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1947/09/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第3号
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1947/09/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第3号

#1
第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第3号
  付託事件
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月二十五日(木曜日)
   午前十時四十二分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○農業資産相續特例法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(松村眞一郎君) それではこれから農業資産相續特例法案の小委員會を開會いたします。一般的の御質問がいろいろございましたのですが、一般的の御質問は又後にして頂くことにしましてて、いかがでしようか、一應逐條的の説明を農林省の方から伺うことにして、それから後に纒めてもう一度全般的に質問いたした方が便宜かと思いますが、いかがでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(松村眞一郎君) ではそういうことにいたします。まだ政府委員が見えませんので、説明員の農政局の農政課長小倉武一君がここにおられますから、便宜説明員の御答辯を伺うことにいたします。それでは逐條に入ります。第一條を問題にいたします。それでは説明員から一應御説明を願いまして、それに引續いて御質問を願うことにいたしましよう。では、第一條の御説明を願います。
#4
○説明員(小倉武一君) 第一條につきまして御説明申上げますと、第一條は、結局のところは民法の相續に對しまして、農業資産の相續について特例を開く。この農業資産相續特例法に定める以外は、勿論民法によるということでありまして、御法の相續に對する特別法だどいう趣旨を表わしたわけであります。何故特例を開くかと申しますと、ここに書いてございますように、相續によりまして農業資産が細分化し、從つて又農業經營が細分化することを防止することによりまして、農業經營の安定を圖ろう。こういう狙いであります。遺産の分割云々というように書いてございますのは、相續によりますと、御承知の通り一応は共有になるわけでありますけれども、その共有した相續財産が分割によつて分れるということになりますので、遺産の分割という言葉を使つておるのであります。
#5
○松井道夫君 この一條にのみ限つたわけではございませんが、いろいろこの法律の名前もそのようになつておりますが、農業資産という言葉について、この言葉が適當であるかどうかという問題なんですが、農業用資産とした方がもつとはつきりするのじやないかという意見があります。そういう點について……。
#6
○説明員(小倉武一君) 農家經濟調査などでは例えば農業用資産という言葉も使つておりますが、用という字がなくとも、二條の點には書いてございますし、意味が通ずるという意味で農業資産としたわけであります。
#7
○委員長(松村眞一郎君) 他に御質問ございませんか、それじや私からちよつとお尋ねしたいのですが、私の考では、資産の細分化というものを、前の委員會でも申したのですが、形の上、經營資産の形として纒まつておるということと、それから所有權が纒まつておるということと二つあると思いますが、持分的に細分されることも困るという考ですか。私の言わんとするところは、農業資産は經營資産として纒まつておる。で所有權も一人に歸屬してしまう。所有にすれば、出資的の關係に相續分がなるような場合においては別に細分じやないと思いますが、いかがですか。
#8
○説明員(小倉武一君) 遺産の分割による財産を分けるという意味には、御指摘の通り現實に物を分ける……現實に物を分けると申しますと、例えば田畑なれば一町歩の田畑を五段と五段に分けるということと、それから一町歩の田を現實に分ける代りに、それを賣つて……田畑なら二つに分けることができるのですが、牛一匹なら牛を半分に分けるというわけには參りませんから、それ賣つてその金額を分ける。この二つの場合があるわけであります。その兩方ともを防止しようというのがこの法律の狙いでありまして、そういう兩方とも防止しなければ經營の安全を圖られない。經營の安全を圖るためには兩方の意味の細分化を防止したいという意味であります。
#9
○委員長(松村眞一郎君) 私の申すのは、この牛を賣らない。財産も分けない。その財産も牛も、この案で言いますと、農業資産相續人と言いますか、その相續人が繼承するわけですね。財産もその人の所有に屬するし、その牛も機潟も、何も彼れ一括して、經營財産として纒まつている。ただ相續分に對しましての關係は金錢債務にして置いて、その金錢債務は必ずしも直ぐ返さなければならん意味でなくて、それぞれ出資者が出資的な考え方をするという場合には、この細分にもならないのじやないか。經營も細分されないのじやないか。
#10
○説明員(小倉武一君) それは御指摘の通り、そういうやり方をすれば、細分化はいたしません。そういうやり方も勿論考えられますが、そうした場合における問題は、持分による配當を如何にしてやるかという點であります。そうしますと、農業經營が産み出す利潤を持分において分けるということになるわけですけれども、そうすると、嚴密に利潤計算というものは農業經營はやつて行かなければならん。そういう面倒なことが起ると共に、又そういうことが現實に農家にできるかどうか疑問でありまするし、又できるといたしましても、このインフレの時には相當いい利益がある時には別でありますけれでも、持分に應じて利益は分配できるという状態が今後とも相當続くかということも疑問でありますので、さような方法はとらなかつた次第であります。
#11
