くにさくロゴ
1988/06/16 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 国民生活に関する調査会 第5号
姉妹サイト
 
1988/06/16 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 国民生活に関する調査会 第5号

#1
第114回国会 国民生活に関する調査会 第5号
平成元年六月十六日(金曜日)
   午後五時四十分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    会 長         長田 裕二君
    理 事
                岩本 政光君
                大塚清次郎君
                斎藤栄三郎君
                丸谷 金保君
                高木健太郎君
                近藤 忠孝君
                三治 重信君
    委 員
                小野 清子君
                大島 友治君
                斎藤 文夫君
                寺内 弘子君
                中曽根弘文君
                二木 秀夫君
                向山 一人君
                矢野俊比古君
                刈田 貞子君
                平野  清君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       越智 通雄君
   政府委員
       経済企画庁国民
       生活局長     末木凰太郎君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        菊池  守君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国民生活に関する調査
 (労働と余暇に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○会長(長田裕二君) ただいまから国民生活に関する調査会を開会いたします。
 国民生活に関する調査を議題といたします。
 本日は、労働と余暇について御意見をお述べ願いたいと存じます。
 意見陳述に先立ちまして、越智経済企画庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。越智経済企画庁長官。
#3
○国務大臣(越智通雄君) このたび経済企画庁長官に就任いたしました越智通雄でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 労働と余暇に関する本調査会の報告書が取りまとめられるに当たり、本問題に対する所信の一端を申し述べたいと存じます。
 皆様御承知のとおり、我が国の経済力が飛躍的な向上を遂げた今日、ますます国際的に調和のとれた形での経済発展が求められると同時に、国内的には、個人の価値観が個性化、多様化してきている中で、物の豊かさのみならず心の潤いとゆとり、生きがいのある生活を求める傾向が強まりつつあります。こうした中で、労働と余暇の問題に対する国民の関心はとみに高まってきております。昨年五月に策定した経済計画「世界とともに生きる日本」におきましても、労働時間の短縮と自由時間、余暇の充実は、豊かさを実感できる多様な国民生活を実現していくための極めて重要な政策課題の一つとして位置づけられているところであります。
 まず第一に、労働時間短縮の問題について申し上げますと、我が国の年間総労働時間は現在二千百時間程度であり、欧米諸国と比較いたしまして二百時間ないし五百時間ほど長くなっております。経済計画では、計画期間中、すなわち昭和六十三年度から平成四年度までの間において、これを千八百時間程度に向けてできる限り短縮することを目指しまして、完全週休二日制の普及を基本とし、年次有給休暇の計画的付与・取得の促進、連続休暇の普及等による休日の増加、所定外労働時間の短縮等の諸施策を推進することとされております。
 計画策定後現在までの約一年間の動きを振り返ってみますと、本年一月から国の行政機関の土曜閉庁が実施され、地方公共団体においてもその導入が進められることとなり、また、二月からは金融機関の完全週休二日制が実施されているところであります。さらに、最近においては労使の労働時間短縮の重要性への認識や取り組みにも前進が見られております。しかしながら、現実の労働時間の動向を見ますと、改正労働基準法の施行に伴い、所定内労働時間に短縮の動きが見られるものの、景気が拡大を続ける中で所定外労働時間が増加し、これまでのところ総労働時間の短縮はほとんど進んでおりません。このため、労働時間短縮のための所要の施策を強力に推進していくことが緊要の課題となっております。
 先般、経済審議会において取りまとめられました初年度のフォローアップ報告におきましては、このような認識に立って、完全週休二日制の普及徹底のため、企業経営上のノーハウの開発普及を進めるとともに、特に取引企業、同業他社等の関係で普及がおくれている中小企業については、これら企業との一斉導入等を促進する必要がある等の指摘がなされております。
 第二に、自由時間、余暇の充実につきましては、経済計画では、四季折々にある程度まとめて休暇を取得する制度・慣行の確立、自由時間増大に対応した環境の整備や各種活動の指導に当たる人材の養成、外国文化に接する機会の拡充等に向けた海外旅行の促進等の施策が掲げられております。
 また、国民生活審議会におきましても、昨年十二月以来、余暇充実のための方策について検討が進められてきており、これまでの審議の過程において、年次有給休暇の取得促進のための制度的支援策の検討も含め、余暇の問題に関する国民的議論の一層の高まりに資するため問題の提起がなされたところであります。同審議会では、今後さらに、国民各層からの幅広い意見も聞きながら審議を深めていく予定であります。
