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1990/06/01 第118回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第7号
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1990/06/01 第118回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第118回国会 法務委員会 第7号

#1
第118回国会 法務委員会 第7号
平成二年六月一日(金曜日)
    午後一時三十分開議
 出席委員
   委員長 小澤  潔君
   理事 逢沢 一郎君 理事 大塚 雄司君
   理事 熊谷  弘君 理事 小澤 克介君
   理事 小森 龍邦君 理事 中村  巖君
      木部 佳昭君    佐藤  隆君
      古屋 圭司君    簗瀬  進君
      渡瀬 憲明君    清水  勇君
      山花 貞夫君    冬柴 鐵三君
      木島日出夫君    中野 寛成君
      徳田 虎雄君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 井嶋 一友君
        法務大臣官房審
        議官      永井 紀昭君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (東京大学名誉
        教授)     鴻  常夫君
        参  考  人
        (TKC全国会
        会長)     飯塚  毅君
        参  考  人
        (経済団体連合
        会資本市場部会
        長)      宮内 康夫君
        参  考  人
        (全国中小企業
        団体中央会常務
        理事)     錦織  璋君
        法務委員会調査
        室長      小柳 泰治君
    ─────────────
委員の異動
六月一日
 辞任         補欠選任
  大内 啓伍君     中野 寛成君
同日
 辞任         補欠選任
  中野 寛成君     大内 啓伍君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)
 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四六号)
     ────◇─────
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として東京大学名誉教授鴻常夫君、TKC全国会会長飯塚毅君、経済団体連合会資本市場部会長宮内康夫君、全国中小企業団体中央会常務理事錦織璋君、以上四名の方々に御出席いただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 両案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 御意見の開陳は、鴻参考人、飯塚参考人、宮内参考人、錦織参考人の順序で、お一人二十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員からの質問に対しお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。
 それでは、まず鴻参考人にお願いいたします。
#3
○鴻参考人 鴻でございます。
 私は、五年ほど前まで東京大学法学部の教授として二十年余り商法の講座を担当しておりまして、現在も法制審議会商法部会の委員を務め、また、社債法小委員会の小委員長を仰せつかっておるものでございます。
 本日は、商法等の一部を改正する法律案等について、本委員会の委員の皆様の前で参考人として意見を述べる機会を与えてくださったことにつきまして、まずもって小澤委員長初め委員の皆様に対し、厚くお礼を申し上げます。
 今回の商法改正案は、会社法の改正を内容とするものであり、会社法の改正としては、昭和五十六年の改正以来のものであります。この法律案の基礎になったのは、御高承のように、法制審議会が本年三月十四日に法務大臣に答申した法律案要綱であります。その法律案要綱は、また、本年二月二十八日に法制審議会商法部会が五十六年改正に続く改正作業として、翌五十七年から七、八年の歳月をかけて慎重審議した結論である要綱案を総会で原案どおりに承認し、決定されたものでございます。もっとも、国会に提出され、本委員会に付託されている内閣提出の法律案と法制審議会の法律案要綱とでは、会社を新しくつくる、新設する際の最低資本金の額が低くなっていること、計算書類の登記所における公開に関する一連の規定が削られていることなど若干の点で相違がありますが、改正の趣旨の基本に相違があるわけではありません。すなわち、今回の改正の趣旨は、法律案提案理由説明にもありますように、小規模、閉鎖的な会社にも適合する法制度の整備、会社債権者の保護、会社資金調達の方法の合理化、この三点が主要な点でありまして、この限りでは、法律案と法律案要綱とでは相違はございません。
 私は、後ほど、以上の趣旨でまとめられている改正法律案中の幾つかの重要事項について私の意見を申し述べたいと思いますが、それに先立って、今回の会社法改正の意味を一般的にどう受けとめることができるかについて少しばかり述べることをお許しいただきたいと存じます。
 今回の商法改正は、昭和四十九年以来続けられている会社法の全面的な改正作業の一環であります。そして、先ほども言及しました五十六年の改正の方は、会社法の全面的な改正作業の中で、大規模な株式会社に関する法制を中心として、株式、株式会社の機関、会社の計算、新株引受権付社債、この四つを柱として、商法と監査の特例を主な内容とする商法特例法の改正を実現したものであります。したがって、これに続く作業として、五十七年から、大小会社の区分を中心とし、会社の合併等五十六年改正の後に残された事項の改正をも含めて、今度は商法と有限会社法の双方にまたがる法改正の検討が開始されまして、自来長く続けられてきたのであります。
 もし当初の方針どおりの改正要綱をまとめ上げることができたとしたら、それは、昭和十三年の商法改正、それから有限会社法の制定以来、中小会社立法としては実に半世紀ぶりの本格的な大改正になり、そしてまた同時に、四十九年以来の会社法の全面的な改正作業は一応終了することになると言えるものであったでありましょう。
 しかし、昨平成元年十一月末になりまして、商法部会は、当初の改正試案が取り上げていた事項の全部の範囲を今回の改正において一度で処理することは困難であると判断するに至りました。そして、従来の方針を変更して、それまで検討を進めてきた改正事項のうち、会社の設立、株式、有限会社の方は持ち分ということになりますが、それと会社の計算・公開、それから会社の組織変更等を中心とする事項について、この段階で一区切りをつけて、まず改正を行うことが適切であるというふうに考えて、その範囲で改正要綱案を取りまとめることにしたものであります。
 以上の結果、今回の法律案に盛り込まれた改正点は、項目数からいいまして、商法部会の審議の対象とされてきたものの全体から見ますと、数としては半減、あるいは半減以上ということになってしまったということが言えるかもしれません。しかし、私は、このような方針の変更は適切であったと考えております。と申しますのは、会社法の全面改正の審議の全体が完結するのを待つとすれば、審議の進展の状況にかんがみるとき、どうしてもこれから後数年先にならざるを得ないでありましょうから、それよりも、既に審議が煮詰まって大方の意見の一致が見られていた部分であって、しかも、会社法の他の部分とは切り離して改正することができるものについては、少しでも早く法改正を実現することの方が望ましいことは明らかでありますし、後で言及しますように、現に今回の改正法律案の中には、社会的な影響力の大きな大会社に関して、法制度の緊急な改正が望まれている問題も少なからず含まれているのであります。
 さて、今回の法律案は、商法の一部改正と有限会社法の一部改正と社債発行限度暫定措置法の一部改正の三つを含んでおります。以上の三つのうち、第一と第三の改正が株式会社に関する改正でありまして、株式会社法の改正の柱となっている項目は、設立、株式、計算、社債の四つであって、相当広範な改正でありますが、これに対して有限会社法の改正の柱となっているのは、設立、持ち分、会社の組織変更の三つであり、その中では最後の組織変更が重要であって、他は株式会社法の改正に対応するものが大部分であります。そして、以上の改正の大部分は、先ほども申し述べました三つの改正趣旨、すなわち小規模会社に適合する法制度の整備、会社債権者の保護及び会社の資金調達の合理化の三点にかかわるわけでありますので、以下に、原則的には法律案の末尾に提案理由として掲げられているところの重要な改正点に問題を絞って私の意見を申し述べることにいたします。
 第一は、小規模会社にも適合する法制度の整備に関する改正点であります。
 株式会社の発起人及び有限会社の社員の員数についての規制の緩和、商法百六十五条以下、有限会社法六十九条の改正でありますが、これはいわゆる一人会社の設立及び存続を許容するものであって、現行法の形骸化を解消、改善するものであります。
 また、株式会社の設立における現物出資及び財産引き受けについての検査役の調査の一部を省略することにしたことなどは、株式会社設立手続の簡素化に役立つものであり、いずれも適切な改正であると考えます。
 このほか、株式譲渡制限会社における株主の新株引受権の法定、これは商法に三百四十一条ノ十一ノ二の規定を新設するというものですが、これは形式的には規制の強化とも言えますが、実質的には現行有限会社法五十条で定められている有限会社の社員の出資引受権と同様の法規制でありまして、まさに小規模閉鎖的会社に適合するものと認められ、私は賛成であります。
 その他にもこの改正趣旨の点については細かい点の改正が幾つかありますが、それらは省略して、ただ、会社の経営管理(運営)機構の簡素合理化という点が小規模会社についても将来に先送りされましたために、小規模会社に適合する法制度の整備という点は必ずしも十全なものとはなっておりません。しかし、今回の改正点だけでも、小規模閉鎖的会社法制の整備の一歩前進であると認めることはできると思うわけであります。
 第二に、会社債権者の保護のための法規制の点であります。
 株式会社はもとより、有限会社も社員の間接有限責任を特色とする資本会社、言いかえれば社員の全員が会社に対してのみ出資義務を負い、会社債権者に対して直接の責任を負わない建前のいわゆる物的会社であります。したがって、こういう会社にあっては会社債権者の保護ということが法規制の基本になるわけであり、会社財産の最小限度の確保がどうしても必要であります。この点自体は、各方面でも十分認識され、理解されているところであると存じます。有限会社法が昭和十三年の制定時から最低資本金制度を採用していることも、その必要性があることが認められている何よりの証拠であります。改正法律案が株式会社について最低資本金制度を今回導入しようとしていることは、私考えますに、やや遅きに失したぐらいのことでございますが、私はこの際、この株式会社における最低資本金制度の導入をぜひとも実現したいものだというふうに願っております。
 ただ、最低資本金額を幾らに定めるかという点だけはなかなか難しく、審議の過程でもいろいろの意見がございました。御高承のとおり、改正法律案では、新設会社と既存会社を区別することなく、株式会社の場合は一千万円、有限会社の場合は現行法の十万円を三百万円に引き上げるということになりました。私は、個人としては、現在の貨幣価値なり物価指数なりの私の感覚からいたしまして、新設会社の場合に限ってはもっと高い金額でもよいのではないか、これに対して、既に存在している会社の場合には、何らかの税法上の優遇措置を講ずることができないというのであれば、余り高い金額にするのは適当でないのではないかと考えておりましたが、中小企業基本法の示している基準の金額なども考慮に入れるとき、また、ヨーロッパ主要国の立法例から見て、改正法律案の示している最低資本金額は、まあこの際落ちつくべきところに落ちついた穏当な金額と考えてよろしいのではないかというふうに思っております。この点に関連して、会社の組織変更に関する規定も整備されましたし、なお、既存会社についての経過措置が附則で詳細に定められておりますので、改正法施行の暁には、こういった点の法の適切な運用が切に望まれるところでございます。
 会社債権者の保護のための法規制としては、もう一点、利益準備金の積立基準が、「金銭ニ依ル利益ノ配当額ノ十分ノ一」から「利益ノ処分トシテ支出スル金額ノ十分ノ一」に改められることになっております。この点は会社の規模を問わず適用される規定でありますが、実際上の見地からは、特に中小会社にとって法の規制の強化となるでありましょう。しかし、規制の強化とはいいましても、同時に、会社経営の健全化、とりわけ小規模会社の体質の強化のためにも役立つことであって、この改正も、会社債権者保護のための法改正として私は適切な改正であると考えております。
 最後に、第三の会社資金の調達の方法の合理化のための法改正としては、優先株の制度の改正と社債の発行限度の緩和の二点が重要であります。
 優先株制度の改正は、優先配当額はその上限のみを定款で定めればよいことにしたこと、議決権なき株式の発行限度を、現行法の定める発行済み株式総数の四分の一というのから、その三分の一に緩和することにしたこと、累積的配当優先株について議決権の復活の時期を定款の定めで若干おくらせることができることにしたことの三点でございます。
 また、社債の発行限度の緩和の点は、社債法の全面改正の検討もしておったわけでございますけれども、この点が先送りになりましたけれども、社債の発行限度を純資産額まで発行できるというふうに一元化することにしたこと、社債発行限度暫定措置法を改正して新株引受権付社債も、転換社債と同様に、会社の純資産額の二倍まで発行できることにしたことでございます。
 これらの改正は、経済界の一致した強い緊急改正の要望にこたえたものであり、いずれの改正も、証券の多様化、国際化という時代の要請に即応した適切なものと考えております。
 以上までで、改正法律案の主要な改正点について簡単ながら私見を述べてまいりました。このほかにも改正案には、端株制度の改正、株式配当など無償交付や株式併合に関する規定の整備、設立手続全般など、株式会社法制の改善と認められる点は決して少なくありません。もっとも、私としては、改正法律案の内容の個々の点について、全部が全部賛成というわけのものではもちろんありません。また、会社法の改正が今回の改正だけで十全というわけのものでないことを私も承知しております。見方によっては、中小会社に対する規制の強化じゃないかというような批評があるかもしれません。しかし、長期的に見れば、今回の会社法の改正が実現すれば、株式会社や有限会社の体質の強化、ひいては国際化の時代に即応した会社発展の要因ともなり、さらには、企業の社会的責任を果たすことにも役立つところが少なくないと存じます。そして、改正法律案が一日でも早く成立すれば、会社の経営管理(運営)機構、適正な計算と公開、会社の合併、単位株制度などのほか、有限会社法制や社債法制の全面見直しといった残された会社法改正の重要問題の審議検討が大いに促進されることを期待することができるでありましょう。
 我が国会社制度が本当に国民のためのものとなるように、会社法制の整備改善に、私自身微力ながら、商法学者の一人としての立場から、及ばずながら今後一層力を尽くす所存でございます。
 時間が来たようでございますので、私の意見の中身の乏しいことを恐れますが、本委員会の法律案審議に少しでも参考になるところがあればまことに幸いでございます。ありがとうございました。
#4
○小澤委員長 鴻参考人、ありがとうございました。
 次に、飯塚参考人にお願いいたします。
#5
○飯塚参考人 私が飯塚毅でございます。
 国権の最高機関を構成する先生方を前にして、今回の第三次商法改正について意見を申し上げる機会を賜りましたことは、私の最も光栄とし、感謝申し上げるところでございます。
 御承知のように、昭和五十九年と昭和六十一年と二回にわたって、法務省民事局参事官室との銘を打って、商法改正に関する問題指摘と改正試案とが公表されております。自来四年以上六年間にわたって、商法改正問題は、我が国の産業界、学界及び実務界において論議が尽くされてまいりました。
 その法務省民事局参事官室の提起しました問題点は、約二百項目に及ぶ広範多岐にわたるものであって、私に与えられました時間内では到底カバーできる筋合いのものではございません。したがいまして、私は、以下の四点について的を絞った形で意見を申し上げたいと存じます。この点をまず御了承いただきたいのであります。
 問題点の第一。
 我が国の国会の先生方及び行政担当の各省庁の幹部の方々は、時代の変化が既に行政の縦割り体制の維持のみでは事が済まなくなってきたとの現実認識が不足しておられるのではないかと心配いたしております。今回の商法改正の素案づくりを法務省のみの専担としたことが、この現実認識の不足を実証していると私は判断いたしております。
 御承知のように、既にイギリスでは、行政の縦割り制度の弊害を認識されたサッチャー首相は、各界から最優秀の若手七名を出向させ、ポリシーユニット、政策調整機関とでもいいますか、なるものをつくりまして、このチームをダウニング街の首相執務室の隣の部屋に置き、縦割り行政の弊害にとらわれることなく、政策批判と政策立案の有力機関として機能させる処置をとっている事実があるのであります。なぜ我が国は、国として縦割り行政の弊害を円滑に克服していく施策を工夫しないのでしょうか。
