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1947/08/08 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 決算・労働連合委員会 第1号
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1947/08/08 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 決算・労働連合委員会 第1号

#1
第001回国会 決算・労働連合委員会 第1号
  決算委員
   委員長     下條 康麿君
   理事      太田 敏兄君
   理事      西山 龜七君
   理事      山下 義信君
           岩崎正三郎君
           田中 利勝君
           吉川末次郎君
           今泉 政喜君
           北村 一男君
           中川 幸平君
           田方  進君
           竹中 七郎君
           谷口弥三郎君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           小川 友三君
           小野  哲君
           駒井 藤平君
           鈴木 憲一君
           伊達源一郎君
           帆足  計君
           山崎  恒君
           西園寺公一君
           千田  正君
           西田 天香君
  勞働委員
   委員長     原  虎一君
   理事      堀  末治君
   理事      小川 久義君
   理事      栗山 良夫君
           赤松 常子君
           天田 勝正君
           千葉  信君
           山田 節男君
           荒井 八郎君
           木下 盛雄君
           平岡 市三君
           植竹 春彦君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           奥 むめお君
           川上 嘉市君
           竹下 豐次君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           藤井 丙午君
           穗積眞六郎君
           松井 道夫君
           中野 重治君
           岩間 正男君
――――――――――――――――
  付託事件
○勞働省設置法案(内閣提出)
――――――――――――――――
昭和二十二年八月八日(金曜日)
   午後一時三十三分開會
――――――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○勞働省設置法案
  ―――――――――――――
   〔決算委員長下條康麿君委員長
となる〕
#2
○委員長(下條康麿君) それでは決算勞働連合委員會を開きます。昨日小野委員から御質疑になりました勞働省設置法第三條第二項につきまして法制局次長から答辧を願います。
#3
○政府委員(井手成三君) 昨日小野委員からの御質問に對しまして、法制局長官が御説明するはずでございましたが、外にどうしても缺けることのできない用事がございますので、次長である私から代つてお答えすることを許して頂きたいと思います。第三條二項についての御質問の趣旨を、列席の政府委員から承りましたので、それによりましてお答え申上げます。もし何か足らんようなこと、或いは喰い違いがございますれば、更に御要求によりましてお答えさして頂きたいと思います。
 この三條二項でございますが、大體この勞働省設置法案の骨子は第二條にあると私共考えております。即ち大臣の分擔する權限ははつきり法律で書く必要がある。これは憲法の第七十四條を御覧下さいましても「法律及び政令には、すべて主任の國務大臣が署名し」云々というような言葉がございまして、行政權を主任の大臣が分けているというようなことを憲法に書いてあります。そういう意味で大臣の權限分配の根本、これはどうしても法律で書く必要があると存じております。この二條が骨子でございまして、この根本が決まりますれば、あとはどういう程度のものを法律で書くか、どういうものは政令で委任するかということは、その省或いはその作ろうとする行政機關のそれぞれの性質に應じて、適當な判断で作つて行く方がよいのだろうと考えます。即ち極端に法律論を言いますと、憲法によりまして行政權は内閣に歸属しております。今主任大臣として法律で分配されました權根をいかにして實施して行くか、その實施をするのにどういうような機構でやつたらよいか、どういう骨組でやつたらよいかということは、むしろ行政權の主體として、國會の責任をもつている政府の自立に任して行つてよいくらいではないかということが、法理論として言えるのじやないかと思うのでありますが、これは法理論でありまして、實際問題といたしましては、この役所はどういうような骨組でやつて行くかという大きな枠は、法律で書いた方がよかろうというので、今囘の勞働省設置法は、三條から九條まで、その中に局、官房の名稱、並びに所掌事項を書いた次第であります。これはあくまでこれが適當である、これが便宜であるというところから出たのでありまして、ここに四條なり五條なりに細かいことが書いてあつて、これは實際の必要に應じてどうも適當でない、或いは又、この外に多少の部局を作るという必要があるときに、次の國會の開會を得たなければできないということは、便宜をはかろうとして却つて不便になるというような點から考えまして、大きな枠、大筋はこうして決めておくけれども、それの多少の變更は、實情に應じまして、政府部内の決定でできるところの政令で任して行こう、それが一番實効を擧げる所以であろう、こういう考えから三條二項を作つておる次第であります。併しこれは第二條の勞働大臣の持つておる權限内の問題でありまして、勞働大臣が持つておらんような事項をやるような部局を設けるとか、或いは勞働大臣が持つておる事項を、どこでもやる部局が全然なくなつてしまうというようなことはできないことであつて、あくまでも二條の枠内の單なる實施の問題でありますから、新設の勞働省に當りましては、こういうような大きな枠は法律で示して貰いたい、あとの細かいところは貫際の便宜に應じさせて頂きたい、こう考えた次第でございます。
#4
○小野哲君 只今井手次長から、私の質問に對する第二條、第三條の解釋竝びに立法の御趣旨を拝聽したのでありますが、第二條が憲法の第七十四條に基く大臣の權根の分擔と申しますか、内容を示されておるということは十分理解できるのであります。又第三條乃至第九條が、その大臣の權限の内容を表現すると申しますか、具體的にこれを現わすための部局をここに列擧されておるということも了解するのであります。ただ私の疑問といたしますことは、勿論國會の召集を俟つまでもなく、政府の責任において、又行政權の歸属が政府にある限り、内閣にある限りは、その範圍内において、特に勞働大臣に與えられました第二條の權限の範圍内において、部局を設置されるということはこれは考え得る點であります。ただ私が一應今疑問としておる點は、この第三條の第二項の中で、前項の部局の外に部局を設けるということに關聯して、又これに基きまして、假に第三條の第一項に掲げられておるところの部局を或いは分離したり、或いは新設をする権限の範圍内において新設をするというふうなことがありました場合においては、やはり法律に第三條乃至第九條に細かく規定されます限りにおきましては、法律の内容を變更することになるのではないか、従つて自由に且つ無制限に政令の定めるところによつて、部局の増設或いは分離というふうなことを行うことが、少し行き過ぎではないかというふうな感じがいたすのであります。これは一應の研究に基く法律的な見解でありますが、同時に又、この條文を見ました場合において、どういうふうな感じを受けるかということを申しますというと、一應法律で以て勞働省設置に關する問題が取上げられておるが、その後においては、政府が自由に無制限に、と申しますと語弊がありますが、部局の設置ができるのだ、こういうふうな印象を持たれ易い慮れがあるのではないか。こういう點につきましては、先例にもなります關係上、十分なる検討を加えて行くことが必要であるし、又今後の取扱いにつきましても、解釋をはつきりといたして置くことが、運用上から申しましても必要なことではないか、かように考えるのであります。
 これらの點を綜合いたしますと、先程御説明がありました第二條の點、竝びに第三條乃至第九條の事柄の性質につきましては、了承するのでありますけれども、尚第三條第二項の取扱い方につきましては、先例となる關係もありますので、十分愼重な檢討を加える必要がある、と申しますのは、國會との關係におきまして、この第三條第二項、特に前項の部局の外に部局を設け、この點につきましては、十分なる検討を加える必要があるのではないか、かように私は考えるのであります。從いまして、勞働省設置自體につきましては、私がここでとかくの意見を申述べるわけでありませんので、今後の設置後の運用の問題、竝びにここに掲げられた各條項、特に第三條第二項の解釋及び國會との関係において、これをどういうふうに措置することが必要であるかということについての檢討を加へ、若し更に國會との関係において、一層圓滑なる運営、運用ができるとするならば、この點について研究の必要があるのではなかろうか。こういう點について私十分ではありませんが、研究いたしておりますために、御質問申上げたのでありますが、この點につきまして、第三條第二項の、今申上げました國會との関聯において、政府においてはいかなる見解をお持ちになつておるか、この點を伺いたいと思います。
#5