○委員長(松村眞一郎君) 私の意味は、家族的に從來經營しているのでありますから、それは株式會社のような工合に、嚴重に利潤計算をお互いに要望することもなかろうじやないか。當然これは親の死んだ場合の兄弟同士の場合を想像しますと、兄弟同士從來と同じような工合に經營を續けて行くわけですから、そういう綿密なことをお互いに要望するわけでもなく、極く組合的になだらかにやつておればいいではないか。利潤ができたら配當するのでありますからゐ經營者側で自分の生活に必要なものは渡して貰う。若し殘れば、それは必ず利潤を分配しなければならんということが起るわれじやないので、もともと親の財産でありますから、若し從來の制度であれば、全部その利潤が曽續人に屬してしまうのであるけれども、今度は均分の關係がありますから、持分的にそれぞれ出資關係で兄弟が出す。利益が出ればその時は貰うというわけで、從來の憲法下よりも、今度の憲法下の上が、若し次男が經營をすれば、次男の方が幾らか利潤が得られ、そうして共同經營で働く。若しも自分に利益が歸屬すればいいじやないか。こういう想像の下に私は考えておるのであります。若し利潤を餘りやかましいことを言わないで、そうしてもともと親の下で利益の配當を受けたわれでありますから、今度は少しでも儲かれば、その時、元よりは自分は利益を得られるという考からすれば、或る程度從來よりも次男以下の者が企業に對する熱意も出て來、相當利潤も出て來るというようなこどで經營に對する改善というようなこともお互いに工夫し合うのじやないかという工合に考えるのですが、如何ですか。そういう意見は……。
#12
○説明員(小倉武一君) 持分によりまして、共同經營をやる。但し利潤の配というようなことは嚴密にやらないというような趣旨で、家族的な經營を續けて行くということは、実際問題としては、さようなことも現實に行われるでありましようし、又過去においてそういうことがあつたろうと思いますけれども、この度の民法の改正によりましても、兎に角そういうような形をとりますと、遺産の分割をせずして共有という形に置いておくということにはなるわけであります。若し遺産の分割をせずにずつと相續のまま共有物として置きますと、後で分割した場合に、親父が死んだ場合に遡つて分割があつたということになりまして、法律關係が非常に面倒になつて行くということが非常な缺點であります。若し共有にいたしましても、それの分割があつた時には民法の普通の共有に變るということにいたしますと、兄弟がいつでも分割請求ができるということになりますから、相當分割をせざるを得なくなりまして、親父が死んだ當面の間、暫くの間は共有の形になつて行くでありましようけれども、長い間普通の共有の状態を期待するということは困難であろうかと思います。それから利潤が出て來れば分けてやるけれども、利潤が出なければ分けないということになると、むしろ共同相續人の相續權を害するというような虞れも生ずるだろうと思います。そうして又農業經營に從事しておるということによりまして、兄弟同士が同じ釜の飯を食うということになりますけれども、その結果、却つて逆に多くの子供が一つの小さな經營の若干の持分を持つておるからということで以て、いつまでもその經營に依存をして生活をするということになりまして、やはり農業經營というものの安定は確保できないというふうに考えるのであります。
#13
○委員長(松村眞一郎君) 意見の相違になりますが、私の考えは、分割をした時に親の死の時に遡るというようなことになれば、それはそういう意味にならんようにすることができると思います。この分割相續の分割の問題も、相續の始めから既に均分に分割されたものと考えるのでありますから、金錢債務に替えてしまうという私の思想なのであります。相續人が決まりました場合に、共同相續人の持分は、その時から既に金錢債務として決まつておるという考え方を私はしております。そういうようにたしますれば、分割を要求するという場合、結局金錢を辨濟するということで、それで濟むわけじやないかと思うわけであります。相續人の方からも金錢で支拂つても宜しい。それを拒むことができない。もとより金錢債權でありますから……ということになれば、大體今の親の死亡の時まで遡るという議論は解決することができると思うのであります。その次の、いつまでも共同にかかり合うということは、どつちがいいか分りませんが、共同にかかり合つて依存するがため經營が惡くなるということになるか、協力して經營がよくなるか、これは見込の問題でありますから、これは意見相違ということになるかと存じます。第一點は私は今そういうように考えております。親の死亡の時まで溯るというようなことにならないで金錢債務とするということに書けばそれで解決するのではないかと思うのであります。以上私の意見だけ申上げておきます。
#14
○竹中七郎君 遺産の分割に對しまして農林省が農業細分化を防止される法案を作られましたことに對して、私は敬意を表するのであります。現在日本の全般に對しましても、資産の細分化ということが日本の國力を低下するということを、我々修正資本主義をモツトーといたしております政黨といたしましては考えておるのであります。こういう點に對しましてこの問題を考えましたのでございますが、この問題が中小商業方面にも、農林省の關係でありますから分りませんが、出た、出るような方向に向つておるようなことはございませんですか。この問題はどうですか。
#15
○説明員(小倉武一君) 中小企業の、例えば工場というようなものにつきましても、當然これと同じようなことが考えられると思うのであります。但しその場合におけるよりも、農業の方に特にもう一つ更に緊要性があると申しますのは、これは一つは、農業の收益が外の企業、商工業よりも少いということと、それからもう一つは、工業のような場合、或いは店鋪のような場合でも、その施設目體は現實に分割ができない場合が多いと思うのであります。誰か一人が相續する、或いは共同でやつて下かなければならんような設備になつておるのでありますけれども、農業の方は、土地が主たる生産の手段になつておりますから、その土地というものは幾らでも細分化して、殊に日本のような場合は、細分化してもそれだけの食糧供給の基地にはなるわけなのでありまして、細分化の危險が現實に非常に多いというので、この際特に農業についてかような法案を提出した意味でありまして、勿論この同じような趣旨は、商工業にも考えられると思うのであります。その點は改正民法におきまして、遺産を分割する場合には、遺産の種類とか職業というようなことも考えて、分割をやるのだというような趣旨を謳つておるのでありますから、かような趣旨は商工業者的なものにつきまして、ただ工場を賣拂つて金を分けるというようなことでなくて、一人の者が工場を相續して、他の者は先程委員長からお話があつたような債權の取得というような形で以てできるようにという御趣旨だろうと思うのであります。
#16
○竹中七郎君 この問題に對しまして、私は委員長とは反對の意見を持つておるのでありまして、やはり小農を活かして……今現在日本に殘るのは大農はないので、小農でございますが、これをやつて行きますのには、全部いい人ばかりおりますれば、やはり委員長が申されました善人であつたならば法律は要らない。併し親が死に、あと子供の時代、孫の時代になりますというと、今のこの法律を作らないときにおきましては、細分化いたしまして、殆んどもう變な形になつて來るのであります。こういう點を考えまして、私はこの法律の第一條に對しては、非常に良い案であり、非常に支持する者であります。この點だけを申上げます。
