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1990/10/16 第119回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第119回国会 本会議 第2号
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1990/10/16 第119回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第119回国会 本会議 第2号

#1
第119回国会 本会議 第2号
平成二年十月十六日(火曜日)
    ─────────────
 議事日程 第二号
  平成二年十月十六日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員矢追秀彦君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(櫻内義雄君) お諮りいたします。
 国会議員として在職二十五年に達せられました矢追秀彦君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員矢追秀彦君は国会議員として在職すること二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ─────────────
#5
○議長(櫻内義雄君) この際、矢追秀彦君から発言を求められております。これを許します。矢追秀彦君。
    〔矢追秀彦君登壇〕
#6
○矢追秀彦君 ただいま院議をもって永年在職議員としての表彰をいただきました。謹んで御礼を申し上げたいと思います。
 顧みますと、大阪大学で歯科医学の基礎研究に従事していた私が、三十一歳の若輩で、昭和四十年、参議院議員に全国区より初当選して以来三期十八年、昭和五十八年、大阪府第六区より本院に初めて議席を与えられて以来三期七年の歳月を国政の場に参画させていただきました。この間、不肖の私を二十五年もの長きにわたって支えてくださいました先輩、同僚議員の皆様、地元大阪を初めとする全国の党員、支持者、有権者の皆様に対し、心から感謝を申し上げますとともに、この栄誉と喜びを分かち合いたいと思います。(拍手)
 さて、私が初当選した年は、日韓基本条約批准のための第五十回臨時国会が開かれ、十万人を超えるデモの中、徹夜に継ぐ徹夜審議が行われました。これは私にとりまして初めての経験であり、大きな戸惑いとともに国会議員としての責務の重大さを痛感させられたのでありました。
 以来、沖縄返還、日中国交樹立、大学紛争、二度にわたるオイルショックなど、時代の大きな転換期を経てまいりました。
 この間、私は微力ながら、イタイイタイ病を初めとする公害問題、財政経済問題などに取り組み、今日までただひたすら懸命に走り続けてまいりました。
 今、九〇年代に入り、冷戦の終結、ドイツ統一を初め世界は大きく変革を遂げ、日本もまた、国際社会の中にあって重要な責任を持つ立場となりました。
 私は、議会開設百年の意義あるこのときに表彰されたことを誇りに思い、今後とも、二十一世紀を展望し、世界平和と生活者のための政治を目指し、全力で働いてまいる所存であります。今後とも皆様方のなお一層の御指導、御鞭撻をお願い申し上げる次第であります。
 最後に、私が政治信条ともしてまいりました緒方洪庵先生の医師に対する戒めの言葉を引用し、ごあいさつを締めくくらせていただきます。
 一、医の世に生活するは人のためのみおのれがためにあらずということを其業の本旨とす。安逸を思はず、名利を顧みず、唯おのれをすてて人を救はんことを希ふべし。
 一、病者に対しては唯病者を視るべし、貴賎貧富を顧みることなかれ。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
     ────◇─────
 国務大臣の演説に対する質疑
#7
○議長(櫻内義雄君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。土井たか子君。
    〔土井たか子君登壇〕
#8
○土井たか子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、去る十二日に行われました海部内閣総理大臣の所信表明に対し質問をいたします。(拍手)
 世界史は今急激に大きく転回しつつあります。米ソ冷戦の終わりは確実なものとなり、ヨーロッパは東西ドイツの統合を組み込んで大きな共通の家を建設しようとしております。アジアにおいても、韓国とソ連とは関係を正常化し、朝鮮半島の南北対話やスポーツ、芸術の交流が前進しております。日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係正常化へ向けた足取りも、朝鮮労働党、自民党とともに私たち社会党も微力を尽くしたことなどによって、ようやく確かなものとなりました。(拍手)これらはすべて、人類がこの地上に初めて非戦の構造とでもいうべきものを個別、具体的に近隣と共同してつくり上げようという文明史上に特筆される出来事であると私は思うのであります。
 このときに当たって私が深く思いをいたし、誇りと感動を覚えるのは、私たち日本国民が持つ非戦の憲法のことであります。(拍手)日本人は、過ぐる侵略戦争太平洋戦争で三百万人に上るとうとい人命と貴重な財産を失いました。そしてまた、あの十五年戦争で二千万人を下回らないアジアの人々のとうとい命とはかり知れない財産を犠牲にしてきたのであります。私たちは、このかけがえのない犠牲と深い反省の中から平和憲法をこの手にしっかりと握ったのでございます。(拍手)この非戦の憲法は、このような戦争犠牲者に対する日本国民の贖罪であり、過ちは繰り返しませんという誓いでもあります。(拍手)
 あれから四十五年、たかだか四十五年しかたっていないのに、自衛隊が年ごとに増強され、今や世界第三位の軍備を持つに至りました。私たちは、この現実を大戦の犠牲者並びにアジアの人々が一体どう考えているかということに思いをいたさなくてはなりません。
 それでも日本は、二十世紀の後半まで、一発の弾丸も他国に撃たず、一台の戦車も他国に輸出せずにまいりました。そして、一兵たりとも他国に派兵せずに来たのであります。ただ乗りとか対岸の火災視などという悪罵もありましたが、憲法は完全な空文化の一歩手前にどうにか踏みとどまってきたと申せるでありましょう。(拍手)
 その間、平和憲法の理念は、日本の経済的成功と結びつけられたことも一つの理由でありますが、世界各国の心ある人々によって認知され、尊敬の念さえ持たれるようになりました。今、非戦の構造構築に向けて世界史が転回する場に身を置いて思うとき、日本の平和憲法が持つ先見性に改めて強い自信を抱くことができるのであります。(拍手)
 今国会は、イラクによるクウェートへの侵攻、併合に端を発する中東の湾岸紛争に関連し、日本がこのような世界の危機に際して平和をつくり出すのにどのような貢献ができるかを考えることが主題であります。私は、それを考えるに当たっても、ただいまの世界史のとうとうたる流れと、その中で正当な評価が与えられるに違いない我が憲法の理念とを基本に据えなければならないと信ずるものであります。(拍手)
 この点に関する総理の基本的な御見解をまず第一に伺いたいと思います。
 今回の湾岸紛争のように、国際法の基本、国際社会の基本的ルールを踏みにじったイラクの暴力的行為は、国際社会において決して許されるべきではありません。このような国際平和の破壊者に対して国連がとる行動に、日本が積極的に参加し、役割を果たすことは当然だと考えています。
 しかし、それは、平和憲法の規範を実態として、また解釈として変えるようなものであってはなりません。(拍手)あまつさえ、日本の国連加盟は平和憲法を前提として実現したことをあわせ考えるなら、日本の国連への貢献が自衛隊の海外派兵の道でないことは自明の理であります。(拍手)
 社会党は、我が国が軍事面には一切手を出さず、専ら非軍事面、そして経済面で貢献すること、そして国連の平和維持活動には、自衛隊とは明確に一 線を画した国連平和協力機構を創設して、平和のための行動に積極的に参加すべきだと考え、その具体的提案を準備いたしました。経済大国である日本の出番は、例えば難民救済、近隣諸国への緊急援助、経済制裁によって被害を受けた途上国に対する経済協力がそれであり、むしろ国際社会はそのことを日本に求めているのであります。(拍手)問題なのは、今なぜ平和主義の日本が軍事大国と同じ行動をとらなければならないのか、なぜ平和憲法に反してまで自衛隊の海外派兵をしなくてはならないのかという点であります。
 以上の見地に立って、私は総理に次の諸点をただしたいと存じます。
 政府が本日閣議決定した国際連合平和協力法案は、平和協力隊という美しい衣装を自衛隊に着せ、併任というこそくな手法で海外に派兵する内容であります。これは、自衛隊の海外派兵は憲法第九条第一項により禁じられているとする従来の政府見解を明白に踏み外し、一九五四年、第十九回国会参議院本会議において決議された自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、すなわち、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」に背くものと考えますが、総理はどうお考えか、お尋ねいたします。(拍手)
 総理は、去る八月二十九日の記者会見で、自衛隊を海外に派遣することは考えていないと断言されました。その考えは変わらないのか。変わらないとすれば、この法案を総理はどう解釈しているのか。変わったとすれば、それはなぜなのかについてお答え願います。(拍手)
 総理は、この法案が仮に今国会で成立するならば、直ちに現在の湾岸紛争地に国連平和協力隊なる自衛隊を派遣し、アメリカ軍を中心とする多国籍軍と共同の作戦を行うことを考えているのかどうか。これもはっきりとお答えください。
 多国籍軍は、あくまでその名の示すとおり多国籍軍であります。国連軍でもなく、いわゆる国連平和維持活動でもありません。総理、あなたは多国籍軍への参加はすなわち国連への協力であると考えるのか。また、国連は日本に対してそのような形の協力を求めてきた事実があるのかどうかをお尋ねいたします。
 政府は、自衛隊の海外派兵を合法化する言いわけとして、恐らくその行為が「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」としていることを挙げられると思われます。総理は、湾岸地域にある多国籍軍は武力による威嚇をしておらず、武力の行使を予想できない存在であると考えておられるのかどうかをお尋ねしたい。
 さらに、法案によれば、日本の協力隊は小火器を携行して後方任務につくのだと説明されています。近代戦において、前線のみが武力であって後方任務は武力には当たらないなどという区別ができないことは、もはや常識であります。国民の支持を得られない法律によって発足させようとしている協力隊の最高指揮官として、総理は、日本の若者たちに戦場で血を流すことを求めるのかどうか、明確な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)万一、中東地域に派遣された協力隊が攻撃を受けた場合、自衛隊は自衛権を発動して武力行使するということがあるのかどうか、明確にしていただきたい。
 次に、従来から政府は、我が国は憲法第九条で。許容されている自衛権の行使は、自国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであると解しており、集団自衛権の行使は憲法上許されないとしてきましたが、まさかこの憲法解釈を変更するお考えはないと思いますが、総理の明確な御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 特に、この際、ただしておきたいことがございます。
 政府は、従来から、国連軍の目的、任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと答弁してきました。しかし、昨日からの報道を見ると、新たな集団的安全保障という概念を導入して、武力行使の目的や任務を持つ国連軍に武装自衛隊が参加することは憲法上許されるという憲法解釈を行おうとしておられるようですが、これは本当でしょうか。国の基本法である憲法の解釈を時の政府がくるくると恣意的に変更することは許されません。このようなことがまかり通るなら、もはや法治国家ではありません。文字どおり、戦後最大の憲法の危機であります。総理の、腰を据えた、はっきりした御答弁をお伺いいたします。(拍手)
 既に政府の決定した中東支援策には、湾岸諸国への経済援助二十億ドルとともに、この地域に展開する米軍等の多国籍軍に対する二十億ドルの資金援助が含まれております。この多国籍軍に我が国が資金を供与することは、集団的自衛権をそもそも否定している我が憲法に違反する行為であると私たちは考えますが、総理はどうお考えか、次にお聞きしたい点であります。
 この法案成立によって自衛隊の海外派兵に一たん道が開かれるならば、その後は、平和の実現、自衛権の発動などの名目によって日本はその軍事力を世界各地に展開する可能性があるのではないかというのが、かつて日本の侵略を受けたアジアを初めとする諸国の懸念であると考えられます。(拍手)総理は、このような諸国に対してどのような説明をされるのでありましょうか、これもお聞かせ願いたいと存じます。
 現在、イラクには、重要施設等に拘束されている人質百四十一人、非拘束であるが出国できない日本人三百九人の在留邦人が出国を拒まれております。これらの邦人を、欧米などの諸国の人質とともに、一日も早く解放させることが政府に課せられた重大な責務であります。しかしながら、総理の所信表明では、一刻も早い解放に全力を尽くしますと述べられただけであります。
