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1947/11/29 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法・治安及び地方制度連合委員会経済査察官の臨検検査等に関する法律案に関する小委員会 第4号
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1947/11/29 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法・治安及び地方制度連合委員会経済査察官の臨検検査等に関する法律案に関する小委員会 第4号

#1
第001回国会 司法・治安及び地方制度連合委員会経済査察官の臨検検査等に関する法律案に関する小委員会 第4号
  付託事件
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案(内閣送付)
――――――――――――――――
昭和二十二年十一月二十九日(土曜
日)
   午後一時四十七分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○経済査察官の臨檢檢査等に関する法
 律案
  ―――――――――――――
#2
○委員長代理(岡本愛祐君) これより経済査察官の臨檢檢査等に関する法律案の小委員会を開会いたします。前回の小委員会下委員から御質問がありまして、これに対する安本長官の御答弁がありましたが、まだ徹底しない点がありますので、今日法制局長官の御出席を求めまして御答弁をお願いいたしたいと思います。
#3
○政府委員(佐藤達夫君) 私從前の小委員会の方に伺つておりませんので、ここでどういう御説明を申しましたか存じません。從いましてすでに御説明申上げたことを繰返して重複して申上げることに相成るかとも存じますが、一通り私共が頭を整理いたしましたところの結果によりまして、今回御審議を煩しております経済査察官の臨檢檢査と憲法との関係ということを中心にして御説明申上げたいと存じます。
 この問題に関聯いたしまして、直接議論の対象になります事柄は恐らく憲法の第三十五條との関係であろうと存ずるのでございます。ただ私共はこの憲法の第三十五條は、この條文の場所から申しまして、或るいはその中に用いられておりまする用語から考えまして、これは犯罪捜査というような場合を考えての條文であるというふうに今日まで考えておつたわけであります。この点は実は先年の憲法審議の帝國議会の委員会におきましても御質疑がありまして、当時の司法大臣がその旨をはつきりお答えしたような経緯もありました。現内閣といたしましてもその解釈を踏襲して今日に至つておる次第でございます。申すまでもございませんが、憲法において基本的人権を廣く保障しておるのでありますが、その中でもこの刑事訴追の関聯の事柄につきましては、これは事柄の性質上國民の自由なり権利なりに非常に深刻な影響を及ぼす性質の事柄であり、又我が國の過去の事例から申しましても、非常に暗い沿革を持つた濫用の行われた事柄であり、かたがた憲法が細かいい條文を、この三十二條と申しますか、三十三條と申しますか、三十二條、三十三條あたりからずつと四十條までをその方向の規定としてこれを設けておるものであつて、この三十五條はその中の一ケ條をなすものであるというふうに考えておつた、又現に考えておるわけでございます。で、そうなつて参りますと、我々の考えといたしましては、三十五條の関係については直接関係はない。併しながら固より憲法はすべての基本的人権を保障しておるのでありますから、只今問題になつておりまするこの臨檢檢査ということは、一種の住居の安全に影響のある行爲であります以上は、三十五條は関係ないとしても他の憲法の第三章の問題としては大いに檢討しなければならん事柄ということになるわけであります。第三十五條以外の問題として一應考えて見ますというと、この関係の保障は例えば第十二條、十三條即ち第三章の前の方の條文で一括して保障されておるということに相成るわけであります。この第三章の関係の保障は申すまでもありませんが、十三條或いは十二條に明らかになつておりますように、絶対に無制限の保障ということでありませんで、公共の福祉というものを一方に考えまして、この公共の福祉に反しない限りというような枠を決めておるわけであります。