 さらに、余暇の問題は、単に労働時間の短縮を通じて自由時間の増大を図るということにとどまるものではなく、生涯教育の問題や高齢者の社会参加活動促進の問題、住宅・社会資本整備の問題、産業政策上の問題、地域開発の問題等非常に幅広い分野の問題と密接にかかわっております。経済企画庁といたしましては、従来から国民生活向上のための総合的な施策について調査検討、企画立案をするという立場から余暇の問題にかかわってまいりましたが、本年度におきましては、国民生活局に余暇・生活文化行政企画官を設置し、余暇・生活文化行政に関する施策の調査検討、立案及びその推進を図るための体制を充実させたところであります。
 経済企画庁といたしましては、今回取りまとめられる報告書も十分参考にさせていただき、関係省庁と密接な連携をとりつつ具体的な対応を進め、労働時間の短縮と余暇の充実という今日的課題の実現に積極的に貢献してまいる所存であります。
 よろしくお願い申し上げます。(拍手)
#4
○会長(長田裕二君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより労働と余暇について意見陳述を行います。
 御意見のある方は順次御発言を願います。
#5
○斎藤栄三郎君 労働時間は文化のバロメーターであります。十八世紀のイギリスでは一日十六時間という長時間労働でありました。今日では一日八時間労働が常識となっております。
 年間労働時間はドイツ、フランスが千六百時間、アメリカ、イギリスが千九百時間、日本は二千百五十時間となっており、日本の労働時間を欧米並みにすることが望ましいと思います。日本の経済運営五カ年計画では千八百時間に短縮することを目標としております。そのためには機械の装備率を高め、労働の生産性を向上することが根本であります。自由経済世界ではコストの競争であり、この競争に敗れれば労働時間の短縮は困難になります。昭和初期に労働時間を長くしてソーシャルダンピングと海外から非難された愚は繰り返してはならないと思います。労働時間を短縮し、雇用の機会をふやすことがこの際望ましいのです。
 高齢化社会において高齢者の雇用を促進することが必要であり、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で六十歳定年が明記されております。働く意思と能力のある高齢者の雇用を安定させることをねらいとしておるのです。事業者は定年を定める場合一六十歳を下回らないということに努めなければならない。六十歳を下回る企業には、公共職業安定所長が定年引き上げに関する計画書作成を命ずることができる。事業主は退職者の再就職に支援をする必要があります。企業に一定比率以上の雇用、これを法定雇用率と申しておりますが、この一定以上の雇用を義務づける。雇用比率が低い企業には罰則として納付金を課し、高率の企業に対しては奨励金などの優遇措置をとることが望ましいのであります。
 六十歳定年の企業はまだ六〇%であり、五十五歳定年の企業が四分の一を占めているのです。その人たちは年金を受けるまでの五年間を自力でつながなければなりません。六十歳定年の確立がまず必要であります。通産省では完全週休二日制になれば、家計消費支出は約三兆円拡大すると見ております。
 次に、余暇に移ります。
 労働時間が短縮すると余暇が生じます。豊かな生活の実現のためには余暇生活の充実が必要でありますが、我が国の余暇時間は諸外国に比べてかなり短いにもかかわらず、教養娯楽費の支出割合は高く、時間当たりの余暇支出が諸外国に比べて大きくなっております。教養娯楽費は日本が九・七%、アメリカは八・七%、フランス七・二%であります。これについては短時間で密度の高い余暇活動をしていることもありますが、レジャー費用が高いことも一つの原因と考えられます。
 レジャーなどの阻害要因は、施設の利用料や入場料が高いこと、いつも混雑していることが挙げられます。それは利用日が集中しているためと考えられます。労働時間の短縮を含む勤務時間の弾力化、休日の増加は、レジャー施設利用の集中を緩和し、施設の経営効率を高めることにより利用料の引き下げもまたもたらされます。人々がゆとりのあるレジャーを楽しむことに資するものと考えられるのであります。また、家族一緒に余暇を充実させるためには学校の休日のあり方なども重要であると思います。
 さらに、ゆとりのあるレジャー実現のためには各種移動費用の低廉化が望ましいのです。そのため、各種運賃の認可に際しては生産性向上のための努力が必要であり、需要の少ない時期などに割引を行うなどの割引制度の導入、拡充も望ましいと思います。航空輸送については競争条件を整備すること、国際航空運賃については一層の方向別格差の是正措置が望まれるのであります。
 余暇とは人間の自由な時間であり、自由な創造の時間であります。フランスではバカンス法で年間三十日の休暇を定め、西ドイツでは連続休暇法で十二日の連続休暇を定めております。イギリスの休日は二十三日、アメリカは十九日でありますが、日本は年休九日にすぎません。日本では余暇促進基本法を制定すべく、国民生活審議会余暇・生活文化委員会で検討中であります。週休二日制は二八%、隔週二日制を入れても七八%であり、当面週休二日制を完全実施することと、連続休暇が取り入れられることが望ましいと考えます。
 従業員三十人以上の企業で日給制を採用しているのが二七%、労働者数では一二であります。日給制の人たちは休暇がふえれば収入が減るのであり、この面についても十分な考慮が望ましいと考えます。
 余暇を学習権と結びつけることが望ましいと思います。第四回ユネスコ国際成人教育会議の宣言に、学習権とは読み書きの権利であり、想像し、つくり出す権利であり、自分自身の世界を読み取り、歴史をつくる権利であり、個人的、集団的技能を伸ばす権利であるとしております。余暇を家庭でのごろ寝で過ごすのではなく、想像し、歴史をつくり出すために有効に活用すべきであると考えます。
 額に汗して苦痛に耐える労働をレイバーと言い、精神的にも喜びのある労働をワークと言いますが、日本では昔から働くとは、はた、すなわち隣近所の人を楽にするという意味であり、第三者に奉仕する喜びであります。労働時間が短縮した場合、自分の休養に充てるとともに、ボランティア活動などを通じて社会奉仕に余暇を活用することが望ましいと考えます。