#17
○委員長(松村眞一郎君) ちよつと私申上げますが、私はやはり贊成なんです。第一條はやはり贊成なんです。ただ私のは、このあとで來ますところに疑問があるのでありますけれども、特別に相續分ということについて異議はない。これに贊成なんです。第一條はよろしうございましようか。では第二條に移ります。
#18
○説明員(小倉武一君) 第二條は農業資産の定義を書いておるのであります。第一項におきまして農業資産とはどういうものをいうかということを、先ず列擧的に示しておるのでありまして、一號は土地の關係をいつておるのであります。土地に關しても、所有權だけでなくて、地上權でありますとか永小作權、賃借權なども入れまして、經營の安定を圖ろうという意味であります。これは財産權自體としては、貸借權は、評價しても大したものではない賃借權もあろうかと思いますけれども、經營の安定を害しないという意味におきまして賃借權も入れました意味であります。
 次はその土地にある樹木でありまして、自家用の薪炭の樹木でありますとか、或いは果樹園の果樹というようなものをこの第二號に掲げたわけであります。三番目は建物の關係であります。建物もこれは農業だけの建物というのは勿論ありましようけれども、最も大きなものは、住居兼農業というふうな建物、住宅兼農業用の作業場でありますから、さような趣旨で以て「農業又は常時の居住の目的」というふうに書いてあるわけでありまして、「常時」と特に入れたのは、農家でありますからさような例は殆んどないと思いますが、別莊を持つておるというのは入らないという意味であります。それから四番目は、その建物などのある土地であります。敷地の所有權、又は賃借權であります。それから五番目は、以上の土地、建物以外の動産につきまして、表の最後に農機具、牛馬等を別擧いたしております。この別表の第四號につきましては、最後に「前各號に掲げるものに準ずる動産で農林大臣の指定するもの」とございますが、只今のところ農林大臣が指定するというようなものはございません。併し何故こういうものを入れましたかと申しますと、一號に掲げてある農機具と同じような農機具で以て、地方的に多少違つておるというものが場合によつてはあり得るわけであります。さようなものを擧げないということになりますと、地方的な不均衡が生ずるという場合を恐れまして、さような場合の生ずるために四號を掲げておるのであります。
 それから第二條の第二項でございますが、第二項はこの一應定義いたしました農業資産について、便宜的な規定を置いておるのであります。それは一項に書いてございますように、これは一段歩以上の土地につて耕作を營んでおる者というようになつておるわけでありまして、從つて五畝歩だけしか耕作していない者が持つておる農業資産は、この法律では農業資産といたしておらないのであります。ところが一段歩以上耕作をやつておりましたところが、一時耕作の業務をやめたというような場合でありますとか、或いは病氣その他の理由で以て一時一段歩にならなくらつた。普段ならば一段歩やつておる者でありますけれども、たまたま事情で八畝歩だけしか耕作をしなくなつたというような者は、これは一段歩以上の土地を耕作しておる者と見做しまして、その者の持つておる農業資産は、やはり本法を適用するという意味であります。それから又この耕作以外に、先程擧げました各號に列擧してあります各種の資務についても、一時他にこれを供するがために農業に供しないという場合でも、すぐ又農業に供するようなことが明かなものは、やはり農業資産と見るということであります。最後の項は、これは農業定義でございまして、これは他の法律の農業の定義、例えば協同組合において農業といつておるのと全く同樣であります。
#19
○竹中七郎君 第二項の問題についてちよつとお伺いいたします。一時耕作の業務を營むことをやめたという問題に對しまして、これは病氣その他でありますが、こういう場合があると思います。學校の先生、或いは役場の吏員というような連中が一段歩以上持つておつたのが、それが非常に忙しくなつて來た。それで八畝なり五畝になつてしまつた。こういうのはお認めになるのですか。學校の先生なんか、まあ一時自分も勤めの間にやつて、學校と一緒にやつておつたところが、轉任になつて、三、四里の遠方に行つた。こういうようなことになつたときには、特殊の者はお認めになるのですか。
#20
○説明員(小倉武一君) 一時と申しますのは、役場に今勤めておりました人が、役場の仕事が忙しくなつたので、一時耕作を止めたいというようなのは、これは入ろうかと思います。但し今まで家において農業をやつておつたけれども、役場に勤めた結果やめたという、職業を變えるためにやめるというような場合には、一時耕作をやめるというような場合には入らないと思います。併し村會議員に選ばれたというようなために、その仕事が忙しいから一時一段歩以下になるとか、一時親戚の者に頼むというような場合には入ろうかと思つております。
#21
○松井道夫君 この一段歩以上というとこにお決めになつた根據は、どういうことなんですか。
#22
○説明員(小倉武一君) この一段歩につきましては、特別理論的な根據はございませんが、これは面積をあまり下げるということになりますと、農業資産としては非常に僅かであつても、僅かでしかも農業資産以外の財産が非常に多い者がこの法律の適用を受けるというようなことになりますと、却つて法律の企圖しないような結果が生じはしないかというようなこととになるのであります。もう一つこの面積をあまり上げますと、いわゆる貧農というふうな方の相續について、全然適用ができなくなるというようないろいろ弊害がございますので、一段歩ということにいたしたのでありますけれども、この一段歩は、例えば農地調整法におきまして、農地委員の選擧權を持つておる、或いは被選擧權を持つておるというような者は、府縣では一段歩というようなことになつておるというふうな例もありますので、大體今財産限度一段歩というのが、その邊だろうということであります。
#23
○松井道夫君 これは全國いろいろ違うでしようけれども、この法律の目的から言つて、專業農家としてやつて行ける程度の面積ということも、一つの標準として考えられるだろうと思いますが、そういうことを考慮されたかどうか。又專業農家としてやつて行ける面積というものは、大體どのくらいと見ておられるか。
#24