 御存じのとおり、我が党は、イラク、ヨルダンなど関係諸国に調査団を派遣し、いわゆる人質の皆さんの解放と実態調査を行ってまいりました。邦人たちは、日本政府が何かを言うたびにイラク側の日本人に対する取り扱いが厳しくなったと訴えられておられます。そして、今回の自衛隊の派兵で事態は一層悪化することが強く心配され、協力法に反対であるとの要請書に在留法人一同として署名されておられたのであります。(発言する者あり)
#9
○議長(櫻内義雄君) 静粛に願います。
#10
○土井たか子君(続) きょうここにその文書を持ってまいりましたが、ここにございますのは「イラク在留邦人一同」とございまして、あて名は「衆議院及び参議院議員の皆様」となっております。要請書でございます。後ほど直接海部総理にもお届けしたいと存じますが、その要請書の終わりにはこのようは書かれております。(発言する者あり)
#11
○議長(櫻内義雄君) 静粛に願います。
#12
○土井たか子君(続) 「イラク残留邦人の現在置かれて居る情況をご賢察賜り、この時期に於ける平和協力法案の採択は何としても見合わせて頂けます様心から伏してお願い申し上げます。」と書いてあります。(拍手)全議員にあてた要請書であります。政府は、海外派兵との関連において人質解放にどのような見通しを持っているのか、具体的に伺いたいところでございます。
 今大切なことは、フセイン大統領を国連決議に従わせること、すなわち、クウェートからの撤退や人質の解放などを実行させることであり、決して武力による制圧にその目的があるわけではございません。(拍手)だとすれば、国連を中心とする平和的、外交的手段で解決に導く以外に方法はないと思います。
 総理、この際、あなたの紛争解決のための方針、海部ドクトリンを国民の前に示していただきたい。御存じのように、ミッテラン大統領は、国連総会においてミッテラン・ドクトリンを発表しておりますが、これについて総理はどういう御見解をお持ちか、伺っておきたいと存じます。(拍手)
 総理は、「今回の事態は、我が国の平和国家としての生き方を厳しく問われる戦後最大の試練でもあります。」と述べられました。その言やよしであります。試練に耐えるとは、戦後四十五年を律してきた理念に忠実に、海外派兵をあくまで行わないことでなければならないのであります。米国の不満を和らげるために自衛隊の海外派兵に踏み切れば、その試練に耐え切れず、日本の平和主義は敗れ去ったことになるでありましょう。(拍手)総理はどのような意味で試練に耐えようとしているのか、この問題の最後のポイントとして伺っておきたいと存じます。
 以上は、いずれも国際社会において名誉ある地位を占めたいと願う日本国民にとって、なおざりにできない重要な論点であります。
 私は、国連平和協力法案の速やかな撤回を求めるものであります。(拍手)それでもなおかつ、現憲法に違反することが明白な法案の成立を求めるのであるならば、自民党はその前に憲法改正の定められた手続による発議を両院に求める必要があります。自民党総裁としてその意思があるのかどうかについての答弁も求めます。(拍手)
 さて、ひとまずこの問題をおきまして、次へ進みたいと存じます。
 冒頭にも一言触れましたが、自由民主党と社会党が力を合わせて日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係改善に努めたことは、世界の平和を前進させる近来の快挙でありました。第十八富士山丸の紅粉さん、栗浦さんのお二人は、実に七年ぶりに釈放され、無事祖国の土を踏むことができました。私は、羽田に到着した機内に迎えに来られた奥さんとお二人の、声も出ない、ただただ涙の御対面を目の当たりにして、よかった、本当によかったと胸の熱くなる思いでした。これまで懸命な努力を重ねてこられた諸先輩、今回英断をもって事に当たられた自民党の金丸元副総理、金日成主席あての親善を託された海部総理、そして、我が党のことではありますが、田邊、久保両副委員長たちも含めまして、関係者の皆さんに敬意を表し、朝鮮民主主義人民共和国の国民、朝鮮労働党の方々に衷心よりお礼を申し上げたいと存じます。(拍手)
 日朝関係改善につきましては、問題はこれからであります。(発言する者あり)
#13
○議長(櫻内義雄君) 静粛にお願いします。
#14
○土井たか子君(続) 朝鮮労働党、自民党、社会党、三党の共同宣言を基礎として具体的に発展させ、揺るぎない両国間の関係を樹立をすることは、両国の利益だけでなく、朝鮮半島における民族の統一に貢献することであると私は確信しております。政府の早急な取り組みを強く要請いたしますが、総理の御決意のほどをお聞かせいただきたく思います。
 日ソ間の関係改善も日程に上ってまいりました。来年はゴルバチョフ大統領が来日されます。これを機会に、日本政府はこれまでの政経不可分の原則なるものを大胆に脱皮し、領土問題の解決と日ソ平和条約の締結の実現に向けて積極的に行動する必要があると私たちは考えております。日ソ間の関係を前進させる方途について、総理の御見解を伺います。
 一方、日本は世界の軍縮に向かう流れに沿って、次期防の策定を中止し、積極的に軍縮を推進することを考えるべきであります。その上で、米、ソ、中、南北朝鮮に呼びかけて、アジアの平和のためのテーブルに着くことを求めていかなければなりません。さらに、日本に対してアジアが、そして世界が求めていることは、軍縮、平和への直接的貢献にとどまらず、飢餓や貧困に苦しむ人々に対する援助の拡大や地球環境保全のために積極的に取り組むことであります。これら一連の平和外交推進に対する総理のお考えをお尋ねいたします。
 今回のイラク問題への対応を見ますと、日米安保条約の問題が改めてクローズアップされてまいります。日本がアメリカのイニシアチブに基づく多国籍軍に軍事費援助と海外派兵を行うということは、アジアにおいて類似の問題が発生し、あるいはアメリカの権益保護のため米軍が出動するようなことがあれば、自衛隊の出動と負担をその都度求められる危惧が現実にあることを物語っております。現に、在日米軍駐留経費の肩がわり要求も年を追って大きくなり、来年度は基地労働者の人件費の全額負担などの要求が日本政府によって受け入れられようとしております。しかも、海部内閣の姿勢や政策を見ると、何事についてもアメリカの言いなり、ブッシュ大統領のおっしゃるとおりということが余りにも目につきます。これで日本国民の意思はどう生かされるのでしょうか。このような外交が自主外交と言えるでしょうか。それは本当のパートナーシップとは無縁であります。この点について総理の御存念をぜひ伺っておきたいと存じます。
 また、国際協力のあり方について重ねて伺います。
 我が国の政府開発援助、ODA関係予算は一兆四千四百九十四億円、世界一になりましたが、問題はその内容であります。かねてより、我が国の海外経済協力のあり方は、理念も不明確であり、かつ国民にはほとんど実態がわからない、そして現地の人々から歓迎もされない事例が数多く指摘されています。しかも、先日発表されたODA白書では、その性格を途上国への開発援助から政治的要素を重視する、いわゆる戦略援助への方向づけをしたことは見過ごせません。ODAについては、その基本原則を定めた基本法の制定こそが急務であります。国民が大きな関心を持っている国民の税金で賄われるODAについて、これ以上政府の独断で進めることをやめて、国民の合意のもとに進めるために、いわゆる国際開発協力基本法を制定すべきことを強く主張しますが、御見解を求めます。(拍手)
 このような国際協調を前進させなければならない時期に当たって、日本政府当局者の国際社会における基本的なモラルに疑いを持たれるような事件が発生したことを、私は大変恥ずかしく思います。人権の守り手であるはずの法務大臣の去る九月二十一日の人種差別発言に対し強く抗議するとともに、海部内閣がこの件について明確な形で責任をとることを強く要求いたします。いかがですか。(拍手)
 また、海部総理は、先般子供サミットに出席され、各国の首脳とともに子供たちの人権問題を協議してこられましたが、子供の権利条約は既に発効しております。私は、ことし三月の代表質問で、同条約の早期批准とそのための準備本部の設置を強く求めましたが、総理は今回の所信表明でも、これらについては一言も触れておられません。単に会議に出席するだけでは人権尊重を実行したことにはならないのであります。人種差別撤廃条約、子供の権利条約の早期批准を含めどのような行動を決意しておられるのか、ここでお聞かせいただきたいのであります。
 国際社会と日本の問題としては、ほかに米の市場問題があります。総理は、国会決議を守り、国内自給の方針を堅持するとの所信を表明されましたが、通産大臣が今月九日のアメリカのベーカー国務長官との会談において、米の市場開放問題で譲歩すると約束したとの報道がございました。これは閣内不統一であるのか、それとも海部総理の演説の方が国内向けのものであって、内閣としては既に譲歩の方針を内々決めておられるのか、はっきりしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、内政問題に目を向け、税制問題に絞ってお尋ねいたします。
 さきの特別国会で政府提出の消費税見直し法案と私たち野党の四会派提出の消費税廃止法案がともに廃案となりたことを受けて、税制問題等に関する両院合同協議会が設置され、専門者会議が重ねられております。社会党は、総合課税、企業税制、土地税制について具体的な改革の提案を既に行い、間接税についても二回にわたって提案してまいりました。しかし、自民党からは見るべき具体的な提案は出てきておりません。
 自民党の見直し案は、特別国会での審議で消費税の持つ矛盾と欠陥を解消し得ないことが明確となっており、自民党自身がその不十分なことを専門者会議で認めております。自民党は、野党が提案した企業税制、土地税制など、不公平を是正する税制改革案について具体的にこたえるべきであります。そして、消費税の矛盾と欠陥の解消策を示すべきであります。それを示すことができないのであれば、消費税を一たん廃止し、改めて国民合意の税制をつくるのが民主政治の基本にかなう方法ではないでしょうか。(拍手)自民党総裁としての海部総理の決断を求めたいと思います。
 税制問題の中でも、土地税制の改革は急を要する問題であります。土地投機で大もうけした大企業が持っている土地の含み益まで適切に吸収できるよう新たな土地保有税を創設することを初め、譲渡益課税や法人税の計算方式などを抜本的に強化し、土地神話を打ち破らなければなりません。また、自治体財源である固定資産税は土地価格に応じて適切にふやす必要がありますが、最も肝心なのは、バブル経済の犠牲者となっている庶民、すなわち小さな住居や店舗の土地への課税が大きな負担にならないように考えることであります。相続税についても同様の考え方が必要であります。その点をどうするのか、総理のお考えをお聞かせ願います。
 最後に、私は、一九五四年六月二日、参議院本会議において自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議が全会一致で可決されたとき、鶴見祐輔議員が行った趣旨説明をここで申し上げておきたいのであります。
 自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。外国においては、過去の日本の影像が深く滲み込んでいるために、今日の日本の戦闘力を過大評価して、これを恐るる向きもあり、又反対に、これを利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。さような場合に、条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。
これこそが自衛隊発足の初心であったはずであります。まさに初心忘るべからずであります。(拍手)
 海部さん、あなたは今初心を忘れ、院議を被り、憲法を捨てようとされている。私は事ここに至ってもなお、総理が日本の総理として、平和国家日本の宰相として、計画中の海外派兵をぜひとも思いとどまるよう強く強く要求いたします。
 我が党は、平和憲法を守り、自衛隊の海外派兵を断じて許さないために、党を挙げて闘うことを国民の皆さんにお誓い申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 土井委員長にお答えをいたします。
 世界史の流れの中で憲法の理念をどう考えるかという第一の御質問でありますが、一生のうち二度までも言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、善良な隣人として互いに平和に生活をし、国際の平和及び安全を維持するため力を合わせていこうという理念を、戦勝国は戦争を反省し、平和を求める国連憲章の中で書き上げたのであります。平和を愛する諸国民の信義と公正に信頼して安全と生存を保持しようと決意をし、国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う、これは戦いに敗れた日本が憲法に書いた文言であります。ともに平和を願っていこうという理念、これは共通するものであり、世界史の流れの中で今こそ公正な真の平和をこの国際社会につくっていこうという願いは、ひとしく国際社会の求めるものであると私も考えております。(拍手)
 この国連憲章並びに日本国憲法の理念を真っ向から否定する明白な平和の破壊行為であるイラクのクウェート侵略に対し、国際社会は国連を中心に一致団結して対応していくとの共通の認識を有しているところであります。平和を希求する我が国としては、こうした国際の平和と安全の回復のための国際的努力に対し、積極的な貢献を行っていくべきと考えますし、このような貢献は、恒久平和の確立という崇高な理念を掲げる我が国憲法の理念を基本として行われるべきものであることは申すまでもありません。
