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1990/06/25 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 文教委員会 第7号
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1990/06/25 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 文教委員会 第7号

#1
第118回国会 文教委員会 第7号
平成二年六月二十五日(月曜日)
   午後一時一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
   委員長          柳川 覺治君
   理 事
                石井 道子君
                田沢 智治君
                粕谷 照美君
                山本 正和君
   委 員
                井上  裕君
                石井 一二君
                木宮 和彦君
                世耕 政隆君
                会田 長栄君
                小林  正君
                西岡瑠璃子君
                森  暢子君
                高木健太郎君
                針生 雄吉君
                高崎 裕子君
                笹野 貞子君
                小西 博行君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊池  守君
   参考人
       富山県民生涯学
       習カレッジ学長  吉崎 四郎君
       川崎市教育委員
       会社会教育主事  北條 秀衛君
       筑波大学教授   山本 恒夫君
       社会教育研究所
       理事長      山本 隆一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(柳川覺治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、富山県民生涯学習カレッジ学長吉崎四郎君、川崎市教育委員会社会教育主事北條秀衛君、筑波大学教授山本恒夫君、社会教育研究所理事長山本隆一君の四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様には、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。当委員会では、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案の審査を進めているところでございますが、本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 つきましては、議事の進め方でございますが、まずお手元の名簿の順序でお一人十五分程度御意見をお述べいただき、全部の参考人から御意見を伺った後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、まず吉崎参考人よりお願い申し上げます。
#3
○参考人(吉崎四郎君) 富山県民生涯学習カレッジ学長の吉崎四郎でございます。御説明は座ってやらせていただきます。
 今、私どもが取り組んでおります生涯学習行政について、あらまし御説明申し上げたいと思います。
 富山は、教育県というふうにも言われますとおり、生涯学習の声を上げましたのが大変早うございまして、既に昭和四十三年、今から二十二年前に精神開発室という部屋を教育委員会内に設けまして、当時の県民の生涯学習に取り組んでまいりました。四十九年には県民大学校講座を開設いたしまして、実際に生涯教育という言葉を使い出したのが五十一年、教育委員会の中に教育長直属の生涯教育班を設けまして、生涯学習リーダーバンク、そして学習団体の調査等をやったわけでございます。
 五年後の五十六年には、生涯教育室と生涯学習センターに機能を分けまして、室の方は企画、運営、センターの方は講座、相談そして広報を担当することにしてまいりました。同時に、知事公室にありました生涯学習推進本部を教育委員会の方に移管しまして、そこで生涯教育の推進協議会を発足させたわけであります。当時御存命でした池田弥三郎先生が会長に就任なさいました。五十八年に生涯学習ガイドブックをつくりまして、六十一年には生涯教育室と社会教育課を合同いたしまして生涯学習室をつくりました。これは行政改革の一端を担うものでございます。六十三年には、生涯学習センターを発展的に解消しまして、現在の富山県民生涯学習カレッジを創設したわけでございます。
 現在、私どもの県民カレッジでは、一つは講座の開設でございまして、現在、主催している講座が六十、連携しておるものが九十二、約九千二百人の受講生が参加しておりまして、講座を開設している日数は三百二十日間でございます。九千二百人の受講生のうち、単位取得に挑んでおられる方々が約六千二百人でございます。
 次いで、この県民カレッジは、二番目の仕事としまして種々の学習情報を県民の皆様に広く提供しております。この十月には、大型のコンピューターを導入しまして、県内のすべての図書館、公民館、そして市町村、高等教育機関と結ぶことになっております。
 それから三番目は、学習団体の援助でございまして、現在私どもが進めております県民カレッジの講座には友の会がございまして、約千人の会員がいらっしゃいます。これは友好団体としていろいろボランタリーな活動をしていただいております。このほかに全県的な生涯学習団体協議会がございまして、これは現在八千五百人の会員を擁しております。
 それから四番目に、放送講座並びに視聴覚教材の貸し出しサービス等をやっております。
 最後に、生涯学習に関する調査研究を行っておる次第でございます。
 生涯学習に対する基本的な考え方としましては、私どもが今皆さんにお伝えしておりますキーワーズというのがございまして、「いつでも どこでも だれでもなんでも好奇の心で生涯学習」、好奇というのは好奇心であります。「いつでも どこでも だれでもなんでも好奇の心で生涯学習」、これが私どもの県民カレッジのキーワーズでございます。
 生涯学習というのは、私どもの考えでは一つは学習の生涯化でございまして、そしてもう一つは学習の水平化と呼んでおります。つまり、人間勉強するのは必ずしも青少年期だけの問題ではなくて、これは一生涯にわたって学習すべきものであるし、また学習するのが幸せを得る道である。それぞれの世代にはそれぞれの世代にふさわしい学習というものがあるのではないか。こういう観点から学習の適時性ということを考えて、乳幼児期から高年期に至るすべての方々に生涯学習を呼びかけているのでございます。もう一つは、そういうふうに縦の線で見るだけではなくして、学習というものを単に学校だけに限らずに、家庭と学校、そして職場あるいは地域社会といったように平面的に横の関係で、学校だけに限らないで学習というものの領域を広めると同時に、それぞれが有機的につながり合うという、こういう観点から生涯学習を進めているわけであります。
 富山県は、御承知かと思いますけれども、高校進学率とかあるいは国立大学への進学率が十数年トップでございまして、そのくせ塾、予備校等が少なくて、しかも高校中退率が全国でびりという、こういう県でございまして、こういうところからよく教育県というふうに言われるわけでございますが、実は教育県というよりはむしろ私は生涯学習の県であると言った方がいいのではないかと思っております。一つは、公民館、図書館の設置率がトップでございますし、あるいはまた各市町村には博物館、文化会館等がほとんどございまして、よく使われております。公民館、図書館等の利用率も全国一位でございます。
 これは、かつて三百年も前、越中売薬というものを全国に流布するために寺小屋で読み書きそろばんをやりまして、実学を勉強するという地道な姿勢が今日に連なっているのではないかというふうに思っております。現在、NHKテレビで「凜凜と」という朝ドラが入っておりますが、あそこに登場するような、勤勉で好奇心があって、非常に創造的な人材が富山県にはたくさん輩出しております。これも、一つは生涯学習の成果ではないのかというふうに思っております。
 特に特筆すべきことは、生涯学習によって得た大きな資産を、成果を教育に投資する方が非常に多いことであります。例えば、日本で初めて生命保険の会社を築いて大きな財をなした安田善次郎は、東京大学に安田講堂を寄附されました。日本で初めて洋紙を開発された黒田善太郎という方は、富山大学に黒田講堂を寄附されました。あるいはまた、超近代的なホテル経営をなさっておる大谷米太郎さんは、富山短大を寄附されました。政治家の皆さんにも、松村謙三さん、正力松太郎さんといったような方々、質実で積極、真摯な方々を輩出しているのも、これは一つはこういう教育風土の生み出したものではないかというふうに思っております。
 さて、このたびの法案に対しまして私の考えを簡単に述べさしていただきますと、一つは、私どもは、特に第四条関係でございますが、官と民が一体の姿でパイロット的な、これは第五条にもかかわることでございますが、姿勢でもって生涯学習を普及しようという姿勢に対して、双手を挙げて賛成いたしたいと思います。
 私どもがやっておりますこの県民カレッジは、県立民営型でございまして、県が文化振興財団に委託をしてサービス本位の教育行政を展開しているわけであります。したがいまして、私どもには土曜も日曜もございません。ウイークデーの都合のいい日にお休みをとって、あくまでサービス本位にやっているわけであります。そして、一方では、民間でおやりになっているようなカルチャーセンター風のものは避けておりまして、現在受講生の男女の率を言いますと、男が五で女が三、五対三の割で男性が多いのでございます。カルチャーセンターのようなことをやりますと、必ず女性が多くなってまいります。この辺が県民カレッジの一つの特徴でございます。
 二番目は、教育行政を中心とした連携プレーの推進ということでございますが、私どもは、県庁の各部局との連携、市町村との連携、あるいは高等教育機関との連携、とかく縦割り行政になりがちなこのような教育上のいろんなイベントにつきましてもできるだけ連携をとって進めております。例えば講師の交渉、会場の設営、その他PR等につきまして、一切のサービスに骨身を惜しまず協力しているわけでございます。そういう点で、第三条関係に、生涯学習センターのようなものを設けて連携を進めていくという姿勢は非常に望ましいのではないかと思っております。
 最後に、この行政改革の時代に、こういうものを行政が丸抱えでやるという姿勢には私は賛成できません。行政はあくまでサービスをすべきものであって、実際には行政と学習団体と二人三脚でもって生涯学習というものを推進していった方がいいのではないか。私どもの県は、とかく実験劇場というふうな、いい意味でも悪い意味でもよく言われるわけでございますが、特にこの生涯学習の実験劇場として成功しているんじゃないかと思われるような観点から申しますと、特に学習団体と連携をする、協力して進めた方がいいのではないかと思いまして、このような観点からつくられた今度の法案に対しまして賛成の意見を申し述べた次第でございます。
 以上でございます。
#4
○委員長(柳川覺治君) 吉崎参考人、ありがとうございました。
 次に、北條参考人にお願い申し上げます。
#5
○参考人(北條秀衛君) 川崎市の教育委員会におきまして社会教育主事をしております北條と申します。
 それでは、座って意見を述べさせていただきたいと思います。
 私は、川崎市におきまして社会教育主事として約二十年間、公民館活動、青少年教育、文化行政に携わってまいりました。社会教育の現場で働く一職員として、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案についての考えを述べさせていただきたいと思います。
 まず第一に、地域における社会教育の現状がどうなっているかでございます。
 戦後四十数年、社会教育は、時代の推移とともにその形態や内容を変えつつも、それぞれの地域において脈々と行われてまいりました。公民館、図書館、博物館、スポーツ施設、文化施設、あるいは最近では社会教育センター、生涯学習センター、婦人センター等のさまざまな施設を中心としながら、それぞれの地域で地域の実情に応じいろんな工夫や努力をしながら行われてきました。そして、それらはますます隆盛になっていると言っても過言ではないだろうと思っています。まさに学習社会の到来を迎えつつあるといった感じです。これはひとえに、学習を志す人々とそのニーズにこたえるべく条件整備を行い多様な学習機会を提供してきた行政あるいは専門職員との連携によるものだろうと思います。
 例えば、私の勤務する川崎市においても、民主主義の精神にのっとり、平和と基本的人権を尊重し、より豊かで活力ある地域社会の実現を目指す、このことを基本方針としてさまざまな施策を立て事業を行っております。学習の時期は、俗に言う「揺りかごから墓場まで」でございます。今日の核家族時代の中で、子供を産むということは大変不安なことが多いものです。そんなわけで、出産を控えた人々に明日親学級、正式の名称は「明日の親のための学級」といいますけれども、このようなことを開催しましたり、それぞれ少年期、青年期、成人、高齢者と、おのおのの時期に応じて学級や講座その他のことを開設しています。
 学習内容も、初心者への導入から始まり、市民大学等かなりハイレベルなものまで多岐に分かれております。また、平和教育学級、人権尊重学級、識字学級など、人が人として生きていくのに欠かせない基本的人権の観点に立った学級もあります。地域の生活課題をメーンとした地域セミナーや、青少年地域活動促進事業などもあります。当然、学社連携の諸施策もございます。このほか、各種文化、スポーツなどの行事や講座等も数多くあります。そして、それらは市民館、図書館、青少年関係施設等の二十四の社会教育施設を中心としながらも、地域の町内会館等それぞれ身近なところへも出ていって今展開されているところでございます。
 詳細は、お配りいたしました別添の「平成二年度川崎市社会教育活動方針」をごらんいただきたいと存じます。
 また、これらは教育委員会の事業でありますが、市長部局においてもさまざまな学習活動が進められております。
 以上は川崎という大都市の実例ですが、それではほかの市町村はどうなっているかといいますと、それぞれが、あるところでは公民館活動を中心にする、あるところでは図書館の活動を中心にする、スポーツ活動や地域の文化活動などに力点を置くところもございます。それぞれが地域の住民の要求に根差した活動を繰り広げているところでございます。そして、これらは現行の法体制、教育基本法あるいは社会教育法、それらの関連の法のもとで行われてきたものであります。そして、これらの法体系の中でも、まだまだ拡大発展していく可能性を数多く秘めております。
 それでは自治体の社会教育に問題がないのかというと、そうではありません。
 まず第一に、住民の、学習する方の非常に多様な要求になかなか応じられないでいるというのが今現実であります。例えばハード面におきましては、より身近な日常生活圏へ施設を建設してほしい、こういう要望が非常に強く行政に出されてきております。また、従来よりもグレードアップした施設、これは例えて言いますれば、川崎市も例外ではありませんけれども、今までは例えばホールをつくればほとんどが多目的なホールでございます。演劇もでき、音楽もでき、集会もできるという。ただ、今望まれているのはそれらではなくて、コンサートの専用ホールが欲しい、こういうようなことが大変多く望まれておりまして、現実に多くの市町村でそれぞれコンサートホールなり演劇ホールなど目的別のホールは今建設のラッシュにあるだろうというふうに思います。また、ソフトの面では、生活課題がそれぞれ大変多様化しております。あるいは高齢化社会、情報化社会、国際化社会等に十分対応できているのかというと、そういう現実になっていない部分もあります。
