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1947/11/04 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第5号
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1947/11/04 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第5号

#1
第001回国会 司法・農林連合委員会農業資産相続特例法案に関する小委員会 第5号
  付託事件
○農業資産相続特例法案(内閣提出)
――――――――――――――――
昭和二十二年十一月四日(火曜日)
   午前十一時十一分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○農業資産相続特例法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(松村眞一郎君) それでは農業資産相続特例法案の小委員会を開会いたします。前囘までに、総括的の質疑應答と逐條審議を一應終つたのであリまするが、尚御質疑がありますれば政府委員の農政局長も見えておりますから、御質問頂きたいと存じます。
#3
○北村一男君 この法案の審議も段々いろいろの事情で遅れまして、これが施行になりまするのも、もう附則を見ましても、公布の日からこれを施行すると相成つておりまするが、相当遅れるのではないかと思いまするが、そういたしますると、この中に、旧といいましても、現行の民法でございまするけれども、やがて改正される民法の規定を引用しておる面もございまするしそれからこの裁判所が、政府委員の御説明によりますれば、やがて家事審判所において扱われることになるということでございまするから、又間もなく改正しなければならんというようなことに相成りまするから、この際改正民法の施行される來年の一月一日からこれを施行するといたしまして、そういうふうに條文の整理をいたしたらいかがかと存じまするがこの点について政府委員の御見解を承りたいと存じます。
#4
○政府委員(山添利作君) 只今お述べになりました御意見につきましては、私からお答えするよりも、むしろこの委員会でお決めになるべき筋合のものでありまするけれども新らしい條文を布く、或いは「裁判所」を「家事審判所」とする。而してこの法律の性質上、施行は早い方がよろしい。從つてそれまでの間附則で民法の新らしい條文を布きましたのを、これこれと読み替えるというような立法技術は可能でありまして、それにつきましては委員長において御意見がおありであろうと思います。
#5
○北村一男君 委員長の御見解をちよつと承りたいと存じます。
#6
○委員長(松村眞一郎君) 私はこの委員会では、この案をそのまま何とか、可否をそれぞれの御意見をお述べ願つて、今の法律技術上のことは、この法案それ自身が司法委員にかかつておりますから、司法委員で処理して貰つたらどうかという考えがあるのでございます。むしろこの委員会では、この法律は新らしい民法の施行の期日よりも前に施行すべきものであるか、民法の改正法が成立してから後に同時に施行するのでよくはないか。そのいづれか御決定願つていかがでございましようか。立法上の技術の方は、司法委員に委した方がいいかと思いますが、この委員会では、この法案というものは一月一日前に急速に施行すべきものであるか、或いは民法の施行と同時にやるのがいいかというようなことで、いかがでございましよう。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(松村眞一郎君) そういう趣旨で御決定願いたいと思います。只今の点はいかがでございましようか。今北村委員から御発議があつたのでありまするが、実質上はいかがいたしましようか。民法施行のときに法制も整え、そうして実際上の運用もしてよくはないかということにお考えでございましようか。或いは一日も早くこれを司法委員の方で処理して、早く司法委員会で決定をして、若し施行すべきものでありますれば、速かに施行することを適当と考える。いづれがに一つ御決定願いたいと思います。決定といいましても、この委員会では決を採るわけに参りませんから、大体の御意向だけ承つて御報告したいと思います。
#8
○藤野繁雄君 民法と同時に取扱つて行つた方がよくはないかと考えております。
#9
○松井道夫君 私も今の御意見に賛成いたします。
#10
○委員長(松村眞一郎君) そういう御意見があつたということで、別に決を採ることにいたしませんから、そういう御意見があつたということに報告いたしまして、いかがでございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(松村眞一郎君) それではそのようにいたします。
