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1990/06/19 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第6号
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1990/06/19 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第6号

#1
第118回国会 法務委員会 第6号
平成二年六月十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十五日
    選任          三重野栄子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         黒柳  明君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                安永 英雄君
                矢原 秀男君
    委 員
                下稲葉耕吉君
                林田悠紀夫君
                山岡 賢次君
                北村 哲男君
                櫻井 規順君
                千葉 景子君
                三重野栄子君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  長谷川 信君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省民事局長  清水  湛君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       大蔵省主税局税
       制第一課長    長野 厖士君
       大蔵省証券局企
       業財務課長    中川 隆進君
       中小企業庁計画
       部下請企業課長  田中 信介君
       中小企業庁指導
       部組織課長    藤原治一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 小野明君の逝去に伴い委員が一名欠員となっておりましたが、去る十五日、その補欠として三重野栄子君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(黒柳明君) 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○千葉景子君 きょうは商法等の一部を改正する法律案につきまして、これまでの質疑と重なる部分もあろうかと思いますが、お許しいただきまして、問題の整理をしつつ若干の提起などもさせていただきながら質問をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。
 さて、この商法等の一部を改正する法律案の提案理由を読ませていただきますと、この法律案は今我が国におきまして大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する法規制、これを実情も踏まえて整備をするということ、それから会社債権者の保護のために必要な措置を講ずる、そして会社の資金調達の方法を合理化する、こういう点が大きな柱にもなっております。
 この中で、会社の資金調達の方法を合理化するという点においては、優先株や社債の問題などの整備により一定の実を上げてくるのではなかろうかというふうに思いますけれども、小規模、閉鎖的な会社に対する法規制、あるいは会社債権者の保護、こういう大きな柱についてはこの法律が一体その目的に沿って十分なものであるのか、本当に実効あるものとして機能するのかどうか、私は大変疑問に思っている一人でもございます。これは、この法提案のこれまでの経過等も私もいろいろと調べさせていただき、あるいはお聞きしてきたわけでございますけれども、どうもこの改正の趣旨が従来の本来の目的から見ると大分かけ離れたものになってしまっているのではないだろうか、そういう気がいたします。
 そんな意味で今回のこの法改正、一番基本ではございますけれども、一体どんな目的、まあ目的はここに書かれておりますが、それが実際に十分と認識なさっているのか、あるいはこれはいろいろな条件のもとで第一歩と考えているのか、あるいは将来に向けて一体どういう御認識を持っていらっしゃるのか、まず総論的にこの点についての法務省としての御認識を伺わせていただきたいと思います。
#5
○政府委員(清水湛君) お尋ねのように今回の改正案は幾つかの点があるわけでございますが、特に小規模会社の実情に適合するようにという面におきましては、委員御指摘のとおりまだ積み残されている問題点が多々あるわけでございます。会社法の根本的な見直しにつきましては四十九年の改正の際附帯決議をされたわけでございますけれども、これに基づきまして法務省といたしましてはずっとこの改正作業を続けてまいりました。五十六年改正で主として大規模会社向けの法改正を行ったわけでございますが、残された小規模会社の問題につきましては設立手続だとかあるいは株主総会、取締役会あるいは監査役制度、株式制度等々多くの問題があるわけでございまして、そういうような問題を含めまして昭和五十七年以来改正作業を続けてまいりました。五十九年五月には小規模会社立法に関する問題点を公表し、六十一年五月には商法・有限会社法改正試案を発表いたしました。この中には、委員御指摘のような小規模会社向けのもろもろの問題点を拾い上げた試案が示されているわけでございます。
 しかしながら、それらの問題についてすべて結論を得るということがどうも非常に難しいという状況になってまいりましたので、今回の改正におきましては株式会社の設立あるいは株式に関するとりあえず改正が急がされている事項、これは要するに譲渡制限をしている株式会社、つまり閉鎖的な主として小規模の株式会社における株式の問題でございますが、そういうような問題、さらには計算・公開、組織変更等の問題に限りまして小規模会社については今回の改正案にそのような点が盛り込まれたわけでございます。そういうわけで、小規模会社法制としてはある意味においては一部についてだけ今回法案化されておる。それでも設立手続を簡素合理化するというような面におきましてかなり有効な改正だというふうに私どもは考えているわけでありますが、なお今後株主総会制度だとか取締役会制度等の会社の管理運営機構あるいは監査制度等についてさらに検討を続けてまいる必要があると考えているところでございます。今回の改正が成った後には引き続きこの改
正作業を続けるという考えでございます。
#6
○千葉景子君 今後も改正作業を続けられるという今お話でございますが、率直に言いまして、その試案と今回の改正案では大きく内容が異なっている、異なっているといいますかその一部しか改正案として提案をされていない。今後も改正作業を続けられるということですけれども、その改正作業に当たりまして最もネックというんでしょうか、一番難しい点、今後作業を続けるに当たって法務省としてはこういう点をクリアしないとなかなか先へ進みにくいというところはどういうところにあるんでしょうか。
#7
○政府委員(清水湛君) 特に重大なネックがあるというわけではございませんけれども、例えば非常に重要な問題といたしまして有限会社法と小規模株式会社法をどうするかという問題があるわけでございます。御承知のように、有限会社というのは社員の総数が五十人以下に限定されておるというようなこととともに、一方では社員総会とか取締役制度について非常に簡素な手続になっておる、こういうような状況がございます。我が国の株式会社の実態というものを見ますと、その多くは有限会社、そういうその種の有限会社と実質的には変わらないのではないかというような御指摘があるわけでございます。
 そういうようなことから、例えば中小規模の株式会社法と有限会社法を一本化したらどうかというような提案も実はあるわけでございますが、しかし一方では、既に相当長期にわたって有限会社法制、株式会社法制というものが別個の法制として存在している、また、そういうものに依拠して設立された会社が多数存在するというような状況もあるわけでございます。そういうようなことを踏まえて一体どういうふうに判断するか、こういうようなことになりますと実にいろんな考え方があるわけでございまして、なかなか意見がまとまらないということになるわけでございます。
 小規模の株式会社も有限会社もともに有限責任であるという点においては共通でございますので、その点は動かすわけにはまいらないわけでございますが、さらにはまた、そうは言いながらも例えば小規模会社については支配株主だとかあるいは取締役の個人責任を強化するとか、そういうような問題もまた指摘されているわけでございまして、いろんな面でまだ十分論議が煮詰まっていない状況にあろうかというふうに私ども考えているところでございます。
#8
○千葉景子君 今回のこの改正、先ほど申しましたように、大きな柱として会社債権者の保護ということが柱になっております。今回はその柱に基づいて一定の中身が改正をされたということでございますけれども、そもそも法律的に考えますと、株主あるいは社員の有限責任制度といいますものは債権者に対する責任財産、これは会社財産に限定をされるという制度でございますから、何らかの形で債権者に迷惑というか、さまざまな問題を生ぜしめるということが考え得る制度でございます。だとすれば、それを十分に考えた上で社会的な信用あるいは信頼を得るための措置というものが講じられていなければいけないというふうに考えます。
 そういう意味では現代社会、とりわけこういう国際化が進む社会の中では、株主などの有限責任の制度を支えるためにはやはりどうしても会社債権者を保護するための十分な条件整備というものが不可欠になってきているのではないかというふうに思います。そういう意味で、まず会社債権者保護の面につきまして、少し具体的に質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 会社債権者の保護につきましては、私ばかりではありませんで、さまざまな学者の皆さんなどからも、一定のそのための条件というのは三つほどの柱があるのではないかというふうな指摘がされています。一つは、いわゆる資本をどうやって確保するか、充実をさせていくかという視点。それから、会社の計算をできるだけクリーンな透明なものにして、だれもがその会社内容をわかるようにする、それによってさまざまな取引関係の安全を図っていく、こういう柱。それから、その裏づけにもなろうかと思うんですけれども、会社の計算を明確にする。これは例えば第三者によるチェックの機構ですね、こういうものが考えられるのではないかと思います。それらが債権者保護の意味での大きな柱、方向づけとして考えられるのではないかというふうに思いますけれども、この点については法務省としてはどうお考えになっていらっしゃるでしょうか。
#9
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のとおり、まさに債権者保護のための現行制度として、商法は資本金制度、これは資本充実の原則とか資本維持の原則という形で守られるべきものとされているわけでございますが、そういう資本金制度。それからもう一つには、計算書類の公開制度。この公開というのは、決算公告という制度もございますけれども、計算書類の備え置きによって株主、債権者に会社の財務情報を提供するというような面もございます。そういうような計算書類の公開という問題。それからその前提として、公開される計算書類が正しいものであるということを保証するという意味での監査制度と申しますか、あるいは外部の会計監査人による監査も含めましてそういう監査制度というものがある、こういうことが考えられます。その他いろいろあるのかもしれませんが、基本的には委員御指摘のとおり、この三つの制度が重要な柱となっておるというふうに私どもも考えているところでございます。
#10
○千葉景子君 その三つの柱なんでございますけれども、今局長も答弁をいただいたように、現在も一定の制度がつくられております。それの現行法制におけるさまざまな制度、その問題点などをちょっと若干整理をさせていただき、今後のさらなる充実に向けた問題指摘などもさせていただきたいというふうに思うんです。
 まず、資本の確保といいましょうか、その面におきましては株主というのは会社に対して有限の出資義務を負うだけでございます。これは先ほども申しました。そういう意味では会社の財産的基礎となり会社債権者の担保となるのは会社財産ですから、その会社債権者を保護するためにも、それから会社自身が長期的に見て企業経営を安定させるという意味でも、この基本的な財産の確保というのはやはり大変重要な問題であろうかというふうに思います。それのための制度として具体的に今幾つか御指摘がありましたけれども、資本充実、維持の原則、あるいは資本を登記上に公示をしてそれをしっかりと堅持していく、こういうような制度があろうかと思いますが、その現行制度とそれの実情というのもおかしいですけれども、問題点といいましょうか、そういうところを若干御指摘、御説明いただきたいというふうに思います。
#11
○政府委員(清水湛君) まず第一に、資本金制度の問題点についてお尋ねでございますので、この点についてお答え申し上げます。
 資本金という言葉にはいろいろな意義あるいは機能があろうかと思うわけでございますけれども、会社債権者の保護という観点から申しますと、要するに会社債権者の引き当てとなるべき純資産を保持すべき最低の基準を示すものが資本金であるということに相なろうかと思います。つまり物的有限責任会社においては、会社財産が唯一の債権者の担保でございますので、純資産として資本金相当額以上の財産を会社に保有しなければならない、こういうことになっているわけでございます。
 ところが、我が国の株式会社法におきましては、その資本金の最低限の定めが今までございませんでしたために、例えば非常に極端な例で申しますと、現行商法の規定に従いますと、一人五万円の株券を一株引き受けて、発起人が七人でございますので、三十五万円の資本金で会社をつくることができる。つまり、会社に保持すべきいわば最低限の純資産は三十五万円で足りる、こういうようなことになるわけでございます。そういうようなことから、商法の中で資本充実の原則とかあるいは資本維持の原則というようなことで、例え
ば二百九十条等で配当規制をするというようなことをいたしましても、その保持すべき純資産の最低額についての制限がないというようなことから、会社債権者保護のために問題があるというようなことがかねてより指摘されていたわけでございます。
 そういう意味で、戦後、商法の一つの課題として、最低資本金を定めてそれに満たない株式会社の設立は認めないというような法制を早期に導入すべきであるということが各方面から指摘されていたわけでございます。今回の最低資本金制度の導入は、このような商法の規定をめぐる各種の論議というものを背景にしてなされたものであるというふうに私どもは考えているわけでございます。
#12
○千葉景子君 この資本の制度といいますのは、一定の会社財産の基準といいましょうかそういうことでございますので、低い額であってもその会社自体が営業成績を上げることによって十分な社会的な信用あるいは基礎を築くこともあり得るわけです。そういう意味では必ずしもこの資本の制度だけが債権者保護に資するわけではありませんし、逆にその中身が空洞化しておれば、これは幾ら高い資本を定めても、倒産とか危ない状況も生まれるということにもなろうかと思うんです。ただ、これをできるだけ維持していこう、それをさらにふやしていこうという意味での一定の基準になっていくのではないかと思うんですね。
 そういう意味で今回、一番基本になる基準としての最低資本金制度が採用されたということではなかろうかというふうに思うんですけれども、これは現在の日本の多くの中小企業を含めた産業構造、こういうものを考えたときに、法務省としてはこの最低資本金制度というのはどのように今後機能していくというふうにお考えでしょうか。あるいは問題点等がないというふうにお考えでしょうか。
#13
○政府委員(清水湛君) 最低資本金制度を導入すれば、それによってすべて債権者が保護されることにはならないということは御指摘のとおりだと思います。現実に資本金が百億円の会社でも倒産することはあるわけでございますし、資本金百万円でも立派にやっておられる企業も多々あるということも私どもは承知しておるところでございます。
 しかしながら、一般的に、非常に小規模の会社というものをつくっては消え、つくっては消えというような状況を繰り返しておるということも一つの現象としてはありますし、また、小規模の会社については各種の訴訟等が提起されましても、現実には会社の財産というものはなくて、取締役個人の責任とか法人格否認の法理というようなものを使って個人責任を追及するというようなことにならざるを得ない。それだけ資本金の金額が少ないがために、いわば企業の体質が非常に弱いものになっておるということの一つのあらわれだろうというふうに思うわけでございます。
 そういうような観点から、今回の最低資本金制度、一千万円が絶対的に正しいかどうかという問題は別といたしまして、このような最低資本金制度をしくことによって、多くの会社の経営というものが健全化されるとともに中小会社の乱立が抑制されて、結果において債権者保護にもつながっていくというふうに私どもは考えているところでございます。
#14
○千葉景子君 例えば、こういう最低資本金制度をとることによって、仮にこれだけの資金調達力に欠けるような場合、企業活動などへの影響というのでしょうか、そういうことの懸念というのはございませんか。
#15
○政府委員(清水湛君) 最低資本金を幾らにするかということと関連する問題だというふうに私どもも思うわけでございます。最低資本金を今回新たに導入するにつきまして各界から寄せられた意見の中には、例えば一億とか五千万とか三千万とか、そういうような金額にすべきだというような御意見もございました。それから昭和十三年に制定されました有限会社法におきましては、有限会社の最低資本金が当時の金額で一万円であった、これを現在の貨幣価値に換算いたしますと一千五百万ないし二千万になるというようなこともございまして、それとのバランスからいきますと、株式会社については少なくともそれを上回るような金額であるべきだというような御意見もあったわけでございます。
 他方、しかしながら資本金一千万円の企業というものが多数存在する、そういう企業が現実の経済取引社会の中で、いわば経済活動の基盤を支えておるような実態もあるという御指摘もございました。そういうことで、現実にそういうような活動をしている中小企業に大きな負担をかけるということであっては、これはいかに理念的に正しいものであってもやはり問題であるというようなことに当然相なってくるわけでございます。
 そういうような過程から、例えば今回最低資本金制度を導入するに当たって、どの程度の金額であればこの法律が施行されることによって五年内に資本金の増額をしなければならない中小企業としては耐え得る金額であるのかというようなことについて、中小企業団体その他関係方面とも十分に意見を交換し、あるいはいろんな事情をお知らせいただきまして、最終的に、今回私どもが提案しておりますような株式会社一千万円、有限会社三百万円という最低資本金であるならば、現在の中小企業はそれを満たすための必要な措置をとり得るというような結論に到達いたしたわけでございます。
#16
○千葉景子君 この点につきましては、きょう中小企業庁にもおいでいただいているんですけれども、一番実態等を掌握なさっている官庁として、今回の最低資本金制度、これの導入による問題点とか、あるいは今後の見通しなどについてはどうお考えですか。
#17
○説明員(藤原治一郎君) お答え申し上げます。
 中小企業庁といたしましても、先生御指摘のような中小企業への影響ということにかんがみ、中小企業の活力をそぐことのないよう、またその実態を十分踏まえた改正内容としていただくよう従来から要請をしてまいったところでございます。
 今回の最低資本金の導入または引き上げということでございますが、確かに会社法制の立場から債権者保護のための措置ということは理解するものでございますけれども、しかし一方、債権者保護の立場を重視して余りに高額の最低資本金を要求したという場合には、株式会社なり有限会社により企業活動を行うことを阻害し、経済の活力をそぐおそれがあるということを懸念したわけでございます。このためさきのような要請をしてきた結果、今回の改正案におきましては債権者保護と企業活動の活発化の要請との調和ということを勘案した額として、株式会社一千万円、有限会社三百万円という最低資本金が設けられたということと理解してございます。
 なお、影響でございますけれども、確かに現在、改正案の最低資本金額を下回る資本金の既存会社に対しましては、その増資なり組織変更の負担を強いることになることは事実でございます。しかし、今回の改正案ということでございますれば、既存会社に対する最低資本金の適用については十分な猶予期間が認められた、さらには最低資本金の額も従来の主要中小企業団体等の意見も踏まえた現在の案ということに設定されていることから、改正案の内容というのは大数の中小企業に十分理解され、また努力して達成しようという目標設定になっているというふうに考えてございます。
 将来の見通しでございますが、したがいまして、現在の会社形態を選択しようとする大部分の中小企業者は、増資等により努力してクリアしていくのではないかというふうに予想しております。
#18
○千葉景子君 それでは次に、会社の計算の公開の問題について御質問させていただきたいというふうに思います。
 会社の信用状況を判断するという場合には、やはり会社の財産状態とかあるいは経営の状態が今
どんなふうになっているかということを知ることが欠くことのできない条件ではなかろうかというふうに思います。先ほど資本の制度のところで指摘をさせていただきましたように、資本というのは一定の基準でございますので、その後その会社がその資本に見合った十分な活動をしているか、あるいは資本は少ないが今の経営状態はさらに大きく拡大している、さまざまな問題をその会社の現在の財産状態とか経営状態を見ることによって知ることができるということでは、これは債権者の保護にとっては大変重要なポイントになるのではなかろうかというふうに思います。また、会社が現在の経済社会の基本的な要素として位置づけられていることを考えますと、やはり会社がどうなるか、これは大変社会にも大きな影響を及ぼしていくことになろうかというふうに思います。また、今後の国際経済の中でも信頼を得ていく、そして日本の会社の透明性というんでしょうか、そういうものが大変大きく指摘されている中で、この公開の問題というのは避けて通れない課題であろうというふうに思います。
 その課題の割には、そして会社債権者の保護が大変大きな柱だという法の目的から考えますと、本当に今回の法改正というのは、何だか結局何をやったのかなというふうに考えざるを得ないわけなんですね。これまでもこの公開の問題については、現行法でも一定の手当てはされているわけでございます。例えば株主とかあるいは債権者による閲覧権のようなものですね、こういう形で一定の情報を得ることができる、こういうことが法制度として決められております。それから決算公告の制度、これも法的に採用されている制度でございます。しかし、大体そのくらいのところが大きな柱でございまして、これで十分な公開がなされているか、そしてこれが本当に機能しているのかどうかという点では、大変私は疑問を持たざるを得ないわけでございます。
 そういう意味では、この現行の制度、一体本当に機能しているのかどうか、法務省の方ではどういうふうに認識をなさっているのか答えていただきたいことと、それから閲覧などを考えますと、一定の取引関係にあるとかそういう場合ですといいんですけれども、これからいよいよ、いろいろな会社を見て自分も取引に入りたいというときには全く意味がないという制度なんですね。そういうことも跡まえまして、この現行制度の実態、問題点などについてまずお知らせをいただきたいと思います。
#19
○政府委員(清水湛君) 計算書類は、これは会社の財産の状況を示す極めて重要な書類でございます。貸借対照表は決算日における会社の財産の状況、損益計算書は当該営業年度における会社の損益の状況を示す書類だ、こういうふうに言われておるわけでございます。そういうような会社の財産の状況というのは、会社が有限責任の利益を享受する以上、当然これは第三者にも公開すべきだというのが現在の商法の考え方だろうと思うわけでございます。
 そういうような観点から、委員御指摘のように、商法二百八十二条では計算書類等の本店あるいは支店への備え置き、これに対する債権者、株主等の閲覧請求権、あるいは謄本、抄本の交付請求権を定めておりますとともに、貸借対照表につきましてはこれを公告する、こういうことになっているわけでございますが、この決算公告の問題につきましては、これは現在の会社法の中におきまして会社法制と現実が最も乖離している例として指摘されているところでございまして、多くの株式会社はこのような決算公告を現に行っていないという実情にあるわけでございます。登記簿上百二十六万社の株式会社が存在するというふうになっております。この中にほかなり営業の実体を失っている休眠会社というものがあろうかと思うわけでございますが、それでも、この株式会社のうちこういう計算書類の公告をしているのは全体の一%ないし二%にとどまるというような推計もあるわけでございまして、そういう意味におきましては、この計算書類の商法における公開制度というのは十分に守られていないというような結果になっているわけでございます。
 こういうような点をやはり改めなければならないということで、今回の改正案を提出するについても、その前段階であります法制審議会で議論され、またこの公開についての答申もされたわけでございますが、御指摘のように、今回の改正案では、いわば一つの重要な柱の部分である計算書類の登記所公開制度が抜け落ちておるという点は、まさに委員御指摘のとおり、会社法制の基本的なあり方という面から見ますとやはり問題であるというふうに私どもも考えているわけでございます。
#20
○千葉景子君 国際的に見て、諸外国では今後ECなど大変大きな世界の経済での中心になっていくかと思いますけれども、諸外国でのこの公開の問題はどんな状況でしょうか。
#21
○政府委員(永井紀昭君) 国際的に見ますと、EC諸国におきましては我が国の株式会社及び有限会社に相当いたします有限責任会社はすべて計算書類を登記所で公開しなければならないというふうにされております。また、EC諸国におきましては、国によって若干違いますけれども、我が国と同じような公告の制度、官報公告といった制度もあわせて採用しているところもございます。ただ、中小会社につきましては、公開すべき計算書類の範囲が若干限定されているというのが現状でございます。
 なお、アメリカにおきましては、実は計算書類の公開ということが登記所で行われているという制度はないようでございます。ただ、証券取引規制法におきまして情報公開が非常に厳しく要求されている、あるいは民間の情報機関が非常に発達しておりまして、そういうところでの情報公開ということが現実にはなされているというように聞いております。
#22
○千葉景子君 諸外国でもそれぞれの国の特色によりまして手段は大分違うと思うんですけれども、ほぼ公開という方向にやはり先進諸国ではあるのではないかというふうに思うんですね。そうなりますと、今後、今言ったように、局長も御答弁なさったように、どうも法的に欠けている部分と言わざるを得ないんじゃないかというふうに思うんです。
