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1988/06/16 第114回国会 参議院 参議院会議録情報 第114回国会 法務委員会 第3号
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1988/06/16 第114回国会 参議院

参議院会議録情報 第114回国会 法務委員会 第3号

#1
第114回国会 法務委員会 第3号
平成元年六月十六日(金曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     工藤万砂美君     斎藤栄三郎君
 三月三十一日
    辞任         補欠選任
     斎藤栄三郎君     工藤万砂美君
 六月十六日
    辞任         補欠選任
     工藤万砂美君     宮崎 秀樹君
     林  ゆう君     石井 道子君
     関  嘉彦君     田渕 哲也君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         塩出 啓典君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                鈴木 省吾君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                石井 道子君
                工藤万砂美君
                中西 一郎君
                林田悠紀夫君
                宮崎 秀樹君
                山岡 賢次君
                秋山 長造君
                千葉 景子君
                田渕 哲也君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  谷川 和穗君
   政府委員
       法務大臣官房長  井嶋 一友君
       法務省民事局長  藤井 正雄君
       法務省刑事局長  根來 泰周君
       法務省矯正局長  河上 和雄君
       法務省入国管理
       局長       股野 景親君
       外務大臣官房審
       議官       谷野作太郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   金谷 利廣君
       最高裁判所事務
       総局総務局第一
       課長       秋山 壽延君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁備局外
       事第一課長    杉田 和博君
       法務大臣官房審
       議官       濱崎 恭生君
       法務省民事局第
       二課長      南  敏文君
       林野庁業務部業
       務第二課長    小林 新一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
○法例の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(塩出啓典君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 まず、法務行政の基本方針について、谷川法務大臣からその所信を聴取いたします。谷川法務大臣。
#3
○国務大臣(谷川和穗君) 委員長を初め委員の皆様には、平素から法務行政の適切な運営につきまして格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。
 私は、今回、図らずも法務大臣に就任いたしました。内外ともに極めて厳しい問題が山積しているこの時期に当たり、その職責の重大であることを痛感いたしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 申すまでもなく、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤というべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民の権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存ずるのであります。
 私は、こうした認識のもとに、法務行政の各分野にわたり、一層の充実を図り、時代の要請に応じた適切な施策を講じ、真に国民の期待する法務行政の遂行に万全を期してまいりたいと存じております。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、最近の犯罪情勢と治安の確保及び法秩序の維持についてであります。
 最近における犯罪情勢は全般的にはおおむね平穏に推移していると認められるのでありますが、その内容を見ますと、幼児を対象とした誘拐殺人事件、暴力団構成員によるけん銃発砲事件等の凶悪事犯が多発するとともに、いわゆるリクルート事件等の公務員による汚職事犯、いわゆる悪徳商法詐欺事犯等が後を絶たず、コンピューターによる情報処理システムを悪用した事件、多額の株式売買益の脱税事件等最近の社会経済情勢を反映した事犯も相次いで発生しているほか、来日外国人による犯罪や諸外国と捜査共助を要する事件の増加等犯罪の国際化の傾向が顕著となってきており、これら各種犯罪の趨勢には楽観を許さないものがあると言わなければなりません。
 また、覚せい剤を初めとする薬物事犯も隠密化、潜在化の傾向をますます強めながら依然として多発しているばかりか、暴力団による大規模な密輸入事犯などが多数発生し、これが暴力団組織の重要な資金源となっており、さらには青少年層を含む一般国民の間にもその乱用が拡散浸透するなど、薬物事犯の社会に及ぼす悪影響は看過し得ない状況にあるとともに、次代を担う少年の非行件数は、引き続き高い水準を維持しているのみならず、その低年齢化傾向もうかがわれる上、最近では社会の耳目を聳動させる少年による凶悪事犯が少なからず発生していることなど、今後の動向には引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。
 さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を当面の最大の闘争課題とし、千葉県収容委員会会長襲撃事件のような個人を対象としたテロ事件や空港建設工事関連業者等に対する悪質ゲリラ事件を繰り返し敢行しているほか、反天皇制闘争を一段と強化して爆弾を使用したゲリラ事件を発生させており、一方、右翼諸団体においても、先般の日本社会党書記長等襲撃事件に見られるように、近時、暴力化、テロ化の傾向を強めているところであり、これら過激派集団及び右翼諸団体の動向には十分な警戒を要するところであります。
 私は、このような事態に適切に対処するため、検察体制の一層の整備充実に配意するとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいる所存であります。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と保護観察処遇についてであります。
 犯罪者及び非行少年の社会復帰及び再犯防止につきましては、国民各層の幅広い参加、協力を求めながら、刑務所、少年院等における施設内処遇と更生保護機関による社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。
 そのためには、まず施設内処遇につき、犯罪者の改善更生及び非行少年の健全育成の推進に効果的に寄与し、時代の要請にもこたえ得る適切な矯正処遇の実現に努めるとともに一関係機関、団体相互の緊密な連携のもとに適時適正に仮釈放を許して保護観察への円滑な移行を図り、また、保護観察等の社会内処遇においては、関係機関、団体、民間篤志家の御支援を得つつ、保護観察官と保護司との協同体制の強化、更生保護会の充実等により社会情勢、犯罪情勢の変化に即応した有効適切な処遇及び措置を実施してまいりたいと考えております。
 また、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、昭和六十二年四月三十日、第百八回国会に再提出されました後、昨年五月十七日、衆議院本会議において趣旨説明が、また、同月二十四日、衆議院法務委員会において提案理由説明が行われ、前国会において、十月十八日から実質審議が開始され、これまで法案審議二回及び参考人の意見聴取一回が行われ、現在継続審議の扱いとなっております。
 刑事施設法案は、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなどを改正の重点とするものであります。
 同法案は、昭和五十七年四月、第九十六回国会に提出され、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い審議未了のまま廃案となった経緯がありますが、法務省は、日本弁護士連合会と意見交換を行うなどして関係機関等との調整に努め、法案の内容についても、慎重に検討して所要の大幅な修正を加えて再提出されたものであります。
 制定後約八十年を経た現行監獄法のもとでは、近代的な被収容者処遇を行うことがもはや困難となっているため、その全面改正は喫緊の課題でありますので、今国会において十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第三は、一般民事関係事務の処理、訟務事件の処理及び人権擁護活動についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大するとともに、社会経済生活の多様化を反映して複雑困難の度を強めてきております。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織機構の合理化、事務処理の能率化、省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。
 特に、登記事件は、経済規模の拡大、公共事業の活発化等に伴い増加の一途をたどっておりますが、内需主導型経済及び多極分散型国土形成の進展に伴い、今後ともこの傾向はなお一層進むものと考えられるところであり、その適正迅速な事務処理体制を確保することが重要な課題であります。そこで、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、コンピューター化を中心とする登記事務処理体制の抜本的な改善を行うため、昨年、第百十二回通常国会において、不動産登記法及び商業登記法の改正を一していただきました。
 これにより、昨年十月には東京法務局板橋出張所において、コンピューターによる登記事務処理を開始したところであり、順次全国に展開を図り、二十一世紀に向けて、コンピューター化を推進してまいりたいと存じます。
 しかし、コンピューター化を円滑に推進するためには、移行作業要員の確保が必要不可欠でありますし、またコンピューター化の推進には相当期間を要すると考えられますので、その間、増加する登記事件を適正迅速に処理するための要員が必要であり、職員の増員を図ることが緊急の課題となっております。
 民事関係の立法につきましては、法制審議会の各部会において調査、検討を進めているところでありますが、民事訴訟法部会における仮差し押さえ及び仮処分制度の改正と国際私法部会における法例の改正につきまして、本年一月に法制審議会の答申が得られましたので、これを踏まえ、民事保全法案と法例の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところであります。
 民事保全法案は、審理及び裁判の迅速化と仮処分の執行方法及び効力の明確化を図るとともに、仮差し押さえ及び仮処分の命令及び執行手続の全面的な整理と合理化をすることをその趣旨とするものであります。
 また、法例の一部を改正する法律案は、近時の世界各国の国際私法、国籍法の改正の実情及び我が国における国際結婚等渉外身分関係事件の増加にかんがみまして、親族関係における準拠法の指定に関する規定等について所要の改正を行い、世界各国の国際私法に関する規定との国際的調和を図るとともに、準拠法の指定の面での両性平等及び子の福祉の理念を一層推進しようとするものであります。
 何とぞ、十分な御審議をいただき、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 次に、訟務事務の処理についてでありますが、訟務事件は、近年の社会経済情勢と国民の権利意識の変化等を反映して、例えば環境関係訴訟、原子力関係訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られるように、自然科学の分野と密接な関係を有する複雑困難な事件が集団的に提起される傾向にあるばかりでなく、その結果いかんが、政治、行政、経済、社会等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくない状況にありますので、今後ともこれら事件の適正妥当な処理に万全を期し、個人の権利、利益と国民全体の利益との間の正しい調和が図られるように努めてまいりたいと存じます。
 また、人権擁護行政につきましては、国民の基本的人権の保障をより一層確かなものとするため、各種の広報活動によって国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するように努めるとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいる所存であります。
 中でも、社会の国際化に伴う外国人の人権問題、さらには部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題につきましては、それぞれの所管分野における施策を通じてその根絶を図るべきものでありますが、法務省といたしましても、関係各省と緊密な連絡をとりながら国民の人権意識を高め、その根絶を図ってまいりたいと考えております。
 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
 近年、国際間の人の移動はますます活発化しております。我が国社会の随所におきまして国際化が進行し、これまで経験したことのないさまざまな変化があらわれております。こうした我が国社会の各般における国際化の進展の中でこれに対応する出入国管理行政の体制整備が重要となっております。出入国管理行政につきましては、大量出入国者時代を迎えて、入国審査、在留管理事務の急増を見ると同時に外国人労働者問題、不法就労問題、就学・研修生問題等々各種の問題が顕在化しております。
 このような状況を踏まえ、我が国が国際間の人的交流をより円滑にするため、入国・在留手続等の適正合理化を図るとともに、他方、外国人の不法就労をより一層的確に防止し得るよう、在留資格制度の改正を中心に出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。何とぞ、十分な御審議をいただき、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 また、出入国管理業務は、本邦に入国し、または本邦から出国するすべての人の出入国について適切に対応し、適正な処理を期するとともに、国際協調の一層の進展に即応する責務を担っております。
 この責務を果たすため、今後とも引き続き出入国管理事務の迅速適正な処理及びそのための要員の確保や組織、体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
 第五は、司法試験制度の改革についてであります。
 司法試験制度については、近年、合格までに平均六回余の受験を要し、合格者の平均年齢が二十八歳を超えるなど、合格が余りにも困難になって合格までの受験勉強の期間が非常に長期化するに至っております。その結果、大学在学生に司法試験を敬遠する傾向が生じ、また、法曹の後継者が実務家としての修練を積み始める時期が相当遅くなっている上、裁判官、検察官の任官者が減少するなど、裁判、検察、弁護の法曹三者それぞれが後継者を十分かつ適切に確保するという司法試験制度の目的からはほど遠い状況にあり、多くの深刻な弊害を生じております。
 法務省では、この現状を改めるため種々の検討を行い、最高裁、日弁連及び法務省の三者で構成しておりまする三者協議会において司法試験制度の改革問題を議題とするよう提案し、昭和六十三年十二月十九日から法曹三者による協議が行われているところであります。司法試験の深刻な現状にかんがみ、司法試験制度改革について法曹三者が真剣に検討を行い、早急に国民の期待にこたえる改革案を策定して、改革を実現したいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べましたが、委員長を初め委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
#4
○委員長(塩出啓典君) 以上で谷川法務大臣からの所信聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(塩出啓典君) 法例の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。谷川法務大臣。
#6
○国務大臣(谷川和穗君) 法例の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、近時の諸外国における国際私法、国籍法等の改正の動向及び最近の我が国における渉外婚姻を初めとする渉外的身分関係事件の増加にかんがみ、婚姻関係及び親子関係における準拠法の指定をより適切なものとするため、法例の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は次のとおりであります。
 第一に、婚姻の効力、夫婦財産制及び離婚につきましては、現行法では夫の本国法を準拠法としておりますが、これを改め、夫婦に共通の本国法または常居所地法等、夫婦に共通する法律を段階的に準拠法として定めることとし、準拠法の指定を両性平等の精神に一層即したものにすることとしております。
 第二に、婚姻の方式、嫡出親子関係の成立、認知及び準正に関する準拠法につきましては、当事者に関係がある複数の法律のうちのいずれかにおいてその要件を満たせばこれらの身分関係の成立を認めることとする、いわゆる選択的連結の方法を採用するとともに、養子縁組につきましては、各当事者につきそれぞれその本国法を適用するいわゆる配分的適用を廃止することとして、これらの身分関係の成立の容易化を図ることとしております。
 第三に、親子間の法律関係につきましては、現行法では父の本国法を準拠法としておりますが、これを改め、子の本国法または常居所地法を準拠法とし、また、認知及び養子縁組の成立につきましては、子の本国法において子の同意等がその要件とされている場合には、その要件をも備えなければならないものとして、準拠法の指定を子の福祉の理念に一層かなうものにすることとしております。
 第四に、親子の法律関係等についての準拠法指定の連結点として常居所の概念を採用することとし、また、夫婦財産制につき当事者の合意による準拠法の選択を認めることとして、諸外国の国際私法の立法等の動向との調和を図ることとしております。
 第五に、世界各国の国籍法の改正によって、子がその出生により複数の国籍を取得する場合が増加したことにかんがみ、複数の国籍を同時に取得した場合の本国法の決定の方法について規定するほか、準拠法指定のための補則的規定について所要の整備をすることとしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#7
○委員長(塩出啓典君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより法例の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#8
○千葉景子君 法例の一部を改正する法律案に入る前に、何点か質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、さきの六月十五日の新聞の報道によりますと、今問題になっている、大分いろいろと取りざたをされております日本語学校、この一部につきまして入管の幹部が助言をした、有利な取り扱いをしているんではないかというような報道がされております。これは川崎にある日本語学院についての報道でございまして、入国管理局成田支局の現役幹部が入管に提出する書類の作成などについて助言をするなど、開校当時から関与をしていたことが明らかになったという報道でございます。
 今、日本語学校というのはその内容の充実等を含めまして大変問題になっているところで、厳しい規制がかなりとられているというわけですけれども、そういう中である一定の学校についてのみ、こういう入管の幹部などが特別な関係を持つとか、あるいは助言とか何らかのかかわりを持つというのはいろいろな意味で公平を欠きますし、特別扱いがあったんじゃないかというような疑いを持たれるんじゃないかと思いますが、まず、この報道されている川崎の日本語学院についての実情を、もしお調べの範囲でわかる範囲があればお知らせをいただきたいと思います。
#9
○政府委員(股野景親君) ただいま委員から御指摘のございました報道に関連いたします日本語学校の点でございますが、この興和日本語学院という学校は、昭和六十二年八月にその内容が日本語学校として外国人を受け入れて日本語を学習させる施設としての要件を整えている、こういう認定を法務省当局により受けまして発足している学校でございます。川崎市に所在しておりまして、私どもが把握しているところでは、定員は百七十四名という申請でございますが、昭和六十三年十月現在で在籍者は八十七名、こうなっております。
 それから、この学校につきまして私どもでいろいろ最初の申請のありました段階からその後について状況を把握しておりますところでは、教室は四つの教室を持ち、また事務室、教員室等の必要な施設も確保しておるということでございまして、また、その四教室のうちで二部制のもとで六コースの授業を九人の教員によって行っている、こういうようなことは就学生を受け入れる施設としての要件を満たしている、こういうふうに認めております。
#10
○千葉景子君 さらに、入管の現役の幹部の方がこの学校に関与していた、あるいは書類の提出などについて助言を与えていた、こういう報道についてはお調べいただいていますか。
#11
○政府委員(股野景親君) 御指摘の報道については、私どもも早速注目をいたしまして目下調査をいたしているところでございます。
 この報道で言及されましたところの入国管理局の職員というのは、成田の支局の職員でございます。そこで、その成田の支局の職員としては、日本語学校あるいは就学生、こういう問題の審査に関与する立場にはございません。したがって日本語学校、この日本語学校についてもそうでございますが、具体的に何らかの権限を行使するというような立場にはない者でございます。
 したがって、この職員とこの報道されました日本語学校との関係ということになりますと、それは職務上の権限というような問題ではなくて個人としての問題ということになるんだと思いますが、その事実がどうであったかということについては目下確認をすべく調査中でございます。
#12
○千葉景子君 これ以外にも入管の職員などがかかわりを持つというようなことも耳にしておるわけですけれども、審査をするような立場にはないということで、職務上の仮に何らかの関係があったとしても職務上権限を行使したということにはならないだろうということでございますけれども、実際入管の職員が助言をするというようなことになれば、やはりそこに何らかの有利な状況が生まれるんじゃないかという疑いも持たれるわけですから、これはしっかり調べていただきたいと思います。
 今調査中だということですけれども、今後の調査の段取りとか、あるいはこの問題に対する対処、どう考えていらっしゃいますか。
#13
○政府委員(股野景親君) ただいま委員御指摘のとおり、日本語学校の審査というものは適切で公平でなければならぬと私どもも十分肝に銘じております。また、職員に対してもさような指導をいたしておるところでございまして、そういう点は今後も十分職員の間で徹底するように努めてまいりたいと思っております。機会あるごとにそういう点について職員の間の注意喚起をいたしておりますが、今後もそういう点で何らかの疑問を持たれるような行為がないように十分指導をしてまいりたいと思っております。
 また、調査についても十分事実関係をはっきり明らかにするようにいたすよう努力してまいります。
#14
○千葉景子君 十分にやっていただくということはよくわかるんですが、調査結果につきまして明らかになりましたらば、何らかの処分とかあるいはそういうようなことも今後の対処の中には入るんでしょうか。
#15
○政府委員(股野景親君) 今後のことについては、まず事実関係を私どもも十分把握をいたしたいと思っておりますので、それに基づいて適正な措置をとるということになると存じます。
#16
○千葉景子君 事実関係を明らかにした上で、平等を欠くことのないような措置をきちっととっていただきたいと思います。
 ところで、リクルート問題でございますけれども、いろいろな形で検察当局にも大きな努力を続けていただきました。その結果、一応の捜査の終局ということで、さきにリクルート事件の捜査結果に関する報告が行われております。
 このリクルート疑獄、動いたお金も大変大きい、あるいはその範囲も広い、関与した政財界関係者なども大変数が多い、極めて大きな深さを持ったそういう疑獄事件だと言わざるを得ないと思いますが、それだけに国民からも大きな関心が持たれ、またこの解明については非常に国民の期待も大きいと言わざるを得ません。しかしながら、今回報告をいただいた内容を見ますと、まだまだ国民の目から見てもわからない部分あるいは疑いを持つような部分、こういうものが残されているような気がいたします。そういう意味では、ぜひこの際、このリクルート疑惑について少しでも国民にその内容が明らかになる、わかるような形で法務省にも御協力をいただきたいというふうに思うわけです。
 そこで、捜査結果に関する報告、その内容にかかわりまして、私も疑問の点あるいはまだ不明な点を何点か質問させていただきますので、ぜひ明確なあるいはわかりやすいお答えを期待をしているところです。
 まず、この報告の中で、政界関係をめぐる捜査結果について報告がなされております。その中で、「昭和六十一年九月に行われたコスモス社の未公開株式の譲渡につきましては、その中に藤波議員及び池田議員を除く十一名の国会議員に係る合計十万株の譲渡が含まれて」いるという記載になっておりますが、この十一名の国会議員というのは全員が必ずしも明らかになっていないという今実情でございます。この十一名ですね、ぜひ明らかにしていただいて、やはり今後こういう問題が二度と起こらない意味でも国民の前に明らかにしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか、刑事局長。
#17
○政府委員(根來泰周君) 今回の最終報告につきましては、前から大臣がおっしゃっておりますように、国会法の百四条の御趣旨も踏まえまして、また刑事訴訟法の四十七条の趣旨も踏まえて最大限に報告すべきところは報告したと私どもは考えておるわけでございます。
 そこで、この六十一年九月に行われましたリクルートコスモス株の未公開株式の譲渡に関係する国会議員にかかる十一名ということでございますけれども、この件についてはもともと犯罪が成立しないわけでございますので、委員もその趣旨はよく御承知のように、この報告書に具体的に名前を盛れなかったわけでございます。といいますのは、私どもが要するに犯罪が成立しないというものについて名前を開示すると、やはりそれは何か後ろ暗いことがあったのではないかという揣摩臆測を呼ぶことになりますので開示しなかったわけでございます。
