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1990/04/13 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 外交・総合安全保障に関する調査会 第2号
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1990/04/13 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 外交・総合安全保障に関する調査会 第2号

#1
第118回国会 外交・総合安全保障に関する調査会 第2号
平成二年四月十三日(金曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         中西 一郎君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                野沢 太三君
                梶原 敬義君
                和田 教美君
                上田耕一郎君
                高井 和伸君
    委 員
                井上 吉夫君
                井上  孝君
                尾辻 秀久君
                沓掛 哲男君
                木暮 山人君
                田村 秀昭君
                成瀬 守重君
                平野  清君
                宮澤  弘君
                翫  正敏君
                北村 哲男君
                田  英夫君
                堂本 暁子君
                森  暢子君
                矢田部 理君
                山田 健一君
                黒柳  明君
                立木  洋君
                井上  計君
   政府委員
       防衛庁参事官   内田 勝久君
       外務省情報調査
       局長       佐藤 行雄君
       大蔵省国際金融
       局次長      江沢 雄一君
       通商産業省通商
       政策局次長    堤  富男君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        荻本 雄三君
   説明員
       防衛庁防衛局防
       衛課長      萩  次郎君
       国土庁土地局土
       地政策課長    鈴木 省三君
       外務大臣官房審
       議官       原口 幸市君
       通商産業省産業
       政策局大規模小
       売店舗調整官   金子 和夫君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○外交・総合安全保障に関する調査
 (ソ連・東欧の情勢変化とアジアの政治情勢及び安全保障に関する件)
 (日米経済摩擦と今後の両国関係に関する件)
    ─────────────
#2
○会長(中西一郎君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査会を開会いたします。
 外交・総合安全保障に関する調査のうち、ソ連・東欧の情勢変化とアジアの政治情勢及び安全保障に関する件を議題といたします。
 まず、外務省及び防衛庁から説明を聴取いたします。外務省佐藤情報調査局長。
#3
○政府委員(佐藤行雄君) 本日はこのような機会をお与えいただきまして、どうもありがとうございました。
 ソ連・東欧の情勢変化とアジアの政治情勢及び安全保障に関する件ということで大変広いテーマでございますので、私なりに整理させていただきました骨子をお配りさせていただいておりますけれども、それに従いまして、若干事実関係を補足しながら御報告させていただきたいと思います。
 まず、ソ連及び東欧の変化につきましては、ソ連のペレストロイカや東欧政治に対する不介入の姿勢というものが東欧の変化を促したり、また、あるいは東欧におきます共産党独裁体制の放棄ということがソ連における憲法改正の動きに影響を及ぼしたというようなことがございまして、両者の動きは相互に影響し合ったという側面があるということをまず指摘することができると思います。しかし、ソ連及び東欧の変化は、それぞれの性格あるいはその国際的な影響ということが異なると存じますので、この二つの問題は別々に論ずる必要があると考えております。
 まず、ソ連の動きでございますが、ゴルバチョフ書記長は、これまでにペレストロイカ政策のもとで、複数候補選挙制の導入とか人民代議員大会の創設あるいは企業、個人への経済自主権の付与といったことを含みます広範囲にわたる政治、経済改革を試みてまいっております。同時に、現在御承知のとおり民族問題の顕在化、あるいはこれまで続いております経済状況の悪化、あるいは共産党の権威の低下あるいは分裂傾向というような大きな国内問題に直面していると言うことができると思います。
 まず、民族問題のことでございますが、昨年以降、バルト三国で独立に向けた動きが強まってきておりますことは御承知のとおりであります。本年三月にはリトアニア共和国、次いでエストニア共和国が独立宣言を行っておりますし、ラトビア共和国におきましても五月の最高会議で同様の独立宣言が行われると言われております。このほかにもアゼルバイジャン共和国、グルジア共和国、タジク共和国等で民族間の対立、さらには暴動までが生じているのが実情でございます。経済状況につきましては、中央計画体制と官僚主義のもとでの非効率的な生産、過剰流動性とインフレ、財政赤字といった問題を抱えておりまして、そうした中で消費物資の不足、そこにちょっと書いておきましたけれども、砂糖、石けん、お茶といったものの配給制度の導入、さらにはストの多発といったような状況の悪化が見られております。また、共産党の地位に関しましても、民族問題と絡んではおりますが、一部共和国の共産党の中央からの分裂、あるいは地方選挙での党幹部の落選というような状況も見られておりまして、共産党の権威が低下していると言ってよろしいのではないかと思われる状況にあります。
 こうした中で、ゴルバチョフ書記長はソ連憲法を改正いたしまして、共産党一党独裁体制の放棄、複数政党制の容認、さらには大統領制の導入といった措置をとったわけでございます。しかしながら、かかる措置がソ連の抱えている困難な問題を効果的に解決できるかどうか、この点については必ずしも予断を許さない状況と言えると思います。本年は、今後のソ連の政治動向を占う上で最も注目されておりますソ連共産党大会が予定されておりまして、大統領になったゴルバチョフ書記長がいかにして改革を進めていくかということが大いに注目されているところでございます。
 他方でゴルバチョフ書記長は、外交面におきましてはいわゆる新思考外交を展開しておりまして、米国を初めといたします西側諸国との関係の改善、人的交流の拡大、さらには東欧諸国への不干渉、地域問題解決に向けての一定の協力、軍備管理・軍縮への積極的取り組みといった好ましい姿勢も見られております。
 米ソ間では、軍備管理・軍縮、地域紛争、人権、二国間関係及び全地球的問題といった広範囲な分野にわたり、対立から対話の定着、拡大への過程が一層進み、昨年十二月のマルタ非公式首脳会談後の合同記者会見におきましては、ブッシュ大統領が米ソ関係は全く新たな時代を迎えつつあると述べ、またゴルバチョフ書記長が世界は冷戦から新時代への最初の一歩を踏み出したと発言するまでに至っております。本年五月末から六月の初めにかけまして米ソ首脳会談が予定されておりまして、STARTを中心とする米ソ間の軍備管理・軍縮、欧州通常兵力削減交渉やドイツ統一問題を含む欧州の新しい政治、安全保障秩序の構築の模索、地域問題での米ソ協力といったことでどのような進展が見られるかが大いに注目されるところであります。
 次に、東欧でございますが、欧州を舞台とします東西関係は、昨年以来大きな変化の中にあると言えましょう。ソ連が東欧各国の改革の動きを容認し、不介入の姿勢を明確にしたこともありまして、昨年の夏以来、東欧諸国におきましては急激かつ劇的な変化が生じております。ポーランドでは「連帯」からのマゾビエツキ首相による連立内閣が成立しましたし、ハンガリーでは社会主義労働者党が社会党に変更されるとともに、党の指導性ということも放棄されております。東独では、昨年の夏以来の国民の大量出国や大規模なデモの圧力のもとで、昨年十月にホーネッカー指導部が退陣しております。ブルガリアでも昨年十一月、これまで三十年以上権力を掌握してまいりましたジフコフ書記長からムラデーノフ書記長へと政権が交代しております。チェコスロバキアにおきましても、十一月に入ってデモ、集会が続く中で指導部が交代いたしまして、非共産党員を含む連立内閣が成立し、また、かつての反体制派からハベル大統領が選出されております。このような動きの中で、チャウシェスク大統領一族の独裁体制のもとにありましたルーマニアにおきましても、昨年十二月のハンガリー系住民の暴動を契機に反政府デモが拡大いたしまして、チャウシェスク大統領が逮捕処刑されたことは御承知のとおりでございます。さらに、戦後の冷戦の象徴と見られておりましたベルリンの壁は崩壊いたしまして、東西ドイツの統一に向かっての話し合いが始まっているわけでございます。さらに、チェコスロバキアとハンガリーのソ連軍の撤兵が既に合意されておりますし、またポーランドもソ連軍の撤兵につきソ連と交渉を開始する旨の発表をいたしております。
 こうした中で、東欧諸国は、民主主義と市場経済の導入に向かっての努力を開始しているわけであります。ちなみに、このメモには書いてございませんが、今回の一連の東欧の動きを見ていまして、ソ連との違いは、東欧の動きはソ連の支配からの離脱という側面があるということでございます。
 そしてことしの春から夏にかけまして、既に東独、ハンガリーで選挙が済んでおりますが、五月にはルーマニア、さらに六月にはブルガリア、チェコスロバキアと各国で自由選挙が予定されております。これらを通しましていずれも民主政権の誕生が予想されております。しかしながら、いずれの国におきましても多数の政党が乱立する傾向にございまして、不安定な内政状況が継続する可能性はあると言わざるを得ません。
 また、ソ連の影響力が弱まる一方で、各国における民族主義の高まりということもございます。そういう意味で、東欧各国の少数民族問題が表面化し始めております。ここに書いてございませんが、東欧の民族問題といたしましては、例えばルーマニアのトランシルバニア地方にはハンガリー系住民が百七十万名住んでいるというようなこともございますし、御承知のとおりドイツ系少数民族というものがポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコの各国に存在しております。そのほか、ブルガリアとユーゴの間のマケドニア人の問題とかユーゴのコソボ問題とか、東欧には多数の民族問題がございます。
 経済面におきましても、東欧各国はEC、欧州自由貿易連合等への接近姿勢を強めておりまして、また、西側の支援、協力獲得に努めております。しかし、各国ごとに事情は異なっておりますものの、貿易及び石油等のエネルギー資源の面での対ソ連依存の脱却、あるいは市場経済の導入、債務問題の解決といったそれぞれの問題は、いずれも一朝一夕で達成できる問題ではございませんで、この面でも、東欧の経済も前途多難と判断せざるを得ない状況にございます。
 次に、ドイツ統一問題でございますが、本年三月十八日の東独選挙の結果、保守連合を主体とする連立政権が発足いたしまして、通貨同盟、経済統合を初めとする東西両独間の話し合いは今後本格化すると見られております。けさの新聞でお読みになられたと思いますが、昨日東独では大連立内閣が成立いたしまして、いよいよ西独との交渉が本格化するという状況になっております。
 他方、本年二月以来、両ドイツ及び米英仏ソ首脳等の間の一連の会談を通じまして、ドイツ統一に向けての動きが一段と外でも活発化いたしております。
 ドイツ統一の対外的側面につきましては、米英仏ソの戦勝四カ国に両ドイツを加えましたいわゆるツー・プラス・フォー方式で協議することが既に合意されております。また、ポーランド国境問題に触れる問題が議論される場合には、ポーランドもこのツー・プラス・フォーの会議に招待されるということが決定されております。
 また、統一後のドイツとNATOとの関係につきましては、ソ連は統一ドイツのNATO加盟に依然反対しておりますが、幾つかの東欧諸国を含む欧米諸国は、統一ドイツのNATO加盟が欧州における長期的安定に資するとの立場をとっております。まだ詳しいものを読んでおりませんので新聞情報に頼らざるを得ませんが、けさの新聞に出ておりました東独の連立政権の政策協定によりますと、「統一ドイツは、全欧安全保障システムが作られるまでの移行期間、NATOの成員であることを前提とする。」ということが決められております。もちろんこれには若干の条件がついておりますが、こういうようなことが既に東独側の連立政権の政策協定にも盛り込まれているわけでございます。いずれにしましても、統一後のドイツとNATOとの関係の問題は、統一後のドイツの安全保障あるいは統一後のドイツと周辺諸国との安定的関係をいかにして確保するかとか、ワルシャワ条約機構の今後の取り扱いをどうするかとか、東独駐留ソ連軍の撤退をいかにして実現するかといった問題とも密接に絡んでおりまして、ドイツ統一問題の処理をめぐるこれからの国際政治の中心的な課題になっていくと思われます。
 また、欧州の将来に係る問題を話し合う場といたしまして、欧州安全保障協力会議、いわゆるCSCEを一層重視する傾向が出ておりまして、本年十一月にはCSCE首脳会議も開かれるのではないかという話もございます。ドイツ統一問題を初めとして、欧州の新たな秩序の構築に向けてこの場でいろいろ議論されることになると思われております。
 次に、アジアにおける動きでございます。
 まず、ソ連でございますが、ゴルバチョフ政権下のソ連とアジア諸国との関係につきましては、中ソ関係の正常化、ソ連と韓国との関係の改善など評価すべき動きも見られております。また、中ソ国境からの一部兵力削減、モンゴル駐留軍の撤退、カムラン湾からの一部兵力撤退もありまして、極東ソ連軍につきましても量的にはある程度の減少が見られると言ってよろしいかと思います。しかしながら、極東ソ連軍全体を見てみますと、海空戦力を中心に質的増強が継続されている模様でございまして、しかも大きな核戦力は引き続き存在しているという状況にございます。また、この地域のソ連の外交姿勢を判断いたします上で、北方領土が依然として未解決であるということの持つ意味は、単に我が国との関係においてのみならず、広く国際的にも極めて大きいと言わざるを得ない状況にございます。
 中国でございますが、中国は、国内的な経済困難に加えまして、昨年の天安門事件について国際的な批判を受けたこともありまして、十年来の改革・開放政策も内外両面で多くの問題に直面しております。それに加えまして、東欧さらにソ連における共産党の指導原理の放棄は、中国共産党指導部に大きな衝撃を与えたと言われております。そうした情勢を背景にいたしまして、中国では政治面での引き締め政策がとられるとともに、党と大衆の関係強化ということも強調され始めております。
 他方経済面では、経済の停滞が大変顕著になりまして、失業者の増大が新たな社会問題になってきたという事情もございます。そういうことを背景にいたしまして、実は一昨年秋以来経済の過熱を鎮静すべく行ってまいっておりました調整政策につきまして、最近これを一部緩和いたしまして、例えば農村における生産請負の堅持などの具体的政策に言及しながら、改革・開放は不変であるということを強調するようになっております。しかしながら、中国経済全体を見ますと、この改善は容易ではないと思わざるを得ません。
 また、民族問題に関しましては、新聞に報道されておりますように、新疆ウイグル自治区で民族騒乱が発生中との報道も見られます。ただこの点につきましては、ゆうべまでの段階でございますが、中国側からは何の発表もなされておりません。また、他方チベット自治区におきましては、昨年三月以来ラサにおいて戒厳令が実施されております。
 また、中国の対ソ関係につきましては、中国は今後ともこれを発展させていくという立場をとっておりまして、今月下旬には李鵬総理の訪ソが予定されております。この点につきまして、先般三月の末に銭其シン外務大臣が記者会見で述べておるところによりますと、この訪ソにおきましては経済協力問題と国境兵力削減問題等について合意が得られることを中国側としては希望しているということでございます。
 次に、モンゴルでございますが、ソ連・東欧の変化の影響のもとに、モンゴルでは最近民主化要求運動が急速に展開しておりまして、その結果、党指導部の交代、続いて憲法から党の指導原理に関する条項を削除し、複数政党制に移行するという決定が行われております。そういう意味で、モンゴルにおいては民主化が進展する展望が生まれつつあると言ってよろしいかと思います。
 朝鮮半島でございますが、韓国は、ソウル五輪を契機に積極的な北方外交を推進してまいりました。ソ連・東欧情勢の変化及び東西関係の進展はこの北方外交を一層促進し、昨年からことしにかけて東独及びアルバニアを除く東欧諸国との間で韓国は国交の樹立を達成しております。また、ソ連との間では、昨年四月に貿易事務所を相互に設置いたし、また本年に入りましてからは、その中に領事部を相互に設置するという措置をとっておりました。そして、さらに本年三月二十日より金泳三民自党最高委員が訪ソされまして、ゴルバチョフ大統領を含むソ連の指導者と意見交換が行われ、ソ連の対韓国関係改善の意向を確認したという措置がとられております。
 他方、北朝鮮につきましては、現在までのところ最近のソ連・東欧情勢についての国内報道はほとんど行われていない模様でございます。ただ、指導部は相当な危機感を有している模様であるということがうかがわれます。
 次に、インドシナ半島でございますが、ベトナムでは従来経済面を中心とするドイモイと名づけられる改革が進められておりました。しかし、本年三月に開催されました共産党中央委員会第八回総会におきましては、豊かな強い社会主義国の建設に向けた決意が表明されるとともに、党内において政治改革を提唱しておりました政治局員が解任され、ベトナム共産党が当面複数主義を導入する意図のないことが示されております。他方、経済面のみならず政治面での改革を求める声は青年層を中心として党内外に確実に支持を広めつつあるようでございまして、今後の動向が注目されるところでございます。
 カンボジア問題につきましては、当事者や関係諸国の間でさまざまな努力が継続されておりまして、国連の関与等につき一定の進展も見られておりますが、他方、問題の最終的な解決の見通しはまだ立っておりません。
 次に、アジア・太平洋地域におきます米国の動きでございますが、本年二月に日本、韓国、フィリピンを訪問しましたチェイニー国防長官は、財政上の理由から、今後三年ぐらいの間にこれらの国の駐留米軍のうち約一割を整理するとの計画を明らかにしております。しかし米国は、太平洋国家であり、またそうあり続けるとの姿勢を明確にしておりまして、アジア・太平洋地域において日米安保条約を初めとする同盟関係を維持強化するとともに、前方展開戦略を堅持していくとの姿勢も明らかにしております。この関連で注目されております米比基地協定の期限到来後の在比米軍基地の存続問題をめぐる交渉につきましては、フィリピンにおけるクーデター未遂事件の発生、あるいは対比補償額の減額問題等もございまして開始が延期されておりましたが、五月中旬ごろに開始される模様でございます。恐縮でございますが、この文書で「五月中旬頃に近く」と書いてございますが、この「近く」はお消しいただきますことをお願いいたします。
 それから次に、欧州とアジア・太平洋地域との相違点の問題でございます。
 欧州との対比におきましてアジア・太平洋地域の戦略的環境や地政学的条件等を考える場合には、特に次の点を認識しておくことが重要であると考えております。
 第一に、欧州ではNATOとワルシャワ条約機構の二極に集約された形での東西関係が存在しているのに対しまして、アジア・太平洋地域ではいわゆる東西いずれの陣営にも属さない中国の存在ということを含めまして、国際政治上の力関係が多極的であります。それに加えまして、同盟関係も二国間取り決めがほとんどでございまして、また各国の脅威の認識も多様でございます。そういうこともございまして、全体としてアジア・太平洋地域では安全保障の構図が複雑であるということが言えると思います。また、戦力配備の面におきましても、欧州では東西両陣営が陸上で対峙している面が大きいものですから、その間の戦力バランスの比較も容易でございますが、アジア・太平洋地域では各国の軍事力の配備の重点が多様でございまして、各国間の戦力バランスの識別がしにくいという状況にございます。
 第二に、アジア・太平洋地域におきましては、依然として日ソ間において北方領土問題が未解決であり、朝鮮半島において軍事的な対立が続いており、またカンボジアにおきましても和平が未達成であるという問題が存在いたします。
 第三に、軍備管理・軍縮の中心課題でございます核戦力の問題につきましては、欧州では従来から、米ソ間のグローバルな核戦力バランスに加えまして、欧州内の地域的な核戦力バランスにも大きな焦点が当てられてきましたけれども、アジア・太平洋地域につきましては、域内諸国の安全保障が米ソ間のグローバルな核戦力バランスに大きく左右される傾向が強いということが指摘されると思います。
 第四に、欧州諸国の間には欧州の一員としての一体感がございまして、また、EC統合の動きを中心といたしまして政治的にも経済的にも統一に向かう大きな流れがございます。それに対しましてアジア・太平洋地域ではむしろ国家の多様性に特徴がございまして、この多様性を基礎にした経済的な相互依存関係が追求されているという状況にございます。
 以上を踏まえまして、近年の米ソ関係や欧州を中心とする東西関係の変化が、東西の力の対決、冷戦時代の発想を乗り越えまして、対話と協調を基調とする国際関係を定着させることにつながり得る重要な動きであるということが言えると思いまして、これは歓迎すべきことだろうと思います。そして、こうした動きをアジア・太平洋地域にも
起こしていくようにすることがこれからの我が国の重要な外交課題の一つであると認識いたしているところでございます。
 アジア・太平洋地域におきまして、国家間の相互信頼関係を高め、より低いレベルの軍備で各国の安全保障を図り、対話と協調を基調とする国際関係を構築していくためには、さきに触れましたようなアジア・太平洋地域の特徴を踏まえまして、この地域の実態に即した努力が多角的に行われることが必要であることは言うまでもないと思います。そして、その中におきまして、我が国が米国とも緊密な協調をとりつつ、積極的な役割を果たしていくことが重要であると考えております。
 また、西欧諸国が今後欧州問題に没頭することが予想されますところ、アジア以外の地域における国際政治の面の安定や経済面での発展のために、さらには環境問題のような地球的規模の人間社会の問題につきまして、我が国がこれまで以上の貢献を行うことを期待する声が高まっていくものと思われます。そして、こうした声に積極的にこたえていくこともこれからの我が国の外交政策の課題だろうと存じております。
 さらに、東欧諸国の民主化、市場経済の導入は、先ほども指摘させていただきましたように多くの困難をはらんでおります。したがって、我が国といたしましてもこれに対しまして支援の手を差し伸べていくことも重要であろうと考えております。また、ソ連のペレストロイカにつきましても、その正しい方向性は支持するものでございまして、我が国としても適切な協力を行うことは重要であると認識いたしております。ただ、この点につきまして、ソ連が依然として軍事超大国であるということを十分踏まえた対応が必要と判断いたしております。
 どうもありがとうございました。
#4
○会長(中西一郎君) 次に、内田防衛庁参事官。
#5
○政府委員(内田勝久君) ソ連・東欧の情勢の変化とアジアの政治情勢及び安全保障につきまして、基本的にはお手元に配付させていただきました説明の要旨に基づきまして御説明を申し上げたいと思っております。
 現在の国際情勢は、非常に変化の激しい、将来に対する予測の極めて困難な情勢に入っていると考えております。例えばゴルバチョフ政権誕生以降のソ連の動きや、これに触発されました東欧諸国の民主化への動き、さらには欧州全体や米ソ関係の変化など、その規模、速度のいずれの面においても我々の予想をはるかに超えた変化が現在進行中でございます。このような急激な変化は、戦後の国際システムを大きく変質させるものであると私ども考えておりますが、現在起こりつつあることですら、それが今後の情勢展開にどのようなかかわり合いを持ってくるのか実は確たることは申し上げにくい状況にございますが、にもかかわらず、本日は私どもの所見をできるだけ率直に申し述べたいと思っている次第でございます。
 そこで、まず最近の国際軍事情勢でございますが、私どもが最も注目をしておりますのは、戦後の国際システムの中核を構成してきたところの欧州東西関係が変質の過程に入っているということでございます。欧州を中心とする東西関係は、第二次世界大戦以降最近まで国際軍事情勢の基調でもあったわけでございますが、これが変わりつつあるということでございます。
 御承知のように、ソ連では、ゴルバチョフ政権の誕生以降、構造的な経済不振や社会的停滞からの脱却を目指しまして、ペレストロイカ、グラスノスチあるいは民主化といった国内改革に着手しております。このような改革の試みは、ソ連邦成立以来最も大胆かつ野心的なものと言うことができると思います。しかし、この改革は順調には進んでおりません。経済状況は依然泥沼でございます。ただいま外務省の方からもこの点説明ございました。ペレストロイカの東欧諸国への影響がいわばブーメラン現象のような形を起こしまして、ソ連邦内での少数民族問題というものも顕在化してきております。さらに、共産党の権威の低下もございまして、最近では権力を党の機構から国家機構へと移転いたしまして、大統領制を導入するといった、そういう荒療治まで行っております。またソ連は、対外的にはこのような改革の推進の成功を図るために、各種の軍備管理・軍縮交渉の積極的な推進、一方的な戦力削減の表明、あるいは防衛的な軍事ドクトリンへの移行の強調といったいわゆる新思考の外交を展開している次第でございます。このようなソ連の政策変更というのは、恐らくソ連自身が予想したよりもはるかに大きな影響を東欧諸国の方に与えていると考えられます。
 東欧諸国につきましては、かつて民主主義あるいは市民社会というものを経験した国が多く、また一般に民族意識も強うございます。したがいまして、ブルガリアのような例外を除きましてはソ連の支配に対する反発が強かったわけでございます。また、中央計画経済のもとで経済が不振を続けていたことから、国民の生活水準も西欧に比べまして非常に低いところに抑えられておりました。このようなことから東欧諸国においては国民の共産主義政権に対する不満がかなり強かったものと考えられます。一九五三年の東ベルリン、一九五六年のポーランド、ハンガリーあるいは六八年のチェコスロバキアでの事件、このような事件はこうした民衆の不満が導火線となって発生し、それがソ連の軍事介入によって抑圧された例である、こういうことでよく知られていることでございます。いずれにいたしましても、先ほど外務省から説明のとおり、ソ連と東欧諸国というのは、基本的にその国家の存立の基盤を異にしている部分が多くございます。その意味で両者を分けて考えるというアプローチには私どもも基本的に賛成でございます。
 さて、ゴルバチョフ政権が誕生いたしましてペレストロイカとかグラスノスチといった政策が打ち出されてきますと、先ほど申し上げたような、そういう異なった土壌のある東欧諸国の方がはるかに強くその変化に反応いたしまして、大方の予想を超えるスピードでこれら諸国での民主化、自由化が進んでおります。政治的には一党独裁制の放棄、複数政党制から非共産党政権の成立の方向に向かっておりますし、また経済的には市場原理の導入から自由経済化という方向に動いております。そして、東欧における民族自決の動きというものが高まるということの当然の帰結は、それは東欧諸国のソ連圏からの離脱でございます。いわゆるブレジネフ・ドクトリンというものに照らして考えますと、ソ連としては当然このような事態は容認し得ないということでございますが、今日の事態というのは、まさにソ連のペレストロイカ自身がその火つけ役になったわけでございますし、従来のハンガリーやチェコスロバキアのときのように軍事介入をしてこれを力で抑圧するということになりますれば、それはソ連のペレストロイカあるいはソ連が推進しております西側との対話、協調といった路線そのものが水泡に帰することになるわけでございます。このようなことから、ソ連としては現在の東欧諸国の変化を容認せざるを得ないという結論に達したものと考えられます。ソ連がこのような決断を下したこと、すなわちソ連が東欧諸国の共産主義からの事実上の離脱を容認したこと、このことが今回の東欧の変化の最も大きな特徴であると私どもは考えている次第でございます。
 もちろん、東欧におけるこのような変化が今後順調に進んでいくという保証はどこにもございません。東欧の政治的な変化が余りにも急激であったために、新しい民主的な政権基盤はいまだ弱体なものであると言わざるを得ません。いずれの国におきましても、真に民主的な体制ができ上がるまでには、また、従来の社会主義経済を市場経済に転換していくまでには相当の時間を要するものと考えられます。ポーランドのワレサ「連帯」代表は、先般ポーランドを訪問された海部総理に対して、五十年はかかると述べたということを聞いております。そして、その変化の過程において混乱が生じる可能性も決して否定はできないのでございます。
 このような動きを軍事的な観点からとらえて申しますと、次のように言えるかと思います。
 ソ連は戦後一貫して東欧諸国を政治経済、軍事的に支配することによって自国の安全保障に対する緩衝地帯を設けて、この地域に圧倒的な兵力を配備することによって西欧諸国に対して大きな軍事的な圧力をかけてまいりました。すなわち、ソ連は東欧諸国を西側に対しまする防壁といたしまして、その緩衝地帯に共産主義政権を擁立して、軍事的にはワルシャワ条約機構、経済的にはコメコンなどを通じましてこの地域を完全な統制下に置いてきたわけでございます。最近、ソ連は東欧諸国に対する支配、統制を放棄せざるを得なくなっているわけでございまして、東欧に駐留いたしますソ連軍は、あるいは一方的に、あるいは取り決めによりまして撤退を開始しております。この結果、WPO、ワルシャワ条約機構は事実上その機能を停止しているということも言われております。しかし、東欧諸国、とりわけ東独、ポーランドなどは依然としてソ連の安全保障にとって極めて重要な地域であることに変わりはございません。ソ連がこういった地域に対し今後どのように対処しようとしていくのか、今のところは必ずしも明らかではございませんが、我々としては重大な関心を持ってこれを見きわめていく必要があると考えている次第でございます。
 このようなソ連あるいは東欧諸国の変化を引き起こした要因といたしましては、これらの国々の経済困難であるとかといった事情もございましょう。あるいはCSCEのヘルシンキ宣言以来の欧州での信頼醸成というものが大きな基盤になっていることも明白でございます。しかし、見過ごしてならない点は、米国を中心として西側諸国が自由主義と民主主義のもとで結束して今日の繁栄を築き上げてきたこと、そのことが東側の諸国に対して変化を促したことであると私どもは考えている次第でございます。
