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1988/03/22 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 外交・総合安全保障に関する調査会国際経済・社会小委員会 第1号
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1988/03/22 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 外交・総合安全保障に関する調査会国際経済・社会小委員会 第1号

#1
第114回国会 外交・総合安全保障に関する調査会国際経済・社会小委員会 第1号
平成元年三月二十二日(水曜日)
   午後三時三十一分開会
    ―――――――――――――
平成元年二月二十一日外交・総合安全保障に関す
る調査会長において本小委員を左のとおり指名し
た。
                下稲葉耕吉君
                中西 一郎君
                堀江 正夫君
                真鍋 賢二君
                山内 一郎君
                志苫  裕君
                矢田部 理君
                中西 珠子君
                上田耕一郎君
                関  嘉彦君
                青島 幸男君
同日外交・総合安全保障に関する調査会長は左の
者を小委員長に指名した。
                矢田部 理君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    小委員長        矢田部 理君
    小委員
                下稲葉耕吉君
                中西 一郎君
                堀江 正夫君
                志苫  裕君
                中西 珠子君
                上田耕一郎君
                関  嘉彦君
                青島 幸男君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        荻本 雄三君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際経済・社会問題に関する件
 (経済協力の在り方について)
    ―――――――――――――
#2
○小委員長(矢田部理君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査会国際経済・社会小委員会を開会いたします。
 国際経済・社会問題に関する件を議題とし、本日は経済協力の在り方について小委員の皆様に各会派を代表して御意見をお述べ願います。
 それでは、御意見のある方は順次御発言をお願いいたします。
#3
○下稲葉耕吉君 ODAについて申し上げます。
 昨年五月の当調査会の中間報告からの主要な動向を簡単に展望いたしますと、一つは、竹下首相は就任以来「世界に貢献する日本」を国際関係の基調に据えまして、その具体化のための三つの柱として、平和のための努力、ODA、国際的文化交流を掲げましてその推進に努めておられるわけでございますが、結局政府がODA重視の姿勢を打ち出しているということでございます。
 二つ目には、昭和六十三年の六月、政府はODAの第四次中期目標を設定いたしました。一九八八年から九二年に至る五カ年間、ODA実績総額を五百億ドル以上にするよう努めるということと、あわせてODAの対GNP比率の着実な改善を図ることなどを決定したのでございます。
 それから三つ目には、現在国会に提案中の平成元年度ODA一般会計政府原案は、先ほどもお話がございましたように七千五百五十七億円、事業量ベースで言いますと一兆三千六百九十八億円にも達しているわけでございまして、アメリカを抜きまして援助額では世界一位になることは確実な情勢であります。
 それから四番目は、政府は当調査会における昨年五月の中間報告における提言なども考慮いたしまして、昨年十二月、経済協力の基本政策についての意見交換等を通じ、経済協力の実施に関係する行政機関相互の緊密な連絡を確保し、その効果的かつ総合的な推進を図るため、対外経済協力関係閣僚会議を設置いたしまして、今日まで二回の会議を開催しているのでございます。
 このような情勢等を背景にいたしまして、以下ODAについての意見を申し述べます。
 まず、ODAの理念は、かねてから申しておりますとおり二つ我々は考えております。ODAによる国際開発協力は、開発途上国の貧困、飢餓等看過し得ないという人道的、道義的立場と、もう一つは、開発途上国の平和と安定が世界全体の平和と繁栄に不可欠という意味での国際社会の相互依存性の認識等に立って行われるものである、この二つでございましていずれを欠くこともできないものである、このように考えます。
 それを受けましての原則等でございますが、開発途上国の自助努力を支援することを目的にし、民生の安定、福祉の向上に貢献し、国民の基本的な生活条件の向上に重点を置くこと。二つ目に、主権尊重、内政不干渉の原則を守るということ。三番目に、軍事的用途に充てられる経済協力の禁止。国際紛争を助長することのないよう配慮するということ。四番目に、これらの理念・原則に沿った相手国の真のニーズにこたえるものであるということ。五番目に、原則として(できる限り)情報を公開すること。六番目に、外国政府、国際機関及び民間組織と協力して行われるものであるということ。七番目に、対象地域住民の生活、文化、環境に及ぼす影響を配慮するということ。八番目に、NGOに対しその自主性を尊重しつつ適切な支援を図ることということであろうと思うのでございます。
