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1947/09/26 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第4号
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1947/09/26 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第4号

#1
第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第4号
  付託事件
 農業資産相續特例法案(内閣提出)
――――――――――――――――
昭和二十二年九月二十六日(金曜日)
   午前十時二十九分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
 農業資産相續特例法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(松村眞一郎君) それではこれより農業資産相續特例法案に関する小委員會を開會したします。
 今日は第十條から逐條の説明を伺うことにいたします。今日も説明員がおられますから、小倉君の発言を許すことにいたしたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○説明員(小倉武一君) 第十條の御説明を大體申上げます。先ず第一項でございますが、一項は簡単に申上げますと、農業資産を持つておる被相續人の財産の相續人の相續分は、普通の場合の半分であるということを言つておるのであります。民法の千四條とありますのは、これは同順位の相續人が二人以上ある場合は、その相續分は均分であるという意味のことを書いておるのであります。それから民法の應急措置に関する法律の第八條におきましては、配偶者の相續分を決めておるのであります。これは誰と一緒に相續人になるかということによつて相續分が違つております。このいずれの場合におきましても、本法によりますれば普通の相續分の半分であるということになるのであります。
 第二項は丁度その裏側になりまして、農業資産の相續人は普通の相續分の半分のほかに、相續財産の二分の一の相續分を受けるということにいたしておるのであります。従つて農業資産の相續人は、全體の二分の一の相續分を受けるほかに、一般の民法の規定による相續分の半分の相續分を受けるということになるのであります。
 それで例えて申しまするというと、被相續人たる父が亡くなりまして、子供が二人あるという場合を簡単な場合として假定いたしますというと、五割、五割の相續分を受けるわけでありますけれども、第一項によりましてその半分、即ち二割五分づつの相續分を受けるのであります。第二項によりまして農業資産相續人は、残りの半分、即ち五割の相續分を受けるということになりまして、農業資産の相續人は七割五分、そうでない相續人は第一項だけの相續分、即ち二割五分になるのであります。
 第三項はこれは民法の千六條におきましては、相續分というものが今申上げましたように千四條と新しい法律の第八條によつて決まるわけでありますが、民法千六條におきまして、相續人が遺言で以て相續分を指定する。或いは第三者に指定を任すことができるという規定を置いているのであります。従つて法律で決まつております相續分を變更するという餘地を認めておるのであります。その規定をその儘特例法にも採用いたしおるのであります。従つて第三項によりまして、一應第一項、第二項で相續分を決めておりますけれども、その相續分を非相續人の意思によつて變えることができるということになるのであります。「この場合において」というふうに民法の規定を讀み替えておりますのは、これは民法によりますところの相續分の二分の一、即ち十條の一項の相續分のほかに、この二項による特別相續分につきましても、遺言によつて變えることができる。従つて二分の一を變えまして、或いは多くし、或いは少なくするということもできるということになるのであります。
 次は第四項に移ります。第四項はこれだけではお分かりにくいかとも思いますけれども、民法の相續に関するこの四項に列挙したる法律と合わせてお讀み頂くというとお分かりになるのでありますけれども、蛇足的に簡単に御説明いたしますというと、第一は民法の千七條との関係であります。民法の千七條によりますというと、共同相續人が被相續人から遺贈を受ける。或いは贈與を受けたというふうな場合に、その受けた部分だけを相續分から差引くということを言つておるのであります。これは相續分というものを成るべく公正にするという意味の規定だろうと思いますけれども、さような場合に民法にありますところの相續分から差引くというのを、この法規によりまする二分の一の普通の相續分、それから特別相續分と、両方に引掛けて讀む。両方から差引くということを意味しておるのであります。それから民法の千三十九條との関係でございますが、これは相續人が相續を放棄した場合に、その放棄した人の相續分が如何様になるかということを規定しております。その場合には地の相續人にその相續分の割合に應じて行くという意味のことが書いてあるのでありますが、その場合の他の相續人の相續分というのを如何様に讀むかということを注意的に書いておるのでありまして、この場合には、特別相續分を除くということにいたしております。特別相續分を除きますわけは、特別相續分を除きませないと相續を放棄した人の相續分が公平に相續人同士に分けられないというわけであります。特別相續分を入れますと、特別相續分の分だけ餘計に農業資産の相續人に分けられるということになるから、左様にいたさないという趣旨であります。以上で第十條の説明を終わります。
#4
○藤野繁雄君 農業資産を算定するのは、時價でやられるのでありますか、或いは仕入價格でやられるのでありますか。
#5
○政府委員(山添利作君) 時價であります。而して農業資産全體としまして、農業収益に合致するような基礎で評價をする。
#6
○藤野繁雄君 例えば牛馬のようなものも時價でやるということであれば、數年前までは公定價格があつたから或程度で押さえられておるが、今であれば、生まれたての馬でも牛でも一頭一壱圓、二萬圓、或いは大きなつたのであつたならば四萬圓、五萬圓という、こういうふうな價格になつておりますが、そういうふうなものも時價でやられのでありますか。
#7
○政府委員(山添利作君) これは一應牛の價格が今一萬五千圓とか、二萬圓とか、そのままとりますと、これは農業資産を承繼した人の負擔が非常に大きくなるのであります。左様な場合におきまして第十六條に「時價の範囲内で農業経営の収益を基準としてこれを定めなければならない。」ということがありますので、農業経営の面からみた價値というものを想定をしまして、時價が二萬圓しておりましても、それは相當なところで評價をする。こういう精神であります。
#8
○藤野繁雄君 若し、そういうふうな農業収益を土臺にして計算されるということであつたならば、土地の現在の價格から言つたならば、農地調整法ですか、それによつて定めた價格よりもより以上の収益があると思いますが、又事實あるのでありますが、そういうふうな場合においては、土地の價格も時價で定めて差支ないのでありますか。
#9