 では、なぜこれらの住民要求に対応できないかといえば、一つは、週休二日制を初めとした労働時間の短縮等で非常に学習する人々がふえている、それから、今まで学習を継続して行ってきた人たちがより意欲を増しておりまして、もっとさまざまなことを学習したい、このような住民の要求がどんどん拡大している一方であるというのが現実であります。
 そして、対応できない二つ目の理由は、それだけの要求に見合う体制が行政の側からでもなかなか組み切れないということです。特に、行政改革によりまして、弱い部分ということでこの社会教育行政等の予算が年々削られ、あるいは人員も抑制されております。それぞれの現場が大変困難な状況にあります。アルバイトを雇いましたりあるいはパートを雇いましたり、あるいは過重な時間外勤務を行っている。当然サービス業務ですので朝早くから夜遅くまで施設を運営しているわけですけれども、それらが働く者に大変過重になっているというのが現在であります。
 それでは、それらを解決するために法律を改正すれば済むかといいますれば、そうではないだろうというふうに思っています。現行法の中でも、むしろ法の精神にのっとり、それをきちんと遂行する手だてを講じることの方が先だろうというふうに私は考えます。現在の社会教育法の精神等を生かすその手段をきちんととらなければ、法律をつくったとしてもそれは絵にかいたもちにしかすぎないだろうというふうに思っています。まず、現行法の実現を困難にしている部分を解決させることが先決だろうというふうに思っています。
 次に、それではそれぞれの自治体がどのような観点から社会教育行政を行ってきているかと申しますれば、それは人々の自発的な学習の意思を公的にどう保障するかということです。確かに、カルチャーセンターや英語学校等の各種学校、民間スポーツクラブなど、民間における教育産業もどんどんふえております。しかし、そのような観点の中で、公的社会教育の果たす役割が一体何なのかということも常日ごろ議論になっていることは事実であります。しかし、教育の機会均等、いつでもどこでもだれでも、このようなことを保障できるのは、やはり公的な社会教育を除いてはあり得ないだろうというふうに思います。むしろ、学習権の考えがユネスコを中心に世界においてもあるいはこの日本においても定着しつつある現在、どんなに民間教育産業が栄えても、いやむしろ栄えれば栄えるほど公的社会教育の理念と責任は重要視されなければならないというふうに思っています。そういう意味でも、先ほど申し上げたそれぞれの社会教育の現場が現在抱えている諸問題を解決し、公的社会教育を充実するという観点でより各種の施策が講じられることを思っております。
 次に、今回提案されています法案に対して、幾つかの問題点を現場からの目で指摘させていただきたいと思います。
 第一には、生涯学習の定義がないということでございます。日本で最初の生涯学習にかかわる法案ですので、ぜひきちんとした定義を盛り込んで考え方を統一してほしいと思います。国やあるいは県や市町村段階でそれぞれの考え方に差が出てくる、このようなことが十分予想されます。そして、そのことによっていろんな混乱が起きるもとになるんじゃないでしょうか。
 次に、これまでの社会教育行政は、環境を醸成するという条件整備が本来の任務でございました。この法案では、都道府県、これも従来は都道府県の教育委員会等ということでありましたけれども、今回は都道府県ということになっておりますが、基本構想を作成し、なおかつ文部大臣及び通産大臣の承認を申請することになっています。これは条件整備ではなくて、逆の指導行政への転換ではないでしょうか。教育基本法の理念及び社会教育法に矛盾するように思われてなりません。
 第三に、都道府県教育委員会の事業は定められていますが、私ども市町村の事業は定められておりません。これは一体どういうことなのでしょうか。また、特定地区の指定は広域圏構想であり、市町村という学習者が日常生活するその単位としての場が、最も基本的な場が崩壊してしまう危険性もあります。
 第四に、民間事業者の活用が義務づけられていますが、このことはどうしても理解できません。芸術文化振興基金、先日できましたけれども、あるいは今構想に上っておりますスポーツ振興基金などは、その是非はともかくとしても、一定理解することはできます。ただし、これまで厳然と一線を画してきた民間教育産業や民間事業者と混然一体となって生涯学習を行っていくということは、行政としてどうとらえていいのか判断に苦しんでおります。また、営利性との絡みもあり、なかなか理解ができません。
 最後に、学習権との関連で申し上げます。一九八五年にユネスコにおいて、学習権をすべての人に保障することが採択されています。生涯学習は、恵まれた者に対する施策のみでなく、むしろ社会的な弱者の学ぶ機会を確保することが公共的な教育にとっては不可欠なことではないでしょうか。民間活力の重視が公的な社会教育あるいは生涯学習を縮小することにならないか、そのことが大変大きな危惧となっております。
 私たち社会教育の現場で働く職員は、お互いの情報交換や研究、あるいはそれぞれの地域で行われています実態についての調査等を行うために、職員集団を組織しております。その中で、大学の研究者の先生方のお力もかりながら社会教育に対する一つの提言をまとめました。その前文で学習権についての考えをまとめましたので、朗読させていただきたいと思います。
  人は、誰しも太陽の光に浴し、きれいな空気を吸い、冷たい水を飲みたいと思う。それは、人間として当然の欲求であり、権利である。では「学ぶ」ということについてはどうであろうか。「学ぶ」ということもまた太陽の光や空気や水のように、人が人らしく生きるためになくてはならない要求であり、権利である。
  そしてそれは、老若男女、心身の障害の有無、人種の如何を問わず、権利は万人のものであり、差別されてはならない。
  また、地域においてこそ学習権が保障されねばならず、そのことが私たちの暮らしを豊かにし、子どもたちとともに成長発達するとともに、主権者としての力量を発揮し、さらに広く世界の人々と手を組んで平和のうちに生存することにつながる。
  住民の学習・文化・スポーツの権利は社会教育の権利である。したがって、権利としての社会教育が、自由かつ濶達に保障されることなしに、住民の住民の手による住民自治の確立はありえない。
 最後になりましたが、社会教育の現場から、この生涯学習法案の慎重な審議を強く望みたいというふうに思います。学習者やあるいは我々行政の職員に混乱をもたらすような法律ではない、私どもが生きがいを持って働ける、真に日本の生涯学習の振興の糧となり、だれもがその法律をよりどころとできるような法律、ぜひそういうような法律に変えていただいて作成していただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。
#6
○委員長(柳川覺治君) 北條参考人、ありがとうございました。
 次に、山本恒夫参考人にお願い申し上げます。
#7
○参考人(山本恒夫君) 筑波大学の山本でございます。教育学系に属しておりまして、生涯学習論、社会教育学等の講義を担当しております。よろしくお願いいたします。座って失礼させていただきます。
 それでは、私の意見を述べさせていただきます。
 私は、最近の国民の生涯学習への関心の高まりとか、あるいは学習活動の活発化というような状況を見まして、今回のこのような法律がつくられることにつきましては賛成でございます。その理由を申し述べてみたいと思います。
 その一つは、国民の学習要求と学習活動が多様化してきておりまして、それへの対応が必要になってきているということでございます。
 昭和六十三年に、NHKの放送文化調査研究所が日本人の学習関心調査というのを行っております。これは二十歳から七十九歳の国民を対象にするものでございます。それによりますと、学習率は四五%でございました。その報告によりますと、一%が約八十五万人と計算しているようでございますので、日本人で学習をしている二十から七十九歳の方というのは約三千八百万人と推計されます。もちろんサンプリング誤差がありますからぴたっとした数字ではありませんが、大体そのぐらいと推定されます。その調査を見ておりますと、学習が非常に多様化してきております。
 一つは、学習内容の多様化でございます。人気のありますのは、例えばお花とかゴルフとか編み物等々ですが、そういう人気のあるものでも学習率は二、三%ぐらい。二、三%ということは、百人いると二、三人しかいないということでございます。学習率が低いように見えますが、そうではありませんで、そういう項目が非常に多くて、その調査だけでも約三百項目以上に分散しているというような状況でございます。そういう状況をとらえて多様化と呼んでいるわけでございます。
 それからもう一つは、それだけではなくて、学習方法面でも多様化してきております。その調査の場合には学習方法をいろいろ挙げておりますが、十九種類にも分散しております。それを見ますと、個人で学習する者が非常に多くなっております。例えば、本、雑誌というようなもので勉強している人、これが三割、テレビが一七・一%とか、新聞、テープ、レコード、社会通信教育、ラジオ、ビデオ等々、これは個人で勉強するものでございますが、そういう個人学習の手段、方法、形態が非常に多くなってきておりまして、それを合計しますと六三・六%でございます。それから二番目がグループ、サークルによるものでございます。趣味、スポーツ等、グループ、サークル、クラブをつくって皆さんいろいろ活動をなさっておりますが、それが二六・三%、その次が学級、講座、あるいはセミナー、講習会等でございまして、内訳はカルチャーセンターが一一・七%、公的な学級、講座が八・八%でございます。合わせて二〇・五%。ただし、カルチャーセンターは、カルチャーセンター等で民間のセミナー、講習会が入っております。それから四番目が個人教授でございまして、これが一一・二%、一割ということでございます。合わせると一〇〇%を超えますが、これは一人で二つの手段、方法をとっている人もいますのでそうなります。
 こういう状況を見ておりますと、従来の体制では対応できないものが非常に多くなってきております。例えば、先ほどの民間のカルチャーセンター、あるいはセミナー、講習会、専修学校、各種学校とか一般行政の事業などでございますが、そういう関係のものが多くなってまいりました。また、それで学習している人がふえてきますと、従来の社会教育の側だけではうまくその辺との連絡調整等々ができないというようなことが起こってくるわけでございます。それが一点でございます。つまり、そういうことのためにそれに対する対応が必要だということでございます。
 それから二番目は、学習要求が強くても学習できないでいる人々がおりまして、その人々への対応が必要でございます。今申し上げましたNHKの調査によりますと、具体的に学習したいことがあるという方は五八・五%、すぐにでも学習してみたいと思うことがある人は五八・五%でございます。もちろん、今学習している人も入っております。先ほどの学習している人という四五%を引いて計算いたしますと、単純に見ましても約千百七十万人の人が学習したいけれども学習できないでいるという状況でございます。誤差がありますから、まあ一千万人ぐらいと見てもいいわけでございますが、そういう方々が学習したくても学習できない。理由は、忙しいとか、あるいは費用がかかるとか、身近なところに施設がないとか、講座等々の時間、時期が適当でないとかいろいろあるわけでございます。
 それで、その学習希望を持っている方々の学習方法、形態等についての希望を見てみますと、一番今国民が関心を持っておりますのは、カルチャーセンター、セミナー、講習会でございます。これを希望する人が二六・五%でございます。その次が本、雑誌等でございまして、二六・〇%でございます。第三位がグループ、サークルで二四・八%、第四位がテレビで二〇・九%、第五位は個人教授で一二・八%、第六位が知り合いと一緒にで一二・五%、学級、講座は第七位でございまして、一一・四%でございます。これは公的な学級、講座でございます。
 こういう状況になっておりまして、国民の学習に対する関心とか要求というものを生かしていくとすれば、やはりまたここでこれへの対応が必要になってくるわけでございます。そういう状況に対応していくためには、どうしても生涯学習推進体制の整備というのが必要になってくるのではないか。しかし、それに対する法的な裏づけが今のところございません。そういう推進体制の整備ということを強力に進めていくためには、やはり推進体制等の整備に関する法律が必要ではないかと考えている次第でございます。
 次に、それでは具体的に生涯学習を振興する上での課題につきまして申し述べてみたいと思います。
 まず第一は、今のような学習活動とか学習要求の多様化というのがあるわけでございますが、それに対応していくためには、よく言われておりますように学校教育、社会教育あるいは文化活動等々の有機的連携が大変重要になってくると思います。多様化しました実態というのをよく直視しまして、生涯学習関連施策とか施設が連携、協力してそれらの対応策を打ち出す必要があると考えるわけでございます。
 それにつきましては、例えば具体的に言いますと、学習者が自分で自分の興味、関心に合わせていろいろな手段、方法を選んで自分のメニューをつくっていくというような学習メニュー方式というのを最近打ち出しているのでございますけれども、その場合には学習者に選んでいただくメニューをつくる必要がございます。このためには、先ほど申し上げましたいろいろなところが連携をしなければなりませんで、その連携があって初めて学習者が自分の興味、関心を生かした学習をしていくことができるということになるわけでございます。ですから、どうしてもその辺の連携が重要になってくるというわけでございます。それが大きな課題の一つでございます。
 第二番目としましては、行政の役割としまして、国とか都道府県、市町村の推進体制の整備が重要な課題としてやはりあると思います。特に、生涯学習推進についてのいろいろな調査をしたり審議する機関の設置が望まれると私は考えております。今回の法案ですと生涯学習審議会というのが入っておりますが、それらがそういうことになるかと思います。
 こういう調査、審議する機関というのはどうして必要かといいますと、第一に挙げました連携、協力のあり方を検討してその方向を打ち出すということをどこかでやらなければならないからでございます。それが一点でございます。
 それから、当然のことでありますけれども、生涯学習については、これは広く社会教育だけではなく学校もあるいは他の行政機関も民間機関も学習者も含めて、何かの審議する機関をつくり、そこで調査、審議する必要があるというふうに考えるからでございます。従来からの審議機関ですと、今のような幅広い層を含めることはちょっと不可能なのではないかと考えてそのようなことを申し上げるわけでございます。それが二番目でございます。
 第三番目の重要な課題としましては、地域における生涯学習の振興のためには、都道府県がさらに市町村支援の役割を強化する必要があると考えております。これも大きな課題と思っております。
 学習活動、学習要求の多様化ということに対しましては、一つの市町村で対応できないことが多くなってきております。当然、広域サービスが必要となってきていると思うのであります。例を挙げますと、例えば学習情報の提供ということを最近は言うのでありますが、学習者とか学習希望者が求めているのは、広域の学習情報でございます。自分の住んでいる市町村だけではなくて、隣近所あるいは時には遠く離れたところの情報まで求めております。そういう需要に対応するためには、やはり都道府県レベルの市町村支援の役割を強化する必要があるのではないかと考えております。
 それから第四でございますが、第四の課題としましては、公的機関、施設の生涯学習支援のことは当然でありますけれども、それの強化をしなければならないのは当たり前でありますが、さらに民間教育事業の役割を拡大することも重要ではないかと思っております。先ほど言いましたように、カルチャーセンター等民間のセミナー、講習会等で学習したい人というのは非常に多いわけでございます。これにどう対応していくのかということも考えなければなりません。
 それからもう一つは、生涯学習における地域格差の拡大を防ぐ必要がございます。これは生涯学習の振興が言われたときからあちこちで指摘がなされておるわけですが、どうしても条件のいいところが充実されてきまして、条件の悪い地域はそのまま取り残されるということになりかねない。具体的に言いますと、大都市というのは人々の方からしますと学習機会に恵まれているわけでございます。小都市あるいは町村に行きますと非常にそういう点では恵まれないということがございますので、その格差を防ぐということのために私は民間教育事業の役割を拡大する必要があろうかと思っております。
