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1990/06/20 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第7号
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1990/06/20 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第7号

#1
第118回国会 法務委員会 第7号
平成二年六月二十日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十九日
    辞任         補欠選任
     宇都宮徳馬君     星野 朋市君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         黒柳  明君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                安永 英雄君
                矢原 秀男君
    委 員
                下稲葉耕吉君
                林田悠紀夫君
                山岡 賢次君
                北村 哲男君
                櫻井 規順君
                千葉 景子君
                三重野栄子君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                星野 朋市君
                紀平 悌子君
   政府委員
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   参考人
       神戸学院大学教
       授        河本 一郎君
       日本大学教授   稲田 俊信君
       弁  護  士  家近 正直君
       全国中小企業団
       体中央会常務理
       事        錦織  璋君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、宇都宮徳馬君が委員を辞任され、その補欠として星野朋市君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(黒柳明君) 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、本案につきまして御意見を伺うため、神戸学院大学教授河本一郎先生、日本大学教授稲田俊信先生、弁護士家近正直先生及び全国中小企業団体中央会常務理事錦織璋さん、以上四名の方々に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙の中、本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。心から御礼申し上げます。どうか忌憚のない御意見を吐露していただきまして、本委員会の参考にさせていただければありがたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度順次御意見をお述べいただき、その後各委員の質疑に対してお答えいただく方法で進めていきたいと思います。
 それでは、これより各参考人に順次御意見をお述べいただきたいと存じます。
 初めに、河本参考人にお願いいたします。
#4
○参考人(河本一郎君) 重点的にお話を申し上げたいと思います。
 今回の商法改正法案の第一の柱は、何と申しましても、株式会社につきまして最低資本金額を一千万円にすること及び有限会社の最低資本額を現在の十万円を三百万円に引き上げるということでございますが、これにつきましては私は賛成を申し上げたいと思っております。
 株式会社及び有限会社の法律上の最大の特色は、有限責任ということでございます。つまり、株式会社及び有限会社の法形態を利用して企業を営む者は、利益は収受し、他方、もしその企業が破綻したときにも出資した資本のみを失うだけで、それ以上の責任を負うことはないという非常に大きな利益がございます。このような大きな利益を享受するのには、それ相当のいわば対価を拠出するのが当然と言うべきであろうと考えます。最低資本金額とは、その対価に当たると言っていいかと考えます。
 その際、法律は二つの会社形態を提供しております。比較的大きな企業向けには株式会社を、比較的小さな会社には有限会社をというわけでございます。もっとも、最低資本額が株式会社については一千万円、それから有限会社については三百万円が妥当であるかどうかということは問題でありまして、私は商法部会で決めた二千万円と五百万円というのが国際的比較及び日本の経済の実力から見て妥当であろうと考えておりますが、立法は妥協の産物と言われるところから見まして、今回の法案のように、それぞれ一千万円、三百万円となるのもやむを得ないかと考えております。
 次に、株式会社につきましての最低資本金制度の導入は、殊に私ども研究者の立場から見まして、会社形態の乱用を防止してその利用状態の正常化に大いに役立つというふうに考えております。我が国で株式会社が百二十万もあるというのは、国際的に見ましてもこれは大変異常でございます。この原因は、一般に法人になる方が個人企業であるよりも節税ができるということと、同じ法人になるのなら有限会社より株式会社の方が社会的信用がありそうだし、しかも、昭和五十六年改正以前は一株五百円で七人以上の発起人、結局三千五百円、つまり、当時有限会社の最低資本金は十万円であったのに、それよりも低い資本で株式会社がつくれるということであって、どっと株式会社になだれ込んだんではないかと思われます。現在は一株が最低金額五万円となっておりますから三十五万となっておりますが、ここのバーが低いためにどっと株式会社に流れ込んだ、こういうふうに考えております。これは会社の利用形態の方法としては乱れてしまっていると言うほかはないと考えます。
 今回の改正によりまして株式会社の最低資本金を一千万円とし、有限会社の資本金を三百万円に引き上げることによりまして、確かに株式会社の中にはその資本を一千万円にすることができず有限会社に組織を変更しなければならないというところも出てこようかと思います。しかし、以前とは異なりまして、現在、有限会社という法形態につきましての社会的認識は大きく変わってきておると思います。その証拠に、最近の設立会社数は株式会社より有限会社の方が多くなっております。平成元年で株式会社は六万三千、有限会社は十万四千、この数字を見ましても、有限会社に対する社会的な偏見はなくなってきておると思います。しかも、いずれも法人でありますから、税金
の点では株式会社と有限会社とで差はないわけであります。そうだといたしますと、今回の改正によりまして、資本金を一千万円に上げられない現在の株式会社、あるいは上げようという余り必要を感じない株式会社が有限会社に組織変更するということにつきましては、私もそれほど大きな抵抗はないのではないかと考えております。したがいまして、私ども主として法律制度というものを研究しております立場から言いまして、今回の改正によりまして会社形態の利用状態が純化されるあるいは正常化されるということが実現できる、これを非常に強く希望しておる次第でございます。
 もちろん、そうはいいましても既存の株式会社が増資をして所定の資本額に達することを容易にするということに商法の立場からも少しでも助力しなければなりません。それに有効な方法といたしましては、毎期の利益の一部を資本に組み入れていく、これが今後五年、施行日を考えますとざっと六年ございましょうか、その間に毎期の利益の一部を資本に組み入れていくことができるというようになれば一番いい、こう考えます。もっとも、それにつきましては現在だって商法の二百九十三条ノ二で株式配当という規定がございます。しかし、この条文は、現金配当をしてそれを新株の払い込みに充当した、こう解釈されても仕方がないような条文になっております。そのことが税当局によってみなし配当として課税される理論的根拠にもなっているわけでございます。
 今回の改正は、この二百九十三条ノ二を根本的につくりかえまして、これは単に利益の資本組み入れと定めるにとどめまして、その後の株式の発行は株式分割の一方法と定めることにいたしました。そうすることによって、一たん現金配当してそれを新株の払い込みに充てるんだといったような理論が成立するのをなくするように、まず商法の方で体制を固めようということでございます。このように、まず商法の方の規制の規定のあり方を固めまして、その上で大蔵省の方へ働きかける、こういうふうにするのが一番順序であろうかと考えております。
 なお、ここで特に申し上げておきたいことは、今言いましたように株式配当について課税をしているのは、実は国際的に見ましても非常に異例だということであります。米国では一九二〇年の最高裁の判例によりまして、それからフランスでは一九三〇年までに既にもう決まった解釈論によりまして、それからドイツでは一九五九年の特別法によって、私法上も税法上も株式配当は配当でない、これは単なる株式の分割であるということで、みなし配当というような形で税金かけることができない。これは古くから私ども学者の一部では日本のこのやり方が極めて国際的に異例である。これは商法にも、今言いましたような条文の上に不適当だと思われるところがあり、それが税法上の取り扱いにも根拠を与えておったということも否めません。
 そこで今回の改正によりまして、利益及び準備金の資本組み入れと新株の発行を完全に切り離すことによりまして、株式配当についての取り扱いを国際的にも通用するものにし、ひいてはこれに課税することをやめてもらうことによって、その結果、健全に企業を経営し、そしてある程度の利益を上げているところであれば、今後所定の期間内に増資をしていくことも容易である、こういう体制に今回の改正法規として移行していくということを非常に強く希望しておる次第でございます。
 今国際的ということを申しましたが、日本の経済は極めて国際化してきておりますが、私どもこの法律制度という面から見ますと、日本にはまだ国際化されてない非常に異常な現象というのが目につきます。先ほど申しました株式会社が極めて数が多い、しかも、そこでの資本金制度というものが各国と比べて極めてこれも異例な状態になっておる、こういう点も今回の改正を機に、極力国際的に通用するようなものになっていってほしいとこういうふうに強く希望しております。
 あと、また御質問に応じまして補足させていただきたいと思います。
#5
○委員長(黒柳明君) どうもありがとうございました。
 次に、稲田参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(稲田俊信君) 稲田でございます。
 ただいま河本先生から中小企業と小規模会社を中心としたお話がございました。実は私もこの最低資本金ということを前提としてきょうここでお話ししたいと思いまして、一応自分なりの原稿をつくってまいりましたので、これを中心としてお話しさせていただきます。
 まず、今回の改正の中心というのは、ただいま申しましたように小規模会社のいわゆる法制度の確立という面と整備という面にあるということは、もう御承知のとおりであろうかと思います。この場合に一番出てまいりましたのが、やはりこの最低資本金制度であろうということができると思います。ただいま河本先生の方からもお話がありましたように、一体いかなる最低資本金制度、最低資本額というものが妥当であるかということが一番問題にされているわけであります。
 ここで考えなければならない事柄は、この最低資本金というものが一体本質は何なのか、しばしばこの資本金というものをいわゆる大企業で使われる、あるいは会計学において使われるようないわゆる資本金というふうにとらえ、こういうとらえ方でいきますと、債権者保護という面が非常に前面に出てくる。これはいわばその資本金の額に当たる財産を常に企業は確保しなければならない、こういうところから申しますと、会社債権者、いわばその会社と取引する者についての担保的な効力をこれによって果たされる、こういう形で説かれているわけであります。実は、商法の規定における資本というのは、まさにこういうような債権者保護ということを前提としたところの金額でとらえられている、こういうふうに言うことができるかと思います。
 これに反して、実は有限会社法におけるところの資本というものの考え方というのは、実は御承知のように、これは十三年に有限会社法が制定されたわけでございますが、この第九条に、出資というものは一万円を下ってはならないと、こういう形で制定の段階から最低一万円を出資しなさい、こういう形で有限会社法はでき上がってきたわけでございます。これを考えますと、有限会社というものを利用するには少なくとも昭和十三年当時におきまして一万円出資しなければならない、これはもう最低の金額として要求されるもの。当時の商法ではこういうことはございませんで、むしろ一株が五十円、それで七人の発起人があればできる、こういう形態ででき上がってきたわけですから、ここではもう最低資本金という最低の出資額というものは全く規定されていなかった。
 このように考えていきますと、有限会社法におけるところの最低出資額一万円というのは一体どういう意味を持っているか、これは今河本先生もお話がありましたように、まさに有限会社を利用するための対価、いわば有限責任会社の制度を利用して企業活動を行う、そうした場合に自己の出資においてのみ責任を負えば足りる、こういう形ででき上がっている企業を、これを利用するための対価として最低出資しなければならない、こういう利用に対する、砕けた言葉で言いますと使用料というような形で最低資本金額というものが初めから設定されていた、こういうふうに考えることができると思います。
 さて、実は私、資本金が一万円というものが現在の物価に直した場合にどのぐらいになるのかということをいろいろな試算で、いろいろな方面で検討されているんですけれども、一つの例証といたしまして十三年の有限会社法ができ上がった当時の有限会社法の解説書がございました。これは大橋先生がお書きになった解説書なんですけれども、その定価が一円二十銭であります。ほぼその同じ本を考えてみますと、大体二千円前後というのが現在の価格ではなかろうか。これを一円二十
銭で割ってみますと千七百、千六百六十六と、こういう数字が出てくるわけですけれども、何か十三年当時の一万円というのは現在の千七百万円ぐらいに当たるのかなと、こんな感じがするわけです。十三年当時は非常に高い金額をもちまして制定されたんだなということをその本から換算いたしまして考えたわけであります。
 さて、そこで問題となりますのは、このような千七百万というような最低資本金額を有限会社法に現在課すということは一体どうなのかという問題が出てくるわけでありますけれども、御承知のように今度の改正案は、この最低資本金額につきまして、株式会社は一千万、それから有限会社については三百万。本来最低資本金額というものがなかった株式会社においてこのような一千万円というものを最低資本金として掲げなければならなかったということは、これは現状から見ていきますと、非常に異常と思えるほどのたくさんの企業形態が株式組織をもって経営されるに至った、これはいわば最低資本金額が有限会社と比べてなかったということを利用してこの株式制度形態をとってきた。実はこの結果いろいろな弊害が出てくる。例えば株式会社でありますと、株式を発行してこれは少なくとも市場に乗せてその中で資本を調達していくという本来の目的があったはずでありますけれども、これが小さい企業に利用されるともう初めから株式などというような観念すらない企業がたくさん出てきてしまった。こういう中小企業と小規模企業が株式というものを利用する時点になるならば、これについてもいわゆる社員の有限責任というものを利用するためには、やはりここに最低資本金制度というものを取り入れなければならない、いわば有限責任形態をとって企業活動をやる限りにおいては最低ここに出資しなければならない金額というものを株式会社にも設定しなければならない、こういうことになったんではなかろうか、こういうふうに推測されます。まさに現在のような株式会社制度というものが存在する限りにおいては、依然として有限会社のみに最低資本金制度を設けただけでは足らず、やはり株式会社に設けない限りにおいては異常な数が出てきて、本来的な会社制度というものとどうもかけ離れたものが出てきてしまう、こういうようなところから株式会社にも最低資本金制度というものをつくらなければならなくなってきた、こういうふうに考えることができるかと思います。
 さて、そうした場合に、同じ有限責任制度をとる会社でありながら、片方は一千万円、片方は三百万というのは一体どうして出てくるのか、こういう疑問がわいてくるわけですけれども、これは株式会社というものは本来多くの人々から集めてきた資本というものを前提として経営される、いわば株式会社の方が大きい組織形態である、それに対して有限会社の方は少々小規模的な、株式と比べるならば小規模的なもの、こういう我々の持っているところの既存の観念というものが、いわばこれは社会感覚と言ってよろしいかと思いますけれども、そういう感覚が前提として存在するのでこのような一千万、三百万というような形で分かれてきている。これは河本先生から既に御指摘があったわけですけれども、最近は御承知のように一億円近い有限会社が設立されるようになってきて、その規模的な面でも有限会社と株式会社の観念というものが実務界ではだんだん解消されてきているというふうに考えてもいいんではないか、こういう現象が最近起こりつつあります。しかし、これはまだ固定化したものではございません。こういうようなところから、大小の区分というものが感覚的にも社会感覚にある限りにおきましては、ここにやはり一定の差を設けたところの最低資本金制度というものを取り入れなければならないということになろうかと思います。