 それからもう一つは、仮りに公共の福祉の要請によつて制限をする必要があるという場合においても、この制限は必らず法律で制限をしなければならんというこれは條件はございますけれども、要するに公共の福祉に反する、或いは公共の福祉の強い要請に基く場合において、法律を以てするならば止むを得ず制限をすることもできるというのが第三章の建前と考えておるわけであります。
 從いまして今回の問題は、今私の申しました二つの條件から考えなければならないことになるわけであると存じます。公共の福祉という條件にこれを照して考えて見ますると、この法律が狙つております事柄は法律案第一條で明らかになつておりますように、経済安定の緊急施策の実施のためと謳つてあつて、そういう今日の経済危機を突破いたしますについて止むを得ない必要に出たものであるわけであります。この大きな社会公共の要請に應ずるために止おを得ざる処置として、かような法律を設けなければならんという建前でございますからして、公共の福祉云々の関係では、法律を以てするならば制限を設け得る事柄であるというふうに考えておるわけであります。
 それからこの具体的の場合を憲法に照して考えます場合には、やはり憲法の底に流れておりますところの一つの限度、即ち公共の福祉を維持するために、或いはこれに反しないということのために、どうしてもかような措置をしなければならん。その「どうしても」ということは実体上の限度があるわけです。その決め方が結局法律案を作り、或いは法律をお作りになります際に、どういう條件でこれを決めるべきかという実体の問題に相成るわけであります。で、その法律案で考えておりまする実体と申しますというと、先ずこの一種の強制でありますが、臨檢檢査という強制は、いわゆる間接強制ということに止めておるわけであります。それからもう一つは、その臨檢檢査の対象といたしまして、この場合本法案におきましては二つの場合が一ありますが、第一の経済行政監査という関係の場合、これについて申しますと、事柄を特定の物資につきましての生産輸送、それから割当、配給又は使用というようなことの範囲に止めまして、消費というような部面を除いておるわけであります。又その場所につきましても、事務所、営業所、工場事業場というようなものに限定いたしまして、一般の普通の人の住宅などが対象にならないようにという配慮をしておるわけであります。
 尚たびたび御説明したと思うのでありますが、この行政監査の面、その部面が行政廳の仕事の仕振りの実体を把握しようというところがその狙いであります関係上、これを受けます方の側の國民の立場は被告扱いの立場ではなくて、むしろ参考人というような立場に置かれての監査を受けるということになるわけであります。その行爲自身の強さということも、深い、浅い、重い、軽いという点から申しますれば、余程浅いものでもあり、又軽いものであるということが考えられる次第であります。それからこの法案の狙つております第二の場合の即ち隠退藏物資の調査の場合でありますが、これはこの注文に明らかでありますように、物資の保管に止めまして、物資を保管する者を調査の対象としておるわけであります。かようなことになつておりますと共に、尚又この臨檢檢査をする場合の手続といたしましてはいずれの場合につきましても必らず身分を示す証標を持つて行つて、それを示して後に行うべきように定めておるのでありまして、決して簡單に又自由奔放に私人の家に踏み込んで持ち物を調べるというようなことを許しておるわけではないわけなのであります。
 いろんなことを申上げましたが、かような点を綜合いたしますならば、結局憲法の第三章全体の精神から申しまして、憲法に違反するものではないというふうに考えておる次第でございます。
#4
○鬼丸義齊君 法制局長官に伺いまするが、そういたしますると、憲法三十五條に規定してありまする住居、書類、所持品につきましても、公共の福祉のためであるとするならば、これを押収、侵入、捜索をすることも差支ないと御解釈になつておるのですか。
#5
○政府委員(佐藤達夫君) 私の申上げました趣旨は押収、捜索と申しますか、この事業の安全を害するというような措置については憲法が保障しておりまするから、簡單にそれを行うことはできません。それは三章の全体の精神からそういう一つの網が被つておるわけです。その中で特に刑事訴追と申しますか、そういう事柄について三十五條を設けておるのであります。三十五條は特に特定の場合について一條文も設けておるという趣旨から申しまして、公共の福祉云々という問題は三十五條の関係ではむしろ何と申しますか、特則を設けておるというふうに考えてよいのではないかと考えておる。即ち刑事訴追の関係におきましては三十五條は特則を掲げておる。こういう條文を設けておると申上ぐべきであろうと思います。