 民間教育事業が公的機関、施設と協力して役割分担をしていく、なるべく地域格差を生じないようにしていくということがあってもよいのではないか。もちろんその場合には営利に走っては困るわけですから、今回の法案を見ますとその点のチェックがなされているようですので、そういうチェックをしながら民間の教育事業等々にも一役担っていただいていいんではないか。学校でも公立の学校と私立の学校があるわけでございますから、もっと入っていただいていいんではないかということでございます。それは、今回の法案ですと地域生涯学習振興基本構想ということになっておりますが、その点について私は賛成でございます。
 以上四点、課題という点を挙げてみたのですが、最後に、生涯学習振興への期待を申し述べて終わりたいと思います。
 生涯学習の振興というのは、漸進的アプローチで進めていただきたいと思っております。これは、生涯教育の考え方が日本でいろいろ検討されるようになったときから言われていることでありますが、一歩一歩充実を図っていく、そのためには地味でも結構ですから基盤をしっかりつくるところから始めていただきたいというふうに考えております。この法案はそのような第一歩であろうかと思っておりますが、この法案がすべて生涯学習を振興するときのいろいろな条件を整備するというものではないと私は考えておりまして、第一歩であろう。したがいまして、今後、次々と生涯学習振興方策が打ち出されてくることを期待いたしております。
 以上でございます。
#8
○委員長(柳川覺治君) 山本恒夫参考人、ありがとうございました。
 次に、山本隆一参考人にお願い申し上げます。
#9
○参考人(山本隆一君) 私は、大阪で、学者あるいは文化人、あるいは社会教育、公民館の現場の職員の皆さん、それから一般の市民の方々有志でこの社会教育研究所を構成しながら、社会教育の発展のために努力をしている役割を担っております山本でございます。現職場は大阪府立城東老人ホームの施設長という役割も果たしております。そういう観点から意見を申し上げていきたいというふうに思います。意見は座って失礼ですが、よろしくお願いをしたいと思います。
 私は、この法案が持つ主な内容として、学校教育あるいは社会教育、それから職業教育、文化活動とあわせまして、民間事業者の行う文化教育事業を包括的にとらえ、そしてその包括的にとらえたものを生涯学習として位置づけられているという理解をしているものであります。また、その推進を図るための方法がこの法案によって提起されている、それ以外の何物でもないのではないかというふうに判断をしているものです。それは、まずこの法案の中で生涯学習についての理念や目的が欠落している。そういうものが全く見受けられないという点では、甚だ法案としても、国民の側から受けとめることでは非常に混乱を来すものになるのではないかという判断をいたしております。
 また、この生涯学習を進めるための体制整備に対する国あるいは都道府県主導型という、これが主体的になる整備の体制づくりについてでありますけれども、このことがこの法案の中心となっているのではないか。しかし、この体制の整備と設置される審議会によって統合整備されていくことが、私たちが最も危惧をする問題をはらんでくるのではないか、このように考えております。
 その危惧の一つは、憲法やあるいは教育基本法、社会教育法が戦後一貫してきょうまで現場の職員の皆さん方に支えられながら、市民あるいは地域の住民の方々の共感と合意を求めながら、社会教育活動や運動が積み重ねられてまいりました。具体的に何点かを申し上げて御理解を賜りたいと思うわけでありますけれども、一つは、憲法にありますひとしく国民が教育を受ける権利、このことがこの法案の中に盛り込まれております民間事業者の導入による有料化、これをまず危惧するものであります。ここから心配されるのは、教育そのものが営利事業化の影響を受けるのではないか、そこから社会的に弱者と言われている人たちが排除されるおそれも生まれるのではないか、こういう点をまず危惧するものであります。
 次に、法案の中で盛り込まれております、国、都道府県が主導的にこの役割を果たして、その実施団体あるいは広域性の中で市町村の自治という主体性が薄められていくことを二番目に危惧をするものであります。法案の中でも挙げられておりますように、特に市町村が協力を要請をされる、特に教育の立場から見ますと、市町村教委そのものの協力の体制あるいは位置づけが全く不明確になっている。そこから、地方自治の確立のために社会教育が住民とともに歩んできた、こういう積み上がってきたものを根底から揺さぶられていくような危惧を私は持つものであります。
 特に三番目に、教育基本法にあります教育の中立性あるいは非営利性、そういったものと、不当な支配に服することのない教育の確立、この辺のところから見まして、民間事業者の導入、あるいは国、都道府県の主導型による影響から、これまでの社会教育の行政あるいは住民の社会教育の活動が大きな影響を受けるのではないか、教育分野の権限が弱まり、行政首長の権限が強化されるという教育軽視の方向が生まれるのではないか、このことを危惧するものであります。
 四つ目に、社会教育法にあります社会教育関係団体は公の支配に属さないものをという定義づけがありますけれども、この法案の中で行政に組み入れられるようなそういう仕組みがうたわれておることをまず危惧をし、官民一体化ということで社会教育あるいは生涯教育体制を形づくり生涯教育を推し進めるというこのことが、社会教育法に言われている公の支配に属していくといいますか組み込まれていくことを危惧するものであります。社会教育関係団体の主体性があるからこそ民主的な社会教育がこれまで積み上がり、あるいは発展をしてきたのではないか、このように考えております。
 次は、基本構想あるいは実施の組織、これを見ますと、基本構想が国あるいは都道府県の基本構想の範囲の中におさめられていく。そういう中では、これまで自由に社会教育を、独自性を発揮し、そして専門性を発揮し、社会教育職員集団の役割が重要視され、住民の自治と参加、これが大切にされ、下からの組織づくりや計画づくりが大切にされてきた、このことが軽視をされていく方向に陥るのではないか。同時に、これまでの社会教育の法律の中でうたわれておりました環境醸成、いわゆる条件整備の面で、ハードな面になりますけれども、施設の充実あるいは職員の体制の確立、充実、そういったところが全くこの法案の中では、生涯学習を振興する上で最も重要だと考えられる面のこの部分が欠落をしているのではないか、このように危惧をするものであります。
 特に、教育行政が持つ独自性あるいは非営利性、それによって数多くの恵まれていない市民の方々の学習の場として保障されてきたそのものが崩れていくような、そういうおそれを抱くものであります。推進体制の整備というそういう統合化、こういうことでは必然的にこれまでの民主的につくり出されたものを排除されるようなそういう危険性を感じるという、そういうことを御指摘申し上げておきたいというふうに思います。
 最後になりますけれども、きょうまで社会教育あるいは公民館の事業、計画を推進してこられました社会教育委員あるいは公民館の運営審議会委員、これらの方々の役割と、それから改めてこの法案の中で盛り込まれております審議会の方々の役割とが非常に混乱をし、将来、生涯学習の確立の分野でさえ混乱を来すのではないか、このように考えております。それは、これまで社教委員は教育計画を教育委員会に住民の立場から反映をさせてこられた。公民館運営審議会委員の方々は、公民館で行われる住民主体の事業の企画や実施について住民の立場での意見を持ち続けられ反映をされてこられた。このことが都道府県主体の審議会の手にゆだねられていく、地域性が失われ住民の手から離されていくような、そういうものになりはしないかという危惧を抱くものであります。
 特に最後に申し上げておきたいのは、今なぜこういう生涯教育の振興に対する推進体制を急いで整備しなければならないのか、そういうことを考えてみますと、二十一世紀を展望しながら、これから本格化する高齢化社会あるいは日本の国民全体の国際化、そういったものを根底に据えながら、もっと大きな視野に立つ教育百年の計画を展望できるような、そういう生涯教育の発展を目指す法案を本当にこれからつくり上げていくということが大切ではないか。これこそが国家百年の計に結びつく生涯計画の中身に結びつくのではないか。これまで積み上げてこられた社会教育の現場、あるいは住民の社会教育運動あるいは活動、そういったものをさらに発展させる、そういうことに結びつけられる、そういう法案にぜひしていただきたいと思います。私は、そういう意味からこの法案の中身には賛成しがたいという考え方を持っております。
 あわせまして、現在、法体系が社会教育を中心にありますけれども、その法体制のもとでも生涯学習の形態が保障され得る、そういうことが東京都を初め川崎あるいは長野、京都、各地方においても生涯学習の計画を持ち、具体的に取り組みが進められている、そういう体制を補助しながら強化をし援助をする、そういう中身をぜひ法案を作成する中身に入れていただいて、先ほど申し上げましたハード面あるいはソフト面において、両面ともに確立を目指すような、そういう中身にぜひしていただいきたいと思います。
 以上です。
#10
○委員長(柳川覺治君) 山本隆一参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見聴取を終わりました。
 これより質疑を行います。
 なお、参考人の皆様に申し上げます。各委員の質疑時間が限られておりますので、恐れ入りますが、お答えはできるだけ簡潔にお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○森暢子君 四人の参考人の方々、大変貴重な御意見をありがとうございました。いろんな御意見がありましたのですけれども、私お話を聞いておりまして、ますますこの生涯学習振興法という法案は本当に急いではいけない、たくさんの問題点を抱えている、やはりもっともっと国家百年の計ということから考えまして教育というのは慎重に考えていかなければならないということで、最後の山本隆一さんがおっしゃいましたが、なぜ急ぐのかというその気持ちを深く持ったところでございます。
 それぞれに、きょうの内容も初めてお聞きしましたので、その中でいろいろと感じましたところをまずお尋ねしたいと思います。
 まず、吉崎参考人の方に、生涯学習の基本的な考え方として、いつでもどこでもだれでも何でも好奇を持った心でというふうな、大変すばらしいお考えをお持ちで進めていらっしゃるということなんですが、このいつでもどこでもだれでも何でもというのがこの法案で保障されますかどうか、そこをお聞きしたいというふうに思います。
#12
○参考人(吉崎四郎君) いつでもどこでもだれでも何でも好奇の心で生涯学習というのは、先ほども申しましたとおりキャッチフレーズでございまして、これは一つの私どもの理想といいますか、こういう形で進めたいという願いを込めた文句でございます。
 今回のこの法律案は、百点満点というふうな考え方からいけば少し足らないところがあるかもしれません。しかし、このような法案が今できたということについては、私どもが少し先走ってやっております生涯学習の一つの運動を推進している立場からいいますと、むしろ遅きに失しているというふうな感じさえするわけでございます。今、日本列島に押し寄せております国際化、情報化、あるいはまた高齢化といったような大きなメガトレンドの中で、どんどんかつての知識というものが陳腐化していく。そういう中で、私たちはどんなに戸惑っているのかということを考えますと、できるだけ早い機会に生涯学習の基盤整備をするということは、これは行政の責任ではないかというふうに思います。
 そしてまた、このようなものはある意味での先導的な役割を果たすということが大切なのであって、今至らざる点だけを取り出して、こういう点が物足りないとかと言っているような場合ではないんじゃないか。我々がこれからこの法案をさらによいものにしていくという、こういう前向きの姿勢が大切なのではないかというふうに思います。この法案がこのままで完結するものだと私は考えておりませんし、これが出ることによってたくさんの意見がまた出てまいります。世の中は動きつつあるわけでございますので、いよいよ情勢にマッチするような方向で前向きに協力してまいりたいものだというふうに思っております。
#13
○森暢子君 富山県は大変教育県だということで、教育行政、教育委員会が大変しっかりしていらっしゃるので、そういうふうな取り組みが今までにできたと思うんですけれども、財政の面でも一括して財政が県におりてまいりますから、その中で生涯学習もしろ、何もかもしろといった場合に、県の教育委員会の姿勢によって、そういうところに力を入れられない県もあるかもわからないというふうなことを思うわけです。
 というのは、法案化に際して、国の機関が地方公共団体にどのような一般財源を持っているかということを調べてみましたら、職員もふえてもいない。これをするには必ず人が要るし、場所が要るし、それを調べて前回に質問しようと思って用意していたんですが、その中に財源が積算されていないんですね、人も何も。そういう中で本当にできるんだろうかということなんですね。それを大変心配しまして、審議会の構成とかメンバーを何人にするとか、地方交付税を中にどのように積算しているかというのが入ってないんですね。それで、富山県のように、では生涯学習を強力にやりましょうという県は、それはほかから取ってきていただけるかもわかりませんけれども、そういう面から見ても大変心配だなということを感じます。
 それでは、北條参考人にお伺いいたします。
 川崎市で大変社会教育ということで進んだいろんな体制がとられていて、住民を中心にすばらしい取り組みがなされていると思うわけです。ここのを見せていただきましたら、平成二年度川崎市社会教育活動方針、その中の基本方針には、「民主主義の精神にのっとり、平和と基本的人権を尊重し、より豊かで活力ある地域社会の実現を目指す」、大変すばらしい定義がここにあるわけですね。それが今回の生涯学習法案の中にないということは何人かの方が指摘なさったわけですけれども、これを中心にしてきちっと社会教育というものを今までに進められてきたと。そこに今回生涯学習というものが入ってきますと、今まで社会教育でやっているではないか、ではその関連はどうなるのかということを大変心配するわけですが、そのあたり北條さん、御意見がございましたらお願いしたいと思います。
#14
○参考人(北條秀衛君) まず、今御指摘いただきました川崎市の基本方針につきましては、これは私ども行政が勝手に決めたものではございません。これは私どもの社会教育委員会、これは既にいろんな立場の人を入れなさいという、こういうきちんと社会教育法で決められた委員会でございますけれども、それらの委員の方々が集まって決めた一つの定義でございます。そういう意味では、今回の国の出された法案につきましても定義というものが出てこない。やはり先ほどなぜ急ぐのかというのがありましたけれども、まずその辺をきちんと議論をしていかなければいけないんじゃないか。私も、生涯学習が振興することについては決して反対するものではありません。
 ただ、先ほど私の事業の中で、市長部局でもいろんなものが行われているというふうに申しました。国においても、労働省、厚生省、通産省その他、いろんなところで行われているだろうというふうに思っています。あるいは民間でも行われておりますけれども、そういうものの統合した考え方、ライフロング・インテグレート・エデュケーションというのがイギリスの生涯学習に対する考え方だそうです。そういう意味で、生涯学習というのはもう少し統合的なきちんとした考えを持たなきゃいけないんじゃないか。それじゃないと、この法案ではそれがないわけですね、ですから一体何を指しているのか。私どもこれに述べられていますのは、これは社会教育法あるいは今の教育基本法にのっとって十分できるものだというふうに思うわけでございます。ですので、先ほどお話がありました財源の問題、人の問題等をきちっと配置していただけるならば、より充実したものができていく。そして生涯学習の観点で思いますれば、例えば学歴偏重が言われています学校教育の問題あるいは学習権としての社会教育の問題、そしてその他で行われているいろんな教育の問題、それらを統合して一つの体系化をしていく、そのことがやはり国に求められていることではないかというふうに強く思っているわけでございます。そういう意味で、ぜひそういうものの体系化なりをきちんとつくっていただきたい。