 この弊害のあらわれが、今回の商法改正に露骨にあらわれているのであります。法務省民事局の幹部が、今回の商法改正の動機は、EC(ヨーロッパ共同体)指令第四号等の一連の会社法及び会計に関する域内十二カ国の国内法統一を求めた指令にあったことを再三にわたり「商事法務研究」その他の雑誌類に発表しながら、事柄の本質を正しく把握しておらず、そのために、大蔵省所管事項や通産省、特に中小企業庁の所管事項を含む今回の改正作業を、法務省の視野と権限事項の枠内で解決しようとしてしまったのであります。その結果どうなったかと言えば、関係各省庁の幹部は法務省のお手並み拝見とばかりにいわば冷ややかに批判的であり、おれたちの仕事ではないと感じてか、積極的協力の姿勢は打ち出さなかったのであります。そればかりか、会社会計の監査、つまり会社の会計内容を透明にするための決定的施策である会計監査人による監査を世界に類を見ない会計調査人制度による調査に置きかえ、会計の一応の確からしさを確保すればよいものとしてしまうなど、縦割り行政の奇形児のようなものまで法制化しようとしていた次第であります。
 幸い、法務省内の会計調査人制度の研究会は何らの実も結ばずに統一見解に到達せず、したがって今回の商法改正の原案からは削除されて、監査問題は政府提案としては先送りとされたのであります。私たちは、行政官による縦割り行政への執着がいかに根強いかを思い知らされたのであります。
 日本国憲法第四十一条により、私たちは、国会が国の唯一の立法機関であると信じたいのでありますが、現実には立法事務の実質担当者は各行政庁の幹部たる行政官であり、国会議員諸公は、単に原案の一部を削除するか、または投票によって賛否の意思表示を行うかだけの役割の担い手となっている観があるのであります。もちろん日本の行政官は世界的に見ても圧倒的に優秀であります。ただ、致命的な欠陥とも申すべきは、世界全体の動きへの気配りを欠いていると申すべき一点であります。専門の分担事項については圧倒的に詳しいのでありますが、今世界がどの方向を向いて現に動いているのかの把握には、客観性が欠けるうらみがございます。
 一九五八年、つまり昭和三十三年元旦から発効したローマ条約、EEC条約でございますが、これは全文二百四十八カ条、その第五十四条第三項(g)号が、今般の会社法改正の発火点となった条文でありますが、同条約の前文の第三文が「欧州を分割している諸障壁を撤廃すること」を眼目とすることを宣言しており、したがって、ヨーロッパの加盟十二カ国は、完全な単一国家になろうとしていることは明白であります。しかも、指令第四号の第五十五条第三項は、指令に対応する国内法律案の案文をどうつくったか、その文言をEC本部委員会に届け出る義務を課しているので、各国ともその会社法改正案はほとんど同一のものとならざるを得ないのであります。アメリカの会社法及び会計の原則は、完全にヨーロッパと同調いたしております。ヨーロッパとアメリカが、会社法及び会計の制度上、完全に近く同一歩調をとっている場合、日本だけが世界の先進国中ではぐれ者になってもよいのだとの理屈は立てがたいものがあるのであります。それは日本と欧州各国との経済関係がますます緊密化の度合いを増しているからであります。
 以上これを要するに、問題点の第一で申し上げたいことは、行政の縦割り体制のあおりを食って、法務省は他省庁に関係なく処理できるものとして会計調査人制度をつくろうとしたけれども、世界に類例がない制度として自滅してしまったのだということ。一九九二年末には欧州の統合は実現してしまうので、日本は制度上大きくおくれてしまう結果になっているということであります。
 問題点の第二に移ります。
 EC加盟の十二カ国のベルギーにあるEC本部が、一九七八年七月に出したEC指令第四号には、物的有限責任会社は、一定の規模を超えたものは、社会的責任上、その計算を公開し、正規の監査を受けなければならないと定めております。この五十一条という条文は、監査と言っていて、調査とは言っていないのであります。ところが我が法務省は、何を勘違いしたのか会計調査人という制度の創設を図り、その吟味と調整とのために一年有余を使ってしまったのであります。実に惜しい時間の空費だったのであります。
 御承知のように、世界の先進国で税理士という制度を持っている国は、西ドイツと日本だけであります。この西ドイツは、指令第四号を受けて、監査を要する会社が一挙に拡大するとの事態に対応するため、税理士と旧宣誓帳簿監査士、これは日本の昔の計理士に該当しますが、これと弁護士に、簡略試験によって公認会計士、西ドイツ法では経済監査士、ヴィルトシャフツプリューファーと呼んでいますが、これになる道を開いたのであります。それは、会計指令法、ビランツリヒトリーニエンゲゼッツという名の法律で一度に三十九本の法律を改正してしまい、その中で公認会計士法を二十二カ条改正して、簡略試験制度を大規模化したのであります。
 御注意いただきたいのは、その会社数であります。西ドイツでは、この簡略試験制度を大々的に確立した一九八五年から一年たった一九八六年の十二月末現在で、二千百九十社の株式会社と、三十四万六千三百七十一社の有限会社を持っていただけであります。日本はといいますと、百四万三千八百九社の株式会社と、百三十九万九千社の有限会社とを持っていたのであります。これは法務省の資料によります。実に西ドイツは、株式会社数で日本の四百七十六分の一、有限会社で日本の四分の一という少数ぶりなのであります。しかるに、西ドイツの公認会計士は約六千名、公認会計士会社は約一千社もあるのであります。日本は公認会計士が約九千名で、監査法人は約百社ほどしかありません。すなわち、日本は社会に対する公認会計士の数が圧倒的に少ないのであります。これは何も公認会計士の数だけに限らず、弁護士の実数についても言い得ることであります。これは公認会計士や弁護士の数に関して、すべて行政当局の判断に任せてしまっていて、見識ある国家意思の確定がないことが原因だと私は考えております。国権による国家の方向づけがなされていないことを意味するわけであります。かつてニーチェは、「偉大とは方向を与えることである」、グレーセ ハイスト リヒトゥングゲーベンと言いました。願わくは我が国権の最高機関も、我が国運に方向を与えていく働きをしていただきたいのであります。
 税理士を大量に公認会計士に移行せしむべしとの主張の論拠は、公認会計士法及び税理士法のともに第二条を吟味していただければうなずけることではないかと考えます。両職業は、ともにその第二項で、業務の根底に、会計学の理解と実践という共通基盤を持っております。ただ両者が違う点は、その法第二条の第一項が、公認会計士の場合は監査証明書の作成を、税理士の場合は申告書等の作成をその専属の業務と規定している点であります。しこうして、公認会計士の場合は会計監査に試査が許されていますが、税理士には試査は許されておらず、全部監査をやらなければなりません。したがって、税理士資格の喪失は伝票一枚一枚の吟味にかかっているにもかかわらず、公認会計士の場合は、財務諸表規則の示すように、貸借対照表科目あるいは損益計算書科目の数%以下の金額の間違いは、重要性がないものとして問題としないという法体制になっているのであります。ここに先生方の御考慮を煩わしたい重大問題があります。
 かつて私は、いわゆる職業裁判、これは日本にはないので、強いて言えば国を被告とする訴訟、この証人として大阪地方裁判所に出頭したときに、政府側の検事が証人たる私に対し、「一体、公認会計士と税理士ではどっちが難しい業務なのか」と質問したことがありました。私の答えは「監査の対象を分量的に見れば、公認会計士の方が難しいと言えるかもしれません。しかし、監査の対象を質的方面から見るならば、税理士には公認会計士のように試査が許されておらず、伝票一枚まで全部監査の責任を負わされていますから、税理士業務の方が難しいとも言えます。私は両方の資格を持っていますから、両者の異同がよくわかるのであります」と答えたのであります。ただし、税理士の場合、西ドイツと違って相当数の方々が、年金だけで暮らしていて、税理士業は看板だけという方が多くいますから、事態はかなり違います。日本の税理士の場合は、約六〇%が税務官庁のOBであり、西ドイツの場合は、OBは一%いるかいないかというほど違うからであります。したがって日本の場合は、簡略試験によって選別する必要があります。西ドイツの場合は、簡略試験の段階を三段階に分けて、税理士開業五年以上の者と、十年以上の者と、さらに十五年以上の者とに分けております。五年以上の者には会社法と監査論と、すなわち二科目の簡略試験、十年以上の者には会社法だけの試験、十五年以上の者には三十分以内の口頭試問、いわゆる口述試験だけでよいということになっております。我が国の法制審議会の先生方または法務省民事局の幹部が、西ドイツのビランツリヒトリーニエンゲゼッツ、つまり会計指令法を入念に読まれていたならば、この実際の立法例を参考として、日本でも円滑に法案をつくり得ただろうに、残念だったと思います。ドイツの会計指令法は、民事局参事官室の昭和六十一年の問題点文書よりは一年も前に制定されていたのですから、参考としようとすれば簡単にできたわけでございます。
 なお、公認会計士の数でありますが、最低十万人は必要だという元日本公認会計士協会会長もおられましたが、私は、少なくとも五万人は必要であると信じております。五万人といえば、米国の五分の一、イギリスの二分の一の人数であります。そのくらいの数がないと、会計の分野で日本社会の需要を満たすことはできないものと確信するものであります。
 問題点の第三。
 EC指令第四号は、その第五十一条第三項によって、正しい記帳と決算財務諸表とをつくらなかった会社に対しては、加盟国の国内法に処罰規定というよりも刑罰規定を設けるように指示しております。加盟十二カ国は、この指令を受けて一斉に刑罰規定を整備したのであります。日本は加盟国ではありませんが、おくればせながら、世界の大勢に合わせて処罰規定を設けるべきだと考えます。
 ちなみに米国は、内国歳入法第七千二百一条により、虚偽の記帳または財務諸表の作成を行って税を免れんとした者は十万ドル、法人の場合は五十万ドル以下の罰金または五年以下の懲役または両罰の併科と定めており、イギリスは租税管理法、タックス マネジメント アクトの第二十BB条、おかしな名前でございますけれどもそう書いてある、及び九十八条とにより、三千ポンド以下の罰金または二年以下の懲役または両罰の併科と定めており、フランスは国税通則法、コード ジェネラル デ ザンポの第一千七百四十一条により二十五万フラン以下の罰金または五年以下の懲役または両罰の併科としており、西ドイツの場合は国税通則法いわゆるAO、アプガーベンオルドヌングの第三百七十条、刑法第二百八十三b条により、十年以下の懲役または罰金との定めを有しているのであります。なぜ日本だけが、先進文明国全部に共通する法制に反して、単に過料を科すだけとしているのでありましょうか。しかも、過料徴収の実例を聞いたことはありません。現行大店法違反の場合には、その第十八条によって三百万円以下の罰金という刑罰が科されることになっております。この点、不実記帳との関連で法の整合性を欠くものとお考えにはならないのでしょうか。
 ちなみに、ECの指令を受けたイギリスは、一九八五年と一九八九年の二つの会社法をもってこれに対応したのでありますが、一九八五年会社法について言えば、法律の本文だけで七百四十七カ条あります。そのほかに付表、シェジュールという条文群が二十五もついており、特にその付表第二十四の罰条リストには、懲役刑または罰金刑を創設した条文が二百五十八カ条も掲げられており、そのうちには二年ないし七年の懲役刑を定めた条文が二十五カ条もあるのであります。そして、会計に関する条文だけで、付表の分を合わせて約四百カ条もあるのであります。先生方は、イギリスが、商法、したがって会社法を含む領域で、いかに総合的に、包括的に、そして断固たる姿勢で国家形成に当たっているかを推認し、先生方の立法に対する考え方について再吟味していただければこれに過ぎる幸せはないと信じるものであります。
 最後に、問題点の第四について申し上げます。
 今回の商法改正に当たって、我が法務省が全く無視したか忘れてしまったかと思われる問題が一点あります。
 それは、イギリスが、一九四八年会社法の第百四十九条に有史以来初めて確立した商法上の大原則であります。「真実かつ公正なる見解」、ア ツルー アンド フェア ビューの原則といいます。時の流れ、経済の変化は目まぐるしく変わっていますが、法律は固定性を持っています。したがって、法律が現実の経済に追いつけないという現象が起こり得る。そのときの経済と法律とのギャップをどう埋めるかという問題が出てくる。そのときの会計処理が真実をついていて、かつ公正であるときは、それが既存の法律に抵触する場合にはその法律を破ってよい、つまり踏み越えてもよいという原則であります。
 不幸にも、我が国の会計学関係の大学教授は、会計学辞典の中でこれを「真実かつ公正な概観の原則」と訳してしまったので、何のことかよくわからず、日本では一般に理解されていませんが、これは誤訳であります。イギリスのパーマーの会社法第二十二版には正確な解説がついています。これを参照すればいいのです。
 EC加盟の各国は、この原則を商法上の、したがって会計処理上の基準として採用するかどうかで十年間の論争をやり、結論として採用に踏み切ったのであります。この原則の立法化を、EC指令第四号は前文以下六カ所でうたっております。
 EC加盟の十二カ国は、この指令を受けて、この原則を法律化しました。フランス法はこれをイマージュ フィデールと言い、スペイン法はこれをラトビザンデ ビルドと言い、ドイツ法はこれをアイン デン タートゼヒリッヒェン フェルヘルトニッセン エントシュプレッヒェンデス ビルトと言い、イタリア法はこれをクワドロ フィデーレと言い、デンマーク法はこれをパリデリクト ビレーデと言い、オランダ法はこれをゲトロー ベールドと称し、各国が、その商法または会社法の中に取り入れたのであります。アメリカもいち早く企業会計原則、ゼネラリー アクセプテッド アカウント プリンシプルズの中に取り入れたのであります。
 この原則を実施したときは、各国はその決算書(財務諸表)の中の附属明細書にこの事実を表示して、ディスクロージャーの要求にこたえねばならないことになっております。日本だけがこの問題からは取り残されてしまったのであります。
 そこで最後に、諸先生に謹んでお伺いしたいのであります。
 日本はこのように、ことごとく国際社会でみずから求めて孤立化したいのでしょうか。日本の場合、法律案の策定作業をやる行政官がこういう法律条文の必要性を理解せず、積極的に法律案の中に取り入れない場合、日本の国会議員諸公はもうどうしようもないのでしょうか。昭和八年に日本は国際連盟を脱退して孤立化を宣言し、滅亡の道に突進しました。今日また、諸先生方は、この日本に同じ運命をもたらしたいのでありますか。
 これで私の意見陳述を終わります。
#6
○小澤委員長 飯塚参考人、ありがとうございました。
 次に、宮内参考人にお願いいたします。
#7
○宮内参考人 ただいま御指名いただきました日立製作所監査役を務めております宮内でございます。
 現在、私、経団連の資本市場部会長を務めておりまして、その関係で、今回の商法改正につきましても経団連の意見の取りまとめに参画してまいったところでございます。本日は、こうした国会の場で経済界の考え方を申し述べる機会を与えていただきまして、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。
 さて、今般の商法改正につきましては、昭和五十七年より法務省及び法制審議会におかれまして大小会社区分立法を中心に改正を進められてまいったわけでございますが、御承知のとおりに商法は企業活動にとりましてまさにその基本となる法律でございまして、私どももこの動向に大きな関心を持って今日まで見守ってきた次第でございます。そこで、機会あるごとに経済界としての意見を取りまとめまして、関係各方面にいろいろと献策、お願いを申し上げてきたわけでございます。
 御承知のとおり、当初、今回の改正は昭和四十九年の改正以来の総仕上げと位置づけられておったわけでございますが、改正事項が、先ほどの鴻先生の御説明にもありましたように、膨大過ぎる等の理由から、まさに現段階において最低限必要な改正事項のみが法案に盛り込まれている、こういうふうに考えておる次第でございます。そういう意味におきまして、ぜひともこの最低限必要な法案を国会で成立させることを希求するものでございます。
 次に、今般の商法改正は、大きく分けまして大小会社区分立法にかかわる改正、すなわち中小会社にふさわしい法制の整備と、もう一つは資金調達にかかわる改正と、この二つに分かれるものと理解しております。
 まず、今般改正の最重要課題とされております大小会社区分立法につきまして意見を述べさせていただきます。
 本問題に関しましては、中小企業にふさわしい法制を構築するという観点に立って、例えば発起人は一人で足りるとするなどの規制緩和を行うとともに、一方では最低資本金を設定するなど、債権者保護のための必要最小限の規制をするという考え方のもとに改正案が取りまとめられているものと拝察いたしております。しかし、債権者保護のためには、最低資本金制度の導入に加えまして、計算書類の公開などディスクロージャーの充実を図る必要があるのではないかと考えております。その面で今後さらに関係者の努力が期待される次第でございます。
 なお、法案では、最低資本金制度とも関連いたしまして配当可能利益の資本組み入れの規定が整備されておりますが、これにつきましては、利益準備金の資本組み入れとあわせまして、みなし配当課税がなされないよう先生方の御理解を得たいと存じます。少なくとも中小会社の最低資本金を満たすための配当可能利益の資本組み入れにつきましては、格別の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。
 次に、資金調達にかかわる改正についてでございます。これは私ども経済界の要望を取り上げていただきました事項でございまして、ぜひとも早期に実現していただきたいと考えております。
 まず第一に、社債の発行限度枠の拡大についてでございます。現在の発行限度枠では相当数の企業におきまして社債による資金調達に現在支障が出てきており、早期に改善を図っていただく必要性が高まっております。これがまた、社債市場の活性化にもつながるものと考えております。
 もちろん、社債発行につきましては、投資家保護を図ることが最大の課題でありますが、近年ディスクロージャー制度の整備が進んでおりますとともに、我が国の資本市場において格付の整備が着実に進んでおります。
