような立場に立って質問をさせていただきます。
 まず、私は、平和協力隊員は四種の隊員から成ると思うのですけれども、その一つ一つについてお尋ねしたいと思います。
 まず、平和協力隊員というのは、十九条が定めます志望者から選考されて期間を定めて採用される平和協力隊員、それから二十条に定めます関係行政機関より期間を定めて個々に派遣される平和協力隊員、二十一条に定めます海上保安庁より船舶とともに期間を定めて派遣される平和協力隊員、それから二十二条の自衛隊より部隊及び機関を含めて組織として期間を定めて派遣される平和協力隊員、この四種類から成ると考えますけれども、この点間違いございませんね。
#51
○中山国務大臣 お説のとおりであります。
#52
○宇都宮委員 間違いないということですので……。
 まず、この十九条の志望者から採用される平和協力隊員なんですけれども、これが当初海部総理がお考えになっていた平和協力隊の理想といいますか、そういうのに当たるのじゃないかと思うのですけれども、これは具体的な青写真としましては、こういう志望者から選んだ民間の平和協力隊員というのは、どういう業務に対してどういう形で、例えば人数ですね、どういう業務につけさせようとお考えなのでしょうか。
#53
○赤尾政府委員 まず第十九条の選考による採用でございますけれども、今先生が言われましたとおり、基本的に民間の方が中心になるかと思いますけれども、それ以外に地方公務員の方あるいは国家公務員でこの二十条、二十一条、二十二条によらないで自分で志願して入ってこられる方等が対象になります。
 それで、どういう業務につくかということにつきましては、もともとどういう方が入ってこられるかによると思いますけれども、この第三条の二号に書いてあります、例えばお医者さんあるいは医療関係の方であれば医療活動でありますとか、あるいはもしも通信関係に従事しておられる方であれば通信でありますとか、民間の方の場合ですね、あるいは自動車等の修理を行われる方であれば車両の整備とか、それぞれその専門分野等に応じて配置されるということになると思います。
#54
○宇都宮委員 先ほど関係行政機関等からの公員の場合も十九条で採用される場合があるといことなんですけれども、その場合はもとの公務員というのはやめるわけですか。
#55
○赤尾政府委員 十九条に基づく選考の採用の場合には、もとの職場をやめて入っていただくということが原則だと思います。
#56
○宇都宮委員 この民間の……
#57
○加藤委員長 宇都宮君に申し上げます。発言の際には委員長の許可をとってください。
#58
○宇都宮委員 はい。この民間の平和協力隊員だけで部隊といいますかそういう団体を組んで何か業務につくということもあるんでしょうか。その場合の指揮命令関係というのはどういうふうになるんでしょうか。
#59
○赤尾政府委員 お答えいたします。
 例えば十九条に基づく選考採用の場合に、地方公務員の、地方公共団体の方が例えば選挙監視要員として参加される場合が想定されます。選挙監視団、これは国連の行う平和維持活動の一環としての選挙監視団にグループとして参加されるということで、これは国連の選挙監視のもとで参加されるということになるわけでございます。
#60
○宇都宮委員 そうしましたら、十九条で参加する場合には、常に国連のもと、国連の指揮下に入ってその指揮を仰ぐ、そういう形でいいわけでしょうか。
#61
○赤尾政府委員 私は、ただいま国連の平和維持活動の一環としての選挙監視団のことを例示いたしましたけれども、それ以外の民間からの参加のあり方といたしましては、例えば今サウジアラビアに医療チームを派遣しておりますけれども、看護士さん、看護婦さんのように、例えばこの法律があれば、この法律の十九条に基づく選考採用的な形で民間から参加されるということになりますので、必ずしも国連の平和維持活動だけとは限りません。
#62
○宇都宮委員 そうしましたら、この場合の平和協力隊員の場合は、最終的には内閣総理大臣が最高指揮権者だということなんですけれども、具体的にはどういう指揮系統になるのでしょうか。国連のもとに入らない場合です。
#63
○加藤委員長 局長、語尾がはっきりしませんから、しっかり答弁してください。
#64
○赤尾政府委員 はい。平和協力隊員は、本部長の指揮監督下で活動するということになっております。
#65
○宇都宮委員 それはわかっているんですけれども、具体的な本部長の指揮がそうしたら直接にはどこにおろされるのか、それをお聞きしたいのですけれども。
#66
○赤尾政府委員 チームを編成して海外に派遣いたします場合は、そのチームの団長でありますとかチームリーダーを定めて、その方にある程度の裁量の余地を与えるということになります。
#67
○宇都宮委員 じゃ、十九条の場合には、そうしたら本部長である内閣総理大臣の指揮がそのチームを組んだ平和協力隊員のチームの団長みたいな人におろされる、直接には。そうお聞きしていいんですか。
#68
○赤尾政府委員 これは十九条に必ずしも限らず、一般的にそのように機能することが想定されております。
#69
○宇都宮委員 そしてこれから、この十九条のこういう形の、平和協力隊員という名前は別にしましても、こういう形で選挙監視等に一般の民間人を派遣するということは、この法案がなくても、現在の法制度のもとでもできますね。
#70
○赤尾政府委員 現在の制度のもとで、例えばナミビアですとかニカラグアへの選挙監視に参加したことがございます。
#71
○宇都宮委員 次に、二十条の関係行政機関からの派遣される平和協力隊についてお尋ねいたします。
 これもやはり選挙監視とか今までにやっていました停戦監視とかに携わると思うのですけれども、この場合の派遣された平和協力隊員というのは、もとの関係行政機関の指揮系統から全く外れちゃうわけですね。
#72
○赤尾政府委員 関係行政機関から平和協力隊に参加される方につきましては、身分は第二十条の三項に書いてありますように双方の身分を兼ねるわけでございますけれども、この平和協力隊が行う平和協力業務に従事している間、本部長の指揮監督下に置かれるということでございます。
#73
○宇都宮委員 その場合は、派遣されるという意味は、休職・出向という形になるのですか、それとももとのを辞職して平和協力隊員の方に入る、そしてその任務が終わればもとに戻る、どういう形になるのですか。
#74
○赤尾政府委員 二十条の場合には休職・出向ではなくて、もとの身分を持ったまま平和協力隊員の官職をも兼ねるということでございます。したがって、任務を終わりましたら、またもとへ戻る、だから平和協力隊員の方の兼務は解かれるということでございます。それゆえに期間を定めて協力隊に派遣するというふうに規定してございます。
#75
○宇都宮委員 じゃ、もとの身分はあるけれども、平和協力業務に従事するときはそちらの方が優先的にその指揮系統というか適用される、そういうことなんですか。
#76
○赤尾政府委員 平和協力隊に参加して平和協力業務に従事している際には、本部長の指揮監督に服するということでございます。
#77
○宇都宮委員 この関係行政機関から海外に選挙監視等で派遣するということも、現行法のもとで可能でございますね。
#78
○赤尾政府委員 可能でございます。
#79
○宇都宮委員 それから二十一条の海上保安庁からの派遣なんですけれども、これも人を派遣する場合は、海上保安庁は運輸省の一般公務員ということですので、現行法のもとでもできますよね。
#80
○丹羽政府委員 お答え申し上げます。
 この法案上の法律論といたしましては、二十条を使う派遣ということもその可能性としては否定されてないと思います。ただ、私どもの方は、実質的に二十一条の方で船舶と、「海上保安庁の船舶」と一緒になって派遣されるということを実質的に考えております。
#81
○宇都宮委員 船舶とともにということなんですけれども、船舶を例えばこの法案でいいますと二十五条ですか、「管理換え」というのがあるのですけれども、現行法のもとでそういう形で海上保安庁の船を海外に派遣するということはできないのですか。
#82
○丹羽政府委員 あくまでも理論上のお話としましては、そのようなこともあるいは可能かと思います。
 ただ、私どもがその二十一条という規定で派遣されると申し上げましたのは、私たちの現在の仕事の中で一番似通った仕事を現地でできることを考えたわけでございます。そういたしますと、当然その巡視船には、二十一条で考えています仕事というのは基本的には被災民の海難救助ということでございますから、そのためには巡視船もそれなりの設備は整えておりますし、また、それの乗組員はそういうことの訓練をしっかりやって熟練した乗組員でございますから、船舶と一体となって行く場合が一番お役に立つということを考えたわけでございます。
#83
○宇都宮委員 理論上は現行法のもとでも可能ということは、工夫をすれば現行法のもとで海上保安庁の職員を船舶とともに海外に派遣してこういう救助に当たるということはできる、そういうふうにお考えなわけですか。
#84
○丹羽政府委員 まず、現行法の中に私どもの海上保安庁法という法律がございます。この海上保安庁法によりますれば、海難救助ということの海域がどこまでかということを特に制限しているわけじゃございませんので、私たちが海上保安庁法そのもので日本の例えば領海外の活動も現にいたしているわけでございます。
 ただ、私たちの実際の仕事のやり方としては、基本的には我が国の周辺海域ということを中心に仕事をするのが当然でございますので、この平和協力隊法で行くべき海域というのがどこになるかというのはこれからの問題でございますけれども、今現在の私どもがいろいろ仕事をしている海域より離れる場合もあるいはあるかと思いましたので、その場合は法律上はっきりした明定の条文があった方が当然私たちの仕事もはっきりしていいのではないか、こう考えております。
#85
○宇都宮委員 一応、海上保安庁法には船を派遣する場所というのは限定されてないということでしたので法的には可能である、そういうふうにお聞きしたいと思います。
 そうなりますと、だれを派遣するかという問題につきましては、要するにこの法律が目的としているところは、自衛隊員あるいは自衛隊の部隊を派遣するというところにこの法律の目的があるということになると思います。まさにこの法案の最大の問題点は、この二十二条で自衛隊の参加を認めている点、この点にあると思います。特に派遣に対して反対する運動が盛り上がっている事実、特に女性たちが怒りを持って反対している点もこの点にあります。自衛隊を派遣するかどうか、この点に議論が現在集中されておりまして、本当の意味で国連に対して日本が今後いかなる協力をすべきかという点にまで議論が入っていっておりません。もう入り口のところで議論がとまっているような気がして非常に残念に思います。本当に日本が国連に対していかなる協力をすべきかということを議論するためには、まずこの自衛隊の派遣をやめて、そして自衛隊は派遣しないということを大前提に置いて、そしていかなる協力ができるかということを議論していかなければならないと思っております。
 この二十二条なんですけれども、「身分を併せ有する」ということなんですけれども、この場合には両方の身分を有しているわけですから、この派遣された平和協力隊員にも自衛隊法の適用はあるわけですね。
#86
○村田政府委員 先生お尋ねのとおりでございまして、自衛隊法の適用もございます。
#87
○宇都宮委員 そうしましたら、自衛隊法五十七条の上官の指揮命令に従う義務というこの義務も、平和協力隊にもあるわけですね。
#88
○村田政府委員 自衛隊法五十七条だったかと思いますけれども、自衛隊員は防衛庁長官の指揮命令に従うということになろうかと思います。
#89
○宇都宮委員 あるのですね。
 ところで、自衛隊法を見ますと、まず自衛隊の最高指揮者は内閣総理大臣であるということ、その指揮命令が防衛庁長官に下がって、そして防衛庁長官は幕僚長を通じて方面総監等にその指揮命令がおりていく、この関係があるんですけれども、この関係は平和協力隊員についてもあるわけでしょうか。
#90
○柳井政府委員 とりあえず法案との関係について御答弁申し上げます。
 御案内のとおり、法案第二条第三項におきまして「内閣総理大臣は、海外派遣に係る平和協力業務の実施に当たり、平和協力業務実施計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。」というふうに規定されているわけでございます。したがいまして、自衛隊から派遣された者を含めましてすべての平和協力隊員は内閣総理大臣の一元的な指揮監督のもとに活動することになるわけでございます。
#91
○宇都宮委員 私がお聞きしていますのは、自衛隊法に定めてあります、先ほど五十七条の上官の指揮命令に従う義務が平和協力隊員にもあるということでしたので、自衛隊法で定めます総理大臣から防衛庁長官に行って、幕僚長を通じて方面総監に至るその指揮命令関係が平和協力隊員にも適用があるのかないのか、この点をお聞きしたいのです。
#92
○柳井政府委員 防衛庁からも御答弁あると思いますが、とりあえず私の方から御答弁を申し上げます。
 自衛隊が平和協力業務に従事する場合でございますが、平和協力業務は国連平和協力法第三条二号に列挙されているとおりでございまして、自衛隊の行う業務は本部長の指揮のもとに行われる平和協力業務そのものでございます。その場合におきまして、例えば平和協力業務たる輸送の業務に自衛隊の船舶を使用するに当たりましては、当該船舶の操艦、船を操るという意味でございますが、操艦は平和協力業務そのものではございませんで、当該自衛隊の船舶は、通常自衛艦が、船の方の自衛艦でございますが、従うべきものとして防衛庁長官が定めている操艦の規則に従うことになるわけでございます。このことは自衛隊の最高の指揮監督権を有する内閣総理大臣が防衛庁長官を通じて当該自衛隊の船舶の操艦を指揮することにほかならないわけでございます。
#93
○石川国務大臣 ただいま条約局長から詳しく説明されましたが、むしろ私から答えた方がよろしかったかという立場もございますが、もう今繰り返す必要はないと思いますけれども、十分にそれが答弁されております。
 ただ、先生、ここにも書いてございますように、第二十二条によりますと、この平和協力隊法ができますと、いわゆる平和協力隊業務を実施するため必要があると認められたときには、防衛庁長官に対して自衛隊員あるいは自衛隊、これを平和協力業務に参加させるよう要請することができる、この要請を受けて防衛庁長官として、部隊に所属する自衛隊員を含む部隊を参加させるために派遣するものとする、こういうふうに書いてあるわけでありまして、しかも第三項によりましては、この期間中は自衛隊の隊員としかも平和協力隊員というものが身分をあわせ有する、こういうことになっておるわけであります。これが要するにお尋ねの併任ということになるわけであります。しかも四項にはさらに、派遣された平和協力隊員は、平和協力隊が行う平和協力業務に従事し、本部長の指揮監督に服する、こういうふうになっておるわけでございますので、いわゆる自衛隊法としてはそういう総理、長官さらに幕僚長を通じての指揮命令系統がございますが、一たび平和協力隊の中に参加した場合にはこの法律によって指揮命令は一元化される、こういうことでございます。
#94
○宇都宮委員 そうしますと、平和協力隊に入っている間は、平和協力隊の業務を遂行している間は自衛隊法の適用よりもこの平和協力隊の適用の方が優先する、つまりこの平和協力隊の本部長たる内閣総理大臣の指揮の方が優先する、自衛隊の方は後ろに引っ込んじゃう、そのように解していいのですか。
#95
○日吉政府委員 繰り返しになりますけれども、もう一度申し上げさせていただきたいと思います。
 自衛隊が平和協力業務に従事いたします場合は、自衛隊の行う平和協力業務は本部長たる内閣総理大臣の指揮のもとに一元的に行われることになっております。それから、自衛隊法第百条の六の規定によりまして平和協力隊が行います平和協力業務に参加する自衛隊員は、平和協力法第二十二条第四項の規定によりまして、平和協力業務に従事し、本部長たる内閣総理大臣の指揮監督に服することになっております。また、第二条第三項の規定によりまして、内閣総理大臣は、平和協力業務の実施に当たり、内閣を代表して行政各部を指揮監督することとなっております。
 したがいまして、指揮権の一元化が図られているということになりますが、このことをもちまして委員ただいまのように、平和協力法に基づきます指揮命令系統が優先するのかということをお尋ねでございましたが、優先するという言葉が適当かどうかは別としまして、そういう意味におきましてそういうことを優先するというふうに表現するとすれば、優先するということが言えると思います。
#96
○宇都宮委員 要するに、この自衛隊員の場合は身分を併任するということですので、以前の御答弁にも出てきたと思うのですけれども、表は自衛隊員、裏は平和協力隊員、表裏一体となって一元化しているんだ、それに似たような表現があったと思うのですけれども、要するに二つの指揮命令系統があるわけですよね、身分が二つあるということは。それが平和協力隊員である以上は、そうしますと、優先するということは、その平和協力隊員という身分を有する期間だけは平和協力法が適用される、自衛隊法は適用されないと考えていいのですか。
#97
○石川国務大臣 この国際連合平和協力法案の中にもちゃんとこれは明記されていると思います。要するに、先ほど来官房長も申されましたように、自衛隊あるいは部隊あるいは隊員がこの法律によって平和協力隊としての中に参加した場合には、身分は、これは確かに平和協力隊員あるいは自衛隊員、このあわせ有することは事実でありますけれども、しかし、その中に入ってその仕事をした場合、仕事をする場合ですね、その場合には、要するに本部長たるもとに命令が一元化される、こういうことが明記されているわけでありますから、そういう意味で考えれば、決してその中身は、身分が二つあるから命令系統が二つある、こういうことでは絶対ない、かように私は理解をし、それをひとつ先生も御理解をいただきたい、かように思います。
#98
○宇都宮委員 そうしますと、自衛隊法の八条の防衛庁長官の指揮監督権ですね、幕僚長を通じて行うというところの八条、九条は平和協力隊には適用ないと考えていいわけですか。
#99
○海部内閣総理大臣 何度もお答えしておりますが、平和協力隊の方へ入ってもらったときは、これは平和協力隊本部長の指揮権に一元化をいたします。そうして、武器の問題等についてもいろいろありましたが、例えば自衛隊法の八十七条については、これは包括的な規定を定めてありますが、しかし、こちらの……(「八十七条関係ないよ」と呼ぶ者あり)関係ありますよ。平和協力法案の二条では、武力の行使、武力の威嚇はしないとここで書いてありますから、こちらに入ってもらうわけでありますので、それは協力隊法が優先し、協力隊の指揮に従ってもらいます。そうして、入ってもらった自衛隊員についても、行き先によって護身用の武器が必要だと認めるときは特に貸与を認めるということもこの平和協力法案に書いてあるわけでありますから、指揮はそちらで一元化されておりますので、そのようになっております。(発言する者あり)
#100
○加藤委員長 委員が質疑を続けておりますから、御静粛に願います。
#101
○宇都宮委員 簡単に、自衛隊法の八条、九条が平和協力隊員に適用あるかどうか、この点をお聞きしているのです。
#102
○日吉政府委員 平和協力業務と関連いたしまして、例えば輸送業務に携わったりいたします場合には自衛艦という艦艇を使います。そういたしますと、ある物をあるところからあるところに運ぶという業務そのものは平和協力業務でございますから、これは完全に本部長たる内閣総理大臣の指揮のもとになされるわけでございますが、その際に、操艦、船を操る、この場合には自衛艦という艦艇を操るということになります。これは国際法上も軍艦というように認められておりますので、そういうような意味では、一般の船舶等の運航に関するのとは違います、別の法律体系の防衛庁長官が定めました規則等がございますので、それに基づいて行うということがございますが、これそのものは平和協力業務そのものではございませんで、したがいまして、平和協力業務につきましては完全に一元化されております。
#103
○宇都宮委員 今お聞きしていますと、日本から海外に自衛隊の船を出して物を運ぶ、そのことに関しては平和協力業務であり、平和協力法の適用を受ける、ただ、船を操艦する、操る分については自衛隊の業務であり、自衛隊の方の指揮命令を仰ぐ、そういうふうに聞こえたんですけれども、そういうふうに分けるんですか、一つの業務を。操艦も、船を操ることも物を運ぶための手段であって、その場合は物を運ぶという平和協力業務をやっていると思うのですけれども、その間も分けるのですか。
#104
○日吉政府委員 平和協力業務といいます場合には、まさに私が申し上げましたように、ある物をあるところからあるところに運ぶというようなことでございまして、これそのものは第三条第二号に列挙されておりまして、この自衛隊の行う業務はまさに平和協力業務でございますから、本部長の指揮のもとに行われるわけでございます。
 しかしながらその場合に、例えば平和協力業務たる輸送の業務に自衛隊の船舶を使用するというようなことになりますと、その船舶の操艦、船を操ることでございますが、これは平和協力業務そのものではありませんで、事実行為といたしまして不可分のものではございますけれども、平和協力業務そのものではございません。したがいまして、自衛隊の船舶は、通常自衛艦という艦艇が従うべきものとして防衛庁長官が定めている操艦の規則に従うということになります。ただし、この場合にも自衛隊の最高の指揮監督権を有されますのは内閣総理大臣でございまして、その内閣総理大臣の指揮のもとに防衛庁長官を通じて当該自衛隊の船舶の操艦が行われているわけでございまして、いずれにしましても指揮は一元化されているということでございます。
#105
○宇都宮委員 一元化されているとは思えないのですけれども、例えば、じゃ船のかじをどちらに向けるかなんということは運ぶということに、輸送するということで関係あるんですか、それとも船の操艦ということになるんですか。
#106
○日吉政府委員 操艦といいますのは非常に技術的な概念でございまして、ある品物をあるところからあるところで、どういうルートを通ってというようなことは本部長からの指揮を受けましてやるわけでございますが、その中で具体的に、ある場面に遭遇いたしましたときに何ノットで走るとか、ある場合には安全な航路といいますか、航路上右にかじを切るとか左にかじを切るとか、そういうようなことが事細かく規定がされてございますが、これは防衛庁長官が通常の船舶航行安全につきまして決められているのと準じたような形で防衛庁長官が決めているものがございますから、こういうふうな技術的な操艦に関する規定は、防衛庁長官が定めた規定に従って船を操るということでございます。
#107
○宇都宮委員 平和協力隊として自衛隊員あるいは部隊を参加させる場合、ここに言う部隊は自衛隊法八条に言う「部隊」ということなんですけれども、そうしますと部隊というのは方面隊あるいは師団、このようなことを念頭に置いていらっしゃるのでしょうか。
#108
○日吉政府委員 実際の要請がどのようなことになろうかでございますけれども、常識的に考えましてそのような大きな部隊を派遣する要請があろうとは考えられません。したがいまして、ここで言っておりますのは、先ほど国連局長からもお話ありましたように、一般の方が参加されましたときにチームを組成するというような表現があったかと思いますが、そういうふうなたぐいのものと考えていただければと思います。例えば船の場合でございますと、原則的に一艦、一つの船が一部隊、船そのものとそれの乗組員でもって一つの部隊を組成いたしております。そういうふうな部隊というふうにお考えいただければよろしいかと思います。
#109
○宇都宮委員 常識的には云々と申されますけれども、法律上はここの八条の「部隊」ということを使っている以上は、方面隊であってもいいし師団であってもいいわけです、陸軍の場合。ということは、法律的には可能だと、法上は何ら上限の、どんな大きな部隊を派遣するかということについては制限がないと考えていいんじゃないんです
#110
○日吉政府委員 あるいは概念法学的にはそういうような解釈も成り立つのかもしれませんが、百条の六をごらんいただきますと、「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度」というふうにございますので、今委員が御指摘のような方面隊とか師団とかいうようなものはまず考えられないと解釈するのが妥当ではないかと思います。
#111
○宇都宮委員 事実上考えられないということで、法的には可能である、そのように考えます。
 その場合、例えばさっき言われましたけれども、では、例えば陸軍とかの場合だったらどういう形で自衛隊員を派遣しようとお考えなわけですか。――陸上自衛隊、済みません。
#112
○赤尾政府委員 その前に、まず規模の問題でございますが、これは前にもお答えしておりますように、もちろん法律上そういう制限はございませんけれども、派遣の必要性が生じた場合にその都度、平和協力隊の派遣目的でありますとかあるいは活動内容などあらゆる観点から政府部内で慎重な精査を行いまして、閣議で実施計画を決定するわけでございます。その範囲内のものになるわけでございます。その内容は、個別の国連平和維持活動その他の任務の遂行のために必要なものに限られるということでございます。それともう一つは、国連の平和維持活動等への参加の態様を見ておりますと、国連から各国に要請がありまして、特定の国に過大な負担がないように、できるだけいろいろな国に分けて行うというのが通常でございます。
 そのあたりをまず御説明した上で、それでは自衛隊にどのような分野の業務をお願いするかということでございますけれども、この三条の二号に規定してありますような分野のうち、例えば停戦監視でありますとかあるいは輸送、通信、医療活動、戦災、特に紛争終了後の戦災復旧等が考えられるかと思います。
#113
○宇都宮委員 そもそもこの法律自体には、すべてのことにおいて歯どめがないんですよ。それを全部、例えば政令でとかあるいは実施計画によって定めるというところ、その点については何ら国会の関与もなくなされているということで、本当にもう全面的に委任しちゃうという形で、自衛隊を派遣する云々は別にしても、法律として到底賛成できない内容がそのあたりにあると思うのです、一つは。
 そして例えば、もとに戻りますけれども、チームを派遣した場合、そうしたら本部長の指揮というのは、その平和協力隊の派遣された隊に隊長みたいな役割をする人がいると思うのですけれども、そこに直接おろされるということなんです
#114
○赤尾政府委員 海外に派遣されます平和協力隊員に対する指揮はあくまで本部長のもとにございますが、同時に、現地に派遣されますそのチームリーダーあるいは隊長を通じて具体的には指揮されるということになります。
#115
○宇都宮委員 そうしましたら、その本部長と現地のリーダーとの間には幕僚長とか防衛庁長官というのは入らないわけですか。
#116
○赤尾政府委員 平和協力業務に関する限り、そういうことはございません。
#117
○宇都宮委員 そうしましたら、例えば本部長というのは日本にいらっしゃると思うのですけれども、現地に行った隊長というのは一々本部長に相談というか指揮を仰いでしないといけない、そういうことになるんですか。
#118
○赤尾政府委員 もちろん日本を出ます前に十分打ち合わせがございますし、同時に現地におきましても、例えば十八条二項におきまして、「平和協力隊は、外務大臣の指定する在外公館と連絡を保ちつつ平和協力業務を行う」という規定でございますとか、あるいは二十五条におきまして、本部長は関係行政機関の長に対して、「その所管に属する物品の管理換えその他の協力」、「その他の協力を要請することができる。」ということでございまして、例えば、特に通信事情の悪いところ等につきまして、本部長はできるだけ在外公館の協力も仰げということでございまして、極力そのような経路を通じて連絡を密にすると同時に、前にも御説明申し上げましたけれども、何らかの行動指針のようなものに基づいて現地の責任者が判断するということもございます。
#119
○宇都宮委員 そもそもこの平和協力隊が出動する、出るということは、平和が害されているか少なくとも害されそうなところに出かけるわけですから、出かけた以上、その場その場でやらなくちゃいけないことがいっぱいあると思うのですけれども、事前に幾ら計画を立てていてもそれは余り意味をなさない場合があるんではないかと思うのですけれども、そういうのも一々本部長ということになるんですか。
#120
○赤尾政府委員 まず、平和協力隊の実施に関する基本方針、その他海外派遣に関することにつきましては、閣議で決めます実施計画に定めるわけでございますし、状況の変更等がありますときにもまた閣議で変更するわけでございますけれども、同時に、現地の状況が急変するというような場合には、事前に定める行動指針等に基づいて現地の責任者が判断をして行動するということになります。
#121
○宇都宮委員 そうしましたら、そもそもこの平和協力法で自衛隊員と身分を併任する、そのようにした、自衛隊員の身分を有したまま協力隊に加える、しかも、自衛隊の身分を喪失したら協力隊の身分を失う、そのことまで書いているのですけれども、その理由というのはどこにあるんですか。
#122
○赤尾政府委員 自衛隊として自衛隊員が参加してまいりますので、自衛隊員の身分をもともと持っているわけでございますけれども、同時に、この自衛隊を平和協力隊に取り入れて平和協力業務に従事していただくということ、そのために本部長の指揮監督に入れるということから平和協力隊員の身分をあわせ有するということでございます。同時に、今先生が御指摘されました二十二条の六項におきまして、「自衛隊員の身分を失ったときは、同時に平和協力隊員の身分を失うものとする。」と、もともと自衛隊の参加についての規定でございますので、もしも本人が自衛隊の隊員の身分を失えば平和協力隊員の身分もなくなるということでございます。
#123
○宇都宮委員 だから、そこまでして、国民がこれほど反対しているにもかかわらず自衛隊の身分を有したまま平和協力隊に入れるということは、自衛隊の指揮命令系統を残す、その点にあるんじゃないかと思うのですけれども、この点いかがなんですか。
#124
○日吉政府委員 先ほども申し上げましたように、平和協力業務につきましてはまさに本部長たる内閣総理大臣の指揮命令に一元化されているわけでございますので、「身分を併せ有すること」としているのは全くその観点とは違うわけでございます。
 と申しますのは、そもそも国連平和協力法につくられます枠組みの中で平和協力隊員になるわけでございますから、平和協力隊員の身分をまず有さないといけないことは当然でございますが、その際になぜ自衛隊の身分をもあわせ有することとするかという理由でございますけれども、自衛隊の部隊等がこれに参加するということになりました理由は、先般来再三にわたって総理からも御説明がございますように、長年にわたって蓄積しました技能、経験、組織的な機能を活用するということでございます。そういうことになりますと、例えば先ほど私が例を申し上げましたように、自衛隊の参加の典型としましては艦艇、航空機によって輸送するということがあるわけでございますが、自衛隊の艦艇とか航空機を運航するためには自衛隊固有の資格が必要だというような法体系をとっております。こういうような意味からも自衛隊員の身分があわせ有する形をとっておく必要がある、こういうような観点から「併せ有する」ということにしているわけでございます。
 なお、一般に併任というような言葉でよく言われておりますけれども、これは必ずしも正確な表現ではありませんで、私どもは「身分を併せ有する」というような表現をさしていただいております。
#125
○宇都宮委員 そうしますと、この二十二条というのは、二十一条の海上保安庁の方が船と一緒に出る場合と身分関係というのは同じなんですか。
#126
○赤尾政府委員 海上保安庁の職員の方は国家公務員法で言う一般職の方でございますので、これは一種の併任ということになりますが、他方、自衛隊の場合には特別職の方でございますので、特別職たる自衛隊員の身分と一般職である平和協力隊員の身分を二つあわせ有すると、ですから、今、日吉官房長からも御説明いたしましたとおり併任という言葉を使っておりません。私たちは両方の身分をあわせ有する、特別職と一般職との身分をあわせ有するという言葉を使っております。
#127
○宇都宮委員 一般職と特別職が変わるだけで、実体は一緒だということですか。
#128
○赤尾政府委員 これは、国家公務員のいわゆる身分上の言葉といたしましては、二十条あるいは二十一条の海上保安庁の場合には併任という言葉が使われております。他方、特別職と一般職とを兼ねる件につきましては併任類似行為、併任という必ずしもそのものということではなく、併任類似行為というふうに解釈していただくのが適当かと存じます。
#129
○宇都宮委員 じゃ、最後に確認しますけれども、自衛隊が平和協力隊にして行った場合には、その業務が平和協力業務か、あるいは操艦等自衛隊の平和協力業務でないかを分けて、平和協力業務の場合には内閣総理大臣を本部長とする指揮下に一元される、そうでない部分については自衛隊の指揮命令が残る、そういうことなんですか。
#130
○柳井政府委員 先ほど来何度か特に防衛庁の方から御答弁があったと思いますが、また私の方からも御答弁申し上げたとおりでございまして、自衛隊が平和協力業務に従事する場合には本部長の指揮下に行われるということでございます。ただ、その場合におきまして、船を操るというようなことにつきましては、当該自衛隊の船舶は、通常自衛艦が、自衛隊の船が従うべきものとして防衛庁長官が定めている操艦の規則に従うということでございます。このことは、自衛隊の最高の指揮監督権を有する内閣総理大臣が防衛庁長官を通じて当該自衛隊の船舶の操艦を指揮するということでございます。
 なお、海上保安庁につきましても、本部長の指揮下に置かれるという点は同じでございます。
#131
○宇都宮委員 要するに、そのしている業務が平和協力業務であるかないかで分けるんでしょう。
#132
○柳井政府委員 平和協力隊に参加していただくのは、当然これは平和協力業務をやっていただくために参加していただくわけでございます。したがいまして、それに関する指揮権というのは内閣総理大臣がお持ちになる、本部長の指揮下に置かれるということでございます。
#133
○宇都宮委員 では、船を操艦するということは平和協力業務なんですか、違うんですか。
#134
○柳井政府委員 この点は先ほど防衛庁の官房長の方から御答弁があったとおりでございまして、事故を避けるとかあるいは具体的な航路においてどのようなかじを取るというようなことにつきましては、これは通常自衛艦が、自衛隊の船が従うべき規則に従うということでございます。ただ、平和協力業務、すなわちどこに何を運ぶかあるいはどういう時期に運ぶかというような業務は、これは平和協力業務そのものでございますから、この点につきましては本部長の指揮に従うということでございます。
 なお、その操艦につきましても、繰り返しになりますけれども、これは自衛隊の最高の指揮監督権を持っておられるのは内閣総理大臣でございます。したがいまして、その点につきましては防衛庁長官を通じて内閣総理大臣が指揮監督をされるということでございます。
#135
○宇都宮委員 ちょっと操艦が平和協力業務かどうかわからなかったのですけれども、要するに操艦に関しては残るわけでしょう。残るか残らない
#136
○柳井政府委員 先ほど来何度か御答弁申し上げておりますとおり、その操艦に関する規則というものは防衛庁長官が定めておられるわけでございまして、本部長がどういう場合に面かじを取るとか取りかじを取るとか、そこまで指示をされることはないと思いますが、これは自衛隊の方の規則に従うということでございます。それで、それは防衛庁長官の定められた規則ではございますけれども、そういう問題に関しても自衛隊の最高指揮権は内閣総理大臣にある、それでそれが防衛庁長官を通じて発揮される、こういう関係でございます。
#137
○宇都宮委員 そうしましたら、操艦に関しては幕僚長とか、そういうのを通してやはり防衛庁長官が指揮監督してやるということになるんです
#138
○日吉政府委員 それは委員お尋ねのとおりでございますが、何度も繰り返しになりますが、そのことそのものは平和協力業務ではないということでございます。
#139
○宇都宮委員 操艦が平和協力業務でないということなんですか。
#140
○日吉政府委員 事実上一体化している行為ではありますけれども、操艦そのものは平和協力業務そのものではございません。
#141
○宇都宮委員 そうしましたら次に、自衛隊を派遣した場合、自衛隊と一般の、例えば十九条、二十条、二十一条――二十一条はないかな、十九条、二十条と混成部隊ということはお考えです
#142
○赤尾政府委員 これはその業務内容いかんでございますが、業務によってはそういうこともあり得るわけでございます。
#143
○宇都宮委員 そうしましたら、例えば自衛隊の部隊に入れるということですか、それともその場合には部隊を派遣した場合はしないということですか、自衛隊員と。
#144
○赤尾政府委員 どのような部隊が参加されるか必ずしも定かではありませんが、例えば船、艦船あるいは航空機による輸送のような場合には、もう自衛隊だけの単独の部隊だと存じます。他方、医療活動などに参加されます場合には、これは部隊というよりは自衛隊の医官、看護士さんたち、それで民間あるいは国立の病院等からのお医者さん、看護婦さん等が一緒になって行っていただくという可能性が強いかと存じます。
#145
○宇都宮委員 混成部隊の場合にも、やはり自衛隊の指揮命令関係は残るわけですよね。
#146
○柳井政府委員 それは先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、そのような部隊に対する指揮監督というのは本部長が持っておられるわけでございますから、本部長の指揮のもとに統一されるということでございます。
#147
○宇都宮委員 要するに、自衛隊が派遣された場合には自衛隊の方の自衛隊法の指揮命令のあれが残る、業務によって、それが平和協力業務であるかどうかによって区別するかのような御答弁いただきましたけれども、実際上はどこからどこまでが平和協力業務でどこからどこまでがそうじゃないということは区別できないと思いますので、要するに自衛隊法の適用が残るということ、したがいまして、この法律というのは、平和協力隊と名をかえましても、自衛隊の派遣そのものであるというふうな感じを持ちました。
 そういうことで、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#148
○加藤委員長 これにて上田君、宇都宮君の質疑は終了いたしました。
 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十九分休憩
     ────◇─────
    午後一時開議
#149
○加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。自見庄三郎君。
#150
○自見委員 最初に、我々の大先輩でございます愛知二区選出の丹羽兵助代議士、前労働大臣でございますけれども、大変痛ましいことでございまして、十月の二十一日の日に、自衛隊の記念日に愛知県に行かれたとき、精神病院入院中の無職の男性に襲われたということでございました。十一月の二日の日に御他界をされたということでございます。
 当選十二回、我々本当に議会人としての大先輩でございました。
 私ごとで大変恐縮でございますけれども、五十八年初回当選をさせていただいた後、いわゆる米価をめぐりまして米議員の大先輩として、本当に政治家としてのいろいろな御指導をいただいたわけでございます。私自身も本当に、私のような若輩者でも胸が痛む思いでございますが、海部俊樹総理は同じ愛知県の御選出でもございまして、長い間政治行動をともにされた大先輩でございます。新聞報道によりますと、海部総理は丹羽兵助代議士のお見舞いにも行かれたし、またお悔やみにも行かれたというふうな報道を見たわけでございますけれども、海部俊樹総理に、このことにつきましてコメントがございましたらいただきたいと思うわけでございます。
#151
○海部内閣総理大臣 御指摘いただいたように、私も初当選のとき以来三十年間、郷土の、選挙区はお隣同士でございますし、議員会館もお隣同士でずっと御指導願ってきた人生の先輩でもございましたし、何かとお世話をいただきました。
 個人的なことを申し上げてお許しいただければ、ちょうど私が結婚しますときにお仲人代理として務めていただいたお方でもあり、いろいろ思い出が多い方でした。心から御冥福をお祈りさせていただきます。ただ、あのような形の不慮の死でございましたから、志半ばで逝かれたその心中をお察しすると、本当に胸が痛みます。
 同時に、あの犯人は数年前、私の選挙カーに鉄パイプを持って殴りかかってきて大騒動になって取り押さえたことがございます。間もなく、今度は春日一幸先生だったと思いますが、宣伝車に鉄パイプを持って殴りかかって襲っていった、そのたびごとに何か精神に異常があるからこれは罪にはならないというので釈放されておった方だと聞いております。ああいった突発的なとっさの事故で、しかも人の命が奪われるということになりまと、私はそれでいいのかなという疑問を感ずるのですか、基本的人権の問題もあり、同時に社会、公共の問題もございます。いろいろな面で、これは担当の当局において、今回の件が再発されていかないように、丹羽先生の不慮の死を無にしないように、そういったことも十分考えてほしいなということを私は率直に今感じております。
#152
○自見委員 今総理の言葉の中にも担当当局ということがあったわけでございます。きょうは厚生大臣もおいででございますから、このことについて、精神障害者の方につきまして、一昨年でございますか、精神保健法という法律を新たにつくらしていただきました。こういった障害を持っておられる方の、同時に人権あるいは社会復帰だ、こういったことでも法律の改正をさせていただいたわけでございます。こういったときに、本当に総理が申されましたように痛ましい事故が起きたわけでございます。
 このことについて一点と、また新聞報道でしか私は知りませんが、血液型の違う輸血をしたということでございました。何と申しましても厚生行政、医療行政というのは、医療というのは基本的にやはり国民の方々から信頼をされる、信用をされるということが大事でございますから、このことにつきまして厚生大臣としての御所見がございましたらお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
#153
○津島国務大臣 丹羽先生は、私どもにとっても大変御指導を賜った大先輩でありまして、今回の事件は本当に心の痛む思いでございます。温厚なお人柄により多くの方々から慕われておられた方が、こういうことで志半ばにして他界をされたということをまことに残念に思う次第でございます。
 今回の事件でございますけれども、精神保健法によりましていわるゆ措置入院をさせられておられた方が加害者になったわけでございまして、今総理が言われましたように、措置入院と申しますのは、自傷他害、自分を損じたり周りの方に害を加えたりする可能性があるということで知事が専門医の判断で決定をする措置でございまして、そういう方が不幸にして病院の外に出て再びこういうことを起こしたということをまことに残念に思っております。
 昭和六十三年に精神保健法の改正を行いましたが、これは精神障害者の方の人権の擁護とそれからその社会復帰の促進を目的とするものでございましたが、しかし、こういう精神障害の方々がみずから回復して社会復帰をするということと同時に、やはり社会、公共の利益を損なわないという要請があることは当然のことでございます。
 そこで、今回の事件については、自傷他害のおそれのある措置入院患者が、結果として病院外に外出していたことがなぜ起こったのか、厚生省といたしましても愛知県と合同で、加害者が入院をしておられた病院に立入検査を行っておりまして、主治医の判断や病院の管理体制に問題がなかったかなどの検討を行っているところでありまして、この検討結果を踏まえ、精神保健法に基づき適切な措置を講ずることといたしたいと思います。いずれにしても、こういう不幸な出来事は再びあってはならないということで今取り組まさせていただいております。
 なお、丹羽先生が違う型の血液が輸血されていたという報道でございます。丹羽議員の診療に当たった病院において不適合輸血か行われたということが事実のようでございまして、医療に対する国民の信頼を失わせることにつながる事態として深刻に受けとめております。
 もっとも、当日病院に担ぎ込まれた丹羽先生の状態は大変危篤状態でございまして、心臓がとまっており、早急に輸血をする必要がある中で、実は私も調べてみますと、「国会便覧」にも先生の血液型B型と書かれておるわけでございまして、そういうようなことで、ある種公知の事実のようなことでB型の輸血が行われたんではないかというふうに思っておりますけれども、しかし、いずれにしても救急医療の際に輸血療法が適正に行われるように、昨年九月に輸血療法のガイドラインを、厚生省といたしまして都道府県を通じて医療機関に周知徹底を図ったところでございました。
 そういうことからも申しまして、今回の事例については、極めて緊急の事態であったといたしましても、やはり問題があるのではないか。その事実関係をよく調査いたしました上で、二度とこういった事態が生ずることのないよう、輸血に際しての血液型検査の励行についての指導の徹底を図ってまいりたいと思っております。
#154
○自見委員 わかりました。いずれにいたしましても、大変痛ましい事故でございました。戦後、私お聞きするところによりますと、浅沼稲次郎元社会党の委員長さんですね、それから丹羽兵助代議士、現職の国会議員で二人目だという新聞報道も読んだわけでございます。そういったことを踏まえて本当に善処をお願いをしたい、こう思うわけでございます。
 それでは次に、実は御存じのように、昨日行われました愛知県の参議院のいわゆる選挙区の補欠選挙の結果でございますけれども、自由民主党の大島候補が八十三万票の票で、社会党あるいは共産党の候補を破りおかげさまで当選をさせていただいたということでございました。総理は御出身でもございまして、二回ほど応援に行かれたということをお聞きしたわけでございまして、総理初め幹事長も数度行かれましたし、のみならず本当に自由民主党の党員、私も実は先週行かせていただきました。全員、この委員会の方も国対の方も、実は本当に総力戦で愛知県の方に行かせていただいた結果でございます。選挙をした結果でございますから、私はもう大変厳粛なものだろうというふうに思っております。
 言うまでもなく、今度の選挙戦ですね、国連平和協力法が最大の争点となっていたわけでございまして、各新聞社あるいはマスコミ関係の調査でも、愛知県で実際やった調査でも、一番の大きな争点は何かという質問に対して国連平和協力法だと、こういった結果が出ていたというふうに私思うわけでございます。この結果、選挙でございますから、いろいろな御意見はあると思うわけでございます。自由民主党の大島候補は八十三万票でございまして、社会党、共産党の方も七十九万票、二十一万票という票でございます。私は、特にいろいろな御意見があってしかるべきだ、自由主義の社会ですからしかるべきだと思うわけでございますけれども、この大島候補のとられた八十三万票という票は、投票率が三八・七%とすれば、絶対数としては大変多い数字ではないか、こう私は思うわけでございます。
 ちなみに第十五回の、昨年の七月の選挙でございますけれども、これは候補者が多いということもございますが、投票率が六二・七五%、大変高い投票率でございますね、このときに自民党の候補がいただいた票よりも、当時は七十万票でございますから、今度は八十三万票、投票率が下がった割には十三万票ふえたということでございますから、私は、まさに堂々たる国民の御審判をいただいたというふうに思うわけでございます。そういったことでございますし、これはひとつ与野党本当に総力を挙げて愛知県の方々に御審判をいただいたという結果でございます。
 私は、このことにつきまして総理にコメントをいただきたいということは申しませんけれども、ひとつ全力を挙げて、これはまさに郷土の人が、日本人の方がこの国連平和協力法の、総理初め皆さん方の努力でだんだんだんだん国民にこういう法律かということも知れ渡ってきたと思うと同時に、やはり国際国家日本がここまでになって、やはり従来の惰性と申しますか考え、確かに考えを変更するときはだれでも一種の恐怖感がございます。しり込みがございます。しかし、それを越えて、やはりこれほど大きくなった日本国でございますから、何か国際貢献をせねばならないということについては、大変厳粛な国民の判断が私は投票結果からあったのではないか、こういうふうに思うわけでございますから、総理といたしましても、ひとつ全力を挙げてこの法律の成立に使命感と情熱と責任感を持ってやっていただきたい、こういうふうに私は強くお願いをさせていただく次第でございます。
 それから、次の質問でございますが、新聞報道によりますと、中曽根元総理と我が自由民主党の佐藤孝行団長ら八人の我が同志、先輩でございますけれども、自民党議員団がイラクを訪問中でございます。新聞報道によりますと、中曽根元総理は昨日フセイン大統領とも会談をした、三時間半にわたる会談だというふうに新聞報道は伝えておりますが、きょう、各紙、各新聞いろいろ報道があるわけでございます。必ずしも報道が一致をしていないようでもございます。いろいろまだ情報等々、ましてやこれは政府の正式な派遣というわけではございませんけれども、しかし、国民が大変関心があるところでもございますので、その会議の内容、特に日本人の人質問題について前進があったかどうか、これが一番国民の知りたいところでもございます。
 しかしながら、同時にこれはほかの国々にも人質がとられておるわけでございまして、何も、こういった国連決議を守ろうという厳粛な、ある意味で厳しい選択の中で日本だけがまた抜け駆けをするというわけにもいかないわけでございまして、そういった大変苦渋に満ちた選択があるというのはよくわかるわけでございますけれども、まず外務省の方に、この会議につきまして、ひとつこの会議の内容あるいは特に日本人の人質問題について前進があったかどうかということを、政府の立場で答えられることというのは、今申し上げましたように、今の段階では非常に制限があるのかと、こう思うわけでございますけれども、国民の大変知りたがっている、大変重要なことでもございますので、ひとつ外務省の方からお答えをいただきたいと思います。
#155
○中山国務大臣 中曽根元総理は、政治家としての立場でこのイラクの今回のクウェート侵攻に対する反省を求めると申しますか、クウェートからの撤退、人質の解放について毅然たる態度で交渉をやっていただいておるというふうに報告を受けておりますが、細部にわたりましては政府委員からお答えをさせていただきたいと思います。
#156
○渡辺(允)政府委員 私どもが今まで承っておりますところでは、中曽根元総理は、今回の湾岸危機の平和的な解決につきまして、国連安保理決議の実行、それから武力衝突を避けて平和的解決であるべきこと、それからすべての外国人の人質の速やかな解放というような基本的なお立場で対応をしておられるようでございます。今まで伺っておりますところでは、具体的に日本人のいわゆる人質の方についてまだお話は出ておらないようでございます。
    〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
#157
○自見委員 それで、きょう各新聞紙を読み合わせますと、言っていることがいろいろ違うところもあるのですが、二カ国以上の国が武力行使はしない、これも一カ国は安保理事会の国あるいはもう一カ国は日本かドイツか、こういう条件らしきことが載っているわけでございます。これはアメリカ軍に武力行使をさせないというのを保証するのか、あるいはこの国、当事者が武力行使をしないというのか、その辺が、新聞でも各紙違いますのではっきりよくわからないわけでございますけれども、武力行使ということになれば、我が日本国は、言うまでもなく、憲法の範囲でも、また今度は国連平和協力法でも、総理御存じのように武力による行使及び威嚇は一切やらないと書いてあるわけでございますから、まさにそのままのとおりでございますからね。
 しかし、そこら辺は今さっき申しましたように大変微妙な問題があると思いますし、御存じのように、ブラントさん、前のドイツの首相でございますけれども、この人も行かれるというような記事があるわけでございますけれども、ECあるいはEC諸国は、ローマで開かれた首脳・外相会議で、人質解放のための独自の交渉、工作はしないことで合意した、こういう状況も当然あるわけでございます。国際的な正義を貫くためには、当然国連の加盟国それぞれの国が抱えている苦しみもございます。
 あるいは、必ずしも国民から御理解をいただけない面もあるわけでございますけれども、やはりこれが本当に私は、戦後訪れた正念場だ、こう思うわけでございますから、そういったことを含めて、ひとつ中近東アフリカ局長さんに、そういったことをわかればもう一度その内容をお知らせいただきたい。特に、今私が申し上げました武力行使をしない、西ドイツか日本か、あるいは国連安保理事会の国、五つございますが、そのうちの一つだ、こういうことがどの新聞にも一応、報道は違いますが載っております。そのことについて、もし明らかにすることができれば、大事なポイントでございますのでお答えいただければと思います。
#158
○渡辺(允)政府委員 ただいま先生御指摘の点につきましては、先生仰せられましたとおり、必ずしもイラク側の申しておりますことの内容あるいはその真意がはっきりいたさないところもございますので、私どもといたしましてはさらに慎重にこれを見きわめて、対処をいたしていきたいと思っております。
#159
○自見委員 それでは、次の質問に移らさせていただきたい、こう思うわけでございます。
 国際連合平和協力法、私もずっと審議を聞かしていただいて、いろいろな問題点が浮かび上がってきたわけでございますけれども、私はもともと医師でもございますので、きょうは、この平和協力業務の中で医療、防疫を含むという項が第五番目にあるわけでございますけれども、ひとつこのことについて、少し細かいような質問も中にはあるかと思うわけでございますけれども、中東貢献策として最初、御存じのように政府の方は輸送あるいは通信、医療と出したわけでございます。先遣隊も行ったようでございますが、このことを通じて、この国連平和協力法の中身あるいは日本国が今現在置かれている国際状況の中で、この法律がなぜ必要なのかということが国民の皆様方にもわかっていただければ、こう思うことで質問させていただきたい、こう思うわけでございます。
 まず最初でございますけれども、国連平和協力法の中の平和協力業務として医療が挙げられておりますが、医療業務とは具体的にはどんな内容でございますか。大変大ざっぱな質問でございますけれども、外務省の方からお答えをいただきたいと思います。
#160
○赤尾政府委員 この第三条二号ホに掲げてあります医療活動といたしましては、国際の平和と安全の維持のために活動している国連あるいは国連加盟国の要員、国連の平和維持活動等に従事している要員でございますが、あるいは紛争によって被害を受けた住民その他の者に対する医療活動が想定されております。
 なお「防疫活動を含む。」と書いてございまして、これは薬剤の散布ですとか配布あるいは水質検査等も想定されております。
#161
○自見委員 それでは、昭和六十二年でございましたか、国際緊急援助隊法という法律ができました。御存じのように、これは自然災害が発生した場合に、日本国も当然国際的な責務の一つとしてそういった被災国、自然災害が起きた国にこの国際的な緊急救助隊を出させていただこう、こういった趣旨で法律を制定させていただいた、こう思うわけでございます。この中にも医療チームという項目があるわけでございまして、またこれは、私は新聞報道でしか知りませんが、初回は政府の内部でも、この国際緊急援助隊の派遣を考えたらどうかという御意見もあったかに、これは私はあくまで新聞報道でしか知りませんが、そういう話も聞くわけでございます。
 考えといたしましては、この国際緊急援助隊の特に医療チームに働いていただくというのも確かに初期における考えの一つであったのかな、こう思うわけでございます。御存じのように地震、火山の噴火、洪水等各種自然災害、それからコンビナートとか原発の事故等の各種産業災害の被害調査、応急復旧、第二次災害防止に関する技術援助の協力等々ということでございますので、まずこの国際緊急援助隊と今法律に提案をしております平和協力業務の中の医療活動との違い、これをまずお知らせいただきたい。どこが違うのか、具体的に違うのかということをお知らせいただきたいと思います。
#162
○赤尾政府委員 国際緊急援助隊の対象事項は、今先生が言われましたとおり第一条の「目的」に書いてありまして、海外の地域、特に開発途上にある海外の地域において大規模な災害が発生し、またはまさに発生しようとしているような場合に派遣するというふうに書いてございまして、主として自然災害あるいは人為的な災害が中心でございます。
 他方、国連平和協力法に基づく医療活動といいますのは、国際の平和及び安全の維持のために活動している国連の平和維持活動等に従事している要員に対する医療活動、あるいはそのような国際紛争によって被害を受けた住民その他の者に対する医療活動を想定しているということで、この点が違いでございます。
#163
○自見委員 この法律の制定の前に、御存じのように、中東貢献策というのを政府の方で正式に決められたわけでございますから、その話あるいはその話の延長上こういったことをやってみたけれどもなかなかうまくいかない、そういったことも私は、この国連平和協力法の現状をなす中東支援策、中東貢献策ということがあるわけですから、そのことも含めてお聞きをしたい、こう思うわけでございます。
 この国際緊急援助隊は、今局長が言われましたように災害、自然災害が中心だ、発展途上国にこういった大地震だ、あるいは噴火だと起きたときに、日本がまさに人道主義に基づいて先進国のある意味では責務としてお助けに出させていただこう、こういうことだろうと思うわけでございますが、同時に今回の中東の支援策は、まあ八月二日にイラクがクウェートに侵略をすることによって始まったことでございますから、基本的に自然災害とは違うわけでございますけれども、その中で政府といたしましては百人規模の医療団を編成して、とりあえず先遣隊を要するに送り出そうというふうな方針を決められたわけでございます。私は、総理が何回も言っておられますように、戦後四十五年間平和でございましたし、これも確かに日米安保という基本的な骨組み、そして日本国は、私は率直に言うと非常に幸運であった、運がよかったというふうに思うのです。
 私ごとで恐縮でございますが、明治以来の歴史を振り返りまして、大変先人が努力をされたということもございますが、やはり日本は東洋の島国ですね。第二次世界大戦に敗戦をしたわけでございますけれども、ある意味ではその中では、そういった厳しい状況の中では、国際環境、特に周囲の国際環境が大変運がよかったというふうに私は思うわけでございます。
 私、ことしの七月に実は衆議院の法務委員会でキューバという国に行かしていただきました。そのときそこの文化大臣が、日本にも花博で来られた文化大臣でございます。立場、イデオロギーが違いますけれども、長い間話したときに、やはりキューバの歴史、キューバはアメリカの横でございますね。日本の歴史、日本は当然アジアの横でございまして、率直に日本の歴史はキューバの歴史に比べ、自見さん、大変ハッピーだ。我々キューバの歴史は、同じようにアメリカ大陸の横の島でありながら、日本に比べたら大変冷酷で過酷だということを文化大臣が切々と私に話されたことを、立場の違い、イデオロギーの違いがございましても、私はよく理解をできたわけでございますけれども、そういった中で、話は戻りますが、中近東のこの貢献策につきまして、大変皆さん方も御努力をいただいたわけでございます。
 そういった時代の中で、安全保障の問題あるいは国の安全あるいは外交の問題というのは、どちらかというと戦後四十五年、たまに正面玄関に座ることもありましても、どちらかという我が党の中でも、余りこういったことを言いますと先鋭的なイデオロギーの対立になりまして、率直な話で言えば、余り票にもならない。こういった風潮が一部あったのも、私自身の反省を含めて事実だ、こう思うわけでございますけれども、そういった中で法律の整備もされてない、あるいはいろいろなことが、各省庁の連絡機構につきましても、もともとシステムができていませんから非常に苦労をされただろうと思うわけでございます。
 その中で、いわゆる中東の医療団の先遣隊として十七人の方が行かれたわけでございます。そのうちお医者さんが五人でございまして、看護士の方が、あるいは看護婦さんの方が四人、そして調整員の方が行かれているわけでございますが、しかしながら、これに行っていただくために、まあ行った方に大変私は敬意を表する人間でございますが、本当に行っていただける方がおられなかった。特に、その国際緊急援助隊のウェーティングリストですね、そういう方がずっと登録をしておられるわけでございます。そのウェーティングリストに載っておられる方も非常にちゅうちょをされたという話を新聞報道によって知ったわけでございますけれども、まあ、そこら辺の苦労、苦渋というのがございましたら、ひとつ外務省の方からお知らせいただきたい、こう思うわけでございます。
#164
○赤尾政府委員 確かに、今のイラクのクウェート侵攻が起こりまして、八月二十九日に日本の貢献策が発表されまして、その後先遣隊をまず送るということになったわけでございます。準備期間が非常に短いということもありまして、一方において厚生省及び文部省を通じまして、国立病院あるいは大学病院等のお医者さん等を募っていただきますと同時に、民間の方を中心に、特に今先生が言われました国際緊急援助隊の登録の方も参考にしながら、ある程度募集をやったということでございます。
 なお、当時新聞にもいろいろと先遣隊を出す等の話がありましたこともありまして、民間の方から外務省等に直接電話をいただいて照会を受けて関心を表明していただいたということ等もございますので、あわせて御報告させていただきたいと思います。
#165
○自見委員 それでは、この国際緊急援助隊、なかなかそれがうまくいかなかったという話でございました。
 それからもう一点、こういう医療活動といいますと、御存じのようにこれは赤十字でございます。国際赤十字だ、こういうことで、レッドクロスでございまして、この国連平和協力法に言う医療活動、いわゆる国際赤十字活動と申しますか、これとの違いはどこにあるのかということを質問をさせていただきたいと思います。
#166
○赤尾政府委員 国際赤十字の目的は、この定款の第四条に実は任務が書いてございまして、「中立的機関としての資格において、特に戦争、内乱または国内騒擾に際して常にそれらの紛争及び直接の結果による軍人及び文民の犠牲者に対し保護と援助を提供する」ということ、同時に「人道的諸問題において当事者間における仲介者としての役割を務める」というのが国際赤十字委員会の任務でございます。
 なお、国際赤十字の場合には、国連の活動とは独立して行われております。ことしの総会におきまして、国際赤十字委員会は国連のオブザーバーの資格をとりましたけれども、必ずしも活動の前提といたしまして国連決議がある必要はないわけでございます。
 他方、この国連平和協力法のもとで想定されております医療活動は、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議を受けて行われる国連平和維持活動その他の活動に対する協力の一環として行うということで、具体的な業務につきましては先ほど御説明申しましたとおりでございます。
#167
○自見委員 国際赤十字と申しますと、国際法で保障された唯一の人道的な組織。国境を越え、人種、宗教、思想、政治体制の違いを乗り越えて人人に援助の手を差し伸べるということで、十九世紀ですかの中ごろ以来、伝統と歴史を持つ活動、国際的なオーガニゼーションだということはわかるわけでございますが、これは要するに敵味方がなく、人間であればだれでも救援をしようという、医療の基本的な原点の一つでございます人道主義の上に立った私は行いとも思うわけでございますけれども、同時に、そういったことでは必ずしもカバーは十分にできないというところもあって、国連平和協力法とは全然別のものでございますね、まあ言えば。これは人道主義でございます、敵も味方もどちらも救おうという国際組織でございますから。国連平和協力法というのは、国連決議に従って、それに従って、そういった精神に従って医療活動をやろうということだというふうに認識をしたわけでございます。それでよろしいのですか。
#168
○赤尾政府委員 そのとおりでございます。
#169
○自見委員 それではちょっと具体的に、前後いたしますが、中近東の貢献策の一環として中近東の医療の先遣隊が派遣されましたが、先遣隊の人員、メンバー、構成、派遣先、それからここが大事でございますけれども、第一次、帰ってこられたようでございますけれども、実際の活動状況ほどうだったのか、報告を含めて御報告をいただきたい、こう思います。
#170
○赤尾政府委員 中東貢献策の一環といたしまして派遣されました先遣隊、医療の先遣隊でございますが、九月十八日に出発いたしまして、十九日に、約一カ月間の現地の活動を行った後帰ってまいりました。
 一行は、先ほど先生も言われましたように十七名で、医師五名、看護士、看護婦四名、調整員五名、その他外務省職員三名から構成されております。
 一行のサウジアラビアにおける滞在中、保健省関係者あるいはサウジ側の外務省関係者等々、いろいろなサウジ側の医療施設の状況あるいはニーズ、日本が協力するとすればどのような分野で協力することが期待されているかというようなことにつきましていろいろと意見交換いたしました。同時に、リヤド等だけではなく、東部州にも出張いたしまして、その州の病院関係者も含めました関係者ともいろいろと協議をいたしました。
 同時に、現地視察といたしましては、いろいろな病院施設、その中にはキング・ファハド軍病院の視察も入っておりますけれども、いろいろな主として民間の病院施設等の視察を行いました。同時に、一部の方はジョルダンの難民キャンプ、これは六つほどの難民キャンプを視察しまして、難民キャンプの状況あるいは医療のニーズ等について調査して帰ってまいりました。
 特にその際、先方から表明されました強い関心といたしましては、一つにはいろいろな医療関係の機材が不足しているので、機材面での協力を期待するということ。例えば移動病院でございますとか救急車でございますとか、あるいは救急車絡みでの通信施設等の機材協力が非常に望ましいという点と、もう一つは、日本から引き続き医療チームを派遣していただく場合には、拠点における活動に加えて、余裕のある限りいろいろな外科分野での指導等にも当たってもらいたい、サウジ等の医者等に対する指導に当たっていただきたいという強い要望が表明されました。
#171
