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1988/03/29 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 科学技術特別委員会 第2号
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1988/03/29 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 科学技術特別委員会 第2号

#1
第114回国会 科学技術特別委員会 第2号
平成元年三月二十九日(水曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     岡野  裕君     倉田 寛之君
     成相 善十君     大浜 方栄君
     穐山  篤君     及川 一夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         高桑 栄松君
    理 事
                木宮 和彦君
                後藤 正夫君
                千葉 景子君
                伏見 康治君
    委 員
                大浜 方栄君
                岡野  裕君
                岡部 三郎君
                倉田 寛之君
                志村 哲良君
                高平 公友君
                出口 廣光君
                長谷川 信君
                林  寛子君
                前島英三郎君
                穐山  篤君
                稲村 稔夫君
                及川 一夫君
                高杉 廸忠君
                吉井 英勝君
                小西 博行君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       宮崎 茂一君
   政府委員
       科学技術政務次
       官        吉川 芳男君
       科学技術庁原子
       力局長      平野 拓也君
       科学技術庁原子
       力安全局長    村上 健一君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        高橋 利彰君
   説明員
       原子力安全委員
       会委員長     内田 秀雄君
       資源エネルギー
       庁公益事業部原
       子力発電安全管
       理課長      三角 逸郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○科学技術振興対策樹立に関する調査
 (派遣委員の報告)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(高桑栄松君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宮崎科学技術庁長官。
#3
○国務大臣(宮崎茂一君) 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 原子力の開発利用を進めるに当たりましては、安全の確保を図ることが大前提であることは申すまでもありませんが、さらに万一の際における損害賠償制度を整備、充実し、被害者の保護に万全を期することにより国民の不安感を除去するとともに、原子力事業の健全な発達に資することが必要であります。
 このような観点から、原子力損害の賠償に関する法律が昭和三十六年に制定され、原子力事業者に無過失損害賠償責任を課すとともに原子力事業者への責任の集中、損害賠償措置の義務づけ等の一連の制度を導入し、さらにその後の諸情勢の変化に対応して所要の法改正が行われてきたところであります。
 昭和五十四年の法改正以来九年を経過した現在、最近における原子力損害賠償制度に係る内外の状況の進展等にかんがみ、賠償措置額の引き上げを図ることにより被害者の保護に万全を期するとともに、原子力損害賠償補償契約及び国の援助に係る期限を延長する等の措置が不可欠であります。
 これら諸点につきましては、原子力委員会におきまして鋭意検討が行われ、昨年十二月に本法の改正についての決定をいただいたところであり、これを受けまして改正案を取りまとめここに提出した次第であります。
 以上、本法案を提出いたします理由につきまして御説明申し上げました。
 次に、本法案の要旨を述べさせていただきます。
 第一に、現在の賠償措置額百億円につきまして、諸外国の例や民間責任保険の引受能力といった点を総合勘案し、三百億円に引き上げることといたしております。
 第二に、原子力損害賠償補償契約の締結及び国の援助に関する規定の適用を延長し、平成十一年十二月三十一日までに開始された原子炉の運転等に係る原子力損害について適用するものとしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げました。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
#4
○委員長(高桑栄松君) 以上で本案の趣旨説明は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○木宮和彦君 それでは、私から、まずただいま提案されました原子力損害の賠償に関する法律の一部改正につきまして、質問をさせていただきたいと思います。
 まず第一に、原子力発電などをめぐる最近の情勢が大分いろいろ新聞にも出ておりますが、しかしながら、いろんな要素がたくさんあろうと思いますが、現在の日本の電力総量からいいますとまさに三割といいますか、三分の一は原子力発電に頼っていると思います。日本では原子炉が現在三十六基、二千八百七十万キロワットを原子力発電に頼っているわけでございますが、この原子力というものと我々国民の生活とは切っても切れない関係にあると思いますし、特に経済性あるいはエネルギーの安定性ということにつきましては、まさに我々がどうしてもこれをぬぐい去ることのできない事実でございます。
 しかしながら、この安定した安いエネルギーではありますけれども、しかしそれなりにまた危険もはらんでいることも事実でございまして、特にチェルノブイリの事故がございましたし、その前にアメリカでちょうど十年前にスリーマイル島の事故がございましたが、最近、それらを国民が非常に敏感に感じてそして危惧を抱いている点がたくさんあろうかと思います。最近の原子力の反対運動が今どういう状態でありますか、その辺をひとつお伺いをしたいと思いますのでお願いいたします。
#6
○政府委員(平野拓也君) 原子力発電というものが現在国民生活の中に非常に深く浸透しているということは、委員の御指摘のとおりでございます。昨年来、主としてチェルノブイリの事故等の影響であろうかと思いますが、原子力に対する反対運動というものが非常に盛んになっているということでございます。これの原因は、先ほど申し上げましたようにチェルノブイリの事故、それによります一部輸入食料品に放射能等で若干のものが発見されたといったようなことがきっかけになったわけでございます。
 これは従来から反対という動きはあったわけでございますけれども、特に最近の特徴といたしましては、非常に横の広がりといいますか、従来は原子力発電所の所在地等が主として中心ということでございました。それに対しまして、最近は都市部に至るまで全国的な広がりという一つの特徴がございます。
 それから、反対される方々も、従来はどちらかといえば専門家に近いような方々が中心でございましたけれども、最近は一般の主婦の方々とかあるいは若年層の方々、そういう方々が反対運動の中核になっていらっしゃるというふうに私どもも感じているわけでございます。それから、従来はともすれば技術的な論争という色が強かったわけでございます。したがいまして、同じような科学的な認識のもとにこれを賛成、反対を議論するというふうなことでございましたけれども、最近はどちらかといえば、情緒的といいますか、ムード的といいますか、そういうふうな動きがあるというふうなことでございます。それから、一部大変科学的には正しくないような知識をもとに反対をされるというふうな動きもあるということでございまして、私どもいろいろ議論があることはこれはまた健全な社会として当然であろうと思いますけれども、ぜひ科学的、技術的に正しい認識のもとにいろんな議論が闘わされるということを願っております。
 そういう意味で、そういうものに対しまして、やはり私どもとしてもできるだけパブリックアクセプタンスという観点でいろいろな広報活動を行っているというのが現状でございます。
#7
○木宮和彦君 ただいまの答弁のとおりだと思いますが、我が国が原子力の開発利用に着手してからちょうど三十年たちます。また、商業用のいわゆる原子力発電所が運転開始してからちょうど二十年近くなると思いますが、この間の関西電力高浜発電所に対するIAEAのOSARTでもわかりますように、大変にいい成績である。同時にまた、諸外国に比べても日本は原子炉等規制法が非常に厳しくて、今まで非常に高レベルの安全性を保ってきたと思います。
 しかし、最近日本におきましても、幾つかの原子炉の中の漏れがあったり、あるいは一部、再循環ポンプが故障して金属片が原子炉の中にまで侵入したというような事実が報道されております。そういう意味からいきまして、この原子炉の事故というものは絶対にあってはならないことなんで、これを絶対になくすということはなかなか困難なことかもしれませんが、しかし私は絶対にできないわけではないと思うのです。特に、何といいますか、扱うのは人間でございますので、やはりそこに携わる人たちが常にダブルチェックといいますか、新幹線ももう既に三十年近くのキャリアを持っておりますが大きな事故が一回もないというのは、やはりダブルチェックでもって運転席の制御装置と、それから中央制御装置と両方でもって確かに、しかも事前に何かあればすぐとめるという、そういう姿勢を貫いてきたからこそ今日大きな事故につながっていないんだろうと思うのです。
 やっぱりこの原子力発電所もしかりでありまして、心の緩みが一番大きな原因であろうかと思いますが、それらについて、原子力発電の利用について国民の理解を得るための根本的な安全の実績を積み重ねることが一番私は大事だと思うんですが、その辺、安全確保に対する基本的な科学技術庁当局のお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
#8
○政府委員(村上健一君) 原子力の研究開発等利用を進めるに当たりましては、今先生御指摘のとおり、安全性の確保に万全を期すことが大前提でございます。このため、御案内のとおり原子力施設の設計、建設、運転等の各段階におきまして、原子炉等規制法等に基づきます厳しい安全規制を実施してきているところでございます。
 特にその設置等に当たりましては、まず行政庁が安全審査を行いまして、その結果について、きょうここに委員長もお見えになっておりますが、原子力安全委員会がさらにダブルチェックを実施することによりまして安全性の確保に万全を期しているところでございます。
 また、内外の原子力発電所の事故、故障等の経験をも十分踏まえ、安全対策には万全の措置を講じてきたところでございます。
 以上のことから、我が国の原子力施設の安全性は十分確保されているものと考えておりますが、今後とも原子力の安全確保につきましては最大限の努力を払ってまいる所存でございます。
#9
○木宮和彦君 ぜひひとつ口だけじゃなくて現実に、現場がしかるべき体制が組めますように今後一層の御努力をお願いを申し上げたいと思います。
 次にお伺いしますが、ついこの間の東京電力の福島原子力発電所の再循環ポンプの事故ですけれども、新聞の発表によりますと、私それしか知りませんが、警報が鳴ったんだけれども、出力を落としたらそれがなくなって、振動もわずかに、近く定期検査があるので、全部とめないでまた出力を上げたらまたブザーが鳴った、こういうふうに私は理解をしておるのでございますが、最初にランプがついて、出力が下がろうがとにかく一応とめて、そして全部ある程度点検すればあそこまでの事故にならなくて済んだんじゃないかなという、これは素人考えでございますが、その福島第二原子力発電所三号機のトラブル、原子力安全委員会はどのように受けとめていらっしゃいますか、お伺いをしたいと思います。
#10
○説明員(内田秀雄君) 今回の福島第二発電所の三号機の事故につきましては、原子炉施設の冷却材の再循環系におきますポンプの破損に伴う事故でございまして、非常に重大な事故と認識しております。特に、その結果住民の方々の不安を引き起こしましたことをまことに残念に思っておるところでございます。
 原子力安全委員会は、今回のトラブルに関しまして行政庁から数回にわたり報告を受けてきたところでございまして、先ほど先生もおっしゃいましたように、何か異常の前兆があったときに早目に対策をとるということが非常に大事なことでありますが、また、どのようなトラブルに対しましても、同様の事象の発生を二度と起こしてはならないと考えているところでございます。このため、今回の事故につきましても、徹底した原因の究明が一番重要と認識しておりまして、行政庁に対し、破損部品の回収作業と原因の調査の徹底を要請しているところであります。
 今後、原因の究明にはまだ時間がかかると思いますが、調査の最終結果の報告を待ちまして原因を確定し、適切な対策を立てるよう行政庁を指導する所存でございます。
#11
○木宮和彦君 大変残念な事故だと思いますが、今後二度とこういうことがないように徹底的な調査と、それからまた、地元の自治体あるいは地元の住民とのコンセンサスといいますか、信頼関係がいち早く取り戻せますように一層の御指導とそれから御協力をぜひ賜りたいと思います。
 さて、こういう問題が起こったことも一因はあると思いますが、最近原子力に対する反対運動が非常に盛んになり、しかもそれが、私も素人でございますから余り大きなことも申し上げられませんが、やや誤解によるものやら、あるいは非常に原子力そのものについての、何といいますか漠然とした不安といいますか、あれはもうだめだというような概念が特に若い人とか、あるいは女性の方々に非常に多いんじゃないか。非常に情緒的と申しますか、感情的にどうも反対している、理論的なものが全くないにもかかわらず反対しているというような嫌いが、決して私の考えを押しつける気持ちは毛頭ございませんが、私が見る目ではそんな気がいたしてしようがないんです。しかし、不安を除くということがやはり当事者の責務であろうかと思いますので、ぜひ今後その人たちにわかるような、わかりやすい、しかも科学的な知識を冷静に理解していただくようなことが私は不可欠ではないかと思うんです。
 ですから科学技術庁も、あるいは電力会社も通産省も、これからテレビとかあるいはラジオとか、放送とか新聞とかいうマスメディアを十分利用されて、直接国民一人一人に原子力というものは安全で、しかも安全な実績を積みながら啓蒙をしていくという、俗に草の根運動と申しますけれども、何かそういう地道な理解を得るような努力をやっぱりしていく必要があるんじゃないか、私はそう思うのでございますが、それらにつきまして何かお考えがありましたらひとつお述べいただきたい、こう思います。
#12
○政府委員(平野拓也君) 原子力につきまして国民の皆様方の御理解をいただくということは、これは大変大事なことでございます。私どもは、科学技術庁に限りませず、資源エネルギー庁あるいは電力事業者ともども従来からそういう意味での広報活動といったことは、できるだけのことはやってきておるつもりでございますけれども、昨年でございましたですか、ある新聞の世論調査等によりますれば、国ないし事業者が十分やっているかという問いに対しましては、ほとんどがまだ不十分であるというふうな世論調査の結果も出ておるというようなことも私ども非常に反省をいたしまして、昨年来より一層こういう努力を続けているわけでございます。
 特にパンフレットとかあるいはテレビ、ラジオ等でやりますいわゆるマスメディアを使ってやるような広報ということは在来からやっておるわけでございますが、昨年の秋から新しい試みといたしまして、私どもの若手の職員でございますとか、それから関係の研究機関の研究者の方々、そういう専門家を数十名選抜いたしまして、各地に出かけてまいりまして、これは賛成反対を問わずお話を聞いていただけるサークルといいますかグループの会合に出かけていきまして、講演をしたり対話をしたりというふうないわゆる草の根といいますか肉声で話し合う、そういう試みをやっておるわけでございます。既に現在まで三十数回そういうところへ出かけていっておりますし、その結果はこれはもう立場がいろいろありますけれども、とにかく生の声で話し合えたことはよかったというのが大方の評価であると私どもは受けとめております。
 したがいまして、今後ともこれは大変人手と時間、費用もかかるわけで、なかなか苦しい点もございますけれども、やはりこういう時期でございますし、息長くこういう活動を続けていきたいというふうに今考えておるわけでございます。
#13
○木宮和彦君 ぜひひとつ。それから、できましたらやっぱりわかりやすいように漫画を利用するとか、いろいろな意味で親しんでいただけるような方策もお考えになることが大事じゃないかな、こう思います。
 それから、長官、ちょっとお伺いいたしますけれども、長官もこの雑誌に書いてございますが、「最近、政党の中でも原子力は不要との主張がありますね。これらの人々に対しては、現在原子力は総電力の三十%を供給している。三割減のエネルギーで日本の経済はどうなるんですかと問い返して、原子力に頼らざるを得ない日本の資源状態を理解してもらうようにしています。資源の乏しい我が国では、石油依存度を低減しなければなりません。」云々と、こう書いていますね。二酸化炭素がふえるということも書いてございます。
 日本にとってエネルギーの問題として原子力発電がどうしても必要であるということ、それから、今局長が述べられたように、これから国民に安全性を訴えていくというそういう意味で、長官みずから御決意といいますか所感がございましたら、ひとつお述べいただきたいと思います。
#14
○国務大臣(宮崎茂一君) 御承知のように、日本は非常に資源のない国でございまして、化石燃料もほとんどが輸入でございます。そういった不安定な輸入のものに頼らなきゃならぬ。そしてまた、化石燃料は最近の地球の温暖化の原因の一部になるんじゃないかというような懸念もあるようでございますので、そういった意味、あるいはまた、ほかに水力とか潮力とか太陽熱とかいろいろエネルギー源はあるわけでございますが、まだ経済的に大規模な発電をするに至っておりません。したがいまして、これから十年ぐらいの間はどうしても原子力に頼らざるを得ないんじゃないか。
 日本のエネルギーの需要の方は二、三%ぐらいずつふえてまいりますので、この需要をどう対処するかということを考えてみますというと、やはり原子力に頼らざるを得ない。したがいまして、今電力需要の中の三割ぐらいでございますが、十年もすると四割ぐらいになるんじゃないかというような御意見が多数でございまして、私どももそのように考えております。
 しかしながら、今委員のお話のように原子力は安全性ということが大前提でございますので、いろんな意味からひとつ安全性につきましては万全の努力をいたしたいと先ほども安全局長から話がございました。そういった意味でこの安全性に対する国民の皆さん方の御意見、これは謙虚にひとつ受けとめまして、一つ一つそういった安全性に対する不安を解消してまいりたい。そのためには、電力会社もあるいはエネ庁も私どもも関係者、国民の御理解と御協力を得るために最大の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。これからも安全が大前提でございます。この点につきまして一生懸命やる覚悟でございます。
#15
○木宮和彦君 ありがとうございました。
 ひとつ、ただいま長官述べられましたように、やはり国民が不安を持っていることを少しでも除去していただいて、しかも、安全が積み重ねられていくような運転を心からお願いを申し上げたいと思います。
 さて次に、今度は核燃料サイクル施設についてちょっとお伺いしたいんですが、青森県六ケ所村における日本原燃産業株式会社及び日本原燃サービス株式会社による核燃料サイクル施設の建設計画は順調に進んでいるように聞いておりますが、昨年の十二月二十九日ですか、青森県の農協あるいは農業者団体の大会において反対決議が行われた。地元では必ずしもこの核燃料サイクル施設の建設に賛成ではないという意見が多いというふうに聞いておりますが、この際、それらの施設がどうなっているか。
 私は、大いにこれを進捗していただきたいという立場から、現在の施設建設の意義と進捗状況、それからこれからどういうふうになっていくのか、ひとつこの際お伺いをしたいと思います。
#16
○政府委員(平野拓也君) 核燃料サイクルにつきましては、先ほど来お話が出ておりますように、我が国の電力供給の三割を占める原子力発電を今後ますます進めていくためにもどうしてもやはり必要な施設であると私どもは考えております。と申しますのは、現在のいわゆる核燃料サイクルのほとんど大部分は海外に依存しているということでございますので、やはりセキュリティーという関係からも国内である程度の設備を持ちましてこういう仕事をするということがどうしても必要であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 現在の進捗状況でございますけれども、まずウラン濃縮施設でございます。これは昨年の八月に事業の許可がされておりまして、秋からもう建設に入っているという段階でございます。
 それから、低レベルの放射性廃棄物の埋設の事業でございますが、これにつきましては昨年の四月に事業の許可の申請がなされたわけでございまして、現在、科学技術庁におきましてその安全の審査を行っているということでございます。
 それから、再処理につきましては、現在、事業者におきまして事業指定の申請のための準備を進めておるという段階でございまして、近々そういう申請が出てまいるのじゃなかろうかというふうに考えております。
 私どもといたしましては、今後とも安全の確保を大前提に地元の御理解をいただくべくいろいろ努力をするということでございまして、昨年暮れの県内の農業者の団体の方で反対の決議がなされたことは大変残念でございますけれども、これにつきましてもいろいろ御理解をいただくべく事業者あるいは県も含めまして、私どももそのために努力をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
#17
○木宮和彦君 これは大事な不可欠な問題でございますので、国においてもこの事業が成功するように、今後ひとつ万全の支援をぜひお願いを申し上げたいと思います。
 それから次に、最近国民の一部の中に、非常に不安が広がっている原因の一つの中に、放射性廃棄物、どうしても原子力発電が行われれば放射性廃棄物というものが出るのは当然なんでして、それについての不安が非常に多いように聞いております。その放射性廃棄物は原子力の開発利用にどうしてもこれは今私が申し上げましたように不可避のものでございまして、この発生した廃棄物をどうするか、これが原子力推進の国是としてはどうしても欠くことのできない大事な問題だと思います。
 ただいま低レベルの廃棄物についてはお伺いしたとおりだと思いますが、これからは低レベルだけではなくて高レベルのもの、あるいは埋設事業化が進められたときにその対策はどうなるのか、またどういうふうにこれから進めていくのか、またそれら放射性廃棄物対策をより一層積極的に進め、しかも国民の不安をなくしていくということが大事だと思いますので、この際、放射性廃棄物に対する国の対応策はどんなふうになっているか、ひとつ詳しくお伺いをしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
#18
○政府委員(平野拓也君) 委員仰せのとおり、放射性廃棄物の問題というのは、原子力の開発利用を進めるに当たってこれをきちんとするということがぜひ必要なことでございます。そういう意味におきまして、国といたしましても従来からこれにつきましての研究開発を初めさまざまな施策を進めてまいっているところでございます。
 まず、低レベルにつきましては先ほどもお答え申し上げましたように、今下北半島におきまして処分をするための事業の準備が進んでいるということでございますが、高レベル、これは再処理工場から出てまいります、量は少のうございますけれども、比較的といいますか非常にレベルの高い廃棄物でございますので、これをどうするかということが大きな課題でございます。私どもは、最終的にはこれはガラスで固化をいたしまして、地下数百メートル以下の深地層に処分をするという基本的な方針を立てておりまして、これにつきましてのさまざまな技術開発を現在進めているというところでございます。
 具体的には、現在動力炉・核燃料開発事業団の東海の再処理工場に、そこで発生いたしました高レベルの放射性廃棄物があるわけでございますが、これをガラスに固めるためのプラントの建設を進めておるということでございます。