 従来より、いわゆる海外派兵というのは、一般的に言えば、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領空、領海に派遣することと定義されておりますが、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えられております。国連平和協力隊については、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われる国連の平和維持活動その他の活動に対する協力を任務とするものであって、これは武力による威嚇または武力行使に当たるものであってならないことを前提としておりますから、いわゆる海外派兵に当たらないのは当然だと思います。
 御指摘の海外出動に対する昭和二十九年の参議院本会議の決議につきましては、その有権的な解釈は参議院によって行われるものでありますが、自衛隊が平和協力隊の行う平和協力業務に参加し、国際の平和及び安全の維持のため平和維持活動等に協力するために海外に派遣されることについてまでもあのときの事態で想定されたものではなかったのではないでしょうか。
 また、国際の平和と安全のための活動に適切かつ迅速に協力するためには、自衛隊が長年にわたって蓄積してきた技能、経験、組織的な機能を活用して平和協力隊が行う平和協力業務に参加させることが適切であると考え、これまで政府部内で慎重に熟慮、検討した結果、今般、国連平和協力法案において示したような形で自衛隊を参加させることができるようにしたものであります。(拍手)
 国際の平和及び安全の維持のため国連決議を受けて活躍している多国籍軍への協力を行うことは、国連決議の実効性確保のための基本と考えられます。決議としてその中で加盟国の協力も求めておるわけであります。私は、安保理の決議の実効性確保のために協力する加盟国の姿勢は必要であると考えております。
 また、いわゆる多国籍軍は、累次の国連安保理決議を受けて、各国がイラクに対する軍事行動拡大の抑止及び対イラク経済制裁措置の実効性確保のために湾岸地域に展開しているものでありますが、これは湾岸地域、ひいては国際社会全体の平和と安全の維持に積極的に貢献するものであって、侵略のこれ以上の防止、抑止力としての存在であると私は認識をし、そうであるから、中東五カ国首脳との首脳会談においても、粘り強く平和的な話し合いによって湾岸危機を解決するために、それには国際社会全体の平和と安全の維持に一致協力した姿が必要であるということを確認をしてきたところであります。
 なお、御心配されましたが、多国籍軍へ自衛隊を派遣することは考えておりません。
 また、平和協力隊の派遣に当たっては、そのときどきの国際情勢等を十分勘案し、協力の内容等派遣先を含む基本的な事項は、実施計画を立て閣議で決定するなど、慎重に対応してまいる所存であります。
 また、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであると解釈をしておりまして、集団的自衛権についての政府見解は変わりません。
 多国籍軍への資金供与は違憲だというお話でありますけれども、集団的自衛権を含め、およそ自衛権とは国家による実力の行使に係る概念であるので、我が国が単に費用を支出するということは実力の行使には当たらず、我が国憲法九条の解釈上認められない集団的自衛権の行使には当たりません。
 なお、私はこの際お尋ねをいたしたいことは、党首会談に際して、土井委員長は、国連平和基金をつくってそこへお金を出したらどうかと提案をしていただきました。我々はいろいろと協力をし、多国籍軍への二十億ドルと周辺国援助への二十億ドルと、四十億ドルの額を決めて、その次の党首会談で御報告したときに、委員長は私に、それはツーレート・ツーリトルだとおっしゃいました。私は、その遅過ぎる、少な過ぎるという御批判は謙虚に承って、それでは、少な過ぎるとおっしゃるなれば、どの程度を念頭に置いておられるのか参考のために教えていただきたいとお願いをしましたが、残念ながら教えていただくことはできませんでした。御批判は御批判として承っておきたいと思います。
 また、国連平和協力法案は、我が国がその地位にふさわしい責務を果たしていくという観点から、国際の平和、安全維持のために国連が行う決議を受けて行う行動であります。アジア諸国への懸念をおっしゃいましたが、国際社会の正義を確立していく、力が弱い国を併合するというあるまじき行為を見逃すよりも、それを正していくということは、アジア全体の平和と安定にも役立つのではないでしょうか。同時に、この国連という組織の中には、中国は常任理事国として、アジアを代表する非常任理事国によって行われる決議であるわけでありますから、国連の平和維持活動、そのほかの活動に対して国連平和協力隊の派遣を行う体制を整備すること、これはこの法案の趣旨、この法案の内容、武力行使のために行くものではないということ、平和を維持確保するための協力であるということ、それらを十分に御説明をして、アジア諸国の懸念をぬぐうように御理解を求めていきたいと考えております。
 人質問題について触れられましたが、事件の根本的解決は、全世界が一丸となってイラクの考えを改めさせる必要があります。これが基本であります。各国の連帯を崩さないことが解決への早道だと考えます。私はこれまでも外交チャネルを通じて働きかけをいたしましたし、私自身もアンマンでラマダン・イラク第一副首相に対し、直接すべての外国人の自由回復を強く訴えました。今後とも、邦人を含むこれらの方々の自由回復のためにあらゆる努力を続けていきたいと考えております。
 ミッテラン大統領の提案にお触れになりましたが、九月二十四日の国連総会演説で行った和平提案については、この提案が第一段階としてイラク側に安保理決議を受諾させ、イラク軍のクウェートからの撤退、在留外国人の解放をまず実現させるよう要求しておることが重要な問題であると考えております。
 世界が新たな国際秩序を模索する過渡期特有の不安定性と不確実性をはらんだ危険な時代にあって、平和をつくり出し、また守っていくためには、国際社会を構成している各国が持てる力を結集して協力をしていくことが一番肝要なことだと考えます。この中心的な役割を国連が担いつつありますが、その中で、我が国と志を同じくする米国、欧州、アラブ諸国等、これらの国々が平和のためのイニシアチブを発揮しており、我が国としても国連を中心とする国際協調努力に最大限協力していくことが肝要であると考えております。
 このような考えに立って国連平和協力法案を提案したわけでありまして、国連を中心とした国際平和のための努力に寄与することを目的としております。憲法の基本原則の枠内で協力を行うものでありますので、これが憲法違反であるとの御指摘は当たらないと考えております。(拍手)
 日朝関係についてお触れになりました。
 今次、北朝鮮側の国交正常化交渉の提案は、同国の対日政策の転換を意味しているものと認識をいたします。我が国は、これまで北朝鮮に対して、前提条件なしの当局間対話を呼びかけた経緯もございます。右交渉にできるだけ応じてまいりたいと思います。かかる交渉は、朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れて、同半島の緊張の緩和、平和及び安定に資する形で、韓国、米国等関係諸国とも緊密に連絡しながら対処していく考えであります。
 ゴルバチョフ大統領の訪日につきましては、我が国の対ソ政策の基本方針は、戦後最大の懸案である北方領土問題を解決して、平和条約を締結することを最重要としております。日ソ関係全体を均衡のとれた形で拡大させつつ、その正常化と抜本的改善を図ることが大切であります。
 明年四月のゴルバチョフ大統領訪日が、日ソ関係の抜本的改善の重要な契機となり、日ソ関係が質的に新しい段階に入ることを強く期待をしておりますが、この点につきましては、去るシェワルナゼ外相訪日の際、共通の認識が確認をされております。今後とも日ソ双方で真剣な準備作業を進めていく所存でありますが、この中で、我が国としては、何よりも北方四島の一括返還のため、ソ連側の勇気ある決断を強く期待をいたしたいと思います。
 平和は、単にそれを唱えているだけで達成されるものではありません。真剣な努力によって獲得されるものであります。特に、世界が新たな国際秩序を模索する過渡期に特有の不安定と不確実をはらんだ危険な時代にあっては、平和を守る努力はますます重要になってまいります。
 我が国は平和憲法のもと、持てる経済力、技術力、経験を活用して、我が国にふさわしい分野で世界の平和と繁栄のための外交を従来より展開をしてまいりました。具体的には、国際協力構想のもと、国連平和維持活動への協力や軍縮への取り組みなどの平和のための協力を行っており、また、飢餓に苦しむ人々に対する援助を含むODAの拡充を強力に推進し、さらには地球環境等の人類共通の問題に積極的に取り組んでおるところであります。今後とも、新しい世界の秩序づくりのために、なし得る役割を具体的行動によって示していく所存であります。
 また、今回のイラクによるクウェート侵攻とその一方的な併合は明白な国際法の違反であり、平和国家の理念を掲げる我が国としては、断じて容認できるものではありません。また、湾岸地域の平和と安定の回復には我が国の重大な国益がかかっております。以上を踏まえて、我が国として貢献するとの観点から、我が国自身の自主的な判断に基づいて一連の中東貢献策を策定してきた次第であります。
 また、在日米軍経費負担問題については、従来から我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の効果的運用を確保していくことは極めて重要との観点から、我が国として自主的にできる限りの努力を払っているところであります。それ自体の問題として、次期防策定の作業の中で引き続き努力してまいりたいと考えております。
 ODAの基本原則は国際協力が基本であります。これは、我が国は相互依存と人道的考慮に基づき、開発途上国の経済社会発展、民生安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を実施してきておるのであります。右実施に関しては、国会に対しても、相手国の立場を配慮しつつ所要の報告、資料の提出等を行うとともに、情報の公開にも努めてきており、援助に対し国民の一層の御理解を得るべく努力をしてきておるところであります。経済協力の一層の効果的、効率的実施のためには、現行の関係法令等の枠内で運用、改善を図ってまいりたいと考えております。
 さきの法務大臣の発言は、御指摘のように極めて不適切であり、遺憾なことであると考えております。
 法務大臣に対しては、私から厳重に注意をいたしましたが、同大臣も深く反省をし、自己の発言を取り消すとともに、関係者の皆様に対し深くおわびを申し上げ、また、米国のアマコスト大使に対しても謝罪を行っているところであります。
 私も、この不適切な発言が多くの方々に不快感を抱かせ、御迷惑をおかけしたことに心を痛め、大変遺憾に思っております。法務大臣も、今回の発言については十分反省し、謝罪をしておりますので、今後は自重自戒をして慎重な言動をするものと確信をいたします。
 政府といたしましては、マイノリティー問題に対する正しい認識を日本国内に根づかせるよう啓発の努力を行っていかなければいけないと考えております。
 子供の権利条約につきましては、内容が重要かつ広範でありますが、できるだけ早期に批准できるよう作業を急いでおります。
 人種差別撤廃条約の締結につきましては、本条約に規定する処罰義務と表現の自由など憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整するかなどの困難な問題があり、この点を含め現在検討中であります。
 米問題については、私が所信表明で申し述べたとおり、内閣の一致した方針として、米問題については、我が国における米及び稲作の格別の重要性にかんがみ、国会における決議の趣旨を体し、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処していく考えであります。
 消費税の創設を含む先般の税制改革は、来るべき高齢化社会を展望し、国民の重税感、不公平感をなくすことを目指して行われたものでありました。これによりもたらされる安定的な税体系こそが、安心して暮らせる福祉社会をつくる基礎となるものと確信しており、税制改革全体は正しい選択だったと考えます。
 御承知のように、消費税を含む税制問題については、前国会での法案処理の結果を踏まえ、与野党がその責任を果たすとの立場から、税制問題等に関する両院合同協議会が設置され、専門家会議等を中心に精力的に審議を重ねてきているところであると承っております。消費税の問題については、その必要性を踏まえつつ引き続き協議を進め、各党各会派の特段の御努力を賜り、一日も早く建設的な合意が得られることを心より期待をいたしております。
 土地税制につきましては、土地基本法を踏まえ、土地という有限で公共的性格を有する資産に対する負担の適正公平の確保を図り、あわせて土地政策に資するとの観点から、その総合的な見直しを行うこととして、税制調査会において、御指摘の保有課税、譲渡課税の問題を含め、現在精力的な審議を願っておるところであります。税制調査会では近々答申の取りまとめが行われる予定でありますが、この答申を踏まえて、土地税制改革のための所要の法案を次期通常国会に提出することとしたいと考えております。
 固定資産税については、既に住宅用地のうち二百平方メートルまでは四分の三を、それを超える部分についても二分の一を軽減する措置を講じているところであり、住居併用の小規模な店舗についても基本的に同様の措置を講じているところであります。評価がえに伴う税負担の増加については、従来よりなだらかなものとなるよう所要の調整措置を講じてきており、平成三年度の評価がえについても、状況を見きわめた上で適切な対応を図ってまいる考えでおります。
 相続税につきましては、先般の税制改革において、課税最低限の二倍引き上げ、税率構造の緩和等を行い、税負担の軽減合理化を図ったところであります。その際、近年の地価高騰に配慮し、居住用及び事業用の小規模宅地等についての相続税の軽減措置の拡充を行ったところであります。相続税の改正の結果、死亡者中に占める相続税の課税割合は、昭和六十二年の七・九%から昭和六十三年度には四・六%に減少しておるところであります。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(櫻内義雄君) 越智通雄君。