○自見委員 今報告あるいは実際の活動状況があったのですが、国連局長、そういうふうな御報告をいただいておると思うのです。しかし、私も実際医療の方に十五年ほどおらせていただいた人間でございますから、現実にこういったときの医療はどうなるのかというのは、大体ある程度推測はつくわけでございまして、また行かれた方々の御意見あるいはその周辺の方々の御意見をいろいろ聞かしていただいて総合しますと、このクウェートの近くにある地域はかなり厳しい状況にあるのじゃないかというように私は思うのでございます。
 私の聞いたところでございますから、これは内容については私が責任を持つことでございますけれども、クウェート国境のサウジアラビアのアル・コバルですか、これはいずれ医療の基地をつくろうというところのようでございますが、四百キロぐらい国境から離れて、クウェートから四百キロぐらい離れたアル・コバル近くに二百床、二百ベッドですから、日本でいうと結構大きい病院でごさいますけれども、そういった病院あるいは五十ベッドぐらいある病院が、実は戦争が始まりまして、イラクがクウェートに攻め込みまして、病院を放棄しまして、結局お医者さんなり看護婦さんが職場を捨てられたという話を聞いておるわけでございますね。
 そういった病院が、特にプライベートホスピタルでございますけれども、こういった病院が機能してない。建物はありますけれども、いわゆるスタッフが職場を捨てたために、言うなれば実際機能してない二百床あるいは五十床あるような病院がございまして、この辺の地域のお医者さんは、御存じのように、当然サウジアラビアでございますから、サウジアラビアのお医者さんが中心でございますが、周辺のインドとかパキスタン人あるいはシリア人、エジプト人などのお医者さんもこの辺は当然多いわけでございます。また機能している病院でも、やはり戦火が近づいてきたということで、くしの歯が抜けるようにだんだんだんだんお医者さんがいなくなるということでございます。
 いまさっき国連局長からございました、お医者さんのいわゆる医療技術指導をしてくれということも、もしひょっとして、こういうことを我々望みませんけれども、戦争が始まれば、これは火傷、やけどでございますね、やけどの専門家なんか非常に必要となるわけでございますから、そういった技術指導、日本でも大変腕のいいお医者さんがおられるわけでございますから、そういった人を派遣してくれとか、あるいはまた、周辺には、御存じのようにアメリカ軍が展開をしておりますから、今度は米軍の病院がこのアル・コバルからその近くに海軍が五百ベッドの緊急野戦病院と申しますか、野戦病院を展開をしているという話も聞かせていただいておるわけでございます。五百ベッドの病院と申しますと大変大きな病院でございます。なおかつ、そのテントの中に冷房機を、エアコンディションを入れてある、アメリカで全部システムとして持ってきたということでございます。
 また、別にアメリカの病院船でございますね、病院船が大体千床ぐらいの、千ベッドといいますから日本でいいますと大体慶応病院とか東大病院が大体千ベッドの大学病院でございます。あれくらいの規模を持った病院船を二隻ほどアメリカが本国から持ってきまして、この地域の海域に展開をしているという話も聞くわけでございます。
 そして、話は少し前後いたしますが、大体そういう状況でございまして、ほかは三十床、五十床の野戦病院を、アメリカの陸軍ですが、そういったのがいろいろつくっておられるという話でございます。ただし、これはアメリカの野戦病院でございますから、基本的はアメリカの人を診る病院でございまして、もし戦争になれば、アメリカ人の兵士を治療するということが当然第一義的に優先をするわけでございますから、ほかに例えばアラブ連合軍、例えばエジプトの方なんかも今度は多国籍軍として参加をしておられるわけでございます。そういった方々の今度は戦傷に遭われた方を主にサウジアラビアが、破棄された病院も、個人病院がございますが、公立の病院が、あるいは政府の影響のある病院はまだ踏みとどまっておられるといいますか、いろいろ内部の、中にはやめられたお医者さんもおられるそうでございますけれども、非常にシステムとして一生懸命努力をして整えておられるらしいのでございますが、そういった状況にあるというふうに私はお聞きしておるわけでございます。
 率直に申しますと、今政府が中東派遣策で派遣をされたお医者さん、個人的には本当にこういった厳しい状況の中行かれたわけでございますから、私は本当にその決断と勇気は大変多とするわけでございますけれども、実際民間のお医者さん、国立病院だ、あるいは大学の病院のお医者さんだ、こういう方、大変個人的にはすばらしいことでございますけれども、行きましても、実際今私が言ったような、まさに戦火が近づいてきつつある国の医療システムにそのまま行って一体役に立つのかどうかということを私自身率直にいいまして非常に疑問に思うものでございます。これはもう医療というのは、やはり腰を落ちつけてやるものでございまして、小さなシステムではございません。お医者さんが一人おれば、それを一緒にやる看護婦さんでありあるいは薬剤師さんあるいは臨床検査技師だ、レントゲン技師だとか、そういったチームでやる、ますます今の医療はそういう傾向にあるわけでございますから、そういった中でこういった戦火の非常に切迫したサウジアラビアにこういった方々が行きましても、確かに今もお話ございました移動病院車、これは向こうが非常に多としておるという話を聞いていますし、それから救急車でも、また救急車だけでなくて、何台も救急車を、日本でもそうでございまして、無線でこうコントロールしているわけでございますね、そういうシステム、救急車と無線システム一括のシステム、これは非常に向こうの方から、今局長の話はございましたように、大変高く評価をされておられるようでございます。
 どうも私が今申し上げましたように、そういった先遣隊で行かれるということは大変御苦労なことでございます。行ってもすぐ向こうのニーズに合わない。ニーズは、五十床の病院だとかあるいは百床の病院が破棄してありますから、その病院を日本人で全部やってくれということが最初の要望でもあったというふうにお聞きしておるわけでございます。まあ行った人が少ないものでございますから、なかなかそこまでできないということでお断りをしたというふうなところもあったやに聞くわけでございますけれども、そこら辺の事情につきまして、こういう私が今言いました認識につきまして、ひとつ外務省の方でコメントがございましたらいただきたい、こう思うわけでございます。
#172
○赤尾政府委員 今先生が言われましたように、特に国境に近いあたりでは病院でお医者さんが一部いなくなられたところもございますが、同時に外国人が比較的いなくなってなかなか経営が成り立たないというようなところ等もございまして、例えば日本から医療チームが来ていただけるのであれば、そのようなところでやっていただけるのも一案かというような関心の表明はございましたけれども、必ずしも私たちの計画にそぐわない点もございまして、結論といたしましては、アル・コバルに拠点を設けて、そこを中心に移動病院軍等も使いながら活動するというのが今のところの現状でございます。
 なお、このサウジの医療事情でございますけれども、大きな都市部ではそれほど不備はないということでございますけれども、他方遠隔地における体制は必ずしも十分でないということと、都市部の医療施設におきましても、脳神経外科でありますとか整形外科でありますとか心臓外科でありますとか、そういう分野でのスタッフが必ずしも十分でないということ、いわんや万一あのあたりで紛争が起こったような場合に、例えば被災民、今は比較的国境は近くクウェート人を中心に三十万人近くの被災民が滞在しているわけでございますけれども、万一紛争が起こったような場合には、そういう被災民ももっと南下してくるだろう、そういう場合にどう対応すべきかというような態勢を整えておく必要があるというようなことだと存じます。
#173
○自見委員 それで、話があっち行ったりこっち行つたりしますが、サウジアラビアも、もし戦争が始まった場合、こういうことは絶対許される話じゃございませんが、化学兵器が使われた場合、腎不全が起こりますので、その治療として携帯用の人工透析器が欲しいとか、そういう要求もされたという話もお聞きしておるわけでございますが、今アル・コバルに医療基地をつくって、それから移動病院車を使ってやろうということを考えておられる、こういう話でございました。確かにお医者さんが四、五人ならそれしかできませんからね、率直に言えば。それより多くのことはできないわけでございますけれども、今国連局長の方からも、やはり破棄された五十床なりあるいは二百床の病院をやっていただきたいという関心の表明があったという話があったわけでございますけれども、やはり向こうとしても、向こうはお願いする方ですけれども、本当に日本国が中近東に医療面で貢献をしようと思えば、やはり四、五人という方だけでなくて、システムとして、向こうが二百床なりあるいは五十床の病院を日本人でやってください、こういう関心の表明があったということでございますから、こういう法律をつくって、性根を入れて、世界に貢献しようという話であれば、やはりそういった道と申しますか、実際ほかの国は、行ってもう千床なりあるいは五百床の病院としてやっておるわけですからね。そういったことと同列に言えない部分もあるかと思いますけれども、やはりそこら辺は、本当に向こうから感謝される、向こうも緊急事態でございますから。
 話を聞きますと、アル・コバルの公立の病院に近い病院でございますと、これは外務大臣、よくおわかりだと思うのですが、もうベッドを二百床ほどあけてあるそうです。慢性の患者さんを退院させまして、いつ戦争が始まるかわかりませんから、もし戦争が始まった場合、緊急の戦傷病者あるいは被災民の方で傷つかれた方がどんどん来られるわけでございますから、もう二百ベッドあけてあるそうでございまして、なおかつ地下の駐車場の中にも仮設のベッドを持ってきまして、何かの場合にそこが病室になる、こういうふうな状態もあるそうでございます。
 また、外来も、これは大変恐縮な話ですが、病院に着かれたときに、もう既に絶命しておられるという方もこういうときにあるわけでございますが、そういった方が行かれるところはブラックゾーンと申しまして、それから、こっちはレッドゾーンと申しまして、戦禍に遭われまして、まだ息をしておられるという方はレッドゾーンだ。ブラックゾーンとレッドゾーソを病院の外来に、日本の平和な状態ではそんなこと考えられない話でございまして、それくらいの状態にあるというふうに実は私聞いておるわけでございますから、やはりこういった臨戦態勢、確かに国境から四百キロ離れているからそっちは平和だということはあり得ないだろうと私は思う。特に湾岸地域は、大臣御存じ、私もあそこのジッダという町に一遍行かせていただいたことがございますが、湾岸、特にクウェートの近くの石油の出るところは、人口五万なり二、三万の都市がずっと並んでおるわけでございます。そういった中で臨戦態勢の中にあるわけでございますから、こういった異常な環境の中にあって、やはり日本の普通の民間のお医者さんは、率直に言ってこんな環境になかなかなじまないというふうに私は思うわけでございまして、そこら辺は医師でもございます中山外務大臣にコメントがいただければと思うわけでございます。
#174
○中山国務大臣 委員もよくお話しいただいていますように、国立病院あるいは大学の附属病院から医師を出すといった場合に、いわゆる派遣する期間あるいは帰ってきたときの待遇、ポスト、いろいろな問題が全部絡んでおりますから、そういう人たちにお願いをしてボランタリーで行っていただくということにはなかなか大変な難しい問題があったことは事実でございます。そういうことの中で、特に緊張状態が続いているということで、篤志家が非常に少ない、こういう中で何人かの先生が積極的に御協力をいただいたということに対して我々は深く感謝をいたしておりますけれども、もしこの国連平和協力法案が日の目を見、成立させていただくということになりました場合に、この法案の中に書かれているようなことで自衛隊の医療関係者にお願いをできるようになればどのようなスタッフがおられるかということをちなみに申し上げますと、防衛医官は七百三十名、それから看護士が千八百五十人、看護官が六百六十人、こういうことで、このような方々を含めて衛生隊員と言われる方々の総数が約一万人おられるということでございまして、そういう意味では、この法案の成立がもたらす国際紛争の際における医療の国際協力については、大変大きな効果が発揮できるものである。
 なお、委員御指摘のように、システムで動かないと医療の効果が上がりませんから、そのシステムの形成については一応これから十分研究をして対処しなければならない、このように考えております。
#175
○自見委員 私が言いたいことをさすがに外務大臣ぴしゃっと言われたわけでございます。私も今までサウジアラビアのそういった現状を言いまして、率直に言いまして、やはりこの法律を通していただいて――防衛医官という方がおられるわけでございます、今言われた七百三十人の方ですね。防衛庁長官もおられますが、今日本国に十三個、師団がありますが、いわゆる甲師団というので衛生隊が大体百八十六人おるという報告を私いただいておるわけでございます、もう詳しくは聞きませんが。そうなりますと、お医者さんがそれに約十名おられまして、百七十六人の方が看護士さん、あるいはこういった、移動して回る病院でございますから、通信隊あるいは管理、整備班だとか、そういったことで、まあ治療小隊といたしまして二十五人、こういうのが四つあるそうでございますが、一人の小隊長がお医者さんでもう一人お医者さん、二十五人にお医者さんが二人ですね、二十五人に二十三人は医者でない人がおって支援をしていただかないと医療というのは当然円滑にいかないわけでございますからね。
 私が今長々と申し上げたわけは、この一人、二人の民間のボランティアの方も大変貴重でございますけれども、やはりこういった国際国家日本になって、まさに日本国だけでは生きていかれない、ましてや憲法でも国連憲章でも、国家の利己主義、国家のエゴイズム、国家は自分のところの国だけを考えてはいけない、これはもう崇高な国連憲章の精神であり、日本国憲法の精神でもございますね、国際協調主義というのは。ですから、こういった中で、特に衛生医療の分野で日本は御存じのようにシステムとしては世界一の医療システムを持っているわけでございます。一番長生きできる国は日本国でございまして、いろいろな問題がございますが、厚生大臣もおられますけれども、一番すぐれた医療システムを全体として保持している国は日本でございます。
 そういった中で、やはり私は、この法律を通すことによって、サウジアラビア、実際にこの二百床の病院がございます。これはもう外務大臣御存じのように、日本の法律でも、二百床の病院に大体最低でも約七十人のお医者さんあるいは看護士さんあるいは薬剤師さん、臨床検査技師あるいはレントゲン技師等々要るわけでございます。大体二百床の病院では約百人のスタッフが要るわけでございます。
    〔高村委員長代理退席、委員長着席〕
そのスタッフが全部移動していかないと、実はこういうサウジアラビアのような緊急の事態が起きたときに役に立たない、もうシステム全体が動いていかねば役に立たないわけでございますから、そういった意味で、ひとつぜひこの法律を通すことによりまして、こういった面での世界における貢献をしていただきたい、こういうふうに私は思うわけでございます。
 そういった中で、最終的に、外務大臣が大変きちっと的確に答えていただきましたので、ひとつ総理も、私の話御理解をし、おわかりになった、こう思うわけでございます。ひとつ総理、ちょうどもう時間でございますが、愛知の補欠選挙で勝ったわけでございますから、堂々と使命感を持って、責任感を持って、この国の置かれた大変厳しい状況でございますが、総理がこの何週間か大変苦しい目に遭っておられるのじゃないかというふうな気も委員会の中におってするわけでございますが、これは日本がいずれは通らねばならない道でございますから、多くの自由民主党の先達が一つ一つ苦しい道を乗り越え、今日まで四十五年間大筋においては日本国を間違いなく運営してきたと私も誇りと確信を持っているわけでございます。
 今まさに日本が大きくなって、ちょうど世界の環境と日本の国内環境の大きなギャップのあるときでございますから、大変な総理の苦しみもあると思うわけでございますが、勇気と使命感を持って、そして国民を指導していただきたい、そのためにはこの国連平和協力法を本当に通していただきたい、こういうふうに強くお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
#176
○加藤委員長 これにて自見庄三郎君の質疑は終了いたしました。
 次に、左近正男君。
#177
○左近委員 私は、三十日の本委員会で、本法の三十一条、民間協力、特に輸送協力の問題について質問をさせていただきました。政府の答弁、どうしても私は納得できません。そういうことで、再度質問をさせていただきたいと思います。
 その前に、少し三十日の答弁を整理をしていただきたいと思います。
 まず運輸大臣、日本国籍の民間船舶及び民間航空機については、武器、弾薬、兵員の輸送はしない、よろしいですね。
#178
○大野国務大臣 そのとおりでございます。
#179
○左近委員 結構でございます。
 私、この「外航海運の現況」、これは運輸省が出していると思うのですが、ここに「我が国商船隊」という言葉、この「商船隊」という言葉がよく出るのですが、我が国の商船隊とは具体的に何を指すのか、お答えください。
#180
○寺嶋政府委員 我が国の商船隊と申します場合には、日本の海運会社が保有しております日本籍の船舶及び外国の会社から用船してきております外国籍の船舶、この両方から成り立っております。平成元年の年央時点では、日本籍の船が五百三十二隻、それから外国用船は千四百七十隻保有しております。
#181
○左近委員 この日本商船隊についても、武器、弾薬、兵員の輸送はしないと確認できますか。
#182
○寺嶋政府委員 十月三十日の当委員会でもお答え申し上げましたとおり、日本の船会社及び関係の労働組合は、武器、弾薬、兵員等の輸送はしないということを明確に意思表示をしておりますので、政府といたしましても、これら当事者の意向を尊重いたしまして、日本籍の船であろうと、あるいは外国用船であろうと、日本の船会社に武器、弾薬、兵員等の輸送を求めることはしないつもりでございます。
#183
○左近委員 ちょっとつもりではぐあい悪いわけやな。何のつもりであなたは答弁しているの。だから、今、日本商船隊の現状について、昨年の七月一日現在、日本籍船、日本に籍のある船五百三十二隻、日本の運航事業者が用船をしておる外国の船千四百七十隻、合わせて二千二隻については武器、弾薬、兵員の輸送はしない、確認してよろしいか、運輸大臣。
#184
○寺嶋政府委員 日本の船会社に輸送協力を要請いたします場合には、その使用する船舶が日本船籍か外国船籍であるかにかかわらず、武器、弾薬、兵員の輸送を求めることはございません。
#185
○左近委員 それでは大分煮詰まってまいりました。
 そこで、三十日の本委員会で私が政府の見解を不満にしたところは、日本商船隊以外の外国籍の民間船舶、外国籍の民間航空機について、私は、武器、弾薬、兵員の輸送をすべきでないということを申し上げましたが、外務省の方からひとつ見解を示していただきたいと思います。
#186
○柳井政府委員 三十日の御審議の際に申し上げましたことを、いま一度整理した形で御答弁申し上げたいと思います。
 ただいま御指摘の外国の民間企業の場合でございますけれども、国連平和協力法案のもとにおきましては、法的には、外国の民間企業が武器弾薬等を輸送することは排除されていないということは前回申し上げたとおりでございます。
 他方、この国連平和協力法案におきましては、国連の決議を受けて行われる国連平和維持活動等に対する協力を目的とするものでございます。目的ということで一つ縛りがあるわけでございます。また、協力の要請を受けまして民間が行う輸送業務が武力の行使と一体となるような場合には、本法案第二条二項により、そのような輸送業務を行うことができないことは当然でございます。この点が一つ基本的な制約になっていると申しますか、この法案の一つの基本的な枠組みになっているわけでございます。
 いずれにいたしましても、現実に外国の民間企業に協力を求める場合につきましては、まず当該外国企業の方針、意向も尊重いたしまして、この法案の十七条に規定しております業務計画の策定の過程におきまして慎重に検討するという考え方でございます。
#187
○左近委員 結局、武力行使と一体にならなければ外国の船舶、航空機に武器、弾薬、兵員の輸送、これを排除しない、これは前回答弁と全く変わってないわけですよ。何が変わったのか。言葉の言い回しが変わっただけだ。私は少し、やはり現状を総理初め関係大臣も御理解をいただきたいと思うのですが、世界の全体の海上の荷動き量に占める日本の輸出入の物量的な貨物量、この割合は、トンベースでは一九・四%、トン・マイルベースでは、これは遠いところから石油を運んでくるからでしょう、トン・マイルベースでは二四・三%である。このことから推測しますと、日本商船隊以外に大体二千トン級ぐらい以上の船がどれぐらいあるかといえば、大体六千隻ぐらい僕はあると思うんですよ、多いか少ないか多少の違いがあるけれども。そこへどんどんと――どんどんという言葉はこの前も出まして、どのぐらいだと言われましたが、まあそれは比喩として、そういうような六千隻のシェアのあるところへ外務省なり政府が武器や弾薬や兵員、そういうものを運ばすということについては、私はもってのほかだと思うんですよ、そういうところへ。これは、今お話があった本法の第二条の基本原則あるいは第三条の平和協力業務、この趣旨から見て私は非常におかしいと思いますね。この点どうですか。
#188
○柳井政府委員 前回もお答え申し上げましたけれども、この平和協力法のもとでは、外国の民間企業にそのような輸送をお願いすることは排除されていないということでございますが、どんどん行うという趣旨ではございませんで、むしろ先ほど御答弁申し上げましたように、この法案そのものに一つの枠組みあるいは歯どめというものがあることに加えまして、いずれにいたしましても、現実に外国の企業にお願いする場合には、まずそのような企業の方針、意向を尊重して、業務計画の策定の過程におきまして慎重に検討するというのが方針でございます。
#189
○左近委員 私は反対なんですけれども、この自衛隊の補給艦、これに武器、弾薬、兵員の輸送を、あり得るということは、今まで政府は答弁されているわけですね。これはなぜできるのかといえば、私は反対ですよ、なぜできるのかといえば、自衛隊法の百七条、これは航空法等の適用除外、航空法の八十六条の適用除外、また自衛隊法の百九条、船舶法等の適用除外、船舶安全法という法律を自衛隊法では適用除外をしているわけですよ。したがって自衛隊の艦船は、理屈的には武器や弾薬を輸送できる一つの道が政府はあると言っておられる。これは私は反対ですけれども、そういう理論構成についてはでき得るかもわかりません。しかし、日本の国の中の船についてはしない、それでは外国の船にそういうものを積み込めるということは、日本の国内法規を外国の企業にさすということになりますよ、これは。この点いかがですか。わからぬですか。よく聞いてないからわからない。この辺が、日本の国内法規、これではこの危険物は積めない。だから外国の船や飛行機に日本の航空法や船舶安全法、こういう趣旨を全然尊重せずに適用除外のゾーンを設けていくということになるわけですよ。これはおかしいんじゃないですか。
#190
○柳井政府委員 外国の会社の外国の船舶につきまして、日本の法令を適用するとかあるいは適用除外をするとかいうことではございませんで、外国の船舶につきましてはそれぞれその関係外国の法令の適用があると思います。そのような場合におきまして、ただいま御指摘がございましたような安全基準等の適用もあると思いますが、これは外国の法令上ということでございますが、そのような場合には、やはりそれに従って業務を委託するかどうかということを決めるわけでございまして、そのような外国の法令はもちろん尊重すべきものであるというふうに考えております。
#191
○左近委員 僕はこの前も言ったでしょう。国際連合平和協力法というのは、これは日本の法律じゃないですか。そんな外国に協力要請する場合も、この日本の法律の延長線上で協力要請をすべきじゃないですか。日本の法律に違反しているような事項を外国の船会社や飛行機会社にやらすというのはおかしいじゃないですか。
#192
○柳井政府委員 ただいま御指摘のように、この法案はもちろん日本の法案でございます。したがいまして、この法案が成立いたしました場合におきましては、この法律は日本の国内で適用、執行されるものでございます。政府が三十一条に従いまして民間の企業に業務をお願いするという場合におきましては、当然日本政府はこの法案、この法律に従って行動するわけでございます。
 他方、この法案は、いかなる法律でも同様でございますけれども、地域的にはやはり日本の国内で適用、執行されることを基本としておりますので、これを外国に持っていって、そこで適用、執行するということはできないわけでございます。
 したがいまして、先ほども申し上げましたように、外国の企業にお願いをする場合におきましては、日本政府の行動といたしましては、この法律に従って行動いたしますが、他方、外国の企業の側にとりましては、その外国の法令が適用される場合にはそれを尊重すべきことは当然でございます。
#193
○左近委員 あなた、勘違いの答弁しておるのと違うか。僕は、やっぱりこの法律、これは日本の法律ですよね、この延長線上で民間協力を頼まなあかんのと違いますかと言ってるんです。航空法の危険物や船舶安全法、こういうものでは、民間の船や飛行機がこんな爆薬なんか、爆弾なんか積んだらあかんわけですよ。これを、外国の船やからそれはできるんや、こういう論法ではだめですよと言ってるんですよ。わからぬかなあ、あんたら、ほんまに。(発言する者あり)わからぬ者は聞かぬでもいい。
#194
○柳井政府委員 私、諸外国の関係法令を知っているわけではございませんけれども、先ほども申し上げましたように、外国の船舶につきましては、それに適用のある諸外国の法令を尊重するということでございまして、そこで、諸外国すべてが日本と同じ法体制をとっているとは必ずしも思わない次第でございます。もしその外国の関係法令上、そのようなものを運搬することが禁止されているという場合にはもちろんそれに従うべきでございますし、他方、禁止されていない場合もあると思います。そのような場合には、先ほど申し上げましたように、業務計画の作成の過程におきまして、当該外国の企業の意向等も尊重して慎重に検討するという方針でございます。
#195
○左近委員 私は、きょうは先輩の時間をもらって質問をしていますので、まだまだいろいろやりたいのですが、僕は一つ言っておきますよね。飛行機でそういうものを運ぶことについては、これは国際民間航空機関あるいは国際航空運送協会、こういうところもやっぱり安全なものを輸送しなきゃならぬという目的が設定されているんですよ。もし民間の飛行機で武器や弾薬を日本政府が運ばしているということが明らかになったら、世界から、国際的に物すごい非難されますよ、これは。あなたたち、そういうことを考えたことあるんですか。私は、委員長、これはどうしても納得できませんから、質問を留保して先へ行かしてもらいます。
 この前、外国の軍隊、これはアメリカになると思いますが、アメリカの軍艦、補給艦か輸送艦か知りませんがそういうもの、あるいは軍用の輸送機、こういうもので日本の中東支援の物資を運ぶことがあり得ますか。
#196
○柳井政府委員 国連平和協力法第三十一条におきましては、我が国政府のみでは平和協力業務を十分に実施することができない場合、また物資協力が十分行い得ない場合がございますので、そういう場合に民間等国以外の者に対しまして適正な対価を払って輸送の委託、物品の譲渡等について協力を求めるということになっているわけでございます。このような方法によりまして、この法律の目的を十分に達成することができるという考え方でございます。
 そこで、この三十一条に言う「国以外の者」でございますが、これにつきましては、外国企業を含むということは既にお答え申し上げたとおりでございます。したがいまして、外国企業に適正な対価を払って輸送の委託等をお願いするということは想定されるわけでございます。しかしながら、このような三十一条の趣旨にかんがみますれば、ただいま御指摘のような外国の軍隊、まあ補給艦か何か知りませんが、そのようなものに平和協力業務の一つとしての輸送を行うということをお願いするというようなことは全く想定しておりません。
#197
○左近委員 中東に対する支援物資については、外国のそういう軍隊の船なり輸送機で運ばない、これはわかりました。
 そこで、総理にお伺いしますが、本法の実施に当たって、総理はこの武器輸出三原則、それを厳格に守るという決意をお持ちですか、総理。
#198
○海部内閣総理大臣 武器輸出三原則については、私はそれはきちっと尊重していくべきものと原則的に考えております。(左近委員「原則的」と呼ぶ)はい、原則ですから。原則だから原則を……。
#199
○左近委員 私は厳格に守るかと聞いているんだ、総理に。
#200
○海部内閣総理大臣 武器輸出三原則でありますから、これは厳格に守ります。
#201
○左近委員 それでは、この中東に支援をする物資、これは戦略物資と言おうか、軍事物資と言おうか、これはまだ明確にされておらない。政府は、トラックなりミニバスなり四輪駆動車なりあるいはプレハブ住宅なり、こういうものを想定されておられるらしいですが、草川質問にもありましたように、ヘリの発着台等も今問題になっているわけですね。だから、この中東への物資的な支援できる品物の、物資の範囲、こういうものを僕は明確にすべきだ、本委員会に提出をすべきだ、このように思っておりますが、外務大臣、いかがですか。
#202
○中山国務大臣 中東貢献策に関する輸送につきましては、兵器、弾薬、兵員、これは輸送をしない、これ以外のものはできるという認識を持っております。
#203
○左近委員 それでは困るわけですね。砂漠地帯に分厚い鉄板、長い鉄板を持っていけば、これは飛行場のかわりになるわけで、ヘリコプターの問題もそうでしょう。防毒のガスのマスクの問題も出ました。だから、武器弾薬以外はすべてのものが物資協力の対象になる、これでは私はだめだと思うのです。したがって、政府はどういうものをその物資協力の範囲の中に入れておるのかという見解の統一をしてもらって、本委員会に提出をしていただきたい。
 委員長、取り扱いをお願いします。ちょっと理事、お願いします。
#204
○渡辺(允)政府委員 先生ただいま御質問の点は、現在やっております中東貢献策の中の物資協力の対象物資というふうに理解をいたしますけれども、これにつきましては、防暑機材、それから水関連機材、車両、宿舎及びその附属機材、建設資機材、通信機材、事務用の資機材、それから食糧及び医薬品ということで考えておりまして、いわゆる武器というようなものは全く考えておりません。
#205
○左近委員 そうではなかったのは、せんだっての公明党の草川議員の質問ではなかったですか。だから、本委員会でどういうものを中東の支援物資としてやるのかということをリストを提出をしてください。委員長に要請します。理事、お願いします。――もう答弁要らぬよ。要望だ。
#206
○渡辺(允)政府委員 私がただいま御答弁申し上げましたのは、その物資協力の対象となり得るものを申し上げたわけでございます。
 それからもう一つ別の問題といたしまして、我が国がやっておりますいわゆる輸送協力の対象として何を運ぶかということがございますが、これにつきましては、従来から御説明申し上げておりますとおり、武器弾薬は運ばないという方針をはっきりいたしまして、これを実施しておるわけでございます。
#207
○左近委員 要望しておきます。委員長、取り扱いを理事会でお願いします。
 終わります。
#208
○加藤委員長 今の点は、質疑でちゃんと追及していただきたいと思います。
 次に、池端清一君。
#209
○池端委員 海部総理、あなたは早稲田大学の雄弁会におきましては、海部の前に海部なし、海部の後に海部なしと言われた大変屈指な雄弁家でございます。これはつとに知られたところでございまして、きょうここに持ってまいりました「早稲田大学雄弁会八十年史」にも、海部総理の名前が至るところに出ておるわけでございます。
 その中に、あなたの実は思い出の記が一つ書いてあるわけですね。御承知でありましょうか、「早慶討論会 冷汗三斗の詭弁怪論」と。冷汗三斗、冷や汗ですね。「冷汗三斗の詭弁怪論」と題する海部俊樹さんの思い出の記が書いてあるわけです。
 これは、当時の早稲田大学と慶応大学との討論会で、「赤線区域は廃止すべきや否や」、是か否かというテーマが当たった。それに対して、これは抽せんでこのテーマを決めるわけであります。ところが、早稲田大学は残念ながら赤線区域廃止ノー、こういうテーマが当たった。それで、総理は赤線なんてものは経験したことがない。で、もう苦心惨たん、いろいろな論理を展開をして、この文章によると、赤線区域を廃止して、「もし何等の具体的対策無き限りそれは破壊活動であり、民主主義の敵である、と、とんでもない方向へ論点を誘導し、文字通り詭弁怪論で煙に巻き、トロフィーを抱いたのである。」こう書いてあります。そして最後に、「大隈侯の心境や如何、都の西北に赤線区域必要論を唱える学生現るとは思ってもいられなかった事だろう。帰路、墨絵の様に夜空を彩る大隈老侯の銅像に、心からなる敬礼を捧げたのであった。」こういう一文があるわけであります。
 私は、なぜこういうことを引用したかと申しますと、これは大学生の討論として非常に海部さんの面目躍如、才気煥発、こういう状況をあらわしていると思うのであります。しかし、総理の立場になると、これは違うということを言いたいわけであります。
 あなたは、八月二十九日の記者会見で、自衛隊を海外に派遣することは考えていないというふうに明確に言い切ったわけであります。これは、自衛隊の海外派遣は違憲であるという認識を海部総理がお持ちであったからこそ、こうやって明確に言い切ったと思うのであります。それが二転三転あるいは四転五転して、今や苦し紛れに、武力による威嚇や武力行使をしないんだから憲法違反ではない、こういう論理展開をしておるわけであります。私に言わせるならば、極めて残念でありますが、この論理展開こそまさに詭弁であり、怪論であると言わなければならない、こう思うのであります。
 最近の新聞の社説に、「いま国民が求めているのは、胸にストンと落ちる明快な説明である。長文の、しかも役所用語で針の穴を通すような、こじつけの理由づけでは、だれも納得できまい。」という論評が出ておりました。私も全く同感であります。どうか総理、今からでも遅くありません。この憲法違反の法案をぜひ撤回していただきたい、このことを要求しますが、いかがでしょうか。
#210
○海部内閣総理大臣 池端委員とは同じときに学生生活をともにいたしましたから、あの当時の背景は十分御承知だろうと思います。同時に、あのころの討論会というのはその場で抽せんだものですから、パチンコはいいか悪いかとか、赤線はいいか悪いかとか、大変奇妙な演題をつくっては学生に抽せんをさせて、そして審査員が審査をするという、考えてみれば、ちょっと討論の性格からいったら横道にそれているんじゃないかと思うようなこともございました。
 したがいまして、今お示しになったことは、私が卒業に当たってそのとおりのことを書いた記憶がございます。ございますから、私の責任で率直にそれは認めますけれども、それと、今度の条件とか法案とは全く違うわけでありまして、早稲田大学の雄弁会の学生のころと今とは立場も、それから、これも抽せんで決めた法案じゃなくて、みんなで相談をしてこれはいいんだと、これはまじめに申し上げておるのですが、決めたわけでありますから、例としてお引きになっただけでしょうから、私もそのことについては余りこだわりませんけれども、しかし、委員も御承知のように、昭和四十年ごろずっと国会でいろいろな議論があって、派兵と派遣とは違うんだということは、速記録を通じて、あるいは国会の議論を通じて定着しておる考え方だと私は考えております。
 ですから、今国際社会が変わってきて、国連がこのように機能するようになるということも当時の社会では認識もできなかったことだと思いますし、また、冷戦後の初めての国際社会で、今後とも平和な環境の中で生きていきたい、日本のような、経済力ができ、国民生活の質が高くなって豊かな生活を享受できるのも、やはり世界が平和で、そこと貿易ができて、毎年毎年七億トンぐらいのものを輸入して、そして八千万トンぐらいの製品に変えて輸出をして、こういった質の高い国民生活ができるというのも、世界が平和であるということと自由と民主主義のいろいろな市場経済が機能できるということでありますから、私はそういう意味で、そういった社会を大事にしていきたい。国連の決議に基づいていろいろな活動が国際社会で行われるなれば、日本もできるだけの協力をしていかなければならぬというのがこの法案の趣旨でありますけれども、ただ、憲法の精神もありまして、私ども何回も申し上げておるように、武力による威嚇とか、あるいは戦争に参加しようとか、戦争を起こさせようとか、そんな気持ちは毛頭ないわけでありますので、本当にそういう考え方で政府内部できちっと意思をまとめて出しました法案でございますから、どうぞその点は御理解をいただきたい、こう思います。
#211
○池端委員 海部総理、あなたが師と仰ぐ、今は亡き三木武夫元総理が政治改革に情熱を燃やした。そして防衛費の一%枠、これを何としても守らなければならないと言って頑張られた。そして、信なくば立たずというような政治信条を貫き通した偉大な政治家だったと私は思うのであります。また、河本敏夫代議士は、昭和四年、旧制姫路高校在学中に、いわゆる戦争反対の演説をして姫路高校を放校処分になった。こういう反戦思想の持ち主でございます。
 この間、我が党の左近さんの質問に答えて、あなたは、私はハトでもタカでもない、人間である、こう言われた。まさにその言やよしであります。私は、人間として、このあなたが師と仰ぐ二人の今日までたどってきた歴史をやはりいま一度思い起こして、そしてやはり憲法に違反するがごときこの悪法の提出、これは断念をすべきである、私はこう思うのであります。
 重ねて総理の所信を承りたいと思います。
#212
○海部内閣総理大臣 私は、今お示しになったような討論を学生時代いたしましたが、しかし、池端委員、お互い四年生のときに、私が総理大臣杯というのをもらいましたときの演説の原稿は「平和国家建設と我らの使命」、こういうテーマでございまして、私は、歴史の厳しい反省に立って二度と再び侵略戦争はしない、日本は軍事大国に二度となってはならないという誓いを表明したのですということについて、それなりの考え方を学生のころからも述べてまいりましたし、同時に、この法案が憲法違反だとおっしゃるなれば、そんな法案を国会にお願いするようなことはいたしません。
 この法案は憲法違反でない、その証拠に、きょうまで国会で議論された憲法違反につながる派兵はしない、自衛隊を自衛隊のままで、戦闘集団として戦闘兵器を持って、日本の国がほしいままにどこへでも出ていけるようにしますというならば、これは憲法違反の法案だ、撤回しろとおっしゃったら素直に私はそれはお受けしますけれども、国連決議というものを大前提に置いて、国際社会の平和の敵、平和の破壊者に対してこうしろというまず大前提があって、それから武装もしない、戦闘兵器も持たない、何にも持たない、そして第三条に書いてあるような与えられた業務そのものを、内閣が決めたものについて、原則非武装で行って協力をしてくるということでありますから、私はこの法案は憲法違反の法案だと考えておりませんので、今憲法の枠組みの中で、これは日本が国際社会に貢献するためにしていい、許される範囲内のものである、こう確信をしてお願いをしておりますので、どうかその辺の真意をお酌み取りいただいて、一体、じゃ、どこがどうなのかという議論については、これは法制局長官の方も何回もここでお答えしましたように、この法案は今の憲法の枠内のものである、こう考えておりますので、その点は、直ちに法案を撤回しろとおっしゃいましても従うわけにはまいらないのであります。
#213
○池端委員 室町時代の能役者世阿弥は「初心忘るべからず」という言葉を残しております。今あなたは、あの当時、平和憲法を守る、こういう精神でやってきたということを言われました。その初心を実は忘れないでもらいたい、ともに早稲田の森で学んだ一人の友情として私は申し上げたい、こう思うのであります。
 そこで、きのう自民党の小沢幹事長が今臨時国会の会期延長を示唆するような発言があったというふうに報道されておりますけれども、自民党総裁としての海部総理は、これについてどのような御見解をお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。
#214
○海部内閣総理大臣 申し上げましたように、私はこの法案は憲法違反だと思っておりませんし、同時に、日本の憲法は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」「生存を保持しようと決意した。」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、」「自国の主権を維持し、」「平和を維持し、」「他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」、これも憲法に書いてあるわけでありますから、日本だけが自分のところさえよければいい、自分のところさえ豊かであればいいと経済万能でやっておりますと、それこそエコノミックアニマルとか人の国のことを考えないとか、いろんな批判を受けたわけでありますから、今後は、東西の対決が終わり、イデオロギー時代が終わり、冷戦が終わった今日こそ、日本はきょうまで世界のそういった状況の中で相互依存を守りながらやってきた、そういったことに対して技術力や経済力やいろいろなことで共存するために世界に向かって貢献もし、お返しもしていかなきゃならぬという、そういう立場に立ったんだ、こう自覚しておりますので、その一点がこの協力法案ということでございます。
 なお、幹事長とそういった発言については一々事前に打ち合わせをしませんので、何と言ったかよくわかりませんけれども、私はこの会期の中でこうして毎日朝から夕方まで皆さん方のいろんな質問に答えて、私の考え方や心情を申し上げておるわけでございまして、ここに書いてあることは憲法違反でないと私は思う。池端さんは、これは憲法違反だと思う、こうおっしゃるわけでありますから、その辺のところはやはり、極端なへ理屈を言いますと、憲法八十一条に違憲立法審査権があって、その辺で違憲かどうかは判定することになっておりますけれども、しかし政府としては、内閣でいろいろと相談をして、これはきょうまでの国会の議論やあるいは学者の議論等合わせて、憲法違反ではないんだという確信を持ってお出ししておりますので、国会の手続に従って各党の議論を闘わせていただいてこの法案を成立させていただきたいという願いを持って毎日答弁に臨んでおるわけでありますから、どうぞその心情もおわかりいただきたいと思います。
#215
○池端委員 これ以上この問題をやることを避けますけれども、先ほど愛知参議院選挙の結果も言われましたけれども、海部総理の地元であのような大接戦、薄氷を踏むようなあの勝利というのは、必ずしもこの問題についての国民の意思というものが、これはやはり反対だという声になってあらわれている、私はこう思います。そういう立場を改めて申し上げておきたいと思います。
 そこで、「いわゆる「国連軍」への平和協力隊の「参加」と「協力」について」という、この委員会に提出をされました統一見解について、私は、この統一見解は憲法改正に等しい解釈の変更が行われようとしていることが明らかになっており、見過ごすことはできない。参加のメルクマールとされる指揮下に入るかどうかについての政府の説明、あるいは武力行使と一体となる場合と一体とならない場合の基準が政府の政策判断に任せられておる。それによって合憲か違憲かの違いが出てくるといったような政府の答弁には私は全く納得できないのであります。このような統一見解が存在することは許されません。したがって、この統一見解を撤回してもらいたい。強く申し上げますが、どうですか。
#216
○工藤政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の統一見解でございますが、これは昭和五十五年の十月二十八日に、稲葉誠一議員から提出されました質問に対しまして当時政府からお答えしましたところ、これがまずもとにあるわけでございます。そこにおきましては「いわゆる「国連軍」」、これは当時この質問の方にございますが、「いわゆる「国連軍」」、これは「個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えている。」まずかような答弁がございます。
 それの延長線と申しますか、それにつきまして、今回の法案の審議の過程におきまして、そこに言う参加とはどういう意味か、参加と協力とはどういうふうに違うのか、こういうことで御質問を受けまして、それに対しましてお答え申し上げた、そういうのが先ほどのいわゆる統一見解、こういうことであろうかと思います。
 そういたしますと、今お答え申し上げましたように、どのような形での自衛隊の関与、先ほどの質問主意書に対する答弁書におきまして、どのような関与、参加が憲法上許されないのか、こういうことでございまして、そこの点をここにおきましては、「当該「国連軍」」といいますのはいわゆる国連軍でございますが、いわゆる「「国連軍」の司令官の指摘下に入り、その一員として行動することを意味し、」こういうことで、その答弁書の前提となっております考え方、要するに、憲法九条からまいりますれば我が国が武力の行使あるいは武力による威嚇を行うことは許されない、こういう憲法上の制約、これが五十五年の答弁書のそもそもの前提でございます。そういう意味で、それを、いわゆる「参加」という形で書かれておりましたのを敷衍した、こういうことでございます。決して、今回新しくといいますか、そういう意味で概念を変えたというふうなことではございません。
#217
○池端委員 一貫しているという不規則発言もございましたけれども、これはもう明らかに違うと私は思うのであります。私は、きょうこの問題はいろいろ議論しようとは思いませんけれども、私どもの見解だけを明確に述べておきたいと思います。
 それは、この政府見解では、武力による威嚇または武力行使を目的・任務としない場合はもちろんのこと、それを目的・任務とした国連軍、平和維持軍、そして多国籍軍などであっても、参加に至らない協力であれば自衛隊が何らかの形態で海外に出動できる、こういうふうにされているわけでございます。これは憲法違反の自衛隊の海外出兵を企図したものでございまして、協力法の提案と同時に憲法解釈を根本的に変更し、実質上改憲をねらったものである、こういうふうに断ぜざるを得ないわけでございまして、仮に政府がこの政府見解を将来の憲法論争の際のベースにしようというねらいを持っているならば、我々は断じてこれは承服できない。したがって撤回を求めるということをあくまでも要求してまいりますので、その点については十分御留意をいただきたい、こう思います。
 そこで、次の項目に移ります。
 法案の第三条の第一号に言いますところの「その他の国際機関」とは、これは何を指すものでしょうか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
#218
○赤尾政府委員 「国際連合その他の国際機関」でございまして、具体的には、例えばIOM、国際移住機構のような、あるいはその他の専門機関――国際移住機構でございます。例えばジョルダンで今難民の救済活動に当たっております国際移住機構等の専門機関が考えられております。
#219
○池端委員 それではこちらからお聞きしますが、北大西洋条約機構、NATOあるいはワルシャワ条約機構、こういうものは「その他の国際機関」に含まれますか含まれませんか。
#220
○赤尾政府委員 ただいま先生が指摘されましたような機関は想定しておりません。
#221
○池端委員 想定するかしないかじゃないんです。含まれているか含まれていないか。国際機関の、国際法上の通念からいって、今のあなたの答弁は全くなっていない。
#222
○赤尾政府委員 NATOですとかワルシャワ条約機構は含まれておりません。
#223
○池端委員 それは間違いありませんか。
#224
○中山国務大臣 間違いございません。
#225
○池端委員 NATOには、国連憲章第五十一条によって認められている個別的または集団的自衛権の行使を、兵力の使用を含め必要と認める行動をとることができる、こういうふうになっています。基礎を国連憲章五十一条に置いているわけであります。それが、国際機関と言わないというのはおかしいじゃないですか。(発言する者あり)
#226
○加藤委員長 政府が見解をまとめているようですから、この間は質問時間に入れません。――それでは、再開いたします。国連局長。
#227
○赤尾政府委員 この第三条一号で想定され、考えられておりますのは「国際連合その他の国際機関」でございまして、国際連合等、まあ類似の国際機関で、私が今申しましたのは、IOMあるいはUNDROという、今ジョルダンで活躍しております救済機関等がございますが、そのような国際機関を念頭に置いて、典型的な例は国際移住機構でございますが、その他の専門機関、国連関連の専門機関がこの場で想定されておりまして、NATOあるいはワルシャワ条約機構は含まれておりません。
 なお、国連憲章五十一条でございますけれども、この集団安全保障に関しましては、読ませていただきますけれども、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当つて加盟国がとつた措置」、これは加盟国のとった措置でございます。
#228
○池端委員 それは、想定をしていないという答弁では納得できません。今の局長の答弁は、これは国連の機構に関連した答弁でありまして、国連には確かに総会、安全保障、経済社会それから信託統治の三理事会と司法裁判所並びに事務局の六つの機関、そして百十三の補助機関があるわけですね。これは国連の機構であります。私が言っているのは、この第三条に明確に書いてある「その他の国際機関」とは何か、特定をしてもらいたいということでありますから。
#229
○赤尾政府委員 国連以外の国際機関として「その他の国際機関」ということで書いてあるわけでございますが、例えば先ほどもIOM、国際移住機構と申しましたけれども、それ以外に例えばWHO、国際保健機構でございますとか……(池端委員「それは国連の機関でしょう、あなた」と呼ぶ)いや、私が先ほど国連の専門機関と申しましたけれども、国連その他の国際機関ということでございまして、国連の機関ではなくて、国連の専門機関ということでございます。(発言する者あり)
#230
○加藤委員長 発言の際には、委員長の許可をもって御発言願います。
 池端君。
#231
○池端委員 できません。そんな答えで、何質問できるの。
#232
○赤尾政府委員 ここで考えております「国際連合その他の国際機関」といいますのは、まず第三条一号の定義にございます「国際の平和及び安全の維持のための活動」という、それの定義がございますけれども、国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づき、または国連決議の実効性を確保するために活動を行うような国際機関でございまして、ただいま考えられておりますのは、国際連合以外の国際機関といたしまして国連の専門機関等でございます。専門機関でございます。例えば先ほど申しましたような国際保健機構でございますとか国際移住機構などでございます。
#233
○池端委員 それではお聞きしますが、WHOが国際の平和及び安全の維持のための決議を行うことはあるわけですか。
#234
○赤尾政府委員 ただいま、例えばイラクならイラクの関連でそういう決議はございませんけれども、国際の平和及び安全の維持に関する決議が安保理事会または総会で採択されまして、例えばWHOに協力の要請があるような場合には、そのWHOが入るということでございます。
 なおIOM、先ほど申しました国際移住機構でございますが、これは今ジョルダンにいる難民の移送等におきまして実際に主役を演じております。
#235
○池端委員 それは国際機関ではないんであります。国連の機関なんです。国連の機構の一部なんです。だから、ここで法律で言っている「その他の国際機関」というのは、今の局長の答弁ではもう全然違うんであります。
 私も質問するからには、委員長、いろいろな国際法学者にも御意見を聞いてまいりました。そういう立場で私は質問をしているわけであります。そんないいかげんな理屈で、理論で納得させられると思ったら大間違いですよ。しかも、法律というのは厳格、厳密に規定をしなければならない。そんなアバウトでどうするんですか。
 この間、公述人に元外務省の浅井課長に来てもらいました、今の日大教授。彼は言った。外務省というのは法案をつくったことは余りないんです、条約をつくることはありますけれども、法案をつくる、そういうあれにはなれていませんとはっきり言った。その欠陥がここにあらわれている。こんな、あなた、もう不備、欠陥だらけの法案、どうやって審議するんですか。
#236
○赤尾政府委員 私が前から御説明を申し上げようと思っておりますのは、先生は例えばWHOは国連の専門機関、国連機関の一部だと言っておられますが、私は国連と全く関係ないということを申し上げているのではなくて、専門機関といいますのは、国連に関係のある政府間機関あるいは国際機関でございます。したがって、そういう国連以外の国際機関ということに、「その他の国際機関」というふうに書いてございますが、この場で私たちが念頭に置いておりますことは、例えばWHOでありますとかIOMでありますとか、そういう専門機関を念頭に置いて書いた言葉でございます。
#237
○池端委員 私は、いろいろ調べた結果、これはNATO等も含まれる、こういう立場に立って今質問をしておるわけでございます。この法案は、ポスト冷戦下における国際協力はいかにあるべきかという観点から出された法案なんですよ。ところが、これはNATOにも協力できる余地を残した極めて重大な問題を含んだ法案である、こう言わざるを得ないんです。そういう意味で、私は、この点は厳格にはっきりとやはり政府は統一見解を示すべきだ。
 内閣法制局長官、どうですか。法の番人というか、法の有権的解釈をするあなたの立場から、これはどう思いますか。こんな外務省の理屈は通ると思いますか。
#238
○加藤委員長 政府答弁が出るまでの時間を質問時間にカウントいたしません。
#239
○工藤政府委員 お答え申し上げます。
 国際機関と一般的に言われます場合に、その範囲につきまして、例えば条約法条約といったようなものがございます。条約法条約などで、「「国際機関」とは、政府間機関をいう。」というふうな定義があるものがございます。これは非常に広い意味だろうと思います。それから、それに対しましてただいま先生御指摘のような、五十一条を引いてとおっしゃいますが、五十一条はむしろそういう意味の機関を想定したもの、国連憲章の五十一条でございますが、そういうものを想定したものではなくて、むしろ加盟国それぞれがそういうものを対抗措置として持つという権利を害するものではないという、むしろ個別国を頭に置きました規定だと存じております。
 それで、その次に、第三条の第一号におきましての「国際機関」の話でございますが、これにつきましてはただいま国連局長からも話がございましたように、そこの国連決議に基づきあるいは国連決議の実効性を確保するために行う活動、そういうものから限定される国際機関ということでございまして、先ほどの先生の言われる一番広い意味の国際機関、これはそういう意味では心ずしも当たらない。そういう意味で国連局長はそこの部分を想定していない、かように御説明申し上げたものと考えております。
#240
○池端委員 想定しているとかしていないとかという問題ではないんですよ。よく皆さん方はそんなつもりはございませんと、こういうことを盛んに言うのですが、そんなことは今は苦し紛れにそういう答弁をするかもしれませんけれども、一たん法律が成立をすれば、これはどのようにも解釈をされる、そういうおそれがあるわけですよ。だから私は厳密にこれはお尋ねをしたわけでございますが、これは私は納得できません、答弁は。さらに引き続いてこの問題は究明をするということで留保して、次に進みたいと思います。
 次、PKO、ピース・キーピング・オペレーションですね、この問題についてひとつお尋ねをしたいと思いますが、この法案に基づくところの我が国の協力の対象となる活動の典型的なものがPKOである、こういうようにさきの統一見解でも明らかにされたわけでございます。
 それでは、日本政府はこのPKOについてどういうようなこれまで認識と理解を持っておったか、それについてお尋ねをしたいと思います。
#241
○赤尾政府委員 国連のPKO、平和維持活動と呼んでおりますけれども、これは紛争の解決あるいは鎮静化のために国連が行い得る実際的な手段でありまして、過去四十年以上にわたりまして既に十九の活動が実現しております。特に最近におきましては、アフガニスタンの問題でありますとかあるいはイラン・イラク紛争の解決でありますとか、さらにはナミビアの独立に当たりまして目覚ましい活躍をしております。
 特にこの二年間、八八年以来の二年間におきまして六つのPKOが発足して、いろいろなそういう地域紛争の解決等に、あるいは地域紛争解決の合意後の停戦監視ですとか平和維持活動あるいは選挙監視等に当たってきております。同じく八八年におきましてはノーベル平和賞も受賞しておりまして、日本といたしましてもできるだけ積極的に資金面あるいは要員派遣面等において協力していく必要があるというふうに考えております。
#242
○池端委員 総理や外務大臣は、平和維持活動に関する日本政府の見解という、本年四月二十三日に国連が出しましたこの報告書、お読みでございましょうか。御承知でしょうか。外務大臣、国連の文書ですから。平和維持活動についての文書、ごらんになったでしょう。
#243
○中山国務大臣 正直なことを申し上げて、膨大な書類が毎日上がってまいります。私は本当にできるだけのことは読んでおりますけれども、読み切れない点も事実ございます。そういう点ではひとつ国連局長から詳細御報告をさしていただきたいと思います。
#244
○赤尾政府委員 国連におきましては平和維持活動、PKO特別委員会というのがございまして、各国が積極的にその国連の平和維持活動を活性化するためにあるいは効率化するために、どのようにやったらいいかということについて議論しておりまして、日本もその討議に参加すると同時に、日本のポジションをまとめたペーパーを提出しております。
#245
○池端委員 どんな内容のペーパーを出しておりますか。
#246
○赤尾政府委員 本年春に提出いたしました日本のペーパーの、ペーパーというのは日本政府の考え方を取りまとめたペーパーでございますけれども、そのペーパーにおきましては、PKOの効率化をどのようにやっていったらいいか、あるいは財政面の強化、特に一部の国の財政支出がおくれているということもありまして、それが国連の財政難の原因にもなっておりますところ、財政面における強化をどうしたらいいか、あるいは近年平和維持軍あるいは停戦監視に加えて選挙監視等の役割もだんだん出てきておりますので、文民の派遣面における役割あるいは訓練等につきまして日本の考えを取りまとめたペーパーを提出いたしております。
#247
○池端委員 非常に特徴的なことは、財政的な注文をいろいろつけているということであります。本年のこの報告によりますと、PKOの受け入れ国の財政的、物質的負担が確立されるべきである、あるいは事務局及び安保理事会は、平和維持活動の設立及び活動に関し、主な人員及び資金提供国と協議することを提案する、これがことしの内容であります。要するに、財政負担には非常に厳しい見解を示していながら発言権を強化しよう、こういう内容でございます。
 去年の報告では、装備の備蓄は加盟国の新たな財政的負担を招くおそれがあり、避けるべきであることに注意すべきである。平和維持活動より直接利益を受ける国は、その利益に応じた追加財政負担を引き受けるべきである。去年は日本を含めて二十一カ国がこの報告を出しております。ことしは十四の国でありますが、この中で特徴的なことは、日本が財政的な注文を大いにつけている。ほかの国には見られないことです。皆さん、これまで政府は、金ばかりではなくて、人も物も汗も流さなければならないと盛んに言ってきた。ところが、この金についても、まあけちっているわけであります。財政的な注文を大いにつけている。これが国連中心主義の今の政府の実態なんですよ。総理、どうですか。この報告書を見て、僕は唖然としましたよ。余りにも金に注文をつけている。こういう状況をどう思いますか。これが国連中心主義、これの実態ですよ。
#248
○海部内閣総理大臣 突然の御質問でしたので、事前にそのペーパーを読んでこなかったことは事実ですから、改めて読んでみますけれども、私の理解に誤りなければ、国連に対する拠出金は日本は二番になっておって、全体の需要のたしか一一・三六%ぐらいじゃなかったでしょうか、拠出いたしておりますし、また国連の機関が呼びかける例えば難民の援助に対する費用なんかも、国連が要ると言ったものの半分を日本は直ちに拠出するというようなこともいたしておりまして、それらの面については、いろいろ御批判があることは承知しておりますけれども、どこよりも早く、どこよりも多く日本はこういったものについては最近努力を重ねておるというのが私の理解でございます。
#249
○池端委員 私は、国連中心主義を強調しておる政府は、そしてまたこの法案を強硬に推し進めようとしている国の報告としては、まことにお粗末なものではないか、こういうことを、辞書を引きながらこれを読みました。実はそういう実態であるということを十分御承知おきいただきたい、こう思います。
#250
○赤尾政府委員 ただいま総理からの御発言のとおりでございますけれども、私、実務面を担当しておりますので、特に財政面で日本は厳し過ぎるのじゃないかという御指摘がございました。
 この日本のPKO特別委員会におきます意見は、これは国連の一員といたしまして、国連全体の効率化の観点から、財政面も含めてどうあるべきかという点についての意見の表明を行っているわけでございます。例えばPKOで一たん設立されますとなかなかフェーズアウトできない、いつまででも続いている、何十年でも続いているというのがありますが、そういうのはできるだけ早い期間にやめていくべきじゃないかという共通の認識があります。同時に、新しい需要に対してはちゃんと対応できるようにしなければいけないという観点から、日本のみならず多くの国がその財政面における強い関心を持っておりまして、日本もPKOへの大口の財政拠出国の一員としてそのような厳しい注文を出しているわけでございますけれども、同時に日本独自に、ただいま御説明ありましたように、PKOにつきましては一一・三八%の分担金に加えて、さらに特に近年、通常の分担金に加えて追加的な拠出をやっております。
 例えばアフガニスタン・パキスタン仲介ミッションにつきましては五百万ドルの特別拠出を行いましたし、国連イラン・イラク監視団に対しましては一千万ドルの追加の特別拠出を行っておりますし、ナミビア独立支援グループに対しましては千三百五十五万ドル、最近のニカラグアに対しましては、これは監視団と選挙両方合わせまして二百五十万ドルの拠出をやっております。ですから、国連加盟国としてPKOの活動がどうあるべきかという点からの財政的な側面からの意見が一方にありますし、同時に、日本としてそれじゃ資金面も含めてどういうふうに積極的に参与していくかということが同時にありまして、後者につきましては、今申しましたように積極的に協力しているということでございます。
#251
○池端委員 受け入れ国の財政的、物質的負担が確立されるべきである、こういうようなことを報告するということは、私は本当にPKOに対しての熱意があるのかどうか疑わしい、こういうふうに言わざるを得ないわけでございます。
 次の問題に移りますけれども、政府は、これまで武器の使用について、自己または付近の人の身が危険にさらされるなど個人の合理的判断で使用する場合がある、こういうふうに答弁をしてまいりました。このような正当防衛のために武器を使用し、結果として特定の相手に打撃を与えるという状況になっても、それは構わないことなのでしょうか、どうでしょうか。
#252
○柳井政府委員 お答え申し上げます。
 平和協力隊の行う平和協力業務の実施等につきましては、御承知のとおり、そもそも「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」という大原則があるわけでございます。他方、この法案の第二十七条に規定しておりますことは、そのような平和協力隊の任務遂行上、武器が必要だということはございませんけれども、他方、実際の問題といたしまして、治安が悪いところに派遣されるということも十分あり得るわけでございます。そこで、平和協力隊員の安全ということも政府としては十分配慮する必要があるわけでございまして、そのようなことを念頭に置いた規定でございます。
 ただ、この二十七条の規定は、ごらんのとおり非常に慎重に規定しておるわけでございまして、「平和協力隊員が自己の生命又は身体を防護するため特に必要があると本部長が認める場合には、本部長は、」外国においてこの平和協力隊員に小型武器を貸与することができるということでございます。一項にただし書きがございまして、「ただし、当該外国の法令により当該平和協力隊員による小型武器の所持又は使用が禁止されている場合その他政令で定める場合は、この限りでない。」ということになっております。また、この小型武器の保管は、特に任命されました、指定されました責任者が保管をするということでございます。
 また、三項におきましては、この武器の使用につきまして非常に厳格な規定を設けておりまして、「平和協力隊員は、自己又は他人の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があるに認める相当の事由のある場合で、かつ、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてでなければ、」このような小型武器を使用してはならないということでございます。ただし、そのような場合におきましても、刑法三十六条の正当防衛または三十七条の緊急避難の「規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」ということでございまして、この貸与を行う場合、そして、それをやむを得ず使用する場合につきまして、非常に厳格に規定しているわけでございます。
#253
○池端委員 そういう抽象的なことではなしに、もっと具体的にお答えをいただきたいのですが、それではこの武器使用について、平和協力隊にそうした武器使用のマニュアルというものがあるのですか。
#254
○柳井政府委員 御指摘の点は、法案が成立いたしまして平和協力隊が設置される段階になりまして、この法案に基づく政令におきまして武器の管理、貸与の手続等の詳細を決めることになっているわけでございます。その場合の武器の取り扱いの詳細についても、政令またはより詳細な規則をもって決める必要があると考えております。現在の時点でそのようなことまで案があるというわけではございません。
#255
○池端委員 これからつくるということですね。
 その場合に、武器使用の場合の正当防衛のための行動は、個人として行うのですか、部隊として行うのですか。