 さらに、これを埋設処分するのは、このガラス固化体ができましてから三十年ないし五十年間冷却をするわけでございますが、具体的に埋設処理はその後でございますけれども、その埋設処理するための地層の条件その他につきましての研究開発というものを現在進めておるわけでございます。北海道の幌延におきまして貯蔵工学センターというものを建設したいと私どもが考えておりますのは、研究開発の一つのセンターとしてそういうものを建設したいということで、今地元といろいろ御相談を申し上げている、こういう段階でございます。
#19
○木宮和彦君 きのう、テレビ見ておりましたら、ちょうど昨日がスリーマイル島のあの事故が起こってから十年という日、しかもなおその原子炉がそのまま今も水取り作業を少しずつやっている。どうしてこれを放射能漏れがないように封じ込むかということが非常な課題であるというようなテレビの報道もございましたけれども、商業用の原子力発電所というものの寿命は、聞くところによりますと大体三十年から四十年くらいだというふうに聞いております。ですから、海外では既に原子炉の廃止措置が行われた事例もあると聞いておりますけれども、日本でも一九九〇年代後半にはもう既に御用済みといいますか、寿命が終わった原子炉をいよいよ廃止措置しなきゃならないということが現実的に起こってくると私は思います。
 この際放射性廃棄物が相当出ると聞いているその原子炉の廃止を、国民の中に不安を感じている人が非常に多いと思うんですけれども、この寿命が終わった原子炉の廃止措置について関心を持っておるんですが、これから原子炉を安全に廃止する技術、それから廃止する措置について生ずる放射性廃棄物の処理あるいは処分、それから原子力推進に当たって非常に重要な課題であるということで、ひとつこの際国の対応策、もうお考えだとは思いますけれども、ぜひひとつお述べいただきたい、こう思います。
#20
○政府委員(平野拓也君) 原子炉の寿命が終わった後の措置でございます。これの考え方は大きく分けまして三つぐらいございます。
 一つは、原子炉の中の燃料といったようなものを抜き取りまして、ほぼそのままで閉鎖をして管理する、こういうやり方が一番簡単なやり方でございますが、そういう方法が一つ考えられます。これは密閉管理というような言い方をしておりますが、そういうことが一つあります。
 それから、圧力容器といったものをコンクリートで封じ込めてしまうということで、これは遮へい隔離という言い方をしておりますが、そういう方法もございます。
 それから三つ目は、原子炉を完全にきれいに解体してしまうという解体撤去、こういう方法があるわけでございます。
 それで、我が国におきましては、昭和五十七年に原子力委員会が長期計画を策定したわけでございますが、それにおきましては、「敷地を原子力発電所用地として引き続き有効に利用することが重要」、そういう認識のもとに、「運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則」とする、こういう方針を立てているわけでございます。これに基づきまして、政府といたしましてもこの廃止措置が安全にかつ円滑に実施できるように技術開発を現在進めているということでございます。
 具体的には、日本原子力研究所で我が国で初めて原子力発電を行いましたJPDRという炉がございますが、それをモデルにいたしまして昭和五十六年度よりその解体技術というものの研究を行いまして、その解体のためのいろんな測定技術なり、あるいは解体をするための切り刻むような技術とか、あるいはコンクリートを上手にはがす技術とか、そういう技術開発を進めてまいりまして、六十一年度からはそういう技術開発をもとに実際にこのJPDRを解体するという仕事を今続けておるわけでございます。こういう成果をまとめまして、今後実際の大型の商業用の発電炉の解体のために役立てたいというのが私どもの方針でございます。
 それから、この解体に伴いまして放射性廃棄物がたくさん出るんではないかということでございますが、確かに量的には、レベルは非常に低いものでございますけれども、たくさん出るということは当然考えられるわけでございまして、こういうものにつきましてはレベルに応じた合理的な処分を行うというふうな必要が出ようかと思いますが、そういう基準等につきましては、現在原子力安全委員会において検討を進めてくだすっておるというふうな状況でございます。
 それから、小さな炉の解体というのは、これは試験研究炉で幾つかの事例がございますので、我が国の解体技術は現在の技術でも相当程度のことはもう十分に対応できるというふうなのが現状でございます。
#21
○木宮和彦君 ぜひひとつ、これからの問題でございますが、現実にやってくるわけでございますので、なお一層対策を御検討いただきますようによろしくお願いいたしたいと思います。
 時間も半分以上過ぎてしまいましたので、きょう上程されました原賠法につきましてお尋ねをしたいと思います。
 この原賠法は、昭和三十六年に制定された法律でございますし、当時としては非常に画期的ないわゆる被害者保護を図るための立派な法律だと思います。この原賠法が今までに果たしてきた役割について政府の所見をお伺いしたいと思いますし、またその確認をさせていただきたいと思います。
#22
○国務大臣(宮崎茂一君) 原子力の研究開発を進めるに当たりましては、先ほど来いろいろ御議論がございますように、国民の理解と協力を得るということが必要でありますし、そして安全確保が大前提である、そういう立場から申し上げますと、この法律の被害者保護を図るために万全の備えが重要でございますし、この法律によりましてそういったことが十分確保されていくんじゃないかというような考え方、そしてまた原子力産業の事業の健全な発達の基盤をつくるというような意味からいたしましても、原賠法が今まで果たしてきた役割というものは大きいものだと考えております。
 今まではこれを適用した例はございませんけれども、しかしながらこの法律があるということによりまして安心が得られ、そしてまたそういったような役割も果たしていると考えますので、これからも一応この制度の、何と申しますか、整備充実と申しますか、そういう方向に向かって努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
#23
○木宮和彦君 今長官がお話しくださいましたように、この原賠法の意義というものは非常に大きいと思います。特に民法の枠を超えて、昭和三十六年は我妻栄先生などが健闘されて、こういう世界に冠たるといいますか、世界に例のない被害者保護に万全を期する立派な法律だとこう思いますが、この被害者保護の観点から我が国の原賠法はどのような制度になっているのか、また諸外国の制度と比べてどうであるかということをひとつこの際御説明いただきたいと思います。
#24
○政府委員(平野拓也君) 我が国の原賠法でございますが、これはまず無過失責任というものを原子力事業者に課しております。それから賠償責任を原子力事業者のみに集中する責任の集中という考え方をとっておるわけでございます。それから損害賠償措置を原子力事業者に強制をしているということ、それから損害措置額を超える損害につきまして、必要があれば国の援助もできるような規定が定められている、これが基本的な枠組みでございます。
 それで、海外でもほぼこれと同様な枠組みでございますけれども、ただ賠償の無限責任という考え方は、西ドイツあるいはスイスそれから韓国以外の国はそういう考え方じゃなくて有限責任という考え方をとっているわけでございまして、そういう意味では、我が国の原賠法は事業者に対して無限の賠償責任を課しているという意味で被害者保護には非常に十分配慮している内容になっているというふうに考えておるわけでございます。
#25
○木宮和彦君 ただいま無過失責任を課しているということでございますが、そうすると例えば大地震、天変地異があって原子炉が不幸にして漏れたというような場合でも当然電力会社が責任を持つと。我々の常識でいきますと、損保の場合にはいわゆる責任賠償、責任があって初めて出すので、責任がないものについては出さないわけなんですが、その補償がないわけなんですが、この法律によりましてはそれがあるということ、そういうふうに理解していいんでございますか。
#26
○政府委員(平野拓也君) 委員仰せのとおりでございまして、天災でございましても、これはやはり事業者に賠償責任があるということでございます。
#27
○木宮和彦君 そうすると、例えば第三者が、電力会社とは全く無関係な例えばの話で大変恐縮でございますが、民間飛行機が上を通っておって、天候が悪くてちょうどそれがぶつかったところが原子炉であった、そして原子炉漏れしたとか、あるいはアメリカの戦闘機が練習をしておってたまたま失敗して、それがちょうどうまくぶつかっちゃった、それで原子炉漏れしたというような場合、これはもう電力会社ではどうしようもないんですけれども、その場合も第三者の責任じゃなくて電力会社が賠償責任を負う、こういうふうに理解すべきなんですか。
#28
○政府委員(平野拓也君) 責任の集中ということでございますので、その場合も仰せのとおり賠償責任があるわけでございます。
#29
○木宮和彦君 そうすると、結局無過失でも責任を負うからこそ次に出てくる問題があるんですが、賠償措置額というものが百億と今まで決められたものが三百億になるというふうな理解でいいんでございますか、その辺はいかがですか。
#30
○政府委員(平野拓也君) 賠償措置額というのは現在百億、今お願いしております案では三百億ということでございますが、これは無過失賠償責任という責任を課しておるわけでございますけれども、実際上それを実行確実にたらしめる、それから迅速にそれを実行せしめるという意味で非常に流動性の高い資金をあらかじめ用意しておく、こういう趣旨で百億ないし三百億という責任の賠償措置額というものが考えられているわけでございまして、これをもちまして事業者の責任が終わりということではございませんので、あくまでも全額賠償するというのが建前といいますか、そういうのがこの制度でございます。
#31
○木宮和彦君 そうすると、三百億を超した損害が仮にあったとすると、あっちゃ困りますけれども、五百億あったとすると、三百億まではその措置額、言ってみれば保険みたいなものでそれで払う。あとの二百億もそれもその電力会社が当然支払う義務がある。しかしながら、その二百億に対してはもし払えない場合には国が融資するなり、あるいは一時払いというか、それを肩がわりしてあげるというふうな理解でいいんでございますか。
#32
○政府委員(平野拓也君) 仰せのとおりでございまして、これは三百億を超えた場合は必ずやるということではございませんので、その状況に応じまして支払い能力のある限りこれは事業者が負担するわけでございますけれども、被害者の保護の観点からどうしてもそれが負担し切れないような状況が仮にありますれば、これは政府がその内容、状況に応じてしかるべき措置をとる。その場合の措置は、ただいま仰せのように融資のあっせんをするとか、あるいは利子補給をするとか、あるいは場合によっては補助金を出すとか、いろいろなことが考えられますけれども、いずれもこれは国会の議決をいただいた範囲内で政府が措置する、そういう仕組みになっているわけでございます。
#33
○木宮和彦君 念のためにもう一回お伺いしますが、それは無過失の場合、例えば天変地異とか、あるいは第三者がやった場合でも同じことなんですね。
#34
○政府委員(平野拓也君) 同じでございます。
 ただ、天変地異の場合は民間の責任保険ではなくて、政府の補償契約という仕組みの中から保険金に当たる額は出す、そういう仕組みになっているわけでございます。
#35
○木宮和彦君 もう一つお伺いしますが、そういうことじゃなくて、例えば故意に破壊してやろう、名前挙げていいか悪いか知りませんが、例えば過激な分子がおって、あんなものは要らないというのでロケット砲を撃ち込んで、たまたまぶつかってこうなっちゃったというような場合はどうなんですか。これもやっぱり電力会社の責任なんですか。
#36
○政府委員(平野拓也君) 故意にそういう事態が、まあないと思いますけれども仮にあった場合も、被害者救済という意味からは電力会社が第三者、被害を受けた方々には賠償をいたします。故意の場合は、そういうことをやった今おっしゃったような過激な分子に対して事業者は請求権というのが当然あるわけでございますけれども、第三者に対しては事業者が責任を負う、こういう形になっているわけでございます。
#37
○木宮和彦君 そうすると、それでも電力会社は被害をこうむった人に対しては賠償する、これはこの法律の趣旨でございますね。ただ、民事的に請求権は持っている、だが現実には何もとれないということが多いと思いますけれども、その場合は結局は最終的には電力会社がかぶるというふうにならざるを得ないですね。そうですね。
#38
○政府委員(平野拓也君) そういうことになろうかと思います。
#39
○木宮和彦君 そういう意味で私も理解いたしましたが、しかしこれは被害者にとりましては大変頼もしい法律ではございますが、しかし逆に言いますと電力会社に対しては非常に過酷な法律のようにも思われますが、今回の賠償措置額を三百億に引き上げた理由、それからまた、三百億という一つの根拠は何でございますか。
#40
○政府委員(平野拓也君) この法律は、三十年前にできたわけでございますが、過去二回ばかり見直しを行っておるわけでございます。ほぼ十年おきにやっているわけでございます。ことしは九年目ということでこの見直しをやっているわけでございますが、その際の考え方といたしましては、まず一つは国際的な水準がどうかということを考えているわけでございます。この改正に当たりましては、原子力委員会に専門部会を設置いたしまして、各方面の専門家の方々にお集まりいただきまして種々検討をいただいたわけでございますが、その際におきましてはやはり非常に高いレベルの国際水準に、できるだけこれに合わせたいということが一つございました。
 それから、賠償措置の中心になっておりますのは民間の責任保険でございますが、これも引受能力ということも考慮しなければならぬということが第二点目にあるわけでございます。この責任保険は、国内だけじゃなくて世界に、約二十五カ国に二十六の保険プールというものがございまして、それに再保険に出すということでございます。それは実際上七割ないし八割ぐらいは海外に出るわけでございますから、そういう世界の保険プールの引受能力ということも考慮しなければならない。この二つの要素を総合的に勘案いたしまして、ぎりぎりの線ということで三百億という数字が出たわけでございます。
 ちなみに、日本と同じ制度、無過失賠償責任をとっております国で一番高いところは、西ドイツの約三百六十億円弱、それからスイスの三百四十億円強といったような数字がございます。そういうものを参考にしたということでございます。
#41
○木宮和彦君 原子力損害の発生が非常に広範囲でしかも金額的にもかなり大きくなるということもチェルノブイリの例を見ればわかるわけでございまして、果たして三百億で足りるかどうか、その辺はいかがでございますか。
#42
○政府委員(平野拓也君) 原子力の施設につきましてはそういうことを起こさないということが大前提でございまして、私どもはこういう大きな被害が起こるとは考えておらないわけでございますが、仮にそういう被害が出たといたしますれば、まず事業者としてはその三百億の範囲で払えるものは払う。それからそれを超した分につきましてもその能力に応じて全額補償する、賠償するというのが原則でございますから、できるだけ支払うということになっておるわけでございますが、事業者のいろんな経済状態その他によりましてこれは払い切れないということになりますれば、被害者が泣き寝入りしないように国は事業者に対して援助をする、こういう規定になっているわけでございまして、そのときの具体的な状況に応じて政府として必要な援助を行うということによりまして被害者の救済のために遺漏ないような措置を講ずる、こういうことになっているわけでございます。
#43
○木宮和彦君 それではわかる範囲で結構でございますが、諸外国の原賠法みたいなものでいわゆる有限の国と無限の国とあると思いますし、それと金額がどういう状況になってあるのか教えていただければと思います。もしおわかりでしたら。
#44
○政府委員(平野拓也君) まず無限責任の国では、先ほど申し上げましたようにこれは昨年の末のレートでございますが、西ドイツで三百五十七億円、それからスイスで三百四十一億円ということでございます。それからもう一つ無限責任をとっております韓国の場合はこれが約十億円程度だったと思うんです。それから有限責任をとっておりますのでは、例えばイギリスの場合が四十五億円程度でございます。それからフランスが十億円程度ということでございます。それからスウェーデンが百六十五億円というふうなことでございます。
 それからアメリカの場合が、ちょっとこれは制度が全く違うわけでございまして、保険では大体二百億程度でございますが、事業者間の相互扶助制度という全く日本の場合とシステムが違うわけでございます。しかもこれは有限でございますが、その場合は昨年のプライス・アンダーソン法というアメリカのいわゆる原賠法の改正によりまして全体で約八千八百億ぐらいの上限値といいますか、そういうものをとっているという国もございます。
#45
○木宮和彦君 今ちょっとお伺いしますと、やっぱり日本と様子の違う国もありますし、ヨーロッパは国が接しているという点もあると思いますが、大分有限無限も違うようでございます。国際的にこれら何といいますか、原賠法を統一するというとおかしいですが、そういう動きは現にあるんですかないんですか。それとも現在あるパリ条約あるいはウィーン条約というもの、日本は加盟しておりませんけれども、加盟しないには加盟しない理由があろうかと思いますが、国際的な問題にどうしてもならざるを得ない一面があると思いますが、その辺は政府としてはどのように今後対策をしていらっしゃるかあるいはするつもりがあるのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思うんです。
#46
○政府委員(平野拓也君) 国際的な枠組みといいますか仕組みでございますけれども、委員仰せのようにパリ条約、ウィーン条約という二つの条約がございます。パリ条約というのはOECDが中心でございまして、主として先進国、原子力発電所を持っている国々が中心となりましてつくったものでございます。それからもう一つのウィーン条約というのはそれより後にできたものでございまして、十カ国が入っておるわけでございます。これはIAEAが中心となってまとめたものでございまして、その中ではアルゼンチン、ユーゴスラビア以外は原子力発電は現在やっていない国、例えばキューバとかボリビアとかエジプトとかニジェールとか、あるいはペルーといったような国が入っておるわけでございます。この二つの国際条約というのは非常に類似はいたしております。責任限度額というのは当然決まっておりまして、有限責任でございます。
 これに対して我が国がこれに参加しないということは、一つは地域性の問題がございまして、パリ条約の場合は主としてほとんど今はヨーロッパの国でございます。それからIAEAの方のウィーン条約の方も、アジアではフィリピンが入っておりますけれども、これは原子力発電所を持っておらないわけでございまして、日本の近隣諸国の中で、例えば韓国、それから中国、台湾、ソ連と発電所を持っているところがあるわけでございますけれども、そういうところは加盟していないということでございます。したがいまして、今のところ我が国としてこれに加盟する実益が実はないということでございます。
 それからもう一つは、やはり我が国は無限責任の制度をとっておりますから、有限責任を前提とするこれらの条約に加盟するということにつきましてはその整合性の問題が当然ありまして、現時点におきましては直ちにこれに加盟するというふうなことにはちょっとならないというふうに考えておるわけでございます。
#47
○木宮和彦君 この間のチェルノブイリのときにソ連が大気汚染から農産物に、近隣の国にかなり被害を及ぼしたと思いますが、その損害については請求をソ連にして取ったんですか、取らないんですか。それとも請求していないんですか。あるいはもし農民の損害があれば、終局的にはどこがそれを補償したんでしょうか。その辺おわかりでしたらちょっと教えていただきたいと思います。
#48
○政府委員(平野拓也君) ソビエトは、今申し上げましたような二つの条約にも入っておりませんし、それから被害を受けました国々、主としてヨーロッパの国でございますが、請求をするかどうかということで、請求権を留保するということでソ連と交渉した国もございましたけれども、ソ連がそういう申し入れ書の受け取りを拒否したというような話も聞いておりまして、具体的に国として請求したということは現在のところないというふうに承知しております。ただ個人的に、オーストリアの個人がソ連の裁判所に訴えたというようなこと、あるいは多分あれはノルウェーのラップ人だったと思いますが、やはり個人が訴えたということは承知しておりますけれども、その結果がどうなったかということはまだ私ども把握しておりません。そんな現状でございます。
 それから、実際上ヨーロッパ諸国でかなり被害が出たわけでございますが、これはそれぞれの国でそれぞれの国の政府が一種の災害対策みたいな形で国費を支出して被害者を救済したというふうな事実はございます。
#49
○木宮和彦君 これも仮の話で恐縮で、お答えできないかもしれません。仮に日本でもし原子力のあれがあって、日本じゃなく外国に、例えばアメリカとか隣国の韓国に損害をもたらしたという場合が、あっちゃいけませんよ、あっちゃいけません、仮の問題ですから。その場合は、政府としてはそういう仮説の話にはお答えできないかもしれませんが、この条約から見るとそれはやはり賠償責任あるんですか、無限に。
#50
○政府委員(平野拓也君) 我が国は先ほど申し上げましたようにその条約に加盟しておりませんから条約上の責任ということではございません。ただし、我が国が、そういうことがあっちゃいけないし、ないと思いますが、仮定の問題として、我が国の原子力事故で外国に被害を及ぼしたということが仮にあった場合、これは国際私法の原則で日本の法律が準拠法になる、こういう場合には我が国の原賠法が適用になりまして、外国の被害者に対して賠償するということになるということでございます。
#51
○木宮和彦君 もう時間も大分過ぎましたので、今回の改正点の第二の適用期限の延長でございます。法第二十条の適用期限の延長について質問いたしたいと思いますが、政府補償契約及び国の援助をさらに十年間存続させることについての考え方をお伺いしたいと思います。
#52
○政府委員(平野拓也君) まず十年間の延長でございますけれども、政府補償契約の担保範囲というものは、現在のいわゆる民間の保険では引き受けてもらえない、担保することが困難なそういうものを補償契約でカバーするということで被害者の保護に万全を期する、そういう観点からこういう規定があるわけでございまして、これはやはり賠償措置の中の一方の柱でございますからぜひこれは延長しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
 それから、国の援助の規定につきましても先ほどからるる申し上げておりますように、万一の際にやはり被害者救済の観点からどうしてもこういうバックアップの規定をつくっておくということは必要でございますし、また国民の皆様にも御安心いただくという観点からもぜひこの規定は必要であるということで十年間の延長をお願いしているということでございます。
#53
○木宮和彦君 それでは最後に、長官に今回の法改正を踏まえてこれから日本の原子力行政につきましての所信並びに御決意といいますか、それからなお、賠償に対する、あっちゃいけませんけれども、この法律を踏まえてひとつ御所見がございましたら披瀝していただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
#54
○国務大臣(宮崎茂一君) この法律は今までの法律を拡充整備したものでございまして、これからも万が一というその被害者の損害賠償制度を整備充実した点、そしてまた原子力の事業者の健全な発達に資する、その二つの意味から今後とも拡充していきたいと思いますし、初めに申し上げましたように、我が国のエネルギーの事情から見て原子力に頼らざるを得ない現状にございます。
 しかしながら、原子力というのは安全性ということが大前提でございますので、国内における国民の方々のいろんな御意見を承りましてこれからも万全を期してまいりたい、安全性を大前提にいたしまして万全を期して努力をいたしたいと考えている次第でございます。
#55
○木宮和彦君 終わります。
#56
○千葉景子君 本日はただいま審議されております原賠法について、またそれに付随する安全性あるいは事故などについて質問をさせていただきたいと思います。
 今、原賠法につきましては、その目的あるいは法律の概要、改正点、こういうものについて基本的な御答弁をいただきました。それを私もお聞きしておりますので、それを踏まえて、若干重なる面もあろうかと思いますけれども質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、今回の改正の大きな内容の一つが賠償措置額の引き上げということでございます。今お聞きしたところによりますと、賠償措置額につきましてはその基準の設定の根拠といいましょうか、それはほぼ国際水準、あるいは民間の保険の引き受け能力等を勘案して賠償措置額が決定をされるというようなお話でございますけれども、これは実際に、これもあってはならないことですけれども、これが適用されるということは万が一ですけれども事故の発生があった場合ということになりますが、この賠償措置額の設定などに当たっては、実際に具体的な事故の想定、あるいはそれに伴う被害予測というようなもの、こういうものはなされていらっしゃるんでしょうか。