○政府委員(井手成三君) 重ねて小野さんからお尋ねを受けたのでございますが、固より法律で決まつておりまする事項を、政令で變更したり廢止したりすることはできないのでございます。從つて第三條第二項という法律を明定いたしまして、この法律の委任を受けて、この法律の權威の下に、政令が事實に應じて多少の變更を加えるということを規定しておる次第でございます。さてそれじや、これで何でもできるのかということになりまするが、「必要があるときは」と、どうも決まり文句見たいに、「必要があるときは」ということが法令に出ていますが、勿論こういうはつきりとした法律で局が決まつておる、その所掌が決まつておるに拘わらず、直さなければならないというのは、非常なる必要に迫られなければならないのでありまして、その點はこの言葉によつて抑え付けてある點でございます。さてこの局その他について變更するということは、少くともこの條文では減らすことはできない、これだけの局は置いて置く、その外に設ける、或いはその局の所掌を多少は變更できる、あつちから入れたり、こつちから入れたりすることができる、これも只今申しました法律の委任に基いてできるのでありまして、政令が獨自にやるわけではありませんが、多少の權限のやり繰りをやる、それから部局をこの外に設けるということだけであります。局を減らしてしまうということはできないのでありまして、さてそれではどんどん部局を設けることができるかと申しますと、豫算その他の法則もございます。更に法律が、こうしてはつきりと勞働省は大體こういう法律で行けということを規定しております以上は、これを根本的に直してしまいますことは、勿論この法の第三條の二項の趣旨ではないし、そういう政令は政府部局としては倒底今後やる見込もないし、やる積りでありませんが、ただ臨時に非常に大きな失業問題が起つたとか、非常に大きな調査研究が必要になつて來たというようなときに、多少それを外の部局からピツクアツプして行きまして、臨時的に部局を設けるとか、そういうようなことが多分豫相されるであらうと私は考えておる次第であります。
#6
○小野哲君 今、井手次長からのお話は、先程の御説明の更に補足的な御説明として承り、且つ一層具體的な御説明で結構だと思うのでありますが、私の聽いております點は、ただ法律の委任による政令によつて變更ができる、言い換えれば、この政令は執行命令の性質を持つておる、又その限度においては法規命令たる性質を持つておるんではないか、こういうふうに考えられるのであります。併し一應國會の議決を經てでき上つたこの法律に關係のある事項でありますので、而も勞働省の設置の問題は、政治的に見ましても、今後相當重要な事柄ではないかというふうにも考えられますので、國會自體としても、今後の運用の點につきましては、相當重大な關心を寄せることは當然であろうと思うのであります。從いまして、假に部局を設置いたします場合におきましても、この法律の解釋上は當然の權限によることにはなりましても、やはりそこに政治的に考慮、或いはこの法律の運用、或いは勞働省自體の點に關する關心の度合の強いというふうな點から考えまして、國會に對して何らかの關聯を持つ方法を考究する必要があるのではないか、必ずしも一々國會を召集しましてこれを議決するというふうなことは、只今御説明になりましたような解釋上から申しまして、必要ではないかと存じまするけれども、少くとも何が國會に對してその結果についての承諾を求めるとか、或いは何らかの方法によつて關聯を持たしめるという措置が私は必要ではないか、かように考えるのであります。もつと端的に申しますと、この法律を國會が取上げまして、議決いたしました以後は、一種のトンネル的な結果になつて、素通りをしてしまう、あとはどうなるか分らんというふうなことでは、困るのではないかという懸念を持つものでありますので、國會との關係について、この第三條第二項の部局を設けるというふうな場合において、政府當局としては何らかの考慮を拂われるお考を持つておられるかどうかという點を、お伺いたしたいと思うのであります。
#7
○國務大臣(米窪滿亮君) この第三條の二項についての法律的な解釋は、只今井手次長から申上げた通りであります。
 これについて、行政的な運營に封する思いやりというのですか、心やりというのですか、そういうことが小野さんからお話がありまして、これは國會が英國のようにずつと一年中開かれておれば、これは割合に現實論として政令で決めることもよろしいということも考えられるのでありまするが、その面から見れば……。併し日本のように、ともかくも、國會はちやんと定期的に開かれるのは決まつておつて、そうして急を要するときに國會に一々掛けられない場合を考慮して、政令で決める、但しそれはあくまでも二條の枠の中における大臣の權限内において、部局を分けるとか、或いは新らたに設けるとかいうことの權限が與えられておるのだと、私は考えておるのでありまして、その場合においては、私は法制的には十分な解釋は申上げられませんが、適當なる方法によつて、これを國會の然るべき委員會に報告して、そうして事後の御承認を求めるというような手續を取りたいと思つております。豫相されることは、この二條の枠の中における部局の變更でございまして、例えば失業對策が非常に重大化したときに、職業安定局を直ちに分けて、失業對策局というものを設けなければならないような段階になり、又婦人少年局というものを、更に先日も本院或いは衆議院において質問があつたように、婦人問題が非常に重大化して、これは少年局と一緒にできない、新らたに婦人局を設けなければならないというようなときに、これを分離しなければならない、そういうような含みを以てこういう政令を決めたのであります。この政令の取扱いについては、十分に小野委員の御趣旨を尊重して、完璧を期して参りたいと思います。
#8
○委員長(下條康麿君) ちよつと皆さんにお諮りいたしたいと思いますが、今の小野委員の御質問は昨日の續きであつたので便宜上許したのですが、先ず連合委員會では、最初に政府に對して質疑をいたしたらばいかがかと思いますが、丁度齋藤國務大臣がお見えになつておりますので、二時までしか時間がないということですから、若しそういうことで、最初に御質疑をなさるなら、先ず齋藤大臣に對して御質疑なさつたらどうかと思います。
#9
○田方進君 勞働行政の完璧を期する上において、勞働省の設置を必要とするということにつきましては、先般來米窪國務大臣から詳細に御説明に相成つたのであります。又夙に識者間に提唱されておるのでありますが、現在の荒廃した國情からいたしまして、これだけの行政のために一省を設けることが果して當を得ておるかどうか、又そういたしましても國力として国民がこの負擔に耐え得るかどうか、あらゆる角度、觀點から愼重に檢討せんければならん、我々決算委員會としては誠に責任の重大なるを感ずるのであります。さようにいたしまして、大體論を簡單に一、二お尋ね申上げたいと存ずるのであります。
 現内閣、殊に栗猶大藏大臣は常に健全財政を唱えられておるのでありまして、いかに國債を濫費しても、租税増徴、苛斂誅求をするところにおいて健全財政は成立つではありましようが、國民は日々に疲弊困應とすることは當然であるのであります。政府は先に内務省を廢止の聲明をされました。これは官僚の根源であるという點のみならず、大々的な行政整理の一歩を踏出されるものであるという見地から、我々は非常な關心を持つたのであります。この内務省の廢止が實現するかしないかの今日、この一省を設けられるということは、どうあつても行政整理を大大的にやらなければならんという現状において矛盾をしやせんかという點をお尋ね申上げるのであります。
 次は、本年の七月に勞働基準局を各府縣に設けられたのであります。政府は行政の大幅地方委讓を聲明されましたが、知事公選の今日、當然のことと存ずるのでありまするが、一面出先機關を續々と殖やしておられます。從來は、大藏省關係の專賣局或いは財務監督局とかいうように、現場を監督する所は當然必要でありましようが、その後商工省は地方商工局、これは各府縣に出張所を設けております。又農林省は農地局かようなものは果して縣に委任をできんものであるかどうか、これらを考えて、地方でもいろいろとやかましく言つておるのであります。この勞働行政につきましては、從來の勤勞署は全國に通常に配置されておるのでありまして、この外に又何々局というようなものが果して必要であるかどうか、国民は果して基準局はいかようなことをするものであるか、これすらも知らんのであります。これらはむしろ仕事の性質は違いましようが、やはり勞働行政の一端であらうと思います。御承知のごとく、警察は司法警察、行政警察或いは經濟警察を一つの警察でやつております。勞働行政である以上、今の職業安定所、これを何か名前を變えてでも一元的にやり得ることができんかどうかということを考えるのであります。殊に今日住宅の非常に拂底しておる際、これらを拵えるといたしますると、たちまち建物を見付けなければならん、その下に又勞働監督所というものの設置を急いでおります。併しながらなかなか建物が見付かりません。かような點について、勞働省を設置する前提として、かように分けられたのかどうかということをお尋ね申上げる次第であります。
 又、勞働基準局を設けられたについて、どれ程の豫算を見られたものでありましようか。これはお尋ねすることは外でもありませんが、まだ新設されたかされないうちに、業者に對して多額の寄附を願つておつたのを見たのであります。その人たちの話によりますると、一基準局に十六、七萬圓の豫算しかないのである、どうしても自動車の一臺も要り、又什器なども最少限度を見積つても、何としても百四、五十萬圓は要る、どうあつても百二・三十萬圓寄附して貰いたい、業者はかような局のできることを決して歡迎はいたしておりません。併しながら今後監督を受けるという立場から何とかせんければならんと、いろいろ苦慮しておることを見たのであります。必要である役所を拵えるといたしまするならば、それに必要なる經費は當然國家が支辨すべきであつて、まだできるかできないうちに、業者を集めて寄附を強要する、強要と言つては語弊がありますが、寄附を懇請するということは果してどうであらうかという點から、その豫算をお尋ね申上げる次第であります。(「同感」と呼ぶ者あり)
#10
○國務大臣(齋藤隆夫君) お答えをいたしまする前に、この行政調査部というものにつきまして、一言御了解を願つて置きたいと思います。行政調査部は昨年の十一月に官制ができまして、その後今日に至るまで著々その目的に向つて研究をいたしております。官制にとりまするというと、御承知の通りに総裁が一名、總裁は國務大臣を以てこれに充てる、主幹は法制局長官を以てこれに充てる、その外部が四つに分れまして、その部に、おのおの各省の事務官で極めて精鋭なる人材が部員に集つておりまして、總計で雇員を合せて百名餘りおります。その外學識經験者という者を十数名顧問嘱託いたしておりまして、こういうような機構で、日本の行政機構を根本的に且つ全般的に改革する、併せて公務員制度を改め、並びにその運用について十分民主的に、能率的に、これをば講ずるというような目的を以て發足しておりまして、今日になりまするまで、内外の行政機構を根本的に多種多様に亙つていろいろ研究を遂げておりまするけれども、まだ全部研究も終りませんので、これを具體化して議會の協賛を經るというまでには至つておりません。尤も前の議會におきましても、行政官廳法をば審議を願つたのであります。又先だつて發表いたしました内務省の解體のごときも、行政調査部だけで立案したのではありませんが、この内務省の機構改革につきまして、行政調査部が相當の力を注がれておるのであります。その外最近におきましては、日本の公務員制度を根本的に改正することになりまして、これも相當に案はできておりまするけれども、まだ關係方面との折衝がありまして、この議會に出すまでには至つておりません。これがために特に臨時議會でも開いて頂かねばならんかと思つております。そういう工合でいろいろ研究をいたしておりまするけれども、今度の勞働省の設置につきましては、これはもう前内閣以來、前内閣で決めたことでありまして、殆ど勞働省の設置は既定の事實になつておりまするからして、この問題につきましては、行政調査部は少しも關係しておりません。行政調査部が關係するまでもなく、前内閣の方針として、又それが現内閣に引繼がれて實現することに決まつておりまするからして、我々が今これに向つてかれこれ口出しをすべき筋合でないと思いまして、勞働省設置につきましては、行政調査部が全く關係しておりませんから、この問題に關することは私からお答えをすべきものでないと思つております。大體そういうふうに思つておりますから、御承知願いたいと思います。