 それと同時に、その中には民間という言葉がありましたけれども、やはり公的なものとしての保障。例えば私どもで行っております学習の場には大変女性の方の参加が多うございます。昔は、お子さんがおりますと学習に参加できないというようなことも多々ありました。最近は、それぞれのお母様方の強い要望により、ほとんどの施設に保育室を設けてございます。ただ、残念ながら保育を公的に行うというところまでは至っておりませんけれども、その中で学習する人たちが今度は保育について学習して、自分たちで相互に学習に来たお母様方のお子さんを保育室でお互いが見る、そしてそのための勉強もしていく、こういうような形が今とられているわけでございます。そういう意味で、私どもは、そういうお子さんがあっても学べる、あるいはいろんな社会的に弱い立場の人でも学べる、そういう公的なものというのをきちっと保障していかないと、どうしても今の大きな流れの中でそれらが埋没してしまう、そのように考えておりまして、その辺のことまで含めてきちっと保障できる法案というものをぜひ作成していくべきじゃないか、そのように考えております。
 以上でございます。
#15
○森暢子君 今ちょっと女性の問題も出ましたので、続いて女性と生涯学習との関連ということで御意見をお聞きしたいんです。
 前の方は、吉崎参考人でしたか、男性が五で女性が三、これはカルチャーにすると女性の方がふえるというふうなことでございました。しかし、文部省のをいろいろ見ておりましたら、いろんな女性の施設があるんですけれども、全部それが婦人という名前になっているわけですね。それで、婦人か女性かというのを言っていますとまた長くなりますけれども、しかし婦人というのは、御存じのように結婚して子供もおる、そういう方を大体指す。ところが、女性というのは若い女性もオールすべての女性を指すということになりますと、生涯学習ということは本当に小さいころからお年寄りまでとなると、女性という総称で呼んでいただきたいと思うわけです。ところが、女性は大変今御存じのように学習欲、要求が強まっておりまして、私も生涯学習ということは必要だと思いますし、生涯学習するということは生きることにつながりますので、大切だと思います。
 ところが、女性が本当に学習する機会が保障されているかどうかということを考えますと、大変だと思うんです。多くの女性は家庭責任をほとんど持っております。家事、育児を持って、職場へ出たら男女平等に働かなきゃいけないわけです。そういう中で、まだまだボランティアに参加したりとか、公的福祉や、家に帰ったら教育は母親任せという中で大変な重荷を負いながら、まだまだ職業能力の開発をしたいとか、私はもっと勉強して小説も書きたいとか、水泳をしたいとか、いろんな要求を持っておる。ところが、その人たちが行くためには、働いている女性が行くためには、やはり教育休暇制度であるとか、それから今北條さんがおっしゃいましたように、そこに学びに行ったときにちゃんと保育室があるかどうかというふうなことや、夫の理解があるとか家族の理解があるとか、いろんなものがなければ女性がそういう生涯学習に参加できないのが今現状なんです。
 そういうのをこの法案では、それは女性にも生涯学習してもらいましょう、そしてそれを今度は社会に還元してそれを評価してもらいましょうとかいうことを言っておりますけれども、実際それができるかどうかということをもっと分析していただきたいと思うんです。
 北條さんにもう一度お聞きいたしますが、つまり女性とかそれから高齢者ですね。もう一つ言わしていただきますと、高齢者ははっきり申しまして女性がほとんどだと思うんですね。男の方の方が先に亡くなりますので、残るのは女性ということになりますと、この高齢者の生涯学習というのは女性が八割ぐらいではないかと、こう思うわけです。統計によりますとそうなっておりますので、ごめんなさい、私が勝手に決めたんではないんですけれども。そうなりますと、その高齢者の女性、そういう人たちの生涯学習との関連ですね。つまり、近いところでないと行けませんね。近いところで、そして手軽に行けて、そこへ行けば学べる、市町村段階でそういう施設ができないと、大都市周辺に大きなビルを建てて、さあカルチャーです、スポーツですといったって、それは事実行けないんですね。だから女性とか高齢者の問題、それからもう一つは障害者ですね。障害者の方の学習権の保障というのは大事だと思います。
 岡山の例を出して悪いんですけれども、岡山県で県立図書館をつくるということまではよかったんですが、そこに公文書の保存をするビルを建てて、その七階から上を県立図書館にするというんですね。それで今図書館関係の人が猛反対しております。七階から上に図書館を建てて、だれがどのようにそれを広く利用できるかということにつながってくるわけですね。障害者の方は大変ですし、お年寄りも大変です。何かあったときにすぐ避難するということもできないわけですね。
 そういう障害者のこと、それからことしは国際識字年であるという、勉強したくてもできなかった人たちにどのように保障するかということ、それから外国人労働者の人たち、それから帰国してきた子供たちの学習権とか、中国残留孤児の学習権とか、そういう世の中で弱い立場にある人たちの学習権をどのように保障していくかということがこの学習については一番大事なんではないかというふうに思います。
 そういうことについて、北條さん、ひとつ一言お願いしたいと思います。
#16
○参考人(北條秀衛君) 今、森委員の方から、女性あるいは高齢者、障害者、それから外国人あるいは識字教育等、どのような形でそういう社会的な弱者と一般的に呼ばれている者に対して保障をしていくのか、川崎の現状を申し上げたいというふうに思います。
 まず、女性が学ぶということについては、大変多くの要求が当然寄せられてきております。実際に、先ほど富山県の方ではカルチャー化すると女性がふえるという話がありましたけれども、私どもではむしろ現在既に六五%ぐらいの女性の参加がありますけれども、カルチャーというよりも、やはり生活の課題というものの追求が大変多くなってきております。
 例えば、今ちょうど募集しておりますけれども、こういうものがあります。ごみ箱の中から地球が見える、これは御多分に漏れず、ごみが非常に多い、あるいはリサイクルの問題等が起きてくる。それらの問題に地域として、生活課題としてどうとらえていくのか、その辺のことを企画委員としてのそういう女性の参加の方々のアイデアの中から、今そういう問題での学習活動が始まろうとしております。あるいは、一定の子育てを終えて社会にカムバックしたい、そのときの職業能力の開発等につきましての要望も現在は数多く寄せられつつあります。
 ただ、残念ながら現在の法体系の中では、職業能力の開発については労働省という形になっております。その中でも、私どもはいろいろな苦労をしながら学級、講座等を持つわけですけれども、本来ならば、やはりそういうものがこれだけ多く要求されてくる中では、先ほど申しました統合的にきちっとどこかでとらえられる、そういう場が必要なんじゃないかというふうに思っております。
 決して、女性の問題は教育委員会だけの問題に限らないだろうというふうに思っております。私どもの市にも女性事業推進対策室というのが、前は「婦人」だったんですけれども、最近「女性」に変わりましてことしの四月からできておりまして、その中でも、社会教育というよりも一緒に連携をしていく、そしてその連携の道筋を探っていく、やはりそういうことが今後非常に重要になってくるだろうというふうに思っております。
 次に、高齢者の問題ですけれども、高齢者の学級もシルバー大学とか寿大学とか老人大学とか、いろんな名称をつけて高齢者が生きるためのいろいろな学習ということもやりました。高齢者にとっての病気との問題あるいは宗教との問題、これは高齢者そのものに限っての学習が多かったんですけれども、最近の要求はそうではありません。やはり地域の中で、あるいは家庭の中で高齢者がどう生きていけるのか。例えば、学校に出かけていきまして、昔の子供時代やったいろんな遊びを教えるとか、それは学社連携の中で今大変川崎の場合、はやっているという言い方はおかしいですけれども、いろんなところで今行われている。
 そして、そのことを高齢者の教室の中で学んでいきたい。今の子供は何を考えているんだ、そういうことを高齢者の教室で学んでいく。あるいは地域においてのいろいろな諸問題。例えば、高齢者にとってこの地域は住みよいかどうか、高齢者マップみたいなものを自分たちでつくっている学級、講座もあります。ここにはこういう福祉施設がある、ここにはこういう学習施設がある、あるいはここではこういう買い物ができるとか、いろんな問題をつくりながら自分たちで学びながらそういうものをやる。そういうふうに、生きるということの中で高齢者も今さまざまな学習活動を行ってきている問題もあります。
 それから、障害者につきましては、特に障害を持つ青年の養護学校なり、養護学校を卒業した後のアフターケアというのが、残念ながら今の学校教育では十分とは言えないだろうというふうに思っています。それらの方々が集まってレクリエーションをしたり、あるいはいろんなことを学んだりという場のための教室をいろいろ持っております。あるいは、そういう教室を運営していくための障害者の青年教室のスタッフを募集という、ですからそれも自分たちで学びながら自分たちで運営していく、そういう募集事業も今行っているところでございます。
   〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
 それから、ちょっと長くなりましたけれども、識字年ということもありますので、その辺の観点、特に外国人の問題あるいは識字年のことで若干述べさしていただきたいと思います。
 川崎市では、昭和五十七年度から社会人学級という学級を行っております。ちょっと聞きなれない言葉だと思いますけれども、これは社会人に対しての基礎学力、特に川崎の場合在日の朝鮮・韓国人も大変多数おります。あるいは、先ほど御指摘ありました外国からの労働者も多数おります。そのような問題の中から、社会人学級というものを開設しております。特に、日本に何十年も住んで日本語を学ぶ機会がなかったという在日の方々からは大変高い評価を受けますし、あるいは出席も大変ようございます。年齢的には、それこそ学齢を通り越して六十、七十を過ぎて日本語を学んでいるという方も大変多いわけでございます。昨年の例ですと、その学級には三十五名の方々が参加しております。そして、そのうち二十二名は外国人でございます。今申し上げましたように、在日の朝鮮・韓国人を初めエジプト人、ブラジル人あるいはニカラグア、台湾、いろんな国の方が参加をしている学級がございます。そして、その中での主流がやはり識字ということになっていくんじゃないかというふうに思っております。
 このように、大変表面的にはどこでもやらないような活動というものを内在的にそれぞれの学習者が持っているわけでありまして、それらをどう要求をとらえて対応していくのか、その辺に公的な役割というものが強くあるんじゃないかというふうに思っています。
 以上でございます。
#17
○森暢子君 今のお話を聞いておりましたら、もう何か生涯学習というのは社会教育の分野で、本当にそれぞれの県が、市が工夫して、地域の住民を中心に取り組まれているということを痛感いたします。そして、学ぶという、学習の権利というのは、やはり今弱者の人たちやいろんな方たちを含めて公的に保障するということが一番ではないかと思うんです。ところが、その中に民間事業者を入れる、民間活力を導入するというふうなことがこの法案の中にうたわれているんですけれども、そうなった場合にどうなるかというのはもう皆さん御想像なさったらわかると思うんですが、そんなに人もいない過疎地に大きな建物を建てるわけもないし、やっぱりお金のもうかる大都市に、人の集まるところにそういう業者というものは、企業は建てていくわけですね。そういうことで大変心配をするわけですけれども、そういうあたりについて山本隆一参考人、どのようにお考えですか、お願いします。
#18
○参考人(山本隆一君) 私たちもまた一番大きな危惧をするところがそれでございます。国民どの地域に住んでおりましてもひとしく機会均等に教育を受けるということができる条件を整備していくという、これが公の部分での大きな責任ではないかというふうに考えておるわけでございます。
 振り返ってみますと、戦後、自治体財政が非常に窮迫をした時期、昭和三十年代でありますけれども、この時期には工場誘致やあるいは大企業誘致で各自治体が競争をいたしました。全国的にこれは起こったことでございます。また今回、四全総との関係で見ますとリゾート地域の開発が非常に地域で取り組まれてまいりますと、企業の争奪戦が起こるのではないか。その上に、生涯学習振興のためのこの法案が通りまして民間事業者が教育の分野に非常に大きなウエートを占めてくるということになってまいりますと、特に過疎地など地方ではどの企業が来るかによってその教育の水準や中身が決められていく。ひいては、その民間事業者によってそこの地域の教育内容までも規制をされていくんではないか、こういうことを一番危惧をしておるわけでございます。こういうことがるる予想をされるということも含めまして、何とかその辺は公的に国や都道府県が本当に指導性を発揮していただきながら、そういうことの起こらないように、日本どの地域に住みましても同じような水準の教育がすべての人たちに安心して受けられるような条件づくりをしていただく、このことが目下急務ではないかというふうに思っておるわけでございます。
 以上でございます。
#19
○森暢子君 では、続いて山本恒夫参考人にお伺いしますが、民間教育事業は地域格差を防ぐというふうなことをおっしゃったんですが、私どもは拡大するのではないか、このように、今おっしゃったように本当に心配しているわけですね。ですが、それを防ぐんだと、基盤をつくることが第一歩であるというふうな御意見でしたので、そのことをひとつお伺いしたいと思います。どういうお考えでそのようなところが出てきたのか。
#20
○参考人(山本恒夫君) 申し上げます。
 地域格差の問題というのは先ほど申し上げましたのですが、民間の事業者というか、今さしあたってはカルチャーセンターということで限定して申し上げたいと思いますけれども、カルチャーセンターの関係の方々にいろいろ話を伺っていますと、関係の方々は必ずしも営利だけを追求してもうかればいいという主義ではない、やはり教育事業、文化事業というようなことでいろいろお考えになっているところがございまして、それでもしある程度損をしないというようなことがあるのであれば協力することにはやぶさかでないという意見を私どもたくさん聞いているわけでございます。ですから、先ほどの公的な社会教育等々に協力してもらえるところはどんどん協力してもらったらどうか。今申し上げましたことにつきまして、大分前ですけれども、雑誌の座談会でカルチャーセンター関係の方々が発言したのがございますので、決して私が勝手につくった話ではございません、ちょっときょうはそういう資料を持ってきておりませんけれども。公的なそういう機関の方々はどうぞ遠慮なくいろいろ申し出てくださいとまで言い切っている方々がいらっしゃるわけでございます。そんなことを背景にしながら申し上げているということでございます。
#21
○森暢子君 それで、今山本恒夫参考人のお話の中で、学習したくてもできない人々がいる、本当にたくさんいらっしゃるわけですね。その理由として、忙しい、費用がかかる、身近なところに施設がない、こういうことをおっしゃったわけですね。これは本当に私どもが考えている問題点なんですね。それで、じゃ忙しい人たちの学習を保障するためにはどうしたらいいか、それから費用がかかることは、民間活力を導入したら費用がかかりますよ、たくさんお金が。お金のある暇のある都会に住んでいる人しか行けないんですから、これが本当に生涯学習につながるかどうかというのは問題があると思うんですね。それから身近なところに施設がない。これはもちろんそうですよ。民間活力を導入すると、そんな過疎地へつくらないということなんですね。この対応が必要だと、このようにおっしゃったわけですが、もう一度御意見をお伺いしたいと思います。
#22
○参考人(山本恒夫君) 申し上げます。