    〔越智通雄君登壇〕
#17
○越智通雄君 私は、自由民主党を代表して、海部総理の所信表明に対し、外交問題を中心に質問いたします。
 質問に先立ち、来る十一月、天皇陛下の即位の礼及び大嘗祭が全国民のお祝いと世界各国からの祝福のもとにとり行われることを、心からお祝い申し上げます。
 今日の世界政治の中心課題は、何といっても中東問題であります。海部総理御自身もこのたび中東五カ国を歴訪されてこられ、大変に御苦労さまでございました。しかし、この紛争は冷戦終結後初めて起こったものであり、この問題の解決いかんがこれからの新しい国際秩序づくりに大きな影響を及ぼすことを考えれば、極めて重大な問題であります。イラクのサダム・フセイン大統領のとった行動は、国際的にも人道上も許されざる暴挙でありますが、彼らはこれを民族紛争の解決を装った格好でクウェートの国を侵攻したと言われております。総理御自身今回の問題の本質をどのようにお考えになっているのか、まず御所見を承りたいと思います。
 そもそもこうした事態は、大きな歴史の流れの中でその認識を確かめていかねばならないと思います。歴史観のない現状把握は、えてしてその方向を間違えるおそれがあります。今世紀もあと十年で終わろうとしておりますが、二十世紀に私どもは二度の世界大戦を経験し、その結果として民主主義が拡大してまいりました。
 第一次世界大戦の末期、一九一七年、世界に初めて共産主義国家が出現し、そして、それまでの間世界に大きな影響を及ぼしていたロシアのロマノフ王朝あるいはオーストリアのハプスブルク家等を初め、専制君主をいただく多くの王朝が消えていきました。それから二十八年、第二次世界大戦の終わりとともに、世界は米ソ両大国の支配するところとなり、アジアに、あるいはアフリカにたくさんありました欧州列強の植民地が次々に独立を果たす時代が参りました。その結果、今日において世界に百七十の国を数えるに至っているのでありますが、その中には独立後も経済的基盤に弱く、国民生活が不安定なものが多く見受けられ、先進諸国の協力を求める声が世界に高まっております。
 また、米ソ両大国の間では、一方で軍拡競争を続けながら、他方では二十年前から長距離ミサイルを中心とした軍縮交渉が粘り強く続けられ、殊に近年、その方法、範囲、内容について大きな進展が見られました。昨年十二月、米ソ両大国は、マルタ会談によって実質的に冷戦構造の解消を達成したわけであります。そして、ソ連を初め東欧諸国のペレストロイカが進展してきました。つまり、二十世紀の歴史は、共産主義国家が現実にはうまく機能しないことを実証したのであります。その結果、各国において国家意識が希薄となり、それと反比例して民族意識が高揚され、宗教、生活対応の違いなどを含めて、世界各地に今までとは違った形の紛争が見られるようになりました。今日、米ソ両大国は、かつての単純な与える側から協力を呼びかける側に変わり、日本、ドイツを初めとする国々の支援が世界的規模で求められているように思われます。
 政治は、現状を的確に認識し、英知に基づいて将来を予見し、政策をもって国民を誘導していかねばなりません。総理は今日の世界情勢をどのような流れと認識し、どのような方向に日本を誘導していこうとされるのか、あなたの政治信念をここに承りたいと存じます。
 今回の国会は、イラクによる中東紛争問題を中心として召集されたものであり、その解決のために必要な国連平和協力法の審議が主眼であります。そもそも我が国は、戦後四十五年間、第一に国連中心主義、第二に日米協力体制、第三にアジア諸国との親善という三本柱を軸として外交を展開してまいりました、憲法にうたわれている平和国家の宣言にはそうした理念が込められており、その前提なくしては十分達成できないものであります。
 今度の協力法は、国連の決議を受けて行われる活動に対し、日本国が行動することを前提としております。殊に今回のイラク問題に対する国連の態度は、従来にない決然とした厳しいものであり、国連中心主義をうたいながらこの国連決議を軽視した政治態度をとる政党は、我が国を世界の孤児に陥れるものであります。
 ところで、冷戦構造の解決は従来の国連をより強いものとするでありましょうか。それとも国連は、依然として各国の動きの中に世界警察としての機能を十分発揮できないとお考えでしょうか。国連中心主義を標榜する我が国として、今後の国連のあり方について総理はどのようにお考えでありますか。
 今回提出されたこの法案は、現行憲法の枠内で、かつ戦後長年にわたって積み上げられてきた解釈論の上に立って出されたものだと思いますが、こうした方向を突き進めていくと、いつかその枠内にとどまることが難しくなるのではないかという意見もあります。仮に、もし今後多国籍軍が国連軍となったり、さらには世界平和のために常設国連軍などができるとするならば、世界の中の日本としてこれに協力せねばならないと考えられますが、憲法との関係を含め、総理の御見解をお伺いいたします。
 冷戦構造の解消によって、米ソ両大国による指導から、世界は各国の協調による支配に変化してきたものと思われます。その間、我が国も経済力の向上とともに、世界の運営に対して発言力も増してきましたが、負うべき義務も非常に大きなものとなってきました。しかしながら、そうした新しい事態に適応して世界平和に日本がどのようにして協力できるかという基本原則も、国内外の法律的体系もいまだ整備されておりません。今回のイラク紛争に対してとられている国際連合平和維持活動は、従来にない全く新しいものであり、これに適切かつ迅速な協力を行うために、我が国も国連平和協力法により、国連平和協力会議の設置、国連平和協力隊の派遣等を可能ならしめる措置をとることが求められているのであります。
 既に二カ月半に及んでいる紛争の解決に対し、我が国が人員の派遣を含む協力体制を確立することは、まことに急を要するものであります。しかしながら、我が国にとってこのたびの措置は、戦後初めての試みであるため、八月以来、政府・自民党が一体となって周到かつ慎重な検討を重ねてまいりました。私どもは、一日も早いこの法案の成立を図り世界の期待にこたえたいと思いますが、法案提出に当たり、平和協力業務の最高責任者となる海部総理の政治信念を改めてお伺いいたします。
 それにつけ加えてさらに大事なことは、百四十一名の人質その他の多数の邦人がイラクに捕らえられていることであります。我が国経済の海外進出は、常に誠実にして勇敢な我が国企業人によってなし遂げられてきました。どんな炎熱酷寒の地でも、国家のため、企業のため耐えがたきを耐えながら経済活動を続け、それを通じてその国との友好関係を増進、維持してくれております。イランとイラクが戦争していたときでも、我が国と両国との関係が維持できておりました。それだけに、今回イラクによって我が同胞が人質となり、その数は西側諸国の中で一番多きを教えることは残念で仕方ありません。留守家族の皆様のお気持ちを考えると、何とかできないものかと私自身も一政治家として深い悩みを感じておりますが、総理はアンマンにおいてイラクのラマダン第一副首相とも会談されたと聞いておりますが、人質問題の解決について総理のお見通しを伺いたいと思います。
 中東はアジアの始まりであります。遠く離れていても、日本と中東にはアジア人としての共通するものがあります。そのアジアの中に、第二次世界大戦後に新しく独立し、その後隣国との紛争が続いている国がまだ幾つも残されております。また、第二次世界大戦の結果分裂国家となったところもあります。
 他方、ヨーロッパにおいては、西ドイツと東ドイツは驚異的なスピードで統合を成し遂げました。十二月には統一選挙も行われるでしょう。名実ともに、来年一月一日からドイチェランドは再生するのであります。しかし、その東西両ドイツの統合の中で絶対に見誤っていけないことは、これが自由主義による共産主義の吸収合併であったことであります。去る十月二日、東ドイツのデメジェール首相の宣言は、東西ドイツの統合ではありません。東ドイツという共産主義国家の消滅を宣言したのであります。(拍手)
 今、分裂国家は、世界の流れの中で、自由主義国家としての統合再生を目指して動くべきであり、我が国もそのために力をかすべきだと存じますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
 さらに、こうした問題解決の前提として、極東におけるソ連の態勢について認識を確かなものにしておかねばなりません。総理は、このたびの防衛白書の作成に際し、ソ連の脅威という文字を削られたと伝えられておりますが、アジアにおける米ソ両大国の出方をどのように展望されておられるのでしょうか。アジアにおける日本の立場、今日の米ソの間においての我が国のとるべき道について、総理のお考えを承りたいと思います。
 クウェートという国は、四国四県ぐらいの国土に国民二百万人、横浜市ぐらいの人口の国でありますが、世界屈指の石油王国であり、同時に巨大な金融資産を持つ金持ち国家であります。この国に働いていた何十万という多数の外国人が、戦争を逃れ、職を失い、難民生活を強いられておりますことは御承知のとおりであります。
 このため、海部総理は、このたびの中東訪問で、三カ国に対し約十億ドルの経済援助を約束されてきました。なお、総理御就任以来一年二カ月、その間に外遊先でコミットされた経済援助は、合計で九カ国、約三十四億ドルに上っております。今日の日本にとって、困っている国、苦しんでいる人々に援助することは国際的義務であります。しかし、それが日本国民の税金で賄われている点で国民は厳しい目で見ております。今大事なことは、経済援助の原則を確立し、なぜその国にそれだけの援助をしなければいけないかを国民によく理解してもらうための手段を講ずることだと思います。今日までは人道主義的な原則が優先いたしておりました。しかし、これからは、世界平和のために日本が何をなすべきかという外交戦略上の配慮も色濃く注がれるべきではないかと思いますが、経済援助に対し、総理はどのような御所見をお持ちでございますか。
 我が国の経済は、昭和六十一年後半から足かけ五年、四十数カ月にわたって景気上昇を続けております。これが来年夏まで続くならば、戦後最長と言われたイザナギ景気をも抜くであろうと考えられておりました。もちろん、そうした楽観的な見通しに対し懸念材料も幾つかありまして、年初以来株価は急速な下落とささやかな反転上昇を繰り返しながら、極めて不安定な相場展開となっておりました。他方、景気上昇を支えていた超低金利時代は終わり、日銀公定歩合を初め、金利は次第に国際水準にさや寄せされてまいりました。このように、経済運営に一段と難しさを加えたと認識されていたこの夏、八月二日にイラク紛争が起こったわけであります。
 そうしたことに最も敏感な株価は、それ以来下げ足を速め、フセイン・ショックという呼び名のもとに、十月一日には二万円台を割り込み、昨年十二月のピーク時に比べると約半値にまで下げたわけであります。市況の急変を憂慮された大蔵大臣の声明により、その後株価の推移は、やや取り戻しているものの将来に明るい展望はなく、氷河期に入ったのではないかという声もあります。株価の急落は、企業にとり資金調達を困難にならしめ、さらには資産内容を悪化せしめ、そして、一般投資家にとっては、消費に対する意欲を減退させる結果を生むものと思われます。これらのことがいずれ経済諸指標にあるいは税収にはね返らねばいいがと案ぜられるところであります。
 それにも増して、フセイン・ショックを直撃的に受けたのは石油の値段でありまして、石油取引が引き渡し後に値段を決めるという特殊な商慣習も絡んで、八月から石油製品が割高となり、既にガソリン等の値上げが行われ、今週中にも第二次値上げがあるのではないかと言われるところまでまいりました。一バレル十八ドルぐらいの水準から、中東紛争の長期化に伴い、一バレル四十ドルの声が聞かれるような昨今の情勢であります。原油価格の上昇は、言うまでもなく、我が国経済のあらゆる面においてインフレ要因を構成し、さらには経済成長の足を引っ張りかねないものとなります。これに対し、総理は、所信表明演説で省エネルギーを訴えられましたが、残念ながら、国民
の間にはまだそのような動きはほとんど見受けられず、大変心配なところであります。
 こうした経済情勢の中で、最も読みにくい要素は為替の動向であります。原則的に言えば、世界動乱においてドルは強く、国内証券市場の低迷という要因を持つ日本の円は弱くなるのが当然であります。しかるに、現実の為替相場は、今日一ドル百三十円前後という円高基調となり、ひところの百五十円前後とはけた違いな水準となっております。
 これは一つには、アメリカの財政赤字の解消がはかばかしく進んでいないということ、それに加えて、アメリカが中東紛争に大量の兵力をつぎ込んだが、これが長期戦となればさらにアメリカ経済の大きな負担となる懸念だと言われております。また、別に日本サイドで見れば、国内証券市況の低落に伴い、海外資産を取り崩して円建て資産を補強している企業が出てきたためではないかという説もあります。これらはいずれも町のうわさであり、関係者のささやきであります。
 しかし、大事なことは、円高が日本経済の強さによってもたらされたのではなくて、ドル経済の弱さによって反射的に起こったものであることを忘れてはならない点であります。現に欧州通貨に対するレートは、決して円高ではありません。相手の事情はいつどう変わるかもしれません。中東紛争の行方によって激変する可能性もあります。日本経済が外交のはざまでもてあそばれているのではないかという不安がささやかれております。
 経済が政治のすべてではありません。しかし、経済が安定していかなければ、国民生活の安定もありません。いいえ、今日の日本から豊富な経済力を抜いたら、一体何をもって日本は世界に貢献できるのでしょうか。日本の発言力はその経済力という一点に今あるのではないでしょうか。平成三年度の予算編成も間近に迫ってまいりました。来年度の経済見通しを含めて、総理の日本経済の展望についての御所見を承りたいと思います。
 あわせて、十二月に期限の参ります関税一括引き下げ交渉、ウルグアイ・ラウンドの決着についてお伺いしたいと思います。
