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1947/09/19 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会 第1号
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1947/09/19 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 司法・農林連合委員会 第1号

#1
第001回国会 司法・農林連合委員会 第1号
  付託事件
○農業資産相續特例法案(内閣提出)
――――――――――――――――
  司法委員
   委員長     伊藤  修君
   理事      鈴木 安孝君
   理事      松井 道夫君
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           平野 成子君
          大野木秀次郎君
           奧 主一郎君
           水久保甚作君
          池田七郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
           鈴木 順一君
           岡部  常君
           小川 友三君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  農林委員
   委員長     楠見 義男君
   理事      木下 源吾君
   理事      森田 豊壽君
   理事      高橋  啓君
           太田 敏兄君
           門田 定藏君
           田中 利勝君
           羽生 三七君
           北村 一男君
           柴田 政次君
           西山 龜七君
           平沼彌太郎君
           岩木 哲夫君
           木檜三四郎君
           小杉 繁安君
           佐々木鹿藏君
           竹中 七郎君
           石川 準吉君
           宇都宮 登君
           岡村文四郎君
           河井 彌八君
           島村 軍次君
           寺尾  博君
           徳川 宗敬君
           藤野 繁雄君
           松村眞一郎君
           山崎  恒君
           板野 勝次君
           廣瀬與兵衞君
――――――――――――――――
昭和二十二年九月十九日(金曜日)
   午前十時三十九分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○農業資産相續特例法案
  ―――――――――――――
   〔司法委員長伊藤修君委員長席に著く〕
#2
○委員長(伊藤修君) 大變お待たせいたしました。これより司法委員會及び農林委員會の連合委員會を開催いたします。議院運營委員會の決定に基きまして、付託をせられました本委員會において委員長の席を汚さして頂きます。本日は農業資産相續特例法案を議題といたしまして、これに對する政府委員の提案理由並びに各條に對するところの説明をお伺いすることにいたします。
#3
○政府委員(井上良次君) 只今提案になりました農業資産相續特例法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げたいと存じます。
 實は大臣が提案理由の説明に出席する豫定でございましたが、本日は二十二年度産米の割當會議を地方長官を集めていたしております關係上、甚だ申しわけないのでございますが、私が代りまして御説明いたすことにいたしたいと思います。
 日本の農業はその經營規模が極めて零細であることを特色といたしておるのでありますが、これがために高度の農業技術の導入が妨げられ、農業生産力の發展は非常に停頓いたし、現に今日農業の近代化の大きな障碍となつていることは皆さん齊しく認めるところでございます。而もかような零細な經營の崩壞を支え、辛うじてその維持發展を齎らした所以の一つは、その可否はともかくといたしまして、我が國の家督絹續制度にあつたことはこれ又異論のないところであると存じます。然るに前議會におきましては、日本國憲法の施行に伴のう民法の應急的措置法案が上程可決せられ、我が國の相續制度は改正されることになりまして、家督相續が廢止され、遺産相続だけが行われることになつた次第であります。從いまして若しも農業の相續に際し、遺産が均分により分割相續されるに至りますならば、さなきだに過少な農家の農地その他の農業資産は更に細分化され、一層零細脆弱な經營状態となるか、又は農業經營者が相續の行われる毎に過大な債務を負擔して、小作農同様の地位に陷いるかのいずれかの途を迫る虞れがあると言わねばなりません。
 かくては現に實施中の農地改革により折角創設された自作農も再び小作農同様の地位に轉落し、日本農業も亦弱體化し、我々が農地改革の結果に期待すべき農業の近代化と、農村民主化の實現に重大な支障を及ぼすに至ることは明らかであります。從いましてかように相續に起因して農業資産が細分化されることを防止すると共に、進んで農業を營むべき相續人に對し、相續上の保護を與え、農業經營の安定とその健全な發展を圖るべき必要なる措置を講じますことは今日絶對に必要であると確信をいたしている次第であります。
 而して新憲法の施行せられております今日、古き家督相續制度の觀念から脱却すると共に、新憲法の理念に立脚し、新たなる觀點より農業の社會的生産力發展の基盤を確保するために、農業資産の相續について民法の特例法を制定せんとするのか、即ち本法案提案の理由の骨子であります。
 以下法案の主要なる内容について概略を御説明申上げたいと存じます。
 先ず農地その他の農業資産は、相続によつてこれを分割することを禁じ、一人が相續することにいたしたのであります。そうして農業資産相續人については、家督相續の概念から脱皮して、農業を營む見込のある者が相續人になることを建前といたし、被相續人の指定した者又は共同相續人の話合によつて選定した者が原則として相續人になることといたしたのであります。
 次に農業資産相續人は、相續上農業の収益による負擔力以上の債務を負わないように留意いたしまして、他の共同相續人と同様の相續分を受ける外に、一定の特別の相續分を受けることにいたすと共に、他の共同相續人は農業資産が一人の相續人に歸屬することによつて不當に利益を侵害される場合には、一定の範圍で農業資産相続人に求償するごとにいたしまして相続人間の利益を公正に調和することにいたした次第であります。而して農業資産の相續上の問題が、裁判に附せられる場合には、裁判所は農地委員會の委員の意見を聽くことを必要とすることにいたした次第であります。
 以上が法案の主要な内容でありますが、何卒愼重御審議の上速かに御協賛あらんことをお願いいたします。
#4
○政府委員(山添利作君) 極く簡單に各條についての御説明をいたします。
 第一條、これは法律の目的を掲げただけで別に申上げることはありません。
 第二條には、何がこの法律において農業資産であるかということを掲げました。これは土地、耕やします農地竝びに住居、又その宅地、それから農業經營を營むのに必要なる主なる農具、家畜等の範圍を決めておるのであります。
 第一號については、農業を營むところの土地の所有權、又小作地であれば賃借権、そういう權利、それから農業を營みます場合に、若し自家用薪炭林等をその農家が持つておるといたしますれば、これは當然農業經營に不可分に必要なものでありますので、自家用薪炭林をもこれに含めて、おるのであります。第二番目は、自家用薪炭林であるとか、或は果樹園等の關係上その土地の上にある樹木、これを掲げております。第三番目は住まう建物、又農作業に使う農舎等を掲げております。第四號はその敷地……宅地等であります。第五番目に掲げておるのは、別表にある主なる動産でありまして、これは相當の財産的價値のある動産ということにいたしております。農業を營みますのには、これ以外の動産が澤山あることは申すまでもありません。第一、種苗であるとか、肥料であるとか、家畜にしても、鶏まであるわけですが、そういう細かいものは考えないで、法律の建前としては主要なる動産に限つております。
 これが農業資産の範囲でありますが、一言御注意までに申上げておきたいことは、自分がみずから經營をしておる農地が農業資産として不可分に相續されるということでありましで、他に小作に出しておるという土地は目的にはなりません。これは農業經營そのものの安定を圖るという意味からでありまして、單なる普通の意味における財産即ち小作地として他に貸してあるようなものは目的に入つておりません。併しながら第二條の二項におきましてたまたま他に小作に出しておりましても、これが一時の事由で他に出しておるので、當然又特別の事由がありますれば、自分が引取つて耕やすというようなものにつきましては、これを農業資産の範圍に含めております。尚この法律を適用いたしますのにつきましては、一段歩以上の土地について、耕作の業を營んでおる農家ということにいたしております。この一段歩と決めましたのは、まあ大體從來から、例えば農業曾の會員になる標準を一段歩ということにいたしておる關係上、一段歩というような標準をとつたのでございます。
 第三條に參ります。第三條に規定しておりますことは、農業資産は一人の者がこれを相續するということであります。この法律の骨子は、要するに一人が相續するということと、その相續する者は農業を營む者でなければならんということ、それから全體の相續財産の中の半分、五割を限度として、農業資産に相當する價額は、その農業資産を受繼ぐところの相續人が特別相續人として相續をする。この三つの點に盡きるのであります。第三條は一人が相續をする、こういうことを決めておるのであります。その第二項は、第八條第二項又は三項とありまするのは、結局農業を營む見込の者がないという場合におきましては、即ち農業經營が繼續されないという場合におきましては、これは普通の民法の原則に立戻りまして、均分相續になるということであります。これは先に申しました小作地がこの農業資産の中に含まれないということと同じ趣旨であります。
