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1990/05/25 第118回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第118回国会 社会労働委員会 第6号
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1990/05/25 第118回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第118回国会 社会労働委員会 第6号

#1
第118回国会 社会労働委員会 第6号
平成二年五月二十五日(金曜日)
    午後一時六分開議
 出席委員
   委員長 畑 英次郎君
   理事 粟屋 敏信君 理事 伊吹 文明君
   理事 自見庄三郎君 理事 丹羽 雄哉君
   理事 持永 和見君 理事 池端 清一君
   理事 永井 孝信君 理事 貝沼 次郎君
      今枝 敬雄君    今津  寛君
      岡田 克也君    片岡 武司君
      古賀 一成君    古賀  誠君
      佐田玄一郎君    坂井 隆憲君
      鈴木 俊一君    住  博司君
      中谷  元君    平田辰一郎君
      三原 朝彦君    宮路 和明君
      森  英介君    山口 俊一君
      山本 有二君    網岡  雄君
      伊東 秀子君    沖田 正人君
      川島  實君    川俣健二郎君
      小林 恒人君    五島 正規君
      筒井 信隆君    外口 玉子君
      富塚 三夫君    渡部 行雄君
      石田 祝稔君    大野由利子君
      児玉 健次君    柳田  稔君
      阿部 昭吾君    菅  直人君
      岡崎 宏美君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 塚原 俊平君
 出席政府委員
        労働政務次官  加藤 卓二君
        労働大臣官房長 若林 之矩君
        労働大臣官房審
        議官      石岡慎太郎君
        労働省労働基準
        局長      野崎 和昭君
        労働省婦人局長 佐藤ギン子君
 委員外の出席者
        労働省労働基準
        局労災管理課長 坂根 俊孝君
        社会労働委員会
        調査室長    滝口  敦君
    ─────────────
委員の異動
五月二十五日
 辞任         補欠選任
  鈴木 俊一君     中谷  元君
  住  博司君     森  英介君
  山本 有二君     佐田玄一郎君
  網岡  雄君     富塚 三夫君
  川俣健二郎君     小林 恒人君
  五島 正規君     筒井 信隆君
  菅  直人君     阿部 昭吾君
同日
 辞任         補欠選任
  佐田玄一郎君     山本 有二君
  中谷  元君     鈴木 俊一君
  森  英介君     住  博司君
  小林 恒人君     川俣健二郎君
  筒井 信隆君     五島 正規君
  富塚 三夫君     網岡  雄君
  阿部 昭吾君     菅  直人君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
     ────◇─────
#2
○畑委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
#3
○池端委員 今回の労災保険法の改正の大きな柱の一つとして、長期療養者の休業補償給付への年齢階層別最低、最高限度額の導入の問題というのがございます。これは既に年金に設けられている制度でございますが、まず最初に、この点について若干お尋ねをいたします。
 一つは、この限度額を設けることによって、現在約三万人を数える長期療養者がおられるわけでございますが、このような方々に対してどのような影響を与えるのか、その人数、そしてまた影響額についても明らかにしていただきたいと思います。
#4
○野崎(和)政府委員 お答え申し上げます。
 今回の改正による最低限度額の導入によって基礎給付日額が引き上げられることとなる者は全受給者の八・九%、二千六百四十人でございまして、これを六十五歳未満の方に限ってみますと、一〇・七%、二千四百七十人となっております。一方、最高限度額の導入によって基礎給付日額が下がることになる方は全受給者の七・九%、二千三百四十人でございまして、これを六十五歳未満に限ってみますと、四・二%、九百七十人になっておりまして、全体としては、基礎給付日額が引き上げられる方の方が多くなっております。特に六十五歳末満層におきましては引き上げられる方が下がる方を大幅に上回っているところでございます。
 次に、影響額でございますが、御承知のとおり最低、最高限度額の導入については療養開始後一年六カ月を経過した方から適用されることになっておりまして、また施行前に療養を開始された方につきましては施行日に療養を開始したというふうにみなす経過措置が設けられておりますので、財政に影響が出てまいりますのは施行後一年半後の平成四年度からでございますが、その影響を推計いたしますと、最高限度額の導入による支出減が最低限度額の導入による支出増を上回る分だけ、約五億円程度の節減になるものと推定しております。
#5
○池端委員 この制度の実施によって引き上げられる者が下がる者を大幅に上回っておる、こういうような御答弁でございます。確かに、発症直前の賃金が安くて休業補償も低い、こういうような方々についてはこの下限規定を設けることによって休業補償給付は増額となるというメリットがあることは事実でございますし、このことは評価するにやぶさかではございません。しかし、今御答弁がありましたように現に七・九%の方、約二千三百四十人が不利益をこうむる、こういうこともまた明らかなわけでございます。とりわけ高齢者、それから年功序列賃金体系にない建設労働者、林業労働者、これらの方々の受ける影響は極めて大きい、こういうふうに思うわけでございます。これは明らかに既得権の侵害ではないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、この点についてはどういう見解をお持ちでしょうか。
#6
○野崎(和)政府委員 今回導入を予定しております最低、最高限度額につきましては、年金の場合と同様、年齢、階級別に一般の労働者が得ている賃金の実態を給付に反映させたいというものでございまして、具体的に最高限度額は、労働省が実施しております賃金構造基本統計調査をもとにしまして賃金の高い方から五%目の方の賃金の額を原則としております。したがいまして、年功賃金体系にない労働者も含めまして大多数の方にとっ
ては受給額は変更がないと考えますし、また最高限度額の適用を受けましたとしても、その影響はそれほど大きくないというふうに考えております。
#7
○池端委員 労働基準法の第七十六条では、被災労働者は療養期間中平均賃金の六〇%相当の休業補償の給付を受ける権利を有する、こういうふうに定められておるわけでございます。このたびこの上限規定が設けられますと労基法の規定以下の給付しか受けられない方々が発生するのではないか、こう思われるわけであります。これは最低の労働条件の基準を定めた労基法の精神に反するのではないか、このように私は考えるわけでございますが、この点についてはどういう御見解をお持ちですか。
#8
○野崎(和)政府委員 重要な問題でございますのでやや詳しく説明をさせていただきますが、確かに、今回の最高限度額の導入によりまして労働基準法に定められた休業補償の水準を下回る方が生じ得るわけでございますけれども、ただいま御説明申し上げましたように、全産業平均の賃金の高い方から五%目のところが上限となっておりまして、大多数の方には影響のない問題であること、一方、労災保険におきましては休業特別支給金というのが出ておりまして、実際の支給割合は労働基準法の六割ではなくて八割になっております。こういった点をあわせ考えますと、実質的に労働基準法の水準を下回る方はごく一部の高額受給者に限られるというふうに考えます。さらに、これに加えまして、労働基準法では八十一条で打ち切り補償制度をとっておりますが、労災保険法では三年を超えましても引き続き休業補償を行うことにしております。さらに、今回同時に導入を予定しております最低限度額の設定によりまして基礎給付日額が引き上げられる方も少なくないということを考えますと、制度全体としては労働基準法よりも大幅に改善されることになりまして、改正後の休業補償給付は全体として見れば労働基準法の休業補償に相当する給付と考えられますので、労働基準法に抵触する、精神に反する問題はないというふうに思っております。
 なお、御指摘のような問題につきましては、労災保険法に年金制度を導入した際に過去既に発生したわけでございますが、その際の最高裁判決におきまして、労災保険法の遺族補償給付の額が労働基準法の災害補償の額を下回ることがあっても相当する給付として認められるという判決が出ております。また、年金に最低、最高限度額を導入いたしました先般の改正の際にも種々御議論がございまして、休業補償給付にかわる給付である傷病補償年金に最高補償限度額が最終的に導入されているということから考えましても格別問題はないというふうに考えているところでございます。
#9
○池端委員 実質的に労働基準法の水準を下回るものはごく一部である、ごく一部の高額受給者に限られている、こういう御答弁でございますが、しかし私は、たとえ少数の方であっても従前の給付額が切り下げられるという問題は、これはその当事者にとってみれば極めて大きな問題、重大な問題だと思うわけなんです。大多数の方が影響ない、こう言われてしまいますけれども、これは切り下げられた方にとってみれば大変な問題でございまして、そういうことをおっしゃるのはいかがかと私は思うわけであります。労災保険制度というものが生活保障制度である以上、低額の方の底上げを図るというのは当然であります。また、労働省はこれまでも一貫して、労災保険制度というものは損害てん補の性格をも有する、こういうふうに説明をされてきたわけでございますから、高額の所得にあった者についても被災前の収入に対応した給付をすることはこれまた当然のことではないか、こういうふうに思うわけでありますので、重ねてお尋ねをしたいと思います。
#10
○野崎(和)政府委員 先ほど申し上げましたが、今回最高、最低限度額を導入いたしました趣旨は、年金の場合と同様に、現行のままですと被災時の年齢によりまして給付額に非常に大きな差が出るという不均衡を是正しまして、そういう意味では平均的な稼得能力にできるだけ近づけたいという趣旨でございます。御指摘のとおり、労災保険制度の基本的な性格は、労働災害により失われた労働者の稼得能力のてん補を行うものでございますけれども、同時に、保険制度でございますので、個人の事業主ではできないいろいろな措置も行っているわけでございます。そういった観点に立ちますと、被災していない労働者との均衡の問題あるいは受給者の中における均衡の問題ということも重要な要素になってまいりまして、そういったこととの関係で、高額の所得のあった方に若干の影響が出るということも保険制度の趣旨から考えてやむを得ないものではないかというふうに考えるわけでございます。
#11
○池端委員 これは百歩譲ったとしても、労働基準法の八十一条は休業補償は三年、こういうふうになっておりますね。この労働基準法八十一条の趣旨からいって、この三年を経過した者から導入するというなら一応の話はわかるわけでありますが、こういうことからいって今直ちにこれを実施するというのは問題があるのではないか、こう思うのでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
#12
○野崎(和)政府委員 今回最低、最高限度額を導入いたしましたもう一つの理由は、委員よく御承知のとおり、現在療養開始後一年六カ月の時点で症状の重い傷病年金の受給を受けておられます方が既に最高、最低限度額が適用になるのでございますけれども、その傷病年金を受給される方よりも症状の低い四級以下の方が重い方よりも多い休業補償給付を受けるという不均衡が現在ございますので、この不均衡を改善したいということももう一つの理由でございます。したがいまして、仮に御指摘のとおり休業補償給付につきましては三年経過した者から導入するということにいたしますと、傷病年金受給者との間に一年半から三年までの間、一年六カ月間不均衡が残ってしまうという問題が生じまして、やはり一年六カ月経過者から適用するということが適切であるというふうに考える次第でございます。
#13
○池端委員 傷病補償年金との均衡を欠く、だからこういうふうにするのだ、こういうお答えでございますが、私が先ほどから申し上げておるように既得権という問題もございます。こういう既得権という立場から考えると非常に問題ではないかというふうに私は思うわけでございます。最高裁判決もあるというような話でございますが、これらの問題は労働基準法の根幹にかかわる極めて重大な問題でございますので、また改めて議論をしていきたい、こう思っております。
 次の問題に移ります。
 六十五歳以上の高齢者については、最高限度額が六十四歳までの一万六千二百二十二円から一万七百四十七円と急激に下がるわけであります。五千四百七十五円も一挙に下がる、こういう状況になっているわけであります。これは大変な影響だと思うのであります。また、先ほども触れたように、年功賃金体系にない建設労働者や林業労働者にもこれは大変な影響を与えると私は思うのであります。この点について特段の配慮があってしかるべきではないか、こう思いますが、これについてのお考えを聞きたいと思います。
#14
○野崎(和)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、今回導入を予定しております最高限度額は賃金の高い方から五番目の方の賃金レベルを目標にしておりますので、大部分の方には影響が少ないのでございますけれども、御指摘のとおり六十五歳以上の方につきましては、一般の方の賃金が低いということで影響を受ける方が若干多くなる、額も多くなるということは事実でございます。ただ、この限度額につきましても、一般の実態どおりに設定しますとさらに低くなってしまいますので、政策的に配慮してそれよりも若干高目な額を採用しているのでございますけれども、高齢者の方に大きな影響があるということは事実でございます。仮に、そういった六十五歳以上の方の最高限度額が急に低くなるという問題の改善のための措置を検討するといたしましても、
休業補償給付導入に関する最低、最高限度額は既に年金に導入されているものと同じでございまして、年金にも同様の問題点があることになるわけでございまして、休業補償給付だけに改善措置を講ずることはまた別の不均衡を生むことになりますので、年金による取り扱いとあわせて検討する必要があると考えます。
 そこで、御指摘の問題につきましては、昨年十二月に出されました労災保険審議会の建議におきまして、各種給付における被災時年齢等による不均衡の問題について引き続き検討を進めることとされておりますので、御指摘の点に留意しつつ、この検討の一環といたしまして、年金の取り扱いを含め今後審議会において検討していただくことにしたいと考えます。
#15
○池端委員 今後審議会において年金の問題も含めて検討する、こういうことでございますので、ぜひ早急に、前向きにこの問題について検討されて対処されるように私は強く要望しておきます。
 そこで次に、労働基準法研究会の中間報告の問題点についてこの際お尋ねをしたいと思うのであります。
 昭和六十三年の八月五日、二年前のことでございますが、労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会が労災補償制度に関する中間報告を行いました。そしてこれを労働大臣に提出をしたわけであります。これが重大な改悪部分を含んでいるということで当時大きな問題となった、議論となったことは御承知のとおりであります。以下、これらの点について今後どのような方針で対処されようとしているのか、お考えをお聞きしたいと思うのであります。
 具体的にお尋ねをいたします。第一は、休業補償は療養開始後一年六カ月で打ち切る問題についてであります。これについてお答えを願います。
#16
○野崎(和)政府委員 御指摘のとおり、労働基準法研究会の中間報告におきましては、休業補償は具体的に一年六カ月経過後までとしまして、それ以後は障害補償給付を行う、なお療養補償給付は引き続き続けるという御提言がなされたことはそのとおりでございます。この問題につきましては、その後労働基準法研究会御自身が、同提言につきまして、長期療養中の被災者の社会復帰等の問題あるいは症状の推移に関する医学上の問題等を踏まえて慎重な検討がなされる必要がある旨の見解を表明されておりまして、昨年末の労災保険審議会の建議においてもこの問題は取り上げられなかったところでございます。このような経緯を踏まえて考えますと、労働省としては、この問題については審議会において引き続き検討されるべき課題とはなっていないと理解しているところでございます。
#17
○池端委員 審議会においては引き続き検討されるべき課題とはなっていないと理解しているということは、この問題は再度蒸し返されることはないと理解してよろしいですか。
#18
○野崎(和)政府委員 少なくとも中間報告の延長ラインとして議論されることはないというふうに思います。
#19
○池端委員 もう少しはっきりとお答え願えませんか。どうも奥歯に物が挟まったような言い方をされておりますが、これは非常に重大な、労働者が関心を持っているところでございますから、明確に、やらないということをはっきり、大臣もいないのだから、あなた大臣になったつもりでお答えを願いたい。
#20
○野崎(和)政府委員 先ほど来御説明申し上げました事情でございますので、取り上げられることはないというふうに考えております。
#21
○池端委員 取り上げられることはないということは、やらないと理解してよろしいですか。
#22
○野崎(和)政府委員 制度の改正はすべて労災保険審議会の審議を経て行うことになりますので、結果的にそのようになるというふうに思います。
#23
○池端委員 次に、労災年金の年齢スライド制の導入の問題についてであります。これも今度の建議では取り上げられておりませんが、この問題についてはどのように対処されるお考えなのか、お聞きしたいと思います。
#24
○野崎(和)政府委員 この問題につきましてもほぼ同様な事情になっておりまして、研究会御自身が中間報告をさらに検討を行った結果、年齢カーブの設定の可否、あり方等について実証的な検討をさらに行う必要があり、年功賃金制にない労働者の問題をどのように考えるかも含めて今後検討する必要がある、また、高齢者の生活保障という観点からも慎重に検討する必要があるという見解を取りまとめられたところてございまして、このような労働基準法研究会の見解を踏まえまして労災保険審議会の建議においても取り上げられていないところでございます。したがいまして、労働省としましては、年齢スライドの導入については研究会自身が述べられているような困難な問題があると考えられますことから、今後労災保険審議会の検討の推移を見守りつつ慎重に対処したいと考えておるところでございます。
#25
○池端委員 困難な問題があるので慎重に対処したいということは、当面これも実施する考え方はないと理解したいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
#26
○野崎(和)政府委員 当面は取り上げられる予定はないと思います。
#27
○池端委員 次に、労災専門医委員会の設置の問題であります。
 実は、これは局医協議会の問題で大分議論のあるところで、労災専門医の設置については強く反対の声があったところでありますが、これについてはどうですか。
#28
○野崎(和)政府委員 この点につきます労働基準法研究会自身のその後の研究の結果は、専門医委員会の構成、その判断と主治医の判断との関係について慎重な検討が必要と考えるということでございまして、その旨の見解を出されております。したがいまして、先ほどの問題と同様、今回の建議におきましても具体的には取り上げられなかったところでございまして、同じような扱いになるというふうに考えております。
#29
○池端委員 次に、暫定任意適用事業の廃止と労働基準法第八章の削除の問題、これまた非常な議論を呼んだ点でございますが、これについてはどのようにお考えですか。
#30
○野崎(和)政府委員 この点につきます労働基準法研究会御自身のその後の検討結果でございますが、研究会は、これまでの問題と同様に、労働基準法第八章の問題につきましては、まず全面適用が現実に可能であるか等について十分検討する必要があると考えられ、労働基準法第八章を削除するか否かは、その法的意義を含めて別途検討すべき問題であるという見解を取りまとめられているところでございます。
 したがいまして、労働基準法第八章のあり方につきましては、こういった見解も踏まえまして労災保険審議会の建議においては取り上げられていないところでございまして、労働省としては、まず強制適用事業の範囲の拡大について検討を進めるべきであり、八章の問題については全面適用が達成された時点で改めて検討すべき問題であるというふうに考えております。
#31
○池端委員 労働基準法第八章の問題については全面適用が達成された時点で改めて検討するということで今の答弁があったと思うのでありますが、それでは、これも当面その削除は全く考えていない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#32
○野崎(和)政府委員 当面は、検討の予定はございません。
#33
○池端委員 大臣まだお見えでないのですか。これからいろいろ大臣にお尋ねをしていきたいと思うのですが……。
#34
○畑委員長 では、速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#35
○畑委員長 それでは速記を起こしてください。
 池端清一君。
#36
○池端委員 大臣、本日は衆参両院往復御苦労さんでございます。極めて重要な問題でございますので、大臣のお帰りを待っておったわけでありま