○説明員(小倉武一君) 專業農家と申しますか。或いは農業を主たる業務とするという者に限るかどうかという點でございまするが、この點は、成るべく農業經營、或いは農地全體の細分化を防止するという意味合におきまして、成るべくその最低限は小さくしたいというのが、原案の目的であつたのであります。若し專業農家ということに限りますというと、恐らくこれは一町歩の農家、内地の平均は大體一町歩でございますけれども、その一町歩の耕作をしている農家というのは、七割以上に達しておるというようなことになつておるのでありまして、又その一町歩というのが、大體現在のところは多少違つた事情もありましようけれども、從來は家族の生活を維持するのには、大體一町歩要る。適正規模というようようなことになりますというと、更に二町要る。地方によつては更に三町要るというような所もあります。ところが一町以上の農家、或いは二町以上の農家ということになりますと、非常に限られてしまう。戸數が限られるばかりでなく、その對象となる面積も限られるのでありまして、農業の細分化を防止するという趣旨に、あまり副わなくなるという恐れがあるのであります。
#25
○竹中七郎君 養畜というのは、養鶏などもありますけれども、養鶏などは何羽以上を持つている者を農家と考えられますか。
#26
○説明員(小倉武一君) この養鶏だけをやつているというのは、この法律には適用ないわけです。養鶏が大部分でありましても、傍ら一段歩以上やつているのでなければ、適用がないわけです。
#27
○竹中七郎君 これをちよつと見ると、ただそれでもいいように見えますが、
#28
○説明員(小倉武一君) この二條の一項に、「左に掲げる權利で一段歩以上の面積の土地に就いて耕作の業務を營む者が有し」、ということになつております。例えば養鶏專門の農業でありまして、養鶏だけをやつていて、耕作をやつていないというふうな者につきましては、この法律は適用がないのであります。
#29
○竹中七郎君 序でにちよつと伺いますが、この法律において、農業とは、耕作養畜、又は養蠶の業務をいうと書いておりますが、農業とは、耕作も一つある。養畜もある、養蠶もあるというふうにとれるじやないですか。
#30
○説明員(小倉武一君) はい。農業という意味はさようになつておるのであります。例えば一番目に、一號に、「農業又は自家用薪炭の原木の採取の目的に供される土地」とありまして、農業の目的に供せられる土地でありますから、牧野も入るわけです。牧場は一號によつて、農業の目的に供せられる土地となるのでありますけれども、この土地は、「一段歩以上の面積の土地に就いて耕作の業務を營む者」というものになつておりますから、牧畜專業者でありまして、いわゆる耕地というもの、田畑を全然耕作していない方の牧野は、農業資産とはならないのであります。
#31
○松井道夫君 今の、特に牧畜の場合ですが、相當廣い土地を使用して、いろいろの牧畜をやつており、牧畜に關連していろいろの副産物もあるわけでありますが、そういうものをいわゆる農家として、この法律を適用するというようなことは必要ではないかというように感ぜられるんですが、そういうものをどうして除かれているのでありますか。
#32
○説明員(小倉武一君) 積極的に除く意味はないのでありますが、ただ日本の實情として、牧畜業だけをやつていて全然耕作していないというのは非常に例外でございましようからして、一段歩以上の耕地を耕作しているということになれば、大體いわゆる農家、農業をやつているというようなことに値いする農家は一體入るだろうという趣旨であります。
 それからもう一つは、この全然耕作に關係ない、例えて申しますれば、今のお話の牧野の經營をしているとか、或いは又養鶏だけやつているというよな者につきまして、特殊な例を考えて見ると、一體そういうものの限度をどこに置くかということになると、むづかしい問題になりますのでそれを避けまして、大體一段歩ということになれば、いわゆる農家というものは大部分入るだろうといふ實情で以て押えたのであります。
#33
○竹中七郎君 もう一遍誠にくどいようでございますが、養鶏の問題は何も飼料がなくて五畝歩や八畝歩持つておつたのでは……私は愛知縣でございますが、愛知縣の吉濱といふところは非常な大きな養鶏をやつておつたのであります。これの飼料を配給して頂きということになつて、餘り持つていない人がやるのもありますが、こういふ養鶏を助長さすといふような意味におきまして、この問題を一つ考えて貰いたい。こういう私は希望を持つておるのですが、いかがでしようか。
#34
○説明員(小倉武一君) まあ大規模の養鶏をやつておる方で、一段歩以内の面積の土地につきました耕作をやつておる人は、一應これから外れることになりますが、この法案の趣旨は、もともとこの農業經營の基本である農地といふことに重點を置きまして、その細分化を防止するといふことが、一つの元になる考えになつておりますので、農地に全然關係のない、或いは非常に關係の薄いものは、農業となつておりましてもそれだけを以て入れるといふことはいかがか。新しい民法の例外にもなることでありますから餘り無意味にと言いますと語弊がありますが、餘りに廣いことにならないということで、農地の一つの基準にいたしたのであります。御説のようなこともあろうかと思いますけれども、まあ專業の養鶏家でありましても、一反歩程度の土地なら多くは持つておるだろうというようなことになるかと思いますが、大體これで以ていわゆる養鶏家も農業資産相續特例法の適用を受けるのではないかというように考えております。
#35
○委員長(松村眞一郎君) ちよつと私からお尋ねいたしますが、世論調査という印刷物がありますが、それの終いの別紙としてこの法案と同じようなものが書いてあります。ところがその第二條の第四號に、この方には地上權が書いてありますが、法案の方には地上權がありませんが、これはなくても宜しいのでありましようか。別紙の方には地上權が書いてあります。第四號の方には地上權又は賃借權と書いておりますがね。
#36
○説明員(小倉武一君) これは世論調査の方がミスプリントであろうと思います。
#37
○委員長(松村眞一郎君) 第一號の方に地上權がありますから、第四號にことさら拔いたようにも考えられますが、或いは事實上ないのでありましようか。餘り農地について建物なり、工作物を持つとか、地上權を持つことがないというのでありましようか。あればやはり第四號にも載せることが必要だと思いますが……。
#38
○説明員(小倉武一君) ミスプリントであるかどうか後で取調べます。法律上はあり得るわけであります。一號にあるからといつて、四號にことさら省くわけはありません。
#39
○委員長(松村眞一郎君) それでは第三條に移りましよう。
#40