 第四條以下は如何にしてこの農業資産を相續するところの一人を決めるかということを規定しておるのでありまして、第四條は被相續人、即ち晋通の場合におきましては、父親が自分の子供の誰に農業資産を承繼せしめるかと、豫め指定をして置くということを書いてあるわけであります。この指定は何時でも取消すことができるし、又その指定竝びに取消しは遺言でもこれをすることができる。これは固より、一人の意思の自由、或いは遺言の自由という事柄と同じ意味であります。恐らくあんまり日本の場合こういうことが行われるとも思いませんが、順序といたしまして第四條に書いてあります。
 策五條はかように父親から指定を受けた相續人があるといたしまして、そのものは何時でも、又相續の放棄をすることができ期間に限つて、農業資産の相續人たる地位を放棄することができる。これ又人の自由というような意味合におきまして、こういう規定を掲げてございます。
 第六條は指定相續人が、即ち指定されました相續人が當該農業資産について農業を營む見込がないということが明かであるという場合に裁判所は他の兄弟等の共同相續人の請求によつて第四條によつて被相續人がいたしました指定の取消をすることができる。即ち根本精神として農業資産の相續ということによつて農業經營を安定し、又そのことによつてこの特別の法律によりまして農業資産を相續する人は特別の利益を受けることになつておりまする關係でこれらのことは總て農業を繼續して行く、實際に營んで行くということが根本になつておりまするので、單なる成人の財産上の利益を與えるということではございませんから、農業を營む見込がない時は、指定の取消ということが行われるという意味でございます。
 第七條におきましては、この指定相續人がない場合、若しくはこの一項目、二項目、三項目に掲げておりまする事由によりましてなくなつたという場合にどうするか。これは恐らく多くの場合、實際には第七條が普通の場合であると思いまするが、その場合には兄弟等の共同相續人が相談ずくで誰が農業資産を相續するかということを決めるわけであります。第八條になりまするが、この兄弟聞の協議によつて誰が相續するかということが決まらない場合、又は兄弟が遠隔の地におるというような理由で相談をすることができない場合におきましては、裁判所は相續人の請求によりまして誰が農業資産を承繼するかということを選定する。二項、二項は農業を營む見込のある者がない場合、又總ての人が、共同相續人が農業をやる意思がない。こういう場合にはかような選定をしない。これは原則に立戻りまして民法の普通の原則によるわけであります。これは第三條の第二項において先程申しました結局第四條によりまして被相續人が農業資産を相續する者を指定することができる。これが第一段、又指定がない場合或いは指定された者が五條、六條等の理由によりまして農業資産を相續しないという場合には、結局第七條によりまして共同相続人が相談ずくで決める。その相談が決まらなければ第八條によつて裁判所が決める。こういう三つの順序と申しまするか、場合があるわけであります。
 第九條は單なる法律上の規定であります。
 それから第十條、この第十條は、特別農業資産相續人が特別相續分を受けるということを規定いたしたのでありまして、第十條の二項から讀んで參りますれば、「農業資産相續人が前項の規定による相續分の外、二分の一の相續分(以下特別相續分という。)を受ける。」第一項におきましては農業資産の承繼をする人がある。この場合には各共同相續人の相續人が普通の民法、又日本國憲法施行に伴う民法の應急措置に關する法律、この法律によつて定まりますところの均分相續、この相續分の二分の一を貰う。即ち半分に削減されるわけであります。その半分はどこに行くかということが、この第二項即ち農業資産の特別相續人は、特別相續分として二分の一を受ける。こういうことを規定いたしてあるわけであります。この三項以下いろいろ贈與があるとか、こういういろいろの場合において、どういうふうに分けるかということを、普通の民法の原則に從つて措置をするということが書いてあるわけであります。第十一條は、遺産の分割によつて、農業資産は、農業資産相續人一人に一括歸屬する。
 第十二條でありますが、これは先程申しましたように農業資産の相續人が全財産の二分の一を超えない範圍で農業資産に相當する價額を特別相續分として受ける。こういう關係になつております。これは實際の農業資産について餘計貰い過ぎるというような場合がある。それらに關することの調整であります。第十二條の第一項の場合は、農業資産の價額が、農業資産相續人の、この法律によつて定まりました相續分よりも餘計であるという場合であります。例えて申しますれば農業資産の價額が八萬圓である。ところが實際上その農業資産相續人の相續分として定められたものが七萬圓であるというような場合には、その差額の一萬圓をおのおのの相續分に應じて分ける。こういうことを規定しております。第二項はその反對といいまするか、法律によつて定められました相續分よりも農業資産の價額が低いという場合であります。七萬圓が農業資産相續人の、法律によるところの相続分である。農業資産は五萬圓であるというような場合に、二萬圓餘計貰い過ぎているという關係が起りますので、これを他の共同相續人に分配をするということになるわけであります。この全體を見まして、こういうふうに例を以て申上げますれば分り易いと思いまするが、假にここに十萬圓の全體の相續財産があるといたしまして、その中七萬圓が農業資産であるといたします。而して簡單にいたしまするために妻等のことは考えないで、兄弟二人で分けるという場合を考えて見ます。そういたしますと、農業資産を受ける人を假に兄といたしますと、兄はいくら貰うか。これは第十條によりまして、まず十萬圓の中の五萬圓は兄が貰う。而して殘りの五萬圓は兄弟二人で分ける。即ち兄の方は七萬五千圓を受取るということになるわけであります。弟の方は二萬五十圓を貰う。こういう関係になります。で、その場合におきましては、この十二條の両方、一項も二項も適用はないのでありまして、農業資産の價額七萬圓は兄が貰うところの七萬五千圓の價格を超過しない。又第二項によりまして、兄の特別相續分によつて受けましたところの利益なるものが五萬圓であります。これは農業資産の價額を超過するわけではありません。從つてこの十二條の如き措置をする必要はないということになります。併し又いろいろ例を取れば、こういう十二條のような關係の起つて來る場合が出て來るわけであります。このようにいたしまして十二條によつて農業資産の相續人が餘計貰つた。即ち農業資産の價額が殆ど全體の財産の大部分を占めておるというような場合或いは農業資産の價額が全體の資産の半分より以下である場合、この二つの場合には、十二條による調整が起るわけでありまするが、斯様な場合において、他の共同相續人に補償をするところの額、その支拂の方法等は、お互いの共同相續人の間のことでありますから、その相談によつて決める。その相談ずくで決まらなければ裁判所が決めると、こういうことが書いてあるわけであります。第四項は外部に對する債権等の關係、これが民法の普通の原則に依るが如くに書いてあります。それから第十三條、遺産の分割をする場合において、相續財産の中に農業資産に屬するものかどうか分らないというものが假りにあるといたしますれば、それは裁判所で決めて貰う。それから第十四條は農業資産の相屬ということは、繰り返して申しますように、その人が長く農業を繼續して行くということが根本の精神であり、条件になつておりますので、斯様に農業資産を一時相続いたしましても、而して特別相續人の利益を受けておりながら、任意に農業の經營をやめたという場合におきましては、特別相続人による農業資産の粗續人が受けた利益を他の共同相續人に拂い戻すと、こういう規定でございます。併しながらこれが一時やめた。又例えば健康が快復すれば農業を營むというような場合には、この十四條の規定は、これを適用しない。こういうときであります。それから第十五條は、農業資産は、これを物として分割出しないので一人が相續すると、こういう意味合からの趣旨の徹底という意味から、農業資産の相續人が贈與を受けた。而してそれが共同相續人の遺留分を害した。その報合に、返して呉れという場合には、物で返さないで價額で返す。こういうことが規定してあります。それから第十六條は農業資産の評價を如何に見るか。これは勿論時價の範圍内で農業經營の収益を基準として、これを定めなければならん。この十六條の意味は農業經營の収益を基準としてこれを定める。現在の價状態はいろいろでありますから、一概に申せないのでありまするが、通常の自由經濟等の時代におきましては物の賣買價格よりも農業収益から見た農業資産の價額は低い。農業収益は大體今まで低かつたのでございまするために、農業經營の安定を期するという意味からは、この農業資産の評價に當つては高い評價をしない。農業經營の収益というものから逆算をした値額を標準として定める。これは特別相續分等を認めましたと同じ理由によるところの農業經營の安定を期するという趣旨でございます。その他十七條、十八條等については申上げることはありません。
 第十九條は裁判所の裁判、これはいずれ簡易裁判所ができますれば、そこで裁判をして頂くことになりますが、何と申しましてもこれは農業經營を繼續して行こうということでありまして、誰が農業を經營する見込みがあるかというようなことにつきまして、市町村農地委員會の委員の意見を聽いて、裁判所が定める。甲と乙が農業を營むというような場合に一人を選定する。どちらが農業經營に適するかというようなことについては、その村におけるところの農地委員の意見を聽いて裁判所が定めるということであります。
 第二十條は申上げることはございません。極く概略でございますが、以上を以て説明を終ります。
#5
○委員長(伊藤修君) これより質疑に入ります。
#6
