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1987/09/04 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 環境特別委員会 第4号
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1987/09/04 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 環境特別委員会 第4号

#1
第109回国会 環境特別委員会 第4号
昭和六十二年九月四日(金曜日)
   午後二時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月二日
    辞任         補欠選任
     田渕 勲二君     一井 淳治君
 九月四日
    辞任         補欠選任
     一井 淳治君     田渕 勲二君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山東 昭子君
    理 事
                石井 道子君
                曽根田郁夫君
                丸谷 金保君
                高桑 栄松君
    委 員
                青木 幹雄君
                石本  茂君
                関口 恵造君
                原 文兵衛君
                星  長治君
                宮崎 秀樹君
                小川 仁一君
                田渕 勲二君
                渡辺 四郎君
                広中和歌子君
                沓脱タケ子君
                近藤 忠孝君
                山田  勇君
   政府委員
       環境政務次官   海江田鶴造君
       環境庁長官官房
       長        山内 豊徳君
       環境庁企画調整
       局長       加藤 陸美君
       環境庁企画調整
       局環境保健部長  目黒 克己君
       環境庁大気保全
       局長       長谷川慧重君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        菊池  守君
   参考人
       東京都新宿区長  山本 克忠君
       経済団体連合会
       環境安全委員会
       委員       柴崎 芳三君
       全国公害患者の
       会連合会事務局
       長        神戸 治夫君
       日本弁護士連合
       会公害対策環境
       保全委員会委員  峯田 勝次君
       京都大学経済研
       究所教授     塚谷 恒雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公害健康被害補償法の一部を改正する法律案
 (第百八回国会内閣提出、第百九回国会衆議院
 送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山東昭子君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
 本日は、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 お手元に配付しております名簿の参考人の方々に本日は御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ御出席を賜りましてまことにありがとうございます。
 皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の法案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。
 これより参考人の方々に御意見を伺うわけでございますけれども、議事の進行上お一人十五分以内で御意見をお述べ願いたいと思います。全部終わりましたところで委員の質疑にお答え願いたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 なお、委員会の終了予定は午後五時四十五分でございますので、どうぞよろしく御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
 それでは、これより各参考人に順次御意見を述べていただきます。
 まず、東京都新宿区長の山木克忠参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(山本克忠君) 本日、私が伺いまして御意見を申し上げるわけでございますけれども、最初にお断りしておきたいのは、区長会長を今務めておりますけれども、区長会全体の意見ではございませんで、新宿区長としての意見を申し上げるということをあらかじめ御了承いただきたいと思います。
 新宿区は昭和四十九年十一月三十日に公害健康被害補償法に基づく第一種地域の指定を受けたわけでございます。法に基づく認定患者の状況を見ると、本年の三月末日現在におきまして患者総数は二千二百十七人であります。制度発足直後における昭和五十年度末の四百八十七人に対しまして、この十二年間で四・五倍に伸びておるわけでございます。現在におきましても年間約一〇%の割合で増加しております。
 新宿区における大気汚染の推移と現状を見ますと、まず、二酸化硫黄については四十年代の後半に入って低減傾向を続け、現在の環境濃度は最高時の約六分の一となっておりますが、環境基準も昭和五十五年度から達成はできております。
 次に、二酸化窒素につきましては、一般環境大気測定局におきまして、四十年代後半から増減を続けながら横ばいに移っておりますが、五十七年度ごろから漸減傾向を示しておりますけれども、自動車排出ガス測定局におきましては、五十年代に入りまして最高となっております。以後わずかに減少したものの近年は横ばい状況にあります。
 また、浮遊粒子状物質については環境基準を達成しておりません。光化学オキシダントについては環境基準を達成しないまま、ほぼ横ばいながら微増の状況になっております。