 ちなみに、格付につきましては、昨年一月、発行体、格付機関、銀行、証券、投資家、学者、行政と広く関係者が参加する、格付についての懇談会というものが設置されまして、ただいま私がその会長をさせていただいております。格付の定着に向けての具体策を幾たびか各関係に提案したわけでございますけれども、具体的な提案を申し上げますと、例えば格付機関に対しましては、その独立性、中立性、企業の秘密保持、また国際的な格付の信頼性の確保に努力していただきたいということ。それから発行体につきましては、積極的に取得をしてこれを公表していただきたいこと。それから受託銀行につきましては、現状の受託制度の見直しをこの格付とあわせて検討していただきたいこと。次に証券会社につきましては、これまた引受業務の簡素化を格付業務とあわせてやっていただきたい。また投資家に対しましては、格付の積極的な利用をお願いしたい。学者の先生方に対しましては、アドバイザーとして国際的な見地からアドバイスをお願いしたい。行政面におきましても、自由な市場づくりへの行政措置をお願いしたい。こういった具体的な提案を各関係者に提案した次第でございます。なお、この懇談会は半年に一回フォローアップ会合を開催いたしまして、着実に提言の実行を図ってきておる次第でございます。この結果、例えば転換社債につきましてはこの四月から、CPにつきましては、コマーシャルペーパーにつきましては本年十月から複数の格付を取得することを制度化した次第でございます。
 いずれにいたしましても、社債の発行限度枠は欧米諸国にはほとんど例がないものであります。このため、限度枠は撤廃すべきであると私どもは主張してまいりました。今回の法案では、限度枠の撤廃は見送られ、純資産基準に一元化することにとどまっております。また、暫定措置法により、基準は純資産の二倍まで発行できることになりました。さらに、社債につきましては、これまでの担保付社債、外債、転換社債に加えまして新株引受権付社債を含める形になっております。これは経済界としてまさに最低限実現していただきたい内容でございまして、早期実現をお願いする次第でございます。
 第二に、優先株式に関する規定の整備改善についての問題でございます。
 国際化の進展に伴いまして、御承知のとおり、最近MアンドAが我が国企業にも波及しつつありますが、一方において、企業といたしましては経営の安定、雇用の安定、さらにはお客様及び取引先との信頼関係の維持を図るために、MアンドAに対する防衛策が必要でございます。ちなみに、新聞によりますと、一九八九年度の日本企業の関係するMアンドAの件数は全部で七百四十件、対前年比一三三%、そのうち、日本企業による海外企業の買収が四百四十八件、対前年比一三四%、海外企業による日本企業の買収が十四件、日本企業同士の買収、被買収が二百七十八件となっております。
 このような状況下、優先株式は、MアンドAの危険を防止しつつ資金調達を行える有効な手段でございまして、資金調達の多様化が図られる次第でございます。また、子会社が株式発行によって資金調達を行います場合、優先株式が機動的に発行できるのであれば、流通する株式が増大し市場の活性化が図られるとともに、グループとしての資金の効率化が図られます。このような観点から、経済界において優先株式を発行するニーズが非常に増大しております。
 ところが現行法では、御承知のとおり、優先株式を発行する場合、優先配当金額、累積・非累積、参加・不参加、あるいは発行価額、転換権の有無、株式数など、会社の定款に全部定めなければならないことになっております。したがいまして、発行の都度株主総会を開き、定款変更決議を行うことが必要となります。そうしますと、株主総会を開くためには、その手続に相当の日数を要します。たまたま日立製作所で最小限何日かかるかということになりますと、取締役招集通知を出しましてから株主総会開催まで七十四日もかかるという試算でございます。
 一方、御承知のとおり、今や資本市場はグローバル化し、世界の政治経済の変動に対応して時々刻々変化いたしますが、現行法のもとでは、このような変化の激しい市場の動向をにらんだ機動的な発行が不可能であります。しかしながら、資金調達側にとりましては、金融情勢、特に株価、金利あるいは為替の情勢に応じまして、迅速かつ機動的に資金調達をできるかどうかが大きな条件でございます。
 ちなみに、我が国における優先株式の発行は、昭和五十年以降では、昭和五十一年及び五十七年の日立造船さん、昭和五十九年の日本冶金さん、二社三回の事例しかございませんが、アメリカでは新株発行の四分の一がこの数年間優先株式であると調査しております。
 さらには、無議決権株にできるのは発行済み株式総数の四分の一以内に限られており、ロットの大きい優先株式の発行ができないわけでございます。
 このため、私どもは、発行手続の簡素化や発行限度枠の拡大などの規定整備を行うことをお願いしてまいりました。今回の改正案では私どもの要望がほぼ反映される形で取りまとめられておりまして、その早期実現をお願いする次第でございます。
 第三は、今般の改正案に盛り込まれております端株制度の改善も大きな意味を持っております。現行法では、端株主は会社に対して端株券の交付を請求することができることになっております。今般の改正により端株につきましても定款で端株券の不発行を定めることができるようになり、現在の単位未満株と同じ処理が可能となりますれば、端株制度が適用される昭和五十七年以降に設立された会社にとりましても、転換社債等の発行の道が開かれるわけでございます。端株制度が適用されます上場会社は、NTTのみでなく、次第に増加するものと考えられます。資金調達を容易にするという意味で、端株制度の改善を高く評価いたしておる次第でございます。
 なお、今回の法案では、自己株式取得規制の緩和、社債法の全面改正、例えば発行限度枠の撤廃、受託制度の見直しなどの実現が先送りになった重要事項もございます。今般の商法改正が実現した暁には、これらにつきましてもできるだけ早く経済界の要請も踏まえまして検討が再開されることを期待しておる次第でございます。
 最後に申し上げたいことは、我が国の株式会社の大宗は中小会社によって占められており、大会社と申しましても、中小会社の助けをかりて初めて成り立つものでございます。中小会社こそが日本経済の基盤をなすものであります。したがいまして、中小会社の立場を考えずして商法改正を行うことは到底考えられないわけでございます。
 私ども、今般の商法改正案、とりわけ大小会社区分立法にかかわる改正案につきましては、最低資本金の導入が行われる一方、規制緩和も行われまして、中小会社に対する配慮が十分になされた上でつくられたものと理解いたしております。その上で、私どもは商法改正に賛成し、その早期実現をお願いしている次第でございます。
 以上、商法改正に関する経済界の意見を述べさせていただきましたが、先生方の温かい御理解をいただき、この法案を無事成立させていただくことを心からお願いする次第でございます。御清聴ありがとうございました。
#8
○小澤委員長 宮内参考人、ありがとうございました。
 次に、錦織参考人にお願いいたします。
#9
○錦織参考人 私は、中小企業の立場から、特に中小企業に直接影響を持っております事項について意見を申し上げたいと思います。
 初めに中小企業の会社形態の実態及びこれに関する基本的認識を述べ、次に本法案に対する基本的な考え方を申し上げたいと思います。
 初めに、中小企業の会社形態活用の実態及びこれに関する基本的認識について申し上げますが、我が国の会社数につきましては、法務省によれば二百六十万社、国税庁によりますれば百七十七万社、総務庁の事業所統計によりますと百三十二万社となっております。個人事業者を含め、我が国全体の事業所総数は、事業所統計によりますれば六百四十九万、これは民営、非一次産業でございますが、これに対応する会社数は百三十二万社でありますが、これは二〇・三%が会社形態を選択しているということになります。六百四十九万事業所のうち、中小企業基本法による従業者規模の定義で見た中小企業者は九九・三%に当たる六百四十五万事業所でございますが、その中小企業のうちで会社形態を選択しているものは百二十九万社であり、中小事業所の一九・九%を占めております。このように、我が国の事業所数の大宗を占め、日本経済の発展を支えてきた圧倒的多数の中小企業の中にあって、会社形態を選択してその事業活動を営んでいるものは二割であり、あとの八割は個人事業者にとどまっております。このことは、一九八七年のアメリカ非農業企業の税務申告数一千八百十三万四千社のうち法人会社は三百七十万社、つまり二〇・四%と比較いたしますと、日米は近似したものと言えるわけであります。また、ヨーロッパにおきましても、株式会社を除けば、絶対数はともかく、会社と個人との比率は各国に比べて日本が著しく突出して高い比率を示しているということはないというふうに考えております。
 さて、日本におけるこのような現実の姿を、日本経済の成長、国民の起業家精神の高さなどに求めるか、あるいは税務対策に求めるかなどは議論が分かれるところでございますが、ともあれ、中小企業の大多数が会社になっているわけではなく、したがって会社形態を選択している中小企業者は、膨大な数に上る我が国中小企業の中にあって経営組織の近代化を図り、対外信用力を高め、さらに大きく飛躍しようとする意欲ある先進的部分であると見ることができます。
 本年の中小企業白書が指摘するように、近年、開業率の低下、商店数の減少という憂慮すべき事態が進行する中にあって、中小企業全体の健全な振興発展を図るという我が国産業政策、特に中小企業政策の観点からすれば、このような会社形態によって意欲的に事業活動を行っていこうとするいわば中小企業全体の牽引車たる役割を担っていこうとするものに対しては、その旺盛な活力をそぐような障害は設けられるべきではないと考えております。
 したがって、我が国の経済取引、企業活動の基本法たる商法といえども、その改正によってこれら意欲的な中小会社の活力をそぐおそれのある過度の規制を加えることは望ましくないものと認識をいたしております。すなわち、経済社会の実勢に合わせ、これを後見的に見守ることが商法の立場であり、反社会的な活動を除けば、経済活動はある程度当事者の自由にゆだねるという基本的考え方に立って行われるべきであると思います。
 もとより、株式会社、有限会社のような物的会社にあっては、株主、社員の責任は有限であり、基本的には限定された責任しか負わないというメリットがある会社形態であることは、中小会社においてもしっかりと認識されなければなりません。したがって、有限責任の会社制度の根幹を支える原則として、責任財産の確保、会社の計算の適正化及びその開示についてはこれが励行されるよう経営者として法の遵守に努めるべきものであると考えております。
 次に、本法案に対する基本的な考え方について申し上げたいと思います。
 このたびの法改正が、会社の実情に適合する制度を整備するため一人会社の設立を認め、発起設立における検査役の調査を廃止するとともに、現物出資について検査役の省略を認めるなど手続の簡素化等が打ち出されていることに対しましては、基本的にこれに賛成するものであります。
 しかし、改正案のうち、最低資本金制度についてはやむを得ないものと認識しておりますものの、ややもすると中小会社は株式会社にふさわしくないものとして他の会社に移行させるかまたは切り捨てようとする面がうかがえるので、中小企業は多くの不安を持っております。
 我々は、昭和六十一年五月の法務省改正試案のうち、中小企業に最も関係の深い五項目についてその是正を求めてきたところであります。
 すなわち、一つは最低資本金については株式会社二千万円、有限会社五百万円の原案に対しまして、株式会社一千万円、有限会社三百万円とし、五年以上の猶予期間を設けていただきたい。このほか、二番目といたしまして貸借対照表等の登記所における公開。三番目の会計調査人による調査、会計専門家による指導の義務づけ。四番目の取締役の責任強化。五番目の支配株主、社員の責任強化。すなわち、二から五番目につきましては反対をしてまいりました。最低資本金を除きまして、他の四点は本改正案には盛り込まれなかったわけでありますが、これらの事項が今後法制審議会においてさらに検討される場合には慎重な対応を求めたいと考えております。
 さて、最低資本金制度は、会社を設立しようとする者が最初にクリアしなければならないハードルであり、これまでになかった作用を中小企業界や新規参入者に及ぼすものと考えます。
 そもそも、小規模な有限責任の存在自体を活力と評価するか乱立と評価するかは見方の違いと言ってよいと思います。個人企業で事業活動を継続していくか、株式会社または有限会社を設立して事業活動を展開していくかどうかは、基本的には当事者の判断によるべきものであります。有限責任の乱用や放漫経営は、資本の大小に起因するものではなく、経営者の姿勢や能力にかかわるものであります。これは企業倒産の状況を見ても、資本金規模と倒産との間に直接の相関関係が見られないことからも明らかであります。立派に黒字経営をしてきた会社でも、親会社の業績不振によって影響を受けることは日常茶飯事であります。無論、資本金規模に比べて不相応な受信を得ている場合には、当然のことながら倒産した際には危険性は大きくなるのでありますが、経営内容に見合う取引をしている限りは、債権者に危険を及ぼすことは少ないものと考えます。むしろ、中小会社では、経営者個人の手腕、人柄が信用のバロメーターであり、資本金額よりも重視されているのが一般であります。
 かかる見地から、法制審議会答申に比べ、本法案は、既設と新設との区別をなくし、一律株式会社一千万円、有限会社三百万円としたこととあわせて五年間の猶予期間が設けられましたことは、実体経済から見て妥当なものと考えております。我々も最低資本金の法制化は大きな負担ではございますけれども、他方、小規模会社の資本充実により、その経営体質の強化に寄与することと理解をいたしております。しかし、急速かつ高額な最低資本金の導入は、多くの小規模会社に混乱を招くことになるので、現実的な対応を求めてきたところでございます。
 さて、このたびの最低資本金の法制化に伴い、法定最低資本金額に満たない株式会社は約八十万社、有限会社で約七十万社と言われ、膨大な数の既存会社が強制的に増資や組織変更を余儀なくされております。したがいまして、法改正に伴って最低資本金額に満たない多くの既存会社が増資、組織変更等の措置を講じようとする場合には、税制上の特別措置が実現されるよう特段の配慮をお願いするものであります。
 以上をもちまして、私の意見を終わります。
#10
○小澤委員長 錦織参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ─────────────
#11
○小澤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簗瀬進君。
#12
○簗瀬委員 私に与えられた時間が十五分というふうな大変短い時間でありますので、通常、一問一答式でやるわけでありますけれども、各参考人の皆さんに二問ないし三問集中的にお一人ずつ質問させていただくという形をとらせていただきたいと思います。
 初めに、鴻参考人でございます。大変難しい問題をリーダーシップをとっていただきましてまとめていただいたその御努力には、大変敬服をする次第であります。最低資本金制度が日本企業の体質を強化し、また国際化に即応しながら社会的責任を果たす、そのためにもぜひとも必要だというふうな御意見があられました。しかし、それと同時に、日本のこれまでの経済発展を支えてきたのは大変すそ野の広い中小企業があったからである、こういうふうなことも私は間違いないことだろうと思います。このような二つの要請というようなものをどのようにこの最低資本金制度の中でまとめていこうとするのか、大変苦しい御選択をなさったろうと思われるわけでありますけれども、そこで、二点ほど御質問させていただきたいと思います。
 お話の中で、本来参考人御自身としては、新設会社と既存会社が最低資本金制度に即応していく場合に、取り扱いを変えていくべきではないかな、このようなお考えを持っておった。しかしながら、結果的にはそのような区別はなくしましょうというふうなことに今回なったわけでありますけれども、それに至るお考えの変更といいますか、その辺についてちょっとお尋ねをしたい。
 また、その金額的なところで二千万が一千万になりというふうな変化があったわけでありますけれども、その辺の金額的な御評価についてもちょっとお伺いをしてみたいなと思います。
 それからもう一点、お話が途中になってしまったと思われるのですけれども、小規模会社の運営機構についても簡素合理化の方向で考えていくのが妥当なのではないかとおっしゃっておられましたけれども、これについて具体的な施策ないし今後のお見通し等についてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
#13
○鴻参考人 簗瀬さんの御質問にお答えをいたします。
 二点ございましたが、最低資本金制度について、先ほど意見陳述の中で、今簗瀬さんがおっしゃられましたように私は当初新設会社と既存会社で最低資本金額を区別してもいいのじゃないかというふうに考えておったということを申しました。御承知のように、この問題を審議している中では、改正試案以来、株式会社の場合は新設会社、既存会社を問わず二千万円、ただし既存会社については猶予期間とか経過措置を講ずるということがございましたが、有限会社についても同じように五百万円で既存会社、新設会社ともという考えで来ておったわけでございます。そういう中で私は、既存会社についての二千万ということが今の中小会社の実情からして多少無理があるのではなかろうかというふうに考えておりました。
 それと同時に、先ほどの意見の中でも申し上げましたように、私自身の貨幣価値と申しましょうか、あるいはお金と物との物価との関係といいましょうか、そういう感覚からいたしまして、会社制度を採用するときの二千万円というものが、既存会社はともあれ、これからつくる会社として適当な金額であろうかというふうに疑問に思っておりまして、では幾らがいいかというのはなかなか難しいのですけれども、私自身はあるいは新設会社なら五千万円ぐらいかな、そういう案も最初に一つの案として示されたことがございました。
 そういうようなことで、多少最低資本金額が新設会社と既存会社で区別する方がいいのじゃないかと考えておりましたが、最終段階近くまで最初の案が続いておりまして、商法部会の終わりの方の段階で、新設会社二千万円は大方の意見ですからいいにしても、既存会社の方は何らか考慮する必要があるのじゃないか。特に、先ほど錦織参考人の御意見にもございましたように、株式会社の場合は一千万円、それから有限会社三百万円ということを早くから言っておられ、そういう御意見等を伺っても、私自身としても多少高きに過ぎるのではないかというふうに考えておりまして、既存会社については少なくとも下げた方がいいのじゃないかということを私、商法部会の中でも発言をいたしまして、商法部会自身の決定のときにそこに区別が一たんなされたわけでございます。
