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1990/06/14 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第5号
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1990/06/14 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第5号

#1
第118回国会 法務委員会 第5号
平成二年六月十四日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         黒柳  明君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                安永 英雄君
                矢原 秀男君
    委 員
                下稲葉耕吉君
                林田悠紀夫君
                山岡 賢次君
                北村 哲男君
                櫻井 規順君
                千葉 景子君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  長谷川 信君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁刑事局保
       安部保安課長   平沢 勝栄君
       法務省民事局参
       事官       大谷 禎男君
       大蔵省主税局税
       制第一課長    長野 厖士君
       中小企業庁指導
       部組織課長    藤原治一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題といたします。
 まず、政府から両案について順次趣旨説明を聴取いたします。長谷川法務大臣。
#3
○国務大臣(長谷川信君) 最初に、商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、我が国の株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の規制が形骸化している実情等にかんがみ、このような会社にも適合する法制度を整備するとともに、会社債権者の保護のために必要な措置を講ずるほか、会社の資金調達の方法を合理化する等のため、商法、有限会社法及び社債発行限度暫定措置法の一部を改正しようとするものでありまして、その改正の要点は、次のとおりであります。
 まず、商法につきましては、第一に、株式会社の設立手続の合理化を図るため、発起人の員数の下限の制限を廃止するとともに、発起設立における払い込み等についての検査役の調査を不要とし、また、現物出資及び財産引き受けに関する検査役の調査についても、少額の財産等についてはこれを不要とし、不動産については弁護士の証明を受けることによりその省略を認めることとし、これに伴い、事後設立及び新株の発行の際の現物出資についても同様の措置を講ずる等の改正をすることとしております。
 第二に、株式等に関する制度を改善するため、譲渡制限株式の譲渡の承認請求の手続に関し、単純な譲渡の承認のみを請求すること及び株式の取得者一般から譲渡の承認請求をすることができることとし、株式の譲渡制限の定めをした会社の株主に新株、転換社債及び新株引受権付社債の引受権を認める等の改正をすることとしております。
 第三に、会社債権者の保護を図るため、株式会社に千万円の最低資本金の制度を新設し、資本の増加を容易にするため、株式配当の制度を利益の資本組み入れと株式分割に分離して、利益の資本組み入れのみを行うことも可能とし、また、利益準備金の積立基準を拡充する等の改正をすることとしております。なお、最低資本金の制度につき、その円滑な実施を図るため、既存会社には、改正法の施行の日から五年間はその適用を猶予する等の経過措置を設けることとしております。
 第四に、株式会社の資金調達の方法を合理化するため、優先株式等について機動的な発行をすることができるようにその発行手続を改正し、無議決権株式の発行限度を発行済み株式総数の四分の一から三分の一に緩和し、端株について定款の定めにより端株券を発行しないことができるものとするとともに、端株券が発行されない場合には、端株主に会社に対する端末の買い取り請求権を認めることとし、また、現実に利用されていない無記名式の株券の制度を廃止し、さらに、社債については、その発行限度に関する資本及び準備金の総額と会社に現存する純資産額による二重の制約を純資産額による制約のみに改めることとしております。
 第五に、先般の民事保全法の制定に関連して、会社の社員、取締役、監査役及び清算人の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分に関する規定を準備することとしております。
 次に、有限会社法につきましては、第一に、有限会社の設立及び資本増加の場合の現物出資等に関する検査役の調査等については、株式会社の場合とほぼ同様の手続によることとするほか、有限会社の最低資本金額を十万円から三百万円に引き上げ、出資一口の金額を千円から五万円に引き上げる等の改正をすることとしております。なお、最低資本金額の引き上げについては、株式会社の最低資本金についてとほぼ同様の経過措置を設けることとしております。
 第二に、株式会社と有限会社の間の組織変更を容易にするため、組織変更の決議要件を緩和し、債権者保護手続を合理化する等の改正をすることとしております。
 最後に、社債発行限度暫定措置法につきましては、商法の社債発行限度に関する規定の改正に伴い、社債発行限度暫定措置法による発行限度を会社に現存する純資産額の二倍に改めるとともに、新株引受権付社債についても、同法による発行限度の特例を認めることとしております。
 以上が商法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 続きまして、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、商法等の一部を改正する法律の施行に伴い、民法ほか三十五の関連する諸法律について規定の整備をするとともに所要の経過措置を定めようとするものであります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#4
○委員長(黒柳明君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○北村哲男君 北村でございます。
 最初に、大臣にお伺いしたいと思いますが、これはまず日米構造問題協議に関するものであります。
 今年四月六日に発表された日米構造問題協議の中間報告書の中で「会社法の見直し」という項目がございまして、その中に「商法によるディスクロージャーの制度の拡充及び合併の弾力化等について、今後の法制審議会において検討する。」という項目がございます。この項目については、明らかに今回の商法改正作業を意識して盛り込まれたものだと思います。そして、今月の二十六日から二十七日にこの日米構造協議の最終報告書が出されると聞いております。その中では、この中間報告よりもさらに進んだ具体的内容が盛り込まれるのか、あるいはこの中間報告のままなのか。さらに、いずれにしてもここに掲げられた二つのテーマ、すなわちディスクロージャーの問題と合併の問題について、今後どのくらいの期間をにらんで本当に具体化しようとしているのでしょうか。これからの対米関係、あるいは二年後、一九九二年のECの統合等の国際関係から見て時期的なことについての方針を大臣にお伺いしたいと存じます。
#6
○国務大臣(長谷川信君) ただいまのお尋ねにお答え申し上げます。
 日米構造協議の中間報告において企業の財務内容の開示の強化が指摘をされており、この点につきまして証券取引法とも関連するところでありますが、商法においてどの程度対応することができるか真剣に検討いたしてまいりたいと思っております。
 なお、私どもとしてはこの線で真剣に検討いたしていくつもりであります。
 以上であります。
#7
○北村哲男君 それでは、その内容について若干法務当局にお伺いしたいと存じます。
 まず、ここに掲げられたディスクロージャーの問題につきましては、ここに法制審議会で今後検討するというふうに言っておりますけれども、この中間報告書は四月六日に発表されたものであります。この時期にディスクロージャーの制度の拡充について検討するという将来的なことを言っておられるんですけれども、一方、法制審議会はことしの三月十四日に商法等の一部を改正する法律案要綱を総会で決定しております。この要綱の中には、第一の三の中で、株式会社の計算・公開については貸借対照表等の商業登記所における公開ということが既に法律案要綱として決定されております。
 日米構造協議の中間報告書段階では既に存在していたこのディスクロージャーの制度について、「今後の法制審議会において検討する。」とはどういうことなのかということ。すなわち、言ってしまえば、既にこの段階では法案としては現実性がないものとあきらめてさらに今後の課題とするというふうに挙げたのか、あるいはそのようなことをどのように意識してこういうふうな中間報告になったのか、その点についてお伺いしたいと思います。
#8
○政府委員(清水湛君) お答え申し上げます。
 まず第一に、今回の法制審議会における商業登記所における計算書類の公開でございますけれども、これは法制審議会の答申におきまして、資本金三千万円以上、負債総額五億円以上の会社、これはもう大会社を含めましてすべての会社につきまして原則として貸借対照表と損益計算書を登記所に提出して登記所で公開する、しかし資本金五億円未満の、つまり五億円以上の大会社を除く五億円未満の会社につきましては、当分の間、貸借対照表だけを登記所に提出していただく、こういう内容のものになっているわけでございます。
 しかしながら、この日米構造協議でアメリカ側から提示されましたいわゆるディスクロージャーの問題は、単に商法の規定による貸借対照表あるいは損益計算書を一般に官報等に公告するほか、さらに登記所に公開するというようなその程度のものではなく、もっと詳細な財務内容を公開すべきである。アメリカでは連邦証券取引委員会、いわゆるSECの強力な監督規制のもとに企業の詳細な財務内容の開示がされているというふうに言われているわけでございますけれども、日本におきましても、特に証券取引法の適用のあるような大会社につきましてはもっと詳細な財務内容の開示をすべきである、そういうようなことができるように証券取引法あるいは商法で手当てをすべきである、こういうような議論がアメリカ側からされまして、日米構造協議におけるこの中間報告に盛られた事項というのは主としてそういう大規模会社を念頭に置いたディスクロージャーであるというふうに私どもは理解しているわけでございます。
 したがいまして、法制審議会における答申、これはディスクロージャーという点においては相つながるものがあるわけでございますけれども、ややそれより一般的な、中小企業をも対象とし得るような極めて基本的なディスクロージャーというものを考えているという意味においてかなりの質的な違いがあるというふうに言えるのではないかというふうに思っております。
#9
○北村哲男君 そうしますと、今回の法案では今言われたよりもさらにさらに後退して、単に登記所における公開制度も改正案として盛り込まれてないということですね。そうすると、今後の日米構造協議とかそういう問題の中で大規模会社だけでなくて中小企業も含めた公開制度も一緒に検討していかれるということになると思いますが、さらに私は、ここで単にディスクロージャーの制度とそれから合併の問題だけでなくて、この商法の一連の改正作業の中で大きな論点というか柱であります支配株主の責任問題とか計算、会計監査ないし調査人制度等の問題についても当然一緒に検討されていかなくちゃならないと思うんですけれども、その辺が外されて二つの問題だけに限られておるのはどういうことなんでしょうか。
#10
○政府委員(清水湛君) 今回の商法の改正は、実は昭和四十九年に商法の大改正をいたしたわけでございます。この改正は主として大会社に会計監査人、つまり公認会計士あるいは監査法人による外部監査を導入するという制度を初めて導入したものでございます。その際に、当参議院の法務委員会あるいは衆議院の法務委員会においてもそうでありましたけれども、会社法制の抜本的見直しと申しますか、一面において会社法というものが非常に形骸化しておる、大会社から中小会社までさまざまな会社がある、こういうような会社の実態に照らして大小会社の区分等の会社法の抜本的な見直しをしなさいという趣旨の附帯決議をいただいたわけでございます。そういうような附帯決議に基づきまして、昭和五十年から法務省におきましては商法のいわば根本問題につきまして改正作業を続けてまいったところでございます。そのいわば第一陣といたしまして、昭和五十六年に主として大会社を対象とします株主総会制度あるいは株式制度等についての大きな改正をお願いいたしたところでございます。それに引き続きまして大小会社の区分と小規模会社等についての改正作業を続けてまいったという経過があるわけでございます。
 今回の改正は、昭和五十六年の改正を受けまして主として大小会社区分等を中心とすることに焦点を当ててこの改正作業を進めてまいったわけでございますが、いわばこの大小会社の問題点のうちの一部だけを取り上げるような形でこの法律案を作成いたしましたためにやや中途半端な印象を与えるというようなことにもなっていようかと思
うわけでございますけれども、そういう大小会社問題のいわば一部についての法律改正であるというふうに申し上げていいのではないかと思います。
 先ほど日米構造協議でも合併の問題が今後検討課題として取り上げられているということ、私ちょっとその点についての説明を失念いたしましたけれども、実は合併の問題につきましても、四十九年改正を受けまして商法の根本改正事項に係る問題として問題点が指摘されているわけでございます。合併あるいは企業分割の問題があるわけでございますが、この問題につきましてはまだ法制審議会においてもほとんど検討はされていないというような経過がございますので、この日米構造協議の過程におきましてもディスクロージャーの問題と企業の合併等の問題が今後の検討課題として指摘された、こういう経緯になっているわけでございます。
 このような経過、過程の中で、今後商法についてはいろんな問題をさらに引き続き検討していかなければならないわけでございますが、そのような過程の中で今回の改正案が作成されたという経過になっておるわけでございます。
#11
○北村哲男君 ただいま合併の問題についても若干触れられましたけれども、今の商法の中にも合併の項目については細かい規定がたくさんございます。それを今後どういうふうに変えていこうとおっしゃるのか、そのイメージ、それを簡単に御説明願いたいと思います。
#12
○政府委員(清水湛君) 合併の問題については、まだ企業の大規模化とかあるいは大規模化の逆に合併の反対である分割手続とか、いろんなことについての法律論が展開されているという面があるわけでございますけれども、実務界あるいは私どもの立場あるいは法律実務家の間におきましても、具体的な問題点提起とかイメージづくりというようなものはまだされておりませんので、ちょっと方向づけについて今の段階で申し上げるというふうなことは差し控えさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
#13
○北村哲男君 それでは、方向はいいんですが、一、二点でいいんですけれども、現在のやり方のどの辺が問題になっているんでしょうか。
#14
○説明員(大谷禎男君) やや技術的な問題にわたりますので、私の方からお答え申し上げることをお許しいただきたいと思います。
 現行合併法制、今局長からもお答え申し上げましたとおり、まだ具体的な検討作業には着手していないのでございますけれども、さしあたりの問題点として私どもが意識しておりますところは、まず現行の合併法制の中で財産の承継手続、すなわち吸収合併の場合ですと消滅会社の財産が吸収会社に承継されるわけでありますけれども、その財産の承継の手続に関する規定がほとんどないという点が非常に問題でありまして、実務界でもどのように消滅会社の財産を承継するのかという点については困っておられるという事情があるようでございます。したがって、まずその点の整備をしなければならないだろうというふうに考えております。
 それから第二点には、我が国の合併手続が現在の商法に基づいて進められますと非常に時間がかかるということが指摘されております。平均的に申しましても半年はかかるし、場合によりますと一年はかかるというようなことを言われております。その原因はどこにあるかと申しますと、例えば、我が国の合併には二つの合併の態様がありますが、いわゆる吸収合併の場合でございますと合併報告総会というような株主総会を開かなければならない、あるいは新設合併の場合でありますと創立総会というようなものを開かなければいけない。この株主総会を開くということはかなりの時間的な手続を要するということになりますが、なぜこのような総会を開かなければならないのかということについては必ずしもよくわからない。ひょっとしたらこのような手続は省略しても差し支えないのではないかというようなことが意識されておりまして、その点の改善も一つの問題であります。
 さらにつけ加えますと、現行の会社法におきましては、合併をすることができる会社の組み合わせあるいは合併をした後の会社の態様についてかなり厳しい制限を設けております。このような制限が合理的かどうかというようなことも問題点であろうかと思います。
 以上、このような点を含めまして、今後法制審議会で本格的に検討をお願いしたいというふうに考えているところでございます。
#15
○北村哲男君 一九九二年にヨーロッパの自由諸国はECの加盟国として経済的に統合されることになって、各国はその統合に向けて法律の整備を急いでいると聞いております。この詳しい内容は後日に譲りたいと思いますけれども、会社の従業員の保護と第三者の保護のために物的有限責任会社の会社公開を強制しているということ、特に今後激増する国際取引において他国の債権者を保護し取引の安全を確保するためには、会社の正味財産を正確にだれにもわかる形で公開する以外にないということは大体の合意事項であると思います。そして、これらの公開された計算書類などが客観的なものであるということの担保として適正な監査制度の確立が急がれているということも、これも世界の流れであろうと思います。
 この一九九二年という時期、そして先ほどから言っております日米構造協議において早急に日本の企業の透明性が求められているのが今の国際情勢であると思いますけれども、これと今回の商法改正、流れを一つにしておりますが、具体的内容は何か随分離れている、ちぐはぐというような感じがするんですけれども、その流れについて法務省当局は会社法等をどのように整備していこうとしておられるのか、その点について先ほどから述べておられますけれども、もう少しまとめて述べていただきたいと存じます。
#16
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、EC会社法案等におきましても企業内容の開示ということが一つの非常に重要な問題になっているということは私ども承知いたしておるところでございます。そしてまた、ほとんどすべてのヨーロッパ諸国におきまして、今回は私ども法案に盛り込んでおりませんけれども、法制審議会の答申で示されましたような登記所における計算書類の公開ということが行われているわけでございます。そういうような諸外国の法制というものを、私どもはこれから国際化社会というものを迎えましてこれは当然参考にいたさなければならないというふうに考えておるところでございます。