○政府委員(山添利作君) 時價と申しますのは、公定價格がありますものにつきましては、しては、公定價格が時價であります。
#10
○藤野繁雄君 併しその場合においては、命令をもつて定めたところによつて地法長官の認可を受けたらば、價格を上げて差支ないと書いているものと思つておりますが、如何でありますが。
#11
○政府委員(山添利作君) 農地調整法に取引價格云々につきましては、そういう規定がございます。
#12
○藤野繁雄君 若し規定があるといたしましたならば、この土地の値段を決めたということは、米價が非常に安いときの土地の値段であつたのでありますから、現在の農産物の價格がらいたしましたならば、この價格を適當に引上げなくちやできないのではないか。又今度の農業資金の相續をするというような場合において、それを引上げなくては財産を分配する場合にいろいろな問題が起つてくるような虞れはないのでありましようか。
#13
○政府委員(山添利作君) 只今の問題は非常に重要な問題でありまして、農地價格そのものの現在の公定價格を如何に見るかというところに根本の問題があると思います。この點につきましては、前にこの委員會でも申上げたのでありますが、物の取引價格を見ます場合に、現在の小作料という點を中心にして考えますれば、七十五圓換算でやつております。これは今の決められた公定價格よりも高いことになるのであります。その後その當時より負擔が増しておりますけれども、大體高いことになります。今の公定價格は昭和二十年當時における農業経営の収益を基礎にしまして、耕作者の立場から見たところの適當なる價格で決めているのであります。而して小作料は七十五圓換算ということで決められてその後動かしておりません。又當面動かす意思もないのであります。然らばお話になりましたように、農業経営の収益が非常に殖えているかどうかということについても、又おのずからいろいろな見方があると思います。米だけの單作地帯等をとつて見ますれば、米價が安いので生産費が合わないというような點をそのままとつて考えますれば、これは農業収益が殖えていないということも一應は考えられる。又畠作地帯を相當やつているという所では、實際問題として収益が非常に多い。そういう點から見れば、地價も非常に高くてもいいというような御議論も出ると思うのであります。さようにいたしまして、場合場合により、状況によりまして農業収益の状況も違いますから、その事柄を基礎にしての土地價格ということもおのずからそこに経済的の價値としては相違があるのは當然のことと思います。併しながら大體の問題といたしましては、申すまでもなく日本の農業は米作農業を中心とし、又全體の農業生産の主要食糧が中心である。この點から考えますると主要食糧の價格政策に伴いまして、農業経営は決してしかく楽ではないというのが實情でありまして、その面から見る限りの土地價格は、しかくこれを實際上の経済價値があるものと見ることはできないと思うのであります。そういう點竝びに又政策的な點から申しましても、昭和二十年に決めて、その價格で以て土地を買収するという政策を行つているところの土地價格を途中で變更せしめるということが、土地を買う人にとりましても、又土地を手離す人にとりましても、いろいろな問題を起こしまして、結局途中で變更することを許されないという理由もあるわけでありまして、こういうような趣旨から現在の公定價格を堅持いたしておるわけであります。こういうふうに公定價格がありますものにつきましては、その人にとつての價値が非常に多い。その人にとつての収益が多いというような客観的な事情、又使用價値が多い。これは今では主要食糧を一段歩作つても非常な違いでありますから、その者にとりましてはその主観的價値は非常に多いから、土地取上げというようなこと、或いは飯米農家というものができておると思いますが、そういうような場合でありましても、これは價格として論ずる限りは、一律の公定價格よりはこの農業資産を見る場合においてはおのずからそこに決つておるところの公定價格による。農具等も公定價格がきまつておればその公定價格による。そうして全體の農業収益を考えての評價によると言いますのは、これらの農業資産を一括した場合において、その農業の収益度に應ずるところの範囲でなければならない。こういう趣旨でありまして、そういうことは非常にむずかしいのじやないかということは實際ございます。そこでそれらの點につきましては、お互に相續人同士のうちの問題でありますから、そこで世間の常識をも参酌して適當な價格を決めるという措置をとるのでありまして、若し決まらなければ裁判所においてそういう事柄の評價を一切の事情を参酌して決める。こういう意味になるわけであります。
#14
○藤野繁雄君 今のは値段が上つた場合を質問したのでありますが、いよいよ今度は農業恐慌が参りまして非常に下つた。そうしてその場合において分配するところの金を一時に拂うことができなかつたから、借金で相續人が拂つておいた。そういうような場合に、いよいよ分けた際においてはそれが適當な價格であつたけれども、あとで農産物の價格、その他が下つたために、前に決めたところのものでは収支計算上立たない。相續人が困るというような場合が到来したといたしましたならば、その際においては遡つて、或いは特別の約束によつて支拂わなくてもよいというようなことができるのでありますか。
#15
○政府委員(山添利作君) それは第十二條の第三項等によりまして、そういう條件を附けておけば、そういうことになるわけであります。途中で免除をするというようなことですね。
#16
○北村一男君 私ちよつと旅行しておりまして逐條審議の初めの方を承らなかつたのでありますが、関連しておりますからお尋ねするのでありますが、第二條の第四項の「前號の建物その他の工作物の所有の目的に供される土地の所有權又は賃借權」……工作物が賃借であつた場合は、これはどういうふうな解釋ですか。
#17
○説明員(小倉武一君) 工作物が賃借權であつた場合も入るのであります。
#18
○北村一男君 所有の目的という文字で、そういう解釋ができますか、どうですか。
#19
○説明員(小倉武一君) 四號の土地の方が、これは工作物の敷地になつておるところの賃借權でありまして、工作物實體の賃借權の方は三號で入るわけです。
#20
○北村一男君 どうもそこははつきりしませんが、工作物が賃借であり、賃借をいたしておる場合に、その賃借をしておる建物の賃借を繼續する。そういう目的の場合に、土地の所有又は賃借であり、所有權又は賃借權が相續財産の中に入るという場合のことをお伺いしておるのでありまして、これは「建物その他の工作物の所有の目的に供される」……。所有の目的という文字では、その工作物の所有權又は賃借權をカバーしてあることはできるかどうかということをお伺いいたすのであります。
#21
○政府委員(山添利作君) これは詳しく書けば、所有又は占有と書くべきところであつたと思います。
#22
○北村一男君 そこは、こういう問題は詳しく書いて頂かんというと困ると思いますが、如何でありましようか。
#23
○政府委員(山添利作君) 御審議の結果に従つてです。
#24
○北村一男君 それから第五條でありますが、相續の「前條第一項の指定を受けた相續人は、相續の放棄をすることができる期間内に限り、他の共同相續人に對する意思表示を以て農業資産の相續人たるの地位を放棄することができる。」この條項から見まして、農業資産の相續というものは義務であるというふうに考えていいか。或いは權利であるということになるか。そこの御見解を承りたいと思います。