○羽生三七君 御提案になりました農業資産相續特例法案については、今政府委員の御説明でよく分りましたが、甚だ恐縮でありますが、多少私質疑というより意見に亙る點があるかと思いますが、お許し願いたいと思います。御説明でよく分りましたし、この裏の一提案理由にありますように、結局農業經營の安定を圖るために出す法案でありますから、趣旨は誠に賛成であります。殊に先般施行された農地改革によりまして、農村においては土地問題については革命的な變化が起つておりますが、その結果として場合によりますると、却て農業の細分化、或いは零細化を招來しておるような嫌いが相當あるのであります。そういう點で、恐らくこの法案というものの持つ價値が高く評價されるかと思うのでありまするが、ただこの場合私達が考えなければならないことは、これは一つの例でありますけれども、嘗て十數年前のあの農業恐慌時代を考えて見ますというと、農業自體では生活のできない次男、三男というものが澤山できまして、これらの人達が皆都會の勞働者の職場に殺到いたしまして、勞働者の賃金を低下さしたと思います。或いは地方におきましては銀行、會社、役場、學校その他少くとも働ける如何なる場所へでも使つて貰いたいということになりまして、多くの俸給生溶者の待遇というものを低下させる直接の原因になつております。恐らくこれが日本の、まあ理窟になりますけれども、非常な非民主的なる、封建的であつたことを規定する重要な要素になつておると思うのでありますが、假に農業資産の細分化がこの法案によりまして阻止されましても、實質上將來日本に長男以外の次男、三男が何らかの形で生活できるという形が創造されない限り、實質上においては又再び昔のような非常な農村恐慌時代が起る可能性があると思うのであります。そういう意味から考えますというと、私はこの法案の趣旨を活かして行くために、先般農林委員會で審議されておるような農業協同組合法とか、或いはその他種々なる對策が併せて考慮される。種々なる對策という場合にはどういうものがあるかと言いますと、例えば農村工業というようなものがあります。そういうものが併せて活かされて行きませんというと、結局恐らく數年後に、來るべき我が國の農村の將來を考えますというと、次男坊、三男坊は行き場がないわけであります。而も恐らく今日あらゆる行政部面を見ましても實際に人員は飽和點に達して、むしろ過剰の状態でありますから、これを都會において吸収し得るということは現状においては考えられないと思うのであります。そういう意味から考えまして、私達は若し長男だけが相續をいたしまして、その財産が長男に歸屬し、次男、三男が行く所がないといたしますと、同居人としてその家族内の成員として止まつて農業に從事するか。或いは雇用関係として他の農良業生産者の下に農業勞働者として勤めるか。そういう形が現われて來ると思うのであります。そこで私はそういう意味におきましては次男、三男がなかなか困難な状態に置かれまして妻帯をするとか、一家を持つというようなことは非常に見透しが困難であります。そこで私は飽くまで先程申上げましたように農業協同組合法等が活かされ、その中に協同の生産形態というものが或る程度採り入れられる。このことは何も私は私有財産の否定を意味する精神を含んではおりません。それはお断りいたして置きます。あくまで協同の精神に基くそういう農業生産の形というものが活かされて行かなければならんと思います。それから一方においては次男、三男等を収容する農村工業というようなものが政府において相當程度力を入れる。農村の白發的に盛り上つて來るのを待つておるだけでなしに、政府自身がそういう問題について相當力を入れてやりませんというと、長男はそれでよろしうごごいますが、又同時に我が國の農業の細分化はこれによつて防止されますけれども、農村全體が果して民主主義的な、或いは文化的な生活を營み得るかということになりますと、極めて困難なる將來が豫想されると思うのであります。この意味におきまして私は今申し上げたようなことが同時に政府の方針として併せて採られることを希望するわけであります。箇々の逐條的な問題につきましては他日に讓りまして、これだけを、これは質疑というよりは、多少外れておりまするけれども、希望として申上げて置きます。
#7
○政府委員(井上良次君) 只今の、御意見を中心にする政府に對する御質問については全く同感でありまして戰爭に敗れた日本がこの狹隘な國土で、而も限られた耕地の上で農業經營を營む場合に、如何に法律でそれを食い止めようといたしましても、みずからの生活を營む基礎が確立しておらん限りにおいては、この法律的な效果は現われて參りません。一方農地の經營の合理化を圖り、農地の細分化を防止しようというためには、どうしても今御指摘のような農業協同組合の健全な發達を促しまして、特に從來のような購買利用という面の力よりも、農村技術面の指導、この面を積極的に政府は援助いたしまして、そうして農村工業を飛躍的に高めて行く。これはいろいろ立地條件によつて異なるのでありまして、例えて申しますというと單作地帯の面における農村工業はどういうものが適當するか。或は又單作地帶でも特に東北のような山を中心にする工業、更に又表日本のような地域、或いは又は西日本のような地域、それぞれの立地條件に適合する農村工業を飛躍的に振興させなければ駄目でありまして御存じの通り、重要な工業都市は戰災に遭つて、その復舊が未だ遲々として進まない現状におきましては、どうしても農村工業に政府が大きな力を加えなければならんということで、今農林省におきましても、新年度の豫算を組むに當りましても、如何にして農村の振興を圖るかということを中心に、例えば畜産の五ケ年計畫、或いは植林と言いますか、造林の方面に對する具體計畫、或いは開拓方面に對する計畫、或いは漁村を中心にする海産物にも飛躍的な増産という方面に力を入れまして、專業農業以外の餘剰勞力を、どう一體最大限に活用して、農村の經濟を安定さすかということに全力を注ぐ方針を探ろうといたしまして、折角檢討を加えておる次第であります。全く御説のように、我々も全力をその面に注ぎたいと考えておる次第であります。
#8
○松村眞一郎君 私はこの、條文の細かいことに入るのじやありません。第十五條に「減殺を受けるべき限度において贈與又は遺贈の目的の價額を遺留分權利者に辨濟しなければならない。」という、この問題が、餘程これを實行する上に重大な關係があると思う。それは分割を防ぐものは一人の人に集中する。その代り金だけでその遺留分權利者に渡すと、こういう思想ですね。そうなりますと金のない場合のことを私は考えなければならんと思います。それはどうしてもそこまで深切に考えなければ、實行において非常に不可能と思います。そこで私は農業動産信用法というものがあつて、これが從來あまり十分適用されていないと思う。どのくらい運用されておるか。それも併せて伺いたい。ところがその農業動産信用法の中の先取特權の關係と、抵當權の關係と二つあります。抵當権の節圍をこの動産の範圍と同じようにされることが、非常に適切だと思うのです。片方においてこの動産が……、表があります。今度のこの表を見ますというと、ここに別表というものが掲げてありますが、石油機關とかいうものが、動産信用法の中の別表と、施行令の方の、農業動産信用法施行令の掲げるところのものと、ほぼ一致しておる。ところがこれは全然一致していません。私はこういうことは餘程農林省の方でも御注意になつて、この抵當權の範圍における農業動産信用法の施行令の第一條に掲げてあるところのいろいろな品目と、この品目と一致させることが非常に深切なやり方だと思います。そうしないと擔保に取るときに非常に不便である。それは抵當權の場合でありまして、先取特權の方は、別に障りないのであります。その御考慮を煩わしたい。なぜかというと實際においてその運用を深切に考えないと、ただ法律を出したらいいというものじやないのでありますから、動産信用法が從來どのくらい行われておるか。この場合どのくらいそれを活用させるつもりであるかということを承りたい。
#9
○政府委員(山添利作君) この前に農業動産信用法ができたのでありますが、後に實績を調べまして、分かれば御報告申上げますが、實は殆ど活用になつておりません。現在では殆どあれは使われておりませんわけであります。數字的には後に調査をいたしましてお答をいたします。
 この法律全體の問題として、何らか金融の途をつけておくことが必要ではないかと、これは御指摘になりました十五條の關係、又十二條の關係共に、金があればよろしうございますが、ない場合に困る。これは法案を立案いたします途中におきましても、いろいろ考えたのでございますが、丁度只今インフレーシヨンの時期にあつて、できるだけ金の出ることを抑制しなければならんということもございまして、將來状況の變りました時に、又どういう程度の必要があるかというようなことを見ました上に、金融については特別な考をいたしたい。こういう積りでおります次第であります。
#10
○北村一男君 逐條的には後刻お尋ね申すといたしまして、私はこの法文を讀んで、なかなか難解である、私のみが法律を咀爵する力がないかと思つて、同僚議員に尋ねて見ましたら、やはり難解である、これは一體誰を對象にして法律を作つたか。農民のために作つたものであると私は考えます、こういう點に私は官僚の不深切さというものがにじみ出ていると思います。もう少し深切に、分り易く作る能力が官僚にないのか。そういう深切がないのか。私はこの點について先ずお尋ねしたいと思うのであります。
#11
○政府委員(山添利作君) 細かい所になりますと、分りにくい所が非常にあります、例えば全體としての民法の規定から言いましても、私自身も均分相續權ということをよく知らない、これは法律といたしましては、農民を對象とする場合でありましても、又その他の者を對象とする場合においても、分り易くするように努力することは當然であり、又新しい憲法以來、この平かな等が使われる。そうして國語體になつていることも、只今御指摘になりましたような目的を達するためでありますが、まだ遺憾ながらそういう法律の書き方がそこまで至つていないのが今の立法技術士の現状でありまして、心持は同じでありますけれども、まだそこまで行つていないのであります。こういうふうに御了解を願いたいと思います。
#12
○北村一男君 ちよつと關連して、どうも只今の説明では、私は御努力が足らんと思うのであります。まだこの條文の中で、今審議に當りましても、關連の法規をここにお出し下さるというような深切さもなく、すべてが一事を以て萬事を推することができるように、甚だ不深切であると考えるのでありますが、今後こういう法律を作る場合においては、特に法文とかを、文化の程度が低いと言われる農民を對象とする場合に、特に分り易く書いて、そういう方向に向つて御努力願いたい。こういうことを希望しておきます。