 日本ぐらい食料品を輸入している国はありません。日本ぐらい関税を低くして外国にドアをあけている国もありません。なのに、お米のことではどうしてこんなにも悪者扱いされるのでしょうか。今申し上げましたとおり、為替の変動は全く予知できないほど大幅であります。円高ということは、安い外国食料品が日本に殺到するということであります。農業は物により一年に一遍しか収穫できません。農業経営は十年、二十年かかって発展させていくのです。農家の人たちが、もっと腰を据えて明るい希望を持ちながら生産にいそしめるようにすることが政治の責任ではないでしょうか。(拍手)日本農業に対する不安を取り除いてください。総理の御所見を伺います。
 さらに、国民の心にあるもう一つの不安は、急速に来た高齢化社会への不安であります。
 今日、両院の決議に基づく税制に関する両院合同協議会が十数回も開かれております。与党と野党それぞれが出した法案がそれぞれに廃案になり、そのようなことを繰り返していたのでは国政に対する信頼を失ってしまうという危惧から、党派を超えた合意を形成するために、私もその一員として必死の努力をいたしております。この協議会は、御承知のとおり、消費税をめぐってつくられました。したがって、消費税の制度をどうするかについて各政党の柔軟な判断と現実的な対応が求められております。一部政治家のかたくなな態度を反省していただき、その目標に向かって今後一層の御協力を各党にお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 しかしながら、税制は所得、消費、資産の三段階でバランスよく機能することが必要です。消費税よりも相続税の方が痛いと言う人もいます。消費税よりも住宅ローンの方を何とかしてもらえないかという声もあります。税制は広く全般的に検討し、判断していかねばなりません。
 その中で今一番問題になるのが土地税制であります。マイホームを持てない不満と、今いる家を維持できないのではないかという不安と、これらが渦巻く中で土地問題がいわば内政最高の課題となってまいりました。国会において土地基本法が制定され、土地問題についての方向づけが出たようなものの、国民一人一人の不満と不安はいまだ解消に向かっておりません。政策の目標が大都市圏の住宅難解消なのか、それとも土地をめぐる資産格差の解消なのか、はたまた東京一極集中排除、地方社会の振興なのか、必ずしも明確になっておりません。総理御自身、土地対策を内政課題の最重点として対処されるおつもりと伺いましたが、さらに突っ込んだ御所見を承りたいと思います。
 この臨時国会を終わりますと、十一月十二日には天皇陛下の御即位の式典が行われます。真の平成時代というのは、いわばそのときから始まると言ってもいいでしょう。この世紀の祝典に際して、多くの国々から元首が来日され、その機会にいわゆる首脳外交がこの東京で華々しく展開されるものと思います。さらには、そこに参加されないけれども、二月にアメリカのブッシュ大統領が訪日されます。四月には、両国の歴史上初めてソ連の元首ゴルバチョフ大統領が我が国に見えられます。ブッシュ大統領とは中東問題、日米経済構造協議、極東政治情勢など、また、ゴルバチョフ大統領とは北方四島、シベリア開発など、先送りすることの許されない重要課題が数多く残っております。向こう半年間のこれら首脳外交に日本として何を訴え、何を約束して世界に貢献する日本を示そうとしておられるのか、海部総理の御決意を承りたいと存じます。
 最後になりましたが、本年は、我々国会議員にとりましても、明治二十三年十一月二十九日、帝国議会創設以来ちょうど百年という輝かしい年に当たります。海部総理は議会の子と言われております。総理の手によって今日、政治改革が進められ、選挙制度の大改正も図られております。総理の並み並みならぬ御決意は既に所信表明演説で伺いましたが、この達成には国民各層の幅広い理解と支援なくしてはできないものと思いますが、その点いかがでしょうか。
 それと同時に、国会運営そのものも大きく改革し、国会と内閣のあるべき関係についても再検討されるべきものと存じます。わかりやすい国会、頼りがいのある政治を築いてこそ国会百年の記念碑となると思います。本院議員として三十年の御経験を持つ海部総理の御所見を承りたいと存じます。
 私は、自由民主党を代表して質問いたしました。我々にお答えいただくと同時に、総理、あなたの御答弁はテレビを通じて全国民に伝えられるのです。良識ある国民一人一人の胸のつかえを私がかわって率直にお訴え申し上げました。その国民一人一人の心にしみる御答弁をしてくださいますようお願い申し上げて、代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(海部俊樹君) お答えに先立ちまして、先ほどの土井委員長の御質問の中で追加されました、いわゆる国連軍の任務、目的が武力行使を伴うものであれば自衛隊は参加することが許されないとの従来からの答弁を変えるのかというお尋ねでございましたが、これらについて従来の答弁を変えるつもりはございません。(拍手)
 越智議員にお答え申し上げます。
 イラクの武力によるクウェート侵攻は、東西対立の構図が大きく変化し、国際社会が冷戦時代の発想を超えて新しい国際秩序をなお真剣に模索している段階に発生したものであり、武力による侵略、併合は決して容認されないという国際規範は、全世界の国民がひとしく平和のうちに生存する権利にかかわる最も基本的な規範であり、今回のイラクの行為は、これを既成事実化することは絶対に許されないと考えております。
 昨年来、東西関係は欧州を中心に歴史的に変化しております。自由と民主主義、市場経済を基礎として、対話と協調による世界経済構築の流れが現実のものになりつつあります。しかし、この変化は、国際社会が新たな秩序を模索する過渡期に特有の不安定、不確実を内包しております。イラクのクウェート侵攻は、東西対立の構図が大きく変化し、冷戦時代の発想を超えて世界の歴史が新しい平和への秩序を求め始めた中で、人々の希望を真っ正面から否定するものでありまして、我が国としては、みずからの責任と役割を自覚し、新しい国際秩序の構築に向けて積極的な貢献をしていきたいと考えております。
 私は、今回の湾岸危機にとどまらず、これからの時代においては、国連を中心とする国際的努力の重要性がさらに高まる世界であると認識をいたしております。平和を希求する我が国としては、国連が果たしているこの重要な役割にかんがみ、我が国の国際的な地位、国力にふさわしい責任を遂行するため、国連のいろいろな活動に対する協力を推進していきたいと考えております。
 御質問のような国際の平和及び安全を維持し、回復するために、国連憲章七章のもとでの措置として常設国連軍が創設される場合には、我が国が国連加盟国として、憲法の枠内でこれにできる限り協力するのは当然のことと考えております。
 また、今般のイラクのクウェート侵攻とその一方的併合という事態は、世界が新しい国際秩序を模索する過渡期に特有のものであり、危機の時代を迎えたことも端的に示しております。平和国家としての生き方が問われ、平和国家とは、国際社会の一員として平和を守る責任を果たす用意のある国、平和とは、国際社会を構成している各国が力を結集して獲得し守っていくものであると私は認識をしております。
 イラクにおける邦人を初めとする人質問題はどのように解決するのかというお尋ねでありますが、これは、国際社会が力を合わせてその非をイラクに諭し、国際法上も人道上も断じて許されないこの暴挙に対して、一刻も早い解放と自由な出国を粘り強く果たしていくことが大切だと考えております。本件の解決に当たっては、一丸となってイラクの考えを改めさせる必要があり、私も直接イラクのラマダン第一副首相とジョルダンで出会い、すべての外国人の自由回復を強く訴えるとともに、特に邦人の解放については強く要求を続けてまいりました。今後ともでき得る限りの外交努力を国際社会、国際機関とともに原則を守って完全解決に努力をいたします。
 分裂国家は国家の統合再生を目指して動いていると言われますが、第一義的には、両当事者間の対話により解決するのが一義的でありますが、我が国としてもできる限り協力すべきものと御指摘のとおりに考えております。
 アジアにおける米ソ両大国の軍事力をどのように分析しているのか。私は、米国は引き続きアジア・太平洋地域における前方展開戦略、二国間の安全保障取り決めを基本的に維持していくことを明らかにしており、米国がこの地域で果たしている役割に大きな変化はないものと理解をいたしております。他方、同地域におけるソ連の軍事力は、最近量的には一部の地域、幾つかの分野で減少が見られますものの、それは、欧州に比して限定されたものであり、海空軍戦力を中心に装備の質的強化が継続されている模様であります。
 我が国は、アジアの一員として、アジア諸国との友好協力関係の増進を我が国外交の重要課題としてきたところでありますが、今、自由世界第二の大国となった我が国の動向は、国際関係、なかんずくアジア諸国に対し大きな政治的な影響を及ぼすようになっており、みずからの立場、みずからの考えを表明し、相応の貢献を果たすことが国際的に強く求められるに至っていると認識をいたしております。この地域の平和と安定のために、より積極的な役割を果たしていきたいと考えております。
 これからの経済援助には、世界各国のために我が国は何をなすべきかという戦略を問うということでありますが、今世界では、東欧でも、中南米でも、アジア、アフリカ地域でも、民主化、自由化、市場経済を目指す歓迎すべき動きが出てきております。開発途上国は、累積債務問題、貧困問題、環境問題など、数多くの問題に直面しております。我が国は、このような情勢の中で、経済協力を通じて、これら国際社会の安定と繁栄のために積極的な貢献を果たしていくことが世界から強く期待されているものと認識をし、今後とも幅広い分野で、相手国との対話を十分に行いながら、我が国にふさわしい経済協力に努めてまいりたいと考えます。
 また、経済の見通しについて述べろとのことでありますが、御指摘のとおり、六十一年十一月に底を打った我が国経済は、既に四十七カ月の長期にわたって内需主導型の景気拡大を持続してまいりました。今後については、原油価格の動向などにより不透明な面がありますものの、個人消費や設備投資が堅調に推移していくと見込まれます。原油価格の上昇が我が国経済に与える影響についても、過去二回の石油危機に比べると、我が国経済の石油に対する依存度が大きく低下していることなどから、比較的小さなものになると考えられること、また、引き続き内需を中心とした着実な成長が持続するものと考えられるのであります。
来年度の見通しは来年度予算編成時に作成するのでありますが、現段階で確たることは申し上げられませんけれども、適切、機動的な経済運営によって、内需中心の景気拡大をできるだけ息の長いものとするように努めてまいりたいと考えます。
 ウルグアイ・ラウンドについてのお尋ねがございましたが、二十一世紀に向けて我が国と世界経済の健全な発展を確保するためには、多角的自由貿易体制の維持強化が必要不可欠なことは御指摘のとおりであります。政府としましては、ウルグアイ・ラウンド交渉が実質的内容の伴った形で成功裏に終結するように全力を傾注してまいる考えでおります。
 また、農政についてもお触れになりましたが、農家の方々が将来を見通しつつ、誇りと希望を持って農業を営める環境をつくり上げることが重要と認識し、本年一月閣議決定をいたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」を指針として、農業構造の改善、すぐれた担い手、農業の開発、普及など諸般の施策を総合的に展開してまいります。また、道路、下水道などの生活環境の整備などにより、住みよい農村づくりに努めてまいる考えであります。
 土地対策についてもお尋ねがありましたが、真の豊かさを実感できる社会を築いていく上において、土地問題の解決は内政上の最重要課題であります。これまでも、土地基本法を制定するとともに、大都市地域における住宅宅地の供給促進関連の二法のさきの国会における成立、税制調査会における土地税制の総合的見直しに関する精力的な審議など、「今後の土地対策の重点実施方針」に掲げられた諸施策の完全実施を図ってきているところであります。また、土地利用計画、供給、有効利用促進策、土地関連融資、公共地価評価、土地関連情報整備などなど、幅広い分野について土地政策審議会において検討していただいているところであり、今月じゅうに予定されている取りまとめが行われ次第、その具体化、実現に全力を挙げてまいりたいと思います。こういう構造的な対策の展開を図り、土地神話を打破して、土地問題の根本的な解決を図ってまいりたいと考えます。
 土地税制については、土地基本法を踏まえて、土地という有限で公共的性格を有する資産に対する負担の適正公平の確保を図り、あわせて税制調査会において現在御審議いただいておるその見直しの結果を踏まえて、土地税制改革のための所要の法律案を次期通常国会に提出することとしたいと思います。
 歴史的な変革期にある世界において、我が国としては、好ましい動きをさらに世界全体に広めていくこと、及び新しい国際秩序づくりのために、我が国の役割と責任を自覚して積極的な役割を世界に示すことが大切であると考えております。かかる観点から、今後一連の首脳会談を好機ととらえ、我が国の考えを訴え、特にゴルバチョフ大統領に対しては、日ソ関係の抜本的な改善が日ソ関係のみならずアジア・太平洋の平和と安定、東西関係の一層の改善のために重要であるとの考えに立って、今こそ勇気ある決断を呼びかけてまいりたいと思います。また、ブッシュ大統領との会談においては、日米が責任を分かち合い、グローバルなパートナーシップを推進していくことにより、日本外交の基軸である日米関係を一層揺るぎのないものにしていきたいと考えております。