 それとともに、振り返って我が国のこの会社法の運用の実態というものを考えてみますとき、株式会社の大多数、百二十六万社ある株式会社のうち商法で義務づけられておりますところの決算書類の公告というようなものを現実に履行している会社は一%ないし二%程度にとどまるというような実態、九八%から九九%の会社は決算書類の公告という行為をしていないというような実態。そういう実態を踏まえまして、少しでも企業の財務内容を公開するという方向にその歩を進めるにはどうしたらよろしいのかということから、実は長年にわたってこの計算書類の公開制度の研究、検討をしてきたわけでございます。
 大体ヨーロッパ諸国の伝統が登記所公開であるというようなことも先ほど申しましたように踏まえまして、法制審議会の答申では登記所公開の制度をこの際導入すべきであるということになったわけでございまして、私どもも基本的には、そういう制度は今回の法案では盛り込まれておりませんけれども、できるだけ早い機会にやはり実現すべきであるというふうに考えている次第でございます。
#17
○北村哲男君 企業には国境はないと思います。EC統合あるいは日米構造協議で問われているものは企業の客観性あるいは透明性の確立であると思うんですが、これには大企業も小企業もないし、日本のこれからの企業は小さい企業でもどんどん外国に出ていく、国際取引をするということでは共通の課題を抱えておると思います。
 私は、今回の改正案は、昭和六十一年五月の改正試案からことし三月の法制審の決定、そして今回の改正法律案の一連の流れを見ますと、この理想というか目的は一応わかっているものの、第一歩を踏み出したとは到底言えないというか、いまだ一歩を踏み出したとも言えるか言えないかという非常に歯がゆいような感じがするんです。もちろん、現実に存在する多くの日本の会社によって日本の経済が営まれ今日の繁栄が築かれたという事実があり、その現実を無視した形の会社法の改正をすることはできないと思います。しかし、その現実が経済社会の本来あるべき姿、特にますます狭くなっていく国際社会の中にあってあるべき普遍的な形とかけ離れているとすれば、その現実を少しでもあるべき姿にする努力をするのが立法府あるいは政府の使命であると思います。
 今回の改正案は、そのような現実と理念のバランスの追求であるというふうに言われておりますし、また私自身もそう思います。また、私は現在社会党に所属しておりますけれども、衆議院におきまして既に反対の態度を表明しておりますが、この社会党の中でもこの理念と現実の二つのバランスの追求をめぐって激しい意見の対立もありました。私の立場あるいは態度も、この理念の追求かあるいは現実重視かという点で必ずしも定まってはおりませんけれども、そこでしばらくこれからの話は立法論にわたるかと思いますが、各論についてこれから聞いていきたいと存じます。
 まず、最低資本金の問題、今回最も大きな問題になっておるんですけれども、この最低資本金制度は有限責任の基礎的条件であると普通に言われておるんですが、日本の場合は、今まではこの基本的な制度を採用していなかったことは確かであります。そして今回、初めてその最低資本金制度を取り入れようとしておられるわけですけれども、その制度がなかったために生まれた弊害というか、それはどのようなものがあるのか、具体的に幾つか挙げていただきたいと存じます。
#18
○政府委員(清水湛君) 御承知のように、有限会社につきましては昭和十三年に有限会社法という法律ができまして、その当時の最低資本金が一万円というふうに定められていたわけでございます。昭和十三年当時の一万円というのは、今日の貨幣価値に換算いたしますと、相当巨額なものになるというふうに私ども考えられるところでございます。当時におきましても、株式会社というものは有限会社をさらに上回る規模の会社組織であるという想定が当然されていたというふうに言われているわけでございますけれども、株式会社についてはそういうような意味での最低資本金制度というのは当時においても設けられておらなかったということになっております。戦後、昭和二十六年の改正の際に、有限会社についてはインフレ等を考慮いたしまして、最低資本金が十万円に引き上げられましたけれども、その際も株式会社については最低資本金制度が導入されなかったという結果になっているわけでございます。
 その結果、どういう状況が生じてきたかと申しますと、例えば株式会社を設立するには発起人が最低七人必要で、発起人は最低一株の株を引き受ける必要があるということでございますから、極端な話でございますけれども七株発行すればよい。当時は五十円でもよかったわけでございますから、三百五十円あると株式会社がつくれる、こういうような話がまことしやかに伝えられるというようなことがあったわけでございますが、そのようなことの結果といたしまして、多数の小規模会社というものが生まれました。小規模会社が生まれる背景には節税その他いろんな問題があろうかと思いますけれども、しかしながら会社法という面から見ますと、そういう極めて小規模な会社、家族的な事業を法人化するというような形での会社も当然あるわけでございますが、そういうものが生まれる。しかしながら、そういう会社というのは、ほとんどと申しますか、すべてと言っていいかと思いますけれども、会社法が予定しているような会社法の諸規制というようなものを、これはもうほとんど守らない、一〇〇%守らないというような結果に現実の問題としてなってくるわけでございます。
 そういうような会社が、例えばいろんな取引上のトラブルが生じまして、訴訟等が起こるというようなことになりますと、会社の実体がないわけでございますから、取引をする相手方としてはどういうふうな形で責任を追及してよいかわからないというようなことにもなってくる。そのために、委員御承知のように、例えば判例の面におきまして法人格、形式的には法人格があるわけだけれども法人格を否認するというような判例法理が形成される。あるいは、本来有限会社でありながら、取締役個人の責任を追及する、実質無限責任会社というような扱いを法律、裁判面においてせざるを得ないというような現象が多々生じてきたというふうになるわけでございます。つまり、相対的に申しますと債権者、具体的な取引の当事者である債権者のみならず、これから取引をしようとする債権者、その他もろもろの会社をめぐる第三者にいろんな形で損害を与えるというような現象が出てまいったというように思われるわけでございます。
 そういうようないわば現象を小規模、閉鎖的な会社の形骸化と申しますか、そういうような形で呼んでいるわけでございますけれども、そういう形骸化現象が極めて顕著になってきたということが一つの例として指摘することができるのではないかというふに思うわけでございます。
#19
○北村哲男君 最低資本金制度を採用している国、あるいは採用してない国というのは世界各国にあると思います。大体、日本が比較すべき、あるいは対象にすべき国は先進資本主義諸国ということになると思うんですが、資料集の中にも幾つかございます。その中で、最近はアメリカ、イギリス、フランス等が多く比較の対象にされているんですけれども、NIES諸国と申しますか、韓国あるいは台湾等のこれから日本が一緒にやっていこうという国々についても比較の対象にすべきだと思いますが、特に台湾等は抜けておるようですけれども、もしおわかりでしたら、どういうふうな制度になっておるのか、あるいはその辺の諸国について教えていただきたいと思うのでございます。
#20
○政府委員(永井紀昭君) 今台湾の最低資本金制度についてお尋ねがございましたが、台湾では会社の払い込み最低資本金は原則といたしまして株式会社が百万元ということでございまして、日本円で約五百四十万円でございます。それから、有限会社が五十万元、日本円にいたしまして約二百七十万円でございます。ところが、台湾におきましては業種によりましてさらに過重的にといいますか、非常に高額の最低資本金を求めております。例えば国民住宅の建設業になりますと、台湾元にいたしまして二千万元、日本円で約一億八百万円でございます。それから、商業ビルの建設業ということになりますと三千万元、日本円にいたしまして一億六千二百万円。さらに、自動車製造業でございますと一億元、日本円で五億四千万円。あるいは観光ホテル業でございますと、特に国際観光ホテル業でございますと四千万元、日本円にいたしまして二億一千六百万円ということになります。また、投資専門業等におきましては五千万元、すなわち日本円で二億七千万円という、業種によりまして相当高い最低資本金を求めているというそういう状況がございます。
#21
○北村哲男君 多くの国が最低資本金制度を設けているということはわかりましたが、肝心のアメリカの場合は最低資本金制度を採用していないようですけれども、そしてその結果かどうかわかりませんが、会社数というのがほかの諸国に比べて際立って多いですね、日本の倍ぐらいになるんでしょうか。この表によりますと、二百九十九万九千社。これは株式会社だけの記録かどうかわかりませんが、日本は二百七十万ぐらいですか、株式会社と合わせて。そういうふうに記録が出ているんですが、アメリカについて最低資本金制度を設けることの有無が問題になっているのかどうかということと、それから最低資本金がないことに対
する資本充実の原則、会社法における一つの理念でありますが、そういうもの、あるいは取引の安全等についてはどのような配慮がなされているのかということについて若干お伺いしたいと思います。
#22
○政府委員(永井紀昭君) ヨーロッパ諸国におきましては、いずれも最低資本金制度が定められておりますが、委員御指摘のとおり、アメリカにおきましては最低資本金制度が採用されておりません。ただ、州によりましては営業開始条件といたしまして一定程度の資本金といいますか、保証金みたいなものの払い込みを求めているところもあるようでございますが、これとて相当低額なものだと言われております。
 アメリカでは、現在最低資本金制度の採用については直接的な声は上がっていないようでございます。ただ、これは若干の補完作用があるようでございまして、非常に民間の信用情報の発達あるいは情報公開というものがいろんな各種法令で要求されておりまして、それで非常に経理内容等がいわばディスクロージャーといいますか、そういうものが非常に発達しているということから補完作用があるようでございます。
 それから、委員御承知だと思いますが、アメリカにおきましては非常に会社関係の訴訟というものが徹底してやられるようでございまして、非常に訴訟提起の数が会社法をめぐってたくさんありまして、それがいわば補完作用をなしている一つでもあるというような、こういう説明があるようでございます。ただ、そのほか税制等の関係もあるようでございますが、アメリカで最低資本金制度そのものが余り問題にされないのは、むしろ情報公開を中心とした非常にクリアなといいますか、透明度の高い会社制度ということで、何か余り最低資本金がなければならないということまではいってないんではないかというふうな推測をしているところでございます。
#23
○北村哲男君 もう一つこの表について伺いたいんですが、イギリス、西ドイツ、フランス、韓国あるいは台湾等ですが、最低資本金というのはもう一たん決まったらずっと長い間そのままになっておるのか、あるいは経済の流れというか、そういう経済の膨らみに応じて大きくしておるのか、その期間とか、あるいはスパンというか、そういうものについてはどのような資料をお持ちなんでしょうか。
#24
○政府委員(永井紀昭君) やはり社会経済情勢の変化に伴いまして、若干スパンは長うございますが改正をしているようでございまして、例えばこの参考資料に挙げました三十二ページの「主要各国における株式会社等の最低資本金額」でございますが、ここでも実は申しわけございませんがフランスが既に変わっております。フランスにおきましては、既に一九八一年に株式会社につきましては五十万フランから百五十万フランへ値上げがされております。これは古い資料で掲げまして恐縮でございます。それから、公募しない場合の株式会社が十万フランとありますが、これが二十五万フランに上がっております。それから、有限会社につきましても二万フランから五万フランに上がっております。フランスの株式会社制度及び有限会社制度が一九八一年に改正されておりまして、参考までに株式会社百五十万フランという額は日本円にいたしますと約四千万円でございます。
 以上でございます。
#25
○北村哲男君 諸外国の例を見ましても、会社制度としては、一応最低資本金というものが会社制度のためには必要であるんだろうという気はするんですが、ただし最低資本金制度そのものを見ますと、私どもが常に問題にしております物的有限会社にあっては、取引の安全あるいは債権者保護あるいは従業員の保護のためには、その担保となるべき会社の実質上の財産と、それから会計関係書類の公開及びその適正を担保するための監査制度等々、そういうものが実質的な担保になるというふうに考えます。さらに、若干修正的な考えになると思うんですけれども、支配株主の法的責任等を強くすることによって取引の安全なんかが図られるということは当然わかるんですが、しかし最低資本金制度というものは必ずしもそういう取引の安全等について実質的な結びつきがないんではないかという意見も多くあるようですし、また衆議院の中でもかなりその辺が質疑の集中したあたりだと思うんですけれども、その辺について最低資本金を導入をしようという実質的な理由ということについては法務当局はどのようにお考えなんでしょうか。
#26
○政府委員(清水湛君) 株式会社における資本金というものの機能でございますけれども、結局企業は純資産として少なくとも資本金額に満つる財産は会社内に保持しなければならない、この純資産の存在形態は現金でもよろしいし不動産でもよろしいし、あるいは債券でもいいということになるわけでございますが、そういう財産を評価いたしまして、そういう評価額の総額から負債を差し引いたいわば純資産額が資本金額以下であってはならない、こういうことになっているわけでございます。これはあえて申し上げるまでもないわけでございますけれども、そういう形で資産を保持すべき義務を課す原則として資本充実の原則とか資本維持の原則ということが言われるわけでございます。
 他方、企業というのはこれは物的有限責任会社でございますから、第三者の方から見ますと、会社に責任を追及するということになりますと最後の引き当て財産となるのはこれは会社の財産だけである、こういうことになります。したがいまして、そういうような観点から考えますと、会社が保持すべき純資産額というのは多ければ多いほどよろしいということになるわけでございまして、その保持すべき基準である資本金額というのはできるだけ高い方がいい、少なくとも一定の基準額を上回るものでなければならないという意味において最低資本金制度というものは意味がある、こういうふうに思うわけでございます。
 ただしかし、御指摘のように、例えば会社が非常に経営が悪化いたしまして倒産をするということになりますと、これは例えば資本金が百億でも資本金が百万円でも、結局弁済していただけなかった債権者は取りはぐれてしまうという意味において債権者は保護されないという極限状況というものを考えますと、最低資本金制度は余り意味がないということにもなってくるわけでございますが、そこまでに至らない、会社が通常の状態で継続しているという状態を考えますと、やはり取締役といたしましては、純資産額が少なくとも資本金に満つるまでは会社にこれを保持されるように努めなければならないし、あるいはそれを超えて配当をするというようなことがもしあるといたしますと、会社債権者は取締役に対して違法配当分を会社に返せというような請求権が商法二百九十条の二項でしたか、規定されておりますけれども、会社債権者といたしましてもその資本金に少なくとも満つるまでの純資産額を会社内に保持すべきように請求することができるというような権利は認められておるというようなことからも明らかなように、やはり一つの会社に保持すべき純資産額の最低限を画することによりまして、会社の経営というものを正常化していくと申しますか、債権者保護の見地から常にチェックしていくというような意味において、非常に債権者保護のための役割を果たすことになるのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。
#27
○北村哲男君 大体わかりましたが、もう一言申しますと、今のお言葉でもあるんですが、最低資本金制度は確かに多ければ多いほどいいという一つの考えがあるんです。今後もこの問題については検討を重ねていかれると思うんですが、今後の流れとしまして、多ければ多いほどよいというふうな考えで臨まれるのか、あるいは最低資本金制度について他の発想で臨まれるのかという点についてはいかがでしょうか。
#28
○政府委員(清水湛君) 最低資本金制度の導入、あるいはその金額をどうするかというようなことにつきましては、私ども、少し大げさに申します
と、戦後商法の一つの重要な課題であって、いろんな時点でいろんな角度から議論されていたというふうに理解しているわけでございます。しかしながら、委員最初に御指摘になりましたように、理屈はとにかく、我が国の会社法は最低資本金制度というものを持たなかったわけでございます。そういうような状況の中で、諸外国の諸情勢等を考えまして今回最低資本金制度を導入するということであり、またそのことを前提として金額をどうするかということについていろんな議論があったわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、そういう単なる理念だけではなく、従来のいろんな議論の経過というものを踏まえまして、今回この最低資本金制度がこの法律案どおりに導入された場合には、やはりこれは相当期間このような形で運用されるべきものであろう、直ちにこれを改正するとか引き上げるというようなことは、そう私は軽々しくやるべきことではない。やはりいろんな経済情勢の変化、著しい変化があればまた別でございますけれども、当面はこの改正案の中身、これが実現した暁におきましてはそれに沿って相当期間運用すべきものであろうというふうに私どもは考えております。
#29
○北村哲男君 若干細かい問題に入ってまいりますが、今度の改正法案で附則というところがございます。これは、向こう五年間に最低資本金を上げるべしということで、その上げる手続等に関する附則なんですが、まず附則一条によりますと、もしこの改正案が公布された場合にはその日から一年以内に施行するということがまずあります。そして、施行後五年間はこの法律は適用しない、五年間は猶予、今のままでよいということになります。そして、五年たっても増資や組織変更をしない会社はそのまま解散とみなされるのではなくて、五年経過後のいつかある日、官報によって本日より二カ月以内に組織変更しないと解散とみなしますというふうな公告を法務大臣がされるというふうな規定になっております。そして、二カ月が経過したときに解散したものとみなされるということになります。
 そこで質問なんですが、五年経過後、官報で解散の予告の公告をするまでの期間は一体どのくらいを予定しているのか。この辺のことはどのようにお考えですか。すぐにするのか、あるいは一定の期間、たくさん出てくると思うんですけれども、それを順次やっていかれる予定なのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
#30
○政府委員(永井紀昭君) こういった手続につきましては、既に商法の四百六条の三の休眠会社の整理の仕方というので私ども昭和四十九年以来登記所におけるやり方というのは少しなれておりまして、今回のみなし解散につきましては、そのやり方につきまして公告等の日は事前に準備をしておきまして直ちにやるということに予定しております。
#31
