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1988/03/08 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 国民生活に関する調査会 第3号
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1988/03/08 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 国民生活に関する調査会 第3号

#1
第114回国会 国民生活に関する調査会 第3号
平成元年三月八日(水曜日)
   午後三時二十九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    会 長         長田 裕二君
    理 事
                岩本 政光君
                大塚清次郎君
                斎藤栄三郎君
                丸谷 金保君
                高木健太郎君
                近藤 忠孝君
                三治 重信君
    委 員
                井上 吉夫君
                大島 友治君
                斎藤 文夫君
                寺内 弘子君
                中曽根弘文君
                二木 秀夫君
                水谷  力君
                向山 一人君
                矢野俊比古君
                大木 正吾君
                山本 正和君
                吉川 春子君
                平野  清君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        菊池  守君
   参考人
       日本経営者団体
       連盟専務理事   小川 泰一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国民生活に関する調査
 (労働と余暇に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○会長(長田裕二君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。
 国民生活に関する調査を議題とし、労働と余暇について参考人日本経営者団体連盟専務理事小川泰一君から意見を聴取いたします。
 この際、小川参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本調査会に御出席をいただきましてありがとうございます。
 本日は、労働と余暇について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 議事の進め方といたしましては、最初に二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 それでは、小川参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(小川泰一君) 御紹介をいただきました日経連専務理事の小川でございます。
 本日、こういう席にお呼びいただきましたことを光栄に存じております。
 余暇の問題につきましては、率直に申し上げまして研究が行き届いておりませんので、私からは専ら労働時間短縮問題につきまして御報告をさせていただきたいと存じます。
 お手元に発言のポイントということで幾つかの項目を書いてございますが、二十分ということでございますので、端的に2の(2)の「労働時間問題への基本的な取り組み」からお話をさせていただきたいと存じます。
 お手元に二種類の資料を差し上げてございます。一つはピンク色のパンフレットでございまして、私どもが昨年の二月に「労働時間問題専門委員会報告」ということで、主要企業の労働時間の実務を担当いたしております幹部の意見を集約したものでございます。それからもう一つ、ライトブルーの表紙のものでございますが、これは実は、毎年春に賃金問題を初め労使交渉の参考に供するために日経連で発表いたしております諸般の問題に関する所見と報告でございます。この中に労働時間の項がございますので、それを引用させていただきたいと思うわけでございます。
 まず、経営側の昨今におきます労働時間問題についての基本的考え方でございますが、これはピンク色のパンフレットの十四ページを恐縮でございますがお開きいただきたいと存ずるわけでございます。十四ページ以降、実は私どもが勉強いたします背景といたしまして、かなり多くの経営者の労働時間問題についての意見を聞きましてそれを集約いたしたものでございます。
 十五ページに第1図というのがございますが、「マクロ的・中長期的にみた労働時間問題の受けとめ方」というグラフが載っております。これを見ていただきますと、労働時間短縮に積極的な意見は、「かなりの部分を賃上げよりは時短に振り向けるべき」、「賃上げと同程度に時短へ振り向けるべき」、この二つの意見を持つものであろうかと存じますが、合計いたしますと八割を上回っております。かなり企業の責任者の意識は賃上げと同程度あるいはそれ以上に時間短縮に昨今は関心が向けられておるのではなかろうかと存ずるわけでございます。
 次のページをごらんいただきたいと存じます。第2図でございますが、「マクロ的・中長期的にみた労働時間問題の受けとめ方で「時短」に肯定的な意見の理由」、つまり時間短縮の意義についての認識でございますが、一番多い意見といたしましては、「国民生活全体の質的向上のため」、「労働者の福祉向上に結びつく」といったような勤労者並びに国民の生活の改善のためには時短をぜひやらねばならぬというような考え方がにじんでおるのではなかろうかと存ずるわけでございます。
 第3図は、これは後ほどまた御説明する機会もあろうかと思いますが、省略をさせていただきます。
 しからば、とりあえず労働時間を短縮するに一番の取り組まねばならぬ問題は何かということでございますが、これは十七ページ、「時短の取り組み方法」というところに第4図ということで示してございます。一番多うございますのが、何はともあれ時間外労働、休日労働の削減をすべきである。その次とその次は大体同じ考え方でございますが、要するに休暇の取得率を向上する、あるいは計画的な休暇をとるということでございます。その次は休日をふやす、それから変形労働時間制を導入するといったようなぐあいになっているかと思います。経営側の時間短縮に対する取り組みの重点があらわれているのではなかろうかと思っております。以上で、労働時間問題への基本的な取り組みについて、言葉でるる申し上げますよりもお察しいただけるのではなかろうかと思います。
 そのような調査を背景にいたしまして、「労働時間問題専門委員会報告」の副題には「密度の高い価値ある仕事と充実した余暇との調和をめざして」というふうに書いてございます。昨今のそれぞれの企業におきます労働と申しますものは、ひところよりもやはり創造的なものを従業員に求めていくという傾向が強うございます。だとするならば、それ相応のやはりバランスのとれた余暇と労働というものがなければならないのではなかろうかということでございます。
 次に、労働時間短縮のための方策でございますが、大変恐縮でございますが、ライトブルーのパンフレットの四十ページをお開きいただければと存じます。
