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1990/04/17 第118回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第3号
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1990/04/17 第118回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第3号

#1
第118回国会 法務委員会 第3号
平成二年四月十七日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 小澤  潔君
   理事 逢沢 一郎君 理事 大塚 雄司君
   理事 太田 誠一君 理事 熊谷  弘君
   理事 自見庄三郎君 理事 小澤 克介君
   理事 小森 龍邦君 理事 中村  巖君
      木部 佳昭君    久間 章生君
      佐藤  隆君    古屋 圭司君
      簗瀬  進君    渡瀬 憲明君
      伊藤  茂君    鈴木喜久子君
      高沢 寅男君    山花 貞夫君
      平田 米男君    冬柴 鐵三君
      木島日出夫君    中野 寛成君
      徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 長谷川 信君
 出席政府委員
        宮内庁長官官房
        審議官     河部 正之君
        法務大臣官房長 井嶋 一友君
        法務大臣官房会
        計課長     木藤 繁夫君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 濱崎 恭生君
        法務省民事局長 清水  湛君
        法務省刑事局長 根來 泰周君
        法務省矯正局長 今岡 一容君
        法務省人権擁護
        局長      篠田 省二君
        法務省入国管理
        局長      股野 景親君
 委員外の出席者
        宮内庁長官官房
        参事官     角田 素文君
        外務省アジア局
        北東アジア課長 今井  正君
        外務省国際連合
        局社会協力課長 鈴木 一泉君
        文部省教育助成
        局地方課長   小野 元之君
        運輸大臣官房国
        有鉄道改革推進
        部監理課長   圓藤 壽穂君
        労働省労政局労
        働法規課長   山中 秀樹君
        自治省行政局公
        務員部公務員第
        一課長     佐藤  信君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  金谷 利廣君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  島田 仁郎君
        法務委員会調査
        室長      小柳 泰治君
    ─────────────
委員の異動
四月九日
 辞任         補欠選任
  石井  一君     池田 行彦君
  大原 一三君     越智 通雄君
同日
 辞任         補欠選任
  池田 行彦君     石井  一君
  越智 通雄君     大原 一三君
同月十三日
 辞任         補欠選任
  中野 寛成君     大内 啓伍君
同日
 辞任         補欠選任
  大内 啓伍君     中野 寛成君
    ─────────────
四月十七日
 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四六号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件
     ────◇─────
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所金谷総務局長、島田刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
     ────◇─────
#4
○小澤委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。長谷川法務大臣。
#5
○長谷川国務大臣 委員長を初め委員の皆様には、常日ごろ法務行政の適切な運営につきまして、格別の御支援と御鞭撻をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 法秩序の維持と国民の権利の保全を図ることを使命とする法務行政の運営に当たる私の基本的姿勢につきましては、過日の当委員会において就任のごあいさつを申し上げました際に申し述べたところでありますので、ここでは、当面する法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 第一は、最近の犯罪情勢と治安の確保及び法秩序の維持についてであります。
 最近における犯罪情勢を概観いたしますと、全般的にはおおむね平穏に推移をいたしていると認められるのでありますが、その内容を見ますと、身の代金目的の誘拐事件、幼児を対象とした殺傷事件、暴力団構成員による銃器を使用した殺傷事件等の凶悪事犯が多発するとともに、いわゆるリクルート事件等の公務員による汚職事犯、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事犯等が後を絶たず、さらには、コンピューターによる情報処理システムを悪用した事件、多額の株式売買益の脱税事件等最近の社会経済情勢を反映した事犯も相次いで発生いたしているほか、来日外国人による犯罪や諸外国との間において犯罪人引き渡しや捜査共助を要する事件の増加等犯罪の国際化の傾向が顕著となってきております。また、覚せい剤を初めとする薬物事犯は依然として鎮静化の兆しを見せず、暴力団による悪質巧妙な密輸入・密売事犯などが多数発生し、これが暴力団組織の重要な資金源となるとともに、一般国民の間にもその乱用が拡散浸透している上、近時、我が国においても、コカイン、ヘロイン等、国際的に乱用が深刻化している麻薬の大量密輸入事犯や使用事犯も目立ち始めるなどしております。さらに、過激派集団は、反天皇制闘争、新東京国際空港第二期工事阻止等を最大の闘争課題とし、皇室関係施設に対する金属弾発射事件、首都圏交通機関に対する同時多発ゲリラ事件等の悪質な不法事犯を引き続き敢行しており、一方、右翼諸団体においても、先般の長崎市長銃撃事件、過激派集団の拠点に対する銃撃事件に見られるように、近時、テロ化・暴力化の傾向を一段と強めております。加えて、次代を担うべき少年の非行件数は、引き続き高い水準で推移しているのみならず、その低年齢化傾向がうかがわれる上、最近では、社会の耳目を聳動させる凶悪事犯も少なからず発生をいたしております。
 私は、このような情勢のもとで、各種犯罪事象に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に配意するとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいる所存であります。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と保護観察処遇についてであります。
 犯罪者及び非行少年の社会復帰及び再犯防止につきましては、国民各層の幅広い参加、協力を求めながら、刑務所、少年院等における施設内処遇と更生保護機関による社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。
 そのためには、まず施設内処遇につき、犯罪者の改善更生及び非行少年の健全育成の推進に効果的に寄与し、時代の要請にもこたえ得る適切な矯正処遇の実現に努めるとともに、関係機関・団体相互の緊密な連携のもとに適時適正に仮釈放を許して保護観察への円滑な移行を図り、また、保護観察等の社会内処遇においては、関係機関・団体・民間篤志家の御支援を得つつ、保護観察官と保護司との協働体制の強化、更生保護会の充実等により社会情勢、犯罪情勢の変化に即応した有効適切な処遇及び措置を実施してまいりたいと考えております。
 なお、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第百八回国会に再提出されました後、前国会までに衆議院法務委員会において法案審議二回及び参考人の意見聴取一回が行われ、継続審議の扱いとなっておりましたところ、衆議院の解散に伴い廃案となったのであります。
 しかし、刑事司法の重要な一翼を担う行刑制度の近代化を図る上におきまして、制定後八十二年を経た現行監獄法の全面改正は不可欠の課題であり、その早期成立を図る必要性はいささかも変わっておりませんので、今国会に法案を再提出いたすべく、所要の検討を行っているところであります。
 第三は、一般民事関係事務の処理、訟務事件の処理及び人権擁護活動についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大するとともに、社会経済生活の多様化を反映して複雑困難の度を強めてきております。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、登記事件は、経済規模の拡大、公共事業の活発化等に伴い増加の一途をたどっておりますが、内需主導型経済及び多極分散型国土形成の進展により、今後ともこの傾向はなお一層進むものと考えられるところであり、適正迅速な事務処理体制を確保することが重要な課題であります。そこで、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、コンピューター化を中心とする登記事務処理体制の抜本的な改善を行うため、昭和六十三年、第百十二回通常国会において、不動産登記法及び商業登記法の改正をしていただきました。
 これにより、昭和六十三年十月、東京法務局板橋出張所において、コンピューターによる登記事務処理を開始し、以後、順次全国に展開を図っているところであり、二十一世紀に向けて、コンピューター化を推進してまいりたいと存じます。
 しかし、コンピューター化を円滑に推進するためには、移行作業要員の確保が必要不可欠でありますし、またコンピューター化の完了までには相当期間を要すると考えられますので、その間、増加する登記事件を適正迅速に処理するための要員が必要であり、職員の増員を図ることが緊急の課題となっております。
 民事関係の立法につきましては、法制審議会の各部会におきまして調査検討を進めているところでありますが、商法部会における「会社制度の改正」につきましては、本年三月法制審議会の答申が得られたところであります。
 この改正の趣旨は、会社の設立手続、最低資本金、株式及び計算等に関する法規制の合理化並びに充実を図り、もって小規模会社にも適合する会社制度及び債権者保護のための規制を整備するほか、会社の資金調達に関する規定等を合理化しようとするものであります。
 本日、この答申を踏まえ、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を国会に提出する運びであります。十分な御審議をいただき、何とぞ速やかに成立に至りますようお願いする次第であります。
 次に、訟務事務の処理についてでありますが、訟務事件は、複雑多様化した今日の社会経済情勢や国民の権利意識の変化等を反映して、例えば、環境関係訴訟、原子力関係訴訟及び薬害訴訟等の例に見られるように、社会的にも法律的にも新たな問題を内包する複雑困難な事件が提起される傾向にあり、その結果いかんが、国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくありませんので、今後とも事務処理体制の一層の整備充実を図り、事件の適正、円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。
 また、人権擁護行政につきましては、人権の擁護は民主政治の基本であり、国民のすべてが人権についての正しい認識を持ち、お互いに他人の人権を尊重し合いながら幸福を追求するという態度が必要であると考えます。
 人権擁護行政におきましては、各種の広報活動によって国民活動によって国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するように努めるとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査処理を通じて関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めているところであります。
 中でも、社会の国際化に伴う外国人の人権問題、部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題につきましては、法務省といたしましても、関係各省と緊密な連絡をとりながら、一層啓発活動を充実強化して、その根絶を図ってまいりたいと考えております。
 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
 近年、国際交流の活発化と我が国の経済社会の国際化の進展等に伴い、我が国においては出入国者の数が著しく増大するとともに、外国人の雇用、留学・就学・研修等の課題について新たな対応を行い、また、不法就労、偽装難民等の問題に適切に対処することが必要となっております。国際社会における我が国の役割がますます重要性を加えている今日、かかる我が国の立場にふさわしい出入国管理体制を早急に整備確立することが求められております。このような状況を踏まえ、先般国会に出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案をお諮りして御審議いただいた結果可決され、昨年十二月十五日に公布されて、本年六月一日には施行の運びとなっております。
 外国人の我が国への受け入れのあり方は、今後長期にわたり我が国の国家としての基本にかかわる重要事であり、国民生活全般に対する影響をよく考えて我が国としてとるべき施策につき検討してまいる考えであります。また、出入国管理業務は、本邦における人の出入国並びに外国人の在留について適正な管理を行い、国際交流の発展と国際協調の増進の基礎を形成する責務を担っております。
 この責務を果たすため、今後とも引き続き出入国管理事務の迅速適正な処理及びそのための要員及び施設の確保を初め体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
 第五は、司法試験制度の改革についてであります。
 司法試験制度については、近年、合格までに平均六回余の受験を要し、合格者の平均年齢が二十八歳を超えるなど、合格が余りにも困難になって合格までの受験勉強の期間が非常に長期化するに至っております。その結果、大学在学生に司法試験を敬遠する傾向が生じ、また、法曹の後継者が実務家としての修練を積み始める時期が相当遅くなっている上、裁判官、検察官の任官者が減少するなど、裁判、検察、弁護の法曹三者それぞれが後継者を十分かつ適切に確保するという司法試験制度の目的からはほど遠い状況にあり、多くの深刻な弊害を生じております。
 法務省では、この現状を改めるため種々の検討及び関係方面との意見調整を行ってきましたが、昭和六十三年十二月からは、最高裁、日弁連及び法務省の三者で構成しております三者協議会において司法試験制度の改革が真剣に協議されており、平成元年十一月には、それまでの協議の結果を踏まえて、法務省が「司法試験制度改革の基本構想」を提示いたしました。既に大学関係の方々からは、法務省が提示した改革の方向を支持する旨の御意見をちょうだいしており、三者協議会においても、この基本構想を中心として鋭意協議が続けられているところであります。
 司法試験の深刻な現状にかんがみ、三者協議会の協議を積極的に進め、早急に国民の期待にこたえる改革案を策定し、法制審議会の審議を経て、できるだけ早期に司法試験法の改正法案を国会に提出したいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べましたが、委員長を初め委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
#6
○小澤委員長 この際、委員長から申し上げますが、平成二年度法務省関係予算及び平成二年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付してあります関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いします。
    ─────────────
#7
○小澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
#8
○太田委員 ただいま長谷川法務大臣から所信の表明を承ったわけでございますが、その内容につきましてはいずれももっともなことでございまして、結構な内容だと思います。しかし私は、今日の法務省が当面しております諸問題の中で大事な問題が一つ落とされていたと思うわけでございます。それは、既に日本と韓国の間で重要な課題となっております在日三世問題というのですか協定三世問題というのですか、それにつきまして何か積極的な御意見の開陳があってもよかったのではないかなというふうに思っているところでございます。
 まず、これまでの日韓の法的地位協定によって来年の一月の十六日までに三世、三世というのはまだ三人ぐらいしか生まれていないそうでございますが、乳児でありますから、普通言う、我々が二世とか三世とか思って思い浮かぶのは、そんな我々が二世で我々の子供が三世くらいの感じだと思っておったら、そうでなくて、我々の子供が二世で我々は一世だと、そのくらいの感じでございますから、ちょっと感覚が違うのでございますけれども、その三世の問題に来年の一月の十六日までにこの結論を出さなければならない、協議を行うことに同意するということになっているわけでございますから、協定上協議をしなければならないわけでございます。そうであれば、向こう一年の間にこの入管法、そしてまた国籍に関する取り扱いに答えを出さなければならないわけでございます。連日このことについて新聞に報道されていることでございますから、ぜひここは積極的な、むしろこういう問題についてもリーダーシップを発揮をしていただきたいと思っているわけでございます。
 そのことに関係をするわけでありますが、韓国側から九項目にわたる要求が出ておるらしいのであります。確認したわけではありませんが、九項目にわたって出ておる。そして一つ一つを読んでみますと、どうもこれは果たして日本と韓国の間の外交交渉マターなのかどうかということが私は正直疑わしく思うし、こういうことを言われることについて抵抗感があるわけであります。なぜかというと、この協定に盛られたことでもって協議をするのは、これまで認めてきた既得権というものを引き続き認めるかどうかということについては外交交渉マターであろうと思いますけれども、その他の、国内での就職をどうする、あるいは選挙権、被選挙権をどうするとかいうことは、結局我が国の政府として、我が国政府と我が国に在住する外国人との間の問題であって、その母国たる韓国と日本が協議をすべき問題ではないというふうに思うわけであります。ですから、韓国側が要求してきていることに対してずるずると、この土俵の上に唯々諾々として上がってしまうのではなくて、どこからが日本国の国家主権の範囲内の問題として取り扱うのか、どこからが韓国と交渉すべき問題なのかということを明確に峻別すべきことだと思うわけであります。
 きょうは外務省からもおいでをいただいておるようでございますが、もし外務省の今井課長にも御答弁いただければ結構なんですけれども、いただけなければいただけないで結構でありますが、まず、大臣の御所見になるのですか、股野局長になるのですか、どなたかわかりませんが、お答えをいただきたいと思います。
#9
○長谷川国務大臣 太田委員の御質問にお答えいたします。
 毎日、新聞に出ておりますが、昭和六十三年から今日まで六、七回くらい事務者レベルの、事務者レベルといっても最高事務者レベルの日韓のいろいろすり合わせというか、会合を持っております。本年に入ってから三回やっております。それは今お話ございました九項目を中心としたものでございますが、今その九項目全部がだめだとは向こうももちろん言っておりませんし、こっちもすり合わせを盛んにやっておりまして、かなり締まっているような感じは受けますけれども、まだ両方とも完全に意見が一致をしているということではございません。
 ただ、日本側のあるいは韓国側も含めた交渉の精神としては、いわゆる日韓法的地位協定に基づく協議は、委員御指摘のとおり、同協定第二条の1に基づき、協定永住者を直系卑属として日本国で出生した韓国民の日本における居住を対象として行うとされているが、これまで韓国側からこれらの法的地位、待遇について種々の要望が出されており、法務省としては、在日韓国人の法的地位に関する歴史的経過と日韓友好関係を考慮し、韓国側の要望を踏まえて、所管にかかわる各事項について鋭意検討を進めており、日韓法的地位協定の前文に示されておる精神及び目的を十分に尊重しつつ、可及的速やかに双方の満足し得る結論を見出すべく努力をしておりますということが骨子になっております。
 なお、御案内のとおり、韓国の大統領も近々おいでになるようでありますし、我が国とのいろいろの交流も御案内のとおり出ておりますので、何とかこの日韓の親善の基本的な形を持続しながら解決をいたしていきたいというふうに考えております。
#10
○太田委員 今私が申し上げたのは、その内容ではなくて、これはそもそも外交交渉の対象とされる部分と、我が国の国家主権の範囲内において、法務省を中心としまして日本国が、日本国に在住する外国人に対して、それぞれ色合いが違うわけでありますが、色合いに対して、どのような処遇を与えるかというその判断の、主権の範囲内の問題と相手と交渉してもいい問題と二つに分かれておって、この八項目か九項目のほとんどは外交交渉マターではないのではないか。韓国の大統領が来るとか、韓国の大統領に言われてどうのこうのする問題ではないというふうに私は思っているわけであります。
 それで、実は戦後の、戦後というか近いところでは戦争のときにかつての政府が何かしでかした、そしてそれが外国人に対して後世において責任をとるべき問題であるというようなことはたくさんあると思うのですよ。我が国が謝罪をしなければいけない事柄もあると思いますし、外国が我が国に対して謝罪をすべきこともあるいはあるかもしれない。その中で一つ私が思い出しますのは、日本人がカリフォルニアで戦争が始まったときにキャンプに強制収容された。そうしてそのことは我々は、まあ日本から行った人でもう既にアメリカ人になった、アメリカ人の仲間に入っちゃったということで、これをどうするか、こういう歴史の汚点をアメリカ人がどうそれに対して答えを出すかということはこちら側から言う問題ではないと判断して、我々は黙ってそれを見ていたように思うのです。外務省は何か言ってきたのかもしれませんけれども、我々はそれに対して何もしなかった。アメリカ人の判断でもって、アメリカの主権の範囲内で、過去に犯した過ちに対して非常に潔い、過ちを認めて補償をするということを四十何年たってからやったわけでございます。それを見ると、私は、いかにも日本人としては恥ずかしい過去の歴史について、きちんとそれを清算をするといいますか、過去の歴史で我が国が犯した過ちに対して、法律の解釈とかなんとかということにとどまらず、政治的な判断といいますか、人道的な判断に立ってその過ちを認めるような抜本的な解決策をむしろ我が国の主導権でもって示すべきではないかというふうに思っているわけでございます。
 極論をすれば、ここに書いてある八項目か九項目の韓国側の要求というのは、まさにほとんど内国民待遇にせよということでございます。ということは、つまり日本人としてみなせと言うにほぼ等しい内容でございます。ということは、これはもう一歩進めば、日本人としても認めよ、韓国籍は失わないけれども、韓国籍は放すのは嫌だけれども日本人として認めよということにほぼ近い内容になっているわけであります。じゃ、その要求が我が国のこれまでの法体系からいって受け入れられるものであるかどうかというと、これは属人主義と属地主義というものがございますし、二重国籍を認めることがいいか悪いかということまで発展するわけでございますが、例えば在日韓国人とか、あるいはちょうど同じような条件の人たちは日本の国にたくさんほかにも住んでいるわけでございますから、そういう人たちに対して、例えば特異な超法規的な措置として二重国籍を認めるというふうなことがあってもいいと私は思うのでございます。ですから、この問題の解決策は、最後は帰化というものをどうするのかというところにたどり着くわけでありまして、ひとり入国管理政策の問題だけではない。ですから、両局にまたがる問題であればこそ、まず法務大臣のリーダーシップが必要でありますし、もっと言えば、これは時の政権が政権を挙げて答えを出さない限りは何ら解決ができない問題であろうと思っております。
 そういう帰化という問題、あるいは今最初に申しました、一体これは国家主権を損なうような交渉に既になっているのではないかという危惧に対してどうお考えになるか、お答えをいただきたいと思います。
#11
○股野政府委員 ただいま委員から御指摘の、法的地位に関する韓国側の各種の要望と、それから我が政府における検討状況との関連について、私ども今考えておるところを御説明申し上げたいと思います。
 冒頭大臣から申しましたとおり、現在の日韓の協議というものは昭和四十年の日韓法的地位協定の条項に基づいて行っているものでございますが、同時に、この法的地位協定の中にも、その前文に、両国が、在日韓国人が「日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことができるようにすることが、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与すること」である、こういうふうに述べておって、これがこの法的地位協定の全体を通ずる一つの精神となっております。
 そこで、この法的地位協定に基づく協議を現在行うに当たって、この在日韓国人のいわゆる第三世代以降の方々の法的地位の問題に関連して、韓国側から各種の御要望がなされている。これについては我が方としては、法的地位に関するこれまでの歴史的な経緯、そして日韓の友好関係、さらにはただいま申しました法的地位協定の前文に示されているその精神及び目的、こういうものを総合的に考えて、韓国側の御要望についてはこれを御要望としてひとつ我々としてはそれをお聞きする。ただ、それではそれに対して我が方としてどういう対応ができるかということにつきましては、これはまた我が国が現在持っている法体系というものにかんがみての対応を行う必要がある。こういう観点で、我が方として現在韓国側の要望というものも踏まえて、日本側の法体系について総合的な観点からの検討も行っておるという状況でございます。
 そういう意味で、我が国の法制度にかかわる問題でございますので、委員御指摘のとおり、我が国としては我が国としての立場でこれを検討していくという必要があると考えておりますが、韓国側の要望についてこれをお聞きするということは、これは日韓法的地位協定の前文に示されている精神、目的にも沿うものであると考えております。
#12
○太田委員 要望を承るということと協議をするということは別の問題であって、協議をする必要のない、つまり要望を承るというよりも、率直に言えば、これは日本に住んでおるそういった方々からの要望を我が国政府がお聞きすればいいのであって、韓国政府から言われる問題ではないと私は思っているんですよ。だから、協議をするというのは何を協議をするのか。ここまでは認めろとか、ここまでは認めないとか、そもそもそんな協議をするようなテーマなのか。今は韓国籍にあるわけですから、その韓国籍の人が母国の政府に対して、こういうふうに自分たちはもう少し待遇改善してもらいたいと思っている、それを聞いて母国の政府が日本側に要望をしてくるというならわかるけれども、要望を言うことはいいけれども協議をするということは、これは外交交渉のまないたの上にのせるということになるわけでありますから、私はそれは必要はない。協定三世に対して永住権を付与するということは、これは確かに法的地位協定に盛り込まれた内容でありますから協議をしてもいいけれども、ほかのことについては協議をする必要はない。まして、最近のように各省がそれぞれ自分の省の判断で、ここまでは譲っていいというふうなことを言っている。これは一体こういう入管政策とか国籍に関する政策というふうなものを一応法務省が窓口になってやっているわけでありますから、そういうことについて、すべてこの判断は法務省の判断によらなければならないと思うわけでありますが、ばらばらにそんなことを協議されたらたまったものではないというふうに思うわけでございます。そういう意味でも、協議の対象とすべきではない項目については交渉を打ち切るべきだろうと私は思うわけであります。
 そもそもどういう問題が根本的にここにあるのかというと、この法的地位協定というのは、二十五年前に結論を出しておくべきことを結論を先送りして、二十五年後の来年の一月十六日に持ち越したことでありますから、そうであれば、これからまた、じゃ何らかの結論を出して、子々孫々まで本当に、三世、四世、五世、六世と永久にこの法的地位協定に基づいて、日本国内に外国人が内国民とほぼ同じ待遇でもって外国人として生き続けるということがいいことなのかどうなのかという判断が我が国としてはあるわけでございます。私は、そんなことは望ましくもない、これは速やかに帰化をしてもらうことが大事なのであって、そして我が国の社会に同化をしてもらうということが大事なのであって、どうしても同化をしたくないというのであれば、おのずからそれぞれの方々には人生の違う選択の仕方があると思うわけでございまして、これは帰化をもっとしやすいように我が国がこれからやっておくとか、あるいは先ほど申しましたように、向こうが要求してきたことよりもさらに一歩こっちが先に進んで、潔く過去の過ちを認めて、かつて日本国籍だった人たち及びその子孫については一時的には二重国籍を認めるというだけの、そういうような清水の舞台から飛びおりるような決断をすべきであろうというふうに私は思っているわけでございます。そうすればすっきりするわけでありまして、いつまでたってもぐずぐずぐずぐず隣の国からいろいろ言われて、それを小出しにしたり小切ったり、そんなことはもう続けるべきではない。来年の一月十六日までにいずれにしてもはっきりした明快な結論を出して、この地位協定というものはむしろ存続をさせないような努力が払われるべきだろうと思っております。
 質疑時間が終了いたしましたので、私が申し上げたいことを申し上げただけで終わりましたけれども、どうぞよろしくお考えをいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
#13
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 小森龍邦君。
#14
○小森委員 長谷川法務大臣の先ほどの所信表明を聞かしていただきまして、何点か疑問に思います点、さらにこの際もう少し深く所信を聞きただしておきたいことにつきましてお尋ねをしてみたいと思います。
 法務省はいろいろな所掌の範囲を持っておりますが、その中でも非常に大事だと思われます人権擁護という課題がございます。人権擁護という問題は広く人間のありよう全般にかかる問題でございますので、勢い教育の問題にも関連をしたり、あるいは人間のそのありようを支える我が国の経済社会の現実ともかかわったり、そういうことになりますので、どうしても質問をそういったいわば基本のところから始めさしていただかなきゃいかぬ、こういうことになりますので、可能な限り、ひとつ法務大臣、そういう観点でお答えをいただきたいと思います。
 まず、法務大臣の所信の中に青少年問題が取り上げられておるようでございまして、青少年をどういうふうに指導するかという問題について触れられております。そこで私、お尋ねをしてみますが、今日の我が国の青少年問題、特に小中高の児童生徒の問題、現時点で申しますとこれらの児童生徒諸君が相当数学校に通学をすることを嫌がっている、こういう事実がございます。聞くところによりますと、児童生徒四万人ということが言われておるようでありますが、その以前は何年間かを単位にこの形態が推移しておることに私は気づいておるのでありますが、その以前は大体いじめ現象、これは林田法務大臣のころにそのことが所信の中で述べられております。そしてそのもう一つ前は、大体先生に反抗するというか暴力的な行為に走る。暴力、いじめ、そして今日では不登校、こういう形態に移りつつあるわけでありますが、まともに教育を受けさせるような環境条件を整備するということは、青少年諸君の極めて大事な人権の問題であります。青少年がそういう状況に今日立ち至っておるということについては、どういうふうな客観的情勢が青少年をしてそうせしめているか、その客観的情勢に対する人権擁護の角度からの正しい対応がなければこれらの問題の解決を図ることはできない、こう思いますので、その点について大臣はどのようにお考えになっておられますか、お考えを承りたいと思います。
#15