 次に、実施体制についてでございますが、援助行政の一元化のために、ODAにつきましてはただいま申し上げました関係閣僚会議を設置し、活動を始めているわけでございます。
 したがいまして、国務大臣を長とする国際開発協力庁、これは仮称でございますが、を設置することには賛成いたしかねます。閣僚会議に期待いたしたいと思います。
 三番目に、関係省庁、在外公館、事務所等の実施体制の強化、なかんずく援助関係人員の飛躍的増加と人材の養成が重要でございます。この点については、既に本年二月のDACの対日援助審査プレスリリースにおいて援助の管理能力の強化が指摘されているところでもございます。
 四番目に、合理化、効率化のための権限、事務の委譲と外部委託の推進を図るということでございます。
 それからODAの量と質の改善の問題については、第一に第四次中期目標を着実に実施すること。第二番目に、可及的速やかにDACの平均まで、そして当面、一九八〇年国連総会合意でもありますGNP比〇・七%目標達成の努力をすること。それから質的な問題では、贈与比率、グラントエレメントを高め、質的向上の努力をすることでございます。
 次に、援助の評価等についてでございますが、事前調査、実施中の評価、事後評価等、調査、評価をさらに一段と多角的に実施し、援助が効果的に実施され維持されているかを点検するということ。二つ目に、援助評価等についての専門家の育成に努める。部外の人、国際機関等の要員を含めた評価体制の強化を図るということ。次に、国会と行政府との関係について申し述べます。
 国民を代表する国会の場における論議は重要で
あり、その意見を尊重し援助行政は行われるべきであります。二つ目に、援助は適時適切に行政府の責任で行われなければならず、援助実績はできるだけ速やかに国会へ報告されるべきであります。政府に対し、基本計画や年度計画の策定を事前に国会に提出させる、あるいは承認を含むということにつきましては、外交の機動性、弾力性の面等から見ましても必要でないと思います。四番目に、ODAについての国会の審議は、もちろん他の委員会等において審議されることを排除するものではありませんが、当調査会において集中的に審議されることが適当と思います。
 立法化につきましては、現状ではその必要を認めません。
 以上でございますが、本日各党からいろいろ意見開陳があるわけでございまして、この小委員会の中で合意を得られるものもあれば、合意を得られないものもあろうと思われるのでございます。それらを世話人会等で整理をすることとなろうと思うのでございますが、その後の取り扱いにつきましては親調査会において行っていただきたい、このように申し上げます。
 以上で開陳を終わります。
#4
○志苫裕君 それでは、ODAのあり方について意見を申し上げます。
 一、ODAのあり方に関する日本社会党・護憲共同の意見は、さきに本調査会長名をもって議長に提出されております調査報告書(中間報告)、六十三年五月二十四日ですが、それの二の(三)において所属委員が述べておるとおりで、基本的にはこれに変更を加えるものはございません。
 二、同意見においては立法措置の必要性を述べ、法案に規定すべき事項を提起しておりますが、その成案を得ておりますので、本小委員会における協議に供するために別紙のとおり提出をいたします。別紙というのは小委員長のお手元にお届けいたします。
 三、以上が本小委員会における日本社会党・護憲共同の基本的な意見でありますが、中間報告においては、「次期常会において本院の決議を行うこととし、立法化についても検討を進める。」とされていることを考慮し、かつ会期の迫っていることにかんがみ、今会期においては決議として取りまとめることが妥当と思われます。
 四、この決議は一定の体裁を整えた憲章的なものとし、一 ODAの理念・目的、二 実施上の諸原則(遵守事項)、三 達成すべき目標、四実施体制の強化、五 国会の積極的関与、六 国の責任及び国民の理解と協力等の内容がうたわれるべきだと思います。
 具体的には中間報告一の口「主要論議」をもとに意見調整を図ることが妥当であります。
 なお、立法化の検討も決議の一項に加えるものとしたいと存じます。
 以上で意見開陳を終わります。
#5
○中西珠子君 日本のODAはことしは米国を抜いて世界一になるだろうと言われておりますが、量は大幅にふえても質においては国内的のみならず国際的にも批判が後を絶ちません。ODAの質の改善は急務であると考えております。
 平成元年度のODA予算との関連で、その質の改善について申し上げたいと思いますが、まずNGOとの関係について申し上げます。
 最近外務省は、ODAの質的改善のために無償資金協力とか技術協力の拡充、第三者を交えた客観的評価、フォローアップ、アフターケアの拡充などに努めているようであり、また本年度予算におきましては、国内のNGOとの連携強化のための予算措置を小規模ながらされているし、また一九八八年七月の行政監察の勧告に沿った小規模無償資金協力が新設されて、これにより国外のNGOに対しても支援が可能となったわけであります。これらは、数年来私どもが主張してきたことでもあり、一歩前進と評価しております。しかし、NGOとの連携強化のための予算については、資金配分の基準を確立する必要があることと、資金を供与されたNGOの自立性、独立性を損なうことのないよう配慮すべきことが必要だと強調したいと思います。