 実は、この辺には賃金の問題と労働時間の問題についてるる私どもの見解を述べておるところでございますが、労働時間の問題についてのみかいつまんで申し上げたいと思います。
 基本的視点といたしましては、
  労働時間問題は、豊かな社会へ向けての重要課題である。人間が創造的な自由な時間をもつことは、価値ある労働を生み出す要件であるともいえよう。
  従来の労働と余暇という対比、つまり、余暇とは「余った時間」という考え方は改めていかなければならない。余暇とは、人間の自由な時間であり、自由な創造の時間である。
 このように余暇の問題あるいは労働時間の問題についての認識を述べております。
 あと三点にわたりまして労働時間問題について所見を述べさせていただいておりますが、御説明の都合上四十二ページのAから申し上げた方がおわかりやすいかと存じますので、少し順序を変えてまず四十二ページから申し上げてみたいと思います。
 四十二ページは、「時短・賃金パッケージ論の定着」ということで、昨今多少御批判もちょうだいいたしましたり御賛同もちょうだいしたりしていることでございますが、大変単純なことでございまして、労働時間はこれはコストであるということを申し上げているところでございます。二千時間の企業が年間一時間の労働時間を短縮いたしますならば〇・〇五%のコストアップに相なりますし、週一時間、年間五十時間短縮すれば二・五%のアップになることは算術的に出てまいります。二・五%のアップということでございますと、大体定期昇給一年分でございます。労働組合にも理解を求めておりますけれども、一部の労働組合におかれてはこの辺の理解も進んでおると私どもは感じておるところでございます。
 例を申し上げて恐縮でございますが、鉄鋼労連の要求はベースアップ四・八四、労働時間短縮一・三六ということで、すべて金額に合わせまして要求をいただいておるところでございますが、その辺のいわゆる時短・賃金の認識においては私どもが申し上げているところとそう変わらないのではなかろうかと思っております。それが第一点でございます。
 第二点は、四十一ページに戻らせていただきますが、確かに賃金も労働時間もコストという面では同じでございますが、労使交渉の上でそれを実現するという段取りにおいては若干の相違がございます。賃金につきましてはトップ同士がある水準の賃上げを決断し、若干の配分交渉をすれば直ちにそれが勤労者の、従業員の、組合員の皆様の賃金にはね返るということでございますが、労働時間短縮につきましては、経営と労働組合のトップが一定の合意をいたしましても直ちにそれが実現するというものではございませんで、その実現にはさまざまな詰めが必要でございまして、どの労使関係を私ども見ておりましても、労働時間の交渉には相当長時間を要しております。
 例えますならば、休日をふやす、労働時間を短縮するとすれば仕事のやり方をどうしたらよろしいのか、人の配置をどうしたらよろしいのか、あるいは設備投資をどう考えたらよろしいのかというようないろいろな詰めの交渉、工夫がございます。また逆に、そういった働く実態に応じた工夫によりまして労働時間短縮の余地も生まれてくるという場合もございますので、私どもといたしましては、労働時間短縮については労使の自主的な労力と工夫が大切であるということを申し上げているところでございます。その中で、一点私どもが主張いたしておりますのは、労働時間の弾力化ということを今後考慮すべきではなかろうかということでございます。この点につきましては、先般の労働基準法改正の中にも幾点かお取り上げをいただきまして、労使といたしましては考えやすい条件が整ったと思っております。
 労働時間の短縮、弾力化でございますが、これは既にドイツを初め西欧においてはかなり取り入れられているところでございますが、一面においては全体の労働時間を短縮しながら仕事の方に労働時間を若干合わせてコストを削減していく、そのコストで逆に労働時間を短縮するということでございまして、例えば機械の稼働を向上するために交代勤務を取り入れる、あるいは土曜、日曜、従来機械を休ましていたときに機械を動かして、それによるコスト減を労働時間短縮の費用に充てるというのが一つの行き方であろうかと思います。
 さらに日本の場合、第三次産業でいろいろ工夫をされておりまして、例えばお客様のニーズに従ってスーパーとかあるいは百貨店等で閉店時間をおくらすというようなことが昨今行われております。当然営業時間は長くなりますが、逆に従業員の方は労働時間を短縮しなきゃならぬという要請もございまして、例えば早番と遅番をつくってうまく組み合わせる、あるいは休日をふやして、大変忙しいときには逆にふだんの労働時間より延ばして残業代を払わずに勤務していただいて総体的には労働時間短縮をする、あるいは正規の従業員とパートの労働時間を適切に組み合わせながら対処するというような工夫が行われております。
 いま一つ、逆に生活の方にどちらかと申しますと労働時間を合わせるという工夫でございまして、これはフレックスタイムということでかなりもう世の中では言われておりますので御承知であろうかと存じますが、特に昨今はメーカーにおきまして研究機関であるとかあるいは一般業務の方々に随分導入をされております。ある程度の制約はございますが、自主的にみずからの労働時間を決めることによって生活と労働を調和させる、その中から高い生産性を生み出していこうという考え方でございます。
 それから、四十一ページの最後から四行目にちょっと書いておきましたが、ライフサイクルに合わせるという手もあるわけでございます。一例を申し上げますならば、十年なり十五年なり勤務をした方にはリフレッシュ休暇ということである程度まとまった休暇を与えて、その間に心身ともにリラックスをして次のステップに進む、あるいは働き盛りのときには多少労働時間が長くても、引退が間近になった時期には労働時間を少なくして老後への軟着陸を図るというような発想もこれからあり得るのではないかということでここに取り上げてございます。今後の課題であろうかと思うわけでございます。こういった工夫が労働時間短縮には伴うことが必要であろうかとも思いまして、労働問題研究委員会で取り上げたところでございます。
 第三点としましては、政府への要望となっておりますが、これは四十三ページに書いてございます。
 本来、労働時間短縮は労使の自主的な努力で進めるのが私ども本筋と思っておりますが、労使の努力が力足らずでございまして、大変政府の方からさまざまな指導をいただいておるわけであります。それはそれとして、私ども率直に受けとめざるを得ないのでございますが、端的に申し上げますと、行政でお決めになったから何が何でもある一定の期間にそこへ強引に持っていくということだけは御勘弁いただきたいと思っております。
 御承知のように、るる繰り返しましたように労働時間もコストでございまして、経済の実態や企業の業績等を無視してはこれは進まないものでございまして、それに合わせながらどうぞひとつさまざまな条件整備の点で御指導をちょうだいしたい、そんなふうに思っております。
 ちょっと話が前に戻って恐縮でございますが、赤いパンフレットの十八ページをお開きいただければと思っておりますが、これは「時短を進める上での国への要望点」ということで経営側の意見をまとめたものでございます。これはまとめますと二つになると思います。
 例えば第一の「物価引き下げによる実質所得向上策」、率直に企業の現場に参りますと、まだまだ労働時間短縮よりも賃金とか残業は欠くべからざる生活の原資であるとかいうような声がございます。そういった勤労者の気持ちを徐々に労働時間の方に向けるためには、やはり幾ら名目賃金を追加いたしましても昨今の情勢では限界がございまして、何と申しましても物価の引き下げによりまして客観的な暮らしやすさを実現していく。さらに三番目にございますが、生まれました余暇、「自由時間を生かす社会環境の整備」、その辺も御配慮をいただきたい。それからもう一つは「円高差益の還元による実質所得向上策」、これは第一点と同じかと思います。いわば時短の方向に勤労者の目が向く、あるいは時短の結果を享受し得る方向に勤労者の目が向くという条件を整備していただきたい。これはもちろん企業の責任もございます。