#13
○松井道夫君 このたび新憲法の施行によりまして、家督相続というものが廢止せられ、從つて財産の均分という、相續關係においてはさようなことに相成つたのであります。ところでこの制度は日本におきましては始めてでございますので、今後これがどういう工合な影響を社會生活に及ぼすかという點につきまして、識者はそれぞれ憂慮いたしておるのでありますが、それに關連しまして、この法案が立案せられたものと存ずるのであります。これを審議するに當りまして、私共はこの均分制度は我が國においては初めてではありまするけれども、諸外國においていろいろ今まで行なわれておるのではないかと存ずるのであります。その諸外國におきまする農地關係とその他の制度等の關係はどういうことになつておるか。これを參考にいたしたいのであります。又これはすでに五月三日から施行されておりますので、現在に至るまですでに數ヶ月を經過し、その間にこの法律で規定せられておるようなことが、實際問題として惹起しておると存ずるのでありまするが、實際これがどういう工合に取扱われ、解決せられておるのか、その點についても、當局にその情報が入らない筈はないと思いますが、この法案の立案について參考になると思いますので、その點の御説明を願いたいと思うのであります。先ず只今のことから御説明を願います。
#14
○政府委員(山添利作君) 先ず後の方から御答えいたしまするが、この法案は元來、この前の議會に提出をいたしまして、新憲法の施行と同時に實施をいたしたいという考でございましたが、色々關係方面との折衝等でち遲れたのであります。その間數ヶ月經ちまして、事實新憲法實施以來、農家にも當然相當數の相續が行なわれておるわけでありますが、併し具體的にそれがどういうように處置をされたかということにつきましては、別段調査も實はいたしておらないのであります。從つて分らないのであります。併し參考資料として差上げました、農村のこの事柄に関する輿論調査というものがお配りしてあると存じますが、それによりますと、農村方面では、固より均分相續ということは全然新しいことでありまするから、新しい、慣れないものに對する反撥ということもありましようが、兎も角農業資産が均分的に相續されるということにつきましては一〇〇%に近い反對を惹起して、不分割に相續することをよしとすることが壓倒的でございます。そういう農村方面の意見又從來の傳統という點から考えまして、これは大體こういうような法律の趣旨に副つて來ておるのではないかということを想像いたしております。それから外國における例でございますが、勿論外國におきましては、只今お述べになりましたように、均分相續と農地との關係をどうするかということにつきましては、農業上の要求とか、それから均分相續の自由思想との間に、長い問いろいろな調和を見出すための社會的な問題であつたわけであります。ドイツ等におきましても、一人に相續させる、これを遺言でやるというような制度、或いはだんだん發展しましてナチスの如きは、これは思想が違いますけれども、御承知の世襲農場というところまで發展しておりまして、スイス等におきましては、細分化の最低單位を決める。これも州別によつて違いまするが、まあ日本で言えば八段、一町というような最低の面積を決めて、分割によつてそれ以下の面積になるということを防ぐというような法律もあつた。又その他のことにつきまして特に家産制度に関する效果というようなことは、參考資料も差上げておるのでございますが、海外におきましても非常に苦しんだ問題であるわけであります。概ねそういう苦しみ方をした結果としては、大體いわゆる參考と考えますものは、或最低面積を決めてそれ以下の分割を禁止するという思想、それから一子相續、ドイツ等に行なわれる遺言によるという制度、この二つの點が注たる參考になるのではないか、こういうように考えております。
#15
○松井道夫君 只今御説明になりました外國の制度、これに對しての資料はまだ頂戴していないのでありますが、できるならば急速に頂戴できるようにお願いしたいと思います。
#16
○政府委員(山添利作君) 差上げてある筈なんですが……。
#17
○松井道夫君 私は頂戴しておりません。それから輿論をお調になつたということですが、これもちよつと見當らんのでありますが、資料がありましたら纏めて、できるだけ急速に頂戴したいと思います。それから今の御説明に關連して伺いたいのは、これを家産制度ということにいたしたらどうかということをお考えになつたかどうか、それが一點であります。
 それからこの法律では特別相續分ということを認めました關係で、非常に難解複雑になつておるように存ずるのでありまするが、考え様によりましては、さような相續分に特則を設けるということでなしに、大體遺産の分割によつて農業資産というものを分割することができないということにいたしまして、この農業をどうやづて行くかということは、相續人の協議によつてこれを決めて行くというようにすれば、それでいいように存ぜられるのであります。その點についての御意見を伺いたいのであります。
 それから第三に、これは經過規定といたしまして何らの規定がございませんが、既に先程申しましたように、五月から均分相續ということが實施せられておりますので、この法律が實施されまする間におきまする相續、これをどう取扱うかということにつきまして、經過的の規定が必要ではないかと存ぜられるのでありますが、それを必要なしと認められた理由を一つ……。
#18
○政府委員(山添利作君) 家産制度をとりますれば、農業と安定、又繼續ということは更に一層徹底するわけでございまするが、それだけに又不便も半面にあるわけでありまして、例えば金融の點等においては、忽ち困るという點もございます。のみならず我が國農業の形態でも、今後相當やはり研究の結果によつて變つて行くというような點もございまするので、まあ主といたしまして家産制度をとれば、結局農業資産を擔保にして金を借りるのに非常に不便を來すというような點もありまするので、そういう固定的な又金融上面白くない影響を及ぼす家産制度は、これを研究の結果とらないということにいたしたのであります。
 それから特別相續分という制度を設けることによつて、法案が非常に複雑になつておるのでありますが、そういうことなしに、どうせ兄弟の間柄でおるから相談ずくで任しておいたらいいじやないか。これも一つの日本的な考え方ではあろうと思います。併しながら苟くもこういう法律を決めます以上は、事柄が問題になりますのは、結局爭のある場合が問題になるので、その場合に如何なる基準を以てどう措置かするかということは、やはり法律を以て決めておく必要があるわけでありまして、その意味におきまして遺留分を害さない範圍において特別相續分を認める。こういうことにいたしたのであります。
 尚又繼過規定の點でございまするが、これは遡及してこの法律を適用するわけには行きませんが、すでに行われたる相續は、これはその法律、即ち均分相續制による。事實この處理につきましては、先程申上げましたように農村の事情と輿論でありまするから、爾く不都合なる事柄は起つてはいないようなことで、それぞれ解決がされておるだろう。こういうふうに考えております。
#19
○松井道夫君 先程申上げました第二點でありますが、法律によつて少しも規正をしないということでなしに、農業資産は、遺産の分割によつてこれを分割することはできないのである。それから指定相續人というものを作つても少しも差支ないのであります。ただ折角均分の相續になつたのを、特別相續分といつたものを作つて、その例外とするというところに非常に複雑なる點がありますので、その特別相續分というものを認めずに、原則によつて、均分相續にしおけば非常に簡單ではないか。ただ農業を經營して行く農業資産による収益その他の關係は共同相續人の協議によつて決めればよろしいではないか、又被相續人が指定相續人を定めますることにつきましては、遺言等におきましてそれぞれ相當の處置をする場合も考えられますので、特にこういう均分相續の例外をなしまするところの特別相續分というものを作つて法律關係を錯雑ならしめる。民法の原則と違うものを作つて法律關係を錯雑化するということは頗るわかりにくい事柄ではないか。かような意味であります。その點について伺います。
#20
○政府委員(山添利作君) 特別相續分の制度を作ります事柄は、農業資産の不分割、即ち一人が相續するということと竝んでこの法案の重要な點をなしておるところでありまして、若し民法の原則通りに均分相續にすると、勿論物としての資産を一人が承け繼ぐとしましても、相續分を、價額を均分に分けるということにいたしますれば、農業資産を承け繼いだ人が、その農業を繼營して行く間において、他の共同相續人の多額の負債を負い、これを或期間に償還をして行かなければならん、そういうことでありますれば、これは農業を承繼したところの相續人に非常に重い負擔を課すことになりまして、一面からいえば、現在農地制度の改革によつて、小作農を自作農にいたしておりまするが、そうすれば丁度兄弟の間で新しく又小作關係……、繼濟的な意味においては同じような關係を作ることになりまして、小作關係を再生産をするというような形にもなるわけでありまして、農業經營を安固に、又發展する農業經營として繼績せしめますためには、どうしても過大なる負擔を負わさないような制度を考える必要があるわけでありましてそのためにはどうしても特別粗續分という制度を認めて、そうしてこの農業を承繼して行く人が、均分相續によるところの大なる負擔を負わないようにしておく必要があるわけであります。固より親が遺言によつて處置すればいいじやないか、これも理論としては一應言えるわけでありますけれども、現實問題として日本にあまりそういう遺言の習慣があるわけでもありません。これはむしろ遺言に代わるべき制度として、こういう特別の相續に關する法律が必要じやないか。かように考えておる次第であります。
#21
○委員長(伊藤修君) 午前の質疑はこの程度にいたしまして、次は午後にいたしたいと思います。午後は一時から開會いたしたいと存じます。これを以て休憩いたします。
   午前十一時四十八分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時三十七分開會
#22
○委員長(伊藤修君) これより委員會を開會いたします。午前に引き續きまして質疑を繼續いたします。
#23