すが、今も基準局長からいろいろお答えを願ったわけでありますが、昭和六十三年の八月に労働基準法研究会の中間報告が出されております。この中間報告が出されましたときは、本当に内外に大きな波紋を呼びまして大変議論されたところでございます。しかしその後、審議会の建議にもございませんので、私どもはこれは完全に消えた、こういうふうに理解をしておるわけでありますが、大臣の基本的な考え方をひとつ改めてお聞きしたいと思います。
 それは、休業補償は療養開始後一年六カ月で打ち切るという問題、二つ目には労災年金の年齢スライド制の導入の問題、三番目には労災専門医委員会の設置の問題、四番目には労働基準法第八章の削除の問題、こういう問題が非常に大きな問題になったわけでありますが、これについての大臣の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
#37
○塚原国務大臣 先生からの御質問通告をいただきましてから、私ども、政府委員と、その趣旨に沿いましてしっかりした御答弁を申し上げるようにということで精いっぱい頭を突き合わせて一生懸命努力をいたしてまいりました。そういった中で、それぞれ基準局長からも御答弁があって、御不満な点等もあったかと思いますが、そういうような今の部分につきましての御答弁も一応私ども精いっぱい考えてつくらせていただきましたので御答弁させていただきたいと思います。
 ただいまの御指摘の諸問題につきまして、休業補償給付を一年半までとすることや、労働基準法第八章の問題のように、審議会の建議において触れられておらず、審議会における検討は予定されていないものもあり、また、それ以外についても今後の検討すべき問題点が多々あることから、審議会の動向を見守りつつ慎重に対処したいと考えております。その際、これまで労働団体その他の関係方面からいただきました御意見を十分に念頭に置いて対処してまいります。いずれにいたしましても、御指摘の諸問題を現段階で実施に移すということはちょっとまだ考えておらないというようなことでございます。
#38
○池端委員 現段階では考えていない、こういうような御答弁でございましたので、その点を十分私どもも今後見守ってまいりたい、このように考えております。
 次に、振動病の労災補償給付打ち切りの問題について幾つかお尋ねをしたいと思うのであります。
 振動病、とりわけ林業振動病問題については、これまでもしばしば当委員会でも議論をしてきたところでございます。私は、昭和六十三年の五月十日の本委員会で、当時の中村太郎労働大臣に対していろいろこの問題をお尋ねをいたしました。その質疑の中で、大臣の方から、初めに打ち切りありきという姿勢はとらない、主治医の意見を尊重する、こういう明快な答弁があったわけであります。しかしながら、その後全国各地で、この国会答弁を無視するような労災補償給付打ち切りが実は強行をされているわけございます。
 私は、先日も、四月の二十五日から三日間、屋久杉で有名な鹿児島県の屋久町に調査に行ってまいりました。そこでは、屋久町の林業振動障害者認定患者百二十二名のうち三十九名が、主治医の引き続き治療を要するという診断にもかかわらず、これが全く無視をされて労災補償給付が打ち切りになっているのであります。非常に深刻な状態に今屋久町では直面をしておりまして、先般四月の十二日には、尾久町の町長さんあるいは町議会の議長さんが塚原労働大臣に対して、従来の治療補償を行ってもらいたい、こういう陳情もされておるところでございますし、私どもも現地でそのような陳情を受けてまいりました。この打ち切られた患者さんは、現在も痛み、しびれ、不眠、こういったような苦痛にさいなまれて、大変な状況であります。生活の現況も、月々二、三万円の年金で、三度の食事も一度に切り詰めて、こういうような状況でまさにその窮状は目を覆うばかり、こういう実態を私はつぶさに見聞をしてきたわけでございます。これは単に鹿児島県屋久町だけの問題ではございません。全国津々浦々でこういうような状況が出ておるわけでございます。事は人の命に関する極めて重大な問題でありまして、このような患者切り捨ての暴挙というものを私は本当に心の底から怒りを覚えるものでございます。厳しく糾弾されなければならないと思います。
 それで、以下御質問を申し上げます。
 これまで、国会答弁なり関係組合と労働省との間で確認されてきた諸事項がございます。すなわち五八五通達、五百八十五号通達、これは新治療指針と呼ばれるものであります。これについては医学的な情報であり、目安であって、画一的な基準ではないということを確認してまいりましたが、これは現在も変わっていないかどうか、これをお尋ねしたい。
 第二点は、治療等に当たってはあくまでも主治医の判断を尊重する、こういう原則が確認されてきましたけれども、これについてもいささかも変わりがない、このように確認してよろしいか。
 三番目、治療によって症状の改善が図られている者や治療を中断することによってかえって症状が悪化する者については症状固定としない、この点も国会答弁で確認をされておりますけれども、この点についての再確認を求めていきたい、このように考えるわけであります。
 そして、この答弁、審議経過等を十分地方の各機関、基準局なり監督署に対して周知徹底を図って、いやしくもこのような、屋久町で起きているような悲惨な状態を再度発生しないように、行政として十分指導を図り、対処すべきだ、このように考えますけれども、これについての大臣の答弁を承りたいと思います。
#39
○塚原国務大臣 御答弁の前に、ちょっと経過、経緯につきまして担当局長から答弁させます。
#40
○野崎(和)政府委員 委員御指摘の、特に前段の事実関係につきましてでございますが、被災労働者の方々にとってみれば、治療、補償が受けられるか否かは多くの場合深刻な問題でございます。御指摘のような、国会審議に反するようなことがあったとすればまことに遺憾であるというふうに考えております。御指摘の、これまでの国会における審議経過、組合との間の確認事項等についてはこれを尊重していくという考え方は全く変わっておりません。
 また、その内容を地方に対しては周知してきたつもりでございますけれども、今後ともその周知徹底をさらに図ってまいりたいと考えます。
#41
○塚原国務大臣 振動障害者の方の労災補償対策につきましては、ただいま御指摘ございましたように、これまでの国会における審議の経過及び関係組合との間の確認事項について今後とも十分に尊重をいたしまして、地方局署に対しまして周知徹底をいたしてまいりたいと考えております。
#42
○池端委員 ただいま申し上げましたように、各地で重症であるにもかかわらず打ち切られる、その後も痛みやしびれがひどくて現に治療を続けている、こういう患者さんがたくさんいらっしゃるわけでございますが、これらの方々については再調査をしていただいて、公的病院で鑑別診断をすべきだ、このように考えますが、この点についてはどうでしょうか。
#43
○野崎(和)政府委員 症状固定と認定されました方々につきましては、労働基準監督署長が主治医の意見を尊重することを基本に、必要に応じ局医協議会の意見を聞いて慎重に判断した結果であると考えますが、御指摘のような事案につきまして、本人から申し出があったような場合には主治医等関係者の意見を十分聞くとともに、再発の可能性のあるような者につきましては、必要に応じ鑑別診断等の調査を行うことを含め、適切に対処してまいりたいと考えます。
#44
○池端委員 再調査をぜひ実施してもらいたいということを重ねて要望申し上げておきます。
 そこで、この振動障害者の症状固定の認定に当たっては、慎重の上にも慎重を期してやるべきだし、個々人の症状の推移を見た上で十分判断すべきである、こう思うわけでございます。こういう
観点から症状固定の認定を行う前に一定の経過観察期間を設けるべきだ、このように考えますが、この点についてはどうでしょうか。
#45
○野崎(和)政府委員 御指摘のような経過観察につきましては、現在でも症状の推移を観察するという趣旨で、主治医による治療の過程で、あるいは局医協議会の判断に当たって実質的に行われてきたのではないかというふうに考えます。しかしながら、その位置づけが必ずしも明確でなかったということもございますので、御指摘の趣旨を踏まえまして、症状固定の認定を行う前に、個人の症状に応じてより的確な判断がなされるよう、症状観察期間を設ける等所要の改善を図る方向で前向きに検討してまいりたいと考えます。
#46
○池端委員 経過観察期間を設ける等前向きに対処していきたいという答弁、これは私は評価をしたいと思うわけでございますが、その際、患者さんにとって一番厳しいのは何といっても冬季間であります。冬季間にはレイノー現象というものも出てまいりますし、冬季間を観察期間に当てるべきではないか、少なくともその期間は六カ月程度にすべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
#47
○野崎(和)政府委員 具体的にどのくらいの期間をどのように設定するかは今後の検討課題でございますが、御指摘の趣旨も踏まえながら今後検討してまいりたいと考えます。
#48
○池端委員 この経過観察期間というものの制度を速やかに発足させてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、これはいつごろまでにその結論を出すおつもりなのか、時期的なめどをお聞きしたいと思います。
#49
○野崎(和)政府委員 いつごろまでに結論を出すということは現時点では申し上げかねますが、具体的内容等について早急に詰めました上で、結論が出次第速やかに実施に移していきたいと考えます。
#50
○池端委員 次に、社会復帰特別援護金制度の問題についてお尋ねをいたします。
 林業振動障害者の社会復帰特別援護金制度というものが今実施をされておるわけでございます。しかし、山間に住む方であるとか離島に住む方であるとかそういう方が非常に多うございますし、年齢も高齢者が多いというような状況から、必ずしもこの制度が被災者の社会復帰につながっていないという問題がございます。したがって、実情に即した制度改善が急務ではないか、私はこう思うわけでございますが、この制度改善についてどのような御見解をお持ちなのかお伺いをしたいと思います。
#51
○塚原国務大臣 林業振動障害者の社会復帰特別援護金制度につきましては、居住地、年齢等の状況から現実問題としてはなかなか就職しにくいという事情もございまして、これまでも必ずしも十分活用されていないという問題があることは御指摘のとおりだと思います。このため、今後は特にこの点に着目をいたしまして、社会復帰援護制度の拡充について検討いたしてまいりたいと考えております。
#52
○池端委員 そこで、この振動障害の方については林業以外の方もたくさんいらっしゃるわけでございますので、私は、林業以外の振動障害者についてもこの制度を適用すべきではないか、このように考えるわけでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
#53
○野崎(和)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、今後検討を進めてまいる過程の中において、林業以外の業種の振動障害者に対する対策の拡充についても前向きに検討してまいりたいと考えます。
#54
○池端委員 最後に、その他の事項について二、三お尋ねをいたします。
 人口の高齢化とともに被災労働者の高齢化も進んでおります。高齢重度障害者が増大をする、したがって、介護を要する被災労働者が非常に増加をしている、こういうような現状にございます。介護については、現行、年金に含まれる割り増し加算のほかに、労働福祉事業で介護料月額四万五百円、これを支給しておりますけれども、これではまことに不十分だ、こういうふうにも思うわけでございます。介護にかかわる補償のあり方を含め、介護の施策について、この建議にもありますように、早急に結論を出してその充実を図るべきだ、こういうふうに思うわけでありますが、この点についての労働省のお考え方を明確に示していただきたい、こう思います。
#55
○石岡政府委員 今後の高齢化社会の進展を考えますと、介護に係る補償のあり方の問題は労災保険制度の重要な課題の一つであり、労災保険審議会の建議でも指摘されているとおり、早急に検討を進めていくべき課題と考えております。したがいまして、本問題につきましては、今後労災保険審議会において議論されることになると考えておりますが、労働省といたしましては、その審議の推移を見つつ、適切に対処をしてまいりたいと考えております。
#56
○池端委員 次に、現在、保険給付の請求、不服審査の請求、再審査の請求がありながら未処理になっているものがそれぞれ件数にしてどのぐらいあるか、具体的にひとつ数字で示していただきたいと思います。
#57
○石岡政府委員 御指摘の件につきまして、昭和六十三年度の数字で申し上げてまいりたいと思います。
 まず、保険給付の請求件数につきましては、約八十三万人となっております。未処理件数は確かにあると思いますが、把握いたしておりません。次に、労災保険給付の決定に関しまして審査請求がございますが、六十三年度末におきまして審査請求の処理できなかった残件数は千二百七十八件となっております。またさらに、保険審査会に対しまして再審査請求が行われることになっておりますが、再審査請求につきまして六十三年度末における残件数は七百八十二件となっております。
#58
○池端委員 不服審査の請求でまだ未処理のものが千二百七十八件、再審査の未処理のものが七百八十二件というかなりの数字がまだ未処理になっておるわけであります。審査請求をしても、一体いつこれが決着がつくか、地方では皆さん非常に不安のまなざしを持って見詰めている、こういうような状況でございます。
 労働大臣は、さきの所信表明において、「不幸にして労働災害をこうむられた勤労者やその御家族に対しては、労災補償を迅速かつ適切に行い、必要な援護措置を講ずる」、こういうふうに述べられておるわけでございますね。ですから、処理の迅速化を図るためにも、私は、関係職員の増員を含め、行政執行体制の充実を図るということが非常に急務になっているのではないか、こう思うわけでございます。
 それで、今日までの定員の増員の状況なんかどういうふうになっているのか、その辺の経過をまずお聞かせ願いたいと思います。
#59
○石岡政府委員 御指摘のような目的を達成するために、労働省は、これまで増員等による行政体制の強化を図ってまいったところでございますが、平成二年度について申し上げますと、労働基準局といたしまして合計百十六名の増員が認められ、定削もございましたが、八名の純増という定員を確保したところでございます。
#60
○池端委員 純増八名ということでありますが、業務量は膨大になっている。現場第一線の皆さんは大変な御苦労をされているわけであります。そういう意味で、この現場の皆さんの御苦労に報いるためにもあるいは被災労働者の願いにこたえるためにも、この行政執行体制の充実は急がなければならない、こう思うわけでございますが、その点についての大臣の決意をお聞かせ願って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
#61
○塚原国務大臣 現状の御認識をいただきまして、私どもの労働行政の中に檄を飛ばしながら、なおかつ温かい御配慮の御質問をいただきまして、本当にありがとうございました。
 特に増員問題につきましては今日まで、ただいま答弁ありましたように精いっぱい努力をいたしてきたわけでございますが、今後とも、厳しい行
財政改革の中でございますが、関係職員の増員に努めるなど行政体制の充実を図るために一層の努力を行ってまいりたいと決意をいたしております。何とぞ御支援のほど、よろしくお願いをいたします。
#62
○池端委員 終わります。
#63
○畑委員長 五島正規君。
#64
○五島委員 先ほど池端委員の御質問に対しまして基準局長から一部御回答があったわけでございますが、私も非常に重要な問題と考えますので、一部繰り返し、再度大臣の御答弁をいただきたいと思います。
 一昨年八月五日に労基研が出されました中間報告につきまして、昨年六月の労災保険基本懇の公益側委員会の要望にこたえて、昨年の八月労基研自身がさきに出された中間報告につきまして非常に否定的な回答をしておられるわけです。
 要望の中身につきましては、御案内のようにさらに追加しての検討の中身であったわけでございますが、研究会自身が、中間報告は主として法律的見地から検討を行ったものであり、医学、社会復帰施策などを含め、より多角的観点からの検討が必要である。中間報告の内容については今後さらに多角的観点から慎重に検討が行われなければならないという形でもって、みずから出した中間報告の中身そのものの再検討が必要である、すなわち見直しが必要であるというふうに認めたのでございます。そういう意味におきまして、この一昨年八月五日に出されました労基研の中間報告は既に取り消されたものというふうに考えていいのかどうか、まずその点についてお伺いしたいと思います。
#65
○石岡政府委員 御指摘のように昨年八月、労働基準法研究会は中間報告につきまして、この中間報告は主として法律的見地から検討を行ったものである、あるいはまた中間報告の内容につきましては今後さらに多角的観点から慎重な検討が行われなければならないという見解をあらわしたところでございます。
 労働省といたしましては、この中間報告の性格につきましては今後さらに多角的な観点から慎重な検討が行われなければならない、そういう報告であると考えております。
#66
○五島委員 ということは、中間報告そのものが取りまとめとして出されたわけでございますが、まだ中間報告の形をなしていないということであって、資料としての意味も消失しているというふうに受け取っていいのでございますね。
#67
○石岡政府委員 労働省といたしましては、中間報告は主として法律的観点からなされた問題提起であると理解しておりますが、先ほど申し上げましたように、今後さらに多角的観点から慎重な検討が加えられなければならないものと考えております。
#68
○五島委員 そうであれば、労基研はその後再開されて、いわゆる見直し作業にもう既に入っているのでございましょうか、その点についていかがですか。
#69
○石岡政府委員 労働基準法研究会は、目下のところ再開されておりません。
#70
○五島委員 もう既にこの見解が出されまして十カ月近く経過しているわけでございますが、今後この問題につきましてどのように進めていかれるお考えなのか、お教えいただきたいと思います。
#71
○石岡政府委員 労働基準法研究会が今後どのように見直し作業を行われるかにつきましては、研究会自身がまず御判断される問題であろうと思います。研究会の御判断を聞きながら、労働省としても適切に対処してまいりたいと考えております。
#72
○五島委員 現行の労災保険法の中に多数の矛盾があるということはもう明らかでございます。例えば二、三事例を挙げましても、傷病等級表、これらはいわゆる災害性の労働災害、外傷といったようなものの後遺症を対象としてつくられた等級表であり、今日のいわゆる職業病を含めた疾病構造にはほとんど適用しない部分がたくさんある。先ほど、池端委員の御討議にございました振動病等をとらえましても、治療を開始して十年近くたってもいまだに改善していないというふうな職業病の発生というふうなもの、そういうふうなものを現在の等級表の中に当てはめていくということが極めて困難であるということは、もう広く医師から指摘されてきたことでございます。
 そういう意味におきまして、この労基法の研究会が、いわゆる現在の疾病構造の変化に伴った医学的な見地、あるいはそうした被災労働者の社会復帰といった見地からの検討を早急に開始すべきであり、それについて労基研自身が検討する問題で、労働省はわからないというのは極めて無責任であるというふうに考えます。その点について、改めて労働省の御見解をお伺いしたいと思います。
#73
○石岡政府委員 先生御指摘のように、等級表一つ挙げましてもいろいろ問題が所在するところでございます。
 先ほど申し上げましたように、労働基準法研究会は、今後多角的な見地から慎重にさらに検討を行うという方針を出しておりますので、私どもとしましては、研究会御自身の今後の見直し作業の御見解などを承りながら、適切に対処をしてまいりたいと考えております。
#74
○五島委員 今回、労災審の建議の中には、いわゆるスライド制の問題と限度額の設定問題にあわせまして、農作業従事者の労災特別加入の拡大、あるいは労災患者の社会復帰についても建議しているのでございますが、今回の法律の改定では、この農作業者の労災特別加入の拡大、あるいは労災患者の社会復帰については触れられておりません。これらについて、省令等においてどのように今後していかれるのか、お伺いしたいと思います。
#75
○野崎(和)政府委員 社会復帰の問題は、労災保険行政の極めて重要な課題だと考えておりまして、昨年十二月の労災保険審議会の建議におきましても、社会復帰施策の今後のあり方が示されるとともに、被災者の早期社会復帰の総合的推進を図ることが提言されているのは御指摘のとおりでございます。
 これを受けまして、平成二年度予算におきましても、林業振動障害者の援護金の増額を図る、あるいは従来は常用雇用に雇われた場合にだけ賃金助成が出ていたのでございますけれども、これを季節雇用にも広げるというような措置を予算上の措置として講じているところでございます。今後とも社会復帰施策の一層の充実を図るために、各種の施策を講じてまいりたいというふうに考えております。
#76
○五島委員 農業従事者、いわゆる農作業従事者の労災特別加入の拡大について御返事がないわけでございますが、改めてその点についてお伺いするわけでございます。
 あわせまして、私はこの農作業、いわゆる農業作業者の労災特別加入問題につきまして、現在は農作業に従事する機械によっての障害だけが対象になっているわけでございます。しかし、昨今の農業というのは、ある一面において非常にさまざまな化学物質の使用というものが進んできています。そのことによっての急性あるいは慢性の障害という問題も多数見受けるところでございます。そういう意味におきまして、この農業従事者の労災特別加入につきましてその拡大をするとともに、農薬に伴う障害についても労災保険の適用を拡大すべきであるというように考えますが、その点について労働省はいかがでございましょうか。
#77
○野崎(和)政府委員 先生御指摘のとおり、現在、小規模の農家に雇われる場合には、労災保険は任意加入になっておりますけれども、農業の作業に関連しましていろいろな災害であるとか、おっしゃるような農薬による被災とかの問題が生じてまいりまして、雇われる方はもちろん、農家御自身も非常に不安を感じておられまして、労災保険に特別加入の道を開いていただきたいという関係団体からの強い要望がございましたので、今回の改正法案においてはそういった一定規模以上の農業事業主が行う一定の危険または有害な作業について新たに特別加入の道を開きまして、かつ特別加入された農家に雇われた労働者には当然に労