 そういたしますと、全般に亙りまして尚御質疑がございますればお尋ねを願いたいと存じます。若しございませんければ、討論に入りたいと存じます。採決はいたしませんけれども、それぞれ御意見をお述べ頂きたいと思います。
 私は修正案といたしまして、お手許に差上げて置きましたような意見を持つておるのであります。一應御覧を頂きたいと存じます。便宜それを御説明いたしましよううか。
#12
○藤野繁雄君 説明して下さい。
#13
○委員長(松村眞一郎君) それでは修正案の理由を御説明申上げます。大体はもう末尾の修正理由というところに書いてあるのでございまするが、この新らしい憲法は、個人の尊重ということを非常に重点を置いておるのであります。國民は法の下に平等であるということにいたしておるのであります。で、結局趣旨とするところは、各國民は機会均等で進まなければならんという趣旨と存じますから、相続のありました場合は、この被相続人の残しました財産を相続人は均分に相続いたしまして、財産上の立場も機会均等、力も均等で進んで行くということが憲法の精神と存じます。そういう意味において改正民法は均分主義の相続制度を定めて今審議に付しておるのであります。その面から考えまして、均分に対する例外を認めるということは、憲法の精神に副わないものでありますというふうに私は考えるのであります。政府委員の説明は、相続の関係におきまして遺留分は尊重するのであります。遺留分は尊重しまして、自由に被相続人が処分し得る範囲内においての、遺言の心持をこの法案で示しておるのであるという意味の御説明があるのでありますけれども、均分の相続にはならないことが明瞭であり、相続の特別相続分というものを認めまして、農業資産の相続人は先ずその特別相続分を受けまして、その残りのものを均分に配当する、こういうことになつておるのであります。結局これは不均等の相続でありますし、かくのごときことをいたしましても、相続がたびたび重なりますというと、結局二分の一、二分の一ということになつて、やはり小さく分れてしもうのでありますから、均分の主義を一部的に認めながら、或る程度の修正をしたという意味の案でありまして、趣旨として私は徹底してないと思うのであります。若し資産としての纏つた相続を要望されるならば、農業の資産に関する限りは、從來の長子相続的の総括相続の意味を以て進まなければ、ただ時期を延ばすということに過ぎないと考えます。民法の規定に対しまする例外の趣旨としても不徹底であるということを先ず考えるのであります。
 第二の点は相続につきましては、大体におきまして親等主義でありまして、血族の中、親等の近い者が先ず相続するということになつておるのであります。能力によつて相続するという主義は採つていないのであります。例えば被相続人に子供があります場合は子供の順位に、兄弟のあります場合には兄弟の順位によりますので、能力の如何を問わずに均分に相続するということになつておるのであります。能力者に纏めて相続させるという思想は從來の相続制にないのであります。今度のは農業経営に適当なる者に農業資産を相続せしむるという趣旨でありまして、能力相続という制度になると思います。そういつた相続の制度を農業資産の相続の場合に認めるということはどういうものであるか、血統相続を改めて能力相続というようなことをここに始めることになりますから、そういう点から申しましても法律上疑義があると私は考えます。そういうわけでありますから、この法律の要望しておるところは、農業資産というものが分割されないで、纏まつて経営が円滑に行くようにということが趣旨でありますから、農業資産というものだけは不可分的に農業に適当する者に相続させる、併しながらそれは能力相続の意味ではないのであつて、その農業資産の継承というものに適当なる者が当る。外の相続関係はすべて均分でありますから、農業資産を継承いたします者も然らざる者もやはり均分の相続にいたしまして、その均分の関係は金銭債務関係にいたしまして、農業資産の部分が非常に大きい場合においては、相続分を超過します部分については金銭債務として他の共同相続人に対する負担にするということで解決いたしましたならば、農業を経営しながら或る程度の利潤を以て他の相続分に対して配当をするというような方法も付くでありましようし、金銭債務のままで或いは年賦の償還というようなことも、相続人の間に相談もできるであろうと思います。均分相続の趣旨を入れまして、併しながら農業資産を纏めて農業経営に適当なる者が受継ぐということで目的は到達するのであろうと考えます。そういう意味におきましてこの修正案を提出いたしたのであります。