 ところが、先日の参議院の予算委員会におきまして、この名前をめぐっていろいろ御議論がございました。その中で私どもは四名の国会議員について名前を開示したわけでございますけれども、これは国会で証言されておる、あるいはみずから国会で認められているという方が四人いらっしゃいました。そういう件まで私どもがその中に入っているかどうか言えないと強弁することはいかがなものかと考えまして、これは開示についてそれ相当の理由があるということで四名の名前を申し上げたわけでございます。
 したがいまして、残る方々の名前については従来どおりの取り扱いでひとつ名前を申し上げることは差し控えるということで御理解いただきたいと思っております。
#18
○千葉景子君 四名の国会議員については国会などで発言をしている、証言をしているということに基づいて認められたということなんですけれども、それ以外七名ということになりましょうが、必ずしも国会などで証言などをしておりませんともいろいろな報道等を通じ国民には一定の名前が明らかになっている。そして国民の目から見ると一体そういう国会議員は本当にこの贈収賄についてどの程度のかかわりがあったのか、あるいは全くなかったのか、その点に大変大きな関心が持たれていると思います。
 それとともに、単に犯罪が成立をしないけれども、国会議員という非常に公的な立場としてその適格性とかあるいはそのクリーン度、そういうものも求められる地位にある、こういうことですから、必ずしも一般私人と同じような形で取り扱われるべきではないというふうに思います。それだけ疑義が呈せられている部分ですから、ぜひともこれを明らかにしていただかなければいけないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#19
○政府委員(根來泰周君) 基本的な立場は、私先ほど申し上げたとおりでござまして、やはり不起訴になったというか、起訴に至らなかったものについては公開しないという原則に立って申し上げているわけでございます。
 それともう一つ、私どもが非常に危惧するのは、最近そういう例えば特定の方の名前についてあるいはその職務権限について申し上げますと、それが灰色の示唆であるというふうに論評される方もあるわけでございます一これは私どもとしては極めて意外なことでございまして、私どもとしては従来から繰り返して申し上げておりますように、政治的道義的責任については国会が基準を決められて国会で御議論される話と承知しているわけでございます。したがいまして、そういう問題について行政機関が立ち入ることについては極めて警戒しているわけでございます。これは私どもの立場のみならず、国会の権威にかかわることだと理解しているわけでございます。
 ところが、そういうふうな風潮の中にございますので、先ほどの原則及びそういう風潮の中で特定の名前を申し上げると、やはりその方が灰色であるということを私どもが暗に指弾しているととられるおそれも大いにあるわけでございますので、その辺は御勘弁願いたいと考えております。
#20
○千葉景子君 それでは、少し違った面からお尋ねしたいと思いますけれども、この十一名の国会議員については、それが職務権限外の事項だということが明らかか、それとも抽象的な職務権限はあるけれども当該職務と株式譲渡の間に対価関係が認められない部分と、二つに分けられるようにこの報告では記載をされています。そうしますと、抽象的な職務権限が全くなかったという方と、抽象的には職務権限があったことは認められるという部分と二つに分かれるわけですが、その四名以外に、抽象的職務権限はある、しかし対価関係が認められないという部分に入る方は四名以外にもいらっしゃるんですか。
#21
○政府委員(根來泰周君) 四名のお名前を開示いたしましたけれども、この中のお二人の方については職務権限に論及して私は回答を申し上げました。ただし、そのうちのお二人については職務権限については何ら申し上げておりません。と申しますのは、お二人の方は国会でその職務権限に係る事実関係を申されておりますので、それについて申し上げたわけでございます。
 話はくどくなりますけれども、抽象的職務権限が認められるということを私どもはどういうふうに分類したかというところから申し上げますけれども、ある事柄、具体的に言えばリクルート株式会社、リクルートの関係の会社の懸案事項ということでございましょうけれども、ある事柄と国会議員あるいはその国会議員が占められている大臣とのかかわり合いというのは、頭の中で考えますといろいろな場面が想定されるわけでございます。そのいろいろな場面を想定した場合に、ある場面については職務権限が認められる場合もあるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 したがいまして、この十一人の方々、具体的には十三人の方々でございますが、十三人の方々を置きまして、そしてその懸案事項というのとを対比しましていろいろの場合を想定して、どういうふうな場合に職務権限がかかわり合いがあるかということを検討いたしたわけでございます。そうしますと、抽象的にかかわり合いのある場面があるという方については抽象的な職務権限があったのではないかということで、こういうふうな分類をしたわけであります。
 もちろん、具体的にその職務権限を検討するということになりますと、各種の法令とか、あるいは内閣総理大臣については閣議にかけた方針に基づくとか、あるいは役所の問題については各省の大臣の所管事務にかかわるとか、いろいろ具体的な検討はしなければなりません。しかし、そういう具体的な事実がないものですから抽象的に頭の中で考えて、そしてある場面では職務権限の関係があるのではないかということで分類したわけでございます。そういうような分類をした結果、この十一人の方はあるグループとしては抽象的な職務権限が認められる場合があるという一つのグループと、全く職務権限が認められないグループの二つに分かれる、こういうふうに報告したわけでございます。
 したがいまして、この十一人の内訳ということについては極めて微妙でありますし、その内容を十分説明しなければ納得していただけない問題でございます。その内容を御説明するということになりますと、内容をすべて開示しなければならないということになりますので、ひとつその辺は御勘弁願いたいと考えております。
#22
○千葉景子君 名前を明らかにすることで全容がむしろ解明されて、それこそが国民が望んでいることではなかろうかというふうに思うんですが、その職務権限がないグループと、それから職務権限はあるけれども対価関係などが認められない、そういう二つのグループ、これは人数としては何人と何人に分けられますか。
#23
○政府委員(根來泰周君) 先ほど申しましたように、職務権限というのはいろいろ議論があるところでございます。その議論を具体的な事実関係について議論しなければなりません。その議論をするということになりますと内容を開示するということになります。したがいまして内容を開示すると私どもの立場としては非常に困るわけでございます。
 ここで、例えばこの十一人のうちの何名が職務権限があり、何名が職務権限がないということになりますと結論だけ申し上げることになりまして、その辺にまたいろいろ端摩憶測を呼ぶことになりますので、ひとつその辺は御勘弁願いたいと思います。
#24
○千葉景子君 むしろ、このままにしておく方がいろいろな憶測を今呼んでいるわけでして、この報告の中でも明確に二つのグループといいますか、職務権限がないということで贈収賄の対象にならなかった、あるいは職務権限内の事項であるけれども対価関係などが認められないということで贈収賄罪の対象にならなかった、こういう形で報告の中で説明をされているわけですから、その点について、一体十一名のうち何人がどちらのグループで、何人が違うグループだということは、当然この報告の説明としてもされてしかるべきじゃないかと思います。それによってこの憶測が強まったりするようなことは私は考えられないと思いますが、いかがですか。
#25
○政府委員(根來泰周君) 先ほども申しました理由でございますけれども、最近のいろいろの論評を見ますと、抽象的な職務権限が認められると言いますと、その方はいわゆる灰色高官という指摘をしたというふうなとられ方をするわけでございます。そういうふうになりますと、例えばこのうちの何名の方が抽象的職務権限がありと言いますと、その何名の方はすなわち灰色である、政治的道義的責任のある方であるというとられ方をするわけであります。
 私どもの方の刑法的な立場から申しますと、いずれにせよ具体的な対価関係とか便宜を図ったとか、あるいは陳情を受けたとかいうことはなかったという認定をしているのでございますから、抽象的な職務権限があろうとなかろうとすべて一視同仁といいますか、これは全部犯罪にならないということでございまして、その分け方によっていろいろとまた掃摩憶測を呼ぶわけでございますので、ひとつその辺十分御勘案いただきまして答弁をお許しいただきたいと考えております。
#26
○千葉景子君 私も、そう聞きますと逆に一体どういう内容だということでむしろ憶測が強まるような気がするんですが、新聞の報道等の中にも、例えば抽象的職務権限があると認められるのは中曽根、加藤六月氏ら五人であるというような報道などもされている。これは政府筋が明かしたというような報道ではありますけれども、こういう形でむしろ今国民の方は疑義を深めているわけですから、明らかにしていただく方が国民の疑義も解消して、そしてリクルート問題に対する解明の一途になるのではないかというふうに思います。
 報道等では中曽根元首相、加藤六月元農水相、渡辺秀央元官房副長官、塚本三郎民社党前委員長、田中慶秋同衆議院議員ということで報道をされておりますけれども、この点についての真偽はいかがですか。
#27
○政府委員(根來泰周君) 個々具体的にお名前を挙げられましたけれども、私どもが参議院の予算委員会で申し上げたのは、中曽根元総理あるいは竹下前総理、宮澤元大蔵大臣あるいは塚本議員という方については、自分の周辺あるいは自分の秘書を通じてそういう株が流れたということを認められているわけでございます。したがいまして、その件については十一人の中に入っていないと私どもが幾ら申しましても強弁するわけにはまいりませんので、それはお認めしておるわけでございます。
 それから権限の問題でございますが、中曽根元総理につきましては抽象的権限がある場合があるということを申し上げましたのは、中曽根元総理は証言に出られたときにスーパーコンピューターのかかわり合いその他のことにつきましてこういうことで自分は関係しておったということを言われておりますから、そういう事実関係を前提にしますと、やはり先ほど申しましたように、いろいろの場合を想定した場合に総理としての職務権限があった場合があるのではないかと。それから、各省の所管事項につきましても、これはまた先ほども申しました具体的なことになりますと検討しなければならない問題、例えば閣議にかけてその方針に従って、あるいは各省の大臣の所管事務に属するかということ等を検討しなければならないわけでございます。そういう具体的な事項はないから抽象的な面については職務権限のある部分があるのではないかということを申し上げたわけでございます。
 それから塚本議員につきましては、御本人が代表質問の際に自分は職務権限がなかったと言われておるわけでございます。その点については私どもも否定するつもりはないということは申し上げたわけでございますが、その他の方については一切私どもは申し上げているわけではございません。これは申し上げない理由は先ほど来くどいほど申し上げたわけでございますが、そういう点をひとつ十分御勘案いただきまして、私ども政府の立場とそれから国会の立場を十分御勘案いただきまして、答弁を勘弁していただきたいと考えております。
#28
○千葉景子君 三名については刑事局長の方からもこの十一名の中に含まれているという御答弁が前回からもあるわけですけれども、そうするとこの新聞の記事等については肯定も否定もされない、そういうことは明らかにする立場にないというお考えですか。
#29
○政府委員(根來泰周君) 新聞でいろいろ論評されるのはこれは自由でございます。また、それを基本にされていろいろお考えになるのはこれは自由でございますが、私ども行政機関に身を置く者がそれを公式に申し上げるということはやはり国会の関係で差しさわりがあるのではないかというのが基本的な立場でございます。
#30
○千葉景子君 それでは十一名の名前を明らかにする問題、あるいは職務権限があるとされた議員、それから対価関係がないなどの理由で贈収賄罪が認められなかった議員、これについては今後も引き続き明らかにしていただく努力をお願いをせざるを得ないわけですが、一つこの中で、中曽根元総理につきましては、抽象的な職務権限は総理の職務は国の行政全体に及ぶということ、役所の問題であれば各省庁を監督する首相には抽象的職務権限があると言わざるを得ないというようなお答えも予算委員会などであったかと思うんですけれども、そうなりますと、この中に「スーパーコンピューターの導入、就職情報誌の発行等に対する法規制、いわゆる就職協定の存続遵守、安比高原の開発等当時のリクルート社及びその関連企業の事業遂行上の懸案事項」、こういういわゆる四点の問題点で検討を加えられたということが出ているわけです。
 そうすると、中曽根元総理についての抽象的職務権限というのはこの全体にかかわってくるわけでしょうか、それともその何点かについて抽象的職務権限ありと考えられたのでしょうか。
#31
○政府委員(根來泰周君) 先ほども申し上げましたように、証言にあらわれている事項を中心に検討したわけでございますが、全くこれは頭の中で考えた、いろいろの想定して考えた話でございます。それで、これは一つはそういう問題を考えるに当たりまして、内閣総理大臣の法令上の職務関係、あるいはこれまで贈収賄に絡みましてロッキード事件等がございましたけれども、そのロッキード事件の判決等に指摘されている事実、法律関係、そういうものをやはり頭に置かなければ、具体的にはどうとは言えないと思います。
 したがいまして、例えば安比の問題でも就職協定の問題でも各省の所管事務でございます。ですから、具体的に総理の職務権限がそこに及ぶかどうかということになりますと、それはロッキードの判決に言っておりますように、閣議で決定した方針に基づき各大臣の所掌主務事務の範囲内のことであるかどうかということを具体的に検討しなければならないわけでございますが、抽象的に検討する場合には、非常に巨視的なことになりますけれども、役所の上に総理大臣がおられるのであるからそれは抽象的な職務権限が成立することもあるのではないか、ないこともあるし、あることもあるのではないかというようなことであります。
 したがいまして、この四点につきましては、先ほど御指摘のあった問題につきましては、やはり抽象的職務権限がある場合もあるのではないかという結論に相なると思います。
#32
○千葉景子君 捜査をされる過程では、今言ったように抽象的に役所の上に監督する立場にあるので抽象的職務権限がある可能性は当然持たれていると思うんですけれども、ただ捜査の過程で検討されるのは、抽象的職務権限と個々の問題との関連、こういうことで捜査をされるわけですから、今回の報告の中ではスーパーコンピューターの導入とかその他の就職協定、就職情報誌の問題、安比高原の問題、それぞれについて一体職務権限が及ぶものかどうか、こういう検討のされ方だと思うんですよね。そうなりますと、全体として各省庁の上にあるから権限は及んでいく可能性があるということはわかりますけれども、個々の問題についても総理の権限というものは及ぶと考えてよろしいんでしょうか。
#33
○政府委員(根來泰周君) これはよく御存じだと思いますけれども、これは今の問題と別にしまして、役人に業者から金品が行った場合に、それ相当の理由があるわけでございます。それは役人側にいろいろ業者のために便宜を図ってやった事柄があるとか、あるいは業者から陳情を受けたとかいうようなことで、そのお礼といいますか、謝礼ということで金品が行くというのが通常見られる贈収賄でございます。そうすると、そういういわゆる陳情を受けた事柄、あるいは尽力をしてやった事柄、あるいは便宜を図ってやった事柄がその役人の法令上の職務権限の中に入るかどうかという検討をして、それが積極ならば贈収賄が成立する、こういうことに相なろうかと思います。
 だから、今回の場合に、例えばそういうリクルートコスモス社のためにスーパーコンピューターの問題とか安比の問題とか、あるいは就職情報誌、あるいは就職協定の問題について何か尽力したということがありますれば、それを基本にしまして、尽力したことが法令に照らして職務権限の中にあるかどうかということを検討するという過程をたどると思うんですけれども、今回の場合は、この報告にありましたように、この十一人の方についてはそういう便宜を図ったことあるいは尽力をしたことあるいは陳情を受けたことがなかったというふうに認めているのでございますから、そこから職務権限を云々ということは言えないと思います。だから、全体的に見まして抽象的な職務権限があったかどうかということに判断としてはとどまるわけでございます。
 なお、申し上げますけれども、この十一人の国会議員についてはストレートに未公開株が行ったということを申し上げているのではございませんで、この報告書にありますように、「国会議員に係る」という中で、そういう関係者、あるいは親族、親戚の方、あるいは秘書の方というふうに渡ったということをあらわしているのでございますので、その辺付言して申し上げます。
#34
○千葉景子君 今の御説明から判断をしますと、十一人の国会議員については、とりわけその企業、リクルート社等について特別な尽力をした、取り扱いをしたというような行為が具体的にはなかったと認定できるので、そこから権限を云々するあれはないということなんですが、しかしこの報告では、職務権限外の事項とそれから職務権限内だけれども対価関係が認められない、そういう説明のされ方をしているわけですから、そういう意味では抽象的な職務権限、いわゆるこの十一人に対しては職務権限そのものはあったのだと認定できる部分はやはりあるのだと思うんです。
 そういう意味では、そういう職務権限があったけれども対価関係は認められなかったという部分が一体どのくらいあるかというのは、当然はっきりさせていただきたい部分だというふうに思いますけれども、何度やりとりをしてもなかなかお答えしていただけないようですけれども、最後にちょっとその点、もう一回いかがですか。
#35
○政府委員(根來泰周君) 何度も御質問をいただいて恐縮に存じますけれども、従来から私どもは公表する限界はこの辺だということで報告書を提出しておるわけでございます。何回か予算委員会で御質問があって、若干その報告書より中に立ち入って御説明申し上げておりますので、この辺で御勘弁いただきたいと思います。
#36
○千葉景子君 立ち入ってというよりは、この内容を解説していただいたということなんじゃないかと思うんですね。そういう意味では、さらにこの内容をもう少しわかるように解説していただくような、そういう努力をぜひともいただきたいというふうに思います。
 ところで、今回のこの捜査、そしてこの報告に至るまでになかなか問題点として幾つかのことが残っているのじゃないかというふうに思うのです。
 一つは職務権限、これをどう考えるか。先ほど言ったように、総理の職務権限あるいはその他の議員の職務権限、とりわけ議員の職務権限というのは一体どこまでかかるのかという問題もありますし、それから国会での役職ではなく、あるいは例えば官僚の御出身の国会議員の方については、その官庁にかかわる部分で何らかの影響力がある、そういう部分は職務権限として何らか評価されないのだろうかとか、そういう問題がやはり残っているのじゃないだろうかというふうに思うんですが、この点についてはどんなふうに解釈をされておりますか。
#37
○政府委員(根來泰周君) 国会議員の職務権限等につきましては、今まで判例が相当集積されているわけでございます。そして一部言われているところは、最近、判例も職務権限を相当広く解釈しておるというような御批評もあるわけでございますが、私どもはそれは当然の判決あるいは判例だと考えております。
 しかし、役人の場合もいろいろ職務権限についても判例が集積されているわけでございますから、我々はその法令の解釈あるいは判例の集積に従いまして捜査処理を行うという方針には変わりないと思います。
#38
○千葉景子君 それから、今回の捜査に当たられて、総体としてなのですけれども、現在の贈収賄罪、この法的な建前、これと今回のリクルート事件、これの適用に当たって今の贈収賄罪が直ちに適用し得ないような広範な部分が非常にたくさんあると思うんです。そういう部分についての捜査の困難さとか、それから問題点、何かございませんでしょうか。
#39
○政府委員(根來泰周君) いろいろ贈収賄罪の捜査処理に関しまして、現場の実際捜査に当たっている者はいろいろ感触を持っている、あるいは考えを持っていると思いますけれども、私どもの方は、建前としましては法執行機関でございます。ですから、国会で国民の声を聞いていただいて、こういう点がやはり国民として処罰してもらわないと困るというようなお話がありましたら、これはやはり国会で立法をしていただいて私どもに御下令になって、私どもはその法律を忠実に実行するというふうなことになっております。したがいまして、私の方から捜査の都合でこういうふうにしていただいたらいいと申し上げるのは若干潜越な話だと考えております。
 しかし、一つはこういう事件になって、私どもが考えるのは、今の訴訟法というのは非常に難しくできているという感じはございます。こういう非常に困難な事件になりますと、身柄の問題とか捜索の問題とか、いろいろ訴訟法に厳しい規制がございます。だから、これも国会でお決めになった話でございますから、その武器を最大限に有効活用して捜査をやったと思いますけれども、その辺には限度が出てくるのではないかという感じは持っております。
#40
○千葉景子君 リクルート関係についてもまだ明らかにしていかなければならない部分はたくさんあろうかと思います。これは国会の責務でもございますし、それから法務省についてもさらなるこの報告の、先ほど言いましたけれども、解説といいましょうか、あるいはもう少し事実関係を明らかにしていただくための御協力をぜひとも今後ともいただきたいというふうに思います。
 時間もありませんので、次の問題に移らせていただきたいと思うんですが、一つ最近問題になっていることで、大変私はこれは前向きなことでいいとは思っているんですが、それによってさまざまな権利関係に支障を来すようなことになると困りますので、一つ質問させていただきたいと思います。
 それは土曜閉庁にかかわりまして、例えば拘置所などは土曜日のさまざまな処遇、いろいろな取り扱いというものに支障といいますか、これまでとは異なった取り扱いが出てこざるを得ない、こう思うわけです。とりわけ面会などの取り扱いなどについては、土曜日が閉庁ということになりますと、原則として面会ができないという今実態にあるのではなかろうかと思いますが、この点について、これは職員の処遇をより改善していくという意味では当然しなければならない部分なんですけれども、他方、収容されている人間の権利、そういうものをできるだけ尊重していくという側面になりますと今度は矛盾した部分が出てこようかと思うんです。それについてちょっと今の実態を、土曜日についてはどうなっているか、まずお答えをいただきたいと思います。
#41
○政府委員(河上和雄君) 昨年の国会だったと思いますけれども、この委員会で千葉委員から、いわゆる土曜閉庁案に関連して弁護士の面会だけは何とかしたらどうだと、こういうサゼスチョンをいただきました。
 同じようなサゼスチョンを衆議院の法務委員会でも何人かの委員からいただいたわけでして、当時、私、弁護人面会の憲法上の重要性から何とか積極の方向で考えたいと、こういうふうに御答弁したのを記憶しているわけですが、その後、主としてこれは大きな拘置所が問題になるものですから、大きな拘置所についてもいろいろ実態を調べ、相談をし、そして最低限、弁護人の方からあらかじめ連絡があり、またそれなりの緊急性、必要性のお話があれば職員を納得させて土曜日でも出すことはやむを得ないだろうということになりまして、それなりの案を私の方でつくりまして、日本弁護士連合会に私参りまして藤井会長や大石事務総長とも会ってこちらの案をお示しし、そして向こうの御賛同を得て各単位弁護士会にも流していただきました。
 幸い、その後ほぼ私どもの案のとおり、スムーズに弁護人の面会というのが行われておりまして、大きなトラブルはない。あらかじめ大体御連絡をいただいて、職員をその際は出勤させて面会を実施している、こういう状況であります。ただ、これは今も千葉委員からも御指摘ありましたが、結局、職員にせっかくの休日である土曜日を返上させて、午前中ではありますけれども出勤させる、こういう扱いをしているわけで、いわば職員を泣かせているわけでございます。
 その際、やはり千葉委員からだったと思いますが、一般面会についてももっと積極的に考えたらどうかと、こういうようなお話があったと思います。私どもの方としても、これは現実の問題として、受刑者それから拘置所両方ひっくるめまして一般面会をさせたいという気持ちはあるわけです。特に受刑者の場合でいいますというと、日曜日あるいは土曜日でも一般面会させますと、それを楽しみにして余り悪いことを中でしないというようなこともあるわけですから、どちらかといえば、そういう人権的なことのほかに私どもの方の処遇の問題からいっても、会わせる、会わせたいという気持ちは私どもとして持っております。
 ただ、もちろん物に両面ございますから、例えば被拘留者が奥さんと会って別れ話が出たりなんかするというと自殺がその後非常に多いものですから、会わせた後にむしろこちらの方はたくさん職員を動員して見させなきゃいかぬ。そういう面もあるわけですが、一般論でいう限り、我々としては会わせたいという気持ちを持っております。
 ただ、今千葉委員の御指摘のように、結局職員の数が限られておりまして、職員の勤務条件との兼ね合いということでやむを得ないわけですが、現段階においては今御指摘の面会について、これは主として東京拘置所あるいは大阪拘置所といった大きなところだろうと思います、大きなところが中心ですが、やはり閉庁土曜日には面会をさせておりません。そういう意味では、従来の開庁土曜日には会わせるわけですし、それから従来の土曜日は一応開庁しておりましたから会わせていたわけなので、それだけの意味での家族あるいは知人に対する、あるいは被収容者に対する意味では若干の保護は薄い、そういう状況になっているだろうと思います。
#42
○千葉景子君 従前の統計といいますか、面会の状況などを見ますと、やはり土曜日というのは平日に比べましてもその割合が大変高かったと言えるんじゃないかと思うんですね。そういう意味では、土曜日が面会できないということになりますとやっぱり外部交通という権利が非常に狭まってくる、こういうことが言えるんじゃないかというふうに思うんです。それをぜひ実現していくためには、今局長も申されたように職員の問題もあろうかと思うんですが、面会の方式についてもある意味では工夫あるいは新しい考え方などを取り入れて、職員の配置もある程度の数で足りる、それによって職員の間でも任務を軽くしていくというようなことも考えてよろしいんじゃないかと思いますけれども、そういう面会の方法なども含めてのお考えはいかがですか。
#43
○政府委員(河上和雄君) たしか前国会でも千葉委員から、例えば月曜日を休ませるというような案はどうだろうか、こういうふうなサゼスチョンをいただいた記憶があります。現在、ウイークデーはもちろん会わせているわけですが、必ずしもウイークデーでなくて、例えば土曜日、日曜日ということも考えられないわけではないと思います。その際も申し上げましたように、将来の検討する一つの事項であろうということで私どもも考えております。
 ただ、土曜日、日曜日は現在のこの行政機関に関する法律では土曜日は日曜日と同じだということになっておりますのと、一般の職員について世間並みというのはあれかもしれませんけれども、やはり土曜日、日曜日、世間一般が休むときに休みたいという希望は非常に強いわけでございます。御承知のとおり、監獄職員については国家公務員法上団結権が認められていないわけでございまして、結局、職員のいろいろな意向を酌み取るのは我々がしなければならない、あるいは施設長がしなければならないことで、そういったいろいろな各施設での現場からの声をいろいろ聞いてみますと、やはり子供たちとの関係その他で土、日は世間並みに休ましてもらいたい、休めるものなら。
