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1990/06/21 第118回国会 参議院 参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第8号
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1990/06/21 第118回国会 参議院

参議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第8号

#1
第118回国会 法務委員会 第8号
平成二年六月二十一日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月二十日
    辞任         補欠選任
     中西 一郎君     鎌田 要人君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         黒柳  明君
    理 事
                鈴木 省吾君
                福田 宏一君
                安永 英雄君
                矢原 秀男君
    委 員
                鎌田 要人君
                斎藤 十朗君
                下稲葉耕吉君
                林田悠紀夫君
                山岡 賢次君
                北村 哲男君
                櫻井 規順君
                千葉 景子君
                三重野栄子君
                橋本  敦君
                山田耕三郎君
                星野 朋市君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  長谷川 信君
   政府委員
       法務大臣官房長  堀田  力君
       法務大臣官房審
       議官       永井 紀昭君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  井嶋 一友君
       法務省矯正局長  今岡 一容君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       大谷 禎男君
       外務省国際連合
       局人権難民課長  角崎 利夫君
       大蔵省証券局企
       業財務課長    中川 隆進君
       厚生省健康政策
       局総務課長    小沢 壮六君
       中小企業庁指導
       部組織課長    藤原治一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、中西一郎君が委員を辞任され、その補欠として鎌田要人君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(黒柳明君) 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○北村哲男君 北村です。
 先回に引き続いて質問させていただきたいのですが、まず、株式の譲渡制限の問題についてから聞いていきたいと思います。
 二百四条ノ二の一項の改正条項ですが、ここに新規に「譲渡ヲ承認スベキコト」という点が新しく加わって改正になっているんですけれども、現行法でも今までの解釈上は単純承認ということは当然できておったようでありますし、判例学説上もよかったと思うんですが、これをあえて改正を加えたというのはどういうことにあるんでしょうか。
#5
○政府委員(永井紀昭君) ただいま委員御指摘の点は、二百四条ノ二では現行の条文上は「譲渡ヲ承認セザルトキハ他二譲渡ノ相手方ヲ指定スベキコトヲ請求スルコトヲ得」というふうな規定ぶりになっております。この場合の単純な譲渡承認の請求、すなわち要するに自分の欲する相手への譲渡が承認されない場合には譲渡をしないという選択が許されないような一見規定ぶりとはなっているわけでございます。もちろん委員御指摘のように、従来の解釈でも単純な譲渡承認の請求ということは当然できるはずだということなんですが、ただ、会社が応答しなかった場合の効果についての規定がはっきり決められていなかったということから若干いろんな誤解を生じていたわけでございます。
 ただいま委員御指摘のように、解釈上当然それは一定の法律効果を含めて譲渡を承認したものとみなすというような考え方、解釈もあり得ようかと思いますけれども、そこのところに若干疑義があったわけなものですから、それを明確にするという趣旨から、単純な譲渡承認の請求を書面をもって行った場合にはそれに対して会社が、第四項でございますが、二週間以内に通知をしないときには承認の効果が生ずるということをはっきりさせる。もちろん改正後におきましても株主が書面によらずして譲渡承認の請求をすることは自由でございます。この場合には会社は応答義務はないということになります。ただ、会社が口頭による請求でも応答をきちっとして承認すればそれは当然承認の効力が出てくる、そういうことでいろいろ錯綜していた解釈論といいますか、そういう取り扱いにつきましてきちっと法律で明確にしたというこういう趣旨でございます。
#6
○北村哲男君 解釈上確定をされたということと要件をしっかりされたという御趣旨だと思います。
 その点はよくわかりましたが、譲渡制限を今回緩和されておるわけですけれども、それによって、一般論なんですが、事実上譲渡制限の意味がなくなって会社の買収がしやすくなったり、閉鎖的な会社の運営を混乱させてしまうというふうな批判もあるようですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
#7
○説明員(大谷禎男君) 今回の改正は、会社に対して承認請求をする場合のルートを整備したということでございます。どのようなルートであれ、会社側がそのような請求を受けた場合にそれを承認するかどうかは取締役会が判断することになるわけでございますが、この取締役会の判断の自由については何ら変更を加えておりません。その主体性は依然として維持されておりますので、委員御指摘のような懸念は生じないものと考えております。
#8
○北村哲男君 譲渡制限の問題につきましては、商法とそれから有限会社法の十九条一項にも同じような規定がございます。有限会社法では社員は持ち分を他の社員に譲渡することは自由となっております。これは制限できないような規定になっております。しかし、その十九条二項では、社員外の人に譲渡する場合は社員総会の承認が必要であるという一種の譲渡制限があるわけです。有限会社は閉鎖的な会社であるということを予定してありますから当然であろうと思うんです。一方株式会社では、現行法の二百四条一項及び二百四条二項によって株主相互間の譲渡の禁止もできるようになっています。本来この株式あるいは持ち分の譲渡制限は閉鎖的な会社を対象として制定されたものですけれども、現実には上場株が証券取引所の取り扱いで譲渡制限が事実上できないということ以外はほとんどの会社がもう今は採用しているような規定であるわけですね。
 それで、株式会社と比べて有限会社の方が閉鎖性が強いにもかかわらず、この譲渡制限が株式会社の方が厳しく、すなわち株主相互間のことも禁止できる、事実上禁止されている。有限会社は株主相互間は自由であるというところでバランスがとれないような気がするんですけれども、これももちろん試案の中で検討されてきた問題であろうと思いますし、それから当然改正ということもお考えになったんじゃないかと思うんですけれども、今回厳しくあるべきところが甘く、譲渡を自由に認めた方がいいところに厳しくというふうな改正になっておるということについて、その辺はどのようにお考えなんでしょうか。
#9
○説明員(大谷禎男君) 現行法のあり方が今委員御指摘のとおりであるということはお説のとおりでございます。
 譲渡制限の定めを株式会社において採用いたしますと、今御指摘のとおり株主間におる譲渡も制限をされるということになります。一方有限会社におきましては、社員間の譲渡は自由だということになっているわけでございます。現行法の思想は、有限会社におきましては社員相互間においては閉鎖的な会社であるということからそれなりの信頼関係が成立しているであろう、そういうことから社員間の持ち分の移動についてはそれほどの規制をする必要はないという考え方に基づくものであろうかと思います。しかし、元来会社の閉鎖性と申しますものは社員の地位の交代を余り自由には認めないということにあるわけでございますが、その趣旨は社員と社員以外の会社の外の者との間の地位の交代にとどまらず、社員相互間の地位の交代についても同じような趣旨が当てはまるはずであります。
 したがいまして、法制審議会におきましても委員から御指摘のありましたような問題を踏まえまして、有限会社においても原則として社員間の譲渡も制限すべきではないか、すなわち現在株式会社におきまして譲渡制限の定めを設定した場合と同じような状態、これを有限会社においては法律上の原則的な形態とすべきではないかという指摘が確かにされているわけでございます。法制審議会におきましてもそういう方向で手当てをするということで検討が続けてこられたわけでございますけれども、これまで御説明申し上げておりますように、有限会社の抜本的な見直しにつきましては次の課題のものとして考えるということにされたわけでありまして、この問題も社員の構成のあり方に対する基本的な法制にかかわるということから、今回はとりあえず検討の対象から外したということでございます。したがって、将来は委員御指摘のような問題を踏まえて本格的な検討がされることが予定されております。
#10
○北村哲男君 そうすると、そのバランスが確かに、一方のそれでいいんだという考えもあると思うんですけれども、流れというか考え方としてはもう一緒にした方がいいというふうな方向で検討されておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
#11
○説明員(大谷禎男君) 御指摘のとおりでございます。
#12
○北村哲男君 実務的にも、前からこの委員会でもずっと言われておりますように、株式会社数ある中で、ほとんど小さな会社、有限会社も株式会社も変わりないと思いますし、特に有限会社が同族だとかなんとかとおっしゃるならば、株式会社だって実態同じなわけなんですよね。それと、実務的にやはり社員相互間であっても、譲渡することによって骨肉の争いというのが多く起こるということがありますので、ほとんど私はもう変わりないような状態で検討すべきだと思うんです、その辺は私の意見でございます。
 そうすると、今のような点は今後の改正作業では当然考慮に入れて進まれるということとお伺いしてよろしゅうございますか。
#13
○説明員(大谷禎男君) お考えのとおりでございます。
#14
○北村哲男君 次に、今回の改正の中では、株式または有限会社の持ち分について、相続とか合併の場合の譲渡制限については規定してないように思えるんですけれども、これは規定しないと譲渡制限がしり抜けになるような感じがするんですが、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
#15
○説明員(大谷禎男君) 今御指摘の点も一つの問題点ではあるわけでございますけれども、現行法はいわゆる合併とか相続というふうな包括承継の場合は譲渡制限の例外とされております。この点につきましても、俗な言葉で申しますと、おやじはいいやつだったけれどもせがれは会社にとって好ましくない、したがって、せがれをそのまま社員として認めるわけにはいかないというような事態も確かにあり得るわけでございまして、そういう点についても法制審議会では検討がされていたわけでありますが、この場合について、しかし制限を直ちに設けるというふうなことになりますと、財産権の規定についての一つの制約になるというようなことから、必ずしも問題は簡単ではないということで、さらに慎重な検討を要するということにされているわけでございます。
#16
○北村哲男君 先回の委員会でも、今度の法改正によって合併が多く出てくるんではないだろうか、資本金を上げるために合併が多く出るんじゃないかというふうな質問も、どなたかから出されたような記憶があるんですけれども、合併によって譲渡制限がじゃ堂々と免れ得るということになるわけですか。
#17
○説明員(大谷禎男君) 現行法のもとではやむを得ないのではないかと思われます。
#18
○北村哲男君 次の質問に入ります。
 譲渡制限を今度定めておりますけれども、それとその会社の株主に新株引受権を認めたということの趣旨ですね。これはもう何度も説明をされておるんですけれども、この新株引受権を特別決議で排除できるということとなると、これは事実上新株引受権を認めたことが難しくなるんではないかというふうにも思えるんですが、それはどういう観点から特別決議によって新株引受権を制限するというふうな規定にされたんでしょうか。その理由を伺いたいと思います。
#19
○説明員(大谷禎男君) 今回の改正法におきましては、今委員御指摘のとおり、閉鎖会社の株主に新株引受権等を認めるということにしているわけでございますけれども、その例外といたしまして、株主総会の特別決議があれば株主以外の第三者に対しても新株を発行することができるという余地を認めております。この趣旨は、すべての場合に株主に新株引受権を認めてそれ以外の余地を一切認めないということにいたしますと、会社の資金調達の便宜あるいは資本政策等々から、かなり会社の行動を制約することになるということが懸念されるわけであります。すなわち、いろんな取引活動の展開あるいは資本構成をどうするかというようなことから、株主以外の者についても新株を与えて、新たな株主として仲間に入れたいというようなこともあるわけでありまして、そういう場合に対するやはり例外的な要素というものを認める必要があるというのが法制審議会での判断であったわけでございます。もっともそれは株主の法律上の権利を侵害するという重大な欠陥をもたらしたわけでございますから、そういう例外措置をどのような要件のもとに認めるべきかということがその次の段階として問題になるわけであります。
 その要件の設定の仕方でございますけれども、例えば現行法のもとにおきまして、株式を発行する場合に公正な価格で発行しなければならないとされております。これを第三者に特別に有利な価格で発行するということになりますと、この場合にも既存の株主の利益を害することになるのでございますが、現行商法は、その場合に株主総会の特別決議による承認があれば特に有利な価格で第三者に株式を発行してもよいという規定がございます。すなわち、現行商法は特別決議というような要件、株主の過半数が出席し、そのうちの三分の二以上の多数の承認があるというような、その程度の株主の了解を取りつけることができるのであれば、株主としてはそのような不利益を甘受するという意思を表明したものと見ることができるという考え方をとっているように思われるわけでありまして、今回の譲渡性株式の第三者への発行につきましてもそれと同じ思想に立ちまして、同じ要件のもとに例外的な取り扱いを認めたということになるわけでございます。
#20
○北村哲男君 今の点は確かに定款変更と同じ条文ですので、定款変更すれば譲渡制限を排除できるわけですから、その辺のバランスかなという気もするんです。
 それはそれとしまして、次に配当優先株の発行の問題についても改正が今回されます。これはどのように改正されたのか、その趣旨と効果について聞きたいことと、その改正の必要性といいますか、現在の社会情勢の中での必要性、例えばMアンドAに対する対抗的なものなのかという点について、まずお伺いしたいと思います。
#21
○説明員(大谷禎男君) お答え申し上げます。
 商法の二百二十二条によりますと、会社は株式を発行するに当たりましても、必ずしも同一内容の株式ではなくて、内容の異なる株式を発行することができるとされております。もっともそれも無制限にいろんなバリエーションのものを発行することができるというわけではありませんで、配当に関する内容の異なるものとかというような一定の制限があるわけでございますが、そのような種類の異なる株式の発行が認められているのでございます。
 ところが、現行法がこのように数種の株式の発行を認めてはおりますけれども、これを発行する場合の手続の規定を見ますと、その内容をすべて定款で定めなければならないということにされているのでございます。したがいまして、会社がこのような株式を発行しようといたしますと、定款にこれまで定めがないというような場合には株主総会を招集いたしまして定款変更の手続をとらなければならないということになるわけでございます。しかも、その定款の中では株式の細目にわたって規定を置かなければならないことになります。そういたしますと、会社がある種類の株式を発行したいという意思決定をいたしましてから現実に株式を発行するまでの間に株主総会を招集し、定款変更の手続を行い、そうしてその上で株式の発行の手続をとるということになりまして、極めて長期間を要するということになります。しかし、株式の発行をする場合にはその株式の条件をどのように設定するか、大きな問題は配当金額を幾らぐらいに設定するかというような問題、あるいは発行価額を幾らと定めるかというような問題があるのでありますが、そのような問題はそのときそのときの金利情勢その他の経済情勢に極めて敏感に反応するべきものでございまして、最新の市場の状況を前提として考えなければ適切な判断はできないことになるわけでございます。近時、経済情勢の変動がますます早く激しくなっておりますから、そのような要請はさらに顕著になってきております。そういう背景で現行法を見ますと、先ほど来御説明しましたような現在の商法の規定においてはほとんど数種の株式を発行するという可能性が閉ざされていると言わざるを得ません。現実にもこのような株式が発行される例はほとんど例がないわけであります。
 ところで、現行法は幾つかの種類の株式の発行を認めておりますけれども、実務界の中からはその中で特に配当に関する優先株式を機動的に発行したいという要請が近時強くされております。現行法の規定が今まで御説明しましたように少し手続が厳格に過ぎてマニュアルとしての機能がほとんどないということを考えますと、そのような実務界の要請にもそれなりの正当性があるのではないか、この点についてもう少し合理化をする余地があるのではないかということからこの改正が考えられたわけでありまして、定款で現在はすべてを定めるべきであるとされておりますが、その中の配当優先株の具体的な配当金額、これにつきましては最新の金利情勢等の経済情勢に応じて会社が決定することができる、すなわち株式を発行する取締役会の決議の中で取締役会が決定をすることができるというような改正をすれば機動的な発行をすることが可能になるのではないかということが検証されたのでございます。
 もっとも優先配当金額を取締役会の専権の事項とするということにいたしますと、その金額の定め方によりましてはその他の株主の利益が害されるということがございます。すなわち、非常識に高い配当金額をつけて発行するということになりますと、その場合にはその配当金額が他の株主に優先して支払われるということになりますから、配当株利益の存在のありようによっては既存株主の利益が害されることになります。したがいまして、その限度は総株主の総意に基づかなければならない、すなわち配当優先金額の上限は定款に基礎を置く必要があるということから、そういう点については定款で定めを置き、その授権のもとにその範囲内で取締役会が配当優先額を定めて株式を発行することができるようにするということにしたのが今回の改正の趣旨でございます。
#22
○北村哲男君 今かなり長く説明されたので中に入っていたかもしれませんが、優先株、議決権のない株にすることによって、議決権がないということで買い占めの心配のない株としての要請が経済界からあるということはあったんですか。
#23
○政府委員(永井紀昭君) 優先株だけが無議決権株ということでございまして、無議決権の株を発行することによってMアンドAに対抗する手段となり得るという考え方も一部あるようでございますが、経済界では必ずしもMアンドAに対抗するための手段として無議決権株、すなわち優先株を持ちたいというそういう経済界の強い要望というものではございません。一般的に優先株というものが、これが性質によりましては非参加的なものでございますと社債に非常に類似してまいります。資金調達の便宜等を考えまして、むしろそういう優先株でありかつ無議決権株の発行枠を拡大してほしいというそういう一般的な要請でございます。
#24
○北村哲男君 私が聞いておるのは、日経新聞にかつての三月ぐらいの記事なんですが、MアンドA対策として大企業の間から要望が強かった優先株の発行手続の簡素化、それは今の御説明で結構ですけれども、もう一つ自社株買いという問題もあわせて当然問題になったと思うんですが、この点についてはどういうお考えでまた今回排除されたのか、この点についてもお伺いしたいと思います。
#25
○政府委員(清水湛君) いわゆる自己株の取得制限は現在の商法で非常に厳しくされているわけでございます。この制限を緩和してほしいという要請は経済界の一部からあるわけでございますけれども、これを緩和するということになりますと、いわゆる自己株の取得はいわば資本の払い戻しになるというようなことが前から言われておりまして、資本充実の原則との関係で非常に問題であるということから、従来からこの制限緩和については非常に消極的な考え方が強かったということは言えようかと思います。
 ただしかし、例えばアメリカの会社法制で一部認められておりますように、例えば配当可能利益の限度において自社株をマーケットプライスで取得することはいいのではないかというような議論もないわけではございません。あるいは従業員に持ち株を取得させるために経過的に会社が自社株を取得するというようなことも認められてしかるべきではないかというような議論も実はあるわけでございます。しかし、そういうようなことを一体どこまでどのような形態によるものについて認めるかというようなことについてはいろいろな問題がございますので、今後さらにこれは慎重な検討を要するということで、今回の改正案に盛り込むことは見送られた、こういう経過になるわけでございます。
#26
○北村哲男君 結論だけでよろしいんですが、慎重に検討されるとおっしゃるんですが、これは前向きというふうな御趣旨なんですか。あるいは、これは確かに理論的には浮動株ということとかそういういろんなマイナス面もあるんですけれども、ただし経済界の要請とか、それからもう一つは、実質上は持ち株会社の問題とかというふうに考えたら、自社株を持っていることも同一の会社がほとんどの株を持っているのと余り変わりないような気がするんですね。その点では前向きの検討を進めるということになるんですか。
#27
○政府委員(清水湛君) 確かに、自社株の取得が個別的なケースで見ますと別にこれが会社法の根本原則に反するというようなことにはならないのではないかというような現象も多々あるわけでございます。しかし、他方ではいろいろ問題が指摘されておる。つまり、自社株取得に対する消極論というのは、ある意味においては会社法の非常にクラシックな議論に基づくいわば一種の拒絶反応的消極論というような面がないわけではない。確かにそういう面もあろうかと思います。しかしながら、だからといって自社株の取得を緩和する方向で今後検討するということはちょっと今の段階では申し上げかねる。まさに慎重に検討するというのは、そういうような経済界の要望を踏まえて、なお問題点について十分見きわめたい、こういう意味でございます。
#28
○北村哲男君 もう一回優先株のことですが、大谷さんがお答えになったかもしれませんが、現実に優先株を発行している実例は日本ではあるんですか。
#29
○政府委員(永井紀昭君) 昭和五十年代に三回ばかり優先株が発行されたことがございます。これはたしか日立造船とそれから日本冶金工業で、三回だけでございます。
 なかなかその手続面、現在まさに改正をお願いしているところの手続面でなかなか厄介だとかそういう関係で余り発行はされてこなかったという経緯がございます。
#30
○北村哲男君 五十年代に二社ぐらいですか、日立造船と日本冶金とか、それぐらいという記録にあるんですけれども、今後この改正によって優先株がどんどんふえていくというふうな予想はあるんですか。どういうふうに見ておられますか。
#31
○政府委員(清水湛君) 優先株式は結局無議決権株ということになるわけでございますけれども、従来から企業の所有と経営の分離というような観点から、経営に参加することはしないけれども自分の収益は確実に確保したい、こういういわば俗に言う投資株主というのが配当は優先させてもらいたい、そのかわり私は議決には参加いたしませんと、こういう形でこういう株式の取得を望むというふうに言われていたわけでございますけれども、しかし一方では、余り多くの無議決権株というものを認めますと、少数の議決権のある株主だけで会社を支配することが可能になるというような弊害も指摘されているわけでございます。そういうような問題が経済の具体的な場面でどういうような形で機能していくことになるのかということについては、私ども経済の専門家ではないから、そういう意味ではちょっとわかりにくいところがあるわけでございます。しかしながら、発行手続がどうも非常に厳格過ぎるんじゃないかということについては、ある程度私ども納得し得る面がございましたので、今回このような発行手続の簡素化と発行枠の拡大ということをいたしたわけでございます。本来制度が予定したような合理的な趣旨の範囲内でこれが活用されるということについては、私どもも期待しているところでございます。
#32
○北村哲男君 今、自社株買いと優先株を行ったり来たりして大変恐縮なんですが、今度は自社株買いの問題についてもう一つ質問したいんです。
 大きな会社の場合はいいんですけれども、小さな会社の場合、お金を出して株を取得しても、それを第三者に売ったりなんかして投下資本を回収することはほとんど不可能なんです。そうすると、結局その会社に買ってもらう以外に自分で出したお金を回収する方法がない。これは私どもが実際に実務をやってみて、そういう問題で株は持っているけれども一銭にもならないということが実にたくさんあるんです。そういうことについて自社株買いというのを認めることは非常にいい方向だというふうに思うんですが、そういうふうな回収方法は、これ以外にどういうふうに解決をしようということをお考えでしょうか。関係ありませんか。
#33
○政府委員(清水湛君) 小規模の会社で、いわばお互いに出資をして小さな会社をつくった、そのうちに仲間割れをしまして自分が出資した金を返してほしい、それを回収する手段として自分の取得した株券を会社に買い取ってもらう。こういう形になりますと、これは自社株の取得ということになりまして、会社のそれだけ純資産が流出するということになるわけでございます。それを他の経営者が個人で買い取るということであれば、それは自社株取得にはならない、こういうことになるわけでございますが、委員御指摘のようなケースは、どうも正面から認めにくいのではないか、会社が取得するという形ではちょっと認めにくいのではないか。具体的な小規模会社の紛争の解決手段として、あるいは裁判所の和解の場面等で実質的にそれに類したようなことが行われることがないわけではないような気がいたしますけれども、やはり形式的には他の経営者、他の株主が買い取るという形で解決するしかないのではないかというふうな気がいたします。
#34
○北村哲男君 その辺で結構です。
 次に、株式の関係では、無議決権株の発行枠を四分の一から三分の一に広げておられますが、これは広げたこと自体はそれはわかるような気もするんですけれども、その効果というかどういうふうな理由ですか、その点について御説明をいただきたい。
#35
○政府委員(永井紀昭君) この無議決権株式は、昭和十三年当時から発行済み株式の総数の四分の一という制限が設けられておりまして、これは当時のフランス法なんかでも四分の一という線があったようでございますが、現在英米法ではこれの制限がございません。それからドイツ及びスイス等では二分の一、そういう発行枠のようになっているようでございます。
 これは先ほど申し上げましたとおり、無議決権株式といいますのは優先株でございます。優先株の発行手続を機動的にするということに伴いまして、無議決権株式の発行枠につきましても若干の拡大をしてほしいという経済界からの要望がございました。現実にはさほど多く利用されておりませんが、今後のことを考えまして、また国際的な動向を見ましても、やはり無議決権株式の発行限度の拡大をした方がいいのではないかという意見がございまして、やや中途半端かもしれませんが、四分の一から三分の一へ若干の拡大をしたということでございます。