○長谷川国務大臣 青少年の問題、今先生いろいろ御指摘がございましたが、法務省は、御案内のとおり、人権を確保するということが極端に言えば一枚看板であります。したがいまして、そういうことを基本に考えなきゃならないのは当然でございますし、先ほども申し上げたのでありますが、少年の犯罪は最近非常に多くなって、これは私も教育者でもないのでつまびらかではございませんが、新聞を見るたびに慄然とするようなことが日常茶飯事のように行われておりまして、この対策をどうしたらいいか、これは文部省あるいは一般の社会教育も含めていろいろ考えなきゃなりませんが、現状のまま推移をしたら今先生おっしゃいますように大変なことになると同時に、日本の国の将来にとりましてもえらい頭の痛い問題であると同時に心配の種であるということでございます。
 今先生お話しのように、対策等についてまた関係各省ともいろいろ意見をお聞きした上、青少年のいろいろな犯罪の問題あるいはその他今御指摘の点等々についても、法務省としても決して看過しないで一生懸命勉強いたしておきたいというふうに考えております。
#16
○小森委員 冒頭私がこういう問題の質問をいたしましたということは、先ほど質問をする私の気持ちを述べましたように、やはり人間というものの存在の様式といいますかあり方といいますか、そういうものがその時代の社会、経済、環境、そういうものと非常に深くかかわっておるわけでございますから、したがって、これからの人権擁護行政というものはそういうところまで視野を広げて、関係省庁とよく打ち合わせをしながらそこらの環境を整備するという政策が内閣全体としてとられつつ進めなければ事がうまくいかない、こういう意味で申し上げておるわけでございます。
 何でも、四万人というのは五十日以上休む数だそうでありますが、聞いてみると、四十九日以下を計算して、まず常識的にあの子はよく学校を休むというようなのを含めますと、これは数十万人に及んでおるそうであります。ある専門家に聞きましたら、四十万人という数字を私は耳に挟んだことがございます。そういうことで、これは非常に大事な問題でありますから、法務省としても力を入れて、ただどうも学校で手に負えぬようになったから警察の手に回る、そしてそれが鑑別所へ行く、少年院に行くというような段階で法務省が頭を痛めるというのでなくて、人間のあり方というものが基本的にどうなのかというところから、法務省が他省庁に対して事前においてこういうことをやるべきではないか、こういうことをよく連携をとりながら進めていただきたい、かように思います。
 これから私がいろいろお尋ねをしますことは、そういうような観点に立ちまして、すべての問題が、実は人間というものはそういうものなんでありますから、そういう観点に立ってお尋ねをしますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 そこで、実は先般法務大臣に、我が国社会に今日存在しておる差別というものをどういうふうに認識をしておられるか、こういう質問をいたしました。その際の法務大臣の答弁は大変明確を欠いておりまして、私は新潟の出身だからよくわからないというような意味のことでございましたが、それは新潟に住んでおろうが、広島に住んでおろうが、やはり一定の認識というものは持っていただかなきゃいかぬわけであります。
 そういうことで、この際、また後ほどこの問題については裁判所にもお尋ねをするんでありますけれども、ちょっとただしておきたいと思いますが、先般私が具体的な事例として出しました一九六六年、昭和で言いますと四十一年でありますが、岡山家庭裁判所の高梁支部に、部落民と間違えられるから姓を改めたい、こういう申し出をいたしまして、そして裁判所でその氏の変更許可がされておるわけであります。その理由を概略申しますと、部落問題というのはなかなかこれは解決つかないんだから君がそういう考え方を持つのは無理からぬ、だから君の人生の幸せのために氏の変更を認めましょう、こういう判決が出ております。これは、私はあえて申しますならば、我が国憲法、すべて国民は法のもとに平等であるという憲法がああいうふうに戦後間もなくできた。一九四七年に憲法は効力を発しておる。そこには「すべて国民は、法の下に平等」となっておる。この連中と、この連中というのはいわゆる被差別部落民と同じように思われたら君は不幸せだから君だけそっちの方に逃げい、こういう判決を出しておるわけです。ではここはどうなるのかという問題なんですね。そういうことは部落問題に対するあるいは人権に対する感覚の非常に欠落したところである、こう思います。
 しかし、これは現実に裁判の実例として現在も生き続けておるし、また後ほどお尋ねしますけれども、この事例以外には他にありませんという意味の回答が先般裁判所の方から行われておったのでありますが、私の調査によりますと、私が調べただけでも他に三件、これを含めて四件あるわけであります。つまり、これは我が国の一種の権力行使でありますが、法務大臣はその点についてどういうふうに思われるかということと、もう一つここで重視しなきゃならぬことは、我が国の裁判所の判決理由書の中に、その特殊部落の出身者と見られて取引に支障を来したことがあると、盛んに特殊部落、特殊部落という言葉を使っている、我が国の裁判の判決文の中に。法務大臣はそれについてどう思われるかということを聞きたいんだが、まず、特殊部落という言葉を同対審ではどういうふうな評価をしておるのかということをお尋ねしてみたいと思います。
#17
○篠田政府委員 私の方から答弁さしていただきたいと思います。
 最初の、氏の変更についての問題でございますけれども、これは前回最高裁判所の方から答えがございましたように、確かにそういう審判があったわけでありますけれども、それは昭和四十一年当時のことでございまして、その後そういうケースというのは見当たらないわけでございます。具体的な審判につきまして法務省の立場からとやかく申し上げるのは、司法権独立との関係もございますので意見は差し控えたいと思いますけれども、私どもの調べたところでは、その後はそういう種類のものは見当たらないわけでございます。
 それから、もう一つの同対審の問題でございますけれども、同対審としては要するに、いわゆる寝た子を起こすというような考え方では部落差別というのは解消しない、そういうことで評価しているわけでございますけれども、私どもの立場といたしましては、その同対審の出した答申は、その後出ました地対協の意見具申と抵触しない限度におきましては十分尊重すべきものだというふうに考えております。
#18
○小森委員 私が尋ねておりますのは、特殊部落という言葉を我が国の権力が使っておることをどう思うかと尋ねておるんです。そこを答えてください。
#19
○篠田政府委員 特殊部落という言葉の持つ意味でございますけれども、これは差別的な感じを含んでいるかどうかということでございますけれども、一般的な用法としては必ずしもそういう差別的な用語にはつながらない、そういう認識で使っているものと解釈しております。
#20
○小森委員 特殊部落という言葉が、その人がどういう意味で使うかということと、客観的にどういう響きを持つかということとはおのずから違います。ここではどうなんですか。
#21
○篠田政府委員 それまではそういういわゆる差別意識というのはなくて使っているものと解釈しております。
#22
○小森委員 主観的な意図とは違うということを考えないと、世間さまざまの思いがあるわけですから、響きはどうかということを言っているんです。
#23
○篠田政府委員 ですから、響きというのはやはり受け取る側の受け取り方にも関係するわけでございまして、差別というふうに受け取って感ずる人もいれば、今委員おっしゃいましたように、いろんな考え方の人がいるわけですから、そうではないというふうに受け取る方もいるというふうに理解しております。
#24
○小森委員 それでは、あなたは、今の日本の国の全体的状況で、特殊部落という言葉を使うことはこれは慎もうではないかという状況が一般的にあるということを御存じないんですか。
#25
○篠田政府委員 それは存じております。ですから、好ましくないという受けとめ方をする方もいらっしゃいますから、できる限りそういう表現は避けた方が穏当ではなかろうかとは思います。
#26
○小森委員 その避けた方が穏当だということをなぜあなたは素直に最初から言わないんですか。持って回ったことをぐるぐるぐるぐる言うて、こうして理論的にずんずん詰めていかないとそこに到達できないということは、一体人権擁護行政を本気でやろうとするのかどうか、そこが問題になるでしょう。
 法務大臣、どういう見解ですか。
#27
○長谷川国務大臣 さっき新潟県のお話が出ましたが、これは就任早々でございますので、ちょっと言葉が適切でなかったことをここでおわび申し上げておきます。
#28
○小森委員 ちょっと聞き取りにくかったんですが。
#29
○長谷川国務大臣 新潟のあれは言葉が不適切であったということは……
#30
○小森委員 それは直接尋ねてないことですから。直接尋ねておることは、司法権力、個々の問題について法務当局がこれを批判するということは難しかろうけれども、裁判の判決の文章などに特殊部落などという言葉を使って判決文を出すということは好ましいのか好ましくないのかということを局長に尋ねた。局長は、それは好ましくないでしょう、そして第三者的にそれを嫌と思う者もおるろし、よいと思う者もおると言うが、基本的にはその該当者が嫌と思うことについては最大限尊重しなければいかぬでしょう。だから、法務大臣はその点についてどうかと尋ねている。
#31
○長谷川国務大臣 先ほど、冒頭所信の中で申し上げましたように、人権を擁護するということは法務省の一枚看板であります。したがって、その線から外れたような表現あるいはいろいろなものについて、これはできるだけ慎まなければならないし、そういうことは今委員御指摘のとおり、なるべく使わない方がいいだろう、これは私個人的な見解も含めまして、そのように考えております。
#32
○小森委員 法務大臣がそういう見解ならばそれを私はまともに受けとめさしていただきまして、行政推進の上でそういう言葉の問題について留意をしながら進めていただきたい、こういうふうに思います。
 それで、この際、人権擁護局長に言っておきますけれども、これは一九五〇年代前半の事件であったと思いますけれども、広島地方裁判所福山支部で検察官が起訴状の中に、部落の青年を逮捕して、そして結婚問題ですけれども、部落の青年なるがゆえに一般の者とは尋常一様の手段では結婚することができない、だから不法監禁し営利誘拐をした者なりと、そのとき特殊部落という言葉を使っておった。それは削除せざるを得なかった。そういう予断と偏見で逮捕したから、それは最高裁まで行って差し戻しになって東京高裁で無罪になった。しかし、その間数年間、その青年は人生を棒に振っているわけです。だからこういう言葉、ああ特殊部落か、ほんならよその娘をそういう形でかどわかすのか、こういうことになって大変な被害を受けるんですよ。それがわからずに、いや、それは嫌がる者もおるし、それは当たり前と思うておる者もおりますよ、そういう第三者的なことでどうして人権擁護行政ができますか。あなたより上役の法務大臣が先ほどまともな答弁されたからいいけれども、それじゃ私は心配ですよこれから、あなたの考え方に。先ほどの同対審の答申の問題につきましても、あなたの言っていることは物が逆です。後ほど指摘します。
 そこで、最初の所信のごく総論的なことについて尋ねたいと思います。もう一点お尋ねをしたいと思います。
 それは、ここ数年来、大変幼児が誘拐をされて惨殺されておる、そういう事件が連発して起きました。それで私が思うには、それにはそれなりの社会経済的な条件というか、そういう事件が発生する原因がある。問題は、きょうここで私が尋ねたいのは、人権擁護の角度からあるいは国民全般の人権意識の角度から、子供がそういう形にされるということは、地域社会がその子供を守るという一種の防衛体制といいますか、他人様の子供も自分の子供のようにみんなが気をつけて目をみはっておったら、なかなかそういう誘拐事件なんかというものはできない。ところが、私はその地域の連帯感、子供をめぐる連帯というものが非常に弱まっておるのではないかと思うのですね。そういう点について、これからまた子供の権利条約などの問題が国際的に議論をされ、日本でも早期に批准をしていただきたいと思っておりますが、人権の担当の省の長として法務大臣はそういうことについてはどういう見解を持たれ、どういう対処をされようとしておるか、お尋ねをしたいと思います。
#33
○長谷川国務大臣 今委員のお話、至極ごもっともでございますが、先ほどお話し申し上げましたように例えば今幼児のいろいろの一連の事件、あの種の問題は法務省だけでできる問題ではございません。文部省だとかあるいは保育所、幼稚園の担当だとか全般にわたっての空気は、ちょっと表現できませんが、今先生おっしゃるようにもっと向上しないとなかなか直らないと思うのですが、そういう面で、さっき申し上げましたように関係各省等々ともいろいろ意見の交換をしたりすり合わせ、勉強しまして、法務省だけの問題で解決できるとは私も思っておりません。したがって、そういうようにこれから措置をいたしたい、こういうふうに考えております。
#34
○小森委員 各省庁とよくそういうことにつきましては連絡をとりながら、子供の環境をよくするということが子供の人権を守ることでありますので、最大の努力をしていただきたいと思います。
 この際、少し私考え方を申し述べまして、人権擁護局長にひとつお尋ねしてみたいと思いますが、そういう自分の子供だけでなくて全体の子供を守ろうとする人間的な感覚というのは、例えばさっきの特殊部落という言葉でも、嫌がる者もおる、使いたい者もおるというような、そういう感覚では連帯感はできませんよ。一番焦点になっておるところを基本に進めなければいけませんよ。憲法は第十三条に「すべて国民は、個人として尊重される。」となっているでしょう。その嫌がる言葉ですね。賤称語といいますか、あるいは賤称語という概念にならなくても嫌な感じのする言葉があるでしょう、その該当者にとっては。そういうものを使わないようにしなさいということは政府が各自治体に流しておるんですよ。だから、問題は、本当に人権擁護というものは深い人間哲学に根差さなかったらできない。今のあなたのような答弁ではできませんよ。
 つまり、隣の子供あるいは百メートル先の子供を我が子のごとく慈しみ見詰めておる者が三千人、五千人の目で見詰めておれば、子供たちは守られるわけでしょう。そのときに本当に人間の連帯感がなかったらだめでしょう。法務省が先頭を切って人々を分裂させてしまうんではだめですよ。この子供のことについて、あなた、ちょっと答えてください。
#35
○篠田政府委員 先ほど委員御指摘の幼児の誘拐とかそういった事件が多々起こっておりますことは、私どもといたしましても非常に残念なことであり、悲しむべきだというふうに考えております。
 今委員御指摘の、連帯感をいかにして養うかということでございますけれども、これはやはり人権の共存というようなことも含めまして、いたわりの精神を持とうということで私どももモットーの一つとしているところでございまして、人間哲学というようなことにつきましても勉強してまいりたいと思っております。
#36
○小森委員 言葉の上でモットーとしていると言うてみたところで、現実に先ほどの対応はそのモットーになっていないでしょう。後ほど触れるところですけれども、同対審と地対協の報告と、地対協の報告というのは、法律的な根拠というものは随分下位にあるんですよ。同対審答申というのは、同和対策審議会設置法という法律に基づいて委員が選ばれてできているんですよ。それには差別されておる関係者も入っているんですよ。それをあなたは、どっちにどういうふうに抵触したと言い間違えたのかどうか知りませんけれども、後ほど聞きますが、そういう物事をみんなが分裂して考えるようなことを発想しておったのでは人権擁護行政は前に進まないのです。そこを私は強くあなたに私の意見を述べておきますよ。
 それで質問を次に移しますが、法務大臣、これも少し難しい問題かもわかりませんけれども、やはり大臣の認識ということが大事でございますのでお尋ねをするのですけれども、我が国社会の今日の歴史的発達段階、この現時点において、どういうわけで世界の状況から見て近代社会のあり方としてはこういうものが残ったのかなと思われるこの差別ですね。戦後、憲法は全て国民は平等だと言うておっても、特殊部落という言葉をまだ裁判所が使うようなそういう状況は、どういうわけでこういうようになっているかということを御存じですか。同和対策審議会答申の中に書いてある。どうですか。
#37
○長谷川国務大臣 今委員御指摘のことにつきましては、頭の中ではいろいろあれでございますが、明確に申し上げるというふうなそれだけの勉強もいたしておりませんし、資料もございません。
 ただ、先ほど申し上げますように、法務省は人権擁護が何といっても金看板であり一枚看板でありますので、その線はいかなることがあっても主張していかなければならない、それは全般にわたって腹におさめておきます。
#38
○小森委員 人権擁護局長はどうですか。
#39
○篠田政府委員 ただいま大臣のお答えになったとおりでございます。
#40
○小森委員 局長、大臣はその職分について最高の立場にあることはこれはもう明確でありますけれども、それは政治的に最高の立場なんです。問題は、事務的な立場ではそういうことは人権擁護局長の立場で明快な答えができなければいかぬのですよ。大臣が詳しいことを言われた後、あなたが大臣のとおりですと言われるなら、それはわかりますよ。大臣が腹の中でわかっているようだけれどもちょっと今うまく言えない、これは私は政治家同士でわかることですよ。気持ちはわかるのですよ。私だってほかの専門的なことについて問われて、いや、わかっておるのだがちょっと上手に言えないというようなことはしばしばありますよ。あなたの立場ではそれは許されないでしょう。答えてください。
#41
○篠田政府委員 いかにして部落ができたかという問題でございますけれども、それはやはり根の深い、歴史的にかなり長い年月のもとに形成されたわけでございまして、いろんな説がございますけれども、私どもの理解としては、政治的につくられたものだというふうに理解しております。要するに、士農工商の下にさらにまた一階級、二階級つくるという、そういう政策でできたものだというふうに理解しております。
 したがって、その解消について努力しているわけでございますけれども、依然として心理的差別というのがまだなくなっていないということで、法務省としてはその心理的差別の除去に向けて懸命に努力しているところでございます。
#42
○小森委員 私が尋ねておるのは、そんなに遠い歴史のことを尋ねておるんじゃないのです。近代化の方向をたどった我が国社会に、なぜ前近代的なものが今日的に存在しておるのか。同対審に書いてあるんですよ。あなたは今同対審に少しけちをつけようというような形の発言をなさったが、人権擁護行政を進める者が、あなたが個人的に気に入らなくても、みんなの知恵を絞って分析したわけでしょう、それをあなた、わからないのですか。
#43
○篠田政府委員 同対審の答申にも書いてございますように、要するに経済の二重構造ということでございまして、近代的な産業がある一方で、中小企業というものがございまして、そこのいわば下位と言うとまた表現が問題ですけれども、そういう二重構造の経済構造が一つの原因にはなっておると思います。
#44
○小森委員 そこで、あなたにしっかり認識を整えていただかなければならぬのは、先ほどあなたは言い逃れをするために、今なお心理的差別が残っておる、そこだけが非常に問題のような言い方をされましたでしょう。そうして、こうして私が詰めれば、同対審答申には我が国産業構造の二重構造が問題だと。そこで下位だとか低位だとかいう言葉に気を使うことはないのですよ、こういう討論では、それは必要な言葉なんだから。不必要な言葉を使う必要はないんですよ。そういうところへは気を使うけれども、肝心の論理展開から言うたら、さっき答弁したことと、差別が今日残っておる状況というものは、そういう我が国の産業構造の二重性の中に、私から敷衍さしていただければ、そういう二重構造の中に、上見て暮らすな下見て暮らせという感覚がある。これが心理的差別なんだ。そうしたら、先ほどから私は子供のことについても言っておるように、人々の気持ちの中につくられてきた意識というものがどういう社会経済的な雰囲気の中から出てくるのか、そことの関連を分析せずには日本の人権問題は解決することはできないでしょう。言葉をかえていうと、法務省だけではできませんので各省庁と連絡をとりますというのは、事業を握っておられる、予算を相当握って、我が国社会についていろいろ政策的なアプローチのできる省庁とも打ち合わせをしなければならぬという意味でしょう。そうしたら、もう少し物を真剣に考えて、論理的に整合性のあることを言うてください。
 そこで、そこまでのことがわかっていただいたのなら次に申し上げますが、要するに我が国産業構造の二重構造という問題は、当時顕著にいわゆる親会社、そして俗に言われる下請、孫請、これは協力会社と最近言っていますが、そして我が家のお父さんとお母さんと息子夫婦ぐらいが旋盤を一台動かしてやっておるという家内工業、家族労働、そしてそれは同じ旋盤を使うという仕事に従事しても、規模が千人ぐらいの会社と自分たち三、四人でやっておるのとでは、その日当を計算してみると五割か四割五分かぐらいの格差かついておる、これが産業の二重構造なんですよ。そこからは生活水準の高さを求めることもできないし、人々からも上見て暮らすな下見て暮らせと思われるだろうし、それを同対審は今から二十何年前に分析したのです。しかし、我が国経済は今は異常な発展をしていますからね。現在はそれがどういう形態となっておるように思われますか。
#45
○篠田政府委員 同対審答申の出ました昭和四十年当時とはかなり違った面もございますけれども、やはりまだ完全には解消されていないというふうに理解しております。
#46
○小森委員 いや、そこであなたはその解消過程にあると思っているのですか。そのひずみがそのときそのときに手をかえ品をかえ、歴史的に継続されるという見方でなくて、例えば江戸時代の士、農、工、商、えた、非人というあの六段階の差別が、明治以後、本来ならばあそこで、人は生まれながらにして自由であり平等であるというフランス革命の精神でいったら著しく解消されていなければならなかった。ところが、むしろ江戸末期よりは明治の末年の方が、それぞれの世帯を見たら経済的に貧困者がふえておった。一例を申しますと、私らのおじいさん、ひいじいさんは文字を書いていましたよ。筆で字を書いているのを私ら子供のころ見ておったのですよ。父親の代になると字をよう書かなくなったですよ。それは日本の教育が一般的に普及したといいながら、その一般の教育の場に我々の父親の年代の者が通い出して猛烈に差別をされるから、学校へ行きづらくなったのです。だからそこで字を失ったのですよ。そういうふうに時代の変化とともに物事は変わっていくのです、形態が変わっていくのです。それをあなた、まだ完全に解決しておらぬような側面で見るのですか。アメリカが今問題にしておる、日米経済協議で日本の経済の構造についていろいろ言っておる中のかなり大きな部分がそこのひずみの問題なのですよ。どういうふうにお考えですか。
#47
○篠田政府委員 委員御指摘のひずみもございますし、それからこれは当局の言うべきことではないかもしれませんけれども土地問題なんかを通じてまた別の意味の格差というのが生じてきたりしているわけでございますけれども、とにかく、委員今御指摘の識字の問題については、識字年ということでその対策も講じられているわけでございまして、字を書けない人というのは近年はもうかなり減ってきているものと理解しております。
#48
○小森委員 私の言い方が下手なのかどうか知りませんが、よく考えて私も言いますけれども、そういう識字の問題について答えてくださいと言っているのじゃないのですよ。物事の歴史的変化というものは、一九〇〇年よりも一九五〇年、一九五〇年よりも一九九〇年の方が一般的には進歩すると通常考えるのですよ。確かに進歩しておる面もたくさんあるのですよ。しかし、うっかりするとその進歩から外れて、そしてむしろ後退する問題がある。そういう角度から、二十五年前の同対審答申が二重構造と言って指摘して、明治以後の我が国社会が近代化の歴史的方向をたどったにもかかわらず、非常に悲惨な差別というものが残っておる。私の立場からいえば、部落差別のことだけを言っておるように思われるかもしれませんが、そうではないですよ。そのために私は、子供たちの悲惨な状況も先ほど言うたのですよ。これを特殊部落という言葉になぞらえて特殊視しちゃいけませんよ。我が国社会の直面しておる重要な課題だと思わなければいけませんよ。そういう意味で、日米経済協議という形で問題になっておる我が国の経済のひずみ、それが同対審が二十五年前に言うた産業の二重構造とかなり重複しているのです。それをどう思いますかということを尋ねているのです。
#49
○篠田政府委員 先ほども少し申し上げましたように、同対審の答申が出たのが昭和四十年でございまして、その後昭和四十四年に同対法ができまして、以来同和関係の事業がかなり行われてまいりまして、したがって物的面ではかなり改善を見た、しかしその心理的な差別は依然としてまだ残っている、そういう事態を踏まえまして、その後の社会情勢の変化といったようなことを踏まえて池対協の具申が出ているわけでございまして、その後の変化というのを踏まえた上での具申ですので、地対協具申をも尊重する、そういうことでございます。
#50
○小森委員 尋ねておることについて答えてください。尋ねておるのは、同対審答申、二十五年前の社会の二重構造、社会経済の二重構造と言ったところが今日的形態としてはどうなっておるように思いますかということを尋ねているのですよ。あなたが今言うたことを一々私が反論すれば、こういう問題があるのですよ。そういうことを言うとだんだんあなたの方に私は時間をとられるからあれだけれども、ちょっと注意しておきましょうよ。
 同対審答申は、心理と実態は互いに因となり果となる相互因果関係と言っているのですよ。あなたは心理が残っておる、心理が残っておると言うけれども、心理は足のない幽霊のようにふわふわふわとそれ自体が独立して存在できるものじゃないのですよ。そういう環境面での改善をしつつも、なぜ人々の意識というものがそういうふうに根強く残るのかということは、よく社会の経済構造を分析してみると、毎日毎日人々の差別的な感覚、意識、観念というものを刺激しておるという社会の経済的な実態がなかったら、人間の考え方は割合簡単に変わるじゃないか。だから、そこのところを二十五年前の同対審がそういう原理的な説明をしておるが、今日的にはそれが日米経済協議という、一種のヒントを私は言っておるわけでしょう。日米経済協議の中には、差別という言葉も使っているでしょう、アメリカが。それをあなたはどう認識しておるかというその認識がなかったら、大臣が言われるように人権擁護は我が省の一枚看板ですというその気持ちは、非常に私はありがたいし、うれしいが、実際の実務をやられる長として、局長として物を前へ進められないじゃないか。
#51
○篠田政府委員 残念ながら差別が残っている現状は認識しなければいけないわけでございます。したがって、その上に立ってなお事業面につきましてはほかの関係省庁と協議して、それから心理的な面につきましては我が局の所管事項でございますから、その点に極力留意して努力してまいりたいと思っております。
#52
○小森委員 差別が残っていることについて今どうするかというて文句言っておるのと違うのですよ。同対審が二十五年前に分析したことが、必ずしもあの言葉どおりで現在が説明できない。あれは簡単に言うたら親会社があって下請、孫請、ひ孫請、家内工業、こういう形で、同じ鉄を扱っても規模千人の会社へ行っておる者が月額四十万円の月給をもらうとすれば、下請、下請の手をずっと通ってきたところの者は、同じように油まみれになっても十五万円か十八万円しか収入がない。あれはそういう意味のことを言っておるのですよ。それが現在の社会ではどういう形態になっておるだろうか。大分解決したと言うけれども、変化の形態というものはお互いがよく分析をしないとなかなかわかりにくいから、そのわかりにくいところをよく理解をしておかないと的確な人権擁護行政はできないでしょう。それを尋ねておるのですよ。どういうふうにするのかとか、今までどういうふうにやったのかということを今問うておるのじゃないですよ。それを答えてください。
#53
○篠田政府委員 ですから、経済的な二重構造というのが依然としてあるということは認識しているわけでございます。したがって、その上に立って関係省庁と経済面では協議するということになるわけでございます。
#54
○小森委員 こういう議論が詰まっていくと、あなたの方は経済の二重構造が残っておる、こう言われるんだが、残っておるということは私も知っておるから尋ねておるんですよ。それを単純に経済の二重構造が残っておると言うたら、あなたが今言われた同対審と地対協の意見具申とが抵触しない限りにおいてというような意味で、人権擁護を一枚看板としない他の省庁は、なおさらのこと、それはおかしいですな、二十何年も前のことなのに、あれから言うたら国民所得も随分上がっているし、それは問題になりませんよ、こういうふうに担当省庁が他の省庁から言われたら、ぐうの音も出ないでしょう。人権擁護の具体的政策で予算要求一つするにしても、要らぬのじゃありませんか、もうそんなものは必要ないんじゃないですか、こう言われたら、あなた言いようがないでしょう。だから、今日的形態はどうなのかと。これだけで相当時間を食いますよ。それを尋ねているのですよ。
#55
○篠田政府委員 その今日的形態がどうかという御質問ですけれども、かなり改善されているとはいうものの、まだまだ残っているということでございます。二十五年の間に日本の国民所得は非常に増大しておりますけれども、やはりその格差という点におきましてはまだ残っているわけでございますから、その点を踏まえて考えてまいりたいと思います。
#56
○小森委員 格差がまだまだ残っておるという言い方なんですけれども、格差の解消しておるところもあるんですよ。そしてお話にならぬほど、つぶれてしまうほどこの辺で立ちおくれた問題もあるんですよ。
 例えば、産業でいいますと皮革、皮製品。昔は、この革靴、この靴の底をつけるのに一人の職人が一足か、片へら、というのは備後弁かな、一足と半分くらいつけていた。それで、普通の日当が五百円ぐらいのときに千円ぐらいもうかっていた。それは職人だからそのぐらいもうかっていた。ところが、この靴が機械で製造されるようになって、五年も七年も腕によりをかけて技術を磨いたものが、全く自分の仕事では金がもうからぬようになった。一例を挙げれば、今のを底付師というのだけれども、この靴の表、これを甲革というのですよ。この甲革をつくるのにも相当の年数をかけて職人の修業をするのですよ。それが機械でばばっとできるようになって、そして一足が二千円ぐらいで町に出たら売っているのですから。あなた、表だけの工賃が二千円も三千円もしないと今日の世の中生きていかれないような時代になってくると、それは壊滅するんですよ。
 そのようなことで、今まで被差別部落民が従事しておった仕事のところが特にしわを食っておるのか、いや、それは随分よくなったというのか、そこらに焦点を当てたら日本の経済の構造はわかるんですよ。
 もう一つ言いましょうか。運送業のことについて日米経済協議で指摘しておる。その運送業のところを読んでみたら、運送業に対する政府の規制、それを緩めなさい、こうなっておるでしょう。私は、この間ある運送関係の労働組合に行ってあいさつした。あいさつが済んで一緒に組合の幹部とコーヒーを飲んでおったら、小森さん、とにかく労働時間の短縮だなんだといろいろなことを言うておるが、我々は二千五百時間にどう短縮するかということが問題だと言うておりますよ。千八百時間じゃ千九百時間じゃと世間は言うておるけれども、我々の職場は二千五百時間までにどういうふうに縮めるかということが問題である。今二千八百時間ぐらい働いておる。それがどういう産業構造から来るかということを考えなかったら、そういう我が国社会――部落問題とはちょっと関係ない話ですよ、今の運送業の問題は。しかし、どうあれ、どこかの一部の人間がそういう圧迫された状況にある限りは、絶対に上見て暮らすな下見て暮らせの考え方は直らないのですよ。それは運輸省の問題だけれども、しかし、知識としてはそこまでなかったら的確な人権擁護行政はできないでしょう。啓発をやるやる言うて、何をやるのですか。今あなたが言われておるような論議で啓発したら、世間は笑いますよ。人口三千ぐらいの小さな村の同和教育課長や社会教育課長だって、そんな下手なことを言いませんよ。そういうことを言っているんですよ。どうですか。総論的にあなたどう思われますか。
#57
○篠田政府委員 いろいろ経済的なひずみがあるということは承知しておりますけれども、各経済分野につきましてはそれぞれの所管庁が担当しておることでございますから、当局としてはそういった実態の上に立って、やはり啓発面を担当しているわけでございます。
#58
○小森委員 人権擁護を進める頼りがいのある法務省ということになれば、運輸省や通産省は、人権の角度があなた方よりも少し薄い知識しかなくても具体的な仕事は進めていかれるのです。ただ、各省庁がやられる自分たちの事業の中で、それが人権の角度からどうかということになると、ちょっと人権擁護局へ聞いてみようか、こういう関連ができないと、日本の人権擁護行政は前へ進まないんです。だから、あなたにそこのところをしっかり整理をしてもらわなければならぬと思って私はこういう質問をしておる。そうしたら、どういいますか、肩透かしとまではいかぬけれども、質問からずれたようなずれたような答弁をされたんじゃ、本気で聞いてもらっておるのかどうかということを私は疑うでしょう。