○説明員(小倉武一君) 第三條はこの法案の最も重要な狙いの點の一つとして書いておるのでありまして、二條で定義化いたしました農業資産は一人が承け繼ぐということを書いておるのであります。そこで二項におきまして、八條の二項、三項と申しますのは、農業資産の相續人と申しますか、農業資産の承繼人といたしまして、適當な者がない、相續人の中に農業を經營いたす見込みがないということを裁判所が決めた場合、或いは又相續人が誰も農業を營む意思がないというような場合に、やはり裁判所がそういう農業資産を承繼する人がないというふうに裁判をした場合でありまして、さような場合には、それは今申上げました一人が承繼するというのではなくて、民法の一般の例によりまして相續をするということになるのであります。この第三條に「遺産の分割」と書いてございますが、遺像独ヲ久よりまして分割することを禁じておらないのであります。大體第三條はさようなことであります。
#41
○松井道夫君 これは總括的の質問のときにも申上げたわけでありますが、特殊な場合、特に自作農ということで相當廣い耕地を付つておる。例えば北海道あたりはその一つの例であるかも知れません。そうでなくても例えば四町、五町或いはその以上というものを作つておる場合、何らこういう規定を設けて分割によつて二人以上に區分させないという必要がないのじやないかと思います。尤も今の自作農創設等によりまして、三町歩何上のものは、自作農でも成るべく買取るようにするというような御方針かも知れませんけれども、さように考えられるのでありますが、その點についてお伺いいたしたいと思います。
#42
○説明員(小倉武一君) 普通の經營よりも大きな經營につきましては、農業資産は分割してもよいではないか。特に或る場合、分割によりましてできる經營が二つとも普通の經營よりも大きい、普通の經營くらいの大きさになるというような場合は、勿論さような趣旨も考えられるのであります。併しお話にもなりました通り、自作農創設特別法によりまして、内地では三町以上の經營は、原則として三町以上の分は買取る。買取らない部分は自家勞力でやつておりますとか、或いは買取るということによつて生産が落ちるというようなことになつておるのであります。從つて農地改革の後に残る經營は、三町以上であつても、それを分割することは、少くとも自作農創設におきまして國が買取ることは適當ではい。現實に農業を分けることは適當でないとされておるものなんであります。さような關係もございますので、ここでは遺産の相續ということだけでは一應かけないで、そのまま相續させるということにした方がよかろうというように考えたのであります。
#43
○松井道夫君 今の自家勞力によつて十分耕作しておるといつたような自作農は、これは二男、三男とか、そういつた自家勞力が相當大きな勞力の比率を持つておるんじやないかと存ぜられるのでありますが、長男と共にそういう家族が親父の遺産、廣い自作地を分割するということは、頗る新憲法による相續の精神に適したものじやないかと存ぜられるのであります。重ねてその點について御意見を承りたいと思います。
#44
○説明員(小倉武一君) 自家勞力による場合におきまして、御指摘のような場合もあろうかと思いますけれども、さような場合におきまして、經營を分けた方がよろしいというような場合は、これは父親が遺言をしますとか、或いは相續した後に長男が分けるというふうに、從來の日本の家督相續の下でも、分家とか、或いは父親が死んでも、死なないでも同じでありますが、分家とか或いは遺贈というようなことで大體解決が付くように考えておるのであります。
#45
○松井道夫君 只今説明されたようなことは、これは何ら本質的な事由がなしに、長子相續、そういう制度を復活するものであつて、何ら答辯とはならんのじやないかと存ぜられるのであります。遺言のことを言われるならば、それよりも小さい三町歩以下の耕作面積の、この法律の狙いがそこにあるように思われるように農家におきましても、お父さんの遺言で適當に解決して行く、或いはこれを相續して人達の間に話合で適當に解決して行くということが考えられますので、先程私の質問いたしましたことについても、更に別個の本質的の理由がございましたら伺いたいと存ずるのであります。
#46
○説明員(小倉武一君) 遺贈であるとか贈與による分割に禁じて居りません。從來分家というようなことも行われて居ます。もつとも遺言のような場合は、日本の農家に餘り行われることはないと思いますが、併し一般的の原則の例外といたしまして、大きな經營の農家については遺言により分割する場合もありませう。そうして又被相續人の死んだ後に、丁度經營を二つに分けて、おのおの經營主になつてやつて行けるというふうな見込のある子供が揃つておるというような場合には、二人の相談で經營を分けることを、この法律では禁止して居りません。從つて或場合には遺言をするというようなことも考えられますし、又生前から分家をさして置き、或いは死後弟が分家するというようなことも考えられるのであります。一般の場合にはさようなことを期待することはできないように考えるのであります。
 それから又遺産の分割の全面的禁止と申しますか、一人に農業資産を相續させておるのでありますけれども、これは何も、後から出て來ますように、從來の長子相續を復活すると申しますか、維持するということとは全然違つておるのであります。さようなふうに考えております。
#47
○松井道夫君 これは以前からいろいろ議論してことでございますが、要するに農家の經營を危殆ならしめるというような状況の場合に、その農業資産をいわゆる細分させないということができれば、それでこの法律の埜いが一應到達できるのではないか、さように存ずるのであります。これが只今の例で申しますれば、五六町も作つておるという場合には、假りに兄弟二人で二つに分けるにいたしましても、農業經營を危殆ならしめるというようなことがないのでありますから、何もこの法律によりまして農業資産というものを一人に歸屬せしめなければならんということはないのであります。又總面積が三町歩以下の小さいところでありましても、これを二人なら二人の共有にして置くということも又妨げるものでもない。何となれば、その三町歩以下なら三町歩以下の農業資産を分割してばらばらにしてしまうということでなしに、その農業資産を從來通り農業資産として農業經營の範圍にして行くということであれば、何等農業の經營を不安定にするということもないのではないかと思うのであります。結局この三條は、この法律の本當に企畫いたします目的に對しまして、今申しました二つの方面において行過ぎておる、逸脱しておるというように考えるのであります。もつと細かくあらゆる場合について考えまして規定することができれば結構なんでありますが、立法技術上そういことができないので、まあこの程度で我慢されたのでないかと存じまするけれども、他方面から考えますとそういう必要のない場合、この法律の目的からいつて必要のない場合にまで、その法律によつて強制いたすということはこれは如何かと思われる。新憲法の均分相續という原則を破つていることになる。結局そういうことになると思うのでありまして、改めてその點について御意見を承わりたいのであります。