○北村哲男君 今、休眠会社の話が出ました。休眠会社というのは、これは商法四百六条の三にありますが、これはどんどん実際にやっておられますか。その辺の実態を教えてください。
#32
○政府委員(永井紀昭君) この休眠会社の制度は、昭和四十九年の改正に始まりました。四十九年以降、五年置きに実際の作業をやっております。この作業は、本当は理屈を言いますと何も五年置きにやる必要はないわけでございまして、毎年やってもいいんですが、やはり登記所側の繁忙度その他で五年置きにまとめてやるという手続でやっておりまして、実は昨年の秋にも一斉にやりました。
 昨年度やりました結果でございますが、株式会社だけでございますが、株式会社につきまして全体で約八万社ぐらいがみなし解散ということにされております。通知をいたしまして返答があったりレスポンスがあったり、それから、いやまだやっておりますよということで反応があった会社も一万数千社ございました。そのような状況でございます。
#33
○北村哲男君 株式会社に限っては百二十六万なんですけれども、そのほとんど、一千万未満というのは八十三万五千件からあるんです。この中のどれくらいが実際に組織変更されるのかどうかわかりませんが、実態調査はもうされておると思うんですけれども、どのくらいが一斉にこういう事態になっていくのかということはどういうふうに予想しておられますか。
#34
○政府委員(清水湛君) 株式会社については一千万未満の会社が約八十三万社あるわけでございますけれども、私どもは大体二十万社は実際上はもう営業の実体を失った、いわゆる形だけ存在している会社ではないかと各種の資料から推計いたしております。
 それから、有限会社につきましては三百万円未満の会社というのが約七十万社ぐらいあるわけでございますけれども、有限会社には休眠会社の整理という手続がございません。株式会社だけについてしか商法四百六条の三の規定が適用になりませんので、有限会社については整理というものは行われていない。そういうようなことといろんな資料から推測しますと、七十万社のうち約三十万社は完全にこれはペーパーカンパニーと申しますか、経営者も場合によってはもう亡くなって、何もしていない、登記簿だけが残っているというような会社ではないかというふうに各種の資料から推測いたしております。
 そういたしますと、結局有限と株式会社、合計約百万社ぐらいが今回の商法改正によって影響を受けるのではないかというような推測をいたしております。
#35
○北村哲男君 直ちにできるとおっしゃるんですから、それを信用する以外ないと思います。
 ところで、今ペーパーカンパニーという話も出ましたけれども、最低資本金がないことによって、その一つの病理現象だと思うんですけれども、まず会社を簡単につくっておいて、幾つか例えば商標を確保するためとか、それからある業種を確保するためなんかにどんどん仮につくって持っておいて、あるいはトンネル会社のためにわざわざつくるとかということもあると思うんです。そういうものと実際に稼働している、現実に社会的存在として評価できる会社というのは、株式会社だけに限って結構ですけれども、大体どういうふうに実態を把握しておられるのかお伺いしたいと思います。
#36
○政府委員(永井紀昭君) そういうような区別は登記所の立場ではなかなかわかりません。それで、資料にもございますとおり、私どもはいろんな税務統計なども参考にしながらいろんな推測をしているわけでございまして、ただいま局長が答えましたとおり、株式会社の方は休眠会社の整理を五年置きとはいえやっておりますので、比較的その率は低いんだろうと思っております。ただ、今回も有限会社の役員につきまして任期制を定めることによって結果的に有限会社の休眠会社を整理することができるのではないかという議論が法制審議会でも煮詰まっておりましたが、今回は提出しておりません。したがいまして、有限会社につきましては相当程度休眠会社が多いのではないかというふうな推定をしたわけでございます。
 それからなお、詐害的といいますか、やや設立の乱用的な会社というのも、これも登記所でありますとか裁判所等におきまして一部そういう事例を見聞きするということでございまして、必ずしもそれが実数としてどの程度あるかということも把握しておりません。ただいま委員御指摘のありましたように、例えば非常に小さな資本金で会社をつくっておきますと、これはある特定の市町村、行政区画の中では同一商号あるいは類似商号というものを使用することができないわけでございます。すると、ほかのまじめにつくろうとする会社が同じような、類似だということになりまして、それでペーパーカンパニーが新設のそういう会社へ行きまして、いわば和解金をせしめるというようなそういう現象も我々は若干見聞きするわけでございまして、そういったような設立の乱用といいますか、そういう事象もありますが、それは我々がたまたま知見するという程度でございますの
で、その率がどの程度であるかという実態の把握は必ずしもできないというところでございます。
#37
○北村哲男君 附則の五条三項を見ていただきたいんですが、この五条三項によりますと、「登記所は、その株式会社に対し、その公告があったことの通知を発しなければならない。」とありますけれども、実際今のお話を聞いておりますと、休眠会社あるいはもうほとんど役に立たない、捨ててしまうような会社に通知を発したところでその通知はまず届く可能性はないと思うんですけれども、これは特にどういうことで意味を持っておるんでしょうか。
#38
○政府委員(永井紀昭君) この通知は発信主義でございまして、登記簿上わかる住所にあてて発信せざるを得ないわけでございまして、これを一々すべて実態調査あるいは追跡調査をしてまでやるということは考えておりません。先ほど申しました我々が従来やってきておりました休眠会社の整理のときもこういう手続をやっておりまして、それでも何割かの会社は現実にレスポンスがあるわけでございまして、やはり登記簿上の住所であるとはいえ、できるだけそういう手を尽くすという姿勢が重要ではないか、かように思っております。
#39
○北村哲男君 確かに、形式論、法律論としては発信主義で足りると、ここに書いてあるだけというふうな形になるんですが、今までの休眠会社の整理の問題と今回は相当内容が違うというふうに考えます。
 というのは、場合によっては実際にまじめにやっておる会社が、抽象的に言いますと法律で一方的に財産権が奪われるといいますか、会社が急になくなってしまう、強制的に解散させられてしまう、こういう重大な問題でありますので、単にこういう法律に基づく形式主義ではなくて、こういうふうになるということは相当実質的に周知徹底をして注意を促す必要があると思いますけれども、それはいわゆる法律論でなくて実際――ちょっと話は飛びますけれども、ここの場で、この前の法務委員会では入管法の問題で周知徹底がいいかげんだったというために大混乱を起こしたということがありますので、その辺はどのようにお考えなんでしょうか。
#40
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、五年間という期間はございますけれども、その間に対応する何らかの措置を講じませんと解散したものとみなされてしまう会社が出てくるということになるわけでございます。そういうようなこと、つまり知らないうちにそういうような結果になってしまうというようなことがございましても、さらに三年間はみなし解散をされましても会社継続の決議をすることができるというような規定がまた別にあるわけでございますけれども、それも気がつかなかったということもそれはあり得ないことではないと思います。
 そういう意味におきまして、私どもこの五年間の期間内に少なくとも現実に活躍しております企業がそういうチャンスを失するというようなことがないようにPRその他については十分の配慮をしてまいりたい。恐らく登記所を中心としてそのようなPRをするということになろうかと思うわけでございますが、そのほかにも今回の法律の改正の審議の過程におきましては各種の中小企業の団体の代表者も委員として御参加になっておりますので、そのような団体を通じてこのPRをしていただく。中小企業団体連合会とか商工会議所とか各地の商工会等の連合会の代表者が委員に参加していただいておりますので、そういうような方、団体を通じてまた周知徹底を図るということもやはり考える必要があるというふうに思っているところでございます。
#41
○北村哲男君 今の点はいずれはっきりさせていかなければならないということだと思いますが、次に附則六条の二項によりますと、解散の公告期間の終了後、すなわち解散とみなされた日から三年以内に限り、商法三百四十三条の決議、すなわち発行済み株式の総数の過半数が出席し、その三分の二の多数で組織変更ができるという規定がございます。一方、株式会社から合名あるいは合資会社への組織変更は、これは単なる株主総会の決議によってできる、すなわち発行済み株式総数の過半数の出席とさらにその過半数で可能だというふうに理解できます。そしてさらに、有限会社法の六十四条一項による株式会社から有限会社への組織変更は、これは商法三百四十八条の特別決議として総株主の過半数にして発行済み株式の総数の三分の二の多数で可決するというふうにしてあります。
 そこで、どうして両者に決議内容の差を設けたのか、そしてどのように両者がこれは違うのか、その辺の説明をしていただきたいと思います。
#42
○説明員(大谷禎男君) 今の御指摘、私どもの方で誤解をしているかもしれませんが申し上げますと、附則の第六条の第二項で解散したものとみなされた会社が継続をすることができますが、その継続の要件というのは商法三百四十三条の決議、すなわち過半数が出席してその三分の二以上という通常の特別決議とされております。これは現行商法における会社継続の決議要件と同じ取り扱いをしたということでございます。
 一方、組織変更ということになりますと、これは会社の組織の同一性を維持して会社を継続するということにとどまらず、会社の組織形態が変わるということになります。現行法におきましては、株式会社から有限会社への組織変更につきましては、総株主の全員の一致が要るということにされておりますけれども、それを若干緩和いたしまして現在の商法の決議要件の中で最も重い決議、すなわち商法三百四十八条の株式の譲渡制限の定めを設定する場合の決議要件に倣った要件を設定したということになるわけでございます。
 それからまた、猶予期間内に特別の手続として特例的に認められる組織変更といたしまして、株式会社及び有限会社から合名会社、合資会社という人的会社への組織変更がございますが、これも今お話ししました商法三百四十八条の特別決議によって組織変更することができる、こういう構造になっているわけでございます。
#43
○北村哲男君 こういうところで議論をしても条文が入り組んでなかなか理解ができないことで、また私も若干考えの違いというか、認識違いがあるのかもしれませんが、さらにもう一つお伺いしたいのは、株式会社から有限会社への組織変更は財産権としての株主の権利として見ると余り差がない、すなわち、一方株式会社は転々譲渡できる有価証券であり、有限会社は単なる持ち株、持ち分というそういう形態の違いであって、有限責任という点では同様だと思うんです。ところが、株式会社から合資会社へあるいは合名会社への転換というのは、これは有限責任から無限責任への転換であって、その意味では権利関係というのは大いに違うと思うし、自分はもう百万円出してそれだけでいいんだというふうな考えは、その次にその百万円が多数決によって自分の財産すべて、一億円持っている財産に全部かかってくるというふうな、そういう意味で権利関係に及ぼす影響は重大な違いがあると思うんです。
 にもかかわらず、株式会社から合名、合資への変更ははるかに重大であるにかかわらず簡単と。ところが一方、そうではないものは別の法律との整合性の関係もあるでしょうけれども極めて厳しいというふうな、そういうふうに思えるんですが、それが私の間違いか、あるいはもしそういう観点から説明がおできになるんであればその辺の説明をしていただきたい。私どうもそういうことで、どうして大変なことの方が簡単にできて、そうでもないものが、従来の法律はありますけれども、それに伴って厳しい条件を課せられているのかなという点、その辺の説明をお願いしたいと思います。
#44
○説明員(大谷禎男君) 組織変更につきましては、株式会社からほかの会社形態へ組織を変えるという場合を想定いたしますと、有限会社へ変わる場合、それから合名会社あるいは合資会社という人的会社に変わる場合と二つあり得るわけでございます。今、委員御指摘のように、株式会社から有限会社へ変わる場合は構成員の責任形態にそ
れほど根本的な相違はない。しかし、人的会社ということになりますと、場合によっては無限責任を負う社員に変わると、責任形態はまるっきり変わるわけであります。そういうことでありますから、合名会社、合資会社への組織変更の要件がほかの場合よりも軽くてよいということには決してならないという御指摘はそのとおりであろうかと私どもも考えております。
 そこで、まず株式会社から有限会社への組織変更につきましては、先ほどお話し申し上げましたとおり、現行法が総株主の全員の一致を要するというのを一段軽くいたしまして、現行商法の中である既存の決議の中で最も重いもの、商法三百四十八条の決議ということにしているわけであります。
 一方、株式会社から人的会社への組織変更というのは、先ほど来御指摘ありますように責任の形態が全く変わるということに着目いたしますと、株主全員の一致を要するというような立法政策もあり得るところでございます。しかし、そういたしますと、構成員の一人でも反対いたしますと組織変更もできない、しかし一方で増資もできないということで、会社としては立ち往生してしまうという事態もあり得るわけでありまして、それも適当ではないのではないか。そういう議論から、この場合も株式会社から有限会社への組織変更と同じように最も重い特別の多数決ということで組織変更を認めたらどうかということにされているわけであります。
 ただその場合に、無限責任を負うことになるから自分は運命をともにするのはかなわないという株主は当然あるはずでございまして、そういう者のためには会社の組織から離脱して無限責任を負うことになるという事態を避けるという機会を与える必要があるというふうに思われます。したがいまして、その組織変更に反対の者につきましては会社に対する自分の持ち分、すなわち株式の買い取り請求権を認め、会社から離脱するということを認めるという手当てをしているわけであります。
 なお、この手当ては株式会社から有限会社への組織変更につきましても、現在全員の一致を要するということを特別の多数決に緩和するということの代償といたしまして、同様に反対株主には株式の買い取り請求権を認めるという手当てをしているところでございます。
#45
○北村哲男君 わかりました。
 ただし一点、今、代償措置として株式の買い取り請求が認められているんだというお話でございました。しかし、実際に考えてみますと、小さな一千万以下の会社が組織変更するときに、実際に自分は嫌だという人が株式の買い取り請求をしてそれが正当な評価で買い取られるかどうかということについて、とても予想がつかないというか、実務家的に見まして一体買い取ってくれるんだろうか、あるいはどのくらいで買い取ってくれるんだろうか。そうすると、小さな会社の計算というのは非常に複雑でして、ちょっと借金を増せば会社の予算ゼロというような、多くの会社がそういうふうに税務申告をしているという実態があるわけですけれども、その実態を踏まえて買い取り請求を保証したところでまさに絵にかいたもちのような感じがするんですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
#46
○政府委員(清水湛君) 私どもも、株式会社が資本金一千万円以上に増資ができない、そのために有限会社に組織変更する、あるいは非常に異例なことではございますけれども、この経過措置で人的会社たる合名会社、合資会社に組織変更されるというケースが一体どの程度あるのか実ははっきりしないわけでございます。私ども今までいろいろ関係者から聞いているお話では、大多数の中小企業は資本金を一千万円に増資する、あるいは有限会社でございますと三百万円以上に増資するということは可能であろうというような感触を得ているわけでございますけれども、しかし中にはそういうことがあり得ようかと思います。しかし、そういうことになった場合、先ほど御説明申し上げましたように、自分はどうしても有限会社になる、あるいは合名、合資になるのが嫌なのにそれを強制されるということになっては困りますので、法律上の手当てとしてはそういう買い取り請求という形で対抗手段を与えざるを得ない、こういうことにいたしたわけでございます。
 現実の問題として、この種の会社はほとんど家族的な会社あるいは親族間だけの経営による会社というものであろうと思いますので、そのようなことにはならないのではないか。これもしかし、いやそんなことはないよと言われてみますと私ども実際の経験ございませんのでわかりませんが、しかしそういう法律的な整合性は保持する必要があるということでこういう規定を置いたわけでございます。
#47
○北村哲男君 ちょっと予測できないこともいろいろあるとは思います。
 ところで、今の問題はそれくらいにしまして、附則六条二項で、解散とみなされた会社がさらに三年間は継続が認められるという規定がございますが、二項の最後で、ただし、継続は認められるけれども組織変更するまでの間は、「当該資本の額又は組織の変更の目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」とあります。もちろん従来の例えば三十五万円の会社であるとすれば三十五万円の資本額の範囲の中で権利を有し、義務を負うということになりますけれども、それは普通の会社を経営する人たちは、五年過ぎたときに一体どういうことを予想して会社を継続していけばよろしいんでしょうか。
#48
○政府委員(永井紀昭君) ただいまの附則第六条第二項の後段の読み方でございますが、これは「資本の額又は組織の変更」という「変更」にかかるわけでございまして、増資をするか組織変更するかというそういう目的の範囲内で会社を継続することができるということでございます。
 一般的に解散したものとみなされた会社は、例えば四百六条ノ三の休眠会社の整理の規定にもございますが、ここでも三年間の猶予期間がありまして、継続することができるというふうになっております。こういうふうに、解散したものとみなされた会社はあくまで原則的には清算手続をする目的で会社を継続することができるわけでございますが、特にこのように最低資本金に達しない場合の措置としてなされる場合につきましては資本の額を変更する、すなわち増資をするあるいは組織を変更するという目的の範囲内で会社を継続することができる、そういう定め方をしているわけでございます。
#49
○北村哲男君 そうですか、私の読み方が間違いなのかもしれませんが、そうしますとちょっと釈然としませんね、これはほかの解散会社のあれですか、今株式会社法に解散会社の継続の規定がございますけれども、それと同じ規定なんでございますか。
#50
○政府委員(永井紀昭君) 基本的には同様でございますが、ただ、特に増資または組織変更する目的の範囲内と定めましたのは、こういう会社につきましては清算をする手続もされて結構ですが、やはり継続をするという決議をした以上は増資をするか組織変更するというそういういろんな活動をしなければいけません。そういうことからこういう規定を置いたわけでございまして、ただ三年内にこういう増資または組織変更しなかったときは、継続の決議は効力を失うことになります。それから登記手続上は、継続の登記とそれから増資または組織変更の登記を同時に申請していただくというそういうことを考えているわけでございます。
#51
○北村哲男君 もう少しこの辺についてはっきりしないことがありますので聞きます。