 余暇がふえるのに対応して、借地農園により自然に親しむ人々がふえているので、農地法の特例を設け、農地の賃貸借が認められるようになるのは喜ぶべきことだと考えます。国民のすべてが自分の趣味、信条に基づいて余暇を適切に使用すべきであり、見るレジャーからやるレジャーに転換することがこの際望ましいと思います。
 中国の言葉に鼓腹撃壌というのがございます。これは食事を十分にとり、満腹で、腹いっぱいで腹鼓を打つということであります。労働時間を短縮しても生活が保障され、自分の趣味、才能を伸ばすために余暇を十分活用できるということが理想の姿であると考えます。
 終わります。
#6
○丸谷金保君 今日の社会経済情勢を踏まえますと、自由時間、余暇は今後増加することが予想されますし、また増加させなければならないと思います。我が党は昨年九月に、「二十一世紀への社会経済転換計画」と題して、来るべき二十一世紀に向けて我が党のとるべき内政、外交の基本方針を広く国民に提唱したところでありますが、その中でも国民の余暇を豊かな社会、豊かな国民生活を実現する一つの大きな条件として位置づけているところであります。
 私は、労働と余暇の問題について国民生活の向上という観点から意見を述べたいと思いますが、最初に余暇問題に深いかかわりのある労働時間の問題について触れ、その後で、働く者の余暇生活をどのように充実していくかについて申し述べたいと思います。
 まず、労働時間についてであります。
 我が国の年間総労働時間はアメリカより二百四十時間程度も長く、西ドイツと比べれば五百時間以上、実に三カ月分相当も長いため、欧米諸国からは働き中毒患者の国とまで批判されています。国民は心の豊かさやゆとりある生活を物の豊かさ以上に望んでおり、そのためには所得水準、特に可処分所得の向上が不可欠であるとともに、時間的なゆとりが必要であります。働くことを自己目的とせず、働くことの生きがいと同時に、余暇や文化・スポーツ活動などを有意義にしていく手段として労働をとらえ直す必要があります。また、労働時間短縮は、ワークシェアリングによる雇用の確保と週休二日制の実施で約五兆円の内需が喚起されると言われるように、内需拡大にとっても重要であります。
 このような観点に立って、以下具体的な取り組み方について述べてみたいと思います。
 まず第一に、完全週休二日制の確立についてであります。
 当面は、改正労働基準法の積極的な運用、官公庁の土曜閉庁の推進、中小企業への税財政上の援助などにより条件整備を進めつつ、三年程度で確実に週休二日制、週四十時間制を実現させるべきだと考えます。
 次に、年次有給休暇の増加などについてであります。
 欧米諸国並みの年次有給休暇を実現するため、まず最低限を三労働週に引き上げることが必要です。年休取得資格についても、ILO条約の要請に沿って改善することが望まれます。また、取得率を引き上げるため、休暇を消化しなければ労使ともに罰せられるなどの有給休暇消化促進法の制定を図るべきです。さらに、五月一日を祝日とし、ゴールデンウィークの大型連休化を図ることも必要であります。
 次に、時間外・休日労働の規制についてであります。
 時間外労働については男女ともに年間百五十時間、休日労働については四週間に一回に制限するべきです。一方、時間外及び深夜労働の賃金割り増し率を五〇%に、また休日労働については一〇〇%に引き上げるべきではないかと思います。
 次に、有給教育休暇制度の確立についてであります。
 平均寿命が延びる一方、社会が急激に変化している今日、あすの社会と人生を切り開いていくために、だれでも、いつでも、どこでも学べる生涯学習体制の確立が急がれます。とりわけ勤労者については、一、一般教育、二、職業訓練、三、労働組合教育を有給で保障しようとするILO百四十号条約(有給教育休暇に関する条約)の趣旨に沿って、有給教育休暇制度を確立するとともに長期研修休暇の普及促進を図ることが重要であります。
 最後に、中小企業その他の特別対策についてであります。
 下請中小企業等については、休日の確保や時間外労働の抑制ができるよう発注企業等に対し強力な行政指導を進めるとともに、完全週休二日制の導入を円滑に進められるよう助成措置を講じるべきたと考えます
 また、トラック運送業者の過長な労働時間を改善するため、関係国内法を整備するとともに、強力な行政指導を進めることが必要であります。
 さらに、パートタイマーや派遣労働者など不安定雇用労働者についても、しわ寄せや差別的な取り扱いを受けることのないよう各種の規制を講じるべきであります。
 次に、余暇問題について私の意見を申し述べたいと思います。
 余暇はあすの生活へ向けての活力の源であり、同時に、それ自身、自己を取り戻し、自己を充実させる機会でもあることを十分認識する必要があります。単に労働の余りとしてテレビやごろ寝に費やすべきものでもなく、逆に現実逃避のためのせつな的時間つぶしの機会でもありません。そのため国、地方自治体も、国民が余暇を十分にかつ有効に活用し得るようそのための環境整備に努めていかなければなりません。
 そこで、以下、余暇政策を推進する上で特に重要と思われる事項について指摘してみたいと思います。
 まず第一は、勤労者、特に中高年勤労者を対象とした余暇政策の推進の必要性であります。
 現在四十代以上の中高年は、我が国の高度経済成長を支えた働きづくめ世代であって、働くこと以外何をしたらよいかわからない世代であります。人生八十年時代の到来、高齢化社会の進展を考えると、これら中高年世代の人々がこれからの長い人生を楽しくかつ充実して過ごせるよう余暇に関連した諸施策を重点的に行っていかなければなりません。
 第二は、文化、スポーツ、生涯学習活動を支援するための施設等諸環境整備の必要性であります。
 文化活動は日常生活の中で埋没しがちな自己を取り戻すために欠かせない営みであり、また、スポーツ活動は健康の維持増進のためにも欠くことができません。今日、カルチャーセンター、アスレチッククラブ等民間による文化・スポーツ分野への進出には著しいものがあります。これはこれで結構だとは思いますが、同時に、地域に根差した身近で手軽な公民館、市民体育館等の公的施設についてもその整備に努めていかなければなりません。そのため、思い切った文化・スポーツ予算の増額を行うとともに、文化・スポーツ施設の中長期整備計画を策定し、着実な整備に努めていく必要があります。