#256
○柳井政府委員 先ほどお時間を拝借いたしまして御説明いたしましたように、この二十七条の規定はあくまでも個人の護身用ということでございます。平和協力隊の任務として武器を使用するということは全くないわけでございまして、これはあくまでも正当防衛、緊急避難等の場合におきまして個人の護身用としてやむを得ざる場合に最小限度の使用を認めるということでございます。
#257
○池端委員 部隊として行動するというような場合、その判断はだれがするのですか。
#258
○柳井政府委員 先ほど申し上げたことと若干重複いたしますけれども、部隊として、すなわち任務として、この二十七条の規定のもとで武器を使用するということはないわけでございます。したがいまして、治安が悪いとき等、そこに書いてございますような厳格な条件のもとで貸与される武器を、小型武器を使用する場合と申しますのは、あくまでも個人の護身用ということでございますので、そのような状況に置かれた隊員個人が一義的には判断するということでございます。
#259
○池端委員 その場合、シビリアンコントロールはどういうふうに働くのですか。
#260
○柳井政府委員 二十七条のもとでの武器の貸与、使用は、部隊としてのあるいは任務としての武器使用ということではございませんので、いわゆるシビリアンコントロールというものがそのままの形で適用されるような場合かどうかにつきましては、私は、そういう場合ではないのじゃないかと思いますが、ただ、この武器の使用につきましては、二十七条に詳細規定してございますように、極めて厳格に、かつ、制限的に規定されているということでございます。
#261
○池端委員 それでは、国際法上戦闘行為あるいは交戦についての定義がございますか。
#262
○柳井政府委員 国際法上明確な定義があるとは承知しておりませんけれども、いわゆる武力紛争と申しますのは、通常は国家間の、国家としての武力行使が行われている場合と、いわゆる紛争と申しますものは事実関係あるいは法律関係につきまして異なる主権国家間に見解の相違がある、こういうものが一般的に紛争というふうに考えられておりますが、いわばその解決のために実力の行使を行うというのが武力紛争というふうに言えると思います。
#263
○池端委員 明確な定義はないようでありますけれども、相手国が戦闘と認識した状態が戦闘になる、これが通説のようであります。国際軍事常識では、物資の輸送も前線の後方支援として戦闘の一形態とされる、これが国際軍事常識であります。
 協力隊の任務であります輸送、通信、建設、医療、既に同僚委員が指摘いたしましたように、これらの任務についても、交戦開始もしくは交戦の可能性が高い地域で行えば、常識的にはこれは戦闘行為とみなされる、こういうことになっておるわけであります。百歩譲ってもこれは威嚇の一形態だ、こういうふうに言われておりますが、この認識についてどういうふうに理解をしますか。
#264
○柳井政府委員 二十七条のもとでの武器使用、小型武器の使用につきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、これは平和協力隊員個人の護身のための武器使用ということでございまして、この行為が国際法上国家に帰属するというものではないわけでございます。基本的にはいわば派遣先の国の国内法のもとにおきましての正当防衛その他の行為ということでございます。
 国際法上の武力の行使につきましては、御承知のとおり、自衛権によってその違法性が阻却されない限り、あるいは国連憲章に基づく措置としてとられる場合を除きまして、一般に違法な行為であるというのが現在の国際法の原則でございます。国際法上違法とされるのは国家の行為でございまして、国家の行為は究極的には国家機関たる自然人によってなされるのでございますが、これは個別の事例ごとにその自然人が国家機関として行動したのか否かという点を判断いたしまして、もし国家機関として行動した場合に、その行為が国家に帰属するということであれば国家による武力行使ということになるわけでございます。
 ただ、二十七条の場合は、繰り返しになりますけれども、これは個人の護身ということでございまして、国家による武力の行使というものにはなならないわけでございます。
#265
○池端委員 どうもお聞きしていることにはお答えになっておらないようでありますが、私どもは今般のイラクの行動というのは到底容認できない、こういう立場に立っておるわけでありますが、先日、テレビのインタビューを見ておりましたら、イラクのフセイン大統領は、日本の湾岸支援を敵対行為だ、こういうふうに言っておりました。湾岸支援でさえ彼らは敵対行為と見ているわけでございます。それに加えて、この法案によって多国籍軍への武器弾薬の輸送、場合によっては兵員の輸送も考えている、こういうことになれば、イラクから見ればこの日本の行動というものは、敵対行為より以上の文字どおり戦闘行動の一環と見るのではないか、私はそのことを非常に心配するわけでありますが、その点についてはどうですか。
#266
○柳井政府委員 イラクの事態につきましては、これはもう申すまでもございませんけれども、八月二日にクウェートを侵略いたしまして、国連安保理事会によって平和の破壊というふうに認定されたわけでございます。その後また一連の決議が採択されまして、国連加盟諸国が、国連が、ひいては国際社会が一致してこのイラクの侵略行為、平和の破壊を抑止し、そして平和を回復するということで努力しているわけでございますから、イラクの目から見ればいろいろなことはあるでしょう。しかしながら、この事の本質はイラクの侵略に対する国際社会の一致した制裁であるという関係にあるというふうに認識しております。
#267
○池端委員 ジュネーヴ諸条約に追加される国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書、第一議定書、ここには軍事目標が記されているわけでございます。この議定書の第五十二条「民用物の一般的保護」の第一項、「民用物は、攻撃又は復仇の対象としてはならない。民用物とは、2に定める軍事目標以外のすべての物をいう。」こうなっておりまして、第二項に「攻撃は、厳格に軍事目標に限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献する物で、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものに限る。」こういうふうに規定されているわけです。したがって、武器、弾薬、兵員の輸送を行うのは、この議定書のとおり、攻撃目標になる、その意味では武力行使も側面支援である、武力行使と一体となるものである、こういうふうに私は理解するのでありますが、その理解についてはどうお思いですか。
#268
○柳井政府委員 ただいま御指摘のございましたのは、私の理解に誤りなければ、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約に追加される国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書、いわゆる追加第一議定書であるというふうに理解いたします。
 この議定書自体につきましては、実は我が国は締約国になっておりませんで、また米英仏独等の主要国も当事者になっておりません。そのようなものといたしまして、この議定書の内容につきましては、あるいは慣習国際法で固まったような国際法規もあるとは思いますけれども、この議定書自体は一応普遍性を持つ条約というふうには観念されていない次第でございます。
 なお、多国籍軍に対する補給というような行動につきましては、これまでいろいろな機会に御答弁申し上げておりますように、これはケース・バイ・ケースに判断すべき問題でございますけれども、具体的な事案に即しまして判断いたしまして、武力行使と一体となるようなことは我が国としては行い得ないということは明らかでございます。ただ、補給等の活動そのものが常に武力行使と一体となるというふうには考えていない次第でございます。
#269
○池端委員 普遍性を持っていないからどうだというのですか。我が国はこれに拘束されないというのですか。関係ないというのですか。相手方の意図にかかわらず関係ないというのですか。
#270
○柳井政府委員 通常いわゆる戦時法規の適用関係につきましては、紛争当事国間で、このような議定書なり条約なりの当事国間において適用されるという関係にございますので、その意味でこの追加議定書そのものが普遍性を持った条約ではございませんので、かつ我が国その他主要国が入っておりませんので、そのような関係で適用される場面というのは限られるのではないかということを申し上げた次第でございます。
 ただ、先ほどもちょっと触れましたけれども、この追加議定書の中で慣習国際法を確認したような規定がございますれば、それは当事国になっているか否とにかかわりなく慣習国際法として適用になる部分があろうということでございます。
#271
○池端委員 それでは、角度を変えてちょっとお尋ねいたしますが、武力行使と一体となる輸送とそうでない輸送、その違いを明らかにしてください。
#272
○柳井政府委員 具体的な武力紛争を離れまして、一般的、抽象的に申し上げるのはなかなか難しいところでございますけれども、したがいまして、具体的な事案に即して判断せざるを得ないと考えております。すなわちケース・バイ・ケースに判断せざるを得ないというふうに考えております。
 ただ、非常にわかりやすい例としてこの委員会でもさきに申し上げたような事態といたしましては、例えば地上で戦闘行為が行われている、それに対して空挺部隊が武器弾薬を空から直接補給するというようなものは、まさしく武力行使と一体となるような補給あるいは輸送というふうに考えて差し支えないだろうというふうに考える次第でございます。
#273
○池端委員 ケース・バイ・ケースで考えていくという答弁が非常に乱発されているわけでありまして、我々どうもその判断に困るわけでございます。何でもケース・バイ・ケースに逃げ込まれたら、この法案の審議はどうするのですか。私は、そこにこの法案の持つ大きな問題点がある、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。
 それでは、この平和協力業務のニに言うところの「輸送」ですが、これまでの政府答弁では自衛隊の補給艦及び輸送機を使用する、こういうふうになっておりますが、陸上輸送は行わないのですか。
#274
○柳井政府委員 この法案上は、ごらんいただきますように、この輸送の形態に関する制約は特にないわけでございます。ただ、この法案起案に当たりまして主として私どもの念願にございましたのは、船舶、航空機による輸送ということでございまして、現在のところ、具体的に陸上輸送ということを考えているわけではございません。
#275
○池端委員 どうもおかしいのですね。主として念頭にあったのは海上と空中輸送だ、今のところそれは考えてない。どうなんですか、こんなことが通用すると思いますか。陸上輸送を考えているのか、陸上輸送は含まれているのか、はっきりしてください。
#276
○柳井政府委員 先ほども申し上げましたように、この法案上は陸上輸送を排除しているものではございません。ただ、現在の事態におきましてそのような陸上輸送は考えておらないということを、これも先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、将来の問題といたしまして、例えばPKOに対する協力に当たりまして何らかの陸上輸送をするということがあり得ないことではない、そういうこともあり得るというふうには考えております。
#277
○池端委員 現在は考えていないけれどもあり得ないわけではない、これが法律解釈ですか、これが法律の条文ですか。それじゃ、あり得ないわけではないと、こうおっしゃったのだから、あるというふうに理解します。
 そうすれば、この陸上輸送を行うとすればどういう手段を使うのか、また、その輸送業務に当たるのは協力隊員なのか自衛隊員なのか、お答えをいただきたい。
#278
○柳井政府委員 今具体的に考えているわけではございませんけれども、陸上輸送ということになりますれば、常識的にはトラックにより何らかの物資を輸送するということであろうと思います。それでは、だれが輸送するかという点の御指摘でございますけれども、これは平和協力隊員が輸送するということでございます。
#279
○池端委員 常識的にはトラックだとか、そういう答弁がまかり通るんですか。常識的にはトラックだと。
 それじゃ、そのような輸送業務を行っている最中に、トラックが移動中に前線で武力行使があった、あるいは紛争が始まった、その場合はどうするんですか。
#280
○柳井政府委員 仮定のまた仮定でございますので大変お答えしにくいのでございますが、これも再三御答弁申し上げておりますように、協力隊の海外派遣につきましては、その業務計画の作成の段階におきまして国際情勢その他を総合的に勘案いたしまして、そのような事態が発生しない、そのような事態に至らないように万全を期する考えでございます。万が一ということもあるかもしれませんけれども、やはりこれは何も戦闘部隊を送るというものでは毛頭ないわけでございますから、そのような場合に危険を回避することに全力を尽くすということでございます。
#281
○池端委員 業務計画作成の段階で検討するというのは、これはおかしな話でありますがね。
 要するに陸上の輸送でありますから、これはやはり前線に近づくという場合も大いにあり得る、紛争の渦中に巻き込まれる、こういう事態は大いに予想されるわけであります。その場合どうするのか、もうちょっと明確にしてください。
#282
○柳井政府委員 繰り返しになりますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように現在陸上輸送を行う考えはないわけでございますから、したがいまして、行った場合にどうなるかという想定に対しましては非常にお答えしにくいわけでございます。現在そういうことは考えていないわけでございます。
#283
○池端委員 現在考えてないけれども将来あり得る、こうはっきり言ったじゃないですか。法律上は排除されていないんですよ。前々から言っているように何らの歯どめがかかっていないんだ。全部こういう状況だ。ここで平和協力、そうじゃなくて戦争協力じゃないですか。
#284
○柳井政府委員 この点、いま一度確認申し上げたいと思いますけれども、先ほど私が御答弁申し上げましたのは、現在のこの湾岸情勢のもとで陸上輸送をするというような考えはない、ただ、将来の問題といたしましてPKOのような活動につきまして陸上輸送を行うということは、そういうことはあり得るであろうということを申し上げた次第でございます。
#285
○池端委員 それでは、今もお話があったようにPKOに限定しているというのはどの、法律上の根拠を示してください。
#286
○柳井政府委員 この法律上は、一番初めに御答弁申し上げましたように、この輸送業務の形態等につきまして限定はないということでございます。ただ、現在の湾岸情勢のもとでそのようなことを行う考えはないということと、一例として申し上げましたけれども、将来のPKOということはあり得るであろうということでございます。
#287
○池端委員 納得できませんけれども、時間が来ましたので次に進みます。
 次に、捕虜の待遇に関するジュネーブ条約に関連してお尋ねをしたいと思うのであります。
 いわゆる第三条約の第四条Aの(4)には「実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員、従軍記者、需品供給者、労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。」こういうふうに書いておりまして、つまり「軍隊に随伴する者、」という認定を受けるのではないか、こういうふうに思うのですが、この点についてはどうでございますか。
#288
○柳井政府委員 ジュネーブ第三条約、四九年の捕虜の待遇に関する条約でございますが、第四条は、同条約における捕虜の定義について規定しているわけでございます。同条Aの(4)は、同条約に言う捕虜といたしまして、「実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、」に属する者で「敵の権力内に陥ったもの」が含まれるということが規定されております。この点、御指摘のとおりであると思います。
 この御指摘の条項を含みますジュネーブ第三条約と平和協力隊の関係につきましては、平和協力隊の海外派遣に当たりましてはその時点での国際情勢等を勘案して、派遣先を含む基本方針等を慎重に考えるわけでございますので、したがいまして、平和協力隊が紛争に巻き込まれるというような事態が起こらないように万全を期するということは、先ほど来申し上げたとおりでございます。したがいまして、平和協力隊員が捕らえられるというような事態は実際問題としてちょっと考えにくいわけでございます。
 ただ、申し上げましたように、御指摘のような事態がそれでは実際仮定の問題として起こったときどうするかという点の御指摘でございますが、これは紛争当事国というふうに我が国が考えられる事態はちょっと想定しがたいわけではございますけれども、ある国が我が国を紛争当事国とみなすというような場合について、純理論的な観点から述べれば次のようなことであると思います。
 自衛隊から参加しておられます平和協力隊員は、この第三条約第四条Aの(1)に言うところの「紛争当事国の軍隊の構成員」ということで捕虜になる資格があるというか、捕虜として取り扱いを受けるということでございます。
 他方、自衛官でない平和協力隊員につきましては、第四条約、これは文民の保護に関する条約の方でございますけれども、その第四条約の第四条によりまして、これは捕虜ということではなくて「被保護者」、「保護される者」として第四条約の保護を受けることになりまして、平和協力隊員の中で、御指摘のジュネーブ第三条約第四条Aの(4)に該当する者はないと考えております。繰り返しになりますが、自衛官でない平和協力隊員につきましては、「被保護者」として第四条約の保護を受けるというふうに考えております。
#289
○池端委員 文民の保護に関する第四条約の適用を受ける、こういうことですね。これは紛争当事国の住民全体に適用される条約であって、住民の一般的な保護について定めた条約だ、私はそのように理解をするわけであります。
 そうではなしに、私が問題を提起したのは、第三条約の第四条Aの(4)、これに該当することになるのではないか。「それらの者がその随伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。このため、当該軍隊は、それらの者に附属書のひな型と同様の身分証明書を発給しなければならない。」こうなっている。どこが身分証明書を発給するのですか。
#290
○柳井政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、この平和協力隊はいわゆる「軍隊に随伴する者、」というふうには私ども考えていないわけでございますので、そのような者に対する身分証明書を出すというようなことはこの場合はないというふうに考えております。
#291
○池端委員 ジュネーブ条約の第三条約の第四条のAの(4)にはっきり書いてあるわけですよ。「実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員、従軍記者、需品供給者、」まさにこれは輸送業務に携わっているのは需品供給者じゃないですか。それから「労務隊員」、いろいろ建設作業。「労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。」は、これは随伴者とみなす、こういうことです。その者については身分証明書がなければだめだ、こうなっている。その身分証明書はどこが発給するのか。我が国の自衛隊ですか、アメリカ軍ですか、はっきりしてください。
#292
○柳井政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、この平和協力隊と申しますものは、この法案に基づきまして、この法律に基づきまして、この三条に掲げられたような任務を遂行するものとして日本政府の一機関として設立されるわけでございます。したがいまして、「軍隊に随伴する者、」というものではないわけでございまして、これは国家機関の一つでございますが、ここで申しておりますような軍隊の随伴者、従軍記者等、そういうようなものではないわけでございます。
 それでは身分証明書をだれが出すかということにつきましては、これは当然平和協力隊の本部が、平和協力隊員であるということを証明する何らかの身分証明書を出すことになるというふうに考えております。
#293
○池端委員 全く納得しがたい答弁でございます。改めてこの問題については委員会で深めたいと思います。
 津島厚生大臣、私、医療活動についてもお尋ねをしたいと思っておったのでありますが、時間も来ましたのでこれは同僚の五島議員に関連質問として譲りたいと思いますが、最後に、国連の基地の問題について一点お伺いをいたします。
 現在、在日米軍基地において国連基地に指定されているのは我が国で何カ所ございますか。
#294
○松浦政府委員 今韓国におります国連軍との間には地位協定を結んでおりまして、在日米軍の基地が基本的には提供することになっております。
#295
○池端委員 それで何カ所国内にありますか。
#296
○松浦政府委員 申しわけございませんが、現在手元に資料がございませんので、何カ所かちょっと数は存じません。
#297
○池端委員 それじゃ私、申し上げますが――わかってるの。
#298
○松浦政府委員 先生、何カ所かという御質問でございますけれども、七つの在日米軍の施設、区域を使用することができるとされております。(池端委員「箇所名、基地名もあわせて言ってください」と呼ぶ)
 それでは七カ所の施設、区域の名前を申し上げます。キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイト・ビーチ地区、以上七カ所でございます。
#299
○池端委員 この問題については、後ほど同僚議員の上原議員からお尋ねをいたしますので、その点に譲ります。
 最後に、総理、出番がなくて手持ちぶさただと思うのでありますが、先ほど私が申し上げました「早稲田雄弁会八十年史」には、早稲田出身の政治家の演説集があるわけですね。大山郁夫、石橋湛山、浅沼稲次郎、大隈重信、永井柳太郎、緒方竹虎、こういう諸先輩の名前の演説集が載っておるわけです。その中で、特に、先日も中山議員からお話がありました斎藤隆夫代議士の昭和十五年二月二日の第七十五帝国議会における演説集も載っておるわけであります。ここで斎藤議員は、「聖戦の美名に隠れて」、こういう題での演説をしておるわけであります。それをちょっと申し上げたいと思うのでありますが、
  唯徒に聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く道義外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和斯くの如き雲を掴むような文字を列べ立てて、そうして千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことがありましたならば……、現在の政治家は死しても其の罪を滅ぼすことは出来ない。私は此の考を以て近衛声明を静に検討して居るのであります。
これはいわゆるシナ事変処理に関する質問演説でございます。
 私は、この法案も、平和、国連、協力という耳ざわりのいい言葉がちりばめられておりますけれども、やはりこれは国家百年の大計を誤るものではないか、こういうふうに思うのでありまして、聡明な海部総理、再考をお願いをしたい、そして潔くこの法案を撤回をしてもらいたいということを重ねて強く要求して、私の質問を終わります。
#300
○加藤委員長 この際、五島正規君から関連質疑の申し出があります。池端君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五島正規君。
#301
○五島委員 先輩議員である池端議員に時間を譲っていただきまして、残りの時間、質問したいと思います。時間がございませんので、本法第三条に定めております「平和協力業務」のその中において、医療活動を中心にお伺いしたいと思います。
 本法によって「医療活動(防疫活動を含む。)」というふうに書かれているわけでございますが、現実のこの中東湾岸危機に際して、防疫活動を除く医療活動としてどのような医療行為を想定しておられるのか。一次医療、二次医療、三次医療という医療の概念がございますが、一次医療を担当しようとしているのか、あるいは二次、三次医療を担当しようとしているのか、お伺いしたいと思います。
#302
○石川国務大臣 自衛隊が協力隊に参加をいたしまして医療活動を行う際の内容でございますけれども、現にまだその具体的な要請を受けておらない段階でございますから、その実態についてはまだ明確な御答弁はできないわけでありますけれども、一応自衛隊が所有しております医療隊といいますか、そういう内容からの一般論としてのことにつきまして、衛生参事官から答弁させたいと思います。
#303
○玉木政府委員 ただいま防衛庁長官が申し上げましたように、自衛隊としましてのどのような協力ができるかということでございますが、自衛隊には衛生隊というものがございまして、平常の教育訓練を積んでおるわけでございますけれども、その中身といたしましては、一般的な傷病を有する者に対する救急的な一次医療及び一部二次的医療のほか、重症の傷病を有する者に対する応急的処置並びに後方の高度医療機関への移送、それから自衛官に対する健康管理とか隊内の防疫及び環境衛生活動等を平常の教育訓練として実施いたしておりまして、そういう点から考えてみますと、平和協力としての医療では、主として、先ほど委員の御質問にございました伝染病に対する防疫活動、それから栄養障害者に対する栄養補給の問題、乳幼児に対する予防接種、飲料水の確保、一般市民に対する医療の提供及び民間医療活動への協力、このようなことが考えられるのではないか、このように考えております。
#304
○五島委員 今、防疫活動を含めて御返事いただいたわけですが、玉木参事官の話によりますと、現実医療の問題としては、救急医療あるいは救急処置という一次医療を中心という話でございました。そうなりますと、この医療隊が活動するエリアというのはどういう地域を想定しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
#305
○赤尾政府委員 医療活動に従事する平和協力隊員が行います、あるいは派遣されます地域といたしましては、まず国連決議がございまして、その国連決議に基づく……(五島委員「湾岸に限ってですよ」と呼ぶ)湾岸のことを言っておられるのですか。
 現在の医療活動につきましては、先般先遣隊が行ってまいりまして、その先遣隊の報告に基づきまして、ただいま東部のイラク国境から三百キロメートルばかり南へ下がった地点に、アル・コバルといいますけれども、一つ拠点を設けて、そこを拠点にして活動を行うことを考えております。
#306
○五島委員 アル・コバルで医療活動をするということになりますと、先ほど玉木参事官がおっしゃいましたような一次医療あるいは応急処置という話になりますと、アル・コバルが戦場になるとお考えになっているのか。もしそうでないとすれば、後方医療機関であるならば、一次医療でなく二次医療、三次医療をやるということになると思うわけでございますが、その点についてはどのようにお考えなんでしょうか。
#307
○赤尾政府委員 先遣隊の報告に基づきまして私たちはアル・コバルに活動拠点を設けるということにしたわけでございますが、先遣隊の報告によりますと、そこがまず戦闘地域になることはないだろうという判断がございまして、その判断に基づいて設営しておるわけでございます。
#308
○五島委員 戦線にならない、したがって一次医療の対象でないとするならば、当然後方医療として二次医療、三次医療を分担するということになると思うわけでございます。そうなるとするならば、それに対応した医療施設というものがそこにつくられないといけないということになると思うわけですが、その点について、そのような御計画があるわけでございますか。
#309
○赤尾政府委員 今置いております拠点におきまして直ちに強い需要があるというわけではなく、活動拠点をつくりまして、そこに移動病院車を送りまして移動病院でその地域の関係者の治療に当たると同時に、近くの病院、大学等におきまして外科を中心にした講義その他の指導に当たるというのが当面やることでございますけれども、万一不幸にして紛争が拡大しましたような場合に、例えば被災民等が、今は北の方におりますからアル・コバルまで来ておりませんけれども、そういう方たちが南下してくるだろう、その際に一次医療を主体に行いまして、応急処置を施した後、近くの病院施設に移すというのが計画でございます。
#310
○五島委員 もし戦闘行為が起こって、被災住民が負傷しあるいは傷病を持って三百キロのところまで移動してきた場合に、その人たちに対して一次救急を行う、このようなばかげたことが医療という範囲の中においてあるのか。まさに医療というのは、一次医療をやるのならば、そこで災害が起こっているところに行かざるを得ないではないか、それが医療の当たり前の原則ではないですか、どうお考えなのですか。
#311
○津島国務大臣 委員が専門家の立場から御質問をいただいておりまして、私も真剣に承っておるのであります。先般当地に参りました先遣隊が私どもに送ってまいりました報告書の中身は先ほど外務省から概略御答弁ございましたが、一言で申しますと、現状におきましては遠隔地における医療の体制が十分ではなくて、十分に医療貢献の可能性はあるが、今後どういうふうに事態がいくかによりまして、委員がまさに今おっしゃっているように対応の仕方がいろいろあるであろう。そこで、私なりにこれを判断をしてみますと、現在、先遣隊の後でまた二人のドクターが行って現地でいろいろ勉強しておりますけれども、一つには脳神経外科、整形外科、心臓外科等の専門的な分野で先方の医療スタッフと十分な情報の交換と知識の交換をやる、これは現在でも既にできるから、私は恐らくやる方向で準備をしておると思うのであります。
 そのほかに現実にどういうやり方をするかということは、やはり今後の事態の推移を見ないと的確には申し上げられないというのが現状であろうと思いますけれども、委員が今御指摘のような一次から三次にわたる体制をどう組み合わせるかは、まさに今後の事実検証の問題にかかっていると私は思っております。
#312
○五島委員 今、厚生大臣がおっしゃったような脳外科あるいは心臓外科に対する技術研修を主としてやるのであれば、何もこんな平和協力法でやらなくたって、現在ある国立医療センターの海外協力部の中において十分やれる業務であるはずですね。この平和協力法において医療団を派遣するというのは、まさにそこに戦争災害が発生するかもしれない、それに対する医療部隊を出すということでございましょう。それに対して一次医療をやるのか二次医療をやるのか。前線から三百キロ離れたところでやるのであれば、それが当然二次医療、三次医療ということになるが、その二次医療、三次医療を日本としてはやっていくということなのかということをお伺いしているわけです。
#313
○津島国務大臣 これまでの報告からでも、既に今後かなり現地の需要が高まってくる可能性はある、逆にいえば、貢献の可能性はある、こういうことでございますが、私どもの方の供給側の方から申しますと、今のような前段階的な段階では、意欲のある方々にお声をかけてそして参加をしていただくことはできるけれども、しかし今後、このような貢献の幅が広がっていった場合、それから時間が長くなった場合には、残念ながら今のままの私どもの力では及ばないのではないかという認識を持っているわけでございます。
#314
○五島委員 時間がございませんので、この問題について先に進みたいと思います。
 先ほど防衛庁の参事官が申していましたけれども、一次救急、一次医療として、戦闘行為が起こり、被害が起こった前線に医療団を出すということはあるのかないのか、まずそれだけ簡単にお答えください。
#315
○赤尾政府委員 医療チームを前線に出すという予定はございません。
#316
○五島委員 続いて、この平和協力隊が今回湾岸でもし行動するとした場合、これは傷病兵医療を行うのか、あるいは住民医療を行うのか、被害を受けられた住民の医療を行うのか、この点についてお答え願いたいと思います。この二つを混同するというのは、現実問題としてあり得ない。したがって、前線でない後方においては、そのいずれかをやるということになると思うわけですが、住民医療をやるのか、傷病兵医療をやるのか、それを明確にお答えいただきたい。
#317
○赤尾政府委員 実際に必要が起こった場合の状況にもよりますけれども、ただいまの医療協力といたしましては、傷病兵の治療並びに被災民の治療双方を考えております。
#318
○五島委員 そのようなばかげたことが起こるかどうかは考えればわかるわけなんで、一方は、軍のシステムとして傷病兵の医療のチームというのを二次医療、三次医療においては当然持つわけでございます。したがって、そのチームの中の一員として入って医療をするのか、それともそのチームから除外される、いわゆる一般住民の被災者に対しての医療を行うのか、あるいはその両方のチームを出すというのか、その点を明確にしてください。
#319
○赤尾政府委員 その状況いかんによりますけれども、考えられますことは、万一紛争があった場合に、例えば被災民等が南の方に逃げてくるという可能性が非常に高いと思います。そういう場合には被災民の治療が中心になるかと思いますけれども、同時に、前線等で治療を受けられなかった、あるいは十分治療を受けられなかった人たちがその都市の病院に運ばれてくる可能性等もございます。したがいまして、双方の可能性を想定して準備を進めているわけでございます。
#320
○五島委員 あり得ないような話をしてもいけないわけで、傷病兵医療というものについては軍の医療システムの中において当然やられるわけです。これは前線における一次医療の場合は別ですよ。しかし、現実に後方医療においてはそれは明確に分けられる、これはもう常識でございます。そのような国連局長の話というのは全く信用できない。
 続いて、今アル・コバルにアパート二室借りまして医療拠点というのをつくられたわけですが、この医療拠点というのは、そういう紛争が起こり、そして被害者が出、そしてその被害者がアル・コバルまで待避してこられた、その時期において初めて医療行為を行われるのか、それまでにおいても医療行為を行われるのか、どうなんでございますか。
#321
○赤尾政府委員 アル・コバルが活動の拠点でございますけれども、例えば移動病院車を持っていきまして、その周辺地域の住民等の治療に当たるということも考えております。
#322
○五島委員 紛争が行われていない状況の中において、サウジにおいて医療拠点を軸にして医療行為を行うということになった場合、当然日本の医師法のもとにおいて住民医療を行うということなわけですが、日本の医師法はサウジアラビアで通用するのですか。
#323
○熊代政府委員 お答えいたします。
 日本人医師がサウジアラビアで医療行為を行うことにつきましては、日本の医師免許がありかつ医療の経験のある医師であれば差し支えない旨、外務省を通じまして同国保健省から御回答をいただいております。
#324
○五島委員 ということは、サウジアラビアと日本との間において医師免許が通用できるという協定ができた、今後サウジアラビアにおいて日本人医師が医療行為することについて何ら問題がなくなったというふうに解釈していいわけでございますね。
#325
○長谷川(慧)政府委員 お答え申し上げます。
 医師免許につきましては、先生も御案内のとおり、ある国とそれからその外国との間で、それぞれの国の医師免許を有しておればそれぞれの他国におきましても医師免許を有する者ということで医療行為を認めるということを双務的に認めているということがあるわけでございますけれども、我が国におきましては、現在どの国との間におきましてもこういう双務的に認めていることはございません。
#326
○五島委員 矛盾じゃないですか。先ほど厚生省の方は、外務省からその日本人の医師免許が認められたというふうに言われた。今は双務的なものであるから認められないというふうに答えておられる。どうなっているんですか。
#327
○長谷川(慧)政府委員 私が御答弁を申し上げましたのは基本的な物の考え方でございまして、サウジとの間の関係におきましては、サウジの国の方で特別的に認めておるというぐあいに聞いておるところでございます。サウジアラビアの国におきまして日本の医師が、医師免許を持っている方が向こうで医療行為をすることについては認めておるということでございます。
#328
○五島委員 医師免許の問題は、先ほど申し上げましたように双務的なものでございます。したがいまして、サウジアラビアで認めたということよ、日本もサウジアラビアの医師免許を認めたということでございますか。
#329
○津島国務大臣 医師免許の日本における扱いについて申し上げますが、日本国とある国との間で、それぞれの国の医師免許を有していれば他国においても医師免許を有する者として医療行為を認めるという、双務的な扱いをするという原則が一般にはございますが、我が国は、現在どの国との間においてもこれを行っておりません。
#330
○五島委員 医療先遣隊に参加した医師から聞いた話によりますと、東部州において医師、看護婦が流出していった、そういうふうな中において、日本人の医師が東部州に働いている外国人労働者に限って医療行為をすることについてサウジアラビアの保健省は了承したというふうに聞いたわけでございますが、そのような事実はないのでございましょうか。
#331
○赤尾政府委員 サウジアラビア政府と日本の大使館あるいは先遣隊との話し合いで、日本から派遣される医療協力チームがサウジで医療活動ができるということの了解をサウジの外務省及び保健省から得ているわけでございます。なお、その際に日本の医療チームが診察をできるのは外国人だけであるという了解はございません。ですから、一般に、サウジの方もそれ以外の方も診ることができる、そういうことでございます。
#332
○五島委員 今の外務省の話は無理があるわけですね。厚生省がおっしゃっておられますように医師免許は双務的なものであるし、したがいまして、サウジアラビアと日本との間において了承されているのは、あくまで緊急避難的な一次医療というものが想定された形でこれができていると解釈するのが常識でございます。それを二次医療や三次医療というふうに話を持っていっているところにその問題の混乱が起こっているわけです。一次医療ということになれば、これは当然その災害が発生したところにおいて治療行為を行っていくということが常識である、またそうでなければならないというふうに考えるわけですが、そこで外務省にお伺いします。
 クウェートとサウジとの国境線に非常に近いところにラスアル・カフジという町がございますが、これはサウジ、クウェート国境から何キロ離れているでしょうか。――時間がないのでもうあれですが、このカフジという町はクウェートとサウジとの国境線に極めて近いところにある。言いかえれば、多国籍軍が展開している、その部隊よりもより国境に近いところにある地域でございます。そこに現在なお日本のアラビア石油の企業が操業しておりまして、約百名の日本人が働いている。こうした極めて前線に近いところで日本人が働いている。この日本人に対する安全確保の問題あるいはイラクの中で人質になっておられる、あるいは出国を停止されている日本人のそういう救出の問題、その点について外務省ほどのような方策を今お持ちなんでしょうか、教えていただきたいと思います。
#333
○久米政府委員 カフジについて御質問ございましたが、サウジの東部州、これは先ほど申しましたアル・コバルから北に向けて約三百キロぐらいに邦人社会が散在しておりますけれども、東部州、とりわけその中でもこのカフジにつきましては政府といたしましても非常に重大な関心を持っておりまして、かねてから、そういったことについての緊密な連絡体制を邦人の方々との間に確立するために、東部州の中の中心に位置しますアル・コバルに邦人保護の要員として在サウジ大使館の館員を長期出張させておりまして、カフジのアラビア石油を含めて各社との間で緊急対策について緊密な連絡をとり合って遺漏なきを期しているところでございます。また、サウジ当局あるいは現地の米側関係者に対しても十分な配慮を要請いたしておりまして、このほか、特にカフジにつきましてはアラビア石油の方でも万が一の事態が起こった場合の対応策について、大使館とも連絡をとりつつ、現地事情を勘案した幾つかの緊急避難の対策というものを講じていると承知しております。
#334
○五島委員 時間がございませんので、最後に一つお伺いしますが、医療団を派遣するといった場合に、先ほど自見委員の質問に対して答えておられましたが、七百二十九名の自衛隊の医官がいるといっても、研修生あるいは大学院生を除きますと、四百十数名しか現実に医療に従事している防衛医官はいない。その中で約十八ですか十六ですかの自衛隊病院の医療を行おうとするならば、医官がほとんどいないというのが現状でございます。
 そういうような中で、もし医療団を派遣するとするならば、民間の医師をボランティアで集めていく、あるいは他の、厚生省なり文部省の医官を連れていくということが必要になるわけですが、その場合に自衛隊という一つの階級社会とそれから外部からのボランティアの医師というふうな混合体の中において、現場の医療という特殊な行為がやっていけるのかどうか、その点について最後にお伺いしたいと思います。
 あわせまして、資料要求として、先ほどサウジとの間に協定ができたというふうにおっしゃいましたので、その協定の内容について資料を要求したいと思います。
#335
○中山国務大臣 この法案を成立をさせていただいた後で自衛隊の衛生隊を出す場合におきましても、委員、専門家でいらっしゃいますが、チームでいわゆる現地の外科を中心にした医療が行われると思いますけれども、その場合には、やはり今御指摘のように自衛隊の医官も相当定員を割っておることは私もよく存じております。そういう意味で、このチームの構成につきましてはいろいろと実施計画において十分検討しなければならない、このように考えておりますが、ボランティアだけをお願いするよりも、はるかに部隊として、チームとして出すには一つのベースができ上がるもの、私はこのように認識をいたしております。
#336
○加藤委員長 御指摘の、我が国とサウジアラビアの間の医療行為についての双方の間の取り決め等につきましては、後刻、その資料提出問題について、理事会で諮ります。
#337
○五島委員 私の質問を終わります。
#338
○加藤委員長 これにて左近君、池端君、五島君の質疑は終了いたしました。
 次に、東祥三君。
#339
○東(祥)委員 総理初め関係閣僚の皆さん、私は公明党の東祥三でございます。
 私は、ことしの二月の総選挙におきまして初当選させていただきました。今までUNHCR、つまり国連難民高等弁務官事務所の職員としてトルコ、ホンジュラス、エチオピア、スイスなどの国々で難民救済の仕事に従事してまいりました。もとより私は政治家として素人同然でございます。本日、このように総理並びに関係閣僚に対しじきじきに質問させていただき、まことに光栄の至りでございます。
 初めに、今回の国連平和協力法案に対しては、断固反対でございます。
 その主な理由はたくさんありますが、三つあります。戦後四十五年一貫してきた日本の平和主義及び日本国憲法の精神を逸脱していること。二つ、日本が国連中心主義の原則から大幅に踏み出すおそれがあること。そして三つ目、緊急湾岸地域に対する日本の貢献と今後の国際紛争時における日本の貢献とを混然一体にしている。したがって、この平和協力法案に対しては断固反対であり、この撤回を要求する次第でございます。
 本日の質問は、今までの国際連合に勤務していた経験に基づいて、今まで聞いておりますと、ともすると国内議論あるいは憲法議論にとらわれがちになっておりますので、できれば一歩踏み出して、湾岸危機に対する日本の貢献策あるいは国連平和協力法案の問題点、同法の運用、また具体的には中東の避難民や難民救助について御質問をさせていただきます。
 一年生議員でございますので、経験豊富な総理に対し大変失礼な言動や、永田町の論理にそぐわない質問もするかもわかりませんが、どうかお許しください。長年世界じゅうを歩いてきた経験から幾つかの提案もいたしたいと思いますので、時間の関係上、簡潔なる御答弁をお願いいたします。
 まず初めに、巷間伝え聞くところによりますと、海部首相、あなたは種々の圧力を受けつつも、平和主義を貫き通している政治家であると聞いております。総理の師匠である故三木元総理は、平和原則にのっとった主義主張を貫徹されたたぐいまれな偉大な政治家でありましたし、そして総理も、その御遺志を継承された希有な政治家であると私は個人的に尊敬いたしております。その意味で、今回の国連平和協力法案の内容は、総理の本意に反する内容ではないのかと私は推察いたしておりますが、まず総理の御所見を簡単にお伺いしたいと思います。
#340
○海部内閣総理大臣 湾岸危機が起こりましたころに、私は委員の顔写真入りの御意見を新聞で拝見いたしまして、国連の諸活動に参加していらっしゃった体験から、いろいろ国連に対する日本の協力が必要であるということを力説されておった論文を私は拝見させていただいて、大変心強く読ませていただいたことを今覚えております。そして、国連活動を実際に体験された方の御意見とはこういうものなんだと思って私もますます意を強くして、国連が果たしていく役割、同時に国連が果たしていかなきゃならぬ役割に、日本も黙って見ているだけじゃなくてできる限りの協力をしなければならぬということを考えたわけであります。
 もちろん、そのできる限りの協力というのは、今具体的に御指摘いただいたように、憲法の平和主義というものの許される枠内でありますし、また、国連が憲章で掲げている平和目的、平和理念というものについて私は賛成でありますから、そういった意味で平和主義を貫いていって、国際社会の平和の破壊者とかあるいは今なお存在する侵略者、力を信奉して弱肉強食をやるような国はこの国際社会で許してはならないという国際社会全体の共同行為の中に日本も協力して入っていかなければならぬ、こういう気持ちでありますから、この平和協力法案というものは、そういった考え方に立っての法律であるということをどうぞ御理解をいただきたいと思います。
#341
○東(祥)委員 わかりました。基本的には総理はまだ撤回する意思がないということを承ったと思います。
 今回のイラクのクウェート侵略及び併合は決して許されるべきではないということに関しては、国民的なコンセンサスができておると思います。そしてまた、国際的、地域的軍事危機に際して、日本は平和的解決に向けた何らかの国際的な貢献をしなければならないということに対しても、国民的なコンセンサスはできていると私は思っております。しかしながら、こういった冷戦後の新時代における国際的、地域的、軍事的危機に対して日本がどのような国際貢献をすべきなのかということについては、全くコンセンサスはできていない。つまり、国際貢献のあり方に関してはまだまだ国民の合意は得られていないと思っております。ただし、今日までの議論を通じて、自衛隊を組織として外国に送り出すということに関しては、国民的合意として送ってはならないのではないか、このようになっているのじゃないかと思います。
 こういう視点から、日本の国際貢献のあり方について総理に素朴な質問をいたします。したがって、素朴に答えていただきたいと思います。
 まず総理、なぜ物とお金を中心にした貢献だけではいけないのですか。
#342
○海部内閣総理大臣 日本が国際的にどのような批判をきょうまで受けてきたかは、国連で活躍された委員はよく御承知と思います。それは、日本がきょうこういうような事態になったのは、世界のすべての国々の平和と自由な貿易の中においてお互いの相互依存関係、互恵関係を通じて成り立ってきたことは御承知のとおりと思います。そうして、日本の対外政策というものが経済政策中心であり過ぎたがために、エコノミックアニマルとかいろいろ余り芳しくないうわさも耳にするようになってきました。
 そういったものはやはり率直に世界にある意味では還元もしていかなければならぬ。同時に、平和という環境のもとで日本が今日あるわけですから、平和という環境を守るためには、日本も小ぢんまりと国内でつじつまを合わしていないで協力をしなきゃならぬ。その協力の場を与えてくれるのが、やはり国連憲章に基づいた国連の活動がようやく冷戦時代の終わりを迎えて効果をあらわし始めつつあると、私はこう認識しましたので、お金、物だけじゃなくて、できるだけみんな一緒になって助けていこう、それは国連憲章の前文にも書いてあることであり、日本国憲法の前文にも書いてあることであり、自国のことのみ専念して他国のことを顧みないのはいけないということが日本の憲法にも書いてあるし、また国連憲章にも、みんな平和を愛する隣人として、よき隣人として国際社会では手を携えて協力していかなきゃならぬということが明確に出ておるわけでありますから、私は、汗を流して、みんなの力を合わせて協力しなければならぬという国連憲章や日本国憲法の前文に書いてある平和主義の理念に基づいて、お金や物だけよりも汗を流そうと、こう決心をしたのであります。逆に、お金や物だけでいいという意見を私は声高に言う勇気はございません。
#343
○東(祥)委員 いろいろとお話ししてくださいまして、中に重要なこともありますので、その分は後で引用さしていただきますが、具体的に聞かさしていただきます。
 どこの国が金と物を中心にした支援策だけではだめだと言っておりますか。
#344
○海部内閣総理大臣 いろいろな国々の情報すべてを取り寄せておるわけではありませんのでいけませんが、私はそういう世論があるだろうということを、今詳しく申し上げたように、日本国憲法の前文と国連平和憲章の前文を踏まえて私営身がそう判断するとともに、国際会議なんかへしょっちゅう参りますが、エコノミックアニマルと言われたり、日本は自分の国のことだけしか考えない、人の国に迷惑をかけることを考えない、いろいろなところで聞かされ続けてきた私の政治家としての体験から申し上げておるところでございます。
#345
○東(祥)委員 ここに、「ワールド・ミリタリー・アンド・ソーシャル・エクスペンディチャー」という一九八九年の権威あるデータがあります。戦後、第二次世界大戦後一九八八年まで、戦争と言われるものが百二十七ありました。二千百万人以上のとうとい命が死んでおります。日本はその間、私の知る限りにおいて基本的にこういう国際危機、地域的紛争に関して一切貢献はしてこなかったと思っております。それは、まさに日本国憲法に基づいたその精神が許さなかったからこういうところに介入しなかったんだろうと思います。
 重ねてお伺いいたします。総理、どの国が具体的に、例えば日本の自衛隊、それも組織として送れという要請をされましたか、具体的に挙げていただきたいと思います。
#346
○海部内閣総理大臣 自衛隊を組織として送れということを私は聞いたこともありませんし、やろうとも思っておりません。平和協力隊をきちっと日本が自主的に考えて協力をしよう、しかもそれは自衛隊を組織として戦闘部隊として送ろうなんということは毛頭考えておりませんので、どこの国もそんなことを私のところへ言ってきた人はありません。
#347
○東(祥)委員 もう一度先ほどの質問に戻ります。
 それでは、日本がお金と物を中心とした支援だけではだめだと言っている国はないんですね。
#348
○海部内閣総理大臣 ある、ないよりも、私自身がそう判断しておるということを先ほど来何回も申し上げております。
#349
○東(祥)委員 わかりました。総理独自の判断であるということです。
 それでは、続いて質問いたしますけれども、国際社会の反応、私はこれまで国際連合の二つの専門機関の職員として働いてまいりました。いろいろな国々で働く機会を体験しましたけれども、その多くの方々と日本の国際貢献に関しても議論いたしました。また、現在も議論しております。
 そこで私が感じることのまず最大のポイントは何かというと、先ほど総理もおっしゃられましたけれども、日本が国際社会において重要な国になっていて、それなりの役割を担ってもらいたいということはよく言われました。ところが、ここでポイントになることは、重要な国というのはどういう意味なんですかと私が聞きますと、日本は経済的に重要な国であるということで、政治的にあるいは軍事的に重要な国であると言った人は一人もありませんでした。日本の平和憲法もよく理解しております。また、自衛隊も送れないということもよく理解しております。そういう意味におきまして、私の経験からいったとしても、世界のいろいろな国々で人を送れということは聞いたことがありません。物で、またお金で十分なのではないかということも聞いたことがあります。これでは不十分なんでしょうか、総理。
#350
○海部内閣総理大臣 お言葉を返すようで大変恐縮ですけれども、私の体験からいくと、人を送れ、人を送ってくれたらうれしいということは、今のこの現状じゃありませんよ、三十年前に私が初めて当選したとき、日本青年海外協力隊というものを考えて、物やお金だけではいけないから、日本人が出て行って汗を流して一緒になってその国の国づくりに励もう、アジアの国やアフリカの国や中南米の国へ毎年毎年努力をして送って、延べの人員でもう五千名を超えるぐらいの大勢を送りました。今現在千四百名の青年がいろんなところへ行って汗を流しておってくれます。そういったところへ激励に行くと、もっと人を送ってくれ、日本と一緒にいろんなことをしたい、人をたくさん出せという声は、そういった国々から随分出ておることを私は肌で感じてきておるわけでございます。
 それから、物やお金だけで満足だ、それでいいというならば、どうして世界にああいった、日本に対して、経済中心だ、お金のことしか考えない、お金で片つけようとしておる国だという、ああいったいろんな声が出てくるのでしょうか。私は、どの国が具体的にどう言ったかと言われると、それは調査してありませんし、きょうは突然の御質問で、私への通告はまるっきり違ったことでありますから、私も思ったとおり、本当に思ったとおり、失礼に当たるかもしれぬけれども、率直に答えておるわけですから、お許しいただきたいけれども、それは事前に準備する期間もありませんし、世界の国のどこがどう言っておるかということは、調べればあるいは書いたものぐらいあるかもしれませんけれども、私のところへ直接それを言ってきた人はありません。
 そう思われておる日本というものがなぜこれだけ経済力を持ったのか。粗っぽい話で、アメリカの総GNPが五兆ドルならば日本が三兆ドルあるとよく言います。けれども、それは日本だけの条件の中でできたんじゃなくて、世界の国々との貿易を通じてそういった結果があらわれておって、すべての国との相互依存関係はあるわけですから、それに対しては日本も、受けとめるべきは謙虚に受けとめ、なし得ることは積極的にやらなきゃならぬと考えております。人を出さなきゃならぬというのは、私の青年協力隊の三十年にわたる体験を通じての原体験であります。
#351
○東(祥)委員 私は、国際紛争時あるいは地域紛争時における日本の貢献という視点から質問させていただいております。また、前もって、どこどこの国がどういうことを言ったか、こういうことに対しての質問をしますということを総理にあらかじめ申し上げておきませんで申しわけありませんでした。ただ、一般的なものとして、多くの国民の方々が素朴に思っている質問でございますので、質問させていただいております。
 先ほども青年協力隊という話がありましたが、これは平時でございます。私も平時、国際紛争時でないところで彼らとともに仕事をさせていただいたこともございます。今は国際紛争時あるいは地域紛争時において日本の貢献が何かということを質問しているのでございます。意味が違うと思います。
 問題は、物と金を中心とした支援がだめだといったことではなくて、そのあり方、つまり日本はもたついている、反応が遅い、鈍いということはよく私は聞いております。にもかかわらず、金と物だけじゃだめなんだ、人を出さなければだめなんだということは、ある意味で急速にこういう問題を考えているところに大きな誤りがあるのではないのか、物と金でも十分できるものは多々あるのではないか、こういう視点からもう一度日本の貢献策というものを考えていかなければならないのではないか、この視点から言わさしていただいております。
 基本的には、第二次大戦後、先ほど申し上げましたとおり百二十七以上の紛争があるにもかかわらず、全く関与してこなかった、初めてなことなので、そのやり方がよくわかってないんじゃないだろうか、こういう疑問を僕は持つのです。
 具体的な例を挙げてみましょう。例えば、御存じのとおり、九月一日、少なくとも七十人の日本の婦女子が人質解放されて日本に帰ってくるという朗報を受けました。このことは、さらにまたイラクに残っている人質に対してできるだけ早いうちに解放していただぎたいという思いがあるわけですけれども、具体的には、遅い、日本ができるべき時点においてやらなかったという視点から、一つの例として挙げさしていただきたいと思います。
 御承知のとおり、九月一日、日本政府は、解放された婦女子を帰国させるため、DC10をヨルダンのアンマンに送りました。この場合、DC10、二百三十九人乗りです。このときDC10は空っぽだったのでしょうか、外務省お答えください。
#352
○渡辺(允)政府委員 申しわけございません、直接の担当でございませんので、事実関係は後刻また正確に申し上げますけれども、一部救援物資のようなものを運んだというふうに記憶をいたしております。
#353
○東(祥)委員 外務省に聞いておりますので、そのときに何かトラブルがあって来られていないのかもわかりません。
 私が得た資料によりますと、七十二名の人間が日本からアンマンに乗り込んでいっている。その七十二名のうちクルーが四十名、そして企業関係の人が十四名、外務省一名、医師、看護団等で総計七十二名が乗り込んだそうです。クルーが四十名ですから三十二名。二百三十九の席、残った二百はもちろん空っぽで行っているわけです。そして救援物資はわずか二トン、二トンしか持っていっていないのです。これが私は問題だというふうに言っているんですね。基本的には救援物資を満載して積んでいくことができたのではないか、なぜこれができなかったのか、この点について、一般的で構いませんので、お答えしていただけますか。
#354
○渡辺(允)政府委員 これも私の記憶で恐縮でございますが、あのときの救援機は急遽婦女子の方が出国が可能になったということで準備をいたしまして、その時点で最大限のことをしたはずでございますけれども、そういう状況のもとでできるだけの救援物資を運んだということでございます。
#355
○東(祥)委員 八月下旬から九月上旬というのは、あのヨルダンに避難民が一番あふれているときでございました。十万あるいは十二万と言われる人々があそこにおりました。行くとき、そのヨルダンの避難民キャンプの人々に、こういった人人に救援物資をもし満載していくことができたならば、過去ですのでこれは申しわけないと思うのですけれども、満載していくことができたならばと思うのは私だけではないのではないだろうか。結局日本政府はこの時点で、国際社会への貢献というものを声高に叫んでいたとしても、その実、できる貢献をやるべきときにやらなかった、チャンスを失ってしまったというふうに私は思いました。
 私の経験で恐縮でございますけれども、紛争が起きたとき避難民が出てくる、そしてそのとき最も役に立つのは、人ではなくて物です。間違いなく物です。あるときは食糧、あるときは毛布といった物なんです。これをすぐ送れるのかどうか、こういったことが極めて大切なんじゃないでしょうか。
 さらに質問しますけれども、また、邦人婦女子を帰国させるとき、DC10には邦人婦女子六十八名プラス男性二人、計七十名しか連れてこなかったというふうに聞いております。そういう意味で、このときまた、事実関係ですからわからないと思いますので、さらに三十名、七十名、プラス残り百以上の空席がありました。そしてまた、このDC10が成田に戻ってくるときにニューデリーに寄港しているんですね。ここでクルーが入れかわっています。ニューデリーに寄港しているわけです。ということは、もし可能であるならば、もし国際的センスがあれば、もし国際的な貢献ということを真剣に考えているならば、あの時点で、日本の婦女子だけではなくて、あそこにいた、百名足らずの人でもいいですけれども、東南アジア系の人々、これを連れてくることができたのではないか。その後、約三週間後に、まさに避難民の本国送還ということで三機を飛ばしました。しかし、これはもう後の祭りです。後の祭りなんです。
 そういう意味におきまして、私が先ほどから聞いている視点というのは、国際紛争時、また地域的な紛争において、物と金を中心とした支援でも十分やっていけるものがあるんだ、しかしそれをなし得ていないところに最大の問題がある、このように私は思うんですが、総理、いかがでしょうか。
#356
○渡辺(允)政府委員 先ほどの日本人婦女子の帰還の場合の問題でございますけれども、これは一つには、先生御承知のとおりと思いますが、その難民の方々の出国手続等の問題がございます。したがいまして、その後本格的に私どもとしては飛行機を運航して、特にフィリピンの難民の方々の帰還を行った、手続を踏んで行ったということでございますし、またその際には、ヨルダン政府に対しまして救援物資を供給をいたしております。
#357
○東(祥)委員 大変お忙しくて、そしてそういうところに多分気が回らなかったのだろうと思うのですが、三週間後に送ったとしても、これは基本的にもうピークを過ぎている。まさに日本人があのアンマンから帰国する、そのときにどのような気持ちで他の避難民の人々がそれを眺めていたか、これが問題なんですね。だから、こういう部門に対しての配慮がまだできない日本の状況なんですね。だから、こういう部分を攻めていくことによって、さらに日本の国際紛争時あるいは地域紛争時における貢献というものは、もっともっと知恵を出せばできるのではないのか、このように私は思っているわけです。
 続けて質問させていただきますが、避難民救済に関してこれから何をされようとしておられますか。外務大臣お願いします。
#358
○中山国務大臣 ジョルダンの難民に対して日本政府は二千二百方ドルの援助をやり、この難民救済については各国が拠出した金額の約五〇%に達すると私は報告を受けております。
 また、これからどういうふうなことをやるかといえば、難民の状況というものは、全体の国境を通過した数が約七十万と言われておりますが、最近の報告によりますと、残っておる者が四千から七千の間を上下動している、つまり国境を越えて出国をしているという状況でございまして、このような状況を踏まえながら、この冬に向かって日本が何ができるかということについては、引き続き政府としても検討していかなければならないと考えております。
#359
○東(祥)委員 私の得た情報によりますと、例えば九月の二十日までに、タイ系の人が約一万五千人ほどおられました、そのうちの大半の人たちが本国に戻ってきているそうでございますが、タイに戻ってきた避難民の人たちは、イラクあるいはクウェートに行く前、飛行機代の捻出のため莫大な借金をして出ていったそうです。借金もままならないうちに本国に帰国してきた。就業機会はあるんですけれども、低賃金なので、また中東地域にそのうちの何人かの人たちは帰っていっている、サウジアラビア等に帰っていっているそうです。再び戻っていっているそうです。
 日本の避難民救済は、ある意味で一番初め――時なんですね。紛争が起こった、そしてそこでどうしていいかわからない、それで出ていった、そこで何ができるかという問題と、そして何カ月もたった後にできる問題、これも一つ一つ分けて貢献策というのを論じていかなければならないのではないか、このように思っておりますけれども、今避難民を幾ら本国に帰したとしてもまたその人たちはもとに戻っていくという、こういう動きを示しております。そういった意味では、本質的な解決を今の時点においてはもたらしていないんじゃないか、このように思うのですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
#360
○中山国務大臣 いわゆる中東地域への各国からの出稼ぎをやっている人たちの祖国というものは一体どういう状況かというと、つまり自分の母国で働くにもなかなかいい職業がない、いい所得が得られないという状況の中で、自分の国からいわゆる働き口のあるところに出かけていくというのが、一つの、発展途上国といいますかそういう国国の抱えている大きな悩みであろうと思います。
 今委員御指摘のように、難民として帰ってきた人たちがまたもとへ戻っていくということでございますが、基本的には、その国その国のいわゆる国民生活の向上のために、あるいは職業訓練とかあるいはまた経済協力といったようなものをやっていかないと、この問題はなかなか解決ができない。先般も、この人たちを日本に受け入れたらどうかというような御質問もこの委員会でございましたが、この扱いについては政府としては非常に慎重だという答弁が行われております。このような状況の中で、私どもはやはり発展途上国の人たちの職業が十分手につくように、職業訓練等も含めてこれから積極的に努力をしていかなければならない、このように考えております。
#361
○東(祥)委員 私はなぜこういう質問をしているかといいますと、日本のこういう国際紛争時、地域紛争時への貢献というのは、いろいろな形で、非軍事的な分野あるいは人道主義的な分野ででき得るものがいっぱいあるのではないか、そういったところから、まずできるものは一体何なのかということを塗りつぶしていく、そういうことが今基本的には日本に問われているのではないのかという、そういう観点から質問させていただいております。
 そういった意味で、きょうは労働大臣並びに法務大臣も来ていただいておりますけれども、労働大臣そして法務大臣、避難民救済に関してお考えになっていることがありますか。また、避難民救済だけでなくても構いませんけれども、こういった国際紛争時において、法務省においてでき得ることは一体どういう方向性があるのか。こういったことについて、法務大臣と労働大臣にお聞きしたいと思います。
#362
○梶山国務大臣 避難民を中心とする救済策でございますけれども、ただ、これは一法務省ということよりも、政策論でございますから、こういう紛争時においてどうするかあるいは平時においてどうするかという問題は、一つは我々の所管をする出入国管理法、改正をいたしましたけれども、技能的な労務者あるいは単純な労務者をどう取り扱うかという問題がございますし、この紛争時において考えられることは、まさに国連の動きその他、政府全般として決定をすべきことでございますので、慎重に検討をしながらそれに対応してまいる性質のものだというふうに考えております。
#363
○塚原国務大臣 御質問の点は極めて重要な事項であるという認識は持っておりますが、労働省としてどのような貢献策を考えているかということにつきましては、現在のところまだ貢献策はございません。
#364