 さてそこで、一千万、三百万というのが現在の経済観念からいって妥当であるかどうか、今河本先生は国際的と言われましたけれども、こういう国際的に見ても妥当かどうかという問題がございます。しかし、現実に存在する企業というものを今回の改正のように同時に同じ資本金を埋め合わせていこうということになりますと、実は既存の会社の経営者が持っている観念というのは新しくつくる企業家と少々違う観念を持っている。 実は私も中小企業庁の改正案に対する意見をまとめるときにお手伝いさせていただいたわけですけれども、その中のいろいろなデータを見ましてもこれが出てまいります。とりわけ出てくるのは、我々は長年低い資本でやってきたけれども、他人には迷惑かけてないんだ、債権者にも支払いを遅滞したこともない、我々は一生懸命努力しているんだ。にもかかわらずここへ来て資本金を高くされるということは、非常に何か悪いことをしていたというような感覚になるんだ。しかも、それが高い金額に置かれた場合には、我々はそのためにまた個人的な資金をつくってここに繰り入れなければならない、こういうような声が出てくるわけであります。
 そうしますと、こういう感覚というのはこれは無視することができない現実の感覚でございますので、株式会社というものに対する大規模であるということの観念というものを大事にするとするならば、ここに一定の金額に対する妥協的なものを見つけ出さなければならない。最初に出されたのが二千万であり、現在かけられているのは一千万ということは、少なくとも中小企業庁の委託に基づく調査などを見てもわかりますように、多くの企業者がほぼ達成できるであろうということの予測、これは六〇%前後から七〇%にわたっているわけですが、こういう予測のもとに一千万円であるならば努力してまあこれを達成することができるであろう、こういうようなところで株式会社の一千万というのが出てきた。これと比較いたしますと、有限会社というものが三百万円になったのも、こういう金額が一応妥当かなというように私は思います。
 少なくともこのように設定した限りにおいては、既存の株式会社もまた新設する株式会社もそのような資本金額をもってぜひ達成していただきたい。また、達成するに当たりましては、いろいろな法制度の面ではもちろんのこと、やはりこれに対する税金という面でもこれを援助するという形で中小企業が適応できるような法というものをつくり、それを遵守するというような方向にぜひ向けていただきたい、こういうふうに私は思います。
 なお、そのほか幾つかございますけれども、例えば設立に対する適正化に関する条文等は非常に精緻をきわめたところの条文の改正案が出されておりまして、これらについては別段異論もありません。また、中小小規模会社を前提としたところのいわゆる株式譲渡制限のある会社の株主の支配権の変更を伴わないような保護政策もきめ細かになされている。
 ただ、一点これは問題になりますのは、いわゆる経理の公開に関する問題につきましては、片方では有限責任というものを利用する限りにおきましては経理の公開というものによって自分の財産を明らかにし、適正な形で経営しているということを明らかにするという制度の必要性というものはあるのではないか。いろいろなこれに対する悪用等についての問題もあるかもしれませんけれども、みずからが適正な規模で適正な方法をとりながらやってくれるならば何らこれを隠す必要はなく、むしろ公開することによって第三者に対しても迷惑を自分たちはかけないということを明らかにしていただきたい。 この意味におきまして経理の公開についても早急に改正の方向でひとつ検討していただきたい、こういうふうに思われます。
#7
○委員長(黒柳明君) どうもありがとうございました。
 次に、家近参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(家近正直君) 家近でございます。
 初めに、日本弁護士連合会の商法改正に対する取り組みについて御説明を申し上げます。
 日弁連では、立法を初め司法制度全般の検討のために司法制度調査会という常置委員会を設けておりますが、その委員会の中に、昭和四十九年以降商法特別部会というのを常設いたしまして、継続して商法改正について検討を加えているわけでございます。そして、法務省の問題点とか試案の公表に際しましては、その都度各単位弁護士会の意見を聴取いたしまして、日弁連理事会の決議でもって意見書を提出いたしております。またそのほかにも、法制審議会の審議に対応いたしまして、必要に応じ随時意見を述べてきております。
 ところで、今回の改正案につきましては、私ども慎重に検討いたしました結果、最低資本金その他全般に対しまして特に異論はないということで賛成をしているものでございます。ここでは時間の関係で二、三の点に触れることといたします。
 御承知のように、我が国の会社は、数字の上からごらんいただきますと圧倒的に中小企業が多いわけでございます。そして、これらの中小企業では、一般に法律、つまり会社法が守られていないというふうに言われているわけでございます。私自身の実務を通じましての実感もまたそのとおりでございます。ところが、考えてみますとこれは当然のことでございまして、一口に株式会社といいましても、上は資本金が数百億円ないし数千億円、株主数が数万人ないし数十万人という会社がございます。一方において、資本金数十万円、株主数数人という会社も存在するわけでございます。これらを同じ株式会社として、同じ法律で規制をしておるというところにそもそも無理があるわけでございます。本来は、会社の規模や内容によって別々の法律をつくるか、一つの法律の中で会社の規模、内容ごとに区分するのが当然でございます。
 もちろん、この点については過去何回かの法改正で若干是正されてまいりました。本来、今回の改正はその集大成として審議を続けられてきたわけでございますが、残念ながら現時点では完結した形での改正案ができなかったということについては遺憾に思うわけでございます。しかしながら、私どもは今回の改正がこのような方向づけのきっかけになる、かように位置づけて評価しておるわけでございます。
 私は、三十年近い弁護士業務の中で、特に商事関係に関心を持って過ごしてまいりました。その中で、中小会社に絡む紛争、事件の多くは、会社法の事件というよりは家庭内、親族間の家事事件、本来家庭裁判所で処理されなければならないような事件が大多数であるというのが実感でございます。そして、紛争の多くは株主権の帰属、つまり本当の株主はだれかというようなことや、会社法上の諸手続の瑕疵、違反を理由に会社法上の行為の効力を争うものでございます。例えば、同族の中小企業におきまして、株式は通常家族、親族、知人等の名義に分散いたしております。そのような会社が、例えばオーナー社長が死亡した場合、残された相続人の中で相続争いが起こりますと、必ず株式の帰属、つまり株式はだれのものかというようなことをめぐって争いが生ずるわけでございます。
 現在、御承知のように株式会社の設立には発起人七名を要するとなっております。通常、適当に家族、親族、知人等の名前をかりまして、名義人だけの発起人を七人そろえて設立手続を済ませるわけでございます。大会社が一〇〇%小会社をつくります場合には、設立後直ちに最終の一人株主に株式を集中させまして、形式と実体を合わせておくわけでございます。しかし、例えば個人の法人成りのごときは、株券や株主名簿なども整備しておらないのが通例でございますので、一たん紛争が起こりますと名義上の株主との間で厄介な問題が生ずるわけでございます。その原因は、もとをさかのぼりますと、株式会社の設立に七人の発起人を要するというところに大きな原因もあるわけでございます。今回発起人は一人でもよい、現行法の七人でなくてもよいというような改正は、このような法律と実態との乖離を是正しようというもので評価できるわけでございます。この点は今回の改正の一つの柱でございます小規模会社にふさわしい法制度の整備ということの具体的な一例でございますが、今後この面での改正を推進していただきたいわけでございます。
 最低資本金について一言申し述べます。
 最低資本金の創設及び金額の定め方についていろいろの議論があるとお聞きいたしております。日弁連では、先ほども申しましたように、当初の検討段階から終始この点については賛成の態度を表明いたしております。言うまでもないことでございますが、会社は個人から独立して社員ないし株主の出資した資産と経営管理機構をもって運営される法人であります。会社を設立するには当然に人と物が必要でございます。物つまり資本は、会社の経済活動の源でございます。しかも、会社は個人とは別の人格でございますから、財産的にも会社財産と個人財産は峻別されなければなりません。
 ところが、多くの中小企業の実態はそうではないと思います。往々にして個人と会社の資産、負債が混同したり、場合によれば法人格の使い分け、つまり乱用と言われる状態を引き起こしておるわけでございまして、それが多くの複雑な、かつ困難な問題を発生させております。いわゆる法人格否認の法理とか取締役の第三者に対する責任とか、こういう問題はそもそもそのような土壌から発生してまいっておるのでございます。しかもその原因の多くは、本来会社の営業活動を賄うに足りる会社の資産、信用がないからでございます。現在の経済実勢で三百万や五百万のお金で立派に会社が経営できるかということは、ほとんど恐らくの方はとても考えられないことではないかと思うわけでございます。
 ところが、現実に資本金がそれ以下の会社が多数存在しておるわけでございます。それは、結局経営者の個人の財産、個人の信用で賄っておるわけでございます。つまり、会社の基本財産が過小であるために、会社の営業活動のすべてを会社独自の財産、信用だけでは賄えないからでございます。そこでやむを得ず個人の財産や信用でそれを補っておるわけでございます。個人保証とか個人の担保提供というのはまさにそのあらわれでございます。本来、会社の営業活動は会社独自の財産、信用の範囲にとどまるのが理想であります。それでこそ有限責任が全うできるわけでございます。中小企業の実情は決して有限責任ではないと思います。有限責任と無限責任が合体しておるのではないかというふうにも思われるわけでございます。むしろ中小企業が無限責任であればそれなりの筋も通るわけでございますが、法形式としては有限責任を選択されているというところにいろいろややこしい問題が出てまいります。
 例えば、個人保証や担保提供をいたしておりますと、たとえ有限責任の会社であっても個人までいわゆる丸裸になる危険性がございます。また、都合のよいときは個人と会社の使い分けをして有限責任でそれを逃げるということにもなります。そのことは結局債権者に迷惑をかける、こういうことになるわけでございます。結局、有限責任というのは会社の営業活動に十分なだけの出資をもとに個人の信用、資産から独立した会社の資産、信用をつくり上げるということがそもそもの基本ではないかと考えるわけでございます。その意味で、会社の基盤になる最低資本金制度は必要であり、有用であると考えるわけでございます。もちろん、今回の改正でこれらの問題点がすべて解決するわけではございません。しかし、まずもってその方向づけをして第一歩を踏み出す、この点に意義を認め評価するものでございます。
 最低資本金制度そのものの法的意味としては、会社に常に留保すべき純財産ということでございますが、実際にはそれによって会社の財産的基盤、存立の基盤が確立することになります。もちろん会社の経営基盤の確立のためには最低資本金だけではなくて財務体質、内容の健全化、監査体制の確立あるいはその内容の開示ということが必要であることは御承知のとおりかと思いますが、今回そういった点の改正が見送られてしまったわけでございますが、少なくとも最低資本金制度だけはぜひ実現していただきたいと念願するわけでございます。最低資本金制度は会社債権者の保護につながることはもちろんでございますが、何よりもまず中小企業そのものの存立の基盤になります。そしてそのことは中小企業に勤務する従業員のためでもあります。 さらには中小企業の取引先、相手方になる他の中小企業の利益にも結びつくのではないかと考えております。
 なお、日弁連といたしましては、今回の最低資本金制度に伴う既存会社の増資手続に関し税法上の優遇措置について十分配慮してほしいという意見を表明しておることを付言いたしまして、私の意見陳述といたします。
#9
○委員長(黒柳明君) ありがとうございました。
 次に、錦織参考人にお願いいたします。
#10
○参考人(錦織璋君) 錦織でございます。
 私は、中小企業の立場から、中小企業が直接影響を受ける事項に限りまして意見を申し上げたいと思います。
 初めに、中小企業の会社形態活用の実態と、これに関する基本的認識について申し上げたいと思います。
 個人事業者をも含めた我が国全体の事業所数は、昭和六十一年の事業所統計調査によれば、民営、第二次・三次産業では六百四十九万事業所であり、そのうち中小企業基本法による従業者規模の定義で見た中小企業の数は九九・三%に当たる六百四十五万事業所となっております。このように我が国の事業所数の大宗を占め、日本経済の発展を支えてきた圧倒的多数の中小企業の中にあって、会社形態を選択してその事業活動を営んでいるものは、六十一年事業所統計によれば百二十九万企業、二百七万事業所となっております。
 さて、日本におけるこのような現実の姿を、日本経済の成長率やビジネスチャンスの多さ、また国民の起業家精神の高さなどに求めるのか、または税務対策などの付随的効果を期待したものとして判断するのかは議論が分かれるところでありますが、ともあれ、中小企業の大多数が会社になっているわけではなく、したがって会社形態を選択している中小企業は厳しい経済環境の中にあって、企業経営組織の近代化を図り、対外的信用を高め、さらに大きく飛躍しようとする意欲ある先進的部分であると見ることができます。
 本年の中小企業白書が指摘するように、近年、開業率の低下、商店数の減少という憂慮すべき事態が進行する中にあって、中小企業全体の健全な振興、発展を図るという我が国産業政策、特に中小企業政策の観点からすれば、このような会社形態によって意欲的に事業活動を行っていこうとするいわば中小企業全体の牽引車たる役割を担っている企業に対しては、その旺盛な活力をそぐような障害は設けられるべきではないと考えております。
 したがって、我が国の経済取引、企業活動の基本法たる商法といえども、その改正によってこれら意欲的な中小会社の活力をそぐおそれのある過度の規制を加えることは望ましくないものと認識しております。すなわち、経済、社会の実勢に合わせ、これを後見的に見守ることが商法の立場であり、反社会的な活動を除けば経済活動はある程度当事者の自由にゆだねるという基本的な考え方に立って行われるべきであると考えております。
 もとより、株式会社、有限会社のような物的会社にあっては、株主、社員の責任は有限であり、基本的には限定された責任しか負わないというそれなりのメリットのある会社形態を選択した以上、有限責任の会社制度の根幹を支える原則として、責任財産の確保、会社の計算の適正化及びその開示については、これが励行されるよう経営者としては法の遵守に努めなければなりません。我々中小企業団体としても、このたびの改正を機会に、今後、会社制度の理念、あり方について認識を深めるよう努力してまいりたいと考えております。
 次に、本法案に対する基本的な考え方について申し上げてみたいと思います。
 このたびの法改正が、会社の実情に適合する法制度を整備するため一人会社の設立を認め、発起設立における検査役の調査を廃止するとともに、現物出資について検査役の省略を認めるなど手続の簡素化等が打ち出されていることに対しましては、基本的にこれに賛成するものであります。しかし、改正案のうち、最低資本金制度についてはやむを得ないものと認識しておりますものの、ややもすると中小会社は株式会社にふさわしくないものとして他の会社に移行させるかまたは切り捨てようとする面がうかがえることは否定できず、この点に中小企業は強い不安を持っております。
 我々は、昭和六十一年五月の法務省改正試案のうち、中小企業に最も関係の深い五項目についてその是正を求めてまいりました。
 すなわち、第一に、最低資本金については、株式会社に二千万円の最低資本金制度を導入し、有限会社の最低資本金額を五百万円に引き上げるという原案に対して、我々は中小企業の現状から見て、最低資本金額は株式会社一千万円、有限会社三百万円とし、五年以上の猶予期間を設けるとともに、増資円滑化のための税制上の特別措置を講じるよう強く要望をいたしました。第二に、貸借対照表等の登記所における公開については、その社会的有用性から見て中小企業にまで義務づけることには反対をいたしました。中小企業の場合、取引範囲も限定されておりますので、現行商法二百八十二条による株主、債権者への開示で十分であると考えております。第三に、会計調査人による調査、会計専門家による指導の義務づけについては、その実効性について疑問があり、第四に、取締役の責任強化並びに支配株主、社員の責任強化等については、中小会社を差別するものとして反対をいたしました。