#6
○鬼丸義齊君 そういたしますると、根本問題として基本人権の確立ということについて、公共の福祉であるということであるならば、原則としていかなる場所においても、いかなるものに対しても、強制力を加え得るということに解釈するわけなのですか。而してこの三十五條を犯罪者の場合には特則としてこういう手続を取らなければいけない。こういうふうに御覽になつておるのですか。私共の考えではむしろその点を逆に考えておる。犯罪というのは行政方面においても、勿論急を要する場合もある。公共の福祉のために必要なる場合は沢山あるでありましようが、併しながらその代表的の一番いわゆる非公共的のものは、取も直さず犯罪、その非公共的、即ち非社会的の行爲の代表的のものですらかような鄭重な手続を要するにも拘わらず、行政の目的を達するためには、もう少し原則的に、極めて簡易な方法によつて、これを犯し得るということになりましたならば、憲法が人権を保障しております趣旨には全然適わないと私は思います。故に先般來当委員会におきましても、この憲法の趣旨に抵触するという所以のものは、すでにそうした非社会的の代表的のものにおいてすらこうした鄭重なる手続をして、我々の人権を保護するのだということを憲法が示しておる。況んやこれに劣るべき、更にこれ以下に属するような行爲に対して、無限に公共の福祉を理由として、居住を初めとしましてその他の場所に自由に侵入し、或いは押収というようなもの、或いは捜査というようなことがされますということは、私共少くとも解釈上、憲法の趣旨に適わない、かように実はみておるのであります。その点について重ねて一つ明確なる御答弁を願いたいと思います。殊に十二條、十三條の法文の甚だ不明確なるために、只今長官の御説明によりましても私共は納得のできないものがあるのであります。そういうことで以て牽強附会の解釈をなして、憲法施行一番当初からかりそめにもそういう基本人権の範囲に侵蝕をなさるということがあつたならば大変である。つまりそういうことがあるために、ここに新憲法は明文を掲げて人権の尊重なる所以を天下に声明したのであろう、かように実は我々解釈しておるのでありますが、從來ありまする恰かも本法と同様な字句を以て定められておりまする隠退藏物資、或いは需給調整法、乃至は食糧管理法等にもございます。むしろ私共は更に進んで、これらすでに規定してある規定自体が憲法と抵触しておつて、そのまま無効になつて死法に帰しておるものだと解釈しております。その点が非常な誤りがあります。懸隔がありまするが故にこそ今回のこの問題について一段と実は私共熱烈なる研究をしておるということになつておるわけです。いろいろ規定の本質的なことにつきましても亦当然考慮に入れなければならんと思いますが、やはりこの隠退藏物資の摘発に対しまする点についても、やがては提案理由の一部に書いてありましたごとく統制令の違反或いはその他の法文に抵触するようなことが概して多いのであります。それに対しましては、当然三十五條の精神に則つて鄭重なる規定をすることはむしろ危險に非ずして大事を取る所以ではないかと思う。一歩過つて國会第一回より違憲の法律を我々が承認をしたということになりましたならば、その責任たるや甚だ軽からんものがあるという意味から、この点に対しては実は最も強い熱意を以つて臨んでおるわけでありますから、どうぞ……。
#7
○政府委員(佐藤達夫君) お話よく分りましたのでございますが、先程私が申しましたのは、この三十五條に決められてない場合ならば、公共福祉の枠に掛かる以上は何でもやれるという趣旨で申上げたのではないのでありまして、憲法三章のみならず憲法全体に漲る人権保障の精神というものは私はもうこの文面、文裏に溢れておると思うのであります。仮りに三十五條以外の場合でありましても、而も公共福祉のためという場合でありましても、そこに権利を制限し、自由を拘束することについては、そこに又おのずから適当なる枠というものがこれは個々いろいろな場合がございますから、一律には申上げ得ませんけれども、守るべき準縄というものが、そこにあるということはこれは私も強く感じておるわけであります。そこでこの三十五條というもの、これは犯罪捜査の場合、公共福祉のためということの一番強い場合ではないかというお話でありましたが、これは正にそれに該当すると思いますが、この三十五條めいわゆる犯罪捜査の場合は、三十五條のみならずすべて犯罪捜査関係にこれは附随することがありましようが、えて官憲の措置と申しますか、措置はこれは常識の問題としても行われ方が深刻であろうと思います。