#57
○政府委員(平野拓也君) 結論から申しますと、事故の想定というのはいたしておりません。と申しますのは、無限責任という原則でございますので、そういう被害額がどれぐらいであるからということで賠償措置額を決めるという必要はないということでございます。
 それから、措置額百億あるいは三百億というものは、これはそれでもって賠償は打ち切りということではございませんので、とりあえずの流動性の高い資金を確保する、こういう趣旨でございますから、これを設定するに当たりまして必ずしも事故の想定というのは必要はないという観点でそういう事故想定は行っておらないということでございます。
#58
○千葉景子君 この法律が、原子力事業者は原子力損害について無過失責任を負うということになっておりますので、確かにどれぐらいの事故があろうとも責任はどこまでも負わなければならない、これはわかります。しかしながら、それに備えて賠償措置額というものが決定をされる。賠償措置額を超えた場合には政府の援助というようなことにもなってくるわけですね。それが必要な場合も出てくる。そういうことを考えますと、やはりできるだけ事業者の責任を集中させるという趣旨からいえば、やはりどこまで事業者に基本的な責任を負わせるかということは大変重要なことだというふうに思うんですね。
 賠償措置額が百億円から三百億円に引き上げられた。これは今のお話から伺いますと、例えば想定されるような事故が、その規模が拡大をしてきた、施設の巨大化とか実績も長期化しておりますけれども、そういう観点で被害も拡大されることが想定される、こういうようなことから賠償措置額が上げられたというようなことは全くないわけですね。
#59
○政府委員(平野拓也君) そういうことではございませんで、言うなればほぼ十年おきに定期的に見直しをしているというときに、一番アップ・ツー・デートでこういう措置額を考えていこう、こういう観点でございまして、何か危険性が高まったからやるとか、そういう趣旨では全くございません。
#60
○千葉景子君 御説明はわかるんですけれども、この額を決定するに当たって、どうも全くそういう事故の想定とか被害の予測等も要素にないというのは、私はちょっと理解に苦しむところなわけなんですね。
 仮に、今回は三百億円の賠償措置額ということになりますけれども、三百億の賠償で足りるような事故、あるいは場合によっては政府の援助も必要なような、三百億円を超えるような賠償が必要な事故、こういうものをやはり一定予測をする。それによって各事業者の責任感といいますか、安全管理、こういうものもしっかりしてもらうということも被害者の保護あるいは責任の集中という趣旨からも必要なことではないかというふうに思うんですが、三百億円の賠償で足りるような事故あるいはそれを超えるような事故も可能性があるというようなことは全く検討はなさっておりませんか。
#61
○政府委員(平野拓也君) 私どもは、理論的にはいろいろ考えられると思いますけれども、実際上どういうものが幾らというようなことはやっておらないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 ただ、これは国際的に見ましても、従来大きな事故といわれるものが私の承知している限りで三つぐらいあったと思いますけれども、これは三十年ぐらい前の、ウィンズケールのものでございますが、事故がございまして、これが当時の金で七千万円ぐらいの補償を払ったというふうに聞いております。それからチェルノブイリはまだよく事態がわかりませんけれども、十年前のスリーマイルのときも、今訴訟中でございますけれども、和解した金額、現在まで聞いておりますところでは約五十億円ぐらいの和解金みたいなものを払ったということでございますが、事故の態様といいますか、それはさまざまでございますので、それを一々ケーススタディーするということはこの法律に関しましては必ずしも必要ないということでございまして、被害が出ただけこれは支払う、補償するというのが原則でございますから、そういういろんなケースを想定して作業をするという必要はないというのが我々の判断でございました。
#62
○千葉景子君 事故の想定というのはなかなか難しいところかと思います、それによる被害予測も。しかしながら、責任を明確にするという意味では事故想定などもやっていただく必要があるのではないかというふうに思うんですが、これまでも幾つかの大事故が起こった場合の被害予測というものがされております。
 例えば、WASHの被害予測とか、それから原子力産業会議による被害予測、あるいは科学技術庁の一九六〇年の被害予測、こういうものがございますけれども、そういう被害予測によりますと、少なくとも、今財産の価値が若干変わっているかと思いますけれども、WASHの被害予測によりますと二兆円を超える、あるいは原子力産業会議の被害予測でも一兆円、それから科学技術庁の被害予測でも三兆七千億円というような、こういう資料等も出ているようでございますけれども、そうなりますとやはりできるだけ重大事故の場合には三百億を超えるような被害が想定をされる。それに備えてやはり責任を持って事業者が平豊から安全管理あるいは被害者保護に向けての体制を整えておくということが必要だというふうに思うんですね。
 そういうことから考えますと、この三百億円、これは国際水準、保険の引受能力等から積算をされている数字かと思いますけれども、必ずしも十分な額とは言えない。そういう意味では今後もこの額の引き上げ、そういうことについてはやはり被害予測等も含めた、そういうことも考慮に入れた形でやっていただくことも必要じゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
#63
○政府委員(平野拓也君) 確かに昭和三十四年に、原子力産業会議とおっしゃいましたのは、これは科学技術庁から委託をしたものでございまして、これはちょうどこの法案を作成する過程でそういう委託をしまして試算をいただいたということは事実でございます。
 ただ、結果的にはこれはこの法案には直接反映しなかったということでございまして、と申しますのは、当事私どもの承知しておりますところでは、この責任を有限にするか無限にするかということで、仮にこれを有限にするということになりますと被害想定というのは非常に重要な意味を持つわけでございますが、結果的には世界では数少ない無限責任というのをとったということもそういう一つの理由であったとは思いますけれども、直接これを活用したということは私どもは聞いておらないわけでございます。
 この報告書によりましても、一応一兆円というような数字も出ておるわけでございますが、これは非常にいろんな仮定を置きましてやっておるものでございますから、この報告書自体でも結論が前提条件と密接不可分であるということで、しかもまたそのデータの認定というものが非常に不確定である、そういうことに十分注意して数字をひとり歩きさせないようにというふうな注がついているというふうなものでございます。
 事ほどさように、なかなか被害予測というものはいろんなケースが考えられるものですから非常に難しいということでございまして、私ども、そういう必要性があるというお話でございますけれども、そういうものをやって、それでもって三百億をまたさらに上げるかということになりますと、必ずしもそういう方法でなくて、これは将来もこの制度全般について常に現状に合わせるべく努力はいたします。したがいまして、いずれの時期にかはまたこれを見直す時期があろうと思いますけれども、そういう努力はいたしますけれども、被害想定をやってそれでもってという考え方は現在のところ私どもはとっておらないということでございます。
#64
○千葉景子君 私も被害予測のみからこの数字を決定すべきだということは言うつもりはございませんけれども、やはり今なかなか予測は難しい、いろいろな前提条件を伴って。それは、これよりも被害が少なくて済むかもしれないし、逆に言えば、もっともっと拡大する可能性だってあるということを意味しているわけですので、ぜひ責任の明確という意味からも検討すべきではないかというふうに思うんです。
 特に措置額を超えた場合、無限責任ですから、賠償能力等がございますればそれは基本的には事業者の責任ということになりますが、場合によっては政府の援助、こういうことも当然必要になってくる。これは結局は国民の負担ということになってくるわけですね、ツケが国民にも回ってくるということですから。そういうことを考えますと、やはり事業者にできるだけ事故管理、事故責任ということで基本的な責任体制というものを備えておいていただかなければならないというふうに思うわけです。そういう意味では事故予測だけが基本ではございませんけれども、そういうところも含めてぜひ御検討いただきたいというふうに思うわけです。
 こういうことも含めてちょっと具体的な内容についてお尋ねをしたいというふうに思うんですけれども、先ほどの同僚議員からの質問にもございましたように、この三百億円を超える事故の際の政府の援助、これは原則としては無過失、無限責任であるということから必要な場合ということになろうかと思うんですけれども、これは具体的にどういう場合に援助をする、こういうものについては基準といいましょうか、明確なそういう基準のようなものはつくっていらっしゃるんでしょうか。
#65
○政府委員(平野拓也君) 明確な基準というものをつくっているということはございません。どういう場合かとおっしゃいますれば、やはり現実に賠償措置額を超えた被害が発生したということでございまして、その被害が一体どの程度のものであろうかということにつきましては私どもも当然それは調査をいたしまして、それをその責任のある事業者が賠償するに足るだけの経済的な余力があるかないかというようなことまで調査をするということで、国の援助がなければ被害者救済にならない、こういう判断が出た際にはそれに応じてしかるべき適当な手段を講ずるということでございます。したがいまして、具体的に一たん事が起こった後その状況に応じて判断していく、こういう性格のものであろうかと考えているわけでございます。
 したがいまして、その判断につきましては当然国会にも御報告申し上げ、あるいはその援助措置の内容につきましても国会の御決議の範囲内で政府が行うわけでございますから、具体的に予算措置その他が必要でございます。
 いずれにしましても、そういう調査はしっかりやって、しかるべき後にこれしか方法がないといった場合に初めてそういう援助措置が講じられるものであるというふうに考えておるわけでございます。
#66
○千葉景子君 総論的には説明はよくわかるのですが、そうしますと、一番大きい理由といいましょうか、必要な場合というのは、やっぱり経済的な余力といいましょうか、そういうことが第一義的な基準になってくるのでしょうか。あるいは、例えば責任を負わせることによって、その周辺の国民生活に大変大きな影響を及ぼすとか、そういう点なども勘案をされるということになりましょうか。
#67
○政府委員(平野拓也君) その辺はおっしゃいましたような両方の観点を考慮すると思います。
 と申しますのは、仮にこれが電力事業者ということになった場合には、もちろん電力供給という責任がございますから、それが賠償することによって経済的に破綻するというようなことがあれば国民生活に重大な影響を与えるということがございますから、当然そういうケースは考慮の対象に入れるわけでございます。
 それと同時に、先ほどから申し上げておりますように、被害者の保護ということで、被害者に泣き寝入りをさせないようにという観点を考慮するということでございます。
#68
○千葉景子君 援助の内容ですけれども、これについては資金の援助等が考えられると思いますけれども、ちょっと具体的にどういう内容が考えられるか、幾つか挙げていただけませんか。
#69
○政府委員(平野拓也君) まず、一番普通に考えられますのは、例えばつなぎの融資のあっせんをするとか、あるいは政府系の金融機関から低利の融資をするとか、そういったようなことが考えられます。それから、これは予算でもってやるわけですが、融資を受けた際の利子補給をするというようなこと、あるいは、場合によっては事業者に対して補助金を交付するといったようなことも考え得る内容の一つであろうと考えております。
#70
○千葉景子君 こういう法律が存在をしておりますけれども、ぜひ事業者の安全管理体制、こういうものを厳重にしていただいて指導をいただき、こういう法律に頼るようなことなきようにしていただきたい、これは強く要望したいというふうに思うんです。
 この原子力損害ということに関連いたしまして、この原賠法自体も原子力事故が必ずあるということを意味しているわけではありませんで、できるだけそれはないにこしたことはないわけです。ただ、少なくともその可能性がゼロということではありませんから、そういうことに備えてこの賠償法が存在をしていると考えてよいかというふうに思います。こういう危険に対しては、それを防止するとともに、これが万が一という場合、それに備えるさまざまな体制も必要だというふうに思います。
 そこで、そういうときに備えた防災対策あるいは防災計画等について若干お聞きをしたいというふうに思っておりますが、国民にとってもTMIの事故あるいはチェルノブイリなどの実際の事故というものを経験をして、非常に安全対策、防災対策などについて関心を持ち、あるいは危惧を感じているという部分も多いかというふうに思うんです。
 こういう防災対策あるいは防災計画等を策定するに当たりましては、先ほども賠償額の措置額の決定について被害予測等がやはり肝心ではないかという話を私させていただきましたけれども、こういう防災対策などについても、やはり事故の予測あるいはシミュレーション、こういうものが前提になければ、じゃどんなふうな対策を立てるか、どんな体制をとるかということはなかなか明確に決められないというふうに考えるんです。
 こういう防災対策などに当たって、事故の予測、シミュレーション、どんな規模、あるいは内容等、検討はなさっていらっしゃいますでしょうか。
#71
○政府委員(村上健一君) お答え申し上げます。
 我が国の原子力防災においてどのような事故を想定しているのかという御質問に整理さしていただきたいと思いますが、結論から申し上げますと、防災対策を立てる上に、事故を先に想定してそれに見合った対策をとるという考え方で防災対策が組み上げられているわけではございません。
 すなわち、我が国の原子力発電所等の原子力施設につきましては、先ほど御説明申し上げましたけれども、各段階で十分な安全確保対策が施されておりますので、環境に影響を与えるような事故が発生したこともございませんし、今後もそういうことはないと思っておりますけれども、それでもなお万が一の放射性物質の大量放出があった場合ということで、ちょうど原賠法と同じ考え方でございますが、万が一のために防災対策を講じるということに実はなっているわけでございます。
 ただ、そのときに、災害対策基本法で「放射性物質の大量の放出」という言葉がございますんですが、これはそうすると一体どういうことなのかということになるかと思いますけれども、この場合は実際に原子力発電所なり原子炉を設置します場合には、重大事故という技術的に起こると思う事故をまず想定いたしまして一度考え、それからさらに起こらないというふうに仮想的に考えます事故を想定して原子力発電所の敷地といいますか、そういったものを決められているわけでございますけれども、その技術的見地から起こるとは考えられない事故の放出量をさらに超えるような極めて発生の可能性が低いと考えられる大量の放射性物質の放出があった場合でも、施設周辺の住民の健康と安全が確保されるようにという、やや抽象的で恐縮でございますけれども、そういったような考え方で防災対策というのは組み上げられることになっております。
#72
○千葉景子君 これはほかの事故、交通関係、航空機等もございますけれども、この原子力に関する事故というのは万が一じゃなければ困るわけで、万が一もあっては困るわけですけれども、そのあった場合のやはり事故の大きさ、あるいは規模、その被害、そういうものは極めて想定しにくい。なかなか過去に例がそうあるわけではありませんし、それから起こったときにはどのような状況が想定されるかというものもはかり知れない、実験できるものではありませんから、はかり知れないものがあるわけですから、そういう意味ではどのような際にも危険を防止できるというような体制はやはり具体的にいろいろな状況を想定した上で考えていただく必要があろうかというふうに思うんですね。
 現実には、今日本における防災対策、その現状というのはどうなっているでしょうか。国、都道府県、市町村、事業者等がかかわりがございますけれども、その具体的な体制はどのようになっておりますか。
#73
○政府委員(村上健一君) お答え申し上げます。
 結論から申し上げますと、災害対策基本法、すなわち災対法に基づきます国の支援体制というものと同じく災害対策基本法に基づきます地方自治体が実施する対策、こういう構造になっております。
 具体的に申し上げますと、昭和五十四年の七月の中央防災会議の「原子力発電所等に係る防災対策上当面とるべき措置について」という御決定に基づきまして、国としては緊急時におきまして緊急技術助言体制というものを既に整備いたしました。これは原子力安全委員会のもとに整備されております。それからまた、専門家の現地派遣体制といったようなものも既に構築してございます。
 それから、もう一つの柱は、昭和五十五年の六月の原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」といった御決定などに基づきまして、地域防災計画の策定など地方自治体の実施する防災対策について指導、助言を行う制度ができております。
 それからまた、同じく昭和五十五年度から電源開発促進対策特別会計によりまして原子力発電施設等緊急時安全対策交付金制度というものを創設いたしまして、地方自治体が実施されます原子力防災対策を財政的にも支援してきているところでございます。ちなみに現在御審議いただいております予算の政府原案におきましては、この財政支援の額は約六億円が計上されているところでございます。
 一方、実質的に防災対策を行うことになります地方自治体におきましては、今御説明申し上げましたような国の財政的支援のもとで、緊急時連絡網の整備、ポケット線量計、アラームメーター等の防災活動の資機材の整備、緊急時医療資機材の整備、それから防災業務関係者の研修会の実施、講習会の開催、それから実際の防災訓練の実施などによって充実が図られているところでございます。
 なお、日本原子力研究所におきましては、万一、本当に万一のときに大気中に放出されました放射性物質の濃度、それからそれに基づきまして被曝線量がどうなるかということを迅速に予測するための緊急時迅速放射能影響予測システム、私どもSPEEDIと名前をつけておりますけれども、これの開発を行いまして、現在、公益法人であります原子力安全技術センターがこの改良、整備を行っておりまして、原子力発電所等原子力施設の設置県とも協力いたしまして、端末の整備、運用に取りかかっているという一つの具体的なことも申し上げたいと思います。
 なお、原子力安全委員会におきましては、ソ連原子力発電所事故調査報告書の指摘事項等を踏まえまして、防災対策の専門的事項についてなお調査審議が進められているところでございまして、それらもあわせまして今後とも防災対策の内容をさらに充実していきたいというのが政府の姿勢でございます。
#74
○千葉景子君 今、仕組み、あるいはその内容等について御説明をいただいたわけなんですが、防災計画などにおいては、広範囲、あるいはどこまで拡大をしていくかわからないそういう事故、あるいは放射能がどういう形で地域周辺にばらまかれていくかということもなかなか予測できない部分だと思いますけれども、その計画の中においては、施設のある自治体のみならず、例えば避難をする際の避難先の自治体との関係とか、それに伴う交通手段とか、そういうことについても重要な問題があるだろうと思うんですね。
 私も、これは正確なものではありませんけれども、アメリカ等におきましてはその相互の自治体間の受け入れ体制等含めて、こういうことが確立しない限り原子力施設を設置しないというようなことも行われているようでございますし、それから緊急医療活動とか救急活動などを考えても、その際一体だれが行くんだと、そんな危険なところになかなか行こうという人も積極的にはいないわけで、そういうための安全措置、そういうようなことも含めて綿密なやはり計画というものが必要だと思います。
 先ほどから万が一ということを強調なさっておりますけれども、万が一が当たり前なことでありまして、そういう意味でそういう具体的な体制というものはどの程度とられているんでしょうか。その辺についてはちょっと今御説明の中にありませんでしたので、少しあれば説明していただきたいと思います。
#75
○政府委員(村上健一君) お答え申し上げます。
 原子力防災にかかわります各地方公共団体の地域防災計画は、科学技術庁と国土庁等との協力によりましてでき上がっておりますマニュアルに従ってつくっておられるわけでございますけれども、その中に実際に、災害対策基本法の六十七条、六十八条、七十二条、七十四条等に都道府県の知事と市町村との関係、知事と知事との関係、市町村と市町村との関係といったような規定ぶりがございますが、こういうような避難先、避難方法についてもあらかじめ定めるようになっておりまして、このマニュアルに従いまして、実際にそれぞれの地域防災計画で、個々に御説明申し上げるのは時間の関係で割愛させていただきますけれども、定められているわけでございます。
 それで、ほとんどの場合、もちろん原子力施設が県境といったようなところにあります場合には隣の県が当然隣接県ということでかかわってくるわけでございますが、多くの場合は同じ県の中というようなことが多いかと思いますので、同じ県の中の市町村間の連携ということになろうかと思います。それから隣接自治体との連携につきましても、今御説明申し上げましたように、災対法の規定に基づきまして、知事または市町村長さんは、災害の状況にもよりますけれども、隣接の市町村等に対して避難住民の受け入れ等の協力を要請し得ることになっておりまして、実際上、計画上もそういうふうにつくられておりまして、私どもといたしましては、十分な対応ができるものだというふうに考えております。
#76
○千葉景子君 要請し得るということになっておりましても、万が一のときというのはそれは緊急事態でございますし、起こってから、じゃあお願いします、いやこっちは困りますというようなことをやっていたのでは全く対処できないわけですね。それはふだんから具体的にこういう場合にはここの市町村からここへ移動するとか、風向きだのいろいろなことによっては反対の方に避難をするとか、いろいろなケースが考えられるわけです。そういうことをやれるというのではなくて、その体制を具体的に確立をしておく、そういうことがやはり住民にとっても安心を得られる一つでございますし、必要なことだというふうに思うんですね。
 ぜひそれは具体的に指導をしていただく、そういう防災計画を立てていただく、そういうことがない限り原子力施設は運転しない、あるいは建設しないというふうなことまで考えていただく必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#77
○政府委員(村上健一君) 御指摘のとおりだと思います。
 これは一つの例で、ある県における原子力防災計画の例でございますけれども、その中にいわゆる防災対策を重点的に充実すべき市町村のことをちゃんと定めておくとか、それから応援協力体制の確立を定めておく、それから避難先の問題までちゃんと定めておくということに整備されておりまして、それで御承知のとおり、実際の防災訓練の際に、通信連絡網のいわゆる点検等を含めました実際の訓練で充実するようにやっておるところでございます。
#78
○千葉景子君 これは、先ほどの事故の予測を含めて、具体的に必ず防災計画を確立するという体制をつくっていただきたいというふうに思うんですね。やっているところもあるというのでは困る。
 それで、計画がありましても、実際にそれを運用するあるいは計画を実施せざるを得ないような場合を考えますと、日ごろからの防災訓練等がやはり必要だというふうに思うわけです。
 安全委員会の方からいただいております資料等によりますと、避難訓練等を実施されている現状としては、六十二年度で宮城、福島、茨城、新潟、静岡、愛媛、佐賀、鹿児島というようなところが挙げられておりますけれども、これは実際には定期的に実施されているものかどうか。あるいはこれを見ましても、その他の周辺部分というのはやっていないということになりますね、施設があればそうですけれども、ないところも含めてですけれども。そしてこの訓練については、何か指針とかガイドラインとか通達とか、こういうものがあるのかどうか、それから参加者の範囲、こういうものについて実情をお知らせいただきたい。
#79
○政府委員(村上健一君) 防災訓練につきましては、地方自治体が行われます一般の防災訓練の中に原子力防災訓練というものが組み込まれておりまして、これはあくまでもそれを実施されます地方公共団体の御決意でおやりになるわけでございますけれども、私どもとしてはできるだけ定期的に進めていっていただきたいというふうに考えているわけでございますが、やはり原子力発電所を地元に誘致されましたときの御事情の問題とかいろいろな問題がございまして、すべての設置県及び隣接県が定期的に毎年行っているということにはなっておりません。私どもとしては、委員御指摘のとおり、できるだけこれは充実すべきものだというふうに考えておるわけでございます。