 それから夏休みはやはり世間並みに何日でもとりたい、こういうようなことを言うわけですが、例えば夏休みの問題を見ましても、私どもの統計では夏休みは二・五日しか平均でとっておりません、行刑職員の場合。これは一般の国家公務員の場合はもう少し多いようでございまして、総務庁の統計によると四・何日だったですか、かなり多い形になっておりますし、それから年休二十日間、これはいわば権利的なもので、とることができるわけですが、行刑職員、矯正職員の場合だけこれは十日を切っております。一般の国家公務員は十二日以上ということで、非常に勤務が過酷なわけでございますし、勤務内容自体も御承知のとおり、社会にあってさんざん悪いことをしてきた人を相手にするわけですから、大変なやはり勤務をせざるを得ないわけでございます。
 おまけに、何度も申し上げるようですけれども、日本の行刑職員の被収容者一人当たりの人数、これを被収容者負担率と言っておりますけれども、これはいわゆる先進諸国に比べて極端に高い。一人で三・二とか三・二五といった被収容者を相手にしているわけです。ちなみに、いわゆる先進諸国を見るとイギリスあたりが一・六、西ドイツは一・七、イタリアでさえ一・一、こういったような数字なわけで、それじゃ職員の数をふやしてくれというふうに予算要求を私どもがいたしましても、現在の行財政改革の中では、なかなかそう簡単にお認めいただけるわけでもないわけでして、結局、閉庁土曜日を何とか一般面会をさせたいという気持ちで、もしそれをそのとおりするということになると、職員を泣かさざるを得ないだろう。
 といって、もし御示唆のように月曜とか火曜とか水曜とか、そういった特定の日を休みにした場合、現在そういった日に休んでいる人たち、あるいはそういった日に来るのが当たり前だと思っている人たちが当然またたくさん来られるわけですし、と同時に職員の配置が、やはりそういったウイークデーの方が非常に余裕があるわけです、私どもとしては。ですから、職員の配置の余裕のあるときに会いに来られれば会わすことはできるけれども、土曜日に会わせるために、じゃ月曜日の職員配置を極端に切り詰めることができるかといえば、これはできない。
 なぜできないかというと、やはり刑務所も他の社会との絡みがいろいろございますので、月曜日に休むことによって、例えば刑務所関係でしたらば作業の関係の業者、これは月曜日は休んでおりませんので、そういった方々は月曜日に役所に当然来なければいかぬ。そういうようないろいろなこともございまして、できれば本当はウイークデーの日を土曜日にでも振りかえることができないかなというようなことで検討はしたわけですけれども、また検討を続けてはおりますが、なかなか難しい状態にあるわけです。
 それじゃ、どこかもっと、もう少しほかの方法はないだろうかということで、例えば退職したOBを何とか使うことはできないか。これは、やはり公務員でないので人を収容させるという仕事に直接使うことはできないだろう。それでは例えば会計とか庶務とか、どこかそちらの方にでもウイークデーに使って、それで手の浮いた人を土曜日にでも回すことはできないだろうか、そういうこともいろいろ検討しております。
 しかし、現実にはなかなかいろいろな国家公務員法上の法規制がございまして、まだ結論を出すに至っておりませんが、何とか私どもとしても、できればやはり家族に会わせてあげたい。先ほど申し上げましたように、特に受刑者の場合には家族に会わせると後が非常にいいものですから、何とかしてあげたいという気持ちは持っております。それだけ申し上げたいと思います。
#44
○千葉景子君 いろいろ細かい御説明をいただきまして。
 わかります。職員の方の問題等は私も十分理解できるところですけれども、基本的な考え方として、外部交通、面会というのがやっぱり受刑者なり被収容者の権利であるというところをまずもって基本的な基礎に置いていただきたいということ。
 それからもう一つは、今余りお話に出ませんでしたけれども、その配置を職員間でいろいろ工夫すると同時に、私はもうそろそろ面会のやり方についても、今は私の知る限りでは一人について一つの部屋で、小部屋で一人の職員の方が立ち会ってというような形で面会がされている。こういう部分も、他のヨーロッパ諸国など、場合によっては一定の大きなところで何人かが自由に面会して、そこに監視の人がいるというような形なども考えられるわけですから、そういうことなども含めながら、ぜひ権利としての外部交通権、こういうものを確保していただくような方向で検討していただきたい。
 それはきょう、あすで結論が出るとは私も思いませんけれども、さまざまな面会の方法なども含めて検討する中で土曜の面会、このことをぜひ実現していただきたいというふうに思いますが、その点について、簡単で結構ですから方向性などを一言お願いします。
#45
○政府委員(河上和雄君) 今御示唆いただいた、例えば大勢会わせて一人の職員が立ち会う、これは当然弁護人じゃなくて一般面会だろうと思いますが、そういったことも実は検討しなかったわけではございませんが、結局プライバシーにすぐ絡んでくる問題でございまして、一人の職員が全部を聞くということ、何人かのお話の内容を聞くというようなことになると、職員だけが聞ければいいんですが、ほかの人たちの会話もどうしても通ずるというようなことになるのか。それを機械的にやるとすると、これも実は大変金がかかる。
 いろいろな問題がございまして、なかなか簡単に現在のような職員配置から他の配置に変えることができないわけですが、先ほども再三申し上げましたとおり、私どもの方としては、会わすことができるならば、つまり職員が何とか絞り出せ、あるいは職員に負担をこれ以上かけないならば、会わせてやりたいという気持ちはございますので、今後ともいろいろな面で努力はしたいと思っております。
#46
○千葉景子君 くどいようですけれども、会わせてやりたいという御配慮よりは、会わせることが原則として権利だということだけはぜひ強く指摘させていただきたいと思います。
 それでは、法例の内容に移らせていただきたいと思います。
 今回の法例の一部を改正する法律案なんですが、まず私が最初にびっくりしましたのは、この第一番目、要綱で考えますと第一番目なんですけれども、削除される規定がございますね。法律の異時施行に関する規定の削除ということなんですが、これはこれまでどういうことで存在をしており、今回はどういう意味でこれが削除されることになったのか。まず、その点についてお伺いしたいと思います。
#47
○政府委員(藤井正雄君) 法例の第一条の第二項でございますが、これは、この法例が施行されました明治三十二年当時、台湾だとか北海道、沖縄県、こういった地域については交通手段が完備していなかったというようなことから、官報などの到達期間が何カ月にもなる。そこで、法律を全国に同時に施行した場合には、国民の知らない法律を遵守させるというような不都合も生じ得るということで、勅令をもって特別の施行時期を定めることができるというふうに規定されたものと思われます。しかし今、全く時代は変わってまいりました。特に、台湾というのはもう日本の施政権の及ぶところでなくなっておるわけでございまして、これを削除するのは当然であろうかと思います。
 ただ、これまで法例につきましては比較的この条文についていろいろ手を入れる、改正を施すという機会が少のうございまして、それも戦後、ハーグの国際私法会議で採択され日本が締結をした条約の批准に当たりまして、その該当部分を抜き出して単行法として制定をするというような手法がとられてまいりましたために、この法例の第一条二項というのはそのままにいわば残されてきた。これはこの際すっきりさせたいということで、改正の中に一つ加えたということでございます。
#48
○千葉景子君 それとともに、全体にかかわる問題なんですが、これは今残されている法律の中でもいわゆる片仮名で書かれている法律でございまして、現代では非常にわかりにくい、読みにくいといいましょうか、そういう法律だと思うんです。そういう意味では今後、この法例について片仮名法案を何とかするような方向があるのかどうか。あるいはこの法例全体については今回の改正以外にも、今後の改正の方向ということを含めて、どんなふうになっているでしょうか。
#49
○政府委員(藤井正雄君) 今回の改正法が、従前から存しております法例の一部を改正し、その中に溶け込ませるという形での改正となりまして、そのために片仮名の改正法案になっているということは、まことに私どもも少々遺憾に思う点がないわけではございません。これにつきましては、この部分を抜き出して単行法にして平仮名にするという考えも実はあったわけでございますけれども、特に今回の改正の主な目的の一つは、現行法例の中の男系中心の規定を改めて両性平等化を図るという点にありまして、対外的にも早急な改正をする必要があったわけで、そのためにこれを非常に急いだわけでございます。
 親族関係の部分を抜き出すといたしましても、なお検討の及んでいない後見の問題であるとかあるいは能力の問題であるとか、そういったものがございまして、親族関係の部分を切り出して単行法にするということも技術的に少々困難であるという事態になりましたので、改正を急ぐ必要上、現行法例に溶け込ませる片仮名書きの改正法案で御提案せざるを得なくなったということでございます。
 将来、この法例の残された部分につきまして、さらに検討がされる必要があろうと思っております。したがって将来的には、全体を改めて平仮名にするということを考えなければならないであろうと思っております。
#50
○千葉景子君 今回の法案の改正の柱は、今御説明があったようにやはり男女平等の考え方、これを基本的にこの法律の中で位置づかせるということだろうというふうに思うんですけれども、これを法的な考え方で言いますと、いわゆる選択的な連結の方法とか、あるいは夫婦共通の法律を適用するというような方法とか、幾つかあろうかと思うんですけれども、これまでのやり方と、それから今回取り入れられた方法、それがどう男女の平等あるいは子供の保護というものと関連をしているのか、その辺を少しわかりやすく説明をしていただければと思います。
#51
○政府委員(藤井正雄君) 婚姻に例をとりますと、準拠法は「夫ノ本国法」というふうに書かれております。これは渉外的婚姻関係において適用される実質法をどこに求めるか、世界各国にたくさん併存しております法秩序の中のどれに求めるかという、それを指定する法律でございますので、これ自体が直ちに男女平等に反するというふうには解釈されているわけではないんですけれども、ただ、その規定のあり方としまして夫と妻とを対等に扱うことは抵触法規の分野でもやはり考えなければならない。
 そこで、その点につきましてこれまでの規定の仕方を改めるとなると、諸外国の例にもございます三段階に分けの連結方式、これをとるのが現在の世界的な立法の流れであるということで、この改正法案の十四条にございますような段階的連結の方法を採用したわけでございます。
 これはあくまでも抵触法規の定め方の上で両性の平等の実現を図るということでございまして、その適用の結果が果たして今までの夫の本国法によった場合と、それから改正法の段階的連結の方法によった場合とでどちらが男女の平等にかなっているのかということは、具体的な渉外婚姻事件に照らしてみた場合にはさまざまの態様があり得ると思いますので、それは一般的に申し上げることはちょっと困難であろうと思っております。
#52
○千葉景子君 その趣旨はよくわかりました。
 それから、養子縁組などについてはこれまでのいわゆる配分的な適用、これを廃止してやりやすいようにされたということですけれども、これもちょっと従前の形と今回取り入れられた形とでどう違いが出てくるか、どう容易になってくるか、その辺の基本的な問題を説明していただきたいと思います。
#53
○政府委員(藤井正雄君) 養子縁組につきましては、現行法例では「各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム」と規定されておりまして、養親の側の要件は養親の本国法、そして養子の側の要件は養子の本国法、この両方を適用する、配分的適用と申しておりますけれども、そういう形での準拠法の適用になっております。したがって、これは両方の要件を備えないと養子縁組は成立しないという意味におきましてはかなり養子縁組の成立が難しいわけでございます。
 これに対しまして、今度の改正法案では「養親ノ本国法ニ衣ル」と、こういうふうに規定をいたしまして、これによりまして養子縁組というものが成立をしやすくなるということをねらっております。
 ただ、養子縁組につきましては、養子の方の利益がどういうふうに保護されるかという視点も見逃すわけにはいかないわけでございまして、従前の規定でございますと養子の本国法も適用されたわけでありますから、その養子の本国法の方で規定されておりました保護規定というものがかぶっていたわけでありますけれども、それが養親の本国法のみによって縁組を成立させるということになると、落ちてしまいます。そこで、養子縁組の成立について、養子とかあるいは第三者、公の機関などの許可とか同意とかが必要であるというふうに定められているときには、その要件も備えなければならないということで子供の保護を図る。養子縁組という身分行為の成立は容易にするが、子供の保護については目配りを怠っていないということでございます。
#54
○千葉景子君 改正内容の何点かで幾つかの共通な概念というか、そういうものが用いられているので、ちょっとその点について御説明をお願いをしたいと思うんですが、例えば今回は婚姻などについて常居所地法、こういう考え方がとられているわけですけれども、これは実際にどういう内容で、あるいはどういう基準で考えられるものでしょうか。
#55
○政府委員(藤井正雄君) 常居所と申しますのは国際私法の分野で生まれた概念でございますけれども、人が常時居住する場所である。単なる居所とは異なって、人が相当長期間にわたって居住する場所であるというように理解をされております。でありますから、その認定につきましては居住年数であるとか、居住の目的であるとか、居住の状況であるとか、いろんな要素を総合的に勘案して決定されるということが言えます。
 日本で考えてみますと、これは日本民法上の住所というのと大体同一のものであるといって差し支えないと思われます。住所という概念につきましては、これは国際的にはいろんな国でかなり異なった内容のものというふうに把握をされておりますために、国際的にできるだけこれを統一した方がいいんじゃないかということで、この常居所という概念があらわれてきたものでございます。
#56
○千葉景子君 さらにそれと、次のランクといいましょうか、そういうことで今度は最も密接な関係がある地の法律という三段目があるわけですが、これは今言われたように常居所地ということになると民法上の住所と同じようなものと考える。この密接な関係がある地ということになると、今度は具体的にはどういうことを考えればよろしいんでしょうか。
#57
○政府委員(藤井正雄君) 夫婦の本国法が同じときにはその法律による、それがない場合でも夫婦の常居所地法が同じであるときにはその法律によるというふうに決めたといたしましても、それもない場合にどうするか、最後の歯どめが必要になってくるわけでございまして、そこを押さえるために密接な関係のある地の法律によるという第三段階目の連結点をここに規定をしたわけであります。
 これはこの資料の末尾にございます西ドイツの国際私法などにも同じような規定のされ方がしてあるわけでありますが、一番問題になりますのは離婚の場合にこれがかかわってまいろうかと思いますけれども、国籍を異にする夫婦が別居をしてしまって国を隔てて居住しているような場合ということになります。この場合には、例えばこれまで一緒に住んでいたところ、つまり過去の常居所地法というようなものが一つ考えられようかと思います。また、夫婦の一方が子供と一緒に住んでいるというような場合には、その子供と一緒に住んでいるその人の住所地というものが密接関連を有するというふうにも考えることができようかと思います。
 幾つかの例は想定されるわけでございますが、結局このような包括規定でございますので、その時点その時点で適切に判断するほかはないであろうと思っております。
#58
○千葉景子君 次に、今回のこの法律案の中で、一方の当事者が日本人である場合には特別扱いといいましょうか、そういう部分があるように思うんですね。
 例えば婚姻の方式については、日本において婚姻を挙行した場合において当事者の一方が日本人であるときはこの限りでないということがありますし、それから離婚につきましても、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは日本の法律によるという部分があります。それからそのほかにも何条でしたか、補則的な方ですけれども、当事者が日本の国籍を有するときは日本の法律をその本国法とすると、幾つか、これはそれぞれ意味合いが違うかもしれませんけれども、一方が日本人である場合特別な取り扱いがされているわけですが、これはどういう理由で、それから具体的にはどういう内容になるのでしょうか、御説明をお願いします。
#59
○政府委員(藤井正雄君) 第一に御指摘になりましたのが婚姻の方式でございまして、これまではいわば絶対的婚姻挙行地法主義というものであったわけでございますが、それを改正いたしまして、当事者の一方の本国法によりたる場合も有効とするということにしたわけでございます。
 そこで、日本で日本人が外国の人と婚姻をした、その外国の人の本国法の方式によって婚姻を成立させたと。例えば儀式を挙げることによって婚姻が成立するという国の人と婚姻をして日本の国内で儀式を行ったというような場合、この場合でもその日本人は戸籍につきまして事後的に報告的届け出は必要でございます。しかし、婚姻の成立自体はあくまでもその儀式によって成立をしている。その届け出は事後的に報告のために届け出をするということが必要なわけでありますが、そういうことになりますと挙行地、日本で挙行した場合にはその挙行地法である日本の方式としての婚姻の届け出を最初から要求してもそれほど当事者に困難を強いるわけでもないわけでございます。
 逆に、そういう場合に当事者が報告的届け出もしないというようなことになりますと、日本国内において日本人が日本人の身分関係を登録公証する責務を負う戸籍の吏員の知らない間に、戸籍に記載されないままで婚姻の成立を認めてしまうという不都合が生ずるわけでございますし、婚姻の届け出をしないような人でありますと子供が生まれても子供の届け出もしないであろう。そうすると、日本人から生まれた日本人の子供であるにかかわらず戸籍にも載らないというような人もあらわれてくるという弊害も生ずるわけでございまして、そういうことから、日本国内で婚姻を挙行した場合には日本の方式である婚姻の届け出ということをこれは要求をしてよろしいんじゃないかということでございます。
 それから、二番目に御指摘になりましたのが十六条の離婚についてであったかと思います。
 離婚につきましては、従来と変わりましたところはただし書きの方でございまして、「夫婦ノ一方が日本ニ常居所ヲ有スル日本人ナルトキハ」「日本ノ法律ニ依ル」、これは例えば、日本において夫婦がともに共通本国法を有するというのは、これは日本人で夫婦である場合でありますし、それから夫婦がともに日本に常居所を有するという場合、これは日本に住んでいる場合でございますから、このただし書きが意味があるのは第三段階目の密接関連法が適用される場合であろうかと思います。その場合に、その当事者が、一方が日本に住んでいて、日本で協議離婚をするという場合を考えてみますと、相手方が日本の方式に従って日本の民法に規定している協議離婚のやり方で協議離婚をしようとしているわけでありますから、「日本ノ法律ニ依ル」としても別に相手方に不利益を与えることもないであろう。
 それから、裁判離婚の場合を考えますと、これは国際裁判管轄につきましては被告の住所地を原則的な基準とする、被告の住所地に国際的裁判管轄があるというふうに考えられているわけでございますので、相手方が日本へやってきて、日本の裁判所に訴えを起こすというのならば「日本一法律ニ依ル」ということにしても格別不都合はないのではないか。結局、こういう場合には日本法が密接関連法であるというふうに一般的に規定してしまっても特別不都合はないのではないか、こういう考え方でございます。
 それから、三番目に御指摘になりましたのが改正法の二十八条の規定に関してであろうと思います。
 重国籍を有する場合における本国法の決め方でございますけれども、こういう場合に、重国籍を有する一方の国籍が内国籍であり、他方の国籍が外国籍であるという場合には、多くの国の立法例においても内国籍優先の規定が置かれておるわけでありまして、この点につきましてはこれまでの法例の規定の仕方を踏襲いたしております。
 それで、これは実際的に申しますと、一つの国籍が日本である場合に、戸籍の窓口でその者が少なくとも日本人である、日本の戸籍に載っているということであれば日本人であるわけですが、日本人である場合にはその者が重国籍者であるかどうかということはもう調べる必要がないわけでございまして、要するに日本の国籍があれば、単一国籍なのか重国籍であるのかを調べる必要もなくその人の本国法は日本法であるというふうに考えてよいわけでございますので、そういう実際上の必要性もあるわけでございます。
#60
○千葉景子君 大体わかったような気がするんですけれども、もう一度今のを前提に私も頭の整理をしてみたいと思うんですけれども、少し条文に即してなんですが、婚姻の効力につきましては、夫婦の本国法が同一であるときはまず第一段としてその法律による、それからその法律がない場合においては常居所地法ということなんですが、その法律がないというのは同一の法律がないというふうに、この「其」というのは解してよろしいわけですね。
#61
○政府委員(藤井正雄君) 仰せのとおりでございますが、ここでは夫の本国法と妻の本国法が同一なときと、それから同一でないときという決め方をしておりまして、その夫の本国法、妻の本国法というその本国法というのは何であるかということは二十八条で決まるわけでございます。単一国籍の場合にはその国籍の属する国の法律が本国法であることは明らかでありますが、重国籍の場合には二十八条によってその夫の本国法というものをまず決める、それから妻の本国法というものを決める、そしてその二つを比べてみて同じであるか違うものであるかということを判断いたしまして同一の本国法があるかないかということを決めるわけでございます。
#62
○千葉景子君 それから、非嫡出親子関係の部分なんですが、これは十八条によって嫡出でない親子関係の成立については、父との間の親子関係については子の出生のときの父の本国法、それから母との間の親子関係についてはその当時の母の本国法による。そして認知による親子関係の成立については、認知の当時の子の本国法がその子または第三者の承諾、同意云々という要件がありますけれども、そうするとこの嫡出でない子の親子関係の成立というのは認知とは別のことを意味しているわけですか。
#63
○政府委員(藤井正雄君) 非嫡出の親子関係につきましては、特に父子関係でありますけれども、事実主義の国と認知主義の国がございまして、国によっては単に生理的父子関係があるということが認定されればそれで父子関係があるという国もあるようでございます。
 そこで、十八条の第一項前段に書いておりますのは、認知を要件とする場合もそうでない場合も両方含めて、とにかく父との間の親子関係の成立については出生当時の父の本国法によるんだ、こういうことを規定しているわけでございます。
 さらに十八条の第二項におきまして、子供の認知ということが問題になります場合には、十八条の一項で言う子の出生当時の親の本国法でもよろしいわけですけれども、それにさらに加えて、認知の当時の認知をする親の本国法、さらにもう一つ加えましてその当時の子供の本国法、そのいずれによっても認知ができる、こういう仕組みでございます。
#64
○千葉景子君 それから次に、養親子関係の問題なんですが、これについては今回の基本的な考え方としては、いわゆる配分的な適用ではなくて容易な成立を可能にするということが基本だというふうに思うんですけれども、子供の保護というのでしょうか、養子もしくは第三者の承諾もしくは同意または公の機関の許可その他の処分のあることを要件としているときはその要件をも備えなければならないものとするということになっておりますけれども、これは養子になるべき者の法律がそうなっているときに、こういうことを要求していると考えてよろしいんでしょうか。
#65
○政府委員(藤井正雄君) そのとおりでございます。
#66
○千葉景子君 それから二十二条に、さまざまな親族関係についての法律行為の方式はその行為の成立を定める法律によるけれども、ただし行為地法によることを妨げないということなんですが、これはどういう理由でしょうか。それから具体的にはどういうことが考えられるのでしょうか。
#67
○政府委員(藤井正雄君) 現行法においては十四条から二十条までに掲げられております親族関係についての法律行為、例えば認知であるとか養子縁組であるとか、そういったものの方式については、法例の第八条に法律行為の方式が決めてございまして、ここで「方式ハ其行為ノ効カヲ定ムル法律ニ依ル」、さらに「行為地法二依リタル方式ハ前項ノ規定ニ拘ハラス之ヲ有効トス」、こういう規定がございまして、この規定が適用されていたわけではございます。これはいわゆる場所は行為を支配するという考え方に基づく行為地法、さらにその法律行為の効力を定めている法律の方式、これもいい、どちらでもいい、こういう考え方であったわけでございまして、行為地法によることができるという考え方はそのまま踏襲をしております。
 いま一つは「行為ノ効カヲ定ムル法律ニ依ル」という点でございますけれども、これはむしろ行為の成立に関する事柄でありますので、行為の成立の準拠法、つまり実質的成立要件の準拠法と歩調を合わせた方がいいのではないかということで、成立の準拠法によらしめるのが適当であると考えましてこういう規定になったわけであります。特に配分的適用をする場合でございますと、成立を定めている法律、準拠法というのは複数あるので決められないじゃないかということになりますが、そういう場面がなくなりましたので端的にその成立の準拠法によると、どういうことにいたしております。
#68
○千葉景子君 あと何点かちょっと補則的な部分などについてお尋ねをさせていただきたいと思いますが、この補則的な規定にかかわる二十八条の関係なんです。
 これは本国法の決定をどうするかという部分なんですが、その中で、当事者が地域的に法律を異にする国の国籍を有する場合にはこうせよという規定になっているんですが、この地域的に法律を異にする国の国籍というのは、これはちょっと具体的にどういう例などが考えられるのか、もしございましたら。
#69
○政府委員(藤井正雄君) 一番典型的な例を申し上げますとアメリカ合衆国でございまして、アメリカにおいては各州ごとに州法が定められておりまして、カリフォルニア州のアメリカ人はカリフォルニア州法が適用される。テキサス州の人についてはテキサス州法が適用される。そこで「地方ニ依リ法律ヲ」、一つの国であるけれども一つの国の中に複数の法域が存している場合には、その国でこの人についてはどの法律、国の中の複数存在するうちのどの法律を適用するかということをその国が決めておりますので、その決め方に従ってその人についてアメリカの中のどの州の法律を適用するかということを決めるということでございます。
#70
○千葉景子君 同じように今度は三十一条の関係では、「人的ニ法律ヲ異ニスル国ノ国籍ヲ有スル場合」と。それはその国の規則に従ってやはり指定される法律をということなんですか。この「人的ニ法律ヲ異ニスル国ノ国籍」ということになりますと、これも具体的にはどういう場合が考えられるんでしょうか。
#71
○政府委員(藤井正雄君) 人的に法律を異にする場合として典型的なものを一つ挙げますと、その人の宗教によって法律が異なっているという場合がございます。
 マレーシアにおきましては仏教徒について適用される法律とキリスト教徒について適用される法律とがございます。これは地域的に分かれているわけじゃございませんで、その人がどの宗教に属しているかによって適用される法律が違うわけでございますので、そういう人につきましてはマレーシアの国が定めている内部的な抵触規則に従いまして、内部のどの法律を適用するかということを決めるということでございます。
 これは昭和六十一年に国会で制定をしていただきました扶養義務の準拠法に関する法律の第七条で「当事者が、地域的に、若しくは人的に法律を異にする国に」云々とこう書いてございます。この「人的に法律を異にする国」というものと同じでございます。
#72
○千葉景子君 それから三十二条なんですが、これはこれまでの御説明いただいたような部分とどうかかわって、どう違ってくるのだろうか、ちょっとわからない部分があるんですが、この三十二条という部分の内容を御説明をいただければと思います。