普通の行政目的の場合よりも犯罪捜査の場合に、仮りに臨檢して捜索をするというような場合は、その目的から來るせいもありましようが、深刻にこれが行われるということは否認すべからざる事柄であろうと思います。さような点に着目して憲法は更に又、先程触れましたように過去における我が國の弊害というようなことを強く念頭に持ちまして、三十五條に特にこの関係を謳つたというように考えるわけであります。で、似たような場合が外に、例えば今度の査察官のごとき、行政目的のために似たようなことが行われるということは憲法も固よりこれは予想しておるのであります。ただこの行政目的の場合におきましてはいろいろな場合がありうるわけであります。或いは火事の場合に消防の目的を以てすることもありましようし、傳染病予防の目的を以てすることもありましようし、今回のような経済行政査察、その完璧を期するためというようなこともありましようし、これは種々いろいろなものがあるわけであります。それはこの法律で個々の目的のための法律を制定されますときに、個々の目的に即應した、その事情に應じた適切なる條項を設けられて然るべきもので、又憲法はそれを予想しておるのであろうと思います。例えば今期國会において成立いたしました災害救助法というようなものでも、やはりこの臨檢檢査の規定があるのでありますが、これには災害救助の目的上必要な條文がその中に設けられておるというように、その場その場において適切なる措置が設けられておる。又設けられべきものであろうと思うわけであります。
 今回の法案もこの目的のためにはうういう内容の條項を法律にお決め願えれば、憲法の企図しておる民権の保障には差支ないというふうに考えておるわけであります。それで余計なことを申しますけれども、この三十五條を中心といたしまして、私共は刑事訴追の関係だということを先程から申しておりますが、例えば似たような場合があります。この三十三條に逮捕の規定を置いておるのでありますが、「現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」、これは「理由となつてゐる犯罪を明示する令状」とありますからして、犯人逮捕の場合であることは明瞭であります。併し客観的に人の体を捕えるという事態を考えますと、例えば精神病者を監置しておる、その監置しておる精神病者が逃げ出した場合に、それを捕えて元の監置所へ戻すというような行政目的のために措置が必要な場合は、これは予想されるのであります。その場合は三十三條直接には謳つておりませんけれども、他の三章の精神からそれに應じた適切な立法がなされ得るというように考えておるわけであります。丁度今の三十五條における侵入、捜索の場合と、その行政目的のためにする臨檢檢査の場合との関係は、三十三條について私が只今述べましたような場合と丁度似たような場合に相成るのではないかというふうにまあ考えておるわけであります。
#8
○委員長代理(岡本愛祐君) 外に御質問はございませんか。
#9
○岡田喜久治君 私も当面の問題につきましては、非常に憲法違反の疑いありとして、前回経済安定本部関係の政府委員諸君、又和田國務長官にお尋ねをしたわけであつたのであります。然るに当時の政府の説明は非常にどうも明瞭を欠いておりまして、殊に又その説明の趣旨と鋳物については到底了解し得ない話振りがありましたために、是非來るべき時期に法制局長官も出席されて政府としての解釈、又提案の合法制についての説明を十分にして頂きたいという要求をいたしてあつたのであります。而して只今鬼丸委員との間に取り交されました問答につきましては、大体本日の御説明につきましては政府のこの提案された趣旨について一應政府の意思が那辺にあるか、殊にこの三十五條に絡まつた憲法解釈の眞意がどこにあるかということについては、いずれにしましても余程政府の考え方については一應領得ができるのであります。つまり三十五條と十三條との関係におきまして、十三條においては三十五條の規定あるに拘わらず、とにかく「公共の福祉に反しない限り」という絶対の條件あつて、止むを得ざる場合においては立法上、或いは三十五條の憲法の趣意に……趣意ではいけません、三十五條の規定を絶対に守らねばならんということではなく、立法上他の手段を講ずることを得る余地を與えて置くという意味においては、私もさように、憲法の解釈をしてよいのでないかと考えておりますから、その趣意については一應領得はできたというつもりであります。