 なお、避難訓練につきましては、地方公共団体の訓練におきまして災害対策本部が設置されまして、その本部長の指示のもとに、もろもろのガイドラインを総合的に本部長が判断されまして、通常これは県知事さんでございますが、判断されました上で市町村長さんに避難のための立ち退き勧告または指示を行って、これに基づいて実際に訓練が実施されているわけでございます。
 それで、その内容につきましては、地域によって非常に異なるわけでございますけれども、例えば言葉がちょっと悪くて恐縮でございますが、私ども模擬住民と言っておりますけれども、防災関係業務者を中心とします、一般住民を右代表するという格好での模擬住民という言い方をしておりますが、模擬住民等を所定の防災計画に基づいた場所へ誘導いたしまして、そこから避難場所へ必要な手段によって避難するようなことを行っている次第でございます。
 それで、原子力防災訓練の実施状況につきましては、例えば、北海道では六十三年の十二月九日に一般住民の参加を含む退避等の訓練がございました。それから宮城県は、六十三年の十月、大体毎年一回宮城県は実施しております。それから福島県も、大体毎年度一回実施しておられまして、退避の訓練も行われております。
 といったことで、大体多くの県は、定期的ではございませんけれども毎年度大体一回訓練を実施しておられまして、その場合、退避訓練を含められるところ、それから含められないところという内容の差はございますが、かなり充実した訓練が実施されているところでございます。
#80
○千葉景子君 これについては、やはり定期的な訓練などを義務づけるような形をとっていただきたいというふうに思います。
 それと同時に、先ほどの防災計画あるいはこの避難訓練について、やはり住民の参加あるいは住民の納得というようなものが非常に大きな意味を持つと思うんですね。今多くの国民から危険性、そしてそれに対するいろいろな体制、疑問が大きく沸き上がっているところなわけで、そういうことを考えてみましても防災計画を立てるに当たっての住民参加、あるいは住民の意向などを十分に勘案する措置、あるいは防災訓練におきましてもだれもが参加できる、あるいは参加して納得のできるやり方、そういうことがぜひ必要であり、実現をさせていただきたいと思うんですが、住民参加といいましょうか、納得を得られるその手段、こういうことについてはどうお考えですか。
#81
○政府委員(村上健一君) お答え申し上げます。
 住民参加の防災訓練につきましては、時間とともに世の中が変わりつつあると申し上げることができるかと思いますのは、実は、これまではと申し上げますか、もう少し前までは、実際に実施をされます地方自治体あるいは市町村におかれましては、やってくれるなというような御意見をお持ちのところが多かったということでございます。それで、私ども政府それから防災を専門的にやっております者の基本的な考え方も、特に避難訓練につきましては一般住民をやるということよりも、原子力防災という特殊性がございますので、一般防災でできるものは一般防災に譲って、原子力防災の特殊性、例えばモニダリングとか除染とかといった原子力防災特有の訓練を防災業務関係者を中心に行うことの方がより重要だというのが、どちらかというと専門家のいわゆる認識といいますか、判断であったわけでございます。
 しかしながら、先ほど来御説明申し上げておりますように、あくまでも国のもろもろの支援、協力のもとに、実際に防災訓練、避難訓練を含めます防災訓練を実施されますのは地方公共団体でございますから、地方公共団体が、地域防災体制の整備状況や、地域地域のいろんな事情がおありになりますので、その事情に応じて判断を下されることがいいのではないかというふうに変わってきているというのが現状の認識でございます。
 私どもといたしましては、そういったようなことで、地方公共団体が避難訓練を含む――基本的には私どもやはり防災関係業務者中心が優先すべきだというふうに考えておりますけれども、地方公共団体の方でそういう御判断で住民参加の訓練をやるということでございます場合には協力するのを惜しまない、こういうのが現在の状況でございます。
#82
○千葉景子君 協力を惜しまないという遠慮はなさらずに、むしろ積極的に住民が納得いくような住民参加の体制を国の側でも推し進めていただきたいというふうに思います。
 ところで、避難訓練、防災訓練につきまして、避難の範囲というのが国の指針でしょうか、八キロから十キロということが第一義的な避難範囲というようなことになっているようでございますけれども、これは何か根拠がございますのでしょうか。
#83
○政府委員(村上健一君) 私ども原子力防災計画上EPZと略称しておりますが、エマージェンシー・プランニング・ゾーンという頭文字を急いで使うためにEPZと言っておるんですが、このEPZといいますのはどういう考え方かといいますと、原子力防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲の目安、こういうことで、これが実は今委員がおっしゃいました八ないし十キロメートルでございます。
 この八ないし十キロメートルというのはどういうことで目安として定められたかと申し上げますと、昭和五十五年の六月に原子力安全委員会の御決定がございまして、原子力発電所等周辺の防災対策というのをお決めいただいたわけでございますが、その中に実はアドバイスとして、目安としてこの八ないし十キロメートルが提案されているわけでございます。
 これはどうやって決められたかと申し上げますと、先ほどちょっと申し上げましたように事故の想定で決められたものではございません。もちろん、原子力施設の技術的側面は非常に大きく考えられてございますけれども、そのほかに大きなファクターといたしまして、人口分布、行政区画、地勢などその地域の固有の状況を考慮しまして、結果的に応急対策の実効性が上がるかどうかということを総合的に専門家で御検討されて判断されて、我が国の場合は八ないし十キロメートルが目安としていいのではないか、こういうふうに実は示されているわけでございます。
 この八ないし十キロメートルは、それじゃ一体実際の事故が起こったときには大体どんな感じになるのかということもその答申の中の付録の中で計算してございますんですが、一例的に申し上げますと、いわゆる重点的に充実すべき地域の範囲である八ないし十キロメートルのちょうど外側のところに人間がずっといたとしまして、決して起こることはないと思いますが、万が一起こりまして、気象条件等も被曝線量を高目に与えるような条件をとりまして計算いたしますと、そのときに立っている人の全身の被曝線量が一レムになるような範囲が八ないし十キロメートル。
 それで、この一レムという数字はどういう数字かと申し上げますと、同じくこの指針で提案されています防護対策を何かとった方がいいという、これは屋内退避でございますが、まず屋内退避をした方がいいなあという数値が実は一レムでございます。
 そういうような範囲が八ないし十キロメートルの中でございまして、先ほど申し上げましたように、対策を重点的に充実すべき地域ということで提案されている目安でございまして、その中の人を全部避難させろという、そういうためだけに設けられたいわゆるキロメートルではございません。
#84
○千葉景子君 まあ当然この範囲だけではいろいろな対策というのは不十分なことは明らかでございます。それから、仮に避難ということであっても、この範囲以下で済むか、またこれ以上必要であるかということもあろうかというふうに思いますけれども、こういう数字が出ておりますと、これがその範囲ではないかということに受け取りがちですから、その辺もほかのことも含めて十分な対策を立てていただくようにしていただきたいというふうに思います。
 先ほどから、私は事故の想定あるいはそういう被害のシミュレーション等について、なかなか予測は難しいけれども、そういうものに基づいた対策が立てられない限りなかなか具体的な対策ということにはなっていかないのじゃないかというふうに思うんです。防災対策、避難訓練等も含めて私は強くそういうことを感ずるわけです。
 たまたま、これは原子力施設といいましても若干異なりますけれども、私は神奈川でございまして、神奈川には横須賀を含めて原子力潜水艦、あるいは軍艦推進用の原子炉、そういうものがございます。そういう事故に対して一体どんなことが起こるんだろうか、これは市民レベルでございますけれども、そういうものをシミュレーションをしたものがございます。これは決していいかげんなものではなくて、専門家に依頼をした、これは一九八八年の六月ですけれども、アメリカの環境研究所、ESIのジャクソン・デービス博士という方に研究を依頼しまして、横須賀等に停泊したそういう原子力艦、こういうものの事故想定をしたものがございます。これは直ちにほかのものにこのまま適用されるというものではございませんけれども、これはアメリカの原子力規制委員会の確立した方法などを使いながら想定されたもので非常に内容も精密なものだというふうに言えると思います。
 こういう中で幾つか想定がなされておりますけれども、横須賀の軍艦推進用の原子炉の事故などがあった場合に、炉心溶融と格納容器の破損によって放射能を帯びた炉心の部分が四時間にわたって周囲の環境に放出される、こういうものを想定したものでございますけれども、だから必ずこうなるというわけではありませんけれども、万が一こういう事故があった場合を考えますと、非常に愕然とするような結果が想定をされているわけですね。
 条件によりますけれども、横須賀から考えまして東京全域、あるいは事故地点から百十キロ以上に及ぶ地域でアメリカの連邦政府の限界値の数百倍あるいは一万倍の放射性物質がばらまかれるだろう、こういうことが出ております。それからこういう放射性降下物あるいは中長期的な被曝などによって、短期的な死亡者でも二万五千人ぐらい、あるいはそういう中長期のものを含めますとさらに二万五千人、また一年たつとさらに二万五千人余り、こういう形で重度の障害があらわれる。あるいは発がんなどによっても七万人という人の重度障害というようなものが推定をされるというようなことも出ているわけですね。
 これは本当に危険性、あるいは原子力施設に対する関心を持つ市民の間で、ここまでのシミュレーション、あるいはそれに対する防災の必要性などが検討されている、こういう事実もあるわけですので、ぜひ国においても具体的に、万が一ではございますけれども、いろいろな想定をし、それに対する十分な体制を確立をしていただきたい。それがやはり住民にとって今非常に国民の間から起こっている危険に対する不安感、こういうものに対する答えにもなっていくんではないかというふうに思います。
 その点についての積極的な取り組み方をお願いをして、午前中は一応ちょっとここで切らせていただきたいと思いますが、今の点についての御見解を最後にお聞きします。
#85
○政府委員(村上健一君) 委員の今の事柄につきましての御心配それから御懸念、地元の皆様もあわせまして御懸念、御不安はもっともだと思っております。
 その理由は、私どももデービス博士の論文を入手いたしまして読ませていただいたんですが、私も読んですぐ実は驚いた次第でございますが、その驚きました最大の理由は、事故想定というやり方が、要するに原子炉でございますと、横須賀の場合、これは原子力潜水艦が対象になっておりますからその中にあります原子炉でございますけれども、その原子炉の中にあります放射能が結局外界にどれだけ出ていくかというところが事故シナリオのスタートのところでございます。もっと手前は、どうしてそういう事故になるかというのが実はあるわけでございますが、このデービス論文はともかくある量を任意に放出するというところになっているわけで、これは通常私どもが事故想定をやるときの手法と、かなりいわゆる被曝を多くする要因であるというふうにまず理解いたしました。
 それから二つ目は、中で用いられております、先ほどもちょっと八キロ、十キロのところで御説明申し上げましたけれども、気象条件のとり方でございますが、この気象条件がやはり同じように被曝量を大きく出すような気象条件が使われている。
 それから三番目、これが非常に問題なんですけれども、被曝した人が後になってがんになるリスク係数というのを使うわけですけれども、このリスク係数が世界的に専門家の間では評価されてないリスク係数を使われている。それで結果的に人口が非常に多い東京の方にその放射能が突進してまいりまして、それで今委員がおっしゃいましたような多数のいわゆるがんになる人が出てきて死亡する、こういうような計算でございます。
 私どもとしては、論文といいますかレポート、これも委託を受けておやりになったようでございますが、読ませていただきましたけれども、私どものもろもろの対策等の参考にはできないというのが現在の見解ではございますけれども、委員の御不安、御懸念も承りまして、現在、神奈川県それから横須賀市等も非常にこの問題に積極的にお取り組みになっているようでございますので、私どもも一生懸命協力したい、こういうふうに考えているところでございます。
#86
○千葉景子君 今の問題点の指摘は、私は別に構わないところだと思いますが、逆に言えば、そういう問題点を指摘なさるのであれば、そういうことを踏まえた、問題点がない独自の想定なり事故予測というものを出していただかなければやはり私どもも納得できない部分があります。そういう意味では、もしこれが問題点があり、やり方としてももっと妥当な方法があるということでございましたらば、ぜひそのやり方で事故想定など実施をしていただきたい、これは私の要請でございます。
 終わります。
#87
○委員長(高桑栄松君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#88
○委員長(高桑栄松君) ただいまから科学技術特別委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 先ほど、穐山篤君が委員を辞任され、その補欠として及川一夫君が選任されました。
    ―――――――――――――
#89
○委員長(高桑栄松君) 休憩前に引き続き、原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#90
○千葉景子君 では、午前に引き続きまして質問をさせていただきますが、今回は、さきに起こりました福島第二原発三号機の再循環ポンプの破損事故を中心に伺わせていただきたいと思います。
 先ほどもちょっと出ておりましたが、この再循環ポンプの破損事故ですが、これは経過を見ますと、そもそもまず一月一日に異常振動が発生をしている。そして、一月一日の十九時二分と十九時十九分に警報が発生。特にこの場合も、記録計が振り切れるというような状況があったということですけれども、そうなりますと、結局実際にはどの程度の振動があったかというのは、記録計が振り切れているわけですからわからないわけですね。それにもかかわらず出力を若干下げて運転を継続をしている。
 それからさらに、一月六日にその状況でまた異常振動があり、四時二十分、四時三十九分に、これも記録計の範囲をオーバーするような異常振動があった。ここでもやはり振り切れているわけですから実際の振動はどの程度かわからない。これも、そういう状態があるにもかかわらず、十八時五十五分まで十四時間半にわたって運転が継続をされ、ようやくその後停止をされているということです。
 この間の振動の記録、これは記録から別途つくられた資料は私も手元にいただいているわけなんですが、原資料、記録、これを出していただかないと、この記録に基づいて作成された資料によると、ぐによぐによぐによと大枠の振動はわかるんですけれども、詳細な部分あるいは微妙な部分というのはわからないということなんです。まずこの実態を知るためにこの間の振動記録等を提出をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
#91
○説明員(三角逸郎君) 御説明申し上げます。
 先生御指摘のように、正月の一月一日でございました。福島第二原子力発電所三号機原子炉の再循環ポンプでございますが、AとBございます。そのうち、Bの方だと承知してございますけれども、ポンプBの振動が一時的に御指摘のように上昇したものでございますが、先生御指摘のように、そのときの措置といたしましては出力を低下させた。具体的にはポンプの回転数を下げたわけでございますが、下げたところが振動のレベルが警報値以下に戻ったとい?たような事実がございまして、東京電力といたしましては監視を強化しながら運転を継続したものというふうに我々今のところ聞いてございます。
 通産省といたしましては、このような場合の措置といたしましては、特に原子力発電の安全の確保を常々私どもも規制に関与する者として自戒自重しているわけでございますけれども、慎重の上にも慎重にあるべき、そう考えてございます。
 そういう観点からいたしますれば、先生御指摘のように、一月一日の午後七時〇二分でございましたが、東京電力のそのときの措置というのはいささか原子力に携わる者としては適切さを欠いたものではなかろうかというふうに私も存じ上げてございます。
 それから、重ねて一月六日の措置についても御指摘がございました。このときにも、これは明け方、朝四時だと思いますけれども、四時二十分の時点でございました。警報が発生してございます。その後の判断というのは、基本的にはポンプの回転数を下げまして運転をとめるという方向で動いたわけでございますけれども、結果的に御指摘のように最終的にポンプをとめた、これは十八時五十五分だという記録でございます。
 その間の取り扱いについては、マニュアル等はあるわけでございますけれども、同じく、繰り返しになりますけれども、やはり原子力発電の安全性を考えた場合には、特に正月の一日のことも重ね合わせればなお慎重さを欠いた、適切さを欠いたものだったのかなというふうに思ってございます。慎重に今後とも検討いたしたいと思います。そういう事情でございました。
 それから、その事情に関しましては、原子力につきましてはぜひ安全についての御理解を賜りたい、特に地元の方々についても御納得いく説明をしたいということで、この三月十七日でございましたか、それなりの、中間的ではございますけれども、今までの資料を取りまとめて御発表、先生にもお届けしたという事情でございます。
 その中に、先生御指摘の「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機原子炉再循環ポンプ損傷の経緯」という資料が取りまとめられてございます。今私申し上げました事象の一日の経緯、正月の一日から始まった、最終的には原子炉停止に至る事象の経緯を初めといたしまして、出力をどんなふうに取り扱ったかといったような出力の推移、あわせて言えば、先生御指摘の、モーターのBの振動大で警報が発生したでしようと。
 御指摘のように、第一回目、正月の一日午後七時には、七時二分から七分まで警報が発生してございます。それから、同じように午後の七時十九分、それから二十一分まで二分間警報が発生している。これが一月一日午後七時以降の状況でございました。それから、第二回目と申しますか、一月六日でございますが、これは午前の先生御指摘のように午前四時二十分から二十五分まで警報が発生してございまして、その後午前の四時三十九分から午後の六時五十五分まで警報が、断続的と申しますか、発生しておるといったような状況を別途お示しするポンプの振動のチャート、これをお手元にお配り、御紹介しておるわけでございます。
 確かにこの記録、この資料につきましては、横軸が一日から六日、七日にわたる、お手元の資料、御案内かと思いますけれども、そういうこと。それから縦軸にはXYの振動値、これはミクロンでございますが、マイクロメーター。それから上部振動というようなことで、安全上全体を把握する――私どもこれから先、先生方の御指摘を待つまでもなく、原因の究明、安全性向上のための一層の努力の一助として事態の解明に努めるわけでございますが、私が申し上げたいのは、ポンプBの振動の推移についてお示ししました。御指摘の生のチャート、これは運転室で生じておるものでございますけれども、それを安全上解釈し理解するためにこの「ポンプ(B)振動の推移」を、我々としてはこれを見ることによって安全上それなりの、いわゆる相当性を持った判断ができるのかなということで、現状、原因の究明中であるというのが一つございますし、それからポンプBの振動の具体的な記録につきまして、それが今回の事象ともちろん関係ございますけれども、どんなふうな純技術的な意味合いでの相関関係があるかといったようなこともございましょうし、あわせて言えば、具体的に情報として個々出ているところの記録の紙、それ自身をお示しする、もちろん検討するにやぶさかでございませんけれども、そういう事情もございますので、個々具体的にデータが持つ意味合い等々も一つ一つ吟味しながら、今後できるだけそのようなことについても御納得がいくような形で考えてみたい、こういうふうに思ってございます。
 以上でございます。
#92
○千葉景子君 ちょっと前提が大分長く御答弁をいただきましてあれなんですけれども、記録等そのほかもまた質問の中でお願いをする部分があるんですけれども、我々もこの実態をぜひ知るために、私自身のみならずまた専門の立場で研究をなさっている人に御相談をする、いろんなことがあろうかと思いますので、できるだけ生の資料を出していただくような方向を検討していただきたいというふうに思っております。
 ところで、警報が作動した場合の措置なんですけれども、振動計の針が振り切れてしまうというような異常振動があったような場合、マニュアル上は何か特別な措置、あるいは停止をさせるというような取り扱いになっているんでしょうか。それとも振り切れるようなことについては特別な措置は求めていないんでしょうか。その点はいかがですか。
#93
○説明員(三角逸郎君) 御説明申し上げます。
 御指摘の再循環ポンプモーターBにおきまして、振動大が発生したときの手順についてのお尋ねでございます。
 先生の御指摘は、記録計が振り切れた等々のことでございますが、現象的には警報、つまり運転室のそのときの状況は、運転室内にアラームが鳴る、こういうことであろうかと思います。つまり原子力発電所の安全確保の第一点として予防的な措置を講ずるという、そういう観点から基本的には運転員、操作員の注意をそこに引き向けるといったようなことでとられている措置でございますが、アラームが鳴りました。そこで運転員、操作員につきましては、発生時、そういう再循環ポンプモーターBの振動が大きいですよというアラームが鳴った場合の措置といたしましては、まず第一点にはその警報を確認する必要がございます。具体的には多分指差喚呼、指なんかで指しながらやるんだと思いますが、中央制御室、操作室のいわゆる警報盤を指しながら、なるほど間違いなく警報が確認できたなということをやったと思います。
 それから、振動値を確認する必要があろうかと思いますが、それにつきましては振動値の具体的な数、これは場所的には私の理解ではパネルの裏側等にあろうかと思うんですが、そういう振動値を確認するという手順が必要かと思います。それからそれに基づきまして振動が増加傾向にあるかどうかという判断が第一のステップ。つまり警報を確認した後、振動値を確認して振動が増加傾向にあるかどうかを判断する、これがまず第一点目の手続上の手順になろうかと思います。もちろん、その場合には警報が誤警報でないようなことも含めまして常識的な技術判断をするわけでございますが、それが第一ステップでございます。
 その後の手順といたしましては、ポンプのモーターの振動が大きくなるといったような事態と申しますのは、あわせて言えばそれに関係する、我々の言葉でパラメーター、関連の指標でございますが、関連の指標が当然ながらある種の異常な値なり状況を示しているのではなかろうか、こういうことを見るように手順上なってございます。具体的には、ポンプに関しましては軸受け等がございますけれども、異常振動が生じたようなときには当然軸受けの温度と、それからシールがございますけれども、メカニカルシール等の状況、つまり関連パラメーターの状況を十分監視をする、警戒を怠らない。そして必要を見きわめつつ、このあたりは技術的にかなり微妙な判断が必要でございますけれども、必要に応じてポンプの回転数を下げましょう、下げて様子を見る、こうなってございます。それが第二のステップかなということで、それが手順の二番目でございます。
 それから、さらに振動が続いている場合、これは具体的には一月の六日の時点ではそういう判断ということになろうかと思うんですが、ポンプ回転数を下げる、速度を下げるといったようなことをマニュアル上決めておりまして、当該ポンプを停止して原因の調査に入る。これが先生の御指摘のつまり警報が出たときの、発生時の手順ということになろうかと思います。
 以上でございます。
#94
○千葉景子君 今の話から見ますと、基本的な監視体制というのはわかるんですが、針が振り切れたような場合に即時停止をするというような形にはなってないように思うんですね、確認をして監視をさらに強めるわけですから。そういう意味ではマニュアル自体を、やはり針が振り切れるような振動、はかることのできないような振動が生じた場合には直ちに運転を停止するというような形につくっていただく必要があるんじゃないかと思うんですが、その点については今後いかがですか。マニュアルの改定等も考えていらっしゃるのではなかろうかと思いますが。
#95
○説明員(三角逸郎君) 先生の御指摘はよく理解できるわけでございますが、我々の今の認識、スタンスと申しましょうか、現在は原因の調査を鋭意いろいろな企業に進めておるということは先生御案内のとおりだと思います。時間と暇を惜しますに、再循環ポンプ回転機器の損傷によってこんなようなことが起こらないようにするのはもちろんでございますけれども、日本の原子力安全の一層の向上のために教訓を大いに反映するような措置を今後講じていこうというふうに考えてございます。総合的な判断が必要かと思います。その結果が出た段階で我々としては今先生御指摘のようなマニュアルの変更についてももちろん視野に入れて勉強したいと思ってございます。