 結局しますところ、特別相続分というものを止めますということと、それからその超過部分を均等に金銭債権債務の関係で相続の初めからそういつた債権債務を持つたものとして処分をして行くという考えであります。その趣旨によりまして修正案を提出いたしましたので、大体この第一條にありまする遺産の分割による農業資産の細分化を防止するということも目的を達せられることになります。農業経営の安定を図ることもできると思います。ただ安定という意味におきまして、特別相続分があれば、相続をする者については安定の程度は強いと思われますけれども、併しながら纏めて経営ができれば、それで農業経営は安定できるであろうと思うのであります。尚機会均等の非常に大切であることは、農業に從事しない兄弟もあるわけでありますから、その兄弟のためには、やはり兄も弟も同じだけの資産を受継ぎまして、その資産によつて他の方面にやはり進出して行くという基礎ができるわけでありますから、農業を特に尊重するという関係は、農業資産として不可分的に纏めるという程度において、農業を尊重することで適当でないかという考えを以て修正案を拵えたのであります。
 尚他に御意見がございますればお述べ願いたいと思います。
#14
○北村一男君 政府委員にお尋ねいたしますが、この法案で農業資産を相続する場合も、今委員長の仰せになりましたように、二分の一、二分の一とやつて行けば、結局農業資産自体は二分の一に細分化される虞れがあるという仰せでありまするが、この法案で行きましても、農業資産のその資産だけはやはり一括して相続するというような趣旨でないかと思いまするが、その点お説明を承つて置きたいと存じます。
#15
○政府委員(山添利作君) 農業資産そのものはどこまでも不分割に何囘相続が重なり続きましても、分割はされませんわけでありまするが、尚相続分といたしましては、委員長が仰せになるようなこともあり得るわけでありまして、何と申しますか、仮りにここに資産の價格として農業資産七万円なら七万円を受継いだ、その次に又相続が起りますれば、その二分の一を特別相続分として受け、他を又兄弟で分ける、こういうことになる、さようなことが重なつて行きますると、最初の場合から比べますと、農業資産相続人の資産内容といいますか、持分関係というような意味におけるそれは薄くなつて來る、こういうことはあるわけであります。併しながら物としての農業資産は、飽くまでも不分割ということであります。
#16
○委員長(松村眞一郎君) 他に御意見ございませんか。
#17
○北村一男君 そういたしますると、只今委員長の修正案を、仮りに委員会で皆同意したとしますと、これは特例法ではなくなるわけでございますね。委員長にお尋ね申上すわけでありますが、特例ではなくて農業資産相続法案になりますか。
#18
○委員長(松村眞一郎君) お答えいたします。それは政府委員の説明されたのと同じなのでありまして、やはり農業資産は不可分、政府原案と私と違うところは、相続分が、私のは実質的にいつも均分で行くということになるわけでありまして、政府原案は二分の一だけが特別相続分として内容が大きい、こういうことになるわけなのであります。実質と形式はちつとも違わないのです。程度の問題です。農業資産としてやはり纏めて不可分的にいつまでも永久的に相続させるというのが特例の必要なる所以であります。政府の方は特別相続分という二分の一というものを、始終取らせるということになるのであります。私のはいつも均分で、すべてのものが均分で相続分を取るということでありますから、実質も形式もちつとも違わない、ただ持分が変つて來るということになるわけなのであります。結局するところはどうなるかというと、細分が私の案の方が早くなります。すべて均分で小さくなつてしもうのですから……。原案の方は二分の一だけは始終残つて行くのでありますが、二分の一が更に四分の一になり、八分の一になり、十六分の一になるということはどうせ起つて來るものであつて、結局するところは小さくなりますのは程度の問題であつて、最後までみますというと、結局いつしか非常に小さくなつてしもう。併しそれは持分の関係で小さくなるのであつて、その農業資産としてはいつも不可分的に大きいものが、ずつと続いて行くということになるわけであります。結局最後になつてどういうことになりますかというと、殆んど実質的の相続分を持たない者が、相続財産を相続して経営するということは、丁度資本なくして経営するという状態と同じことになるだろうと思います。その人が能力があれば借入金をしても経営ができるわけでありますから、やはり農業の経営はそれで存続すると思います。結局するところこの均分相続の制度が、そういうことになるのじやないかと思います。資産がすつかり小さく分れるという結果は、それぞれの人間は、極端な言葉で申しますと、裸一貫で行くけれども能力がないために纏つた農業資産というものを受継ぎまして、その纏つたものを手段として経営できるという便宜が法律によつて與えられるというのでありますから、これは相当に意義のあることと存じます。
#19
○政府委員(山添利作君) 委員長のおつしやることと同じ結果になると私が申しましたのは、短い期間に度々相続が重なつて、そういう結果が起る。通常の場合におきましては、相続から相続の間に先ず財産價値が相当殖えることが前提でありまして、兄弟に対する償還等を済まして、若干受継いだものも殖えて行くという結果になるのであつて、持分の財産價値の上からいいましても、通常の場合に段々減つて行くというわけではないと思います。短い期間に度々起れば、財産價値の囘復を見ることができないで、細つて行く、こういうことはあり得る。こういうふうに私は考えておるのであります。