 最終的には、最低資本金の導入、引き上ぎを除いて他の三項目は本改正案から削除されており、このことは評価をいたしております。しかし、これらの事項が法制審議会において今後さらに検討される場合には、理念に偏りかつ形骸化することのない規定を検討するよう慎重な対応を求めたいと希望いたしております。
 さて、最低資本金制度は、会社を設立しようとする者が最初にクリアしなければならないハードルであり、これまでになかった作用を中小企業界や新規参入者に及ぼすものと考えております。近年はややもすると小規模な有限責任会社の存在自体を過剰な存在としてこれを否定しようとする一部の見解もありますが、個人企業で事業活動を継続していくか、株式会社または有限会社を設立して事業活動を展開していくかどうかは、基本的には当事者の自主的かつ自由な判断によるべきものであると考えます。有限責任の乱用や放漫経営は資本の大小に起因するものではなく、経営者の経営姿勢や能力にかかわるものであると確信をいたしております。これは、企業倒産の状況を見ても資本金規模と倒産との間に直接の相関関係が見られないことからも明らかであります。無論、資本金規模に比べて不相応な受信を得ている場合には、当然のことながら倒産した際にはその危険性は大きくなりますが、経営内容に見合う取引をしている限りは債権者に危険を及ぼすおそれは少ないものと考えます。むしろ、中小会社では経営者個人の手腕、人柄が信用のバロメーターであり、資本金額よりも重視されているのが経済社会では一般であり、小資本会社でも健全な企業経営を行っている会社が大半であることを認識すべきであると考えます。
 かかる見地から、法制審議会答申に比べ本法案は既設と新設との区別をなくし、最低資本金額を一律株式会社一千万円、有限会社三百万円とし、あわせて五年間の猶予期間が設けられたことについてはおおむね実体経済に既したものと考えております。我々としても、最低資本金の法制化は中小企業にとって大きな負担でありますが、他方、小規模会社の資本充実によりその経営体質の強化に寄与することについては理解をいたしております。しかし、急速かつ高額な最低資本金の導入は多くの小規模会社に混乱を招くことになることを考え現実的な対応を求めてきたことは、ぜひとも御理解をいただきたいと考えます。
 さて、このたびの最低資本金の法制化に伴い、
法定最低資本金額に満たない株式会社は約八十万社、有限会社で約七十万社と言われる膨大な数の既存会社が強制的に増資や組織変更等を余儀なくされることになります。また他方、有限責任形態で新たにベンチャービジネスなどが会社を設立することが困難なものとなったり、有限責任形態での企業活動が大きく制約されるおそれを懸念いたしております。したがって、法改正に伴って最低資本金額に満たない多くの既存会社が増資、組織変更等の措置を講じようとする場合には、税制上の特別措置が実現されるよう特段の配慮を望むものであり、また同時に、新規に起業化する際に何らかのこれを支援する中小企業対策を講じるよう要望しておきたいと存じます。
 最後に、今回の改正で取締役会の決議方法の簡素化、総会の招集手続、決議方法の簡略化、総会における議決権行使の方法、株券の不発行など管理運営面での法改正が先送りとなりましたが、これら会社運営の簡素合理化が一層促進する方向での改正については、これが速やかに行われるよう期待して、私の意見を終わります。
#11
○委員長(黒柳明君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○下稲葉耕吉君 本日は、大変お忙しい中を四人の参考人の方々から貴重な御意見を承りました。心からまず御礼申し上げます。
 承りますところによりますと、河本参考人、家近参考人、錦織参考人は法制審の商法部会の委員をなさっておられるというふうに伺っておりますが、それでよろしゅうございますか。――わかりました。
 それでは、まず最初に河本参考人にお伺いいたしたいわけでございますが、法制審の商法部会の答申が出ているわけでございます。そしてその答申をもとにいたしまして今度の法案ができた。先ほど来お話に出ております最低資本金制度の導入の問題に関連いたしましても、二千万円というものが一千万円、有限会社についても同じように柔軟な扱い、あるいは貸借対照表の提出の問題等々、答申の内容と現実の法案と違っているわけでございますが、その辺につきましての参考人の御意見をお伺いいたしたいと思います。
#13
○参考人(河本一郎君) 私ども部会の案作成に関与いたしました者といたしましては、確かに今おっしゃいましたような点での後退あるいは脱落ということは大変残念に思っておりますが、しかし例えば先ほど来四参考人がすべて触れられましたような最低資本金制度の導入、これはもう本当に、戦後、商法の改正問題が出てくるたびに、私どもは何とか、私どもの先輩の先生方も常に導入に努力されたようでありますが、常に挫折した。それが今回できたということは、これが最大の最後に残ったポイントじゃないか。そうしますと、これすらもいろんな事情から金額を引き下げられたのではありますが、とにかくここを中心にしてまず商法の改正の第一歩をやっていただこうというためには、ほかに残っておりますような問題まですべて抱き合わせて持っていきますと容易なことではこれは通らないんではないかというふうな予測は、私どもも部会で決まりましたときにはある程度予想は少なくとも私個人はしておりました。
 したがいまして、いろんな事情から、とにかく商法改正のこれはまさに第一歩でありますが、それを通すためにはこうなったのもやむを得なかったであろう、こういうふうには考えております。
#14
○下稲葉耕吉君 家近参考人はいかがでございますか。
#15
○参考人(家近正直君) 私も要綱の段階から改正案のいわゆる調子がダウンした経緯については存じませんけれども、私どもは要綱の内容に賛成でございまして、そういう意味では現在の改正案は一歩後退、こういうふうに評価いたしております。
#16
○下稲葉耕吉君 錦織参考人はいかがでございますか。
#17
○参考人(錦織璋君) 有限会社あるいは株式会社に有限責任を認めようとする以上、これらの会社にある程度の責任財産が当初から確保されるべきであるという考え方については我々も理解はいたしております。ただ、問題は当初の原案でございます株式会社二千万円、有限会社五百万円では実体経済の中の中小企業の分布等から考えますると余りにも金額が高いということで審議会におきましては反対をいたしてまいりました。 それが原案では一千万円、三百万円ということに相なっているわけでございます。変更の過程につきましては私ども十分承知はいたしておりませんが、その間各政党からも意見をいろいろと徴されましたときには、その点につきましていろいろと意見を申し上げた記憶がございます。
#18
○下稲葉耕吉君 それでは、今問題になりました最低資本金制度の問題についてお伺いいたしてみたいと思います。
 法務省からいただきました資料によりますと、株式会社百二十六万社のうち資本金が一千万円未満の株式会社が八十三万五千社というふうな数字をいただいております。三分の二ぐらいになると思いますけれども、三分の二の株式会社が資本金一千万円未満であって、今回の商法の改正によりまして五年間の猶予期間はあるといたしましても、そういうふうな努力をしなければ株式会社として存在することが難しくなるということであろうと思うのでございます。
 一千万円未満の株式会社、大体どれぐらいが平均的なものかなかなかよくわかりません。今お話しのように非常に数十万円の株式会社からいろいろあるわけでございまして、仮に五百万円の株式会社といたしましても八十三万社ですと四兆円以上の金が動く、四百万円の株式会社ですと六百万円出さぬといかぬわけで、そういうことになりますと五兆円超すぐらいの大変なお金の蓄積というものが期待されるというふうなことになるわけでございまして、中小企業の御意見等を承りますとそれは大変だという御意見もあるわけでございます。
 そこで、片や今度は国際化の問題があろうかと思います。お話がございましたように、これも資料によりますと、アメリカはともかくといたしまして西欧の諸国それから韓国、大体一千万円前後ぐらいの最低資本金の制度というものがあるわけでございます。そういうようなことで、河本参考人の御発言の中でも国際化の問題は時間があればお話ししたいというようなこともございましたけれども、やはりこういうふうな商取引というものはもう今やどんどんどんどん国際化が進んでいるわけでございますので、一国だけのいろいろな事情だけで左右できないような要素もたくさんある。それから、ECの統合なんというのも九二年にあるわけでございますし、そういうふうな問題も含めまして、今回の商法改正からさらに将来を見通していろいろな考え方がそれぞれの方々におありじゃないかと思うんです。
 まず、その辺のところにつきまして河本参考人の御意見を承りたい。
#19
○参考人(河本一郎君) ただいま私が国際的な調整を我が国の会社制度についてもとらねばならぬと申し上げましたことに関連いたしまして御質問があったわけでありますが、まず最低資本金をどこへ持ってくるかということにつきましての一つの手がかりは、国際的にどの辺が平均的なところであるかということがまず手がかりになります。今も先生御指摘のように、アメリカは全然別の法規制体制をとっておりますので最低資本金制度というものはございませんが、それ以外のイギリス、西ドイツ、フランスあるいは隣の韓国等々はいわゆる資本金制度というものによって法律を組み立てているわけであります。もう一々細かい各国の金額は申し上げることを省略いたしますが、先ほどもまとめて申しましたように一応一千万という前後であれば国際的にも通用するんではないか、しかも日本の経済の力から見ましても世
界で十分いけるんじゃないか、こう考えております。
 それから、さらに今後の制度改革におきましてこういう点をどのように考えていくかということでありますが、一つはやはり何といいましても、今回は一応先に見送られておりますが、有限責任をとっておる会社はその計算書類を登記所に公開するということでありますが、これも各国においてはもうかなり、その実施にはもちろん抵抗があるのは現実のようでございますが、しかし、イギリスにおきましても何十万という会社が既にこれを実行しておる、こういうふうに聞いておりますし、西ドイツにおきましてもこれはかなりやっぱり抵抗もあったようでありますが、どんどんこれも実施に移しておるようでございます。こういう意味で日本の企業だけがこの点でブラインドであるということは今後は難しいんではないかというふうに考えております。
 それから、将来残っておりますのは会社の管理組織の面でございますが、ただ、この点になりますとまだ各国ともかなり特殊性を持っております。例えば、我が国等が今後最も競争関係が強くなってくるんではないかと思われる西ドイツにおきましては、これは御承知のように労働者の共同決定という全く我が国では存在しないものがありますので、ここではその管理形態につきましては非常に違った点があって、この点はちょっとECの中でも調整が非常に難しゅうございますが、ましてや我が国の場合はここの比較が難しいと思います。
 それから、今後やっぱり考えていかなきゃならぬのは企業結合の問題、殊に企業はますます国際化していきますとこの面が強くなってきますから、この点の各国との法律の調整をしていかなきゃならぬし、それからまた合併の問題につきましても、これも西ドイツとの比較などは既にやったわけでございますが、今回は大変問題が大きくなりますので一応落としておりますが、そういう点におきましても国際的な調整をしていかなきゃならぬか、こういうふうに思っております。
#20
○下稲葉耕吉君 今の国際化の問題に関連いたしまして、中小企業も大変な問題があるだろうと思うのでございますが、そういうふうな点につきまして錦織参考人の御意見ございましたら、お伺いいたしたいと思います。
#21
○参考人(錦織璋君) このたびの日米構造協議の経過でも判断できますように、やはり商取引あるいは規制等についても国際的な協調性が普遍性を持つようになってきたことはよく承知をいたしております。また、企業法学においても日本が国際的水準から立ちおくれることのないよう努力をしていかなければならないこともよく承知をいたしております。しかし、中小企業では現実的に国内取引が大半でございますし、会社の大半は小規模かつ閉鎖的会社でございますので、中小企業に直ちに理解を求めるということにはかなりの困難があるというふうに考えております。 このたびの最低資本金制度だけではなくディスクロージャーの必要性を含めまして、今後我々も国際的な視点での会社のあり方ということについて勉強をし、同時に関係の構成メンバー等に対して教育をしてまいりたいというように考えております。
#22
○下稲葉耕吉君 今の問題とも関連するわけでございますが、稲田参考人にお伺いいたしたいと思いますが、中小企業法制の整備に当たりまして今後こういうような点を考慮すべきじゃなかろうかというふうな問題、御指摘がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
#23
○参考人(稲田俊信君) 先ほどは最低資本金を中心としてお話ししたわけでありますが、資本金制度を前提としてこの利用関係を明らかにするためには、やはり経理の公開ということをやっていくということによって信用をかち取る必要があるんではなかろうか、いわば中小企業の信用というのはここにかかってくるんではないかというふうに考えております。そういう意味ではぜひ公開の制度というものは整備をしていただきたい、こういうように考えます。
#24
○下稲葉耕吉君 もう一つ大きな問題といたしまして中小企業の実態と法律との乖離の問題がございます。
 政府側の答弁によりますと、株券を発行して正規に手続をとって株主総会をやって役員の選任をして、そして官報なりなんなりに公告する、そういうふうな会社というのは一%ぐらいだろう、こういうふうに言われております。もともと法律というのは国民の方々に守ってもらうためにあると思うんです。政府の答弁でも私奇異に感じますのは、そういうふうに一%ぐらいしか法律に基づいて手続をとっておられないのが、あたかも当然みたいな感覚を受けるわけなんです。これは本当はおかしいと思うんですよね。そういうふうな主張の一方側に中小企業の方からのお話としては、もう実態としてこういうふうになっているんだというふうなことなんですね。しかし、やはりこういうふうな商法の改正なりなんなりを契機といたしまして、少しずつでも実態に合うような形に両方から歩み寄ってもらいたいというふうに思うわけなんです。
 そういうふうな立場から申し上げまして、今回の改正というものがどの程度の役割を果たすんだろうかということを各参考人にお伺いいたしたいと思うのでございます。
#25
○参考人(河本一郎君) まさにおっしゃるとおりでありまして、私ども教科書に書いておることと実際に行われておることとが余りにも違うので講義でも実際困るわけでございますが、ただ、今回の改正の出発点が実はそれを合わそうというところから出発したことは事実であります。先ほど家近参考人が申しましたように、無理をして七人以上の発起人を集めるというようなことをしなくてもいいようにというので一人でも会社をつくれるというようなことにしたのは、全くその実態に合わそうとしたわけでございます。それからまた、現物出資を嫌がって、それを避けるために見せ金というようなところへいくので、現物出資をもっと正面からやれるようなふうに商法で改めようと。もちろん、これはむしろ税金の面が根本的にありますので、商法だけで幾らやってみましても実効が上がらないかもわかりませんが、少なくとも商法では現物出資を容易にできるようにという法改正をやったのも、実態に合わせてのことでございます。
 ただ、中小企業でやっているとおりに本当に合わせていきましたら、実は法律はなくなってしまう。つまり、株主総会も本当は開かぬとなれば、これもしかし合わせようがなくなってしまう、取締役もなくなってしまう。しかし、そこまでこれは合わせるわけにはいきません。つまり、最小限あるべき姿というものはやはり法律は堅持しなきゃなりませんし、したがってその中で極力歩み寄れるところはどこであるかということを探っているのが今の改正の作業ではないか、こういうふうに考えております。甚だどうも、先生の御質問に十分よくお答えできませんのですが、そういうことでございます。
#26
○参考人(稲田俊信君) 今河本先生もおっしゃった中の、法の守るべきものというのが一番問題であろうかと思うんです。すべてを事実があるからその事実を追認するというならば、いわば法そのもの自体が問題になってくる。やはりここに出てくるのは法の理念という問題だと思うわけであります。そうしますと、有限責任会社というものに貫かれなければならない法の理念というのは、まさに教科書的になって恐縮なんですけれども、資本の充実であるとかあるいは債権者あるいは株主の保護あるいは経理の適正化、こういうような言葉で出てくる。もう一つ出てくるのは、事実と法の乖離の中では、いわゆる組織法の簡易化の中でも、適正な、中小企業に見合うような組織の簡易化、こういうところが出てくるんではなかろうか。こういう理念的なものを前提といたしまして、守るべき最低の基準というものをきっちりとつくり上げていかなければならないんではなかろうか、こういうふうに思います。
#27
○参考人(家近正直君) 今の御指摘の問題は、会社法をめぐる一番根本的な問題点だというふうに
理解いたしておりますが、先ほどちょっと申し上げましたように、現状が余りにも多種多様な、格差のあり過ぎる会社を対象にして一つの法律で規制をしようと、こういうところに根本的な無理があるわけでございまして、基本的にはやはり衆参両院で何度か附帯決議もいただいておるようでございますが、大小会社に適した会社法、こういう形へ持っていくのが筋であろうかと思います。現在の立法の状況は、まさにその途中で何とかつじつまを合わそうということで、一方においては現状を追認、追随する方向に行き、一方においては少しでも指導的な役割を果たさせようと、こういうふうに自己矛盾をはらみながら立法が動いておるのではないか、かように考えます。
