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1990/03/02 第118回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第118回国会 本会議 第3号
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1990/03/02 第118回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第118回国会 本会議 第3号

#1
第118回国会 本会議 第3号
平成二年三月二日(金曜日)
    ─────────────
    開 会 式
午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、参議院の調査会長、衆議院参議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
衆議院議長は、次の式辞を述べた。
    …………………………………
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百十八回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  去る二月十八日衆議院議員の総選挙が行われ、二月二十七日をもって特別国会が召集されたのでありますが、われわれは、新たな決意のもとに、当面する内外の諸情勢に対処して、適切な施策を強力に推進し、もって国民生活の安定向上につとめるとともに、国際社会においても一層大きな役割を果たしていかなければなりません。
  本年は、わが国の議会開設百周年という記念すべき年にあたります。この際、われわれは議会政治の足跡をあらためて顧みるとともに、議会制民主主義の健全な発展のため、たゆみない努力を続けなければなりません。
  ここに、国会は過般の総選挙による新議員を迎え、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。
    …………………………………
次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
    …………………………………
  本日、第百十八回国会の開会式に臨み、衆議院議員総選挙による新議員を迎え、国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の大きな喜びであります。
  現下の内外の諸情勢に対処し、国民生活の安定向上と世界平和の実現に努めることは、極めて重要であると思います。
  ここに、国会が国権の最高機関としてその使命を十分果たし、国民の信託にこたえることを切に希望します。
    …………………………………
衆議院議長は、おことば書をお受けした。
午前十一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
次いで、一同は式場を出た。
    午前十一時七分式を終わる
     ────◇─────
平成二年三月二日(金曜日)
    ─────────────
 議事日程 第三号
  平成二年三月二日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 海部内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 中山外務大臣の外交に関する演説
 橋本大蔵大臣の財政に関する演説
 相沢国務大臣の経済に関する演説
    午後一時三分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
 国務大臣の演説
#3
○議長(櫻内義雄君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、相沢国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣海部俊樹君。
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕
#4
○内閣総理大臣(海部俊樹君) 総選挙による厳粛な審判の結果、私は、再び内閣総理大臣に任命され、国政を担当することになりました。内外の山積する諸問題を前に身の引き締まる思いでありますが、選挙の結果を謙虚に受けとめ、国民的合意を目指して全力を挙げてまいる決意であります。皆さんの御協力をお願いいたします。(拍手)
 世界は今、歴史的な変化の中にあります。特に劇的な変化をしているのは、ソ連・東欧諸国であります。ベルリンの壁の崩壊に象徴されるように、自由の抑圧、社会主義的統制経済の非効率、その中から自由と民主主義と市場経済を求める動きが大きなうねりとなっております。激しい変化の過程では不安も見られさすが、苦しくてもこの改革は決して後戻りできないとのポーランドやハンガリーの首相の言葉が今も鮮やかに耳に残っております。
 ブッシュ大統領とゴルバチョフ議長によるマルタ首脳会談は、世界の平和と安定にとって極めて象徴的なことであります。東西の力の対決、冷戦時代の発想を乗り越えて、対話と協調によって新しい世界秩序を模索していこうという動きは、ひとり欧州にとどまらず、アジア・太平洋地域へと連動させていかなければなりません。力による対立が世界の秩序を支配する中では、日本は力による貢献をすることはできませんでしたが、対話と協調によって新しい平和共存の世界の構築への模索が始まっている今日、我が国は積極的な役割を果たしていかねばなりません。(拍手)
 先般の訪欧を機会に、我が国と欧米との協力関係がより一層強化されたこと、東欧諸国との友好関係が新しい段階を迎えたこと、そしてこれら各国首脳との会談が極めて有意義であったことをここに御報告申し上げたいと思います。さらに、先週、ブッシュ大統領から、昨年の会談に引き続き、早急に、議題を決めずに国際情勢及び二国間関係全般にわたり話し合いたいとの提案がありました。国会の御了承をいただきましたので、直ちに訪米し、率直な意見交換を行ってまいりたいと思っております。
 今日、世界の経済秩序も重要な岐路に立っております。保護主義圧力の増大は、戦後の繁栄を支えてきた自由貿易体制の存立を脅かしております。他方、経済のグローバル化が急速に進み、我々の住む世界は、一つの共同体としてますます連帯感を深めており、まさに「地球化時代」ともいうべき様相を呈しております。
 内に目を転じると、我が国社会もまた大きな変動期を迎えています。高齢者の急増、出生数の減少、農林漁業の後継者難や中小企業の人手不足、女性の社会参加など社会の基本構造を左右する大きな変化が見られ、これらへの適切な対応が迫られております。経済成長の持続にもかかわらず、国民一人一人に豊かさの実感が乏しいとの声も多く聞かれます。大都市地域においては、地価の異常な高騰や住宅の取得難が見られます。また、次の時代を担う若者たちを中心に生きがいや人間関係の上でさまざまな問題が生じつつあることが指摘されております。
 このような内外の諸情勢を踏まえ、私は、次の方針により政策を展開してまいります。
 まず第一に、我が国は、新しい秩序を築くための国際的な努力に、持てる経済力、技術力、経験を活用しつつ積極的に参加していくことであります。
 第二に、公正でしかも心から豊かさを享受できる社会を建設していくことであります。特に、長寿社会における福祉の充実、土地住宅問題の解決、内外価格差の是正は当面の急務であります。
 第三に、政治改革を進め、「信頼の政治」を確立することであります。リクルート事件の反省の上に立って、政治倫理を確立するとともに、金のかからない政治活動や政策中心の選挙の実現など実のある政治改革を全力を挙げて進めてまいります。(拍手)さきの国会における公職選挙法の改正の実現は高く評価されるものであり、これは平成の政治改革第一歩ととらえるものであります。現在、選挙制度審議会において、定数是正を含む選挙制度及び政治資金制度の抜本的改革のための具体策について、精力的に御審議いただいております。ことしは、時あたかも国会開設百年という記念すべき年に当たっており、同審議会の御答申をいただき、その趣旨を尊重した改革の実現に向けて不退転の決意で取り組んでまいります。引き続き政治改革について各党各会派の御理解と御協力をぜひともお願いいたします。
 本年十一月には、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の皇位継承に伴う儀式として、即位の礼及び大嘗祭が挙行される運びとなっております。即位の礼は、国民がこぞってお祝い申し上げ、世界各国からも祝福されるものとして粛然と実施できるよう、万全の準備を進めてまいります。また、大嘗祭は、皇室の伝統にのっとって厳
かにとり行われるよう、必要な手だてを講じてまいります。
 国際関係は、政治面でも経済面でも大きな変化を遂げつつあります。東欧諸国が予想を超えたテンポで自由、民主主義及び市場経済を目指した改革を進めており、ソ連ですらも共産党一党独裁の放棄と市場経済の導入への道を歩み始めたこと、東西ドイツが統一に向けて動き出したことは、まことに注目すべきことであります。また、米ソ関係が協調関係へと改善を見せ、東西間の軍備管理・軍縮交渉に進展が見られることは歓迎すべき動きであります。
 他方、アジア・太平洋地域においては、経済面での目覚ましい発展は見られるものの、いまだ不安定な要因も抱えております。その他の地域においても、幾つかの紛争に解決の兆しは見られますが、全体として政治的安定度が高まったとまでは言えない状況にあります。
 世界経済もまた、構造的な変化に直面しております。情報、科学技術の急速な発展、相互依存関係の深まりとともに、我が国やECの経済力の増大、アジアNIESの躍進、EC統合の動きなど躍動的な変化が見られる一方で、保護主義圧力の増大、開発途上国の巨額な累積債務問題など不安定さを増す要因も少なくありません。