 ただ、じゃどうするかということになりますと、今出ていますように現行法でも公告の制度がある、これを広げていく、あるいは実質化していくということも考えられるんではないか。あるいは、会社において公開をする今の閲覧制度のようなもの、これをやはり広げていくという方向も考えられるだろう。それから、EC等の諸国でも見られるように登記所などでこれを備えつけて公開するというような考え方等が検討され得るだろうというふうに思うわけですが、これはどうなんでしょうか、これまでも検討課題には上っているというふうに思いますけれども、それぞれいろいろな問題点それから実情等を踏まえて、私は、決算公告というのが費用の問題等も含めて大変だ、それから会社で公開をするというのも実際では現在でもわざわざ会社に行って閲覧をするとかというのは、なかなかやられていないと聞いておりますし、難しい点があるだろう。そういう意味では登記所での公開というのはかなりいい制度ではなかろうかなというふうに思うんですけれども、法務省としてはこの公開制度、今後の問題点としてどうお考えでしょうか。
#23
○政府委員(清水湛君) 計算書類の公開をどういう形でするかということ、会社における公開というのは現在二百八十二条という商法の規定があるわけでございます。そのほかに現在は決算公告という制度があるわけでございますが、それが果たして中小企業なんかにとって適当なのかどうか。委員も先ほどおっしゃいましたが、新聞、官報等に公告するということになりますとその費用も相当額のものになるというような問題もあるわけでございます。それから、取引分野というものを考えますと必ずしも新聞、官報というようなものでなくてもいいのではないかというような問題点
も指摘されているわけでございます。
 そういうような観点から、法制審議会におきましても計算書類の公開のあり方をどうしたらいいかということで従来から検討してまいったわけでございます。しかしながら、公開制度はやはり拡充強化すべきであるという基本的な視点は変わらないわけでございますけれども、いろいろな検討を重ねたわけでございますが、そういうことの中で最終的に得られた結論というのは、原則として株式会社はすべて貸借対照表、損益計算書及び監査報告書を登記所で公開する。今新聞、官報で公告をしております大会社についてもこれは登記所に出して、そういう書類を公開するということにしていただく。これは実はヨーロッパ諸国でも登記所公開とあわせてそういうような官報公告もやっているという例もございますので、公開を強化するという意味においてそういう基本的な制度を導入すべきだということにいたしたわけでございます。
 ただ、中小企業等につきましては貸借対照表、損益計算書、監査報告書のすべてを登記所で公開するということについてはまだ問題があるというようなことから、当分の間、資本金三千万未満かつ負債総額五億円未満の株式会社については登記所公開は適用しないということとし、それ以上の会社については、つまり商法特例法上の大会社以外の株式会社については、当分の間、貸借対照表のみを提出すれば足りるという形にいたしまして、やはり基本的には登記所公開という線を守るべきであるというふうに法制審議会の答申では結論づけたわけでございます。
 私どもといたしましても、中小企業における計算書類の公開というような点を考えますと、登記というのはこれはもう中小企業については役員変更の登記は少なくとも二年に一回はあるわけでございますので、登記所は非常に中小企業にとって近しい存在になっておりますので、登記所にそういう書類を提出していただいて、それを一般に公開するというのが現実的で最も合理的な方法ではないかというふうに考えるわけでございます。
 ただ、しかしながらこのような制度はヨーロッパ諸国ではもう昔から採用されている制度とはいえ、我が国では今回初めて公式に提案された制度でありますために、関係する中小企業関係者の理解をまだ十分に深めるには至らなかったということから今回改正案に盛り込むことを見送らせていただいた、こういう結果になっているわけでございます。今後ともこの登記所の公開制度は何とかして関係方面の理解を深めた上で実現いたしたいというふうに私どもは考えているところでございます。
#24
○千葉景子君 これにつきましては、さまざまな煩雑さとかあるいはコストの面等も勘案して、どうなんでしょうか、中小企業庁としては、こういう制度をもし取り入れるようなことであれば、中小企業あるいは一定の大きさの会社にとっては相当負担になると考えていらっしゃいますか。それとも、やはり公開というのは方向性としては基本的にはお認めになり、ただ、いろいろな手段としてどうするかというのが問題だというふうにお考えでしょうか。その辺はどうですか。
#25
○説明員(藤原治一郎君) 中小企業庁におきましても会社法制の理念、それからまた中小企業の実態ということを踏まえて検討したわけですが、特に中小企業者の立場からの感触を申し上げますと、まずそもそも有限責任の会社制度を利用する限りにおいて、その計算書類は原則として公開されることが望ましいということは我々も当然のことながら理解してございます。ただ、ヨーロッパ諸国ではやられているということではございますけれども、既に百二十六万社という株式会社がもう設立されているという中で、一気に公開の制度を進められるか、どのように進めるべきかについてはいろんな意見がございます。
 特に、中小企業関係団体等の感触をあえて申し上げますと、まず公開の方法について、やはり対象とするのは我が国の産業経済に広い影響力を持つ大会社の計算書類の公開ということについては、当然不特定多数者の多目的な活用に資するという観点から、これは有効な方法であろうというふうに考えられますけれども、しかしながら一般的に活動範囲も狭く、また取引先もしたがって少ない中小企業にまでも大会社と同様に強制的な一般公開というのが導入されることについては、その有用性についていかがかなという疑問がある。さらに一方において、これも意見があるわけですが、場合によっては逆に悪影響が生じかねないいろんな取引上の問題が出てくる。下請関係等で収益が明らかになると単価の引き下げその他が出て、再投資すらできないというような状況に追い込まれるというようないろいろな懸念もございます。債権者、株式会社以外の全く第三者に公開するということについての不安、懸念というのもございます。
 したがって、今後どのようにするかにつきましては、一方には外部監査制度との問題、要するに信頼性に足る計算書類かということの担保の問題もございますので、やはりいろんな知恵を組み合わせて、一定規模以上から段階的にディスクロージャーというのを――我が国の風土にはなかなか今までなじみにくかった面もございますので、対応していくべきではないか。そういう面から実態に即した慎重なあり方というのが検討されることが望ましいというふうに考えてございます。
#26
○千葉景子君 今の中小企業庁の方からの御指摘は私も理解をするところでもございます。
 ただ、下請企業などの取引上の問題等は、ある意味ではこの商法上の問題のみならず、やはり取引をきちっと圧迫がないように公平公正にやるバックアップを別な観点からするということも必要な点ではなかろうかというふうに思うんです。そして、確かに大会社とそれから中小の、小規模の会社との社会的な影響力の問題等もあるかというふうに思います。ただ、できるだけ会社の計算をクリーンなものにして明らかにしていくということは、基本的な考え方としてはやはり進めていかなければいけないところだろうというふうに思うんです。そういう意味では、ぜひそれらのさまざまな課題を十分に検討いただいて、これは世界的な要請から考えても相当早急に取りかからなければいけない、あるいは実現していかなければいけない部分だろうというふうに思いますので、その点について今後の取り組み方をぜひ私は提起させていただきたいというふうに思います。
 それでは、またさらにこのかかわりもございますが、これの裏づけともなる会社の計算の適正の問題に移らせていただきたいというふうに思います。
 会社の計算が適正になされているかどうかということにつきましては、これは公開をされてもそれが偽りであったり、あるいは不十分なものであったりしては余り意味がないということにもなってまいります。そういう意味では、それを担保する意味でも重要だというふうに思います。本来、取締役がその点をきちっと取り仕切るというのが第一義的な責任であろうというふうに思うんですけれども、公平さ適正さを担保する意味では、その取締役が行った行為をやはり何らかの形で第三者がチェックするというようなことも有効な方策ではなかろうかというふうに思います。現行法でも監査役による監査、また大会社などには会計監査人による監査というものが制度としては取り入れられておりますけれども、これも一体現状において十分な機能を果たしているのかどうかというのが大変私も疑問です。
 大会社の会計監査人の問題は、これはかなりの適正な機能を果たしているんではなかろうかというふうに思うんですけれども、監査役の制度、これを見ておりますと、どちらかというと人的に取締役には就任いただけないけれども監査役に就任いただくというようなケースが見られたり、あるいは小規模のところでございますと親族の間から監査役が選ばれている、あるいは人的に密接な関係を持つ方から選ばれているというようなことなども見受けられるような気がいたします。そうなりますと、本来の意味での第三者的なチェックがで
きるんだろうか、あるいは専門的な計算書類、そういうものの監査というものに十分な能力を発揮できるんだろうかというあたりでも、若干私も疑問があるわけなんですね。全部が全部適正に行われていないとか機能していないということではないわけですけれども、そういう問題点があるのではなかろうかと思いますが、どうでしょうか、現行法上これらの制度はどんな機能を今果たしているというふうに御認識なさっていますか。
#27
○政府委員(清水湛君) 会社の計算が適正に行われるということは非常に大事なことであるというのはまことにそのとおりでございまして、第一義的には取締役が忠実にそういう計算書類を作成するということが基本だというふうに思われるわけでございます。しかしながら、それをチェックするシステムとして監査役制度というものがありまして、この監査役制度が制度本来の機能を十分に発揮するということによってさらにその適正を確保するというふうに会社法はなっているわけでございます。
 従来から監査役制度が十分機能しておらないのではないかというような指摘がございまして、実は先ほど私申し上げました昭和四十九年改正というのはそういう問題意識から監査役制度、つまり監査役の権限を強化するとかそういうような形での重要な改正も行ったわけでございます。加えてまた、いわゆる大会社につきましてはそういう監査役による内部監査のほかに、公認会計士あるいは会計監査人等による外部監査としての監査制度を導入したということになっているわけでございます。
 しかしながら、中小企業につきましては、実は必ずしもこの監査役制度が十分に機能していないのではないかというような御指摘も実はあるわけでございまして、そういう面でのつまり中小企業における監査役制度、監査役監査というものをいかに充実強化させるかということが一つの大きな問題であろうかと思うわけでございます。もちろん監査役の監査と申しましても、会社の規模により、例えば資本金一億円以下の会社ですと会計のみについての監査であるとか、一億円を超えますと業務監査権があるとか、いろいろその権限の違いはありますけれども、いずれにいたしましても、監査役監査というものの実効を期することができるようなことを考えなければならないというふうに私どもは常日ごろ考えているわけでございます。
 ただしかし、この種の問題は法律を改正すれば事足りるということではございませんで、中小企業全般についてふさわしい監査役を選んでいただくというような実体が形成されるということもまた大事なことだと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういう中小会社についての監査制度の充実強化、さらには外部監査の導入の可否というような問題は非常に重要な問題で、今後検討さるべき課題であるというふうに考えておるところでございます。
#28
○千葉景子君 今御指摘があったわけなんですけれども、これも大変重要な検討課題として一定の御提起があったと思うんですね、この法改正の間。今回はそれが見送られてしまったということだろうと思うんですけれども、私もその見送られた経緯というのはいろいろとあるのだろうと思うんですが、やはりこれはどうしても考えていかなければいけないところだろうというふうに思います。
 これまで監査制度というのがございますので、それをやはり活用をしてできるだけ適正な計算をするということは可能だろうと思うんです。例えば、監査人あるいは監査制度をもう少し幅広く全体に広げていくということも一つの考え方としてできるだろうというふうに思いますし、あるいは別な制度としては会計調査人の制度というのが大分検討されていたというふうに伺っているわけなんですけれども、これは私の知る限りではなかなかいろいろな調和を図った制度ではなかろうかというふうに思うんです。監査制度を拡大するといっても、監査人の数の充実などの意味でなかなか難しいところがあるかと思いますし、それから受け入れ体制ですね、監査制度をやるということになると、会社側の体制づくりの面でもコストなど大変であるというようなことを考えると、その一定の調和点、そういうことも十分考慮し、そしてその計算を適正にするということも一定程度クリアをするという意味で、この会計調査人の導入というのはこれはそれなりに納得のいくといいますか妥当な一つの考え方ではなかろうかというように思いますけれども、その点について経緯を含めて、それからその導入し得ない問題点などがございましたら御指摘をいただきたいと思います。
#29
○政府委員(清水湛君) 会社の計算の真正を確保するための外部監査の導入の問題でございますが、現在、御指摘のように、監査法人等の公認会計士つまり監査の専門家である公認会計士等の監査を受けるべきものとされている会社は、資本金五億円以上または負債総額二百億円以上の会社でございまして、これは全株式会社のうち約五千社程度でございます。つまり株式会社百二十六万社の全体の中から見ますと、ごく一部の会社だけがそういう会計専門家による外部監査の対象になっておる、こういうことになっているわけでございます。
 そういうようなことから、もう少し外部の人による監査というような制度を拡充すべきではないかというような御意見がございまして、それを公認会計士というような会計専門家による監査というようなもので賄おうといたしますと、公認会計士の数が非常に少ないというようなこともあって、実際問題としては実施不可能であるから、いわゆる外部監査という監査というようなものではなく、会計調査というような形でそういう制度を中小会社に導入したらどうかというような形で会計調査人制度という提案がされたわけでございます。
 法制審議会の審議の過程等におきましては、例えば資本金が三千万円以上、または負債総額が三億円以上の会社についてそういう外部の会計調査人による調査をすることにしたらどうかというようなことが検討されたわけでございます。この案によりますと該当会社が約二十万社になるというような問題がございました。公認会計士の数は約一万人、税理士の数が五万人でございますので、一万人の公認会計士をもってしては到底これは賄えない。それでは税理士さんに会計調査人になっていただくかというような問題が出てまいりまして、そもそも会計監査とは何であるか、会計調査とは何であるかというような根本論から、公認会計士がやるべきではないとか、あるいは税理士がやるのは不適当であるというような公認会計士の団体、税理士の団体等の相互間の議論にまで発展するというようなことになりまして、さらにはまた具体的にこういうような外部の会計調査人の調査を受ける対象となる中小企業団体、中小企業等からも問題点が指摘される等のことがございまして、最終的にはこの会計調査人の制度というのは法制審議会の段階において既に成案を得るに至らなかった、こういう経過をたどったわけでございます。
 このような会計調査人というような制度、これは仮称でございますけれども、そういうような制度が導入されて計算書類の適正がチェックされ、そういうふうにチェックされた計算書類が登記所において公開されるということになりますと、これは非常に望ましい姿だというふうに思われるところでございますけれども、会計調査人制度そのものの採用について種々の議論があって結論が得られなかったというのが実情でございます。
#30
○千葉景子君 これは会計監査というんですか、全体として監査という意味で使わせていただきますけれども、外部監査ですね、これは中小企業などの側から考えますと、大変な時間とかコストとか、そういう意味での負担というのはやはり大きくなるだろうというふうに思うんです。それから、どういう方がその監査に当たるかということにおいてもいろいろな影響があろうかというふうに思うんですけれども、この外部的な監査の問題
について、基本的には中小企業の側として、それから中小企業庁としては方向性としてはどう考えられているのか、それから問題点としてはどんなことを認識なさっているのかお答えをお願いいたします。
#31
○説明員(藤原治一郎君) お答え申し上げます。
 先ほど法務省の方からございましたように、いろいろな意見がこの件についてはなされているというふうに承知しています。
 あえて中小企業等の感触を申し上げますと、確かにこれもまたどこまで強制されるに足る社会的有用性があるのかという中小企業者の理解の問題と、一方でそれができたとしても本当に意味ある、要するに簡易な監査というものの内容が本当に意味あるものかどうか、それに一方では新たに内容によっては大きなコスト負担になるのではなかろうかというようないろんな問題が指摘されてございます。これはまさに法制審議会の中で検討すべき問題ということでございますので、そういう意見があるという点を指摘させていただくにとどめさせていただきます。
#32
○千葉景子君 これもなかなか難しい問題ではあろうかというふうに思うんですけれども、やはり現行法でも何らかの形で計算の適正を図るということ自体は法的に否定されているわけではございませんで、先ほどの問題点はあろうかと思いますけれども監査役の制度もあり、そういうことを考えますと、これも方向としては監査の内容あるいはその程度とか、それからどのところの会社までどの程度の監査をするかというようなことを含めて検討をしていただかなければいけない面だというふうに思いますけれども、これも現代の取引社会において基本的な公正確保の見地からは早急に取り組まれてしかるべき課題であろうというふうに思います。そういう意味でぜひこれからの検討をやはり提案させていただきたいというふうに思います。
 さて、今ちょっと監査役のところに触れましたものですから、それにかかわってちょっと質問をさせていただきますが、今回はどうも監査役とか機関の部分は余り改正の内容に含まれていない、今後の問題であるとして残されているということでございましたけれども、監査役につきましてちょっと私も問題があろうかと思うんです。
 今、小規模の会社において監査役というのが本当に機能しているのかどうかということを先ほど指摘させていただいたわけなんですけれども、今回も小規模の会社については業務監査権はなしで、むしろ計算の明確化といいますか適正、その監査権というものに限られているわけですね。これは何か何となく私は実態からいうと逆じゃないかという感じがするわけなんです。むしろその専門性とかあるいは能力などの点からいうとなかなか専門的な計算のチェック、書類のチェックというのは難しい、しかし業務自体の監査というのは何らかの形でやり得るんじゃないか、こういう点を考えますと、この監査役の問題というのは、次回に回されたのかもしれませんけれども考え直してみる部分があるんじゃないかと思うんです。この監査役の権限それから責任、この部分については現行法上どうお考えになっていらっしゃいますか。
#33
○政府委員(清水湛君) 会社の計算あるいは業務執行の適正化という面につきましては、監査役制度というのはいわゆる内部監査として非常に重要な機能を期待されておるということになっているわけでございます。そういうような観点から四十九年改正が監査役制度を中心に、あるいは監査制度を中心に改正されたということは御存じのとおりでございます。そこでそういう監査役の権限というのはかなり強化されてきているわけでございますけれども、依然として中小会社あるいは有限会社等については監査役というのが有名無実になっているというような実態もございます。家族の一員の者が監査役になるというような形での運用がされておる、したがって監査役として本来期待される機能は果たしていないということに当然のことながらなるわけでございます。
 そういうような実態を踏まえまして、例えば冒頭も御質問がございましたけれども、中小株式会社あるいは有限会社、小規模有限会社における監査役制度というものをどうするのかということが実は非常に頭の痛い問題でございます。基本的な方向としては、御指摘のように監査役に単なる会計の監査だけではなくて、一般的に業務監査権も与えるというような方向で考えたらどうかというような議論が現在多くされているわけでございます。他方、非常に小規模な株式会社あるいは有限会社についてはそんなに複雑な監査役とかなんとかというような制度を形の上だけでもつくらなければならないようにするのが適当であるかどうかという問題も実は指摘されておるわけでございまして、小さな会社では監査役を置かなくてもいいのではないか、置いても余り意味がないのではないかというような議論、小規模会社のあり方として、あるいは中小規模の会社のあり方の問題として議論があるわけでございます。
 いずれにいたしましても、会社の計算の適正が担保されるということが目的でございまして、そのためにどういう制度なり方法が有効であるかという観点から議論をしなければならないということは当然のことでございまして、今後そういうような観点から監査役制度、これは取締役会制度も含めまして会社の管理運営機構につきまして、大会社は大会社なりの、中小会社は中小会社なりの、あるいは有限会社についてはそれにふさわしい管理運営機構というようなものが当然検討されていくことになるというふうに私ども考えております。
#34
○千葉景子君 これまで債権者保護の問題を中心に現行法、そして今後の問題提起などをさせていただいたわけなんですけれども、その中でとりわけて問題になるのは、取引関係ではない、突然どうしても債権者として余儀なくされるというのは変な言い方ですが、自分で選択できないケース、こういうことは救済の措置を考えていかなければいけないのではなかろうかというふうに思います。
 例えば労働債権とかあるいは不法行為債権、これは労働債権も働いた対価でございますので、そしてまた、労働ということで取引とは異なる、当然優先的に保証されなければいけない債権でもございます。そして、不法行為債権というのも、これも選択して不法行為を受けるわけではございませんので、これも余儀なくされるという部分があるわけでございます。そういう意味では、一般の取引関係にある債権者保護、あるいは一般の取引に入ろうとする第三者と異なる特質を持っているのではなかろうかと思います。これまでは極限の場合ですと、法人格否認の法理などを使って救済されていたケースなどもあろうかというふうに思うんですけれども、やはりこれは制度ではございませんし、裁判を経てぎりぎりの形でこういう法理を使って救済をされるということでございますので、何らかの形でこういう選択できない債権、これについての保証措置というのが私は必要なのではなかろうかというふうに考えているところでございます。
 これにかかわって問題として挙げられてきていたのが支配株主、一定の大株主とかそれに支配的な地位を持っている個人に対する責任を何らかの形で追及すべきではないか、こういう指摘や論議がなされてきたように思います。例えば、個人的な会社でもう大株主が代表取締役なども兼任をして会社をほぼ個人的に取り仕切っているというようなケースなども考えられますし、それから親会社が子会社などに代表取締役などを派遣して親会社が子会社を実質的に指揮しているというようなケースなども例としては考えられるんじゃないかというふうに思います。そういう場合、確かに株主というのは大原則が有限責任でございますので、この大原則を変更するあるいはそこに一定の制約をつける、例外を設けるというのは、これは商法の原則からいってもそうたやすいことではなかろうというふうに思います。ただし、反面そういう労働債権だの不法行為債権のような債務者を
みずから選択できないようなケースの救済というのも、これもまた考えなければいけないということになるのではないかというふうに思います。
 その点について、現在の制度でどの程度救済の余地があるものか、あるいはそれが非常に困難であるとすれば今後検討の余地はないのかどうか、その辺についてお聞きしたいというふうに思っております。
 労働債権などは、例えば先取特権とかあるいは労基法、賃金の支払の確保等に関する法律等で一定部分は担保をされるんですが、破産などの場合になりますと、これは当然に優先されるわけではないということにもなるわけで、逆に言えばこういう状態こそ救済されねばならないときなんですけれども、なかなか困難であるということも法的にはあろうかというふうに思います。不法行為債権などは、これはまさに全く優先的なものが現行法上ではとりわけて定められていない、あるいは個人責任が定められているわけではないというふうに私は理解をしているんですけれども、これらの点いかがでしょうか、今後の検討なども含めてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#35
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のような労働債権あるいは不法行為債権というようなもの、これは相手を選ぶことができないわけでございまして、会社にどうしてもその支払いを求めていかなければならない、こういうようなことになろうかと思います。
 そういうような問題について債権者保護を図るというような観点から、まさに御指摘のように従来ですと、例えば商法の二百六十六条ノ三で取締役の個人責任を追及する、こういうようなことが一つの方法として行われていたわけでございます。しかし、これも「取締役ガ其ノ職務ヲ行フニ付悪意又ハ重大ナル過失」があるということが要件でございまして、そういう要件の立証という点で種々の問題があったということもまた言われているわけでございます。そういうことから法人の実態を見まして、そもそも法人ではない、これは個人の企業であるというような事実認定を先行させまして、当該請求権との関係においては法人格を否認するというような法人格否認の法理というようなものが一方では判例上あらわれてきたということも御指摘のとおりだと思います。ただしかし、形式的に法人格を認めながら、当該取引の分野に限るという限定はあるにせよ法人格を否認するというのは一種のこれは論理矛盾でございまして、いろいろ問題があるというような点もまた指摘されておるところでございます。
 そういうような観点からこの検討の過程におきましては、例えば支配株主等の責任というようなことを制度化することにしたらどうかというような意見がございまして、実はそういった考え方に沿う試案も民事局参事官室試案として発表いたしているわけでございます。例えば、お尋ねの中にも一つの例としてございましたけれども、例えば子会社に株主としては親会社が支配的な株式を持っているわけでございますが、もう直接ストレートに親会社に責任を追及する。もちろんその親会社から出向した取締役に故意または重大な過失がありますれば、取締役の個人責任の追及という形である程度解決することは可能かもしれませんが、それも難しいということでございますと、親会社に直接その責任を追及するというようなことが認められてもいいのではないかというような考え方に基づくものでございます。特に、労働債権とか不法行為債権なんかについてそういう保護を図る必要があるのではないかというような考え方に基づくものと思われるわけでございます。