併しながらこの当該問題は、然らば果してこの経済査察官に対する臨檢檢査の権能を與えるということは、只今殊にお話のあつた通り、傳染病予防に関する重大な場合であるとか、或いは災害予防に関するその他危急の間に処する場であるとかいうがごとく、公共の福祉、安寧を擁護するために絶対止むを得ざる場合とは非常に異つておるのであります。即ち言葉を換えていうならば、これを実体的に考えて見ましても、私は尚且つ到底これは憲法十三條の趣旨にも副うべきものではない。更に例えて云うならば、大体この法案そもそもの立場からいたしまして、経済査察官そのものにはすでに本年の五月かにおきまして、これを司法警察官の指定をされたと初めで私承知したのであります。そういうことを先刻雜談の中に伺つたのであります。すでに査察官には司法警察官としての権能を與えたということ自体が、政府がこの方針によつてすでにこれらの問題を処理しようとしたのであろうと思います。又実際犯罪捜査の際においてさえ尚且つ司法官憲の発行する令状によるにあらざればこれをなし得ない。司法警察官に対してすら尚且つ令状の発行を必要とする。こういう措置を取つておるのであります。然るにこれは十分な嫌疑のあるところの犯罪捜査の場合とは異つて通常の生活、通常の経済行爲に基いて営んでおるところの者に対しまして、司法上の嫌疑のある者に対して、即ち一般の人に対しまして而も令状なしにこれを随意に臨檢檢査をするという、こういう権能を與えるということは、比較的に考えましても我々到底首肯できません。この比較的考えからしてみましても、況んやこの際においては單なる経済査察というだけの目的を以てするならば、云うまでもなく令状の携帶ということを必要とすることは明かであります。これがつまり類推解釈というか、條理解釈といおうか、当然の常識ではなかろうかと私は思います。又この手段によつてなし得るものと政府はすでにみて取つて、今年の五月に経済警察官の少くとも身分を與えて、而して又併せてこれに対して司法警察官の発する令状を便宜容易に取り易からしめて、而してその職務を遂行するの便宜を與えておるのであります。何故に、そういう便宜を與えて置きながら、尚且つこれに向つて司法警察官、即ち三十五條の規定を超越いたしまして、令状なしに而も臨檢檢査をさせるということは、どこに一体理由があるのか、到底この点が肯けません。でありますから、実体的に考えてみましても、この場合においては絶対にこれはどうも令状なしの随意臨檢檢査という、そういう超越的の権能を與える理由はどこにもない。仮りに與えるとすれば從來五月以來の実績において、そういう手段においても絶対になし得ない。司法警察官から令状を取るということは事実において不可能である。或いはそういう手段においては事の目的を到底達成し得ない。これは向つて絶対査止むを得ざるところの実際事情、そういう事実というものについて十分な理由と説明とがない限り、只今申上げた通り、その理由において絶対にこれは行うべき立法ではないと思います。法律を作るに際しまして、かような憲法三十五條の趣旨にも戻り、又その必要もない筈でないかと思う場合において、到底このような立法をすべきものではない。こういう考えを持つておりまして、若し絶対的にどうしても三十五條以外の手段による外はないのだ、即ちこれを超越した規定を設くる外ないのだ、こういう理由があるならばその点を十分に御説明頂きたく思います。併しながら今まで伺つた理由及び私が考えておりまするところの一般情勢とでは、要するにこれは非常に無理な立法、少くとも基本人権の精神を無視したところの立法である。この民主憲法実施勿々の際においてかような立法を軽々しくなすべきものではないという信念を持つておるわけであります。以上の点について更に政府の御答弁を十分にお願いいたしたいと思います。
#10
○政府委員(佐藤達夫君) 只今御指摘になりました司法警察官として、いわゆる経済査察官が活動する場合のお話がございましたが、この最初は、御承知のように只今お述べのように五分の一でありましなが、取敢えず、取敢えずと申しますか、とにかくこの経済査察官を司法警察官にしたわけであります。これは固より経済違反関係の犯罪捜査の本格的な活動を司法警察官として行うという場合、それを又させるということによるのでありまして、この場合は固よりこの三十五條の規定に則つての活動がなされるということになるわけであります。ただ今回この法律案を御提案申しまして、御審議を受けておりますのは、司法警察官としての立場の問題とは全然別個の、又犯罪捜査というような事柄とは全然別個のものであるということは、これはまあ繰返して申上げる必要もないと思いますが、今回の趣旨とするところは、要するに行政監査と申しますか、これの実体を把握するということが狙いでありますからして、結局先程も申述べましたように、この臨檢檢査を受ける相手という者は、被告人扱いではなくてむしろ参考人的の立場に立つものであるというような関係から申しまして、この臨檢檢査の行われ方のその態様と申しますか、強さと申しますか、さようなものは余程ごの犯罪捜査の場合とは違うことと、これは私共確信を持つておるわけでございます。そういうことをこの際申上げて置きたいと思います。