#36
○北村哲男君 何となく必然性があるかないかわからないような改正のように思えるんですが、まあその辺はそれとしまして。
 次に、今回の改正で端株券の不発行を認めておりますね。これは、現在日本ではこの問題が必要なのはNTT一社だけというふうに聞いておるんですけれども、そんなことはないですか。その点について、それも含めて、特に端株券を発行しないでもよろしいという改正にした趣旨と、それから今言ったように、実際実務的にどれくらい必要性があるのかということについてお伺いしたい。
#37
○説明員(大谷禎男君) 端株制度は昭和五十六年改正で新設された制度でございまして、昭和五十六年改正法のもとで新設される会社に原則的に適用がある制度でございます。したがいまして、今委員から御指摘がございましたNTTは五十六年改正後にできた会社でございますから、端株制度の適用があるわけでございますけれども、一般論として、それ以外の会社でも五十六年改正後に設立されている株式会社についてはこの制度の適用がございます。したがいまして、耳にしたところによりますと、現実に端株が発行され、かつ端株券が発行されている例もあるというふうに聞いております。
 ところで、今回この端株制度につきまして、端株券というペーパーを発行しなくてもよいというような余地を認める改正を考えてきたところでございます。その趣旨でございますけれども、これはまた後ほど審議の中でお取り上げになることかとも思われますが、無記名株式を廃止したということと問題意識については相通ずるところがあるのでございますが、端株券は無記名式の株券ということにされておりまして、端株主が会社に対して端株券の発行を請求いたしますと、無記名式のものとして発行がされることになります。その段階で、端株主は端株券を所持するということによって端株についての権利の主体となるのでございますが、その反面、会社からは端株主の名前がだれであるかがわからないということになります。すなわち、端株券が発行されますと、端株券を示してもらうということによって端株主であるかどうかということを確認するという手続になるのでございます。そういたしますと、端株主も広い意味では株主の一種でございますから、会社に対していろいろな権利を行使することができることになります。例えば利益配当を端株主に対してもするということになりますと、年に一度は利益配当にあずかることになるわけでありまして、現在多くの会社で行われておりますような中間配当もするということになりますと、年に二回は会社との関係で権利行使をしなければいけないということになります。
 その場合の権利行使の仕方と申しますのは、今お話ししましたように、端株券というものを会社に示して、自分が端株主であるということを証明した上でそのような権利を行使するということになります。そうしますと、株主の数が極めて多数にわたるというような会社におきましては、少なくとも年に二回はそのような手続をとらなければいけないということになりますと、その事務の煩瑣は極めて膨大なものになることが予想されます。端株主が権利を行使する場面というのは、利益配当の場面のみではございませんで、株式分割とかいろんな場面であるわけでございます。そのたびにそのような手続をとるということは、実務的には到底たえられないということがございます。
 この問題点は、五十六年改正が成就した直後から問題意識としては提起がされておりまして、何とかその点の改善をしなきゃならないということがずっと指摘をされてきたわけでございます。そのような事情を踏まえまして、会社の選択によりまして端株券を発行することを要しないというような余地も認めるということにするのが適当ではないかということになったわけでございます。
 話が長くなって恐縮でございますけれども、この端株券が発行されるという趣旨は、端株に関する投下資本の回収を担保するということに意味があります。すなわち、株主は会社から端株券の発行を受けまして、それを第三者に譲渡することによって端株に関する資本を回収するというところに端株券の意味がございます。そこで、この端株券の発行をしないということになりますと、そのような手段が端株主から奪われてしまうことになりますので、それにかわる手当てが必要となります。その手当てといたしまして、端株券が発行されない場合には端株主に会社に対する端株の買い取り請求権を認めるということにして、その部分の投下資本の回収を認めるという手当てを反面でいたしております。これは単位未満株式について会社に対する買い取り請求権が認められると同様の制度であるということになるわけでございます。
#38
○北村哲男君 もう一点、株式について聞いておきたいんですが、無記名株式を今回廃止しておられるようですが、これは簡単に理由を言っていただきたいと思います。
#39
○政府委員(永井紀昭君) 無記名株式は現在我が国では全く利用されていないと言ってよろしいかと思います。少なくとも上場会社では見たことはございません。それからほかの会社でも、我々の知るところではどうも経験がないんですが、これは全くないと言い切っていいかどうかわかりませんが、ほとんど利用されていないというところでございます。
 それで、先ほど大谷参事官の方から端株の問題で言われましたとおり、無記名式の株券を発行いたしますと株主がその権利を行使する場合にはその都度株券を会社に供託することになります。また、会社からの株主への連絡等も、これはすべて公告ということでやらざるを得ない。非常に株主にとりましても不便でありますし、会社にとっても不便であるということ。その他、記名株式につきましても実は株式譲渡の要件を株券の交付にしておりますので、流通の場面では無記名証券化していると言ってもよろしいかと思います。
 そういったことから、無記名式株券を発行する実益がない、必要性がなかった、こういうこともございます。こういった利用がされていないこと、あるいは不便であるということから実務界あるいは学者の先生方も含めて、これはもう不必要である、また整理していいのではないかということでこれを廃止したものでございます。
#40
○北村哲男君 じゃ株式の点はそれぐらいにしまして、今度は社債の問題についてお伺いしたいと思いますが、今回社債の発行限度枠を拡大しておられまして、今までの資本の限度から今回純資産額を限度とした形に拡大しておられるわけですが、これはどういう目的で、また現実的にはどのくらいの拡大幅になると予想しておられるのか、その点について目的あるいは経済的効果等について御説明願いたいと存じます。
#41
○政府委員(清水湛君) 現在、社債の発行限度につきましては資本及び準備金を原則といたしまして、純資産が資本準備金の合計額を下回るという場合には純資産の限度、こういうことになっているわけでございます。
 しかしながら、この資本準備金というような基準というのは、これはあくまでも形式的なものでございまして、会社の中身というのは本当は純資産で決まる、こういうことに当然のことながらなるわけでございます。そういうようなことから、いわば発行会社の責任財産を実質的にとらえる基準としてはやっぱり純資産基準ということでいいのではないか、こういうことから今回発行限度をとにかく純資産額一本やりにいたした、こういうことになるわけでございます。
 このような改正をすることといたしました背景には、一つには現在社債発行限度枠の逼迫状況と申しますか、企業における社債発行という需要が非常に多いわけでございますけれども、現行のこの基準によりますとそろそろ満杯になってくるというような企業がある。そういうような状況がございまして、この発行枠の拡大ないしは、もう先進国におきましては社債の発行制限というようなこと、発行枠で規制するというようなことをむしろしていないというのが先進諸国の状況でございまして、そういうようなことを踏まえまして商法による発行枠規制自体の撤廃というような意見が経済界あるいは学者から一部主張されているわけでございますが、発行枠をすべて撤廃するというようなことは、現在の段階ではそこまで踏み切ることは非常に困難であるということから、とりあえず、先ほど申しましたような本来の責任財産の基準である純資産額基準にまで枠を広げるということで今回は一応の対応をいたしたということでございます。
 これによってどの程度企業の発行限度枠が実質的にふえるのかというような問題があるわけでございますけれども、これは大蔵省等にお願いして調査していただいたところによりますと、発行限度枠は従来の約一・九倍、二倍近くに拡大することになるのではないか。つまり、それだけ企業の純資産額というのが膨れ上がっておるということ。現在は、例えば資本準備金の合計額が限度で、資本準備金を純資産額が下回る場合には純資産額が限度という形で、資本準備金の額を純資産額が上回るというような場合にはその純資産額までは発行することができないということになっておりますので、その面で発行枠が拡大し約一・九倍程度になる、こういうふうに私どもは承知いたしておるところでございます。
#42
○北村哲男君 何か随分少ないような気もするんですが、それは結構です、大蔵省の方の御調査によるんでしょうから。
 それから、この問題はワラント債という、これはすなわち新株引受権付社債というのがございますね、それとか担保付社債についてもこの改正案の適用を受けるのかどうか。それにつきまして、社債発行限度暫定措置法という法律が既にありまして、これらがかなり大幅な枠の、今のワラント債あるいは担保付社債については既に立法措置によって解決済みであるような感じもするんですが、それとの関連性はどうなっているのか。例外とか、その中に入るのかどうかという問題について御説明願いたいと存じます。
#43
○政府委員(清水湛君) 社債については商法の方で一般的に発行枠規制があるわけでございますけれども、社債発行限度暫定措置法によりまして、特定の社債につきましては本来の商法の発行限度枠を超えて二倍まで発行することができる、こういうことになっているわけでございます。
 この中には今まで、例えば転換社債とかあるいは外国で発行する社債というようなものが含まれていたわけでございますけれども、今回新株引受権付社債もこの中に含めるという改正をいたしたわけでございます。
 まあ現行法上、既に転換社債がこの二倍まで発行することができる社債の中に入っておるわけでございますけれども、転換社債というのは、これは社債であると同時に株式に転換することができるものでありますから、株式の発行については本来発行枠規制というのはないわけでございまして、そういうような株式的な性格を持つ社債については、これは商法規制を超えて二倍まではいいじゃないかということでこの発行限度暫定措置法というのがあるわけでございますが、この中に新株引受権付社債を転換社債に準ずるものとして新たに組み入れる、こういう形のものになっているわけでございます。
 新株引受権付社債というのも、これは新株引受権と社債というのを分離してしまうと単純な社債ではないかというような議論もないわけではございませんけれども、しかしながら、やはりこの新株引受権が付されている社債であるということで、実質的には転換社債に近いということで発行枠を広げるという意味におきましてこれを加える。したがいまして、新株引受権付社債という形で発行する限り商法規制の二倍までは発行することができるということになるわけでございます。
#44
○北村哲男君 このように社債の発行枠を広げることによって企業側は確かに簡単に資金調達ができるようになると思うんですけれども、投資家に対してむやみな社債発行によって返済不能による被害ということも考えられるんですけれども、その点の配慮はどのようにされておるのでしょうか。
#45
○政府委員(清水湛君) 商法の発行枠規制というのは、少なくとも商法の基本的な理念というもので考えますと、純資産額を基準として、それが最終的な責任財産になるからということでこのような発行枠規制をしているというふうに思われるわけでございます。例えば一般の個別の借金ですと、これはもう純資産に関係なしに銀行と当該企業との信用関係で幾らでも金が借りられるわけでございますけれども、社債というのは一般の大衆を相手にしておるということから法律面でその発行限度を課さなきゃならぬということで、しかもそれが純資産というものを一つの基準として発行枠というものを決めているというふうに私どもは理解しているわけでございます。しかし、株式的な性格を持つものについてはさらに二倍まで認めるということになってはいるわけでございます。
 そういうような商法における発行枠規制というものに加えまして現実の社債市場というものを見ますと、社債の発行に際してこれを引き受ける証券会社なり銀行というようなものが関与するわけでございますけれども、社債発行市場のメカニズムと申しますか、そういう過程の中で実質的には不良社債の発行というのはチェックされておる、信用性のある社債のみが現実においては発行市場において発行されておるというような実態。そういう市場メカニズムによるいわば信用性の保持ということが現実には行われている。そういうものに信頼を置き得るのではないかというふうに私どもは考えている次第でございます。
#46
○北村哲男君 それでは、次の質問に移ります。
 設立の際の現物出資の規定がかなり変わってきております。それで、設立の際の現物出資とそれから設立後の現物出資の場合の違いがあるんですけれども、その実質的な違いはどこにあるのか、まず簡単に御説明願いたいと思います。
#47
○説明員(大谷禎男君) 現物出資につきましては、設立の際のものであれ会社設立後の新株発行の際のものであれ、原則として検査役の調査が必要であるということにされております。ただ、その場合でも、一定の場合には当事者の責任で、あるいは弁護士の証明を受けることによって検査役の調査を省略することができるというような特例措置が認められていることは御案内のとおりでございます。
 そこで、今委員御指摘の双方の違いということになるわけでございますが、まず設立の際の現物出資についての特例を見ますと、財産の規模が一定の範囲にとどまっている場合には当事者の責任において処理することを認めるということにされておりますが、その場合の範囲というのは、目的財産の価格の総額が資本の五分の一を超えず、かつ五百万円を超えないときということとされております。すなわち、資本に対する割合が五分の一以内におさまっており、かつ絶対額としても五百万円を超えないときとされているのであります。
 これに対しまして新株発行の際の現物出資の特例を見ますと、これは二百八十条ノ八でございますが二つの基準がございます。一つは、資本に対する割合基準でございまして、現物出資者に対して与える株式の総数がその当時における発行済み株式の総数の十分の一を超えず、かつ新たに発行する株式の数の五分の一を超えないときということにされております。それからもう一つは、それとは別の独立の基準といたしまして、目的財産の価格の総額が五百万円を超えないときというふうにされております。このように、設立の場合と新株発行の場合とを比べますと相当に開きがあるわけでございます。
 その趣旨でございますけれども、まず設立の際の現物出資について申しますと、設立の際にはそのときの出資の総額がとりあえずは会社の純資産の全部を占めるということになります。したがって、その全体の出資の中で現物出資がどれだけの比重を占めるかということも大変重要な問題になります。そういう観点から、まずその資本の全体に対する割合というものを考えなければならないであろうということから、全体の二〇%までの範囲であれば当事者の責任で処理を認めるということがまず出てくるわけでございます。しかし、その場合には二〇%の範囲におさまってさえいればいいのかということになりますと、資本の額が極めて高額に上るという場合には二〇%と申しましても絶対額としては相当高額に当たるということが考えられるわけでございます。それは必ずしも適当ではないのではないか、やはり経済的な常識を加味しますと、絶対額としてもおのずから限度があるであろう。そういうことから、全体の二〇%におさまっているとともに、絶対額としても五百万円程度までの財産であることを要するというのが設立の場合の制限の趣旨であるわけでございます。
 一方、新株発行の場合ですと、先ほど御紹介いたしましたように二つの基準がございます。一つは、株式総数。これは資本というふうに置きかえても大体当てはまると思うわけでございますけれども、そういう既存の資本に対する割合基準というものだけをまず考えております。
 説明が重複いたしますけれども、その割合基準と申しますのは、これまでの全体の株式の中で十分の一の範囲内にとどまっているということであると同時に、当該新株発行で増資がされるその範囲で五分の一にとどまっているということ、これも設立の際と基本的には同じ発想になるわけでありますけれども、その新株発行の際の株式の中で五分の一ぐらいの範囲におさまっていれば当事者の責任、取締役の責任において処理をすることを認める。しかし、この五分の一というものもその新株発行のスケールが極めて大きいということになって、現在それまである資本との関係で余りに大きなものになるということになりますと、場合によっては資本に対する脅威というものが懸念される。そういうことから、既存の株式の全体というものとのバランスも考える必要がある。それまでに形成された資本との関係、すなわち発行済み株式の総数との関係で十分の一という範囲内にとどまっている必要があろうというふうに考えられているわけであります。
 もう一つは、設立の際の現物出資と非常に際立った違いと申すことができるかと思いますが、全く独立の基準といたしまして、目的財産の価格の総額が五百万円を超えないというようなものであれば資本との関係を問わないで取締役会の責任において処理するということを認めているところでございます。これは、もう既に設立された会社といたしまして経営管理機構が完備し、かつ相当の規模の資本が形成されているということを考えますと、取締役会によるそれなりの慎重な経営が行われるであろうということと、既に相当の資本の基礎があって、少なくとも設立の際ほどには心配をする必要がないというようなことが考えられている。
 それから、さらには検査役の調査をお願いするということになりますと、その調査の費用として平均的にも百万円程度の金額は要するというふうに言われております。そういたしますと、百万円の費用を払わさせてもなお検査役の調査を求めるのが適当な財産はどの程度のものかということが問題になるわけであります。
 例えば、財産の価格が二百万とか三百万とかいうようなものであってもなお百万円の費用をかけさせるというのは、経済的な感覚からいたしますといかにも非常識な感じがいたします。そうしますと、その程度の金額を調査費用としてかけさせてもなお調査を求めるのが適当だとされる財産というのはやはり五百万円程度を超えるものではないのか。それを下回る財産についてはそういう調査というものを求めるのは必ずしも適当ではない、それは取締役の責任において処理させる、万が一後で不適切な評価があったという場合には取締役にその責任を担保させるという法制度をとるのが合理的ではないかということから五百万円というような基準の設定がされたということなわけでございます。
 やや説明が散漫にわたって恐縮でございましたけれども、そういうことでございます。
#48
○北村哲男君 二〇%とそれから五百万円との合理的根拠はどの辺にあるんだろうかという質問をしたかったんですが、今の長いお話の中で大体言っておられたのでもう結構でございます。
 次に、二百八十条ノ八で、現物出資の目的たる財産が取引所の相場のある有価証券である場合において取締役会で定めた価格がその相場を超えないときは検査役の調査は不要であるというふうな規定になっておりますけれども、またこれは設立の際の百七十三条の二項もまた同様の規定でございます。この場合、いつの時点の相場をとらえて取締役会の定めた価格と比較するのか。衆議院での民事局長のお話では、定款作成時あるいは取締役会の決定時というふうな――定款作成時だけのお答えかもしれませんが、その辺をお答えしておられるようですけれども、まずその辺について、いつの時点をとらえておられるのかということをお聞きしたいと思います。
#49
○政府委員(永井紀昭君) 今回の百七十三条二項あるいは二百八十条ノ八におきます現物出資の場合における有価証券の相場でございますが、相場といいますのは当該有価証券の定款作成時における相場価格というふうに一般的に解しております。
#50
○北村哲男君 増資の場合はどうなるわけですか。増資というか、新株発行の場合は。
#51
○政府委員(永井紀昭君) 取締役会の決議のときでございます。
#52
○北村哲男君 御存じのとおり、相場は特に最近何か非常に乱高下をするわけですが、四月十二日の日経には次のような記事が出ているんです。「東京相和は三月二十六日に増資計画を取締役会で決めていた。十一日は、公募価格の値決め日だったが、株価の終値は公募を実施できる基準価格をギリギリ上回った。」ということで、解説記事には「しかも今度の増資は、東京相和の十一日の株価の終値が公募時の基準価格である千三百六十円を超えないと実現しないことになっていたが、大引け二分前に千三百五十円まで下げていた株価が、一分後の二時五十九分に千三百九十円に急反発し、そのまま引けた。売買高もこの日は通常の十倍程度あった。」ということですね。さらに「大引け間際の株価形成には、不自然に感じられる点もある」というふうなことも載っておるわけです。
 すなわち、この場合には株価操作が最後の一分間で相当されたということを予想される記事なんですけれども、こういうことをしますと、取締役会の決定をしておいてその時点で、まあ今の記事は直接は関係ないと思うんですが、操作によってクリアできるということも考えられるんですけれども、その点についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#53
○政府委員(清水湛君) 具体的にこの取引所の相場で事を処理するという場合に、いつの時点の株式の価格をもって相場と言うかという問題があるわけでございます。通常安定的に相場が変動しているという場合には、普通は定款作成日の前日の終わり値というようなものが一つの基準になろうかというふうに思うわけでございます。 しかしながら、委員御指摘のように非常に変動があるとか、あるいは意図的な操作がされるというようなこともこれはあり得るわけでございまして、そういう場合も単純にある特定の日の終わり値をもって相場とするというようなことでいいというわけにはこれはまいらないというふうに思うわけでございます。
 実はこの取引所の相場を証する書面というのは、このような出資がされた場合における株式会社の設立手続の際における登記申請の添付書面になるという考えを私どもしているわけでございます。また、新株発行における増資の登記の際の添付書面であるということにもなるわけでございます。そこで、実務的には弁護士の証明書も当然添付書面になるわけでございますが、取引所の相場を証する書面としてどの程度のものを要求するかということで問題を考えていかざるを得ないということになるわけでございます。法律の方では一週間の平均価格だとかあるいは一カ月間の平均価格だというような一定の期間を指定して、その間の価格で見よというようなことを言っておりませんので、具体的にどの範囲のものがいいかということはこれは相当慎重に考えなきゃなりませんけれども、少なくともそのような現象があり得るということを前提といたしまして、例えば一週間分の価格を証する書面を出させるとか、それが一週間がいいのか十日がいいのか問題はあろうかと思いますけれども、御指摘のような問題点は十分私ども考えまして、具体的には登記申請、登記の際における添付書面の範囲としてどの程度のものを要求するかという形で問題はあらわれてくるわけでございますが、十分にそのような委員の御指摘の点も考慮して対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#54
○北村哲男君 民事局長は衆議院の御答弁でも、乱高下なんかで「非常に特異な状況の場合には、やはり数日間の平均値みたいな考え方もとり得るのかなというふうに思ってはおります。」とか、それから「実務の実情に適合したような形できちっとした処理方針を出したいというふうに目下考えている」というふうに言われましたが、これは法律改正をしておいてまだその点について整備をされないということでもよろしいわけですか。ある程度それは決められてこういう法律改正を持ってこられるべきなのか、あるいはどの辺でその辺をわかりやすいような形でされるのか、これだけでは今後どうなっていくのか、要するにその日の終わり値というだけしかわからないんですけれども、その辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。
#55
○政府委員(清水湛君) この問題は非常に理論的な問題でもあるとともに、登記所の窓口において登記官がどういう書類に基づいて判断するか、審査するかという問題とも絡むわけでございます。ですから、実務的にもたえ得るような、つまり現場の登記官でも直ちに判断できる、また登記所に書類を出す側でも形式的にこの程度の書類が整えば登記所はパスさせてもらえるというような一つの基準というものが示されませんと、現場は混乱する可能性がございます。
 そこで、私どもといたしましては、今回そういう相場を証する書面というものが登記申請の際の添付書類とされましたので、この書類としてはこういうものを出しなさいということをいずれ通達か何かで明らかにしなければならないというふうに考えております。今のところ一週間とか一カ月とか十日とかちょっとそこのところまだもう少しどの程度の期間にするか、実務の現場の登記官がたえ得る範囲内での書類ということも一方では考えなきゃなりませんので、その辺はもう少し細かく法律が通過、成立し次第詰めてまいりたい、こういうふうに考えております。
#56
○北村哲男君 今回のこれは現物出資ですけれども、不動産、株式、それははっきり言えば無限、どんな高くてもいいようで、しかも検査は非常にやさしい方法。そのほかは、たったというのはおかしいんですが五百万円とか資本の二〇%というふうにあるんですけれども、特に有価証券の場合は非常に高額なものも当然予想されるわけです。その辺の安全性といいますか検査を実際に必要としないというふうに言って不安はないんだろうかという気もするんですが、その辺については今までも御説明あったんですけれども、もう一度その辺を簡単にお伺いしたい。
#57
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、この取引所の相場がある書面についてはそのままでよろしいという制度は、今回の改正で初めて採用された制度でございます。そういうようなことをすることによって、現物出資というものをしやすくしてあげましょうということでございますけれども、これが悪用されるということになりますと問題でございます。非常に意図的な株価操作をして、それで現物出資がされたということで、実質的には資本の空洞化をもたらすようなことになってはこれは大変でございますので、そういう点についても十分今後とも私ども、この新しい制度の運用の動向については注意してまいりたい、かように考えております。
#58
○北村哲男君 もう時間ですけれども、先ほどの御説明だと、その取締役会があった日の終わり値というふうに一つはお答えがあったんです。もう一つは、その数日間の平均値みたいな考え方もとり得るというふうに局長の御答弁があったんですけれども、その辺は矛盾はないんですか。私の聞き方がまずいのかどうかわかりませんけれども、それをそういうふうな数日間の平均値で決めることもあり得るわけですか、その後の法律以外の取り決めによって。
#59
○政府委員(清水湛君) 私は、新株発行なんかの場合には新株発行の決議あるいは資本増加の決議の日の前日の終わり値というのが一つの基準にはなるだろう、まず第一次的な基本的な基準。あるいは定款作成の場合ですと、定款作成の日の前日の終わり値というのが一つの基準にはなるだろう。しかし、それは瞬間的な値段であって、いわゆる相場というものに必ずしもぴったり合うと常に保証がされるわけではない。
 通常、株式市場というものが安定的に動いているというようなときには、あるいはそれだけでも普通の場合はカバーできるということが言えるかもしれない。しかしながら、そうでない場合もあり得るわけですから、例えば一週間分の毎日の終わり値を証する書面を出してもらうとか、そういうようなことである程度実務的には対応せざるを得ないのかなというようなことは、実は内部で今議論されているわけでございますけれども、その辺を一週間にするのか十日にするのかというようなことについて、非常に事務が煩瑣になるというようなことでありますと、もう少し日を縮めるというようなこともそれはあり得るという意味で申し上げているわけでございます。
#60
○北村哲男君 終わります。