 平成元年度のODA予算は、第四次中期目標設定後の初の予算として、一般会計予算案は御承知のように政府全体として対前年比七・八%の伸び、そして合計七千五百五十七億円が計上されております。ODAの事業規模は一兆五千百五十三億円となっておるわけでございますが、国民から徴収された税金その他の貴重な資源で賄われているこのODA予算は十六省庁にまたがっており、その根拠法は各省庁の設置法であると政府は説明していますが、その使い道は国民の前に明らかにされていません。
 国民の信託を受けた国会の関与が余りにも少な過ぎ、行政の自由裁量にゆだねられ過ぎている。また、ODAの理念や目的、基本原則を明記したODA基本法もないまま、政府予算全体を国会で承認してもらって内閣の行政権の中でODAに対応していくという政府答弁は納得がいきません。我が国のODAの質に対する国際的批判が後を絶たない状況の中で、十六省庁がそれぞれのODA予算を計上し、総合調整も十分に行われず、責任の所在が明らかでないからであります。
 ODAの具体的な計画と実施について国会の審議と承認がなされない現状では、国会は国民の負託にこたえられない上、日本の国際的な責任である国際開発協力の分野での役割を十分果たすこともできず、マルコス疑惑のような問題が起きても国政調査権を十分に行使することもできない現状であります。ODAに対する責任の所在を明らかにし、ODAの質的向上、内容の充実、効率的、効果的運営のためには援助行政の一元化が必要であり、情報の公開が必要であり、また基本的な理念と原則を確立することが必要であります。
 こういったものも含め詳しいことは、昭和六十二年九月二十五日と昭和六十三年二月二十六日の二回にわたりODAの改善について各会派からの意見開陳がございましたときにもう既に内容を御説明しておりますので、私ども公明党・国民会議が国際開発協力基本法案というものを出しまして、その内容の説明やODAの改善のための補足的な意見も述べておりますので、重複を避けまして詳細を述べることは差し控えさせていただきます。
 それで、昭和六十三年の五月の中間報告にも明らかなように、私たちはこの法案に固執しているわけではないのですけれども、やはり行政の一元化が必要であり積極的な国会の関与が必要であるということは依然として考えております。そして、行政一元化のために、私どもが出しました法案の中では、ODAの企画・立案・実施、評価・調査・研究などを総合的に行う主務官庁として国際開発協力庁を置くことにしておりますが、中間報告に記載されました意見開陳の中にも述べましたように、ODAの総合的な企画、立案、実施に責任を負うべき大臣が必要と考えて、現在の状態の中では総理府に置く以外にはないということであったのでそのようにしたわけでございますが、外交の一元化の見地からいうと外務省の外局に置き、そして国際開発協力庁の長官を大臣にするという方途を模索したいと考えております。そして、そのようにすればベターであろうと考えているわけでございます。
 この小委員会においていろいろ論議を重ねてまいりましたが、各会派との合意点を見出して、もし立法措置が早急に無理であるならば、先ほど社会党委員もおっしゃいましたようなODA憲章とも言うべき国会決議の形をとって国民的コンセンサスづくりを目指したい、このように考えているわけでございます。
 それから、これもたびたび申し上げたことではございますが、ODAの質の向上、またODAを行う分野の多様化についての要望について、殊に婦人と開発の問題について重ねて要望を申し上げたいと思います。
 国連婦人の十年の最終年の国連世界婦人会議で採択されました紀元二〇〇〇年への将来戦略の中でも、ODAの企画、立案、実施の過程に婦人をもっと参加させ、開発の成果を婦人にも平等に享
受させる必要性を強調しております。政府は婦人と開発の問題にもっと注意を払って、婦人の参加をふやし、婦人向けのプロジェクトをふやすべきであります。
 例えば、開発途上国の婦人の八割は文盲であり、LLDCの中には九割以上の婦人が文盲という例もたくさんあります。日本のODAは、これまで職業訓練や社会教育の面では相当の成果を上げてきたと言われておりますが、文盲撲滅を含めた基礎教育の面では余り援助をしてこなかったと言えます。文盲撲滅の面でももっと積極的な貢献をするべきであります。文盲撲滅を含めた基礎教育分野は開発途上国の基本的政策にかかわるので、二国間協力、バイラテラルな協力の面では微妙な問題であり、介入、内政干渉とみなされる危険があるということで余りタッチしなかったようでありますが、ユネスコやユニセフその他の国際機関と協力していわゆるマルチ・バイ方式で行えば効果が上がり、途上国からも日本の援助が喜ばれるのではないかと思います。こういう基礎教育の分野にももっと日本のODAをふやすべきであると考えます。
 環境問題につきましては、もう既に私も何度も言っておりますし、きょう同僚委員の方もお触れになりましたので簡単に申し上げますけれども、とにかくODAのプロジェクトを決定する前には環境アセスメントをやること、これはOECDで八五年と八六年に既にガイドラインができておりまして、御承知のように三年後、すなわちこの秋には各国が援助政策において環境面のアセスメントをどのように実施するかについてレビューすることになっておりますし、日本でもJICAの環境問題パネルが報告書を出しましたけれども、実際に効果的にやるという面で日本の一層の努力が必要であります。また、環境保全のためのODAプロジェクトも積極的にやっていくということも考えるべきであると思います。
 最後に、対外経済協力関係閣僚会議について申し上げます。