○北村一男君 第二條の「一時耕作の業務を營むことをやめ、」というのでありまするが、これはちよつと問題の焦點が外れるかも知れませんが、止めますと小作に出すというような場合があると思いますが、現實の問題として小作に出した土地は、そのときもう今度耕作をやるときは返して呉れるということを條件にしましても、今日農村の實情としてなかなか返して呉れませんから、一時に耕作の業務を營むことを止めるということは、若しも小作にそれを出す。又出さなければ今後、農業生産調整法などが出ますと、作付けの命令などが出ますと、どうしても耕作をしなければならん。一遍出せばなかなか現實として返つて來ないということになると、これは一時でなくて相當期間耕作をやらんということになりますが、そういう場合のお扱いはどうなるのでありましよう。
#24
○政府委員(山添利作君) 現在の状況で、一旦小作に出しますと、なかなか返つて來ないというお話であります。これは一時小作に出すと、而して直ぐある事情があれば返して貰うということを明確にして置けば、これは當然返すわけであります。これで返さないといたしましても、農地委員會で必ず返すものと判定をいたすものと思います。ただ現在の状況といたしましては、一時の積りでありましたのが、戰爭が長引いたというような事情で結局長くなつてしまつた。長く小作闘係が續いておればこれを自然施行するという關係になつておるのでありまして、將來の問題といたしましては、一時ちよつと小作に出したがそれは返つて來ないのだというような状況では、どんなことに不都合を生じ、全體としても農業生産を上げるということに不都合を來すわけで、そういうことには私はならんと思うのであります。ここに「一時」と申しますのは、無論一年と限つたわけではありません。これが恒久的でないという意味でありまして、病氣が三年續けば三年業務を營んでいないということがありましても、治り次第又みずから作るということでありますればよろしいと、まあこういう考え方をいたしておるわけであります。尤もこれは相續の起るときの問題で、病氣は適切なことでないと思いますけれども、そういう考え方もいたしておるのであります。
#25
○北村一男君 十二條の「第十條第一項乃至第三項の規定により定まる相續分に相當する財産の價額を超過する疑があるときは、」というのは、これは利害關係者が疑を持つたときという意味になりましようか、その點をお伺いしたい。
#26
○政府委員(山添利作君) 「疑があるとき」というのは、これはまあ精密に考えました結果こういう字が使われたのでありまして、本来から言えば價額を超過するときという意味であります。超過するときと言いましても、詳しく算定してというわけにも行きませんので、そこにある漠然とした要素を入れるという意味におきまして、こういう字を使つたのであります。これは無論關係者の間での評價の問題であります。
#27
○北村一男君 この法律は餘程はつきり決めて頂かんというと、將來兄弟喧嘩の因になるのじやないかと思います。つまり血で血を洗うというような結果を招來する慮れが十分あるのでないかと思われますから、はつきり決められるところは疑とか認めるとかいう文字を絶つて、外に何か明確に規定することはできないのでしようか。
#28
○政府委員(山添利作君) これは率直に申しますと、法制局で十分練られてこういうことになつたのであります。
#29
○北村一男君 法制局で練つても、あなたはどうお考になりますか。
#30
○政府委員(山添利作君) 常識論としましては、今のように普通の觀念で行けば、財産の價額を超過するときというわけでありまするが、實際の問題として、この家庭内の事件、事柄を處理するのについて、精密なる計算をしてかかりて、こういうことでないという、そこに裕りを持たせるという意味において、この構成が適切である。かように考えておるのであります。
#31
○北村一男君 私はそれで申上げたいのですが、こういうぼんやりして幅を持たして置くということは、その親心が却て喧嘩の因になりやしないか。疑を以て直ぐ、どうも超過しておる。仲の良い兄弟だとよろしうございますけれども、感情問題などが差挟まる處が十分に私はあると思います。それでこれを明確化することが必要じやないかと思うのですが、今局長のおつしやつたような言葉が一番いいのじやないかと思いますが、どうでございましようか。
#32
○政府委員(山添利作君) これは本來、これも餘計なことを申すようでありますが、立案の途中におきましては、成るべくならば、この農業資産を相續する人の負擔を重くしたくないというのが、私ども原案を作つた者の意見でありまして、従つてこういう評價の場合におきましても、資産の評價をする場合に農業經營の収益を引くというようなことを書いております。同時にこの農業資産を承け繼ぎます人は、農業を承繼する人、言い換えて見ますると、長く親の下にあつて共に農業勞働に從事しておる。こういう人であります。從つてその事情を考慮をして特別相續分以外においても資産の評價というような場合に、そういう要素も相當考えたらどうか。こういう考え方を持つておつたのであります。最後にできました條文におききしては、そうう趣旨は現れておりませんのでありまするが、そごに若干の餘裕を持つ。こういう點を殘しておりまして、結局精密に計算してどうこうというよりも、大體そういうような事情をも勘案して物事を處理したい。こういうような趣旨も、非常に間接的ではありまするがある。こういうわけでありまして、超過する疑があるときは、これは成る程普通の文字の使い方とは異なつておるのでありまするけれども、そごにそういう含蓄があるということを御了承願いたいのであります。
   〔門田定藏君、發言の許可を求める〕
#33
○委員長(伊藤修君) 質問の通告がありますから、通告が濟んでからお願いいたします。
#34
○齋武雄君 先程或委員から、この法律は非常に難解である。分りにくいというお話があつたのでありまするが、私も同感であります。その一例を舉げますというと、十條に、民法第千四條及び昭和二十二年法律第七十四號第八條の規定による、こういうことを書いておるのでありますが、これは現行民法を指して言うのであると考えるのでありますが、改正民法は今審議中でありましてそうして相續は全部變更になるのでありますが、こういうようにもう古くなります現在の民法或いは法律第七十四號を引用しておるということについても非常に難解であるのであります。先程政府委員の方が、これは昨年立案したものをそのまま出したのであるというお話のようでありましたが、これが私の聽き違いでなかつたならば、一體昨年出したものをそのまま出すということは、不深切ではないかと私は考えるのであります。その後において情勢は變化しておる。それから相續というものは全面的に改正されておる。こういう事態におきまして、昨年立案したものをそのまま出したということは、これは言い過ぎかも知れませんが、國會を侮蔑しておるのではないかと、こういうふうにも思われるのでありますが、不深切であるということは言えると私は考えるのであります。それでありますから、私の考えといたしましては、五月から新しい憲法が施行されまして、その間從來の通りやつて來たのでありますから、直ぐ新しい民法ができるのであります。その民法と対照して關聯を持たせて、この法律を更に檢討して作るのが本當ではないかと考えるのでありまして、五月から今日まで現在の通りやつて作たのでありますから、あと一ヶ月ぐらいの問題であります。若しこの法案をこのまま通すとすれば、更に十二月になつたならば、又改正される積りであるのかどうか。改正しなければならんと私は考えておるのでありますが、その點をお伺いしたいのであります。
 それから二番目は、法案の第五條或いは十九條において裁判所が決定するということになつております。十九條において、先程の説明では、家事審判所が取上げる、こういうことになるでしようということをおつしやいましたが、どこから家事審判所というものが來るのであるか。この法律自體から見ると、家事審判所ということはないのでありまして、まだ家事審判所というものはできておりません。當然にはならんのであります。むしろこれは家事審判所で取上げるのでありましようけれども、この法律では明確でないのであります。先程家事審判所でやることになるでしようとおつしやつたことは、この法案のどこから來るのであるか。この點もお伺いしたいのであります。
 第三番目には、第三條の、「二人以上の者にこれを歸屬させることはできない。」、これは二人以上ということは、無論一人を指すのでありまして、一人という意味でありますが、この字句が分にないのであります。二人以上というのは、二人を指すのであるが、一人を言うのでありますか。我々司法委員といたしましては、用語例によつて分ります。一人ということは分りますが、一般にこれは、二人を言うのであるか、二人までよいのであるが、一人のみに限るのであるかということは分らんのでありまして、こういう點においても、この法案の作り方が不深切ではないかというふうに私は考えるのであります。
 最後に、先程政府委員の逐條の説明に當りましては、私は不深切であると考えておるのであります。何だか要領を得なかつたのでありますが、司法委員會においては、政府委員が説明される場合においては、もつと詳細に説明されるのでありますが、それは先程政府委員の方が、相屬法についてははつきり分らないということをおつしやつたようでありますが、そういう點からして説明がそういうふうになるのじはないかとも考えるのでありますが、若し相屬法がはつきりお分りにならんと假定いたしますれば、司法の政府委員の方に説明を願つたらどうであるかという考えも持つておるのであります。これは新しい相續法と非常に關聯のある法律でありまして、相續法をはつきり知つて初めてこの法律が審議されると私は考えておるのであります。相續法は一般の原則であります。併しながら農地の細分化を防止する意味において、これは相續法に對する特例であります。そういう意味におきまして、なるべく相續法に従うようにした方がよいと思うのであります。止むを得ない場合においては、この目的のために相續法の例外を作るということは結構でありますが、併しでき得る限り相續法と矛盾しないような方法に考えて行かなければならんと私は考えておる者でありまするが、そういうような場合においては、新しい民法の相續法というものを詳細に知らなければいかんのであります。私の聽き違いであるかどうか分りませんが、新しい相續法については詳しくは分らんという政府委員のお言葉のようであつたと私は記憶しておるのでありますが、それであつたら、新しい相續法の分る人を以て説明された方がいよろしいのではないか。こういう考を持つておるのであります。これらの點についての御見解をお願いしたいのであります。