 これまでの東西関係を見ますると、東西の間では、一つには政治経済体制及びイデオロギーといった面での根本的相違がございましたし、二つには米ソ両国が持っております圧倒的な核戦力及び通常戦力を中心とした軍事的な対峙を基本的な前提として構築されてきたと考えておりますが、最近のヨーロッパでの変化は、この東西間の政治経済体制及びイデオロギー面での相違というものを著しく薄くしているものでございまして、東西間の対話と協調の側面がその反映といたしまして大きく促進する形をとっております。
 これを軍事的な側面について見ましても、こういった政治情勢の変化を受けましてSTART、CFEといった軍備管理・軍縮交渉が進展を見せております。STARTやCFEは、東西間のいわば飽和状態とも言えるような高いレベルの軍事的な対峙から脱却してより低いレベルでの均衡を目指すという、私どもから見ましても極めて有意義な交渉でございまして、我が国といたしましてもその早期合意を期待しているところでございます。しかしながら、ここで留意しなければいけないことは、STARTについて申しますと、その中核は米ソ両国の戦略核兵器の約五〇%の削減を目指すものでございます。したがいまして、STARTが合意、実行されたといたしましても、依然として米ソの戦略核には圧倒的なものがございます。また、御承知のように米ソ両国とも引き続き戦略核の近代化を図っていくことを明白にしている次第でございます。
 また、CFEにつきましても、その目的の一つはいわゆる奇襲攻撃であるとか、あるいは大規模攻撃能力を除去するということでございまして、対象地域は大西洋からウラルまでになっており、かつ対象戦力も海上戦力を除き、あるいは核を除き、あるいは化学兵器を除くといった形で、地上戦力が主体となっております。そのように限定された軍縮交渉となっているということもよく承知しておく必要があるのではないかと思います。したがいまして、このCFEが実現いたしましても、欧州における軍事力の水準は依然として高いものであるという事実には変わりがないと私どもは考えております。したがいまして、東西関係が変質の過程に入ったとはいいましても、また、現在欧州で模索されている新しい秩序、安全保障の枠組みというものが成立したといたしましても、それは軍事力と無縁のユートピアのようなものが出現するものではございません。力の均衡と相互の抑止という原則は今後とも国際関係の安定化のための不可欠の要素であり続けると思われます。
 最近ソ連は、新思考外交の一環といたしまして、あるいは平和攻勢の一環としてと申し上げてもよろしいかと思いますが、ソ連の軍事ドクトリンは防衛的なものを志向している合理的十分性の枠内に転換するということを強調しております。しかしながら、ソ連は、大幅な軍事力の増強を続けてまいりましたブレジネフ政権時代におきましてもソ連の軍事力の防衛的性格ということをしばしば表明しておりましたし、最近におきましても、この合理的十分性の説明の中で、相手に対する反撃能力は防衛的性格に含まれるといったような議論も行っている次第でございます。したがいまして、その合理的十分性の主張については何を基準として自国の防衛に合理的でありかつ十分であると言えるのか、そういう判断というのは、私どもにとりましても、恐らくソ連自身にとりましても極めて難しいものではないか、このように考えている次第でございます。いずれにしましても、ソ連が真に防衛的になったか、あるいはソ連軍が合理的十分性の枠内にあると考えられるのか、このあたりになりますと、言葉だけではなくて、ソ連軍の編成ですとか配備の状況、兵器の体系、さらにはどういう訓練をそこで行っているのか、こういったソ連軍の実態によって判断を行う必要があると考えております。そういう意味で、現段階ではソ連軍が防衛的なものに変化したという実証を私どもは得ておりません。
 こういう流れの中で、一昨年の十二月ですか、ゴルバチョフ書記長は、現在大統領でございますが、国連での演説で、ソ連軍の兵力五十万人などの一方的削減を発表いたしました。その後、軍の要人などがその五十万人削減の大体半分を昨年中に実施したと発表しておりますが、私どもはその真偽のほどを確認しているわけではないわけでございます。削減という言葉の意味にもよりますが、果たしてこれが軍の解体を意味するのか、あるいは一つの地域から他の地域に撤退したことを意味するのか、こういった点についても私どもとしては慎重に見きわめていかなければいけない、このように考えております。
 話を再び欧州情勢に戻させていただきますが、欧州を中心とする大幅な東西関係の変質化は、画期的でかつ好ましい変化でございます。しかし、逆説的ではありますが、従来の東西関係というのが一面で国際社会の安定化をもたらしてきたこと、これも事実でございます。WPO、ワルシャワ条約機構がやや実質的に機能しなくなることに伴って、例えばルーマニアとハンガリーとの間で民族問題が起こっているという新聞報道がございますけれども、これもその一例であるかと思っております。
 世界の軍事情勢は、第二次世界大戦以降、米国及びソ連をそれぞれ中心とする東西の集団安全保障体制の対峙の中で、それを基本的な枠組みとして東西間における核戦争や大規模な武力紛争の発生が抑止されてきたことは御案内のとおりでございます。こういう集団安全保障体制の対峙、すなわちWPOとNATOの対峙でありますけれども、これが今回の変化によりまして新しい事態を迎えている。特に東側のワルシャワ条約機構という枠組みが機能しなくなってきている、あるいは少なくとも大きく変質化してきているということは確かでございます。他方、このような状況に対応して、NATOの役割についても種々議論が行われていることも事実でございます。最近のソ連や東欧諸国の劇的な好ましい変化によってNATO諸国の東側に対する脅威感は減少いたしておりますが、ソ連が核戦力及び通常戦力の両面において引き続いて軍事超大国であり続けることは確実でございます。これに対する抑止力として、また
恐らく近く実現すると思われる統一ドイツに対する近隣諸国の懸念と申しますか不安というものに対応するためにも、欧州において米国のプレゼンスが維持されるべきであるというのが大方の見方でございまして、この米国と欧州の結びつきの役割を果たすものとしてのNATOは今後とも維持されていくのではないかというのが私どもの考え方でございます。
 ドイツ統一問題について一言だけ申し上げたいのですが、昨年の夏、大量の東ドイツ人が西ドイツに脱出してホーネッカー政権を崩壊に導いたころからこの問題は急浮上いたしまして、昨年十一月九日のベルリンの壁の崩壊を契機といたしまして、大方の予想をはるかに超えるスピードでこの統一問題が進展しているのは御案内のとおりでございます。欧州最大の経済力と強大な軍事力というものを持ち得ることになる統一ドイツというものの出現は、第一次、第二次世界大戦の経験を持ちます周辺諸国にとりましてはかなり複雑な思いで受けとめられていると思います。その中で、周辺諸国に脅威感を与えないような統一ドイツというのはどういう形をとるべきであるのか、欧州全体の安全保障との関係はどうあるべきなのかといった議論が盛んに行われております。現在のところ、NATOに組み込まれた統一ドイツという考え方が大勢を占めているようではございますが、この問題は欧州全体の新しい安全保障の枠組みをどう構築するかという問題とも深くかかわり合いを持っております。
 いずれにいたしましても、これらの問題に対する解答はまだどこにも得られておりません。総じて欧州の情勢は、ソ連・東欧の情勢も含めまして、今後とも不透明の中で流動的に推移するのではないかと思っている次第でございます。
 次に、我が国周辺の軍事情勢について御説明したいと思います。
 結論を先に申し上げるようですが、我が国周辺におきましては、欧州におけるような変化は生じておりません。欧州における劇的な変化は、国際システム全体にかかわるものであることは確実でございますし、今後いろいろな形でアジア・太平洋地域の政治、軍事情勢にも影響を及ぼすと思われますが、その影響の出方につきましては、当然アジア・太平洋地域の特性というものが反映された形で出てくると考えております。
 そこで、この地域の特性について指摘させていただきたいのですが、この地域の特性につきましてはただいま外務省からも説明がございました。私どもも基本的には同じような認識を持っておりますが、やや繰り返しになる点もございますけれども、私どもなりの見方で御説明申し上げたいと思います。
 まず第一に、この地域の安全保障の環境でございますが、これは欧州とは著しく異なっております。我が国周辺にはソ連や中国の大陸部、カムチャツカ半島や朝鮮半島、我が国を含む大小多数の島々、これらに囲まれた日本海、オホーツク海、東シナ海などの海域及びこれらの海域から太平洋に通ずる海峡その他さまざまな地形が交錯しております。そして、そこには政治経済体制、イデオロギー、歴史、文化などの面でそれぞれ特色を持ったさまざまな国が存在しております。軍事的に見ますと、この地域には欧州におけるNATOやWPOのような多数国間の安全保障体制は存在せず、多くの国々は米国またはソ連との二国間の安全保障体制を構築しております。対峙の形態を見ましても、NATOとWPOの場合は言うまでもなく二極化されたものでございますし、かつ基本的には陸上戦力による対峙でございますが、この地域におきましては、まず第一に幾つかの複数の対峙が併存しております。とりわけ米ソ間の対峙は、ソ連が陸上戦力を中心としているのに対しまして、米国は海上戦力を主体とするという非対称のものとなっております。
 このような戦力の非対称性に加えまして、例えば米国太平洋軍はソ連極東軍と対峙すると同時に、アジアの地域的な不安定に対処するという役割を持っておりますし、他方、極東ソ連軍も中国への備えという意味合いも当然あるわけでございます。中国について見ましても、中ソ、中越、中印といった対立関係を持っておりますし、さらに、緊張を続けている朝鮮半島、流動的なカンボジア情勢などが存在しておりまして、この地域の対峙、対立は東西対立と直接関係のない領土問題あるいは民族、宗教などの問題を原因としているものも多く、総じてこの地域の情勢は複雑かつ多様なものとなっております。
 このように、我が国周辺地域と欧州とでは安全保障上の環境を著しく異にしておりますが、それではアジアにおいてはCFEのような軍備管理・軍縮交渉はどうなるのかという御疑問があろうかと思います。私どもはもとよりアジアの軍備管理・軍縮は望ましいものであり、長期的には適切な目標であると考えております。しかし、残念ながら現時点ではそのための条件と申しますか環境と申しますか、そういうものは整っていないと言わざるを得ません。ただいま申し上げましたように、この地域の入り組んだ安全保障環境からして、この地域全体で包括的な軍縮交渉を行うとすれば、それは陸と海と空全体の戦力を包含した軍縮という形にならざるを得ないと思いますが、このような軍縮が持つであろうところの技術的な観点だけを考えても、克服すべき極めて難しい問題を多々含んでいると思われます。しかしながら、私が強調したいことは、アジア地域の軍備管理・軍縮については、その技術的困難性以前の問題といたしまして、その前提となっている条件あるいは環境というものが未整備ではないのか、そういうことでございます。欧州における兵力の削減の動き、CFE交渉の進展にはソ連・東欧諸国の民主化というものがその動きの背景になっております。東欧諸国には欧州に復帰したいという願望があり、欧州全体として共通のいわゆるコミュニティー意識というものが長い歴史の中で形成されてきております。残念ながらアジアにはこのような共同体意識はいまだ醸成されてはいないのではないでしょうか。これはよく言えば多様性ということでございますが、諸国間の異質性が極めて大きいというのがアジアの現状でございます。さらに申し上げますと、アジアの社会主義諸国は、モンゴルを例外といたしまして、最近のソ連・東欧諸国の変化に直面して、少なくとも短期的には思想の引き締めを強化しておりますし、現行体制をどうして維持していくかという問題に腐心している、そういう現状にございます。これが私が申し上げたいアジアの特性の第二番目でございまして、この点についての改善が図られなければアジアにおける軍備管理・軍縮をテーブルに乗せることはなかなか難しいのではないかという気がいたします。
 アジアの特性の第三番目として申し上げたいことは、欧州には一九七五年のヘルシンキ宣言以来CSCEという包括的な協議の場がございます。政治、経済、安全保障の分野での交流を図り、信頼関係を醸成してきたという歴史がございます。このような成果の積み重ねがNATOとWPOとの間の信頼の基礎となってCFEの進展が図られているわけでございます。
 他方、アジアはどうかといいますと、そういったフォーラムは存在しておりませんし、諸国間の政治的な信頼関係というのは低いレベルにとどまっていると言わざるを得ないのではないでしょうか。この地域には北方領土問題、朝鮮半島問題、カンボジア問題、その他未解決の政治的懸案が残されておりますし、このような政治的懸案を解決して、緊張を緩和して信頼の醸成を図るということがアジアの軍備管理・軍縮へのもう一つの前提ではなかろうかと考えている次第でございます。
 そこで、そういったアジアの情勢の中でソ連はどういう動きをしているかというのが次の問題でございます。
 ソ連は、ゴルバチョフ政権の誕生以来、この地域において幾つかの注目すべき動きを示しております。その一つは中ソ関係の正常化でございます。中ソ間の合意の内容については省略いたしますが、この中ソ関係の正常化によって、中ソ両国が
かつてのような一枚岩の同盟関係に戻ることはないと思われますし、したがいましてこの地域の安全保障環境に大きな変更をもたらすことにはならないのではないかと私どもは考えております。また、ゴルバチョフ書記長は、このとき、極東方面についても兵力十二万人削減を含みます一方的な戦力の削減発表を行っております。この発表はそれなりに評価できるものでございますが、内容になりますとあいまいかつ不明確な点が多く、総じて漠然としたものとなっております。ややくどいかと思いますが、例えば兵力の内訳、対象師団の配備状況、地上、航空及び海上戦力の具体的内容などは一切明らかにされておりません。また、欧州方面における一方的削減発表においては、通常言及されている戦車とか砲とか作戦機といったものの数値についても、これは示されておりませんし、艦艇につきましても、艦種、トン数などは示されておりません。ソ連はこの一方的戦力削減を二年間で実施すると述べており、既に一年がたったわけでございますが、確かに一部は実施に移されているようでございます。ただ、私どもとしては、その実証が得られているかどうかということになりますと、現在はなお不明と言わざるを得ないのでございます。いずれにしましても、この実施状況は十分注意していかなければいけないと考えております。
 ただ問題なのは、このような一方的な削減というものが完全に実施されたとしましても、ソ連が極東部に膨大な兵力を配備しているという実態には変わりがないということでございます。ソ連は一九六〇年代中期以降、この地域において一貫して質量両面にわたり軍事力を増強してまいりました。ソ連が人口、産業にほとんど見るべきものを持っていないこの極東部において、何ゆえにこのような膨大な軍事力を配備しなければならないのか理解に苦しむところでございます。今日では極東ソ連軍は核戦力、通常戦力のいずれにつきましても、ソ連全体の戦力の三分の一から四分の一に相当する、全体の戦力のその程度のパーセンテージの戦力を極東地域に配置しているという事態に至っております。
 もう一つつけ加えておきたい点は、一九八五年にゴルバチョフ政権が誕生いたしましたわけですが、その後におきましても老朽装備の廃棄など部分的な削減が行われる一方で、SLCM搭載の原子力潜水艦あるいは新型の駆逐艦といったものの増強、多数の第四世代戦闘機の追加配備など装備の質的強化を続けており、全般的な戦力の再編合理化及び近代化を進めております。若干具体例を申し上げますと、最近ソ連はSSN21という海洋発射のミサイルを搭載するアクラ級攻撃型原子力潜水艦を極東に配備しております。古いタイプの潜水艦を削減いたしましても、他方でこのような巡航ミサイルを搭載した新鋭艦を配備しているということであれば、ソ連海軍の攻撃力はかえって増大することになります。また、航空機につきましてもミグ31、スホーイ27といった第四世代戦闘機の増強が続けられております。このような新型の戦闘機はいずれも行動半径が広く、かつ搭載能力も向上しており、旧式の戦闘機を幾ら削減いたしましても、新型戦闘機の配備が続けられる限りその戦闘能力はむしろ増大している、こう言わざるを得ないと思うのでございます。このような極東ソ連軍の動向は、この地域の軍事情勢の最大の不安定要因になっておりますし、依然として我が国にとりまして潜在的脅威となっているものでございます。
 次に、米国の動向について申し上げます。
 御案内のとおり、アメリカは太平洋国家の側面を持っておりますし、近年では東アジア・太平洋地域はアメリカにとりまして最大の貿易相手地域になるなど、この地域の平和と安定は米国にとって一層重要なものとなっております。このため米国は、従来より日本を初めこの地域の幾つかの諸国と安全保障取り決めを締結するとともに、アジア・太平洋地域に陸・海・空・海兵隊を配備、前方展開することによってこの地域の紛争を抑止し、米国と同盟国の利益を守る政策をとってきております。また米国は、有事においては必要に応じて所要の戦力をハワイや米本土から増援する態勢をとっております。
 米国は、最近の国際情勢の変化の中におきまして、アジア・太平洋地域でも米国の軍事的ブレゼンスがどうあるべきかということを戦略的な観点から再検討する作業を進めております。米国はこの作業を東アジア戦略構想と呼んでおりますが、先般訪日いたしましたチェイニー国防長官の説明によれば、まず第一に、米国はアジアの平和と安定に資するためのコミットメントは遵守する、前方展開戦略は維持するということを述べておりますし、第二に、現在十一万程度ございますアジアの駐留米軍、これをここ二、三年の間に一〇%から一二%程度削減する方向で検討しているが、この調整、あるいは再編成と言ってもよろしいかと思いますが、これは戦力の合理化、近代化の過程で実現していくものであって、戦力の低下をもたらすものではないということでございました。この米国の考え方の背景といたしましては、次のような国際情勢認識があるものと私どもは理解しております。
 第一に、米ソ関係及び東西関係は顕著に改善され、欧州におけるソ連の奇襲能力、奇襲攻撃の脅威というものは大きく低減していること。第二に、しかしソ連は依然として軍事大国であって、軍事力の量的削減を補う以上の質的な向上を図っており、米国と同盟国に対する軍事的脅威であり続けること。第三に、アジアの状況は欧州の情勢とは異なるものであること。第四に、国際情勢は不確実、不透明、流動的であるので、この東アジア戦略構想のもとにおきましてもその調整は十分慎重かつ弾力的であるべきこと。こういったことを申しておりました。私どもも、このような米国の認識につきましてはほぼ同様の認識に立っている次第でございます。
 会長、もう五分ほどいただいてよろしゅうございますか。
#6
○会長(中西一郎君) あとは答弁の中で述べてください。
#7
○政府委員(内田勝久君) それでは、そういう認識に立っているということを申し上げまして私の説明を終わらせていただきますが、一言最後に申し上げたいことは、第二次大戦後我が国は、我が国の防衛力と日米安全保障体制を軸といたしまして、外交努力、内政の充実と相まって、幸いにも紛争に巻き込まれることなく今日の平和と繁栄を築き上げております。しかしながら、今後我が国周辺の国際軍事情勢がどのように展開していくのかにつきましては極めて不透明、流動的な部分がございます。我が国といたしましても、好ましからざる状況の出現を防止し、今後生じ得るどのような変化にも対応し得るよう、今日までに確立している防衛の基本政策のもとで適切な防衛努力を続けていくとともに、現在行われている国際的な安定を求めるための努力、これに積極的に参画していくことが肝要である、このように考えているところでございます。
 ありがとうございました。
#8
○会長(中西一郎君) 以上で政府からの説明の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○田村秀昭君 ただいまの外務省、防衛庁の御説明ありがとうございました。
 国の安全を確保するということは国家存立の基本でありまして、政治の根幹であります。私は、第二次世界大戦のときにまだ小学校の子供でございまして、非戦闘員でございました。その後、昭和二十八年に防衛大学に入りまして、以来三十余年自衛隊の勤務をしてまいりました。その間、アメリカ合衆国その他の米軍の基地に技術の連絡官として勤務しておりまして、我が国の防衛力がどのような防衛力であるということを最もよく知っている人間の一人でございます。また、アメリカ、ソ連の軍事力というものがいかに強大なものかということも認識しております。また、戦争がいかに悲惨なものであるかということも、子供のとき、東
京空襲等を通じまして身をもって体験しております。
 私が自衛隊に入りましたころにどういう人が自衛隊に入ってきたかといいますと、約四割は海外の引揚者であります。海外の引揚者というのは、自分の国が滅びて武装解除されたときに、他国民からどういう仕打ちを受けるのかということを身をもって体験した人たちであります。私が大変親しい人に、あなたはどうして自衛隊になんかに入ってきたのかと聞いたらば、私が小さいときにお世話になった隣のおばさんが真っ昼間何人ものソ連兵にレイプされて死んでしまったと。男は大きくなったら必ず兵隊になるんだという覚悟で入ってきたということでございました。そういう人たちが自衛隊に約四割入ってまいりました。もうそういう人たちもだんだんと退職をしてまいる時期になりましたけれども。
 明治以来、日本列島に力の空白ができたのはたった一回でございます。それは、昭和二十年八月十五日からマッカーサー元帥が厚木に到着をする、八月三十日だったと思いますが、わずか十五日の間、約二週間、この間にソ連は満州、樺太、北方四島を全部占領したわけであります。このことは、かつてビスマルクも申しておりますけれども、個人の体験に学ぶ者は大変愚かな者である、我々は歴史に学ばなきゃいけないということを述べております。今御説明のありましたように、大変不確実、不透明な時代を我々は迎えたと言えると思うんです。こういう不透明なときには歴史がよみがえってくるわけでございまして、過去にどうであったかということ、歴史がどうであったかということが行動の基準になると考えております。また、古今東西何千年も通じて変わらなかった基本原則というのがあります。人だとか社会というのは、明るくて、自由で、はつらつとして健康であることが大切だと思っております。我々は大地にしっかり足をつけて、防衛問題で申し上げますと、備えあれば憂いありませんということを私はこの時期非常に強く感じているわけであります。
 それで、今の御説明に対して御質問をしたいと思うのですが、その前に、防衛庁、外務省の皆さんと私の認識が一致していないと質問の効果も上がりませんので、四点ばかり認識が一致しているかどうかお聞きしたいと思います。
 まず、外交と防衛は共通の使命、すなわち国の安全保障を確保するとともに、国益の増進に奉仕する重要な任務を負っております。我が国は、戦後みずからの安全保障を米国との同盟に依存して、諸外国との平和的協力関係の構築に邁進してまいりました。この政策決定は、当時の我が国が置かれた内外諸情勢にかんがみ我が国自身が行ったものでありますが、その選択が正しかったことは、その後の日本の経済発展及び国際的地位の向上により明白に立証されていると考えております。
 ただ、ここで極めて重要なことは、我が国の今日の発展について、それが我が国民の努力と英知によるものであることは疑う余地がありませんが、同時に、安全保障を含む絶大な米国の支援と世界、特に米国の豊かな市場を存分に活用し得たことがなかったならばこの努力と英知も実を結ばなかったのではないか、このことを忘れてはならないというふうに私は考えております。昨年の一月でしたか、ブレジンスキー博士が、多くのアメリカ人は日本人は恩知らずだというふうに思っておるということを述べておられます。アメリカ合衆国の日本に対する絶大な支援というものを忘れてはならないと思いますが、いかがでございますか。
#10
○政府委員(佐藤行雄君) ただいま田村委員御指摘の米国の重要性の点につきましては、核の抑止力を含めましての安全保障の問題、さらに経済関係を含むアメリカの重要性につきましては、私は同じような認識を持っております。重要だと考えております。
#11
○政府委員(内田勝久君) ただいま外務省から答弁のとおりでございまして、防衛庁といたしましても、日米安保体制というものは我が国の平和と安全を維持するとともに、その枠組みの中にあって国際社会に貢献する、そういう貢献のための一つの基盤をも与えるものでございまして、これは今後とも我が国の平和と繁栄のために維持していかなければいけない枠組みである、このように認識しております。
#12
○田村秀昭君 現下の日米関係を見ますと、巨大な経済的不均衡を背景にして各種の摩擦現象が発生しております。かかる摩擦現象は貿易のみならず投資、技術その他の分野においても生じており、このため米国内において対日批判の声が強くなっております。このような対日批判の中には誤解や認識の不足によるものも多分多くあると思いますが、世界経済の四割を生産するに至った日本とアメリカの両国が相携えて自由世界の安定と繁栄を支えていかなければならないのであって、そのために我が国としてはより多くの責任と役割を果たさなければならない時期に来ておると考えております。このような要請、期待にこたえることは日本の国際的責務であり、そのために市場開放、規制緩和、構造問題等のほか開発援助、ウルグアイ・ラウンド、環境問題、麻薬問題等に時期を失することなく積極的に取り組む必要があると考えております。
 このような意味で、日米関係は高い信頼度を保たなければならないわけでありまして、防衛の分野では高い協調関係が認識されておることは大変にいいと考えておりますが、今日ほど日米安保体制の堅持を強く求められている時期はないと考えておりますが、いかがですか。
#13
○政府委員(佐藤行雄君) 日米安保体制が戦後長きにわたって我が国の安全の確保に重要な貢献をしてまいりましたことは、先ほど先生が御指摘のとおりでございます。
 日米安保体制は、今や単に安全保障上の問題のみならず、アジア・太平洋地域の安定の政治的な枠組みにもなっておりますし、あるいは緊密な日米関係を象徴する政治的な存在ということにもなっております。そういう意味合いも含めまして、日米安保体制の重要性がますます高まっているという認識を我々も持っております。
#14
○政府委員(内田勝久君) 私のお答えの前半は防衛庁としての立場を離れますけれども、ただいま田村委員御指摘のとおり、最近米国の中での対日批判というものが大きくなってきているのではなかろうかという点に対しまして、私も大変な危惧を持っております。世論調査等を見ましても、日本の信頼度といったことに対する米国におきます世論調査の数字というものが毎年下がってきているようなそういうこともございますし、あるいは一部の人たちの間で、日本は異質である、日本異質論あるいは修正主義といった考え方が表明されている。こういうことも非常に難しい問題であり、かつそういう点について私は心配をしている次第でございます。
 そもそも日米の安全保障体制というものがしっかりとした基盤の上に立つ前提といたしましては、私はこれは、アメリカが日本を守るべき価値のある国である、同じ民主主義と自由という、そういう価値と理念というものを共有しているという前提がしっかりとアメリカ国民に根づいて、それで初めて日米間の協力体制というものは確固たるものになるものであると、このように考えているわけでございまして、その基盤というものがこのような最近の考え方によって影響を受けることがあるのではないかという点についての懸念でございます。
 田村委員御指摘のとおり、安全保障体制というものが今日ほど重要な意味を持っていることはないと思っております。先ほどの私の説明の中でも触れたかと思いますけれども、まさに西側諸国が一致して防衛努力を行い、かつ経済面での繁栄を確保してきたこと、そのこと自体が今日の新しい変化、新しい情勢というものを生み出しているという現実に着目いたしますと、まさにその根源でありまするところの西側としての協調あるいは団結といったものが、その基盤が崩れてしまいますと、今までのこの好ましい変化自体がもとのもく
あみになってしまうのではないかという懸念すら持つ次第でございます。
 そのような認識で日米間の安全保障体制の維持というものをこれからも私どもはしっかりと認識していかなければいけない、このように考えております。
#15
○田村秀昭君 ちょっとつけ加えますと、これは二月二十六日の「フォーチュン」でございますが、今おっしゃいましたように、アメリカにとって最も信頼できない同盟国はどこかという問いに対しまして、日本が四四%、西ドイツ二九%、フランス一八%、イギリス五%、こういうことになっておりますので、ますます日米安保体制を堅持し、信頼性を高める必要があると考えております。
 先ほど来御説明いただいたように、大変東西間の緊張緩和がなされているわけでありますが、この緊張緩和というのは天から急に降ってきたわけではありませんで、緊張緩和や軍縮の進展というそのことによって軍備を撤廃せよとか防衛はもはや不要となったという声につながるとすれば、それは全く非現実的なものであり、大きな誤りを犯すことになると私は考えております。なぜならば、この緊張緩和や軍縮というものの進展は、正しく自由諸国が結束をして安全保障の努力を一生懸命行ったことによってもたらされたものでありまして、私たちはそのことを念頭に置くとともに、軍事力の均衡と抑止の維持により、世界の安定が今後も保障されていくという枠組みについては何の変更もないということを直視することが必要不可欠だと考えておりますが、いかがですか。
#16
○政府委員(佐藤行雄君) 我々も全く同じ考えを持っております。
#17
○会長(中西一郎君) 内田参事官にちょっと申し上げます。
 先ほど申し残されたことがあるようでございますから、適当なときに補足をしていただければと思います。
#18
○政府委員(内田勝久君) ただいまの田村委員御指摘の点、均衡と抑止というものが国際関係の枠組みになっているということは事実でございまして、私が先ほど申し残しました点はまさにその点に関連しております。
 米国といたしましても、このような国際情勢の新たな展開の中にあっても均衡と抑止というものをはっきり米国安全保障政策の中核に据えていく、そのような形で米国及び同盟国の利益を守っていきたいということを申し述べているわけでございまして、太平洋地域との関連におきましても、米国は従来からの基本戦略であります前方展開戦略、あるいは柔軟反応戦略、抑止戦略といったものを引き続き維持していくことを明らかにしております。こういったアジア・太平洋地域に対しまする米国の軍事的役割というものが大きく変化することはないと私どもは考えている次第でございます。
 この関連で一点だけ付言させていただきますと、米国の戦力の再編成というものは多分に財政的な制約という観点から迫られているという、そういう側面もあるわけでございまして、これに関連して、米国は我が国等に対しましていわゆるバードンシェアリングの面で一層の努力を行うことを期待している次第でございます。
 このバードンシェアリングの増大への要請という米国からの声についても、ただいま田村委員から御指摘いただいた点でございます。その点につきましても、私どもも自主的にできる限りの努力をしていくべきそういう極めて重要な問題であると認識している次第でございます。
#19