 法制審議会総会も、先ほど申しましたように原案どおり通ったのですが、政府関係各省間の御調整の結果だとは思いますけれども、内閣提出の法案としては低い方にそろえられるという形、また新設会社、既存会社を区別しないということになったわけでございます。したがいまして、先ほど終わりに錦織参考人も数字を挙げられました既存の有限会社の七十万、八十万というような数の会社について低い方の金額に決まったということは、それだけ無理が少なくなったということはあるのじゃないかと思いますが、新設会社について私の当初の考え方からすれば、大分考えておるところと離れてしまうということはあろうと思いますけれども、私、一般論を申して恐縮ですが、法の改正は、いいことでも漸進的、順を追って改めていくということが社会のフリクションというものを少しでも少なくするに役立つという面もあるのではないか、また、同じ改正でも、やりやすい時期とやりにくい時期があるのではないか、そういう点も考慮しながら、適当な時期に少しでも理想な形に近づけるような努力を今後もするということでいいのではないかということで、先ほどまとまった意見で申しましたように、今回の改正法律案の金額が穏当な金額ではないかというふうに考えるようになったわけでございます。これが第一点のお答えでございます。
 それから、第二点でございますけれども、これは最初は中小会社について、中小会社らしい法規制を大小会社区分立法などでするということで、それなりに経営管理機構等についてもかなり規制の緩和をするような案を考えておったわけでございます。しかるに、そういう問題は全部先送りということになってしまいまして、取締役の役員の数とか取締役会の運営のやり方等々、現行法は大会社を念頭に置いた規制になり過ぎているという点がございますので、そういう点も規制を強化すると同時に、緩和することを考えるということだったわけでございます。しかし、これは先送りとは申せ、次の改正のときには必ずそういう点も織り込まれることは間違いないというふうに考えており、その程度までの審議は既に済んでいる段階でございます。
#14
○簗瀬委員 どうもありがとうございます。
 時間がないので、駆け足で次に飯塚参考人にちょっとお尋ねしたいわけでありますけれども、縦割り行政に対する御批判、あるいは私ども国会議員もっとしっかりせいと、大変ずしんと胸にこたえたわけでありますが、その中で二点ほどお尋ねをさせていただきたいと思います。
 参考人のお話の中で、大変な長い御経験の中から監査の本質について、会計調査人の調査と大分質が異なるのじゃないかというふうな御主張が強いものがあると思います。その辺についてもうちょっと具体的にお話をいただければと思います。
 それから第二点といたしまして、今回最低資本金制度が導入されますと、株式会社あるいは有限会社という名前を冠する企業の数が当然大分減ってくるわけであります。そうなってきますと、外部監査をする人間、公認会計士とか税理士とかのいろいろな数の問題、そしてその対象になっている企業の数の問題、この適正な規模あるいは適正な人数、この辺がどのくらいなのかというのは大変問題になってくるだろうと思う。そこで、参考人は公認会計士五万人というふうなお話を出しているようでありますけれども、この五万人とする根拠と今回の最低資本金制度導入との絡みといいますか、その辺をちょっと御説明をいただければと思います。
 以上です。
#15
○小澤委員長 参考人各位にお願いをいたしたいと思います。答弁は簡潔にお願いいたしたいと思います。
 飯塚参考人。
#16
○飯塚参考人 監査というものと会計調査との違いといいますか、そこを言え、こうおっしゃるわけなんで、申しますが、それは、実は法務省の研究会で中間報告をやっていたのでそれでわかったのですけれども、会計調査人の場合は一応の確からしさがあればいいというので、冗談じゃない、それは監査でも何でもない、監査というのはやはりがっちりと確からしさ、真実性を追求しなければいかぬ、そういうことなので、そこに質的な大変な違いがあるということを申し上げなければならぬ。
 それから、第二番目の公認会計士が五万人必要だということでございますが、実は人口比率から見ますと、イギリスは現在大体六千万人おります。そこで公認会計士が十万人。ですから、これを日本と同じような比率に直しますと、イギリスは二十万人の公認会計士がいることになってしまう、つまり日本は一億二千万ですからね。そうすると、イギリスと同じということになると二十万は欲しいのだけれども、とてもそんなことは無理だ、せめて五万人、こういうことなんで、五万人というのは直観的な合理性を探求した結果申し上げておるだけです。
#17
○簗瀬委員 時間も大変迫ってまいりましたので、宮内参考人、錦織参考人それぞれ要点を一問ずつということで質問させていただきたいと思います。
 宮内参考人でございますけれども、社債の発行限度枠の拡大というふうなことで、今回の改正については一応の御評価をいただいたというようなことでありますが、できれば撤廃をしてほしいというふうなことで、社債を中心にした資金の流入というようなものを大変期待をされているようでありますが、諸外国の状況と比較をいたしますとどのようなところなのかという点をちょっとつけ加えて聞かせていただければと思います。
#18
○宮内参考人 お答えいたします。
 欧米先進国といいますか、アメリカ、ドイツあるいはフランス、イタリー等におきましては、社債の限度枠ということはございません。なぜならば、格付機関というものが充実しておりまして、発行しようと思いましても、例えばジャンクボンド債のような非常に信用力のないものは売ろうといったって買い手がないわけでございます。したがいまして、我が国におきましても格付ということは今充実整備されておるわけでございまして、それが充実されるならば――借金は幾らでも現在銀行からできるのではないかということですけれども、借金も信用がなければ貸してくれないわけでございますし、社債にいたしましても、格付によって非常に低いランク、ジャンクボンドのようなのは買い手がないわけでございますから、そういうことで、国際的に見ても適債基準とかそういうものを設けているのは日本だけではないかということで、撤廃していただきたい、早く欧米並みにしていただきたい、そういうことでございます。
#19
○簗瀬委員 最後に、錦織参考人に一問御質問させていただきます。
 今回の最低資本金制度の導入が中小企業切り捨てになってはならないということはまさにお話のとおりでありまして、私も、お隣の韓国と比較して日本の経済がこれほどまでにすばらしい結果を残してきているのは大変広範な、すそ野の広い中小企業の存在があったからであるというふうに評価をしているわけであります。
 そこで、税制面での優遇、特段の措置をというふうな、大変遠慮がちの御表現をなさったようでございますけれども、具体的に特段の優遇措置とは一体どのようなものを御希望なさっているのかということをもっと率直に聞かせていただきまして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。
#20
○錦織参考人 最低資本金に満たない約百五十万社の既存会社が円滑に最低資本金に達しますよう税制上の特別措置をお願いしたわけでございます。具体的なものといたしましては、第一点は、資本準備金、留保利益の資本組み入れにかかわる株主に対しますみなし配当課税を非課税としていただきたいということ、第二点は、増資、組織変更にかかわります登録免許税につきまして減免措置を講じていただきたい、この二点でございます。
#21
○簗瀬委員 以上で質問は終了いたしました。
#22
○小澤委員長 小澤克介君。
#23
○小澤(克)委員 委員の小澤でございます。
 参考人各位におかれましては、御多忙な中を御足労いただきまして、当委員会に貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。若干御質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、鴻参考人にお尋ねしたいわけでございます。
 御意見では、最低資本金制度についてむしろ遅きに失したくらいであるというお話でございました。そして、これは債権者保護の観点から導入すべきものである、こういう御意見かと承ったわけでございますが、私にとってややわかりにくいのは、最低資本金制度が何ゆえに債権者保護という結果をもたらすのか、そこのところを具体的に教えていただきたいと思うわけであります。
 と申しますのは、確かに商法には資本充実の制度については種々規定がございまして、設立当初あるいは増資の際には資本充実が実現されるような保証といいますか制度が整っているわけでございますが、一たん営業を開始いたしますと、これは商売は生き物でございますので損失が出ることも当然ある。資本維持については何条でしたか、俗に言ういわゆるタコ配を禁止する規定のほかには、特に制度的な保証がないわけでございます。
 そういたしますと、配当をしないような会社、欠損会社については、債権者保護には資本金制度がほとんど機能しないのではないか。しかも、企業の倒産等の場合には、どんどん欠損していって、資本を食い込んでいって、そして最終的に債務超過に至って倒産する、その際に、債権者が損失をこうむる、こういうのが常態でございましょう。そういたしますと、最低資本金制度が債権者保護につながるというところがどうも直ちには理解できないわけでございます。そこについての具体的な御説明をしていただければありがたいと思うわけでございます。
 また、鴻委員はこの法制審商法部会等にずっと御参加のようでございますので、その審議の際に、この最低資本金制度と債権者保護についての実証的な資料を持っての御議論というものがあったのかどうか、その辺についても教えていただきたいと思います。
#24
○鴻参考人 ただいまの小澤さんの御質問は二点ございまして、順次お答えいたします。
 最低資本金制度は、有限会社法ではもう現行法であるわけでございますが、株式会社法に新たにその制度を採用するというのが今回の改正法律案の問題でございますけれども、ただいまの御質問は、最低資本金制度がなぜ債権者保護のための法規制ということになるのか具体的に説明してほしいというお尋ねでございます。
 小澤さんも言われましたように、それは資本というものが、商法二百九十条にあります利益配当の要件というもので、資本は、配当に当たって、計算書類上まずそれは差し引いて残しておく形でなければ配当してはならないという形で働いてくるということ、関係があることは、先ほどお話があったとおりでございます。これが一番大事な点でございます。
 それはいかなることを意味するかというと、債権者保護と申しましても、現実に会社が事業に失敗して資本の欠損を生ずるような状態になったときに、債権者というものが十分な保護を受けないということはお話のとおりでございますけれども、会社保護における債権者の保護というのは、会社をめぐる関係者と申しましょうか、者の間で会社債権者の利益を優先して考える。もっと言えば、会社に出資して事業によって利益を上げようとする投資家、株主よりも債権者を保護するという趣旨でございまして、そういう意味におきましては、最小限度、資本に見合う財産は持った上でなければ会社の資金を株主の間、社員の間で分配してはならないということは、債権者保護の制度になるのではないか。のみならず、その資本というものが決まれば、さらにそれを基準として単に資本に見合う財産を持つ、会社は持たなければならないという意味の資本充実だけでなしに、先ほどの意見の中でも申し述べました改正法律案に利益準備金の積立基準の改正の点も触れましたが、資本準備金、利益準備金等資本を基準にしてさらにそういう会社債権者の担保になるものを積み増すような、そういうものを考えるときのまた基準になるということにもなるわけでありまして、そういう意味で、最小限度の財産というものは会社設立の際から会社にそれに見合う財産を持つようにするということが会社債権者の保護につながるということだというふうに私は理解をしておるわけでございます。
 それからもう一点は、商法部会の審議の過程で、今申しました最低資本金制度が債権者保護につながるという問題であるということについての実証的な資料というものが出されて、それに基づいて審議した結果なのかという御質問のように承りましたが、そうでございますか。――具体的に相当な範囲のデータに基づいてその両者の関係をまとめたような資料というものが配付されたという記憶はございません、一般的な形ではそういう問題も議論はいたしましたが。それでよろしゅうございましょうか。
#25
○小澤(克)委員 今のお話ですが、私にはなお腑に落ちないところがございます。
 資本金制度は、あるいは利益準備金等の制度も含めて、その一定範囲を取り崩して配当してはならないという、いわば消極的な意味での資本充実の手段は確かに商法上確保されておりますが、それ以外に積極的に資本維持を図ることは、そのような制度はございませんし、また技術的にもそれは、商売は生きておりますので損失をこうむることはあり得ることですから、それを法的に積極的に資本充実を図らせるということは技術的にも不可能であろうかと思うわけでございます。
 したがって、先ほど私が疑問としたところのように、配当などを行っているような会社ならばむしろ問題ないわけでございまして、あるいは配当しようという志向を持っている会社ならばむしろ問題ないわけでございまして、欠損がどんどん生じていって資本を食い込んでいって、最終的に債務超過に至って倒産に至る、その際に、実際に債権者が損害をこうむるというのはそういう際でございますので、今のお話はどうももう一つ、大先生を前に大変恐縮でございますけれども、腑に落ちない点でございます。
 また、大変失礼な物言いかもしれませんけれども、具体的な資料なしに討議があったということが、この最低資本金を幾らにするかという具体的金額についてやや、どういいますか議論が明晰さを欠いていたのではないだろうか。大変失礼ですが、バナナのたたき売りのような形で今回の金額に決まったというところがその辺に起因するのではないかなということもあるものですから、お尋ねをしたわけでございます。どういたしましょうか。なおお答えいただけるなら、どうぞ。
#26
○鴻参考人 私のお答えが十分でなかった点もあったかと思いまして、第一点、第二点ともに重ねてのお尋ねでございます。
 第一点の方につきましては、先ほども申し上げましたように最低資本金制度、資本の制度の債権者保護との関係というのは、やはりこれは会社をめぐる関係者の利益の調整の中で債権者の利益の保護を優先するという考え以上のものではないので、会社事業をすればどんなに経営者というものが一生懸命にやり、まじめに正直にやりましても、時に大損失を受けて会社財産というものを全部失ってしまうようなそういうことになる場合、これはいかなる人も避けがたいことではないか、そういう場合に、債権者がその会社から債権の回収ができないということになり、債権者もろとも損害を受けるということになるかもしれません。それは債権者保護にならないじゃないかと言われればそのとおりではございますが、その債権者保護までは会社法の制度ではちょっと解決できないのではないかというふうに私どもは考えております。それで、債権者保護について、私の説明は消極的な意味ではそうかもしれないが、積極的な意味での債権者保護にならぬじゃないかという御趣旨かと思いますが、その点については今のようなお答えをするほかないのじゃないかというふうに考えております。
 それから第二点に、実証的な資料なしの審議という点は問題ではないかということでございますけれども、この点私の申し上げ方がちょっと不用意だったのかもしれませんが、私自身、商法部会の委員は東京大学に在官中からで二十年になりますが、その審議の過程で改めてそういうまとまった資料が出たことがないということでございます。したがいまして、今回、四十九年からの改正ということになれば、先ほどお答えしたとおりで間違いないかと思うのですが、商法部会といたしましては、最低資本金の問題というのはたしか昭和三十年ぐらいから問題として取り上げられ、私まだそのときには委員としてはもとより、幹事としても参加しておりませんでしたが、あるいはその時期にそういう関係の資料が配られたことがあるのかもしれません。それで、あるいはそういうことはいわば当然のこととしてというんでしょうか、先ほどちょっと私も申し上げましたように、有限会社法に既にそういう制度があって、これは本来先に株式会社法にあった上で有限会社法が制定されるときにそれに倣うというのならわかるけれども、有限会社法が新しく昭和十三年にできたときにもう入っておるということは、そういう意味では株式会社や有限会社のような、先ほど私は資本会社とか物的会社ということを申しましたが、そういう会社にあっては最小限度の会社財産確保のための最低資本金制度は当然である。逐一外国立法例は申し上げませんでしたが、この法律案参考資料の後ろにも、具体的な、ヨーロッパ主要国それから韓国を含めて最低資本金額、株式会社、有限会社どうであるということが挙がっておりますが、外国の立法例でも早くからそういう制度が確立しておるというその趣旨、理由としては、会社債権者の保護であるということはもう問題なく承認されて認められていることだというふうに私ども理解しておりましたので、ただいま小澤さんが言われたように、そういう資料なしには最低資本金問題を審議できないというふうには私は考えませんでした。それでよろしゅうございましょうか。
#27
○小澤(克)委員 それでは、飯塚参考人にお尋ねいたします。
 大変高邁なかつ貴重な、しかも諸外国等の状況について大変御精通で、しかも経験を踏まえた御意見だったと拝聴いたしました。ちょっと時間の制約等もあってあるいは十分に、若干削ったのではないかというふうにも思われまして、ちょっとわかりにくい点がございましたので、差し支えなければ教えていただきたいと思います。
 一つは、「問題点の第一」のところで、アメリカの会社法及び会計の原則は完全にヨーロッパと同調しております、このようなお話がありました。この点についてもう少し具体的に、どのようにアメリカもまたヨーロッパと同じであるというふうにおっしゃられるのか、教えていただきたいと思います。
#28