 また、人生八十年時代を迎え、生涯学習の重要性も一層高まってきております。そのため、だれでも、いつでも、どこでも学べる生涯学習体制の確立が急務であります。学校教育についても、ゆとりある個性重視の学校教育を実現するため学校五日制について検討するほか、余暇教育、生活教育など各人の人生設計に対応し得る教育機会の提供も今後考えていく必要があります。
 第三は、公的リゾート事業の推進であります。
 政府主導の計画、整備によりリゾート都市ラングドック・ルシオンを建設したフランスとは異なり、現在、我が国では総合保養地域整備法による民間活力重視のリゾート開発が進められておりますが、自然環境の保全と行き過ぎた商業主義の抑制のため、国や地方自治体が中心となったリゾート開発を今後考えるべきであります。
 第四に、地域社会活動の促進という点からも余暇政策を考えていく必要があります。
 社会の高齢化、都市化、核家族化が進展し、地域には寝たきり老人問題、環境問題、消費者問題、子供の非行の問題等が顕在化しております。その一方で地域住民の結びつきは次第に希薄化してきており、行政のみではこれら諸問題に十分対応し切れないという事態を招いております。こうした状況の中、社会の第一線で働いている勤労者も、余暇時間、自由時間を活用して地域の問題に積極的に取り組んでいくことが今日求められております。そのためには、国、自治体としてはどのような対応をしていけばよいのか、今後真剣に考えていかなければなりません。
 最後は、余暇政策を推進する上での組織、制度の見直しの必要性であります。
 現在、余暇に関連する諸施策は各省庁ばらばらに進められております。これら諸施策を有機的、合理的に推進していくためには、中長期的な観点から総合的に展開し得る余暇行政体制の整備、計画制度の導入が検討される必要があります。
 この調査会でお呼びした参考人のお話にもありましたように、最近、国民の余暇をレジャー権といった国民の権利としてとらえようという動きもあるようであります。権利意識にまで高まるのか否かは今後の推移を見なければわかりませんが、少なくとも、ますます重要な問題となっている国民の余暇に対し、行政の推進体制をどのように整備していくかを検討していくことは必要であると言えましょう。
 以上で意見表明を終わります。
#7
○高木健太郎君 労働と余暇に関する意見としては、この調査報告書の案にあることでほとんど尽きていると思いますので、これに関して私の意見を申し上げることにいたします。
 この調査報告書案は大変立派にできておりますが、その発表の方法、いつ、どこで、どのような形で、そしてその後の利用法はどのようにするかということがまず大事だと思います。また、特に各講師からいただいた図表は非常に貴重であり、その利用度は大きいと考えられますので、発表の体裁等もここで考えておく必要があろうかと存じます。
 この報告書案にあります。その裏を考えてみますと、やや問題が多いのではないかと思いますので、その点について申し上げます。
 労働時間は少なく、また余暇は多く、その利用、活用ということはもちろんこの報告書案に尽きるわけでございますけれども、日本人の労働時間が多い、そしてそれがなかなか改められないというその背景の分析に欠けるところがあるのではないかと考えます。
 第一は、日本人の意識改革が必要であります。日本人は働くことに意義を感じておるということがここに盛られております。また余暇をいかに利用するか、いろいろの試案がここに述べられておりますが、私はまず余暇の利用についての科学的あるいは心理的の基礎研究が大切だと思います。どのような方法が疲労をとり、またあすの活力を生むかということも大事であろうと思います。例えば、左の腕を余計に使って左の腕が疲れた場合に、その左の腕を休めることは一つの休息の方法でありますけれども、右の腕を使うことがかえって左の腕の休息になるという科学的の成績がございます。このようなことを考えると、どのような労働のときにどのような余暇をとり、それを活用するかということがまず最初に考えられなければならないのでありまして、何にでもある一定の余暇のとり方が有効であるとは言えないと思います。
 意識改革として重要であるのは、労働があって余暇がある、いわゆる労働による余った時間というものを余暇というふうに考えられるのでありますが、私は余暇ではなくて要暇という言葉を用いてはどうかと考えております。必要な暇であると。すなわち、暇というものは必要であって、それの余りがかえって労働である、これくらいの発想転換がなければ日本人の余暇に対する考え方は改まらないのではないか、このことがまず大事だと思います。
 第二は、労働時間が多い、そして余暇が少ないという一つの原因としまして、住宅が遠隔にあるということであります。すなわち、それは土地が高騰しておりまして、住宅もまた非常に高い。その土地の高騰を抑え、住宅の獲得が容易である、あるいはまた高層化をして勤務地に近いというような環境をつくるべきでありましょうし、交通機関の整理も必要であると思います。
 第三には、住宅そのものが狭くてそこでは安息がとりにくいということも原因でありましょう。また、貧しい住宅環境でありまして、住宅のそばに適当な遊び場、適当な休息をとる場所がない、緑も少ない、そういうことも有効な余暇がとれない一つの原因じゃないかと思います。
 第四番目に、日本人の働き過ぎ、そしてまた貯蓄高が大きいということが言われておりますが、それは老後の生活に不安があって、働いて貯蓄をしておかざるを得ないということも原因であろうかと思います。そのためには老人福祉政策の推進、年金の増額あるいは早期支給、あるいは保障制度の充実、医療体制の整備、これがまず先決であろうと考えます。それでなければいかに労働時間を減らそうとしてもそれは減らし得なくなる可能性が大きいと思います。