 私、今ここへ持ってきていますけれども、中央公論の四月号に、ある論文が載っておるのです。その論文というのは、外国人の書かれた書物、日本という国は不思議な国だと言うて書いた本がある、その本の中に、日本の経済は自由経済じゃ自由経済じゃというけれども、本当は自由経済じゃない。そういう意味でも、この間海部首相が、東ヨーロッパと我が国資本主義経済諸国との関係についてちょっと述べたくだりがあった。それで、自由主義経済の勝利だ、こう言うた。しかし、アメリカは自由主義経済じゃと日本が言うけれども、おかしいじゃないかというて日米構造協議に持ってきているわけでしょう。外国の学者や評論家も不可思議な国だ、自由、自由というけれども日本の自由はどこにあるのか。そして官僚が、私らには政策選択の権力がないのですからと言い言い、自分たちの思う存分のことをやっておる、こう分析をしておる。中央公論四月号です。
 そういうことを考えると、国際的な協調という観点からいきましても、アメリカが言っておることが必ずしも全部正しいと思いませんよ。あるいは得手勝手なこともありますよ。しかし、あそこで言っておることの、こちら側、我が国内において吸収しなければならぬ問題もいっぱいあるのですよ。その中に流れておる近代思想、近代思想というのはイコール人権思想でしょう。それを受けとめてもらいたい。心構えだけ聞いておきましょう。
#59
○篠田政府委員 人権擁護行政を推進する立場から、やはりそういったことについても留意してまいりたいと思います。
#60
○小森委員 熱意が違うのかもしらぬけれども、留意というような問題じゃないでしょう。全身全霊打ち込まなきゃならぬ問題でしょう。それではちょっと注意しておきましょうとかちょっと気にとめておきましょうとかいうようなものじゃないでしょうが。私はそういう物の言い方には不満ですよ。
 ごく大まかに言うと、みずからがどういう宣言をしておるのですか。あなた方は大変大事だと思っておるかもしらぬけれども、地対協部会報告あるいは意見具申の中に、整備された法務省人権擁護局と言うておるでしょう。整備されておるのだからどんと来い、何でも請け負うてやる、こうなっておるでしょう。どんと来いというなら今のような問題だって速やかに明確に、そんなに学問的な深いところまでなくても、ぱぱっと答えられなきゃいかぬでしょう。そして私があなたの心構えを聞くと言うたら、留意しましょう、留意でも、きょうこういう議論をする前よりは少し前進でしょうけれども、もう少し打ち込んでやっていただけませんか。もう一度お尋ねしましょう。
#61
○篠田政府委員 その点につきまして、努力してまいりたいと思います。
#62
○小森委員 それでは、質問項目を他に変えさせていただきたいと思います。
 法務大臣の所信表明の中身の中に、法務大臣の立場から、いわゆる新左翼などのラジカルな反天皇制闘争というようなものについて触れられております。したがいまして、天皇制の是非ということは別の問題としても、やはり法秩序を守った社会の成員のお互いは一員ですから、むちゃくちゃなことをしてはいけません。そういう意味では、法務大臣の指摘はそのとおりなんであります。
 そこで、せっかく天皇制という問題が出ましたので、それに関係して一、二、法務大臣にお答えをいただき、なお詳細な点につきましては、条約と今日の皇室典範の関係とかあるいは大嘗祭の関係には宮内庁の方からお答えをいただくことになると思いますが、法務大臣にはごく原則的なことを尋ねます。
 まず、明治憲法の天皇というのは、もう御存じのとおり、朕は国家なり、天皇は神聖にして侵すべからず、これはもう憲法上の規定であったわけです。しかし、今日の我が国の憲法は、天皇は日本国の象徴である、日本国民の統合の象徴、しかもその地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく、こうなっておるのですね。そうすると、大臣にお尋ねしたいのは、亡くなられた裕仁天皇は、一九四五年にマッカーサー総司令部に足を運んで、今までの戦争の反省という意味も多分に含まれておったのではないかと思いますが、私は神さんじゃありません、人間ですと、人間宣言をなさったわけであります。ところが問題は、近く予定をされておる大嘗祭、これは天皇になられて初めての、昔でいう新嘗祭ですね。新嘗祭にアマテラスオオミカミと一緒に食事をするというような意味でしょう、どっちが先に食べるのか知りませんけれども。それを言葉をかえて言うと、つまりそこで神様になる。日本の皇位は、皇位というのは天皇の位置ですね、天皇の位置は、神様の子孫でそこで改めて神になるということでなければ天皇たるの立場はない。これが大嘗祭じゃないかと私は思うのです。それならば、象徴天皇の憲法の精神に反する。これを法務大臣に尋ねるのは、人権というのは踏みつけられておるものだけの人権の問題じゃないのですよ。人権というのは上があれば下がある、下がなければ上のありようがない。しかし、それは社会秩序の上で、例えば我が衆議院に衆議院議長がいる、これは上か下かと言うたら、我々のようなこの間当選してきたような議員と衆議院議長というのは貫禄も違うし、国権の最高機関の長だとみんな認めておるから、俗っぽい言葉で言えば上でしょう。そんなことを言っているのじゃないのですよ。つまり、生まれながらにして、近代的な市民的権利意識とは違う概念上の上とか下とかいう意味で私は上とか下とかいう言葉を使うのですが、下がなければ上のありようがない、上がなければ下のありようがない、こういう関係において、生物学的には自然人としてはもう人間であることは間違いないのですが、それを社会の雰囲気として神さんに仕立てるような大嘗祭、それは天皇家が勝手にされるんならそれこそ勝手ですよ。それはカラスの勝手です。しかし、国家というものがそれにかかわってするということについては人権上いかがわしい問題ではないでしょうか。それを法務大臣にお尋ねするのです。
#63
○長谷川国務大臣 私も、今委員のおっしゃるようないろいろ議論の取捨選択はちょっとまだ勉強不足かどうかわかりませんが、大嘗祭というのは、私ども一般的に考えますと、要するに皇位の承継をされる儀式であるということでございまして、神様になるとかならぬとかというような、まあ私ども一般に聞いてみますと、やおよろずの神というのは一人一人が全部神様だという思想もありますね、日本の中に。小森さんも神様だし、長谷川信も神様だというような思想もなさにしもあらずでございますので、大嘗祭をやったから天皇がもう人間から離れて神様になったというふうな――むしろ人間として、前の神格化した天皇陛下よりも今の天皇制の方が非常に親近感がある。親近感と言ったらなんでありますが、身近な感じがいたしますね。今の皇室も昔と違ってかなり身近な感じがします。
 大嘗祭というのは要するに即位の儀式である、神様になるための儀式であるかないか、その辺は私どももわかりませんし、私はそのように解釈をいたしております。
#64
○小森委員 御承知のとおり、天孫降臨の詔勅というのがありましたね。私ら小学校の折に覚えさせられた。「豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は、是れ吾が子孫の王たるべき地なり」、豊葦原の千五百秋の瑞穂の国はアマテラスオオミカミの子孫が治める国だ、これが天孫降臨の詔勅ですね。それとの関係じゃないのですか、この大嘗祭というのは。
 小学校の昔の教科書にちょっとそう思わせるようなことが書いてあるのです。これは小学校の昔の教科書ですよ。いや、そのころの大嘗祭と今日の大嘗祭は違うんだということならば、それは宮内庁からまた答えてもらいたいんだけれども、昔はこういう感覚ですよ。これは小学校の子供に教える教師用の教科書、何と言うのですかね、教典と言ったか何か、こう書いてあるのですね。「天皇の方より神に向かひて進み給ひ、」これは何と読むのか、主に基礎の基という字を書いて、「主基殿に於ては大神の御方より御霊を天皇の上にふりそそぎ」、天皇の上ヘアマテラスオオミカミの魂を降り注ぎ、「ここに神皇」、神さんと天皇、「神皇不二」、神皇が全く一つになった意味ね、「神堂不二の御境地が展開せられるといふところにある。これがいはゆる霊嗣の御行事である。このやうにして、天照大神の御霊魂を御相続あそばされた天皇が、天津日嗣の高御座に昇り給ふ。」こうなっている。
 それで、私は興味とすれば今あなたが言われたように、いや小森委員も日本の昔からの考えからいえばやおよろずの神の中の一人だ、確かに私はそうだと思うのです。それは、日本の土俗信仰というのはみんなそれぞれが神さんを持っておったのです。だから、藤原氏もおろうし、中臣氏も蘇我氏もみんないろいろな神さんがおったのです。ただ、その神さんの中で一番大将の神をつくろうとしたところに無理があったのではないですかな、一番大将の神をつくろうとしたところに。その大将の神をずっと続けようと思うてこんなことをやっておるのではないかと思いますので、ちょっと面倒ですけれども、宮内庁の方から答えてもらいましょうか。
#65
○角田説明員 大嘗祭の意義でございますけれども、これは政府見解にもございますけれども、大嘗祭は、稲作農業を中心とした我が国の社会に古くから伝承されてきました収穫儀礼に根差したものでございまして、天皇陛下が御即位の後初めて大嘗官において新穀を皇祖及び天神地祇にお供えになりまして、御みずからもお召し上がりになりまして、皇祖及び天神地祇に対し安寧と五穀豊穣などを感謝されますとともに、国家、国民のために安寧と五穀豊穣などを祈念される儀式でございます。それは皇位の継承があったときは必ず挙行すべきものとされ、皇室の長い伝統を受け継ぎました皇位継承に伴う極めて重要な伝統的儀式である、こういうふうに考えております。
#66
○小森委員 天孫降臨の詔勅は「豊葦原の千五百秋の瑞穂の国」と言っておるから、米の生産と非常に深い関係があるということは私もよくわかるのです。結局、主要なその時代の生産、今は重工業とか化学工業とかハイテク技術とかというところまで進んできていますけれども、恐らく我が国の歴史の中でおよそ二千年あるいは二千五百年も米づくり生産というのが一番大きな産業であったと思うのですね。その産業と、それからまことに不可思議きわまりない、みんな本当は神さんがおったのに、その神さんの中の一番大将の神さんをつくって、そしてこれが一番本家本元だというふうにしないと、生産力を支配する関係においては少しふつり合いになるからそういうことをやったんじゃないか。だから、それは土俗宗教の原始の一番最初のころの宗教は、世界的にアニミズムですよね。アニミズムの原初形態が皇室のこの行事の中にどれだけ残っておるかは別として、これは非常に私は興味のあることなんです。だから、本当を言ったら行ってみたいぐらいなんです。それでも入れてくれぬらしいですけれどもね、大嘗祭へは。その中へ、天皇が入ったところへは入れてくれぬらしいですけれども、本当は行ってみたい。どういうふうに残っておるかということ。しかし、何もありがたがらにゃならぬ問題でもないし、それでさらに神秘的な、不合理な感覚を日本の国全体に広げるということになると人権上いかがわしいな、こういうふうに考えておるわけであります。まあ余り突っ込んでも、ここは内閣委員会でもないし、ちょっと人権の問題からここへ入っていったわけですから、大嘗祭はその程度にさせておいていただきたいと思います。
 次に、法務大臣にお尋ねをいたしますが、女子差別撤廃条約ですね。女子差別撤廃条約には次のように書いてあります。人権上非常に重要な問題であります。我々は人権差別撤廃条約とこの女子差別撤廃条約なるものを早期に批准してもらいたいと強く念願をして外務省にも陳情に参ったことがございますが、幸いにして女子差別撤廃条約は早く批准をしていただきました。
 そこで、その第一条に、女子差別の定義というのがございます。これは非常に厳密な定義をしておりまして、「この条約の適用上、「女子に対する差別」とは、性に基づく区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。」これが要するに女子差別撤廃条約における女子差別の定義ですね。
 そこで法務大臣にお尋ねをしたいのは、その第二条の、(a)(b)と書いてありますから(a)項ですね。(a)項に「男女の平等の原則が」ここですよ、問題は。「男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。」こうなっておる。
 そこで問題になるのが皇室典範であります。皇室典範は、御承知のとおり男系の子孫、皇孫ですね、男系の皇孫が皇位につく。だから、女性はそこではちょっと排除されておるわけです。もしそれが排除されておる場合には、この条約を批准した国は、あなたの国ではそういう法律をきちっと整備しなさいよ、こういう意味なんです。これは人種差別撤廃条約の場合もそうなんですよ。国内法整備という問題ね。人種差別撤廃条約の場合は、ちなみに申し上げておきますけれども、外務省の幹部はどう言うかというと、国内法が整備されていないので、うちはもう大体条約を受け入れるときには国内法を整備してやるんですというような意味のことを言われるんですが、これは国内法が歴然と、国民注視の的になるような皇室典範がこの女子差別撤廃条約と違反しておる、これに対して法務大臣、どう思われますか、ちょっと法務大臣に総論的なことを聞きます。
#67
○長谷川国務大臣 日本の国におきましても昔女帝が何人か出たりしまして、それが歴史とともにいろいろ変わってきております。今の取り決めというか今の定めが必ずしも私は間違っているとも思いませんし、また、幾ら男の帝王でも悪い人は悪い人なんだし、女の人でも悪いのは悪い、いいのはいい、別にどうこうそれこそ区別する必要がないということでございますが、今の現行法につきましては、私どもこれは国の歴史、明治以来というか、あるいはもっと前からの一応伝統であり、歴史でありますので、今急にいろいろそれを変更するとか改変するとかというようなことについては、意見は差し控えさせていただきたいと思います。
#68
○小森委員 法務大臣にこれを変えてもらいたいと言っても、それはやはり国の、内閣の大方針、あるいは一内閣を超えたもっと大きい問題であるかもわかりませんので、そこまで私は言うのではなくて、女子差別撤廃条約が「男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。」となっているのですね。「確保すること。」というのはその通りですと言うて、日本国家が批准しておるわけです。にもかかわらず、歴然としたものがここにある。女性は天皇になれない。天下の半分は女性が支えておるというけれども、その半分をボイコットしておるということになるから、その点についてこれは矛盾してはいませんかと。法務大臣の言われる、男も変なことをする者はおるし、よいのもおるし、女の中にも変なことをする者はおるし、よいのもおる、これは当たり前のことで、私はそれは深く共鳴するのですよ。ところが、それならばきちっと平等な扱いをしなければならないでしょう。天皇家に生まれた女性は、とにかく天皇の位につくほど立派な者はおらぬのだというふうに決めつけることはないでしょう。
#69
○長谷川国務大臣 先生のお話でございますが、もう三百年も四百年もそういう歴史的な経過もずっと続いておりますので、今そこに反論するとか疑義を持つとかというような感情は私どもは持っておりません。専門家がおりますから、専門家からちょっとお答えさせたいと思います。
#70
○鈴木説明員 お答えいたします。
 先生御指摘になりました女子差別撤廃条約でございますが、この条約に申します「女子に対する差別」と申しますのは、性に基づく区別等によって女子の基本的自由及び人権を侵害するものを指しておることは当然でございます。ここで言います「基本的自由」及び「人権」とは、いわゆる我々が申します基本的人権のことを意味しているわけでございますが、皇位につく資格といいますものは、この基本的人権に含まれているものではございませんので、皇位継承が男系男子の皇族に限定されていても女子の基本的人権が侵害されていることにはならず、したがいまして、この条約が撤廃の対象としている差別にも該当しないというのが私どもの解釈でございます。
#71
○小森委員 非常に苦肉の策、そういうことを考えているというか、こういうことでひとついこうじゃないかというふうに外務省はなったのだと思いますけれども、私は事前には、どうして女子差別撤廃条約を批准しないのですかとまだ批准しない前に外務省に言ったことがあるのです。そうしたら、言われぬことがあるのですと。何ですか、言われぬと言ったってこうして話しておるのだから、意思疎通だから言ってくれと言ったら、実は女子差別撤廃条約は皇室典範との関係でちゅうちょしておるんだと。ところが、やはり国際的に女子差別撤廃条約を批准しないわけにはいかぬし、そうかといって皇室典範を変えるほどの近代的な合理的精神はまだ日本社会の中に、特に権力を担当しておるところにそういう大胆な市民的感覚がないし、そこで今のような白馬非馬論――白馬非馬論というのは、白い馬を連れていったら、いやわしは馬を連れてこいと言ったので白い馬を連れてこいと言ったのじゃないんだ、今度は茶色の、くり毛の馬を連れていったら、わしは馬を連れてこいと言ったのでくり毛の馬を連れてこいと言ったのじゃないんだという、あれが詭弁の一番代表的ななにですよね。それを外務省はそう言われておるのですよ。
 じゃ、ちょっと時間の関係もありますけれども、私も気分急ぎ気味ですけれども、あとのほかの質問がありますが、基本的人権とはどういうものなんですか。基本的人権の例外だと言われましたね。
#72
○鈴木説明員 お答えいたします。
 基本的人権と申しますのは、各国で近代法制制定以来、近代法の中で制定されてきたものでございますが、国連の場でも世界人権規約その他で定められておりまして、各国、世界共通に認められている権利だというふうに解釈しております。
#73
○小森委員 つまり世界各国が認め、我が国憲法の第三章「国民の権利及び義務」のところで何十カ条も書いてあることの、どうして例外と言えますか。女性も男性と同じように平等の地位を確保しなきゃならぬというのが世界じゅうから認められておるから女子差別撤廃条約というのができたのじゃないですか。これはどうして例外ですか。だから日本という国は不思議な国だと世界が言うのですよ。
 イギリスの王さん、これはイギリスへ行って聞くと、小森さん、あんたのところと違うよ、こう言う。どういうように違うのかと言ったら、うちはキングですよ、あんたのところはエンペラーですよと。キングは人間がなっているのです。エンペラーというのは、ちょっと人間とは格の上の者を観念的に捏造して、そしてそれをこうやっておるんだと。だから、イギリスではおもしろい話がありますよ。それとてもやはりだれでもかれでも王さんになれぬのだから、それは近代思想からいえばやや角のこけた不合理な点がイギリスだってあるのです。
 けれども、日本の場合は、要するに今大嘗祭の関係もあるし、さらには女帝ができない。それは天皇家の中の女性一人がなれるかなれぬかの問題だから直接的には私には何の関係もないのですよ。だけれども、そのことから受ける精神的イメージというものは、日本の全体の女性は少し軽んじてもよいというイメージに役立つから、だからこれは人権上の問題なんです。天皇家がだれを天皇にしようがかれを天皇にしようが政治に関係させやしない。我々の一部の税金が多少そっちに回るのかなあということで、今この歴史的段階に生きてきたのだから仕方がない。だから、それはよいですけれども、問題は全体の雰囲気に関係するでしょう。それで私は言うのですよ。
 それで、昼の時間が大分参りましたので、ちょっと申し上げておきましょう。
 先ほど来申し上げておるように、女帝があったということを言いますね。日本には女帝の時代もあった。だからこれは天皇家と不可分の問題じゃないのですよ。万世一系の皇祚を践める我が大日本帝国天皇といって、それは子供のころに教えてもらったけれども、本当に万世一系の皇祚を践める我が大日本帝国天皇ならば、それの子孫ならば、今女帝という制度をみんなが持ち上げてつくらぬということになったら、かつての女帝であった人はどういう歴史的な意味になりますか。あのときは歴史的にちょっと感覚が迷っておったということになるのですか。
 事の起こりは、そもそも皇国史観からいったらアマテラスオオミカミでしょう。アマテラスオオミカミが天の岩戸へ隠れたら、世の中真っ暗になったのですよ。それでどうするかと言ってみんなが集まって相談して、アマノウズメノミコトが、今でいえばあれはストリップじゃないですかな、みんなの前で踊ったのでしょう。余りがやがや楽しそうだから、アマテラスオオミカミはちょっと岩戸に手をかけてあげたら、ぱあっと光が差したというのでしょう。そこをタヂカラオノミコトががあっと戸をあけたというのでしょう。だから、日の本は女ならでは夜の明けぬ国と言われておる。どうしてこういう差別をするのか。午前中の締めくくりで、人権擁護局長、我が国はよその国から見たら人権問題についてはまことに不合理きわまりない問題があるのですよ。そこらを科学的に、人間哲学と言ったらちょっと余り広大だから、人間というものを直視する、そういう態度で人権問題と取り組んでいただかなければいけませんよ。
 午前中はこの程度にします。
#74
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 午後零時四十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ────◇─────
    午後零時四十五分開議
#75
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小森龍邦君。
#76
○小森委員 午前中に引き続きまして午後の質問をさせていただきます。
 午後は、主として逮捕状の問題それから勾留の令状の問題などにつきまして、お尋ねをしてみたいと思います。
 先般の法務委員会におきまして、私の方からある一つの事件につきまして、それを、Gさんというふうに呼ばせていただきましてお尋ねをいたしました。それは繰り返すまでもございませんけれども、逮捕されましてそして十日間ほど勾留されまして、それから釈放されたという事件でございますが、逮捕するには逮捕するに値する一つの相当な理由というものがなからねばならぬと思うのでありますが、これは一般論的に、逮捕状を請求する段階ではどの程度のことがその事件を疑うに足りる相当な理由と考えられるのか、つまり、逮捕状請求側の一つの考え方というものをまずお聞かせいただきたいと思います。
#77
○根來政府委員 一般的に申しますと、被疑者が罪を犯したことを疑うに足る相当な理由と、それから逃走するような状況があるとき、あるいは罪証隠滅すると疑うに足る状況があるときというふうに規定されているわけでございますけれども、個々の事案によるわけでございますので、どの程度あれば逮捕状を請求するかということを個々の事案に即して言わなければ、見なければ、ちょっとわからない問題だと思います。一般的に申しますと、先ほど申しました要件があるというふうに捜査担当者が考えるときというふうに御理解いただければありがたいと思います。
#78
○小森委員 世の中の法的な秩序というものを守るためには、当然に犯罪捜査を行い、そしてそれに対してしかるべき法律上の処置を講ずるというのは当然のことなのでありますが、逮捕状を請求し、逮捕状をもらい、その人を逮捕し、まあ逮捕される方がもし無実であるとすればもう大変な、迷惑千万なことでありますが、法律的にはどういう観念をお持ちなんでしょうかね。いや、どうも済みませんでした、過ちでした、今日はごめんつかあさい、こういうふうな感覚でやられるとすれば、国民の人権は守られるということにはならないのでありますが、そういうふうに逮捕した人を、後にまた勾留のことも聞きますけれども、勾留して、そして自分らが見込んだことが間違いであった、それで釈放せざるを得ない。それは、うんといろいろな対抗する手段を持つ者は後から訴訟でもやりますけれども、通常は、そんなことをしておるとまた金もかかるし、面倒くさいし、簡単に言うとこれこそ本当の切り捨て御免ではないかと思うのですが、そこらはどういう市民的権利感覚、もともと逮捕状というものはそう簡単に行使してはならないという憲法上の精神がございますが、釈放するときには、法律的にはどういう観念というものがそこに成り立つのですか。
#79
○根來政府委員 逮捕状を間違って執行するあるいは逮捕状を間違った資料で請求するということはあってはならぬことでございますが、事件というのはその都度その都度の証拠を総合いたしまして生々発展するといいますか、そういうものでございますから、間違いというものも間々あることだと思います。しかし、内部的には逮捕状を請求する場合でも勾留を請求する場合でも、いろいろ上司の判断も仰いで慎重に検討してやることでございます。
 ただ、その中で仮に誤ったことがございました場合には、当然謝るとかそういう問題ではなくて、法的には過失が大きいときには国家賠償という問題も起こりましょうし、あるいは刑事補償法による補償ということもあり得ることだと考えております。
#80
○小森委員 それは先ほど私が、ある程度国家権力に対して対抗しなければならぬというふうに思ってしかるべき応援者がおればできることなんですけれども、そうでない場合には、一般的にはやりっ放し、やられっ放し、こういうことになるわけで、これは民間でしたら、あなた、私のものをとったんじゃありませんかということになると、間違っておったらそれは丁重な断りをして相手の気持ちをいやすというか、そういうことになるわけですが、国家権力の場合は、要するに相当な被害を受けたと思ったら国家に賠償請求したらいいじゃないか、こういうことになるわけですか。
#81
○根來政府委員 問題は制度の問題でございますから、その衝に当たった者が本人に謝るとかそういうようなものではないと思います。むしろ、制度によるそういう問題でございますから、制度による救済を求めるしかないのではないかと考えております。
#82
○小森委員 そうなりますと、要するに大事なことは、逮捕状の請求というものは慎重には慎重を期す、そうでないと、つまり人間のやることですからすべてが完備するというわけにはいかぬので、制度的な過ちが万一起きたときに申しわけない、そういうものがいつも念頭にあって逮捕状の請求というものを慎重に構える、こういうことになるのだろうと私は思います。
 そういうことになりますと、例えばこの間私がGさんということを言いましたが、Gさんの場合は五万円の詐欺事件の嫌疑がかかりまして、非常に定着した生活を営んでおられるし、ある程度財産もあるし、その財産収入もあるし、それから警察がいろいろなことを尋ねに来ると何回も応対をしておるし、一度も警察に任意出頭を求められていないし、そしてその嫌疑のかかったときの、五万円の借入金という形でそれが詐欺だということになっておるわけですが、その借入金に対する、Gさん以外の人がそれはうまいこと言って金を借りて逃げたわけですけれども、その人が筆跡を残しておるわけですね。そうしたら筆跡を見させていただくということもできるし、場合によったら協力して指紋で照合させてもらうということもできるし、また事情は任意出頭ということもできるのですが、そういうことをやらずにいきなり逮捕状請求、こういうことは、誤ったことをしてすぐにそれをきょうあすに落とした信用とかそういうものを救済することができないだけに、逮捕状の請求というものは相当慎重を期さなければならぬと思いますが、他にやる方法があるのに、この場合は指紋の照合もしていないし、筆跡の照合もしていないし、任意の出頭も求めていないし、しかし警察官が会いに行けばいつでも会えるし、いろいろなことに応対をしておるという場合に、逮捕状請求というのがそういう場合でも、現にやっておるわけですから、それはやって物理的にできないことはないのですけれども、しかし、それは憲法の三十三条ですかね、ちょっとはっきりした条文を覚えておりませんが、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とわざわざ手続を憲法事項としておるということの精神からするといかがなものでしょうか、そういうふうな軽はずみなことをするということは。その点どうでしょうか。
#83
○根來政府委員 ただいま具体的な事件についてお尋ねがございましたが、問題の事件、私どもの心当たりのある事件と申しますと、その事件は、警察が逮捕して検察官に送致して、検察官が勾留請求をして勾留して十日間を調べまして、そしてなお犯罪の嫌疑が十分ではないということで釈放し、そしてその後不起訴になった事件だと私は理解しておるわけでございますが、この事件については、検察庁としては逮捕状の段階から関与しておるわけではございませんので、果たしてどういう資料で逮捕状を請求したか、あるいはどういう理由で逮捕状を請求したかということについてはつまびらかではないわけでございます。もちろん、一般論といたしましては検察官も逮捕状を請求することはあるわけでございますが、十分捜査をいたしまして間違いがないという心証を持って逮捕状を請求するというのが一般的な考え方でございます。
#84
○小森委員 したがって、逮捕状請求に関する法律の条文といいますか、そういうものからしますと、逮捕状を請求するまでに他に幾らでも方法がある場合に一般的には逮捕状を請求しないと私は思いますが、その点はどうでしょうか。
#85
○根來政府委員 具体的には今おっしゃったGさんに対する事件を頭に置いて答弁するということではなくて、全く一般的に御答弁するわけでございますけれども、逮捕状請求というのは、先ほど委員からるるお話のあるように慎重に行わねばならないということからしますと、やはりできる限り周りを調べて、それから逮捕状を請求するということもありましょうし、ただ、本人が逃走するおそれがあるとかいうことで日時的に間に合わない場合は、やはりそういう手続を若干省略して逮捕状を請求するということも一般的にはあり得ると思います。
 ただ、これは繰り返すようでございますが、先ほどのGさんに対する事件は私ども全くわからないことでございますので、それを横に置いての話でございますので、御理解いただきたいと思います。
#86
○小森委員 もちろん私は、このGさんの問題についてヒントを得て、さらにそれを一般論に還元してお尋ねをしておるわけで、慎重を期すということはわかるのですけれども、その慎重の中に他の方法、例えば任意出頭を求めるとか、あるいは筆跡を片方ではつかんでおるわけですからその筆跡と同じかどうかということを調べたらすぐ大体の見当はつくわけですから、あなた、ちょっと筆跡を、これと同じ字を書いてもらえませんかとか、あるいは本人はどないなことでもやりますよと言っておるのですから、字を書いてもらうとか、あるいは紙に指紋が残っておるわけですからいろいろな方法で指紋をちょっととらせてもらってそれを照合してみれば、それでこれは十分な、相当なる理由があるということならば、その逮捕状の請求をして勾留の方向へ持っていって、さらに詳細を調べるということはあり得ると思うのですが、一般論的でよろしいのですけれども、逃亡のおそれなし、あるいは逃亡のおそれありということについては判断の基準になるということはわかりましたが、今のようなGさんは別として、一般論的に仮定の話として、例えば指紋がとれるとか、あるいは筆跡がとれるとかというときに、しかも五万円の詐欺事件だということで逮捕するということが通常妥当と考えられるでしょうかね。
#87
○根來政府委員 ただいまのGさんのお話の中でございますが、記録によりますと、やはりその借用証といいますか、預かり証の筆跡とか、あるいは指紋とか、あるいはその五万円の被害金額とかいうことが問題になっているようでございまして、それがいろいろ調べた結果、それについて否定的な見解が出たために不起訴になっているわけでございます。したがいまして、ただいま一般的なお話ということでお尋ねがございましたけれども、やはりそれについて、一般的なお尋ねについて答えますと、そのGさんの問題について答えることに相なりますので、その辺については、先ほどから繰り返し申し上げますように答弁ができないわけでございますけれども、いろいろできる限り手を尽くして、周りを調べて、そうして逮捕状を請求するというのが一般的な話でございます。
 ただ、そのGさんの問題についてはどういう事情でどうなったかということは、私ども所管している官庁ではございませんので、答弁は何とも申し上げかねるわけでございます。
#88
○小森委員 話をある程度、まあ切実感を持たせるという意味でこういう具体的な事例を出したのですけれども、その具体的な事例を出すと、なかなかその事例に対する分析のようなことになって答えにくいということも私にはよくわかります。しかし、ここで一度そのGさんのことを外して、そしてもうGさんとかAさんとかBさんとか関係なしに、いつでも警察が会える、また会いに行ったら嫌がらずに会ってくれる、そして片方では指紋と筆跡の証拠というものを犯人が残して逃げておる。そうしたら、嫌疑のかかっておる人の指紋と筆跡の問題について、逮捕状執行前にそれを調べたらすぐにわかること、そういう場合に、そのGさんを抜きにしてどういうふうに判断をするか、これくらいは私は答えられると思いますがね、どうでしょうか。
#89
○根來政府委員 再三のお話でございますけれども、どうもその具体的な話が絡んできますと、むしろ警察当局にお尋ねになった方がもう少しおわかりになるんじゃないかと思いますが、私どもの方は、捜査権としては警察が第一次捜査権を持っておって、第二次捜査権ということでございまして、それほどしばしば検察官が逮捕状を請求することはございませんので、だから、まあそういうお尋ねがありましてもなかなか的確な御答弁がいたしかねるわけでございます。
 繰り返して申し上げるわけでございますが、そういう被疑者がどの程度協力していただけるか、あるいは周りにその被疑事実に対して否定的な証拠がどれだけあるかということについては、仮に検察官が逮捕状を請求する場合には十分考えて、そして万一にも誤りがないようにすることと思います。ただ、その逃走のおそれとかいう緊迫した状況のときには、必ずしもそうはまいらぬ場合もあると思います。