災保険は適用するという措置をとったところでございます。
 御指摘の農薬の関係につきましては、この有害な作業の中に指定する方向で、今後関係者の御意見等も伺いながら具体的に対応してまいりたいと思います。
#78
○五島委員 非常にいい御回答をいただきました。農薬使用に伴う災害に対して労災保険を拡大するということは、あわせまして、そうした農業における農薬の使用に伴う災害防止という面においても、ぜひ力を注いでいただきたいというふうに考えます。ぜひお願いいたします。
 質問を少し変えさせていただきます。本年三月、愛媛の地方裁判所におきまして、じん肺三のイに合併した肺がんが業務上疾病として認められる判決が下されました。この判決に対しまして、国は控訴せずにこの判決が確定したのでございます。
 これまで労働省は、通達により、じん肺の合併がんは管理四以上のじん肺に合併した場合のみをその業務上疾病として扱ってこられたわけでございますが、国が判決を確定させた、あるいは控訴をしなかったということは、こうしたこれまでの通達を変更されるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
#79
○石岡政府委員 御指摘のように、本年三月、松山地裁の判決が出たわけでございますが、国といたしましては、関係機関と協議の上、控訴審において事実関係の立証が困難である等々の問題がございますので、控訴しなかったところでございます。
 本判決を見ますと、じん肺と肺がんとの医学的な因果関係を認めているわけでもありませんので、当面、現行の通達を取り消す考え方はございませんが、医学的知見がいろいろ進みますので、今後十分に医学的知見の収集に努めて適切に対処をしてまいりたいと思います。
#80
○五島委員 この判決が医学論争の結果でないということはあったとしても、この判決自身が、じん肺管理三である藤田さんという患者さんに合併した肺がん、それをじん肺に続発せる肺がんとして認めたということについては紛れもない事実でございます。がんの発生メカニズムということが現在まだ解明されていないということでございまして、そのがんの発生メカニズムが解明されないから云々ということは、そもそも労働行政からいってもなじまない。そういう意味では事実の問題として、じん肺管理三という患者さんに肺がんが合併し、そして労働省は当然じん肺管理三に合併した肺がんであるから業務上災害として認めない。それに対して原告の藤田さんの方は、それはじん肺に合併したがんだということでもって争われ、それが地裁の判断において業務上のすなわちじん肺に続発した肺がんであるということが確認された。そして、そのことについて国側は控訴しなかったという経過でございます。とすれば、このことを国が受け入れたのであるならば、これまで労働省が出してこられた通達を当然変えて、少なくともじん肺管理三という患者さんに続発した肺がんは業務上ということで認めていくということでないと整合性がとれないというふうに考えるのでございますが、その点についていかがでございますか。
#81
○石岡政府委員 本裁判におきましては、じん肺と肺がんの医学的因果関係につきましては否定しているのでございますが、訴訟上の因果関係を肯定いたしております。そういう性格のものでございますが、労働省の出しております通達は医学的知見に立ったものでございます。その医学的知見が覆されたという事態ではございませんので、これを契機に直接この通達をすぐ変える考え方はないと申し上げたところでございますが、今後医学的知見も十分収集いたしまして、もし変える必要があるならば、将来適切な時期に変えることにはやぶさかではございません。
#82
○五島委員 ぜひ専門委員会を再開して、再検討をしていただくことをお願いしておきます。
 先ほど池端議員の方から質疑がございました振動病の問題につきまして、私も重ねてお伺いしたいと思います。
 高知の事例でございますが、高知県におきまして昭和六十三年度振動病の患者さんで治癒の判断を受けた患者さんが十七名、そして症状固定と判断された患者さんが三名ございました。それが平成元年度治癒の診断によって治療を中断した患者さんが四十名、そして症状固定として判断された患者さんが五十名ございます。症状固定という判断が昭和六十三年から平成元年度、三名から五十名、一挙に十七倍という非常に大きな増加をしているわけでございます。こうした数字につきまして先日我が党の国会議員団の調査の中で、高知の基準局長は治癒と症状固定の数字の違いについて、治癒というのは主治医との間において医学的見解が一致した者、そして症状固定といういわゆる認定治癒というのは主治医の意見と局医の意見の判断が食い違って通告した者、これがいわゆる認定治癒であるというふうに局長は明確に答えられました。
 そうしますと、主治医の意見との同意がないいわゆる認定治癒という者が昭和六十三年から平成元年度の間において三名から五十名と急激にふえているわけでございます。こういうふうな急激ないわゆる主治医の意見を無視した判断というものが出されている背景というものについて、労働省が直接各都道府県の局に対して一定の割合でもってこうした数を出すような、そういうふうなことを要請されたとか、そういうふうな事実があったのかどうか、お伺いしたいと思います。
#83
○野崎(和)政府委員 お尋ねの高知労働基準局管内のケースでございますが、まず人数でございますけれども、大体委員の御指摘の数とほとんど同じでございますが、私どもが調査しました数字をまず申し上げますと、昭和六十三年度において要するに局医協議会の意見を聞いて症状固定と判断した者が三名、それから主治医のみの段階で症状固定、治癒と認定されました者の数が二十四名でございます。それが平成元年度になりまして前者が御指摘のとおり五十名、後者が四十三名ということになっております。委員の数と大体同じでございますが、細かい点若干違っているかと思います。
 そこでまず第一点の治癒、症状固定等の言葉の考え方でございますけれども、私どもは治癒も症状固定も同じ意味であるというふうに思っておりますが、三名、十七名、あるいは五十名、四十名というその違いは、主治医の段階でもう症状固定であるということが明白になりましてそのまま症状固定となった者と、主治医の段階であるいは主治医としては別の御意見をお持ちであるというような状態で、基準局として局医の御意見も聞く必要があるということで局医協議会におかけをして、種々その後その中でいろいろな検討をした結果、最終的に症状固定であるとされましたのが三名、五十名という数でございます。
 三名から五十名、急にふえたような形になっておりますが、若干背景を説明させていただきますと、長期療養者につきましては一年経過後には長期療養者がどういう状態になっているのか、その状態に応じた適切な治療が行われているかどうかを個別に私どもの方で拝見させていただきまして、必要な適切な治療が行われるように必要があれば指導する、あるいは症状固定に既になっている可能性があるのではないかというようなものについては、主治医の御意見のほか局医協議会の意見も聞くということで長期療養者が適切に療養を続けられる措置をとっているのでございますけれども、林業振動障害者と申しますか振動障害者全体につきましてはそういったことをするのに必要な病像が、どういう病気かというような点が必ずしも従来十分明らかでございませんでしたので、それを専門家の方に御研究いただきまして、昭和六十一年十月にようやくそれが治療指針としてまとまったわけでございます。したがいまして、振動障害者につきましては昭和六十二年度から、おくれてそういう長期療養者の管理が始まった。そして高知局の事情を詳細私どもわかりませんが、少し立ち上がりからペースがほかの局よりも
おくれていたような感じでございまして、六十三年、六十四年と少し後ろに集中したような形でそういった措置がとられたのではないだろうか、そんなふうに考えているところでございます。
 なお、お尋ねのございました何人とかそういうような割り当てめいたことはもちろん一切いたしておりません。
#84
○五島委員 今基準局長もお認めになりましたこのいわゆる治癒という判断、基準局長は治癒という判断とそれから主治医合意の症状固定が入りまして二十四名と四十三名という数字になっているわけでございますが、そういう数字と、それから主治医と局医といいますか、基準局との判断に食い違いのまま打ち切られた三名が五十名にふえたという問題、この患者さんたちを大まかにその中身で見てみますと一つの傾向が見られます。それは、主治医が判断して治癒もしくは局医との間において意見の違いがなくて症状固定になった患者さんというのは、おおむね症状そのものも軽快しておられるケースが多い。ところが、いわゆる主治医の意見と食い違ったまま局の判断においてあるいは局医に相談されて打ち切られたという三名、あるいは平成元年度の五十名という患者さんの特徴は、症状そのものは改善していないというケースがその大半でございます。そこのところに主治医自身と局医あるいは局自身の判断との間の食い違いというものがそのまま残されているのでございます。その点についてはどのようにお考えでしょうか。
 また、全国的にこうした問題についてのケースの中で症状固定者、症状固定判断者と治癒者との間において打ち切りのその段階において、あるいは治癒の段階におけるいわゆる症状、今労働省は症状基準としてVとNとで数量化した数字をお持ちでございますので、それについてはどういうふうになっているのでしょうか。
#85
○野崎(和)政府委員 主治医が症状固定であるということで結果的に症状固定として処理されたものは別としまして、主治医は必ずしもそういう御意見ではなかった、しかし基準局としまして症状固定の可能性もあるのではないかということで、主治医の御意見も十分お聞きしながら局医協議会にかけた結果症状固定と最終的にされた中には二種類あると思います。局医と主治医の間の仲を私どもが取り持つ場合が多いのでございますけれども、いろいろな意見交換の中で主治医の方も納得されまして症状固定ということになったものと、それから主治医の方にどうしても納得していただけなかったけれども、やはりこれは症状固定であるという局医の御意見が妥当であろうということで症状固定にしたものと両者あるように思います。いずれにしましても、局医協議会と主治医の間の御意見が一致することが一番望ましいわけでございますので、私どもとしては、多少時間はかかりましても御意見が一致するように、両者の御意見の間を取り持つ努力をこれまでもしてまいりましたし、今後とも努力をしてまいりたいと考えます。
 なお、お尋ねの症度の関係でございますけれども、症状固定とされた者の症度の程度についての調査、統計等は現在とっておりませんので、若干時間はかかりますけれども改めて調査をすることにさせていただきたいと思います。
#86
○五島委員 昭和三十年に労働基準局長と厚生省の保険局長の連名で三五九号通達というのが出されているわけでございますが、この通達はいわゆる労災保険と社会保険との谷間を埋めるということがその趣旨になっております。その通達は、その後取り消されたのでございましょうか、現在も生きているのでございましょうか。
#87
○野崎(和)政府委員 御指摘の昭和三十年基準局基発第三五九号通達は現在も生きております。
#88
○五島委員 もしこの通達が生きているとすれば、この通達の中身から検討いたしますと、その当時はまだ国民保険制度が確立しておりません。したがいまして、社会保険と労災保険との間の谷間というものをあけないように、それぞれ審査官または第一線機関において通報し合って意見の調整を図るようにという中身でございまして、主として認定当初あるいは認定――業務上外の判断の段階において配慮して出された通達であるというふうに受けとることができます。
 しかし、現実に例えばこの振動病の場合のように、VのS、Lが二とか三あるいはNのS、Lが二とか三とかいうふうな、まだ症状そのものが非常に重い段階で打ち切られていっている患者さんがたくさん出てきているということは、その当時想定されたように労災の業務上外の判断だけでなくて、いわば打ち切りという出口の段階において新たな谷間をつくることになってきています。そういう意味ではこの三五九通達はこの打ち切りの段階においても当然適用されるべきであると考えますが、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。
#89
○野崎(和)政府委員 三五九号通達の趣旨は委員御指摘のとおりでございます。
 そこで、振動障害者で症度が重い場合に、症状固定とされた者については結局後遺症状が残ることになりますので、その後遺症状をどうするのか。業務上の場合は労災保険、私傷病の場合は健康保険ということになるのでございますけれども、労災保険ではもはや治療としては続けられないという形になるのでございますけれども、そういった場合健康保険の適用を受けることももちろん困難でございます。したがいまして、そういった事情を考慮いたしまして、症状固定後においてしびれ、痛みといった後遺症状が残っている場合にはアフターケア制度を労災保険制度の中に設けまして診察、検査、投薬等を行っているところでございまして、このアフターケアに要した費用は労災保険において労働福祉事業費から支出しているものでございます。こういう形で谷間ができないように配慮いたしているところでございます。
#90
○五島委員 アフターケア制度の問題は前回もお話ししましたので繰り返しませんが、大臣にぜひお聞きいただいて御返事いただきたいのですが、社保と労災との関係について谷間ができるという問題だけではなくて、この三五九通達が出されてから後国民皆保険制度が成立いたしました。そして国保制度が確立したのでございます。国保は医療保険の中の上位保険でございますので、御案内のように国保においてはこうした労災の患者さんも保険給付をするわけでございます。しかし、現実には例えば人口が千名、千五百名という山村の中において、振動病の患者さんが百名、百五十名現実に治療しておられる町村が少なくございません。そういう中において現在進められておるように、症状が治療の必要がなくなって症状固定なり治癒という判断をされたなら当然であるけれども、症状は軽くなっていない、ただ治療効果がなかなかはかばかしくないから労災保険としてもう給付しないのだと言われた場合に、当然そうした患者さんは医療に救いを求めて治療を受ける。その場合に労災保険の、言われたような月に一回や二回に制限されたアフターケア制度を利用するよりも国保医療を利用して、国保でもってそれまでどおりの治療を受けていく、これは既に打ち切られた患者さんの大半がそのようにしておられるわけでございます。
 そのことは結果において非常に貧しい山村の国保財政に非常に多大の犠牲をしわ寄せすることになり、財政基盤そのものを危うくしていく危険性を持っています。労災がそのような形で窓口を閉めることによって皆保険制度の中に、社保との間に谷間をつくるだけでなくて、今非常に問題になっております山村の小規模の町村における国保財政にも非常に大きな影響を与えていく。その点について大臣はどのようにお考えか、ぜひお伺いしたいと思います。
#91
○塚原国務大臣 アフターケア制度の充実に努めて、業務上のものについては労災保険の中でできるだけ見るようにするというのがとりあえず答弁できるところなんでしょうけれども、それ以上の全体の保険制度のお話、確かに今の財政の部分の御指摘、かなりごもっともな点があると思うのですが、そういうことになりますとかなり話が大き
くなってしまいますものですから、答弁は慎重を要さなければ、各省ともまた打ち合わせをしなければいけないような感じ、無論労災の門戸が狭いからということの御指摘であることは重々承知しているのでございますけれども、現在の私どもに与えられた守備範囲では、ただいま冒頭答弁したような感じの御答弁になってしまうと思うのです。
#92
○五島委員 これは何も保険制度全般とか他の省庁との間の云々という問題になるわけではなくて、これまで基本的に労災の症状固定という概念については、ある一定の症状の改善そのものが図られて、そして、そのことによっての苦痛というものがいわゆる月に一回や二回のアフターケアで対応できる程度まで症状が改善するということが前提として運用されてきた。ところが、現在問題になってきているのは、それこそ今症状固定で判断された患者さんを、労働省自身の出しておられる再発基準なりあるいは認定基準に照らし合わせてもまだ重症であるという状態の患者さんを打ち切っておられるところにこうした問題が起こってきているのであって、そういう意味においては大臣のお答えというのは、まさに労働省自身がこうした問題をつくっておりながら、保険制度全体の問題にこれを矮小するということは許されないと思うわけなんで、その点について再度御回答をいただきたいと思います。
#93
○塚原国務大臣 今確かに御指摘のとおりで、いわゆる答弁としてはちょっとずっこいようなところがございましたので、申しわけございませんでした。
 どちらにしろ、アフターケア制度の回数制限等今あるものですから、それをひとつ配慮していくということと、それから、先生この前のときも御指摘ございましたが、一つは振動病についての、いわゆる労働省のお医者さんと主治医との間の話にしても、これからまた過労死等でもいろいろ御質問いただけると思うのですが、ありとあらゆる問題の中で結局どう判断するかという、そこは労働省のやる部分なんだと思うのですね。判断の仕方等について各委員から今日までもいろいろな御質問等いただいてきたわけでございますが、私も施政方針の中で、無論労災認定等については速やかにやるとか、そのようなことを述べているわけですが、いかにして血の通ったものとして現場がそういう判断をしやすい環境をつくっていくのかということが大変に大きな、今の問題も含めてすべての大きな問題だと思うので、そういった点について私の在任中にできるだけきちんとした、現場に対する通達等を出すようにしていきたいというふうに思います。
#94
○五島委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 先ほど池端委員の質問に対しまして、基準局長、いわゆる経過観察期間というものを設けることについて非常に前向きな御回答をいただいたわけでございますが、その中で、経過観察期間というものはもう既に主治医のところにおいて判断しているはずだというふうなお話がございました。しかし、それはあくまで症状が軽快し、そして治癒の判断をしていいかどうかという状態まで改善された、そういうケースについてのみ言えることであり、症状がまだ改善していないケースにおいてはなかなかそうはいかないということを申し添えておきます。
 そして何よりも、経過観察期間ということを認めるとすれば、この経過観察、あるいは治療を行ってそれによっての治療効果があるかないか、あるいは治療を中断することによって症状悪化することがないかどうか、そういうふうな判断を実際にしていくのはだれかといえば、主治医しかございません。基準局の方へ出される書類というのはせいぜいのところ年に一回ぐらいの書類しかないということになりますと、私も多くの書類を見てきたわけでございますが、現実にはそうした中身が詳しく求められたような調査になっていないということもございまして、局医の段階において治療の経過あるいは治療が中断した場合に症状が悪化するかどうかというふうな判断が書類上できるような内容となってはいないわけでございます。そこに主治医の意見を尊重しなければいけないという非常に重要な部分があるというふうに考えるわけでございます。
 ところが、現実には高知の事例のように五十名もの患者さんが主治医の意見と食い違ったまま一年間で打ち切りを行われている。それも前年度に比べて十七倍という大量の打ち切りが出てきている。ここに医療に対する患者さんの不信、医師と患者との不信、あるいはそういうふうな形で一方的に自分の主治医としての意見を抹殺された主治医の側からするならば、まさにおまえは誤診して悪徳医療をやっているんだ、あるいは必要でもない医療をおまえのところでやっているんだと基準局から言われたというふうに受け取っておられる開業医の先生方も少なくございません。こうした形でもって、非常に重要な、しかも振動病の患者さんがたくさんおられるのは大体過疎地でございます、そういう地域の中で営々と地域医療に努力してこられた主治医の先生と地域との間において、医師と患者との信頼関係を破壊するというふうなケースも間々見られるのでございます。
 そういう意味におきまして、まず主治医と局医の間において意見が食い違う場合、両者の協議の場をぜひ設けていただきたい。協議の場の設け方というのは、フェース・ツー・フェースで設ける方法というのが一番いいのでございましょう。しかし、例えば労災保険の場合でも社会保険の場合でも、治療に対して一定の疑義があった場合、仮に査定その他のあれがあっても、主治医の方から必ずそれに対して異議の申し立て権は認められております。ところが、この労災保険も症状固定判断に関してだけは全く主治医の異議の申し立てのチャンスが与えられていない。こういうふうなものを早急に改善して、主治医と局医との意見が何らかの形で、医師同士が医療上あるいは医学上の判断として協議し得る場をぜひつくるようにお願いをしたいと思うのですが、その点についていかがでございましょうか。
#95
○野崎(和)政府委員 症状固定かどうかは基本的には医学判断でございますので、医師の方の一致した意見に基づいてそういった結論を出し得ることが一番望ましいことは言うまでもないわけでございまして、主治医と局医の方との間で意見が食い違っている場合には、先ほども申し上げましたように、多少時間はかかっても何とか意見が一致するように私どもとしても努力をいたしているところでございます。そういった中で、御指摘のように直接主治医と局医の方でいろいろ意見交換をしていただくという場につきましても、もし、それを関係者がお望みになるならば、そしていい結果が生まれるならば、それも一つの方法だと思いますので、そういったことも十分念頭に置いて今後運営に努めてまいりたいと思います。
#96
○五島委員 よろしくお願いします。
 最後に、今非常に社会的に問題になっております過労死の問題についてお伺いしたいと思います。
 過労死という言葉は一般的によく使われているわけでございますが、過労死というよりもいわゆる脳血管障害あるいは急性心疾患、そうしたものによるところの死亡、あるいはそういうものの発症ということについてお伺いしたいと思います。