#25
○政府委員(山添利作君) これは法律的な解釈といたしましては、國より相續人の誰かが農業資産を承け継ぐところの權利をもつておる。併しながら相續の放棄をするかどうかというようなことからは、一般相續につきましても三箇受けるという場合に、農業資産の價額が四萬五千圓というふうな場合が一例であります。そうしますと、特別相續分が六萬圓でございますから、農業資産は四萬五千圓たのに、六萬圓の特別相續分を與える必要はないということになるのであります。従つて六萬圓から四萬五千圓を引きました一萬五千圓は、これはみんなに分けるということになるのであります。従つて五千圓ずつになるのであります。農業資産の相續人にも五千圓、他の兄弟にも五千圓、従つて一萬圓を他の二人の相續人に返すということになるのであります。
 で第三項は一項と二項のこの他の兄弟に封する支拂い、或いは賠償というような問題につきまして、その額がいくらであるか、或いは又いつ支拂うか、年賦で支拂うか、その他の方法で以て支拂うかというような方法でありますとか、そのようなものを相續人同士が相談をして決めるということにいたしておるのであります。相談が纒まらないとき、或いは相談することができないような事情があるときには、裁判所が定めるということにいたしたのであります。
 次は第四項でありますが、第四項はこれは民法との関係において、かような規定をいたしたのであります。これは例えば民法の遺留分の計算によりますというと、被相續人の財産の半分は遺留分として相續人の権利になつておるのであります。この被相續人の財産の半分という場合の相續人の財産を如何様に見るかというのが、この點に関係するのでありまして、先程申上げました一項と二項によりまして、他の共同相續人が得ました債権でありますとか、或いはその相續人に封する農業資産の相續人の負擔する債務というようなものは、これは被相續人が持つておつた財産というふうにみなしまして、遺留分の計算上間違いのないようにいたしたのであります。次の項は、これは第三項によりまして、裁判所が裁判をいたしました場合の効力に関する規定でありまして、その裁判が決定をいたしましたときは、「執行力のある債務名義」と申しますのは、これは御承知の通り行政執行をするに適した効力を持つておるということであります。
#26
○委員長(松村眞一郎君) ちよつとお尋ねいたしますが、疑いのあるというようなことで計算を始めることが、後の債権、債務をはつきりする場合の障碍になることはありませんか。疑いなしと確認してかからんというと、細かいそろばんの計算が出ないのじやないですか。
#27
○政府委員(山添利作君) 疑いがあるときに請求することはできる。その請求をして話が決まりますれば、そこで債権債務は決まるわけであります。
#28
○委員長(松村眞一郎君) その時には、勿論疑いのない額になるという意味でしようね。
#29
○政府委員(山添利作君) そういうわけです。
#30
○大野幸一君 末項の「第三項の規定による裁判が確定したときは、その裁判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。」この意味は、「その裁判は、執行力のある債務名義を同一の効力を有する。」というのは執行力について、他の債務名義と同一であるというのか。この裁判は即判力に及ぶのか、及ばないのか、どういうお積りなんでしようか。
#31
○説明員(上田明信君) その點は従来から非訟事件手續法の債務名義問題で、當然その儘裁判が權定してしまつた場合の即判力、いわゆる判決で、即判力の問題としては論じられていないけれども、即判力と同様の結果になるというふうに考えられております。それは用例にしては今度の家事審判法なんかも、そういうふうな考え方からなつております。
#32
○大野幸一君 原則としては即判力はあるあか、ないんですか。
#33
○説明員(上田明信君) 即判力自體はありません。即判力というのは言葉の問題でありますが、即判力と同じ効力はあります。それをどういうふうに言うかという問題は、又別の問題だと思うのでありまして、即判力自體は判決に限るという訴訟法の建前になつております。結果においては即判力と同じ結果になると思います。
#34
○北村一男君 専門の法律家が見ましても、なかなか難解な點があるから、私はこの委員会の劈頭において、この法案はなかなかむずかしいということを申上げたわけでありますが、私らが讀みましても第三項が分かりませんが、分かり易いように、呑み込めるように、一つもう一遍御説明願いたいと思います。それから私が讀んで分からんくらい……私は自惚れるわけではありませんが、農村でありますが、私が讀んで分からんくらいの法律でありますから、なかなかこれは農村人が讀んでも分かりません。農民などは、もう初めからこれを讀む気はしないだろうと思います。私はこの機会に重ねて今度法律をお拵えになる時は、農民が讀む法律であるということを頭に置いて立案して頂きたいということを、重ねて希望いたしまして、この第三項を今一遍御説明願いたいと思います。
#35
○説明員(小倉武一君) 第十二條の第三項でございますが、これは一項、二項との関係の締めの括りを言つておるのでありまして、一項、二項によりまして、先程御説明いたしましたような超過額がありまするというと、これを他の相續人に支拂うということになるのであります。従つてその場合の一體超過額が幾らであるか。或いは又農業資産の相續人が、他の共同相續人に支拂う場合に、その時期を如何にするか。或いはその方法を如何様にするかという點を共同相續人全體、即ち皆が相談をして決めるということいたしておるのであります。但し協議が整わない。話が纒まらないという場合、或いは共同相續人の一人或いは二人がそこにおらない。例えば外地から引揚げて来ないというふうな場合におきまして、協議ができないというふうな場合には、共同相續人の誰かの請求によりまして、裁判所が代つてこれを定める。即ち超過額が幾らであるとか。或いは支拂いをどうする。いつ、するかというようなことを裁判所が代りに決めるということを規定しておるのであります。
#36
○北村一男君 違いました。第四項であります。
#37
○説明員(小倉武一君) 再四項は、御指摘の通りこれだけではよくお分かりにくかろうと思いますが、民法の遺留分の計算から、かような規定が必要になつて来ておるのであります。民法の千百三十一條でありますが、例えばその一例を申上げるわけですが、民法の千百三十一條におきましては、「遺産相續人タル直系卑屬ハ遺留分トシテ被相續人ノ財産ノ半額ヲ受ク」というふうになつておりまして、直系卑屬たる相續人は、被相續人の財産の半分は當然受ける権利がある。従つて相續財産を、例えば全部被相續人が處分してしまう。外に贈與したいというような場合も、その半分だけは取り戻しの請求権があるわけであります。さような場合の、被相續人の財産というものを如何様に解釋するかということが、この第十二條の一項と二項との関係上疑問になつて来るのであります。で、この十二條の一項と二項によりまりして、相續人の間、即ち農業資産相續人と、その他の相續人との間に債権債務の関係が起る場合があるのであります。かような場合の債権債務は、これを被相續人から受けた債権債務というふうにみなしまして、即ち被相續人から相續した財産というふうにみなしましておるのであります。さようにいたさないというと、被相續人から受けた財産の額が減るわけであります。そうしますというと遺留分の額が減り、遺留分の権利者を害するというような場合も生じて来ますので、さような補充的な規定を置いたのであります。