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 第四号指令というのが今回の商法改正の背景として大きく存在しておることは御理解いただいておると思うのでありますが、その第四号指令の第五十六条に、会社というものは決算書をつくるときに財務諸表に未来予測というものを添付しろ、つまり今後三年、五年のうちに我が社はこうなっていきますよという未来予測ですね、それを記載しなさいということが初めて、一九七八年の第四号指令に五十六条として載っかってきた。それを見たアメリカは、直ちに今までの会計原則を変えまして、そして、今までは実はアメリカの会計原則は、企業というものは未来予測に踏み込んではいけない、未来予測をやっちゃいけないということを言っておったんでありますが、その第四号指令が出た後は、実は未来予測はやらなければいけないというふうに大転換したわけです。そうしてさらに、それだけじゃなくて、未来予測をするためのテクニックはこうだよ、その未来予測のテクニックまでも実は教示するというふうに変わってしまったということが第一。
 それから第二は、例えば第四号指令には、前文を初め六カ所において「真実かつ公正なる見解」の原則というのを出しているわけでありますが、その原則は、別な言葉で言えば、経済の変化が速過ぎて法律と合わない、ギャップができちゃったという場合ですね、その場合には経済の変化に合わせて法律の方を無視してもいいという原則、それが実はこの「真実かつ公正の見解」の原則というやつの中身でございますけれども、それを見てアメリカは直ちに、デパーチャー フロム ザ プリンシプルズという、つまり会計原則からの離脱、離脱ということは、従来の法に基づく会計から法に基づかない離脱の処置を認めるというふうに変わった。
 大きく言うとその二つが非常に顕著な例でございますけれども、実はそればかりではございませんが、大きな点ではその二つが特徴的だと思っております。
 終わります。
#29
○小澤(克)委員 続いて飯塚参考人にお尋ねいたします。
 そして、今の「問題点の第一」のところででしたでしょうか、その末尾のところで、欧州の統合のことを御指摘の上で、日本は制度上大きくおくれてしまう結果になっているというお話がございました。これは監査の制度についての御説明だと思うんですが、このことによって実際に実害といいますかはどのようなことが想定されますでしょうか。
#30
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 実害ということでございますけれども、やっぱり取引の円滑を欠くに至るという点が一番大きな実害じゃないかと思います。まあ国会の先生は余り直接には感じないでしょうけれども、我々公認会計士はヨーロッパの公認会計士たちからめちゃくちゃに非難される。おまえの国はどうしてるんだ。特に国際会計基準というものは、設立するときに九カ国の代表が集まって、本部をロンドンに置いて、そして国際会計基準というものをつくり出した。ところが、日本はその発起人に入ったにもかかわらず国際会計基準というものを日本としては法的な拘束あるものとしていない、だから全然もうその点は無責任じゃないか、何やってんだという形で私どもはしょっちゅう現場で責められておる。私は今約四、五十名の公認会計士を抱えた監査法人の理事長、会長もやっておりますけれども、彼らが一様に同じ困難を味わっておる。
 そしてさらに、実はそういう会計士による監査は、その監査がしっかりやれているのかやれていないのかによって取引が円滑にいくかいかないかということが大きく左右されてくるということでございます。なお、その公認会計士が取引の円滑発展のために活用されているという側面、その側面は国会の先生方はどこまで掌握なさっているか存じませんけれども、非常に大きな影響がございます。
 終わります。
#31
○小澤(克)委員 さらに飯塚参考人にお尋ねいたします。
 そこで、同じく日本と同様に税理士制度を持っていた西ドイツにおいて、簡略試験制度ですか、こういったものを採用し、大規模化したという表現がございました。この大規模化というのは内容はどういう事柄なのか、またそれはどのような根拠と申し上げますか理由によって行われたのか、その辺についていま少し詳しく御説明願えませんでしょうか。
#32
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 実は今回の会計指令法という法律、この法律で二十二カ条、公認会計士法を直してドイツでは大規模化したのでありますけれども、この法律ができる前に、実はドイツの公認会計士法の第九条を見ますと、フェルキュルツテ・プリューフング、つまり簡略試験という制度はあったのであります。あったのですけれども、やや狭くしまして、つまり入り口を狭くして、ちょっと難しい条件をかぶせておったのでありますが、今度は一挙に、開業五年以上の者は監査論と会社法だけでいいんだ、十年以上の者は監査論をやめて会社法だけでいいんだ、十五年以上の者はもう口頭試問だけでいいんだというふうになったわけであります。
 しからば、その理論的根拠は何であるかといいますと、これは日本も同じなんでありますけれども、税理士も会計士もともに会計学の理解と実践というのはやらねば業務が成り立たないので、どうしても我々は会計学の理解と実践はやっているわけなんです。特にドイツの場合は、法制上シュトイエルプリューフング、つまり税務監査という言葉が一般化しておりまして、監査には親しんでおるという傾向がある。だからなおさらのこと、これは大量に税理士を公認会計士にしていいんだという議論が出てきてしまうわけなんです。
 日本の場合はどうかというと、従来は税務監査、特に巡回監査、毎月必ず開業先へ行ってその会計資料の合法性、正当性を是認してくる、批判してくる、そういう一種の大切な監査行為というものは日本でも実は同じようにやってきているので、全く共通基盤を持っているというふうに言えるわけであります。ドイツではそれが大々的に行われるようになりましたので、一九八五年以後一挙に公認会計士がふえてきたという状況でございます。
 終わります。
#33
○小澤(克)委員 続いて飯塚参考人にお尋ねしたいのですが、ドイツでは今御説明のあったような制度によって税理士が公認会計士になる道を開いた、大変興味があるわけでございますが、その結果、先ほどのお話ですと、ドイツでの話ですが、公認会計士約六千名、こういうことでございました。日本でも約九千名いるわけでございます。先ほどのお話にありましたとおり、株式会社の数で絶対的な乖離がございますので六千名で十分ということなのかなとも思いますが、率直に申し上げて、そういう道を開いて簡略試験制度を大規模に行った割にはそれほど公認会計士はふえていないなという印象を受けるわけでございますが、これは何か原因があるのでしょうか。素朴な疑問でございますが、よろしくお願いいたします。
#34
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 実は先生のおっしゃっているとおりでありまして、ドイツにあってはなぜもっと公認会計士はふえてくれないのかということで、この法律改正当時のドイツの公認会計士協会の会長であったドクター・シューレンという方がおりまして、これが私のことを旅先まで追っかけてきまして、そして一緒に夕食して、どうしてなんだろうと彼自身もよくわからないで言ったことがあるのです。だから、一つの悩みだということは言えると思います。
 しかし、今先生がおっしゃったように西ドイツでは六千名だというけれども、それは西ドイツの人口は六千万ですから、それで六千名です。だから、日本に引き直せば、日本の場合は一万二千人ぐらいいたっておかしくないというふうに思うのですね。そういう点で、人口比の上から見ればドイツは決してそう少なくないのだというふうに言えると思うのです。
 なお、実態論的に申しますと、ドイツの会社法、商法に一つの大きな原因があると思うのです。今度改正されたドイツ商法の三百十九条第二項第五号という条文があります。それによりますと、いわゆる帳簿作成あるいは監査をやっていた者は監査をやってはいけないのだ、つまり通常監査をやっていた者、通常決算書をつくっていた者、通常帳簿作成に協力していた者、その者は監査してはいけないのだという規定があるのです。だから、その規定で阻害されてしまって入っていけないというふうに思うのです。実はその後、ドイツの税理士会の会長が日本へ来まして私と公開討論をやったのでありますが、そのときに、ちょっとあなた間違ってないかと言ったのは、ドイツはなるほどそうなっている、しかし条文をよく見てくれ、何と書いてあるか。それはこういう文句が入っているのです。第五号に、ユーバー ディ プリューフングステーティヒカイト ヒナウス、つまり監査行為を越えて関与しているという場合、その場合はその会社に対していわゆる商法上の監査をやってはいけないよと書いてある。つまり、監査行為という普通の行為を越えてやっていた場合には監査してはいけないよというので、これは裏と表の表現がありますけれども、アメリカの商法、アメリカの会計原則と全く同じでございまして、なぜそこのところを君はいいかげんにするんだと言って私は突っ込んだのですが、そのユーバー ディ プリューフングステーティヒカイトヒナウス、つまり通常の監査行為を越えてやった場合、その場合にはだめだよと言っているのであって、それ以上のものじゃないので、ひとつそういう阻害要因があるのだということを御認識いただきたいと思うのです。
 終わります。
#35
○小澤(克)委員 続いて飯塚参考人にもう一つ、二つお尋ねしたいのですが、今お話ありましたところ、例えば日本でも税理士さんがある会社の代理人として税務署との関係でいろいろ申告書等をつくる、そういった立場と、それから第三者として監査といいますか調査といいますか、いずれにしても客観的に会計の調査に当たるということがどのような関係に立つのかなというのも、どうもちょっと私にももう一つ、一度しみじみ考えてみなければいかぬなと思うわけでございます。
 それはともかくとして、御質問でございますが、日本においては公認会計士が圧倒的に少ないというお話がございました。これは会社の数との相関的な関係だろうと思いますが、日本ではどの程度いればいいと、これは後の方でちょっと五万人という数字がございますけれども、これはどういうところからといいますか、諸外国との比較等かと思いますが、どういったことからこのような御認識をお持ちなのでしょうか。
#36
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 例えばアメリカの場合は、実務についている公認会計士は二十五万人と言われますね。日本はわずか九千人です。しかし、よくアメリカを見てみると、例えば政府機関とか政党とかあるいは個人の政治家の資金の出納というようなものまで公認会計士の監査にさらされておる。日本はやっていない。政治家の先生方は国民の代表でございますから、願わくは先生方の政治資金の出納等も公認会計士や五年以上の経験ある税理士による監査を受ける必要があるのではないかと思うのです。それには日本の現在の政治資金規正法の第十四条をちょっと改正していただかねばならぬと私どもは思っております。
 いずれにせよ、実はアメリカは二十五万人でございますが、イギリスは先ほど申し上げたように十万人。しかし人口比で申すならば、イギリスは人口は六千万しかありませんから、これを一億二千万と見れば公認会計士の数は大体二十万人ということになる。日本はわずか九千人でございますから、イギリスの二十分の一以下であるということになります。
 なお、ドイツの場合は二千百九十社ぐらいしか株式会社がないのですから非常に少ないのです。有限会社を加えたって三十四万ぐらいしかないのですから、日本とは全然条件が違う。しかし同時に、ドイツの場合は、公認会計士会社、ヴィルトシャフツプリューファーゲゼルシャフトというのがございまして、それが約一千社ある。だから、それで十分社会の需要を補っている。ところが、日本の場合はどうだというと、余りにも少ない。公認会計士が少ないだけじゃない、弁護士の先生方も少な過ぎる。何しろ全部で一万四千人弱でございますから。アメリカの場合は六十万人おります。しかし、アメリカの場合はちょっと多過ぎると思います。私が懇意にしているアメリカの若い弁護士は、命がけで勉強してやっと弁護士の資格を取ったんだけれども、資格を取ってみたら仕事がないんだと言っていました。つまり、そういうふうに仕事がないという状況にまで追い込まれている。そこまでいってしまってはちょっとひど過ぎるんじゃないかな。だから、アメリカの弁護士の六十万というのは多過ぎるんじゃないかと思いますが、日本の場合、一万四千人というのはひど過ぎないか。せめて弁護士先生も五万か十万いたっていいんじゃないかと私どもは思っております。五万とか十万とかというのはあくまでもインテレクトゥエレ・アンシャウウングといいますか、英知的直観で申し上げているだけであって、実証的な数字を申し上げているわけではないのでございます。
#37
○小澤(克)委員 大変率直な御意見だと思います。
 飯塚参考人に最後にお尋ねしたいのです。
 これは最初に鴻参考人にお尋ねしたことと多少重複して恐縮なんでございますが、飯塚参考人は、企業監査の大切さといいますかその充実について大変力説されていらっしゃるわけでございます。今回の商法改正では、調査を含めてですけれども、企業監査の制度とその結果の計算の公開制度について見送りまして、債権者保護という観点からは最低資本金制度のみ残したわけでございます。もちろんほかのところはいろいろありますけれども、それは除きまして。先ほども申し上げたとおり、企業の会計が適正で、しかもそれがガラス張りになっていることこそが債権者の保護に直接的につながるのでありまして、それらを省いて、ただ最低資本金制度のみ導入しても、果たして債権者保護という結果をもたらすものか、そういう機能があるのかどうか、依然として私は大変疑問に思っているわけでございますが、この点についての先生の御意見を最後に伺わしていただきたいと思います。
#38
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 最低資本金の額というのと債権者保護というのを観念的に結びつけられたようでございますけれども、実は今回の商法改正の背景としてのECの第四号指令、その第四号指令の法的根拠であるところのローマ条約の第五十四条の第三項(g)号というのがございますが、それによりますと債権者保護とは言うてない。先ほど鴻先生も債権者保護とおっしゃっていたけれども、ローマ条約の五十四条第三項(g)号には債権者保護という用語が書いてない。何と書いてあるかといいますと、デア ゲゼルシャフター ゾヴィー ドリッターと書いてある。つまり、会社の社員及び第三者の保護、こうなっている。第三者の保護なんであって、したがって債権者保護というふうに狭義に解すべきではない。少なくとも第四号指令の背景にあるローマ条約はそうなっている。同時に、第四号指令も債権者保護と書いてない。そうではなくて第三者保護と書いてある。
 御承知のように、ECの条約の解釈に関してはドイツ語とフランス語とイタリー語が正文であると書いてある。それで、私も仕方なしにドイツ語を調べてみたのですけれども、ドイツ語はドリッター、第三者と書いてあるだけであって、債権者とは言うていない。その点がちょっとどうかと思います。
 なお、最低資本金を設けたということは日本の実情に合った処置であると私は思っております。
 と申しますのは、先ごろ私的会談のときに先生がちょっと私にお漏らしになったかと思いますけれども、日本の場合は税法上の考慮のためか何か存じませんけれども、要するに小規模の会社の乱設があり過ぎる。私は冷静に日本の商法学者の著作を調べてみたのでありますけれども、一様にそれを嘆いていらっしゃる。だったら、なぜそれを法務省に訴えないのか、そういう小規模の、余りにも零細な会社の乱設を許すのかと。これが世界で飛び抜けて会社が多くできちゃった理由だ。何しろ日本の株式会社、有限会社の数はヨーロッパ全体の株式会社、有限会社の数より多いのですから。こんなことはべらぼうですよ、そう私は思っております。
#39
○小澤(克)委員 それでは、宮内参考人にお尋ねいたします。
 宮内参考人は主として大企業の立場からの御意見だったかなと拝聴いたしました。今回の商法改正の中で、小規模、閉鎖的な会社にも適合する法制度の整備という観点から一人社員の会社設立を可能としたという説明となっているわけですが、私が考えるところでは、これは必ずしも小規模、閉鎖的な会社のみではなくて、大きな会社が一〇○%の子会社をどんどんつくっていくというようなことが今実態として行われておりますが、そういった際にも便利な改正になるのではないだろうかと思うわけでございます。この点について私と同じような御認識があるかどうかをお尋ねいたします。
#40
○宮内参考人 お答えいたします。
 全く同感でございまして、小会社ばかりではございません。
#41
○小澤(克)委員 続いて宮内参考人にお尋ねいたします。
 利益準備金あるいは配当可能利益の資本組み入れについてみなし配当課税がなされないようにしていただきたいという趣旨の御意見でございました。これは要するに所得税法第二十五条二項のことだろうと思いますが、一般的にこのみなし配当の制度を廃止してほしいという趣旨なのか、あるいは今回の最低資本金導入に伴ってその法定の資本まで増資するのに際しての特例措置としてそういうことをしてほしいという御意見なのか、そこのところをまずちょっと教えていただきたいと思います。
#42
○宮内参考人 お答えいたします。
 この問題は、もともと株式配当というものはもちろん株主がいただくわけですから、源泉徴収二〇%お支払いすることはこれは当然でございますけれども、端的に見まして、利益剰余金から資本金への組み入れというものは、経理的に見ますならば科目のつけかえにすぎないわけでございます。ところが、その科目のつけかえに対しましても二〇%の所得税を払う。果たしてこれが論理的に妥当なものであるかどうかという一つの疑問がございます。
 と同時に、現在その法律が施行されているわけでございますが、今回最低資本金制度というものができますと、五百万から一千万にするときに、単に資本準備金、利益準備金からつけかえると、そうでなくても厳しい環境にある小会社がさらにそういった負担が多くかかるということで、まずとりあえずは、今回の商法改正にある最低資本金会社はぜひ認めていただきたい。さらに、広くは理屈が合わない、もちろん税法的に何らかの、何らかのといっても立派な根拠もあろうかと思いますけれども、我々が見た限りにおいては必ずしも妥当ではないじゃないか、こういうふうに考えまして、将来は全部そういうものはなくしていただきたい、こういうことでございます。
#43