 こうした中で迎える九〇年代は、新しい時代の始まりでありますが、その進む方向の青写真は未完成で、希望と不安が混在する時代でもあります。このようなときにこそ、我々は希望に満ちた新しい国際社会をつくるための国際秩序の構築に参画し、「志ある外交」の展開に取り組んでいかねばなりません。
 我々の求める新しい国際秩序は、第一に、平和と安全が保障されること、第二に、自由と民主主義が尊重されること、第三に、開放的な市場経済体制のもとで世界の繁栄が確保されること、第四に、人間らしい生活のできる環境が確保されること、第五に、対話と協調を基調とする安定的な国際関係が確立されることを目指すものでなければなりません。
 新しい国際秩序の構築を目指すに当たっては、確固とした日米間の協力関係が基軸にならなければなりません。日米の協力関係は、我が国の平和と繁栄のためのみならず、アジア・太平洋地域ひいては地球的な規模での国際関係の安定にとって不可欠であります。この協力関係のかなめをなす日米安全保障体制については、今後とも堅持していくことは申すまでもありません。
 日米間の貿易経済問題の解決は、我が国の直面する最も大きな政策課題であり、中でも構造問題協議は緊急かつ重要な懸案であります。この協議は、我が国の国民生活の質の向上に寄与するとともに米国の競争力強化にも資するものであり、両国間の協力関係の基礎を強化することに直結するものであります。私は、この協議の前進に最大限の努力を払ってまいります。また、世界が共通に抱える各般の分野の問題に対し両国が共同して取り組むことにより、一層良好な日米関係を発展させてまいります。
 今日の国際経済が直面する重要な課題は、多角的自由貿易体制の維持強化であります。世界経済の発展は、自由貿易体制に大きく負っていることは言うまでもありません。保護主義は、一時しのぎにはなっても、結果としてその国の経済基盤を弱め、より大きなマイナスをもたらすことを忘れてはなりません。このような見地から、本年末を交渉期限とするウルグアイ・ラウンドを何としても成功させるとともに、我が国としても、対外不均衡の一層の是正を図り、我が国経済を国際的に調和のとれた構造に転換するため、内需主導型の経済運営を堅持するとともに、市場参入条件の改善、製品輸入促進税制の導入などを図っていかなければなりません。政府としては、国民生活の質の向上、消費者重視の視点からも、輸入拡大を目指した施策を強力に推進していく所存であります。国民各位及び各企業もその方向での努力を積み重ねていただくよう強く希望いたします。
 アジア・太平洋地域の政治的安定と経済的発展を確保することは、我が国にとって極めて重要な課題であります。この地域は世界経済の成長を大幅に超えるスピードで発展しており、二十一世紀にはますます大きな存在となることが予想されます。また、我が国からの投資、貿易は年々拡大し、この地域の経済発展に大きく貢献しており、我が国とこの地域との結びつきはますます強いものとなっております。しかし、一方で、いまだ南北が軍事的に対峙している朝鮮半島、引き続き戦闘の続いているカンボジア、西側諸国との関係がなお修復されていない中国など、先行きの見通しが困難な地域を抱えております。さらに、多くの国が経済発展の過程にあって援助や投資、貿易の拡大を必要としております。我が国は、アジアの一国として、具体化に向け歩み出した経済面での地域協力を含め、これらの地域の平和と繁栄のために引き続き努力するとともに、ASEAN諸国などアジア・太平洋諸国との関係を一層強化してまいります。また、北朝鮮との間においても、対話の実現を図り、関係改善が進むよう努力してまいります。
 ソ連との関係については、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、安定的な関係を確立するとの基本方針の上に立って、日ソ関係全体を均衡のとれた形で拡大させることが我が国の方針であります。最近の国際社会の構造的変化の中で、日ソ関係を正常化することの重要性がこれまで以上に高まっております。明年のゴルバチョフ議長の訪日に向け双方が一層の対話を積み重ね、日ソ関係の抜本的改善が図られることを期待するものであります。
 欧州では、東西分断を超えた新しい秩序の構築への大きな胎動が始まっております。政治、経済、文化の各面において西欧各国との関係を一層緊密化し、日欧関係を一辺とする日米欧三極の関係強化を図っていく考えであります。
 我が国は、国際社会から恩恵を受けつつここまで発展してきており、国際協力を通じて世界の平和と繁栄のために貢献しなければならない立場にあります。既に打ち出している国際協力構想は、平和のための協力、ODAの拡充及び国際文化交流の強化を柱として着実に成果を上げておりますが、今後この構想を一層推進してまいります。また、地球環境、麻薬、テロ、人口増加といった問題への取り組みと科学技術面での協力を強化し、地球的視野に立った国際協力を推進する所存であります。
 特に、地球環境の保全については、国際的な枠組みづくりへの参加、国際協力に努め、地球環境の観測監視、調査研究や技術開発の推進を図るとともに、資源を大事にし自然を愛する心、いわゆる環境倫理を大切にして、環境保全のための努力を着実に進め、世界的規模での取り組みへと結実させてまいります。
 以上のような時代認識、国際情勢を踏まえて、国際社会の中で我が国が選択すべき姿勢は、次のとおりであります。
 その一つは、我が国が世界のどの国に対しても軍事的な脅威を与えるような存在となってはならないということであります。このような方針のもとに、我が国は、日米安全保障体制を堅持し、専守防衛に徹し、非核三原則と文民統制を確保しつつ、節度ある防衛力の整備を図るとともに、国際的に機運の高まっている軍備管理・軍縮の促進への外交努力を一層強化してまいります。
 そして、このような基本方針のもとに、経済的、技術的な持てる力と経験を地球的な視野から見て緊要なプロジェクトに効果的に投入し、地球の未来を全人類のために明るく豊かなものにしていく建設的な努力を繰り広げるとともに、経済を中心とするきしみを対話と相互の努力によって平和的に解決してまいります。
 私は、このような国の姿勢を改めて平成日本の決意として宣言するものであります。(拍手)
 今日、我が国においては、子供のころは勉強し過ぎ、就職すると働き過ぎ、退職後には時間のあり過ぎという状況で、生き生きとした人生が送れていないのではないかとの声も聞かれます。私は、人生のあらゆる段階で生活のあり方を自由に選択でき、健康で豊かな高齢期を迎えることができ、また育児、介護を中心とする負担が女性にかかり過ぎている現状が改善されるなど、国民一人一人が豊かさを実感できる環境をつくり上げてまいりたいと思います。
 このため、「生涯はつらつ、生涯しあわせ」を基本理念とする新人生設計計画ともいうべき構想を推進することとし、その具体的対応の第一弾として、ゴールドプランすなわち「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定し、今世紀中に実現を図るべき目標を明らかにいたしました。寝たきり老人ゼロ作戦の推進、在宅介護体制の緊急整備、保健福祉施設の大幅な拡充、在宅福祉などの充実のための福祉基金の創設などを強力に推進してまいります。障害者や母子家庭の方々に対しても、きめ細かな対策を講じてまいります。また、日ごろからの健康づくり、疾病の予防、がん対策や難病の克服、食品の安全性の確保などにも努力を積み重ねてまいります。
 人口の高齢化の問題で忘れてならないのは、高齢者がふえていくという側面だけでなく、我が国において誕生する子供の数の減少が進んでいることであります。出生数の減少は、我が国の将来にさまざまな問題を投げかけております。若い人々の子供を持つ意欲を積極的に支えていくことに日本の未来をかけて努力していかなければなりません。子供は世の宝であります。この宝を守り、健やかにたくましく育てていくことこそは、何にも増して大切な仕事であります。私は、これらのことを肝に銘じて、効果的な環境づくりを積極的に進めてまいります。
 女性が、職業生活と家庭生活を調和させつつ、男性とともにその能力と経験を生かすこともできるよう、育児休業制度の確立などに向けて積極的に努力をしてまいります。
 また、生涯を通じて、各人が、生きがいを持ち、その能力や創造性を発揮していくことは、今後の長寿社会にとって極めて大切であります。六十五歳程度までの継続雇用を初め高齢者のためのさまざまな就業機会の確保、生涯にわたる能力開発などを進めてまいります。
 教育は国家百年の大計であります。自我を確立し、歴史、文化、伝統をとうとび、国際社会の中で信頼される公正な心と豊かな創造性を持つ青少年の育成に努めていかなければなりません。学校教育においては、知育偏重にならないように戒め、個性と創造性を伸ばすとともに、その個性をお互いが尊重し合う気風を育てる教育を実現してまいります。また、国民の多様かつ高度な学習意欲にこたえ、精神的、文化的な充実が得られるよう、生涯にわたる学習やスポーツの機会の整備に力を注いでまいります。
 今日、国民の間には心の豊かさを求めて文化への志向が高まっております。我が国独自の伝統文化を継承しつつ、新しい芸術文化の創造発展を図るため、すべての国民が芸術文化に親しみ、みずからの手で新しい文化を創造していける環境の醸成、基盤の確立に努め、すぐれた芸術文化の振興普及や文化による町づくりなどを支援する芸術文化振興のための基金を創設してまいります。
 私は、国民の間に豊かさの実感が乏しいのは、住生活の貧困が大きな要因であると考えています。地価の高騰は、社会的な公正感を揺るがせ、国民の住宅確保の夢を奪っております。待望の土地基本法の成立を踏まえ、早速土地対策の重点実施方針を取りまとめましたが、今後一層、地価の動向に細心の注意を払い、投機的な取引を厳しく抑制するとともに、総合的な土地住宅対策を強力に展開してまいります。土地税制は総合的に見直し、平成二年度中に成案を得てまいります。大都市地域の市街化区域内の農地への課税については、総合土地対策要綱に沿って、関係制度の整備充実等とあわせ見直しを行い、平成四年度からの円滑な実施を図ることとしております。