#11
○委員長(下條康麿君) 行政整理のことについてはどうですか。
#12
○國務大臣(齋藤隆夫君) 行政整理はできるならば、一つ根本的に強く私やりたいと思つております。併しこれはなかなか實際やつて見まするとですね、日本の行政組織は、御承知の通り、明治以來の傳統の上に設立されまして、傳統を離れて根本的に改めるということはできませんし、それが又必ずしも時代に沿うておるとは思いません。又行政調査部でどんな案を立てましても、なかなか内部關係が複雑になつておりまして、これを實現するには相當の摩擦も起りますし、努力も要るのでありまして、なかなか我々が立案しましてもうまく参りません。私思いますのに、誠に望ましいことではありませんが、どうも日本の大改革は國内だけの力ではいかん、現に大きな問題でございまするが、憲法の改正でも、その外軍國主義の打破とか、立憲政治の確立とかいうようなことも、日本人の力だけではなくて、外國の力によつて漸くできたような有様でありまして、どうも外國の力を借りるということは、誠に残念でありますけれども、今の國内情勢から見ますると、餘程強い力を以てしないと、根本的な改革はできないと思います。今度の國家公務員制度につきましても、これはまだ内容はお話するまでには至つておりませんが、これもやはり關係方面の力を相當に借りなくてはならんと思いますので、こういう問題を、國内の各省とよく調和をとつて、圓滿にやろうというようなことは、なかなか實際むずかしいのでありまして、どういうふうになりますかまだよく分りませんけれども、成るべく民主的に、能率的に、繁文縟禮を避けて、簡單に、國民に迷惑を掛けないように、そうして經費を少くなるように、行政の大整理を一つやつて見たいと思つております。行政の大整理をやりますれば、今の役人などは半分か三分の一で私はよかろうと思いますが、そうするだけの大鉈を振いますにつきましては、やはり國會の非常なカを借りねばなりませんし、同時に或いはその關係方面の力を借りる必要があるかも知れませんけれども、そういう關係にありますから、その點をよくお含みを願つて置きまして、まだどういうような形になつて現れて來まするか、もう少しお待ちを願いたいと思います。
#13
○委員長(下條康麿君) 勞働省設置と行政整理との關係については……。
#14
○國務大臣(齋藤隆夫君) 勞働省を設けることについては、勞働省を設ける必要がありますので、その必要なことは米窪大臣からお話があつた通りであります。行政整理といつたところが、ただそれを減らすということばかりが行政整理でありませんから、減らすべき省、内務省のごときは解體いたしますし、又刻下の状態において新らしく設けなくちやならん必要がありますときにはやはり新らしく設ける、これが行政整理の根本主義であると思います。勞働省が今度新らしく設立せられるにつきましては、それ自體特別な理由がある、或いは米窪大臣からお話があつたと思いますから、私はそこまで口を出す必要はなかろうと思います。御承知を願いたい。
#15
○國務大臣(米窪滿亮君) 田方さんのお尋ねに對して、その前半は齋藤國務大臣からすでにお話の通りであります。一應それについて私の考えを申上げるならば、行政整理に向うべきであるという、その御希望に對して、丁度それと反對なことになるのでございますが、これは時勢が止むを得ざる結果、そういう獨立省がどうしてもできなければ、産業の復興、生産の増強ということが所期の目的を達せられないので、行政整理の方が大切であるか、或いは生産を増強して産業を復興することが現下必要であるかという、このウエイトの相違ということが問題になるのであります。我々は省が一つ殖えて多少行政費が殖えても、やはり刻下の至上命令は、生産を増強して産業を復興しなければならん、それがためには勞働省という獨立省が必要であるということが、政治から見て、その方が効果が擧がるであろう、こういう工合に考えております。近く水産廳というようなものもできるということでございますが、これ又同じような趣旨でないか、こういう工合に考えておるのでございます
 第二の點についてのお尋ねでございますが、この點は地方自治法というものが實施されて、地方の分權が非常に強くなつて來た今日において、地方からのそれに封する相當な意見が出て來ておる現状において、そういう御意見、田方さんのおつしやつたような御意見も御尤もだと思います。ただ勞働基準法というものが實施されたときに、すでにその點が明らかになつておりますが、これは勞働省ができたので初めて勞働省關係の出先官廳が殖えたのではなくて、これはすでに厚生省の時から勞働基準法が實施されて、當然生まるべきものが生まれておるのでありまして、これは勞働省新設とは一應關係がないのであります。これはすでに既定の事實である。そこで、勞働基法を實施するには、どうしても中央から工場なり或いは職場の末端の所まで一貫した監督行政が行われないというと、その効果を舉げることはできないのでありまして、從つてこれは止むを得ないために、どうしてもいわゆる各府縣の方にお任せすることができないという建前にある、この點は勞働基準法を御覧になればよく分ることですが、やはり中央において全國津々浦々に亘つて監督行政を行わなければならんという建前になつておる、止むを得ずそういう廃置に出ておるのでございます。併し勞働省關係のその他の行政、例えば職業の安定、或いは紹介、或いは勞政の面、或いは婦人監督、或いは勞働の統計というようなことについては、私はこれを相當の部門までは、各府縣に行政を委任して差支えないだろうと考えております。この點は成るべく御趣旨に副うようにして参りたいと思うております。
 それから勞働基準局についての豫算でありまするが、詳しい正確な經費をここで申上げることがちよつとできないのでございまするが、大體約八千萬圓と御承知を願いたいと思います。中央及び地方を通じて八千萬圓、これで全國府縣に一ケ所ずつの地方勞働基準局と、その下に約三百幾つかの監督署を運營して行きたいと考えております。勿論これだけでは物價高の今日不足でございまして、若干高の追加豫算を大藏省と折衝中であります。主としてそれは建物に充當する意味において折衝中でありますが、なかなかこの折衝が困難でありますので、取敢へず今日はその場凌ぎのために、極く一掴みの借家賃、借入賃というべきものを各府懸へ渡してありますが、それでは完全な事務所を開くことができないので、或いは若干の府縣においては寄付金というようなものを頼んで、各府縣に御迷惑を及ぼしておる點があるだろうと思いますが、これは至急通達して、そういうことのないように、嚴に取締つて行きたいと考えております。
#16
○委員長(下條康麿君) 齋藤國務大臣が御退席になりますが、この際同大臣に對する御質疑がありましたら、どうぞ。
#17
○山下義信君 先程來からの齋藤國務相の御答辯は、要領を得たようで要領を得ないので、田方委員の質問に對して的確なお答えになつていないように思いますので、私から重ねて伺いたいと思います。
 それは行政調査の御擔任をしていらつしやいます大臣が、こういうふうな機構の増設改廢ということをなさる上において、何か一定の計書、根本的なお考えを持つておいでになるか、綜合的なお考えを持つておいでになるかどうか、ということを、田方君はお尋ねしたのであろうと思う。その行政整理、行政整理という言葉を使つておりますが、私は田方さんの質問の要旨を聞いておりますと、政府におきましては……中川委員でありましたか、中川委員の質問は、整理という言葉を使いましたが、それはただ行政機構を縮めて行く、減少して行くという意味だけではなくして、今日の日本の現状に鑑み、尚又將來を達觀いたしまして、日本の政治の機構というもの、組織というものを、根本的に計畫を政府が十分調査をしておるかどうか、從つて或いは内務省の解體といい、勞働省の新設といい、或いは近く又やろうとする建設院云々というような事柄も、それもぽつりぽつり前後の連絡なしに、或いは關係方面からのいろいろなことがあつて、その都度々々するというのでなしに、それに一貫した方針か何かあるかということを尋ねられておるのであろうと思いますから、その點につきまして、政府はそういうふうな今日の日本の國の全般的な行政組織の改廢について、綜合的な計畫を、調査をなしつつあるかどうか、その一環として勞働省の新設というものを見て來ておるのであるかどうか、ということを尋ねておるのであろうと思いますから、その點はつきりといま一度お答えを願いたい。
 尚關聯いたしまして、私もこれは尋ねたいと思つておつたのでありますが、幸いに小野君から御質疑がありましたので、この點も齋藤國務大臣からお答えを願いたい。これは我々の尊敬をする、かねて國會の權威について、今日まで憲政のために戰い來られましたる、我々の大先輩の齋藤國務大臣から御答辯を願いたい。と申しまするのは、すべて今日まで日本の立法というものが、政府のやり方というものが、法律を出しまして議會の協賛を求めておりますが、大部分は從來のいわゆる勅令というものにこれを委ねまして、細大悉く勅令主義でやつて來ておるということは、いうまでもなく從來の奮憲法が大權中心主義であつたので止むを得ませんが、今囘の新憲法に基きまして、これが運營をやつて行きます上におきまして、大體を法律において立てまして、國會の承認を受けて、あとは大部分政令に委ねるというがごときことは、これは奮憲法の精神によるものである、いわゆる主權在民の新憲法のやり方ではない、止むを得ない小さいことは政令に委ねる場合もあるかも知れませんが、これは殆ど國會の承認を受ける法律によるべきものである、政令主義は廢止しなくちやならんと、こういうふうに私共は考えるのであります。でありますから、今日すべて政令によつて改廢される、或いは物價であるとか、或いは鐵道賃金の引上げというような事柄も、これは實に怪しからんものであると私は考えております。先程から法制局の御答辯を承りますと前後矛盾しております。それは但書の政令によるということは、大體を第二條の、いわゆる勞働大臣の權限で決めてしまつたらば、あとは小さいことであるから、それは政令に任せるのだ、こういうことをおつしやる、部局を設置するのを小さいとは、どういうことをおつしやるか、部局というものは勞働大臣の權限を行なつてゆく内容ではありませんか。その内容が小さい、部局を殖やす殖やさないという中の組織は小さいことであるというごときは私は甚だ了解しにくいのでございます。又そうした方が便利がいいというようなこともおつしやるのでありまして、私は甚だ意を得ない、それを小野君は、これは國會にかけて承認を受くべきものではないか、法律主義によらなければならんものではないか、ということを非常に憂慮しております。國會の權威の上において憂慮しておる、その點についての法制局の確たる見解を求めておるが、それをまだ法制局はおつしやらないのでございます。