○田村秀昭君 四番目は防衛庁の内田参事官にお聞きいたしますが、我が国の防衛力につきましてでありますが、我が国が外国からの侵攻に対して独自に対処するのは小規模限定の範囲であって、米軍が駆けつけるまでの間一時的に持ちこたえる仕組みになっているというふうに考えておりますが、これが五十一年十月の防衛計画の大綱で基盤的防衛力と言われるゆえんだというふうに私は考えております。したがいまして、もう既に十三年が経過しているわけでありますけれども、今、東西のデタントというか冷戦の脱却というふうに言われておりますけれども、我が国は、別に我が国の国民が冷戦を経験したことは一度もないわけでありまして、ひたすら平和時の防衛力を維持してきただけでありますが、これは先ほど申し上げましたように日米安保体制に負うところが極めて大であるわけであります。したがいまして、今後の防衛力をどうするかということは日本だけで独自に、勝手に決められるわけではないと考えております。
 私は、日本はナンバーツーの国で、ナンバーワンの国になるべきではないというふうに考えております。また、島国で、三千年の歴史の中で世界を制覇したことは一度もないし、そういう理念とか責任を全うし得るようなことになれていないわけでありまして、日米安保体制には負うところ極めて大である。そうしますと、日米安保体制を堅持する、アメリカとのパートナーとしての立場を堅持しなければならない。その枠を無視して勝手に我が国の防衛力を過度に減少したり増強したりすれば、それこそ米国はもとよりソ連やアジア諸国から大変な警戒と非難の声が上がってくるだろうと私は考えておりますけれども、防衛庁いかがですか。
#20
○政府委員(内田勝久君) ただいま田村委員の方から、我が国の防衛力のあり方、現在の大綱についての御意見をいただきましたが、御指摘のとおりでございまして、日本の防衛力というのは限定、小規模な侵攻に対処する、そういう構えの防衛力でございまして、日米安保体制と相まって初めて完結した防衛の体制というものがとられるわけでございます。その点から考えましても、米国との間のパートナーシップというものがなければ日本の防衛を全うすることはできないというただいまの御指摘は、全くそのとおりでございます。
#21
○田村秀昭君 それでは、ほとんど認識が一致しているという建前に立ちまして、状況に即しましてまず外務省の方に御質問をさせていただきます。
 最近、インドが海軍を大変増強しているという情報を聞いておりますけれども、いかがでありますか。
#22
○政府委員(佐藤行雄君) ただいま手元に具体的な数字は持っておりませんが、私の承知している限りでは、特にここ四、五年の間におけるインド海軍の増強ぶりは顕著なものがあると承知いたしております。
#23
○田村秀昭君 あそこは、我が国は資源がございませんのでたくさん石油その他の物資を運んでおるわけでありまして、いろいろ今後の調整が大変だろうというふうに考えております。
 次に、ソ連・東欧諸国と我が国との学術とか文化交流というのを積極的に推進した方がいいと考えておるんですが、いろいろな資料がなかなか入らないというふうに聞いておりますが、その実情についていかがですか。
#24
○政府委員(佐藤行雄君) まず、ソ連及び東欧双方とのさまざまな分野における交流を強化するということは、大変大切なことだろうと思っております。
 資料の点について今具体的なことは私ちょっとわかりかねますが、東欧との関係で申しますと、今最も求められておりますことは、東欧がこれから進めようとしている二つの大きな課題、すなわち民主主義の導入と市場経済の導入という二つでございまして、そのうち後者の点につきましては、我が国が戦後努力してきたことを通じて得ましたさまざまな経験、あるいは今日得ております資金面、技術面での力ということが東欧のために大いに役立つと言われております。特に東欧では環境問題が大変厳しいようでございまして、そういう面のことも含めて大いに協力していかなければならないと思っております。また、もちろん文化面の問題につきましては、そういうことの基本にありますことでございまして、相互理解をさらに深めるという面で考えましても、文化的な交流を大いに進めていかなければいけないと思っております。
 ソビエトの問題につきましても同様でございまして、一つは、ソビエトがペレストロイカのもとで経済的な改革に取り組もうとしているわけでございます。ソビエトがその面で知的な分野での知識と経験に欠けている部分がある、そういう面について我が国からも協力を得たいということがございまして、既に一回その面における調査団の受け入れをいたしておりますし、近く第二回目の調査団が来ると承知いたしております。文化面につきましても、ソ連との文化交流が重要なことは隣国として当然でございまして、例えば日本週間ということを昨年度モスコーで行いましたし、また我が方でもロシア・ソビエト芸術祭ということをやりまして、お互いの相互理解を深めることに役立つように努力しているわけでございます。
#25
○政府委員(内田勝久君) ただいま委員の方から御指摘ありましたインドの海軍力につきまして、私たまたまここに資料を持ち合わせておりますので発言させていただいてよろしゅうございますか。
 委員御指摘のとおり、インドは我が国にとりまして石油の輸送ルートであることを初め、通商国家である我が国にとっても大変重要な地域でございます。特にインド洋というものは大変重要な海域でございますし、それは何も我が国に限ったことではございません。自由主義諸国全体にとって重要な海上交通路になっている。そういう意味でも、戦略的にも非常に重要であると思っております。
 そこで、インドの軍事力でございますが、インドの軍事力は規模的には陸海空合わせまして百二十六万の正規軍を有しておりまして、ソ連、中国、アメリカに次いで世界第四位のものとなっております。質的にも装備の近代化、研究開発に努めておりますし、またソ連を中心とした諸外国からの最新兵器の導入、例えばミグ29など軍事力の強化を図っております。特に海軍力につきましては、ソ連からのチャーリーT級原子力潜水艦の貸与あるいは三隻目の空母建造といった形で、インド洋におけるインド海軍のプレゼンスを拡大する動きが見られております。
 具体的にもう少し数字を紹介いたしますと、海軍戦力の推移でございますが、一九八五年には隻数で申しますと百十隻であったものが現在百五十隻、トン数で申しますと八五年には二十万トン規模であったものが現在二十五万トン強の規模というような形で増強が図られておりまして、防衛庁といたしましてもこの動きを注目しているところでございます。
#26
○田村秀昭君 外務省にお尋ねいたします。
 アメリカを初め西側の先進諸国は、ペレストロイカを進めるソ連ゴルバチョフ政権を支持し、ソ連や東欧諸国に対する活発な経済援助、交流を行う動きを見せております。我が国としては、ソ連を初めこれらの国々に対して具体的にどのような経済援助を、内容等わかっておられればちょっと教えていただきたいと思います。中には当面積極的な援助を差し控えた方がいい分野も、地域もあるのではないかというふうに考えておりますので、北方四島との問題と絡めましてお聞きしたいと思います。
#27
○政府委員(佐藤行雄君) 先ほど冒頭の御説明のときにも簡単に触れましたけれども、ソ連・東欧に対する経済面での支援を考えますときに、我々としてはソ連と東欧を区別しているという状況にございます。
 東欧は既に複数政党制のもとにおける民主主義を導入し、市場経済を導入しようという方向で努力をしているわけでございまして、そういう我々が信じてまいりました自由主義経済というものを受け入れようという方向で努力をしている国々でございます。そういう国々に対しては積極的にその支援の手を差し伸べるのが当然だろうというのが我々の考えでございまして、先般海部総理の訪欧の際にも、御承知のとおり、ポーランドとハンガリーに対する経済面での支援を約束してまいったわけであります。さらに、G24という先進国の集まりの中で、東欧に対していかなる援助をさらに行うべきかということが検討されているわけでございますが、ポーランド、ハンガリーに限らず、ほかの国に対しても必要な支援には我々も参加していこうという考えでございます。
 それで、つい先般欧州復興開発銀行についての基本合意ができましたけれども、まさにこの欧州復興開発銀行は東欧における経済発展を、ソ連も若干の条件のもとで融資を受けることができるような合意になっておりますが、基本的には複数政党制、多元的民主主義、市場経済の原則ということを実施しております東欧諸国の市場経済への移行を援助するということが基本目標でございまして、我が国もそれに対して八・五七五%の、細かくて恐縮でございますが、財政的な出資を行うということを約束しているところでございます。
 ソビエトにつきましても先ほどちょっと触れましたけれども、ソビエトにおける経済困難を克服するための知的な面での支援ということについては協力する姿勢をとっております。ただ御指摘のとおり、北方四島についての問題が、北方領土の我が方への返還がまだ実現していないという状況でございますし、ソビエトに対する全面的な経済面での支援につきましては東欧諸国とは異なった取り扱いをするというのが我々の現在の考え方でございます。
#28
○田村秀昭君 先ほどの「フォーチュン」で、四四%のアメリカ人が日本を同盟国として信頼できないと言っているわけでありまして、アメリカでことしは中間選挙が行われますし、来年は真珠湾攻撃の五十周年記念、再来年は大統額選挙ということが進められるわけでありますが、何か、我々は広島、長崎に落とされた原爆についてアメリカ人を恨んでおるし、アメリカ人はパールハーバーはやみ討ちだみたいな気持ちを持っておるということも歴史的にこれあり、何か、両国が広島とハワイで許し合い週間みたいなイベントを持つような、そういうような計画はありませんか。
#29
○政府委員(佐藤行雄君) 明年はパールハーバーの五十周年ということがございましたけれども、本年は日米安保体制が成立いたしまして三十周年の年でございます。これは私の口からまだ具体的に申し上げる段階にはなっておりませんが、外務省といたしましても、大臣の指示のもとで、防衛庁と協力いたしまして、日米安保三十周年を記念いたしまして、これをさらに日米関係の強化につなげる方策はないかということでイベントというのもちょっとあれでございますが、いろいろな方策を今具体的に考えているところでございます。六月二十三日が三十周年の記念日でございますので、それを挟みまして幾つかの行事を行いたいということを考えているところでございます。
 それから、ちょっとそのイベントの問題と離れますが、先ほど来田村委員御指摘のとおり、アメリカの世論調査に出てくる数字に関する限りは日米関係は非常に厳しい状況にあると言えると思います。他方、先般の構造協議の中間報告の取りまとめに当たりましてのブッシュ大統額の発言、あるいは最近におきましては当地に参りましたアメリカの閣僚でありますチェイニー国防長官の発言等を見ましても、政府と政府の間においてはお互い現在の関係の重要性を極めて強く認識しておりまして、それを何とかしようという努力をしているわけであります。また、アメリカ議会の議員の方々も、特定な案件につきましてはそれについての日本の対応についての批判を率直に述べられる向きもあるわけでございますが、どの方と話してみましても、我々がワシントンの大使館からの報告を聞きましても、あるいは我々が東京でお目にかかる場合でも、日米関係が極めて重要であるということについての共通の認識はあるわけでございます。しかも、率直に言ってこの重要性についての認識はますます深まっていると言ってもよろしいのではないかと思います。
 問題は、それをどのようにして世論の中に反映させていくか。その点については、外務省といたしましても対米関係における相互理解を超えまして、我々が積極的にやっていることについてのアメリカの世論の幅広い理解が得られるように努力
してまいりたいと思っているところでございますが、基本的にはもはや広報だけで済む問題ではございません。先ほど来先生御指摘の三つの分野、すなわち日米経済関係における相互の協力、これはもちろんグローバルな経済面での協力が必要だと思います。もう一つは日米安保体制の円滑な運用のための協力、これは先ほど防衛庁の方からも触れましたいわゆるバードンシェアリングの問題も含めまして、日米安保体制の円滑な運用、これは我が国に対する利益にもなるわけでございますので、その面におけるアメリカとの協力。そして、防衛協力の面において日本がみずからなすべきことをなす、日米安保体制の枠の中で日本としてなすべきことをなすという姿勢をはっきりと示していく、この三点が重要ではないかと思っております。
#30
○田村秀昭君 佐藤局長どうもありがとうございました。
 時間がございませんので、防衛庁内田参事官に二点。
 極東のソ連の軍事力の脅威について、日本とアメリカとの認識は一致しているんですか、少し違うんですか、どうなんですかというのが一点。
 もう一つは、次期防の策定中と聞いておりますけれども、その重点的な方針というのは打ち出されていると思いますので、どのような方針でいかれるのか教えていただきたいと思います。
 この二点お願いいたします。
#31
○政府委員(内田勝久君) お答え申し上げます。
 極東の軍事情勢、特にソ連の脅威につきましての日米間の認識の問題でございますが、これは私先ほどの冒頭の御報告でも申し上げましたように、結論といたしましては、基本的に日米間の認識の差はございません。米国は、もとよりグローバルな戦略という観点から物事を見ておりまして、米ソ関係あるいは東西関係が顕著に改善されて、特に欧州におけるソ連の奇襲攻撃の脅威、そういったものは大きく低減しているということを言ってはおりますけれども、ただ、事アジアの問題になりますと、アジアの状況というのは欧州の情勢とは異なったものになっているということをまず強く言っておりますし、第二に、そういう前提に立ちまして、米国としてもアジアにおける前方展開、米国軍のアジアにおけるプレゼンスというものは今後ともこの地域の平和と安定にとって緊要不可欠なものであるという点についても述べております。さらに、第三点をつけ加えますと、先ほど申し上げました米国の作業としての東アジア戦略構想という構想におきまして米国のアジアにおける駐留軍についての一部再編成という作業を行っておりますけれども、これは今後事態がどのように展開していくか予断を許さないところがあるという前提を常に置いておりまして、その前提に立って弾力的かつ慎重に行っていかなければいけないという認識を示しております。そういう点につきまして、私どもも基本的に認識を一にしているということが言えるかと思います。
 第二の、次期防におきます重点事項は何かという御質問でございますが、委員御案内のとおり、これは現時点ではまだ作業が進捗中の段階でございまして、いずれ政府全体として安全保障会議等の場での検討を経て決められるものでございますが、基本的にこの平成二年度におきまして現在の中期防衛計画というものが終了し、その中で大綱にいう防衛力の水準というものがおおむね達成されるという観点に立ちますと、今後につきましては後方の分野を含めての全体として効率的で均衡のとれた防衛力を整備していくこと、防衛力を確保していくこと、それが適切であるというように考えている次第でございます。
 若干具体的に申し上げますと、第一に、正面の装備につきましては、量的な拡大を図るよりむしろ将来の方向を展望しつつ質的な向上を図ることを基本とすることが望ましい。それから第二は、そういう正面装備よりは、むしろ正面装備の能力を有効に発揮するための情報、指揮通信等の各種の支援能力の充実を図っていくということが望ましい。それから第三点には、人的資源の制約等を考慮いたしまして、隊員の施策の充実を図るとともに、防衛力全体にわたる効率化、合理化の徹底、そういうことによって省力化を図っていくことが望ましい、こういうことを防衛庁としては現時点で考えている、そういう段階でございます。
#32
○田村秀昭君 時間が参りましたのでこれで質問を終わらせていただきますが、我が国の安全は国家存立の基本にかかわる事項であります。国を守る決意のない民族の五十年、百年後の独立と平和と安全と繁栄はあり得ないと私は確信しております。国際情勢は大きく動いておるわけでありまして、その中で国民の理解を得て我が国の安全、防衛に遺漏のなきよう外務省、防衛庁にくれぐれもよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
#33
○田英夫君 きょうは、ソ連・東欧の変化と我が国の外交・総合安全保障のかかわりということで外務省、防衛庁の話を伺っているわけですが、この調査会の目的として、外交・総合安全保障を正しい方向へ持っていくということのためにみんなで議論をしようということですが、率直に言って、今お二人の御意見を伺ってかなり認識が違うと言わざるを得ないわけで、まず最初に、先週キプロスで行われましたIPUの総会に当院を代表して参加してまいりましたので、その報告をしながら意見を申し上げたいと思います。
 今回のIPUは、例年にも増して、ソ連・東欧の変化ということが端的に会議の中にあらわれて、非常に興味のある会議であったということが言えると思います。日本の代表団としては、イギリスと西ドイツの代表団と公式会談をやりましたが、それ以外に私も個人的にかなりソ連・東欧含めて、代表団と交流というか会談をいたしました。
 例えばソ連の変化を実に端的に認識したのは、ソ連の側から、ソ連の議員の中から会いたいというのが出てきましたので会ってみましたら、これがモスクワ郊外の選挙区から出てきた無所属の人でありました。自分は緑の党と思ってくださいと、こう言っておりました。もちろんそういう政党はないんですけれども、一人区で共産党を破って当選をしてきた。まさに自然保護派なんですけれども、これは今までのソ連の議員の感触、雰囲気と全く違う、本当に市民派ですね。こういう人が国会議員として出てきているということ、これでおわかりいただけるかと思います。
 また、ハンガリーの議員はちょうどテレビのコメンテーターをやっている人でありまして、これも完全な市民派。民主フォーラムの推薦で当選をしてきたということを言っておりました。この人の発言の中で一つ御紹介すると、今やもう我々はイデオロギー対立という感触はありません、こういうことをはっきり言っております。
 それから西ドイツの議員団は、これは議員団として会ったわけですが、ドイツ統一について極めて積極的に話をしております。CDU、キリスト教民主同盟もそれからSPD、社会民主党もいるわけでありますが、両方ともこの差はありません。そして一九九二年のEC統合前に統一をなし遂げるべきだと実は思っているんだというくらいのスピードであります。そして、例えば障害になっている通貨の交換率の問題で、一対一が一対二になるということで東独が反対をしているということについて質問しますと、これはかなり問題があるだろう、東独が言うのも無理はない。しかし東独は一般の人が大変貯蓄をしているんで、これを一対一でやったんじゃ西ドイツの方はたまらないということで、その打開策として、一定額を定めてそれを一対一で交換するということから始めるべきではないかという意見も出ている、こういうことを言っています。いずれにしても非常に積極的ですね。それから、東ドイツからのソ連軍の撤退という問題について質問しましたら、これは実はかなり困難があるだろう。しかしこれがなければ統一は進まない。しかし我々の方にはアメリカ軍がいるんだ。向こうにはソ連軍がいるんだ。それをそのままにして統一するということが可能かどうか、これは非常に問題点だという指摘をしております。
 それからモンゴルの議員とも会ってみました。これはまさに民主化が進んでいるということの中でソ連軍が撤退をする。そして日本とこれからは積極的に友好を進めていきたいということで、先ほどモンゴルを除いてと言われましたけれども、まさにそのモンゴルは非常に変化をしているということが言えると思います。
 それから中国は、元駐日大使の符浩さんが団長で来ておられましたが、アメリカに対して厳しい姿勢をとっているということがあらわれておりました。アメリカ側の議員が天安門事件を取り上げて攻撃をしたのに対して、すかさず、アメリカはそういう内政干渉をする資格があるのか、アメリカがパナマやニカラグアなどでやっていることは侵略ではないか、こういうことを言って反撃するという空気があります。
 それから、南北朝鮮両方とも来ているわけでありまして、気づいたことは、以前のように双方が相手を公の場で攻撃するということは全く見られませんでした。IPUの中にはアジア・太平洋ブロック会議というのがあります。そこにも南北ともに出てきておりましたが、その場でも攻撃をし合うという場面はありませんでした。
 そういうことを申し上げておいて、お二人の意見に対する私の意見を申し上げたいのでありますけれども、まず、防衛庁はひたすら、ヨーロッパは変わっているけれどもアジアは変わっていないということを強調されて、防衛体制を変えないんだということを言おうとしておられるようでありますけれども、私の認識はいささか違います。今のIPUにあらわれている空気というのはやはり明らかにアジアにも及んでくる、いや、及びつつあるという気がいたします。先ほども出ておりましたけれども、カンボジアとかそれから南北朝鮮とか、そういう不安定要因がたくさんあるじゃないかということを言われますが、南北朝鮮は確かに世界で唯一残された東西対立の名残であります。私は、基本的に今や世界は東西対立というものは解消しつつある、イデオロギー対立というものは解消しつつあるという認識に立っています。その唯一残っているのが朝鮮半島である。したがって我々は、これから政府も北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国といかに関係を改善するかということに積極的に取り組むべきだ、この唯一残されたところに真剣に取り組むということが非常に重要だと思っているのであって、これがあるからアジアは緊張状態が続いているんだという言い方はこれは無責任だと思いますね。むしろこっちが積極的に何をするかということが大切であって、評論家のような態度をとっているというのは私は行政府としてのあるべき姿ではないと思います。そして、カンボジアの問題というのはいわゆる東西対立、冷戦構造の中から出てきたことではありません。しかも、これは今解決の方向に向かいつつある。ここで何を積極的に日本の役割として果たすかということがむしろ問題じゃないですか。
 そこでちょっと外務省に伺いたいんですが、カンボジア問題で東京会議をやるという意思がおありかどうか。これは、パリで常任理事国五カ国の会議をやり、ASEAN会議もやっています。そういう中で日本が役割を果たすとすれば、今いわゆる民主連合政府を承認していて、そしてベトナムとも国交のある西側唯一の国である日本、その東京でカンボジア会議をやるというのは一つの意味があるのじゃないかと言われているわけですけれども、そういう意思はありますか。
#34
○政府委員(佐藤行雄君) カンボジア問題に対する我が国の姿勢は、この問題をまずアジアにおける一つの不安定要因と見て、アジアの一員の日本としてこの和平の達成のためにできる限りの努力をしよう、協力をしようというところにあることは御承知のとおりでございます。その過程において、東京で会議を開くことが役立つということであれば、もちろんその点は考えるべきことだろうと私は思います。ただ、今の段階で、実は先般タイのチャチャイ首相がお見えになられましたときもへン・サムリンさんとシアヌーク殿下との会談を東京でアレンジしてはどうかというお話があったことも聞いておりますが、全体の問題としてまず一つ私として申し上げておかなければなりませんのは、この段階で今そういうことを決めているかと言われれば、そういう点はまだ決まっておりません。
 それではこの問題をどう考えるかということについては、私限りでこの段階で申し上げられることは、和平の達成に役立つことであれば前向きに検討してよろしいのではないかと思います。ただ問題は、現在御承知のように、国連における安全保障委員会常任理事国五カ国の動き、それからオーストラリアの提案、ASEANの考え方、その上に立って、かつ現場で基本的にはクメール・ルージュとへン・サムリン政権との話し合いがなかなかまとまらないという状況でございますので、そういう全体の展望の中で会議をどこに位置づけて考えてよろしいのかということはこれから考えていかなければならない問題だろうと思います。
#35
○田英夫君 今のカンボジアのことでちょっとつけ加えますと、東京でやるにせよいずれにせよ、今の国連常任理事国の提案あるいはオーストラリア外相の提案も、国連が管理して選挙をやろうということは共通しているわけですけれども、これについて私一月にカンボジアへ行ってキュー・サムファン副大統領に会ってきたんですけれども、彼の指摘は、ベトナムは去年の九月に完全撤退したということになっているけれども、そうじゃない。へン・サムリン軍の軍服を着たベトナム軍がたくさん残っている、それから入植者という形で二十万のベトナム人が今カンボジアにいるんだ、そのベトナム人とカンボジア人の区別というのは自分たちにしかできない。国連がやってくださるのはありがたいけれども、この区別は国連にはできませんよということを言っているんですね。せっかくクメール・ルージュを含めた民主カンボジアを承認している日本政府としては、この辺を配慮しながら、中国とはまた違った意味でこの調整をしていくということが必要だということを申し上げておきたいと思います。
 それから、防衛庁に伺いたいんですけれども、いわゆる脅威対処論というのはとらないんですかということなんです。先ほどからのお話を伺っていると、ヨーロッパは変わっているけれどもアジアは変わっていないということを強調されて、ソ連の脅威は変わらないという印象を受けるんですね。そうすると、いかにもそれは脅威対処論につながるような印象なんですけれども、脅威対処論はもうとらないということになっているんじゃないか。防衛計画の大綱を策定したあの段階から脅威対処論というのはとらないんだということになっていたはずではないかと思うんですが、この点を伺いたいと思います。
#36
○説明員(萩次郎君) ただいまお話がございましたように、防衛計画の大綱というものは、我が国周辺の軍事的な脅威に直接対抗することを目標としたものではありませんで、我が国自身が力の空白となって安定を乱すことがないようにするということを基本的な考え方としております。
 ただ、脅威に直接対抗することを目標とはしておりませんけれども、全く脅威と無関係というわけではございませんで、例えば目標とします防衛力は、限定的かつ小規模な侵略に対しては独力でこれに対処するという考え方をとっておりますが、その際にはやはりある程度周辺諸国の潜在的能力というものは考慮せざるを得ない、こういう考え方でございます。
#37
○田英夫君 よくわからないんですけれども、脅威対処論というのはもうとらないということを国会でも防衛庁長官あるいは時の総理が述べておられると思います。
 そこで、もう一つ伺いたいのは、先ほどから世界の、特に日本を取り巻く軍事情勢というのは均衡と抑止の状況で安全が保たれているんだというそういう言い方をされていると思います。しかし、均衡と抑止というのは、二つの勢力が対立している場合に言える論理だろうと思うんですね。私が冒頭申し上げたように、今や東西対立というのは
解消しつつある。もう今度のIPUの空気なんか、ハンガリーの議員が言っているように、我々はイデオロギー対立というものは全くありませんと、こうまで東欧の人は言い切っている。こういう状況がアジアに波及してこないというあれは全くないわけです。中国は私はやはり近い将来に変わると思いますよ。そういうことがあるにもかかわらず、均衡と抑止という二つの勢力が対立していることを前提にした論理で日本の防衛を考えていくというのは非常に危険だろうと思うんですね。この考え方というのはむしろ大きく変えなければいけないんじゃないか。アメリカの中にさえもうそういう変化が起こっていると思います。御存じのとおり、ベーカー国務長官は、一九九五年にソ連は東欧から駐留軍を引き揚げるだろう、こういう予想を議会で証言しております。
 そういう中で、日米安保条約というのも変質をすべきではないか。つまり、今まではひたすら軍事同盟ということの面を強調してきたわけでありますけれども、安保条約の第二条には明快に、この両国は経済の面で協力をし合って協調していくべきだということが書いてある。つまり、経済安保ということが明快にうたってあるわけでありまして、今後は政治、経済の面での日米関係を重視する安保条約に変質させるべきではないかと思うんですね。軍事同盟という面はだんだん軽くなっていって政治経済の面での、まあ安保条約というよりむしろ友好条約に変わってくるわけですが、そうなってくると。こういう変質をすべきではないか。防衛庁のようにただただ脅威があるぞということを言うのじゃなくて、アメリカも変わっていく中で、日米安保条約をそういうふうに変えていくべきではないかと思いますが、外務省どうですか。
#38
○政府委員(佐藤行雄君) 委員御承知のとおり、日米安保条約は非常に幅広い問題について書かれておる条約でございます。そして、日米安保体制という言葉一つで表現しておりますが、その中には、もちろん抑止力の問題を含む安全保障の面から政治面の問題、あるいは最近話題になっております経済の問題も精神として、また条項として入っているわけでございます。その軍事面の意味が、日米安保体制を軍事的に活用することがなくて済むことが我々の願いであるわけでございまして、これまでもそれがなくて済んできているわけでございます。
 ただ、先ほど抑止と均衡ということでお触れになりましたけれども、確かにアジア・太平洋地域においては米ソを頂点とする東西関係だけで割り切れない部分もございます、私も申し上げましたように。それでは中国はどうなのか。それから委員御指摘のとおり、それではカンボジアの問題は東西関係の結果なのかといえば、そうじゃないという部分があるだろうと思います。しかしながら、アジア・太平洋地域に東西関係の部分があることも事実でございます。先ほど来防衛庁の方からの指摘もございますように、ソビエトとアメリカとのグローバルな意味での対峙ということの一端がこの地域にあるわけでございます。そういう意味でアメリカとしても、私の理解しているところではまだ抑止という姿勢はとっているわけでございまして、我々といたしましても、私は決してここでソビエトに対抗してという意味を申し上げるわけではございませんが、東西関係の問題がここに存在している以上は、日本安保体制の安全保障の部分が要らなくなったんだと言い切れる状況ではないんだろうと思います。
 それから、東西関係に限らずとも、日米安保体制を通じてアメリカのこの地域における存在ということがこの地域の安定に資していると我々は判断いたしておりまして、その意味でも日米安保体制の安全保障に資する側面ということは引き続き意味がある、重要であると考えているわけであります。そういう意味で、時の需要に応じまして日米安保体制の持っている幅広い意味の中からどの点を強調して、日米関係の安定に資するとかあるいは我が国の外交目的に使うということは時々の状況によってあり得るかもしれませんが、私の立場といたしましては、日米安保体制の中で御指摘のような軍事面のものを落としてほかのものにかえていってよろしい時代が来たとはまだ言い切れないのではないかと考えております。
#39
○田英夫君 もう時間が来たようですから終わりますけれども、私は、さっき申し上げたように、政府は何をするのかということをもっと積極的に考えてほしいと思うんですね。アジア・太平洋は変わっていないんだと言うのなら、日本がアジア・太平洋を変えようじゃないか。ですから、私は本会議の代表質問で言ったんですけれども、アジア・太平洋平和会議というものを日本が主張して呼びかけたらどうかという提案もしたんですけれども、ひとつそういう姿勢をとっていただきたいということを申し上げて終わります。
#40
○梶原敬義君 二つのことを聞きたいと思います。