 それからもう一つは中小企業の問題でございます。日本の中小企業が所定労働時間においてかなり長いということについては御批判をいただいておりまして、重点的な御指導をちょうだいいたしておりますが、やはり中小企業は中小企業なりの悩みがございまして、その体質を改善していくことが第一だ。労働時間短縮それ自体に対していろいろ御援助をいただくことも場合によっては適切かと存じますが、それよりもじんわりと中小企業の体質を改善していって、おのずと主要企業並みに労働時間短縮ができるという環境に導いていただく。例えば「中小企業の省力化投資に対する税制優遇措置」、「設備近代化のための金融措置」といったようなことが労働時間短縮に関連をいたしまして要望をされております。
 最後に、公務員の閉庁方式について一言触れております。
 日経連といたしましては、公務員の閉庁方式による四週六休といったような一般の国民とバランスのとれた処遇改善については、私どもとしては何ら異論はございません。ただし、公務員にお願しし大しごとに、サービス精神と仕事に対する意欲でございます。したがいまして、政策官庁等で大変ハードな日常業務をやっておられる方は、正直な話御遠慮なく週休二日をおとりになって立派な政策をおつくりいただきたい。また日常きめの細かい国民なり地域住民に対するサービスを事としておられる官庁におかれては、これは例えば民間のサービス産業、例えばエネルギーであるとか、それから交通、運輸であるとかあるいは一部の小売業であるとか、そういったところの勤務も少しは見習っていただいて、かわってお休みをとる分については一向差し支えございません。
 どうぞひとつその辺の工夫もあってしかるべきではないかということをかねがね申し上げておりますので、最後に申し上げさせていただきます。
 以上でございます。
#4
○会長(長田裕二君) 有意義な御意見をありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○山本正和君 大変どうもありがとうございました。
 そこで三点ほどお伺いしてみたいと思うのでございますが、まず第一点として、我が国が国際社会の中でさまざまな文化あるいは経済、いろんな問題でかなり責任ある立場を占めている、こういう中で我が国の経済といいましょうか、あるいは我が国企業というものが国際社会の中に占める位置も非常に高くなってきている。そういう中でヨーロッパ各国やあるいはアメリカ等から、我が国の企業がこれだけの力を持っているにもかかわらず、なおかつ労働時間がそういう国と比して非常に多いじゃないか、こういうふうな批判が今やっぱりあるんじゃないか、またそのことがいろんな意味での経済摩擦の原因の一つにもなっている。こういうふうな問題については、一体日経連としてはどんなことをお考えでございましょうか、まずその点をお伺いしたいと思います。
#6
○参考人(小川泰一君) お答えをいたします。
 御指摘のとおり、先進各国とかなり労働時間の開きがあることは事実でございます。英米とはさほど差はないつもりでございますが、ヨーロッパとはかなり格差がございます。これにつきましては、それぞれの国の事情もございましょうし、勤労観もございましょうし、またこれは失業の状態もかなり違うわけでございまして、それぞれ各国の労使の力の入れ方の相違点もございまして今日に至ったと思っております。
 今後におきましては、この報告書でも書いてありますとおり、労働時間につきましても国際的な比較の中で改善をしていきたい、さように考えております。したがいまして、生産性向上の成果の配分についてはより重点的に労働時間に向けるべきだという主張をいたしております。
 この青いパンフレットの四十二ページに、日本と西ドイツ、フランスの生産性向上の成果配分の賃金と労働時間に対する割合を掲げてございます。残念ながら、西ドイツ、フランスに対しまして日本は半分でございます。二十年間に二百時間ぐらい日本も短縮はいたしておりますが、このような配分の度合いの差が今日を生んだと思っております。
 この辺につきましては、なかなかこれは企業労使という現場に参りますと困難はございますが、日経連といたしましては、生産性向上の成果配分については、今後はできるだけ労働時間にウエートを置くようにという方針で申し上げてまいりたいと思っております。
#7
○山本正和君 関連しまして、実はアメリカの場合我が国と労働時間がそう変わらない、あるいはイギリスもそんなに開きがない、これは数字で出ておるわけですけれども、現実の問題としてイギリスやアメリカの労働者の企業との関係がかなり違っている。特にアメリカの場合、我が国のようにどちらかといったら終身雇用的な形態というのはもうほとんどない。そういう中で、ですから我が国の労働者が企業の中で働いていく形態というものが、やはり日本的な条件がかなり強く出てきている。そういうふうなものも一つの原因と見てもいいとは思うんです。
 要するに、アメリカにおける労使関係と我が国の労使関係との違い、そういうものを含めて見た場合、私は、企業に大変大きないろんな意味での責任と言ったらおかしいんですけれども、国のあり方もかかわって、我が国がこれから国際社会でどういう地位を占めるかということもかかわって、いわゆる企業側の方にかなり難しいかもしれませんけれどもいろんな問題についての越えなきゃいけない幾つかの問題があろうかというようなことを思ったりするわけでございます。
 そういう意味で、日経連加盟の企業をずっと見ていきますと、今度の改正労働基準法についても別にそれで差し支えない、こういう企業が約半数というふうな数字も出ておりますけれども、となると、結局日本の企業の中での格差がかなりきつい。要するに、労働時間問題に対する日経連という一つの大きな団体の中での考え方の違いというものがかなりあって、その部分でまとめられるということについての御苦労がおありになりはしないか。ですから、経営者の意識の中に随分大きな格差がある。先進部分と、それから昔の家族ぐるみの企業といいますか、そういう中での発想というものの間にかなり違いがあるような気がしてならないのでございますけれども、そういうふうな問題等についての日経連としてのいろんな議論、あるいはまとめられるようなそういうことはかなりおやりになっているのかどうか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいのでございます。
#8
○参考人(小川泰一君) 中小企業につきましては、日経連の構成員は大部分中小企業でございますので、大変関心を持っておりまして研究を進めておりますが、その一端をちょっと労働問題研究委員会報告に述べておりますので補足説明をさせていただきます。
 青いパンフレットの三十ページから述べておりますが、「規模間格差への対応」という視点でご
ざいます。中小企業と大企業の関係については、統計などをとりまして平均的に比べますと、三十二ページにその表がございますけれども、大変さまざまな面で格差がございます。しかし、どうも一つ一つ当たってまいりますと平均的議論は通らないと思っております。日本の産業は大変力強い中小企業のバイタリティーによって支えられておるという認識を基本的には持っております。
 しかしながら、御指摘のように大変まだ改善を要する中小企業群もございまして、それらはかなり多くの部分を大企業との関連において生産なり取引なりで成立をしている企業が多うございますので、私どもといたしましては、三十一ページの真ん中に書いてございますが、