それを議會が休みが多いからとおつしやる、とんでもないことをおつしやる、議會が休みが多いのは元の議會のことで、今囘の國會は、常會を五ヶ月と憲法は規定しております。一年の殆ど半分は國會開會中でございます。あとのたまたま藪ヶ月が或いは國會の休會の場合もございましよう。然るに國會が休會中改めることがあつたときに、不便であるからということをおつしやる、それならばこの勞働省設置法という法律は、僅か敷ヶ月の國會開會中に早くもすでに一部を改正しなければならんことを豫相する、さような豫想の下にお作りになる内容とするならば、實に粗雑でたらめなものと言わなければならん。少くも一年や一年半はこれでやつて行ける。新らしい局を設ける必要も先ず當分ない、新らしい部を誰ける必要も先ず當分ない、これで以て一年や二年は現状から見てやつて行けるというくらいのお見通しの下に、勞働省設置法律案というものはお作りになつたものでなければならん。僅か數ヶ月議會が休んでおれば、その間に變えなければならんというごときことを豫想せられて便不便をおつしやることは甚だ面白くない。決算委員會において行政機構に關する事項ということがございます。私は行政機構に關する事項というのは、ただ單に大臣の所管事項程度のことを議するのであつて、或いは一省を作るとか作らないかということを議するのであつて、部局という小さいことは關係がないのだということを言わなければならんことになつて参ります。そうではない、部局どころではない、一課を作ることが果して適當であるかないかというところまで、我々の決算委員會の行政機構に關する事項は、掘り下げて行かなければならん仕事であると考えておるのであります。でありますから、この點は明瞭にして頂きたい。幸い齋藤國務相は憲法學者として我々の尊敬する大先輩でありますから、國舎の權威のために、政府というお立場でなくして、大臣も國會議員でありますから、國會においては、必ずこれは法律主義によらなければならんというところの我々の見解に對しまして、どういうふうなお考えになつておられますか、その點明瞭にして頂きたいと思うのであります。
#18
○國務大臣(齋藤隆夫君) 私のお答えが極めて漠然としておりまして、御了解を得なかつたことは誠に恐縮千萬であります。行政機構の改革について一定の方針があるかというような御質問のように承りますが、具體的には方針がございませんが、抽象的には確かに一定の方針を持つております。御承知の通りに、日本の政治機構も新憲法の制定と同時にすつかり變りまして、以前はお話がありましたように大權本位の憲法でありましたが、今度の憲法は全く民主主義の憲法になつておりますので、行政改革もこの民主主義を實行する線に沿うて、そうして新憲法の精神を行政機構の上において實現したいという考えを以て進みつつあるのであります。これを具體化いたしまするとどういう工合になるか、それは今研究の主眼になつておりますが、私共の見るところによりまするというと、これまでのいわゆる官僚主義の弊をばでき得る限り一掃して、どこまでも民主主義の精神を發場するがために、行政機構をば成るべく簡單にし態率的にして、繁文縟禮を省いて國民に迷惑を掛けない、同時に態率を増進し、國費もでき得る限り軽減するというような方針を以てこの具體化に向つて皆勉強しておる次第であります。それからすべて行政改革に限らず、國家の重大な利害に關することは、行政官廳のみで專斷すべきものでなく、國會の決議を經なくちやならんということは、これはもう無條件に同感であります。併しこれをば實現いたしまするその方法といたしましては、或いは法律を以て、或いは政令に委ねることもありますけれども、いかなる場合において政令により、いかなる場合において法律によるかということは大鵬憲法の精神を見計は分ることでございまして、以前は法律によらずして、いわゆる天皇の大權によつて、法律に代るべきところの勅令……罰則でもどしどし勅令若しくは命令を以てやることができましたけれども、今度はそういうことも餘程制限されておりまするからして、許す限りは國會の承認を受くるということは、新憲法の精神に副うところの正當な途であると存じます。併し實際にこれを運用いたしまするにつきましては、どういうようなことになつておるかはよく存じませんが、我々といたしましては、さういうような方針を以て今後といえども進むつもりであります。政府もその考えにおいては別に變つたことはないのであります。只今承りますれば、勞働省の官制につきまして、部局を廢し若しくは新設することが政令に讓つてあるというようなことが問題になつておりますが、どういうことになつておりまするか、私はよく存じませんが、併し法政局次長がお話になりましたように、この運用につきましては、そう大した議會の意向をば無規するようなことがないと思いまするが、それらの點につきましては、私がこの上進んでお答えすべきことではないと思いまするから、この程度で御了承願います。
#19
○太田敏兄君 先程齋藤國務大臣のお説の中で、將來行政改革を徹底的に行い、いわゆる大鉈を振つて繁文縟禮を廢止するならば、現在の役人の人員は二分の一乃至三分の一で済むというような御所見を御發表になりましたが、そういたしますると、今囘の勞働省の機構なり人員の配置には、そういう齋藤國務大臣の言われまするような意思が十分その中に反映し、取入れられまして、組立てられましたものであるかどうか。若しそうじますならば、どういうところにそういう御趣旨が反映して、新味があるかどうかということであります。それとも又從來のような古い傳統的な官僚的な枠でやつた、そうするならば、又行政官聽におきまして再びそれを整理しなければならん時期があるのじやないかということを考えるのであります。齋藤國務大臣の行政改革の意見と、今回の勞働省の機構なり人員配當の関係についてお尋ねいたします。
#20
○國務大臣(齋藤隆夫君) 勞働省の設置につきましては米窪國務大臣が非常に骨折られまして、その組織につきましても、事務の分擔につきましても、從つてこれに必要なる人員につきまししも、成るべく人員を少くして能率を増進し、勞働省設置の目的に副うように骨折つておられるのでありますからして、別に我々が目指すところの行政機構の改革と矛盾するような點は毛頭ないと思つております。
#21
○山下義信君 米窪國務大臣に伺つてよろしうございますか。
#22
○委員長(下條康麿君) どうぞ。
#23
○山下義信君 米窪國務相にお伺いしたいと思います。二三あるのでございますが、只今お話になりました地方末端機構のことでございます。これはかねて衆議院の方でも頻りにお話がありましたようなふうでございまして、私共の考えておりますのは、府縣知事に委讓いたしまするような權限は、その府縣限りにおきまして地方自治に関係のありまするような行政を委讓すべきである。地方産業或いはその他その地方特殊の自治行政に關係のありますることを委讓すべきものであると考えるのでありまして、こういう勞働行政というものは、それは各地方特殊の勞働事情もございましようが、併しながら一貫した勞働基準法というがごとき、勞働憲章によつて、これが行政をやるというような場合には、必ずしも悉く地方に委譲すべき性質のものではなく、假りに今日ありまする勞政事務所、即ち勞働組合或いは勞働委員會の仕事をいたしておりまする勞政事務所の仕事などでも、賃金關係の上におきまして、私は基準局の仕事と密接不可分の関係があるのじやないかと思う。これは今日はどういうふうになつておりますか、むしろ勞政事務所は知事に御委任になつておられることと思うのでありますが、職業安定事務所などとは違いまして、質が違う。職業安定事務所の方の仕事は、その地方のいういろ需給でございますから、これは知事などもよく事情も通じておりますし、關係もございますし、地方民の民生安定に関係がありますからよろしうございますが、行政事務のごときは基準局と密接な關係があります。先程できるだけ末端機構は委讓するとおつしやいましたが、これは意見になつてはいけないのでございますが、むしろ私共はそういう點は反對でありまして、基準局を中心にして勞働行政を一元化して、勞働省の直轄の仕事が、ずつと地方にまで行くべきものでないかというような氣がいたしますので、この點も一度米窪國務相の御見解が承りたいのでございます。
 それから今一つは、勞働行政の上におきまして、大臣の御政策の御一端が伺いたい。今日言うまでもなく、勞働者に要望いたしまする國家再建の期待というものは非常に大でございます。9日の再建の鍵がそこにあると内閣も仰せられておいでになりますが、勞働者の保護を全くいたしまして、基準法によりましてうんと勞働者の保護をいたし、保護條件の水準を社會的に高めて、そうして勞働能率を擧げまして、國家再建を期待して行こうということにつきまして、實にこの勞働行政が私は重大であると思います。それでこそ勞働省の獨立設置の意義もあろうと思いますが、それらに對しまして米窪國務相はどういう具體的な政策をお持ちになつておられますか。例えば勞働者の非常に勤勉努力いたす者に對する表彰法、先般大臣は御族行中に某地におきましてこの點にお觸れに相成りました。いわゆるスタハノフ運動、勞働勲章というようなものを與えたいということが新聞に現われておりました。私はこの新聞記事を讀みましたときに、眞にこれあるかな、よいことをおつしやつた、たとえこれは勲章でなくてもよろしうございます。功利的に勲章で釣るというような意味でなくて、今日國家の安危を擔いまする勞働者の勤勉労力に對しましては、今日も決議がありましたように、非常に感謝をいたして行かなければならん、優遇をいたして行かなければならん、眞面目な勞働者の方々に對しても、國民が尊敬をいたして行かなければならん、そういう面に對しまして、ただ彼等の能率を釣り上げるといつたような、ああいう資本主義的の考え方でなくして、この勤勉なる勞働者を社會的に優遇をいたすという面に關しまして、米窪國務相はどういうような抱負をお持ちになつておりますか伺いたいと思う。又勞働者全般に對しまして、非常蹶起、なかんずく今日の勞働者に對しまして、非常なる決意を以て彼等が立ち上がりますように、米窪國務相は勞働非常宣言というがごとき一大闡明を遊ばしまして、全國の勞働者が立ち上がるというようなことに對して、どういうふうな手をお打ちに相成りますか。そういう勞働行政に對する、勞働政策に對する大臣の高邁なる御見解の一端を伺いたいと思うのであります。
#24
○國務大臣(米窪滿亮君) 山下さんの御質問にお答えいたします。
 第一の點は、仰せの通りで、特に勞働基準法を實施する勞働基準局が、ダイレト・ラインで、中央から地方まで一貫して行かなければならんという御説に對しては、當局もその意向で、各地に勞働基準局、地方勞働基準局竝びに監督署を設けておるのでございます。ただその他の御指摘のあつた勞政局或いは職業安定所等の地方における行政については、地方からはこれを成るべく……例えば、大縣において勞働部のある所はその勞働部に仕事だけは委譲して行く、身分は中央において監督する、或いは勞政方面の事務も、御説の通り勞働基準局と相當深い關聯はあるけれども、やはり勞働部のある縣、或いは勞働部がなければ勞政課のあるような縣においても、同じようにやはり縣ごとの勞政をとつております。中央の出先官憲においてやることは屋上屋を架するのじやないかという意見が地方から出ておるのです。それらの點は非常にこれは重大な問題でございますから、よく地方の聲を聞き、又中央における関係各省との間に協議を重ねて、これを一元的にやるようにする、或いはそれがよいじやないかというような決定をいたしたいと考えております。