#48
○説明員(小倉武一君) これは日本の農業をどういうふうに考えるかということにも關係すると思うのであります。現在のようにと申しますか、これまでのように自分の食う食糧を作つて、あとを人に、自分の食う程度の食糧も他人に供與するというような程度の農業というようなことでいつまでも日本の農業はいいのだという建前を採るならば、現在の二町、三町の經營を半分にしてもいいかと思うのであります。それでは日本の農業というものは、世界の農業に伍して行くための基盤としては餘りにも慘めであるというように我々は考えておるのであります。三町、四町くらいの經營は、世界的に眺めれば何ら大きな經營でも何でもありませんので、その程度だからといつて、こういう特別の例外を認めて分割してもいいのだということを認めるということは、法律全體の趣旨を不明瞭にするということになりますので、農地改革によつて、これは農地の制度が新しい明るい形になつて行ますけれども、あれによりますと、どうしても細分化の傾向になつて來るのであります。かつて加えて相續によつて又細分化の傾向を助長するということは、日本の農業の將來のために採らないという方針の下に、かようなことをいたしておるのであります。
#49
○松井道夫君 どうも私の質問いたすことが言葉が下手でありますから、それにつきまして質問いたすところと丁度合つておりますお答が得られないような氣がいたしまして、時間をだんだんに空費するようになるので、甚だ遺憾と存じます。私のお尋ねしたことを更につづめて申上げますと、要するに廣い經營の場合、廣い農地の場合、それを二人なら二人、三人なら三人に分割せしめて經營しても、農業經營の安定を亂すことにならん。要するに收支が結構とれるという場合に、尚一人に相續せしめるということは、この法律の目的からいつて直ちに出て來ないのじやないかということを聞いておるのであります。
 それから農業資産を分割することは、細分化することはこれはよろしくない。これは私は大贊成なんであります。ただこれを一人に歸屬させるという必要が、この法律の目的からいつてないのではないかということを聞いているのであります。その意味は、要するに農業資産さえばらばらにならないで一つの纏つた經營單位になつておる限りは、それが多少狹い單位でありましても、二人以上の者に所有權の點では歸屬させましても、經營それ自體としては何ら不安定になるということはないのではないか。例を取つてみますというと、この以前から連つておりましたように、親父が三町歩の田で農業經營をやつて、長男次男をそれに勞力として使いまして、農業經營の收支がちやんと立派に行つておつた。そのときに親父が亡くなつたので、その長男次男が相變らず、從前通りその土地につきまして農業經營をやつて行く。それが内部關係におきまして共有という形でありましても、何ら農業經營の收支には變りはないのではないか。要するにこの法律の意圖します目的からいつて、その必要はないのではないかということを伺つておるのであります。
#50
○説明員(小倉武一君) 第一點でございますが、分割しても收支が償えればいいじやないかということ、その收支が償えるか償えないかということが、問題であります。最近のような經濟の下における、又孤立した日本の農業の下における收支であるか、又將來の問題を考えての收支であるかについて問題は變つて來るでありまして、我々は多少將來のことを考えるというと、現在の經營で以て十分收支がとれるというようなことを簡單にいうわけには參らないと思うのでありまして、ただ經營が大きければ收支がとれるじやないかというようなことには參らんように考えておきまして、分けても成り立つということは考えることはなかなかむずかしい。そういう場合はおそらくなかろうというように我々は考えておるのであります。具體的に見るに當りまして、具體的な事例に當りまして、勿論そういうことはあり得るかと思いますけれども、一般的に考えた場合にはないように思うのであります。
 それから共有の下に、共同して農業經營をやれば、財産としては分割しても、經營はそのままやつて行けるじやないかという御指摘でありますけれども、これは御指摘の通りであります。そういうふうなことを考えられることは、何らこの法律の下でひ差支ないのでありまして、農業資産は一人に歸屬いたしますけれども、農業資産の額とその財産との關係などがありまして、他の相續人にも相當のものを支拂わなければならん。財産を分けなければならんということになりまして、この法律の下においても、勿論そういうことはできる決めがありますけれども……できていいのであります。併しながら共同經營を強制するわけには勿論參らないのであります。從つて共同經營を期待はしても、そういう状態を長く續けるということはできません。一人になつても農業資産を相續した者が他からの助力を以てやつて行けるというようにこの法律はしたいのであります。
#51
○石川準吉君 今の問題に關連しまして……この農業資産は共在はこれを認めないのでありますか。
#52
○説明員(小倉武一君) この法律は共有を認めないというのは、こういうことなのであります。相續をいたしますというと、相續人が二人以上ある場合は、必ず共有にするわけです。この法律によつても、ともかく一應は共有になるのであります、併しその共有のまま續けて行くということは一應認めておらないのであります。それで遺産については分割が行われるわけでありますが、分割をすればそれは分れる。分れるには分れる。それは相續のときに遡つて分れるのでありますから、共有の状態という意味はなくなるのであります。共有を認めるということは、遺産の分割という方法として、二人が共同してそれを相續するということでありまして、遺産の分割の方法の一つとして共有をするということは、これは認めないので、一人以上に歸屬させることはできないということは、さような意味であります。もつとこの法律も、嚴密にいえば、兄弟が相續したまま、分割せずに放つて置く。放つて置けばこれは共有にならざるを得ないわけです。いつまでも分割せずに放つて置くと共有になつて續いて行く。それもこの法律は否定しておらないのであります。とにかく分割の方法として共有という形をとるということをとつていないのであります。
#53
○石川準吉君 三町歩を自作農が實際やつている場合に、三町歩程度認めるという場合なのですが、今松井さんの御質問はそこにからんでいると思いますが、三町歩以上を認める、この場合は、それは非常に稀な場合でありますが、例えば五町歩作つておるという場合には、普通原則として三町歩見る譯でありますが、五町歩作つても、六町歩作つても、共に認めるというような制度は、特殊な條件があるような場合に限るのではないですか。