○東(祥)委員 基本的に、日本の貢献策を考える場合、やはり日本政府として各省庁が知恵を出し合わなくてはいけないわけなんですよね。だから、そういう意味において、各省がそれぞれ自分自身とは全然関係ないんだというところで、最終的に何か決断が下った後どうするかという、そういう視点でいいんでしょうか。それがまさに日本の国際貢献として世界から問われていることではないのか、大げさに言えばそのように思います。
 先ほど総理が言いました、汗を流すことが国際社会から要求されている。汗の流し方はたくさん僕はあるんだろうと思います。日本が国際社会へ貢献ということを考えるとき、初めに自衛隊ありきという視点ではないんじゃないか、そのように思うのです。戦後四十五年間、日本が本格的な形で国際社会への貢献ということを真剣に考えなければならないときが来たわけですね。にもかかわらず、今の諸大臣、大変失礼でございますが、自分のところは関係ないと思っている、そういう印象を私は受けました。
 今回提出された国連平和協力法案なるものは、日本政府の総力を結集したものではなくて、結局一部の人の自衛隊派遣先にありきという視点から出てきたものなのではないか、このように思わざるを得ません。まさに日本の将来の方向性を決めてしまうにはそういう意味では余りにもお粗末過ぎるではないか、このような印象を私は持ちます。
 難民救済の話に戻らさしていただきますけれども、先ほど総理大臣言われたとおり、汗を流す。知恵も出す。湾岸地域における避難民は、ある意味で出稼ぎを目的にしている外国人労働者です。これはまさに現代社会を反映する一つの動きなんだろう。物、金、情報、技術といった、国境を越える諸現象に加えられるまさに現代社会を象徴する一つの新しい動きです。
 先ほど法務大臣からお話を聞きました。入管法では、法的には一切単純外国人労働者を入れておらない。また、労働省も、昭和四十二年以来一切方針は変わっていないわけです。しかし、この現実の動きに対してどのように対処していくか、こういうことが今議論されているのだろうと思うのですが、私が言っているのは、例えば十万人以上、十万人だとか何十万という単位ではなくて、今国際紛争が起こる、地域紛争が起こる、それによって被災民が出てくる、その人たちに対してどうするのかといった視点で考えれば、外国人労働者問題と絡めて考える必要はないだろう。あくまでも人道主義的な立場でもって、例えば五百名なら五百名という限定つきでそれを受け入れるということをもし日本政府が宣言するならば、まさにこれは国際的に大注目を浴びるものであり、それこそ国際社会から日本はいよいよ変わってきたのではないか、このように思われるわけですけれども、外務大臣、総理大臣、いかがお考えでしょうか。
#365
○中山国務大臣 日本は、いわゆるベトナム難民と言われた昨年のいわゆるボートピープル、これに対して日本はいわゆる不法入国といいますか、そのような機会を得たわけです。今、日本は、委員もよく御存じだと思いますが、国際社会においては、難民については一万人までこの国に定住させることを約束をしているわけであります。そして、昨年の時点では約六千六百名既に定住を見ておりますが、このような日本政府の考え方というものは、既に国際公約となって確立されていることを御理解をいただきたいと思います。
#366
○東(祥)委員 避難民について言っておりまして、難民とはまた定義が違ってきますし、また、インドシナ難民は、閣議決定によって受け入れるということになりまして、この点とごっちゃにしないで、私は、国際紛争が起こったときの避難民、これを特別に受け入れたらどうなのか、こういうことを質問させていただいております。総理。
#367
○塚原国務大臣 単純労働者の受け入れにつきましては、ずっと御答弁をしておりますが、日本の国では非常に今難しい状況にございます。それで、その理由につきましては、本当に今まで長い間いろいろな面で検討をいたしてまいりました。なお、現在も、非常に人手不足感が広がっている中で、企業からは何とか単純労働者を受け入れさせてくれという御質問もございます、そのような御要望もございます。ただ、そういった状況の中で、私ども、常に政府内でも検討に検討を重ねておりますが、どうしても日本の国内においては現在単純労働者を入れるには余りにも問題が多過ぎる。具体的な問題につきましてもしお入り用でしたら政府委員も来ておりますが、答弁をさせたいと思います。
 ただ、そういう状況の中で、ただいま先生の御指摘がございましたように仮に五百人あるいは百人あるいは千人という形で手を挙げてみたらどうだというようなお話もございますが、労働大臣としての立場だけでお答えさせていただきますと、非常にわずかでも門戸を開くだけの今日本の国は余裕がその件に関してはない。ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
#368
○東(祥)委員 済みません、質問が悪いのかわかりませんが、私は避難民、紛争時において避難民が発生した場合、そのうちの一部をという、そういう質問でございます。また、外国人労働者とリンクさせて考えるとわからなくなってしまうので、これは特別枠、別枠でという、そういう質問をさせていただいていると思いますけれども、先ほども総理がおっしゃいました国際社会に対して汗を流さなければならないということは、国内的にも何らかの形で、我々が彼らを必死になって受け入れてあげているという、そういう姿勢を示すことが汗を流すということにもつながっていくのではないですか。何百万、何十万、何万という単位ではなくて、私は五百名あるいは千名ぐらいでもその選定はそちらにお任せいたしますけれども、そういうことはできるのではないか。まさに人道主義的、非軍事的な支援ができるのではないか。どの世界もやっていないわけですから、汗を流すということであるならばそういうことはできるのではないか。総理、いかがでしょうか。
#369
○中山国務大臣 今委員御指摘の、いわゆるこのような一時的な難民ですね、そういう避難民の受け入れ枠を特別につくったらどうかという御指摘がございました。私は、そのような避難民を日本が受け入れるかどうか、国連の動き等もよく見ながらこの御意見は一度十分研究しなければならない問題である、このように思っております。つまり、率直に申し上げて収容施設をどうするかという問題、まずそれを決定する前に、事前に政府としてはフィージビリティースタディーをやっておかないと、飛行機が一台飛んでくれば五百人来るわけですから、その点はどのような形で受け入れができるのか、そのときの法律的な手続をどうするのか、そういう問題につきましては、一応政府として慎重に検討させていただきたいと思っております。
#370
○東(祥)委員 いろいろ難しい問題があると思いますが、そういうことをすることが、日本は戦後四十五年間変わってきたんだなということをわからせる一つの最大の方法なのではないか、僕はこのように思っております。
 また、これに関連して、例えば避難民キャンプを日本で経営、直営する、こういう考えはどうですか、外務大臣。提案でございます。
#371
○中山国務大臣 今申し上げましたように避難民キャンプをどこに設置するか、これがやはり一つの問題です。日本の国内に設置するのか、それともいわゆる外国の土地を借りてそれを設置するのか。私は昨年のいわゆるベトナム難民のときにも、香港の収容所あるいは長崎の大村の収容所も実際自分が歩いてみまして、この人たちを収容する施設というものは日本では既にパンク状態になっている、そうすれば新しくどこかへつくらないといけない、これがまず第一の問題であろう。私は率直に、自分の経験からはっきり申し上げておかなければならないと思います。
#372
○東(祥)委員 紛争が起きる、紛争の近隣諸国でも結構です。御存じのとおり他の国々はこういう活動を活発にやっております。日本は、先ほど言いましたとおり、行くときが遅いから拠点も失ってしまっている。そういう意味で、国際紛争が起こる、地域紛争が起こる、そしてその近隣諸国に避難民があふれてくる。この避難民に対しての運営、その現地でですね。いかがですか。
#373
○中山国務大臣 検討に値する貴重な御意見だと考えます。今、先ほど申し上げましたように資金的には協力をしておりますから、その国その国で、ジョルダンの難民センターも私この間見てまいりました。こういうふうないわゆる難民キャンプというものを周辺国でやる場合、どのようなところに難民をその国が受け入れてくれるかどうかという問題もまず一つ前提条件としてあるんじゃないでしょうか。だから、そういう点は貴重な御意見として検討をこれからさせていただきたいと思います。
#374
○東(祥)委員 また御存じのとおり、フランスの例でございますけれども、フランスにMSF、国境なき医師団というのがございます。これは、紛争が起こる、わずか一人の医師と調整員三人でもってすぐその現場に行くんですね。そして現場に行ってその状況を調査して、そしてすぐそこに拠点をつくる算段をすることができる。二十四時間以内に動くことができるのです。また御存じのとおりスイスにおいてもICRCという、国際赤十字、スイスの国内法人です、こういったものが動いておりますので、政府レベルだけではなくて民間レベルでも活発に動いている。そういう点におきましても、日本というのはどうしても政府レベルで何かやらなくちゃいけなくなる、また民間レベルでもなかなかフットワークの軽いものがないということで、日本の顔が全然見えない。これも先ほど言われた日本の国際貢献、一生懸命やっているのだけれども目立たないというところに関連しているんじゃないか。こういうNGOを政府主導でつくるというのも、これも論理的に矛盾するかわかりませんが、現実にはないわけですから、ある意味でフランスのMSFだとかあるいはICRCといったもの、こういうものをつくり上げていく、積極的に援助していく、こういう考え方に関してはどうですか。
#375
○中山国務大臣 NGOを政府が主導してつくるということ自身がNGOのいわゆる設立の理想とかけ離れたことは委員も今御指摘のとおりだと思います。しかし政府は、NGOに対する運動を支援するために予算に補助制度をつくっておりまして、補助金を予算に計上いたしております。たしか今年は二億円の補助を計上していると私は記憶をいたしておりますが、そういう形でNGOに対しては日本政府は既にやっておりますが、委員御指摘のように、外国のいわゆるNGOのグループのような活動が日本でもでき得ることが起こってくれば、政府としては当然その補助対象に入ってくる、このように考えております。
#376
○東(祥)委員 より前向きに積極的に検討していただきたいというふうに思います。
 済みません、時間がどんどん過ぎ去ってしまいまして。国連平和協力法案に関して質問させていただきます。
 国連平和協力法案というのは英語で何と言うのですか。
#377
○赤尾政府委員 ザ・ユナイテッド・ネーションズ・ピース・コオぺレーション・ローと言っております。
#378
○東(祥)委員 国連という言葉は日本語ですから、これはこれでよろしいんだろうと思っていたのですが、「ユナイテッド・ネーションズ」という言葉が入ってきますと、これはもう世界で通用してしまいます。こういった国連、ユナイテッド・ネーションズという冠を冠することは、これは国連総会の許可なくてよろしいのですか。
#379
○赤尾政府委員 必要はないと考えます。
#380
○東(祥)委員 この国連協力法案に関してアジア諸国からかなりの不安あるいは非難の声が新聞紙上において出てきておりますけれども、国連に協力する活動と日本が国連とは関係なく活動する動きがひょっとして見えてくるのではないか、これが基本的な視点でございます。本来、この国連協力法案、いろいろなこれまでの議論を通じても明らかになっているところですけれども、二つが入りまじっている。国連への協力なのか、それとも日本独自の活動なのか、これがよくわからない。前の諸先輩議員の方々もこの点は何度となく指摘してくださっておりますけれども、代表的な例が「その他」という言葉が余りにも多過ぎるということですね。ここに私は極めて大きな不安を感ぜざるを得ません。そういった意味で、国連の名をかたって実は日本が独自の行動を歯どめなく行う可能性があるのではないか、このように思うのですけれども、外務大臣、いかがお考えですか。
#381
○中山国務大臣 この法案の冒頭第一条に書かれておりますように、「目的」として、国際の平和と安全の維持の確保のために国連が行う決議を受けてと、このように国連の決議がなければ一切この国連平和協力隊は外国へ出ることもありませんし、また、その事前に実施計画あるいは平和協力会議に対する諮問、閣議の決定が行われるわけでございますから、十分な歯どめがそこに行われていると私は認識をいたしております。
#382
○東(祥)委員 しかし、国連の決議に基づいた、そしてその後何をするかというのはあくまでも日本政府が決めることであって、国連から離れるわけですね。国連の職員でしたから、国連の事務総長が決定しない限り、職員である限り動くことができない、したがって国連のもとに動いている、こういうことが言えるわけです。ところが、国連の旗のもとに日本政府が動いていくということではないし、国連の事務総長の要請に基づいて日本が動いていくということでもないし、したがって、これが結局「その他」という部分において、余りにも「その他」が多いわけですけれども、ここに日本が独自の活動をしていってしまう危険性があるのではないか。いかがですか。もう一度お聞きいたします。
#383
○中山国務大臣 少なくても海外の国に不安を与えるようなことは一切行わないということを明確に申し上げておきたいと思います。
#384
○東(祥)委員 この法案は一見、例えで言いますけれども、漆塗りのはしに見える。漆塗り、国連です、国連協力。実はプラスチックではないか、日本です、日本の活動。ヒラメに見せているけれども、カレイではないのか。牛のミルクとロバのミルクの違い、御存じですか。一見全く同じように見えるミルクですけれども、味が全く違います。ましてや精製すると牛乳の場合は最上の製品ができますけれども、ロバのミルクというのは似ても似つかないごみのようなまがいものになってしまいます。ヒラメのように見えてカレイなのではないか。漆塗りのはしに見えてプラスチックじゃないのか。プラスチックを漆と偽って、カレイをヒラメと思わせて、そしてロバのミルクを牛乳といかに主張したとしても、にせものはにせものであって、かえって後で人々を惑わせてくるのではないか。つまり、全世界の人口五十三億です。約六〇%弱、これが東南アジアの国々にいらっしゃいます。こういった人々の意見を前もって聞いて、その上でユナイテッドネーション、国連というこういうものを冠しているならばわかります。しかし、そういうことはやっていない。あくまでも日本独自で国連平和協力法案というものを冠している。ここに大きな問題が将来出てくるのではないか、禍根が出てくるのではないか、このように思えてなりません。総理大臣、いかがでしょうか。
#385
○海部内閣総理大臣 アジア地域のことにお触れになりましたけれども、例えば五月に私がSAARCと言われた南西アジア、今までは非同盟、中立ということでやってきた地域でしたが、日本はもっと政治的にも経済的にもこの地域に入ってきてもらいたい。なぜなれば、冷戦時代の対立が終わったら、中立、非同盟というのは、何かそれだけ掲げておると空白地帯になる危険があるから、もっと積極的に政治的にも入ってきてほしい、これは率直な四カ国の首脳の御意見でありました。そういったときに、いろいろとアジア地域の平和と安定を図るということは、国連が目指しておる国際社会の平和と安定のために非常に大事なことで、これは利害は直結すると思うのです。私は国連で、平和の破壊者がある、あるいはこの世の中にまだ力で侵攻、併合することを仕方がないといって皆が手をこまねいて、あれもいけない、これもいけない、結局何もしないで見ておったら、そういったことが既成事実化していくわけでありますから、そういうことはアジア・太平洋地域のためにも役に立たないだろうと私は思っておるのです。
 ですから、世界があのような力による併合、侵略というようなことを今後冷戦が終わった後の世界ではなくしていきたいという願いは、どこの地域でも同じなんじゃないでしょうか。だから、そういったことに対してみんなが知恵を出し、集まっていろいろやろう。まさに今度起こった湾岸の問題というものについては、多国籍軍と言われるアメリカを初めとする多くの国々があそこに緊急に抑止力を展開して、平和の、非常に奇妙な膠着状態というものをつくっておる。私はそのときにはその局面を打破して恒久平和の話し合いをすれば、さらに世界の平和は定着していくではないか。
 アジアについてはアジアの問題一つ一つを、やはりカンボジアの問題とかあるいは朝鮮半島の問題とか日ソの問題とかいろいろございますが、それはそれで一つずつ戦争にならないように平和的に安定していくような、火種をつぶす努力をしていくことが一番大切で、そういったことを国連が国際社会の総意として、これはいい、これはいけない、これは平和の破壊だと決めてかかってくることについては、日本もできるだけ応援していくわけでありますから、戦前のように日本が恣意にどこかの国へ出ていくとか、日本が勝手にここへこういうことをやろうとかいうような法案の仕組みでは全くないわけでありますし、そしてそこには幸いなことに冷戦後の東西の両巨頭もそれから中国もみんな入って安保理事会があるわけでありますので、私はこの国連というものを信頼し、国連の意思というものを大事にし、世界じゅうが国連の意思に従って平和を守っていく努力をするということは、これは世界共通の利益に通ずると私は思っております。
#386
○東(祥)委員 時間がなくなってきてしまいますので、先に行きます。
 国連平和協力法案が成立した場合の運用の問題です。つまり、一たびこの国連平和協力法案が成立した場合、過去の国連決議に対しても有効なんですか。
#387
○海部内閣総理大臣 法律不遡及の原則なんていうのがあるようですから、法律の過去の決議に対するどうこうについては専門家からお答えをいたさせます。
#388
○柳井政府委員 お答え申し上げます。
 この法案の第三条におきまして「国際の平和及び安全の維持のための活動」というものを定義しているわけでございますが、この定義によりますと、「国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づき、又は国連決議の実効性を確保するため、国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国が行う活動をいう。」というふうに定義されているわけでございます。したがいまして、この国連決議に基づくかまたはこれに実効性を確保するために行われております活動に協力するというのがこの法案の目的でございまして、したがいまして、この決議がいつ採択されたかというよりは、この決議に基づき、あるいは実効性を確保するための活動が現に行われておる、そういう活動に対して協力するということでございますから、言いかえれば、過去に採択された決議でございましても、そのための、それを受けての活動が現在も行われておるということであれば、この法案の協力の対象になるということでございます。
#389
○東(祥)委員 それでは、具体的に質問いたします。
 朝鮮動乱のときに、一九五〇年、八十三号及び八十四号の決議がなされております。もしこの国連平和協力法案なるものができましたら、八十三号、八十四号、まだ決議解除されておりません、この一環で支援していくということになるのでしょうか。
#390
○柳井政府委員 ただいまお挙げになりましたいわゆる朝鮮戦争に関する国連決議は現在でも有効でございまして、その限りにおきまして、純理論的には同決議を受けた活動はこの法案の協力の対象になり得るものではございますけれども、ただ、現実の問題といたしまして、現在の国際情勢等の状況下におきましては、この法案による協力の対象となるような事態はないというふうに考えております。幸いにいたしまして、朝鮮半島における南北の対話、その他国際情勢が非常に変わっておりますので、そのような事態はないであろうというふうに考えます。
#391
○東(祥)委員 先ほど池端議員が質問されたことに関連しますけれども、日本に七つの基地がある、国連軍の基地に当たるわけですけれども、そうしますと、この国連平和協力法案なるものが成立いたしますと、そういう基地に対しての支援というものも積極的に行っていくという根拠になってしまうわけですか。
#392
○松浦政府委員 今条約局長から国連軍の実態について一般的な形で言及がございましたけれども、私からも念のため申し上げたいと思いますけれども、いわゆる朝鮮国連軍は、一九五三年の休戦協定発効後、大部分の兵力が撤退しております。
 現在の実態がどうかということでございますが、現在は実動戦闘部隊は存在しておりませんで、八カ国の軍の代表四十名が国連軍後方司令部として現在キャンプ座間に存在しているわけでございまして、先ほど私が申し上げましたのは、国連軍に関します地位協定に基づきまして七つの在日米軍の施設を使用をすることができるということになっているということでございまして、この国連軍の実態から申し上げまして、その実体がもうほとんどなくなっているということを改めて申し上げたいと思います。
#393
○東(祥)委員 ということは、今は四十名足らずであるからそういうものに対しては、この平和協力法案ができたとしても、たとえ援助していった、支援していったとしても大したことではないということですか、それとも、それは支援でき得るということなんですか、あるいはできない、しないということなんですか。
#394
○松浦政府委員 最初に法的な立場を申し上げますと、これは将来仮にこのような国連軍が形成される場合に、その平和協力隊が、これは繰り返し政府側から答弁申し上げておりますけれども、武力による威嚇または武力の行使を伴わない平和協力業務により協力することは排除されておりませんけれども、実態的に申し上げますと、先ほど来私が繰り返し申し上げておりますように、もう実体がほとんどなくなっておりますので、現在のいわゆる朝鮮国連軍に対してこの平和協力法成立後にそれに基づきまして協力を行うということは考えられないと思います。
#395
○東(祥)委員 一九六五年に南ローデシアの独立問題で国連は経済制裁の決議をしています。また一九七七年に南アのアパルトヘイト問題で経済制裁の決議をしております。そうしますと、この法案ができますと、この経済制裁の決議を実効たらしめるために、また日本が国連協力の名のもとに、こういう過去に決議された問題に対して支援していくということになりますね。これらの問題に対してはどう対処されるのですか。
#396
○赤尾政府委員 南ローデシアに対する制裁決議につきましては、これほ既に当時の南ローデシアがジンバブエとして独立いたしまして、当時の決議の状況はもう消滅している、前提が消滅しているということでございますので、この新しい法律のもとでの協力の対象にはならないというふうに考えられます。
 他方、南アフリカに対する制裁決議、これも総会決議と安保理決議、双方が幾つかございますけれども、これにつきましては、この法律で言います国際の平和と安全の維持のために国際連合が行う決議と認められる場合には、理論的には平和協力業務の対象として排除されないというふうに考えられます。いずれにいたしましても、この決議の具体的な内容あるいはその時点での国際情勢等を十分勘案して、どういうふうに日本として対応するかということが決定されるということでございます。
#397
○東(祥)委員 いずれにしても、もしこの平和協力法案が成立してしまうと、過去の国連決議、解除されていない国連決議に対しても適用することができる。そして、適用するか適用しないかはそのときの状況によって判断していく。ある意味では歯どめがないということですね。歯どめはありますか。じゃ、もう一度お願いいたします。
#398
○柳井政府委員 まず第一に、先ほどお答え申し上げましたように、過去に採択された決議でございましても、それに基づきまたはそれに実効性を与えるような活動がない場合には、これはこの法案として、法案のもとで行う協力の対象がないわけでございますから、その活動が現にあるかどうかという点がまず第一に基準になるわけでございます。
 それから、それではいかなる活動に協力するかということになりますと、これは、この法案において規定されておりますように、平和協力本部において業務実施計画を作成するわけでございますが、これは閣僚級から成る平和協力会議に諮られまして、その後に閣議決定をしてこの実施計画を決めていくということでございまして、そこで慎重な手続を経て我が国としてどのような協力を行うかということを決める仕組みになっているわけでございます。
#399
○東(祥)委員 協力隊員の、何と言ったらいいんでしょうか、一たび民間から協力隊員に採用された場合のその人の官職、官制と言ったらいいんでしょうか職制と言ったらいいんでしょうか、これはどこに規定されているのでしょうか。
#400
○赤尾政府委員 民間からの採用の方は十九条の選考採用によるわけでございますが、そういう方の身分等の取り扱いにつきましては、これは国家公務員法が適用になります。国家公務員法とそれに基づく人事院規則が適用になりまして、その方の身分というのは国家公務員法と人事院規則等によって一応保障されているということでございます。
#401
○東(祥)委員 例えばあるAという民間人が協力隊員の採用に合格した、そしてその人があるところに派遣される、例えば中東湾岸地域に派遣される。その場合、現地にその人が行った場合、例えば大使館ならば一等書記官だとか二等書記官だとか、そういうふうになって行くわけですけれども、この人はどのようになるんでしょうか。
#402
○赤尾政府委員 外務省員でございませんので、大使館の公使とか参事官、一等書記官という、そういう名称は考えられておりませんけれども、人事院規則に基づく級別等級ですね、それは本人の過去の職歴等に応じまして級別等級がつくわけでございます。それによって俸給等も決まるということでございます。
#403
○東(祥)委員 具体的にこういう活動には民間の人を採用したい、そういうイメージはありますか。
#404
○赤尾政府委員 十九条に基づく民間の方といいます場合には、純粋に民間の方の場合と、特に地方公務員の方が十九条に基づいて採用される可能性が非常に強いと思います。地方公務員の中でも、選挙監視団に参加していただく場合、そういう方につきましては、特に地方公共団体の方に期待されますし、例えば医療活動につきましても、ここで想定されております自衛隊あるいは国家公務員以外に、特に看護士、看護婦さん等を中心に、あるいは調整員等で医療活動を補助していただく方につきまして、民間から来ていただく可能性というのは非常に強いと思っております。
#405
○東(祥)委員 もう時間がないので、最後に、今に関連しているのですが、その民間の方が採用される、そして現地に行く。現地でのその人の指揮系統はだれに指揮を仰ぐことになるのですか。
#406
○柳井政府委員 平和協力法案第二条三項におきましては、内閣総理大臣が、海外派遣に係る平和協力業務の実施に当たりまして、内閣を代表して行政各部を指揮監督するというふうに規定しておるわけでございます。また、この法案の第二十条、第二十一条、第二十二条、それぞれ四項でございますが、これらの条項におきまして、平和協力隊員は本部長たる内閣総理大臣の指揮監督に服するというふうに、これは平和協力隊員の側から規定しているわけでございます。平和協力隊員はいろいろな出身の方がおられることになるわけでございますが、その派遣元のいかんを問わず、内閣総理大臣の一元的な指揮監督のもとに服するということでございます。
#407
○東(祥)委員 済みません、ちょっと申しわけありません。時間です。ただ、総理大臣は現場に行っているわけじゃありませんから、民間の人が現場に行って総理大臣から指揮を仰ぐということは、これは物理的に不可能ですね。そのときの指揮系統がどういうふうになっているのか、こういうことを聞いているんですけれども。済みません、最後にいたします。
#408
○柳井政府委員 現地の平和協力隊に対する具体的な指揮等につきましては、この平和協力隊を各案件に即しまして実施計画に基づいて決めるわけでございますが、その実施計画の中で具体的な案件に即しましてそのような現場の責任者というものを決めまして、その方を通じて指揮をするということでございます。ただ、最終的には内閣総理大臣の指揮監督に服するということでございます。
#409
○東(祥)委員 ありがとうございました。実施計画がなければ基本的には民間の人を採用することもできないのではないか、このように思います。それを最後に終わらさせていただきます。
 総理、諸閣僚の皆さん、まことにありがとうございました。
#410
○加藤委員長 これにて東祥三君の質疑は終了いたしました。
 次に、児玉健次君。
    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕
#411
○児玉委員 イラクがクウェートに対して侵略を始めてから既に三カ月が経過しました。軍事衝突の危機が高まっている、そういった中で、ブッシュ・アメリカ大統領は、議会の承認がなくても軍事行動は可能だ、こういう趣旨の言明を先日行いました。一方、イラクの方は厳戒態勢を指示しております。こういったときだからなおさら事態を平和的に解決するために努力が強められなくてはなりません。現在最も重要なことは、イラクに対して経済制裁を徹底してイラクを追い詰め、人質を解放させ、クウェートから撤退させることにあります。
 経済制裁の強化について、我が党の不破委員、古堅委員が本会議で質問したのに対して総理は具体的にお答えにならなかった、そのように私は受けとめております。
 十月二十五日にこの委員会で不破議員が、安保理事国の経済制裁、抜け穴行為があると具体的に指摘をしました。経済制裁を徹底するために日本が外交上のイニシアチブを発揮すべきだと質問したのに対して、海部総理は、そのとき、日本として早速よく調査をして、国連決議の実効性を高めるために国連の事務総長にしかるべき情報を提供して何らかの措置をとる必要があるのではないか、このようにお答えになりました。
 そこで、明確にお聞きしたいのですが、第一に、日本としてよく調査されてと言われたわけたが、どんな調査をしたのか。第二に、国連事務総長に情報を提供して、どのように情報を提供されたのか。第三に、何らかの措置をとる、どのような措置をとられたのか。具体的にお答えいただきたい、こう思います。
#412
○海部内閣総理大臣 私も新聞報道程度でしかこういうことをした、ああいうことをしたと、そちらが――失礼しました。不破委員長が指摘されたことは知識として持っておりませんし、また、大原則として経済制裁を皆が力を合わせて国際社会の総意でやっていくということは、これは基本的に全く一緒の認識でありますから、もし報道されるように指摘されるようなことがあるとするなれば、これは抜け道をやっておったんではどうにもならぬわけでありますから、そういったことはよく調べてみる、そしてそういったことが事実としてあれば言ってみるということを申し上げたつもりでおりますが、具体的なことについてはまだ私はどのようなことがあったか存じ上げておりませんので、わかる限りは政府委員から答えさせます。
#413
○赤尾政府委員 私たちは、前回不破先生に私の方から申しましたように、特にOECDの場におきまして、OECD加盟国の間でありますとか、あるいは西側主要国の間で、例えば日米間でありますとか日英間とか米英間等、バイあるいはマルチの場でそれぞれこの決議の実効性確保のためにどのような輸出規制、あるいは資本等も含めましてどういうふうに実効性を確保するかということについて終始情報交換はしております。同時に、いろいろと新聞等に報道されますことについても私たちは関心を持ってフォローをしておりますけれども、その関連で国連の安保理のもとにできております制裁監視委員会というのがございますが、その議長等とも御連絡をとっておりますけれども、とにかく日本として国連に報告をするためにはちゃんとした証拠を持った上でやる必要があるということでございます。したがいまして、新聞報道だけで国連に報告するということは今できないような状況でございます。
#414
○児玉委員 十月二十五日に不破委員が質問をして、外務省は十月二十六日に高須国連政策課長の名前でどのような行動をやったのか、そして、当時の国連安保常任理事会の議長国、十月はイギリスですね、イギリスは高須国連政策課長の電報、それを受けての日本代表部の行動に対してどのような言明をしたのか、具体的に答えてください。
#415
○赤尾政府委員 二十六日に、本省からの指示に基づきまして我が方国連代表部より当時の監視委員会の議長国イギリスに対していろいろと照会をいたしましたところ、各国の制裁破りが監視委員会で、報道されているようなものですね、その裏づけがないということもあって正式に取り上げられて討議されたことはないという回答を得ております。
#416
○児玉委員 この問題を日本政府が平和的解決の決め手として重視していないということが今のいいかげんな答えからも出てきますね。十月二十六日に高須国連政策課長が国連の日本代表部に対して命令電報を打った、その命令電報の内容を紹介してください。
#417
○赤尾政府委員 こちらから代表部を通じて議長に対して、いろいろと新聞報道があるけれども、これらについてどのようにこれまで制裁監視委員会において取り上げられたかということについて照会する訓令を打ちました。
#418
○児玉委員 今の答えを最初から言えばいいのに、これだけ堂々めぐりをしなければ言わない、この問題に対する態度がうかがわれますね。
 そこで、続けて聞きます
 皆さんがそういう訓令を十月二十六日に打たれた。イギリス代表はそれに対して、今後経済制裁の不履行について取り上げていきたい、イラクの隣国のヨルダンを通じて物資が流入していることも取り上げることがあるかもしれない、このように言明したんじゃないですか。
#419
○赤尾政府委員 そのときの議長国からの発言の一つに、ある一部の国、ジョルダン等の一部の国の制裁破りにつき取り上げる可能性はあると述べているという趣旨の発言がございました。
#420
○児玉委員 そこで海部首相にお伺いしますが、二十五日に総理がお答えになったことをめぐって、外務省としては一定のフォローをしております。それは私たちも確認をしている。それからもう何日もたっているんで、この間平和的な事態の解決という点で、ただ外務省の課長が訓令を打つなんということではなく、日本のすべての在外公館に対して、各国の経済制裁の抜け穴、それを具体的に調査するように日本政府として指示すべきじゃないかと思うのです。総理の今までの御発言からすればそれが当然だと思うが、どうですか。
#421
○中山国務大臣 日本政府がそのように現地の大使館に訓令を出すということではなしに、国連が行うべき仕事でございますから、私どもとしたら、国連がこの問題を取り上げていくということが極めて重要であるという認識を持っております。
#422
○児玉委員 今の外務大臣のお答えに対して、二つ聞きたいのです。
 一つは、今のあなたの御答弁で、国連が取り上げていくように具体的に意思表示をされましたかどうか。事実の有無を聞きたい。
#423
○赤尾政府委員 まず一つ、先生の発言で訂正させていただきたいと思いますけれども、これは高須課長から現地に訓令を打ったということではなくて、外務大臣から波多野大使に対する訓令で調査するようにということを言ったわけでございます。引き続き制裁監視委員会等と連絡をとりながら、監視委員会の監視状況等について緊密にフォローするようにということもあわせ伝えてあります。
#424
○児玉委員 その今国連局長が述べたことを大臣は日本政府の意向だと御理解なんでしょうか。
#425
○中山国務大臣 私の、外務大臣としての訓電でございますから、当然日本政府としての考え方であります。
#426
○児玉委員 それを不破質問の翌日皆さんがなさったということは、事実として確認しておきましょう。
 そこで、先ほどの御答弁の二つ目の点なんですが、国連から抜け穴の有無について調査をさせる、これも一つの筋だと思います。しかし同時に、日本がなし得る重要な貢献として、日本の在外公館を通してさまざまに各国の経済制裁の実施状況についてキャッチをして、そのことを情報として国連に提供していく、それが必要だと思うのです。海部首相はお答えになったことについてよくお忘れのようですが、ここに会議録持ってきているのだけれども、あなたははっきり「国連の事務総長にしかるべきこういった情報を提供して、」と言っているのですから、首相のその言葉を受けて在外公館に指示をする、当然じゃないですか。
#427
○中山国務大臣 政府としては、先般不破委員長から御指摘があったと同じ海外の新聞等の情報を認識してそれで訓令を打って、国連のいわゆる制裁委員会に日本政府の意思としてこれを積極的に監視を強化するように連絡をしているというのが現状でございます。
#428
○児玉委員 ですから、それは私は事実として確認をいたしましょう。
 それにとどまらず、日本の在外公館を通じて経済制裁の実施状況について各国の状況を可能な限りつかんで、それを国連に提供する、これも必要じゃないでしょうか。
#429
○赤尾政府委員 各国がどのような例えば法律ですとかあるいは行政命令等を出してどういうふうにやっているかということにつきましては、これは最初も申しましたし先般も申しましたように、それぞれ二国間ベースあるいは国際機関、OECD等の場を使いまして、いろいろと緊密に連絡をとりながらやっているわけでございます。
#430
○児玉委員 この十月二十九日、切迫した情勢のもとで国連安全保障理事会の決議六百七十四、その十二項でこういった趣旨のことを書いていますね。国連事務総長の「平和解決にむけての外交努力を信頼し、すべての加盟国に、国連憲章に従って平和解決にむけての努力を追求することを要求」、各国に要求しておりますよ。不破質問を契機にして外務省が一定のことをなさったということは、私は事実として確認をしました。そして議長国であるイギリスが一定のことについて述べた。問題は、そのフォローアップを日本政府がどうやっていくのかという問題が一つ。そして、特に日本がなし得ること、海部首相は日本としての、日本経済の分野における抜け穴の阻止という点では努力をしているとたびたび述べておられますが、それはそれで私たちお聞きしておきますが、各国に対してもそれを日本として発言をしていくという点での指導性が今厳しく求められていると思うのです。この点を改めて海部首相のお考えを聞かしていただきたい。
#431
○海部内閣総理大臣 日本が経済制裁に参加をしてきちっとやっておるわけですから、抜け穴を日本の国内のことは防ぐというのは当然のことだと思います。それから、よその国のことまで全部こちらが調べてやるよりも、国連という上部機関があって、そこでいろいろ意見交換しながら国連が全体のあれをしておるわけですから、日本でいろいろ報道されたり国会で質問されるようなことがあれば、こういう情報があったがこれはどうだということはやはり国連事務総長に知らせて、国連事務総長の方でやってもらうというのが一番いいことじゃないでしょうか。それが国連の果たすべき役割の一つであろうという考えです。
#432
○児玉委員 日本の行っている経済制裁がどのように十全なものかというのは、これはこれで私たちはシビアにこの後調べていきたい。現にそれをやっています。
 首相、私は率直に言いたいのだけれども、この問題で当委員会で議論したこと、予算委員会その他で議論したことについて、やはり総理として私はきちんとしたその後の誠実な行動をお願いしたい。あなたが何とおっしゃろうと、この二十五日の当委員会における総理の答弁の中で、国連の事務総長にしかるべき情報を提供するとおっしゃっているんですよ。日本の情報だけでないでしょう。知り得た他国のことも提供すると言われたんじゃないんですか。その上で、日本の意向として厳しくやれという意向を伝えるとおっしゃっているんですから、そのとおりなさったらどうですか。
    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕
#433
○海部内閣総理大臣 私は、決してよその国のことまで一々調べ上げてきて、ここにこういう脱法がある、ここにこういうものがあるということを言う、そんなことは一つも言っておりません。そして、ここでよその国のことに触れられる質問が野党から来るなれば、それはそのまま情報として国連へ教えて、そして国連できちっと取り締まるのが筋じゃないでしょうか。私はそういうことを言っておるので、よその国のことまで日本が暴ける能力があると思っておりませんし、そのような趣味は持ち合わしておりません。
#434
○児玉委員 冗談じゃないですよ。これは趣味の問題でないよ。趣味の問題じゃありませんよ。経済制裁を強化するという国際的な責務ですよ。その点を厳しくやってほしい。
#435
○海部内閣総理大臣 経済制裁を厳しくやるということは何度も言っているじゃないですか。よその国を、一々全部指示を出して、どこの国が守っておるか守っておらぬか調べるとおっしゃるから、そうじゃなくて、ここで外国が抜け穴をやっておるということを言う方がおるから、そういった情報も教えて、それは国連という一段高い国際機関でやるのが筋じゃないでしょうか、私はそういうことを申し上げておるのです。経済制裁をやれということは大前提として徹底的に言っておりますから、どうぞ誤解なさらないように。よその国へ全部訓令を打ってその国がどうのこうのということは、知り得た情報は国際機関へ伝えようということで、御質問の翌日に私の方はちゃんと国連へ指示していろいろしておるのですから、誠意を持った対応もしておるのですから、聞いて聞かないふりしたり、伝えないようなことをしない。こういう議論が国会であった、そういったことはちゃんと教えてあるのですから、それに従って国連が対応して行動するというのは、これが筋じゃないでしょうか。私はそう思っております。
#436
○児玉委員 あなたが、ないしは中山外務大臣が、不破質問の翌日、何らかのことをなさったということは、さっきから言っているように私は確認をしておるのですよ。そして、今総理が言われたように、あのときは不破が提供した資料をあなたたちは国連の方に出しているようなんで、日本として在外公館で知り得たことを国連にもたらすということも、これまた日本の重要な貢献だ、その点についての努力を強く私は求めて、法案の内容の問題に入っていきたいと思います。
 法案第三条二号のイ「停戦(武力紛争の停止、兵力の撤退その他これらに類するものをいう。)の監視」とありますが、「その他これらに類するもの」に例えば兵力の切り離しが含まれますか。
#437
○赤尾政府委員 このイの停戦の中には、「武力紛争の停止、兵力の撤退その他これらに類するもの」でございますけれども、「これらに類するもの」の中で兵力の切り離しはここに含まれるかどうかという御質問ですが、これは通常、平和維持軍の方の任務になっております。平和維持軍、停戦監視団ではなくて平和維持軍の方の任務でございます。
#438
○児玉委員 聞いたことに答えてほしいですね。じゃ、こういうふうにお尋ねしましょう。「停戦(武力紛争の停止)」それを監視するというのですね。どんな態様が予想されますか。「兵力の撤退」、それを監視するという、どんな態様が予想されますか。
#439
○赤尾政府委員 兵力の引き離しは、通常、平和維持軍の職務あるいは任務に入っておりますけれども、兵力の撤退の監視というものであれば、先生の言われる兵力の引き離し業務というものが、今言われましたように兵力の撤退の監視というものであれば、これは第二条二項の平和協力業務の一つとして予定されているというように考えます。
#440
○児玉委員 もう一遍伺いましょう。あなたは、その監視軍の仕事の中に兵力引き離しは含まれない、そういった趣旨のことを言われましたけれども、具体的にお聞きしましょう。
 国連兵力引き離し監視軍、シリアのゴラン高原で活動した。一九七四年の六月から現在までその活動は展開されています。兵力引き離しをやっています。これは明白に国連監視団のカテゴリーに入る、あなたたちがこの委員会に提出された資料の中にもそのように書いてありますよ。どうですか。
#441
○赤尾政府委員 ただいま先生が御指摘になりました国連兵力引き離し監視軍、これはUNDOFのことだと思いますけれども、これは基本的には平和維持軍でございます。したがいまして、武器等も、小銃、重機関銃等も装備しております。
#442
○児玉委員 PKOの活動について国際連合が出しました「ブルーヘルメット」という本があります。この中で、国際連合は、いわゆる国連平和維持活動、ピース・キーピング・オペレーション、それを平和維持軍と監視団に分けていますね。外務省は、民社党の求めで先日委員会にお出しになったこの「平和維持活動一覧表」の中の今のUNDOFは平和維持軍であって監視団ではないと主張されるのですか。
#443
○赤尾政府委員 私たちの判断では、今の先生の御指摘の監視軍は平和維持軍のカテゴリーに分類しております。
#444
○児玉委員 私は、法の実際の運用の問題と、法案が何をなし得るか、何を排除しているのかということは、この際きちんと区別して議論しなければ混乱が増すばかりだと思います。この三条の二号の例えばイについて、平和維持軍の活動は含まないということがどのようにこの法律で保証されていますか。
#445
○柳井政府委員 この三条二号のイに「停戦の監視」というのがあるわけでございますが、先ほど来御指摘のございましたいわゆる平和維持軍でございますが、これは兵力引き離しのために武力の行使を伴うことがあるわけでございます。その意味におきまして、この法案の基本的な原則といたしまして、二条の二項にございますように、「海外派遣に係る平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということでございますので、そのような意味におきまして、この平和協力業務がその任務として何らかの武力の行使を想定しているようなものには参加ができないという考え方でございます。
#446
○児玉委員 そのような説明は全く国際的な常識にも反しますね。
 それでは、さっき聞いた、この点に答えてください。武力紛争の停止、それを監視すると二号のイで明確に言っています。兵力の撤退、それを監視すると明白に言っています。どんな態様になるのですか。
#447
○赤尾政府委員 先生の言われます態様というのがよくわかりませんけれども、監視団と平和維持軍との任務を、基本的な任務を申し上げますと、監視団は、選挙監視はちょっと今別にしまして、停戦監視、監督のために紛争地域に派遣されて、停戦合意に違反する行為があればこれを直ちに安保理に報告することを任務とする。ですから、停戦監視についての合意がありまして、その監視が守られているかどうかというのを見ておりまして、合意違反があれば直ちに安保理に報告するというのが監視団の任務でございます。
 他方、平和維持軍の任務は……(児玉委員「それは聞いていない」と呼ぶ)はい、それじゃ……。
#448
○児玉委員 武力紛争の停止、兵力の撤退、それを現場で監視をする、そして何らかの不都合なことがあれば、対処すべきことがあれば報告をしていくということをあなたたちは言われたけれども、「その他これらに類するもの」として何がありますか。
#449
○赤尾政府委員 通常、国連監視のもとでの停戦が合意されます場合には、その周辺国が巻き込まれているケースも往々にしてあるわけでございますが、そのような地域からの例えば武器援助というようなものが「これらに類するもの」ということで読めるのではないかと考えます。
#450
○児玉委員 外務省は、平和維持軍を何とか出さないようにということでさっきから盛んに努力をされておりますが、平和維持軍も広い意味でのPKOの活動の範囲に入っています。その点はどうですか。入っているか、入っていないか聞きます。
#451
○赤尾政府委員 PKOの主な分野は、平和維持軍と停戦監視団及び選挙監視団でございます。
#452
○児玉委員 さて、そのPKOの活動でこれまで何人の死者を出していますか、負傷者は何人出ておりますでしょうか。
#453
○赤尾政府委員 私、ただいま負傷者の数までは持ち合わせておりませんけれども、死者の数だけ申し上げますと、一番多いのはコンゴ国連軍の百九十五名、これは死者の数でございます。その次が国連レバノン暫定軍、UNIFILでございますが、これが百七十一名。国連サイプラス平和維持軍が百四十七名。その他、第一次国連緊急軍、これはもう任務は終わっておりますが、六十四名。(児玉委員「トータルを言ってください」と呼ぶ)トータルはちょっと今集計すると時間がかかりますので、主なものだけあと残り申しますと、第二次国連緊急軍は三十九名。UNDOF、今問題になっています国連兵力引き離し監視軍、これは三十七名。ナミビア独立支援グループが二十七名。あとは、国連パレスチナ休戦監視機構、UNTSOですが、これが二十一名。最後に、国連インド・パキスタン軍事監視団が四名でございます。
#454
○児玉委員 今の数を私たちが足し算しますと七百五名になります。
 それで、これだけの数が停戦の監視等の活動の中で生じている。日本がこれまでPKOに派遣してきた要員はどのような形態でどんな任務でしたでしょうか。
#455
○赤尾政府委員 PKOへ派遣しましたのは、ナミビアの選挙監視団へ二十七名と、ニカラグアの選挙監視団に六名でございます。
#456
○児玉委員 その方たちはいずれもシビリアン、文官であって、いろいろな経過はあるにせよ外務省職員という形で国連に出向して政務官としての任務につく、これが一般的な形態ではないでしょうか。
#457
○赤尾政府委員 ただいまのナミビアとニカラグアへの選挙監視団への参加の方は、すべて地方公共団体あるいは民間から外務省の職員になっていただきまして、外務省の職員としていわゆる国連監視団に参加する、すなわち出張の形で参加するということで参加していただきました。
 なお、先生が今外務省から国連へ出向という言葉を使われましたのでついでに申し上げますと、アフガニスタン・パキスタン仲介ミッション及びイラン・イラク監視団にそれぞれ一名ずつ、これは外務省の職員を国連に出向させまして、政務官として参加させた経緯がございます。
#458
○児玉委員 この点は法制局長官にお尋ねをしたいのですが、現在の法律であっても、国連のこのPKO活動に対して非軍事的分野でシビリアンを派遣するということは完全に可能だと思うのですが、長官のお考えをお聞きしたいと思います。
#459
○工藤政府委員 先日からお答え申し上げておりますように、昭和五十五年のいわゆる政府に対します質問主意書の答弁書でもお答えしているところでございますが、平和維持活動として編成されたいわゆる国連軍のうち、その目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、これに参加することは憲法上許されないわけではないということでございます。したがいまして、現行法令上の根拠がありますれば、憲法と現行法令上の両方でクリアされるならば、その範囲でこういうものに、こういうものにと申しますのははっきり申しましてその目的・任務が武力行使を伴わないもの、こういうものに参加することは可能であろうと思います。
#460
○児玉委員 まさにそうだと思います。
 そこでちょっと先ほどに返るのですが、この停戦監視業務に参加する場合に、国連事務総長の指揮下に入るのではないかと思いますが、いかがですか。
#461
○柳井政府委員 ただいま御指摘の国連平和維持活動の一つの典型といたしまして、いわゆる監視団と呼ばれるものがあるわけでございますが、その指揮系統につきまして、これまでの実例に照らして、実態に即してみますと、次のようなことになろうと思います。
 この場合、国連事務総長によりまして現地における司令官が任命されるわけでございますが、各国から派遣されました要員、部隊は、各国政府と国連事務総長との間の何らかの取り決めに基づきまして、この司令官の指揮下で行動を行うこととなるのが通例だというふうに言えると思います。ただ、ここに言いますところの国連平和維持活動における事務総長ないし現地司令官の指揮というものでございますが、これは各国要員または部隊を有機的に結びつけまして一体として機能させるために、その配置でございますとかあるいは移動等の運用を行う権限でございまして、各要員の身分、地位、懲戒等の面での権限は、あくまでも派遣元でございます各国政府に属しているわけでございます。したがいまして、我が国国内法上、例えば自衛隊が他国の軍隊の指揮下に入ることは想定されていないという場合の指揮とは、この意味において性格が異なるというふうに解しております。したがいまして、このような平和維持活動の典型例たる監視団に平和協力隊が参加することは、現行の法令上も許されるというふうに考えております。
 なお、平和協力隊を今後いかなる形で監視団に参加させるかということにつきましては、派遣対象となる活動の態様でございますとか、あるいは現実のニーズあるいは他国とのバランス等を考えまして、国連からの要請を踏まえて検討して決めていくという考え方でございます。
#462
○児玉委員 今の御説明も、国連自体がPKOについて述べていることと全く違いますね。後から海部首相に見ていただきますが、首相、さまざまな監視団の組織図を国連は全部書いています。そのいずれも事務総長が頂点にあって、その事務総長の指揮のもとに活動が行われるということが明白に明示されております。
 そこで、私はこの点は総理にお伺いしたいのですが、デクエヤル事務総長自体が、平和維持活動に従事する者は自衛のために武力行使ができる、こういうふうに明言をしております。この本の中にそのことを明言しております。そしてその場合に、平和維持軍か監視団かの別を問うておらず、「平和維持活動に従事する者は、」と総括的に述べて、自衛のために武力行使ができる。しかも、その「自衛」というのは、PKOの任務遂行を強制的手段によって阻止しようとする部分に対する反撃も含めて「自衛」と国連では言っています。そうなってきますと、これは明らかに停戦監視の業務であっても武力行使を伴うことになる。非軍事的分野での協力を貫くのであれば新しい法律は全く必要としない。そうではないでしょうか。この点、総理のお答えを聞きます。
#463
○赤尾政府委員 まず、私の方から事実関係を申し上げたいと存じます。
 事務総長が言っておられること、あるいは私たち国連のPKOのビデオ等も大分見たことがございますが、ああいうところに出てくる国連のPKOのメンバーというのは、ほとんどが平和維持軍に参加している方が多いと思います。今先生が申されましたように、反撃を加えるというのは、平和維持軍へ参加している方たちで、例えば国連のサイプラス平和維持軍の場合は、自動小銃、装甲車とかいろいろなものを装備しております。あるいは、もう御存じのとおり、UNIFILにつきましては、バズーカ砲、機関銃、重機関銃等も装備しております。他方、私たちが今まず一義的に参加を考えております停戦監視団につきましては、原則非武装でございます。そのような違いがあるということをまず第一前提として申し上げたいということでございます。
#464
○児玉委員 今の質疑の経過からも既に明らかになっているように、PKOへの要員の派遣というのは、現行法の枠内で既に実施されています。非軍事的な分野での協力を貫くというのであれば、新しい法律をつくる必要は全くありません。国連について言えば、国連がやることだから何でもすべていいということにならない、これもはっきりしています。今度、このきょう議論した三条の二号のイ、これはまあ一つですが、こういったものを含む新たな法律をつくるねらいは、自衛官あるいは自衛隊の部隊としての参加、それをこのチャンネルからもさせようとする、そこに明白な意図がありまして、このようなことは必要ない。この法案はきっぱりと廃案にして、自衛隊海外派兵に道を開く一切の火種はこの際きれいに断ち切って、この法案を撤回する、それを厳しく求めて、私の質問を終わります。
#465
○加藤委員長 これにて児玉健次君の質疑は終了いたしました。
 次に、高木義明君。
#466
○高木委員 まず冒頭に、恐縮ですが、国連平和協力隊の編成について待機部隊とすべきであることとして、派遣部隊の編成のあり方について、去る十月三十一日の本委員会における我が党中野寛成委員の要求に対し外務省から中間報告をする旨理事会で話し合われたようですが、その報告を求めます。
#467
○中山国務大臣 現在、私が先般中野委員の御質問に対してお答えをいたしまして、委員会に、委員長に出させていただくと申し上げたその時点から整理をやっておりまして、もうほぼ完成の域に近い。私はけさ実は素案を全部チェックしてきたのでございまして、できるだけ速やかに提出をさせていただきますが、理事会においてもいろいろと御協議をぜひ願いたいと思っております。
#468
○高木委員 ぜひ委員長におかれましては、例の件につきましては理事会で取り計らっていただきますようにお願いを申し上げます。
#469
○加藤委員長 はい、そのように理事会で再度協議いたします。
#470
○高木委員 私は、中東における紛争の平和的解決とすべての身柄拘束者の、いわゆる人質の早期解放を求める立場から、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まず、御案内のとおり、イラクのクウェート侵攻の結果、当時クウェートに残留をしていた邦人男性百三十九名はイラク、クウェート各地の軍事施設などに拘束をされております。また一方では、イラク当局に足どめをされているイラク在留邦人百六十六名も出国の自由を奪われておる現状であります。ただ、私は、この三カ月の間、戦火の拡大は一応防止され、人質と言われる方々の身の安全が確保されていると言われることに何よりの安心を覚えるわけであります。しかしながら、既に三カ月を経過し、厳しい環境の中で、はかり知れない不安と不自由な生活を強いられておりますので、早期の問題解決が私は今どうしても望まれておると思いますし、同時に残された留守家族の皆さん方におかれましても心労が極に達しておる、このように考えておるわけであります。
 そこで、お尋ねをいたします。
 身柄を拘束されている方々の早期解放に向けての我が国の取り組みについてお尋ねしたいわけでありますが、アメリカ、イギリスなどについても各国それぞれ自国民の解放のためにミッションを派遣するなど水面下を通じて交渉しているものと伝えられております。人質の解放に向けて我が国もただ手をこまねいているのみではならないわけでありまして、外務省も、これまでこの問題につきましては国連決議重視の立場から、人質問題はイラク政府と交渉しない、このような考え方を表明しておりますけれども、私は、国際連帯の中で努力をするものとされましても、抜け駆けではない、そのような意味の我が国の独自の行動は何かあるのではないか、やるべきことがあるのではないか、このように思うわけでありますが、この点につきましてまず総理の御所見をお伺いしておきたいと思います。
#471
○中山国務大臣 今人質として拘束されている各国の方々の解放については、政府としては国連事務総長あるいは国際赤十字、あるいは現地の大使を通じてできる限りの努力をいたしておりますし、この問題につきましては八月の二日以来二十四時間体制で外務省は職員を張りつけてやっておりますが、今日現在、中曽根元総理を初め自民党の代表団もバグダッドに滞在をしておられまして、イラクの政府首脳ともいろいろ協議をしている最中でございます。
 我々としては、やはり国連決議を尊重しこれに協力をしていくということと、イラク政府が人質をとることはみずからの国が最も世界から見て不利益を受けるということを認識してもらうように積極的に努力をするとともに、今回のいわゆる自民党の代表団初め中曽根元総理、個人の立場で行っていただいておりますけれども、このような間にいろいろな協議が開かれていく。また、けさの新聞報道によりましても、昨日イラク政府は、人質から各国にいる家族に電話をすることが承認された、こういうことで、日本には二十六名かの留守家族に電話があったということでございますから、私どもはさらに一層人質の解放が行われるように努力をしてまいらなければならないと考えております。
#472
○高木委員 この問題につきまして、我が国としてもアメリカ、イギリス、ドイツなどと協議をする用意はないのか、その点について、どうでしょうか。
#473
○久米政府委員 ただいま外務大臣から御答弁ございましたとおり、この問題はやはり国際社会が一致団結してイラクに対して働きかけを行っていくということが非常に重要な問題でございます。そういうことからいたしまして、当然国連その他の場におきましてもこうした国際間の、この問題を含めて国際間の話し合いというのは行われておると思う次第でございます。
#474
○高木委員 最近の例を見ましても、これは十月十九日以降でありますが、各国人質の出国者数というのは、アメリカで十四名、イギリス三十三名、フランス二百六十七名、ドイツ八名、スウェーデン六名、フィンランド五名、ギリシャ十名、ソ連については千五百名の許可が出ておる、ブルガリアにつきましては七百名の予定が決まっておる、こういうことであります。もちろん、フランスにつきましては、既に十月二十九日、二百六十七名全員が出国をされたということになっておるわけであります。こういうものを見ていましても、我が日本が極めて少ない。これについては、関係者一同ひとしくいら立ちの気持ちを持っておるということであります。この点につきましてどのように思われておるのか、御所見をいただきたいと思います。
#475
○中山国務大臣 一番心配しております者の一人としてまず外務大臣がおりますし、海部総理ももちろん日本の代表者として一番心配していただいておる。私どもは、一層の努力をさらに続けたい、このように考えております。
#476
○高木委員 そこで、私は、先ほども出ましたけれども、今回の中曽根元首相のイラク訪問についてお伺いをしてまいりたいと思います。
 事態を何らかの意味で打開をしたい、こういうことから、これまでにない新しい行動の一つとして中曽根元首相がイラク訪問したわけであります。日本人人質の解放に向けては、いろいろな目的はありますけれども、今回はそれが大きな目的の一つであることは間違いないわけであります。この点につきまして、まず総理、今回の中曽根元総理のイラク訪問についてどのようにこれを受けとめておるし、そのめどは、どのような期待をしておるのか、御所見があればぜひお聞かせをいただきたいと思います。
#477
○海部内閣総理大臣 イラクの、正確な名前はちょっと今ど忘れしましたけれども、民間の団体から中曽根元総理に対して招待状が来て、そして訪問をされたら大統領との面会も準備されるだろう、こういう御連絡が来たということを私も承りました。人質の皆さんに対する問題については、私自身がラマダン副首相にお目にかかったときも、これは大統領に日本の意思として率直に伝えてほしいということで、国連決議の原則に従う問題を述べた中で、邦人を含むすべての人質の自由、解放ということも日本の強い要望である、また、その局面を転回できるのもあなただ、そして政治的な対話は続けていこうということで一致しましたので、その後もいろいろなレベルを通じて政治的な対話は続けるけれども、局面転回の決断をイラクもするように強く求めるということになります。ですから、その後もいろいろな国を通じて働きかけをしたり、あるいは今回自民党の代表団が出かけたり、中曽根元総理のところにイラクのそういった団体から招待状が来たり、そういった努力が全部積み重なっていくところは、おっしゃるように事態の平和的な解決が一番根本であります。そして、その中の一つの重要な側面として人質の釈放の問題もあるわけでありますから、みんながいろいろなところで平和的解決の努力とともに、人質の皆さんの一日も早い解放問題について努力をそれぞれの立場で積み重ねていただいておる、このように受けとめております。どのような会談内容で、どのような結果になったかは、まだ私のところへ具体的な詳細が入っておりませんので、憶測で物を言うことはお許しをいただきたいと思います。
#478
○高木委員 この中曽根元首相のイラク訪問に、御案内のとおり自民党のイラク訪問団も同行しておるわけでございますが、この訪問に当たりまして、総理・総裁として何か考え方を持っていくように示されたのか、あるいは何らかの指示をなされたのか、その点についていかがでしょうか。
#479
○海部内閣総理大臣 自民党の訪問団は、それぞれ留守家族の皆さんといろいろ連絡をとりながら、人質の皆さんへの物を持っていってお届けするとかいろいろなことをしたいということでありました。私は、それはそれなりに非常に結構なことでありますから、気候も変わっていくときですので大いにされたらいいということを申しましたが、それよりも根本的なことは、私がラマダン副首相と話しましたときの基本原則、それについて申し上げるとともに、同時に、自由民主党の代表団ですから、政府・与党の立場で、きょうまでのイラクと日本との長い間の関係の中で、イラクは今日本に約七千億円近くの債務がある、それは言葉をかえて言うなればそれだけ技術協力、経済協力も積み重ねができてきておったわけでありますし、また同時に、混合借款の残りの分をどのように再開していくのか、イラン・イラク戦争で滞っておりました関係が再開をして、八月一日にもそのことについてのお話し合いが日本から人も行ってイラクで行われておったさなかでありますので、私は、そういった日本とイラクとの関係の再構築のためにも、イラクが思い切ってここで決断をして局面を転回すること。今局面を変えることができるのは、イラクそのものが、もっと言えばフセイン大統領がきちっと決断すればそこのかぎはあくわけでありますから、そういったことについて日本は二国間関係を再構築していく用意があるということも、これは言うだけではなく、八月一日にやってきたことでありますから、それを続けようという継続の意思や、あるいはもう少し中長期の目盛りで言いますと、アラブとパレスチナの問題というものが恒久和平のためにいろいろテーマになっておりますが、政府としては二百四十二号の決議に従ってイスラエルの占領地からの撤退のこと、パレスチナ国家の樹立を含むパレスチナ人の基本的な権利の問題のこと、そしてイスラエル国家を認めないと言っておったアラブやPLOなんかにイスラエル国家は認めるという前提に立って物を行うこと。PLOのアラファト議長も、私が日本へ招く前には、テロはしない、イスラエル国家の存在は認めるという二つの条件を認めることによって政府賓客として招いて会談もしておるわけでありますから、そういった中東の恒久和平に対する政府の物の考え方も既に私との対談で伝えてはありますけれども、自民党の議員団の皆さんにもそういったことは機会があったらお伝えいただくように、これは伝えてございます。
#480
○高木委員 人質の問題につきましては何も申し上げてないということでございますか。
#481
○海部内閣総理大臣 最初にも申し上げましたが、原則に従った解決というのは国連決議の原則に従った解決でありまして、そしてそれはクウェートからの撤退ということ、クウェートの正統政府の復帰ということ、同時に人質の、日本人はもちろんのこと、すべての人質を解放するということ、これは国連決議に従ったこの問題解決の大前提でありますし、それから冒頭に申し上げましたように、人質の皆さんに、いろいろこれは早く解放して自由を返さなければならぬということは、ラマダン副首相にもフセイン大統領にも十二分に伝えてあることでありまして、そのことは当然のこととして代表団の皆さんは受けて、国連決議の原則に従った解決というのはその三つだということも詳しく、事細かに説明いたしました。
 時間の関係で原則に従ったとくくって物を言いましたけれども、その三つの点に分かれておるということもきちっと皆さんにお話ししてありますし、今の時期に人質の皆さんの問題が一番大切であるということも、これはもう言をまたないところでありますから、私からはしっかりと申し上げてあるということをここで申し上げさせていただいておきます。
#482