 今の点でございますけれども、今回の場合には私の理解では、この法案では、民間業者がこの基本構想で地域でサービスをする場合には税金関係で優遇されるというふうに読み取っております。そういうようなことの関係で、今までのカルチャーセンターの費用、五千円とか六千円とか七千円ということであれば無理であるかもしれませんけれども、もうちょっと安くというようなことでできれば、そういう方面に行きたい人はもちろん行くということがあるだろう。しかし、私はそのことを今申し上げておりますのは、それだけでいいと言っているんではなくて、そういうような民間の活力も導入する必要がある。逆に言いますと、それでは公的な社会教育その他だけで全部要求にこたえられるのか。これは物すごくお金がかかるわけです。それができればいいんですけれども、果たしてできるんだろうかということを考えるものですから、今のような協力体制をつくってはどうかというふうに言っているわけでございます。
 先ほどの、忙しいとか費用がかかるとか、その他いろんなことがございますけれども、これらについてはまた新しい学習方式等々も考えていく必要があると私は思っております。
 具体的に申し上げますと、学級、講座へ参加するということだけではなくて、家庭にあっても学習をし、またうまく時間がとれればそういうところに参加するとか、そういうものを組み合わせた方式の新しいやり方も開発していく必要があるんじゃないかというふうに考えております。忙しいから勉強できないといいますけれども、忙しくても勉強している人はいるんですね。工夫してやっている人もいます。しかし、そう言ったってそれは無理ですから、今忙しいということを抜きにして考えられませんから、忙しい中でも勉強できるやり方というのは考えていく必要があると思います。
 具体的に申し上げますと、私どもが今取り組んでおります先ほど言いました学習メニュー方式というんですけれども、三歳児を長子に持つお母さんたちに勉強してもらったわけでございます。三歳児を長子に持ちますと、その下にゼロ歳児がいるかもしれないわけです。今まで一番取り組みにくいところなわけです。あるところで実験をやりましたところ、五十四人ほど登録がございました。それは、学級、講座へ行っても結構です、それからビデオ等でも結構です、いろんな方式を入れて結構ですというやり方でやりましたところ、所定の回数を終了した方が五十二名でございました。普通でしたらとてもそこまでいかないんですけれども、そこまでいって、お母さんたちもまた喜んで次の勉強に取り組むという姿勢が出てきております。それは一つの例ですけれども、何か工夫をしていかないと、忙しいからだめだ忙しいからだめだでは済まないというふうに思っております。
#23
○森暢子君 忙しくても勉強している人もいるということはもちろん大事です。私も美術専門で絵をかいておりましたが、もう忙しいときほど絵がかけるんですね。暇だからといって、じゃ時間があるから絵をかけるというんじゃなくて。それはわかるんです、それはその人一人一人の心意気でございますけれども。じゃなくて、やっぱり国が公的にどう保障するかというところが問題ではないかということを大変心配しているわけです。全体として、国とか都道府県主導型の学習体型ということも問題でありますし、経済界、教育産業主導型の生涯学習体制であるということも大変危惧しているところでございます。
 そこで、最後に北條参考人にお伺いしたいんですけれども、いつでもだれでもどこでも何でも、これはすばらしい言葉だと思うんですけれども、それの目指す生涯教育といいますか、これから私どもが、ここにいらっしゃる方はみんな通る道でございます。ずっと地域に戻って、本当に生きる糧として生涯勉強していきたい。みんな年寄りになるんですし、そういうときにどういう姿であったらいいかということですね、そのことについて北條さんお願いいたします。最後に四十一分までお願いします。
#24
○参考人(北條秀衛君) 今、いつでもどこでもだれでも何でも、という生涯学習の大変基本的な考え方がございます。そのことについて私の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 その前に、先ほどカルチャーセンターの話がちょっと出ましたけれども、私どももカルチャーセンターが近所に多数あります。私ども社会教育主事の研修会のときに、カルチャーセンターの所長を呼んでいろいろとお互い意見交流をしました。実際にカルチャーセンターは余りもうかっていないそうでございます。もうかる講座もありますけれども、講師の謝礼を払う程度で終わってしまう。一つは、公的なものであれば講師の謝礼が比較的安いんですけれども、カルチャーになると非常にそういうものが高く要求されるというような問題もあります。その中で、お互いがお互いの学習する人を取りっこしているというような感じはどうでしょうかということにつきましては、それはないとはっきり断言いたしました。
 学習する意欲のある人を多くつくっていただく、それは公的な社会教育の場をどんどん広げていただく。先ほど述べました、いつでもどこでもだれでも、そういう場所をどんどんつくっていただければ、学ぶということを目指す人がどんどんふえていく。そして、公的なものではやはりできない部分も多いわけです、ある特殊ないろんな問題になってくれば、あるいは大変高度な問題になってくれば。例えば語学なんかでも、非常に特殊な語学というのは教育の中ではなかなか参加者も多いわけじゃありませんので、なかなかやっていけない。そういうものについてカルチャーの中で今度は目指していく。そういうふうなことのお互いのフィードバックができていけばこれからの生涯学習社会というのは成り立っていきますし、そういう社会が理想じゃないですかというようなことを言っておりました。
 私どもも、確かに生涯学習は社会教育だけですべてが賄えるとは思っておりません。そういう意味では、今忙しいということが出ましたけれども、やはりそのことについては多くの議論があると思います。特にリカレントという場で、大きなリカレント教育ということで、労働者の忙しい働き過ぎの我々にとっての有給の教育休暇というものを制度化しなさいという要求が、これは別の観点から出されているというふうに思っております。そういう意味では、ぜひそういうものを含めた生涯学習体系というのをつくってほしいわけです。そのことによって初めて我々がそれぞれの生きる、それこそ先ほどおなかの中の赤ちゃんの学級の話もしましたけれども、それから高齢者に至るまで、どんなところでも、あるいはそういう意味では逆に費用がかかるかもしれません。例えば、高齢者の寝たきりの人でもいろいろ学びたいということはあるだろうと思います。あるいは本を読みたいということもあるだろうと思います。今なかなかそこまで本を持っていくということは現在の制限のある教育行政の中ではできていない部分も多うございますけれども、そういうものをきちっと保障をしていく、そしてそういうシビルミニマム的な保障ができていくならば、それが全体のアップになっていくだろうというふうに思っています。
   〔理事田沢智治君退席、理事石井道子君着席〕
 私も、民間の教育産業が隆盛になることを決して否定しません。ただし、公的な社会教育あるいは公的な学習、そのこともそれぞれが保障されていく。そういう意味ではより時間をかけて、この生涯学習への移行の中には当然学歴社会の問題も出ているわけですので、そういうこと、あるいは労働者教育の観点、そういうものをもっとしっかりと議論をしてほしい、恐らく中教審の答申の中にも一部そういうものが出ているわけですから。それらのことを省いてこの法案が出ているということについて現場としては大変危惧を抱いていますし、混乱が起きてしまうんじゃないかというふうに思っているわけです。ですから、そういうものを統合しての生涯学習の体系をぜひつくっていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。
 以上でございます。
#25
○田沢智治君 きょうはお忙しいところを参考人の皆さんに御出席をいただきまして、よりよい法案をつくるための貴重な御意見をちょうだいしておるのでございますが、私の時間が二十分ということで少のうございますので、多くの先生方に公平に聞こうと思っておったのでございますけれども、その時間がございませんので、吉崎四郎参考人と山本恒夫参考人、お二人に絞りまして質疑をいたしたいと思っております。
 今日、私たちを取り巻く社会全体を見ますとき、国民の所得水準の向上や自由時間の増大、そして高齢化社会の進行等に伴い、お年寄りから若者まで大変強い学習意欲を持っていることは周知のとおりだと思います。そこで、このような人々の生涯にわたる学習が適切に行われるような体制整備をすることが国政を担う我々にとって重要な課題の一つであるとの認識を私たちはしておるのでございます。
 そこで、まず吉崎参考人と山本恒夫参考人に御質問いたしますが、生涯学習の振興のための推進体制について、どのような観点に立って特に整備を必要としておられるのかどうか、ひとつ要点を絞ってお答えをいただきたいと存じます。
#26
○参考人(吉崎四郎君) 一つは、生涯学習というのはやれと言われてやるようなものではなくて、やりたいからやる、くどいようですが好奇心を持ってやるということが基本にあるんじゃないかと思うんです。最近、ニーズということがよく言われますが、この場合はニーズでやる行政ではなくて、むしろウオンツでやる。ウオンツの裏づけのないニーズというのは、生涯学習行政には余り意味はないんじゃないかというふうに思います。したがいまして、国民の自発的な意思によってやる。かつて臨教審の方で生涯教育よりも生涯学習だという言葉が出てまいりましたが、その違うところは、生涯学習というのは学ぶ側に立っている、ラーナーの立場に立っている。生涯教育というのはプロバイダー、供給する側に立っている。見方の違いではございますけれども、この辺が私は非常に大切な点ではないかというふうに思います。
 それから二つ目は、国と県と市町村がそれぞれの役割に応じた体制でもってやっていく。これを同一に、一緒くたに考える必要はないわけでありまして、市町村の場合は住民と直結した立場というものがありまして、そういうところまで一々法律で縛るということは好ましくない。そういう点でこの法案はうまくできているんじゃないかというふうに思います。
 三番目は、何といっても教育という問題で縦割り行政というのは非常に大きな支障を来します。そういうわけですから、例えば各都道府県でも、各部局にまたがる生涯学習の問題というのはあくまで教育委員会が主体になって連携をとるということ。それから、市町村との間にでも連携をする、あるいは経済団体とかいろんな民間の団体、もちろん図書館、公民館等ともお互いに連携をとり合って進めていく。これはもう私どもの県で実証済みでございますので、こういうやり方をぜひお勧めしたいと思っております。
 四番目は、学習情報の収集とか提供というものを的確にかつ迅速にやれるような施設、設備をつくるということであります。そのためには、やはり生涯学習センターのようなものをいち早くつくって学習サービスに努めるということが大切だと思います。
 もう一つ、教育というものは一人が百歩進むということも非常に大切でありますが、百人が一歩進むということ、これを欠くことはできないと思います。生涯学習の場合には、どちらかといいますとやはり百人が一歩進めるという点でこれから大いに威力を発揮していくのではないかというふうに思います。
 以上でございます。
#27
○参考人(山本恒夫君) 申し上げます。
 私も、生涯学習という場合にはやはり国民の自発的意思が尊重されるべきでありますし、それから国民の学習ニーズ、学習要求等々に基づく体制づくりが大事だというふうに考えております。しかし、これは総論として言うことは非常に簡単なんですけれども、実際にやるとなると大変でございます。今までにもそういうことは常に言われてきているわけですが、それじゃニーズの把握ということできちんと調査がなされたりしているかといいますと、なかなかそうもいかないというようなことがあったりいたします。今回の法案で、その自発的意思のことは二条に入っておりまして、また先ほどのニーズに対応していく必要があるということは第三条に入っておりますので、この辺のところをぜひきちんと実行していただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、やはり今吉崎参考人の方からもお話がありましたが、国とか都道府県とか市町村というのはそれぞれの役割があるんだろうと思います。ですから、その役割に応じて体制を整備していくということは非常に大事で、その辺の努力をしていただきたいというように思います、これも今回取り上げていただいているようですが。生涯学習という場合には非常に幅が広くて、学校教育、社会教育、さらには文化活動その他いろいろなところと関係がございます。したがいまして、そのいろいろな領域と連携を保ちながら生涯学習を進めていく、そういう体制が必要で、やはりその場合の中心は文教行政だろうというふうに考えておりますので、その辺もしっかり押さえていただくような体制にしていただきたい。大体今回そういうところは押さえていただいているように思っております。
#28
○田沢智治君 両参考人の意見を聞きまして、大変参考になったと思います。特に、国民の学習意欲が多様化する中で、その欲求に対応して生涯学習の振興に関する国、都道府県、市町村の推進体制を確立していこうとすることがこの法律案の趣旨でありますが、この法律案に盛り込まれた国の生涯学習審議会、都道府県生涯学習審議会及び市町村の連携協力体制についてどのようにお考えになられるか、お聞かせをいただきたいと思います。山本恒夫参考人よりお願いいたします。
#29
○参考人(山本恒夫君) 申し上げます。
 私は、この生涯学習審議会というものには大変期待いたしております。具体的に申し上げますと、生涯学習施策相互の連携協力が今非常に重要だと思います。
 例を挙げた方がいいかと思うんですが、昭和五十年代の半ばぐらいに、生涯学習推進ということであちこち小さな町等々にお伺いしたときに言われたことで今でも印象に残っていることがあるんですが、ある高齢の方が手を挙げまして、一体これはどうなっているのかと言うわけです。何かといいましたら、ゲートボールですね、そういうところですから役場ということになりますが、役場がこれを用意してくれる。二日続けてあって、最初の日は弁当がついて、それでもってやらせてくれた。翌日同じことを今度は弁当なしでやった。一体これはどういうことだ、同じことをやるとは何だということになりますね。これはやはり連携協力、調整が必要なわけです。
 ところが、そういう場がない。今までですと、幾ら教育委員会が一生懸命言っても、それは縦割り行政ですから言うことを聞いてくれないというところがあるわけです。したがいまして、こういう審議会をつくって、それも公的に裏づけられた審議会にしていただいて、そういうところで今のようなことを審議していただくというようなことがぜひ欲しいというように考えております。
 市町村の場合というのは本当に人口規模もいろいろでございまして、いろいろ事情も違います。私どもも小さな町等々にお伺いしていろいろ御協力することもあるんですが、そうしますと、法律等で一律に決めてしまうというのはちょっと酷ではないか。いろんな事情に合わせていろんな形のものをつくっていただいた方がいいのではないか。大体この場合ですと努力義務ということになっていると思いますが、こういう機関を置く努力を促すということでやっていただければ、市町村の方はそれでいろいろ独自のものをつくってくださるのではないか。やはり、こういうものは地域ごとの独自性があった方がいいと考えております。
 以上でございます。
#30
○田沢智治君 吉崎参考人にお聞きいたしますが、学習活動が地域でいろいろ盛んになっておりますが、学習意欲を持つ者がどこにどう行ったらどのような学習機会があるのかを知りたいということも多くなっていると思います。このような生涯学習に関する情報の収集、提供や、一つの市町村などではなかなか対応しがたい学習の機会の提供あるいは学習の方法の開発というものについては、都道府県レベルである意味でリーダーシップをとってもらいながら、多くの人たちが参加できるような、末端組織の人たちをもしっかりと網羅できるような整備を図ることも私は必要ではないだろうか、そう考えます。
 この法案も、都道府県の推進体制の整備を図ることがうたわれておりますが、県民全体の生涯学習ということに携わっている参考人は、その点肌身で感じて、どうしたらより効果があったか、期待したけれどもこの施策は余り効果がなかったというような体験があるかと思いますので、そういう失敗的なものがあればそういうものも含めて、こうしたらよりいいものになるというふうに思われる点がありましたら御指摘をいただきたいと思います。
#31