#90
○小森委員 そこで問題になりますのは、逮捕状を請求するときに、裁判官の判をもらうのだろうと思いますが、どの程度の具体的なことを様式としては書くのでしょうか。その次第によっては、裁判官がそれが妥当な請求であるかどうかということを判断するのだろうと思いますが、どの程度のことを書くのですか。つまり私が言うのは、主観的にこれは臭いんだというぐらいのことで請求できるのか、なるほどこれはちょっと逮捕しなければいかぬなというふうに客観的に思えるような書式になっているのか、その点はどうなんですか。
#91
○根來政府委員 これは逮捕状請求書というのがございまして、これは被疑事実がどういうことかということでございまして、その被疑事実を疑うに足る資料といいますかそういうもの、あるいは供述調書なり証拠物がございますけれども、そういうものを添付して裁判所に提出して裁判官の検閲を受けるといいますか、裁判官の判断を仰ぐ、こういうことに相なっております。
#92
○小森委員 一つの犯罪事実をめぐる問題ですから、例えばこれを仮に新聞社に置きかえますと、新聞社が事実の報道をするためには、いつ、どこで、だれが、何を、どうだという、あの五W一Hというのがありますね。あれに相当するぐらいの一つの客観的事実というものを裁判官に提示しないと、裁判官はそれに対する判断を出すことができないと思うのですが、どうもこれが臭いと思うのですよというようなことで裁判官が簡単に判を押すことはないと思いますが、そういう意味で、どういう書式になっているのですかということを尋ねているのです。
#93
○根來政府委員 この刑事訴訟法の百四十二条に細かい規定がございまして、「逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。」ということでございまして、被疑者の氏名とか罪名とか被疑事実の要旨、例えば詐欺事件なら、だれがどこでどういうものをだまし取ったかというようなことでございますが、そういうようなこと。それから「被疑者の年齢、職業又は住居が明らかでないときは、その旨を記載すれば足りる。」というようなことがずっと記載されております。そういうことを記載して請求するわけでございます。
#94
○小森委員 そうしますと、その書式の中に裁判官が判断のできる客観的な証拠みたいなものは何にも添付しないのですか。
#95
○根來政府委員 先ほど刑事訴訟法と申しましたが、刑事訴訟規則でございます。
 これは、先ほど申しましたように資料を添付して裁判官に提出するわけでございます。
#96
○小森委員 その資料というのが、例えば指紋であるとか、筆跡の場合は必ずしもこの筆跡が同一人物かどうかわからぬけれども、肉眼で見てどうもこれ似てるな、それじゃまあひとつ逮捕して調べるのが妥当だろうというような判断はできると思いますが、そういう何か客観的事実に近づくような資料がつくのですか。
#97
○根來政府委員 例えば殺人事件を例にとった場合に、その殺人事件を起こした被疑者がおるわけでございますけれども、その殺人の犯罪事実が記載されているわけでございます。そこで、その殺人の目撃者の供述調書とか、あるいは死体の検案書とか死体の鑑定書とか、そういうものが資料としてつくわけでございます。
 詐欺や恐喝の場合も、恐喝の場合は被害者がございますから被害者の調書とか、あるいは被害状況を目撃した者の調書とか、詐欺の場合だってその詐欺の被害者の調書とか、そういうものを添付して裁判所に逮捕状を請求するわけでございます。
#98
○小森委員 そうしますと、例えば何か盗まれた。逃げておる後ろ姿を見たら、どうもあの人であったように思うというくらいのことになったら、後ろ姿だから、もし暗やみだったらもうほとんどわからぬけれども、どうも姿があの人のように思うというくらいのことでいきなり逮捕されるということはあり得るわけですね。
#99
○根來政府委員 一般的に考えまして、今お話のありましたような事案について、まあ後ろ姿があの人であったように思うというような資料で、仮に私だったら逮捕状は請求するほどの勇気はありません。
#100
○小森委員 それで、逮捕状は慎重には慎重を期さねばならぬという意味で、法務委員会におけるこのような質疑のやりとりも幾らかは日本の社会のそういう問題を慎重に取り扱うことの前進に役立つと私は思ってこのような議論をしておるわけでありますが、そうすると、その逮捕状請求書が参りまして、今度は裁判所の関係になりますけれども、裁判官がそれを妥当と思うか思わないかという物差しはどの辺にあるのでしょうか。
#101
○島田最高裁判所長官代理者 先ほどから委員が問題にされておりますところの「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」ということが法律で決まっているわけでありますが、この「相当な理由」の程度がどのくらいが必要であるかということになりますと、なかなかこれは抽象的に表現しにくいわけでございます。一般に言われておりますのは、裁判になりまして終局的に有罪の判決を言い渡す際、これはいわば真っ黒けな心証が必要である、もう合理的な疑いを生じさせないだけの嫌疑が必要であるということになっておるわけでございます。しかしながら、この逮捕状の場合にはまだ捜査の初期の段階でありますので、何分にもそれだけの十分な資料をもって請求されるというわけでもございませんし、これから捜査が進んでまいる、そしておいおいまた有罪の判決を得るための証拠を獲得してまいるその中間の段階的なものでございますので、その有罪判決を言い渡すに必要なそれほどの心証までは必要ないということは言われております。ただし、そうかといって、いわゆる証拠の優越、五分五分でどちら、五分五分よりはこちらの方がありそうである、シーソーに、はかりにかければこちらが上がるというような程度の証拠の優越では足りないということも講学上言われております。
 その辺のところで、抽象的に言えばそういうことでありますが、それでは裁判官として実際に逮捕状の請求があった場合にどのように判断しておりますかということになりますと、先ほど来委員が仰せのように、間違った逮捕などということはかりそめにもあってはならないという心構えで裁判官は対応しておりますので、与えられた資料を見て、それこそ法文の繰り返しになりますが、これはやはり、罪を犯したことを疑うに足りるだけの相当な理由があるものという確信をした上で逮捕状を発付しておる、こういうことで御勘弁願いたいと思いますが……。
#102
○小森委員 それで、表向きはそういうことだと思うのですが、事実はこの簡単な事例の場合も、十日間勾留したけれども、もともと指紋くらい照合しておればすぐわかることなんですけれども、逮捕して勾留して、そして筆跡や指紋ということでそれ以後いろいろやってみて合わない、だから釈放せざるを得ないというのは、これはこの事件で答えてくださいというとまた答えにくいと思うけれども、そういうことになると必ずしも裁判官は逮捕状というものに判を押すときにまじめにやっていないのではないか、つまり捜査官が請求してきたらほとんどこれに判を押しておるのではないか、こういうふうに私は思うのですけれども、もし裁判所の方に、逮捕状請求に対してそのまま判を押したという事例と、裁判官がそれは逮捕に値しないと言って拒絶したというか判を押さなかったというのが統計数字みたいなものでもとっておられれば知らせていただきたいのです。
#103
○島田最高裁判所長官代理者 今の点について年々の統計を見てまいりますと、多い年ですと却下率が大体〇・一%、少ない年ですと〇・〇五%、そのあたりで動いておるようでございます。
#104
○小森委員 この数字を聞きまして私は、私が日ごろ心配しておることがまさに当たっておる、こう思います。それは要するに、〇・一%というと、一%なら百件に一件ですけれども、千件に一件、二千件にやっと一件が、これは逮捕状をとらなくてもいいじゃないかという裁判官の態度ということになるわけですから、これはほとんどゼロに等しい。つまり、裁判官は憲法の精神に基づいて、逮捕状を出すときにはそれは憲法的事項だ、こういう自覚が足りないのではないか、私はこういうように思うのです。したがって、この点は国民の権利を守るために、逮捕したけれども釈放するときにそれなりの名誉を回復して、そして裁判官でもついていって、逮捕状で引っ張ってきたけれども、皆さんこの人は悪うありませんでしたと町内会でもあいさつに連れて歩くのならまだわかりますけれども、そんなことは全然しないわけですから、したがって裁判官というものがその辺のところをどのように厳格に判断をするかということは、今後の努力としてぜひひとつしかるべき機関で努力してもらいたいと私は思いますね。そうしないとこれは切り捨て御免になってしまいますから、その点をひとつお願いしておきたいと思います。
 それから今度は、逮捕の段階から勾留の段階に入るのですが、逮捕状の請求と勾留令状の許可というのか請求というのか、そういうものをとる場合とは、私の常識からすると勾留の方が期間が最初十日ですから、身柄を拘束する期間は長いのですから、だからさらに厳格でなければならぬと思うのですが、それは法文上はさらに厳格を期すようになっているのですか。
#105
○島田最高裁判所長官代理者 御指摘のように勾留の場合には期間が長いものでございますので、さらに手厚く、例えば手続的にも勾留の場合には勾留質問ということで、裁判官が被疑者に面接いたしまして被疑者の言い分を聞いた上で判断をすることになっております。また逮捕についても、逮捕状を出す際にも逮捕の必要性ということが考えられなければいけないわけですが、勾留の場合にはより以上、期間として十日間という長い期間の身柄の拘束でありますので、勾留の必要性というところでも十分に絞る。また、先ほどの「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のところでもさらに絞って慎重に判断するということで、逮捕に比べればさらに一層手厚く判断しておるわけでございます。
#106
○小森委員 それで問題になりますのは、先般も私が指摘をいたしました裁判官というものの近代社会における市民的権利の感覚といいますか、簡単にぽっと言ってしまえば人権感覚ですけれども、そういうものがどの程度あるかということによってここのところはうまくいったりいかなかったりするものだと思います。しかしながら、その犯罪を疑うに足りる相当なる理由というのは、全く抽象的な裁判官の感覚なのですか、それとも、こうこうこういう問題があるからこうなのだという、いわばある程度動かない一つの証拠といいますか、そういうものがあって勾留の令状に裁判官は判を押すのか。少なくとも逮捕状の段階よりも勾留の令状を出すときの方が慎重でなければならぬということは私もわかるわけで、そうしたら何か逮捕状のときよりはより一層の、法文の上でも何か少し型にはめたものがあるのではないか、こう思いますが、それはいかがですか。
#107
○島田最高裁判所長官代理者 特に法文の上でそのような規定はないわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、まず手続的には被疑者の言い分を十分よく聞きます。そして、仮に裁判官の方が提出された記録を見ておりましてここのところはどうであろうかというような疑問がある点については、被疑者からの言い分も十分確かめ得るわけでございます。私どもの経験といたしまして、勾留状を発付した裁判官が後で勾留状を発付した裁判官として、どの証拠、どの資料に基づいて罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断したのかということをよそから問われた場合には、必ずこれとこれとこれ、こういう資料があるからこういう証拠に基づいて自分としてはこのような判断をしたのだと言えるだけの資料は十分頭に置いて、それによって判断しておるということでございます。ただ、委員が先ほど言われましたように、このあたりにつきましては私ども絶えず、例えば裁判官寄り寄り集まった会同、協議会等におきましても、さらにこの令状発付の問題についてはお互いに執務の結果を持ち寄りながら検討し合い、かりそめにも間違いがあるような令状発付をしないようにという努力は怠らないでやっておるつもりでございますし、今後ともそれは続けてやってまいりたいと思っております。
#108
○小森委員 そこで、先ほど逮捕状のことについて裁判官が判を押さなかったパーセンテージをお知らせいただいたのですが、勾留状、勾留の令状というのか、それに対して判を押さなかったパーセンテージがございましたらそれもひとつお知らせをいただきたいと思います。それで、その勾留状の問題について先ほどお答えになりました点は、心構えの問題としてもし他人様から聞かれたら、私はこうこうこうだからその勾留状に判を押したのですと言えるぐらいのものを心構えの問題として持たねばならぬということでしょう。要するに、だれかからそういうことは聞かれる場合があるのですか。
#109
○島田最高裁判所長官代理者 まず統計の関係でありますけれども、却下率で、多い年は約〇・七%、少ない年で約〇・四%というようなことになっております。
 それから、先ほど申し上げましたのは、まあ仮にこういうことを問われればという形であるわけでして、その裁判官が実際にどうこうと言って問われることではございません。
#110
○小森委員 それで法文も極めて抽象的だし、それから人様から聞かれることもないし、結局最終的にはやりっ放しということになるのじゃないですか。それで、しかも裁判官はそれぞれの同僚がやったことなんですし、ほかに裁判官がかわってその裁判に当たったとしても、同僚のことだから、勾留までしたのだから、そして起訴までしたのだから、何か格好をつけぬと同僚の裁判官に対しても、あるいは請求をした検事や警察に対してもちょっと格好が悪い、こういう意識が、これは人間ですから作用して、結局は人々の人権が守れないのじゃないですか。
#111
○島田最高裁判所長官代理者 令状発付してやりっ放しではないかという御意見ございましたが、この勾留状の発付につきましては、不服申し立てとして準抗告という道もございますので、場合によってはその準抗告等がされて他の裁判官によって十分慎重な検討がなされるということはございます。
 それから、先ほどの委員の後半の御指摘の点でありますけれども、私ども裁判官といたしましては、やはり人々の基本的な人権を守っていくということが私どもの職務をする上でのいわば生命線ともいうべき重大なことであるというふうに思っておりますし、また、私どもが仕事をしていく上でその点にこそ仕事のやりがいを感じ、生きがいを感じながらやっておることであります。したがって、勾留状発付の段階でも、その辺のことについては十分慎重に、人権を損なわないようにという基本的な姿勢で臨んでおるつもりでございます。
#112
○小森委員 言葉でそれをそう言うことは非常にたやすいのですけれども、実際の問題として逮捕状に判を押し、さらに勾留の許可をし、そして極めて簡単なことが、十日ほどたったら全然その証拠というものが最初の思いとは違うということで釈放するというようなことになりまして、果たして慎重に対応しておるということになるでしょうか。物すごく複雑な問題でそういうことになった場合はお互いにわからないでもないですけれども、極めて簡単な問題で釈放した、勾留した後に釈放したということで真剣に取り組んでいることになるでしょうか。
 そこで、私はそのことのお答えをいただくと同時に、勾留まで打って、そしてそれが事件に発展をせずに釈放したというこの統計数字はどうなっていますか。
#113
○島田最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、逮捕、勾留というのが捜査の初期の段階のことでございましてまだ資料も、例えば勾留されて十日たった段階に比べれば、勾留状を発付するという段階では何分にも資料がまだ十分ではございません。例えば、先ほど話が出ておりました指紋とか筆跡の関係なども、あるいは筆跡が非常に似ている、肉眼で見ればこれはかなり怪しいというようなことはあるかもしれません。ただ、それを鑑定に回すと、科学者の目で十分鑑定すればこれはやはり別人のものであったというようなことが判明することも出てまいります。そういうことで捜査をおいおい進めていけば、それだけ当然のことながら資料の範囲が広がり、その結果、その事実の真の姿により一層近づくことができるということはありますので、したがって、私どもが令状を発付した後で、後から見てまいりまして批判されても、それはそれで批判されてもやむを得ないというような事案も中には出てまいります。そういうようなことも踏まえまして、私どもとしては絶えず反省もしながら、なお私どもの今後の執務のよすがにそれをしてまいっていくことでやっております。
 先ほどおっしゃった統計面のことでありますが、勾留までして事件にならなかった、起訴されなかったという事案のことをおっしゃいましたが、これは委員がお考えになっておられるように、そもそも勾留状を出したのが誤りで、実はこの被疑者は嫌疑がなかったんだ、要するに嫌疑なしで不起訴になるという場合も中にはございます。しかしながら、多くの場合には、むしろ捜査した結果これは起訴するまでのことはない、御承知のように起訴猶予、情状等を考えますと、これは裁判にかけるまではないということで起訴せずに終わるという事件も多うございます。それらの内訳については私どもとしては所管しておりませんので、統計上何とも申し上げかねるわけでございます。
#114
○小森委員 要するに、そういう数字を把握するのはどこが所管をしておるわけですか。
#115
○根來政府委員 先ほど御質問がございましたように、逮捕状で逮捕して、それから検察官が、一般的には司法警察員から受け取って、弁解の機会を与えて裁判所に勾留請求をするわけでございます。そして勾留請求をして、十日なら十日あるいはそれより短い場合もありますし、あるいは延長して二十日の場合もございます。そうして調べたあげくに、これは起訴する必要がないという場合もございますし、シロ、クロいずれともつかない、いわゆる灰色という場合もございます。あるいは中には真っ白といいますか、人違いであったというのもあるわけでございます。そういうふうな三つの分類があるわけでございますけれども、その分類については私どもは現在のところ統計資料を所持しておりませんので何とも申しかねるところでございますが、そういう場合はそんなに多いというわけではございませんが、全く少ないというわけでもございません。
#116
○小森委員 統計数字が手元にないのですか。それとも、つまりそういうものは統計をとってないのか、とってあるが今ここの手元にないのか、どちらでしょうか。
#117
○根來政府委員 お話の前にそういうお話がなかったものですから、果たしてそういう統計をとっているか、あるいは統計をとっていないか、私が少し無学でございますのでその辺よく把握しておりません。御要望ならば後で調べまして御報告いたします。
#118
○小森委員 それではまた、それは別の機会を見て、あらかじめお願いをしておいてお尋ねをするということにさせていただきたいと思います。
 そこで、さらに続けてお尋ねをいたしますが、先般来、毎日新聞が勾留の問題についていろいろと報じております。そして、それは土曜閉庁との関連で、土曜が休みになればそれより前に物を片づけておこうということでそうなっておるのだろうと思いますが、早い時期に、つまり休みにはもう裁判官が判を押したり、検察の方も請求に行ったりしないというような、お互いが、こういう人権にかかわって大事な仕事をしておる、その大事な仕事だということを少し棚に上げて、自分たちの休みの都合で勾留状が出ておるというような毎日新聞の記事が出ておりましたが、その辺の現状はどうなんですか。
#119
○島田最高裁判所長官代理者 毎日新聞の記事を私どもも読んでおりまして、今委員がお受け取りになったような意味合いで毎日新聞の記事をお読みになる方も多いだろうと思いますけれども、そうだとすると、それは私どもとしては誤解に基づくものではないかというふうに考えます。
 なぜなれば、私どもとして、例えばあの記事にありますように、勾留の延長決定が原則として勾留満了当日になされるべきであるという諭旨で書かれておるわけでありますけれども、これは土曜閉庁の問題とはかかわりなく、従前から勾留満了日当日の前日ないし前々日に勾留延長決定がなされていた例はたくさんございます。これは勾留延長決定の性質の問題でございまして、必ずしも満了当日にならなければ延長請求を却下すべきか通すべきか判断できないものではないようなケースもたくさんございまして、二日前あるいは前日に決定ができる事案もたくさんあるわけでございます。そういう事案につきましては土曜閉庁の前から、仮に例えば水曜日に満了日が来る事案について火曜日なり月曜日に延長決定をする、それと同じく日曜日に満了当日になる事案について金曜日に判断するというようなケースは今までにもありまして、今回土曜閉庁になり、土曜日が休みたいからそれを前倒しにして、今までは土曜日にやっていたものが今度は早くなってしまったというようなものではございません。
#120
○小森委員 そうなると私は、これは原則は先ほど言いましたように逮捕状に対しても極めて慎重な態度をとってもらわねばならぬと思うし、いわんや勾留は逮捕状よりもはるかに長い期間人を拘束するわけですから、その中には全く事件に関係のない者も権力のいたずらに遭ったような感じで身柄を拘束されるということもあるわけですから、したがってぎりぎりのところでやるというのが本当だと私は思います。それをぎりぎりでやることによって捜査官がさらにその間密度の高い、まじめな取り組みをして物事を証明していく、こういうことになると思うのですが、ぎりぎりがやはり原則じゃないのですか。
#121
○島田最高裁判所長官代理者 実際のところの数字を統計面で見てみますと、満了当日が数としては一番多いことは確かでございます。ただ、前日、その前々日もかなりございます。
 それで、それは十日間の勾留期間というものの、勾留されてから八日目、九日目になりますと、その段階で捜査の資料もかなり集まってまいります。捜査もいわば非常に流動的なものであったのがだんだんに固まってまいります。そうなってくると、あと何を捜査すればいいか、何を捜査しなければいけないかというようなことが具体的に固まった形で出てまいります。その段階では、仮に八日目、九日目でも、例えば先ほどの指紋の鑑定に出しているところをその鑑定があと三日なり四日かからなければ返ってこないとかいうような具体的な事情が出てまいります。そういうケースで、先ほど私が申し上げましたようにある程度もうその段階になれば一日前、二日前でも判断が十分できるケースも結構ある、こういう趣旨でございます。
#122
○小森委員 したがって、原則はぎりぎりの方が被疑者の人権を守るにふさわしいわけでしょう。余り早くからやると、もうあと十日もらえるんだからと思って調べる方もゆっくりやりますわ。そして調べる方は、私もいろいろなことを聞いておるけれども、相手をばかにして侮辱したようなことも言いながら、時には手を振るったり、そういう事実もあるわけですよ。そうすると、要するになるべく裁判官が人権を守るという角度から判断をして、本当にこの最初の十日間でできないのかどうかということをぎりぎりまで判断をしてやるというのが妥当だと思います。これはそれが一番妥当ではないかという意味の質問ですからね。それは全く例外がないとは私は思いませんよ。けれども、原則的にはそうでなければならぬのじゃないですか、法の精神、人権の感覚ということからいったら。
#123
○島田最高裁判所長官代理者 満了当日あるいはその前日あたりが一番穏当なところだろうかとは思います。ただ、人権を守る意味ではやはり延長の必要性の判断がどこまで正確になされ得るかということにかかわりますが、延長の必要性の判断が正確にされるためには、勾留されてから九日目あるいは満了当日の方が資料としても多くなるので、そのあたりが穏当な線ではないかというふうに考えます。
#124
○小森委員 そうしますと、勾留状に判を押すということについて、原則は私が今言いましたようにぎりぎりのところですることが人権の角度からは好ましい、しかし物によったら一日や二日前ということはあり得る、こういうふうに受けとめていいのですね。
#125
○島田最高裁判所長官代理者 若干私の言い方が舌足らずだったかもしれませんけれども、原則として当日というよりかむしろ、いろいろなことがございまして、例えば延長請求決定が仮に却下されれば、それに対して検察庁の方では不服申し立てということもあるわけでございます。そういうような事後的な処理の関係も考えますと、当日やることも結構でありますが、前日も結構だし、事案によっては前々日ということも十分資料が整っておる限りあり得るというあたりでありまして、余りに、それよりももっと早くということは望ましくない場合が多いだろう、こういうことは言えると思います。
#126
○小森委員 なかなか、私が原則という言葉を使ったことが少し答弁をぼかすことになっているのかもしれませんけれども、結局関係者の、取り調べる側の事務的な都合では今のような理論も成り立つでしょう。しかし、それには相手があって、取り調べをされておる者がおるわけですから、その観点に立つと、逮捕状が憲法の条文の事項として書かれておるというようなことからすると、その逮捕状よりもさらに勾留状の方がもっと厳密でなければならぬということになると、余りそういう側の立場からだけの説明ではいかぬのじゃないですか。
#127
○島田最高裁判所長官代理者 御承知のように、勾留延長を決定する場合には、法律上やむを得ない事由という要件がありまして、そのやむを得ない事由があるかどうか、これについては裁判所、裁判官において非常に慎重に判断するわけであります。この判断において、仮にも資料が不十分なために誤りがあるというようなことがあってはいけない。その意味で、やむを得ない事由の存在を疎明するための資料が十分でない場合にはむしろ勾留延長の請求は却下されるわけでございまして、この事由が十分にある場合には、仮に例えば満了日の前日や前々日に延長の決定がなされたからといって、そのことで格別被疑者が不利益をこうむるということはないわけでございます。被疑者としてみれば、当然最初の勾留の十日は身柄を拘束され、その後に延長される、その延長される決定自体が当日より一日二日前になされたという意味合いだけになりますので、私どもといたしましては、やはり心すべきは延長をするに当たりやむを得ない事由の存否、この判断を十分慎重になすというところにあろうかと思っております。
#128
○小森委員 そうしますと、先ほどは土曜とか日曜の閉庁の場合でそういうふうに事前にやっておるのでなくて、ほかのときもやる場合もあるんだ、こういう話なんです。そうなると、土曜閉庁とか連休が続くときに、裁判官は新聞で言われているような横着なことはしてないですか。早くから、客観的に見たら、休みだから先にやって逃げたなというような事例はありませんか。
#129
○島田最高裁判所長官代理者 勾留延長の決定と申しますのは、御承知のように、検察官からまず請求がありまして、その請求を受けて裁判所の方で裁判官が判断するわけでございますので、まずそういう請求があるかどうかという点にもかかわってくるわけでありますけれども、ただ、今おっしゃったようなことで、連休などの場合に、先ほど申していた前日、前々日だけではなくて三日前、四日前ということで出されておる延長決定もないわけではないようであります。
 そういう事案があるということは、これはそういうかなり前の段階でも事案によっては延長をする必要性が判断できた事案であろうと思いますけれども、しかし、そういう事案が一般的には多くはないと思われます。また、そのように早い段階で延長決定をすること自体がいいことだろうかどうかというと、それは余り望ましくないというふうにも一般論として言えば考えられますので、そのような運用につきましては、私どもとして、今後そのようなことがいいことであろうかどうか、むしろ反省をいたしていく方向で各地の裁判所の方にも、ただいま委員からも御指摘があったことでございますので、各地の裁判官にもその辺のことについて連絡をしていき、反省をしていただくような機会を例えば会同、協議会等でも設けてまいりたいと思います。
#130
○小森委員 答弁はおおむねそういうことは改善をしなければならぬのだというにおいを出しておるように思います。どうも非常にぐるぐる持って回った言い方をするときは必ず、私らの今までの経験からすると、日本語が特にそうなんですけれども、ぐるぐる持って回ったときには本当にそれをそういうふうにやる気かやらぬ気か、この場を通り一遍で逃げようとしておるのかということで、私の方からすれば大いなる疑念を抱くのです。ですから、もう少し率直に、そうでしょう、身柄を拘束されておる者の中で、先ほどの逮捕状のことに関するパーセンテージもそうなんですけれども、たとえわずかとはいえ、あなた方がはじいたその統計数字でも逮捕されて迷惑をこうむった者がおるわけでしょう。そうすると、慎重には慎重を期して最大限物を考えて、当事者に迷惑をかけないようにしなければならぬということでいかねばならぬわけですから、だからぎりぎりまでひとつもう少し努力してみてくれ、わしもぎりぎりまで君らの努力を見て判断をする、これが本当の裁判官のあり方だと私は思いますよ。
 それで、また後に私はあらゆる努力をして、皆さんの協力もいただいて、数字的に分析をしてみようと思いますけれども、結局、私が今ここへ入手しておるものでも、こういうものがあります。昭和六十三年十月二十八日に勾留をいたしまして、勾留延長十一月四日というのがありますよ。そして、まだひどいのは、正月休みに裁判官がゆっくりしようと思ったのか、勾留の請求をした捜査官の方がゆっくりしようと思ったのか、それに無批判に判を押しているのだと思いますけれども、十二月二十三日に勾留を打って、十二月二十八日に勾留延長したのもありますよ。そういうふうなことでは人権が守られておるということにはならぬと思うのです。それが、きょうは今まで問題になりました冤罪の事件について一々申し上げる時間がもうございませんけれども、冤罪になって再審請求で、恐らくもとの裁判官が亡くなってしまって、あと顔をつぶす者がおらぬようになってから再審の門を開くのかどうか知りませんけれども、あなたが仮に二十何年間あるいは三十年間人生を棒に振るような憂き目に遭わされたらどうなるか。事柄の発端というのはこういうところから始まるのですよ。どう思いますか。十二月二十三日に勾留されて十二月二十八日には勾留延長ができておる。たまたま正月休みの前だった、ゆっくりストーブかこたつに当たろうかということで相手は判を押されて拘束されるというのではかなわぬじゃありませんか。答弁してください。
#131
○島田最高裁判所長官代理者 今仰せの具体的な事案につきましては、具体的な裁判の問題でありますので私どもがここで当否を云々できない立場にあることは御理解いただきたいと思いますが、そういう具体的なケースを離れて一般論的に、例えば五日も六日も前の勾留延長決定はいかがであろうかという問題提起に置きかえてみますと、そのような運用が行われるとすれば、それはやはり是正していくべきではなかろうかというふうに私どもは考えております。
 したがって、今後も、今回委員の御指摘もあったことでございますし、最高裁としては、問題のあるような運用が行われているとすれば、それを是正する方向で各裁判所において検討の機会を設けてもらいますとともに、追って会同、協議会等の場でも検討してもらうように努めてまいりたいと思います。さしあたり、今回、例えばゴールデンウイークでかなり連休がございますが、そのような連休に当たりましてもそのようなことがないような運用がなされますように、私どもとしても事務連絡等は各庁へ抜からずにやってまいりたいと思っております。
#132
○小森委員 答弁が大分はっきりしてきました。今言われたようなことで、人間ただの一日でも生涯を繰り返すことはできないのですから、この過ぎ去っていく刻々というものは取り返しかっかないのですから、人権を守るということはそういう時間的な感覚も持っていただいてひとつ徹底を図っていただきたいと思います。
 そして、このことを最終的に私がまとめて申しますと、結局は裁判官という職責は、法律と良心に従ってやるという抽象的な名目で、だれからも個々の具体的な問題については批判されない。批判が直ちにこたえるというような立場にいない。だからこそ厳密にやってもらわないと人々の権利は守れない、こういうことになるわけであります。申し上げておきますけれども、十二月二十三日勾留決定をして十二月二十八日に勾留の延長をしたこの書類を私は手元に持っておりますけれども、これははっきり言いますと、請求する方の検事も検事、判を押す裁判官も裁判官、横着者同士の寄り集まり、こうなるのですよ。それで、このことをあえて言うならば、人権が守れるか守れないかは、権力を行使する立場にある者が客観的、合理的な精神に立つか、恣意をはびこらせるか、ここが問題なんですよ。恣意とは、ほしいままの恣意ですよ。
 もう時間が来ましたからやめますけれども、人権擁護局長、よく言うておきますよ。今の我が国法務省人権擁護局は、すべてを恣意で判断しておる。これはまだこれから続きますから、こういう場でなくても私は話に行きますけれども、恣意をはびこらせては日本の民主主義は元も子もなくなりますよ。
 日米経済協議も、日本の政府とかあるいは日本の官僚が経済運営について、これは経済の管理ですよ。アメリカで言うたらニューディール政策以来のケインズ的経済学手法なんですよ。ケインズ的経済学手法というのは経済を管理するのですよ。管理することによって社会主義の計画経済に対抗してきて、形の上では今ある程度うまくいったのですよ。その経済の管理に名をかりて物すごい隅々に経済管理の恣意がはびこっておるのですよ。その恣意がはびこることがひいては人権侵害になるのですよ。
 きょうはこの程度でやめておきます。どうもありがとうございました。