#28
○参考人(錦織璋君) 中小企業は全く無法、違法と言われるのは、私自身にとりましては大変疑問に思っておりますし、多分そういうことはないと私自身は確信はいたしておりますが、先ほど一%というお話でございますけれども、何か法律を守って一%であるのか、若干もう少し細かな説明が要るような感じがいたします。
 また、今回の改正では実態に合わせるという点ではまだ十分でもございませんし、特に経営管理等については今後の改正に送るということになっておりますのでそれを期待をいたしておりまして、なるべく実態に合うような、形骸化した規定でなく実効性ある規定にしていただきたいという願いを中小企業では強く持っております。個人的には、現在の株式会社と有限会社の制度の中では、小規模会社では有限会社が一番適切な制度であるというふうに認識はいたしております。現実問題として、有限会社ではなかなか求人の際に人が集まらないという現在イメージがございますので、そういった意味合いでは新しい有限会社像を我々もつくり上げていく必要があるというふうに考えております。
 それから、税制面での問題とこの商法の法律の規制の問題といろいろと混同されているわけでございますけれども、これは商法が悪いというよりもあるいは税制の方にむしろ問題があるのではないかというふうに考えておりまして、現段階の中で仮に小規模企業が会社制度を利用したからといって一概に非難される理由は私はないというふうに思っております。
#29
○下稲葉耕吉君 それでは最後に、河本参考人にお伺いいたしたいと思いますが、株式会社につきましては休眠会社を解散させるという決議がございましたね、この間。今度は貸借対照表の提出というふうなことによって、今申し上げましたようなチェック機能というふうなものがある程度果たされるようなことになるとお思いでしょうか。それとも、いやもう大したことないと。
#30
○参考人(河本一郎君) 先生の御疑問は、この休眠会社の整理と、それから今回は出ておりませんが、将来もし、貸借対照表の登記所への提出、公開ということとの関係はどうか、こういうことでございますか。
#31
○下稲葉耕吉君 そうです。
#32
○参考人(河本一郎君) 休眠会社は、現在は登記が全く行われてこないというところをとらえて休眠会社とみなす。有限会社の場合には、現在のところは役員の任期がございませんので、これは登記でひっかけることができないので休眠会社の整理ということがないんですが、これは恐らく次の段階では結びついてくると思います。そしてまた、貸借対照表を提出するということをまず義務づけた場合に、それが全然なされてこないということを根拠にして休眠会社の整理を考えるということは、これは御指摘のように十分考えられるんじゃないかというふうに思います。これは最も一番会社が眠っておるということの証拠かもしれませんので、それは次の段階で私どもも考えてみたいと思います。
#33
○千葉景子君 きょうは参考人の皆さんに大変貴重な意見を出していただきましてありがとうございます。
 私も大分以前に商法というものを学んだ記憶がございまして、河本先生の御本なども読ませていただいて勉強した一人なんでございますけれども、今回の改正に当たりましてやはり実態などをいろいろ聞かせていただき、あるいは勉強するに従って、商法の改正、これを整備していくということが大変難しい問題を含んでいるんだなということをつくづく感じさせていただいたところでございます。そんな私も、まだまだ疑問点だらけでございますので、そういうものをぜひ解消させていただく意味でも、また貴重な御意見を聞かせていただきたいというふうに思っております。
 今回の改正の基本的な大きなポイントである最低資本金の問題、これにつきましては各参考人の御意見を聞かせていただきまして、若干ニュアンスの違い、あるいはやむを得ず賛成なされたというようなこともあるようでございますけれども、ほぼこの点については今回の改正が妥当ではないかというような御意見だというふうに思います。私も、この最低資本金の制度というのは最低限必要な制度であろうというふうに思っているんですけれども、大きな債権者の保護という観点から考えますと、この最低資本金の制度とそれから今問題に出ております公開の問題、そしてもう一つ、第三者のチェックといいましょうか適正化の問題、これがやはり欠くことのできない検討課題ではなかろうかというふうに思っております。
 その意味で、今回適正化、監査などを含めての問題というのは改正点には上らなかったわけですけれども、これについて調査人とか、あるいは今でも大会社などで適用されている会計監査の制度ですね、そういうことを含めまして今後監査の問題についてほどのように考えていらっしゃるか。それぞれ参考人にまず御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
#34
○参考人(河本一郎君) それでは監査の問題、これは今回出てきてはおりませんが、商法部会で審議いたしましたところでは調査人の調査というもの、これを含めて監査という概念でお答えを申し上げます。現在の企業会計を公表するということは、公表されるものの中身が一応正確であるという保証、しかもそれは保証という以上は、つくった本人が大丈夫だというんじゃなくて一応会社から独立した人がその中身を保証する、それを公表いたしまして一般の人が参考にするというのが基本的だと思います。
 したがいまして、現在大会社につきましては、御承知のように公認会計士が会計監査人となりまして監査いたしまして、それが公開されているということなんですが、それと本来あり方としては、同じ仕組みで中小企業のところまで、もちろん会社の規模によって線を引かなきゃなりませんが、その線以上のものは客観的な調査あるいは監査を受けてそれが公表されてくるというのが本当だと思います。しかし、商法部会でも監査を受けた上での公表というところまでは踏み切れなかった。これはまさに率直に申しまして、公認会計士では数が足らない。したがって、それ以外のしかるべき専門家の協力を得なきゃならない。ところが、そこの協調、意見の一致が少々時間をかけても成立が難しいというようなことがありましたので、部会では公開だけ。しかし、これもそれじゃ意味がないではないかという議論がございましたが、しかし私どもは、たとえ客観的な監査人の調査がなくても、その公表されたものに万が一虚偽があればこれは制裁がございますし、それからまた、それを信用した人に対しては損害賠償が出てくるから、いわばないよりはましだということで、現段階ではせめて公開だけでもということで賛成したのであります。しかし、この点はいろんないきさつから御審議いただいておる案には入っていないわけでございますが、将来は、やはりあるべき姿としては客観的な人の保証のついた資料が公開されるというのがあるべき姿であろうと考えております。
#35
○参考人(稲田俊信君) 計算書類の公開が社会的に信用あるというためには、今河本先生が言われましたように外部監査というものを経たものでなければならない。また、これが適正であることによって初めて第三者保護というものが図られるわ
けであって、適正でないものが公開されるということはかえって混乱を来す、こういうことになる。そうしますと、ここにどうしても外部監査人というものをどういう人に行ってもらうかということが問題になってきて、これは公認会計士という一つのいわゆる監査権を持っている人がなすのが最もふさわしいわけであります。そういう素質のある人をたくさんつくり出すということもまた必要であろうかと思うわけです。
 ただ、これをつくり出すまでの間には時間がかかる。そこで出てきたのがもう少し簡易な調査――調査と監査ということで、この調査というのはどうも一応の確からしさ、こういうような言葉で表現されているわけでありますが、これもないよりはましだ、こういうことなんですが、少なくとも公認会計士のような監査能力といいますか、そういうものを持った人をもっとたくさんつくり出し、そういう人の外部監査を経たところの計算書類というものが将来にわたっては公開されていく、こういう方向でいかなければならないんじゃないか、こういうふうに思います。
#36
○参考人(家近正直君) 御指摘の監査の問題は極めて重要な問題でございます。
 御承知のように、監査制度については順次改正が行われておるわけでございますが、いまだもって不十分であるというのが一般の指摘でございます。もちろん、御承知のように会社内部での監査という制度も当然あり得るわけでございますが、その内容の適格性、客観性ということからいいますと、外部のしかるべき資格を持った人の監査ということが望ましいことはだれしも考えられることでございますし、有限責任会社においてそういった監査の裏づけがぜひとも必要であるということも異論かないところではないかと思います。
 ただ、現実に立法という形でだれがそれをやるか、どの範囲でそれを行うか。監査する人、受ける人、この両面から考えました場合に、現状にはなかなか簡単に実現しそうもない問題があるわけでございます。したがいまして、今後の我が国の立法のあり方といたしましては、ぜひともその基本方針に沿って具体的な実現をしていけるだけの裏づけ、こういうものを十分に各界の御意見を集めて、実現可能な監査体制というものをぜひ考えていくべきではないか、かように考えております。
#37
○参考人(錦織璋君) 監査を実施する以上、正規の第三者監査、すなわち公認会計士による監査を実施するというのが本来的にいえば筋であろうというふうに考えております。しかしながら、小会社に対しまして強制をしてそういう第三者監査をする社会的なニーズが果たしてあるかどうかということについて我々は疑問を持っております。これまで債権者、第三者に迷惑をかけた、すなわち財務諸表等の粉飾によって迷惑をかけたというケースはそれほど多くはないのではないかというふうに我々は判断をいたしております。
 したがいまして、現段階においては時期尚早ではないか、こういうことで原案が出ましたときには反対をいたしたわけでございますが、その過程でもし正規の監査を実施するとするならば、資本金一億円程度の会社にまで実施をして、経過を見てさらに順次下げていくということは一つの方法であろうというふうには考えております。
#38
○千葉景子君 今、将来に向かって必要性があるということはどうやらありそうなんでございますけれども、錦織参考人の方からもお話がありましたように、社会的ニーズといいましょうか、そういう意味では大規模な会社とそして小規模なあるいは閉鎖的な会社において大分違いがありそうにも思うわけなんですね。そういう意味で、確かに原則としては、総体としての監査の原則ですね、これの必要性はあるとしても、その辺のランクといいましょうか、そういう現実を踏まえた問題点というのはいかがでしょうか。実際に実務に携わられていらっしゃる家近参考人、そして河本参考人にお話をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#39
○参考人(家近正直君) 大変難しい点でございますが、一つは、先ほどちょっと申しましたように、監査をする人としてどのような人が適切か、こういうことが問題でございまして、現在の制度から申しますと公認会計士による監査ということが極めて望ましいわけでございますが、ご承知のように絶対数がそれでは少のうございますので、それに近い分野の、例えば具体的に出ております税理士さんがそれを担当する。こういうふうなことである程度その監査の対象を広げていくための素地ということを一つ手当てする必要があるかと思います。
 もう一つは、やはり監査を受ける側から申しまして、何せ外部の監査を受けますと費用の面でもあるいは受け入れ体制の面でもこれは負担になることも事実でございます。したがいまして、具体的な線引きというのはなかなか難しゅうございますけれども、当面、資本金を基準にするといたしますとせいぜい三千万か五千万以上ぐらい。当面は、例えば一億以上というふうなことから順次なろうかと思いますが、そういった形での線引きということが考えられるのではないかと思います。
#40
○参考人(河本一郎君) きょう細かい統計数字を持ってきておりませんのですが、私、商法部会で発言しましたときに、当時資本金三千万円以上ぐらいのところは公開してもらって、そしてまた、その前の検討段階では会計調査人に調査してもらう。大体そのときに、この三千万というところでの線引きをした統計がないもんですからはっきり出てこないんですが、大体十五、六万ぐらいなんですね。ところが、私、そのときも申しましたんですが、日本の経済を支えているこれだけの中小企業の中の十五、六万ぐらいを公開させて、それについてはまあ公認会計士では足らない、ある程度の税理士さんの中から選んだ人に監査してもらうというぐらいのことを強制しましても、決して日本の中小企業がそれで崩壊するというようなことはないんではないかと申し上げたことがあるんです。したがって、何も百二十万あるその本当の下のところまで登記所への公開というようなことを言っているわけではないんです。だから、そういう意味では、私は商法部会で審議しておったことはそんなにひどいことではないんではないかというふうな考えを持っております。
#41
○千葉景子君 今の監査の問題、それから先ほどからも出ております公開の問題、これらは確かに中小企業の皆さんにとっては大変コストの面あるいは現状を含めてなかなか厳しい問題だとは私も思います。ただし、これをこのまま、じゃ現状だけでよろしいかということにもなかなかならないかというふうに思うんですけれども、今回は、錦織参考人の側、中小企業の皆さんの方では登記所における公開、あるいは調査、取締役の責任強化のところは反対をなさったということなんですが、何かやはり今の世界的な動きとかあるいは社会的要請、こういうことを踏まえて、現実的にこんなことならば考え得るんじゃないかというようなことなどはございますんでしょうか。
#42
○参考人(錦織璋君) 今直ちにお答えができるような意識は持っておりませんが、少なくとも今回の改正を契機に最低資本金制度というものが初めて導入されるわけでございますので、こういう機会を通じて今後来たるべき新しい会社制度のあり方といった点で、関係者に少しその趣旨等について説明をしてまいりたいというふうに考えております。そういうことを通じて新しいまた機運が醸成されてくれば、次の改正時にもこれまでのような大きな反対の反応はないのではないかというふうに期待をいたしております。
#43
○千葉景子君 ところで、先ほどこれは家近参考人から現在の小規模の会社は有限責任と個人責任が一体化しているというような形態なんだというお話がございました。そういう中で、現在例えば法人格否認の法理というような形で、それからあるいは取締役の第三者に対する責任というような形で救済が図られている部分があろうかというふうに思うんですけれども、取引上であればいろいろ選択の余地があるんですが、例えば働いた対価、労働債権であるとか、あるいはこういうこと
はそう多々あることではありませんけれども、不法行為に基づく債権のような、これはもう余儀ない債権、こういう問題についての法的な措置というのは必要ではなかろうかなということも感じるんですが、その辺について家近参考人、そして今度は稲田参考人、御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
#44
○参考人(家近正直君) それも本当に大変難しい問題で、先ほどちょっと申しましたように、中小会社で本当の有限責任の会社があるのかなというような実感がするわけでございますが、今御指摘のように判例上は法人格否認の法理とか、取締役の第三者に対する責任でもってある程度その辺を是正ないしは補完しておるというのが現状ではなかろうかと思うわけでございます。
 今御質問の従業員の労働債権の確保の問題とか、あるいは不法行為債権の救済の問題ということになりますと、ある程度社会的な要請がそこに入ってまいると思いますので、単純に法人格否認なり取締役の第三者責任で理論上ないしは判例上賄えるとしてもおのずから限界が出てくるのではなかろうか。つまり、単に解釈上の問題としてあるいは判例の積み重ねとして救済できる限度というのはおのずから限られたものになるのではなかろうか。その上は結局、立法の要請の問題でございまして、それ以外の社会的な要請のもとにそういった特殊な債権の保護が必要であるということになりますと、解釈なり判例の枠を超えた一つの新しい規制すなわち立法ということを考えざるを得ないのではないか。また、それが現に法制審議会で議論いたしております中にも問題点として残っておるわけでございまして、今後さらに検討が続けられるのではないかと考えておるわけでございます。
#45
○参考人(稲田俊信君) 経営が現実に行われている場合にありましては、御承知のように企業財産が完全でない場合には個人的な財産を担保として金融を得て実際に経営をやられている、こういう段階においては直接債権者の保護というのは問題にならぬ。問題になりますのは、いわば倒産した段階である、あるいは経営の段階でも例えば不法行為の問題はこれは出てくると思うんですけれども、通常の例えば自動車事故等については保険というようなもので賄われている。多くの場合、問題になりますのは破産の問題、法人格否認の法理の働くのも実際のところは破産の段階に入ってから、一体最終的な責任はだれが負うのかと、こういうところへ出てくる。ここで出てくる問題は、例えば取締役の責任の追及というようなもので現実には賄われていると言って差し支えない。さらにそれを今度の商法改正の最初の時点では、取締役という資格を持たなくても実質的な経営権を持っているような者まで広げていこう、こういうところまでやっていく。これは恐らくこういうものが制定されていたらこれを活用するということになると思いますので、有限責任会社というものが、現実の問題として完全な債権の担保は破産した段階ではいかに多くても実際はないわけです。その限りにおいては中小企業であろうと大企業であろうと同じである。したがって、そういうところの補てんはどこまでいくのかというと、取締役の責任であるとか実質的経営者の責任と、こういうところがやはり限度ではなかろうか、こういうふうに思います。