#61
○千葉景子君 前回に基本的な問題点を大分お聞きいたしまして、今同僚の北村委員の方からもかなり細かい部分もお尋ねしておりますので、できるだけ重ならないようにあと何点か疑問の点、あるいは不明確な点などをお答えいただいていきたいというふうに思います。
 まず、今回の商法の改正案では、発起人についてこれまで株式会社の設立の場合には七人以上の発起人を要するという規定になっておりましたが、その制限を廃止をするということになりました。それから、有限会社の場合には、一人になっても解散事由とはしないということにもなっております。これは、これによって設立を容易にする、あるいは実態に即した設立を認めていくということも反面あろうかというふうに思うのですけれども、逆な意味で、いわゆる社団として成り立っている会社、そういうものの社団性とかあるいは乱立というんでしょうか、そういうものにもつながりかねない両面あろうかというふうに思うのですけれども、その点については今回七人が、全く急に制限をなくしてしまうということで問題は残らないでしょうか。その点はどうお考えですか。
#62
○政府委員(清水湛君) この点については社団というものの法律的な性格、つまり株式会社も有限会社も社団であると言われているわけでございますが、そういう点から御指摘のような疑問も出てまいろうかと思うわけでございます。
 しかし、この点につきましては、いわゆるその潜在的社団の理論と申しますか、現実には株主は一人だけれども、常に複数の株主になり得る可能性を持っているという意味において、瞬間的には一人だけれどもあした複数になるかもしれないし、またあさっては一人になるかもしれない、そういう意味で潜在的な社団の理論というのがあるわけでございますが、そういうような理論をバックにして、いわゆる株主が一人の一人会社も適法な存在であるというふうに従来から言われているわけでございます。そういうような理論的な背景のもとに、設立の段階から発起人が例えば七人で、必ず一株引き受けることになっておりますので、七人であれば七人の株主がいるわけでございますけれども、実はこれも翌日には一人の株主になってしまうかもしれないし、またその次の日には数人になるかもしれないというそういう潜在的な可能性というものを常に持っているわけでございますから、そういうような理論的な背景のもとに発起人が一人でも設立することができるし、それは社団性を損なうものではないというふうに私どもは踏み切ったわけでございます。
 やはり株式会社というものの基本的な性格というものを考えますと、そういう社団性の問題と同時に、いわば第三者関係というものが非常に重要な問題になりますので、相当の資産を確保させるということ、そういうことが一方では大事ではないかというようなことから、最低資本金制度もその一つでございますけれども、発起人の出資の履行責任とか担保責任とか、そういうようなものも一方では強化するという形で対応したということになるわけでございます。
#63
○千葉景子君 この発起人の数の問題と同時に、先ほども御質問に出ております設立の部分ですが、今回は発起設立における払い込みに検査役の調査を不要とする、そして現物出資等に関するところは専門家の証明に任せるというような形になっているわけですけれども、これは専門家ということで弁護士などがそれに当たるということなんですが、これは現状と今の実態と踏まえてみて、今後十分な機能を果たすというふうにお考えでしょうか。
#64
○説明員(大谷禎男君) 検査役の調査の制度の合理化は二つの面にわたってあります。一つは、今御指摘ございましたように発起設立における検査役の調査を廃止をするということ。もう一つは、発起設立、募集設立を問わず要求されておりますところのいわゆる変態設立事項に関する検査役の調査に関する改善でございます。
 まず、前者の発起設立における検査役の調査の廃止でございますが、これは発起設立というものが発起人だけが出資者となって会社を設立するという形態でございまして、いわば仲間内だけで会社をつくるということから、基本的にどのような出資をしてその出資金をどのように管理するかということは当事者の自由に任せているわけであります。
 ところが、これが放恣に流れますと、会社の関係者を害するということから、発起設立の場合にきちんと出資がされたかどうかということを検証するために検査役の調査が行われるというのが現行法のシステムでございます。ところが、この検査役の調査というのは、御案内のように裁判所へその選任を請求いたしまして、裁判所から選任をいただいて調査していただくということになるわけでございますが、裁判所を通す手続というものが時間がかかるとか裁判所の敷居が高いとか、その他もろもろの理由から敬遠されておりまして、それが理由で発起設立がほとんど利用されないという状況でございます。
 しかし、実態を見ますと、会社を設立するという場合に、その規模が相当大きいものでありましても発起人以外の第三者、全く関係のない第三者から出資を募る必要があるというケースはほとんどないと思われます。そうだとしますと、本来は発起設立という設立のあり方が適当だと思われるわけでありますが、それが利用されないというのはまさしくおかしいということになるわけでありまして、もし適切な手当てができるのであれば裁判所の関与を省略して発起設立の形態をとることができるということにするのが適当であろうと思われます。そのための手当てといたしまして、出資の確実を期するために銀行に出資金は払い込みをしなければいけない、そして払い込みされたということは銀行がきちんと証明するという制度をとる。そういう制度をとれば何も検査役が出資の有無を確認しなくても資本充実は担保されるであろう、そういう観点から、銀行を介在させるという手当てをする反面、検査役の調査を廃止するとしうことにしたわけであります。この改正は、まさしく現行法で発起設立が利用されないという原因のほとんどを取り除いたというように私ども考えておりますので、今後は発起設立がますますといいますか、現在ほとんど利用されていないものが元来の趣旨に沿って利用されることになるのではないかと考えております。
 それから、もう一つの現物出資等の変態設立事項に関する検査役の調査の改善でございますが、変態設立事項の中で現物出資と財産引き受けについての検査役の調査につきましては、一定の範囲で弁護士の証明を受けることによって検査役の調査にかえることができるということにされております。現物出資の実際の例を見ますと、そのほとんどは不動産であります。そのほかに株式等がございますが、あるいはごくまれに自動車というようなものもございますけれども、そのほとんどは不動産でございまして、不動産についてこういう検査役の調査以外の方法が認められるということになりますと、その利用可能性は相当に増大するのではないかというふうに思われます。
 なお、余談になるかもしれませんけれども、この専門家として弁護士を規定したということは、現在の検査役の調査の制度のもとにおきましても裁判所から選任される専門家というのはそのほとんどが弁護士であるということでありまして、そういう現行法の運用をも念頭に置きまして、それと実質的には変わらない制度を合理的なものとして規定をするということから弁護士が取り上げられたということでございます。
#65
○千葉景子君 これまでもこの質疑の中でも取り上げられてきましたけれども、いわゆる資本の充実等との絡みで預け合いとか見せ金、こういう問題が取り上げられてまいりました。それと、脱法するような形というんでしょうか、いわゆる設立直後の貸し付け、これは別に今規制というのはされていないわけですね。しかし、会社成立直後にまた出資者に貸し付けるというような形で出資金を戻すというようなことになりますと、これはまさに見せ金、預け合いと同じような実質を持ってしまうということも考えられるわけですね。こういう事態、それから、成立してすぐというのはまだ本来の意味で貸し付けを行うというような状況には会社がないわけで、そういうことから考えると、こういう貸し付けについての何らかのチェックとか制約をつけなくてよろしいのだろうか。今回もやはり基本的な資本を確保するということが大きな柱になっているとすれば、こういうところに目を向ける必要はないんだろうかという気がするんですが、そこについてはこの間検討がなされてきたのか、あるいは規制については難しい面があるのか。そこはどうでしょうか。
#66
○政府委員(清水湛君) 取締役発起人が現実にその出資の払い込みをしない、あるいは払い込みをしたような形は装ったけれども実はそれは仮装であって、実質的には払い込みがあったと言えないような状況がある、こういうような事例がしばしばあるわけでございます。
 現行法上は委員御承知のように、預け合いにつきましては刑罰規定がございます。これはしかし、出資の払い込みをする者と払込取扱銀行とがお互いに共謀してやらないと預け合いの罪は成立しないということになるわけでございますが、いわば預け合いの罪から逃れるために、払込取扱銀行とは共謀はいたしませんけれども、他の銀行から借りてきて払込取扱銀行に払い込むというようないわゆる見せ金もあるわけでございますし、あるいはその他もろもろの手段を講じまして、実質的には払い込みと言えないような払い込みの仮装行為をする、実際上は会社の資産というものは全然もうないというような会社がかなりあるというふうに言われているわけでございます。
 そういうものをどうやって禁圧するかということが非常に問題でございまして、商法の面からいきますと、払込担保責任とかあるいは出資義務の履行請求という形で民事的に解決をするということが当然可能なことになるわけでございますが、さらにこれを刑事罰の対象とするということになりますと、これは構成要件を極めて厳格に決めなければならないというような問題がございまして、実は見せ金についてもこれを処罰の対象、つまり刑罰の対象とすることができないかというようなことで法制審議会においても随分議論がされたわけでございますけれども、預け合いとの関係等もこれあり、見せ金についてこれを刑罰の対象とするということには結論においてならなかったわけでございます。
 その理由には、非常に構成要件の書き方が難しい、つまり本当に仮装の払い込みと言えるのかどうかという認定が非常に難しいということと、もう一つには、本当の仮装払い込みということであるならばそれはむしろ公正証書原本不実記載というようなことになるのではないか。ただ、犯罪の成立時期ということになりますと、公正証書原本不実記載というのは登記をしたときということになるわけですが、見せ金ということになりますとあるいはその前の時点で犯罪が既遂ということになるのかもしれませんけれども、要するに既遂の時点の違いだけではないかというような、つまり公正証書原本不実記載との関係で見ますとそういうような議論もされまして、最終的にはなかなか立法技術的にも難しいなということでこの結論が得られなかったという状況でございます。
 ただしかし、委員御指摘のように、株式会社の最も基本である資本の充実、資本の維持という面から申しますと、この仮装払い込み行為あるいはそれに準ずる行為というのは最もこれは会社法にとっては危険な行為でございますので、何とかこれをうまくチェックするシステムはないかということにつきましては今後ともこれは知恵を絞って研究、検討していかなければならないというふうに私どもは考えている次第でございます。
#67
○千葉景子君 先ほどの設立の関係ですが、発起設立が検査役の調査ということがあるということもあって非常に利用されないというようなお話がございました。今回の改正によってそれが随分機能していくんではないかということなんですが、閉鎖的な株式会社の場合ですと有限会社とある程度類似したような形で募集設立というのが不要ではないか、ほとんど発起設立のような形で行われるのではないかなという感じがするんですね。この辺は設立の手続として今すべて別に制限がなく発起設立と募集設立という形があり得るわけですが、この辺の設立の形態についての御検討などはあったんでしょうか。
#68
○政府委員(清水湛君) 先ほど答弁いたしましたように、今度、発起設立の場合検査役の調査が不要になった。現物出資なんかをいたしますと弁護士の証明ということが必要なんでございますけれども、現物出資もしないで現金だけ払い込んで発起設立をするという場合には、これは払込取扱銀行を指定して銀行に払い込めばそれでもう何も要らない、あとは取締役及び監査役に払い込みの有無についての調査義務が生ずる、こういうことになりますので、恐らく発起設立というものがかなり利用されていくことになるであろう。その結果として募集設立が余り利用されなくなるのかなと。つまり、従来ですと、本来なら発起設立で賄われるべきものが、手続が煩瑣であるために募集設立の形をとったということになるわけですが、考えてみますと募集設立の方もいろんな手続があるわけでございまして、かえって発起設立の方が便利になるというようなことになりますと、あるいは募集設立というようなものが余り利用されなくなるのかなという感じがしないわけではございません。
 しかしながら、やはり小は別といたしまして中規模会社ということになりますと、単なる発起人だけではなくて何人かの株主に参加していただくというようなこともあろうかと思いますので、これが余り利用されなくなるというふうに今の段階ではちょっと予測しがたいと私は考えているところでございます。
#69
○千葉景子君 次に、株券の発行についてなんですが、現行法上では株券が不発行になるというのは株券不所持制度において株主から申し出があった場合ということですね、法律上は。しかし、現状は大体お聞きするところによると、株券を発行しないケースというのが相当多く見られるわけで、そうすると実際上考えてみますと、株券の発行については今、原則発行、例外不発行ということですが、この点については場合によっては株主が請求する、必要あらば株券を発行するというょうな形も、実態から考えると検討し得るんじゃないかという感じがするんですけれども、ここはどうお考えでしょうか。
#70
○政府委員(清水湛君) 現行法ですと、株式会社は必ず株券を発行しなければなりませんし、株主の地位を譲渡するには株券の交付を要する、こういうことになっているわけでございます。しかしながら、現実には株券を発行していない中小企業というのはたくさんあるわけでございまして、しばしば訴訟なんかでもそういう株券を発行しない株式会社における株式の譲渡というものの効力についてどういうふうに考えたらいいのか、株券がないわけですから交付のしょうがない。それでもしかし株式の譲渡というのは行われる。最高裁の判例もございますけれども、その場合には不発行の株式会社は株式の譲渡の効力を否認することができないというような、結局判例法理で救済されているような面がございます。
 しかしながら、それは株券を当然発行するんだという前提に立ちますからそういう判例法理も形成されてくるわけでございまして、中小会社の実態というものに即して考えるならば、もう株券も一般的な制度として不発行の制度をつくったらどうか、つまり株主の請求があったときに限り株券を発行するというような制度にしたらどうかというような意見は、実は前からあるわけでございまして、私どもが昭和六十一年に発表しました商法・有限会社法改正試案の中では実はそういう制度を提案しているわけでございます。これを今回の改正法では採用していないわけでございますけれども、この株券不発行の制度というのは、中小会社法制全体の問題としてこれはやはり基本的な問題でございますので、いずれ今回の改正法が通過、成立した暁には直ちにこの種の問題について引き続き検討をしていかなければならない、こういうふうに私ども考えております。むしろ正面から不発行の制度を認めて、不発行の場合の法律関係を明確にした方がかえって余計な訴訟ざた等の紛争を少なくする、そういうものを防止するということになるのではないか、こういう認識に立っているわけでございます。
#71
○千葉景子君 次にお尋ねしますが、発起人の払込担保責任、ここが今度規定が変わっているわけですね。ちょっとその中身を説明していただきたいと思います。
#72
○説明員(大谷禎男君) 発起人の担保責任の改正内容について御説明申し上げます。
 まず、現行法でございますが、発起人の担保責任としては大きく分けますと二つございます。一つは、株式の引き受けが欠缺していた場合に、その欠缺部分について発起人が引き受けたものとみなすという規定でございます。これは法学上引受担保責任と呼ばれておりますけれども、これがまず現行法ではございます。それからもう一つは、引受人はあるんだけれども、その引受人が株式の払い込みをしないという場合に、払い込みのない部分について発起人がかわって払い込みをしなければならないという担保責任が置かれております。これが払込担保責任というふうに言われているのでございます。
 現行法の担保責任はこの二つでございますけれども、それ以外に実はほかにも考えられるわけであります。これは有限会社法には規定があるのでございますけれども、ただいまのは払込担保責任でございましたが、例えば現物出資が行われた場合に、実は約束はあったけれども、現物出資者が財産を会社に給付していなかったということが想定されるわけでございます。そういう場合には、金の払い込みがなかった場合と同じように、発起人がその後始末をすべきではないかということが考えられるのでありまして、それが給付未済財産についてその価額分を会社に払わなければいけないという意味で、給付未済財産の価額てん補責任と言われておりますが、こういうものが考えられます。現行法では有限会社についてはあるのでございますが、株式会社についてはこの責任が置かれておりません。
 その理由は、現物出資が行われる場合には、すべて裁判所の選任した検査役の調査が行われるということから、給付がないというふうな事態は生じない。すなわち、あれば必ず検査役がそれを発見して、そしてきちんと後始末をさせる。その上で会社の設立が行われるということから、そのような事態は考えられないではないかというようなことで、そのような規定が現行の株式会社法には置かれていないのだろうかと思われます。しかし、今回現物出資についてのいろんな改正が行われまして、必ずしも常に検査役の調査が行われるわけではないということで、仮に検査役の調査が行われるという場合でありましても、もし穴があいているという場合には、それは帳じりを償わせるのが適当ではないかというようなことから、有限会社法と同様に、まず給付未済財産があった場合にはその価額てん補責任を発起人に負わせるという改正を一つ考えているわけでございます。
 それから、もう一つの担保責任といたしましては、現物出資等の財産の給付はあったけれども、その財産の中身が実はかなり低かったということがあります。要するに、例えば一千万という約束で出資したんだけれども、その中身は五百万円程度しかなかったということになりますと、これは直接に会社の資本充実を害することになります。そのような場合には、やはりその不足額というものを発起人にてん補させるのが適当ではないかというふうに考えられます。現に、有限会社法にはそのような不足額のてん補責任というふうな制度がございます。株式会社について現在その規定がないのも、先ほどと同じように発起人の調査が行われて、その内容の適正がきちんとチェックされるからということに主な理由があろうかと思いますけれども、この責任も先ほどと同様の趣旨から今回株式会社についてやはり置くのが適当ではないか、そういうことから不足額のてん補責任というものもあわせて規定をするということにしております。
 なお、付言いたしますと、この責任の主体といたしまして、発起人のほかに取締役も同様な責任を負うということにしていることをつけ加えさせていただきます。
#73
○千葉景子君 その発起人の、まあ基本的に発起人ですが、発起人がその責任を履行した場合、現行法では求償権を認めているということでございました。今回の改正では引受人に対する買い受け請求というんでしょうか、という形が認められるということなんですが、これは求償権から買い受けを請求できる権利を認めることになったというのはどういう理由でしょうか。そして、その果たす機能というのはどういうふうに考えられますか。
#74
○政府委員(永井紀昭君) 現行法では、株式の払い込みがないのに会社が成立したときは発起人が払込担保責任を負うわけでございますが、この発起人がこの責任を履行いたしましても、当該株式につきまして株主となるのは、委員御指摘のとおり株式引受人でございまして、払込担保責任を履行した者は求償権を有するのみだということでございます。
 株式の払い込みをしていない株主の法律関係についていろいろ問題が生じているわけでございますが、みずから払い込みを行わないで発起人等にかわって払い込みをしてもらったということになりますと、求償権だけを行使させる、すなわち払込担保責任を履行した者が求償権の行使をするだけだということになりますと、いささか株式引受人の思惑買いといいますか、いろいろなそういう投機的な考え方で、やや何といいますか引受人のスペキュレーションを許すというこういう弊害が出てくるのではないかということでございます。
 そこで、株式引受人に対しまして担保責任履行者が、この百九十二条の三項で新設いたしました条項によりますと、六カ月内に限って引受価額を売買価格として自分に売り渡すべきことを請求できる。したがって、その引受価額を売買価格として、これはもう株主は私になりますという請求ができるということにして、株式引受人のスペキュレーションといいますか、そういうものを防止しようというそういうことでございます。
#75
○千葉景子君 確かに、払い込みをしないで、何もしないけれども株主になってしまうという者が出てくるというのも非常に問題だろうと思いますし、それがまた譲渡されると第三者は当然それは株主と。しかしそれは、もともとは払い込まれていないという、何か妙な法律関係も生ずるような感じがいたしますので、これは今回の改正というのはやはり一つの大きな法律関係の整理になるんじゃないだろうかなという感じがいたします。
 それでは、これは少し問題が私もよくわからないんですが、よく株主とか社員ですね、有限会社でいえば。出資の見返りとして配当を受けるわけですが、会社の役員に就任して報酬を受けたり、従業員となって給料をもらったりとかあるいは会社と取引をして代金の支払いを受けるとか、そういう株主、社員としての立場ではなくて利益を享受するというケースはあるわけですけれども、これが対価として相当なものであればこれは別に悪いことではありません。しかし実際には、名目的に報酬だけもらっているという役員があったり、そういうケースというのも考えられるわけです。
 これについて、例えば会社が非常に債務超過になったとか、あるいは支払い不能になったというような場合、これを一定程度返還をさせて債権者の返済あるいは保護に充てるというようなことも考え得るんじゃないか。というのは、現在は、例えば詐害行為取消権などのような形で法的にあるいは裁判上救済をされているというケースがあるだろうというふうに思うんです。これは別に法的に今回の改正ではとりわけた措置ということではないんですが、これは一定期間内にこういう返還などをさせて法律関係を明確にするということ。詐害行為取消権などもなかなか実際に行使するとなると裁判手続を経たりして大変困難がございますので、前回お聞きした債権者保護という観点なども含めて、こういう問題点についてはどんな御検討がなされているのかお聞きしたいと思います。
#76
○政府委員(永井紀昭君) ただいま委員が御指摘になったところは、改正試案におきまして「会社から得た利益の返還」という項が設けられておりまして、そこに出ている問題ではないかと思われます。
 ここに、改正試案当時に考えられたことは、会社が債務を弁済することができなくなったときには、債権者は株主、社員が過去の一定期間内に会社から受けた利益を返還させることができるというこういう考え方を基本に出しているわけでございます。
 ただ、これにつきましても、前にも御議論いただきましたように、支配株主でございますとか、あるいは出資金とみなすべき貸付金の問題と同様に、若干会社の範囲が限定されていないということから、これはあらゆる会社についてこういうことを考えるのかどうかということが一つございました。と申しますのは、支配株主とか出資金とみなすべき貸付金につきましては、改正試案におきましても、例えば資本金五千万円未満のいわば中小会社を中心に考えていこうということでしたが、ここではややそういう会社の範囲を限定した考え方ではなくて、少し望洋としたといいますか、そういう考え方が出ていったわけでございます。
 そういったことから、改正の趣旨がどうも不明確ではないか、また返還義務を負う者を株主と社員に限定するという理由が少し薄弱ではないかといういろんな疑義がございまして、慎重な検討はされたのでございますが、どうもうまくここに当てはめができないといいますか、要件を絞り込むことができないなという議論のままでございまして、これからの審議の中でもまた再燃する場合が出てくるとは思うんですが、ややこれについてはちょっと要件の絞り込み方が難しいなというこういう議論になっているのが現状でございます。
#77
○千葉景子君 商法についていろいろとお聞きしてまいりまして、私自身もまだ十分に細かい点でわからない部分もあるのですが、ただ、全体的に見ますと、やはり今回は一定の前進があったと同時に、逆に審議の中で随分今後検討すべき問題点が残されているということも明らかになってきたんではないかと思うんですね。また、それと同時に、やはり今の中小企業等の実態などもこれは十分に踏まえて検討作業を行わなければいけないということも、これはもう忘れてはならないことだろうというふうに思います。
 そんな意味で、ちょっとあと少し急いで二、三別な件でお聞きしたいことがございますので、ぜひそういう今後の検討を前向きにやっていただくことをお願いをいたしまして、商法につきましては一応終わらせていただきたいというふうに思います。
 ところで、今度は、つい先日、改正案が施行されました入管法の問題についてちょっと二、三お尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 実は、入管法の審議をさせていただくときに、一つ大きく問題になりましたのが就労資格証明書の問題でございます。これは非常に中途半端というと何ですけれども、そういう制度ではないか。逆に、この就労資格証明書が不法就労者の取り締まりなどに非常に利用されてしまうのではないかというような懸念も出されておりました。法務省の方では、これはむしろそういうことではなくて、有資格者が自分を証明するのに大変便利にといいますか、それを証明するのにも役立ててほしい、ある意味では法務省のサービスというとおかしいんですが、そういうものなんだという御答弁などもいただいておりました。逆に、いや余り変に中途半端なサービスをやってもらうとむしろ混乱になるので過剰サービスじゃないだろうかというような議論すら出てきていたわけです。しかし、それを利用してもらって、自分が有資格であるということを簡易に証明できるというようなことに利用してほしいというようなお話でございました。
 しかし、私がちょっと目にした資料によりますと、法務省から建設省の方に不法就労については十分に徹底して注意をするようにというような文書が通達として伝わっているようでございます。多分、法務省からの指導に基づいて建設省の方で各建設業者の団体などに向けまして、これもまた指導文書がございます。これは「改正入管法の施行について」ということで建設業者団体あてに五月二十四日に建設省から出されているものなんです。その中身を見ますと、従来法務省が就労資格証明書の機能として考えられていた内容ではない機能を付与するというようなことが中身として記載をされているんです。
 どういうことかというと、就労資格証明書の交付を受けることができるようになった、だからそれによって不法就労防止にこの就労資格証明書を利用してほしい、活用してほしいというようなことが記載をされているわけなんです。これは、本来の法務省が就労資格証明書を使って機能を果たしてもらいたいと考えていたものが、だんだん伝わっていった結果、就労資格証明書のあるなしで不法就労かどうかを見きわめる材料にしてほしいという形にどうも変容してしまっているような気がするんです。これは審議の途中で懸念をされていた、まさにこれがあるかないかで不法就労か否かを区別する、あるいはそれを持っていないと大変不利益をこうむるんではないかといった懸念にやっぱり現在つながってきているんじゃないだろうかという気がするわけです。
 そういう意味で、法務省が建設省にどういう御指導をされたのか、そして本来、この就労資格証明書についてはどういう趣旨と意図を今でも持っていらっしゃるのか、その点について再度確認をさせておいていただきたいと思います。
#78
○政府委員(股野景親君) 就労資格証明書の問題につきまして昨年本委員会で御審議を賜りましたときに、ただいま委員から御指摘のありましたような就労資格証明書の目的とするところについての御論議がございました。私どもの意図するところも御説明した次第でございます。