 また、東京通勤圏において勤労者が良質な住宅を確保できるよう、この十年間に百万戸を目標に新たな住宅供給を行うことを初め、多様かつ切実な需要に応じた総合的な住宅対策を展開してまいります。
 我が国の物価は、安定的に推移しております。しかし、消費生活に直結する価格の中には、外国の水準に比べてなお割高感をぬぐえないものもあります。このため、私は、新設した内外価格差対策推進本部の長として、流通の合理化、独占禁止法の厳正運用、輸入の促進、公共料金の適正化などに取り組み、内外価格差の是正に努め、国民生活を一層充実させてまいります。
 現在、我が国経済は、息の長い拡大を続けております。今後とも、主要国との協調的な経済運営を進め、為替レートの安定を図りつつ、内需を中心としたインフレなき景気の持続的拡大と対外不均衡の一層の是正を図るため、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいります。
 勤労者の豊かでゆとりのある生活の実現にとって欠くことのできない労働時間の短縮に真剣に取り組んでまいります。また、良好な労使関係の維持発展を図るとともに、活力ある中小企業の育成を図ってまいります。
 さらに、学術研究や原子力、宇宙研究開発を初めとする科学技術の振興に努め、その成果を国際的に展開し、人類の新たな未来を創造してまいります。
 北海道の総合開発と沖縄の振興開発に引き続き積極的に取り組んでまいります。
 本年四月から開催される国際花と緑の博覧会を通じ国際交流を深めてまいります。(拍手)
 先般の税制改革は、来るべき高齢化社会を展望し、国民の重税感、不公平感をなくすことを目指したものであります。このうち、消費税につきましては、すべての人が社会共通の費用を広く公平に分かち合うという趣旨によるものでありますが、国民各層からさまざまな御意見や御指摘をいただきました。政府は、この新しい税について、消費者の立場、生活重視の思想に立脚しつつ、思い切って見直し、既にその内容を決定したところであります。今後、早急に改正法案を国会に提出し、各党各会派の御審議を得て成立を期し、さらに新鋭制の定着に全力を尽くしてまいります。
 この見直しにおいては、逆進性の緩和の観点や社会政策的配慮から、食料品について小売段階を非課税とするほか、家賃、出産の費用、入学金、教科書代を初め、身体障害者用の物品、老人に対する在宅サービスなどについても非課税とし、さらに、年金生活を送る方々のために一層の所得減税を行うこととしております。中間申告や納付の回数の増加などにより、消費者の立場から指摘されていた仕組みの上での問題点についても、現時点においてできる限りの措置を講じております。また、歳出面でも、消費税の使途を明確化するとともに、高齢化に対応した公共福祉サービスの充実を図ることとしております。
 私は、この新税は我が国の二十一世紀を支えるため必要なものと確信しております。税の負担には確かに痛みを伴いますが、しかし、社会全体のことを考え、御理解の上、御協力いただくようお願い申し上げます。(拍手)
 平成二年度予算においては、特例公債依存体質からの脱却を果たすことができました。これは、歴代内閣の御努力と皆さんの御協力のたまものであります。
 しかし、なお、国債残高が累増し、平成二年度末には百六十四兆円にも達する勢いであり、財政は依然として厳しい状況にあります。高齢化社会に多大な負担を残さず、再び特例公債を発行しないことを基本として、国債残高が累増しないような財政体質をつくり上げることを目指し、来るべ
き世紀に向けての足固めを図っていかなければなりません。
 手綱を緩めることなく制度や歳出を見直すことはもとより、来月に予定される臨時行政改革推進審議会の最終答申を最大限に尊重し、さらに新たな気持ちで行財政改革を推進してまいります。
 また、さきの国と地方の関係等に関する答申に沿って、国から地方への権限委譲などに積極的に取り組み、地域の活性化を促してまいります。
 地方財政については、その円滑な運営を期することとしております。
 なお、公務員の綱紀粛正の徹底に努め、いやしくも疑惑を招くことのないよう規律ある行政を確立してまいります。
 農林水産業は、国民生活にとって最も大切な食糧などを安定供給するという重大な使命を担っております。
 農業が自立できるよう、確固たる長期展望のもと、誇りと希望を持って農業を営める環境をつくり上げてまいります。急速な高齢化が進んでいる今、進取の気性に富んだ後継者を育成するとともに、生産基盤の整備、バイオテクノロジーを初めとした先端技術の活用などにより、一層の生産性の向上を進め、国民の納得できる価格での安定的な食糧供給を図ってまいります。私は、これらの施策を積み重ねることにより、食糧自給率の低下傾向に歯どめをかけ、供給熱量で五割の自給率となるよう努力をしてまいります。
 また、農林水産業の持つ多面的な役割を重視し、地域の資源を活用しながら、条件の不利な中山間地域を初め農山漁村の活性化を図ってまいります。
 我が国農業の基幹である米については、米及び稲作の持つ格別の重要性にかんがみ、また衆参両院における御決議の趣旨を体し、国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいります。(拍手)
 地域の活力は、我が国発展の基盤であります。私は、さきの「活力ある地域づくりに関する懇談会」の御提言にあるように、創造性豊かで多様な選択可能性に富む地域づくり、ふるさと創生の具体化に努力してまいります。また、過疎地域の活性化についても意を用いてまいります。
 東京への過度の集中や依存を改め、多極分散型の均衡ある国土づくりを強力に推進することは、国の責務であります。地価の高騰を招かないように配慮しつつ公共投資を推進し、第四次全国総合開発計画に沿って、都市・産業機能の地方分散を図るとともに、基幹的な高速度交通網や高度の情報通信網の整備、イベント開催などによる交流ネットワークの形成を進めてまいります。特に、新東京国際空港の早期完全空港化に積極的に取り組んでまいります。また、より高度な交通サービスを実現するために、リニアモーターカーなどの技術開発を推進してまいります。
 最近の交通事故の急増にかんがみ、交通安全の確保に万全を期すとともに、「国際防災の十年」の始まりに当たり、大都市などにおける防災対策の充実、防災分野の国際協力を推進してまいります。また、安寧と自由、民主主義を脅かす暴力事件やテロ・ゲリラ事件には断固たる決意を持って対処してまいります。
 私は、世界も日本もみずからの未来を決める歴史的な転機を迎えていることをひしひしと感じております。
 冷戦の克服の過程を歩みつつある今日、経済と科学技術の持つ重要性が増大する中で、我が国は、国際社会の恩恵を受けて蓄積してきた経済力、技術力、経験をもとに、地球社会のために積極的に貢献し得るときを迎えたのであります。
 我々の周りには、現在も、貧困や病気に苦しむ人々、開発途上にあって援助に頼らざるを得ない国々、自由を求めて歩み始めた国々、そして環境破壊の脅威にさらされている地球があります。我々は、世界各国と手を携えながら、経済的援助にとどまらず、先進技術の移転、人づくりなど幅広い貢献を行うことによって、これらの諸問題の解決に主導的な役割を果たしていかなければなりません。全世界の人々の人間的でより豊かな生活を可能とし、美しく快適な地球を創出していくという高い理想の実現に向けて汗を流していこうではありませんか。(拍手)
 こうしてでき上がった新しい国際社会は、戦争という言葉すら要らない、平和と繁栄の世界となるに違いありません。この崇高な理想の実現に向けて、私は、全力を尽くしてまいります。
 議員各位と国民の皆さんの御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ─────────────
#5
○議長(櫻内義雄君) 外務大臣中山太郎君。
    〔国務大臣中山太郎君登壇〕
#6
○国務大臣(中山太郎君) 第百十八回国会が開会されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し上げます。
 国際社会は、今、政治、経済両面にわたって歴史的変革の時期を迎えております。特に、欧州の国際政治は何人の予想も上回る速度で変化をいたしております。東欧は旧来のイデオロギーを捨てて民主化と自由経済の道を歩みつつあり、ソ連もまた、レーニンの共産革命以来七十年余の歳月を経た今日、共産党独裁の放棄と市場経済の導入への道を歩み出しました。さらには、これまで進められてきた西欧の統合に向けての進展に加えて、ドイツ統一問題が急激な展開を見せております。また、米ソ関係においても、これまでの対立から対話の拡大へ、さらには冷戦の発想を超えた新しい関係の構築へと向かう動きが見られており、これらの動きは、当然世界全体に大きな影響を及ぼすものと考えられます。このような変化は、自由と民主主義及び市場経済の理念がより一層多くの人々に受け入れられつつあることを示すものであり、歓迎すべきものであります。
 しかし、他方で、現在のソ連・東欧における変化は、その速度が速いだけに不安定性がつきまとっております。また、国際社会はなお多くの不安定要因を残しております。アジア・太平洋地域だけを見ましても、朝鮮半島、カンボジア等において依然として緊張や不安定要因が残っております。世界における国家間の対立も、イデオロギーに起因するものだけではなく、歴史、文化等に起因する対立にも看過すべからざるものがあります。軍備管理・軍縮も、国家の安全を高めるものではありますが、これのみで直ちに平和を実現し得るものではありません。