#54
○説明員(小倉武一君) それは特殊な條件がある譯です。私共はこの法律と同じような趣旨で農地改革におきましても、農地の分割ということは、殊に自作地の分割ということは避けたいのでありましたけれども、關係方面の意見もありまして、分割という規定か入つておるのでありまして、いけないというのは法律上やかましい制限がある譯であるます。これは現在の所では自作農創設法の施行令に條件がなつておるのであります。
#55
○委員長(松村眞一郎君) 他に御質問ございませんか……それでは四條に移ります。
#56
○説明員(小倉武一君) 第四條から第八條までが、これが農業資産を誰が承繼するかということを規定しておるのであります。第四條と第五條、第六條は指定相続人の規定でありまして、指定相續人と申しますのは、被相続人が相續人の中から農業資産を承繼すべき者を選ぶことであります。相續人が一人の場合はそれは勿論問題はない譯でありますが、推定相續人というのは、被相續人と相續人の關係が、原状の儘、そのときの儘であるとするならば、當然相續人になるべき人が推定相續人でありますが、さような者が二人以上ある場合には、被相續人は生前、死ぬ前にその推定相續人の中から……自分が死んだ結果相續によつて遺産を分割する譯でありますが、その分割によつて誰が農業資産を承繼するかということを指定できるのであります。この指定の場合は、これが第一の順位の農業資産の承繼人になるのであります。その指定はいつでも取消すことができることを念のために書いたのであります。それから又指定及び取消しは遺言によつてもすることができるということにいたしまして、成るべく農業資産の承繼人、いわゆる相續人は、被相續人の意思を先ず第一に尊重するということにいたしておるのであります
#57
○石川準吉君 第五條に「期間内」ということが書いてあるが、期間というのは何か……
#58
○説明員(小倉武一君) これは民法の――
#59
○石川準吉君 一般原則ですか。
#60
○説明員(小倉武一君) 千十七條に規定してあるのであります。一般原則は「相續人ハ自己ノ爲メニ相續ノ開始アリタルコトヲ知リタル時ヨリ三个月内」ということになつております。
#61
○委員長(松村眞一郎君) 四條と五條について何か御質問ございませんか……それでは第六條に移りましよう。
#62
○説明員(小倉武一君) 六條の趣旨は、指定相續人の指定は、法律上は推定相續人であれば誰からでも指定できるようになつておるのであります。併しながらこの法律の意圖するところは、農業をやる得る人、やる見込のある人を指定することを被相續人に期待しておるのであります。その指定は六條になつておるのでありまして、被相續人が相續人を指定いたしましても、その人が農業をやる見込がないということが明かである場合は、指定を受けた以外の相續人が裁判所にその指定の取消を求めることができる。かようにして、成るべく農業資産が經營を實際にやる人に行くように考えておるのであります。この取消の請求と申しますのは、これは相續開始後の問題でありまして、相續開始前のこういう取消の請求はできないように考えております。
#63
○委員長(松村眞一郎君) それでは第七條に移ります。
#64
○説明員(小倉武一君) 第七條は、共同相續人が相談をして農業資産を相續すべき者を選定する規定であります。その場合は如何ような場合でありますかと申しますと、被相續人が死んで相續が開始したそのときに、被相續人が指定した指定相續人がないというときが第一であります。それから、さような指定相續人がないという中には指定をしなかつたというとき、それから本續開始までに指定をしたけれども、その人が死んでしまつたという場合も入るのであります。それが第一であります。第二は、指定をしたけれども、指定を取消されたというのが第二であります。それから第三がこの二項に書いてありますが、指定相續人が相續を放棄して、そうして又相續を放棄しなくとも、農業資産の相續人たるの地位を放棄したという場合であります。さような場合は共同相續人が相談をして、誰が農業資産を相續するかを決めるのであります。この協議は普通の場合には勿論全員一致を以て定めることになろうかと思います。單純承認をした共同相續人の中から選ぶということにいたしておりますのは、限定承認をしたという者を選ぶということは、限定承認の法律上の規定の關係からは困難な問題を生じますので、單純承認をしたという場合に法律は限つておるのであります。
#65
○石川準吉君 或いは第六條の問題に關速するかも知れませんが、指定相續人が自分でも放棄しない、それから共同相續人からも請求がなかつたというような場合に、いわゆる農業をしないということがはつきりした場合、そういう場合の救濟方法はありますか。
#66
○説明員(小倉武一君) かような場合は、要するにお尋ねは、指定相續人が農業を全然やらないというような場合において、本人も放棄をしない、それから又他の相續人からも取消しの請求がない場合には、これはこの法律の一つの缺點と申しますか、突き詰めて考えれば缺陷になると思いますが、これはやはりその指定相續人が農業資産を相續することになるのであります。それはどうしてさようにいたしたかと思しますと、被相續人がさような者を指定したということに重點を置いて、その意思を尊重するということにいたしたいのでありまして、さような場合に第三者が……官廳或いは裁判所が職權を以て取消すということはいたさなかつたのであります。
#67
○委員長(松村眞一郎君) 委員外の三好君ですが、發言を許してよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○委員長(松村眞一郎君) それではどうぞ。
#69
○委員外議員(三好始君) さつきの御説明によりますと、第六條の取消しの請求は、相續開始後のように御説明になつたのでありますが、相續開始後何時までたつておつても取消しの請求ができるあかどうか。それだと非常に農業資産の相續が不安定になると思うのでありますが、その點について御説明を願います。
#70
○説明員(小倉武一君) それは相續の後遺産の分割が行われるまでというふうにいたします。それから、なぜ相續後ということに解するかと申しますと、第六條に「共同相續人の請求に因り」という言葉が使つてあるのであります。併し被相續人が死亡するまでは共同相續人という言葉は使えないのであります。
#71
○委員外議員(三好始君) そうすると、相續開始後、遺産の分割までと、こういうふうに解してよろしうございますか。
#72
○説明員(小倉武一君) さようでございます。
#73