#46
○千葉景子君 河本参考人はいかがでしょうか。今と同じ質問です。
#47
○参考人(河本一郎君) これはどなたも皆おっしゃるように、日本の会社というのは経営者自身も担保なり保証なりしておる、こういう話はしょっちゅう聞くわけなんです。ただ、しかし、これはそういう担保なり保証をとれるような債権者というと、まず銀行、それから強力な取引先は取引に当たってとれますけれども、しかしそうでない一般の取引先というのは、こんなのとれませんからね。そこがつぶれたときはそういう有力なところは持って帰ってしまう。そういうところに私、やはり企業には、事に乗り出すときに株式会社に行くんならせめて自分の金は一千万出しなさい、有限会社へ行くんなら三百万出しなさいという話じゃないか。だから担保、保証というのは、これはやはり特定の者が守られておるんであって、一般の弱いところはむしろそうではないんですね。そういう意味で、どうしてもやはり少なくとも入口のところでしかるべき金を出して出ていきなさいと、こういうことじゃないかと私は思っておるんです。
#48
○千葉景子君 今回は、いわゆる管理体制といいましょうか、そこの問題は改正には上らなかったようでございますけれども、先ほど私も申し上げました監査の問題などと関係もしますが、監査役の問題などがやはり残された部分ではなかろうかというふうに思うんです。現在の少なくとも社内チェック機構でございますけれども、第三者のチェックまでいかないとすれば、やはり部内でのチェック機構というのは現行法の中でも重要なことではなかろうかと思いますが、この監査役の問題、本当に機能しているものなのかどうか、それから今後残された問題点はどんなところがあるか、河本参考人、稲田参考人、そして家近参考人、お聞かせいただきたいと思います。
#49
○参考人(河本一郎君) 御指摘のように、現在の監査役は小会社、つまり特例法によりまして資本金一億円以下は今のところは会計監査だけということになっております。ところが、幾ら小さくても一億円を限度にしたとすればかなりな規模の会社が含まれておるわけですが、そういうところの会計監査をやるというのは、これは実は大変難しいことなんです。ところが、監査役につきましては何の資格も要求されておりません。小さいところになってくると、よく話を聞きますように、おばあちゃんがなっているとか奥さんがなっているとか――奥さんはかなり逆に威力があるかもわかりませんが、そういういわゆる法律が予測しておるような監査役が全く選ばれていないわけです。
 そこで、今回出ておりませんけれども、一応検討しておりましたのでは、小さいところはむしろ監査役は任意にしてしまって、その中のある程度以上のところには調査人を入れて、そのかわり監査役そのものにつきましては資格の制限をする。例えば、そういう直系の親族なんかを入れてはいけませんというようなふうにしよう、そしてすべて業務監査をやらせるというふうにしようとしたわけなんですが、先ほど来申しておりますように調査人というものがうまくいかない。これと監査役制度というものは実は連係しておるわけなんです。こちらが決まらなければ監査役制度の根本的な見直しができないというので今回は出てきておらないわけなんですが、御指摘のように監査役制度というものをどうするか、しかもその効果的なものをどうするかということは次の作業が始まりましたら私どもも一生懸命考えてみたい、こういうふうに思っております。今ちょっとそういう難しい問題が絡んだ関係になっておりますので、的確なお答えができませんが、お許しいただきたいと思います。
#50
○参考人(稲田俊信君) 経理という面のいわゆる内部監査では監査役というのが出てくるわけですが、今河本先生からもお話がありましたように、資格があるか、能力があるかといったら全くない人がなっている。したがって、これはまさに形式的な問題となってしまって、むしろない方がいいと。そういうところで調査人という制度、何かかわる方法としてこういう制度がなかろうかというふうに考えられたのは当然であろうかと思うわけです。
 もう一つ、内部監査の問題で計算だけに限っていきますと、今言ったような公認会計士、調査人、あるいは内部監査においてはできる限り長く経理を担当した人がなるとかいろんな問題があると思いますけれども、もう一つ出てくるいわゆる業務監査の問題、これを通じて――今、読売新聞でしたか、何か連載物をやっておりますが、これなんかを見ていきますと、やはり監査役というものにかなりの権限が実際に与えられている。この権限を行使することによって内部的な不正行為をただしていこう、こういう方向でかなりの監査権
能を発揮している会社が最近は出てきているというような一面がある反面、相変わらず従前と同じようなほとんど機能していないものもある、こういうような形で出ております。したがって、この内部監査の会計に関して言うならば、むしろ能力がない者が監査をやっても余り意味がないというふうに言ってこれは差し支えないんじゃないか。結局は外部監査に頼らざるを得ないなという感じがいたします。
#51
○参考人(家近正直君) 私の数少ない経験からの実感としては、少なくとも小会社の監査役というのは全くと言っていいほど機能いたしておりませんし、また監査役になっておる方自身もそういった自分の役割というものを自覚していない方がほとんどではなかろうかという気がいたします。その意味では、率直に言って我が国の小規模な会社においては監査役は機能していない、こういうふうに評価できるのではないかと思います。現在検討中の案の中でも、小規模の会社について監査役を任意の制度とする、こういう案が出ておるのは一つのあらわれかと思います。
 ただ、そうなりますと外部監査に頼らざるを得ない。ところが、御承知のように外部監査についても小規模の会社はその対象から外そう、こういう動きも一方にあるわけでございます。したがいまして、私は個人的にはそのような改正にいくことにはかなり危惧を持っておりまして、結局、内部のチェック機能もなくなる、外部の監査もそういう小規模なものには適用されない、そうすると、いわばきっちりやってもらわなければならないような会社についてそういう機能が全く働かない、こういうことにもなりますので、立法としてはできれば外部監査でそういった点を賄うというのが第一次の方法だと考えます。もし、外部監査をいろんな負担の関係で小規模会社についてその対象から外すということになれば、これはもう現実に機能しておらなくてもやはり現行法を改正して監査役をなくするというのはちょっと問題があるのではなかろうか。
 極端な言い方をいたしますと、ないよりはある方がましという程度のことになるのかもしれませんが、しかし万一のときは監査役さんもやっぱり会計監査についての責任を問われる余地が残るわけですから、現実にそういう形で訴訟等が出てまいりますと、いや監査役もうかうかしておれぬと、こういう意識もだんだんには芽生えてくるかと思いますので、そういう意味では何らかのチェック機能は残しておいた方がよかろう、こういうふうに考えております。
#52
○千葉景子君 最後になりますが、錦織参考人、何か恐縮な感じになってしまっているんですけれども、今の監査役の問題で、実際に企業をおやりになっていらっしゃる皆さんをおまとめの立場としてこの内部監査の問題、どうなんでしょうか。今後やはりある意味では充実の必要があるし、片方では逆に言えばなかなかそれを本当に実効あらしめるのは率直に言って難しい面もあるのではないかという感じもするんですが、そのことについて御意見を伺って終わりにしたいと思います。
#53
○参考人(錦織璋君) 確かに、中小企業では規模の制約がございまして内部監査制度が機能しにくいという点は御指摘のとおりだろうというふうに思います。しかし、それでは大会社の監査役制度がそんなに立派に機能しているのかというと、私はかなり疑問がございまして、じゃ大会社でなぜつぶれたり、あるいはいろんな不正事件が起きるのかお伺いをしたいというふうに思います。やはり中小企業の場合ですと、社長が何をやっているか従業員の方も一目でわかるような状況にございまして、そう極端に反社会的なことを平気でやるというようなわけにはいかないというところに中小企業の職場というものの親しみやすさというのがあるように思います。 これがまた特徴でございますから、従業員の方も社長と一緒になって働く、こういう関係が生まれてきているんだろうというふうに思います。したがって、できれば第三者が監査等を実施するというのが基本的な原則というふうに思っておりますが、ただ、どうも調査人を入れればそれらがすべてうまくいくというふうには私はどうも信じられませんで、結果的にはこの対象会社数の多さ等から考えますれば形骸化するおそれはないのかという心配をいたしております。数が多いために結果的には監査しましたというゴム印かなんかで押されておしまいというようなことのような規定では、何のための調査人制度の導入かということについてかなり私自身は疑問を持っております。したがって、もし導入するとすればそれなりの規模から実施をすべきであるということを私どもは主張をいたしております。
 それからもう一つは、大変コストの面で負担が大きくなる、正規の監査をすればするほど負担も大きくなることは当たり前な話でございます。そういう意味で社会的有用性があるのかという感じはいたします。しかし、中小企業も今日のディスクロージャーの中でディスクローズをしなきゃいかぬというような状況下にございますので、そういう社会的なニーズにこたえる、要請にはこたえていかなきゃいかぬということはよく認識はいたしております。したがって、多少時間がいただければというふうに思っております。
#54
○千葉景子君 終わります。
#55
○櫻井規順君 若干質問をさせていただきます。ぜひ御教示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 商法の改正案が出されて法制審議会の関係者の皆さん本当に長い年月をかけて今日までこの原案をつくる上で御苦労され、かつまた、ややトーンダウンしてきているわけでありますが、これまた関係者との協議の中の御努力の結果こういうものが出てきているということで受けとめているところでございます。
 いずれにしましても、最低資本金の導入一つとってみましても、これをやるのは企業側でありまして、企業側が自立的にこれに取り組まなければ進まないことであるわけであります。しかし、このこと一つとっても私は国家的な事業である、こんなふうにとらえているものでございます。そういう意味では行政サイドから可能な限りの援助を差し伸べるべきではないか、こんな気持ちでこの法案審議に臨んでおります。そして最低資本金の導入も、それから第三者による監査の問題あるいは会計諸表の公表の問題、それぞれどこかで踏み切らなければならないことだと思うのですけれども、それは今言った企業者側がとにかく自主的に、あるいは自助努力でやる体制が大前提でありまして、法律審議といいますか、これは行政サイド、法務局サイドからだけ詰められるべきものではないぞということもみずからに言い聞かせながら審議に臨んでいるわけであります。ある意味では、法改正にはシステム的なアプローチの仕方というのが必要ではないか、そんな考えを持ちながら法案審議に臨んでおります。そういう意味で、今からの質問は法改正に伴ういわば諸条件といったらよろしいでしょうか、そんな点に焦点を置いて質問させていただきます。
 最初に、錦織さんに質問させていただきます。
 審議会に臨んで御発言をされてきた論旨は今伺ったところであります。一体、中小企業団体中央会、全体的に見て今度の商法改正は歓迎するものなのか、望んでいたものが出されてきたものなのかどうか、第一点。 そうして審議会に臨んで代表が発言されているわけでありますが、中小企業団体中央会としてたくさんの団体がおありだと思うんです。民事局の方からは、もうありとあらゆる団体にアンケートを出して意見を伺った結果の集約として今回の結論が出たと、こういうお話であります。一体、中小企業団体中央会の構成団体にどのくらいあまねくこの商法改正のアンケートが参って、あるいはどんな対応をされてきたのか、その辺をまずお聞かせ願いたいと思います。
#56
○参考人(錦織璋君) 我々といたしましては、法案要綱が発表されました範囲内でいろいろ関係者を集めまして議論をし、アンケート調査を実施いたしましたが、まず第一点の歓迎すべきかどうかという点につきましては、そういうアンケート調査した経験はございませんが、雰囲気といたしま
しては、最低資本金も当初の案では一億円というような案がございましたこともありまして、むしろ歓迎するという雰囲気にはなかったというふうに考えております。また、中央会といたしましては約三万五千の中小企業団体がございますので、関係の団体、都道府県中央会等を通じましてそれぞれ意見の集約を行ったところでございます。その結果が我々の意見書という形でまとめられた、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#57
○櫻井規順君 意見書を私は見たことないものですから、また後で読ませていただきたいと存じます。
 その中で、会社で一番小さいのはやっぱり流通の小売商店関係だと思うんですけれども、そういうサービス業、小売商店、こういう関係の業者団体の意見で特に集約されたものがありますでしょうか。
#58
○参考人(錦織璋君) 格別小売商、サービス業という形で分類はいたしておりませんけれども、それぞれ関係の業種別団体に照会をし、意見は求めてございます。
#59
○櫻井規順君 問題は、法律が通りまして有限会社三百万、それから株式会社一千万というふうに増資をしていかなければならないわけですが、その見通しというものについてはどんなふうにごらんになっていますでしょうか。
#60
○参考人(錦織璋君) 増資が法の規定する要件を満たすのにどの程度の期限が必要かどうか等につきまして我々も議論をいたしましたが、我々の関係ではおおむね五年程度あれば何か所要の状況にまとまるのではないか。しかし、それも簡単に条件を満たすというわけにはなかなかいかないであろう。したがって、それを誘導する何らかの政府の施策を強く希望をいたしたところでございます。
#61
○櫻井規順君 どうでしょうか、株式会社は株式会社、有限会社は有限会社としてみずから増資をしてハードルをクリアするという業者はおおむね全般的にそういくでしょうか。あるいはもっと言いますと、株式から有限あるいは合資、合名に変更する方がいるかどうか非常に疑問でございますけれども、組織変更というのがかなり出るものなのかどうなのか、その辺の見通しはどんなものでしょうか。
#62
○参考人(錦織璋君) 全くこれは個人の感触しか申し上げることはできないわけでございますが、ある部分では組織変更ということで株式会社から有限会社へ移行する部分はあろうかと思います。しかし、その部分はそれほど大きな率にはならないのではなかろうかというふうに考えております。
#63
○櫻井規順君 しつこいですけれども、増資できなくて結局解散会社というふうに処分される可能性のあるパーセンテージ的なものというのは、読みはありませんでしょうか。
#64
○参考人(錦織璋君) 今のところ全く予想はつきかねます。
#65
○櫻井規順君 ありがとうございました。
 次に、稲田先生にお願いをしたいと存じます。
 稲田先生の法律関係の雑誌を読ませていただきましたが、先ほどのお話ですと中小企業庁からのアンケートというお話でしたけれども、それなのかどうか私ちょっと定かでなくて恐縮ですが、法務委員会で審議しておりますと、民事局の方から、ありとあらゆる団体にアンケートを出して集約をした結果がこれこれであるというお話を伺いました。稲田先生、アンケート集約結果をお読みになって法律関係の雑誌にレポートをお書きになったように思うんですけれども、業者団体の皆さんはこの法改正に対してどんなふうな、要するに賛成か反対か、もっと言いますと、その雑誌の論文の時点では株式会社二千万、試案の段階ですので今の法案とはおのずから違うわけでありますが、業者団体、要するにみずから受けて立たなきゃならない業者団体の意向というのはどんなふうにごらんになったか、その辺をお聞かせいただければと思います。
#66
○参考人(稲田俊信君) 一点、先ほどのちょっと訂正するというか、補足させていただきたいのですけれども、中小企業庁のアンケートではなくて、中央会の方に委託したアンケートですね。
 それから、私どもがやりましたところの幾つかのアンケートがあるわけなんですけれども、これは実態調査といたしまして学生をお願いして、郷里に帰った折、自分の町の会社を調べてくれと、こういうような形でとったもので、さらに登記簿を添付しておりますので登記簿上の会社の規模というのはかなり明確である。同時に、実際町の中で動いている企業でありますので、これも明確な実態を持っている。ほぼ使えるアンケートが一千件ございまして、一千件を前提としたアンケートです。