 昭和六十三年一月十三日、都道府県の基準局職業病認定調査官の研修会が開かれて、いわゆる過労死の労災認定のマニュアルが説明されたと聞いております。その一部がマスコミに報道されて、今ひとり歩きをしているわけでございますが、これについてどのようにお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。
#97
○野崎(和)政府委員 経緯を御説明させていただきますと、いわゆる過労死、先生御指摘のとおり、脳、心疾患による突然死の問題でございますが、これの業務上かどうかの判断基準につきましては、昭和六十二年秋に新しい認定基準ができたわけでございます。したがいまして、この新しい認定基準を関係の職員に周知するために御指摘の研修会が開かれまして、そこで一枚の図が配られま
して、新しい認定基準を運用するに当たってはいろいろなケースがございますので、そういった主なケースを図にかいて説明をした、それがマニュアルではないかと言われているものでございます。
 しかしながら、先生よく御承知のとおり、そういった過労死に対する業務上かどうかの認定につきましては、労働時間の長さだけで判断できるものではございませんし、労働時間の長さだけで判断してはならず、業務内容、作業環境等を総合的に判断すべきものであるということは本来の認定基準にももちろん明記してございますので、この図がそういったマニュアル、巷間言われているところによりますと、前日の場合は通常の業務の三倍とか一週間の範囲内では二倍とか、そういうふうに図から読み取れるというようなことが言われておりますので、これは非常に大きな誤解でございまして、もし、そういうことが広まりますと、かえって被災者と申しますか御遺族の方にも誤解を与えるというふうに考えまして、何とかその誤解を解きたいということで私どももいろいろと努力をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、この図のどれかに当たるから業務上になり、どれかに当たるから業務上にならないというようなことは全くございませんし、また労働時間の長さだけで業務上かどうかを判断していることも全くございません。
#98
○五島委員 労働時間の長さだけで判断しているのではないとおっしゃるわけですが、あのマニュアルそのものがどういう形で出たのかにつきましてはさておきまして、ああいうふうな文書が出される根拠はあると思うわけですね。
 と申しますのは、六十二年十月二十六日の、今局長おっしゃった通達の中身自身が、こうした脳血管疾患あるいは虚血性の心疾患を業務上に認定するためには「明らかな過重負荷を発症前に受けたことが認められること。」ということで二つございまして、「過重な業務に就労したこと。」あるいは発生直前に「異常な出来事に遭遇した」、こういう極めて抽象的な言葉しかこの中には書かれていないのでございます。そして、その中身として、労働省の基準局がおつくりになりました認定基準について、いわゆる認定マニュアルという文書の中に出ております、例の認定のための調査票のまとめという中身、様式一からずっとございますが、その中身を見てみますと、結果としては、その本人に基礎的なそういう疾患があったかどうかということ以外は、発症時の状況と、あとは専ら発症前後一週間ぐらいの労働時間の長さに集中してそれを調査するような中身になっています。
 したがいまして、あそこのマニュアルに書かれた内容が、その当日、一昨年の一月十三日に配られたものであるかどうかということはさておきましても、現実に、その発症前の一週間以内の就労時間によって業務上外の判断がされているのではないかということについて疑惑を持つことについては、これは当然ではないかというふうに考えるのでございますが、その点について、いやそうではない、ほかに業務量を客観的にはかるマニュアルを持っているとか、業務内容や作業環境についての基準マニュアルを持っているのだとおっしゃるのでしたら、ぜひお示しいただきたいと思います。
#99
○野崎(和)政府委員 委員十分御承知の上での御質問かと思いますが、確かに今様式等見てみますと、やや労働時間に偏り過ぎているのかなという印象も受けます。しかしながら、これが本来、本当のマニュアルなのでございますが、これの中には「過重性の評価に当たっては、業務量のみならず、業務内容、作業環境等を総合して判断すること。」と明記されておりますので、今回もそういった残念な誤解が生じたのでございますけれども、今後ともそういった誤解が生じないように様式その他についてももう一度見直してみたいと思います。
#100
○五島委員 時間がございませんので、この問題について私はこれで終わりますけれども、今局長もおっしゃいましたように、現実に認定を進める調査官としては、こういうふうなものが出されておりますと、実際この調査様式に沿って、この調査様式を埋めていくことに追われてしまうというのが実態だと思います。そういう意味では、今世界語ともなっている過労死なんというような言葉、そういう言葉がふえないためにも、あるいはそうした不幸な患者さんの御遺族を救済するためにも、早急に認定基準について見直しをしていただきたいというふうに御要望して、私の質問を終わらせていただきます。
#101
○畑委員長 伊東秀子君。
#102
○伊東(秀)委員 先ほども池端、五島両委員からも出ましたように、労災の認定が大変厳しくなってきている、あるいは打ち切り、被災者の不安が大きい。さらに、今回の休業補償の最高限度額を設けることも、労働省自身がお認めのように、労災保険の財政の黒字の方へ結びつく。年金の最高限度額設定も黒字にたしかなってきたわけですが、そういう意味で、被災者にとっては今の保険行政のあり方は大変厳しいものになっております。そういう意味で、労災保険に対する被災者の関心も非常に高まっております。
 こういう状況の中で、四月十一日の予算委員会で労災保険が大変食い物にされている実態が明らかにされました。それは朝日新聞等でも報道されておりますように、労働省の退職者による、財団法人労災年金福祉協会という名称ですけれども、財団法人を利用したさまざまな利ざや稼ぎの実態でございます。
 まず、労災保険のあり方ということ、そういった観点から、この財団法人の問題について私の方で質問したいと思います。
 四月十一日の予算委員会の質問で明らかになったことは、労災保険で賄われている「年金のまど」や「年金ジャーナル」などのPR誌を出している労災年金福祉協会という労働省の外郭団体、これは総務庁や会計検査院のチェックの及びにくい財団法人なわけですが、ここで年間約一億三千三百七十二万円もの利ざやが、粗利益が上げられている実態が明らかになりました。それはどういうふうにして出てきたかというと、例えば労働省が一部九十二円で買い上げている「年金のまど」を、協会はナシオンというトンネル会社をつくって一部二十七円で発注をしている。そのナシオン企画というトンネル会社はさらにそれを印刷会社に二十五円で発注している、こういうような構造で協会が一億三千三百七十二万円の利ざやを稼ぎ、さらに、その協会の理事がみずから理事になっているナシオン企画というトンネル会社は八百万円もの利ざやを上げている事実が明らかになりました。この点についてもうちょっと深めてお聞きしたいと思います。
 まず、さきの事実の中で、労働基準局長は質問に対して、この一億数千万の利ざやを公益法人が上げているのはおかしいじゃないかという点に関して、このように答えております。役員報酬とか管理費もそれに含まれている、そういうふうに答えているわけなんですが、ところが同じ日の四月十一日朝日新聞の夕刊で、この労災年金福祉協会の理事である中根義明という人物は、役員報酬額は一億円近かったと答えております。しかし、この協会の六十三年決算書によると三千二百万円になっております。この差額はどういうことなのか。役員報酬や管理費も含まれているという労基局長の答弁と中根理事の答弁は全く食い違っているわけですが、これは裏金として流用されたのではないかと我々は考えるのですが、その事実についてどうなんでしょうか。
#103
○野崎(和)政府委員 初めにお尋ねの件につきましては、財団法人労災年金福祉協会の専務理事がみずから代表になる株式会社ナシオン企画でございますかをつくりまして、そこへ協会で発行する印刷物の印刷を発注していたというケースでございまして、御指摘のようにトンネル会社をつくり、そこへ利益をプールすると疑われてもやむを得ないような、そういったことにつきましては、私どもかねがね通達をもって禁止していたのでございますけれども、それに抵触しておりましたので直
ちに是正を図らせたところでございます。
 そこで、今お尋ねの金額の件でございますけれども、労災年金福祉協会の役員の報酬の総額は三千二百万円ということで間違いございません。お名前をお挙げになりました専務理事が一億円というようなことをどなたかに話したということは私とももその後知りましたけれども、それは恐らく専務理事の記憶違いであるというふうに私どもは思っております。
#104
○伊東(秀)委員 今の協会の利ざやなんですが、一億三千三百七十二万円、これの使途について、そちらの方は従前からちゃんと掌握していたのかどうか、あるいはその後、国会で明らかにされて以降、細かい調査を行ったのかどうか、その辺を答えてください。
#105
○野崎(和)政府委員 協会は財団法人でございまして、私どもの方へ毎年予算決算を提出いたしますので、その内容は毎年チェックしておるところでございます。今回もこういった事件がございましたので、内容については十分チェックしたつもりでございます。
#106
○伊東(秀)委員 そうしますと、協会の六十三年度の決算報告書の中で、このような今問題になった利ざやですけれども、どのような費目でそちらは報告を受けていたんでしょうか。
#107
○野崎(和)政府委員 昭和六十三年度におきまして、印刷物の関係で利ざやと申しますか、労災年金福祉協会がその印刷物の売り上げの中から使用した経費は一億七千二百万円であるというふうに私どもでは把握しております。その内容を見ますと、当然印刷物の編集等にかかる経費、それから印刷に要する経費、この印刷に要する経費はナシオン企画に全部行っているわけでございます、それを除いたものが編集にかかる経費。それから、実際上協会の収入というのは、この本の売り上げによる収入と、それから協会には賛助会員というものを持っております。賛助会員から賛助会費というものを九千二百万集めております。この本の売り上げ代と賛助会費で協会の管理費を含めて全事業費を賄うことになっております。したがいまして、この一億七千二百万円の一部は編集等の事業活動に使われると同時に、役員の報酬あるいは家賃その他にそれぞれ使われている。それぞれの金額は私どもチェックしておりますけれども、結局決算にあらわれているということでございます。
#108
○伊東(秀)委員 私が質問したのは、その今の問題の利ざやは、収入のうちのどのような収入という報告を受けたかについて伺っているわけでございます。
#109
○野崎(和)政府委員 収入の項目としては事業収入に含まれていると思います。
#110
○伊東(秀)委員 次に伺いますが、この同じ質問の中で、ナシオン企画というトンネル会社が、神田印刷のほかに日比谷コンピューターというところに集計業務を委託していたという事実も明らかにされました。この日比谷コンピューターの社長は望月宏次という社長なんですが、この日比谷コンピューターという会社は、八五年の十二月、同じく朝日新聞で取り上げられ、「労働省で裏金作り子会社と架空契約」という表題のもとに、労働省の労働保険徴収機械業務室角田幸男室長のもとで、倒産した大手ミシンメーカー、リッカーの子会社、これが日比谷コンピューターシステムという会社なんですが、との間に長期間にわたって電算処理業務の架空契約を結び、年に数回、一部を払い戻しさせて、恒常的に業務室ぐるみの飲食代やゴルフなどのレジャー費に充てていたことが明らかになった。それは十数年間で、合計一千数百万円に上ると見られるという事実が判明したわけですが、この日比谷コンピューターシステムという会社と同一の会社ですね。
#111
○野崎(和)政府委員 同一の会社でございます。
#112
○伊東(秀)委員 この事件が発覚した後、日比谷コンピューター及び労働省に対して検察庁の捜査が入ったと伺っておりますが、その処分の結果はどうなったのでしょうか。
#113
○若林政府委員 昭和六十年でございますが、大臣官房労働保険徴収機械業務室におきまして、この室の職員が五十七年以降、日比谷コンピューターシステムから九回にわたりまして二百五十万円の金員を受領いたしまして、職員に対する残業、夜食代等に使っていたということが判明をいたしました。このため、大臣官房労働保険徴収課課長補佐一名に対して戒告、同じく課長補佐一名に対して訓告、業務係長二名に対して訓告を行い、あわせてこれらの者を管理監督する立場にありました者に対しまして訓告及び厳重注意の措置を六十年十二月二十七日に行っております。
#114
○伊東(秀)委員 今最後に監督する者というのは、角田幸男という室長のことでしょうか。
#115
○若林政府委員 室長も含めまして管理監督者の処分を行っております。
#116
○伊東(秀)委員 日比谷コンピューターに対する何らかの刑事処分その他はどうなったのでしょうか。あるいは労働省側の何らかの制裁というか、そういう措置はとったのでしょうか。
#117
○若林政府委員 この案件に関します刑事責任事件というのは私ども承知いたしておりませんけれども、日比谷コンピューターとの業務との関係につきましては、十分検討いたしましてシェア等について縮小するという措置をとっております。
#118
○伊東(秀)委員 ただいまの答弁ではそれなりの措置をとったということですが、この日比谷コンピューターシステムの会社の社長望月宏次氏は労災年金福祉協会の評議員になっておられますね。その事実に間違いないですか。
#119
○野崎(和)政府委員 そのとおりでございます。
#120
○伊東(秀)委員 ということは、この事件、五年前に国民にとっては労働省のこのような行為に対して非常に怒りを覚えた事件でございますけれども、架空契約を結ぶ裏金づくりの事件に対する措置として大変なまぬるいというか、非常に国民の期待を裏切るような、そのような反省のない態度で、その後も労働省がさらに裏金づくりのためにナシオン企画というトンネル会社を通じて日比谷コンピューターと癒着して、その後の不正行為を行っていたというふうに考えられるわけですが、その点についてはどうですか。
#121
○野崎(和)政府委員 日比谷コンピューターと労災年金福祉協会、ナシオン企画との関係につきましては、労災年金福祉協会が年金受給者の実態調査を毎年行っております。そのコンピューター集計の部分をナシオン企画を通じて日比谷コンピューターが委託を受けた。ただ、その実態調査の調査費は総額でも四百万余でございまして、その中のどれだけがコンピューター集計費として日比谷コンピューターに行ったかは私どももそこまでは承知しておりません。また、日比谷コンピューター、民間の一企業でございますので、いろいろな営業活動をすることはそれ自体はまたやむを得ないものと思いますけれども、いずれにしましても、今回の事件を契機にそういった明朗でないという印象を与えたことは大変協会にとっても残念なことでございますので、先般の事件を契機に日比谷コンピューターとの取引関係についても絶つように指導いたしまして、現在は取引関係が絶たれているはずでございます。
#122
○伊東(秀)委員 八五年にこのような労働省の裏金づくりが国民の前に明らかになった。今回、労災年金福祉協会のトンネル会社をつくっての利ざや稼ぎというか裏金づくりがさらに明らかになった。その間にリクルート事件にも労働省ルートという形で関与している。私たちの前には大変労働省が裏金づくりに対する反省が全く見られない、そのようにしか映らないわけです。労働省のOBあるいは現職員が業者と癒着してこのような国民に反する裏金づくりを行ってきた、そのように私は考えるわけですが、さらにもう少し、その事実を明らかにするようなことをちょっとお尋ねいたします。
 昭和六十三年七月七日に設立の財団法人労災保険情報センターについて伺います。
 この登記簿謄本によりますと、労災保険情報センターというのは、理事が吉本實、平賀俊行、田中清定、林茂喜、中根義明、高木武敏、村井久夫、
角田幸男というふうになっております。全員が労働省のOB、しかも労働保険業務室長関係者がほとんどでございます。この財団法人の理事に座っている人が、先ほど出ました労災年金福祉協会の専務理事で不正行為を行っていた中根義明氏も入っておりますし、さらに八五年十二月に発覚した裏金づくりの室長、責任者であった角田幸男氏も入っております。このような事実を見ますと、わずか二年半しかたってないわけですね、八五年十二月の事件から。二年半後に設立した財団法人にこのような裏金づくりの責任者であった角田氏を据える、これは通常は考えられないことなのですけれども、なぜ彼をこのような重要な職責につけたのか、その辺の理由について説明してください。
#123
○石岡政府委員 労災保険情報センターの役員につきましていろいろ御質問がございましたが、現状で申し上げますと、役員十一人のうち、正確に申しますと、労働省OBは十人という実態になっております。御指摘の角田はこの協会の専務理事をかつて占めていたわけでございます。その起用の理由は、角田がこの協会の業務、すなわち、労災診療費のレセプト等の事前点検、あるいはまた審査を終了したレセプトの機械入力処理業務等、こういう業務に非常に精通をしているという理由から起用されたものと考えておりますが、本人は先般死亡いたしておりまして、現在専務理事は欠員中でございます。
#124
○伊東(秀)委員 業務に精通しておればそのような労災保険情報センターという、被災者にとっては補償の相談とかあるいは医療の実務の援助とか、この定款にもうたわれておりますように、「労働災害に対する補償の適正な実施及び労災医療の充実を行いもって労働者の福祉の増進に寄与すること」という事業目的を持つ財団法人の理事に据えること、これは労働省として大変な不見識ではなかろうかと私としては思うわけですが、そのような理由から角田幸男氏を起用したということなわけですね。しかも、今回の平成二年度の予算措置を見ますと、それまでは、平成元年までは九十九億だったわけですが、百九十八億円へと約二倍に倍増しております。二百億近い財源を預かるそのような重要な、しかも労働者、被災者の福祉の向上を目的とする財団へ、かつて裏金づくりの責任者であった者を据えたこのような労働省の態度に対しては全く納得がいかないわけですけれども、その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
#125
○野崎(和)政府委員 委員からそういった任命についての御批判がございましたことは私どもも厳しく受けとめたいと思います。
 ただ、過去にそういう事実があったということはもちろん事実として承知はしつつ、しかし、本人に最も適した職務ということで、労働省が任命したというふうには必ずしも言えないと思いますけれども、私どもも承知した上でそういった人事が行われたということでございまして、委員の御指摘については御指摘として厳しく反省させていただきたいと思いますが、先ほど審議官が申し上げましたように、御本人はこの春に既に死亡されておりますので、そういった点も御配慮いただきまして審議等について御配慮いただければと思います。
#126
○伊東(秀)委員 次に、もう一つの財団でありまする労災ケアセンターについても同じような観点から伺います。
 この労災ケアセンターというのは、登記簿謄本によりますと、平成元年七月一日に設立許可された、やはり労働省が監督する財団法人でございます。それで事業目的は、「労働災害による被災労働者の介護に関する調査研究等を行うとともに、家庭内における介護を必要とする被災労働者に対しその特殊性に見合った適切な介護が受けられるよう必要な援護等を行い、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」という、大変被災者にとっては大事なセンターでございます。
 この労災ケアセンターの役員、これを見ますと、理事望月三郎、稲田安麿、この方はかって労災保険業務室長だった方ですね。それから並木重治、稲葉哲、野見山直之、この方はつい平成元年の一月末日まで労働基準局長だった方でございます。さらに加来利一、曽我恒市、さらに、ここにも登場する先ほどの問題になった協会の専務理事であった中根義明、さらに、ここにも先ほど私が申し上げた角田幸男氏、このような人たちが役員に名を連ねております。全く完全な労働省の天下り役人で占められているわけでございますけれども、ここにも協会で不祥事を起こした中根義明氏が登場し、かつ角田幸男氏が登場する。これはどういう観点からこのような人事を行ったのでしょうか。
#127
○石岡政府委員 先生から財団法人労災ケァセンターの設立月日、目的、役員構成などの御指摘がございましたが、それらは事実でございます。確かに理事に中根と角田両氏が起用されておりますが、この起用の理由は、先ほども申し上げましたように両名が労災保険業務に精通をしているといったようなことではなかったかと思っております。先ほど来、局長もお答えいたしましたように、先生の御批判は御批判といたしまして、私ども厳しく受けとめておるところでございます。そういう気持ちに立ちまして、今後この財団法人につきましても、役員人事を含めまして運用の適切を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
#128
○伊東(秀)委員 ただいまの御答弁では労災保険業務に精通しておられるということでしたが、この労災ケァセンターというのの事業目的は、介護に対する必要な援護でございまして、つまり介護施設の運営であって、保険業務と直接は関係ない。ただし財源が労災保険の中から賄われている、そういう意味では全く関連がないわけではございませんけれども、今の御答弁では納得いかないわけです。そういう意味で、これはまさしく労災保険と非常に密接な関連のある、人事を見ますとほとんど労災保険業務室関係者が圧倒的なわけですが、そういったところの天下り先としてこのような財団法人が使われていたのみならず、今の事実でも明らかになりましたように、中根義明氏にしましても三つの財団法人に重任している。角田幸男氏は二つ。さらに稲葉哲氏、この方は労働福祉事業団の理事であり、さらに労災年金福祉協会の理事であり、また労災ケァセンターの理事である、三つを重任している。
 このように大変労災の財政を食い物にした天下りの、単なる天下りの乱用のみならず、一部の者の独占というか、大変不正な人事ではなかったかというふうに私は考えるわけです。しかも、かつて非常に国民の指弾を浴びた裏金づくりに関与した人間、現に関与していた人間が三つや二つ重任している。これはもうもはやリクルート事件と同じぐらい国民の指弾を浴びていいようなことではなかろうか。一方では被災者の給付はどんどん切り下げられ、認定は厳しく、被災者にとってはとても血も涙もない労働基準監督署という状況になってきているわけですけれども、大変ゆゆしいことではなかろうかと思います。