 しかしながら、これは理論として、つまり非常にわかりやすい議論といえば議論のような気がいたすわけでございますけれども、実質的な支配株主というのは一体何であるかとか、あるいは支配社員というのは何であるかとか、あるいは責任を負う債務の範囲はどの範囲なのか、ある特定の債権だけその責任を負いその他のものについては負わないのかというような問題、あるいは先ほど申し上げました取締役の責任。つまり、商法二百六十六条ノ三の責任との関係においてどのようなことになるのかというような、ある意味におきましては全く未開拓の分野の問題提起があるわけでございまして、同じような立法例が外国、アメリカ等にはあるというような指摘もあるわけでございますが、我が国においてはまだ十分に習熟した判例理論にすらなっていないというような状況でございますので、そういうような状況もありまして、法制審議会の中では種々な議論があって結局結論を得るに至らなかったというのが実情でございます。
 労働者の債権とかあるいは不法行為債権をどうやって保護していくかというのは商法の問題でもあるとともに、会社更生法その他いろんな各種倒産法制の中であるいは解決すべき問題でもあるというような指摘もあるわけでございますが、いずれにいたしましてもこれからの検討課題であるというふうに私どもは考えております。
#36
○千葉景子君 労働債権とか不法行為債権とか選択できない、こういう問題も当然なんですが、また取引関係の場合でも、例えば経済的に見ると元請会社と下請会社というような形でどうしても優越的な地位にある会社と取引をせざるを得ない、日本の産業構造の中にはそういうケースも大変多いわけです。というのは選択の自由だといっても結局は取引を一定の会社とせざるを得ない、余儀なく所されているというような場合というのは相当あるというふうに思うんですね、子会社とか下請会社。そういうケースなども、労働債権、不法行為債権とは異なりますけれども、破算をした場合とかそういうときにまず債権を優先的に、あるいは何らかの形で保証されるというような道もこれも一つは考えていかなければいけないんではなかろうかというふうに思うんですね。これはなかなか法的に難しいような気もしますけれども、こういうような問題については中小企業庁などはどういう観点で保証あるいは救済を図っていこうとお考えでしょうか。
#37
○説明員(田中信介君) 先生御指摘のように、我が国下請企業は一般的に親企業を選択できなくて依存度が高いということ、取引上の交渉力が弱いということから親企業のいわゆる下請いじめというのがかなり深刻な問題となっております。
 こういう観点から中小企業庁では、まずは公正取引委員会と共同いたしまして下請代金支払遅延等防止法に基づきまして親企業が買いたたきとか下請代金の減額とか、そういったいじめがないようにというような施策を厳正に行っているところでございます。
 加えまして、親企業あるいは関連取引先が倒産をしたような場合には、そういう会社に対する依存度の高い下請企業あるいは中小企業が非常に経営的な危機に陥るということから幾つかの救済制度を設けておりまして、例を申し上げますと倒産関連の債務保証の特例、これは特別の枠を設定する保証制度でございます。加えまして、中小企業事業団が実施しておりますが、倒産防止共済制度というのがございまして、毎月掛金を積んでいて関連の取引先が倒産した場合には、その掛金の十倍まで無利子、無担保で貸し付けを行うという制度がございます。そのほかにも倒産対策の特別の低利融資制度であるとか相談事業、こういった幾つかの制度を運用しておりまして、下請企業等の中小企業の経営安定に支障を来さないようにしているところでございます。
 なお、参考までに申し上げますと、会社更生法百十二条ただし書きにおいては、会社更生債権の中で、中小企業者が特にその経営を継続させるために必要であるというような債権については、裁判断の許可を得まして先払いの制度も設けられているというふうに承知しております。
#38
○千葉景子君 債権者の保護につきまして何点かにわたりましてお尋ねをしてきたわけでございますけれども、あと個々の改正点について御質問させていただきたい部分があるんですが、ちょっと時間的に中途半端になりますので、私は、ちょっと個々の問題の前に、今回のこの法改正を見まして、今ずっと現行法、そしてその問題点、それから今後検討すべき点などを一応流れに沿って質
問をさせていただいたわけです。
 どうなんでしょうか、やはり私は、今回の法案はむしろここで論議を中断させるのではなくて、債権者保護の問題あるいは小規模会社などに対する法制度の整備なども含めてもう少し論議を進めて、その上で法律案として提起すべき問題ではなかったのかというふうに思います。というのは、中小企業庁のお話も伺いますと、基本的に大きな流れとして債権者保護を図る必要性とか、あるいは整備をしていく必要性そのものが否定されているわけではない。ただ、現在の実態とかそれから実情などを踏まえてまだまだ調整を図らなければいけない、あるいはほかの法制度あるいは政策、そういうものとの関連の中で整備をしていかなければいけないという問題などが残されているんだろうというふうに思うんですね。
 そういうことを考えますと、何だかこの目的と内容、ここでちょん切ってしまうのではなくて、今後も論議を進めた上で十分総合的に、これも資本金の制度だけはやったけれどもほかのところかないというと、結局資本金を上げられた中小企業の人だけ何か資本金だけの負担がかかってしまうというようなことにもなりかねない。そういうことを考えますと、やはり全体像をもう少し煮詰めた上で、その中での資本金の制度あるいは会社の計算の制度、公開の制度、また今度は有限会社あるいは小規模の会社双方を考え合わせたまた別な会社の形態を考えるとか、もう少し全体像を踏まえた法改正というのが打ち出されるべきではなかったかというふうに思うんですね。
 そういう意味で、今回は私は、大変これは何かどうもすとんとおなかにはまらないといいますかね、そういう部分があって仕方がないわけなんですけれども、法務大臣としてもそういう議論あるいは実情等を踏まえて、やはり早急に、しかも全体像を踏まえた法改正なり見直しに向けた検討をやっていただかなければいけないというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。
#39
○国務大臣(長谷川信君) 今ほど委員のお話を拝聴いたしておったのでございますが、私どもも今提案を申し上げているこの案が完全無欠のものであるというふうなことは考えておりません。残念ながら御指摘のようにいろいろな点があるわけでございます。
 ただ、若干御理解をいただかなければならないのは、先ほどからもお話がありますように、今百三十万件くらい中小零細企業の会社と称するのがある。そのまた底辺にもっと三倍、五倍の中小企業、要するに会社でないものも入れれば、これはもう恐らく七百万件から八百万件ぐらいあると思うのです。それらの人の要望というものをできるだけ吸収をして案をつくろうということで、担当も一生懸命いろいろ勉強したのでございますが、例えば一千万円の資本金でも、そんな一千万ばかりの金で何かできるんだという御批判もあるし、また、そんな高いのはとんでもない、私どもだめですよという議論もある。したがって、最大公約数をどうしても時間の中で求めなければならないということになると、私はやはりこの程度のものが出てきたのではないかというような感じもしないわけではありません。
 しかし、今委員の御指摘のように、いろんな点がたくさんございますので、これは改正すべき点はできるだけ早く改正をして、よりよいものをつくらなければならないということは今の時点で当然考えなければならないことであります。そういうことをいろいろ考えますと、完璧ではないが、しかし次善の策としてお認めをいただいて、なお、できるだけ早い機会にいろいろ勉強させていただいて、中小企業、零細企業の皆さんが救われるように、また仕事がうまくできるように、そういうものを模索しながらできるだけ早く改正等もいたしまして、また新しい結論を出したいというふうに念願をいたしておるわけであります。
 ただ、それでは今までのものはだめだからやめてしまえとそうおっしゃっても、これはもう今のこのままでいいということはこれまた皆さんいろいろお考えになれば――きのうもだれだったか笑っていましたが、こういう席で申し上げると不謹慎かもわかりませんが、どこかへ酒飲みに行って、おい社長と言ったら三人ぐらい手を挙げたという話がありまして、零細企業、中小企業の社長があふれているというような感がしないでもないのでございます。
 そういう面をいろいろ考えまして、完璧ではないが次善のものとして御理解をいただいて御審議をいただき、できるだけ早くそれぞれの目的が達せられるような、国際的にも認められるような、そういう商法の確立に向かっていきたい、こういうふうに念願をいたしております。
#40
○千葉景子君 きょうはこの辺で終わります。
#41
○櫻井規順君 今度の商法の改正で、債権者保護の立場に立ってウエートとして小規模企業の制度のあり方についての改正点が出されているというふうに理解をいたします。
 商法の改正という問題は、法務当局の方としてはほぼ九年にわたって準備をしてきたというふうに承ります。しかし、商法の今度の改正点を見ますとおびただしく日本に存在します小規模企業に対する非常に拘束性のある法律改正でありますし、国民的な課題だというふうに言ってもいいと思うんです。法改正、会社のあり方、制度のあり方の追求とあわせて、小規模企業の皆さんの自立的な努力といいましょうか自助努力といいますか、そういうものを引き出しながらこの制度改正というのは成り立つものだというように思います。そういう意味では、国家的な援助といいますか、そういう角度も非常に大切な課題だというふうに思います。そういう全体的な視野に立って御質問をさせていただきます。
 最初に、今度の法改正に至るまでの経緯に関連しまして質問をさせていただきます。
 昭和四十九年の改正、そして五十六年の改正とあったわけでございます。昭和四十九年は監査制度の充実を中心に、五十六年は株主制度の改善あるいは株主総会の活性化を中心にして改革をしてきたわけですが、その審議の経過の中で、この小規模企業のあり方等々を含めて次の改正をしなければならないということが確認をされて今度の改正に結びついてきたわけですが、経過の中で、私はこういう点をお伺いしたいと思います。
 過去の大改正の結果、今次の大改正を迎えて――昭和五十九年に「大小(公開・非公開)会社区分立法及び合併に関する問題点」という提言がなされた。そして、昭和六十一年に商法・有限会社法改正試案というものが出されたわけですが、これは簡潔に項目的で結構ですから、改正点として出された項目は何であったのか。そして、今次改正法案で出されている問題は非常に絞られた問題として出されてきているわけであります。会社設立手続の簡素化、あるいは譲渡制限付株式の制度改善、あるいは資金調達の合理化、あるいは最低資本金の導入、こういうふうに絞られてきています。この改正試案に盛られた中身から比べますと、法律関係者は概して大山鳴動ネズミ一匹と言う方もおります。私は、今日出されてきている問題は、ネズミ一匹とはいえ大変な大騒ぎになる国民的な課題だというふうに思っているわけでありますが、念のため、この昭和六十一年の改正の項目、そしてなぜこういうふうに今次改正案が絞られてきたのか、その絞られてきた要因といいますか、それは関係各界との折衝もあったと思いますが、その要因について簡潔で結構ですからお答え願いたいと存じます。
#42
○政府委員(永井紀昭君) 昭和六十一年五月に法務省民事局参事官室から改正試案というものが出されております。これは御承知のとおり、また、ただいまお話がありましたとおり、五十九年五月に問題点を公表して意見を各界から聴取いたしまして、それを整理したものと言ってもよろしいかと思います。したがいまして、この六十一年五月の改正試案につきましてはまだまだ議論が煮詰まったものではなくて、いわば中間的な整理というそういう性質のものでございました。
 そこの項目には確かに約九つの項目が形式的に挙がっております。御承知のとおり、一番設立、二番経営管理(運営)機構、あるいは三番株式・持ち分、四番計算・公開、それから五番資本減少、六番解散、七番合併、八番組織変更、九番その他ということで細々した事項が載っております。これらのものにつきまして全体的に法制審議会で審議を鋭意進めてまいりました。また、これとの関係で社債法の全面改正をすべきだとか、有限会社法もそれとともに全面改正をすべきだという議論がありまして、いろんな各種の研究会、小委員会というものもつくりまして、社債法でありますとか、会計監査といいますか会計調査の観点からもいろんな研究が進められたわけでございます。
 しかし、先ほど来民事局長から答弁申し上げておりますとおり、それぞれの問題点につきまして主体でありますとか対象でありますとか、どういった内容にするかといったこと、計算関係の問題一つ取り上げましても議論が完璧には煮詰まるという状況にはなかなかまいりません。これまでの経緯で、昨年になりまして余り異論のないところ、大体議論も煮詰まって異論が少ないところについてはひとつここらで中間的に整理した上で、第一歩の商法改正として国会で御審議いただいた方がいいのではないか、これをまた続けて全体像を全部完璧に仕上げて出しますと、またさらに何年もかかるということで、とりあえず、さしあたって異論が比較的少ない点、いろいろ関係業界の意見も聞いて何とかやれるのではないかという観点、そういった問題についてまず第一歩を国会で御審議いただいた方がいいのではないか。もちろん、そういう意味で全体像が見えてないという御批判があるわけでございますが、それにしても第一歩を進めていいのではないかということでございます。
 取り残されたところは、やはり経営管理機構については議論が相当煮詰まった面もありましたけれども、実は有限会社法との関係でどう整理するかというようなことがまだ今後の検討課題とされたわけでございます。そのほか、株式の中で今回の法案にも出されている点もございますが、株券の失効制度でありますとかその他の問題についてはまだ煮詰まっていなかった。それから、ただいま申し上げましたとおり会計専門家による計算の適正担保のあり方、これをどうすべきかという問題、あるいは資本減少及び合併の改正事項をどういうふうに考えるか、あるいは株の問題ですが単位株制度の終結という問題をどうするか。今回も出ております社債の発行限度額は今回とりあえず拡大いたしましたが、社債法制全体をやはり見直すべきだということでこれは鋭意研究会が進められているところでございます。それから有限会社法制の見直しといったいわば大小区分のある意味では骨格部分が本当の意味では残されているというのが本音のところでございます。
 とりあえず今回は、余りさしあたって異論のないところ、学説的にもあるいは実務界の上でも議論が大体煮詰まっているところを取り上げたというこういう改正経過になっております。
#43
○櫻井規順君 ちょっと経緯の面で答弁が落ちているようにも思いますが、次の質問でまたもう一度お聞きしますのでよろしくお願いします。
 もう一つは、今度の商法改正でこういう点が関係があるのかどうか、法制審議会の審議の経過の中で配慮されているのかどうか。非常に経済の国際化という時代を迎えて、それから我が国の企業も世界企業としての企業も多くあるわけでございます。我が国の経済力はこの日本にある小規模企業に依拠する、あずかる力というものは非常に大きいと思うんです。 そういう中で日米間における経済構造協議の関係あるいはヨーロッパの経済統合という背景、そういう世界経済の動向の中で今度の商法改正というのはどういうふうに位置づけられているのか、その辺の真意があればあるいはお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
#44
○政府委員(清水湛君) 会社法というのは、御承知のように経済取引関係における会社の組織を決めるというような法律でございまして、取引というものが国際化するに従いまして大体各国とも会社法制というのは同じような流れで形づくられていくという特色があります。例えば民法の親族、相続法なんという法律は、これは地域的なというか各国ごとに非常に特色があるというような点がございますけれども、商法の面につきましてはかなり国際的に共通する面が多い、こういうことが指摘されているわけでございます。
 そういうような流れから見ますと、今回の商法改正も、先ほど来EC諸国の話が出ておりますけれども、国際的にも通用するような意味での会社法にいたしたい。例えば最低資本金制度なんかにつきましても、お隣の韓国、台湾を初めヨーロッパ先進諸国がすべて大体今回の案と同額程度の最低資本金制度を現にもう既に持っておるというような状況があるわけでございます。そういうようなものを踏まえまして私どもは今回の改正案を提案しているわけでございますが、日米構造協議というような問題が直接の形で今回の改正案に影響しているというふうには考えてはおりません。中間報告、つまり日米構造協議の中間報告の中で「会社法の見直し」という項目がございまして、「商法によるディスクロージャーの制度の拡充及び合併の弾力化等について、今後の法制審議会において検討する。」というようなことが指摘されているわけでございますが、今回の改正自体が直接日米構造協議の影響を受けてされたものであるというふうには認識していないし、そのような議論もされておらないところでございます。
#45
○櫻井規順君 今度の商法改正に当たって法務省が横の関係でどういう御努力をされてきたのか、試案から今度の法案にトーンダウンしているわけですが、それも幅広く業者の皆さんや関係者と協議をなさって、その結果こういうふうにトーンダウンしてきていると思うんですが、少なくとも商法改正という問題は法務省単独で、法務局サイド単独でできるものではないわけでありまして、直接的には通産省あるいは労働省、それから私は大蔵省、自治省というかかわりが非常に大きいというふうに思います。そういう面でこの商法改正で、内容が試案から今度の法改正に下がった事情の中で、特に業界団体との折衝というのはどうであったのか、いま一つは通産あるいは労働等との業界絡みの関連であえて聞きますけれども、そういう商法改正までの経緯の中でどうだったのかその辺をお伺いします。
#46
○政府委員(清水湛君) 今回の商法の改正のみならず、法制審議会の審議の過程におきましては、審議会の委員の方に通産省の代表の方とかあるいは大蔵省の代表の方、具体的には通産省ですと産業政策局長さんでございますけれども委員として御参加いただく、大蔵省ですと証券局長さんに委員として御参加いただく、当然のことながら課長さん方に幹事さんとして加わっていただくというようなことで、各省庁の意見は法制審議会の審議の過程において既に十分に拝聴するという形になっておるわけでございます。そして、今回の法律に関係があります中小企業関係につきましては全国中小企業団体中央会とか、あるいは全国の商工会議所の代表者とか、あるいは各商工会の代表者の方とか、そういう中小企業関係者の方にも委員として御参加いただいて審議の過程において十分に御意見を伺うということをいたしてきたわけでございます。もちろんそういう審議会の場を離れましても、法務省の立案当局の立場といたしまして、当然に政府部内におきまして各省庁の意見を聞くということは必要なことでございまして、そういうような立場からも各省庁あるいは関係団体の御意見を拝聴するというようなことをいたしてきたわけでございます。
 そういうことの中で、私どもが昭和六十一年の五月十五日に法務省民事局参事官室試案という形で商法・有限会社法改正試案を発表いたしましたが、この試案はその時点において法務省当局がベストとして考えたというようなものではなく、問題点に対して各界から寄せられた多くの意見というものを基準として、例えば試みに案を作成するとこういうような形になるのではないか、つまり問題点という形ではなくて一つの案という形で整理するとこういうような形になるのではないかと
いう形で、さらにこれを世間に公開いたしまして議論を深めていただく、こういうような性格を持っているものでございます。このような試案につきまして、関係方面からかなり今度は具体的ないろんな意見が寄せられてまいったわけでございまして、これらの意見を一つのものにまとめ上げることができない問題が多かったという結果になっているわけでございます。
 中小企業関係の法改正と申しますと、いわば商法の理念の問題と現実と非常に乖離しております中小企業の実態というものがあるわけでございまして、そういうものを理念的なもので埋めようといたしますと、どうしてもそこに今までなかった新しいことが中小企業に要求されるというようなことが起こってまいりまして、その面からも非常ないろんなリアクションがあるというようなのが実情でございます。そういうようなことからなかなか一つの結論が得られないということが結果としてかなり多くなっているわけでございます。さらに、法制審議会の答申、先ほど審議官から答えましたように、一応異論のないところでまとめた法制審議会の答申につきましても、例えば登記所の公開の問題については見送るとか、あるいは資本金については二本立てを一本化するというような形でのいわば後退をしたということになっているわけでございますが、やはり私どもといたしましてはその時点時点における関係方面の意見をよく聞きながら、その時点におけるベストの案をつくるということで努力してまいったわけでございますが、結果的にはこのような状況になっておるということでございます。
#47
○櫻井規順君 同じことを聞くわけですが、最低資本金が試案で例えば株式会社の二千万円あるいは有限の場合五百万円、それが今度の法案で株式会社一千万、有限三百万とか、そういうふうに低くさせた直接的な要因は何だったのか、それは今業界等々との折衝の中で出てきたものだと思うんですが、どうだったのか、その辺を伺いたいわけです。
 私は、一つのそういう重要な法改正、施策を講ずる場合に、それはもう法務省サイドだけで判断できるものではないわけでありまして、省庁で言えば幾つかの省庁にまたがる判断を仰ぎ結論を出すべきものだと思いますし、国民的な広がりで言えば関係の企業、業界とのやはりしかるべき機関との合意といいますか、それは当然前提となるべきものだと思うわけであります。それにまた手当ても必要になると思うわけであります。そういうシステム的なアプローチという問題が一条の法案改正にも伴ってくるわけでありまして、重複しますけれども、そういう点の配慮を伺っておきたいと思います。
 関連しまして、具体的で恐縮ですが、株式会社で一番小規模の集中しているのは小売商業部門が多いかと思います。こういう小売商業部門の皆さんの意見というものはこの法案審議の過程でどういうふうに伝わっているのか、具体的にお答えできればお答え願いたいと存じます。
#48
○政府委員(清水湛君) まず、法案作成についての関係方面の意見の聴取の問題でございますけれども、例えば先ほど来問題となっております大小会社区分立法の問題点という形で昭和五十九年に公開した問題点でこれは関係方面の意見を求めたわけでございますが、このような意見照会は全国の法学部のある各大学、それから全国の裁判所、全国の弁護士会、それから全国の商工会議所、それから商工会、中小企業団体、それから各種の経済団体等、およそ関係のあるすべての団体に問題点を送り、必要に応じてその問題点とするところの趣旨を法務省の関係者が説明をし、十分に理解をしていただいてそれについてお答えをいただく、こういうようなことをいたしているわけでございます。現実に各地の商工会議所から多数の意見が寄せられております。また、そういうような商工会議所あるいは商工会等の意見が法務省のみならず中小企業庁あるいは通産省等にも寄せられ、通産省あるいは中小企業庁がそういうような関係団体の意見を取りまとめて私どもの方に伝えてくださる、こういうようなプロセスもあるわけでございます。
 法制審議会で一つの法案を作成する場合には、とにかく一つの方向づけとかそういうような考え方を示さずして、問題点という形でおよそあらゆる団体に意見照会をする、こういうような形を従来からとっているところでございまして、商法につきましてもこのような手続をとらせていただきました。そういう過程の中で、それぞれの中小企業の意向とかそういうようなものを私ども参酌し、それから一番そういうものに関係の深い中小企業庁の皆様方の御意見も踏まえまして、最終的に最低資本金等についての今回の改正案のような中身にさせていただいた、こういう経過をたどったわけでございます。
#49
○櫻井規順君 小売商業部門の話がないわけですが、もしできればそのお話を法務省の方からお答えいただくとともに、中小企業庁の方で今度のこの法案審議の過程でどうかかわってきたのか、ひとつ御説明いただけますか。
#50
○説明員(藤原治一郎君) お答え申し上げます。
 確かに御指摘のとおり、商法改正については経済界に大きな影響を与える可能性があるため各界、各層の意見を十分踏まえて検討していただく必要があるというふうに考えまして、法務省と十分な協議を行ってまいったわけでございます。
 検討段階ということでございますと、六十一年の改正試案の段階におきまして、先ほどございましたように中小企業団体を含めた各界の意見を求めておる。それから法制審議会商法部会の場におきましても、中小企業団体の代表者及び当庁としてもいろんな問題を含めて御意見を申し上げたということでございます。さらに当庁といたしましては、当然のことながら特に中小企業の問題に関しましては主な中小企業団体に傘下の中小企業の意見等を十分集約させ、意見を取りまとめ、さらにそれらを十分反映しつつ、あるいは会社法の理念との関係を十分踏まえていろいろ法務省に実態等を御説明申し上げたということでございます。十分実態を把握しながら法務省に御意見を申し上げたということでございます。
#51
○櫻井規順君 ちょっと小規模企業の現状と課題といいますか、実態の問題ですね、これをどういうふうに把握されているのか。このいただいた資料の中にも「昭和六十三年分税務統計から見た法人企業の実態」という数字が載っておりますが、例えば有限会社の三百万円以下の企業数とか、そういうものは調査がなされていないのでしょうか。それが一つ。
 いずれにしましても、中小企業庁、通産それから法務もちろんですが、一千万円以下の資本の会社に対する実態調査というもの、実情把握というものが余りにもおくれているのじゃないかというふうに思います。一々挙げればいいわけですが、傾向的には確かに一千万に資本金を上げなくても各企業が一千万円の増資、あるいは設立会社も一千万円以上という傾向が非常にここ急激にふえているというふうに平成元年度の統計を見てもわかるわけでございます。しかし、問題は一千万円以下の企業分析、有限会社については今回の対象になっている三百万以下の企業実態というのが把握されていなさ過ぎるというふうに思うわけであります。
 そこで、私は希望するわけですが、有限会社の三百万円以下の企業数わかるでしょうか。あるいは資本金一千万円以上、もっと言えば五千万円。それから百万円刻みで一千万円以下の企業の実態というのはわかるのでしょうか。わからなかったらそれは早急に一斉調査を行う必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#52