 対外経済協力関係閣僚会議が設置されまして第一回の会合が昨年十二月二十三日、テーマとしては「最近の経済協力の国際的動向について」、第二回会合は二月九日、「平成元年度ODA予算について」開催されたとの報告が前回の小委員会で行われましたが、官房長官を含め関係十四閣僚をメンバーとして、自民党の幹事長、総務会長、政調会長、参議院議員会長、幹事長代理、対外経済協力特別委員会委員長の出席を求め、内閣官房長官の指定した関係行政機関の職員を幹事として置くというこの機関は、ODAへの野党の関与を排除しようとするものでありまして、本小委員会の多数意見に反していると思います。また、野党側が主張しておりますODAの行政一元化にプラスにもならないし、ODAの基本的理念、基本原則、行政一元化、その他必要なことを盛り込んだ国際開発協力基本法という、仮の名前でございますが、このようなものをつくっていくことへの代替物にはならないということを強調しておきたいと思います。
 私どもは、できれば立法措置が必要と思っておりますが、とにかく今の段階におきまして時間的な余裕もないままに、何とか決議にまで持っていくことができれば非常に幸甚であると今の段階では考えております。
 以上です。
#6
○上田耕一郎君 外交・安保調査会国際経済・社会小委員会では、二回にわたって各党の意見表明が行われました。これを踏まえて昨年五月、加藤調査会長は本会議で中間報告を行いました。その中で、各党が一致し確認しており、今国会で取り組まなければならない課題は、「本調査会は、引き続き「ODAの在り方」について国際経済・社会小委員会において調査を継続し、合意を得て、次期常会において本院の決議を行うこととし、立法化についても検討を進める。」という点であります。
 これまでの討議で各党が一致した項目は、一経済協力の理念・目的・諸原則、二 ODAの質的、量的改善と国際目標の達成、三 援助行政及び実施体制の一元化、四 国会と行政府との関係、五 経済協力基本法の制定であります。各党意見の最終的取りまとめに当たり、私はこれらの各項目について以下のとおり補足意見を申し上げたいと思います。
 一 経済協力の理念・目的・諸原則について。
 理念・目的については、「人道的立場から途上国の飢餓と貧困の克服、福祉の向上、経済的自立などのための自助努力を支援し、世界の平和と繁栄、国際的な格差解消を図る」ということで一致しております。また諸原則についても「援助は主権尊重」、「内政不干渉を基本に自主的に行うこと」、「援助の軍事的用途への転用を禁止」、「国際紛争助長を回避すること」、「原則として情報公開とすること」で一致しています。
 私は、前回の意見表明でも明らかにしたところですが、このうち「内政不干渉を基本に自主的に行うこと」を特に重視し、強調したいと思います。周知のとおり、これは衆議院外務委員会の決議などで明記されてきた経済協力の理念・目的にはなかった新しい概念であり、いわゆる戦略援助の禁止をその重要な内容としており、とりわけアメリカの対日圧力を受け入れた戦略補完型援助の禁止を合意しているものであります。既に指摘してきたことでありますが、我が国の従来の援助は、援助本来の理念・目的から外れて戦略援助の性格を強く有してきました。しかも、遺憾なことに最近ますますこの傾向を強めております。
 竹下首相は二月の日米首脳会談で、世界規模での責任分担、軍事協力と対外援助で最大限の努力を約束し、経済協力では、対象地域をアジア中心から米国と西側の安全保障にとって重要な中南米や中東にも広げ、フィリピンに対しては多国間援助構想実現のために日米協力していくことを約束しました。アメリカ議会幹部も昨年十二月、宇野外相に防衛費と対外経済協力費でGNPの三%を負担するよう求めています。このようにアメリカが責任分担ということで海外経済援助を求めるのは、アメリカの双子の赤字のため大軍拡予算を組めない状態のもとで、アメリカの援助を日本に肩がわりさせるためであります。すなわちアメリカが戦略的に重要と考える国、地域への日本の援助、戦略援助を強めさせようというわけです。このような戦略援助は、さきに述べた各党で一致している「人道的立場から途上国の飢餓と貧困の克服、福祉の向上、経済的自立などのための自助努力を支援し、世界の平和と繁栄、国際的な格差解消を図る」という立場とは矛盾するものです。
 戦略援助問題は、米議会でも論議されております。例えば、下院軍事委員会責任分担公聴会で米会計検査院のケリー国家安全国際問題担当局次長は「一九八〇年、アメリカに催促されて日本はトルコに対する対外経済援助をふやした。トルコは西側同盟にとって戦略的に重要な国である。さらに日本は、その他の戦略的に重要な国々、例えばエジプト、パキスタン、韓国、オマーンなどへの対外援助をふやした。日本は、対外援助予算を一九八〇年の十六億ドルから一九八七年の四十七億ドル以上にふやした」と述べています。八七年度予算でもアメリカ政府が戦略的に重視する三十カ国(一九八三年に米政府が明らかにした戦略重点国)に対する援助だけで全体の約五〇%を占めております。
 このように我が国ODAは経済協力のあるべき姿から既に大きく外れているのでありますが、財界はこれすら満足できず、佐伯喜一氏(野村総合研究所相談役)の「現在のODAの理念あるいは目的から考えますと、戦略的援助というのはODAの理念あるいは目的に外れるわけです。ODAの理念においては、南北問題の根底にある相互依存の認識と人道的考慮が理念でありますし、目的としては先進国と発展途上国との経済格差の是正、貧困・飢餓の救済が目的になっているわけであります。やはり今後のバードンシェアリングの問題に日本が対応していこうとすれば、ODAの中に実質的な戦略的援助をどういうふうにして取り込んでいくかということを考えざるを得ないと