#38
○北村一男君 どうもまたはつきりいたしません。どういう目的でこれをお置きになつたのか。承るに農業資産相續人と他の共同相續人の間の債務の調整をなさるために、お置きになつたように承つたのでありまするが、我々農民にもう少し分かるような御説明ができませんですか。
#39
○説明員(上田明信君) この規定は債權自體の性質をいつておるのでありまして、例えば先程から例に挙げました農業資産相續人が長男で、二男がその他の相續人であるという場合に、本條の適用によりまして、二男が長男に債權を持つ。一體この債權の性質は何であるか。こういう問題が出て来るのであります。これは一體相續したものかどうかという問題があるのであります。相續したものだということになれば、民法の適用上相續したものだということに基く規定、遺留分だとかその他の規定が適用になるのでありますが、これは兎に角相續の開始後負擔した債務でありますから、相續そのものによつて得たものかどうかということが問題になるのであります。だからこういうふうな規定を置いたのでありますが、今度の新民法では、来年一月一日から施行される豫定で、今本国会において審議中の民法によればこういうことが當然できる。こういう解釋の下に今審議が進められてあるわけなのでありますが、そういうのと實質上は同じなのでありますが、現行民法の下においては、それがこういう分割の方法ができないということになつてまります。それでこの債權自體の性質は一體何であるか。相續自體によつて得たものが、その後、先にいつたように長男が債務を負つたに過ぎないのか、この債權自體の性質を表明しておるものに過ぎないのであります。
#40
○北村一男君 これはどうも私は御説明では分かりませんから、他の委員の御迷惑にもなりますので、政めて後から伺いますから、この程度で打切つて置きます。
#41
○大野幸一君 第一項、第二項に、よつて農業資産相續人と、その他の相續人との間に起きるところの權利義務関係の性質の性質をいつたものでありますか。
#42
○説明員(上田明信君) その權利義務から得た債權の性質であります。その債權の発生自體は相續開始後発生しております。しかしこれはその後発生したものではあるけれども、法律上の性質としては相續開始のときに得たのと同じ結果になるということを言つておるのであります。相續によつて得たものだと……
#43
○大野幸一君 そうすると農業資産相續人と、その他の相續人との間に、相續開始後に第一項、第二項の規定によつて生ずる債權債務を言うのですか。こう聴いたのでありますが、その性質をはつきりさせるためにこれを規定したと、こうおつしやるのですか。
#44
○説明員(上田明信君) さうようであります。
#45
○大野幸一君 これを各共同相續人が相續によつて承継した。被相續人との權利義務とみなさなければならないところの擬制的の規定をする必要が何處にあるのでしようか。その理由を説明して頂きたい。
#46
○説明員(上田明信君) 先ほどから事例が挙つておるわけなんでありますが、この債權を取得した、先ほどの長男と二男の例で考えて行きますと、例えば農業資産が被相續人の全財産であつたという場合に、この規定が働きまして、第一項によつて二萬五千圓の債權を二男が長男に持つわけであります。この場合に一方民法の規定によりますと、遺留分侵害が起るわけであります。その遺留分侵害が起るときに、この債權が相續によつて得たものであれば、相續によつて得たのであるから、この債權があるから、遺留分侵害はないのであります。併しこの得た債權が相續によつて得たものでないとすれば、二萬五千圓の遺留分侵害が行われておるわけであります。だから遺留分減殺の問題が當然起つて来るわけでありますが、その調和を圖つておるわけであります。この規定によつて、相續によつて得たものだから遺留分の侵害がない。こういう結論が出て来るわけであります。
#47
○大野幸一君 それは法律によつて取得するのだから、民法の遺留分との関係は當然にこの規定を俟たなくても、明瞭であるがごとく考えられるが、念のために、こういう規定を置いたのですか。
#48
○説明員(上田明信君) これは解釋に疑問が出るので、或いは注意規定と云つてもいいかとも思います。
#49
○大野幸一君 分かりました。そこで末項の「第三項の規定による裁判が決定した」という意味は、どういう意味ですか。裁判があつたときか、裁判が確定したときか、未確定でも、その裁判は効力ある債務名義と同一の効力を有せしめるという意味なのか。この決定の意味を御説明願いたい。確定の間違いですか。
#50
○説明員(上田明信君) これは確定のミスプリントではないかと思います。
#51
○藤野繁雄君 それは正誤表に「確定」と正誤してあります。
#52
○北村一男君 これは私の専門知識がないからお尋ねいたすのですが、農業資産の相續人は、又共同相續人であるわけですか、どうでありますか。
#53
○政府委員(山添利作君) その通りです。
#54
○北村一男君 質問がないようですから先へお進め願います。
#55
○委員長(松村眞一郎君) それでは次の第十三條に移ります。
#56
○説明員(小倉武一君) 十三條の趣旨は、一體この農業資産に属するのか属しないのかということが、具體的の事例につきまして必ずしも明瞭でない場合があることを予想いたしまして、さような場合には共同相續人の請求によりまして裁判所が決めるということにいたしたのであります。例へえて申しますれば、自家用薪灰の原木の採取の目的に供される土地というようなのが農業資産というように定義されておりますけれども、具體的に一體自家用であるかないかというような點について若干疑問があるような場合があろうかと思います。それから又常時居住の目的に供されてる建物というようなのもございますが、常時移住の目的に供されておるのかいないのかというような疑問の點があろうかと思います。その他具體的には疑問の場合がありまして、相續人間に争が起るというようなことも考えられますので、さような場合には、共同相續人の請求で裁判所が決めるべきことといたしたのであります。
#57
○北村一男君 それでこの別表の第四號に「前各號に揚げるものに準ずる動産で農林大臣の指定するもの」とありますが、指定してありますか。
#58
○政府委員(山添利作君) これは段々農具等が発達していろいろ新しいものができますと、そのときに必要な都度指定をします。
#59
○委員長(松村眞一郎君) 他に御質問ございませんければ第十四條に移ります。
#60