○政府委員(永井紀昭君) 私ども法務局、すなわち登記所で把握いたしますのはあくまで登記簿を中心とした会社数でございまして、果たしてこれが実際にどの程度どう動いているかということはなかなか把握できないわけでございます。例えば百万刻みの資本金の会社が幾つあるかというのは、サンプリング調査あるいは税務統計からの推計をしたことはございますが、細かい確たるもの
を全国で一斉調査したことはございません。ただ、五年に一度株式会社については休眠整理という作業をやっておりますので、百万円未満の会社が大体どの程度あるか、それから百万から一千方までの会社がどの程度あるかという数字は大体把握できるわけでございます。一方、有限会社につきましては休眠会社の整理という手段をまだつくっておりません。これは、今回法律には出しておりませんが、法制審議会等では有限会社につきましても役員の任期を定めることによって結果的に休眠会社の整理ができるということになっておりまして、これは今後の立法作業に入ることになっております。
 有限会社三百万以下がどの程度あるかということは、これも推計でございますが、約七十万社程度であろうと推計しております。そのほか、現在休眠会社の制度がありませんので、有限会社が全部で登記簿上は百三十九万社、約百四十万社あることになっておりますが、このうちどの程度休眠会社があるのだろうかということで推計いたしましたものはございます。ただ、これはあくまで推計でございまして、大体四〇%程度が休眠会社になっているのではないかというような推計が出されております。細かい登記簿上のある程度の推計はできるのでございますが、登記簿も日々動いておりますので、本来ならば一斉調査をやる必要があるかもしれませんが、十分把握できていないというのが現状でございます。
#53
○櫻井規順君 株式会社の百万刻みの数字がわかれば、後刻で結構ですからぜひ教えていただきたいと思います。
 私が自分の住んでいる地域で見まして、資本金が三百万、五百万というような会社で、地場産業ですけれども適正規模で適正な事業を非常に活力を持ってやっている会社が数多くございます。例えばお茶の再製あるいは販売を一〇〇%やっているような会社、資本金が六百万円で二十九人ほどの従業員がおって何億という固定資産を持ってやっている会社、あるいはわさび漬けの会社、あるいは印刷会社、あるいはようかんをつくっている会社、非常にのれんが古くて、それぞれ慶応元年創業とか嘉永三年創業とか明治八年とか、そういう非常に古いのれんで株式会社になって営々としている会社でございます。三百万、五百万の資本でやっておりますが、こういう会社に対して今度の法改正で一千万円に資本金をふやしてくださいという説得の論理は何であるか、ちょっと御説明いただければありがたいと思います。
#54
○政府委員(清水湛君) 恐らく、資本金が六百万で二十九人もの従業員がいて数億の固定資産を持っておるという会社ですから、一株当たりの純資産額というものはもう膨大なものになる会社だろうと私は思います。ですから、本来適正資本金額という観点からいきますと、私は経済学のことはよくわかりませんけれども、果たして六百万円といういわば名目上の資本金という額が適当な会社なのかどうか、ちょっと私には何とも申し上げることができませんが、そういった種類の会社でございますと利益留保性の積立金というものもかなりあるのではないか、例えば毎年百万円ずつ利益を積み立てて、六百万ですから四百万にし、その四百万を四年目に資本に組み入れるということさえすれば簡単に一千万になるわけでございまして、大変立派な会社だと思いますけれども、そういう会社は恐らく今回の改正案に直ちに対応できる会社だと、そういう体質を持っておられる会社だというふうに私拝察をいたします。
#55
○櫻井規順君 二十九人というのは従業員でして社員じゃないわけです。
 それはいいと思いますが、欠損会社がおびただしくあることが問題だというふうに思うわけであります。その欠損会社が今のお話でも、休眠会社はともかくとしまして、数字としてはっきり出ませんが、会社と名のっている恐らく五割以上、六割くらいが、あるいは七割に近い会社が欠損会社になっていると存じます。ですから、おびただしい会社が欠損で事業をやって、たくさんの雇用を、従業員を置いて経済的にも貢献をして、とにかく赤字会社をやりながら営々として努力している、そういう会社が多いわけであります。問題は、そういう会社に一斉に今度増資を求めるわけでありますが、全国的な視野で見まして、そういう一千万以下の資本の会社で今度一千万にさせる場合にどのくらい総額的に増資金額というものはなるのか、そういう点がおわかりでしょうか。
#56
○政府委員(清水湛君) 具体的に一千万未満の株式会社について、それぞれの会社がどの程度増資をすればよろしいかということについての正確な統計がないわけでございます。それを実際調べるということは非常に困難でございます。
 ですから、単純に例えば資本金一千万未満の株式会社、現在約八十三万五千社存在するわけでございますけれども、この中に例えば休眠状態と申しますか、実質的にもう営業してない登記簿だけの会社というのが約二十万社ぐらいはあるんじゃないかというような推計も実はしているわけでございますが、それ以外の六十万の会社がもし仮に資本金一千万まで増資をするということになって、しかも平均的に三百万円ぐらいは増資しなければならない――四百万なのか五百万なのかちょっとわかりませんけれども、仮に三百万という計算をしますと六十万掛ける三百万という数字が出てまいるわけでございますが、現実の問題といたしましては、いわゆる税務上は欠損会社だというような形になっておりましても、自主的に例えば一年間で百万円の利益積み立てをして、三百万であれば三年間にそれを三百万円として資本に組み入れるというようなことをすることによって一千万円に到達することは可能ではないかというふうに思っているわけでございます。
#57
○櫻井規順君 そういう欠損会社が一千万円の資本に増資をするに伴って大変な負担を今度はかけていくわけであります。
 そこで、法務省、それから大蔵省にお伺いするわけでありますが、税制面からの援助ということが、あえて国ができることが何かといったら税制面からの援助だけだと思うんです。この税制面からの援助というのが非常に大切だと存じます。そういう意味で利益準備金の資本への組み入れ、あるいは当期の利益を株主配当しないでその配当可能な利益を資本に組み入れた場合に現行ではみなし課税がかけられる、これは何としても国の施策でいわば企業に協力させる問題であるわけでありますし、あえて言えば今次法改正に伴って一回だけの措置とも言えるわけでありまして、他に類似の減免措置があるかどうかも含めましてお伺いしたいわけですが、これはどうしてもやはり免税措置を講ずるべきであるという点でどう努力をされているのか、見通しはどうなのか、そういう点をお伺いしたい。
 税目としてはもう一つ重要な増資の登記に伴う登録免許税あるいは組織変更もかなりこれはどえらいお金がかかる問題ですが、これを選ぶ人は少ないと思いますけれども、組織変更に伴う登録免許税、これも同様な扱いで免税措置を行うべきだ、こう思うわけでありますが、どう努力され、展望はどうなのか、法務省並びに大蔵省に見解を賜りたいと存じます。
#58
○政府委員(清水湛君) 今回の最低資本金制度の導入に伴います税制上のいわば特例措置につきましては、これはもう法制審議会の審議の過程においても問題点として指摘されていたところでございます。
 私どもといたしましても、こういう制度を導入することによりまして、とにかく株式会社として生き延びようとするならば一千万円以上に増資をしなければならないということになるし、一千万にできないということになりますと有限会社に組織変更しなければならないというような問題が生ずることになるわけでございます。そこで、先生御指摘のとおり、増資の手段として、例えば今回新たにいわゆる法定準備金にはならない一般の利益の積立金を資本に組み入れるというような制度ができるようになったわけでございますが、そういうような利益準備金の資本組み入れに際し、これをみなし配当として現在課税をしているという
ような点について、特にこの増資の関係で新しい制度のために必要を迫られるようなものについては特例的にこれを軽減あるいは免除するというような措置を講じてほしいとか、あるいは資本金を、増額するための登記の際に課せられる登録免許税、あるいは組織変更の登記の際に課せられる登録免許税の減免ないし軽減の措置についてこれを講じてほしいというような強い要請が関係方面からあったところでございます。
 私どもといたしましては、このような要請を大蔵省当局にもお伝えし、何とかその要請に沿うように配慮をしていただきたいということを常々申し入れておるところでございます。法務省から大蔵省に対するそのような申し入れ、強くお願いしているところでございますが、まだ大蔵省当局から最終的な回答はいただいておりませんが、大蔵省においても問題の重要性は十分にわかっていただいておりますので、そういう観点から検討していただいておるものと私どもは承知いたしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、この法律が通りまして最低資本金に移るまで増資をする必要性が法律的に生じたということを踏まえまして、平成三年度以降の税制の問題として、つまり平成三年度から五年間に係る税制の問題ということになりますが、平成三年度以降の税制の問題として御検討いただくということになるというふうに聞いており、しかも平成三年度以降の税制の問題は本年度末の政府税調等において御審議になるということでございますので、私どもとしてはこの法案が国会で通過成立し次第、新しい法律を踏まえまして大蔵省にさらに強くお願いをして、何とかその要望の実現を図りたいというふうに考えているところでございます。
#59
○説明員(長野厖士君) ただいまの検討状況は法務省からお答えのあったとおりでございまして、平成三年度の税制改正作業の中で検討されるべき課題の一つであるというふうに考えております。
 せっかくの機会でございますから税務当局の立場から見たときにどんな問題があるかだけ一点触れさせていただきたいと思います。
 みなし配当の御指摘ございましたけれども、課税上は企業と個人と違う立場になりまして、この問題は個人課税、株主たる個人に対する課税の問題でございまして、原則的に言えば、増資になった事情がどうであれ、株主がみずから新たな払い込みをすることなく自分の株式に見合った持ち分が自動的にふえたという状態というのは、言ってみれば配当をもらってそれを払い込んだと同じことでございますから、この課税のバランスを考えていく必要があるということ。特にその場合、会社と株主といってもほとんど一体混然ではないかという御指摘もございますけれども、またそのあたりが一体混然であるということを余り強調いたしますと、個人企業の方あるいは給与所得者の立場から見ると、そのあたりが増資を使って会社から流出させなかったりなんなりして課税上うまいことやっているんじゃないかというような議論も世の中にございますので、そこらの危険性のないように課税の公平を損なわない範囲で何ができるかということを十分御相談させていただきたいと考えておるわけでございます。
#60
○櫻井規順君 本来ならば法案を提案するこの時点で、法務省とあるいは通産、大蔵の間で見通しについては一定の合意があって提案されますとこの法案に対する賛否の態度も明確になってくるわけでありますが、非常にその辺が不十分だと思います。ぜひ今の免税措置については講ぜられるよう強く求めておきます。
 それから、中小企業庁の方にお伺いするわけですが、資本金を株式会社で一千万円にした場合に、これまで中小企業基本法に決められている資本金が一千万円以下というのが小売商業の中小企業の枠になっているわけですが、一千万円というのは一千万円以下ですからそこが対象外になることはないという説明にはなろうかと思いますが、いずれにしてもそれが最低の資本金になるわけであります。中小企業基本法を含めまして、中小企業金融公庫等々融資対象、貸し付け対象、さまざまな制度融資の関係の中小企業の枠の再検討が必要になってくるのではないかと思うわけですが、その辺についてのお考え、準備がなされているのかどうなのか、あるいは一千万円に最低資本金を上げることによって何か被害をこうむるような制度融資の関係がないかどうか、中小企業庁に伺います。
 それから、あわせて時間がありませんので法務省の方に伺うわけですが、これは労働省の方にも大変な制度融資がございます。ですから、資本金の引き上げというものの影響というのは非常に大きいと存じます。もう少し広げて言いますと、法人住民税の市町村民税あるいは県民税で均等割部分があるわけでありますが、これは資本金を引き上げることによってかなりの自治体で影響を及ぼすのではないかというふうに存じますが、その辺をどのように把握をされているのか。
 それからいま一つは、これは大蔵省に聞くことになりますでしょうか、交際費の欠損算入という問題がありますが、これが今度の資本の一千万円化によって影響があるのかないのか、影響があるとすれば救済をすべきものだというふうに思いますが、そういうもろもろの影響について、そうしてその対策についてどういうふうにお考えか、法務省並びに中小企業庁、大蔵省、関係があれば御答弁いただけたらありがたいと存じます。
#61
○説明員(藤原治一郎君) 前段のお答えを申し上げます。
 まず、いろんな中小企業施策ということで一応の中小企業基本法に基づく定義があるわけでございますが、まず第一点、今回の最低資本金の導入、引き上げにつきましては債権者保護の観点から行われるということでございまして、一方、中小企業基本法等における中小企業の定義というのは中小企業政策の対象をどの範囲とすべきかという観点から決められるものと承知しておりまして、最低資本金の導入、引き上げにより必ずしも直ちに中小企業の定義を改めなければならないというようなことはないというふうに認識しております。
 ただ、先ほどございましたように、小売、サービス業につきましては、一応定義上、資本金が一千万円以下である、または従業者数五十人以下ということになってございます。したがいまして、今回の最低資本金が一千万ということになりましたので、一応資本金基準からしても一千万以下というところで辛うじて一応とどまる。さらには、資本金をそれ以上上げていこうという者もあるかもしれませんけれども、現在ほとんどの小売、サービス業者はむしろ従業員基準の方で五十人以下というところによって中小企業施策の対象となっている実態でございますので、したがいまして影響はないかということでございますが、基本的にはその従業員基準で十分引き続き中小企業であるというふうなことから中小企業施策の恩恵は受け得るものというふうに考えております。いずれにいたしましても、これは各企業者が自主的な選択でいろいろ対応するものと考えてございます。
 以上でございます。
#62
○説明員(長野厖士君) 交際費課税の問題につきまして私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 交際費課税、現在の仕組みは、五千万超えますと一銭も損金算入できない、五千万円以下のケースだけ、五千万以下でございますと三百万、さらに小さくて一千万円以下でございますと四百万という枠で損金算入できる制度でございますけれども、これは株式会社という意識はむしろございませんで、法人企業全体に共通して適用いたしておりますので、元手が幾らの企業であれば株式会社なのか、有限会社なのか、合名、合資会社なのかというこの商法の観点からの整備と直接の関係はないだろうと思っておりますし、株式会社も一千万ということでございますと従来どおりの扱いになるということでございますから、これを契機として交際費課税の問題に直ちに触れなければいけ
ないということはないのではなかろうかと思います。
 もちろん、交際費課税全般につきましては、企業の側からすればなるたけ交際費を使わせてほしいという御要望はかねてございますし、また他の立場からは現在でも交際費課税は甘いのではないかという御指摘がございます。そのような観点につきましては今後とも検討しなければいけない課題だろうと考えております。
#63
○政府委員(清水湛君) 資本金一千万に増資する等によりまして法人住民税の負担が重くなるのではないかという御指摘がございました。私ども実は不勉強でそういうような問題の提起を今までされておりませんでして、法案の作成過程におきましても当然関係省庁に法案を提示しまして意見を求めたわけでございますが、あるいはまた、法制審議会の審議の過程で資本増資の問題についていろんな議論がされたわけでございますが、その中におきまして先ほど来問題となっておりますみなし配当課税、あるいは登録免許税の軽減措置についての議論はございましたが、法人住民税については議論が全くなかったように記憶いたしております。なお、影響あるものかどうか、至急勉強はしてみたいと思っておりますけれども、そういう状況でございます。
#64
○櫻井規順君 幾つか質問あるわけですが、時間が来ましたので、法務大臣に最後にお伺いします。
 いずれにしても商法改正、国民的な課題だと存じます。本来ならば連合審査にかけるべき課題だというふうに存じます。国の援助を含めまして真剣に御検討いただきたいと存じますけれども、国の援助ということを中心にしまして、ひとつ法務大臣の所見を伺いたいと存じます。
#65
○国務大臣(長谷川信君) いろいろ拝聴いたしておりましたが、何といっても冒頭申し上げましたように完璧なものではないが、しかし今のまま、このままではいけませんし、やはり改善、改良をやっていかなければならないということでございますので、とにかくこの法案をひとつ通していただいて、通していただけば大蔵省あるいはその他の便宜取り計らいにつきましては、法務省も含めまして全面的に御期待に沿うように頑張ります。
#66
○櫻井規順君 終わります。
#67
○委員長(黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時半に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#68
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#69
○矢原秀男君 法制審議会商法部会において、昭和五十年意見照会の対象とした会社法改正に関する問題点のうち、昭和五十六年の商法等の一部を改正する法律により改正の範囲外であった最低資本金及び大小会社の区分並びに合併について、昭和五十七年末から引き続いて検討をされていた経過というものをいろいろと熟知をしているわけでございます。
 今私も資料の中で、ちなみに大小(公開・非公開)会社区分立法及び合併に関する問題点を法務省の方で提起をされて検討されている、これを箇条的にちょっと見ておりまして、一つは設立に関する問題点で十七事項というものが検討されていらっしゃる。二番目には取締役・取締役会に関する問題点が十七事項、三番目には監査役に関する問題点が四事項、四番目には株主総会・社員総会に関する問題点が十の事項、五番目には株式・持ち分に関する問題点が十一の事項、六番目には資金調達に関する問題点が八つの事項、七番目には計算・公開に関する問題点が十七事項、八番目には資本減少に関する問題点、九番目には解散に関する問題点が三事項、十番目には合併に関する問題点が二十一の事項、十一番目には組織変更に関する問題点が五事項、十二番目にはその他関連について十事項、十三番目には会社の区分で二事項、こういう中で非常に検討をされていらっしゃることはわかるわけでございます。十三項目で百二十六点の事項について長年かけて関係組織の意見調整の努力も評価をするわけでございます。
 そこで、冒頭に法務大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、法務大臣も経営者としてかつてもう非常に御苦労されていらっしゃいますので、苦しみも善びも酸いも甘いもすべてがわかっていらっしゃるわけでございます。私もやはり中小零細企業というのが国際的にも日本経済の中で悲喜こもごもの中にあり、日本経済の立て役者である、こういうふうに我々公明党は常に中小零細企業に対しても考えておりますので、本当にいろいろとよいにつけ悪いにつけ非常に心配をしているわけでございます。冒頭でございますけれども、法務大臣、たちまち中小零細企業が大きく関係するわけでございますので、経営者として御苦労なさったそういう立場から一言伺っておきたいと思います。
#70
○国務大臣(長谷川信君) 今御指名でございますのでなんでございますが、今中小企業、零細企業で飯を食っている人がじいちゃん、ばあちゃん、それからせがれさん、娘さん入れますと二千万人を超えていると言われております。この二千万人の人が本当に景気のよさを実感としてまた実際感じないと、日本全体の幾らある部分だけ景気が燃えても全体は私はよくならぬと思うんですよ。今中小零細企業の人たちがおかげさまで非常に景気がよろしゅうございますと言っているのは恐らくほとんどないと思いますね。あっても極めて少ない範囲である。そういうものをいろいろ考えた際に、中小零細企業のために役に立つ法律、そういうものがもしあれば私、どんどんどんどん進めていかなければならないということに相なるわけでございます。
 ただ反面、またさっき申し上げましたように、今百三十五、六万くらいの中小零細企業の会社がある。その会社が、地域は北海道から鹿児島まであって、しかも酒屋ありたばこ屋あり呉服屋ありで千差万別になっている。それらの最大公約数がどこにあるかということで、いろいろ努力してもなかなか的確なところが見つからないんですよ。だから今回の案をつくらしていただいたのでございますが、午前中申し上げましたように完全無欠なものではありません。ありませんが、ただ今日の段階で次善の策としてはこの程度しかない。例えば一千万の会社にしても、そんな高いという人もあるし、それぽっちの金で何かできるんだという人もあるし、最大公約数を簡単になかなか模索できなかった。そういうことで完全なものであるとは私どもも申し上げておりませんが、今幸いにして通していただくなら次の改正に向かって、改善に向かって万全の努力をして、なお税制面あるいはその他の万般の点についても、それぞれ各省の御了解も得て、中小零細企業が少なくとも平成になったら前よりもかなりよくなったというふうな実感を伴う方策を見出すべく、今先生からもお話しでございますが、私ども万全の対策を講じたいと考えております。
#71
○矢原秀男君 それでは、本題に入らせていただきます。
 まず、大蔵省にお伺いをいたしますけれども、一人株式会社の税務問題についてでございます。法人税法の第五十一条の「特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入」についてでありますけれども、つまり会社分割の場合の現物出資資産の譲渡益の課税繰り延べの規定の適用要件である九五%以上の株式取得の改正の必要はないのか、こういう点でございます。まず、この点を伺いたいと思います。
#72
○説明員(長野厖士君) 御指摘いただきました現物出資特例等の趣旨はただいま先生が御指摘ありましたように、企業分割をして新しい法人をつくります場合に、現物出資をして、その新しい会社
の資産としたというケースにつきまして、本来でありますとそこで含み益が吐き出されるという問題が起こりますけれども、実質的にこれは前の会社と同じ、ただ形が分かれただけだと認められるような場合には、そういった課税はあえて起こさないで前からの帳簿価額をそのまま引き継ぐことを認めましょうという制度でございます。
 そこで、実質的にすべてのその子会社を前の会社が持っておるという要件といたしまして九五%以上という要件でさせていただきました。これは確かに、今回の改正に至ります前の商法で七人の発起人という要件がありましたことを考えまして、一人が一〇〇%持つことはちょっと無理ではないか、つまり九五ということで五%のアローアンスは残しておこうという気持ちでありましたことは事実でございます。
 そこで、もう一人株主法人が認められるようになったのだから、残り五%もほかの人に持たせることを許さずに全部元の会社が一〇〇%持つようにすべきかどうかという点、確かに理論的には議論があり得ようかと思いますけれども、九五%の要件はほとんど会社を全面的に支配をしておるということでございましょうし、またこの特例は株式会社のみにかかわるものでございません。ほかの形態の法人の場合にも適用になるものでございますし、また一人以外の法人も依然として残るわけでございますから、この九五%というのはその意味では私どもの判断としましては、現状のまま存続させていただくということで差し支えないのではなかろうかというふうに考えているところでございます。
#73
○矢原秀男君 次に、一人法人についての問題でございますけれども、改正商法の案では一人株主が容認をされたわけであります。この一人法人については、一つは農業生産法人の一戸法人、二番目には医療法人の一人医療法人など、税制上所得税適用なのか法人税適用なのかと論じられてきたところでもありますけれども、この一人株主の場合については法人税法百三十二条に見られる個人課税等の規定から考えてみてどのような課税方法がとられるのか、こういうような点も伺ってみたいと思います。
#74
○説明員(長野厖士君) 法人税法百三十二条のお尋ねでございます。
 これは同族会社の行為、計算否認の規定でございまして、実質的な経済取引の姿に応じて課税していく形がどんな形であれ、実質に従って課税していくという考え方のあらわれのケースでございますけれども、お尋ねの一人株主法人との関係で申しますと、株主が一人しかいないというのはもう会社の実体をなしておらぬのだから個人として課税すべきじゃないかという考え方が議論としてはあったこともございますけれども、この問題は私どもの判断といたしましては、医療法人で一人法人等を設けましたときに既に解決しておる問題であったわけであります。すなわち、そういったものが法的に許されて存在しておる限りにおきましては、そのことを税務上実態が違うではないかと言う余地はないというふうに考えております。
 したがいまして、この百三十二条の規定はしからばどういう場合に問題になるかということになりますと、従業員に極端に高い賃金を払った形をとって何か税務操作をしておるといったような場合に、そういったものを否認するとかという異常な取引に対するチェックということで働く規定だと考えておりまして、一人株主であるから直ちにこの規定が動いてくるというものではないというふうに考えております。
#75
○矢原秀男君 次に、大小法人の区分の問題について伺います。
 昭和三十一年以来の税制調査会で検討されている問題でもありますが、公開の大企業と数人の株主を持つ株主即経営者である非公開の中小企業、これを同列に論ずることは問題を混乱させる原因にもなっていると指摘をされている点もあるわけでありますが、両企業は、一つは資本の調達方法も、二番目に利潤分配の方法も根本的に異なっていると思っております。法人税制においては同一率のままでいくのか別個の体系をつくるのか、大きな課題になっておるのではないかと思うのであります。
 そういう中で、まず質問の第一点でございますけれども、今商法改正の最低資本金制度の導入時においてこの大小法人区分制を導入しなかった理由は何か、これについてまた近い将来導入されようと思っておられるのか、こういう点についての見解をまず伺います。
#76
○説明員(長野厖士君) 商法の立場と税法の立場と検討状況は若干違うかもしれませんが、まず私どもの方から税法の立場のことにつきまして申し上げたいと思います。
 まさに先生が今御指摘なされました点、法人企業といってもいろんな形態がございまして、非常に大きい、言葉が過ぎるかもしれませんけれども、商法の本来株式会社というものが歴史的に生まれたときから想定されておった経営と株主が完全に分割されておりというような形のものから、もうそれが混然一体となっているところまでいろいろな形のものがある、そこを税務上本当に同じに扱っていいんだろうかという問題は、実は御指摘のとおりかねてから議論があったわけでございます。