思うのです」という発言に代表されるように、公然と戦略援助実施に踏み切れるように理念・目的を実質的に改悪するよう求めているありさまです。
 今求められていることは、正しい道を外れた実態を容認したり促進したりすることではなく、援助本来のあり方に戻すために法的措置をとること、すなわちいわゆる戦略援助を効果的になくすことのできるような援助の理念・目的の確立を急ぐことであります。
 二 ODAの質的、量的改善と国際目標の達成。
 これについてはグラントエレメント、贈与比率を一層向上すべきであるということで一致しています。日本の贈与のODAに占める比率はDAC諸国の中で最下位です。また日本のODAは、グラントエレメント、LLDC向けシェアの低さを特徴としており、LLDC四十カ国へのODAはわずか一三%にすぎず、GNP比〇・〇六%であり、DAC加盟十八カ国中十六位です。一九八九年国連ユニセフの報告は、「過去数年間に最貧の三十七カ国で人口一人当たりの保健支出が五〇%減り、教育支出も二五%減っている」ということです。ODAの部門別構成も八五、八六年をとっても道路、港湾など経済基盤整備が三七%と一番多い。教育、保健など社会基盤整備費は一九%、食糧援助一六%であるが、DAC平均では食糧援助が一番多く三五%、社会基盤整備二四%、経済基盤整備一七%です。
 このように日本のODAは経済基盤整備を重点としており、実際にはODAで大企業の進出の足場を築き、日本企業にもうけを保障するものとなっているのであります。この性格をそのままにしてODAの総額だけ伸ばすならば、日本企業の経済進出を助長するものという諸外国の批判が一層強まるだろうことは明らかであります。必要なことは質の改善、すなわち我が国大企業の海外進出の露払い役としての経済協力をやめ、LLDCなど本当に援助を必要としている国への援助比率を高め、贈与をふやし、グラントエレメントの向上に努めるべきであります。
 三 援助行政及び実施体制の一元化。
 援助体制の一元化は各党一致していますが、その一元化は基本法制定と同時に進められるべきであります。政府が昨年発足させた対外経済協力関係閣僚会議には自民党の役員も出席するということです。これをめぐって次のような報道が見られます。
 「膨らむ一方のODA予算への政治的発言権を狙い、「族議員」ならぬ「国議員」の登場もうわさされる。昨年暮、首相官邸で初の対外経済協力関係閣僚会議が開かれたが、大蔵、外務、通産の各大臣のほかに、文部、厚生、農水、労働、環境など、これまでODAとは縁が薄いと思われていた省庁の閣僚が大挙して加わった。「名乗りを挙げておけばなにかうまみがあるのでは」といった感じの閣僚もいたようだ」。週刊ダイヤモンド八九年三月十一日。
 「一兆円にものぼる円借款の行方は、外務大臣を頂点とした一握りの政治家派閥の裁量にゆだねられかねない構造になっているのである。むろん、ここに政治の力学やかけひきが働いているであろうことは、想像に難くない」。八八年三月政界往来。
 こうした状況を放置したままで基本法を制定せず、ただ行政機関の一元化を行うことは、いわば利権構造を整理して一元化することであり、何の改善にもつながりません。経済協力基本法を制定し、こういった利権の構造を許さない枠組みをつくることが強く求められていると言わなければなりません。
 四 国会と行政府との関係。
 国会はODAについて一層論議を深め積極的に関与を強めるべきであるという点でも一致しています。私は、さらに具体的に言うならば、計画及び予算の国会審議実施と国会承認制にすること、さらに実施状況の国会への報告の義務づけが必要であると考えます。
 このことを重視する理由の第一は、フィリピンに対する経済援助をめぐって暴露されたマルコス疑惑の例で明らかなように、政府の行ってきたこれまでの経済協力が腐敗の温床となっていたということにあります。これは私が本委員会で主張してきた重要な論点の一つでありますが、改めて指摘しておきたいのは、経済協力に携わってきた人たちが、被援助国にとっては政府並びにそれを取り巻く若干の関係者の懐を肥やすだけで、一般国民大衆の所得の向上にまではなかなか結びつかない。それのみならず、政府当局と先進国の企業との間には汚職が公然と行われ、政治をスポイルし、国民の批判を招いてきたなどその事実を認めていることであります。
 また、これも広く指摘されていることでありますが、こういったことが主に我が国経済協力の原則となっている要請主義の悪用によってなされてきたことであります。発展途上国政府の多くが開発プロジェクトの企画立案能力に乏しいのにつけ込んで、途上国の実情を無視した大企業の利益本位のプロジェクトを途上国の要請事業に仕立て上げるといったやり方が一般化し、その裏でわいろが横行しております。要請主義の悪用はこれ以上許してはなりません。発展途上国に対する汚職・腐敗の輸出をなくすためには、国会が実質的に関与し厳しくチェックできる仕組みがどうしても求められているのであります。
 第二は、せっかくの援助がその効果を発揮せず、相手国の国民生活向上に役立っておらず、むだ遣いとなっていることであります。
 私は、三月八日の打ち合わせ会でODAの具体的な問題を指摘した報道に基づく質問をしました。それは、雑誌「選択」に報道されたもので、「リベリア、教育テレビ放送網拡充計画。八五年度、五億円1もともと最初からテレビ受像機などほとんどなく、それどころか電線さえも充分に配備されていないという現地の事情を考慮せずに、電波を送り出す放送設備の方だけを供与。」とか、「村の用水確保にダム建設用資機材を供与した。しかし水路が確保できず、結局、国連の給水車による給水が行われている。」というものでした。これに対して外務省経済協力局長は、報道はオーバーであり、そのような事実はなく、問題はなかったと答弁しております。