#20
○北村一男君 この法案は農業経営の安定を図るということにも主力を置いておられるわけでありまするけれども、私共は更に残された農業資産の相続について、相続入の間に爭いが起きないようにして貰わなければならんと思うのであります。その意味合から申しますると、政府の原案はともすれば相続について爭が起き易くなる。つまり二分の一だけは無條件で貰えるのでありまするから人情として経営希望者が沢山出ると思うのであります。今の委員長の案によりますると、均分相続の原則を貫かれるということになりますると、その点について爭いが全然なくなるということじやございませんが、まあ比較的少くなるのではないかと思うのでありますから、私はこの均分相続の原則を貫く方がいいのではないかと思うのであります。この点について政府委員の御見解を承りたいと存じます。
#21
○政府委員(山添利作君) この法律改正の狙いといたしましては、二点あるわけでありまして、物としての農業資産を分割しない即ち経営をそのまま存続せしめるということであります。第二点は、農業をやつて行く人の負担を高度に重からしめないという点にあるわけでありまして、若しこれを純然たる均分相続にいたしまするならば農業を受継ぎました人は絶えず兄弟の間における小作人と同じような地位に立つて出発して行くということになるわけでありまして、結局農地改革等によりまして自作農を今創設をして行く、これは十年も経てば又元の格好になつてしまう。言い換えますると、すべての農家は兄弟に対して負債を持つておる、小作料を支拂つて行く、実質的にです、と同じ内容になるわけでありまして、それでは日本の農業、而もそれが必ずしも活溌化して行く、発展していくところの形を持つていない零細農家にとつては、非常なる負担の累積を來すことになるわけでありまして、從つてそういうような負担を持つておれば、経営内容の改善ということもできませんし、農業改革における資本の蓄積ということもできない。結局は農業生産力を非常に低下せしめざるを得んところの運命に立入ると思うのでありまして、元來何もせずに放つておいたらどうなるかといいますると、日本の農家戸数は、御承知のように昔から五百万戸前後ぐらいであります。耕地も殖えません。こては言い換えて見ますると、今まで農家における過剰人口を都市に吸收したということによつて調和がとれておつたのでございませうが、同時にその反面には、農業としては、ともかくこれ以上に細分しても工合が惡いというところにもう行つておるのだ、古い國柄といたしまして、土地に收容し得るだけの農家は收容しておるのである。從つてむしろ農業資産そのものとしてはやはり放つて置いても或る程度不分割という場合が相当あるのではないか。三反や五反のものを分けても仕様がない。結局内容的にそういう小さい農家でも今度は均分相続の度ごとに重い負担をかけて行く。こういうことになるのでありまして、これは独り農業といわず、國力発展という上からも、農業のコストが高ければ結局貿易の世界に伸びて行ぐという基礎も薄弱でありまして、先ず農業なり日本全体としても経済的基礎が薄弱になる。かように考えておるのでありまして、これは物としての農業資産の不分割と同時に、強く又農業経営を承継する人にその経営を安定せしめ、且つ將來の発展性の余力を残したい、こういう氣持から出ておるのでありまして、成るほど爭いがあるないという問題につきましては、本來均分相続の主義を探りますれば、止むを得ずそういう問題は起るわけでありまして、今までの身分的な地位とは違つたことになります。併しながら同時に誰が遺産を相続するかということにつきましても、おのずからその家にあつて父親と共に農業に長く從事しておつた、又今後もやつて行く、こういう人の場合には從來の慣習又は常識から見ましても当然でありまして、そういうことからその者はやはり動かないと思います。その場合にいかなる持分、相続分でどうなるかということは、法律ができますればそれによつて規正され、これが社会の秩序を作つて行くわけなのでありますから、その点の心配がないわけでありまして、いずれにいたしましても、仮りに均分相続ということにいたしました場合におきましても、これを現在の状況等におきまして、即ち他に職がないというときには、当然又財産的價値の如何に拘わらず農業をやりたいという希望はあるでありましようし、又そういうふうに均分するということによつて、財産の評價如何とかいろいろ問題が起り得るわけであります。結局制度としてのトラブルを多くするかどうかということについては敢えて優劣はないのではないかと、かように考えておるのであります。
#22