○高木委員 この訪問団の一行は既に十一月四日、昨日ですね、ラマダン第一副首相、アジズ外相、それから本日、十一月五日、フセイン大統領、サレハ国会議長などと会談をいたしております。今後さらに問題が煮詰まっていくと、人質解放に何らかの前進が見られると思われる条件提案がもしあった場合、これまでにない踏み込んだ対応を総理として決意をされるのか、その辺の心の持ち方についてお伺いをしておきたいと思います。
#483
○海部内閣総理大臣 原則的解決には粘り強く平和的に解決をしなければならぬ、間違っても力の解決に訴えてはいけないということは、私がきょうまで三カ月間寝ても起きても忘れなかった大原則でありますから、人質の皆さんの自由を求める、自由解放をしてもらうためには、日本としては粘り強くあらゆる努力を続けていかなければならぬと考えております。
 そして、それらのことについていろいろな努力の積み重ねの一つが今回の自民党の代表団の訪問でもあり、また中曽根前首相もそういった原則を踏まえて、三つの原則を踏まえて自分は話をきちっとしてくるんだということも再三言っておられますから、その詳細がどのようなことになるのか、私はそれを極めて注目しておりますし、さらに人質問題については、イラク側の高い次元に立っての決断とこの問題の根本的解決がすべての解決につながるんだということ、そしてそれが世界の願いであるということをもう一回厳しく申し上げさせていただきたいと思います。
#484
○高木委員 総理は、イラクとの政治的対話について、さきの十月三十日の本委員会で次のように答えたと言われております。現在の局面を打開をして人質問題を解決できれば、パレスチナ問題を含む恒久平和のための国際会議を日本としても提案し、協力する、またイラクとの関係の再構築のために話し合いを続けることについては、先ほども申されましたようにラマダン・イラク第一副首相との会談でも共通の認識を持った、そういうことを改めて申し上げてみたい、こういうことを述べておられるのであります。
 イラクとの政治的対話を改めて呼びかけるということは一体具体的にどういうことなのか、今後どのような行動の進展につながっていくのか、その辺についてお考えをお示しいただきたいと思います。
#485
○海部内閣総理大臣 何度も申し上げておりますが、イラクがそれを受けて決断してくれれば新たなる展開につながってまいります。そして、今いろいろな方が行って話をしておってくださることも、あらゆるレベルでの二国間の政治対話というものの一つだと思っております。
#486
○高木委員 何かそのような、建前としては十分理解できるわけでありますが、私はここで思い切った、例えば日本がイラクとアメリカの橋渡しを買って出るとか、あるいは機が熟すれば総理みずからがイラクに出かけていってこの問題についての会談をするとか、こういうことができないものか、その点について再度お願いをいたします。
#487
○海部内閣総理大臣 いろいろな事情、いろいろな条件が許せばいろいろなこともまた考えられると思いますが、今は、きょうはこうやって委員会を朝から一生懸命やっておりますし、情報が来たらそれを分析して、私どもはアメリカの大統領やあるいはECの首脳なんかとも十分連絡をとりながら、問題の根本的解決にできる限りの努力をしていかなければならぬ、これは当然のこととして考えております。
#488
○高木委員 次に私は、八月二十五日以降イラクのいわゆる主要軍事施設などに拘束をされておるいわゆる邦人人質について質問をいたしますが、御案内のとおり十月の十八日、四名の方が健康上の理由ということで解放され、帰国をいたしました。残された百三十九名はそれぞれの場所で、これは居住地がはっきりしませんが、空港とかあるいはダム、兵器工場あるいは製油所、こういったところに分散をして拘束をされておる、そのように聞き及んでおります。彼らの状態としては、極度の情報不足の中で精神的恐怖あるいは肉体的疲労、こういった軟禁生活の中でもうほとんど限度に来ておるのじゃなかろうか、このように思うのであります。私の先輩、同僚も二十数名まだこのような立場におられ、留守家族も耐えがたい緊張の日々を送っておるのが実情でございます。
 そこで私は、さきの十八日に解放され十月の二十日に地元長崎に戻ってまいりました四名の中の一人の岩瀬さんの、この状態の中で何か日本がすべきことがあるのかという、そのような要望について私は耳にしたのであります。それによりますと、次の二点が主な要求でございました。
 一つは、抑留されておる外国人に対する健康管理の問題であります。これは、言うまでもなく健康管理でございますから、持病やあるいは痛い、かゆいのメンタルな、繊細な感情、判断、そういうものを含めて、やはりお互いにイラクの医師にいたしましても日本人にいたしましても英語が母国語ではございませんので、なかなかそこにはコミュニケーションに不足するところが多々ある。したがって、かゆいところにも手が届かない、こういうことからいろいろな苦労をされておる実態が聞かれております。例えばフランス人の腎臓結石患者の対応でございますが、この方は後でそのようにわかったわけでありますが、痛みについては鎮痛剤の投与で済ませる、また痛みによる不眠につきましては睡眠薬の投与をする、見るに見かねて邦人の皆さん方あるいは外国の皆さん方、一緒にキャンプにおる方々連名でイラクに文書を出しましたけれども、これが拒否をされた、バグダッドの病院に入院させていただくように要求をしたところが拒否をされた、こういうこともあったそうでございます。
 したがって、これは戦時の極めて厳しい冷厳な事実かもわかりませんけれども、私は、人道的な立場から日本人医師による健康診断がぜひできないか、こういうことを強くお願いをするわけであります。この問題について、例えば赤十字を通じてこのようなことができないのか、この辺について当局の取り組みをお尋ねをしたいと思います。
#489
○久米政府委員 イラク側に拘束されておられる方々の健康状態につきましては、政府といたしましても最も心を痛めているところでございまして、当初の段階から日本大使館を通じまして、イラク側に対して、大使館にこれは二名、クウェートの大使館とイラクの大使館それぞれ一名ずつ医務官がおりますので、日本人の医師による健康診断を認めるようにという要請を繰り返し行っておりますけれども、これまでのところ、イラク側は、こうした邦人を含めて外国人による各国人の人質の方々の診断というものは一切これを拒否しております。もちろん赤十字を通じましても同じようなアプローチをやっておりますけれども、赤十字を含めて外国人医師の診断は一切これを認めないというのが現在のところのイラク側の態度でございます。ただ一つ、一例、拘束されている先で病気になった日本人の方がバクダッドに送られてまいりまして、バクダッドで日本人の医師の診断を得られたというケースはございますけれども、それを除きますと、これまでのところ、イラク側はこれを一切認めてないというのが状況でございます。
 政府といたしましては、今後とも在イラク大使館を通じまして、各国及び国際赤十宇とも協調しつつ、病人に対する人道的扱いをイラク側に粘り強く申し入れていく所存でございます。
#490
○高木委員 これは、英語を母国語としない、例えばドイツ、こういった国あたりとも十分連携をとって要求すれば恐らく可能になるのではないかという望みもあるわけでして、強く私は望んでおきたいと思います。
 また、ビタミン剤や一般常備薬の補給についても強く望まれております。この点について、そういうものが実際にイラクからそのような方々の手元に渡っておるのかどうか、その辺についてどのように認識をされておるのか、お答えをいただきたいと思います。
#491
○久米政府委員 イラク側に拘束されております方々への医薬品の差し入れにつきましては、九月九日以来既に十回ほどにわたって差し入れを行っておりまして、これはすべて必ずしも全部が御本人の手に届いているかどうかわかりませんけれども、かなりの数の受領書というのが送り返されてきておりますので、ある程度の成果は上がっているのだろうというふうに考えております。今後とも、医薬品の差し入れというのは、イラク側の協力を求めつつ、鋭意続けていきたいと考えております。
#492
○高木委員 これも、私は本当に大切なことだろうと思っておりますので、ぜひ人道的な立場から、そういうものも懐に届くようなそういう努力をさらに続けていただきたいと思うわけであります。
 時間も限られておりますので、二つ目の問題はラジオ・ジャパンに関する要望であります。
 現在、邦人人質にとりましては、ラジオによるメッセージのみがリアルタイムで家族の様子を知る唯一最高の手段であります。現地の放送時間、十一時あるいは十九時には、同じキャンプにおられる邦人全員がラジオの前に食い入るように寄って集まってきて、雑音の中ではありますが、自分あてのメッセージがないかと一生懸命耳を傾けておるそうであります。ともすれば弱気になりがちなそういう精神状態も、家族や友人からのメッセージによって力づけられ、そしてまた希望がわいてくると言われております。例えばこのメッセージにつきましては、イギリスのBBC放送、アメリカのVOA放送などのメッセージコーナーに比べますと、メッセージの数、放送回数あるいはまた放送時間が少なくて、かつ短い、こういうことも言われておりますし、留守家族からは、一回三十秒では短過ぎて言いたいこともなかなか言えない、難しい、もっと延ばしてもらえないか、こういう要望もあるわけであります。気象状況、例えば砂あらしなどによっては、通常聞こえる五時とか十九時の放送も聞きづらいと言われております。また十一時の放送につきましては、慢性的に、これはソ連の出力が強いものですからソ連の放送にかき消される、そして聞こえづらい、こういうふうなことが言われておって、この問題につきましては、出力を高くできないか、あるいは周波数、いわゆるチャンネルを変えることができないか、こういうことが言われております。これは今現実に帰国された方の要望でありますけれども、ひとしく拘束されたイラクにおられる不自由な方々の切実なる願いと私は思っております。
 それはもちろんNHKもこの問題に関しましては、当初三・五時間であったものを今十一時間ということで、非常に努力をして夜も昼も関係者は頑張られておることに対して私は敬意を表するわけであります。そしてまた、予算的、物質的な枠もありますのでそう簡単にはできないことも重々承知でありますけれども、あの今百三十九名の方が本当にそのメッセージに自分の生きる勇気とそして希望を持っておられるならば、日本政府ができる、ここにおる国民ができる一つの温かい手だてとして、私は、この問題をぜひ解決してやってほしい、要望にこたえてやってほしい、こういうことを思うわけでございます。
 こういう意味で、関係大臣の御答弁をお願いしたいわけであります。
#493
○深谷国務大臣 今高木先生のおっしゃるとおりでありまして、情報が手に入らないということがいわば精神的なパニック状態を生むわけで、その唯一の情報源がラジオ日本でございます。郵政省といたしましては、NHKとも緊密な連絡をとりまして、八月三日以降ガボンの中継所からの放送時間を三・五時間から徐々に延ばしまして、現在は十一時間の放送を続けているわけでございます。そして、九月六日からイラクの在留邦人向けのメッセージの放送を実施いたしまして、九月十五日から肉親の声を含めたメッセージをお送りする、そういう形で続けているところでございます。
 そして、メッセージの放送につきましては実はきょうから、月曜日から金曜日にかけて十分間一日三回でございましたのを十五分間に延ばして三回、土曜日は従来どおり十五分間を三回、月曜日は三十分を三回行うということで、ただいまさらに時間帯を延ばす工夫をいたしておるところでございます。
 それから周波数の問題でございますが、ただいまガボンから送っておりますのは五百キロワットでございまして、これが残念ながら最大の出力でございます。
 それから周波数の変更等については、どの周波数が一番聞きやすいかということを考慮しながら、一番聞こえる周波数をあてがうという形の工夫も今全力を挙げてやっているところでございます。
 どちらにいたしましても、現地に残されております日本人、また日本におります留守家族にとりまして、唯一最大の武器でございます。郵政省といたしましては、一層NHKと緊密な連絡をとりながらその充実のために努めてまいりたいと思っております。
 なお、けさの新聞等で報道されておりましたが、四日未明、かの地から家族に電話がかなり数多くございました。その中で、ラジオ日本の放送を楽しみにしている、あれが唯一の日本の状況を知る機会だという話がございまして、この放送、今まで本当に聞こえているんだろうかと不安を持って対応しておったのでありますが、そのような状況を知りまして、一層力を得て頑張ってみたいと思っております。
#494
○高木委員 ひとつよろしくお願いをしておきたいと思います。
 次に私は、いわゆるイラク当局に足どめをされたバグダッドにおられる百六十六人の残留邦人について取り上げてみたいと思います。
 とりわけこれらの方々は特に、例えば現地の資金の状況についても非常に不安を持っておられます。侵攻後、経済制裁によりまして銀行送金の業務が停止をされておる。したがって、日本から邦人への必要な経費も送金できないでおる。三カ月たった今では、現地においてはもう通貨不足になっておると言われております。そのため、例えば現地の社員に対しても給料が払えない、もちろん邦人の生活費も非常に窮屈である、こういうことが出ておりますので、この点について、その後どのような状況把握をされたか、大蔵大臣、この点につきましての現状と対策についてお伺いをしたいと思います、
#495
○橋本国務大臣 今委員からお話がありましたように、大蔵省として、人道上の見地から、在イラク邦人向けの合理的な範囲内における生活費の送金は認めるという姿勢を今日までとってまいりましたが、九月下旬以降、我が国を含めてイラクに対して資産凍結を行っております国についてイラク国内で預金の引き出しが認められませんでしたために、我が国から送金をされたという例はございません。しかし、その後、外交当局の非常な御努力をいただきました結果、十月中旬からは既存の預金の中から一企業当たり一カ月一万イラク・ディナール、約五百万円でありますが、引き出しが可能になってまいりました。このような状況を踏まえて、大蔵省の立場として、外交当局に一層の御努力をお願いをしながら、イラクに対し自由な預金引き出しができるように求めるなど、今後とも努力をしてまいりたいと思います。ただ、非常に現地に影響を与えることもありまして、詳細についてはこの程度でお許しをいただきたいと存じます。
#496
○高木委員 時間も参りましたので、私はこの問題につきましては、当初も申し上げましたとおり、早期の平和的解決によって人質の皆さん方が解放されることを強く望んでおります。今イラクにおられる邦人の皆さん方は、何らかの面で日本あるいはイラクの経済発展のために大きな役割を果たされた方でありますし、今後イラクの民生、福祉にとっても極めてその貢献は大なるものがあるであろうと私は思っておるわけであります。この問題が平和的に早期に解決をして、今後ともに世界の平和はもちろんのこと、イラクと日本の国交、さらに友好親善を深めていくことが特に大切ではないか、こういうことで総理初め関係各大臣のそれぞれの立場から、私がまだ触れてない分もお含みをいただきまして、ぜひ強力な取り組みをお願いをして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
#497
○加藤委員長 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎弥之助君。
#498
○楢崎委員 自治大臣にお伺いをいたします。
 十一月一日に不幸な事件が起こりました。過激派によって青木紘巡査が殉職をされました。まことに哀惜の念にたえません。心から哀悼の意を表します。
 そこで、どのようないわゆる補償がなされたかをまずお伺いしておきたいと思いますが、新聞では警部補というふうに載っておりましたから二階級特進になっていると思います。それで、十一月一日付で警察勲功章が授与されておるということも聞きました。したがって、警察庁の職員の任用に関する訓令によりまして、当然二階級特進であればまず賞じゅつ金の、訓令の第五条ですが、最高の千七百万円を考えられるのではないか、それが一つ。もう一つは、警察勲功章を授与されておられれば、当然第五条の二によって別に二千万円が付与される予定である。そのほかに東京都の方から、これはほかの自治体もそうですけれども、今度の場合東京都ですね、救慰金三千万円、上限はそうですが、それを申請中であるということを聞きました。ぜひ遺家族の方のためにも今の金額は確保していただきたいものだと思いますが、いかがでしょうか。
#499
○奥田国務大臣 当然御指摘のとおりに警察勲功章、最高の表彰規定に基づく形は十一月一日付で出しております。したがって、巡査長という立場でございましたから、青木巡査長の場合、二階級特進ということで警部補に昇進をいたしております。と同時に、今賞じゅつ金に関しましては、警察庁の長官賞じゅつ金あるいは東京都の最高額、まだそのほかに、実は殉職の場合の総理の特別な形での賞じゅつ金申請も行う方向で検討中でございます。
#500
○楢崎委員 大変結構だと思います。私はなぜこれを冒頭にお伺いしたかと申しますと、実は自衛隊の家族の方、匿名でした、それから警察官の家族の方から、もし派遣されたときに万一のことがあった場合に、残された者は大変困る、どういう補償があるのでしょうかという問い合わせがありましたから、それをまず聞いたのです。
 そうすると、例えば今度の協力隊に行かれる警察の方がもしそういう公務中同じような殉職があったら、そういう取り計らいを当然なされることと思いますが、いかがでしょうか。
#501
○奥田国務大臣 実は、そのことが検討課題の重要な問題点でございます。ということは、警察職員にもし要請があった場合あるいは消防庁職員に要請があった場合、国家公務員という形で国連平和協力隊に参加することになります。というところで、事故を想定されてのことでございますけれども、実は端的に申しますと、消防庁の場合、市町村消防でも、そういった殉職の場合の賞じゅつ金、府県、そして国と三段階、三重の手厚い、そういった形の万一の場合の殉職にはそういった形が行われることになります。警察の場合、府県警察、そしていわゆる警察庁、そういった形の賞じゅつ金支給があるわけです。二重、三重にガードされているわけでありますけれども、今度はそういうことになると非常に困る面が出てくるという形で、その面に関しては具体的に詰めて検討しておる段階でございます。
#502
○楢崎委員 私は、当然この湾岸地区に派遣される警察官の方、消防職員の方あるいは海上保安庁の方、全部二階級特進のあれが設けられておりますから、公平にやらなくちゃいけませんので、特に消防職員の場合は、東京や大阪や名古屋は一階級または二階級特進になっているけれども、札幌市の場合は二階級特進になっていますね、いきなり。だから、そういう不公平が起こらないようにしてもらいたい。
 そこで問題は、総理と外務大臣にお伺いしますが、今までの答弁によりますと、危険なところにはやらないんだ、もし危険な状態になれば、転進かどうなるか知りませんが、どこか下がるというようなお言葉でしたから、そうすると、この協力隊の人は特に生命の危険が予想される地域に出動することはないということ、あるいは危害を加えられることが予断されるような地域には出さないということ、あるいは特に危険な状況下において特別の任務を遂行することはない、そういう前提ですか。
#503
○中山国務大臣 実施計画を作成する段階におきまして、そのときの国際情勢を十分にらみながら計画を立て、そしてこの国連協力会議にかけて閣議にかけるわけでございますが、委員御指摘のように、中東といった問題から離れて、例えば停戦監視なんかの場合に、カンボジア和平が実現した場合にこれが出ます場合には、やはり現地には相当な武器を持った人たちが相当おるわけであります。そういう場合に、この停戦監視あるいは選挙監視なんかに行く際におきましても、危険がないということは言い切れない、私はそのように思っております。そのためは、その現地の状況を踏まえて、護身用の武器が必要であるときにはけん銃あるいは小銃を持たせることをそこの指揮官が認める、こういうことになるわけでありまして、委員の御心配のように、危険は必ず日本から外へ出た場合には存在をする、しかし、できる限り危険を避けるように努力をする責任が政府はある、私はそのように考えております。
#504
○楢崎委員 いや、私はそのとおりだと思いますよ。それで、危険なところには行かない、危険な場面になったら下がるなんということはできないの。できないの。それがいわゆる補償に関係するから私は言っているのですよ。いいですか。
 これも防衛庁の訓令です。防衛庁の訓令によりますと、千七百万円と九百万円とある。その場合に、防衛庁の場合、自衛隊です、千七百万円の特別弔慰金をもらうときには、特に危険な状況下において特別の任務を遂行するときは千七百万円、逃げていったときは九百万円。それでも、いいですか、今自治大臣がおっしゃったとおり、警察官の場合は最高に見て、今お聞きしただけで六千七百万ですか。――七千五百万になりますか、そうですか、まあいいです。余りにも格差がひどいんじゃないですか。自衛隊の場合は最高にして千七百万です。命にそれだけ差があるのですか。値段の差が命にあるのですか。それを私はしかとお伺いをしておきたい。
#505
○村田政府委員 お答えいたします。
 今先生御指摘の事実関係について申し上げますと、先生御指摘のとおり、防衛庁の場合、賞じゅつ金制度によって危険な場合に授与される金額は千七百万円。これが非常に特殊な場合、先ほど警察で総理大臣から一千万円というケース、我が方の場合には警務官のケースというような場合でございますけれども、一般的な場合には千七百万円、さらにそれが特別増額する可能性のあるときは若干の増額の可能性がございますが、先ほど先生がおっしゃった額、七千五百万とかいろいろ数字もございましたけれども、そのような格差はございます。
#506
○楢崎委員 委員長、一つだけ言わせてください、もうやめますから。
 ことしの二月に沖縄で、宮古島から負傷者を自衛隊が運ぶときに、あれはLRの1だったですか、そのときに四名殉死したでしょう。そのときは、二階級特進はなくて一階級だけで九百万円だったでしょう。それが私はやはり問題だと思いますから、総理、これは家族の人が心配している。これは本部長が特に考える必要があろう。命に値段の差をつけちゃいけませんよ。
 終わります。
#507
○加藤委員長 これにて楢崎弥之助君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明六日午前九時三十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時十九分散会
     ────◇─────
  〔本号(その一)参照〕
    ─────────────
   派遣委員の北海道における意見聴取に関す
   る記録
一、期日
   平成二年十一月二日(金)
二、場所
   ホテルニューオータニ札幌
三、意見を聴取した問題
   国際連合平和協力法案(内閣提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
   座長 加藤 紘一君
      井出 正一君    中川 昭一君
      西田  司君    浜田卓二郎君
      池端 清一君    高沢 寅男君
      山口那津男君    和田 一仁君
 (2) 現地参加委員
      町村 信孝君
 (3) 現地参加議員
      藤原 房雄君
 (4) 政府側出席者
        外務大臣官房審
        議官      渋谷 治彦君
        外務大臣官房審
        議官      野村 一成君
 (5) 意見陳述者
        弁  護  士 山根  喬君
        弁  護  士 浅野 元広君
        協同組合日専連
        札幌会理事長  杉岡幸三郎君
        弁  護  士 越前屋民雄君
        株式会社自由広
        報センター社長 大場 信吾君
        北海道大学法学
        部助教授    山口 二郎君
     ────◇─────
    午前十時開議
#508
○加藤座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院国際連合平和協力に関する特別委員会派遣委員団団長の加藤紘一でございます。
 私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、国際連合平和協力法案の審査を行っているところでございます。当委員会といたしましては、法案の審査に当たり、国民各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。
 まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
 次に、議事の順序につきまして申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 出席委員は、自由民主党の西田司君、浜田卓二郎君、井出正一君、中川昭一君、町村信孝君、日本社会党・護憲共同の高沢寅男君、池端清一君、公明党・国民会議の山口那津男君、民社党の和田一仁君、以上でございます。
 なお、現地参加議員として、公明党・国民会議の藤原房雄君が出席されております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
 弁護士山根喬君、弁護士浅野元広君、協同組合日専連札幌会理事長杉岡幸三郎君、弁護士越前屋民雄君、株式会社自由広報センター社長大場信吾君、北海道大学法学部助教授山口二郎君、以上の方々でございます。
 それでは、山根喬君から御意見をお願いいたします。
#509
○山根喬君 私は、自由民主党推薦ということでこの意見を述べることになりました。しかし私は、自由民主党の党員でもありませんし、他の政党にも属しておりません。一市民として意見を申し上げます。
 まず、この法案を考えるに当たりまして、日本の国際的な立場、これを自覚する必要があろうかと思います。日本は、石油を初めとする原材料、石炭にしても木材にしてもあるいは米を除く食糧にいたしましてもその多く、石油に至っては中近東から七一%を輸入しております。そしてまた、日本はこれらの原材料を製品に加工して世界各国に輸出しております。その結果、国民総生産高世界第二位の地位を確保し、国際的な高い地位を得ているのであります。
 ところで、国際紛争の予防あるいは平和の維持に関してどういうことが設けられているかを検討いたします。
 まず、国際連合であります。国際連合は、国際間の紛争を防止し、平和を維持するために設けられたものであります。国際連合憲章の第一章「目的及び原則」には「国際の平和及び安全を維持すること。」というふうに設けられております。
 次に、日本国憲法の立場ではどのようになっているか、これを検討してみる必要があります。日本国憲法は、その前文におきまして国際の恒久的な平和を希望しております。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」こういうふうにうたっております。また憲法九条の第一項の前段では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」とうたって、日本国憲法は国際平和を念じているのであります。国際平和の維持あるいは紛争の解決に日本が全面的に協力する、どういう形で協力するかは別といたしまして、協力することに反対する者はいないかと思います。
 ところで、近時のイラクのクウェート侵攻を考えてみます。
 イラクのクウェート侵攻、武力による侵攻であります。これが国際平和の破壊であるというふうに、どの国の人も、どの政党の人も、そう考えるでしょう。イラクのクウェートに対する武力の侵攻が正義の道であると容認する者はいないと思います。その結果、国際連合では、ソ連、中国を含む安全保障理事会の決議第六百六十号で、イラクのクウェート侵攻を非難すると決議しております。さらに六百六十一号では、イラクが決議六百六十号をこれまで遵守していないこと及びクウェートの正統な政府の権威を侵害したことを認定する、このように決議をしているのであります。この国連の決議に従って、日本が何らかの国際平和のための協力を惜しむわけにいかないのであります。国連の平和のための努力に協力することが、金だけでなく人の協力を求められ、その面での国内基盤をつくることに異存はありません。
 ところで、日本が国際平和のために何らかの協力をするについては、日本国憲法の枠内でなければなりません。日本国憲法は第九条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とうたっているのであります。したがいまして、国際平和の維持のためあるいは国際紛争解決のためであったといたしましても、日本がみずから武力による威嚇あるいは武力の行使によって行うとすれば明らかに憲法の違反であります。したがって、日本国が、どんなに求められても、武力による威嚇、武力の行使の手段をとることはできないということを国際社会も認めるでありましょう。しかし、国連決議の実現を目指しまして国連が正当と認める軍事行動を展開しているときに、日本がその後方において直接武力の行使あるいは威嚇に当たらない手段をもってこれを支援すること、その国際協力をすることまでも日本国憲法は禁止しているものではないと考えます。
 日本が国際社会への協力を一切できないのだ、こうすれば日本も国際社会からの協力を得られなくなるでありましょう。日本が国際的に孤立すること、これはかえって日本に対する風圧となって、それが大きな経済的な圧迫その他、日本の孤立を招くことになろうかと思います。
 今、日本は国際平和を守る能力を試されているときであります。 国際社会における戦後最大の試練と言ってもよいでしょう。何もしないということでは平和は守れないのであります。いかなる協力をするか、これは高度な政治判断です。防衛とかあるいは外交とか、こういう問題は他の行政と違いまして、極めて高度な政治判断が必要なのであります。
 国際連合協力法、これを見ますと憲法の枠内での十分な歯どめを用意しております。例えば、国連決議がなければ協力隊は派遣されない、さらに、武力の行使または武力による威嚇は行わない、協力隊の業務は平和協力業務である。要するに、通信とか輸送とかあるいは医療とか救助とか、そういう平和協力業務に限定されているのであります。
 この国際連合協力法は、今、日本にとってやむを得ない選択であると私は考えます。この協力法を見るときに、私は、次の中国のことわざを思い起こすのであります。相手方の意見に賛成でもいま一度考えてみるがいい、相手方の意見に反対であってももう一度考えてみるがいい。
 今、日本は極めて大きな選択を迫られていることを申し上げて、私の意見といたします。(拍手)
#510
○加藤座長 ありがとうございました。
 次に、浅野元広君にお願いいたします。
#511
○浅野元広君 弁護士の浅野元広でございます。
 あらゆる意味で私が所属する札幌弁護士会のエースであります山根先生の後で、私のごとき弁護士が意見を述べるのは気恥ずかしいような感じもいたしております。
 私は、平生はごく平凡な民事、商事事件の処理に携わっている者でございまして、憲法や国際法について特別に研究をしたとか深い知見を有しているというわけではございません。したがいまして、本日は、ふだんごく平凡な弁護士業務に従事し、弁護士を日常の仕事としている一人の国民として平和協力法案についてどのように考えるかということを述べたいというふうに思います。
 私は、次の三つの点について意見を述べることにいたします。
 まず第一は、平和協力法案は憲法九条に違反するものであるということであります。第二番目は、我が国は今後の政策としても自衛隊の海外派遣を認めるべきではないということ、つまり憲法の改正や、あるいはこれまでの憲法解釈を変更してまで自衛隊の海外派遣をなすべきではないということであります。第三に、いわゆる地域紛争に対する我が国の国際的な協力、貢献は、自衛隊の派遣にはよらない非軍事的な方法を追求すべきであるということであります。
 まず第一の、平和協力法案は憲法九条に違反するという点について述べます。
 憲法九条の解釈につきましては、御承知のとおり種々の争いがあるところでございますが、現在の憲法学界の通説は次のとおりであると理解しております。すなわち、我が国は九条の第一項によって戦争、武力による威嚇、武力の行使を放棄したわけですが、第一項によって放棄された戦争などには自衛のためのそれは含まれないと解されておりますけれども、第二項で戦力を保持しないこと、そして交戦権を否認したということによりまして、自衛戦争を含むあらゆる戦争が禁止され、かつこのための軍備の保持も禁止された、このように解釈されているのであります。私も、憲法九条は単に侵略戦争を放棄したというにとどまらず、自衛戦争などをも含めた一切の戦争を放棄したものと理解しておりますし、かかる戦争遂行のための戦力の保持が禁止されたものと理解しております。
 このような考え方からいたしますと、自衛隊の存在それ自体が憲法違反なのでありますから、まして自衛隊の海外派遣が違憲であることは論をまたないところであります。また、自衛隊の存在を合憲とする政府も、これまで自衛隊の海外派兵は自衛権の範囲を越えるものであるから憲法上許されないという立場を堅持してきたと理解しております。
 ところが、このたびの平和協力法案は、自衛隊を平和協力隊に参加させるという方法によって海外へ派遣することを容認しているのでありますから、これまでの政府解釈によっても違憲と解さざるを得ないのではないでしょうか。
 協力法案は、確かに自衛隊の海外派兵にわたるものではないということを言わんがために、次のような諸規定を設けております。
 第一は、海外派遣に係る平和協力業務の実施等は、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないということ。第二は、協力隊が行う国際の平和及び安全の維持のための活動は、国連決議に基づき、または国連決議の実効性を確保するための加盟国等の活動を言うというふうにされていること。第三は、協力隊員は小型武器を貸与されるだけであって、かつ、その小型武器の使用も制限されていることなどであります。
 しかし、私は、これらの諸規定が自衛隊による武力による威嚇または武力の行使を防止する歯どめとしての機能を果たし得るかについては、大いに疑問を抱いております。
 まず第一の「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」という規定についてでございますが、これは平和協力業務の実施それ自体が武力行使にわたってはならないということを規定しているわけでありますから、平和的に遂行されているところの平和協力業務が他国から攻撃されるという事態を迎えた場合一体どうなるのでしょうか。政府は、後方支援であるから攻撃される危険がない旨説明しているようでありますけれども、イラクが敵視している多国籍軍への協力を想定している以上、攻撃された場合の対応についての説明が欠けるというのは、協力隊員そして国民に対して甚だ無責任と言うべきではないでしょうか。私は、平和協力業務に対して攻撃が行われた場合、協力隊を構成しているところの自衛隊が拱手傍観しているとは思われないのであります。結局、武力による威嚇または武力行使へと一歩踏み出していかざるを得ない羽目にみずからを追い込んでいってしまうのではないでしょうか。かく考えるのが極めて常識にかなうと思うのであります。
 それから第二に、協力隊が行う活動を国連決議に基づかしめるという点でありますが、これは国連決議に基づく場合のほかに、国連決議の実効性を確保するための加盟国その他の国が行う活動まで含めております。国連決議の実効性を確保するための活動ということになりますと、これは考え方によって多様な対応があり得るでありましょうし、またさまざまな解釈も成り立ってくると思うのであります。国連そのものの決議に基づくのではなく、国連決議を援用した上での特定の国の独自の解釈に基づく活動にも参加できる余地があるのでありまして、範囲として広過ぎるのではないでしょうか。
 それから第三の、小型武器を貸与されるだけであるという点ですが、協力隊員と身分を併任する自衛隊員の立場としても小型武器の携行にとどまるのかどうか、法文上明らかではありません。これは平和協力業務に攻撃が行われた場合の防衛行動の問題とも関連することでありますが、恐らく、協力法案は自衛隊が協力隊として活動することを想定しているのでありますから、法解釈としては当然協力法案二条二項、二十七条の制限に服する、こういう説明になるのでありましょう。しかし、そうであるならば、なぜ軍隊たる自衛隊が協力隊に参加しなければならないのでしょうか。そして、協力隊員としての身分のほかに自衛隊員としての身分も有するべきであるということに、自民党の一部の方々がなぜあれほどにこだわったのでしょうか。私は、状況のいかんによっては、協力隊員ではない、自衛隊員としての活動の余地がやはりあるのではないかと思います。協力法案は、自衛隊の海外における武力による威嚇、武力行使、すなわち海外派兵の道を開くものであるという意見に賛同するのは、今述べたような危惧が払拭されないからなのであります。
 それでは、憲法改正ないしは憲法の解釈を変更して、今後自衛隊の海外派遣を認めるべきでありましょうか。
 あえてこの点に触れるのは、協力法案によって我々国民に提起された課題は、協力法案が違憲か合憲かという問題を超えたところの、今後も自衛隊の海外派兵を行わないという我が国の方針を堅持すべきであるのかどうかという点にあると思うからなのです。本日出席されている自民党の先生方がこういう考えだという意味では必ずしもないのですけれども、実のところ、こういう大問題が今我々国民に突きつけられたのではないかと思うのです。と申しますのは、この問題は、端的に言いますと、イラクのクウェート侵攻に対して、アメリカ、イギリスを初めとする世界の二十六カ国、二十六カ国というのは九月二十六日の朝日新聞に書いてあったのですが、この二十六カ国が軍を派遣しているという現状のもとで、日本が自衛隊を派遣しない、できないということの一点張りでは国際的に孤立するのではないかという問いかけであると思うからであります。
 私は、自衛隊の海外派兵の禁止は今後も貫くべきでありますし、それどころか、世界に向かって軍隊の海外派兵の禁止を呼びかけるべきであるとさえ思っております。
 理由は単純かつ素朴でございます。戦争放棄をうたった我が国の憲法原則を我が国の対外政策として堅持し、何とか実現したいと思うからであります。みずから進んで武力行使に至り得る道をなぜ選択しなければならないのでしょうか。冷戦構造が終えんした今こそ、我が国の戦争放棄の憲法原則を実践すべきときなのではないでしょうか。今日の軍事力の巨大な発達は、国際紛争を解決する手段としての武力行使の現実性、有効性を失わせているのではないかと思います。
 考えてみますと、多国籍軍も現在のところ武力行使を避けております。大変結構なことだと思います。武力によるいわば威嚇にとどまっているわけですが、このこともある意味ではクウェートからのイラクの撤退あるいは人質解放という目的達成の上で、武力の行使というのは大変危険であって、紛争解決の決め手にならないという現実を物語っているのではないでしょうか。国連憲章も、すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって解決しなければならないとし、またすべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならないと規定しているところであります。今後、国際紛争の解決は、国際世論や経済的圧力などを背景としつつ、ますます外交交渉にゆだねられていくべき時代であると思います。少なくとも我が国は、その方向を世界の先頭に立って追求すべきであると考えます。
 それでは、戦争を放棄した国である我が国のいわゆる地域紛争に対する国際的協力、貢献はいかにあるべきでしょうか。
 私は、国際的協力というとき、それはまず国連への協力でなければならないと思います。「国連決議の実効性を確保するため」という名目が付されたとしても、特定の一つないし複数の国家に対する協力であってはならないと思います。もちろん紛争の一方当事者の側に加担するという行いは、もとより避けるべきことであります。国連の目指す集団的安全保障の理念に合致し、かつ憲法九条に違反しない形態、すなわち非軍事的協力であることが前提とされなければなりません。
 現在の多国籍軍は国連決議に基づくものではなく、まさに「国連決議の実効性を確保するため」という大義名分のもとで、米英を中心とする各国が、それぞれの国の国内事情や国益を踏まえて、それぞれの国の個別的判断によって展開されたものと推察しております。つまり、多国籍軍を構成する各国は、それぞれクウェートからのイラク軍の撤退を名分としつつ、同時にそれぞれの国の中東政策、アメリカとの関係などを考慮した上で、それぞれの国の国益の擁護というものを第一に掲げながら派兵しているのではないでしょうか、そのように推察をしているのです。
 というのは、多国籍軍、二十六カ国参加しているといいますが、スウェーデンは軍隊を派遣していないと聞いております。ならば、憲法九条を有する我が国も、戦争放棄の原則を堅持した我が国なりの協力の仕方を探求すべきでありましょう。現在、多国籍軍への協力がすなわも国際協力であるかのような言い方が流布されているように思われますが、問題であると思います。
 現在、日本は、イラク問題に関しては国連決議に基づく経済制裁を忠実に履行しているのでありますから、その限りでは国連への協力を果たしていると言えます。今後我が国が地域紛争に対して国際的に貢献しようとするならば、国連を通じた活動として行っていただきたい。
 今、国連は何ができるのか、国連として何をなすべきなのか、こういった点を我が国が積極的に立案、提言し、かつ国連活動に人も出し、お金も使うということをすべきなのではないでしょうか。いわゆる国連の平和維持活動とか難民救済活動などに知恵を絞るべきではないでしょうか。私が政治家の方々に期待したいのは、かかる方向での活動であります。専ら対米関係に配慮し、戦争放棄の原則を崩していくことではないのであります。
 私は、以上に述べましたように、このたびの平和協力法は、我が国の国是というべき戦争放棄原則に違反しかねない内容を持つものと理解しており、そのゆえにこの法案には反対をいたします。
 以上で私の意見を終わります。(拍手)
#512
○加藤座長 ありがとうございました。
 次に、杉岡幸三郎君にお願いいたします。
#513
○杉岡幸三郎君 私は、法律の専門家でもなく、今問題になっている国際連合平和協力法を特に研究したわけではありません。したがって、私は、この問題に関しては主要な情報を新聞、テレビ等の一般的な情報源より得ている平均的日本国民の一員にすぎないと存じます。その立場より申し上げますが、私は、本法の制定に、若干の前提条件はありますが、基本的に賛成であります。
 以上の立場より、以下、国連平和協力法及び今回の湾岸問題等の関連する事項につき、若干私見並びに要望を申し上げてみたいと存じます。
 まず第一に、私は、今回のイラク軍のクウェート侵攻は国際的に絶対に許されるべき行為でなく、我が国もクウェートを支援する立場に立つことは当然であると確信いたしております。国会においても、与野党この点の共通の御認識のもとに御論議が行われていると存じますが、この点についての国民的合意形成がまず正確に行われることが前提かつ必要な条件と存ぜられます。
 さきの大戦以降、我が国の平和が今日までこのように守られてきたのは、日米安保条約による米国の軍事的庇護あってのことであることは疑いもないところであると存じます。米国の強大な軍事力が戦争抑止力として有効に作用された一つの実例とも考えられます。
 日米安保条約が我が国にいかに有効であったか、国民はもっと正確に認識すべきであると存じます。確かに、六〇年安保騒動のころ、もし国民世論を調査したとするならば、安保反対の声は相当に多かったのではないかと考えられます。そして、その感覚がいまだに尾を引いて現在に至っている感がいたします。しかし、現在に至って考えますとき、安保条約を保持した選択はまさに当を得た選択であった、四十年の歴史がそれを物語っておるような気がいたします。日本の基本的防衛の方針は、遠い将来はわかりませんが、ここ当分は米国と安保条約を維持しつつ従来どおり進めていくことは必然のことと思われ、また、そのようになければならないと考えられております。
 冷戦構造が消去しつつあるときに軍備は必要ないではないかという問いかけが往々に行われておりますが、皮肉にも今回の湾岸問題は、局地戦闘の発生が絶無でないことを物語っていると存ぜられます。さらに、現在の中東情勢下において、米国がクウェートの主権の回復とイラクのこれ以上の侵攻を阻止し、中東紛争の解決を図るために緊急に自国の軍隊を中東に派遣したのはやむを得なかった措置と私は考えております。また、英国その他の国がそれぞれ自国の軍隊を派遣して米国を支援していることは、イラクのさらなる侵攻を阻止した有効な措置と考えられます。
 このような情勢下にあって、米国の要請のあるなしにかかわらず、我が国として憲法の許す範囲内ででき得る限りの支援をこれら各国になすことは当然の責務であると考えられます。
 問題は、何が憲法の許す範囲であるかということであろうと存ぜられます。この点については法律の専門家の先生方の御論議にお任せするところでありますが、私は、政府の申されるとおり、現在の法案の内容が憲法の許す範囲内であるならば、その線に沿って行動されることが当然我が国の責務であると考えております。
 どこの国でも好んで戦争に行く人はありません。ないと思います。しかし、国家のため必要であるとすれば、嫌なことでもやらねばならないとの国民の使命感のもとに、みずからの生命の危険すら覚悟して兵士として戦線に赴くのであります。私もかつてそのような感情のもとに前線へ出征した経験を持っております。 米国や他の多国籍軍に参加の各国では、恐らく、最愛の夫、息子を涙とともに兵士として送り出し、その無事なる帰還を願いつつ、家族は不安の毎日を送っているに違いありません。君、死にたもうことなかれの感情も、青年に銃を持たすなという想念も、その願いは、米国にあってもまた他の諸国にあっても私は同じであろうと思います。その気持ちを乗り越えて国家のために協力をしておる、この事実を日本国民は見逃してはいけないと思います。
 非武装中立的発想や非軍事的な手段でクウェート問題をいかに解決するか、具体的手段が見出されるのならばまた話は別でありますが、当面、世界にとって中東紛争拡大防止のため軍事的措置が抑止的にも必要とされ、また今回の米国の早期派兵が紛争拡大の防止力として有効であることが実証された現在、日本だけ現在のごとく、国外においての協力はできない、軍事協力はできないと、諸外国の活動のらち外におられるものでありましょうか。戦争の悲惨さを他国の国民にのみ負わせて日本国民だけがそのつらさから超然としているのでは、いかに巧言をもって言いわけしたとしても、世界の世論特に多国籍軍に参加している国の国民、そして家族を兵士として送った留守家族に対し納得させられるとは到底考えられません。
 仮に日本は、他国が他国により侵略を受けた際に、すなわち今回のクウェートのような事態に際し、一切の軍事的協力が自国内の憲法上の事情等によりできないとすれば、今度は日本が他国より侵略を受けたとき、他国の軍事的協力を一切期待できないことを覚悟しなければならないと思います。よく日本が他国より侵略を受けることはあり得ないと申される方がいらっしゃいますが、そんな保証はまずあり得ないことと私は考えております。他国の支援を求めず、日本だけで単独に自国を防衛するとすれば、平常的に現在の防衛力の恐らく数倍の自衛隊を保持しなければならないことになるわけであろうと存じます。このことは国民経済的にもまた別の問題が出てこようと考えられます。
 したがって、今回は憲法の範囲内で行動すること、すなわち国連の決議なくして出動を行わない等々の、平和協力に限る等の制限を厳重に守り、かりそめにも日本より他国を侵略する意図の全くないこと、今後もその範囲を厳格に守ることを、政府は日本国民はもとより近隣諸国にもよく説明をなし、その理解を求めることがまず必要と考えられます。
 アジア近隣の諸国を初め各国が、さきの大戦に懲りて我が国の行動に警戒的な見方をするのはむしろ当然であり、日本国民がやはり戦前の軍部のように勝手な行為を自衛隊がするのではないかと疑念を持つのもまた無理からぬところであります。日本は、みずからの自衛隊の海外の事業参加に際して、みずからが課した各種の自衛隊の行動に対する歯どめの要件をよく説明をして、何よりもその厳守を信念を持って徹底する必要があります。
 私が今回国連平和協力法に賛成する根拠も、現行憲法の枠内での自衛隊の行動を確信してのことであります。現行憲法の枠内で自衛隊が行動するのだと確信をしたがゆえに、今回の法律に賛成するのであります。
 また、国民の自衛隊に対する過度のアレルギーも、この際、反省をいたすべき時期であると私は考えております。帝国陸軍、帝国海軍と自衛隊は根本的に異なることについては、国民ももっと自衛隊を信頼してよいと思います。そのために国民の理解を求める作業を精力的に続ける必要は、この際まことに肝要な作業であろうと思います。国民の信頼なき自衛隊は、自国防衛にさえ役立たぬ無用の長物となると思います。
 さらに、政府は一連の御説明で、協力隊の行う後方支援活動は絶対に安全であると申しておられます。そして、私ももとよりそうあってほしいと希望いたしておりますが、さきに申し上げましたように、旧軍人の一員であった経験からいたしましても、協力隊の活動が仮に安全が期待される後方支援活動にのみ限定されたとしても、有事の際は、時として平時では予測できない危険の発生が考えられます。最悪の場合は参加隊員の死亡すら考えられるのがむしろ自然と言えると思います。私は、それらの危険を承知しつつも、国の要請のためには敢然として危険な職務に赴く国民としての気概を持つよう、国民に訴えるべきであろうと存じます。ただ安全であるとして参加を求めることは後日に問題を残すことにならないかと危惧するものであります。
 今回の場合は一般民間人の参加も予想されます。この場合も同様に多くの危険があると考えられるのは自然であります。さきの大戦において非常に多くの軍属が戦死したことは、歴史の物語るところであります。政府は、不幸にしてこのような危険な局面に遭遇して仮に死亡する隊員あるいは負傷した隊員に対する物心両面にわたる補償の手段を今から考慮すべきであると考えます。その際、さきの大戦の際の軍人と軍属の差別のようなことが少しでもあってはならないと思うのでございます。自衛隊員も民間人も同じ使命感にて参加するのであり、そこに何らかの処遇の差があることは絶対にしてならぬことであります。無論、私の申し上げたことが杞憂であることを願っていることは論をまちません。今も申し上げましたように、希望することではありませんが、もし一人の犠牲者が発生した場合、日本じゅうが浮き足立っては我が国のかなえの軽重を問われることになると危惧するものであります。
 最後に、少々要望があります。
 さきの海部総理の中東歴訪の際、総理は対話の継続に合意されたと新聞等で報ぜられております。本法案の成立と同じような熱意を持って政治的解決のための会話が継続されるよう切望いたします。フランスやソ連等による湾岸危機の打開の動きが活発化している昨今、日本の対応はいかにも不活発に見えます。政府は、国際社会への貢献策について、国会において与野党間に比較的合意のできやすいと考えられる難民救済等の問題だけでも早急に意見を調整して、早く具体的に着手してほしいと思います。今回の我が国の今までの対応は余りにも遅く、何か嫌々仕方なく行動している印象を受けて、損になるのではないかと危惧されます。難民救出にしても、民間の航空機等にはそんなに予備機はないのが現状であろうと思います。自衛隊機等をこの問題に限り利用すること等、もっと与野党話し合いを早めてほしい。野党も、国際協力が必要と認めるなら、具体的、実行可能な方法を急いでほしいと御提言を申し上げたいと思います。
 さらにあわせて、不本意にもイラクにより現在出国を制限されていられる多くの方々に対する救出の努力を倍旧の熱意を持ってされんことを希望いたします。無論、この種の交渉は水面下において行われていることと存じますが、残されたお家族の身にもなって万全の措置を講ぜられるよう希望いたします。これらの措置が余り万全でないときは、今後中東等の地に赴かれるビジネスマンの人々が二の足を踏むことになり、貿易上もゆゆしい問題となることが懸念されます。仮に速急な解放が困難としても、これらの方々の日常の生活上の必要品の補給を何らかの手段を持って行われるよう、さらに母国との連絡等にでき得る限りの御努力あらんことを切望いたします。これらの作業が精力的に本法の審議と並行される、このことが大切であろうと存ぜられます。
 さらに、ここ一日二日の新聞では、国連平和協力法の成立断念を報ずる向きもあります。今回のような国家的大問題を、平素研究することなしに、拙速とも言える短時間に審議をすることにも若干の無理があったかもしれませんが、この際はぜひ成立あらんことを希望いたします。
 この種の国際紛争あるいは我が国が侵略行為を受けたとき等の問題を平常時に取り上げ研究することが必要であり、有事の事態に即した研究をすることを何か罪悪のようなとらえ方をすべきではございません。国連平和協力法が成立するしないにかかわらず、ちょうどよいこの機会にもっと掘り下げて、有事の日本の危機管理につき率直そして広範な、さらに平素の検討がなされるよう政府並びに衆参両院議会に要望いたしまして、私の発言を終わります。(拍手)
#514
○加藤座長 ありがとうございました。
 次に、越前屋民雄君にお願いいたします。
#515
○越前屋民雄君 弁護士の越前屋でございます。
 国連平和協力法案は、憲法第九条の解釈から見て憲法違反の疑いが極めて濃厚であり、私はこの法案の制定には断固反対すべきであると考えております。以下、この立場から意見を述べたいと思います。
 反対理由の第一は、法案が軍事力の行使を伴う国連軍、多国籍軍に対する協力を予定している点であります。
 憲法は、その第九条において「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めております。したがって、「武力による威嚇又は武力の行使」そのもの及びこれにつながるような協力は、たとえ国連の平和維持活動のために必要なものであっても許されないものであります。
 しかし、法案の第三条二号の平和協力業務のうち幾つかのもの、例えば輸送、通信、被害復旧活動などは、国連軍や現在の多国籍軍の支援のためになされるときは、それらは戦闘行動を有利にかつ効果的に展開するという目的のもとに計画的、統一的に実行されるのが当然でありますから、それだけで戦争遂行への直接的あるいは間接的な関与となり「武力による威嚇又は武力の行使」に当たり、あるいはこれに密接につながるものと言わざるを得ません。政府は、武力行使と一体となるような協力を行うものではないから、あるいは参加ではなくて協力だから等の理由を挙げて武力の行使ではないとするようでありますが、私としては到底納得できないところであります。
 例えば輸送という点を取り上げて考えれば、多国籍軍に武器、弾薬、兵員を輸送するとなれば、紛争地域まで輸送するか否かにかかわらず、紛争当事国、例えばイラクの目には武力による威嚇そのものに映るというべきでありまして、これが武力による威嚇に当たらないとするのは非常識であります。また、食糧を輸送することを考えれば、これは戦争遂行のために通常必要とされるいわゆる兵たんと言われる行為そのものであります。
 平和協力業務のうちの通信も同様であります。現在の戦争においては軍事情報の収集、分析、評価こそが勝敗を左右する要因であります。しかも、その情報処理システムは、自衛隊の場合米軍とリンクされているわけですから、この分野における通信に協力するということは極めて軍事的色彩を帯びることになります。
 さらに、平和協力業務のうちの「紛争によって生じた被害の復旧のための活動」も同様であります。戦時においては、軍事行動によって破壊された諸施設、例えば軍事飛行場、民間飛行場、港湾、橋梁の復旧工事などは、直接的な軍事的支援にまさるとも劣らないほどの重要性を持つ行為でありまして、実質的には戦闘行為に加担するものであります。
 このように見てきますと、平和協力業務の中身、特に輸送、通信、被害復旧活動は、まさに国連軍あるいは多国籍軍の軍事的プレゼンスあるいは軍事行動を直接的、間接的に支援するものにほかなりません。本法案で私たちに問われているのは、日本がこのような軍事力の行使を後方で支援することを認めるか否かの態度決定であります。かかる後方支援の実質を有する業務は、たとえ平和協力業務のタイトルをつけたとしても、日本国憲法が禁じているところの「武力による威嚇又は武力の行使」に当たるものまたはこれに密接につながっていくものでありまして、明白に憲法に違反するものであると考えます。
 反対理由の第二は、自衛隊の派遣を予定している点であります。
 自衛隊そのものの合憲、違憲は本日のテーマではありませんのでさておき、私は今日に至るまで自衛隊が海外に派遣されることはないと考えておりました。それは、日本が戦前に犯した大きな過ちを心から自覚し、二度とそのようなことを繰り返すまいと深く決意していたからであります。現に国会も、自衛隊が発足した昭和二十九年六月の第十九回国会においては、「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」のタイトルでその旨を決議しており、昭和五十五年十月の第九十三回国会では、「当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。」との答弁書が提出されております。
 私は、政府、国会の自衛隊の海外派遣に関するこの憲法解釈は、それなりに論旨明快で、安定したものと理解しておりました。
 しかしながら、政府は、本年十月二十四日に至り、政府答弁において、協力の対象が武力行使を目的・任務としている国連軍、多国籍軍であっても、自衛隊のかかわり方が武力の行使となるかどうかが最終的な問題などとして、従前の自衛隊派遣が許されるか否かの基準を変えました。さらに政府は、十月二十六日統一見解を出し「「参加」に至らない「協力」については、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、それがすべて許されないわけではなく、当該「国連軍」の武力行使と一体となるようなものは憲法上許されないが、武力行使と一体とならないようなものは憲法上許されると解される。」として、一体にならなければ武力行使に協力できると、一歩踏み込んだ憲法解釈を打ち出しております。
 私は、このような政府による憲法解釈の変化には深い危惧を感ぜざるを得ません。自衛隊の海外派遣の基準がいとも容易に変えられ、しかもその基準たるや言葉だけのものにすぎません。武力行使を伴うか否か、武力行使と一体をなすか否か、参加なのか協力なのかというような基準は極めて抽象的なものでありまして、事前においては、いわば状況に合わせていかようにも基準の充足を説明、判定することが可能であります。また、事後においても、一たび戦端が開かれるや、多国籍軍と一体あるいは統一した動きをすることは必至であり、極めて危険なものであります。
 しかも、我々国民としては、政府の憲法解釈の変化については、最高裁判所にその判断を期待しても、事件性の限界もありますし、最高裁判所は、高度に政治的な裁量に属する問題として、その憲法判断を回避することが予想されます。
 かくして、我々国民は、政府の憲法解釈の変化についてチェックを期待できる機会がほとんど与えられていないと言ってよいと思います。したがって、国会こそが我々国民にかわってこの問題を十分議論して明確な基準を示すことが必要だと考えます。
 反対理由の第三でありますが、今回のイラクのクウェート併合に端を発している現在の中東紛争における多国籍軍に対する平和協力隊の派遣、協力について一言触れておかねばなりません。
 多国籍軍は、国連軍とは異なることは言うまでもありません。多国籍軍が本法案第三条一号に言うところの国際連合が行う決議に基づく軍隊であるか否かについては、私は大きな疑問を持っております。そもそも多国籍軍の主体は米軍であり、その米軍はクウェートの主権回復というよりは自国の権益の保護、サウジアラビア防衛のために出動したものと見るべきであります。また、米国は国際世論の支持を受けるため国際連合の意向を尊重するでありましょうが、多国籍軍は国際連合の指揮のもとにあるわけではなく、多国籍軍の主要な目的は、国連決議の実効性を確保するための経済封鎖を実行することにあると政府は説明しておりますが、多国籍軍は、国際連合の意向に反しても戦火を交える可能性が極めて高い、あるいは不可避であるとも見るべき存在であります。
 このような多国籍軍に対し、日本が平和協力隊を派遣し、これに協力することは、本法案の立場に立っても妥当性という点で疑問が残るところであります。
 反対理由の第四でありますが、本法案は、事が憲法第九条の定める日本の平和国家としてのあり方という国の根幹にかかわるものであるにもかかわらず、政府が多国籍軍への早期の協力実現をねらったためか、拙速に過ぎるものがあります。我々国民にとって何より不満なことは、かかる重大な法案であるにもかかわらず、国民各層の間で十分な議論をする余裕も与えられなかったということであります。本法案で示されている国際平和維持のための基本的あり方についての国民的合意は形成されておりません。国民が広く納得していないということであります。
 以上の妥当性、必要性、国民的合意という見地から見て、本法案には反対であると言わざるを得ません。
 最後に、この問題についての、日本が平和憲法の枠内においていかなる国際平和協力を行うべきかについて、私なりの意見を申し述べたいと思います。
 日本は、前述したように世界史的にもまれな平和憲法を採択しました。私は、私たちの諸先輩がこの平和憲法を採択したことについては、そこに占領軍の意向があったにせよ、心から誇りに思っておるところであります。憲法前文では「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、潔いとも思われるほどの決意を示しております。
 かかる我が国憲法の理想は、単なる理想論ではありません。近時の冷戦構造の変化、東欧における歴史的変化の中に流れる世界不戦の潮流を考えるとき、いよいよその輝きを増してきたように思われます。
 私たち国民が政府、国会に対して希望することは、政府がこの憲法の理想を体して、仮にそれが間接的であろうと否と、また参加ではなく協力というべき程度であろうとなかろうとにかかわらず、軍事的手段ではなく、平和的手段によって精力的に国際平和に協力することであります。そのことによってのみ、我々は、長期的視野に立てば国際平和に大きく貢献できるし、多くの国々から高い評価と尊敬をかち取れるものと確信します。
 具体的には、今日の湾岸危機に当たって当面考えられる対応としては、次のようなものがあると思います。
 一、平和的解決に向けての精力的な外交努力、二、軍事的貢献をしている諸国に比べて、自国の国民の生命を危険にさらすものではないが、決してそれに劣ることのない経済的負担、三、医薬品、食料品等の物資の提供、四、軍事的色彩を持たない医師、看護婦等の医療従事者等の人員の派遣、五、難民の救済の事業等々、日本が積極的かつ真剣にかかる行動をとっていくならば、日本が国際社会の中で十分な責任を果たしていないとの批判は免れることができると確信します。
 長期的には、冷戦構造の変化のもとにおける国家危機管理の体制はどうあるべきかを、別言すれば、日本は、平和憲法のもとで国際平和のためにどう貢献すべきかをテーマとして、今回のいわば突発的ともいうべき湾岸危機への対応から切り離し、ある程度の時間をかけ、国民の間で十分な議論を尽くして、国民の理解を求めるべきであると考えます。
 以上のとおり、私は、本法案については憲法違反の疑いが極めて濃厚であり、かつその必要性、妥当性からも大いに疑問があり、成立させるべきではないと考えております。
 以上のとおりです。(拍手)
#516
○加藤座長 ありがとうございました。
 次に、大場信吾君にお願いいたします。
#517
○大場信吾君 小企業を経営する一市民の立場から、常識の範囲内で判断をした意見の陳述をお許しいただきたいと思います。
 まず、国連憲章の前文第一章には、善良な隣人として互いに生活をし、国際の平和及び安全を維持するために力を合わせようと書かれております。かつて国連加盟を志した日本は、昭和二十七年六月十六日、岡崎勝男外相が加盟申請を提出し、あわせて宣言を発表し、国際平和と安全のための義務の履行を声明いたしました。そのとき、日本は明らかに国際社会の一員として生きる決意を固め、加盟に伴う責任の分担を約束したと言われております。今俎上に上っている国連平和協力法案は、その初心の発露としてとらえることができます。しかも、率直に言って、この法案に示された苦しい決断は、日本が独善を退け、世界のために貢献できる限界ぎりぎりの提案を行ったものと受けとめることができるのであります。
 目下のところ、この法案の帰趨は極めて微妙であります。しかし、たとえどんな取り扱いに至ろうとも、かかわりなく、湾岸地域の緊張は日ごとに高まる状態にあります。外交努力によって事態が収拾されるのか、一挙に戦火が炸裂をするのか、全く予断を許しません。
 その一方、日本の対応をどうするのか、せっかく限界ぎりぎりの提案に踏み切りながら、法案の行方は全く予測できない状況にあります。ただ、法案は現時点では引き続き審議の対象となっており、政府が基本的にどう対処しようとしているのか、明らかにされた事実に注目をしたいと思います。だが、残念ながらこれまでの国会論議の段階では、野党側からこの法案を覆すような新しい指針が示されておらず、勢い、既に報道されている国会論議の経過を振り返りながらその是非を問わなければならないと思うのであります。
 この法案をめぐる論議の経過を見ると、戦争か平和かという問題提起の色合いが濃厚であります。これは間違いであります。例えば平和協力隊の派遣によって日本が危険を負担することになると非難をする意見があります。もちろん完全な平和主義は理想であるには違いありませんが、平和を破壊する無頼の行為を黙認するとすれば、国際社会の暗黒化を招くだけであります。本当の反戦をかち取るためにピースキーピング、平和維持の手法をどうするかが明らかにされなければなりません。そのために日本は何ができるのかということが論議の原点になるだろうと思われます。
 そこで、法案総則の第三条で「平和協力業務」を明確に規定している点に注目をいたします。そこに列挙された具体的な業務は、国連決議を実効あらしめるため憲法の枠内でできる仕事に絞ろうとする意図がうかがわれます。しかも、活動の全体を内閣総理大臣の指揮下に置き、シビリアンコントロールの原則を守る姿勢も示されています。問題は、戦争か平和かではなく、反戦を前提としながら平和を維持するために日本はどうするのかが論議の中心となるべきであり、この法案はそのポイントを明確にしている点で評価できるのであります。
 次に、湾岸危機に対して日本がもっと当事者としての強い自覚を持つべきだと指摘をさせていただきます。