 今、さまざまな事実を挙げたわけですが、大臣に伺います。
 このような財団法人、これは総務庁や会計検査院のチェックが及ばない、そんな形を利用したものでございますけれども、財団法人の人事及び会計の不明朗が大変国民の目を集めている。これに対して情報を公開していく、そして不透明な部分を明らかにしていく、そのような誠意と今後の見通しはないのかどうか、大臣にお答えをお願いいたします。
#129
○塚原国務大臣 労働省は、昭和二十二年にできましてから、非常に皆様方からの厳しい目の中で精いっぱい努力をして、そして、今日非常にいい雇用の状況ができた背景もございますが、大変に働く方々から信頼される役所ということで今日に至ってまいりました。そこに至るまでは、特に本院社会労働委員会、参議院社会労働委員会の適切な御指導をいただいてここまで来れたわけでござ
います。
 そういった中で、このたびリクルート事件という大変大きな事件がございまして、特に労働省、ただいま池端先生の方からもお話がございましたが、非常に人数が少ない中で第一線の職員諸君が頑張っている中で、本省の人間が不祥事を起こしたということで、国民の皆様方に当然申しわけないわけでございますが、それに加えて第一線の職員諸君の士気をそぐというような状況が生まれました。そういう中で、今立て直しをしなければいけないという労働大臣に私がなったこと自体、非常にもしかしたら問題の御指摘をされる部分があるんじゃないかと思います。
 私自身も、政治資金規正法とかあるいは政治倫理規程とかには決して反していないわけですが、ただ、それはあくまでも永田町の中の論理の話でございまして、世間一般の常識からいきますと、少なくとも六年間に三回パーティーをやって、そのパーティーで六百三十万円も購入していただいていたわけですから、これは果たして、そのおまえが今、信用を回復しなくちゃいけない労働省の大臣を務める資格があるのかということも強く御指摘を受ける部分だと思います。
 ただ、そういう中にありまして、私は自分自身がそういうものを持っておりますだけに、私が大臣になりましてなさなければいけない第一の使命は、何といっても唯一、この不祥事によって信頼を失った労働省が信頼を回復する努力をしなければいけないということで、今日若い諸君が中心になってすばらしい将来を展望した政策をおつくりすることでお返しをする、それに対して各省のいろいろな反発があったとしても、大臣としては精いっぱいこれを支援をしていく一つの道筋をつくる、あるいは本省がはっきり襟を正した姿を見せることによって、第一線の諸君がさらに、一回がっかりした、失望したものを、やる気を出してもらうような努力をするというようなことをしなければいけないということを強く誓ってまいりました。
 そういったときに、ただいま先生から御指摘をされた問題が生まれてまいりました。労災保険に関しては、先生からちょっとピントずれると言われるかもしれませんが、やはり労災を受けるような状況になるということは、そのときの企業や何かからだんだん離れていってしまう。ですから、個人個人が一人でいろいろと制度が変わる情報なんかもとっていかなくちゃいけないということになると、きめ細かくいろいろな広報活動とか御連絡とかをしなければいけないような状況がございます。そういうようなところで、よかれと思っていろいろな形のものを、サービス機関のようなこともあってつくってまいったのだと思いますが、そういう中で明らかに疑惑を受けて、私自身も予算委員会でおわびを申し上げたわけでございますが、おわびを申し上げなければいけない事態が出てまいりました。そしてただいま、かなり詳しくその人事配置についての御指摘もいただきました。私ども、今いただきました御指摘のかなりの部分は承知をして、改善に努力はいたしていたわけでございますけれども、さらに、これらにつきまして改善の努力をいたしたいと思います。
 それから、そのことと今回の法改正の問題でございますが、今回の法改正はもうまさにそんな裏金をつくってとか、そういう御質問じゃない、先生は黒字がちょっとふえるのじゃないかと。そういうようなことも全くなくて、制度がよりよく運用されるようにというような形で出しましたものでございますから、どうかその点につきましては、たくさんのおしかりはあると思いますが、どうか法案の方につきましてはよろしく御配慮のほどをお願いを申し上げる次第でございます。
 申しわけございませんでした。
#130
○伊東(秀)委員 平成二年度の予算を見ますと、一般会計が四千八百六十八億円、労働保険特別会計は四兆六千四百五十三億円になっております。特別会計の中の労災勘定は二兆二千百三十三億円。この数字を見ましても、一般会計の約五倍に近い予算を労災勘定という中で計上しているわけです。しかもこの労災勘定は、本質的には被災者やその家族の給付を手厚くする、本当に被災者の福祉の向上のために使われなければならない、そういった金額であるわけですけれども、今のような形で、これまで出てきたようなさまざまな不祥事にも一部使われていた。さらに、これは労働省本省等の庁舎の管理維持費等にも使われているわけですけれども、労災勘定がこのようなたくさんの数字を抱えている中で、予算の中の特別聖域かのごとくになっていたのじゃないか。それで非常に放漫な、労災勘定からならいろいろな支出ができるような、そんな労働省の実態があるのではなかろうかというふうに考えるわけですけれども、その点について御答弁をお願いいたします。
#131
○野崎(和)政府委員 労災保険特別会計の労災勘定から支出できる経費は当然労災保険法等で限定されておりまして、具体的には、保険給付費、事務費、それから労働福祉事業費等の経費でございます。労働福祉事業費の内容につきましても、災害防止対策であるとかその他細かく規定されております。したがいまして、いずれにせよ労災保険の経費はそういった限定された目的に支出されているわけでございます。
 一方、労災保険の予算規模に比べて一般会計の額が少ないではないかという御指摘でございますけれども、私どもとしても、一般会計でもう少し予算があればというふうに思うことは、いつもそういうふうな感じを持つことが多いのでございますけれども、いずれにいたしましても、労災保険の事業につきましてはそれぞれ決められた目的に使われており、先ほど庁舎のお話が出ましたけれども、庁舎につきましても結局、例えば監督署にしてみますと、一般の監督官もその庁舎を使いますけれども、労災保険関係の仕事にも使いますので、全部の庁舎ではございません、庁舎についてそれぞれ労災保険で建てた庁舎、一般会計で建てた庁舎、そんなようなことになっているわけでございます。
 そんなことで、一般会計との比較で一般会計が少ないという問題はございますけれども、使途につきまして、労災保険について非常にむだがあるとか、あるいは一般会計でカバーするようなものまで無原則に出しているのではないかというようなことはないつもりでございます。
#132
○伊東(秀)委員 時間がないので次に進みます。
 まず、今回休業補償の給付基礎日額の上限規定を設けたことについてですが、一年半経過後、休業補償を受給している者は現在約三万人いると言われております。その中で今回の上限規定により給付が引き下げになる者が、労働省の方のお話では約七・九%いるということです。私の方で調べたところでは、この不利益を受ける者、これは主に年功序列賃金体系にない者、土木や建設労働者といった、どちらかというと日雇い的な不安定な雇用状態にある方々なんですけれども、そういう方々、日当という形で支給される人たちに引き下げが多くなる。しかも、こういう建設、土木、あるいは山林労働者も含まれるかと思うのですけれども、こういった方々が被災するのはどうしても高齢者が多い。となれば、今回の上限規定ではこの高齢者に大変厳しい、しかも雇用形態の不安定な、そういう意味で生活の不安定な人たちに、給付の引き下げという生活上もろに響く状況が発生するわけですが、それについてどのようにお考えでしょうか。
#133
○野崎(和)政府委員 休業補償につきまして最低限度額、最高限度額を導入いたしました趣旨は、ただいま委員の御指摘にもございましたけれども、そういう給料の年功賃金にない方の場合は、被災時の給料は若くてもかなり高いということは確かにあろうかと思いますけれども、逆に年功賃金のもとにあります方で若くして被災しますと、非常にわずかな、十万円をちょっと超えるような賃金が一生涯の、遺族年金なら遺族年金の基礎になってしまいまして、それはそれで何とかもう少し年齢の推移に応じてある程度底上げしていきたい、そういうことが最低保障額を入れた理由でございます。それと同時に、一方では、非常に平均
賃金が高かったために高い年金等を受給しておられます方につきましては、年齢の推移に応じましてある程度金額を、少し上限を抑えさせていただく、そういう考え方でございます。
 ただ、上限につきましては、先ほど来るる申し上げておりますように、全体の賃金分布の上から五%目のところでございまして、決してそんなに低い賃金が上限になっているわけではないというふうに信じております。ただ、これも先ほど池端委員から御指摘がございましたけれども、六十歳まではそうでございますけれども、六十五歳以降になりますと、一般の六十五歳以降の方の賃金が非常に少のうございますので、そこでかなりの落差が生ずるといった点については、先ほども御答弁申し上げましたように審議会の中で年金の問題、休業補償の問題とあわせまして十分検討させていただきたいというふうに思います。
#134
○伊東(秀)委員 今の問題に引き続くのですが、このような年功序列賃金体系にない建設、土木あるいは山林といった労働者の方々は休業中、休業前、被災と同時にほとんどが雇用関係をなくしてしまっている人が多い。生活費はほとんどこのような休業補償に頼っている、そんな実態にあるわけですけれども、だんだん症状がよくなっていくと、全く休業状態にないということで通院日しか休業補償が出ない、つまりそういう部分的休業状態にある人が約四割いると言われております。
 この人たちは、被災時の日当が中心になれば二万とか三万とかもらっている方が多いわけで、それで高齢者であっても何とか十日分の休業補償で生活をつなげていた。しかし、今回のような年齢による最高限度額を設けられますと、これだけでは部分的休業費しか支給されない。その実態では食べていけなくなるという状況が生じるわけです。ですから、このような最高限度額を設けるのであれば、前の肉体労働につけない、例えば事務労働につけるほどに症状が軽快したとしても、肉体労働につけない者については、部分的休業という形ではなしに全部休業補償を出すとか、そのような手当てがないと被災労働者にとっては大変悲惨な状況になるわけですけれども、労働行政の中でもいいわけで、その辺、部分的休業に対してもう少し被災者の側に立ったそういう行政はできないかどうかについての御意見を伺います。
#135
○野崎(和)政府委員 休業補償は、委員よく御承知のように、療養のために休業せざるを得ない場合に出されるわけでございます。したがいまして、通院日に限って休業補償が出るという場合もございましょうし、通院日が少なくてもやはり療養のため働くことができない状態であるということで休業補償が出る場合もございます。いずれにいたしましても、症状がある程度軽快し、療養のために休む必要がないという状態になりました段階で休業補償を支給することは、全体の仕組みの中で大変困難ではないかというふうに思います。
 なお、上限の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、現在の上限の額というのは六十五歳以上の方でもそれ自体としては決して非常に生活に困窮するというようなものではないと思いますし、もし、そのような問題があればそれはそれで検討する必要があろうかと思います。いずれにいたしましても、労災保険で労災を受けられ、そのために働くことができない、そういう方たちが生活に困られるというようなことがあってはなりませんので、こういった問題については十分慎重に対応してまいりたいと思います。
#136
○伊東(秀)委員 今出てきた問題とまた関連するのですが、労働災害に遭うと、なかなか事業主は職場復帰を好まない、何とかしてこの労働被災者を切りたいというのが実態でございます。私も裁判等で労働災害事件をかなりやってまいりましたけれども、ほとんど何らかの形で解雇される。解雇禁止規定があるわけですけれども、それを脱法したり、あるいはその期間を待ってすぐに解雇するというのが実態でございます。そういう実態を考えるときに、事業上の、つまり労働を得る過程で発生した労働災害で稼働できなくなった、そういった労働者に対しては、労災保険法上事業主に対する職場復帰の協力義務を法制化して、事業主の都合で解雇していくといったものに対する何らかの歯どめが必要ではないかというふうに考えるわけですけれども、それについてはどうですか。
#137
○野崎(和)政府委員 労働災害に被災されましてまだ治っていない方につきましては、委員よく御承知のとおり労働基準法で解雇制限がございますので、そういった方は少なくとも事業主との関係で身分を残しておられるわけでございますけれども、これもよく御承知のとおり、日雇い労働者等につきましては、結果的に期間満了と申しますか、日々の雇用でございますので切れてしまう、そういう状態が生ずることは事実でございます。そういった方たちに対しましては、先ほども御説明申し上げましたけれども、休業等で山間僻地でなかなか就職の場がないというような方に対しましてはいろいろな援護制度を持っておりまして、そういった方を雇っていただいた場合には賃金の三分の一とか二分の一を助成する、そういうような形で社会復帰の促進に努めているところでございます。ただ、委員のお尋ねのように、そういった社会復帰、職場復帰をもとの企業に義務づけるというのは、そういった実態から考えますと、日雇い労働者あるいは期間雇用者等の場合にはなかなか難しいのではないかというふうに思いますので、現在やっておりますような社会復帰制度を適切に充実していくということで対応させていただきたいというふうに思います。
#138
○伊東(秀)委員 先ほどの労基法研究会ですかの中間報告では、労働基準法第八章の削除ということが言われていたわけですが、今回の審議会の建議ではそれはなくなった。労働基準法の第八章、労働災害に関する部分は労働条件として残るわけですけれども、この労働基準法上の個別事業者の個別の被災労働者に対する責任と労災保険法との関係について伺います。
 この労災保険法というのは、憲法二十七条を受けた、被災者とその家族に人たるに値する生活を営むための必要な最低の労働条件を確保する、それが労働基準法上の法定救済制度でありますけれども、それが個別の事業主の理由によって被災者が十分な補償が受けられなくなるようなことのないように、労災保険という形で集団的に事業主の責任を担保し、さらに責任を拡大する、そういった法である。だから労基法と労災保険法は生存権の理念に基づいた一つの生活保障制度であるというふうに私は考えるわけですけれども、労働大臣も私のような考え方であるかどうかについて、もう時間も余りありませんのでお伺いしたいのです。大臣にお伺いいたします。
#139
○塚原国務大臣 ちょっと学生時代法律の勉強が――ただ、余り頭のよくない頭で先生のお話を聞いた範囲では、大体そのとおりなんじゃないかなという感じがするんですけれども……。
#140
○伊東(秀)委員 そうしますと、年金については労基法には何ら定めがない、だから年金に労基法より下回る補償額が出てきても、それが一気に労基法に抵触するというようなことにはならなかったかと思うのですけれども、今回休業補償で労働基準法を下回る人が出てくる、そうなるとやはり被災後三年間に関しては労働基準法に抵触するという問題が出てくると思うのですね。そうすれば、労働基準法というのは個別の労働者に対する個別の企業主の責任を定めたものですから、下回る給付しか受けられない人は、自分の事業主に対して労働基準法を根拠にして不足額を請求できるということになるかと思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
#141
○野崎(和)政府委員 まず、労災保険法と労働基準法の関係、委員の御指摘のとおりだと思いますが、そういうことで、個々の事業主の補償義務を保険制度にいたしますと、今度は個々の事業主ではできないことが大きな保険制度の中ではできるようになる。それが今御指摘の年金でございます。個々の事業主では到底補償を年金で行うことはできない。したがいまして、御承知のとおり三年の打ち切り補償というような規定もあるわけでございますけれども、大きな労災保険という世帯であ
ればそういった年金等もできる。そういうことで個別の事業主が補償するよりも労災保険の場合は非常に有利になるのでございますけれども、また、それと同時に、個別の事業主が補償する場合には被災者ごとにどれほど額に相違がありましても、それはやむを得ないということになるのでございますけれども、全体として皆同じようにして労災保険で給付を受けるということになりますと相互のバランスという問題が出てまいりまして、そういった見地が今回の改正の上限、下限というものを設けた趣旨だというふうに私ども認識いたしております。
 そういうことでございますが、全体としては先ほどもお答え申し上げましたように、労働基準法の水準よりは労災保険法の補償の水準の方がはるかによくなっております。そういうことでございますので、最高裁の判例もございますけれども、労働基準法第八十四条の規定によりまして、労働基準法の補償に相当する補償が行われている場合ということで、事業主は労災保険から保険給付が出ればみずからの補償責任は免れる、そのように理解しております。
#142
○伊東(秀)委員 全体として労災保険法上の給付額が高いということはそのとおりだと思うのです。しかし、今私が伺いましたのは、圧倒的多数は労基法上よりも労災保険法上の給付が高いわけですけれども、今回の休業補償における最高限度額の中で、三万人の八%ですから二千数百人、労基法よりもさらに下回る金額しか給付を受けられないような人も出てくる。そうなれば労基法に基づいて自分の事業主に対して個別的な不足額の請求ができるということになると私は考えるわけですけれども、その点についての御意見を伺ったわけです。
#143
○野崎(和)政府委員 その点につきましては、これはもう委員十分御承知の上でのお尋ねだと思いますけれども、最高裁の判例がございまして、労災保険の給付が労働基準法上の補償に相当する給付というふうに見られれば事業主は補償の責任を免れるということになりますので、差額を請求いたしましてもそれは手に入れることができない、そういう関係になろうかと思います。
#144
○伊東(秀)委員 労災保険法上の給付が労基法上の法定給付に相当すればできないのは当然ですけれども、個別事業主に対して請求する、それは労基法を根拠にするわけですけれども、不足額についてできないという根拠はないと思うのですよ。先ほど言ったように保険法と労基法の趣旨が違うわけですから。その点について最後に御答弁をお願いいたします。
#145
○坂根説明員 重ねてお尋ねでございますのでお答え申し上げますが、先ほど局長がお答えしましたように、労働基準法の八十四条では、労災保険法で労働基準法に相当する給付が行われる場合には、使用者は補償の責めを免がれる、こういうふうになっております。したがいまして、先生のお尋ねは、個々に見た場合には、下がっている場合には請求できるのではないか、こういうことでございますが、基準法の方にこの規定がございまして、責めを免がれる、こういうふうになっておりますので、私どもとしては、今回の改正によっても相当する給付である、こういうふうに考えられますので、使用者は補償の責めを免がれる、こういうことになるのではないかというふうに考えている次第でございます。
 以上でございます。
#146
○伊東(秀)委員 終わります。
#147
○畑委員長 貝沼次郎君。
#148
○貝沼委員 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、これについて若干の質問をいたします。
 今回の改正は、先ほどから議論になっておりますように、平成元年十二月二十五日に労働者災害補償保険審議会の建議に基づきまして行われたこの三点でございます。これにつきましては、初めの「年金・一時金及び休業補償のスライド要件の改善」、この件につきまして、私ども公明党は完全自動賃金スライド制の導入をせよということで、一九八六年から基本政策に盛り込んでこれを進めてきたところでございます。したがいまして、今回これが実ったということはまことにすばらしいことであるというふうに評価をするものでございます。しかし一方、なぜもっと早くできなかったのかという点はちょっと不足があるわけでございますけれども、せっかくできたことでありますから、今後さらにこれが充実されるように要望してまいりたいと思います。
 それから、きょうは始まりが遅くなっておりますので、私は急ぎますので詳しいことは申し上げません。二番目の「長期療養者の休業(補償)給付への年齢階層別の最低・最高限度額の導入」でございますが、これは先ほど来いろいろな方々から質問がありまして、これはすばらしいとは言い切れない、やはりいろいろな問題を含んでおります。きょうは細かいことは議論いたしませんけれども、問題がある。したがって、今後はさらに細かくこれを検討し、そして理解の得られるようなものに改善していくべきであるということを主張しておきたいと思います。
 それから三番目の「農業従事者の特別加入制度の改善を通じた強制適用事業の範囲の拡大」、これは大変結構なことだと思っております。ただ、これにつきましては、ちょっと心配の点がございます。これはどういうことかと申しますと、先ほどから労働基準法の八章の話が出ておりますが、特別加入したことによって、労働基準法七十五条、いわゆる使用者責任の問題、それから先ほど来話が出ております八十一条の打ち切り補償、千二百日ですね。こういうようなことがございます。一方労災上問題となっておるのは、今度はこういう加入者がふえてまいりますと、未手続事業、これが問題になってまいります。例えば、加入手続をしなくても災害が起これば当然被災者は労災保険給付を受けることができるわけでございます。つまり、使用者は労災法上の義務を果たさなくても労災法上の災害補償責任は果たしているので、労基法上の使用者責任は問われないというような問題がございます。したがって、これの加入促進が進まないというのが現状でございまして、この問題が今後これからさらに出てくるのではないか。