#11
○岡田喜久治君 只今お話のごとく、これが全く疑いある事件に対する捜査という意味を離れた、一般の行政事務執行のためのただ單なるところの臨檢檢査を目的としたものだ、こういうお話であるならば、私は況してやそういう場合においてはこれは第三十五條の基本的人権を徹頭徹尾尊重すべきものでありまして、かようなとき強制的法規を用いて人権の侵害に亘るような立法をすべきものでないと思います。行政上の便宜を得るため、或いにお役人の御都合をよからしめるためには、こういう都合のよい立法をすることが、つまり役人のためにはよろしいかも知れません。そこであります。それであればこそこの民主憲法は、いわゆる三十五條は、徹頭徹尾さような役人の便宜のためにするような行政事務執行のただあらゆる便宜を図つて、民間の、相手の基本人権を無視するような行動というものを封鎖するのが、いうまでもなくもともとこの基本人権尊重の趣旨でなければならないと思いますから、全く通常の行政事務執行のために、いかなる地方においても、一般の行政機関をして随意随時に、私共の住居、事務所に向つて臨檢捜査などするということは絶対に愼しむべき立法でなくてはならない。これは明らかであろうと思います。只今先程私が申しました通り、随分な嫌疑ある司法檢察に関する場合においてさえ、尚且つこの住居侵入の基本人権をどこまでも尊重するということに係わりを持つておるに拘わらず、ただ單なるところの一般の行政組織のためにこれを無視するような立法をすることを是とする事由がどこにあるでありましよう。到底私はないと思います。それでは況してこれは意外なお話でありまして、そういう場合において、やたら無性にかくのごとき立法をするということは、到底私共はこれを民主憲法の主義にとつて考えることができないのであります。こうなりますというと意見に属することでありましようから、もはやこれ以上申しませんが、今の御説明については到底肯けないということをここに申上げて置きます。
#12
○鬼丸義齊君 先般來といい、本日といい、憲法の解釈問題につきまして政府の所信を数次伺つたのでありますが、殊に本日は法制局長官が御臨席でありますから、私はここにお願いいたしたいと思いますることは、民主政治の、最も民主政治のために、これを往々にして阻むものは官僚であるというようなことを口にいたします者が可なりあるのであります。例えば自治制の施行によつては、各所に幾多の地方出先官憲というものがそれに対して続々として出ます。或いは又こうして法制の立て方におきまして、すでに三十五條にかような規定が……事務所、倉庫或いは工場とかいうものについて明文に書いてないという趣旨から、十三條を本として、かような法規が易々としてできるに至つたのではなかろうかと思うのであります。というのは、この規定の中にも、先程も長官から御説明がありましたごとくに、成るほど住居或いは携帶所持品どいうようなものには及んでおりません。それは三十五條に正面から衝突することを避けんがために、殊更にそういう宇を避けたのではないかと実は思うのであります。相共に携えまして、官吏といわず、一般の國民といわず、官民相携えて新憲法の趣旨に副うて、私共は民主政治の本当の徹底のために今後進んで行かなければならんと思います。そこで例えば十三條の場合におきましても、最大限において、公共の福祉のためであるとしても、最大限において國民の権利を尊重をしなければならんということになつておるのでありますから、こうしたような場合と、火災の場合或いは傳染病――傳染病は少し縁遠くなりますが、精神病者のような場合というふうな、本当に緊急実に止むを得ざる、誰が考えても止むを得ざる最少限度のようなふうにおきましては、或いはお説のようなふうなこの三十三條が適用されることもこれは当然だと思いますが、本法のようなふうの場合に、若しも十三條の範囲に属するのだということにいたしますれば、これは殆んど無限に、私は元の憲法よりも遥かに優るべき人権侵害の私は憲法をでかし得たものだというふうに解する。どうかその点に対しましては、相携えて一つ民主政治徹底のために、本当に最大限に憲法の趣意に適うべく、人権を尊重して行くことに行かなければならんと思いますが、御所見簡單で結構でございますから伺いたいと思います。