 これに対して、我々がまずやりましたときの一回目の調査におきましては、実態調査ということで、企業は一体商法をどの程度守られているのか、こういう観点から見た実態でございます。これは、資本金が大きくなればなるほど会社法の定めている規定どおりに近い、完全ではございませんけれども近い形態がとられているというのが出てまいりました。そして、もう一度予備調査の後本調査に入ったときに、今度は改正を少々前提とした意見を問うたわけでございますけれども、この場合に、やはり資本金についてはどの会社も今までどおりでやるのがよいという回答が非常に多うございました。したがいまして、どの程度までというようなところまで出てこないわけです。一段でとまってしまいまして、ちょっと質問の方法が下手であったというので、この部分はちょっと公表できなかったという事情がございます。
#67
○櫻井規順君 私もその日大の「日本法学」とおっしゃるんですか、それの小規模企業実態調査というのをさらっと読ませていただきました。非常にびっくりしました。
 ちょっとそこで関連してお伺いしますが、法務委員会の審議の中で、株式会社で言いますと一千万円以下の資本金の企業の例えば百万刻みの企業実数とか、有限会社三百万円以下の企業は幾つありますかと言っても確かな数は、推計で一部出されておりますが、出ておりません。要するに、小規模企業に対する実情把握というのが極めてできていないわけであります。先生たちが行った小規模企業実態調査というのは非常にヒント、示唆に満ちた調査だというふうに思うわけでありますが、先生は一千万以下の例えば企業実態というのを把握される場合には何か参考にされる官庁統計というものはおありでしょうか。
 それからいま一つは、行政当局でああしたしかるべき調査を全国的な規模においてなすのが当然だと思うんですが、先生何かその辺で御提言はないでしょうか。
#68
○参考人(稲田俊信君) 実は、私的団体が実態調査をやるというのは非常に費用がかかりまして、あるいは集計の労力というのがかかりまして、何としてもやはりこれは公の機関でやっていただきたい。ただ、ここでアンケートというのが非常に危険性があるのは、問いによりまして回答というのが出てくるわけでございまして、いかなる問いを行うかということによって計数が出てまいりますので、ここいらはかなりの専門的知識を持つ人を入れてやらなければ余り意味がないんではなかろうかと思います。
 それで、法改正の中でやはり考えなければならないのは、実態の把握ということは前提である、その前提をとらえて、それに対して法の理念にどこまで近づいていくか、こういうような視点でこの実態調査を利用していただければ幸いではないか、こういうふうに思います。
#69
○櫻井規順君 時間がありませんのではしょらせてもらいまして、河本先生にお願いいたします。
 増資をする上におきまして、先生から二百九十三条の改正の問題等のお話を先ほど伺ったところでございます。私ども審議の中で、行政的に最低資本金導入の観点で援助できるものは利益準備金の資本化あるいは配当すべきお金を資本化する場合、あるいは登録免許税について減免税措置を講
ぜられたいと、これがまだ何といいますか、ことしの年末の税調で議論するということでお預けになっております。大体、こういうものは条件整備してから法案提出しますと通りはよくなるわけですが、法案をまず通してからというお話になっておりますが、これはどうしても促進しなきゃならないというふうに思うわけですが、この是非についてもう一度御意見を伺いたいことと、行政的に何か今度の商法改正に伴って援助できることがこういう点があるぞというような御指摘はないでしょうか。
#70
○参考人(河本一郎君) 最初の二百九十三条ノ二の改正の問題につきまして、新聞等々のジャーナリズムでは、これは単なる条文の整理ぐらいの理解しか示しておらなくて、私どもは実はここには非常に大事な問題が実質的に含まれておるんだということを折に触れて申し上げておるわけでございます。今先生まさにその点を御指摘いただきましたんですが、私先ほど申しましたように、ある程度ちゃんと経営をしている会社なら株式会社でありましても、ゼロから出発したと仮定しましても、五年間で毎年二百万ぐらいの利益を組み入れていけば一千万になるんで、だからこの点のみなし配当ということで税金を取らないようにするということが一番効果的ではないかというふうに理解しております。
 ただ、そのためには今の税法の扱いというのが、商法のこの条文読んでみたら、その「利益ノ配当ノ全部又ハ一部ヲ新ニ発行スル株式ヲ以テ為ス」、こう書いてあるじゃないか。これはもうまさに現金配当してそれを払い込みに充てたということだろう、こういうふうにとられてしまう。そうしますと、商法の方からいやそうじゃないんだと言ってもなかなか説得力が効かない。そこで、もうこの条文そのものを、これは単に利益を資本に組み入れるだけだ、資本に組み入れるということは、これは配当はできない財源にしてしまうわけなんであります。 そうすると、それに税金をかけるというのは、これはおかしい話じゃないか。そこで、かけるんなら今度株を売ったときのキャピタルゲインでかけたらいいじゃないか。それはまさにもう既に国会でそういうふうな方向へ進んでいるわけでありますから、とにかく商法の方を税当局に利用されないような条文につくりかえていこうというのがまず第一番だろう。それで先ほど申しましたように、まさにこれが国際的に日本だけがこういうことをやっているんだというので、ぜひこの機会に実現していただいて、そしてそれを中小企業が増資していかれるのにも大いに利用していただきたい、こう考えておるわけでございます。
#71
○櫻井規順君 たくさん質問があるわけですが、時間がございません。河本先生にもう一つ。
 アメリカではなぜ最低資本金制を導入していないのでしょうか。
#72
○参考人(河本一郎君) これにつきましては、法律全体が利益の処分の仕方といたしまして、現在のその会社の剰余金、それをずっと計算していって、しかも向こうの場合は連結全体で考えていきますので、それで出てきた利益の中から配当していく、そういう形で、特にこの表示資本、つまりステイテッドキャピタル、そういうものに余り重点を置かないで、別の体制で債権者の保護あるいは会社財産の維持を図っていこうという法体系になっておりますので、これはもちろんもしそういうものに根本的につくり変えるというのであれば別なのでありますけれども、そこへ持っていくとすると、あらゆる制度の中から資本という一応の概念を取り外して考えていかなきゃなりませんので、一つの大きな法制度ではあると思いますが、まだちょっと日本では検討されておりません。
#73
○櫻井規順君 最後に、錦織さんにもう一度。
 スモールビジネスの国際会議というのに毎年お出になっているようでございますが、国際会議に出ていて日本の中小企業を考えてみた場合に、商法改正に求めるべき点が何かございますでしょうか。
#74
○参考人(錦織璋君) 特別、会社の法人という形ではございませんで、むしろ欧米の場合ですと、失業問題が大変重視されておりますので、個人、企業を問わず、特に最近では個人企業の振興ということにかなり力を入れているということで、そういう方面の研究等が盛んでございます。
 ただやはり、各国ともこの問題は税制との絡みが大変強いように思われますので、会社制度というよりもむしろそちらの側面からの議論が多いというふうに考えております。
#75
○櫻井規順君 ありがとうございました。
#76
○矢原秀男君 参考人の諸先生には、本当にきょうは御苦労さまでございます。簡単に質問申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、錦織参考人にお伺いをいたします。
 今、各諸先生のお話を承っておりまして、中小企業の皆様方にある面では非常に厳しいお話もあったなと承っているのでございますが、中小企業の実態については錦織参考人もお話がございましたように、今、会社数は、法務省の資料によれば二百六十万社、国税庁の立場からいけば百七十七万社、総務庁の事業所統計からいけば百三十二万社。それから、個人事業者を含んだ我が国全体の事業所の総数というものは、先ほどもお話にございましたように、事業所統計で六百四十九万事業所、民営、非一次産業でございますが、これに対応する会社数は百三十二万社で、会社形態選択は二〇・三%である、こういう形でございます。
 この六百四十九万事業所のうち、中小企業基本法による従業者規模の定義で見た中小企業者は九九・三%に当たる六百四十五万事業所でございますけれども、先ほど申し上げたように会社形態選択は百二十九万社で一九・九%。日本の経済の発展を支えてこられた大会社、中小零細企業、こういう立場の分析の中から、いろんな功罪はございますけれども、日本経済の発展のために非常に中小企業が努力をされたということは私たちも認識をいたしているところでございます。
 先ほど参考人がおっしゃっておられますように二〇%が会社形態の選択であり、八〇%が個人事業者である。こういう中で経営組織の近代化というものを一生懸命図っていきたい、そして対外信用力も一生懸命高めたい、飛躍や意欲というものを先進的にやりたいという三つの建設的な路線というものを明確にされていらっしゃるわけでございます。私も同感でございますが、その中で、先ほども質疑がございましたけれども、これが実施された場合に、開業率の低下また二番目には商店数の減少、この点がさらに進行していくので心配である、こういう懸念をされていらっしゃるわけでございますが、まずその点をどのように分析をされていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
#77
○参考人(錦織璋君) 事業経営を展開する上で資本というのは大変大きな要素になることは御承知のとおりでございますが、しかし、同じようなベンチャービジネスの場合でも、ソフト志向のベンチャーとハード型のベンチャーとでは資本の量にはやはり差があるように思うわけでございまして、これを我々も一律で規制することについてやや疑問があるということで、最低資本金制度については理解はいたしておりますが、金額についてはいろいろと実態を十分に反映していただきたいという要望をしてきたわけでございます。
 特に懸念を申し上げたのは、やはりそういうように当初からある程度の資本がないと新規参入することが非常に困難になる、ひいては日本の産業の活力というものを阻害するおそれが出てくるのではないかという意味で慎重な対応をお願いしてきたわけでございまして、数字的には手前どももお話を申し上げるだけの材料は持っておりません。
#78
○矢原秀男君 全国中小企業団体中央会では、先ほどもお話がございましたように、一つは最低資本金制度の問題、二番目には貸借対照表等の登記所における公開の問題、三番目には、一つは会計調査人による調査、二つ目には会計専門家による指導の義務づけ、四番目には取締役の責任強化の問題、五番目には支配株主、社員の責任強化の問
題等についていろいろと法制審議会の方に申し述べられたようでございます。
 二から五につきましては、今回は意向を酌まれて取り上げられておられないわけでございますが、最低資本金制度の問題は諸先生からもいろいろその苦衷というものの前後、定まった経過をお聞きしておりますので、それは別に置きまして、今後出るであろう二から五番までの問題で非常に心配をしている点がございましたらお聞かせをお願いしたいと思います。
#79
○参考人(錦織璋君) まず、貸借対照表の登記所におきます公開についてでございますけれども、御承知のように小会社ではその取引範囲も大変狭く、かつ株主も大変閉鎖的でございますので、もし万一の場合があったとしても与える影響というのはかなり狭い範囲に限られるのではなかろうか。そういう環境の中で貸借対照表等を第三者にまで公開するということについては、結果的には個人の財産を公開するに等しいということから、むしろプライバシーの侵害につながりかねないという点を大変心配をいたしております。特に最近では、そういうものを利用して他のビジネスを展開することもございますので、我々はかかる意味合いにおいて社会的効果を評価した場合にそれほど大きくないということから、小会社については公開を反対をいたしたわけでございます。
 それから、会計調査人による調査、会計専門家による指導の導入等につきましても、先ほども申し上げましたとおり、本来なら外部監査を実施する以上は、正規の監査が行われるべきが本来の筋であろうというふうに考えておりますので、しかし中小企業の場合には、正規の監査を導入するのにはそれなりのやはり規模の条件等があるのではないかという点を申し上げたわけでございます。
 特に取締役の責任強化あるいは支配株主、社員の責任の強化等につきましては、結果的にはこれは小会社の取締役あるいは支配株主、社員、結果的に小会社では支配株主あるいは社員にならざるを得ないような状況にあるわけでございまして、大企業の経営者の取締役はこの責任を負わなくて、小会社の取締役だけについて責任を負うというのは差別ではないかという点で我々は反対をいたしたわけでございます。
#80
○矢原秀男君 家近参考人にお願い申し上げますけれども、今お伺いをいたしまして、最低の資本金は異論はないと。 そういう中からまた小会社に対しての実務を通して具体的なお話も伺ったところでございますが、一点お伺いいたしますのは、今回見送りになりました株式会社の財務内容の公開の問題についてでございます。
 現行法では、定款の規定に従って官報または日刊新聞紙で公告しなければならない、これが現行だったわけですね。法制審の答申の二年三月十四日には、会社の本店、支店所在地を管轄する商業登記所で公開をする、これについては中小規模会社には軽減、免除措置ありと。こういう形のものが今回の内閣提出案の四月十七日には、現行法と同じ、改正見送り、こうなるわけでございます。専門家の一部からは計算書類の、これらに関連するかどうかわかりませんが、先ほども錦織先生からもちょっと関連のものがございましたが、登記所における公開、これらについて企業の安全性を図るための情報を入手できる反面、企業秘密の漏えい、悪用による経営の混乱、元請会社により下請会社の経営圧迫、登記所業務が膨大となり行政改革に反する等、多くの問題点が含まれるのではないかという懸念性も逆にあるわけでございますが、この面についてはどういうふうな御見解でございましょうか伺います。
#81
○参考人(家近正直君) ただいまの御指摘の点は、一方において経理内容を公開することのメリットとそれに対するデメリットのバランスの問題であろうかと考えます。先ほどからの御意見の中にも多々出ておったわけでございますけれども、有限責任会社における経理内容の適正化と開示の問題というのは表裏一体のものであろうかと考えております。今回は経理内容の適格性の担保という形での外部監査制度が見送られて、今御指摘の登記所への公開の制度だけが少なくとも法制審議会の要綱段階では確定しておったわけでございます。この点をどういうふうに考えるか、中身の適正化がないものを外部へ開示することは片手落ちである、こういう評価もあろうかと思います。
 しかし、法制審議会としては、少なくとも開示をすることだけでも意味があるし、現行法のもとにおいて経理内容の適格性の担保が全くないわけでもなくて、不十分であるから改善を必要とするという程度のことでございますので、私は公開についてそれなりの評価をしておったわけでございます。
 もっとも、今御指摘の幾つかの点については問題があることは承知いたしております。 しかし、これも結局は有限責任会社の計算の公開についての踏ん切りの問題でございまして、どちらにするかとこういう観点でこの問題を考えました場合には、御指摘のような問題点は十分に考慮されるとしても、なおかつ私は公開をすべきであろう、かように考えておるわけでございます。
#82
○矢原秀男君 河本参考人と稲田参考人にお伺いをしたいと思います。
 今回の法律案が、一つは我が国の株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の規制が形骸化している実情等にかんがみ、このような会社にも適合する法制度を整備する。二番目には、会社債権者の保護のために必要な措置を講ずる。三番目には、会社の資金調達の方法を合理化する等のため商法、有限会社法及び社債発行限度暫定措置法の一部を改正しようとするものである。こういう三点が大きな柱だと思うわけでございます。
 河本先生と稲田先生の先ほどお話も伺っておりまして、大体の骨子、私もお受けをしたわけでございますが、これが確かに二十一世紀以降開かれた会社経営という場合に、小さくとも日本だけではとどまらない場合、やはり国際化という問題でも信頼と責任や、またその会社や有限会社も繁栄していただかなくちゃいけない、そういうふうな観点の中で望まれる株式会社、有限会社というものの方向性をもう一度簡単で結構でございますけれども、示唆していただければ幸いと存じておりますので、お二人の先生にお願いしたいと思います。
#83
○参考人(河本一郎君) ちょっと一言で即座にお答えがうまくできますかどうか自信がないんでありますが、まず中小企業といえども国際化の波に洗われていくということはもう当然のことでございますので、そこでそれに対応させるのにはということの第一点は、やはり何度も繰り返しになりますが、その体質の改善、しかもこれは大企業の場合でありますと、資本市場等々から、例えば銀行に対するBIS規制というようなあんなものがありますように、市場経済の方から自然と圧力がかかってまいりますが、中小企業の方にはまだそういう面からのプレッシャーは出てまいりません。そうしますと、ある程度法律の制度によりまして財産的基盤の引き上げを図らざるを得ない。それが今回の、十分ではないとは言いながらも、まず第一歩として株式会社制度に一千万円の最低資本金制度を導入し、有限会社の最低資本金を三百万円に引き上げた。これは国際的な水準に大体近づいてきておるというふうに思われます。