 それで、簡単に実情をお尋ねいたしますが、現在この未手続事業はどれくらいあって、そして、さらにこれから先、労働省はどういう指導をし、どういう実効を上げようと考えておるのか説明してください。
#149
○野崎(和)政府委員 未手続事業場の数については今すぐ申し上げますが、委員御指摘のとおり、労災保険につきましては、労働者保護の見地から、未手続の場合でございましても適用事業場の場合には補償をするということになっておりまして、手続がとられませんと全体の補償の原資がなくなってくるということで、未手続事業場の解消というのは大きな問題でございます。しかしながら、小零細企業の場合、私どものPRもなかなか行き届きませんで、まだ現実にかなりの数の未手続事業、恐らく数十万単位であるのではないかと思います。
#150
○貝沼委員 なければ仕方がありませんけれども、百万くらいあるのですね。平成元年度末現在における適用事業数は、労災保険が二百三十四万二千事業。全部で三百五十二万ですから、いろいろ計算をいたしますとざっと百万くらいあるのではないか。計算はありませんけれども、そういう予想がついておりますが、これは違っていますか。
#151
○野崎(和)政府委員 委員の方から御指摘いただきまして大変恐縮でございますが、御指摘のとおりでございまして、六十三年度末でございますが、適用事業場数は二百二十七万でございます。恐らく全事業場は三百五十万近くではないか。これは統計のとり方にもよりますけれども、そうするとその差はやはり百万前後になろうかと思います。
#152
○貝沼委員 それが現在の数字ですが、これからさらにふえるかもしれません。したがって、これに対してどういうふうな対策を講じて、どういう実効を上げようとされますか。
#153
○野崎(和)政府委員 これらは多くは小零細企業
でございますので、一つは、組合をつくりまして、その組合に加入していただくという形で適用促進に努めているところでございます。
 なお、私ども基準局の職員は常時事業場へ監督とか指導でお伺いしておりますので、そういう際に、労災保険の手続をまだとっていただいてない場合には、手続をとっていただくようにお願いをしているところでございます。その他、年度末等には、車内につり広告等も出ているかと思いますけれども、広く一般にPRしまして、手続をとっていただくようにお願いしているところでございます。
#154
○貝沼委員 これは今後の問題として大変重要な問題になるということを指摘しておきます。
 それから、もう一つは労災の認定基準の関係でございます。これは先ほど来随分お話が出ております。
 そこで、労災、特に過労死の問題につきまして、先般新聞にいろいろ出ました。例えば、先ほども話が出たと思いますが、「前日 仕事がふだんの三倍以上」とか「または 直前一週間 ぶっ続けで二倍以上」とかというような見出しで、「過労死に厳格″指導要綱″」、こういうような見出しで出ておるわけでありますが、これは御存じですか。
#155
○野崎(和)政府委員 先ほども御説明申し上げましたけれども、そのもとになっておりますのは一枚の図でございまして、その図は、新しい認定基準を関係の職員に説明する研修の場でいろいろなパターンを図にして示しただけのものでございます。したがって、その図に当たったから認定されるとかされないとかということは全くございません。そういう意味では、基準でもマニュアルでも全くないわけでございます。
#156
○貝沼委員 それで先ほど研修に使ったという資料、私、当局から資料としていただきました。これをぜひとも委員の皆さんに配付させていただきたいと思います。
#157
○畑委員長 どうぞ配付してください。
#158
○貝沼委員 そこで、当局にお尋ねいたしますが、この何の変哲もないような図面ですね、何の説明も書いてありませんので、何の目的で何を意味するものであるかということ、それを簡単に説明していただきたいと思います。
#159
○野崎(和)政府委員 この図をつくりまして説明した職員が現在もおりますので、私がその職員から直接聞きました内容を御報告申し上げます。
 要するに、新しい認定基準の考え方をまず申し上げなければならないのでございますけれども、従来の認定基準は前日の労働の負荷だけを考えていた。それを今回は、前日だけではなくて一週間程度持続して重い負荷がかかっている場合も脳溢血、心臓麻痺による突然死の発症の原因になることもあるということになりましたので、まず最初の〈図1〉と〈図2〉はそのことを示しているものでございます。そして、〈図3〉と〈図4〉は、一週間を中心に見ますけれども、さらに一週間よりも前に非常に重い負荷がかかっている場合もあり得る。したがって、一週間前も参考にする必要があるというのが認定基準でございます。そのことを示したものが〈図3〉と〈図4〉でございます。
 それから、〈図1‐1〉、〈図2‐1〉は、発症から現実に脳溢血、心臓麻痺の症状があらわれるまでに若干の期間がある場合があるということも医学上明らかになりましたので、そういうこともあるから気をつけるようにというのが〈図1‐1〉、〈図2‐1〉でございます。
 それから、その下にございます八つの図は、要するに一日から一週間に伸びましたので、当然間に休日が入ります。休日の入り方はいろいろございますけれども、休日が入ったからといって一律に決まるものではなく、休日と負荷とを総体的に考えなければならない、そういったことを説明するためにこの図を用いたというのが担当者の説明でございました。
 なお、担当者は、現在この図が労働時間の長さだけを示すものと受け取られていることは全く真意と違いまして、先ほども申しましたように、認定基準そのものを長さだけではなくて労働の質とか作業環境等を総合的に考えて負荷を判断すべきだということになっておりますので、そのことは何度も繰り返し説明したということでございます。
#160
○貝沼委員 こういう図面をかくときは、横軸は何をあらわし、縦軸は何をあらわすということを初めに断らないとわかりません。何か四角がたくさんかいてあるなという感じがある。横軸は時間ですわね、「一週間」とかいてあるから。時間であることは間違いないと思います。縦軸は何ですか。
#161
○野崎(和)政府委員 そこが誤解の原因の一つだとは確かに思います。労働時間と受け取られているのでございますが、つくった者の説明は、負荷というのは労働時間だけで決まるものではないから、これは労働時間の長さではないということを説明したというふうに申しております。したがって、全体としての労働負荷を図にあらわしたものであるということだと思います。
#162
○貝沼委員 何も深く追いかけるあれはありませんが、ただ、報道によりますと、この下から二番目のところが問題でありまして、これらのところが認定にかからないのではないかというニュアンスがございますね。今の当局の説明を聞く限り、いや、それは一週間とはなっておるけれども、何も一週間でなくても十分認定される場合もある、あるいは一週間を上回っても勘案される部分もあるというようなことで、かつてより一週間というところまでは話が出ておりますけれども、どっちにしてもこの図面はすべての場合に認定はあり得る、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
#163
○野崎(和)政府委員 この図と認定とは関係がないということは、逆にすべての場合に認定があり得るということにもなろうかと思います。なお、具体的に下の八つの図の中の休日が間に入っていて認定されました例も幾つもございます。
#164
○貝沼委員 このいろいろなパターンのうちで、どのパターンでも認定はあり得るということは、大変重要な答えだと思っております。
 それでは過労死の話はもうそれぐらいにいたしまして、次は労災保険における社会復帰事業についてお尋ねをいたします。
 先ほどから林業振動障害者の問題が出ておりました。林業振動障害者についての労災保険における社会復帰事業の主な内容というのがございまして、その中で林業振動障害者社会復帰特別援護措置の実施というのがあります。この中に四つあるようでございますが、この四つはどういう内容のものですか、簡単にお願いいたします。
#165
○坂根説明員 林業振動障害者に対します対策四つということで言われましたが、その内容について簡単に申し上げます。
 一つは再発防止特別援護措置というものでございまして、これは振動障害者等が訓練を行った場合に、これに対しまして手当等を支給するというものでございます。二番目は広域社会復帰活動費というものでございますが、これは振動障害者が広域的に求職活動を行った場合に旅費等を支給するというものでございます。三番目は社会復帰移転費でございますが、これは今申し上げたのと同じように、移転して就職する場合の費用でございます。それから職業転換援護金というのがございますが、これは林業振動障害者を訓練をしながら雇い入れるという場合に賃金助成等をするものでございます。それから、四つと申し上げましたが、もう一つございます。自立した場合に賃金の六十日分、平成二年度からこれは百日分になりますが、自立した場合あるいは就職した場合に給付基礎日額の六十日分を支給する制度というものでございます。
#166
○貝沼委員 それで、林業振動障害者以外の振動障害者がおりますね、例えば削岩機を使っておったとかいろいろございますが、そういう方々が対象にならないのはこのうちどれですか。
#167
○坂根説明員 今申し上げました措置のうち、一つは社会復帰特別援護金という、最後に申し上げたものでございますが、給付基礎日額の六十日分ないしは百日分を支給するもの、それから先ほど
申し上げました広域社会復帰活動費あるいは社会復帰移転費、これにつきましては林業振動障害者に限られております。ほかのものにつきましては、一般の長期の療養者に対しても同様の制度があるということでございます。したがいまして、大きく分けますと二つございます。社会復帰特別援護金というものと広域的な活動あるいは就職をする場合の費用を出すもの、この二つが林業に限られているということでございます。
#168
○貝沼委員 同じ振動障害者でありながらなぜこういうふうに対応が違うのですか。例えば、労災というのは働いておったところを基準に法律はでき上がっておるのですか、それともその障害が基準になってでき上がっておるのですか。私は非常に疑問に思うのですけれども、同じ振動障害者でありながらなぜ対応がこのように違うのですか。
#169
○野崎(和)政府委員 こうした社会復帰施策はいろいろの段階でできておりますので完全に整合性を持っているとはあるいは言えないかもしれませんが、林業に限られております理由は、要するに林業労働者は山村部にお住みでございまして、せっかく症状固定となり社会復帰が可能になりましてもなかなか適当な職場がない、それを何とか御援助申し上げたい、あるいは就職しないで自立、自営業で働きたいというような場合にも何かそういった御援助をしたいということで、結局、山村部における再就職、自立の困難性に着目したものではないかと思います。
#170
○貝沼委員 時代はだんだん変わっておりまして、それは林業の人もそういう条件がある。しかし、例えば鉱山で働いておった人はもっとあるかもしれません。いろいろな問題がありますが、もうこの辺でどの振動障害者にも当てはまるように、それこそ先ほどの答弁のように整合性を持った方が正しいのではないかと私は思いますが、これを全振動障害者に当てはめるという作業をすることはございませんか。その点についての決意をお聞きしたいと思います。
#171
○塚原国務大臣 社会復帰援護措置を林業以外にも拡大していくことにつきましては、十分に検討をしてまいります。
#172
○貝沼委員 検討は恐らく今までずっとしてきたのですが、検討だけではいけない、やはりやる方向に踏み出さないと。
 例えば削岩機を使ってそれで振動障害者になっておる人が労働基準局に行って、そして林業振動障害者と一緒に話を聞いて、あなたの場合はこれは林業ですからこれだけのお金が出ますよ、あなたはそうじゃないから出ませんよと目の前で言われるわけです、実際問題。そんなことがあっていいのかとみんな疑問を持ちます。したがって、これはならすべきです。ならすようにひとつ大臣は英断を下していただきたい。
#173
○塚原国務大臣 貝沼委員から御質問通告をいただきましたときに、この点につきましては強い調子で前向きの答弁を大臣からするようにという打ち合わせを役所といたしました。
#174
○貝沼委員 だから、そんな状況なんか聞いているのではない。あなたがやる気があるのかないのか、そこのところをはっきりしてください。
#175
○塚原国務大臣 かなりやる気があると思いますけれども。やる気あります。
#176
○貝沼委員 やる気があるということですから、我が日本国の大臣が答弁されたことですのでよもやうそはないと思いますが、私は今後、労働関係の委員会があるたびにこの問題についての進捗状況を追及してまいりますから、ひとつ覚悟を決めてやっていただきたい。
 次の問題は、同じ社会復帰事業の中の問題で、労災就学援護費でございます。端的に言いまして、これを増額せよという主張でございますが、これについてのお考えを。
#177
○野崎(和)政府委員 この点につきましては、昨年末に出ました審議会の建議においても増額の建議がございますので、それを踏まえまして平成二年度におきましては、その月額を小学生の場合は六千円、中学生の場合は九千円、高校生の場合は一万一千円、大学生の場合は二万三千円と、それぞれ現在より約一〇%程度引き上げることを予定いたしております。
#178
○貝沼委員 時間がありませんので、金額を言った場合にはそれはどういう方法で今後やるということもつけ加えていただきたい。これはどういう方法でやるわけですか、通達か何かでやられるわけですか。
#179
○坂根説明員 就学援護費の引き上げにつきましては、予算措置をもちまして、その内容は通達で実施していく、そういうことでございます。
#180
○貝沼委員 もう一点、介護料についてやはり増額並びにその制度を検討すべきであるという意見が出ておりますが、少なくとも増額の面についてはどういうお考えですか。
#181
○野崎(和)政府委員 介護のあり方の問題につきましては、審議会で最も議論のあった点でございます。結果的には今回は時間が足りなくて結論が出ず間に合いませんでした。したがいまして、引き続き検討し、なるべく早い時期に結論を出したいということでございまして、その場合には介護料そのものの額もさることながら、もとになる平均賃金と申しますか給付基礎日額が非常に低い方、それから非常に高い方、その間に百万円近い全体の年間の介護料の差が出ます。それを何とか実態に合わせたものにできないかというような点が議論の焦点でございますが、なるべく早く審議会で御検討いただきまして、結論を待って対応したいと思います。
#182
○貝沼委員 何となく漠然とした言葉が多いのですね、例えばなるべく早くとか早急にとか。大体なるべく早くというのはどれぐらいの期間を考えておっしゃっておられるのですか。
#183
○坂根説明員 介護料の問題、額の引き上げにつきましては確かに建議の中でも触れられておりますが、これは既に四月一日に引き上げが実施されているところでございます。
#184
○貝沼委員 それでは、なるべく早くというのは何のことですか。
#185
○野崎(和)政府委員 大変失礼いたしました。介護のあり方につきまして、介護料の問題ももちろん含まれますけれども、高齢被災者の介護のあり方をいかに充実するかという問題につきましては検討課題として残っているということでございます。
#186
○貝沼委員 これは重要だと思いますので、今後また議論してまいりたいと思います。
 次に、先ほどからこれも出ておりましたが、症状固定の問題でございます。
 これは主治医の意見を尊重せよというのは当然だと私は思うのですが、ある医者のところに行って治療を受けておるわけですね。そうすると、そのお医者さんから診断書を書きまして、そして基準監督署の署長さんのところに症状固定と判断するかしないかの最終意見聴取が行われる。そこから労働基準局で労災医員協議会、いわゆる医学専門家で構成されたところでいろいろと検討される。その結果、これは療養を必要とするというものは従来どおりやる。症状固定とした場合には監督署長が症状固定と決定した旨の通知を出す。どういう通知かといいますと、簡単に読んでみますと、「症状固定(治癒の認定について)通知」となっていますね。「あなたの症状について調査した結果、今後治療を継続しても明らかな医療効果は期待できないとの医学的所見により何日をもって症状固定(治癒)と認定し、認定日以後は療養補償給付及び休業補償給付は行わないこととなりますので、お知らせいたします。」その下の方に今度は、「不服があれば」というのがございまして、これを受け取った人はびっくりするわけですね。いつの間にそんなことが決まったのかというわけでびっくりするという事実がある。
 そしてこの場合に、じゃ実際の主治医はどういう診断書を書いておるかというと、例えばこれはある例でありますが、「その他の参考事項」というところ、診断書のところでここが問題になるわけです。あるいは「今後の治療要否とその概要」という欄がありまして、そこのところには「治療は要する。投薬、注射、理学療法」というふうな
ことが書いてあり、そしてまた、「その他の参考事項」というところには、「今年も暖冬のため全体的に症状軽いようです。現在、治療を継続していると少しずつではあるが症状軽快している。」こんなような書き方ですね。
 ところが、これくらいのものであると症状固定としてばんと決まってしまう。そこで患者から見れば、医者はまだ治りつつあると書いておるじゃないか。ところが偉いお医者さんが集まって判断すると、もうここからは治らぬのだということで症状固定を下すわけですね。そこにどうしてもはっきりしない面が起こってくる。それはなぜかというと、少なくとも自分のところにしょっちゅう来ておる患者に対して、被災者に対して、あなたの病気はもうここから治らぬのだから治らぬと書くよと言う医者はまずいないということですね。人情的にそれはありません。したがって、何らかのことを書くでしょう。そうすると、それだけを見ておる人は、私の病気はまだ治るんだと思っている。ところが症状固定がぽんと来る。そこで、一体だれが決めたのかということで問題が起こってくると思うのです。そして、決めたお医者さんというのはその患者を実際に診たことがあるのかというと、これがないのですね。
 私は、大体、診察をするというのは患者を医者が直接診て、それで判断するところからいくんだろうと思うのですが、どうも最近のお医者さんは、まず検査があり、それから診断をして、それから何かをやる。今回も主治医の診断書にはまだ治りつつあると書いてあるにもかかわらず、そういう結果が出てくる。ということは、その偉い先生か何か知らぬけれども、とにかくそれだけの判断を下すなら一度ぐらいその人に会って診たっていいじゃないか。あるいはその人たちがどうしてもだめなら、ほかの人が行ってその患者を直接診察をしたっていいじゃないかという感情が当然残ると思うわけでございます。しかし、それはどうもなされていないようでありますが、この辺のことについて当局はどうお考えでしょうか。
#187
○野崎(和)政府委員 振動障害者の症状固定につきましては私どもも何とか円滑に行いたいと日ごろ思い、いろいろ改善策を考えるわけでございますけれども、ただいまの先生の御指摘で重要な問題点を幾つか御指摘いただいたように思います。私どもとしましても、患者と申しますか、その方にいきなり手紙一本でいくということはあってはならない。そろそろ症状固定ではないだろうかと当局の方で考えましたならば、事前に御本人に何度かお会いし、主治医の方にも何度かお会いし、相手のお考えも十分聞くと同時に、こちら側の問題意識もお知らせして、何とか円満に御理解をいただいた形で症状固定の認定を持っていきたいというふうに考え、そういう努力はしているつもりでございます。
 それから、局医の方が実際に患者を診るケースが少ないというのも先生御指摘のとおりでございます。先ほど来、局医と主治医の間に意見の相違がある場合にはもう少し経過期間等を置くことを考えたらどうかという御指摘もございましたので、それももちろん検討させていただきますが、そういった際にも、局医なりあるいはみんなが納得できる第三者なり、そういった方の御判断を仰ぐということにつきましても十分検討させていただきたいと思います。
#188
○貝沼委員 とにかく症状固定の決定から本人に通知をするのがお役人になっておるところに、まあお役人はしなければならないのでしょうけれども、そこに医師がかんでこないところにやはり何となく、役所がお金を切り詰めるためにやったのかなという感じが出てくるわけでありますから、その辺のところはもっと改良すべきだということを主張しておきます。
 それから、これも有名な話でございますが、民間の人で単身赴任者の土帰月来の問題です。これは説明は要らないと思いますが、公務員と違って大変難しい面がございます。この業務災害または通勤災害の認定基準を明確にすべきであるという指摘が前からございますが、これは何らかの方法をとるのかとらないのか、とるとすればどういう方法をおとりになるのか、これについてお尋ねいたします。
#189
○野崎(和)政府委員 労災保険上の取り扱いでは、単身赴任者の土帰月来行為あるいは新規赴任時の災害の取り扱いが現在のところ十分明らかになっておりませんで、公務員等についてはかなり明らかになっており、妥当な取り扱いがなされておると承知しておりますので、その公務員の取り扱いを参考にいたしまして、これは方法としては通達で処理できますので、なるべく早い機会に結論を得てそういった基準を明確にいたしたいと思います。
#190
○貝沼委員 公務員を参考にしてできるだけ早い機会と言いますが、これまたわかりませんので、これは今年度中でよろしいですね。
#191
○野崎(和)政府委員 今年度中にも必要な改善措置を講ずるようにいたします。
#192
○貝沼委員 次は、遺族補償年金の受給資格者の認定の問題でございます。これは去年の十一月十四日、私ここで質問をさせていただきました。このときの、これはどういうことかといいますと、遺族補償年金の支払われる先がはっきりしていないということなんですね。おじいさんなのかおばあさんなのか、あるいはお父さんなのかお母さんなのか、そしてまた、それは生計一なのか一でないのか、生計維持というのはどういうことなのかというふうなことで、会計検査院の方からこれを明確にするように指摘されておったはずでございます。ただ、そのとき私がこの問題を指摘いたしましたら、当局の答弁は、「生計維持関係にあるかどうかの認定に際しましての言ってみれば運用の問題でございまして、違法であるとか不当であるとかという問題ではないと実は考えている次第でございます。生計維持関係の解釈を、いろいろな経緯がございまして、また、かわいそうな遺族のケースでもございますので、弾力的に運用してきたということでございます。」ここまではやってきた話であります。