○参考人(吉崎四郎君) 生涯学習情報をいかに県の隅々まで行き渡るようにするかということは、大変重要な問題でございます。私ども、生涯学習センターというものを県民カレッジにしましたのが一昨年でございますが、初めはセンター機能として情報提供に最重点を置いていたわけでございますが、コンピューターを一つ備えたら情報が行き渡るというものでは決してございません。やはり学習情報というものは、それに参加することによって口コミによってかなり伝わっていく。そうしてまた、そういう講座に参加することによって友達ができて、あるいは討論をする相手もできてますますよくなっていくわけでございます。
 私の県で調査しました、生涯学習にあなたは何を求めますかというアンケート調査によりますと、一番多いのが個人的な意見でございまして、社会、個人と分けますと、個人の自分としての生きがいを求める、こういうのが四〇%ございます。それに負けないくらい多いのが、地域文化の向上に役立てたい。つまり、自分が住んでいる町や村の町づくりとか村おこしに参加したいんだ、そのために生涯学習に参加したい、こういうわけでございまして、これは恐らく富山県だけではなしに全国の地域で言えることではないだろうかというふうに思います。私どもでは、この学習情報というものを県下の隅々にわたらせるために生涯学習リーダーバンクというものを備えまして、そして今小さなコンピューターですけれども、それでもって公民館とかあるいは経済団体とかいろんなところと結びながら、例えば講師交渉のことだとかあるいは会場、設備、施設等の案内を努めてわかりやすくやっているわけでございますが、「富山の生涯学習」というようなパンフレットも出しまして、刻々とした学習情報を提供しているわけでございます。
 以上でございます。
#32
○田沢智治君 最後にもう一点吉崎参考人にお聞きしたいんですが、私は生涯学習を幅広く進めるためには、まず推進体制をしっかり整備しなきゃいかぬと思うんです。それから、学校教育、社会教育、文化活動等の関連施策の連携協力が図られないと実益は上がらないと思っております。国民の学習欲求の動向にこたえる施策が一歩ずつ進められることが大切であり、その意味でこの法案を国が整備し提案したわけでございますが、このような連携協力体制というものをより効果あらしめるにはどういうところに留意すればいいのか、お聞かせをいただければと存じます。
#33
○参考人(吉崎四郎君) この連携をとる場合というのは、やはり人と人とが直接に出くわして肝胆を吐露するということが非常に大切ではないかと思います。とかくこの情報化時代には、便利な機器を使って話せばわかるというふうに考えがちでございますけれども、必ずしもそうはいかない。同じ県庁なら県庁に勤めておりましても、教育委員会と他の部局との間に何かわだかまりができる、人の予算に手をつけて取っていくんじゃないかというふうな誤解を生んだりするわけでございまして、ましてや県と市町村あるいは県とその他の民間のいろんな団体、そういう場合には必ず会ってよく確かめ合って誤解のないようにお互いに協力をすべきだろうと思います。まあこう言ってしまえば当たり前のようなことでございますけれども、実際に私どもがこのような生涯学習行政を進めていく上において、非常に単純なようなことでございますけれども、お互いに肌身で確認し合う、こういうことが大切なのではないかと思います。
#34
○針生雄吉君 私の持ち時間も二十分でございますが、四人の参考人の方にそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。
 最初に吉崎四郎参考人、引き続いて申しわけございませんけれども、富山県が教育先進県としてそういったバックグラウンドを持ちながら、生涯学習についても先駆的な活動を展開されたということでございますけれども、その二十年間、吉崎先生が直接タッチなさったのは二十年以下かもわかりませんけれども、そういう富山県の生涯学習の活動の中において、今まで最も問題とした点は何だったか、困った点は何だったか。
   〔理事石井道子君退席、理事田沢智治君着席〕
先ほど縦割り行政の弊害というようなお話もございましたけれども、その点についてお伺いしたいと思います。
#35
○参考人(吉崎四郎君) 申し上げます。
 一つは、私自身教師出身でございまして、役所という世界へ入りまして行政官といろいろと話し合ううちに、初めはやはり異和感のようなものはございました。教育委員会からほかの部局へ入ってまいりますと、少し疑心暗鬼のようなところもありまして、なるほど縦割り行政というものは難しいと。しかしこれは反面それぞれの部局が責任を持って自分の仕事をなし遂げるということのあらわれでもあるということがわかりました。お互いにいがみ合うというのも善意に基づくものであると、こういうところを確認しますと、お互いに連携するということも大したことではないと、今はそのような気持ちで対処しているわけであります。
 もう一つは、社会教育課というものが富山県の中にあるのに、なおかつ生涯学習室というものが両立していたために、いろいろと細かい点で問題があったかと思います。しかし、それは社会教育法にしましても今度提出されておるものにしましても、大局的に見ますと精神は一つでありまして、国民の教育レベルを上げる、みんなが幸せをつかむというふうな点では私はほとんど違わない、その精神において変わりはないというふうに思います。
 教育施策というものは、この十八年間教育行政に携わってみまして、あるいはまたアメリカやヨーロッパ八カ国の教育事情を視察させていただきまして、どうも満点というのはなかなかない、なかなかクイズ百点満点みたいなわけにはいかないで、何かに力点を置くとどこかに欠陥を生ずるというようなことがあるわけでございまして、初めから満点なものを願うよりも、これから少しずつよくしていくというような前向きの姿勢で教育問題を考えていくということが現在私たちにとって一番大切なことではないかと、こういうふうに考えている次第でございます。
#36
○針生雄吉君 ありがとうございました。
 次に、北條秀衛参考人にお伺いいたしますけれども、先ほどのお話の中にも、生涯学習を進めていくにおいて民間教育産業の活用、それに関連しまして大都市に集中するのではないかとかその他の疑問があると。それから、住民自治の確立という点からも非常に不安であるという、そういう御意見を承ったわけでございますけれども、今までの御活動の中において、本法律が制定されたときそういう面において特に危惧されるところ、具体的なところで構いませんので、ありましたらどういう事例があるかということでも構いませんので、お教え願えればと思います。
#37
○参考人(北條秀衛君) 今、民間教育産業の活用あるいは住民自治の確立についてどういう不安があるかというお尋ねでございますけれども、一つは民間教育産業の活用ということもあります。これは連携ということで今までもいろいろやっておりますけれども、今回の法案ではむしろ民間事業者という、教育の字が抜けているんだろうというふうに思うんですけれども、このことが一体何をあらわすのかが一つはよくわからない。民間教育産業との連携ということであれば、これはまだ考える余地もありますしいろいろあるんですけれども、民間事業者の能力活用ということについては教育委員会としてはよくわからないというのが実際ですし、もしそれに一歩譲って民間教育産業の活用でも、それぞれがお互いやっていくということについては共存できるだろうというふうに思っています。現在も共存しているわけでありまして、それらを一緒にする必要があるのかどうかということについては非常な疑問を持っています。
 私どもは、そういう意味では公的な社会教育として、先ほど言いましたように権利として考えていくならば、別にお金を払わなくてもできるようないろんな求めに応じての学習を教える。民間の教育産業の場合に、今まで私が知っている中では無料で教えてくれるところは一つもありません。むしろ、徐々に高くなっていると言った方がいいかもしれません。ですから、そういう意味では、有料で受益者負担が非常に大原則となるようなものについての不安があります。
 それからもう一つ、住民自治の確立ということでございますけれども、都道府県の業務ということで事業あるいは基本構想ということで出されました。でも、実際には行政単位は市町村で行っているんだろうと思うんです。広い県の中で一つや二つの推進センターをつくったからといいまして、そして県民を直接対象に授業を行うということについては、これまでの行われてきた基本的な自治の原則から外れていくんじゃないか、むしろ国なり県なり市町村の役割というのははっきりさせた方がいいというのが私の考えであります。
 先ほど、法律をつくると縛るという考えがありましたけれども、私はむしろ学習権という観点からいえば保障するという法律が欲しいわけです、縛る法律ではなくて。それは、教育基本法でも今までの社会教育法でもそういう形になっております。決してそれは縛られるというよりも、それぞれの住民の自発的な学習を保障しているんです。ですから、そういう法律が特に欲しいということで、今回にはそれが非常に欠けている、そのことがやはり住民自治にとって非常に危惧である、このように考えております。
 以上でございます。
#38
○針生雄吉君 ありがとうございました。
 次に、山本恒夫参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほどのお話の中で、いろいろ生涯学習に対する住民の要望、希望の多様化というものがあって、その多様化に対応するためには行政だけじゃなくて民間活力、民間教育機関の強化拡大ということも大変重要であるというお話があったわけでございますけれども、そういう国民の要望というものがある中において、高等教育機関、特に大学とか大学院とかあるいは短期大学も含めて、そういう高等教育機関がそういった国民の高度な多様化された要望に対してどう対応していくべきか、そういうことについて御意見があればお話し願いたいのです。
#39
○参考人(山本恒夫君) 申し上げます。
 民間活力のということがございましたが、ちょっと先にそれを申し上げますと、高くなるということでございますけれども、話を聞いておりますと、今地価の高騰で場所代がどんどん上がっちゃいますね。ですから、それさえなければもっとずっと安くできるという話を伺っております。
 それから、今の高等教育機関でございますけれども、私はこれからは高等教育機関が積極的に生涯学習のいろいろなニーズに対応していくべきではないかと思っております。その点に関して言いますと、高等教育機関が従来のままですと余り対応できないところもあるんではないかと思っております。具体的に言いますと、今までの高等教育機関というのは準備教育機関なわけですね。年齢輪切り対策になっていまして、十八歳前後になりますと入ってくる、それを教育して社会へ出すという仕組みになっておりますから、成人の方々が転職するとか何かのために、あるいは教養を得るために入ってくるとか、それを利用するというのはいいんですけれども、今仕事をしていてさらに力をつけたいとか、そういうようなことになってまいりますとちょっと今のカリキュラムでは合わない。ですから、これからは高等教育機関も大学の生涯学習センター等々を開いていただいて、積極的に複線型のカリキュラムにしていただいて、社会人の学習のニーズに合うような内容のものを提供できるようにしていっていただきたいというふうに思っております。
#40
○針生雄吉君 大学院なんかについても同じようでございましょうか。
#41
○参考人(山本恒夫君) 大学院についても同様でございます。ただ、大学院の場合には今のところやはり現職教育的な色彩が非常に強いわけでございます。したがいまして、今申し上げました現職教育的なカリキュラムを一層鮮明に打ち出す必要があると思いますが、私ども筑波大学も夜間大学院を開いております。これ大変需要が多いのでございますけれども、その場合にも筑波地区に置いております大学院のカリキュラムと東京の大塚で社会人のために開いておりますカリキュラムは違っているわけでございます。現職教育用にカリキュラムを組んでいるというような体制をとっております。大学院もこれからは積極的にやはり社会に開かれていくべきではないかと私は考えております。
#42
○針生雄吉君 ありがとうございました。
 次に、山本隆一参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほどのお話で、生涯学習の振興そのものについては何も反対すべきものはないのであるけれども、なぜ急ぐのかというお話がありましたけれども、その点について、なぜ急がなければならないのかという疑問点について特にどういう危惧があるのか、その点についての御意見をもう一回お話しください。
#43
○参考人(山本隆一君) 私は、なぜ今生涯学習の振興を慌てて法制化をしながらやらなければならないのか、早いにこしたことはないというのは、同じ思いは皆さん方にも国民の側にもあると思うんです。しかし、その法律がそういう国民の願いや動きやあるいは将来を考える上で本当に役に立つ法律なのかどうか、これが判断基準ではないかというふうに思うわけです。ただ、今のところ、国際化やあるいは高齢化社会がこれから非常に重くかぶってくるといいますか、こういう時期に慌てて今のような推進体制をこしらえるよりは、もっと基本的な理念、目的を明確にしながら、国民がこぞって生涯学習の体制に協力し得るような中身にしていただきたい。そのためには、国民が持つ基本的な生存権を踏まえながら、生涯生きていてよかったと思えるような体系、体制が必要ではないのか。そのことが守られるような、またそのことを守ることを国民が知り得るような、そういう中身にぜひしていただきたい、このように考えているわけでございます。
#44
○針生雄吉君 ありがとうございました。
 次に、四人の参考人の方々に放送大学に関しましての御意見をお伺いしたいと思います。
 どこでもだれでもどこからでもというテーマに非常にぴったりした生涯学習の体系として、放送大学構想というものが推進されまた実施されているわけでございますけれども、放送大学の今までの実績を踏まえ、あるいは今後の構想というものも含めまして、参考人の先生方のそれぞれのお立場からの御意見を放送大学というものに絞ってひとつお願いをしたいと思います。吉崎四郎参考人から。
#45
○理事(田沢智治君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#46
○理事(田沢智治君) 速記を起こして。
#47
○参考人(吉崎四郎君) 大変残念なことに、千葉の幕張で行われております放送大学の講座は私ども富山県には参りません。
   〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
非常に不満、不服でございますが、しばらく気長に待つより仕方がないんじゃないかと思っております。
 私どもが今県民カレッジでやっております放送講座は、民間放送が二つ、そしてFM放送、これはラジオでございますが、これを利用してやっておるわけでございますが、県下全域にわたって大変反応が大きいようでございまして、これこそ「いつでも、どこでも、だれでも、なんでも」でございまして、できるだけ早く関東以外のところにも放送大学の講座が見られるようになることをここで要望いたしておきます。
#48
○参考人(北條秀衛君) 簡潔に申し上げたいと思います。
 個々で受信して学習するよりも、やはり集団で視聴して学習する方が非常に効率が高く、そういう意味では学習の場として私どももそういう機会を設けてあります。このことは、あわせてスクーリングその他も放送大学は行うのだろうと思いますけれども、やはり個々の学習よりも集団で学習していく、特に生涯学習等の観点の場合に、そしてその中でお互いが学びつつある関係になっていくということが一つの望ましい姿じゃないかというふうに思っております。
 以上でございます。
#49
○参考人(山本恒夫君) 私も、放送大学の対象地域が関東に限られていることは大変残念に思っておりまして、なるべく早く全国でこれが利用できるようにしてもらいたいと思っております。特に、社会教育関係施設等々とこの放送大学との連携というようなことが考えられないか、その辺について御検討いただいて、そういう幅広い利用を進められるようにしていただきたいと思っております。
#50
○参考人(山本隆一君) 簡潔に申し上げます。
 放送大学については、全国一律のカリキュラムというようなものではなしに、地域性を尊重しながら、大きなブロックでも行けるようにぜひしていただきたい。私ども関西でありますけれども、これからの取り組みはそういう形で充実をしていただきたいと同時に、運営についても十分に事前に調査をお願いをしながら実施をお願いしたい、こういうふうに考えております。