 他方、総務庁行政監察局は、経済協力に関する行政監察(第一次)結果報告書には事前調査や本格調査を実施していないことによる支障の項目で監察していることになっていますが、監察の結果問題があったのかどうかを含めて外交配慮もあり、国名、個々の案件名を挙げて公表できないという立場をとっております。そもそも総務庁の今回の監察も三人で行い、現地の在外公館までは行っているが、現場へはほとんど行けず、外務省やJICAから資料を出させたり公になっている資料から判断したということであります。このため全体を通じて外務省のスポークスマンのような感が否めない報告となっているのでありますが、それでも前述のように幾つかの問題の指摘はしております。
 こうしたことから明らかなように、ODAの計画、予算についての事前の国会での審議、承認、事後の調査などの制度化こそ、汚職・腐敗やむだをなくす上で大きな保障となることは疑いのないところであります。事後の調査及びそれの国会への報告について、外務省は相手国との問題を持ち出して国会への報告をほとんど行っていません。こうしたことをなくすためODAにかかわる外国法人にも日本の会計検査院の検査が及ぶようにすべきです。
 五 経済協力基本法について。
 立法化については、少なくとも次の内容を入れたものとすべきであると考えます。
 (一) 経済協力の目的を明記する。経済協力は、発展途上国が自主的に飢餓、貧困等の経済的困難を克服し、国民生活向上、自立的経済発展を図るのを援助することである。経済協力の理念や目的をあいまいにしたまま戦略援助や大企業利益優先の援助を進めてきた政府の路線は根本的に転換す
ること。
 (二) 民主的公開の原則を確立し、経済・技術協力計画及び予算の国会審議実施と国会承認制の導入、海外経済協力基金や国際協力事業団など対外経済協力関係機関の計画や実施状況の国会への報告の義務づけなどすべて国民の監視のもとに置き、ガラス張りにすること。
 (三) 外国法人に対する会計検査をも実施すべきです。国または国が資本金の二分の一以上を出資する法人が外国法人と契約を結ぶ場合、その契約に、当該外国法人は当該契約に関する会計について日本国の会計検査院の会計検査を拒んではならない旨の条件を明記すること。
 (四) 海外経済協力基金や国際協力事業団の運営を民主化する。殊に、官僚の天下りや渡りを規制し、真の援助専門家を育成すること。
 (五) 大企業、多国籍企業による経済的侵略、対外援助を利用した内政干渉と介入をやめさせ、発展途上国の経済的な自立を達成し、現地の雇用拡大、所得の増大につながる事業を優先させ、事業計画は途上国自身の自主的判断によって作成されるよう保障すること。
 (六) 軍事独裁政権てこ入れや紛争介入的な援助を禁止すること。
 以上です。
#7
○関嘉彦君 本小委員会の取り扱うべき問題は、例えば発展途上国の累積債務や先進工業国間の経済摩擦の解消を含む国際経済秩序問題、ますます急を要する国際環境問題なども含まれるが、ここでは発展途上国への開発協力、その中でも政府開発援助(ODA)の問題に限定して意見を述べる。なお、この問題については既に昭和六十二年九月二十五日の本小委員会で述べたことがあり、今回の報告もそれと重複する点があるが了承願いたい。
 日本のODA予算は、対GNP比率においてこそ先進国の基準であるDAC平均の〇・三五%になお及ばないとはいえ、その絶対額においては一九八九年度予算で百十億ドル、アメリカを抜いて世界第一位である。さらに政府は昨年一九八八年に、今後五年間でその援助総額を過去五カ年間の倍以上とすることを国際的に公約した。軍事大国になることを拒否した日本としては、途上国への援助こそは世界に貢献する最大の手段であると考えられるので、我が党も今後ともODAの予算規模の拡大には賛成であるが、しかし、これだけ絶対額が増大した以上、一層国民の理解と支持を求めるのでないと実現は不可能である。というのは、国民の中には、財政事情の厳しい今日、現在程度の援助はやむを得ないとしても、その増額には必ずしも賛成でない人が少なくないからである。今後国民に負担の増大を求めていくためには、なぜ援助が必要であるかについてのみでなく、その援助が有効に使用されていることについて国民の納得を得る方法を検討すべきである。その点から現在のODAの改善策について若干の提案をする。
 第一は援助の理念、すなわちなぜ援助が必要であるか、援助の目的は何であるかについて明らかにする必要があるが、我が党の考えは次のとおりである。
 今日、世界には、特にアフリカのサハラ以南の地域では、なお三度の食事すら満足にとれない人たちが多数いる。最近の日本人はともするとマイホーム主義に陥りがちであるが、その傾向が強まれば世界の人々から軽べつされるようになるであろう。その意味からいっても、飢えに苦しむ人々への人道主義的精神からの援助は日本人の品位の問題としても必要である。その場合の援助は、国の体制の差、地理的遠近を問わず行うべきである。
 しかし、援助は単に心情倫理から必要とするのみではない。飢餓状態は免れているとはいえ、なお文化的生活水準からほど遠い生活を強いられている人々が大多数である。これらの人々の貧困は社会不安を起こし、しばしば内乱ないし戦争の原因となる。世界の平和の中でしか繁栄し得ない日本としては、これらの国の開発に協力することは日本として当然払うべきコストであり、それが日本の繁栄と安全保障にも役立つ。確かに途上国が経済的に発展することは、往々にして日本の経済的競争力を脅かすことも短期的にはあり得るが、長期的にはそれらの国の購買力の増大は日本の輸出市場の拡大にも役立つ。資源の少ない日本としては、世界貿易の拡大は日本繁栄の必須条件である。