 国会開設百年を迎え、政治改革の達成には国民各層の幅広い理解と支援が必要であるとお述べになりました。私も全くそのとおりだと考えます。そのために政治倫理の確立が重要であり、同時に、金のかからない、政党本位、政策本位の選挙を実現していくことが必要であります。政府といたしましては、この選挙制度審議会からいただいた答申の趣旨を尊重し、抜本的改革の成案化に向けて全力を挙げてまいる決意でありますが、改革実現のために、皆さんの御理解と御支援をお願い申し上げる次第であります。
 最後に、国会運営そのものを大きく改革し、国会と内閣のあるべき姿を再検討するなど、わかりやすい国会、頼りがいのある政治を築いていけとの御指摘でございます。
 私は、政治改革のみならず、国会と内閣の関係、頼りがいのある政治、わかりやすい国会、これはまさに国会百年が一つの記念碑として考えられるべき重要な御指摘だったと承らせていただきます。各党各会派の間で議論を重ねていただいておる問題と承知はいたしますけれども、一層の適切な結論をお出しいただくように心から期待をさせていただきます。(拍手)
    ─────────────
#19
○副議長(村山喜一君) 石田幸四郎君。
    〔石田幸四郎君登壇〕
#20
○石田幸四郎君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の所信表明演説に対し、重点項目に絞って質問を行うものであります。
 今、世界は、歴史的な転換期に直面し、世界規模での冷戦構造の清算と新しい世界秩序の形成に向けて歩みを始めており、東西ドイツの統一は、このことを象徴的に示すものであります。
 こうした中、平和憲法を持つ経済大国日本に課せられた役割は、以前にも増して重要視され、これまでの経済優先や一国繁栄のみの古い発想から脱した新しい対応、新たな進路の構築が迫られているのであります。
 今こそ我が国は、世界の平和と発展のために、世界に貢献する日本を目指し、二十一世紀を展望した取り組みが必要であります。同時に、経済的繁栄の過程で生まれた我が国自身の構造的諸矛盾、不公正を見直し、世界とともに歩む自由で公正な新しい政治、経済を構築しなければなりません。歴史的転換期を迎えている今日の時代認識と基本姿勢について、まず総理に見解を伺うものであります。
 イラクのクウェートへの侵攻と併合は、国連憲章を初めとした国際法に違反するだけでなく、その後、人質を盾にとるなど、いかなる理由にせよ断じて容認できません。事件発生以来既に二カ月半を経過した現在も、中東地域では緊迫した情勢が続いております。
 今回の中東危機は、平和のうちに解決されることが何にも増して重要であり、軍事衝突は是が非でも避けるべきであります。我が国の行うべき最大の貢献策は、平和的解決への貢献であると思うのであります。総理は、中東五カ国を訪問されたのでありますが、平和的解決にいかなる努力をされたのか、平和的解決の可能性、見通しについていかなる御認識を持っておられるのか、お伺いをいたしたいと存じます。
 冷戦終結後に起こった初めてのイラクの不法な行為に対し、世界が、また日本がどう対処し解決するのか、冷戦後の新しい国際平和秩序の形成に直接影響をもたらす重大な問題であります。
 総理、我が国の石油輸入の七割を依存している地域での国際紛争に対し、経済大国としての国際的地位にふさわしい貢献は何か、国際平和秩序の形成にいかなる役割を果たしていくのか、世界の中の日本としてのあり方が問われているのであります。
 一方、国際紛争解決に武力を行使しないという平和憲法の不戦の誓いは、第二次世界大戦の惨劇を体験した日本が、新たな生存の原理として世界に表明したものであります。不戦こそ日本の世界平和論の原点であり、戦後約半世紀にわたって営々として築き上げてきた平和国家としての大切な平和原則を、今回の中東危機に対する貢献策と称して崩壊させるようなことは、断じて許されないことを肝に銘ずべきであります。(拍手)
 総理、今国政に求められているのは、この二つの議論に満足するような貢献策を考えることであります。私ども公明党は、その作業が可能であると確信をいたします。
 公明党の基本的な主張を要約して申し上げれば、今回の中東危機に際して検討されている我が国の国連平和協力については、憲法厳守、国連中心主義を原則とすべきであると考えます。特に、海外派兵並びに集団的自衛権行使の禁止など、その平和原則を厳守すべきであります。
 イラクのクウェート侵攻、併合は突発的事態であり、緊急な対応が迫られていることから、これは時限立法として処理すべきだと考えます。そして、今後将来起こり得るかもしれない問題に対しては、これとは別に、中期的に十分な論議を行い、恒久立法として対処すべきであります。
 政府が提出されようとしている国連平和協力法案は、緊急に対処すべきものと、今後に想定されるものとを混同させております。国連平和維持活動、今回のような多国籍軍、そのいずれもが性格、対応が異なることを踏まえ、今回はこれを明確に分離し、次の段階として常設の国連平和協力隊の本格的機構を創設すべきであります。
 そこで、今回の中東紛争に関しては、時限立法、任務は平和憲法の趣旨にのっとり非軍事に限定し、医療、輸送、通信、建設の分野とする、難民救済については、これを積極的に行うなどとすべきであります。また、自衛隊は組織としての参加、併任は認めるべきではなく、小火器の携行も認めないとするものであり、これが憲法厳守の中で許されるぎりぎりの貢献策であると私どもは確信をいたします。(拍手)
 総理、こうした公明党の基本的立場から政府の考えを見まするに、極めて疑念の多いことを指摘せざるを得ません。
 第一に、今回の平和協力法案の考え方が、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使と海外派兵に道を開きかねないことであります。従来、政府の憲法解釈は、集団的自衛権の行使は、憲法の容認する自衛の措置の限界を超えるものであって、許されない、また、我が国が武力行使を許されるのは、我が国に対する急迫不正の侵害に対処する場合に限られ、他国に加えられた武力を阻止することを内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は憲法上許されないと、明確なものでありました。
 ところが、政府の方針では、協力隊に参加する輸送のための自衛隊の艦船、航空機は通常の武装をしており、武力行使はあり得ることになります。しかも、武力行使と後方支援は、理論的には分けられても、実態的には区分は困難であり、武力衝突が起こった場合の後方支援は集団的自衛権の行使であるとの指摘を免れるものではありません。明らかに集団的自衛権行使の解釈を変更し、なし崩しにしようとするものと言わざるを得ませんが、総理の見解を求めます。
 今回の措置は、自衛隊の海外派遣にとどまらず、憲法で禁止している海外派兵につながるおそれがあります。派遣と派兵をどう分けておられるのか伺いたいのであります。さらに、平和憲法に対して総理はどう理解をしておられるのか。自民党の一部には改憲論という議論があるのでございますけれども、どう考えておられるか、あわせてお考えを伺っておきたいと存じます。
 第二に、この問題に対する海部内閣のリーダーシップの欠如と原則のなさについて言及せざるを得ません。
 総理は、八月二十九日の記者会見において、自衛隊の海外派遣は考えていないと表明し、九月二十九日には、武力行使を伴わない非軍事面での貢献が目的で、攻撃を受けるような場面に協力隊が行くことは想定していないと述べ、十月八日には、自衛隊に輸送手段を協力隊が委託、要請する枠組みとすると述べるなど、国の基本問題について最高責任者である総理の方針が二転三転したのであります。しかも最終的には、これらの総理の見解とさらに異なるものになっております。これをどう説明されるのか、責任ある答弁を求めます。(拍手)
 第三に、具体的な問題についてお伺いします。
 自衛隊の補給艦や輸送機は、自衛隊法に基づく武装をし、輸送する途中で攻撃されたら応戦は可能とされております。
 一、応戦という事態になれば、派遣と派兵の区別は全く困難であります。派兵せずという憲法上の原則はいかなる形で歯どめをされるのですか。
 二、出動する輸送のための自衛艦や輸送機は、平常から武器を装備しており、当初堅持していた非武装という趣旨は完全に変更したのか。
 三、また、自衛隊は、他の国々から見れば軍隊であります。今回の自衛隊の派遣は、平和協力隊であるとしても、その主力は自衛隊であり、武器を装備して、しかも応戦可能としているのでは、他の国々から大きな危惧を持たれるのは必至であります。アジアの近隣諸国の危惧にどう対応されるのか伺いたいと思います。
 四、平和協力隊と自衛隊を併任することによって、自衛隊を組織として紛争周辺地域に直接派遣できるようになっております。我が国は従来、自衛隊の海外派遣はしないという戦後の大方針であったはずでありますが、この大方針を変更されたのですか。
 五、従来、どちらかといえば消極的態度をとってきた国連平和維持活動には今後どんな方針で対処されるのか。それぞれ明確なお答えを求めるものでございます。
 第四に、国連平和協力隊の性格と目的について伺います。
 平和協力隊の対象は、国連平和維持活動やあるいは今回のイラク問題におけるようないわゆる多国籍軍への協力が含まれていると解されます。しかし、この二つの活動は、その性格や武力行使の有無など、対応は同一ではありません。国連平和維持活動は、紛争終結後に、紛争当事国の要請を受けて、国連決議に基づいて行われる活動であり、国連により派遣される監視団や平和維持軍をいい、受け入れ国政府の同意に基づいて現地に派遣され、紛争当事国に介在することによって、休戦や停戦の監視、当該地域内の治安維持といった任務を行うものであります。今回の場合の多国籍軍は、各国がそれぞれの判断で出動、指揮権もそれぞれ各国に属しております。
 これら時間をかけて十分な議論をすべきものと緊急に対応を迫られているものを混同し、今回の国連平和協力法に定めるのは余りにも乱暴であります。総理の明快な見解を重ねて求めるものであります。
 また、国連平和協力隊は、国際の平和及び安全を維持するために国連が行う決議に基づき、またはその決議の実効性を確保するために活動を行うとされております。しかし、国連が行う決議はさまざまでありますから、その決議の実効性を確保するというだけでは、平和の活動と認める基本的要件が余りにも不十分であります。これでは政府の恣意的判断によって、協力隊という名のもとに自衛隊が他国に派遣されかねません。出動を決定する際の原理原則を明確にすべきことは当然であると考えますが、総理の御見解を承りたいのであります。
 我が党は、金と物だけでよしとする態度ではなく、さきに申し上げたように、今回の湾岸危機は時限立法による緊急対策とし、中期的な対応については、十分な時間をかけ国会で論議し、国民の理解と支持のもとに、法律の整備も含めて行うべきであることを改めて提案をいたします。また、国連中心主義の立場から、武力行使を目的とせず、休戦や停戦の監視、当該地域内の治安維持といった任務を行う国連平和維持活動、いわゆるPKOについては、積極的に参加の方向で検討すべきであると思います。
 それぞれ、御見解を承りたい。
 次に、自衛隊の海外派兵について重ねて伺います。
 昨日からきょうにかけて、政府は、国連憲章で言う国連軍に対して武力行使を前提とした自衛隊が参加することは憲法上許されるとする新しい政府解釈、すなわち集団的安全保障措置を検討していると報道されているのであります。もしこれが事実だとすれば、これは集団的自衛権に関する従来の政府解釈の重大な変更であります。確たる答弁を求めたいと存じます。将来の国連軍の内容が全く不明なままに、今直ちに自衛隊の海外派兵まで可能にしようとするのは、全くの行き過ぎであり、断じて私どもは容認をできません。(拍手)多国籍軍への支援のあり方について、まだ十分な世論の合意を得ていないときに、こういう重大な問題を持ち出すのはどういう意図なのか、総理の確たる見解を伺いたいと存じます。
 さらに、次の諸点について伺いたい。
 さきに政府が貢献策として定めた総額四十億ドルの支出についてでありますが、今後この四十億ドルを具体的にどのような目的に、どのような手段で使用されるのか。また、その予算措置は、予備費でうやむやに支出するのではなく、財政民主主義の観点から、きちんと補正予算を組み、国会にその適否について承認を求めるべきであると考えますが、どう対処されますか。さらに、今後の各国からの経済援助、技術援助の要請にどのように対応されようとしているのか、方針を伺いたい。同時に、非軍事面での国際協力が我が国の堅持すべき立場でありますが、それには国際世論を納得させるだけの哲学や基本方針がなければなりません。あわせて総理の見解をお尋ねいたします。
 今、クウェート周辺では、イラク侵攻によって多くの人々が家や財産を奪われ、食糧も十分確保できないまま難民生活を余儀なくされております。我が国がイラク問題での貢献を考えるとき、人道上の立場から、こうした難民の救済対策に真っ先に取り組み、貢献策の中心に据えて実施すべきであると考えますが、総理の所見を伺います。
 また、人質問題について、ラマダン・イラク第一副首相に人質解放を要請されたことは、その労を多といたします。しかし、現状は依然として好転をしておりません。日本人を含む人質の食糧、医療についての状況悪化が心配をされております。また、イラクに在留する人質以外の人たちについても、生活費を含め同様の懸念が伝えられております。そこで、今後の見通しはどうなのか、どのような可能性を探っておられるのか、しかと御答弁を伺いたいと存じます。
 日本の中東貢献策に関連し、米国議会では在日米軍の駐留経費の全額を日本政府が負担すべきだといった決議が行われ、また、ブッシュ大統領からも、さきの首脳会談で日本側の負担増を要請されたと聞いているのであります。我が党は、米軍駐留費を日本がある程度負担することはやむを得ないと考えておりますが、中東貢献策の一環というのでは余りにも筋違いと言わざるを得ません。総理の見解をお伺いをいたします。
 ヨーロッパから始まった東西のデタントがようやくアジアにも波及し、冷戦構造の転換と新しい枠組みづくりというデタントへの動きが見られます。最後に残った唯一の分断国家となった南北朝鮮問題では、韓ソ国交正常化が実現し、中韓関係の改善、米朝対話など、緊張緩和と平和的解決へ向けて目まぐるしい動きを示しております。