 そうすると、商法三百四十三条に定める決議をしないと、三年以内にいつしてもいいと思うんですけれども、五年を経過して一定の期間、二カ月公告期間があって、それで解散とみなされる。そして、あと三年までに決議をすれば継続できるんですけれども、ずっとしないでぎりぎりまで行った場合は、解散とみなされてからぎりぎり継続ま
での間というのは、会社はいわゆる普通の商売というか商行為はできないということになるわけですか。
#52
○政府委員(清水湛君) 解散したものとみなされますと、御承知のように法律の規定によりまして、当該会社は清算の目的の範囲内においてのみ権利を有し、義務を負う、こういうことになります。会社の継続の決議をいたしますと、そのときに会社はいわば回復しまして、すべての会社の目的の範囲内における行為能力を復活するというのが原則でございます。しかしながら、この種の会社については、もし継続の決議をするとすれば資本の額を増額するかあるいは組織を変更するということ、そういうことをすることのために特にこの継続の決議という三年間の期間を認めたわけでございますから、その間は資本の額あるいは組織の変更の目的の範囲内においてのみ権利を有し、義務を負う、こういうことにいたしたわけでございまして、それ以外の行為はできない、またそういう行為をいたしましても目的外の行為として会社にその効果は帰属しない、こういうことになってしまう。しかも、継続の決議もしないで三年間を経過いたしますと、これはもう、もともとみなし解散の状態がずっとそのまま続くということでございますから、いずれにいたしましても清算結了の手続をとっていただかなければならない、こういうことになってこようかと思います。
#53
○北村哲男君 くどいようですがもう一点。
 そうしますと、先ほどちょっと永井さんが言われたかもしれませんが、決議をして登記をすれば普通の会社に戻るんでしょうけれども、決議だけしちゃってそのままほっておいた場合はこれはどうなるんですか、登記しなかったような場合は。
#54
○政府委員(永井紀昭君) これは決議をしただけでは効力は生じません。実態的には生じておりますが、継続の登記とそれから増資または組織変更の決議といいますか、そういう手続も経て同時に申請をしないと、継続の決議をしただけでは実質的には意味がないということになります。
#55
○北村哲男君 もう一点。
 ちょっと私も整理できていない点があるかもしれませんが、五年過ぎて解散とみなされて決議をするまでの間、これはみなされますと清算手続に入りますが、取締役は当然ここの規定によると清算人になるわけですけれども、これはそうすると、五年目に公告があったときにもう清算人の登記かなんかを義務づけられることになるんですか、それともほっておいていいんですか。
#56
○説明員(大谷禎男君) みなし解散後の清算の手続は一般の商法の清算の手続がそのまま適用されますので、清算人の登記とかあるいは裁判所への届け出等々、手続の規定の適用があるわけでございます。
#57
○北村哲男君 大体この辺については、以上で質問を終わりたいと存じます。
 次に、計算書類の公開制度の問題についてお伺いしたいと思いますが、今回、登記所公開の制度が見送られました。法制審においては決定されていながら、実際の法案については見送られておりますけれども、本来今までの商法においても、二百八十二条によって会社は貸借対照表、損益計算書あるいは営業報告書、利益の処分または損失の処理に関する議案の計算書類などを監査報告書とともに公示しなければならないという規定が既にあります。そして、その債権者あるいは株主はそのコピーをいつでも交付を求めることができるという規定が現実にあります。それに違反した場合は百万円以下の過料に処すという規定がございます。これは公示ですが、さらに公告に関しても同じように二百八十三条の三項によりますと、この貸借対照表は公告をしなければならないという規定があります。これについても違反した場合は百万円以下の過料という規定があるようです。
 これらの既にある法制度を実際活用しないで――しておられるのかもしれませんけれども、それをしないで、より簡便になるのか複雑になるのかわかりませんが、登記所における公開の制度に変更しようとされた理由は何なのか。あるいは今までは新聞なんかに出すのはとてもお金がかかるから、それをただ安くしようというふうな親心というか易しくしようというお考えでやられたのか。そういうことを含めて、どうして今までのことをはっきり活用されようとしないのか、あるいは実際にこれをさせようとする努力をどのくらいされておられるのか、現実に過料を科したような事例がどのくらいあるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
#58
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、株式会社につきましては計算書類を定款で定めた官報あるいは日刊新聞に決算期ごとに公告をする、こういうことが義務づけられているわけでございまして、これに違反いたしますと百万円以下の過料に処せられる、こういうことになっているわけでございます。しかしながら、我が国の株式会社百二十六万社のうちこのような公告をきちんと行っております会社というのはごく一部である、大多数の会社はそういうようなことを行っていないという客観的な事実があるわけでございます。そういうような状況のもとで、例えば過料の制裁があるわけであるから、そういうような会社についてはばしばし過料を取って公告させるようにしたらどうかという意見もこれはないわけではございませんけれども、しかしながら、どこの会社がこの公告をしないかというようなことを把握するということが現実の問題としては不可能であるということ、不可能と申しますか極めて困難であるということ。それからもう一つは、大多数の人が守っていないようなものについて過料を、制度上はあるけれどもこれを現実に発動するというようなことが適当であるかどうかというような問題もこれはないわけではございません。そういうようなことから、従来、この商法の中で現実と法制が最も乖離している典型的な現象としてこの公告制度が守られていないということが指摘されていたわけでございます。
 しかしながら、一方株式会社制度というものを考えますと、先ほど来御議論がございましたように、企業の計算をどの程度公開するかという問題は別といたしまして、とにかくある程度公開するということが債権者保護あるいは従業員等の関係におきましても非常に重要であるという問題点の指摘がつとにされ、諸外国においてもそのようなことがかなり励行されているというようなこともございまして、一体、じゃ我が国の中小企業というものを対象にして考えた場合、公開制度はどういう形で実行するのが適当であるかというような観点からいろいろ議論が重ねられたわけでございますけれども、登記は、これは株式会社については一定期間ごとに必ず役員の変更等の登記をしなければならないというようなこともございますし、また諸外国では登記所でそういうような公開をしておるというような実態がございますので、我が国でも計算書類を登記所で公開するようにいたしたらどうかということでこのような案が提案されたわけでございます。
 もちろん、その公開をしなかったためにどういう弊害が起きたかというような問題を御指摘でございますけれども、少なくとも極めて小さな会社についてまでこのような制度を今直ちに強行するのは適当ではないというような御意見もございまして、法制審議会の答申では、資本金が三千万円以上あるいは負債総額が五億円以上の会社についてこのような公開制度を導入したらどうかということになったわけでございます。
#59
○北村哲男君 そうすると、商法二百八十三条なんかは実際死滅した法律と、現実に今の公告の関係ですけれども、それはもう既にあってない法律というふうに法務省当局もお考えのようなんですが、これがこういう形で実行されないという社会的実態があったとすると、さらに登記所公開についても同じようなことがあり得るというふうに考えるんですが、その辺の実効性はどのようにして担保しておられるんでしょうか。
#60
○政府委員(清水湛君) 現在のように新聞あるいは官報に対する公告ということですと、これはもう登記所自身も把握する方法がないわけでござい
ますが、一応登記所で書類を提出いたしまして公開するということになりますと、先ほどちょっと申し上げましたように、株式会社につきましては定期的に変更登記等の申請をしなければならないという義務があるわけでございまして、別にそういう計算書類を提出しないと、例えば役員変更の登記の申請を却下するというような強行手段までは私ども実は考えていないわけでございますが、そういうような登記申請の機会に計算書類等を提出するように慫慂すると申しますか、指導するというような形で多くの中小企業がそれに従っていただけるのではないか。つまり、登記所における登記事務ということを契機といたしまして、そういうような計算書類が提出されているかどうかということを一応行政的にチェックできるというようなシステムでございますので、かなり守られる、かなりというかほとんど守っていただけるという前提のもとに実は法制審議会のこの案ができているわけでございます。一人の論者として、もし出さないなら登記申請を却下するとかなんとかというようなことまでしたらどうかというような御意見もありましたけれども、新しい制度を導入する場合、そこまで強くするのはやや問題であるというようなことで、そういうようなことにはいたしておらないわけでございます。
#61
○北村哲男君 先ほどちょっと聞きそびれたのですが、実際現在の公告制度はほとんど適用されておらないというお話でしたけれども、実際にそういうことを適用した例はないんですか。
#62
○政府委員(清水湛君) 百万円以下の過料に処することができることになっておりますが、これに処せられた会社があるということは、私聞いておりません。
#63
○北村哲男君 公開制度、特に登記所における公開制度、また諸外国でも同じような例があるというふうにお聞きしました。ただし、この公開制度は適正な監査制度による制度的な保証がないと実質的な意義がない、弱い。ないとは言いませんが、弱いと思われますし、また不正な登記所用の書類とかいうことがよくちまたで言われております、税務署用、自分用、そして銀行用というふうにですね。そういうようなことも考えられますけれども、それに対する監査制度あるいは調査制度というものについてはどのようにお考えでしょうか。
#64
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、この登記所公開制度を導入するにつきましては、その前提として公開される計算書類が適正なものでなければ意味がないのではないかという議論、これは法制審議会の審議の過程でもかなり強くあった議論でございます。しかしながら、じゃそういうことのために、現在ですと、例えば資本金五億円以上、あるいは負債総額二百億円以上の会社につきましては会計監査人によるいわゆる外部監査が行われておりますので問題がないわけでございますけれども、資本金三千万円以上ということになりますと、百二十万社程度の会社がその対象になるのではないかというような考え方もございまして、一体どういう形で適正な計算書類であるかどうかということをチェックさせるかというようなことが大変問題になったわけでございます。
 そういうような議論の過程の中で、委員御指摘のように、そういうような外部監査的な監査を受けた書類を登記所で公開するというようにすることが望ましい制度ではあるけれども、しかしそういう制度を導入するということになりますと、それ自体一つ大きな問題があるというようなことから、そこまでいかなくても、例えば計算書類を登記所で公開するということになりますと取締役にこの作成義務があるわけでございますが、いいかげんなものはこれはつくれないということに当然なる。第三者の批判を浴びるわけでございますので、取締役の責務として、やはり適正な書類を作成するというようにおのずからなることは期待されるというような考え。仮に取締役が不適正な計算書類を公開したということになりますと、それによって損害をこうむった第三者があるということになりますと、取締役の損害賠償責任というような問題も生じてきましょうし、あるいはその他、いろんな過料の制裁――虚偽の内容の計算書類をつくるということになりますと、これは現行法でも過料の制裁があるわけでございますが、そういうような制裁規定の発動等により計算書類の適正というのは担保されるのではないかというような考え方のもとに、法制審議会の答申におきましては、まずそういう登記所における計算公開制度の導入に踏み切るべきであるというふうにされたというふうに私ども理解しているところでございます。
#65
○北村哲男君 その登記所公開制度を法制審で決定までしまして、そして聞くところによると、今までの制度と違って簡便でかつ費用もかからないというにもかかわらず、今回改正案としては見送られているわけですけれども、どういうところからその改正案が見送られたのか。どういう欠点というんですか、いろいろなところからの御批判もあったと思いますけれども、その功罪といいますか、長所、短所、それから今後同じような形で進めようとしておられるのか、あるいは別の発想からこの点を考えておられるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
#66
○政府委員(清水湛君) 計算書類の登記所における公開につきましては、法制審議会の答申においてその内容が示されたわけでございます。私どもといたしましても、このような公開制度は、先ほどから申し上げておりますように、ヨーロッパ諸国においては古くから行われているところでもあり、我が国の一つの会社法の重要な問題として戦後議論されてきた問題でもありますので、答申の線に沿ってぜひともこれは実現したいということで努力をいたしたわけでございます。
 しかしながら、法制審議会の答申におきまして資本金三千万円以上というふうにかなり制限はしてはおりますものの、現実にこの規定に従って計算書類を毎決算期ごとに登記所に提出しなければならない現実の中小企業という方の立場から見ますと、これは現状のあり方が是か非かということは別といたしましても、相当の負担をおかけすることになるというようなこともございまして、あるいはこういうことの結果として中小企業にいろんな不利益を生ずるおそれがあるというような御意見もございまして、最終的に法案を作成するまでの過程におきまして関係方面といろんな意見の調整をしたわけでございますけれども、この制度を導入することの結果として、これを現実にその制度によるいわば提出を行わなければならない中小企業団体等の理解が十分にまだ行き渡っているとは認められない。こういうような制度を導入してこれを円滑に運用していくためには、いわば制度の担い手であるそういう中小企業の関係者の理解を深めるということがどうしても必要ではないかというようなことに相なりまして、今回の法律案からは見送らせていただくということに最終的に決断したわけでございます。
 ただ、しかし非常に重要な制度であり、ぜひともこれは実現すべき制度であるというふうに考えておりますので、今後とも中小企業団体等を中心とする関係団体とよくお話し合いをいたしまして理解を深めていただきまして、この制度が円滑に導入されるよう努力してまいりたい。できるだけ早い機会に法律案の形にいたしまして御審議を仰ぎたいというふうに私どもは考えているところでございます。
#67
○北村哲男君 この点につきまして、単に宣伝が足りなかった、理解が得られなかったというふうなお考えで今後進まれるのか。ということは、話し合えば、話せばわかるというふうな、わかっていただけるだろうというふうにお考えなのか。あるいは本質的な対立というか、話しても相手といゆわる価値観が違えばこれは対立のままが続くと思うんですけれども、その点については今局長のお話だと今後理解を深めていただきたい、あるいはそういう方針で臨みたいとおっしゃるんですが、別の発想はないのか、やはり同じような考えで宣伝あるいは話し合いを進めていくというお考えなのか、ですから法案はまた同じものをつくっていかれるというふうなお考えなのか。その辺を
もう少し詳しくお伺いしたいと存じます。
#68
○政府委員(清水湛君) この案の法制審議会における審議の過程におきましても、やはり中小企業の体質強化というような観点から、少なくとも貸借対照表程度を登記所に出すというのはもうむしろ当然のことではないかというような中小企業の関係者も多数おられたわけでございます。しかしながら一方では、やはり登記所で貸借対照表というような決算期における会社の財産の状態を示す書類というものが第三者の目に触れるというようなことについての心理的な抵抗感と申しますか、新聞等を見ますと、例えば銀行用の貸借対照表、税務署用の貸借対照表、何々用の貸借対照表というようなものがいろいろあるんだというようなことをおもしろおかしく書いている記事もございますけれども、しかし中小企業の方でそういうふうに第三者に会社の財産状態を公表するということに対するいわば抵抗感と申しますか、場合によってはそれがプライバシーの侵害につながるのではないかというような危惧を抱かれたということも、全く私どもも理解ができないわけではございません。
 さりとて、じゃ新しい別途の方法を考えるかということになるわけでございますけれども、そういう中小企業の団体等の代表者も加わっていただいて、いわば各界の権威者がお集まりいただいた法制審議会で長い間議論して得た結論でございますので、私どもといたしましては答申の内容の実現ということで今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#69
○北村哲男君 終わります。
#70
○委員長(黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時四十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開会
#71
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 午前中に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#72
○矢原秀男君 法案審議の前に、委員の皆様の御了解をいただきまして時事の一点を質問したいと思います。
 昨日の夕刊から朝刊にかけて、この六月の十三日までに関東一円の地域において、都内を中心にして千人に近いタイの女性がだまされて売春目的で来日し、そして売春組織が非常に動いている、こういうことで警察庁では一生懸命努力をされていらっしゃるわけでございますが、その摘発された実態とまず今後の対応について伺いたいと思います。
#73
○説明員(平沢勝栄君) この事件につきましては、昨年の十二月ごろ埼玉県下のスナックでタイ人の女性を使った売春が行われているといった情報を得まして、私どもとしては内偵捜査を行っていたところでございますけれども、本年の四月十八日に至りましてそのスナックの経営者二名、これを売防法違反で逮捕しまして、あわせて同じスナックにおりましたタイ人女性六名、これを入管法違反で逮捕したところでございます。
 さらに、これらの者の取り調べを通じまして、これらの女性をこのスナックにブローカーとして供給していた日本人ブローカー一名、これを職安法違反で逮捕いたしまして、さらに一名を指名手配したところでございます。
 さらに五月二十九日に至りまして、これら日本人ブローカーの供述から、この上に日本側の窓口としてタイ人女性二名のブローカーがいるということも判明いたしまして、これら二名につきましても職安法違反で逮捕しまして、あわせてそこに同居していましたタイ人女性三名を入管法違反で逮捕したところでございます。これまでに、結果としてタイ人女性十一人を含む十四名を逮捕したところでございます。
 そのほか、この取り調べを通じましてタイ人女性ブローカーが約九億五千万ほどを外国に送金していたという事実も判明しております。