 第二の御質問の點は、私の抱負をお聞きになつたのでございまするが、私としては、今日勞働者の地位を確保することが極めて困難である、いわゆる物の面から見て、勞働者の地位を確保し、その給與或いは待遇を改善することが非常に困難である、日本歴史において、曾て今程困難な時期はないというときに、勞働省が生れるのでございまして、非常なる責任の重大性を痛感すると同時に、且つその困難性をみずから感得している次第でございます。從つてこの生産性の昂揚、勞働能率をフルに發揮するということが、経済危機を突破する非常な不可缺の條件であることは仰せの通りでございまするが、然らば勞働者に奮起して貰うその裏づけになるもの、例えて申しまするならば、勞務加配米の確保であるとか、或いは最低生活を保障する程度の賃銀を、支給することができるかというようなことについて考えて見ますると、そこに非常なる困難を發見するのでございまするが、こういうことに對處するために、私が定義をいたしまして、最近勞働關係閣僚の懇談會を閣内に設けまして、そういう問題について關聯する各省との協議を十分にやつて参りたい、取敢えず私としての抱負は、勞働省は、サービス省にして、最も民衆に親しみ易い省にして参りたいということと、勞働省は能率省として最低の人間で最大の効果を擧げて参りたい、これについて具體的のことを申上げたいと思いまするが、まだ事務當局とも十分なる打合せがないので、本日ここで申上げる機會を私は持ちませんが、ともかくも相當新構想を以て臨みたい。その御指摘のスタハノフ運動に對しましては、一九三五年當時のロシヤにおける經濟事情と日本における今日の經濟事情は相當のき音があるので、直ちにあの通りの制度を設けることはどうかと思いまするが、併し私は確信を以つて、何らかの方法を以て、勞働者の能率を擧げるための、勞働者の精神的奮起を促す方法を政策の上に現わさなければいけない、この點は私の信念でございます。ただその方法としては東條軍閥華やかなりしときにやつたような、ああいう弊害に陷らないように、いわゆる個人を表彰する餘りに、東條式なああいう弊害に陷らないように、個人を表彰すると同時に、その人の属しているところの班或いは組等も、いわゆる團體的に表彰して、以て個人間の僻み根性などを起さないような方法を練つて行きたいと思つております。又その表彰の方法についても、徒らに個人の名譽のみを表彰するのではなしに、表彰する場合において、例えば品物で表彰する場合においては、それが直ちに建設的に生産増強に役だつやうな物をやるということが必要じやないか、即ち個人に對しては社會的な名譽を與え、又それの屬しているところの、集團的な意味においては、報奨物資を與えることによりて、更にその職業における生産を増強するということに役立つようにして参りたい、大體そういう工合に考えているのでございます。スタハノフ運動においてはスターリンが勲章を與えたのでありまするが、私は勲章などを與えなくてもよくはないか、ただ何かの徽章なりそういうものを持つておつた者は、これは一つの私の思いつきですが、或いは電車に只乗れる、或いは汽車に只乗れる、或いは映畫を只見られる、そういうようにすることも一つの方法じやないか、こういう工合に考えております。
#25
○山下義信君 大變力強い御答辯を得ましたが、是非一つ米窪國務相の手によりまして、勞働行政の刷新を期待して止みません。我々は待望いたしておるのであります。
 尚、關聯いたしまして、いま一つ伺いたいと思いますが、この勞働者に對しまする物資の配給でございます。これは基準局で扱つて行くのだろうと思いまするが、先般の流通秩序の確立に關聯いたしまして、政府間の物資の取扱い、殊にこういう工場自體の物資の配給はいうまでもなく、或いはこの基準局が將來勞働者の加配のいろいろの取扱い、こういうことも御中止に相成るのでございますか、尚依然勞働者に對しまする各種物資の加配は御續行に相成りますでございましようか、どうでございましようか。
 それから從來勞働者に加配をいたしておりました米であるとか酒であるとかというもの、ああいうものの報告というものが當局に出ておりますでしようか、どうでございましようか。多分毎月か隔月報告が出るべきだと思つておりますが、この報告が確實に當局に届いておりましようか。即ち、當局の手によりましていろいろ加配を割當配給なさるその状態が、どういうふうになつておるかということが、常に一目瞭然に把握しておいでになりますかどうか、この點を伺つて、おきたいと思います。
#26
○國務大臣(米窪滿亮君) お尋ねの點の詳しいことは、政府委員からお答え致させまするが、勞働省ができたときには……勞務加配米の基準或いはその比率等の決定は、目下經済安定本部でやつておりまするが、これはやはり勞働省が共管をするか、或いは勞働省に移して頂くということに、交渉をして見たいと思つております。そうしてこれに、基いて、いわゆる重要な基礎産業については直配を行い、その他の産業については地方官廳を通じて行つておるのでございますが、それの統計或いは決算というようなものですか、それがいたされておるかどうかは政府委員から答辯いたさせます。ただ私としては、直配の場合でも、府縣廳がやる場合でも、現業での非現業といわれる者が、現業と同じような勞務加配米を受けておるというようなことが、非常な問題になつておる現状においては、嚴重に粛正しなければならない、こういう工合に考えておるのでございます。
#27
○政府委員(吉武惠市君) 只今勞務用物資の配給の機構についてのお尋ねでございましたが、今後の問題は、只今大臣からお答えになつたような方に向けて行きたいと思います。從前は、米は例の農林省、煙草は大蔵省というふうに、それぞれ農林省なり或いは商工省なり、それぞれ物資を扱つておりまするところが直接加配をし、或いは地方廳を通じてやつておつたのであります。それではうまくないからというので、今年の春頃からこの取扱いを、中央は安本が綜合的にやるということになりまして、安本に勞務用物資対策中央協議會というのができまして、それに事業者側或いは勞務者側等を以て民主的な協議會ができまして、そこで配分の方法を決定いたしまして、決定に基いてこれが地方に流れて、地方廳でやつておるという實情でございます。今後の問題は、勞働省ができますれば、やはり勞働省にその問題を移管して貰いますか、或いは安本と勞働省で協議の下にやりますか、いずれにいたしましても中央は勞働省が重大なる關心を持ちたいと思つております。地方は、基準局が各府縣から獨立してできて参りましたら、やはりこの機關を通じて、それぞれの地方の基準局に、民間の事業費の方或いは勞働者の代表の方で協議會のようなものを作りまして、そこで民主的に割當を決定をして、そうしてやる、こういう考えを持つております。從いまして、今のところではどれだけを配給しておるかという数字は、私の所では分らないのでございます。
#28
○山下義信君 從來の報告は餘り参つておりませんか。分りませんな。どういうふうな配給をしているか……。
#29
○政府委員(吉武惠市君) はい、そうであります。
#30
○川上嘉市君 大臣に御尋ねいたします。今日物價が非常に上つて参りまして、政府のこの物價政策については、物價安定の基準にしている昭和九年十年十一年の平均價格の六十五倍というのが、段々崩れはしないかというような懸念がいたします。實はこの間名古屋の中部日本新聞において、大臣とそれから安本長官とが座談會をやりました。その時の話に、若し千八百圓という賃金の平均の基準が破れるようであれば、この次は六十五倍というのは百三十倍になりはしないか、こういう話が新聞に出ております。それから安本長官が、從來外國の例を見ても、平時の物價の平均の百倍以上になつた時には、インフレの止つた例がないと言つていることが新聞に出ておりました。これは新聞の間違いであるかも知れませんが、私共やはり同じように考えます。又最近、この内閣のできた後に、段々に物價が上つて來たために、又勞働攻勢と申しますか、あつちこつちで大分言つているようであります。この賃金が上つた時に、果して六十五倍というその物價の政策維持ができるかどうか、又若しそうでないとすれば、勞働省としては、どんな風な處置を、それについてお探りになる考でありますか。實は最近まで、例えば産業復興會議というものがありましたが、一向それを利用するようなふうも見えません、もうすでに全産協は三千百圓ということが決まつたように新聞に見えております。そうなると恐らく六十五倍という安定帶を維持することはできないと思います。これに對してどういうふうな御確信を持つておりますか。どうして物價水準を守つて行くか、守り通すかということについて御意見を伺いたいと思います。
#31
○國務大臣(米窪滿亮君) 御答えします。御指摘の名古屋の話は少し間違えがあります。實はこれについては、給與審議會における……、物價と賃金の悪循環を断ち切る方法として、政府から發表された經濟緊急対策の一つの重大問題である。勞働政策の點について、一應給與審議會において、標準賃金千六百圓、更に物價のはねつ返りを見て一應千八百圓と決めた經過を簡單に申上げます。大體當時の各業種別の勞働者の受取る賃金を統計に取つて見ましたところ、約千五百何十圓ということになつている。又官廳の方でも一應協定が千六百圓ということで決まつたので、我々としては物價を算出する新物價體系を策定するための重要なる要素である賃金を、どこで抑えるかということが、これが又必要であるので、結局いまの二つから來たところの千六百圓を以て抑える、但し昭和九年十年の時の物價の六十五倍というセーフテイ・パンドがあるために、即ちマル公が上つたために、それのはねつ返えるのを考慮して、二百圓を殖やして千八百圓というのを、物價對策上の基礎要綱である名目賃金の標準としたわけであります。この議をいたしましたところが、これに對して、勞働省は、この千六百圓を決めた時の物價は本年初めであつて、それから六ヶ月經つている。その間に物價は約五割上つているから千六百圓の五割を加えるというと、約二千四百圓乃至二千六百圓くらいに賃金をしなければならんじやないか、又一方においては昭和九年十年の時の物價に比べて今日は六十五倍に物價を上げるというのに對して、賃金は昭和九年、十年の賃金の二十五、六倍にしかなつていないじやないか、これは甚だ不公平じやないかという意見が出たのであります。ただこの際、物價のコストが原價計算によつて、それの五割或いは六割七割が賃金である、企業體におけるところの原價計算のコストで行くと、賃金の占める分野が五割及至六割という多額になつておるときに、これを勞働者の要求額二千六百圓に上げた計算になると、どうなるかというと、逆計算いたしますと、昭和九年十年のときの物價を約百三十倍に安全辨を嵌めないとできないということを申止げたわけであります。