#13
○政府委員(佐藤達夫君) 憲法の趣旨といたします人権の尊重のために、國会も人民も共に相携えて邁進したいという御趣意がございました。誠に御同感に存じます。ただ先程ちよつとお触れになりましたこの法案の趣旨といたしておりますものは、やはり現在の経済危機を突破しよう、而して流通秩序を確保して、全國民の生活を安定せしめようという大きな狙いから、又今日止むに止まれない必要から出ておるのでありまして、その意味におきましては、このバツクになつておりますところの、公共の要請というものは私は非常に強いと思つておるのであります。從いまして官僚なり官憲が目分のやる都合のいいように、便宜のようなふうにというような趣意でないことは、これはもうお分りになつておると思いますけれども、一つ申添えて置きます。
#14
○委員長代理(岡本愛祐君) それでは私からも一つお聞きして置きたいのですが、只今各委員から御質疑があり、御答弁がありましたのですが、この問題は第三十五條とそれから十二條、十三條、この関聯の問題であります。それと今度の政府の原案とを比べて、原案が憲法違反でないかどうかという問題、これが延いて又今までに出ております法律、臨時物資需給調整法の中に同様な規定がありまするから、それも憲法違反ではないかという相当大きな問題であります。そこで今の法制局長官の御答弁によりますと、この政府原案によつて、臨檢し捜査する、それは憲法第三十五條の侵入、捜索ということには当らないのだという御答弁のようであります。併し鬼丸委員、岡田委員より御指摘になりましたように、承諾なくして強制しますれば、侵入、臨檢、檢査ということを承諾なくして強制すれば、侵入、捜索ということになつて來るのではないか、そういうことが要点だろうと思います。私は本人の承諾なくして臨檢、檢査をやれば、これは侵入、捜索になる。而も本人が拒んだならば刑罰に処するのですから、これはやはり強制になる。こういうふうに思うのであります。
 それからもう一つは、公共の福祉の問題ですが、これは今長官の御意見だと、政府原案の経済安定の緊急施策の実施に関する監査事務ということは、これは公共の福祉であるのだ、こういうお話でありますが、そうすれば、鬼丸さんのお話のように犯罪捜査は当然公共の福祉に入らなければならん、これは当然だろうと思うのです。そうすると、犯罪捜査という公共の福祉の場合でも、三十五條の正当な理由に基いて発せられ且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、これはできないのですから、これが監査事務が公共の福祉だと、こうしましても、犯罪捜査よりも弱い公共の福祉であると存じますが、そうすれば当然にこの場合も令状を持つて行かなければならんことになつて來るのだろうと思います。その点を私はそう思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
#15
○政府委員(佐藤達夫君) 最初にお話がありました侵入、捜索ということに、今回の法案で書いてあるような事柄は当らないというようにお聽き取りになつたように承つたのでありますが、これは一体侵入という言葉の包括しておる内容は、どういう処置をいうのか、捜索というのはどういう処置をいうのか、これは明確な定義は恐らく困難でありまして、本人の意思に反してその住居の中に入つて行くことが仮りに侵入ということになる、そうなるのではないかと思うのでありますが、そうなつて來ると、客観的な形態からいいますと、今度の目的とする場合もそういうことになるわけであります。これは全然三十五條の侵入ではございませんということを、私は言い切ることはできないと思います。丁度逮捕という文字が三十三條にあつて、先程触れました精神病者が逃げ出したのを捕まえるのが逮捕になるかならないかということと同じでありまして、これは事柄の客観的な事態からいいますと、一應それに当るのだと考えます。