 貢献という言葉は、サービスもしくはコントリビューションということになりますが、いずれにしても、らち外からの協力を意味すると思います。しかし、日本の現状や中東地域とのかかわりから見れば、貢献というよりも、むしろ責任の分担という表現が妥当であると思います。
 日本は、戦後四十五年平和国家の歩みを続けることができました。しかも、たぐいまれな経済力を備えることができました。今や世界は日本の影響力を無視することができません。その背景には、まず勤勉な日本人の自助努力があったこと、また石油資源を順調に確保できたこと、さらにアメリカとの協調関係を守り抜いたことが挙げられると思います。中でも、中東に七割を依存する石油資源を抜きにして今日の繁栄はないと言われています。そのかかわりは今日依然として変わりがなく、湾岸危機はそのまま日本の危機であるという側面を持っております。まさに渦中に立つ当事者としての自覚が求められるのであります。
 しかし一方で、日本が大国になったことによる風圧を否定することができません。外交でも通商でも文化でも、開発研究の分野に至るまでギブザリーストゲットザモスト、最小の犠牲で最大の収穫を上げるのが日本だと冷笑する外国の批判があると聞きます。今や政治は地球規模の時代だと言われており、日本自身を孤立に追い込む過ちは犯してはなりません。日本の使命、日本の将来、日本の安全を語るとすれば、それは地球上にある国家すべての使命、将来、安全に目を向けるべきであります。今、国連中心という道のりを志向している日本は、国連加盟国全体の判断を尊重しながら、進んで発言をし、行動する責任を持っています。当事者としての自覚を持とうというもう一つの意味は、この点にあります。
 ここで、日米協調の重みについて考えてみます。
 その前に、アメリカはなぜ湾岸危機に際してリスクテーキング、火中のクリを拾ったかであります。
 まず、イラクのクウェート侵略は明らかに暴挙だからであり、国際的な平和を破壊する導火線になると見たからであります。多分イラクには周到な計算があったと思われますが、アメリカは予想以上に素早く断固たる行動を起こしました。このアメリカによるサウジアラビアへの派兵を侵略と見る人はおりません。アメリカ国内に激しい反イラクの世論が高まっていることも事実だと言われますが、アメリカにとってイラクの行為は、自由社会に対する悪らつな挑戦と見たに違いありません。日本は、日米協調によって支えられた戦後の歩みを顧みるまでもなく、多くの国民がアメリカとの賢明な協調を継続すべきだと判断しています。憲法の枠内で可能な分担をするという日本の立場に理解を求めながら、日米協調の視点に立って活路を開こうとするのは当然の方向であります。
 そこで、現実に、アメリカが主導している多国籍軍への協力をどうするかの問題が浮上いたします。
 今、一方に突如として侵略行為に走ったイラクの圧倒的な軍事力があり、一方に多国籍軍が対峙しています。これには、国連安保理事国の全部を含む二十数カ国が参加しており、双方がにらみ合うという図式によって、侵略拡大を抑止する効果が生まれていると言われます。また、国連決議による経済制裁を実効あらしめるための機能も発揮していると伝えられます。言いかえれば、イラク側の意図をそんたくすることはできませんが、少なくとも多国籍軍は戦争へ直進することを目的としたものではないことが明らかであります。したがって、多国籍軍は、いわゆる国連軍に先駆けたピースキーピング、平和維持の手段であると判断をすることができます。当面、日本にとってアメリカの立場を理解し、協力するための具体的な手段は、これに参加をし、憲法の枠内にとどまる業務の協力に従事することに絞られてまいります。
 翻ってアジアの現状を見るとき、日本をターゲットとする地域的なトラブルが絶対に惹起されないという保証はどこにもないと考えます。共産主義国家が変化の過程にあるのは事実でありますが、その多くは、経済不安に加え、内部に深刻な対立の根を持っていると言います。依然として国を守るための備えを固めなければならない現実にあると同時に、アメリカと連帯する安全保障の体制を取り崩すことはできません。したがって、湾岸危機における日本の行動は、予測できない将来の日本の危機に対する安全保障の担保と見るべき側面があります。もちろん、多国籍軍への業務協力の場合、その逸脱を防ぐため、万全の歯どめ対策を用意すべきことは論をまたないところであります。
 この法案における重要な問題点として、自衛隊の派遣があります。原案では、この法文中に自衛隊の参加規定を一つ加えるだけで参加の道を開いております。このことは、事態の緊急性にかんがみ、当面やむを得ないものと考えます。なぜなら、自衛隊は政府組織の一つとして機能できるすぐれた危機対応能力を持っていること、そして法案に平和協力業務に限るという具体的な条文上の制約があること、及び総理大臣が指揮監督をするという規定によりそのガバナビリティーに信頼がおけること、当面そのような現実的な対応を認めざるを得ないと判断するからであります。したがって、湾岸危機を乗り切ることができた段階で、改めて自衛隊法の抜本的改正を通じて平和協力隊のあり方も含め再検討の余地を残すべきであります。このため、この法案は暫定立法の扱いとすることが妥当だと思います。
 さて、現実に、この法案を引き金として多くの不安の声が聞かれるのも事実であります。人質はどうなるのかという声があります。今、人質救出のため、全力を挙げて創意ある日本の外交力を発揮すべきときでございましょう。また、子供を戦場に送るなという訴えがあります。政府は、心情的な平和主義では打開できない現状にあることをあらゆる手段を駆使して周知しなければなりません。また、アジアから日本の軍国主義の台頭を恐れる声が聞かれます。これに対しては、アジアにおける平和維持のための新しい仕組みを、諸国とともに語らい合って創設することも一つの方法であります。
 結論を申し上げます。この法案は暫定立法を考慮されてはいかがでしょうか。また、改めて自衛隊法改正の準備を進め、新時代に沿う国の防衛の道を確立するため、国会で徹底的に論議することを期待いたします。また、国論の整合を図り、平和のために行動する日本の姿勢を確立するため、政府は必要な法と組織にかかわる大胆な改革に踏み切るときだと考えるものであります。
 以上でございます。(拍手)
#518
○加藤座長 ありがとうございました。
 次に、山口二郎君にお願いいたします。
#519
○山口二郎君 北海道大学の山口です。私は、政治学を研究している立場から、この法案に反対する立場から意見を申し上げたいと思います。
 反対の論拠はおよそ次の三点でございます。
 第一、この平和協力法案は、今後の国際秩序の形成と維持に対する日本の取り組みに関する前例ないしはひな形となるべきものであります。にもかかわらず、この法案においては、今後の日本の外交、安全保障政策に関する基本的な理念の検討が完全に欠如しているというふうに私は考えます。憲法に基づく平和主義は、日本の外交、防衛政策の大原則として、国内及び世界的に定着してまいりました。これを変更するに際しては十分慎重な検討が必要であることは論をまたないと思います。
 まず、いろいろな方が問題にされております憲法第九条との整合性を考えてみますと、今回の海外協力の本質は、あくまで自衛隊を紛争地域に送り、紛争処理に必要な業務に従事させるという点にあると私は考えます。
 憲法第九条の条文を虚心坦懐に読んでまいりますと、国権の発動たる武力の行使は、国際紛争の解決の手段としては放棄するということが書いてあります。確かに、明白な侵略に対して国際的に一致協力した抑止ないし防止の行動をとるということに日本が何らかの協力、貢献を行うことは、理論的には可能であります。しかし、憲法は、それに関してさまざまな歯どめを設けているわけです。
 第一は「国権の発動たる」という文言であります。もし日本が何らかの侵略の抑止、防止のための国際的警察的行動に従事するとしても、日本の送る部隊、組織というものは、国権の発動、つまり日本政府自身の指揮命令に服することはできないというふうに私はこの文言を解釈したいと思います。すなわち、国連事務総長あるいは国際連合等の国際的な中立的機関の指揮命令に服するというのが、この国権の発動たる武力行使を放棄するという文言の意味ではないでしょうか。その意味で、指揮命令系統を日本に残したまま自衛隊を海外に派遣するということは、この点に抵触すると私は考えます。
 それから、国際紛争の解決の手段として武力の行使を放棄するという文言でございます。つまり、憲法は、いかなる侵略戦争であろうとも、武力による制圧ないし武力による制裁には日本は加担しないということを表明しているわけであります。多国籍軍が国連の決議に基づくものかどうかという点には論争がございますが、現状の判断といたしまして、多国籍軍ないしアメリカ軍がその独自の判断によってイラクを攻撃する可能性は残されているわけであります。それは、名目はどうであれ、武力による制圧ないし制裁であります。 これに日本が間接的な形であれ参加するということは、絶対に憲法が許すことではないと私は考えます。
 それから、自衛隊法との整合性を考えてみましても、自衛隊はあくまで自国を侵略から防衛するという機能ゆえに、そういう理由のみによって内外から承認されてきたわけであります。私は、ここで自衛隊の合憲性を論ずるつもりはありませんが、ともかく過去の事実において、自衛隊は自国を防衛するという機能によってのみ正当性を得てきたわけであります。名目はどうであれ、海外の紛争地域にこの自衛隊を派遣するということは、日本国民、そして近隣諸国、そしてほかならぬ自衛隊員自身の了解を裏切るものであります。もし本当に海外派遣が必要であると政府が判断するのであれば、自衛隊法自体の改正を行うべきであります。
 それから、この国連平和協力法案の内容を見てまいりますと、そこには、法案の具体的な条文の解釈において行政府に大幅な授権ないし委任を行っているという問題があります。
 すなわち、法案では「国際の平和及び安全の維持のための活動」の定義として、国連決議と並んで「国連決議の実効性を確保するため、国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国が行う活動」という定義を挙げております。この文言は、まさに政府の裁量によって拡大解釈が可能であります。そして、日本の協力対象が、純粋な侵略の抑止や防止から、あるいは紛争の平和的解決から逸脱する可能性があります。また「平和協力業務」の定義につきましても、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トと例示されておりますが、最後に「イからトまでに掲げる業務に類するものとして政令で定めるもの」という規定を置いております。この点に関しても法は政府に対して大幅な授権を行って、平和協力業務の内容がここから無際限に拡張されるおそれがあるわけであります。
 いずれにしましても、国家の基幹的政策に関して、法律の条文においてあいまいな規定だけをして行政府に広い裁量を与え、ないし授権を行うということは、法律による行政、法治主義に対する重大な挑戦であります。状況に合わせて政策を変える場合には、従来の政策を規定していた法律ないし憲法そのものから改めるべきであります。行政府の場当たり的な解釈によってそのような重要な法律の内容を組みかえていくということは、まさに国民主権あるいは法の支配という国家の根本的な原理に対する挑戦であろうと私は考えます。
 反対理由の第二点は、この法案がアジア諸国に対する配慮を欠いたものであるという点であります。
 政府は国際世論への対応ということを根拠に挙げておりますが、ここで言う国際世論とは、専らアメリカ政府の主張であります。日本の軍事的プレゼンスの増大を憂慮するアジア諸国の声は重視されていないと言ってもよいと思います。また自衛隊は、一九八〇年代前半のいわゆる新冷戦下で急速に膨脹を遂げてまいりました。政府は、一方において冷戦の終えんを根拠に国際紛争に対する日本の対応が新しい段階に入るべきであるとおっしゃっておりますが、他方で自衛隊そのものは冷戦を前提とした巨大な装備を保ったままであります。そして、自衛隊は地域紛争に対応した体制には変わっておりません。その自衛隊が現状のままで海外に出動すれば、これを脅威と感じる国が出てくるのも当然であります。加えて、日本政府は、過去の侵略戦争に対するけじめをきちんとつけていないと言うことができます。この点は西ドイツと著しい対照をなしております。ですから、過去と現在は違う、旧軍と自衛隊は違うと言っても、それは説得力か弱いというふうに私は考えます。
 反対の理由の第三番目は、国際紛争の処理のために日本がなすべき貢献方法と、それに伴うコストについての検討が不十分であるという点であります。
 国際世論は、日本に汗を流すこと、あるいは場合によっては血を流す貢献を行うことを要求していると一般に言われております。その場合の汗を流すということは、一体何でありましょうか。国際世論は、要するに、海のかなたにいて金だけを出して協力した顔をするという姿勢を批判しているわけであります。 そして、金だけではなくて、ある程度リスクを冒した実質的な貢献を日本も行うように要求しているわけであります。
 これに対して日本の政府は、自衛隊の派遣という軍事的なコミットメントに踏み出しながら、リスクは回避したいという身勝手な矛盾を犯しております。何よりも首相の、危険なところには送らないとか後方支援部隊が攻撃を受ける事態は想定しないなどという答弁に、そのような消極的な姿勢があらわれております。リスクを回避したいという姿勢がある限り、幾ら軍事面で貢献を行っても、国際的には理解されないだろう思います。また、むしろ非軍事的な手段によってもリスクを冒して実質的な貢献を行い、国際的な信頼と理解を得るということは十分可能であります。例えば国際連合による平和維持活動、PKOは、軍事的な手段を伴わないものであっても、しばしば重大なリスクを伴うものであります。そして、日本のとるべき手段、選択というものは、まさに非軍事的な手段によりつつ、そのようなリスクをあえて冒し、国際社会の期待にこたえるという点にあるのではないでしょうか。まさに手段において軍事的な面に踏み込みながら、実際の貢献活動の中身においては危険を回避したい、リスクを回避したいという身勝手な主張をするということは、国際社会から失笑を買うことになるだろうと私は考えます。
 そして、このような地域紛争の処理のために日本が一体どのような原則によって貢献を行うべきかということを最後に考えてみたいと思います。
 一般的な議論として、憲法はもはや時代に合わない、あるいは国際情勢の変化によって憲法を解釈面で読みかえていって積極的な活動を行うべきであるという主張が行われております。しかし、その時代時代の状況の変化によって、憲法が時代おくれになる、それを実質的に読みかえていくということであれば、何も我々は憲法などという面倒なものを持つ必要がないわけであります。むしろ、原則というものを常に掲げながら、具体的な事例に処して日本のとるべき対応策を考えるという思考方法こそ我々がとるべきものであろうと私は考えます。そして、この種の国際紛争の解決処理に当たっては、我々はまず何よりも紛争によって被害を受けている国々の声を聞くべきであろうと思います。そして、有意味で実効性のある貢献方法とは何かを考えるべきであろうと思います。そのような実効性のある貢献方法を実際に行おうとすれば、当然そこにはさまざまなリスクが伴うだろうと思います。
 私は、今回のこの平和協力法案の審議をきっかけに、これからの日本の対外的な貢献の方法について広い立場から根本的に議論していただきたいと思うわけであります。そして、その際は、単に従来のいわゆる孤立主義的な平和主義から脱却して、あえてリスクを引き受けながら国際的な責務を果たしていく、しかもその際に憲法で掲げる非軍事的な手段への限定、自己抑制という原則を貫くという観点から具体的な方策を検討していくことこそ政治の課題であるというふうに考えております。
 以上のような理由から、私は今回の国連平和協力法は廃案にして、日本のとり得る選択肢について根本的な議論をもう一回行うということをここに御提言申し上げて、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
#520
○加藤座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。
    ─────────────
#521
○加藤座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
#522
○浜田(卓)委員 きょうは大変お忙しい中を意見陳述者の皆様には御来場いただき、貴重な意見を賜りましたことを心から感謝申し上げます。私は当特別委員会の理事をいたしております自民党の衆議院議員浜田卓二郎です。どうかよろしくお願いいたします。
 わずかな時間しかありませんので、私もできるだけ簡潔に御質問申し上げますので、お答えもできるだけ簡潔にお願いをしたいと思います。
 まず、私も昭和十六年生まれ、そして戦後育ちでありまして、現在の憲法というものを大変いい憲法である、そのように確信をしつつ、また私も法律を専門に大学時代は勉強してまいりまして、司法試験にも挑戦をした者でありますので、かなり法律的には一生懸命勉強してきたと思っております。今回の法案の提出につきましても、そういう観点から現行憲法、戦後四十数年にわたって積み上げてきた我々の確定した解釈、国民的なコンセンサスのある解釈の範囲内にきちんと入っているかどうか、そこは私なりに厳しく政府ともいろいろ話をし、疑義もただし、かつNHKで中継されました去る総括質疑のときも代表質問に立ちまして、できるだけわかりやすくその点を解明してきたつもりであります。そういう立場から幾つかの点をお伺いいたしたいと思います。
 まず、山根先生にお願いをしたいのですけれども、憲法前文を引用なさいまして、我が国は国際社会における名誉ある地位を占めたいという国民の切なる希望がこの文言に入っていることを御指摘になられました。そしてまた、戦後初めて日本は国際的にいかにあるべきか、その態度そしてその能力を試されている、そういう御認識も示されたわけであります。その中での選択としてこの法案の提出があるというふうにとらえていらっしゃいますが、今我々一生懸命やっておりますけれども、審議においてなかなかスムーズに展望が開けない状況があることもまた認めざるを得ません。
 仮に、こういった法案の提出、この状況における日本の一つの選択の提示というものが挫折するようなことがあった場合に、憲法前文との関係あるいはまた国際社会におけるそういう観点からの影響をどういうふうにお考えになられるか、ひとつ率直にお伺いさせていただきたいと思います。
#523
○山根喬君 極めて高度な御質問で十分なお答えができませんが、やはりこういう大きな問題は必ず反対の意見があろうかと思います。本来は、こういう問題については政治的な妥協ができて解決すれば一番いい姿なんですが、なかなか妥協ができない。安保条約のときもそうでした。そういうものを含んでおります。ですから、私としては、もしこのやむを得ない選択が成功しないということがあったときに、それをどうするかということまでは私にはちょっとお答えができないのですが、国際社会で果たしてどういう評価を得られるか、心配をしております。
#524
○浜田(卓)委員 次に、浅野先生にお伺いいたします。
 浅野先生、スウェーデンは派遣していないから我が国も余分なことをする必要はないという御認識を示されましたが、スウェーデンというのはどういう国だか御承知でしょうか。例えば人口ほどのくらいでございましょうか。
#525
○浅野元広君 スウェーデンは派遣していないということを、先ほどそういう話を聞いておりますというふうに表現をいたしましたけれども、まさに聞いた話ということでございまして、私が何かの文献で確認をしたとか、そういうことではございません。
 私がそこで言わんとした趣旨は、我が国は憲法九条の制約下にある、これを踏まえた上での我が国なりの活動というものを考えなければいけない。つまり、単純な言い方になりますが、右へ倣え式の発想ではいけないのではないかというふうな趣旨でスウェーデンを引き合いに出したのでございます。ただいまの質問に対するお答えにはならないのですが、スウェーデンという国がいかなる国であるかということについて特別の知識、見解を有しているわけではございません。
#526
○浜田(卓)委員 説教みたいでまことに恐縮ですが、私はスウェーデンに割と詳しいものですから。スウェーデンは人口八百万人なんですね。私は埼玉県の出身ですが、埼玉県の人口がもう六百五十万ぐらいになります。つまり、我が国でいえば一つの県ぐらいの規模の国であります。私どもが実は今なぜ協力法のようなことを考えなければいけないかという前提には、人口も一億二千万を超す国であり、GNPももう世界の一割をはるかに超える国になって、まさに世界的に我々の行動というものが見過ごされない、そういう大きな存在ということを認めざるを得ない。ですから、私は、その辺の正確な認識というのは各議論の前提に必要だと思ってあえて申し上げたわけです。
 そこで先生、もう一つですが、多国籍軍も今までは武力を行使していない、私もそれは非常にいいことだと思うのです。ですから、武力行使というものがない世界がいいのだ、それは本当に理想ですよね。しかし、事がなぜ起きたかということでありますが、クウェートという国、人口がそれこそわずか百五十万から二百万ぐらいの国で、軍隊もたった二万しかいない。それをイラクが、百万人もの軍隊を持つ国が一瞬のうちに侵略をして覇権を確立してしまった。もしこのときに米軍が出なければ、この後の事態はどういうふうになったというふうに先生はお考えなのか。ちょっと推測で結構ですから。
#527
○浅野元広君 それはまことに床屋政談的なレベルでしか話はできませんけれども、確かに伝えられるようなサウジ侵攻とかヨルダン侵攻ですか、そういうことがあるいはあったのかもしれませんし、あるいはどの規模で侵攻したのか私には予測の限りではないというか、わからない領域の問題であります。ただ、我が国として戦争にわたるようなといいますか、武力行使の危険のあるようなことはすべきではないというのが我が国の国是ではないのかというふうに考えておるということです。
#528
○浜田(卓)委員 私は、現実の世界が、そういった武力の行使によって小さいところが、備えていないところが侵略されるおそれがある、それを許す国際社会であってはならない、そういう認識をあえて申し上げたかったわけであります。
 先生への最後ですけれども、国連への協力を中心に考えていくべきだという御説であります。私も全く同感です。そして、その例としてお挙げになったのは、経済封鎖をやっているのだから、その経済封鎖だけでいいではないかという御趣旨もちょっと言われたように受けとめました。今、経済封鎖を実効性あらしめるために軍隊が展開されている、それは国連決議によってそういう形になっている、これは現実として認めざるを得ない。
 それともう一つ言いたいことは、国連ももっと進めば、四十二条によって国連軍というものの結成が規定されている。まさにそれぞれの国の独自の軍隊ではなくて、世界の共通の国連という機構を通じて軍事的な力の行使、それも平和の維持のためには必要だというのも実は国連のもう一つの大事な機能であるということもお考えいただいて、国連中心というのはそういうこともお考えの上の御発言なのかどうか、確認させていただきたいと思います。
#529
○浅野元広君 国連軍の問題になりますと、海部総理のまねをするわけではありませんが、私自身よく研究しなければならぬということになるわけですけれども、きょうの段階で言えるのは、やはり憲法九条の原則がありますので、国連軍の場合であってもそうたやすく我が国が軍隊を出せるかということについては、私はちょっと疑問を感じております。
 それから先ほどの、経済制裁だけでいいのではないかという意味では必ずしもないので、それはほかにもっと非軍事的な手段をやれるのではないか、むしろそういうことを政治家の方々に考えていただきたいのだという趣旨で述べたわけでございます。
#530
○浜田(卓)委員 次に、杉岡さんにお伺いしたいと思います。
 杉岡さんは、日米安保条約が日本の発展の上に果たした役割の認識が必要だということをおっしゃいました。私も同感なんです。
 それと同時に、やはり日本人の物の考え方に若干特殊なものを残してきたのも事実だと言わざるを得ないと思うのです。つまり、米軍に駐留をしてもらって早期講和を結んだ、これは歴史的事実です。吉田ドクトリンの考え方というのはまさにそこにあったわけですね。それが同時に、日本人のメンタリティーにとっては、日本の外で起きたことは日本に余り関係ない、それはアメリカであり、あるいはまた国際連合もありますけれども、ほとんどアメリカだという頭の整理をしてきて、どうも日本は国内だけでやっていればいいという話で来たというのがもう一つの日米安保条約の副作用というか所産であったような気がしてならないので、それを今どういうふうに独立国家として考え直していくかということも一つの課題だと思いますが、その辺について杉岡さんのお考えを聞かせてください。
#531
○杉岡幸三郎君 直接の御返事の前に、なぜ安保の話をわざわざこの際持ち出したかといいますと、いわゆる国民世論といいますか、それを非常に尊重されることが最近多いわけで、それは当然のことだと思います。ただ、私の短い生涯の中でも、例えば大東亜戦争の終末時に仮に国民の世論調査をしたとすれば、恐らく終戦に賛成した国民は余りいなかったと私は思うのです。安保のときもまさに同じでございまして、やはり安保というものについて、今先生おっしゃったようにある種の拒絶的な反応があった、これは無理からぬところであろうと思います。ですけれども、国民大衆の世論そのものが必ずしも正しいのではないのだということを私は自分の体験から考えておるものでございますから、当然現在の国の政治は国民世論の大勢に沿った形で政治が行われるのが最も望ましいわけで、しかもそれが正しいということが非常に望ましいわけですけれども、あるときにおいては国民の世論というものについても若干誤謬があるということもやはり考えなければならぬ問題だと思います。そのときに、この二つの事例で何が一番問題であったかといえば、国民に正しい判断をするデータが与えられていなかったことだ、私はこのように思っておるわけです。 そのようなことで、安保の問題につきましても、国会の討論等では安保の重要性を与党の先生方は述べられる場面がありますけれども、比較的そういうものについての国民的了解を得る機会が少なかったのではないか、私はそのように思っておるわけです。
 日本の基本的な国是というものは、やはり今後もしばらくは米国を中心としていかなければならぬであろう、私は防衛の遠い将来のことはわからぬと申し上げましたけれども、そのようなことでございます。今申し上げましたように、今回の行動について若干の違和感を持つ国も出てくるわけでございますけれども、一番大切なところへ私どもの真心をあらわすということが必要なことだ、私はそのように考えておるわけです。
 そういうようなことで、今申し上げましたことが直接のお返事になりませんけれども、安保問題については古くて新しい問題で、現在も進行している問題ですから、この辺のところについては積極的な啓蒙活動が今後も必要な問題であって、決して古い問題ではない、こういう意味で実は申し上げたつもりなんです。
#532
○浜田(卓)委員 それからもう一点、杉岡さんですが、平和協力隊の後方支援活動は、それは死ぬことも負傷することも覚悟する必要があるという御意見でありました。実は、私も先ほど申し上げました代表質疑の中でいろいろ確認をしていったわけですが、戦端が仮に開かれますね、そういう状態になったらこの輸送活動というのはやらない、というよりも、むしろもう憲法の考え方からいっても、集団自衛権の考え方からいってもできない、やれないのだということが明確なのですね。そして、実際上実施計画というのを一回一回閣議決定して決めていくわけですから、よほど限界的な、いろいろ与野党の議論の中で危ない話ばかりたくさん出てしまうものですから、今おっしゃったように全体が危ないみたいになってしまっているわけですけれども、私どもはそういう話にはしたくない、また、それはまさに平和協力隊の役割としてはできないというように考えているわけですが、その点についてもうちょっとお考えを……。
#533
○杉岡幸三郎君 平和協力隊の役割については……
#534
○加藤座長 杉岡君、速記者の都合もありますので、発言の前に委員長と言っていただきますと、名前が出ます。そうすると、速記に名前が載ります。
 杉岡君、お願いいたします。
#535
○杉岡幸三郎君 今のお話でございますが、これも私どもも平和協力隊が後方支援の活動に限定されるということは何回もお話を伺っておりまして、それが安全なことを希望されることについては、私ももちろんそのとおりだと思っております。
 ただ、私どもの軍隊経験から見ますと、有事の際においては絶対ということがまずあり得ないということ、ですから、私どもよく戦時申し上げたのですが、戦争行為は錯誤の連続であるということでございまして、平常時の常識では成り立たないのではないか。それから、こちらからしかけなくてもしかけられることが当然あるわけでございますから、日本人はどう考えるか知りませんけれども、後方にいて軍事的な行動をしていないのだからあれはらち外だとは当事者は考えないわけで、危険が必ずしもないということは絶対にない、私はこのように実は考えております。
 ですから、この発言が、どちらかといえば法律制定に歯どめになって、障害になる発言であることは十分承知していますけれども、例えばきょうの報道でありますように、警視庁の宿舎でさえ爆破されて全然関係のない方が亡くなっているわけで、その点についての危険が絶対ないということで、もしも起きたときに行動そのもの全部が浮き足立ってしまってはならない、こういう意味の方に私はスタンスが多いのでございます。
#536
○浜田(卓)委員 御趣旨はよくわかりました。これから要するに戦端が開かれるようなケースとか、そういう実施計画を組めない場合あるいはまた組むべきでない場合、そこは今の御意見もよく拝聴しながらやっていく必要があると思います。
 最後に、大場さんに御質問させていただきます。
 大場さんは長崎被爆の体験もお持ちだということで、非常に戦争に対する反戦的な御意思の強い方というふうに私ども承知しております。そういうお立場で、先ほどの御意見を拝聴いたしておりまして、今の日本の国際的責任に対する非常に厳しい認識というものに敬意を表するわけでありますが、今我が国が何をすべきか、ぎりぎりの選択だということをおっしゃられたわけですけれども、その点についてもう一度お考えを聞かせてください。
#537
○大場信吾君 今長崎の体験というふうにおっしゃられましたけれども、実は私、昭和二十年三月十日の東京大空襲の罹災者の一人でございます。母親も死にまして、相当厳しい戦争体験を持っているというふうに自分では受けとめております。したがって、戦争は憎いといいますか、あるいは恐ろしいというか、戦争はなくしたいといいますか、そういう意識については人後に落ちないというふうに考えておりますけれども、ただ私自身の判断としましては、心情的な平和主義という言葉を説明の中でも使いましたけれども、それでは問題が解決できない。やはりある程度のリスクを覚悟しながら初めて手にすることができるものが平和だというふうに自分の体験を通して考えておりますので、今回のこの平和協力法案の意図する方向は日本にとっては避けることができないというふうな所感を持っているわけでございます。
 ぎりぎりの選択という点につきましては、私とても口幅ったいことを言える状況にはございませんけれども、例えば憲法解釈の問題とかあるいは自衛隊の派遣をめぐる論議とか、いろいろな賛否両論が交錯をする中で、政府としては相当な決意を持って選択をした最終的な方向ではないか、それだけの努力が背景にあるというふうに理解をいたしましてぎりぎりという表現を使っているわけでございます。それに賛意を表するという意味でございます。
#538
○浜田(卓)委員 これで終わります。
#539
○加藤座長 次に、中川昭一君。
#540
○中川委員 先生方には貴重な御意見をありがとうございました。
 この法案に反対するお三方がいずれも法律の専門家ということで、私はもちろん専門家ではございませんからひとつお聞きをしたいのですけれども、反対する理由が、憲法九条により自衛隊の海外派遣は違憲である、あるいは平和協力業務そのものが違憲であるというふうにおっしゃった方もいらっしゃいます。
 私はもちろん国会議員として憲法を尊重する義務があるわけでありますから、その立場で、この法案並びに自衛隊の参加業務は憲法九条に違反しないと私は思っておる人間でありますけれども、その前提として、諸国民の平和を希求する心を前提とした憲法というものがある。先ほど前文を引用された方がいらっしゃいましたけれども、この前提としての憲法のそもそもの成り立ちが、世界じゅうの国民とともに平和をつくっていきましょう、その立場で名誉ある地位を占めたいというのがこの憲法の前提であります。それにもかかわらず、イラクのような問題が起こると、我々は世界を国連を中心にしてもとのあるべき平和に戻していこうというふうに考えているものでありますけれども、この憲法九条だけを引用して違憲というふうにおっしゃいますが、法律家のお立場として、例えば憲法九十八条の問題でありますとか、前文との整合性を総合的に判断した上で違憲とおっしゃるのか、憲法九条の一部分だけをとって違憲とされるのか、お三方から一言ずつで結構でございますから、結論だけ聞かしていただきたいというふうに思います。反対されたお三方、法学部の山口先生も含めまして、一言ずつで結構です。
#541
○浅野元広君 結論だけ申し述べます。
 前文の趣旨も総合的に考えた上で、私は協力法案に反対であるというふうに考えます。
#542
○中川委員 九十八条との関連も含めて……。
#543
○浅野元広君 九十八条との関連についてどういう問題意識で御質問なのか、ちょっと一言補充していただきたいと思います。
#544
○中川委員 つまり、九十八条とかあるいは前文、憲法九条、九十八条も含めた憲法全体の趣旨から見て違憲というふうにお考えになるのですかということです。
#545
○浅野元広君 ちょっとよくわかりませんが、私の意見としては憲法九条の解釈として違憲でありますし、しかも憲法九条というのは憲法前文の精神も受け継いだ規定である、こういうふうに理解しておるということでございます。
#546
○越前屋民雄君 中川先生御指摘のように、憲法前文には国際協調主義ともいうべき大変崇高な理念が説かれております。したがって、それが憲法体制を支える大きな基本原則の一つであります。反面、それに引き続いて、その次の段には平和主義も高らかに宣明されておりまして、その平和主義の中には、国際紛争を解決する手段としてもこれを放棄するというふうに述べております。 したがって、私としては、両主義、つまり国際協調主義と平和主義の二つの大きな理念の中で国際協調主義が平和主義によって制約されるべきだろう、制約されている、こういうふうに考えております。
#547
○山口二郎君 中川先生御指摘のとおり、日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためには、今回のような明白な侵略あるいは不正に対しては、国際的な対抗措置をとることは憲法の予定しているところだと思います。しかし、私は、憲法第九条というものは、そのような国際的な貢献方法についての制約、枠をはめた規定だと考えます。ですから、その範囲内で考えるべきだということであります。
#548
○中川委員 終わります。
#549
○加藤座長 次に、町村信孝君。
#550
○町村委員 私ども自民党に与えられた時間も大分なくなってまいりました。端的な御質問だけをちょっとさせていただきます。
 先ほど浅野さんは、自衛隊はそもそも違憲だ、こういうはっきりとした、今や社会党もそれを超えようとしているのかという状態でありますけれども、明確な憲法違反な存在だ。さっき越前屋さんは、今これは述べる主たるテーマではないとおっしゃった。確かにそうなんですが、一言、越前屋さんと山口さんから、自衛隊は違憲な存在なのかどうなのかということについて明快に一言だけお答えください。
#551
○越前屋民雄君 合憲の方向で考えていいと私は思っております。
#552
○山口二郎君 領域保全などの基本的な業務に限定して合憲な存在であり得ると私は考えます。
#553
○町村委員 ありがとうございました。
 国連への協力ということを皆さん、それぞれ若干の違いこそあれおっしゃった。さっき浜田委員もおっしゃったように、もちろん前段階のステップは踏むものの、最終的な世界の平和と安全を築くための担保としての軍事力の行使というのが国連憲章一条、二条そして四十二条以下に明白に述べられているわけですね。ところが、どうもこの法案に反対をされるお三方の御意見を聞いていると、その軍事的な側面というのは認めない、こう言わんばかりの御発言が相次ぎました、山口先生のは少し違うのかなと思いますけれども。
 そこで、越前屋さんに伺いますけれども、例えば多国籍軍への協力の是非という点で、あれは今多国籍軍というのは名ばかりで、実はアメリカの権益保護のために出ているのではないか、こういう一つの判断を示されました。そういう面があるのかないのか私もよくわかりませんが、しかし明らかに国連という場で大きな国が強大な軍事力を持ってイラクに侵攻することはよくないということで多国籍軍も出ていっているわけで、したがってこの多国籍軍に協力するのは当然だという立場から、多国籍軍は米国の権益保護のために出ているのだという断定は正直言っていかがなものか。多国籍軍があるからこそ、イラクがクウェートからさらに進んでサウジ、さらに行けばバーレーンとか、あっちの方まで出ていったかもしれないのを事前に抑えたという平和維持機能というものを現実に持っているという点をどう評価されておられますか。
#554
○越前屋民雄君 確かに町村先先おっしゃるそういう側面は私もあると思います。
 評価の問題でして、やはり二面性があろうかと思うのです。アメリカにしてみれば、我がアメリカの友好国、中東のかなめであるサウジが侵略されるということはアメリカにとっては極めて重大なことでありまして、そういう面では一面アメリカは自国の権益擁護のために出動したというふうにも見られるし、それは同時に反面、国際平和維持の点につながっていくという面では国際連合の決議に準拠するというか、そういう面もあると思うのです。だけれども、反面、ではアメリカが忠実に、いわば国連決議に拘束されて、その枠から一歩も出ないで行動する、そういう組織体なのかといえば、これは国連自身がどうも危惧の発言もあるようでして、例えば国連は経済封鎖だけだ、それで若干の武力行使にとどめたい意向を明確に示しておりますけれども、我々の耳に伝わってくる情報では、まさに一触即発という軍事情勢にあるわけですね。そういうような角度から見て、果たしてこれが真実アメリカが国際連合の決議を実行する、その実効性を担保するためにのみ行動しているのかといえば、僕は疑問を持たざるを得ないだろうと思います。
#555
○町村委員 委員長、終わる前に一言、時間がないようですが、よろしいですか。
#556
○加藤座長 時間です。
#557
○町村委員 一言だけ。私は、山口さんが言われた孤立主義的平和主義はもう脱却して、若干のリスクを冒してもというところまでの議論は大賛成でありまして、その後いかなる方法でというのはまたこれから議論を深めるべきポイントだな、こういう感想を持ちましたので、一言だけ申し上げさせていただきます。
 ありがとうございました。
#558
○加藤座長 山口さんから何か一言ございますか。
#559
○山口二郎君 いや、特にございませんが、あえて一言申し上げさせていただくと、ぜひ国会の論戦におきまして、今町村先生と私の間で成立した了解に基づいて具体的な貢献策を鋭意探求していただきたいという希望を申し上げさせていただきたいと思います。
#560
○加藤座長 次に、高沢寅男君。
#561
○高沢委員 本日、意見の陳述をしていただきました六人の先生方、本当にありがとうございました。私と池端さんを含めて社会党三十分の持ち時間ですから、すべての方にお尋ねすることはできませんが、その点はお許しいただいて、順次お尋ねをさせていただきたいと思います。
 初めに、山口さんにお尋ねしたいのであります。
 言うまでもなく、今までの東西冷戦激化の時代、米ソ対決の時代、そのもとにおいて日本は日米安保条約を持ってきたわけでありますが、今まではソ連の脅威、言うならばソ連が仮想敵という位置づけで、それに対して北海道はまさに最前線であるというような位置づけで来たわけでありますが、その前提の冷戦の構造が根本的に変わった。こういうときに、私は、特にこの北海道という土地柄から見て、これからの日本の安全保障のあり方はどうあるべきかということを、非常に総論的でありますが、初めに山口さんから聞かしていただきたい、こう思います。
#562
○山口二郎君 先ほど申しましたように、この種の法案を論議する際には、これからの日本の外交、防衛政策のいわば基本的な戦略あるいはグランドデザインというものをきっちりと考えることが不可欠の前提であろうというふうに考えます。
 私は、もはや東西対決の時代は終わったというふうに感じております。日本の防衛政策、外交政策というものも、米ソの緊張緩和あるいは東西の融和という事実を前提として方向転換をすべきときであろうというふうに思います。そのために日本が一体何をなし得るか。緊張緩和をより推し進める方向に、あるいは従来潜在的に対立する関係にあった地域、国々、人々といかにして相互了解や信頼醸成の措置を講じていくかということは、日本の外交、防衛にとっての最も重大な課題であるというふうに考えるわけであります。
 ですから、一方においてこういう中東紛争といったような緊急事態に対応して、平和協力の方法を探るという努力も重要でありますけれども、同時にこれからの日本の外交、防衛政策のグランドデザインをどう描くかということについて、むしろ国会においてきちんとした論議を行うべきであるというふうに考えます。
#563
○高沢委員 今山口さんは、東西冷戦構造が根本的に変わった、そのもとにおいて日本の外交政策や安全保障政策の根本的転換が必要である、こうおっしゃいましたが、私の見るのに、今までの冷戦の時代は、日本が何か国際的な判断をする、国際関係をどうするかという場合の判断の基準は、ほとんどもう一〇〇%と言っていいくらいアメリカとの関係はどうか、アメリカはどう言うかということを判断の基準にしてきた、私はこう思います。今それが根本的に変わるべきときに来ていますが、しかしこの中東問題に日本が対応するという対応の仕方が、国際協調という言葉はあるけれども、私は、中身としては、アメリカがサウジへ展開している多国籍軍の中心になっておる、それとの協力をどうする、相変わらず対米関係をどうするかという判断が最優先されて今度の平和協力法案が出されてきておる、こういう実態があるのじゃないかと思いますが、この辺の先生のお考えはいかがでしょうか。
#564
○山口二郎君 先日、海部首相が、この法案がうまくいかないと国際世論から非難を受ける、なかんずくアメリカから大変な批判を受けるということをおっしゃいましたが、まさにその点に日本の政府の指導者の対外認識があらわれていると私は考えます。つまり、国際協力イコール対米協力という図式が支配しているというふうに考えるわけであります。
 従来、アジアの一員、西側の一員、国連中心主義といったような言葉が状況に応じていわば便宜主義的に使い分けられてきたわけで、日本のアイデンティティーといいましょうか、立場というものをどこに置くのかということについて、きっちりと詰めた議論がなかったように思うわけであります。
 アメリカというのはやはり独自の国益を追求している国でありまして、アメリカの言うことが全部正義というわけではもちろんない。それはグレナダ侵攻やあるいはパナマに対するアメリカの政策などを見ていれば明らかであります。そこで日本としては、アメリカの協力要請に対してどういう原則をもって対応するかということをきっちりいわば理論的な武装をする、知的な準備をするということが何よりも重要なことだろうと思います。
#565
○高沢委員 その国連協力ということなんですが、私の知る限り、今まで国連の総会とかいうところで軍縮関係とかあるいは人権の関係とか、そういうふうないろいろな決議がなされてきましたけれども、大体いつもアメリカと歩調を合わせて反対をする、棄権をするというふうな態度で来たのが今までの国連に対する日本の政府の態度であった、私はこう思うのです。
 ここに来て今度はにわかに国連、国連と言い出したわけで、それにしても、国連に対する態度を改めて、本当に国連の平和維持機能に日本が協力していくということは全面的に賛成ですけれども、ただ、それも先ほど皆さんの御意見にも出ましたように、実効を確保するためにとか、国連の活動のその他の活動とか等々の非常にあいまいな修飾語がついている。そして、本来の国連の厳密な決議、総会の決議、安保理事会の決議の枠を踏み越えた、そういうところまで国連の名のもとに日本が行動をとっていくということはあってはならぬ、こう思います。その辺の、国連というけれども、ではその国連という言葉の中身はどういうふうに限定すべきかという点について、お考えをお聞きしたいと思います。
#566
○山口二郎君 形式的な、客観的な、だれから見てもはっきりとわかる基準によって日本のお金なり、組織なりを国際的な業務に参加させるということが何よりも重要であろうと思います。
 先ほど申しましたように、日本が国際的な紛争解決に関与するということについては、日本の意図とは違った読み方をされる可能性がある、軍事的なプレゼンスが増大するといったような憂慮を招く可能性があるわけであります。そういう誤解や憂慮というものを払拭するためには、何よりも国連としての意思決定という形式的な、客観的な要件というものを入れなければならないというふうに私は考えます。
#567
○高沢委員 それから、今の情勢の中で、日本はリスクを冒しても協力せよという声が非常に強いということですね。確かにそうです。そのリスクを冒してもということの中に、したがって軍事的なそういう協力関係もあってしかるべきだというふうな御意見にそれが発展していくという感じがいたしますが、先ほど来指摘されておりますように軍事的に協力するということは実は一番危険なことですね。だけれども、そのことをやろうという政府は、いや危ないところには行かないのだ、いやそういう危険は想定されない、こう言って、一番危ない軍事をやろうとしながら、しかし危険はない、こう言われる。
 しかし、それと別に、では軍事でなくて、本当に難民救済とか医療活動とか等々の協力をするにも、外地へ出ていけばやはりそれに伴う危険はある、リスクはある。先ほどの山口さんの御意見では、そういうリスクは当然避けるべきでないというふうな御意見もあったと私はお聞きしましたが、そういうリスクとそれから協力の性格、この相互関係というものをどういうふうにごらんになっているか、お聞きしたいと思います。
#568
○山口二郎君 これは例えて申しますと、例えばある地域に非常に悪質な疾病がはやっていて、そこに医療チームを派遣すべきかどうかという問題みたいなものでありまして、そういう悪病がはやっているところに医者が行けば、それに伝染して医者自体も命を落とす危険性がある。だけれども、その病気を治療するためには人が行かなければいけないということで、平和的な作業についても当然いろいろなリスクはあるわけであります。
 紛争処理の例で言えば、国連によるいわゆるPKOは、文民が参加しても不慮の被害を受ける可能性はあるわけであります。しかし、日本はそのような意味での危険性というものはむしろ進んで負うべきではないかというふうに私は考えるわけです。
#569
○高沢委員 ここで浅野先生にひとつお尋ねをしたいと思います。
 実は、私は東京の練馬区というところに住んでおりまして、その練馬区には自衛隊の駐屯地があります。その駐屯地の隣には自衛隊の隊員、その家族の宿舎の大きな団地があります。そういうところに住んでいる方から、今度のこの国連協力法案の関係で私のところへも電話が来たりということも実はあるわけです。
 それはどういうことかというと、今自衛隊にいる人たちは、日本は専守防衛である、海外に派遣出動ということはないのだ、こういう前提で自衛隊へ入隊された。家族の人もそのつもりでいる。ところが、今度のこの法案が成立すると海外出動が命じられる。そのときに自衛隊の人が、私は嫌ですと断れば懲戒の、罰則の対象になる、懲罰の対象になるということが国会の討論で政府から示されたわけですね。そのことに対して、今自衛隊の中にいる人から、それは話が違う、我々はそういうつもりで自衛隊に入ったのではないのだというふうな意味の電話などが来て、この点はしっかり国会でただしてほしいというようなことがございました。私は、これは自衛隊の今の隊員が入るときに、海外派遣の危険性はないという、ある意味の政府との一定の暗黙の了解といいますかあるいは契約といいますか、そういうものがあって自衛隊に入隊した人たちで、そこでその人たちは今、それは今度は契約が違うじゃないかというふうな意識がかなりあるのじゃないか、こう思います。
 浅野先生、弁護士というお立場でそういう契約問題をよく扱われると思うのですが、そういうお立場から、法律上の立場と、あるいはある意味では国民感情的な常識の立場からこの問題をどう考えたらいいか、御意見をお聞きしたいと思います。
#570
○浅野元広君 私は民事、商事の契約を扱っておりますので、常識の立場からお答えをしたいと思うのです。
 先ほどの御意見の中で、協力隊を設置するのであれば自衛隊法の改正が必要になるのではないかという指摘があったと思うのですが、確かに現行の自衛隊法のままで海外に派遣されて活動をするという任務が果たして含まれるのかどうかということについては、御指摘の問題点はあるのだろうとは思います。もしそれが含まれないのだとすれば、いわば義務なきことを行わさせるということになるわけですから、あるいはこれは拒絶してもいいという論点も大いに成り立ち得るのではないかというふうに考えます。
#571
○高沢委員 私は今自衛隊の例で申し上げましたが、今度の平和協力法案は、国家公務員とかそういう立場の人も出動を命ぜられればやはり行かなければいけない。そのときに断ったらどうなるか、やはり懲戒の対象になるということで、事柄は及ぶところが非常に広いということになろうかと思います。殊に、自衛隊の人の場合には、今までの自衛隊法の本来の日本の国土を守るという立場から、例えば防衛出動が命ぜられる、あるいは治安出動が命ぜられるというふうな命令が出たときに、自衛隊員がその命令に従わない、上官の命令に抵抗するということをやれば、今度は、ただ免職される、首になるという罰則の範囲をはるかに超えて、そういう場合には五年以下とか七年以下という懲役、禁錮の対象になる、こういう罰則が自衛隊法の中にあるのですね。
 今度の平和協力隊の中で、自衛隊の隊員が出動を命ぜられて、私は行きませんと言ったら、首を切られるだけじゃなくて懲役、禁錮の対象になるのかどうか、私は随分実は国会でこれを政府に質問いたしましたが、なるとも言わない、それではならないのかと言うと、ならないとも言わない。大変あいまいな灰色のゾーンのような状態で今法案審議が行われているということで、私はそういうあいまいな状態を含んだままでこの法案を成立させることはますますできないと考えているわけですが、そういう禁錮、懲役という罰則まで含むとなったら、浅野先生、この点はまたどう考えたらいいか。いかがでしょう。
#572
○浅野元広君 仮にそういう問題が発生して刑事裁判になるという事態になれば、やはり裁判としても相当大きな問題として国民の関心を呼ぶようになるのだろうと思いますが、先ほど述べましたように、現行自衛隊法の中での自衛隊の任務の中に含まれてくるのかどうかという問題なんだと思います。海外派遣というものが含まれないのだとすれば当然義務違反はないわけですから、やはり罰則の対象にはならぬ、こういう議論になるのであろうというふうに思います。
#573
○高沢委員 きのうの中央公聴会でもやはりこの点のあれがありまして、海外派兵を義務づけるならば、自衛隊法第三条の任務の中にはっきり出してからやるべきだという公述人の御意見もあって、私もそれでなければ罰則を受けるというようなことはあってはならぬ、こんな気持ちでおります。
 それはそれといたしまして、杉岡さんにひとつお聞きしてよろしいでしょうか。
 杉岡さんからの御意見の中では、要するに、国が必要とするときは言うならば犠牲を避けるべきではない、極端に言えば命を捨てることもあってしかるべきだというふうな御意見があったかと思います。これは杉岡さんの強い御信念として私も敬意を表するわけでありますが、ただ、そういうことを一般の多くの青年や国民に要求する、国のためには命を捨てることがあってもやむを得ないということを要求する場合には、やはりそれなりの憲法の根拠がなければいかぬ、私はこう思います。
 第二次世界大戦までの我が国の明治憲法下では「一日一緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と、そういう場合には命を捨てても戦えということが規定されておりました。しかし、戦後の今の憲法ではそういう規定は完全に除去されて、排除されているわけでありまして、私は、今の憲法では国のために命を捨てることも覚悟して役割を果たぜということを国民に強制する根拠はない、こう思うわけであります。
 そういう立場から、杉岡さんの先ほどの御意見があって、それはお気持ちとしてはわかるけれども、平和協力法案という法律、制度の問題にそのことを持ち込んでいくことは、大変大きな憲法との関係の誤りを犯すのじゃないのか、こんなふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
#574
○杉岡幸三郎君 国を守るということは、憲法の問題もさることながら、個人の情念の問題がまず基礎だと私は思っております。ですから、私どもも戦争中に軍隊出動した経験がございますけれども、我々が守らなくてはだれが守るのか、そして我々が自分の母親を、父親を、子供を守らなければだれか守るのかということが基本でありまして、憲法が制定してあるから戦陣に出たという記憶は私、持っておりません。そして、今の日本で最も欠如しているのが実はその情念である、私はそう思っております。したがいまして、このことについてはやはり自分らが守るに値する美しい日本、尊敬する日本というものをつくるということが一番の基礎の問題でございまして、それを我々が守るということについて、やはり国民としての義務の一つとしてあってしかるべき問題だ、私はこのように実は考えております。
 でございますから、先ほど先生のお話の中にもありましたけれども、若干先生と思想の立場が違うようでございますが、アメリカばかりに配慮した時代は過ぎたと先生はおっしゃっておられますけれども、一歩譲ったとしても、アメリカの考え方を一番尊重すべき関係にあるということの前提を私は考えておるわけでございまして、ちょっと御質問と違いますけれども、そのような形で私は考えております。
 ただし、私の発言の中で、今回の行動については現行憲法の枠内でということは再三申し上げております。ただし私は、現行憲法に一〇〇%満足だという立場ではございません。念のため申し添えておきたいと思います。
#575
○高沢委員 もう一つだけ申し上げて池端さんにかわりたいと思いますが、先ほど杉岡さん、例えば安保闘争のときに世論調査をすれば安保反対は多数になったろう、しかし今なら違うだろう、世論調査というものの状況による変化というふうな意味のことをおっしゃいました。私も確かにそれは非常にあると思います。
 今度のイラクのクウェート侵攻が起きた。当初、アメリカの世論は圧倒的に沸騰して、アメリカ軍をサウジへ展開したブッシュ大統領の決断を圧倒的に支持したということが伝えられました。しかし今、新聞の報道によれば、十一月六日にアメリカの中間選挙がある、この中間選挙ではブッシュ大統領は大きく敗北するのじゃないのかということも伝えられて、つまりアメリカの世論もこの二カ月、三カ月の間にそれだけの変化を示しているということが言えると私は思います。そういうときに、私はむしろ冷静になったときの世論の方が正確な世論、こう言っていいのじゃないかと思います。
 また、日本の国の憲法の関係でいえば、この憲法を変えるべきかどうかという世論調査がよく行われますが、いつも必ず八〇%の人は憲法を変えるべきでない、こういう世論調査が日本の国民の世論として定着している。私は、このことは世論調査の中でも特に重要な一つの方向をあらわしておると思います。そういう立場で私たちは憲法と平和協力法案との関係も論じているわけでありますが、そのことについて杉岡さんの御見解をここでお聞きして、あとは池端さんにかわりたいと思います。
#576
○杉岡幸三郎君 アメリカの世論の推移については、今先生のおっしゃったようなことは新聞で承知をいたしております。ただ、私がこの際申し上げたのは、国民的世論というものが正しくないこともあるということを実は申し上げたつもりです。その点についてやはり正確な情報を渡していなければならない、こういう前提でお話を申し上げたと私は思っております。
 もう一つ申し上げておきたいと思いますのは、日本は日本として誇りのある憲法があります。しかし、世界各国もまた各国民が誇りとしている憲法をお持ちになっていらっしゃるわけでございまして、日本の憲法だけが誇りある憲法だとは私は思っておりません。したがいまして、各国の憲法上の意図するところで国外に軍隊を出せるところも当然あるわけでありますし、日本のような特異な憲法――私もよく憲法を存じ上げませんけれども、日本の憲法の今の軍事に関することについてはやや特異であるというふうに伺っておりますが、そういう意味で憲法の差があるということは当然でございまして、私は再三申し上げておりますように、憲法の枠内において今回の場合の行動を支持している、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
#577
○加藤座長 次に、池端清一君。
#578
○池端委員 時間も大分たちましたのでごく簡単に一点だけ、浅野先生、越前屋先生、山口先生にお尋ねをしたいと思います。
 この法案の国会の審議の状況は既に新聞やテレビで御承知のとおりでございますが、政府側の統一見解の乱発、そしてそれに対する訂正、大臣答弁を局長が訂正をするという、下克上というような言葉も使われておりますが、まことに異常な状況でございます。この状況は、先ほどもお話がありましたように、この法案がいかにも拙速に過ぎて泥縄式にまとめられた、こういうものであるということを象徴していると私は思うのであります。この法案審議の成り行きを院の外で熱いまなざしをもって見詰めておられる国民のお一人としてどのように感想を持っておられるか、それぞれ三人の先生方から簡潔にお答えをいただきたいと思います。
#579
○浅野元広君 解釈の変遷といいますか、あるいは答弁の食い違いといいますか、そういうことについて私が抱いている感想は、かつて自衛隊が憲法に適合するということの説明のために種々の議論が提起されまして、非常にある意味では憲法九条の精緻な条文解釈が展開されていった経緯があると思います。ですから、このたびの平和協力法というのも、やはり憲法との関係でその説明が非常に難しいものなんだと思うのですね。その難しさがああいういろいろな答弁に結局出てしまっているのではないか。つまり、非常に単純明快な、だれにもわかるような形での論理的説明が難しくなっておる、そういう感想を抱いておるわけでありまして、そうすると、その難しさ自体がやはり憲法との適合性に対する疑念を生じせしめる原因になっているというふうに理解しております。
#580
○越前屋民雄君 この点については、私は二点問題があろうかと思います。
 基本的には池端先生と同じ意見なんですが、一つは国民の側に十分時間をちょうだいしまして議論できるいとまもないうちに、突然大きな問題を突きつけられてしまった。したがって、そういう問題でありますから、当然政府も十分検討してなかったように我々も受けとめておりまして、政府部内での論議もまた十分でなかったろう、これがまず一点です。
 もう一点は、この法案の中身を見ますと、やはりちょっと整理されてないものがあろうかと思うのです。それは、将来的に国連が国連軍などをつくった場合に、日本はそれに対してどうかかわりを持って国際的責任を果たすべきかという非常にスケールの大きな視野の問題を検討するというテーマと一緒に、現在の多国籍軍に急いで参加して貢献しなければいけないのだという当面の問題、これがいわば混在しているように思うのです。したがって、当面の対応も急がなければいけないから、ちょっと問題のある多国籍軍にも参画できるような条文の体裁にもする。一方、長期的な展望に立って国際連合のいろいろな活動、平和維持活動にも協力できるような体制も組まなければいけない。いわば、やや時期を異にして対応しなければいけない問題を一つの法律で一遍にやってしまおうというところにやはり問題があったのかなと思っています。
 もう一点言わせていただければ、中身について、国民のだれしもかそれは結構なことだ、それはやるべきだという問題と、それから、まかり間違えば戦争行為あるいは軍事行為を後方で支援することになるかもしれない危険性を持っているものも含まれている、いわば異質なものも一緒に入っている、だから議論が混乱するのだろう、こういうふうに考えております。
#581
○山口二郎君 私の感想は、指導的な立場に立つ政治家の方々には、みずからの信念や理念というものをもっと率直に語っていただきたいという点であります。つまり、政府・自民党の側にあっては、一体、国連中心主義と対米協調主義が食い違いあるいはずれる可能性があるとすればどっちを優先すべきであるかとか、自衛隊を海外に派遣することの本当の必要性は一体何なのかといったような点について、いわば目先のごまかしではなくて、それぞれの信念というものを語っていただきたいわけであります。
 他方、野党の側にも同様の問題はあると思うわけで、従来ややもすれば孤立主義的な消極的な平和主義の色彩を持っていたいわゆる護憲の理論というものを、この新しい時代の国際社会にあってどのように組みかえていくかという点についてきっちりした議論をしてほしいと思います。
#582
○加藤座長 次に、山口那津男君。
#583
○山口(那)委員 まず、弁護士の山根先生と浅野先生にお伺いいたします。
 先ほど越前屋公述人の方から、憲法の問題に関しては最高裁判所で判断を得る機会は極めて少ない、こういうお話がありました。今回の法案の憲法解釈に当たりまして、武力行使と一体とならない後方支援は許される、こういう解釈が政府から述べられております。そうしますと、仮にこの法案が成立したとしますと、この一体性の解釈について、政府側は状況に応じてさまざまな要素をケース・バイ・ケースで総合的に勘案をして合憲性を判断する、一体性を判断する、このように答弁をしているわけですが、この法案が成立すればこの行政府の個々の憲法判断というものを司法的にチェックするチャンスはないばかりか、国民もそれを判断することは容易ではない、このように思われるわけですね。弁護士の実務家の立場から、こうした点について憲法解釈の基準はどのようにあるべきか、御意見をちょうだいしたいと思います。
#584
○山根喬君 憲法判断を最終的にするのは最高裁判所に与えられた任務です。その最高裁判所で憲法判断をするについては、抽象的なことでは最高裁判所には上がりません。具体的な行為、例えば自衛隊の職員が派遣を命ぜられて、それを拒否したということが訴訟問題になる。懲戒を受ける、あるいは罰則を受けるというようなことがあった場合に、それを中心にして最高裁判所が判断をするわけです。
 これまでも憲法判断は最高裁判所はいろいろな面でやっています。自衛隊についてもやっております。あるいは国家公務員の争議権についてもやっております。結局、憲法判断というものを個々に、行政庁なりあるいは国会なりで独自にやっていったのでは統一的な見解が得られない、最終的にはやはり最高裁判所が判断を示すというのが道だと思います。
#585
○浅野元広君 山口先生御指摘のように、ただ後方支援が武力行使と一体性をなしているのではないかというふうに仮に我々が考えた場合に、裁判所にその点についての判断を直ちに求めるということはございません。何がしかの事件が起きなければ判断を得られないということになるわけであります。
 そういたしますと、この法案が成立をして政府の解釈のもとで現実に協力隊が派遣され、協力隊の活動が行われていった場合に、そのことをいわば司法的に救済してもらうといいますか、それは確かに制度的には大変に困難だと私は思います。でありますから、越前屋先生も御指摘しておりましたけれども、やはり徹底的な論議を尽くして、慎重の上にも慎重を期した上でこの問題についての結論は出していっていただきたいと思うのであります。
#586
○山口(那)委員 弁護士のお三方と山口先生にお伺いいたします。
 刑法には外患援助罪という規定がありまして、この規定によりますと、我が国に武力行使をなす勢力に軍事上の援助を与えた者は死刑以下の重罰に処す、こういう規定であります。この軍事上の援助というのはかなり幅広く理解されておりまして、武器弾薬はもちろん、糧食、医薬品あるいは兵員の運搬輸送、軍事情報の提供等に至るまで広く処罰の対象となっております。こういう規定が我が国に存在する、そして平和憲法のもとに法体系ができ上がっている、こういう立場に立ちますと、この協力法が多国籍軍等の後方支援ができる、こう政府は解釈しているのですが、果たしてこれが整合性がありや否やという点について御意見を伺いたいと思います。
#587
○山根喬君 外患援助罪というのは刑法の八十二条に規定されていますが、これは「日本国ニ対シ外国ヨリ武力ノ行使アリタルトキ之ニ与シテ其軍務ニ服シ」云々と、やはり武力の行使があったときに処罰されることを予定している。後方援助が武力の行使と一体になるかどうか、あるいはそれに関連するかどうかということは非常に難しい問題だと思います。私は、通信だとか医薬だとかそういうものを提供すること、これはやはり武力の行使には直接には関係がない、そういう直接に関係のないような配慮をしてこの法案をまとめているのではないかなというふうに思います。
 ちょっと直接のお答えにならなかったかもしれませんが……。
#588
○浅野元広君 ちょっと、頭が悪いせいか、質問の趣旨がひとつわかりづらい点もあるのですけれども……。
#589
○山口(那)委員 では、もう一度補足して言いますが、この外患援助罪、予備罪等も処罰しているわけですね。つまりこれは国外犯、外国で行っても、あるいは行う人が外国人であっても処罰する、こういう規定なんですね。あらゆる人々にどこでやってもいけないと我が国が言っておきながら、我が国が多国籍軍に協力することはいいですよという今回の協力法案になっているわけですね。これが平和憲法等の趣旨から法体系の上で整合性があるのかどうか。私はないと考えているわけですが、その点の御意見をということであります。
#590
○浅野元広君 その前提の、外国による武力の行使が日本国に加えられたる場合というその要件を満たしているのかどうかという問題であろうというふうにさしあたり考えます。
 それで、この関係が問題になり得るとすれば、強いて言うならば、さっき私の意見の中でも述べましたけれども、協力隊に対する攻撃があった場合に、いわば協力法とは別次元で、本来の自衛権行使が仮に認められるという立場に立てば、協力隊に対する攻撃それ自体が外国による武力の行使だということで、今の質問とはちょっとまた別なことになってきますけれども、外患に関する罪の適用という問題は論理としては出てくるのかなという気がいたします。
#591
○越前屋民雄君 山口先生御指摘のとおり、私もやや整合性を欠く嫌いがあるのではないかなという感じを受けます。