○北村一男君 この法律がそのまま通りましても、結局相続する人は農耕の実情から見まして多く長男が相続するものと考えますが、そういたしました場合に次男以下の、つまり農業相続人の選に洩れた人は相当多くあるのじやないかと思いますが、從來のように都会に出て、工業なり商業に入るという機会が段々少くなりまするが、農林省としてはこの農業相続人に洩れた多くの次男以下の者に対しまして、どういうようなことをお考えになつておるか、これは農林省の問題ではないかも知れませんが、農村の問題としてこういう問題をどういうふうにお考えになつておるか、その点を一つお尋ねしたいと思います。
#23
○政府委員(山添利作君) これは非常に大きな問題でありまして、この法律ということよりもむしろ越えた大きな問題だと思うのであります。結局農村におけるところの過剰な人口には從來は幸いに都市における工業部面にこれを吸収した。明治の初め当時から見ますれば、恐らくその当時の農民人口は國民全体の七割が八割を占めておつた。それが現在四割くらいになつている。その人口が倍になつたのが一体どこに行つたかといえば、工業その他の方面に吸収することができたというわけであります。今後はどうするか。國外への移民或いはその他の地域における発展ということも望みが非常に薄い現在におきまして、どこに求めるか。これは直接農業部面といたしましては、先ず第一に御承知のごとき開拓政策であります。
 それから今後起らんとするところの農村工業の問題、併し全体として何と申しましても多くの人口を吸收するところのものは、結局は國民経済一般の囘復、就中貿易を中心とするところの國民に対して職を與えるという問題であろうと思うのであります。これは私見でありますけれども、その意味においてはイギリスと同じような立場に似ておるのじやないか。無論彼は世界に誇つた大きな領土若しくは資源関係の國を持つておる。日本はそうではない。資源のある領土はなくなり、人が溢れておる。そうして貿易工業によつて起つて行かなければならないと同じようなところにあるのじやないかというように考えておみのでありますから、現在の暗澹たる状況、これが今後数年間続くであろうことは、いかなる努力を拂うといたしまとても止むを得んことでありますが、目標とするところは貿易を中心に國民経済の囘復、工業の進展を図つて行く。そうして人が行く代りに、労働力が商品の形において世界に販路を求めて行く。こうい形において解決をさるべきものであり、又それ以外に途はないのじやなかろうか、かように考えておるのであります。貿易産業を中心としての工業、國民経済一般の囘復を図るためにも亦農業自体が健全な立場にあるということが予想せられることも亦当然でありまして、一面から見れば、仕事がなければ農村に人をだぶつかせて置く方がよいのじやないか、そういう非常論理なことを考えることはないのでありますが、そういうような考え方をしない人もないかと思いますけれども、それはそうじやないので、物の合理的に進む途という点から見ますと、農業は農業として健全な立場に立ち、而してそこに余剰を生ずるところのものは又工業方面にどうしても吸収せらるべきである。こういう考え方を持つておるのであります。
#24
○松井道夫君 私はこの法案を立案されたことにつきましては、その御苦心に対しまして敬意を表しておるわけであります。日本の農村の將來、農地の細分化、経営の安定等からその結論に達せられたということに対しては敬意を表するに吝かでない者であります。ただ修正案の理由に出ております憲法の精神に反するという点は、これは十分に考えなければならんことではないかと存ずるのであります。或る一つのことでその例外を含めますと、その精神まで次第に時日の経つにつれて薄れて行くということは、これは十分に警戒しなければならないだろうと存ずるのであります。又折角立派な憲法ができたのでありますから、その原則を飽く迄も守つて行こうということも亦非常に大切なことでないか、殊に参議院の立場といたしましてそういうことが大切じやないかと私は考えるのであります。それで私考えますのに、問題は要するに均分相続というものの原則を貫くことができまするならば、それに越したことはない。それによつて生じまするところのいろいろの立案当局の考えられる心配というものは、これは外の方法でできるだけそれを少くして参る。こういう方法を先ず第一に考えなくちやならんのじやないかと私存ずるのであります。この法案の狙いは先程政府委員から御説明があつたように、農業資産についての経営の單一というものを確保する。それから農業経営の負担を、遺留分というものを害せない範囲において軽減するということであるのであります。経営の單一ということはこれは尤ものことでありまして、この点について特殊の法則を認めまして農業資産についての経営を單一にいたすということは必要であり、私も同感なのであります。ただその点についても私多少疑問を持つておりますものは、農業資産が二つの経営單位を容れる余地があり、経営の希望者、今までそれについて経営しておつた者が二人ある、そういうような場合にも亦單市でなくちやならんということは、私は均分相続の精神と、又職業選択の自由といつた憲法の精神に反する虞れがあるのじやないか、さよう考えます。