○説明員(小倉武一君) 十四條の趣旨は、農業資産を相續しました相續人が農業をやめるというふうな場合に関する規定でございまして、農業資産の相續人は普通の相續人と違いまして、この法律による特別の利益を受けておるのでありますからして、農業資産を相續した途端に農業をやめて、その資産を他に處分するというようなことがありますというと、不當に利益をするというようなことがあり得るのであります。さような場合を、そのまま放任して置きますというと、他の共同相續人の利害にも関係いたしますので、さようなことがないようにいたしておるのでありまして、この法律では資産の分割があつてから五年以内に限りまして、その間に相續しました農業資産につきましての農業をやめる、自分でやめるというやうな場合には、特別相續分によつて受けた利益、これだけが外の相續人よりも特別の利益を受けておる限度でありますので、特別相續分によつて受けた利益の範囲内でその利益を他の相續人に分配するということにいたしたのであります。勿論この特別相續分というのは、これを解體すれば農業資産の相續人の相續分に該當する部分もあるのでありまして、それは外の相續に返す必要はありませんけれども、他の相續人の相續分に相當する部分は、他の相續人に分配の請求ができるということにいたしたのであります。併しながら農業を営むことをやめると言いましても、一時病気でありますとか、その他の事情によりまして、農業をやめたというふうな場合には、この規定を適用いたしますというと、却つてこの法律の趣旨は逆になりますので、さような場合には、今申上げましたような分配をいたさなくてもよろしいということにいたしたのであります。尚この利益の分配につきましては、その幾らの額を返すかという額でありますとか、或いはその支拂の時期、方法などにつきましては、十二條で御説明いたしましたような方法で以てやるということが二項に書いてあるのでありまして、相續の纏まらないような場合には裁判所が決めるということ、それから又その裁判の効力というようなものは十二條の場合と同じようなことにいたいしたのであります。
#61
○北村一男君 この分割後五年以内という、この五年には特別の意味があつて、かように御決定になつたのでありますかどうか。これを伺いたいと思います。この五年という期間は私は非常に今日の時勢から見て長過ぎやしないか。昔の五年ならば、安定しておる時代の五年ならばともかくとしまして、今非常にこの世の中が變つて参りますとき、五年も経つて情勢が非常な變化を来すというようなこと、それから先般藤野委員からもお話がありましたが、農業恐慌のようなものが来て、段々食い込んで、農業をやつておる者が農業をやつておるために赤字が相當出て来た、止むを得ざる處分ということもあり得るわけでありまするから、この期間を五年のように長期にいたして置くということは、農業資産の相續者に對して不當な損害を蒙らせるという虞れがないものであるかどうか。私はこの期間が少しく長過ぎると考えますが、御所見はどうでございまするか。
#62
○政府委員(山添利作君) 将来農業恐慌等が来た場合に、不景気でやめる者はこれは仕方がないじやないかというようなお話でございまするが、さような場合もないとは申せません。併しながら實際の問題といたしましては、そういう場合における價格政策乃至は又農業経営を安定せしめるべきところの方策は當然とるべきでありまして、問題は、さういう特別の今の時代に農家が憂えておることを考えるのでなくて、ただ普通の場合に五年が長いかどうかということをやはり考えるべきだと思うのであります。その場合に、まあ十年と言えば一昔、非常に落着いた秩序を亂すということになります。三年と言えば、まあこれは人の主観でありまするからいろいろありましようが、やはりこの民法の均分相續の原則を破つての、特に農業の安定を期するという趣旨からするところの、與えられた特別相續分の利益でありまするので、やはりあまり短い期間にいたしますることは、この法律の趣旨に副わない。場合によつては、又そこに農業をやるつもりもない人が俺はやるのだと言つて利益を得るというような、信義に反するような場合もないとは限らないのでありまして、そういう意味合から適當な頃合として五ヶ年を選んだわけであります。これを或特別な不安定な時期についてという問題につきましては、これは一般の農業政策といたしまして、十分對處すべきでありまして、これを今そういう事柄が起きるであろうという或想定の下に立法をすることは、これは適當ではないと、こういうふうに考えております。
#63
○北村一男君 只今農政局長は想定という、将来のことを私が想定してお尋ね申すという方に重點をお置きになつたようでございまするが、現に單作地帯などは、農業会の預金の引出し状態から見て、また農村の懐ろにもう金が殆どないというような状態から見まして、農業恐慌では勿論でございませんが、非常に苦しい建前になつておる。昨日も農林大臣に、供出價格をお決めになる大體の方針をお尋ねいたしたところが、生産費を確保したいと思うけれども、必ずしもさようなわけには行かないかも知れない。こういうような御答辯もあつて、農産物の價格は必ずしも農民の希望しておるような値段に決まるとは保證なさつておりません。そういう點から見ますと、やりたくともやれない場合がある。又段々やつておるうちに赤字が出で、農業資産のうちの一部を處分せんければならんという事態が起きて来て、つまり農業を営むことを、任意ではありませんが、止むを得ずやめんければならんということは、ただ一部農家でなしに、單作地帯の、全部とは申しませんが、相當部分が、これに任意でなくて止むを得ずやめる場合ができて来ると存じます。これは私は單なる想定でなしに、現實がそういうふうに進行いたしておるということを信じております。そういう場合にも、こういう、まあ任意ということの解釋にもなりますが、適用されるということになりますと、農業資産の相續人に對して非常な過重な負擔になる。こういうことについての救済的のお考がおありになるかどうかということを重ねてお尋ね申したいと思います。
#64
○政府委員(山添利作君) 元来この法律におきましては、兄弟に對して償還をするというような場合に對する金融措置、これらのことも或時期になれば是非とも實現をいたしたいと存じておりまするが、今北村委員のお述べになりましたような事柄についても、農業経営維持のための資金の途というようなものは、當然考えられるべきものであると考えておるのであります。只今は、御承知のようなインフレーションの時期でありまして、如何なる意味におきましても、資金が殖える。膨張するということは避けなければなりません事情から、特別な金融措置等も附随していないもであります。さようなこの法律を裏付けるところの農業政策なるものは、當然に又考えられ、状況によつて進展を見るべきものと考えております。と同時に、この法律自體といたしましては、やはり任意にやめるのは、これはいけないのでありまして、尤も借金のかたに結局處分されてしまつたという、強制執行でも蒙つたと、こういう場合には、これは任意にやめたという中には入らないわけであります。併し経営が苦しいからといつて勝手にやめる。他に行つてしまうというようなことは、これは又任意の中に入る。こういう解釋であります。
#65
○北村一男君 只今の御答辯ではありまするが、経営が苦しいからやめたことを以て任意という御解釋をなさることは、私は少しく酷ではないかと考えます。営むことを任意にやめる。この任意の解釋でありますね。苦しければ人情としてやめて外の有利な方に行くということまで抑えて、そういてますます苦しみのところに追いやるというようなことが起きやしないかと私は惧れるのでありますが、まあそれにいたしましても、これは政府委員の御見解と私の考がそういう點で一致しなければ、誠に止むを得ないことでありまするが、只今、いろいろそういう面に對しては農業政策を以てなんとかやつて行くという御答辯も伺つたのでございまするが、そういう御答辯は毎度承わるのでありまするが、どうもなかなか實現しないことが多いのであります。ちよつとこの法案からはずれまするけれども、なかなか農民は横に廣く擴がつておる、中央から遠い所に分布されておるということから、商工業者と違つて、ものを言えば直ちに政府の耳に入るというような立場に置かれておらんために、それから又他に轉換することがなかなか容易でないために、苦しみながら、借金が嵩んでも止むを得ずやつておるという事態が多いのでございまするから、只今のお言葉で私は可なり意を強うしたのでございまするが、どうぞそういう事情を十分御推察頂きまして、この苦しい経営に對して、何らかの手を打つことを是非ともお考え願つて置きたいことを希望意見として申上げて置きます。