 国際経済の面におきましても、相互依存関係が著しく深まる一方で、さまざまな構造的変化が進展しており、また保護主義の台頭もあって、多角的自由貿易体制を初め戦後の国際経済の枠組みは
重大な岐路に立たされております。さらに、開発途上国の累積債務問題は、世界経済にとって大きな問題を投げかけております。
 このようなときに当たって、今や世界のGNPの一四%を占める経済力と極めて高い技術力を持ち、さらには経済的な後進国から先進工業国へ発展する過程で体得した貴重な経験を保有する我が国が、世界の平和と繁栄を確保するため積極的外交を展開していくことは、極めて重要であります。私は、我が国が国際社会におけるみずからの責任と役割を自覚して、新しい発想のもとでみずからの犠牲を払ってでも国際社会の繁栄と安定に貢献していく姿勢を貫いていくことが、これからの世界で我が国が信頼される国になっていくゆえんでもあると確信をいたしております。(拍手)
 このような見地に立って、以下、日本外交の当面の重点課題につき所見を申し述べます。
 対決を克服し、対話と協調に基礎を置く新しい国際秩序を築くためには、全世界、特に先進民主主義諸国が一丸となって取り組む必要があり、そのためにも日米欧の関係強化を必要としております。
 日米関係は、両国が自由、民主主義、市場経済といった基本的な価値を共有する同盟国として相互依存関係をますます緊密化していることを背景に、基本的に堅固であります。日米両国の協力が必要とされる問題は、今や世界的規模の広がりを見せており、他方で、日米関係の国際情勢に及ぼす影響もますます大きくなってきております。その意味でも、米国との間で二国間の主要問題に関する政策協調を進めるとともに、地球的規模の問題に関する共同作業を強化していくことが重要であります。
 日米二国間関係では、依然として巨額に上る貿易不均衡を背景として、経済面において厳しい状況に直面しております。この中で日米構造問題協議は、現下の日米間の最大の課題であります。本協議は、我が国の国民生活の質の向上に資するとともに、米国の競争力強化にも資するとの視点から、私といたしましても、この協議の前進に向けて最大限の努力を行ってまいる考えであります。
 このような日米関係の基盤となるのは日米安保体制であります。最近の東西関係の変化にもかかわらず、国際政治は、依然として力の均衡と抑止を基調としていることには変わりありません。その中にあって、我が国が効果的な抑止の確保と積極的な対話の展開によってみずからの平和と安全を確保しつつ、広くアジア・太平洋地域の安定と発展を図っていくために、日米安保体制は不可欠であります。政府としては、今後とも、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、日米安保条約を堅持し、その円滑な運用のため尽力してまいる決意であります。(拍手)
 二日からの日米首脳会談につきましても、政府としては、このような日米関係の重要性についての認識を踏まえて臨む方針であり、私といたしましても、国会の御了承を得て総理に同行し、日米の協力関係の一層の強化に最大限の努力を払ってまいる所存であります。
 日欧関係につきましては、その協力関係を格段に強化する必要があります。私は、民主的で繁栄した安定的な欧州が構築されることが、将来の望ましい国際秩序形成にとって不可欠であると考えております。かかる観点から、EC統合に向けた西欧の動き、ECとEFTAとの関係の進展、さらには両独統一に向けた動きを含む東西ヨーロッパ関係の進展等に注目をしております。このようにますます重要性を増している欧州との間で、政治、経済、文化等の幅広い分野で緊密な関係を構築していくことは我が国にとっての重要課題であり、先般の総理の訪欧の際も、日欧関係の強化に関し各国首脳と意見の一致を見たところであります。
 日米欧三極関係の大幅な拡充により、新しい国際秩序の構築に大きく寄与することが可能となります。我が国は、先般の総理訪欧において、ポーランド、ハンガリーに対し、民主化と民生向上のかぎとなる両国の経済再建、経済開発に資するべく、経済支援策を打ち出しましたが、これは、東欧において現在起こっている出来事が我々を含む世界全体の平和と繁栄に直接関係する性格のものであるとの認識に立つものであり、国際社会の将来に明るい展望を開くために、欧米諸国と協力して対応していくという我が国の姿勢を内外に明らかにしたものであります。今後、我が国としては、ポーランド、ハンガリー以外の東欧諸国に対しても、その改革の進展を見きわめつつ、米欧と協調して積極的に対応してまいる所存であります。(拍手)
 次に、アジア・太平洋諸国との関係について申し上げます。
 現下の国際情勢にかんがみ、アジア・太平洋地域の不安定要因の除去に努め、繁栄を確保し、外に開かれた活力ある地域をつくり上げることは、今まで以上に重要性を増しております。
 まず、朝鮮半島につき、私は、南北当事者間の対話の進展を期待し、そのための環境づくりに応分の貢献をすべく努力をしてまいります。韓国との間では、二十一世紀に向けた世界的視野での協力関係を構築してまいりたく、同時に、在日韓国人子孫の法的地位、待遇に関し、現在韓国側と進めている協議につきましても、誠意を持って全力で取り組んでまいります。また、政府は、可能な限り早い時期に盧泰愚大統領をお迎えすることを強く希望しております。北朝鮮との関係改善も大きな課題であり、そのために引き続き粘り強く対話を呼びかけるとともに、日朝間の各種人的交流を側面から支援してまいる所存であります。
 中国が孤立化の道を歩むことなく、諸外国との協力関係を維持発展させていくことは、アジア・太平洋地域、ひいては世界の平和と安定にとりまことに重要であります。そのために日中関係が果たす役割は大きく、日中間で良好にして安定した関係を維持発展させていくことが重要であります。先般、鄒家華国務委員が来日された際にも、我が方から、西側諸国との関係改善には双方の努力が必要であり、なかんずく中国側の一層の努力を期待する旨を中国側に対し改めて明確にしたところでありますが、今後とも、日中関係ができる限り早く従前の関係に復するよう、双方で努力を積み重ねていくことが重要であると考える次第であります。(拍手)
 ASEANは、総じて平和と安定を確保し、経済的にも目覚ましい発展を遂げつつあります。我が国は、ASEANの役割を重視しつつ、協力関係を増進してまいる考えであり、かかる観点より、私は年初にタイ、マレーシアを訪問した次第であります。フィリピンにつきましては、昨年十
二月に反乱事件という大変残念な事態が生じましたが、我が国としては、フィリピンにおける民主主義の確立及び経済の再建の努力に対し、今後とも、多数国間援助構想等を通じ、協力してまいる所存であります。
 東南アジア最大の不安定要因であるカンボジア問題につきましては、選挙に先立つ暫定期間における国連の役割の強化につき国際的な合意が得られる等一定の進展が見られておりますが、和平のかぎとなる暫定政権のあり方につき、関係者による協議の一層の進展が望まれるところであります。かかる状況のもと、我が国といたしましては、和平達成の過程において具体的な形で貢献してまいるとともに、和平達成後の人的、資金的協力につきましても積極的に検討してまいる所存であります。
 インド亜大陸におきましても、我が国はこの地域の安定と発展のために引き続き協力するとともに、この地域の国々との関係に一層の幅と深みを持たせるよう努めてまいる所存であります。
 大洋州諸国との関係につきましては、豪州、ニュージーランド及び太平洋島嶼国との間の友好協力関係の一層の拡大強化に努力してまいります。
 昨年十一月、アジア・太平洋経済協力閣僚会議が初めて開催されましたが、我が国は、これが地域のブロック化を目指すものではなく、開かれた協力であるべきことを強調し、具体的な協力構想を提唱いたしました。今後とも、PECCの活動を含めて、アジア・太平洋協力をさらに発展させるために努力をしてまいります。
 次に、日ソ関係について申し上げます。
 東西関係の変化が真にグローバルなものとなるためには、アジア・太平洋における東西関係の重要な要素である日ソ関係の正常化が実現することが重要であります。我が国は、領土問題を解決して平和条約を締結することを最重要課題として、日ソ関係全体を均衡のとれた形で拡大させつつ、日ソ関係の抜本的な改善を実現するとの考え方に立って努力しており、これにはソ連側の基本的理解も得られております。我が国としては、ゴルバチョフ議長の進めているペレストロイカの正しい方向性を支持するとともに、ソ連の新思考外交が、日ソ関係改善を含め、アジアと太平洋の平和と繁栄に向け積極的に適用されることを期待するものであります。このような認識に立って、私は、明年のゴルバチョフ議長の訪日に向け、日ソ間の一層の対話を積み重ねていく所存であります。
 我が国外交の地理的広がりを確保し、全世界的規模の外交を強化する努力も不可欠であります。
 米ソ関係の好転を背景としたナミビアの独立等地域情勢の安定化の兆しはありますが、全般的に言えば、中近東、中南米、アフリカ地域には、深刻化する累積債務問題や困難な開発問題に加え、不安定な政治状況のもとに置かれている諸国も多々あり、国際社会としては大きな関心を引き続き払っていく必要があります。我が国といたしましても、このような問題の解決を目指すさまざまな努力を可能な限り積極的に支援し、また、種々の国際的協力を行ってまいる所存であります。
 中東和平の帰趨はなお予断を許しません。我が国といたしましても、昨年PLO議長及びイスラエル外務大臣を日本にお迎えし、さらなる和平努力を訴えましたが、今後とも中東和平に積極的に貢献をしてまいります。また、レバノンにおける真の平和と統一の実現を強く期待するとともに、イラン・イラク和平交渉における国連事務総長の努力を全面的に支持し、紛争解決に向けてできる限りの協力を行ってまいる所存であります。