 特に個人事業者の立場からいえば、自分とほとんど同じような事業をやっておるのが法人という形態で大法人と同じような適用を受けておるのは問題ではないかというようなことでたびたび議論がございましたが、御案内のことでございますけれども、税制調査会でもそういった問題意識の検討はなされたことがかつてございます。その問題は、やはり商法という制度においてその同じ法律の適用を受けるものとして存在する限りにおいては、税の立場だけでこれこれ以上のものとこれこれ以外のものは分けるというふうなことはやはり無理であろう。したがって、それは会社組織、会社法の問題、商法の問題として御検討いただくような課題であって、税法の方が先に動き出すということではないという結論を、これは随分以前でございますけれども税制調査会からいただいておりまして、その状態のままになっております。今日におきまして、その大小法人区分ということを税制調査会で改めて検討したことは最近はございません。
#77
○矢原秀男君 大小法人の区分制が導入されたときを考えた場合に、当然税制というものも異なってくるわけですが、巷間、大法人については独立主体課税方式、中小法人については、一つは株主課税との調整を行う課税方式、二番目にはパートナーシップ課税による一段階課税方式、こういうものがとられるのではないかと予想を私はするわけでございます。それぞれ具体的にどういう課税方式なのかもう一回御説明を願いたいと思いますし、そしてまた現在の検討状況、この点だけはちょっと明確にしていただきたいと思います。
#78
○説明員(長野厖士君) 今日の私どもの検討いたします点は、大小会社の区分ということではなくて、株式会社における最低資本金を導入する、つまり株式会社というものとその他の組織というのをどこで区分けしていくかという問題が俎上に上ったと理解しておりまして、株式会社たるものの中でさらにその中を二つに分けていくという検討段階には来ていないのではなかろうかと考えておりますので、これからお答え申し上げますことも具体的にそういったことを念頭に置いてということではございませんですが、学問上と申しますか、理論的には先生の御指摘になられましたような課税方式というのが議論になったことはございます。
 すなわち、三つの方式を今仰せになられましたけれども、大企業には独立主体課税をする、つまりもう法人というのは株主と分かれた独自の存在として課税していく、その法人から例えば個人が配当を受けようが何しようがそこの間の課税の調整というのは全く考えない、個人と企業というのは全然別のものであるという考え方が妥当するのではないか。しかし、中小企業というものにつきましてはやっぱりそういうこともできないので
何らかの調整が必要である。その調整の方式としまして、ただいま御指摘がありました株主課税との調整課税方式、これは言ってみますと、法人の段階で課税されたものにつきましては、個人が配当とかあるいは残余財産の分配を受け取る段階ではその前の段階の税負担を控除してあげるという形で二重課税が起こらないようにするというような考え方でございます。
 それからパートナーシップ課税についてもお触れになりましたけれども、パートナーシップ課税ということになりますと、ここらは論者によりましていろんな考え方があるのかもしれませんけれども、もう法人というものをなかりしものというふうに考えて、すべて法人が行った経済取引は最終的に株主たる個人に帰属するというふうに偽装をいたしまして、その個人の方にすべての課税を集中してしまうというような考え方かなというふうに理解いたします。
 従来の議論の過程でもこういったもろもろのことが議論されておったことは事実でございますけれども、今日はどういう解決をとっておるかと申しますと、企業課税の方は大法人、中小法人ということでは分けない。税率その他の面で中小企業に対する助成措置はございますけれども、株式会社制度としての課税の方式の中で区分けすることはしない。しかし、先ほどちょっと私申し上げましたけれども、個人事業と法人企業との課税のバランスをどうとるのかという指摘につきましては、個人の方である程度法人類似のみなし法人という仕組みを導入することによってそこの課税のバランスをとったという状況でございます。ただ、このみなし法人というものが今度は給与所得者との課税のバランスから考えてどうかという問題の提起は受けておるところでございますけれども、今日ただいまの大法人、中小法人、個人を通じます課税の均衡の問題につきましての状況は今御説明したような点でございます。
#79
○矢原秀男君 今回の最低資本金制の導入による大小法人区分というものは、一つは法人格乱用防止、所得分割防止、二番目には赤字法人課税に道を開く準備ではないかという意見もあるわけですけれども、こういう点は大蔵省としては実際どういうふうに考えているのか。
#80
○説明員(長野厖士君) 御指摘いただきました二つの視点、法人格の乱用といったような問題、これは税務と申しますよりもやや法務省プロパーの問題であるかなと思いますけれども、どういった規模の存在を株式会社として認識していくかという御議論の中から出てきたことであろうかと思いますので、税務上は直接私どもに関係する問題ではなかろうと考えております。
 二点目にお触れになりました赤字法人課税の準備であるというような意見があるという御指摘でございますけれども、率直に申しまして、そういう論文を拝見したこともございますが、趣旨が私どもにはにわかに理解できないところでございまして、赤字企業にどういった課税をするかという問題と、株式会社が株式会社として事業活動をする上にどの程度の資本金があるべきかという問題は全く違う問題であろうと思っておりますし、これは諸外国の例を御研究いただいてもおわかりになるわけでございますけれども、最低資本金制度がある国は赤字法人課税をやっておるかというと、そこらは論理的にも実際的にも何ら関係のない話でございますので、私どもとしましては、この赤字法人課税の問題とこの最低資本金が関係があるとか伏線とか準備とかいうことは、率直に申しまして全く理解に苦しむ議論のような気がいたしております。
#81
○矢原秀男君 次に、資本金の増加による税法上の影響についてでございますが、これは午前中も質疑が交わされておりましたが、重ねて明確にお願いしたいと思います。
 最低資本金制の導入による資本金の増加により、税法上損金算入限度の上昇など影響が出てくると言われております。例えば交際費の基礎控除などでは、資本金一千万円以下では四百万円、資本金一千万円以上五千万円以下では三百万円、五千万円超ではゼロと、現行では損金算入限度額が決めらております。したがって、一千万円でぴたりの資本金の場合は四百万円でありますけれども、一円でもオーバーする場合は三百万円に上限が下がるなど注意すべき問題点もあろうかと思いますが、資本金の増加による影響の度合い、この点について説明を願います。
#82
○説明員(長野厖士君) 御指摘のとおり、税法上資本金の金額によりまして取り扱いが異なってくるという仕組みが幾つかございます。その中で通常、大企業と中小企業では一億円ということが問題になる制度が多うございますけれども、ただいま御指摘いただきましたとおり、交際費課税につきましては一千万と五千万というラインがございます。
 午前中も触れさせていただいたところでございますけれども、この交際費の損金算入の仕組みにつきましては、これは企業の形態、株式会社であるか有限会社であるか合弁会社とか合資会社であるかという形を問わず、元手が一千万以下である場合には四百万、五千万以下である場合には三百万という形にさせていただいておりますので、株式会社と有限会社と合弁、合資会社の商法の観点からする資本金の要件といったものがこちらにストレートに関係してくる問題ではないであろうというふうに考えております。
 株式会社についてはちょうど一千万、二つそろうではないかという御指摘がございますが、たまたま一千万ということになりますと従来どおりの扱いということになりますが、一千万を若干でも超えたら三百万になるという点は、事実そのとおりでございますけれども、これは従来からそういった仕組みでやってきておりますので、企業が一千万を上回る、一千万ぴたりじゃなくてこれを上回るような資本金を選ばれる場合には交際費課税も変わってくるということも前提とされた上でその資本金の規模を選ばれるのであろうと思いますので、直ちに商法改正に伴いまして交際費課税につきまして考え直すということは必要ないのではないかと思っております。
 ただ、これもけさほど申し上げた点でございますけれども、そもそも交際費課税をどう考えるかという問題は長い検討課題としてございまして、片方の立場からはふやしてほしいという立場があり、片方の立場からは交際費課税はむしろ強化すべきであるという御意見がある。その御意見の帰趨をどこでとっていくのか。それから、大企業は一銭も認めてないのに中小企業に限って幾らか出すというのはおかしいじゃないか、大企業といえども三百万、四百万保証してくれというようなお話もまたあったりいたしますが、そこらの御議論は世の中の議論の流れあるいは交際費の支出状況といったものを踏まえながらこれからも恐らく検討されていく課題なのではないかというふうに考えております。
#83
○矢原秀男君 次に、増資強制の緩和策について伺います。
 最低資本金制の導入に伴う増資の強制に対する緩和策として、東京商工会議所等においては六十二年以来、一つは会社資産の再評価を認め、その評価額を非課税にすること、二番目には既存の利益積立金の資本組み入れを非課税にしてほしいと要望している向きもあるようでございます。この問題については衆議院でもことしの税制改革で検討するとのことであるように伺っておりますが、今年度の税制改正で資産の再評価が行われる方向で進んでいるのか、それとも時期尚早でさらに後年になる模様なのか、その辺の感触をまず伺いたいと思います。
#84
○説明員(中川隆進君) お答えを申し上げます。
 税の観点からのお答えの前に、資産再評価の問題につきまして企業会計の観点からお答えを申し上げたいと思うわけでございますが、御承知のとおり我が国では昭和二十年代急激なインフレのもとにおきまして企業資産の帳簿価額が実際の価額を非常に大きく下回った時期がございました。その際に、減価償却が極めて不十分となりまして実質的な企業の資本維持が困難になった、そういう状況のもとで資産再評価が行われた例はございま
す。
 ただ、これは今申し上げましたように非常に激しいインフレという特殊な事情のもとで行われたものでございまして、今申し上げましたように非常に大きな償却不足に対しまして企業資本の維持等を目的とされたわけでございますが、一般に企業会計の立場から申し上げますと、資産を再評価して簿価を時価あるいはその他の価額につけかえるということにつきましては、これはいわば、いわゆる実現しない、未実現の利益を財務諸表に反映させるということに相なるわけでございますが、こうした会計手法につきましては、諸外国を含めまして現在一般に、公正妥当と申し上げましょうか、そうしたもので企業会計原則の観点からいたしますとなかなかなじみにくいという問題もございます。また実行上もいろいろどういう評価をするかというような問題がございまして、現時点におきましてはなかなか難しい問題だろうというふうに考えるわけでございます。
#85
○矢原秀男君 六月十二日の衆議院の税特委員会で大蔵大臣が含み益課税に前向きの答弁をしているわけでございますが、報道の記事をちょっと見ておりますと、大蔵大臣も理論とかそういうものよりもやはり理論を超えた状況の中に国民の声、こういうものがやはり前向きの意向を示したんではないか、こういうようなことになっておりますけれども、大蔵大臣の前向きの答弁に対して大蔵省としてはどういうふうに検討をしているのか、その点もう一回伺います。
#86
○説明員(長野厖士君) 大蔵大臣が衆議院の税制特別委員会におきまして土地税制の問題としてその含み益課税につきましての御質問をちょうだいし、お答えを申し上げ、それが報道では前向きという記事も承知いたしておりますが、正確には大蔵大臣がお答え申し上げましたことは、現在土地税制の見直しは税制調査会で抜本的に行おうということで小委員会を設けて議論いたしておりますので、含み益の課税問題といった問題も税制調査会の検討の中の一項目として、結論はともあれその検討課題となっておるでありましょうという趣旨でお答えいたしたものと承知いたしております。
 まさに私どものお答えできますこともそこに尽きるわけでございますけれども、あえてどういう点が問題になるかというところだけ触れさせていただきますと、含み益というものが企業にその土地をめぐって存在する、これは資産再評価も先ほど証券局からお答えいたしましたようにさまざまな問題がございますから実現しない状態でございますけれども、それにあえて課税をしていくかどうかという問題でございますが、一つの論点といたしましては、未実現に課税するのが本当に企業の事業遂行上可能かどうかという問題に加えまして、土地政策として考えていきますと、含み益が生じておる事業というのはかなり長期間にわたってその土地を事業に昔から使っておられるというケースでございます。一方にはまた、最近土地を転がし的に取得されたという方、それが両方とも同じ例えば一億円の時価であるとした場合に、最近取得した一億円の方には含み益課税というのは含み益ございませんから一切行きません。従来からずっと土地を使ってきておる、そして一億円の時価の土地を持っておられる方、この人にだけにどんと課税が行くということで、現在の経済社会の中でよろしいのか、あるいは課税のバランスとしてよろしいのかといったような点も問題になってきますので、それならばむしろ、含みがあるかないかは別として、もう現在一億円の土地を持っておるならその一億円の土地の実力に着目して税制を考えていった方がいいではないかといった御議論もございまして、まさにそういった御議論を今税制調査会の中でいろいろいただいておるところでございまして、その中からいずれ結論はちょうだいできるだろうというふうに考えております。
#87
○矢原秀男君 法務省にお尋ねいたしますけれども、利益及び利益準備金の資本組み入れについて税制の手直しを税務当局に検討依頼をされていると聞いたことがあるわけでございますが、その経韓についてお願いをしたいと思います。
#88
○政府委員(清水湛君) 今回の改正案におきまして、本来の利益準備金のほかに利益処分の対象となる利益につきましても資本に組み入れるということができる制度を導入いたしております。そういうような資本の組み入れに伴いまして、従来これをみなし配当ということで課税をするということがされておるわけでございますけれども、この課税についてはいろいろ理論的に疑義があるというような指摘が一般的にも指摘されていたわけでございます。
 そういうような一般論とは別に、さらに最低資本金に満たすために利益準備金なりあるいは一般の利益を資本に組み入れるというような場合につきまして、最低資本金に満たす限度におけるみなし配当課税の軽減あるいは免除というような措置を講じてほしいというような要望が私どもの方に寄せられてきておるわけでございます。この種の要望につきましては、私ども今回の改正法で採用しました最低資本金制度がスムーズに導入されるための手段として非常に好ましい措置だというふうに考えましたので、大蔵省にも検討をお願いしているところでございます。
 ただ、これは平成三年度以降の税制の問題として、つまりこの法律が通りました順には私ども平成三年度からこの法律を施行するということを考えておりますので、いわば平成三年度以降の税制の問題ということになるわけでございますが、この税制につきましては本年末に政府税調等において検討されるということでございまして、まだ大蔵省から御返事はいただいておりませんが、先ほど来からのお話のとおり、大蔵省におきましてもいろんな観点から問題の重要性を御理解いただいて検討されておるというふうに承知いたしております。
#89
○矢原秀男君 大蔵省に伺いますけれども、株式配当、新株の無償交付の法的性質は株式の分割であり、西ドイツ、アメリカの例に沿って非課税の方向に法的な整備が進められていると聞いておりますけれども、この点はいかがでございますか。
#90
○説明員(長野厖士君) 増資に関連いたします課税の扱いは法人税の中で最も難しい分野でございまして、各国それぞれいろいろ歴史的な変遷の中で苦労しながら扱いを行っております。我が国におきまして現在私どもがとらせていただいておる仕組みは、準備金の資本組み入れ等が行われた場合、それはまず大原則といたしまして現金配当が行われる場合にはこれは株主の所得になります。配当で課税が行われます。現金配当が行われてそれを今度は有償の増資に応じたということになりますと、有償の増資に応じたということ自体は別段課税関係は起こりませんけれども、その前段階としてその元手を配当という形でもらっておる、これは配当課税である。そこで今度は株式配当という形で企業から株主に交付されたときはどうだと、これも現金で配ったときと同じであるから配当と同じ課税をいたしましょうと。しからば株式は配っていないけれども、定期積立金といったものを資本に組み入れた、したがって従前の株主は何もしないで黙って会社に対する持ち分がふえたという場合にどうするかという問題が次に出てくるわけでございます。その場合は、やはり最初に申し上げました配当を受けてそれを会社に払い込んだということと結果において株主の立場は全く同じですので、同じような課税をしておく必要があるだろうということでみなし配当という仕組みをとらせていただいておるわけでございます。
 この点につきましては、そういったみなし配当という仕組みがそもそもどうなのかという御指摘も学問的にもいただいておりますけれども、現在の課税のバランスということを重点におきますとやはり今の仕組みで考えざるを得ないのではなかろうかというのがただいまの私どもの率直な気持ちでございます。ただ、その中で今回日本に最低資本金制度というのが新たに導入される、しかもこの制度は既存の会社にも適用するのであるというところでそれが実施が難しくなっては困る、その点について特例を設けることができないかという法務省からの御相談をちょうだいしているわけ
でございまして、その問題の重要性というのは私どもは大変よくわかります。しかしまた、このあたりは扱いを間違えますと、いろんな操作でいわば税対策の一番人目につきにくい、一番操作しやすい分野ですので、課税の公平上の問題は大変気になりますので、問題のないような方法を探しながら平成三年度の税制改革の中で法務省と御協力して結論を出していきたいということを考えておるわけでございまして、そのように御理解いただきたいと思います。
#91
○矢原秀男君 合併と課税について伺います。
 最低資本金をクリアするための手法として、余り利用されないかもしれませんけれども、小会社を合併する場合もあり得ると考えます。これは法務省としてはもう予見はされているわけでございますか。
#92
○政府委員(清水湛君) 最低資本金を満たすために小会社同士が合併して一千万円のバーを超えるというようなことも理論的にはあり得ることだというふうに考えております。
#93
○矢原秀男君 そういう合併によりまず生ずるものは課税だろうと思いますけれども、この生ずる課税はどのようなものがあるのか。これは三つに分類をしているわけでございますが、一つは、被合併法人の株主に対する課税でみなし配当課税と贈与税の問題。二つ目には、合併法人に対する課税で合併差益に純資産の評価益が含まれる場合。三つ目には、被合併法人に対する課税、これは清算所得課税と言いますけれども、こういうふうな三つの分類があろうかと思うわけでございます。合併によって生ずる課税、これを今申し上げた三つの分類した中での関連を御説明願いたいと思います。
#94
○説明員(長野厖士君) 企業が合併いたしますときの課税問題、御指摘のとおり三つの局面で生じてまいります。
 まず被合併法人、合併された法人の株主に対する課税の問題でございますけれども、端的に申し上げますと、合併法人から金銭とかその他の資産、何らかのものを交付を受けた場合につきまして、その交付を受けたものの金額がもともとの出資金額を上回っておるという事態におきましては、その部分は配当所得として所得税調税が起こるということでございます。したがって、株主に対してそういった新たな金銭の交付といったことが行われない、従来からの出資分だけで新しい法人に株主たる地位が引き継がれるというケースでは課税の問題は起こってまいりません。
 贈与税の御指摘もございました。これはまれなケースかと存じますけれども、二つの企業が本来対等合併すべきでないにもかかわらず、対等合併の形をとるというケースについて贈与税の問題が出ることがございます。お父さんがある会社Aという会社を経営されておられる、息子さんがBという会社を経営している。Bという会社は非常に規模が小さい、持ち分も小さいというときに、このAとBが合併しまして、そしてお父さんとお子さんが同じ割合でこの新しい合併法人の株主として位置づけられるということ、これも法的には可能といえば可能でございますので、そういたしますと、気がついてみるとお父さんから息子さんへ財産がそんな形を通じて移転されておるということが起こり得ますので、その場合に、計算のやり方は大変複雑でございますけれども、本来そのお子さんがもともとBという会社に対して持っておった持ち分以上のものが合併法人の株主になったことによってお父さんの方から移ってきたと見られる部分は、そこは贈与税の課税対象とさせていただくという問題でございます。これは同族会社間の非常に特殊な合併のケースであろうかと思いますけれども、課税の公平上はそういう扱いをさせていただいておるということでございます。
 それから、合併法人自身に対する課税が第二点御指摘でございます。これにつきましては、どういう資産につきまして帳簿価額をどういう形で引き継ぐかということが課税のポイントになってまいりまして、一種の評価益を発生するような形で、つまり従来は簿価一億円だったものを新たに二億円なり三億円なりという形で、もともとの帳簿価額よりも新しい会社は高い価額で引き継ぐ、したがってそこにもとの帳簿価額との間に差益が生ずるといったものにつきましては、いわばこれは先ほど先生御指摘になりました含み益の実現と申します、再評価が結果的に合併を通じて行われたという形になりますから、そこにつきましては通常の法人税課税が行われるということでございます。しかし、これは常に起こるということではございませんで、それは合併のときの企業の選択でございまして、古い帳簿価額をそのまま引き継ぎたいというケースにつきましては、それは認められる。したがって、合併法人に対する法人税課税の問題は起こらないということになろうかと考えます。
 それから、三番目に被合併法人に対する課税でございます。被合併法人につきましては、合併の時点で金銭その他資産の合計額といったものを計算いたしまして、その金額が資本の金額とかあるいは利益積立金の合計額を上回る場合には一種の清算に当たりますので、清算所得としての法人税課税が行われるということでございます。これは通常この形の課税が起こるということでございます。
#95
○矢原秀男君 次に、資本の増加、増資に伴う課税についてでございますが、先般来種々問題になっております増資にかかわる課税について整理をしてみたいと思います。
 まず、増資方法には、第一点は有償増資、これは一つ目は株主割り当て、二つ目には第三者割り当て。第二点には無償増資でございますが、これは一つ目は資本積立金の組み入れ、二つ目には利益積立金の組み入れ。それから第三点は抱き合わせ増資、これは一部株主に払い込ませ、一部を積立金の資本組み入れの方法。第四点は株式配当でございますけれども、配当金をもって増資新株の払い込みに充当する方法、等々の増資方法が考えられますが、これらの課税について詳しく説明をしていただきたいと思います。
#96
○説明員(長野厖士君) 増資には、御指摘いただきましたようにさまざまな形態がございます。また、その形態別にただいま先生に整理していただいたところかと存じますが、それに即しまして課税関係を申し上げますと、まず有償による増資ということでございまして、株主割り当てと第三者割り当て、御指摘でありました。もう一つあえて申し上げますと、いわゆる公募発行というのも有償による増資の一つの形、これは中小企業ではあり得ないことかと思いますけれども、大企業では起こり得るということでございます。これらにつきましては、まさに有償による増資でございます。
 この有償という意味は、株主自身がその対価を企業に払い込んでおるということでございますので、それはいわばまさに普通の出資でございますので、原則といたしましてその個人たる株主に対して課税が起こるということはございません。特殊なケース、第三者割り当てで時価に比べて非常に低額な形で株を発行したという場合には、その限りにおきまして第三者割り当てを受けた方に利益が生じますので、その部分につきましては一時所得として課税させていただくというところがございますが、考え方といたしまして、有償による増資というのは課税関係を生じないというグループであろうと思います。
 無償による増資は利益積立金の資本組み入れ、それから資本準備金の資本組み入れという形態がございますことは御指摘のとおりでございます。それから、ある意味で独特の形態として御指摘いただきましたけれども、株主との関係で申しますと株式配当というのもあるいは無償増資の一つの形というふうに考えることができるのであろうと思います。すなわち、株主としては何ら自分として新たな金銭の払い込みということは一切していない、しかし会社の方でその株主に見合った資本金というのが膨らんでいった、したがって潜在的な会社に対する持ち分が膨らんだというケースでございます。私どもは、これらにつきましては先ほ
ど触れさせていただきましたように、現金で配当を受けてそれを会社に出資したという形で持ち分がふえた場合と経済関係が終わりました姿は全く同じでございますから、同じ課税をさせていただくのが公平にかなうかなということで、ここにみなし配当という概念が出てまいります。株式配当の場合はみなしも何も株式が配当されておりますからまさに配当所得でございますけれども、利益積立金とか資本準備金といったものを資本に組み入れた場合、これらにつきましても配当所得として課税が行われるということでございます。
 抱き合わせ増資のケースでございますけれども、抱き合わせ増資と言われますものはただいま申しました有償、無償、整理して申しますと有償三つのパターン、株主割り当て、第三者割り当て、それから公募発行。それから無償三つのパターン、株式配当、利益積立金の資本組み入れ、それから資本準備金の資本組み入れ、この三つのケース。この三つ三つのケースのいわばコンビネーションと申しますか、いずれかの組み合わせという形であろうかと思いますので、それはそれぞれの要素に分割いたしまして、有償に当たる部分につきましては課税がない、無償に当たる部分については課税、みなし配当課税が起こるという形で整理させていただいているところでございます。
#97
○矢原秀男君 法務省に伺いますけれども、資産再評価の認可のために越えるべきハードルというものがあると思うんですが、資本増加のための原資として資産の再評価を認めるためには今後どういうハードルを越えなければならないのか、簡単に伺います。
#98
○政府委員(清水湛君) 御承知のように、会社法におきましては、資産の評価につきましては取得時の価額、要するに取得原価主義という原則をとっているわけでございます。このような原価主義をとっております理由は、要するに会社が何も仕事をしないのに、その間に資産の値上がりがありますと利益が生じたことになってその利益を配当しなければならないというような問題が生ずることを背景にしているわけでございます。つまり、取得原価主義をとらないと会社の計算の正確性と申しますか、そういうものが失われるということがその理由であると思うわけでございます。