#73
○政府委員(藤井正雄君) これは講学上反致と呼ばれているものでございまして、前段部分は現行法の二十九条をそのまま踏襲しておるわけでありまして、例えば我が国の法律において離婚についてはその者の本国法による、当事者の共通本国法として指定される本国法を準拠法とすると。そこで本国法にまで尋ねてまいりますと、今度はその本国においてはそのような夫婦の離婚は常居所地法によるんだというふうにその国が決めているといたします。そういたしますと、日本の国際私法では本国法によるということで、一たんその本国の法律を適用しようとしたんだけれども、その本国の法律を見てみると、実は住んでいるところの法律によりなさいと、こういうふうになっている。とすると、日本に住んでいる人につきましては再びはね返ってまいりまして日本の法律を適用して、結局日本の法律によって離婚の裁判をする、こういうことであります。
 そこで、これが従来の考え方であったわけでありますけれども、今回、「夫ノ本国法」というのを改正いたしまして三段階の連結の方式をとるということになりました。その三段階の連結の方式をとるということは、当事者に共通する法律をここで非常に厳選し、選んで、三つの段階に分けて適用していこう、こういうことでございますので、この三段階連結の場合にはもはや反致を認めない。これまでは反致が認められていたものではありますけれども、十四条とか十五条、十六条の場合にはもう反致を認めないということにする。こういう考え方で、十四条によって定められた共通本国法なり共通常居所地法なりによって離婚の要件を考えていく、こういうことでございます。
#74
○千葉景子君 いろいろな点について御説明をいただきまして、なかなか具体的な適用を頭に描きませんとはっきりどうもイメージがわかない部分があるんですけれども、今回の改正によりましていわゆる両性平等の精神を実現していこうということがほぼ完成をしたのではないかというふうに思うんですが、世界的な課題でもありますけれども、両性平等という部分についてはこれでほぼ改正が終わったというふうに考えてよろしいんでしょうか。
#75
○政府委員(藤井正雄君) この点につきましては、かねてから男女両性平等の精神に沿うように改正をしろという御指摘を受けてきたところでございまして、今回の改正によってその目的は達したものと私どもは考えております。
#76
○委員長(塩出啓典君) 午前中の審査はこの程度にとどめます。
 午後一時十分まで休憩いたします。
   午後零時十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十分開会
#77
○委員長(塩出啓典君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 法例の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#78
○下稲葉耕吉君 私は、最初にリクルート事件の捜査について、その次に法例の一部を改正する法律案関係につきまして質疑をいたしたいと思います。
 去る六月十三日の本院の予算委員会におきまして、法務大臣からリクルート事件の捜査結果に関する報告がございました。その中に、
 本事件は、その内容が複雑かつ多岐にわたっておりましたため、捜査は約二百六十日の長期間に及び、その間、捜査に従事した検察官は五十二名、検察事務官は百五十九名、取り調べた参考人の数は延べ約三千八百名、捜索場所は約八十カ所、押収証拠品は約九千点に上っております。という御報告がございまして、引き続いて、検察官においては、厳正公平、不偏不党の立場を堅持しつつ、法律の定める手続にのっとって事案の解明に当たり、法と証拠に照らして適正な事件処理を行ってきたものでありまして、
という御報告がございました。
 そこで、「法と証拠に照らして適正な事件処理を行ってきた」というお話でございますが、リクルート事件の一つの特徴といたしまして私が感じますのは、これはマスコミ先導型の事件であったと、このように思うのでございます。
 御承知のとおり、昨年の夏ごろでございましたか、川崎市の元助役に係る収賄容疑事件というふうなものがマスコミに報道されまして、一躍リクルート、リクルートというふうなことでにぎやかに報道されるようになったわけでございます。マスコミが、何といいますか、社会正義を追求するという立場からいろいろ報道をなさる。あるいは検察官も、その職責を通じて正義を追求する。ある程度、背景といいますか、基盤といいますか、共通する面はないわけじゃない、このように思いますけれども、検察当局はあくまでも法と証拠に照らして事件の解明というものを地道に、そして粛々と厳粛におやりにならぬといかぬわけでございます。
 マスコミはそれとは別な立場からいろいろ取材し、そして報道される。本件の場合はそちらの方が先行しているわけでございまして、その後、言葉は悪いんですが検察庁の捜査なり事件処理というものがついていくような形になっている。
 マスコミ、新聞報道等によって国民には、事件に対するある程度の輪郭なりあるいは見通しなり予見なり、そしてさらにそれに基づいて希望といいますか、将来についての希望というものがありますが、それと検察の地道に証拠に基づいて追求していくという姿勢とは、必ずしも一致しない。一致しないと、今度は逆に検察の捜査が不十分じゃないかとか、国民の期待にこたえられないんじゃないかというふうなことになろうと思うのでございます。
 また、マスコミのそういうふうな一つの報道なり何なりにこたえようという形で検察が動くことはないと思いますけれども、そういうふうなことになりますと結果的に捜査が適正に行われないということになりかねない。その辺のところが大変難しいところじゃないかと思うのでございます。
 私もこの事件が起きまして、大正の末期から今日に至りますまでのいわゆる疑獄事件と言われるような事件をちょっとフォローしてみたわけでございますが、その中で非常に指摘したいのは、無罪事件というのが大変多いということでございます。
 例えば、古くは松島遊廓移転事件、これは大正の末期から昭和の初めにかけまして事件化されたものでございまするが、いろいろ当時騒がれたにもかかわらず、三名の人が無罪になったというふうな事件でございます。
 さらにまた、御承知のような帝人事件。これは昭和九年の五月ごろの事件でございますが、この事件は性格的に見ますと今度のリクルート事件に非常によく似たところがございます。大臣が二人逮捕された、大蔵省の次官も起訴された。その結果、齋藤内閣が総辞職した。東京地裁で裁判が行われまして、四年余にわたって二百六十六回の公判が行われたわけでございますけれども、全員無罪です。そして、それが確定しているわけです。判決文なんか読んでみますと、証拠不十分というふうなものじゃなくて、空中楼閣であるというふうな形。そういうことになりますと今度は一斉に、これもよくよく調べてみますとマスコミ先行型の、マスコミが大変事前に報道していた事実があるわけでございますが、今度は一転いたしまして検察の人権じゅうりんということで大変問題になったというふうな結果になったわけでございます。
 そういうことで、なかなか検察の処理というのは難しいわけでございますけれども、私はあくまでも粛々と、法務大臣の報告にございますように、法と証拠に照らして適正な処理をする、それが仮にその当時の世論に必ずしもこたえられるようなものでなくても、それが私は検察の宿命であるというふうに思います。
 昔、昔でもないですが、ロス疑惑という事件がございまして、皆様御承知のとおり、三浦なる夫婦がロサンゼルスへ行きまして、銃撃されて、そして二人ともけがしたんですが、女房が重傷を負った。アメリカ政府に大変働きかけまして、アメリカの軍用機まで出して日本にその女性を持ってきた。当時のマスコミは、本当にすばらしい男性だというふうなことで、多くの女性が三浦にあこがれるといいますか、そういう風潮があったです。ところが一転いたしまして、あれはもうやらしたんだと、結局殺人事件で起訴され、今公判係属中だと思うんですが、あんな憎たらしい男はいないということで今度はマスコミに一生懸命書き立てられる。しかし、そういうふうなことにかかわらず、検察というものはやはり今申し上げましたように法と証拠に照らしてやらなくてはならない。これは大変苦労されるところであろうと思うのでございます。
 そこで、リクルート事件そのものについて、政治的な道義の問題なり倫理の問題なり、これは大いに追及しなくちゃならない。それはしかし我々の問題であるわけでございまして、それは法務省の問題じゃないと思うんです。法務省は事件を処理される、そういうふうな立場からすれば、私は司法がそういうふうな分野まで介入すべきでない。あるいはもっと言いますと利用されるべきじゃない。やはり、その辺は厳然とした姿勢を貫かれるところに長い目で見て国民に信頼される司法のあり方があるんじゃないか、こういうふうな感じがいたすわけでございます。
 そこで、大変御苦労なさったわけでございますが、以下、先ほど読みました点につきまして若干お伺いいたしてみたいと思うのでございます。
 一部の報道によりますと、五十二名の検察官と検察事務官百五十九名が従事されたということでございますが、捜査の途中で担当の検察官が異動かなんかでおかわりになっているという報道がございました。一般的に、ああいうふうに国民が大変関心を持って、その行方を見守っている事件で、捜査の途中で担当の検察官がかわるということは、ちょっと何といいますか、一生懸命やったのだろうかとか、あるいはもう捜査は終わったんだろうかとか、それでいいんだろうかとかいうふうな感じがあったことは間違いのないことだと思うんでございますが、その辺について、まず最初に御説明いただきたい。
#79
○政府委員(根來泰周君) ただいまの御指摘の人事異動の件でございますけれども、本年三月二十八日に、定例の人事異動でございますけれども東京地検の特捜部所属の検察官三十六名、部長、副部長、検事、副検事を含めて三十六名おりますけれども、そのうちの副部長二名を含む十四名が他に転出いたしまして、それに相応する検察官が転入したということでございます。結論的に申しますと、この異動によって捜査に支障を来したということはないということは申し上げられると思います。
 この件でございますけれども、私どもの人事異動というのは大体三月に定例の人事異動があるわけでございますが、大体もう十二月ごろに原案ができまして、そして本人に意向打診をして、そして三月に発令するというような慣例になっております。
 御理解いただいておりますように、このリクルート事件というのは実際もう不透明な事件でございまして、どのように展開するか全然わからなかったというのが実情でございます。したがいまして、十二月当時にはまだそこまで切迫感といいますか、そこまで人手が要るという見通しはなかったわけでございますが、日時が進んでいくに従いまして、御承知のように二月十四日に強制捜査ということに相なったわけでございますけれども、既にそういう人事異動の計画はできておったものですから、それに従って人事異動をし、かつ、そういうことを踏まえて人的な準備といいますか、事件に対する人的な準備を周到に行っておったというのが実情でございます。
#80
○下稲葉耕吉君 事情はわかりました。
 検察官五十二名、検察事務官百五十九名が従事されたということでございますが、私の承知しているところによりますと検察官は超過勤務手当はない、このように理解いたしておりますが、それは間違いございませんですか。
#81
○政府委員(根來泰周君) お説のとおりでございます。
#82
○下稲葉耕吉君 そうだといたしますと、ちょうど連休のさなかですとか、あるいはもう捜査に時間がございますから、早朝あるいは夜遅くまで調べもございましょうし、事件の検討もございましょう。そういうふうな場合と平常一般的な処理をしている場合とで待遇が全く同じだということは、私としてはこれは大変なことだなと、このように思います。検察事務官の方は、これは超過勤務の対象になっていると理解してよろしゅうございましょうか。
#83
○政府委員(根來泰周君) 管理職を除きまして超過勤務手当の支給を受けております。
#84
○下稲葉耕吉君 検察事務官の方は管理職を除いて超過勤務手当が出ている。これも大変だろうと思うんですけれども、ちょっと細かく聞きますと、一般経費以外で本件捜査のために、例えば参考人は三千八百人と出ていますが、この参考人に対しましては被疑者じゃないですから参考人の日当といいますか、旅費といいますか、そういうものをお支払いになっておるんだろうと思いますけれども、そういうふうなことで、その他いろいろございましょうが、本件の捜査を終えられまして大体幾らぐらいの費用といいますか、予算といいますか、かかったものでございましょうか。
#85
○政府委員(根來泰周君) 大臣の御報告にありましたように二百六十日かかったわけでございます。ざっと申しまして一億五千万円ぐらいでございます。その内容は、超過勤務手当あるいは検察旅費、それから一般の庁費あるいは参考人等旅費を含めましてそういう金額になっております。
#86
○下稲葉耕吉君 一億五千万円と伺いましたが、この経費はそうすると既定経費の中で賄われたんでしょうか。あるいは予備費なり、あるいはその他大蔵省との折衝でどういうふうになるかわかりませんが、その辺のところはいかがなものでございましょうか。
#87
○政府委員(根來泰周君) この経費のほとんどは既定経費の中で賄ったわけでございますが、不足分は、行政経費について節約という処置がとられておりますけれども、節約の解除あるいは人件費については若干予算に余裕がございましたので、人件費からの流用で賄っております。
#88
○下稲葉耕吉君 「武士は食わねど高楊枝」という言葉もございますけれども、やはり検察官なり検察事務官の方々はそれぞれの仕事に大変な使命感をお持ちになって、本当に一生懸命おやりになっていると思うわけでございます。しかし、個々の人間にとってみますと、そういうふうな使命感を背中にしょいながらも、やはり毎日毎日の生活をやっておるわけでございまして、普通の実態より大変違う、私も役所にいたからわからぬわけじゃないんですけれども、そういう場合の超過勤務手当にしても、実質的に超勤をやっただけの支給ができているかどうか、これもなかなか疑問だろうと思います。
 これ以上お伺いいたしませんけれども、大変苦労されていることだと思うんです。そういうふうな中で仕事をやられるわけで、やっている人たちは使命感に基づいて一生懸命頑張ってもらわぬといけないんですけれども、皆様方、大臣初め管理的、管理という言葉がいいかどうかわかりませんが、管理的な立場にある方々は、現実に働いているそういうふうな人たちの苦労に甘えることなく、やはり十分そういうふうな苦労にこたえて、憂いがなく仕事ができるような環境なり何なりをつくっていただくということが大変大切じゃないかと思うんです。
 先ほど社会党の千葉先生の質問の中に、刑務所の職員の方々のいろいろな勤務超過といいますか、面会等に関連いたしまして質問が出ました。さらにまた先ほどの法務大臣の所信表明の中にも、検察官、裁判官志望者というものが少ない。それは司法試験制度にも問題があるんじゃないか。この委員会でもしばしば議論されているわけでございまして、平均二十八歳で合格するということになりますと、司法修習生二年やりますと三十歳で初めて現場へ出る。定年が特別な方を除いて六十三歳だといたしますと、三十年そこそこぐらいしかできないというふうなことであります。給与が低い、転勤がある、住居関係が悪い、その他いろいろな理由で検察官志望者が少ない。そういうことも聞くわけでございまして、その辺のところを実際管理的な立場にある大臣以下の皆さんたちに十分配慮してもらわなくちゃならない、こういうふうに思うわけでございますが、この事件を処理されましていかがでございますでしょうか。
 例えばこの前、四月から司法修習生が卒業したり何だかんだしたわけですけれども、検察官の志望者がふえたとか、あるいはこの事件の結果、部内にどういうふうな影響を与えたのか、士気が上がったのか下がったのか、あるいは外から、国民から検察庁にどういうふうな反応があったのか、その辺のところをもしお聞かせいただければお願いいたします。
#89
○政府委員(根來泰周君) 検察官初め職員に対していろいろ温かい御配慮をいただきまして大変恐縮しているわけでございます。いろいろ先生が先ほど来御指摘のあった点について、私どもなりにいろいろ考えております。
 まず、職員の勤務状態といいますか、そういう問題でございますが、平素の超過勤務というのは多少忙しいものですからオーバーしておりますけれども、これは給与の中で賄っているという感じはあるわけでございますが、こういう大事件になりますと極めて多忙でありまして、休暇はほとんど返上しておる、あるいは毎日十一時、十二時に帰るという生活を続けているわけでございます。これは制度上、検察官あるいは管理職員に対しては超過勤務の支給はございません。ですから、そういう点については今後私ども、従来も考えておりますけれども、法制度の変更といいますか、法制度の改正を含めていろいろ考えていかねばならないことだと考えております。
 それから、この事件についての考え方でございますが、非常に今までの事件に比べて大事件であったということは間違いありません。ただ、私どもとしては若干考えねばならないのは、やはり端緒の問題があるわけでございます。これはやはり検察が端緒をつかんでやったということじゃなくて、報道先行型、先導型というふうに先ほどおっしゃいましたけれども、そういう面があったわけでございます。したがいまして、報道先行型であったために非常に事件としてはやりにくい事件であった。それで各種の情報をもとにしまして世間的には巨悪というのがまず形として出てきて、それを検察が追いかけるというような形になっておるわけでございます。
 御承知のように、検察の方は武器は刑事訴訟法だけでございます。刑事訴訟法によって、証拠によって認定した事実が重大な犯罪事実ならばそれは巨悪ということに相なるわけでございまして、情報で築き上げたものは巨悪というわけにはまいらぬわけでございます。その辺に世間と私どもの、いわゆる法律との乖離があるわけでございます。これは先ほどおっしゃったように法律で適正にやることでございますし、今後公判のあることでございますから、そういう結果に相なったことは当然の話だと考えております。
 それから、国民の間からの反響でございますが、事件終結までの間に一万一千通の激励文書が郵送される、また多数の激励電話が寄せられたというふうに聞いております。また外国でも、タイムあるいはニューズウイーク等に取り上げられて、東京地検の捜査ぶりは国際的にも注目を浴びたわけでございます。
 検事の任官者に対する影響というのは、非常に間接的なものですから今後にかかるわけでございますが、大体そういうような結末になっておりまして、私どもとしては検察が全力を尽くして、その持てる法律によって証拠を認定して終局処分を行ったと考えておりますが、今後仰せのように公判維持に全力を尽くすものと考えております。
#90
○下稲葉耕吉君 最後に、法務大臣にお願いかたがたお伺いしたいんですが、法務省というのはなかなか応援団の少ない役所でございまして、それだけに大変苦労も多いわけでございます。今もお話しいたしましたように処遇の問題、待遇改善の問題、たくさんいろんな問題がございます。今お話ししましたのはその一端でございますけれども、こういうふうな問題を契機にいたしまして、大臣の抱負なり決意なりを例えればありがたいと思います。
#91
○国務大臣(谷川和穗君) もちろん、法の秩序を維持させていくということが法務省に与えられている一つの大きな仕事でございますから、特に刑事事件のような法に違反をするような事件に対しまして私どもとしては精いっぱいの努力をしていかなきゃならぬ、これは当然のことだと思います。しかしながら、それはそれで国民の御理解と御支援がなければこの仕事はできるものではないし、そういう意味からいっても法務省に対して国民の各位から温かい御支援と御理解をちょうだいしなきゃならぬ、こう思います。
 それから、実際に現場を担当する、特に検察の諸君はそれこそ口で言えない大変な、先ほど局長が休日を返上してという表現を使いましたけれども、まさに努力をしておるようなことでございまして、それにもまた御理解をいただきたいと思いますし、それからそういうことに対しまして国会の方におきましても周辺の事柄につきましては御支援をいただきたい、こういうふうに思います。
 それから、法務省の仕事は何も検察の刑事事件といいますか、事柄にだけかかわるものではない。国民の日々の生活に直接関係のあるようなその他の仕事も数多くあるわけでございまして、しかしながら、残念ながらこれにかかわる人の問題からいいますると、当然総定員法にもかかわってまいりまするし、それから予算の面でも必ずしもなかなか思うように伸びてまいってはおりません。社会がこれだけふくそう化してき、しかも国際化し、行政需要が巨大化してくる中で、法務省の国民の権利義務に直接かかわる日々の仕事に対しまして、ひとつぜひとも温かい御理解と御支援を今後ともお願いを申し上げなきゃならぬ、こう考えておる次第でございまして、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。
#92
○下稲葉耕吉君 次に、法例の一部を改正する法律案関係につきまして、時間もございませんが、御質問いたします。
 提案理由の説明にもございましたように、国際私法、国籍法等の改正の動向及び最近の我が国における渉外婚姻を初めとする渉外的身分関係事件の増加にかんがみ、婚姻関係及び親子関係における準拠法の指定をより適切なものとするため、要するに両性平等の精神に一層即した適切なものにするために改正するというふうなことでございまして、基本的には賛成でございますが、その前提に立ってお伺いいたしたいと思います。
 実は、この改正案をいただきまして、何回も読み返してみたんです。なかなかわからない。なかなかわかりにくいというのが第一の印象でございます。明治三十一年ですから、もう満九十年たっているわけでございまして、この法律を今、中卒ぐらいの人たちに読ませてわかるかといったら、ほとんどわからないんじゃないだろうかと思うんですね。やっぱり法律というのは平均的な日本人が読んでわかるぐらいの法律が好ましいわけなんですけれども、先ほど社会党の千葉先生の御質問を聞いていても、やっぱりなかなかフォローしにくいところも多いわけです。
 そこで、私も読み出しまして、第一に改正案の最初にひっかかりましたのは、「第一条第二項を削る。」とあるので何だろうかと思ったら、「台湾」という言葉が入っているんですね。もう終戦後四十四年たっているわけですが、そういうふうな言葉が、実際は及ばないわけなんですけれども法律の条文として残っている。条約の改正だとかほかの法律の改正で一部改正がなされた程度で、今回こういうふうな形で改正案が出てきたんですけれども、それでも片仮名です。最後まで読んでみると、附則だけ平仮名で書いてあるというふうな状態になるわけです。
 そしてまた、言葉にいたしましてもなかなかわからない言葉が多いんですね。「方式」だとか「準正」だとか「常居所地」だとか。それで私も手元にある辞典を引いてみたんです。そうしますと、講談社から出ている現代実用辞典を引いてみましたら、方式というのはあるんです。ところが、準正だとか常居所地というのは辞典にもない言葉なんですね。そこでさらに今度、三省堂から出ておる新小辞林、これを読んでみましたら、これも方式だけある。方式という言葉だけなんです。一定の形式または手続。それならば手続だとか形式というのは我々がよく使う言葉だからそんな言葉にかえてもらったらどうだろうかな。
 そこで、今度は岩波の二千四百ページから成っておる広辞苑を読んでみたら、やっと準正という言葉が見つかったわけですね。ところが岩波のその二千四百ページの広辞苑においてすら、常居所地という言葉はついに見当たらなかった。ですから、勉強しようと思う人が辞書を引いたって出てこないんです。そういうふうな改正案がまた出てきているんですね。まあ、それはいろいろ経緯もあることはよくわかるんですけれども。
 ですから、何も刑事局と民事局の話をするわけじゃないんですけれども、刑事局の方は監獄法の改正で刑事施設法、これは今度よくわかりますね。内容の議論が今あって、まだ参議院まで回ってこないんですけれども、内容は理解できるけれども、民事局サイドの一部改正ということですからそうだったんだろうと思いますけれども、これはなかなかわかりにくい。
 そこで、その辺の経緯を聞こうと思ったんですが、時間もございませんので、実際この法律の運用をするのは市町村だと思うんですね。市町村の扱う人たちは年間何件ぐらい扱うんだろうか。そして実際扱う人たちがわかるんだろうかどうか、そのためには教養をどういうふうになさるんだろうか、その辺のところについてひとつお伺いしておきたいと思います。
#93
○政府委員(藤井正雄君) 全面改正に至りませんでしたために、このように片仮名の法律を片仮名のままで改正するということになりまして、わかりにくいという御批判を受けるのはまことにもっともでございまして、この点はおわびを申し上げます。
 それで、この種の渉外的な戸籍事件がどのぐらいあるかということでございますけれども、お手元にございます合本の資料の三十四ページというところでございます。これは目次の六、法例の一部を改正する法律案参考資料というところの三十四ページをごらんいただきますと渉外婚姻数調べというのがございまして、日本人と外国人との婚姻届け出数を人口動態調査結果によって数字でもって表示をいたしております。
 これをごらんいただきますと、昭和六十二年ではこの渉外婚姻事件は一万百七十六と四千四百八を足しまして一万四千五百八十四件でございます。五年前の昭和五十七年は八千九百五十六件でございますから、六割以上の伸びを示しております。もっとさかのぼりましてこの表の一番上、昭和五十年で見ますと六千四十五件でありますから、その時点から見ますと倍以上に伸びているということになります。
 そのほか、裁判所の司法統計によりますと、昭和五十七年と六十二年で比較いたしまして渉外養子縁組の許可件数は百七十二件から五百五十二件へと三倍強の増加をいたしておりますし、全国の家事事件の渉外事件の新受件数はこれまたこの六年で約六割増の高い伸びを示しておりまして、非常に渉井戸籍事件が増加しているということがうかがわれます。
 ただいま準正とか常居所地とかいうようなわかりにくい言葉がある、こういう御指摘でございました。これはまことにそのとおりという面もあるわけでございますけれども、準正と申しますのは、民法の七百八十九条に規定してあるものにつきましてこれを講学上準正と呼ぶということがほぼ確立いたしておりますし、また、常居所地というのも、これはハーグの国際私法会議でもってこういう概念を使うということが世界的になりまして、これがいずれも既に国籍法なりあるいは扶養義務の準拠法に関する法律なりにそれぞれ取り入れられておるわけでございますので、実際の事務担当者にはそれなりに理解をしてもらえるであろうと思っております。
 実際の事務処理上の指針となるように、私どもの方で通達を発出する準備はいたしております。
#94
○下稲葉耕吉君 御説明ございましたけれども、この資料は婚姻の届け出だけでございまして、出生もあれば、離婚もあれば、あるいは認知もあれば、養子縁組もあれば、離縁もあればというふうなことだろうと思います。
 もう時間も参りましたので、この辺でやめますけれども、やはり専門家だけがわかっても実際その適用を受ける人たち、それから手続をとる役場の人たちが理解していただいて間違いのないようにやっていただかなければ国際的にもまた国内的にも問題になるわけでございますので、その点を強く要望いたしまして私の質問を終わらせていただきます。
 終わります。
#95
○猪熊重二君 今回のこの改正案は、ことしの一月三十日に法制審議会から答申されたものを急いで改正案にまとめて国会に提出されたということで、短い期間にこのようなものをまとめられたことは非常に御苦労なことだと思います。
 ただ、今回のこの改正に関連して法制審議会ではその私法部会で、昭和三十六年の四月に法例改正要綱試案婚姻の部、それから昭和四十七年十一月には同じく親子の部というものについて、改正に関し、各種提案、提言がされているわけです。今回の改正にはこの従前の試案がどの程度生かされているのか、概略で結構ですが御説明ください。
#96
○政府委員(藤井正雄君) 法制審議会の国際私法部会は、昭和三十六年と四十七年に改正要綱試案を発表いたしておりますが、そこでは裁判管轄権及び外国裁判所の裁判の承認の規定を置くことといたしておりました。今回の改正案はこれを設けていない、この点が違うところでございます。