 しかし、限られた資源で多くの国の援助の必要に応ずるためには優先順位が考えられねばならない。個人であれ、企業であれ、国家であれ、競争場裏において生存し繁栄していくためには何らかのストラテジーを持たねばならない。戦後日本では国家観念が希薄となったために、国家としてのストラテジー(これを戦略と訳すると軍事的意味に誤解されるので政略と訳した方がいいと思う)の観念が弱いが、これについての国民的合意を形成し、それに沿って援助の優先順位を考うべきである。
 すなわち、日本と政治的、経済的、歴史的に相互関係の深い国を優先することは日本の国益につながる。政治的とは日本の安全保障上重要な国のことである。日本の安全保障は少なくとも現在のところ西側の自由民主主義陣営と密接な関係があるので、それに関連する地域への援助も優先順位上考慮すべきである。もちろんこのことは軍事援助とか交戦状態にある国への援助とかを意味しない。また、腐敗の甚だしい政権の国への援助はその政府の延命につながり、民衆の反感を招く危険があるので慎重でなければならない。経済的相互関係とは、日本の貿易拡大上の利益や経済安全保障上の利益の考慮のことであるが、その場合も単に目前の短期的利益だけで考えるべきでなく、長期的観点が必要である。歴史的とは、過去において日本と関係の深かった周辺諸国、特に過ぐる大戦において日本が多くの損害を与えた国を重視しすべきであるという意味である。
 次は援助の目的である。これについては比較的合意を得やすいと思うが、その目的は援助により被援助国が経済的に繁栄し、社会的に安定し、政治的にも完全に独立して援助を必要としない状態をつくり出すことである。もちろん援助が内政干渉になることは厳に慎むべきであるが、被援助国に対する忠告の範囲内でその国の発展計画につき政策上の対話を重ねることが必要である。
 特に強調しておきたいことは、港湾、道路、発電所建設などのハードのインフラストラクチャーの整備を援助することはその国の発展の重要な条件ではあるが、それよりも重要なのはそのような整備を自国内で行い得る人材の養成、すなわち衛生状態の改善、広義の教育の充実などのソフトの面での援助である。その点から考えて、経済協力という話を改めて開発協力という話に統一することが国家の援助への姿勢を明確にする上で望ましい。名はしばしば実体を拘束しがちであるからである。
 以上が理念の問題であるが、次に重要なのは援助担当機関の一元化の問題である。現在のODA予算は、国際機関への出資や拠出金を通ずる多国間援助は大蔵省、被援助国への直接の援助である二国間援助は、無償資金協力が外務省、大蔵省、技術協力は主として外務省が中心となり各省と協議しながら行われており、借款、特に円借款は外務、大蔵、通産、企画が中心となり協議し、これにその他の官庁が参加している。予算も各省庁に分散して計上される個々の事業項目の合計額として計上されている。しかし、このように計画及び実施が各省に分散していることがその総合性を害し、責任の所在をあいまいにしがちである。
 例えば、食糧援助及び食糧増産援助は無償資金援助の一部であるにかかわらず、一般無償資金協力とは別個に予算に計上されている。これは大蔵省が主管官庁であるからである。その理由は、被援助国が被援助物資の価格の全額または三分の二を現地通貨で積み立てること(これを見返り資金と言う)を義務づけられており、それを被援助国の農業開発事業の資金に充当するためにその予算を大蔵省が監督すべきだというにある。しかし、
同様の見返り資金の積み立てば円借款の場合も義務づけられている場合があるにかかわらず、大蔵省主管でない。さらに総務庁の政府開発援助に関する行政監察報告(昭和六十三年七月)によると、多くの国で見返り資金の積み立てが行われていない実情にある。(百八ページ参照)。そもそも食糧増産援助に限ってその積み立てを義務づけ、特別にイヤマークする必要があるかどうかも疑われる。さらに同報告書は、同援助実施の遅延の理由の一つとして政府部内協議に時間を要することを挙げている(九十四ページ参照)が、これも外務、大蔵両省間の協議のことを言っていると考えられる。
 このように見ると、同援助の合理化及び能率向上上、これを外務省に一元化することが必要であるが、それが行われないのは日本の官庁の長年の縦割り行政の欠点によると思われる。
 これは一例であるが、能率化、合理化及び責任の明白化のためにも援助の計画及び実施機関の一元化が必要である。その方向としては、総理府内の独立官庁として開発協力庁を設置するのと外務省内の外庁として一元化するのと、二つの方法が考えられる。それぞれ一長一短があるが、前者の方法は、今の日本の官僚機構の点から見て五省庁体制になる危険があるのと、外交の一元化という観点から難がある。それゆえ外務省の外局として開発協力庁をつくり、そこにかつて外務省内に対外経済担当大臣を置いたように、大臣クラスの責任者を置くことが望ましいのではないか。
 現在政府は経済協力関係閣僚会議をつくって計画と実施の一元化の要求にこたえんとしているが、平均在任期間が一年未満の閣僚の単なる意見交換にすぎない機関が何ほどの効果を上げ得るか疑わしい。政府は速やかに一元化の方向に向かって真剣な検討を開始すべきである。
 第三の問題は、援助の透明性確保のため国会のコントロールを強化する問題である。