 第五番目には、教育費、食料費による可処分所得あるいは所得に占める割合が大きいということでありまして、十分以上に働かなければこれらを満たすことはできないということでないかと思います。また、冠婚葬祭が非常に多くて、そのための費用もばかにならないと考えるわけでございまして、その解決には、労働時間短縮と同時にこれらの問題を解決しておくことがまず大事だと思いますので、そのことをつけ加えさしていただいたわけでございます。
 最後に、これは私自身の考えで、感想でございますけれども、現在の理想としては千八百時間ということでございますが、私がこの第百十四国会において参議院の議員として働いておる時間を計算してみますと七百十二時間になります。米国は一年じゅう開会されておると聞いております。この点を国民にどのように説明するかということにつきましては、実は非常に困っているわけでございまして、一部の議員はしかしながら極めて多忙でありますが、一般の議員は私同様かなり少ない労働時間ではないかと思いまして内心じくじたるものがあるのでございます。国会運営の問題としてまずこれも反省しておく必要があるのではないかと考えております。
 以上をもって私の報告を終わります。
#8
○近藤忠孝君 労働と余暇について意見表明を行います。
 人間が人間らしく生活する上で余暇は必要不可欠な時間であります。勤労者の毎日の生活時間を分析してみますと、労働時間がまずあります。そして労働によって失った労働能力を再生し、あすへの活力を回復するのに必要な食事、睡眠、排せつ、疲労回復などの生理的生活時間や、炊事、洗濯、掃除、育児、教育、冠婚葬祭などの家事的生活時間という、いわば勤労者とその家族の生活のために無条件かつ絶対的に必要な生活時間があります。これらを十分確保した上で、なおかつ勤労者自身の本来の要求を実現する意味での真の自由時間があるわけであります。
 それは趣味、スポーツ、学習、娯楽、芸術鑑賞、社交、その他の社会的活動など自己の個性や能力を自主的全面的に発達させる主体的活動を行うことのできる時間であります。余暇は、勤労者が労働から解放されて、自分自身や家族の精神的肉体的発達や社会的文化的活動に参加するために自由に使える生活時間と言えるでありましょう。
 日本の年間の自由時間は、一九八五年時点の政府資料によると、労働者の年間総生活時間八千七百六十時間から年間総労働時間、通勤時間、生活必需時間、家事時間の二分の一を差し引いた残りの時間として見て、フランスより八百五十四時間、西ドイツより八百三十八時間、イギリスより五百四十五時間、アメリカより四百二十六時間もそれぞれ少なくなっています。我が国の労働者の自由時間は年間一千八百五十八時間、日曜、休日を含めて一日当たりにして約五・一時間であり、一九八六年の総務庁社会生活基本調査報告によれば、十五歳以上の者が一日平均、学習、趣味、スポーツに費やす時間はわずか五十三分にすぎません。しかも、一世帯の一か月平均の教養娯楽費は、消費支出全体の九%前後、約六千五百円程度と極めて低いのが実情であります。
 このように諸外国と比べても格段に低水準の余暇の実態は、我が国の労働者の低賃金、長時間労働と不可分の関係にあります。
 我が国の賃金水準は、異常円高のもとで名目賃金が欧米並みになったなどと宣伝されていますが、実質賃金が極めて低水準である実態には何の変わりもありません。労働省資料により一九八六年度の実労働時間当たり賃金を購買力平価で比べた場合、日本を一とすると、アメリカ一・八二、西ドイツ一・五一、残業も含めた年間賃金総額で見ても、アメリカ一・六三、西ドイツ一・一六などと、我が国の賃金水準は先進資本主義国の中で最低の水準であります。
 また、一九八六年の資料では、日本は年間総労働時間が二千百五十時間と欧米より格段に長く、フランスより五百七時間、西ドイツより四百九十五時間、アメリカより二百二十五時間も多く働いております。所定外労働時間も長く、例えば西ドイツの二・六倍となっております。業種別、規模別の格差も大きく、特に大企業と比べて中小零細企業ほど労働時間は長い傾向にあり、小規模な企業などでは賃金が低いので生活費を確保するため残業が恒常化しているのが実情であります。
 年次有給休暇の取得率も低下傾向にあり、労働省資料によると、一九八七年の労働者一人平均の年次有給休暇の付与日数は、三十から九十九人規模の企業で十二・六日、千人以上の規模の企業で十七・一日などとなっていますが、取得日数はそれぞれ六・一日、八・八日、取得率は四八%、五二%などとなっています。ちなみに、欧米諸国では日本の二倍から三倍の年次有給休暇が取られています。
 こうした我が国の低賃金、長時間、過密労働の強化の結果、一九八五年のNHK国民生活時間調査では、労働者の睡眠、休養、自由時間などが減少傾向にあり、労働省調査でも、調査対象者の六七%が通常の仕事で疲れを訴え、七二%が神経の疲れを訴えています。翌朝に疲れを持ち越すケースは五一%に達し、労働時間が長くなるほど増加する傾向にあります。また、通勤時間も長くなる傾向にあり、高・狭・遠の住宅難や劣悪な生活環境も労働者の暮らしと健康に深刻な影響を与えています。
 こうした現実を反映し、今国民の間に豊かな生活への願望が高まり、総務庁調査でも、生活の中心をレジャー、余暇生活に置く傾向が増加しています。また、最近の総理府世論調査でも、余暇がもっと欲しいと望む国民は三年前の調査より八・二%ふえて四八・七%に増加しているなどもその端的なあらわれであります。高まりつつある国民のこの要求を真に実りあるものにしていくためには、国際的非難の的にまでなっている我が国の労働者の低賃金、長時間、過密労働の実態を抜本的に是正し、充実した余暇生活が可能となる前提条件を整備しなければなりません。具体的には、賃金水準の大幅引き上げ、労働時間の思い切った短縮、自由時間を使った社会的文化的活動の発展に必要な社会的基盤、各種公共施設の本格的な整備、社会教育関係職員等の増員、配置などが不可欠であります。
 以下、その概略を具体的に述べます。
 第一には、労働者の生活向上はもとより、雇用確保、真の内需拡大のためにも労働基準法を改正し、賃下げなしの一労働日八時間、週休二日、週四十時間労働制を直ちに実施するとともに、時間外労働の規制、年次有給休暇の充実などを図る必要があります。この点で、労働時間の弾力化の名による変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制の導入は、一日八時間労働制を崩し、業務の都合による長時間労働や労働強化を促進し、派遣労働者、パート労働者など不安定雇用を拡大するおそれが強い問題であります。