 そこで、最近のように不動産等の値上がりが激しい時期におきましては、資産の再評価をしていわばそこで含み利益を表面化させてそれを資本に組み入れるということがいいではないかというようなお考えもあろうかと思いますけれども、しかしながら先ほど申し上げましたような取得原価主義というものがとられている背景というものを考えますと、個別の会社ごとにそういうようなことをするというのは非常に難しい話ではないのかというふうに思います。もちろん、先ほど大蔵省の方から御説明がございましたように、大変大幅なインフレがございまして資産全体を再評価して含み益というものを出してそれを資本に組み入れるというようなことを統一的にやるということでありますと話は別でございますけれども、個別の会社の問題としてそのようなことをするということは許されないことではないかというふうに考えております。
#99
○説明員(長野厖士君) 先ほど御答弁申し上げました中で間違えた点がございますから、おわびして訂正させていただきたいと思います。
 資本準備金の資本組み入れの場合にみなし配当課税が起こるということを申し上げてしまいましたけれども、資本準備金は時価発行の場合のプレミアムなどでございまして、株主がもともと払い込んだ金額、一〇〇払い込んだのが資本金には八〇入っておって準備金に二〇入っておるというようなケースに、この二〇をもとの資本勘定に戻すということでなくて、もうもともと株主が払い込んだ金額でございますから、それを組み入れることによりましてみなし配当課税は起こりませんので、大変申しわけございませんが、訂正させていただきます。
#100
○矢原秀男君 有限会社における内部留保された利益の資本組み入れの便宜措置について、今後どう検討されるのか伺います。
#101
○政府委員(清水湛君) 有限会社については、内部留保をされた利益の資本組み入れという制度は現在ないわけでございますけれども、有限会社法制の全面見直し作業の中で一つの重要な問題として今後検討されることになるだろう、このように考えております。
#102
○矢原秀男君 時間の関係がございますので、最低資本金制度の意義についてでございますけれども、改正商法案の第百六十八条ノ四には「資本ノ額八千万円ヲ下ルコトヲ得ズ」と規定されております。また有限会社においては、有限会社法第九条「資本ノ総額ハ三百万円ヲ下ルコトヲ得ズ」と規定されております。この問題については中小企業関係の方々からも相当の異論があったように伺っております。例えば創業への弾力性が失われるなど反対の御意見も相次いだように伺っております。従前の三十五万円あるいは十万円では現実問題としていろんな問題点もあったろうかと思いますけれども、利点もあり、そしてまた検討されねばならなかった問題もあろうかと思います。
 こういう制度の目的について、一面では株式会社乱造防止策とも言われているようでございますけれども、最低資本金制度の意義というものは、私も先ほど中小零細企業の果たす大きな役割、功績というものもお話し申し上げたわけでございますけれども、そういうものを含めて最低資本金制度の意義というものはどうなのか、これは何回も質疑をされておりますけれども、こういう点なもう一回改めて伺ってみたいと思います。
#103
○政府委員(清水湛君) 現行法におきましては最低資本金制度はないわけでございます。こういうようなことから会社制度が乱用される。例えば、小規模の会社が次々につくられまして取引関係でトラブルを起こすとか、あるいは次々とつくられた会社がそのうちにすぐいわゆる休眠状態になってしまうというような現象、いわば会社制度が乱用されまして、それが取引社会の中でいろんな混乱のもとになるというような弊害も指摘されているわけでございます。
 他方、また、会社と取引関係に立つ債権者、特に弱小債権者の保護ということを考えますと、会社は事業による損失をある程度吸収することができる程度の資産というものを一定額以上常に維持するということがやはり必要ではないかというふうに考えられるわけでございます。つまり、株式会社あるいは有限会社というのは有限責任会社でございまして、株主、取締役等は原則として個人責任を負わないわけでございます。会社債権者、これは労働者とか下請の弱小債権者などでございますけれど、そういう方々にとりましては通常の場合、会社財産だけが唯一のよりどころになるというようなことでございます。ですから、やはりそういうような観点から考えますと、会社が個人財産とは別に一定額以上の、それも余り低くない、ある程度経済変動等による変動を吸収し得る程度の資産を常に維持すべきであるということが当然要請されるのではないかというふうに思われるわけでございます。こういうような乱設防止とかあるいは債権者の保護というような観点から最低資本金制度の導入が必要であるということで、今回のような改正提案になったわけでございます。
 ただしかし、これまでもしばしば御指摘がございましたように、だからといって最低資本金が何でも高いものであればいいというわけにはまいりませんで、我が国には現実に多数の中小企業が存在し、しかも我が国の経済の基盤を支える活力のもとになってきたというような実態もあるわけでございますから、そういうような実態を十分に踏まえて中小企業のいろんな意欲を喪失させることがないような範囲内でこの金額を決める必要があるというようなことになるわけでございまして、そういうような観点から関係方面あるいは関係省庁の意見等も踏まえまして、株式会社につきましては最低資本金一千万円、有限会社につきましては三百万円というふうにいたしましたわけでございます。もちろんこのことにつきましては諸外国
の法制等につきましても種々調査いたしまして、これを参酌しているところでございます。
#104
○矢原秀男君 きょうはここでやめておきます。
#105
○山田耕三郎君 私は、先日の質問におきまして、今回のこの法改正は我が国の株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の法規則が形骸化している、こういう実情にかんがみ、このような会社にも適合する法制度を整備するとともに、債権者の保護のために必要な措置を講ずるほか、会社の資金調達の便宜に資するため、株式及び社債に関する制度を改善する等の改正を行うことを目的としながらも、今回の改正要綱は各界による論議の過程で内容が後退をし、中途半端なものになった結果、果たして目的を達せられるのかどうかという立場から所信をただしてまいりました。
 本日は同じ立場から、さらに細かい点についてお尋ねをいたします。
 まず第一点は、取引の安全と債権確保のための方策についてであります。今回の法改正のきっかけは取引の安全と債権者保護がその主目的であり、一連の商法改正の集大成とすべく法制審議会商法部会において鋭意検討がなされたと聞いておりますが、政府案では大幅に後退した案となったが、そのために欠落した部分については今後どのように対応していかれますのか、午前中の質問にも類似の質問がございましたのでお答えはいただいておりますが、もう少し具体的にお示しをいただきたいと思います。
#106
○政府委員(清水湛君) 昭和五十六年に主として大会社を目的とする商法の改正をお願いいたしたところでございます。例えば株主総会制度だとかあるいは単位株制度であるとか、その他もろもろの点について改正をいたしました。その後、法制審議会におきましては、大小会社の区分、小規模会社に適合し得るような法規制というような観点からいろんな研究、検討を重ねてまいったわけでございます。
 このような過程の中で、昭和五十九年には大小会社区分立法に関する問題点を公表いたしまして、各界から意見を求めました。この問題点はまことに、先ほどもお話がございましたけれども、多数の事項にわたって問題点を指摘し、これについての意見を聞くという形をとったわけでございます。さらに、この問題点に寄せられました各界の意見をもとにいたしまして、商法・有限会社法改正試案というものを昭和六十一年に作成いたしまして、これも公表いたしたところでございます。この中におきましても、今回の商法改正案の内容とはある意味において比較にならないくらい多くの問題についていろいろ寄せられた意見に基づく試案的なものを公表し、これについてもまた改めて各界の意見を求める、関係団体の意見を照会するというようなことをいたしたわけでございます。
 そういう過程の中で、やはり中小会社にふさわしい法制ということを考えてみますと、一方で中小の多数の株式会社がありますとともに、有限会社という法制が、本来中小企業向けの会社としてつくられた有限会社法というものが一方において存在する、それぞれ株式会社、有限会社が中小のものが多数存在するというふうな実態がございまして、そういうものの実態を踏まえて、かつ現実にある程度そこにでき上がっております株式会社、有限会社に対しても適合し得るような形での法改正をしていくということになりますと、非常にいろんな問題が出てくるわけでございまして、単なる理念論からのみではいかないというような問題が多数あるわけでございます。
 午前中にもお話が出ましたような中小規模の会社における経営管理機構の問題、あるいは支配株主の責任の問題等々、実にたくさんの問題があるわけでございます。そういうような問題については、これは引き続き法制審議会で検討を続けるわけでございますけれども、既に五十九年に問題点を公表して以来六年以上の年月が経過しておるというような事情もあり、その間における経済情勢の変化ということもあり得ますものですから、この時点において一応意見がまとまっている点について改正をお願いする、残された問題についてはそれなりに非常に難しい問題があるわけでございますが、引き続き検討をするということで今回の改正をお願いしたわけでございます。
 しかし、この今回の改正の中でも最低資本金制度の導入というのは、これはやはり戦後、商法が抱えていた最大の問題の一つでございまして、これが解決されるということは、金額についてはいろいろ御意見があるところでございますけれども、私どもといたしましては今後の商法における株式会社法のあり方を議論していく上でも、少なくとも一千万円以上の株式会社というものを念頭に置いて議論ができるという意味におきまして、非常に大きな進歩であるというふうに考えているわけでございます。
 中小会社向けの改正と申しますと、今回の改正案では例えば設立手続の合理化、発起人が一人でもいいとか、あるいは今まで余り議論にはなっておりませんけれども、株式の出資の払い込みについては金融機関にしなければならないというようなことにいたしまして、中小会社の設立手続の簡素合理化を図るとともに、実質的な資本の充実、維持の原則をも図るというような点にも配慮しているわけでございまして、一つ一つをとってみますと一見ばらばらのような改正案のように見えますけれども、やはりそれなりに中小企業の設立等をめぐる法制の簡素合理化という面で十分有効に機能し得るものだというふうに考えている次第でございます。
#107
○山田耕三郎君 現在、会社の設立に際しては株式会社、有限会社はそれぞれの書式に従って設立登記をされますが、この会社の公示制度が社会一般にどのような役割を果たすことを期待をしておいでになりますのか、それについてお尋ねをいたします。
#108
○政府委員(清水湛君) 株式会社、有限会社等の法人を設立するということになりますと、これは登記をすることが義務づけられているわけでございます。株式会社について申しますと、会社の商号、それから本店の所在地、それから営業の目的、どういう目的の会社であるか、それから資本金は幾らであるか、発行予定の株式は総数幾らであって発行済み株式は幾らであるか、つまり会社の資本状況がわかるような事項、それから会社の役員、その他もろもろの事項が登記される、こういうことになっております。
 そういう観点から見ますと、法人というこれは自然人ではございませんけれども、自然人については戸籍というものがございまして本人を特定しているわけでございますが、会社について法人の登記がされるということは、当該法人が法的な存在として社会に存在するということを一般に明らかに示す、こういう意味で非常に重要な機能を営んでいるものだというふうに私どもは考えております。
#109
○山田耕三郎君 今お答えをいただきましたけれども、現状の会社の公示制度は、その期待をしておられますそれには十分こたえられておらないように私たちは思います。もしこれらの点、期待にこたえておらないといたしますなれば、今回、計算書類の公開等もありますのですけれども、それらを含めて会社の公示内容はどのようなものにしていくことが理想なのか、その点お答えをいただきたいと思います。
#110
○政府委員(清水湛君) 会社の登記というのは、会社が法人格を有する存在であるということを公示するわけでございますが、その目的は会社が経済活動における取引の主体であるというところから、取引の安全と円滑に資するということの目的のためにそのような公示制度が設けられているわけでございます。
 したがいまして、会社の登記をする際にどういう事項を登記簿に記載するかということにつきましては、やはり取引の安全と円滑ということに基準があるというふうに考えるわけでございます。と同時に、これは何人も第三者が見てこれを理解し得るということが必要でございますので、簡明
にしてかつ合理的なものであるということが同時に要請されようかというふうに考える次第でございます。
#111
○山田耕三郎君 計算書類の公開等が非常に難航をいたしましたように聞いております。当然のこととして、これはプライバシーの問題が関連をしてくるからかとも思います。会社とプライバシーの関係とはどのようにあるべきとお考えになっておられますのか、その点お答えをいただきたいと思います。
#112
○政府委員(清水湛君) 大変難しい御質問で、プライバシーというものをどういうふうに理解するかということ自体が既に一つの問題だとは思います。いわば他人に知られたくない私的な事項を保護する、こういうのがプライバシーということで考えますと、一般的に言えば、プライバシーというのは自然人について言えることではないのかなという感じがいたします。
 しかし、法人については、プライバシーと言わなくても、例えば営業上の秘密というような概念もあるわけでございますから、そういう意味で法人における営業上の秘密、これを保持する利益というようなものももし認められるということになりますと、やはりこれは当然法制度上も保護されなければならない、そういうものもあるのだろうと思います。
 ただ、会社の計算書類を公開するということが、じゃ会社の営業上の秘密であるかどうかということになってきますと、これは相当問題があるところだろうと思います。そういうようなことと必ずしも直接関係するのかどうかわかりませんけれども、現行法でも会社が例えば決算公告という形で新聞あるいは官報に公告すべきだとしているものは貸借対照表あるいはその要旨ということになっておるわけでございます。しかも、その貸借対照表についてどういうようなことを記載するかということは、これは法務省令であります計算規則というものがございまして、そこに記載すべき事項がすべて決まっておる。したがって、法令で決められた事項を貸借対照表に記載して、しかもそういうものを公開するという形になっておりますので、どういうものを記載するかという段階において、やはりその企業にとって営業上の秘密に属するような事柄まで貸借対照表に記載すべきだということには当然のことながらなっていないというように私ども考えるわけでございます。
 したがいまして、現在の商法で予定されております貸借対照表程度のものの公開というのは、これは企業の営業上の秘密、あるいは企業にプライバシーというものがあるとするならばプライバシーの侵害ということになるものではないというふうに私どもは考えているところでございます。
#113
○山田耕三郎君 現行の登記事項では、会社の権利の主体がだれであるかは把握はできますが、会社の現行の財産状態は何一つとして情報が得られません。これでは債権者の保護どころではなく、全く片手落ちではないかと私は思いますが、会社の財産状態を把握できる登記事項の新設が必要だと考えておりますのですが、これに対する御所見をお願いします。
#114
○政府委員(清水湛君) 恐らく委員の念頭にありますのは、民法法人と申しますが、民法の規定によって設立されます社団法人あるいは財団法人につきましては総資産の登記をするということになっております。その総資産というのは、会社法で言ういわゆる純資産の意味であるというふうな運用がされているわけでございます。また、民法上の社団法人、財団法人のみならず、ある種の法人につきましては、純資産としての総資産を登記すべきであるということで、毎年一回その決算期における純資産の額を登記をするということが行われているわけでございます。株式会社についてはそういうようなことは登記事項になっておりませんが、少なくとも現行株式会社法が考えておりますのは、登記ではなくて貸借対照表を公告する。貸借対照表というのは資産の部と負債の部とそれから資本の部というふうに分かれているわけでございますが、資産の部の総額から負債の部の総額を差し引きますとそこに純資産というものの額が間接的に公示されている形になっておりますので、貸借対照表を公告することによって会社の財産状況というのは単に総資産を登記するよりより詳しくわかる、こういう建前に現在の株式会社法はなっているというふうに思われるわけでございます。
 しかしながら、この前も申し上げましたように、公告というものがほとんど行われていないというよりか、九九%の会社がこれを行っていないというような実情でございます。また、このような公告が行われないには行われないなりの理由があるのではないかというようなことから、法制審議会等におきましてもいろいろ従来から議論を重ねまして、それならば登記所に貸借対照表を提出する。その貸借対照表を登記所に備えて、そこで登記簿と一緒にそれが見れるようにすれば会社の財産状況はたちどころにわかるのではないかということで、実は登記所における計算書類の公開という制度を答申されたわけでございますが、今回の改正案にはそれが盛り込まれなかった、法制審議会の答申があるにもかかわらず盛り込まれなかったということになっているわけでございます。
 私どもといたしましては、株式会社について民法法人と同じような総資産の登記をするというようなことは今のところちょっと考えておりません。それにかわる制度として、あるいはもっと進んだ制度として貸借対照表の登記所備えつけというふうなことを何とか早い時期に関係方面の理解を得て実現をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
#115
○山田耕三郎君 もう一つ、現行の株式会社法の登記簿を見ますと、代表取締役に限って氏名、住所が記載されておりますけれども、取締役及び監査役は氏名だけで住所は記載をされておりませんし、おらなくてもよい書式になっております。例えば、会社倒産等で代表取締役が雲隠れをしたような場合、取締役や監査役の責任を追及しなければならないときに氏名だけでは特定をすることができません。こういったことはやはり安心して取引のできない原因をつくっておることになります。昭和三十八年の商業登記規則の改正前までは取締役も監査役も氏名だけではなく住所も記載されておったとのことでありますけれども、規則の改正によってなぜ住所が省略をされましたのか、その理由と、改正前の状態に戻して住所もきちっと記載をさすようにすべきではないかと思いますが御所見をお願いいたします。
#116
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、現在の株式会社の登記簿におきましては住所が記載されるのは代表取締役だけであるということになっているわけでございます。このようにした趣旨は、先ほどもちょっと申し上げましたように、株式会社の登記というのはこれから会社と取引をしようとする第三者に対して取引の安全と円滑を期すためにされるものであるということでございます。つまり、会社といろんな取引関係に立とうとする者がだれを相手として会社と契約を結んだらよろしいのかということをわからせる、こういうことにあるわけでございます。そうだといたしますと、結局会社を代表して契約等の行為をすることができるのは代表取締役でございますので、代表取締役についてその個人を具体的に特定できるように住所も記載するということが必要になるということになるわけでございます。
 実は、昭和二十五年に商法は大幅改正を受けたわけでございますが、昭和二十五年改正前におきましては取締役はすべて代表権を持っておりました。つまり、代表取締役という制度はなかったわけでございます。取締役という肩書をいただきますとすべて代表者でございましたので、逆に言うと取締役の数も非常に少なかったということになるわけでございますが、二十五年の法改正で取締役会という制度ができまして、代表取締役といわゆる平取締役というものが分離された、こういうことになったわけでございます。そういうことを受けまして、若干時間のずれはございますけれども、昭和三十七年の法改正におきまして平取締役
の住所については登記をする必要はないということで削られたという経緯がございます。このことは第三者の方から見ましても、取引の相手としての取締役というのはこれは直接関係がないということでございます。もちろん、取締役経理部長というような形で代表取締役の代理人という形で契約を結ぶということはあるわけでございますが、これは平取締役としてそういう行動をしているわけではない、こういうことでございますので、会社登記簿に平取締役の住所を書く必要性というものはなくなった、こういうふうな理解に立つものでございます。
 ただ、委員先ほど御指摘のように、会社が倒産状況に陥って代表取締役がどこかへ逃げていってしまって、結局取締役個々の責任を追及しなければならないというような事態ももちろんあり得るわけでございまして、そういうような場合には取締役の住所が必要ではないかというような御意見、これはある意味においては一理ある御意見だろうと私どもは考えるわけでございます。しかしながら、会社登記の本来の目的というようなものを考え、さらに取締役の個人責任を追及しなければならないような事態というものを考えますと、それは株式会社の登記簿にいわば平取締役の住所が記載してあるか否かというような問題とはちょっとかけ離れた問題になってくるのではないかというような気もいたすわけでございまして、今のところ平取締役について住所を登記するというようなことはちょっと実は考えていないわけでございます。むしろ一般の傾向としては、会社以外の法人についても代表権のある理事だけを登記するというような方向に実は今なりつつあるわけでございまして、そういうこともお含みおき願いたいと思うわけでございます。
#117
○山田耕三郎君 ただいまのそれに関連をいたしまして、有限会社の場合には設立に際していわゆる見せ金の必要はなく領収証だけでよろしいことになっております。極端なことを言えば、お金なしで設立さえ可能になっております。登記上は確認のしようもないとのことでありますが、これでは債権者の保護どころではありませんように思います。これらはどのように理解してよろしいのか、所見を承りたいと思います。
#118
○政府委員(清水湛君) 現行法については、まさに御指摘のような御意見が実はあるわけでございます。
 そこで、先ほど私、有限会社あるいは株式会社の設立の簡素合理化ということを申しましたが、合理化という面におきまして、例えば金銭出資につきましては払込銀行というものを決めまして必ず銀行に払い込む、つまり金銭出資は銀行等を通じて払い込みをしなければならないというふうに今回の改正法ではいたしておるわけでございます。もちろん払込銀行を決めましても、払込銀行以外の銀行から借りてきて払い込んで、設立したらすぐおろしてしまうという、いわゆる見せ金ということになりますとこれは問題ではございますけれども、少なくとも今回の改正法、これは具体的には有限会社法十二条の第二項でございますけれども、金銭出資は銀行等を通じてしなければならないということにし、また現物出資についても原則として検査役の調査が必要であるということにいたしまして、委員御指摘のような懸念の解消を実は図っている次第でございます。
#119
○山田耕三郎君 次は、有限会社の取締役、監査役の任期に関連した事項についてお尋ねをいたします。
 本件については午前中櫻井委員の質問にもありましたが、現在有限会社は全国で百三十万社を超える程度の登記がされておると言われておりますが、現実に何十万社が活動をされているのか、その実態を調査しておいでになるのかお尋ねをするつもりでしたが、概略の答弁は櫻井委員の質問に対していただきましたので、それは省略をさせていただきます。
 ただ、有限会社は設立登記してしまえば定款に役員の任期の規定がない以上定期的に登記の必要はなく、結果として、辞任した役員はもちろん死亡した役員でさえ登記上はまだ役員として記載をされており、また現に活動していないのにかかわらず登記上は現存する会社として残っている有限会社がたくさんありますようでございますが、そのために新会社をつくろうとしても類似商号により会社が設立できない場合等不都合なことが近年特に多く、関係者から苦情を聞くことがありますが、これらの対策はいかように考えておいでになりますのか、お尋ねいたします。
#120
○政府委員(清水湛君) 有限会社につきましては、委員御指摘のように、定款に役員の任期の定めがない限り、一たん設立の登記をいたしますとほぼ永久的に登記をする必要がないということで、登記簿を私どもサンプル的に見ましても非常に古い登記でございまして、恐らく関係者は全部もう亡くなっているだろうというふうに推測できるような登記簿がございます。そこで、こういうようなことを何とか防ぐ必要があるのではないかというようなことになるわけでございますが、御承知のように株式会社につきましては昭和四十九年の商法改正の際に、登記を引き続き五年間怠った場合には登記所の方で通知をしまして、その通知について返事がありませんとみなし解散ということで解散の登記をしてしまう、こういう制度を導入いたしました。これも株式会社については原則として二年ごとに役員の変更の登記が必要だという制度をとっておりますからそういうこともできるわけでございます。しかしながら、有限会社についてはそういう制度はございませんので、一方的に会社が解散したものとみなすというわけにはまいりませんというような問題も実はあるわけでございます。
 そういうような問題もあるわけですが、そもそも登記をしっ放しで何年もそのままでおられるということ自体が既におかしいわけでございますので、有限会社についても役員の任期を導入したらどうかということで、実は六十一年の商法・有限会社法改正試案にはそういう提案がされております。このことについても、任期制の導入につきましては大方賛成でございましたが、今回の改正案を作成するに当たりまして、あるいは法制審議会の答申をまとめるに当たりまして、いわば会社の経営管理機構、中小株式会社あるいは有限会社の取締役、監査役制度をどうするかというような全体的な問題の中でこれは解決すべき問題であるというようなことになりまして、有限会社の取締役に任期制を設けるという方向はほぼ全員の一致した意見でありましたけれども、今回の改正案では見送るということにいたしたわけでございます。
 このような点を含めまして、有限会社、中小株式会社の法制につきましては多々まだ検討すべき点が残されており、中には任期制のようにほぼ固まっている問題もあるわけでございますけれども、引き続きできるだけ早い時期に残りの問題を整理検討いたしまして改正案を作成いたしたいと考えておるところでございます。
#121
○山田耕三郎君 その次に、現物出資における専門家制度の導入についてお尋ねをいたします。