 先般のマルコス疑惑発覚以来、例えば契約受注企業名の公表など透明性確保のために努力が払われたことは評価するにやぶさかでないが、なお国民の理解を求めるには不十分である。現在は大項目ごとに一括して総額について国会の承認を求め、その配分は行政府に一任されている。確かにこの問題については立法機関と行政機関との権力分割の問題が絡んでいるが、現在のごとき行政府への白紙委任に近い状態では国民の理解を得られないのではないか。少なくとも援助金額の大きい国については向こう三年間ぐらいにわたる大体の援助計画の大枠を予算審議の参考資料として国会に提出すべきではないか。途中での計画の変更ももちろんあり得るから、議決案件として拘束することは避けるべきであり、細目までの計画を公表することは外交交渉上の問題もあろう。しかし主要国について、例えば農業開発のための土地整備事業に幾ら、衛生向上のために幾らぐらいの大枠を示すことは可能ではないか。
 しかし、この問題については国会の方においてもそれに対応する機構をつくるべきである。すなわち参考資料として提出された計画の妥当性を審議するためには国会の方でも常設の専門委員会、例えば外務委員会を増員しその中に特別の小委員会をつくり、平素から研究するとともに、その調査を行う事務局を強化すべきである。そうでないと国民の理解を増進するような審査は行われなくなる。
 なお、援助について国民の理解を求めるためには、その事後評価をも適切に行うべきである。プロジェクトの事前の調査を十分に行うことはもちろんであるが、事後においても、契約に基づき受注企業に支払われた金額が果たして適切に使用されたか、それがどの程度の効果を上げているかを第三者、当該国の民間人や第三国の経験者を交えたその意味の第三者により評価してもらうことが必要である。この事後評価は外交上相手国の主権侵害につながりかねない点もあるので、その点は十分に配慮せねばならぬが、その資金が日本国民の税金であることを考え、むだ遣いにならないよう評価を厳正に行う必要がある。
 以上の三点については可能な限り各党間で合意を形成し、その基本的考え方を開発援助基本法または憲章の形でまとめることが望ましい。仮に現調査会で成案を得ることが不可能としても、次の調査会でそれを基礎に発展した議論ができるよう調査会の報告書の中で合意事項を集約しておくことを切望する。
 最後に、援助の内容につき一言述べておきたい。
 初めに述べたように、橋や道路、発電所建設などのプロジェクトごとの援助の重要性を決して否定するものではないが、それと並んで場合によってはそれ以上に必要なのは人材の養成である。そのためには現在行われている技術研修事業をさらに拡大するほか、専門家の派遣、特に公衆衛生、医療施設、農村改良事業、教育事業などについての専門家の派遣と海外青年協力隊の事業を拡大強化することが必要である。特に海外青年協力隊については私の知る限り各国で感謝されており、それぞれの国の人材養成に寄与するのみでなく、日本の青年が外国の僻地において困難に耐えつつそれぞれの国の文化を学んでくることは、ともすればマイホーム主義に陥りがちな日本の青年の国際性の育成にも役立つ。その飛躍的拡大を望みたい。
 第二はNGOとの協力の拡大である。
 開発協力に限らず、日本では民間の自発的社会奉仕活動は欧米先進国に比し劣っている。しかし、最近ようやく開発協力についての民間の団体の活動も活発化しつつある。これらの団体の活動につき、政府が資金援助を通じてその活動の内容に介入することは厳に慎むべきであるが、例えば日本においての集会や研修の施設への補助、現地における草の根の人材養成活動への資金援助などはもっと拡大すべきである。一層の政府の配慮を望んでやまない。
 なお、この意見陳述においては、援助の量的拡大と並んでその質の改善、例えば無償資金援助の増大やグラントエレメントの改善の問題は当然のことであるので述べなかったが、一層の努力を望みたい。
 さらに援助行政を担当するスタッフ、特にその実施機関である国際協力事業団(JICA)の強化は緊急の課題である。JICAは創立後その前身を加えれば二十数年を経過しているのにかかわらず、その要員が創立当時とほとんど変わらないというのは驚くべきことである。また、今日に至るもなお依然としてその管理職に関係省庁からの天下り的人事、一定ポストの各省庁の私有財産化が後を絶たないのも問題である。JICA職員の士気の増進のためにも外部からの天下り的人事は漸次廃止すべきである。
 以上、終わります。
#8
○青島幸男君 先日、小委員会で対外援助の基本理念につきまして私は意見を申し上げました。その際の基本的立場は、その折にも申し上げましたので改めてここでつけ加えることはないと思いますけれども、最近は金額的にも対外援助はますます増大する折から、実態を一層明確化する必要があると考えております。
 つきましては、理念・目的・諸原則あるいは質的向上、改善、その他実行についての行政府の取り組み方、責任の所在、それから国会の関与のあり方、あるいは一般国民への公開の手段とかその保障などにつきまして、基本法とも言われるべきものが法制化されることが一番望ましいとは思いますが、そこまで手が届かないという実情を踏まえてのことでしたら、今後の援助の指針ともなるべき憲章あるいは決議というようなものを諮られて、ここで明確化する必要があるということを痛切に感じて、そのことだけをまず申し上げさしていただきます。
 以上です。
#9
○小委員長(矢田部理君) ありがとうございました。
 以上で小委員の皆様の御発言は終了いたしました。
 なお、志苫小委員より先ほどの資料が小委員長
の手元に提出されております。これを本日の小委員会会議録の末尾に掲載することにしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○小委員長(矢田部理君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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