 私どもといたしましては、今後ともこの種外国人女性に係る事犯につきましては、とりわけ悪質なブローカーに重点を指向しまして、入管当局とも緊密な連携を図りながら強力な取り締まりを推進していきたい、このように考えているところでございます。
#74
○矢原秀男君 どうも御苦労さんでございます。
 法務省としても、短期滞在という形に該当するのかなと思いますが、平成元年は二百二十一万九千人、このぐらい入国をされておられるわけでございますけれども、今後の対応として法務省としてはどういう防止策があるのか、そういう点を伺いたいと思います。
#75
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から御指摘のございました具体的な案件につきましては、目下捜査機関におかれて調査が行われていると承知しておりますが、この関係についてのそのあっせんされた女性の身分事項等は、入管当局としてはまだ捜査機関から情報の提供を受けておりませんので、その具体的な内容についてはまだ把握していない段階でございます。
 ただ、委員がただいま御指摘になりましたように、この種のケースにおいて、短期滞在という目的を持って入国をした者が不法残留という形で不法就労を行っているケースということがこれまでもございました。そこで、こういう者に対する対応としまして、入管当局としても関係機関といろいろ協力をしながら努力をしているところでございますが、まず入管当局としましては、空港等における上陸の審査に当たりまして旅券及び日本への渡航目的が真正なものかどうか、さらにまた、渡航目的に見合う費用を所持しているかどうかということについて厳重に点検を行ってまいってきているところでございますし、また、日本へ到着するに先立って我が国の在外公館での査証申請に際しても、在外公館において同様の点検が行われているというように承知をいたしておりますが、今後とも外務省側等関係方面との協力も得て適正な審査を行うことによって、この種の不法就労事案が発生することを防止するよう努めてまいりたいと思っております。
 なお、委員御高承のとおり、六月一日より改正入管法が施行されたところでございますが、その中に新たに不法就労助長罪というものも設けられておりますので、こういうものも不法就労のあっせん等の行為に対する抑止の効果があるものと考えております。
#76
○矢原秀男君 この点で最後の質問ですが、法務大臣、政府としても今国際化の時代において、私もこの報道を見ながら、一つは国際的にやはり女性の人権というものを踏みにじっている、そういうものに対する各国の日本に対しての信頼関係も崩れていく、こういう点を非常に心配をしているわけでございますけれども、大臣に今後の対応の決意を一言伺っておきたいと思います。
#77
○国務大臣(長谷川信君) 今矢原委員からお話ございましたように、我が国といたしましてもまさに恥ずかしい事件でありまして、再びこのようなことが起こらないように法務省としても可能な限り厳重な対処をいたしたいと考えております。
#78
○矢原秀男君 よろしくお願いをいたします。
 それでは、法案の審議に入りたいと思います。
 私は、この法案につきましては三点の目的があるんだなと、こういうふうに意識をいたしております。
 商法等の一部を改正する法律案の目的としての一つは、我が国の株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の法規制が形骸化している実情にかんがみ、このような会社にも適合する法制度を整備する、これが第一点。第二点は、債権者保護のために必要な措置を講ずる。三番目には、会社の資金調達の便宜に資するため株式及び社債に関する制度を改善する等の改正を行う。
 こういう目的があるんではないかなと絞っているわけでございますが、この点はいかがでございますか。
#79
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、大きく分けまして三つの目的があるというふうに申して差し支えないと思います。
#80
○矢原秀男君 もう一つ課題といたしまして残っているのは、審議の経緯をちょっと拝見いたしておりますと、法制審議会の商法部会で二月二十八日、小規模会社にも適用する法制度の整備等を内容とする商法等の一部を改正する法律案要綱案の取りまとめをされて以来今日に至っているわけでございますが、商法部会がこれまで審議を続けてきた事項のうち六項目が見送られている事項になっておりますね。
 一つは、取締役、監査役等の経営管理(運営)機構に関する事項。二番は、株式に関する改正事項中の株券不発行、株券失効制度、支配株主の責任に関する事項。三番目には、計算・公開に関する改正事項中の会計調査人による調査に関する事項。四番は、資本減少及び合併に関する事項。五番目には、単位株制度の終結に関する事項。六番は、有限会社法制の基本的な見直しに関する事項。その他社債法の抜本改正、自社株買い戻し等が見送られたようになっているわけでございますが、これも確認をしますけれども、これで結構でございますか。
#81
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、昭和六十一年の五月十五日に法務省民事局参事官室試案という形で商法・有限会社法の改正試案を発表したわけでございます。これは、それまでの法制審議会における議論等を踏まえた試案でございますが、御指摘のようなかなり重要な点について法制審議会としての結論が得られないまま今後の課題として残されておる、こういう状況になっておるわけでございます。
#82
○矢原秀男君 今回の改正案が法制審議会答申との比較でいろいろと上下に変動をされて今日の提案になっているわけでございますけれども、その中で、一つは質疑が交わされております最低資本金制度の問題、二番目には株式会社の財務内容の公開の問題、三は現物出資等の検査役の調査の省略の項目等々ございますが、非常に変動した理由についてまず伺いたいと思います。
#83
○政府委員(清水湛君) 法制審議会の答申をいただきまして、私どもそれに基づきまして改正法案の作成に着手したわけでございますけれども、その過程におきまして法制審議会の答申とは異なる点が出てまいったわけでございます。大きな点としては二つあるわけでございますけれども、一つは最低資本金制度の導入に伴う当該最低資本金の金額を幾らにするかという点でございます。もう一つは、御指摘のように計算書類の登記所における公開制度の導入についての問題でございます。
 まず、前者につきましては、答申におきましては、新設会社については株式会社最低資本金二千万円、有限会社五百万円、それから既存の会社につきましては株式会社一千万円、有限会社三百万円という二つのランクの最低資本金制度の導入が答申に盛り込まれていたところでございます。しかしながら、この答申に基づきまして法案を作成すべく関係方面といろんな意見を調整いたしました結果、やはり最低資本金が二千万円というのは現実の中小企業というようなものの力を考えてみると負担過剰であるというようなこと、さらには新設会社と既存会社を区別する合理的な理由に乏しいのではないかというような指摘がございまして、私ども慎重に検討いたしました結果、やはり現時点において関係方面の理解を得るには、新設会社も既存会社も含めまして株式会社は一千万円、有限会社は三百万円とするのが最も妥当であり、受け入れられやすい金額ではないかということでそういう結論に到達いたしたわけでございます。
 それから、二番目の計算書類の登記所公開の問題につきましても、これは長年の懸案事項として法制審議会で慎重に審議され答申された問題でございますので、何とか実現をいたしたいということで努力いたしたわけでございますが、これも関係方面と意見を調整する過程の中で、観念的にあるいは理念的にそういう制度の重要性というのは理解することができるけれども、現実にこれを実行しなければならない中小企業の立場から見ますとやや負担が過剰になりいろいろ問題があるというような意見が強く述べられまして、現実にそういう登記所に提出するという行為を履行していただく中小企業の深い理解なしにはこの制度の円滑な運用というものも難しいというようなこともありますので、今回の改正案に盛り込むことは断念し、なお引き続き関係方面の理解を深めまして、これをできるだけ早い機会に実現したいということといたした次第でございます。
#84
○矢原秀男君 次に、関係省庁との調整問題についての過程を伺いたいと思います。
 この改正案の提出に当たりまして、中小企業基本法の改正準備等、関係省庁との協議いろいろあったと思います。通産省の中小企業庁の立場、大蔵省の立場等々があったと思いますけれども、具体的に途中経過の取り組みでどういうふうな問題点を処理していったのか、こういうことを伺いたいと思います。
#85
○政府委員(清水湛君) 今回の改正につきましては、中小企業等に大きく影響する問題でもございますので、法制審議会の審議の段階から大蔵省あるいは通産省の方に委員あるいは幹事として御参加を願い、その議論の過程でそれぞれの専門的な立場から十分に問題点の吟味、検討をしていただいたところでございます。もちろん、そういう通産省あるいは大蔵省等の背後にあると申しますか、中小企業団体等の代表者も委員として参加をしていただくという形でいろんな御意見を伺ったわけでございます。
 そういう議論を経まして法制審議会の答申がされたわけでございますが、さらに具体的な法案を作成する過程におきまして通産省あるいは中小企業庁とも緊密な連携を保ちましていろんな御意見を伺い、それぞれの業界の実情を冷静に分析するというような行為をいたしまして、最終的にこの法案の結論になったわけでございまして、中小企業庁におきましても中小企業団体等の動向を踏まえてこの法案に御賛同いただいたものと私ども理解しておるところでございます。
#86
○矢原秀男君 企業庁見えてますか。ちょっと一言。
#87
○説明員(藤原治一郎君) お答え申し上げます。
 今回の商法等の改正案の策定に関しましては、中小企業庁といたしましても小規模企業に影響を与える内容があるということもございまして、検討の段階からいろいろ御要望申し上げてきたところでございます。
 基本的に申し上げますと、我が国経済の源泉を占めます中小企業の活力をそぐことのないよう、また、その実態を十分踏まえた内容にしていただきたいということで御要望を申し上げまして、結果的に申し上げますと会社法制の理念とそういう実態を十分勘案していただいた案が現在の案というふうになったものと理解してございます。
#88
○矢原秀男君 大蔵省。
#89
○説明員(長野厖士君) 大蔵省関連では私の直接の担当ではございませんけれども、企業財務あるいは証券行政と密接に関連している分野におきましては幅広く法務省からいろいろと御相談があったというふうに承っています。私ども所管いたします税制に関連いたしましては、これに伴います税制上の問題点につきまして法務省から御相談を受けておりまして、現在も引き続き御相談申し上げておるところでございます。
#90
○矢原秀男君 私もこの法律改正というときに、常に第一段階の現時点から第二段階に改正されるハードルが高い場合は、その現行制度のもとでそれぞれの企業が御苦労されていらっしゃる、そういう問題点を少しでも多く加味したものでなければいけない、こういうふうに非常に神経を使っているところでございますが、各種団体の賛成、反対、こういうようないろんな陳情を受けるわけでございますけれども、特に反対意見の多い各種団
体、組織の御意向というものは私たちがやはり神経を使って細かく努力をしていかなければいけない、こういうふうに私は思っているわけでございます。
 税理士の組織の方からも、先ほどからもお話が出ておりますけれども、一つは最低資本金の導入、引き上げには反対である、これは小さな企業というものがうまくいくかどうかという御心配。また二番目には、現物出資、財産引き受けの目的たる財産価格の相当性についての証明を行う専門家に税理士を加えるべきである。三番目には、改正案では削除された部分でありますけれども、貸借対照表等の商業登記所における公開制度に反対である。こういう御要望であるとか、そしてまた中小企業の組織の方々の反対意見とかいろいろと伺っているわけでございます。
 しかし、先ほど質問いたしましたけれども、こういう各種団体の要望に対して法務省としても非常にいろいろ条件、言い分等を修正されて取り入れていらっしゃるのかなと、こういうふうにも解釈をいたしているわけでございますが、そういう面について各種団体の賛成、反対、当然物すごく陳情があったと思いますけれども、それらに対しての具体的にこういうふうにやりましたということの点がございましたら教えていただきたい。
#91
○政府委員(清水湛君) 一般的に申しましても、例えば法制審議会でいろんな法律の改正について議論をするという場合には、まず広く問題点を整理いたしまして、こういう問題について議論をすることとしたいがどうかというような形で問題点を公表いたしまして、これを関係団体に送ります。これは例えば法学部のある大学だとか、あるいは裁判所、各地の弁護士会というような団体はもとよりのこと、各種の経済団体、これは上は経団連から地方の商工会議所に至るまでそういうものをお送りして意見を求める、あるいは税理士会の連合会だとか公認会計士協会だとか弁護士連合会だとか司法書士会連合会だとか、あるいは中小企業の関係でございますと全国中小企業団体中央会だとか、あるいは商工会議所であるとか、そういったような各種の団体にすべて意見を求める。その意見を求めまして、それについて審議をし、その途中経過におきまして委員最初に御指摘になりましたような試案をつくりまして、さらにそれを公表して同じような関係団体の意見を求める。当然のことながら、すべてが賛成ということではございませんで、いろんな意見がございます。
 例えば、先ほど委員が御紹介のありました税理士会連合会の御意見とそれから日本公認会計士協会の御意見というようなものは、この中小規模会社について外部監査あるいは外部会計調査というものを導入するという非常に重要な争点についてかなり顕著に食い違う、こういうような面もあるわけでございます。そのために、例えば会計調査人制度の採用というのが今回見送りになったということの背景にも税理士会と公認会計士会の意見の対立というようなものも実はあるわけでございまして、もちろんその背後には中小企業団体そのものが積極的ではなかったという実質的な事情があるわけでございますけれども、そういうような問題がございます。つまり関係団体の多くが反対し、あるいは相互に意見が対立したために採用できなかった案というものも多々あるわけでございます。
 しかし、例えば最低資本金という問題を一つとらえてみましても、税理士会としては先生御説明のように必ずしも賛成ではないけれども、もし導入するならなるべく低い金額で設定すべきではないかというような、何でも反対ということではございませんで、ある程度消極的ではあるけれども、やはりやむを得ないというような御意見も述べられた点もございますし、計算の公開の点につきましても例えば税理士さんが会計調査人になるということでこういう制度を導入すべきだというような御意見であったように考えておりますし、いろいろ問題が複雑多岐、多方面にわたっておりますので、それぞれにわたって賛成、反対あるいは中立の意見があるわけでございますが、そういった意見につきましては全部これは私ども取りまとめまして公開をするというような形で審議を進めてまいっておるところでございます。
#92
○矢原秀男君 小売店商店数の減少加速というものの予測云々と、ちょっと話題になっているわけでございますが、この小売店商店数の減少を加速させかねないという心配もこれは中小企業庁の方では懸念されているんではないかなと思うわけでございます。全国商店街振興組合連合会の推計によりますと、全国で百六十万店を超える商店のうち株式会社組織をとっているのは二十五万から三十万社、こういうふうな分析の中で今度の法案が通されると非常に今申し上げたような点が心配である、こういうふうな懸念さえもあるんですけれども、この小売店商店数の減少加速というものの予測、そういうような分析というものは中小企業庁ではされていらっしゃるのかどうか伺いたいと思います。
#93
○説明員(藤原治一郎君) 先生御指摘のように小売店、特に従業員一、二人規模の商店が減少してきているというのは事実でございます。この要因につきましてはいろいろあるわけでございますけれども、消費者ニーズの変化についていけなかったとかあるいは後継者難で、その後継者がもうサラリーマン化しているというようなこと、それから立地条件が急に変わったとか、いろいろあるかと思います。
 それで、今回の最低資本金制度の導入ということとの関係で申し上げますと、我々手元に六十一年の事業所統計がございますけれども約百七十三万、これは事業所数でございますが、推計でその中の株式会社は十万ほどございます。これらが影響を受けるかということでございますけれども、基本的には今回の最低資本金額一千万というのは、商店街振興組合連合会も含めました中小企業団体も、これであれば何とか努力できるであろうという線だったと思われまして、大部分の商店は増資で対応していくであろうというふうに予測してございます。
 ただ、あえて増資しなくても有限会社でもというようなことも当然のことながらあると思いますけれども、これが直ちに小売店の減少ということにつながるとは我々は認識してございません。
#94
○矢原秀男君 税制優遇策の適用について、全国の中小企業団体や日本商工会議所等では、基本的に資本金の規模によって企業の健全度合いを問題にするのはおかしい、こういう反論もございます。また、資本金の引き上げや増資時の税制優遇策を要望しているようでございます。
 大蔵省にちょっと伺いたいのでございますが、全国の中小企業の組織のいろんな要望の中で、一つは株式会社への最低資本金制度の導入及び有限会社の最低資本金額の引き上げに伴う既設小会社の融資円滑化を図るため、利益準備金、留保利益の資本組み入れの非課税化、登録免許税の減免等の措置を講じてほしい、こういうことも言っているようでございますけれども、これらに対してはどういうふうな対応を考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。
#95
○説明員(長野厖士君) 特に増資関連の税制というのは、率直に申して、税法上大変デリケートな分野でございまして、中小企業のお立場、中小法人のお立場、個人事業者のお立場あるいは一般のサラリーマンから見た立場でいろいろと御指摘のあるところでございますが、かねて法務省の方から商法改正に伴いまして、ただいま先生御指摘のあります特に既存会社に適用があるということを踏まえまして、その最低資本金導入に関しますみなし配当課税あるいは登録免許税の軽減措置につきまして御要請をちょうだいいたしております。
 私どもといたしましても、この問題の重要性は認識しておるところでございまして、税制改正には私ども手順がございますので、平成三年度の税制改正作業におきまして課税の公平を損なわない範囲でどのような対応ができるか十分に詰めさせていただきたいと考えておるところでございます。
#96
○矢原秀男君 よろしくお願いします。
 次に、附帯決議から見たお尋ねでありますが、衆参で、それぞれ昭和四十九年、六十一年の衆参法務委員会の附帯決議があるわけでございます。そういうふうな附帯決議に対応した結論というものはどうなっているのか。それからもう一つは、先ほども冒頭に申し上げましたけれども、積み残した課題の今後の取り扱いについてどういうふうな手順でやっていくのか。この二点を伺いたいと思います。
#97
○政府委員(清水湛君) まず、第一点の昭和四十九年におきます商法改正の際に、当委員会で付されました附帯決議等との関係でございますが、この附帯決議の原文をそのまま読み上げますと、