 我が国を含む国際社会は、長く南アフリカ政府に対しアパルトヘイトの撤廃を求めてきましたが、最近マンデラ氏釈放等南アの国内情勢に大きな前進が見られるに至っております。我が国は、このような情勢の変化と変革への動きを高く評価し、南アの当事者間の交渉によるアパルトヘイト問題の平和的解決の動きを支援するとともに、アパルトヘイトの犠牲者に対する援助、南ア周辺諸国に対する経済協力等、南部アフリカ地域全体の安定のために一層の貢献を行ってまいる所存であります。
 中南米地域におきましては、多くの諸国で近年民主化が進展しております。今般、ニカラグアにおいても国際的な監視のもとに自由かつ公正な総選挙が行われました。これは真の中米和平達成への重要な一歩であり、我が国といたしましても歓迎をしたいと思います。我が国としては、中南米地域の真の安定と発展のために、引き続きできる限りの貢献を行ってまいる所存であります。
 世界経済は、主要国間の大幅な対外不均衡の存在や保護主義圧力の増大、累積債務問題等を抱えており、各国の政策協調の維持強化が求められております。我が国としては、サミット等を通じ主要先進諸国間の政策協調を積極的に推進するとともに、対外経済関係の円滑な運営に努める必要があります。このため、国内経済を世界経済全体と調和のとれたものにしていくとの観点から、我が国にとっての最大の政策課題である対外不均衡を是正すべく、内需主導型の経済運営を堅持するとともに、市場アクセスの一層の改善、規制緩和を含む構造調整の推進、製品輸入促進税制の導入等の総合的な輸入拡大策を推進する方針であります。
 ウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、私自身、昨年十一月主要交渉参加国の関係閣僚を日本に招請し、非公式な意見交換を通じ交渉の進展を図りました。本年、交渉は最終局面を迎え、国内的にも困難な調整が予想されますが、自由貿易体制のもとで繁栄をなし遂げた我が国としては、多角的自由貿易体制の維持強化が、我が国のみならず世界の今後の繁栄の前提であることを念頭に置いて、この交渉の成功のため全力を尽くす決意であります。
 世界経済の繁栄を確保するためには、開発途上国経済の健全な発展が極めて重要であり、先進諸国と開発途上国との協力関係を強化するとの観点から、累積債務問題及び政府開発援助の拡充強化に取り組んでまいります。
 我が国は、一昨年、日本の国際的地位にふさわしい貢献をするための具体的施策として、平和のための協力、政府開発援助の拡充及び国際文化交流の強化を三本の柱とする国際協力構想を発表し、着実に具体化を図ってまいりました。
 平和のための協力につきましては、確固たる平和の基盤をつくるための外交努力とともに、国連の平和維持活動に対する協力の強化等に引き続き努めてまいります。特に、昨年ナミビアでの制憲議会選挙に計二十七名から成る初めての本格的な
要員派遣を行い、国連等より高い評価を得ました。また、先月にはニカラグアの選挙監視のために要員を派遣いたしました。今後とも、資金面の協力とともに、要員派遣にも努めたく、そのために必要な体制の整備に努めてまいる所存であります。
 国連やジュネーブ軍縮会議等の多数国間の軍備管理・軍縮努力につきましても、我が国の技術と経験を提供する形で、検証分野において具体的な貢献をしてまいります。
 政府開発援助の拡充、すなわちODAの拡充につきましては、非軍事的手段により国際社会に積極的に貢献しようとする我が国外交の重要な柱であります。振り返るに、我が国自身、かつては途上国でありました。その我が国が世銀や米国等の援助を受けながら経済発展を達成し、今日では総額一兆二千億円と世界で一、二の規模の援助量を誇るに至っております。このような歴史を背景とする我が国のODAは、アジアを中心に、アフリカ、中近東、中南米を含むまさに世界的な広がりを持った地域で、開発途上国の経済の発展、国民の生活水準の向上、貧困の軽減、人づくりの増進などに貢献し、効果を上げております。我が国といたしましては、援助される側であった経験を生かし、途上国のみならず、他の援助国、国際機関との政策対話、政策協調をさらに推進するとともに、現在実施中の第四次中期目標に沿い、引き続きODAの量的拡充、内容の改善、質の向上、援助実施体制の強化に努め、新たな諸課題にも積極的に取り組んでまいる決意であります。また、評価システムを強化し、援助の効果的、効率的実施にも一層の努力を払い、幅広い国民の皆様の御理解と御支持を得るように努めてまいりたいと考えます。
 国際文化交流の強化につきましては、諸外国の我が国に対する関心と期待の増大に積極的にこたえ、我が国に対する理解を深めるとともに、国際的な文化面でのさまざまな努力に対し積極的な協力を行っていくことが、我が国にとって緊要な課題となっております。私といたしましても、幅広い文化交流を通じて新しい文化の創造を促し、世界的な文化遺産の保存のためにさらに努力してまいる所存であります。また、文化交流を支えるのは人の交流であり、各国の間の相互理解を促進するためにも、さまざまなレベルでの人的交流を進める必要があります。現在我が国で学ぶ外国人留学生は約三万人に上りますが、人と人との交流は我が国の国際化に寄与するものであり、その積極的な推進を図ってまいる所存であります。
 さらに、今日、地球のいかなる国においても、より豊かな環境のもと、一人一人が健康で人間的な生活を営んでいけるよう、人類は多くの課題を克服してまいらなければなりません。我が国といたしましても、環境、麻薬、国際テロ、人権、難民問題等の地球的な規模の諸問題に対し、地球社会の責任ある構成員として行動することが重要であります。
 地球温暖化等の地球環境問題につきましては、我が国といたしましても、豊富な経験と技術力を活用し、国際的な枠組みづくりや開発途上国における環境問題に関しこれまで以上に協力を拡充してまいります。
 麻薬問題につきましても、人類全体に及ぼす深刻な影響にかんがみ、この分野における国連等の活動を今後とも支援をしてまいりたいと思います。
 また、我が国は、理由のいかんを問わず航空機爆破を初めとするあらゆる形態のテロに断固反対し、国際社会全体の安全の問題としての観点からその防止のための国際協力を強化してまいります。
 人権につきましても、昨年の主要国首脳会議において人権に関する宣言に参加し、人権尊重の立場を改めて明確にいたしました。難民問題につきましても、国連難民高等弁務官事務所等に対する資金協力を初め、インドシナ難民の定住受け入れ等の面で協力をさらに強化してまいる所存であります。
 最近の科学技術の飛躍的な発達は、経済発展の原動力であるとともに、人類共通の諸問題を解決する無限の可能性を秘めております。このような認識のもと、科学技術立国を目指す我が国としましては、研究者間の交流、国際共同研究の推進、技術の交流移転等、我が国が得意とする科学技術面での国際的貢献を行ってまいると同時に、科学技術の適正な利用を図るよう努めてまいります。特に、開発途上国の人々が健康的で充実した生活を享受できるようにするため、世界で一番の長寿社会を実現した我が国の経験を生かしつつ、医療面での国際協力を積極的に推進してまいります。
 以上のごとく、今日国際社会の中において我が国の果たすべき役割は飛躍的に増大をしております。こうした中で、新たな状況に的確に対応しつつ積極的な外交を推進するとともに、緊急事態における迅速な対処を含め、増大する在留邦人の保護体制を充実させていくために、外交実施体制の一層の強化が必要であり、このためにさらなる努力をしてまいる所存であります。
 以上申し述べてまいりましたことから明らかなとおり、今日我が国にとって外交の重要性はますます高まっております。しかも、我が国にとりまして外交は即内政であり、内政はすなわち外交であります。そして、世界の平和と繁栄なくして日本の安全と繁栄はなく、日本の行動は世界の平和と繁栄に大きな影響を与えます。このような認識のもとに、私はみずからに課せられた責任の大きさを改めて痛感し、日本のため、そして世界の平和と繁栄のため、第一線に立って全力を尽くしてまいる決意をいたしております。国民の皆様方及び同僚議員各位の御理解と御支援をお願い申し上げる次第であります。(拍手)
    ─────────────
#7
○議長(櫻内義雄君) 大蔵大臣橋本龍太郎君。
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#8
○国務大臣(橋本龍太郎君) 平成二年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたします。
 我が国は、国民のたゆまぬ努力と創意により、二次にわたる石油危機など幾多の試練を乗り越え、今や戦後最長のイザナギ景気にも迫る息の長い景気拡大が続く中、一九九〇年代のスタートを迎えることができました。この間、国際社会に占める我が国の地位は急速に高まり、我が国の諸外国に対する経済的影響や我が国に課せられた責任も飛躍的に増大してきております。
 今後、我が国は、これまでの経済的成果を踏まえ、二十一世紀における豊かで安定した社会の実
現を確実なものとするため、国内的には、国民一人一人が豊かさを感じられるよう、国民生活の質的な向上に努め、対外的には、世界の国々とともに繁栄できるよう、世界経済の安定的発展のために我が国にふさわしい貢献をしていくことが肝要であります。
 ここで、財政金融政策の前提となる最近の内外経済情勢について申し述べます。
 現在、我が国経済は、物価が安定する中で、内需を中心とした自律的拡大を続けております。設備投資は増勢を続けており、個人消費も堅調に推移するなど、民間需要は順調に拡大しております一方、労働力需給等注視を要する点も存在しております。対外面では、経常収支の黒字幅が縮小を続けるなど、対外不均衡の是正は着実に進んでおります。
 国際経済情勢を見ますと、先進国においては、物価安定に努力が払われる中、持続的な経済成長が続いております。主要国の対外不均衡は、改善の努力が行われているものの、依然大幅であり、これを背景として、保護主義的な動きにはなお根強いものがあります。また、累積債務問題につきましては、前進が見られるものの、依然深刻な状態にあります。さらに、最近における東欧の民主化、自由化の動きが世界経済に与える影響については、十分注視する必要があるものと考えます。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、我が国を取り巻く状況を踏まえ、以下に申し述べる諸課題に取り組んでまいります。