  日本の中小企業群の存在は、日本経済の強い底力の大きな要素として各国から注目されるところであるが、発展途上国の追い上げも考慮すれば、中小企業には一層の技術力と経営力の強化が要請されるところである。同時に、こうした自助努力をバックアップするための大企業の適切な配慮を強く要請したい。
 実はこの辺は昨年以来強調いたしておりまして、まだ顕著な実効は上がっているとは思いませんが、労働時間問題についても私はこれは同じ考えで、大企業なりあるいは親企業と称するところもございます、そういったところでバックアップすべきであるとかねがね申しておるところでございます。ただし、やはり画一的に何か一挙に中小企業の労働条件を改善してしまう、一刀両断はなかなか通りにくいということは繰り返しになりますけれども申し上げておきたいと存じます。
#9
○山本正和君 実は私も年が近いものですから、時々一緒にいろんな話をしたりしますが、八百屋さんから始めて、そしてもう今数千人の職員を使って、中部ブロックですけれどもスーパーをやっておられる経営者がおる。大変仲よく懇意にしていろいろ話をすんですけれども、その方が、企業を大きくしていく上で、アメリカのスーパー業界に若い職員を派遣してそして勉強させて、い北ゆるスーパー経営というものを自分たちなりに頑張ってやっていかれた。そのときに、出発点から、労働時間問題なんかも含めながら近代的経営という立場に立って徹底的に合理化を中心にしておやりになっている。ところが、そうじゃなしに、やっぱり昔からの家族経営的な発想の中で、どっちかといったらワンマン社長でおやりになる会社とある。
 私が思いますのは、ですから、企業の経営者の中に、いわゆる合理的な立場に立って賃金や労働時間を考えられる方と、それから昔の意識と言ったらおかしいんですけれども、江戸時代の小僧、でっち、番頭といったような、そういうふうな時代の意識がどうしても抜けない中で来ている部分とあるんじゃないか。その辺の問題が実は理屈ではわかっておるけれどもなかなかやりにくい。こういうふうな形で経済団体で、特に地方になりますと、いろんな話をしてみましてもなかなかうまくいかないようなことをちょっと聞くんですけれども、その辺はいかがでございましょうか、率直な話。
#10
○参考人(小川泰一君) 御指摘の点があろうかと思いまして、私どもは地方に経営者団体を一つずつ持っておりますものですから、そこを通じていろいろお願いもいたしておりますが、私は、将来展望といたしまして、経営の近代化については人材の確保という観点から徐々に改善をされていくのではないかという楽観論を持っております。
 と申しますのは、私ども関東経営者協会というところがございます。そこで中堅中小企業の求人のお手伝いをさせていただいておりますが、そのときには御指摘のとおり近代的な経営をやっておりませんとなかなか新規の人材が集まらないという決定的な問題が生じております。したがいまして、幸い日本企業も、日本産業も逐次発展をいたしておりますので、その過程でだんだんそちらの方向に行くんではないかと思っておりますが、私見でございます。
#11
○山本正和君 それで実は、私も労働時間短縮問題をずっと見ておりまして、一番経営者が苦しかったのはいつかと。いろんなことがありますけれども、戦後要するに第二次大戦が終わった後に労働基準法が取り入れられて労働者に対する一つの保護法規ができた。そのときにほとんどの経営者の方がこれで日本の国はやっていけるのか、こんなことでは企業はできないぞと、こういう中で随分いろんなことを乗り越えて取り組みをおやりになった。そしてまた、例の昭和三十年前後から、昭和三十年代にかけて繊維業界が、特に今でこそ興和紡とか鐘紡とかいろいろ新しい近代経営になっておりますけれども、そういう昔の繊維工場の感覚ではこれからやっていけないんだという中で大変な努力をおやりになって今日の状況をつくっているんじゃないか。
 ですから、私は何か一つのそういうものがあって初めて企業も活力を増すし、労働者もいろんな経験を経る中で本当の労働の意味といいますか喜びといいますか、そういうものをわかっていく。そんなことを思いまして、ですから、日経連さんがよくおっしゃる行政が先行してはいけないよと、確かに行政が先行して企業をつぶしたらいけないと思うんですけれども、ある程度そういうものがなければ、法的な規制がなければ、なかなかヨーロッパ各国等から見て日本の企業は何をしているんだと、あるいは日本の労働者は何をしているんだと、こういう批判に耐えて、なおかつ国際社会で生きていくというためには難しいんじゃないかというような気もしたりいたします。
 あくまで現在の中で法律が先行するといいますか、いきなりいかなくても、法律の上である程度の、例えばこの前の改正労働基準法のような、これは労働側から言いますと非常に不完全なものですし、企業側から言わせるとちょっと早過ぎるんじゃないかというような、しかしいずれにしても、そういうふうに漸進的に少しずつ国の段階で目標を示されたようなものが出ていく中で乗り越えていかなければいけないのじゃないかというようなことを思ったりもするのでございますが、その辺は日経連さんの中での論議はどんなものでございましょうか。
#12
○参考人(小川泰一君) 率直に申し上げまして、何とかやはり労使の自主的努力で適正な水準に持っていくべきだというふうに思っておりますし、そのような主張も続けております。ただ、客観的に見た場合、御指摘のとおり労働基準法改正あるいは労働行政等が一つの刺激になっていることは否めない事実だろうと思いますが、私どもとしては労使の誇りにかけて何とか自主的に、そういう御指摘を行政なりあるいはいわんやよその国から何か言われるようなことがあってはならないということだけは思っております。
#13
○山本正和君 もう質問の時間が余りございませんので、私の方からはお願いでございますけれども、日経連の中で企業の責任者の方いろいろおありになって、私どもも逆に、何だ、一体君は労働というものの意味がわからぬじゃないかとしかられたりするような方もおありになります。いろいろあるんですけれども、今いやでも応でも二十一世紀を迎えている中での新しい企業といいますか、経営者の感覚といいますか、それがやはりどうしても私どもから見ていますと、まだどうも昔風の発想の方がかなり力強く御発言になっているような気がしてならないんです。ですから、その辺を含めまして何とか、経営者の中でもそういうもっと合理性を持って、しかも二十一世紀を展望した経営という中でのセミナーといいましょうか、特に地方段階における御指導をひとつぜひお願いしたい。
 いろんな意味でトラブルが起こっている状況を見ますと、労働争議一つ起こったのを見ても、本来の数字からきたさまざまな議論を扱うんじゃなしに、感情の部分からきた労働争議がかなりまだ残っているというようなことも思いまして、その辺ひとつぜひこの際の機会でございますので、日経連の方で何とかそういう形でのお取り組みをいただきたいと、これをお願いしておきまして、私の質問を終わります。
#14
○参考人(小川泰一君) お手元に差し上げました労働問題研究委員会報告を御通読願えれば、かなり変わったんではないかというふうな御認識を不十分ながら得ていただけると思いますが、お言葉についてはよくかみしめまして今後の参考にさせていただきます。
 ありがとうございました。
#15
○大塚清次郎君 それでは、参考人にお伺いをいたします。
 先ほどいろいろとうんちくに富むお話を承ったわけでございますが、さすがに生産性基準原理に基づく時短・賃金パッケージ論ですね、これは非常に私どもも感銘を受けて聞いておるわけでございますが、問題は、その中で賃金は非常に速効性だけれども、パッケージになっていく労働時間短縮ということについては非常に遅効、効果が遅く発生するということなんです。