 ただ併し三十五條にいつておるのは、仮りに客観的にそういうことに該当いたしましても、刑事目的のための侵入であり、捜査であり、押収であるというようなことは、一般の通念からいえば、その行われ方が相当深刻に行われ勝ちなものであるということは否認できない。そういうことと、それから過去における暗い我が國の弊害とを思い合わせて、特に三十五條についてこういうことを憲法みずからが設けて規定したということになるであろうと思います。從いまして今回の場合は、侵入という、少くとも侵入そのものでないにしても、侵入に準ずるもの、又檢査というものは捜索に準ずることは明瞭でありますから、これは憲法の第三章の規定によつて十分に保障せられておる。而してその保障は公共の福祉の見解の下における保障でありますから、これは今回の法案が公共の福祉という見解から見てどうかというと、それはその條件に嵌つておる。從いまして今度の法律を以てすれば、それは制限できようということになるわけでありますが、その法律を以て制限するということは、これはこの憲法が裏に持つております一つのやはり規矩準縄があるのであります。何でもかんでも自由奔放にどこにでも入つて行けるかといいますと、これはいかなる法律を以てしても許されないのであります。從いまして本法案におきましては、その強制の限度、例えば警察強制というような形を取つております。これは正当な理由があつて拒む場合は罰せられないということを、裏に持つての事柄であると思います。又その客体、場所等についても妥当と思われる限界を引いております。又手続といたしましても、証票を必ず持つて行つて、それを示した上でなければいけないということにいたしております。それらの諸点を綜合いたして考えますならば、穏当なる、結局憲法の精神に反しない條件になつておるのではないかというふうに考えておつたわけであります。
 それから公共の福祉云々でありますが、これは公共の福祉の強さ、弱さというような、公共の福祉自身の強さ、弱さということは、これは判断の問題であろうと思います。流通秩序の確立による経済危機突破というものの、その公共の要請が強いか弱いかということの判断の問題になろうと思いますが、それよりもむしろやはり三十五條との関係におきましては、侵害のされ方と申しますか、そういうむしろ國民個々の人々の権利の侵され方、それから侵し方の條件というような事柄の、綜合されましたところにあるのじやないかと思うのでありまして、それは今私が第一に申しましたようなことによつて、結局憲法の精神には反しないということになるのでありましようと思います。即ち仮りに三十五條に言うような令状、裁判官の発する令状というものを必要とするということが三十五條の條性でありますが、それによらなくても、保障の上においてはこれだけの條件を、この法案にありますような事柄を掲げてあれば保障に欠くるところがないのではないかというような考え方の筋でおるわけでございます。
#16
○委員長代理(岡本愛祐君) 外に御質問はございませんか。それではこの小委員会の鬼丸委員、それから私その他で一應修正案文と申しますか、これを作つて見ました。これは鬼丸委員から皆さんに御説明をお願いいたします。
#17
○鬼丸義齊君 私共が本法案に対しまして修正いたしたいと思いまする趣旨は、
  「第二條第二項として左の一項を加える。前項の臨檢又は檢査は、相手方においてこれを拒んだ場合には、正当な理由に基いて発せられ、且つ檢査する場所及び檢査する物件を明示する権限ある裁判官の発する令状がなければ、これを行うことができない前項の令状の発布及びその執行については刑事訴訟法第十一章の規定を準用する。
 第三條中「又は前條の規定による証票を示してなす檢査を拒み、妨げ若しくは忌避し」を削る
 以上が修正の案であります。私はこの修正の程度において本法律案は可決するものと信じております。よろしくお願いいたします。
#18
○委員長代理(岡本愛祐君) それでは今日はこの程度にして措きまして、皆様この修正案を一つ御研究願うことにいたして散会いたしたいと思います。御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長代理(岡本愛祐君) それではこれで閉会いたします。
   午後二時四十二分散会
 出席者は左の通り。
   委員長代理   岡本 愛祐君
   委員
          大野木秀次郎君
           岡田喜久治君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           小野  哲君
  政府委員
   法制局長官   佐藤 達夫君
   経済安定本部副
   長官
   (第四副長官) 田中己代治君
ソース: 国立国会図書館
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