 第一の課題は、内需を中心としたインフレなき持続的成長を確保していくことであります。
 このことは、国民生活の向上と世界経済の健全な発展に資するものと考えます。
 このような見地から、平成二年度予算につきましては、長年の懸案であった特例公債依存体質からの脱却を実現するなど、財政改革をさらに推進するとの考え方のもとに編成いたしました。
 金融面では、昨年公定歩合が三度にわたり引き上げられるなど、内外経済のときどきの動向に応じた適切な措置がとられたところであります。今後とも適切かつ機動的な金融政策の運営に努めてまいりたいと考えております。また、最近の地価動向等にかんがみ、土地関連融資について引き続き厳正な指導に努める所存であります。
 持続的な経済成長を確保する上で、為替相場及び金融・資本市場の安定が重要であることは申し上げるまでもありません。今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図るとともに、金融・資本市場の動向を十分注視し、その安定を期してまいりたいと存じます。
 第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。
 各般にわたる改革努力の結果、平成二年度予算においては、昭和五十年度以来十五年間の長きにわたって続いた特例公債依存体質からの脱却を実現するとともに、公債依存度もかつての三割を超える水準から八・四%に低下させるなど、我が国財政の健全化に向けて大きな歩みを進めることができました。
 しかしながら、特例公債依存体質からの脱却をもって財政が健全体に復したとは決して言えません。それはあくまで財政改革の第一段階を達成したにすぎないのであります。連年の公債発行により国債残高は平成二年度末には百六十四兆円にも達する勢いであり、国債費が歳出予算の二割を超えて他の政策的経費を圧迫するなど、我が国財政は依然として厳しい状況にあります。また、国鉄清算事業団長期債務の処理問題なども残されております。
 将来の我が国の安定と発展にとって、財政の対応力の回復を図ることは緊要の課題であり、また、簡素にして効率的な行財政を確立し、活力ある経済社会を維持していくことは我々の責務であります。
 今後の中期的な財政運営につきましては、昨日、財政制度審議会の報告を受けたところであります。この報告に沿って、来るべき高齢化社会に多大の負担を残さず、再び特例公債に頼ることのない財政構造の確立を目指して、公債依存度の引き下げ等により、国債残高が累増しないような財政体質をつくり上げることに全力を傾けてまいる所存であります。
 第三の課題は、新しい税制の一層の定着を図ることであります。
 御承知のように、先般の抜本的税制改革は、それまでの税制が持っていたさまざまなゆがみやサラリーマン層を中心とする重税感を是正するとともに、高齢化の進展を踏まえ安定的な税体系を確立することを目的として行われたものであります。
 このうち、昨年四月に導入された消費税は、その後の経済動向や円滑な申告、納税等の状況を見ましても、着実に日々の生活に溶け込んできております。一方、消費税に対しましては、国民各層からさまざまな御意見や御指摘をいただきました。消費税の一層の定着を図るとの観点から、御指摘をいただいた問題点はすべて検討の対象とし、現時点で最善と確信する消費税の見直しを行うことといたしました。
 その具体的内容は次のとおりであります。
 第一に、消費に広く薄く負担を求めるにしても、食料品のようなものについては特別な配慮をすべきではないかという御指摘がありました。これにつきましては、まず、すべての飲食料品について小売段階を非課税とするとともに、卸売段階までの税率はこれまでの半分の一・五%にいたしております。また、これまでの社会保険医療等の非課税に加え、人の生命にかかわる出産費、火葬・埋葬料を非課税とするほか、借家住まいの方々のために家賃も非課税とすることといたしております。さらに、入学金、教科書等も非課税といたしております。
 次に、社会的に弱い立場の方々にはより一層の配慮が必要ではないかとの御指摘がありました。これにつきましては、身体障害者用物品、老人福祉センター経営事業等の社会福祉事業、ホームヘルパー等老人に対する在宅サービスを非課税とするとともに、年金生活者のために一層の所得税及び住民税の減税を実施することといたしております。
 また、納税義務者の事務負担に配慮しつつも、制度の公平性をより一層追求していくべきではないかとの御指摘がありました。これにつきましては、中間申告、納付回数の増加等現時点においてできる限りの措置を講ずるほか、事業者免税点制度等については、消費税の申告、納付が一巡する本年五月までの間は実態把握を行い、これらの制
度をどう見直すか十分検討の上提示することといたしております。
 さらに、消費税は本当に福祉のために使われるのかという御指摘に対しましては、消費税収のうち国分につき福祉に優先して充てる趣旨を法律で明らかにすることといたしております。また、歳出の分野においても、新たに「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定するなど、各般の施策を推進することといたしております。
 税制は、国民生活や経済取引などに深く関連するものであり、現実の社会経済情勢や生活実感から離れたものにならないよう努めていかなければなりません。消費税についても、国民の皆様の声に十分に耳を傾けながら、執行面においても広報、相談、指導を中心とした対応に努めることによって、日々の国民生活に一層溶け込んでいくものと確信いたしております。
 二十一世紀を展望したこの新税制が、国民各位の御理解のもと、名実ともに我が国の経済社会の基盤となるよう、今後とも最大限の努力を傾けてまいる所存であります。(拍手)
 なお、土地税制につきましては、土地基本法の趣旨に沿った関係制度の整備状況を踏まえつつ、土地に対する負担の適正化、土地政策の推進の見地から、その総合的な見直しに取り組んでまいる所存であります。
 第四の課題は、調和ある対外経済関係の形成に努めることであります。
 世界経済は、相互依存関係をますます深めつつ、一層の繁栄と発展を遂げつつあります。もはや一国の経済は、他国との円滑な経済関係なしには成り立たないという状況にあると考えられます。
 日米間の経済関係は、特に重要なものの一つであります。昨年七月の日米首脳による共同発表を受け、日米構造協議が行われております。我が国としては、構造調整は国民生活の質の向上につながるとの観点からも、我が国みずからの課題として積極的に取り組むべきものと考えております。
 自由貿易体制は、世界各国の経済発展と国民生活向上の基礎であり、各国との協力のもとに、その維持強化に努めていく必要があります。ウルグアイ・ラウンドにつきましても、本年末の交渉期限に向けて、交渉を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 関税制度につきましては、市場アクセスの一層の改善を図るとの観点から、平成二年度において、機械類の関税の原則撤廃を含む工業製品関税の撤廃、引き下げなどの改正を行うことといたしております。
 経済協力につきましては、開発途上国の自助努力を支援するため、政府開発援助の着実な拡充に努めております。
 累積債務問題につきましては、国際的な合意を得て進められている新債務戦略を我が国としても積極的に支持し、我が国から開発途上国への六百五十億ドル以上の資金還流措置を含め、所要の協力を行っていく考えであります。
 さらに、最近の東欧の民主化、自由化の大きな流れの中で、これら諸国への支援が大きな課題となっておりますが、我が国としても、西側主要国の一員としてふさわしい協力を行うとの考え方から、ポーランド、ハンガリーに対する積極的な支援策を表明したところであります。
 第五の課題は、金融・資本市場の自由化、国際化を着実に進めていくことであります。
 経済構造の変化や経済全般にわたる国際化の進展などに対応して金融・資本市場の自由化、国際化を進めていくことは、内外経済の発展、効率化及び国民のニーズの多様化に的確に対応していく上で極めて重要であります。
 このような観点から、預金金利の自由化、外国金融機関のアクセスの拡大などの措置を逐次講じ、短期金融市場、国債の発行・流通市場、先物市場の整備拡充などに努めてまいりました。証券取引につきましては、内外の信頼をさらに深め、取引の公正性、市場の透明性を高めるため、内部者取引規制の整備など所要の措置を講じてまいったところでありますが、これに加え、株式等の大量の保有状況に関する情報の開示制度の導入及び公開買い付け制度の改善を図るため、所要の法案を今国会に提出し、御審議をお願いいたしたいと考えております。
 さらに、今後の我が国の金融制度のあり方、資本市場のあり方及び保険事業のあり方等につきましては、関係各審議会において鋭意審議が進められているところであります。
 次に、平成二年度予算の大要について御説明いたします。
 平成二年度予算は、真に必要な財政需要に適切に対応しつつ、財政改革の第一段階である特例公債依存体質からの脱却を実現するとともに、公債依存度の引き下げを図るため、さらに歳出の徹底した見直し、合理化に取り組むことなどにより公債発行額を可能な限り縮減することとして編成いたしました。
 歳出面につきましては、一般歳出の規模は三十五兆三千七百三十一億円となっており、また、国債費は、定率繰り入れを実施することとし、十四兆二千八百八十六億円となっております。これらに地方交付税交付金等を加えた一般会計予算規模は六十六兆二千三百六十八億円となっております。