#66
○政府委員(山添利作君) 私共農業政策のために、又農民の安定のために全力を盡しますことは、これは勿論であります。併し一般の状況として、いろいろ苦しい場合も出て来ようかと思います。結局この法律の解釈をいたします場合には、経営が苦しくて止めたいという場合に、十四條で一應餘計出たところの利益は償還する義務がある。併しながら具體的にはそれをどう處理するかということにつきましては、第十二條の三項によりまして、ともかく兄弟の間で相談をする。そうして一切の事情を斟酌して物事を處理して行く。恐らくそういう場合におきましては、もう兄弟に返すべき資力もなくなつておるというような事情であろうと思いますが、それは又そのような事情を参酌して適當に協議をされる。又協議が纏まらなければ、そのような事情も参酌して裁判所が適當な裁判をする。かように考えておる次第であります。
#67
○藤野繁雄君 農業資産は擔保に入れて差支ないのでしようか。
#68
○政府委員(山添利作君) これは差支ございません。
#69
○藤野繁雄君 擔保に入れて差支ないとしたならば、差押えられて處分されることも豫想しなくちやいけないと思います。差押えて處分をされて所有權が移轉したならば、その後の耕作權というものはやはり別な法律によつて維持されて行くべきものでありますか。
#70
○政府委員(山添利作君) 只今の問題は、農地に関する問題であると思います。農地調整法によりまして、農地を擔保に入れますことは、無論よろしうございまするが、それが、所有權がその結果として、極端な場合を申せば、競売等によつて移るということは、それから又假りに所有權の問題はないといたしましても耕作權が移るという場合、これはいずれも農地調整法によりまして、耕作の權利があります場合においては市町村の農地委員會、今の所有權問題につきましては地方長官の許可を受けるべきことになつております。従つて競売と言いましても、そこは地方長官が若しそれを許可しなしということでありますれば、その効果を発生し得ないということになつております。
#71
○藤野繁雄君 若しそういうふうなことになつておるとしたならば、擔保權は、擔保に設定していいというものの、設定したところの効力はないから、金融業者は資金の融通をしない。従つて農業資産の相續を永久にやろうとしても、農林恐慌が来たような場合においては、維持できないという結果になることはございませんか。
#72
○政府委員(山添利作君) 成る程農地調整法の規定によりますところの所有權の移轉についての地方長官の許可制度は、そこに擔保力に對してある制限を加えておることになるわけであります。従つて全然農業に縁のような人が、その農地を引取る。そこに又不在地主的なものを發生せしめるというようなことは面白くありませんので、さようなことは極力避けるように運営をして行くべきものと考えております。併しながらさような制限がついておりましても、これは家産法案と異なつて、農地調整法の場合でございまするが、移動を禁止するというところまでは行つてない。又そこに土地に對する買手というものは、いろいろあり得るわけであります。従つて金を貸しておいたら必ずしも自分が引取らなくても他に買手はあるわけでありまするから、そこに金融の途が阻碍されるという程度までに働くものというふうには考えておらんのであります。
#73
○小委員外委員(木下源吾君) この何は、農業経営の安定を圖るために、資産がある者のことを一生懸命やつておるのですが、農業経営がまだできない。できるだけの資産というものがない者に對しては、何か政府が外に考えておられますか。
#74
○政府委員(山添利作君) これは農村の方の人口を農業部面で如何に吸収するかということにつきましては、御承知のような開拓事業或いは移住開墾等に限りません。増段というような、段別を増すというようなことも同じ効能がございます。或いは今後における農村工業であるというような部面で、極力農村における人口の吸収と言いますか、職業を與えることを圖つて行きたい。固より併しそれだけでは、日本の国全體で殖える人口に職を與えるのは一部分でありまして、大部分は貿易を中心とする工業、国民経済全般の囘復、発展ということに待つより外ないと考えております。
#75
○小委員外委員(木下源吾君) 今全国を通じて営農をやるために、いろいろなこれに言うところの資産のない者が大部分を占めておると思う。殊に開拓に行つておる者等は鋤、鍬も禄にないという状態なんですが、こういう有る者に對するいろいろの御心配のことも必要であろうが、そういう者に對して、もう一段と工夫をせられることを私は希望を申上げて置きます。
#76
○委員長(松村眞一郎君) それでは第十五條に移ります。
#77
○説明員(小倉武一君) 現在の民法におきましても、或いは新しい民法におきましても、一定の相續人というものは、御承知の通り遺留分というものの權利を持つておるわけであります。例えて申しますと、子供が相續人である場合は二分の一だけの遺留分を持つておるのであります。さような場合に財産の二分の一以上を贈與たどか、遺贈いたしますと、その二分の一の遺留分の權利を害することになりますので、相續人は遺贈なり贈與を受けた人に向つて減殺の請求ができることに民法の規定でなつておるのでございます。返して貰うというわけであります。かような減殺の請求を受けますと、贈與の目的になつておつたものを返す或いはそのものの價額を返すということになるわけでありますけれども、農業資産の場合におきまして、農業資産の相續人が、農業資産の贈與なり遺贈を受けるというふうな場合に、同じようにやはり遺留分の權利を害するという場合が起るのであります。かような場合が起りますときには、農業資産の相續人は、普通ならば贈與を受けました農業資産自體を返してもよろしいし、或いはその價格を返してもよろしいということになつて来るのでありますけれども、本法の趣旨上農業資産を返すのはよろしくない。その物自體を返すのはよろしくない。その價格で返しなさいということを規定いたしておりまして、本法の趣旨でありますとこのの相續人が農業資産全體を引継ぐという趣旨を明らかにしておるのであります。
#78
○説明員(小倉武一君) この法律の適用におきまして、農業資産の價格を如何様に評價するかということが非常に問題になつて来るのであります。それは例えば、十二條の場合が最もいい例でありますけれども、さような農業資産の價格を如何様に決めるかどうかということにつきまして、十六條は、これは時價の範囲内で農業経営の収益を基準として定めるということにいたしておるのであります。時價と申しますのは、先程も話がありましたように、公定價格のあるものにつきましては公定價格ということであります。その範囲内で、尚且農業経営の収支がとれるように、収益の関係を基準として定めるということにいたしまして、農業資産を相續しました者が、十分農業経営をやつて行けるように、この法案の趣旨に基きまして、さような規定を置いたのであります。