 建設省側で出された関係団体に対する文書というものを私どもも拝見いたしました。その表現は、「就労を伴う資格外活動についてもすべて法務大臣の許可を要することとされ、就労を認められている外国人は、法務大臣から就労資格証明書の交付を受けることができることとされたので、不法就労防止のため、活用されたいこと。」、こういう文章がございました。この点を委員がただいま御指摘になったことと存じます。
 法務省といたしましては、建設省に対しまして不法就労問題について御説明をしたのはもとよりでございますが、そもそも外国人の就労ということ全体についてその適正なあり方ということを十分御説明するために、就労のできる在留資格、それから就労のできない在留資格あるいは資格外活動、そしてこの就労資格証明書、こういったもの全般についての説明を何度もいろいろな形でこれまで行ってまいりました。その際、この就労資格証明書というものについては外国人の申請に基づいて交付されるものであって、そしてその外国人の御本人の側から見ると、雇用主等にこの証明書を提示されることによってみずからが就労できるということを証明できる、こういう便利なものがある。同時に雇用主側から見ますと、就労のできない外国人を誤って雇用するということが防止できるというそういうことにも役立つ、こういう側面も御説明をいたしました。その際に、本来その在留中の活動で制限のない方たちがこういう就労資格証明書というものの制度によって不利益をこうむるということがないようにしっかりこの点は留意を願いたいという点もあわせて十分御説明をいたしてきているところでございます。
 そこで、ただいまの御指摘のこの表現でございますが、この点は私どもも建設省側にも確認をいたしましたが、ここで使ったこの表現の意図するところは、善意の雇用主等が誤って不法就労の外国人を雇うというようなことがこの制度によって防止できるという趣旨のことを述べたことである、こういうことであると建設省側からも私どもに対する確認がございました。私どもとしても、それが我々のこの制度の本来の趣旨でございますし、引き続きこういう点については建設省側とも密接な連絡をとって、本来の就労資格証明書の制度が十分生かされるように今後とも十分留意し、努力してまいる所存でございます。
#79
○千葉景子君 重ねて御説明をいただかないと本当にこの文書の中身がよくわからないというのでは混乱を起こすというふうに思うんです。
 この文章表現の中でやはりこの就労資格証明書がどういうものだということが十分にわかるようなそういう表現をしてほしいと思いますし、この間入管法の改正、施行に当たってはさまざまな部分でこういう何か本来の意図と異なるようなものが結局出回ってしまう、あるいは誤って伝わってしまうというようなことがいろいろな部分で見られると思うんです。
 前回も質問させていただきましたけれども、入管の窓口が大変混乱をしたとか、これはもうすべてその趣旨、目的とするところをやっぱり正確にきちっと伝えていないというところに問題が残っているんじゃないかというふうに思うんです。後から、本来はこういう趣旨でしたんですと言われても、それでは遅いわけでして、ぜひこういう部分も今後――いろんなことが起こってから、いや実はそういう趣旨じゃなかったということになりませんように、十分内容を伝え、そして文章なども外に出回るものでございますので十分な注意をしてほしいなというふうに思います。
 それからもう一点。今度は改正された入管法で研修の問題、ここが大きく改正をされてまいりました。ただし、この研修については政省令などを拝見いたしますと極めて窓口が狭まってきたというんでしょうか、逆に言えば厳格になった部分というのが大きいと思うんですね。公共団体であるとか公的機関などについては研修の窓口としてきちっと受け入れ体制をつくろうということがあるのですが、例えば、まじめにやっぱり外国の方を受け入れていい研修をしてもらおうというような中小企業の皆さんなどにとっては、研修の受け入れの窓口としては大変厳しくなっているんではないかというふうに思うんです。今後、この研修の受け入れについては法務省の告示でどういうところが受け入れにふさわしいかということが示されるということでございますが、この中で基準は一応示されているんですけれども、どういうところが受け入れの団体なり受け入れの組織として認められていくのか、その辺のちょっと要件をお知らせいただきたいと思うんですが。
#80
○政府委員(股野景親君) 研修の基準につきまして省令の中で新たな基準を設けております。この点は既に委員もごらんいただいていると思いますが、この基準は本来の研修が研修の効果を上げるように配慮する必要から、関係各省間で協議を重ねまして一つのこういう姿にまとめたわけでございます。これが研修の効果を確保するという点で重要であると考えておりますが、同時に、こういう基準を定めますと、この基準に必ずしも当てはまらないがしかし研修としての実際の効果を上げる、そういう事業というものもあるというふうに感ぜられるところでございまして、その点で、特に実務を伴う実務研修の観点での基準のつくり方に際しましては、この省令の中にも示してございますが、受け入れ機関それから派遣機関に関する基準について法務大臣が告示をもって定める場合にはそこに書いてある基準の適用を除外することとされておりまして、それはそれなりの合理的な理由があるということの場合にそうすることにいたしております。
 そこで、ただいま委員が御指摘になりましたようなまじめな方で本来の研修を遂げようと、しかし必ずしもこの基準において合致しないというような場合もあり得ると思いますので、私ども現在関係方面とこの内容について御相談をしておるところでございますが、現在例えば考えておりますところでは、農業の関係の研修で農家で研修生を受け入れられる場合あるいは中小企業等で研修生を受け入れられる場合、そういうところが受け入れ機関になるものであって、かつその事業が公共性という観点から見て一つの公共性のある研修ということが認められる場合、あるいは公的な資金で研修が行われるといったような場合、具体的な関係方面からのお申し出も今受けておりますので、そういうものを踏まえて大臣告示で定めるものを現在検討しているところでございます。我々といたしましても検討を早急に終えまして、明確な姿でこの点を明らかにするように現在努力中でございます。
#81
○千葉景子君 なかなかどういうものが該当するんだろうかというのは今のお答えだけではわからないわけで、できるだけ明確な基準というものを示していただきたい。そしてそういうものにのっとって本当に誠実なものについて受け入れを考えていただくような道をつくっていただきたいと思うんですね。
 ただ、そうおっしゃっている反面、中小企業協同組合とかあるいは商工会議所などは一定の厳格な要件を緩和して受け入れ機関として認めていくというようなことも今出されているようなんですけれども、これは中小企業協同組合とかあるいは商工会議所等は、まあこれは別に公的な機関ということではないんですが、とりわけて研修の受け入れ機関として認めていこうとなさるのは何か意味があるんでしょうか。
#82
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘になりました中小企業の協同組合からこういう点についての現在お申し出が関係方面を通じてございます。私どもそのお話を伺っておりますと、一つのポイントとしては、中小企業の最終的な受け入れ機関の姿からして現在基準で定めております受け入れ機関の常勤職員の二十分の一以内の数で研修生を定めるとなっている点について、もう少し弾力的な運用ができまいかという点が一つ提起されております。この点は実際上既にこういう分野で研修の実績を上げておられるところがございますので、その実績も踏まえまして私どもそういう点での基準の緩和ということを考えておるわけでございますが、同時にそういう中小企業等の協同組合がなさっている事業につきましては、例えば地方公共団体の関係する職業訓練施設であるとか、あるいは宿舎等の提供も行われるというような形で公共性というものがその研修の事業の中に加わっておるということが現実の姿としてございますので、そういう観点で先ほど私申し上げました公共性というものがそういう事業の中に認められる場合、これは研修の実効を確保するという点からも安心であると考えられますので、そういう点での今検討を行っているという次第でございます。
#83
○千葉景子君 商工会議所はどうですか。
#84
○政府委員(股野景親君) ただいまの商工会議所については、まだ具体的に私どもお話を承っておりませんが、具体的のお申し出を受けてこれは検討をしてみる必要があろうかと考えております。
#85
○千葉景子君 中小企業庁、法務省、外務省、労働省などで出された「中小企業事業者のための外国人労働者問題QアンドA」というのがございますね。その中から見ますと、中小企業等協同組合、商工会議所等はこの研修の受け入れ団体として告示される予定であるというようなことになっているようなんですけれども、私はこの問題とそれから今盛んにやはり中小企業などで労働力の不足が叫ばれている、この入管の改正によって非常に悲鳴を上げているというそういう実態が片方ではある。研修ということについてこういう中小企業協同組合や商工会議所などについて一定の緩和措置をする、片方ではそういうところには労働力としての要求があるということになると、これは下手をするとやはり本来の研修ではない、労働力不足を補うというそういう面に機能していくことが私は危惧されるような気がするんですけれども、その点についてはどうでしょうか。何か労働力不足についてもう検討を始めているというような新聞報道等もなされているような状況ですが、その辺の危惧はございませんか。
#86
○政府委員(股野景親君) ただいまの研修につきましては、私どもとしてはこの基準を一部緩和する場合であっても技術ないし知識の修得ということが確保されるという点があくまで研修の本来の趣旨でございますので、その点についてはきちんとしていきたい。また関係方面の協力も得たいと思っております。
 他方、それでは外国人労働者の受け入れ一般の問題になってまいりますと、これは本委員会でも御審議をいただいたところでございますが、これは我々としましてはいろいろな関連して検討すべき問題がございますので、この点については引き続き関係各省さらには関係方面と幅広くお話し合いを続けながら、引き続きこれはあるべき姿について検討をしていく、こういうふうに考えております。
#87
○千葉景子君 じゃ、いわゆる実務研修などが実際には労働力不足を補うというようなことにつながらないということは、今確信を持ってといいますか、考えていらっしゃいますか。それに対してやはり厳密な指導をなさっていくというふうにお考えですね。
#88
○政府委員(股野景親君) 研修は本来の研修として行う、そして外国人労働者の問題は、これはまた別途の見地で考える。したがって、本来の研修が確保されるように十分配慮していくべきである、こう考えております。
#89
○千葉景子君 それでは、またちょっと違う問題になりまして大変恐縮でございますが、これも大変困っている方がたくさんいらっしゃるということで若干お聞きさせていただきたいというふうに思います。
 過日の委員会で私は、土曜閉庁に伴う施設での取り扱いの問題をお聞きをさせていただきました。とりわけ、矯正施設などにおける面会等の問題、そしてその中でも弁護士との接見交通の問題についてお聞きをしたわけですけれども、弁護士だけではなくて一般のさまざまな処遇にかかわる問題も、土曜閉庁に伴いましていろいろと弊害が出てきている。それによってさまざまな不利益を受けているという事実が私のもとにも届けられるようになりました。そんな意味で二、三お聞きしたいというふうに思うんです。
 まず、土曜閉庁になりまして、一般の面会もこれは一切その閉庁日には行われないということになったわけですね。これについて法務省では、この間私も話をさせていただきまして、日曜日と要するに同じ扱いなんだ、日曜日がふえたと同じだということでございます。これはそう言えばそうなんですけれども、やはり人の問題ですから、そしてさらには、例えば拘置所などでは無罪の推定を受け、面会、人と会う権利を持っている人に対する問題ですから、単に休日がふえたからといってそれを制約していいものではなかろうというふうに思うんですね。
 特に矯正部分、拘禁部分というのは交代制動務で、これは休日なく、もう二十四時間体制、そして一週間隔たりなく行われている。それと切っても切り離すことのできないこういう面会などの問題については、それとは切り離して土曜日も閉庁になったので日曜日と同じ取り扱いというのは、これは極めて、何というか形式的、そして本来の権利を無視したやり方だというふうに思うんですね。この点について、まず面会部分を交代制勤務、そしてその拘禁部分と切り離して、単に事務部門のような取り扱いをするということについては、私はこれは本来のやり方ではないと思いますけれども、これについてはどうお考えでしょうか。
#90
○政府委員(今岡一容君) 閉庁土曜日における弁護人あるいは一般の方の面会の件につきましては、前回にも御質問をいただきまして、その際お答えしたところでございますが、この閉庁土曜日になりましても弁護人の被告人等との接見につきましては、これはこれまで土曜日に接見をいただいていたということを十分尊重し、また弁護人の役割の重要性というところも考慮いたしまして接見をしていただくように配慮しているということは前回申し上げたと思います。
 ただ、一般人の面会ということになりますと、やはり現行法制のもとにおきましては、休日においては接見等の業務は行わないということになっておるわけでございます。現に、これは長年にわたりまして休日、日曜日等においては接見、差し入れ等の業務はずっと行わないということでやってまいりましたし、そのことにつきましてはそういうものだということで御理解をいただいていたと思うんでございます。
 そういう制度を受けまして、職員の配置も休日、日曜等におきましては極端に職員の人数を減らしております。やはり委員御案内のように矯正職員は非常に厳しい勤務条件のもとに置かれておりまして、その辺も我々としては十分に考慮してまいる必要があるわけでございます。この休日にそういう扱いをしておりまして、現在の職員配置はそれで手いっぽいというのがこれは実情でございまして、これをさらに日曜日においても原則的にといいますか、接見等の業務を行うということになりますと、大幅に職員の配置をふやさざるを得ないというまことに難しい問題があるわけでございます。
 そこで、私どもといたしましては、現状のもとにおきましては日曜日についてはやはりこれまで同様接見業務ということはやらないということについて御理解をいただきたい。現状において直ちに接見業務を行うというのは――施設の中で日曜の給食でございますとか食事を給したりというような、それをやっているから接見もやるべきだというふうな御指摘でございますが、なかなかそれはそのように職員を配置することが困難な状況にあるということにつきまして十分御理解を賜りたいというふうに思っております。
#91
○千葉景子君 私は、根本的にやっぱり誤っていると思うんですよ。というのは、日曜日はそういうものだと御理解をいただきたいというこれは問題ではなくて、基本的にはやっぱり無罪の推定を受けた人にできるだけ外部交通権を保障するというまずそれを根底に置くこと。そして職員の皆さんの状態とか、あるいはぎりぎりでやっているということは私たちもそんなことを知らないで言っているわけではないし、それをできるだけ待遇をよくしていこう、休日もふやしていこうというのは土曜閉庁の制度としてこれは当たり前のことですし、やっていかなければいけないことです。
 だからといって、じゃ権利やあるいは処遇を悪くしていいということには決してつながらない。そこにやっぱり何らかの努力が必要なんじゃないかと思うんですね。この間私はずっと言ってきました。そして河上局長のころも、何らか工夫、努力をしていきたいとおっしゃるけれども、全く行われないんです。御理解いただきたい、御理解いただきたいというこれ一点張り、これじゃ全然、いわゆる拘留施設の改善とかそういうことは行われないだろうというように思うんですね。
 だから、別に私もあしたこうせい、日曜日全部面会させるなどということは全く言っていないつもりです。しかし、土曜閉庁においても全体にサービスの低下をもたらさないような工夫をしなさいというのも、これも総務庁などでも言っていることですね。例えば、公的な機関でもその部分を少しほかの日に延長して窓口をあげるとか、いろいろな工夫をしているところもある。それから本年の予算の御説明をいただいたときに、最近その職員の不足とか、あるいは休日をふやすためにOBの職員の方なども採用をされていろいろな工夫をされているということもおっしゃっている。だとすれば、この部分についても何らか方向性としてこうしていきたい、そのために職員もぜひ次の年は大いに要求をしていきたいとかそういう前向きなやはりお答えがなければ、これはもう根本的に私はその姿勢そのものが問われるんじゃないだろうかというふうに思うんです。そういう意味で、御理解いただきたいではないお答えをぜひ出していただきたいと思います。
#92
○政府委員(今岡一容君) 現在行っている処遇、いわゆるサービスとでも申しますか、それを落とさないようにするということが必要であるということは私どもも十分認識しているところでございます。弁護人等の接見についていろいろ現行制度のもとで可能な限り配慮しているのもそのようなことを認識していることのあらわれであるとお受け取りいただきたいわけでございますが、そのほかにも、先ほど御指摘のありましたように、私ども今年度から賃金職員というようなものも導入いたしまして業務の一部をこれらの職員によって代替させるというようなことも積極的に推進しようといたしております。
 それから、もちろん必要な人員とかの手当てという問題につきましても引き続き大いに努力してまいりたいと思っておりますし、また運用の面におきましても、接見について申しますならば、例えば現状におきまして日曜日などの場合、遠方からわざわざ施設へ訪ねてこられて平日に出直してくるということが非常に困難だというような事情をお持ちの方には特に配慮をいたして、やりくりをして接見に応じているというようなことも現にやっているわけでございます。したがって、私どもとしましては、運用面におきましても、将来における勤務体制の整備というような面につきましてもいろいろな面でいろいろもっと工夫を凝らしながら努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
 ただ、現状はどうかということにつきましては、直ちにそのようにすることが困難な事情があるということを申し上げたわけでございまして、将来的には大いにいろいろ努力してまいりたい、このように考えております。
#93
○千葉景子君 じゃ、もう時間もございませんので、最後にちょっと大きな問題をお尋ねして終わりにしたいというふうに思います。
 昨年の十一月でしょうか、国連で子供の権利条約が採択をされました。これは私も大枠を勉強させていただきましたけれども、まあ大変これまでと発想を大転換をしなければいけないような非常に重要な課題であろうというふうに思います。今後、この子供の権利条約批准に向かってさまざまな論議が進められていかなければいけないと思うんですが、これだけ重要なことですから外務省としては早くやっぱりきちっとした訳をつくっていただいて、そして広く国民各層に、いろいろな関係者に論議を巻き起こす、そしていろいろな意識の啓蒙をしていくということが必要じゃないかというふうに思うんです。そういう意味で、外務省には何しろ早急に皆さんに資料を提供できるような、そういう訳として正式に提出をすることをまず要求をしたいと思うんですが、その点。
 それから法務省、正式なといいますか訳がないわけですから、まだ訳がないので何にも言えませんと言われてしまえばそれまでですけれども、これまで民間の中で訳されたものなどを前提にいたしますと、法務省管轄の民法等あるいは少年法関係などに随分この子供の権利条約を検討するに当たっては考えなければいけない点がたくさんあるんではないかと思います。もう時間がないので一々挙げませんけれども、親族の関係、非嫡出子の差別の問題など、これは憲法上も問題ですが、こういう根本的な議論を展開しなければいけない点がたくさんあるように私は思います。
 そういう意味で、今後、法務省としても子供の権利条約を踏まえてどういうお取り組みをなさるつもりか、法務省にはそれをお尋ねして質問を終わりたいというふうに思います。
#94
○説明員(角崎利夫君) お答え申し上げます。
 一般的に申しまして、確定した日本語訳ができていない段階におきまして条約の訳文を公表することは差し控えさせていただいているというのが現状でございます。
 本条約につきましても、現在、訳文を含めまして検討を重ねておるところでございまして、現段階におきまして、確定できる時期を含めてお尋ねの点について申し上げる状況にはまだ至っておりません。
#95
○政府委員(清水湛君) 児童の権利条約の内容につきましては現在外務省を中心といたしまして勉強会が開かれておるわけでございまして、法務省からも係官が参加いたしまして熱心に研究、検討を続けておるところでございます。
 御指摘のように仮訳が現在出ておりまして、それをもとにして私ども議論するということになるわけでございますが、委員おっしゃいました嫡出子と非嫡出子の相続分の問題、これが条約に抵触するのかしないのか、これはいろいろな考え方があろうかと思います。それからまた、養子縁組についていわゆる夫婦連れ子の養子縁組については現在裁判所の許可を要しないということになっておりますけれども、この条約によりますとすべてそういう一定の権限ある機関の許可に係らしめるというようなことになっておりますので、この関係は形式的には衝突するのではないかというような各種の指摘がされておるということを私ども十分承知しているわけでございまして、そういうような問題点も含めまして、現在内部で真剣に検討をいたしておるところでございます。
#96
○委員長(黒柳明君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時半に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#97
○委員長(黒柳明君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#98
○矢原秀男君 企業合併、買収に関連しての質問をしたいと思います。
 昨年から今年にかけて報道でもいろいろと株式の持ち合いとか企業買収、MアンドAの記事を見かけることは皆さんも御承知のとおりかと思います。今までは海外の問題として非常に多かったわけでございますが、最近では日本でもごく身近な問題としてやはり見過ごしてはいけない問題等もあるわけでございます。このMアンドAの形態については御承知のとおりでございますけれども、一つは国内企業対国内企業の合併、買収、二番目には国内企業対国外企業の合併、買収、三番目には国外企業対国内企業の合併、買収、四番目には国外企業対国外企業の合併、買収等々が考えられておるわけでございますが、我が国企業に直接関係するのは今申し上げた中で一、二、三であるわけでございますが、このような分類をした場合に、それぞれ日本の国では何件近くあるのか、まず大蔵省にお伺いをしたいと思います。
#99
○説明員(中川隆進君) お答えを申し上げます。
 実は私ども大蔵省におきましては、証券行政という観点から所管をしているわけでございまして、直接的に企業の合併、買収筆法律的な面あるいは産業政策的な面について所管している立場ではございませんけれども、御指名でございますので、私の承知している限りの数字を申し上げたいと存じます。
 実は私どもの調査ではございませんで、山一証券の調査がございます。この数字がよく利用されるわけでございますが、これによりますと、御指摘の我が国企業が直接関連をいたしますMアンドA、すなわち企業の合併、買収でございますが、一九八九年、昨年中で今御指摘の国内企業対国内企業といいましょうか、国内の企業同士の合併、買収が二百四十件でございます。それから日本の国内企業が国外企業を合併、買収をしたというケースは四百四件でございます。逆に国外企業が国内企業の合併、買収をしたというのは十五件でございまして、合計六百五十九件ということでございます。近年だんだんふえてきているという状況であろうかと思います。
#100
○矢原秀男君 日本国内でも非常に多くなっているようでございます。
 このMアンドAについては今お聞きをいたしておりますと非常に活発に行われる形態の数字が出ておりますけれども、定着してきた原因には、企業の資金力の向上、余剰資金つまり金余り現象。また円高による割安感、一九八二年には一ドル二百四十九・〇八円でございますが、一九八九年の第一四半期には百二十八・四五円、こういうふうな経済力の飛躍的な向上にあると私たちも分析はいたしているわけでございますけれども、合併、買収する側とされる側はお互いにメリットがなければ成立はしないはずだと、こういうふうに考えております。
 そういう中で大蔵省に二点伺いますが、まず活発になってきた背景、そして二番目にはお互いにどういうメリットがあるのか、そういう分析をされていらっしゃれば御見解を伺いたいと思います。
#101
○説明員(中川隆進君) お答えを申し上げます。
 これにつきましても一般論ということでお断りをしたいわけでございますが、今御指摘のようなまさに我が国企業の経済力の向上といいましょうか、あるいは円の強くなったという背景もあるかと思うわけでございますが、欧米におきましてかねてから企業の合併、買収あるいは営業の譲渡、いわゆるMアンドAという手法につきましては企業戦略を進めていく上での有力な方法ということでかなり古くから行われているわけでございます。一方、我が国におきましても、近年の産業構造の変化といいましょうか、いわゆる企業のリストラクチャリングという言葉で言われておりますけれども、そうした変化に伴います企業活動の多様化あるいは我が国企業が生産活動を海外に展開していくグローバル化という言葉になりますでしょうか、そうしたことの背景といたしまして我が国企業が海外へ進出していく、そういうような状況の中でMアンドAが着実にふえてきている、こういうことではないかと思っているわけでございます。
 それから二番目の、合併、買収、MアンドAはお互いにメリットがあるからやるのだろうという御指摘でございます。まさにそのとおりだろうと思うわけでございます。どういうメリットが考えられるのかということでございますが、これも行政の立場でお答えするのはなかなか難しい面があるわけでございますけれども、一般論として申し上げますと、MアンドAを行う方の企業の立場ということを考えますと、例えば当該企業が持っていないような資源、技術でありますとか、あるいは専門的な知識あるいは独自に開発するのには非常に時間やコストがかかるといったような場合、それから流通システムなど、そうしたものを相手企業が持っている、こういった場合に短期間にそうした市場の参入であるとかそういうシステムを確保するとか、そういうメリットが一つ考えられるのではないかと思うわけでございます。あるいは合併、買収によりまして市場拡大あるいは規模の拡大ということでシェアの拡大、販売力の強化といったような相乗効果も期待できるといったこともあろうかと思いますし、あるいは、これはやや敵対的なケースなのかもしれませんけれども、相手企業の資産が非常に過小評価をされているといったような場合に、合併、買収を行うといったようなケースもあろうかと思います。
 他方、合併、買収される側のメリットということになるわけでございますが、敵対的な場合は別といたしまして、一般的には、例えば経営不振に陥った企業が救済を受けるといったようなケースもございますでしょうし、企業の構造転換のために部門の一部を積極的に譲渡していくといったようなケースもあろうかと思います。また、先ほどの買収する側とは逆になるわけでございますが、人的資源、技術資源あるいは流通システム等の面で競争力のない企業が将来の発展性ということを考えて積極的に買収に応じるといったようなケースもあろうかと思います。こうしたことがいわばメリットということになろうかと思うわけでございます。
#102
○矢原秀男君 最近書店では、こういうMアンドA関係の書籍が非常にあふれております。政府当局としても、商行為の一種と見ていろいろと検討されていらっしゃるんではないかなと思っているわけでございますが、このMアンドA遂行の手順には、大きく分けて一つは、対象企業との話し合いによるもの、二番目には敵対的な企業買収、この二つがあると考えられております。