 また、日経連などが主張するいわゆる賃金と労働時間短縮とのパッケージ論は、コストインフレ論の立場を強調しつつ、結局は賃上げも労働時間短縮もともに抑制するまやかしの議論にほかなりません。円高への対応を口実にした最近の過酷な人減らし合理化による労働強化は、労働者の健康をむしばみ、過労死や労働災害の増大となってあらわれています。過密労働の法的規制の実施により労働者の健康を守るべきであります。
 第二には、低賃金の仕組みを是正し、大幅賃上げを実現する必要があります。現行の最低賃金制は、労働大臣、労働基準局長が職権で業種、地域ごとに最低賃金を決めていますが、これを抜本的に改め、労使の代表の対等の交渉を基本として決めた最低賃金に法的拘束力を持たせ、その額を下回る賃金を禁止する全国一律最低賃金制を確立すべきであります。また、賃金水準引き下げのてことなっている不安定雇用、男女差別を廃止すべきであります。パート労働者に対しすべての労働関係法を厳正に適用するとともに、必要な法改正を行い、パート労働者に対する一般労働者との不当な格差をなくすことが重要であります。同時に、人入れ稼業の現代版、労働者派遣事業の公認と拡大の方向を根本的に是正し、これを廃止すべきであります。さらに、職場に自由と民主主義を確立し、男女差別を撤廃することが必要であります。
 第三には、安くて質のよい公共住宅を大量に建設し、住宅難を解消するとともに、生活基盤関連の各種公共施設を整備充実し、生活環境の抜本的な改善を図る必要があります。そのためには、大企業、大不動産業者などによる土地投機や、大銀行、大生命保険会社などによる巨額の土地融資を厳しく規制し、国土利用計画法に基づく規制区域の指定、土地取引の許可制などにより地価を引き下げるとともに、持ち家中心の住宅政策を根本的に改め、安くて住みよい公共住宅を大量に建設、供給することが必要であります。
 第四には、増加する自由時間を有効に使った国民各層の社会的文化的活動を多面的に発展させるため、国民の権利としての社会教育の公共性を重視し、国と地方自治体が責任を持って図書館、公民館、博物館、児童館、各種体育・スポーツ施設などの社会教育施設を増設し、設備を充実させる必要があります。また、社会教育関係職員を増員し、専門職としての身分の保障や待遇改善を図り、自主的な研修なども十分保障して国民の要請にこたえられるようにすることが大切であります。このため、研修及び余暇生活の充実のための研究施設なども整備する必要があります。
 また、大企業や大観光資本のもうけ本位のリゾート開発などにより大切な自然的文化的環境の破壊や地域社会の荒廃が進むのを防止し、国土の美しい自然環境を保全しながら、真に国民の保健・休養の要求にこたえられるよう、安くて使いやすい公共の宿泊施設その他の保健・休養施設を各地に計画的に整備していく必要があります。
 以上の施策の総合的計画的な実施により、労働者を初めとする国民各層の余暇生活の一層の充実を図るべきであり、これらが本当に実現されるためには、従来から我が党が主張しているように、大企業に対する民主的規制の強化がより確実な保障となることを指摘し、発言を終わります。
#9
○三治重信君 労働と余暇の意見陳述をいたします。
 まず最初に、労働時間について。
 年間総労働時間を抑制することが必要であると思います。それは超過労働時間を規制することになります。今、労働時間は労使の自由契約になっておりますけれども、超過労働時間の制限が強く望まれております。したがって年間総超過時間を規制することが望ましいと思います。さらには産別労使協定とか地域の労使間協定等が行われることも望ましいと思います。
 次に、年次有給休暇の完全消化でございます。有給休暇を自由にとることがまだ中小企業では十分できておりません。年次有給休暇は権利であるから、まずこれから実行をすべきであります。実際は年次有給休暇が半分くらいしかとられておらない実情と聞いております。ましてや余った年休を買い取る習慣がいまだ残っておるのではないでしょうか。
 次に、週休二日制は職場全体が二日休むということではありません。労働者が週に二日ずつ休むことで、職場は一週に一日または無休であってもよいのであります。その例は交通機関は一日も休むわけにいきません。病院等においてもしかりであります。したがって、学校に通う子供を持つ家庭と子供のない家庭とは土、日の休みのとり方を変えていくということにして、スポーツ施設やレジャー施設、リゾート施設等を土、日だけに固まって利用されるということからできる限りほかの週休日にも利用される慣習をつくる、こういうことによって施設の利用効率を上げることができるのじゃないかと思います。
 次に、一日の労働時間を八時間以下とするということになりますと、第二の職場をアルバイト的に利用する、こういうことの現象が起きます。もとの勤務がおろそかになりかねない現象だと思います。アメリカやヨーロッパでは、週三十六時間制という短時間労働になりますと一人が二つ以上の職場をかけ持ちして所得を稼ぐ、こういうような現象が別にあらわれておるようでございますので、このような労働体制というものは、労働時間短縮というひとりこのことはできても一人当たりの総労働時間が規制から逃れる、こういうことのないように配慮する必要があろうかと思います。
 次に、短時間労働、アルバイトという問題について述べてみます。この短時間労働、アルバイトということは第三次産業、特にサービス産業、外食産業の発展によって需要が急増をしております。学生あるいは研修中の者が副収入を得るためのアルバイトをやる、あるいは主婦が家事労働の余りをアルバイトに出る。短時間労働の機会が増加すれば人と社会もともに利益の増進となっております。種々の形のものが現に続々と出ておりまして、人それぞれ時間を有効に利用することが考えられております。新しい職業としてはコンパニオンとか通訳とか家事手伝い、ベビーシッター等であります。
 そういう労働時間に対して余暇の問題を考えてみますると、余暇は労働の休息に利用されるべきであります。