  現下の株式会社の実態にかんがみ、小規模の株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り、大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革を行なうため、政府は、すみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること。
こういうふうになっているわけでございまして、この附帯決議を受けまして、法務省としては商法の根本的な改正作業に着手をいたしたわけでございます。
 御承知のように、昭和五十六年に主として大会社を対象といたします株主総会制度あるいは株式制度等の改善を図りました。その後は、この附帯決議の趣旨にかんがみまして、小規模の株式会社、つまり俗に大小会社の区分というような言葉で呼んでおりますけれども、そういう小規模の株式会社にふさわしい法制を考えようということで検討を進めてまいったわけでございます。
 そういう状況の中で、先ほど委員御指摘の昭和六十一年の商法・有限会社法の改正試案の中では、かなり小規模会社用の恩典が列記されているわけでございます。例えば小規模の株式会社については、株式を発行しないというような制度もあっていいのではないか、あるいは株主総会の招集手続をもっと簡素合理化してもいいのではないか、あるいは株主総会は書面で決議をすることができるようにしたらいいではないかというような、かなり斬新な提案がされているわけでございますが、今回の改正は、先ほども確認いたしましたように、主として設立手続等を中心とした小規模会社の方の簡素合理化という点に焦点を絞っておるわけでございまして、今後は、先ほど申し上げましたような経営管理機構、つまり取締役会とかあるいは株主総会とかいうようなより基本的な事項について引き続き検討がされる、こういうふうに私どもは考えているところでございます。
#98
○矢原秀男君 次に、弁護士の法的地位について伺いますけれども、現物の出資、財産引き受けの目的たる財産が不動産である場合は評価額の相当性について弁護士の証明で足りるとしておりますけれども、この場合の弁護士の法的地位について説明していただきたいと思います。
#99
○政府委員(永井紀昭君) この弁護士の地位は、基本的には設立中の会社との契約によりまして現物出資等の適正について証明を行うべき責務を負う地位にある、こういうものでございまして、いわゆる会社法上の機関という位置づけはございません。いわば設立中の会社との契約による地位である、こういうふうに理解しているところでございます。
#100
○矢原秀男君 そこで、弁護士でなければならない理由についていろいろそれぞれの専門家の御要望というものがあると思うんですが、改正商法百七十三条の「弁護士ノ証明」、弁護士でなくてはならない理由と現行法上の実態的取り扱い、こういうような問題をめぐって司法書士の方も反対の理由の中に、専門家としてなぜ加えないのか、たしか税理士もそうだったと思いますけれども、こういうふうな中で、弁護士でなければならない理由というのもまたそういう反対の方々は大きな疑問点を持っていらっしゃるわけでございますが、法務省並びに弁護士会ではどういうふうな、こういう反対意見もよくいろいろと検討をされて今後の課題にされなくてはいけないと思うんですけれども、そういう点はいかがでございましたでしょうか。
#101
○政府委員(永井紀昭君) 確かに、こういう証明をいたします専門家としてなぜ弁護士だけに限ったかという問題がございます。改正試案あるいは要綱の中には公認会計士及び弁護士というように、公認会計士という方の名前も挙がっていたわけでございます。審議の経過あるいはその後の過程におきましても司法書士の方々あるいは税理士の方々を含めまして、我々もある面では証明ができる専門家ではないかというこういうお話もありました。いろんなそういう御要望も十分承ったわけでございます。しかし、今回におきます裁判所の選任する検査役にいわばかわりますといいますか、それにかわります専門家という観点から見てみますと、今まで裁判所が検査役を選任している方は大体弁護士さんがほとんどでございます。
 それから、今回の改正の中身は百七十三条の三項にございますとおり、弁護士さんが証明をするといいましても基本的には不動産だけでございまして、その不動産につきましても不動産鑑定士の鑑定評価を受けた上、さらに弁護士さんがそのほかの土地、建物をめぐる法律関係が錯綜している場合があるのではないか、そういうことについての一般的な法律的な評価を加えた上で総合的に判断をするという仕組みといいますか、そういう考え方をとっているわけでございます。こういったような一般的な法律問題の専門家といいますと、まず弁護士さんということになるわけでございまして、もちろん公認会計士さんあるいは税理士さんあるいは司法書士さんもそれぞれの御専門がございます。したがいまして、そういう方々の地位といいますか、そういう方々も証明できるということにするという考え方もあったのでございますが、とにかく一般的な法律問題を処理する、また過去検査役としては大体弁護士さんが選任されてきたというそういう経緯等を踏まえまして一応弁護士さんに統一するということにしたわけでございます。
 なお、弁護士さんが不動産鑑定士さんの鑑定評価だけでありませんで、司法書士さんあるいは税理士さんその他の方々の補助者といいますか、その方々と一緒に補助者的に検討していただきまして、それを取りまとめて弁護士さんが証明をするというそういう形も当然許されるわけでございまして、決して各税理士さん、司法書士さんを排除しているというそういう趣旨ではございません。ただ、法律上の証明の最終責任者は弁護士にしているというこういう仕組みにしたわけでございます。
#102
○矢原秀男君 次に、不動産鑑定士の評価基準についてですけれども、百七十三条に「不動産ニ付不動産鑑定士ノ鑑定評価」とありますが、その評価基準について伺いたいことと、今後の予定でございますけれども、政令は関係ないのかどうか、そういうことを含めて伺いたいと思います。
#103
○政府委員(永井紀昭君) 今度の改正をお願いしております条文では百七十三条三項に不動産の不動産鑑定士による鑑定評価ということが定められております。この鑑定評価は一般の不動産の鑑定評価の手続によって行われるものでありまして、この手続につきましては既に法律的には不動産の鑑定評価に関する法律あるいはこれに関する法律の施行令あるいは施行規則というものがございまして、こういった関係法令によりまして規制が既に行われておりまして、この制度のために新たに政令等を定めるというこういう予定はございません。
#104
○矢原秀男君 今回、最低資本金の引き上げ、こういうことになるんですが、私もちょっと懸念をいたしておりますのは、改正法案の最低資本金の導入、引き上げが債権者保護の決め手ということになるわけでございますが、現在欠損法人は五一・三%、こういう数字から見ておりまして、この点はどう対応していかなくちゃいけないのかなと思っているわけでございますが、この点を伺い
ます。
#105
○政府委員(清水湛君) 欠損法人五一・三%というのは国税庁が把握している数字で、要するに利益を生んでない、つまり赤字法人という意味だろうと私ども考えるわけでございます。税法の面は税法の面として相当の法人が課税対象となるような利益を生んでないという事実があるというふうに思うわけでございます。
 そういうような面からいたしますと、今回の最低資本金額というのは余り意味がないのではないかというようなあるいはお考えもあるのかもしれませんが、もともと最低資本金制度というのは会社が維持すべき純資産額の最低限を示すというものでございまして、一千万円が十分であるか、二千万円ならばいいのか、あるいは三千万ならいいのか、いろいろ金額についての考え方はあろうかと思いますけれども、大方の賛同を得られる金額として一千万円という金額が適当というふうに私ども判断したところでございまして、それはそれなりにやはり債権者保護のために相当の寄与をすることになるであろう、税金の関係で赤字法人が多数であるというようなこととは必ずしも結びつかないのではないかというふうに考えているところでございます。
#106
○矢原秀男君 有限責任の問題について伺いますけれども、法制審における有限責任の修正意見、これについての説明を伺いたいと思います。
 それとあわせて、資本金百万円未満の株式会社及び有限会社の数字について、きょう現在どの程度か伺いたいと思います。
#107
○説明員(大谷禎男君) 前段の御質問についてお答え申し上げます。
 法制審議会で株式会社及び有限会社における有限責任原則を修正すべきであるという観点から議論されておりましたテーマは、いわゆる支配株主の責任という構想に関するものでございます。
 この構想の概要を申し上げますと、改正試案の当時、御案内のように株式会社については二千万円、有限会社については五百万円というふうな資本金額を考えておりましたけれども、いずれにいたしましても実定法において定めることのできる最低資本金額というものは、現実との妥協から招来されるところの政策的な金額とせざるを得ないということでございまして、その金額を資本金として保持さえすれば株式会社あるいは有限会社として有限責任の利益を真っ向から主張し得るということにはならないのではないかという問題意識があったわけでございます。換言いたしますと、有限責任の利益を正面から主張するためにはもう少し高い金額を資本金として保持すべきではないか。その金額として例えば五千万円というような、これもある意味の政策的なものでございますけれども、その程度の金額を想定いたしまして、そのような金額に達しない資本規模の会社におきまして、会社の株式の半数以上を所有し、同時に取締役というような形で会社の経営に参加をしている者、俗に言いますと、金も出すけれども口も出すという機能資本家と言えようかと思いますが、そういう者が過小資本によって大規模な企業活動を行う。それによって万が一会社の関係者に迷惑を及ぼすというようなことになった場合には一定の限度で個人としての責任を負わせ得るのではないか、そういうような構想が検討されていたわけでございます。
 それから、後段の資本金百万円未満の株式会社及び有限会社の数について申し上げますと、百万円を基準といたします正確な統計資料はございませんが、税務統計等の資料に基づきまして推計をいたしますと、現在のところ株式会社は約五万一千社、それから有限会社は約二十万社が資本金百万円未満であるというふうに推定をいたしております。
#108
○矢原秀男君 終わります。
#109
○橋本敦君 商法の改正という問題に関連をいたしまして、当面重大な事件が起こっておりますので、それについてお伺いをしたいと思うわけであります。
 最初に、民事局長に御見解をお伺いしたいのでありますが、これまで商法の改正に当たりましても、田中金脈やあるいはロッキード事件がございました。あるいはグラマン・ダグラス事件という疑惑もございました。こういうことに一つの重大な反省点として、大企業がこのような社会的不正行為を行わないように、あるいは会社の役員がこうした不正に社会的責任をきっちり負うように商法の改正が必要であるという議論が数多くなされてきたと思うのです。そういう方向で改正がされたかされなかったかは、きょうは問いませんが、今日企業の社会的存在の責任として、今言ったような社会的不正行為を許さない、そういう立場からの商法の改正問題というのは依然として重要な課題であると思いますが、いかがお考えでしょうか。
#110
○政府委員(清水湛君) 株式会社は、これは多数の関係者から資本を集めまして、それによって利益を得、これを配当するという一つの組織でございますが、このような企業活動が適正に行われるためには、それぞれの会社がきちんと商法の規制を守っていただく、こういうことが何よりも肝要なことだと思うわけでございます。つまり、きちんと法律を遵守することによって、おのずからそこに社会的な責任も果たされていくというふうに考えられるわけでございます。それとともに、社会というのは、特に経済的社会というのは流動、変動を遂げるわけでございますので、そういう社会に適合するように法律自体もやはりその時代時代に応じて改正をしていく、そういうふうにして改正された法律を企業も遵守していただく、こういうことがまた先ほど申した企業の社会的責任にも通ずるものであるというふうに思うわけでございます。
 そういうような面から見ますと、昭和四十九年の商法改正は、例えば古くには山陽特殊鋼の粉飾決算による倒産というようなことが一つの契機になって提起された改正でございますけれども、外部監査、つまり公認会計士や監査法人による外部監査の導入、あるいは監査役による単なる会計監査だけでなく業務の監査もする。そして企業行動の適正化を図る、こういうような意味で例えば四十九年改正がされ、さらには五十六年改正におきまして、株主総会の運営の適正化を図るとか、あるいは取締役制度の改善を図るとか、監査の充実強化をさらに図る、こういうような形で各種の法改正が行われてきておるところだというふうに私ども考えている次第でございます。
#111
○橋本敦君 最近は、言うまでもなくリクルート疑獄事件の重大な問題が起こりました。近年の政治家の資金調達がいわゆる政治献金、それから巨額のパーティー券、あるいはさまざまな方法があるわけですが、いわゆる錬金術としてマネーゲームや株の仕手戦への介入といったことも問題があると言われて久しいわけであります。アメリカあたりでは投機目的でまじめな会社を買収する、いわゆる敵対的なMアンドAと言われる、こういった買収によって健全な企業活動が阻害されて大問題になっておるわけですが、最近の日本でもこういった種類に属する買収ということが、これがやはり重大な問題になってまいりました。
 私は、その一つが今回の光進、つまり前の名前は、御存じのようにコーリン産業でございますが、これの国際航業乗っ取り事件ということになっておると思うわけであります。昨日深夜に、検察庁はこの国際航業の元経理担当役員ら四名を、今お話しした仕手集団光進の会社乗っ取りに関連をする中からつかみ出した不当な利益九億円の脱税という容疑で捜査を開始したようでありますが、当面脱税容疑でこの問題を究明する突破口を開いたということになり、これからいよいよこの事件の全容解明が進められる手はずになった、こう理解しておりますが、そういうことでございますか。
#112
○政府委員(井嶋一友君) 国際航業株式会社の元役員等によります所得税法違反の事件につきましては、昨年、東京国税局から告発を受けまして、自来東京地検におきまして捜査を継続してきたところでございますが、昨日、同社の元取締役経理部長石橋紀男など計四名を所得税法違反で逮捕
し、かつ関係する箇所を捜索をしたということでございます。
#113
○橋本敦君 これは、いわば捜査の端緒であると私どもは理解するわけです。つまり脱税ということで捜査の対象になっております事犯というのは、金額にして九億円と言われておるようでありますが、この脱税がどこから起こってきたかということは、その事実関係の背景と基礎に、今私が指摘をした光進による国際航業株の乗っ取り買収があるわけですね。したがって、この脱税容疑の徹底的捜査は、その犯罪を構成した背景的事実あるいは基礎となった事実、いわゆる会社乗っ取りの仕手集団の一連の行為の全容にも十分目を向けた捜査をしていく必要が捜査上当然あると私は思いますが、御見解はいかがでしょうか。
#114
○政府委員(井嶋一友君) 昨日逮捕いたしました被疑事実によりますと、四名の者はそれぞれ株式売買に絡む自己の所得税の逋脱を図る目的を持って、それぞれ他人名義等を活用した所得隠しをしたという事実で捕まっておるわけでございまして、被疑者として立件されました四名の個人的所得税の逋脱違反事件ということで捜査をしておるというのが現在でございます。
#115
○橋本敦君 いや、それは刑事局長わかるんです。それを本当に捜査を遂げるということで、その脱税が起こってきた背景となり基礎となっている事実、これは冒頭陳述なんかでもよくそういうことは展開をされるわけですが、そういう意味ではいわゆる光進グループの仕手集団の国際航業に対する株買い占め事件というものにも当然重大な関心を持ち、それにも捜査の視点を当てながら全容解明に努力するというのが捜査の基本方針としてあるべきではないかと私はお尋ねしているんです。
#116
○政府委員(井嶋一友君) この国際航業に絡みますいろいろな報道がなされておりますことは承知をいたしておるわけでございますが、検察は厳正、公平な立場で捜査をするというのが基本でございまして、社会的な現象としてあらわれるものすべてについて検討を加えて、厳正、公平な処理を行うということでやっていくことを考えております。
#117
○橋本敦君 まさに事件の本質は、私が今指摘したところにあるというのが社会的な見方でありますから、検察はそこの点についても公平、公正に検討を加えていく必要があると思います。
 そこで、そういった問題の一つとして、私は、政治家のこの事件に関する絡み、疑惑の問題が余りにも多くこの事件では指摘をされてきたということを重視せざるを得ません。挙げてみるだけでも、まず第一にこの政治家の絡みというのは、これは多くの疑惑がこの乗っ取り劇の前後に集中しているという事実に注目する必要があるわけですから、名前を挙げていくならば、もう新聞でも明らかになり国会でも論議されておりますから言いますが、稲村利幸元環境庁長官の堀越秘書の八五年から八八年にかけての国際航業株などの売買で得た八億三千万円の申告漏れがあったという事実、これが明らかになっている。また、さらに八七年二月には百億円の転換社債を発行して、このうち数千万円分が同社の元取締役を通じて数人の政治家に渡ったという疑惑が報道もされている。これは重大な問題であります。それから、さらにそれに加えまして、光進グループが株の買い占めを進めていたピークの八七年八月、我が党上田議員もこの問題で質問いたしましたけれども、御存じの中曽根元首相の金庫番と言われた山王経済研究会の責任者の太田英子さん名義での相対取引で十万株、これが五億一千万円で売り渡されて、一カ月後に六億三千万円で買い戻すというようなことで、小谷氏との関係で一億二千万もぬれ手でアワの利益が転がり込んでいる。こういう事実が報道されている。
 それからさらに、それに加えまして、この小谷氏が国際航業の当時の社長桝山氏に共同経営の話を持ちかけたとか和解するとか、いろんな動きの中で三塚代議士がその話に同席をしたというそういった報道もなされる。亀井静香代議士もそのころこれに関連して和解させたという報道が行われている。さらに、これに加えて津島厚生大臣の政治団体代表が光進グループの数社の監査役を務めていたという事実もある。
 数々のこういった政治家絡みの疑惑がこの光進の仕手集団の動きに関連をして言われてきた事実があるわけです。こういった報道がたくさんあり、国会でも論議されたという事実は刑事局長ももちろん御存じですね。
#118
○政府委員(井嶋一友君) 委員ただいま御指摘のいろいろな事実が報道されたという事実は承知をいたしておりますし、検察も当然承知をしているものと思います。
#119
○橋本敦君 これまで仕手集団との絡みで、株の売買で政治家が動いたというのは、有名な東郷民安氏の事件もございましたが、多くの場合、政治家の疑惑は名前が浮かび、事実が浮かんでも捜査のメスが入れられるということはなしに進んできたのであります。しかし、これはリクルート事件、そして今日の国民の金権腐敗政治を一掃してほしいという清潔と公正な政治への期待から見て、こういう政治家の疑惑があるならば、検察はそれに対しても勇気を持って公正にメスを入れていくという姿勢を貫いていかなければ、国民の期待を担えないと思うわけです。これだけの多くの政治家の疑惑がありますが、これがすべて犯罪を構成するとは私は決して申し上げません。申し上げませんが、しかし、この問題についても重大な関心を持って公正な立場で、相手が政治家だからということでもちろん遠慮することなしに、検察は必要ある限り公正な捜査を遂げると、こう決意とお伺いしてよろしいでしょうか。
#120