 刑法のその条項は、我が国、日本の国益を保護すると同時に、国際関係を破壊する行為、ひいてはそれが日本の国益にはね返ってくる、こういうことを保護法益としているのでありますから、その刑法の条項は、国際平和に対する加害、こういうものも考慮しようとする犯罪でありますから、それと今回の国連協力法案でねらっているところの実質後方支援とは必ずしも整合しない嫌いはあるというふうに考えます。
#592
○山口二郎君 先生の御指摘を私なりに解釈すると、つまり、一方において日本に対する武力の行使については非常に広い概念でとって、物資も情報も間接的な協力は全部武力の行使に含めるという法規定を一方で置きながら、他方で自分が出すときは後方支援は武力の行使とは別だという使い分けをするのがずるいという御趣旨だと思うので、それは私も全く同感であります。つまり、法的に論理的な一貫性、整合性がないというふうに思います。
#593
○山口(那)委員 最後になりますが、我が国は憲法上許されることであっても政策的には行わない、こういう選択を長年してきたと思います。これは私、極めて賢明なあり方であったと思うわけですね。今回の協力法では憲法上許されることをすべてなそう、こういう態度であるかのように思われます。しかし、これについては十分な議論がなされていないわけでありますから、私はむしろこの国際貢献はできるところから、憲法上許されることはもちろんですが、国民のコンセンサスを得やすいところから早急に体制を整備していくべきだろう、このように考えております。具体的には、例えば資金援助、あるいは民生物資の援助、あるいは医療、それから難民の救済、そのために限った輸送等についてであります。
 また、国際緊急援助隊法という法律がありまして、これは自然災害に対する援助を規定している法律でありますが、これもこの援助チームの輸送の点については必ずしも十分な法体系ができておりません。今回の協力法案においても、この点は必ずしも明確ではありません。したがいまして、このようなコンセンサスは比較的得られやすいと私は思うわけでありますが、こういう点から早急に体制を整備していくべきである、軍隊に対する支援についてはしばらく十分な議論を深めるべきである、このように考えているわけですが、この点について御意見をお一方ずつちょうだいしたいと思います。
#594
○加藤座長 どなたか御意見のおまとまりの方から順次で結構でございます。
#595
○越前屋民雄君 私もただいまの御意見のとおりと思います。
 それに補足して意見を言わせていただければ、果たして本当に日本が今回の協力法案で予定されているような協力を、つまりかなりリスクも負いかねないまでの協力を外国が痛切に望んでいるのかという点は、私は大いに疑問だと考えております。十月の下旬の日経新聞にはアメリカのワインバーガー元国防長官のコメントが載っておりましたが、日本が憲法を拡大解釈してまでペルシャ湾岸に軍隊を送る必要はないというふうにまで言っておりまして、その他米議会の公聴会においても同様の意見が出ているようでありまして、外国があれだけ軍隊を展開して活発に動いていると、じゃ我々日本人はそれでいいのかというふうに思ってしまいますけれども、その点はよくよく慎重に考えるべきことであろうというように考えます。
#596
○山口二郎君 私は、先ほど申しましたように、協力のあり方を考えるときには、まずだれのための、何のための協力かという発想から論議を進めるべきだと考えます。したがって、今回の平和協力は、何よりも紛争によって被害を受けた国々の生の声をまず聞いて、そこから具体的な協力の手段を考えるべきだと思います。まさに先生の御指摘のとおり、難民の救援その他早急に日本が協力できる分野が現にあるわけですから、そういう面で実績をつくることこそが国際社会の期待するところだろうというふうに思います。
#597
○大場信吾君 先生がおっしゃるとおり、緊急措置として期待をされている業務というものは大変たくさんあるように思います。したがって、この法案で示された方向で、とりあえず暫定措置というふうな形でその内容を確立をして、例えば法案の中で平和協力本部というものがあり、さらに実施計画をつくって、総理大臣のもとで指導をしながら作業を進めていくという規定もありますから、そこで国民の合意を得ることができる方向づけをしていく、十分責任を持った体制を整えていくということで可能ではないかというふうに考えているわけです。
#598
○杉岡幸三郎君 日本の置かれている環境が変化していると私は思うのでございます。従来のような手法だけでは国際的に許されない時代になっているのではないか。例えば朝鮮戦争のときに正式に国連軍が戦争行為に入ったわけですけれども、その時代の日本とは現在の日本の置かれている環境が違うと私は思う。だから、今までのことがこうであったからこれでいいのだというふうには考えていないつもりです。
 もう一つ、現在二十数カ国がもう既に何らかの形で多国籍軍をつくっているという現況から見まして、日本がそれのらち外にあっていいのかというふうな感じはするわけです。現在の国連平和協力法案が必ずしも円滑に審議されないとするならば、先生おっしゃったように、私もさっきの発言で申し上げたと思いますけれども、いろいろな法律的な問題はあろうとは思いますけれども、例えば自衛隊の輸送機を使って難民の救援にだけでも速急に取りかかれないかというふうな印象を私は持っております。
#599
○浅野元広君 北海道新聞で今、協力法案に関するいろいろな立場の人の意見がシリーズとして載っておりますが、どなたかちょっと名前が出てこないのですけれども、けさの北海道新聞の朝刊に載っていた人は、日本は何もしないのが最大の貢献と、これはいささか極論でありましょうけれども、そういう意見が表明されておりました。私は、それぐらい、国民がこぞって一致する貢献の方法というのはそうたやすくはないのだろうと思います。そういう意味で、山口先生の今の問題提起は正しい点をついているというふうに思います。
 それで、私は、今回も平和協力法という形ではなくて、ひとつ難民救援のためにこういうことをやりたいのだというふうな問題提起であった方が国民にとっては大変わかりやすいものであったのではないか。経済制裁については、恐らくほとんどの国民は賛成であろうと思います。つまり、一般的、包括的あるいは抽象的な形で国際協力というふうに問題提起されるために、どうも憲法との関係を考えてみたり、いろいろなことを考えてしまわざるを得ないわけですね。そういう意味では、今の山口先生の御指摘のように、今大部分の国民が納得できる手段、方法を具体的に提起されるべきなのではないかなと私は考えます。
#600
○山根喬君 山口先生のおっしゃること、それも一つの大きな道だと思います。
#601
○山口(那)委員 以上です。ありがとうございました。
#602
○加藤座長 次に、和田一仁君。
#603
○和田(一)委員 大変長時間ありがとうございます。もう私、最後になりましたので、あと十五分ばかり、ぜひお許しをいただきたいと思います。民社党の和田一仁でございます。
 私どもの考え方は、前々から、日本が国際的な協力が必要だというときにはもっともっと積極的に取り組むべきだということを主張してまいりました。どうも何か事があるときにはお金だけで、小切手にサインするだけというのではもういけない、こういう感じを持っておったわけです。
 それで、さっき山口さんのお話にもございましたけれども、あちらこちらで大地震が起きる、あるいは噴火が起きて埋まってしまう、こういうような大災害のときに、国際的なSOSが出たときに何ができるかということから、六十二年でしたか、国際緊急援助隊法というものができました。このときの審議の中で、これは関係するのは十六省庁にまたがる大変な法案なんですが、これもやはり同じように外務省主管の法案でしたが、その中に防衛庁は入っていない、つまり自衛隊の協力は全然考えていない、こういうことでした。私は、おかしいではないか、こういうときに自衛隊は、たとえ戦闘部隊であり、実力集団であるかもしれないけれども、そういう性格のものでない面をもっと活用すべきだと。つまり、常時集団的な訓練が行き届いている、また非常に機動性も持っているし、災害地に行ったときに、通信も破壊されている、お互いのコミュニケーションもないというようなときに、各国から出かけていった救助隊と一緒にいろいろなことをやる場合にも通信能力があるし、またホテルも何もつぶれてしまっているようなところにボランティアのお医者さんだけ行っても宿泊するところもない、そういうときにも宿営の能力を持っている、こういういわゆる自衛隊が実力集団、武力集団として持っている性格でない面、非常に平和に使える面をもっと活用して出すべきだ、私はこういう主張をいたしました。ところが、そのときに中曽根総理は、いや、和田さんの言うのもよくわかる、しかしもしそういう形になるとやはりもっと時間をかけて論議しないと海外派兵に誤解をされてしまう心配もあるし、もうちょっと時間をかけるべきだという趣旨の御答弁がありまして、非常に慎重で、結局は入らない、こういうことになりました。
 ところが、今度の場合は、御案内のように、そういう人命救助だけではなくて、これは人命救助もあるかもしれませんけれども、とにかく当面、紛争があって、そして多くの軍隊が対峙しているという非常に緊張したところへ後方支援も含めて自衛隊に参加してもらう、こういうことなだけに、緊急援助隊のときのように慎重さがなかった。したがって、唐突にこういうことが国民の前にわっと出てきて、その出し方等について皆さん非常に問題を考えていると思うのですね。
 そこで、私どもの考え方はそういう立場なんですけれども、おっしゃっていただいた中身にできるだけ触れてちょっと御質問させていただきたいと思います。
 まず浅野弁護士さんに。自衛隊は違憲であるとはっきり断定をされておられるのでスタンスは非常にはっきりしておられるのですが、最後に、しかし経済封鎖をやっている、それから経済的な支援もやっている、これは一つの協力だ、将来は国連を通して協力ということ、それから国連は何ができるか、何をなすべきか、これが日本が提案をして取り組むべきことだ、こういうふうなお話がございました。先生御自身が国連中心主義というお考えの中で、今最後におっしゃった、国連に何ができるか、何をなすべきかは私の理解では極めて明確にイメージされていると思うのですが、それを改めて日本は提案をして、提言をしながら協力するという趣旨をもう少し御説明いただきたいと思うのです。というのは、もう一つ、将来日本が国際的な立場からいって、恐らくドイツも同じですけれども、将来は安保理事国として、あるいは常任理事国というような格好にでもなってきたときのことも踏まえながら、国連中心主義という立場と、今おっしゃった自衛隊は憲法違反であるという断定との関係でどういう協力関係をお考えになっているか、具体的にお話しいただければありがたいです。
#604
○浅野元広君 ただいまの御質問の中で、国連協力の具体的な形について明確なイメージを持っているのではないかという内容が含まれておりましたけれども、先ほどの意見の中でも述べましたとおり、逃げるわけではありませんが、政治家の方に考えていただきたいというふうに述べたところでございます。
 ただ、私なりに思うことは、難民を救援するために例えば日本は輸送手段を提供するというふうなことが、さしあたり考えられるのではないかというふうに思っております。あとそれ以上、例えば具体的な方策について、今ここで私が何か具体的な、こうすればいいというほど明確な提案を持っているかというと、それは必ずしもそうではありません。むしろ、そういうことを自民党も社会党も民社党も公明党もみんな含めた中で考えて探求していただきたいというのが私の意見でございます。
#605
○和田(一)委員 それでは、越前屋さんにちょっとお伺いしたいのですが、先ほどこの法案の第三条二号に触れられて、後方支援の中で食糧、輸送、これも兵たん行為である、したがってそれはよくないというお話がございました。そして、憲法の枠内でやれることとなれば、軍事的でない平和協力、平和的なもののみである、こういう御判断のようですが、食糧、水というようなものも戦時物資、軍需物資という認定になると、やれることは非常に限定されてくると思うのですね。
 そういう中で、おっしゃるように外交努力、これも大事ですが、生命のリスク、危険を払わないという代償としては経済的な負担をやるべきだというお話がございました。こういうことになりますと、相当の経済負担というものを覚悟しなければならない。あるいはそのための無限に近いような協力を求められたときに、国民の税負担というものは非常に大きくなってくるという感じもいたしますけれども、その辺はもう経済負担一本やりで行けというぐらいにお考えでしょうか。
#606
○越前屋民雄君 今最後の質問の経済的負担一本やりということは毛頭考えておりません。国際平和維持のための貢献策の主要な柱であったとしても、それはただ、一つの方策にしかすぎないというふうに考えております。
 経済的負担の限度の問題につきましても、それは思い切って負担をすべきだろう。今回のように、当初政府は約十億ドルの経済負担を決定し、その後アメリカ政府から要求があって四十億ドルでしたか、二十億ドルでしたか、一遍に倍くらいの負担を決定するなどという見苦しいことではなくて、我々の血を流すことなく解決するわけですから、それは相当な覚悟で僕は経済的負担を自主的にかつ積極的にすべきだろう、そのことについての国民の若干の負担増については、政府が十分説明してくれれば私たちは納得できるというように思っております。
#607
○和田(一)委員 私も、自衛隊をこういう協力の中に入れてやるということは非常に国民の合意を得られないということになるとすると、では何をやったらいいかという選択肢の中で、じゃ、もう日本は経済力だけに限ろうという議論も一つの考え方だと思うのですね。それはそれなりに相当の負担を覚悟した上でそういう選択をするならば、それはまた国際的な理解も得られるかもしれませんけれども、それはやはり相当な負担になりかねない、こう思っておるので、そうなりますと、あとは民間のボランティアという形だけで協力体制をやって十分なことができるか。結局、つくって、出して、協力をしたつもりが、実効性の上でそんなに有効適切な協力にならなかったというものだと、これまた大変日本の評価が下がってしまう、こんなふうにも考えておるわけです。
 そこで、大場さんにちょっとお伺いしたいのですけれども、これはやはり十分ではない、暫定的なものにした方がいいという御発言、御意見ございました。とにかく当面の対応としてこれしかないというお考えでそうおっしゃったのだと思うのですが、そうだとすると、将来的にこれから各地でいろいろ紛争が起こりそうな状況ではございますし、そういう中で、これは暫定的で当面の処理として、将来はどんなものがいいとお考えでしょうか。
#608
○大場信吾君 さしあたって、湾岸危機というものが発生をしていて、これに対する対応が日本側に求められているという状況にございます。どうするかということでいろいろ論議をしている過程の中で、非常に根本的な問題で時間もかかるし、あるいは手続も踏まなければならない問題が残ることになる傾向がございます。例えば、その一つは憲法問題であり、あるいは自衛隊法の改正の問題であり、いろいろな形で論議を深めなければならないテーマが派生をしているわけでございますが、これに対しては、できれば湾岸の危機が終息をした段階でこの法律の適用を切りかえて、そこから本格的な法体系の対応策を考えていく。しかも、自衛隊法の改正なり憲法論議というものもそこからスタートをするということで、当面のびほう策になるかもしれませんが、暫定という表現を使ってこの法案を適用してはどうか、こう申し上げているわけでございます。
 ただ、湾岸危機と並行して、あるいはどこかほかの地域で紛争が起こるかもしれません。しかし現実問題として、日本の対応が湾岸危機に対してはっきりと示された段階で、例えば続いて起こるクライシスというものがあった場合にもこれに準ずる体制は整え得るのではないか。恒久対策というものは別に論議を深めるという建前の中でそのような準備を進めていく、そうしたらどうかというふうに、私は全く常識的な判断で大変大ざっぱな言い方で恐縮でございますけれども、そんなふうに考えているわけでございます。
#609
○和田(一)委員 それでは、大場さんを除いて、私の最後の御質問をさせていただきます。
 今、この法案の行方にもかかわるのですけれども、我々としては長期的に、これからの国際社会の中でこういうものの対処はどうあるべきかという基本の論議を深めていかないといけない、こう思っておるのですが、法案の行方もございますけれども、今大場さんが指摘されたように当面の問題と長期的な問題に分けたときに、長期的に対応していくのにこの法案はだめであるというだけでなく、どうすればいいかということについて、ほかの先生方の簡単なコメントをいただいて終わらせていただきます。
#610
○加藤座長 どなたかから、適当な順番で結構でございます。
#611
○浅野元広君 私は、いわゆる紛争というのは今後も恐らく世界で起こり得るのでありましょうけれども、同じ性質の同じような紛争が起こっていくというものではない、まあ常識的な意味で言っているわけですが。例えば朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争、このたびのイラクのクウェート侵攻、恐らくそれぞれがいろいろな意味合いを持っているのだろう。そうすると、それに対する日本のかかわり方というのも個別の紛争ごとに判断をしていくことになるのだろうと思うわけです。そういった意味でも、私はやはり一般論として言う限りは、国連中心主義でいくといいますか、国連を通した形での関与というふうにしか立てられないのではないかと考えているのです。今の和田先生の御質問に対する答えになるかどうかわかりませんけれども、将来の地域紛争が起きた場合に対処する一般的な我が国の組織とかをどうしようかということになりますと、そういうふうに問題を考えていいのだろうかというふうに、若干そういう感想を持っております。
#612
○杉岡幸三郎君 私は、今の場合、外国へ支援に行くかどうかということが問題になっておりますけれども、日本が侵略を受けたときに具体的にどうするのかという有事立法、これもあわせて平常時から常に考えておく必要がある。先ほども意見で申し上げましたけれども、重ねて申し上げておきたいと思います。
#613
○越前屋民雄君 引き続きこの問題は国会で十分検討していただきたいのですが、いろいろ意見も申し述べたいと思いますけれども、基本的に、自衛隊を活用することはできるだけ避けていただきたいと思っております。
 和田先生おっしゃるように、自衛隊は軍備、武器のほかに危機対応能力、ノーハウを十分持っておりまして、それを利用したいという気持ちも僕自身ないわけでもないのですが、特に日本が戦前近隣諸国に与えた脅威等を考えて、できるだけ慎重にあるべきだろう。むしろ、政府が本格的に取り組みを始めまして――例えばこれは最近聞いた話なんですが、オーストリア等においては緊急に国がいろいろな援助あるいは国連協力義務に役立ち得る人材の訓練センター等を設けて、しかもそれはオーストリア自国だけではなくて、近隣諸国からのいわば研修生みたいなものを受け入れるまでの、そういう大がかりな本腰を入れた平和協力体制をとっているようなのです。僕は、制度とかそういうことじゃなくて、国自身が本当に真剣にやるのだという精神があれば外国の方にはかなりよく理解していただけるのじゃないかなと思うのです。果たして日本政府が、今回の紛争においても、ではクウェートの要人等に会って詳しく希望も聞き、経過も聞き、それだけやったのか。報道ではソ連の大統領会議のプリマコフ氏が再三にわたってフセイン大統領と会見し、いろいろ折衝している。大変な外交努力を払っているわけですが、日本の政府は一体何をやっているのかということが僕は大変大きな疑問でありまして、そういう外交努力を積み重ねつつ国民の英知を結集すれば幾らでも方途は可能なことであろうというふうに考えます。
#614
○山口二郎君 今後この種の地域紛争が起こり得る可能性はあるわけで、それに対して日本が国際秩序の維持のためにどういう協力をするかということは、いわば原則としてこれから考える必要があると思います。私は、国連の平和維持活動という形式的な要件をつくって、それに対する人的、物的、経済的支援を積極的に行うという方針を立てるべきだというふうに思っております。
 和田先生の自衛隊の有効活用のアイデアをもし生かすとすれば、自衛隊のあり方そのものをやはり本質的に変えていく。どこかに仮想敵国を想定して、それに対する抑止として装備を持つというよりは、そういう地域的な限定的な紛争に対する体制として、いわば本質を変えていくという努力をきちんとやらないと、恐らく自衛隊の海外派遣というのは議論にならないというふうに思います。
#615
○加藤座長 これにて委員よりの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 また、この会議の中で皆様を君づけしてお呼び申し上げましたけれども、これは国会内の長い習慣でございますので、どうぞお許しをいただきますようにお願いいたします。
 拝聴いたしました御意見は、法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚く御礼を申し上げたいと思います。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして深甚なる謝意を表する次第でございます。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後一時十三分散会

   派遣委員の沖縄県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成二年十一月二日(金)
二、場所
   沖縄ハーバービューホテル
三、意見を聴取した問題
   国際連合平和協力法案(内閣提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
   座長 山崎  拓君
      高村 正彦君    自見庄三郎君
      三原 朝彦君    宮下 創平君
      大木 正吾君    川崎 寛治君
      日笠 勝之君    児玉 健次君
 (2) 現地参加委員
      上原 康助君    古堅 実吉君
 (3) 現地参加議員
      仲村 正治君    玉城 栄一君
 (4) 政府側出席者
        外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君
        外務大臣官房審
        議官      河村 武和君
 (5) 意見陳述者
        沖縄県経営者協
        会副会長・専務
        理事      宮城  豊君
        沖縄大学学長  佐久川政一君
        沖縄県議会議員
        弁護士     仲松 昌彦君
        沖縄国際大学法
        学部教授    緑間  栄君
        弁  護  士 知花 孝弘君
        元  教  諭
        ひめゆり平和祈
        念資料館運営委
        員       宮城喜久子君
     ────◇─────
    午前十時一分開議
#616
○山崎座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院国際連合平和協力に関する特別委員会派遣委員団団長の山崎拓でございます。
 私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、国際連合平和協力法案の審査を行っているところでございます。当委員会といたしましては、法案の審査に当たり、国民各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。
 まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
 次に、議事の順序につきまして申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 出席委員は、自由民主党の宮下創平君、高村正彦君、自見庄三郎君、三原朝彦君、日本社会党・護憲共同の上原康助君、川崎寛治君、大木正吾君、公明党・国民会議の日笠勝之君、日本共産党の児玉健次君、古堅実吉君、以上であります。
 なお、現地参加議員として、仲村正治君、玉城栄一君が出席されております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
 沖縄県経営者協会副会長・専務理事宮城豊君、沖縄大学学長佐久川政一君、沖縄県議会議員・弁護士仲松昌彦君、沖縄国際大学法学部教授緑間栄君、弁護士知花孝弘君、元教諭・ひめゆり平和祈念資料館運営委員宮城喜久子君、以上の方々でございます。
 これより意見陳述をお願いいたしますが、陳述は着席のままで結構でございます。
 それでは、宮城豊君から意見陳述をお願いいたします。
#617
○宮城豊君 それでは、私から国連平和協力法につきまして意見を述べさせていただきます。
 まず最初に、この平和協力法案の趣旨、目的につきまして私も大変共感を覚えました。我が国が国連を中心とする平和維持活動に積極的な協力をしなければならないという必要性を痛感いたしておるのであります。と申しまするのは、この中で、国連中心主義を外交の基本としております我が国は、国連を中心とする新しい国際秩序の形成並びに平和維持活動に応分の協力をしなければならない義務を負うていることが第一でございます。
 それから、我が国が今日世界一流の経済大国に発展を遂げてまいりましたのは、世界大戦以後今日までの長い間、世界平和に負うところが非常に大きいわけであります。したがいまして、国際社会は、日本が国際平和の維持のために私ども日本人が認識している以上により大きな役割を果たすべきである、こういう認識をしていることでございます。いわゆる認識ギャップの問題でございます。
 次に、我が国が消費している石油の七一%は、今危機を迎えております中東に依存しておりまして、もしこの地域の平和が崩壊し同地域からの石油の供給がとまりますことになりますというと、日本経済は壊滅的な打撃をこうむることは必至でございます。したがいまして、我が国はこの地域での平和維持活動に積極的役割を果たさなければならないということでございます。
 以上の認識にもかかわりませず、しかしながら、同法案に示されたこの協力の方法、すなわち自衛隊の海外派遣ということは、次のような重大な問題点を含んでおりますので、遺憾ながらこの法案の立法化には同意いたしかねるのでございます。
 まず第一の問題点は、自衛隊の海外派遣という、まさにこれは国是に相当する立法でございますので、これにつきましては国民大多数の理解と支持が必要と考えられますけれども、今のところそのような国民的コンセンサスが得られていないということでございます。特に、去った戦争で国内唯一の戦場となりました本県の場合には、ほとんどの県民がこの案に反対であると申し上げても過言ではございません。私も去った沖縄戦に参加させられました。三度も重傷を負いまして、まさに九死に一生を得た生き残りの一人でございまして、戦争というものがいかに残酷なものであるかということを体験してまいりましたがゆえに、県民が戦争を憎みそして平和を願うその切実な気持ちというものを私もよく理解しているつもりでございます。
 第二の問題点は、自衛隊の海外派遣で、特に兵員、武器の輸送に従事することは憲法の規定に抵触するのではないかというおそれがあることであります。
 私が経験した限りでも、戦争になりますというと兵器、兵員の輸送、この輸送路の遮断という戦略が展開されることは当然の理であります。そうなりますというと、相手側すなわち敵は、戦闘の前線部隊であろうとあるいは後援、後方支援部隊であろうと区別してくれませんから、もしそこで自衛隊が派遣されますというと、派遣自衛隊も当然戦闘に巻き込まれるというおそれが出てまいります。
 さらに、戦場という人間心理が極限状態になるところでは、攻撃が反撃を呼び、武力行使がどんどんエスカレートしていくということは当然の理でございます。そうなりますというと、たとえ派遣されました自衛隊でありましても、小武器しか持っていないといたしましても、場合によっては相手の重火器を奪ってでも武力行使せざるを得ない、対抗せざるを得ない、こういう結果が起こり得るのでございます。
 このようにいたしまして、自衛隊の海外派遣ということは、どうも私の理解するところでは憲法の規定に抵触するのではないかというふうな不安を持っておるのでございます。
 しかしながら我が国は、冒頭で申し上げましたように、国際的な立場上、自衛隊の海外派遣は憲法に抵触するおそれありとの独善的な理由だけで平和協力活動を拒否することはできないことは当然でございます。したがって、その代案といたしまして、私は非軍事的な協力活動を選択されるよう提言いたしたいと存じます。
 すなわち、すべての国際紛争だとか戦争というものはおおよそ経済的な利害関係の不一致から起こるものでございますから、我が国は、そのような紛争の火種が生じないよう平素から関係国の経済開発だとか経済発展を支援するそういう施策、例えばODA、経済協力、技術協力、さらにまた今非常に海外で好評を呼んでおります青年海外協力隊活動だとか、そういったような施策なり活動の規模拡大と、実効の充実と申しますか、実効を上げる、こういうことによって、我が国の経済力にふさわしい、日本でなければできない、こういったような国際平和への貢献策に集約されることを切に希望するものでございます。
 以上、私の陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
#618
○山崎座長 ありがとうございました。
 次に、佐久川政一君にお願いいたします。
#619
○佐久川政一君 私の意見を申し述べます。
 日本で唯一の地上戦が展開された沖縄は、十数万県民のとうとい人命と貴重な財産をすべて焼失したのであります。さらに、戦後二十七年に及ぶアメリカの人権無視、軍事優先の植民地支配のもとに置かれ、戦争の惨禍を嫌というほど味わわされてきました。一九七二年には、政府の言う核抜き本土並み返還が約束され、いよいよ平和憲法のもとへの復帰が実現するものと喜んで迎えた祖国復帰であったわけでありますけれども、米軍基地はほとんど残されたまま、そういう復帰に県民は大変失望いたしました。
 もちろん、復帰して道路、港湾、学校等の公共施設は、本土政府の特段の配慮によってかなり改善されたということを認めるにやぶさかではありません。しかし、沖縄には全日本の米軍基地の七五%が存在し、軍事演習は復帰前と変わらずになされ、若干の基地返還はあるものの、ますます基地機能の強化が図られつつあります。例えば恩納村には都市型戦闘訓練場、那覇空港には対潜水艦作戦センターが最近建築されました。このたびの中東危機に関連しまして申し上げるならば、沖縄の米軍基地は中東への兵たん、出撃基地となっているということであります。朝鮮戦争やベトナム戦争のときもそうであったわけでありますが、沖縄基地は常に米国の戦略拠点にされてきました。戦後四十五年が経過しているというのに、山野には依然として戦争犠牲者の遺骨が散乱しております。建築現場での不発弾処理も日常茶飯事であります。沖縄の戦後はまだ終わってないと言っても過言ではありません。
 私は、このたび衆議院国際連合平和協力に関する特別委員会の山崎団長外十二名の諸先生方が、全国の中で沖縄が特殊な状況にあることに思いをいたし、あえて沖縄で公聴会を開催してくださったことに心から感謝申し上げる次第であります。
 私が生まれたところは北谷町字下勢頭というところでありますが、そこは嘉手納飛行場の中にあり、国民学校五年までそこで育ちました。 大学教育を受ける数年を除いて、沖縄で生まれ育ち、職を奉じております。沖縄戦も国民学校五、六年のとき体験しました。
 私は、現在大学で憲法を教えているわけでありますが、憲法の講義の際は学生から決まって質問を受ける事柄があります。それは、先生、憲法の条文と現実の実態が違う、憲法の条文は実効性のない単なる理念でよいのか、それは勉強する価値がある学問かどうかということであります。私は学生の率直な疑問に答えることから始めなければなりません。憲法施行四十年余りの間に、世界に類例のない平和主義憲法、なかんずく徹底的に非戦、非武装の憲法九条が政権政党の解釈によりどんどん変質させられてきた歴史を話さなければなりません。あまつさえ、日米軍事同盟的な安保条約のもと、全国に存する米軍基地の七五%が沖縄にあり、米軍は安保条約六条で言う極東のみか中東やアフリカをも含めた全世界をにらんだ基地として機能していることをつけ加えなければなりません。
 さて、前置きが大変長くなりましたが、これから本論に入らせていただきます。
 このたびの国連平和協力法案には、率直に言って反対であります。
 イラクがクウェートに軍事侵略し同国を併合した行為は国際法違反であり、国連安保理事会がいち早くイラク非難決議、併合無効決議、対イラク経済制裁決議、そして経済制裁を実施するに当たって特定の状況に見合った措置に関する決議等を次々と打ち出したことは適当な措置であったと思われます。
 ところで、日本政府の八月二十九日の段階での中東貢献策は、米軍主導の多国籍軍に対する十億ドルの資金援助を目玉に、民間の航空機、船舶による食糧、医薬品等の輸送、医療団の派遣等でありました。その後、ブッシュ大統領からの電話での要求、いわゆるプッシュホンに押されて、九月十四日には多国籍軍への十億ドル追加援助、同時に湾岸諸国に対する二十億ドルの援助を決定しました。日本の支出は合計四十億ドルになります。これは一家庭二万円に当たるそうであります。さらに、金だけでなく人もという要求の中で、政府は国際緊急援助隊法に基づく医療チーム派遣を考えました。その上、国連平和協力隊の創設を打ち出し、そのため国連平和協力法案の国会提出を決めました。
 その内容は、当初、自衛官等を監督官庁に出向させた上で同欧に配属し、国際的な平和と安全維持のため海外派遣するというもので、任務は、医療、運輸、通信等の非軍事的分野に限定し、丸腰の自衛官一千名程度を派遣するということでありました。ところが、十月十六日提案の法案には、憲法の平和主義を葬るに等しい解釈改憲、すなわち法律による憲法改正がなされようとしているのであります。法案作成過程で何があったかわかりませんが、くるくる変わっているのは何を物語るのでしょうか。アメリカの言いなりに変えてきたのでしょうか。泥縄式の法案準備と言えば言い過ぎでしょうか。
 ところで、この法案には数多くの問題点が指摘されます。
 時間の都合で一々について申し述べることはできませんが、その主なものを挙げますと、平和協力隊の中に自衛隊を部隊として参加させるということ、二十二条、協力隊員には武器を持たせるということ、二十七条が一番問題になります。
 政府の説明によれば、法案二条二項には、平和協力業務の実施は武力による威嚇または武力の行使を目的とするものではないから憲法違反ではないとか、紛争地域の危険なところへは派遣せず後方支援をするのであるから憲法の枠内だと言っておりますが、大変おかしい議論だと思います。
 さらに、政府の説明によりますと、サウジアラビアやペルシャ湾に展開している米軍中心の多国籍軍の後方支援をすることも、そのために兵員や武器弾薬を自衛隊の輸送艦で輸送することも憲法の枠内だと暴論を展開しております。しかも、その輸送艦には三インチ砲や機関銃等をも装備されているが、派遣された場合取り外すことはないという。また、携行武器は小型と言うけれども、自衛隊法八十七条は、部隊としての自衛隊はもともと武器を保有することができるとうたわれ、この規定の適用が排除されない限り大型の武器も外すことはないということになるようであります。
 さらに、同法案の三十一条によれば、物資の譲渡などとともに役務の提供について国以外の者に協力を求めることができるとなっています。国以外の者とは、地方公務員や民間人もすべて入ることになります。自治体経営の病院の医師や看護婦はもちろん、船舶労働者、民間航空労働者、土木建築労働者等も官公庁から要請を受けた企業を通じて平和協力隊員として派遣されることになるのであります。その場合、派遣命令を受けた労働者は、解雇を覚悟するかやむを得ず戦場に行かざるを得ないことになることを考えますと、この法案の持つ恐ろしさがわかります。
 さらに指摘しますと、この法案では、総理大臣が海外派兵を強行しても国会には何らコントロールする権限が与えられてないということであります。これは大変重大であり、ここで国民主権主義が大きく後退すると思います。
 まだ指摘することはありますが、思うに、この法案の眼目は自衛隊を海外に派兵することであります。米軍中心の多国籍軍への戦争協力法と言うべきかもしれません。
 東ヨーロッパで社会主義国がなくなり、ソ連も社会主義を放棄しつつアメリカと協調しようとする結果、従来の軍事バランスが崩れ、新しい世界の政治秩序の枠組みが模索されようとしているこの機に、経済大国日本も、アメリカと組んで、次は政治大国、軍事大国を目指し、世界の顔役にのし上がろうとしているのではないかと疑りたくもなります。
 思うに、中東に集結している米軍中心の多国籍軍は国連決議に基づいて派遣されたものではありません。そのような多国籍軍に対して資金援助をすることさえ憲法の禁じる集団的自衛権の行使に当たると解釈する人もいるわけでありますが、自衛隊を部隊として、しかも武器を持たせて多国籍軍の後方支援をすることは、明白に集団的自衛権に当たり、違憲であります。現代戦争においては、後方支援といっても通信や武器、弾薬、兵員の輸送は前線と一体のもので、戦闘行為と解されると思います。
 かつて、自衛隊創設の際、参議院は自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議を行ったが、それ以来自衛隊の海外派兵を否定してきました。ただでさえ自衛隊の存在は違憲であるのに、一歩進めて集団的自衛権に相当する海外派遣イコール海外派兵に踏み込むことは、明白に憲法違反であります。一歩譲って自衛隊を認めるにしても、自衛隊の任務は専守防衛であるはずであります。また、世界の情勢、時代の流れにも逆行するものであります。憲法制定以来四十数年間、政府により解釈改憲という手法によって憲法がゆがめられ、自衛隊は拡大の一途をたどり、軍事費は世界第三位というところまで肥大化してまいりました。他国に例を見ない第九条にもかかわらず、また戦力や戦争を認める明示的な憲法規定は一カ条も存在しないにもかかわらず、日本は世界有数の軍事大国なのであります。不思議なことといえば不思議であります。
 時間が限られておりますので、結論を急ぎます。
 憲法を台なしにするこの法案には反対であります。
 四、五日前の共同通信の世論調査でも、法案に賛成はわずか一三%で、五一%が反対となっております。自衛隊派遣には実に六七%が反対しております。
 また、中国、韓国を初めアジアの近隣諸国もこの法案成立を大変憂慮しております。日本は米国にのみ顔を向けるのではなく、近隣諸国との善隣外交をも重視すべきではないでしょうか。
 日本国憲法の基本原理は、非戦、非武装の非戦型安全保障であります。すべての国政はそこから出発すべきであります。日本が今後国際社会において名誉ある地位を占めたいと思うならば、自衛隊の海外派遣ではなく、憲法の命ずる非戦型安全保障に徹し、国連中心主義の平和解決をこそ追求すべきであります。日本の果たすべき役割は、金だけ出せばよいとするものではなく、難民救済とかその輸送とか医療業務、経済援助等非軍事的分野の援助は大いにやるべきであります。ただ、その場合でも軍隊の派遣は避けるべきであります。去る大戦で多くの人命を失い、今なお安保条約のもと、米軍基地の重圧に押しひしがれている沖縄県民にとって、平和憲法のみが生きるよりどころであります。また、日本国憲法はやがて世界の手本になる憲法案として光を発するときが来ると確信いたします。
 大変ありがとうございました。(拍手)
#620
○山崎座長 ありがとうございました。
 次に、仲松昌彦君にお願いいたします。
#621
○仲松昌彦君 おはようございます。御紹介いただきました仲松昌彦でございます。
 まず最初に、私はこの法案には反対であることを冒頭申し上げたいと思います。
 私は、この法案は、税制あるいは行政改革あるいは政治改革などの法案とは異なりまして、日本の進路を国の内外に示すと同時に、県民の、国民の運命をも左右しかねない大変重要な内容を含む法案である、このように理解いたしております。すなわち、自衛隊を部隊ごとあるいは集団として紛争地域に送ることは海外派兵につながるおそれが十分あるわけでありまして、自衛隊派遣まで可能とすることを内容とするこの法案は大変重要な問題を含んでいる、このように認識をいたしております。
 政府はこの法案を作成するに際しまして、憲法を変えるものでもないしあるいは憲法解釈を変えるものでもない、憲法の枠内がこの法律の前提条件であると説明をしておられます。しかしながら、これまでの我が国の専守防衛を基本とした防衛政策あるいはこれまでの政府の公式見解の経過からいたしますと、自衛隊の海外派遣はかなり大きな政策の転換であることは認めざるを得ないと思うのであります。
 また、後方支援といっても、特に輸送あるいは通信業務に携わる者は前線とほとんど一体であり、参戦と同じであると考えるのが常識ではないでしょうか。法第三条二号には「物資協力に係る物品の輸送その他の輸送、通信又は機械器具の据付け、検査若しくは修理」と規定されていますが、この規定の文言解釈からいたしますれば、外国の軍隊を輸送することやあるいは武器弾薬などの外国軍隊の物資の輸送も含まれると解される余地があります。そうなりますと、これは軍事行動に非常に近づいてくるわけでありまして、軍事行動と目される可能性が非常にあるというふうに考えます。
 また、この法案にはそのほかにも、例えば平和協力活動の対象というものが余りはっきりしていないという問題など、幾つかの疑問点、問題点がありまして、大変恐縮でございますが、短期間で急いで出してきたという唐突の感は免れません。この法案は未消化、不明瞭な部分が多過ぎるし、また、紛争に巻き込まれないという確信も持てません。共同通信の世論調査によれば、五一%の人が自衛隊の海外派遣は憲法違反である、こういうふうに考えているということを表明しております。憲法とのかかわりは極めて重大な問題であります。拙速にならずに、なぜ国民がこの法案に対して疑問を持っているかあるいは疑念を持っているか、その真意をくみ上げて、政府としても憲法解釈を明確に示して、じっくりと時間をかけて慎重な審議を重ねる中で国民的合意を形成する努力をすべきであると私は考えます。
 さらに我が国は、かつての戦争で近隣諸国に多大な迷惑をかけたのであります。その償いもまだ終わっていないうらにこういう内容の法案が成立することに神経をとがらせておるわけでありまして、既に懸念を表明しておるわけであります。近隣諸国の発展を支援すべき立場の日本として、平和協力隊の活動にいささかの疑念、不安も抱かせるような内容にすべきではないと私は考えております。
 翻って、去る大戦で沖縄県は我が国において唯一の地上戦が行われまして、多くの沖縄県民がとうとい生命を失いました。二度とあのような悲惨な過ちは犯してはならないのであります。沖縄では現在も、都市、農村、離島を問わず不発弾の処理を行っておるわけでありまして、県民感情からしても、自衛隊を中軸とする本法案には残念ながら反対を表明せざるを得ないのであります。
 この法案の目的である「国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与する」ことについては、全く異論の余地はありません。米ソの関係が対立から協調へと向かい、湾岸危機に対しても歴史上かつて例のないほどに国連を中心にいたしまして国際社会が団結している現在の状況のもとで、中東問題について我が国も何らかの貢献策を講じなければならない必要性は十分認めるわけでありますが、そうかといって、憲法の拡大解釈までして自衛隊の海外派遣を制度化することは、国民に不安を抱かせるばかりでなく、国際的な信頼を高めることにもつながらないと私は考えております。国際協力に対する国民意識の高揚、平和維持のための応分の負担、それから資金的、人的協力のあり方を含め、将来を中長期的ににらむ形でこの種の地域紛争に対応するためには我が国としてどんなことができるのか、どんなことをなすべきであるか、こういうことについて国民的な論議が幅広く成熟するまでじっくりと時間をかけて審議、論議を尽くしていただきたい、こう思います。まことに恐縮ではございますが、この法案については審議未了といたしまして、もう一度仕切り直しをしてもらいたいと私は期待をいたしております。
 以上でありますが、少しばかりつけ加えたいと思います。
 沖縄は、先ほどの陳述者の意見にもありましたが、全国の七五%に相当する広大な米軍基地が存在いたしまして、日常的に基地から派生するさまざまな被害に県民は悩まされているのが現状であります。県民は、なぜこのような小さな島にこれだけの基地が存在して、沖縄県民のみが基地の被害の犠牲を甘受しなければならないか、そういった素朴な疑問というか不平等感といいますか、差別感というものを持っているのが現状であると私は思っております。私は安保条約を容認する自民党員でありますが、沖縄県の基地問題解決へのアプローチというものは、イデオロギーやあるいは保革を超えて取り組むべき問題であると考えております。民間地域からほんの数百メートルしか離れてない極めて近接したところで現実に実弾射撃演習が行われているという現状は、まさしく沖縄県民の生活の安寧を脅かすものであって、決して許されるものではないと考えております。そして、基地からの重圧に囲まれている沖縄の現状を思うとき、やはりどうしてもこういう現状は少しでも緩和する方向に持っていかねばならない、このように考えております。基地容認の立場とはいえ、県民の基地に対する心情については十分に共感を覚えるものであり、県民の気持ちというものは大切にしなければならない、こういうふうに考えております。
 このようなことから、私は自民党県連の所属でありますが、沖縄県民から選ばれた者として、いわば沖縄からの考え方といいますか発想といいますか、こういうことを優先させるという気持ちから、この法案に対して以上のような結論を出すに至った次第であります。御理解を賜りたいと思います。
 以上で意見の開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手)
#622
○山崎座長 ありがとうございました。
 次に、緑間栄君にお願いいたします。
#623
○緑間栄君 ただいま御紹介にあずかりました沖縄国際大学法学部の緑間栄であります。本日、衆議院国連平和協力特別委員会の民主的な配慮により発言の機会を与えていただきました山崎団長以下関係者の皆様に、国民の一人として感謝申し上げ、時間の許す限り、国会での論議を基礎に、同法案について、憲法上及び国際法上、特に国連憲章の法的枠組みとの関係で発言させていただきます。
 特に、同法案については反対の立場から発言させていただきます。一つ目には日本国憲法の平和主義について、二つ目にはこれまでの海外派遣の政府見解、三つ目には国連平和協力法案に対する批判、時間が許す限り、我が国と国連軍、国連警察隊、平和維持活動軍、特に憲法との抵触の問題、最後に自衛隊の国連平和維持活動との関係、以上の点から申し上げたいと思っております。
 第二次世界大戦後、我が国は世界の各国に先駆け平和憲法を宣言し、そのもとに四十五年間発展してまいりました。国民の法意識も、憲法第九条と自衛隊法という二つの法体系の流れのもとで今日に参りました。
 ところで、日本国憲法がつくられた状況で当時の吉田茂首相は、あらゆる戦争は自衛のためという口実のもとであって、憲法の平和主義は自衛の戦争、侵略戦争をも放棄すると明快に述べておられました。当時の米ソ対立もそれほど厳しいものではなかったから、自衛権の発動について国民のコンセンサスも半ばありました。ところが、中国における北京政府の誕生、朝鮮動乱という国際情勢の変化等によって、警察予備隊、自衛隊等が創設され、国際社会の現実から余りにも理想主義の憲法と自衛隊問題が論争され、そのギャップが大きく意識され、憲法の空洞化が進む中で今日に参りました。
 今度のイラクのクウェート侵攻は、米ソの冷戦終えんのすき間を縫って生じた紛争であります。我が国は、経済的には八〇年代以降米国に次ぐナンバーツーとなり、内外から我が国の行動が注目されるようになりました。海部総理大臣とブッシュ大統領との間に何が話し合われたかわかりませんが、にわかに国連平和協力法という、憲法上、国連憲章上理解できない、解釈が矛盾に満ちた法案が提案されております。これまで政府は憲法との論議を避け、自衛隊の海外派遣の枠ということを模索してまいりました。
 これまで我が国は国連中心主義を掲げ、特に憲法第九条を堅持しつつ、いかなる国際協力が可能か論議されてまいりました、例えば一九五四年六月二日、参議院において全会一致で決議された自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法九条の平和愛好の精神に照らし、海外出動は行わない。一九五八年、安全保障理事会の方からレバノン国連監視団の要請がありましたが、やはり憲法上の立場を理由にこれをけっております。我が国はこれまで、集団安全保障措置のもとに兵力を派遣しなければならないという義務はないんだ、経済的措置でもいいんだ、兵力を提供しないからといって国連に協力しないということにはならないということが従来の政府の見解でございました。しかも我が国は、軍事基地を提供し、輸送、経済的物資を供給するということが十分なされているのであるから、国連協力の限界は十分達している、そういう発言でございました。それから六一年等においても、やはり衆議院の予算委員会で、憲法第九条と国際紛争に関する強制措置云々の問題のときに、どうしても派兵したいのだったら自衛隊法を改正すべきであるという意見も出ておりました。それも一つの提案でしたが、やはり実現できませんでした。
 次に、同法案についてでございますが、第一に、もともと同法案は国連協力の名のもとに自衛隊を海外に派遣しようということで、専守防衛に徹するという従来の自衛隊のレベルから、海外に派遣することにおいてやはり自衛隊を認知してもらおうという意味で提案されたのではないかと思うわけであります。これは、平和主義の基本姿勢を持っておる日本国憲法の変更であり、新たに周辺諸国に対する脅威となる法案だと思います。これが一たん成立しますと、ひとり歩きします。解釈もさまざまになります。
 そこで、まずその目的でございますが、第一条における「平和維持活動その他」、これは国連決議によるということになりますが、その国連決議というのは何を意味するのか、私にはわかりません。私は、国際法の立場から、国連決議とは安全保障理事会、特に常任理事国、五大国の全会一致を含む安全保障理事会の決議によって行われるのが国連決議でありますけれども、恐らく同法案に対しては安全保障理事会の全会一致の決議は得られないと思います。例えば一九六六年、フランスのドゴール大統領はアメリカ主導型の北大西洋条約機構はなじまないとして、既に北大西洋条約機構から脱退して独自の安全保障をとって今日に来ております。
 それから法案第四条、十七条、総理大臣がすべての指揮監督を行うというふうになっておりますが、従来自衛隊法の中で、特に七十六条では、緊急出動して、事後に国会の承認を得る、鉄砲を撃ち合ってから国会の承認を得るという歯どめを一応形式上はとっておりますが、今回のものはすべてこういう歯どめは、コントロールはありません。すべて総理大臣の指揮監督、特にこれを私は緊急権と言っておりますけれども、そういう緊急権の論議がまだなされないまま、この法案の中には堂々と緊急権が設定されているという点でございます。
 それから、自衛隊の海外派遣を行うという同法案の十八条、二十二条云々、これはもう自衛隊のみならずすべての人々、公務員等も武器その他を、小型兵器とありますけれども、二十七条で戦力行使をやるということが掲げられていますが、これはもうまさに外国から見ますと軍隊の出動以外の何物でもございません。
 それから、法案三十条の物資協力等についても具体的な明示はございません。事戦闘になりますと、すべての戦時に関する物資等の輸送も可能という感がいたします。
 それから、二十条等において、平和協力法に対する見解でありますが、これはやはり先ほど申し上げた、公務員その他も実質的に徴兵できるという感を受けないでもないわけであります。
 イラクと、アメリカ軍を中心とするいわゆる多国籍軍との関係においても、前線も後方支援もあり得ない、そういうように考えております。アメリカの南北戦争ならいざ知らず、第一次世界大戦、特に第二次世界大戦の沖縄の地においても前線も後線もなかったのでございます。多くの我々沖縄住民が、後線であるのか前線であるのかわからない形で犠牲になりました。ましてや朝鮮動乱、ベトナムでもう経験済みであります。そういう意味で、同法案等における政府の統一見解、解釈は、私は文章として一生懸命読んでおるのですが、わかりません。どういう言葉で並んでいるのか一生懸命――もう申し上げることをやめることにいたしますが、協力、参加という意味で、私の方からすると、ちょっと言葉の遊びをしておられるのかなという感じがして、もう読むことをやめにしました。
 ところで、我が国と国連軍との、または国連警察軍との関係でありますが、これはまだ今のところ憲法第九条等がありまして、確かに憲法第九条の平和主義というのは、アメリカ、ソビエト、すべての世界が戦争をなくすという方向への理念であります。しかし、残念ながら現代社会においては武装国家が存在しております。その意味で、日本の安全保障というのは当然国際連合における集団安全保障体制に頼らざるを得ないのであります。しかし、この集団安全保障体制ということ、集団的自衛権ということ、それから平和維持活動軍ということ、国連との関係においては一切関係のない法案でございます。
 国連の集団安全保障、集団的自衛権、平和維持活動軍ということについては今後十分議論されるものと思いますが、国連の国連軍、国連警察軍というのは、すべてコントロールは国連事務総長の管理のもとに調整、紛争処理、外交の遂行者の立場から、国際連合憲章の第六章「紛争の平和的解決」、国連軍と警察軍は第七章でありますが、私が申し上げたい平和維持活動軍というのは、第六章のあくまでも「紛争の平和的解決」であります。いずれも国連憲章の第六章における紛争解決ということ、我が国の平和憲法の理念からしますと、当然その立場で外交をされるのがやはり筋かと思うわけであります。
 今後、第七章の国連軍、国連警察軍にどのように参加するか、特に自衛隊の国連平和維持活動等への参加については、結論から申し上げますと、これはすべて自衛隊の身分を断ち切るということであります。個人レベルの参加は憲法上許される範囲ではなかろうか。あくまでも国連の国際特権としての特別の地位に依存するわけでありますので、現在の国際社会の状態においては、憲法の平和主義、そういうこととの関係においてはやはり今後国論において議論されるものだと思っております。しかし、同法案は我が国で編成された一つの軍隊方式でございますので、国連憲章における組織と異なった組織であろうというふうに私は理解しております。
 他方、国連軍への参加は、今後特に強制措置の特別協定、これは恐らく当分結ばれることはないと思います。それと、日本の平和憲法の感情から、しばらくは難しいと思われます。
 しかも、世界の相互依存が強くなる中で、これからも経済的摩擦、国際紛争、地域的軍事的トラブル、これは御承知のように起こる可能性があります。我が国が紛争の平和的解決を行う場合、特に気をつけなければいけないのは、周辺諸国に恐怖感を与えないということであります。
 憲法は国家を支える生き物であります。同法案によって瀕死の状態にあります。現代民主主義とは契約主義でございます。憲法は守らなければなりません。これが法の支配であり、法治国家であると思います。今後、我が国の憲法と国連中心主義との間において国民の中で大いなる議論をしていただきたい。特に、自衛隊問題に関する議論を尽くすべきだと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
#624
○山崎座長 ありがとうございました。
 次に、知花孝弘君にお願いいたします。
#625
○知花孝弘君 御紹介いただきました知花でございます。
 職業柄、発言するときには起立をして、こういうふうなことになっておりますので、お許しいただきたいと思います。
 日本国の対外的な基本姿勢は、今までの意見陳述においても述べられたとおり、国際協和と平和の追求であります。第二次世界大戦の惨禍は、人類は平和のうちに生存する権利を有し、平和な国際秩序確立が生存の基底であることを我々に教えてくれました。その帰結が国際連合の結成でありました。日本国憲法は、この国際連合への信頼のもとに制定されております。平和憲法及び戦後のすべての平和論は、国際連合の理念に支えられたものであると言っても過言ではないと思います。
 私は、日本国憲法前文、第九条、第九十八条二項の規定及び国際連合の理念から、本国際連合平和協力法案に対する意見を述べさせていただきたいと思います。
 この法案が出てきた背景は、申すまでもございませんが、今回の湾岸危機はイラクがクウェートという主権国家を侵略して併合したことに端を発しております。歴史が五十年もとに戻った感がいたします。この行為は、国際秩序の明らかなルール違反であり、国連憲章への公然たる挑戦であります。このことに対して異論を述べる方は私はいないだろうと確信しております。第二次世界大戦前夜の独ソ両国によるポーランド分割とソ連によるバルト三国の併合が思い出される事件でありました。しかし、状況はその第二次世界大戦前夜とは全く異なっております。
 これは申すまでもありませんが、イラクのクウェート併合に対し、国連が断固とした決意を示して、加盟国が一致団結してイラクの侵略に対し対処したことであります。国際連合及び加盟国は、ミュンヘン協定の歴史的教訓を湾岸危機で実行したと言ってもよろしいのではないでしょうか。時のイギリス首相チェンバレンのとった宥和政策が第二次世界大戦の発端となった、こういうふうなことをやはり考えさせられるわけであります。その反省の上に、今回の湾岸危機に対し国際連合及び加盟国は断固とした行動をとったものだと確信しております。国際平和の維持に対する各国の態度という点も考慮いたしまして、本法案を見てみたいと思います。
 やはり考えていただきたいのは、日本国がこれまでとってきた国際平和に対する基本的な考え方です。国連中心主義、こういうふうなことが言われてきました。また、それなりのことがなされてきました。ですが、私の目から見ますと、日本のとってきた国際平和に対する考え方というのは一国平和主義の考え方、こういうふうな考え方じゃなかったか、こういうふうに私は感じております。この一国平和主義的な考え方というのは、今の国際社会においてはやはり再検討されなければいけない時点に来ているんじゃないか、こういうふうに思うものです。
 これまで述べました国際協和、平和の追求という点から、本国際連合平和協力法案を検討いたしますと、基本的には私は本法案に賛成であります。同法案の第二十一、二十二条についての私の意見は後に述べることにいたします。
 本法案は、国連決議がなければ平和協力隊は海外に派遣されない、憲法の範囲内での国連平和協力である、武力の行使は一切これを行わないことが大前提条件になっております。日本国は、かつて国際連盟からの脱退により国際社会で孤立いたしました。現在の日本の国際協和は、国際社会でどのように受けとめられているのでしょうか。私は、国際社会の平和があってこそ日本の平和もあると考える立場をとるものであります。
 国際の平和及び安全が脅かされた場合、日本国憲法の枠内で、国連決議に基づき平和維持のためできる限りの貢献をする責任があると私は思います。憲法前文は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」「全世界の国民が、ひとしく」と、こういうふうなことを高らかにうたっているのであります。憲法は、国連の活動としての平和の回復、維持のために日本国が協力することを制約するどころか、むしろ強くそれを求めているものと私は理解しております。
 私は、沖縄に生をうけ、沖縄戦を体験した者として、沖縄戦の筆舌に尽くしがたい実態がどうであったかを片時も忘れることはできないのです。戦場は人間を野獣以下にしてしまいます。沖縄戦の体験を踏まえて、どうして沖縄戦が起こらなければならなかったのかの反省もしなければいけない時期に差しかかっているんじゃないか、こういうふうに考えております。沖縄の、日本の平和も国際社会の平和が前提であるという考え方が、私の本法案に対する考え方の出発点でございます。人類の平和は与えられるものではなく自分たちの手で築き上げるものだ、こういうふうに私は思うものです。
 しかし、本法案に全面的に賛成だということまでは私は申し上げることはできないのです。と申しますのは、本法案の最大の争点となっております二十一条、二十二条については、現時点では国民のコンセンサスが得られていないと判断しております。恐らくこの問題を解決しない限り、この法案が成立すると否とにかかわらず、問題は複雑化するだけでございます。国民多数の賛意が得られないのであれば、私は二十一条、二十二条は修正の必要があると考えております。だれが国際平和貢献のために海外に派遣されるかも大事なことでありますが、国際平和貢献のために何をするかが一番大事なことだと思います。 当面の問題といたしまして、直ちに平和維持活動に貢献できるのは二十一条、二十二条に規定されている人々かもしれません。しかし、その人々が自衛官としての身分を持っていなければいけないということは言えないと思うのです。考え方といたしましては、現在の国際社会における日本の立場、国連憲章の理念、平和憲法の目指すところ、それを総合いたしますと、国際平和・維持活動部隊を創設するというのも一案だと私は考えております。その構成員に自衛隊員であった方々も参加してもらう、こういうふうな考え方はできないものなんでしょうか。
 一方、私は、これまでの日本政府の国際平和協力に対しては、日本国民のというふうに申し上げた方がよろしいかもしれませんが、いささか不満でございます。日本国民は、反戦・平和を追求すると言いながら、自分たちが犠牲を払って国際社会の平和を維持しようという姿勢に欠けていたのではないでしょうか。今や、日本だけが戦争に巻き込まれなければいい、国際社会のどこでどういう紛争が起ころうと知ったことではないという態度が果たして許されるものかどうか。国民各位がやはり日本のこれからの進路ということを考えて、再考する時期に来ているのじゃないか、こういうふうに考えます。
 そして、一言つけ加えておきますと、本法案は内政的な、いわば国内的な法案ではなく、対外的関係を持つ法案でございます。ですから、国民のコンセンサスを得る必要は、ほかの法案とは質的にけた違いの必要がございます。それだけじゃなくして、憲法の国際協和、平和の追求を理念とする法律だと私は判断しておりますから、国民のコンセンサスがなければ本法案は意味がないのです。私は、国民のコンセンサスを得るということは、平和的生存権を明記している日本国憲法の帰結である、こういうふうに考えております。
 結論といたしましては、本法案の二十一条、二十二条を再検討いたしまして、どうか日本が国連中心主義の外交、それから平和憲法の実質的な確保、そして今までの四十五年の平和憲法のもとでの繁栄をさらに一世紀、二世紀と続けていけるような国際社会での役割をお願いいたしまして、私の意見陳述にいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
#626
○山崎座長 ありがとうございました。
 次に、宮城喜久子君にお願いいたします。
#627
○宮城喜久子君 まず初めに、国連協力法案に多くの県民が強い関心を持つこの沖縄県で重要な公聴会を開催していただいたことに深く感謝申し上げます。
 沖縄県民がこの法案に対して強い関心を持つその背景には、あの過酷な戦争体験があるからです。私たち県民は、九十日に及ぶ四十五年前の沖縄戦に非戦闘員として動員され、協力させられました。男子は物資の運搬、負傷兵の担送、通信、情報の活動。女子は看護要員、その中で食糧運搬、水の運搬、伝令、そのような任務を負わされました。弾雨の飛び交う中、さまざまな活動の中でたくさんの命が失われていきました。
 当時十六歳だった私は、ひめゆり学徒隊の一員として戦場へ動員されました。十三歳から十九歳までの十代の女の子が戦場に動員され、戦争に協力させられたのです。辛うじて学友の死体の中から命を得ましたが、二百十九名という恩師、学友を失いました。十五年戦争の中で生まれ育った私たちは、常に国のために尽くすことを教育され、何のためらいもなく戦場へ行きました。戦争の悲惨さも知らず、砲弾の飛ばない後方で赤十字の旗のもとで保護されてさまざまな任務をすると思っておりました。しかし、戦場に行って初めていかにその認識がどんなに甘かったかということを思い知らされました。動員された後方の陸軍病院には昼夜の別なくたくさんの砲弾が撃ち込まれました。国際法で禁止されていたはずのガス弾も使用され、五月九日、六月十九日に多くの学友を失いました。
 戦場から運ばれてくる負傷兵の姿に、その無残な、残酷な姿に恐れ、震えおののきました。手がない、足がない、顔面が吹っ飛んでだれがだれやら判別がつかない。飛び出た内臓を押さえたあの若い二十代の兵士たちが、学生さん助けてください、その泣き叫ぶ姿には言葉もありませんでした。私たちは、そのようなたくさんの活動を砲弾の飛ぶ中一生懸命頑張りました。それもあの教育の力によったものだと思います。負傷兵の世話、傷口に群がるウジを取るのが私たちの仕事でした。そして排せつ物の片づけ、両手のない兵士にはお握りをちぎってあげたり、顔面が吹っ飛んで食事ができない者にはガーゼを突っ込んで、おろおろ泣きながら水を差してやりました。そのほかに弾雨の中での食糧運搬、重い一斗だるを担いでの水くみ、余りの怖さに泣きながらやりました。そのほかに伝令という仕事もありました。連絡係です。砲弾の中を各ごうを回りながら連絡をする仕事です。そして後では、毎日のように夕方は死体埋葬の仕事でした。上級生は手術室で麻酔もかけずに手足をのこぎりで切る手伝いもさせられ、そして切断した手足を何度も何度も砲弾の中を、弾雨の中を運びました。全く想像もしなかった活動を命がけでやる日々が続きました。しかも、一日の食事がピンポン球一個の大きさのお握りでした。ひもじさをこらえるために水を飲んで命を支えたわけです。
 そのような中、たくさんの学友、恩師の死を見ました。とてもつらい、悲しい思いをしました。とうとう米軍が攻めてきて、南部へ撤退するように命令を受けました。そのとき、あの陸軍病院のごう、分室のごうには何千名とも言われる動けぬ患者が寝かされていました。兵隊さん、この人たちどうするんですか。十五、六歳の私たちにとっては、とても残していくということは信じられませんでした。後で知ったのですけれども、学徒隊が撤退した直後に、ミルクに青酸カリをまぜていとも簡単にたくさんの命が処置されたようです。一般住民だった私たちには、そのことは秘密でした。戦後、そのことを聞いて、またあの戦争のむごさをまざまざと思い知らされました。