 つい最近までは賃金労働者、雇用者は八時間労働制、週四十八時間ということで週一日休暇制度ということが本当に労働者の長い願望であったわけでありまして、一日を八時間で三等分して、八時間睡眠とすれば八時間自由時間、食事や通勤時間とそのほか余暇が得られる、この中に余暇、休息を見つける、こういうことでございました。家庭内の休息関係の整備もこういうことであるから、ただ遊ぶということじゃなくて、家庭の中の整理整とん、一家団らんの環境整備ということもやはり十分注意をする必要があろうと思います。
 次に、余暇旅行について申し上げます。家族そろって余暇旅行をすることが望ましいのでありまして、日本では現在一泊から一週間程度の旅行が考えられます。海外旅行も安く便利なものとなっております。ところが、最近は夫婦でなくて一人のみの旅行、殊に女性だけの旅行というものが多くなりつつあるが、これは女性解放といってもちょっと考えものだ、こういうふうに思います。老人の旅行も非常に花盛りでありますけれども、やはり集団的なツアーのために老人が忙し過ぎる、こういうことも現在の状況じゃないかと思って、節度が必要じゃないかと思っております。
 次に、セカンドハウスのことについて申し上げますが、大都会では自宅がどうしても狭い。郊外やリゾート地にセカンドハウスをつくって、週末や月に何回か休養に出かけるという必要が生じます。これは、特に大都会のサラリーマンにこのセカンドハウス制度というものが私は必要ではないかと思っております。
 次に、別荘の余暇生活でございますが、リッチな気持ちを持たすために別荘分譲の不動産屋の広告に乗りやすい。また、事実それが盛んでありますけれども、しかしながら実際的には、便利なホテルやリゾートの休息施設が便利にできれば、各人別な別荘を持つということは余り有効ではない、こういうふうに思う次第であります。
 次に、老人と余暇との関係でございまして、定年退職者、殊に六十歳から六十四歳というような者は、ボランティアを一つ二つ持って、人生の余暇の生きがいを持たすことが必要であります。殊にひとり暮らしの老人の世話や家の掃除、話し相手という作業が必要となってまいります。したがって、一度問題になりましたが、ボランティア手帳というようなものを公共機関で発行して、自分がボランティアをやる場合には、この通帳制度でまずプラスのボランティアをやる。そうしてこれを全国的に、どこへ行っても自分がボランティアを受ける必要のときにはその手帳によってボランティアが受けられる、こういうふうな、同じ定年退職者でも働ける場合にはボランティアの手帳で働いて年寄りの世話をやり、そうして自分が必要なときにはその手帳で受けられる、こういうふうなことが私は非常に必要じゃないかと思っております。
 そうして、老人の余暇として、むしろ老人の余暇活動としては、老人が働いて賃金を取る機会を得ることが望ましい。老人職業紹介所やアルバイトの紹介とか、またそういうアルバイトをやるために新しい研修制度をつくるとよい。造園作業、庭木の手入れとか、ベビーシッターとか、留守番とか便利屋とか、障子や戸の修理、家の修理等の研修制度というようなものをつくって、余暇活動だけでなくて、やはり余暇を有効に活用するための老人労働の特別なアルバイトの機会を得さしめる、こういうことを総合的にやられることが必要ではないか、かように思っております。
 以上であります。
#10
○平野清君 一、初めに。
 戦後の経済復興という至上命令達成のために、国民、特にサラリーマンは皆、身を粉にして働き続けてきました。家庭生活を初め、自由というものを捨てて家畜ならぬ社畜のような状態が長い間続きました。このため、我が国は史上まれな復興をなし遂げ、GNP世界第二位の地位を築き上げました。国の企業も大きくなりましたが、サラリーマンは置き去りのままでした。貿易摩擦という国際的問題を生ずるに至りました。各国からは日本人は働き過ぎという批判が一斉に噴出いたしました。確かに、我が国の就業者の一人当たりの年間総労働時間は、昭和三十五年で二千四百三十二時間、五十年になっても二千六十四時間で、なお二千時間の大台を割っていません。しかもその間、西ドイツ、フランスなどはさらに時短を進めた結果、我が国との労働時間格差は拡大する一方でありました。
 これらの状況から、六十三年四月にはこれまでの法定四十八時間労働を四十時間に短縮した規定を盛り込んだ改正労働基準法が施行されたり、同年を初年度とする新経済五カ年計画も具体的な労働時間短縮目標の設定を行うなど、時短に積極的に取り組み始めてまいりました。各官庁の土曜閉庁、金融機関の完全週休二日制の実施など、幾つかの実効も上がってきています。
 しかし、ここで問題として二、三指摘しておきたいことがあります。
 第一は、国民の貯蓄高などと同様、この時短も外国からの圧力に端を発しているということであります。日本国民みずからが従来の勤労観を全面的に洗い直して新しい労働と余暇観をつくり上げていくことがまず基本でなければならないと考えます。
 第二は、波及効果が大きいからといって官公庁のみが余りにも急進的に実施すれば、一般民間労働者との間に違和感が拡大してしまい、結果的には納税意欲にも影響が出るかもしれません。
 第三に、大企業の時短は歓迎されるとしても、中小零細企業対策を確実に実施しなければ、労働者間の不公平をさらに拡大してしまうでありましょう。また、この時短の問題は、単に雇用労働者のみの問題ではなく、自営業者、農民、また主婦をも対象にした全国民的なものでなければならないと思います。
 第四に、余暇時代の到来と聞くと、地方自治体や大企業が先を争ってリゾート地区開発などに狂奔しているのが現状であります。労働者の余暇に対するニーズやそれに投じ得る財力など厳密に分析してかからないと、それらは共倒れを起こし、何のための地域開発かわからなくなってしまうでありましょう。初期投資が莫大にかかるわけですから、オフシーズン対策が最も大切だと考えます。
 以上の点をまず指摘しておいて、労働と余暇についてさらに分析を進めていきたいと思います。
 二、余暇問題の進め方。
 限られた時間なので、労働と余暇政策の進め方について項目を列挙していきたいと思います。
 イ、余暇拡大の前提条件。