そこで百三十倍にセーフテイ・バンドを、大十五倍の代りに百三十倍ということになつたときのインフレ状態はどうなるかというと、到底手は付けられなくなる、それから打ち返して來る波というものは到底短時間では治まらない、從つてこれは勞働者の方に相當言分があつても、やはり六十五倍にセーフテイ・バンドを嵌めることによつて、そうして計算して來ると、千六百圓くらいの賃金で辛棒して貰わなければならん。然らば名目賃金千八百圓と、勞働者が要求とておる生計費に近い、いわゆる實質賃金二千六百圓との差は、大體千六百圓のときは五百何圓、千八百圓の場合においては六百何圓というものがあるのだが、それをどうして、その間隙を埋めるかということについては、これは物價を一日も早く引下げるということと、そうして資材の、原材料というようなものを、流通秩序を確立して、いわゆる闇を撲滅して、そうして正常なる配給ルートに載せるということ、竝びに、極く僅かなものではあるかも知れませんが、勤勞所得税の基礎控除額を上げることによつて、そういつた二つ、三つの方法によつて、その間隙を吸收し、荷且つ残るものは生計費の節約ということで埋めて行くより外に方法がないじやないかということが、給與審議會における政府の説明であつた、名古屋における私の説明は、この給與審議會における説明を申上げたのでありまして、多少御質問のところとは違うのでありまして、そこで問題は、時間のずれが、果して政府の狙つておるような吸収が、早く効果を奏するかどうかという時間のずれでございます、勿論時間のずれはございます。ずれを長くせずに、三ヶ月で済むところは二ヶ月、二ヶ月で済むところは一ヶ月というので、目下經済安定本部で吸收方法の具體的方策を勘案中で、近くそれが正式に發表されることになるだろう、このいわゆる具體的吸收方策によつて、實質賃金と名目賃金の差を早く埋めることができるかできないかによつて、いわゆる世に傳えられておるところの勞働攻勢を防ぎ得るか、どうかの鍵が、ここに係つておると私は考えるのであります。
#32
○早川愼一君 二三お尋ねしたいのですが、先づ第一に、勞働委員會に關して大臣のお考えなり御抱負を承つて置きたいのですが、勞働委員會は、申すまでもなく爭議の調停等には重要な役割をなしている。どうも從来委員會の調停決定事項に對しまして、とかく権威が非常にないように私共は感ずる。昨年急遽あの勞働調整法を實施いたしまして、第一に電産の問題が掛かりましたが、あれはたしか政府が強制的に調停に付された事件であると思います。その決定に對して一番初めにそれを拒否されたのは政府のように私は考えております。爾來勞働委員會の決定に對しまして、世間は餘り重きを置かない。又勞資双方もこれを輕視しておるというような實情を私共は感ずる。これは勿論委員會は裁判所ではありませんから、調停機關ではありますけれども、何らかの規範力があるものと私は考える。又規範力をあらしめなければ、折角設けられた機構というものは何ら價値のないものと考えます。それには委員會そのものの構成についても、私は非常に疑問を持つておる。と申しますのは、現在の組合法によりますと、勞働者の代表、資本家の代表竝に政府の推薦せられる中立代表というふうに委員が構成されている。常に様子を見てみますと、勞働代表は勞働者側の主張を堅持し、資本家側の方はどちらかというと、それに追い捲られている。中立委員の歸趨によりまして大體調停案の決定がされるというような實情にあるように私共は感ずるのであります。然るに折角この調停委員なるものができましても、私共は少くとも調停委員會は一體となつて決定すべきものであつて、その決定の中に少数意見であるとか、或いはその他いろいろの意見がありましても、委員會として決定した以上は、異議があるべき筈はないと思うのでありますが、この調停の結果を、勞働委員會で勞資双方に申渡されるときには、私共の経験によりますというと、少数意見なるものがあるのであります。これは一面において組合側の方から申しますというと、恰も調停委員會の中にいろいろの意見が對立しておつて、結局は人の僅かな中立委員の差で決定がされた案であつて、組合側としてもこれを尊重する必要がないかのごとき表現があるのであります。かようなことは、私共として勞働委員會の権威の問題として非常に考うべき點があるのじやないか。むしろこれのごときは申立委員だけで構成した方が、公平に行くのではないかとさえ考えられる。この點なんかに對する大臣の御考えはどういうものでありますか、お伺いしたいと思います。
 尚爭議が起きまして、往々にして世間に傳えられる、新聞なんかに傳えられていることは、いわゆる組合方面から放送されることが出ておりまして、勞働委員會で取上げた問題の經過なり、問題の所在點なんていうものは極めて無観されている・二・一ストの時には、最後に大藏大臣が政府を代表して、勞働闘爭委員長、それから中立委員にして勞働委員の會長が、それぞれの立場において爭議の經過を國民に愬えられましたが、少くとも今日そういうような手段が何らかの方法でとられないと、世間はただ一方的な二ユースだけによりまして、事議の中心がどこにあるかというような點がはつきりしないというふうに私共は考えられる。それからもう一つは委員會の調停そのものが、先程申しました構成によつていろいろ影響されるのかどうか知れませんが、とかく勞資の間を取つてやる。例えば組合側が十の要求があると、資本家側の五の要求に對する回答の間を取つて七半で解決するというような傾向が非常に強いように思う。これは我々としては、むしろ勞働委員會は、現在の日本の實情なり又一般観念から見て、ここに妥結すべきものだという決定を獨自に與えるのが本當ではないか。双方が承諾すればどうでもいいのだ、爭議さえ消せばいいのだというようなことは、私は勞働委員會としては不満を感ずるのであります。この點もう少し勞働委員會自體が、もつと精密に世間の状態なり、或いは又時の政府の政策なり、そういうものとよく関聯さして決定すべきじやないかと思われるのであります。
 それから尚もう一つ付加えて申して置きたいことは、いよいよ委員會の調停案は、結局のところ、その財源はない、それであれは何條でありますか、勞働委員會が政府に建議をいたして、この調停案を實施する上におきましては、その會祉なんかに對して政府が相當の收入の途を圖る方法を講じなければならん。例えば公定價格の改訂であるとか、或いは運賃の値上げであるとか、それぞれの適當な處置を取らないと、この調定案は實施できない。かるが故に、委員會としては建議をして政府に申達してある筈であります。ところが、この建議が半年以上も放置されて一向解決されない。その間勞務者の窮状は實際見るに忍びない場合もありましようし、又資本家側、經營者側も早く解決して行かなければ勞働能率が向上いたしませんから、ここは思い切つてやるとかいうような傾向があります。ますます勞働委員會の権威そのものを落すような處置をとられているように私は感ぜられるのであります。これらに對しましてまあほんの一例を竝べて申上げたのでありますが、勞働委員會に對しましては、相當の機構の改正なり、或いは擴充強化についての十分なる御意見を承つて置くことが便宜であろうと思います。よろしく御願いいたします。
#33
○國務大臣(米窪滿亮君) 勞働委員會について各種の御質問があつたのですが、勞働委員會の任務は飽くまでも爭議を圓滿に解決するための調停をするというのにあるので、一種の勞働裁判ではございませんから、その點において、勞働委員會の活動について今日不滿が經營者及び勞働者の双方からあることは、これは御存じのことだと私は考えております。御指摘の通り、勞働委員會の構成については、むしろ中立側だけで行つた方がいいのぢやないかというお話があつたのですが、これはやはり、勞働者側を代表する者と經營者側を代表する者と、それからこの兩者に偏らない公平な社會的な立場に立つ者、この三者がやるところに非常に妙味があるので、諸外國の例もやはり同様になつておるのであります。これについては勞働委員會に掛かつている間は、公共事業以外の爭議といえども經營者はロック・アウトしない。勞働者はストライキはしないというような統制力を加えたならばどうであろうかという意見もあります。又勞働委員會の設置については、これがいわゆる拘束力を持つ。これによつてどういう裁決が下されてももう爭譲は打切りにするとか、というような權威を持たしたらどうかという意見もありますが、そうい行う説を實行するためにはやはり一種の勞働裁判ということになつて、司法、行政、立法の三權分立の今日において、この點は相當重大なる政治問題として考えなければならん。こういう工合に考えておるのであります。そこで勿論我々としても今日の勞働委員會をもつと権威あるもの、その裁決は非常に權威のあるものにして、その執行についても強力なものにして行きたいということについては、その必要を痛感しておるのでありまして、目下この點については勞働委員會事務當局からも、それぞれいろいろの意見があり監督的の立場に立つておる我々としても、これをして行きたいと思つております。現在は御承知の通り勞働組合法の中に勞働委員會に關することが決められておりまして、そうしてその委員は総理大臣がこれを任命するという程度であるのでございまして、若し只今私が申上げたような工合に、強力なものに……拘束力を持たせるということになると、或いは特別の法律案を出して、場合によつては、非常に極端にいえば、行政権と對立し得るもの、或いは立法権とも對立し得るものというようなことにしなければならんのじやないかと考えておるのでありまして、この點は極めて重大なる問題で、場合によつては行政調査部あたりの意向も斟酌し、或いは司法部の意見も聽いて、それぞれ關係方面の意見を聞いて善處したいと思つておるのであります。それから勞働爭議の調停に當つての經過について、まだ十分に國民に納得せしめることが、甚だ今までの經過から見て不徹底ではないかということでありますが、これについては第二十七條にも勞働爭議に関する統計の作成というようなこともありまするし、又第二十八條にも公開することができる、こういうような規定があるのでございまして、勞働委員會が民衆に調停の過程を發表し得る機會はあるだろうと思いまするが、更にもつと適當なる方法によつて成るべく早く、且つ成るべく詳細に、調停の經過を関係者に知らせる方法を探りたいと思つております。
 それから最後の建議についてのお尋ねについては、勞政局長からしてお答えすることにいたします
#34
○政府委員(吉武惠市君) 最後の點は、委員會からいろいろ政府に對して建議をしておるけれども、それが一向實現されないという意味のことであつたかと思いますが、これは勿論政府としましても、できるだけ努力はいたしておるつもりでございますが、こういう時節でございまして、全部實現できないものがあつたかと思いますが、これはできるだけその建議は尊重して實現に努力いたしたいと思つております。
#35
○早川愼一君 もう一つちよつとお伺いしたいと思います。一月三十一日でしたかのマツカーサー元帥の聲明、この聲明の内容に盛つてあることは、現在でもこれは同じ状況ではないかと思います。然らばあの聲明から見ますというと、今日はやはり國民全般に關係するような爭議は、占領政策上禁止されておると、こう考えて私は差支えないと思います。やはりそういう御解釋でありますか。そういう御解釋とすれば、なぜ日本の法律で爭議の禁止法をお出しにならないものか。その點との関聯……