 特に、過日、自社両党の代表団が朝鮮民主主義人民共和国を訪問し、日朝関係改善のために一定の成果を挙げられたことに敬意を表するものであります。また、懸案となっていた第十八富士山丸の船長と機関長の釈放、帰国が実現したことはまことに喜ばしいものであります。
 総理は、今後予定される日朝国交正常化のための政府間交渉についてどのような方針で取り組まれるのか。また、南北統一問題の両国の努力に配慮しつつ、しかも、これまでの日韓友好関係を損なうようなことがあってはなりません。自社両党と朝鮮労働党の三党の共同宣言の中で述べられている戦後の四十五年償いの問題は、理解に苦しむところであります。総理はこの点をどう受けとめられているのか、伺いたいと思います。
 また、我が国にとって大きな懸案である日ソ関係の改善も、ゴルバチョフ大統領の来春訪日によって大きな前進が期待されるのであります。両国間のこのところの要人の往来は、その環境づくりに重大な役割を果たしております。私は、政経不可分といったような態度はもはや政府もとっていないと思いますが、この点についてどう考えておられるのか、ソ連の期待する我が国の経済協力についてはどういう方針なのか、お伺いをいたしたいのであります。また、北方領土問題を含め、日ソ首脳会談に対する総理の決意とその対応をお伺いしたいと存じます。
 イラクのクウェート侵攻以来、原油価格が急騰を続け、最近ではスポット価格では一バレル三十五ドル、四十ドルが現実のものになろうとしております。このような状況が続けば、日本経済の先行きに大きな影響を及ぼすことは必至であります。特に物価への波及は避けられず、石油製品だけでなく諸物価の値上がりにもつながりかねないのであります。政府は、原油価格の上昇に対して、便乗値上げの防止を言うだけではなりません。需要期を控え、これ以上の原油価格の上昇を防ぐために、米国やヨーロッパ諸国と協調し、石油備蓄の放出や原油先物市場の投機的な売買に対する規制、さらには途上国に対する支援などに取り組むべきであると私は思います。総理に、今後の原油需給の見通しとこれらに対する見解をお尋ねするものであります。
 八六年十一月以来拡大が続いてきた我が国経済は、ここへ来て景気のマイナス要因が目立ち始めております。原油価格の上昇に加え、株の下落、金利の上昇、企業収益の鈍化など、一歩間違えば日本経済は停滞と物価高の危険さえはらんでいると言っても過言ではありません。ここへ来ての円高・ドル安も、世界経済から見ると楽観は許されないのであります。総理は、経済の先行きをどのように認識し、どのような経済財政運営を進められようとしているのか。また、米国経済の低迷も必至でありますが、日本経済及び世界経済に与える影響について、あわせて総理の認識をお伺いをいたします。
 このような状況の中で、来年度予算編成が問われております。来年度の予算編成方針についてどのような考えをお持ちなのか、お示しをいただきたいと思います。
 消費税の問題についてお伺いをいたします。
 来年度予算の歳入の大きな部分を占める消費税については、その決着をめぐって現在税制に関する両院協議会で精力的に協議されているとはいえ、いまだに見通しがついておりません。我が党はかねてから、消費税は白紙に戻し、税制の再構築を行うよう主張しているものでありますが、消費税問題の決着について総理はどのように考えておられるのか、答弁を求めます。
 今、国内政治に問われていることは、政治が国民の信頼を取り戻して、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現のために総力を挙げることであります。ところが現実には、政治改革は一向に進まず、国民生活は国や企業の強大な経済力にむしろ圧迫され続けています。
 そこで、総理に次の点をお尋ねしたいと思います。
 海部内閣は、発足当時、政治改革を最重要課題として取り組むと国民に公約し、また、この秋には改革案を提示することになっておりましたが、何ら実行されておりません。
 総理、選挙制度改革に内閣の命運をかけるとは、小選挙区比例代表並立制の導入に命運をかけるということでしょうか。政治倫理の確立や政治資金の改革の問題はどうされるのか、また、法案はいつ出されるのか、御決意のほどを伺います。
 さらに、近年の異常な地価高騰の中で、土地対策は今最大の内政課題であります。今、政府税制調査会では、土地対策の重要な柱である土地税制について最終の検討がなされていますけれども、ここで私が特に指摘したいのは、一つには、一定条件の法人を対象とする仮称新土地保有税を創設し、地価高騰の最大の原因と言われる法人の投機的土地取引と土地買い占めを抑制して、土地の有効利用を促進することであります。
 また、二つには、法人の土地譲渡益に、長期、短期を問わず、すべてに完全分離課税方式を導入すべきであるということであります。法人は土地の譲渡で利益を上げても、本来の事業で赤字が出れば相殺する損益通算が認められており、分離課税される個人と比べて不公平だとの指摘があります。この二点について総理の御見解を伺いたい。
 さきの平成三年度の税制改革要求で、建設省は、昨年に引き続き家賃控除制度の創設を要求をいたしております。賃貸住宅生活者の過重な家賃負担の軽減を図るために、我が党はかねてより、家賃控除と家賃手当を併用した家賃補助制度の創設を主張してきたところでありますが、総理はこの家賃補助制度の創設についていかに考えておられるか、お伺いをいたします。
 最後に、梶山法務大臣の人種差別発言、チェルノブイリ原発事故問題、水俣病訴訟の三点について伺います。
 梶山法務大臣のいわゆる人種差別発言は、多民族国家の人権問題に極めて認識を欠いていたことが露呈されたものであり、こうした発言が我が国の国際国家としての品位を傷つけ、信用を失墜させることは見逃しにできない問題であります。しかも、職務上人権を擁護すべき立場にある法務省の最高責任者の発言だけに、その責任は重大であります。総理はこのような発言をどう受けとめ、どう対処されるのか、お尋ねするものであります。
 チェルノブイリ原発事故による被害は、四年経過した現在でも広がっており憂慮されております。国際原子力機関や世界保健機構等において放射線障害者の救援策が進められ、既に世界数カ国が放射線障害者を受け入れ、治療や費用負担などの救援を行っています。我が国は、国際貢献、人道的観点から、被爆国としての経験を生かし、放射線障害者の受け入れを初め、資金援助、医療協力、情報提供、専門家の派遣等積極的に協力すべきだと考えますが、総理の見解を承ります。
 さらに、先般、水俣病東京訴訟と熊本訴訟において和解勧告が出され、熊本県とチッソ株式会社は受諾の意向を明らかにしましたが、国は拒否しています。この和解勧告に応じることは困難とした国の姿勢は、被害発生から既に三十四年を経過し、長い間苦しんできた被害者に対する措置として、果たして妥当なものと言えるでしょうか。長い年月をかけて審査して、なお和解の道が妥当とした司法の苦しみの判断を政府は軽視すべきではありません。それにも増して、三十四年といえば三分の一世紀、この間に苦しみ抜いてきた数多くの人々に政治は無力であっていいのか、一片の愛情すら示し得ない政治があっていいのでしょうか。
 総理、もはや決断しかございません。見解をお伺いをいたし、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 石田委員長、お答えを申し上げます。
 今日の時代認識と国政の基本姿勢につきましては、歴史的な変革期にあること、冷戦時代の発想を超えつつあるということ、自由と民主主義と市場経済を中心として協調と対話による世界平和構築の流れが現実になりつつあるということ、委員長の御指摘に私も大筋において同感でございます。(拍手)
 また、これに対する基本姿勢として、特に今回の湾岸危機について、国際秩序の根幹にかかわる問題であり、国際社会の平和を守る能力が試されている事態であるということ、私もそのように厳しく受けとめて、今後、国際社会を構成している各国が互いに力を合わせて協力をしながら、このせっかくの平和をいかにして守り、育てていくかということについて、我が国は国際社会の主要な一員として積極的に役割を果たしていきたいと考えております。(拍手)
 中東五カ国訪問においてどのような努力をしてきたかというお尋ねでありますが、湾岸五カ国の首脳はそれぞれ、現下の危機を深く憂慮しておりました。そうして、この危機が長期化しつつあることについて、何とかこれを解決したいが、それは粘り強く努力することによる平和的解決であるという点について、皆が一致をいたしておりました。私は、そのために、国連の安保理決議による経済制裁を厳格に遵守していくことを通じて公平かつ平和的解決が図られるべきものであると考え、我が国の中東問題に対する基本的立場を明確に伝達するとともに、深刻な経済的困難に直面しておる周辺諸国に対する支援を初めとし、また、難民の救援その他について貢献策を発表をし、粘り強く国際社会が連帯して手をとり合って平和的解決への努力を続けるよう主張してまいりました。
 また、人質問題につきましても、国連事務総長や国際関係機関等とともに努力はいたしておりますが、イラクのラマダン副首相とも直接話し合う機会を持って、さきの国連決議に従って、イラクが人道的あるいは国際法違反の立場を一日も早く反省して解放すること、同時に、この事態の根本的解決のためにクウェートからの撤退というイラク側の決断が必要であることを強調してまいりました。今後とも、国際社会の一致協力した努力が必要であると考えております。
 また、集団的自衛権についてのお話でございましたが、国連平和協力法は、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われる国連の平和維持活動その他の活動に対して、協力隊の派遣及び物資協力によって協力を行うための実施体制を整備することを目的とするものでありまして、武力による威嚇または武力の行使に当たる行為は行わないという憲法の原則の枠内で協力を行うことが前提でありますから、国連平和協力法が集団的自衛権の行使を行わないとの前提をなし崩しにしたり、あるいはこれを変えたりするものではございません。(拍手)
 今回、国連平和協力隊の隊員の参加が可能となること、派兵と派遣とどう違うかというお話でしたが、派兵とは、御承知のように、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領空、領海に派遣することであり、いわゆる派遣とは、武力行使の目的を持たないで部隊を他国へ派遣することであります。
 また、憲法改正をどうするかということでありますが、憲法の基本原則は守ってまいりますし、この理念は高いものだと思っておりますから、国の基本法である憲法を改正することについては、極めて慎重な配慮を要するものであり、政府としては現在、憲法を改正する考えは持っておりません。
 自衛隊が長年にわたって蓄積してきた技能、経験、組織的な機能を活用して平和協力隊が行う平和協力業務に参加させることが適切であると考え、これまで政府部内で慎重に熟慮、検討した結果、今般、本日提案した法案において示したような形で平和協力隊に自衛隊を参加させることができるようにしたものであります。
 その際、平和協力業務に参加して輸送を行う際、若干の武器が装備されている場合に、これを取り外すことはないとしても、これらの船舶、航空機が攻撃を受けるようなことのないよう、その時点での国際情勢を十分勘案して、輸送のための航路の選択など、輸送の態様については万全を期していく所存であります。
 また、アジア諸国の危惧についてもお触れになっておりますが、我が国がその地位にふさわしい責任を果たしていくための観点から、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われるものでありますが、国連が行う決議には、アジアの安定にも、アジアの平和にも直接影響する問題がございます。中国もアジア地域の代表も入っての安保理の決議であり、皆が必要と認めておるこの決議の実効性を確保するための行動でありますから、このような点について我が国が国際社会において果たすべき役割を十分近隣諸国に対しても説明を行い、理解を求めていくことが不可欠であると考えております。
 自衛隊のいわゆる海外派遣とは、武力行使の目的を持たないで部隊を派遣することであり、このような海外派遣は憲法上許されないわけでなく、これを実施するために、法律上自衛隊の任務、権限として規定されてきているところであります。国連の平和維持活動その他の活動に対する協力のために、海外で平和協力隊が行う平和協力業務に自衛隊を参加させることは海外派遣と考えております。
 国際の平和と安全の維持を主要な目的とする国連は、これまで東西対立という国際社会の基本的構造に阻まれまして、本来の役割を十分に果たすことができない状況でありました。しかし、米ソの協調関係の進展を初め、東西関係の変化から、世界各地の地域紛争解決へ向けての国連の積極的な役割、機能への期待が高まってまいりました。特に、今般のイラクのクウェート侵攻問題においては、国際社会の一致した行動の中心的役割を国連は果たしております。
 我が国は、これまでも国連による平和維持活動に対し、資金面での協力を行うとともに、国連のアフガニスタン・パキスタン仲介ミッション、国連イラク・イラン軍事監視団への政務官の派遣、ナミビア、ニカラグアへの選挙監視要員の派遣など、要員派遣面でも協力を推進してまいりました
が、今後より適切に、より一層積極的に平和維持活動に貢献してまいりたいとの考えから、このような対応策を考えた次第でございます。
 協力法において、国連平和維持活動や多国籍軍へのかかわりといった対応を迫られる、時間をかけて議論せよとのお話でございます。
 私は、今後ともこのようなものでいろいろな関係が起こってくる場合には、それぞれのことに対して未整備あるいは未熟な部分に対しては、中長期的な見地から我が国の国際的責任に見合った貢献を果たしていくためにも、検討は続けていかなければなりませんが、今回の国連平和協力法は、まさにこのような課題に対応するものとしてまとめ上げたものでございます。武力による威嚇または武力の行使に当たる行為は行わないという憲法の枠内で行われるのが前提でありますし、また業務を実施するに当たっては、派遣先を含む基本方針について、国連平和協力会議の諮問を経て具体的な実施計画を閣議で決定するなど、慎重に対処してまいる考えであります。