 なお、マニュアルの変更等につきましては、もちろんそのようなことで研究するわけでございますけれども、これは若干私見にわたりますけれども、基本的に一部を変えることによって全体の整合性がとれなくなるだとか、全体的なきっちりとでき上がったシステムに対してほかに悪さをしないかとか、そういう幅広い検討の上でのマニュアルの変更ということで、この事例に即してこう変えれば即なるものではございませんので、そのあたりは電気事業者の安全に対する取り組み方、チェルノブイリ等で指摘されてございますところのいわゆるセーフティーカルチャー等の根本のところも含めまして、我々としても肝に銘じてやつていきたいと思います。
 念のために申し添えますと、我々今回の再循環ポンプの損傷の発生にかんがみまして、BWRを所有している各社に対しましては監視の強化ということで指示をしてございます。
 具体的には、若干詳細にわたって恐縮でございますけれどもこの機会に御説明させていただきますと、これは念のためかつ暫定的な措置でございます。具体的な検討の結果を待つわけでございますが、暫定的ではございますけれども、再循環ポンプ部に軸振動その他の関連パラメーターに異常が生じたようなことが仮にあった場合には、原因が固定できないといったようなときには、原子炉の停止措置を遺漏なぐやるようにといったような指示をしてございまして、そういうことと重ね合わせて先生御指摘のマニュアル問題も今後の課題として取り上げていきたいと思ってございます。
 以上でございます。
#96
○千葉景子君 ところで、御報告によりますと、資料等拝見をいたしますと、一月一日それから一月六日に異常振動が記録をされているわけですが、それ以前の昨年、一九八八年の十二月三日にやはりこの三号機において中性子が異常に高くなったということで緊急停止がなされたということがあったと私は認識をしているんですが、これは一月一日、六日の異常とつながっているんじゃないかというのが、やはり当然素人考えですけれども考えるところだというふうに思いますね。
 その後の調査によれば、ボルトが外れているとか破損が生じてかなりの金属片などが見つかっているということから考えますと、単に一月一日から六日に起こったことではなくて、やはり既にそれ以前、十二月三日の段階からこれにつながるような異常が生じていたのではないかというようなことも当然考えられるんですが、この事故については通産省の方としてはどんなような認識をお持ちですか。この原因がやはり再循環ポンプの振動あるいはそれによって炉内の水が脈動したというようなことによるものではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#97
○説明員(三角逸郎君) 何点かの御指摘がございました。
 最初に事実関係を御報告、御説明申し上げたいと思いますが、先生御指摘の東京電力の第二原子力発電所三号機、これは当該今回の損傷を惹起した号機でございますが、三号機が御指摘のように十二月三日に自動停止をしたということがございました。そのときは、運転状態は定格出力百十万キロワットで運転しておったわけでございますけれども、十二月三日午後一時二十八分に中性子束高、これはかたくて申しわけないんですが、炉内の中性子の束を検知しておる検知器がございますが、中性子束高という自動信号、これはとめる信号が出るわけでございますが、それで原子炉が自動的に停止してございます。このこと自身は、我々よく申し上げるわけでございますけれども、先ほど来午前中の御議論にもありましたけれども、安全な、言ってみれば保護動作と申しましょうか、何かあれば事前にとめますという設計の思想でとまったわけでございまして、それ自身は何の問題もないという認識でございます。
 その後自動停止の原因を当然調査するわけでございますが、その当時中性子束の信号を増加させる要因をいろいろ技術的、専門的に検討いたしまして、炉心流量の増加だとかその他の関連する事象発生のための、我々今言いましたパラメーター、関連の指標をいろいろ調査しましたけれども、直ちに原因には結びつかないといったようなことでございましたし、また系統設備等の異常もチェックいたしました。これは先生御指摘の再循環ポンプの異常等も当然含まれてございますが、系統設備の異常についても検討した。詳細に点検をいたしましたけれども、そこでは異常は認められてございません。
 原因といたしまして我々として固定いたしましたのは、再循環系、つまり炉水をぐるぐる回している系統がございますけれども、その配管クロス部というところがございまして、そこでの旋回流、渦を巻いて炉水が回っている旋回流が一時的に発生したり消滅したりといったようなことを繰り返すわけでございますが、このような解析評価を慎重に実施いたしましたけれども、これは再循環系、A系とB系があるというのは先ほど御説明したとおりでございますが、そのA系、B系の流量の変動、それから通常的な揺らぎのごときものが確率的な割合で一致して、その結果、中性子束が安全を確保するために設定されておる自動停止のレベルにまで達した、こういう理解でございまして、先生の御指摘のように十二月三日の当該炉の自動停止が今回のポンプ損傷の事象と関係がある、予兆であるといったようなことはないというのが我々の判断でございます。
 以上でございます。
#98
○千葉景子君 そういうことも理解をするために、できれば十二月三日前後、それ以降の振動記録、これもやはりお示しをいただければ、やはり一月の振動との連係なども、あるいはないかあるかということの推測もできるんじゃないかと思いますが、この点の記録などについての御提出についても含めて検討いただきたいと思いますが、先ほどのと含めていかがでしょうか。
#99
○説明員(三角逸郎君) 先生御指摘の東京電力の福島第二原子力発電所三号機の関連パラメーターということで事象解明のために必要な中性子束の推移につきましては、Aチャンネル、Bチャンネル、それぞれFまでございます。それが論理的に構成されて最終的には論理回路を構成して自動停止にいくといったようなことでございますが、御指摘の中性子束の推移につきましては、もちろんそのものということでは若干検討の余地がございますけれども、中性子束が時間的にどのように十二月三日十三時に至る間に推移をしたのかということにつきましては、御理解のためにぜひ御提出申し上げたい、こういうように思います。
#100
○千葉景子君 振動記録についてはどうですか、再循環ポンプ。
#101
○説明員(三角逸郎君) いずれにしましても、中性子束の推移といったようなことにつきましては、我々今るる申し上げましたように、十二月三日の事象の解明のために当然でございますけれども、必要かつ十分な情報は得て解析したわけでございますけれども、その間の再循環ポンプの推移につきましても、今まさに先生御指摘のように今回等の事例ということで我々認識してございませんけれども、いずれ広く我々がこの中で研究する過程でそういうこともあろうと思います。
 我々としては、今の先生の御指摘も踏まえて、原子力の安全に対しての理解のために必要があれば、あわせて言えば事象解明のために必要があれば、先生御指摘のようなことで前向きに検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
 以上です。
#102
○千葉景子君 必要があるかどうかというのは、見せていただかないと関連があるのかないのかというのは逆にわからないわけですので、全く無関係と言われるようなものは別に要求はいたしませんけれども、やはり疑問に思う部分などについてはぜひ資料の公開というのは積極的に進めていただきたい、また東電側にもそういう指導をしていただきたいというふうに思います。前向きにということですけれども、それはぜひ実現をするということでお願いをしたいというふうに思っております。
 ところで、今回の事故については、今かなり調査中ということでございまして、事前の御報告でもまだまだ内容的にはわからないことが多いようでございますので、ここでお聞きしても同じようなことになろうかと思うんですが、一、二点確認をさせていただきたいというふうに思うんです。
 そもそも二月三日に富岡町に提出された図面などによりますと、かなり主軸の部分、水中軸受けの回転体、羽根車リング等にかじり跡と言われるようなものが残っていたというふうに出ているんですね。そもそもそのかじり跡というのも、この言葉からいうと相当な、やっぱりガリツというような傷ではないかと推測をされるんですけれども、それがその後我が党の方でお願いをして出していただいた資料などによりますと、今度は接触痕、接触跡といいましょうか、そういうような言いかえなどもなされている。
 こういうことを見ますと、一体実際はどんなものなのか。図面でかいていただいておりますけれども、それだけでは、最初はかじり跡だ、次は接触跡だと、随分これは受け取るニュアンスとしては違うんですね。こういうことを考えると、やはりこれは実際の、例えば写真であるとか、行って見るのが一番よろしいかと思いますけれども、少なくともやはり図面とプラスして写真でその形状等を示していただかなければはっきりしたことがわからない。それに基づいていろいろな調査あるいは御質問をさせていただかなければならないわけですけれども、この点についてぜひ写真等で明らかにしていただきたい。
 そのほかにも金属片なども多数出ておりますが、これも図面で示されておりますが、ちょっとそれだけでは何かごみみたいなものがかかれているというだけで、形状とか色とかあるいは実態がわからないんですね。そういう意味では、これもやはり写真等を添えて御説明いただきたいと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
#103
○説明員(三角逸郎君) 御指摘の損傷状況、これもぜひ御理解願いたいということで過日、十七日に再循環ポンプの損傷状況ということで、現在まで我々としてタスクフォースで、作業グループでやってございますが、そのわかり得る、お示しできる最新のものということで損傷状況をかいてございます。
 この中には先生御指摘のいろんな図面、ポンプの構造図から始まりまして分解したときの状況、それからあわせて問題となりました水中軸受けの損傷のぐあい、それからケーシングカバーの状況、また水中の軸受けリングが実は脱落したわけでございますが、それを下から見た図面、これは逆に言えば羽根車とこすれ合ったような証拠ともなろうかと思いますが、そのような損傷状況の図面、それから今先生まさに御指摘の「羽根車の損傷状況」というのをお手元に公にしておるわけでございますが、この中で先生の御指摘の、あえて言えばページで六ページ目の、主軸のラビリンス部だと思いますが、そこに我々のレポートでは「接触跡」と書いてございます。先生先ほど御指摘のかじり跡との関係でどのような資料があれか私もつまびらかにしてございませんけれども、我々といたしましては、ここでの接触跡というのは具体的なイメージと申しましょうか、言葉として非常にわかりやすい、通常の言葉遣いをしてみたということでございます。
 なお、後半に御指摘のございました、このようなスケッチ、あわせて言えば図面というよりも写真を出していただけないかということでございます。基本的に写真の方があらゆる意味でいわゆる情報量が多いというような、これは私も大いにわかるところでございます。
 ただ、その写真の中から、具体的に今回の事象との関係でどのような安全上、今回の損傷の進捗状況等々の観点で何が意味のある情報なのかということにつきましては、もちろん御異論、御意見があろうかと思いますけれども、とりあえずお手元に今の段階では図面、スケッチといったようなことで出さしてもらってございます。
 ただ、何分、繰り返しになりますけれども、現在事故原因の究明等々をやっておるというところでございまして、報告書につきましては、先般来国会等でも、予算委員会等でも御報告してございますように、進捗にあわせまして御報告いたしますけれども、その過程で写真等をそのままお出しするかどうか、そのことが安全を確認する上で必要であればもちろんそのようにいたしますけれども、ケース・バイ・ケースで、図の方がわかりやすい場合はそうするだろうし、写真でないと御理解を得られない、わからない、もちろん我々が安全を評価する上で必要であれば当然そうしますけれども、そういうことを踏まえまして、よく先生の御指摘を肝に銘じて、ケース・パイ・ケースで検討していきたい、かように存じております。
#104
○千葉景子君 先ほどから再々申し上げて恐縮ですけれども、何が必要な情報かというのは、皆さんが御判断されることもあろうかと思いますけれども、やっぱりそれは私どもで必要なものというのは判断させていただきたいわけですね。そういう意味では、情報をできるだけ広く公開をする、やっぱりそれを基本的な姿勢にしていただきたいと思うんですね。
 特に、こういう形で、図面にかじり跡が接触跡になるとか、言葉が変わってしまう。あるいは、東電の説明などお聞きしますと、金属片が摩耗によってできたというようなことも言っているんですけれども、こういう金属片がただこすられただけでできるかというあたりだって疑問なわけですね。やっぱり何か大きな衝撃とかそういうことによってでなければ金属の、粉じゃないですから、破片などができるはずもない。
 こういうことを考えますと、発表あるいは資料の公開、こういうことが極めてやはり重要じゃないかと思うんですね。それによってその周辺の住民、あるいはさまざまなこの問題に関心を持つ者がその情報に基づいて意見を述べる、そういう機会もこれは必要なわけですので、そういう意味での公開、こういうことに留意をしていただきたいというふうに思います。
 質問したい点は多々ございますけれども、調査が進行中ということでもございますので、それを踏まえながらまたこれは継続的に、東電の皆さんも含めてやらせていただきたいと思いますが、最後に、この運転再開などについてどんなふうな認識を持っていらっしゃるか。安全を確認してやるということ、これは当たり前のことですけれども、三月二十二日に東電の那須社長も地元へ行かれまして、原子炉の異物を一〇〇%確認し、安全性を確認し、新品同様にしなければ運転再開という言葉は使わないというような趣旨の発言をなさっているようでございますけれども、安全を確認するといっても、一体安全確認というのはどこまでどういうことをすれば安全確認をされたと言えるのか、そういう点も非常に私どもは関心を寄せているところなんですね。
 その点について最後に、どんな認識を通産省の方では持たれているかお聞きして、質問を終わりにしたいと思います。
#105
○説明員(三角逸郎君) 御説明申し上げますが、先生の御指摘のように、今回のポンプの損傷事象、これは東京電力の運転管理全般にわたる話も含め、その後、御指摘がございましたけれども、地元の方々との関係でも多々今後の糧にすべきものがあろうかと思います。
 そういう観点で、日本の原子力発電の安全性をより着実に、さらに向上させるという観点で十分に原因究明、それから再発防止対策等々は当然ですけれども行っていきたい。そこは先生と同じ見解でございます。
 それから、まさに御指摘のございました運転再開の件でございますが、まずは基本的には今原子炉内にございます金属片だとか、御指摘の摩耗粉等々につきましては、東京電力には時間と労力を惜しますに徹底的に原子炉内をきれいにするように、洗浄するようにといったようなことを申してございます。
 いずれにいたしましても、運転再開を今言及するような段階にはないと思いますけれども、あえてのお尋ねでございますので私どもの認識を御披露いたしますれば、通産省においてはあらゆる角度から、これは我々だけじゃございません。先般来表明してございますように、顧問会の中の東京大学の秋山教授を委員長とする調査特別委員会といったような場で我々の足らざるところを補っていただきつつ、専門的、技術的な知見もいただきながらきっちりとやっていきたいと思っております。その過程で運転再開といったようなことについてどの程度の安全確認が必要かといったようなこともあろうかと思いますが、ただ単に技術的な安全、これはもちろんでございますけれども、その内容、努力というのが地元の方々も含め大方の皆さんの納得のいけるようなそういうレベルまで達することが我々としては必要ではなかろうかという感じでございます。
 もちろんその過程では通産省ということだけではございませんで、原子力安全委員会等にも当然ながら御評価、御了解、御支持もいただきながら進めていこうということで、そういう気持ちでやっていきたいというのが今の認識でございます。
 以上でございます。
#106
○伏見康治君 きのうは三月二十八日で、TMIの事故があってからちょうど十周年というわけで、NHKのテレビを見ておりますと、壊れた原子炉の内部の写真等を見せていただきまして、非常にいい時期にこの委員会を開いていただいたと思います。
 これから三百億円というお金の議論をすることになるわけですから、まずお金の勘定を少し伺っておきたいんでございます。
 TMIの事故というのは非常に貴重な事故で、事故を起こさない日本としてはその事故についてのいろんな調査を当然しておられると思いますが、TMIの事故が起こったためにその会社は一体どれだけの損害を受けたというふうにお考えになっておられますか。
#107
○政府委員(平野拓也君) 今まだ事故処理の一環としていろいろなことをやっておるわけですけれども、これまで私ども把握しておりますところでは、約十億ドル見当のお金が必要であるということになっておるわけでございます。
#108
○伏見康治君 まだとにかく途中経過、十年たっても始末ができない状態ということは非常に弱ったことだと思うんですが、現時点までに、今これから議論する原子力賠償保険と、損害賠償の制度と似たようなことがアメリカにもあるんだろうと想像いたしますが、つまり一体どのぐらい保険金が支払われているかという知識はございますか。
#109
○政府委員(平野拓也君) 先生御案内のとおり、TMIは、放射能の放出はそれほど多量ではなかったわけでございますけれども、しかし当時のいろんな混乱の状態で大勢の方々が避難された、そういう関係であの後訴訟がたくさん出ておりまして、その訴訟の過程で和解という形で、日本円にしまして約五十億円程度のものが和解金として支払われたというふうに私ども承知しております。これが、アメリカの原賠法に当たりますプライス・アンダーソン法に基づいて支払われたものかどうかということにつきましては余り明確になっていないわけでございますが、現在までのところそういう金額は支払われたという実情があるというふうに承知しておるわけでございます。
#110
○伏見康治君 アメリカの事情というものは、いろんなことが日本よりもよく公開されていて、いろんなことがよくわかっているはずだと思うんですが、少し余りはっきりしない御報告でいささか残念だと思うんですが、もしアメリカでその程度の知識だとすると、チェルノブイルの方の損害がどのくらいであったかということについてはほとんど何もわからないというお答えしか得られないように思うんですが、何か推定値でもあるんですか。
#111
○政府委員(平野拓也君) これもソ連政府の正式な発表という形で承知しているわけではございませんけれども、昭和六十三年の一月にタス通信がそういう報道をしておりますが、それによりますと、ソ連の事故対策に必要な経費が約四十億ルーブル、日本円にして約九千億円、その他のいろんな経費、これは内容はよくわかりませんけれども、それがやはり同額ぐらいでございまして、計一兆八千億円に相当するような金額であるというふうな報道がなされたということぐらいでございます。
 私どももその辺の全貌を把握したいということでいろいろ試みてはおるわけでございますが、残念ながらまだつかみ切れないというのが現状でございます。
#112
○伏見康治君 あの規模の放射能汚染がもし日本のどこかの原子炉の周辺で起こったとすると、どのくらいの損害になるという、そういう想定はなすったことはありますか。
#113
○政府委員(平野拓也君) それはございません。
#114
○伏見康治君 私は、よそのいろいろな事故、日本では起こらないにしてもよそで起こった事故というのは極めて貴重な知識だと思うんですね。
 例えば、放射能の影響が人体にどういう影響を及ぼすかといったようなこと、それに関しても日本人自身が非常に知りたいところなんですが、そういうデータを本当に人体実験でやろうとしたらこれは大変なことで、第一人道問題でだめなんでしょうし、チェルノブイルの事故とかTMIの事故とかいったようなものはそういう面でも貴重なデータをいっぱい含んでいると思うんですね。ですから、お役所としてはそういうよその国の事故というものに対しては最大限の調査努力をなすべきだと思うんですが、十分なすったというお感じですか、それとも足りないと思っておられますか。
#115
○政府委員(平野拓也君) おっしゃいますように、大変不幸なことではございましたけれども、先生のおっしゃいますようなことでやはり非常に価値のあるデータがあるはずだということで、私どもも事故の直後からソ連側に対しまして放射線の人体影響に対する疫学的調査等についての申し入れを、日ソ科学技術協力委員会でございますが、そういう場でも提案をいたしたわけでございます。
 当初、ソ連側はそれに対しては乗り気じゃなかったといいますか、断られたということもございました。その後引き続き努力をいたしました結果、ようやくソ連側と一部の調査につきまして合意が成立いたしまして、既に私どもの放射線医学総合研究所の研究者が向こうに行き、また、向こうの研究者がこちらに参るというような研究交流というものもようやく始まったところでございます。なお、引き続きそういう努力は続けていきたいと思っております。ソ連側もキエフにそういう専門の相当大がかりな研究機関を設立したというふうに承知しておりますので、そういう研究者レベルでの交流を通じましてできるだけそういう実態を把握したいということでございます。
#116
○伏見康治君 今のはソビエトのお話だったと思いますが、アメリカの方は非常に日本人もたくさん行っておられるようですし、第一、日本の電力会社がアメリカの電力会社に大分資金的な援助もしているというふうに伺っておりますから、日本人としては恐らく非常にたくさんの知識をTMIについては御承知だと思うんですが、少しアメリカの事情をこれからお伺いしてみたいと思うんです。
 日本の原子力行政というのは大抵アメリカのまねですから、原子力損害賠償ということについてもアメリカを多少まねているんじゃないかと思うんですが、アメリカでは一体どういうふうになっているんでしょうか。特にプライス・アンダーソン法とかいう法律があるそうですが、これはどういう内容のものなんでしょうか。
#117
○政府委員(平野拓也君) プライス・アンダーソン法と申しますのは、言うなればアメリカの原子力損害賠償法ということでございまして、これは日本の原賠法を策定いたします際にも参考にしたものの一つであるというふうに承知しておるわけでございます。
 これが昨年改正されまして、その主な内容は、いわゆる責任限度額というものを大きく引き上げたということでございます。それから、この仕組みは我が国のものとは違いまして、責任は有限責任ということでございます。それから、そういう実際の補償、賠償をやる場合の仕組みは、事業者間の相互の扶助制度というふうな特異なやり方をとっておるわけでございますが、そういうものについての内容を昨年強化充実したというのが最近のアメリカのプライス・アンダーソン法の実態でございます。
#118
○伏見康治君 今、日本と違う、無限責任ではなくて有限の責任であるといったようなことを言われたわけですが、物の本を読むと、アメリカの法律の改定が随分長い間コングレスで議論の対象になっていて、いわば推進側とそれから反対側というのかな、そういうものとの間の議論が非常に長く続けられたという話を聞いておるんですが、一体どういう点が論争になったんでしょうか。
#119
○政府委員(平野拓也君) 私ども承知しておりますところでは、やはり無限責任を導入したらどうかというような議論もあった。それから、責任限度額の引き上げ幅の点につきましても議会内でいろいろな議論があったというふうに聞いております。したがいまして、そういうさまざまな意見を調整するために予定よりも一年ぐらいはおくれたんじゃないかと言われておるわけでございます。
#120
○伏見康治君 結局、日本の原賠法とアメリカのそれに相当する法律との間の差は、無限、有限といったようなことのほかにも何かあるんでしょうか。
#121
○政府委員(平野拓也君) おっしゃいましたようなところが一番大きな差でございますけれども、その仕組みが、先ほど申し上げましたように全体の有限の責任限度が約七十二億ドル、日本円にしますと八千八百億円強でございまして、その中で二億ドル分につきましては保険で担保するということでございます。あとのものにつきましては、原子炉の一基当たりの遡及保険料というもの、それに原子炉の基数を掛けたというようなことで、それが全体で約七十億ドルに当たるというようなそういう仕組みをとっておるわけでございます。
 ただ、これにつきましても、最終的にはアメリカの政府との補償契約で担保するという形でございますから、いずれ最終的には政府が何らかの形で担保するという形になっておるわけでございますが、違うところはそういうところだということでございます。
#122
○伏見康治君 アメリカの事情のほかに、西側のヨーロッパ、イギリス、フランス、ドイツ、スイスといったようなところがやはりそれぞれの制度を持っておられると思うんですが、そういうのを簡単に御説明していただきたい。
#123