 私は、この買収企業並びに被買収企業の権利と義務が十分守られているのか、こういう点に非常に疑問に思っているわけでございますが、今回新聞紙上でも問題になっております、今後もなろうと思っておりますが、国際航業株をめぐる問題にしてもしかりであります。このMアンドAに関する法制はかなり整備されていると私も聞いているわけでございますが、詳細な問題、例えば合併等の問題とかいろいろと山積しているようにも思いますけれども、さらなる法整備についてどういうふうに考えていらっしゃるのか。これは法務省と大蔵省にお伺いをしたいと思います。
#103
○政府委員(清水湛君) いわゆるMアンドAと言われている現象につきましては、これは現在の商法上の法制に沿って考えますと、一つには対象会社の株式を取得してその会社を支配するというやり方によるということが考えられます。それから、現在の商法で認められている会社相互間の合併、こういうような形、これは合併契約が必要でございますから話し合いで合併契約をするということに相なろうかと思います。それからまた、あるいは営業の譲渡を受ける。これも契約でございますので譲渡契約によって営業が移るというようなことになるわけでございます。そういうような現在の商法の規定に従いまして、これらが適正に行われる限り、商法上特に問題とすべき点はないということになるわけでございます。あとは企業行動あるいは企業倫理の問題というのが残るということになるわけでございますが、商法が適正に守られるということが前提である限り、問題はないということになるわけでございます。
 ただ、御指摘のようにこの当委員会でもしばしば申し上げていることでございますが、例えば、じゃ合併自体について現行商法上問題はないのかというふうに問われますと、これは実は昭和六十一年に私どもが発表いたしました商法・有限会社法改正試案の中でも、合併につきまして、例えば違った種類の会社の合併のあり方、報告総会のあり方、合併による計算の承継、合併貸借対照表、合併契約書の記載事項あるいは合併に伴う債権者保護の手続等々、細部の点につきましてはいろいろな意見があるわけでございまして、これはまだ検討が十分にされておりませんので、企業の合併あるいは分割等の問題も含めましてこれから検討される問題が多々ある、こういうふうに考えておるところでございます。
#104
○説明員(中川隆進君) 今法務省から御答弁ございましたように、企業の買収等、基本的には企業行動の一環ということで企業が独自に判断をして行うということでございます。
 これに対しまして、産業政策として行政が関与するという場合は別にいたしまして、一般に証券行政ということで言いますと、基本的には中立ということになるわけでございますが、証券取引法を所管する立場から申し上げますと、投資家保護という立場からになるわけでございますが、当該合併、買収等に関します情報を適宜適切にディスクローズして、投資家が不測の損害をこうむらないようにする、特に一般投資家でございますけれども、不測の損害をこうむらないようにするということが大事でございます。
 その意味で、証券取引法等におきまして合併、買収等のディスクロージャーの徹底ということでいろいろな制度がございますけれども、臨時報告書の制度もございますし、あるいは証券取引所のタイムリー・ディスクロージャーといった制度もあるわけでございます。そのほかインサイダー取引規制の導入でございますとか、いわゆる五%ルールの導入、今回この国会で成立をさせていただいたわけでございますけれども、五%ルールの導入あるいは公開買い付け制度の改正といったことを行ってきているところでございます。
 そうした観点から今後とも投資家保護のための制度の整備という点で、私どもとしても遺漏なきを期してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
#105
○矢原秀男君 昨年、MアンドAにかかわる二つの事件がありました。
 一つは、米国の会社と国内の自動車部品会社とのトラブル。二つは、不動産会社と二社の中堅スーパーマーケットの株買い占め事件でございました。この両事件とも株式の持ち合いによる乗っ取り防止策に関する件で注目をされたわけでございます。一の事件では、結果的には米社が大手の自動車会社とその自動車部品会社との系列関係、ひいては株式持ち合いを批判しただけにとどまらなく、日米構造協議の席上問題となっております系列取引の閉鎖性まで尾を引く形になったわけでございます。その辺の流れについて御説明をいただきたいと思います。
#106
○説明員(中川隆進君) 御質問の趣旨は、今の先生御指摘の二つの事件と日米構造協議の関係ということであろうかと思うわけでございますが、御指摘のとおり日米構造協議におきまして、いわゆる系列問題という議論が行われていることは事実でございますけれども、この小糸製作所の事件、それから後で申されました事件と日米構造協議がどのように関連しているのか、どういう観点で系列問題が日米構造協議で登場してきたのか、そうした経緯といったものについては私ども定かに承知しているところではございません。
#107
○矢原秀男君 先日、系列取引の情報開示について省令を改正し、その強化を提示したようでありますけれども、その改正内容ほどのようなもので、投資家、株主にどういう利点があり、産業界にはどのような影響が出ると予測をしているのか、その点を二点お答えをいただきたいのでございます。
#108
○説明員(中川隆進君) お答え申し上げます。
 今般の日米構造協議におきまして、去る四月に行われました会合で中間報告というのが取りまとめられたわけでございますが、その中で系列関係の部分がかなりのウエートを持っているわけでございます。その中で今御指摘のような、いわゆる企業系列の情報開示といいましょうか、そうした指摘がございます。ちょっと読み上げてみますと、
 系列問題に係るディスクロージャーについては、最終報告までに結論を得ることを目途として、欧米の実情等を踏まえ、一層の改善が適切と考えられる事項に関し、検討を進める。上記ディスクロージャーの改善の検討は、関連当事者間取引に係る情報開示、連結財務情報の整備を含め、これを行うことを見込んでいる。
こうした内容になっているわけでございますが、先般一部の新聞に、この御指摘のような系列関係のディスクロージャーといいましょうか、関係企業、親会社であるとか子会社であるとか、そうした関係当事者間のいろいろな取引についての情報開示にかかわる報道があったわけでございますけれども、実は、これはただいま申し上げました日米構造協議の中間報告を踏まえまして、現在最終報告をめどに検討中の段階のものでございまして、このような企業の取引関係等のディスクロージャーとなりますと極めて専門的、技術的な分野にかかわるものでございますし、産業界でありますとか、あるいは監査を行う公認会計士の方々との調整も十分に行う必要があるということで、現在、ただいま申し上げましたような関係者と協議しつつ、最終報告までに結論を得るよう努力しているということでございます。そうした状況が一部報道されたということでございます。
#109
○矢原秀男君 関連をして、この日米構造協議における系列の取引関係においては、証券取引法関係の系列取引開示とともに、この商法上の開示というものが議題に上がっているのでありますけれども、六月末には内容が明確になるように伺っております。こういう問題でこの商法上の開示にかなり影響するのではないかなと私たちは考えているのでございますが、その点は法務省ではどういうふうな見解でございましょうか。
#110
○政府委員(清水湛君) 日米構造問題協議の中間報告におきましては、会社法の見直しといたしまして「商法によるディスクロージャーの制度の拡充及び合併の弾力化等について、今後の法制審議会において検討する。」ということが示されているわけでございます。
 商法によるディスクロージャーというのは、証券取引法によるディスクロージャーとやや違うという面があることは否定できないわけでございます。証券取引法の方のディスクロージャーというのは、資本市場で資金調達を行う大会社を対象としている、そういうことのために詳細な開示が義務づけられているわけでございます。ところが商法は、百二十六万社に達する株式会社一般を対象としているというような点あるいは小会社の立場も考慮しなければならないというような点、いろいろな要素がございますので、証券取引法と必ずしも同じようにはいかないという面があるわけでございます。しかしながら、これまでもそうでございましたけれども、大会社につきましてはできるだけ証取のディスクロージャーと歩調を合わせる、例えば企業会計の原則などについても商法の計算規則と企業会計原則を適合させるというような形で両者の一致を図ってきたところでございます。
 アメリカが求めているディスクロージャーというものに対して、証券取引法を別といたしまして商法の面からどの程度おこたえすることができるか、これは法制審議会において今後検討されるべき問題ではございますけれども、私どもも十分に努力してまいりたいというふうに考えております。
#111
○矢原秀男君 そうして日米構造協議における会社法の見直しにおいて合併の弾力化、これは法制審においても検討されると思っておりますけれども、この将来方向はどういうようになっているのでございますか。
#112
○説明員(大谷禎男君) お答え申し上げます。
 合併につきましては商法もそれなりの規定を置いているのでございますけれども、商法の規定をごらんいただきますとすぐおわかりいただけるように、非常に規定の数が少なく簡素なものとなっております。この点は実務の工夫の余地をそれだけ認めるという点でよい面もあるのでございますが、具体的な行動の基準が示されないために難しい場面で実務界がいろいろ対応に困るということが指摘されております。一方、簡素であるといいながら逆に余計な干渉をしているというような点が指摘されてもいるわけでありまして、そういう意味では、一方では足らず一方では干渉が過ぎるというような点があるわけでございます。
 合併法制につきましては、これまで局長の方からも御答弁申し上げておりますように、本格的な検討はこれから法制審議会においてしていただくことになるのでございますけれども、さしあたり意識されている問題点について若干御説明をさせていただくことにいたしますと、まず合併というのは平たく申しますと企業同士の結婚ということになるわけでございまして、財産がそれぞれ合体をいたすわけでございますが、その両会社の財産がどのように合体をするのかということに関してほとんど規定がないということが最大の問題点でございます。そのような財産の承継に関する規定をまず整備をしなければならないということが意識されているのでございます。
 それから二番目の問題といたしましては、冒頭お話ししました過ぎたる干渉にわたる事項ではないかと言われているものでございますけれども、合併をすることができる会社の組み合わせ、あるいは合併後の会社の態様について商法あるいは有限会社法はさまざまな制限を置いております。
 若干その例を申し上げますと、例えば有限会社は株式会社としか合併することはできませんで、会社としてはほかに合名会社及び合資会社というものがありますが、そのようなものとの縁組はできないということになっているのでございます。また、有限会社の合併についてはさらに制限が設けられておりまして、有限会社と有限会社同士が合併をする場合にはその後の存続会社も有限会社でなければならないとか、あるいは有限会社と株式会社が合併して存続会社が株式会社である場合には裁判所の認可を得なければいけないというような制限があります。あるいは合名会社、合資会社は株式会社と合併をすることができますが、その場合には存続会社は株式会社でなければならないというような規定を置いているのであります。
 このような制限の趣旨は、一つにはそれ以外の合併の態様は余りないであろうというような必要性の観点からの考慮、あるいは無制限に組み合わせを認めると、例えば簡単に会社を設立して合併によって設立の厳しい株式会社というような形の形態に移ることができるというようなことを防止しようという問題意識があったかと思うのでありますけれども、それにしてはやや不徹底でもあり、必ずしもそういう問題意識の趣旨は生かされていないということが言えるわけでございます。したがいまして、これからの改正におきましては、そのような現行法の合併当事会社の種類の制限というような規制にどこまで合理性があるのかというようなことについて検討をお願いしていきたいというふうに考えております。
 それから、さらにその次の問題でございますが、実務的には極めて大きな問題と言えるかと思いますけれども、現行商法の規定に基づきまして合併手続を進めますと非常に時間がかかるということが言われております。合併は会社の運命に重大な影響を及ぼすものでありますから、株主からの承諾を得るという手続については極めて慎重な手続をとらなければいけない、あるいは債権者の了承をとらなければいけないという点は一般論としてはそのとおりでありますが、それにいたしましても少し現行法の規制は厳重に過ぎる。
 細かい点は省略させていただきますけれども、合併手続が始まりましてから合併が完成するまでの間に二度にわたって株主総会を開かなければならないとされております。果たしてその必要性があるのかというような問題がございます。それからまた会社の債権者との関係では、債権者に対して合併をするという事実を告知いたしまして、それに対して異議のある債権者に対しては、あるいは弁済をするとかあるいは担保を供するとかいうような手当てをその債権者の態様、債権の重要性を問わず一律にしなければいけないというふうなことにされているのであります。このような手続の重さということも期間を長くするとともに合併手続を非常に重いものにしているということになっているわけでありまして、このような点についてもまだ十分合理化の要素があるというふうに学者からも指摘がされているのであります。
 以上、重立ったところを御紹介申し上げましたけれども、そのような点を中心に今後鋭意法制審議会において検討がされていくものと期待をしているところでございます。
#113
○矢原秀男君 大蔵省に伺いますけれども、株式の持ち合い、これは国内では安定株主づくりとしてほぼ一般化しているようでありますが、諸外国では大体どういうふうな傾向であるのか、この点を伺います。
#114
○説明員(中川隆進君) お答えを申し上げます。
 株式の持ち合いにつきましては、申し上げるまでもなく証券市場といいましょうか、公開市場に一般に取引されている企業の株式の取得、保有、相互保有、持ち合いといいましょうか、基本的にはもちろん自由でございまして、そういう意味からしましてどういう持ち合いの状況かという数字を私どもが具体的に把握しているわけじゃないわけでございますが、ましてや海外の状況といいますとなかなかわかりにくいわけでございますけれども、一般に言われていますのは、我が国の場合に株式の持ち合いという比率が高いのではないかというふうなことが言われているわけでございます。
 今、御質問は海外の状況ということでございますけれども、そうした観点でまず国内の状況をちょっと見てみたいと思うわけでございますが、国内で、何をとるかなかなか難しいわけでございますが、証券取引所協議会というのがございますが、そこが調査しております上場株式の法人の所有割合というのを、持ち合いの数字とはちょっと違いますけれども、これを見てみますと、株数ベースで七三%、金額ベースで七五・四%ということになっております。同じような形で海外、英米等を見てみますと、例えば米国でございますけれども、一九八八年の数字になりますが、株式の所有割合でございますが、金額ベースで個人が五八・三%、残りは個人以外ということでございますが、そのうち金融機関が三五%ということでございます。これも、繰り返しになりますが、持ち合いの状況ということでは決してないわけでございまして、最近機関化現象ということでこうした機関投資家の株式保有がふえているということの状況であろうかと思います。それからイギリスでございますが、同じ数字でございますが、一九八八年で金額ベースで個人が二八%、個人以外、金融機関と事業法人合わせまして六二・八%、西独で見ますと、同じ一九八八年で個人が一九・七%、個人以外、事業法人、金融機関でございますが、これが六一・二%、こういった状況でございます。
#115
○矢原秀男君 二つ目の事件につきましては、今東京地裁で仮処分の問題でありますけれども、これは不動産会社と二社のスーパーマーケットの株の買い占めにかかわる事件であります。
 不動産会社の買い占めに対抗して二社のスーパーは、お互いに安定株主づくりのために割安な第三者割り当て株式を発行し、お互いに持ち合いをしたのでありますけれども、この株価が時価の数分の一の低価格で発行したものですから逆に買い占め側の提訴を受け、新株発行差しとめ判決を受ける、こういうふうな形の事件でございます。これに関係して質問をいたすわけでございますが、企業防衛の観点からこの事件の成り行きが注目されていたのでありますけれども、敗訴となりますと二社のスーパーの株式持ち合い、いわゆる株式の第三者割り当てによる安定株主づくりの遂行の仕方が間違っていたのか、それとも従来、企業防衛の一手段として有効方法と考えられてきたこの第三者割り当ての株式持ち合い、これらに欠陥があるのか。非常に複雑な問題があるんですけれども、法務省の立場で分析をしていただいた場合にどういうふうな見方があるのか、そういう点を伺いたいと思います。
#116
○政府委員(清水湛君) お尋ねの秀和株式会社が株式会社いなげやを相手といたしまして、いなげやの新株発行の差しとめの請求をしたという仮処分でございまして、これに対する決定は公刊物に掲載されておりますのでそれに基づいて私どもその事実を知るわけでございますけれども、要するに新株を発行する場合に、授権株式の範囲内で取締役会が経営権の行使として新株を発行する、その際にこれをだれに割り当てるかということは原則として自由である、こういうことに現在の商法上はなっているわけでございます。しかしながら、株主以外の者に対して特に有利なる発行価額をもって新株を発行するという場合には、これは既存の株主の権利を害するおそれがございますので、株主総会の特別な決議が必要である、こういうふうになっているわけでございます。
 本件は、この被申請人の方でした新株の発行についてのその発行価額が特に有利な価格であったかどうか、つまり被申請人の一般の株価というものに比べて、発行価額として決められた価格が非常に低くて、非常に第三者にとっては有利であるというような事情があったかどうかという点が第一の争点。それから第二の争点は、これは商法二百八十条ノ一〇でございますけれども、著しく不公正な方法でそういう新株の発行手続が行われたかどうか。申請人のいわば権利を害する、つまり当然新株を発行することによって申請人のいなげやに対する株式の持ち分割合というのは減ってくるわけでございますから、そういうことは当然のことでございますが、それに加えて何か不当な目的があってそういう新株の発行がされたものであるか、つまり不公正な発行であるかどうか。この二点が争点になったというふうに私どもは理解しているわけでございます。
 これはいずれも、特に有利な価格であるかどうかというのは事実認定に属する問題でございまして、裁判所の一審の判断によりますと、これは特に有利な価格であるから、本来株主総会の決議によるべきところをやっていない。したがって、そういう意味では法令に違反するということをこの決定では言われているわけでございます。また、不公正発行であるかどうかということについても、この決定は不公正なる方法による発行であるというふうに結論づけているわけでございますが、いずれもこれは具体的な仮処分申請事件における事実に基づくものでございまして、そういうようなそこに出されました疎明資料その他に基づいて裁判所がそういう御判断をなさったということであって、私どもといたしましては、これに対してとやかく申すべき筋合いはないと言わざるを得ないというふうに考えているところでございます。
#117
○矢原秀男君 この件について、じゃ最後に法務大臣に伺いますが、こういう経済界の証券に絡むいろんな問題等々、やはり健全な社会のあり方でなければいけないと思いまずけれども、今後MアンドAについてはさらに国内、国外についても数多く進んでいくと思うわけでございますが、国民の立場から見て、ああやはり健全なものだな、そういうふうな安心感がないと、これは単なる経済界のやりとりというものだけではなくして、法務省としても政策的な一つの路線というものが将来法的に必要ではないかなと、今こういう裁判の一つを我々分析して感じているわけでございます。一言で結構でございますが、この点についての見解を伺います。
#118
○国務大臣(長谷川信君) 今委員いろいろ御発言がございました意を体しまして、十分ひとつ勉強させていただいて、検討いたしたいと思います。
#119
○矢原秀男君 次の問題は、先般新聞紙上にも出てまいりました尊厳死宣言の問題でございます。
 私も非常に心配をしているわけでございますが、これは六月二十日の朝日新聞を拝見したわけでございます。「「尊厳死宣言」が急増」「死が迫ったら、植物状態なら、延命措置は一切しないで」という関係の方々の御希望というもので、登録者が八千人を既に超えている、そういうことでございますが、文面を拝見いたしますと、
  死が間近に迫った時や植物状態に陥った場合、死期を引き延ばすためだけの医療措置は一切しないで欲しい――という「尊厳死の宣言」をする人が増えている。この考え方が日本に紹介されて十数年。宣言者は長らく千人台で横ばい状態が続いていたが、二、三年前から急速な伸びを見せ始め、先月半ばに八千人を超えた。高齢化が進む中、今年初めには日本医師会の生命倫理懇談会が尊厳死を容認する見解を打ち出しており、関心はさらに高まるだろうと関係者は話している。
こういう問題でございます。
 私は、この方々の論文というものを拝見をさせていただきました。それは、尊厳死については、充実した生を生きるためにということでいろいろの論文を出されております。そういうものを拝見をしながら非常に私も心を痛めるわけでございますが、その論文の中にもいろいろと道徳、哲学の立場から、ギリシャの哲学者のソクラテスの格言を引用されたり、プラトンの一節も引用されながらいろいろと論文がつくられております。私はやはり、この世に生を受けて、一人の人間の命は地球よりも重いというこの格言、哲学というものは皆さんが周知のとおりでございます。
 だから、いろんな関係分野が全力を挙げて、お体の悪い方々やそういう方々が、本当に何とかこの世の中で精いっぱい生きていただいて喜びにあふれていく、そういう生命の尊厳というものを私は思っているわけでございますけれども、一面ではこのようなことがまた急増傾向にあるわけでございますが、この点につきましては厚生省にまずお尋ねをしたいと思います。
 この尊厳死宣言、つまり死が間近に迫ったときや植物状態に陥った場合、死期を引き延ばすためだけの医療措置は一切しないでほしいというものでございますけれども、日本尊厳死協会の宣言書にもこれらに関して載っているわけでございますが、登録も非常に数多くなっておるようでございます。
 こういう面から見たときに、厚生省に関係をされます日本医師会の生命倫理懇談会がこの尊厳死についてはどういうふうな現時点においての見解を持っていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。
#120
○説明員(小沢壮六君) 日本医師会の生命倫理懇談会におきまして、本年の春に「「説明と同意」についての報告」という報告書を提出されておられます。それの前提の中で、説明と同意に関するアンケートということで約二千名の医学関係者の方々を対象にしてアンケート調査をされたというのがあるわけでございますが、これの中で、末期医療におけるリビイングウイル、生前発効宣言についてどうお考えですかと、そういう問いがあるわけでございますが、これに対するアンケート調査の結果といたしましては、一番多いのが「医師は尊重すべきであると思う」というのが約七〇%、それから、リビングウイルの有効性については「今後立法化すべきである」というのが一六・三%、それから、患者のリビングウイルにかかわらず、「医師は延命処置を実施すべきである」、これが七・三%、それから、その他「あまり関心がない」というのが五・七%というような結果になっておるわけでございます。
 この「説明と同意」という医師会がお出しになりましたのは、尊厳死というよりも説明と同意ということで、いわゆるインフォームド・コンセントという言葉で言われたりするわけでございますが、もともと医療というのは患者と医者の信頼関係の上に立って行われなければいけない。その信頼関係を保つゆえんは、やはり十分な医師と患者との対話がなければいけない。そういうような立場から、説明と同意といいましょうか、よく患者さんに病状を説明し、それから、その病状によりまして幾つか治療方法があるとするならば、どの治療方法を患者さんが希望されるか、そういうものをやはりその対話を通してやっていくことがその本当の治療の効果が上がるんではないか。そういう立場からこの説明と同意ということについての報告書が出たというふうに理解しておるわけでございまして、いわゆる尊厳死協会が言っておられます尊厳死そのものについて正面から取り上げたものではないんではないだろうか、そのように考えておりますが。
#121
○矢原秀男君 尊厳死宣言の条文には、ただし麻薬などの苦痛を和らげる処置は希望すると。しかし、御病気の方とか、非常にやっぱり私たちも病痛に対してはもう言葉もないわけでございますけれども、こういう中で尊厳死協会への登録者が八千人を超えているということでございますが、日本の国で実際にこの尊厳死というふうな形の数字ということになりますと、厚生省ではどういうふうな分析と把握の数字というものを持っていらっしゃるのか伺います。
#122
○説明員(小沢壮六君) 役所といたしましても、その尊厳死という言葉を直接使ったこともございませんので、尊厳死という定義をどういうことでとらえるかという問題はあろうかと思います。
 任意団体でございます尊厳死協会の方々の言っておられますのは二つあるかと思いますが、先生から御紹介ございましたけれども、一つは、非常にがん等の末期的な状況の末期医療の場におきまして、極めて近い時期に死期が迫っている。その場合に、単なる、極めて短い期間の延命治療を行うよりも、苦痛を和らげるようなそういった治療方法を選択する、それが一つのカテゴリーだと思います。
 それからもう一つ、尊厳死協会の言っておられるのは、これはまたちょっと質が違うかと思いますが、いわゆる植物状態に陥ったまま回復の見込みがない場合には一切の生命維持装置を取りやめてほしいというようなことが、その尊厳死協会の言っておられるリビングウイルの内容というふうに承知しておるわけでございます。
 それで、前段のいわゆる末期医療の場におけるどういう治療方法を選択するかという、つまり苦痛を和らげるための医療を中心に行うか、そうではなくて、いわゆる病気のキュアそのものを徹底的に行うかという、そこの選択の問題というのは、今日的な問題として医療の現場で非常に議論のされているところでございます。御案内のとおり、末期医療の場合、例えばがんを告知するかしないかという問題も、どうした方がいいかというような結論が出ている状況ではないわけでございますが、いずれにしても、現実の医療の場におきまして、その医師が患者との関係におきましてどのような医療をすればいいかということを対話して行う場合もあるし、それから告知をしないで医療をするという場合もあるわけでございまして、そういう末期の医療、いわゆるがんの末期の患者さんといいましょうか、年間約二十万人の方ががんでお亡くなりになるわけでございますので、そういう方々につきまして最終的にどういった格好の医療が行われているか、これは医療の現場で医師と患者で最善の方法を選択しながらやっているということでございます。
 長々申し上げましたけれども、結論といたしましては、どのような数が尊厳死として行われているかというような数字は行政としては把握しておりません。
#123
○矢原秀男君 私も末期医療の段階での医学者のいろんな御意見、そして医学的な立場いうものも伺っているわけでございますが、ここでちょっと法務省にお尋ねをしたいと思うのでございます。
 新聞紙上にも、今厚生省からもお話をいただいたわけでございますが、非常にお体の悪い方々の医療上の末期、そしてまた生命を本当に大切にしていかなければならない立場、そういうふうないろんな形の中で法務省という法を表に出された立場から見まして、こういうふうなことに対する御見解というものがございましたら一言伺っておきたいと思います。
#124
○政府委員(井嶋一友君) 委員先ほどから御指摘のように、大変難しい問題を提起されたわけでございまして、私どもも見解を述べるというのが非常に困難を感じるわけでございますが、法務当局にお聞きでございますので、その意味合いは法的な側面からのこの問題に対する見解、もっと突き詰めていえば刑法上の観点からの見解、こういったものをお求めになっておるのだろう、このように思うわけでございます。