#79
○北村一男君 この規定は、収益を基準になさつてはおりますが、必ずしも私は収益ばかり出るものとは考えませんが、損な場合はどういうことになりますか。それについて御見解を伺いたいと思います。
#80
○政府委員(山添利作君) これは損な場合には、マイナスにするかというと、それはそうじやないのでありまして、やはり社會的に見まして通常のその地帯における経営、その規模の、その種類の経営というものを基準にして考えることの方が妥當でありまして、例えはたまたま或年に自分の方が非常に不作を蒙つた、かようなものが又標準になる筋合でもないわけであります。
#81
○北村一男君 私はその損という場合が相當續くべきことを、これは農政局長がさつき仰せられましたが、想定ができるのであります。そうするところの収益というのにみんな集中……この法律からいうと、収益を基準とするということが、果たして妥當でありますか、どうですか。まだ他に適當な文字がないものでありますか。勿論私のいう意味は、只今局長のお話のように、収益がないから、損だからマイナスになるというようなことではありませんが、私が収益という文字から来る感じを申上げると、當局においては農業を経営すれば、必ず収益があるというお考えだと困るという意味も含めて申上げておるのでありまして、経営は必ず収益を伴うものなりというお考えであれば、例外なしに相當の期間に亙つて赤字が出ることがあるということをお考になつて、ここに適當の文字をお使いになる御意向がないかということをお尋ね申しておるのであります。
#82
○政府委員(山添利作君) これは考え方によりますれば、収益を基準とした價格というものは、これはなかなかむずかしいのであります。従つて時價による。取引價格による。これは比較的明瞭であろうと思います。その時價というのは、農業の場合について見ますと、實際収益が價格により高いのが例であります。今の馬の話などがそういう適例であります。そういうものの収益を基準としたところの或枠の範囲で押える。こういうことが第十六條の趣意であります。従つて農業経営全體を見まして、それはやはりその地方々々における農業資産ということにつきましては、おのずからそこに評價の基準の考え方というものが、今でも成立しておるでしようし、今後もこういう法律がありまするれば、そういうものが成立すると思うのであります。そういうことを基準にしてやつて貰えばよろしい。こういう考であります。
#83
○北村一男君 そういたしますと、まあ時價でありましても、これこそ私はやはり兄弟の間柄でありますから、それは経営が不可能のような價額をつけることはないと思いますから、時價の範囲内で、若しその上で條件をつけるなら、農業経営のできる状態を基準にして、つまり収益という文字が……私は収益という文字から受ける感じが、どうも我々の考としては邪魔になるというようなことから、そういうような意味合に、ただ文字だけを御修正になる御意向がないかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。
#84
○政府委員(山添利作君) 議會の審議を仰いでおります法律案について、政府が自分で修正を申出ることはないのでありますから……。そのことは別といたしましても、心持は北村委員の仰せになりました通りなんでありますが、併しそういう状態を基準として定めると言いましても、これはみずからの制限でありまして、やはりそこに或數字的なものが定め得るところのものでなくちやならんわけであります。収益と言えば、それはその地方一帯の平均な収益、それもある。例えば農林省でやつておる農家経営調査、これを基礎にしてやると決めたわけでもありませんので、結局これも観念になりますけれども、やはりそこに數字的に扱い得るところの基準を與えるということが必要でありますので、法律の文字としては、こういう文字の方が適當だと思つております。
#85
○委員長(松村眞一郎君) それでは第十七條に移ります。
#86
○説明員(小倉武一君) 十七條の第一項は、第六條等によります請求、それに基く裁判の管轄のことでありますが、相續が開始される場所の地方裁判所にこれをするということにいたしておるのであります。それからこの裁判の手續でありますが、これは非訟事件手續法によるという趣旨を書いておるのであります。
#87
○委員長(松村眞一郎君) 第十八條も序に御説明願います。
#88
○説明員(小倉武一君) 十八條に移りますが、第一項は、申上げましたような六條等による裁判があつた場合に、それに對して共同相續人が即時抗告をすることができる旨を規定いたしておるのであります。即時抗告と申しますのは、御承知の通り素早く物事を片附けるための決定や命令などに對して、異議を申立てることであります。
 それから第二項におきましては、この十二條以下十四條の関係になるのでありますけれども、一項は共同相續人でありまして、二項は當事者とありますのが、十四條などの関係がありますので、その場合にはもう既に相續が行われておりまして、分割も済んでおるというような場合でありますので共同相續人とは言えない場合があるのであります。さような場合がありますので、當事者というふうに、文字を變えておるのであります。それから三項、四項は特別に御説明を要しないかと思います。
#89
○委員長(松村眞一郎君) それでは第十九條。
#90
○説明員(小倉武一君) 十九條におきましては、この法律でやります裁判につきましては、成るべくこの具體的な村の實情、殊に農地が、この法律では最も重要な農業資産になつておりますから、その関係につきまして、丁度各村に委員會がありますので、その委員會の委員の意見を聴くということにしておるのであります。委員會とぜずに、委員會の委員ということにいたしましたのは、裁判所が意見を聴く場合に、簡便に聴けるというふうにいたしたためでありまして、委員會ということになりますと、いちいち委員會を開かなくてはならない。そうして又委員とうことにすれば、委員の方に裁判所に来て貰つて話を聴くという便宜も得られるわけでありますので、委員ということにいたしたのであります。
#91
○委員長(松村眞一郎君) 第二十條。
#92
○説明員(小倉武一君) 二十條は、この法律を適用しない例外の場合を規定したしておるのでありまして、その例外の場合と申しますのは、民法その他の法律により分割の前に相續財産について清算が開始された場合でありまして、この場合を具體的に申しますと、民法による場合は、例えば相續編に規定してあります限定承認、或いは財産分離というような場合でありますし、その他の法律と言いますのは、破産法の場合が主であろうと思うのであります。いずれの場合も清算が行われることになつておりまして、農業資産であろうとなかろうと、競売に付せられるというような関係にもなるのでありますので、かような場合に本法を適用するということは困難でありますし、又極めて例外の場合でありますので、これを、この本法の趣旨を害しないということで、除外した次第であります。
#93
○委員長(松村眞一郎君) 附則で日を決めなかつたには。
#94
○説明員(小倉武一君) この法律は別段施行令等を要しませんので、公布と同時に施行する。成るべく早くやるということにいたしたのであります。而も新しい憲法が施行されまして、民法の應急措置が行われておりまして、只今既に均分相續になつておりますので、かような規定をいたしたのであります。