#36
○國務大臣(米窪滿亮君) 二月一日のゼネストのストツプ命令は、私共としては、これは元帥の意中を聞いて見ないと分らないのでありますが、我々としてはあの聲明文の内容を十分に檢討しまして、いわゆるああいうゼネラル・ストライキによつて、日本が産業的にも、その他公共的にも、すべての國としての活動が停止するような結果になるようなことは占領政策に反するという意味から、あれのストップを命ぜられたことで、私はあれがやはり適用さるべき立場に今日もあると、こういう工合には考えておりません。從つて、あれと殆ど同じような結果に陷るがごとき爭議については、マツカーサ上元帥、或いはGHQあたりから命令が出るかも分りませんが、ああいう二月一日のようなことは、私はその時の非常な…非常時の現象であつて、爾來あれから今日までは、勞働者も非常に反省して來ておる傾向がありまするし、又ああいうことが始終頻發して來たとは思わないし、又今日もああいう状態にあるものとは思わないので、勞働爭議を禁壓するとか、斷壓するとかいうことは、少くとも現状においては、まだまだその時機になつておらない、こういう工合に考えております。
#37
○伊達源一郎君 ちよつとお伺いいたしますが、聞くところによりますと、衆議院では、この勞働省設置法案を、委員會において希望條件付で可決したということでありまするが、果してそうであるかどうか、若しそうであれば、政府においてはその希望條件なるものに御同意であるかどうか、ちよつとお知らせを願います。
#38
○國務大臣(米窪滿亮君) 衆議院では、こういう附帯決議をつけて、勞働省設置法については全面的に賛成しておられるのです。その附帯決議として、「一、勞働省の新設に伴い中央竝びに地方勞働行政機構を可及的速かに一元的に整備するように務めること。特に地方における勞働行政は窓口を一元化し、事務の簡素化をはかること。」「二、勞働の生産性、勞働能率の向上及び勞働教育の徹底に關し政府は速やかに善處すること。」三、勞働委員會の擴充強化をはかり、中央勞働委員會の運營に關しては、國會の勞働委員會と有機的連繋をはかること。「四、勞働省設置に際しては配置轉換等により官吏総数の増加を極力避けること。」こういう四つの附帯決議を附けられたのでございまするが、これに對して、委員會においても、本會議においても、政府のこれに對する所信を尋ねられなかつたのでございまするが、政府はこれに對して反對の意思表示をいたしておらない、即ち消極的にこれに賛成したということを明らかにしておきます。
#39
○小野哲君 簡單なことでありますが、政府委員にお尋ねしたいと思いまする。本法の附則の第十三條に、施行期日が期限附きで、政令で以て定めるというふうなことになつておりますが、お差支えない限りにおいて御説明を願いたいと思います。
#40
○政府委員(吉武惠市君) 只今御指摘になりましたように、本法の十三條附則の最初でありますが、「この法律の施行期日は、その成立の日から三十日を超えない期間内において、政令で、これを定める。」これは御承知のような現下の情勢でございまするので、できるだけ早く勞働省を設置したいという意圖の下に、法律が成立いたしましたならば、それから三十日の間に、できるだけ早い機會を選びまして施行したい、こういう趣旨でございます。
#41
○小野哲君 實は三十日というふうな期限が切られておりますので、一省の設置につきましては、いろいろの準備の關係等もあるのじやないか。そういう場合に、省の設置について期限が附せられておるということが、準備の上で困離な問題が起りはしないかというふうな心配も持ちますので、この點については、本法律案が成立してから三十日には必ずできるというお見込がついておりますのか。甚だくどいようでありますけれどもお尋ねしておきます。
#42
○國務大臣(米窪滿亮君) これは實は、勞働基準法が七月一日から實施すると、一應議會でもその見當を申上げたのですが、全國における地方勞働基準局ができましたけれども、その下の監督廳がまだできない、そういつたこと、竝びにその他の諸種の事情でこれが九月一日ということに延びて、勞働者災害補償保險法、丁度裏表になる保險を行わなければならない點、そういうことと睨み合せて、どうしても勞働基準法の全部でなくとも、その大半は九月一日までにどうしてもやりたい、それはやはり勞働省において、できるならば勞働省設置の下において、この勞働基準法を施行したいのでありまして、從いましてその意味から申しますと、三十日以内というところが、いろいろな點からみて必要だ、然らば小野委員のお尋ねの通り、準備はどうかという非常に有難い思やりのお言葉があつたのですが、これについては五局の内三局は既に厚生省から参りますし、新らたにできる二局が、局長以下の人事、又官房、次官以下の課長を決めなければならんのですが、これも三十日の期限を與えられるならばできるだろうという見込です。又廳舎も非常に求めるのに困つたのでありますけれども、とにかく一應假住居ができる見通しがついたのです。旁々残つておるのは人事の問題でありますが、それも三十日の猶豫があれば何とかできる、こういう工合に考えております。
#43
○山下義信君 小野君大變勞働省に贊成でありまして、大臣も只今お喜びになりましたが、私も一つ喜んで貰いたいと思いますが、これは先程衆議院の附帯決議があつたというのですが、私よくはつきり分りませんが、餘り増員をしないようにという決議があつたということであります。これは私は衆議院の意向は非常に尨大な増員をするなという御趣旨じやないかと思うので、實際は相當御増員なさらなければ仕事ができないのじやないかと思います。現在のような定員の状況では殆どこれは仕事にならない、相當擴充強化して、人員というものを御増員にならなければ本當の仕事ができない、本當の仕事ができないのじや、ただこういうものを作つただけではいけませんので、必要な程度の増員は衆議院でも御是認になるのではないかと思います。そういうふうに私共は解釋するのです。又同時に相當の豫算がなけらねば仕事ができない。先程同僚の議員が指摘いたしましたが、地方におきましても、いろいろ廳舎を有力者に頼んで買つたり、或いは寄附金云々というようなこともありまして、當局も御心配になつたようでございますが、そういうふうな工場事業場を監督いたしまするような役所が、そういう方面でいろいろ頭を下げて歩くというようなことでは仕事になろう筈がございません。相當の豫算を御計上になり、八千萬圓と思いますが、尚必要があつたならば、追加豫算を御要求になりますくらい十分な一つ内容充實のお役所になさるべきであろうと思いまするので、この點尚念のために御當局のお考えも承つて置きたい。
 それから小さいことでありますが、例の婦人少年局でありますが、これは先へ段々進みまして、私共の意見を申述べさせて頂こうと思いますが、ちよつと條文の上だけで伺いますと、第七條の一號、二號と四號の關係でありますが、ちよつと條文が分り兼ねますので御説明を煩わしたい。第一號には「婦人及び年少勞働者に特殊の勞働條件及び保護に關する事項」というのがございます。二號に「児童の使用禁止に關する事項」と、兒童の特殊の勞働條件のことがここに出ておるのでありますが、更に第四號には「その他婦人及び年少勞働者に特殊の勞働問題に關する事項」、こう又文章が變つて出ておるのでございますが、あの一號二號と四號の關係はどういう關係でございますか。
#44
○國務大臣(米窪滿亮君) 第二の御質問については勞働基準局長から御説明をいたします。
 最初の御質問については、この附帶決議の衆議院の希望は、私も山下さんの御説の通り、不必要な地度の非常な過剰な官吏を使うな、こういう工合に考えております。止むを得ざるものは勿論若干の増員になることは、これは仕方ないと思います。併し私としては、先程申しました通り、或るべく能率省の模範を示して行きたい。今までのように、いわゆる判こを竝べて一週間も二週間も経たなければ仕事がつかないというようなことはやりたくない、この點はまだはつきり決まりませんが、例えば係長あたりを窓口に押出すことも考えております。併し役所の傳統がございまして、野人大臣の理想が果して實現できるかどうか分りませんが、少くとも私はそういう思い切つた能率増進の前半の御質問について、非常に御理解のある御意見を伺いまして、有難とうございました。
#45
○政府委員(江口見登留君) 第七條の御指摘のありました一號と四號の關係でございますが、一號は、主として勞働基準法に規定されておりまする勞働條件及び勞働に關することを狙つたものと解釋しております。勞働基準法以外におきましても、婦人の勞働問題、少年の勞働問題、これらが各方面から論議されると思います。その規定された條件、勞働條件の問題ではなくて、四號はその他の勞働關係における婦人、少年の問題を取扱うことがあるという意味の規定であります。
#46
○山下義信君 ちよつと分りませんが、その他の婦人問題……六號のように思いますが、婦人及び年少勞働者の特殊の勞働條件というだけであれば、もう四は……勞働基準法以外の婦人問題は、家事手傳、ああいうものまでをおつしやるのですか。
#47
○政府委員(江口見登留君) 御指摘の通り、この四號につきまして、具體的に、どういうような問題があるかというお話になりますと、ちつと具體的にまだ申上げ兼ねる、そこまで事務的な研究が進んでいないのでありますが、一號は只今申しましたような意味で……。四號は勞働基準法以外の勞働問題に關する事項であります。六號は勞働問題以外の婦人問題を取扱つておる、こう三段分けになつております。そうして第三號の家事使用人とありますのが、只今御指摘になりました、いわゆる女中下男というようなものに對しまする規定でございます。
#48
○山下義信君 その程度にいたして置きまして、又先のことにいたしましよう。この第六號に一般の婦人問題を取扱うということは、勞働省といたしまして、勞働省の中における婦人局といたしまして、いわゆる婦人の勞働問題、それが基準法であろうと、基準法以外であろうと、婦人の特殊な立場における勞働問題を取扱う、こう了解いたしまするが、それ以外の一般の婦人問題とはどういうものでありますか。例えば婦人の教育問題とか、婦人の教養問題とか、婦人問題一般を取扱おうとなさる御理由を承りたい。
#49
○國務大臣(米窪滿亮君) これは説明がちよつと足りないので、私が申上げますと、例えば第七條に書いてあります通り、婦人問題は非常に廣範圍に亙つておるのでありまして、例えば婦人に關する教育問題を文部省で今取扱い、學校における教育、社會教育、家庭教育は大體文部省で扱つておるのであります。ただ幼児とかそういうものを持つておる者の問題とか、そういつた工合で、文部省で扱つておる教育問題以外の教育問題は相當の分野にあるだろう、そういう問題はいわゆるその他の婦人問題の中に入り、又婦人の保健、衛生、厚生等を厚生省がやつておりますが、併し厚生省で取扱つておる婦人問題とかそういつた種類のもの、そういつた性質の婦人問題があり得る、そういう問題は即ち、文部省、厚生省等で、まだ法律によつて手をつけておらない婦人問題は、これを新設の勞働省の婦人局で取扱う、こういう意味であります。
#50