○政府委員(井嶋一友君) もう委員既に御承知のことでございますが、捜査の具体的な事項に関するお尋ねでございますので、この場における答弁は差し控えさせていただきたいわけでございますが、先ほど来申しておりますように、検察は常に厳正、公平に適正に処理をするということをモットーとしてやっておるということを申し上げさせていただきたいと思います。
#121
○橋本敦君 今、刑事局長がおっしゃった厳正、公正をモットーにということは、容疑がある限り相手が政治家であろうともこれは遠慮するものではない、必要な遂げるべき捜査は必ず遂げるという意味も含めて公正な立場を貫くとおっしゃったというように私は理解しておるわけですが、間違いございませんね。
#122
○政府委員(井嶋一友君) 検察は従来そのような態度で臨んできたことはいろいろの事件でお認めいただけると思います。
#123
○橋本敦君 この問題は、私は今後の捜査の進展がどうなるかということに重大な関心を持たせていただいておるわけですが、一方、国会としてもこの問題の解明のためには、私はやっぱり国民の負託にこたえて努力をしていく必要があると考えているわけであります。
 民事局長にも一言お伺いしたいのでありますが、こういった敵対的MアンドAと言われるような企業買収という問題について、この点は今まで余り商法の改正としては論じてこられなかった問題でありますけれども、こういった事件が起こったことを契機にいたしまして、不当な企業買収についても商法あるいは会社法の立場から厳しく社会的責任を問うていくような立場で論議をしていく必要があるのではないかと思いますが、民事局長の立場でいかがですか。
#124
○政府委員(清水湛君) 企業買収と俗に言われているこれは経済的な表現だろうと思いますけれども、これを株式会社法の面で見ますと会社の吸収、合併だとか、あるいは株式を取得することによる会社支配というようなさまざまな形で行われることになるだろうと思います。私どもといたしましては、そういうような様式の売買あるいは合併等の問題について是正すべき点があるということでございますと、それは必要な調査、審議を経た上で是正をする、こういうことに当然相なるわけでございます。
 会社の合併等の問題については、問題点ありというふうに指摘はされておりますけれども、まだ
法制審議会においても十分調査、審議がされておりませんので、具体的に今どのような形でどのような問題が解決されるかということは現段階ではまだ申し上げることはできないわけでございます。
#125
○橋本敦君 大臣お聞きいただいたと思うのですが、私は、いわゆる仕手集団光進グループの株買い占め事件に関連をして、刑事局長には厳正な立場で捜査を遂げていただくことを期待する質問をいたしました。民事局長に対しては、商法改正という議論を方向づける立場から、こういった企業の社会的責任を明らかにしながら不当な買収だとか、リクルートに見られるような不当な政界工作についての社会的責任も規制し得るような法改正、こういった問題も提起をいたしました。
 この光進グループの株買い占め問題については国会でも論議がありまして、既に官房長官は、政治家は当然節度を持つべきであるということで、それに厳しい立場で対処する姿勢をあらわしておられますが、私は、法務大臣として今度の事件の捜査を端緒にして徹底的にやはり姿勢はきちっと正していく、政治家で不当な介入あるいは重大な疑惑があるならば、これについても検察は公正な立場で捜査をするとおっしゃっているわけですから、法務大臣としてもそういった立場で検察が勇気を持って政治家にもメスを入れて仕事ができるように期待をなさっておられるかと思いますが、大臣の御見解をこの点でお伺いしたいと思います。
#126
○国務大臣(長谷川信君) 今ほど委員お話しございましたように、法務大臣といたしましては、このような事態が再び起きないように検察が厳正な取り調べをやっていると思いますが、そういう線に即して今後とも十分腹におさめ、胸にしっかりととどめて対処いたしたいというふうに考えております。
#127
○橋本敦君 私が法務大臣に答弁を期待したのは、法務大臣も長年の有能な政治家でいらっしゃいますから、政治家という立場で法務大臣も検察も政治家に遠慮することはないと、そういう決意を大臣も当然お持ちだというように思って聞いたわけでありますが、その点はいかがなんですか。
#128
○国務大臣(長谷川信君) おっしゃるとおりであります。
#129
○橋本敦君 時間が来ましたので終わります。
#130
○山田耕三郎君 商法等の一部を改正する法律案に関連してお尋ねをいたします。
 私たち素人目にとりましては、我が国にはなぜ会社がこんなに多いのか。例えば株式会社の数は百二十六万社、有限会社だけでも百四十万社。制度や社会的風土の異なる外国と単純に比較はできないけれども、日本の会社の数だけが異常に突出しているのは事実であります。この理由は、実態が個人事業主であっても会社の看板を掲げた方が事業がやりやすいとか、社会的信用もつくことがあると思っておりますが、いわゆる節税効果をねらっての設立も相当数に上っていると言われております。それはそれで別に悪いことをやっておるわけではありませんけれども、実態がそぐわない場合には社会的不公正や社会的責任の面からも問題を起こすことになります。
 ところが現行の商法は、御承知のとおり明治三十年代のものであり、比較的新しい有限会社法でも昭和十三年に制定をされた法律でありまして、我が国の経済的な環境の変化に応じ戦後も数度にわたって改正をされておられるとはいえ、我が国が経済大国の地位を固めた今日、しかも企業の社会的責任を求める声の大きい中で、実情にそぐわない現行商法の規定を改める必要から、法務省はさきの長谷川大臣の趣旨説明にもありましたとおり、すなわち、特に「我が国の株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の規制が形骸化している実情等にかんがみ、このような会社にも適合する法制度を整備するとともに、会社債権者の保護のために必要な措置を講ずる」と述べておられますとおりの趣旨で今回の法改正の提案となったと思います。
 確かに、親族を発起人に連ねて人数合わせをしている現状は形骸化そのものであり、形骸化それ自体がよくないことであるのにもかかわりませず、法律自体がそのよくない現実に妥協をして、あまつさえ一人でも会社を設立ができるでは、大臣の所信とは全く裏腹な措置であり、個人経営とどこが違うのかわかりません。我が国の古いことわざにもありますとおり、三人寄れば文殊の知恵だとか、毛利元就の三本の矢の故事は何を教えていると思っておられるのか理解に苦しみます。
 また、最低資本金の導入がされました。そのことはよいといたしましても、三百万円が果たして債権者の保護に値する額なのかどうか。あるいは財務内容の公開が改正の見送りで、何の代替対策も講じられないままで閉鎖性が解消すると期待をしておられるのかどうか。経営内容の公開こそ健全な経営の前提であります。
 要するに、今回のこの改正案は極めて中途半端なものであり、近代化などとはほど遠いものと考えますが、商法改正はこの今回の改正案とは別に長期的に考えておいでになるのかどうか。もしそうだとすれば、その目標をどの辺に置いておられますのか。あわせてその構想をお尋ねいたします。
#131
○国務大臣(長谷川信君) 今委員からいろいろお話がございましたが、簡単に御説明をさせていただきますが、委員も御案内のとおり、中小零細企業の会社が百二十万とも百六十万とも言われている。そしてまたその商売は千差万別でございまして、これはもう何百種類、何千種類の御商売をなさっている。それらの皆さんがみんな、ああこれはよかったなというふうな最大公約数を私ども模索をしてきたんですよ。それで、百万、二百万の人がみんないいというふうなことは、これはなかなか至難のわざでございますが、それでもいろいろ審議会にも聞きましたし、あるいは中小零細企業等々の各種団体にも意見を聞きました。意見を聞いた結果、今この提案のような形になったのでございますが、私どももこれが完璧無類のものであるというふうな認識は持っておりません。持っておりませんが、しかし、そうだからといって今このままの従前どおり、さっきもお話がございましたが、百万円出したら四つも会社ができたというふうなことでは、残念ながら今の世の中ではもう通らなくなった。さりとて、今御提案させていただいているのが完全無欠のものだなどとは考えておりません。
 じゃ、いつまでに変えるのか、いつまでどうかということをお尋ねでございますが、これはやっぱり若干時間がかかりますので、できるだけ早く実態に即した方法をひとつ検討いたしたい。
 なお、資本金の問題等々も一千万がそんな高いのかという人もあれば、そればかりの金で何ができるんだとおっしゃる方もありまして、その辺がなかなか私ども苦慮しているところでございますが、若干時間をいただいて、なるべく早い機会に次善のよいものができるような万全の努力をするつもりでおります。
 なお、詳細は局長から答弁させます。
#132
○政府委員(清水湛君) まず最初に、大きな流れとしての今回の会社法の改正で将来どういうふうにしようとしておられるのかという趣旨の御質問でございます。
 この会社法につきましては、大会社は大会社なりに、中小会社は中小会社なりのそれにふさわしい法制を整備すべきであるということがかねてから指摘されていたわけでございます。そういうようなことから委員既に御承知のとおり、昭和六十一年に商法・有限会社法改正試案というようなものを発表いたしまして、中小会社にふさわしいような諸制度、例えば今回の改正案では設立手続の面の簡素合理化という点だけを主として挙げておりますけれども、例えば中小会社における株主総会のあり方の問題、これをもっと簡素合理化するとか、あるいは株式制度、ほとんどの中小企業は株式を発行してないというような実態がございますので、そういうような実態を踏まえて株式制度をどうするかというような問題、その他監査役とか取締役会の制度とか、あるいは共同代表の制度というようなものをどうするかというような問
題、そういうような問題を検討していきますと、おのずから今度は有限会社法との関係をどうするかという問題、かなり有限会社法に近くなってまいりますので、これとの関連をどうするかというような問題、もろもろの問題が実はこの改正試案の中に盛り込まれているわけでございます。
 それぞれについて各界の意見が出されたわけでございますけれども、中小企業は中小企業なりに、あるいは大企業は大企業なりにそれぞれ意見があるわけでございまして、なかなかまとまらない、まとめるためにはもう少し時間を要するという点が多々ございました。そこで、さしあたって余り異論のない設立手続の簡素合理化の問題等を中心といたしまして、さらに中小会社にとっていわば戦後商法の最大の問題の一つであった最低資本金制度を導入するというような問題等を兼ね合わせまして今回の改正案にいたしたわけでございます。
 委員御指摘のように、発起人が一人でも株式会社を設立することができるようになるというのは、その簡素合理化の名のもとに現実に妥協した、むしろ立法の方向としては逆ではないかというような御指摘、確かにそういうような面も全く否定ができないわけではございませんが、しかしながら、一方では発起人七人というのは極めて空疎なものになっておるというような実態もあるわけでございます。そういうようなことであるとするならば、むしろ発起人は一人でも出資の履行等についての責任を強化する。今回の改正法におきまして払い込み担保責任についてこれをさらに強化するというような規定を置いておりますけれども、そういう出資の履行についての責任を強化するというようなことを講じた上で発起人は一人でよいとし、かつまた最低資本金を株式会社については一千万とすることによって、第三者の保護と申しますか、対外的な関係でもその体質を強化するというようなことを講ずれば、むしろその方が中小会社の設立に適合するのではないかというようなことを考えたわけでございます。
 なお、その一人で設立することができるということは、取締役も一人でいいというわけではございませんで、現行法上は取締役は三人以上が必要でございますし、一人で設立いたしましても監査役は別途必要でございますし、とりあえず一人で全額を出資いたしますと、株主総会は株主一人ということになるわけでございますが、これは現行法でも例えば大企業がつくる子会社は株主一人というようなことが、現在発起人が七人必要だという状況のもとにおいてもこれは起こっていることでございますので、そういうようなことが必ずしも株式会社の形骸化につながるものではないというふうに私ども考えているところでございます。
#133
○山田耕三郎君 次に、今回の改正法では、現行法には規定のない最低資本金の導入が図られ、株式会社では二千万円、有限会社についても五百万円に引き上げられるのが原案であったようであります。これは会社設立を困難にするとかの反論もありまして、それぞれ一千万円、三百万円に減額、既存会社には五年の猶予期間が設けられました。
 ここで考えなければならないことは、株式会社にしても有限会社にしても、最大の特徴はいずれも有限責任制で会社の資産についてのみ責任を負っているということです。そのほか、税制面に至るまで、数々の恩典を享受しておればこそ、会社が急増しているのです。毎年十数万社ずつ量産されていると言われておりますが、経営者にすればいろいろの問題はあるかとは思いますけれども、額は別といたしましても、恩典は受けるが義務は歓迎しないというこの風潮はいかがなものでございますでしょうか。
 債権者保護という視点から考えても、最低資本金制度の導入や適正な引き上げは、恩典を享受する代償として受け入れるべきではないかとの意見もあります。法務省はこの点についてはどのように考えておられますのか、お尋ねをいたします。
#134
○政府委員(清水湛君) まさに御指摘のように、株式会社は物的有限責任会社でございまして、債権者等の第三者が会社から債務の弁済を受ける、これは従業員も含めてでございますけれども、その場合にその引き当てとなる財産は会社財産しかない。これがまさに株式会社の本質であり、またそこに最大の特色があるというふうに私ども考えるわけでございます。であるからこそ、商法はあらゆる手段を講じて会社財産が一定の基準以下にならないように、いろいろな法的措置を講じているわけでございます。そういうようなことから、少なくとも最低限株式会社ということで有限責任の利益を享受する以上、少なくともこの程度の純資産は保持さるべきであるということから、最低資本金制度というものが諸外国においても導入され、私どももまたその考えに基づいて導入しようとしているわけでございます。
 そういうようなこの最低資本金制度の機能というようなことを考えますと、最低資本金というのはもっと大きな金額であるべきではないか。金額の点について申しますと、例えば昭和十三年に制定されました有限会社につきましては、当時既に最低資本金が一万円でございます。これを今日の貨幣価値に換算いたしますと、一千五百万から二千万ということになるわけで、当時株式会社についてはもっと大規模な会社が考えられていたわけでございますから、今もし株式会社について最低資本金というものを考えるといたしますと、二千万円をはるかに上回る、議論の過程の中では例えば一億円だとかあるいは五千万円だとか、少なくとも三千万円を下ることはできないというような各種の意見があったわけでございます。
 しかしながら、先ほどから出ておりますように、現実に戦後、特にこれは戦後の顕著な現象でございますけれども、税制その他の影響があるというような指摘がございますが、要するに簡単に株式会社がつくられるというようなことが行われまして、その多くはほとんど登記簿だけに登記されている会社というような実態になっているものがあるというような指摘もあるわけでございますが、とにかく現実の問題といたしまして、そういう少額資本による株式会社というものが多数あらわれてきておる、こういう実態があるわけでございます。
 そこで、そういう実情を踏まえまして、一体幾らにしたらよろしいかということで法制審議会におきましても試案を示して各方面の意見を聞くとか、あるいは審議の過程でいろいろな団体の方に来ていただいて意見を聞くというようなことを繰り返しまして、議論に議論を重ねまして一応新設会社については株式会社二千万円、有限会社については五百万円、既存会社については株式会社一千万円、有限会社三百万円といういわば理念と現実の妥協的な線としてそのような金額を出したわけでございます。じゃ、この金額が果たして株式会社本来の機能あるいは有限会社というものの本来の機能に沿って十分であるかどうかというようなことは、これはまた別な観点からいろいろ議論があろうかと思いますけれども、現実を踏まえた上での一つの線ということで大方が納得し得る金額ではなかったか、もちろんその二千万、五百万という線は私ども法案作成の過程で、最終的には一千万、三百万という線に一本化させていただきましたけれども、おおむね関係方面において現実を踏まえて納得し得る、あるいは理解され得る金額ということでそのようにさせていただいた次第でございます。
#135
○山田耕三郎君 次は、赤字会社についてであります。この問題は法務省だけの対応では困難なことは理解はいたします。
 最近、赤字会社が非常に多く、全法人会社の六割近くになっておるということを聞いております。別に倒産を待っておるわけではさらさらございませんが、これらが経済の好不況にかかわらず倒産することなく続いているということであります。このような不思議なことが起こるのも個人支出と会社の支出との混同が行われておるからだろうと言われております。このような我が国企業の奇妙さや閉鎖性は何とか解消できないものなのか、経済の国際化に障害ともなりかねないと憂える人もたくさんあります。企業の社会的責任を明
確にさせる必要があります面からも、この点にはどう対処していこうとされておられますのか、お伺いをいたします。
#136
○政府委員(清水湛君) 私どもも各種の資料から、いわゆる赤字会社が大多数を占めるという実態は承知しているわけでございますが、私どもは税務の面から会社を眺めるというわけにはまいりません。もちろん節税目的のために法人がつくられるということ自体は、これは悪いことではございませんし、それ自体許容されていることでございます。しかし、節税目的のためでありましても、法律はきちんと守っていただきたい、会社法はきちっと守るべきだ、こういう考え方に立っているわけでございます。
 そういうような観点から、これが赤字会社の減少というようなことに直接役立つものであるかどうかということについては必ずしも自信があるわけではございませんが、しかし会社の経理が適正に行われるということが会社制度の基本である、これは税務とかなんとかということともちろんつながるわけではございますけれども、会社の経理が正確に正しく行われるということが会社制度の存立の基盤であるというふうに思うわけでございまして、そういうような面から今回の改正案では見送られましたけれども、計算書類の登記所公開というような制度をなるべく早く実現することによって会社の経理の健全化と申しますか、適正化に資したいというふうに考えているところでございます。
#137
○山田耕三郎君 最後に、まとめとして長谷川大臣にお尋ねをいたします。
 ただいま二、三点を申し上げましたように、法で定められた制度なのですから、経営者がどんな目的であれ、それを利用されることについては問題はありませんと思います。しかし、制度から利益を得る人は制度の目的を理解して義務や規制をも受け入れるべきだとの意見もたくさんございます。我が国社会にこのような風潮を醸成する必要を私は痛感いたしますのでございますけれども、どのようにしていったらよろしいのか、困難な問題ではありますが、大臣がどのようにお考えになっておられますか、それを承りたいと思います。
#138
○国務大臣(長谷川信君) 非常に難しい御質問でございまして、私も零細中小企業を自分でやっている一人でございますが、なかなかこれは、さっき六〇%がもう赤字だとおっしゃっていましたが、あるいはそうかもしれません。しかし、本当になくなるのは少ないのです。中小企業、零細企業というのはいわば雑草のような、こういうことを言うとまたちょっと言葉が過ぎますけれども、私自身のことだからお許しをいただきたいと思いますが、そういうふうに非常に根は強いのですが経営基盤というものはまことに弱いのでございます。
 それじゃ、それをどうやったら全部うまくいくのかとおっしゃってもなんでございますが、要するに、この商法だって今まで実際の中小零細企業の経営に直接プラスになっている点がどれだけあったかというと、いわば税金面とかそういう面の利用は今先生がおっしゃったとおりでございますが、そういう面もこれからいろいろ考えたり、また債権者の立場も考えたりして、それをやるには一千万、三百万でできるかできないかわかりませんし、いろんな議論もあるでしょうが、少なくともそういう中小零細企業の健全な育成を目標としてこれから私どもも十分勉強させていただきたいというふうに思っております。
#139
○山田耕三郎君 終わります。
#140
○紀平悌子君 今日の課題は商法等の一部を改正する法律案でございますけれども、ちょっと先立ちまして、この商法というもの、私も初めて当委員会でこの課題を与えられて非常に困窮をいたしました。なぜならば、企業者、経営者あるいは専門家の方々以外の人が触れることが非常に少ない技術的、経済的な法律であるということでございます。しかし、一般の人間にはなじみが薄いものの、一方、その改正によって国民経済に与える影響は大きなものがある、そういう観点から国民にわかるようなわかりやすい御答弁をいただきたいというふうに最初にお願いをいたします。
 まず、今回の商法の一部改正案を含めまして商法改正全般でございますが、どのような方向性で、いかなるといってもたくさんおありと思いますけれども、主にいかなる点につき改正をしていくという方向で法制審にゆだねていらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。法務省お願いいたします。
#141
○政府委員(清水湛君) これは、実は今回の改正作業も昭和四十九年における商法改正の際に当委員会あるいは衆議院法務委員会における附帯決議というものがあるわけでございまして、株式会社の現状というものにかんがみまして抜本的な見直しをせよというようなことにされているわけでございます。そういう附帯決議を受けまして法務省では昭和五十年から改正作業に着手したわけでございますが、要するに大会社には大会社としてふさわしい法規制をする。具体的に言えば、いわば多数の関係者から株式という形で資金を調達してそれを運用する、それを資本として企業活動を行う、またそういう面で企業の経理が適正に行われるというようなことが非常に重要なポイントになるとともに、関係する債権者の保護にも十分に資さなければならない、こういうようなことが重要な問題として出てまいるわけでございます。
 それからまた中小企業につきましては、非常にそれが小規模のあるいは本当に家族的な形での経営形態で行われているというような実態がありますために、そういうものにふさわしい株式会社法あるいは有限会社法というものを考える。大会社に適用されるような株式会社法を小会社に持ってまいりましても、ほとんどそれが守られないというようなことになるわけでございまして、かえって法軽視の風潮を生むというようなことにもなりかねないというような問題がございます。
 そういうような観点から、大小会社にふさわしいそれぞれの会社法制を考えるということが基本でありますとともに、会社法というのは、言うまでもなく株主の権利を保護するとともに会社債権者の利益を擁護する、これが一つのポイントでございますので、そういうような観点から、すべての制度について現在の経済情勢にマッチするような形での体制を考えていくというのが会社法改正の基本的な姿勢だというふうに私どもは考えているわけでございます。
#142
○紀平悌子君 ありがとうございます。
 さて、改正法案の大事な骨子の一つでございます、午前中から同僚委員から再々度御質問のございます最低資本金制度でございますけれども、先ほどからお伺いしておりますと、わかったようでもございますけれども、どうももう一つわからない点がございます。株式一千万、有限三百万という妥当な線でこの辺に落ちついたということが最終の御答弁内容のように思われるのでございますけれども、それにしても何か合理的な根拠があったのではないかというふうに思います。
 例えば株式会社については、当初試案では五千万でございましょうか、それが三千万、二千万とだんだん減額となってきたように伺っております。今の一千万という額でございますが、その経緯は、先ほどから各方面の御意見聴取の中でということで妥協の線だと思いますが、初段階の五分の一というのが出ましたときにはそれなりの合理性があったと思うんです。それが五分の一ということになりまして、当初のこの法改正の目的が達し得るものなのかどうか。
 関連して、資料の中にございました外国の例でございますけれども、アメリカ、イギリス、西独、フランスなどの最低資本金制度についてはどのような発想によってそれぞれの額が決められて現行規定になっているのか。それとの関連ももしできましたらお答えいただきたいと思います。
#143
○政府委員(清水湛君) 最低資本金の額を幾らにするかというのは、本当に一億円から五千万、三千万、二千万、一千万といろんな意見があったわけでございます。中小企業団体等から、二千万円ならかなり難しいけれども、一千万円だったら今
の中小企業、正常に取引をしている中小企業ということが前提になるわけでございますが、何とかこれに対応できるというような御意見でもございました。とともに、先ほど委員御指摘の諸外国のこの最低資本金というのはほぼ一千万程度に見合う、こういうような実情が実はあるわけでございます。もちろん、現在の為替レートで計算しますと一千万円弱とかその前後というようなことになるわけでございますが、諸外国におきましてそういうような最低資本金制度というものがその金額になった時点における為替レートで考えますと、あるいは二千万、二千五百万というような数字になる国もあるわけでございまして、今の円高のもとで換算するのは果たして適当な比較であるのかどうか、ちょっと問題なきにしもあらずでございますが、基本的には、やはり一千万前後で諸外国の最低資本金法制が動いておるというふうに私ども認識しておるところでございます。そういうようなことも一つの重要な参考になったというふうに申し上げることができようかと思います。
 それから、諸外国における最低資本金制度、これはアメリカは採用していないわけでございますけれども、イギリスとか西ドイツ、フランス、あるいは近くでは韓国、台湾、これらの国における最低資本金制度というのは、やはり会社に一定額以上の資産を純資産という形で、その具体的な姿は金銭であっても有価証券であっても何でも構わないわけでありますが、金銭的に評価してそれに見合うだけのものが会社に保持されなければならない。それが企業として物的有限責任会社の責任を果たす上に当然のことであるというような考え方でこのような制度が導入されている。このことについては各国とも変わるところはないというふうに私どもは理解しておるところでございます。
#144
○紀平悌子君 これも素朴な質問なんですけれども、中小零細企業に対して法改正をもってその規模に応じた会社形態をとらしめる、その必要性というのを端的に教えていただきたいと思います。
 さらに、中小零細企業が株式会社を選択し、より適するはずの有限会社等を選ばないというか、その例がたくさんあると思いますけれども、その理由はどこにあるというふうにお考えになるでしょうか。
 これは耳学問でございますけれども、有限という文字が会社の可能性の有限というのを連想させるから、どうも会社が先行き細るのではないかとか限りがあるのではないかというネーミングのせいだという話も聞きましたが、これはどうなんでございましょうか。冗談でございましょうか。
#145
○政府委員(清水湛君) 中小零細業の方々が株式会社をつくりまして、本当に御夫婦だけで小さな店をやっていて、世間にはどこにも迷惑をかけない、こういうような小さなお店もたくさんあると私は思います。しかしながら、一方ではそういう株式会社形態というものを利用いたしまして、いわば俗に言うペーパーカンパニーを次々とつくり、いろんな不正行為をするというような現象も一方には多々あるわけでございまして、やはり株式会社ということで有限責任の利益を享受する以上、先ほども御議論がございましたけれども、やはり一定規模の財産というものは常に維持するということがどうしても制度のあり方として必要であるというふうに私どもは考えるわけでございます。
 にもかかわらず、そういうことを考えるならば、日本には有限会社法といういい法律があるじゃないか。確かに有限会社法、現在見ますと、例えば書面決議もできますし、有限会社の社員総会の招集手続も非常に簡素化されておりますし、しかも社員の数も五十人以内というふうにむしろ社員の数も制限されておるというようなことから考えますと、そういう意味では有限会社の方が非常にふさわしいと思うわけでございますが、どうも余り有限会社という言葉を好まれないというような風潮もあるやに指摘されております。しかし、登記の方から見ますと、実は毎年株式会社と同じ程度に有限会社の設立登記もされているわけでございまして、最近は中小企業の方、かなり多数の方が有限会社組織を利用されておるというふうにも思えるわけでございます。
 有限というのが命に限りがあるというような意味で使われるということであればあるいは問題かもしれませんけれども、これは責任が有限であるということでございまして、ネーミングの問題かもしれませんが、心理的な問題として余り好まれないという問題もあろうかと思いますけれども、法律的に見ますと別にそういう特別の意味はないと言って差し支えないわけでございます。
#146
○紀平悌子君 さらに、法務省にお伺いしたいのですが、株式会社の資本金を一千万にしていくまでの経過措置が五年、それから実質八年二カ月でございますか、かなり長いように思われます。この長期間の猶予というものが与えられていることについて、経済的な合理性というものが果たしてございますでしょうか。日米構造協議その他の進展もございますし、経済の発展とか変動、そういうものとの兼ね合いというか、それは十分お考えになってのことでございましょうか。
#147
○政府委員(永井紀昭君) 猶予期間をどの程度にすべきかということは、既に改正試案のところでも三年から十年ぐらいの間の中でどれがよろしいでしょうかということをお聞きいたしました。すると、大方の方々がやはり五年ぐらいがいいのではないかという意見がほとんどでございました。五年というのはじゃどういう意味で合理性があるかといいますと、これは必ずしも説明は十分できないところがありますが、ただ現に、例えば株式会社ですと一千万円未満の資本金の会社が登記簿上は八十三万社ぐらいである。実質は六十万ぐらいだろうと思われますが、その会社の方々が増資をする、あるいは少ないかもしれませんが組織変更するというそういう準備をしていかなければいかぬ。やはり順次増資をしたり、いろんなそういう準備をしなければならないという期間として五年は欲しい、中小企業の関係者の方もそういう意見を述べておられます。したがいまして、五年というところが大方の意見であろう、また準備としてもまあまあ五年あれば何とかやれるのではないかというそういう考え方から五年の猶予期間というものを定めたわけでございます。
#148
○紀平悌子君 今回の改正案がいろいろな方面の御意見あるいはお立場も勘案された上で出された案だということでございますけれども、各委員からの御質問も再々ございましたが、大小会社の区分について検討すべきことという附帯決議、そこで示された期待からは大きく後退をしているように私にも見えます。
 法務省の御意見は伺っておりますので、中小企業庁としては今回の改正についてどんな評価をお持ちでございますか。一言で結構でございます。
#149
○説明員(藤原治一郎君) お答え申し上げます。
 中小企業庁といたしましては、今回の法改正に関しまして、中小企業大多数が会社制度を利用しているものでございますから、その影響にも配慮し、またその活力をそぐことがないよう実態を十分踏まえた内容としていただきたいというように要請してまいったところでございます。
 その結果、今回法務省から改正法案が出されたわけでございますけれども、第一に小規模、閉鎖的な会社に適合する法制度の整備ということで、一人発起人会社の許容、それから発起設立手続の簡素化など、中小企業の実態に合った法制度の構築というものが目指されているという点は評価できますし、また今回の最低資本金制度の導入または引き上げということにつきましては、会社法制の理念というものを踏まえつつも、また実態も十分踏まえて、また中小企業団体等の意見も踏まえてその金額や既存会社についての経過措置等の措置が図られたということから、確かに負担をかけるものではありますけれども、妥当な案ではなかったかというふうに考えてございます。
#150
○紀平悌子君 お話は少し変わりますけれども、いわゆる見せ金というものがあるそうです。見せ金によって仮装された会社設立などの際の資本金、増資金のごまかしというか、今回の最低資本金額の制度導入で発生をしてくるかもしれないと
いうふうなお説も伺いました。いわゆる見せ金についての商法上の規制は現行法ではどうなっておりますでしょうか。また、これを規制する方向での検討は御当局ではどうお考えになっておられますでしょうか。
#151
○政府委員(清水湛君) いわゆる見せ金について今回も検討いたしたわけでございますけれども、結論的に申しますと見せ金を刑罰の対象とするということは今回の改正では見送ることといたしたわけでございます。
 見せ金に類似する行為として、いわゆる預け合いという行為がございます。株式会社の株金を払い込む場合には、払込取扱銀行というものが決まりまして、その銀行に払い込むということになっているわけでございますが、預け合いの場合には、簡単に申しますと払込取扱銀行と払込人との間で通謀いたしまして、例えばA銀行に払い込む場合に、A銀行から金を借りてA銀行に払い込むという、簡単に申しますとそういう形になるわけでございます。ところが、見せ金の場合には、A銀行が払込銀行だといたしますと、B銀行から金を借りてきましてそれをA銀行に払い込んで、会社が設立されるとすぐそれを払い戻してまたB銀行に返してしまう、こういう形でございます。ちょっと粗っぽい説明でございますけれども、そこに見せ金と預け合いの違いがある、こういうようなことが言われているわけでございます。
 そういうことから、預け合いについては刑事罰をもって制裁を科すことになっているわけでございますが、見せ金についても同じような刑罰を科したらどうかという議論があったわけでございますが、これは構成要件の決め方が非常に難しいということと、非常に事実認定が難しい、こういう一つの問題があるとともに、見せ金による設立であるということが明確にされた場合には、これは公正証書原本不実記載に該当するというのも一つの固まった解釈であるわけでございます。
 したがいまして、本当に見せ金だという認定ができるならば、現行法でも公正証書原本不実記載で罰することができる。ただ、犯罪の既発、既遂時点が若干ずれる、おくれるという点の違いはあるわけでございますが、要するに可罰的であるというような御意見もございまして、最終的には見せ金による会社設立行為を直接禁圧するための刑罰的な措置はとらなかったということになるわけでございます。もちろん、その払い込み責任を適正にこれは遂行していないわけでございますから、払い込み担保責任等の会社法上の責任、あるいは損害賠償責任等が生ずることは当然のことでございますが、従来から議論されております見せ金を刑罰の対象とする議論については、今回はこれを採用することはしなかった、こういう結果になっているわけでございます。
#152
○紀平悌子君 時間もなくなってまいりましたので、ちょっと難しい問題かと思いますけれども、株式会社制度に対してもその乱用を防ぐために株主有限責任の原則を一部であれ無限責任に変えて、そして会社債権者を守る制度、例えば支配株主の賠償制度などがあり得るというふうに伺っておりますけれども、そうした会社の実質的支配者に対して責任を追及し得る仕組みというものを商法上どうお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。簡単で結構でございます。
#153
○政府委員(清水湛君) これは前にも問題になったわけでございますけれども、結局小規模の会社については会社財産が十分ではない。十分ではないということになりますと、取締役の個人責任を追及するという手段が現行法上も商法二百六十六条の三にあるわけでございますが、取締役でなくても、例えば株式の大多数を所持していて会社経営にいろんな形で関与するいわゆる支配株主というようなものがあるわけでございまして、一定の場合にはそういう支配株主の個人責任を追及するというようなことを制度化したらどうかという議論が実はあったわけでございまして、これを試案の中では一つの案としてお示ししたわけでございます。
 しかし、この問題につきましては株式会社の有限責任と、それからそもそも株主は出資の限度においてしか責任を負わないという株式制度の根本にも触れる問題であるというようなことから、なおこれは検討をする必要があるということで今回の答申からは見送られたわけでございまして、このような制度を早急にあるいは性急に導入することについては反対であるというような意見もかなり強うございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、そういうような問題提起がされた背景というようなものについては十分これは考えなければなりませんけれども、それを具体的にどういう形で制度化するかということについては、今後法制審議会における調査、審議等を踏まえまして慎重に検討してまいる必要があるというふうに考えている次第でございます。
#154
○紀平悌子君 最後に、法務大臣にまとめとしてお伺いしたいと思います。
 今回の商法の一部改正についての公益的なメリットというものはどのあたりにあるというふうにお考えでございましょうか。
 私、大変素人意見で申しわけございませんが、やや一貫した合理性がどこか欠けているようにも思えるわけでございます。法制審における合理的に導入を予定された幾つもの構想というものが途中で消えております。特に、貸借対照表の公表というものがなくなったといういわゆる公開の原則でございますけれども、それらのことなどを含めて十分な改正とお考えになっておられるか、また今後のお心組みなどを聞かせていただければ幸せでございます。
#155
○国務大臣(長谷川信君) 先ほど委員に御説明申し上げましたように、今回のものが完全無欠のものであるとは残念ながら申し上げかねるわけでございます。
 ただ、これからいろいろ勉強したりいたしまして、できるだけそれに近いような形でいろいろまた変えていかなければならないというふうに考えておりますが、なお、これだけの対象が大きい、幅の広い千差万別のものでございますので、若干時間のかかることはこれはお許しをいただかなければならないというふうに考えております。法務省、最善の努力を払って御期待に沿えるようにしたいと思います。
#156
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#157
○委員長(黒柳明君) 両案に対する審査は、本日はこの程度といたします。
    ─────────────
#158
○委員長(黒柳明君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#159
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#160
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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