#35
○政府委員(山添利作君) この法律を出しますにつきまして、前議會に立案したものをそのまま出したのは非常に不深切ではないかというお話でございまするが、これは私が申しましたのや、前議會に立案をいたしましたけれども、固より新しく出しますにつきましては、更に再應の檢討を加えて提出をいたしたのであります。
 而してこの中に、民法についても現行民法、即ち新しい民法でないものを引いておる。これは立法技術上止むを得んのでありまして、成る程間もなぐ新しい民法ができますけれども、一方この法律といたしましては、できるだけ早く施行をする必要がある。間隙を少くするという必要に基いて、この議會に出しますといたしますれば、新しい民法はまだ施行になつていないわけでありまするので、結局この法律といたしましては、舊民法を引くという以外に立法上の技術として方法がないわけであります。尤もこの施行を延しまして、新しい民法が施行になりましてから、この法律も亦施行すると、こういう建前をしますれば別でありまするけれども、それは又この法律を成るべく早く施行したいという意味から、そういうふうにはいたさなかつたのでありまするし、又いたさない方がよいと考えておるのであります。そういう意味におきまして、これは舊民法を引いておりまするが、お話になりましたように、次の議會には又新しい條文を引出直しをしなければならない。從つて改正案を提出しなければならんのでありまして、裁判所と書いてあります點も同じでありまして、これは家事審判所の法律が施行になりますれば、この法律も又從つて直す考えでおるわけであります。
 それから第三條の「二人以上の者」ということでありまするが、これも法律用語といたしましてこういう文字を使うので、これはまあ只今お述べになりました通りであります。意味といたしましては、固よりこれは二人ならば差支えないという意味ではなくて、一人に限る。こういう意味であります。
 尚又、民法の相續、或いは特に新しい民法の相續編等につきまして、私は詳細には存じません。同時にこの法律そのものは、司法省竝びに農林省で協同して研究をし立案をしたものでありまして、この委員會にも、司法省の人も出て頂き、そうしてこの審議のためには、司法省からもいろいろ又御説明なり御答辨を願うことになつておるのであります。
#36
○大野幸一君 私は本法の目的であるところの第一條の疑義についてお尋ねいたします。第一條に、「遺産の分割に因る農業資産の細分化を防止し、農業經營の安定を圖るための相續に關する特例は、この法律の定めるところによる。」と、こうありまして、農業經營の安定を圖るという意味ですが、これは何人のために圖るのか、相續開始前の將來の相續人の地位もここに考慮しておるのか。或いは又相績開始後の相續人の地位を考慮しておるのかという點であります。或いは又双方を考慮しておるのか。こういう點にあるのでありまして、又安定の意味でありますが、經濟上の意味のみならず、將來の相續人にして、農業に從事する者の、一種の精神上の安定も意味しておるのかどうかということであります。それに關連して第二條に、「この法律において、農業資産とは、左の各號に掲げる權利で一段歩以上の面積の土地に就いて耕作の業務を營む者が有し。」とあるこの意味であります。「耕作の業務を營む者が有し、」この意味はみずから農業を營んでおる者が所有しという意味かどうかという點であります。この双方の解釋如何によつて、この本法の後數條において、幾分不備な點がありはしないかと考えます。この點をお質しする次第であります。
#37
○政府委員(山添利作君) ここにあります農業經營の安定という文字は、本来二通りあると思います。二通りありますことが、實は一通りに歸著するのでありまして、國全體の眼から見まして、農業經營の安定を圖つて行くということが、これは農業生産力の維持發展という上から必要であることは申までもありません。國全體の眼から見たところの農業經營の安定を圖るためには、當然箇々の農業經營の安定がなければならん。その安定は全般から見ました場合と箇々の場合を見ました場合、農業經營が連續的に安定しておることが必要でありまして、農業資産の細分化を防止する。而してそれは相續によつて機械的に細分化されるということを防止しておるのでありまするから、箇々に安定を圖つておる状態は、相績を繞つての親から子への連續した安定であります。そういうふうに客觀的な意味における安定というふうに考えることが、適當であろうと考えておるのであります。それから「耕作の業務を營む者が有し」というのでございまするから、これは固より所有をするという意味でありまするが、賃借權等について所有をするという言葉も變でありますが、結局その者が所有をし、又所有という觀念が適切でないものには、持つておると、こういうような意味であります。
#38
○松井道夫君 先程相續の均分ということについて、それに關連して質問したわけでございますが更にそれに引續きまして質したいと存ずるのであります。御承知の通り均分相續ということは、午前にも言いましたが、新憲法の第二十四條第二項に財産權、相續、家族に關するその他の事項に關しては、法律は個人の尊厳と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならないという規定がありまして、この規定の關係上均分相續ということに相成つたのであります。ところでこの法律におきましてその均分相續の原則に例外を認めまして、特別相積分というものをここに作り出したのでございますが、これはそれ相當の強い理由がなければ、憲法違反という問題を惹起いたすことであると私存ずるのであります。かような特則をこの法案によりまして認めました理由は、均分相續ということと農業經營ということが兩立いたさない。かような見解に立たれたことと存じますが、併しながらこれが憲法違反であるかないかという重要な問題でございますから、更に工夫を凝らしましたならば、その相續の均分、農業の經營の確立ということと、これが兩立する方法が發見できないとも限らないと思うのであります。この第三條に農業資産は、財産の分割によつて二人以上の者にこれを歸屬させることができないとありますが、假にこれが三町歩ならば三町歩を自作しておりまして、子供二人が非常に耕作に熱心であるという場合に、これを一町五段づつ分割いたしましておのおのにその特色を發揮させてこれを經營させ、その地の農業資産も適當に分配いたすということで決して悪い結果はないと存ずるのであります。その際にこれを長男ならば長男にこれを歸屬させまして、残る次男は一個の農業勞働者にいたしまして、その次男に假に多くの子供があるといたしますれば、その多くの子供にほんの僅かの分け分しかないような状態にすることは、明かにこれは個人の尊嚴、家族關係におきまする個人の尊嚴相續財産關係においてもそういう憲法に抵蜀いたすことがないとも限らんと存ずるのであります。先程委員の方が言われましたが、この法律で幾多次男以下の人々が、又昔の長子相續と同じような状態になつている、いろいろの困難の問題を惹起させることがあるということを指摘されましたが、その指摘されること自體が、憲法違反の疑があるのではないかという意味に相成るのであります。これが假に一町ならば一町という僅かな資産でございましても、資産の分割はそういう場合にはできないということにいたしまして、これを共有にいたしまして熱心なる兄弟の協力によりまするところの農家經營ということも考えられるのであります。
 要するにごの遺産の分割を適當に法律によつて規正をいたし、家事裁判所というようなところに、當事者の協議ができませんでしたならば、適當に練達な人々の意見を入れまして、家事裁判所あたりで解決をいたすというようなことにいたしましたならば、その特別相續分というような特殊な制度を挿入しないでも、適當に解決できるのではないか。殊に造言というようなことは日本ではあまり行われていない。かようなことを申されるのであります。今まで家督相續ということであまり遺言というものが必要がなかつだから行われなかつたのでありますけれども、均分相續というような原則になつて參りますると、いろいろな場合が起きますので、これは造言ということはどうしても考えなければいかんことでありまして、これからは遺言というものが自然と行われるようになる。穗積重遠博士の御説によりますと、これは遺言というものは毎年一月一日に常に書いて置くべきものである。毎年書き替えるべきものだというようなことを仰せられておるのでありまして、遺言が從来行われなかつたから、どういう法律制度になりましても、個人の意思というものを尊重いたし、それによつてすべてを自主的に解決いたして行こうという法律制度になりましても、遺言というのもが適切に行われないだろうという前提で、いろいろものをお考えになるということはあまり適切ではないかと私は存ずるのであります。
 いずれにいたしましても、本法が特に今の特別相續分という點が憲法の第二十四條に違反するのではないかという疑があるのでございまして、その點についての御見解を煩はしたいと思います。
#39