#133
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 鈴木喜久子君。
#134
○鈴木(喜)委員 鈴木でございます。よろしくお願いします。
 私は、JR各社が今回国鉄労働組合、いわゆる国労に対する採用差別の事件についていろいろと伺っていきたいと思うのです。
 国鉄清算事業団、JR各社がなした本年四月一日付解雇通告、大変な、最も残念な結果を招いたと思っております。解雇された者が千名以上超えている。そしてまた、これまでにおびただしい数の他労委での救済命令がなされているのに、さらに中央労働委員会、中労委からの履行勧告もなされているのに、これを大胆に無視して、そこで無視したどころか大量の解雇という強引な処分がなされた。こういうことは、国家の法体系の中で位層づけられた単なる労働法上の労使関係というような問題にはとどまらないと思います。法秩序全体に対する挑戦、日本の法社会の重大な危機と言うべきであると思います。
 解雇された者、それからその家族の生活状況というのは、衣も食も住も含めてどれをとっても非常に大変な脅かされ方をする。これはまさに人道上、人権問題として考えなければならないものだと思うのです。そして、こういう立場から、これを法務委員会でも放置することはできないと考えまして、当法務委員会で関係各省庁、また法務大臣からのいろいろな御見解をただしながら、この労働委員会における救済命令の制度そのものについても改めてその意義を確認したいと思って、今回質問をする決意をしたわけでございます。
 本件については、以前にもたびたび国会の衆議院及び参議院の中の運輸委員会とか社会労働委員会とかそういうところでいろいろな形でたくさん質問もされておりますし、これからもまた運輸委員会その他でもっと詳細に、時間をかけた質疑応答がなされ、討論がされると思います。しかし、私は、今回は限られた時間ではございますけれども、この中で、こういう解雇通告がなされたという現状の中で、広く人権擁護という立場からこれから御質問していきたいと思います。
 まず第一に、労働省の方に伺いたいと思います。
 国鉄分割・民営化というこの過程の中で、いわゆる国労が各地方労働委員会、地労委に対して申し立てましたところのJR各社の不当労働行為救済申し立て事件、この総数と、そのうち採用差別についての総数、これはどのくらいでありましたか、お願いいたします。
#135
○山中説明員 JR各社に対する不当労働行為に関する地方労働委員会の救済命令は、ことしの四月十三日現在では、全国の四十一の地方労働委員会から八十一件出されております。その中で、採用に関する事件につきましては十九件でございます。
#136
○鈴木(喜)委員 その中で、地方労働委員会から救済命令その他命令が出たものの数、そして今の採用差別について命令の出たものの数をお知らせください。
#137
○山中説明員 採用差別に関するものにつきましては、先ほど申し上げましたように救済命令が出されたものは十九件、全部救済命令でございます。
#138
○鈴木(喜)委員 そうしますと、この採用差別でない部分で申し立てが認められなかったというものはあるのでしょうか。
#139
○山中説明員 先ほど申し上げましたように、八十一件地労委から救済命令が出ております。その救済命令はおおむね四つに分類できます。その内容として、一つは採用差別の問題でございます。採用差別で地元JRへの採用を認めた事案についての救済命令が今申し上げましたように十九件でございます。二番目に、JR設立時に所属組合を理由として配属差別があったとして原職に戻すようにという事案についての救済命令が二十八件でございます。それから三番日に、JRが設立された後、出向なり配転命令において差別があったということでその取り消しを求めた事案についての救済命令が十六件でございます。それから最後に四番目に、その他組合バッジの着用を理由としてなされた懲戒処分の取り消しを求めたもの、あるいは管理職による組合からの脱退勧奨があったとして陳謝文の掲示を求めたものなどで、それが十八件でございます。合計八十一件ということでございます。
#140
○鈴木(喜)委員 今私が伺ったのはそういうことではなくて、この中で地方労働委員会においてこうした申し立てが認められない、却下されたという事案はあるかということです。
#141
○山中説明員 現在、救済命令が出されたものについてで、却下命令は一件もございません。
#142
○鈴木(喜)委員 この中で特に今回関係のありますのは採用差別ということでございますので、十九件全部について地労委の救済命令が出ているという事実を踏まえて、ここで採用差別の主文を見てみたいと思うのですけれども、昭和六十二年四月一日以降JRの職員として取り扱わなければならないという主文、要するに原状回復の主文、それからいろいろな地位等を決めるときに誠実にJR各社は話し合わなければならないという、誠実に協議しなければならないという主文とか、また、これまで就労までの賃金の差額を支払わなければならないという主文、それから遺憾の意その他についてそれを白紙に書いて掲示したり手交したりしなければならない義務、大体この四つくらいが主な主文としてあると思うのです。この主文の中で、十九件において原状回復を認められていないという、原状回復の主文がないような形のものはあり得ませんね。
#143
○山中説明員 今先生が御指摘のとおりでございます。六十二年四月一日でJRが発足したわけですが、そこにJRが採用したものとして取り扱うことというのが基本的で、すべてそういう案件でございます。
#144
○鈴木(喜)委員 これで地方労働委員会のいろいろな命令の文章があると思うのですが、その理由の中で、判断の根拠として国労の組合員であるということが不当労働行為のもとになっているのだ、こういうことでもって差別をしたのだというふうな理由を挙げていないような命令はありますか。
#145
○山中説明員 ただいま全部精査したわけではございませんが、すべてそういうことだと思います。
#146
○鈴木(喜)委員 今伺いましたのをもう一回確認いたしますと、この採用差別ということについて不当労働行為であるということの判断の根拠ということは、国労の組合員であるということで差別をしたということははっきりと地労委の中ですべて認めているということになると思います。そしてそのうちで、もう一回また伺いますが、地労委の救済命令というものに対してJR側が中労委に再審の申し立てをしたこの数、これは採用差別だけで結構でございますけれども、どのぐらいございますか。
#147
○山中説明員 採用差別事件十九件についてはすべて中央労働委員会に係属しております。
#148
○鈴木(喜)委員 もう一度御足労願って申しわけありませんけれども、もう少し伺います。
 現在までに、今度は中労委の中で初審の命令について履行勧告をした、労働委員会規則五十一条の二に基づいて履行勧告をされたという事例はどのくらいありますか。
#149
○山中説明員 ただいま先生の御指摘の労働委員会規則五十一条の二に基づきまして初審命令の履行勧告については、JR不当労働行為事件については現在中労委に係属中の再審査申し立て事件の七十四件中六十一件について履行勧告がなされております。その他七件については履行状況を現在調査中でございます。
#150
○鈴木(喜)委員 今のは全体の総数をおっしゃっていただいたのですが、そうではなくて、採用差別に関してはどうでしょうか。
#151
○山中説明員 手元にちょっと資料がございませんので、また後ほど調べればすぐわかりますのでお届け申し上げたいと思います。前に出されたものは多分ほぼ出されていると思います。
#152
○鈴木(喜)委員 もう一つ伺います。
 中央労働委員会の命令が既に採用差別に関して出たものはございますか、あればその内容をお知らせください。
#153
○山中説明員 中労委に採用差別について十九件、これはすべて現在まだ中労委で審査中でございます。命令は一件も出ておりません。
#154
○鈴木(喜)委員 採用差別に関して今中労委で審査中ということでありますけれども、この履行勧告ということについて効果をあらわしているかどうか、この履行勧告に基づいて履行がされたという実例はございますか、今回の場合。
#155
○山中説明員 具体的には承知しておりません。
#156
○鈴木(喜)委員 履行勧告がなされて、その前に地労委の段階ですべてについて救済命令がなされ、そして、それで何もそれについては履行がされていないこの状況というものを、労働省としてはどのようにお考えになりますか。
#157
○山中説明員 地労委の救済命令についての履行の問題でございますが、一般論として言えば、地方労働委員会の救済命令については、それに不服がある使用者は行政訴訟も提起することができますし、中労委に再審査の申し立てをすることも認められております。この場合、行政訴訟を提起した場合、裁判所により緊急命令が出される場合がありますが、その場合を除いて、使用者に命令の履行を強制する仕組みに労組法上なっておりません。このような労組法の体系を総合的に勘案いたしますと、地労委の救済命令については、いまだ確定していない間は使用者の任意の履行にまつべきものだというふうに私どもは考えております。
 いずれにいたしましても、JR各社に対する地労委の救済命令につきましては、現在中央労働委員会あるいは裁判所で係争中でありますので、私ども、とかくの見解をこれについて述べることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
#158
○鈴木(喜)委員 今のようなお答えは何回も私も議事録で拝見しておりますので、そういうお答えを今回もう一度いただきたいというふうに思っていたわけではありません。
 ここでもう一度伺います。これについては、まず労働組合法によってそのような規定になっている、確かにそのような解釈ができるかもしれません、おっしゃったとおりだと思いますけれども、その中で、任意規定ということの意味について伺いたいのです。
 任意規定というのは守らなくてもいい規定だということでしょうか。
#159
○山中説明員 ただいまのことについて、地労委の救済命令についてはこれを履行を強制する仕組みになっていないということでありまして、命令が裁判所で確定するなりあるいは労働委員会で確定した場合については罰則などでこれを強制する仕組みに労組法上なっておりますが、いまだ確定しない間は、先ほど申し上げましたように、緊急命令を除いてこれを強制する仕組みにはなっておりません。その意味で、これは使用者の任意の履行にまつというふうに考えるのが当然ではないかというふうに私どもは思っております。
#160
○鈴木(喜)委員 そのまま待つ以外に方法はないというふうにおっしゃるのですけれども、私は何もそこで強制的にやる方法を聞いたわけではないのです。そういうことではなくて、その強制する方法がないけれども履行していないという事情についてどういうふうに思われるか、労働省としてはどういう見解をお持ちなのか、これは困ったことだと思われるのか、それとも大変いいことだと思われるのか、そういうことをここでは伺いたいと思っているのですけれども。
#161
○山中説明員 私ども、この不当労働行為制度につきましては、地労委の段階、そして再審査機関であります中央労働委員会、不服があれば中央労働委員会あるいは裁判所へ、こういう形になっております。そういう意味で、不当労働行為制度についてそういう体系になっておるというふうに御理解いただきたいと思います。
#162
○鈴木(喜)委員 どうも私の頭が悪いせいか、言われている意味がよくわかりません。私の聞いていることに対するお答えにはなっていないというふうに思うのですけれども、もう一度伺います。
 この労働組合法の二十七条の五項というところには、再審査の申し立てがなされたとしても、この「当該命令の効力を停止せず、その命令は、中央労働委員会が第二十五条の規定により再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときに限り、その効力を失う。」というふうに五項のただし書きで言っております。これについてはどのようにお考えなんでしょう。
#163
○山中説明員 ただいま先生から御指摘がございました労組法二十七条第五項は、地労委の救済命令が再審査の申し立てまたは行政訴訟の提起によってのみ取り消しまたは変更されることを前提に、再審査の結果取り消しまたは変更されるまでは当該救済命令に効力があることを、いわゆる講学上公定力と言っておりますが、それを二十七条五項は確認的に規定したものだというふうに理解しております。
#164
○鈴木(喜)委員 そういうふうに公定力というものがありながらこれを守らないということについて、これをどのように考えるかというのが私のさっきの質問なんですけれども。
#165
○山中説明員 救済命令が出され、それが確定した後は、命令違反に対して先ほど申し上げましたように罰金とか過料とかということでこれを強制する規定は労組法上ございます。確定せざる間はこれが科されることがないということは、これについて救済命令が確定するまでの間は、先ほど申し上げましたように緊急命令の制度を除いて救済命令を強制的に履行させるシステムになっていないということでございますので、これは使用者の任意の履行にまたなければならないというふうに私どもは考えておりまして、罰則その他の強制力はございません。
#166
○鈴木(喜)委員 何回同じことを言わせるのかと思うのです。何回同じことを聞かせるのかと思うのですけれども、こういうふうな答えを私は何回聞いても同じことですから、ここにずっと立っていただいて、もう一回、何回でも同じことを聞きたいと思います。歩かせるだけ申しわけないですから。
 そこで、ここで言いますけれども、一体何でそこでこういう答えが返ってくるんですか。強制力のないことはもう百も承知です。そんなことを聞いているんじゃないのです。そうじゃなくて、強制力のない規定であれば、それを守らなくてもそれが正しいということになるのですかということを聞いているのです。
#167
○小澤委員長 山中課長に申し上げますが、ひとつ的確にお答えいただきたいと思います。
#168
○山中説明員 公定力について確認的に規定したものだというのは、先ほど申し上げましたように、でありますが、それが労組法上強制的にはそれを履行させることになっていない、こういうことを先ほどから申し上げているわけですが、これについて、履行されてない状態についてそれは正しいことかということでございますが、これが労組法上正しいかどうかと問われれば、特に違法ではないというふうに言わざるを得ないのじゃないかというふうに私どもは考えております。
#169
○鈴木(喜)委員 特に違法ではないという回答が出たというふうに私は今承ります。
 それでは、労働委員会規則、この四十五条という規定があります。ここでは、ここで救済命令のときにはこれを履行しなければならないということがあります。労働委員会規則というものをつくられるのはこれは労働省のお仕事だと思いますけれども、労働省がこれをつくられるということは、ここでこの労働組合法というものの中の公定力というものを前提としてこの規定ができ上がっているわけでしょう。それを履行しないということがあえてここでは違法ではないとおっしゃると、御自分のつくられた規則というものの中でそういう矛盾を抱えられるということでもよろしいんでしょうか。
#170
○山中説明員 先生の今御指摘の労働委員会規則四十五条の点でございますが、これは労組法上二十六条で、中央労働委員会がこのような規定を制定し、公布する権限を有するということで中央労働委員会が制定した規則でございますが、これは先生おっしゃるとおり公定力を前提とした規定であるというふうに私どもも理解しております。
#171
○鈴木(喜)委員 もう一条、同じこの規則の中の五十一条の二ですけれども、ここでも、履行の勧告というのも同様に、ここではその命令の効力というものを前提として、公定力というものを前提としてでき上がっている規定だと思います。そうしますと、労働省としては労働委員会でつくられた規則というものについては関知しないというふうなお答えなんでしょうか。
#172
○山中説明員 中央労働委員会は独立してこの規則を制定する権限がございますので、労働省としては直接これについてとやかく言える立場にはございません。
#173
○鈴木(喜)委員 非常にわかりにくいお答えだと思いますけれども、最後に伺います。労働省としては、こうして今履行のされていない状況というものについて、これをどのように打開するかということは何の策もお持ちではありませんか。
#174
○山中説明員 私どもといたしまして、このJR紛争が当事者間の話し合いを基本として円満な解決が図られることを強く望んでおります。しかしながら、このJRの不当労働行為の救済命令の点についてはまさに不服として係争中でございますので、私どもがとやかく言える立場にはございませんが、いずれにしてもJRが事業を円滑に運営するためには、労使関係の安定というのは非常に重要なことであるというふうに私ども認識しておりますので、私どもとしても円満な解決が図られることを望んでおるところでございます。
#175
○鈴木(喜)委員 最後に、ここのところで円満な解決を望んでいるのはどなたでもおっしゃることだと思います。それだけでは何の役にも立たないので、これから先の十分な努力というものをお願いするわけでございますけれども、ここでもう一度、今の問題についてどうしても私はここで納得がいかない。なぜかといいますと、任意である、強制力がない、そういう強制力のないものは履行しなくてもいいということになりますと、これから先この労働委員会制度というものを、特に地方労働委員会というものの制度について、だれもみんな守らなくなっちゃうんじゃないか、そういうおそれがあると思うんですね。現にやはりもうここでこんなふうにJRさんが守らないぐらいなんだからということで守らない事態が出てくると、この労働委員会制度そのものを破壊することになってくるんじゃないか、私はそのように考えるのですが、この点はどうお考えでしょうか。
#176
○山中説明員 労働委員会は、現在、各都道府県に地方労働委員会、その再審査機関として中央労働委員会が設置されるのはもとよりのことでございますが、この労働委員会は、不当労働行為の審査と、それともう一つ労使紛争の調整という二つの機能を有しておりまして、これまで私ども、我が国の労使関係の安定についてこの委員会が果たした役割というのは非常に大きいものだというふうに考えております。先生の御指摘のJRの労使紛争について、先ほども申し上げましたように、円満な解決というのができるよう私どもとしても努力はいたしたいというふうに思っております。しかしながら、この不当労働行為制度の問題については、先ほどからるる申し上げましたように、救済命令について当事者間でまだ争っておるということでございますので、現在手続が進行中であるということを御理解いただきたいというふうに思っております。
#177
○鈴木(喜)委員 現在手続が進行中なのはその内容でございまして、その内容についてはもう今とやかく言えないということであれば私は納得するんですよ。内容ではなくて、地方労働委員会で出たその命令を守らないというのは内容とは違うところだと思うんです。それを守らない、任意規定だから守らなくてもそれは何ら違法ではない、そういう御答弁があるから何回も何回もしつこく聞いているわけでございます。その点をここでもう一度だけ確認さしてください。お願いします。あれは違法ではないということなんですね。
#178
○山中説明員 先ほどから繰り返しておりますが、地労委の救済命令については、それについて労組法上それを強制する手段というのが、これが確定せざる間はどうしてもこれを強制してそれを履行をやらせるという規定にはなっておらない。(鈴木(喜)委員「そこはわかっているんですよ」と呼ぶ)そういう意味で、この使用者の任意の履行というものにまつ以外に私どもは手は……(鈴木(喜)委員「そこもわかっているんですよ。手の問題を言っているんじゃないですから」と呼ぶ)いずれにいたしましても、私どもとしてはこのJRの労使紛争、先ほどから何遍か申し上げておりますように、円満な解決が当事者間で行われますよう望んでやまないというふうに考えております。
#179
○鈴木(喜)委員 大変不満な答えしか出てこなかったと思うんですが、時間の関係もありますので、次に運輸省の方に対してお願いいたします。
 まず、JR各社の株主というものは、清算事業団が全株持っていらっしゃるということでよろしいんでしょうか。
#180
○圓藤説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
#181
○鈴木(喜)委員 清算事業団を監督する官庁としては運輸省があるというふうに思うんですけれども、このことで、運輸省としては今回の今いろいろ議論になりましたこの一連の事件について監督する義務というものがおありなんでしょうか。
#182
○圓藤説明員 再就職対策が円満にいくように十分監督する義務はあったわけでございますが、今法律が失効いたしましたので、法律に基づく義務は現在はないと思います。
#183
○鈴木(喜)委員 そうすると、現在からは運輸省としては何にも法律的な義務がないから事実的にも監督することはしないという意味でしょうか。
#184
○圓藤説明員 一般論としまして不当労働行為があってはならないということ、それからまた、会社の事案が円滑に行われるためには民営会社にふさわしい自主的な労使関係が確立されることは重要であるということにつきましては、運輸省としては折に触れて会社を指導しているところでございます。今後とも指導してまいりたいと思っております。
#185
○鈴木(喜)委員 折に触れて、具体的に言いますとどのような指導をされてきたのか。ここで三年間という期間があったわけでございますけれども、その間にどのような具体的な指導をされてきたか、一端をお知らせください。
#186
○圓藤説明員 清算事業団におきましては、この三年間、再就職促進法に基づきまして、職員に対しまして国鉄時代最後の基本給を保証するなどの面で手厚い再就職対策を講じてきたわけでございます。この間の予算は三年間で約三千億円という巨額のものに上っております。
 それで、再就職の援助のために、全国で具体的に百四十八カ所に雇用対策支所を設置いたしまして、千五百四十四人の管理者を配置いたしまして、一人当たり延べ七十四回の就職相談、それから三十四回の就職あっせんを行ってきたわけでございます。また、教育訓練につきましても、延べ一万九千に上る受講数の専門教育を実施してまいったわけでございます。
 昨年の十一月には、再就職促進法の期限が追ってきておるということもございまして、政府の雇用対策本部を開催いたしまして、希望者は全員採用され得るJRの広域追加採用、北海道とか九州の方が東JRとか東海のJRにも採用を認めるという広域追加採用を初めとしまして、三万件以上の再就職先を職員に提示を申し上げたわけでございます。また、事業団の職員の方にも、これが最後のチャンスであるということで自覚を促したわけでございます。
 さらに、これがもう最後だと言った後で、三月二十三日にさらに、これは非常に困難を極めたわけでございますが、再度の広域追加採用を実施をいたしたわけでございます。三月二十六日は、みずから退職し、再就職活動を実施する者に対しましては、基本給の六カ月分に相当する金額の手当を支給するということを決定するなど、再就職対策の期限の最後の最後まで再就職対策に全力を挙げてきたつもりでございます。
 政府としましては、再就職の意思があれば十分再就職し得るような十分な環境整備を図ったというふうに考えておるところでございます。
#187
○鈴木(喜)委員 今のお話だと広域採用ということなんですが、何で地元で採用ができないのですか。それぞれのところで何も反対側の方に行かせる必要もなければ、地元にそれだけの欠員があるということはわかっていることなのではないのですか。
#188
○圓藤説明員 JR北海道及びJR九州におきましては、雇用対策に協力する観点から、発足時に鉄道業務に必要な適正要員数以上の余剰人員を既に抱えておったわけでございます。それから二番目には、経営安定基金の運用等によってかろうじて利益を計上している。本来なら経常利益というのは赤字でございますけれども、安定基金の運用によってかろうじて利益が計上できるように非常に経営環境が厳しい。さらに、今後は高速道路との厳しい競争下に置かれるということが予想されるということで、会社の健全経営を確保するためにはこれ以上の職員を抱えることは好ましくないという判断でございます。
 それから第二としまして、また従来からこれ以上の地元のJRでの採用はないということを前提としまして、多数の職員の方が雇用対策に協力して広域追加採用に応じて、北海道あるいは九州から本州地域に移動しているという事実がございます。現在地元JR採用を主張している者を優先的にJR北海道とかあるいはJR九州に採用するということは、既に移動した者との公平の観点ということから考えても問題であるというふうに考えておりまして、今後地元追加採用を行うということは、以上の観点から適当ではないという判断でございます。
#189
○鈴木(喜)委員 一点目と二点目とは全然ニュアンスが違うと思うのですけれども、初めのところでは、とにかく赤字経営になるかもしれないので、これ以上の過剰の人員の募集は地元ではできないというお話だと、これからの新規採用は、今の清算事業団の人たちということではなくても新規採用はしないということに聞こえますけれども、そのとおりでいいのかどうか。そして、その次に言われたのはそれとは違って、平等原則に反するからというような言い方をされていたと思うのですが、これについてはまた議論のあるところです。今ここでその議論を再燃して話をしようと思いませんけれども、前段の方だけお答えください。新規採用の可能性はほかの人たちにもあり得ないということなんですか。
#190
○圓藤説明員 現時点では何とも申し上げかねますけれども、JRが今後判断すべき問題だと思っております。
#191
○鈴木(喜)委員 先ほどの御答弁と少し矛盾していると思うのですけれども、先ほどおっしゃったのは、一番初めのときには大変まだどうなるか企業の成り行きがわからないから採れなかったんだと。そしてその後に、今でもやはりまだまだ危なっかしい経営状態であるかもしれないので採れないというふうにおっしゃったのですけれども、それが今回はまた、わからない、これからはJRの考え方によるのだというふうに変わってきて、新規採用ということについてはわからないというふうにぼかしておられると思うのです。それだったらなぜ、新規採用をされるのであれば今清算事業団ということの中で地元採用ということを考えられないのか、それも将来の問題として考え得るのかということについては、どう考えられますか。
#192
○圓藤説明員 先ほどから御説明いたしておりますように、清算事業団あるいは政府としましては今まで最大限この雇用対策というものをやってきたということでございまして、先ほど申しましたように、JR北海道とか九州では鉄道業務に必要な適正要員以上の余剰人員を現在でも抱えておるということでございます。したがいまして、これ以上これから採用する余地があるかどうかということにつきましては会社が判断する内容で政府として申し上げることではないということで申し上げたわけでございますけれども、そういう新しく採用するということは非常に厳しい状況であるということには変わりないという認識においては同じだと思います。
#193
○鈴木(喜)委員 何かよくわからない答えになっていると思います。私はここのところでは今ここまでにしておきますけれども、海部内閣が今度できまして、ここで運輸大臣のお言葉の中ではこの就職問題というものについて、本年の二月二十八日付の新聞を見ますと、その中でも就職問題を精力的かつ早急に解決しなければならないということをおっしゃっている。そして、これを精力的に早急にやるということが、労働省の経験もおありの運輸大臣のお話として載っているわけなんですけれども、この二月二十八日からこの四月の何日現在までの間にどのような精力的かつ早急の対策を打ち出されたのでしょうか。
#194
○圓藤説明員 運輸大臣が精力的、早急に対策を講ずると申しました後のことでございますが、三月二十三日から再度の、もうこれで最後だというふうに言っていたのですが、それをJR等を説得しまして再度の広域追加採用を実施をいたしたわけでございます。しかるに、募集の人数はほとんど無制限に近い状況でございましたが、実際問題としては一人しかそれに応じられなかったということでございます。
 それからさらに三月二十六日には、みずから退職し再就職活動を実施する者に対しまして基本給の六カ月に相当する金額の手当を支給する、退職の道を選ばれる方については六カ月分の金額の手当を支給する、こういうことなど、最後の最後まで我々としては全力を尽くしたということでございます。
#195
○鈴木(喜)委員 三月三十一日を過ぎてこれから四月の現在までですけれども、ここの間には何にもされていないのでしょうか。
#196
○圓藤説明員 四月一日以降、再就職促進法の期限が切れましたので、法律に基づく措置というのは我々としてできないわけでございます。ただ、一般の求職者の方と同じように公共職業安定所等におきまして、本人の適性とか能力に応じた就職あっせん活動というものを労働省等において行っていただけるものというふうに考えておるわけでございます。
#197
○鈴木(喜)委員 現在、中央労働委員会に係属していろいろいろな申し立て事件の中で、今履行ができていないという労働省に対するいろいろのやりとりがあったわけですけれども、この履行をしないというJRの形というものについて運輸省はどのような見解をお持ちですか。
#198
○圓藤説明員 運輸省といたしましても、中央労働委員会からJR各社に対しまして不当労働行為の救済命令が出ていることは十分承知しておるわけでございますが、JR各社におきましては、中央労働委員会においてみずからの主張が受け入れられなかったとして、それぞれ中央労働委員会に対して再審査の申し立てを行っておるという状況でございます。これらの事案につきましては、当事者間でなお係争中の案件でございますので、運輸省といたしましてもコメントを差し控えるということが適当であるというふうに認識しております。
#199
○鈴木(喜)委員 当事者間だからコメントを差し控えるというふうにおっしゃいますけれども、この問題を監督している運輸省にもやはり当事者と同視するような関係があるのではないかというふうに思います。ここの場合に、任意の規定であっても履行しなければならないというふうな義務があるものを履行しなさいよということはなぜ言えないのですか。
#200
○圓藤説明員 JR各社が地労委命令を履行しないことが違法であるか否かということにつきましては、労働組合法を所管する労働省が判断すべき事柄でございまして、運輸省としてはお答えする立場にないことを御理解いただきたいと思います。
#201
○鈴木(喜)委員 そのお立場を理解したとしても、なぜそれを履行しなさいよということは言えないのですかと聞いているのです。違法だから履行しなさいではなくて、履行しなければならない、その効力が続いているということであれば、それを履行しなさいよということは言えないのですか。
#202
○圓藤説明員 おしかりを受けるかもしれませんが、先ほど申しましたとおり係争中の案件でございますので、運輸省としてはコメントを差し控えさせていただきます。
#203
○鈴木(喜)委員 先ほどの労働省の場合もそれから現在の運輸省の場合も、これ以上何回聞いてもこの答えしか出てこないということが目に見えておりますのでここまでにいたしますけれども、この問題についてそのような形でいつでもそこのところからもう逃げてしまうという形で、もうここからはお答えを差し控えさせていただきます、係争中の問題でございますから、これではいつまでたっても問題は解決しないし、国民が知りたいと思っている部分というのが一つも答えに返ってこない、私はこの点に大変ないら立ちを感じますけれども、今回はいら立ちを感ずるということだけでここまでにとどめておきます。
 最後に、法務省に対して伺いたいと思います。
 まず、法務大臣、大変お眠そうな顔をしておられますけれども、この辺でちょっと、恐れ入りますけれども見解を聞かせていただきたいと思います。
 この問題については、北海道では自殺者も出るというほどの人権的な問題になっております。こうしたいろいろな大量の解雇、そしてその前からのずっと清算事業団をめぐる問題ということについて、人権的な問題というものについて、法務大臣としてどのような見解をお持ちか、ここで伺いたいと思います。
#204
○長谷川国務大臣 委員にお答え申し上げます。
 本件は、労使にかかわる問題でありまして、それぞれの専門の機関において人権擁護上配慮しながら解決に努力いたされておりますので、うまく解決するように私ども期待をいたしております。
#205
○鈴木(喜)委員 今ちょっと聞こえませんでしたけれども、人権擁護上配慮をしながらされているというふうな評価を、この労働省または運輸省の方々のやり方というものに評価をされているということでしょうか。
#206
○長谷川国務大臣 今の現状においては評価をいたしております。
#207
○鈴木(喜)委員 評価をされている内容について、もう一度おっしゃってください。人権的にでしょうか、ちょっとそこのところが私よく聞き取れなかったものですから、もう一度お願いいたします。
#208
○長谷川国務大臣 この問題は、聞く人によっていろいろ見解が違うと思うのですよ。そういう意味で私は、人権的にも今までそれぞれ努力をされてきた、でき得べくんば今後も努力を重ねて犠牲者が出ないように措置をできないものかというふうに念願をいたしております。
#209
○鈴木(喜)委員 現在既に自殺者その他いろいろな形での犠牲者が出ている現状というものがあるわけなんですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか。