○小澤(克)委員 今回の商法改正で、実は株式配当ということ、そういう概念をなくしてしまいましてすべてを株式分割ということに統一した。これまた、余り議論になっておりませんけれども、実際には大変大きな改正点ではなかろうかと思うわけでございます。株式分割であればこれがどうして課税されるのか。恐らく分割そのものは課税とは無関係な事柄だろうと思います。その意味で、株式配当ということがなくなったことと関連して、所得税法第二十五条二項との関連というのは今後も大きな問題になるのではないだろうかというふうに思うわけでございます。
 きょうはその程度にとどめさせていただいて、次に、錦織参考人にお尋ねをいたします。
 中小企業のお立場からの大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。そこで、特に倒産というのが資本の大小とは余り関係がないというお話等、私も大変そのとおりだろうなというふうに実は思ったわけでございます。
 そこで、最低資本金制度について、やむを得ないという認識であるというふうにおっしゃいまして、後の方では妥当であるというふうにもおっしゃいました。確かに負担ではありますけれども、他方経営体質の強化につながる、こういう評価でありますが、他方で、ややもすれば零細会社に対して切り捨てあるいは組織変更を強要する、そういう思考が見え隠れしているという大変警戒感も述べておられたというふうに思うわけでございます。
 そこで、もっと率直にこの最低資本金制度について本当のところどうなのかということを、重複になって恐縮ですが教えていただきたいと思います。
 それから、既に先ほど他の委員からの質問にありましたけれども、税制上の特別措置を要請するというお話でございましたが、この点についても具体的な数字等ももし、例えば登録免許税等についてそういった御意見等ありましたら、教えていただきたいと思うわけであります。
    〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
#44
○錦織参考人 お答えを申し上げたいと思います。
 倒産と資本の大小と直接関係がないということを申し上げたわけでございますが、例えば手前どもの調査では、国税庁の昭和六十二年の税務統計調査から、それと倒産企業数の比率を見てまいりますと、資本金百万円から一千万円未満では企業数が百四十万三千社ほどあるわけでございますが、倒産企業数としてはその規模の倒産というのは六千百三十六社でございまして、〇・四三%になります。資本金一億円以上では四千八百六十一社ございますので、倒産数が四十五社ございますと〇・九三%になりますので、絶対数はともかくといたしまして、比率から見ればむしろ中小会社、小会社というのはそれなりに健闘しているのではないか。それと直ちに最低資本金と直に結びつけることについてはいかがなものかということを申し上げているわけでございます。
 もちろん、我々もこの株式会社あるいは有限会社に有限責任を認めようとする以上、これらの会社のある程度の責任財産が当初からあるべきである、こういうことについては一応肯定はいたしているわけでございます。それでは幾らが妥当なのかということにつきましては、必ずしも明確な数字が示されているわけではございませんので、我々といたしましては、当初の法務省の案でございます二千万、五百万、それを参考にいたしまして、一千万、三百万程度なら何とか中小企業の理解が得られるのではなかろうかということで我々の基本的な考え方をまとめたわけでございます。これでも、百五十万社にわたります小会社があるわけでございますので、これらの資本充実については多分大変な苦労が要るのであろうと拝察をしております。しかし、これも国際的な流れの中で金額を決める必要がある、こういうことでございますので、やむを得ないものであろうと認識をしているわけでございます。
 先ほどの税の問題でございますが、格別手前どもでもその資料等を用意しているわけではございませんで、利益準備金と留保利益の資本組み入れについて二〇%の源泉がかかるわけでございますので、先ほどの参考人の御意見にもございましたように、これは非課税にするのがむしろ筋論としては正しいのではないかと考えております。
 なお、増資等にかかわります登録免許税につきましては、増加資本金額の千分の七、しかし最低が三万円ということでございます。金額的には大変少ないように思うわけでございますが、これらにつきましてもぜひ減免措置を講じていただきたい、かように考えておるわけでございます。
 以上でございます。
    〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
#45
○小澤(克)委員 終わります。ありがとうございました。
#46
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 中村巖君。
#47
○中村(巖)委員 公明党の中村巖でございます。
 参考人の皆さん方はお忙しい中を御出席を賜りまして貴重な御意見を賜りまして、大変感謝をいたしております。
 まず最初に、鴻参考人に順次お伺いをしてまいりたいと思っております。
 先生は、今回の多岐にわたる商法改正について、これはおおむね必要な改正であって、またその改正内容について賛意を表される、こういうことでお話をなさいましたけれども、最後の方で、必ずしも全部について賛成をしているわけではない、こういうことをおっしゃられたわけでございます。そこで、端的にお伺いをいたしますけれども、やはり今回の改正のいろいろな条項の中で、先生としては問題があるというふうにお考えになっておられる部分がございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
#48
○鴻参考人 中村さんが今言われましたように、私は先ほどの意見陳述の中で、今度の改正案の全部について必ずしも賛成でないということを申しました。そのとおりでございますが、極めて細かい点にわたるようなことでございますので、むしろ、これまでお話ししたようなことに関連して、私がかなり厳しいかなというような感じを持っております点を申し上げた方がいいのではないかと。よろしゅうございましょうか。
 というのは、確かに小規模会社に適合する会社制度というようなことで、この案は株式会社と有限会社について、最低資本金など額は変えてはおりますけれども、その後、例えば経過措置なんかを見ましても、猶予期間を与え、組織変更のやり方も現行法よりは緩和するというようなことはありますが、最終、みなし解散ということで、たしかこの改正案では猶予期間五年、さらに三年ということになっていますが、これは株式会社もみなし解散、有限会社もみなし解散というふうになっていますが、果たして現行の有限会社のようなこういう規制の中で有限会社についてまでみなし解散というようなことまでいくのがいいのだろうか等、有限会社について、株式会社法の規制に、これは小規模株式会社ですが、それに右へ倣えしている形でまとめられているという点がございますが、私は、有限会社については中小規模の株式会社よりはいろいろな点で法の規制を緩和してもいいのではないかというふうに考えております。
 そんな点からいたしますと、有限会社法制の全面的見直しということは先送りをいたしましたので、この際は株式会社の法規制にそろえるという面が表に出てきているわけでございますが、そのあたりにちょっと物足りなさを感じているという点が主でございます。
 さしあたり、よろしゅうございましょうか。
#49
○中村(巖)委員 引き続き鴻参考人にお伺いをいたしますけれども、三月十四日の法制審の法律案要綱の中におきましては、三千万以上の資本金の会社について貸借対照表を登記所に公示をする、こういうことがございました。ところが、今回国会に提出をされました法案の中にはこの点がなくなってきたわけでございます。それについては、中小企業団体等々のいろいろな御意見もございまして、各省庁間の調整ということもあってそういうことになったのだということでありますけれども、この貸借対照表の公開の必要性について法制審議会ではどういう御議論になっておったのか、その辺のことをお聞かせをいただきたいと思います。
#50
○鴻参考人 法制審議会と申しましても、私が委員として加わっておりますのは商法部会でございますから、その範囲のことしか存じておりませんが、中村さんの御質問のお答えとしては、委員の大部分と言っていいかと思いますが、あるいは大勢と言ってもいいのかもしれませんが、これは商法部会の要綱案、法制審議会の総会との関係ではそのまた案ということになるわけでございますが、それにまとまったごとく、計算書類の商業登記所における公開は会社債権者保護のためにぜひとも必要であるという意見だったかと思います。しかし、その適用範囲をどうするかということについて、法制審議会の決定いたしました要綱案は、今中村さんからは三千万円の会社についてということを言っておりましたが、さらに、公告制度との関係でまたちょっと規制の仕方が違っております。それから、三千万円以下の会社につきましても、計算書類の登記所における公開はございませんが、それではどういう開示、ディスクロージャーを行うのかということになりますと、現行法の日刊新聞紙への公告に戻るというような形になっておりまして、そういう意味で適用を受ける会社についての適用の仕方に問題はないかという意見もございました。さらに、三千万円という金額を明確な境としてではないけれども、中小会社について計算書類を登記所に公開させるということは、中小会社の反対ばかりでなしに、客観的に考えても、そういう登記所に公開された計算書類を簡単に見るということでしょうか、そういうことによる弊害も考えられるのではないか等々、商法部会の中でも、数が非常に多かったというわけじゃございませんが、反対意見もございました。そういう意味からは、この改正法律案に計算書類の商業登記所への公開の規定、一連の規定が落ちたということについては、その最低資本金の金額が引き下げられたこととあわせて、内心不満に思っている商法部会の委員は多いかと思いますけれども、必ずしも全部ではなくて、もう少しこの計算書類の商業登記所における公開の制度はさらに練り直しをする必要があるのではないかという意見もあるのではないかというふうに私は理解をしております。
#51
○中村(巖)委員 いわゆるディスクロージャーという問題は長年の懸案でございますから、これは何らかの形で実現をされなければおかしいのではないか。ただ、法制審議会の要綱のようなやり方でいいのかどうかということはそれはあるかもしれませんけれども、それは今後ともやはり商法部会の中で種々論議をしていただいて実現をさせなければいけないのだろう、こういうふうに思っておるところでございます。
 それはさておきまして、さらにまた試案の段階ではいろいろな制度というものがあったわけでありますけれども、要綱の段階になってそれが落とされてしまったというものが多々あるわけで、その中の一つには、いわゆる会計調査人制度というようなものがあるわけであります。これについてもいろいろな論議があることは承知をしておりますけれども、どうしてこれが要綱の段階で落ちてしまうことになったのかということ、さらにまた、別の制度として取締役あるいは支配株主の責任強化というか、責任を新たに創設するというか、そういった問題というものが試案の段階にあったわけでありますけれども、これまたやはり要綱の段階では全くなくなってしまったということで、これらについてどういう論議のもとにこういうものが要綱にはあらわれなかったのか。その辺の経緯についてお話をいただきたいと思います。
#52
○鴻参考人 御指摘のように、改正試案にありながら改正要綱に盛り込まれなかったものがかなりあり、そうして、そのうちの重要なものの幾つかを今御指摘になった、そのとおりでございます。
 私の承知している範囲では、例えば会計専門家による調査の点につきましては、これは相当に時間をかけて審議をしたことは確かでございます。そうして、御高承かと思いますけれども、そのための専門の、調査会という名称でしたか懇談会という名称でしたか、会計専門家を主にし、商法学者も加わり、商法部会内のその方のエキスパートをそろえてこの問題を、時間としては十二分にかけたのではないかと思いますが、しかし、商法部会への報告は結局そこでは意見がまとまらないということでございまして、それでまとまらない意見を商法部会自身もまとめることができなかったということが、試案にありながら要綱には入っていない理由かと思います。
 もう一つ、取締役や支配株主、支配社員の責任の点、これも重要な問題で、会社債権者保護の一つの、これは最低資本金制度だけでは足らないのじゃないかという点は確かにあるわけでございますので、その点を補う一つの問題だったわけでございます。最低資本金の方が改正法律案で一千万円となっておりますが、やはり二千万円は必要なんだという立場からすると、最低資本金制度は一千万円でも、いざというときにはせめて二千万円までについて取締役や支配株主は責任を持つべきではないか。当初の案ですと、それがさらにもっと金額が上がって、最低資本金は二千万円だが五千万円まではというのが改正試案だったと思います。しかしこれも、今度の改正法律案というものは、改正試案当時から比べますと、当初いたしました大小会社の区分というものの全般が、何といいますかその区分というものの仕分けがつかない段階でまとめ得るもの及び緊急改正が望まれているものを一本化して改正法律案にまとめるということでございましたので、取締役、支配株主の責任については、これまた大小会社の区分として、具体的には先ほどまとめて、ちょっとこんな項目というような問題について引き続き審議するということを申しましたが、そういうものの中でこういう問題も取り上げられていくのではないかというふうに私は考えております。
#53
○中村(巖)委員 さらに鴻先生にお伺いをするわけですが、先ほどもちょっと質問の中に出ておりましたけれども、いわゆる小規模で閉鎖的な会社の問題というのはいろいろあるわけでありますが、その中で、現実の管理運営というかそういうものがでたらめに行われている、これを何とかしなければならないのじゃないか。具体的に申し上げれば、例えば株主総会というものを実際に開きもしないのに紙の上だけでつくっているというようなことで、裁判でもやられれば株主総会そのものが不存在じゃないか、こういうことになってきてしまう、そういう争いというものが多々ある、こういうことが問題だと思うわけですね。そういうようなことについてどういうことが論議をされたのか。そして、先ほどのお話では、何かこの問題について先送りになったというようなことでありますけれども、その中である程度の論議はなされているということでありましたが、どういうことなのか。ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
#54
○鴻参考人 私、前の御質問の中でその点に答えたときの答え方が十分でないためにまた御質問をいただいたということで、反省いたしております。
 大小会社区分立法の中で、中小会社には中小会社らしい法規制をということになれば、規制を強化する面も大事だが緩和すべきものは緩和しなければならないということで、その中心をなしたのが会社運営機構。この改正法律案では、設立手続については割に規制の緩和という、簡素化ということが行われておりますけれども、それ以上にむしろ運営機構の面での合理化というものが必要なのではないかということで、先ほどちょっと取締役の数の減少とか役員会というようなことを申し上げましたが、今御指摘の株主総会の関係、総会招集手続を簡略化するとか書面決議を認めるとか、書面による議決権の行使を認めるかどうかといったような点。この最後の点を除いては、ほとんどそういう運営の簡素化は現行の有限会社法には規定がございますんですね。しかし、それが実質小規模閉鎖会社的なものでありながら株式会社になると、いわば大会社を頭に置いてできている法の適用を受けるということで、今御指摘のような問題も出てくるということでございます。
 しかし、こういう点は商法部会の中でも改正試案以来相当審議をいたしまして、ほぼ結論は出ておったように私は考えておるわけでございます。ただ、会社の運営機構の問題は、そういう意味で中小会社や有限会社に関する限りであればあるいは案をまとめられなくはなかったのかもしれませんが、やはり大会社についてもそういう問題があり、会社の規模を問わず全部について会社の運営機構についての改正要綱をまとめるというところまで審議を詰めることができなかったというのが、こういう問題について改正法律案に盛り込まれなかった理由なのではないかというふうに理解しております。
#55
○中村(巖)委員 それでは、鴻参考人はこの程度にさせていただきまして、次に、宮内参考人にお伺いをいたしたいと思います。
 宮内参考人のお話では、株式会社の資金調達のために、いわば社債というような調達手段、あるいは議決権のない株式、無議決権株式というような手段による資金の調達、こういうものが非常に必要であるということでございますけれども、株式会社というのは新株発行によって資金の調達を図るというのが本来的なはずではないのか。それが近年、社債市場を初めとしてその種の資金調達手段というものが大変に盛んになってきた。漠然として申しわけありませんけれども、そういうことの経済的基礎というか、経済実態上からの理由というものはどういうことなんでしょうか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
#56
○宮内参考人 御承知のとおり、企業というものはゴーイングコンサーン、現状じゃなくて将来にどう伸びていくかということが常に経営者としては考えなければいけない最大の条件だと思います。
 翻って、日本の企業の実態を見ますというと、例えば電機業界を例にとりましても、日立製作所というものは連結決算で三五%程度の自己資本比率である。ところが、同じようなコンピューターメーカーのIBMは六〇%である。たまたま最近、ゼネラル・エレクトリックという会社はファイナンスカンパニーとかそういうものを合併しましたためにちょっと下がりましたけれども、昔のベースで見ますというと大体五〇%。同じ電機メーカーでもIBMは六〇%、GEは五〇%、日立は三四、五%程度だ。それからまた、海外の企業と日本の企業との借入金の比率というのを見ますというと、大体日本は借金依存型の経営でございまして、平均すると資金調達額の大体三〇%程度借金を持っている。ところが、イギリスにしましてもドイツにしましてもアメリカにしても、大体平均いたしますと一〇%程度でございます。そういう意味で、日本の企業というものはどちらかといいますと借金体質の経営である。