 それから、後のディスクロージャーの面でございますが、これも先ほど来企業のプライバシーとの問題が出ておりますが、これは非常に形式的な発言になるかと思いますが、現在の法律そのものが株式会社である以上はすべて貸借対照表は官報に載せなさいというふうになっておりまして、やはりこの範囲内では法律そのものがこれをプライバシーとは見ておらないのであります。そしてまた、そこで要求されております程度の公告でありますと、これは家近参考人がおっしゃったように、有限責任の裏づけのようなものでありまして、これを企業のプライバシーの侵害とは到底言えないだろう。 ただ、それじゃそれをどうして強制しないかといいますと、これは余りにも無法状態を放置してしまっておったという以上は、この
線を強力に進めていくということはこれは余りにも非現実的である。そこで、新たな制度といたしまして、この登記所への公開制度が持ち込まれてきた。
 ただ、この場合にはどうしても線引きをしなきゃなりません。その線引きとしてどの辺を引くかということが、まさにこれは現実との妥協の問題であろう。そして私は、先ほど申しましたように、資本金三千万円ぐらいの上であればまず現実やれるんではないか、こういうふうに思っておりましたので、この方向を進めていくことがこれも国際的な基準に合ってくるんじゃないか。これをいつまでもやらずにおりますと、また例によって日本の企業だけが有利なことしておると、これは現にドイツとの話の上ではそういうことがやっぱり出てくるようでございます。だから、これも一つの国際化の方向であろうと思いますし、それから先ほど申しましたような資本の組み入れのところなどでは、もう全く日本だけが異質なことをやっておるというような点は、これはもうぜひ国際化の観点からも改めていただきたい、こういうふうに思っております。
 どうも十分に考えてまとめておりませんでしたのでお答えが十分でございませんが、お許しいただきたいと思います。
#84
○参考人(稲田俊信君) 中小企業の国際化という問題にどのような対応ということなんですけれども、経営者というのは中小企業といえども非常に合理化に関して関心を持ち、その努力を払っているということは御承知のとおりだと思います。
 中小企業が国際化をするその一番基盤となるのは、やはり法的な信頼性というものを持っていかなきゃならないのではなかろうか。こういう意味では、各国の法規制が徹底される中で、日本の中小企業だけが何らその拘束性がない。大きい法典はあるけれども中小企業に実態が合ってない、こういう段階のものが外へ出ていっても、これは信頼性がないんではないか。やはりそれに合った法制度というものをつくり上げ、それを遵法してもらう、遵守してもらう、こういう方向を持つことによって企業の信頼性をかち取ることができるんではないか。
 こういう場合に、今河本先生も言われた配当する利益を資本に組み入れた場合に、直ちにこれをみなし配当とみなしてこれに税金をかけるというのは、これは証券取引の方の基本的な考え方と言ったらおかしいわけですけれども、理論的と言っても差し支えないと思うんですが、会社に利益が出ますとまずそこに税金がかかるわけなんですね。株主というのは企業の所有者であるわけですから、そこに税金を払って残されたものは本来株主そのものの所有に属する。これに対してもう一度得たときに税金がかかるというのはそもそもおかしいじゃないか、こういう意見すらある。ただし、これは法政策、税金の政策の問題でありますから、こういうことに対しては全くこれを否定するということは、私もそこまで申し上げませんけれども、中小企業の体質の改善を図ろうという一つの施策が出た場合に、そのような基本的な理論というものをそのまま適用するというわけではないんですけれども、一応もう税金はもらっているじゃないか。それで中小企業を体質改善して基盤を強固にする、こういうために現金配当すべきものを会社に留保する、こういうときぐらいはもう少し大きい見地からこれに対する税制対策というものがあっていいんではないのか、こういうふうな感じがいたします。ぜひこういうような観点をとらえまして、中小企業に合う法制度をひとつ整備をしていただきたい、こういうふうに思います。
#85
○矢原秀男君 ありがとうございました。終わります。
#86
○橋本敦君 参考人の皆さん本当にありがとうございます。私の持ち時間が大変少のうございますので、わずかしかお伺いできませんが、よろしくお願いいたします。
 最初に、稲田先生が「小規模株式会社の実態とその法的分析」ということで日大会社法研究会でお書きいただいている文を読ましていただきまして、資本金一億円未満の株式会社の実態調査をなさったことをおまとめいただいておりまして、大変興味を持って拝見いたしました。これは昭和五十五、六年の調査かと思うのですが、
   〔委員長退席、理事矢原秀男君着席〕
これを読みますと、「株式会社にした理由」、その理由で一番多かった答えが、実は第一は、調査対象となった千三十八社中五百六社、四八・七%、約半数が税法上の優遇措置を受けようとすることがその理由だということになっております。現在でもほとんどそういう傾向は変わっていないと思います。私が大蔵省からいただきました資料でも、法人にした場合と個人の場合と税負担率が本当にひどく違っております。個人の場合が我が国は非常に高いわけですね。ですから、こういう実態、政府の政策と言ってもよろしいでしょうが、これが一つは中小会社をたくさん実はつくり出している背景にある。この点について先生の御見解はどのように見ていらっしゃるのでしょうか。まず、それをお伺いしたいと思います。
#87
○参考人(稲田俊信君) まさにそのとおりであろうかと思います。とりわけ、これは実態調査をやったときに学生が直接経営者から聞いてまいりました一つの笑い話と言っても差し支えないんでしょうけれども、非常に当を得た、当を得たと言っていいか問題がございますが、話があるんです。企業者が会社経営をするという場合に、やはり税金の問題がある。その中で一番企業者にとって魅力なのは何かと申しますと、実は経費をかなり認めてもらうことができる。そういうところから自分たちは小さい子会社をさらにつくっていくんだ。いわば四社集まりますと、一社で三百万円ずつ認めてもらいますと千二百万の費用を使うことができる、こういうことを学生に教えてくれた。こういうようなことがございますので、単に税率が安くなるというだけではなくて、いわば利益というものに対する控除額が非常に多い、これは個人企業ではほとんど厳格で認められないというようなところがあるんではないか。 こうなりますと、ある意味では行政そのものの問題ではなかろうか、こんなふうに考えるんです。
#88
○橋本敦君 そこからいろいろな問題も起こるわけですけれども、基本的に有限責任制度を活用するということがいわば近代的な会社法の期待しているところなんでしょうが、実際はそのことを選択するよりも今言ったことの方にウエートがかかっている。そうして有限責任制度の選択どころか、会社組織にしたことによって中小企業が今度は実際融資を受ける場合の個人保証あるいは取引の個人保証等で、お話にもいろいろございましたように無限責任を実態上負うという実態になっている、こういう状況があるわけですね。だからしたがって、ここらあたり最も合理的な中小企業に対する法制度がどうあるべきか、国の政策との関係で私はいろいろ検討すべき課題がいっぱいあると思うんですね。最低資本金制度を導入したことによってこういった問題のすべてが一挙に解決のめどが開かれるというものでは決してないというように思っておるわけでございます。
 もう一つの問題は、法務省としてはこの最低資本金制度導入の一つの理由として債権者保護ということを言ってまいりました。ここに中小企業庁の委託で財団法人産業研究所が会社法改正問題研究委員会を設置して報告書を出されておりますが、この中でも資本金の額と倒産との関係においては合理的な因果関係というものは認められない、実態としてはそういうものではないということを言っておるわけですね。これも私はそのとおりだろうと思うんです。そういたしますと、本当に債権者保護ということを考えて会社の基本財産の充実強化ということを考えるならば、なるほど今の時代の経済動向からいって一千万ではとても間に合わぬということも言える。そういたしますと、今度の最低資本金制度導入が現に具体的にどういう意味を持つか。
 家近先生の先ほどのお話ですと、近代的な合理的な会社制度の方向に向かっての第一歩になれば
という期待をおっしゃったのですが、現状として一体どのように合理的な機能を持つのであろうかということを私は疑問に思うんですが、その点についてこういう点があるという御意見がありましたら、河本先生、家近先生、稲田先生、一言ずつで結構ですが、お考えのところを教えていただきたいと思います。
#89
○参考人(家近正直君) 先ほど申し上げましたことでございますけれども、将来の方向づけの第一歩ということですが、これは皆さん方大体お認めいただいておるのではないかと思いますが、有限責任会社において最低資本金制度は必要であるということが一つ。それから、これはやはり現実との調和の関係では段階的に徐々に考えていくべき問題であるということ。
 したがって、今回の改正で一挙に具体的に目に見えるような効果が出るかと、こう問われますと、それは必ずしもはっきりお答えすることはできないということになりますが、だからといって我が国の株式会社制度の最低資本金の採用をあきらめるということ、これはもう一つやはり将来の株式会社制度の健全な育成という面から考えましては非常に後ろ向きの議論になるであろう。したがって、今御指摘のように具体的な効果は目には見えないけれども、将来に向けてそれを育成していくためにはここで踏ん切る時期ではないか、かように考えるわけでございます。
#90
○参考人(稲田俊信君) 先ほども申し上げたんですけれども、最低資本金という資本金は決していわゆる債権者保護を目的とした資本金というものではないと私は思います。一千万だとか三百万というものが、実際倒産した企業を考えればわかりますように、これはもうほとんど意味をなしてない。ただ大会社になって、大きい企業の資本金というのはやはり控除額が多くなるというところから一つの債権者保護的機能というものが非常に大きくなるかと思います。しかし、これも倒産したときは余り意味がない。そういうふうに考えてみますと、小規模会社におけるところのとにかく最低質本金というものは、有限責任会社組織を利用するためのまさに対価、いわばそれを利用するところの使用料というもの、こういう意味合いしかないというふうに私はとるべきではないか、むしろそうとった方が一般の人々を納得せしめる説得力に富むんではなかろうか。
 そうしますと、じゃその額ということになってまいりますけれども、これも少なくとも我々が一般営業をやる場合のその営業資金というものが前提となって物を考えていく、それでいきますと果たして一千万、三百万というのが妥当なのかというと、これもやはり低いような気がする。そうなりますと、まさにこれは妥協の産物で一千万、三百万という額が出てきて、ここに関して合理的な説明をすることの方が私はむしろ無理ではないか、こういうふうに思います。
#91
○参考人(河本一郎君) 一番最初に報告いたしましたときにも、私あえて最低資本金制度と債権者保護というものを結びつけないで御報告申し上げましたのは、まさに今稲田先生のおっしゃったのと全く同じ考えでありまして、債権者保護だけでこの制度の理由づけをしていくとこれはどうも難しいことになります。実際、これもまさにあるべき純資産の額にすぎませんので、なくなってしまえばこれはもう全く何にもなりません。それで、やっぱり私どもが皆さんにお話ししておりますときには、有限責任という制度に入っていくときの入り口の入場料みたいなものだ、そういうふうにお話しした方がわかっていただけるんじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。
 しかし、全然ないかといいますと、出発のときからごくわずか負債が出てきたらもうそれで倒産というのと、まだ三百万あるいは一千万の枠があるというのとでは、やはりある方がいいのではないかというふうに思っております。
#92
○橋本敦君 ありがとうございました。
 いわゆる対価、使用料というお考えもよく伺ったわけですが、実態は有限責任会社に入っていく使用料として払ったと、これはまあ考え方でありますが、入っていった実態は資本金一千万にしたところでやっぱり私は個人保証を含む無限責任体制が解消をしないと思うんですね。そういう意味で私は、中小企業問題の法的対応の難しさがあるということは認識しておかないといけないなと思っておるわけでございます。
 最後に、錦織さんにお伺いしたいのでありますが、先ほどお話のように、今回の最低資本金導入によって八十万社ですか、あるいは有限会社が七十万社ですか、かなりのところが増資の努力をするかあるいは株式会社から有限会社に組織変更するか、しなければ会社法の適用から除外されるということになる。これは数からいいますと八十万社、七十万社、その従業員、家族も含めますと私は大変な今度は大きな広範な影響を持つことだ、こう思っております。
 大阪の商工団体連合会等で調査をいたしますと、その組織ではかなりの九〇%に近いところがそういう必要が出てくるわけですが、五年あれば何とか努力してできそうだというのが半々、それから残りは、今の厳しい経済事情のもとで資本金が今三百万ぐらいのを一千万ということになればこれはやっぱりそれだけの融資をどこかで受けなきゃならぬというようなことも含めて、これは自分の力量では難しいんじゃないかということで心配をしているという不安もいっぱいあるわけでね。
 そういう状況が実態としてあるわけですが、いずれにしてもかなりの負担をしなければならないという状況になってくるわけで、それだけの負担をして、あるいはそれだけの努力をしてなぜやらなきゃならぬのか、今現にこれで無事に倒産もせず、そしてまた他に迷惑もかけず、そしてまた取引としてはそれなりに社会的活動もやっているんだが、なぜこの現状それだけの苦労をしなければ会社法の適用を受けられなくなるのか、その点はどうも納得できないという声を聞くんですが、いかがなんですか。
#93
○参考人(錦織璋君) 再三申し上げたかとも思いますけれども、この最低資本金をそもそも設けなきゃならないという理由の一つに国際的な広がりという問題があるということも事実でございますし、なるべく低ければ低いほど中小企業の対応としては負担が軽くなるわけでございますが、しかし余り低い金額になりますと、そもそも最低資本金制度を設けるという趣旨からまた外れてくるという問題もございます。そんなこともございまして我々も大変苦渋に満ちた選択ではあったのでございますけれども、何とか努力をして一千万円あるいは三百万円程度の資本を確保することによって、あえて言えば社会的責任を中小企業も負っていこう、こういうことで結論を出したわけでございます。したがいまして、百五十方社が現実には何らかの形で負担を負わなければならないわけでございますので、行政としてもそれに見合うようなひとつ誘導策をぜひお願いしたいというのが我々の意見でございます。
#94
○橋本敦君 終わります。
#95
○星野朋市君 私は主として実務上との関連からお尋ねしたいんですが、最初に家近先生にお尋ねいたします。
 今回の法改正の一つのポイントは最低資本金の問題でございますけれども、もう一つ画期的なものは、例の会社設立に関して今までは発起人七人だったのを一人にしたというところも大きな問題でございます。もう一つございますけれども、これはちょっと時間が長くなりますのできょうは省きます。そうしますと、今御質問がありましたように日本の会社というのは非常に税法上の絡みで多過ぎるという認識を持っておるわけですね。これは稲田先生もおっしゃいましたけれども、法人格にすれば個人に比べていかに節税できるかという大きな問題がございます。
 それで、確かに先ほど家近先生おっしゃったように、今までの発起人七人というのは家族間で問題が起きるケースが間々あると思いますけれども、実際には、今度最低資本金が一千万円になりますとなかなか家族という問題は起こりにくいと思いますね、友人とかそういう関係、資本の持ち
寄りということになると思います。そうすると、これは家族じゃございませんので若干チェック機能が働くと思います。ただ、一千万の金を用意できる者は簡単に今度は会社ができてしまう、ますます法人がふえるんじゃないか、そういう懸念が一つあるわけでございますけれども、その点についていかがでございましょうか。
#96
○参考人(家近正直君) 確かに、立法というのはいろんな要請をどういうふうに調和するかという点の難しさがございまして、御指摘のように発起人の数を減らせば減らしただけでまた新しい問題を発生せしめる、こういう自己矛盾を含んでおるのは御指摘のとおりだと思います。ただ、これによって会社の設立が容易になるか、あるいは最低資本金を上げることによって困難になるか、この問題は現実に改正を施行してみないとわからないわけでございますが、やはり法律には多面的な要素が必要であろうかと思いまして、一方においては経済の活力を高めるために会社の設立を実態に合わせてある程度容易にやる、今回の設立に関する改正はまさにその点を眼目に置いておるわけでございまして、それはそれとして方向性は正しいと思うわけでございます。
 しかも、今回は発起人の制限を外したというだけでございまして、幾らの発起人を集めなければならないかということについては全く法律はタッチしないわけでございますから、多人数の発起人が必要な会社設立にはまたそれで対応できるわけでございますから、むしろ最低資本金を上げることによる一つの隘路はできるかもわかりませんが、逆に設立手続に関しては円滑、合理的な形態ということになるのではなかろうか、かように思っておるわけでございます。