○政府委員(平野拓也君) ヨーロッパの場合、西ドイツ、スイスが無限責任という形でございまして、その他の国は一応有限責任という形をとっておるわけでございます。
 賠償措置額で見ますと、さまざまでございます。西ドイツの場合は約三百五十六億円、その程度の日本円の額でございます。それからスイスが三百四十一億円、その辺が非常に高い方でございます。それからスウェーデンでございますが、スウェーデンが百六十五億円といったようなところも、これも真ん中あたりでございますが、相当高い方でございます。それに引きかえまして低い方でございますと、イギリスが四十五億円程度、それからフランスが十億円程度、スペインが九億円、約十億円近いものでございます。そんなような内容でございます。
 主なところはそういうところでございます。
#124
○伏見康治君 そういうふうに伺うと、ほかのところは有限の場合が多いので、無限責任という意味で日本に似ているところというとむしろ西ドイツであるということになるかと思うんですが、西ドイツの金額の方も大体匹敵するんではないかと思うんですが、三百億円という数字の根拠はその辺にあるんですか、それとももっと別の根拠によるんですか。
#125
○政府委員(平野拓也君) 先ほど午前中も申し上げましたように、こうやって眺めてみますと、高い方は西ドイツ、スイスが三百億円強ということでございますので、その辺のレベルをねらいたかったということが一つございます。
 それからもう一つは、保険の引受能力でございまして、これは国内だけじゃなくて外国の保険プールとの交渉事でございますけれども、そういうところでぎりぎりどの程度まで引き受けてもらえるかということを調査いたしまして、総合的に判断いたしまして三百億円が適当であるという結論を原子力委員会に設けました専門部会でお出しいただいたということでございまして、今回の改正はそれに基づきまして法案を出させていただいているということでございます。
#126
○伏見康治君 この賠償措置額と称するのは、要するにいざというときに即座に払えるお金、しかもそれは、原子炉の周りの付近の住民の方々に与えた損害に対する補償額なわけですね。それだけの事故が起こればもちろん発電所自身も大損害を受けるわけですが、そういう損害に対する保険というのはまた別にあるわけですか。それはどのくらいの額なんですか。
#127
○政府委員(平野拓也君) これは、住民の方だけではなくて、前回の改正のときにそういうことにいたしたわけでございますが、従業員につきましても適用されることになっております。ただし、従業員の場合はいわゆる一般の労災というものが先行いたしまして、それでカバーし切れない分についてこの保険がきいてくる、こういう仕掛けになっているわけでございます。
 それからもう一点、いわゆる財産保険でございますが、これは企業がそれぞれの企業経営の判断によりまして掛けるということでございまして、通常の工場等に掛ける保険と同じようなものでございます。これにつきましては、そういうことで任意でございますので、私どもは実は仕事としてこれを把握する立場にないわけでございますから、正確なことを申し上げるのはちょっと、そういう立場にないわけでございますけれども、原子力発電所を例にとりますと、御案内のとおりそれを建設するのに三千億なり四千億なりという非常に巨額な経費が必要であるということで、それに相応した相当な額を掛けているということでございます。どのくらいかということでございますが、私どもの知っているところでは一千億円近いものが掛かっているというふうに承知いたしておるわけでございます。
#128
○伏見康治君 ついでに伺いますが、福島の原子炉が故障を起こして、あるいは事故を起こしてとまっている。とまっているだけでも相当な損害だと思うんですが、殊に中の燃料棒ごとすっかり取りかえるようなことになると大損害だと思いますが、その損害額がどのくらいで、その損害を何か埋めるような保険というものは掛けてあるものなんですか、どうですか。
#129
○政府委員(平野拓也君) これも私ども直接どういう保険が掛かっているとかというようなことを申し上げる立場にないわけでございますが、一般論として申し上げますと、保険の場合はやはり保険約款に基づきまして事業者と保険会社が契約する。したがって、どういう約款になっているかということによりけりだと思いますが、いずれにしろ現在、今の福島の問題の炉につきまして原因調査なりなんなりをやっている段階でございますから、保険金を支払う場合にはやはり原因調査が済まないとそういう結論が出ないんじゃないかと思いますし、また、被害額等については現在のところ全く私どもつかんでおりません。それが実態でございます。
#130
○伏見康治君 これも直接の責任でないから知らないと言われればそれまでですが、三百億円の保険を掛けたときの保険料というのかな、電力会社が絶えず払わなくちゃならないものはどのくらいの程度のものなんですか。
#131
○政府委員(平野拓也君) 先生のおっしゃられるとおり、私どもこれ強制保険を掛けさせるまではいいわけでございますが、それ以降のことは、これはビジネスの世界の話でございますから、一体幾らかということについて正確に把握はしておらないわけでございます。現在さまざまなケースがありますけれども、平均して百億円の場合は約八千万円程度の保険金を払うというようになっておるようでございますが、これが三倍になったから三倍になるということではないようでございまして、これもこれからの交渉事でございますけれども、三割とか四割とかそんな値上がりじゃなかろうかというふうに我々推測いたしております。
#132
○伏見康治君 ついでにとまったときの損害を知る意味で伺いますが、あの故障を起こした発電所が一年間にもうけるお金はどのくらいのものですか。
#133
○政府委員(平野拓也君) それはちょっと申しわけないですけど、今その資料を持っておりませんので、もうけということになりますとちょっとお答えを直ちにいたしかねますけれども。
#134
○政府委員(村上健一君) もうけるということではなくて、仮にキロワットアワー十円で計算しますと百万キロワット、一日に二千四百万キロワットでございますから二億四千万円一日に売電収入がある。それが二百日稼動すれば四百億円でございます。これは全くのキロワットアワー十円にしての計算でございます。
#135
○伏見康治君 チェルノブイリの事故で、一国の原子力事故が実は国際的に非常に大きな影響を及ぼすということが知らされたわけでございますが、日本の例えば九州の原子炉が韓国へ放射能を散らしたといったようなときに、韓国から何か文句が来ると思うんですが、その辺のところはどういうイメージを持っていたらいいんですか。
#136
○政府委員(平野拓也君) これは仮に、そういうことはないと思いますけれども、日本の原子力発電所の事故がございまして韓国に被害、韓国といいますか、近隣諸国に被害を与えた場合、これは向こうの被害者からの請求があるわけでございます。これは私法上の請求でございますので、国際私法の原則によって発生地国、すなわち日本の法律が適用される、こういうことになればこの原賠法が適用されまして被害者に賠償を行う、こういうことになるわけでございます。
#137
○伏見康治君 逆の場合も同じですか、つまり韓国の原子炉が九州に被害を及ぼしたという場合は。
#138
○政府委員(平野拓也君) これは余り特定の国を申し上げるのはどうかと思いますが、仮に近隣諸国の被害が日本に及んだ場合は、被害者が、今の逆でございますけれども、向こうの法律で賠償を要求するということになるわけでございますが、やはり国が違いまして制度もいろいろ違うというようなことでございますので、政府としてもやはり外交交渉でそういう被害者の救済のために交渉を行うというようなことになろうかと思います。
#139
○伏見康治君 話を少し賠償のお話と変わったところに逸脱したいと思うんですけれども、この数年間、アメリカやイギリスでは、自然放射能、我々が日常受けている放射能の中で実は一番大きな原因になっているのは空気中を漂っているラドンであるという結論を出しております。我々が受けている自然放射能のむしろ大部分がラドンであるといってもいいくらい非常に大きなものになっているということになっているんですが、昔はそういうことは必ずしも言ってなかったんですけれども、こういうことは日本の原子力局でも追跡しておられますか。
#140
○政府委員(平野拓也君) 先生おっしゃいましたように、最近国連の科学委員会等でもそうでございますし、アメリカ等でも非常にラドン問題に対する関心が高まっておるということでございまして、我が国におきましても、ラドンに対する実態というのはまだ実は明確にはつかんでいないというのが実態でございます。このために原子力安全委員会が環境放射能安全研究専門部会というところで年次計画をつくっておるわけですが、その中でも生活環境におけるラドンに関する研究を積極的に進めるようにという計画を立てておられるわけでございます。これに基づきまして、放射線医学総合研究所を中心に、国の機関あるいは原子力研究所とか動燃事業団とかといったようなところでいろんな研究を行っているわけでございます。
 具体的に申し上げますと、放射線医学総合研究所では、全国の一般の居住環境の中のラドンの濃度の調査を行っておりまして、幾つかの方法をやっておりますけれども、例えば全国約七千軒ぐらいの一般の家屋の中にラドンの測定器をつけさせていただいて、それで一年間それをはかるといったようなことで調査を行うとか、また別のやり方でやはり屋内あるいは屋外あるいはそのラドン濃度の季節変動といったようなことを調査するというようなこともやっております。
 それから、同じく当庁関係の機関でございますと原子力研究所でございますが、これも実験家屋を使いまして、家屋内の空気中のラドンと娘核種の濃度の測定といったようなことをやっております。
 それから厚生省の公衆衛生院では、やはり一般居住空間のラドンの娘核種の濃度とそれから空調の方式、あるいは導入の外気量とか湿度とか温度とかの関係といったようなことをきめ細かに調査をしておるということでございます。
 それから建設省の建築研究所でございますが、これは各種の建築建材の中に含まれておりますような放射能の含有量、それからそのラドンの放出率とか、そういったようなことの研究をやっているということでございます。
 それから動燃事業団につきましては、人形峠周辺の環境中のラドンの濃度測定といったようなことをやっております。
 こういう結果が出ますれば、それを、情報を互いに交換して日本のラドンの状態というもののマップといったようなものができればいいなということで、今、各研究機関鋭意研究を行っているということでございます。
#141
○伏見康治君 大分昔、人形峠を見学に行ったときに、この近所のラドンはどのくらいですかという話を伺ったことがあるんですが、明確なお答えがなかったんですが、あの近所には有名なラジウム温泉もございまして、そのラジウム温泉の近所なんかではラドンの濃度は相当の高いものになっておるだろうと思うんですが、二、三日前の新聞だと、何か温泉の硫化水素で人が死んだというようなこともありますが、ラドン温泉で、特別な密閉した部屋にでも置いておくとあるいは何か問題が起こるのか、自然という感じもしますが、ラドンはいずれにしても気圧とか風とかいうものによって相当起伏が激しいもので、非常に長い間の測定をやりませんと結果は出てこないんではないかというのが私の学生時代の記憶です。
 ただ、この際申し上げたいのは、天然自然の現象の中に相当の放射能を出すものがあって、我々はそれにしょっちゅう実は浸っているんだ。したがって、人工的につくられた放射能が、ごく微量のものが降ってきたときにそれを余り神経過敏に受け取らないように、むしろ少量の放射線というのは我々の日常生活の中のいつもくっついて回っているものであって、それにわずかぐらいの人工放射能が来たということで余り騒ぎ立てるのは非科学的だという意味の知識の普及を行うべきだと私は信ずるんですが、いかがなものでしょうか。
#142
○政府委員(平野拓也君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもの生活、人体そのものも一種の放射能と言えば言えないことはないわけでございますから、これは人類発生以来、放射能に包まれて生きてきているということでございます。私どもは、そういうことは常識じゃないかというふうな認識を持っているわけでございますが、最近、午前中も申し上げましたけれども、例えば講師派遣制度でいろんな集まりに出ていきました者の報告を聞きますと、そういうことについて実に、常識と言っちゃなんですけれども、そういう知識が一般に浸透していないということを痛感して帰ってまいるわけでございます。
 現在のやはり原子力に対する反対の気持ちを持たれる方の大部分は、放射能あるいは放射線に対する恐怖ということでございまして、この辺はやはり物の程度の問題といいますか、そういうことをよくお考えくださいということを我々常々言っているわけでございますけれども、やはりまだその努力が十分足らないということでございます。
 これからは、いわゆるパブリックアクセプタンスにいろいろ努力するわけでございますけれども、特にその点につきましては留意いたしまして、話だけではなくて、実際にいろんな実験をやってみたり、調査を目の前でやってみたりというようなことも含めまして、わかっていただけるような努力を続けたいと私どもずっと考えてきておりますし、来年度もこれを少し大々的にやっていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
#143
○伏見康治君 そのことに関連して、私が身近に経験したことをちょっと御参考までに申し上げておきたいと思うんですが、相当有名な反原発の運動家がおられまして、その方を呼んで、このどこかの部屋で公明党の勉強会でお話を承っておりますと、その方はこういう哲学を持っておられるんですね。つまり、天然にあるものは人間が長らく共存してきたんだから害はない、人工でつくったものは人間がなれていないから害があるという、そういう説で、そしてその話のついでに、その先生いささか口が滑ったんじゃないかと私は思いますが、ラドンというものは昔から天然自然に存在するから害がない、こういうことをおっしゃられました。
 先生の頭の中には、ラドンというのは希ガスであって、化学的に不活発だから人間が吸い込んでもすぐそのまま出てしまうという考え方で言われたんだろうと思うんですが、実はラドンの害をなすのは、肺の中に入っている間に崩壊を起こしまして、二次的にラジウムA、ラジウムB、ラジウムCとかいう一連の系列の産物を肺の中に残していくわけです。それはみんなほとんど全部がアルファエミッターで、しかもそれぞれが長寿命のものですから、相当長い期間気管支の表面に吸着されたまま放射線を放し続けていく。そういう意味で、ラドンというものの害は、ラドン自身の出す放射線というよりはラドンの娘核が出す放射線が問題になるわけですね。
 そういうことで、どうも反原発で相当立派な学者だと思っている方が非常に誤った物の印象を与えるようなことを言われるので、その学者に対する信用を失ったという意味で非常にがっかりして、同時にそういうデマゴーグでいわば国民大衆が動かされているとすると、これはやっぱり何とかしなけりゃいけないなという感じを非常に受けたわけです。
 それで、これもついでの私の身近な経験から申し上げるんですが、私が関係しているある理科教育に賞を与える会がございまして、そこに最近応募されてきた先生がおられるんです。この先生は非常にいいことをなすって、私は大いに感激したんですが、ラドンでなくってトロンなんですが、トリウムの方のトロンです。
 その方は関西に住んでおられるんですが、関西には花南岩が多いわけで、したがってその辺の砂とかあるいは粘土とかいったようなものには花崗岩の風化したものがございまして、そういうものの中にはウランも含まれていますが、トリウムも含まれております。そういうその辺からとってきた砂を乳鉢で細かく砕きまして粉にして、そしてそれをビニールの袋に入れてこうやって振ってやりますというと、ラドンやそれからトロンが出てくるわけです。それを放射線の検出器にかけますというと非常に簡単にディケーカーブがとれる。トロンというのはわずか数分間の寿命で消えていきます。ラドンになりますと一週間近くのものですから、教育上はラドンよりはトロンを使う方がよろしいわけでして、そういうデモンストレーション実験を開発された先生がいて、私はこれは原子力のいわば基盤をつくるのに役に立つお話ではないかと非常に感心をしているわけです。
 つまり、放射性物質というと何か特別なところにしかないような感じを受けるわけですが、その辺の砂の中にもいっぱい放射能があるんだということを認識させる非常にいい話だし、それから放射能というものがどういうものであるかということを生徒さんに聞かせるのにも非常にいい手段だと思います。
 これに関連して、あるいは前にも申し上げたことがあるかもしれないんですが、ミュンヘン工科大学におられます森永晴彦君という方が、アルゴン42というものを人工的につくり出すことに成功いたしまして、それは相当長い寿命で崩壊していくんですが、崩壊してカリウムの42というのをつくります。それで、その森永君の哲学によると、人造的につくったアルゴンの42をボンベに入れてお医者さんに配っておる。そこで、そのボンベの中に針金を突っ込みましてその針金の表面に電気を与えておきますと、カリウムが吸着してくるわけです。その棒を引き抜きまして、例えばコップの水の中へそれを突っ込みますというと放射性のカリウムがこれに溶けてしまうわけです。それで、それをいろんな生体実験に使うことができる。寿命が短いし、それからとにかく非常に薄い濃度のものでございまして、要するにガイガーカウンターにはかかるけれども、心配するような量では絶対ないわけなんです。
 そういうものを普及すれば、全国のお医者さんがみんな持っていて診療にそういうものをお使いになるというようなことができれば、放射能に対する知識というものが非常に普及するであろうということを言われておられる方なんですが、そういう運動もあるということをお話しいたしまして、今後の政策の材料にしていただきたいと思います。
 まだ時間が余っておりますけれども、この辺でもう終わりにいたします。ありがとうございました。
#144
○政府委員(平野拓也君) 大変いいお話をお教えいただきましてありがとうございました。
 私どもも、身近な放射能をはかっていただくために、例えば測定器を貸し出しするようなことができないかといったようなことをただいま研究しておりますので、先生の今のお話、十分参考にさせていただきまして、ぜひそういうことをやってみたいなと思っておりますので、今後とも御指導いただきますようにどうぞよろしくお願いいたします。
#145
○委員長(高桑栄松君) 速記ちょっととめてください。
   〔速記中止〕
#146
○委員長(高桑栄松君) それでは、速記を起こしてください。
#147
○吉井英勝君 内田先生にはお忙しいところどうもありがとうございます。
 三月三日の予算委員会で内田原子力安全委員会委員長より、せんだっての東電福島の事故の件について、原子炉施設の安全上重要な機能破損に端を発したものだった、重大な事故と認識しているというふうに御答弁いただいております。それで、具体的に安全上どういう問題ありというふうに専門の先生として御意見をお持ちか、この点をまずお伺いしたいと思っているわけです。
#148
○説明員(内田秀雄君) 福島の第二の三号炉の事故は、今お話しのとおり原子炉施設の冷却水の循環系のポンプの破損でございますので、放射能の放出には至っておりませんけれども、施設の健全性を損ねたということで重大な事故であったと認識しております。
#149
○吉井英勝君 それで、先生にもう少しお伺いしたいんですが、その前に長官の方も、これは安全上重大な事故であったという、こういう御認識では科学技術庁長官も一致していらっしゃると思いますが、念のために確認しておきたいと思います。
#150
○国務大臣(宮崎茂一君) 私は、内田先生みたいに専門家じゃございませんのでよくわかりませんけれども、安全委員長がそうおっしゃいますから、そしてまた皆さん方もトラブルの中では大分重大なトラブルだというふうな御意見が多いものですから、私もその後のいろんなことを考えまして、やはりこれは重大なトラブルだ、こういうふうに認識いたしております。
#151
○吉井英勝君 内田先生に若干お伺いしたいと思っているんですが、再循環ポンプの破損ですね。この事故というのは、昨年二月の浜岡原発一号機の場合、ポンプ二台同時停止ということで、あれは電気トラブルですね。一分間は暗やみ運転といいますか状況がわからずに運転してしまったわけですが、今度の事故の場合に、最悪の場合にはポンプが機械的に破損ということで停止するということになりますと、循環そのものがうまくいかなくなるわけでありますし、その場合、特に安全上どういうことが問題になるというふうなことを懸念していらっしゃるか、その辺伺いたいと思います。
#152
○説明員(内田秀雄君) 原子炉の安全の解釈の問題でありますけれども、今申しましたように放射能の放出に結びつく安全の問題ということと、原子炉施設を運転する信頼性を損なったという信頼性の問題からこの安全の問題があると思いますが、循環系のポンプが仮に瞬間的に停止いたしましても、原子炉の安全の問題としては重大なことにはならないということは設置許可の審査の段階で確認してございます。したがいまして、放射能の放出に結びつくという意味での安全の問題からは、循環ポンプの破損あるいは停止ということは大きなことではないと思っております。
#153
○吉井英勝君 放射能の放出という点で直ちには、ということなんですが、まず、それに先立っての事故の問題がありますね。どういうことかと申しますと、循環ポンプが停止いたしますと当然冷却水が流れないわけですから、スリーマイルの場合もまさにそういう問題が生じておったわけでございますし、この点で最悪の場合、循環ポンプがとまって冷却水が流れないということになった場合には、どういう事態を安全上懸念されるという点でお考えか、この辺伺いたいと思います。
#154
○説明員(内田秀雄君) スリーマイルアイランドの事故といいますのは冷却水が喪失した事故でございまして、今回の事故にいたしましても、浜岡の循環ポンプの停止でありましても、これは冷却材の喪失ということではございません。流量が減ったということでございますので、問題のないということを申し上げたわけであります。
#155
○吉井英勝君 時間が限られた中で技術的に事細かにここですべてやろうとは思いませんが、スリーマイルの場合も冷却水の喪失ということだけじゃなしに、どんどん冷却水を入れていく中で、例えば水素発生等圧力低下を来して、あるとき明らかに液面低下で炉心燃料体上部が液面上に出てしまうという問題があって冷却が不十分になったということがあったわけですが、循環ポンプがとまるということはいろんな場合が想定されるわけですね。ですから、あの場合と同じように、温度の急上昇とかボイドの発生とか、あるいは場合によっては燃料体の上部の方では核沸騰に近いような状態に覆われる場合とか、いろんな場合が考えられるわけでありますから、私もかなり安全側に設計したものとか、配慮したことはわかるんですが、そういう事態についても、一応懸念されるべき事態の一つとしては考えなければならないのではないかと思うんですが、先生いかがでしょう。
#156
○説明員(内田秀雄君) 循環ポンプが停止した、あるいは一部破損したということに続いた事象として、ほかの安全装置が働かなかったとか、あるいは冷却水の喪失ということを考えれば問題は別でございまして、TMIでありましても、御存じのように、今お話しのように炉心が露出したということは、これは冷却水が喪失されているから露出したことであると私は理解してございます。
#157
○吉井英勝君 TMIの事故について議論をしているわけではございませんので、次の問題に移りたいと思いますが、ただ、問題は冷却水の喪失だけの問題ではなしに、水素ガスの発生その他による液面低下ですね。これは別な現象の場合ですと、ボイドの発生によって燃料体の上部が沸騰状態に置かれる場合だって同じ問題なんだということを指摘しておきたいと思います。
 次に、炉心本体に約三十キログラムもの金属片が循環しておったという問題でございますが、この燃料体の損傷については懸念される問題もあろうかと思いますが、この点については先生はいかがお考えですか。
#158
○説明員(内田秀雄君) この件につきましては、現在規制当局にその状況を十分調査するように要請しておりますので、現在時点では何も申し上げることがございません。
#159
○吉井英勝君 燃料体の中に金属片が入っておっても、それは調査中であって、今は燃料体が損傷するとか、その心配は全くしていない、そういうお考えですか。
#160
○説明員(内田秀雄君) 詳細は通産省から説明していただくとよいと思いますけれども、燃料体がもし大きく破損するとか、あるいは穴があいたのであれば沃素の放出が冷却水の中に見られますので、直ちにそれは検出できることであろうと思います。現在、まだそういった事象になっているとは報告を受けておりません。詳しくは通産省の方からお話しいただきたいと思います。
#161
○吉井英勝君 通産省の方はまた後ほど。
 それで、ただピンホールが完全にあくとか、そこまでいかなくても、燃料体の損傷そのものが、今回の場合は停止しておりますが、燃料体の損傷というのは、これはやがてそこを中心にしてクラックを生じたりとか大きな問題に発展する問題でありますので、燃料体の損傷という可能性については軽く見ていただいては困るんだということを一言申し上げておきたいと思います。
 ポンプの異音というのは、実は今回と同じように福島第二原発の一号機の方では、一九八四年十一月八日にポンプのリング約百キロ、これが脱落してポンプの羽根車の上に乗っていた、こういう例があったと伺っておりますが、この点はいかがですか。