○竹中七郎君 この「單純承認をした共同相續人」ということについてもう一度御説明願いたいと思います。
#74
○説明員(小倉武一君) 民法によりますと、相續承認の中に單純承認と限定承認というのがあるのであります。限定承認と申しますのは、相續によつて得た財産の限度だけによつて被相續人の債務を拂う條件を以て相續を承認したという場合であります。そういう特殊な場合であります。それ以外に絹續をする場合は、普通の場合は單純承認ということになります。單純承認と申しますのは、別段意思表示を要するのではなくて、例えば相續人が相續財産の一部を處分したというふうな場合には、單純承認があつたということになるというような規定もございまして、大體普通の場合には單純承認ということになるのでございます。
#75
○委員長(松村眞一郎君) ちよつとお尋ねしますが、共同相續人は單純相續人のみでなくてよろしうございましようね。共同相續人が協議を以て單純承認をした相續人の中から選びますけれども、その協議する者自身が、自分は限定承認をしておりなからそういうことをやつてもよいのでありますか。
#76
○説明員(小倉武一君) さようでございます。
#77
○委員長(松村眞一郎君) それは如何ですか。自分で資格のない人が資格のある者と一緒にやるということはどうですか。これは議論でもありませんが、ちよつと不思議に感ずるのでありますが、それは構わないというわけですか。自分は指定相續人になる資格かないというので、ここで先づお決めになつたのですか。
#78
○説明員(小倉武一君) そうです。
#79
○委員長(松村眞一郎君) 資格はないが、選ぶ權利はあるというわけですか。
#80
○説明員(小倉武一君) そうです。
#81
○大野幸一君 第七條の「協議を以て」という言葉の意味を、全會一致だということになると、共同相續人の中には相當多數ある場合がある。こういう場合を豫想する時に、全會一致というようなことは殆んど認められない。いや、稀である。從來の親族會の議決でも、過半數を以てなしておつたのであつても、それでも尚いろいろ紛淆があつたのでありますが、農業資産の歸属者を定める協議が全會一致というようなことは稀であつて、これでは折角兄弟仲よくして農業資産の歸属者を定めようとしても、一人の異議者のために、裁判所において解決する場合が往往あろうと思うが、この點を何とか解決したら如何でしようか。三分の二とか四分の三とか、過半數が惡ければさように解決してやつてもどんなものでしようか。政府委員の御答辯をお願いいたします。
#82
○説明員(小倉武一君) 御指摘のように、相續人が多數あるという場合もございます。併し多くの場合は配偶者とか子供ということになるのでありまして、さような極く近い者同士の協議でありますから、全會一致ということにした方が實情に合うように思うのであります。先づ協議の方を定めて、先づ一致で、多數決で誰を選定しようということを決めて、具體的な選定は多數決によるということは勿論よろしかろうと思うのであります。
#83
○大野幸一君 分りました。
#84
○委員長(松村眞一郎君) それでは第八條に移ります。
#85
○説明員(小倉武一君) 第八條は指定も選定もないというような場合でありますが、先づ選定をいたしました場合に話が合わないという場合であります。或いは又協議することができない場合、協議することができないと申しますのは、相續人の中一人が、例えば外地から引揚げて來られないというふうなことで、事實上できないという場合でありますが、さような場合には、共同相續人が誰か一人、或いは二人でもよいわけですか、誰か一人の請求によりまして、やはり單純承認をした相續人の中から誰を選ぶかということを裁判所にお願いをするわけであります。さような場合には裁判所が選ぶのでありますが、先程もちよつと御説明いたしましたように、併しどうも共同相續人の中には農業を營む者がないという場合には、裁判所が選定をさせないという裁判をすることもできるのであります。それから又單純承認をした相續人が皆農業を營む意思がないという時には、やはり共同相續人の請求によつて、裁判所は農業資産の相續人として選定を受ける者がないという旨の裁判をすることができるということにいたしまして、この二つの場合には一般の民法の相續によるということにいたしまして、農業資産を一人に歸属させるということはいたさないのであります。
#86
○委員長(松村眞一郎君) ちよつとお伺いいたしますが、協議をすることができないときというのには、共同相續人か澤山ありまして、一人がいないという場合はそれに入りますか。
#87
○説明員(小倉武一君) いない場合が入ろうと思います。いないと申しましても、郷里におらずに東京に出ておるというようなことでなくて、交通が遮斷される、或いは外地から引揚げて來ないという場合も入ろうと思います。
#88
○委員長(松村眞一郎君) 事實裁判所で裁判をする場合に、そんなような場合には、先程御質問のあつたような具合に、多數の意志によつてやるということに自然なるでしようね。一人缺けても、それはどうも引揚げて來ることができない。殘りの者だけでは協議ができない。そこで裁到所に頼むのですが、殘つておる者は全員一致しておるということになれば裁判所は直ぐする譯ですか。そういうことを餘想することになりましようね。
#89
○説明員(小倉武一君) 大體さようなことになろうと思います。
#90
○委員長(松村眞一郎君) 第九條に移ります。
#91
○説明員(小倉武一君) 第九條は、民法の相續の分割が相續の開始の時に遡つて效力を發するということになつておるのと同じように歩調を合せまして、放棄だとか取消、或いは選定というようなことが矢張り相續の開始のときに遡つてその效力を生ずるということにいたしまして、民法の相續の分割の效力と歩調を合せておるのであります。
#92
○委員長(松村眞一郎君) ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#93
○委員長(松村眞一郎君) 速記を始めて。それでは本日はこの程度で散會いたしまして、明日午後一時ということに一應定めて置きます。
   午後零時十五分散會
 出席者は左の通り。
   委員長      松村眞一郎君
   委員
           松井 道夫君
           大野 幸一君
           阿竹齋次郎君
           竹中 七郎君
           石川 準吉君
           藤野 繁雄君
  説明員
   農林事務官
   (農政局農政課
   長)      小倉 武一君
ソース: 国立国会図書館
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