 これは、両性の平等の観点から改正を早く実現する必要があるということで改正法の実現を急いだということが一つございますのと、例えば国際裁判管轄権につきましては、我が国が独自に定めても条約の根拠がない限りメリットがいささか薄いというようなこと、あるいは最高裁判所の判例でもって一応実務上の基準はでき上がっているというようなことから、この点は今回の改正案には盛り込まれていないわけでございます。
#97
○猪熊重二君 先ほど申し上げた試案の提案事項の一つでもあるわけですが、現行の法例という名前の法律は、いわゆる法例、直接的な法例の規定としては一条と二条があるだけでして、そのあとの三条から三十一条まで、要するにこの法例という名前の法律のほとんどは国際私法に関する規定なんです。そのために、この試案でも、法例中の国際私法に関する規定を現在のこの法例から分離して、独立の法律としたらどうだというふうな提案がなされているわけですが、先ほどの民事局長のお話で、急いで部分的にということで、部分的な改正ということだったのでできなかったんだろうとは思いますが、この辺は検討はされてみたんでしょうか。
#98
○政府委員(藤井正雄君) 三十六年、四十七年に発表いたしておりますかつての改正要綱試案も、やはり婚姻と親子に関するものでございました。中断後、今回両性平等の観点から、改めて審議を始めまして改正案の立案に至ったわけでございまして、今回の審議におきましては、これ以外の部分には審議は及んでおりません。
#99
○猪熊重二君 それからもう一点、改正に関する総論的なことで、この法文の形態については先ほどから千葉委員、下稲葉委員の方からも出ておりましたけれども、平仮名、口語文の問題、それからそれ以上に、この法例の規定についてはもう規定の内容が非常に不完全であって、判例、学説によって補充しなければ実際の運用に非常に支障を来すというふうに言われているわけです。要するに、国際私法という法律は、判例法、学説法だと言われているという状況にあるわけです。
 このような状況を踏まえた上で、今後の全面的な改正の予定はあるのか、あるいは計画はあるのか、その辺いかがでしょうか。
#100
○政府委員(藤井正雄君) これは今後、法制審議会の国際私法部会でどのようなものをどのようにして審議していくかということにかかわってくるわけでございますけれども、いつまでも片仮名の法律ではぐあいが悪いということは私どももよく認識をいたしております。したがって今後、法制審議会で今回積み残した分について十分な検討をしていただいた上で、今回の改正分も含めて、平仮名による立法にすることを検討いたしたいと事務的には考えております。
#101
○猪熊重二君 それでは、今回の改正に関して各条文的に個々にお伺いしていきたいと思います。
 まず最初に、十三条二項について伺いますが、先ほど下稲葉委員からも出ましたけれども、「婚姻ノ方式ハ」という、この「方式」というのはどういう意味なんでしょうか。
#102
○政府委員(藤井正雄君) これは婚姻の形式的成立要件に属するものを指しておりまして、具体的に申しますと、我が国でございますれば市区町村長に対する届け出がこれに当たります。ほかの立法例で申しますならば、公開した場所における儀式であるとか教会における儀式であるとかというようなことによって、そういう方式でもって婚姻が成立をするというふうに定められているものもございます。
#103
○猪熊重二君 そうすると、十三条の一項で「婚姻成立ノ要件ハ」と書いてあるわけです。二項で「婚姻ノ方式ハ」と書いてあって、この「婚姻ノ方式ハ」というのが今おっしゃったように婚姻成立の形式的要件ということだとすると、一項の「婚姻成立ノ要件」という用語は二項の婚姻の形式的成立要件を除外した要件、すなわち婚姻の実質的成立要件ということを意味するわけでしょうか。
#104
○政府委員(藤井正雄君) そのように理解いたしております。
#105
○猪熊重二君 そうすると、立法の形式として現行法の方は、対照条文で下の方が現行法になっておりますけれども、現行法だと方式はただし書きになっているわけです。ただし書きになっているというのは、本文の「婚姻成立ノ要件」の中に一応全部入っていて、ただし形式要件としての方式はということで現行法だと意味がわかるわけですが、改正案の場合には一項と二項が別建てになっていますから、一項にただ「婚姻成立ノ要件」と書いてあって、二項で「婚姻ノ方式」というふうに別建てにしてくると非常に条文の読み方として読みにくいと思うんですが、その辺は配慮されなかったんでしょうか。
#106
○政府委員(藤井正雄君) 現行法の規定は、「婚姻成立ノ要件」という中に婚姻の形式的成立要件と実質的成立要件との両方を含めるような形でまず本文を書いて、ただし書きでその形式的成立要件を切り出したというふうに読むことができるわけでございます。しかし、法例の中のほかの規定ではすべて、認知にしましても、あるいは養子縁組、準正などにいたしましても、実質的要件を規定いたしまして、方式はそれとは別に規定をしているということになっておりますので、それと平仄を合わせることがよろしいというふうに考えまして、またこの要件というのは形式的成立要件を除いた実質的要件のみを指すということが現在では解釈上確定しておりますので、今回の立法ではそういう解釈に基づいて立法したわけでございます。
#107
○猪熊重二君 次に、同じ十三条の三項についてお伺いします。
 現行法の二項の規定が三項の方には入っておりません。要するに現行法の二項というのは、在外日本人間の婚姻の方式についてはこのとおりのものを有効とするという趣旨の規定ですが、これが改正法では削除というか、全然記載されていませんが、これが書かれなくなったこの後の手だてとか、その辺のことはどういうことになるんでしょうか。
#108
○政府委員(藤井正雄君) 現行法では婚姻の形式的成立要件は「婚姻挙行地ノ法律ニ依ル」と、挙行地法主義をとっておるわけでございます。ところが、在外の日本人間で婚姻をしようとするときには、いわゆる外交婚、領事婚というものが民法の七百四十一条で認められております。これは挙行地法の法律による方式ではございません。そこで、現行法のもとではこの七百四十一条は適用があるんだということを明示しておかなければならないわけでございます。ところが、改正法では絶対的挙行地法主義を緩和いたしまして、各当事者の本国法の方式によってもよろしいということにいたしました。そうなりますと、在外の日本人同士が日本の法律を準拠法にして婚姻をするということができるわけでございまして、七百四十一条は日本の法律でございますので、これは当然に含まれる。「本国法ニ依リテ之ヲ定ム」という中に含まれるわけでございますので、これはここにわざわざ切り出して規定をしなくてもいいということになりますから、削除したわけでございます。
#109
○猪熊重二君 次に、十四条についてお伺いします。
 十四条の第一段に「夫婦ノ本国法が同一ナルトキ」というふうにありますが、これは夫婦の本国法の内容が同一であればよろしいという趣旨なのか、それとも夫婦の本国法が同一の本国法そのものでなければならないという趣旨なのか。いかがですか。
#110
○政府委員(藤井正雄君) 夫の本国法と妻の本国法がそれぞれ別物ではあるけれども内容が同じであるというものはここには含んでおりません。あくまでも夫の本国法と妻の本国法が同じ国の法律であるということを意味いたしております。
#111
○猪熊重二君 そうだとすると、この規定は夫婦の国籍が同一なるときはその国の法律によるという規定を書けばもう少しはっきりするように思いますが、そう書いたんじゃまずいわけですか。
#112
○政府委員(藤井正雄君) 夫も妻も単一の国籍しか有しないという通常の場合を考えますと、まさにそれでよろしいわけでございますけれども、現在は重国籍の人が非常にふえてまいっております。重国籍の人の本国法というのは、この法例の考え方では、改正法の二十八条一項によりましてそれぞれの人についてそれぞれ本国法は何であるかということをまず決めまして、その二人の本国法が同一であるかどうかということを判断する、こういう考え方に立って十四条のような規定をしたわけでございます。
#113
○猪熊重二君 さらに、この場合、「夫婦ノ本国法ガ同一ナルトキ」ということに限定するのもそれなりの意味はあるでしょうけれども、もう少し当事者利益を図るという意味からいった場合には、夫婦の協議によるその一方の本国法というふうな規定にしておいたら、もう少し婚姻の効力に関して便宜だろうと思うんですが、その辺は考えられませんでしたか。
#114
○政府委員(藤井正雄君) この十四条でいう「婚姻ノ効力」というのは婚姻の身分的効力のことを指しているわけでございます。一方、婚姻した夫婦の間における財産についての制度、これは夫婦財産制でございますが、これは次の十五条に規定をいたしております。夫婦財産制につきましては、これは財産に関するものであるということからいたしまして当事者の自治を許すということが考えられます。そこで、国際私法会議が定めております国際私法条約におきましても、夫婦財産制につきましては当事者が一定範囲内の法律を選択するという選択制の準拠法の決め方を認めているわけでございますけれども、純然たる身分的法律関係について法律選択を認めるという考えはこれまでもないようでございまして、それはどうも相当ではないのではないかというふうに考えております。
#115
○猪熊重二君 それから同じくこの十四条で、常居所地法という問題に関して先ほど御説明があったんですが、民事局長の御説明だと、日本民法の場合では住所とほとんど同視し得るというふうな御意見でした。しかし、そうすると一つの法律の中に住所、住所地法、常居所、常居所地法というふうなことが日本の場合には実際問題としてダブっちゃう。ただ、ダブらない国もあるからいいんだと、こういうことになるわけでしょうか。
#116
○説明員(濱崎恭生君) 確かに御指摘のとおり、改正後の法例におきましては常居所地という概念と住所という概念と両方残るわけでございますが、今回改正の対象としております人の身分関係に関する準拠法の場面につきましては住所という概念は残らない。すべてこれは常居所というものを連結点にするという取り扱いをすることにしております。
 現在、住所として残っている代表的なものは法例の十二条の債権譲渡の準拠法でございますが、こういった取引の場面におきましては常居所というものを連結点にするのは必ずしも適当でございません。例えば法人の場合もその対象になるわけでございますが、常居所という概念は自然人についてのみ存する概念でございまして、法人については常居所という概念はないと、こういうふうに考えられております。したがいまして、そういった取引の場面におきましては住所という概念を依然として使わざるを得ないということで、その両方が残るということになっておるわけでございます。
#117
○猪熊重二君 次に十五条についてお伺いします。
 一項本文についてお伺いすると、現行法では「夫婦財産制ハ婚姻ノ当時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル」ということで、本国法について「婚姻ノ当時ニ於ケル」という時間を固定するいわゆる不変更主義をとっておりますけれども、改正法は時点の固定ということをとっておりませんけれども、それの趣旨はどういうところにありますか。
#118
○政府委員(藤井正雄君) 先ほど十四条の婚姻の効力と十五条の夫婦財産制とを対比して申し上げたわけでございますが、準拠法を定める時点につきましては、婚姻の身分的効力の準拠法と同じやり方をとるというのが両者の一貫性の点から望ましいというふうに考えたことが一つでございます。
 それともう一つは、夫婦財産制のように現在の生活に直接影響を与える法律については、現行法のように過去の属人法によるよりも、現在の当事者に最も密接に関連する法律によらしめる方が望ましいという考え方でございまして、こういうような理由から変更主義に改めることとしたものであります。
#119
○猪熊重二君 同じ十五条の二項についてお伺いします。
 二項には、外国法による夫婦財産制云々の場合には「善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ」と、こういうふうな規定になっているわけですが、この「善意ノ第三者」の「善意」ということ、あるいは「第三者」ということ、これはどういうことでしょうか。
#120
○政府委員(藤井正雄君) 夫婦財産制は、夫と妻との間での例えば財産は特有財産であるのか共有であるのか、その管理はだれがするのかというようなことについての決まりでございます。したがって、ここで第三者といいますのは、そういう夫または妻と何らかの法律関係、取引関係に立つ者をここで第三者と呼んでおるわけでございます。
 この場合、例えば一例を挙げますと、フランス人同士の夫婦がいる。そのフランス人の夫婦の財産について取引関係に立つ第三者がいるという場合に、その相手方が自分の取引の対象者はフランス人夫婦であるということを知っていたとすると、その人の準拠法は、特にほかの法律を選択していない限りは、共通本国法であるフランス法であるということを知っていたというふうに一応判断できるではなかろうか。ただし、これはいろいろな条件が加わりますので簡単に例を挙げることは難しいかと思いますけれども、今のようなことが一応言えるのではなかろうかと思います。
#121
○猪熊重二君 そうですか。そうすると、「夫婦財産制ハ」ということは、今局長の出された例で言えば、フランス法における夫婦財産制の内容について知、不知が善意、悪意ということだと私は思ったんだけれども、そうじゃなくて、二人がフランス人ならば、特別のことがなければこれはフランス法が準拠法になるということについての知、不知の問題だと、こういうことになるんでしょうか。
 それからもう一点、通常法律用語では「善意ノ第三者」というふうな場合には、取引の当事者に対するその取引の、何というか、取引の当事者の別の人を第三者と、こういう用語を言うんですけれども、今のお話だと第三者というのは、今の例で言えばフランス人と取引をした当の相手方が第三者ということになるわけですか。
#122
○政府委員(藤井正雄君) 夫婦財産制には御承知のとおり法定財産制と夫婦財産契約とございますが、今簡単な例を挙げるつもりで法定財産制のことを申し上げておるわけでございますけれども、フランス人夫婦であることを知っている場合には、その準拠法はフランス法であるということについて悪意である、これは悪意の第三者に当たるというふうに解しております。
 ここで言う第三者というのは夫婦以外、夫婦財産制についての直接の当事者は夫婦でございますので、それ以外の第三者をいうわけでございます。ただし、一般第三者、何の利害関係もない第三者というのは第三者には入りません。あくまでも取引に入るとかなんとかしたようなそういう第三者がここに言う第三者であると、こういうふうに考えております。
#123
○猪熊重二君 何かよくわかりませんけれども、通常第三者というと、甲乙が取引して、それが取引の当事者で、それで今度丙という取引に直接の当事者ではない者を第三者というんだけれども、これはフランス人と取引した当の相手が第三者ということなんだそうで、非常に頭の回転をよくしないとよくわかりません。
 その同じ条項の中で、「此場合ニ於テ其夫婦財産制ニ依ルコトヲ得ザルトキハ」と、こうありますが、「其夫婦財産制ニ依ルコトヲ得ザルトキ」というのは、具体的にはどんなことが想定されるわけでしょうか。
#124
○政府委員(藤井正雄君) 第三者と申しますのは、要するに夫婦と何らかの利害関係に立った第三者でございますけれども、その第三者が善意である場合、そして自分は善意であるということを主張した場合には一外国法による夫婦財産制についてこれをその第三者に対抗することができないわけでございまして、そうなった場合にそれじゃそれはどうなるのかということになりますので、その夫婦財産制によることができない、フランスの夫婦財産制によることができない場合には、その行為をした行為地法である日本の法律によることにさせると、こういうことでございます。
#125
○猪熊重二君 そうすると、書いてあっても書いてなくても同じことじゃありませんか。「善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ此場合ニ於テ」「其第三者トノ間ノ関係ニ付テハ夫婦財産制ハ日本ノ法律ニ依ル」と、こう書けばいいのであって、「其夫婦財産制ニ依ルコトヲ得ザルトキ」とわざわざ限定して書かなくても、善意の第三者に対抗することを得ないときには、よることを得ないときは当然なんだから、不必要な文言になるんじゃありませんか。
#126
○説明員(濱崎恭生君) その夫婦財産制がある国の法律によるということを知らない者には、その法律によるということを対抗することができないわけですが、そういう場合でも相手方が善意であるという抗弁を出しませんで、それはそれで当該国の法律による財産制であるということを認めるという態度に出ました場合には、それは原則どおりその国の法律によって規律されるわけでございます。そういう場合にまであえて日本法によるということにする必要はないわけでございますので、その点を明確にするために、そういう場合であって、しかも相手方がそれを善意であることを主張したためにその夫婦財産制によることができないときはというふうに明確にしたわけでございます。
#127
○猪熊重二君 続いて、十六条についてお伺いします。
 概括的な質問で申しわけありませんが、十六条のただし書きは、趣旨だとか働きぐあいとか、どんなことになりましょうか。
#128
○政府委員(藤井正雄君) 「夫婦ノ一方が日本ニ常居所ヲ有スル日本人」であるときには常に「日本ノ法律ニ依ル」ことができることといたしまして、いわば内国法優先の定めをしたわけでございます。離婚は、十六条本文にございますように十四条の規定の仕方と同じでございまして三段階連結になっているわけでございますが、このただし書きが適用されるのは夫婦の共通本国もない、共通常居所もない、したがって第三段階である密接関連法に準拠して離婚の要件を考えなければならない場合を指すわけであります。これは論理的にそうなるわけでありますけれども、そのような場合には、例えば協議離婚をするという場合でございますと、相手方は日本人との協議に応じて離婚に同意をしているわけでございまして、これは日本の法律によっても構わないということを認めているわけでございますので、日本の法律に準拠して協議離婚を認めても何ら外国人を差別したことにはならないであろう。
 それからまた、裁判離婚の場合を考えてみますと、国際裁判管轄につきましてはこれを定めた明文の規定はございませんが、民事訴訟法で定めております国内的な裁判管轄の考え方をここに持ってきて、それによって判断をするのが一般的な考え方でございまして、そうなりますと被告の住所地を原則的な基準とすることになります。ですから外国人が日本に来て裁判をするという場合が普通でございます。そういう場合には、これまた日本を密接関連法であるというふうにもう法定してしまっても格別不都合はないのではなかろうかと思っております。
#129
○猪熊重二君 次に十七条についてお伺いします。
 十七条の一項、二項両方関連するわけですが、子供の嫡出性の問題に関して、夫婦の一方の本国法で嫡出なるときは嫡出とするという趣旨になりますが、そうした場合に夫婦の一方の本国法では嫡出、他方の本国法では非嫡出というふうな場合でも、ともかく片っ方で嫡出ということが認められる限りは嫡出だと、こういうことでしょうか。
#130
○政府委員(藤井正雄君) そのとおりでございます。
#131
○猪熊重二君 次に十八条についてお伺いします。
 十八条の一項の親子関係の成立ということについては、認知による親子関係の場合もしくは血縁の事実による親子関係の場合両方含むというふうなことは先ほどの御答弁でわかったわけですが、この一項の規定があって親子関係の成立についてこういう場合は親子関係が成立するぞと、こう書いてある。それに対してさらに二項が設けられた趣旨について説明してみてください。
#132
○政府委員(藤井正雄君) この一項は「出生ノ当時ノ父ノ本国法」または「母ノ本国法」ということになっておりまして、これはその前の条文の嫡出子に関する準拠法の規定と平仄を合わせて、出生時の法律によってそれを定める、こういうふうにしているわけでございますけれども、現行法は「子ノ認知ノ要件ハ」「認知ノ当時父又ハ母ノ属スル国ノ法律二依リテ之ヲ定メ」、こういう定め方をしておりますので、現行法例が定めております認知の当時の認知をする親の本国法というものも準拠法の一つに加える。さらに、現行法は配分的適用をいたしておりまして、「認知ノ当時子ノ属スル国ノ法律」というものも掲げておりますので、これも準拠法に加える。そしてこれらはすべて選択的な準拠法にする。そうすることによりまして認知の成立を容易たらしめるという考え方であります。
#133
○猪熊重二君 そうすると、二項の読み方なんですが、「認知ノ当時ノ」という文言はどこまでかかるんですか。
#134
○政府委員(藤井正雄君) これは、「認知ノ当時ノ認知スル者又ハ子」、この両方にかかります。
#135
○猪熊重二君 認知の当時の認知する者または認知の当時の子のと、こういうふうに読むわけですか。そうすると、ここのところは「若クハ」と書かないで通常「又ハ」と書くわけですか。
#136
○政府委員(藤井正雄君) この文章の中では選択的なつなぎをする接続詞は一カ所しかございませんので「又ハ」でよろしいのではないかと思います。
#137
○猪熊重二君 そうすると結局、一項と二項は、一項の方で子の出生当時の本国法を基準にしてなるべく認知が認められる場合を多くしよう。二項の方は、子の出生の当時の問題でなくして、認知の当時の問題として引き直して考えてみた場合にも認知ができるならばその成立を認めようというふうなことで、一項、二項、まあ一項は認知全部じゃありませんけれども、認知に関して言えば、一項、二項両方とも時のポイントを変えることによっての認知が成立する場合の準拠法を多く認めようと、こういう趣旨だと理解してよろしいわけですか。
#138
○政府委員(藤井正雄君) 仰せのとおりでございます。
#139
○猪熊重二君 次に十九条についてお伺いします。
 この準正についても先ほど下稲葉委員の方からいろいろお話ございまして、私も漢和辞典を見たけれども準正というのは結局ない。大体それじゃ民事局長、この準正という言葉の国語的なというか、漢字的な意味はどういうふうに理解しておられるんですか。
#140
○政府委員(藤井正雄君) これは私どもが大学で講義を受けた当時からもう既に準正という言葉がございまして、これは七百八十九条によって「嫡出子たる身分を取得する。」、そういう法律関係を準正と呼んでいるというふうに理解をしておりますし、そういう考え方で定着をしてきて疑いは持たれていないというふうに思っております。
 国語的な意味は、多少調べてみましたけれども、どうも余り正確にはわかりません。正嫡に準ずるというようなそういう意味を持つものではないかと、これは全くの推測でございまして、間違っていたらまた訂正をさせていただきたいと思いますけれども、そういうものではないかというふうに思っております。
#141
○猪熊重二君 雑談的で非常に申しわけないんだけれども、確かに私も漢和辞典を引いてみると、準というのはなぞらえるとかそれに準ずるというふうに書いてある。準正という単語はないんです。
 だから、今局長がおっしゃったように、どうも準正というのは要するに嫡出の方が正であるという意味で、正しいという意味で、正嫡に準ずるということだとすれば、準正というのは正嫡に準ずるんじゃなくてまさに正嫡そのもののことなんですから、そういう正嫡に準ずるんだという意味で準正というのを使うんだとすれば、いつまでも非嫡出、昔で言えば私生児だったけれども、嫡出に準ずるんだ準ずるんだ、準嫡だというわけでは余り意味内容としても適切じゃないと思うんです。どこでだれがつくった用語だか知らないけれども、こういう用語を知っているのは法律家だけで、読んでだれもわからぬというのは非常にぐあいが悪いということを十九条に関しては申し上げておきたいと思います。
 それで、二十条の一項についてお伺いしますが、養親の本国法のみを準拠法として、子の本国法を準拠法としなかった理由はどこにあるんでしょうか。
#142
○政府委員(藤井正雄君) 現行の十九条は、「養子縁組ノ要件ハ各当事者に付キ其本国法二依リ」ということになっておりまして、いわゆる配分的適用主義をとっておるわけでありますが、配分的適用というのは一方の当事者については甲の国の法律を、他方の当事者については乙の国の法律を適用するということで、どうしても適用関係が複雑になります。
 婚姻につきましては改正法もそういう配分的適用をそのまま維持しているわけでありますが、養子につきましては特に各国の法制がいわゆる契約型と決定型と大きく二つに分かれるようでありまして、日本は特別養子を別にすれば契約型でございますが、外国では多くの場合裁判所の養子決定というものによって成立をするということになっております。その契約型と決定型の両者について配分的適用をやるということになりますと、これは準拠法の決め方が非常に複雑になるということがかねて指摘をされておりました。そこで、最近の立法例の多くは親の方の本国法主義をとるというものが多いことにかんがみまして、改正法では養親の本国法主義をとることにしたわけでございます。
#143
○猪熊重二君 この件に関して、先ほど千葉委員の質問に対して局長の方から御答弁もあったんですが、養親の本国法を準拠法にするけれども、子の本国法について保護規定があればそれも考慮する、考慮するというか要件を具備しなきゃならぬということになっている。そこまではわかったんですが、養親の本国法自体で、養親の本国法で養親たる要件のほかに子に関しても要件を定めている場合、「養親ノ本国法ニ依ル」というのは、その養親の本国法における養親の要件だけ充足すればいいのか、養親の本国法における子に関する要件も充足しなきゃならぬのか、いかがなんでしょうか。
#144
○政府委員(藤井正雄君) 養親の方の本国法で定めておる要件は、養親に関するものと養子に関するものとを問わず、すべて充足をする必要がございます。
#145
○猪熊重二君 次に二十一条についてお伺いいたします。
 二十一条でいっている「親子間ノ法律関係ハ」というこの「親子間」の親子はどの範囲の親子を指しているわけでしょうか。
#146
○政府委員(藤井正雄君) これは嫡出の親子関係と非嫡の親子関係すべてを含んでおります。
#147
○猪熊重二君 もちろんその嫡出の中に養親子関係も入っていると、こういうことですね。
#148
○政府委員(藤井正雄君) 申し落としました。養子も多くの国では嫡出子の身分を与えられるだろうと思いますが、もちろんこれも含んでおります。
#149
○猪熊重二君 それで、この「親子間ノ法律関係ハ」というその「法律関係」というのはどの範囲のことをこの条項では差しているわけでしょうか。
#150
○政府委員(藤井正雄君) ここでは主として親権に関する事項だと考えたらよろしいかと思います。親権がだれに帰属するか、そしてまた親権はどういう内容のものであるかというようなことでございます。
#151
○猪熊重二君 結局、親子関係というけれども、今局長がおっしゃったように、親権を考えている法律関係ということですね。氏だとか扶養だとか相続だとかはもちろん親子の法律関係といっても別に規定してあるから、ここの「法律関係」という中には入らないと、このように考えていてよろしいわけですね。
#152
○政府委員(藤井正雄君) 相続につきましては改正法の二十六条によることになりますし、また親子間の扶養に関しましては扶養義務の準拠法に関する法律によるということになります。子の氏につきましては、これまた子の属人法である本国法によるというふうに私どもは解釈をいたしております。
#153
○猪熊重二君 次に、少し飛びまして二十三条に関連しましてちょっと私がわからないのでお伺いしたいんですが、要するに後見という規定が改正法の二十四条にあるわけですが、後見というのは親族関係には入らないんでしょうか。なぜそういう疑問が出てくるかというと、二十三条で親族関係ということについて規定してある。その後に二十四条に後見というのが書いてあるものですから、後見というのは通常親族法の中に入っているんだけれども、親族関係とは別個な問題だと、こういうことで二十四条が後ろへ飛び出しているわけでしょうか。
#154
○説明員(濱崎恭生君) 後見というものがいわゆる親族関係という概念に入るかどうか、これはいろいろな考え方があると思いますけれども、今回、後見につきましては改正の対象といたしませんでした。