 現行の現物出資の際の検査役制度は資本の充実を図る上から有効な制度であったが、改正案では五百万円未満の場合は検査役を必要とせず、五百万円を超える場合弁護士の証明書を添付することになりました。この場合、会社に関係のあるか、または個人的に関係のある弁護士に依頼をすることになりがちであると思いますけれども、これでは不公平感を免れないと心配されておる向きもありますが、そのことが資本充実の原則に相反する結果を招きかねないと私は思います。多少面倒でも現行の検査役制度を存続すべきだと考えますけれども、これらについてのお考え方を聞かしていただきたいと思います。
 もし弁護士の証明書の添付を義務づけるのであれば、現物出資の種類によってそれぞれの専門家の証明で足りるよう多様化されてはどうなのか。例えば土地、建物などの不動産についてでは司法書士を加えたらどうか、こういった意見もあるようでありますけれども、これらをあわせてお答えをいただきたいと思います。
#122
○政府委員(清水湛君) 現行法の発起設立等の場合におきます検査役の制度というのが会社設立をする場合に非常に面倒だということで、現実には発起設立の実態を有しながら募集設立の形態をとるというようなことが行われておるというふうに言われているわけでございます。あるいは現物出資が現実にはなかなかうまく行われないというような問題があるというふうに指摘されているわけでございます。
 そういうようなことから会社の設立手続を簡素化するという意味におきまして、今回不動産の現物出資につきましては検査役の検査にかえまして弁護士の証明をもって行うことができるという制度を導入することといたしておるわけでございます。こういうふうに弁護士の証明という制度を導入したのは、実は現在の運用におきましても検査役として裁判所から選任されますのは弁護士がほとんどであるというような実態を踏まえてのことでございます。もちろん裁判所から選任される弁護士であれば非常に信頼できるけれども、会社が依頼した弁護士だと余り信頼できないというような御心配もあろうかと思いますけれども、一応資格のある法律専門家として弁護士というものが社会的に認知されておるということでございますので、私どもといたしましては弁護士の職務の性格から公正誠実にこのような証明がされるものというふうに実は期得しているわけでございます。
 なお、このような証明について、例えば不動産に関する現物出資の証明でございますので、登記の専門家である司法書士なりあるいはその他税理士等の専門家を利用したらいかがかという御指摘でございますが、そういうような意見も実はこの立案の過程では私ども耳にいたしておるわけでございます。しかし、総合的に従来弁護士が事実上検査役でやっていた仕事を弁護士が会社から依頼を受けて証明するという形をとるわけでございますとともに、弁護士がそういうような証明をする過程の中で不動産の登記をめぐる疑問あるいは税務をめぐる疑問というようなものが生じた場合には、当然さらにその弁護士さんが司法書士さんにいろいろお尋ねをする、あるいは税理士さんにお尋ねをするというようなことに普通はなるはずでございまして、最終の証明は弁護士という形にはなっておりますけれども、それぞれ司法書士あるいは税理士さんがそれぞれの職域の専門家として弁護士のあるいは補助的な役割ということに相なろうかと思いますけれども、弁護士証明の正確性を担保するために協力をしていただくということはもう十分に考えられることであるというふうに私どもは思っているところでございます。
#123
○山田耕三郎君 債権者としての従業員等のいわゆる労働債権を優先する施策の確保についてお尋ねをいたします。
 労働債権の優先については社会的通念として法的にも定着しつつあり、今日、賃金についてはそのように措置されておりますが、退職金についてはまだ実現を見ておりません。早急に実現を期待をいたしまして、所見を求めます。
 なお、労働債権確保のために行います民事執行手続上の保証金など、例えば差し押さえ供託金等については免除の措置を設けられるべきだと考えますけれども、これについても所見をお願いいたします。
 なお、財務書類の公開は取引の安全と債権者保護のためにはもちろんのこと、中小企業従業員の生活の安定を確保する上からもぜひ必要であり、法制審の答申どおり実現なさることを期待をいたしますのでございますけれども、それが直ちに不可能な場合にあっても一定数、例えば三十人なら三十人以上の従業員のいる企業にあっては労働組合等に限り公開を義務づけられてはいかがかと存じますが、それもあわせてお答えをいただきたいと思います。
#124
○政府委員(清水湛君) 最初の労働債権の保護という問題、これは商法だけじゃなく例えば会社更生法その他の関係でもそれぞれの保護措置が講じられているところでございますけれども、商法の面から申しますと二百九十五条という規定がございまして、退職金債権も含めまして賃金債権が会社と使用人との間の雇用関係に基づき生じたる債権として会社財産に対する先取特権が認められ、その保護が一応図られているということになっているわけでございます。もちろんそれ以上に労働政策的な見地からこの種の債権の保護を、例えば労働組合法なり、その他労働基準法なりでいろんな保護措置が講ぜられており、また必要に応じて講ぜられることになるというふうに考えているところでございます。
 それから、労働債権の確保のための保全処分を行う場合における担保、保証の制度でございますけれども、これは民事執行法等の規定によりまして裁判所が行う例えば仮差し押さえとか、あるいは執行停止等の処分を行う場合に保証を立てさせるということをするわけでございますが、この保証というのは後になって実は仮差し押さえなり、仮処分が違法であるというようなことが判明した場合に備えまして、あらかじめその処分により相手側がこうむることが予想される損害を担保するという意味、つまり相手方がこうむる損害を担保する手段で保証を立てるということになっているわけでございまして、しかもこのような保証を立てさせる必要があるかどうかということは、裁判所が公平な第三者の立場から判断をするということになっているわけでございます。
 したがいまして、こういうような担保制度の趣旨と、それから担保を立てさせるかどうかということが裁判所の判断によって決まるというようなことを考えますと、労働債権は他の債権に先んじて保護すべき債権だと私ども考えますけれども、しかしだからといって、この種の債権について一般的に担保を立てさせることを必要としないとか、あるいは免除するというような立法措置を講ずるということはちょっと困難ではないのかな、こういうふうに考えております。
#125
○山田耕三郎君 終わります。
#126
○紀平悌子君 午前中からの御審議で皆様大変お疲れのところだと思いますけれども、よろしくお願いをいたします。
 前回の委員会では、商法の一部改正につきましての経緯、その目的、そしてその公益的メリットなどの大略を短い時間でお伺いいたしましたけれども、なおまだ小規模会社と言われるそういった会社の状況が十分私にはつかめておりませんので、若干細かい質問をさせていただきたいと思います。
 法務省にお願いいたします。現在、資本金が一千万円に満たない株式会社は全体で同社ございますか。資本金額から見た分布状況はどうなっておりますでしょうか。百万円未満は何社、百万円から二百万円未満は何社というぐあいに百万円の幅で一千万円までそれぞれに何社、何%あるかというふうなデータをできればお示しいただきたいと思います。
   〔委員長退席、理事矢原秀男君着席〕
#127
○政府委員(永井紀昭君) この改正法律案の関係資料にも出ておりますが、法務局で把握しております数字はこの資料の二十七ページでございまして、株式会社合計百二十六万社のうち、一千万円未満が八十三万五千社ということになっております。私どもの資料といたしましては、実はそれ以下の細かい区分をした資料を持ち合わせておりません。次のページで、二十八ページに税務資料で若干五百万円未満の、現にこれは完全に生きている会社であろうと思いますが、こういう資本金階級別法人数というのも出ております。こういった資料、その他の資料に基づきまして私どもが推計をしている数字は、一千万円未満の八十三万五千社ぐらいの中で百万円未満の会社が五万一千社であろうと推測しております。それから百万円以上二百方円未満が十六万一千社であろう。それから二百万円以上五百万円未満、推測しかしておりませんが、それが三十三万七千社ぐらいあろう。それから五百万円以上一千万円未満が二十八万六千社あろうかと思います。ただ、これもあくまで登記簿がある会社ということを中心にしておりまして、果たして本当にこれが通常の営業活動をやっ
ているかどうかということその他については必ずしも明確ではございません。
#128
○紀平悌子君 また、その中で休眠法人と言われる株式会社は何社存在しておりますでしょうか。
 また、欠損法人は何社ほどでしょうか。
#129
○政府委員(永井紀昭君) この数字は、既に休眠会社を整理した数でございます。休眠会社を整理した数と申しましても、実は御承知だと思いますが、昭和四十九年の法改正によりまして株式会社は休眠会社の整理をするという手段をつくりました。それ以来五年おきに整理をしてまいったわけでございます、四十九年、五十四年、五十九年、それから平成元年度と四回にわたって整理をいたしました。毎回株式会社で解散会社とされますものが大体十万社前後ずつございました。昨年度、平成元年度整理いたしましたのを見ますと、八万八千社余りが解散会社とみなされております。こういったものを大体整理した数がそうなっております。
 したがいまして、登記上は一応生きている会社で八十三万五千社あるんですが、ただこれも形式的に五年間登記をしてないという観点から整理をしたものでございますから、登記は一応しているけれども、実際の活動あるいは営業活動をしてない会社も相当あるようでございまして、そういった事実上の休眠会社というものがこの八十三万五千社のうち相当数あるのではないかと思いますが、これははっきり登記所の立場では確認できません。むしろ税務統計の方が相当正確なものになっているのじゃないかと思います。
 それからもう一つ、欠損会社につきましては、私どもはっきり把握する立場ではございませんが、ただ俗に五割か六割が欠損会社になっているのじゃないかというような言われ方をしておるということでございます。
#130
○紀平悌子君 中小企業庁にお伺いしたいんですけれども、非常に今回の商法改正で株式会社制度が変わりますと、中小企業に影響があるということはもう当然のことでございますが、そうした状況において企業に関して商法改正と軌を一にして何らか中小企業庁として対応されるという御予定がおありになりますか。また、計画があったら教えていただきたいと思います。
#131
○説明員(藤原治一郎君) 御指摘ございましたように、今回の商法改正が実現いたしますと、株式会社一千万円、有限会社三百万円という資本金額に到達するか組織変更ということになりますので、相当数の企業が影響を受けるということは我々も承知しております。したがいまして、今回の改正案の設定に当たってもそういう実態を踏まえた金額の設定等を要請してきてまいったところではございますけれども、さらに今後法改正が実現された場合には、まず第一に大多数の中小企業者ということで相当数に上りますので、この法改正の趣旨なり内容を周知徹底する必要があるであろう。いろいろ試案から今日まで参っておりますので、例えば二千万円を実現しなければいけないとか、直ちに用意しなければいけないとか、いろいろ混乱が生じないようにそこら辺は十分関係中小企業団体等を通じて法務省ともどもPRを徹底してまいりたいというふうに考えております。
 また一方、円滑化という意味におきましては、法務省を通じて各中小企業団体もお願いしているかと思いますけれども、税制上の措置等を実現していただくよう我々も協力して努力してまいりたいというふうに考えております。
#132
○紀平悌子君 先ほど矢原委員からも御質問のございました一人会社でございますけれども、法務省にお伺いいたします。
 現行の商法では百六十五条で株式会社の設立には七人以上の発起人が必要とされております。これはどんなねらいがあってその旨規定をされておりましたのでしょうか。改正案では発起人の人数制限が廃止され、一人でも発起人として会社が設立できるように変更されておりますが、これは現行法の定める発起人七人以上の一応制限と申しますか、それを決めております法の趣旨とは大分違っておりますけれども、趣旨として反するのではないかというような素人意見でございます。
 それから、単独設立というものが可能であるというだけの立法を支える事実の変更というものがその間あったのかどうか。要するに一人だけで設立させても法律的、経済的に不都合が生じないかどうか、法務省としての御判断をお聞かせいただきたいと思います。
#133
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、現行法上は発起人が七人必要でございます。例えば普通のかなりの規模の会社というようなものの設立を考えますと、発起人が七人あるいはそれ以上の人数の発起人が現実には要るわけでございます。しかしながら、中小企業、特に小規模会社の設立というようなものの実態を見ますと、実質的な発起人は一人で、形式的にそれを法律が七人要求するから七人というような形で設立手続を行うというようなことがしばしば行われることになっているわけでございます。そのために名目的に発起人にされた者が後に会社をめぐるトラブル等が生じた場合にその紛争に巻き込まれるというようなケースもないわけではないのでございます。そういったような事情を踏まえまして、通常の場合多数の発起人が関与して設立されるけれども、特に中小会社を設立するためには発起人が一人であってもそのために問題はない、こういう考え方に立ったわけでございます。
 もちろん、その裏づけといたしまして、例えば株式会社を設立する場合の出資の履行義務とか、あるいは出資についての担保責任とか、そういうようなものについて規制をある意味においては厳しくいたしておりますので、会社の財産を充実させる、つまり資本充実の原則とか資本維持の原則という面では問題が生じないように配慮をいたしておるということになっているわけでございます。結論的に申しまして、発起人が一人であっても将来株主は多数になり得るわけでございますし、また会社の経営機関としての取締役は三人以上当然必要でございますので、そういうような観点からいさましても、発起設立の段階で発起人が一人でありましても格段の弊害が生ずることはない、こういうふうに考えた次第でございます。
#134
○紀平悌子君 ということは、七人ということには格別趣旨というかポリシーというか、そういうものはなかったという意味でございますか。あるいは初めはあったけれどもということでしょうか。
#135
○政府委員(清水湛君) この点はおっしゃるように、株式会社というものは社団であるということを大前提といたしまして、したがいまして設立をする場合には少なくとも複数人が必要である、こういうような認識があって、その場合の数は五人がいいのか七人がいいのかという問題はあろうかと思いますけれども、この七人という数字は恐らく日本の株式会社法を制定する際に参考とした当時の諸外国の会社法制が大体七人程度の発起人を要求していたということの影響だろうというふうに私どもは考えております。
 ただ、形式的に社団制を保持する必要があるからということで、設立の段階においても七人いなければならないという論理必然性はないというふうに考えまして、今回のような改正案、ある意味においては現実に妥協であるというお話もあるわけでございますけれども、他面では出資義務の履行等についての規制を厳しくするということによりまして、その辺の問題は生じないように配慮をいたしておるというふうになっておるわけでございます。
#136
○紀平悌子君 さらに一人会社についてですが、改正案においては発起人を一人でも構わないということになるわけですが、取締役は三人以上であることを要する、二百五十五条ですが、そうなっておりますんですが、このことは矛盾していることではないでしょうか。考え方によりますと、会社の設立という大変大事な法律行為が単独でできるならば、運営も一人でやっても構わないのではないかというふうな素人論も成り立つかもしれないと思うんですが。
#137
○政府委員(清水湛君) 現在でも一〇〇%出資子会社というのはあるわけでございまして、親会社
が一〇〇%出資して株は全部持っておる。しかし、親会社から派遣された社員が取締役として経営の任に当たっているという現象はあるわけでございます。こういう会社でも、これこそまさに一人会社でございますけれども、そういう会社も現行法上既に存在しているということが発起人を一人ということの理由づけにも、支えにも実はなるわけでございます。そういうことで会社のオーナーが実質的に一人でございましても、経営というのはやはり取締役が一人で判断をするよりか、やはり複数人の判断によって会社の業務の執行の判断をした方がよろしいということに当然なるわけでございます。もちろんオーナーが一人だから取締役も一人で、しかも全責任は、結局危険というのはすべてその一人の株主に帰着するのだから、株主が一人の場合には取締役の数なんかについて規制をしなくてもいいじゃないか、こういう議論もちろんあったわけですけれども、その点についてはやはり取締役会制度というものはすべての株式会社について存置すべきであり、取締役会という以上これは複数でなければならないということで、二人ということになりますと一対一で決がとれませんので、最低三人と、こういうことに現行制度上なっているわけでございます。したがいまして、発起人が一人でいいかということと矛盾するということにはならないと私どもは考えております。
#138
○紀平悌子君 今回の改正で取り上げられなかった事項の一つとして、現在非常に株主の大衆化というか、株式ブームという状況でございます。そういう状況の中で株式会社の総会でございますが、総会の開催日の問題というか、例えば今六月ですけれども、六月二十八日に株主総会が一部上場企業でかなり集中して開かれると聞いています。これには簡単に代理などは立てられない小規模の大衆株主と申しますか、実質的には一社しか株主総会に参加できないことになります。株主総会が会社において占める重要性というものがございますので、株主総会出席権を不当に制限することになるのではないか。この問題について、法務省はどんなふうに考えていらっしゃいますでしょうか。また、立法的にどう解釈されますでしょうか、お伺いしたいと思います。
#139
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、最近新聞紙上等で、ことしの場合は六月二十八日ですか、六月二十八日に株主総会が集中的に開催されると、新聞報道等によりますと全上場企業の約七割が一斉に定時株主総会を開くというような記事もあるようでございます。
 御承知のように、昭和五十六年の商法改正は、これまでもたびたび申し上げておりますように、大会社対象の改正をいたしたわけでございます。その中で一つ大きな問題は株主総会の活性化ということでございまして、株主提案権の問題だとか質問権の問題、あるいは総会荒らし、いわゆる総会屋に対する刑罰規定の新設等々いろんな手段を構じたわけでございます。株主総会の活性化ということで方策を講じたわけでございますが、その後ほとんどの会社が三月即決算に移行し、しかも六月の大体同じ日に株主総会を開くというようなことになりまして、株主総会の活性化の趣旨とは異なる方向に事態がいっているのではないかというような御指摘が実はあるわけでございます。
 これは、商法の関係で特にそういうことに対する手当てをどういう形でするのかということ、非常に問題でございますけれども、余り集中して株主総会が開かれるというようなこと、これはそういうようなことになります背景がいわゆる総会屋を退治する、総会屋というのが昭和五十六年改正前におきましては非常に多数おりまして、会社に寄生して不正な利得を得ていたというようなことが言われているわけでございますが、そういう総会屋をなくすというようなことから、できるだけ総会屋の出席の機会を少なくするために同じ日に開くというようなことがその理由として指摘されているわけでございます。しかし、そのために通常の株主の出席の機会が少なくなるというようなことがもしあるといたしますと、やはり問題ではないかというような気がいたします。ただしかし、法務省といたしまして、今直ちにこれを法制上の手当てで何とかするというようなことはちょっと今のところ考えておりません。企業の行動の問題として、企業サイドでまずお考えになることではないのかなというような感じが率直に言っていたしておる状況でございます。
#140
○紀平悌子君 さらに、今回の改正では触れられませんでしたけれども、株式会社と有限会社を一本化する、この前もちょっと似たような御質問を申し上げましたが、ともに一つの有限責任を持つ社員によって運営される社団として統一的に運用しようという考え方があります。そういう一本化案について、メリット、デメリット、どういうふうにお考えになりますか。また、法務省としてはその考え方をどう評価されておられますか、再度承りたいと思います。
#141
○政府委員(清水湛君) これは非常に実は難しい問題でございまして、私どもは中小株式会社の実態というものを考えますと、まさに有限会社そのものの運用をしておるのではないかというような感じが率直に言ってするわけでございます。例えば有限会社ですと、社員総会というものは開かなくて書面決議で社員総会の決議にかえることができるというような規定もございます。今回の改正案では取り上げられておりませんけれども、例えば中小株式会社については株主総会というようなものを開かないで書面で決議をするというようなことをもしできるようにするということになりますと、その辺でも有限会社と同じようなものになってしまう。現実に、例えば中小株式会社では取締役会なんというものは開かれていない。これは、有限会社は取締役会という制度がありませんから別に取締役会を開かなくてもいいということになるわけでございますけれども、そういうふうに中小株式会社の法規制を緩和してまいりますと、これはもう有限会社と全く同じになってしまいますし、現実の運用はもう有限会社そのものではないかというような指摘がございます。
 ただ、我が国におきまして有限会社もかなり設立されておりますが、依然として中小の株式会社が設立されております。恐らく、最低資本金が一千万になりましても一千万円以上の株式会社は今後もかなり設立されることになるのではないかという推計がございます。経済界の中でなぜ有限会社を避けて株式会社を選ぶのか、あるいは最近は有限会社の設立もかなり数が多うございますので、むしろ株式会社を避けて有限会社にされる方というのもふえているわけでございますけれども、どうもまだその辺にいろいろ理屈では割り切れないような何かあるのかなというような実は感じが率直に言ってするわけでございます。株式会社という名前にこだわるのかなというような感じもするわけでございまして、単純に有限会社と中小の株式会社を一本化した何かいい名称でもあればあるいはみんなそれに賛成されるのかもしれませんけれども、単純に理屈だけでは割り切れないような問題もあって、まだ一本化という結論には至っていない。しかし、そういう問題提起はもう古くからされておりますし、議論もされておるということだけはお話しできるのではないかと思います。
#142
○紀平悌子君 同じく法務省にお伺いいたしますけれども、今回の商法改正における法制審の商法関連の部会、商法部会でございますが、あるいは総会などの構成、そして機構につきお聞かせをいただきたいと思います。
 その中で、女性の委員は何人おられますか、あるいは委員外が何人おられますか、できたら教えていただきたいと思います。
#143
○政府委員(濱崎恭生君) 法制審議会の総会の委員の数は、本日現在で二十六名でございます。その構成につきましては、法制審議会令二条の規定によりまして、「委員は、関係各庁の職員及び学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命する。」ということになっております。これに基づきましてその構成の概要を申し上げますと、学者委員その他の有識者、法曹関係者及び関係政府職員等か
ら成っておるわけでございます。また、商法部会の委員の数は三十八名でございまして、その構成はその取り扱う専門分野の特色に応じまして人選されているわけでございますが、基本的な構成の仕方は総会の場合と同様でございます。
 女性委員につきましては、総会におきましては委員一名でございます。商法部会におきましては女性の委員はいらっしゃいません。
#144
○紀平悌子君 法務大臣にお伺いをしたいと思います。
 今お聞きのとおりの女性の参加率でございますが、商法の一部改正は、男性だけではなくて女性にも非常に影響のある法律改正でございますし、社会的あるいは生活的な問題にもかかわるわけでございます。法制審議会全体に女性の参加がこれで十分だというふうにお思いになりますかということと、それから御案内のことと思いますけれども、国際婦人年の七五年から八五年、十年間の国内行動で、今はまた二〇〇〇年に向かっての新国内行動計画の責任を総理大臣以下行政府が担われておりますわけです。特に、この婦人の地位の向上の中で政策決定参加の部門が最も後進的な部分だとして、七七年、総理府の婦人問題企画推進本部が婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱というのを決定されております。これが十年間この促進がされまして大分改善された部分もございますけれども、いまなお二〇〇〇年に向けて後進的な部分として特筆されて行動計画を今進行中でいらっしゃるわけなんです。
 その中で、実は行動計画の具体策の中でただ一つ数値、数をもって示されておりますのが審議会への婦人の登用ということなんですね。あとは数値、プログラム、それは出ておりません、向上するということだけですね。さまざまな女性に対する差別撤廃の法改正というのは、御案内のように、国籍法の改正以後いろいろございますんですけれども、この政策決定参加の部門だけは余り進んでおらないというのが現状でございます。一番最初、七五年には十年で一〇%の参加率にしようという目標がございました。最初の七五年は二・四%でしたけれども、一番最近のデータでは昨年の三月三十一日は六・七%、でも、四千五百十一人の審議会総員のうち女性は三百四人というふうな状況でございます。
   〔理事矢原秀男君退席、委員長着席〕
新国内行動計画は二〇〇〇年までに一五%という目標設定をしておられます。
 特に、法務大臣にこのことを申し上げるだけでなくて総理大臣から各省に申し上げなければいけないことなのですけれども、いわゆる平等、公平、そして人権ということを担われている法務省でございますので、この商法部会の答申の中に女性の意見が実質的には余り反映されてないという中でこれが決定されていくわけですけれども、そういうことを含めて、大変前置きが長くなりましたけれども、法務大臣に一言お言葉をいただきたいと思います。
#145
○国務大臣(長谷川信君) 今委員お話しの女性が政府の各審議会に参画する必要性につきましては、法務省としても十分その重要性を認識いたしております。このような趣旨から本年三月十四日付で御婦人の審議会委員一名を登用したところでありますが、今お話しのとおり一名だとやはり何というか余りにもバランスを失しておりますので、必ずとりあえずもう一名くらいふやすようにお約束をいたします。実現をいたすようにやります。
 以上であります。
#146
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 時間もなくなってまいりましたので、間をちょっと飛ばさせていただくことになりますけれども、法務省に今の審議会につきましての重要性を再確認していただきます意味で、設置の目的それから意義、行政組織上の位置づけはどのようになっておりますか、念のために短くて結構でございますのでお願いいたします。
#147