○山下義信君 いま一つこの際伺つておきます。やがて勞働配置計畫、いろいろと國務大臣が御心配遊ばしまして、失業問題などに對しまする只今から多大な御心配があろうとお察しいたしておりますが、この婦人の勞働者は大いに奨勵もいたさなければなりますまい。又今日まで婦人勞働者が我が國産業界に寄與いたしましたる功績に對しましては、私共もよくそれは認識いたしております。併しながら男子がすでに失業まさに溢れんといたしております。勞働の需給状態に對しまして、まず私は婦人の勞働者は差支ない限り家庭に歸るべき時期ではないかと考えるのでございます。曾ての戰爭時代に驅り立てられまして、勞働に從事いたしましたる婦人が、非常に多いのではあるまいか。言い換えますると、婦人が勞働いたしまして、家の生計を支えなくとも、或いは且つ又婦人勞着自體が獨立自活いたさないでも、十分家庭にあつても尚且つ生計の維持ができるものが、軍國時代に勞働戰線に驅り立てられて、そのまま残つておる婦人勞働者たちが相常數あるのではあるまいか。そうすると、將來勞働整理と申しますか大整理が來りますときには、まず婦人勞働者が整理されるといたしまして、男子の失業者をできるだけ防ぐのが順序ではあるまいか。この際日本といたしましては、殊に道義頽廢の今日、婦人勞働者が家庭に歸つて大いに修養すべきではないか。最近の婦人の状態を見ますと、私共非常に憂慮に堪えないような點が窺われる。こういうことを申しますると、舊體制の保守主義のように見えまするが、必ずしもそういう意味でなくいたしまして、勞働界整理の第一は婦人が家庭に歸る時期ではないか、こう考えますが、この點に關しまする國務相の御意見を伺いたいと思います。
#51
○國務大臣(米窪滿亮君) 尊敬すべき山下委員の御質問でありまするが、御意見には少し私違つておる。軍閥時代に驅り立てられた婦人勞働者は、その家庭の都合の如何を問わず、強制的に驅り立てられたような婦人勞働者は、終戦後それぞれ家庭に歸つておるものが多い。そこで今職場に働いておる婦人の勞働状態については、今日の物價高或いは新圓生活の事情等から見て、止むに止まれない人たちが残つておるのではないか、こう考えております。又婦人でなければできない業務が、相當今日の世相から殖えておるんじやないか、必ずしもチープ・レーバーの意味を申上げるのじやないですが、とにかくにも婦人といえども働かなければ食えない人々が多くなつておるのじやないかと私共見ております。從つて婦人に對する保護、婦人の地位の向上ということは、將來の重大なる勞働省の取扱う問題なんでありまして、そのために特に婦人少年というものを取扱う一つの局を設けたわけでございます。今までの委員會の議論においても婦人だけの問題を特に取扱うべき婦人局というものを設くべきではなかつたか、というほどの意見があるくらいでございまして私はこの點については、まず婦人は家庭に歸れという御意見については、家庭に歸れる人は歸つてもいいですが、歸れない人が多くはないかということを考えております。勿論婚期に達しておる婦人としては、成るべくは結婚が私は望ましいと思いまするが、併しそれもその人の生活状態或いは家庭事情によつて、職場に残るという場合は政府としてこれをあくまでも結婚させるという方針はとりたくはない、この點においてもやはり婦人は男子と同じように生活權及び勞働權等を持つておると、かく解釋するのであります。
#52
○深川タマヱ君 なんの準備もございませんけれども、先程山下委員から仰せの言葉を承りまして、ちよつと婦人委員といたしまして一言申上げます。米窪大臣が仰せられましたことに双手を擧げて贊成いたすのでありますが、やはり戰爭中に驅り立てられたような女性は、すでにもう戰後に家庭に歸つておりますが、家庭の事情で、結婚適齢期を過ぎてまでも働かなければならないような人が、今尚工場に残つておる。尚働きたくとも、女性のためには、職場さえもなくて、命よりも大切な貞操を、心にもない人のために投げ出さなければならないような、闇の女さえも出ているような事情にありますので、婦人の職業對策についても更に一段の考慮を煩わしたいと存じておる次第であります。ついでに婦人の職場について希望を申上げますが、私は山下委員さんのおつしやつた通り、やはり婦人はできるだけ家庭に歸るのがよいと思いますので、将來夫の管理者として家庭を見守りながら、家庭の收入の助けができるような仕事に携わることが非常に理想と存じますので、丁度八月十五日から貿易も再開されます時機にありますので、相成るべくは都會婦人に對して、輸出向の家庭工業というようなものを、できるだけ政府の御斡旋によりまして注文を取つて頂いて、働かして頂くなれば…今後職場に働きましても、御主人は千八百圓や千六百圓の給料で、到底この物價高に對抗できないと思いますが、婦人が輸出向の家庭工業をいたしまして、一家の生活を助けることとなり、非常に生活が樂になると存じますので、是非とも輸出向の家庭工業につきましては都會婦人に奬勵して頂くのが一つと、もう一つは、日本の紡績業は非常に今婦人の就業者を望んでおりますが、何分一般の給料標準は千六百圓なり、千八百圓であるのに、婦人の紡績業の人たちは八百圓程度でありますので、到底食べて行かれない、それで今のところ就業者が六十%くらいしかありませんので、あれの俸給を上げて頂きまして、紡績なんかも闇の女ができんようにして頂けるならば結構だと存じております。
#53
○政府委員(吉武惠市君) 只今御意見がございましたように、家庭婦人に或る程度の收入を得さしめる方法、又は紡績等においての御考慮は、十分今後婦人局ができましたら、各方面の意見を聽きまして、御趣旨に副いたいと思います。
#54
○委員長(下條康麿君) ちよつと申ますが、米窪大臣は閣議がございまして席を外しますが……
#55
○國務大臣(米窪滿亮君) ちよつと甚だ失禮ですが……
#56
○山下義信君 今私の申上げましたような婦人の問題は、それは實際はですね、只今お述べになりましたようなことは、机上の空論で、女子が今日職業の戰線に働きまして何が生活ができますか、今日の收入で……。私共から言わしたら、今の女は職業に出て行くために大半が闇の女に陷つて行く。家庭において裁縫をしたり、内職をしたりしたならば、ああいう誘惑にはかからない。六百圓か七百圓かの僅か賃銀で、そうして千圓や二千圓もする靴を欲しがるようになりますのは、殆どどんどん職業と稱して出て行きますために、服装であるとか、何であるとか、氣にするようになるのです。女子が今日勞働に出て行きまするが、その得ました賃銀は果して辨當代も出ますか、それは辨當代にも足りない、その足りないことを承知の上で出て行つておる、それが家の家計どころじやない、自分一人だけの生活費だけも…補助を得るのならよいのでありますが、足りない。足りなくて出て行つておるというような状態に徴し、整理が必要だという意味を申上げたので、或いは抗内勞働者のごとき夫婦が働いておる者であるとか、或いは婦人の勞働者が働いて乳呑兒を養つておるというようなのを申上げたのではない。折角働いて得た賃銀が何の足しにもならず、持ち出してむしろ外の誘惑にかかつて悪い方に向いて行く。そういう婦人は大いに修養して勉強いたし向上しなければならん。出しやばる女に嫌な者はいない。假に婦人局を作りましても、局長にしますような適當な婦人がごさいましようか。私共見ますると、決して婦人を軽蔑するわけではありません。婦人は同等になつて頂きたいのでございますが、まだまだ實際を申上げますると、ずつと婦人の修養が遅れて足りません。出しやばる者に嫌な女はございません。それで私は大いに修養するのがよろしいのである。何も生活を脅かして、生活を奪つてしまうという意味ではないのであります。ついでにこれだけ申上げて置きます。
#57
○委員長(下條康麿君) ちよつとお尋ねいたしますが、第一次歐洲大戰後、ドイツでは、いまの婦人の勞働問題について、特別の施策があつて、たしか夫を持つておる婦人は即時に職場から歸れ、それから一定の期間がありましたが、その期間内に就職したような、いわゆる今山下委員の仰せられたような、戰時中に就職したような人は、即時に職場から罷めるような法律が命令が出たように記憶しておるのですが、そういうようなものは何か御承知ないでしようか。
#58
○政府委員(吉武惠市君) 今委員長の御指摘のように、ドイツにおきましては、非常に失業に追われました際、きつい勞務統制をいたしましたので、そういう施策を採つたように私共も記憶しておるのであります。併しながら一體今後のやり方といたしまして、ああいうふうな、いわゆるきつい統制をするのがいいか、或いは又男女平等に、自由に職業の機會をできるだけ職業を與えるという方針を採るのがいいか、この點につきましては相當意見があるところだと思いまするが、今のところ私共は、共に自由に、できるだけ職業を與えて行きたいという方針を探つておるわけであります。
#59
○委員長(下條康麿君) 大體今日は時間も経ちましたから、この程度で止めて置きまして、明日午前十時から引続き連合委員會を開きまして、質疑を続け、且つ質疑が終りましたならばいろいろお打合せをしようと思いますが、いかがでございましようか。
   〔「贊成」と呼ぶ者あり〕
#60
○委員長(下條康麿君) それでは今日はこれで散會いたします。
   午後三時三十八分散會
 出席者は左の通り。
  決算委員
   委員長     下條 康麿君
   理事
           太田 敏兄君
           山下 義信君
   委員
           今泉 政喜君
           北村 一男君
           中川 幸平君
           田方  進君
           竹中 七郎君
           谷口弥三郎君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           小野  哲君
           駒井 藤平君
           鈴木 憲一君
           伊達源一郎君
           西田 天香君
  勞働委員
   委員長     原  虎一君
   理事
           堀  末治君
   委員
           天田 勝正君
           荒井 八郎君
           平岡 市三君
           植竹 春彦君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           川上 嘉市君
           竹下 豐次君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           藤井 丙午君
           中野 重治君
           岩間 正男君
  國務大臣
   國 務 大 臣 齋藤 隆夫君
   國 務 大 臣 米窪 滿亮君
  政府委員
   法制局次長   井手 成三君
   厚生事務官
   (勞政局長)  吉武 惠市君
   厚生事務官
   (労働基準局
   長)      江口見登留君
ソース: 国立国会図書館
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