#51
○針生雄吉君 大変ありがとうございました。
 放送大学に関しましては、通信システムとかあるいは夜間のシステムの方が教育効果が上がるのではないかとか、あるいはいろいろな放送機器業者、ビデオ業者等の何か陰謀があるのではないかとか、そういう声もささやかれるわけでありますけれども、そういう危惧の念は皆様方からは出なかったわけでございますが、国民的な学習、生涯学習に対する要望が多様化しているという現状に対応するためには大変適したシステムだろうと思います。我が党といたしましても、今後ともその推進に努めていきたいと思います。
 きょうは大変いろいろありがとうございました。
#52
○高崎裕子君 時間の関係で、全員の参考人にお尋ねできないかもしれませんことをあらかじめおわびしたいと思います。
 まず最初に、山本隆一参考人にお聞きいたします。
 今回の法案では、先ほど御指摘のとおり、生涯学習について、理念それから定義、目的がうたわれていないわけです。山本隆一参考人は、この法案は憲法、教育基本法、そして社会教育法の体系とは異なった法律ではないかというふうに先ほど述べられたわけですが、その点をもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
#53
○参考人(山本隆一君) 一つは、これまでの社会教育がきょうまで発展をしてきた基礎には、ひとしく住民あるいは国民が教育を受ける権利を尊重し合うという、行政の側も住民の側も国民の側も、そういうことで相寄り合ってつくり上げてきたわけであります。
 その中で非常に立ちおくれていたものが、社会的弱者と言われている方々が社会教育活動にいかに参加をするか、このことの保障を行政の側がどう取り組んでいくかということでは非常に立ちおくれを見せておりました。しかし、国民の側の自覚の高まりと行政の側の理解の高まりの中で、最近になってようやく対応できるそういう水準に至ってまいりました。
 しかし、今回出されております法案の中で特に危惧をしておりますのは、民間事業者の活用によります教育事業の実施、こういうことがうたわれておるわけでございますが、民間事業者は、少なくとも公共団体のように資金を投じて見返りが何もないということであれば、これは実施ができないであろうというふうに考えられます。私どもは、民間事業者のこの事業の中身ももちろん問題ではありますけれども、民間事業者がよって成り立つ基本はやはり収益性、利益性が中心になっていくのではないか、少なくともそういう保証がなければ成り立っていかないのが民間事業者ではないかというふうに考えております。さすれば、提供できる教育事業の中身、これが制約され限定されてくるだろう。教育というのは、もともと持続性と系統性が最も大切にされなければならない事業ではないかというふうに考えてまいりました。そのことの保証が民間事業者の事業の中身として保証されるのかどうか、これは大いに危惧をしているところであります。それと当時に、民間事業者のそういう営利性のところから、有料化、いわゆる受益者負担制度というものが生涯学習の体制の中に固定化をされはしないか。その場合に、経済的な弱者である人たちがひとしくこの教育事業に参画できるかどうか、このことを憂えるものであります。
 同時に、法案の中身と、これまでの国の説明の中でありますように、特に地方過疎地域を重点的にこの生涯学習の振興に対する体制を強化していきたいという意向であるように承っておりますけれども、地方であればあるほど所得の格差が大都会周辺とは異なるのではないか、差が大きいのではないか。その差が大きい中で、民間事業者が過疎地域を中心にした地方に根をおろすということについては参加者の層が限定されるのではないか、そういうところで本当に生涯学習体制の組織が確立できるのかどうか、そういうことが不安条件としてあると思います。このことでは、憲法で保障されているひとしく教育を受ける権利が損なわれる、こういうふうに憂えているわけであります。
 もう一点は、地方自治の問題であります。国あるいは都道府県の主導的な役割を果たす中で、市町村の役割が軽視されはしないか、特に協力を求められるという中では対等に対応できるかどうか、このことを危惧しているわけであります。
 もう一つは、法案の中で広域性がうたわれております。やり方によれば、広域性が必ずしも地域を軽視するということにはならないかもわかりませんけれども、しかしこの民間事業者が入った中での広域性がうたわれてくると、住民自治ということが大いに損なわれることが危惧をされる、このことが二つ目の心配であります。
 同時に、教育の中立性あるいは非営利性、このことが戦後一貫して大切にされてきたわけでありますけれども、民間事業者が入ってくる中で、民間事業者の意向に沿って公共団体が事業計画を承認せざるを得ない立場に立つのではないか。その場合に、この基本法に言われております、不当な支配に服するようなそういう条件が積み上がっていくのではないか、そのことを危惧しているわけであります。
 もう一点は、市町村の首長の権限が教育の中で影響力が強まるのではないか。市町村の教育委員会の今までの力量が軽視をされていく、こういうことに結びつくのではないか。そこから、今までせっかく社会教育あるいはその機関とされている図書館、博物館、そういったものの充実に力を注ぎながら、市長部局に生涯学習という名目のもとに統合されていきながら、教育委員会が手が出せないようなそういうものにされていきはしないか。そのことに対する今回の法案の中での保障が何もない、こういったことが今回の法案に対する最大の不安であります。
 それと同時に、社会教育関係団体が行政の審議会の中から求められていく場合に、意見のみが言われ、あるいは団体そのものの主体性が尊重されないということが起こり得るのではないか。公の支配に属さない、このことが社会教育の法律の中で社会教育団体の位置づけとして大切にされておるわけでございますけれども、少なくとも今回の生涯学習を進めていく体制の整備の中ではこのことには全く触れられていない。少なくとも市町村教育委員会、そこの現場で働いている職員、またそれにかかわって社会教育活動を推進している社会教育団体の主体性がこの法案をもとにしながら損なわれていくのではないか、このことを大いに危惧をしているわけであります。
 以上でございます。
#54
○高崎裕子君 次に、北條、山本隆一両参考人にお聞きします。
 今山本さんからも御指摘あったんですけれども、この法案が国及び都道府県主導の生涯学習となっているわけで、国が基準をつくり承認をする、そして都道府県が事業を行うということになれば、市町村の教育委員会を主体として住民の多様な学習要求に基づいて行われてきたという社会教育活動が否定されることにならないのかという危惧を再々指摘もされていますが、特に現場におられる立場からそのお考えを簡潔にお聞かせください。
#55
○参考人(北條秀衛君) この法案の一つの大きな問題点なんですけれども、社会教育法については全然といいますか、審議会の部分にちょっと触れていますけれども、触れてないんですね。ですから、私ども市町村はこの現存の社会教育法で行っていきなさいということでございます。その中で、今まで市町村が行うようになっていたものが都道府県の事業等に入ってきているという、大変そういう意味では矛盾しています。一体この法案と社会教育法はどこでどう整合性を持っているのか、そのことがさっぱりわからないというような感じであります。そういう意味で、特に、先ほど申し上げましたけれども、地域においてのさまざまな学習課題を解決していく、そういうことではやはり市町村という自治の段階で行っていくのが今後の生涯学習にとっても最も望ましい姿だろうというふうに思っています。なぜそのことをこの法案に規定しなかったのか、大変疑問に思っております。
#56
○参考人(山本隆一君) 今の質問は非常に大切ではないかというふうに考えます。といいますのは、現在御審議をいただいておりますこの法案について、全国の現場の職員あるいは社会教育関係団体の皆さん方が熟知し得ない、そういう短兵急に審議を進められて決められようとしている、このところが非常に問題ではないかというふうに思います。知れば知るほど全国的にも問題が広がっていくのではないか。その辺、初めに御指摘を申し上げたようなそういう幾つかの問題を抱えながら、そして法案だけが決められていくとすれば、法律は一たん決められますとひとり歩きをします。いろんなところでいろんな解釈ができるような法律というのは、社会教育の運動を基礎にするようなそういう場では非常に混乱を持ち込まれる、このことを一番危惧するわけであります。できるならば、国会で慎重に御審議をいただきながら、そういう混乱を起こさないように、社会教育の学習権が国民にとって生涯保障されるというそういう立場に立つ、安心してこの法律に依拠できるような内容にぜひお願いをしたい、このように考えております。
 以上です。
#57
○高崎裕子君 重ねて恐縮ですけれども山本隆一参考人にお聞きします。
 臨調行革や民活導入によって福祉、教育が後退させられ、社会的弱者が切り捨てられてきた。この法案でも民間能力の活用が挙げられていて、この民間能力の活用をうたうことによって行政の責任が放棄され、ひいては学習者の権利が保障されないということが言われていますが、この点、特に社会福祉に長く携わってこられた経験も踏まえてお話しいただきたいと思います。
#58
○参考人(山本隆一君) 私は、今回御審議をいただいております生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案の中で、特に社会的弱者と言われております皆さん方、いわゆる障害をお持ちの方あるいは経済的な負担にたえられない方、こういった方々に対する救済方法やあるいは権利を保障するような、そういう項目が一切見当たらない。同時に、日常的に私たちが接しております方々、この辺の方々は、事業をやろうとすれば公的保障しかあり得ない。ここに今回上程されているこの法案の中で、公的に国や都道府県、自治体が一体どれだけそういう方々の援助をし保障していくのか、この辺のところを明確にされるべきではないか、このように考えているものであります。
 同時に、そのことが憲法や教育基本法や社会教育法の理念や目的に合致をするような法律になるのではないか。私は日常的に、私の老人ホームでは十四年目を迎える老人大学で、二百名の地域のお年寄りを組織しながら日々触れ合っておるわけでございますけれども、一つは老人大学に参加をするお年寄りの人たちがどういう生活実態にあるのか、このことを十分お知りをいただきたい。そのことがなければ片手落ちになるのではないか。生涯学習といいながら、そういう特にこれからふえつつある高齢者の皆さん方を切り捨てていくことにつながるのではないか、このことを一番危惧をしているわけであります。そういう方々を切り捨てられないように、ぜひこの法案の中でこの権利性を保障し得る、そういう内容をぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
#59
○笹野貞子君 時間がありませんので十分な御質問ができないことが大変残念です。先ほどの参考人のお話の中で、私がちょっと聞き間違いをしたのか、わからないところがあります。まず、それをちょっとお聞きをしたいと思います。
 まず吉崎参考人にお聞きをしたいのですが、私は吉崎参考人が書きました論文を読ませていただきました。その中で「学校ママより教育ママ」という論文がありまして、その中で大変に女性のことに期待をかけられて書かれております。中でも、「母親たちのあいだで子供の学歴がファッション化し、一種のカッコよさとしての価値を見出すようにさえなっている」、これではいけないのであって、これからのお母さんというのは、親の見えとかそういう学校ママではなくて本当の教育ママになってくださいという、女性に対する期待なのかそれとも違うのかなというふうに思いまして、もしも吉崎参考人が女性に期待をかけるとするならば、要するに県民カレッジに大いに来ていただかなければいけないというふうに私は思ったのですが、かえって女性の方が少ないとおっしゃったことは吉崎参考人のお考えとちょっと何か矛盾するなというふうに思ったのですが、何ゆえに少ないのでしょうか。もし多くするとするならば、吉崎参考人はこれからどのように直すつもりでしょうか。
#60
○参考人(吉崎四郎君) 私どもの県民カレッジは、十八歳から九十六歳まで九千二百人の方が受講生になっております。その男女の割合が五対三で男が多いと言ったことがちょっと誤解を招いたようでございますが、これは県全体、つまり民間の生涯学習と比べますと大体男女のバランスがとれているわけであります。もちろん、私どもは民間の例えば経済団体とも協力し合って講座を開いております。例えば創造性開発講座といったようなもの、あるいは余暇文化講座といったようなものも開いておりますが、こういうものになりますと男性が断然多くなるわけです。私は女性の参加が物足りないとかそんなことを言っているんじゃ毛頭ございませんで、女性の方々が好まれる生涯学習の講座というのは、例えば源氏物語何とかかんとかというような、こういう古典を愛するような方々が断然女性に多いということでありまして、そういうものはどちらかといいますと行政が税金でやらなくても、民間の新聞、報道機関とかいろんなところがおやりになっておるわけです。そういうようなものを邪魔するようなことまでやらないということが大切なんじゃないかと、こういうふうに申し上げているわけでございます。
 むしろ、これからの日本というのは女性の知恵によって築かれていく面が多々あるんじゃないかと思いまして、私たち自身も、今例えば女子短大の開放講座に真っ向から協力申し上げております。どの講座も超満員というような状況でございまして、できれば婦人会などのおやりになる講座もこういうふうになればいいんじゃないかというふうに考えているところでございます。
#61
○笹野貞子君 時間がありますともうちょっと突っ込んでお聞きしたいのですけれども、そうもできませんので、つまり私は、これから民間の事業者が入るならば、吉崎参考人が憂えている現象が起きてくるんじゃないかというふうに思いますので、その点は時間がなくて大変残念です。
 続きまして、山本恒夫参考人にお聞きをいたします。
 これも私の聞き間違いではないかということで、ちょっとたださせていただきたいんですけれども、先生のお書きになりました「生涯学習施設における事業ネットワーク化の課題と方向」という論文を読ませていただきました。これを読む限りにおいては、ネットワークが非常に必要だということをるるお書きいただいているんですが、先ほど、民間事業団体と提携しネットワーク化する中でこの法律ができたならば、その利益追求はチェックできるというふうにおっしゃったのですけれども、私の読む限りではこの条文の中にそういうのはないというふうに思っているんですけれども、先生はどの条文からその民間の営利目的をチェックできるというふうにお考えでしょうか。
#62
○参考人(山本恒夫君) 私が先ほど申し上げましたのは、この地域生涯学習振興基本構想ということにつきましては、文部大臣のところで承認を得るというようなことが一つかかっているわけでございます。それから、都道府県が関係市町村と協議しなければならない、これもかかっているわけでございます。そういうようなところで私はチェックできるのではないかというふうに考えまして先ほどのようなことを申し上げたわけでございますが、もちろんその後のいろいろな問題というのは出てくるだろうと思いますけれども、私どもは日ごろいろいろ関係方面に聞いておりますと、やはりそれぞれの審議会なり行政機関でそれなりのチェックをなさっているというふうに考えておりますのでそう申し上げたわけでございます。
 ただし、先ほど言いましたのは、営利の追求というのはどの程度までかということが問題になるわけですね。ですから、私の考えておりますのは、損をしない程度のところはいいんではないか、しかしすごくもうかるというのはいけない、その辺をどこで決めるのかということですよね。しかし、これを法律やなんかで決めるということは大変これまた問題なんではないか。それぞれの地域ごとにいろいろ事情がありますでしょうから、それなりにそこで審議していただくということにすべきではないかという、それがケースケースでそれぞれ文部省なりなんなりで検討していただくということにすべきではないかと考えているわけでございます。あいまいのようでございますけれども、それを決めたらかえっていろんな問題が生じてくるというふうに考えております。