 しからば、今先生のおっしゃったように、どんどん増資をして資金調達して、CBとか公募とかじゃなくて普通の額面発行でもやって、どんどんやったらいいんじゃないかということになるわけでございますが、やはり企業が生き延びていくためには、もちろん我々のようなメーカーでありますと研究開発、新製品開発、技術開発というものが最大の課題ではございますけれども、だんだん世界の経済の規模が大きくなる、また、御注文いただくプラントそのものもだんだん大型化するということになってまいりますと、財務体質というものがやはり世界市場において競争する場合の大きな条件になってくるわけでございます。
 そういう意味で、昨年は資金調達を資本市場から幾らしたんだといいますと、二十八兆円もしておる。一昨年は十九兆五千億程度。膨大な伸びをしているわけですが、これもたまたま公定歩合というものを翻ってみますというと、昭和六十二年二月から平成元年五月まで二十七カ月間、日本の公定歩合というものは世界最低の二・五%というものが二十七カ月も続いた。果たしていつまでもそういうものが続くかどうかということもございますから、当然企業といたしましては、いかに金利の安いときに効率的なお金を調達しておくか、これは当座の問題ではなくて、将来に向かってそういった財務体質を強化するということ、これは企業にとって技術開発同様にまた大きな問題だと思っております。
 そういう意味で、資金調達の枠を広げる、あるいは製品そのものを広げて優先株のようなものもどんどん発行させるような市場をつくっていただきたいということが我々の願いでございまして、ただ金を集めて運用するとか、そういうことではございませんということでございます。
#57
○中村(巖)委員 最後に、錦織参考人にお伺いをいたします。
 全国中小企業団体中央会として、今回の商法改正に当たって、最低資本金の問題、さらに貸借対照表の公開の問題、会計調査の問題、さらにはまた取締役あるいは支配株主の責任強化の問題について反対である。最低資本金の制度は今回の金額であるならばやむを得ない、こういう御意見もございましたけれども、当初の段階では、その四点についていろいろ反対をされておったということでございます。今の中小企業の実態からすれば非常によくわかるところでありますけれども、これは将来とも断固反対なんだ、先行き何年たっても反対なんだということではなかなかうまくいかぬのではないかというふうに思いますので、当面今回反対をするけれども、将来それがだんだんコンセンサスを得られるようなある時期に来れば反対はしないんだということなのか、あくまで反対なんだということなのか、その辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
#58
○錦織参考人 今回は、こういうような形でいろいろ我々も議論を重ねた結果、反対の態度をとったわけでございますが、将来の展望ということになってまいりますれば、この間の日米経済構造協議ではございませんけれども、やはり国際的な意味合いがだんだんと日本の中にも広がってまいりますれば、国際性というものが一段と日本の中にも浸透してくるというふうに思います。かかる意味合いにおいては、だんだん中小企業の理解もそれなりに得られてくるというふうに思っております。
 ただ、この法案の審議の中、法制審議会等の審議の中でも、また法案自体でも、当然これは中小企業をねらい撃ちした形で、中小企業の取締役だけが責任を負うというようなところが見えるところがございますので、そういう点について、我々としては将来も多分反対をせざるを得ないだろうというふうに思っております。
#59
○中村(巖)委員 先生方、どうもありがとうございました。
 終わります。
#60
○小澤委員長 木島日出夫君。
#61
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。持ち時間が少ないので、端的にお伺いをいたします。
 最初に、錦織参考人に伺います。
 国税庁が出している「税務統計から見た法人企業の実態」によりますと、相変わらず日本では法人がふえておる。この十年間、昭和五十三年から六十三年までの数字を見ますと、全体で五十万二千三百三十八社ふえている、一三七%の増加であります。そのうち一千万以下の法人が三十一万九千六百九十七社ふえている、六三・六%。また、五百万以下の資本金の法人が十三万八千七百十六社、二七・六%を占めているという統計であります。これは法務省の統計とは違いますから、現実に生きて動いている法人がこれだけふえ続けているということだと思うわけであります。
 先ほど、参考人が中小法人がふえるのを乱設と見るか活性化と見るかは見方の違いであって、必ずしも乱設とは見ないというのはまことにそのとおりであって、私もそのとおりだと思うわけでありますが、なぜこんなに日本で中小零細法人、資本金の小さな法人がふえるかについて、近代化とか雇用の確保とか取引上の信用とか、いろいろあろうかと思いますが、その一つに税法上の措置ということを先ほどおっしゃられました。その点についてちょっと詳しく、税法上の理由で中小零細法人が法人成りしていくというところを説明していただきたいと思います。
#62
○錦織参考人 税法上の理由で中小会社がふえる理由については、これはまたいろいろ多面的な御議論が多分あるだろうというふうに存じておりますが、私はその方の専門家ではございませんので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきます。
 しかし、基本的にはやはり、必然的にこういうふうに会社法人がふえるということは、個人営業よりも会社経営の方が税法上何かと有利であろうということからふえている結果がこの数字になってあらわれているのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。しかし、このこと自身は、商法の問題ではなくてむしろ税法の問題に起因するのではなかろうかというふうに考えております。
#63
○木島委員 飯塚参考人、よろしいですか。
 端的で結構なんですが、ドイツ、フランスで個人事業者が非常に多くて法人が少ない一つの理由に、ドイツ、フランスの所得税制の中に、ドイツでは二分二乗方式、フランスではN分N乗方式というものがあると聞いているわけです。ドイツでは、所得を二で割って、そして出てきた数字に対して税率を掛けて、その二倍を納税すればいい。フランスでは、受け取った利益をN、五人なら五分の一にして、出てきた数字に対して五倍して、それを納税すればいい。累進構造をとっておりますから、ドイツ、フランスの所得税制は非常に企業家に有利になっている。ですから、法人になる必要性はその面からはないということを何かで読んだことがあるのですが、そういう制度があることは事実でしょうか。簡潔にお答え願いたい。
#64
○飯塚参考人 そのとおりだと思います。
#65
○木島委員 そうしますと、重ねて錦織参考人にお伺いするのですが、日本では、所得税制で、中小企業家、法人でない事業家の皆さんは、自家労賃を何としても認めろという要求を再三しておるのですが、いまだに認められていない。そのために、一定の規模になると銀行やその他から法人成りを勧められるということが指摘されているのですが、そういう実態はあるのでしょうか。
#66
○錦織参考人 確かに、会社経営の方が、個人経営よりも取引を行う場合に比較的大口の取引が可能である、社会的信用を高めるという意味においては会社の方が有利であるというふうに思っております。
#67
○木島委員 続いて、鴻参考人にお伺いをいたします。
 先ほど、最低資本金の導入の柱が債権者保護である、これこそ物的有限責任をとる株式会社、有限会社の基本的な柱であると述べられまして、その説明の中で、商法上、債権者保護の意味、資本充実・維持の原則の意味は、株主の利益を会社債権者の利益の上に置いてはならぬのだ、そういう意味であるというようにおっしゃられたわけであります。これは俗な言葉で言えば、利益が上がったときのその利益を株主がみずから懐に入れて債権者の利益を損なってはならぬという意味で、利益準備金を法律の枠に達するまで積み込ませるということだろうと思うわけであります。
 ところが、先ほど鴻参考人がおっしゃられたのですが、欠損が出た場合には、商法上の規定では債権者保護の原則というものは何ら規定するところはない。要するに、欠損が出て純資産が資本金を割ってしまったときに、資本金に満つるまで株主は資本金をつぎ込まなければならぬ、そんな規定はない、義務づけはないのだとおっしゃられたのですが、そのとおりに伺ってよろしいのでしょうか。
#68
○鴻参考人 先ほど来各委員からの各質疑に対する私の答えがその都度やや厳密さを欠いておりまして、同じような問題について質問を煩わすようなことになって大変恐縮に思っておるわけでございますが、ただいまの木島さんの御質問は二点あって、最低資本金が債権者保護の基本というふうに私は申しましたか。私は、資本というものについての考え方は、株式会社あるいは有限会社のような物的会社の基本だと考えておりますけれども、それとの関連で最低資本金の問題が出てきて、したがって債権者保護で、最低資本金さえ確保すればそれで基本は果たせたというふうには必ずしも考えておりません。先ほど、債権者保護について、最低資本金のほかにこれも必要だということも申し上げたかと思いますが、ちょっと言い方が悪かったとすれば訂正させていただきます。
 それから、欠損の場合について債権者の保護が働かないようなことにもし聞いておられたとしたら、これまた法律的には不正確な言い方だったということになるわけでございまして、欠損の場合に、そのような状態で倒産したときに、今木島さんがおっしゃられたように取締役とか支配株主等に資本の額に達するまで自分の財産を吐き出させるということは商法はとっておりません。とっておりませんが、一たんそういう欠損状態になったときに、その後の事業で利益を上げても、その欠損の部分を埋めた上でなければ株主、社員が利益の分配を受けてはならないという意味においては、その資本というものは働く。そういう意味において、債権者保護の役割を果たしておるという点には変わりがないわけでございます。そういう言い方をしておけばただいま受けたような質問にはならなかったのではないかという気もいたしますが、あるいは私の聞き違いであれば、どうか重ねてお尋ねいただきたいと思います。
#69
○木島委員 私の理解が足りなければ恐縮であります。
 欠損のことを私が大変気にするのは、日本の法人は非常に欠損法人が多いということであります。私は、過去十年の国税庁が出している「税務統計から見た法人企業の実態」というのを見て数字を調べてきているのですが、端的に言いまして、日本の全法人のうち約五〇%は税法上欠損会社になっているわけです。現実に事業をして動いている法人のうち半分以上が欠損法人になっているということは大変な問題だと思うわけです。
 そのうち、例えばこの五年間をとってみましても、昭和六十三年から昭和五十九年までさかのぼってみましても、全体の欠損会社のうち、六十三年の場合、八四・二%が資本金一千万以下の小さい法人なんですね。同じく六十二年は八四・七%、六十一年は八五・七%、六十年は八五・九%、五十九年は八六・〇%。要するに、この五年間をとってみますと、日本の全法人の半分は欠損会社だ、その欠損会社のうち八五、六%が資本金一千万以下の中小零細の法人だという統計が国税庁から出ているわけですね。そうしますと、ここの時点で一千万円の最低資本金制度が導入されて、これから五年間に一千万円に増資しなければ法人格を否定されるということになりますと、実際の、日本の一千万円以下の資本金を持った中小零細法人にとってはかなりきついのではないかということがここから出てくるかと思うのです。
 錦織参考人にお伺いします。これから五年間に一千万円にするというのは、たやすい企業もあるけれども、なかなか厳しい企業も多いのではないかと懸念しているのですが、その辺の実態はいかがでしょうか。
#70
○錦織参考人 我々も常々中小会社の損失の高さに胸を痛めているわけでございます。ただ、税務会計と企業会計の違い、あるいは経営計算上特別償却等を詰めますと、どうしても赤字計上した方が得であるということもございますので、内容につきましてはいろいろ吟味をしてみる必要があろうと思っております。
 そこで、我々もいろいろな調査をいたしているわけでございますが、一応我々の調査で、対応可能な最低資本金額、株式会社の場合で聞いてみますと、大体一千万円ぐらいでもいいというのが五二・二%ございました。したがいまして、一千万円で相当期間の猶予を置けば、またそれを誘導するような政策が講じられれば何とか一千万円の方に近づくことが可能であろうということで、一応一千万という数字を出したわけでございます。
#71
○木島委員 国際化に対応するというお話もあったわけですが、鴻先生にお伺いします。アメリカには最低資本金制度はないと思うのです。また、日本の商法が明治時代にできてから今日まで長い間にわたって最低資本金制度を持たずにやってきたわけですが、日本の商法が発足したときにも最低資本金制度はとらなかった。アメリカにもない。これはどういう趣旨であったのでしょうか。
#72
○鴻参考人 アメリカでは、株式制度に額面株式、無額面株式という両方の制度があり、無額面ということになりますと、何といいますか資本とのつながりというものが出てこないというようなことも一つございますが、さらにアメリカは、法と一口に言いましても会社法は各州法の形で決まることであり、全般的にアメリカの州法は会社法の規制を緩い方に何といいますか影響を受ける。比較的そういう代表的な州法としてデラウェアの法律がよく挙げられるわけでありますが、そういう面もあり、連邦法としての証券取引法なんかがそういう不備の点を補うというようなこともやっておるわけでございます。
 そういう意味で、アメリカと日本というものとの関係で、アメリカでそうなのに日本でもそれでいいじゃないかという御議論もあろうかと思いますが、法制全般が会社法をベースに大陸法から入った制度の上で会社債権者の保護をどう図るかということを考えるときには、最低資本金制度は必要になってくるのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
#73
○木島委員 終わりますが、日本が大陸法系の法制度を導入したにもかかわらず、日本はドイツ、フランスと違って最低資本金制度がないというのがもう一つ私はわかりませんが、時間がないので終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#74
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 中野寛成君。
#75
○中野委員 民社党の中野寛成でございます。
 きょうは、参考人の先生方には貴重な御意見をありがとうございました。
 まず、鴻参考人に基本的なことを一点だけお伺いさせていただきます。
 この商法改正というのはたくさんのジレンマを抱えていると思うのです。国際化の時代に合わせたいという気持ちがある。債権者の保護を図りたいという気持ちがある。しかしながら、その規制を厳しくすれば中小企業の皆さんにとっては大変な負担がかかるという問題がある。また、債権者保護という問題だけ取り上げましても、例えば中小企業の皆さん、債権者という立場に立てば逆に明朗にしてもらいたいという希望がある。しかし、債務者といいますか債権者と反対側の立場に立ちますと、できるだけ自分の方はガードしたいという気持ちが働くのもこれは当然だろうと思うのです。ですから、結論的に言いますと、この商法改正の問題に取り組むときには、法務省法制審議会、そしてまた我々国会人も含めて、結局この商法改正の意味は何であるのか、理念は何であるのか、だれが得してだれが損をするのか、それとも損をする人はいなくて結果的にはみんな得をするんだというふうなことが明確に説明されなければ理解を深められることはないだろうと思うのです。また、今回残された問題でも、公認会計士と税理士との職域の問題というようなこともあると思うのですね。この問題は後ほど飯塚先生の方からお伺いしたいと思いますが、そういうふうに考えますと、結局明確な理念を立てて、リーダーシップを発揮して、そして理解を求める行動とともに、とりわけ中小企業の皆様への的確な配慮というものがなされなければ、この商法改正というのは成功しないと思うのですね。そういう基本理念のあり方、法制審議会の作業や法務省の作業等々を含めていかにあるべきか、そのことについて、今日までの御経験を踏まえて簡単に先生の基本的なお考えをおっしゃっていただければありがたいと思います。
#76
○鴻参考人 ただいま中野さんのお話を承っておりまして、私、全く同感であって、確かにこの改正要綱をまとめる過程にありましていろいろのジレンマというものを私自身が感じ取ったこともそのとおりでございます。どういう点についてかということも、ほぼ中野さんが御指摘になったような点に尽きておると言ってもいいくらいではないかと思います。
 しかし、最初の意見陳述の中で申しましたように、今度の商法の改正法律案がまとまるまでの経緯は、四十九年の商法改正以後、ともかく会社法の改正を戦後何度も繰り返しておりますけれども、やはり全面改正という言い方もありますし、根本改正という言い方もなされまして、全面的かつ根本的な改正ということは、結局、大小会社の区分をきちっと整理し得なければ、大会社にふさわしい規制も、小会社にふさわしい規制もどっちつかずのものになってしまうのではないかということで、そういう本格的な審議を長年月かけてやってきたということは確かでございます。
 しかしこれを、先ほど申しましたようなことからその一部だけが――私が先ほど申しましたのは、審議の経過の中で、この時期に意見が煮詰まり、そしてまとめようとすればまとめられ、かつ他から切り離してもそれで改正法律案として出せるところまでその基礎になるような改正要綱をまとめ上げられるんではないかと判断できた範囲のものについて改正要綱をまとめるような形になりましたので、そういう方針の変更が行われました昨年の秋の段階で、率直に申し上げて私自身、商法部会の中で、こういう形でまとめるとなると、改正要綱をまとめ法律案となって国会の御審議をお願いするということになれば、まさに今度の改正案というものの理念は何かということをまとめなければならないじゃないかという点をいわば問いただすような形をしたわけでございます。そういう意味で、法務当局及び関係者が改正の趣旨としてまとめたのが冒頭申し上げたような三つの柱ということでございましょうか。