○政府委員(山添利作君) 憲法の個人の尊嚴、又兩性の本質的平等という見地から流れ出ますところの均分相續制、これに對して農業經營上の安定を期する意味からする特例、この調和を圖りまして起案いたしましたのがこの相續に關する特例でありまして、憲法に反するや否やということにつきましては、これは憲法に反するものでないという見解を持つております。と申しますのは、これは先ず第一にかようなことが必要であるということは繰り返して申上げる必要もないと思いまするが、繰り返して申しますれば、日本の農業の戸數はもう六十年にも亙つて凡そ五百萬戸から六百萬戸、農地の面積も同様でありまして、平均面積耕作は一町歩に満たない。これは古い農業國といたしまして、行き著くべきところに行き著いておる。即ち日本の状況におきましては、經濟上ともかく最小限度のところまで、何と申しまするか、農業經營が分れておると、こういう状況でありまして、これが均分相續ということのために、若し機械的に分割をさせるということでありますれば、ますます農業の生産力を下げますと同時に、又個人の生活をも窮乏に導く原因となるわけでありまして、國家的な見地から申しましても、これは當然そういう事態を防止すべきものであると考えるのであります。併しながらこの日本の農業經營状況から見まして、これ以上の分割を防止しなければならんということが分つたとしても、然らばこの法律によりましてすべての分割を禁止するかというと、それはそうではないのでありおして、この法律で取扱つておりますのは、相續ということによつて當然に機械的に分割されることを防いでおるのでありまして、生前における贈與、今までの言葉で言えば分家であります。そういうことを禁止するものでもございません。又一應遺産の相續が濟んだあとで、兄弟が又贈與の形において農地を分ける。こういうことも禁止いたしておるのではございません。それらのことは固より社會的な事情の變動によりまして、農地の所有權の變動があり、又個人の家庭について見れば、その經營面積の増減というものがあるわけでありまして、これは農地委員會の制度による適當なる規正を加えるほかは、ともかくそういう社會的な理由に基いて變動があるということは認めておるのであります。ただそれ以外の相續によつて當然機械的に細分化されるということを、これは防いでおるのであります。尚又特別相續分を認めますにつきましても、ひとり物として細分化されるのみならず、特別相續分の制度を認めないといたしますれば、結局農業經營に大きなる負擔を負わせる。絶えず小作農の状態から出發して又營々二十数年かかつて、假に申せば……、そうして自作農の形になる。又そこで相續が行われれば、又小作農と同じような状況に還る。かようなことは農業經營の上に不安定でもあり、又農業經營の發展も期せられないのでありますので、さような過當な負擔を負わせない。こういう趣旨から特別相續分を認めておるわけであります。然らばその程度は如何というのでございますが、これにつきましては申すまでもなく民法におきましても遺留分を侵さないという範圍におきましての遺贈というような特別の處分乃至は相續分の變更ということも認めておるわけでありますので、その民法が認めておるところの遺留分を侵さない範圍、即ち二分の一の範圍において特別相續分を認める、こういうことにいたしてあるわけであります。尚又この法律は一應遺言等がない場合のその補充と申しますか。全般の規範としての方でありまして、遺言の自由等は固よりこれを尊重し、遺言等がありますれば、それに從う。こういうことになつておるのでありまして、その遺言の自由をもこの法律によつて強制をするというふうにはいたしておらないのであります。固よりこの均分相續ということが、あまりに例外なしに絶對的な要件かということであれば、只今のように、一方から見ればそういう遺言の自由ということで變更もあるというような工合で、これはそういう民法の精神に即しつつこの農業經營の安定を圖る。そのために農業資産の細分化を防止するという措置のためにとられたものでありまして、決して憲法の精神に反していない。又差支ない場合においては、何ら遣言の自由等の原則はこれを制限いたしておらないのであります。
#40
○松井道夫君 只今御答辨がありまして、尤もの節も了解できるのであります。併し私は憲法に違反する疑のあるような事案であるからして、念には念を入れて考えなければならんのではないか。こういう法律制度を作るにおきまして、これに代わるべき制度があれば、そういう憲法違反といつたような疑を起こさないような制度をとつたらいいのではないか。そういう制度を發見するために全力を盡さなければならんのではないかという意味で質問しておるのであります。それで成る程農地が細分される。それを防ぎまして、或る程度の農地を分割させないで、一人の者に經營させるどいうことは、その經營しておりまするその個人から言えば、成る程結構でございましよう。併しながらそのこと自體が國家の全生産、全農業生産を増加させるという結論には勿論直ちにはならないのでありまして、これを以て二人で共有させまして、その二人で同じ資格において經營させる。多角經營でありまするとか、作業の協同化でありまするとか、そう言つた在來の純個人主義的の經營方法が行詰りになりまして、只今申上げたような多角化、協同化と言つた方向が、これが今後の日本の農業生産の唯一の活きる道であるということは、これは識者の夙に指摘しておるところであります。これをこの特別法によりまして、一個人を保存いたしまして、他の者をすべて無資産者といたしまして、都會なら都會に追う。都曾の失業問題の禍中に投ずるということが、農業生産の日本の全體の額から言いまして、決してこれが増産になるというわけでないのみならず、又個人の尊嚴を傷つけまして、非常に困つた人達、非常に窮境に陷る人達を澤山作るというような結果になるのではないか。これをむしろ農村に共同相續の形で置く、分割を或程度の規正を加えて分割しないで置く、場合によつてはこれを分割できるようにして一町五段づつ經營できるようにする。そういう状態におきまして、その間に作業の協同化、或いは多角經營といつたような方向に進む機縁を作るということも一つの立派な方法ではないかと、私はさように考えるのであります。私は勿論その方法がよろしいのであつて、この法律ではいけないという結論に達したわけではありません。憲法違反であるという結論に達したのでは決してないのであります。ただそういう立場から、憲法はこれは我我が非常な血を流しまして獲得いたしたものであります。この大戰爭を經過いたしまして、我々に與えられました普遍の原理、人類普遍の原理に基いて、そこに我々の向うべき指標として與へられたものであるから、この憲法の精神を苟くも破るような虞のあることをしてはならないという考から、私はこの法案を檢討いたしまする意味で、熱心に檢討いたします意味においてそのことを考えておるのであります。只今遺言の自由を侵すものではないということを言われたのでありまするが、私はこんな意味で質問したわけではございません。午前中の續きでございまして遺言に任しておつたのでは、なかなか今までのおやじさん達はあまり遺言をやらんようだから、うまくいかんだろうという政府委員の御答辯がありましたから、遺言というものは、これからはそう輕く考えてはならない、新しい制度になつてからは、遺言の大事なことはよく分つて、適切な遺言をやる人は多くなるだろう、だから被相續人の考というものに、相當信頼をしてもよいのじやないかということを申上げる意味で申上げたのであります。これはまあ枝葉のことでございまするから、いずれにいたしましても、さような關係でございまして、政府委員の御答辯を伺いましても、これがこの日本の農業生産を増加して、農村問題を解決する上において、非常に有力なものであるという結論にも私としては至りませんし、この點には尚疑を存しまして、後日に質問をすることを留保いたして置きます。
#41
○政府委員(山添利作君) ちよつと一言、お答という意味でもございませんが申上げて置きたいことがございます。この農業資産相續特例法と言いますのは、これは專ら消極的な、いわば或種の影響を防除しようという消極的な策に過ぎないのであります。本質的な問題としては、法律というよりも國全體の經済の囘復發展、勿論それは農業部面においても努めなければならず、又殊に開拓農村工業というような事柄、併し最も多くの事柄は、結局貿易を對象としての工業を起す國民の就業問題、こういうことに外ならないのでありまして、そういうことができません限りは、この農村における人口壓力、その事柄が、如何なる法律がありましても、又いろいろな支障を起す。こういうことには變りはないのであります。その事柄はもとより應急的なことというよりも、恒久的な對策といたしまして、あらゆる方面に努力をいたすことは當然でございますが、そういう見地とは一應離れての今の均分相續ということの起すところの直接の影響について、こういう制度を立てた。こういう意味合でございす。と同時に、又農業經營の形態として、兄弟等が共同して相續をする。そうして共同經營を行なつて行く。こういう形が考えられるのじやないか。こういう御意見に對しまして、成る程協同乃至多角化ということは、日本の農業が進むべき道でございますけれども、これは現在持つておりますところの日本の農業の土地の面積、一戸當り、現在では日本の内地におきますれば九段を切つているというような状況におけるその土地を基礎にして、この家族が生活をして行く、こういうことは考えることが困難でありまして、協同と申しましても、これは獨立の農家が集まつて部分的に協同をする。もとより開墾地等におきまして、大きな完全な協同が行われるということはあり得ることであり、試驗的にやつて見たらいいと考えておりまするが、原則論としてのこの一般の農村における農業としては、今の耕地面積の上に、如何に協同、多魚化しましても、それは困難なことである、こういう認識の上に立つているわけであります。
#42
○委員長(伊藤修君) 松村君。
#43