 そこで、先ほどもちょっと議論がございましたけれども、尊厳死協会が言っておられる尊厳死という概念、この定義というのはいろいろ言いようがあろうかと思うわけでございますけれども、少しく私どもの考え方でまとめてみますと、先ほど委員が冒頭に申されましたように、尊厳死と申しますのは、まずやはり本人の生前の意思に基づきまして、生命維持装置に頼るほかには延命の方法がない、こういう場合においてそういう装置を、つまりそういう医療行為を拒否するのか、あるいは既にそういう医療行為を受けておるが、それをやめて尊厳のある自然な死につかせることを言う、これが私たちは尊厳死というものの定義だと考えておるわけでございます。
 御案内のように、安楽死という言い方がもう一つあるわけでございますけれども、これはもう少し広い概念であると考えておりまして、尊厳死も安楽死の中の一つであろうと思いますが、安楽死と申しますのは、むしろ死に直面して非常に著しい甚だしい耐えがたい肉体的苦痛がある場合、そういった人に対して、その人の嘱託あるいは承諾といったような条件のもとにそういった苦痛を和らげ楽な死に方をさせるというような意味で、若干意図的あるいは積極的な措置を伴って行う行為、これを安楽死と考えるわけでございまして、若干ニュアンスに違いがあるわけでございます。また、確かに法的な面を見る場合におきましても、そういった意味での尊厳死と安楽死との間には若干法的な検討の過程でも違ったニュアンスが出てくるかと思うわけでございます。
 お尋ねは尊厳死でございますから、尊厳死について申し上げるわけでございますけれども、ところでこの尊厳死は、先ほど委員のおっしゃったとおり、やはり法律のみならず――もちろん基本的には医療行為でございますから医療の範囲に属することだということになるわけでございますけれども、その反面法律的に、あるいは道徳的に、あるいは宗教的に、あるいは場合によったら哲学的な問題も含めた非常に大きく深刻な問題の一つでございまして、やはりそういった意味で私どもといたしましては、法的側面だけ、ましてや刑法的な側面だけでこの問題を論じるのはいかがかという感じを持っておるわけでございます。そういった意味で、冒頭申しましたように、非常に困難を感じておるわけでございますし、またここで明快に法的な側面についての見解を申し述べるということが難しいんだということを申し上げて御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。
#125
○矢原秀男君 確かに非常に深刻な問題でございますけれども、生命というものを厳粛に受けとめて本当に生き長らえていただきたいというのが私たちの願いであります。
 最後に法務大臣、今局長のお話もございましたが、いろんな面から非常に難しい側面、そして一面では本当に悲しい思いもするわけですけれども、これらの問題は今後二十一世紀の高齢化社会に向かって避けられない大きな一面であろうかと思います。私は、生命はとうといものでございますから、すべての関係分野が本当に協力し合って何とか一日でも生き長らえていただきたい、こういう願いの中で質問いたしているわけでございますけれども、最後に法務大臣のこれらに対する御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
#126
○国務大臣(長谷川信君) 今先生の御意見を拝聴しながら、もし私が今ここでそういう立場になったら尊厳死の申請をするか、あるいは一秒でも二秒でも長くもたしてくれと言うか考えておったんですよ。どうもまだはっきり結論が出ておりません、私自身体の中で。非常に難しい問題ではあるが、これはやっぱりいずれ解決しなければならない問題だと思いますので、関係方面、専門家の意見をこれから聴取しまして、法務省としても統一見解がもしできるものなら出したいということで検討させていただきたいと思います。
#127
○山田耕三郎君 一昨日、すなわち六月十九日の労働債権確保に関する質問の第三項におきまして次のとおり質問をいたしております。
 すなわち、財務書類の公開は取引の安全と債権者保護のためにはもちろんのこと、中小企業従業員の生活の安定を確保する上からもぜひ必要であり、法制審の答申どおり改正することが肝要と考えます。それが直ちには不可能な場合にありましても一定数、例えば従業員三十人以上の企業にあっては労働組合等に公開を義務づけられませんかとお尋ねをいたしました。以上に対する答弁が欠落しておりましたように思いますので、改めて御答弁をお願いいたします。
#128
○政府委員(清水湛君) 冒頭に、まことに申しわけないということで陳謝をさせていただきます。たしか三点の御質問があったわけでございますが、私、二点については答えたわけでございますが、一点については失念いたしまして大変御迷惑をおかけいたしまして申しわけないと思っております。
 そこで、その三点目でございますけれども、確かに登記所における計算書額の公開という制度、これはなかなか法制審議会答申どおりにこの法案に盛り込むことができなかったわけでございますから、じゃせめてこの分野だけでもとか、あるいはこの金額以上の資本金の会社についてはどうかとか、そういうことが次善あるいは三善の策として当然考えられるところでございます。御指摘のような形で例えば一部でもいいから公開せよ、あるいは議論の過程では中小企業団体の方々からは資本金一億円以上の会社についてやるなら自分たちは反対しない、こういうような御意見も実はあったわけでございまして、それ自体一つの検討課題ではあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、法制審議会でああいう答申が長い審議の過程の中でされたわけでございますので、ぜひとも答申された計算・公開の制度がそのまま実現できるように、できるだけ早い機会にそういうことができるように努力をいたしたいというふうに考えている次第でございます。したがいまして、先生御指摘のような形での解決策というのは現段階では考えていないわけでございます。
 なお、御参考のために申し上げますと、従業員は会社に対する雇用関係上の債権を有するものでございますので、例えば会社に備え置かれた貸借対照表、損益計算書等については閲覧、謄写を求めることは一応できる、現在の商法の二百八十二条の規定でできる場合があるということをちょっと御参考のために申し上げておきたいと思います。
#129
○山田耕三郎君 今日、地方自治体におきましては住民対応をソフトにという立場からお役所言葉の追放が真剣に論議をされ、着々と成果を上げております。行政を円滑に進めるためにはこのことは何よりも大切なことだと私は考えます。主権在民の時代となり、役所のイメージチェンジに最も必要なのは市民対応の改善とお役所言葉の追放だという発想に基づくものであります。かた苦しいお役所言葉も、例えば次のように変えてみますとなかなかソフトになりますということを指摘をしております。例えば「勘案する」という言葉は「よく考える」、あるいは「図られたい」は「するようにしてください」、あるいは「鋭意」は「懸命に」とか「さまざまに」とかいったぐあいに、なかなかおもしろいと私は思っております。法律は国民のためにあるものです。したがって国民にわかるものでなければなりませんし、できれば親しめるものであればもっとよろしいと存じます。
 さきにも私は要望いたしましたのでございますけれども、我が国の法律は本当に難解で浮世離れがしておるように思います。現行商法はもちろん片仮名書きで古い様式のものです。しかし、関連法律の中には片仮名書きもあれば平仮名書きもあります。商法改正についてはなお引き続き検討されるとのことですから、確かに立法技術の問題もありますとは存じますけれども、集大成を得られるまでに近代化されたもっとわかりやすいものに書き改められるか、不可能な場合にはせめて平仮名書きに統一されることはできないものか。法律を読むたびに痛感をいたしますので、素人の立場から要望を申し上げて、所見をお願いいたします。
#130
○政府委員(清水湛君) 法文の平仮名口語化をせよという御指摘でございまして、私ども全くおっしゃるとおりだというふうに実は考えているわけでございます。そうは言ってもなかなかできないのはなぜかというのが御質問の御趣旨だろうと思います。
 実は最近の法律は平仮名、口語文ですべて書かれておるということになっているわけでございますが、法務省所管の法律というのは、これはほとんどもう明治の初期に国家の基本法としてつくられた法律でございまして、漢字片仮名まじりの大変難しい法律になっております。そういうものを口語化せよということが従来から国会でも指摘され、国会外でも指摘されているところでございます。私どもも、例えば先般この当国会で審議して成立させていただきました民事保全法とか、あるいはその前の民事執行法、これは民事訴訟法という一つの大きな法律の中で漢字片仮名まじりの法律でございましたが、必要な部分を抜き出しまして口語平仮名化した形で法律をまとめたわけでございます。
 そういう意味で少しずつは口語平仮名化を進めているわけでございますが、まだ基本である民法あるいはこの御指摘の会社法についてはそういうことがされていないわけでございます。できるだけ早い機会にというか、これはもう至急に私どもすべきだというふうに考えているわけでございますが、一つ問題として残りますのは、口語平仮名化にするという場合に、いわば直訳をしていけばすぐ口語平仮名化できるじゃないかということも考えられるわけでございますけれども、直訳的な口語化というのはそれは簡単にできるわけでございますけれども、なかなかそういうふうにはいかないという面があるわけでございます。
 法律を口語化すると申しましても全面改正をするという形になりますので、全面改正ということになりますとその改正時点における社会経済情勢にやはり適合した形での口語化の法律でなければならないということになるわけでございまして、先ほど委員御指摘のように、例えば一つの言葉につきましてもこれを現代流に言いかえるという技術が必要でございまして、この言いかえの今度は表現をどうするかということでこれが非常に議論が出てくるということと、もう一つは、中身自体についても現代に適合するような形でやはり書きかえなきゃならないんじゃないかというような議論が出てくるわけでございます。
 そうなりますと、それぞれの条文について実はいろんな意見があるわけでございまして、結局一条ごとに逐条的に審議してその中身を新しいものとして確定していかなければならないということになってくるおそれがある。そうしますと、これは大変な時間がかかる、こういうことが従来から指摘されておるわけでございまして、民法の口語化なんということを簡単に言いましても、学者の間でもそう簡単な話ではないということにされているのは、いわばそういうような考え方が背景にあるからでございます。
 これに対しまして、今使われていない言葉は現代流の言葉に変える必要があるけれども、そうでない言葉についてはとりあえずそのまま使って、いわば直訳的な口語化をしたらどうか、こういうようなことをおっしゃる方もおるわけでございまして、そういう立場に立ちますと、口語化された条文の中身が現在の社会経済情勢に適合しているかどうかというのはまた別の機会に御議論いただくことにして、とりあえず口語化された法文として素直に読めるものであるかどうかということだけに焦点を当てて全面改正をするという形にしたらどうか、こういうような意見もあるわけでございます。そういうような形ですと比較的早く口語化ができるのではないかというようなことも言われているわけでございます。
 私どもどういう方針で口語化をするかということをこれから本当に真剣に考えなければならないわけでございますが、商法につきましても実は当初商法・有限会社法改正試案を発表いたしまして、大幅改正を考えるというような時点ではこの際一挙に口語化ということも考えたわけでございますけれども、今回の改正は先般来御議論になっておりますように大きく広げましたけれども、いわばその一部だけを取り上げて改正するような形になってしまいましたために、とりあえず難しい昔の表現にならってその一部を改正するという形で決着をつけざるを得なかったということになったわけでございます。いつまでもこのようなもう私どもにも読めないような難しい字が使われている部分もございまして、いつまでもこのような難しい形での法文のまま放置していくということは、これはもう大変問題があると思いますので、今後の会社法の全面見直しの際には何とか口語化、現代用語化をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
#131
○山田耕三郎君 最後に、本改正法案審議のまとめとして長谷川法務大臣に、商法を守る会社らしい会社のより多くなることを願う立場から質問をいたします。
 我が国では個人企業より会社の方が社会的な信用もあり、税制の面でも有利になっております。こういった会社制度の恩典を利用する目的から、我が国では株式会社や有限会社が極めて多く、他の先進国と比較をしてもその数は突出をしております。しかし、これらの大多数は小規模でありますし、商法などで定められた規則を守っている会社は極めて少ないとも言われております。例えば、株式会社の三分の二は資本金が一千万円未満の小さな会社であり、会計内容を貸借対照表で公開しております株式会社は全体のわずかに一%とも言われております。しかも、株主総会も開いたこともなければ株券の発行もなく、会社の財産と個人の財産を混同しているといった会社が多いようでもあります。会社をつくることは法律で定められた制度なのですから、その目的が何でありましても、それを利用すること自体には何ら問題はございません。しかし、どのような制度も目的どおり運用されるためには義務や規制がつきまとっておりますし、またそれは当然なことでもございます。それが守られなければ、制度自体が形骸化して、行き着くところは制度の崩壊につながりかねません。
 特に株式会社、有限会社の最大の特徴は有限責任制度であります。会社の資産についてのみ責任を負えばよろしいということであります。すなわち、倒産をしたら債権者の頼りになるのは会社の財産だけであります。だからこそ商法では会社の財産がどのような状態にあるのか、債権者にもわかるように貸借対照表等の公開を義務づけておるのですが、それが実行されないとあっては、俗に言うキツネとタヌキの化かし合いになりかねません。そのことは当局におかれましても十分承知をしておられるなればこそ、むしろ形骸化した規則や形式的な規定を改めて、だれでもが守れるように改めようということで今回本改正案が提出されておるのだと思いますが、今日までの質問でただしてきましたように、しかし改正案は余りにも現実に妥協をし過ぎておいでになるのではないか。困難さもわかりますが、重要な問題が先送りされている。この妥協と先送りの二点については、私は不安を感じます。
 今日我が国においては、政治とお金とのかかわりが象徴していますように、お金にかかわります病根が広く蔓延しております中で、この社会的風潮を直すことが肝心だとは思いますが、せめて制度から利益を得る立場の人たちは、制度を形骸化させないためにも、義務や規則を守るという社会的な環境づくりに貢献をしていただきたいものだと思います。
 幸い長谷川法務大臣は、今回の法改正で欠落した部分については引き続き検討を進め、なるべく早い機会に成果を得たい旨の御答弁もありましたことでございますので、私は本法案は良といたしますが、経済大国の日本の経済法として国際的にも立派に通用する商法の集大成を実現をしていただきたいものと存じます立場から、改めて大臣の所信と決意のほどを承らせていただいて、私の質問を終わります。
#132
○国務大臣(長谷川信君) 今ほど山田先生から御理解あるいろいろお話を承りまして大変感謝をいたしております。
 いつも申し上げておりますとおり、今回御提案申し上げたのが私ども完璧なものだとは思っておりません。なぜそうかと申しますと、前にもるる申し上げましたように、何しろ会社と称するものが百六十万件もある。そのほかにも底辺にはもっと、またその下の層もたくさんあるわけでございます。それらの最大公約数をどこに求めるかということになりますと、まさにこれはなかなか簡単ではないことなんだ、やってみて十分わかりました。
 そういうことでございますが、しかし今御指摘のとおり、国際経済の中の日本でございますので、いつまでも放置するわけにはいきません。次善の策ということで御提案申し上げたわけでございますが、いろいろ御注意があったのも踏まえて、できるだけ早い機会に国際的に見ておくれないような日本の商法を改正、改善をすることに今お話しのとおり私も真剣な気持ちで取り組みたいと考えているわけでございます。いろいろまた御指導をよろしくひとつお願いいたします。
#133
○山田耕三郎君 終わります。
#134
○星野朋市君 私は、転換社債の問題一点に絞りまして質問をしたいと思います。
 ここに三百四十一条ノ二ノ六「株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ株主ハ転換社債ノ引受権ヲ有ス但シ」以下略しますけれども、これを新設されました理念についてちょっとお聞かせ願いたいのでございます。
#135
○政府委員(清水湛君) 株式の譲渡制限をしている会社にありましては、株主は市場において自由に株式を取得することができないわけでございます、会社の方でチェックをされるわけでございます。そういう場合に、例えば会社の方で転換社債を発行する、転換社債というのはこれは株式に転換することができる社債でございますので、これを第三者に自由に割り当てて発行することができるというようなことにいたしますと、結果において株主の方は自由に株式を取得することができないのにもかかわらず、会社は勝手にどんどん別な株主をつくっていくことができる、こういうようなことになるというようなこと。つまり今回の改正におきまして、新株引受権につきましても、こういう譲渡制限をしている会社につきましては株主に新株引受権があるというふうに改めたわけでございますが、これに準ずる転換社債についてもやはり同じように改める必要があるということでこのような改正をすることといたしたわけでございます。
#136
○星野朋市君 これは資本調達の多様化ということに対処されたんだと思うんですがね。けさほどの御答弁ありましたように、株式会社は非常に数が多い。それで新株の発行につきましては法律的には統一しなくちゃならないというこの理念はわかりますけれども、実際問題これは上場会社の新株発行の方がそうでない会社よりも難しいんですね。法律の問題と実務の問題とを一緒にするのはなんですけれども、実際は私なんかにすれば上場会社とそうでないもの、商法は本来的に分けるべきだと思っているんです。これは短時日でできるものじゃございませんが。
 それで転換社債になりますと、これはもっと難しいんですね、実際は。私、民間におりまして転換社債の実際実務をやった経験がございますので、ちょっと釈迦に説法ですけれども、いかに転換社債というのが発行するのが難しいか、それから相当な準備を要するものであるかということを若干述べさせていただきまして、これは法律の問題とそこら辺どう絡むのか、実務との問題はどうなるのか、後でちょっとお聞きしたいのでございます。
 実は転換社債を発行するに際しましては、まずその会社の格付という前段階がございます。これは日本に日本インベスターズサービス以下三社、合計四社だけが格付機関という機能を持っておりまして、これがトリプルAから実際にはDまであるんですけれども、Dまで出しちゃったところはもう転換社債発行できません、そういう格付を行う。これは転換社債の発行を心がけている会社は常にその格付というものを一回やらないといけない。それで格付は年に一回ぐらいの見直しというのがございます。
 それで、転換社債を発行するときに、概略申し上げますと、実は日程の概略であるとか、発行を内定して起債の持ち寄りというのをやります。要するに、いつごろどのくらい発行するかという状態のときに証券市場が非常に固まらないような区分けをされるわけですね。そういうのがありまして、それから有価証券届出書、これは報告書と違いまして新たにつくらなきゃならないわけです。実際にはこれが大蔵の認可を得ないと効力を発生しないわけでございます。その後募集条件の決定公告、それからそのほかに転換社債の上場関係手続とか、それから発行コストの計算であるとか、それからこれに要する必要書類のリストというのがございまして、何とこれは全部含めると五十六種類あるんですね。
 その中には転換社債発行に対する証券会社からの質問書、これに対する回答書まで出さなくちゃいけない。それから税務申告も必要とする。それからさらに、国税当局による更正があった場合はその更正決定の写しも出さなくちゃならない。それから監査概要書、関係会議のいわゆる報告書。それから有価証券報告書、これは公認会計士がつくらないと認められませんから、当然公認会計士がやります。それから安定操作可能名簿というのがございます。さらに売り出し日程表、有価証券届出書、これは連結財務諸表をつくらなくちゃならない。それから引受質問、回答書、売り先指定リスト。
 それから問題は信託契約書というのがございまして、これは受託銀行をどこにというのを決めるわけですね。受託銀行は、実はこの転換社債発行のルールづくりをしたのは日本興業銀行でございますから、圧倒的に今までのシェアは日本興業銀行が多かった。最近都市銀行の上位行がかなり受託をしまして、それでも幹事八銀行で転換社債の受託シェアというのは九〇%を超えているんですね。都市銀行の下位行はほとんどこれは受託しておりません。そんな状態でございます。そのほかに引受募集取扱契約というのをこれは証券会社とやります。それから元利金支払いの事務取扱規定、そんなので五十六種類のリストを必要とするわけですね。こういうことを実際にできるのはほとんど上場会社に限られると思うんですね。
 それで、さらに実際にどうなっているかというと、これは転換社債の発行を内定した後三カ月間の、基準日の後三カ月ですよね、この間の株式の乱高下があってはならないということで、実は内規では三〇%の乱高下があった場合には事情聴取を受けるわけです。それからもう一つ、その会社の転換社債の引き受けをいたします当然主幹事会社がございますけれども、主幹事、副幹事この両者のその間における扱い量がやはり三〇%を超えちゃいけない。要するに株価に何らかの操作があってはならないという細かい規定がずっとあって、それでいよいよそういうことが全部クリアされて、いわゆる株価の基準価格というのが決まるわけです。それで転換価格がそれから約七%上になって値つけというのがされるわけです。それでその後さらに株価の乱高下がないように、先ほど申したように安定操作人というのがありますね、この届け出していた者がその間要するにむしろこれが下がらないように安定操作をする、こんな手続を要するわけでございます。
 そうしますと、実際にこれは普通の会社でできるんだろうかというのがあります。もちろん発行の一つのスタンダードは自己資本が三十億以上ですね、これは二年ほど前は六十億だったんだけれども三十億に下がりました。それで、経常益が一株当たり七円、配当が五円していれば一応資格はできるということでございます。
 そんなことを長々と申し上げましたけれども、この法律の問題と実務の面との絡み合いで、法務省、どうお考えでございましょうか。
#137
○政府委員(清水湛君) 転換社債の発行を実際に経験された方のお話というのを私、実は初めて聞かせていただきまして大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
 全くおっしゃるとおりでございまして、社債の発行については受託銀行と引受証券会社による自主ルールというのが定められておるというふうに聞いております。これが大変厳しいルールだということは伺っているわけでございますが、先ほど先生のお話によりますと、とにかくいろんな段階に応じて、最終的には有価証券届出書等で五十数種類の文書が用意されなければならない、一々厳しい大蔵省のチェックがある、こういうようなルールのもとで転換社債が発行されるということでございます。こういう自主ルールによる要件を満たしませんと受託銀行あるいは引受証券会社に依頼して社債を発行することができないという扱いをされているわけでございまして、現在の自主ルールによりますと、転換社債を発行するためには上場会社であることがまず第一の条件であるということでございます。
 したがいまして、株式の譲渡について制限をしている会社におきましてはこの条件を満たしていないわけでございますから、受託銀行、引受証券会社に依頼しても発行することができない。だから、そういうものに頼まないで発行するということは理論的な可能性としてはあるわけでございますが、現実にはそういう可能性はない。こういうふうに私どもも認識しているわけでございますが、しかし新株引受権について同趣旨の改正をいたしておりますために、将来株式に転換する可能性ある転換社債についても同様のやはり手当てをしておきませんと、これがまたどういう形でしり抜けのために使われるかというような心配もありますので、一応の手当てをさせていただいた、こういうことでございます。
#138
○星野朋市君 もう一つ難しい問題があるんですね。というのは、転換価格を実際どう決めるかという問題があるわけです。転換価格が決まらないと株式に転換しないわけですよ。二年はわかるんですけれども、非上場の会社がその場合の転換価格というのをどう決めるのかという問題ですね。これは実務の面から言ったら非常に難しい。要するに、その会社の株式の価格というのは相続税法のあれによるのか何によるのか、そこがはっきりしないと法律つくっても実際にはできかねる。今おっしゃる理由は私もよくわかるんですけれども、実際に運用されないんじゃないか、こういうふうな懸念がございますので。
#139
○政府委員(清水湛君) 普通の上場会社については、最近のやり方といたしましては時価転換方式で、要するに発行日を基準といたしまして何取引以内の株価の平均とかそういうものに一〇%をオンした価格を転換価格とするというような時価転換方式が主流であるというふうに聞いているわけでございます。株式が上場されまして市場価格が形成されるということでございますとそういう一つの基準が出るわけでございますが、非上場の会社ですとそういうマーケットプライスというのがないわけでございます。その場合に転換価格をどういうふうに決めるかというのは、これはもう大変難しい問題で、例えば株式の買い取り請求なんかの規定では、会社の純資産あるいは最終の決算期における貸借対照表による会社の純資産額を発行済み株式総数で割りますと、いわば一株当たりの純資産額というのが出てくるわけでございますが、それを価格とするということにするのかということが一応考えられるわけでございますが、しかし純資産額の計算も、実は不動産なんかについては含み益は入っておりませんので、現実の価格というのはもっとすごい価格になるんじゃないかということがまた問題になろうかと思うわけでございます。
 したがいまして、おっしゃるように一般大衆を相手にして転換社債を発行するということになりますと、非上場の会社というのは一体これはどうやって転換価格を決めるんだろうなと。あるいは時価転換方式ではなくて、昔言われたような転換比率によって決めるのか、あるいは転換価格をフィックスして、そして株主に与えるということであればこれは余り問題はないと思うのでありますけれども、そういうような形でもやるのかなと今ふっと思ったわけでございまして、とても私、具体的な価格の決定方式になりますと、ちょっと果たしてどうするんだろうと自分自身でもわからないようなところが実はあるわけでございます。
#140
○星野朋市君 法律改正の上で、これは資本調達の枠を広げたということで評価すべきことですけれども、実際の運用に当たっての問題いろいろございますので、これからも十分法整備していただきたいと要望して、私の質問を終わります。
#141
○紀平悌子君 去る六月の十四日からきょうで四回目の本案の審議でございます。大変勉強不足で御迷惑をおかけしておると思います。その私にもようやく何か論点がつかみかけたというところで、きょう審査が終了をいたすようでございます。もう一日、二日、せめて時間が欲しいなという思いの中で再度、重なる部分もございますかもしれませんが、質問をさせていただきたいと思います。
 法務省にお伺いいたします。
 非常に基本的なことで恐縮でございますが、現在、制度上会社という名を冠されたものに、株式会社のほかに有限、合名、合資というふうな会社組織があるというふうに伺います。最低資本金制度の導入によって五年ないし八年後にはそれらの形態への組織がえをしていかなければならない例も出てくると思います。
 そこで、有限、合名、合資、それぞれの特徴、特に会社債権者に対するそれぞれの責任のあり方と、株式会社と比較したときの経営上のデメリットについてわかりやすくお教えいただきたいと思います。
#142
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、現在の会社法では合名会社と合資会社と株式会社とそれから有限会社法による有限会社と、四つの会社形態を認めているわけでございます。このうち、合名会社と合資会社が俗に人的会社というふうに言われており、それから株式会社と有限会社が俗に物的会社というふうに言われているわけでございます。