 これをよく考えてみますと、一番大きな問題は、この報告の三十ページでいみじくも御指摘になっております「規模間格差への対応」ですね、これを相当急がないと、賃金に偏ったものを労働時間で短縮ということの遅効性を解消できないんじゃないかということ、だから、これはポイントだと思うわけでございますが、それはやはり日本の長い間の企業経営の歴史的な伝統といいますか、その中でやはりいまだに親会社と子会社、それから親と下請、この関係がまだまだなかなか、二重構造といいますか、これが解消されていないところに問題があるのではなかろうかと私も受けとめておるわけでございますが、それはやはりどうしても産業能率の問題が親会社と子会社の間には大きな開きがある。
 いわゆるここの三十二ページの第6表にございます。それでここに格差のパーセンテージを示してございますけれども、私はこのパーセンテージもさることながら、絶対値ですね、いわゆる一九八〇年、七千十五円と三千二百三十四円、四六%、一九八七年、四九に上がっておりますが、付加価値生産性が八千四百二十三円と四千百三十六円、絶対値の大きな開きがあると思うんです。ですから、そういう意味ではやはりここが一番問題だと思うわけでございますが、これを解消しないと、だんだん近づけていかないと、どうしても労働時間の普遍的な短縮につながらないということ、そして効果もなかなか加速されないということであると思います。
 そういう点の認識に立って一点お伺いいたしたいのは、いわゆる国の行政による支援も一つ言われましたけれども、もう一つ下請と親会社の間の分配の問題をもう少しこれは目に見えるものにしなきゃ、そこに合理化する、近代化するにしてもいかぬのじゃないか。と申しますのは、非常に下請はもう過当競争でございますね。そういうことでますます開きが大きくなる。そこにはやっぱり労働時間の短縮というのは生まれてこないと、こういうことじゃなかろうかと思いますが、そういう点を取り出してひとつ先生の御意見をちょうだいいたしたいと思います。
#16
○参考人(小川泰一君) お手元に差し上げておりますライトブルーのパンフレットの三十ページに、その辺のことを簡単ではございますが記述いたしております。
 「付加価値配分は総合的な見地から」ということでございますが、
  企業で生産された付加価値は、価格や為替レートや労使交渉、税制など種々の仕組みを通して社会に分配されていく。日本の企業は、いわゆるシェア重視のあまり、この大切な付加価値の国際間、企業間の配分について些か軽視の傾向があった。労使の努力の結晶である付加価値を過当競争ですり減らすような経営は避けるべきであり、今後は付加価値を大切にする経営を考えるべきであろう。
 大変抽象的に書いてございますが、これは実は日経連の会長の鈴木三菱化成会長の持論でございまして、例えば日本で生産されたものが日本で買うよりも外国で買った方が安いとか、あるいは今御指摘の親企業、下請企業の間で過酷な配分がされておるというような実態、あるいは過当な競争によってとんでもなく製品が安くなってしまうというようなことは、総合的に見直して適切な配分をしていくべきであるというようなことを申し上げているところでございますので、日経連の考え方もそのように進めてまいりたいと思っております。
 御指摘の点と合うかどうかわかりませんが、なかなか実現性については道のりは遠いかと思いますけれども、いろいろ努力をしてまいりたいと思っております。
#17
○大塚清次郎君 今のことでございますけれども、やっぱり経営側の支援というのは非常にこれはもう大切じゃないかと。そうでないと、そういう過当競争であり、さらに現実にこれだけの格差が出ておるわけですから、やっぱり経営側では親会社、これはかなり時短に進んでおると思うんですよ。進んでいないのがいわゆる下請関係だと思うんです。ですから、やっぱり分配の中でひとつこれを是正していくという、もちろん国もそういう努力を、支援をしなきゃならぬ。いわゆる支援していただけば幾らか時短が、非常に遅効性のものが進んでいくんではなかろうかと、こう思いましたのでお伺いいたしたようなわけでございます。
 そういう点では、いい分析がこの研究報告にはなされておると思います。これをもう少し具体的に追求していく必要があるんじゃないかと思いますが、最後に一つ。
#18
○参考人(小川泰一君) 実は、こういう要約した意見を申し上げる背後にいささかまとめた研究もございますので、また御参考に供する機会もあろうかと思います。ありがとうございました。
#19
○高木健太郎君 大変よくおまとめいただいたお話をお聞かせいただきましてありがとう存じます。私からこれと申してそれ以上のことをお聞きすることはできないような立派なお話でございましたが、一、二、私、気のつきましたことをお聞きしたいと思います。
 一つは、これはどうしても時短をするということになれば、どこかで効率を上げなければコストアップになるということはこれはだれしもわかるわけでございますが、ここに時短に伴ういろいろの方法が、それに対応策がピンク色の六ページから九ページぐらいまでに書いてございます。これが考えておられる一つの方法じゃないかと思うんですが、そうでございますね。
 その中で、六ページのAというところに「短期的に導入」というのがございまして、その二行目のところに「労働密度の集中度向上」として、「きびきびした勤務態度の実現、労働時間の効率的運用」等々と書いてございます。これが私ちょっと気になるわけでございまして、こう書かれるということは、現在は余りきびきびした勤務態度ではないという、反対にとればそう聞こえるわけでございます。それと、この青色の方だと思いますが、三十四ページのところに図がございまして、第4図というところの右側の方ですが、「若いうちは、自ら進んで苦労するぐらいの気持がなくてはならないと思うか」という問いに対しまして、七八年は六〇%、八三年は五七%、八八年は四九%、だんだんこれが減っているように思うわけです。今私は文教の方に関係しておりますけれども、若い人たちの中でそういう傾向があるのかどうかということをちょっとお聞きしたいと思うわけです。
 確かに私、後進国あたりの旅行をしました場合に、レストランであるとかあるいは航空機の中の機内サービスの女の子のサービスのやり方とか、そういうことを先進国の方々と比べてみますと、何だかのろいというような感じを受けるわけなんでして、やはり先進国の人たちの方はきびきびしたような感じを受けるわけですね。そういうことで、もしも今の日本の若い方々にそういう気持ちがあるとすると、これは大変困ったことであると思うのでございますが、どういうふうにこれをとっておられるかというのが一つでございます。
 もう一つは、ここにいろいろ方法としまして、ロボットのやつだとか、あるいはOA機器である
とか、いろいろのことが書いてございます。
 これには書いてございませんが、効率を上げようというよりも労働のコストを下げようと思うと、単純労働者を、輸入という言葉は悪いですが、人間を輸入してくるということが起こるのではないかというわけですね。それは特に中小企業等においてそういうことが起こってくる傾向が出てくるのではないかというそういう心配をするわけです。さらに、今後はもう三、四年たちますと大学の入学者も減ってまいりますし、現在生まれる人口もだんだん減ってくる傾向にございます。となると、人間が、いわゆる生産人口の減少ということがどうしても考えられてくる。こういうことと逆に後進国からの輸入人口がふえてくる。この労働力の輸入ということについては積極的の意見と、これに反対の意見とがあるわけでございますが、日経連としてはこのことについてどのようにお考えか、次にお尋ねしたい。