○松村眞一郎君 いろいろ御説明によつて御趣旨は分りました。併し憲法の均分の精神に反しておるということは明瞭であります。只今遺留分のことを言われたのであります、遺留分は、農業資産の相續人の方の場合の議論である。私共が均分に反するというのは共同相續人の相續分が二分の一になることがいけない。こういう議論なんです。あなたの方の遺留分の議論は、それは正しい。しかしそれは繼承者のことを、あなたは言つておられる。そうでない。他の兄弟達が、民法で決めてあるところの相續分というものをこの第十條の第一項の規定ではそれを半分にしてしまうということは、それはいけない。これは憲法違反である。私は明瞭に申します。憲法違反であるのです。このままでは。それから第一條を政府は自ら書きながら、自分ではこの條文を理解していない。これはどういうことを書いてあるかと申しますと、自分で書きながら自分で分つていない。何故かというとこの法律の精神は農業經營の安定にある。決してその財産の、財産そのものの問題じやない。これは財産というものを形というものと、實質というものに區別して考えないから、そういう間違いを起すのです。この農業經營に非常に必要なことは、纏まつた財産が形の上で分割されちや困るということです。それを保持しさえすればいいのであつて、内容の權利が共有であることはちつとも差支ない。ところがその實質の分割までもここで惧れておる。實質の分割は一向差支ない。土地の一段歩というのは經營單位であるならば、それを農業資産の繼承人が自分で以て經營すればそれでよろしい。その中の權利は、權利分はそれは共有であつて一向差支ない。この法律の趣旨は農業經營のために支障を起さないということが精神であつて、その中の權利の内容が共有的になつておるということはちつとも差支ない。ところがその權利の共有というものを許せば、同時に農業經營の形の方も分割されるのであるという誤解の下に今説明されておる。これは原案者が自分で誤解しておる。そういうことじやない。農業資産相續特例法、これは勿論政府が提案しておりますけれども、我々がこれは立法するのでありますから、我々はそういう意味において立法するのじやない。日本の農業經營の安定を圍るためにどうすればよいかということを言えば、それは個々に分けてしまつては困る。この別表にありますごとくに、いろいろな道具があります。この道具のようなものをいちいち兄貴が石油エンジンを持つ、弟が馬を持つ。これは困る。だから兄貴が石油エンジンも……兄貴が若し農業を經營すればですね。石油エンジンも馬も、何もかも持つていなさい。こういうことなんです。權利の内容は誰だつて一向差支ない。弟が馬の所有主であつても一向差支ない。併しながらそうなりますと、所有と經營とはここに問題が……形の上では一緒にならんといけませんから、そこで形の上の權利は、やはりその相續人たる兄になければいかん。經營者に……。併しながら馬の代金は代金として拂えばいい。それが第十五條に書いてある。法律はよく書いてあるが、その精神が……經營というものと、物の實質というものとを、自分で混同してしまつて、これを自分で書きながら、錯誤の下に進んでおりますから、第十條のごとき、共同相續人の相續分は二分の一にするというようなことが書いてある。これは大變な間違いです。私の言うことが御了解になればこれが憲法違反であるということがすつかり分ります。私は疑いません。これは憲法違反なんです。そこをお考になつていないと思いますから、その形態の統一化というものと、實質の統一化というものとを混同しておるのじやないかということをはつきり認められるがいいと思う。よくお分りだろうと思います農業の一經營者が自分でやりさえすればいいのであつて、だからそこに第十五條にある、代金を拂えばいい。そういうことがちやんと書いてあることを自分でも分らんで説明しておる。分らんで説明してもよろしい。我々が立法するのですから。我々はそういう意味において解釋をするということをここに申上げておきます。
#44
○政府委員(山添利作君) 松村委員がそういうお説を持つておいでになることにつきましては、この前の議會におきまして御説を承つたことがありまして、よく知つております。併しながら私の考は違つておりまして、問題を誤解しておるのではございません。成る程そういう物を物自體として分けなければ、内容はどうでもいいじやないかというお話でありますが、話でありますれば、結局そういうことでございますれば、これは長い間には結局その所有と物の形の一致する運動、運動というと大袈裟でありますが、そういうことにしたいということになるのは當然でありますし、又そうしなければなりますまい。その場合に如何に地の共同相續人に金を拂うかということを問題にしておるのでありまして、若しこの特別相積分というような保護制度を認めませんければ、農業を承繼する人の負擔が重過ぎる。その事柄はその人にとつて惡いのみならず、農業經營の發展の上に有害である。こういう考であります。
#45
○松村眞一郎君 それが誤りの因だとこういうのです。(笑聲)それは自分で力がないのに、農業經營をやつたつて、その人はどうせ脱落してしまう。そういうことを考えておるのではないのであつて、經營する者はその經營の中から、それが經済單位ですから、それから生み出して分けなさいというのです。どうしても配分になるのは仕方がない。人口が殖えればおのずから皆配分になります。そういう議論をなさるならば、人口が殖えるに從つて皆が乞食になるという議論と同じです。そこを段々能率を上げて、農業における工業化ということもできて參りましよう。經營者が努力すれば、後で利害を分配すればいい。だから經營と實質の分配ということを混同しておるから、そういうことになる。併し私の言うことはよく分つているというのでありますから、そうすれば意見の相違ですから、議論する必要はない。併しああいう御答辯では、あまり分つていないようです。(笑聲)
#46
○齋武雄君 先程政府委員の、説明には、民法と家事審判法ができますならば、これは改正をするのである。こういう御話でありましたが、現在においては裁判所というものは、どこを指すのであるか。改正された場合においては、家事審判所が管轄權のあることは疑いないでしようが、改正されるまでの間、現在においてどの裁判所が管轄權を有するのであるか。簡易裁判所であるか。昨方裁判所であるか。高等裁判所であるか分らないのであります。その點をはつきりさせて頂きたい。いま一點はこれは急速に作らなければならぬというので出したのであると、こういうお話でありますが、大體憲法施行後、今日まで何ヶ月になりましようか。それまでそのままでおつたのでありますから、後は民法ができ、家事審判法ができるには、一ヶ月か幾らかであるのであります。今までそのままにして置いたのであるから、十二月一日の通常議會に提案し、それまで民法と睨み合せ、或いは憲法違反の疑あり、強く言えば憲法違反であるという議論もあるのでありますから、私の考としては、相續法と家事審判法との關連をよく考えて、更に檢討して、通常國會に出すのが適當でないかと考えるのでありますが、その點についての御意見をお伺いいたします。
#47
○政府委員(山添利作君) 裁判所のどの裁判所が所轄するかということにつきましては、第十七條に書いてありまして、相續開始地の地方裁判所ということを書いてあります。尚今日まで、憲法が五月三日に施行になりましてから長い間放つて置いて、そうして間もなく新しく民法ができるのになぜそれを待たないかということでございますが、これはできるだけ急ぐことがいいことは勿論で、必要があることは申すまでもないのでありまして、本來から言えば、新憲法の施行又新憲法と共に施行せられましたところの應急措置法、あれと同時に施行をすべきものであります。そのために政府といたしましては、最善の努力をいたしたのでありますが、これは別の關係方面との事情によつて遅れたのでありまして、一日も早くこの法案を施行したいというのが考でございます。而して新しい民法等ができますれば、この内容には何ら……それに變りましても、條文の引直しをする。番號の引直しをするという程度でいいと思いますから、その點は次の議會には又改正をする。こういう手續をとりたいと思つておるのでありまして、やはり本来この法案は、私共の考によれば民法の應急措置法の實施と同時に施行すべき性質のものでありますので、極力急いで制定をするように取運びをお願いしたい。かように、考えておるのであります。
#48
○委員長(伊藤修君) 質疑はこの程度で一時終結して置きまして、本案につきまするところの取扱につきましてお諮りいたしたいと思います。只今質疑應答の結果によりまして、本案が日本の農業企業に對するところの結果について重大な影響を持つという意味からいたしまして、又法案の建前その他につきましていろいろな疑義もある次第でありますから、これを小委員會に移しまして、小委員會におきまして十分詳細に御檢討願うという方法にいたしたいと思いますが、如何でございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○委員長(伊藤修君) では御異議がないものと認めます。就きましては小委員會は句法委員會から五名と農林委員會から五名を以て組織して頂きまして、その十名の小委員におきまして小委員長の互選をお願いいたしまして、これが運行を圖つて參つたら如何なものかと存じまするが、御異議はないでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○委員長(伊藤修君) では御異議ないものと認めます。就きましてはその小委員の選任方法でありますが、委員長にお任せを願えますでしようか。如何でしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○委員長(伊藤修君) 委員長において指名いたします。松井道夫君、大野幸一君、奧主一郎君、松村眞一郎君、門田定藏君、北村一男君、竹中七郎君、石川準吉君、藤野繁雄君、阿竹齋次郎君、以上十名以ちまして、連合小委員會を設けることにいたします。尚小委員會は成るべく農林の本委員會及び司法の本委員會の議事に差支のないように一つ御開きを願いまして、御進行を願いたいと存じます。では本日はこれを以て散會いたします。
   午後二時四十分散會
 出席者は左の通り。
  司法委員
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鈴木 安孝君
           松井 道夫君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           奧 主一郎君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           山下 義信君
           阿竹齋次郎君
           西田 天香君
  農林委員
   委員長     楠見 義男君
   理事
           森田 豊壽君
   委員
           門田 定藏君
           羽生 三七君
           北村 一男君
           西山 龜七君
           平沼彌太郎君
           岩木 哲夫君
           木檜三四郎君
           竹中 七郎君
           石川 準吉君
           河井 彌八君
           島村 軍次君
           徳川 宗敬君
           藤野 繁雄君
           山崎  恒君
           廣瀬與兵衞君
  政府委員
   農林政務次官  井上 良次君
   農林事務官
   (農政局長)  山添 利作君
ソース: 国立国会図書館
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