#210
○長谷川国務大臣 大変犠牲者が出たことについては、本当に遺憾であります。
#211
○鈴木(喜)委員 法務省に伺います。
 法務省としてはこの問題についてどのようなお答えを持っておられるか、法務省の方で結構でございますけれども、お願いいたします。
#212
○篠田政府委員 やはりこういう事態が起こっていることにつきましては遺憾だと思いますけれども、一応専掌機関で努力されていることを期待いたしたいと思います。
#213
○鈴木(喜)委員 この問題には、冒頭に申しましたように、ただ単に労使間の問題ということではなくて家族全体を含んでたくさんの人たちの非常に大きな生活がかかっています。私のところにもたくさんの手紙が寄せられましたし、いろいろ交流会に出たりしてその人たちの悩みや苦しみを聞いています。今ここで国鉄から国労上がりだということでレッテルを張られるとどこへ行っても就職することができない、一たんしても、もうどうしてもそこにいたたまれなくなってしまう、何回もそれを繰り返しながらその人が生活の中で非常に苦しんでいくという状況が手にとるようにわかる、そういうお手紙をいただいています。
 こうした問題について、これまで聞いてきました政府の方々のいろいろな御答弁というものは余りにも冷たい。もっと温かみのある、人間味のある御答弁というものを私はいただきたいと思うし、これから先も考えていっていただきたいと思います。こうした問題について、ただ単に法律上どうであるとかこうであるとか強制力がないとか、そういうことで片づけられる問題では今の時点ではなくなっているんだということをやはり認識していただきたいと思います。
 この問題は終わりまして、最後に、ちょっと問題は変わります。司法試験の問題について大臣の方から所信表明がございましたので、司法試験制度の改革についてちょっと伺います。
 ここで、司法試験制度の改革を考えられているということのまず第一の趣旨ですね、趣旨というか意図というか、大きくどういうことなのかということを一般的にお答えください。大臣、お願いします。
#214
○長谷川国務大臣 お答えを申し上げます。
 昨今、司法試験と申し上げますか、検事になり手が非常に減少をいたしております。これはなぜ減少したかということでいろいろ検討いたしておりますが、一般の就職する人と、司法試験が余りにも難し過ぎるという話もあります。今まで三回か四回受けないと合格をしない。それで三回受ければ三年間時間を費やすわけでありますから、今の若い諸君が三年待つあるいは四年待つということが現実の問題としてなかなか不可能であるかもわからない。はっきり申し上げるわけにもいきませんが、三回も四回も受けて入らないとなると、これはやはりなかなか今の若い者にとってはいたたまれないことになるのじゃないかと思うのです。
 そういう意味で、それを解決するには、じゃどうしたらいいか。じゃ試験問題を簡単にしたらどうかという意見もありますよ。それからもう一つは、合格者を、今五百人なのをふやしたらどうかという説もあります。それらの問題等について今いろいろ弁護士会だとかあるいは法曹界の各般の皆さんと相談をして、ひとついい方法を考えていただきたいということでお聞きしましたら、甲乙丙三つの案が今出されておりまして、それをどれを選択したらいいか、あるいは甲と乙とあわせたもののいいところをとるとか、甲乙丙の一番いいところを三つとるとか、いろいろな意見が今出ておりますが、目下作業中でございます。そういうことで、昔は検事になるといったらまるで竜が玉を得たような大変な名誉であり、また若い者にとっての大変な魅力だったわけでございます。そういうものが時代とともに全く変わってしまった、そういう面で今対応策について真剣に検討いたしておるところであります。
 以上であります。
#215
○濱崎政府委員 失礼でございますが、若干補足して答弁させていただきます。
 この司法試験改革制度に取り組んでおります趣旨につきましてはただいま大臣が答弁申し上げましたとおりでございますが、答弁申し上げました検察官の任官者の数の確保といった問題、これのほかに、法曹としての人材、検察官に限らず裁判官、弁護士も含めまして法曹としての人材をより適切に、かつより少ない受験回数をもってより多く確保する。そういう広い観点からもこの司法試験改革制度に取り組んでいるわけでございます。現状では、合格者の受験回数平均が六回から七回という回数になっている。それだけ長い期間をかけないと合格できないという制度になっておりますために、広く法曹全体の適切な人材をより短い受験期間で確保する、そのことが法曹の将来のために極めて重要なことであるという認識のもとに検討を進めている次第でございます。
 以上、失礼ですが、補足させていただきました。
#216
○鈴木(喜)委員 今、大臣並びに政府委員の方の御答弁なのですけれども、何か一番本音は大臣の方がおっしゃっているのではないかと思うのです。検察官の集まりが悪い。裁判官に関しては、ことしは聞くところによりますと八十何名かの志望者がおられるということなので余り問題はないのじゃないかと思うのですが、検察官に関しては、今回希望者が非常に少なかったというような事情がおありだと思います。これがずっと恒常的に少ないというのは、これは司法試験の改革の制度の改革ということではなくて、検察庁のあり方の方に問題があって、若者とかそれから修習生に人気のない検察庁であるということはそれが事実なのであって、それが司法試験の制度の改革ということとは直接は結ばないというふうに私は考えるのですけれども、その点はいかがでしょうか。
#217
○濱崎政府委員 ただいま御答弁申しましたように、この改革は広く法曹に有為な人材を集める、そして法曹全体が、国民の適切なかつ迅速な司法判断を求めることができる、こういうことに資するということを目標に行っているものでございます。
 御指摘のとおり検察官の定員に満たないという状況、これは一つの大きな解決すべき課題でございますが、検察官の問題だけではなく、裁判所、裁判官の人数ということに関しましても、若くて可塑性に富む人材をできるだけ多数確保する必要があるということは、私どもも、また最高裁判所の方も認識しておられるところであります。また、弁護士の人数も含め法曹全体の人口という観点から考えましても、経済社会が極めて複雑化し国際化していく現状の中におきまして、紛争の司法的な解決を求める場面、これは顕著に増加しておりますし、これからもますます増加する一途である。そういう状況の中で、遅い裁判ということは、国内的、国際的な観点からこれからの我が国の発展のためにとりましても早急に手を打っていかなければならない問題である、こういう認識を持っております。そういう観点から、広く法曹全体の将来の問題としてこの司法試験改革の問題に取り組んでいる次第であります。
#218
○鈴木(喜)委員 法務省が今求めておられる法曹のあるべき像といいますか、そういうものを言いますと、私なんかはまさに全くそれに当てはまらない法曹であったという感じがするわけですけれども、年齢の問題、それから受験回数の問題、そういうところでチェックをしてこれからの改革というものをされていくのだろうと思うのですが、ここで求めている法曹像というものは、若くて可塑性に富む、そういう人をたくさん採りたいということだと今おっしゃったと思うのですが、それにプラス渋くて人生経験に富む、そういう人間も少しぐらいはいてもいいのじゃないか、そういうふうには思われませんか。
#219
○濱崎政府委員 御指摘のとおりであるというふうに思っております。
 ただいま私御説明申しましたのは、裁判所あるいは裁判官の員数の問題という観点から裁判所のお考えになっておることを申し上げたわけでございます。また、裁判官といたしましても、必ずしも若い人ばかりがいいということではもちろんございません。さらに、弁護士という職業について考えますと、これは弁護士としての能力と年齢ということは関係がない、基本的には関係のない問題ではなかろうかというふうに私どもも認識いたしております。そういうことでございますので、私どもあるいは法曹三者で検討をしております内容といたしましては、年齢の制限という方法は考えてございません。したがいまして、具体的な方策といたしましては、受験回数を制限するあるいはそれをある程度バリエーションを持たせた方策を検討するという方向で検討している次第であります。
#220
○鈴木(喜)委員 具体的な問題に関しましては、これからまたいずれいろいろと議論する時期があると思いますのでこの程度にとどめます。ぜひとも、法曹というものを一つの枠にとどめずに、いろいろな人材を各方面から集めるというような形も考えて、そこで司法試験の制度の改革というものに取り組んでいただきたいと思います。
 これで終わります。
#221
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 中村巖君。
#222
○中村(巖)委員 本日午前中に長谷川法務大臣の所信の表明を伺いました。大変詳細でございまして、午前中に太田誠一委員が指摘をされたように、この中では日韓のいわゆる九一年問題について、それに関連するところのいろいろな問題の言及がない、そのことを除いては、当面法務省が直面をしておる問題について大変に詳しく言及をされておって大変便利であるというふうに言うべきであると私も考えております。
 そこでまず、大臣が言及をされましたそのことについて若干詳細にお聞きをすると同時に、その言及をされませんでした日韓の九一年問題について少しくお尋ねを申し上げたい、こういうふうに思っております。
 最初に、この所信表明の内容に即してお聞きをしてまいるわけでありますけれども、まず当面、一番最初に刑事事件の問題について言及をされております。確かに最近いろいろな犯罪が発生をしておるということで、これらの犯罪に対して対処をするということが、これは治安の維持のために大変重要なことであるわけでありまして、法務省当局におきましても、つまり具体的には検察庁におきましても、対処するに際してなかなか御苦労があろうかと思うわけでございます。しかし、この問題は絶対にゆるがせにできない問題でございます。大臣の言われている中には、「検察態勢の一層の整備充実」を図ってこれに対処してまいりたい、こういうことでございます。
 そこで、「検察態勢の一層の整備充実」というふうに言われているそのことの内容はどういうことであるのかということを、まず法務省にお尋ね申し上げたいと思います。
#223
○長谷川国務大臣 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のとおり、最近非常にいろいろな犯罪が多発をいたしておりまして、まさに異常な状態になっているわけでございます。これをどうしたらいいかということ、いろいろそれぞれ関係各省においても検討、研究をいたしておりますが、そのものずばりの対策というものはなかなか難しいのでございますが、一般論から申し上げますと、今の検察の態勢というものをもっと充実して、ただいまもお話を申し上げましたとおり検事になり手がないような今の現状で犯罪を処理するわけにいかないので、まずそういう検察関係の態勢というものを、今こういう時世でございますので、強化する必要がある、そういうことについても今真剣な検討をいたしておるところであります。
 なお、犯罪は法務省だけが担当でなくて、例えば青少年犯罪は文部省あるいは小中学校も関係があるのかわかりませんし、あるいはその他多発している犯罪等についてもそれぞれ関係はございますので、関係各省と対応策について何か研究、連絡をするような形の組織というかそういうシステムを考える必要があるのではないかということで今私もいろいろ検討しているわけでありまして、国会でも終わりましたらそういうことを前向きでひとつ検討させていただきたいというふうに考えているわけであります。
#224
○中村(巖)委員 本当に犯罪をなくすために、あるいは犯罪を減少させるために前向きで取り組んでいただけることは大変結構なことでございます。しかし、今申し上げていることは、具体的に「検察態勢の一層の整備充実」というのはどういうことを意味しているのか、こういうことをお尋ねしているわけでございまして、今大臣が言われましたように検察官をふやさなければならないということも非常に大きいことだろうというふうに思うのでございまして、「検察態勢の一層の整備充実」というのは検察官をふやす方策を講ずる、こういう意味なのかということを伺っているわけでございます。
#225
○長谷川国務大臣 ふやすことだけがその目的ではございませんが、やはり今手不足であり、また希望者が少なくなっておりますので、それも対策の一つであります。
 ただ、今委員御指摘のとおり、若くして検察官になった人がやはり実地の作業になれるような研修だとか、あるいはそれを勉強するとか、そういう場をつくってやらないと、試験に受かったから翌日から使えるというわけでもございませんので、そういう面に対しましても十分な配慮をしなければなりません。
 それから、前段に申し上げましたようにいろいろな関係各位とも相談をしながら、検察官及び事務官の研修、研究の活動の充実により、専門知識の涵養、検察能力の科学的、効果的犯罪情報の収集等態勢管理の充実について、要は検察関係の活動に充実できるような態勢をつくりたいということであります。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
#226
○中村(巖)委員 今大臣が原稿を読まれて、いろいろ言っておられましたけれども、そういうことも極めて重要だというふうに思っておるわけであります。例えば施設の整備であるとか、あるいはまた研修であるとか、そういうことも充実強化のために非常に役に立つことであろうというふうに思います。
 それはそれとして、その中でもやはり何といっても検察官をふやすということがなければならないわけです。現実に本年度任官をされた新任の検事は三十名台というような状況では、これは全国の検察庁そのものが四十幾つかあるわけでありますから、検察庁の数にも足りないという状況であるわけでありまして、これではしようがないだろうというふうに思っております。具体的に検察官をふやすというのはどうやったら可能なんだというふうに法務省は考えておられますか。
#227
○根來政府委員 先ほどの委員も検察庁が不人気だというお言葉がございましたが、一般的にどういうわけで不人気かということに尽きるわけでございます。
 これも、この間二十八人の新任検事の面接を行ったときの話でございますけれども、大体兄弟は一人か二人、あるいは一人っ子というのが多いわけでございます。そして、その両親というのは大体私どもと司じような年配でございまして、今は親の心配は要らぬけれどももう少ししたらやはり親元へ帰りたいというふうに言う者がおりまして、そういう話を聞きますと、やはりこれから転勤の激しい検事の職を求めるよりも、経済的にも安定しておる、居住的にも安定しておる弁護士の方に流れるのもやむを得ないなという気はしたわけでございます。したがいまして、この検事の数をふやすということは非常に難しいことであります。また、先ほど来お話のあったように、人権保障を全うしつつ真相を解明するということも大変難しい仕事であります。したがいまして、そういう難しい仕事よりも、まあもう少し易しい仕事はないかということもまた人情でございます。
 したがいまして、検事の数をふやすということはなかなか難しいわけでございますので、私どもとしては、検事になった検事一人一人を十分その能力を発揮できるようにそういう環境を整える、あるいは研修を充実させる、あるいは一人一人を大事にするということから始めていって、遅まきながら検事の数をふやしていくということしか道はないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
#228
○中村(巖)委員 今のお話は大分悲観的なお話でございまして、司法試験改革の問題があるということも十分承知しておりますし、あるいはまた、今局長が言われたように不人気であるということも私も十分承知しているんだけれども、そういう中を切り開いて何とかふやす方策というものを法務省として積極的に考えられないのかということをお伺いしたわけでありますが、今のようなことから始めなければならないということになると、やはり相当年月検察官が足りないような状況というものが続くのではないか、こういうふうに思わざるを得ないわけでございます。
 いま一点伺いますけれども、検察官が足りなくて検察庁としては非常に困っておられるという状況にあるのかどうか、その点はいかがですか。
#229
○根來政府委員 各庁の定員というのは千人ぐらいでございますが、検察官がどの事件に力を入れてやるかということにも絡むわけでございまして、凡百の幾つかの事件がございましてその事件を一々手厚くやっておれば、これは検察官が何人あっても足りないということでございます。したがいまして、検察官がある特定の事件に力を入れてやっていく、国民の期待といいますかそういう期待に沿ってやっていくということになれば、そんなにたくさん検事がいなくてもいいわけでございます。ですから、これは事件の質と量に絡むわけでございますから、現在のところ検察官の数が足りなくて非常に困っているということはないと思います。
#230
○中村(巖)委員 その問題は終わりまして、次に矯正局関係ですけれども、大臣の所信によりますと、刑事施設法の再度提案をしたいというようなことが書いてございます。私どもとしても監獄法を全面的に改正するということについてはこれは賛成でございまして、今、明治四十一年に制定をされた監獄法のもとで矯正行政というものが行われているということについては、こんなばかな話はないではないかというふうに思っているわけでありますけれども、なかなか現実の刑事施設法案そのものについては、これはさきに提出をされ廃案になっておりますけれども、問題なしとはしないということで、なかんずく留置施設法案との関連、つまり代用監獄の関連がありますものですから、非常に問題があるというふうに思っております。まず、とにかく監獄法の全面改正についてどう考えておられるのか、そして刑事施設法案、廃案になりましたけれども、これをどうしようとしているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
#231
○長谷川国務大臣 今お話しのとおり明治の終わりのころできた法律でございますので、今、平成二年に適用するのはどなたがお考えになっても、今先生御指摘のとおりいろいろ矛盾があり、またいろいろな、ちょっと離れたという感じがするのは当然であります。
 そういうことでございまして、でき得べくんばこの法案を国会に出させていただきたいということは念願いたしておりますが、しかし、与野党ともいろいろ法案の議論を深めていただいて、それででき得べくんば通していただきたいという念願は持っております。詳細については矯正局長から……。
#232
○今岡政府委員 ただいま長谷川法務大臣の方からも申し上げましたように、この法律は、何しろ明治四十一年の三月に成立いたしました。人間の年に数えれば八十二歳を超えている法律でございます。私どもとしましては、これを現代の実情にマッチしました法案にいたしたいということで刑事施設法案を提出いたしたところでございますが、残念ながら、御案内のとおり先ほどの前国会におきまして、解散に伴いまして廃案となったわけでございます。
 その後私どもといたしましては、鋭意この点につきまして検討を重ねてまいっておるところでございますけれども、さきの法案につきましても、衆議院の法務委員会において法案審議等も行われたという経緯もございます。また、その趣旨につきましても、既に御案内のとおりでございますけれども、法案の趣旨とするところは、刑事施設の適正な管理運営を図る、また、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的といたしております。しかも、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図る、そのような中で受刑者の改善更生を期する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善をしようとするものでございまして、この法案の早期成立を必要とする事情はいささかも従前と変わりがないということでございます。今国会に再提出いたすべく、現在鋭意最大の努力を傾けているところでございます。
#233
○中村(巖)委員 従来、刑事施設法と留置施設法というものは一つのセットになって出されておりまして、そのことがいわば大変に物議を醸しておるという状況にあるわけで、そういう状況それ自体を改めない限りにおいてはやはり国会において同じような運命に遭うのではないか、こういうことが考えられるわけでございます。したがいまして、私どもは、刑事施設法案が監獄法の全面改正であるという限りにおいては、これは大いにもろ手を挙げて賛成をいたしたいわけでありますけれども、その絡みにおいて代用監獄という問題が出てくる。そこに大きな問題がある。したがって、留置施設法案というものを切り離すというか、セットにするのをもうやめてしまう、そして代用監獄について刑事施設法案それ自体において言及をしない、こういうような形にでもつくらなければやはり現状の国会の中では通りにくいのではないか、こういうふうに思いますけれども、その辺について考え方はいかがでございましょうか。
#234
○今岡政府委員 今の点につきましては、いろいろ御意見があるということは承知いたしております。いわゆる代用監獄制度が現状のままで今後推移するとは私どもも必ずしも考えていないのでありますが、留置施設に代替収容される者がある限りは、これらの者の処遇に関しまして法律で定める必要がもちろんあるわけでございます。そして、これらの者の処遇に関する事項をすべて刑事施設法案において規定するかどうかということにつきましては、これはすぐれて立法技術上の問題であるというふうに考えておるところでございまして、専らこの観点から、留置施設に代替収容された者の処遇に関する一定の特則が留置施設における被逮捕者の処遇等に関する定めとともに留置施設法案で規定するというふうになった経緯があるわけでございます。そのようなことで、いわばこれまで二本立てという形で参っておるわけでございまして、今回もこれまでと同様に両法案を同時に国会に再提出してさらに御審議をお願いいたしたく、現在警察庁とも緊密な連絡をとりつつその準備を進めているところでございます。
#235
○中村(巖)委員 警察庁に余り義理を感じ過ぎたらいけないのです。警察庁は警察庁で勝手に御努力をされればいいことで、今も現行のままでも留置場というのは存在しているのですから、法務省がそれにかかずらわって、それがために監獄法改正が実現をしないということは大変よくないことだというふうに申し上げておきたいと思います。
 それから次には、民事局関係でありますけれども、コンピューターによる登記事務の処理ということがなされておりまして、このために法案を幾つか通したわけでありますし、登記特会もできたわけでありますけれども、今これがどのように進展をしているのか、それから今後の見通しについてはどうなのかということを承りたいと思います。
#236
○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。
 登記事務のコンピューター化につきましては、昭和六十三年五月に不動産登記法等の一部改正がされたわけでございます。コンピューター化を目的とする改正でございます。
 この改正法が施行されまして以来、東京法務局板橋出張所におきまして、それまで実験的な研究を重ねてきたわけでございますが、昭和六十三年十月にコンピューターシステムによる登記事務の処理を開始いたしました。つまり、純粋にコンピューターだけでブックレスの状態で登記事務を処理するというのを開始いたしたわけでございます。その後、これまでに名古屋法務局の名東出張所、仙台法務局の大河原支局、大阪法務局の民事行政部の不動産登記部門、東京法務局江戸川出張所、福岡法務局粕屋出張所、広島法務局海田出張所にこのシステムを導入いたしまして、現在ブックレスの状態でコンピューター処理をいたしております。
 これらの登記所で現在コンピューター処理の対象になっております不動産の筆個数は二百万筆個でございます。全国の不動産の筆個数、つまり土地及び建物の数が約二億八千万ということでございますので、現在はその約百五十分の一がコンピューターによって処理されておるという状況でございます。
 ただ、この七カ所の登記所というのは、全体から見ますと、いわばまだ実験的な段階といってもいいような状況でございまして、私どもといたしましては、これらの七つの登記所におけるコンピューター処理が非常に順調にいっておりますので、今後これを全国的に展開していきたいと思っております。恐らくこれは当初の計画どおり昭和七十五年、平成十一年になりますか、あるいはさらに若干の年数を必要とするか、いろいろと不確定な要素はございますけれども、計画的にこれを実現してまいりたいと考えております。
#237
○中村(巖)委員 大体このコンピューター化を始めたときに、法務省は十年あるいは十五年で全部完了するのだ、こういうことでありましたけれども、今の局長のお話では、平成十一年ですか、できるというような見通しもおありのようだけれども、ただ、今の状況では、登記所の数は多いわけですから、これは計算上からいっても到底そんな短時日に終わるようには思えないわけでございます。それと同時に、これを早急に実施するためにはそのコンピューターへの移行を実現するところの要員の問題というものがあるのではなかろうかと思いますけれども、今要員の確保というものは十分に行われているのでございましょうか。
#238
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 委員御承知のように、登記事務は戦後急激に量がふえ、かつ質も非常に複雑困難化しておるという状況でございまして、コンピューター化をしなくても、要員が非常に不足しておる、登記の事務職員をふやさなければならないという要請があるわけでございます。そういうことから、また同時に登記のコンピューター化が必要であるという議論も出てまいったわけでございますが、それにいたしましても、全国的にコンピューターが展開されるということになるためにはまだ相当数の年限を要するということにならざるを得ないと思っております。十年でできれば私どもとしては大成功、あるいはもっとかかるのではないかという予測もあるわけでございます。
 そういうような状況でございますから、コンピューター化が完成するまで現在の処理方法による登記事務の処理を相当期間続けていかなければならない、そのためにも相当の人員を必要とする、こういう問題が一つございます。
 それからもう一つは、コンピューター化するために、まさに一時的には相当量の人員を必要とするという問題がございます。それは主として移行作業でございます。つまり、全国に二億八千万筆個ある不動産をコンピューターに移しかえるという作業があるわけでございまして、これはかなりの部分を民間に業務委託することは可能でございますが、どうしても正規の職員が最終的にチェックするというような形で処理しなければならない分野がたくさんございます。そういうものにぎりぎり絞りましても、かなりの数の正規の職員を必要とするという問題がございます。コンピューター化を円滑に進めるためには、またコンピューター化を完全に全国的に終了した暁にはかなりの人員の節減効果ということが期待できるわけでありますが、それまでの過程においては、一時的にせよ、まあ十数年の期間がかかるとすればその十数年間はかなりの職員の増員を必要とするという状況にございます。
 私どもといたしましては、コンピューター化を円滑に進めるためにこの増員を毎年毎年お願いしているところでございます。しかしながら、必ずしも私どもの期待するような状況にはなっていないという事実がございます。現下の厳しい財政状況のもと、これはある意味においてはまことにやむを得ない面があると思いますが、今後とも登記事務の円滑処理あるいはコンピューター化の円滑な推進のために必要な増員を確保するために努力してまいりたいと思っております。
#239
○中村(巖)委員 目標年次までに終わらせるためには、要員確保のために大変な努力をしなければこれは到底できないのじゃないか、こういうふうに思っておりますので、法務大臣の方でも鋭意御努力をお願いしたいと思っております。
 次に、同じく民事局関係で、商法等の一部を改正する法律案に関することであります。
 最近、商法等の一部を改正する法律案の中身が固まったということで報道されておりますし、一両日中に国会に提出される、こういうことでありますけれども、その内容を伺いますと、これは法制審議会が先般答申された中身と非常に異なるところがある、こういうことでございます。
 もともとこの商法改正に際しましては三本柱があるのだということで、一つは最低資本金制度である、もう一つは会計調査の制度である、そして三番目には決算書類の公開であるということで、その三本柱のうちの一つである会計調査の問題が法制審議会の段階で既に断念をされ、その上、法制審議会から答申をもらいながら、法務省はさらに、残る二本柱のうちの一本である決算書類の公開の問題をこの法案の中から抜いてしまった。そして、最低資本金制度そのものについても、新規設立会社についての答申の中身とこれを違えてしまう。こういうような状況になっているわけでございます。
 私は、そういうことにすることがいいことなのか悪いことなのかということはまた二の次にいたしまして、どうしてこういうことになってしまうのだ。答申というのは法制審議会がやるんだから、それはそのまま法案にはできないという部分もあるのかもしれない。しかし、それならそれで法制審議会のリードのしようもあるだろうし、世の中の実態あるいは世の中の人の意見と全く乖離したような答申を受け取って、いや、答申は受け取ったけれどもこれしかできませんというようなことでは、法務省の権威が問われることになるのではないかと思います。その点についてお答えをいたただきたいと思います。
#240
○清水(湛)政府委員 大臣からお答えをいただく前に、経過等について若干御説明させていただきたいと思います。
 御指摘のように、法制審議会の改正要綱では、最低資本金は、新設会社については株式会社は二千万円、有限会社は五百万円、既存会社については株式会社は一千万円、有限会社は三百万円とされておりました。また、計算書類の登記所における公開の制度というものが答申されておったわけでございます。これが先ほどおっしゃいましたように、けさほどの閣議で決定されました法案におきましては、株式会社の最低資本金は一千万円、有限会社については三百万円、計算書類の登記所公開の制度は法案には盛り込まれなかったということになっているわけでございます。そういう意味で、今回の改正案が法制審議会の答申の内容と異なるという結果になっているわけでございます。
 最低資本金の考え方についてはいろいろ議論もあるところでございますが、特に一つの柱と言われた計算書類の登記所における公開制度が取りやめになったことは、私ども担当者としても非常に残念に思っているところでございます。これは現行の官報あるいは日刊新聞紙による公告というものが形骸化しておってほとんどの会社によって守られてはいない、中小会社においてはほとんど守られていないというような状況を踏まえまして、しかも資本金三千万円以上等の会社に限るというようなかなり制限した形で計算書類の登記所公開という制度が答申されたわけでございます。
 しかしながら、法制審議会の審議の段階におきましても、あるいは改正要綱が答申された後におきましても、中小会社を中心に会社の負担が重くなる、つまり現在の中小会社のあり方が商法の規定に照らして適当であるかどうかという問題はさておいても、少なくともこういう制度を導入することによって中小会社に新たな負担を課することになるというようなことから、現実にこの計算書類を登記所に提出しなければならないこととなる中小企業を中心といたしまして負担が重くなる、あるいは会社の経理を公開することについて問題がある等の指摘がされたわけでございます。また、制度の導入を肯定する意見の中にも、例えば資本金一億円以上の会社に限るべきだというような議論もあったところでございます。
 私どもも、このようないろいろな意見を聞きながら、商業登記所における計算書類の公開というのは、ある意味におきましては戦後の商法が抱えていた一つの大きな問題であったわけでございますけれども、まだ現実にこの適用を受ける中小会社の方面に必ずしも十分に理解が行き渡っていない。その必要性は観念的にはお認めいただいても、現実の問題としてはこれを受け入れるような理解がまだなかなか深まっていないというようなことを率直に感じたわけでございまして、このような状況を考えますと、今回の改正案に盛り込むのは必ずしも適当ではない。今後これら関係方面の理解を深める努力を積極的にして、いつの日にか答申の趣旨に沿った改正の実現を見たいというふうに考えまして、今回の改正案に盛り込むことは見送らせていただいた、こういう状況でございます。
#241
○中村(巖)委員 御事情はいろいろおありになってこうなったということは理解ができないわけではありませんけれども、法務省は会計調査の問題でも極めて熱心であった、それからまたこの決算書類の公開の問題についても大変熱心であった。しかし、これが実現をされない、こういう結果になったということであれば、熱心であるならば熱心であると同時にまた、これは私自身の個人の考え方としては理論的には極めて正しいんだろうというふうに思っているわけでございまして、これを今後どういうふうにされるのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。
#242
○長谷川国務大臣 中村委員からいろいろ応援演説を承りまして大変ありがたく存じます。