#63
○笹野貞子君 今の御回答は、かえってそういうことを決めた方が問題が大きいというふうに受け取ってよろしいのですか。
#64
○参考人(山本恒夫君) はい。
#65
○笹野貞子君 そうしますと、先生が先ほど言いましたこの法律によってチェックできるというのは、ちょっと理論的に矛盾をするということですね。
#66
○参考人(山本恒夫君) いや、そうじゃなくて、例えば学習の中身だとかそういうようなことを決めるべきではないというふうに申し上げているわけで、ここにございますように、それぞれのところで承認を得ると。中身は決まってないわけですね。中身を決めるのは問題ではないかと申し上げているわけで、チェックするところはあるわけでございますね。ケース・バイ・ケースでチェックしていきませんと、時代も変わります、地域もいろいろでございますから、その中身を、例えば幾ら以上もうかるのはいかぬとかなんとかということはできないということで申し上げているわけでございます。
#67
○笹野貞子君 今、大変造詣の深い山本恒夫参考人においてすらこの法律の解釈においてはちょっとわかりづらいという、そういうことをおっしゃるというのは、やっぱりいかにこの法律がそういう重大なところが抜けているかということで、国民はそういうことを非常に知りたい、またそういうことにはタッチしない国家権力のあり方というのをこの目的の中できちっと決めなきゃいけないということですから、まあ私に言わせますと、それほど国民が非常に興味を持ち、また重大なところの条文が抜けている法律というふうに受け取らしていただいても山本恒夫参考人構いませんでしょうか。
#68
○参考人(山本恒夫君) 根本的な問題になってくるようなんですけれども、私はこの法律はあくまで基盤整備のことを決めている、もう最小限のことを決めているものであって、それで今のような中身にかかわるところは、やはり学習する人々とか地域とかそれぞれのところで検討していくべきものではないかというふうに考えているわけでございます。ですから、例えば定義にしましても理念にしましても、今のような基準の額とかそういうものにしましても、これは決めない方がいいんではないか。それはその時代時代でも違うでしょうし地域によっても違うから、それぞれのところで検討していただくというふうにすべきだという考えでございまして、むしろこういう中に入れない方がいいと考えております。
#69
○笹野貞子君 本当に時間がなくて申しわけないんですけれども、だんだん興味がわいてまいりますね。
 というのは、先生の論文を見ますと、ネットワークのところで民間のネットワークは入っていないんです。そうするならば、公的機関のネットワークでさしずめは先生のこの大論文からしましてもそれで私はいけるんじゃないかと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
#70
○参考人(山本恒夫君) 先ほど御指摘いただきました論文の場合には、別の論文もまたあるのでございますが、段階的にこういうようなネットワークは組んでいかなくちゃならないということで、今のは雑誌の論文でございます。ですから、公的な機関のそういうものについて書けと言われたのでそこの部分を書いたわけでございまして、その続きのところを実は今あるところでやってきたのを構想を立てているんですが、その場合には実を言いますと大学も入っているんですが、大学も民間もそういうものも入れたネットワークというふうに次の段階を実は検討しているということでございまして、その一部分だけをとらえますと、ちょっと私どもとしては今のようなことを申し上げたくなるということでございます。
#71
○笹野貞子君 先生の論文を非常に私も楽しみにさせていただきますけれども、先生がこの次の論文で民間もいろいろなところもきちっとネットワークするというわけですから、そのときまで待って法律を出した方が本当はよろしいですね。
 本当のことを言うと、もっとお話をしたいんですけれども、時間がありませんので、続けて北條参考人と山本隆一参考人にお聞きしたいというふうに思います。
 お二人とも現場でいろいろとお仕事をなさる。私も社会教育を今までずっとお手伝いしてきた一人です。そのいろんな体制はまだまだ不備で、どんなに一生懸命やってもなかなか大変です。やはりそれを本当に支えているのは人間の情熱と教育にかけるということです。このお二人の御意見を聞いていて、弱者に対していかにいい学習をするかということなんですが、それは今現場においてその部分がどんなに欠けているかという現状と、そしてこの法律が出たらそれが全部解消してどこがよくなるというふうにお考えか、ちょっと時間がなくて申しわけありません、四十六分までですから、お一人二分くらいということでお願いします。
#72
○参考人(北條秀衛君) 弱者に対してこの法律ができれば何かできるかということについては、基本的にそういう立場にはならないだろうというふうに思っています。先ほども申し上げましたけれども、公的な社会教育のきちっとした基本理念というものを出していかない限り難しい。それは一つは、社会教育法にはきちんと教育基本法の理念を受けてということが入っているんです。この法律にはそういうことも入っていない。あるいは職員の問題、施設の問題、職員も市町村にはきちんと専門職を置くというようにもなっています。それらもこの法律には入っていない。それから施設も、設置するというようなことが全然入ってこない。やはり今一番望まれていますのは、そういう大きなものじゃなくて、身近なところに身近な施設が欲しいというのが多くの人の一番の願いだろうと思いますので、そういうことをきちっと法体系に整備していただきたいというふうに思っています。
 以上であります。
#73
○参考人(山本隆一君) 私は、簡潔に申し上げさせていただきますが、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備という名称からして、対象となる国民の多くがこの法律に対する期待が大きいだけに、中身を見て落胆をし、そして期待を持たせるだけで終わるということでは罪な法律ではないかというふうに考えております。
 以上です。
#74
○笹野貞子君 以上で質問を終わります。
#75
○小西博行君 午前中も私はいろいろ勉強させてもらったし、先ほどから参考人の皆さん方から大変いい中身のお話を伺いまして、感謝を申し上げておるわけであります。
 ただ、私ふと思ったのは、生涯教育という、数年前の例の放送大学ですね。放送大学も実は真っ二つに分かれまして、賛否それぞれの立場から議論をしたことを覚えております。今回のこの生涯教育どころではなくて、何倍も時間をとって議論をしたわけです。私はそのときに申し上げたんだけれども、本当にそのように衛星を中心にして、むしろ都会じゃない、学校のないそういうような地域の中で皆さんがひとしくテレビを通じて勉強できるという概念は非常にいい。ただ具体的に、それが例えば大学卒業の認定をもらうためには大体一日に二時間ぐらいテレビで勉強しなきゃいけない、あるいはスクーリングに行かなきゃいけない。しかし、あの法案は最終的に通りまして、現在、関東一円ということで今日まで試行錯誤されながらやってきております。いろいろ聞きますと、平成九年に衛星の打ち上げを行い、それは多分いただけるというような方向でこれは日本全国にということになろうと思うんですが、非常に私はその成果が上がるんじゃないか。
 そういう面でいきまして、どうもこの放送大学の場合は学際的な雰囲気がかなりあります。そうは申し上げましても、例えば具体的ないろんな専門をやろうと思ってもそういう講義はないわけです。教養学部という、したがって卒業しても教員の資格は取れない。当時は単位の互換性なんかを言っておりまして、各大学との単位の互換性をとることによってそれをうまくクリアできるんだ、そういうようないろんな問題がございまして、私はこの生涯学習の場合は、むしろそういう分野ではなくて、各地域の中にあるいろんな、例えば私が今非常に関心を持っているのは文化財の発見あるいは修復、そして保管、展示。こういうものは各地域の中に相当ございますし、最近では特に遺跡の発掘なんかがございますから、もう膨大な数量が発掘されてくるんではないか。そういう意味で、どうもこの生涯学習というのは中身が少々放送大学の分野と変わってくるのかな、先ほどの社会教育という分野も多少内部的には変えた方がいいのかな、そういう感じを持っておりまして、これは吉崎参考人、いろいろ経験が豊富でありますので両面をよく御存じのようですから、まずその点をお聞きしたい。
 放送大学のいろんな機能の持たせ方あるいはそれと生涯学習との関係、これは山本恒夫参考人、大学の先生でありますからその面、まずこの二つを質問させていただきたいと思います。
#76
○参考人(吉崎四郎君) 放送大学の問題は、先ほど触れましたとおり関東一円ということで限られておりまして私どもは大変不満に思っておりますが、放送教育、その放送講座というものそのものは大変便利なといいますか、生涯学習をする上で大変役立つ効果的なものであるというふうに考えております。私どもは、この聞きっ放し、見っ放しということを避けるためにスクーリング制というのを設けまして、初めにそこに登場される先生方にはまず最初に来ていただいて、最後にはまた別の先生方にも来ていただいていろんな質問をしていただいているわけであります。
 この生涯学習の中で私の今までの経験から一番大切なことは、一方通行にならないということ、これが一番重要なことではないかと思っております。例えば一時間半の時間であれば、一時間はお話を聞いて三十分は話し合うということであります。私、ことしのキャッチフレーズというのは、よく学びよく遊びよく語らうということでありまして、遊ぶというのは要するに遊び心を持つ、好奇心を持つという意味でございまして、放送講座の場合も、ただ見たまま、聞いたままで終わるということのないように、それをちゃんとスクーリングの際に吐き出して、そしてよく語り合うという、こういうところから地域文化の向上とかあるいは町おこしといったような事柄も出てくるんじゃないか。
 富山県の場合、もちろんいろいろ審議会とかあるいは何とか委員会というのがありますが、そういう場合でもさほどいいアイデアとか発想というようなものは各種団体の長からはなかなか期待できないわけでございまして、むしろそういう生涯学習の場で一般の人たちが集まっておられるところで語り合われることの中から大変有益な提言をいただいているわけでございます。放送の場合も、一方通行にならないという点で私どもは一番警戒をしているわけでございます。
#77
○参考人(山本恒夫君) 放送大学と生涯学習の関係でございますけれども、放送大学というのは言うまでもなく学習機会を提供する機関でございますが、生涯学習という場合には学習者の側から学習していくところを見るということで生涯学習という言葉を使っているわけですので、当然放送大学はその機会を提供する。ですから、生涯学習の方からいえば、学習者の方は放送大学をいろいろ活用していくということになろうと思います。
 先ほどから話がありますように、全国ネット化されれば大変これは利用価値が高まるのではないかと思うんですが、特にこれから生涯学習は多様化だけではなくて高度化ということが大きな課題といいますか、学習の高度化ということがクローズアップされてきまして、高度な学習機会を提供するということが重要になってくると思うんですね。そういう場合に放送大学の役割というのは大変大きなものになってくると思いまして、放送大学は必ずしも卒業しなくてもいい、科目履修とかそういうのもございますから、そういう点では生涯学習の機会を提供するという機関の中でも非常に重要な役割を果たすようになってくるのではないか、そういうように私は考えております。
#78
○小西博行君 それでは、北條参考人と山本隆一参考人にちょっとお尋ねをしたいと思います。
 私自身が教員をやった経験もございますので、いつも反省を含めながら思っておるんですが、学校教育というのはやっぱり試験という一つの制度がありまして、点数によって合格不合格が決まる。ところが、一般のこういう生涯教育的なものというのは、恐らくそういうことは全然ないと。ただ、さっきから参考人の皆さん方からお話を伺いますと、大変みんな勉強したいという欲望が満ちあふれているということなんですね。ところが現実は、やっぱり講義をしたり、いろいろ指導したりという具体的な作業が始まると思うんですね。
 そういう場合に、恐らくその講義のテーマも皆さんの要望をいろいろな形で集約してそれを皆さんに供給するように努力されていると思うんですが、しかしそれとは別に、どうしてもこれだけはやっておかなきゃいけない、例えば今国際化という問題をすぐに論じられるわけですが、田舎の方で国際化といいましても、テレビ、新聞はよく見ていると思うんですが、なかなかそこまで動機づけにならないんじゃないか。そういうものも含めて皆さんに満足のいくような教育というのは一体どういうところにあるんだろうと、これは学校教育とはまるで違った部分がありはしないかと、自分が教えているつもりがかえって受講生の方が詳しかったりというような問題もありはしないかと、そういうことを試行錯誤しながらこういう教育が非常に根づいて、しかも興味が持たれて発展する、こういうものが私は非常に大切だと思うので、もしそういう具体的な体験がございましたら、お一人ずつお伺いをしたいというふうに思います。
#79
○参考人(北條秀衛君) ただいまの学校教育には試験があり、生涯教育の方にはという問題がありましたけれども、今望まれている中では、やはり資格認定、資格付与というものも大変多く望まれております。そして、実際にそれらの授業も行われております。これは現行の社会教育法の中でも十分行われるということでございます。
 それから、先ほど文化財の話もありましたけれども、生涯学習にとって大きな目的といいますか、あり方といいますか、やはり一つは学び手と教え手が一緒であるという、ともすると生涯学習ということでだれか教える人が要るんじゃないかというような考えもありますけれども、基本的にはやはり学び手と教え手とが、すべてが学び手ですべてが教え手であるという、このことは先ほどの文化財で言いますれば、地域にある文化財、それは遺跡として発見する場合もあります。そういう中から地域の成り立ち、あるいは昔栄えて今は過疎になっている場合もあるかもしれません。それらの原因を学習していく。そして、地域をより深く見ていくことによって、今先生がおっしゃいました国際的なものも見えてくるんじゃないか。地域を見詰め直せば世界が見えてくる、そういうようなあり方の生涯学習というものを地域に根差して今後行っていくことが理想だろうというふうに私は考えております。
 以上でございます。
#80
○参考人(山本隆一君) 私は、かつて社会教育として発足当初現場におったかかわりで申し上げるわけでありますけれども、二十年代から三十年代にかけて総理府が中心になって生活改善運動というのに取り組まれた時期がございます。これの受け皿としては、社会教育の行政が受けたわけでございます。その中で何から始まったかといいますと、物のない時期は栄養の偏りのないように、それから保健衛生に入って台所の改善、そして結婚の簡素化というような生活全般にわたる取り組みに広がっていきました。
 そういう中で、私は社会教育というのは実際生活に密接に結びつくような中身のものが非常に大切ではないか、このように考えてまいりました。そういう取り組みの中から、世界的に食糧の事情がどうなのか、あるいは衛生保健の関係はどうなのかというふうに自分自身が取り組む中で見えてくる部分が広がっていく、こういうものが社会教育の非常に大きな特徴ではないか、このように考えております。
 満足される教育内容ということでございますけれども、自分の生活で学んだことが役に立つということが非常に満足度の度合いを増すのではないか、ここが社会教育は学校教育にない実生活に即したものが非常に大切にされるゆえんではないか、このように考えております。
#81
○委員長(柳川覺治君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれをもちまして終了いたします。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。本委員会を代表し、厚く御礼申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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