 いろんな考え方がございますけれども、一般的な考え方は、後見、保佐といった問題は親族関係そのものではない。これは財産的な関係の性質も有しているわけでございますので、親族関係には入らないという考え方が一般的でございます。そういう考え方に基づきまして二十四条の前に規定しているわけでございます。
 なお、現行法におきましても、現行法では二十二条と二十三条の関係になりますけれども、そういう考え方を前提にして二十二条で「親族関係」といっておりますが、後見は入らないという前提で規定している、それを踏襲しているわけでございます。
#155
○猪熊重二君 次に二十八条についてお伺いします。
 二十八条のまず一項で、現行法では二十七条の一項ということになるわけですが、「当事者ノ本国法二依ルヘキ場合二於テ」という文言があるわけです。ところが、改正法の二十八条ではこの文言が削除されていますが、この削除された理由はどういうところにありましょうか。
#156
○政府委員(藤井正雄君) 現行法の二十七条にいう「当事者ノ本国法二依ルヘキ場合」というのは、当事者の本国法を準拠法とする場合ということでございます。改正後の二十八条一項は当事者の本国法を準拠法とする場合にこれが適用されることはもちろんでございますが、それ以外に、例えば婚姻の効力を定めました十四条で「夫婦ノ本国法が同一ナルトキハ」という、この「夫婦ノ本国法」の規定の適用に当たってもやはりこの二十八条一項は適用される。これは直接に本国法が適用される場合じゃございませんで、共通本国法を見出す前提の作業でございますが、そこの場面でも二十八条一項が適用されるということになりますので、現行法のような「本国法二依ルヘキ場合」という表現を使わなかったわけでございます。
#157
○猪熊重二君 なるほど言われてみるといろいろあるもんだなと、こう思いました。
 それから同じ条文で、現行法は「最後ニ取得シタル国籍ニ依リテ其本国法ヲ定ム」という規定があるわけです。これは、最後に取得した国がその人にとって一番いい国だから、その国を本国法にしようということなんだろうと思いますが、この最後に取得したる国籍による本国法の規定を削除した理由はどこにありますか。
#158
○政府委員(藤井正雄君) 現行法は時を異にして別々の国籍を取得するという場合を前提にして規定をしているわけでありますが、最近の各国の国籍法改正によりまして、特に我が国もそうでございますけれども、父母両系主義をとった。そこで父と母とが国籍を異にする場合には子供は生まれながらにして重国籍者になるわけでございまして、国籍を同時取得するということになります。現在では、重国籍者というのは異時取得の場合よりも同時取得の場合の方が断然多くなっているわけでありまして、そういう人につきましては現行法の規定は役に立たないわけでございます。そこで昭和五十九年に国籍法を改正していただきました直後から私どもの方で国際私法の改正に取り組んだ理由の一つはそこにもあるわけでございます。
#159
○猪熊重二君 同じ二十八条三項についてお伺いします。
 「当事者が地方ニ依リ法律ヲ異ニスル国ノ国籍ヲ有スルトキハ」というこの問題なんですが、この「地方ニ依リ」というのは例えば日本の場合だったら、日本の場合は地方により法律を異にすることが余りないのであれですが、この「地方に依り」というのは何か地域的な広さだとか、あるいは行政的な区画上の問題とか、何らかの区分けのメルクマールとなるようなものはあるんでしょか。
#160
○政府委員(藤井正雄君) ただいま御指摘のような行政区画の広さとか地域とかというような、そういうメルクマールは何もございませんで、要するに一国の中に複数の法域があるという場合を考えているわけであります。
#161
○猪熊重二君 「其国ノ規則ニ従ヒ指定セラルル法律」というのはどういうことでしょうか。
#162
○政府委員(藤井正雄君) 現行法の二十七条三項は、我が国の国際私法が直接に外国のどの地域の法律によるかを指定するかのごとき規定になっておりますが、このような一国内に複数の法域があるような国では、その複数の法のうちのどれを適用するかという、一国内における抵触規則が必要なわけでございまして、これを準国際私法というような呼び方で呼んでおりますが、要するに本国法において国内でどういう法律を指定するかという、そういう抵触規則があるはずである一その規則の定めるところによっていずれの地域の法律を適用するかを定めようということで、間接指定方式というふうに呼ばれておるところであります。
#163
○猪熊重二君 同じ条文で「当事者ニ最モ密接ナル関係アル地方ノ法律」ということは、これは当事者に最も密接なる関係ある地方の問題なんですか、それともその地方の法律という問題なんでしょうか、いかがでしょうか。
#164
○政府委員(藤井正雄君) これは当事者がどの地方と最も密接に関係をしているかということであります。つまり最も密接な関係ある地方という意味であります。
#165
○猪熊重二君 三十一条の「人的ニ法律ヲ異ニスル国」の問題についてお伺いします。
 先ほど千葉委員の方からもこの件に対して質問がありましたけれども、「人的ニ法律ヲ異ニスル」というのは、先ほどの宗教的な区分けによる法の適用の区別というほかに、もう少しどんなものが考えられるでしょうか。
#166
○説明員(南敏文君) インドにおきましてはヒンズー教徒がございます。ヒンズー教徒の中にも各カーストというのがございまして、そのカーストいかんによりましても、さらに身分関係について適用すべき法律が違っております。そのような身分も含まれております。
#167
○猪熊重二君 そうすると、先ほどの宗教による人的区別、今お話しになった社会的身分による人的区別、そのほかに例えば、あるかないか知りませんけれども民族や人種による法の適用区別、あるいは場合によれば男女の性的区別による法の適用の区別、要するにそんなようなものもこの「人的ニ法律ヲ異ニスル国」云々という概念の中に入るわけでしょうか。
#168
○政府委員(藤井正雄君) 世界各国の法制を全部つまびらかにしているわけでございませんので、どのような例があるか即座にはお答え申し上げかねますけれども、ただいま挙げられましたようなそういう区別によって法が違う場合にこの規定はやはり適用されると思います。適用の結果が公序に反するかどうかという別個の考慮は働く余地があろうかと思いますけれども、原則的にはそのように言えるかと思います。
#169
○猪熊重二君 次に三十一条の二項についてお伺いします。
 二項直接の問題ではないんですが、一項の人的に法律を異にする国に関する規定を二項において準用しております。ところが、準用しているのは常居所地法や最も密接関係ある地に準用しておりますが、この人的に法律を異にする国に関する一項の規定は住所地法だとかあるいは居所地法の場合には準用しないんでしょうか。準用なんていうことは考えられないことなんでしょうか。
#170
○説明員(南敏文君) 住所あるいは居所にもこれは類推適用がされるものと考えられます。例えば難民に関する条約第十二条第一項におきましては、難民についての属人法というのは住所地法によるということになっております。その場合、その住所地がこのように人的に法律を異にするという場合にはこの第三十一条が類推適用されて、それぞれの法律を適用するということになろうかと考えます。
#171
○猪熊重二君 次に三十二条のただし書きについて、この趣旨を概略御説明ください。
#172
○政府委員(藤井正雄君) 現行法の二十九条が改正法の三十二条になったわけでありますが、現行法では、属人法として当事者の本国法によるべき場合には相手方の国際私法の規定によりまして反致が可能であるという規定になっております。
 改正法におきまして反致をどの範囲で認めるかというのが一つの議論の対象になったわけでございますけれども、十四条、十五条、十六条という場面では段階的連結という手法を用いました。この段階的連結の場合には当事者双方に共通する法律を厳選して準拠法というふうにしているわけでありまして、この場合には反致を認めないこと、こういう場合には反致は起こらないんだという建前で立法をしたわけでございます。
 例えば、もし共通本国法によるべきところをその国の国際私法の規定によって反致をするとした場合に、その国の国際私法上共通常居所が日本にある、だから反致をするという場合が、まあそういう場合もあるわけでありますけれども、夫の住所地が日本にある、だから反致をするという場合もあるわけでございまして、もし夫の住所地を理由に反致するということを認めるといたしますと、そのときは共通の要素を欠く法律を適用することになるわけでありますし、何にも増して男女平等の見地からも適当でない、こういうことにもなるわけでございます。そういうことで段階的連結の場合には反致を認めないということにいたしまして、ただし書きを置いたわけであります。
#173
○猪熊重二君 次に三十四条についてお伺いします。
 この三十四条についての質問は非常におかしな質問なんですけれども、どうしてかというと、ただし書きが非常におもしろい規定だろうと思うんです。というのは、本文で「本法ハ」云々の「扶養ノ義務ニ付テハ之ヲ適用セズ」というふうに書いてありますから、本法は扶養の義務については適用されないから、本法と扶養の義務は無関係だと書いてある。「但第三十条本文ノ規定ハ此限ニ在ラズ」というと、扶養の義務についてはこれを適用しないんだけれども三十条本文の規定は適用するんだというと、本法全体が適用しないんだろうと思うんですけれども、何かないものについてまた三十条本文の規定だけ適用すると。こういうおもしろい規定のような気がするんですが、この辺はどういう説明になるんでしょうか。
#174
○説明員(南敏文君) お答えします。
 この三十四条の書き方は、実は遺言の方式の準拠法に関する法律、昭和三十九年に制定されたものをなぞらえたものであります。
 この規定は、先生おっしゃるとおり非常に奇異な感じを与えるわけでございますが、三十四条第一項を見ますと、扶養義務につきましては特別に扶養義務の準拠法に関する法律というのがありますので、これについてはこの法律の規定は適用しないということにしております。ただし、三十条本文の規定は、これは常居所についての補助準拠法の規定でありますが、これにつきましては扶養義務の準拠法に関する法律中には規定がございません。そこでこれを適用するということにいたしたいわけでございます。
 その場合に、扶養義務の準拠法に関する法律に法例第三十条の規定を準用する、適用するという形で書けばよろしいんじゃないかという御指摘、御意見があるかもわかりませんが、扶養義務の準拠法に関する法律はこの法例の特則になっているわけでありまして、この本則、一般法たる法例の規定が何もなくても当然に適用になるということになろうかと思います。その場合には、結局このように「此限ニ在ラズ」というのは、適用するというんじゃなしに白地に残したということだけでありまして、そうすれば特則、本則との関係でこの規定が適用されるということになっているわけであります。
#175
○猪熊重二君 条文の一つ一つの細かい点についていろいろお教えいただいて大変ありがとうございました。
 質問を終わるに当たって、先ほども申し上げましたけれども、短い時間でいろいろおつくりいただいて、なかなか難しい法律をおつくりいただいて、大変御苦労さまでございました。
 法務大臣に最後に一つだけお伺いしておきますが、お伺いというかお願いというか、先ほどから下稲葉委員も申されましたように、えらい難しい法律でございまして、用語も難しい、法律の中身自体もこれは難しいんです、難しいんですけれども、用語も難しい、書き方も難しい。法律で書き切らぬところが非常に多い法律ではあるわけですけれども、もう少し国民にわかりやすいような形で今後は改正法を考えていくというふうなことに関して一言御意見をお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
#176
○国務大臣(谷川和穗君) ここに至るまでの経緯もこれあったことかと存じますが、何せ作業としてもいささかこれを急いだ方がよろしいという判断も別途あったわけでございます。しかしながら、ただいままでの御議論、そのとおりでございまして、国際私法に関する部会においてもさらに作業を詰めてなさっておるようでもございますので、御指摘の点につきましては今後十分留意すべきであろう、こう考えております。
#177
○猪熊重二君 終わります。
#178
○橋本敦君 法例の一部の改正の問題から質問に入ります。
 今回の改正につきましては私どもとしては国際的な私法の統一の方向、そしてまた両性の平等、こういう原則にのっとって改正されるわけでありますから、その基本的な理念において私どもも賛成であり、法案としても賛成をしておる立場でございます。そういう立場ですが、若干二、三の点だけお尋ねをしておきたいと思います。
 まず第一は、今度の改正が早くから議論をされながらようやくにして今日に至った、こういうことですが、先進諸国の中でこういった今日の国際私法の動向に沿って国内法の整備をまだしていない国があるのか、我が国はどれくらいの順位になっておるのか、そういった点の判断はどうなんですか。
#179
○政府委員(藤井正雄君) 昭和四十七年に改正試案を作成いたしました後、法例改正作業を中断いたしておりました。幾つか理由はあるわけでございますけれども、諸外国で改正作業を行われておりまして、その内容との調和を図りたいという気持ちもあったわけでございまして、ごく最近ではオーストリアとか西ドイツとかスイスというような国が相次いでここ近年に改正を行っております。ヨーロッパの国の中では例えばフランスであるとかイタリアなどはまだ改正が未了であるということでございます。決して自慢できるほど早いわけでもございませんけれども、まあ、それぐらいの位置にあるというふうに御理解をいただければと思っております。
#180
○橋本敦君 今回の法例の改正に伴いまして、実務的にもいろいろとこれからの具体化ということで問題になっていくわけです。この法例の改正に伴って、戸籍法とか国籍法とかそういった国内法の整備は全く必要がなかったんでしょうか、あるいは今後の課題で幾つかの点をお考えでしょうか。
#181
○政府委員(藤井正雄君) 御指摘の戸籍法や国籍法それ自体を改正する必要はございませんでしたので、その手当てはいたしておりません。ただ、常居所というような新しい概念、決して新しくはないので前の法律にもございますけれども、そういったものの適用基準などについて通達を発する必要はあると考えております。そういうものでもって対処してまいりたいと思っております。
#182
○橋本敦君 今の通達という検討の中に、例えば今後いろいろ密接関連法という関係が問題になってまいりますが、それ自体わかりにくい概念ですが、その密接関連法の選択の基準といいますか、適用の基準といいますか、そういうものは通達で示すことができるのか、あるいはできないのか、個々の具体的判断に任されるのか、そこらはどうお考えですか。
#183
○政府委員(藤井正雄君) 共通常居所地法もない。第三段階として密接関連法によるという場面になりますと、これはなかなか一義的にこうであるというふうに通達でもって基準を示すことは難しいのではないかという感じがいたします。このようなものが裁判上あらわれてきた場合には裁判所において判断をするということになりますが、多くの場合には戸籍の窓口にあらわれてくるわけでございます。そういう場合には戸籍役場の方から管轄の法務局の方に受否伺いをしてもらいまして、法務局の方で必要な事実の調査をして何らかの指示をするというような体制が考えられます。
#184
○橋本敦君 そういったことを戸籍関係の窓口あるいは市町村段階で法務局に問い合わせることもできるし、またそれが妥当だという、そういったことはこれは通達になじむのではないかと思いますが、どうですか。
#185
○政府委員(藤井正雄君) 確かに御指摘のとおりでございます。私どもはこの法例の改正法案が成立をいたしましたならば、法務局はもとより、関係市町村に対しまして十分な指導を行わなければならないというふうに考えております。
#186
○橋本敦君 そこで具体的な条文の二、三についてお尋ねすることにいたしますが、まず十三条の婚姻の成立の要件であります。十三条ではまず第一項で「婚姻成立ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム」、この「各当事者ニ付キ」というのは夫婦の両方それぞれという意味なのか、共通の場合という意味なのか。「各当事者ニ付キ」というのはどういうように解釈すればよろしいんですか。
#187
○政府委員(藤井正雄君) この点は現行法を何らいじっているわけではございません。
 現行法の解釈といたしまして、婚姻の要件の中に一方の側だけの要件と考えられるものもございますし、両方に通じた要件でなければならないというものも考えられるわけでございまして、このあたりは大体解釈上一定の見解が示されて落ちついているのではなかろうかというふうに考えております。
#188
○橋本敦君 今度は第二項で婚姻の方式がいわゆる婚姻挙行地法、こういうことになってくるわけですが、これと第一項との関係は、全く当事者の選択的なのかどうなのか、その点はいかがですか。
#189
○政府委員(藤井正雄君) この第二項は婚姻の方式について定めておるわけでございまして、一項は実質的成立要件について定めております。
#190
○橋本敦君 はい、わかりました。
 それで、例えば日本に在日しているアメリカ人とドイツ人が結婚をしてアメリカ大使館に届け出をされる、そういったことに対して、これまでですと日本の法律としては一体どういう関係にあったということになるんですか。
#191
○政府委員(藤井正雄君) 日本において外国人が婚姻をする場合には、婚姻挙行地は日本でございますのであくまでも日本の法律で定めるところに従って婚姻をしなきゃならない、つまり日本の戸籍役場にそれを届け出なければならないわけでございまして、いわゆる外交官、大使、公使、領事などに届け出るということでは効力が生じないわけでございます。
#192
○橋本敦君 その点は、この法改正によっても変わりはないということですか。
#193
○説明員(南敏文君) ただいま民事局長がお答え申し上げましたのは先生がお示しになった例のことであります。すなわち、日本におきましても、現行法下におきましても、例えばアメリカ人同士が婚姻をアメリカの大使館に届け出るという場合、この場合は有効と考えております。と申しますのは、この法例の現行法令第十三条の第二項で、外交婚姻について日本人についてではありますが定めておりまして、これを類推適用するという形にしております。しかしながら我が国では外交婚は同国人同士でしか認めておりませんので、先生の例であります、例えばドイツの大使館にドイツ人とアメリカ人が婚姻を届け出するという場合は、これは日本法上は日本では無効になるというように考えていたわけです。しかしながら今度の改正によりまして、それはドイツではそういう領事婚も有効ということにしておりますので、当事者の一方の本国法においての方式ということで有効になるということであります。
#194
○橋本敦君 それでよくわかりました。
 その次に、第十四条の関係ですが婚姻の効力に関する規定、これは先ほどからも議論をされておりますので、もう出てはおるんですけれども重ねてお伺いしておきたいのは、一番最後に「夫婦ニ最モ密接ナル関係アル地ノ法律ニ依ル」。ここで地というのが一定の法の適用法域といいますか、行政的場所ではなくて、そういうものである。そのように先ほどの説明でも解しておるんですが、「夫婦ニ最モ密接ナル関係アル地ノ法律」ですから、夫婦ということ、それからその双方に最も密接な関係ということ、そしてそれが特定の法領域であるということ、こういうことになるんですが、個々具体的に実際そういうもの選択というのはすぐ一見明白にわかるんでしょうか、どうでしょうか、これ。
#195
○政府委員(藤井正雄君) 十四条は、婚姻の効力の準拠法を定めているものでございまして、ここで想定されますのは婚姻が継続している場合のことでありますから、通常ならばどこかに一緒に生活をしているという場合が普通であると思いますので、余り具体的には考えにくいかもしれません。しかし、そうだといたしまして、別に破綻しているわけではないが国境を越えて別々のところに生活をしているという場合もあり得るわけでございまして、そういう場合には一番考えられやすいのは、その直前にどこかで共通の常居所を持っていたのではないであろうか。もしそういうところがあるとすると、そういうところが密接に関連する土地と言えるかと思います。あるいは、夫婦のどちらかが子供と一緒に住んでいるというならば、そちらの方がその夫婦にとっては密接に関連するということも言えるかと思います。
#196
○橋本敦君 というように思ったので、実はその前段に常居所地法ということがありますので、結局はその常居所地法ということで処理して事足りるのではないかな、それをわざわざこういったわかりにくい密接関係地ということまで規定しておく必要があるのかなという気がしたものですからお尋ねをしたんです。
 次に進みますけれども、十五条の夫婦財産制ですが、この関係で夫婦が署名した書面にして日付も入れて適用の法律を一、二、三と書いてございます。そういうようにして、そのいずれかによるべきことを定めたときは、その夫婦財産制はその定めた法律によると、こうなっているわけですが、こういう規定を置いたことの合理性といいますか、合理的理由はどこにあるんでしょうか。
 つまり、私が聞きたいのは、裁判管轄の合意というのは当事者でよくあるわけですけれども、夫婦財産制について法律の適用を夫婦で合意しておくというのは、なるほど一定の合理性があるように思うけれども、しかし同時に、本当に夫婦が対等平等でそれが合意できればいいけれども、そうでない場合には一方に不利益になる場合もないとは限らないという意味がありますので、だから両性の平等あるいは弱者と言われる婦人の立場の保護、妻の立場の保護ということからいいますと、無原則的にこれでよろしいという合理性が出てくるだろうか、どうだろうかといったことをちょっと問題意識としては私持っておるわけなんです。
#197
○政府委員(藤井正雄君) 我が国の場合には、夫婦財産制というようなこと、特に夫婦財産契約といったようなことはほとんど行われることが少ないわけでありまして、どの程度意味があるかということを言われますと御指摘のようなことも考えられるかもしれないわけでありますが、ここは今回の私どもが法改正を行いました理由の一つとして国際的な統一、協調を図るということを挙げておりますが、ハーグの国際司法条約で夫婦財産制の準拠法に関する条約というのが作成されておりまして、ここでまさに今回私どもが改正法に採用しましたような準拠法の選択制というものがとられているわけであります。一応、これは国際化の流れに沿ったものではなかろうかと。このようなことがなされる夫婦というものを考えてみますと、そのような夫婦はまさに対等の立場に立った夫婦であるからこそ、そういうものが行われるというふうに言ってよろしいんじゃないかと思っております。
#198
○橋本敦君 なるほど。もう一つの問題は、十五条の第一項と二項の関係ですけれども、二項で第三者との対抗要件ということがありまして、一番最後に「第三者トノ間ノ関係ニ付テハ夫婦財産制ハ日本ノ法律ニ依ル」場合があると、こういうことを定めているわけですね。この「日本ノ法律ニ依ル」場合がこの場合あるということと、第十五条第一項の夫婦での準拠法律の選択との関係は出てきますか、出てきませんか。
#199
○説明員(濱崎恭生君) 御質問の趣旨を必ずしも正しく理解しているかどうかわかりませんけれども、十五条の第一項で定めておるのは専ら夫婦財産制に関する当該夫婦の間の法律関係がどういうふうになるかということを定めているわけでございまして、二項は日本で取引がされる、あるいは日本にある財産について取引がされるという場合におきます。その取引の相手方たる第三者との関係については、その夫婦の間の法律関係の要件を適用するということでは適当でないので、第三者の立場も考慮しなければならないという考え方でこういう規定を設けているわけでございます。そういう関係にあるわけでございます。
#200
○橋本敦君 ちょっとわかりにくいんですけれども、私が言うのは日本国内における財産の処分に関する問題について、言うならば第三者であるというのはこれは日本国民になるわけで、その日本国民との関係で言えば、善意の第三者である日本国民との関係で言えば、夫婦財産制で一項でどういう選択が法準拠なされようとも、第三者との関係で言えば日本の法律が優先すると決めてあるというように言っていただければ非常にわかりやすいんですが、そういう意味じゃないんですか。
#201
○説明員(濱崎恭生君) 御指摘のとおりでございます。質問の趣旨をちょっと取り違えたかもしれません。
#202
○橋本敦君 その次に、二十六条です。この二十六条は改正前は二十五条、こういうことになるわけですね。この点は「相続ハ被相続人ノ本国法ニ依ル」ということで、条は変わりましたけれども内容は変わっていないということになるわけです。「被相続人ノ本国法」と、こうなりますので、その被相続人の本国法に基づいて相続がなされる。こういう場合に、被相続人の本国法が財産の相続については妻には認めない、あるいは子供は長子だけ、長子相続だと、こういった今の日本よりもはるかにおくれた、戦前の日本に近いといいましょうか、そういう状況にある場合に、日本に財産がある。そういう場合は日本の公序良俗からすれば、もはやそれは公序良俗違反というような状況の法律に近いんじゃないか。そういう場合に日本で公序良俗違反だとかあるいは日本の憲法に照らしてどうだとかというような議論が起こる可能性はありませんか。
#203
○政府委員(藤井正雄君) 御指摘のような場合は被相続人の本国法の決め方によりまして起こり得ると思います。現に起こっております。
 それでは、そのような外国の法律を適用した結果が果たして公序に反するかということになりますと、これは最終的には裁判所の判断になろうかと思いますけれども、これは内国法の立場で考えられる法秩序をどこまで押し通すことができるかということになろうかと思います。それぞれの国でのこういう身分法あるいは相続法というものは、それぞれの国の風俗習慣というものに根差している、だからこそ属人法によって判断をするわけでございますので、これは私も断定的に申し上げるのははばかりますけれども、そう簡単に公序に反するというふうには言いかねるのではないかというふうに思っております。
#204
○橋本敦君 言いかねるけれども、そういう議論が出てくる条件や余地は社会的にあるわけですね。そういう意味で国際私法というのは非常に難しい要素をいっぱい持っているということを私もよくわかっておりますが、今度の改正にもかかわらず、そういった問題も将来課題としてはあるなというように私も思っております。
 いずれにしても、先ほど局長がおっしゃったように、実務的にスムーズに運営されるようなしかるべき通達その他の措置で運用にも適正な努力をお払いいただきたいということを申し上げて、法例関係の質問は終わります。
 ありがとうございました。
 そこで、一般の問題に質問を移らせていただきますが、まず中国の問題であります。
 私どもは、中国の天安門における軍隊の学生、市民に対する発砲という暴虐な事態については厳しく抗議をし、かつまた日本政府に対しても厳しく抗議をするように求めてきたところであります。この事態は中国の問題にとどまらず、今日の国際的な人権規約に見られる人権の擁護という重大な国際的な課題、そしてまた日本でも国民の自由と権利を守らねばならぬという大事な課題とも関連をして、無縁な問題では決してないわけであります。
 そこで、まず法務大臣にお伺いしたいのは、まさに人権を正しく守るという意味において法務大臣にも重大な職責がおありだと思うわけでありますけれども、今回の中国で起こっている事態について、多くの日本に留学している中国人の留学生あるいは中国の国籍を持っていらっしゃる方々も大変不安を覚え、かつまた心配をなさっている状況があります。こういう状況の中で人権を擁護するという、そういう立場に立つ法務大臣として、事態をどうごらんになっていらっしゃるか、その御所見は非常に注目されるところかと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
#205
○国務大臣(谷川和穗君) 隣国でございます。しかも関係の非常に深い大事な隣国でございます。一日も早く平静になりますように心からまず祈るわけでございます。