 今担当局長が御説明申し上げましたとおり最初の案でいこうということでいろいろやってみたのでございますが、委員から今お話がございましたようにいろいろの意見があり、いろいろの御指示もございましてああいう形になったのでありますが、これまた、時間がたつに従って若干ニュアンスも変わってくるような意見も出るかもわかりません。そういう面で、今後ともまた事あるごとにいろいろ検討しまして、最終的には理想案の形に持っていきたいというふうに考えております。
#243
○中村(巖)委員 この問題はそれ以上聞きませんけれども、要するに、こういう結果に終わったということは法務省そのものの権威の問題でありますし、法務省のやり方のまずさの問題でもあるということを御指摘申し上げなければならぬということ。それと同時に、やはり今後の問題として、法制審議会が答申をしたことはそれはそのままできるだけ立法化をしなければならないんだ、法制審議会が決めたんだから正しいんだというような法務省の従来の言い方というものは今後揺らいでくるのではないか、こういうことを危幌をせざるを得ないというふうに思っておりますことを御指摘申し上げます。
 次に、入管局関係でありますけれども、昨年来話題をにぎわせました偽装ベトナム難民、いわゆる中国人がベトナム難民を装って多数の方々が非合法の形で日本に入国をしてきたということの問題について、この処理は今現在どうなっておりましょうか。
#244
○股野政府委員 委員御高承のとおり、昨年の五月二十九日から十月二十八日までの間に我が国に直接ないしは百名を上回るグループという形で到着をしたボートピープルが三千百十名に達しておりました。これにつきまして入管当局で調査をいたしました結果、これまで、その中でこれは偽装した難民である、いわゆる偽装難民という判定を入管当局として下しました者については、これはその数が二千六十五名になっておりますが、既に退去強制手続を行い、退去強制令書を発付いたしております。その二千六十五名のうち、中国側と折衝をいたしまして中国側においてもこれは中国人であるということを身元確認をいたしました者が七百九十二名になります。この七百九十二名につきましては、既に中国に向けて送還済みでございます。そこで、この退去強制手続を既にとっている人間でまだ中国に向けて送還を行っていない残りの者について、現在その身元確認を中国側において行うことを求めておりまして、中国側との折衝を進め早期送還を図るということで現在臨んでおります。
 それから、まだ偽装難民であるかどうかということについての調査を終えてない者があるわけでございますが、これについては引き続き調査に全力を挙げておりまして、その結果が判明次第速やかに退去強制等の手続をとることにいたしております。
 なお、前述の、三千百十名のボートピープルが日本に直接にあるいは百名を超えるグループの形で到着いたしましたが、その中で九十三名についてはベトナム人であるということが判明をいたしました。これはこの人たちの希望に従いまして、これらの方々については既に米国等に向けて出国をするということで措置をとった経緯がございます。
#245
○中村(巖)委員 そうしますと、今三千百名のうち二千幾らか偽装難民であることが判明したということは、まだ一千近くの人たちがどちらかということの判定がつかないままにおるということを意味しているのでしょうか。それと、二千何名のうち七百何人は中国へ送還したけれども、あと千三百名近くはいるわけであります。その両方合わせると二千三百人ぐらいがまだ日本にいて、偽装難民であることが判明しているか、もしくは偽装難民であるかどうかまだ調査中である、こういうことになるのでしょうか、その辺どうなっておりましょうか。
#246
○股野政府委員 まず、委員御指摘の、三千百十名のうちこれまでに偽装難民と判明をした二千六十五名以外の残りの人たちについてでございますが、その中には、先ほど申し上げましたように既にベトナム人であったと判明して、その人たちの要望に応じて米国等に向かって出国をした者が九十三名あるわけでございます。他方、まだその調査を終わってない者が確かに今あるわけでございまして、これについては偽装難民であるかもしれないという観点から引き続き調査を行っておるということでございまして、この人たちは現在日本に引き続きおる。したがって、この人たちの調査を進めることによって偽装難民であるということが判明すれば退去強制手続をとり、また、中国側と折衝して送還手続を行う段取りになってまいります。
#247
○中村(巖)委員 そうすると、結局二千人を超える人たちが今日本に収容をされて日本におる、こういうことになるわけで、それについては日本の国費を非常に使っているということになるわけです。そして、この問題が発生してからだんだん一年近くになってくるわけです。その間、そういったような状態では非常によくないじゃないか、早く調査して帰すべき者は帰さなきゃ、これは日本の国家財政にとってもマイナスじゃないか、こういうふうに思いますので、早急に処置をとっていただくようにお願いを申し上げたいというふうに思います。
 次に、やはり入管関係ですけれども、今言われていることは帰化の申請手続ですね、これが非常におくれている。民事局ですね。帰化の申請手続が大変におくれている、こういうことでございまして、東京関係では二年たたないとその帰化手続が終わらない、こういうことでございます。一般的にもそうでありまして、私が関係ある問題では、韓国人と結婚した日本の婦人の子供さん、それが本来的には国籍法の附則で、昭和四十年一月以降生まれておりますので三年以内に届け出をすれば日本国籍を取得できたわけですけれども、その人が三年を経過してしまったために、その限りの手続ではやれないで帰化の申請をした。こういったような場合にすら、もう間もなく二年になりますけれども、二年を経過するのにまだ帰化が終わらない。こういうような状況でございまして、確かに法務省も民事局もなかなか人員の確保が難しいので、東京法務局あたりは一人当たり相当件数手持ちをしているのだ、こういうお話も聞きますけれども、これでは余りにも遅過ぎるのじゃないか、しかもなおかつ、今言った国籍法の附則の関係の人なんか、もう文句なしに何の審査もなしにほとんどその事実が確認されれば帰化できるような人でさえそんなにかかるということは、これはもうしようがない。また、やり方そのものが、順番にやっているのかどうか知りませんけれども、そういうような人は別分類にして早急に手続をするようなことでなければしようがないのではないか、こういうふうに思いますけれども、帰化手続は何とかならぬのでしょうか。
#248
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 委員みずからの御経験に基づいての質問ですので、私ども本当にそういうふうに、帰化事件がある種類あるいはある局のものについて相当の長期間を要するケースがあるということも事実として残念ながら認めざるを得ないという状況でございます。
 一般論として申しますと、帰化事件の処理については、私どもの一つの努力目標として、申請のときから十カ月内に結論を出す、遅くても一年以内には結論を出すということも大きな目標に掲げまして、全国の各法務局が努力をしているわけでございます。大部分の局におきましては、そういう帰化の範囲内で事件がスムーズに処理されておるというような結果になっているわけでございますが、ただ、身分関係の認定が非常に複雑であるというような事件、あるいは特定の局に非常に集中的に大量の帰化事件が申請されるというようなことがございまして、一時的にその処理が長期化をするというようなこともございます。さらにはまた、登記事件等が増加する、そちらの方の対応に追われてどうしても帰化事件の処理の方が手薄になるというようなことも現実の問題としてはあるわけでございます。そういうような問題はあるわけでございますけれども、御指摘のように、例えば通常ならば届け出で日本国籍を取得することができる事案であるにもかかわらず期間を徒過したために、帰化という手続になった途端に相当長期間の処理期間を要するということは適当ではないというように私も考えます。
 そこで、そういった事情も踏まえまして、私どももう一度帰化事件の処理状況を洗い直しまして、できるだけ早期に処理することができるように努力をいたしたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
#249
○中村(巖)委員 ある法務局においてはと言われましたけれども、なかんずく東京法務局は非常によくないという状況にあるわけでございますので、東京法務局について早急に要員配置等々について何らかの処置を講ずべきではないか、こういうふうに思います。法務大臣。
#250
○長谷川国務大臣 実はきのう東京法務局の入管関係、登記の関係、現場を約三時間ぐらいにわたって見てまいりました。もう一々中村委員のおっしゃるとおりでありまして、どうにもならない状況で、もうごった返しておりまして、本当にどうにもならない状況。人員を早急にふやさなければなりませんが、法務省といたしましても、それらの問題につきましてこれから真剣な要請をそれぞれ関係のところに申し上げたいと思いますが、どうか各党の先生方からもひとつ御支援をいただきますようによろしくお願いをいたします。
#251
○中村(巖)委員 それでは、今大臣所信に言及をされた問題については、以上をもって終わります。
 次に、日韓地位協定に伴うところの諸問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。
 言うまでもなく、日韓地位協定におきましては、在日韓国人の三世の問題については、三世と申しますか、一九七一年の一月十七日以降日本で出生した在日韓国・朝鮮人についてはまだその法的地位というものがはっきりしてない。それ以前の人については協定永住ということになっているわけでありますけれども、この問題について二十五年間協議をするんだということで、その協議の期限が来年の一月十六日に来る、こういうことでございます。この問題でございますけれども、外務省が来ておられましょうか。
 まず第一に外務省に伺いますけれども、協議がもう何回も行われているということについては承知をしておりますけれども、この協議の現状はどういうふうになっておりましょうか。
#252
○今井説明員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、この問題に関する日韓協議は、八八年の十二月から既に正式協議を三度開きまして、さらに非公式協議も何度か重ねてきております。
 この協議におきましては、在日韓国人の方々の法的地位の安定を図りまして、これらの人々が我が国の社会秩序のもとで安定した生活を営むことができるようにする、そういうことが両国間あるいは両国民の間の友好関係の増進に寄与する、そういう基本認識では日韓一致しておりまして、その基本認識のもとでかなり率直な意見交換を行ってきておるところでございます。いまだ結論を得るに至っておりませんけれども、今後ともこのような基本的な認識に基づきまして、双方が満足できるような回答、解決を得られるように今後とも努力を重ねたいと考えております。
#253
○中村(巖)委員 その協議の中身でありますけれども、協定永住者の三世、これについて、日本における永住権を付与するということについては日本側も異論がないんだろうというふうに思います。問題は、それに付随してさまざまな在日韓国・朝鮮人の法的地位の問題というものが出てきて、それについての協議というものがなかなかまとまりかつかないんだろうというふうに私どもは想像をいたしておりますけれども、韓国側からこの法的地位に関して持ち出されている問題、つまり永住権を付与するという以外の付随的な要求、そういうものはどういうものがありましょうか。
#254
○今井説明員 韓国側からは、永住権の付与のほかに、退去強制制度の廃止、それから再入国許可制度の適用除外、それから指紋押捺制度の適用除外、あるいは外登証の常時携帯義務の適用除外、それから地方公務員採用への道を開いてほしい、あるいは国公立の学校の先生への採用の道を開いてほしい、それから民族教育を支援してほしい、あるいは地方の参政権を認めてほしいというような、いろいろな問題提起がございます。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
#255
○中村(巖)委員 そういう要求について、それぞれ今日までの協議の中で、日本側としては韓国に対して三世あるいはそれ以前の在日韓国・朝鮮人に対してこういうところまでは地位を与えることができる、しかしこういう点についてはそれは与えることはできないのだ、こういうことであるからこそ今日までの協議がまとまりがつかない、こういうことだろうと思うわけでありますけれども、日本側として、今韓国側の出された付随的な要求、それのうち、どういうことについては譲歩ができ、どういうことについては譲歩ができないのだという、現状でどうなっているわけですか。
#256
○股野政府委員 委員御指摘の各種の問題について、法務省当局の方で検討している問題について現在の検討状況を基本的なところで御説明を申し上げたいと思いますが、何分この問題については韓国側との話し合いが行われている最中でございますので、その詳細について先方の立場あるいはこちらの立場というものを具体的に述べるということは、この席では差し控えさせていただきたいと思います。
 そこで、この問題について、法務省当局が法務省当局として所管している事項についてとっている考え方というものが次のようなものであるという形で御了解願いたいと存じます。
 まず、退去強制制度の問題でございますが、これは法務当局としては、現在の退去強制制度につきまして昭和四十年の日韓法的地位協定における規定がございまして、協定永住者について一般の外国人よりも有利な取り扱いが設けられておりまして、現在協議の対象になっておる第三世代以降の人たちについても、親の協定永住者という人たちよりも不利な扱いはしない、こういう方向で検討をいたしております。
 なお、委員も御承知でいらっしゃるところでございますが、昭和四十年の法的地位協定に関連して、この協定について合意された議事録がございまして、その中で、退去強制の制度につきましては、日本側としては人道的な見地からその者の家族構成その他の事情に考慮を払う、こういうことを述べ、双方間でこれが了解されているという事項がございますので、日韓法的地位協定における条文の運用につきまして、このような了解に基づく運用を現在までも既に行ってきているということがございます。
 それから次に、再入国許可の問題でございますが、これにつきましては法務省当局としては、再入国許可をもって出国していることのできる期間を延長するということについて検討をいたしている状況でございます。
 それから、指紋押捺の問題がございますが、これは法務省当局といたしましては、人物を特定する方法としての確実性という観点から現行の制度が果たしている役割というものを考慮する必要があると考えております。これに関連しまして、外国人登録法の一部改正に際して、昭和六十二年九月、衆議院及び参議院の各法務委員会において附帯決議をちょうだいいたしておりまして、その附帯決議の内容を踏まえまして、法務省当局としても指紋制度にかわる同一人性の確認手段の研究開発に今努力中でございます。
 それからもう一つ、外国人登録証の常時携帯の問題でございますが、この点について法務当局としては、即時的に外国人の身分関係を把握する、こういうことがこの常時携帯制度の趣旨でございますので、その趣旨に照らして常時携帯制度というものは基本的に維持さるべきものであろうと考えておりますが、先ほど申し上げました昭和六十二年九月の国会における附帯決議に基づきまして、その常時携帯制度につきましても、その制度の乱用にわたることがないよう常識的、弾力的な運用がなされている、こう承知しております。
#257
○中村(巖)委員 今の問題については次に間きますけれども、三世問題について韓国の方では、三世だけではなくて子々孫々まで永住権を与えるべきだ、こういうふうに言われているということでございますけれども、外務省はそのことについてはどうなのですか、異存かないのですか。
 それと同時に、この中心的な問題と付随的な問題があるわけですけれども、中心的な問題ないしは付随的な問題を含めて、これを今度来年の一月までに協議が調えばまた日韓地位協定の改定をするというような協定の方法でやるのかあるいはそのほかの方法でやるのか、その辺はどうなっておりましょう。
#258
○今井説明員 先生御質問の第一点の、子々孫々の話でございますけれども、これもまだ全体が協議をやっている最中でございまして、まだここで明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 第二点の方の、解決した後、結論の得られた後の措置はどうするのか、法形式はどうするのかという御質問でございますけれども、これも実は内容を先に固めて内容に照らして法形式を検討していこうということになっておりまして、まだまだ結論が出ていない段階でございます。
#259
○中村(巖)委員 子々孫々の問題についても、とりあえずじゃ今度は一九七一年一月十七日以降出生した三世で、現に来年の一月十六日までに生まれている人について協定してみたところでこれはしようがないので、また次々問題を先送りにするばかりですから、これはやはり子々孫々までの問題をここで抜本的に解決をしておかなければしようがないのだというふうに思うわけでございます。
 それと同時にまた、問題それ自体を何とか抜本的に解決しなければいけないのじゃないかということでございまして、日本の法体系に固執をしておるということであると、その子々孫々というか永住権の問題はいいかもわかりませんけれども、法的地位の問題というものがずっと後々まで問題を残していく、そのたびにいろいろな問題が起こってきて、今回一応何とかおっつけた、おっつけたというのは言葉は悪いけれども、したとしても、また次から次へと問題が起こっていくことになるのだろうと思っております。この際抜本的に解決する方策を講じなければならない。
 それには、今のような日本の政府の対応の仕方ではこれはだめなのじゃないか。つまり、法務省はこうだこうだということを言って、今の外登法を崩せないんだ、こういうことをおっしゃり、文部省はこうなんだこうなんだ、自治省はこうだ、それぞれが自分の所管関係の法律に固執をしている、こういうことでは一切解決になっていかないのだろうと思っているわけでございまして、もう少し事務当局的なそんな協調をするのではなくて、日本政府が打って一丸となった解決方法を講じていくということが大切だろうと思っているわけでございます。ある意味ではそれは政治的決断というふうにいうものなのかもしれませんけれども、そういうことをしていかなければならない。
 その場合に、日本と韓国との従来の歴史的な関係というものを重視する、あるいは在日の韓国・朝鮮人の二世、三世の置かれている状況というものを重視するということでなければしようがないので、ただ単に、日本が韓国を併合した、そのこと自体が悪かったという反省に立つというそれたけの問題ではなくて、かつて日本の国籍を有しておったんだということ、さらにはまた、その人たちが日本で生まれて日本で育ち、今多くの在日韓国・朝鮮人はほとんどが日本で生まれて日本で育っているという状況の中で、日本的な発想方法を持ち、日本的な感性を持ち、それは日本の社会にある意味では、言葉は悪いけれども、同化をしているような状況にある。ただ、国籍だけは手離したくないんだ、こういうような中でで今暮らしている状況、これを考えたときにやはりそれに応じたことを考えなければならない。日本のその人たちに対する責任というものを考えなければならないのじゃなかろうかと思っているわけです。
 過去の歴史をたどれば、強制的に連行されてきたとかいろいろなことがあります。そういうものをすべて総合した上に立った大胆な政治的決断というものが必要であると思うわけでありまして、午前中の質問でも太田誠一委員は、アメリカにおいても日本人に対して救済をしたではないか、こういうことを指摘されましたし、また、今の世の中は、ソビエトでさえカチンの森の事件について、これは自分がやったんだということを認めて謝るという時代でございますから、そういう認識に立たないと日本が国際的な孤児になってしまう、こういうことだろうと思っておりまして、概括的に大臣、いかがですか。
#260
○長谷川国務大臣 非常に貴重な御意見、御示唆をいただきまして、大変ありがたいと思っております。ただ、今事務折衝の真っ最中でございますので、今ここで第一条がどうだ、第二条がどうだという議論をしますと交渉にもいろいろ差し支えがないとも限りません。しかし、今先生のお話は本当に傾聴に値する御意見でございますので、十分腹におさめていきたいと考えております。
#261
○中村(巖)委員 今、竹下元総理が韓国へ行っておりますし、あるいはまた盧泰愚大統領が日本に来るということの中で、やはり早急に解決を図られなければならない問題だろうと思っております。
 抜本的に解決をするためにはどうするのかというと、私は、いろいろ考えていくと、やはり国籍の問題に帰着してくるのではないかと思っておりまして、在日の方々の団体なんかにはかなり抵抗が強いかもしれませんけれども、やはり三世を含めて、それ以前の世代も含めて日本国籍を付与してしまう、こういうことが一番いいのではないか。そうすると問題は抜本的に解決をしてしまうわけで、外登法の問題もなくなってしまうわけですから、例えば本人が希望すれば、届け出で日本国籍が取得できるというような制度を考えたらいかがか、こういうふうに思うわけです。そこまでいかないと問題はいつまでも残っていく、こういうことだろうと思うわけです。
 それと同時に、この人たちについて特殊な取り扱い、日本の既存の一般的な法体系を廃棄をした特殊な取り扱いというものをしなければならぬのじゃないか。それは確かに一般論でいえば、再入国問題にしても強制退去問題にしても、あるいは指紋押捺、常時携帯の問題にしても、それは外国人一般に等し並みにやっているんだからこういうふうにやらなくてはならぬのだ、こういう発想を捨てたらどうなのか、そういう人たちは準日本人として取り扱うのだ、こういうふうな大胆な踏み込みをしなければ問題は解決をしないと私は思うわけであります。そういう人たちについて指紋押捺も常時携帯もやめてしまおう、それは特殊な、こういう人たちに限ってだけれども、やめてしまうということをおやりになったらどうか。
 さらにまた、再入国の問題について言っても、五年間通用する数次旅券と同じようなものをその人たちに付与をするということで日本人と同じように取り扱う、こういうようなことをやらなければならない、こういう時期に来ている。これは日本がそれをどれだけやれるのかということが、これから日本が国際社会の中において他民族を抱えてともに生きていく道だろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、最後に入管局長のお答えを聞きまして終わります。
#262
○股野政府委員 ただいま委員から御指摘のとおり、在日韓国人の方々についての歴史的経緯があるんだという点は、法務当局としても十分考慮をしていくべきものであると考えておりまして、その意味において、一般の外国人の方々とは違う取り扱いを現に行っておりますし、今後の第三世代以降の方々についてもそうあるべきであると考えております。他方、一般外国人の方々とは違う歴史的な経緯をお持ちの方々でありますが、日本人ではない、外国人の方々であるという限りにおいて、日本人との間においての合理的な違いというものが法制上出てくるということも、これも一つのやむを得ないところであろうかと思っております。
 問題は、ただいま委員御指摘のとおり、その歴史的経緯ということについて、あるいはこれらの方々が日本への定住性を非常に高めている方たちであるということを十分考えて、この法体系のもとでそれをどう合理的に解決するかということであろうかと思います。我々も、四十年の法的地位協定の前文に示されている精神、目的というもの、まさにそういうことからのことでございます。十分その点を考えながら対処いたしたいと思いますし、あわせて委員御指摘のとおり、今後第三世代以降の方たちの問題というのは、日本社会にとって長く、我々社会のあり方にかかわる問題であるという、まさに同じ認識に立って対処をいたしてまいりたいと考えております。
#263
○中村(巖)委員 とにかくこの人たちの問題については、日本人でなければ外国人であるという、截然とわかるような、エントベーダーオーダーというような発想そのものを転換をしなければ話にならぬのではないかということを私は思いまして、そのことを御指摘を申し上げて、質問を終わります。
#264
○小澤委員長 木島日出夫君。
#265
○木島委員 長谷川法務大臣から所信表明をお聞きいたしました。第一のところで最近の犯罪情勢をるる述べまして、こうした「各種犯罪事象に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に配意」したい、そして第五のところで司法試験制度の改革について触れておりまして、「裁判官、検察官の任官者が減少するなど、裁判、検察、弁護の法曹三者それぞれが後継者を十分かつ適切に確保するという司法試験制度の目的からはほど遠い」そして「多くの深刻な弊害を生じております。」と述べられました。そして先ほどの御答弁の中にも、検察に魅力がなくなっている、若い人が検察官になりたがらないような傾向が出ている、それを打開をして、量的にも強化しなければいかぬと答弁をなさいました。
 ところが、刑政を直接預かっている刑事局長の答弁の中に、現在検察官が足りなくて困っていることはないという趣旨の御答弁が先ほどあったわけですね。これは大臣所信の根幹にかかわる食い違いの答弁だと私は聞いて、重大なことだ、刑事局長のような答弁であれば、ここに書いてある基本が崩れるというふうにお聞きしたのですが、法務大臣として現在の検察態勢がどうなんだということを重ねてお聞きします。
#266
○長谷川国務大臣 検察全体としては仕事は順調にいっていると私は思います。ただ、今委員御指摘のとおり、若い人がどうも検察官になりたいという希望者が減っておる、その他いろいろそういう状況の中で、将来の、五年、十年先の、今の日本の検察を考えた場合、本当に心配がかなりあるということでございまして、ただいまどうこうということとは若干違うと思うのですが、そういうことで、その対応策はさっきるる申し上げましたように、法曹三団体等々と協議をして、どうしたら検察官になりたい希望の人を多く吸収することができるかということで今検討いたしております。
#267
○木島委員 それではこういうことですか、現在法務省としては検察官不足という状態とは認識していない、ただ若い人が足りないから問題があるんだ、そういう認識だとお伺いしてよろしいですか。
#268
○長谷川国務大臣 今でもやはり若干そういう嫌いはないわけではございませんが、今のこの状態が五年、十年続いた場合かなり心配される状況が予測をされるので、今から万全の対策を講じなければいけないということだと思います。
#269
○木島委員 大臣所信の最後のところで、多くの深刻な弊害を生じておるということが指摘されているのですが、これはどういうことですか。現状を述べたことじゃないのですか。
#270
○根來政府委員 私どもは、検事の定員からしますと定員割れを生じていることは事実でございますし、そういう点からいうと、先ほども申しましたようにいろいろ問題があろうと思います。しかし、先ほど申しましたような点、要するに事件をどういうふうにして検察がこの定員割れの状況で対処していくかということを考えつつやっていった場合に、現在はそういう問題は生じていないということでございまして、定員倒れということでは深刻な問題があると言わざるを得ないわけでございますが、現象面としてそういう問題は生じていないということを申し上げたまででございます。
#271
○木島委員 ここ十数年来の研修所を卒業して検察庁に入る任官者数と、それから定年退職ではなくて検察官の中途退職者数が最近極めて異常にふえているという点が問題として指摘されているわけですが、ここ十数年来の中途退職者数の推移と、そしてその結果としての欠員の数の推移を述べていただきたいと思います。
#272
○井嶋政府委員 まず、最近十カ年程度の任官者数の推移でございますが、十カ年の平均をとりますと約四十六名でございまして、多いときは五十名を超えることもございます。しかし、ことし二十八名ということになりまして、ここ数年見ますと、二十八名の前が五十一名でございましたが、その前が四十一、その前が三十七、その前が三十四ということで、この五年を見ますと、アップダウンはございますけれども若干減少傾向にあるということが言えるという状況でございます。
 これに対しまして中途退職者は、過去十年平均いたしますと約五十名でございます。この点は最近も過去もそれほど変わっておりませんで、大体平均五十名前後が中途退職をいたしております。
 その結果というわけでもございませんが、欠員というのがもちろん毎年出てくるわけでございます。この欠員数というのは、定年退官以外に途中退職もございますので、定年も途中に発生するわけでございますので、そういった意味で数は流動するわけでございますが、十二月末で毎年とっております数で申し上げますと、最近は六十名台から七十名台の欠員になっておるわけでございます。したがいまして、任官者数が減少してまいりますとこの欠員数をカバーすることができなくなるという意味におきまして、先ほど来問題になっておりますように任官者数が低下してくることがそれなりに一つの問題点として指摘されておるというところでございます。
#273
○木島委員 私の調べた資料では、欠員数が昭和六十年が三十三、六十一年が五十七、六十二年が六十二、六十三年が七十六、そして平成元年が七十九、急速に上昇傾向にある。こういう推移でいきましたならば大変重大な事態になるのではないか、私は懸念をしているわけであります。
 それとの関連で、本年四月一日から地家裁の支部の統廃合がありました。それに伴って、地方検察庁の支部の甲号、乙号の支部が一応垣根が形としてはなくなって、支部としては合議事件を取り扱う支部とそうでない支部に大きく分けられたやにお聞きしておりますが、現在の日本の地方検察庁の支部の数と、その内訳として合議事件を取り扱っている支部の数とそうでない支部の数、そしてそういう支部は検察官が、副検じゃないですよ、検察官が常駐しているかどうかについて、まず数字をお聞かせ願いたい。
#274
○根來政府委員 地方検察庁の支部のうち、いわゆる合議取扱庁というのは六十三庁ございます。そのうちのほとんどは検事が配置されておりまして、四庁が検事が配置されていない庁ということでございます。それ以外の支部でございますが、百三十八庁ございまして、そのうち百十三庁が検事が常駐しておりません。
#275
○木島委員 実は私は長野県の諏訪地方で二十年弁護士活動をやってきたわけですが、長野地検の諏訪支部は、少なくとも私が弁護士として活動していた二十年来、検察官がいなかった時期はないわけです。しかし、この四月一日から長野地検諏訪支部から検察官がなくなってしまって、現在副検事が一人になってしまったわけであります。
 どういう状態になっているかといいますと、松本に合議を扱う裁判所がありまして、それに伴って検察庁があって、地検松本支部の支部長が地検諏訪支部の支部長を兼務するという形になったわけですね。しかし、そちらの方の体制は、支部長検事に検察官一人に副検事一人という状況です。しかも、この松本の管轄は大町と木曽がありまして、こちらの方は両方とも今回地家裁支部が統廃合によってなくなりましたから、たった二人の検察官で、長野県中信地方と言いますが松本、大町、木曽全部と諏訪地方人口二十万全部を見るという形になるわけですね。少なくとも諏訪地方は、人口二十万で、従来検察官がいない時期はなかったところで、暴力団関係の事件、覚せい剤の事件等が後を絶たないわけであります。また、最近長野県下においては、外国人にかかわる犯罪が被害者、加害者両方多発しています。また、高速道の開設に伴って交通死亡事件が非常に急速にふえている。重大な事態があって、法務大臣所信に言われておるような「検察態勢の一層の整備充実」、そして「法秩序の維持」が求められているわけなんですが、現実には検察官がいなくなってしまっている、こういう現状があるわけですね。しかし、先ほど来刑事局長は充足しておるというような認識のようですが、認識の根本が違うのではないかという感じがしてなりません。
 重ねて法務大臣に伺います。
 この法務大臣所信の「検察態勢の一層の整備充実」には量的な充実と質的な充実と両面あるかと思うのですが、両方必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#276
○長谷川国務大臣 今委員御指摘のとおり、量と質と両方向上させなければ成果は上がりません。それはおっしゃるとおりであります。
 長野県の問題につきましては、私も新潟で隣なんですが、熟知いたしておりませんので、担当から……。
#277
○根來政府委員 先ほどからもいろいろ御説明いたさせていただいておりますように、要するに、量がたくさんあり質が向上するということが一番望ましいことでございます。ですけれども、現況を踏まえましていかに多数の事件を処理していくかというと、やはり頭をひねっていろいろ考えざるを得ないわけでございます。
 そうしますと、最近交通事情がよくなっているとか、あるいはそういう機動性をいろいろ持たせるとかいうことで集約するといいますか、そういうことで多数の事件に対処をしていくほかはないわけでございます。そういう方法を講じて事件を円滑に処理しているという状況に今あると考えておるわけでございます。
#278
○木島委員 全国の百十七の地検支部において、司法試験に合格をして検察官になっていった者が配置されていないという現状は重大な事態だと私は認識せざるを得ないわけです。