 一つは、今我が国の外交問題におきまして最大の課題というのは日ソ平和条約の締結ではないか、このように考えるんですね。私はそのように考えておりますが、外務省のお考えを聞きたい。そして、外務次官レベルの作業グループで何回か作業をされているやに聞いておりますが、どのように今取り組みをされておるのか。
 それから今後の見通し、日程等を含めてお伺いいたします。
#41
○政府委員(佐藤行雄君) 御指摘のとおり、北方領土問題を解決して日ソ平和条約を締結するということが我が国の当面する外交の重要な課題の一つであると我々も認識いたしております。
 これまでの事務レベルの話し合いの内容につきましては、まだ、外交交渉上の問題でございますので逐一申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、総括的に申しまして、領土問題に関するソビエトの姿勢には余り大きな変化は見られないということが我々の受けている印象でございます。
 それから、今後の見通しでございますが、ゴルバチョフ書記長兼大統領が来年には日本に見えることになっております。その点については先般も海部総理の訪米の直前に先方から書簡での確認があったところでございます。それに先立ってシェワルナゼ外務大臣が日本にお見えになることになっておりまして、実はこの春にということでお互いの話が、一応準備を進めていたわけでございますが、先方の国内の事情ということで今若干訪日の時期がおくれております。そういうことはございますが、日ソ双方の間において明年のある時期、まだ具体的な日取りは決まっておりませんが、明年じゅうにゴルバチョフ大統領が訪日されるということになっておりますので、我々といたしましても、それを目指しましてさらに協議を重ねて、何とか北方領土問題を解決して平和友好条約を締結して、日ソ関係をより一層安定した、そして発展し得る基盤の上に乗せたいと努力いたしているところでございます。
#42
○梶原敬義君 もう腹を据えて今後やっていただきたいと思うんですが、これまで日ソ平和条約締結の努力に対していろんな障害が言われておりました。
 一つは、一体アメリカの意向を無視してやれるのかというようなこともあったと思うんですが、四月三日の衆議院の予算委員会で中山外相は、日米安保条約が日ソの平和条約締結交渉の障害とはならないという認識を持っていると、このように答弁されております。それから、三月二十七日の朝日新聞にアマコスト駐日米大使の記事が載っておりますが、「北方領土問題について米国内には、今を「解決の好機」とする見方が出ている一方で、日本が対ソ関係改善に独り歩きするのではないか、と警戒感もあると伝えられている。日ソ関係をどう考えるか。」という朝日新聞の質問に対して、彼は、「我々は、日本がソ連との関係を改善しようと努力することを不安に思ったりはしない。米国もソ連との関係改善に努めているし、他の国がソ連との間で障害を取り除こうとするのは全く当然なことだと考える。」、このように述べておりますね。
 したがって、まさに障害となっているものはそ
ういう周りの方にはない。あとは北方領土を中心とする問題だけなのかどうなのか。
#43
○政府委員(佐藤行雄君) まず、ソビエトとの会談において、日米安保条約の存在が障害にならないという点は、ソビエトのシェワルナゼ外務大臣が、八九年、昨年の五月に宇野外務大臣に対しまして、日米安保体制と日ソ平和条約は両立するということを言った経緯がございまして、ソビエト側の口から障害にならないということがはっきりいたしておりますので、我々も、先ほど御引用になられました中山大臣の答弁もその点を踏まえてのことだろうと思います。アメリカに関しましては、御指摘のとおり既に何回となくアメリカの、例えば最近のベーカー国務長官とシェワルナゼ外務大臣との会談の際も、アメリカ側からこの問題をソビエト側に提起されております。
 我々としては、決してアメリカとかほかの国の力をかりてこの問題を解決しようとしているわけでないことは御承知のとおりでありまして、また、他方においてこういう状況でございますから、まさにこれは日本とソビエトの間の問題となっているわけであります。あとは、我々としてはソビエトに北方領土の問題についての我々の立場を理解してもらう、その上で解決するということだろうと思います。我々の立場と申しますのは、北方領土問題というのは四島一括返還、これが我々の原則的な立場であるということを長年言い続けてきているわけでございまして、この点について根気よく、かつ先ほどおっしゃられましたように腰を据えて粘り強くソビエト側と話し合ってまいりたいと思っております。
#44
○梶原敬義君 希望でございますが、腰を据えて粘り強く、さらにスピードを速めてやっていただきたい、このように思います。
 次に、防衛庁と外務省から先ほど国際情勢やあるいは国際情勢の変化に対する見方をお聞きいたしました。私だけかどうかわかりませんが、非常にニュアンスの違いがあちこちで感じられました。
 防衛庁にちょっとお聞きしますが、ソ連軍の削減問題等について、まあいろいろ言われておるが、本当にそれが削減をされているのか、あるいはただこう移動しているだけではないかというようなニュアンスのこともちょっと言われています。これで我々判断をするにはなかなか、あなた方の話を聞いて一体何を判断していいのかよくわからない。
 そこで、私たちは、下稲葉委員を団長にいたしまして、昨年九月七日から八日、九日とソビエトに行ってまいりました。これは各党それぞれ代表者が行きました。そこでソ連最高会議議長外交顧問のドブルイニンあるいはソ連最高会議議長軍事顧問のアフロメーエフ、そういう人にも会いました。特に具体的な防衛力削減問題については、ソ連国防省参謀総長臨時職務代行のククレフ少将、それからプレスセンター長のマルケロフ少将、これはアタッシェの方も一緒でございましたが、会いまして、そして私どもの調査団の方からこういう質問をしております。
  ゴルバチョフ書記長が国連で、二年以内に五十万人の兵力削減、さらに東部では二十万人、五月にはモンゴル撤退が始まっている。極東、なかんづく、日本の防衛力は、憲法で自主防衛と規定している。極東の中でも我々が関心を持っている北方領土からも、二十万人のソ連軍の撤退の中に入っているのかどうか。
この質問に対して、向こうの少将の回答はこのようです。ちょっと長いけれども読んでみますと、
 実際、昨年の十一月の国連総会で、ゴルバチョフ書記長は、五十万人の削減を述べております。これは軍縮を達成していこうとの我々の決意を示したもので、我々の安全保障を、大きな軍備によって達成するのではなく、不必要なほど大きな軍備で達成するのではなく、逆に相互の話し合いによって、もっと小さな軍事力によって安全保障を高めようとする、そういう我々の決意の現れです。実際にもこの削減計画は、履行されております。東部の二十万人については、すでに多くのことがなされている。例えば東部では、二つの軍管区を廃止した。即ち九月一日ウラル軍管区を廃止、六月一日中央アジア軍管区を廃止しました。モンゴルではタンク大隊、それに附属するそれ以下の隊、空軍部隊も撤収しました。二年間で三つの師団をモンゴルから、二つのタンク大隊一つの機械化師団、二つの空軍師団、この結果、九〇年からは、我々の一〇四兵力はモンゴルから存在しなくなります。このようにして現在の全兵力の七五%を撤去することができます。残りの二五%は永久存在が決まっているわけではなく、モンゴル政府との時間を追っての話し合いで決めていく。日本の人々、社会大衆がソ連の極東の兵力について心配しているのをよく知っている。このような懸念を考慮に入れて、この二年間に十二万人を極東から削減することにしています。
  この十二万人は、十二師団、十一の空軍連隊、海軍兵力からは、十六の艦船を削減することにしており、このようなソ連の措置は日本でも知られている。
このように言っているんです。
 それから、このような問題をアフロメーエフ前参謀総長と話した中で、やっぱりこの軍事力を削減するというのは非常に大変なことだ。その人たちをどのように、新たな平和産業に職を見つけていくかというのは、これは最大の課題だと。そして非常に苦労されているお話も聞きました。
 だから、そういう点で私が今言っている防衛力は、先ほど、まあ減すと言っているが何をやっているかわからぬと、このような意味のことを参事官が言われましたが、その点はどうもよく理解できません。どのように一体認識をされているのかちょっとお聞きしたい。調査会ですから余り難しく言わぬでいいですから。
#45
○政府委員(内田勝久君) ただいま委員御指摘になりましたソ連軍の一方的な削減、特に五十万人の削減を全体として行うと。さらにソ連アジア部から二十万人、極東部十二万人云々、その他数字をお挙げいただいてお話しいただきましたが、その点につきましては、私どももそういう発表をしていることは十分承知しておりますし、さらに、ソ連の発表いたしました一方的削減の実績というものもある程度出ております。若干を御紹介いたしますと、例えば五十万人削減のうちの一九八九年中の実施済みの分は二十六万五千人でありますとか、あるいは東部二十万人については、これは発表はないんですけれども、そのうちのモンゴル駐留軍についても五万人のうち二万三千人を削減したとか、こういった数字の発表は確かに行われております。
 私どもは、この削減の発表あるいは削減の実施、これはそれとして大変高く評価してよろしいかと思いますが、問題は、やはり事軍にかかわる問題でございますので、これが本当に実施されているのかどうか、私ども必ずしも即座にそれを実証する手段も持ち合わせておりません。それが本当に解体されたのか移動したのかという点について私どもなりに注目していかなければいけないと思っておりますけれども、どのような状況になっているのかということについて必ずしも現時点では実証されていない、不明のところが多いということを先ほど申し上げた次第でございます。
 あるいは、先ほど委員御指摘の軍管区の統合の話、あるいはモンゴルからの撤退の話、七五%というのは四個師団あるもののうち三個師団までを撤退するということで、ソ連の方の発表もございましてこれもよく承知しているところでございます。ただ、繰り返しになりますけれども、その実態というものについて私どもが基本的に興味を持っている、発表よりも実態に関心を持っているということでございます。
 なお、軍縮というものは大変難しい問題で、その実施については例えば撤退あるいは削減された兵員の住居の問題あるいは職業の問題、いろいろ難しい問題をソ連として抱えている。これはそのとおりであると私ども思っております。ソ連社会あるいはソ連経済に占めますソ連軍のプロポー
ションと申しますか割合というものは大変膨大なものに現在なっていると思います。それをどういう形で軍の組織からいわゆる民間と申しますか、そういう民間経済のセクターに組み込んでいくかというのは、これはソ連社会の一番大きな、ペレストロイカの一つの大きな課題であり、かつ我々の言葉で申しますれば恐らく一つの構造調整の問題であろう。我が国社会も今構造調整で大変難しい問題に直面しておりますけれども、恐らくソ連が直面しているこの軍の構造調整の問題というのは、我々の想像を絶する難しい問題であろうかと思っている次第でございます。
 そういう観点も含めまして私どもは、実際にやりたい、こういう削減をしたいという意思の発表というものはこれはそれなりに評価するものでございますが、実施になりますと、その意思いかんにかかわらずなかなか実態として難しいポイントが出てくるのではないか。それが具体的にどうなっているのかということを、ぜひその点が確認したいというのが私どもの立場でございます。
 以上でございます。
#46
○梶原敬義君 もう時間がございませんから簡単に申しますと、外務省の佐藤情報調査局長、まあ外務省の情報局長という名がついている以上は、今の防衛庁のような、一方では断定しない、一方ではわからぬ、こういうような話ではちょっと困るんですよね。判断がしにくい、国会でも。したがって御意見を賜りたい。
 それからもう一つマルケロフ少将が言っておりまして、日本の軍備そのものはソ連にとって余り脅威ではない。しかしアメリカが太平洋地域に持っている五十万人、これと合わさった軍事力というのはソ連にとって脅威だ、こう言っているんですね。それから、ソ連に対してアメリカが与えている脅威には二つある。一つは戦略兵器、それから二つにはそういうように五十万と二十七万の合体した前方に展開している兵力、これがやっぱり脅威なんだ、こう言っているんですね。だから、ソ連の脅威だけ先にずっと言いましたが、両方言って、なぜそこにそういう緊張が出てくるのか、その辺の問題についても少し触れていただきたい。
#47
○会長(中西一郎君) 簡単にしてください。
#48
○政府委員(佐藤行雄君) 簡単に申しますと、まず、先ほど防衛庁の方から説明のありましたソ連の撤退の問題につきましては、仮にそのとおり実施されるといたしましても、もう一つ我々としては考えておかなきゃならない問題があります。それはソ連の兵器体系の近代化の問題でございます。そういう面では、例えば水上艦艇につきまして、この間ゴルバチョフ書記長は北京で、古い十六そうを撤退するということを言われたわけですが、他方で、最近非常に近代艦のこの地域に対する配備が目立っております。そういう意味で、数を減らすものと兵器体系の近代化というものが全体でどちらの効果が出ているのかという点について我々は判断しかねているというところでございまして、安全保障を考えるという面から脅威が減ってきている、あるいは潜在的脅威を構成する要素が減ってきていると言い切っていいのかどうか。我々もまだそこまで言い切れないのではないかという判断をいたしております。
 それから、アメリカとソビエトとのお互いの間において、ソビエトもアメリカの核兵器を脅威と思っているという面はあると思います。逆もまたあるわけでございまして、我々は防衛計画の大綱で「核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存するものとする。」という立場をとっております。そういう立場から見まして、我々としてはまずソビエトの膨大な核兵器が減っていくことを期待しているということを先ほど申し上げたわけでございます。
#49
○黒柳明君 時間がありませんから、三問ばかりまとめて聞きますから、外務、防衛担当の方からお答えいただきたい。
 このリポートを見ますと、ソ連極東軍の問題は大体同じようなニュアンスですね。今もちょっと触れました、大体廃棄されているのは老朽化したものであると。あるいは海、空を中心にして近代化、増強が行われていると。若干こう部分的には出ていますけれども、ひとつまとめて、一昨年の秋あたりから米ソを中心にして急速に軍縮、和平のムードが高まっておりますが、その前と今とを比べてどういう点が増強されているのか、数の上で具体的にね。今若干出ましたよ、二、三。今佐藤さんがおっしゃったこともその一つでしょうけれどもね。もう一つ陸、海、空、どういう点が増強され、数字的にどうなっているのか。質的に近代化されているのか、これを数字の上でつかんでいる方からおっしゃっていただきたい。
 それからもう一点は、今週の月曜日でしたか、いつでしたか、北を中心にしてのスクランブルが少なくなったというような新聞報道が出ておりました。その数もひとつ教えていただけますか。
 それから三点目は、これは衆議院の予算委員会でも質疑がありましたけれども、ソ連の潜在的な脅威はなくなっていないと。何がなくなれば潜在的脅威がなくなるのか。まあなくなるというよりも、ソ連の何が潜在的脅威なのか。特に極東ということの広い範囲じゃなくて、これは日本の国会でありますから。我が国は潜在的脅威と考えているわけでありますが、同じことを必ずしも極東のほかの国が、こういう勢力が展開され、あるいは質的な増強があってもそれが脅威であると感じているかどうかは、ほかの国はほかの国でありまして、これは日本の国会でありますので、日本の国としまして国際的枠組みは変わっていないんだ、ですから潜在的脅威はこれは変わっていないと。となると、我が国の立場からどういう点が変われば潜在的脅威がなくなるのか、あるいは減少するのか。それについてひとつ箇条書きに教えていただきたい。
 以上、三点。
#50
○政府委員(佐藤行雄君) 大変難しい質問をいただきまして、まず潜在的脅威のことでございますが、きょうはこういう場だと先ほど言われましたので、私の若干個人的な感じも含めまして申し上げさせていただきたいと思います。
 黒柳委員御指摘のとおり、アジア・太平洋地域にとりまして各国がそれぞれ脅威の認識あるいは潜在的脅威の認識の仕方について違いがあるというのは事実だろうと思いますし、かつそれは変化するものであることも事実だろうと思います。そういう前提のもとで、脅威を構成していることについてよく能力と体制と言われますが、その体制の面一つとりましても、ソビエトの場合につきまして、我々としては、まずソビエトが我が方の領土である北方四島を占拠しているという認識が一つございます。それから、そこに一個師団規模の兵力を配備しているということもございます。そういう前提を踏まえまして、我々は従来からソビエトに対して、北方領土の返還を求めて、平和条約を結ぼうということを言っているわけでございまして、その領土に兵力が配備されているという事実、これは一つの要素として、ソビエトをここであえて潜在的脅威を構成していると呼ぶかどうかは別として、友好的行為とはなかなか呼べないと私は思うわけであります。そういう点もございます。
 それから第二に、戦後の歴史の中で、東西関係が構成されてきている中でソビエトがアジア・太平洋地域についても我々の目から見れば侵略行為ではないかと思われた行為を行ったわけであります。アフガニスタンに対する兵力の侵攻がそれでございまして、そういう前提のもとで我々としては、ソビエトがみずからの安全あるいはみずからの目的のためであれば国境の外に兵力を出すといいうことがあり得るということも考えなければならない。そういう流れの中で潜在的脅威を考えた場合に、ソビエトの中に潜在的脅威ではないと言い切れないものがあるというふうに考えております。
 それから、私の方で見ておりますソビエトの変化の件でございますが、私の方としては数量的に申し上げる立場にはございませんので、傾向的に、御納得いただけるかどうかは別でございますが、
まず陸の師団の問題でございますが、陸の中での装備面の変更というのはなかなか我々としてはつかみ切れません。他方、陸の師団はもともと大変な師団があったわけでございます。アジア地域だけでも四十八個師団あったわけでございまして、そのうち十個師団を減少させるとソビエトは言っています。ただし、そのうちの八個師団は中央アジア軍系の編成がえでございまして、対象になったのは二個でございます。そのうちモンゴルから一個を撤退させたと。具体的に解体されたのは残りの一個であるというのが我々の了解であります。太平洋艦隊の船の面でございますが、先ほど申し上げたとおりでございまして、新鋭艦の増強が非常に見られる。最後に飛行機の件でございますが、この面でもいわゆる我々の言います第四世代の新型戦闘機の配備が増加傾向にございます。今、ソビエトのこの地域における戦闘機総数の中の約一割が最新鋭機になっているという状況だと我々は理解いたしております。
#51
○政府委員(内田勝久君) 黒柳委員御質問の三点につきまして、第一点の極東ソ連軍の近代化につきましては、近代化のために数字がどうふえたのかという御質問のように私受け取れましたのですが、私ども、ゴルバチョフ書記長が昨年五月の北京での演説で述べております極東ソ連軍の一部削減という発表がありまして以来の話でございますが、特に極東ソ連軍の数字が増加したということは認めておりません。むしろ、どちらかというとそれは削減の方向にあるのではないか。そういう模様である。先ほども御指摘いただきましたのですが、その模様であるというところを強調させていただきたいのですが、数字としてはそういう傾向にあるのではないかと認識しております。
 ただし、委員御指摘のとおり、量的な削減を補うに十分な軍の近代化というものが行われておりまして、その近代化の中身につきましてはただいま外務省の方からも御説明がありましたけれども、例えば従来の在来型の潜水艦から原子力推進による潜水艦が増加していることとか、あるいは在来型の普通のロケットを備えた駆逐艦がミサイル搭載の駆逐艦に変わってきていて、そういうものが増加してきているとか、あるいは多数の第四世代の戦闘機でございますね、航空機が追加配備されている。そういった面での近代化が進められておりまして、全体としての戦闘能力、これも計量化はなかなか難しいところがございますけれども、私どもとしてはそういう戦闘能力はむしろ増大しているという認識に立っているわけでございます。
 第二点のスクランブルの数でございますが、私ちょっと担当しておりませんでここに持っておりません。大変申しわけないと思っております。
 それから第三点目、我が国は極東ソ連軍を潜在的脅威であると言っているけれども、それがなくなる条件は何かという御質問でございます。これはまさに私どもは、現在は増加傾向にないとはいえ、六〇年代中ごろから蓄積されております極東ソ連軍の規模というものは膨大なものになっているという認識でございまして、そういう膨大なソ連軍、特に極東ソ連軍、特にその持つ攻撃的な性格、そういったものが大幅に削減される、そういうものがなくなるということが潜在的脅威がなくなる一つのといいますか、そういう能力に着目して私ども潜在的脅威ということを申し上げているわけですから、それがなくなるということがまさに潜在的脅威がなくなるということであろう、このように認識している次第でございます。
#52
○政府委員(佐藤行雄君) ちょっと私数字を間違えました。陸は四十八個師団と申し上げましたけれども、五十八個師団から十個減らして四十八個師団にするというのがこれまでの発表でございます。
#53
○黒柳明君 結構です。ありがとうございました。
#54
○会長(中西一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十四分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#55
○会長(中西一郎君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査会を再開いたします。
 外交・総合安全保障に関する調査のうち、ソ連・東欧の情勢変化とアジアの政治情勢及び安全保障に関する件を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#56
○上田耕一郎君 初めに内田参事官にお伺いします。
 ソ連・東欧の変化は第二次大戦以来非常に大きな劇的な変化だと言われて、私もそう思うんですけれども、ヨーロッパに関する限り、第二次大戦後最大の変化だろうと思うんですね。ドイツの統一、中立化、さらにはNATO、ワルシャワ条約機構の解消などという問題にも焦点が当たり始めているわけですね。私はその意味では、五千万の死者の出た第二次大戦後集団安全保障を軸にした国連、本当に平和を望んであれがつくられたとき、そういう原点に改めて戻る必要があるんじゃないかと思うんですね。
 その点で言いますと、やっぱり軍事同盟問題で防衛庁のお考えというのには私は大きな疑問を持つんです。
 というのは、内田参事官も、NATOそれからWPOを東西の集団安全保障と、そういう言い方をされたんですね。それから日本の防衛も、日米安保条約もNATOも全部集団安全保障だ、こう言っているんですね。僕はこれは言葉の言い間違いというだけじゃなくて、非常に欺瞞だと思うんですよ。というのは、集団安全保障というのは、軍事同盟、個別的安全保障、こういうものを解消してそれでつくるべきものなんで、これは国際法上の当然のイロハの議論です。集団安全保障と対立する軍事同盟や個別的安全保障を集団安全保障と言うのはこれは大間違いだと思うんですね。国連憲章五十一条の集団的自衛権に基づいてつくられているものなんで、集団的安全保障とは全く違うんです。ここら辺が大事な問題なんです。ところが内田参事官は、例えばNATOについてもアメリカのプレゼンスが望ましい、NATOは維持されなきゃならぬ、それからドイツの統一問題についてもNATOに組み込む考え方、構想が大勢だと言われましたね。そうすると、では防衛庁は、当面この軍事同盟を必要だと思うだけじゃなくて、集団安全保障を目指さないのか。今の軍事同盟を絶対化し、永久化していくのか。日本政府は国連憲章の精神は支持するという立場に立っておるはずなのに、一体どういう考えを持っておるのかということなんです。これは基本問題なので第一にお伺いしたい。
#57
○政府委員(内田勝久君) ただいま委員御指摘の集団安全保障と国連との関連の御質問でございますが、御案内のとおり、日本の防衛に関しましては昭和三十二年五月二十日に国防会議で決定されました「国防の基本方針」というものがございまして、これが現在でも生きて、生きてといいますか、現在でも適用になっているわけですが、その第一項に、「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」という、これ第一項でございますけれども、そういう国連重視という姿勢には変わりございません。
 ただ、御案内のとおり、現在では国連にそれだけの力が残念ながらまだできてきていない。その間において、もちろん国連憲章そのものにも認められているわけですけれども、個別的自衛権、集団的自衛権というものの行使が認められている。もちろん日本の場合にはその集団的自衛権に当たる部分は行使し得ない憲法の態勢になっている。私直接担当しておりませんけれども、そのように理解している次第でございます。
 したがいまして、日本の個別的自衛権が行使できて、かつ日米安保体制という、これを集団的な安保体制と呼ぶのかどうか。委員御指摘のとおり、日米安保条約というのは若干特異な形をとっておりまして、日本の防衛にのみ日本の防衛についての条項、さらに極東条項というのがございますけれども基本的には日本の防衛ということを米国に
依存している、最終的には米国に依存していると、そういう態勢をとっているわけでございまして、現在、米ソを中心とした戦略核というものが大きく世界を二つに分けた形で対峙している。そういう基本的な戦略構造になっているという中で、日本は日本の安全の最終的なよりどころを米国の戦力に依存しているということがございますので、そういう形から出てくるものが日本の現在の防衛の体制である、このように私どもは理解している次第でございます。
#58
○上田耕一郎君 あと一、二問と思ったんですが、もう時間がございませんので、外務省の佐藤情報調査局長にお伺いします。
 今も指摘したように、日本は軍事同盟を維持しているわけですね。我々はこの軍事同盟をなくすことが日本の平和、世界の平和に一番役立つと思うんですが、日本の場合この軍事同盟が核軍事同盟に実際上なっているわけです。ヨーロッパでも、きのう東ドイツで連立内閣の協定が発表されたあの中にも、ドイツからは核兵器をなくすという項目があるんですけれども、日本も非核三原則があって、軍事同盟をなくす前にやっぱり核はなくそうというのが国是になっているはずですね。ところが、一つ大きな問題になっているのは、実際上非核三原則というのは空洞化されている。アメリカが核のあるなしは肯定も否定もしないということがあり、日本政府も非核三原則をあいまいにするのに協力しているんですね。
 それで、一つお伺いしたい。外務省の「外交フォーラム」二月号に、アーミテイジ前国防次官補が「今日の世界と日米安保関係を考える」という論文を書かれている。この中で、日本の野党、これは社会党も含むんでしょうが、非核三原則の強化、こういう主張をしていることの素朴さについて心配している。アメリカは八五年に不本意ながらニュージーランドとの防衛関係に終止符を打った、ニュージーランドがあの非核政策とったからだというんですよ。ニュージーランドが同盟の利益にあずかりたいと言いながら、その同盟における責任を引き受けようとしなかったからだと。もし日本がそのような政策をとるならば、その被害は甚大で、恐らく取り返しのつかないものになるだろうと。アメリカが肯定も否定もしないという政策は、これは安上がりに抑止力を確保することができるんだということを言っているんですね。だから日本の野党のように、ニュージーランドのように非核政策をとれば取り返しがつかぬと。同盟やめるぞ、安保条約やめるぞというようなおどしをアーミテイジ前国防次官補が外務省の雑誌に書くというような状況になっているんですね。
 実際上こういうことで横須賀に核積載の軍艦がどんどん入ってきている。あるかないかわからない。ソ連の方は、あるかないかわからないんだからあると見てね、これは抑止力になっているだろうというのがアメリカの立場です。それに日本政府も協力しているでしょう。この問題は国会でずっと議論になったので、一つだけ局長にお伺いしたいのは、こういうふうにあるかないかわからないということによって、ソ連側から見れば日本はアメリカのアジアの核戦略の前方展開の根拠地になっているわけね。日本がアメリカの核抑止力の拠点になっているというこういう事態、これは外務省にとっては好ましいものと思っているのかどうか、この点について端的にお伺いしたいと思います。
#59
○政府委員(佐藤行雄君) 答えが若干すれ違いになるかもしれませんが、我々は、先ほど申し上げましたように、グローバルなアメリカの核抑止力に依存して我が国の安全保障を図っているということでございまして、今委員御指摘の核の抑止力の根拠地がどこかということについて、なかなかはっきりしない問題でございますが、いずれにせよこの段階で私が申し上げられますことは、日本はアメリカの核抑止力全体に対してそれを、日本の安全保障のために安保条約を通じて活用しているという状況でございます。
#60
○上田耕一郎君 終わります。
#61
○高井和伸君 私の質問のテーマは、まずはヨーロッパ主義というようなことをテーマに外務省佐藤情報調査局長にちょっとお尋ねしたいんです。二つ目は内田参事官に、軍縮問題などを考える場合に、例えば一個師団削減するといったような場合に先ほどのお言葉の中に、軍縮の事実は立証されていないといったような、そういった側面でちょっとお尋ねしたいと思います。
 それで、先ほどのレポートの中に、東ドイツの統一大連合の政策協定の中にも、NATOに一部入っていて、将来大きくできたときには全ヨーロッパ的な安全保障の中に入っていこう、このような発想でございました。そしてさらに、先ほどの田村委員の質問の中にも、アメリカから見た同盟国の信用度では日本は非常に低くて、ヨーロッパ諸国の信用度は非常に高い。まあいろんな場面で、先ほども全体的な東欧の政治情勢の変化、そういったものに比べましてもヨーロッパとアジア地域は違う、異質であると、このような観点からいろいろレポートされました。そういう認識だということだと思うんですが、そうした場合、このヨーロッパ主義という、まあ日本異質論の出てくる根拠なんだろうと思うんですが、こういったヨーロッパ主義というものが現行の安全保障の上で日本国はどのようにとらえて対処し考えているのかというようなことの一端を、端っこの方で結構ですから、個人的見解でも結構ですので、ちょっとそこらのお話を聞かせていただきたい。要するに日本は軽く見られているんじゃないか。その裏っ側に、やはり核抑止力というアメリカの傘の下にいて、日本国の、何というんですか、やせ我慢の国家としてのりりしさが足らぬのじゃないかというような側面で、ある意味では軽く見られているんじゃないか。その裏っ側にヨーロッパ主義というものがあるのじゃなかろうか、こういう私は推理しておるわけでございまして、そこらの点での御見解を伺いたいと思います。
#62
○政府委員(佐藤行雄君) いわゆる西側の世界の中におけるアメリカと欧州と日本の対比ということでお答えさせていただきたいと思いますが、アメリカと欧州は、確かにアメリカ人の多くの人がイギリスから来たとかヨーロッパから来たとかいうことで、歴史的なあるいは文化的な背景をともにするという事実があることは一方の前提にあると思いますが、アメリカと欧州とのNATOの同盟関係の実態を見ますと、お互いのかなりの主張の違いもあるのを全体としてまとめていくという過程の繰り返しでございます。その中で、ある時期は特殊な関係と言われた英国がアメリカと一番近かったり、あるときはドイツが近かったり、フランスは軍事組織の中から外れておりますが、時にアメリカとの関係が非常に近かったりするわけであります。そういう意味で私が指摘したいのは、アメリカとヨーロッパとの関係、西欧諸国との間でも決して常に平穏な協調体制があるというわけではないということを私はまず指摘したいと思います。