 これが一つの大きな基本的な特徴でございますが、なぜ人的会社と呼ばれるかと申しますと、合名会社も合資会社もその社員、特に合名会社の場合には社員全員でございますけれども、社員個人が無限責任を負うという特色がございます。つまり、会社と取引をした債権者が会社に対して債権を取得する。その場合に、会社に対して債務の弁済を求めて、会社の財産に対して強制執行するということももちろんできるわけでございますが、会社が支払わない場合には社員一人一人に対して社員の個人財産に対して責任を追及することができるというのが合名会社でございます。そういうような実質的には人的会社の典型でございますけれども、そういうような個人責任が完全な形で併存している会社が合名会社と言うことができるかと思います。したがいまして、そういうふうに個人責任を負わされておりますので、社員の間のいわばつながりと申しますか、そういうものが非常に大事でございまして、例えば社員が自分の地位を勝手に譲渡するというようなことはできない。こういうようないわば典型的な閉鎖的な会社であるということにあるわけでございます。
 その次に、合資会社というのは、そういうふうに個人的に責任を負う人と、責任は自分が出資した限度であるという形でしか責任を負わない、この二種類の社員によって構成されるというのが合資会社でございます。つまり、全部責任を負いますというのが無限責任社員、それから出資の限度でしか責任を負わないというのが有限責任社員でございます。普通、こういう合資会社というのは、経営能力はない、経営能力はないけれども自分は財産は出す。出したけれども、会社がまずくなった場合には出したものはなくなってもしようがないけれども、それ以上のものはもう責任を負いませんよと。こういう人も仲間に入れて会社を経営するという場合に、この合資会社というのが非常に適している、こういうふうに言われているわけでございます。したがいまして、例えば合資会社では、無限責任社員は会社を代表する権限がありますけれども、有限責任社員には会社を代表する権限はない、こういうような形になっております。
 これに対しまして、物的会社である株式会社というのは、これは社員の地位というのは一定の単位である株式というものに細分化されまして、株式を持つという形によってその社員の資格を得る。その社員は自分が出資した株式、これは株式を取得するためには会社に払い込みをするわけでありますけれども、その限度においてしか責任を負わない。すべて株主は自分が出資した限度においてしか責任を負わない。個人的に株主がその責任を追及されることはない。こういうことになるわけでございます。実は、これは有限会社についても全く同じでございます。
 ところが、じゃ有限会社と株式会社はどこがどういうふうに違うのかと申しますと、非常に大ざっぱな言い方をいたしますと、株式会社というのは大規模な企業形態、つまり一般の大衆を相手として資本を調達して多数の株主を集めて、そこで大規模な資金を調達して企業経営をするというようなことに向いているのが株式会社の組織である。有限責任であることにおいては変わりがございません。ところが、有限会社の方は、そもそもそういう株式会社で言うと株主ですが、社員と呼びます。社員の数自体が五十人を超えてはならない。五十人以内の仲間で有限会社というものはつくりなさいということになっているわけでございます。いわば仲間同士の人的な結合というものが非常に重視されている会社である。しかし、責任は出資した限度においてしか責任を負いません、こういうことになるわけでございます。
 また、普通の場合、株式会社ですと本来株式の譲渡は自由。譲渡制限をすることはできますけれども、原則、譲渡は自由でございます。ところが、有限会社の場合には、五十人の仲間で集まって会社をつくったんですけれども、そのうちの一人が単に自分の持ち分なり、つまり社員の地位を譲渡したいという場合には社員総会を開きましてそういう譲渡ができるかどうかということを決議をする必要がある、社員総会で認めてもらう必要がある。こういうふうに物的責任、これは有限責任ではあるけれども社員相互の人的結合が非常に強い。つまり、そういう意味では小規模の人数の人たちが集まって会社をつくるという場合に非常に向いておる、こういうことになるわけでございます。
 そういうことで、それぞれの会社に特色があるわけでございますが、当委員会でも前から議論されておりますように、小規模の株式会社については株主も有限会社と同じように、いわば非常に人的なつながりの濃い人たちによって構成されているという意味において、有限会社と実質的には同じようなことになっておるというようなことになるわけでございます。例えばまた、有限会社においては取締役会という制度はございません。株式会社については取締役会という制度が法律上の制度としてございます。有限会社においては、それぞれの取締役が代表権を持つ。これは小さな会社ですから取締役は全員代表権を持つことになります。ところが、株式会社については取締役はたくさんいますけれども、その中の一部の人たちが代表取締役という形になる。こういうような違いもあるということが言えようかと思います。
#143
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 同じく法務省にお伺いいたしますが、日米構造協議に至る日本の企業における非関税障壁としての系列会社、このシステムの解消、それから取引の自由化などの問題、今回の商法改正では積み残しになっておりますわけですけれども、一部の評では日本の会社法改正作業がこれで十年や二十年はおくれてしまったという観点もあるというお話がございます。
 昭和四十九年改正から五十六年改正まで七年、昭和五十六年から平成二年、つまり現在の法改正審議中のものまで九年、やはり商法は非常に国民経済に深い関係のあるものでもございます基本法でございますので、かなり期間がかかるということがもう既に実証されております。そういうことにつきまして、この商法改正で系列会社の問題を今後取り入れて御研究になっていくにしても非常に時間のかかる問題だと思いますけれども、その辺法務省としてはどんなふうにお考えでございましょうか。
#144
○政府委員(清水湛君) 日米構造協議で系列関係ということが大きな問題として取り上げられておるということは私ども承知いたしておるわけでございますが、主として証券取引法関係の開示制度の問題、あるいは独占禁止法関係の問題というような面での問題が大きく言われているような感じがいたしておるわけでございます。
 会社法の関係につきまして取り上げられている問題は、「商法によるディスクロージャーの制度の拡充及び合併の弾力化等について、今後の法制審議会において検討する。」というふうに指摘されているわけでございます。系列関係というような事実上の企業行動の問題ということになりますと、商法でどの程度対応できるのかという問題もあるわけでございます。商法の問題という法的な面でとらえますと、例えば相互保有の制限の問題だとか、企業の連結決算制度というようなものを商法に導入するかどうか、親子会社関係についての現在の商法規制をさらに強化する必要があるかどうかというような問題があるわけでございますが、アメリカ側で指摘されている問題というものを見ますと、単純に商法の改正だけで解決ができるというような問題でも必ずしもないような気がする面もございます。しかし、商法によるディスクロージャーの制度の拡充等について指摘されておりますので、そういう問題も含めながら、今後商法については検討していくことになっているわけでございます。
 ただ、何分にも大臣が前から申しておりますように、我が国の企業というのは大変数が多く、しかも巨大会社から、今回最低資本金一千万ということになりましたけれども、一千万円の株式会社に至るまで規模が非常に大規模から小規模の、しかもさまざまな形態の企業があるわけでございまして、そういうものに適合し得る会社法ということになりますと、なかなか現実との調整という意味において難しい問題がある。立場、立場によっていろんな意見が出てくるという面もあるわけでございまして、なかなか簡単に結論が出にくいという要素もあることは御理解いただきたいと思うわけでございます。
#145
○紀平悌子君 昨日、参考人の御意見の中にも、中小企業もまた国際化の波の中で公的な信頼性を保っていかなければならない、企業規模、機構、制度の一致などの基本的な認識、これが必要だということが示されておりました。
 そうした流れを踏まえて、今回の法改正案では不十分であったり、積み残しになった点、大きなものを挙げれば、第一に、法制審などの方針の五分の一ないし二分の一になってしまった最低資本金制度についての最低資本金金額のこれからの再検討、またはディスクロージャー制度、貸借対照表の登記所における公表などでございますけれども、それぞれ次の第二ステップの商法の改正では非常な困難があるというお話ではございますけれども、速やかに必ず図っていかれるというおつもりかどうか再度お伺いしたいと思います。
#146
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、計算書類の登記所における公開につきましては、答申があったにもかかわらず、この改正法案におきましては全部スリップダウンしておる、こういう結果になっております。このことにつきましては、できるだけ早い時期に関係方面の理解を得て実現してまいりたいというふうに考えております。
 それから、最低資本金額については、これは現実の企業に大きな影響を与える問題でございまして、答申では新設会社には二千万円ということになっておりますが、少なくとも一千万円ということで金額を具体的に決めましたものでございますから、これをまた再検討してすぐ上げますよということにはなかなかまいらないのではないかというふうに思っております。
 このことにつきましては、少なくとも、例えば施行後五年内に一千万円にしなさい、この法律施行後五年以内に一千万まで増資をするということになっており、さらに三年の猶予を実質上与えておるという八年間の猶予期間があるわけでございますが、その期間は特段の事情がない限り一千万円をさらにかさ上げするということはちょっと考えにくいというふうに私どもは今のところ考えております。
#147
○紀平悌子君 必ずしも最低資本金をぜひ上げるべきだという意見で申し上げたわけではなく、どういう御意見か伺ったということでございますので、念のために。
 アメリカは企業の非常な先進国でございますけれども、アメリカではディスクロージャーなどの仕組みはどうなっておりますでしょうか。企業債権者の保護はどんなふうに図られているか、御審議の途中にもそんな御質問は出たと思いますけれども、簡単で結構でございますので、よろしくお願いいたします。
#148
○説明員(大谷禎男君) アメリカの法制と我が国の法制との間には相当の違いがあるわけでございます。
 アメリカの会社法、これは基本的には各州で規定をしているわけでございまして、州ごとに違うということがあるのでございますけれども、一般的な傾向として申し上げますと、会社法自体におきましては計算書類の公開とか、あるいは債権者の保護というような点についてほとんど規定を置いていないというのが一般的な傾向であろうかと思います。むしろそういう対一般的な保護という観点は、もう一方の証券規制法、こちらにおいて相当厳格な規制が行われております。我が国の証券取引法のモデルとなったものでございます。
 御指摘の計算書額の開示におきましても、資本市場で資金調達をするというような会社につきましては、証券規制法が厳格な年次報告書の提出等の義務づけというふうなことを初めとする規制をしているところでございます。
 それから、アメリカの一般的な法的な習慣といたしまして、委員も御案内のことかと思いますけれども、訴訟社会というふうにも言われているところでございますが、利害関係者による責任追及という素地が非常に発達しているということが指摘されようかと思います。
 会社の取締役につきましても、アメリカの会社法はそれほど細かな規定を置いておりませんで、比較的自由な行動を許すという側面がございますが、そのかわり、一たん不適切な運用をいたしまして損害を第三者にこうむらせたということになりますと徹底した責任追及が行われるという厳しい社会であるということでございます。したがいまして、例えば取締役が第三者に対して損害賠償責任を負う場合に備えてそれについての保険制度というようなものさえあるわけでございますが、取締役が余りにも責任追及をされ、かつ裁判所によってその責任が認められているケースが多いために、その保険料が莫大なものになる。むしろ、保険会社としてはそのような保険制度では会社が成り立っていかなくなってしまうというような非常に極端なケースまで出てきているというようなことでございまして、そのようなことを考えますと、我が国とアメリカとでは企業社会一つをとりましても相当に法的な実情が違うのかなということを感じているところでございます。
#149
○紀平悌子君 再び、法務省と中小企業庁に続けてお伺いしたいと思います。
 中小零細の株式会社のうちサラリーマンなどとそれから御商店経営というか、それを兼ねているいわば兼業商家、こういう言葉はないとは思いますが、そういう概念が考えられるのですけれども、その実態にかんがみて、いわゆる農家における兼業農家と同じく、小規模であるということ、それから非専業性、こうした点に着目した会社法制度の中での適切な政策的な対応が必要ではないかというふうに思うわけです。
 これは、小規模株式会社をいかに扱っていくかという問題とおおむね一致する問題かと思いますけれども、法務省としてはこの点どんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。また、中小企業庁としてはその問題をどんなふうにお考えになっていらっしゃるか。また現在、これは造語かもしれませんが、いわゆる兼業商家に対してどのような御対応がございますでしょうか。
#150
○政府委員(清水湛君) 兼業商家という言葉を私初めて聞きましたけれども、確かに兼業農家と同じように家族が商売、例えば雑貨屋を営むとか、あるいはいろんな化粧品の小売をするとか、そういうような形で奥さんがうちで小さな小売商をする、御主人がどこかに勤めておられる、こういうような形というものはあり得ることだろうと思います。
 ただ、そういう場合に、例えば奥さんが経営されている化粧品店なら化粧品店というものを法人組織という形にする必要があるのかないのかというようなこと、これは税金対策その他の面で必要になるというような場合もあるのかもしれませんが、そのために株式会社という法制が必要であるのか、あるいはまさにそのために設けられたというように考えられる有限会社という会社組織を選択していただくのが適当なのかというような問題はあろうかと思います。そういうことで、それぞれにふさわしい会社組織にしていただくということは、これは差し支えないことだと思いますが、積極的にそういうものを認めて法務省としてこれを助成するとか助成しないとかという問題ではないように考えられます。あるいは中小企業庁等で何か特別のお考えがあるのかどうかわかりませんが、法務省としては会社法制一般の問題として考えるしかない、こういうことになろうかと思います。
#151
○説明員(藤原治一郎君) サラリーマン等とあわせて事業を行っている兼業商家という実態については、我々も実態を十分把握してございません。ただ、当方でやっております商業実態基本調査によりますと、小売業で約二割が兼業である。ただ、この兼業というものもサービス業とか不動産業等をあわせて行っているということでございますので、またそのサラリーマンというのがどの程度かというのは把握できません。したがいまして、中小企業政策におきましては、そのようなサラリーマンとの兼業商家に対して特段の措置を講じているということはございません。
 しかしながら、そのようなケースであっても当該会社自体はその商業なりの特定の事業を遂行する事業者でありますので、その中小企業の定義の範囲に含まれるのであれば中小企業対策の各種支援策を受けられるという形になっておるところでございます。また、特に小規模小売業でいえば、五人以下の従業員の会社に対しましては、商工会議所、商工会等を通じまして経営改善普及事業等、特段のさめ細かな施策も講じているところでございます。
 以上でございます。
#152
○紀平悌子君 本法案では一人会社の設立ということを容易にしております。これは、現在大企業がいわゆる一〇〇%出資の子会社をつくって系列化する仕組み、そういうものがありますけれども、手続的にこれをさらに簡略化することになります。そのことは昨日の参考人のお話しの中でもありましたところですが、このような企業系列化の公認、助長となるような商法改正の方向性は企業の国際化とは逆の方向に向いていると思いますけれども、法務省のお考えを伺わせていただきたいと思います。
#153
○政府委員(清水湛君) 今回、株式会社を設立する場合に発起人が一人でもよろしいし、有限会社を設立する場合社員が一人でもいいというふうにいたしましたけれども、これは別に企業の系列化の公認とか助長というような要素というか、そういうものと関係があるというふうには私どもは考えていないわけでございます。むしろ、現在のそういう中小会社の設立の実態にかんがみまして、手続を簡素化するとともに会社財産の充実を他の面において図る、こういういわば理念のもとに今回の改正がされているわけでございまして、私どもの考えでは、系列化の公認とか助長ということとはちょっと関係がないのではないかというふうに思うところでございます。
#154
○紀平悌子君 今回の最低資本金制度の導入でございますけれども、既存の零細、しかし誠実に商業を営んでいらっしゃるというふうな株式会社、そういった株式会社に与える影響は、大きいか小さいかわかりませんけれども少なくともあると思います。このことは昨日の参考人の御答弁でも、不足分を、これは最低資本金の不足分ですが、自分の借金として借り入れてこなければならないというような御答弁があったことなどからも確かめられたことでございます。
 そこで、極めて基本的な質問ですけれども、金の用意のできない者は、いかに誠実に商っていても株式会社、有限会社制度からおりざるを得ないというか、そういうことにもなりかねないわけですけれども、今回の法改正のあり方の中で、一面では見せ金というような形ででも資本金が一時的にそろいさえすれば、いかにペーパーカンパニーであっても株式会社などの形態がとり得るということと対比いたしますと、今回債権者保護という実効性を欠いた最低資本金制度の導入、果たしてこれは意義があるものなのかどうか、法務省の御意見をお伺いしたいと思います。
#155
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、例えば見せ金を用いて増資の登記を済ませて、その金をまたすぐ返してしまえば簡単に登記簿上は一千万円にすることができるじゃないかという御指摘だと思います。
 この見せ金の問題は、当委員会でも既に御議論になっておりますように、資本充実という面からは大変困った現象でございまして、これを何とか防止したいというふうに考えましてこれまでもいろんな議論がされていたところでございます。しかしながら、どうもこれを防ぐうまい手だてがない、いわば会社法の一種の病理現象みたいなもので、これは別に小規模会社だけではなく中規模会社にも、その他の会社についてもそういう現象は実はあり得るわけでございます。そういう病理現象が今回の小規模会社の増資の際にもあらわれてくるのではないかという懸念がないわけではございませんけれども、しかしそれは一般の株式会社法における病理現象でございまして、だからといってこういうような最低資本金制度の導入は無意味である、こういうことにはつながらないというふうに私どもは考えている次第でございます。
#156
○紀平悌子君 恐縮ですが、法務大臣、このことで一言お願いいたします。
#157
○国務大臣(長谷川信君) 今民事局長が御説明申し上げたとおりでありまして、十分これからも議論していただきます。
#158
○紀平悌子君 前回御質問申し上げた際、中小零細企業の中で法改正によって影響をこうむる方たちというか、御商店等々の実態について法務省の方で少し資料が不足であったというふうに私は感じておりますが、やはり法律は一つの、商法といえどもというとあれですが、非常に大事な商法でありますから、国民の福祉というものを最終的な目的として制定をされるものには違いありません。その法による国民への影響について、実態調査のようなものはもっと精査に行っていただきたいという希望がございます。中小企業等、特に弱い立場の方々の実態把握等について今後の第二ステップの商法改正におかれまして十分な御配慮をいただきますよう、またいただけますかどうか、この点もお伺いしたいと思います。
 と申しますのは、非常に丁寧にこの商法改正への審議を法制審商法部会等で行われていらっしゃいまして、時間も非常にかかっていることでございます。いろいろ調査は十分になさったというふうに私も信じておりますけれども、やはりそれぞれの個々の人々に聞くというのは無理なことではございますが、何か方法がありそうなものだというふうに思うわけでございます。大学の教授とかあるいは専門家とかあるいは団体の方々とかいうところも大事なところでございますが、例えば先ほど申し上げたように、夫がサラリーマンしてそして一人で商業を営んでいる主婦というか奥さんもたくさんいるわけで、何かそういったきめの細かい事前調査というものはできないものなんでしょうか。お願いいたします。
#159
○政府委員(清水湛君) 立法に際しましては、関係者の意見を十分に聞きましてそれを反映させるということが非常に大事だという点については私どもも全く同感でございまして、現に今までそういうことでやってきたつもりでございます。ただ、聞き方の問題といたしまして、私どもといたしましては各種の中小企業の団体に何回も何回も問題点を照会し、あるいは試案を示して説明し、あるいは具体的に各地の商工会議所等で関係者にお集まりいただいてお話をしてヒアリングをするというようなことを何回も繰り返しているわけでございます。片やまた、中小企業庁にもお願いして、中小企業の実態に大変お詳しい中小企業庁の関係者の皆様方から生々しい実態をお知らせいただく、こういうようなことも繰り返し繰り返し行っているわけでございます。
 そういうようなことの中で、個々的にとりますとそれぞれまたいろんな問題があるかもしれませんが、前から大臣が申し上げておりますような最大公約数的なやはり接点を求めるということにならざるを得ないわけでございまして、そういうような努力を尽くした上で法制審議会の答申もされておる、これは今回の商法改正に限らず、民法その他の改正についても常にそれだけの慎重な手続を経て法制審議会としては調査、審議をやっておられるというふうに私どもは理解いたしておる次第でございます。
#160
○紀平悌子君 たびたびで恐縮でございますが、法務大臣にも一言お願いいたします。
#161
○国務大臣(長谷川信君) さっき申し上げましたとおり、中小零細企業が会社だけでも百三十万も四十方もある。それらのあるいはじいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんが手伝いをしているのを入れますと、恐らく二千五百万人くらいが中小零細企業で何らかの形で飯を食っているということになるんですよ。だから私は、この法律案の骨子というものは、いろんな見方はございますが、要するに日本国民の中の三分の一、四分の一を占める今の中小零細企業が前よりも少しよくなるということが前提でなければならない、よくするということが前提でなければならない。
 そういう面でいろいろ議論あるわけでございますが、重ね重ね申し上げておりますように、今回御提案申し上げたのは完璧なものではございません。しかし、次に改正をするときは、やはり今私が申し上げたようなことも踏まえて、中に入れて、腹に据えて、いろいろ改正案をつくらなければならない、そういうことを念頭に置いてやりますので、若干ひとつ時間をいただかなければならないと思っているところであります。
#162
○紀平悌子君 これまでの質問と重複するところがございますけれども、私も法そして秩序というものにつきまして、これは社会の公正を図るために、また福祉のためにも絶対に必要なものだということはそれなりにわきまえてはおります。
 ただ、今回の商法改正で、昨日の参考人への御質問の中でも、こもごもそのお答えの中にもあったのですけれども、債権者保護という非常に重要な視点の実効性というか、これが欠けているというか、あるいは欠けないようにお心がけいただいたはずなんだが、いろいろな状況でもってそれが変わってきた。それで審議会の答申よりは大分後退したものになってしまったということ。提案の御趣旨にございますようなあるべき法の姿から大分現実の問題とのいろいろな御意見あるいは利益と申しますか、そういう立場の対立とかあるいはそれのバランスを図ることに非常に心をかけられましたために妥協の産物となったのではないかというふうにどうしても感じられるわけです。
 私は、法律というものは、先ほど山田委員の御質問にもありましたように、法治国でありまた法治国の中でも法整備が先進諸国の中でもすぐれていると思われるこの日本の中で、国民一般がこの法律と非常に遠いところに置かれているというのが現実だと思います。やはり食べていくのに忙しい、生きていくのに忙しい、仕事が忙しいということで、大学の法科御出身の方でも実際の法律の運用に当たりましたときにまごつく。まあ交通事故一つ起こしましてもなかなかどうしていいかすぐわからない、あるいは自分のいわゆる正しさを表現していくのにどういうふうに一体進めていったらいいかわからないというようなことで、非常に法律と国民の間が遠いということも事実だと思います。私などもそれを切実に感じます。
 例えば婦人問題と申しましても、これはやはり法のもとの平等というようなことがありましても実際との乖離がございますがために、女子差別撤廃条約が国連で採択をされ、そして日本の政府もこれを批准していったわけでございますので、まあそういうふうな立場のものがたくさんいるということの中で、やはり非常にこの商法の改正も、いざ新聞には、もちろん大きな改正でございますので解説も出ますし、あるいはそれに対する社説その他も出てくると思います。よく新聞を読み、そしてそれを質問すればわかるんですけれども、この商法の改正につきましても、国民のほとんどが知らないところで、そしてどうなっているのかもわからない、ただ商法の一部改正があったなと、そして最低資本金の導入があったというようなことぐらいは頭に入りますけれども、その法の真の目的とするところがどれほど達成されているかとか、あるいはそれに賛否を一人一人が胸にすとんと落ちるようにはなっていないというのが現状でございます。私も正直言って、むしろそういった国民の層を代表しているかと思いますので、採決を目前にいたしまして非常に心が迷うというか、どういうふうに国民にかわって賛否を表明していくかということに迷ったもう何日かを過ごしております。
 ただ言えることは、先ほどから申し上げておりますように、今後、日本の企業の多国籍化、日米構造協議など、国際化の波というのがございます。ほかの法律も同様だと思いますけれども、こういった激動する国際環境の中に打ちかっていく国内法というものを整備していくということが、やはりこれからの法整備、改廃の基本ではないかというふうに思います。その意味で二十一世紀というと言い古された言葉ですけれども、二〇〇〇年をにらんでどのような商法の体系を築いていくのがいいのか、これは大臣に御所見を承れば幸いだと思います。
#163
○国務大臣(長谷川信君) 今先生お話しの、いろいろ御要望、御注意を兼ねたお話、十分理解をいたしております。
 ただ、重ね重ね申し上げたいのでございますが、何しろ膨大な対象でございますので、隅から隅まで全部よかった、うまくできた、百点滴点じゃないかというふうな結論は、これはまさになかなか至難のわざでございまして、そういう面では最大公約数的なものであったかもわかりません。わかりませんが、しかし中小零細企業の問題等々含めまして、どちらかというと余り恵まれておらない層に日の光を当てるということがまた政治の基本でなければならないかもわからない。そういう面で中小零細企業の育成に幾分でもこの問題が役に立つようにしなければならない。
 今やってみたって、さっぱりどこがどうだかわからぬじゃないかというお話もございますが、気持ち、心構えとしてはそういうことを念頭に置いて、腹におさめてやっておることはやっておるんです。やっておりますが何しろ対象が対象でございますので、農業問題なんか割合にあれは米は一種類ですから、中小零細企業は百六十万件あるけれども一件ずつ全部違う。酒屋あり呉服屋ありたばこ屋ありですね。それをみんなまとめようというんだから、これはもうよほど大変なわざであるということも御理解いただかなければなりませんが、要するにそういう面も含めて、中小零細企業を育成をするというのが法務省の仕事であるかないかわかりませんが、国民全般としてはそういう今これだけ日本の経済成長した中で、若干おくれているような感じもいたしますので、しかもそれに従事をしている人が何千万人もいらっしゃる、それで飯を食っている人が。