 国家公務員の定員につきましては、第七次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、三千百四十八人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 税制につきましては、平成二年度の税制改正として、消費税の見直しのほか、当面の政策的要請、課税の適正化に配意しつつ、土地税制に係る所要の改正、製品輸入促進税制の創設、租税特別措置の整理合理化等を行うことといたしております。
 公債発行予定額は、前年度当初予算より一兆五千百七十八億円減額し、五兆五千九百三十二億円となっております。これはすべて建設公債であり、特例公債の発行はいたしません。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は二十三兆四千八百九億円となります。
 財政投融資計画につきましては、住宅、社会資本の整備、国際協力の推進等の政策的要請にこたえ、資金の重点的、効率的な配分に努めており、その規模は三十四兆五千七百二十四億円、このうち資金運用事業を除いた一般財投の規模は二十七兆六千二百二十四億円となっております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 社会保障関係費につきましては、二十一世紀に向かって活力ある福祉社会を形成していくことが重要な課題であり、給付と負担の適正化、公平化等を図ることにより、将来にわたって安定的かつ有効に機能する制度を構築していく必要があります。このような観点から、国民健康保険制度の改革や老人保健制度の基盤の安定化のための措置等を講ずることといたしております。また、すべての国民が安心してその老後を送ることができるよう、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定し、その着実な実施を図るなど福祉施策についてきめ細かな配慮を行っております。さらに、高年齢者雇用対策等の施策の充実を図っております。
 文教及び科学振興費等につきましては、教育環境の整備、生涯学習の振興、芸術、文化、スポーツの振興などの施策の充実に努めるとともに、基礎的、創造的研究を初めとする科学技術の振興のための施策を推進することといたしております。
 公共事業関係費につきましては、景気の持続的拡大の維持に配慮し、また、社会資本整備の重要性にかんがみ、NTT株式売り払い収入の活用による無利子貸付事業を含め、その総額は引き続き高水準を維持することといたしております。その配分に当たっては、生活環境の向上に資するよう下水道、公園等の事業に特に配意するとともに、地域の実情に十分な配慮がなされるよう対処してまいる所存であります。また、住宅金融公庫の融資戸数の増加、大都市地域における融資額の拡大など住宅対策の拡充も図っております。
 中小企業対策費につきましては、経営基盤強化のための諸施策の内容充実を図ることとし、特に地域の産業の起業化の支援、労働環境の改善のための施策に配慮しております。
 また、農林水産関係予算におきましても、内外の情勢変化のもと、需要の動向に適切に対応しつつ、産業として自立し得る生産性の高い農林水産業の確立に向けて、新たに地域活性化の観点をも踏まえた構造改善事業を発足させるなど生産基盤の整備等に配慮しております。
 経済協力費につきましては、第四次中期目標の着実な達成を図るとの観点から、政府開発援助予算について八・二%増といたしており、また、実施体制の充実にも配慮しております。
 防衛関係費につきましては、最近の国際情勢、厳しい財政事情等を勘案し、他の諸施策との調和を図りながら、その質的充実に配意しております。その結果、中期防衛力整備計画はほぼ達成されることとなります。
 エネルギー対策費につきましては、地球環境問題等の環境保全に留意しつつ、安定的なエネルギー供給を確保するための施策等を着実に推進することといたしております。
 地方財政におきましては、中期的な地方財政の健全化等を図るため、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金の返済などの措置も講じております。地方団体におかれましては、歳出の節減合理化をさらに推進し、より一層効率的な財源配分を行われるよう要請するものであります。
 この機会に、平成元年度補正予算について一言申し述べます。
 平成元年度補正予算につきましては、歳入面では租税及び印紙収入の増収及び昭和六十三年度決算剰余金等を計上するとともに、歳出面では地方交付税交付金、国債整理基金特別会計への繰り入れ、災害復旧等事業費、給与改善費、厚生保険特別会計への繰り入れ、住宅金融公庫交付金等、日本国有鉄道清算事業団補助金など特に緊要となった事項について措置を講じております。特例公債は六千五百億円減額することといたしております。
 以上によりまして、平成元年度一般会計補正後予算の総額は、当初予算に対し、歳入歳出とも五兆八千九百七十七億円増加して、六十六兆三千百十九億円となっております。
 以上、平成二年度予算及び平成元年度補正予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
 二十一世紀まであと十年余り、この期間において、私たちは、私たち自身のために、また子供たちのために、しっかりとした基盤を築かなければなりません。
 二十一世紀には今まで我が国が経験したことのないような高齢化社会が確実に到来をいたします。そのような時代においても、真に長寿を喜べる社会、だれもが生きがいを感じ得る社会を築くためには何をなすべきか。政府は、常にこのことを念頭に置いて、二十一世紀においても耐え得る制度を構築するため、財政改革、税制改革を一歩一歩進めてまいりました。今日の私たちの地道な努力は、必ずや新しい時代における我が国の一層の発展と繁栄の礎となるものと確信いたしております。
 国民各位の一層の御理解と御支援を切にお願いする次第であります。(拍手)
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#9
○議長(櫻内義雄君) 国務大臣相沢英之君。
    〔国務大臣相沢英之君登壇〕
#10
○国務大臣(相沢英之君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について、所信を申し述べたいと存じます。
 本年は、一九九〇年代への第一歩を踏み出す大きな節目の年に当たっております。
 我が国経済は、イザナギ景気以来の息の長い景気拡大が続く中で、四百兆円規模の時代を迎えようとしており、国民一人当たりの所得も既に世界の最高水準に達し、対外面におきましても、今や世界最大の資金供給の担い手となっております。
 一九九〇年代におきましては、二十一世紀への展望を開きながら、均衡と調和のとれた経済発展を目指していく中で、我が国の国際的地位にふさわしい貢献を果たしていくとともに、国民生活の一層の充実と豊かな長寿社会の実現を図っていくことが重要であると考えます。
 まず、我が国経済の発展に伴い、国際社会における我が国の責任と役割も、従来にも増して大きなものが求められるようになってきております。また、貿易や資本取引など国境を越えたさまざまな経済活動が活発化し、環境問題も地球的な広がりを示すなど、世界経済の一体化がさらに進みつつあり、世界的視野に立った経済運営がますます重要となってきております。我が国としては、今後とも、各国、各地域との交流を深めるとともに、内需主導型経済成長の持続と対外不均衡の一層の改善を図り、調和ある対外経済関係の形成に努め、我が国の国際的地位にふさわしい貢献を果たしていく必要があると考えます。
 次に、国民生活の面では、経済の発展に伴い、その水準は着実に改善してきておりますが、国際的に見て労働時間が長いことや地価、生計費が高いことなどから、所得水準の向上の割には生活の豊かさやゆとりが実感されていないという問題が指摘されております。国民の価値観は、物の豊かさから心の豊かさ、ゆとり、生活の快適さなどを大切にする方向へと変化してきております。今こそ、生活重視の観点に立って、内外価格差の縮小や労働時間の短縮などを目指した経済構造調整を積極的に進めていかなければならないと考えます。同時に、国民生活の質的向上を支える基盤となる社会資本の整備を今後とも着実に推進していく必要があると考えます。
 さらに、本格的な高齢化社会の到来に備え、経済社会の活力を維持しながら、生涯を通じて健やかで充実した生活を楽しみ、長生きをしてよかったと言えるような長寿社会を築いていくための施策を進めていくことも極めて重要な課題であります。政府は、公平で長期的に安定した年金制度、医療保険制度の確立を図るとともに、健康づくりの推進や高齢者に対する福祉の充実などに努めてきているところであり、今後とも、保健、医療、福祉等広範な分野にわたる施策を推進していく考えであります。特に、緊急に整備が必要な在宅福祉対策等につきましては、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の着実な実施を図っていくこととしております。
 また、国民生活の充実や豊かな長寿社会の実現を図っていく上でも、大都市圏における生活環境の改善に努めるとともに、地域経済の活性化を推進し、国土の均衡ある発展を図っていくことが大切であることは言うまでもありません。
 先般の税制改革は、高齢化の進展や一層の国際化に対応していくために必要な改革でありました。政府としては、引き続き新税制の円滑な定着を推進する中で、消費税について国民の理解を深め一層の定着を図る観点から所要の見直しを行うこととしております。
 また、我が国の財政は、特例公債依存体質からの脱却を実現いたしましたが、巨額の公債累積に伴う国債費負担等により、なお厳しい状況にあります。今後の社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくためにも、引き続き財政改革を強力に推進していく必要があると考えております。行政改革の推進や公的規制の緩和につきましても、今後とも積極的に取り組んでいかなければなりません。