 最後に、もう一つお伺いしたいのは、時短というものを、このピンク色の方の十七ページでございますが、いろいろなとり方があるわけですけれども、それをどういうふうなとり方が一番よいと具体的にはお考えか。例えば土、日を休みにするという考え方か、あるいは毎日の勤務時間を減らすというお考えか、どのような形がいいとお考えか。
 日曜日が二つになる、休日が一週に二つになるということは、生活リズムを乱すということからいうと余り私はいい方法ではないように思いますし、子供、家庭ということからいいますと、一週間に二日あるということは家庭のリズムがかなり狂ってくるというふうにも思うわけですね。そういうこともございまして、これはいろいろ長所、短所がありますし、業種によっても違うと思いますが、一般的にはどういう方法を今後おとりになっていこうとされるのか、あるいは何のパイロット的あるいはテスト的なことなしにいきなりおやりになるのか、何年ぐらいかけてこれに国民をならしていくようにおやりになるのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
 以上、三つについてお伺いできれば大変ありがたいと思います。
#20
○参考人(小川泰一君) お答えをいたします。
 第一点の若い人の意欲でございますが、実は青いパンフレットの三十四ページに幾つかの図表を掲げておりますが、私どもこれを論議いたしまして、これをどう判断すべきかということについては議論がまとまりませんで、三十二ページから三十五ページにかけてきちっとした議論を必ずしも展開しておらないわけであります。
 我々のような年輩者が議論をいたしましたものですから、ちょっと議論百出でございまして、要は、結論といたしましては、少しずつやはり勤労観というのは変わっていくということだけは事実でなかろうか。昔のようにただ勤勉であればいいということではなくて、いろいろな働き方が併存していくのではないか。これは容認していかざるを得ないだろう。しかしながら、少なくとも企業としては働くことを通じて社会に貢献する、その中でみずからが成長していくというようなところは残していかざるを得ないし、またその方向で若い方を指導していかざるを得ないのではないか、そんなようなところが最大公約数であろうかと思っておりまして、今後の課題にいたしております。
 ただ、私の乏しい経験によりますと、昨今の若い方は決して働くことが嫌だということではございませんで、やはりただとから言われた、ただ会社のためにということではなくて、自分の成長あるいは自分の興味、自分の能力を生かすというような方向で一つの、何と申しますか、働こうという自覚が生まれれば、率直に申し上げましてそれなりに、それこそ余暇の時間も忘れて頑張っていくという傾向もあるようでございまして、これからは世代も逐次交代いたしますので、人事管理のあり方も少しずつ変わっていかざるを得ないのではなかろうかと思っております。
 それから二番目の、いわゆる単純労働者でございますが、これはお手元の青いパンフレットの二十五ページに私どもの基本方針を書いてございます。全部読み上げますのもどうかと思いますので要点だけ申し上げますと、文化の交流、相互の経済発展、技術協力といった視点を国境を越えた人の移動については中心とすべきであって、したがって、専門的技術・技能や国内では得られない能力の持ち主などを中心にすべきではないか。日本としては、単に人手不足だから、賃金が安いから、日本人は最近ダーティーワークをしたがらなくなったからといった理由で発展途上国の労働力を入れるべきではないというふうに、これはすべてのこれに参画をした人の一致した意見でございました。ただし、現実問題としてはいろいろございますので、これに対する対応につきましては現在研究を進めている最中でございます。
 それから三番目の、十七ページに私どもがたまたまアンケートをそのまま取り上げたものについて、どれを優先するかという御指摘でございます。
 率直に申し上げまして、それぞれの企業、それぞれの業態によってさまざまでございますが、そのときの議論では、やはりとりあえず取り組むべき課題は、総労働時間を何とかして減らしていくという方向であろう。だとすると、例えば休日をふやしていくことも結構だし、所定労働時間を減らすということも結構だけれども、ともあれ勤労者にとっても多いと思っておる、あるいは企業の立場からいってもいかがかと思っておる時間外労働や休日労働を何とか工夫して減らす方向に持っていくべきではないか。
 また、せっかくあります休暇をとらないという、これはいろいろな事情もあろうかと思いますが、その辺はやはり経営側も十分考えて、計画的な休暇をとるようにトップも考え、従業員の方にも考えていただくということでいかねばならぬだろう。そういった策を講じることと並行いたしまして週休二日を導入する、あるいは少し長時間かなというところについては所定労働時間も見直すというような工夫を並行してやるべきではないだろうか、そんなような空気でございまして、あえて最大公約数を言えばそんなことではなかろうかと思います。
 あと何年ぐらいという御質問でございますが、大変お答えにくうございます。現在、労働省の計画でありますと、あと三百時間をもう四年ちょっとで減らさにゃならないわけです。三百時間をコストに換算をいたしますと一五%でございます。それから、四年間でやりますと三・数%のコストアップを毎年やるわけでございますから、毎年のペースアップをほとんどやらないで全部労働時間短縮にしないとつじつまが合わないようなことになりますので、大変難しいなと思っております。これはやはり経済の動向と企業の動向と労使の真摯な交渉によってもたらされると思いますので、何年になるかということだけはちょっとお答えしかねると思います。
#21
○高木健太郎君 ありがとうございました。
#22
○吉川春子君 日本共産党の吉川でございます。質問いたします。
 今、参考人が詳しく説明されましたこの日経連の労働問題研究委員会報告には幾つか問題があるんですが、きょうは全般的に触れる時間がありません。ここは参議院ですので、「立法府改革への具体策を」について一言すれば、報告では、中選挙区制という今日の選挙区制が選挙に金がかかり過ぎる原因であるとして、多額の政治献金を行っている企業の責任には言及しないばかりか、小選挙区制を示唆しています。加えて、参議院を中心に国会議員の定数削減を強く提案するなど、議会制民主主義を揺るがしかねない方向であり大変危険だと、資料をいただいて一読して、私はそういう印象を持ちましたので、一言申し上げます。
 さて、この報告では、賃金問題では今まで繰り返し使われてきました生産性賃金論、賃金物価悪循還論、それに加えて生産性は実質、賃金は名目、こういう形で対比させて生産性基準原理を持ち出しています。これは率直に言って、賃上げというのは一%たりともやりたくない、こういう意図に
私は読めました。そして、今お話もありました時短・賃金パッケージ論、これは労働者に対して時短か賃上げかと択一を迫るものですね。つまり労働時間の短縮というのは生産性が上がらない限り応じられない、労働強化か賃下げ、こういうものと引きかえにしか時短に応じられない、わかりやすく言えばこういうことじゃないんですか。
 しかし一方、日本経済は大企業を中心に膨大な利益を上げていることも事実です。大蔵省の八八年四月−六月期法人企業統計によりますと、全産業の経常利益は八七年回月比で二五%増、四半期の金額では過去最高になっています。また、鉄鋼では前年同月比六・五倍と飛躍的に伸びています。日銀の企業短期観測調査によっても、製造業は高度経済成長期と同じように飛躍的に伸びているというふうに指摘されておりますし、こういう状態はしばらく持続するということも予測されています。例えば三月期の上場企業の決算は、経常利益が九五%増じゃないか、製造業は二九・九%増ではないかと新聞も予測しているわけです。