 そういう面もいろいろ含めて考えますと、その資本金の問題その他等々もいろいろまたこれから勉強させていただきまして、できるだけ早く、今先生の御注意のようなことも踏まえて、勉強させていただきたいというふうに考えております。何とぞ御理解を深めていただきますように、重ねてお願いをいたします。
#164
○紀平悌子君 どうもありがとうございました。終わります。
#165
○橋本敦君 きょうは、最低資本金制度についてお伺いするということにさせていただきます。
 まず、民事局長にお伺いしたいのでありますが、我が国が中小企業がたくさんあり、中でもこの会社制度を利用して会社になるという数が大変多いわけでございます。なぜこの会社を選択するかという一つの問題が社会的にあるわけですが、例えば私の手元に日本大学会社法研究会で、先日参考人でお越しくださった稲田教授らが検討をなさった「小規模株式会社の実態とその法的分析」というのがございます。これを見ますと、資本金一億円以下の会社を二千社余り調査された結果が出ておりまして、株式会社にした理由について調査をされた結果、一番理由が多かった回答として第一位は「税金が安くなる」ということだというのが五百六社ございます。大蔵省から資料をいただきまして検討をいたしましても、我が国の個人営業と比べて会社の場合は諸種の制度がございますから、確かに税負担率はかなり違うわけでございます。こういう社会的な状況が一つは小さな会社をも含めて、会社を多くしている理由にあるということは御認識いただいておりますでしょうか。
#166
○政府委員(清水湛君) いわゆる節税と申しますか、そういう目的のために会社組織にするということがあるということは私ども承知いたしております。
#167
○橋本敦君 したがって、そのこと自体決して違法でもまた不当でもないわけであります。
 そして、もう一つの点について考えてみますと、この会社制度を利用するということは、いわゆる有限責任制度を活用するということでありますが、中小企業の実態を調べてみますと、会社の役員、とりわけ社長、そういった皆さんは取引上あるいは融資を受ける場合も含めてほとんど自分の財産を担保に提供するなど、個人保証も含めて事実上有限じゃなくて無限責任を負っているという状態が一般的になっているわけです。こういう実態もこれは実情としてあるわけですが、この点も御認識いただいておりますか。
#168
○政府委員(清水湛君) 金融機関等の関係において、いわゆる代表取締役等が個人保証をする例があるということは、これは私どもも知っているところでございます。
#169
○橋本敦君 さらにもう一つ、私が大阪で商工団体を調べまして話を聞いたんですが、取引を実際行います場合に、親会社の方が下請を入れる場合に株式会社でないと入れないという状況があるというのを聞きました。地方自治体等で入札等をやっている中小企業を調べてみましても、これはもうほとんど会社組織で、個人で入札ができているところはこれは実際ゼロでございますね。だから、そういう意味で今日本の社会的な経済関係における慣行からいって会社組織を選択するということが小さな事業体にとっても取引上要請されるという問題がある。
 もう一つは、求人の場合も個人事業者よりも、今の若い皆さんを含めて求人をする場合にやはり会社組織であるということの方が求人にとってもそれは有利になるということも間違いない、こういった事情もこれまたあるということも間違いないと思いますが、いかがですか。
#170
○政府委員(清水湛君) 例えば公共団体等が入札をするような場合に、法人格があるというようなことを要件にしておるというような話は私ども時々耳にするところでございます。その場合、税金の関係でもそうでございますが、株式会社でなければならないのか、有限会社でもいいのかということになりますと、有限、株式の区別はないというふうな話もまた聞いているわけでございまして、そういうような金融機関との取引の面あるいはその職員を採用する面、あるいは市町村等の工事を例えば請け負うというような面においてしっかりした法人格を有する者であるということがある意味においては一つの要件とされているというようなことがあるにいたしましても、これはそういう節税目的の法人とかそういうものがあってちっともおかしくはないわけでございますけれども、だからといって、有限会社法なり株式会社法の法規が遵守されなくてもよろしいということにはならない、こういうことであります。
#171
○橋本敦君 実情として御認識を聞いているわけですね。したがって、実情から言いますと、今度の最低資本金導入によりまして一千万増資できればいいですよ。しかし、苦労しても一千万増資できなきゃ法的に解散を命ずることになるんですから、まあいわば強制処分で小会社の死刑執行をやろうということですよ。しかし、社会的には会社にしたいし、会社にした方が企業活動が円滑だという事情の中に中小企業は置かれている。ここにこの問題の重大な一つのとらえどころがあるということを私は指摘をするために言っておるわけです。
 それで、もう一つの問題は、今度の最低資本金導入について債権者保護のためだということが言われました。果たして債権者保護ということになるだろうか、一千万の最低資本金制度の導入が。これについては、昨日お越しいただきました参考人の四人の皆さんはそろって、この最低資本金制度導入ではそれ自体債権者保護に役立つという具体的な効果を期待することはできないということを全部おっしゃっている。私はそれは当然だと思うんですね。例えば資本金を一千万に増資しても、当然のことですけれどもそれが会社基本財産として常にあるわけじゃありませんので、それ自体が常に一千万の担保力があるというわけじゃないわけです。
 そういう点について中小企業庁が財団法人産業研究所に委託をいたしまして、この産業研究所がその委託に応じて会社法改正問題研究委員会をつくりまして、それで実情調査をいたしました結果が報告書として出されております。これはごらんになっていると思いますが、ごらんいただいておりますか。
#172
○政府委員(清水湛君) 拝見いたしております。
#173
○橋本敦君 それによりますと、これは二十二ページですが、最低資本金の導入に反対する理由として、その理由の一番多いのは「現在の資本金でも取引活動に支障はない」というのが六〇・四%。つまり、現状でもやっていけます、やっております、頑張っておりますということですよ。その次に多いのが「資本金を引き上げても倒産防止等にはそれ程効果はない」、こういうのが四三・五%というように意見が返ってきておることが記されております。だから中小業者の皆さんそれ自身が、資本金を一千万にしても実際倒産防止にそれほど効果はないということを認識をして、倒産しないように個人保証もしながらあるいは適正な営業活動に努力してやっておられるわけです。
 この資本金の問題についてもう一つ考える観点として、それではこれまでの倒産と資本金との間に因果関係があるのか、つまり資本金が小さいから倒産率が高いのかということも検討してみる必要がありますが、その点についてこの報告書はどういう結論を出しておりますか。お読みいただいたということですからおっしゃってください。
#174
○政府委員(永井紀昭君) この報告書のアンケートの中では、関係ないのではないかというようなたしか報告が出ていると思います。
 ただ私ども、最近他の民間情報機関及び税務統計等から見た倒産件数とそれから資本金額との関係を少し整理してみました。確かに、例えば百万未満の会社ですと意外に倒産件数の比率は少ないんです。ところが百万から一千万の会社ということでしかちょっと資料はございませんのですが、そこになりますと、例えば六十三年度ですと倒産件数が五千二百二十六件ございます。その母数をもとに割りますと〇・四一%という比率になっております。それから、じゃあ一千万から五千万はどうかということになりますと、倒産件数が一千五百三十五件、その比率は〇・四四%でございますから、むしろ一千万から五千万の方が多いということになっております。ほんの少しであります。それからさらに五千万から一億円の会社について見ますと、倒産件数百件でございます。これは〇・三二%でございますから、こちらの方が比率としては少なくなっている。それから一億円以上でございますと三十九件でございます。これは比率として〇・一六%でございます。したがいまして、少なくとも一千万円以上の会社につきましてはむしろ資本金の多い方が倒産件数は少ないということに比率としてはなっております。
 ところで、じゃ百万未満のところが意外に少ないのはなぜかといいますと、この倒産件数といいますのは銀行取引停止処分ということでございます。実は百万未満あるいは百万から例えば一千万未満の会社におきましても、そういう銀行取引停止処分を受ける以前の事実上の倒産とか解散というのが暗数として相当あるということも言われているわけでございまして、そもそも当座勘定を開けない中小企業すらあるわけでございまして、こういった数字をどう評価するかというのはいろいろ考え方があろうかと思います。
 ただ、やはり基本的には資本金の多い方が一般的に比率としては少なくなっているということは大きな見方としてはあるのではないか、こういうふうに思っております。
#175
○橋本敦君 おっしゃったようにいろんな傾向があるということであっても、明確な相関関係や因果関係というものはこれは統計上明確には出てきておりませんね。この報告書でも、今おっしゃったのと少し数字は違うにしても、ここであらわれているのを見ますと、資本金一億円以上では〇・二%ないし〇・三%、これは倒産比率ですね。それから、それに比べまして今おっしゃったように一億円以下になってまいりますとそれほど違うかというと、それほど違った比率は出てきていないというのもここで記されているわけですね。
 だから、こういう点からいきまして、それは会社の基本財産がしっかりしているのがいいという意味では資本の充実は大事だというのはこれはだれしも一致するところです。しかしながら、資本金を一千万に今以上引き上げたから中小企業の倒産が減るというような社会的な経済関係や因果関係はそれ自体明確に出てくるものではないというのはこれは常識ではないですか、いかがですか。
#176
○政府委員(清水湛君) 倒産率というのは既存会社の数の中で現実に例えば銀行取引停止処分を受けた会社が何社かという形での比率の問題ですから、そもそも数字自体にどの程度の信用性があるのかという問題もあろうかと思います。
 ただしかし、最低資本金制度が、債権者と申しますか、これは具体的に現在既に債権を持っている債権者という意味のみならず、これから取引関係に立とうとする第三者あるいは従業員あるいは下請企業等を含めて債権者と呼んでいるわけでございますけれども、そういう人たちの保護にならないのかというと、それはそうではございませんで、最低資本金制度さえ導入すればそういう人たちは保護されるということを私どもは申しているわけではございません。しかし、最低資本金制度の導入が物的有限責任会社の基本財産を維持させるという基本的な条件でございますから、そういうものがまず満たされることによって、他の制度と両々相まって会社の財務体質が強化され、少なくともちょっとした程度の経済変動によって従業員の賃金が払えなくなるというようなことにはならないのではないかという意味で債権者等の保護が図られるということを申し上げているわけでございます。
 経済変動が非常に激しくなるということになりますと、資本金十億の会社でも倒産をし従業員の債権さえままならなく払えないというような事態が現実に過去にもございますし、また資本金五百万円でも立派な経営をされているという会社もま
たあるわけでございまして、個々的にはいろんなケースというものがあるわけでございます。あるわけでございますけれども、しかし少なくとも最低資本金という制度を導入して、取締役は少なくとも最低資本金に見合う純資産を会社に常に維持すべくいわば努力をする、これが会社に対する義務として取締役に課せられているわけでございますが、そういう努力を日々することによって債権者に対しても適切な債務の履行あるいは従業員に対してもきちんとした賃金の支払いを行うということが可能になるというふうに思うわけでございます。最低資本金制度それのみで直ちに債権者保護が図られる、こういうふうに申し上げているわけではございません。
#177
○橋本敦君 今のお話でも最低資本金制度導入だけで債権者保護になるという趣旨ではないということははっきりいたしました。また、実態もまた事実そうであります。
 そこで次にお伺いしたいのは、今現在の実情でこの最低資本金制度が導入されると、現存する会社約百二十万ございますけれども、そのうちどれくらいか増資の努力をしなきゃならないのか。約八十三万社かと言われておりますが、大体数は合っておりますか。
#178
○政府委員(清水湛君) 資本金一千万未満の株式会社が約八十三万五千社あるわけでございます。私どもいろいろ過去の数字から推計いたしますと、あるいはまた国税庁に税務申告をしているという会社の数等から推計するわけでございますけれども、このうち約二十万社は実質的には何もしてない会社ではなかろうか。いわゆる休眠会社の整理作業をいたしますと、登記はして生き延びるけれども現実に営業の実態は全くないという会社が二十万社ぐらい含まれているんじゃないかという推計をいたしております。こういう会社が増資をして株式会社として生き残ろうといたしますと、五年間にこの増資の手続をとっていただく必要がある、その五年間を過ぎましても、三年間さらに会社継続の決議等はできますけれども、そういう状況になろうかと思います。
#179
○橋本敦君 数として要するに大変な数なんです。
 それで、今私が指摘したように、会社制度を維持していきたいということが、これが中小会社にとっては現在の日本の経済機構の中では取引上必要である、求人に必要である、取引信用、社会的信用上会社でありたい、こういうニーズが社会的にあるわけですよ。これはいわば会社でおりたいということに対する社会的プレッシャーですから、経営者はその努力をやっていますし、またやるでしょう。現にそれをやっておるんですけれども、今度一千万ということになりますと、自分の意思に反して、資本充実や会社を大きくしたいという意欲があるにしても、法律の強制によって資本を増資しなきゃならぬ、こうなるんですよ。そうなければ社会的信用が保たれないという問題も出てくるでしょう。そしてまた取引が停止するということも出てくるでしょう。できなければ解散を命ぜられるんですからね。だから、そういう意味でかなりの負担を中小企業に与えるという状況をつくり出されることは間違いないんです。
 そこで、中小企業庁が委嘱して行ったこの調査によってもう一遍調査結果を見てみますと、無理をして増資をしなければならないという回答が、これが合計四九・七%出ていますよ。つまり五〇%ですね。中小の半数の日本の会社が、楽にできますと言うんじゃなくて、かなり無理をしてでもやらなくちゃならぬ、無理をしなければ増資ができません、簡単にできることではありませんと、こう言っている。なるほどそうでしょう。個人保証、担保をいっぱい出している。そして下請の安い代金で中小企業は苦労している。そしてその中で、現状で一生懸命頑張っている会社がほとんどですけれども、資本金三百万、五百万、六百万という会社が一遍に、五年間のスタンスがあるとはいえ一千万に増資をするというのは、これは大変なことですね。そういう負担を与えるという状況がこの問題で出てくるわけです。
 そこで、もう一つ局長にお願いしたいのは、資料をいただきましたが、資本金一千万円未満の株式会社の設立登記の推移で、昭和六十年以降今日まで、毎年一千万未満の会社がどれくらい設立されているか、資料をいただいておりますが、ちょっと数字を御指摘くださいますか。
#180
○政府委員(永井紀昭君) 資本金一千万円未満の株式会社の設立登記でございますが、昭和六十年度は三万四千八百九十件でございます。昭和六十一年は三万三千六百件、それから昭和六十二年が三万三千九百六十件、昭和六十三年が三万五千九百六十件、それから平成元年が三万九千三百三十件でございます。
 これは構成比では、全体の設立登記の比率は、昭和六十年度が七五・九%でしたが、平成元年度は六二・七%、比率自体は下がってきております。
#181
○橋本敦君 今御指摘のとおり、毎年三万五千から四万近い会社の設立が一千万未満でやられている。それから構成比は、六十年が七五%、平成元年で六二%ですからね。いずれにしても過半数を超えておるわけです。これからこの会社は全部一千万でないと登記申請できなくなるわけですね。そうすると、無理をするかできないかということになって、会社を設立したいという自由な経済活動に枠がはまって、この数が減少するという可能性がこれは客観的に出てくる、否めないと思うんですよ。だから、そういう意味において、この最低資本金制度というのは中小会社に対して大変な負担を及ぼし、その負担にたえられなかったら会社の取引信用が阻害されることを甘受するか、あるいは五年後には法によって解散を命ぜられるということの運命に行かざるを得ないか、そういうことになるということが極めて明白であります。
 そこまで中小企業の小会社に負担をかけて、一体この法案はどこにメリットがあるのか。現在、日本の中小企業では、今日の日本の経済繁栄を支える社会的経済的基盤として、圧倒的多数の中小企業が大事な役割を果たしておるわけですが、そこまで負担をして一体どこにメリットがあるのか。それは債権者保護だということ以外に具体的にないわけですが、その債権者保護というそのこと自体が、今私が指摘したように、客観的に一千万によって債権者保護が担保されるという具体的な保証がないわけですからね。そういう意味で、私はこの問題というのはにわかに合理性がある法改正だとはとても考えられないわけであります。
 最後に一問、局長にお伺いしておきたいと思うのですが、この中小会社にこういうような最低資本金導入ということが、これは国会決議なんかどこを見ても出てこない問題だということをはっきりしておきたいんですが、その点はどうですか。
#182
○政府委員(清水湛君) 大小会社の問題として、最低資本金というのが一つの論議の出発点になったわけでございますが、先ほど委員の方から中小企業はみんな反対であるというような趣旨のお話がございましたけれども、二千万円ではどうだというアンケートに対して、多くの中小企業がこれでは高過ぎるということをお答えになった。そういう中小企業に対して、じゃどの程度ならいいんですかと尋ねましたところ、まあ一千万円ぐらいなら好ましい金額だということで多数の中小企業がそういうお答えをなさっている、こういうような実態もあるわけでございます。また、有限会社については三百万円でいいということでございます。
 そういうふうに、私どもとしては中小企業が全部これにもろ手を挙げて賛成をしているというふうに申し上げているわけではございませんで、確かにいろんな御意見はあるわけでございますけれども、大多数の方々は株式会社一千万円、有限会社三百万円ということであれば、これはまあ何とかスムーズに対応できるし、またそういう制度を導入することが中小企業の体質強化あるいは信用強化にもつなかるという意味で、積極的に導入に賛成されている中小企業グループもあるわけでございます。そういういろんな意見調整を長い間重ねて、そういう調整過程の中で一千万円、三百万円という数字が最終的な数字として出てまいったということでございまして、このことについては中小企業の実態を綿密に調査され、十分にその実情を反映し得る金額として中小企業庁も私どもの意見に最終的には同意していただいた、こういう結果になっているわけでございます。
 それから、このような最低資本金制度を導入するという議論は、四十九年改正の際にこのような委員会の議論の中では出たように記憶いたしておりますが、附帯決議というような形での最低資本金制度の導入をせよというようなものは、たしか私の記憶にはないというふうに承知いたしております。
#183
○橋本敦君 意見はいろいろありますが、要するに私の言うことと局長のおっしゃることとの相違点は明白になったと思います。
 私の時間、あと二十分まであるんですが、いろいろ御迷惑をかけましたので、きょうはこれで終わります。
#184
○委員長(黒柳明君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#185
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより両案に対する討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#186
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、商法改正法案につきまして反対の討論を行います。
 戦後、我が国では一九七四年と八一年の二回にわたって商法の大改正が行われましたが、これらはいずれも山陽特殊鋼の倒産やロッキード事件に見られたような大企業の不正経理をただして、大企業に対する監査の強化を図ることを目的とするものでありました。
 この改正に際して、国会の附帯決議は、企業の社会的責任を重視して厳正、公正な大企業の業務運営を確保することによりまして社会的不正行為を規制する方向を打ち出してまいりました。今日でもリクルート事件を初めとして一連の疑獄事件もあり、土地の買い占め問題もあり、また、地球的現横での環境破壊等、大企業の社会的不正行為に対して厳しい規制を求める声は強まる一方であります。
 ところが、その後実際に進められた商法改正作業では、こうした国民の要求は顧みられずに、いわば換骨奪胎、大小会社の区分ということで始まった作業は、いつの間にか中小企業の多数を事実上会社制度から締め出すに等しい状況をつくり出しかねない今回の改正案となったのであります。
 このような法改正自体、私が質疑の中でも指摘しましたとおり、参議院で付せられた附帯決議の本旨に反するものであると考えざるを得ません。
 次に、具体的に最低資本金制度の導入についてでありますが、これは今回の最も重要な改正点の一つであります。
 そもそも我が国の経済活動で中小企業が占める比重は高くて、法人数の約八割、従業員の数からいってもその七割が中小企業で働いております。そして、これらの中小企業の旺盛な企業活動が今日の日本経済を下から支えていると言っても過言ではありません。これらの中小企業家の中で、いわゆる法人成りと言われる自己の企業を法人にしようとする志向は極めて強いものがあります。これは先ほども議論いたしましたように、国税庁の調査によりましても明らかでありますが、税制、取引の面で、そしてまた融資や信用、雇用の面で個人よりも法人の方が有利だという社会環境や社会状況、これを反映したものでありまして、法人成り志向をもって中小企業家それ自体を非難することはできないわけであります。
 今回の最低資本金制度が導入されますと、現存する百二十万社の株式会社のうち、一千万円以下が八十三万社あるわけでございますから、全体として大きな負担がかなりの数の中小会社にかかっていくわけであります。
 こういう負担を押しつける最低資本金制度導入を、それではなぜやるのかという問題については、債権者保護ということが挙げられてまいりました。しかし、会社の倒産と会社の資本金との間には、統計的にも、また実態においても具体的な因果関係や関連性があるというものでは決してありません。中小企業家は、連帯債務者として個人的にも事実上無限責任を負わされているような状況にも耐えながら、自己の利益のみを追求することなしに会社を運営し、その中で倒産した場合には個人資産も投げ出して、労働債権や下請代金、会社債権者に手当てをしておる実情でございまして、むしろ国会の附帯決議が述べていたのは、大会社の倒産に対してこそ債権者保護の必要があるということであったはずであります。
 また、最低資本金を一千万にアップしたところで、それは会社設立時において出資者から払い込まれた金額を示すだけでございますから、その後引き続いて、いつもそれだけの資本が会社に留保されているという保証は何もないわけであります。
 こういった点を考えましても、参考人の皆さんも、今回の最低資本金制度導入がそれ自体債権者保護に効果があるというわけにいかないということは皆お述べになっておるところであります。
 そしてまた、私が指摘をしました中小企業庁の委嘱によります財団法人産業研究所の研究報告によりましても、債権者保護ということについてこの最低資本金制度が具体的に効果があるという結論は、それは出ていないこと明白であります。
 このように、今回の改正は理由にならない理由だと私は思うんですが、そういう理由も付しながら、結局は中小企業を株式会社制度から締め出すという方向を強めてまいります。一方、大企業に対しては、社債発行限度の緩和などで資本調達を容易にするということでそのニーズにこたえていこうとしておるものであります。
 私どもとしては、今回のこういった商法改正の基本的な姿勢に問題があると考えておりまして、以上の理由で本改正案に反対するものであります。
#187
○委員長(黒柳明君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#188
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 まず、商法等の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#189
○委員長(黒柳明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#190
○委員長(黒柳明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 安永英雄君から発言を求められておりますので、これを許します。安永英雄君。
#191
○安永英雄君 私は、ただいま可決されました商法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、連合参議院、税金党平和の会の各会派並びに各派に属しない議員紀平悌子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
     商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  現下の会社制度の実態にかんがみ、政府は、次の諸点について格段の努力をすべきである。
 一 中規模以上の会社の計算については、会計専門家による適正な監査制度の法確立を図るため、早期に調査検討を行うこと。
 二 前項の監査制度及び会社計算書類の公開制度については、EC統合等諸外国における立法の動向に充分配慮し、速やかに、立法上の措置を講ずること。
 三 小規模会社に関しては、その実情に応じた株式会社法の整備を検討するとともに、小規模会社制度としての有限会社法については、取締役・監査役の任期等の制度を導入するなど抜本的な法改正を検討すること。
 四 株式会社への最低資本金制度の導入及び有限会社の最低資本金額の引上げに伴い、小規模会社が増資等をする場合については、税制上の所要の措置を講ずること。
 五 最低資本金制度の導入等、今次の法改正が国民一般とりわけ中小企業関係者に与える影響の大きいことにかんがみ、その趣旨及び内容の周知徹底を図り、遺憾なきことを期すること。
 六 今後の法改正に当たっては、より一層会社全般の実情に配慮しつつ、実効性ある立法措置を講ずること。
  右決議する。
 以上でございます。
#192
○委員長(黒柳明君) ただいま安永英雄君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#193
○委員長(黒柳明君) 全会一致と認めます。よって、安永英雄君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川法務大臣。
#194
○国務大臣(長谷川信君) ただいま可決をされました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して善処いたしてまいりたいと思います。
 特に、今回、法改正の趣旨及び内容の関係者への周知につきましては、十分に意を尽くす所存であります。
#195
○委員長(黒柳明君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#196
○委員長(黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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