 ここからです。「したがいまして、会計検査院の方からも、現行の制度を直していただきたいという御意見をいただいているところでございます。したがいまして、制度をこれから直してまいりたいと考えている次第でございます。」それで、「労災保険制度につきましては、現在、労災保険審議会のメンバーから成ります基本問題懇談会でこの問題も含めまして各般の検討を行っているところでございます。年末までに関係労使の合意がこの基本懇及び審議会においてなされるといたしましたら、労災保険法の改正法案を次期通常国会に提出したい、そういうふうに考えている次第でございます。」というので、スケジュールを尋ねたときに、ここまでやるということになっておるわけでございます。
 それからさらに、会計検査院に対する答えにも、労働省では本院指摘の趣旨に沿った制度の改善を図るため、六十三年十一月以降検討を行っているところだという、そして、平成元年度末までに出されることが見込まれる云々、こういうふうに所要の改善措置を講ずることが約束されております。
 そういうふうにいろいろなところで制度の改善ということが言われておるわけでございますが、制度の改善といいますと、やはり法律改正ということになってくるわけでございますが、法律改正が出なかったようですが、これはどうなったんでしょうか。
#193
○石岡政府委員 平成元年十一月十四日、先生からの御質問に対しましてスケジュール等をお答えしたのは実は私でございます。その後、労災保険審議会の建議におきましても、改善すべきだという提言をいただきましたし、また御指摘のように、もともと会計検査院からの指摘もあった問題でございますので、労働省としましてはこの改善をこれから図っていきたいと考えております。
 ただ、その場合に、いろいろ検討いたしました結果、法律改正までは必要ではないのではないか、労働省令等の規定の整備を行えば改善ができるの
ではないかという方向が出てまいりましたので、その方向で他の国家公務員災害補償制度、類似の制度の取り扱いも十分参考にして、今の目途といたしましては十月ごろを目途にいたしまして施行を図ってまいりたいと考えている次第でございます。
#194
○貝沼委員 でも、会計検査院にも制度を改めると答弁していますよ。これ、六十三年度の会計検査、六十三年十一月以降、とにかく何回かこの質疑があったりあるいは会計検査院と当局との間の話し合いでも制度を改める、そして、法律改正をするというニュアンスの話がたくさん出ておるわけですけれども、それが急激に変わらなければならないという理由があったはずですね。それは一体何なのか。そこを説明しなければ、そう簡単には、ああ、そうですかと言うわけにはいかなくなるのですけれども、この辺はどうですか。
#195
○石岡政府委員 確かに法改正を含む制度改正をするという表現で御答弁申し上げたはずでございますが、その後、法律的な検討をこの問題についていろいろいたしました結果、必ずしも法律改正でこれを行う必要はない、省令等の改正で十分対応できるという法的見解が得られました。また、その点につきましては、会計検査院の御了解も事務的にいただきましたので、先ほど申しましたように、省令等の改正によりまして、御指摘の問題については改善を早急に図ってまいりたいと考えております。
#196
○貝沼委員 そうですか。そうなると、ちょっと言わなければいけないのですね。この問題を国会で質問したのは、私なんです。答えたのは、あなたなんです。これは国会質問です。これは政府答弁です。政府答弁を変更される場合は、第一義的には質問者に相談があるのが当然、私は何の相談も受けたことがない。それで簡単に変わるのですか。どうなんですか。
#197
○石岡政府委員 大変失礼いたしました。
 事前に御連絡すべき問題だったと思います。深くおわびを申し上げます。
#198
○貝沼委員 ですから、僕が言わんとすることは、何もわびてもらわなくたっていいんですけれども、国会答弁の重みがあるということが一つ。したがって、答弁した以上はきちっとしておかないと、例えば変な例を出して大変恐縮ですけれども、ファクシミリで票を頼むことは文書配布ですかどうですかという質問を、私は決算委員会でやりました。そのときに自治省の選挙部長さんは、ファクシミリは電話でありますから筆談に相当いたします、したがって、文書ではありません、で、ファクシミリで頼むということは選挙違反にはなりません、こういう答弁をしたのです。この答弁はいまだに生きております。したがって、自治省は非常に困っておるわけですけれども、国会答弁というのはそういうものですよ。一たん答弁したらこれはちゃんと守ってもらわないと、何のための答弁かわからなくなってきますから、それを私は言いたかった。私は、謝ってもらいたい、そんなことを言っておるわけではありません。国会答弁の重みをちゃんとかみしめていただかないと困る、こういうことを申し上げておるわけでございます。
 現在、こういう情勢でありますから、いろいろな実情があってそれがよりベターな方法を選ぶなら、私はその方がいいと思いますけれども、それなりにその関係には説明をし、そしてまた、了解を得るというのが当然ではありませんかということを申し上げたいわけでありますが、大臣、いかがですか。大臣の答弁いかんではこれで終わろうと思いますけれども。
#199
○塚原国務大臣 また、先ほどの打ち合わせの話になりますけれども、要するに、労働省としては大臣答弁は大変重いものであるという前提でいたしました。ですから、私はあのときもあれでかなりおほめいただくと思ったら、強い御指摘をいただいたので何かあるのかなと思ったら、やはり先生にちょっとそのような御不信を持たせるような点があったようでございまして、ほかの件に関しては労働省答弁そんなことは間違ってもないと思いますが、いかに国会答弁というのが重いものであるかということを、もう一度しっかりと省内全部に確認をしておきます。
#200
○貝沼委員 それでは最後に、これも先ほどお話がありましたように、不服申し立てその他で審査体制が大変だという実情がございました。対応できかねておるのではないかという心配がございます。
 一々お尋ねするともう時間がありませんから、例えば七十六人の労働者災害補償保険審査官、これ、平成二年ですね、それで六十三年度の災害補償保険の審査請求、再審査請求件数が出ておりますが、審査請求だけでも六十三年度の新規が千三百五十九件とか、そして繰り越し件数が千二百七十八とかというふうに多いのですね。繰り越しそのものも多い。ところが、何千件もやるということは大変困難なことであるし、結果としては被災者の迅速な救済ということから見て問題があるし、審査請求している人に大変迷惑がかかる結果にもなりかねません。こういうところから、人員の補充あるいはその体制、何らかの方法をもってこたえるべきであると考えます。現在、調査員とかあるいは補助員等も動員してやっておるようでございますが、その補助員とかそういうものは今後どういうふうにしてやっていくかということを説明をいただき、そして大臣にはさらに、そのために頑張っていただくということをお願いいたしまして終わりたいと思いますが、答弁をお願いいたします。
#201
○石岡政府委員 労災保険の審査の迅速化は、全く先生御指摘のように非常に大切なことでございますので、今までも労働省いろいろ努力してまいりましたけれども、審査体制の整備につきまして一段と努めてまいりたいと思います。平成二年度におきましては、新たに労働本省に労災保険審議室を設置するといった新しい体制もしく予定でございますし、また審査官の方もふやしてきておりますが、それをさらに事務補助をする専門調査員制度も新たに平成二年度から発足させたいと考えておりまして、これらを通じまして、御指摘を踏まえまして体制整備に全力を挙げていく考えでございます。
#202
○塚原国務大臣 定員につきましては、先ほども御答弁をしたのですが、JRからの各省庁への受け入れというような枠もたしかことしでなくなるので、かなりまた厳しい状況が出てくると思うのですが、そういった中でも、今回かなりの実績が確保できるように一生懸命頑張りたいと思います。どうぞ御声援のほどをよろしくお願いいたします。
#203
○貝沼委員 終わります。
#204
○畑委員長 児玉健次君。
#205
○児玉委員 今回の改正案で休業補償給付に最高限度額が設けられた、このことについてまず御質問をします。
 先ほど来、随分繰り返しの論議がありましたから、私はそれを重ねてもう一回というつもりはありません。その点で労働省の御協力もいただきたいのですが、この最高限度額の設定によって、労働基準法が定める水準を下回る部分が出てくることについては労働省も当然のことながらお認めでした。これは労基法が定める給付全体と、そして労災法が約束している給付全体、どちらが上なのかという議論とは違うと思うのです。労働基準法が憲法に基づいてつくられたものであるということは言うまでもありません。その中で、労働基準法が国民に約束をしている給付がたとえ部分であっても下回ることがある、これは質の問題であって、事柄の重要さを私はまず強調しておきたいと思うのです。
 先ほどからの議論の中で、例えば労働省は、傷病補償年金が導入されたとき、先般の改正のときですが、そのとき事実上この問題は既にクリアされていると言わんばかりの御主張でしたが、この点の事柄の重要性にかんがみて、私たち日本共産党がそのときの改正に反対をしたということは局長はよく御存じだ、こう思うのです。そしてさらに、傷病補償年金が特別支給金を含めればかなり
のレベルに達するのだというお話でした。これも労働省の皆さんもプロですから、私が何も言う必要はありませんけれども、一般の労働者が勤務をしているときには、日本の給与体系にあってはかなりの額のボーナスが前提になっております。例えば収入年額云々という問題もありますが、ボーナスが年額五カ月分だとすると、この補償はある試算によれば四八%にしかならない。この試算についても皆さんは御存じだろうと思うのです。ボーナスを抜きにして議論をするのは実態に合わない、この点も明白にしておきたいと思うのです。
 労災給付が非常に巨額なものだ。その中で三億八千三百万円、確かに全体から見ればわずかな金額ですが、個々の労働者にとっては非常に重大な問題だし、労働基準法が一歩一歩空洞化していく道が開かれつつあるという点でも重視しなければなりません。そういった観点から、私は今回の改正における最高限度額の導入の部分については除外されるべきだと考えるのですが、いかがですか。
#206
○野崎(和)政府委員 労働基準法と労災保険法の関係につきまして、労災保険法は労働基準法をどんなわずかでも下回ってはならないという御意見もあり得るかとは思いますけれども、先ほども申し上げましたが、労災保険は、保険化されたことによりまして、労働基準法自身だけではできないようないろいろなことができるようになっております。年金等はその最たるものだと思います。その場合に、どうしても適用を受ける方の間の公平ということを考えなければならない。したがって、給料の低い方の最低限度を上げる場合には、やはり最高限度も下げるということがどうしてもワンセットにならざるを得ないと思います。それをセットにして、全体としてバランスのとれた形にするということでなければなかなか理解は得られないということで、若干の労働基準法を下回る部分が出ましても、全体として整合性があり、かつ、レベルの高いものであれば決して労働基準法の精神に反するとかそういうことはないと思います。
#207
○児玉委員 この点では私たちは修正案を出します。
 先般来の議論の中で、最高裁の判決云々ということも出されている。これも労働省は百も御承知ですが、昭和四十年、労災法の改正の際に、遺族補償一時金が平均賃金の四百日分に定められるということがありました。労基法は千日分と所定しております。その後国会は、裁判の判断はずっと後に出たのですが、労基法を下回るという事態が明らかになって、その点については訴訟も起きる、そういう事態の中で国会はこの点について法改正により千日分に戻したということもございます。最高裁の判決が出たのはその後のことなんで、私はあくまで、今回の最高限度額の導入については除外をすべきだということを強く主張しておきます。
 この機会に、これも先ほどから議論がありましたが、脳、心臓疾患に関する労災補償について御質問いたします。
 先ほど資料の配付がありましたが、私は今手元に「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の労災認定について」、連絡先、労働省労働基準局補償課、算用数字で1、2、3から成る文書を持っております。この文書は、労働省がこの五月十四日に労働省の記者クラブでなさった説明でお使いになった文書だと思うのですが、そうですね。
#208
○野崎(和)政府委員 恐らく、お手元の資料はその資料だと思います。この経緯は、そういった私どもの承知していないマニュアルがあるという話を聞きましたので、それを取り寄せて調べましたところ、全く事実と違いますので、国民の代表である記者クラブにも御理解いただきたいということでお配りし、御説明をしたものでございます。
#209
○児玉委員 この点は確かめておきたいのですけれども、連絡先、基準局補償課と書いてあるこの文書の中にこういうところがあります。昭和六十二年十月二十六日付の新しい認定基準により、「その運用の適正を期しているところであるが、」云々と言ってあって、そして、「この図は、会議の場で種々のケースをわかりやすく示して、」という部分がありますね。この会議というのは、昭和六十三年一月十三日、十四日両日にわたって労働省の本庁において各県の職業病認定担当者を招いて行われた、名前は全国職業病認定担当者会議である、そして、この図を使って御説明になったのはおたくの職業病認定調査官だ、そのように承知しておりますが、事実はそのとおりですね。
#210
○野崎(和)政府委員 そのとおりでございます。
#211
○児玉委員 先ほど貝沼委員から図も配られております。記者クラブで労働省が説明にお使いになったメモの中にこういう部分があります。「種々のケースをわかりやすく示して、多様なケースに適切に対応するよう説明するための資料」としてこれが使われた、こういうふうに書いてあります。まさに、脳、心臓疾患の労災補償、業務上か業務外か、それを判定するために全国から各県の職業病認定担当者を集められた。そのときに、多様なケースに適切に対応するよう説明するための資料としてこの図が使われている。労働省の文章自身がそのことを明らかにされております。違いますでしょうか。
#212
○野崎(和)政府委員 そういう文章でございますが、まさに今回、昭和六十三年の時点で認定基準が新しくなりまして、従来のような前日のみというケースからいろいろなケースが想定されるようになりましたので、それをパターン化していろいろなケースを図に示したのが先ほどの資料になるというふうに思っております。
#213
○児玉委員 労働省は、長い間、発症直前の強度の精神的もしくは肉体的負担を生じせしめる災害事実の有無、ここをポイントにして業務上か業務外かの判定を行っておられました。言ってみれば、災害のない、いわゆる過労のみでは業務上とするに足る原因とはならない、こういう行政解釈に固執されてきたと私は受けとめております。
 ところが、昭和五十年代に入って、このような行政解釈を批判し、そして、このような行政解釈に基づいて行われた判定を覆す裁判の判例が各地で続出いたしました。我が党の、例えば内藤功議員や浦井議員などもこの点について何回か、当時それぞれの委員会で発言したことがございました。そういう中で、昭和六十二年十月に新しい認定基準が出た。今、労働省がお認めのように、基準を若干緩和する、そういう内容だったと思います。
 そこで申したいのですが、昭和六十二年十月の基準自身は、各地の裁判の判例が認めるものを著しく狭めるものでした。そして、表面上は基準を若干緩和しておきながら、内実において、業務上の判定を極めて厳しく限定する。それがここずっと続いてきている。そして、基準を若干緩和したとしても、実際の判定業務についてはこれは譲らない。その点を周知徹底するために行われたのが六十三年一月十三日、十四日、二日間にわたった全国職業病認定担当者会議ではなかったのか。その場であなたたちのこの記者クラブでお使いになった文書でいみじくも言われているように「多様なケースに適切に対応するよう説明するための資料」。例えば、ケーススタディー、多様なケースに適切に対応するよう説明するための資料としてこの図が用いられた。この図は明らかにマニュアルまたはマニュアルの一部ではないでしょうか。いかがですか。
#214
○野崎(和)政府委員 マニュアルと申しますのは、私どもの業務を行う場合の手引であるとか、そのための基準であるとかというような意味でございましたならば、これは手引でも基準でもございません。ある意味では、状況をなるべく正しく理解するための勉強用の資料でございまして、マニュアルではないと思います。
#215
○児玉委員 何か行き過ぎや過ちがあれば、それこそ改むるにはばかることなかれということだと私は思っております。
 ちょっと立ち入って言いますけれども、全国の判例がどんどん出てくる、労働省の非常に限定的な行政解釈が覆されていく、そういった時期に、昭和六十年十二月十七日、参議院内閣委員会が開かれておりまして、私たちの内藤功議員が公務員
の公務災害の認定のことについていろいろと当時の労働省と質疑をしております。その中で、説明員として参加されていた佐藤正人さんは、新しい基準については近く出すことになるだろう、その検討を今始めている、そして、そこで、「現在の認定基準が極めて難解であるというようなこともございまして、行政担当職員の精通性あるいは迅速性のためにもマニュアルをつくって同時に施行いたしたい、このように考えております。」こう答えております。
 この図は文字どおり精通性、迅速性という点である意味では非常にわかりやすいものですね。そういうものではなかったのでしょうか。重ねて伺います。
#216
○野崎(和)政府委員 私どものマニュアルと申しますのは、こちらに今持っておりますけれども、これでございまして、これがマニュアルでございます。
 この図につきましては、そういう御指摘がございますとかえって申し上げなければならなくなってしまうわけでございますけれども、この図につきましては、確かに他の委員から御指摘ございましたように、余りにも事態を単純化し過ぎている、そういう意味では適当でないというふうに私どもは現在では反省しております。ただ、しかし、当時の状況において、こういう場合もありますよ、こういう場合もありますよというようなことをわかりやすく説明するためには、こういった資料も必要だったのかな、そんなふうに思いますけれども、現時点では、いずれにせよ非常に誤解を与えますので適当でない、そういう意味でも、マニュアル、手引ではあり得ないというふうに思っております。
#217
○児玉委員 私がさっきからマニュアルまたはその一部と述べていることに御注意いただきたいと思います、これがマニュアルの全体だとは私は思っておりませんから。
 それで、昭和六十三年一月の十三、十四日、皆さんの担当者会議が開かれた。その結果どうなったのかということも私はこの際追跡してみる必要があると思うのです。
 労働省の新しい基準が出されましたから、突然死をなさった家族の方や、幸いにも命は取りとめられたそういう方々が、昭和六十二年に比べて六十三年について言えば、この脳、心臓疾患に伴っての請求を数多くお出しになった。昭和六十二年においてはその件数は四百五十九件、昭和六十三年は六百七十六件になっております。災害でなく、いわゆる皆さんのあの資料で言えば、九号「業務に起因する疾病」として認定されたのは、新しい基準が出る前の段階、昭和六十二年で二十一件、そして新しい基準が出た昭和六十三年で二十九件、請求件数と認定された件数を、これはちょっと機械的な議論で恐縮ですが、比率で出してみると、六十二年四・二%、六十三年四・三%、全く前進がないと言わざるを得ません。極めて機械的に直前一週間の労務時間が平常のどのくらいか上回っている、一週間前であればどうなんだ、こういった形で使われている。しかも、それが皆さんのこの文書によっても、多様なケースに適切に対応するよう説明するための資料として今も評価されている。全く不適当なことじゃありませんか。これはこの際潔く廃棄されてはいかがでしょうか。
#218
○野崎(和)政府委員 新聞等でそういう報道がなされました後に、この資料はそういう趣旨では全くないので誤解のないようにするよう課長名の内簡を出しております。
#219
○児玉委員 内簡というのは私たちは今この瞬間に拝見することができませんので……。今のお話は、要するにこの図は常識的に言えば廃棄されたというふうに受けとめていいんですね。
#220
○野崎(和)政府委員 そういうふうに受けとめていただいて結構でございます。
#221
○児玉委員 それでそのこと自体は私は必要なことだ、こう考えております。問題は現在の突然死、脳、心臓疾患に関する業務上ないしは業務外判定、この点について労働省がさらにいかにして前進していくか、この問題だと思うのです。
 先ほど厚生省は廃棄されたこの図について、この図で照らしてみて認定されたケースがある、こういうふうにおっしゃいました。私も追っかけてみたら、確かにありますね。しかし、それらは全体として、さっきから私が強調している全国的な判決の傾向、監督署からは却下されてしまって不服再審査を求める、訴訟に持ち込む、そういう中で業務内として認められるものが多いのですよ。そういう前進的な事態に合わせた新しい基準をこの際労働省としては準備されるべきだ。それが今大変な長時間労働で苦しんでいる日本の労働者に対する労働省としての当然の務めだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
#222
○野崎(和)政府委員 認定基準につきましては、昭和六十二年十月の改正というのは、その前に昭和五十七年当時から検討を始めまして、専門の学者にあらゆる角度から検討していただいたものでございまして、現時点で我々考えましても、現時点の場合においてはこの内容で判断するしかないと確信しているものでございます。しかしながら、過労死というのは、御承知のとおり脳溢血、心臓麻痺による突然死でございますけれども、そういった脳溢血、心臓麻痺の発症のメカニズムがわかっているようで実は余り医学的にわかっていないようでございます。また、そういう動脈硬化、動脈瘤という基礎疾病を労働による過重負荷がどのような形で急激に悪化させるのか、そして動脈瘤の破裂という問題を引き起こすのか、その負荷と疾病の発症との関係も正直なところ余りわかっていないようでございます。したがいまして、認定基準は現行の認定基準で可能な限り適切に対応するとともに、別途そういった基礎的な医学的な研究を今後五年間かけて進める、その中で得られた知見をもとに適切な認定基準にさらになるように今後検討を進めていきたい、そういうことで現在作業を進めているところでございます。