 それから、日本におられる留学生等のこういった方々から、この状況のもとでいろいろ滞在期間をさらに延長したいというような申請が出てくるとかいうことも、これまたあるいは次々とこれから先、状況いかんによっては考えられる事態が起こってくるのかもしれませんが、こういう問題につきましては今後の推移を十二分によく見ながら、もしそういう状態が起こってきたようなときには、これは個別の問題でございますから、まずは個々にそれぞれの対応をしていかなきゃならぬと思いますが、もしそういうような申請がありましたときには、これは弾力的にこれに対して対応いたしていきたいと、こう考えておる次第でございます。
#206
○橋本敦君 今大臣がおっしゃった趣旨を私なりに理解をすれば、具体的な状況に応じて人道的見地あるいは人権擁護という見地も、これもきちっと踏まえて対処をするというようにお考えいただいておる、そのように伺ってよろしいわけですか。
#207
○国務大臣(谷川和穗君) 申請者の申し立てがございました時点で、それぞれの諸条件を十分考えながら弾力的に検討、対処いたしてまいります。
#208
○橋本敦君 今おっしゃった弾力的にという運用については、私はそういうように理解をして進めたいと思うんです。
 早速、中国大使館から亡命ということで保護を求めて出られたという事実が一斉に報道されました。外務省、この件について、現在の状況はどうなっておりますか。
#209
○政府委員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 新聞等で既に報道されておるところでございますけれども、中国大使館の一職員が亡命を申し出るという事態が発生いたしました。ただいま状況が進行中でございまして、今の中間的な段階でただいまの状況を公に申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、外務省その他関係省庁協議のもとに、これが処理に当たっておるという状況でございます。
#210
○橋本敦君 その方針として、日本政府としては、外務省首脳としては、人道的な立場を尊重して対処するというような報道もあるわけですが、そういう人道的立場を貫いていくという点について、これは間違いないですか。
#211
○政府委員(谷野作太郎君) お説のとおりでございます。
 一般論として、政府のこの種の事案に対しまする処理方針というのをちょっと御説明いたしたいと思いますが、我が国に亡命を希望いたします外国人に対しましては、政治的な迫害の申し立てにつきまして十分に根拠があるものであるかどうかということを検討いたしまして、根拠ありと認められる場合におきましては、人権の尊重そして我が国の利益とその辺の調和を考慮いたしました上で、在留を認めることを適当というふうに判断するものにつきましては出入国管理及び難民認定法の所定の手続によりまして、これが在留を許可するということになっております。
 また、第三国向けに政治亡命をしたい、そういう希望を有します外国人に対しましては、当該国において受け入れを認められる場合におきましては、本人の希望を尊重するという人道的な見地から、その渡航の実現に精いっぱいの好意的な考慮を払う、これが政府の基本方針でございます。
#212
○橋本敦君 今回の場合はアメリカに亡命を希望されているそうですから、今おっしゃった後段の見地に立って処理する、こういうことですね。
#213
○政府委員(谷野作太郎君) 本人の希望がそういうことであれば、そのように処理すべきものと思います。
#214
○橋本敦君 そこで大臣にお伺いしたいのは、日本に在留している中国の学生諸君、留学生、これらの諸君が北京で起こったみずからの国の民主化の闘いに連帯の意思を表明したい、あるいは軍隊による発砲に抗議をしたいという自然な気持ちというのも含めて、当然あり得ることですから、皆さんが教会に集まったりあるいは街頭でデモをしたり、いろんな行動、当然ございまして、いずれも平穏な行動です。こういう行動そのことについては、我が国の憲法自体が言論、表現、結社の自由、表現の自由を明らかに宣言しておりまして、すべての在日外国人にもこうした憲法の規定は当然適用されるわけですから、日本に在留する中国の皆さん、学生諸君が、そういった北京の事態に対する集会をお持ちになったということ自体は、これは憲法上当然正当であるというのは問題ございませんね。
#215
○政府委員(股野景親君) これは今、日本におります中国人の留学生等が日本でどういう活動をするかということにかかわってくる問題であるかと思いますが、これはまず、日本におります中国人留学生等はそれぞれの在留資格というのを与えられておりまして、その在留資格に応じた活動をする、こういうことを入管法上認めているわけでございます。
 そこで、ただいま先生の御指摘の、例えば意見を発表するというようなことがこの在留資格との関係でどうかという点でございますが、今中国人の留学生等がそれぞれの政治的意見を発表するということ自体は、これは一般社会生活に伴う活動、こう判断されますので、そういう意味では在留資格内の活動と判断できると存じます。
#216
○橋本敦君 同時に、私が指摘した、日本の憲法でも当然保障している基本的人権の問題だということですね。
#217
○政府委員(股野景親君) これは、その在留資格の中の活動というものについては、本来留学生なら留学が目的でございますが、そういう点で、その留学ということの中に一般社会生活ということが当然入ってまいります。そこで、それは日本で通常認められている社会生活、これは人権ということもその中に含まれるわけでございますが、そういう点を踏まえた認定ということになると思います。
#218
○橋本敦君 立場上、非常に懇切な解説をなさったけれども、結論的には問題がないわけです。
 そこで私が問題にしたいのは、そういう在日中国留学生の皆さんの中に、中国政府の不当な弾圧ということが起こって以来、大変いろんな心配が起こっておるわけですね。
 例えば、新聞によりましても、中国留学生にいろんな脅迫電話がかかってくる。そして、そういうことは反革命的行動だ、自首せよとか、あるいはビザの延長などはしてもらえないぞとか、それから直ちにやめよとか、身辺に危害を加えかねないような電話がかかったりして、ある人は警視庁に保護を求めるというような事態も起こっていると報道されておりますが、一部にそういうような事態が実際あるのですか。警察庁、御認識はいかがですか。
#219
○説明員(杉田和博君) お答えをいたします。
 事柄の性質上、具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、警察に保護を求めてきたという例はございます。
#220
○橋本敦君 中国の皆さんが日本政府で許可された滞在要件に違反することなしに安心して勉学を続け、生活ができるように、今、最大限の配慮をしてあげる必要があるし、そのことは日本としても重大な責務だと思うんですね。法務大臣、この点は当然ですね。
#221
○国務大臣(谷川和穗君) 当然でございます。
#222
○橋本敦君 だから、そういったことの中で学生諸君が滞在ビザの延長というようなことを要求してきた場合に、中国政府が延長するなということを言ってきても、それはケース・バイ・ケースで、先ほどおっしゃったように、具体的なケースによって弾力的に状況をよく見て判断をするという方針に変わりありませんか。
#223
○国務大臣(谷川和穗君) 在留期間の延長あるいは更新というものの申請が行われた場合には、その申請に基づきまして、個々について審査をしながら弾力的にこれに対処いたしたい、こう考えております。
#224
○橋本敦君 今おっしゃった弾力的対応というのは、人道的な見地からも非常に大事です。
 この間、私はテレビを見ておりまして痛感したんですが、中国が発給したビザを放棄して台湾のビザに切りかえるということも考える、そういう学生も一部心配な状況で出始めておる。実際、問い合わせや申請が出ているのですね。そうなりますと、台湾の方にビザを切りかえれば、その人は中国の父母が待つ本土に永久に帰れないかもしれない。いつ帰れるかもわからない。極めて困難になる。ですから今大臣がおっしゃったような、事態をよく見きわめて人道的な弾力的な対応というものを正しくしていただかないと、そういう意味で新たな国際問題、人道問題というのが出てきかねない状況があるわけですね。
 そこで、さらに進んで私は聞きたいんですが、そういう中国の留学生の諸君の不安を一層かき立てておる状況があるんです。それはどういうことかといいますと、一つは、中国の公安筋が来日をして、そして学生諸君の動向あるいは集会をカメラで撮ったり調査をしたりするという状況が出てきた。例えば六月十三日のこれは産経新聞の夕刊ですけれども、「中国公安の来日急増」、こういうことで、学生の洗い出しをやっていると状況が一つはある。
 それからもう一つは、これは私が直接に当事者の学生から聴取した話でありますが、都合によって名前は出すことができないんですけれども、ある留学生のところへ中国大使館だということで名のって電話があって、○○さんですか、そうです、すぐ大使館に自首してもらいたい、自首しないと安全は保障できないということで、大使館へ出てこいという電話がかかってきた。
 それに加えて、大臣もごらんになったかもわかりませんが、ビデオを撮ってありますけれども、六月十二日のテレビ朝日の放映、夜のニュースステーションでございましたが、京都で留学生が集会をしている。そこでカメラでそれを写している、そのシーンがきちっと撮られておりまして、コメントとしては、締めつけは海外にいる留学生にまで及んできました、学生の顔を撮影する中国公安当局者の姿が目立ち始めました、こういうテレビの説明が放映されたわけですね。
 もしこれが事実だとしますと、これは金大中事件でも、日本への韓国KCIAの潜入とその権限行使が主権侵害として大問題になったということは今も御記憶に新しいわけですが、もしこういう中国公安当局者が来日をする、あるいは大使館に依拠して学生に対する証拠資料や調査や呼び出しやという、まさに捜査権を発動しておると見られるようなことをやっておるならば、そのこと自体、これは明白に日本の主権侵害行為だというように言わざるを得ないわけであります。大臣の御認識、いかがですか。
#225
○国務大臣(谷川和穗君) この時点で個々の実態について、私、つまびらかにしておりませんので、この点につきましては政府委員からあるいは現況を何か報告申し上げることがあるかもしれません。お許しをいただきたいと思います。
#226
○橋本敦君 大臣、個々の具体的な問題は今御存じないということですが、それでは、もし仮に中国公安当局者がそういうような日本国内での捜査活動を日本政府の了解なしにやるということについては、これは許されない、そういうことをやればそれは主権侵害になるというのは、理論的にそれは当然でしょう。これは大臣としてお考え、間違いないですね。
#227
○国務大臣(谷川和穗君) 中国政府の公安関係者というようなお話がございましたが、今のようなお話はいずれの国のどこの政府の機関がどういう目的でやるか、それは存じませんが、日本の国の中において行われることは、それはとてもではございませんが、我々として、しかるべき手続をとってのこと以外、とても考えられないことだ、こういうように考えております。
#228
○橋本敦君 つまり、いかなる国であれ、日本政府の了解なしに日本国内で捜査権発動と見られるような行為は主権侵害として許せぬ、こういうことでしょう。
#229
○国務大臣(谷川和穗君) さようでございます。
#230
○橋本敦君 ということなので、政府委員にお答えさすということもあるとおっしゃいましたが、ここまで公然と報道され、また、具体的に証言としても、学生の諸君が、ある学生は六月七日、東京山手教会で集会を開いていたら中国人四人が無線で連絡をとり合って写真撮りをしていた。そして、やめよと包囲すると逃げていったというようなことも実際起こっておるし、そしてテレビでも放映されて、これはビデオにも撮っておるわけですから、もし本当だとすれば重大な主権侵害ですから、大臣は具体的事実、今御存じないということはわかりましたが、これは政府委員に一遍調べさせる、調査を命ずる必要があることだと私は思うんです。調査を命じてくれますか。
#231
○政府委員(股野景親君) ただいま御指摘の、これは一つの理論的な問題を御指摘いただいたわけでございますが、私ども当局としては今その実態をまだ把握いたしておりませんし、また、関係省庁からも特にその点についての通報を受けていないという状況でございます。したがって、私どもとしては今中国、例えば留学生等から何かそういう点についての申し出があるかどうか、こういう点は注意をして見守る必要があると存じております。
#232
○橋本敦君 注意をして見守るということは、それは大事です。しかし、警察庁もおっしゃったように実際、保護を求めて駆け込んだ学生もある。そしてまた、注意をして見守るのは当然ですが、主権侵害という事態を絶対に起こさないように私は事実を指摘して調べろとこう言っておるわけですから、そういう事態はテレビでも放映されたわけですから、調べなきゃ主権を日本政府として擁護する立場を貫くという姿勢にならないですよ。そういう点については厳しく調査を含めて対処する。これは大臣、しっかり指示してくださ…。
#233
○国務大臣(谷川和穗君) 非常に事態が流動的な事態でもございますし、最初に申し上げさせていただきましたように、一日も早く隣国に国内で起こっております事柄が平静を取り戻すことを私は心から期待をいたしておりますが、ただいま御心配の向きにつきまして、私どもといたしましては私どもの責任を果たしていかなきゃならない、こう覚悟はいたしております。
#234
○橋本敦君 その責任を果たすという立場で、さっき入管局長もおっしゃったそういう状況にも注意をして進めていくということで厳しく調査をすることを要求して進みます。
 もう一点、警察にお伺いしたいんですが、そういう留学生の安全、そしてそのために不法な行為は許さないということで目配りをしていただくというのは当然ですけれども、その警察自体が留学生のところにデモに行かない方がいいとか、あるいは帰化を申請したいんならデモなどやらない方がいいとか、あるいは何人ぐらいデモに行ったかとか、そういうことを警察自体が問い合わせをされているという状況も私もちょっと二、三耳にするんですが、そういうことはあってはならぬことなんですね。どうですか。
#235
○説明員(杉田和博君) お答えをいたします。
 御指摘のような活動は行っておりません。
#236
○橋本敦君 私のこの問題についての質問の最大の主眼点は、日本の主権侵害を絶対に許さない。中国公安当局のあるいは大使館の不当な動きに対しては、毅然として日本政府として対処するということを厳しく要求して、この問題は質問を終わります。
 次に、リクルート関係であります。
 だんだん時間がなくなってきたのですが、刑事局長、お願いしたいと思います。入管局長、警察の方、ありがとうございました。
 まず第一に、刑事局長にお伺いしたいのは、最終報告を拝見いたしました。これを拝見いたしますと、国会議員等にかかわる藤波、池田両氏を除く十万株、この記載がございますが、この記載の中で「安比高原の開発等、当時のリクルート社及びその関連企業の事業遂行上の懸案事項」、こういったこととの関係で調査、捜査をされたということがわかります。つまり一口で言って、いわゆる安比高原の問題も贈収賄ということとの関係で捜査の対象としてお調べになった事実は、これは間違いないわけですね。
#237
○政府委員(根來泰周君) この点につきましては、国会でもいろいろ御議論がございます。そういう国会での御議論も念頭に置いて十分捜査をしたものと考えています。
#238
○橋本敦君 最終報告書に「安比高原の開発等」ということで出てきておりますから、安比高原にかかわる国会での議論も踏まえて捜査をしたということで間違いないんでしょう、これ名前がちゃんと出ていますから、安比高原と。
#239
○政府委員(根來泰周君) そのとおりでございます。
#240
○橋本敦君 そこで、時間がないので簡単にいきますけれども、この安比高原の問題というのは、要するに岩手県の八幡平にある安比高原、これで前森山のことですけれども、これの北東斜面八百ヘクタールの観光開発をめぐりまして、そのうちの半分を岩手県の観光開発公社、残りを江副氏が社長である安比総合開発が行うということで出発をした。そして、そういうことで申請も出されて、具体的には昭和五十八年四月に地元営林署がこれを聞き、そして六十一年の四月には青森の営林局が施業計画書で前森山のスポーツ林、これの指定を行って事実上これを承認して、具体的には六十一年の八月に営林局が事業承認をするということを言った。こういう経過は林野庁、間違いないですね。
#241
○説明員(小林新一君) お答えをいたします。
 お話にございましたとおり、当初は県公社及び安比総合開発でやるということでございました。六十一年四月にお話のとおり地域施業計画を改めましてレクリエーションの森に指定し、同年八月、管理経営方針書を策定いたしまして、ただいま冒頭申し上げましたような計画で事業を行うということを決めております。
#242
○橋本敦君 ところが、承認されたのだけれども、その前から動きがおかしくなってきている。記録によりますと、昭和六十一年に入ってから動きがおかしくなって、例えば六十一年の八月には、渡邊副知事それから安比の小倉支配人、これがその事業を公社でなくて安比総合開発が承継するという協議をやっておるという記録がある。その前に県自体が既にもうこれはやらないというようなことの方針を決めまして、六十年の九月十九日には県の政策会議で前森山スキー開発はもう公社はやめるということを方針に出しておるということもあって、こうなっていくんですね。
 そこで林野庁に聞きますけれども、具体的に営林署にそういう話が届いたのは、私どもの記録では、六十一年の十一月二十九日に県の神田観光物産課長が営林署へ来て、公社事業の中止を申し入れてきたという記録がはっきりしているんですが、これは御存じですか。
#243
○説明員(小林新一君) お答えいたします。
 お話しのとおり、六十一年の十一月二十九日に公社の事業中止につきまして岩手営林署の方に打診があったということがございます。
#244
○橋本敦君 青森営林局が許可したのが八月、その直前からもうやめようという動きが出て、十一月にはせっかく許可してもらったのにもうやめだというようなことを言ってくる。だから営林署としては、地元では勝手なことを言っちゃ困る、なぜそういうことになったんだと非常に強い批判と意見があって、県に対しても釈明することを求めるなど一連の動きがあったのではありませんか。
#245
○説明員(小林新一君) 突然のお話でございまして、営林署またその直後に営林局の方にも見えているわけでございますが、戸惑いまして、よくお話を聞かなければならない、こういうことであったというふうに聞いております。
#246
○橋本敦君 ですから、安比総合開発に全部やって県が手を引くという話は営林署としては納得できない話、それは当然であります。
 そういうことが起こっておる状況の中で、新聞報道は六十一年の八月ごろからもう県が撤退するという報道をし始めます。これは新聞を見てもらったらわかります。そこで六十一年の九月に江副から加藤農水大臣に株の譲渡ですよ。まさに動いている時期なんです。やめよう、安比にやらせよう、そして営林署はなかなかうんと言わない、そういうことで年を越して、六十二年二月に加藤農水相が現地を視察する、こうなるわけですね。ですから、そういう意味でこの農水相の視察、その視察が終わって五月に変更が承認されるという事態。そしてこれについては保安林の用途変更等、農水大臣の抽象的権限がある事項であることは刑事局長、この前も国会でお話ししたとおりでありますけれども、そういう動きの中でこの株とそれからこの動き、農水相の視察とを考えてみますと、これはまさに職務に関連をして株の譲渡がなされたと当然見なきゃならぬ重大な問題だと思うんですね。
 しかも、このときに、大事なことは私どもの調査団に対して、今お話しした安比総合開発の当時支配人であり取締役をしていた小倉義昭氏が江副から直接に、いろいろ難航しているけれども中央政界に対する工作はおれに任せておいてくれ、こういう話があったということを小倉氏は我々調査団に言っているんですよ、まさに重大な発言ですね。
 こういうことを考えてみますと、この安比総合開発とそれから加藤農水大臣周辺に持っていかれた株との関係というのは、これはまさに職務の関係において密接な関係があると見るのは当然じゃないですか。刑事局長、改めてはっきりしてください。
#247
○政府委員(根來泰周君) ただいま御指摘のありました外形的事実につきまして私どもそれを別に否定するつもりはございませんが、いずれにせよ、いろいろの状況について証拠を収集して慎重に検討した結果、この報告書に記載した結果となったわけでございます。御承知のように収賄罪の成立というのにはいろいろの要件がございます。その要件について個々に十分慎重に検討した結果、こういう結果になったわけでございますので、御理解願いたいと思います。
#248
○橋本敦君 慎重に検討したということですが、慎重に調べたというなら、安比総合開発の取締役の小倉義昭氏に今私が指摘したような事実の有無について聞いたんでしょうか、あるいは加藤農水相本人から事情を聞いたんでしょうか、どうですか。
#249
○政府委員(根來泰周君) ちょっと今の元支配人の点については、私自身ただいま承ったわけでございますので、もちろん知識はないわけでございますが、一般的に申しまして、国会ではどなたに協力いただいたか、あるいはどなたを調べたかということについては、将来の検察運営の問題もございますのでお答えしないことになっておりますので、ひとつ御了解願いたいと思います。
#250
○橋本敦君 刑事局長、法務大臣に聞きますが、捜査はもう終わって、国会で何が出てきても、もう調べないという態度ですか。それとも、一応終わったけれども、国会の論議あるいは社会的に出てくる新たな事実、そういった問題で必要な捜査は、これは当然そういうことが出てきたらやるということなのですか。その点はどうですか。
#251
○政府委員(根來泰周君) この最終報告書をつくるときにも、あるいは検察庁がいわゆる終結宣言をする場合にもいろいろ雑談的にもお話がございました。一つは、時効が終わるまでそういうふうに言っていいのかというようなお話もございましたけれども、要するに限られた人員で限られた日数の中で、あるいは御承知のように刑事訴訟法では身柄についてもいろいろ厳しい制限がございます。そういう限られた中で捜査をするものですから、それは理論的には時効になるまで捜査はできるわけでございますけれども、やはり焦点を合わせて捜査をしておったのがこの間までということでございます。そういうことで御理解いただきたいと思います。
#252
○橋本敦君 焦点を合わせて陣容を整えてやったのがこの間までの仕事、そしてその焦点に合わせたその問題、あるいはそれに関連するリクルート疑惑について、新たな事実の指摘あるいは重要な事実が新たに発見をされる、そういった問題が出てくれば捜査は起こして、おっしゃったように時効にはなっておらぬのですから、捜査を遂げるということがあり得るのは検察としても当然じゃありませんか。そうでしょう。何が何でももうやらぬという意味ですか、終結宣言というのは。
#253
○政府委員(根來泰周君) ただいまのお答えが若干誤解があるかもしれませんけれども、検察としては要するに全力を尽くして調べたという考え方でおるわけでございます。したがいまして、万が一にもほかの御指摘とかほかの証拠が出てぐるとは思いませんけれども、もしそういう御指摘なり証拠が出た場合は、そのときに適切に対応するものと考えております。
#254
○橋本敦君 当然ですよね。出てくると思わないけれどもというのが私はちょっと気に食わぬですな。出てくるかもわからぬですよ。出てきたらやるのは当たり前。
 それで、この問題でも六十二年の五月二十七日についに全面的に安比総合開発に事業が行ってしまうんですけれども、その直前の四月二十九日に、御存じのようにリクルートのビルの中にあるノヴァ企画という、これは私どもはペーパーカンパニーに近いと見ておりますが、ここに輿水茂三という取締役が入っておりますが、これは加藤農水相の秘書をやっていた方です。これはもう有名ですわな。そこヘファーストファイナンスの四十万株が行っているという事実はもう御存じでしょう。これは店頭公開はされなかったけれども、されていたら莫大な利益を生んだに違いないが、当時としては店頭公開する予定だった。だから六十一年九月の株といい、それから四月二十九日四十万株という、こういう重要な動きがあるわけですね。この四十万株が、これは未公開株の譲渡ですからそれ自体最高裁決定でもわいろ性があると見られるわけですけれども、もしもこれが第三者に利益を得さしめるという意味で、これがもしわいろだったら第三者収賄罪が職務権限があれば成立しないとは限らない重大な事項の一つであると私は思いますが、刑事局長、理論的にどうですか。
#255
○政府委員(根來泰周君) 具体的事実を挙げられてこれがどうだと言われた場合に、私どもは答えに窮するわけでございますが、刑法の構成要件に当たる場合は犯罪が成立するということは理論的に承認されているところでございます。
#256
○橋本敦君 ですから、これもやっぱりそういう意味では重大な問題ですよね。私は、何でこれが藤波、池田両氏だけで、この安比問題が起訴されなかったのかいまだに不思議でなりません。もしこれが告発ということをやっておったならば、検察審査会ということで議論をやり直してもらうということにも値すると思うんです。関西のオンブズマングループの皆さんが、中曽根元首相を含めてリクルート事件で贈収賄罪で告発状を出して正式に受理されておりますが、これは今捜査中ですか。どうなっていますか。
#257
○政府委員(根來泰周君) 御指摘のような告発状が提出されて、東京地検で受理していることは事実でございます。告発状が出されて受理した段階では既に事件について捜査が終了しておったわけでございます。それで実質的には、この最終報告書に書いてありますように、その事件は犯罪と認める証拠はないということに帰着しているわけでございますが、形式的にはまだその告発状は帳面上処理されておりません。いずれにせよ、帳面上処理するということで手続は近々進められるものと考えております。
#258
○橋本敦君 帳面上処理を急ぐんじゃなくて、国民から告発もされておるんですから調べなさいよ。
 刑事局長に次にお伺いしますが、藤波さんが起訴されたということで、御報告によりますと一万株ですね。しかし、藤波さんのところへ行ったのは徳田秘書名義で一万株だけじゃなくて二千株もありますね。秘書名義の一万二千株のうち一万株だけ起訴されたのは、これはどういう趣旨ですか。
#259
○政府委員(根來泰周君) これは将来公判で立証することになると思いますが、証拠上そういうふうな認定になったものと考えております。
#260
○橋本敦君 つまり、わかりやすくいえば、証拠上秘書名義で一万株と二千株、合計一万二千株だが、政治家への分は藤波さんの場合一万株、あとの二千株は藤波さんではなくて秘書だというように証拠上判断されたと、こういうふうに思います。
 私どもはこのリクルート事件が起こってから、五千株とか万のつく株は政治家向けだ、端数はこれは秘書名義であり、秘書あてということも十分あり得ると、こう見てきました。例えば中曽根元総理の場合は二万九千株ですが、九千株は二人の秘書と太田さんという女性、ですから政治家は二万株だと、そういうように計算しますと話が合うんですよ。中曽根さん二万株でしょう、渡辺さん五千株、渡辺元官房副長官一万株、安倍さん一万五千株、秘書名義は二千株ありますが、この端数は秘書です。本人は一万五千株、加藤さん一万株、宮澤さん一万二千株ですが、二千株はこれは秘書ですから一万株は宮澤さんのものとしてカウントする。加藤紘一さん五千株、竹下前首相は一万二千株ですが、二千株は青木さんのものとして一万株、上田卓三さん五千株、塚本三郎さん五千株、田中慶秋さん五千株、これ足しますとちょうど十万株になる。
 そこで、いいですか、この最終報告書にお書きになっていらっしゃるリクルートコスモス株の未公開株式の譲渡、藤波、池田議員を除く十一名の国会議員に係る合計十万株の譲渡とお書きになっている、この十万株というのは、今言ったように端数は秘書で、政治家のものと証拠上認められるというやつを合わせればちょうど十万株になる、こう当然解せられるんですが、間違いないですね。
#261
○政府委員(根來泰周君) 今のお話は、証拠の中身といいますか、捜査の中身になるものですから、私どもそれを肯定するというわけにはまいりません。若干計算も私どもと違うということは前に予算委員会で申し上げたとおりでございます。
#262