#162
○説明員(三角逸郎君) 先生御指摘の昭和五十九年だと思いますが、十一月の事案、事象でございます。この事案を御説明申し上げますと、福島第二原子力発電所の一号機でございました。これは同じようにBWRの定格出力百十万クラスのものでございますが、定期検査中でございましたけれども、原子炉の再循環ポンプ、これはAでございます。そこで、私の記憶が正しければ、定期検査の最終調整段階、ポンプを動かす段階がございますが、そこで異音の発生を認めてございます。そこの異音、これを感知いたしまして分解点検をしたところ、先生御指摘のように、水中軸受けリングの溶接部にひび割れが生じてございまして、約半分ということでございますが、脱落しておるのを発見してございます。
 調査の結果につきましては、その当時、五十九年でございましたけれども、水中軸受けリングの溶接部に明らかな溶け込み不良、先生御案内のように溶け込みが十分じゃなかった、溶け込みの不良というのがございまして、そのときの判断、これはポンプ内の圧力変動、ポンプの中での水圧の変動によりまして、その力が加わったことによる疲労による割れが生じたものであろう、こういうふうに判明、解釈してございます。
 なお、その当時、当該軸受けの溶接を念入りに行ったいわゆる対策品と取りかえて、そのときには健全側でございました、問題がなかったポンプBにつきましても取りかえを行っておる、こういうことでございます。
 以上でございます。
#163
○吉井英勝君 このときも今のお話しあったようにまずポンプの方で異音なり異常振動なり確認して、そして調整運転中でしたがストップしておるわけです。ですから、このポンプの異常とか異音というのは原子炉の安全上問題ありということで即時停止をして点検をする。そのときの、八四年のこの問題以降、まずそういうマニュアルをつくっておってもおかしくなかったはずなんです、今回と同じ問題を起こしておるわけですから。このときに、そういうポンプで異常が確認される。そうすると、即時停止して点検に移るという、そういう異常時に対応したマニュアルがなぜできていなかったのか。八四年のこの経験というのが生かされてないのじゃないかと思うんですが、これはどうなんですか。
#164
○説明員(三角逸郎君) 先生の御指摘のように、八四年につきましては、昭和五十九年当時の話でございますけれども、基本的に異音をとらまえて、その結果、調整運転中でございましたので、その当時直接すぐにそのポンプを緊急にとめたかどうかというのはちょっと今手元に資料がございませんけれども、その当時からポンプに対する異常の振動大ということに関しまして、五十九年につきましては異音の発生といったようなことで若干事情は違うというふうには思いますけれども、ポンプモーターの振動の大におきますところの取り扱いの手順ということにつきましては、状況を勘案しながら、必要に応じてポンプの回転数等について、必要な措置を段階的に講ずるといったようなことになっていたというふうに私は承知してございます。
#165
○吉井英勝君 そのポンプの異常を確認して段階的に停止に入れるようになっていたと思うというお話なんですが、私がいただいておりますこの間の事故の例のポンプの「原子炉再循環ポンプ(B)振動の推移」というチャートを見ました。このチャートを見ておって、一月一日の異常発生、十九時二分と十九時十九分の二回にわたってブザーが鳴っておるわけです。このとき以来、明らかにこのチャートは異常を示しておりますね。これは、このチャートを見れば私は異常を示していると思うんですが、これ異常だという御認識はお持ちじゃないですか。
#166
○説明員(三角逸郎君) 先生御指摘のチャート、これは資料1として先般十七日にお示ししたものでございます。
 先生御指摘のように、一月一日七時二分、それから十九時十九分に警報が発生してございますが、その後の措置といたしまして、私どもの理解しているところによりますと、出力百三万キロワットから百万キロワットに下げた。ポンプの回転速度からいたしますと、約ABともその当時ポンプの速度が八七%ぐらいだったのが二%下げぐらいの八五%ぐらいになったと思いますが、そういうことで措置いたしましたところ警報レベル以下になった。
 ただ、先生御指摘のように、これがどんなふうな技術的な意味合い、もしくはポンプの中で何が起こっているかといったようなことの判断の一つの重要な手がかりということでは私どももそのような理解をしてございますけれども、我々実はこの事実については後ほど御議論もあろうかと思うんですが、一月五日の時点で報告を受けてございます。
 その当時の認識といたしましては、一つは警報レベル、これはX軸、Y軸、それから上部の振動とございますけれども、それぞれ設定をされているレベルがございます。お手元の資料にございますように、それぞれ上部のモーターにつきましては百十二ミクロン、それからX軸方向、Y軸方向それぞれ引っ張ってございますところのセンサーにつきましては三百八十ミクロンでございます。そういう設定値を言ってみればクリアした。そのときの判断をここでいろいろ申すつもりはございませんけれども、そのときの認識としては警報のレベルはクリアされて、見かけ上と申しましょうか、二百ミクロン程度で推移した。
 ただ、御指摘のように、これがいわゆる回転体の振動、通常は百ミクロンだとか八十だとかそういうことになっている例もございますし、一方では二百ミクロン、それぞれポンプのいわゆるアライソメントでいろいろ変わってきます。そういうことを現場の技術者がいろいろ判断しながら、この状況、これは中央制御室ではつぶさに承知しながら推移を見たということでございましょうけれども、我々の認識といたしましては、これは先般来申してございますけれども、この過程、二日、三日、四日のいわゆる不安定な推移をした。認識としては不安定に推移していたということでございますが、電力のそのときの判断というのは、先ほど来先生が御指摘のように、この一号機の方での同種のトラブル、損傷というのが二回あったといったようなことも勘案すれば、その時点で慎重な対応を我々としてはすべきであったというふうに認識しておる、こういうことでございます。
#167
○吉井英勝君 ちょっと三角課長さんの御答弁、的確、簡略にお願いしたいと思います。
 それで、今あなたがおっしゃったように、電力側の方で不安定に推移した、同種の事故が二回もあって、その時点でなぜちゃんと対応しなかったんだという御意見今おっしゃったわけだけれども、私が不思議なのは、一月五日に通産省の運転管理専門官は、この原子炉に出勤していかれたんでしょう、正月明けで。この運転管理専門官は運転日誌を見たんでしょう。チャートも見られたんですね。このチャートを運転管理専門官は見たんじゃないですか。これを見てなぜその時点でシャットダウンするべきだという指示を下さなかったのか。私は、電力には電力側の責任あると思うんですよ。しかし通産省は、スリーマイルの事故の後、各サイトに運転管理専門官を置いたんでしょう。置いたその人がちっともちゃんとやってないじゃないですか。当然その人一人の判断じゃなくて、本省と連絡とっているわけですよ。本省もサイトにいる運転管理専門官も、運転日誌見てもチャート見ても何も感じなかった、何も指示しなかった。おかしいと思うんですが、いかがですか。
#168
○説明員(三角逸郎君) 簡単にお答えいたします。
 御指摘の点につきましては、第一点でございますが、一月五日の時点、十一時前後だと思いますが、我々の方に東京電力から一月一日のPLRポンプ、再循環ポンプの異常振動について報告がありました。その際、先生御指摘のようにしかるべくデータ等も見、通産省本省としても判断をいたしましたけれども、その際の我々の理解というのは、これはまた詳細な御議論もこれからあろうかと思うんですが、もちろん我々も詰めますけれども、一点は、PLRポンプのモーターの振動の値がそのときの五日の時点をお手元のチャートでごらんになるとつまびらかでございますけれども、一時的ではございます。一時的ではございますが、相当程度平静かつ落ちついたような状況になっていたというのがこの一月五日のポンプの振動の推移として出たのが一つ。
 それからあともう一つは警報値、発生の時点での警報が消えていた。この二つの時点、要するに二つの意味内容が東電からは説明があったというふうに我々は理解してございまして、我が方からは東京電力に対しまして二点を指示してございます。
 一つは、一月一日十九時〇二分、お正月の元旦ではございましたけれども、このような異常が警報として出た場合には即刻相談をし、連絡をするようにということで口頭注意をいたしましたとともに、今先生御指摘のようなことにつきましては詳細な調査、今はこれは落ちついたように見えるけれども、どうも正月以降の振動の推移を徴した場合、いささか詳細な原因調査も含めて注意を喚起し、かつ、慎重に見守るようにということで、その時点では先生御指摘のようにまさにすぐにとめなさいといったような指示はしてございません。
#169
○吉井英勝君 もう少し答弁簡単に頼みます。
 それで、このチャートを見て安定になったという判断されたんですか。とんでもない話でしょう。このチャートの針は飛んでいるんじゃないですか。一時間値だからね、実際はもっと飛んでいると思うんですよ。一時間の平均値でしょう。一時間ごとの値でだって随分飛んでいるじゃないですか。安定という判断は全くおかしいと思うんですね。
 いずれにしても、安全委員長の方は原子炉施設の安全上重要な機能損傷に端を発した重大な事故だという認識をしていると冒頭お伺いしました。
 おたくの方は、先ほどは電力の側で不安定的に推移しておって、同種の事故が前にもあったんだからちゃんとすべきだったというふうなことをおっしゃりながら、通産自身の責任についてはちっとも感じてないんじゃないですか。私は随分おかしいと思うんです。なぜシャットダウンをその時点で指示しなかったのか。運転管理専門官も現場におり、本庁とも連絡をとりながら、しかも重大な事故だという、安全委員長がそういう認識を示しておられるような問題を持っている時点で、なぜ安全上問題ありという認識を持って対処されなかったのか、私はこれが一番肝心なところだと思うんですが、簡潔に、どうなんですか。
#170
○説明員(三角逸郎君) 重ねてのお尋ねでございますけれども、私どもの認識、この一月五日の時点につきましては詳細な調査、詳細な状況の把握を行うようにといったような調査の指示にとどまってございまして、結果としていろんな御議論があろうかと思いますけれども、事実関係として簡潔につまびらかにせよということであれば、調査を継続して、何か次に問題があればそこは措置するようにといったようなことも含めて申し上げた、こういうことで御理解願いたいと思います。
#171
○吉井英勝君 その詳細な調査というのは、とめなきやわからないんでしょう。詳細な調査をするためにも安全上問題あるんだからシャットダウンしなさいという、なぜそういう指示をしなかったのか、私はそこが問題だと思うんです。
 通産省にあわせてお伺いしておきますが、そういうポンプ異常に対するオペレーションマニュアル、異常音を確認したとか異常振動を確認したとか、あるいは別なパラメーターについて複数確認すれば直ちにシャットダウンに移りなさいとか、そういうオペレーションマニュアルをその時点ではちゃんと通産としてはつくっていらっしゃって、それに基づいて指導をされたのかどうか、この点についてお伺いします。
#172
○説明員(三角逸郎君) オペレーションマニュアル、運転操作のマニュアルのお尋ねでございます。
 これにつきましては、再循環ポンプの振動が大きくなるといったような警報が発生したときのマニュアル、これは東京電力の側で、運転操作警報発生時の取り扱いとして定めておるものでございますが、そこには、すぐにとめなさいといったようなことの前に種々の確認というのをマニュアル上決めてございます。
 一つは、アナンシエーターが出るわけでございます。警報でございますが、アナンシエーターの再循環ポンプモーターAもしくはBの振動大というのがパネル盤に出るわけでございます。パネル盤はH一三のPの六〇二盤でございますが、そのパネル盤で現実を確認する。それから一方では振動値そのものを確認するといったようなこと。
 それからあと、これがポイントでございますけれども……
#173
○吉井英勝君 それは通産の指導なんですか、東電のマニュアルでしょう。私はあなたの指導を聞いているんですよ。
#174
○説明員(三角逸郎君) そのこともあわせて御説明します。
 これ自身は、冒頭申しましたように、東京電力が運転操作上の警報発生時のマニュアルとして定めておるものでございまして、その中にどういうことが書いてあるかということを累次御説明しているわけでございますけれども、要は……
#175
○吉井英勝君 それはいいです。東電のことは東電に聞くからいいわけです。
 私がお聞きしたいのは、通産省の側に、ポンプの異常時にはこういう要素こういう要素があればシャットダウンに移りなさいという、異常時に対応するマニュアルを持っていらっしゃるか、そういうものに基づいて少なくともひな形になるマニュアルをつくって指導していらっしゃるかという点をお聞きしたんですよ。結局今ないということですよね。そのなかったことが私は問題だと思うんですよ。
 次に移りたいと思いますが、実は金属片が炉心本体に流入しておった問題、これは燃料体損傷の危険が生じた問題として私はこれは重大だと思っているんですが、先日調査に入りました関電の大飯一号、八一年九月二十九日、八七年十二月十七日、二回にわたって金属片が炉心本体に入っておりました。高浜一号も八七年七月十一日に入っております。そして、原電東海二号も金属片が入っておった。それで今回の東電福島の事故。ですから、炉心本体に金属片が入っておったという問題というのは、実はこの八〇年代でぱっと見ただけでも五回以上発生しているんですよね。燃料棒そのものにピンホールがあったということだって、これは八七年五月に日本原電東海第二で見つかっておりますが、これはこのこと自体が、燃料体の損傷というのは重大な問題に発展していく可能性を持ったものですから、ですから金属片が炉内に、炉心本体に流入するということはこれは大変なことであって、そのこと自体を安全上重視して対応策をとるということが私は非常に大事だと思うんです。
 この点、安全委員長さん、そういう意味も含めて私はさっき伺っておりましたので、今細かくは安全であったかどうかとか放射能が漏れたかどうかの議論についてやっておるんじゃないので、そういう点では、炉心本体に金属片等が、ポンプが破断して先の鋭敏なものが流れ込むとか、そういうこと自体が安全上問題であるということで、これは重大だというとらえ方がまず大事だと私は思うんですが、この点委員長さんの御認識を伺っておきます。
#176
○説明員(内田秀雄君) 一般論といたしますと、破損したような破片が炉心に流入したということは、その破片がどのような燃料なり冷却系に影響を及ぼすかという安全評価をする必要があるとは思っております。
#177
○吉井英勝君 もちろん、安全評価は安全評価で一つ一つについてやっていただかなきゃならないわけなんです。ただ、TMIの事故からちょうど十周年なんですよね。私たちは改めてあのTMIからどんな教訓を学び取ってきたのか、それを本当に実効性のある対応を進めてきたのかどうか、これから何をなすべきかということを今考えなきゃいけないときですね。個々の安全評価の問題は、それは一つ一つまたやっていただかなきゃいけないわけです。
 あのTMIの場合だって、私はここですべてを復習しようというようなつもりはないわけですが、ただ大事な点だけをちょっとピックアップして見ておくと、あのときも最初は二次冷却ポンプの停止から始まっているわけです。
 大事な部分でいきますと、原子炉容器内の一次冷却水が逃がし弁から逃がしタンクへ大量に出た。それはさっき委員長おっしゃっていたですね。ECCS作動で炉心にあわが発生して、核燃料の冷却不十分が生じた問題、これも委員長よく御存じのことであります。それから激しい水流によって核燃料棒を折損したり、あるいはもちろんジルカロイ合金のバーンアウトの問題などもいろいろあったと思いますが、それから、加圧器の水位計が原因不明で振り切れたということで、ECCSがストップした後、温水と燃料棒を被覆しているジルコニウムによる激しい放射線損傷作用による大量の水素の発生とか、ボイドによるものか水素によって液面が引き下げられたかは別にして、原子炉容器内の水位を押し下げたというのは事実なんですね、あれはフュエルの一部が一時的に水面に露出、燃料棒が液面から出ておったというのがありますから。それが崩壊熱によって燃料体を加熱してメルトダウンヘいったという、そういう一連の問題というのはTMIから我々は学んできたことですね。
 そこから今我々が何を考えなきゃいけないかといいますと、ポンプがとまって循環がとまるということは、もちろん安全サイドは安全サイドで設計をしておったにしても、懸念さるべきことは、非常にいろんな重大問題があるわけですから、そのことを考えなきゃいけないということと、もう一つは、炉心本体に金属片等が入ってくるということは、炉心本体に影響を及ぼす問題等、そういう事態が起こっているということは、これまたポンプのインペラーを壊してしまう問題とか、重大な問題がそこには出てくるわけですから、私はそういう点では福島の今回の事故を見たときに、本当に東電にしても通産省にしても、あのTMIの教訓から実効性のある対応策というものをつくっていらっしゃったんだろうかと、そのこと自身が今問われているということを申し上げたいと思うわけなんです。
 この点で、時間も参りましたので、私は最後に改めて安全委員会の内田委員長とそれから科学技術庁長官に、やはりTMIからの教訓というのは、そういう日本の原発は安全だ安全だといういわゆる安全神話に立つのではなくて、今回の東電の事故にも見られますようにまだまだたくさん問題を抱えているわけですから、これからの安全評価の問題だけじゃなしに、そういう私が今申し上げましたような炉心本体の損傷問題とか、またポンプ事故そのものが重大な事故に至るものだということで重たい認識を持っていただいて、そしてこれからの対策を進めていただかなきゃならぬと思うわけであります。
 この点で、最後に委員長さんと科学技術庁長官の御見解だけ伺って、ちょうど時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
#178
○説明員(内田秀雄君) 原子力の安全の確保は、一番大事なことは予防保全に徹することでありまして、何らか異常事象の前兆がありましたならば、それに対する適切な対応をして、予防保全を貫くということが大事な問題であると思っております。そのように行政庁、あるいはそれを通じて産業界に指導していきたいと思っております。
#179
○国務大臣(宮崎茂一君) 原子力の研究開発を進めるためには、安全性の確保に万全を期すということが大前提であることは申し上げるまでもございません。そのために、過去に起きましたいろんなトラブルを参照しながらやっていただく。そしてまた、今回の福島の問題も、目下ちょうど安全委員会の方で審査中でございますので、早急に結論を出していただきましてこれからの原子力発電所の安全確保に資したい、このように考えております。
#180
○小西博行君 私は、原賠法について数点お尋ねをしたいと思います。
 この原賠法なんですが、特に国内の問題というよりも、むしろ国境を越えたいろんな災害の場合に果たしてどのような体制をとっているのかというのがまずその中心であります。
 最初にチェルノブイリの事故、これによ?ていろんな意味で大変な被害が出ているわけでありますが、この補償金額が、これは定かではないんですけれども、タス通信によれば大体一兆八千億ぐらいというふうに言われておるんですけれども、具体的にソビエトの場合に、近くの国とのいろんなそういう原子力の事故の場合の原賠法的な何かお互いの契約というんでしょうか、そういうものが存在しているのか。補償金というのが一兆八千億というんですが、ソビエト以外の国にそういう支払いがなされたかどうか、わかっている範囲で結構ですがお尋ねいたします。
#181
○政府委員(平野拓也君) チェルノブイリの件でございますが、先生仰せになりました一兆八千億円というのは、これはタス通信でざっとそういう金額が被害額であるというふうな報道があったわけでございますけれども、中身につきましてはよくわからないんでございますが、少なくともソ連が近隣諸国に賠償を支払ったということはございません。それで、事故直後にヨーロッパの一部の国から、ソ連とそういう損害賠償交渉を始めよう、あるいは請求権を留保するといったような趣旨をソ連に申し入れたところが拒否された。それから、ソ連はパリ条約、そういった国際的な枠組みにも一切とらわれないというようなことを表明したという事実があるようでございますけれども、具体的にソ連が賠償金を払ったというケースはないというふうに承知しております。
 それから、個人的にオーストリアの人あるいはラップ人、これはノルウェーのラップ人のようでございますが、そういう人が個人的にソ連の裁判所に賠償請求を出したというふうなことは承知しておりますけれども、その結果がどうなっているか、まだ係争中というふうに聞いておりますので、具体的にソ連からそういう賠償金がおりたという話はまだ私どもつかんでおらないところでございます。
#182
○小西博行君 損害といいましてもいろんなケースがあると思うんですが、特にいろいろ新聞、雑誌なんかで報道されておりますけれども、例えば農産物ですね。これはソビエトだけから別に農作物が出るわけじゃありませんし、ヨーロッパのものはもう買うなよというような感じにどうしてもならざるを得ない。特に、近い国というのはそういう影響というのはすごくあると思うんですよね。そういった意味での損害という形をどのようにソビエトの方が考えて対処されるのか、あるいはされたのか。その辺のところは私は大変日本としても参考になるんじゃないか、こう思うんですね。
 そういう意味で、日本の場合は、本当に近い国々が結構たくさん原子力発電所を持っておるわけです。特に中国とか韓国、台湾というのが、皆さんも御承知だと思いますが、相当数の原子力発電をもう既に計画している、あるいは実行している、運転中、いろいろあるわけでありますが、先ほどもお話がございましたように、パリ条約あるいはウィーン条約、こういうものには加盟していない。私は、余り意味がないから加盟しないんだと思うんですね。
 そういう意味で私は、特に中国、韓国、台湾、こういう国々とは原子力について相当緊密な技術的なコミュニケーションも、あるいは賠償についても何かそういうふうなものがなければ、いざこういう事故が発生した場合には困るんじゃないか、そういう感じがするんですが、その辺の実態は一体どうなってるんでしょう。
#183
○政府委員(平野拓也君) 日本の近隣諸国でございますが、まず中国は、現在原子力発電所を建設中でございまして、実際はまだ原子力発電はやっておらないということでございます。それから韓国は、今八基動いているというふうに承知しております。それから台湾は六基動いているというふうなものが主なものでございます。なお、ソ連の極東地域にも熱利用用の小型のものがあるようでございますが、それを含めまして、日本の近隣諸国での原子炉といった大きなものはそういうものであるというふうに私どもは把握しております。
 それで、もし万一そういう事故があったときに我が国に影響が及ぶじゃないかということでございます。これはケース・パイ・ケースでございますから事故の態様その他によってどういうことになるかなかなか予測がつかないわけでございますが、そういった場合に、確かにおっしゃるように、ヨーロッパと違いましてそういう国際的な越境損害の枠組みというのはないわけでございますから、仮に外国の被害が日本に及んだ場合は、日本の被害者がそれぞれの外国の事業者等に請求する、それを政府が手助けするという形で処理をせざるを得ないということでございます。逆に、日本の事故が外国に被害を及ぼした場合は、日本国の法律でこれを処置するといった場合は、この原賠法によりまして外国の被害者に対して補償をする、こういう枠組みでございます。
 これをもっと、パリ条約あるいはウィーン条約のような一般的なルールをつくったらどうかという意見も確かにございますし、原子力委員会で今回の改正につきまして専門部会で御討議をいただきましたときにもそういう意見もございましたけれども、今のところ、相手の国の意向その他も不分明でございますし、まだその時期ではないだろうということでございます。
 それから台湾につきましては、これは国交がございませんので直接政府がいろんな情報を交換するというわけにはまいりません。ただし、これにつきましては民間ベースで、日本原子力産業会議が、いろいろな原子力情報の交換をするという協定を結びまして、実質的に日本の窓口になっているという実態はございます。
#184
○小西博行君 今、中国、韓国、台湾ということで説明があったわけですが、こういう国々というのは自分の国で原子力発電をつくるわけではないんでしょうね。どこかの国から、本体といいますか、ハード部分は購入されて、恐らくソフト部分も同時にそのハードについていると思うんですがね、そういう形で恐らくやっておられるんじゃないか。中国では、たしか高圧がまなんか三菱から行ったという話も聞いて、本体はフランスというふうに聞いているわけですが、そういうハード部分についてどのようになっているんでしょうか。
#185
○政府委員(平野拓也君) 中国では、一つは広東に建設中のもの、これはそのままそっくり発電所を買ってくるというような形でございまして、私どもはフランスの技術であるというふうに聞いております。それから一つ、自分でつくっているというものは、お話がございましたように、日本から圧力容器を輸出いたしまして、中国が自分で設計をいたしまして、その他のパーツもいろんな国から購入して、これは比較的小型のものでございますけれども、上海近くの秦山というところに今建設中でございます。