#223
○児玉委員 時間ですから最後に一言。医学的な知見は大いに重要で、かつ必要だと思います。それと同時に、日本の裁判自身がこの問題について非常に積極的な判断を示しつつある。この点は、以前内藤議員から労働省に判例の私たちが集めたものをお渡ししたこともあるのですよ。日本の裁判所自身が皆さんより何歩も進んだ判断をしている、そういうときなんですから、五年なんという長い時期でなく、直ちにその点の努力を始めていただきたい。この点は大臣の御決意を伺って終わりたいと思います。
#224
○塚原国務大臣 私自身も所信表明の中で、労災認定につきましては迅速に作業を進めるということを申し上げておりますし、特に突然働き手を失われた御家族の皆様方の大変なお苦しみというものは、これはもう想像にやすいわけでございまして、特に目に見えた形のことが、認定基準を直すというのはこれからかなり先行き医学的な背景も必要だと思っておりますけれども、まず血の通った形で、今日までも一生懸命現場の諸君も努力していたと思うのですが、さらに血の通った、彼らが作業をしやすいように、また過労死等で御相談に見えた方が、はっきりその場で無理だというのはあると思うのですけれども、そういう場合でもきちんと納得されるような形のもの、現場ですぐに対応できるような形のものを早急に準備をいたしたいと考えております。
#225
○児玉委員 終わります。
#226
○畑委員長 柳田稔君。
#227
○柳田委員 いろいろと審議を伺っておりまして、私の質問したいことはほぼ出尽くしたような感じがいたしておるわけです。ダブりは避けたいと思うのですけれども、ちょっと私の頭の中の整理の意味も含めましてお伺いをしたいと思います。
 今回のこの労災保険法改正の基本的な考え方というのはどういうものなのか、教えていただきたいと思います。
#228
○野崎(和)政府委員 今回の労災保険制度の改善につきましては、昨年十二月の労災保険審議会の建議を受けまして、高齢化の進展等経済社会の変
化に的確に対応する、いま一つは一層の公平、均衡を図る、そういう観点から当面講ずるべき措置について建議をいただきましたので、その建議のうち法律改正を要する事項をまとめたものでございます。
 具体的には、御承知のとおり年金等のスライド要件の改善、長期療養者に対する給付制度の改善、それから農業の特別加入制度の改善でございます。
#229
○柳田委員 今、労災保険審議会の建議に基づいてということがありました。この労災保険法もまだまだこれから改正しなければならない点が多々あると思うわけです。これからこの労災保険法のどの辺を手直ししていって、どういうふうな姿にしたいというビジョンといいますか考えがおありになると思いますので、具体的にいつごろというのももしつけ加えられるのでしたならば、その辺も入れまして、今後こういうふうにしていこうという考えがある、できるものはできる、今検討しているものはこれを検討しておる、これからこういうことを検討するんだというものがあれば、いろんな面で、これからの労災保険法の改正といいますか、これからの姿についてお尋ねしたいと思います。
#230
○野崎(和)政府委員 我が国の労災保険制度は、たびたびの改正で世界的にもかなりレベルの高いものになっているというふうに自負はしているのでございますけれども、一面ではいろいろな経済社会情勢の変化が急速に進んでおりますので、やはり常に見直しをしていかなければならないというふうに思っております。
 そういう意味で、現時点での主な課題というのは、結局この前の労災保険審議会の建議に包括的に盛られているわけでございますが、その主要なものを紹介させていただきますと、一つは、やはり「重度障害者等に対する介護に係る補償のあり方」でございます。これは、これから高齢化が進む中で、こういった問題についてもう少し充実した対応をする必要があるのではないかという問題意識でございます。それからもう一つは、「各種給付における被災時年齢等による不均衡の問題」。本日の審議の際にもたくさん出ておりましたけれども、年功賃金のもとで、若い、給料の低い時代に被災しますと、そのときの賃金の額が一生ついて回るということを何とか是正したい。今回の最低補償額の導入はその一つでございますけれども、そのほかにもいろいろ問題がございますので、こういった問題に取り組んでまいりたいということでございます。
 そのほか、「各種認定基準のあり方や医学的判断を必要とする事項についての認定体制のあり方」。本日は、いわゆる過労死の認定基準につきまして種々御意見がございました。これもその一つでございますが、そのほかにも、時に医学的判断を要する重要な問題がたくさんございます。そういう認定基準を関係者の納得の得られるような形でつくり、認定する、そういう体制にするにはどうしたらいいかという問題が大きな問題としてあると思います。さらに、「社会保険との調整のあり方」もございます。こういった問題については、引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。
#231
○柳田委員 審議会の建議の中についてちょっとお聞きしたいのですけれども、一番最後のところに、「労働組合の一人専従者への特別加入制度の拡大にむけての検討」というものがあります。これはどういう趣旨で、また今後どのようにお取り扱いになるのか、御説明をお願いします。
#232
○石岡政府委員 現在、労働組合の役員につきましては、中小事業主等として労災保険への特別加入の対象となっております。しかしながら、労働組合業務に従事する者が委員長等代表者一人のみで他に専従職員を持たない場合には労災保険への加入の道がない、こういう現実になっております。しかしながら、このような場合におきましても、代表者といっても、行っている業務は一般の専従職員と実質的な差は少ないと考えられることなどを考えますと、労災保険の保護をこのような方に及ぼすことは十分検討に値すると考えておるわけでございます。
 労災保険審議会におきましても、この点いろいろ検討が行われまして、労働組合の一人専従役員については特別加入の対象とする方向で調査検討を進めるといった旨の御提言をいただきましたので、労働省といたしましては、この建議を踏まえまして、今後関係労働組合の協力も得ながら実態調査等も行いまして、特別加入制度の改正に向けて早急に準備作業を進めたいと考えている次第でございます。
#233
○柳田委員 前向きにお願いをしたいと思います。
 先ほど来過労死という問題が出ております。過労死、先ほど量と質と負荷というようなことでおっしゃっておりまして、いろいろ考えてみても、やはり量を減らせばおのずとその重荷も減ってくるだろう。先日の大臣の所信の中にも、千八百時間を達成しますと先日はその決意の強さもお伺いしたのですけれども、この過労死をなくすためにも労働時間短縮は急がれるんじゃないかな。もう余り時間もない、そういう段階において、この労働時間短縮、具体的に今後どのように取り組むのか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#234
○塚原国務大臣 何としても千八百時間程度の労働時間にしたいということで、現在精いっぱいの努力をいたしております。そういった中で、早急に完全週休二日制の普及の促進あるいは年次有給休暇の完全取得の促進、連続休暇の普及、拡大、所定外労働時間の削減に努めてまいりたいというふうに考えまして、いろいろな形でお願いをし、指導をいたしております。
 たびたび同じ答弁の繰り返しで申しわけございませんが、どうしても中小規模の企業に対しましてなかなか難しい部分があるものでございますから、その点につきましても、きのうも参議院の社会労働委員会で御党の委員からいろいろな形のアイデア等の提供もございましたが、いろいろな形で御指導いただきながら、それに対する対策も早急に講じてまいりたいというふうに考えております。
#235
○柳田委員 今の世の中の景気を見ますと難しいかもしれませんけれども、でも、やっていただきたい、またやってもらわなくちゃ困るという気持ちがあります。また最近、忙し過ぎるという面もあるのですけれども、実際の表に出てきた時間以上に皆さん働いていらっしゃる。いわば隠れて残業していると言ってもいいかもしれませんが、非常に労働時間が長くなってきておりますので、その辺の調査もそのうちにやっていただきたいな。また調査をしたら是正をしていただきたいなという気がいたしておりますので、この辺は要望させていただきたいというふうに思います。
 最後に一つ質問させていただきたいのですが、六月一日に入管法も改正されますけれども、まだまだ外国人の不法就労者というのは数がわからないくらい多いわけです。また、その辺の言葉また実際仕事になれないということで事故も多く出ているという気がするわけなんですけれども、この不法就労外国人に対しての労災補償の現状はどうなのか。それと今後どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
#236
○野崎(和)政府委員 各地の労働基準局を通じて調査をいたしましたところ、不法就労者と考えられる外国人労働者に対して行った労災保険給付の件数は、昭和六十二年度は四十件、昭和六十三年度は七十一件、平成元年度は八十九件ということで、少しずつ増加しているという状況がうかがえるところでございます。
 この不法就労者の問題でございますけれども、私どもといたしましても、不法就労を容認するということでは決してございませんが、日本国内の事業場で日本の企業に使用され、その結果労働災害をこうむった方に対して日本企業が補償の責任をとらないということを放置するわけにはいきませんので、そして先ほど来お話が出ておりますように、日本企業の補償の責任は労災保険で肩がわ
りすることになっておりますので、労災保険で補償を行っているところでございます。しかし、いずれにいたしましても、こうした状態は大変好ましくない状態でございますので、いろいろな形でよりよい状態に持っていくように、私どもとしても努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#237
○柳田委員 終わります。
#238
○畑委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
    ─────────────
#239
○畑委員長 この際、本案に対し、児玉健次君から修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。児玉健次君。
    ─────────────
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#240
○児玉委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました労働者災害補償保険法改正案に対する修正案について趣旨説明を行います。
 周知のごとく、我が国の労働者は世界にもまれな長時間、過密労働を強いられています。
 一九八八年八月に労働基準法研究会が発表した中間報告は、労働基準法第八章を削除し、使用者の責任である災害補償を社会保険的な内容に変え、労災認定患者の休業補償を一律に一年半で打ち切り、社会保険との調整ということで、現在認められている労災保険年金と厚生年金の併給さえも廃止し、労災専門医委員会を設置するなど労働災害補償制度の抜本改悪を意図するものです。
 中間報告に盛り込まれた内容の多くは、今後慎重な検討がなされるということになっております。政府提出の改正案には、中間報告が提起する年齢スライド制の導入が、療養開始後一年半経過した者に対する休業(補償)給付の給付基礎日額に、年齢階層別の最低、最高限度額制度を適用するという形で盛り込まれています。
 修正案の内容について説明いたします。
 修正案は政府提出の改正案から最高限度額制度の導入を削除するものとしています。
 次にその理由を述べます。
 療養開始後一年半経過した労働者は一九八八年度で三万名になっています。最高限度額制度が導入されることによって二千三百四十人、七・九%の被災労働者が影響を受け、休業(補償)給付は二十二億八千万円減額される見込みです。
 農村労連が千五十九人の振動障害、じん肺の被災者から回答を得た調査によると、最高限度額を上回る者六十六人、最高限度額以下の者が五十八人という状況です。
 労働基準法が定めた給付基礎日額の六割の休業補償を保険給付が下回るという法改正は、労働基準法の空洞化を意図するものと言わなければなりません。
 職業病治療の目的は障害を回復し社会復帰させることにあります。そのためには、患者が従来の生活を維持し治療に専念できるようにしなければなりません。休業補償の減額は治療の目的にも反するものです。
 以上が修正案を提出する理由です。
 委員各位の賛同をお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。
#241
○畑委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。塚原労働大臣。
#242
○塚原国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府といたしましては反対でございます。
    ─────────────
#243
○畑委員長 日本共産党から討論の申し出がありますが、理事会の協議により、御遠慮願うことにいたしましたので、そのように御了承願い、直ちに採決に入ります。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、児玉健次君提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#244
○畑委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。
 次に、原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#245
○畑委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ─────────────
#246
○畑委員長 この際、本案に対し、粟屋敏信君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合の六派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。永井孝信君。
#247
○永井委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一 高齢化の進展を踏まえ、重度障害者等に対する介護に係る補償のあり方を含め被災労働者の介護施策について、積極的に検討を進めること。
 二 長期療養者に対する給付については、これまでの国会における審議の経過を踏まえ、個々の被災者の症状の推移に即し、主治医の意見を尊重して、適切に行うこと。
 三 治ゆ後の医療措置を対象とするアフターケア制度、社会復帰援護制度等の拡充等を図るとともに、職業安定機関、職業能力開発機関等との連携のもとに、被災労働者の早期社会復帰の促進に努めること。
 四 各種給付における被災時年齢等による不均衡の問題については、年功賃金体系にない労働者や高齢者の問題に留意しつつ、引き続き検討を進めること。
 五 給付基礎日額の最低保障額を最近の賃金水準の上昇の推移にかんがみ早急に引き上げるとともに、引き続きその改善に努めること。
 六 業務に起因する脳・心疾患による突然死を予防する観点から、業務との関連について医学的な調査・研究を進めるとともに、職場における健康管理施策及び労働時間の短縮を積極的に推進すること。また、脳・心疾患に係る突然死の業務上外の認定については、医学的知見の動向に十分注意を払いつつ、適切な運用に努めること。
 七 労働災害の防止、保険給付の認定・審査請求処理の迅速化等を図るため、関係職員の増員を含め行政体制の充実強化を図ること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#248
○畑委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 粟屋敏信君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#249
○畑委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
 この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塚原労働大臣。
#250
○塚原国務大臣 ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
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#251
○畑委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#252
○畑委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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    〔報告書は附録に掲載〕
     ────◇─────
#253
○畑委員長 この際、内閣提出、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。塚原労働大臣。
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 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
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#254
○塚原国務大臣 ただいま議題となりました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 中小企業退職金共済法は、中小企業の労働者の福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的として、昭和三十四年に制定されたものであります。
 その後、本制度は着実に発展し、一般の退職金共済制度に加入している事業主の数は約三十六万、加入労働者数は約二百四十三万人に達しており、本制度は、中小企業の労働福祉対策の主要な柱の一つとなっております。
 ところで、我が国における退職金制度の現状を見ますと、大企業ではあまねく普及を見ているものの、中小企業においてはその普及状況及び内容はいまだ必ずしも十分なものとは言いがたい実情にあります。
 また、最近における経済社会情勢を見ると、賃金、退職金水準の上昇、短時間労働者の増加、金利情勢の変動、高齢化の進展等の変化が見られるところであります。
 このため、このような本制度の経緯及び現状を踏まえ、経済社会情勢の変化に対応しつつ、長期的に安定した制度としてその一層の充実を図ることが必要となっております。
 政府は、このような観点から、本制度について所要の改善を行うこととし、先般、中小企業退職金共済審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一は、掛金月額の最低額及び最高額の引き上げであります。
 現行制度では、掛金月額の最低額は三千円、最高額は二万円となっておりますが、賃金、退職金水準の上昇等を勘案し、退職金給付水準の向上に資するため、掛金月額の最低額を四千円に、最高額を二万六千円にそれぞれ引き上げることとしております。
 第二は、短時間労働被共済者に係る掛金月額の最低額の特例の設定であります。
 現行制度では、短時間労働者が本制度に加入する場合には通常の労働者と同様の掛金月額の範囲内から掛金月額を選択して加入することとされていますが、通常の労働者を前提として設定された掛金月額の最低額は高過ぎる場合があることから、短時間労働被共済者については掛金月額の最低額を二千円とし、その加入促進を図ることとしております。
 第三は、付加退職金制度の導入であります。
 現行制度では、退職金の額は、掛金月額及び掛金納付月数に応じて一定の金利の運用収入を前提として計算された現行法別表のみにより定まる額とされていますが、最近における金利情勢等のもとで、共済制度の安定を維持するため、退職金の額は、掛金月額及び掛金納付月数に応じて定まる基本退職金の額に金利の変動に応じて定まる付加退職金の額を加えた額とすることとしております。
 第四は、分割支給制度の導入であります。
 現行制度では、退職金は一時金として支払われることとされていますが、高齢化の進展の中で、老後生活の安定化に資するため、被共済者の請求により退職金を分割して支給することができるものとすることとしております。
 この法律案の主たる改正内容は以上のとおりでありますが、この法律の附則におきましては、この法律の施行の際被共済者である労働者に関して、最低掛金月額までの掛金月額の引き上げについて一定の猶予期間を置くこと及び施行日前に加入した被共済者で施行日以後に退職した者に係る退職金の額は、掛金のうち施行日前における掛金月額の最高額を超える部分について新法により算定した額と、それ以外の部分について従前の算定方法により算定して得た額の合算額とすること等の経過措置を定めるとともに、その他これらの改正が円滑に実施されるよう所要の経過措置を規定しております。
 なお、この法律のうち掛金月額の最低額の引き上げに係る規定は平成三年十二月一日から、その他の規定は平成三年四月一日から施行することとしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#255
○畑委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る二十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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