#97
○星野朋市君 そういうことからいえば、本来は最低資本金一千万なんというんじゃなくて二千万、もう少し大きくとも本当はそれの方がよかったと思うんですね。というのは、これは単純に比較できるかどうかわかりませんけれども、ドイツあたりは株式会社は二千百社ぐらいしかないんですね。日本の会社がいかに形骸化しているかということの一つのあらわれだと思うんですよ。 それで、概念的に言えば今中小企業というのはどうでしょう、一千万とかそういうことでなくて、今の経済の実態からいえば先ほど錦織さんもおっしゃったが、一億円という案が出たんですけれども、それぐらいでもしかるべきだと私は思うんですが、そこら辺稲田さんいかがでございますか。
#98
○参考人(稲田俊信君) ただ、この最低資本金どうのこうのという資本金というのは、もう考えてみますと設立の段階ではいわば元入れ金なんですね。この出資されたものは即それが開業準備費として役立つ。こういうもので、一千万入れるという場合には一千万入ったお金はこれは使っちゃいけないというわけじゃないんです。新しい財産にして持っていいわけですね。そうなりますと、現在営業をしよう、何か事業をやろうといった場合に、一体一千万円の事業というのはどの程度なのか。例えばビルの一室を借り電話をつけ、あるいは幾らかの机だとか文具をそろえる、もうこれだけで何百方とかかってくるわけですね。 これはすべて考えていきますと、そんなのはもう当然に営業資金として一千万を持ってなければある一定の事業というのはほとんど無理である。となれば、それは全部元入れにしなさいと、これだけのことなんです。
 だから私に言わせますと、有限会社は三百万、株式会社は一千万となっておりますけれども、このぐらいの営業資金のない人が事業をやろうなどというようなことはもともと思わないんじゃないか。としますと、決して一千万、三百万にしたからといって事業に対する新規参加ということが低下するんではないかという懸念は全くないんではないのか。ただ、むしろ既存の企業の人たちの方がこれは今営業続けているわけですね。そこへ新たに資本金を出しなさいということになりますと、自分で借りてきて入れなきゃいけない。これは三百万を上げる、あるいは七百万を上げるという場合のそのお金は、自分で借りてきて出資する。確かに事業として使えるんですけれども、自分の借金は残る。こういう意味で、むしろ既存の会社の経営者の方がこれは大変ではなかろうか、こういうふうに私は思うんです。したがって、これが決して新規参加の活性化を妨げるなどということはあり得ないというふうに私は思っております。
#99
○星野朋市君 河本先生にお尋ねいたします。
 先ほど利益の中から資本組入れというお話がございましたんですけれども、資本組み入れができるぐらいの利益を上げているところは、これは要するに利益の資本組み入れは当然のごとく額面でするわけですから、その一株当たりの実体は、そういう利益を上げて資本組み入れできるぐらいならば、額面よりはるかに高い、要するに含み利益を相当持つことができるわけですね。だから、大会社になったらこういう株式配当するなんというのは大歓迎なんですよ。中小企業についても同じことで、資本組み入れすることに特別の減税措置、こういうものを講じる必要はないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
#100
○参考人(河本一郎君) 減税措置というのではなくて、むしろその場合に配当があったものとみなして株主の方に課税しないということなんですが、それが減税だと先生おっしゃっておるんだろうと思います。これは、私どもがいつも比較として申しますのは、現在でも資本準備金を組み入れて無償で出します場合は、これは現在税金の方でもみなし配当としてかけておらないんですね。かけているのは今の株式配当と、それから利益準備金を資本に組み入れたという場合にかけておるわけでございますね。私どもは、資本準備金の資本組み入れでかけないのなら、実際の現在の株の表章しておる実価には利益準備金を組み入れようが利益を組み入れようが、そこの資産項目には全く何の動きもないわけですから、その組み入れた前後によって株主が持っておる一株当たりの実財産はふえもしてない、減りもしておらず、なぜそこに税金かけるんだと。かけるのであれば、その株を売って利益が実現したときにそこでキャピタルゲインでかければいいんだ。それは現にもうキャピタルゲインは実現しておりますのでね。だから、資本準備金の組み入れにかけないのと同じ理屈ではないか、こういうふうに考えておりまして、それに合わせるような商法の改正を今やっていただこうとしておる、こういうふうに理解しております。ちょっと御質問に対してうまく答えられましたかどうか。
#101
○星野朋市君 それはちょっと、見解の相違ですから。
 最後に、錦織さんにお尋ねいたします。
 今まで一千万に満たない中小企業は増資が大変だ大変だというお話を聞いておるんですけれども、一方貯蓄統計というのを見ますと、法人含めて千八百万というような数字が出ておるわけです。これは中小企業の大変なところだけが特別にそういう数字を除外しているわけじゃないと思うんです。五年間ぐらいかかれば、いざということを考えれば、そんなに難しいことじゃないと思うんですけれども、いかがでございますか。
#102
○参考人(錦織璋君) 貯蓄と資本の増資との関係について明確にお答えできる私は知識は持っておりませんが、我々の今までの調査、アンケート等によれば、やはりそれなりの御苦労があるというふうに答えられておりますので、特に法律で強制をされるということ等から考えてみるならば、それは誘導するのが一番政策的にも適合するのではなかろうかというふうに考えております。
#103
○星野朋市君 終わります。
#104
○紀平悌子君 河本先生と稲田先生にお伺いをしたいと思います。
 先ほどからお話を伺っておりますと、何か商法改正の建前と、それから内容的な本音の部分というのが相当乖離しているなというふうに感じながら伺っておりました。
 そこでお伺いしますけれども、商法の改正に伴って債権者保護のため最低資本金制度を導入すれば、お話を伺いますと、まあ五年の間にはとおっ
しゃいますが、中小零細の会社経営者の方々に負担がかかってくる、またディスクロージャー、会計内容の開示を充実すれば会社経営の実態に明らかにはなりますけれども、もし経営が今少し危ないというような状況のときは、そうした開示したゆえに逆に債権者が群がって倒産してしまうこともあるというふうに伺っております。ですから、なるたけオープンにしたくはないというお気持ちがあるように伺っております。これは逆に会社債権者からしてみれば、自分の債権を守るためにはやはり徹頭徹尾オープンにしてもらった方がいい。まさしくこのように利害関係というか、あるいはそれぞれが希望するというか、それが対立をしているという状況で、先ほどもバランスというお話が家近先生から出ましたけれども、こういう状況の中で一体商法改正のあるべき姿というものは、特に中小零細企業への配慮と、それから会社規模に応じた法制の整備というものを図っていくということはどういうふうにすればよろしいか。もちろん、今法案として結果は出ているわけですけれども、ビジョンというか、たくさん方法をお持ちだと思いますが、肝心なところを一言ずつでもお伺いをしたいというふうに思います。
#105
○参考人(河本一郎君) ただいまの企業の経営が悪化しているときにディスクローズをすると、それが引き金になってむしろ倒産を早めるというのは、これはまあ大企業についてもそういうことは言われますんですね。
   〔理事矢原秀男君退席、委員長着席〕
それで、経営者が一番悩むのはそこで、その場合は法律上開示義務があるわけですが、それを守ればもう即倒産に逆に追い込まれるというようなところから、あえて粉飾決算というようなところへいくというケースも間々あると聞いておりますんですが、その問題はこれは大小に限らずディスクローズという問題と裏腹に絡んでくる問題だと思います。
 そこのところで、それじゃどうするかということなんですが、これは紀平先生、私どもとしましてはもう割り切って考えるよりしようがない。その企業そのものがそこでこれを開示さしたら倒産するというために、それではその場合は出さぬでもいいとか、あるいはだから全般としてこういうのをやらぬでもいいんだというオール・オア・ナッシングの議論になってしまいますと、何とかしようと思いましても何とも解決の方法がないということになってしまいます。そこで、私どもはこれは一つの制度としまして、ある程度以上の企業につきましては、そこのところは万が一の危険を考えてもその真実を出してもらう、それがやっぱり社会全体のためになるんだという割り切り方しかお答えすることはまだできませんのです。
#106
○参考人(稲田俊信君) 河本先生がおっしゃいましたように、非常に悪化した状態をディスクローズするというのはいろんな問題があろうかと思うんですけれども、法の建前からいきますと、破産法も債務超過をしたならば破産原因になっているわけなんですね。そもそもが債務超過は破産原因なんです。これをディスクローズするということはどういうことかといいますと、悪化しているところへさらにつぎ込むような債権者を保護しようということだと思うんですね。したがって、これはまさにどこでとどめる、企業をつぶすかつぶさないかというよりも、さらに連鎖倒産をするような企業をむしろとどめる、こういうふうに御理解いただいた方が、悪化している場合でもディスクローズせよという一つの理解は得られるのではないか。
 確かに一企業はつぶれるかもしれませんけれども、それをそのまま放置すると、さらにいろんな企業がその企業との間で取引しているわけですから、中小企業の倒産の一番多くは連鎖倒産でありますから、元請であるとかあるいは自分の助け合っている仲間、これかつぶれたことによってかぶっていくのがほとんどであると言っていいと思います。ただ、放漫経営だとかいうのはちょっと別でありますが、通常はそうであるとなるならば、やはりそういう連鎖倒産等を防ぐためにはこれは法制度としてやむを得ないという御理解をいただければよろしいんじゃないかと思います。
 もう一つ、小規模会社も大規模会社も今の一つの法律で、一つの法典と言った方がいいかもしれませんけれども、これを全部規制しようというのは法形態としても非常にまずい形態であろうと思うんですね。言うならば理解しにくい、また中小企業者が利用しにくいという面が出てくる。そういう点では、最初のうち法務省もいわゆる上場会社を前提とした大きい企業とそれから小さい企業に対する法というのを分離してかけようとしたんですけれども、これは小規模会社から猛反発がございまして、要するに株式会社という名前をとられるということが、何か非常に社会的信用を失うというようなことになって取り外したんですけれども、やはり法形態、また利用という点からいきますと、大きい規模の会社法とそれから小さい会社法というものを分離してやった方がいいんではないかというふうに私は個人的には考えるし、また研究会でもそういうふうに発表いたしました。
#107
○紀平悌子君 恐らく大変難しい問題を一言でというのは私としても失礼な質問だったかもしれませんけれども、一部わかりました。
 次に、家近先生にお伺いしたいと思います。
 一人会社の会社設立制度というものを認めました。今回の法改正案で大会社等が自分の系列会社をつくって、いわゆる非関税障壁の一つと言われている系列会社のシステムを強化してしまうのではないかというふうな心配が聞かれます。この点につきましてどう評価されますか、お伺いします。
#108
○参考人(家近正直君) 大企業の一人会社の設立は現行法でもごく一般に行われておりまして、今回の改正がありますと手続的に若干手間が省けるというにすぎないのでございますので、今回の改正と今御指摘の問題とは直接関係がないのではないか、かように理解いたしております。
#109
○紀平悌子君 時間もございませんので幾つか伺いたい点を省きまして、河本先生と稲田先生にお伺いしたいと思います。
 私が不十分な聞き方でございますので失礼があるかもしれませんが、先ほど下稲葉委員から、この法改正でどの程度実効性があるか、お言葉は違ったと思いますけれどもそんな御質問があったと思います。河本先生からは、実態に合わせてやったと、これもごく省略して申し上げております。稲田先生からは、法改正のメリットは法の理念を明らかにするということにあるというふうなお答えであったかと思います。足りないところは補っていただきたいと思いますけれども、しかし下稲葉委員の御質問の趣旨と同じかもしれませんが、法律というもの、法の命題というものは、やはり実効性がどのくらいあるかという法益というか、そういうものにもあると思いますので、今回は会社資本の充実による会社債権者の保護というものがこのこと自体では十分行われない、今後の段階的な改正のワンステップとはいいながら、改正の目的と内容との整合性というものを欠くという点で実効性に余り希望というか、それが持てないような気がいたします。簡単に御感想で結構でございますのでお願いいたします。
#110
○参考人(河本一郎君) 私は、実効性がないとは考えておりませんので、少なくとも今回は一部ではありますが、この一部実現されましたならば、その範囲内におきましては実効性は十分ある。例えば、既に申しましたように設立の手続が楽になる、あるいは最低資本金制度の問題などはこれはもう法律の力でどうしたって効果が出てまいりますし、したがいまして、実効性が上がらないと先生おっしゃっているのは、例えばこの改正の中のどういう点をおっしゃっていらっしゃるのか、ちょっとその点、私にもし重ねて、恐れ入りますがおっしゃっていただきましたら……。
#111
○紀平悌子君 例えば債権者保護。
#112
○参考人(河本一郎君) 債権者保護ですか。これは先ほど言いましたように、私どもは報告の最初から余り債権者保護ということと今回の資本金の引き上げと結びつけておりませんので、法務省の
御説明が債権者保護ということでこれを説明してこられたんだろうと思いますが、私どもは、それはもちろん入り口のところで十分あることはあるんですけれども、これによって債権者保護の万全が図れるというような効果は最初から考えていないので、その点は最初から実効ということは余りそこへは結びつけていないということでございます。
#113
○参考人(稲田俊信君) 実効性の問題については、もう実効性と言うならば実際に行われている社会事実を前提として法をつくれば一番簡単であるわけです。しかし、それをもとにするならば法は全く要らないということは先ほど河本先生もお話しになったとおりでございまして、そうした実効性を図るためには、実態をとらえながら同時に法の目的であるところの資本充実であるとか債権者保護であるとか、あるいは資金調達の簡易性だとか、そういう一つの理念というものを歯どめにして法をいわばゼロのものからそういう理念のところへ近づけていく、そういう意味で私は理念という言葉を使ったわけで、やはり実態と理念とが全く一致するのが一番理想型である。しかし、どうも事実の方がほとんどないというものは、やはり理念を絶対に貫かなきゃならないところまではぜひとも高めてもらいたい、こういう意味でありまして、一たんつくった限りにおいては実効性を持っていただきたい、こういうふうに思っております。
#114
○紀平悌子君 最後の意見というか質問を申し上げさせていただきます。
 家近先生にお伺いしたいんですが、皆様に実は伺いたかったんですけれども、私も幾つかの法律というものを市民サイドで見守ってきた。どういうふうにできてくるか、また一部改正がどういうふうに行われるかという経験の中から、法律というものは一たん決められますとそんなに早く再改正するとかいうふうになりません。この点につきまして、前回の改正が昭和四十九年から五十六年で、七年間でしょうか。それから、このたびの昭和五十六年から平成二年でしょうか、九年間かかっている。非常に長い時間をかけてこの重要な法改正に取り組んでこられているわけですね。一歩前進という御意見でそれはそうなんでしょうけれども、この間五年間、例えば五年間の経済変動とか国際情勢というか日米構造協議の中で、一たん決まった法律がここを次はやりたいという話でそれにかけたいんですけれども、次はなかなかないというのが今までの経験でございますので、一言で結構ですからその辺のことを。
#115
○参考人(家近正直君) 私も全く同感でございます。法務省はある意味では非常に民主的で、各界の意見を極めて丹念にお聞きになるために、今度はそれをまとめる段階でなかなか難しい問題が出てくるのではなかろうかと思います。
 御指摘の昭和四十九年、五十六年、それから去る衆議院の法務委員会の附帯決議、こういうのを見ますと、何年も前にやった同じ内容の決議を国会でまたなさる、これは何とかしていただきたいというのが私の本音でございます。
#116
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#117
○委員長(黒柳明君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の先生方に一言御礼申し上げます。
 本日は、本当に長時間、貴重な御意見を承りましてありがとうございました。 委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。
 本案に対する審査は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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