 少し前に経企庁は、日本では労働成果配分を労働者がその労働に比べて十分受け取っていない、成果配分が適切に行われていない、こういう論文を出しております。今日ではそういう状況はますます高じていると言わざるを得ません。日本のいわゆる国際競争力の強さというのは低賃金、長時間労働、過密労働、こういう労働に負うところが多いわけです。私は、労働者の生活向上、それから国際的なこういう批判を浴びないためにも、正当な労働成果配分として時間短縮もしくは賃上げ、こういうことを積極的にやる、これが今日の課題ではないかと思いますが、まずその点について参考人の御意見をお伺いします。
#23
○参考人(小川泰一君) お答えをいたします。
 私ども、議会制民主主義を決して否定しているものではございませんで、私どもの立場からでございますから、いろいろ御意見もございましょうが、より効率的にと言うと大変おしかりを受けるかもしれませんが、議会制民主主義がより国民のために効率的にその機能を果たすという観点から幾つか、何年かにわたりまして御提言を申し上げているところでございます。御批判は御批判としてちょうだいをするということになろうかと存じます。
 それから、生産性基準原理は、決して一%たりともやれないということではございませんで、端的に申し上げますと、私どもが経済的に力をつけたその範囲内で配分をしようということでございまして、過去のケースをきょうは統計を持ってきておりませんけれども、生産性基準原理とその年の名目賃金のアップが大体において乖離をして、生産性基準原理で目指すものよりも多く実は賃金アップがされているわけでありますが、それと消費者物価の相関をとってみますと、かなりきれいに、乖離が大きいほど消費者物価が上がっているという現実もございますので、私どもとしては、これは一つのホームメードインフレを起こさないという目標のあるべき姿ということで提唱をいたしております。一%たりともやれないという意味ではございません。
 それから賃金か時短か、択一ではございませんで、それは企業によって産業によって適切な配分があってもよかろうかと思っております。過去については、先ほど労働省の統計を引用いたしましたように、九対一ぐらいになっております。これをもう少し労働時間の方に振り向けることも必要ではなかろうか。その辺は労使で熟慮をしていただきたいということを申し上げているところでございます。
 生産性向上の手段につきましてはさまざまございまして、主として私どもは、過去においてはやはり技術革新と設備投資に負うところが多いのではないかと思っておるところでございます。賃下げをした経験もございませんし、労働強化についてはいろいろ意見が分かれるところであろうかと思いますが、決して私どもは労働強化が生産性向上の源泉であるというふうには思っておりません。
 それから、企画庁の論文につきましては、私ども厳しく反論をさせていただきました。私ども詳しく申し上げる時間がございませんが、労働問題研究委員会報告で申し上げておりますことは、従来どおりのパターンで統計をとりますと、確かに企業の業績が上がった、あるいは人手が足りなくなった、物価が上がったというようなファクターで過去の賃上げは説明できるわけでありますけれども、私どもはこれ以上名目賃金をどんどん積み上げていくことが果たして勤労者の生活にいいぐあいにはね返るのだろうかという疑問を持っているわけであります。そこはやはり企業の責任もございます。お国の政策もございます。物価を少し優先して頑張らなくちゃいけない。したがって、経済企画庁の言うような従来のパターンの延長線上での労使交渉は、これはいかがかと思うということについて反論をさせていただいたわけでございます。
 それから、日本の国際競争力は、日本の企業における労使の大変な努力によりまして高いことは事実でございます。低賃金とおっしゃいますけれども、確かにコストとしては為替相場の影響もございましてこれは世界一、あるいはそれに近いものになっていることは事実でございます。それでやはり日本の産業は国際競争をしていかねばならぬ状況でございます。ただしその使いでになりますと必ずしも世界一ではないと思っております。それを直していくのがこれからの労使協議のやはり中心ではなかろうかと思っております。
 労働時間が長いことも御指摘のとおりでございますし、これについては改善の努力をしてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
#24
○吉川春子君 ちょっと一つ。
 企業が大変な利益を上げておりますが、それを配分する問題についてお答えがなかったように思いますので、それだけお願いしたいと思います。
#25
○参考人(小川泰一君) 失礼をいたしました。
 それについては私ども端的に申し上げております。企業の業績というのはそのときどきによって浮き沈みがございます、率直に申し上げまして。昭和六十年、六十一年あたりは大変厳しい状況になってまいりました。今日のように多少ともそれが浮かんでいるケースもございます。
 私どもといたしましては、それがずっと続くものであれば、これは毎月の賃金に配分するのもよかろうし、または労働時間短縮に向けるのもよかろうと思いますが、それがテンポラリーなものであれば、それは幸い日本の労使慣行の中に賞与というものがございますので、賞与の方で適切な配分を労使協議したらいかがかと、そんなふうに、この報告書には書いてございませんけれども、常々申しているところでございます。また、昨年の暮れの賞与が一般の賃金の伸びよりも多少伸びたようでございまして、労使関係で私どもはそのように配慮されたのではなかろうかというふうに想像をいたしております。
#26
○吉川春子君 時間ですので終わります。
#27
○三治重信君 民社党の三治ですが、この赤い表紙の十七ページ、これでちょっと現状がどうなっているかお伺いしたいんですが、時間短縮のやつで、「計画的な年休の取得促進」「年休取得率の向上」ということで、二つ同じようなものだということなんですが、そういうような日経連の指導はいいんですが、問題は、一時年休の買い上げが相当あったんですがね、これは今どの程度になっているのか。年休をとらぬと年休をとらぬだけの時間を賃金でもらえるという制度、これが非常に年休をとらぬようになった大きな原因だというふうに、まあ我々が労働省におったときにはそういうことだったんだが、最近は大企業の労働組合はそういう年休の買い上げというのは逐次廃止しているんじゃないかと思うんですけれども、中小企業なんかではまだ相当残っているんじゃないか、これが年休の取得率の向上しない大きな原因じゃないか、こう思っているんですけれども、その点はどういうふうな実情かという最近のことは余り僕は勉強していないものだから、どういうふうに
なっているんだろうかということ。
 それから「時間外労働・休日労働の削減」というのがこれが第一番になっているんですが、私は、中小企業で労働時間が長いというのは、やはり賃金との関連もあるんだけれども、時間外労働を非常に自分たちの個人的な努力による賃金増加の手段だと考えて、正規の時間中に仕事を若干でも残して残業でやっていくという風習がまだどうも残っているというふうに感ずるわけなんです。
 そこを中小企業の経営者に、ひとつ所定時間中の労働能率についてもっと注意をして、残業はしなくてもできるような体制、もちろん下請なものだから製品のできるのを規制されているものだから、できぬとどうしても残業をやってもらわぬと納品が間に合わぬということで残業をやる。しかしそれは、所定労働時間の中で若干でもサバを読んで超過労働時間を所望するという一つの労働慣行というものも、中小企業ではやはり時間管理なり労働者の意識革命と、それが賃金との関連でそういう問題を改善する必要があるんじゃないかと思うんですが、実情がどうなっているかということをちょっとお尋ねしたいと思います。