 それから第二に、核兵器を持っていれば、尊重されるかされないかということも一つあるんだと思いますが、今申し上げましたように、ドイツは核兵器を持っておりません。それでもアメリカが時にドイツをNATOの中で一番重要だということを強調している時期もあったわけでございますし、これからはヨーロッパの政治の大きな動きの中心になるだけに、アメリカの関心をますます引きつけていく国はドイツになるだろうと思います。まあアメリカとヨーロッパとの間にもいろいろございますし、西側の世界というのは決してヨーロッパ中心ではなくて、それぞれの部面部面の問題がある。そういう意味では、私は決して日本がアメリカの核抑止力に依存しているということで低く見られているとかそういうことはないだろうと思っております。
#63
○高井和伸君 もう少し太い答えを欲しかったんですが、あちらこちらに分散した御答弁で、理解しにくかったという感想でございます。
 続きまして、先ほどの話の中で、今軍縮を一方的にゴルバチョフさんがいろいろ宣言してやっておられるだとか、先ほどのレポートの中にも、引
き揚げて、量的にはある程度の減少が見られるだとか、他方には軍縮の事実が実証されていないだとか、北方四島には一個師団いるだとか、そういったような、我々の政策議論、ないしは軍縮外交の問題で議論する上での基本的立場で、こういった軍事的な機密事項が皆さん方にある程度前提としてあるはずだ。まあ他方で、いろいろ聞いていくとそういう事実がないからというようなことで、かなりそこら辺の事実ですね、軍備力に対する事実の認識において恣意的に政府当局はいつでも答弁できる。他方では、軍縮ができているというときはそれでいいし、逃げたいときはそういう事実が実証されていないと言えば機密の中に逃げ込めるわけですね。そこら辺の基本的な観点で、日本国政府は、行政当局はどういう事実をもって――具体的に言えば、軍縮ができたかできないかということを、衛星をもっていろいろ上からぱっぱぱっぱ見ていくという情報を日本がアメリカからもらっていて確認しているだとか、アメリカの当局が言明したからそれを信用するだとか、そういう複合的なものだろうとは思うんですが、そこら辺の、きょうもいろいろ議論なさりレポートされた事実問題において、防衛当局で結構ですが、一個師団削減されたという事実は例えばどのようなことで確認なさるのか、実証されたと認識されるのか、そこら辺についてお尋ねしたいと思います。
#64
○政府委員(内田勝久君) ただいまの御質問でございますが、まず第一点として、行政当局あるいは防衛庁は、恣意的に情報を出したりあるいは引っ込めたりと申しますか、隠したり、そういうことをしているのではないかという御趣旨の質問でございましたら、その点は全くそういうことではございません。これは客観的な私どもが確認し得る事実に基づきまして、できるだけそういう事実については国民の皆様にも理解をいただきたいということで、最もよく人口に膾炙しておりますのは毎年出させていただいている防衛白書の中で、日本をめぐる周辺の軍事情勢についても発表させていただいている次第でございます。
 情報源はどこなのかというのが第二の御質問であったかと思いますが、委員御指摘のとおりこれはいろいろな情報がございます。確かに複合的であると思いますが、その情報のソースそのものにつきましては、いろいろこれは情報にかかわる問題でもございますので、詳細を公表することは、むしろ今後の情報収集という面にも支障がございますので、大変遺憾ながら答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#65
○高井和伸君 今の話、まあ鶏が先か卵が先かのような話になってしまって、エンドレスの話になるわけですが、そこは信用しろと、こういう趣旨でございますか。
#66
○政府委員(佐藤行雄君) 軍縮の問題全体について、先ほどの点はソビエトの発表している点が事実かどうかの確認ということでございましたけれども、もう少し全体を見ますと、御承知のとおり、核軍縮、核の軍備管理を初めとしてこの点の交渉が一番進んでおりますのは米ソ間でございます。それで、米ソ間で何が重点かと言われますと、軍備管理の目標と同時に、その検証ということが重視されているわけであります。それが条約化されていって初めて確認されるということでございますので、その点がまず何よりも第一である。第二は、一方的な削減の発表については、私が先ほど申し上げましたのは、それが本当に事実かどうかということもさることながら、ソビエトの全体像、極東ソ連軍の全体像の中でどれだけの意味を持っているかという点がむしろ我々としては今解釈すべき重点ではなかろうかということでございます。第三の点である、本当に減っているかどうかという実証については、最近アメリカとソビエトとの間ではお互いに立入検査とかいろんなことをやっておりますけれども、まだ我々の中ではそういう手段もございませんので、我々の用いる手段は間接的にならざるを得ないということでございます。
#67
○会長(中西一郎君) ソ連・東欧の情勢変化とアジアの政治情勢及び安全保障に関する件についての質疑はこの程度といたします。
    ─────────────
#68
○会長(中西一郎君) 外交・総合安全保障に関する調査のうち、日米経済摩擦と今後の両国関係に関する件を議題といたします。
 まず、外務省、大蔵省及び通商産業省から説明を聴取いたします。外務省原口大臣官房審議官。
#69
○説明員(原口幸市君) 外務省の原口でございます。
 本日、先生方から与えられましたテーマは、日米経済摩擦と今後の両国関係という非常に大きなテーマでございますが、私は、とりあえずこの問題を、先般まとまりました日米構造協議の中間報告を軸にお話しさせていただきたいと存じます。
 まず、日米構造協議の経緯でございますけれども、これは昨年の五月二十六日、実はこの日は米国の行政府が新通商法に基づきましてブラジル、インド等に対してスーパー三〇一条に基づき優先国との指定をした日でございまして、日本もスーパーコンピューターあるいは衛星の政府調達、林産物のスタンダード等に関連しまして、この三品目を優先慣行として指定された日でございますが、この日にブッシュ大統領は声明を出しまして、スーパー三〇一条とは全く別の枠組みとして日本と構造問題について協議を行いたいという提案をされたわけでございます。そしてそれから二カ月後の七月十四日、ちょうどパリで先進国のサミットがあったときでございますが、そこにたまたま集まった宇野当時の総理とブッシュ大統領が会談をされまして、今後本件協議を行っていく旨合意され、共同声明を発出したわけでございます。
 御参考までに、その共同声明のさわりの部分を御紹介させていただきますと、「両首脳は、低インフレの下の持続的経済成長、国際貿易の拡大、及び経常収支不均衡の一層の削減を促進するために緊密に協力していくとのコミットメントを再確認した。この関連で両首脳は、経済政策協調についてのコミットメントを再確認し、」「また、両首脳は、新しいイニシアチブを発足させることによって、これまで払われてきている努力を補完することについて合意した。両首脳は、」「国際収支不均衡の削減に貢献していくとの目的の下に、両国で貿易と国際収支の調整の上で障壁となっている構造問題を識別し、解決していくこととなった。」「この構造問題協議は、米国通商法第三〇一条とは係りなく行われる。作業グループは、一九九〇年の春に中間的評価を行うものとし、両国首脳に対して一年以内に共同最終報告を提出する。」とこのようになっております。
 そこで、今の共同声明に既にある程度協議の性格は明らかでございますが、特に先生方の注意を喚起したい点は、第一に、これは両国の経済政策協調努力を補完する努力であるという点。それから第二に、双方通行の作業であるという点でございます。すなわち、米国が日本に一方的に注文を出すということではなくて、日本も米国に対して指摘する、両国共同の双務作業ということでございます。
 そこで、共同の双務作業ということで、日本側から米国に指摘した点が七分野ございます。
 第一は、貯蓄・投資パターンということでございまして、その裏には、米国連邦政府の財政赤字の削減が不可欠である。また、民間部門の貯蓄率の向上が必要で、米国政府としてはこれを促進する措置をとることが望ましいのではないかという我々の考え方があったわけでございます。
 第二の分野は、企業の投資活動と生産力と名づけられておりまして、これは米国企業の競争力、輸出余力をつけるためには、設備投資を促進していく必要があるのではないか。また、外国からの直接投資は、米国の競争力を高める上に役立つので、一部米国で出ております外国の直接投資の制限を求める動きに対して、米行政府としてはしっかりした反対の態度をとるべきではないかというような考え方が裏にございました。
 第三分野は、企業ビヘービアの問題でございます。御存じのとおり、米国の企業は、ややもすると
非常に短期業績主義というものを重視する結果、中長期的な企業戦略を忘れがちで、それが結果として米国産業の競争力を弱めているのではないかという観点から我々は問題提起をしたわけでございます。
 第四の分野は、政府規制でございまして、これは各種の政府規制がややもすると米国の競争力の乏しい産業を保護することによって、結果として米国産業の競争力を全体として弱めていることになっていないかという観点からの問題意識でございます。
 それから第五番目が研究・開発関連でございまして、競争力を強化していくためには研究・開発を大いに進めていく必要がある。その面で米国政府としては何らかの配慮というものをこれまで以上に行っていく必要があるのではないかという問題意識から指摘した点でございます。
 第六の分野は輸出振興でございます。もう少し米国の政府がこの輸出振興の重要性を認識して、音頭をとっていただいてもよいのではないかというような観点からの問題提起でございます。
 第七番目が労働力の訓練と教育の問題でございまして、結局米国産業の競争力強化のベースになるのは、労働力あるいは将来の労働力になる人たちの教育の問題。したがって、米国政府としてはこの点についても今まで以上に配慮をしていく必要があるのではないか。かかる問題意識から七分野について問題提起を行ったわけでございます。
 これに対しまして米国からも日本に対して六分野について問題の提起がございました。
 第一は貯蓄・投資パターンについてでございまして、これはまさに我々がアメリカに提起した問題の裏返しのような形になっておりまして、日本の対外不均衡を是正するためにはもっと日本とししては消費を進めることが必要ではないか。したがって、もう少し具体的に言えば、公共投資とか消費者金融の利便性を向上させるというような問題についてもう少し政府として考えてもらっていいのではないかという問題提起でございます。
 第二番目の問題分野は土地利用の問題でございまして、これは日本の地価が非常に高い、その結果、外国から日本に企業が進出しようとしても、イニシアルコストが非常に高くてなかなか思うように進出できない、こういうような問題点。それから、地価が高いことが物価を高める。それで家が小さい。そうなれば家の中に入ってくる耐久消費財もおのずとそれに対する需要も少なくなってくる。そして、それが輸入制限的に働くのではないか。かかる観点からの問題提起でございます。
 第三の分野が流通の分野でございまして、流通面で各種のボトルネックが日本にはある。これが物価を不当に押し上げていて、新規参入特に輸入品の参入を難しくしている側面があるのではないかという観点からの問題提起でございます。
 第四番目は排他的取引と彼らが称しているものでございまして、日本の独禁法の運用が十分に厳しくない。このため、新規参入者特に外国企業や外国製品の日本市場に対する参入がなかなか難しい側面があるのではないかという問題提起であります。
 第五番目は系列関係。系列グループ間の取引は、外国企業を差別したり、公正かつ自由な競争を阻害するおそれがあるという観点からの問題提起でございます。
 第六番目が価格メカニズムと彼らが称しているもので、内外価格差の存在は、日本における構造上の問題の存在を示すものだという問題意識でございます。
 そこで、この協議の展開でございますけれども、昨年の九月に第一回の会合を開催いたしまして以来、十一月、それから本年の二月と会合を重ねまして、先般ワシントンDCで開催された会合が第四回に当たります。先ほど御紹介いたしました共同声明の一番最後のところに、九〇年春に中間評価、一年以内に最終報告を出すということが書かれてあったことを思い起こしていただきたいと思いますが、この第四回会合はそういうわけで中間報告を取りまとめるべき時期にたまたま開かれる会合になったというわけでございます。
 そこで、本日のテーマに関連いたしますが、まず、日米構造協議に対する政府の基本的な立場ということをこの際御説明した方がよろしいかと思いますが、基本的には政府としてはこれに前向きに対応すべきだということでございまして、大きく分けて三つの理由があると存じます。
 第一は、国民生活の質の向上、それから消費者利益の重視というものにこのエクササイズが役立つという認識でございまして、三月二日の今第百十八回国会の施政方針演説におきまして、海部総理みずから政策展開の基本方針の一つといたしまして、「公正でしかも心から豊かさを享受できる社会を建設していくこと」ということを述べられております。そして、「特に、長寿社会における福祉の充実、土地・住宅問題の解決、内外価格差の是正は当面の急務であります。」とも述べられております。まさに日米構造協議に臨む第一の視点というところはここにあったと言うことができると思います。
 それから第二の理由といたしましては、現下の日米関係のマネジメントに資するという判断があったと思います。これはそもそも宇野・ブッシュ共同声明から始まったという経緯から考えてもおのずから明らかであろうと思います。
 第三に、我が国経済と世界経済全体との調和を確保する上にこの日米構造協議は役立つという判断もあったと思っております。相互依存関係がますます深まっております国際社会において、日本の国際社会に占める比重は大幅にふえつつありますので、この観点は日本にとって極めて重要だろうと思っております。他方、一九八六年の東京サミット以来、構造調整の重要性というものは毎回サミットの主要なテーマとなっておりまして、経済宣言の中に必ず一項が設けられているという事情がございますし、OECDでも本件の議論が活発に行われてきております。したがいまして、日米構造協議は国際的な構造調整努力に積極的に対応する努力の一環という一面もあろうかと思います。
 以上、三つの重要性、判断の根拠、前向きに対応するという裏にある根拠を御説明いたしましたが、そのうちで本日のテーマに非常に関係する日米経済関係の現状について若干触れさせていただきたいと思います。
 これは、まず第一に私が強調したいと思いますのは、日米両国の互恵的で相互依存的な関係というのは近年ますます強まっているという事実でございまして、貿易面を一つとりましても、日本にとって米国は最も大きな貿易相手でございまして、日本の輸出の約三割を占めております。米国にとりましても日本はカナダに次いで二番目の貿易相手国であります。米国の対日輸出額というものは、米国の西独、英国、イタリアに対する輸出額を合わせた額にほぼ匹敵するほどの大きさになっております。他方、資金面の流れを見ましても、米国債の入札で日本勢は全体の三割ないし四割を落札しておりまして、日本からの資金流入は米国政府の財政赤字、貿易赤字をファイナンスする上で非常に大きな意味を持っていると思います。
 他方、最近米国における対日観が悪化していることも遺憾ながら紛れもない事実でございまして、外務省ではかねてから米国のギャラップ社に依頼いたしまして、米国における対日世論調査ということを行ってきております。本年もまた一月から三月にかけましてこの調査を行いました。その結果は四月の八日に公表しております。
 その中で、日本は米国の信頼できる友邦か否かという質問がございます。これは実は昭和三十五年以来一貫して同じ質問をしておりますので、その結果をたどっていきますと、それなりに大きな意味のあるトレンドというものが読み取れるわけでございますが、一般の部での回答は、信頼できると答えた人が四四%、できないと答えた人が四〇%でございます。この信頼できるというふうに答えた四四%の数字は、過去三十年間に、これ以下であった年というのが六年あっただけでございまして、その他の年はもっともっと高かったという
事実がございます。他方、信頼できないと四〇%の人が答えたわけですけれども、これは昭和三十五年以来では、昭和三十五年に信頼できないと答えた人が五五%に上ったという事実がございますけれども、それ以降一番高い数字でございます。これがある意味では最近の米国における対日観というものの変化を示している一つの証拠かと思うのでございます。
 では一体、この変化というものはどういうところから来ているのだろうかという分析の問題がございます。もちろん、この理由につきまして公的な分析というものは存在いたしませんので、どうしてもこれは私の個人的な印象ということにならざるを得ないのでございますが、そういう意味で御了解いただきたいと思いますが、私が感じるところ、第一に、やはり国際情勢の急転回というものがあろうかと思います。特に米ソ関係の緊張緩和というところがあずかって大きいのではないか。これまで米国人は、米国の脅威のナンバーワンはソ連の軍事的な脅威であるというふうに答えるのが常でありましたが、最近、ニューヨークタイムズとかCBSの世論調査等によりましても、ソ連の軍事的脅威を重視する答えが減ってきて、それにかわって日本からの経済的脅威というものを重視する人の数がふえてきているということがよく伝えられております。たまたま私の手元には昨年八月七日に出されたビジネス・ウイークの調査結果がございますが、ソ連の軍事的脅威が米国にとって一番深刻だと答えた人は二二%、日本の経済的脅威が深刻だと答えた人は六八%であったという報告が出ております。これは問題の設定が必ずしも適当でなくて、二者択一という形になっておりますので、どの程度これを重視すべきかは問題でございますけれども、それにしてもある程度一つの傾向を読み取ることができるのではないかというふうに考えております。
 第二の理由は、両国間の貿易の不均衡が巨大であり、余り改善していないという点があろうかと思います。お手元に資料をお配りしてあるかと思いますが、米国のグローバルな貿易赤字は極めて巨額でありますが、このところかなり急速に減少しております。八七年、八八年、八九年と三年間で千五百二十一億ドルから千八十六億ドルへと減少しております。ところが対日赤字になりますと、この間五百六十三億ドル、五百十八億ドル、四百九十億ドルと多少減少はしておりますが、減少の速度はそれほど大きくなく、この結果、全体が減っておりますので、日本の対日赤字の割合はかえってふえている、五割近くまでなっているという面があります。しかも、問題は八六年とか八七年の時点におきましてはアメリカのECに対する貿易は赤字でありました。ところが、八九年になりますとアメリカのECに対する貿易収支は黒字に転じている。そういう意味で一層日本の貿易黒字というものが米国人の目に大きく映っているという側面があるのではないかと思います。
 そして第三に、この大幅な二国間の貿易収支の不均衡と関連して、日本の貿易・経済システムが閉鎖的である、あるいは異質だというパーセプションがややもすれば横行するという側面があろうかと思います。そして、日本は異質だから、日本に対しては別のルールを適用しても差し支えないんだといったような管理貿易論というものがややもすれば幅をきかすという側面があろうかと思います。
 第四番目に、日本からの対米直接投資の急増という側面もあろうかと思います。特に不動産投資、またコロンビアの買収とかロックフェラー・センタービルの取得といったように、アメリカのシンボリックな建物、物件についての取得というものが、ややもすれば日本が米国を金に飽かして買い占めているのではないかというような印象を植えつけているという側面もあろうかと思います。しかもそれに加えて、お配りした資料に出てございますが、日本の対米投資は米国の対日投資に比べますと、残高それから年別のフローにおきましても非常に大きいという側面がございまして、それがインバランスという感じを殊さらに米国民に与えているのではないか。
 それから、最後の点になりますが、ハイテク分野で日本におくれをとっているという懸念があって、このハイテク分野というのは米国の将来にかかっている問題でございますから、これもまた日本に対する何らかのネガティブな感情につながっているのではないか、このように考えております。
 中間報告の日米経済関係マネジメントの上における意義でございますけれども、いずれにいたしましても、こういう背景の中で両国首脳の共同声明で始まった協議でございますので、これを成功させることが両国関係をマネージしていく上でも大変重要であるというふうに我々は考えておりまして、政府といたしましても全力を尽くして中間報告の成功に努力したわけでございます。
 そこで、十三省庁、総勢六十余名がワシントンに出張いたしまして、四月二日、三日の予定で第四回の協議を行ったわけでございます。しかし、これまでの会合と異なりまして、今回の場合には双方の措置を紙に残すという作業でございますので、ややもすればどうしてもその詰めに時間がかかりまして、結局最終的にまとまりましたのは現地時間で五日の午後六時五十分ごろでございます。
 中間報告は、お手元にお配りしました共同記者発表及び日米それぞれの措置の三文書で構成されております。それに加えまして、実は米国、日本がそれぞれ相手側の措置についての感想、希望、所信といったものをコメントという形で一方的に出した文書がございますが、これは今申し上げました中間報告と一体をなすものではなく、当然、その文書についてもお互いが同意を与えたという性質のものではございません。
 実は、この中間報告というものの成功を非常に我々は重視してきたわけでございますので、当然のことながらこの報告が米国でどのように評価されるかということについて大変関心を持って見守っていたわけでございますが、ホワイトハウスは五日にプレスリリースを出しまして、このように要旨を述べております。「日米関係強化に向けての重要な道程である」、「海部総理のリーダーシップにより両国関係に新しい協力の精神がもたらされた。これにより両国の安全保障関係を強化し、日米のグローバルパートナーシップを促進するとともに、両国間の未解決の経済問題の解決をも促す積極的で協力的な力が生まれた。」と、非常に歓迎するステートメントを出しております。
 片や、マスコミも概して、極めて積極的な反応を示しておりまして、二、三御紹介いたしますと、六日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、「もし、完全に実施されれば、今次中間報告は、二国間関係の分水嶺となるであろう。」というふうに述べておりますし、同じくジャーナル・オブ・コマースは、「日米両国は、政治的、文化的な貿易障壁削減を目的とする交渉において大きなハードルを越えることができた。」「今次報告は、日米間に有効な意思疎通が行われたことを示し、両国は、今後より良好な協力関係がもてる筈である。おそらく最も重要なことは、今次報告は、世界貿易体制の強化を意味する。」というふうに述べております。また、六日付のサンフランシスコ・クロニクルは、「今次協議が妥協点に達したことは喜ばしい。日本人は、自己批判的になっているが、米国も自己批判を行うべき。」である。「感情的反発は不毛。」であり、「日米関係は、意思疎通不足によって倒壊するには重要すぎる。構造調整は、容易ではないが、今回の合意は正しい方向」である、このように述べております。
 他方重要な点は議会の反応でございますけれども、ボーカス上院議員あるいはダンフォース上院議員といった従来強硬派と言われた人たちの反応も、例えば、ファーストステップとしては勇気づけられる。あるいは、協議はやる価値のあるものだった、しかし百聞は一見にしかずだ、というようなことを言っております。通常極めて批判的、否定的なコメントの多い議会の反応としては、まずまずの反応ではなかったかと我々は考えております。
 そこで、今後の課題でございますが、宇野・ブッシュ共同声明で、一年以内に最終報告書を出すということになっております。したがって、夏には最終報告を出す必要がございまして、今後の作業は、最終報告に向けて、今回の中間報告に盛り込まれた日本側措置の具体化、実施を中心として着実にこれを進めていくことが重要かと考えております。
 他方、中間報告には、米国として財政赤字削減、競争力強化等に対する真剣な取り組みを示す措置が盛り込まれております。日本としては、かかる米側の措置が着実に実施されることを強く期待しているところでございます。
 日米の構造協議は、世界一、二の経済力を有する両国が、それぞれの経済構造上の問題について互いに指摘し合い、協議を進めてきているものであります。相互依存関係の著しい深化を示すものとして世界的にも注目されているというのが現状でございまして、今般の中間報告に関しましては、各国とも日米両国の努力を評価しておりまして、今度日米中間評価に盛り込まれました諸措置の実施に大きな関心を示しているというのが現状でございます。
 なお、日本側の措置のうちには法改正を要するものもございます。今後国会の御了承を得るべく所要の手続をとることになると思いますが、よろしく御理解と御協力を賜りたく、あらかじめお願い申し上げます。
#70
○会長(中西一郎君) 次に、大蔵省江沢国際金融局次長。
#71
○政府委員(江沢雄一君) 今、外務省から御説明がありましたように、日本側、米国側、それぞれの項目につきまして議論を行ったわけでありますが、御承知のとおり構造協議は、外務省、大蔵省、通産省、三議長で行っておるわけでございまして、大蔵省の担当の分野について御説明をさせていただきます。
 まず、日本側の措置としまして、大蔵省が議長として担当したのは貯蓄・投資パターンそれから系列の問題でございます。それから米側の措置につきまして、大蔵省としてはやはり貯蓄・投資パターンの点を担当いたしました。
 まず、日本側の措置につきまして、「貯蓄・投資」パターンでございますが、まず、基本認識といたしまして、我が国の経常収支黒字は着実に縮小してきておる。対GNP比で八六年度四・五%というピークを示したわけでございますが、八九年度には二・二%まで下がっておる。今後ともインフレなき内需主導型の持続的成長を目指す政策運営を行っていくということが一つでございます。それから、我が国は対GNP比で米国の約四倍に上る公共投資を行っております。社会資本整備の重要性、必要性は強く認識しておりまして、今後ともその着実な推進を図ってまいる方針でございます。
 具体的な「対応策」でございますが、まず第一に、平成二年度予算における積極的な取り組み、それから二番目に、今後の積極的な取り組みとしまして少し長期的な問題を、中長期的な問題を扱いました。それから三番目に、民間部門の消費拡大ということでございます。
 まず第一に、当面の平成二年度予算における取り組みでございますが、一般会計予算におきまして引き続き高水準の公共事業関係費を確保いたしました。また、地方財政計画における地方単独事業費や財政投融資における公共事業実施機関の事業規模は、それぞれ七%程度の増加となっております。
 それから、今後の中長期的な公共投資のあり方につきましては、本格的な高齢化社会が到来する二十一世紀を見据えまして、着実に社会資本整備の充実を図ってまいります。平成二年度末に期限の到来します八分野の社会資本整備長期計画は、ほとんど目標を超過達成する見込みでございます。これらを更新し、現行規模を上回る計画の策定に当たっての積極的かつ具体的な整備目標を示唆するというために、早急に検討を開始するということにしております。それから、今後十年間の新しい総合的な公共投資計画を策定することとしておりまして、七月の最終報告において計画の支出総額を明示するということにしております。また、各年度の具体的な進め方につきましては、各時点の経済財政情勢を踏まえ、機動的、弾力的に対処するということでございます。それから、公共投資の配分に当たりましては、国民生活の質の向上に重点を置いた分野にできる限り配慮をしていくということにしております。そのほか国庫債務負担行為の有効活用、財政投融資の活用、大規模複合開発プロジェクトについての関係省庁間の体制の整備を図る。あるいは国公有地の活用、例えば汐留の操車場跡地の高度利用でございますとか、大深度地下の利用促進のための法律の検討、また民間の資金、技術等を最大限発揮させるための規制緩和、インセンティブの付与、大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的な推進、例えば常磐新線の計画がございます。それから建設市場参入に関する日米合意の誠実な実施というふうなことを考えておるわけでございます。
 それから三番目に、民間部門の消費を拡大するという観点から、労働時間の短縮、あるいは消費者信用の充実のためにクレジットカードの利便性向上等を検討するということになっております。
 それから、系列問題につきまして申し上げます。
 まず、基本認識といたしまして、系列関係の存在は一定の経済合理性を有するというプラスの側面もあるわけでございますが、系列関係を背景とする事業者間の取引が公正な競争を阻害することのないよう、競争政策上の対応を図りつつ、外国企業による我が国市場への参入が円滑に行われるよう各般の施策を推進することとしております。
 具体的な対応策といたしましては、まず第一に、公正取引委員会における検討等といたしまして、公正取引委員会は系列関係にある事業者間取引における監視を強化するとともに、これにより一定の取引分野における競争の実質的制限が明らかとなった場合、株式の譲渡等の適切な措置を講ずるほか、この問題に関連しまして独占禁止法の運用を明確にしたガイドラインを作成、公表し、この法律の運用を厳正に行うということにいたしております。公正取引委員会は系列グループに関する調査をおおむね二年ごとに定期的に実施することとしておりまして、その結果を公表することにしております。また、調査に当たっては、総合商社の役割に重点を置くということになっております。
 それから二番目に、対日直接投資の促進ということでございまして、対日直接投資の開放性に関しましてポリシーステートメントの公表を検討する。それから対日直接投資及び技術導入の規制に関する外為法の改正について検討する。また、日本開発銀行等の外国企業向け融資制度の拡充等、外国企業の対日投資の支援を図るということを考えております。
 それから、TOB制度につきまして、事前届け出制の廃止等の法改正を行うことといたしまして、今国会に改正法案を提出する予定でございます。
 それから、ディスクロージャーの改善に関しましては、株券等の大量保有の状況に関する開示制度、いわゆる五%ルール、五%以上のシェアを持ちます場合にその公開を義務づけるという五%ルールの導入を図るべく今国会に改正法案を提出する予定でございます。それから、系列問題に関するディスクロージャーにつきまして、最終報告までに結論を得ることを目途としまして、関連当事者間取引に関する情報開示、連結財務情報の整備等、一層の改善が適切と考えられる事項に関し検討を進めてまいります。
 それから最後に、会社法の見直しでございますが、商法によるディスクロージャー制度の拡充等について、今後の法制審議会において検討することになっております。
 次に、米国側の措置につきまして、貯蓄・投資パターンの項目について簡単に御説明をいたします。
 米国におきまして貯蓄率を高めることは米国の経常収支の不均衡の改善を助長するということで