 といいますのは、検察官の役割の一つの重大な問題として、警察官の違法、不当な取り調べをチェックするという役割があるわけですね。大臣御承知のように、昨今全国各地で警察官にかかわる犯罪が非常に多発して、国民の警察に対する信頼が大きく低下しているということがあるわけです。また、最近、冤罪事件で四件の死刑確定の被告人がいずれも無罪になったということがあるわけです。これは、根本的な原因の一つに、警察官が代用監獄で自白を強要してうその自白をとった。そして、残念ながら現在の検察が、警察官がとったうその自白をうのみにして、それをそのまま起訴したということが指摘されているわけであります。警察のこうした違法な状況をチェックするという大きな役割を検察はしょっているわけでありまして、こんな役割から考えましても、全国の百十七の地検支部に一人も検察官が配置されていない、副検事にすべての検察事務が任されているという点は、日本の法秩序の維持、確立にとってもゆゆしい事態だと言わざるを得ないと思うわけでありますが、重ねて大臣、どうでしょう。
#279
○長谷川国務大臣 今委員のおっしゃるようなことが現実だと思います。そういうことでございますので、私ども法務省といたしましても、検察官の質と数と両方とも向上、強化させなければならないということで、スタートしたばかりでございますのでまだ成果は上がっておりませんが、御期待に沿うようにこれからも努力するつもりであります。
#280
○木島委員 そこで、最後に一つだけ数の点でお聞きしますが、平成元年度で欠員が七十九というのは先ほど指摘したとおりでありますが、現在検察事務に直接かかわっていない検察官、刑事局長もそうだと思うのです、公安調査庁に派遣をされている検察官もそうだと思うのです、そういう検察官は何人おるのか、わかったら教えていただきたいと思います。わからなかったら、後ほど教えていただきたいと思います。
#281
○井嶋政府委員 いわゆる法務行政に関与する検事といたしまして、法務省設置法の附則の中に、百三十三名の枠でもって運用してよろしいという規定がございます。現在百三十三名には相当欠員がございまして、私、今直ちに正確な数字を申し上げられませんが、約二、三十名の欠があるだろうと思っております。
#282
○木島委員 次の質問に移ります。
 先ほど法務大臣の方から、若い者に今検察は魅力がなくなっておるという指摘がありました。まさにそのとおりだと思うのですが、根本的な原因はどんなところにあるというふうに法務大臣としては考えておられますか。
#283
○長谷川国務大臣 なかなか難しい御質問でございますが、検察官の仕事自体は五年、十年前と今とそんなに変わっているとは思いません。例えば会社に勤めているとかあるいは役所に勤めているとか、そういうほかの状態がかなり変化しておりまして、わかりやすく申し上げれば、何というか仕事が、ちょっと表現できませんが、近代化して快適な生活がおくれるというふうなことも含めて、検察官の仕事というのは五年、十年前あるいは二十年、三十年前と今ではそんなに変わっていないような、御専門の委員に私からむしろお聞きしたいくらいですが、ほかの職場というのはかなり変わっていると思いますね、生活環境が。そういう面で、検察官も人の子である以上、やはり何とかそういう面もこれから改善をしていかなきゃならないし、いろいろなそういう問題も処理しなければならないというように考えております。ちょっと答弁になったかならぬかわからぬけれども……。
#284
○木島委員 現代の若い青年に検察が魅力がなくなっている最大の要因として、検察に国民から負託をされている任務、巨悪を許さない、逃さない、そして正義を守るというその点で、残念ながら期待にこたえられてないのではないかと思うわけであります。
 実は、ことしの四月十二日の朝日新聞の投書にこんな記事が出ておりましたので紹介いたします。
 「検事不足にはまず不信解消」が必要だ、茨城県の六十六歳の農家の方の投書であります。今春、司法修習を終えて、新任検事はわずか二十八人、戦後最低の数だという。円滑な検察人事のためには約五十人の採用が不可欠とされ、ここ数年来の検事志望著減は司法界にとどまらない重大問題だ。そして、検察庁がこの検事不足を解消するために司法試験の改正の問題を持ち出しているのは見当違いも甚だしい。リクルート事件を初め、パチンコ業界の献金疑惑、警察官による電話盗聴事件――これは私ども日本共産党の緒方靖夫国際部長に対する電話盗聴が神奈川県警察の組織的な犯罪であったことが検察当局としても確認をされておりながら不起訴、起訴猶予処分になったということを指しているかと思います。「さらに事故発生から四年後の今日もなお遺族が検察審査会に上申書を提出し、不起訴処分は不適当だと争っている日航ジャンボ機墜落事故などに見られる検察の対応は、いわゆる国家訴追主義や、起訴便宜主義といった特権の上にあぐらをかいた不まじめなものだ。」と指摘をされているわけです。「いま検察に求められているのは、小手先の改善ではなく、検察自身の体質と運営のあり方に思い切ったメスを加え、内外の強い不信を取り除くことではないのか。」これはもう法曹関係者じゃない全く普通の農家の方から、こういう投書が出ているわけです。
 まさに、ここにこそ今日本の現代の若い青年が検察に魅力を感じなくなった最大要因があるのではないかと。先ほどの法務大臣の御答弁はいささかこの根本のところから目を向けない答弁に聞かざるを得なかったわけですが、どうでしょうか。
#285
○長谷川国務大臣 ちょっとさっき舌足らずでございましたが、御指摘の各事件は、その内容に即し適切妥当な処理がなされているものと承知をいたしております。したがって、これらの事件処理いかんが検事任官数の減少の原因になっているとは考えておりません。以上であります。
#286
○根來政府委員 せっかくの御指摘でございますけれども、それは反省する点はないとは申しませんが、決して、そういうことが若い修習生の検事離れ、検察希望者の減少を呼んでいると私は思わないわけでございます。
 この朝もいろいろ御質問がありましたように、検察というのは適正な手続によって適正な証拠能力のある証拠によって事実を認定するわけでございまして、決して一片の情報で事実を認定していくわけではございません。そういうふうに、人権保障と社会秩序の維持ということを念頭に置きながら、なおかつ真相究明というのは大変な仕事であります。今御指摘のいろいろの事件も、そういう間で検事がいろいろ苦闘した結果導き出した結果でありまして、それが能力不足だというおしかりを受けるならそれは甘んじて受けるわけでございますけれども、それが検察の不信を呼んでいるということについては、私どもはなかなか承服しがたいことであります。
 検察庁で実務修習をしている修習生の意見を間きましても、そういう事情は十分承知しているわけでございます。そういう点で、若干私はせっかくのお言葉でございますが、それは反省の資料とはいたしますけれども、なかなか承服しがたいことだと考えております。
#287
○木島委員 若い修習生が検察に魅力を感じない問題ではないという御答弁ですが、せっかくの御答弁ですが、私は手元に、今春司法研修所を終えて裁判官、検察官、弁護士になっていった第四十二期の司法試験改革問題アンケートの結果を持っているわけです。
 昨年の十二月の下旬に実施したアンケートで、四百九十人中四百九名から回答を得た。その中で、「なぜ、検察官志望者が少ないと思いますか。」というアンケートがあるわけです。まさに今の修習生がどう考えているかということを直接問うたアンケートですが、「複数選択可」とありますが、「検察の仕事に魅力を感じない」百六十五、四〇・三%、「検察の雰囲気・体質が嫌」百九十五、四七・七%、「決裁制度が窮屈」九十一、二二・二%、「採用・勧誘方法に問題がある」六十六、一六・一%、こうした結果があるわけです。転勤の問題で志望が少ないというのも、確かに二百五十二で六一・六%あったりしておりますが、総体的には、個人的な理由よりも現在の検察のあり方そのものに魅力がないのだということが、この四百九人の司法修習生のアンケート調査によっても如実に出ているのではないかと思います。
 同じように、私の手元には、昨年四月に修習を終えて裁判官、検察官、弁護士になっていった第四十一期の後期修習のアンケートの結果もあるわけでありまして、大局は同じでありますが、こういう司法修習生のアンケートの結果は法務省は御存じですか、あるいはこれに対してどうお考えですか。
#288
○根來政府委員 そういうアンケートは私どももよく承知をしております。
 先ほど申しましたように、そういうアンケートとか御意見は決して無視しておるというわけではなくて、一つの反省材料にはいたしておりますけれども、検察の仕事は難しいと、そして、最近のリクルート事件についても大勢の検事が寝食を忘れて奮闘した結果でありまして、そういう意味からいって、そういう事件の結果を見て不信であると言われると私どもも承服しがたい点があるということを申し上げているわけでございます。
#289
○木島委員 もう一つ、私の手元にはこれから法曹になろうとする修習生のアンケート以外に、現に検察官としての職務を長い間やってきて、しかし残念ながら検察官を中途退官をしてやめていった皆さんのアンケート結果もあるわけであります。これは東京弁護士会の一つの有志の皆さんがとられたアンケートであります。
 その中に、「退官した理由は何ですか」と直接になぜ検察官をやめたのかを問うアンケートの項目があるわけであります。数が多いのを幾つか指摘しますと、「検察官の仕事にやりがいを感じなくなった」「自主的な判断で仕事をできない」警察の仕事の事後処理的な役割になっている」「人事に公正さが欠けている」というのが非常に多いわけであります。総体的には、この弁護士さんたちのまとめによりますと、退官した理由の中で、検察の仕事や組織上に関する不満が百七ある、個人的な事情が五十八で、個人的な事情の約二倍が現在の検察の体質にあるということをアンケート結果は物語っているわけですね。
 やはり、現在の検察はまず基本的にここにメスを入れる。自分の問題ですからなかなか大変だろうかと思います。しかし、先ほど来の紹介をいたしました国民の検察に対する期待もあるわけでありますから、みずからの問題点をえぐり出すという勇気が今検察にまさに求められているのではないかと私は思うわけであります。
 検察の最高統括責任者である法務大臣の所感をもう一度求めます。
#290
○長谷川国務大臣 先ほど根來局長からお話がありましたように、必ずしも御説のとおりだとは思っておりません。
 この間、新しい検事が、試験にパスをしてそして四、五十人ぐらいお集まりになっているところへ私も呼ばれて行ったのですが、顔色を見てみましたり、あいさつの内容を聞いておりますと、まさに希望に燃えてこれからも一生懸命天下国家のためにひとつ頑張っていきたいというあいさつ、あるいは一人一人の顔を拝見しまして非常に心強く感じたのです。だから、今委員のおっしゃるのがすべてだとは思いませんが、そういうようなこともなきにしもあらずでございますので、今後ともまた真剣な対応をひとつ考えさせていただきたいと思っております。
#291
○木島委員 私が指摘したのは、まさにそういう希望に燃えて、巨悪を許さない、そして正義を守るという高い理想に燃えて検察官となっていった若い法曹が、今の検察の体質に希望を失って大勢が退官しているじゃないかということを指摘したわけです。ですから、本当に今の検察のみずからの体質にメスを入れないと、ことしも二十八人という少ない数でありますが、せっかくそれでも日本の正義を守っていこう、人権を守っていこう、そして巨悪は許さないんだという高い気概に燃えて入っていった若い検察官、法曹の期待を失うことに今のままではなってしまうのではないかと懸念をせざるを得ないわけであります。
 重ねてそのことを触れまして、時間が参りましたので終わりにいたしますけれども、ぜひとも検察、法務みずからの問題点についてもっと率直に大胆にメスを加えることを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
#292
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 中野寛成君。
#293
○中野委員 きょうの朝刊を読んでおりますと、非常に大きな記事で、日韓議員連盟竹下登会長が訪韓をされ韓国の盧泰愚大統領と会談をされた中で、在日韓国人の三世問題についてまさに日韓間に存在する最大の政治課題として取り上げられ、そして盧泰愚大統領訪日を契機としてこの歴史的な問題をぜひとも解決し、日韓間の真の友好親善のために大きな役割を果たしたい、今日まで日韓間には不幸な歴史が幾たびかありましたけれども、逆にそれらを国民感情の中から一気に払拭する絶好のチャンスであるという意味のことが報道されておりました。
 先般、予算委員会におきましても、法務大臣にそのことを中心に若干の質問をさせていただいたわけでありますが、私は過去十三年ほどこの問題を当委員会や予算委員会等で取り上げ続けてまいりましたし、そしてまた、先般予算委員会で申し上げましたが、十年前に訪韓をいたしました際に、まだ国軍保安司令官であった現在の盧泰愚大統領にお会いをいたしました際に、この在日韓国人の問題についてはむしろ韓国政府としても最大関心事をもって臨んでいただきたい、とりわけ三世問題についてはまだ十年あるとはいえ、当時ですとまだ十年あったわけですが、これは韓国側から問題提起をする、申し入れをするということに法的地位協定ではなっている、この問題については簡単に日本の国内事情を調整することができるわけではないわけでありますから、年月がかかるわけでありますから、これについては早急に取り組むべきだ、それを韓国政府サイドとしても日本政府に申し入れるべきである、我々も日本国内において、この問題は韓国のためとか韓国人のためとかいうのじゃなくて、むしろ日本国及び日本国民の名誉にかけて、人権を尊重する日本人であることを国際社会に認めてもらう、日本人の名誉にかけて我々としては取り組みたい、こういうことを申し上げたことを思い起こすわけであります。
 今まさにその正念場を迎えた時期に当たって、テーマが八つほどございますけれども、きょうは法務省、外務省そして自治省、文部省、その四省の皆さんに、ぜひともこれは特別な歴史的経緯を踏まえて対応しなければならないんだ。諸外国との関係は相互主義ですとか均てんですとかいろいろな文言が使われますけれども、事在日韓国人に関する限りは、無理に強制的に日本に連れてこられ、場合によっては一番厳しい仕事を日本でやらされ、そして日本国籍を強制的に押しつけられ、戦争が終わった段階では、本人の選択の自由もなくまた韓国籍に戻されたという経緯があるわけでありますから、その原点に立ってこの問題は考えなければならない。しかも、現在、永住資格を取り、そして日本人社会の中において日本人と同じように生活をし、教育を受け、納税の義務を果たし、そういう生活を送っている人たちに対してとりわけの配慮をしなければならないという考え方の中で我々としてはこの問題に取り組まなければならぬと思うわけであります。
 永住権の付与につきましては、これは永住権という権利の権をどうするのかという言葉の解釈上の問題があるでありましょうけれども、永住権の付与等につきましてはおよそ見通しがついたというふうに考えておりますけれども、法務省における、退去強制、再入国許可制度、指紋押捺、登録証常時携帯、これらのことにつきましては、ある意味では、現在生まれております三世が例えば指紋押捺をするまでには十六年間、まだ時間的ゆとりもございますが、少なくとも日本人と同じ扱いをするという視点に立って解決されなければならない、こう思うわけでありますし、また公務員採用の問題は、民間企業等に積極的に平等に採用されるということの裏づけ、まず官民の官が率先して取り組むという姿勢を示すことによって民間企業に対する協力要請というのは十分可能になってくるわけでありますから、そういうことを含めて考えなければなりません。これは一般公務員及び小中高等学校の教員についても同じことが言えようかと思います。
 よく、今日までの論議の中で、当然の法理として国籍条項等が制定をされたり、国籍条項がなくても当然の法理として一つの制限を設けたりということがございましたけれども、その当然の法理も、時代の変遷や科学技術の進歩や、そしてお互いの国民感情や国際情勢においてその解釈は当然変化があり得るものと思うわけであります。日本の国会が、そしてまた法務省が、それらのことについて新しい時代にマッチした解釈をすることによって問題は進展をするということもあり得ると考えるわけでございまして、その両面から積極的な取り組みが必要であろう、こう私は思うわけでありまして、まず基本的に法務大臣からこのことについての御見解をお尋ねしたいと思います。
#294
○長谷川国務大臣 今、中野委員のいろいろお考えを拝聴いたしておったわけでありますが、本当に先生の考え方に私ども賛同をいたしております。ただ、御案内のように、韓国で今八カ条、八つですか、九つですか、問題を逐一事務者レベルのすり合わせをやっておりますので、今ここで役所が、一人一人指紋はどうだ、これはどうだこれはどうだとおっしゃいましても、交渉中でございますので、また、言って不利とか有利とかということを抜きにしても若干差しさわりもないとも限りません。そういう意味で、これからの御答弁については若干それらの点はお含みをいただきたいと思います。
 ただ、私も新潟県の日韓協会の会長を十年もやっておるのですよ。今度こっちへ来てかわりましたが、いろいろ歴史的な経過もこれあり、隣国でもあり、また顔を見ても全然区別がつきませんし、こんな近い国がお互いに仲よくならないということは両国にとっても非常に大変なマイナスの面でございますので、今先生がおっしゃった御指摘の点については全く賛成であります。
 ただ、重ねて申し上げますが、この席でいろいろ細かな議論をしますと全部あれしますので、その点お含みの上御答弁をお聞きいただきたいというふうにお願い申し上げます。
#295
○中野委員 それぞれの項目については時間の都合もございますから一つ一つ事細かくお尋ねしようとは思いませんが、まず、急速外務省にお願いして恐縮でございますが、外務省の方で今、日韓間で交渉をしておって、どれがおおよそ話かつくめどが立っているか、どれが問題でそれはなぜなのかということについて、基本的な考え方の相違がありますれば御説明をいただきたいなと思うのであります。
 ただ、その中で一つだけ申し上げておきたいと思いますが、この問題は先ほど申し上げましたような歴史的経過を踏まえていることが一つ。そして、これは一九六五年に結ばれました日韓法的地位協定に基づいて日本と韓国の間での交渉事であるということが一つ。他の国にこれを及ぼすということではない。ただし、公務員採用のことや指紋押捺のことなど、それぞれ法務省や自治省や文部省で解釈をされますときには、そちらの方が優先をいたしますと、これは諸外国の人たちとともどもに均てん化を考えなければいけない。平等にということもあるでしょうし、相互主義の問題もあるでしょう。しかしながら、この相互主義も例えば韓国とアメリカとの関係でそういう問題が起こるわけではありません。これは韓国と日本、それは日本が韓国及び韓国人に対して行った歴史的経緯があるから日本は要求をされているわけでありまして、これはヨーロッパでも、昔植民地にした、昔ある国の植民地であったその国の人たちから要求をされた場合には、やはり特別の措置を講ぜざるを得ないというふうな問題等がやはりヨーロッパ等でも起こっていることと同じであろうと思うわけでございます。
 私は、そういう意味では、まずできることからやっていく、そのできることとは、日韓法的地位協定に基づいて、在日韓国人のことについてその協定は規定をし、その協定に基づいて今交渉がなされているわけでありますから、まず協定ありき、そしてその協定に基づいた国内法の整備がなされ、そしてその中で普遍的に考えていくことについては、他の外国の人たちにも均てん化させていくという手法が講ぜられていいであろうというふうにも思います。朝鮮半島、南北に分断をされておりますし、いろいろな困難な問題がございますけれども、それだけに私どもとしては積極的に取り組む必要があるということ。歴史的経緯から踏まえて特別扱いをしなければならない、むしろ特別扱いをするところにこの問題の意味があるということを踏まえて交渉もされているであろうと思いますので、そのことを含んだ御答弁をお願いしたいと思います。
#296
○今井説明員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、この問題について日韓の間で協議を続けておりますけれども、我が方といたしましては、基本的に、先生おっしゃいました在日韓国人の方々が日本で生活するに至られた歴史的な経緯、それから、日本社会においていろいろ溶け込まれて定着性が増しているというような要素も勘案いたしまして、これら韓国人の方々が日本社会の秩序のもとで安定した生活を営むことができるようにするということが、日韓両国あるいは日本人と韓国人の国民の間の友好関係を増進する上で非常に重要である、そういうふうな基本的認識に立って韓国側と交渉しておりますし、韓国側もこの認識については我々と同様でございます。
 先生最初の御質問の、いろいろ項目があるけれども、どの辺が差が狭まりどの辺がまだ懸隔があるのかという御質問でございますけれども、これは交渉の中身でございますので、ここで申し上げることは御勘弁願いたいと思います。
 それから先生の、韓国との特殊性ということでございますけれども、我々この問題を韓国とやっておりますけれども、歴史的経緯については十分踏まえて交渉に臨んでおるところでございます。
#297
○中野委員 自治省及び文部省にお尋ねをいたしますが、例えば一般公務員、地方公務員等も、まあ自治省の場合はそうなんですが、この場合に交渉の過程の中でこういうことがあるのではないかと思うのですね。公の権限に関することはこれはやはりちょっと除外をしたい、当然の法理だ、こう言われるのですが、むしろそれらの中でいかにすれば、どの範囲ならば就職できるのか、そしてそれをどういう条件ならばもっと広げることができるのかというふうに前向きに考える必要があるだろうと思うのであります。例えば、採用試験を受けなさい、受けてそしてその職種が採用できる職種なのかどうかというのは試験に合格してから考えましょう、または自治体から自治省へ問い合わせがあるなどということでは、これはやっぱり受験する人に対しても失礼な話でありますし、また現実にそういうことが、非関税障壁ではありませんけれども、言うならばそのことがその試験を受けることをちゅうちょさせる、最初からあきらめさせることにまでつながるということもあるだろうと思うのであります。私は、でき得る限り拡大解釈をして、そしてその就職の門戸が開かれる、そしてそれは積極的にこちらから提示をしてあげるというくらいの積極性が必要であろうと思うのであります。
 これは各学校の教員につきましても同じことが言えると思います。臨時講師ならばというのが大体今日までの経緯であったと思います。しかし、地方自治体の自主的な判断で正式の教員として採用されたケースもございます。後に文部省からそれはいかぬということで取り消しなさいという通達が出されて、そして自治体との間にいろんなトラブルになったこともあります。しかしながら、例えば極端な例を申し上げますと、校長、教頭についてはこれは全体を統括する役割があるからそこまでは無理だけれども、臨時講師どころか常任講師や教員までならばいいとか、また特定の公の権限を行使するのは学校を代表して校長、教頭がやる、そして一般教員については自分の考え方をその権限を持つ校長、教頭に提示をする、またはアドバイスをする、助言をするというふうな役割というふうに割り切って考えますと可能性は広がっていくということになるのではないだろうか、これは一般公務員もまた同じことが言えると思います。いかにかた苦しく閉鎖的に考えるかではなくて、いかに可能性を広げるかという視点に立って、態度に立ってお考えをいただきたいと私どもは思うわけでありますが、自治省、文部省のお考えをお聞きしたいと思います。
#298
○佐藤説明員 委員御指摘の、外国人の公務員への任用の問題でございますけれども、当然の法理に関する御指摘もございましたけれども、政府としては従来から公務員に関する当然の法理という考え方をとっているわけでございまして、この考え方は国家主権とのかかわり合いから出てくるものなんだというふうに私ども聞いているわけでございます。逆に申し上げれば、それ以外の公権力の行使あるいは公の意思形成の参画に携わらない公務員というふうになるためには必ずしも日本国籍は必要としないということでございまして、この考え方は従来からそういうことでございますので、各地方公共団体においても十分に承知はされているものというふうに私ども考えているわけでございます。その結果、この公権力の行使等には該当しないと思われる医療技術関係の職員でございますとかあるいは技能労務の職員などを中心にいたしまして、ある程度の数の外国人、なかんずく在日韓国人の方々が採用されているという実態もまたあるわけでございます。したがいまして、今後ともこの当然の法理に該当しないという職員について任用の道を開いていくべきというのは当然のことだろうというふうに考えておるわけでございます。
 そこで、もう一点委員からの御指摘がございました、もう少し積極的な対応というお話でございまして、具体的には恐らく任用できるところの職種でございますとかその範囲といったような点について、もう少し国としての方針を示すことはできないだろうかというふうな意味合いであろうかというふうに理解をいたしますけれども、画一的に方針を示すというようなことについては、事柄の性質上かなりの難しい点があるということでございます。私どもとしては、従来から各地方公共団体から具体的なケースなどに関していろいろ照会があれば、これに積極的に対応する、相談に応ずるというような形をとる中で、それぞれの地方公共団体において個別の問題として対処するということで、次第に道が今以上に開かれていくことになる、あるいはそういう方向づけで考えていきたいということでございます。
#299
○小野説明員 在日韓国人の方々の教員への採用の問題でございます。これにつきましては、先ほど自治省からも御答弁ございましたけれども、我が国では、従来から、公務員に関する当然の法理ということで、公権力の行使あるいは公の意思形成への参画に携わる公務員になるためには日本国籍を必要とするということが、文部省だけではなくて法制局も含めて、政府としてそういう考え方をとっておるわけでございます。そういう形で、国公立学校の教諭には日本国籍を有しない方を任用するということはできないというのが私どもの考え方でございます。
 先ほどお尋ねのございました、できるだけいろいろな形で、いろいろな職種もあるではないかということであったと思うわけでございますが、私ども従来から申し上げておりますのは、例えば非常勤講師でございますと、先ほどから申し上げております公の意思形成への参画に必ずしも携わらないということで差し支えないのではないかということを思っておるわけでございますし、それ以外にも、例えば学校給食調理員でございますとか、学校用務員さんでございますとか、そういった形の職種等につきましては、私どもとしては採用することについて問題はないのではないかと考えておるわけでございます。
 ただ、教員、教諭という形につきましては、最初に申し上げましたように、当然の法理に抵触するということで困難であるというふうに考えておる次第でございます。
#300
○中野委員 公権力の行使、そして公の意思形成、これらの問題につきましては、残念ながらただいまの答弁では、自治省、文部省の答弁によりますと、今日までの政府の見解からまだ一歩も出ないわけでございます。お立場上無理もないかなと思ったりもいたしますが、しかし、これは政府全体として、特に盧泰愚大統領が海部総理の決断を求める、きょうの朝刊にもそういう感じの記事が載っておりましたけれども、やはりこれは先ほど来申し上げておりますような特別の措置というものが講ぜられてしかるべきケースなわけでありますから、ただいまのような答弁の今日までの繰り返しではなくて、私はむしろ、これから法務大臣に申し上げたいと思いますけれども、政府としても、その当然の法理や公権力の行使や公の意思形成や、その解釈について、もちろんこれは最高裁の判例を求めなければ結論が出ない問題もあるかもしれませんけれども、しかし、政府として可能な限り拡大解釈をしていくという姿勢というものが求められているし、また必要なのではないだろうかというふうにも思うわけでございます。
 これらは指紋押捺や登録証常時携帯の問題も同じことが言えるだろうと思うわけでございまして、ぜひともそういう姿勢を持って考えていただきたい。
 また、学校教員の問題についても、非常勤講師までというのは果たしてそれだけしか解釈できないものか。また、自治体の一般公務員にいたしましても、もう少し具体的にこの職種であればということを拡大して解釈する。例えば一部の医師などという御答弁がございましたが、例えば獣医師について、場合によっては伝染病その他の関係があって公権力の行使が必要になるからということで、これさえもだめというケースがあるわけでありまして、結局これらの問題も、その獣医師が一人で公権力を行使するとかということではなくて、それは公権力を行使する人の補佐的な役割を果たしているという解釈をしていくならば、これはまた幅は広がってくるというふうに工夫の余地は当然あろうと思うわけでありまして、これらのことについて前向きの考え方を政府としてとっていただきたい、私はこう思うわけでございます。
 そういう意味で、時間がほとんどありませんので、指紋押捺や登録証常時携帯の問題につきましては入管局長から、そして今申し上げました政府としての改めての、この基本的なスタンスについての再検討をぜひしていただきたいということについては最後に法務大臣から御答弁をいただければと思います。
#301
○股野政府委員 ただいま委員御指摘の、法務省当局で所掌しています事項につきまして御説明を申し上げたいと思います。
 まず、永住の問題について法務省として所掌しておるわけでございますが、この点については、在日韓国人の第三世代以下の方々について、法務省当局としてはできる限り簡素化した手続で永住を許可するという方向で現在検討をいたしておるところでございまして、この点について、この昭和四十年の法的地位協定の一番の基本的なポイントでございますので、この点についてはさような立場で対処をいたしておるということでございます。
 それから、退去強制制度の問題について、これは同じく法務省で所掌しているわけでございます。これは先ほど来の御審議の中で法務省当局の立場も御説明申し上げておるわけでございますが、基本的に親の世代の方々よりも不利な取り扱いをしないということは、まず基本的に考えていくべきであろうと思っておりますが、他方、この退去強制制度ということについての、これは一つの法的な意味ということを考えますと、昭和四十年協定の中で、既にこの協定永住者の方々に有利な取り扱いをするということが規定をされておるわけでございますし、またさらに、その有利な規定を運用するにつきましても、先ほども御説明申し上げました法的地位協定に関する合意議事録の中で、人道的見地から家族構成その他について考慮するということを約し、かつ、それを実施してきておるということがございます。これはまさに委員御指摘の歴史的経緯ということを踏まえて対処してきているわけで、こういうことについても、これは第三世代以降の方々について同じ考え方で臨む、また、その点を十分関係者の方々にも明確にしてまいりたいという立場でございます。
 それから、指紋押捺と外国人登録証の常時携帯の問題については、いずれも外国人登録法の問題になってまいります。この点につきましては、昭和六十二年に外国人登録法の一部改正法を御審議願いました際にいろいろ御議論もいただいた経緯がございますが、そのときに国会で、改正の法律につきまして附帯決議をちょうだいいたしました。その附帯決議の趣旨というものは十分我々としても踏まえて対処をいたしておるところでございますし、特に指紋押捺につきましては、指紋押捺制度にかわる制度の開発に努めるということが法務省当局としても重要な課題であると考えておりますので、現在、同一人性の確認の手段として指紋押捺にかわる制度の開発ということに最大限の努力を傾けておるという状況でございます。
 それから、常時携帯につきましても、同じ昭和六十二年九月の国会によっていただきました附帯決議の中で、常時携帯について、その規定の運用に当たって常識的、弾力的に行うことという趣旨をうたわれた、そのことを十分踏まえた運用を現在いたしておると承知をいたしております。
 我々としては、この外国人の登録制度全体のあり方について検討することということもあわせて同じ附帯決議の中でちょうだいをいたしておる次第でございますが、総合的な見地から、こういう問題というものについて、この外国人登録制度ということのあり方を今後とも考えていくという立場で臨んでおる次第でございます。
#302
○長谷川国務大臣 中野先生のいろいろな御発言あるいは御説明は十分腹におさめて、これからもひとつ一生懸命頑張っていくようにいたします。何しろソウルできっと今ごろ話が出てごちゃごちゃやっている最中でありますので、細かなことはひとつお許しいただきたいと思います。
#303
○中野委員 時間が参りましたので終わりますが、大臣が最後におっしゃいましたが、せっかくの機会でございますから、ぜひ積極的に、先ほど来私が申し上げました基本的な姿勢を御理解いただいてお取り組みをいただきますように重ねて御要請を申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
#304
○小澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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