 南部へ撤退するその道は泥濘と化し、その道には死体が二倍、三倍に膨れて浮いていました。傷ついた学友に手をかし、肩をかし、二カ月間のごう生活の中で栄養失調のため目が見えなくなった友達もいました。もものつけ根まで泥につかり、その友達を支えながらの撤退でした。私たちだけではなかったのです。その道には傷ついた人がいざったりはったりして、たくさんの人たちが逃げ惑っていました。そして、当てもなくただ南へ南へと逃げていく住民の姿がその道にはあふれていました。南部の戦場では、ほとんど飲まず食わずの毎日が続きました。それでも私たちには、本部ごうへの伝令、水くみ当番、食糧探しなどの任務がまだ負わされていました。死体の浮いた井戸から水をくんで飲んで、命を支えていました。
 そのような中、米軍に包囲された極限状態の中で、私たち学徒隊に解散命令が下されました。その後は、十万人余の人の逃げ惑う中、二日も三日も空から、海から、戦車から飛んでくる砲弾に追われて逃げ惑いました。傷ついた学友を包帯もせずにそのまま引きずるようにして、はって逃げました。つらかったことは、即死した友達を葬ることもせず道端に残しました。ごうの中にもそのままたくさんの学友を残しました。
 そのような中、ほとんどの人が命を失いました。学徒隊の者もガス弾や砲弾で命を奪われました。二百余名の者が苦しんで死んでいったのです。およそ九十日間の戦闘の末、二十万人余の命が奪われました。
 平和を失った人間がいかに惨めであるかということは、あの沖縄戦が証明してくれたはずです。戦争が終わり、私たち県民は、平和の大切さ、命のとうとさをかみしめるように生きてまいりました。三十五年間教師をしました私は、常に心の中にあったものは、この子たちに二度とあのような体験をさせてはいけない、そういう思いでずっと教師生活を送ってまいりました。二十七年目にしてやっと本土に復帰し、平和憲法に守られて生活ができることをどんなに喜んだことでしょうか。
 しかし、今、私たちの前に突然降ってわいたような国連協力法案が提案されました。その内容が、何とあの四十五年前の学徒動員法を思い起こさせるものであることにとても大きなショックを受けました。お母さん、足がないと叫んで逝ったあの友達、伝令に出されて重傷を負いながら、先生早く青酸カリ飲ませて、楽にさせてと苦しみながら死んでいった学友たち、米軍に包囲される中、もう一度お母さんに会いたいと泣いていた多くの亡き学友たち、砲弾に追われ、当てもなく逃げ惑っていた子供を連れたあのたくさんのお母さんたち、おじいちゃん、おばあちやん、そしてあの戦場で重い通信機を担いではって私たちと水くみ当番の中ですれ違っていったあの若い通信隊の学徒隊の人たち、手足のないむごい姿で、お母さん、お母さんと泣き叫んで死んでいったあの二十代の若い兵士たち、かつての戦場のことが一挙に私の頭の中をよぎりました。あの多くの人が流した血は、あの血は一体何だったのだろうか、そういう悲しさと悔しさで胸が詰まりました。この思いは、私だけでなく多くの県民の思いだと思います。
 沖縄戦の実相を伝え、そして平和を伝え、命のとうとさ、平和の大切さを訴えるために、平和の創造の場として私たちはひめゆり平和祈念資料館を建設しました。もちろん、私たち同窓会だけの力ではありません。全国たくさんの方の御芳志によってあの資料館もできました。今、一年四カ月たった現在、八十万人余の方が訪れてくださいました。その中で、本土から来館してくださった方たちが、息をのんで、この日本の中でこのような無残な戦争があったとは全く知らなかった、とてもショックだと大粒の涙を流し、そして平和の大切さ、命のとうとさを改めて見詰め直す姿があります。
 きのうも私は資料館に一日おりましたが、本土からたくさんの修学旅行の高校生がやってまいりました。やはり残したその感想の中に、平和、命とただ簡単に考えていた、先生から話を聞いたときも何のことと無関心でいた私は、この資料館に来ていかに人間にとって平和が大事かということを初めて知りました、これからは上辺だけの考え方ではなく、本当に命を大切にする、そういう生き方をしたい、そういう言葉を残してくれました。それから自衛官の中にも、命が大事だ、私は海外派兵には絶対応じません、そういう感想を残していく方もいます。そういう意味で、私たちは、平和の創造の場として次第に根づきつつあることをとてもうれしく思います。その原点には、十代で無念の思いで、お母さんに会いたいというその思いを抱いて死んでいったあの学友たちの死を無にしない、そのことがあります。
 あの資料館には二百十九名の遺影が安置されています。しかし、その中の五名はまだ写真が見つかりません。一家全滅の生徒たちです。その中で、お母さんたちがその学友たちの遺影をさすりながらずっと立って泣いていらっしゃる姿があります。その姿に、まさにあの戦争の深い傷跡を見る思いがしてなりません。
 戦争という事態の中で特別に保護されるということは絶対にあり得ないということを、私たちはあの沖縄戦で知りました。 戦争につながりのある行動に対しては、すべて攻撃の目標にされるのは当然だと思います。私が今声を大にして申し上げたいことは、国民、特に若者の命を奪う要因になるような法案は決してつくっていただきたくない、その思いで、そういうことを申し上げたいと思います。
 武力を盾にしての行動では決して平和は生まれないということは、今までの戦争が実証したはずです。粘り強い対話によって生み出す平和こそ真の平和だと思います。母として、祖母として、子を生み出し、孫をつくった私は、心の底から対話による平和の創造を希望します。そのような努力を私たち国民のためにしてくださることが、政治の場にある方たちの大きな責任だと思います。そのことを心からお願いしまして、私の意見を終わらせていただきます。
 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
#628
○山崎座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。
    ─────────────
#629
○山崎座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下創平君。
#630
○宮下委員 私は自由民主党の宮下創平でございます。
 きょうは、沖縄におきまして公聴会を開催しましたところ、公述人の皆さんには、大変お忙しい中を御出席を賜りまして、御協力をいただいたことに対しまして、まずもって冒頭厚く感謝を申し上げます。
 さて、時間が限られておりますので、幾つかのポイントについてお伺いしたいと思いますが、まず最初に私は、公述人の六人の方々の意見を聞きまして感じたことを率直に申し上げておきます。
 私どもが沖縄でこの公聴会を開催したということでございますが、特に皆さん方は共通して、第二次世界大戦における沖縄のあの悲惨な経験を、国民感情を率直に訴えておられました。特に、宮城さんからは経験を交えて、自分の経験から、本当に戦争はあってはならないという悲壮とも言える体験をお聞きいたしまして、私ども大変感激いたしました。私どもも、戦争は絶対あってはならない、これから国際平和、そして日本の平和をどうしても維持することが我々政治家の責任であるということを痛感いたしましたので、その点をまず申し上げておきたいと思います。
 しかしながら、今回公述人の皆さん方の御意見を求めましたのは、私どもは、決して戦争か平和かという論点だけの御意見をお伺いするわけではございません。最近、特に昨年来、世界が大変な変化を来しております。すなわち東西の冷戦構造の解消、米ソの冷戦、対立から協調と対話への動き、そしてまた東西ドイツの統一等々、世界は今までの戦後世界が一変するような急激な構造変化を遂げております。そして私どもが、世界平和が実現できるのではないか、もう完全にこれから安心できるのではないかと思っていたやさきのイラクのクウェート侵攻、侵略でございます。この点についての皆さん方の認識はほぼ共通していると私は存じますが、まず最初にお伺いしたいのは、こうした世界情勢の変化と、それから、経済大国となってこれだけ世界から注目される日本が国際社会への貢献をいかに考えていくかということが、今回の法案の大変な前提でございます。私どもはそこの点について、時間の関係もございますから、六人の方から簡潔にさらに所見をお伺いしたい。
 そして二点目は、イラクの態度についても、これは皆さん非難をされておられると思います。しかし、このイラクの侵略行為につきましては、ちょっと公述人の中に国連決議との関係についての疑念を申される方もおられましたけれども、安保理事会で米ソ、それから中国、英、仏という五大強国が安全保障の問題について完全に一致して行動するというのは戦後初めてでございます。そして、世界各国がこのイラクの侵略的行為を一斉に非難し、その決議を支持しております。そして、現にアメリカを初め、英、仏あるいはアジアにおける国々までも、この武力行使や侵略非難、そういうことのために二十六カ国、これはソビエトも含まれておりますが、こういう国々が参加をして、イラクに速やかなる原状回復を求めておるわけでございます。私どもとしてもこの平和的解決をぜひ望むわけでございますが、イラクに対するこの徹底した認識が我々の法案の基礎にあるということであります。この点について、なお念のために御意見を簡潔にお願いします。
 それから、我々国会における議論におきましてもそうでございますが、アメリカの中東戦略にのみ日本が加担するという意見が野党側の先生方に多いのでございますけれども、アメリカがあの侵略行為に対して迅速な行動をとり、そしてイラクのサウジへの侵攻等をもし抑止しなかったならば、石油の七割を依存している我が国として、また世界も、あの石油資源を持った国、地域として大混乱に陥ったであろうと思われるのであります。その点について、アメリカの貢献策についてのお考え方をお示しいただきたい。
 世界情勢の認識、それからイラクの侵略行為、それからアメリカの貢献策、まずこの三点について、ちょっと簡潔に六人の方々からそれぞれ御意見をちょうだいしたいと思います。
#631
○山崎座長 それでは、公述人の皆様方に先ほどの発言の順序で御意見を御開陳願いたいと思います。
#632
○宮城豊君 まず、世界平和の秩序がイラクのクウェート侵攻によって破壊されたということにつきましては、先生と全く同じ危機感を持って認識しておるわけでございます。これにつきましては、やはりアメリカがああいう早急な行動を起こしたがゆえに、これ以上のイラクの侵攻を食いとめる、歯どめをかける大きな抑止力として働いたということも私は認識しておるわけでございます。ただ、アメリカ軍の行動はぜひあくまでも抑止力として働いてほしい、それがいささかも戦争をしかけるようなことがあってはならない、そうである限りは、今の中東危機の問題というのは必ずや平和裏に解決できるのではないか、そういう見通しといいますか、考え方を私は持っておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、この今回の問題をきっかけにいたしまして、これから長期的な展望に立ってどういうふうな角度から我々は平和維持のための協力をすべきかということにつきまして、ぜひ国民的なコンセンサスを得ていただきたいというふうに存じます。
 以上でございます。
#633
○佐久川政一君 イラクがクウェートを侵略したということにつきましては、私は先ほども申し上げましたように非難さるべきであり、そして常任理事国五カ国を含め、棄権が一つ二つあったかと思いますが、ほとんど一致して決議をしたということは、私はこれは妥当として先ほども申し上げた次第であります。
 次に、アメリカが迅速な行動をとったということにつきましては、国連の従来のあり方というのが大きく変化してきているということは、マルタ以降、いわゆる冷戦構造の終結、終えん、そして協調路線というものがそこで出てきまして、十近くの決議がスムーズになされたということでありますが、私は、アメリカの中東の戦略と申しますか、それが大きい比重を持つと申しますか、そういうことで大軍をそこに派遣したのではないか。この時期ですから、国連がもう少し主導権を持ってやれたのではなかろうか。それを、国連の行動をむしろアメリカの大軍派遣によってブレーキをかけたと申しますか、そういうことになっているのではないかな、こういうふうに思っております。そういう意味で、アメリカはあくまでも中東に足場を失いたくない、石油権益を失うまいということが真っ先にあったんではないか、こういうふうに私は思います。
 以上です。
#634
○仲松昌彦君 現在の世界情勢の認識については、宮下先生御指摘のとおり、そのとおりであります。
 それから第二点のイラクのことでありますが、もう陳述人の先生方からたびたび御指摘があったように、許されざる蛮行であると思っております。これは徹底してみんな一緒になってつぶすべきである、こういうふうに考えております。
 それから第三点、アメリカの派兵でありますが、迅速に対応した、こういうことではアメリカの国民も大多数の方が歓迎したと私は思います。また、そうすることが結局はある程度の抑止力になって、直ちに戦火を交えることを避け得たという面もあろうと思います。またアメリカは、経済力は落ちたとはいえ、やはり内心まだまだ世界の警察としての役割を果たしたいという焦りというのか、気持ちもあっただろうし、何よりも特徴的なのは、ソ連も一緒になって行動をともにしたというのが今回の特徴であろうと思います。そういう意味で、私は今回の湾岸紛争についてアメリカの貢献については一定の評価はするわけでありますが、ただ最近、例えばあのベトナム戦争に参戦をした経験者から、一部だと思うのですが、武力行使についての批判的な見解も出ているということも米国の中には言われておりますし、そういう意味で私は、これから米国が湾岸地域でどのような行動をとるかということについてはその辺についての配慮も当然必要になってくるだろうし、そういう面からもなるべく強力な話し合いを進めて、平和裏に、平和的な解決の方向に向かってやっていくべきである、こういうふうに考えております。
#635
○緑間栄君 一点目のイラク紛争についてでございますが、皆様方の意見と一致でありまして、当然これはフセイン大統領の独裁的行為、先ほど申し上げましたように冷戦構造の終えんに伴うすき間を縫ってそういうことをやられた、新しい一つの独裁者のタイプでありまして、これは許されるべき行為ではありませんし、既に国際連合は、第一次世界大戦後の国際連盟時代から不戦条約及び侵略に関する定義等を検討してまいりましたが、国連はまさに一九七四年に侵略とは何かという定義を可決いたしまして今日に来まして、それに基づいて、当然侵略に対して国際連合は集団安全保障をもとに対応している。その意味で初めて、ゴルバチョフのペレストロイカ以降の大きな流れの変革によって今日に来ておりますが、特にソビエトのそういう変革というのは、従来国際法についてはなかなか認知しませんでしたが、最近ゴルバチョフも国際法及び法の支配ということに市民権を持たせてきまして、それがもとで先ほどのイラク紛争等に対しても全会一致という四十数年ぶりの快挙をなしたものと思うわけであります。それが一つの大きな決議でありまして、その決議は私は大変すばらしいものであって、その方向でどんどんいくべきだし、またその方向に緩やかではあるけれども国際連合は進んでいくであろう、そういうふうに考えております。ますます国連及び国際社会における壁というのは低くなってまいります。ただ、それでもなお、先ほど申し上げましたように、経済的摩擦、地域的ないろいろのことが出てまいりますし、軍事衝突等も起こる。そういう意味で、やはり国連における集団安全保障ということを考えるべきだと私は思うわけであります。
 それからもう一つ、集団自衛権の問題でありますけれども、これは日米安保条約とか北大西洋条約とかいう、そういうもろもろの仮想敵国を見越した条約でありましたので、徐々に日本もそういう仮想敵国並みの安全保障というのを解消して、地域的な、太平洋なら、別に戦前の太平洋じゃありませんけれども、その安全保障ということを模索して、一つの地域における国連警察隊的な役割という意味で検討されていいのではないか。そこでイラク等に対しても、これはもう降ってわいた独裁者の侵略行為でありますので、だれも想像しませんでしたし、ただ戦略的には、いつの間にかそういう独裁者が力をつけていたということは、今後もう一度再検討すべきだと思うわけであります。
 それからアメリカの貢献策、これはまさに現在そういう意味では、先ほど委員からお話がありましたように抑止力になっております。だからといって、我々は日本国憲法という長年の平和憲法を保持して、しかも国会でも海外派兵ということをしないままに今日に来ておりますので、今こそ、平和憲法ということがあるのであるから、もう少し変わった方法で国連への協力をすべきではなかろうか。例えば四十億ドルという支出をしておりますが、私はお金のことは知りませんが、もしお金があればもっと出していただいて、どうも済まぬが我々は今のところ平和憲法があって、国連軍、国連警察隊等についての模索がある中において、いましばらく時間を下さいということをアピールすれば、理解されるのではないか。例えばオーストリアは、一九五五年に永世中立になりまして、いかなる侵略行為に対してでも当事者にはならないという憲法を保持しております。これを一つの国是としておりまして、別に安全保障理事会がオーストリアに対してあなたひとつ兵力を出せとは言いませんが、恐らく向こうはノーと言うはずです。そういう意味で、確かに日本はナンバーツーではありまして、大変な力を持っておりますから、恐らく日本に要請があろうかと思います。だけれども、要請は要請として、それをどういう形で憲法と調和させるかということが重要かと思います。確かにアメリカの現在の抑止力については、これは大変貢献していると思っております。
 以上です。
#636
○知花孝弘君 世界情勢についての件は、私は今回の国連の行動というのは国連理念の再生と実現、こういうふうにとらえております。
 それからイラクの侵略につきましては、国際秩序の破壊、こういうふうにとらえております。
 アメリカの貢献ということにつきましては、貢献というふうな言葉で表現するよりも、戦火の拡大を阻止した、こういうふうな表現が妥当だと私
は考えております。
 そして、ここで国民が徹底的に理解しておかなければいけないのは、先ほど国連の主導権というふうなことが意見陳述人の中から出ておりましたが、私は、これ以上中東において国連が主導権を握るということについては非常に危険に思っております。もし国連が国連軍などというふうなにしきの御旗を多国籍軍に与えてしまうと、これは戦火が必ず始まります。ですから私は、現在の状態で粘り強く話し合いをする、それが戦火を避ける一つの大きな役目だと思っております。ですから私は、現在の国連の態度それからアメリカの中東に対する態度、これは平和憲法それから国連の理念、こういうふうな点からいたしましてこれ以上のことはできない、こういうふうに考えております。いずれにしましても、戦火は避けなければいけない、利権がどうのこうの、こういうふうな問題があるかもしれませんが、戦火は避けなければいけない、これが私は現在国民が議論をしなければいけない基本的な問題だ、こういうふうに考えております。
#637
○宮城喜久子君 今、富める日本の国はたくさんの役割を背負っていると思います。その中で、世界各地で災害に苦しむ人々がたくさんいます。それから飢えに苦しむ人々がたくさんいます。そういうような人たちへの協力は平和行動の中で援助していき、そして国際社会に貢献する義務があると思います。
 それから、イラクの侵攻に対してですけれども、イラク侵攻のあの行為は、いかなる戦争をも否定する私たちの立場から、許せない行動だと思います。だからといって、目には目、歯には歯というような、武力で武力を排していく、そのようなことは絶対してはいけないと思います。今こそ粘り強い対話がとてもとても必要なときじゃないかと思います。湾岸各国の首脳が精力的に対話の行動をしています。そのことが、今日本の政治を担当していらっしゃる方々の大きな仕事じゃない
かと思います。
 それから、米軍の中東湾岸における軍事行動ですけれども、だんだん時間がたってさました。アメリカの国民もその軍事行動を最初はほとんどの人が支持していました。でも、最近はだんだんその支持率が低下してきたことをテレビの中で、ニュースの中で知らされています。それは、かつてのあの泥沼化したベトナム戦争の悲惨さをまた思い起こしたんじゃないかと思います。そういう意味で、やはり武力を行使して平和を維持するということは間違った行動だと思います。
 石油問題のことですけれども、高度な生活にもうならされてきた私たちにはとても必要です。しかし、米一粒も食べずに生きていた時代もあります。あのような過酷な時代のことを考えると、やはり幾らかは我慢してでも物より命を大事にしていく、そういうようなことを今国民に教育する大切な時期ではないでしょうか。今物があふれて、本当に物の大切さとか、命の大切さまでも失われようとしている、そういうような雰囲気さえ見えます。今こそ命の大切さ、物よりもやはり心の大切さを特に若い人たちに教えていくいい機会ではないかと思います。
 以上で終わります。
#638
○宮下委員 意見陳述者の方々から今の三点について御意見を承ったわけでございますが、基本的には、私の理解ではそういう認識だというように理解いたします。
 そこで、さればこういう国際社会の中において、日本としてこれからの国際社会でいかなる貢献をしていくべきか。八月から九月にかけまして、まず私どもとしては、中東貢献策として四十億ドルに及ぶ貢献策を金の面で発表して約束をしております。しかし、国際貢献ということになりますと、世界の大勢は金だけで済まされるかどうか。日本は平和を金で買うつもりかとかいうような非難等もございます。したがって、私どもとしては、金の貢献は応分の貢献をいたしましたけれども、平和的な手段によって人の派遣もやろうということでございます。意見陳述者の中では、中東貢献策として何かをなすべきであるということは大体申しておられるようでございます。
 そこで、時間の関係がございますので、今度は特定の方にお伺いしたいのですが、宮城さんはODAとか技術協力とか青年海外協力隊というようなことをおっしゃられましたが、我々も今までの国際貢献の中においては、南北問題、その他の問題のためにこれらの方策をフルに利用してきておりますが、当面問われているのは、この事態、中東問題についての緊急策でございますので、その点緊急策として何があり得るのか、まず宮城さん。
 それから、佐久川さんも難民救済その他のことをおっしゃられました。私も難民救済は非常に大きな問題だと思います。この点は同感いたしますが、しかしそれ以外に、今直ちに貢献策があり得るのかどうかという点、これは同じ質問でございます。
 時間の関係上、多くの方からお伺いしたいのですが、とりあえずお二方から貢献策についての御意見を承りたい。
#639
○山崎座長 宮城豊君、簡単にお願いします。
#640
○宮城豊君 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、今回のこの中東危機というのが余りにも突然起こりましたがゆえに、こういったODAとかいうふうな施策でもって中東危機の解決に役立てるということはちょっと難しいというのがございますけれども、私があえて申し上げておりますのは、やはりこれから先、こういったような非軍事的な協力の方法というものを、規模を拡大して、そういう紛争が起こらないような、そういった火種を消すといいますか、まさにそういったようなことに日本が積極的に大きな役割を果たすべきじゃないかということを申し上げているわけでありまして、今の中東危機を解決するために日本がなし得ることは、これまで先生が御指摘のような、資金面におけるあるいは医療面におけるそういうことで精いっぱいではないかというのが私の感じでございます。
#641
○山崎座長 佐久川政一君、これまた簡潔にお願いいたします。
#642
○佐久川政一君 緊急策としての人の派遣は難民以外に何を考えているかという御質問だと思いますが、いわゆる非軍事的な面における貢献策であれば、ピース・キーピソグ・オペレーションですか、PKOも日本は文民を派遣するということが過去にありましたね。もちろん停戦の監視だとかあるいは選挙の監視、いろいろあるわけでありますが、これから考えられることであれば何でもいいと思います。いわゆる非軍事的な面で、しかも自衛隊を派遣しないということであれば、いろいろなことをこれから模索して考えてやるべきであらう、こう思います。
 ただ、四十億ドルのうち二十億ドルを多国籍軍に使わせたという点は、私は反対です。といいますのは、先ほどから申し上げていますように、私は、アメリカでさえボタンのかけ違いをしたのではないかな、こういうふうに思います。フセインは決してひるまないわけですね。そして、クリスマスには家族に会わせてあげようと、一面からすればかなり傲慢な態度であるわけであります。そういう意味では、軍事的な面では決して解決はしないわけでありますから、やはり粘り強くいわゆる平和的な解決。ということを申しますのは、アメリカがサウジアラビアを助ければ助けるほどサウジ国王の立場は非常に難しくなる。と申しますのは、シオニズム対アラブの民族の問題あるいはアラブ対植民地を形成した大国の問題等と、非常に複雑に絡んでおりまして、そういう意味では、歴史的な背景も考えていきますならば、やはり大軍が押しかける、大軍を結集したというのは果たして解決になり得るのだろうかなという危惧を私は持っております。
 以上です。
#643
○宮下委員 時間が参りましたので、もっとお伺いしたい点、多々ございますが、自衛隊の海外派遣につきましていろいろ御意見がございました。特に、自衛隊の海外派遣を兵力の行使というように、同義語にとられている向きがございますけれども、私どもの考え方は、やはり国連の決議に沿った国連中心外交である。しかも、先ほど申しましたように全世界的に非難している、その行動に日本が貢献していく。それから同時に、武力の行使、武力の威嚇は手段として絶対行わない。これは、護身用の小型武器を持っていくことは法に明定してございますけれども、それ以外は持っていかないという考え方に立っておりますし、それから平和協力会議あるいは協力本部におきまして、政府がシビリアンコントロールのもとにその判断、派遣するかどうか、どういう期間を設定するのかという判断は日本が自主的に判断する、こういう建前をとっておりますので、その点はぜひ御理解をいただきたい。
 それから最後に、やはり国際社会の中で我々は義務をあるいは責務を果たしていかなければいかぬ、こういうことでございまして、私どもは決して戦争か平和かを問うておる法律でないということを冒頭にも申し上げましたが、改めてその点を申し上げたいし、それから、青年の血をいたずらに流すようなことを我々は考えておるわけではありません。これからの国際社会における日本の立場というものを明確に主張をして、名誉あるあるいは尊敬される日本というものをつくっていきたい、こういう思いからこの提案をしておりますので、その点は御理解をいただいて、これは私の意見の陳述になってしまいまして恐縮でございますが、時間が参りましたので、所見をもう一回求めたいのですが、時間超過で野党の皆さん方に迷惑をかけますので、これで終わります。
 ありがとうございました。
#644
○山崎座長 次に、川崎寛治君。
#645
○川崎(寛)委員 六人の公述人の皆さん、本当にありがとうございました。特に唯一の地上戦という大変厳しい御体験の上に立った、戦争と平和ということをぎりぎり考え詰めてのそれぞれの公述でございまして、大変胸を打たれました。
 実は、私はきのう空から摩文仁丘を見ました。私はもう数十回こちらに参っておるのでございますけれども、この沖縄戦では私の台北高等学校の同級生が戦死をいたしております。また、鹿児島の基地から飛び立った予備学生はここで自爆もいたしております。第一回の学徒兵として参加をいたしておりますので、宮城豊さんの御発言につきましても、また宮城喜久子さんの御発言につきましても、特に胸を打たれたわけでございます。
 そこで、この法案についてのそれぞれのお立場からの御発言というものについて、一致をいたしております点が大変ある、こういうふうに私は思います。どなたもやはり今回のこの法案の提案については拙速であったというふうな御意見でございますし、また、こちらに参りまして地元の新聞を拝見いたしますと、自民党県連さんが正式に反対表明をされまして、特に伊集政調会長さんが、法案は、国の進路にかかわる自衛隊の参画について拙速過ぎる、自衛隊の海外派兵につながるおそれがある、国民の理解を得ていない、こういう御説明をなされておるのを拝見をいたしました。
 これは私たち国会の責任でもございますけれども、先ほど来宮下委員も言っておられることでございますけれども、米ソが冷戦終結、米ソが新しい協力をする時代、国連を中心に世界の平和を考えなければならない、そういう点についてはまさにそのとおりだと思います。私たち日本社会党も、日米友好というのを基本にしなければならないという立場をとっております。また、これからの九〇年代の世界の平和というのは、国連中心に考え、全力を尽くさなければならない、こういうふうに思っております。そこで、そういう立場から考えてまいりますときに、どういう貢献をすべきか、どういう新しい世界情勢を考えるかということを国会でぎりぎり煮詰めないままこの法律を、イラクの侵攻というのを機会に出されてきたわけでございまして、その点が私は一番、国民の皆様に責任を持つものとしては拙速過ぎた、大変大事な点が抜けておる点であろうと思います。
 そこで、六人の方に端的にお伺いをいたしたいのでございますけれども、自民党県連さんの見解というものを踏まえまして私この法律を考えますならば、自衛隊の参加はいけない、拙速だ、こういうことでございますから、法律を撤回する。そして、先ほど来それぞれ御意見をお述べになっておられますように、国連中心に地域紛争の予防、予知、解決の方法を国連としても強化をしていく。さらには、平和維持活動に徹底をした日本の貢献策というのを確立する。つまりもっと端的に言えば、これを撤回し、日本の世界に果たすべき役割を明確にし、そして国連中心の平和維持活動に徹底をする、そうした法律に立て直すということについて、私たちのそういう考えについて御賛成であるか反対であるか、端的にひとつ御意見をお述べいただきたいと思います。公述いただいた御順序でお願いいたしたいと思います。
#646
○山崎座長 全員の意見陳述を求められたのですね、全員ですね。
#647
○川崎(寛)委員 全員です。
#648
○宮城豊君 今、川崎先生が御指摘になったことに賛成でございます。
#649
○佐久川政一君 私も、これまで述べてきたとおり、国連中心主義に平和的に解決するということに賛成であります。
#650
○仲松昌彦君 いろいろな諸外国との兼ね合い、しがらみの中で、複雑な国際政治の中で、のっぴきならない気持ちでこの法案を提出してきたと思うのですが、先ほど意見陳述の中で申し上げましたように、やはり時期尚早である、自衛隊派遣という重大な内容を含む法案ですから、もっと時間をかけて国民のコンセンサスを得る努力をすべきだ、こういうふうに考えておりますが、先生の御指摘のように、国連を中心とした解決策を模索すべきである。日本はこれまで日米外交、それから国連外交、こういう二本柱の外交政策を進めてきておりますから、今後も、こういう急に降ってわいたような危機に対しましても、そういう考え方で対処すべきであるというふうに考えております。
#651
○緑間栄君 同法案を撤回するということについては、まさに撤回して、新しい国際連合のもとにおける国連中心主義におけるところの安全保障を模索する、これは私、大賛成であります。
 しかし、今緊急にどうするかということがいろいろあるわけです。先ほど申し上げませんでしたが、私が申し上げている紛争の平和的解決、これは、従来の国際連合というのは、六九年のスエズ紛争から一九七八年のレバノン暫定軍まで六回の実績が国連中心主義で平和裏に紛争解決をしております。それから軍事監視団、これは一九四八年のパレスチナ国連休戦監視機構からことしのニカラグア大統領選挙まで九回、まさにそういう実績に対して日本がどう貢献していくかということを私は先ほどからお願いし、また、模索すべきだというふうに申し上げているわけであります。
 そこで、それでは例えば自衛隊がそういう形で新しく身分を変えて行くということになりますと、当然これは教育の問題も出てまいります。むしろ平和大使的な役割を持たせまして、旧日本帝国軍隊というイメージをすべて根底から払拭する。それによって現地のいろいろな状況等について――大使の到来であるというような団体でなければ、平和維持軍というのは紛争当事国から歓迎されませんし、また、現にこういう国連のなしてきた平和維持軍、平和監視団というのは国境を越えて、国籍を越えて歓迎されております。また、参加している人も大変なプライドを持ってやっておられる。そういう意味で国連中心主義は賛成であります。
#652
○知花孝弘君 国連中心主義ということは、私が本法案について意見を述べた根底ですから、それに異存はありません。
 ただ、私は国会議員の皆さんに一つ注文をつけたい。国民の立場として注文をつけたいのです。この問題は国家の根底にかかわるような問題であるということを認識しておきながら、どうして今まで真剣に議論がなされていないのか、これが大きな問題なんです。経済をどうするとかこうするとかいうことは、これは皆さんがやらなくても一部分はできることなんです。ですが、このような危機に対する対応というのは、これはやはり皆さんで問題を提起して、どうだということを国民に問わなければいけない問題なんです。私はこの点、まず国会の皆さんに注文をつけたい。
 それからもう一点、国民もやはりもう一度自分たちの世界における立場ということを再考してみる必要がある。特に冷戦終えんの今日、これはまさに好機到来、千載一遇の機会だ、こういうふうに私はとらえております。どうか皆様方の御健闘をお祈りいたします。
#653
○宮城喜久子君 私は、何も政党人でもありません。ただ一介の主婦です。その私が、安保ということに関しては、もう私たち国民にとても長いこと課題として心の中にある問題だと思います。その安保があることで、米国と一緒に軍事行動をする、そこまで追い詰められるんじゃないか、そういう不安があるのです。しかし、本当にこの沖縄県であるからこそ、自民党県連の方も、紛争地にいかなる人も派遣しない、そういうような姿勢を声明なさったことはとてもうれしいことだと思います。ただ、やはり安保についてこれからはもっと深く考えてくださって、本当に筋道が通るような、県民が納得するような御意見をこれからも県民にアピールしていただきたいと思います。
 それから、国連中心の平和維持行動、もちろんこれはとても大事だと思います。ただし、武力による活動は絶対に望みません。
 以上です。
#654
○川崎(寛)委員 ありがとうございました。
#655
○山崎座長 次に、大木正吾君。
#656
○大木委員 今、知花さんから出されました問題につきましては、私たち社会党といたしまして、今回の法案に対して直ちに大綱というものを出しました。自衛隊派遣とは違った意味の、新しい世界の進路に従いまして、憲法に従った方向でもって要綱を出してございます。きょうは細かなことは申し上げませんけれども、あくまでも戦争の大変な影響を受けた日本でございますから、平和憲法擁護を中心としながら、他の方法で国連中心主義の援助、協力、そういったことをしたい、こういうふうな大綱になっておりますから、ぜひこれは御参考に見ておいていただきたい、こう考えております。
 そこで、宮城豊さんと佐久川さんにお伺いいたします。
 実は、海部総理は今回の法案につきまして平和協力維持法と、こう盛んに言うのでございますけれども、新聞の投書等を拝見いたしますと、皆さんほとんどもう自衛隊派遣じゃないかということばかりが八割方占めておりました。これは、四十六年前のあの忌まわしい戦争、そういったことが絶対に抜け切っていないということが日本国民の世論の土台にあろうと思うのです。シビリアンコントロール、こうおっしゃいますけれども、シビリアンコントロールは大体内閣の閣僚全員がやるわけでありますから、いわば今回の法案では、計画にしてもそこで決め、同時に、それをさらにシビリアンコントロールする場合でも同じ方々がやるわけでございますから、シビリアンの意味をなしてない。シビリアンの中心はやはり国民世論と考えるわけでございますが、そういった問題について宮城豊先生と佐久川政一先生に御意見をちょうだいしたい、こう考えております。
#657
○宮城豊君 今、先生御質問の趣旨は、いわゆる平和維持協力すなわち自衛隊派遣だというとらえ方をしておるというふうなことについての見解でございましょうか。
 確かに私もその法律の内容をよく勉強しておりませんが、ただ、明らかにこの中で一番大きな問題が自衛隊の海外派遣の問題であるということ、それが私としましてもこの法案の立法につきましては同意いたしかねるという最大の理由の一つでございます。
 ただ自衛隊は、あくまでもこれはシビリアンコントロール下の存在であるということになっておりますので、この平和協力法の問題とは離れて、自衛隊のあり方というのは当然シビリアンコントロールでなければならぬし、その線は、そういった体制はあくまでも維持されなければならぬ、かように存じます。
#658
○佐久川政一君 もし自衛隊を派遣しました場合にシビリアンコントロールが要するに守られるか、そういう質問でございましたでしょうか。
 本部長は総理大臣である、法案にはそうなっております。しかし、何千キロ、何万キロの遠距離に派遣するわけであります。そこで、派遣されました場合に、もちろん命令系統というのは、総理大臣からずっと末端まで一つの系統というのはあると私は思いますけれども、しかし、例えば武器を輸送するために輸送艦を派遣します。その場合に、やはり現地におきましては例えば現地の多国籍軍に組み込まれる。弾薬をこちらからこちらまで運んでくれとか、あるいは後方支援だといって果たしてしり込みもできるのか。そういう意味では、これはシビリアンコントロールは担保されないのではないかという危惧があります。
#659
○大木委員 第二次世界大戦の最後に日本の中で最大の戦禍をこうむった沖縄でございますが、いろいろお話がありましたとおり、現在でも日本の米軍基地の七五%が沖縄に集中している。こういった状態の中でどの程度の弾薬、場合によっては核もあるかもしれませんが、こういったものをいわば日本の補給艦が持っていく。そういった際に、もちろん核の問題の点検等はできないと政府は言うでしょうし、そういった問題等を考えたときに、結果的にはこの平和協力法案のねらいというものは沖縄における基地機能をますます強化してしまう。あるいは補給艦が積んでいく武器弾薬等についても恐らく日本の方からはなかなか関与ができない、そういった問題等を持っているということを考えたり、あるいは今の戦争、近代戦争においては、前線に展開している兵隊よりむしろその後方をたたくということも大いにございますから、近代戦では前線と後方支援の部隊の区別がなかなかつかない状態になってきます。
 そういった問題についてこれはぜひ伺いたいのでござしますが、緑間教授にそういう際における問題点等についてもし御意見がございましたら伺いたいし、宮城喜久子さんにも、沖縄戦の生々しい話がございましたから、これについて御意見がありましたらぜひ伺いたい、こう考えております。
#660
○緑間栄君 ただいまの御質問で、この法案がもし通りましていよいよ自衛隊が海外出動するとなりますと、まさに大木先生の御指摘のとおり、沖縄基地は強化される一方でしかありません。これはもう日に見えたことであります。しかも、世界協調路線がしかれている。特に一般的な立場で申し上げると、ヤルタからマルタへの世界レベルの平和において、日本だけがますますそういう形でGNP一%という、世界からしますと大変な驚異の金額をもってどんどん自衛隊が膨らんでいくようなことがありますと、当然沖縄の基地は強化される。特に沖縄の住民と申しますのは、これはもうごらんのとおり五十八号線にはずっとフェンスがあるわけで、ですから、どなたでも初めて沖縄に見えると、そんなに基地があるのかとびっくりするわけですが、どうして我々沖縄住民だけが四十五年間そういう痛みを感じなければならないかという怒りも、同法案に関する補助的な立場で感ずるわけであります。
 したがって、御指摘のようにこれはベトナム戦争、朝鮮戦争で沖縄の米軍基地がその前線基地の輸送基地として利用されていることはもう目に見えた、しかもはっきりしたことでございます。そういう意味で、やはり同法案というのは世界の流れからも、国際協力ということを隠れみのに我が日本がますますそういう自衛隊強化、外国からはこれはもう軍隊であります、幾ら自衛官、自衛隊、航空自衛隊と申しましても。特車という言葉がありますが、これは戦車であります。あるテレビ番組で自由民主党のリーダーの方が、軍艦と言って、ああ失礼しました、あれは軍艦じゃない、自衛艦ですと訂正したのを、ちょっと私、にやにやしながら見ておりました。これはもうまさに、今の状態で、特に法案の内容等からすると、先ほどの緊急権の問題も、まだ自衛隊法のレベルでは緊急出動等については、事後承認ではあるけれども、戦争して事後承認というのは本当はありませんけれども、一応シビリアンコントロールという何らかの法的歯どめがありますが、この法案の場合にはすべてもうありません。
 以上です。
#661
○宮城喜久子君 もう戦争が終わって四十五年たった今でも、私たちの周りには膨大な基地があります。しかも全く日常茶飯事のように、あの四十五年前の戦争を見るような戦闘訓練も行われています。特に、私たちが学業も放棄して日本軍と一緒に陣地構築、砲台づくりをしたかつてのその日本軍の基地が、何十年もたった今でもまだ姿を変えて米軍基地として存在していることは、とても耐えられないことです。その中で、さっきも申し上げましたが、あの二十万人余の人が流した血であがなわれたあの平和は何だっただろうかと、いつもその憤りと悲しさで毎日沖縄の状態を見たり聞いたりしております。
 先ほど申し上げました、武力では絶対に平和は生まれてきません。ですから、武力を行使する、それにつながる基地は私たちには要りません。本当の意味の、真の平和である沖細の島にしてほしいということを毎日毎日願って生きております。
#662
○大木委員 終わります。
#663
○山崎座長 次に、上原康助君。
#664
○上原委員 大変短い時間ですので、簡単に若干所見を交えてお伺いしますが、まず、きょう意見陳述なされた六名の代表の皆さんに心からお礼を申し上げたいと存じます。
 私は県出身者の一人として、この国連平和協力法案の審議の大詰めの段階で、特に沖縄県でこのような公聴会が持たれた意義は非常に大きく、そしてその内容は重いものがあると、改めて六名の方々にお礼を申し上げます。
 そこで、残された時間は五分しかありませんから、皆様方が陳述なさった内容については私たち真摯にそれを受けとめて、来週以降のこの法案の審議に反映をさせるように全力を尽くすことなお誓いしたいと思います。
 共通している点は、やはり自衛隊の組織的、しかも武器を携帯しての派遣というものは同意できない、憲法に違反あるいは抵触することは間違いないということ、一方において、日本の危機管理あるいは国際支援というか貢献は必要である、したがって、国会としてというか、国政にあずかるものとしてそのような施策を早目に確立すべきである、こういう点についてはみんな一致をしておると思います。その点を私どもは共通の土俵として、どなたもこの法案のままでいいとおっしゃいませんでしたので、改めてそのことを大切にしてまいりたいと思います。
 そこで、もう各先生方から御指摘がありましたので、時間があれば佐久川先生や宮城喜久子先生、また宮城豊さんにもお尋ねしたいのですが、あえてと言うと大変失礼になるかもしれませんが、仲松さんに一言お尋ねをします。県連のお立場でこの法案に反対をなさるという勇気、また、先ほどお述べになった内容も評価できる面が多かったと思うのですが、よもや今の意見陳述あるいはそのお立場を変えるおつもりはないのかどうか、その点だけ明確にしていただきたいと思います。
#665
○仲松昌彦君 お答えいたします。
 私は、過去二カ年間議会の米軍特別委員会の委員長として基地問題に深くかかわってまいりました。先生方にももう何十回となく代表団として頭を下げてお願いいたしました。やはり県民代表の機関の一員として、特に沖縄県の県政の重要課題である、先ほど申し上げましたように沖縄県民を徹底的に苦しめている基地から派生する問題、そういうものに直接かかわっておりますと、これはこれでいいのかなという気持ちを切実に感ずるわけであります。そういうものはやはり政治の場で解決をすべきであろうし、また県民としても、これは一つの方向を見出して保革を超えて取り組まなければならない問題だ、こういうことをしみじみ感じたわけであります。
 先ほど川崎先生から自民党県連の英断に対しまして高い評価をいただきましたが、もちろん私も県連の一員ですので、その意思形成過程に加わりまして私なりに意見を述べました。私はもう最初からそういう意見でございまして、何といっても沖縄県民の実情、沖縄が置かれている今の状態、そういうものを考えると、私は当然こういう結論になると思っております。したがいまして、今沖縄県がどういう政治状況にあるかにかかわりなく、これは一般論的な問題として、沖縄の問題としてとらえておりますので、そういう妙な、見解の変更とかそういうものじゃありません、確固たる信念に基づいてこういう見解を表明しておりますから、誤解のないようにお願いいたします。
#666
○上原委員 大変ありがとうございました。
 これで終わりますけれども、私どもも、今回のこの法案といるのが余りにも拙速かつ欠陥があり、問題だらけの法案である、しかも、今後の進路とあわせて戦後四十五年の国の根幹にかかわる問題であるということで重要視をしてまいりました。本当に沖縄が再び国策によって犠牲になってはなりませんし、日本の平和国家としての進路というものは、保革を問わず全うしていかねばならない使命であり、重要な政策課題だと思うのです。ある面では国としての国是だと思いますので、きょうの皆様方の御意見陳述に改めて感謝を申し上げて、しっかりとその御意見を受けとめて頑張りたいと思いますので、今後とも御協力のほどお願いをして、私のお尋ねを終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#667
○山崎座長 次に、日笠勝之君。
#668
○日笠委員 公明党・国民会議の日笠勝之でございます。
 まず、陳述者の皆様方はさきの大戦で地上戦を経験された沖縄県民を代表しての御意見と、心から御礼を申し上げる次第でございます。
 私は、時間が非常に短い時間でございますので、重複しない範囲で何点かお伺いをいたしたいと思います。
 まず、知花先生にお伺いしたいのですけれども、先生は、この法案の二十一条、すなわち海上保安庁の参加と二十二条の自衛隊の参加、これを修正をというようなお話に聞こえたわけでございますが、実はこの法案は、もちろん自衛隊の参加という大きな問題があるわけですが、それ以外にも、先ほどから陳述者の皆さんもおっしゃっているように国会の承認事項が一つもないわけです。極端な言い方をしますと、これは、総理大臣が日本のフセインになりますと何でもできる法案なんですね。わからないわけです。海部さんはやらないというようにはっきりと答弁はいたしておりますけれども、それ以降の総理がどうであるかということは予測はつかないわけです。
 例えば輸送協力にいたしましても、法律上では兵員も弾薬も武器も輸送できます。また通信も、近代戦は情報戦でございますから、幾らでも多国籍軍にも提供できるわけです。また補修ということ一つとりましても、いわゆる軍事施設、特に飛行場なんかの補修も可能なんです。そしてまた物資協力でも、何でも物資協力できる。先日も特別委員会で、米軍のサウジに展開している地上軍、ヘリコプター強襲兵団でございますけれども、これは砂漠でございますから、ヘリコプターが砂を巻き上げて墜落いたします。プラットホームといって二十メートル四方の鉄板を韓国から送っておる。こういう武力行使一体のような軍事物資だってもう既に運んでおるわけです。
 こういうことを考えますと、この法案は、二十一条、二十二条だけではなくて、もう根本的な大欠陥がある。それらを歯どめを全部この法案の中に入れようと思えば、まさに換骨奪胎で法案の体をなさない。速やかにこれは修正ではなくて撤回、廃案というのが筋ではなかろうかと思うのですが、知花先生の御意見を賜りたいと思います。
#669
○知花孝弘君 お答えいたします。
 私は本法案の撤回ということは考えておりません。どこまでも修正でいくべきだと思います。先ほどから申し上げましたように、余りにも今まで国会がこういうふうな問題を提起して国民の信を問うてない。今でも時間が遅い。それにもかかわらず撤回をしてというふうな考え方は、私は不賛成でございます。
 それから、本法案はいろいろな点で問題がある、こういうようなことをおっしゃっておりますが、私はそうは見ておりません。素直に本法案を読みますと、これは憲法の範囲内、それから自衛隊が問題にはなっておりますが、私はそういうふうに他の陳述人が述べたような大きな心配はしておりません。これは、もし国会の方で問題があるというのであれば、皆さんの方で、こういうような点はどうするんだ、こういうふうなことを率直に国民の前に示して国民の意見を聞く、こういうふうな手続がなされるべきだと思います。今何をなすべきかという刻々切迫していることを問われているわけですから、やはりいたずらに時間を空費するべきじゃない、私はこういうふうな立場です。もし問題があるのであればそれを早急に解決し、そしてまた、その法律が不十分であるというのであれば手直しをして立派なものにする、こういうふうなことを考えてしかるべきだ、こういうふうな状況にある、こういうふうに私は判断しております。
#670
○日笠委員 続いて、緑間先生にお伺いをしたいと思います。
 皆様の御認識も、いわゆる国連決議に基づくいろいろな協力というふうなことでの御意見はほぼ御一致だと思うのです。日本の今後のあるべき姿、国連決議を第一義とする。実は私、この国連決議というものを金科玉条にして、国連決議があったから、国連決議があったからということでいいんだろうか。例えば、国連決議でも全会一致という歯どめがなければ、極端な話をしますと、五十一対四十九で総会で辛うじて国連決議が採択されたからそれ行けどんどんというわけにはいかないと思うのですね。また、日本とその相手国といいましょうか、歴史的な、外交的な、地理的ないろいろな配慮も日本としてもなしていかなければいけない、独自の判断もしていかなければいけない、こういうことを思うのでございますが、緑間先生は、国連決議というのは、これは過半数以上占めればそれでいいとお考えでございましょうか。
#671
○緑間栄君 この法案の中にある国連決議というのは、私が見たところでは、この前の多国籍軍を含めた二十六カ国が参加したのは、これはすべて一応イラクの紛争は侵略行為であるという意味の国連決議であって、二十六カ国出動しなさいという決議じゃないわけであります。ただ、一つ大事なことは、我々も国連に加盟しておりますので、あくまでも国際連合憲章の第二条における国連におけるところの権利義務を果たす義務はあります。否定するものではありません。その義務の果たし方を私先ほどから申し上げているのです。
 それから、具体的にこの法案と国連決議とが結びつきますと、恐らくこの法案との関係では、常任理事国を含む九カ国以上の多数決の原理に従って決議がされるわけでありますが、その場合でさえも四十三条の特別協定があるわけです。この特別協定というのは、安保理事会との間において特別に国連軍を創設しましょうという国際条約の約束事なんです。しかし残念ながら、先ほどから申し上げますように、米ソが従来までの冷戦状態のもとにおいて今日に来ていましたので、いまだに一度も特別協定というのは結ばれておりません。確かに朝鮮動乱等に国連軍というのが、現在でもいますけれども、あれは変則的なものでありまして、ソビエトが中国代表権問題でたまたま欠席したときに決議されたわけでありまして、果たして欠席は拒否につながるかどうかという細かい議論はありますけれども、あれ以来ソビエトの方はびっくりして八月にはまた復帰しまして、あれからそういう国連決議というのはなされないままに来ておるということです。
 ですから、この国連決議というのは総会の決議でも、総会の決議はあくまでも紛争解決については勧告でございまして、総会の決議が即その法案に基づく海外派兵であるというふうにまた誤解されても困るわけなんです。
 海外派兵というのは、あくまでも自衛隊が行くということは紛争解決のため、確かに紛争の平和的解決という意味かもしれませんけれども、現実に軍隊、多国籍軍と協力するわけですから、これはやはり武力によるところの解決の支援活動であろうと思うわけであります。
 それから、一つ誤解してもらうと困りますけれども、あくまでも国是として日本国憲法を堅持しつつ、同時に日本の置かれている憲法上の立場イコール国連中心主義からいたしますと、国際連合憲章の第六章の紛争を平和的に解決するという、これがやはりすべてに優先して解決に当たらなければならない、これがまさに先ほどから申し上げる平和維持軍であり、軍事監視団でありますので、国連決議ということをすべて混同していただくと困る。
 以上でございます。
#672
○日笠委員 続いて、緑間先生にもう二点、簡単にお答えいただきたいと思うのですが、一点はPKOですね。ピース・キーピソグ・オペレーション、いわゆる平和維持活動に対して、これは自衛隊が部隊ごととか自衛官が参加をするということは許されるのかどうか、どうお考えかということが一点と、それから、将来国連警察軍なるものができた場合、それに自衛隊が部隊ごとないしは自衛隊員が参加をすること、これは現憲法上、日本の憲法上許されることなのかどうか、二点、端的にお答えいただきたいと思います。
#673
○緑間栄君 集団的安全保障に基づく国連軍、国連警察軍と平和維持軍及び軍事監視団とは全然別であります。前の方の国連軍というのは、紛争の強制的解決、強制措置のことであります。これはもう当然、現在の日本国憲法等からいたしまして、特に特別協定の取り扱いがいまだになされていない状況、それから国民感情等から恐らく大変論議を呼ぶことでありましょうから、当分はできないだろうと思うわけですが、平和維持軍、これはあくまでも紛争を平和的に解決するということ。自衛隊が即というのは、これは先ほど申し上げましたとおり、自衛隊とは即ではございません。あくまでも自衛隊の身分を断ち切り、個人レベルで参加する、それで国連事務総長の指揮監督のもとに平和維持軍として活動すべきだということであります。何も自衛隊だけじゃなくて、それ以外の人ももちろんこれは個人の意思に従って参加するということであります。
 しかし、同法案については先ほどからシビリアンコントロールの問題はどうかという御質問がありましたけれども、これは、同法案からしますと、シビリアンコントロールはありませんし、現在の自衛隊法以上に総理大臣の権限というのは強化されているというふうに受け取られるわけでありまして、今の状態での自衛隊の参加というのは避けるべきだということであります。
#674
○日笠委員 最後に、実は私はこれをぜひお聞きしようと思っておりましたら上原先生がお聞きになったのですが、重ねて仲松さんに、この法案をどうするかということで意思形成にかかわったとおっしゃいましたけれども、まことに失礼な言い方をしますと、この法案の中に欠陥があるということでのいわゆる政策判断で反対表明を明確にされたのか、いわゆる俗に言う政治判断的なもので反対を明白にされたのか、この点、最後にお聞きしたいと思います。
#675
○仲松昌彦君 日本が経済……
#676
○山崎座長 仲松君、座長の指示を得て発言してください。仲松昌彦君。
#677
○仲松昌彦君 我が国が国際社会における地位、経済力に応じて応分の平和維持活動に貢献すべきだ、こういうことについては先ほどからたびたびお互いに確認をしてきた事項でありますが、今回の法案につきまして、私どもがこれは廃案あるいは審議未了、やり直しをすべきだ、こういうふうに結論を下した背景には、先ほど申し上げましたように、何といっても自衛隊の派遣というものに道を開く内容になっておる、こういう根本的な問題がありまして、やはり政治的な結論を下す場合には、何といっても置かれている地域の方々がどういうことを考えているか、そしてどういう心境にあるか、どういう心情にあるか、そういうものをまず第一義的に考えるべきだ。
 したがいまして、せっかく国会議員の先生方が国際レベルの立場から日本がどうすべきか、国際社会の問題ですから、それは県よりはもっと大きな問題だといえばそれまでですが、しかし、やはり私たち沖縄県に住んでいる者としては、それよりもまず県益を優先といいますか、県民の立場というものあるいは県民の心というものを優先すべきじゃないか。そういう観点からいたしますと、今の時期にいきなり自衛隊の海外派遣ということを盛り込む法案については、これはやはり反対せざるを得ない。これは会議に加わったほとんどの県会議員がそういう見解を述べておりまして、私自身そういう見解でございましたので、自民党の先輩方には大変申しわけない気持ちも率直に言ってあるわけでありますが、国際社会における日本の地位の確立、応分の負担、そして国際社会において名誉ある地位を占めたいという憲法上の要請にこたえる、これは立派なことです。当然我々もそれについては十分に考慮、配慮すべき責務があると思いますが、しかし、その前に、申し上げましたように、沖縄県民の置かれている立場、特異な歴史的な体験、そういうものを考えるとやはり県民の側に立つ判断をしなければならぬ、こういうふうに考えた次第です。
#678
○日笠委員 終わります。ありがとうございました。
#679
○山崎座長 次に、児玉健次君。
#680
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。貴重な御意見をいただいたことに心からお礼申し上げます。
 私たちは、今回のような事態に直面したとき、国際連合の適切な取り組みを中心にして、しかもその際、日本は日本国憲法を厳しく守り抜く、あくまで平和的な分野で努力をしていく、そのことが肝心だ、このように考えております。そういった立場から何点か御質問をさせていただきたい、こう思います。
 まず宮城喜久子先生にお伺いしたいのですが、今、この法案の国会の審議に際して、後方だから出かけていっても安全だ、そしてもし戦火が開かれたらそのときは何とかする、危ないところには行かせない、こういうふうな説明が政府の側からよく出されております。先ほど先生のお話の中で、ひめゆり学徒隊として出動なさるとき後方で赤十字の旗のもとで保護されるとお考えになっていた、そういうお話がございまして、ところが実際行ってみたら、戦争につながる行為はすべて攻撃の目標になった、こういう貴重な体験を聞かせていただきました。そのあたりのところについてもう少しお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#681
○宮城喜久子君 私たちは本当に不幸な時代に生まれ合わせた女の子でした。そして、十五年戦争の中で生まれ育った中で、私たちの教育目標が、常に国のために命をささげるぐらい尽くしなさい、これがみんなへの与えられた教育目標でした。特に幼児期からそのような教育を受けた私たちは、全くそういう女の子になり切っていました。だから、先生方からこれから戦場に動員されますと言われても、みんな当然のような顔をしていました。その中で、私たちが一度でも戦争の悲惨さとかそれから命の大切さを教えられる機会はありませんでした。いつもかっこよく戦っている戦場の様子、日本軍はいつも優位に立って戦って、そして悠々たる状況の中で戦争を進めている、そのようなことしか教えられていませんでした。ですから、そういう私たちの認識は、まさにさっき申し上げましたように、後方で看護訓練を受けたときのように真っ白いきれいな包帯を巻く、薬を塗る、注射を打つ、そういうようなきれいごとしか頭にありませんでした。それくらい、あの当時の私たち国民は戦争については全く見ざる、聞かざる、言わざるの中で無知にされておりましたから、そういう意味で私たちは後方で安心して戦争に協力できると思っておりました。
 しかし、それが全く私たちの認識が甘かったということを、さっき申し上げましたが、本当につくづく思い知らされました。そして私たちが常に言われていたことは、日本人はいつもアジアの指導者だ、そういう気持ちで一生懸命勉強して、将来はアジアの国に行ってよきリーダーとなりなさい、そういうようなことまで授業の中で教わりました。ですから、私たちには全く悲惨な戦争なんて頭にありませんでした。そういうことで戦場に出かけてしまったわけです。
#682
○児玉委員 ありがとうございました。
 佐久川先生にお伺いしたいのですが、先ほど先生は、日本に駐在する米軍の七五%、それだけが沖縄に駐留している、そして中東に出動した米軍の兵たん基地に沖縄がなっている、そういう点についてもお触れになりました。沖縄で行われている日米合同演習のことを私たちは深刻な関心を持って見ているのですが、キャンプ・ハンセンやブルー・ビーチなどで行われるさまざまな軍事演習で日本の自衛隊は米軍の主導のもとで追随者としての役割を果たしている、このように思います。今度の法案で自衛隊が組織として、部隊として海外に出かけていく、これは日米安保体制の全地球的な規模への拡大になるのではないか、これを深く危惧しているのですが、その点について先生のお考えを伺いたいと思います。
#683
○佐久川政一君 安保条約の歴史を振り返りますと、一等最初の安保条約は、御承知のように基地を提供するということだけでございました。それから六〇年安保で、これはもちろん日本の領域内においてでありますが、共通の敵に対処するということで、要するに共通に戦うということでございました。六〇年安保では、つまり極東の安全のためにも米軍は日本の基地を使用する、こういうことでありました。しかし、今日ではその極東の範囲というのはもう歯どめかたくなってしまって、例えば中東へもあるいはアフリカの沿岸へも沖縄の基地が利用されている、こういう状況でございます。新聞の報道によりますと、沖縄の基地から今度の中東に何千名の海兵隊が出動したというような報道もございました。そういうわけで、もはやもう沖縄に駐留する米軍は世界じゅう至るところに出ていっているのではないか、こういうふうに思います。
 そういう意味では安保条約は、ある意味ではもう日米軍事同盟としましてもはや、事前協議の問題にしましてもそうでありますし、かなり見直すべきと申しますか、危険な条約になっているのではないか。ソ連の脅威論というのも今日では防衛白書からなくなっておるようでありますし、世界もそう変わっていくわけでありますから、また世界の軍縮もだんだん進められてきているわけでありますから、安保条約につきましても検討すべき時期ではないか。私は、二十一世紀を待たずして撤廃すべきだ、こういうふうに思っております。
#684
○児玉委員 もう一つ先生にお伺いしたいのですが、先ほど先生は、沖縄の戦後はいまだ終わっていない、そういうふうな御陳述がございました。この沖縄で学生に憲法を教えていらっしゃる研究者として、戦後が終わっていない事態に自衛隊の海外派兵が盛り込まれた法案が出てきている、この点について先生の御心情を伺わせていただきたいと思います。
#685
○佐久川政一君 沖縄に憲法が適用されましたのは、本土より二十五年おくれることになります。要するに、沖縄の米軍統治が二十七年間続いたわけでありまして、その問いわゆる軍事優先、人権無視の米軍統治下にあったわけであります。憲法が適用されない期間はそのうちの二十五年間ということでありまして、適用されましたときには復帰前と同じように基地がかなり過密で、基地の実態というのは変わらないままに復帰したわけでありますから、そういう意味では学生たちに憲法を教えます場合にも、どうして六法全書にある憲法の条文と現実の実態がそうかけ離れているか、これは非常に素朴な質問でございまして、やはりどうしても学生にはそれを語らなければならないわけです。そういう意味では非常に苦しいと申しますか、そういう憲法にだれがしたかということで怒りも覚えるわけであります。
#686
○児玉委員 ありがとうございました。
 緑間先生にお伺いしたいのですが、先ほどの先生の御陳述の中で、この法律案が法律になったらひとり歩きをする危険性があるという趣旨のお言葉を私は伺いました。今度の法案に則してどのようなひとり歩きをする危険性があるか、制定者のいろいろな説明だとか国会での答弁とは関係なく、この法案自体が持っている可能性としてどんなひとり歩きをする危険性があるとお考えですか、その点をお伺いいたします。
#687
○緑間栄君 先ほど私が指摘いたしました同法案の問題点について二、三申し上げたことから申しますと、同法案における特に総理大臣の海外派兵についての指揮系統、指揮権の問題であります。これはまさに現在、具体的にこの政府見解等の文章を読んでおりますと、「必要最小限度の協力でもし武力を伴うようなことがあったら憲法で許される」とか「しかし、必要最小限度の武力なら憲法で許される」とか、これはあくまで新聞報道でありますから何の意味かわからないわけですが、そういう形で、結局この程度の武力行使をしたら憲法違反ではない、この程度は違反であるとか、まさに現場の方ではそういう形をする、指揮監督する方はやはり総理大臣であるという、これはまさに先ほども申し上げた緊急権の問題であります。確かにアメリカの大統領、ソビエトのゴルバチョフさんには、緊急権と申しまして、立法、司法、行政、国の存亡にかかわる場合にはございます。そういうものを憲法論議で日本ではまだなされていないわけでありまして、恐らくそういう方向にもこの法案等からいたしますと、法案が通りますと、まさに今我々が議論しているものを拡大解釈をして、しかも類推解釈をして、我々が立法する意思または我々が立法しようという目的から離れてどんどん拡大していくという心配があるから、ひとり歩きということを申し上げました。
 以上でございます。
#688
○児玉委員 最後に、あと二分ございますので、宮城喜久子さんにもう一つお伺いしたいのです。
 実は私も教師を長くやっていた者で、広島で集団疎開で原爆を免れた者でございますが、先生は先ほどのお話の中で、三十五年間の教師の体験を通して子供たちに同じような苦しみを味わわせたくないということをお述べになりました。今は教壇を去られていると思うのですが、これまで長く教育のために努力をなさった先生として、今度の法案についての率直なお感じをさらに述べていただきたいと思います。
#689
○宮城喜久子君 やはり、若者が二度と悲惨な目に遭うような、そのような要素を持つ法案は絶対につくってはいけないという、その気持ちがますます強くなっております。今資料館の中で非常勤としてやっておりますけれども、その中で、余りにも若者たちがそういう大事な平和、命について無関心だということもまた見ることができます。そういう意味で、教職は去ってもこれからますますその若者たちに私たちのようなことを二度とさせないために一生懸命行動したいと思いますけれども、そういう意味で、やはり犠牲になるのは若者たちです。それにかかわるこの法案には絶対反対の立場をとります。
#690
○児玉委員 ありがとうございました。
#691
○山崎座長 これにて質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにあ
りがとうございました。
 拝聴いたしました御意見は、法案の審査に資するものがあると信じます。厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして深甚なる謝意を表する次第でございます。
 それでは、これにて散会いたします。
    午後零時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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