 それから台湾につきましては、これはすべて米国製であったというふうに聞いておりますが、韓国につきましては、アメリカのもの、それからカナダのいわゆるCANDU型のものも入っておりますので、これはしかし皆やはり技術導入をしてつくったというものでございます。
 ハード面ではそんなようなことでございます。
#186
○小西博行君 事故の発生ということで先ほどからいろいろ質問があるわけですが、私は、ハードの部分とソフトの部分と相まってやっぱり事故というのは発生するだろう、そう思います。回転体の中がどうなっているかって人間の目でなかなか確認できないわけですから、先ほどの振動その他でキャッチするということでしょう。それで、その計器を見て判断するということですから。
 私はちょっと心配なのは、中国、韓国、台湾にいたしましても、経験的には日本に比べて相当まだ劣っているんではないかな、そう思うのです。特にこういう国々からもし事故が起きた場合に、日本はもろにその影響を受ける可能性があるという感じがするので、先ほど申し上げましたように、ウィーン条約にかわるような、アジア条約というような名前でいいかもわかりませんが、そういうものを具体的にやって、そして私は、特にその機械は今経験のあるそれぞれの国から来ているわけですからそう心配は要らないんじゃないか。問題はソフト、管理の部分をどのようにするのか、チェックも含めてですね。そういうものをやはり、日本の技術は相当私は進んでいるというように思うので、その辺も含めて、先ほど申上げた技術指導ももちろん入りますけれども、何かそういう条約的なものを明確にしておかないと大変私は心配なような気がしてならないんです。
 国内にも先はどのようないろいろな問題がありますけれども、特にこういう近隣の諸国ということは大変心配な要素が多いので、これに対して何か具体的な、今申し上げたような十分なる話し合いというのか、具体的な取り決めというのは私は必要じゃないかな、そういう感じがするんですが、どうでしょうか。
#187
○政府委員(平野拓也君) まことにそのとおりでございまして、やはり我が国だけが安全であればいいというようなことではいけないということでございます。
 具体的に近隣諸国との間でございますが、例えば韓国との間、これは昨年の秋に日韓科学技術協力委員会というのが開かれまして、その結果で合意した内容を若干申し上げますと、例えば、原子力研究所と韓国のエネルギー研究所の間での協力で、いろんなことを協力するテーマが挙がっておりまして実際やっておるわけですが、これは事故時の原子炉の燃料の挙動がどうだとか、それからいろんな廃棄物の処理方法の評価だとか、それから人材の養成だとかといったようなことを具体的に協力していくということでございます。
 それから、科学技術庁の原子力安全局とそれから韓国のやはり科学技術庁との間で、発電所周辺の緊急時の放射能の防護対策についての情報の交換をするとか、あるいは核物質の計量管理体制を確立するとかといったような約束もしておるわけでございます。
 それから、通産省とやはり韓国のエネルギー研究所との間では、原子力発電所の事故とかあるいは故障の情報収集の処理システムの開発、あるいはその発電所の安全性の評価とか、あるいは耐震技術の解析といったような、そういうふうないろんなことを協力されるということになっております。
 今後も、韓国に限りませず、中国も含めてそういうソフト面の協力ということを強力に進めていく必要があると私どもは考えております。
#188
○小西博行君 中国なんかでも建設中と計画中ですか、三百三十万キロワットですね。韓国が千二百二十九万キロ、これはもう既に八基動いている。それから、台湾の場合は運転中が六基ですね。計画中を入れますと九百九万キロ。これはもうすごい、量的にもどんどんふえていくんじゃないか。特に、中国なんかはまだまだふえるんじゃないか。国土が広いわけですから恐らくふえていくんじゃないか。そういうことがあるだけに、中国との関係、これはまだ運転しておりませんから具体的になっていないだろうと思うんですがね。この中国との関係も私は技術指導も含めてもっと、まあ教えてあげるというのは変な話だけれども、お互いのコミュニケーションをつくる場、そういう場をどんどんやっぱりつくっていかなきゃいけないんじゃないか、そういう感じがしてならないんですね。
 というのは、これは何も原子力発電という問題だけではなくて、いろんな、自動車にしてもあるいは電子機器にしましても、製品の品質なんかというのはよく出てまいりますよね。そうすると、やっぱり日本の品質に比べると相当悪いんじゃないか。つまり設計段階の品質というのは相当いいのかもしれませんが、製造品質、設計と製造とのギャップ、こういうものが私は相当ありはしないかなと。ということは、管理体制と、それから作業員がそれをやるわけですから、そういう教育訓練というのも当然入ると思うので、そういう面を含めてアジアの中では日本が一番やっぱり経験があるわけですから、中国との関係も私はもっと進めていく必要があるんじゃないか、そういう感じがするんですが、この辺の計画はありますか。
#189
○政府委員(平野拓也君) 中国との間の関係も非常に大事なことであるということで、私ども行政官同士の交流ということも当然やっておりますし、例えば原子力研究所とそれから中国の核工業部との間で、軽水炉の安全性とかあるいは廃棄物の管理とか放射線防護とかといったようなテーマで具体的に研究者の交換あるいは情報の交換、共同研究といったようなことも進めつつあるわけでございます。
 そういったことで、中国に限りませず、近隣諸国、これはまだ発電所の計画だけで建設はやっておらないような国もたくさんあるわけですけれども、今から人材の養成を図っていただくという、そういう趣旨で、研究者あるいは技術者、それから行政官も含めまして招聘制度等を活用して我が国に来ていただく、あるいはこちらの専門家を派遣する、そういったことを積極的にやっております。現にただいま今日でも、東海村にインドネシアの方が来ていろいろ勉強していらっしゃるというようなこともございますし、そういうことを今後ともますます積極的にやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
#190
○小西博行君 これは私、広報活動が非常に大事だと思っているんですね。先ほど同僚議員からも、そういう原子力発電というのは安全であるというような意味も含めて、広報活動というのは非常に必要だと思うんです。
 その中で特に最近少し新聞でも出てまいっておりますが、原発事故のランク表示というのが出ていますね。フランスなんかは割合具体的に、七段階だったですかね、出しておりますね。地震と同じように三とか四とか表示すると、それで大体その中身はわかることだというふうに思うんですけれども、これなんかも各国でそれぞれの分野でつくっていくのもいいかもしれませんが、やっぱり世界共通項の形でないと、日本の三は例えばフランスでは四だとかそういうようなことになりはしないかなという感じがするんです。
 だから、国際的にそういう安全の一つのゲージをつくっていくのであればその辺のお互いの調整を十分して、国柄によって多少違うんではないかとも思いますけれども、私はそういうものを早急にやはりつくり上げる必要があるんじゃないか。つまり、国際的に通用できるようなランク表示というものを考えるんですが、そういうことについてはもう既に着手されておるでしょうか。
#191
○説明員(三角逸郎君) 先生の御指摘は、いわゆる原子力発電所で起こりますところの現実に起こる事故、故障、トラブルをランク分けするような事柄、それからそれを国際場裏でも使えるような一定の協力といったような、そういう御指摘かと思います。
 まず最初に、今検討中の状況でございますけれども、これは先生の御認識と同じでございますけれども、日本の原子力発電所で現実に起こります故障、トラブル等に関しましては、従来からその都度原子力の公開と申しますか、できるだけお示しするということで、発生の都度、それから原因とか対策が確立したときに公表をしている、こういう事情にございます。
 その内容についても国民の理解を求めておるということでございますが、一方で、先生御指摘のように原子力発電に関しますところの国民的な関心が非常に高まってきている。こういう中で故障、トラブルが安全上の観点からいってどんなふうな意味を持つのかということを簡明かつ説得的、あわせて言えば客観的に説明できるようなそんなふうな尺度、指標があればいいのかなということで通産省の方で勉強中でございます。いろいろ検討してございますけれども、その結果、先生御指摘のように原子力発電の安全に関する国民の理解に、結果的にでございますけれども、使えればなと思ってございます。
 なお、国際協力の観点でございますけれども、これは先生御指摘のようにフランス等でもやってございます。ただ、私どもの基本的な立場、認識は、日本もこれだけの原子力のいわゆるリーディングカントリーと申しますか、そういうことでございますので、まずは日本の原子力を取り巻く諸般のいろんな状況等も勘案しつつ、日本でまずつくってみで、それを国際場裏の中でどんなふうに、フランスだとかアメリカとかいろいろございますけれども、やっていくのかということを次の段階で考えなきゃならぬということでございますが、先生の御指摘等も踏まえながらこれから広範かつ精力的に検討していきたい、かように考えております。
#192
○小西博行君 東電の事故について数点感じたことを質問させていただきたいと思います。
 日本の原子力行政というのはなぜやらなきゃいけないかというのは、当然、先ほどからも御意見が出ていますように、資源が非常に少ない、だからできればクリーンな、永遠に使えるような、そういうような電力供給をしたいというのがその基本にあると思うんです。事故としては私は割合少ないというふうに見ておるわけですが、しかし今度のような事故が発生いたしますと、東電だけではなくて日本全国の電力会社には大きなダメージを与えてしまうという問題がありますね。それだけに私は事故というのは絶対に起こしちゃいけないという感じがしてならないんです。
 そういう意味で、特に地元の人の信頼回復というのはどういう形でなされるのか。恐らく技術屋さんというのは、よく中身をわかっていますから大したことないというふうに自分自身は考えているかもしれませんけれども、皆さんに与える影響というのはまるで違いまして、私はそういう意味で信頼回復の方法ですね、これは国も電力会社もやらなきゃいけないんですが、これは当面どういうことを計画されているんでしょうか。
#193
○説明員(三角逸郎君) 先生御指摘の今回福島第二原子力発電所の三号機の原因究明等々、技術的な側面はさることながら、今後の地元との信頼関係、もしくは、もっと言えば、原子力発電に関する広く損なわれた不信感と申しましょうか、それを取り戻すための方策はどうなんだろうかということでございます。
 私は、基本的には原子力の規制に携わってございますので、まずは第一に、福島第二原発の今回のポンプの損傷事故につきまして、原因究明、再発防止ということについて全力を傾注する。それで原因の究明、再発防止対策ということで技術的に問題のない十分吟味されたものをつくり上げるということがまずは大前提だと思いますが、それをただそれだけで技術的に押しつけると申しますか、これで理解してくれというのではなくて、その意味するところ等を地元におきましても、もちろん電力会社にも十分説明させしめますけれども、規制当局といたしましても、我々としてその中身をいろんなところで理解を求めていくといったようなこともやりたいと思ってございます。
 原子力における故障、トラブル、事故の発生状況につきましても、もちろん低位にはあると思いますけれども、今回みたいなことが一たんありますと、長年培ったそれなりの信頼感と申しましょうか、そういうことで極めて残念な事態が出来しておるわけでございますので、先生御指摘のようなことも踏まえて安全第一ということを肝に銘じてやっていきたい、かように考えております。
#194
○小西博行君 時間が二分ぐらいしかありませんのでまとめて質問しますけれども、原子力行政全体を見ますと、古いものはもうそろそろ廃炉の時期に差しかかってくるわけですよね。だから、建設から始まって、運転して、最後に廃炉にして、後の処分どうするかという一つの大きなものがありますよね。そういうものに対しても具体的な計画はあるんじゃないかというふうに思うんですよね。その点を私は一つ心配しております。
 それからもう一点は、広報活動というのがさつきから申し上げているように非常に大切だと思うんです。事故の起きた後の結果についていろいろ言っても、これはなかなか大変だと思います。そういう意味で、皆さん方に啓蒙する意味でも、広報活動というのはもう前々から必要だと。大抵は事故が起きると慌てて走り回る、なかなか信頼がもらえない、こういうような後追い型になっているんです。
 予算を見てみますと、通産省も随分ふえていますね、広報予算というのは。六十三年度は十六億ちょっとですが、もうことしは三十二億、倍になっているんですね。それから、科学技術庁の方は一億七千万が九億六千五百万、随分これ率が上がっています。
 私、そういう意味で本当はもっと細かく広報活動というのは具体的にどういうふうにするんだと聞きたいんですけれども、ちょっと時間がないので、その辺も含めて原子力行政全体に対していろんな問題がたくさんあるんだけれども、安全に、とにかく事故が起きないような体制をさらにもう一回原点に返って見詰める、そういうところが非常に大切だと思うんです、すぐなれてしまうという問題もありますから。そういう点をできれば大臣の方から最後に決意をお聞きして、質問を終わります。
#195
○国務大臣(宮崎茂一君) 委員の御意見には私も賛成でございまして、最近の原子力の反対運動は、原子力の立地の場所だけじゃなくて、一般的に、都会の主婦の方々、若年層の方々、特に原子力の専門家でない、よく御存じない方の反対が非常に多いわけでございまして、なおまた、一部におきましては原子力に対する誤解に基づく反対もあろう、こういうふうに聞いておりまして、まことに残念でならないわけでございます。
 私どもの方といたしましては、従来から行っております広報とかパンフレットの配布の活動を一層強化いたしますとともに、国民と直接対話が重要だと思いまして、草の根的な広報にも努めてまいりたい、かように考えております。今後とも原子力の安全確保に万全を期するとともに、関係省庁あるいは電力会社とも連携をとりながら、ひとつ国民の理解の増進に努めてまいりたい、かように考えているわけでございまして、委員の御説には私も賛成でございます。これから一生懸命やります。
    ―――――――――――――
#196
○委員長(高桑栄松君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 先ほど、成相善十君及び岡野裕君が委員を辞任され、その補欠として大浜方栄君及び倉田寛之君が選任されました。
    ―――――――――――――
#197
○委員長(高桑栄松君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
    〔賛成者挙手〕
#198
○委員長(高桑栄松君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、後藤正夫君から発言を求められておりますので、これを許します。後藤正夫君。
#199
○後藤正夫君 私は、ただいま可決されました原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
  案文を朗読いたします。
    原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行にあたり、原子力開発利用における安全の確保に万全を期するとともに、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。
  一、賠償措置額については、今後とも国際水準等を勘案しつつ、引き上げに努めること。
  二、越境損害については、国際動向を注視しつつ、今後の我が国の対応のあり方について、さらに調査検討を行うこと。
  三、不測の事態に対処するため、避難訓練等防災対策の強化充実を図ること。
  四、最近の事故等にかんがみ、原子力発電所の安全確保に努めるとともに、一層厳密な点検・保守を行い、機器・材料の品質の維持、改善、向上に努めること。
  五、下請業者を含む作業員の放射線被曝の低減化及び放射線被曝管理の充実を図ること。
  六、将来の廃炉措置に備え、研究開発の一層の推進に努めること。
  七、放射線の人体に対する影響評価のためのデータの蓄積を図ること。
  右決議する。
 以上でございます。
#200
○委員長(高桑栄松君) ただいま後藤正夫君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#201
○委員長(高桑栄松君) 全会一致と認めます。よって、後藤正夫君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、宮崎科学技術庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮崎科学技術庁長官。
#202
○国務大臣(宮崎茂一君) ただいま原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。
 私といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重し、安全確保を大前提に原子力開発利用を進めるとともに、原子力損害賠償制度の整備、充実に努めてまいる所存であります。
 何とぞよろしくお願い申し上げます。
#203
○委員長(高桑栄松君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#204
○委員長(高桑栄松君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#205
○委員長(高桑栄松君) 次に、科学技術振興対策樹立に関する調査を議題とし、先般本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。木宮和彦君。
#206
○木宮和彦君 科学技術特別委員会委員派遣について、その概要を御報告申し上げます。
 派遣地は、愛媛県、香川県及び兵庫県でありまして、派遣期間は、一月十八日から二十日までの三日間であります。派遣委員は、高桑委員長、後藤理事、伏見理事、穐山委員、小西委員及び私の六名であります。派遣先は、四国電力伊方発電所、西条太陽光試験発電所、原子力工学試験センター多度津工学試験所、本州四国連絡橋及び三菱重工神戸造船所であります。
 以下、調査の概要を御報告申し上げます。
 四国電力伊方発電所では、同社の概況説明を聴取した後、中央制御室、非常用炉心冷却装置の高圧注入ポンプ、二号機の使用済み燃料ピット及び三号機の建設現場を視察いたしました。
 伊方発電所は、四国の西北端、佐田岬半島の瀬戸内海に面したつけ根の部分に位置しており、一号機が昭和五十二年九月、二号機が五十七年三月に営業運転を開始し、また現在、三号機が建設中であります。
 同発電所の一、二号機は、ともに加圧水型軽水炉で、出力は一機当たり五十六万六千キロワットであり、建設中の三号機は八十九万キロワットであります。同発電所の特徴としては、プラント用淡水は、海水淡水化装置によって供給していること、温排水の環境への影響を極力少なくするため、深層取水・水中放流方式を採用していることなどを挙げることができます。
 同社における発電電力量の電源構成は、昭和六十二年度で、原子力四二%、火力四三%、水力一五%となっており、全国平均よりも原子力発電が一〇%強多くなっております。
 同社では、固体廃棄物はアスファルト固化方式等を採用しており、これをドラム缶に詰めて貯蔵庫に保管しており、六十二年度で貯蔵量は約八千九百本となっております。年間平均の廃棄物の発生量は、不燃性廃棄物約六百五十本、可燃性廃棄物約千百本でありますが、現在は、貯蔵中の可燃性廃棄物を焼却するなどして容積を減らしておりますので、固体廃棄物の全体の増加量は年間約百五十本程度となっております。
 同発電所の職員数は三百五十人で、平均年齢は三十二歳、うち約七割が技術系の社員であります。同社では、一人一人の知識や技術また意識の向上を図るため、福井県の原子力訓練センター、松山の原子力保安研修所を初め、各種のセミナーに運転員や保修員を派遣しており、安全運転には特に力を入れているとのことであります。
 次に、西条太陽光試験発電所においては、同所の概況説明を聴取した後、発電施設等を視察いたしました。同発電所は、株式会社四国総合研究所が四国電力及び電力中央研究所と共同で、昭和五十五年十一月以来、通産省サンシャイン計画の推進母体である新エネルギー総合開発機構から太陽光発電システムの研究開発を受託し、西条市に試験発電所を建設し、試験発電を行っているものであります。
 同発電所では、昭和五十五年に基本設計を開始し、その後、毎年、発電システムを拡大してまいりました。同発電所で初めて発電が行なわれたのは五十七年二月で、六十一年二月には太陽電池パネル二万七千枚で千キロワットの発電能力を達成し、以後、実証試験を行っております。
 太陽光発電の仕組みは、シリコン半導体でできた太陽電池を組み込んだパネルの集合体を太陽に向けて設置し、発生した直流電気を交流に変換し一般に供給しようとするもので、システム自体は単純で保守が容易であります。しかし、設備が場所をとること、雨天、曇天時には発電電力量が減少するなど安定供給に難があり、現在、蓄電池等を併用し改善努力が図られておりますが、まだ克服すべき課題が残されているといった現状であります。
 次に、原子力試験工学センター多度津工学試験所では、同所の概況説明を聴取した後、制御室、大型振動台等を視察いたしました。
 同センターは、原子力発電用機器などの安全性、信頼性の実証試験を行い、原子力発電技術の向上と定着を図ることを目的として昭和五十一年三月に設立されたものであります。
 多度津工学試験所では、最大積載重量千トンの振動台を用いて原子力発電施設等の耐震信頼性実証試験を行っております。実証試験においては、当該原子力発電所の建設予定地で予想される地震動のうち最大の地震波を用いて、縮尺四分の一から等倍の模型を試験体として実験を行っております。
 これまでにPWR原子炉格納容器、BWR再循環系配管、PWR炉内構造物、BWR炉内構造物等について試験を実施し、耐震強度の健全性を確認しており、その成果は国際的にも注目されているとのことであります。
 次に、本州四国連絡橋児島−坂出ルートにおいては、同ルートを通過中に車中で概要を聴取し、また、船に乗りかえ周辺を視察いたしました。この児島−坂出ルートは、九年半の歳月と約一兆一千三百億円の工費を費やして昨年四月に完成したものであります。また、この連絡橋は、道路・鉄道併用橋で、道路は、瀬戸中央自動車道と呼ばれ、岡山県早島町で国道二号及び山陽自動車道と連絡しており、香川県坂出市で国道十一号と連絡しております。一方鉄道は、本四備讃線で、岡山県のJR西日本宇野線及び香川県の予讃本線を結んでおります。
 このルートの海峡部分は、瀬戸大橋の愛称で親しまれておりますが、つり橋、斜張橋、トラス橋のさまざまな長大橋梁群は、我が国の橋梁建設技術の粋を結集して建設されたものであります。このルートの完成により、本州−四国間の交通は著しく改善され、このことは地域の人々の生活圏の拡大、生活利便性の向上はもとより、産業の振興、文化の交流など瀬戸内地域の活性化に大いに貢献するものと思われます。
 最後に、三菱重工業神戸造船所では、同社の概況を聴取した後、しんかい六五〇〇等を視察いたしました。
 同造船所は、明治三十八年の創業以来、船舶の建造を中心に常に最新の技術を駆使し、すぐれた製品を送り出してまいりました。近年は、船舶のほか主要望品として、原子力発電プラント、ボイラー、鉄構製品、公害防止機器などを手がけており、また、長年培ってきた優秀な技術で深海潜水調査船、原子力プラント用メカトロ機器等の新製品の研究開発を行っております。
 また、視察いたしました潜水調査船しんかい六五〇〇は、海洋科学技術センターが発注しているもので、全長約九・五メートル、幅二・七メートル、高さ三・二メートルの大きさで、重量約二十五トン、乗員三名で、最大潜航深度は六千五百メートルとなっております。これにより我が国二百海里経済水域の九六%がカバーされます。同調査船での調査は、まず第一に、深海底における地層、地形を精査し、地震や津波の予知技術に資することであります。第二は、世界的に注目を浴びているマンガン団塊や熱水鉱床などの深海底鉱物資源の探査であります。その他、深海の海洋生物や水温、塩分濃度、海流等の調査研究によって、深海海洋環境や生態系の解明にも寄与することができます。
 しんかい六五〇〇は、現在、海上試験を行っているところで、本年十一月に海洋科学技術センターに引き渡されることになっております。
 以上、調査の概要を申し述べましたが、今回の調査に当たりまして御協力を賜りました関係諸機関及び関係者の方々に衷心より感謝の意を表しまして、報告を終ります。(拍手)
#207
○委員長(高桑栄松君) 御報告を聞いていただいただけでも大変なことでございましたが、視察対象が多岐にわたっておりまして、本当に報告御苦労さまでございました。
 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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