 以上、一九九〇年代における我が国経済の課題と進むべき方向について申し述べましたが、経済計画「世界とともに生きる日本」におきましても、内需主導型経済構造への転換定着に向けて種々の経済構造調整を推進していくべきであると、既に指摘しております。私は、市場メカニズムの持つよさを十分に活用しながら、必要な改革を着実に推進し、二十一世紀における新しい発展の基礎を築いてまいる所存であります。
 次に、内外の経済の現状と平成二年度の経済運営の基本的方針について申し述べたいと存じます。
 まず、世界経済の動向を見ますと、各国間の政策協調が進展する中で、息の長い景気拡大が続いており、一時高まりが見られた物価上昇率も、昨年後半以降総じて落ちつきを取り戻してきております。アジア・太平洋地域において力強い経済の発展が見られるとともに、西欧諸国において市場統合への動きが進みつつあり、東欧諸国の政治経済情勢にも大きな変化が見られております。一方、主要国にはなお大きな対外不均衡が存在し、保護主義的な動きにも根強いものがありますし、発展途上国の中には累積債務問題を抱える国があるなど、引き続き対応していかなければならない課題が数多く残されております。
 他方、我が国経済は、個人消費や民間設備投資を中心とした内需主導型の景気拡大が続いており、昭和六十一年十二月以来の景気上昇は四年目を迎えております。こうした中で、企業収益はさらに増加を続け、雇用者数が堅調に増加し、労働力需給は引き締まりの状況が続いております。また、製品類等を中心として輸入が増加していることなどから、経常収支の黒字幅は縮小傾向にあります。
 これらの内外の経済動向を勘案しますと、平成元年度の実質経済成長率は、四・六%程度になるものと見込まれます。
 以上のような状況を踏まえ、私は、平成二年度の経済運営に当たりましては、特に次の諸点を基本的な柱としてまいりたいと考えております。
 第一の柱は、内需を中心とした息の長い景気の拡大を図ることであります。
 このためには、まず、今後とも、主要国との政策協調にも配慮し、為替レートの安定を図るとともに、物価の安定を基礎としつつ、適切かつ機動的な経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 また、公共事業の事業費の確保を図るとともに、民間活力活用のための環境の整備、各種の中小企業対策、人材確保に向けた雇用、能力開発対策等につきましても積極的に推進してまいります。
 金融政策につきましては、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しながら、今後とも適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。
 平成二年度の我が国経済は、以上のような政府の施策と民間経済の活力とが相まって、引き続き対外不均衡の是正を進めながら、内需主導型の着実な拡大を実現し得るものと考えられます。この結果、平成二年度の実質経済成長率は、四%程度になるものと見込んでおります。
 第二の柱は、物価の安定基調を維持することであります。
 物価の安定は、国民生活安定の基礎であり、経済運営の基盤となるものであります。
 最近の物価の動向を見ますと、消費税導入等の影響は昨年六月までにほぼ出尽くしたと見られ、この点を考慮いたしますと、引き続き安定的に推移してきていると言えます。平成元年度及び平成二年度の消費者物価上昇率は、それぞれ二・七%程度、一・六%程度になるものと見込んでおります。今後とも、原油価格、為替レート、労働力需給等の動向を十分注視しながら、物価の安定に最善の努力を尽くしてまいる所存であります。
 第三の柱は、内外価格差の縮小や労働時間の短縮などを目指した経済構造調整を積極的に進め、国民生活の一層の質的向上を図っていくことであります。
 我が国の生計費が近年の円高の進展もあって国際的に割高であるということは、国民生活上の大
きな問題として考えております。政府は、この問題の解決に積極的に取り組むため、昨年末に政府・与党内外価格差対策推進本部を設置し、本年一月に五十二項目にわたる当面の具体的方策を決定したところであります。これには、関係省庁における内外価格差の実態把握とその公表、予算、税制等による輸入促進策、規制緩和、独占禁止法の厳正な運用等による競争条件の整備、電話料金の引き下げ等適正な公共料金政策、消費者への情報提供などの施策が盛り込まれており、その着実な実施を図ってまいる所存であります。
 また、近年の地価高騰は、大都市地域の住民が通常の所得の範囲で良質な住宅を手に入れることを困難にしたほか、国民の不公平感を増大させる等、深刻な問題となっております。政府としては、土地基本法の成立を踏まえ、今後とも総合土地対策要綱等に沿って土地対策をさらに積極的に推進していくこととしております。投機的土地取引の抑制のための対策を講ずるほか、大都市地域における住宅宅地供給の促進、都市・産業機能の分散等を図るとともに、土地税制の総合的な見直しにも取り組んでまいります。
 同時に、ゆとりある社会の実現を目指す観点から、「しっかり働き、ゆっくり休む」という考え方に立って、仕事とゆとりのバランスを図っていくことがますます重要になってきております。国民各層への訴えかけや労使の自主的な努力の促進などを通じ、完全週休二日制や連続休暇の普及、所定外労働時間の短縮など、労働時間の短縮に努めるとともに、自由時間充実のための施策を推進してまいります。その際、就業意欲のある高齢者や女性が働きやすい環境を整備していくことは、働き過ぎとなっている中高年層の負担を和らげるという観点からも重要であると考えます。
 また、国民生活基盤の一層の充実を図るため、引き続き国民生活の充実に重点を置いた社会資本の整備に努めることとしております。
 消費者行政につきましても、国際化、情報化、サービス化、高齢化の進展など、消費者を取り巻く環境の変化に適切に対応しつつ、引き続き積極的に取り組んでまいります。悪質な商法による被害の防止や商品、サービスの安全性の徹底などを図るとともに、消費者の選択の幅を広げ、より豊かな生活を営む支えとする観点からも、各種の情報提供や青少年期の早い段階からの消費者教育の充実に努めてまいりたいと考えております。
 また、地球環境の保全に配慮するとともに、限られた資源エネルギーを有効に活用し質の高い生活の実現を図っていくため、省資源省エネルギー型社会を目指した施策を推進してまいります。
 第四の柱は、保護貿易主義の抑止と自由貿易体制の維持強化に向けて率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化への積極的な貢献を図っていくことであります。
 このため、まず、輸入の拡大を通じて貿易の拡大均衡を図るとの基本的な考え方に立って、対外不均衡の着実な改善に努めてまいる所存であります。具体的には、内需の持続的拡大に加え、市場アクセスの改善を図るとともに、輸入品の我が国市場への定着を目指して総合的な輸入促進策を推進してまいります。
 また、投資受け入れ国との関係に配慮しながら海外直接投資の推進を図るとともに、本年に最終年を迎えるガットのウルグアイ・ラウンド交渉に対しましても、多角的自由貿易体制の維持強化を図る観点から、その成功に向けて一層の貢献を行ってまいりたいと考えております。
 日米構造問題協議につきましては、両国の構造調整の推進に資するものであり、我が国としては、国民生活の質的向上を図るという観点からも、我が国自身の問題として積極的に取り組んでいくこととしております。
 発展途上国への経済協力につきましては、我が国が国際的に貢献していく上でますますその重要性が高まってきているところであり、効果的、総合的な経済協力の推進に努め、政府開発援助に関する第四次中期目標の着実な実施を図るとともに、累積債務国等に対する資金還流を促進してまいる所存であります。また、地球環境問題について、我が国の有する知識、経験、技術力などの活用を通じて世界的問題の解明と解決に貢献するとともに、発展途上国への協力を進めていくこととしております。
 以上、今後の経済運営の課題と方向について所見を申し述べました。
 世界情勢は今大きく揺れ動いておりますが、こういうときこそ、各国が互いに協調しながら、持続的な発展を目指していくことが重要であることは言うまでもありません。内外の経済はなお多くの課題を抱えており、それらの解決に向けて今後とも構造調整の推進など粘り強い努力を続けていかなければなりません。
 私は、世界の動きにも十分目を凝らしながら、経済運営に誤りなきを期し、世界経済の安定と繁栄に積極的に貢献していくとともに、国民生活の一層の充実と向上に努めてまいる所存であります。豊かな自然との共存や人と人との間の触れ合い、文化の蓄積や交流を大切にしていくことを通じて、精神的な面での豊かさも深め、生活の充実感を心から味わえるような社会をつくり上げていきたいと考えます。
 国民の幅広い方々からの御意見、御示唆に十分耳を傾けながら、全力を尽くしてまいります。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
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#11
○佐藤敬夫君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る五日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#12
○議長(櫻内義雄君) 佐藤敬夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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