又経営は一つしか容れない、單一の経営しか容れない、農業資産であつても、それについて経営を続けて参りました丁供が二人おつて、且つそれを希望するという場合に、その一人を強いて排斥する。二人でやつておつても経営が成り立つて行くのにその一人を強いて排斥するということも、又職業選択の自由と均分相続という憲法の精神に合わない何ものかがあるのじやないかということを私考えるのでありまするが、併しながら原則といたしまして今の單一の経営ということを確保することには賛成なのであります。それから第二の今の遺留分を害せない範囲において、法律で今の農業経営の負担を軽減するという点でございまするが、併しこれは均分相続の原則を破つてまで、それをやる必要はないのではないか。他の方法でこれを補うことができるのではないか。勿論この原案の配慮いたしまする程度にはできないかも知れませんけれども、併しながら相当程度それを配慮いたしまして、農業経営というものを継続する上において差支えない、大体において差支えない程度にできるのじやないかと考えるのであります。それはこの法案の中にもございまするけれども、この法案で裁判所、將來は家事審判所に相成るのでございますが、その家事審判所に相当の期待を置きまして、今の補償金なら補償金の支拂方法、その額の認定について、農業の経営を危くしないというところに主眼を置いて、今の方法を定めるというような配慮をいたして置きまするならば、それが相当程度防げるのではないか。原案にもやはり農業資産相続人の超過額の支拂といつたようなものについて規定があつたと存じます。又第十六條にも「農業資産の價額は、時價の範囲内で農業経営の収益を基準としてこれを定めなければならない。」というような配慮がしてあるのでございますが、そういつた農業資産の相続関係についての意見の纏らない場合には、家事審判所が農業資産の相続人の経営か成立つということを第一の主眼としてその方法を決める。かようなことにいたせばよろしいのではないか。そうすれば特別相続分を認めたと同じ結果になると思うということを、いつぞや委員会で政府委員も云うておられたので、それはその通りの結果になるかも知れません。それにしても今の均分相続を貫き得たという、憲法の精神を紛淆するような結果を將來起す虞れがあるような方法を探らないという大きな利点がある。何を措いても守らなければならない利点があるのでございますからして、仮りに結果が同じようなことに相成りましても、私は少しも差支えないのではないか、さよう考えるのであります。將來の農業経営ということを考えますと、私も非常に心配なのでございますが、併しながら仮りに相続人を從來の長子相続同様のような形にいたしまして、経営の安固を図るといたしましてもこれは見解はおのずから分かれるわけでございまするが、ときによりましては却つて経営の安固に馴れまして、技術の改善或いは農村工業の振興、或いは協同組合法が提案されて審議されておりまするが、そういつた傾向の促進ということに反対の結果にならんとも限らんと私存ずるのであります。これはいろいろの場合がございましようけれども、それを差引きいたしまして政府の原案の方がよろしいという結論は容易に私引出せないのではないか、さよう考えるのでございます。まあかれこれ考えまして、参議院議員といたしまして、何とかこの均分相続の原則といふものを置きたいというような希望を多分に持つておりますということを申上げます。そうしてそういたしますると松村議員の提出されました修正案は、一つの非常に有力な修正案であると私存じます。それだけ申上げて置きます。
#25
○委員長(松村眞一郎君) 他に御意見ございませんか。御意見ございませんければ、この委員会としてはこの程度で終了することにしてはいかがでございましようか。
   〔「結構です」と呼ぶ者あり〕
#26
○委員長(松村眞一郎君) それでは小委員会としては審議をこれで終つたことにいたしまして、この小委員会の経過を農林・司法連合委員会に報告することにいたしましてよろしうございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○委員長(松村眞一郎君) それではそういうことに決定いたします。それでは小委員会はこれで終了することにいたします。どうも有難うございました。
   午後零時一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     松村眞一郎君
   委員
           北村 一男君
           藤野 繁雄君
           松井 道夫君
           阿竹齋次郎君
  政府委員
   農林事務官
   (農政局長)  山添 利作君
ソース: 国立国会図書館
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