 時短、余暇問題への関心が急速に高まった理由の一つに外圧があると前に申し上げましたが、その裏返しとして内需拡大の問題があります。国民の余暇利用が盛んになれば確かにそれだけ内需は拡大するでありましょう。各地で大企業がリゾート、レクリエーション産業に参入してきていることを見てもこの点がよくわかります。しかし、その前にしっかりと確認しておかなければならないことが二点あります。
 第一は、労働あっての余暇という点であります。一年三百六十五日すべて余暇であったとしたら、もはやそれは余暇ではありますまい。青壮老ともにきちんと働く場所が確保され、働きがいのある仕事があり、それをきちっとやりこなすことによって余暇のありがたさがわかるというものではなかろうかと思います。この点、働くことが人類の苦痛とする西洋思想には、我々はくみしません。
 第二に、余暇の充実には今よりも賃金がアップしなければ、幾ら余暇利用施設が整備されても、労働者が豊かさを感ずることはできません。
 第三に、国や地方自治体、加えて企業や労組が積極的に余暇利用施設の充実を図っていかなければなりません。そのためには、税収入が伴わなければならないし、企業はある程度の安定成長を続けていかなければなりません。こうして見てまいりますと、第一項の労働者の収入アップと矛盾するかのような面が出てまいります。
 そこで第四項として、現状のような企業が富んで社員が貧しいという利益分配をまず合理化することが重要になってこようと思います。また、労働者はそれに対応する勤労意欲、収益アップに貢献する姿勢が一層求められてくると思います。
 ロ、賃金と余暇の関係。
 労働時間を短縮する方法では、法定労働時間がどんなに減っても残業がふえれば実質は変わらなくなってしまいます。特に日本の労働者は、長い間所定の労働時間賃金だけでは食べていけない仕組みにならされています。企業によっては朝一時間早出、夜一時間ないし二時間残業ということを前提に勤務表がつくられている場合すらあります。これを解消しようとすれば、定員の見直しが必要になってまいります。人員がふえればそれだけ企業の収益率は悪くなります。この点では経営者は一層の省力化が必要でありましょうし、各セクションの定員の見直し、パートの合理的な活用が必要になってまいります。
 さらに注目したいのは、時短と賃金の関係であります。調査会が参考人として招いた日経連の人が持参した「労働時間問題専門委員会報告」には、状況によっては、労働時間の短縮に見合った賃金額の修正や増加した休日の無給化などの課題があると記述されていました。この点をただしたところ、時短は当然コストアップにつながるのだから、賃下げは当然考えなければならないという意味の答えが返ってまいりました。労働者としては聞き捨てならない重要な点を持っております。せっかく時短が進み、週休二日制などが実施されても、経営者側がこのようなことを実行したらゆとりある豊かな余暇など望むべくもありません。
 労働者への利益分配率の極めて低い我が国にとって、さらに右のような事例が行われれば労使間の摩擦が大きくなり、ひいては余暇拡大に歯どめがかかってしまうことは十分予想されます。このようなことは絶対に阻止しなければならないと思います。余暇がふえても収入が減少すればせっかくの余暇や週休を別の仕事すなわちアルバイト等に振り向けないとは限らないと思います。これではせっかくの余暇拡大の意味がなくなってしまうでありましょう。
 時短、週休二日制の実施に当たっては、中小企業、零細企業に対して税制面などで十分な配慮が必要でありましょう。時短や週休制などを実施しないところは、これからは優秀な人材が集まらないから当然努力するはずだといった安易な考え方ではこの問題は解決しないと思います。さらに大企業と下請との関係を改善しなければ余暇拡大は絵にかいたもちになってしまいます。なぜなら中小零細企業の方が圧倒的に多いからです。
 以上、見てきたとおり、一口に余暇拡大、週休二日制、有給休暇の完全消化といっても、いざ定着させるとなると容易なことでないことがわかってまいります。
 次に、項目的に申し上げます。
 一、余暇利用促進年の設定。
 時短、週休二日制を含め余暇利用促進をPRし、国民のコンセンサスを得るための促進年、例えば一九九〇年をそれに当て、二十一世紀の労働と余暇の理想確立を期す。
 二、時短と週休二日制促進スローガン。
 労働と余暇に対する意識を若いうちから育てる必要があります。学校教育などでも取り上げるべきだし、若年労働者に対する国や企業等の教育、啓蒙も重要な課題となってまいります。労働省や経企庁が音頭をとって、余暇利用促進のスローガンを国民から公募してはどうでしょうか。
 三、労働と余暇行政の一元化。
 労働と余暇に関して各省の間で連絡機関が設けられていますが、経企庁か労働省に余暇利用を促進する課を設け行政の一本化を図るべきだと思います。
 四、余暇利用サービス運賃の創設。
 JRは現在、フルムーンパスを発行、夫婦合算年齢が一定以上なら相当の割引をしており、これによって収入も高めています。この際、余暇利用家族優待運賃制などをとってはどうかと思います。年の利用回数を制限するとともに、季節によっては割引率を変更することも一つの手かもしれません。
 既に持ち時間が尽きましたので、あとは項目を列挙するにとどめます。
 一、レクリエーション指導者の養成。
 二、小中高校の週休二日制の早期実施。
 三、高校・大学の夜間開放講座。
 四、土地・住宅対策の推進。
 五、病欠の有給化とドック入りの半強制化。
 六、年休取得時期の分散。
 七、リゾート施設などの利用料金前払い制度による大幅割引き。
 八、公民館、文化会館、スポーツ施設などへの国庫補助充実並びに夜間開放時間の延長。
 九、放課後の小中学校特別管理者制度の創設。
 十、文化・スポーツ施設入場料金の減免。
 十一、余暇情報の充実。これは郵便学窓口の利用などが考えられます。
 十二、リゾート利用会員券の規制。これは各地にトラブルが起きております。
 十三、余暇促進法制定は不要だと思います。余暇は法律で規制するものではなく、労働基準法の整備とその遵法で足りると思います。法律で休み方を縛るのはおかしいと考えます。
 以上です。
#11
○会長(長田裕二君) 以上をもちまして意見の陳述は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト