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1988/04/11 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 外務委員会 第3号
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1988/04/11 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 外務委員会 第3号

#1
第114回国会 外務委員会 第3号
平成元年四月十一日(火曜日)
   午後一時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     小野 清子君     堀内 俊夫君
     木宮 和彦君     原 文兵衛君
 四月十日
    辞任         補欠選任
     堀内 俊夫君     坂元 親男君
 四月十一日
    辞任         補欠選任
     倉田 寛之君     柳川 覺治君
     最上  進君     松浦 孝治君
     黒柳  明君     及川 順郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         堀江 正夫君
    理 事
                久世 公堯君
                森山 眞弓君
                矢田部 理君
                小西 博行君
    委 員
                大鷹 淑子君
                倉田 寛之君
                後藤 正夫君
                嶋崎  均君
                林 健太郎君
                原 文兵衛君
                松浦 孝治君
                柳川 覺治君
                中村  哲君
                松前 達郎君
                及川 順郎君
                黒柳  明君
                広中和歌子君
                立木  洋君
                吉岡 吉典君
   国務大臣
       外 務 大 臣  宇野 宗佑君
   政府委員
       外務大臣官房長  藤井 宏昭君
       外務大臣官房審
       議官       谷野作太郎君
       外務大臣官房外
       務参事官     丹波  實君
       外務大臣官房領
       事移住部長    黒河内久美君
       外務省アジア局
       長        長谷川和年君
       外務省中南米局
       長        坂本重太郎君
       外務省条約局長  福田  博君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        辻  啓明君
   説明員
       通商産業省貿易
       局長期貿易保険
       課長       橋本 城二君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華
 人民共和国との間の協定の締結について承認を
 求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(堀江正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る三月二十九日、小野清子君及び木宮和彦君が委員を辞任され、その補欠として堀内俊夫君及び原文兵衛君が選任されました。
 また、昨日、堀内俊夫君が委員を辞任され、その補欠として坂元親男君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(堀江正夫君) 投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。宇野外務大臣。
#4
○国務大臣(宇野宗佑君) ただいま議題となりました投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この協定につきましては、昭和五十五年の第一回日中閣僚会議において協定締結交渉の早期開始につき合意いたしましたのでその後両国政府間で交渉を行いました結果、昭和六十三年八月二十七日に北京において、両国政府の代表者の間で、この協定の署名が行われた次第であります。
 この協定の主な内容としまして、投資の許可について、最恵国待遇を相互に保障しているほか、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動、出訴権等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化等の措置のとられた場合の補償、送金等の自由、投資紛争解決のための手続、合同委員会の設置等について定めております。
 この協定の締結により、我が国と中華人民共和国との間の投資の増加並びに経済関係の拡大及び緊密化が促進されるものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#5
○委員長(堀江正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○矢田部理君 今大臣から御説明ありましたが、この協定が昭和五十五年の第一回日中閣僚会議において交渉の早期開始につき合意をし、その後交渉を行ってきた結果、六十三年八月二十七日、去年の夏に協定の署名が行われたということになりますと、大分時間がかかっているように思われますが、このような時間が経過したのはいかなる理由に基づくものか、何が問題であったのか、その問題点はどんなふうに解決をされたのか、まとめて御説明をいただければと思います。
#7
○政府委員(谷野作太郎君) ただいま確かに委員御指摘のように、大変長い経緯がございます協定でございまして、八年かかりました。一九八一年五月第一回の交渉から昨年七月の第九回の交渉による妥結に至りますまで七年、九回の交渉をいたしました。
 その背景といたしましては、やはり両国の経済社会体制の相違からきます例えば用語の概念をどういうふうに考えるかというような問題、その辺のすり合わせ等いろいろ技術的な問題が多々ございまして、それに係る議論で相当時間を費やした経緯がございます。他方、我が国といたしましては、協定を締結いたします以上、できるだけ効果的なものにしたいということで幾つかの点で強い立場をとりましたので、そういうことについての中国側の認識を得るのにも若干時間がかかったという経緯がございます。
 それから、委員御案内のように、中国側の実情はまだまだ国内の法制一つとりましても未熟でございまして、他方、しかし近代化という政策のもとでそういった国内の法制も徐々に整ってまいりました。そのためにもしかしながら時間がかかったという経緯がございます。
#8
○矢田部理君 法体制の整備に中国内に時間を要したというお話が最後にあったのですが、結局中国側がこれを受け入れるために、あるいは協定を締結するためにどんな法律ができたのか、主な点だけ説明をいただけますか。
#9
○政府委員(谷野作太郎君) 委員御案内のように、中国が外国からの投資を積極的に受け入れるという方針に踏み切りましたのは七八年の末のことでございました。それ以来、例示的に御質問の法律を名前だけ挙げてみますと、七九年には中外合資経営企業法というのができました。それから、八三年にはその実施細則が公布されております。八六年に至りましては外資企業法あるいは外資企業の投資奨励に関する国務院の規則、かなり詳細なものでございますが、こういうものが公布されました。
 そういうことで年を追いまして、これだけではございませんけれども、徐々に外国からの投資を受け入れる中国側の法制が整ってきたということでございます。また、これに加えまして、各省のレベルでそれぞれ省が自分の責任を持って策定いたします法令がこれに加えてございます。
#10
○矢田部理君 協定を内容的に見ますと、最恵国待遇と内国民待遇、この二つの柱で成り立っていると思うのですが、最恵国待遇というのは幾つかの国と既に内容的には結んでおられるというふうにも聞き、しかしながら内国民待遇については今度の日中協定が初めてであるというようにも伺うんですが、この最恵国待遇を結んでいる国々はどんな国々でしょうか。
#11
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 先ほど御説明申し上げましたように、中国が外国からの投資を積極的に受け入れたいという基本的な心情がございまして、今日まで約二十カ国の国々と投資保護協定を結んでおります。これら幾つかの国の名前だけを例示的に申し上げますと、ヨーロッパの国が多うございますけれども、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スイスあるいは英国といったところがございますが、これらの国々との間で中国が結びました投資保護協定におきましては、いずれも最恵国待遇の条項がございます。
 そこで、今回私どもが八年の年月をかけて主張いたしましたのは、これに加えて何とか内国民待遇の条項を、原則的にせよ、きちんと確保したいという強い考え方がございまして、したがってこのたび中国側も日本側の投資を積極的に受け入れたいという基本的な気持ちがございまして、日本に対しては初めて内国民待遇の条項を、原則的にではありますけれども、認めることに踏み切ったというのがただいま御審議いただいている協定の内容でございます。
#12
○矢田部理君 内国民待遇の基本的な内容といいますか、中心的な内容といいますか、これはどんなことがポイントになるのでしょうか。
#13
○政府委員(谷野作太郎君) これは先生もよく御存じのところでございますけれども、要するに日本から中国に進出いたします合弁企業等投資の面におきまして、平たく申し上げれば、中国の企業と差別をしてもらっては困る、中国の企業が与えられておる待遇より劣ったものでは困る、最小限中国の企業が与えられておる待遇を与えてもらいたいということでございます。
 そういうことではございますけれども、他方、中国側のいろいろな国内の事情がございます。まだまだ発展途上国でございますし、いろいろ国内の事情もございますので、そういう状況をおもんぱかりまして若干の例外の規定を設けました。すなわち三つの場合、「公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のため真に必要な場合において」、そういう場合においては必ずしも日本に内国民待遇を与えなくても、それをもって条約違反だという責め方はしないということを約束したわけでございます。
 しかしながら、そういう差別的な措置をいたしますにおきましても、協定でうたいましたのは、中国側がきちんと透明性を持った法令、きちんと公布された関係法令によってそれをしてください、わけのわからない内部規定、そういうものによって不透明のままこれをなされては困ります、そうなさる場合は関係法令に従ってちゃんとなさってくださいということを約束したわけでございます。
#14
○矢田部理君 例外というか、そういうことについてもお触れになられたわけですが、その前に、内国民待遇を日中協定で確立したということになりますと、この条項は既に最恵国待遇を受けている他の二十カ国にも実際上は影響が出てくる、その効果が及ぶというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
#15
○政府委員(谷野作太郎君) お説のとおりでございます。したがいまして、そういう意味におきましても他の二十カ国におきましては、今回の御審議いただいております協定については、必ずや評価いただけるものと思っております。
#16
○矢田部理君 そこで、先ほど例外というか適用上の問題について触れられましたが、議定書の三項ですか、「公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のため真に必要な場合において他方の締約国の国民及び会社に差別的な待遇を与えることは、「不利な待遇」とみなしてはならない」ということの意味、内容なのですが、文章だけだとちょっとわかりにくい点もあるので、例えばこんな場合、こんなことがそれに当たるということで例示的に御説明をいただけますか。
#17
○政府委員(谷野作太郎君) 確かにここの書き方は若干抽象的な書き方にはなっておりますものの、例示的に申し上げれば、日本の場合は、私の承知する限り例えば航空の面あるいは沿岸の海運の問題、そういう問題につきましては必ずしも日本の企業に認められておると同等のものを外国の企業には認めていないというようなことがあるようでございますが、中国にもそういったことがあろうかと思います。
#18
○矢田部理君 ちょっとわかりにくいのですけれども。
#19
○政府委員(谷野作太郎君) それから、いずれ御議論が出るかと思いますが、例えば価格の問題がございます。
 中国は二重価格あるいは物によっては三重の価格がございますけれども、合弁のために日本から進出しておられる企業に、例えば物資の売り買いをする場合に、どの価格を適用するかというような問題がございますけれども、その際に中国側が最低の価格でこれに応じ得ないということがあるといたします場合、仮定の問題でありますけれども、それは恐らくここで申します「国民経済の健全な発展のため真に必要な場合」だというふうな主張があるいは中国側から出てくるかと思います。
 いずれにいたしましても、そういったことも含めましてまさに公の秩序、国の安全、国民経済の健全な発展のために真に必要な措置であるかどうかということにつきましては議論もあり得ますので、そのためにも、協定の本文にございますように、両国の政府間で合同委員会を設けましてそこでじっくり審議していこう、日本の考え方もそこで開陳していこう、中国側の考え方もそこで聴取しよう、そして問題が起きればその都度妥当な解決を図っていこうということになっております。
#20
○矢田部理君 何が不利益な待遇かということの基準を設定するに当たって前提となる内国民としての基準というのはどういうことなのかということがまた問われることになるわけですが、この内国民というのはどんなことが基準として考えられるわけでしょうか。
#21
○政府委員(丹波實君) これは、事業活動その他の分野の活動におきますところの中国市民または会社の活動というものが中国におきますところの内国民待遇の基準になる、そういうことで考えております。
#22
○矢田部理君 時間の関係もありますから先に進みますが、その不利益な扱いを受けたときの解決方法として例えば十三条の仲裁などが考えられるのでしょうか、それから十四条の合同委員会というのが先ほどからお話がありますがね、この両者の関係、位置づけ、相違と言ってもいいかどうかしりませんが、役割の分担という点ではどんなふうに整理をしたらいいのでしょうか。
#23
○政府委員(丹波實君) まず、紛争解決の問題につきましては協定に二条用意してございまして、第十一条が第一番目、それから第二番目が先生御指摘の第十三条の問題でございます。
 第十一条におきますところの紛争は二つ考えられておりまして、一つは収用その他の場合の補償問題をめぐる紛争、それからその他の紛争と。この二つの紛争につきましては、いわゆるワシントン条約に倣った仲裁制度あるいは調停制度というものが考えられております。これは会社、国民対相手側の国の紛争。それから、国対国の条約をめぐる解釈の紛争につきましては、十三条にやはり仲裁条項その他の細かな規定が設けられております。
 それから、最後に先生が御指摘になられた十四条の合同委員会、この十四条の合同委員会はこの協定の実施に関連するところの問題をすべて取り上げることができる、こういうぐあいに整理できるかと思います。
#24
○矢田部理君 紛争の問題とは別なのですが、向こう側、中国側の法制の整備として収用問題それと補償問題が一つ柱としてあったというふうに言われているわけですが、それはどんな内容になっておりましょうか。この要件とか基準とか含めて御説明ください。
#25
○政府委員(丹波實君) 収用の問題につきましては五条の二項に規定されておりまして、これは本件協定のいわば核心的な条項の一つでございますが、端的に申し上げて、「公共のため、かつ、法令に従ってとられるものであり」これが第一の条件、「差別的なものでなく」これが第二の条件、また「補償を伴うものである場合」というのが第三条件、そういうものである場合を除くほか「収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置の対象としてはならない」、ここで申し上げました三要件というのは、現在一般国際法上の概念とこう考えられております。この日中協定におきましてはまさにそういう一般国際法上の概念を固定化し明文化したということでございます。
#26
○矢田部理君 少し立ち入って聞くのもなんですが、例えば憲法の規定で日本の場合は二十九条で収用する場合には正当な補償を必要とする、正当な補償については完全な補償か相当な補償かという議論などもあるわけですが、補償の中身などについての基準化はできておりましょうか。
#27
○政府委員(丹波實君) この点は、第一要件の中の「公共のため、かつ、法令に従ってとられる」という中の「法令」に日本の場合には土地収用法その他の収用あるいは国有化のときに適用される法令が入ってくる。その法令に従って適正に処理されるというのが日本の場合であろうと思います。
#28
○矢田部理君 だから、日本の場合はそうだが、中国の場合にはそういう中身は確定したのですか。
#29
○政府委員(谷野作太郎君) 中国の場合には、憲法で次のような、十三条でございますが、規定がございます。すなわち国家は、公共の利益のため、法律の定めるところにより、土地を収用することができるというふうに規定されておりまして、それを受けまして土地管理法というのがございます。そのための具体的な規定をこの土地管理法で定めておるようでございます。
#30
○矢田部理君 協定の中身とか制度についてはもう少し聞きたいこともありますが、同時に実体論、実質論を少し議論しておかなきゃならぬと思うんです。
 率直に言って、中国側にとって今度の協定の締結はどういうメリットがあり、かつ今後日本の投資がどんな伸びを示すかという見通しなど、どんなふうに考えておられるか御説明をいただきたい。
#31
○政府委員(谷野作太郎君) 先生も御案内のとおりでございますけれども、中国との経済関係は各般非常に活発に関係が深まってまいっております。貿易も順調に伸びておりますし、なかんずく日本からは経済協力というものを大変活発に中国にやっております。その中で投資の面、中国に対する日本からの投資、この面だけが少なくとも中国の政府が期待するレベルには全くいってないという問題がございます。
 そこで、この種の協定が御審議を通じまして御承認を得て発効ということになりますれば、日本の企業にとりましてはやはりある種の安心感といいますか、中国に進出していく場合のある種の安心感をこれで持っていただくということはあろうかと思います。それがまた中国への日本からの投資の活発化につながるということで、これがやはり中国の今当面日本に最も期待しておる、そこの期待にこたえるゆえんであろうかと思っております。
#32
○矢田部理君 従前の投資額の世界のランクを見ると、日本はアメリカよりも少ない、第三位でしたか、たしか。これはどんな事情、どんな背景からそうなっているのでしょうか。中国側から見ると、近い国でありながら非常に投資額が少ないというような議論、受けとめ方もあるようですが。
#33
○政府委員(谷野作太郎君) まさに委員からお話しのように、まず中国に対して一番活発に投資を今のこの時点で行っておりますのはお隣の香港からの投資でございます。そして、委員御指摘のように米国からの投資が二番目、次に三番目に日本、こういうことになっております。
 さて、なぜアメリカのレベルにまで至らないのかと。いろいろな理由があるかと思いますが、日本の経済界、企業の方に伺いますと、やはり一つは、若干これは手前みそになるかもしれませんけれども、この種の投資保証協定、保護協定というものがなかった、政府間でそういう約束事がきちんとなされてなかった、そこに対する不安が間違いなく日本の経済界にはあったと思います。したがいまして、この協定ができるということになりますと、非常に喜んでいただけるということは間違いないと思います。 しかし、それに加えまして、現実の問題といたしまして、日本の企業の方方から伺いますのは、例えばエネルギー一つにしても十分な安定的な供給が得られない、あるいはいわゆるインフラといいますか、通信の手段、交通の手段にいたしましても、まだまだ日本の期待するレベルにまでは現実の問題として中国はそこまでいってないというような問題、それから法令は整備されてきたと申し上げましたけれども、まだ日本の方の期待するレベルにまではいってないということで、その辺の不安がまだまだ残っておるようでございます。したがって、もう一つ活発になれない。
 最後に、しかしながらこれだけの円高がずっと続いておりますし、他のアジアに対する日本からの投資は大体一巡したと言われております。それから、いわゆるアジアNIESにおきましては労賃の問題一つにいたしましても大変日本にとっても高くなってきてます。そういうことで、企業の方からいただきますアンケートを見ますと、将来的にはやはり中国に対する大変強い御関心がある、これも事実でございます。いずれも、これからの関心はどこに向けられておるかといいますと、投資に関する限り中国が第一位にきておるアンケートの結果が非常に多うございます。
#34
○矢田部理君 今の説明だけではちょっと説得力に欠けるような気もするんですね。例えばアメリカは協定がなくたって日本より多い、それから諸条件は同じということになるわけだから、ちょっとそれだけでは説明がしにくいと思うんですが、大臣、中国の李鵬総理がお見えになるに当たって、投資促進機構というようなものを詰めるというような話も伝わっているのですが、これはどんな状況、見通しになっておりますか。
#35
○政府委員(谷野作太郎君) 昨年八月、竹下総理が御訪中になりましたときにこの投資保護協定の調印が行われまして、その年の十月に日本側の経済界の方を団長といたしまして中国投資環境調査団というのが派遣されました。この調査団の御報告を受けまして、ただいま先生がお話しになりました日中投資促進機構、これは今の段階では仮称となっておりますけれども、そういうものを民間のレベルで日中間でつくるということになりました。早ければ四月にも正式に発足するということになっております。
 お仕事といたしましては、一つには、いろいろ日中間で投資に関してのもめごとがあり得ますので、したがいましてそういうものをここに持ってきていただいて解決のための策を練っていただくという、紛争処理のための一つの機能がございます。それからもう一つの機能は、これから中国にいらっしゃろうという方々に投資の面で適切なアドバイスあるいは情報提供のサービス等を行うということもこの機構では考えられておるようでございます。
#36
○矢田部理君 きょうは、こういう国会がリクルート問題等で緊迫した状況にかかわらず、中国から総理がお見えになるということで特別にこの協定を成立させて日中間のきずなをより深くしよう、つながりを強めようということで我々も協力しているわけでありますが、最後に、今後の日中関係のさまざまな展望などについて、それからまた日本政府のこれからの中国に対するさまざまな政策の展開について、まとめて所信を伺って私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
#37
○国務大臣(宇野宗佑君) 幸いなるかな日中平和友好条約締結十周年、昨年にこの機会を迎えました。その機会にちょうど本日御審議願っております投資保護協定というものの調印ができたわけでございますが、はっきり申し上げまして、中国には資源ありまた労働力あり、我が国には資金あり技術あり、これをひとつ一体として考えていこうというのがいつも中国政府関係者と会談をするときには真っ先にお互いが認識をしているところでございます。
 したがいまして、そういう認識でひとつ未来永劫にわたりましてよき隣国としてお互いの信頼と友情さらには繁栄が期されなければならぬ、これが私たちの考え方でございます。
#38
○中村哲君 中国と日本の問題のみならず、ソビエトと日本の問題、また今不幸にして分かれております朝鮮半島のうちの朝鮮民主主義人民共和国、これらは御承知のように社会主義国でありまして、その上日本にとっては最も関係の深い、しかし同時に、それだけにデリケートな問題を抱える隣国であります。なお、今は正式な国交は国連の加入等で切れておりますけれども、私は台湾の問題もあると思う。ただ、台湾は、今申しました三国とは別に、社会主義を建前としてはおりません。しかし、ソビエトを含む社会主義国というのは今まさに大きな転換をしようとしている。これは、ゴルバチョフのペレストロイカという政策で代表されているように、実際には市場の原理を正面から取り上げるという世紀の転換をしているので、こういう時期に日中の間で経済交流をさらに促進するような協定を結ぶということは非常にいいことで、同時にそれは歴史的なことだと思います。
 そういう状況の中で、中国の李鵬首相を明日迎えるわけですが、どうか外相とされてもそういう世紀の転換が始まろうとしている時期だということから、前向きに問題をぜひ考えていただきたい、こういうふうに思っておりますし、また宇野外相にそれを期待したい、こう思っております。何か御意見ございましたら。
#39
○国務大臣(宇野宗佑君) 今一連の極東情勢、中村委員がおっしゃったとおりだろうと私も賛同いたしたいと思います。特に日中関係は、日中平和友好条約十年を迎えたわけでございますが、やはり過去の歴史等々に顧みましたときに、常に私たちはそうした遺憾の意を表しつつ、この大切な関係を今後もやはり発展させなければなりません。
 過般の弔問外交におきましても、やはりいろいろと日本に対する恩讐というものがそれぞれの国にはあったと存じますが、私は改めて次のように申し上げておきました。象徴天皇、昭和天皇を厳かにお送り申し上げまして、新しい象徴天皇を私たちは今日いただいております、そして年号も平成と改めて新しいスタートを切りますから、どうぞそういうことで皆さん方と友好親善を深めたいと思いますと、私は八十八人の方にお目にかかりましたが、一人残らずそうした気持ちを訴えまして、日本としても一九四五年以来平和の路線をたどってまいりましたが、なお一層、年号も変わりました、天皇もおかわりになりましたという意味を強調しつつ、今の変貌きわまりなき新時代に対処するという決意を申し述べておきました。
#40
○中村哲君 新聞の見出しだけを見て内容を見なかったんですが、新しい天皇も、中国の代表者が来られたときには、日本と中国との間の不幸な戦争のことについて、やはりこれに対する深い反省をされたように新聞が書いておりましたけれども、これはやはり必要なことだと思うんです。中国との関係というと、すぐ侵略という言葉で非常にデリケートな問題になりますけれども、それはきちんと問題にするならばかなり歴史的にすることであって、国会の場ですぐやれと言われても私もしかねるところがあるんですが、国が接しておる隣国との間で武力的な衝突をするとか、それから戦争というものを国民の生活しているその国土の上でするということ、これが一番不幸なんです。
 私も一回はここで申したと思いますが、中国との戦争のときは既に官職にあって、国立大学の助教授でありましたときに戦場に引っ張られましたので戦場の実際の経験を持っておりますし、弾にも当たったし、今なお私の体には弾の破片が残っておりまして、これは手術をしなくても支障がないというものですからそのままにしておりますけれども、そういう戦場経験から言うと、人が生活しているところで戦闘をするということは、これは非常に悲惨なことなんです。
 ですから、太平洋戦争を終わらせようということで、緒方竹虎さんが朝日の論説委員であった佐々弘雄さんとあの段階で終戦の工作をしたことがあり、私も多少関係があったものですから、緒方さんなんかに当時会っていろいろ発言したこともありますけれども、あれだけの戦争しておって、日本が勝ったか負けたかじゃなくて、日本の国土の上で戦争始めたら、これはもうこんな悲惨なことはないんです。それをつまり日本の方は経験しないで、ヨーロッパはお互いにそれを経験しておる。それから中国の場合は、侵略かどうかということよりも、みんなが生活しているところで戦闘したんですからね。この経験は私は非常に悲惨なものだと思いますから、したがって終戦のときは、私も戦争中発言をしておりましたものですから、終戦工作に加わって、当時は台北の教授でありましたけれども、緒方さんなんかに会う必要から東京へ来ておりまして、そして結局そこでいろいろなことがありまして終戦になったわけなんです。
 その経験というのは、要するに日本人は自分たちの住んでおるところで戦争していなんです。そうして、軍人というのはとかく戦国時代の戦争みたいに武闘をお互いでするように思っておるけれども、これはみんながたちまちにして戦争の被害を受け、そして命を捨てるわけなんです。
 関東大震災、それから今度の大戦の大きな空爆等のああいうことが問題なんであって、侵略そのものももちろんどういうことになって侵略があったかということはありますけれども、何といっても本土の上で戦争をするということは、そういうことは避けたい。この点については平和論の中で、ジョージ・ケナンがクリスチャン・サイエンス・モニターに書いていた短い文章ですけれども、つまりキリスト教の立場から、ヨーロッパの中でEC等の国家とソ連との間で衝突が起こればだれが被害を受けるかといえば住民なんだと、それを忘れてはいけないと言ったのは、やっぱりキリスト教者だからなんですね。ジョージ・ケナンの主張はキリスト教者ということで、それぞれのネーションやステートを超えた発言をしている。これがないと今日の世界の政治を論ずることはできないと思う。ですから、とかくこういう国会に出ていますと、やはりネーションが基準になって発言しているけれども、実際は人類が基準で考えていくということを忘れますと、これはその時代に発言することにならない。私はもう痛感いたしました。
 で、一例を申しますと、大学の講義としては私は憲法にも関係したんですけれども、外国で、憲法の講義をしていると言うと、それは国際法ですかと、こう言うんですね。つまり、ヨーロッパではテリトリーの問題とか、それから何というか国の元首だとか平和だとか、ああいうものはみんな国際法、同時に憲法の問題だと。日本は憲法学者と国際法学者というのは、大学の講義が区別されているために何か切り離しているんですね。こういうことが国会に出てきますと総合的だということですね、経済も政治も法律も。こういうことで、私はまあそういうものだと思っているんですけれども、それを実感を持ちます、国会というところは。
 そういうことから、話が横にそれましたけれども、国会が国という単位だけでなくてもっと大きなところで、大きなところで言いますと抽象論になるけれども、それがないと現代の世界の政治家たることにはならないんじゃないか、こう思いますので、その点、外相のお考えもそうだろうと思うんですが、もしありましたら。
#41
○国務大臣(宇野宗佑君) 日中戦争に関連してのお考え方なり一つの史実を申しておられると、私はこう承っておりました。
 私自身も昨年中国の要人の方から次のように承りました。目の前で自分の親が殺され、また子供が殺されているんです、その悲しい思い出を我が国の国民はこらえて、そしてひたすら新しい時代に日中間の友好を構築しようと努力しています、だから日本においてもそのような思い出を思わさないようにお願いしたいと。これは一つの大変な発言で、むしろ我々としてもそうしたことを耳にいたしましたとき、私は深い感動に包まれました。
 したがいまして、日中平和友好条約締結のときの共同宣言等々におきましては、明らかに我々は過去の戦争において中国の国民の方々に迷惑をお与えし、そのことを遺憾としていますと、こういうふうにきちっと申し上げておるわけですから、いやしくも内閣にある者はそのことを継承性の問題からもきちっと守らなければならないし、またそれをお互いに批准していただいた国会におきましても、これは与野党超越してそういう気持ちをもとにして今後永久の両国の親善を図る、これが大切だと、こういうふうに心得ております。
#42
○中村哲君 とかくジャーナリズムは非常に話題をつくることに関心を持っているものですから、私どもでも多少評論する場合、人の関係で人で取り上げるという傾向がありまして、それは科学にはならないんですね、人間関係でやると。
 それで、例えばつい最近中国共産党の大会があって、そしてケ小平さんが相変わらず中心で、そして陳雲なんて人を含めて五人ばかりの人が垂簾グループという、あれは英語とか中国語ではどう書いておるのか知らないけれども、要するに簾をおろした御簾の中にいる人たちということなんですね。そういう人を中国共産党の中央部の後ろに置いたんだね、今度。そうすると、それが胡耀邦やその他の現実に政治をとっている人に対する何か巻き返しみたいなものじゃないかというように書く者もあれば、いずれにしてもそこが牽制するというようなことに人間関係で言っておりますけれども、今の中国にしてもソビエトにしても、ペレストロイカ的に民衆に開放した場合はそれを逆戻りするというのは難しいんですね。ですから、ゴルバチョフの場合だって、ゴルバチョフがグルジアとかあるいはレニングラードでああいうことがあると政権が確かに維持できるのかという式のことを言いますけれども、そういうことは、民衆が自覚を持っていった場合にはそれを抑えることはできないし、大勢はそっちの方で問題を解決していく。したがって、ソ連でも中国でも民主化の方向で今後はずっと広がっていくわけです。
 だから、胡耀邦でしたか、学生運動を支持したかのようなことから一時、中心にいたけれども、隠退しておりましたのに、また今復活しております。こういう人が復活するのは当然なんですね。これがつまり先ほどから申しております社会主義国家が市場の原理を全面的に入れ民主主義を全面的に入れる、そういう方向に進んでいることなんで、こういうこともそのときそのときの人的な出入りというかスキャンダルみたいなところにこだわっていることじゃなくて、政治の大勢を見ていくということが非常に必要だと思うんです。これが国会を見ておりましても、何だか人と人との関係ばかり言うようなことがありますけれども、これは見損なわない方がいいんだろうと、こう思っております。
 それで、一々申し上げませんけれども、今度のこの協定を見ますと、最恵国待遇とそれに並んで内国民待遇というものを与えるように書いておりますが、この点は確かに従来中国が経験したことがないんではないかと思いますが、内国民待遇を日本と約束することによってこれに踏み切るような感じがいたしますので、このことは非常に大きいと思うんです。ですから、そういう意味でこういう協定が明日の首相の来日の前に結ばれることは非常に重要だと思っております。
 ただ、この協定を拝見しておりますと、中国は今まで投資保護協定を締結している国というのがかなり広い、西独だとか英国だとか等々ありますけれども、この中にアメリカが入っていないのはどうしてかと思うんですが、これの説明をちょっと願いたいと思います。
#43
○政府委員(谷野作太郎君) 確かに、中国がこれまで二十カ国の国々と投資保護協定を結んでおります中でアメリカが欠落しております。アメリカも、実は新聞報道等でも御案内のように、この種の協定を中国側と締結するということについては一定の関心がございまして、それなりに話し合いは進めておるようでございます。第三国同士の間のお話し合いでございますから、一々その内容をここで御紹介するのははばかられますが、報道等によりますと、まさに今回日本が原則的に確保した内国民待遇の問題について、米中の間でもこの問題をめぐって意見が合わないというようなことが伝えられております。
 それからもう一点は、アメリカの場合は、恐らく各企業が中国に進出いたします場合に、企業の責任と、それから先生御案内のように大変きちんとした弁護士の制度がございますので、そういうものに頼りまして個々の企業が進出いたします場合に大変詳細にわたる契約をつくります。そのために大変長い年月をかけるわけでございますから、したがいましてこの種の協定は必要はないとは申しませんけれども、日本においてありましたように企業の側から、経済界の側から一刻も早くその両国の間で、米中の間でこの投資保護協定をつくってほしいという非常に強い、せっぱ詰まった御要求というものもなかったやに聞いております。
#44
○中村哲君 これは、恐らく法的な形態として保険制度が発達しているということと、今おっしゃった弁護士制度が日本とは違って非常に発達している、そのこともあるでしょうね、今おっしゃったのでは。ただ、条文を見ますと、今おっしゃったのは企業と言われましたけれども、国民と書いてあって、これは自然人のことですね。これはもちろんそういうことを含めて今言われたんだと思うんですけれども、そういう意見でしょうね。
#45
○政府委員(谷野作太郎君) そのとおりでございます。
#46
○中村哲君 それで、この議定書が一つくっついてるんですね、後ろの方に。これには著作権がどうとか書いてあるんですが、これは投資に関することに限定していると、こういう意味ですか、それの逆。
#47
○政府委員(丹波實君) 本件議定書の1及び2、1は先生おっしゃるとおり著作権のこと、それから2は工業所有権に関しますいわゆるパリ条約、この二つに関しますところの権利義務にこの協定が影響を与えないということを規定しておるわけですが、まさに念のための規定でございまして、この種の問題は、このまさに書かれておるところのいろいろな多数国間の条約によって処理するということを念のために書いておる規定でございます。
#48
○中村哲君 そうすると、くどいことになるけれども、工業所有権とか著作権とか、それの協定には及ばないということ、そういう意味なんですね。
#49
○政府委員(丹波實君) そういう多数国間条約が与えている加盟国に対する権利義務にこの日中保護協定は影響を与えないということを念のために書いておるわけでございます。
#50
○中村哲君 そうですが。
 この投資協定ができましても、日本側として進出する者が果たしてどういうふうにあるかということはそう楽観もできないようにも聞いておりますけれども、しかし中国側がこれで積極的に進出してくることは、中国にとってもまた日本が中国の隣国としての友好関係を促進する意味でも、中国の方がこれを非常に活用してもらえばこれでいいんだと思いますが、別に御意見をということじゃないんですけれども、外務大臣、殊にそういう考えで何かこういうものを結んだって日本にはそんな利益はないという、さっきの国家中心のエゴイズムみたいなもので言わないようにすることが必要ですね。
#51
○国務大臣(宇野宗佑君) これは投資環境を十二分に整備し、日中両国の投資、そのために役立つということが一つの精神でございますから、したがいましてよき隣人としてやっていかなくちゃならない。
 先ほどもお答えしましたが、確かに大きな国ですし、南と北あるいは海岸べリと奥地ではまたいろいろと事情が違うかもしれませんが、十二分にそうしたこと等とも頭に入れて合同委員会で今後は本当に腹蔵なき意見を交わして相互の繁栄を図るということが大切だと、かように心得ております。
#52
○中村哲君 このことは殊に北朝鮮の場合でもやはりそうなんで、日本の方からどういう利益があるかなんて考えるんじゃなくて、今の人民共和国にとって市場の原理が事実上入ってくることによってそこでアジアの一層の安定が図られるというような、そっちの方で考えるべきで、日本の国家の利益とか民衆の利益がいきなりどうかというふうなことを、どうも国会というのは何かすぐそういうふうなことになるような気が私はしまして、外におりますときはそういうことは余り考えないけれども、自然に論議がそっちにいきますものですから、どうか相手国の民衆の生活にプラスになるようにということ、それによって日本が支持や友好を続けられるというふうな考え方でいっていただきたいと思う。特にこれ以上に言うことはありません。
#53
○国務大臣(宇野宗佑君) ありがとうございました。
#54
○広中和歌子君 ただいま同僚お二人の委員に引き続きまして、日本国と中華人民共和国との間にこのたび結ばれます投資の奨励及び相互保護に関する協定について幾つか質問させていただきます。準備をいたしました質問が重なることもあるかと存じますけれども、より具体的にお答えいただければありがたいと思います。
 投資の奨励並びに保護に関する協定でございますけれども、一般的に申しましてこのメリット、そしてもしデメリットがあるとしたらどのようなデメリットがあるか、お答えいただければと思います。
#55
○政府委員(谷野作太郎君) 私からお答えさせていただきます。
 投資は本来投資家が経済的な合理性をきちんと計算されまして行われるものでありまして、したがいまして政府としては、日中間の投資促進のために政府としてできることは積極的に行いたい、そういうことで今回の協定の締結に至ったわけでございます。その意味するところは、一口で申し上げれば、両国の投資環境の法的な枠組みを整備するということにあるわけでございまして、ここにこの協定の持つ大きな意味があろうかと思います。
 それから、先ほど来御議論が出ております内国民待遇の問題あるいは収用、国有化についての手続、紛争解決のための手続、さらには合同委員会の設置、そういったことも両国間で約束いたしまして、そういうことを通じて、特に日本から中国に投資をなさろうとなさる企業の方々に安心感を持っていただくということに今回の投資の保護協定の大きな、先生のお言葉で言えば、メリットが期待されるわけでございます。
 どういうデメリットがあるかというお尋ねでございますが、当面そのようなことは思いつきません。
#56
○広中和歌子君 この協定はエジプトそしてスリランカに次いで三番目でございますけれども、なぜこのような協定がもっと積極的に結ばれなかったのか、国としての御方針というのがあったんでしょうか。つまり民間レベルとして任せておかれたのか、それとももっと積極的にしたがったけれども何かできなかった事情があるのか、その点についてお伺いいたします。
#57
○政府委員(谷野作太郎君) 確かに、中国側は二十カ国とも結んでおる状況で、日本が今回第三国目というのは少ないわけでございますが、他方これまでにASEANの諸国とはかなり長い年月をかけて交渉を進めてきております。ただ、これも先ほど来御議論が出ておりますまさに内国民待遇の状況の処理をめぐりましてASEANとの間に非常に難しい状況に今なっておりまして、交渉がいずれの国ともちょっととんざしておるということでございますが、そこの辺の道が開ければ、ASEAN諸国との投資保護協定の締結ということは、将来はぜひこの交渉を再開して交渉の妥結に持ち込みたいと思っております。
 それから先進諸国、アメリカあるいはヨーロッパ諸国でございますが、ここにつきましては先生御案内のように通商航海条約というのがございまして、その中で日本からのこれらの国々に対する投資につきましてもきちんとしたこれを保護する仕組みというものは政府間で約束されておりますので、そちらでカバーされておるというふうに御理解いただければと思います。
#58
○広中和歌子君 西側先進国ではこの種の協定を結ぶことについてどのような対応をしているか、その点についてお伺いいたします。例えば西ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなどはこういう協定についてどういう考え方を持っているんでしょうか。
#59
○政府委員(丹波實君) 先生が例示的に挙げられた国は割とこのような協定を結ぶことを積極的に考えていると思います。例えば西ドイツは今日まで約六十カ国と締結しております。英国も約三十カ国ぐらいと締結しております。アメリカにつきましても私たちが承知しているところ十カ国ぐらいと結んでいるというふうに考えますと、先進諸国は結構積極的に考えているんじゃないかということが言えると思います。
#60
○広中和歌子君 こうした相手国は主に政情不安な発展途上国が多いんでございましょうか。
#61
○政府委員(丹波實君) いわゆる開発途上国というものが多いと思います。
#62
○広中和歌子君 こういう国々は内国民待遇ですか、その点についてはどういうふうになっているか御存じでいらっしゃいますか。もし御存じでしたらお答えいただきたいと思います。
#63
○政府委員(丹波實君) 網羅的な調査はしておりませんけれども、内国民待遇を与えられているところもあるでしょうし、そこはケース・バイ・ケースで分かれるんじゃないかと思います。
#64
○広中和歌子君 先ほどちょっとお答えいただいたわけですけれども、今後こうした協定をふやすことに日本としては積極的でいらっしゃるのかどうか。そして、日本側にそれを希望している国、ASEANとおっしゃいましたけれども、ほかにどういう国々があるのか。それから、内国民待遇ということでASEANとの協定を結ぶについてひっかかりがあるというふうにおっしゃいましたけれども、それはもっと具体的にはどういうことなのか。お伺いいたします。
#65
○政府委員(丹波實君) 今後、円高その他の理由もございますし、大きな傾向としては日本の資本が従来に比べてもっと積極的に外に出ていくということを考えますと、やはり日本としてもこの種の協定は今後締結数がふえていくであろうという見通しが立てられると思います。
 現在交渉を行っている国を例示的に挙げますと、ASEAN諸国のほとんどがそうでございます。それから、その他ASEAN以外でもトルコとかパキスタンというような国がやはり締結したいということで日本政府としては今交渉中でございます。その他現在私申し上げなかった国々もいずれそういう交渉の仲間に将来は入ってくるという見通しを持っております。
#66
○広中和歌子君 今回の中国と結ばれた投資奨励保護協定と、さきの二つの国と結ばれた同様の協定とは異なる点がございますか。
#67
○政府委員(丹波實君) この日中協定は、日本がエジプト、スリランカと結んだ協定と大きな枠組み、大きな考え方は同様なものでございまして、そういう意味では大きなところでは変わっておりません。ただ、日中両国の経済制度といったようなものの相違がございましたので、それがエジプト、スリランカとの協定とは違った形で日中協定に反映されているという例があるかと思います。
 例えば一番典型的な例といたしまして、投資に関連する事業活動に関する内国民待遇というものが規定されておるわけですが、その例外規定の書き方、これはエジプト・スリランカ協定と日中協定では違っておるわけです。エジプト及びスリランカとの協定では、内国民待遇規定の例外としては航空機の登録の条件あるいは船舶の国籍に関する事項といったことを具体的に列挙する形をとっておりますが、日中協定では議定書に書いてあることですけれども、中国経済の実情を踏まえまして、単に「公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のため真に必要な場合」にそういう例外的措置をとるということが書かれておるわけで、こういう違いが出てきておるということでございます。
#68
○広中和歌子君 内国民待遇の具体的なことについて後で質問いたしますけれども、その前にこの協定の第一条に「締約国の領域内」という言葉が出てくるわけですけれども、「領域」という場合、中国の場合は一九九七年に主権が返還される香港などは入るんでしょうか。
 それからまた「領域」には海域も含まれるのか。つまり、漁業権とか天然資源の探査や採掘権ですね、この絡みで御質問いたします。
#69
○政府委員(丹波實君) 一条以外でも「領域」という言葉が出てきますけれども、この意味は、その国の支配あるいは法律が実効的に及んでいる陸地及び水域であるとお考えいただいて結構でございます。
 したがいまして、中国について見ますと、台湾あるいは香港といったものについて中国政府が一定の見解あるいは立場を持っておることは御承知のとおりでございますが、現に中国の支配あるいは法律というものが実効的には及んでいない。ところが、この協定は地域的な適用を主眼とする協定でございますので、そういう地域はこの協定の適用上除かれるというのが自然な考え方であろうと思います。
#70
○広中和歌子君 第三条二項に示されておりますように、内国民待遇が与えられている。しかしながら、第五条二項で示すように、補償を伴えば収用、国有化あるいは類似の効果を有するその他の措置の対象となり得るということを示しております。
 それで、この補償を伴えばの「補償」でございますけれども、五条の三をわかりやすく説明していただきたいと思います。
#71
○政府委員(丹波實君) 五条の二項でございましょうか。要するに、五条で扱っております収用及び国有化あるいはそれに類する措置について簡単に考え方を御説明申し上げたいと思います。
 五条の二項は、一般国際法上のいわゆる三要件と言っておりますけれども、収用が行われる場合には次の三要件が満たされなければならないとよく言われておるわけでありますが、その三要件がまさに日中協定の五条二項に入っておるわけであります。第一は、公共のため、かつ法令に従うということ。それから第二番目は、差別的なものであってはならない。この差別の意味は、自国民及び第三国との関係における差別、そういう内外の差別があってはいけない。それから第三番目は、補償を伴うものでなければならない。その補償というのは迅速、適当、効果的な補償でなければならない。そういう三要件を満たして初めて「収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置」をとることができるというふうになっております。これが大原則でございます。
 第三項以下は、しからば現にそういう収用等の行為が行われた場合に、その補償というものがいかに支払われるべきかという手続的あるいは基本的な補償の算出の考え方というものを規定したという、そういう構成になっております。
#72
○広中和歌子君 補償についてでございますけれども、社会主義国におきまして、市場価格による補償ということは、市場価格という考え方というのはあるんでしょうか。
#73
○政府委員(丹波實君) これはまさに適切な御質問と思いますけれども、この三項の内容につきましては、日本がエジプト及びスリランカと結んだ協定におきましてはまさに市場価格に当たるものを補償するという規定があったわけです。
 中国につきましては、そういう提案をしましたところ、中国には市場価格という言葉はなじまないという中国側の主張がありまして、この三項の一番最初の書き方、つまり収用その他の措置がとられなかったとしたならば当該国民及び会社が置かれただろう財産状況に復帰させる、そういう補償だという表現をしたのは、先生が言われるとおり、市場価格という概念が中国のような社会体制に当てはまらないということで工夫してつくった表現でございます。
#74
○広中和歌子君 それから、「遅滞なく」支払うというふうになっているんですけれども、もしおくれた場合には利子の支払いというのはあるんでしょうか。
#75
○政府委員(丹波實君) 「補償は、遅滞なく行われなければならない」といいますのは、これはスリランカとの協定、エジプトとの協定にも規定されておりまして、いわばこの種の問題を処理するときの、これも一般国際法上常識化した考え方であろうと思います。その遅滞が生じた場合には利子も支払われる必要があるというのも、実はこれはエジプト、スリランカの協定にも入っておりまして、この点についてもこれは一般国際法上の考え方であろう。したがいまして、日中の協定におきましては、合意議事録にもそのことが書かれておるということでございます。
#76
○広中和歌子君 それから、換算率でございますけれども、これはどうなんでしょうか。御説明いただけませんか、よくわかりませんので。
#77
○政府委員(丹波實君) 換算率、これはまず補償が決定した場合のそれを外国為替を通じて、例えば中国元から日本円に換算するという意味での換算率を先生は言っておられると思いますけれども、それは三項の一番最後にありますところの「その換価又は移転に当たって用いる外国為替相場は、補償の価額が決定された日の相場による」ということが書かれておりまして、まさに補償が決定された日の円対元の相場というものを基準に考える、そういうことを規定したものでございます。
#78
○広中和歌子君 最悪の場合ということを想像しては大変恐縮なんですけれども、例えば内乱とか戦争とかさまざまなことが起こった場合に、価格というのは非常に決めにくいんじゃないかなと思うんですが、それは何かもっと客観的な、少なくとも日本側からの投資額というんでしょうか、そういうものに見合ったものが戻ってくるのかどうかということ。
#79
○政府委員(丹波實君) これは協定の十一条をごらんいただきたいと思うんですが、協定の十一条の二項は、特にこの補償の価額に関する紛争ということを扱っておりまして、したがってこの場合の紛争は、関係の会社とその他方の国との紛争になるわけですが、こういう紛争が生じた場合には、国際会社に既にでき上がっておりますところの調停委員会または仲裁委員会という制度を通じて問題を解決するという考え方に立っております。あるいは話し合いの結果がこういう制度にいく前に解決するかもしれませんけれども、いずれにしてもこういう制度が本協定上も用意されているということでございます。
#80
○広中和歌子君 それから、先ほどの内国民待遇のことに戻るんですが、これも大変失礼な言い方かもしれませんけれども、内国民というのは、中国市民、中国の会社が与えられている当然の権利に準ずるということでございますけれども、我々のような自由主義経済のもとに住んでいる者にとりましては、またはそういうところで企業活動を行っている会社にとっては、非常な制限があるというふうに受けとめられるのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。つまり、だから内国民以上のものが与えられないと投資家としては満足しないということもあり得るのではございませんか。
#81
○政府委員(谷野作太郎君) 私の方からお答え申し上げます。
 中国も外国からの投資の誘致に大変熱心でございまして、実は多くの場合、内国民に与えられている以上の待遇を外国からの直接投資企業は与えられておるということがございます。
 それから、ただいま価格の点について御言及があったと思いますが、確かに現在の中国の経済におきまして、一つの物に対しまして複数の価格体系が存在する、これが大変大きな問題になっておりまして、中国政府はこれをいずれは解消したいというふうに申しております。しかしながら、現実としてそういう二重、三重の価格があります場合に、これと内国民待遇との関係をどのように考えるかという問題がございます。
 そこで、具体的に申し上げますと、例えば中国におきます国営企業の場合を考えてみますと、安い資材を特定のルートからある企業が仕入れる場合がございますけれども、その場合に、それに対する見返りの義務といたしまして、そこから生まれてきます製品につきましては、ただいま申し上げました国営企業の方に納める、安い資材で製品をつくる、そのかわりにそこから産出される製品については、その見返りの義務として国営企業に納めるという問題がございます。したがいまして、そういう場合の安い特定の価格というものを日本なら日本から行っております企業にそのまま適用できるかという問題はあろうかと思います。そういったこともございまして私どもは、これだけではございません、いろんな問題があり得ましょうから、両国の政府間で合同委員会を設けましてそういった問題を率直に議論していきたい、そして適切な解決を図っていきたいということを考えておるわけでございます。
    ―――――――――――――
#82
○委員長(堀江正夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、黒柳明君が委員を辞任され、その補欠として及川順郎君が選任されました。
#83
○広中和歌子君 ブラジルに参りましたときに、あの国が意外と輸入制限といいましょうか、外貨節約のためだと思いますけれども、輸入制限をしているということで現地に進出しております日本の企業がパーツを輸入するのに非常な困難を経験している、特別な地域があってそこでは輸入ができるとかさまざまな例外は設けられているんですけれども。中国の場合には、例えばパーツを現地で調達しなければならないといった制限が課せられているとか、あるいは生産した物は輸出向けであるといったような規制がかかるのか、そういうようなことについては具体的な話というのはあるんでございましょうか。
#84
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 その辺の個々の具体的な問題になりますと、恐らく個々の進出される企業がどのような契約を相手方と結ばれるかということにかかっておると思います。押しなべて、例えば製品はすべて輸出しなければならないという政策は中国政府としてはもちろんございませんし、パーツを必ず国内で調達しなければ投資を認めないといった一般的な方針、政策というものも存在はいたしません。
#85
○広中和歌子君 では、個々の企業に関しまして、企業リスクについてお伺いいたしますけれども、これまでの多くの海外投資はこうした協定なしでやってきたわけですけれども、どういう形でリスクを回避してきたのか、お伺いいたします。
#86
○政府委員(谷野作太郎君) 中国に進出されます場合にいろいろ御苦労があるわけでございますけれども、損失のリカバーにつきましては、例えば日本政府の側では投資保険というような制度もございますし、そういった仕組みを念頭に置きながら進出されるということであろうかと思います。
   〔委員長退席、理事久世公堯君着席〕
#87
○広中和歌子君 また、この協定で、投資保険というのか、貿易保険というんでしょうか、そういう保険に入る必要はなくなるんでございましょうか。それについて伺います。通産省の方。
#88
○説明員(橋本城二君) 海外投資を行う人がどのような形で投資したリスクを回避するかということでございますが、これは投資者の考え方によるわけでございます。
 ただ、日本政府としましては、投資した方がこうしたリスクを回避するために国営の保険制度に御加入いただくという御意思があれば加入していただきまして、加入した場合、そうしたいろいろな事故が起こった場合に保険価額の九〇%、これを国がお支払いするという制度はございます。したがいまして、この制度を御活用いただければある程度そうしたリスクを現実に回避することは可能であるというふうに考えております。
#89
○広中和歌子君 こうした投資協定が今後どんどん結ばれますと、その国との貿易保険等、その保険料は安くなるんですか。
#90
○説明員(橋本城二君) 確かに、投資保護協定が結ばれますと、投資許可の際の取り扱いの最恵国待遇だとか、いろんな面で海外投資にかかわります法的環境が整備されるわけでございますので、そうした意味では、投資者にとってのリスクはある程度軽減されるわけでございます。しかしながら、万が一現実に収用がなされる場合、あるいは利益の送金が為替取引制限によりましてできなくなった場合、この場合には協定に基づいて直ちに必要な金額が投資家に対して支払われるというわけではないわけでございますので、そういう意味におきましては、投資保険にかかっておりますとこうしたお金が払われるということになるわけでございます。
 したがいまして、投資保護協定によってこうした法的枠組みが整備されたという意味ではリスクは軽減されているんですが、現実に保険金の支払いがなされるという可能性は依然として残るわけでございますので、直ちに保険料を引き下げるということにはつながらないというふうに考えております。
 しかしながら、現実に日中間でこうした協定が締結されておるわけでございますので、今後保険当局としましても関係者間でよくよく十分協議していきたいというふうに考えております。
#91
○広中和歌子君 つまり、繰り返しになりますが、例えばイラン日本石油化学会社のイランにおける投資のような場合、戦争とか政変による投資施設のダメージ、こういうものは今度の協定のようなものがあってもなくても結局は保険によってリスク回避をする、そういうことなんでございますね。
#92
○説明員(橋本城二君) 一般的に戦争、内乱等によりまして日本の投資家が損失を実際に受けたという場合には、保険金請求があれば日本政府から必要な金額が支払われるということになります。ただし、IJPCのプロジェクトにつきましては、現在日本とイランの関係当時者間で話し合いが行われている最中でございますので、保険当局としてはその話し合いの推移を見守っているという状況でございます。
#93
○広中和歌子君 どうもありがとうございました。
 この協定につきましては質問終わりますけれども、多少時間がございますので、ちょっとアマゾンの道路計画についてのうわさについてお伺いいたします。
 アマゾンの道路計画というのは、ブラジルのリオブランコ市と隣国ペルーを結ぶ道路建設計画についてなんですけれども、それに対しまして日本の金融機関が融資をしているという報道がなされ、その後、その事実を否定する坂本中南米局長及び在京のブラジル大使の記者会見がございましたね。その一連のいきさつについて御説明いただきたいと思います。
#94
○政府委員(坂本重太郎君) 実はことしの一月五日から二週間にわたってアメリカの上下両院議員団が六名ほど現地に行かれまして、そのときにどうやらアクレ州知事からこの話を聞いた模様でございます。それ以後、二月に入りましてからアメリカの新聞及びロンドン・エコノミスト等が一斉に報道を始めました。それから、現地に行かれました国会議員団、上下両院議員団の先生方から日本の議員の方々に、これは非常に環境破壊につながるおそれがあるからやめていただきたいと、こういう要請がありました。
 それを受けまして、私ども外務省といたしましては、まず円借款その他、輸銀、基金のお金、協力要請があるかどうか調べました。それからまた民間の主要なところにも全部当たりましたけれども、そういう事実はございませんでした。
   〔理事久世公堯君退席、委員長着席〕
 そこで私どもは、先生が今言われたように、記者会見をいたしまして否定いたしましたが、他方、上院議員団はそれをなお納得せず、上院に決議案を出そうといたしましたので、松永大使を通じまして各議員団に御説明いたしましたところ、事実がわかりまして先方も決議案上程は断念いたしました、こういう経緯がございます。それ以後、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等に日本政府が否定をしておるという報道もなされておりまして、私どもとしては一応この問題に関しては一段落したのではなかろうかと、こう思っております。
#95
○広中和歌子君 私たまたま三月の十一日から十八日までハンガリーのIPUの会議に出席していたんですけれども、そこであるアメリカの議員に、日本の融資がアマゾンの生態系を破壊するからぜひやめてほしい、それを個人的に働きかけてほしいというふうな要請を受けて御質問した次第なんでございますけれども、そういたしますと、この議員に関しては恐らく事実を知らなかったので私にそういう要請をなさったと思いますけれども、一たんこのようなうわさが広がりますと、ニューヨーク・タイムズとかその他で記者会見の模様が報道されたといたしましてもなかなか徹底しないということが一点と、それからもう一つは、誤解を受けたまま日本の経済進出の悪いイメージというのが広がってしまう。そういうことで外務省としては、これからますます悪玉日本みたいなイメージで見られがちなので、非常に対応が大変だと思うんでございますけれども、どういうふうに広報活動をこれも含めましてなさっていくのか。
 このアマゾンのことだけじゃなくて日本が行いますさまざまな援助とか、それから融資、そういうものが結びつけて考えられて、つまり自然破壊につながるといったような、または相手の経済を破壊するといったような悪いイメージでとられる場合も少なくなくて、これはほとんど誤解に基づくものではないかと思うんですけれども、その点につきまして局長並びに外務大臣から御意見をお願いいたします。
#96
○政府委員(坂本重太郎君) 広中先生と全く私も同感でございまして、このような根も葉もないうわさが世界じゅう飛び回って、その結果、日本の国際的イメージが低下しておるということに関しては非常に残念に思っております。その旨私も記者会見で申しました。
 そこで、対策でございますけれども、私ども東京で全外通を呼びましてこの否定をするとともに、主要紙には我が方の在ワシントン大使館を通じまして投書をしていただいております。そして、この事実を否定してもらっております。それから、ブラジルでも一週間ほど前に私サルネイ大統領と会ってまいりましたけれども、ブラジル政府もこの件に関しては日本政府に要請した事実はないということをはっきり否定するということを言っておりました。それからまた、外務大臣レベルでもベーカー長官ともいろいろ話し合っていただいておりますので、私どもはこういう問題に関しては遠慮をしないで否定すべきものは否定すべきだと、こう考えております。
#97
○国務大臣(宇野宗佑君) 一概に経済協力と申しますが、特にODA等々におきましてもやはり心すべきことは、相手の要請、それをしかと見届けて、そしてそれがその国の民生の安定なり自助努力に役立つということをやはりきちっとしてかからなければならないと思います。そのためには、今まで日本はODAは大きいけれども、やはり日本自体を背負ってきておるというようなことであってはいけませんから、できる限り広く私はアンタイにすべしと、こういうふうに今そのことの徹底化を図っております。さすれば、あらゆる企業がいろんな仕事に対しても公正に参加して、そしていわゆる競争の原理で最も効率的なそこに事業ができ上がるわけでございます。
 さらに、投資等々に関しましても、中には極めて不愉快なやはり投資もあります。もう私たちとしても本当に十分だからいいじゃないかというようなことでございましても、これは我が日本のイメージを非常に傷つけ、また相手の感情も傷つけておるというふうなやつもなきにしもあらずだと、私はこう思いますから、投資等に関しましては特によき市民たれと、相手国のよき市民として生きるということが大切な投資であって、一時的なギャンブラーのようなことはすべきでないと、私はこういうふうなことを常にやかましく言っております。
 今後、御指摘のとおり、いろんな面でへんてこなうわさが立たないように、各地において謙虚に我々は経済大国としての仕事を進めていきたいと、かように思います。
#98
○広中和歌子君 どうもありがとうございました。
 質問を終わります。
#99
○立木洋君 この投資保護協定ですが、一九七二年、日中の国交関係が回復してからの今日までの経過を見てみますと、日本と中国との経済関係というのはいろいろな曲折があったと思うんですね。中国の市場というのを非常に過重に重視するというふうな傾向が一時出てみたり、実際にはミッションを送っていろいろ契約するけれども契約破棄の状態が起こる、契約違反が出てくる。さらに、そういう関係では経済的な参加過程においては関係が薄くなるというか、弱まるというふうな状態、いろいろな経過があってきて今日、長年の話し合いを通じて、一定のこうした契約が結べる段階にまで来たというふうな判断でこうしたことになったんだろうというふうに思うわけです。で、大臣もこの協定によって両国の投資の増加並びに経済関係の拡大及び緊密化が促進されるものと期待をされますというふうにここで述べられておりますけれども、同僚議員も述べましたけれども、今までそういうふうに両国間に存在していた経済上のいろいろなそごな関係ですね、これが実際に解決されるという見通しが大体どの程度までできてきているのか、そして本当にこういう順調に期待されるというふうなことだけでいいのかどうなのか。そこらあたりの判断というものもあわせてちょっと関係当局から御説明いただきたいんですが。
#100
○政府委員(谷野作太郎君) 私の方からお答えさせていただきます。
 今回のこの投資保護協定によりまして、日本から中国に既に投資をされておる方々あるいはこれから中国に対して投資をなさろうとする企業の方方、これらの方々に対しまして一定の法的な投資の面での枠組み、約束事を政府レベルできちんとしたという意味におきましては、企業の方々にはそれなりの安心感を持っていただけるのではないかと思っております。事実、新聞報道等を通じましても、この投資保護協定を御承認いただきますれば、これが大変我が国の経済界に大きく歓迎されるであろうという報道を見かけるわけでございます。
 他方、先生御案内のように、現実の問題として、中国に投資をなさろうとする方々がぶつかるこのような法的な枠組みを超えるいろいろな問題がございます。電力の供給が一定しないとか、まだまだインフラがおくれておるとか、法令がしょっちゅう変わるといったような問題がございまして、これはこの投資保護協定の枠外といいますか、これを超える、しかしこれはこれで大変御苦労の多い現実でございまして、私どもはそういったことも中国側には時宜に応じて政府レベルで指摘しておりますし、中国側も日本からの投資を一層活発にしたいという心情がございますから、その辺のことにつきましては精いっぱいの努力を重ねて、事実、中国側の投資環境は年を追って改善されてきておるというふうに私どもは理解しております。
#101
○立木洋君 投資環境の改善という点ではいろいろ調査の報告なんかも出ておりますけれども、見てみれば、例えば原材料の調達にしても、中国の国内で調達可能なものがあればそれは中国産のものが優先的に使用されることが義務づけられるとか、それを保証されるとかということがありますが、この価格の問題ですね、二重価格制の問題については「エネルギー、原材料価格は、一九八四年以来二重価格制を採っているが、将来は計画供給による公定価格の部分は縮小することとしているが、今後とも相当長期にわたり二重価格制を撤廃することは不可能である」旨中国側が説明したというふうにこの投資環境調査団の報告には書いてあるんですが、その後の事実関係はどうなっていますか。これは去年の調査ですから、その後変わっているのか、あるいはこのことは今後の具体的な協議の中で話し合いをしていくのかどうなのか、いかがでしょう。
#102
○政府委員(谷野作太郎君) 確かに、御指摘のような中国におきます二重価格あるいは物によりましては三重価格といった価格が多層的に存在するというのは、中国に進出されております企業が直面しておられますいろんな問題の中でも大きな問題でございます。ただ、これは日本の企業だけではございませんで、実はこの二重価格について苦労がございますのは、中国の企業の中でもそういったいろいろな不満があるようでございまして、時間はかかりましょうけれども、私どもの理解するところでは、やはりこれは長期的には、時間をかげてでございますけれども、解消をぜひしなければならないということは、中国の中央の政府の指導部が非常に強い決意をそれはそれでお持ちのように伺っております。
#103
○立木洋君 条文についてちょっとお尋ねしておきますが、これは投資の時点において当該他方の締約国の法令に従うということがここに第一条には書かれていますが、「「投資財産」とは」という内容について。これは基本的には、いわゆる投資される国、そこの法令に従うということが行われなければならないということが基本的な考え方として双方で了解されているというふうにこの条項はとっていいですか。
#104
○政府委員(丹波實君) 二つあるわけでございますけれども、つまり「当該他方の締約国の法令に従って、又はこれに違反しないで」という二つの規定があるわけですが、前者につきましては、締約国の法令に積極的に根拠があるという意味でございます。二つ目の「これに違反しないで」といいますのは、法令がなくても明示の法令に違反しない限りはそれはそれでいいと、そういう意味を込めたものとして日中間で了解されております。
#105
○立木洋君 この第一条の第四項の(b)ですね。中国側のこの「中華人民共和国に関しては、企業その他の経済組織及び団体をいう。」ということになっていますが、先ほど来若干問題になっていました国営企業だとか、あそこは合弁企業だとか私企業だとか、それぞれによって運営上の違いがありますね。それから、与えられたそれの特権というか、与えられた優遇措置等の違いもあるわけですが、これらの内国民待遇という場合には、つまり先ほど言ったような、できた商品を国家に納めるというふうなことがない限りすべてのこれらの企業の権益、権利を得ることができ得るという意味として解釈していいのかどうなのか。
 価格の問題から労働の雇用の問題、解雇の問題、その他いろいろあると思うんですよね。そういう内国民待遇というのはそれらのすべての企業の形態にかかわりなく、こちらから投資したものは得ることが可能だということを基本的にここでは示すものと理解していいのかどうなのか。その三条とのかかわりもありますが。
#106
○政府委員(丹波實君) この一条の(4)の「会社」の定義、これは会社をここで定義しておるだけでございまして、先生御承知と思うんですけれども、エジプト、スリランカの場合にはこういう書き分けはしていないわけです。日本、エジプトとも一つの文章で済んじゃうわけですが、それじゃなぜ日本国の会社、中国の会社を書き分けているかというところから御説明申し上げた方がいいと思うんです。
 要するに、中国側はこの「日本国に関しては」云云の会社の定義、これは中国の経済制度をとっているものとして見れば非常になじみがない、非常に理解できないと、そういう主張をして、それはそれで私たちから見ればそれなりの理由がある。それでは、中国としてはどういう書き方にしましょうかと言って出てきて決まったのがこの案文でございまして、中身的には「日本国に関しては」以下の会社と中国の会社とここで言っておりますが、そう違いはございませんで、要するに中国に関して言えば「企業その他の経済組織」というものを広くとる、この中には地方の経済機関、その他も入るということでございまして、現実にこれが協定上どういう意味を持つかという点につきましては、各条で、そのケース・バイ・ケースの意味を与えられて、そこで解釈ができると、こういうことになろうかと思います。
#107
○立木洋君 いや、丹波さん、企業の言い方を言い分けるという意味はあなたの御説明でわかりますけれども、これを内国民待遇ということで考える場合に、つまりそれらのすべての企業の権益を与えられるのかどうなのかという問題になると思うんですね。ここで言うならば、言葉をあえて言い違えなくても構わぬというか、中国でも公司と言えば日本でも公司という形で表現できるんですよ。公司と言えばそれでいいんです。だけれども、これで言いあらわさなければならないというところに一つの中国の――それぞれ国営企業があり、私企業があり、合弁企業があり、それぞれ与えられた権利というのは違うわけですから。それらのものを内国民待遇として得られる場合に、どの範囲のものが得られるのかというのは、これからの話し合いによるのか、それらに与えられるものがすべて得られるというふうに合意されているのか、その考え方を基本的にお尋ねしたい。つまり、第三条とのかかわりで聞いているわけですよ。
#108
○政府委員(丹波實君) 先生のおっしゃることの問題意識はよくわかります。ただ、この問題は例えば二条のときにどうなるのか、三条のときはどうなるのかという個々のケースにぶつかってやはり考えていく問題であって、抽象的にこうだという議論は難しいことは御理解いただけると思うんです、ここは。
#109
○立木洋君 丹波さんとは前からいろいろやり合ったこともありますから、あなたとやり合うと大分時間がかかるので……。
 今後の問題としてこの問題は残される、やっぱり話し合いの中で具体的に処理しなければならないものとして理解しておくことにいたします。
 それから、第十一条の「仲裁委員会」ですね。この仲裁委員会というのは、実際には三者から成り立つわけですが、これは最終的なものであり、拘束力があるわけですね、ここでいろいろ問題が起こった場合に決める。それは中国側と日本側と、それから両方で選定する者の三者によって決まるわけでしょう。そして、その仲裁委員会を構成する場合に、あらかじめ何か大体の考え方があるのかどうなのか。これが仲裁する第三者を決める場合に一致しないというようなことが起こったらどうなるのか。何らかのそういう点では話し合いがあるのかどうなのか、全く白紙なのか。その点、仲裁委員会というのは権限が多いだけにちょっとお聞きしておきたい。
#110
○政府委員(丹波實君) この点は、再び引用して恐縮ですけれども、エジプト、スリランカの場合にはもっと簡単に規定されているわけです。その理由は、先生御承知と思うんですけれども、この十一条の二項に引用されておりますワシントン条約にエジプトもスリランカも、日本も加入しておるからでございます。しかし、中国はまだ加入しておらないということで、基本的には日中間でもこのワシントン条約の規定を参考にしながら、紛争が起こった場合の処理を考えていこうというふうなことで三項、四項、五項、六項、七項、八項が全部書かれておるわけでございます。
 特に、仲裁人の選択について問題が起きたらどうするかという先生の御質問に対しては、第三者の仲裁人ということをあらかじめ決めておくということが非常に重要になるわけですが、この点については、私はまだ決まっているとは承知しておりません。このような問題も含めてまさに合同委員会その他で今後の実施上の問題として話し合いが行われていくんじゃないか、こういうふうに考えております。
#111
○立木洋君 それから、第八条の「為替制限を課することを妨げるものではない」というのがありますね。それで、この議定書の中の第七項に「協定第八条2の規定は」云々として問題になっておりますが、しかし「為替制限に関して国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に影響を及ぼすものではない」ということなんですが、送金の自由の問題とのかかわりで言えば、どういうことになるんでしょうか、実際には。
#112
○政府委員(丹波實君) もうこれも先生御承知のところだと思うんですけれども、まず基本的な考え方を申し上げますと、ここで書かれておりますのは「為替制限」というものが各国の国内法令に従って行われることは妨げないと、しかしながら、そういう制限を行う場合でも日中それぞれがIMF協定で持っている権利義務の範囲内ですよということを書いておるわけです。御承知のとおり日本はIMF八条国としての権利義務を持ち、中国は十四条国としての権利義務を持っている、その枠内における行動ですということを規定しております。
 それ以上の問題につきましては、私は実は専門家じゃございませんのでそれ以上踏み込めませんけれども、法律上の枠組みとしてはそういう枠組みを規定しておるというのがこの協定でございます。
#113
○立木洋君 一応協定としては成文化されてこういうふうになっておりますけれども、今後にいろいろやっぱり話し合いをして詰めていかなければならない問題点が少なくなく存在するということが理解できるわけですが、それでひとつ改めてお尋ねしておきたいのは、第二十九回の国連総会で採択された「諸国家の経済権利義務憲章」というのがございましたね。これは前も当該委員会で私も、お尋ねしたことがあるんですが、この第二条、これは「天然資源の恒久主権、民間投資、多国籍企業」、つまり民間投資の問題ですが、この第二項のところにある点としては、その投資に関して特権的な待遇を与えることを強制されないという項目や、あるいはその国の法令及び規則を順守し、内政に干渉してはならない等の規定、あるいは国有化や収用に関しては「自国の適切な法令及び自国が適当と認める全ての事情を考慮して、妥当な補償を支払わなければならない」、しかし「補償問題で紛争が生じた場合」にはその国の国内法に基づく等の規定があったわけです。これは日本の国としてはこの三項については棄権というか反対をされたというふうになっていたわけですが、中国は当時この内容についてはすべて賛成したと思うんですがね。積極的に賛成したかどうかは別としても、いずれにしろ賛成をした。
 今回の内国民待遇の内容を見てみますと、これはどういうふうに判断したらいいのかという問題ですが、つまり中国は、当時の二十九回国連総会でとったときの態度に若干の変更を、今回日本と投資協定を結ぶ場合に変更してこういう協定を結んだというふうに解釈していいのか。それとも一それともは後にしましょう。まず中国側がどういう態度、態度を変更したというふうに解釈されるのかどうなのか、日本の外務省としてはどうなんでしょうか。
#114
○政府委員(丹波實君) 先生まさにこの問題は御専門でこの委員会でも過去に議論されておられますので、簡単に申し上げますけれども、まず第一点、日本といたしましては天然資源の恒久主権及び国有化の権利は、これは認めるという立場をとっております。
 しかし、先生が指摘されておりますところの憲章には、外国投資に対しまして受け入れ国が恣意的または差別的措置をとる等の権利乱用があった場合の歯どめがない、また国有化が国際法上合法であるための条件にも十分言及されていないということで日本政府は反対の立場をとってきたことは御承知のとおりでございます。
 中国の変化のことにつきまして問題提起されましたけれども、先生言われましたとおり、これは一九七四年に採択されたもので既に十数年の時間を経ておりますけれども、この憲章につきましては開発途上国寄りだと、非常に開発途上国寄りの内容であって、かえって先進国の資本の導入に必ずしもプラスに作用しなかったという反省のようなものが過去十数年の間に開発途上国の中に見られてきている。どの国がどう変わったかという点については、具体的に論ずることは私は差し控えたいと思いますけれども、この憲章に賛成した国国が日中協定と同じような協定を今あちこちで結んでおる、そういう流れが一つできてきておる。そういう中でやはり中国ということもお考えいただければ、先生の質問に対する答えが私は出てくるのではあるまいか、こういうふうに見ております。
#115
○立木洋君 おっしゃらんとするところは理解できます。
 初めて内国民待遇というのに中国の場合踏み切ったわけですね。これは相当中国側としても考えてこれを踏み切っただろうと思うんです。で、これは日本側が積極的にこういう内国民待遇をやらなければ協定を結ばないというふうな強い態度をとられたのかどうなのか。ある報道等によれば、八千百億円をちらつかせながらなんというようなことも書いてある。それを私は信じたくないけれども、そういうことを書いているのもありますから、これは双方の合意できちっとなっただろうと思うんですけれども、ここらあたりの経緯ということも私はやはりはっきりさしておいていただきたい。
 つまり、この歯どめが一方にだけ歯どめがきいて、一方に歯どめがきいていないということも、これはやっぱり片手落ちになると思うんですね。だから、きちっとやはり双方が平等互恵で経済の発展が図られるということが本来の趣旨ですから、そういうふうにならなければならないということだろうと思うんです。
 先ほど社会主義国におげる市場の開放等の問題が大分問題になっておりますが、今社会主義の国において体制の異なる国との間の投資協定で内国民待遇を与えている社会主義国があるでしょうか。
#116
○政府委員(谷野作太郎君) 前段の部分を私からお答え申し上げます。
 私自身この交渉の最後の段階を担当さしていただきましたのでよく承知しておるわけでございますが、先生の御心配のような経済協力をちらつかせながら内国民待遇についての譲歩を迫ったということは一回もございません。経済協力は経済協力、この投資保護協定は投資保護協定ときちんと使い分けてそれぞれのメリットについて議論したわけでございます。
 それから、先ほど経済権利義務憲章のお話がございまして、中国がこの点について立場を変えたのかというお話がございました。これも交渉を担当いたしました者として一言申し上げれば、交渉の過程で、この二十九回の国連総会で採択されたこの憲章について、中国が激しく自分の主張を展開したということは一回もございませんでした。やはりこの立場が変わったか変わらないかというのは、日本政府が中国の立場をそういうふうに解釈するのは問題がありますから、そういう言い方はいたしませんものの、やはり御案内のように、当時は中国への投資、すべからく外国からの投資というのはなかったわけでございます。他方、ケ小平さんが出てこられて、そして近代化路線――改革・開放ということになりまして、国の政策が大きく変わったことは事実でございます。そういう前提で、日本も含め諸外国からの、先進国からの投資を活発に導入したいという、そこの思いは非常に強いものがございますし、そこは二十九回の国連総会の当時と随分さま変わりした中国を我我は相手にしておるということなのだと思います。
 後段の問題につきましては丹波参事官からお答えいたします。
#117
○政府委員(丹波實君) 先般ゴルバチョフがキューバを訪れまして、そのときのカストロの演説を見ましても、最近はどういう国が社会主義で、どういう国が資本主義であるか非常に難しい状況になっておると思いますけれども、いわゆる純粋な社会主義国と内国民待遇を挿入した協定を結ぶことの経済的なメリットということを考えていきますと、私はここに数字は持っておりませんけれども、いわゆる純粋な社会主義国との協定の中で内国民待遇が規定されたものは恐らく少ないであろうというふうに想像します。
#118
○立木洋君 最恵国待遇というのはあるでしょうけれども、内国民待遇というのは果たしてあるかどうか、私はちょっと疑問なんですが。
 「純粋な」なんという変な言葉を丹波さんが使われましたけれども、資本主義の国が社会主義の国に資本を投資すると双方の経済の発展の利益になるということは私たちだって反対しているわけじゃありませんから、それは誤解されないように。純粋か純粋でないかという変な議論をすると、また行く末がいろいろありますからね。
 ただ、先ほど八千億円云々はなかったというお話で、それはそれでいいんですが、去年の九月に日本から日中経済協会の訪中団が行きましたですね。そのときにケ小平氏が発言されている中では、竹下総理の持ってこられた六十数億ドルのお土産は決して小さくないが、さらに重要なのは日本の経済界の対中投資のテンポを速めることであるというふうに述べているわけですね。ここに向こう側としてのいわゆるこの投資協定を結びたいという最高首脳の意欲というものがこういう発言の形でも出ている。
 しかし、先ほど来言われておりますように、本当に双方の経済の利益にとっても完全に有益にこれがうまく機能して進んでいけるかどうかというのは、やつ。はりこれからにかかってくる。すべてが解決されているわけじゃないんですから、だからそういう意味では、私はやっぱりそういう相手のこともよく考え、こちらのことも十分に向こうに理解してもらうように努力をしながら、この協定が正しく発展させられるように努力していただきたいということを、私はこの問題については特に望んでおきたいというふうに思うんですが、大臣いかがでしょうか。
#119
○国務大臣(宇野宗佑君) 先ほどから市場原理等等のお話もございまして、確かにそうした面は社会主義国それぞれ努力しておられる現今だろう、こういうふうに私は認識しております。
 かつてケ小平さんと私お話ししましたときにも、ただいま社会主義の枠内において市場原理、競争の原理と言われましたが、競争原理の導入の是非について検討中ですと。そうしたことが開放・改革経済へと移ってくる、私はそう思いまして、そこにはやはり資本主義経済機構と社会主義経済機構とのまだまだなれ合わないところがあるかもしれませんが、しかしそこはお互いの制度というものを尊重しながら私はやはり努力してやっていけばいい、こういうことが今回の投資保護協定の趣旨である、こう思っていただいてもいいんではなかろうか、私はかように考えております。
#120
○立木洋君 あした中国の李首相が来られるということで、それに関連して、これはもう新しい問題ではないんですが、古い問題でもあるわけですが、よく言われてきた、つまりあの戦争をどう考えるかという問題ですね。これは先般も銭外相が来られたときに外相は盛んにこのことを説明されて、そして今回の問題は解決されたのではないかというふうに思われるということも新聞を通じて拝見いたしました。
 考えてみますと、この問題というのは中国と国交が正常化されてからやはり何回か繰り返されてきているんですね。これは中国だけじゃなくて朝鮮との問題でもそうですけれども。そして、これは一々お名前を出すのもあれかと思いますけれども、例えば藤尾元文相の発言あるいは奥野元国土庁長官の発言等々ありますし、それから歴代の総理の発言等を見ましても、これが侵略戦争だったということをはっきり述べられた発言というものはほとんどないに等しいという点でもあるわけですね。それで、侵略の事実はあっただとか、あるいは侵略というふうに第三国が主張していることをよく認識しているだとかいろいろな表現がある。けれども、あれは軍事力を用い日本が国家として事実上侵略戦争を行ったというかってない状態なんで、私はあの戦争を振り返ってみて、新しい出発を遂げなければならなかった日本としては、この点では、こういうことが再び起こらないようにやっぱりしなければならないんじゃないか。
 それで、改めてこの際お尋ねしておきたいんですが、戦後こうした問題について常に外国から、中国などを初めとする外国から批判を受ける、そして批判を受けたら弁明をして何とかこれ取り繕うということがこれほど繰り返されなければならないというのは、一体どうしてこんなことになるのかという点については、大臣はどのようにお考えでしょうか。
#121
○国務大臣(宇野宗佑君) 私は、そうした事態が今日まで何度となく繰り返されておることは非常に遺憾と存じます。やはり私たちの過去の戦争、あるいはまた韓国につきましては過去の政治でございます、そうしたものについては、もう既にコミュニケとかあるいは共同声明でもう明らかにしておりますので、やはりこのことは、政府といたしましても、さらに広く国民の方々にも認識していただきたいものである、かように考えます。特に、政治の継承性から申し上げましても、そうした先人の努力というものがあって初めて韓国との間も正常化し、また日中間にも新しい友好親善が生まれておるわけですから、だから閣僚たる者は当然そのことを人一倍認識しなくちゃなりませんし、またそうした議論を常に繰り返し、そしてこの条約等を御承認願いました国会におきましてもやはりその認識が当然持たれているべきものである、かように考えておるわけであります。それが、うかうかいたしますとそうでない方向の発言があったということが残念なことでございますが、私は、まあそういう意味で、過去の日本のいろいろな問題に関しましては、軍国主義の侵略であった、きちっとそういう認識を持ちまして、そして今後も対処していきたい、かように考える次第です。
#122
○立木洋君 大臣の発言も、よくお聞きしますと、侵略戦争というふうにはおっしゃらないんですが、侵略であった、侵略戦争であった、そこら辺はどうなんでしょうか。
#123
○国務大臣(宇野宗佑君) いろいろ言葉というものは大切にしなくちゃなりませんが、私は、日中間におきまして昨年来、今私が申し上げることをもってすべて申し上げて、先方の方も非常によくその点を理解していただいておる、かように思っておりますので、軍国主義の侵略である、こういうふうに申しております。戦争に関しましては既に共同声明で、戦争を通じて中国の国民に迷惑を与えた、このことはまことに遺憾である、こういうふうに表明されておりますから、そういう一連のものをずっと考えればよいのではなかろうか、こう考えております。
#124
○立木洋君 私はその言葉にただ単にこだわるわけではなくて、あの戦争というのは人類に与えた大変悲惨な事態であった。先ほどのお話にもございましたけれども、アジアにおいて二千万人、そして日本が三百万人以上死傷しなければならないという重大な事態になって、そこから復興して今日に至るまでというのは大変な事態をそれぞれの民族がやっぱり経てこなければならなかった。こういう事態は決して起こしてはならないということで明確にされて、極東裁判も行われたし、あるいはドイツの場合もニュルンベルクで裁判が行われたわけですね。
 その裁判の判決を見ましても「これらの犯罪は、侵略戦争または国際法、条約、協定もしくは誓約に違反した戦争の計画、準備、開始及び遂行」であったということが明確に出されておりますし、「判決は東アジア、西及び西南太平洋、及びインド洋、これら大洋における島々の一部の軍事、政治、経済支配獲得を目的とする侵略戦争が行われたことを認定した。」と、これは判決文ですね、そして「侵略戦争を遂行するための共同謀議の存在を認定した」、「侵略戦争を遂行する共同謀議、又は侵略戦争を遂行することよりも、いっそう重大な犯罪は、まことに想像することができない」、つまり「最高度の犯罪」であるということもここで明確に規定しているわけです。
 この極東裁判で示された内容についてはサンフランシスコ平和条約で日本政府は受けたわけですね。サンフランシスコ平和条約の第十一条に「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し」と、こういうことをはっきりされたんですね。そして、第十二回国会で、大橋法務総裁、当時の法務総裁ですが、これは結局「十一条により裁判を受諾するということは、被告に対して申し渡された裁判を合法的且つ最終的なものとして、日本国政府が承認するという意味を含んでいる」ということも日本政府の態度として明確にされているわけです。
 ですから、この極東裁判で出されたものがあのサンフランシスコ条約の中でも明記され、そしてそれを日本国の政府としては受けとめているわけですから、これが軍事、政治、経済のすべての分野にわたるやはり侵略戦争であったというこの裁判の認定、これをしっかりと受けとめるということを私は基本にしなければ、日本国の政府として今後態度をとっていく場合に、いろいろなやっぱり国際的な支障がまた生じかねないということになるんではないか。今までのそういう経過が起こってきたのは、ただ単なる偶然にそういうことが言葉の舌足らずで起こったとかいうことではなくて、これは普通一般の方々が認識不十分であるいはよく理解できないためにさまざまなお考えを持つということが仮にあったとしても、それはそれとして、しかし少なくとも政府を預かる立場にある人が、この問題に対しては自分の考えは自分の考えであって、日本国政府として歴史的に経過を経てきた内容についてあいまいな態度をとるということは、私はやっぱり許されるべきではないだろうと思います。
 ですから、こういう点についても、今後の日本の対外的な姿勢を明確にしていく上でも戦後の出発点ということをもう一度よくやはりお考えいただいて、こういうふうな誤りが繰り返されることのないようにはっきりさせることが日本の国の新しくすべての国々との経済関係を発展さしていく上でも私はやっぱり大切な点だろうというふうに考えるんですが、その点、大臣いかがでしょうか。
#125
○国務大臣(宇野宗佑君) サンフランシスコ平和会議において私たちは極東軍事裁判の結果をすべて受諾しておる、これは紛れもないことでございます。また、平和会議におきましては、そうした精神によりまして私たちは諸外国と今後平和に生きていきますということをはっきりうたわれておるわけでございます。
 だから、私たちも今申し上げましたような認識を持ちつつ、ともすれば経済大国日本は軍事大国になるのではなかろうかというような危惧すらある今日、まだ決してこれは消えておりません。政府といたしましては、経済大国日本は軍事大国ならずということを常に申し上げ、また私自体は、過去の戦争においては軍国主義の侵略があったと、このことをはっきり認識をしていきましょうということは常に申し上げておるわけでございます。そうしたこともひとつ御理解賜りたいと思います。
#126
○立木洋君 最後ですが、最後まで結局侵略戦争という内容については大臣はお触れになりませんでしたけれども、そういう考え方は間違いなく受けとめられるという意味ですが、こういうことが今後起こらないように何らかの措置をやはり宇野外相の時期におとりになられたらいかがでしょうか。つまり、少なくともこういうような、私は失言とは言いたくないんですが、こういう舌足らずだとかというふうなことで再び外国に対して謝罪をして、そして解決しなければならないような事態が少なくとも閣僚の間からは出ないという何らかの措置を私は宇野外相が外相の時期にとっていただきたい。ましてや明日、李首相も来られるわけですから、その問題とは別にしても、この重要な時期に私は、日本の政府のあり方としては、少なくともその問題は外相がそのようにお受けとめになるならば、このことを何らかの措置をとっていただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
#127
○国務大臣(宇野宗佑君) 昨年ちょっといろいろ問題がありましたときに、私もきちっとしたそうした私の見解、内閣としての見解、申し述べております。
#128
○立木洋君 もう一言だけ。
 申し述べてもまたやっぱり起こるわけですから、ひとつ外相の時期に必ず何らかの措置をとっていただくということを強く希望しておきたいと思います。
#129
○小西博行君 今回の保護協定が締結されたということは、大変私は歓迎しているわけです。むしろえらく遅きに失したんではないかという感じすらしているわけでありますが、きょうは内国民待遇という問題についてはもう相当議論をされているわけであります。そういう意味で、この議定書を読ませていただいたんですが、第三項にあります「公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のため真に必要な場合」は差別的待遇を与えても内国民待遇に反しないとされているわけです。このような抽象的な規定内容では、場合によっては乱用されるという懸念もあるんではないか、そのように思いますが、この議定書をつくるに当たりまして、日中間で十分に具体的な検討がなされたんじゃないかというふうに思いますので、その辺をまずお伺いしたいと思います。
#130
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 先生御案内のように、中国におきましては、最近のいわゆる改革・開放政策の進展というものがありまして、法制度もそれに伴って整備されてきまして、そういう背景をもって今回御審議いただいているこの協定で、原則的ではありますけれども、内国民待遇を日本に与えるということに踏み切ったわけでございます。
 他方、改革の過程にまだ中国は依然としてあるわけでございまして、その意味におきましても発展途上国でございます。そういった中国経済の複雑ないわば実情等からいたしまして、そこからいろいろ起こってまいります中国側の制約ということにつきましては、やはり日本側も妥当な考慮を払う必要があったわけでございまして、したがって一々細かい話を書いたらどうだという御議論もわかるわけではございますけれども、例外を具体的に列挙するというふうなところまではまだ中国の国内も成熟しておりませんので、御指摘のようなことはございましょうけれども、一般的な表現で抑えたわけでございます。
 ただ、その差別的な待遇ということにつきましては、あくまでも中国側は関係の法令によってください、関係の法令に従ってこれを示してくださいと、言葉をかえて言いますれば、国内法令上根拠がない差別は日本としてはこれは認められませんと、こういうことをはっきり申し上げまして、その点はこの議定書の中でも明確に確保されておるところでございます。
 確かに、御指摘のように、いろいろな問題が詰まってないという御批判はありましょう。したがいまして、そういう点につきましては、個々の事例に即しまして、両国政府間で設けられることになります合同委員会におきまして十分討議を尽くして円満な解決を図っていきたいということに中国側と話し合った次第でございます。
#131
○小西博行君 さらに議定書第四項、この中で、外国人及び外国会社の活動に関して特別の手続を定めることも、内国民待遇を実質的に害するものでなければ差別とみなさないというように言われております。ここで言う「実質的」というこの意味についても、日中間で大きく解釈が異なる可能性があるんではないか、このように心配もするんですが、外務省の見解をお伺いしたいと思います。
#132
○政府委員(谷野作太郎君) 投資に関連いたします事業活動につきましては、確かに協定の第三条の二項におきまして、規定に従って内国民待遇が与えられるということになっているわけですけれども、そのような原則にもかかわりませず、協定の第三条の二項で保障された「権利を実質的に害するものであってはならない」ということを条件といたしまして、外国人の行う事業活動につきましては、公共目的上必要な加重的な手続の要件を課すことを妨げるものではないというのがこの趣旨でございます。
 そこで、実質的に害さない、これは一体どういうことかということでございますけれども、内国民待遇の付与によりまして確保されるいわば権利の実体が害されてはならないという趣旨でございまして、この点につきましては日中間で理解の差はないように思います。
 そして、同じような話になりますけれども、個個のケースで、ある特定の手続がここに言う実質的にこれを害する云々ということについて、仮にこの解釈の相違等議論が分かれました場合には、協定の十三条等でこれに規定する手続によってこの解決が図られるという道が残されておりますし、同じようなことになりますが、そのほかに合同委員会というものもその種の議論を尽くす場に適切であろうかと思います。
#133
○小西博行君 こういう協定ができたわけですが、たしか宝山製鉄所の問題が数年前にございまして、四、五年前になるでしょうか、あの場合は恐らぐ契約というんでしょうか、向こうの国と日本の企業との契約が不十分であったのか、あるいは途中でその契約の解釈が中国の方が違った解釈をされて数年間とまるということがありましたね。ちょうどそのときに私も中国へ行って宝山製鉄所にも行ってまいったわけです。私はそのときにいろいろお伺いしますと、そういう契約も、いろんな法律が中国では不十分だと、したがってなかなかその辺がうまくいかないんだというお話でありました。もちろんこれは合弁企業もたくさんありますし、三洋電機がたしか深切で単独でやっておられたと思うんですが、そこへ行きましても、十四年契約で土地、建屋を借りている、しかし果たしてそれが間違いないのかどうだろうか、十四年間もですね。そういうことを大変企業側としては心配している。
 さっきのお話では、二重価格の問題がやっぱり出ておりますね。その際、従業員の方の住宅ですよね、向こうで家を買った場合にえらく高いと。小さい住宅でたしか三千何百万とか言っていましたけれども、隣に中国人の同じ住まいがありましたがそれは数百万とそれぐらいの価格差があって、なかなか向こうで住むのには大変なんですよという話も実はあったわけでして、そういう部類はすべてこの協定で解決されるんではなくて、先ほどの話じゃないですが、アメリカの話が出ましたね、向こうで会社をやるという場合、協定の場合にアメリカでは弁護士を立てて長期間かけて十分なる精査をして契約をする。そういう契約をすると大して問題はないんでしようというようなお話があったんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
 私考えますのに、今度のこの保護協定ができて全部心配ないということにはならない、企業間のいろんな問題もあるだろうとさつきお話もありました。大体何%ぐらいこれで解決できるんでしょうかね。なおかつまだ心配な要素がたくさんあろうかと、どれだけの威力を発揮するのか、そういうふうに感じるんですが、いかがでしょう。
#134
○政府委員(谷野作太郎君) 恐らくこの協定を御承認いただいて発効に至りました場合に、日本からの企業がどれほど伸びていくのか、あるいは伸びていかないのかというお尋ねかと思いますけれども、そこは今私の立場できちんとした判断を実は持っておりません。ただ、間違いなくこれが何らかの中国に対するいい意味での投資の促進材料になるであろうという確信は持っておりますけれども、しからば明年、明後年と何割ずつ伸びていくのかという具体的な見通しは私は持っておりません。
 申し上げるまでもないことでございますけれども、この協定というのはまだあくまでも法的な枠組みを基本的な問題についてつくったということでございまして、他方、中国に実際に投資をなさろうとする場合に、これを超える、あるいはこれの中に入らないいろいろな現実の問題はそれはそれであるわけでございまして、しかるがゆえに中国の政府の関係者には、私どもは投資保護協定ができたからといってすべて中国側のなすべきことは終わったと思ってもらっては大間違いであると、投資環境改善のためになすべきことは多々あるということをあわせて事あるごとに中国側に申しておるところでございます。
#135
○小西博行君 もし御存じであれば、宝山製鉄所の失敗の原因というのは一体何だったのか、どのように理解されているのか、もしおわかりでしたら答えていただきたい。
#136
○政府委員(谷野作太郎君) 私もちょっと過去の経緯でございますから不勉強なこともありまして詳細は存じませんが、一つには、あのときはたしか華国鋒政権でございまして、とにかく外国から大変なスピードで大きなプラントを、中国の現状を超えたスピードで大胆にといいますか、受け入れたということでございまして、そのスピードが速過ぎたということ、そしてそれに対しまして「大躍進」と言わずに「洋躍進」と言って華国鋒さんのとられたあの種の外国からの大量のプラントの輸入が国内で大きな批判が出てまいりました。そんな経緯もございまして党の当事者たちが若干慎重になったということで、日本側の熱意にもかかわりませず、プラント全体が若干の縮小、調整を余儀なくされた。そこで日本政府は、これに対しまして政府のベースで、御記憶だと思いますが、若干の経済協力の面でお手伝いいたしましてこれをつないだ経緯がございます。
#137
○小西博行君 私もあれはやっぱり資金不足というんでしょうかね、それが一番大きな原因というふうにつかまえているんですよね。
 私はそこで、あの当時はここの法案で今度できる合同大貝会――合同委員会というのはなかったわけでして、混合委員会というのがあったというふうに理解しているわけです。その混合委員会と合同委員会というのは一体どこが違うのか。合同委員会というのは相当効力はあるというふうに先ほどからおっしゃっておられるようなんですけれども、混合委員会もそう変わりはしなかったんじゃないかと、そういう感じがするんですが、この両方の機能の違い、あるいは権限がもう少しふえるのかどうかわかりませんが、その点はどうなんでしょうか、中身ですね。今度は検討とか協議、勧告とか、こういうようなものもある程度具体的に行うんでしょう。
#138
○政府委員(谷野作太郎君) 仰せのとおりでございまして、両方の基本的な違いと申しますのは、混合委員会の方は主として貿易上の問題を両国の政府レベルで扱う場として協定に従って設けられております。関税の引き下げの問題とか日本市場への参入の問題とか、そういうことが話題になるわけでございます。
 ここで定めております合同委員会と申しますのは、この協定の下に設けられるわけでございますから、専ら投資に係る両国間のいろいろな問題をまさに率直に政府ベースで討議するという場でございます。どういうレベルでこれを設けるかということにつきましては早急に中国側と合意に達しなければいけないと思いますけれども、仰せのとおりでございまして、なるべく頻繁にこれを中国との間で北京、東京、交互に開いていきたいと思っております。
#139
○小西博行君 そういう意味じゃちょっと機能がどういう問題について実際にこの合同委員会というのは機能を発揮するのかというのがちょっと私もまだ理解ができないわけですがね。例えば日本の企業が向こうへ行っていろんな事故によって不利益をこうむったようなことが発生した場合に、この合同委員会がその機能を具体的に発揮するのか、そういうことはどうなんでしょうか。
#140
○政府委員(丹波實君) 抽象的に事故と言われた場合、どういう状況で起こった事故かその他によって対応が非常に違うものですからお答えが非常に難しいんですけれども、例えば中国に進出した日本企業の隣にたまたま普通の中国人が経営する工場があって、それが爆発したために損害を受けたというようなケースですと、これは中国の中で損害賠償を争う問題に発展するわけです。
 この協定との関連で言えば四条の条項が働きまして、この四条によれば、中国におきまして日本の国民及び会社は中国の裁判を受ける権利があるというふうに規定しておりますので、かつその裁判を受けるに当たっては最恵国待遇及び内国民待遇を与えられるということになっておりますので、もしそういう待遇を損害を受けた日本企業が与えられないのであれば、これは協定違反の問題としてあるいは外交交渉で取り上げられますし、あるいは違反の前段ぐらいのところでもめておるのであれば、場合によっては合同委員会の話題にもなるというようなことで、状況によって対応が違うと思いますけれども、そういう過程の中で合同委員会が関与するということは、これは排除されないんじゃないかと思います。
#141
○小西博行君 つまり、やっぱり日本の企業が向こうへ行くということは非常にいろんな心配があるということだと思うんですね。特に、中国の場合には政治の変化によって全く中身が変わってくる。一般の企業の人にお話を伺うと、何年契約でそこの場所を借りるということなんですけれども、それにしても、ひょっとしたらそれが十分履行されないんじゃないかというような心配を恐らく皆さん持っておられるわけです。
 そういう意味で、この合同委員会なるものは、とにかく向こうへ行った場合の環境整備ですよね。そういう環境整備を十分やっぱりつかんでいただいて、議論していただいて、そして安心して海外投資ができるような体制づくりという、私はそれがまず第一だと思います。
 そういう意味では、もう経済特区の中でも深切とかあの近辺というのは、香港と近いということもあって非常に今発達していると思うんですよ。一般の中国の中でもまるで異質な発展状況だと思うんですね。ところが、ちょっと右の方の海岸ベリ、あれは沿海地域と言うんでしょうか、あの近辺にも資料を見ると随分会社ができておる。どうも私自身はあっちの情報がわからないので、一体何をやっているんだろうかなという感じがするんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。深切以外の経済特区、準経済特区という表現をされておったでしょうかね、昔。
#142
○政府委員(谷野作太郎君) 私ども、先生の御質問受けまして、経済特区を除きました地域にどの程度の諸外国からの投資が行っているかということを調べておりますが、とりあえずの手元にそれだけを扱った資料がないので御容赦いただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、経済特区も含めますと、いわゆる中国の言葉で言う沿海経済開放地区、ここにつきましては、先生もお話しのようにまさにこの地域の投資環境というものが非常に他の地域に比べればすぐれておるわけでございますから、この手元の資料によりますと、日本からの投資のうちの極めて多くの部分がそこに向けられておるということは間違いないようでございます。
#143
○小西博行君 海岸ベリですからね、日本の船の解体作業をぜひやってみたいと、それで日本ではああいう解体作業というのが余り利益につながらないということもありまして、要するに解体した材料を使って何か物をつくる、これは台湾あたりでもそういうものからスタートしているわけでしょう。そういう要望が数年前に随分ありました。
 そういう意味で、もう少しやはり内情を調べていただいて、当然内陸とはもう全く違いますからね。恐らくそこに適した何かの産業をやっておられると思うんです。件数だけはこれは随分の数が日本からも行っているんですよね。アメリカからも相当入っていますよ。そういう意味で、この地区がこれからは恐らく経済特区の次にどんどん発展していくんじゃないかと、そう思いますので、きょうは資料はお持ちじゃないようですから、この次でも結構ですから、そういう実情を調べていただきたい。
 以上です。
#144
○委員長(堀江正夫君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#145
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#146
○委員長(堀江正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#147
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#148
○委員長(堀江正夫君) 速記を起こして。
    ―――――――――――――
#149
○委員長(堀江正夫君) 次に、旅券法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宇野外務大臣。
#150
○国務大臣(宇野宗佑君) ただいま議題となりました旅券法の一部を改正する法律案について提案理由を御説明いたします。
 我が国の旅券発給件数は、昭和二十六年の旅券法施行以来増加の一途をたどってきましたが、特に最近においては円高傾向の定着と相まって急激な伸びを示しており、昭和四十七年に約百万件であった発給件数が昭和五十七年には二百万件台、昭和六十二年には初めて三百万件台を超えて三百三十八万件に達し、今や我が国は米国に次ぐ最大規模の旅券発給国となるに至りました。
 従来はごく一部の国民を対象としていた旅券の発給がこのように急激に一般化するに伴い、旅券発給窓口の混雑、旅券事務量の膨張、旅券管理の複雑化等の諸問題が生じており、その改善が急がれております。他方、大量渡航時代における旅券事務及び出入国手続の合理化及び管理強化の必要性から国際的に機械読み取り旅券(MRP)の導入が開始されておりますが、我が国としても早急に機械読み取り旅券を導入することが望まれます。
 現行旅券法は昭和四十五年に改正して以来二十年を経過しており、このままでは、右のような現在の内外の諸状況に対応し切れなくなっております。このため、旅券法の一部を改正することにより、手続の簡素化、事務の整理、合理化を行い、国民の一層の便宜及び行政効率の向上を図るとともに、内外における旅券制度の適正な運用を図ろうとするものであります。
 以下、この法律案の主な内容につき御説明申し上げます。
 第一は、一般旅券の原則数次旅券化であります。
 旅券を国際的な標準旅券に統一し、事務の合理化を図るため、一般旅券は、有効期間五年の数次往復用旅券とすることを原則としました。ただし、二重に旅券を発給する場合及び発給を受けようとする者が長期二年以上の刑で訴追中である場合等においては、渡航先を個別に特定し、有効期間を五年未満とすることができることといたしました。一往復用の一般旅券につきましては、外務大臣が指定する地域へ渡航する場合を除き廃止することとしました。
 第二は、有効期間の満了時点を明確化したことであります。
 機械読み取り旅券の導入に備えまして、すべての旅券は有効期間満了の具体的な日付を旅券面に記載することとし、同日を経過したときに失効することといたしました。
 第三は、提出書類の簡略化等であります。
 一般旅券の発給申請のために必要な提出書類のうち、渡航費用の支払い能力を立証する書類を削除することとしました。また、申請書、請求書等の通数及び写真のサイズ等詳細については、技術の進歩に伴って簡略化を弾力的に実施し得るよう、省令で規定することとしました。
 第四は、本人出頭義務の緩和であります。
 本人出頭義務を原則として交付時一回とし、申請時は幅広く代理申請を認めることといたしました。また、病気、身体障害、交通至難の事情等真にやむを得ない理由があるときは、例外的に本人の出頭を免除し得るような救済措置を設けることとしました。
 第五は、記載事項の訂正の原則廃止であります。
 機械読み取り旅券の導入に備えて、旅券の記載事項の訂正を原則として廃止し、新規発給にてかえることとしました。ただし、渡航者の便宜のため、一般旅券については、名義人の氏名、子の併記に係る事項等に関して、変更が生じた場合には、別ページに訂正を追記することを認めることとしております。
 第六は、切りかえ発給の規定化と再発給制度の一部廃止であります。
 残存有効期間が一年未満になった場合等における切りかえ発給を明文で規定することとしました。また、査証欄に余白がなくなった場合についても切りかえ発給により新規旅券を発給することとしました。
 第七は、合冊の廃止であります。
 事務の簡素化の観点より、現在では諸外国にほとんど例を見ない合冊制度を廃止することとしました。
 第八は、手数料の一部の都道府県への分納化であります。
 都道府県における旅券事務の財政基盤を改善するため、これまでの委託費方式を改め、手数料の一部を実費を勘案して政令で定めるところにより都道府県へ分納することとしました。
 次に、施行期日等であります。
 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、手数料の都道府県への分納に係る規定につきましては、平成元年六月一日から施行することといたしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
#151
○委員長(堀江正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#152
○矢田部理君 海外渡航者が非常に激増したということにかんがみて、事務の簡略化とか合理化ということが言われているわけでありますが、海外渡航者にとってはどんなプラス、どんな点で利益が出るのか、サービスの面も含めてちょっと説明をいただきたいと思います。
#153
○政府委員(黒河内久美君) 海外渡航者が旅券を申請いたします際に、現行法では二度の出頭を求めておりましたものを今回は原則交付時一回で済むようにいたしました。
 さらに、従来現行法上では渡航費用の支払い能力について証する書類を申請時に要求しておりましたけれども、これも時代の趨勢にかんがみまして不要ということにいたしております。
 また、機械読み取り旅券を近い将来に導入することといたしておりますけれども、それに伴いまして旅券の発給の事務自体がかなり合理化されますので、そのために発給の日時も今よりは少なくなるように期待しております。
 さらに、もう一言つけ加えさしていただきますと、都道府県の財政基盤の強化を図ることによりまして、窓口の混雑等の解消に向けて行政サービスの向上にも資するものと考えております。
#154
○矢田部理君 最後にお話のあった手数料の問題でありますが、従前は委託費方式ということでやってきたようですが、今度は都道府県への分納化という新しい方式を導入されるそうでありますが、具体的にはどんなことになるんですか。
#155
○政府委員(黒河内久美君) 旅券手数料のうち、都道府県の収入となる額につきましては、実費を勘案して政令で定めることとなっておりまして、現在検討中でございますが、基本となる一般旅券、五年の数次旅券でございますが、これにつきましては手数料八千円のうち千五百円を都道府県の収入とすることを考えております。
#156
○矢田部理君 従前の都道府県に委託費として払っていたお金と分納化によって払うお金とは総額的にはどんな違いが出て、都道府県の財政基盤には具体的にどんなプラス効果が出てくるのか。
#157
○政府委員(黒河内久美君) 例えば昨年度の予算で申しますと、委託費として認められておりました額は年間約三十億円でございましたが、仮に年間の旅券発給数を四百万通、これはほぼ昨年度の実績に見合う額でございますが、これを前提といたしますと、都道府県の取り分といたしましての収入見込みが約六十億円に上ると推定されます。
#158
○矢田部理君 従前、この都道府県に払っていたお金の総額、ちょっと聞き落としましたが……。
#159
○政府委員(黒河内久美君) 約三十億円でございます。
#160
○矢田部理君 すると、従前の倍ぐらいのお金をこれから都道府県に渡すということになるわけですね。
#161
○政府委員(黒河内久美君) これまでは旅券の手数料は国庫に入りまして、国家予算といたしまして外務省に委託費が計上されておりましたものを都道府県に交付していたわけでございますが、今後は、あらかじめ都道府県が窓口で徴収する手数料のうち、現在私どもがめどとしている額といたしましては、千五百円をあらかじめ都道府県が取るという仕組みでございます。結果的には、先ほど御説明いたしましたように、約倍の六十億円というものが見込まれるのではないかと考えております。
#162
○矢田部理君 そこで、第五条ですか、「一般旅券の発行」という規定があって、基本的な枠組みといいますか内容が規定されていると思うのですが、二項はそれなりにわかりますが、一項、三項などを中心に基本的な枠組み、制度の意味というものについて御説明をしてください。
#163
○政府委員(黒河内久美君) 第五条の第一項におきまして、一般旅券の発給については、外務大臣が指定した地域以外のすべての地域を渡航先とした有効期間五年の数次旅券とするという原則を打ち立てております。これに対しまして、指定地域への渡航者につきましては、数次旅券ではなく一次旅券を発給することといたしておりますが、「ただし、外務大臣が適当と認めるとき」は、指定地域であっても限定的な数次旅券を発給し得る余地を残したものでございます。
 なお、一たん外務大臣が指定した地域でありましても、その後この指定を外したときは、申すまでもなく通常の一般旅券が発給されることになります。
#164
○矢田部理君 この三項に書いてあります「外務大臣が指定する地域」というのは、従前は中国とかベトナムとか東ドイツなども含めて相当の数に上ったようですが、現在はどこですか。
#165
○政府委員(黒河内久美君) 現在唯一の未承認国として残っております北朝鮮でございます。
#166
○矢田部理君 その朝鮮民主主義人民共和国にかかわる問題ですが、私は、朝鮮民主主義人民共和国だけを別扱いにするというのはいかがなものかというふうに率直に考えるわけです。特に、朝鮮外交については本格的な見直しが必要だと、現に竹下総理の最近の御発言、それから外務大臣もそれに見合った御発言がありますが、等々を見ますと、少しく動いている感じもいたしますが、この朝鮮民主主義人民共和国に対する外交姿勢の根本的な転換が必要だと、あるいは改善策が求められているというふうに理解をします。
 その立場から、特に今度の旅券問題でも、依然として別扱いとして残すというのはいかがなものかというふうに考えておりますので、外務大臣としてその辺の認識なり今後の考え方などについてまとめてお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#167
○国務大臣(宇野宗佑君) もう既に本国会冒頭におきまして、総理大臣の施政方針また私の外交方針、そこで申し述べましたとおり、北朝鮮、正式には朝鮮民主主義人民共和国との関係改善を我々としては心から望む、そのためには政府間の接触、これを一日も早く求めたいものであるというふうに呼びかげております。この心には今日いささかの変動もございません。
 したがいまして、今後も交流の促進につきましては積極的に努めていきたいと、かように考えております。先方もこれに応じることを私は心から期待します。このため、人的往来につきましてはできるだけ発展するように柔軟な対処をしていくことも必要でございましょうし、政府はかねて申してまいりましたとおり、前提条件をつけません、前提条件をつけずに対話を求めている、これが現在の政府の立場でございます。そうした意味で、共和国向けの旅券につきましても数次旅券を今回発行できるようにしましたのもその一環と考えてよいと、今後はその趣旨を生かしていきたいと、かように思っております。
 で、このような具体的な対話や交流の進展の中で、例えば在外事務所が開設されるようなことになれば、先ほど矢田部委員が御指摘になりましたが、現行の旅券法の北朝鮮を除くという特記事項は外すことになるとこのように思いますし、政府といたしましてもその実現のために早急に今後も努力をしていく、これが私の考え方であります。
#168
○矢田部理君 外務大臣が今御発言になった発言は、私も非常に前向きの発言だというふうに受けとめるわけでありますが、特に承認国とは旅券の発給等は一般的にしているわけでありますが、未承認国についても、承認とか国交回復以前に在外事務所等の設置等があれば特記事項を外すということの意味を私は積極的に受けとめて、ぜひそのように、しかもそういうことは早期に実現できるように御努力いただきたいというふうに思いますが、よろしゅうございますか。
#169
○国務大臣(宇野宗佑君) はい。従来私どもといたしましては、北朝鮮を除くという特記事項は、これはもう当然、従来の冷戦時代の名残であった国々が関係改善をし承認をしたという段階で全部消してきて、ひとり残ったわけでございますから、一番正確なのは国家承認ということでございましょうけれども、承認前に海外事務所を設けることも、これは旅券を発給した場合の我が国の邦人の保護ということが具体化するわけでございますから、さような意味で特記事項は排除し得ると、こういうふうに考えているところであります。
#170
○矢田部理君 それからもう一点。
 共和国等に対しても今度は一次旅券ではなしに数次旅券の発行ができると、こういう制度になったわけでありますが、制度の仕組みはそうなりましたが、具体的にやるかどうかはこれから大臣の判断にかかるわけですね。その点でもきょうの御答弁では、そういう制度を改善した趣旨を生かして積極的に対処する、前向きに進めていくと、こういうことでございますので、その点もよろしくお願いしたいというふうに思いますが、よろしゅうございますか。
#171
○国務大臣(宇野宗佑君) その点もそのようにお考え賜りたいと思います。そのために速やかに政府間の接触、これを私たちは望みますよと、こういうふうに私らは申し上げております。積極的に私たちはあらゆる問題でそういう基本的な姿勢で臨みたい、これが現在の我々の考えであります。
#172
○矢田部理君 以上です。
#173
○広中和歌子君 有効期間が五年でございますね、現行の。それをなぜ五年になさっているのか、その根拠は何でございますか。
#174
○政府委員(黒河内久美君) 世界各国が採用しております旅券も五年ないし十年、いろいろあるわけでございますが、私どもといたしましては、本人の容貌でありますとか身分事項等の変化の起こり得る相当な期間及びそれらを確認する妥当な期間として、従来どおりの五年の有効期間が妥当であるというふうに判断いたしております。
#175
○広中和歌子君 つまり、それをもっと延長するというお考えは今のところございませんか。
#176
○政府委員(黒河内久美君) ただいま申し上げましたような理由によりまして、当面は五年が妥当というふうに考えております。
#177
○広中和歌子君 再発行の場合でございますけれども、どのような書類が必要なんでしょうか。新規に申請する場合と同様の書類が必要であるとしたら、その理由は何なんでしょうか。
#178
○政府委員(黒河内久美君) 再発行の場合には、有効な旅券を提示されれば結構でございまして、戸籍書類の提出は必要としておりません。
#179
○広中和歌子君 それは変わったんでございますか。たしか必要だったと思ったんですが、なぜ必要なのか、私は大変疑問に思いましたものですからそういう質問をしたんですが。
#180
○政府委員(黒河内久美君) 現行法上も有効な旅券があれば特に国籍等の戸籍謄本の提出は要求いたしておりませんので、そのような運用になっております。
#181
○広中和歌子君 つまり、旅券が切れてなければということでございますか。――そうですが、わかりました。
 それから、非常に細かな質問で恐縮なんですけれども、再発行の場合の旅券番号でございますけれども、新しい番号がつけられているようでございますけれども、どうして同じ番号で一生同じ旅券番号にしないのかという御質問をさせていただきます。
#182
○政府委員(黒河内久美君) 御指摘のとおり現在発行される旅券はすべて番号が異なるわけでございますが、これは紛失旅券も多数上りますし、管理上同じ番号を踏襲することは極めて困難でございますので、ただいま申し上げたような取り扱いになっております。
#183
○広中和歌子君 ただ、今度のようにラミネートの非常にコンピューター化しやすいようなシステムになりますと、仮になくしましてもすぐに番号がわかるんじゃございませんか。ですから、その方がかえってこちらも一々パスポートを出さなくても旅券番号は書けますし、覚えやすいというようなこともあるんじゃないかと思うんですが。
#184
○政府委員(黒河内久美君) 先ほど旅券の管理の問題があると申しましたけれども、旅券につきましては不正使用等の事例も多々ございますので、やはり一つの旅券につきましてそれぞれ別の番号を付すことが妥当だと考えております。
#185
○広中和歌子君 それから、手数料八千円のうち千五百円を都道府県へ分納化する、そういうことは大変結構だと思いますのですけれども、千五百円にした根拠というのはどんなものでございましょうか。
#186
○政府委員(黒河内久美君) これまでの都道府県における年度ごとの旅券事務経費の実績を踏まえまして、かつ現在窓口が大変混雑しておるというような事態を解消するための各都道府県の財政基盤の強化ということを勘案いたしまして定めた額でございます。
#187
○広中和歌子君 それにしては何か千五百円というと大変少ないような気がするんでございますが、先ほど都道府県としてはむしろ増収になるということでしたけれども、私はむしろサービスの向上に努めていただきたいという意味からも、もっと都道府県への分納の料金を上げていただいた方がいいんじゃないかというふうな考えを持っておりますが、そちらのお考えはいかがでございましょうか。
#188
○政府委員(黒河内久美君) 例えば昨年度の実績で申しますと、委託費が約三十億だったわけでございますが、都道府県におきます超過負担は約十億円でございました。したがいまして、現在の見込みではこの新しい分納制をとりますと都道府県の収入として約六十億円が見込まれますので、超過負担額をはるかに上回る額のものが都道府県にいくというふうに考えております。
#189
○広中和歌子君 ただ、今現在どうか存じませんけれども、少なくとも数年前に行きましたときには昼休みで閉まっているとか、つまり働いている人が旅券申請に行くのが非常に難しい。今回、土曜閉庁なんかになりますと、さらに休んで行かなくちゃならないというようなことにもなるようで、そういうことから見ましても本当にもっと窓口のサービスを向上していただきたい。それで、委託金ですか、それが増すことによって少し向上するものであるなら、むしろそうしていただきたいと思っているわけなんでございますけれども。
#190
○政府委員(黒河内久美君) ただいま先生御指摘のサービスの向上につきましては私ども大変重要だと思っておりまして、常日ごろ都道府県に対してもそのような要請を行っているわけでございますが、今御指摘の例えば昼休みでございますが、既に混雑の激しい都道府県におきましては昼の時間帯についても窓口事務を行っている例がございます。
 また、土曜日も隔週土曜閉庁制が実施されているわけでございますが、旅券窓口も一部を除き原則的に閉庁されることにはなっておりますけれども、旅券発給につきましては緊急の場合には閉庁日でも外務本省及び関係都道府県で対応することが可能でございます。四月一日から隔週土曜閉庁が実施されておりますけれども、例えば東京につきましては夏季は旅券については土曜閉庁せず、また大阪は土曜閉庁を行っていないというふうに承知いたしております。
#191
○広中和歌子君 今回、代理申請がもっと大幅に許されるということでございますけれども、窓口の数が足りないというような場合には、郵便局なども受け付ける窓口として考慮されてもいいんじゃないかと思うんですが、その点についてお伺いいたします。
#192
○政府委員(黒河内久美君) 旅券というものの性格でございますけれども、その所持人が自国民であることを証明し、渡航先の外国官憲に対し所持人の保護と旅行の便宜を要請するという重要な公的文書でございます。したがいまして、旅券の発給については国として、その内容、発給の可否等について国民及び諸外国に対し重要な責任を有すると考えられますので、これを郵便局等に委託することは現段階では適当でないと考えております。
#193
○広中和歌子君 よその国などでそういうことをやっているところもあるものですから、今後少なくとも現在の窓口の数をふやすとか、サービスの向上にぜひ努めていただきたいとお願いして、質問を終わります。
#194
○立木洋君 先ほど同僚委員の質問で第五条の問題にお触れになられて、「外務大臣が指定する地域」ということが記載されながらも、「外務大臣が適当と認めるとき」には数次往復旅券の発行が可能であるということが記載される、またその指定する地域を除去する可能性についても言及されたという点は、この案件の審議に当たって私は注目しておきたい点だと思います。
 それで、今の朝鮮半島の状況というのが変わっておりますし、そういう事態ができるだけ速やかに来ることを願っている者として、若干の点をお尋ねしておきたいのです。
 朝鮮半島には二つの国家が存在しているのか一つの国家が存在しているのか、あるいは二つの政府が存在しているのか一つの政府が存在しているのか、いろいろ長い間の議論があります。現在、朝鮮半島には二つの国家、二つの政府が存在しているというふうに日本としてはお認めになっているのかどうなのか、その点はいかがでしょうか。
#195
○政府委員(福田博君) 朝鮮半島におきましては、先生御承知のとおり、日韓基本関係条約第三条によりまして、国連決議第百九十五号、これは第三回国連総会の決議でございますが、それに言う唯一の合法的な政府があるということでございまして、これは私どもの考え方は今でも全く変わっておりません。
 他方、じゃこの条約第三条が、北側に有効的に支配している政府の実体があるということについては何ら触れているわけではございませんで、それについては白紙の状態であると。したがいまして、北朝鮮というものについて私どもが国家承認をしているかといえば、これは国家承認も政府承認もしていない。しかし、実態が北の方にあるということを何ら否定するものではないというのが法律的な考え方でございます。
#196
○立木洋君 なかなかややこしい言い回しをしないと説明がつかない日本政府の立場なんですね。二つ現実に存在しているんだから存在していると、しかし日本政府としては南を唯一としているんだというふうに述べれば、それはそれでいいんじゃないかと思うんです。ややこしくしなければならないというのは、やはり今の時代の趨勢に日本の政府の立場というのは合っていないんじゃ左いか。
 北の政府を承認している国というのは、今何カ国ありますか。――ああ、いいです、時間がかい。百一カ国です。そして、南を承認しているのが百三十一です。両方の国を承認しているのが七十一になりました、ハンガリーが出ましたから。だから、世界じゅうで七十一の国が北と南と両方を承認しているんです。現に二つの政府が存在し、それぞれの地域を有効的に支配しているということは国際的に認められている趨勢だと思うんです。なぜそれができないかといえば、先ほど局長の言われたいわゆる日韓基本条約第三条にかかわるから日本政府の立場はそれから出るわけにいかないということになる点が、私はやはり問題だろうと思うんです。
 私は、先般の竹下首相が述べられた、北との関係を改善したい、あるいは前提条件なしに話し合いをする等々のお立場をとるならば、やはり少なくともそういう問題に対する展望を日本の政府としては明らかにしておかないと、唯一合法政府は南ですというふうなことを毅然としていつまでもその立場を守るんですということではいかがなものか。この点については、多少検討なさる意向があるのかどうなのか、今後将来とも変えないということなのか。もちろんこれは、いわゆる二つの分断固定化をしないということを政府が述べているということを私は知った上で述べているわけですから、大臣、いかがでしょう。
#197
○国務大臣(宇野宗佑君) いつも申しますが、朝鮮半島に関しましてはやはり過去三十六年間我が国が植民地化したという、率直に言って恨みつらみというものは南北ともに抱いていらっしゃると私は思います。そうした中において、いわゆる一九四五年以降の冷戦時代の産物として分裂国家が誕生しました。だから、その当時の概念から言いますと、分裂国家は、一つを承認して同時に二つは承認できないというような体制は事実でございました。それはベトナムにも、あるいは東西ドイツにも、さらには台湾と中国との関係においても言い得たかもしれません。そういうふうなことでございますから、その間に一応我々といたしましては韓国を承認し、そして今申し上げたような国連決議の引用のもとに唯一合法という言葉を使っております。
 現在は、そうした冷戦状態も米ソの対話というものの誕生とか、あるいはまた久しく不仲であった中ソ間の国交関係改善とか、いろんな新しい状態が出てまいりました。同時に、私たちは朝鮮半島の南北問題の融和、統合ということはあくまでも南北の問題だと、これはいまだに変えていません。あくまでも、私たちがしゃしゃり出たり飛び出す問題ではない。そういうふうな慎重さが私たちには必要でございますが、盧泰愚大統領みずからが七・七声明におきまして一応いろんな新しい提案をなさっておるということを考えました場合に、情勢は変わっておる、そういうふうに判断をしているのではなかろうか。
 ただし、あらゆることにつきましては、やはり南北のまず話し合いから始まります、これが原則でございます。そうした中で、今回の旅券法で従来の北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国に対しましても、我々といたしましては相当思い切った新しい時点の考え方を示しておると、こうお考え賜ればいいんじゃなかろうかと思います。
#198
○立木洋君 今回の旅券法のあれについてこういうふうに述べられているということはわかるわけですが、しかし問題は、私たち日本の政府は――私たちというのは政府がですね、日本の政府は北を政府としては認めていないんですよ。あなた方を国家として私たちは認めていないんですよという立場をあくまでとっていて、関係を改善しましょうというふうなお考えでは私はいかがなものかと言いたいんですよ。やはり北は北で有効的な支配がなされていると。その国のやっぱり主権といいますか、その国に住んでいる国民の状態を考えて、少なくともこれまで日本の植民地支配が犯してきた誤り等を反省する。そういうことに立つならば、現実に存在しているその国民の主権、これを認めて、そういう展望を持ちながら改善していくということがやはり努力の内容としては必要ではないだろうか。いかがでしょう。
#199
○国務大臣(宇野宗佑君) まさに、立木委員がおっしゃっていることも私たちの考えていることも、その基礎は私は同じだと思うのでございます。
 したがいまして、今までは一応北朝鮮という言葉を使っておりましたが、総理も私もそうした国名ではなくして朝鮮民主主義人民共和国という言葉も最近使い出しておる。そして、関係改善というものを促進していく。だから対話をしたい。対話とは、野党の方々も努力しておられますが、やはり政府と政府の対話ということが一番大切である。そうした中には、今いっぱい山積している問題もございますから、第十八富士山丸の問題も解決したい、そのほかいろんな問題がございましょう。やはりこれは対話の開始ということを私たちはひたすら願っておると、こういうことでございますから十二分にそのことは北朝鮮にもわかっていただいておるのではなかろうか、かように思っております。
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#200
○委員長(堀江正夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、倉田寛之君及び最上進君が委員を辞任され、その補欠として柳川覺治君及び松浦孝治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#201
○立木洋君 結局、政府と対話をするというのは、その話し合う相手を政府として認めて対話をしなければ対話にならないんです、政府として話をするという場合には。私はあなたを政府としては認めませんよ、しかし対話をしましなうということでは対話にならないんです。だから私は、一般的な外交的な議論で言うのではなくて、素朴な人々が考えた場合に、少なくともそういうことを改める時期が日本の政府としては速やかに来ることが世界の今の趨勢から見ても正当な態度ではなかろうかということを指摘しておきたいんです。
 その点と関連して、かつて何回か重ねまして言いましたけれども、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要だという韓国条項というのが再々問題になりました。この条項について現在日本政府はどういう立場をおとりでしょうか。これをそのまま認めているのか、これには変更があるというふうにお考えになっているのか。いかがでしょう。
#202
○政府委員(福田博君) 我が国の認識といたしまして、一般論として申し上げれば、もちろん我が国の安全にとって周囲の状況、特にその中には、朝鮮半島全体における状況というものが我が国の安全に大きな関係を持っているという認識はずっと変わりがないと考えております。
#203
○立木洋君 韓国条項というのは、今局長がおっしゃったような単純なものではないんですよ。議論の経過を私は詳しく言わなくてもおわかりだろうと思ったからあえて詳しくは言わなかったわけで、これは朝鮮に対する北の脅威だとか、つまり言うならばアメリカの世界戦略といいますか、北を敵視した政策と結びついたそういう政治的な軍事的な背景があって北の脅威ということを南が述べるから、それに対して日本政府がとってきた対応なんですよ。
 ですから、私がここで言いたいのは、盧泰愚大統領自身がいわゆる北と関係をお持ちになるのでも、私は世界の国が北と関係をお持ちになるのでも、私はとやかく言うものではございませんというところまで来ているんでしょう。いろいろそれは事情があるでしょう、経過があるでしょう。しかし、かつてのような古い時代の産物にいかにもいつまでもしがみついていくのは私は宇野外相らしくはないと思うんですけれども、だからやはりこういう今の実際のあり方、かかわっている日本の外交政策の上で重要な問題の一つはやはり朝鮮半島に対する日本政府の対応の仕方だと思うんですよ。さっきの日韓基本条約の問題についてもしかり、今の韓国条項の問題についてもしかり。この問題の変更をやっぱりよくお考えになる必要があるんじゃないか。そういう公式的な答弁でなくて、少し展望を持った意味で外相はいかがですか、御所見を。
#204
○国務大臣(宇野宗佑君) 朝鮮半島問題に関しましては中ソも深いかかわりあり、また日米も深いかかわりあり、こういう関係だろうと思います。だから、その間におきまして六者会談がいいじゃないかという案もございますが、まずそうしたことには現在の北朝鮮は反対をしておられる。あるいはまたクロス承認ということでどうだという一つの案もございますが、これまたその結論は出ていない。要は、今おっしゃったような関係すべては我が国だけで判断し得る問題ではない。だから、私たちは常に朝鮮半島問題はソ連とも話しておりますし、また中国とも話し合っております。でき得るならば、そういうふうなものがどこかでひとつ日本も出てきてくださいと、本来は西北相互の話ですが、日本も入ってくださいということを私たちは今待っておるわけで、そういう呼びかけがあったらいつでも飛んでいきますよ、こう言っておるわけであります。
 だから一つ一つの事象、これはだめだ、これはいいわというんじゃなくして、我々といたしましては常にそういう態勢におります。そして、対話も私ははっきり政府間の対話と、こういうふうに言っておるわけでございますから、そうしたところにおいて十二分に北朝鮮側も対応していただきたい、かように私は思っております。
#205
○立木洋君 もう最後にいたしますけれども、やはり情勢が変わっているわけですから、だから日韓基本条約というものだけに固執するのではなくて、朝鮮半島を本当に前向きにやっぱり平和ということを考え、安全ということを考え、日本がそれに貢献するということであるならば、現に存在している北朝鮮も承認する、そして平和な状況が生まれるように前向きに努力をするということが私は必要だろうと思うんです。
 私がこの国会に出てきまして、結局朝鮮半島における唯一の政府は韓国だけとは認識していませんと、当時の外務大臣が言いましたよ、木村俊夫さんが。もう亡くなりましたがね。あれは政府で大分問題になりましたよね。こんな発言をするとは、と言って大分南からも攻撃がきたんじゃないですか。だけど、木村さんは自分の考えている考え方ではっきりと言いましたよね。やはりそういう先見的な明を持った政治家が今求められている。まあ、大変な今状況にあります、リクルート問題等々で。しかし、そういう問題で日本のいわゆる地位が低下するなんというようなことではこれは困るわけですから、こういう問題を決着しなければならないということはありますけれども、しかし国際的な問題については、やはり常に前向きに努力をしていくということがこの朝鮮半島の問題にあっても私はしかるべきだということを最後に強調しておきたいと思います。
 何か大臣に御所見があれば。木村俊夫さんの思い出でも結構ですが。
#206
○国務大臣(宇野宗佑君) 自民党にはいろんな方がおられましたから、そうした方がそのポストにおられたときには自分の主張を申される、これもまた大切なことだと、こう考えております。
 しかし、やはり今日の状態を考えつつ私たちも前向きに対処したいと思いますが、我々のあり方、一つはせっかくの南北の融和というものを妨げてはいけない、このことも考えなくちゃなりません。また、現在は韓国と私たちは基本条約で結ばれておるわけでございますから、これが阻害されては何にもなりません。
 そうやって考えてまいりますと、やはり総合的に考えて、そしてしかも分断を固定化するようなことがあってはならぬというのが南北ともに言っていらっしゃる。こういうことも考えなくちゃなりませんから、やはり南北が率直にお話し合いをなさって絵をかかれて、それに日本も参画せよということも必要でしょう。そうしたときには、私たちは極めていろんな立場において話し合いに応じなければならないだろうから、だから今日ただいまといたしましては、従来は北朝鮮に対しましては音信不通の状態で、現在も音信不通でございますが、しかしながら、せめてそういう関係は電話でもかけられるように、電話ででもしゃべれるようにしたらどうだろうかというような気持ちを常に抱いておると、これでひとつ御理解賜りたいと思うのであります。
#207
○委員長(堀江正夫君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#208
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより本案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もないようですので、これより直ちに採決に入ります。
 旅券法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を求めます。
   〔賛成者挙手〕
#209
○委員長(堀江正夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#210
○委員長(堀江正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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