ありまして、公的、民間両部門において貯蓄を促進するための政策をアメリカ側はとりつつあるということでございます。
 まず、予算プロセスにつきましては、大統領が一九九一年度予算教書におきまして米国財政赤字の削減のためグラム・ラドマン・ホリングズ法の強化を提案しておりまして、例えば大統領の予算教書によりますと、予算期間中において目標が達成されなかった場合には自動的に第二次の一律の支出削減命令が行われるというようなことを提案しております。
 それから、アメリカにおきましては社会保障計画の黒字が生じておりますけれども、これが他の目的のために使われないようにするために、一九九一年度予算におきまして社会保障保全・債務削減基金というものを提案しております。連邦政府はその年の社会保障基金の見込み黒字分に相当する金額を毎年一般会計からこの社会保障保全・債務削減基金に払い込む。この払込資金は一般国民が保有しております連邦政府債務を削減するためのみに使用されるということでございます。
 それから、米国政府は家計貯蓄口座という制度を提案しております。この家計貯蓄口座といいますのは、この口座から生ずる利子への課税を免除することによりまして個人貯蓄を奨励するものでございます。納税者の調整後の年間総所得が六万ドル、家長の場合には十万ドル、共同口座を有する夫婦の場合は十二万ドルでございますが、それ以下の金額の場合には個人は年間二千五百ドルまで、夫婦は年間五千ドルまでの非控除の貯蓄を行うことができるということになっております。
 それからもう一点特に申し上げておきたいのは、個人退職年金口座でございます。米国政府は個人退職年金口座を預金者にとってより魅力的なものとするための改善策を提案しております。一定の住宅購入のために納税者一人当たり一万ドルまでの引き出しが認められる。あるいは早期引き出しに対する一〇%の課税は、適格な納税者に対しては免除されるというふうな措置をとることにしております。
 このように、米国側といたしましても財政赤字の削減には大変厳しい努力を続けておりますし、またそのほか貯蓄増加のための施策をいろいろな側面でとっておるということでございます。
 以上でございます。
#72
○会長(中西一郎君) 次に、通商産業省堤通商政策局次長。
#73
○政府委員(堤富男君) 通産省が議長省として担当いたしました点、日本側措置につきましては、流通と価格メカニズムという二点でございます。それから、米側に対するいろいろお願いをした、サゼスチョンをした点、先ほど全体で六点あると言われましたうち、企業の投資活動、それから企業ビヘービア、それから研究・開発、輸出振興と、この四点につきまして通産省が一応議長省としての担当をさせていただきました。順を追って説明をさせていただきたいと思います。
 まず、日本側のとった措置の方でございますが、流通問題でございます。
 流通問題につきましては、アメリカ側の基本的な考え方といいますのは、この流通は、日本全体が非常に複雑である、効率化してほしい、あるいは物理的に輸入のインフラストラクチャーが十分でないというようなことがあったかと思っております。これに対しまして、結局、輸入インフラの整備、輸入手続の迅速化、大店法等を含みます規制緩和、流通に係ります商慣行についての競争促進、それから日本側としての輸入拡大措置という五点につきまして、流通問題については措置をとることに、中間報告の中でなっておるわけでございます。
 輸入インフラにつきましては、現在、空港関係につきましては八六年から九〇年度までの第五次空港整備計画がございますが、これにのっとりまして新東京、それから東京国際空港の沖合展開、それから関西国際空港の整備と、三大プロジェクトについて重点を置きながら強力に推進をしているところであります。さらにその中でも新東京空港の問題、原木ターミナルの問題、あるいは貨物処理施設の問題等につきまして、今後とも整備拡充を進めていくということになっております。
 それから港湾につきましては、現在やはり第七次港湾整備計画をつくっておりますが、この中でも輸入増加に対処し得る外貿コンテナターミナル、それから大型多目的外貿ターミナル等の整備を重点的に進めるということを言っておるわけでございます。
 以上が輸入インフラでございますが、輸入手続に関しましては、基本的には一九九一年までに日本政府としては輸入手続の迅速化を図る、二十四時間即日通関ということを一つの目標といたしまして、通関手続ですとか輸入手続の簡素化、適正化を図っていくという方針を表明しております。
 それから、第三のカテゴリーでございます規制緩和でございますが、これは大店法、大規模小売店舗法の問題がございました。これにつきましては若干詳しく申し上げますと、一応三段階の措置をとるということにしておるわけでございまして、第一段階といいますのは、運用の適正化ということでございます。これは現在出店期間等が非常に長くなっているということがございますので、出店の調整処理期間を一年半以内にするということ、あるいは輸入品につきまして一定割合、例えば百平米でございますが、これ以下のものについては調整手続を不要にする。あるいは五十平米以下のものにつきましては、増加分につきましては手続を不要にするというような措置をとっていきたいと考えておるわけでございます。第二段階は法律改正をお願いするということを考えております。法律改正の視点はいろいろあるわけでございますが、改正内容といたしましては、さらに出店の調整期間を一年程度という努力目標をつくるというようなこと、あるいは出店調整手続を明確にする、あるいは地方公共団体で現在上乗せですとか横出しとかいうことでやっております独自の規制をさらに抑制をしていくというようなことが入っておるわけでございます。第三段階といいますのは、その改正が実施されてから二年後、今から考えますと三年後になるわけでございますが、その三年後につきまして大店法の見直しを行うということになっております。見直しの中身はもちろんその見直しの時点で決まるわけでございますが、その見直しの中には特定地域に対する規制の撤廃というものを含めた検討を行うということが書かれておるわけでございます。
 以上が第三の規制緩和のカテゴリーの中の大店法でございますが、さらに規制緩和の中には景表法の問題、それから酒類販売店の規制の緩和、あるいは既に行われておりますトラック業等の規制の緩和等が書かれておるわけでございます。
 それから流通の中の第四のカテゴリーでございますが、商慣行の改善ということが書かれております。商慣行の問題点としましては、まず独禁法の観点から独禁法の運用を明確にするためにこのガイドラインを策定するという方向で作業を行うということが考えられております。一方、商慣行が複雑であるというような面がございますので、これにつきましては商慣行の簡素化あるいは明確化、透明化というようなことを考えまして、通産省で商慣行改善指針をつくるということが言われておるわけでございます。
 流通問題の最後、五番目といたしまして、輸入促進策というのがございます。これは今回通産省といたしまして輸入促進税制ですとかあるいはいろんな輸入促進のための予算をいただきましたので、それを活用しての輸入促進あるいは一千品目余にわたります関税の撤廃等をあわせまして輸入促進を図っていきたいという点がございます。
 以上が流通問題の中で日本側の措置としてとられた点でございます。
 それから、日本側の措置の六番目になるわけでございますが、価格メカニズムというアイテムの中で言われておることがございます。この価格メカニズムということは皆さん方よく新聞等で内外価格差問題ということで議論された点でございます。この点につきましては、内外価格差につきま
して共同調査等をいたしましたが、内外価格差の存在がある程度出てきた点がございます。それに対しまして日本側といたしましては既に政府・与党内外価格差対策推進本部、これは総理をヘッドとしたものでございますが、この中で既に六分野五十二項目にわたる措置がとられております。これを着実に実施するということを言っておりますとともに、今後この問題、内外価格差の実態を調査するための実施を行うということにしております。
 内外価格差の点につきましては、アメリカの考え方は、日本政府が既に決めたことをしっかり実施してほしいという観点が一つと、もう一つは、日米構造協議の今回の中間報告でございますそのほかの項目で、系列問題ですとかあるいは商慣行の問題ですとか、大店法の問題ですとか、そういう分野でやったことを着実に実施することが結局は内外価格差の是正に役に立つということでございますので、若干二重に書いたようなところがございますが、ほかのところの項目もあわせてこのために実施をするということにしたわけでございます。
 以上、大きく分けまして流通と価格メカニズムにつきまして御説明を終わります。
 それから今度は米側のとった措置でございますが、米側は、先ほど外務省の方から御説明ありましたように七項目あるわけですが、その中で通産省の議長省としてやりましたのは、第二番目の問題点でございますアメリカの企業の投資活動あるいは生産力、ひいては米国の競争力強化というところを議論したわけでございます。
 米側といたしまして、まずアメリカの独禁法が非常にリジットな運用をしている部分、あるいは不十分な点、特に共同生産につきまして大変独禁法の運用が不確実性がある。この部分を減らすために共同生産につきまして新たな立法を含めて共同生産のどういう点、どの点まではいいかということを明快にするということを考えるということになっておるわけでございます。それからもう一つ、アメリカ側で製造物責任、消費者が物を使って、メーカーに責任がすべてあるという考え方でできております製造物責任というのがあって、非常に乱用されているということがございます。これについても見直しをするということを言っております。
 それから、最近アメリカに対する日本、世界からの投資に対しましていろいろ内部が批判をしておるわけでございますが、先ほどの、日本側への投資を歓迎するというポリシーステートメントというのがございますが、その反対側でございますアメリカ側も、政策、ポリシーステートメントを発出を検討するということになっております。最近アメリカで問題になっております包括貿易法の中のエクソン・フロリオ条項という安全保障条項がございますが、これに対する乱用ということが言われておりますが、アメリカ側はこれは安全保障の観点からリジッドに運用しておるものであるということを宣言しておりますし、今後ともこれが乱用にわたらないようにするということを言っておるわけでございます。
 それから、ブライアント法案という海外投資を差別するような法案がございますが、これに対しては行政府としては反対するということを明快に書いてあるわけでございます。
 以上が国際競争力の問題でございますが、第三のカテゴリーに、アメリカの企業ビヘービアということが言われております。この項目につきまして日本側が指摘した点といいますのは、アメリカの企業家がどうしても短期的な視野に立ち、非常に利益選好、優先する経営をする、その結果、長期的に国際競争力が失われているのではないかということが指摘されたわけでございます。これにつきましては、民間の問題でございますので必ずしもアメリカ政府としてたくさんのことができるということではなかったわけでございますが、一つは、やはりアメリカ全体の資金コストが高いということが企業家をして非常に短期的な行動をさせやすいということもございまして、キャピタルゲインの税率の引き下げですとかそういうことをやりながら、コストをまず下げる、あるいは投資家と経営者との関係をもっとよく考えるということから、行政府部内、特に財務省にこの両者の関係を研究する検討会を設けるというようなことで、アメリカの企業ビヘービアについての今後の改善を行っていきたいということが書いてあるわけでございます。それが第三のカテゴリーでございます。
 それから、第五番目のカテゴリーで、研究・開発というのがございます。これは、アメリカの競争力のなさの一つの裏返しという点は、アメリカの研究開発に対する、特に軍事以外の分野についての研究開発が十分でないのではないかということを指摘したわけでございます。
 政府の研究開発資金につきましては、九一年度予算におきまして四十五億ドルの増分を含みます史上最高の七百十億ドルを今要求をしているという状況にあるわけでございます。さらに、その実施機関でありますナショナル・サイエンス・ファウンデーションの予算を今後とも増加をさせ、一九九三年までには倍増をさせるということをコミットしていきたいということを言っております。
 それから、民間の研究開発を促進するために、日本と若干類似した制度でございますが、試験研究費を税金から控除するという法律を持っておるわけでございますが、これが今まで暫定法でございましたものを九一年度予算案の中ではこれを恒久化するということを明言しております。
 それから、アメリカの一つの問題点として我々が指摘しておりましたが、単純なことでございますが、ヤード・ポンド法をとっていて、これが世界となかなか共通でないという問題点があるわけでございます。それに対しましてメートル法の採用を促したわけでございますが、政府レベル、民間レベルあるいは州レベルに対して、今後ともこのメートル法の採用について強力に働きかけをしていきたいということを言っておるわけでございます。
 それから第六番目のカテゴリーでございますが、米側の輸出努力が足らないのではないか。これは常々指摘されておるわけでございますが、一九九一年度予算案で合計一・五九億ドルの提案をしております。ことしの日本側の輸入促進税制が予算上約一億ドルということでございます、これは増分だけでございますが。これを合わせまして、この間モスバッカー商務長官が見えましたときに、両方の協力できる部分は協力しようというようなことを言っておりますが、この中で輸出振興につきまして一・五九億ドルの予算増分をするというようなことを言っておるわけでございます。
 以上、通産省所管関係、大変簡単ではございますが、説明をさせていただきました。
#74
○会長(中西一郎君) 以上で政府からの説明の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#75
○木暮山人君 日米の経済摩擦と今後の両国関係に関しましての外務省、大蔵省、通産省よりの政府見解の御説明をいただき、まことにありがとうございました。私は、この三省に対しまして、現在の日米経済摩擦に関しまして質問させていただきたいと思います。
 まず、外務省にお伺いいたしますが、長年にわたる同盟国間の信頼感が、近時、追い抜け追い越せの日本経済の急成長と、それに伴う気分的豊饒さによるところの客観性を失った外交施策、また、いろんな経験が多少まだ不足とも考えられる、そして長期グローバル性を欠いた利己的な日本の今の政治に見られる家庭的な雰囲気の我が国政治主観に合わせた、また選挙というものを考えながらの有識者に対応する理念につながる思考、また国内の二院がねじれているというような現象、国際社会におけるところのいろんな体制の中で、今大きな問題に対応しているのではないかと考えておる次第でございます。こんなような判断をする上のずれのある中に否めない事実がまだたくさん
あるが、今後の日米両国の将来を考えるとき、現在の問題を完全に双方納得の上、その結論を出さなければ、たとえ今ちょっとうまくいったにしましても、いずれまた両国間の強いきずなというものは確立することができないと考えられます。こういうような観点から見ますと、現在の構造協議、SII、ストラクチュラル・インペディメンツ・イニシアチブズという問題を最初に受けて立つ場合、構造障壁問題ないしは協議というようなことを単に構造協議というようにして提起したこと。加えまして、だんだん問題が面倒になっていくと、最近では構造障壁問題協議というような経過を踏まえていろんな問題を解決しようという努力がなされてきておりますが、一応中間報告で何かささやかに出口が見えてきたというような状態にあるのではないか、かように認識しておりますが、それまでのいわゆる構造障壁問題か協議を構造協議とした、ここら辺の経過に対する理由と真相等の推移を外務省の方にひとつ御説明願いたい、かように思う次第であります。
#76
○説明員(原口幸市君) お答えさせていただきますが、先生の御質問を必ずしも私正確に理解したかどうかわかりませんが、このSIIと称しているものを日本語で訳したときに、その訳し方がそれぞれ時間の経過とともに変わってきたということでございますか。
#77
○木暮山人君 はい、そうです。
#78
○説明員(原口幸市君) この点に関しましては、先ほど御紹介いたしました宇野総理とブッシュ大統領との共同声明の中にSIIの当然英語が出てきて、それを邦訳いたしましたときには、日米構造障壁イニシアチブというような訳語を使ったこともございます。それからその同じ共同声明の中に構造協議という言葉も出てまいります。したがいまして、これを訳した側からいたしますと、構造障壁イニシアチブというふうに訳したことと、それから構造問題協議と訳することとの間に特段大きな意味合いを付与したわけではないのでございますけれども、通常、最初は初めて出てきた言葉でございますから、まさに辞書に出てくるような意味で構造障壁イニシアチブというふうにとりあえずは訳してみたんですが、ともかくイニシアチブという言葉が必ずしも日本語のボキャブラリーに定着しているとは思えないという問題が一つございまして、それから構造問題というとらえ方は、例えばOECD等でも構造問題ということでかねて政府の中で、関係官庁の間では話し合ってきたものですから、まあこなれた言葉という意味で構造問題協議というふうにその後使うようになってきたという程度の意味合いでございます。
#79
○木暮山人君 そのようないろいろの推移を説明願った次第でありますが、これはやはり国民の立場でそれを横から見ていますと、何かちょっとやはりずれが生じていると思うんです。
 第二の質問といたしましては、外務省のお立場で、この構造障壁協議、これを受けとめた日本には、既に何か貿易障壁の存在を認めさせられたような立場に立たされている。もう一つは、米国側は我が国政府に過剰な期待を持っているように見受けられるが、同盟国の日本として、EC並みの友好感情を示すための施策をやっぱり即時臨機応変に対処すべきところであったと考えられますが、我が国においては、それぞれの交渉に当たった当事者が、やはり直接自分のところに責任がどっとかぶさってくるということを避けようというような悪弊が、米国として正常な交渉姿勢では日本サイドよりの米国が欲している回答というものが得られない。そこで、多角的な揺さぶりと言うとちょっと言葉が悪いんですが、それもやむを得ないなどという考え方を与え、その結果、例えばゲッパート条項とか包括通商法などのいわゆるジャパンバッシング、まあ揺さぶりまでに追い込んだ現在までの折衝過程について、どこかで歯どめをかけてこれを正当な交渉の姿に私はやっていかなければいけないんじゃないか。
 そういうような、最初どうなるのかというところと、もう一つは、逃げ腰といいますか、責任を回避するというのも多少はあったと思いますが、そんなところの交渉過程で考えられる問題があったらひとつ御説明いただきたいと思うのであります。
#80
○説明員(原口幸市君) まず第一の問題でございますけれども、この構造障壁という、構造障壁イニシアチブと直訳すれば訳せるようなものを受け入れたということで、日本にそういう障壁が存在しているということをみずから認めるという可能性の問題でございますけれども、先ほども御説明いたしましたが、これは日米それぞれが相手方に、相手方の構造上の問題を識別してそれの改善についてのアイデアを提起、提案し合うという種類の話でございまして、決して日本だけが一方的に、この種の構造障壁というものを日本が持っているという形でアメリカの要求をのんだという種類のものではございません。
 それから第二に、ECはもっとしっかりしていて日本はどうかというお話だったと思いますけれども、さっきも申しましたが、やはり日本とEC、アメリカに関連して言えば、日本はアメリカとの間で非常に大幅な黒字を持っている。片やECの場合には、八九年になれば反対にECの方が赤字になっているというような背景の違いがございまして、やはり日本とアメリカとの間ではそれなりにこの問題に対して適切なる対応をしていく必要があったのではないかと、このように私は考えておりますが、いずれにいたしましても、構造問題協議そのものにつきましては、先ほども申しましたが、非常にこれを促進することがただ単に米国との関係で結構であるというだけでなく、その他の意味でも、例えば国民の生活の質を向上するというような意味でも積極的な意味があるというふうに私どもは考えております。
#81
○木暮山人君 次に、通産省の方にお伺いしたいと思います。
 米国の行政府はガットにサインをしておりますが、議会は、ガットは多国間交渉で、米国を拘束するというようなことで認めていないことは事実でありまして、日米の目的意識が食い違っているのではないか。もし食い違っているとしたならば、幾ら構造障壁協議を重ねましても、我が国の国益を損ねることはあっても国益にかなう結果にはならないのではないかと考えられるが、我が国はやはり、考えてみると、対米産業依存度や安保体制から見ても、総括的に国益分岐点ぎりぎりの折衝姿勢ということが望まれるが、米国はそれもすべて知り尽くした上で細々と我が国の慣習にまで触れてみたり、非常に微細にわたる現況把握の上での要求のように見受けられるが、一つ一つの折衝過程における事実等、いろいろあると思いますが、御説明願えたらと思いますが、この点につきましてよろしくお願いします。
#82
○政府委員(堤富男君) お答えさせていただきます。
 アメリカが、確かに行政府ではガットにコミットをしておりますが議会ではコミットしていないことは事実であります。ただ、それ自身アメリカ政府との関係で申しますと、アメリカと現在一緒にウルグアイ・ラウンド等の推進もしておりますし、世界全体として自由貿易を定着させ、さらに拡大していくという方向で共同の作業をしておるわけでございます。
 国益という点でございますが、原口審議官の方から申し上げましたとおり、今回の構造協議につきましては、かなり、本来日本でやらなければいけないような問題も多分に含んでおるわけでございますし、その目的という点でいきますと、今までなかなか経済的には成長をしておりながら、国民生活としてなかなか実感のできない分野というものをどうするかという点と、今回のアメリカ側の幾つかのアイデアの中にはそれと符合するものがかなりあるわけでございます。そういう意味では、今回の措置はアメリカ側との交渉ということでございませんで、アメリカ側のサゼスチョンを受けて、我々として本来やるべきことを対外的な関係から考えてさらに推進をしなければいけないなということの確認をしたということだと思っております。
 確かにアメリカ側の指摘の中には細々した点がなかったわけではありません。ただ、それは当然アメリカ側の誤解に基づく点もあったわけでございますし、アメリカ側の指摘がなるほどと思われる点もあったわけでございますが、そういうそれぞれの点を十分参酌をいたしまして、我々として、最終的には日本の国益にかなうものであるという考え方で今回の措置をやらせていただいたわけでございます。
 したがいまして、米側からの要求、譲歩というような考え方ではなくて、アメリカのサゼスチョンを受けて、我々として日本国民のために何が一番いいかということを考えた結果であるというのが我々の現在の認識でございます。
#83
○木暮山人君 次に、同じような問題でございますが、大蔵省にお伺いいたします。
 米国側は、日本側の対米七項目の要求をどのような考え方で対処しているのか。また、日本側だけが独禁法や大店法や土地税制を痛みを感じながら手直ししても、米国議会の要求している短期間に日米貿易不均衡の是正はできないのではないかと思われます。また、構造という基本的問題は短期間では是正できるものでもないので、今度の構造協議で米国議会が満足しないことは明白でありますが、中間報告にも見られるとおり、さらなる努力を求めていると思われるので、米国側の視点の違いに対する譲歩が求められているところですが、同盟国の立場として、どこまで妥協点を求めていけば解決するかの見通しに関しまして、単に貿易黒字解消という方法をEC並みのマイナス十五億ドルに右へ倣えをすることは簡単な解決法だと存じますが、それで解決する問題ではないと私は認識しております。
 最近見られる為替の円安、株の暴落等も世界的戦略路線上に乗せられた変動ではないかとも考えられますが、ひとつ大蔵省としての御見解を説明していただけたらと、こう思います。よろしくお願いします。
#84
○政府委員(江沢雄一君) まず、米側に対しまして、日本側としてもいろいろな措置をとるべきであるということを強く主張したことは今まで申し上げたとおりでございます。特に、貯蓄投資バランス、あるいは企業の投資活動と生産力など七項目の指摘をいたしまして、これに対しましてアメリカ側も最大限の努力を払っているということは言えるのではないか。今外務省、通産省から話のあったとおりでございます。
 それから、今回の措置によりまして日米の貿易不均衡がどの程度是正されるかということでございますが、構造協議の内容は非常に多岐にわたっておりまして、またそれが国際収支にどういう影響を及ぼすかにつきましては、これを定量的に予測することは非常に困難でございます。しかし、方向としては不均衡是正に資するものであるということは間違いのないところではないかと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、この構造協議は国民生活の質の向上あるいは消費者の利益の増進という点、さらには我が国の経済を国際社会と調和させていくという観点から実施をしようとしているものでございまして、まさに我が国自身の国益に資する努力であるというふうに考えております。
#85
○木暮山人君 また外務省の方にひとつ質問させていただきたいと思いますが、米国政府はウルグアイ・ラウンドを優先したいのか、それとも単にジャパンバッシングを優先したいのか、そのほかに本当の何か目的があるのではないかということが、いろんな新聞紙上に取りざたされている言葉の端々から何かそんなことが最近感じられております。
 かつて米国は、鯨の問題でグリーンピースを前面に立てて環境保護問題として我が国を大変批判した時代がございました。当時の困難さを振り返って思い出しながら、その当時の公文書公開によるところの資料というものを見てみますと、その内容は、我が国は環境保護問題としてとらえていた、しかし、ニクソン大統領を初め米国が持っていた感じ、これが相当食い違っていたのではないかと、かように考えております。向こうは国家安全保障問題の中に取り込んで、基本的な戦略の域を脱しなかったことは、当時の文書二百ケースぐらいあるそうでありますが、その中の大切な、重要な部分は抜き取られている。そして、その抜き取り者シート氏名が国家安全保障問題担当国務長官の名前があった。こんなぐあいに、かつてやはり相当かみ合わない交渉をしていた時代もあったわけでありますが、私は今やはりこうやって各省庁のお立場で本当に努力をなさっているのはわかるのでありますが、どだい、向こうが求める一番大切な基本的な問題をのけて、技葉の揺さぶりみたいなことで対応していたのではなかなか本当の当を得た結果が得られない、こう思う次第であります。
 また、これが時間をかけてどんどん延びてまいりますと、今年そして来年また大統領選挙等が控えているわけでありますが、そういう点、実際米国が考えている、まあこれには手をつけてもらっては困るんだと、ここの点では日本は全体的にひとつ納得して協力してもらいたいと。やはりこの間の消費税のように、日本の国民がわからないうちに次から次から事態が展開していきますと、最後は国民が非常に困るわけであります。それは国家の大きな損失にもなることでございますけれども、そういう意味で、この問題については双方、両国間の行き違いというものは絶対ないというのが現状でございましょうか。それに引き続いてまた質問を続けさせていただきたいと思いますが、よろしくひとつ御説明のほどをお願い申し上げます。
#86
○説明員(原口幸市君) いろいろ御質問の項目があったと思いますが、まず第一に、先生は米国政府とおっしゃいましたが、恐らく米国行政府ということで言えば、米国の行政府はウルグアイ・ラウンドの推進ということは非常に重視しておりまして、決してジャパンバッシングというものに関心を持っているわけではない。むしろジャパンパッシング的なものが起こらないように、そしてそれが日米関係に、彼らも非常に日米関係の重要性は認識しておりますから、そういうところに、その重要な日米二国間の関係に悪影響がないようにというふうに望んでいると、この点は間違いのない事実だろうと思います。
 それから二番目に鯨の問題でございましたが、これはアメリカの行政府がグリーンピースを使って、使嗾して鯨の問題について米国の行政府の立場を強引に日本に印象づけたという解釈が果たして正しいかどうか私はつまびらかにいたしませんが、ただ現在の状況は、アメリカだけではなくかなりの多くの国において環境保護団体あるいは鯨愛好者と言っていいんでしょうか、そういうところから捕鯨の禁止を求める声がありまして、IWCにおいては商業捕鯨というものは禁止されております。ただ日本の立場は、IWCの取り決めで調査捕鯨というものは基本的に認められておりますので、条約に認められているところをそのとおりに実施していくということで今まで調査捕鯨を進めてきたということでございまして、それが現状でございますが、果たしてそのグリーンピースと米国行政府との関係というところになりますと、私はこれ以上お答えする能力はございません。
 それからSII、日米構造協議でございますが、私どもは決してこの構造協議そのものが枝葉の問題だとは思っておりませんで、日米経済関係にとって非常に重要なエクササイズだと思っております。そしてこれを、この協議の結果、日米双方がそれぞれ自国の経済構造をさらに効率的なものに、そしてオープンなものにしていければ、それは日米関係にとって極めて結構な事態だろうし、世界経済にとっても歓迎されるものだろうと思っております。米国から今後またいろいろと要望はあると思いますけれども、こうした問題に対して、日本としては当然のことながら是々非々という態度で臨んでいくべきだろうと思います。
 それから、先生たしか国民の理解を得ないままにやってはいかぬということをおっしゃったと思いますが、私どももこの点は十分承知しておりま
して、まさにこの目的が国民生活の質の向上、消費者利益の重視というところにあるわけでございますので、国民に対する説明、理解を求めるという活動は行政府としてもこれから大いに進めていかなければならない問題だというふうに認識しております。
#87
○木暮山人君 私の言わんとするところは、こんなところに鯨の問題が出てくるのはおかしいのでありますが、要するにとらえ方が環境保護問題と国家安全保障問題と、もう視点が、乗っている舞台が変わってしまっていたのではどこかですれ違うんじゃないか。今もまだいろいろ鯨の問題が取りざたされております。アメリカのグリーンピースは、いわゆるシロナガスクジラを日本がとっていると、こう言っているわけですね。日本は調査捕鯨でミンククジラをとっている。ここら辺の違いというものは、やはりちゃんとした抗議というものは姿勢としては必要であると同時に、そういうような基本的な姿勢がやはりこの構造協議などでも同じような姿勢であってほしいなというような感じでこの鯨の問題を出したわけでございますので、ひとつそのように御理解いただければありがたいと思います。