#28
○参考人(小川泰一君) 第一点でございますが、確かにかつては年休の買い上げというような慣行もございまして、これは労働省の厳しい御指摘まことにごもっともだと思いますので、逐次やっぱり企業はこういう方法は廃止していると思います。今手元にございますのは、これはある新聞社、日経産業新聞の調べた統計しか私どもの手元にございませんが、産業労働調査所というところがございます。それが六十二年に約四百社の企業を調べたところ、そのうち二十社、千人以上は四社というふうになっておるようでございます。特に大企業では私鉄関係が取り上げられております。
 私どもといたしましては、気持ちはわかりますけれども、これは何としてもやはりやめなければいけないんじゃないかと思っております。正直な話、この問題について最近は議論をいたしたこともございませんし、統計もございませんものですから、このような程度のお答えしかできません。もし今後何かございましたら、この点についてはかつての労働省の御指導のとおり余り適切でないというようなことでいきたいと思っております。
 二番目の時間外労働の問題でございますが、確かに時間外労働につきましては、一部の働く方々にとっては何かやはり一つの収入の一部ということで意識をされているという面もあることは事実でございまして、それが労使交渉によります労働時間の短縮に若干の問題を投げかけているということも私ども見聞きしているところでございます。
 実は、労働時間を全般的に短縮するに当たりまして私どもが常に考慮をいたしておりますのが三点ございまして、一点は、常に経済や企業の実態に応じてやらねばならぬだろうし、政府の御指導もさようにお願いしたいということを申し上げております。二番目は、中小企業については、体力をつけながら、余り荒療治をしないで時間短縮の方向に持っていくべきだというふうに思っております。最後は、三治先生御指摘の点でございまして、やはり勤務時間中の管理については、もし仮に適正を欠くものがあったら、そこはきちっと当たり前の能率を上げることによって、それでもなおかつどうしてもというときにだけ残業をしていただく、原則として所定内労働時間で仕事は仕上げて、真に足らざるものについては残業で処理していく、それも労使の協定を通じて処理をしていくというような方向に進むべきではなかろうかと思っております。
 そういう御指摘のような労働慣行が今残っているとは思いたくございませんけれども、もしあるようでしたら改めていくべきだと存じております。
 どうもお答えになりませんで恐縮でございます。
#29
○平野清君 本日は御苦労さまでございます。
 この二つの資料をきのうかおとといいただきまして見せていただいたんですが、率直な意見を申し上げますと、行政政策に対する批判が随所に出てまいります。
 例えばそれが根底になっているのか、この言い方の本ですね。私が編集するとすれば、一の「国際情勢と日本経済」というのはトップにあってしかるべきだと思いますけれども、二の「政治、経済、社会のあり方の検討」ということが先になっていまして、御自分たちの「構造改革の中の経営と労使関係」、「今後の課題」、その他「健全な労使関係で経済・社会の安定帯を」というような問題が後になっているんですね。消費者物価の水準、住宅の問題、若者の問題それから行政改革の問題、立法府への具体策、高齢化社会への適切な対応、老人対策、ほとんど何かこれ逆さまじゃないかというような気がするんです。そういう考え方が日経連の中にあるとすれば、ちょっと僕たちは、サラリーマン新党としては納得いかないというふうに思います。そういう基本的な考えをお聞きしたい。
 それからこの赤い方ですね。ちょっと私よく意味がわからないんですが、六ページの真ん中の下の方に、「時間外勤務事前承認制等の勤務管理の徹底がされるべきであり、また状況によっては、労働時間の短縮に見合った賃金額の修正や、増加した休日の無給化なども課題である。」ということは、労働時間を短縮したらそれに見合った賃金を下げろということなんですか。それとも、週休二日制がやってきたら休暇の分は金を払わないでいいという意味なんでしょうか。
 僕はいただいている時間がたった三分しかございませんので、基本的な考えと、その六ページの今質問申し上げたことをお答えいただければと思います。
#30
○参考人(小川泰一君) 第一点は、大変厳しい御指摘ではございますが、編集上の問題でございまして他意はございませんが、ざっくばらんに申し上げますと、論議の過程ではおっしゃるような意見もございまして、来年からは検討しなきゃならぬのじゃなかろうかと存じておるところでございます。他意はございません。編集上の問題でございますので、企業や労使関係を優先しないということではございませんので御了解をいただきたいと思います。御指摘ありがとうございました。
 二番目については、時間外勤務事前承認制というのは、これはもう企業の内幕を書いたようなことでございまして、しばしば企業には率直に申し上げましてルーズな慣行もありまして、十分監督者の承認も得ない、監督も行き届かない間に残業がずるずると行われて、それが結果として認められるというような事態も間々あることは私よく承知しておりますので、その点を改めていこうという、これは実務担当者の意見であろうかと存じます。
 「労働時間の短縮に見合った賃金額の修正や、増加した休日の無給化なども課題である。」、これは御指摘のとおりでございまして、一般的に日本の場合は月給というのが通り相場でございまして、労働時間が幾らになろうとも月給は変わらないという観念が通っておりますけれども、労働時間の問題が非常にシビアになりますと、時間当たり賃金というのをもう少し考えなくちゃいけないんではないか、生産性向上がないままに休日をふやしたり労働時間を短縮すれば、場合によっては賃金を下げるということも考慮に入れて話し合わなきゃならぬのではないかということを指摘したところでございまして、もちろんほとんどの企業は時間短縮をするときには賃金を据え置くのが習慣ではございますけれども、それが当たり前ということではないんだということを、労働時間はコストであるという観点から強調したまででございます。何が何でもこれをやれということではございませんので、御了承をいただきたいと思います。
#31
○平野清君 ちょっと一言だけ、済みません。
 今のことに関連して、極めて零細企業の方は経営者が親方的な発想を持っていらっしゃる。労働組合というのは非常にひ弱なわけなんです。今みたいなことが平気でこういう活字になると労働者には物すごいショックだと思うんですね。だから、
こういうものをきちっと活字にされるときには、もうちょっと具体的にそのことがわかるような表記にしていただかないと摩擦が起きるんじゃないか、まあ一応御忠告です。
#32
○会長(長田裕二君) 参考人、特に今の問題について御意見ありませんか。
#33
○参考人(小川泰一君) 特にございませんが、繰り返すようでございますが、労働時間はコストであるということだけは労使で十分出発点として自覚いたしませんと、企業におきます労働時間短縮は進まないということだけは最後に申し上げさしていただきます。
#34
○平野清君 ありがとうございました。
#35
○会長(長田裕二君) 以上で小川参考人に対する質疑は終わりました。
 小川参考人にはお忙しい中を御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等は今後の調査の参考にさせていただきます。小川参考人に対しまして調査会を代表して厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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