 また、今回の問題について時限立法にしてはどうかというお話でございますが、人的協力及び物的協力を実施するための国内の体制はまだ未整備であり、実施体制を整備することは、単に今回の中東危機に対する対策を超えた焦眉の急の課題であると考えて、国連平和協力法をつくった次第でございます。
 また、将来、国連軍の内容が不明のまま集団的自衛権に関する憲法解釈を変更し、自衛隊の海外派兵まで可能にしようとするのは行き過ぎであるとおっしゃいますが、自衛隊の海外派兵を可能にしようとしておるものではありませんし、将来国連軍ができた場合の国連への協力のあり方について、研究をしてはおりますが、集団的自衛権に関する憲法の解釈の変更は、これは考えておりません。(発言する者あり)
#22
○副議長(村山喜一君) 静粛に願います。
#23
○内閣総理大臣(海部俊樹君)(続) また、政府が貢献策として決めた四十億ドルの具体的使途とおっしゃいますが、これは湾岸における平和回復活動に対する協力として、輸送協力、物資協力、医療協力、資金協力、この四つの分野に対する協力を、また中東関係国に対する支援として、周辺国の支援、難民援助の二つの分野に対する協力を決定しておる次第であります。
 予算措置は予備費ではなく補正予算ということでありますが、中東貢献策のうち、湾岸における平和回復活動に対する協力について、これは我が国の地位にふさわしい貢献が求められておること等にかんがみ、可及的速やかに時宜を逃さず我が国の貢献策を実施に移す必要があったため、十億ドルの協力に関しては、去る九月二十一日の閣議において予備費支出の決定を行ったところであり、また、九月十四日に発表した、新たな十億ドルを限度とする追加協力の財源については、直ちに追加の協力を行うことはなかなか容易ではありませんので、今後の中東情勢の推移を見守りつつ、財源事情を見きわめた上で適切に対処してまいる所存であります。
 今後湾岸地域各国からの経済援助にはどう対応するかというお話でありますが、エジプト、トルコ、ジョルダンに対しては、今次非常事態に対応する例外措置としての総額六億ドルの緊急商品借款を含む経済技術協力を実施することとし、エジプトに四億ドル程度、トルコに三億ドル程度、ジョルダンに二・五億ドル程度の協力を実施する考えである旨発表いたしました。今後の推移については、関係各国及び国際機関とも協議しつつその具体的内容を決定していくことといたしますが、我が国としては、関係国際機関を含む国際的な支援体制がつくられるよう積極的に働きかけていく考えでおります。
 中東の湾岸危機は、世界が新たな国際秩序を模索する過渡期に特有の不安定性の中で起こった、危険な時代を迎えたということを端的に示すものであります。この過渡期の時代における国際社会の平和を守る能力が試されておる事態でありますから、我が国としては、平和国家としての生き方が問われておると受けとめております。平和国家とは、国際社会の一員として平和を守る責任を果たす用意がある国のことであり、平和とは、本来、国際社会を構成しておる各国が互いに力を合わせて協力しながら獲得し、また守っていくべきものと考えております。(拍手)
 私は、世界第二の経済大国であり、先進民主主義国の主要な一員として、平和を守る国際的責任を分担しなければならないという立場にありまして、資金面での応分の負担とともに、平和の確保と維持は結局のところ人間の努力そのものによって可能となるということを思い起こし、人の面でも積極的に参加することが極めて重要であると考えております。(拍手)
 また、今回の中東貢献策の一環として、イラクのクウェート侵攻によって発生した避難民救済、本国帰還のために積極的に貢献するとの立場から、関係国際機関及びジョルダン政府の支援要請にこたえて、合計二千三百万ドルの資金協力、救援物資の供与を実施し、難民援助については、今後ともいろいろな現地の状況等を見つつ積極的に対応してまいる考えであります。
 人質問題については、国際社会が一丸となってイラクに圧力を加えつつ説得を行い、イラクが人質を解放する、かかる見地から、私は人道的、国際的な解決が図られることを強く願っております。ラマダン・イラク第一副首相に対しても直接このことについては強く申し入れをした次第でございます。
 拘束されている邦人と留守家族の皆さんの御苦衷は察して余りあるものがございますが、出国のため一層の努力を要請し、特にまたイラクに拘束されている邦人と留守家族の方々に、この問題の一刻も早い解決のためには、結局、国際連帯を通じて対処するのが一番の早道であると考えておりますので、御理解と御支援を心からお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)
 在日米軍の駐留経費にお触れになりましたけれども、在日米軍の駐留経費は、我が国とアメリカとの間の日米安保体制の効果的運用を確保していく上において重要との見地から、自主的に努力を払ってきているところであり、それ自体の問題として、次期防策定の作業の中で引き続き努力をしておるわけであります。
 日朝国交正常化のための政府間交渉についての基本については、今次北朝鮮側の提案は、同国の対日政策の転換を意味しておるものと認識をいたしております。我が国は、これまで北朝鮮に対し前提条件なしの当局間対話を呼びかけてまいりました。右交渉に応じて、朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れ、同半島の緊張緩和、平和及び安定に資する形で、米、韓など関係諸国とも緊密に連絡をしながら対処していく考えでおります。
 また、自、社、朝鮮労働党三党による共同宣言中、戦後四十五年の償いについての見解ということでありますが、政府としては、累次の機会に、植民地時代の三十六年間にわたる朝鮮半島との過去の関係については深い反省と遺憾の意を表明してまいりました。政府としても、日朝間に請求権の問題が依然として未解決のまま残っていることは十分認識いたしております。戦後、きょうまでの四十五年間については、この間日朝関係が疎遠ないし不正常な関係にあり、結果として請求権問題が話し合われてこなかったことは事実として認識しております。いずれにせよ、請求権問題については、今後日朝当局間で誠意を持って話し合ってまいりたいと考えます。
 日ソ関係についてお触れになりましたが、我が国は、北方領土問題を解決して、平和条約を締結することを最重要視しております。全体で均衡のとれた形で日ソ関係を改善していきたいと考えております。北方領土問題の解決を棚上げにしたまま、経済関係のみを進めるとの無原則な政経分離の方針はとらないとの方針でありますが、現在の混乱したソ連経済に対して有効な協力は、改革の青写真を描くための技術的支援、そして経済改革調査団を受け入れたり、さらに、近く来日を予定されておる調査団の受け入れも行い、知的協力を積極的に行っていきたいと考えており、いわゆる経済援助については、ヒューストン・サミットで指摘されている諸問題や、さらに北方四島返還問題等を含む日ソ関係全般を勘案しながら検討すべきものであると考えております。
 日ソ首脳会談に臨む決意いかんということでありますが、戦後最大の懸案である北方領土問題を解決して、平和条約を締結することが大切であり、明年四月のゴルバチョフ大統領の訪日が日ソ関係の抜本的改善の重要な契機となるべきであると私は考え、その決意で対応したいと思います。
 原油問題についてお触れでありますが、今年度下期の原油需要は、厳冬なのか否かによって相当変化もあろうと思いますが、前年度同期比四・五%程度の増になるものと見込まれております。現在の価格動向は、国際石油需給の実勢に基づくものというよりは、むしろ先行き不透明な中東情勢の不安を受けた心理的な要因によるものがあると考えております。今後とも、国際エネルギー機関等を通じて原油価格の安定化に努力しておるところでございます。
 日本経済の先行きについて、経済財政運営を進めるに当たっては、既に四十七カ月間の長きにわたって内需主導型の景気拡大が持続されております。今後、この内需拡大を中心とした景気の拡大を積極的に図るように、適切な経済運営に努めてまいりたいと考えます。
 また、アメリカ経済の動向と影響のお尋ねでありますが、実質成長率で見ますと、増勢は大きく鈍化してきておる。一方、我が国の経済は個人消費、設備投資を中心とした内需主導型の景気拡大を続けておりますから、直ちに大きな影響が来るとも考えませんが、今後の推移いかんによっては、世界全体の輸入の一割以上を占める米国の輸入の減少などを通じて、世界経済に影響が及ぶ可能性もあり、今後ともその動向には十分注目していく必要があると考えます。
 来年度の予算編成方針とのことでありますが、今年度末の公債残高が百六十四兆円にも達する見込みであり、これは歳出予算の二割を超えるなど、依然として厳しい状況でございます。公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことが緊要な課題であると考えております。平成三年度におきましては、このような考え方に従って、重点的、効率的な予算編成に取り組んでまいる所存でございます。
 また、消費税を含む税制問題につきましては、前国会での法案処理の結果を踏まえ、与野党がその責任を果たすとのお立場から設けられた税制問題等に関する両院合同協議会において審議が重ねられているところであります。政府といたしましては、消費税の必要性を踏まえつつ、全体的、長期的な利益といった高い次元からの御協議が行われ、建設的な合意が得られますことを心から期待をいたしております。
 選挙制度の改革につきましては、新しい時代に望まれる選挙制度は、個人に頼りがちな選挙を政党本位の選挙、政策中心の論争に軸足を移して、金のかからない選挙にしていくことが大切だと考えます。
 審議会においては、衆議院議員の選挙制度として、小選挙区比例代表並立制をとることが適当であるとの答申をいただきましたが、政府としては、答申を尊重すべき立場にあること、政治に対する国民の信頼を回復するためには、個々の政治家の政治倫理の確立はもとよりでありますが、選挙制度及び政治資金制度の改革を図ることが必要であると考えております。できるだけ早い機会に成案を得るべく鋭意取り組んでおるところであり、事柄が選挙及び政党に関する問題でございますので、各党においても議論をいただき、御理解と御協力をいただきながら改革を進めていきたいと考えております。
 土地対策についてお触れになりましたが、私は、土地税制については土地基本法を踏まえ、土地が有限、公共的な性格を有する資産であるという点から総合的見直しを行うとともに、御指摘の保有課税、譲渡課税の問題を含め、現在精力的に作業中でございます。答申がいただけたならば所要の法案を次期通常国会に提出することといたしたいと思います。
 家賃負担の軽減策として家賃控除制度とのお話でありますが、住宅費負担の軽減については、融資、税制の活用等により賃貸住宅供給コストの低減に努力をしておりますし、特に低所得者、自力では一定の居住水準を確保できない世帯について、公営住宅など公共賃貸住宅の的確な供給に努力をしてきたつもりでございます。
 なお、家賃控除制度の創設は、税制面として家賃は食料や被服等と同様典型的な生活費でありますから、家賃だけを取り出して特別の控除を設けることには基本的な問題があるものと考えます。
 法務大臣の問題について御指摘がございました。
 さきの法務大臣の発言は極めて不適切であり、遺憾なことであると考えております。
 法務大臣に対しては、私から厳重に注意をいたしました。同大臣も深く反省し、自己の発言を取り消すとともに、関係者の皆様に対し深くおわびを申し上げ、また、米国のアマコスト大使に対しても謝罪を行っているところであります。
 私も、この不適切な発言が多くの方々に不快感を抱かせ、御迷惑をおかけしたことに心を痛めており、大変遺憾に思っております。法務大臣も、今回の発言については十分に反省をし謝罪をしているので、今後は自重自戒して慎重な言動をするものと確信しております。
 なお、政府としては、マイノリティー問題に対する正しい認識を日本国内に根づかせるよう啓発の努力を行ってまいりたいと考えております。
 チェルノブイリ原発事故による被害については、日ソ二国間及びIAEAを初めとする国際機関を通じ専門家派遣、情報交換等を実施、我が国が有する経験と知識を活用することが有益であるとの認識に立って、先般シェワルナゼ外相が来日した際に両国外相間でこの分野での日ソ二国間協力に関する覚書に署名をしたところであります。今後とも適切な協力を行ってまいります。
 最後に、水俣病訴訟についてでありますが、公害健康被害の補償等に関する法律によって、これまで二千九百名の患者の方々を認定し、医学を基礎として公正な救済を推進しているところであります。政府といたしましても、水俣病に関する関係閣僚会議を設置するなど各種対策の実施に努めてまいりました。
 水俣病の早期解決に向けて努力すべきものと考えておりますが、訴訟に関しましては、当事者間の主張が隔たっており、現時点で和解勧告に応じることは困難であると考えております。(拍手)
     ────◇─────
#24
○佐藤敬夫君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十七日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#25
○副議長(村山喜一君) 佐藤敬夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○副議長(村山喜一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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