 なお、これまた関連しまして、米国には四百三十五の選挙区があるわけでございますが、御存じのように、今ジャパンバッシングの話が出ましたけれども、実際この四百三十五選挙区でみんなわあわあ沸いているという問題ではないような受けとめ方を私はしておるわけでございます。そしてまた、その選挙区から出てきているところの五百三十五人の議員が本当に日本をたたきにかかっているのかということになると、これもまたそうでもない。かえって親日的な議員の方がたくさんいるんじゃないか。しかし、その議員さんたちはどういう理由か、言えない何かがあるから口をつぐんでいる。これはやっぱり大切な同盟国としての双方のやりとりでありますから、そこら辺、全選挙区にどんな零囲気があるか。そしてまた、一人一人の議員がどんな感じでやっているのかというような問題、これもやはり国と国の対応でございますから、外務省の皆様はもう大体みんなわかっていてかかっているのではないかと思いますが、そこら辺を具体的に、どうしても手に負えないところはここら辺にあるのだというところの御説明等をちょうだいできたらと思いますが、ひとつよろしくお願いします。
#88
○説明員(原口幸市君) 今アメリカには大使館を初めといたしまして総領事館がたしか十四か十五ございまして、毎年一回ないし二回公館長会議という形で、しかるべきところに集まりまして各地の情勢、これは各地における対日観の分析というものも含めまして行っております。そしてこの分析の結果を時系列的に見てまいりますと、若干アメリカ各地における対日観の変化ということもまたある程度わかってくるわけでございますが、私が承知している限り、やはり最近の在米公館長会議等の報告を聞きますと、ワシントンに、何というんでしょうか、ベルトウエーがありまして、あの中においてはかねてから非常に強烈な対日批判が行われているわけでございますけれども、そして数年前は、そういう零囲気は、例えばカリフォルニアですとか南部ですとかに行きますとほとんどなかったという報告でございましたが、最近になりますと、次第にやはりその地方においても日本に対する厳しい感情というものが表明される機会がふえてきている。特にアメリカのワシントンあるいはニューヨーク等で出されている新聞、マスコミですね、これと各地の新聞とが、シンジケートというんでしょうか、関係がございまして、その辺で最初に出た論調が一日か二日たって地方の新聞にも出るというようなことが何遍も繰り返されますと、次第に何となくワシントン地域ででき上がりつつある日本のイメージが地方にも広がっていくというような傾向が看取されるという報告は聞いております。
   〔会長退席、理事下稲葉耕吉君着席〕
#89
○木暮山人君 大体そんなような零囲気でいわゆる構造協議が進められていくのでありますが、ひとつ今度は三省の方にそれぞれお伺いしてみたいと思うのであります。
 日本がさまざまな措置をとったとしても貿易の不均衡は是正できないと考えられます。日本の考え方はどうあるべきなのか。そもそも米国の学者でも、米国側にも問題があると言っているような人もおりますから、そういうような問題についてやはり正々堂々と指摘すると同時に、米側の苦情の種になるような点、日本にとってもマイナスの要素はこの機会に大いに是正しまして国際化の方向を示すべきであります。特に人工衛星問題にしてもクレイ社のスーパーコンピューターにいたしましても、単に表面的問題提起ではないように思われるので、その点に関しまして、譲るべきは譲ることといたしまして、今後の収支を試算してみて、まあそういうものには余り何かさわられたくないということで、そういうものに余りさわらずにこの構造協議の結論を持ち越していくというような感じが見えますが、我が国におきまして、そういうことの意思をはっきり決意した上で、そのための対応と方向づけを、国益を損なわない範囲で決意を新たにしなければ、最終の報告に向かってうまくないことになるんじゃないか。こんなふうに考えられます。
 それで、どの程度まで、本音と建前といいますか、どこまで言えばアメリカは済むか。それはもう皆さん十分御存じのことだと思いますけれども、国民としてはやはりそういうところに何か、皆さんは解決の糸口を持っておられましても、国民はさっぱりわからない。そして内政干渉とかいろんな短絡的な批判をしている。これはやはり将来に大変大きな禍根が残っていくんじゃないか。でありますから、そういう点、多少なりとも、本当の姿までいかなくても、ほぼ理解のできるような何か説明を、国民全体が納得できるような説明ができるならば、そういうことをひとつ説明していただきたいというような考えでおりますが、これに関しまして三省の御意見をお伺いいたしたいと思います。
   〔理事下稲葉耕吉君退席、会長着席〕
#90
○説明員(原口幸市君) お答えさせていただきます。
 私は、この構造協議の結果、日本がとる措置というものは、先ほど大蔵省の江沢次長からお話がありましたが、基本的には、中長期的には日米の貿易インバランス是正に意味があるものだと思っておりますが、これには実は二つの前提がございまして、私、冒頭御説明いたしましたが、この日米構造協議というのは、第一に、両国が行っている経済政策調整努力を補完するものであるということでございますので、まず両国が行う経済政策の補完の協調が妥当な方向に向かっているということが第一の前提でございます。それから第二にこれは双方通行の作業であるということを申しました。ということは、アメリカ側も約束したことをきちっとやるということが第二の前提でございまして、アメリカ側がこの中間報告に書いてあるように財政赤字をきちっと削減していく、あるいは民間部門の貯蓄率向上のための措置をこのとおりやっていく、あるいはさらに新しい措置をとっていくと、そういうことをきちっとやった上で、日本側がまたこの中間報告に書いてあることをきちっとしていけば、そういう意味ではいい結果が出てくるだろうというふうに私は思っております。
 それから二番目の側面でございますけれども、これも冒頭私が申し上げましたが、多分、このSIIを実施しても急激には日米の貿易インバランスは改善しないかもしれませんが、同時に、今の日米の経済摩擦の背景に、日本という国が、特にこの貿易の黒字というものを大幅に抱えている日本というものは、その裏に日本の貿易あるいは経済、制度というものに閉鎖的なものがある、不当なものがあるというような認識があるものでございますから、少なくともそういうようなイメージのもとになるようなものを自分たちで客観的に考えて、そういうものがあればぜひ先生おっしゃるように、そういう将来の苦情の種を自主的に削除
していくという努力は非常に重要だと思っております。これはもちろん構造協議という枠内でやれば両国の構造上の問題についてでございますが、それ以外にも別途個別の経済問題というのは起こってくると思います。今後とも起こってくると思いますけれども、そうしたものに対しても、先ほどちょっと触れましたが、是々非々の立場で、日本側に非があると思えば自主的にこれを直していくという態度はぜひ必要ではないか、このように考えております。
#91
○政府委員(江沢雄一君) 先ほども申し上げましたように、この構造協議によりましてどの程度の数量的効果があるかわかりませんけれども、やはり米側、日本側双方の努力によりまして、今、日米間にあります対外不均衡を是正していく、その努力をしていかなければいけないことははっきりしておると思います。特にアメリカに台頭しつつある保護主義的な動きを抑えてやはり開放的な貿易体制をつくっていく、維持していくということが日本自身の国益であるという点を踏まえて対応しなければいけないのではないかというふうに思っております。
#92
○政府委員(堤富男君) それぞれもう重要なことをお答えいただいたので、若干補完的に申し上げますと、基本的には、この構造協議の位置づけの中でマクロ経済政策の補完であるということを言っておるのが大変重要な点だと思っております。貿易収支あるいは経常収支というのは、基本的にはこれは経済学の本に書いてあるように、為替レートですとかあるいはマクロ経済政策、景気対策というんでしょうか、内需拡大政策というんでしょうか、そういう内需依存型の経済をつくっていくという意味での経済政策、それから、大変重要な点だと思っておりますが、貯蓄と投資の関係という、いわばそれが最終的には貿易収支に一致するという経済学があるわけでございまして、こういうマクロ経済政策というのが私は最終的には日本の貿易収支の問題あるいは経常収支の問題を決めていくものであると考えております。
 今回の構造協議の中を見ますと、そういう意味ではISバランスというんでしょうか、投資と貯蓄の関係というようなこと、この点についてのものがかなり入っておるわけでございます。そういう意味では、これ自身が全体として貿易収支あるいは経常収支の改善にかなり効いてくるのではないかという点も私は含まれているだろうと考えております。
 ただ、それぞれの個々のとった措置というものが果たしてどれだけの効果があるかということは、これはなかなかはかりがたいわけでございまして、今後の実施の度合い、あるいはそれをどの程度アメリカがまた活用していくかという点があろうかと思っております。
 ただ、非常に重要な点でございますが、ヒルズ代表等が時々議会等でも明言しておりますが、マクロ経済政策というものがインバランスの原因の約八割で、残りがいろいろ貿易制限的な、あるいは構造的な問題であるということを言っておる点、これは我々と基本的には認識が一致しておると思っております。しかも、今回の構造協議でも議論が十分ありましたように、それぞれの責任の分野はそれぞれがやるということが重要なことでございまして、相互に努力をするということをまたこの構造協議でやったわけでございますので、今後の改善というのが、実施がうまくいけばあると思っております。
 ただ、もう一つヒルズ代表が大変重要なことを言っておりますのは、今回の構造協議というものがすぐに効果をあらわすものでないということも明言をしているわけでございまして、非常に短期的に効果が出てくるということで必ずしもないということも両方の認識が一致しているところでございます。通産大臣等がヒルズ代表とお会いしたときにも、この構造協議のインバランスに対する効果というものがすぐに出るものではないということも明言をし、それはお互いに十分理解をし合っているということであると思っております。
 個別の問題につきましては、これはインバランス是正という観点とは基本的には違った観点でございまして、我々として、長い経済の歴史の中でそれぞれ合理的な理由があって存在している流通分野ですとか、あるいはいろんな規制手続というものも、最近のように国境がだんだん経済的には薄くなってきて、国境のない、あるいはボーダーレスエコノミーというふうなことを言われる実態を考えますと、かつて正しかったことがすべて正しいというわけではないという点も事実であろうと思っております。そういうものを不断に見直していくということも、日米関係のみならず日本が世界で大変大きな、GNPで見ますと一〇%と言っていた時代はもうちょっと古うございまして、一二から一五というような数字が最近出てくるわけでございますが、そういう大きな経済体としての存在になってきた日本が、今後そういう問題について国際的な観点からも日本の経済、制度を見直していくということはやはり必要なことではないかと思っております。
 ただ、重要な点は、そういうものが日米間の誤解なり、あるいはそれが非常に両国間の関係を悪くするようなことにならないように、言うべきことは言い、我々の考えていることは主張していくという過程の中で我々としてもやっていくべきことが必要である、あるいは非常にそれが正しいという観点であれば国内的な痛みが伴うケースも全くないとは言っておりませんけれども、やはり是正をしていくことが日本が将来やはり世界の中で生きていく道ではないかというふうに考えております。
#93
○木暮山人君 時間がございませんから、最後に簡単に締めさせていただきます。
 この日米構造協議の過程におきまして、皆様が直接いろんな面で折衝なされたと思います。国民挙げて両国間のために痛みを越えてこれをまとめなければいけない、そしてまた理解をしていかなければいけない、その中に誤解のないように注意していかなければいけないという、やはり折衝された皆様が国民全体に何かアピールしたい言葉があるのではないかと思うのであります。そういうことをできましたら簡単にひとつお話し願いたい。それで締めたいと思います。よろしくお願いします。
#94
○説明員(原口幸市君) 即座に気のきいた言葉が思い浮かびませんが、表現は別といたしまして、この構造協議というものは、実は自分たちのためになるエクササイズであるということをぜひ国民の皆様にアピールし、かつ御理解いただきたいと思っております。
#95
○政府委員(江沢雄一君) まさに同じでございますが、総理も中間報告がまとめられました段階の談話で、この構造協議というのは「我が国の国益を推進するために必要であり、かつ、国際社会の責任ある一員としての我が国が負うべき責務である」というふうに述べられておるわけでございまして、我々もこういう見地から広く国民の御理解を得たいと思っておるわけでございます。
#96
○政府委員(堤富男君) この構造協議というのは、私は大変ユニークな話し合いだと思っております。新聞等では従来と同じパターンで、要求、譲歩というような二進法で考えているようでございますが、やはり今回日本側が実施するという措置の中身を見ますと、私自身まだ家もない身から見ますと、土地政策なんというのは大変期待を込めてやっておるわけでございまして、もし要求、譲歩というのであれば――譲歩というのもこれは言葉として私は正しくないと思っておりますが、日本側の措置として、国民のためになる分野が非常に私は多いと思っております。もちろん一部の利害が反している場合には、この中で痛みを伴う分野があると思いますが、そういうところに対しても、通産省としてはできるだけ手当てをしつつ、やはり全体としての国益を考えていくのが必要ではないかと思っております。
#97
○木暮山人君 どうもありがとうございました。よろしくお願いします。
#98
○田英夫君 私どもも、日米関係が円滑であるということは大変重要なことだと基本的に思ってお
ります。実は、日米友好議員連盟というのがありまして、会長が今度小坂徳三郎さんから安倍晋太郎さんにかわりました。私も、土井委員長あるいは民社党の永末委員長とともに副会長をやっておりますが、そういう立場からすると、現在の日米の特に経済摩擦について、議員の立場から、もっとお役に立たなければいかぬという反省をしているくらいであります。
 そこで、基本的に日米経済摩擦というのはなぜ起こってくるのかということを考え続けているわけで、きょうは大変いい勉強をしましたが、さっき木暮委員が、アメリカの方も四百三十余の選挙区みんな沸いているわけじゃないだろうとおっしゃって、私がお答えするのも変なんですが、私の経験で言うと確かにそうだと思います。特に下院の場合、自分の選挙区に日本との貿易上重要な産業があると、そこの人は非常に熱心だと。例えばデトロイトの自動車とかピッツバーグの鉄だとかいうようなところの人たちは非常に熱心になる。あるいは西海岸の農業とかですね。そういう関連で熱心な人がいるという印象を持っているわけですけれども、ひとつ、質問ということになるかどうかわかりませんけれども、ちょうど三つのお役所の方がいるところでこういうことを言うのはあれですが、今、表には出ておりませんけれども、アメリカの議員と話していて感ずるのは、日本の省庁の許認可制度の中で、隠れた非関税障壁とでもいうような、そういうものがたくさんあるじゃないか、これが非常に気にさわると、アメリカ側から見てですね。こういう反省はないでしょうか。これは実はここにいらっしゃる、まあ通産は若干あるかもしれませんが、外務、大蔵は余りそういう関係がないかもしれませんけれども、農水とか運輸とか、郵政も最近出てきているように思いますが、そういう許認可制度がこの障壁だと感じているように思いますが、この点はどうでしょう。
#99
○政府委員(堤富男君) 私たちは、先ほど申し上げましたように、日本のように非常に国際化の進展の激しい国におきましては、ある時代正しかったことがすべて現在正しいという状況にはないと思っております。
 行革審等でもいろいろ指摘をされている点もございまして、今回行革審等の進展というのも中間報告の中に入っておるわけでございまして、今後こういう問題についてやはり、国民との関係での手続の簡素化という点ももちろん必要でございますが、その必要がなくなっているかどうかという点は不断の見直しが必要だと思っております。
#100
○田英夫君 実は、今お聞きしたのは、数年前ですけれども、ワシントンへ行きましたときに二人のアメリカ議員から同じことを言われたんですが、当時、いわゆるMOSS協議で通信機器の問題が取り上げられていた。このことに関連をしまして、日本の郵政省は電話機の音の質に基準を設けている、これはおかしいぞ。自分たちアメリカの感覚で言えば、電話機の音の質なんというのは使用者が選択すればいいので、家庭の電話なら質がいい方がいい。しかし、これが仮に一万円するとすれば、これは音の質が悪いけれども二千円だとすれば、倉庫の電話なんというのはこれで五つ買えるからその方がいいじゃないかという選択をする。これは使用者側が選択をすべきもので、官庁がこういうものに基準を設けるというのはおかしいじゃないかということを言われて、実は私も知らなかったのでありますが、帰ってきて調べましたらそういう基準がありました。まあこれは改善したようでありますけれども。小さな問題のようでありますが、こういうことが実は数限りなくあるのじゃないか。それで、それぞれの関係の向こうの企業が自分の相手として日本のそういうものを見ていて、それが積もり積もって議員の一つの感覚になってくるんじゃないか。そういうことを懸念して実はお聞きしたわけであります。したがって、できましたら、これはどこのお役所がやるのか、総理府あたりがやらないといけないのかもしれませんが、許認可制度の見直しということも今後の日米関係という中で一つのポイントじゃないかと私は思っております。
 それから、先ほどからの御説明の中に出てきました独禁法の問題というのは、私などの感覚では、やはり非常に大きな問題だろうと思います。例えば先日ビールが値上げをされました。私はビールが大好きですから大変不満でありますが、そういう私情は別にして、明らかにあれはもう我々の感覚からすれば独禁法違反だとは思いますが、公取はこれを見逃しておられる。また、私も新聞記者をやっていましたから、おかしいんですが、新聞の値上げというのもほぼまず間違いなく独禁法違反だろうと思いますが、これもいつも見逃されている。事ほどさように日本の独禁法というのは大変甘く扱われているんじゃないだろうか。これはひとつぜひ今後改める重要なポイントに、まあ今度の中間報告の中にも盛り込まれてきましたからこれはいいわけですけれどもね。これは通産省ですか大蔵省になるんですか、私の意見に対して感想を言っていただきたいと思います。
#101
○政府委員(堤富男君) 感想は二点ございまして、日本の今までの許認可、特に基準・認証等につきましては、国が消費者のことを考えて基準をつくっているというケースが非常にあるわけでございます。安全性の問題につきましてもかなり国が問題意識を持って基準をつくる。ところが、アメリカ等におきましては、これはすべて民間に任せるという考え方が非常に基本的にあるわけでございまして、これはたどりますと明治政府以来の考え方になっているのかもしれません。何か問題がありますと、国会等でも確かに政府が非常にその問題を追及されるということで、政府としては、消費者の安全をさらに万全を期すためにまた規制を強化するというようなこともあり得るわけでございまして、ただ、これを政府の責任でどこまでやるか、民間の責任でどこまでやるかということが今後の一つの大きな点であろうかと思っております。
 最近の動きは、不要なものを除くということだけではなくて、今、田委員の方から御紹介のありました、消費者の選択に任せるというところをかなりやっておるわけでございますが、そういうことで、通産省の場合、扇風機等はかなり基準・認証も民間に任せるというような考え方でやったわけでございますが、最近どうも輸入品でトラブルが多いというようなことがまた一つの問題として提起されているのも、こういう問題についての基本的な考え方があるのではないかと思っております。
 それから、ビールのお話は、大蔵省の方からお話があると思いますが、一般的にこういう問題につきまして、寡占業界における一斉値上げについては、私の記憶が正しければ、公取当局が調査をいたしまして、その結果を国会に報告するという規定がたしかあったと思っております。
#102
○田英夫君 まあ実を言うと、さっき私の方の反省を申し上げましたけれども、アメリカの議員は最近大変日本のことを勉強していると思うんです。例えば一つの例で、アメリカの下院のピッツバーグ出身の議員に会いましたときに、実は自分は神戸へ行ってきたんだと。神戸製鋼の勉強をしてきた。同じ鉄同士なんですけれども、何を勉強したのかと聞きましたら、アメリカではやっぱり鉄冷えで、解雇をするときに、もうお前はやめてくれと、こう簡単に言ってしまっていたんだけれども、神戸製鋼はどうやらそうではないということを聞いて、人事管理といいますか、そういう雇用の問題について勉強に行った。神戸製鋼の場合は、一定の人員を整理するということになった場合は、本人に通告をすると同時に、期限に余裕を持たせて、その間に次の職業につくための職業訓練を会社が面倒を見てやらせている。こういうことが、日本の企業が非常に強い愛社精神を養っている原因じゃないかということを肌で感じてきた。そういうことを言っておりました。これは私は大変いいことだと思うし、また、アメリカ人のいい意味の率直さだろうと思うんですね。
 ですから、そういう関係になれば、きりきりした日米関係、経済摩擦ということにならないと、
そういう一つの参考として申し上げるわけですけれどもね。一つ質問をしたいのは、さっきも外務省の方がおっしゃいましたけれども、アメリカの対日感情が悪くなっている。これは事実、いろんな世論調査の例もおっしゃいましたけれども、私の知っている世論調査でも、昨年の調査ですが、日本は脅威だと考えている人が七三%いる。もちろんこれは軍事的な脅威じやなくて経済的な脅威という意味でしょうが。これに対してソ連は敵だと思わないという人が七二%いる。だから、同じ調査で米ソ関係の方は非常に緩和をしていて、日本に対して厳しい。こういう結果を聞いておりますけれども、これはお互いにアメリカとの関係を考えた場合に、一体何が対日感情を悪くしている原因か。さっき幾つかの例を私見だがと言っておっしゃいましたけれども、このことは非常に私は重要なポイントだと思います。非常にやわらかい言葉での調査では、結果として日本人はずるい、こういう結果も出ているということを聞いておりますけれども、外務省おっしゃったので、大蔵省は、そういう意味で、アメリカのことを考えていらっしゃる立場から、この原因は何だと思いますか。
#103
○政府委員(江沢雄一君) これは全く私見でございますが、やはり日本の経済的な地位が高まった、それに伴いましてアメリカが日本を競争者として非常に強く意識するようになったということが基本にあるのではないかと思います。同時に、日本の非常に強力な資本あるいは企業の進出ということで、何といいますか、日本の企業にありがちな過当競争体質というふうなこともあって、米国の企業が脅威を感じているということがあろうと思います。そういう意味で、これは日米の経済関係のしからしむるところではないかというふうに思います。
 もちろん自由競争体制というのは堅持していかなければいけないというふうに思いますが、その中で無用の摩擦を生じないようないろいろな配慮というものも必要なのではないかというふうに考えている次第でございます。
#104
○政府委員(堤富男君) ちょっと蛇足で大変申しわけございません。
 先ほど神戸製鋼の話が出まして、それと似たようなことを我々実は主張させていただいたわけでございます。その結果が実はアメリカ側の措置の中に非常に明快に書いておりまして、アメリカ側が現在鉄鋼についてはVRAという形での自主規制型をやっておるわけでございますが、その裏返しをしておりまして、単に輸入が入ってこないということだけをやっておるのではなくて、米国企業として近代化のための再投資をしなければいけないのじゃないかということに対してコミットをしているのに加えまして、まさに先生のおっしゃった労働者再訓練のために、ネットのキャッシュフローの一%を充てなくてはならないということをコミットしている点をつけ加えさせていただきたいと思います。
#105
○田英夫君 もう一つ伺いたいのは、さっきいわゆる内外価格差の問題を言われましたけれども、これも日本におりますと本当に実感としてありますね。また、外国旅行をするとそれがさらに実感としてあるわけですけれども、今内外価格差対策推進本部ですか、これも置かれたということですが、非常に簡単に言っていただいていいんですが、なぜこの内外価格差が起きるのかというそのメカニズムといいますか、これはどういうふうに思っておられますか。
#106
○政府委員(堤富男君) なかなかこの問題は価格の問題なので難しゅうございますが、私、内外価格差というのは、一つは、最近のように円が動いておりますと、かなり円レートの問題が影響しているのではないかと思っております。一年間で百二十円になってしまったという現在、それから百四十円のときに調べてみますとほとんどそれが解消しているというような事態、今百六十円で計算しますと、この間まで確かに安かったというアメリカのゴルフボールが本当に今安いのかどうかというのも考えなきゃいかぬと思っております。そういう為替レートが一点あると思います。
 それからもう一つは、我々調べた結果の中では、日本の土地の値段が高いとか流通コストが確かに高い。これは土地の値段、人件費等が高いということが影響しているという点もあると思います。
 それからもう一つ大きなウエートとしましては、やはりブランド品につきまして特に多かったんですが、外国の企業の価格政策というのがございまして、例えば一万円で売っていたものがドルの方が百十円になったとしても、それをすぐに五千円に下げずに、むしろ過去に一万円で買った人に対して配慮するということを考えて一万円でやり続けるというようなこともあるわけでございまして、そういう意味の価格政策的な分野というのもあったかと思っております。
 非常に簡単に申し上げるとそういうことではないかと思っております。
#107
○田英夫君 最後に、商慣行改善指針というものをつくられたということを言われましたけれども、これも簡単でいいんですけれども、主な内容を教えてください。
#108
○政府委員(堤富男君) 実は、これまだ内容的に中身は検討しておりませんで、現在やろうとしておりますことは、流通過程が非常に複雑であるというようなこともあったり、あるいは透明性が少ないというようなこともございますので、そういう分野について今後の商慣行の改善、簡単に言いますと簡素化、明確化、透明化というようなことをつくる方向でことしの春から考え出して、最終報告のときまでに少し中身を明らかにしていこうかということでございます。
#109
○田英夫君 終わります。
#110
○翫正敏君 先ほどからお話を伺いまして、米国内の対日感情の悪化が非常に進んでいるという、そういうことが言われておりまして、しかし、今度のこの構造協議の中間報告というもの、日本側の六項目、米側の七項目ということになったんですが、こういうようなものは決して、アメリカの要求が出ました、それに日本が譲歩してこうなりましたというような、そういうワンパターンのものではないんだ。これはあくまで日本の国民、消費者の生活にとってプラスになることなので、これをこういう形でまとめたのだという、そんなお話があったわけなんですけれども、アメリカの方の対日感情が悪化しているということの原因の一つに、田さんの先ほどのお言葉では、日本はずるいというようなことを感じている人が多いというようなことがあったんですが、やっぱりそういうことの大きい原因は、約束したことを、公約をしても守らないという、対米公約を守らないという、そんなことが積み重なってそういうぐあいになってきているんじゃないかなと、そんな気もするんですね。
 日本国内ですと、公約などというものは大体選挙のときにちょっと張って選挙が終わればとるという調子で行くんでしょうけれども、外国に対する公約は、特にアメリカのような、契約というものを何百年にわたってやっているような、日本のような腹と腹を合わせてというようなことではないお国柄のところに対しては、やはり書いたものをちゃんと出すと、それはもう約束したんだから必ずいついつまでに実施しなきゃならないと、こんなふうになるんじゃないかと思うんです。例えば中曽根内閣のときに、昭和六十一年に国際協調のための経済構造調整研究会のいわゆる前川レポートというものをアメリカの方に出しましたですね。こういうものはやっぱりアメリカの方から見ると公約で、すぐに実行してくれるものだ、こう受け取って待っていたけれども実行が進まないというようなところから、ずるいとか、約束を守らない国だとかというようなぐあいになっていって、そういうのがやっぱり対日感情の悪化につながっているんじゃないかなというようなことを思うんですけれども、その辺のところ、前川レポートというようなものを公約として出した経過と今回のこの構造協議に至ったことというのは関係があるというふうに考えてよろしいんですか。通産省ですか、外務省ですか、ちょっとお願いします。
#111
○説明員(原口幸市君) まず、アメリカにおける日本はずるいという感情のもとでございますけれども、私は幾つか原因があると思います。今、先生がおっしゃったように、公約を守らないというような印象というものもあるいは一部原因かと思いますが、アメリカの場合に、公約を守らないというのがどういうことかというと、むしろアメリカの多くの、特に議員さんなんかは結果を非常に重視しているところがございまして、こちら側はルールの問題としてそれを直した、しかし、金銭登録機のガチャンという音を鳴らさないというところでそれが公約を守らないというふうに短絡的にジャンプするという、ややこの点は問題があろうと思うんですけれども。しかし、もう一つの問題は、例えば非常に挿話的に、ニューヨークへ行ってみると日本の写真機が日本で買うよりも安く買える。こういうような一種の挿話が結構あるものですから、それがかなりぐるぐるアメリカ社会を回ると、やっぱり日本はどこかずるいところがあるんじゃないかと、そういうようなケースも原因の一つとしてあるのではないか、そのように思っております。
 それから、前川レポートと今回の関係でございますけれども、先ほども申しましたように、前川レポートで志向している方向と今回政府がSIIを積極的に進めようとしている方向とはもちろん同じものでございまして、私も長く経済局にいるわけではないのでそれほど確たることは申し上げられないんですが、前川レポートが出た後、政府としてもそれなりに努力はしているはずでございまして、それなりの成果は上がっている。しかし、前川レポートが志向していることが一〇〇%実現したかといえば、そういうことではなくて、まさに一種の不断の努力の一環として、その延長線上にこの措置を位置づけてもそれほどおかしいものではない、そのように私は考えております。
#112
○政府委員(堤富男君) 若干また蛇足で申しわけございませんが、前川レポートの基本的なラインであります幾つかの制度というものもあるわけでございますが、内需振興、内需依存型経済への移行ということがあったわけでございますが、今度の日本側のレポートにも書いてございますように、八六年度のときには経常収支黒字は対GNP比四・五%であったわけですが、ことしの九〇年度では恐らく二%を切るというところまで来たのも、八七年でございましたですか、六兆円に上る内需拡大、内需振興をやったということも大きな影響が私はあったと思います。そういう意味では、やはりいろいろ努力はしたけれどもなかなか対米の赤字が減らなかったということがまた一つの問題の始まりであったのではないかと思っております。
#113