 今の中野さんの御質問は、まさにその三つを通じて、最近の国際、国内情勢下の中で一本にまとめた基本理念と申しましょうかそういうものは何かというお尋ねかと思いますが、これは、この段階だけでそういう大きな基本理念をまとめるというよりも、やはり四十九年の改正以来継続してきている会社法改正作業全体は、そういう大小会社の区分を整理することにより、大会社には大会社にふさわしい法規制を、小会社には小会社にふさわしい法規制をする、そういう大目標の中でのその一環として現段階でまとめられるものをまとめて、その柱になるものは、先ほども私の申し述べました三つの改正の趣旨にまとめられるということなのではないかというふうに理解しております。
#77
○中野委員 飯塚参考人にちょっと、たくさんあるものですからまとめてお聞きしたいなと思うことがあります。なお、会計処理の視点から国際化の問題に絞ってお述べをいただきました。大変大胆な、しかし大切な問題を提起されたというふうに思うのでありますが、それだけに私も、部分的には失礼があるかもしれませんが、大胆にお聞きをしたいと思います。
 この公認会計士の数を少なくとも五万人は必要だとおっしゃられました。その根拠につきましては、先ほどの質問に対する御答弁でおっしゃられましたが、この簡略試験で税理士を公認会計士にせよということではないかと思うのでありますが、西ドイツのケースは先ほどおっしゃられましたが、日本の場合に、その試験の内容というのは日本の税理士制度と絡み合わせましてどういうことが考えられるであろうかということと、もう一つは、税理士の先生方はお喜びになるかもしれませんが、公認会計士の先生方からは抵抗があるのじゃないかなと思ったりいたしますが、先生は両方のお立場をお持ちでございますので、そこのところも率直にお聞かせをいただければありがたいということが第一点でございます。
 ちょっと、時間の都合でまとめてお聞きします。
 それから、先生御指摘の、問題の第三点のところでございますが、EC指令に基づく正しい記帳とか正しい財務諸表をつくらなかった会社については刑罰規定を設けるべきだとおっしゃられまして、これを聞いてびっくりする方も日本では当然多いのではないかというふうにも思ったりするのでございますが、日本人の国民性から見て果たして妥当だろうか、そのときに日本で起こる問題点はどういうことが想定されるだろうかということを二番目にお聞きします。
 三番目に、そのEC指令でございますけれども、EC、ヨーロッパ共同体全体としての統合の方向、特に経済、将来は政治も含めていこうかというときでありますから、このECのやり方というのは参考になるだけではなくて、EC対策として、日本がこれから経済関係を進めていく上においては十分注目をし、そしてそれに対する対応も講じていかなければならぬ。これは日本の経済強化のためにも必要だろうと思うのでありますが、そのECの指令というのは、どの程度の頻度で、どのくらいの権威を持って、どのくらいの多角性を持って発せられているのかということを参考までにお聞かせをいただければありがたいと思う次第であります。
 それからもう一つ、「真実かつ公正なる見解」の原則、このことをおっしゃられたわけでありますが、真実で公正であれば既定の法律を踏み越えてもよいという法理をつくろうということでございまして、これは今日までの日本人の感覚では余りなかった感覚ではないか。これまた、大胆、率直におっしゃられたわけでございまして、このことにつきまして、商法また会社法上、ヨーロッパではどう表現されているのか。また、日本ではできるのでしょうか。やらなければいかぬとおっしゃられるかもしれませんが、この辺のことをお聞かせをいただきたいと思います。
 最後に、最初に鴻先生にもお伺いをしたことですが、そしてまた、きょうは宮内参考人、錦織参考人からも、日本の場合は中小企業に十分配慮しなければいけないということをおっしゃられて、全くそのとおりだと思うのでありますが、この飯塚先生の御提言は、中小企業者にとってどういうメリットとデメリット――デメリットという言葉はおかしいかもしれません、メリットと負担があるだろうか、考えられるだろうかということを最後にお伺いできればなと思うわけでございます。
 中小企業の皆さんが会社をおつくりになるときに、なぜ株式会社にしたか、その理由の第一に、社会的信用を高めるためというのが一番目の理由だと言われましたが、こういうことを聞いているのですが、この会社制度がルーズであれば社会的信用がなくなるわけですね。そして、そうすることは、中小企業の皆さんが会社にする意味がなくなっちゃうわけですね。ですから、会社の社会的信用は高くしなければならない、しかしそのためのハードルが高ければ中小企業の皆さんはこれはまたどえらい苦労をされる、こういうジレンマがあるわけでございます。同じような意味で、飯塚先生の御提言も中小企業者にとっては随分としんどいと思われる部分と、しかしそれによっていろいろなことが保証されるのですよというメリットと両方あるのではないかなと思うものですから、その両面からお聞かせいただければと思います。
#78
○飯塚参考人 お答え申し上げます。
 問題が非常に多角的にたたきつけられましたので、ちょっとこれ、お答えするのは容易じゃないと思いますけれども、記憶する限りで、先生の提起された問題についてお答えしたいと思います。
 まず、日本の公認会計士の数は五万人ということを申し上げましたけれども、これはいわば英知的直観によるのだ、実証的な調査の結果じゃないというふうに申し上げました。
 さてそこで、その公認会計士になることでございますが、ドイツの場合は会社法じゃありません、経済法、ヴィルトシャフツレヒトと言っている。しかし、日本の場合は、ドイツと違いまして経済関係の法律が非常に少ない。例えば、ドイツの場合は、従業員五人以上持っている会社の経営者は、毎月一回、企業の損益と財政状態を従業員の代表に報告しなければいけないという法律がある。べトリープスフェアファッスングスゲゼッツと申しますが、そういう法律がある。したがって、底辺から、小企業からまじめにやらなければならぬという要素がある。ところが、日本にはそれがない。だから、税務調査というのはどうせ十年に一遍ぐらいしかないのだから、逃げ回るだけ逃げちゃえという意識が強い。それからもう一つ、実は日本の場合は、日本人というのは生き馬の目を抜くというようなするどさがございますから、どこかにうまいところがあればそれに飛びついていくという要素もあろうと思います。そういうことで日本の会社というのは多くなっちゃっているんだというふうに私は見ております。
 なお、日本の税理士を公認会計士にする件でございますが、それはドイツと全く同じで、基礎的には日本の税理士は会計学を理解し、会計学を実践しない限りは業務そのものができない、だからその意味では公認会計士と全く基盤を同じゅうしている、だから区別すべき理由はない。なお、先生とすると、税理士は喜ぶかもしれぬけれども公認会計士は喜ばないかもしれないとおっしゃったけれども、私は公認会計士の先生方に言うのです、どうか国民経済的に国家を考えるという姿勢をとってくれ、日本は極端に公認会計士が少ないんだ、これはいけない、やはり国家国民全体のことを考えると実は公認会計士の数はもっとふやさにゃいかぬと思うのだ。その場合に、やはり公認会計士になるのに一番距離が近いところにいるのが税理士なんだ。それはドイツも全く同じ。だからドイツの場合は、五年、十年、十五年というふうに三つの段階を設けて彼らを大量に公認会計士にしようとしたということですね。
 それから、先ほど私は言い落としましたけれども、ドイツの税理士諸君に会いまして、なぜ君たちはなりたくないんだと言いましたところ、収入は十分なんだという答えが返ってきました。おれたちは、収入は十分なんだ。特に、ドイツの場合は、自宅に温水プールを持っているなんていう税理士がかなりいるんですよ。私もつき合っている税理士諸君、何人も自宅にプールがある。見せろと言って私は行ったことがありますけれども、ちゃんと温水プールですよ、温度まで調節されている。そういうぐあいなんです。だから、つまりドイツの場合は公認会計士になる人が少なかったというのは、先ほど申し上げたような商法三百十九条の問題もございますけれども、同時にドイツの税理士は収入が非常にいい、だから今苦労して公認会計士になる必要が全くないというようなことがあるわけでございます。
 なお、ドイツの場合は日本と違うのは、試験科目は会社法じゃありません。ドイツの場合は、アクチエンゲゼッツの試験というのじゃないのです。ヴィルトシャフツレヒト、つまり経済法、その経済法の試験というのは、つまり先ほど申し上げたような経営組織法だとか、それから賃金協約法という法律があります。これはちょっと日本では余りなじんでないようでございますけれども、タリフフェアトラークスゲゼッツという法律があります。どういうのかといいますと、要するに、どの会社へ行こうとも仕事が同じなら月給は大体同じということですね。これはすごいですよ。そういうのはドイツの場合確立していますから。
 ヨーロッパでは、そういうのを取り入れて今しもやろうとしているのでございますが、ちょっと前後いたしますけれども、先生がEC対策とおっしゃった。これは私はずばりそのとおりだと思います。と申しますのは、あと二年たつといや応なしに統合しますから、そして彼らの目指すところは完全なる単一国家ですから、ヨーロッパの十二カ国が単純な単一国家になってしまうということは、これは怖いことですよ。つまり、アメリカもそうですけれども、アメリカだとかヨーロッパだとかが単一国家になってしまっているという場合に、さあ日本はどうするんだということになりますから、そのときこそ政治家の先生方は、自分たちの立法能力、自分たちの国政能力について国民に本当に信を問われなければならぬときが来るというふうに私は見ております。
 なお、正しい記帳をしなかったときは刑罰をしろということでございますが、これは刑罰しないのはおかしいのです。というのは、文明国全部やっている。アメリカもイギリスもドイツもフランスも残らずちゃんと、インチキの帳簿をつくったときは処罰するぞということになっている。じゃ日本は全くないのかというと、そうでもない。日本にも破産法という法律がございます。その破産法の三百七十四条、これは故意破産罪。故意破産罪の場合、破産したけれども故意に破産したという場合に、そのときの帳簿が不完全であったときは十年以下の懲役だという規定がございます。それからなお、三百七十五条には過怠破産罪というのがございます。つまり、経営を余り一生懸命やらなかったものだから、それでよそから不渡りなどもらってしまって破産してしまったという場合、その過怠破産罪が、なお帳簿が悪かったという場合は実は今度は五年以下の懲役、そういう猛烈な規定がございます。だから、それを実はなぜ実施しないのか。
 私の同級生に最高検察庁の検事をやったやつもいますから、クラス会で聞いてみた。そうしたらば、いや、それをやったら日本じゅう大騒ぎになってしまう、だからやれないんだということを言っていましたけれども、やはり国民の反応を見ているようですね。それで検事としても、実は破産したんだけれども帳簿が不完全なんだと言えば、三百七十四条か三百七十五条かいずれかを適用して、五年以下あるいは十年以下の懲役ということになるんだけれども、おっかなくてやれない。というのは、検察横暴とかというように騒がれてしまって、そこへマスコミが便乗してえらい検察庁をたたくということが行われる、だからやれないということなんですね。そういうふうなことを私のクラスメートが言っていました。なるほど君がそう言うのは無理もないと言ったのですが、しかし先生にお訴えしたいのは、先進国は全部不正記帳、不実記帳、インチキ記帳に対しては刑罰を科していますよ。日本だけやらないというのはおかしい。法律というのは国民生活を方向づけているのですから、先生方は立法することによって国民の方に生活の方向を与えていくのですから、先生方はその力をお持ちなんですから、したがってこれはやっていただくべきだ。ここでちゃんとやらなかった場合は日本は底なしのルーズな世界になってしまう。文明国全体が不実記帳、不完全記帳に対して刑罰をもって臨むという以上は、しっかりやらなければいけない。
 たまたま昨日、韓国の税法が私の手元に入ったので、今思い出したのでございますけれども、韓国の場合は、すべての商人は自分の店にレジスターを置かなければいかぬと書いてある。これはすごいことだと思うのですね、レジスターで逃げ場がなくなりますから。そういうことで、やはりその方向でだんだん国民を方向づけていく必要がある。
 そこで私は、まあ中野先生ばかりではございませんけれども、ともすれば日本の政治家は選挙民の顔色ばかりうかがう傾向がありはせぬか、残念だ。そうじゃなしに、君たちきついかもしらぬけれども、これが名誉ある一流国日本をつくる道なんだ、我慢してやってくれいというぐらいのことを言ってくれたっていいんじゃないかと私は思うのですね。そういう点がちょっと問題だと思うのです。
 そこで、先生は、飯塚の提言があった場合に中小企業に対してメリットはどうでデメリットはどうだということをおっしゃいましたけれども、結構です。そういう御判断があり得るのも結構です。しかし、注意いただきたいことは、水田の中へ飛び込んでいって、農民諸君に抱きついて、泥んこになっても情き一票を頼むと言うのが正しいのか、ちょっとこれは問題だと私は思うのです。その意味で、私のクラスメートがたまたま群馬県の知事をやっておりますけれども、聞いたところが、さる著名な政治家が驚くばかりのどぶ板選挙をやっているよ、君と言っていました。それでいいのか、いやちょっとそれは問題だ。やはり先生方は国民のリーダーなんだ、国家の運命を左右する方々なんだ、だから先生方はそこは厳格に自分を律していただきたい、こう思うわけなんだ。まあ、そういうことができるかできないかは先生方の御決意によるのですから。
 なお、実は先生の御質問の中でこういうことを言われたんですね。「真実かつ公正なる見解」の原則がヨーロッパではどういうふうに表示されておるか。ヨーロッパ十二カ国ございますから、その十二カ国全部の法律を言うわけにはいかない。そこで、例えばドイツを申し上げますけれども、ドイツの場合は、商法の三百二十二条に公認会計士の監査報告書はこう書けというふうに、監査報告のモデルが表示されています。そのモデルによると、この会社は我が輩が監査した結果、要するに正規の簿記の原則に基づいて記帳をしておる、同時に、正味財産額と財政状態と所得額、この三つについて、真実かつ公正なる見解を表示したものと認めるというふうに書けと書いてあるんです、商法上。そういう文句は、この点について真実かつ公正なる見解を表示しているものと書けというのがドイツ商法の場合は十三カ条ございます。そこで、なるほどなと感心したんです、私は。ところが、イギリス会社法を調べてみて驚いた。イギリスの場合は、なるほどツルー アンド フェア ビューの原則というのは一カ条です。一カ条ですけれども、それは法律が一カ条であるだけなのです。いわゆる政令としては三十七本出ている。実に詳細に、ここは真実かつ公正な見解を表示しているのか、ここは真実かつ公正な見解を表示しているのかというその項目、三十七項目あります。たまげた数です。私はそういう点を見て、やはり中野先生、政審会長だなと思いましたのは、実はほかでもない、EC対策という角度で考えなければいかぬ。えらいことですから。
 それからなお、先生おっしゃいましたね。どのくらいの頻度で、どのくらいの多角性を持って、どのくらいの分量でECの指令が出ているのかとおっしゃいましたね。実は私もそれは調べてみました。一九五二年、ヨーロッパにおいて初めて石炭鉄鋼共同体というのが生まれた。一九五二年です。その当時は一年間に二通か三通でした、あの指令は。ところが、御承知のように一九七八年からはEC第四号指令が出て、会社法全体が、おまえたち直せ、統一しろという指令が出ちゃって、それでやっていますね。その当時から、だから七八年ごろから今日まで約二十年弱、この間物すごい勢いで指令が出ております。それは、先生はどの程度の頻度でとおっしゃったけれども、私はおととし一九八八年のECの指令は一体何本出ているのかということを調べてみたんです。そうしたら、一年間に千四百八十七本出ておったですね。つまり、一日当たり四本以上出ているんですよ、休みもなしに。いや、これはすごいなと本当にそう思いまして、私は去年、実はECの本部に参りまして調べてみた。調べてみて驚いた。なるほど、これはすごい。十二カ国から役人が七千名、ブラッセルのEC本部に集まっている。そして、そのうち五千名は翻訳官、あとの二千名は政策担当。だから、大体一カ国から五百人ぐらいの役人を送り込んでいる。まことに各国とも総ぐるみですよ。総力戦ですよ。そういう形でやっている。したがって、一年間に大体二千通からの指令、統一法律をつくれという指令が出ているんですから。では、全部でどのくらいあるだろうと思って調べてみた。そうしたら、一九五二年から今日まで大体七千五百種類ぐらいの指令が出ておりました。いや物すごいです。しかも、ここで先生は、頻度ばかりでなく、どのくらいの多角性とおっしゃったけれども、つまり、多角性は生活のあらゆるところに及びます。恐らく、各家庭におけるベッドの中の行動を除いて人間生活全部だと思います。驚くべき多角性を持っております。もう医者なんかについても物すごいですよ。日本の医師法のようなああいうだらけた医師法はないですね。ないです。もっときちっとしていますよ。
 そういういかなる方向に国民を引っ張っていくか、それは一にかかって国会の先生方の任務であるというふうに私ども見ておるのでして、我々がやはりその意味では、先生方を尊敬申し上げるのはそこから来ているので、我々の運命に対する指導者であり、運命に対する責任を持ってくれる方だ、こう思っていますから。そういうことですよ。
 大体それで、先生がお話しになったことの……。
#79
○中野委員 どうもありがとうございました。
 大分時間が、はるかにオーバーしてしまいまして、宮内参考人、錦織参考人にまではお聞きできなくて申しわけありませんでした。ただ、経団連、そして中央会からはたびたび折に触れてお聞かせをいただいておりますので、今後とも参考にさせていただきたいと思っております。
 きょうは、どうもありがとうございました。
#80
○小澤委員長 御苦労さまでした。
 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べをいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 次回は、来る五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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