○政府委員(濱崎恭生君) 法制審議会は法務大臣の諮問に応じまして民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議をすることを目的とする機関、すなわち法務大臣の諮問機関でございます。その組織法上の位置づけでございますが、法令の根拠といたしましては国家行政組織法第八条におきまして、重要事項に関する調査審議等の事務をつかさどらせるための合議制の機関として審議会等を置くことができるということになっておりますが、これを受けまして法務省組織令の規定によりまして法制審議会というものが設けられているわけでございます。
 なお、法制審議会に関します必要な事項は別に政令で定めるということになっておりまして、その規定といたしまして法制審議会令というものがございます。具体的には法制審議会におきましては民事法、刑事法等法務省の所管いたします重要な法律の制定、改正につきまして法制審議会の議を経て、その答申を踏まえて立案するという運用が行われているところでございます。
#148
○紀平悌子君 私も法制審議会は、いろいろな審議会がございますけれども、非常に重要な審議会の一つというふうに考えております。その大変重要な法制審議会が要綱を答申としてお出しになったわけなのですけれども、今、国会で私ども審議しております商法の一部改正の法案との間に、一般債権者の保護そのほかかなり隔たりがある点があるように私は思います。その点を法制審の委員の中では答申後、要綱等とそれから改正案についての対比につき何か御意見が交わされておりますでしょうか。
 時間がございませんので続けさせていただきますけれども、今回の商法改正案が法の至上の命題とする実効性というかこれを目指しておりますが、ちょっとその点に不十分な点があるとこもごも委員の御指摘がありましたところを考えますと、今後の段階的な法改正のワンステップということでございますので、それはそれなりにそう思いますけれども、改正目的との内容の整合性を欠くという点で、この法制審に対する責任というか、あるいは今後法制審との間での御対応をしかとお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
#149
○政府委員(清水湛君) 法制審議会の答申をいただいたわけでございますが、今回の改正案が法制審議会の答申より後退しておる、こういうことについての現在の法制審議会の対応はどうかということでございますが、私どもこのような後退した法案を出したことについて、法制審議会の委員の先生方といろいろ意見を交わすという機会はいまだ持ってはおりませんけれども、答申を尊重して答申どおりの法案を出すということは私どもに課せられた本来当然の責務であるというふうに考えております。したがいまして、答申からダウンした法案を提出することになったということにつきましては、法制審議会に対する関係で大変私どもは申しわけないというふうに考えておるところでございます。このことについて法制審議会の先生方がどのように思われるかということについてはまだ私ども承知いたしておりませんが、とにかく私どもといたしましては法制審議会に対しては申しわけないことだというふうに思っております。
 しかしながら、答申を受けまして具体的な法案をつくる過程の中で、関係省庁、関係団体等と十分に意見を交換して、そして中小企業団体等の御意見あるいはその実情等も踏まえ、現時点におけるいわばベストの案としてこのような法案を提出させていただいたというふうに私どもは考えているわけでございまして、そういうことについては御理解をしていただけるのかなと、これはちょっと甘えた感情かもしれませんけれども、そんな気もしていないわけではございませんが、とにかく答申から落とされた事項につきましてはできるだけ早い時期に関係方面の理解を深めまして改正案の形で国会に提案をさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
#150
○紀平悌子君 終わります。ありがとうございました。
#151
○橋本敦君 私は、きょうは今次の商法改正問題に関連をしまして、今回の改正の内容がこれまで
の商法改正の一連の流れの中でどういう位置づけにあるのかということから出発をして質問をしたいと思います。
 そういうこれまでの流れの方向を明らかにする上で、国会の衆参で行われました商法改正に関連をする附帯決議というのは、国会における公式の意思表明としても国民の意見を代表する重要なものとしてこれは受け取ってもらわなければならぬと思います。附帯決議についてそういう重要なものであるとして法務省としては当然受け取るという認識だと思いますが、この点は間違いございませんね。
#152
○政府委員(清水湛君) 国会の附帯決議は、当然のことながら私ども最大限に尊重いたしまして、附帯決議の趣旨に沿って直ちに行動を起こしておるということでございます。
#153
○橋本敦君 昭和四十八年七月三日、第七十一国会で衆議院で付されました附帯決議の第一項では、「会社の社会的責任、大小会社の区別、株主総会のあり方、取締役会の構成及び一株の額面金額等について所要の改正を行なうこと。」という一項が基本方向に関する問題として掲げられました。さらにその後、九十四国会、昭和五十六年五月十三日、衆議院における附帯決議では、その十三項で「今後の商法改正に当たつては、企業の社会的責任、企業の結合・合併・分割、中小企業に適切な規定の新設、株式相互保有等について、経済社会の進展に即応した検討を行うこと。」という附帯決議が付されました。ここに言われている主要な柱の内容の一つは、企業の社会的責任、これをはっきりさせよう、そして中小企業には適切な規定の新設によって簡素合理的な運営を図っていこうということが主な内容になるわけであります。
 この趣旨が、昭和四十九年の参議院の附帯決議では私は一層明白に規定されたように理解をしております。参議院の附帯決議を見てみますと、「現下の株式会社の実態にかんがみ、小規模の株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り、大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう、」「政府は、すみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること。」、こういうようになっていました。この点は間違いございませんね。
#154
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおりでございます。
#155
○橋本敦君 そこで、今度は資本金の最低額を決めるといったことも出てきて、債権者保護のためだということになっておるわけですが、その問題は後で触れるとして、大企業の放漫経営における巨大な負債による倒産によって多数の国民が迷惑を受けるという事態がこれまでも山陽特殊製鋼その他あったことにかんがみて、むしろ債権者の一層の保護というのは大企業の厳正な業務運営について言われていたことであることは明白であります。中小企業に言われていたのではむしろなかったということが一つは明らかであります。
 この点について後で触れるとして、この附帯決議に関連をしてお尋ねをしたいことは、繰り返し大企業の社会的責任という問題が言われてきた、まずこのことでありますけれども、第二次商法改正では御存じのようにダグラス・グラマン疑獄事件というのが発生をして、緊急に大企業の不正経理の面、これに対する規制をまずやらなくちゃならぬということで議論がされたはずでありますが、その内容はどういう改正となってあらわれたのでしょうか。
#156
○政府委員(清水湛君) 御承知のように、昭和四十九年における商法の改正は会社の計算の厳正を保持するという観点から監査制度の抜本的な改善というところに重点を置かれてされたものと理解いたしております。その際に、監査役の権限とかいろんなものを強化いたしますとともに、一定規模以上の大会社につきましては外部監査と申しますか、公認会計士、監査法人等による会計監査制度を導入いたしたところでございます。
 四十九年のそういう制度の新設の際における監査対象会社というのは資本金五億以上の会社ということでございましたが、五十六年改正におきましてはそれに資本金五億以上または負債総額二百億以上という負債総額基準というようなものを新たにつけ加えまして、外部監査の対象会社の拡大を図ったということが監査制度に関しましては主要な改正点かというふうに承知いたしております。
#157
○橋本敦君 もう少し具体的にその点を考えてみますと、大会社が裏金をつくり巨額のリベートを提供する、ロッキード・丸紅問題はそういった問題を惹起いたしましたが、ダグラス・グラマンでも同じような問題がありました。そこで、そういった問題を会社の厳正な計算と経理公開という面で担保をしていくために、改正としては、会社が無償でした財産上の利益の供与ですね、これについて大会社監査報告規則第七条第一項第二号が定めているわけですが、附属明細書でそういった経理については営業費用のうち販売費及び一般管理費、こういったことの明細に監査役が監査をするについて参考となるように具体的に記載をせよという方向が一つは出されてきたわけであります。
 しかし、実際はこれがどのように活用されているか、あるいはこれに違反した場合に厳しい規制、制裁があるのか、こういうことを考えてみますと、今度のリクルート事件でもそうですが、江副氏の七十億に及ぶ巨額の未公開株の譲渡や店頭公開に関して創業者利益で彼が売り抜けた利益とかいろんなことがあるわけですが、計算書でなかなかそういったことは出てこない。そういう意味で、大会社、大企業に対する経理の公開というのは現行法制で実際は容易でない、形を変えて言うならばほとんど形骸化されている嫌いがあるということはこれは私は否めないと思うのですが、民事局長の御感想はいかがですか。
#158
○政府委員(清水湛君) 商法における会社の計算に対する規制というのは、下は大変小さな、今回は資本金一千万ということになるわけでございますが、一千万以上の株式会社からいわば巨大会社と言うべき大変大きな会社までを対象とするという意味におきましてなかなか焦点を定めにくいというような点が従来から問題とされていたところでございます。少なくとも今回一千万円未満の会社について、商法の規定を議論するたびごとに小さな会社を持ち出していろいろ議論を混乱させるというようなことはなくなると思いますけれども、そういう意味で商法の規制にはおのずからやはり限界があると言わざるを得ないわけでございます。
 もちろん、いわゆる上場会社と申しますか、会社の資金を一般大衆から集めております大規模会社につきましては証券取引法の規制がございまして、有価証券報告書等により相当細かい財務諸表の公開が義務づけられております。これはもう商法よりかある意味においてははるかに詳しい財務諸表の公開義務でございますが、そういうような形で、いわば巨大公開会社については規制がされておるということでございますので、そういう面からも規制による効果というものにも期待すべきであるというふうに思う次第でございます。
#159
○橋本敦君 今局長がおっしゃったように、それにしても商法の面からの規制は現行法制上限界があると言わざるを得ない側面がある。これはもうそのとおりですね。巨額の使途不明金の書類についても幾ら会計監査を厳しくしたところで会社自体が経理公開でそれを明らかにしないということはしばしばあるわけですから、限界があることは明らかです。
 そういう意味で、附帯決議で、大企業を中心とする厳正な業務運営、公正な業務運営、こういう面についてはこれはなかなか容易なことで厳しい規制に踏み込んだ改正というのはできていないわけであります。一方、中小企業に対して、先ほど参議院の決議で明らかにしましたが、大会社とは別個の制度を新設して業務運営の簡素合理化を図る、このことによって我が国の莫大な数の中小企業の活力を経済的にも一層促進もし、そしてま
た、中小企業、小会社らしい便宜で合理的な運営を図るという意味での大小会社の区別をやりながら合理的な規制をするという問題が残るわけですが、それではこの面の成果はどこにあらわれたのであろうか。例えば今次の商法改正で、この附帯決議が言っておるような小規模の会社について「業務運営の簡素合理化」、この点についての改正ほどこかに出ておりますか。
#160
○政府委員(清水湛君) 大規模会社につきまして、その業務運営を厳正、公正ならしめるための法規制をしようといたしますと、おのずから厳しいものが出てくるわけでございまして、そういうものは一方では中小会社には不適当である、こういうことになるわけでございます。そういうようなことから、中小会社向けの法規制と申しますか、中小会社にふさわしい制度をつくるべきだ、こういうことが前から議論されているわけでございます。これは、委員御指摘の参議院あるいは衆議院の附帯決議もその趣旨であろうかと私どもは考えているところでございます。
 昭和五十六年の法改正が主として大会社を対象とするものでございましたが、その後今度は大小会社の区分立法に関する問題点等を公表いたしまして、中小規模の会社にふさわしい法制度は何かというようなことについて、法制審議会では調査、審議に着手いたしたわけでございます。昭和五十九年にこれに関する問題点を公表し、さらには昭和六十一年に商法・有限会社法改正試案という試案を実は発表いたしました。これは大小会社区分立法及び合併に関する問題点につきまして、各方面から寄せられました意見をもとに、これを試案の形でつくり直しまして、さらにこれを対外的に公表し、関係方面の意見を求めるというものでございました。
 この中では、まさに有限会社法を初めとして、中小株式会社についての問題点というものをおよそ当時において考えられる限り列挙いたしまして、関係方面の意見を伺ったわけでございます。例えば、中小株式会社については株式不発行というような制度、現実には株券を発行してない会社がかなりございますので、株式不発行というような制度を正面から認めて、むしろきちんとした法規制をした方がいいのではないかというような御意見も実はあるわけでございますが、そういうような中小株式会社の設立それから取締役会というような制度、監査役制度、株主総会制度等々、すべての問題について試案を発表して意見を求めたわけでございます。ただ、中小株式会社法というようなことを考えますと、今でも商法と現実がかなり乖離しているという事実がありますだけに、それを踏まえた上で合理的な立法をしようといたしますといろんな意見が実に出てまいりまして、なかなか帰一するところを知らないというような面がございます。そういうことのために問題点として指摘され、あるいは試案が示されながら法制審議会において結論が得られなかったという問題があるいはむしろ多いという状況でございます。
 しかしながら、法改正作業に着手して長年月を経ておりますので、現時点でとにかく大方の同意が得られる問題についてとりあえず取りまとめた、そういう点から見ますと、中小会社向けの法制といたしましては、最低資本金制度の導入というのもこれは中小会社法についての一つの制度の導入でございますけれども、例えば株式会社の設立手続だとか、あるいは株式の出資の払い込みの手続だとか、あるいは検査役制度であるとか、そういったものにつきまして主として設立手続を中心として今回の改正案は簡素合理化が図られておるということになるわけでございます。そういう意味で、経営管理機構の問題とか株式制度の問題、株式制度については若干の改正事項が入っておりますけれども、多くの問題はさらに引き続いて検討すべき事項として残されておるという状況でございます。
#161
○橋本敦君 以上お述べになった経過は私も知っておりますが、結局多くの議論があり、法制審で結論を得るに至らないという状況も多くの課題について起こって、要するに結論としては今次の改正では今おっしゃったように一番大きな問題として最低資本金制度、あとは設立の簡素化、こういうことで非常に狭い範囲にならざるを得なかった。これは御答弁のとおり。
 そこで、最低資本金制度というのがこの決議で言っておる趣旨の中小会社の合理的な「業務運営の簡素合理化」の一つかというと、これはそうではないということを私はこれから明らかにしていかなくちゃならない。つまり、今次の改正では、附帯決議で言われた中小会社のための、そのために利益になり、社会的にもその活動が担保されて我が国における経済の基盤、底の広がりの基盤を支えていく中小企業に手厚い、そういった附帯決議が期待したような改正というのは何一つ行われていないということがまさに決議に反する姿として出てきているわけです。
 一面、別の面からお伺いをしてみると一層明らかになると思うんですが、今次改正案の中で大きなウエートを占めるのは、逆に譲渡制限株式についての整理合理化、こういった問題が出てきている。それからまた、配当優先株の発行を容易にする、それから社債の発行も容易になるわけですが、株式の譲渡制限を定めた会社の株主に新株引受権を認める、こういったことがいろいろあります。こういった面の改正は、これはどういう趣旨で今度改正になったのか、簡単で結構ですが、その理由はどういうことですか。
#162
○政府委員(清水湛君) 譲渡制限株式について株主に新株引受権を与えるという趣旨の改正は、これはまさに中小企業、中小株式会社を想定した改正でございます。中小企業におきましてはほとんど株式の譲渡制限をいたしておるわけでございますが、そういうふうに株主の方では株式を譲渡する場合には会社の承認が必要だと言っておきながら、会社が新株を発行する場合には第三者割り当てができるということでは、これは株主の権限が害されますので、そういう閉鎖会社、これは多くは中小企業でございますけれども、そういう会社についての株式制度の問題点として指摘された問題の中からとりあえず急いでやる必要があるというものを今回の改正で取り上げた、こういう趣旨でございます。
 それから無議決権株、優先株で無議決権株の発行を機動的にいたしたというのは、これはある意味においては中小会社とは余り関係のない立法でございます。
 社債についても中小企業は社債というものをほとんど発行するということはございませんので、これは最近の経済情勢等にかんがみまして会社の資金調達の機動化を図る必要がある。特に社債につきましては、我が国のように社債の発行限度を商法で規制をしておるという先進国はもうほとんどないという状況でございまして、これは撤廃してもいいんじゃないかというような意見がかねてから各方面にあるわけでございますけれども、これは現在社債法の全面的な見直しをしておりますので、当面の暫定的な措置として発行額の制限の緩和を図る、こういういわば応急の立法措置でございます。
#163
○橋本敦君 譲渡制限付株式についての整理合理化が中小企業にも大きな関係を持つことはこれは当然ですが、しかし中小企業だけではないという側面もあります。私がこれを列挙したのは、株式に関する今度の改正、それから計算についてお伺いしませんでしたが、計算も含めてですが、要するに資金調達、それから会社の今日の経済体制に即応する資本増加、そういったものについて便宜を図るというような方向での改正が今度なされているという意味で、今局長もおっしゃったように中小企業には直接関係のない、むしろ大企業の要望に基づく側面が強いということが言えるわけですね。
 今おっしゃったように、社債の発行なんというのは中小企業でできるわけもないわけですし、また資本調達ということで、中小企業が株の上場その他で調達できるわけもないわけですし、中小企業にとってはそういうことでは資本調達なんとい
うものはもう本当に縁遠い話なんです。大企業は、今お話ししたように、附帯決議本来が社会的責任として厳しく指摘をした大企業の会社運営の厳正、公正化、それから経理内容の公表、それからさらに不正行為に対して厳しい規制をするというそういう側面、これはなかなか行われない。逆に、今度の改正でも、附帯決議にはないことであったけれども、今おっしゃったように緊急の改正も含めて大企業の今日の資本調達強化の利益に奉仕する方向が出てきている。中小企業は、まさに合理的な小会社にふさわしい業務運営の簡素合理化という面では見るべきものがほとんどなくて、最低資本金制度ということで、これは中小企業にとってはむしろ切り捨てになるという問題が出てきている。ここに私は、今次商法改正の流れ全体の中で国会の附帯決議に違反するというそういう重要な面を持っていることを私は指摘をしたかったわけであります。
 そこで、次に最低資本金制度の問題に話を移していくことになるわけですが、この問題について中小企業の実態をどれだけ調査をなさったのか。また、法務省としては我が国中小企業の実態まで調査するということはちょっと私は不可能ではないかと思うんですが、局長、どうなんでしょうか。
#164
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、法務省としては直接中小企業を調査するというような組織も権限も実は持っておらないわけでございます。しかしながら、従来からもそうでございますけれども、法制審議会でいろんな基本法である民法とか商法とか、そういういわば極めて重要な法律の改正をしようという場合には、関係団体からの代表者、今回のことで申しますと中小企業団体中央会とかあるいは商工会議所、あるいは商工会等の代表者に委員として参加していただくというようなこと、あるいは中小企業を直接行政の対象としております通産省あるいは大蔵省等にも御参加いただくというようなことで、いわば関係者に審議に参加していただくということを当然のことながらいたすわけでございます。
 それとともに、先ほど来申し上げておりますような大小会社区分立法に関する問題点、あるいはこれを受けての商法・有限会社法改正試案というものをほとんどあまねくすべての団体にお送りいたしまして意見を聞く。大学で申しますと法学部のある大学にはすべて、それから裁判所、これは各地方裁判所すべてでございます。それから各弁護士会すべてでございます。それから各地の商工会議所、これもすべてお送りいたしております。それから中小企業の全国団体、その他もろもろの団体にまず問題点をお送りして意見を聞き、その意見に基づいて試案をつくって、さらにそれをお送りして意見を聞きというようなことを繰り返しておるわけでございます。また、その間には中小企業庁とか通産省の方からいろんな実情をお述べいただくというようなことを繰り返しておるわけでございまして、そういうような過程の中で、今回の改正案については中小企業団体もこの程度ならよろしいということで御賛同いただいた、こういうふうに私どもは理解しているわけでございます。
#165
○橋本敦君 そういう中で中小企業団体も御賛同いただいたという答弁は、これは私はいただけませんね。後で指摘をします。
 しかし、実態調査は困難であったが各般の意見は聞けるだけ聞いたという意味で御答弁になったと思いますね。それが手元にございますが、「商事法務」に参事官の皆さんの御努力で法務省民事局参事官室編として各界意見の分析というこういう分厚いものになっているわけですね、これがそれでしょう、まとめが。
#166
○政府委員(清水湛君) 民事局の参事官室で、このように寄せられました意見を詳細に分析いたしてまとめたものを出しているというふうに承知いたしております。
#167
○橋本敦君 その中に、最低資本金制度については中小企業団体その他が、局長がおっしゃったように御賛同いただけたというどころか、逆に消極的なものとして、中小企業家同友会、商工連、商工中金、それから日本倉庫協会、日本新聞協会、税経新人会、婦人税理士連盟等、ここが消極的な意見を出しておるわけですが、これは間違いないでしょう。
#168
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように消極的な意見もございました。積極的な意見も多数ございました。
#169
○橋本敦君 読んでもうわかっています。積極的な方としては、関経連を初めとして経団連、証券業界、いろいろ書いてありますよね。
 あなたのさっきの中小企業団体も御賛同いただいたという答弁は正確ではないという意味で私は指摘をしておりますが、この消極的なものとしてはどういう意見が消極的な意見として出されたのか。それをここにまとめてありますが、要約するとどういう消極的意見が出されたんですか。
#170
○政府委員(清水湛君) ここでまとめております各界意見は、最低資本金を二千万円とするという案についての意見でございまして、例えば、最低資本金制度を設けても倒産防止とか債権者保護には余り役立たないのではないかとか、中小会社の経営者は個人保証を持っているので実際上は経営者の個人保証という形で債権者の保護は図られているから最低資本金制度を導入する必要がないんじゃないかとか、あるいは中小会社の活力を阻害するのではないかというようなもろもろの御意見があったわけでございます。
 二千万についてはそういう意見でございましたが、中小企業庁でも二千万円を前提として各中小企業に対してアンケート調査をしたというような話を私ども聞いているわけでございますが、そういうような議論がされている過程の中で、最終的に今回の改正案で私ども提案させてもらっておりますような一千万円ということであるなら、これは中小企業としてもこの程度の最低資本金はやむを得ない、私の申し上げました御賛同いただいたというのがちょっと語弊があるといたしますならば、一千万円程度ならこれはやむを得ないことだというふうに中小企業の関係者も決断をされた、こういう経過をたどっておるというふうに思うわけでございます。
#171
○橋本敦君 私が聞いた中小企業は一千万円でも困ると、こう言っていますよ。だから、必ずしも一律的にそれは局長言えませんよ。政府関係では通産省その他の意見も聞いた、中小企業庁にも聞いたということですが、一番関係が深いのは中小企業庁でしょうね。その中小企業庁が今次の改正に関連をして財団法人産業研究所に委嘱いたしまして会社法改正問題研究委員会を設置してもらって、そこで検討をした結果、報告書を出してもらっておりますが、局長、これはごらんになっていますね。
#172
○政府委員(清水湛君) 法制審議会の審議資料としてたしか提出していただいたというふうに承知いたしております。
#173
○橋本敦君 その中小企業庁の委嘱をした会社法改正問題研究委員会、これは中小企業に関係の深い経済団体だけじゃなくて、弁護士、公認会計士、税理士、会社法研究者、専門家も含んでおりますが、この研究委員会が出した最低資本金制度の導入に関しての結論というものは、これは賛成ではなかった、消極的意見であったということは間違いないでしょう。
#174
○政府委員(清水湛君) はっきり反対というか、慎重に検討を要するというような趣旨のものであったというふうに理解いたしております。
#175
○橋本敦君 いや、慎重に検討と言いますけれども、中身ははっきり反対の方向ですよ。私の質問時間は二十三分までしかないからこの次にやらざるを得ませんけれども、局長、正確に答弁はやっぱりされた方がいいですよ。
 そういうことですから、最低資本金制度の問題はこの次にやりますけれども、おっしゃるように、一千万に減らしたから合意ができたとか、あるいは賛成を得たとか、附帯決議の方向でこれが中小会社に対する合理的な会社運営の便利な簡素化、合理化を図る規定だということには、これは
とても当たらないと思います。むしろ、私が今お話ししたように、この最低資本金制度を導入したことによって、中小企業の育成、助長どころか、ますますこれを切り捨てるという方向で、この附帯決議に違反する方向が一層明白にされた重大な問題を含んでいるということを指摘せざるを得ません。
 この課題については、次回に最低資本金制度問題について質問をして検討させていただきます。
 きょうはこれで終わります。
#176
○委員長(黒柳明君) 両案に対する審査は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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