#95
○竹中七郎君 この十九條の市町村農地委員會の委員というのは、これは委員の何人かあります中で、裁判所が、勝手にこの委員というふうに指名してやるのですか。或いは委員長を召喚するか、出頭を願つて、そうしてやるのですか。委員というと、勝手な人をやるのですか。
#96
○政府委員(山添利作君) それは裁判所の……。
#97
○竹中七郎君 大體本人の、家の状態をよく知つている委員の出頭を願つて、そうして意見を聴くわけですね。
#98
○政府委員(山添利作君) さようでございます。
#99
○藤野繁雄君 この法律を全體見てみますというと、農業資産をできるだけ分割せずして、適正規模の農業経営をやろうということが土臺になつておるようでありますが、相續が數囘重なつたならば、更に細分されるということになつて、適正規模の農業経営ができないということになる虞れがあるのであります。それで百尺半頭一歩を進めて、適正規模の農業経営は、これだけの耕地がなくちやできないのだというようなことで、或一定の耕地であつたならば、それを農業資産にして、その耕地は細分せないというような方法をとられなかつた理由は何處にあるか。お尋ねしたいと思います。
#100
○政府委員(山添利作君) 相續が短い期間内に度重なつて起る場合におきまして、物としての農業資産そのものは分割いたしません。ただ農業資産を承け継ぐ人、即ち農業経営者が、兄弟なり親戚なりに對する負擔が殖えるということがあるわけです。而してこの家産法を採らなかつた所以のものは、農業経営の方式等におきましても、今まででもひどい變りはしておりませんが、これからも急激な變化があるとも思えませんけれども、併しながら時代の状況によつて、いろいろ變つて行くであろう。現に適正規模というような観念も、戦さが満州にありました時分と、現在との社會状勢の進むに従つて變つて来たと同様に、経営につきましても、環境乃至はいろいろな農業機械等の進歩、或いは外国農業との闘争等で、いろいろ變化を来すのであります。そこにその變化に即應しつつ、又農業経営も発展して行くのがいいのじやないかという考をいたしておるわけであります。これを家産制度等によりますれば、左様な點について障害を来すわけではありませんけれども、何か思想的に固定するようなところがありますのと、同時に金融方面におきまして、先程御質問がありましたような、農業資産を擔保にするというようなことが、非常に制限されるという缺點がある。その事柄は農業経営の発展上面白くない。又元来法律を作りましても、それが一般のその社會に受け入れられる。歓迎される法律でなければならぬ。家産法を作りましても、恐らく私は日本の農家が歓迎する。又登記をするというようなことまでやるとは思わないのであります。従つてこういう程度のところが、現代として一番いいではないかと、かように考えておるのであります。
#101
○北村一男君 大體こんなものですね。
#102
○委員長(松村眞一郎君) 御質問はございませんか。
#103
○北村一男君 これでちよつと止めて貰つて。
#104
○委員長(松村眞一郎君) では速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
#105
○委員長(松村眞一郎君) 速記を始めて。
#106
○阿竹齋次郎君 この間から説明を聴きましたけれども、問題になつておる憲法に反するとかせんとかいう問題ですが、憲法は言うまでもなく私有財産制度が認められておるのでありますけれども、この法令を拵えても政府は何も差支ないと思つていらつしやるかどうかということをはつきりして頂きたい。もう一つは、政府は将来日本の国の土地国有をしようという計書を持つておるか。これがこの問題に影響して来ると思います。
#107
○政府委員(山添利作君) 私どもは憲法に違反するとは毛頭考えておりません。土地国有思想は持つておりません。
#108
○阿竹齋次郎君 連立内閣が社會政策を採つておる。社會黨は今まで国有を嫌つておつた。大きな看板であつたその方針まで變つて来る。これはよろしいのですが、併し社會政策を行うのには国有ということになつて来る。それは今日の問題でないからよろしい。そこで憲法にちよつとも觸れへん、差支ないということの具體的の説明を聴かして貰いたい。實はその點私も現在の日本の農家経営の實情としてこの程度でよかろうと思つておる。この法案は、現在の實際の問題としてこうして行かなければならんと思つておる。憲法の問題が出て来るからここではつきり聴かして欲しい。差支ないというならば、具體的にこれは差支ないということの説明を聴かして頂きたい。
#109
○政府委員(山添利作君) ちよつと水掛論的なことを言いますよりも、他の例を取つて見ればいいと思いますが、民法におきましても個人の遺言の自由、その遺言の自由の結果に基くのでありましようけれども、遺留分を侵さない限りは、或る人に特別の利益を與えるという均分相續の例を破つておるわけであります。この法律は解釋によりましては、農家が遺言をするのに代つて、公共の利益に合し、又事實、農業経営はかようにして行われるであろうという客観的状況に合うような意味における推測と申しまするか。遺言をする人の遺言に代るべきものであつて、これは又その人が若し遺言をしたならば、こういうふうにしたであろうというところに私は代つておると思う。まあ社會的な事情、又農家の實際の心持、かように考えておるのでありまして、或る必要なる場合に均分相續によらないということは、これはもうあり得ることではないか。委員長の仰せになるように、公共の福祉のためにかような法令ができるということは當然であろう。而してこの法律は、遺言によるところの處分、特別相續分を減らすとか減らさんとか。或いは農業資産を贈與するとかいうことの自由性はまだ奪つてないのでありまして、憲法の規定乃至精神に反するとは考えていないのであります。
#110
○阿竹齋次郎君 私はこう思つておる。共同の所有權の分割を禁ずるものであつて、所有權の否認にならんであろうと思つて、政府は御提案なさつておるのか知らんと思つて、この法案を見ておる。即ち財産の分割を禁ずるものであつて、私有財産、不動産の根本的所有權を否認するものでないというのが、政府のお気持ちであつたと思つておつた。本日はこの程度で……。
#111
○委員長(松村眞一郎君) それでは一應皆さんの御質問が大體終つたように認めますから、今日はこの程度で終了いたしたいと思います。それじや委員會は今日はこの程度で散會いたします。
   午後零時二十六分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     松村眞一郎君
   委員
           大野 幸一君
           奧 主一郎君
           北村 一男君
           竹中 七郎君
           藤野 繁雄君
           阿竹齋次郎君
  小委員外委員   木下 源吾君
  政府委員
   農政事務官
   (農政局長)  山添 利作君
  説明員
   農政事務官
   (農政局農政課
   長)      小倉 武一君
   司法事務官
  (民事局勤務)  上田 明信君
ソース: 国立国会図書館
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