○翫正敏君 四年前の前川レポートを読みましても感じますし、それから今度の構造協議の結果に書いてあることなんかを見ましてもしみじみと感じるんですが、こういうことは基本的には日本の国内問題でありますから、国権の最高機関である国会というところでこれを協議して、そして決めて、国民生活に役立つことを次々と実施していく、こういうのが正しいやり方で、基本的には外国であるアメリカと協議して決めるというようなことではないように思うんですね。我々国民の生活にいいことだから、そういう外交の中で日本の国内の問題も協議していくということになりますと、やはり先ほどもだれかの言葉の中にありましたけれども、私なども田舎におりまして周りの人の話なんか聞いていますと、やっぱりアメリカが日本の内政に干渉してきているんじゃないかというような日本国内の対米感情の悪化ですね、そういうものにもつながりかねないような発言といいますか意見みたいなものも周りの国民の中から出ていると思いますので、私たちの生活にプラスになることなんだから喜んで受け入れましょうというようなふうには必ずしもなっていないんじゃないか、そんなふうに感ずるわけですね。
 ところで、その中間報告の例えば日本の方の六項目というのを見ますと、新聞にも書いてありますし先ほどの御報告にもそれぞれありましたが、三つの省庁がそれぞれ貯蓄・投資パターン、土地利用、流通、排他的取引慣行、系列関係、価格メカニズムという六つの項目でここに書いてあるさまざまなことを実施するということなんですけれども、先ほどからの御説明を聞いておりますと、この日米間の五百億ドルに上るいわゆるアンバランス、日本円に直して七兆円以上かと思いますが、これは急には是正が期待できないものだ、こういうことを言われるんですね。そうしますと、この貿易収支のアンバランスの是正のためだということになっているはずなのに、その是正が期待できないというようなところに何かこの協議そのものに、表現が適切かどうかわかりませんが、いわゆる裏があるのではないか、これが決定した後数年を経ずして今度新しい別の何かが出てくるという、そういうものを背後に控えておるのではないか、そんなふうに感ずるんですが、そんなことはないんですか。
#114
○説明員(原口幸市君) そのようなふうには考えておりません。
#115
○政府委員(江沢雄一君) 先ほど堤次長からもありましたけれども、構造協議はマクロ経済政策を補完するという性格のものでありまして、これはその性質上かなり時間を要する。しかもその成果が出てくるのは、いろいろなビジネスの慣行を改めるというようなことで、時間がかかるという点は十分御理解いただけることではないかと思うわけでございます。
 マクロ政策、それからミクロの構造調整、それから個別の貿易政策、そういうものが総合的に日米の不均衡是正に役立っていくということは間違いないのではないかと思うわけでございます。
#116
○翫正敏君 ある本に書いてあったことなんですけれども、それを見ますと、この日米経済摩擦で今構造協議が行われているけれども、これはアメリカの方から見ると単に経済問題だけなのではなくて、政治、経済、防衛というこの三つをリンクさせて一体にして抱括的な日本とアメリカの今後こういうさまざまな問題、政治問題、経済問題、防衛問題というものをリンクさせて、そして抱括的に協議をしていく枠組み、そういう何か新しい協議機関をつくって今後やっていくという、そういうことの第一歩なんだ、こんなことを書いてある本を読んだんです。これですけれども。これを見ますというと、安保条約は軍事面のものだけではなくて経済協力という「経済政策におけるくい違いを除く」という、そういうことを第二条のところに書いてありますね。このことが、安保条約第二条というものが発動されて、そして今回の協議になって、そしてそういう意味で安保が経済問題も軍事問題もリンクされているものでありますから、このことを軸にして防衛問題、つまりバードンシェアリングですね、肩がわりをもっとしなさい、アメリカの方が軍事費を削減するということについて日本にもっと肩がわりを要求してくる。もう既にかなり要求が出ているわけなんですけれども、それが一段と強まってくる。それを本番としますと、その第一幕というのが今我々の前に展開されておるのではないか、そんなように思うんですけれども、今ほど私が申し上げましたような状況ではないんでしょうか。
#117
○説明員(原口幸市君) 私が承知している限り、構造協議の過程の中で安保条約第二条が言及された事実は一度もなかったと思います。
 それから、今先生がおっしゃった経済の分野だけでなく政治だとか安全保障との兼ね合いの問題でございますけれども、これもそういう兼ね合いを明示的に先方が指摘して、その指摘のもとで構造協議を進めるというような事実はなかったと思いますが、ただ、現実の問題といたしましては、経済の分野のことであってもあるいはそれ以外の分野のことであっても、実際に日米の関係というのは広いコンテクストの中でマネージされているわけでございまして、もし経済の分野で関係が悪化すれば、それがめぐりめぐってそれ以外の分野にも悪影響を与えてくるということは事実としてはあり得ると思いますが、さっき申しましたように明示的にリンクして、だから日本はこれをしろあ
れをしろというようなことは一切ございませんでした。
#118
○翫正敏君 今年度の予算に載っておりますアメリカへの思いやり予算というんですか、肩がわりですか、あれで提供施設整備費千一億円、労務費が六百七十九億円、うち特別協定分が四百五十七億円、基地賃貸料が六百八十八億円、基地周辺対策費千六百億円、合計三千九百六十八億円、まあ約四千億円ぐらいですね。こういう数字になるかと思うんですけれども、まあ四千億円ぐらい、ぐらいと言うても大金なんですが、五百億ドル、約七兆円というのから見ると極めて少ないんですがね。ただ、現在の日本の防衛費が一%で約四兆円という、こういう数字をにらんでみますと、政府の中にはないとは思いますが、自民党あたりの防衛族と言われておられるような方々の中からちらちらと、三%ぐらいにせぬといかぬというようなお話が聞こえてきますね。そうすると、三%にするということは二%プラスになるわけですから七兆円か八兆円ぐらいがちょうどこうきて、それでそれがちょうどうまく七兆円という数字と合うんじゃないかという私なりの非常にずさんな試算をしてみたんですけれどもね。この構造協議というものをいわゆる経済問題だということで我々国民が受け取っておりますことの背後には、やはりアメリカからのそういう防衛問題の肩がわりを要求されるという、そういう強い圧力がやっぱりあって、それが急に一遍に防衛問題で対日圧力というようなことになってくると、それこそアメリカの方での対日感情の悪化以上に、在日米軍はいわゆる占領軍の続きでないかみたいなことを思い出す人が出てきたりして、やっぱり日本の国内の反米感情みたいなものが高まってきたりすることがあってはいけないというので、まず国民感情が一番受け入れやすい住宅の問題であるとか、先ほど堤さんがおっしゃったように、私も家がないのでこの協議で家が持てるようになると本当にいいなと思うという、国民がだれでもそういうふうに喜ぶようなところから、まず初日、二日目あたり始まって、そしてだんだん中日以降から千秋楽へ近づいてくるとそういう本番になってくるんじゃないかなという心配をするんですが、そういう心配は全然しなくてもいいのかどうかですね、ちょっとお願いします。
#119
○説明員(原口幸市君) 私どもは、そのように考えておりません。
#120
○翫正敏君 通産省の方どうですか。それぞれのところでちょっとお願いします。
#121
○政府委員(堤富男君) 私もそのようには考えておりません。
#122
○政府委員(江沢雄一君) 経済的な側面で日米間の関係改善を図るという点、それから日本サイドにとっても国益に即する方向であるということで作業したわけでございます。
#123
○翫正敏君 これで終わりますが、いただいたこれを見ましても、去年四百九十、おととしですか五百十八、その前が五百六十三、その前が五百五十というふうにして、やっぱりすごい膨大なアンバランスの収支の金額が出てきているわけですね。そうしてさまざまな新聞に書き切れないほどたくさんの項目が載っていますけれども、先ほどから聞くと、何かこれ全部実施しても金額的には大したものでないというようなお話があったりして、それで急に是正が期待できるものではないんだというようなお話なんかを聞きますというと、こういっぱい新聞に書き切れないほどの項目、何百項目もの協議をして、そしてそれを受け入れたのか、まあ受け入れて、それでこの五百億の問題が解決する見込みがいつかわからないというようなことになると、一体、本当に表に出ているものを私たち国民が正直に受けとめていればそれでいいのかなという疑問が禁じ得ませんので、私ももっと研究をしましてそのうちまた意見を述べさせていただきたいと思いますが、きょうはこれぐらいしか調べてありませんので、終わります。
#124
○和田教美君 私の質問時間は十分と限られておりますので、ひとつ極めて簡潔にお答え願いたいと思います。三省にそれぞれ一問ずつ質問いたします。
 まず外務省、今度の日米構造協議の中間報告について、外務省は大山を越えたと。大体枝ぶりはできたから後はそれに肉づけしていくだけだというふうな考え方を述べておられるようでございます。しかし、アメリカ側は必ずしもそう言っていないですね。例えばウィリアムズ米次席通商代表は、構造問題協議には論議すべき重要な問題が残っている。日米貿易問題は五十ヤード競争ではなくマラソンのようなものだというふうなことを言っているし、アメリカの議会筋の反応などを見ていると、結局七月の最終報告を待たなければわからないというふうな受け取り方もあるということでございますが、最終報告までの間にこれ以上枝ぶりの上に大きなものがまた持ち出されてくると、そういうふうなことはないのかどうか、その点をひとつお聞きしたいわけです。
#125
○説明員(原口幸市君) これから三カ月ございますから、最終的にまたアメリカがどういう立場になるのか必ずしも確言はできませんけれども、私どもといたしましては、中間報告においてこの時点で我々としてできる最大限のものを盛り込んだという観念でおりますので、まさに先生が御紹介になったように大きな枝ぶりは中間報告で決めた、今後はそれを具体化していく作業、肉づけの作業というものが中心になっていくだろう、そのように考えております。
#126
○和田教美君 もう一つ外務省に、スーパー三〇一条の関係ですけれども、スパコンだとか人工衛星、木材などの今の対象品目については一応解決するとしても、新たにまた指定という問題があるかどうかということもございますね。そして、アメリカの議会筋の発言には、この構造協議は一応中間報告はできたけれども、この再指定は引き続き行うべきである、圧力としてですね。そういうふうな意見が出ておりますね。この点は全然別の問題なんですか。そういうことが起こり得るんですか。
#127
○説明員(原口幸市君) 理論的には別の問題でございます。
 ただし、我々といたしましては二年度目のスーパー三〇一条が日本に対して発動されることがないように強く期待しておりまして、またこの中間報告自体がその辺についてよい効果を及ぼすことを期待しております。
#128
○和田教美君 次は通産省、さっきからこの構造協議をやっても構造改善をやっても即効性はないというお話でございましたが、本当に、とにかくどのくらい貿易インバランスが改善されるかという試算みたいなものを全く政府部内でやったことはないんですか。例えば数十億ぐらいというふうなことを言われる人もあるし、あるいは百億、二百億というオーダーなのか、その辺のところ、全く計算したこともないんですか。
 それともう一つ、構造協議によってこれから具体的にアメリカからどういう輸入がふえるとお考えなのか、どういうものの輸入がふえるというふうにお考えなのか、二、三例を挙げていただきたい。
#129
○政府委員(堤富男君) 試算をしたことはございません。
 最近のアメリカからの輸入というのは、実はそれなりにふえておるわけでございまして、お配りしたこの表の中でも、二年間で百六十四億ドル輸入はふえているわけでございます。実際にふえているものというのは農産物から機械製品の一部にありまして、ふえておりますが、いずれにしてもアメリカ側の競争力のあるものが結局は日本に入ってくるということだと思っております。
#130
○和田教美君 非常に抽象的な話で、どういう品目がふえそうだとお考えなのか。例えばTシャツですか。
#131
○政府委員(堤富男君) 今後の予測は大変難しいわけでございますが、アメリカの最近伸びているものというのを申し上げますと、品目別には事務機械あるいは航空機、木材、化学製品等がその伸びのかなりの部分を占めております。実際にアメリカの中では製品輸入というのもふえておりまし
て、最近では約六〇%ぐらいの製品が入ってきているという状況にあります。
#132
○和田教美君 もう一つ通産省にお聞きしたいんですけれども、国内問題として非常にこれからシリアスな問題になるのがやっぱり大店法の問題だと思うんですね。それで、大店法の問題については三段階ということを言われておるわけですけれども、三段階目にいわゆる特定地域は、要するに大店法の規制の対象外にするというふうなことが含まれるということですが、この特定地域というのは、具体的に例えば三大都市圏だとかあるいはもうちょっと広いだとかいろいろ言われておるわけですが、今度の協議の中でそういうことが具体的に話し合われたのかどうか。
 それともう一つ、仮に三大都市圏というふうなことになった場合に、例えばアメリカのトイザラスが今度新潟に出店するという問題が今度の協議でも出ておりますね。これは三大都市圏以外といいうことになりますが、そういうところにまでアメリカが出店を望んでおるとすればその問題は解決しないということになりますが、その点はどうお考えですか。
#133
○説明員(金子和夫君) お答えいたします。
 特定地域の規制の撤廃の問題でございますが、次期通常国会に提出を予定しております改正法の中で見直すということでその内容を盛り込むことにしておりますが、現在のところ、特定地域の具体的な問題につきましては将来の検討課題であるということで具体的に決めておりません。したがいまして、アメリカともその点について話し合われたことはございません。
 それからトイザラスの問題と関係あるのかという御質問でございますが、この特定地域の問題はそういう意味で将来の検討課題ということでございますので、特に関係はございません。
#134
○和田教美君 最後に大蔵省、この日米投資摩擦の問題ですけれども、これが今度の構造協議問題の背景にもなっているという説明がさっき外務省からございましたけれども、確かに直接投資が急増していますね。例えば八八年度の届け出ベースのアメリカの対日直接投資は十七億ドル、ところが日本からの対米直接投資は二百十七億ドル、さっきいただいたデータはちょっと違いますけれども、いずれにしても百数十億から二百億ドルぐらいの差が出ておりますね。特に目立つのが不動産投資で、これがとにかく三菱地所がロックフェラー・センタービルを買収したり、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ・エンターテインメントを買収したりと、とにかく目立つわけですね。こういう不動産の買収というのは、例えば工場を日本の企業がアメリカで建設するということになると、これは雇用対策にもなるわけですから、とにかくいろんな好意的な反応も出ると思うんですが、不動産だとそういう効果は全くないわけで、いたずらに目立つものをねらい撃ちで買うというふうなことは、これは非常に日本にとってもマイナスだと、こう思うんですね。
 ですから、この直接投資の問題について大蔵省として何か対策をお考えなのかどうか、その点を聞きたいと思います。
#135
○政府委員(江沢雄一君) 確かに御指摘のような問題があると思いますが、他方、具体的な契約の当事者は、お互いに日本に買ってもらいたい、あるいは日本から投資をしようということで、自由な市場の中で両者の意見が一致したところで取引が行われているという側面があるわけでございます。我々はやはり自由な資本の流れというものを世界経済の発展のために重要なことであると考えておりまして、確かに地元でのいろいろな摩擦に配慮をしなければいけないことはそのとおりでございますが、同時に、これを人為的に規制するということは望ましくないのではないか、やはり資本が世界を自由に流れることによって世界経済全体が発展していくという観点を忘れてはいけないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
#136
○和田教美君 そうすると、大蔵省としてはそういう問題について特に何か行政指導をするとか、そういう考え方は全く持っていないと、こういうことですか。この点について外務省の見解もひとつ簡単にお聞かせ願いたい。
#137
○政府委員(江沢雄一君) 先ほど申し上げましたように、地元でやはり摩擦を生ずる、あるいは反発を生ずるということは日米関係全体にとって望ましくないわけでございますから、その点について十分配慮をするようにということを希望しておるわけでございます。ただ、当面これについて何らかの規制をするというふうなことは考えておりません。
#138
○説明員(原口幸市君) ただいまの大蔵省の江沢次長の意見と同意見でございます。
#139
○和田教美君 終わります。
#140
○上田耕一郎君 まず、外務省にお伺いします。
 原口審議官が最初言われたように、五月二十六日のブッシュの声明から始まったわけですね。あの声明はスーパー三〇一条問題でひとつ協議をやろうということと、それにくっつけてこの構造協議問題がついていたわけね。当時の宇野外相は、スーパー三〇一条問題については割に厳しい態度をとったんだが、その後、日米共同声明で構造協議をのんだわけですね。この経過に明らかなように、スーパー三〇一条問題と非常にこれは絡んでいるわけね。宮澤元大蔵大臣はこれ引き込み線だと言ったんだそうですよ。それからブルッキングス研究所のリンカーン主任研究員も、ブッシュ政権にとってスーパー三〇一条、これを回避するための外交的道具だったということになっているわけね。それで、こういうとんでもない状況になってきて、我々、これ内政干渉だ、やめるということを言っているんですけどもね。だから、実はこのスーパー三〇一条問題についての態度が問われていると思うんです。
 それで、EC諸国はこれはガット違反だということで、スーパー三〇一条の撤廃を要求しているんでしょう。それでガットは、これは最恵国待遇、内国民待遇、内外無差別というのが原則になっているのに、このスーパー三〇一条問題というのは、スーパーコンピューターだとか人工衛星問題で不公正貿易と認める、何とほかの商品について制裁したっていいという、これとんでもない問題だと思うんですね。ガットの原則とスーパー三〇一条問題を日本政府、特に外務省はどういうふうに見ているのか。これはガット違反だという態度をとらないのかどうか。ここから問題が出発していると思うので、答えをいただきたい。
#141
○説明員(原口幸市君) 日本政府も、スーパー三〇一条につきましてはガット上問題があると思っておりまして、もちろんそういう立場を表明しております。特に三〇一条が実際に発動されて制裁措置というようなことになれば、なおさらその立場は強く言わざるを得ないと思っております。事実、現在スーパー三〇一条絡みで指定されたものを米国と話し合っておりますけれども、日本の立場はスーパー三〇一条のもとでの話し合いということではなくて、お互いに関係の深い日米両国の間で問題があるということであればいつでも話し合いましようと、そういう観点から話し合いを行っているということでございます。
#142
○上田耕一郎君 やっぱりそういう非常にあいまいな態度をとっているから今度の構造協議みたいになるわけで、この構造協議というのは、もう本当にガットの原則から全く違うものを持ち込んできたもので、世界に例のない最初のものですよ。アメリカの州にさえ連邦政府が要求できないものを他国の日本にこれだけ言ってくるというのは、大変なことだと思う。
 国土庁来ていますかな。――いろいろ問題ありますけれども、僕は建設委員もやっているので非常に関心があるんだけれども、例えば大店法の緩和でも、ああいうものを緩和ないしは撤廃なんかしたら、これは広く認められているんだが、アメリカのスーパーなんか来ないで日本のスーパーの出店競争がすごくなって、地価が上がる。地価が上がると物価が上がるだろうという心配がされているわけですね。
 土地利用問題先ほども説明がありました。それ
でこの中間報告を見ますと、八ページですが、「土地の有効利用促進の観点から、線引きや用途地域についても、今後、適時・適切な見直しを行う。」、「市街化区域の拡大が見込まれる。」、「高さ、容積率、建ぺい率に係る制限の緩和」等々書かれているわけね。先ほどから話が出ております。政府は答弁拒否しているんだが、アメリカ側の二百四十項目と言われるものの中には、例えば四全総の再検討、これも入っているわけね。市街化区域と市街化調整区域の基準を廃止するというものまで入っている。それから東京都の価格監視制度、この制度も廃止する。宅地並み課税から借地借家法改正から入っているわけだけれども、この考え方は結局もっと開発をやれと、開発の規制とかいうようなことを今まで日本はやっているけれども、そういうのはやめて開発を大いにやれというわけで、こういうことをやると、日本は地価が高いからアメリカの企業は進出できないんだということを先ほど説明されていたけれども、とんでもないので、逆に地価は上がっていきますよ。大体八六年、八七年の東京の世界でもまれな地価暴騰も、あの背景の一つには当時日銀が出動してドルを猛烈に買いまくった、余りのドル安を防止しようとして。それが外為特別会計を通じて日本の国内にどんどんどんどん円が出て、これが資金の一つになったというのは宮崎教授の「ドルと円」にも詳しく追跡されているんだけれども、そういう関係の地価暴騰問題を、こういうのをのんだら私は地価が下がるどころか上がると思うんだけれども、国土庁どうですか、どう考えますか。
#143
○説明員(鈴木省三君) お答えいたします。
 土地問題の解決につきましては、今回の協議におきましても、我が国自身の問題として対応するとともに米国側とも十分話し合いを重ねてきたところでございます。
 この結果、土地利用問題につきましては、大都市地域における住宅宅地供給の促進、土地税制の総合的見直しを初め、昨年末の土地対策閣僚会議において申し合わされました、今後の土地対策の重点実施方針に掲げられました諸施策を中心として中間報告がまとまったところでございます。
 これらの諸施策の推進につきましては、国民の理解と協力を得るべき課題も多いところでございますけれども、今後はこれらの施策のできる限りの早期実現に向けて鋭意努力していく所存でございます。私ども少なくとも今回の交渉につきましては、日本で昨年決められました土地対策閣僚会議の方針に基づいて中間報告をまとめたということでございます。
#144
○上田耕一郎君 とにかく日本の予算の編成権から法律制定権まで踏み込んだ、極めて不当な内政干渉なんで、こういうものは断固拒否すべきだ。土地問題一つ見ても、大店法問題一つ見ても、明らかなんですが、実はこういうところに政府が引き込まれて、こういう協議を非常に屈辱的な形でやっているのは、日米関係の大局観が僕はあなたがた間違っているんじゃないかと思うんですよ。
 というのは、五百億ドルの対米貿易黒字黒字ということを言っているんだけれども、これが急速になくなるんじゃないか、今経済情勢の非常な激変が生まれているわけです。例えばこれはヨーロッパ、東欧問題などとも関係があるんだけれども、アメリカは経済的にも復権が始まっている。昨年の年間輸出額でアメリカは西ドイツを抜いて四年ぶりに世界最大の輸出国に返り咲いたという状況も生まれているんですね。それから野村総研の林常務の指摘によりますと、日本もトリプル安にあらわれているように非常に落ち込みが始まっている。昨年末、経常黒字の面で一位の座を西ドイツに明け渡した。ことし一月、一時的にせよ経常収支が赤字になった。こういう指摘がある。日米間の五百億ドルの黒字も、「日経ビジネス」の三月十二日号の特集によると、五年間でゼロになるのではないか、そういうあれがある。自動車生産も、アメリカの原地生産二百万台と言われたのが三百万台に、トヨタ、日産、本田等々の対米直接投資でなろうとしているというんですね。けさのNHKのニュースでも、アメリカのロバート・ゲイ氏という人が、日本の経常収支三年後赤字になるというレポートを発表したというのが報ぜられました。そういう状況で、今大きな情勢変化で、対米貿易の黒字五百億ドル五百億ドルなんと言っているのは変わりかけている状況なのに、ほとんど余り関係のない構造協議で内政干渉を受けてごたごたごたごたやっている。私は本当にことしの中間選挙に向けてのブッシュ政権のわなにかかって、とにかく日本たたきについて、構造協議やっていますよ、日本にちゃんと言うことを聞かせていますよということに全く乗ったんじゃないかと思うんだけれども、今の日米関係あるいは五百億ドルの貿易黒字問題の今後五年間の見通し等々、どう見ていますか。これは通産省ですな。
#145
○政府委員(堤富男君) 五百億ドルという数字はドルベースの話でございますが、円ベースで見ますと、これはもちろん二百四十円時代の五百億ドルと百二十円なり四十円になった時代と違っているわけでございます。我々としても、円ベースで見ますとこれはかなり減少してくることは事実でございまして、これも一つは日本全体の経常収支、貿易収支と同様に一九八五年以来の日本のとったマクロ経済政策なりG7等でやりましたマクロ経済政策がやはり効いてきているというふうに感じております。
 ただ、今御指摘のように、その後どうなるかということにつきましては、全体といたしまして貿易収支、経常収支、最近の円安等も考えますと本当にどうなるかということは我々もまだ断言しかねる状況にございますけれども、全体として日本の海外投資が進むことを考えますと、中期的には改善の方向に向かうということはありますが、さらにそれがアメリカとの関係で、バイラテラルで、二国間でどうなるかということはさらに難しい状況にあろうかと思っております。
 ただ、全体としては改善をする方向に行かないといかぬと思っておりますし、そういう方向に行くことを希望していることも事実であります。
#146
○高井和伸君 この日米構造協議につきましても、私、上田委員と同様、これは日本国に対して非常に内政干渉だろうという認識でおります。そんなことを言ってもしようがない話でありますけれども、例えて言えば、第二次占領政策の始まりじゃなかろうかというような印象を持っております。
 それで思うには、この中間報告にございます、八ページの7の公的土地評価の適正化というような問題についてのこういう中間報告書を読むにつけ、我々、地方行政委員会におきましても同じようなことをいろいろ議論しておりますと、自治省の方から、それぞれ制度目的が別個にあって公的評価三本立てでやっている現状は変えられないというようなことがついせんだっての答弁でも出てくるわけですよ。それをこういう日米構造協議にかけるといとも簡単に、ぱっと打ち出の小づちのごとく出てきてしまうこの政策、これは日本の国益に反するんだろうと、長期的に見ればね。なぜならば、日本の国会が無視されてしまって、行政レベルですべて押し切られてしまう。日本の政治システムが非常にばかにされているというのか、政治システムが悪いというのか、非常に私はじくじたるものを感ずるわけです。これは我々は各立法機関として、いろんな審議会で言ってきたことがなかなか政府当局によって得られない、答えが出てこない。それが米国によればすぐ出てしまうというようなことをこの観点だけからも非常に強く感ずるわけです。
 先ほどからおっしゃる、近未来的に言えばそれは国益に合うだろう。五百億ドルの日米貿易摩擦の解消だとかアメリカとの関係だとかという面ではよろしいとは思いますけれども、長期的に見た場合、これは日本の政治システムの基本的な部分を崩す要素を持ったことが着々と行われつつある。ある意味では私は、日本の場面において政策がなかなか実現できないときは、仕方なしにアメリカに頼んで、アメリカ経由でいろいろやっていただけばすぐ実現するんじゃなかろうかと思われるような構造のもとで行われる。私は、そういう面では非常に国民感情は反米意識が高まるだろう
と思うわけです。
 そういったことで、皆さん方に申しても仕方がないことかもしれないんですが、こういったところの整合性、従前行われてきましたいろんな土地利用の問題につきましても、土地税制のことにつきましても、一軒の家を建てるのにサラリーマンの年収の五カ年分だとか、そういった政策がアメリカによって実現されるような残念な姿というか、そうなりそうな姿ということに対して、行政当局としては内閣の責任で行われることはもちろん当然でございましょうけれども、日本の政治システムの中においてこのような日米構造協議というようなことが好ましくないと私は信じておるわけです。
 そこで、皆さん方に感想を聞いてもまた仕方がないというようなことを言っちゃうんですが、近未来的な面では、先ほどから何度も何度も皆さん方が強調される、国民生活の質的な向上だとか国益にかなうだとか、マクロ的な経済政策の補完作用だとか、またとってつけたような双方通行だとか、このような対応につきまして、国民にきっちりわかるように説明していただかないと、日本の政治システムとの関係では非常に問題のある政治問題解決手法だろう、こう思うわけです。
 そこらのことで、今後皆さん方当局としてのこの日米構造協議の決着のつけ方、簡単に言えば国内レベルにおける立法化というか法の改正あるいは予算措置、そういったものに落とし込んでいく将来的なスケジュール及び考え方、視点、そういったものにつきましてトータル的に御答弁ください。
#147
○説明員(原口幸市君) どうも先生には必ずしも御満足いただけないと存じますが、私どもは、やはりこの構造協議というものは国民の生活の質の向上というものにも大いに役立つものでございまして、これを内政干渉という観点からとらえる必要はないというふうに考えてございます。
 そして、この中間報告に盛られてある幾つかの措置というものの中には、もちろん法改正を要するものもございますし、運用の改善ということで行政府レベルでできるものもございます。法改正を要するものにつきましては、当然のことながら国会に法案を提出して先生方に御審議いただくという手続を今後とっていくことになりますし、また、中間報告の中で既にいつまでにという時期を明示しているものにつきましては、そのラインで所要の手続をとっていくということだと思います。万一そういう時期が明示されていないものであれば、今後、最終報告までに時期が明示できるものであればそのラインで処理するということだろうと思います。
 その他、先生おっしゃるように国民に御理解と御協力をお願いするに当たりましては、先ほども冒頭で述べましたが、政府といたしましてもこの趣旨を十分説明するという努力は今後とも続けていくべきだろうと存じております。
#148
○高井和伸君 そのように言われてしまえば、もう聞くことはないような感じでございますが……
 それで、こういった日本国のいろんな今のレベルでは、経済面における日本の政治のシステムというものを問われているわけでございますが、先ほど田委員がおっしゃったような許認可の問題につきましても、実は総務庁の方で行政手続法の制定というようなことでかなり一生懸命やっておられますけれども、これは国内的な総務庁のレベルでやればなかなか進まないんだけれども、また先ほど私が申し上げたように、アメリカを通じてやればすぐできそうなテーマになってしまうというこの現実の落差を非常に残念に思うわけです。それで先ほどの、日本国において我々がいろんな場面で提言し、ある意味では、与党じゃない方の野党勢力の意見が十分反映されてやってくればこんなことを言われぬで済むようなレベルだったんだろうと思うんですよ。
 そういった面で私が考えたいのは、これはちょっとまたむなしい思いがするんですが、今後とも、アメリカに言われるまでもなく自分たちでやらなきゃいかぬ行政の努力というものを、このことを反省材料にやるべきじゃなかろうか、私はそうかたく信じているわけです。
 そういった意見を申し上げまして私の質問は終わります。
#149
○会長(中西一郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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