○橋本敦君 それじゃ、どういう計算で証拠上どうか、十万株と書いているんだからこれの説明をするのは当たり前じゃないですか。説明をなぜやらぬのですか。
#263
○政府委員(根來泰周君) けさほども千葉委員から御質問がございましたように、この最終報告というのは収集した証拠を集合的に見まして、その結論を報告したわけでございまして、その内容については従来から公開すべきものではないということで申し上げていないわけでございますので、その辺御理解を賜りたいと思います。
#264
○橋本敦君 これはこれ以上言っても、いずれ藤波さんの地検の冒陳で、あるいはまたこれからの審議の中でいろいろと出てくると思うんですけれども、私が今指摘したのは非常に合理性がある。
 中曽根さんはこれは全部秘書が盆暮れに使ったんだと言うんですけれども、今言ったように藤波さん名義で一万二千株で、証拠上政治家と見られるのは一万株である。じゃ中曽根さんの場合も秘書は三人で九千株で、二万株は中曽根さんだと、こうなると、もしこれが事実だったら偽証ばっちりですな、偽証ばっちり。中曽根さんの分は政治家で二万株、竹下さんの場合でも一万二千株で、福田さんが一万株と、こういうけれどもそれは証拠上竹下さんだと我々はにらんでおりますけれども、そうだとしたらこれもはっきりしなきゃならぬ。
 そこで、中曽根さんの問題も含めてこれから捜査はまだまだ、今、安比の問題を指摘しましたが、偽証も含めてまだまだ私はリクルート事件の徹底究明としてはやっていかなくちゃならぬのは当然だと思いますよ。これで捜査一応終結宣言したというけれども、我々国会が、中曽根さんの証言は偽証の疑いが今言った使途の問題 スーパーコンピューターの問題その他あると考えておりますが、国会が偽証告発、これをやったならば検察庁は調べるのは当たり前ですわね。捜査終結宣言したからおしまいだというわけにいかぬでしょう。どうですか。
#265
○政府委員(根來泰周君) これも従来から申し上げておりますように、国会における証言の偽証問題については国会が御判断なさることでございまして、その上で法定の決議をされまして私どもの方に告発があれば当然私の方で取り調べるといいますか、捜査をすることになると思います。
#266
○橋本敦君 そういう問題はまだまだ残っておるんです、国会としてもリクルート事件としても。
 それで、刑事局長、なるほど議院証言法による院の議決、つまり告発の議決、これは起訴の条件としてあるわけですが、捜査自体は告発がなくても検察庁がやろうと思えばできる。ロッキード事件のときには大久保の偽証問題等これは進んで捜査をされたという経緯もあった。だから理論的には国会の告発を待たずに偽証の疑いがあれば検察庁は独自の判断で捜査することもこれは捜査権として可能でしょう。
#267
○政府委員(根來泰周君) ロッキード事件のときもいろいろいきさつがございまして、大久保の問題も、これは国会筋といろいろ意見の調整が行われたわけでございます。私どもは、基本的にはやはり国会の御判断が先行いたしまして、その御判断に従って捜査を進めるという立場を原則的にはとっているわけでございます。
#268
○橋本敦君 原則的にはそうだ。しかし刑事局長、我々国会もいろいろ苦労をしていますけれども、あなたが報告されたように、膨大な証拠資料を国家権力という捜査権で集めて、そして膨大な数の人数から事情聴取をされて、まさに一番よく知っているのは証拠を集められた検察庁ですよ。だから中曽根証言を聞いて、これは偽証の疑いがあるということは、証拠に照らして一番わかるのは検察庁なんです。いいですか。
 だから、なるほど起訴条件として国会の告発は議院証言法上あるけれども、しかし偽証そのものの疑いについて具体的な証拠に基づいて捜査をやるということに踏み切る、検察庁がその気になれば理論的にはやれる。まさにそういうことが検察庁としてやれるんですからね。これはまさに、国民のリクルート徹底解明せよという要求にこたえて検察が公の代表者であるならばおやりになるべきだし、そのことが同時に国政に反映されて、国会での偽証告発という動きに関連をしていく。
 ロッキードのとき、そうですよ。ロッキードのときも両々相まってそういう動きになっていったことを私も覚えていますよ。まさに中曽根証言の問題について一番よく知っている検察庁が偽証の疑いがあるということであるならばみずから捜査を遂げる、そしてそういった関係について国会とも緊密な連携をするという、そういう姿勢に立つのが当たり前じゃないですか。日本の検察として、この戦後最大の疑獄事件に対処する検察として、私はそうあってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
#269
○政府委員(根來泰周君) 今先生がおっしゃいましたように、膨大な証拠を集めまして綿密に計算した結果がこの最終報告書でございます。そして、一昨日もたしか衆議院の法務委員会で申し上げたと思いますけれども、現在東京地検で中曽根証言につきまして偽証の疑いはない、偽証の疑いというものを持っていないという報告を受けているわけでございます。そういう状況でございますから、もし国会で偽証ということが判明して、国会の方からお話があれば十分捜査するものと考えております。
#270
○橋本敦君 納得できませんね。
 もう時間がありませんから、中曽根さんの関係について、江副を税調特別委員に任命したという問題について、これは専決事項として藤波当時の官房長官、彼が処理した、こういうことですが、藤波氏の公訴事実では税調特別委員の関係は出てきておりませんね。
#271
○政府委員(根來泰周君) 公訴事実にはそう記載しておりません。
#272
○橋本敦君 しかし、税調特別委員の任命については法律上、任命権限が総理にあるということは、これはだれしも疑いのない事実ですね。
#273
○政府委員(根來泰周君) ちょっと私、それ、総理大臣が任命するのか内閣が任命するのか、ちょっと失念しておりますけれども、いずれにせよ内閣がかかわっていることは間違いありません。
#274
○橋本敦君 ということになれば、よく刑事局長がおっしゃる、抽象的には総理大臣の職務権限にかかわるということも間違いないでしょう。
#275
○政府委員(根來泰周君) 内閣総理大臣が税制調査会令三条一項で任命権者となっているようです。ですから、権限があることは間違いありません。
#276
○橋本敦君 ですから、この問題について、中曽根氏は専決事項で藤波氏に任せたということを証言しておりますが、みずから法律上も権限がある問題、職務権限がある問題であることは明白であります。これについて、藤波氏の方に公訴事実では一切出てこないんだけれども暴れ馬を入れようと言ったのが中曽根首相自身であること、本人自身が法律上任命権限を持っていることであること、実務的に官房長官の専決事項だとしたけれども、職務権限としてはあることは否定できないこと、こういった点を考えれば、この点について中曽根首相の職務権限があり、これについて調べをしなきゃならぬというのは当然だと思うんですね。その点について捜査は、税調特別委員の任命問題について捜査をやったんですか、やらぬのですか。
#277
○政府委員(根來泰周君) 当時、リクルート社の懸案事項というのは、この報告書に書いてありますように、四点が主題としてあるわけでございます。しかし、この税調の委員の話は国会でも議論になりましたから、それは十分検察庁もよく承知しておりますから、それはよく念頭に置いて調査したものと考えております。
#278
○橋本敦君 だから、そういうことになりますと、よく念頭に置いて調査したなれば、この懸案事項について総理として、スーパーコンピューターも含め、あるいは就職情報誌の発行、あるいは就職協定の問題、政府の所管関係について一般的に総理に職務権限がある、税調特別委員任命は具体的に法律上権限がある、こうなりますと、慎重に調べた、こう言うけれども、当の中曽根元総理自身から直接事情を聞くということなしに捜査を終結させるなどということは、慎重の検討どころか捜査未了だ、まだ捜査は遂げていないと言わざるを得ません。中曽根元首相から調査をしたのですか、事情を聞いたのですか。聞かなかったとしたら、それで捜査終結宣言とはこれはまさに許されないことではないですか。法務大臣、どうですか。
#279
○国務大臣(谷川和穗君) 捜査の中身、事実に関することでございますので、ここでこのことについて触れることはできませんので御容赦いただきたいと存じます。
#280
○橋本敦君 刑事局長、いかがですか。
#281
○政府委員(根來泰周君) だれを調べたかということについては、繰り返しお尋ねでございますが、これは公開の席で申し上げる事柄でないと思いますので、ひとつお許しいただきたいと思います。いずれにせよ、検察庁は必要な範囲内で十分調べたわけでございます。その辺を十分御理解いただきたいと思います。
#282
○橋本敦君 いや、それは納得できませんね。まだまだ、そういう態度であるならば、これから捜査が必要だということについて、機会を得て、また事実をよく調べて質問をし、国会でも論議をしていきたい、こう思っております。捜査終結宣言などというのは撤回をして、徹底的に調べ直してもらいたいというのが私の立場です。
 最後に刑事局長にお伺いしたいのは、宇野首相に関連をして、七千五百万円の政治資金収支報告書の記載漏れが公にされました。これは略式命令で起訴された服部恒雄秘書の関係、また安倍晋太郎氏の私設秘書である清水秘書の関係、こういったことから見ましてもこれは政治資金規正法で明白に違反をする。具体的に言えば、第十二条、報告書の提出でこれは記載をしていないということで五年以下の禁錮に当たる罰則があるわけですが、安倍さんあるいは宮澤さんの場合は秘書が略式起訴されている。同じケースですよね。だから、したがってこの問題が公にこういうふうに明らかになった以上は、法の公正な適用からいっても政治資金規正法、まさに首相になられた人の重大な問題ですから、早速関係者を呼んで事情を厳しく調べて、必要ならば前と同じように起訴の手続もとるというような方針で対処をするのが当たり前じゃありませんか。私は漫然と新聞報道だけでほうっておいて済む問題ではないと思いますが、いかがですか。
#283
○政府委員(根來泰周君) 具体的事件につきまして検察庁が捜査すべきかどうかということについては、従来から指揮権の問題もございますし、私どもの口から捜査すべきであるとか捜査すべきでないとかいうことは申し上げられない問題と思います。
 ただ、一般論といたしまして、そういう問題がございましたら、関係省庁がまずよく知っておるわけでございます。もし関係省庁がそういうことで犯罪になるというならば、検察庁へ告発する、あるいは捜査当局に告発するということもあり得ると思いますが、これはあくまでも一般論でございまして、ただいまの御質問に対しては私ども何とも申し上げかねるところでございます。
#284
○橋本敦君 時間が来ましたので終わります。
#285
○西川潔君 法例の一部を改正する法律案については皆さん方が詳しくお尋ねなさいましたので、私は大臣所信に関連いたしましてお伺いいたします。
 まず、民事局長にお伺いしたいのですが、今国会に提出された法案及び今後国会に提出される法案についてお伺いいたします。
#286
○政府委員(藤井正雄君) 今度の国会には、ただいま御審議をいただいております法例の一部を改正する法律案のほかに、仮差し押さえ、仮処分の制度の改正を行うための民事保全法案がございます。これは衆議院法務委員会に係属いたしたままになっております。裁判所の方からも早期の成立を強く要望されておるところでございます。
 それから、現在改正の準備作業を行っているものといたしまして商法と借地法、借家法がございます。商法につきましては、中小会社にふさわしい法規制の整備を図るということと社債に関する制度の改善を図るということを目指しておりまして、早い時期に法制審議会で答申をいただきたい、そして来年の通常国会には提出をさせていただきたいというふうに考えております。
 それから、借地法、借家法の改正につきましては、昭和六十年から法制審議会民法部会で審議が行われておりまして、ことしの三月にこれまでの検討結果に基づきまして民事局参事官室の名前で改正要綱試案を公表いたしまして、現在関係各界から御意見をちょうだいをしている段階でございます。これがまとまりましたならば改めて改正要綱確定のための審議が行われる予定と、こういうことになっております。
#287
○西川潔君 まだ準備検討中ということでございますので、前もって二、三の要望も含めて、特に僕はお年寄りのことをやらしていただいておりますのでお伺いしたいんですが、最近における都市部の地価は異常なものがあるんですけれども、こういうことで本当にお年寄りの方々の生活、特に弱者、年金生活、生活保護を受けておられる方は悲惨な打撃を受けているわけですが、例えば家賃の値上がりによりまして家賃を払えないとかいう人たちが立ち退きを迫られていることが新聞などにも大変報道されておるんです。こういうお年寄りを救済する手段は、今検討していただいている現行法などで何かそういう手段がおありでしたらお伺いしたいんですけれども。
#288
○政府委員(藤井正雄君) 借地あるいは借家という関係は民法でいう賃貸借でございますので、地代とか家賃を支払うというのは借りている方の基本的な義務ということになっております。
   〔委員長退席、理事猪熊重二君着席〕
借地法、借家法は、借地借家関係について民法の規定の特別法としまして一般的な適用がなされるような形で規定がなされるものでございまして、当事者の具体的な経済的、社会的立場のいかんによって何か法の中で区別をするということは、法律の性質上なかなか困難なことであろうかと思います。
 ただ、借り主の中に経済的に困窮している方がいるということは現実の問題として事実でございます。そういう社会一般の事情があるということを踏まえまして、借地借家法の見直しに当たりましては一般的な形で当事者の間の適切な法律関係が成立するように配慮してまいりたいと思いますし、そういうふうな形での審議がなされるものと思っております。
#289
○西川潔君 例えば供託制度、大変いい制度であると思うんですけれども、大多数のお年寄りの方々はこの制度を知らないと思うんです。
 そこで家主の方から例えばお年寄りに対して、家賃の値上げが不服であるならば法務局に供託して訴訟で争える旨を告知するとか、そういうことの義務づけみたいなことはしていただけないものでしょうか。今だったら検討していただいている中にこういうものを入れていただきたいのですが、また賃貸契約を結ぶときに供託できる旨の条項を入れていただくとか、それを必要事項として義務づけて入れていただけるようなことを何とか民事局長に配慮していただけないものか。僕なんかもきょう朝からずっと勉強させていただいて、法律は本当に難しいことばかりでございますので、どうぞ特にこういうお年寄り、弱者の人たちにひとつ有利になるように今からお願いできないものでしょうか。
#290
○政府委員(藤井正雄君) 地主なり家主なりから増額の請求があった場合に、借り主の方はその増額には不服であるといたしますと、その増額請求にかかわらず、自分がこれだけが相当だと思う額を支払えばいいということになっております。
 これは現行の借地法、借家法にもう既にそういう規定がございます。ですから、それだけの額では受け取らないと貸し主の方が言った場合には供託ができるというのも、これもやはり法律に書いてあることでございまして、したがいましてこれは契約書にそういうことを書いてあろうが書いてなかろうが、そういう法律上の仕組みになっておりますので、とにかく裁判で争いたい、それまでは今までどおりなら今までどおりを払う、受け取らぬなら供託する、こういうことができる。そういう法律の建前になっています。
   〔理事猪熊重二君退席、委員長着席〕
 あとはそういうことを当事者の人に知っていただくという、我々の方からいたしますと国民一般に対してその制度の周知徹底を図るという、そちらの問題になるかと思うのであります。
 契約書の中に書けということを法律の中に規定するというのは、今の法律の仕組みではおかしいと思いますし、逆に書かなかったらどうなるのだという問題がございます。今の仕組みは、たとえ書いてなくても、法律の建前はもとの額が相当だと思えばそれを持っていって供託をすればいいという仕組みになっておりますので、今後、国民一般に対する周知徹底が図られるようなことを考えていくべきものであろうかというふうに思っております。
#291
○西川潔君 今お伺いいたしまして、僕の場合などまだ納得をさせていただける部分はございますんですが、例えば六十年、三十年が二十年になったり十年になったり、新しい法改正になるかもわからない。ああいう部分がお年寄りの方々というのはわからないと思うんです。そしてまた今、書いた場合、書かなかった場合とおっしゃいますけれども、それを義務づけいただくことによって、例えばお年寄りは耳が遠くなったり目が見えなくなったり、昔の方々は少数の方ですけれども字も書けないという人たちも現実にいらっしゃいます。そしてまた、そういう人たちに半ば強制的に出ていけということで随分周囲から地上げの方々が、怖いお兄さん方が来られて、お年寄りが強制的に立ち退きを強要されているわけですね。そういう人たちが大阪でもたくさんニュースでも報道されたんですけれども、これは東京は、また全国的に地域によってはお金を補助してくれるようなところもあるんですけれども、そういうことで、ちょっと法律に書き込んでいただけるようなことを今御検討中でしたらお願いできないかなと、こう思うんですけれども、いかがなものでしょう。
#292
○政府委員(藤井正雄君) 先生の御趣旨は大変よくわかるわけでございます。これは法律に書いたからそれが万能を振るうという性質のものでもないように思うわけでございまして、確かに現実に弱者と言われるような方々が地上げその他で集中的にねらい撃ちをされるという現象があるようにお聞きをしております。
 こういう方々に対しましては、法律の正しい保護が与えられるように努める必要があるわけでございまして、これは法律にどういう規定をするかというよりも、むしろ、例えば弁護士会における法律相談であるとか、あるいは私どもの所管いたしております法務局では人権擁護相談をいたしておる人権擁護委員も各地に配置されているわけでございまして、そういう社会全般の組織がフルに活用されるということがむしろ実効を上げるんじゃないかと思います。先生の御提案はよく考えさせていただきたいと思います。
#293
○西川潔君 そういう専門家のところまで、例えば本当に体の調子が悪いような方々は窓口までもなかなかお出かけすることができない。隣近所、向かいの方々、本当に向こう三軒両隣、それぐらいの人しか、例えば民生委員の人とか社会福祉事業所の方とかという方にしか頼ることができないようなお年寄りの方々がたくさんいらっしゃるものですから、どうぞひとつそのあたりをよろしくお願いいたします。
 そしてもう一点、地代そしてまた家賃の値上げが正当かどうかという判断基準も示していただければと、そう思うんですが、その基準の中には例えば物価の動向とか近隣の土地の価格とか家賃などがあると思うんですけれども、もう一つ御本人の、お年寄りの経済状態も少し明示していただくとか、そういう御配慮もできればお願いいたしたいと思うんですが、いかがなものでしょう。
#294
○政府委員(藤井正雄君) 地代とか借り賃の増減の請求につきましては、現行法にも規定があるわけでありますけれども、今度の改正要綱試案では、所得水準とか近隣の地代などの高低であるとかというようないろいろな事情のほか、借地権が設定あるいは更新されたときにどういう財産的給付がされたかとか、あるいはこれまでの、従前の経過なども考慮して定めるんだと、こういうような基準を書いているわけでございます。
 この種の一般的な法律の中にどのような特殊的な事情が書けるか、その人の社会的立場とか経済的立場を考慮したような規定が書けるかというのは、これはなかなか法律の約束事もあるようでございまして、そう簡単にお答え申し上げることができにくい問題があろうかと思います。何か考えさせていただければと思っております。
#295
○西川潔君 申しわけございません。かえって僕らのような素人の質問の方が局長はお困りじゃないかと思うんですけれども、どうぞ一番大切にしていただきたいという部分は、お年寄りの百五十万人ぐらいの人たちが一人で生活していらっしゃる、また老夫婦が生活をしているというような現状でございますので、どうぞお願いしたいのは、経済状態などを配慮していただければ僕個人としては大変うれしゅうございます。
 大臣、これまで局長にいろいろ質問をさせていただいたんですけれども、借地借家法の改正の際には、ぜひこういうことを考慮していただいて立法がなされるようにお願いしたいんですけれども、一言お伺いしたいと思います。
#296
○国務大臣(谷川和穗君) ただいままで局長の答弁もさせていただきましたように、家賃の決定基準だとか、あるいは家賃の支払いができないということの救済措置だとか、そういうものを法律にそのまま書き込むというのはなかなか立法技術上からも難しいことがあるかもしれません。それは私よくわかりませんが、かもしれません。
 しかし、借り主に経済的に困窮する人がおられることは、これもまた事実であると思うんです。ですから、その方々もやはり社会を構成しておられて生活しておられるといいますか、その家の中で住んでおいでになるわけでございますから、今後この借地借家法の見直しに当たって、そういうふうな現状を踏まえて適切な当事者関係が成立するように配慮をしていかなきゃならないんじゃないかなということも感じます。したがって、今後作業の中でそういう配慮が取り上げられることを念じていきたいと、こう考えます。
#297
○西川潔君 よろしくお願いします。
 次は、法例について、もう諸先輩方がたくさんお伺いいたしました。僕なりに感じたことをお伺いしたいと思います。
 例えば法例というのは、こういう名称ではどうも僕ら素人はぴんときませんし、例えば単行法として国際親族法というような、こういう名称に今から民事局長、間に合わないものでしょうか。
#298
○政府委員(藤井正雄君) 確かに法例という名前は大変古臭い名前でございまして、何だかよくわからないという御意見をよく伺うわけでございます。法律の適用に関する通則という意味を持っている言葉だと承知をいたしているわけでございます。
 そこで、これは本来私ども、法例のできることなら全部を改正して国際私法という名前の平仮名の法律にできればそれはもう最も理想的であったかと思いますけれども、それを待っていたのではあと何年かかるかわからないということがございまして、それではただいま御提案の国際親族法というような名前のものにしてはどうかということになりますと、法例の中の親族法に関する部分を全部取り出してその中におさめないと国際親族法として一つの完結した法律にならないわけでございまして、かなりの部分は今回手を入れたわけですけれども、特に後見の問題、これは未成年者に親権者がない場合の後見の問題、それから人の能力、これは行為能力の問題などについてまだ全く検討がなされていないために、それらを全部あわせて国際親族法というような形にもできなかった。法律の成立を急いだためにこういうことになりまして、大変申しわけないと思っております。
#299
○西川潔君 次に、国際結婚、国際養子縁組がふえているということを我々もお伺いいたしておりますが、今回の改正に当たって国際結婚や国際養子縁組をした人たちに、例えば僕ら、どのような形でどれぐらいの人たちにお伺いしていただいたのかなということがすごく疑問に思うんですけれども、お伺いいたします。
#300
○政府委員(藤井正雄君) この法例の改正に当たりましては、法制審議会の国際私法部会で審議を行ったわけでありますが、その審議の過程におきまして、昭和六十一年に法例改正についての中間報告という題で審議結果をまとめたものを公表いたしまして、これを広く関係の方面にお示しして意見を寄せていただいたわけであります。
 その際に、裁判所の相当数から意見が来たほかに、六つの団体から意見が寄せられました。その中に国際結婚を考える会という団体がございまして、そこから意見をちょうだいいたしております。この会は国際結婚をした女性の集まりで、いわば直接にこの法律の対象になる立場にあるものでございまして、そういう立場からの御意見が寄せられております。
 その後、昭和六十三年二月に改正要綱試案という形でもう少し純化したものを公表いたしたわけでありますが、これもやはり関係方面から意見をちょうだいしたわけでありまして、ただいま申し上げました国際結婚を考える会からも意見が出されております。
 その意見の考え方は、例えば今回の改正法の二十八条第一項のところ、重国籍者の本国法の決定を一つに絞り込むこととして、その後絞り込まれた本国法同士でもって離婚などの場合の共通本国法を決定する、こういう考え方の中にただいま申し上げました団体の強い御意見が反映をされております。
#301
○西川潔君 ほとんど諸先輩がお伺いいたしましたので、次に移ります。
 国際養子縁組がふえているということで、今回の改正によって、日本人が外国人の子供と養子縁組するにはどのようにすればいいんでしょうか。
#302
○政府委員(藤井正雄君) 養子縁組につきましては改正法の二十条の規定が適用されます。
 改正法によりますと、親の方、養親の本国法によって養子縁組みの要件、効果が判断されるということになります。でありますから、ただいまの設問が日本人の親が養子をするということでございますと、日本の法律、つまり日本の民法によって養子縁組ができるかどうか、どういう場合にできるかということが判断されることになります。ただ、養子となる外国の子供の本国法の上で、例えば裁判所の決定が要るとかいうような定めがしてございますと、それはやはり必要になってくるわけであります。しかし、基本的な要件は日本の法律によって養子縁組ができる、こういうことになります。
#303
○西川潔君 次に、外国人の子供の本国法に特別養子の制度、規定がない場合、その子供を日本人が特別養子にするということはできるんでしょうか。
#304
○政府委員(藤井正雄君) ただいま申し上げましたように、養子縁組の準拠法は養親の本国法でございますので、日本の民法に特別養子の制度ができましたから、子供の方の本国法に制度があるかないかにかかわらず、専ら日本の法律によりまして特別養子をすることができます。
#305
○西川潔君 今回の改正で、親子間の法律関係を「子ノ本国法」としておりますが、それはどうしてでしょうか。
#306
○政府委員(藤井正雄君) 改正前の二十条の規定は「父ノ本国法ニ依ル」といたしておりました。これは今回の改正の主眼の一つであります男系中心の規定の一つでございます。そこで、これを改める必要があるわけでありますけれども、親子間の法律関係においては、子供の福祉という観点を最大限尊重しなければならない。そこでこの際、親の方の、父親の方の本国法ということからひっくり返しまして、子供の福祉の観点から子供の本国法によらせるということが適当である。こういたしますと子の福祉という要請を満たすことができるというふうに考えまして、こういう定め方をしたわけであります。
#307
○西川潔君 どうもありがとうございました。大変な法律を本当に……。
 僕はこれで終わります。
#308
○委員長(塩出啓典君) 検察及び裁判の運営等に関する調査につきましての質疑はこの程度とし、法例の一部を改正する法律案につきましては、他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
#309
○委員長(塩出啓典君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、工藤万砂美君、林道君及び関嘉彦君が委員を辞任され、その補欠として宮崎秀樹君、石井道子君及び田渕哲也君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#310
○委員長(塩出啓典君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより採決に入ります。
 法例の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#311
○委員長(塩出啓典君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#312
○委員長(塩出啓典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後四時五十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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