 このように近年におきます大気汚染の状況は、制度発足当時と異なりまして硫黄酸化物による大気汚染は相当改善されてきてはおりますけれども、窒素酸化物及び大気中粒子状物質による汚染は改善されておりません。こうした状況のもとで新宿区の被認定者数は増加している現状にございます。
 このことは、単に新宿区のみならず、二十三特別区の区域全体についても指摘できるところでございます。したがって、二十三区長会におきましては、国において第一種地域のあり方についての審議、検討が開始されて以来、公害健康被害補償法の第一種地域として未指定の区が四区ございます。その四区及び東京湾岸埋立地域を早期に指定するとともに、地域指定の解除要件の検討に当たっては複合汚染の現状に留意し、十分慎重を期せられたい旨の要望を国に対して強く要望してきたところであります。
 以上のような窒素酸化物を中心とする都市型複合大気汚染の状況にかんがみまして、内閣総理大
臣からの公害健康被害補償法第二条第四項に基づく意見の照会に対しましては、新宿区長といたしましては去る一月二十六日に次のとおり意見を申し上げたところであります。
 近年におきます大気汚染の状況を見ますと、硫黄酸化物による汚染は著しく改善される一方、窒素酸化物及び浮遊粒子状物質による汚染は横ばいに推移しております。したがって、現行の第一種地域のあり方については窒素酸化物及び浮遊粒子状物質を地域指定の指標に加えて、費用負担の問題も含め、現行公害健康被害補償制度を都市型複合大気汚染の状況に適合したものとすべきであります。よって、公害健康被害補償法施行令別表第一の五の項の削除に当たっては、さらに総合的な調査、検討を進める等、慎重かつ適切に対処すべきものであると考えております。以上が意見でございます。
 中央公害対策審議会の答申の前提となっております大気汚染と健康被害との関係の評価等に関する専門委員会の報告によりましても、我が国の大気汚染は二酸化窒素と大気中粒子状物質が特に注目される物質であると言われておりますし、「現在の大気汚染が総体として慢性閉塞性肺疾患の自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できない」ということも言われております。また、局地的汚染は考慮を要すると言い、答申の中でも、大都市地域における窒素酸化物についてはいまだ改善を要する状況にあると述べられております。
 このような意味から私は、現時点においては複合汚染の現状や健康への影響についてさらに十分な解明を行い、窒素酸化物と呼吸器症状有症率との関係を量的に検討し、その因果関係を明らかにするよう努める必要がある。二番目には、少なくともすべての地域において窒素酸化物に関する環境基準が達成されるまでの間は、さらに総合的な調査あるいは検討を進める等、慎重かつ適切に対処していく必要があると考えております。
 二十三区長会としては、六十三年度の国への要望におきましても、窒素酸化物を中心とした都市型複合汚染の現状に適合したものに制度全体を改め、環境行政の後退につながらないよう十分配慮されたい旨の要望書を提出したところであります。特にこの窒素酸化物対策につきましては、二十三区のすべての地域において速やかに環境基準が達成されるよう、今後一層強力な対策を推進されるよう要望する次第であります。
 以上で私の参考意見の申し述べを終わります。
#4
○委員長(山東昭子君) どうもありがとうございました。
 次に、経済団体連合会環境安全委員会委員の柴崎芳三参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(柴崎芳三君) 経団連の環境安全委員会委員をしております柴崎でございます。
 本日、この環境特別委員会にお招きいただきまして、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について私どもの意見を述べる機会をいただきましたことを心からありがたく感謝申し上げる次第でございます。
 経団連では、かねてから現行の公害健康被害補償制度の見直しを要望し、先生方を初めとする関係各位に御理解をお願いしてまいりましたが、この機会に改めて私どもの見解をお聞き取り願いたいと存じます。
 まず最初に、私どもの基本的な考え方を申し上げたいと存じます。
 私どもは、行政救済法でありました旧法、すなわち公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の時代から積極的に制度の運営に協力してまいりました。すなわち、旧法時代には救済費用の二分の一を任意に拠出することによりまして制度の円滑な運営に協力してまいりましたし、昭和四十九年に施行されました現行の制度下におきましても、第一次、第二次の石油ショックという大変産業界にとっては受難の時期にありながら、賦課金を遅滞なく納付し、社会的な責任を果たしてきたわけであります。これは、本制度が多数の健康被害者の救済に貢献すると同時に、社会の安定を図る上で大きな役割を果たすと考えたからでございます。
 ところが、現行制度の発足と前後いたしまして、官民を挙げての大気汚染防止対策によって大気環境は著しく改善されたにもかかわらず、患者の認定者は増加の一途をたどるという極めて不合理な状況が顕現化いたしまして、これが今日まで継続しておるわけでございます。これは、もともと現行制度が極めて大胆な行政的割り切りによって発足したものであり、時間の経過とともにその割り切りの矛盾が大きく顕在化いたしてきたものと考えられます。つまり、現行制度が対象としている大気系の四疾病は、非特異性疾患と呼ばれるようにアレルギー、喫煙などを含みますいろいろの原因で起こる病気であるにもかかわらず、現行制度は指定地域に居住する患者を大気汚染による被害者とみなしまして、その補償経費のすべてを全国の汚染物質排出者に負わせるというシステムになっているわけでございます。
 昨年十月の中央公害対策審議会答申では、大気環境は現行法成立の背景となった昭和三十年、四十年代と比べて著しく改善されていることを指摘されまして、その後の科学的知見の積み重ねや法制度的検討から、ぜんそく等の患者をすべて大気汚染による被害者とみなして大気汚染物質の排出原因者にその補償を求めるということは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨を逸脱することになると判断されておられます。現行制度は既に歴史的使命を十分果たしておりますし、その矛盾を大きく露呈している現在、制度の運営をこのまま放置することは社会正義に照らしても許されないと考えておる次第でございます。
 さらに、私どもの考えを述べさせていただくとするならば、企業として公害防止対策を引き続き進めていくことは当然のことでありますが、今後の環境政策は個別被害の救済から予防的な段階へ、さらに進んで快適な生活環境づくりへと移行していくことが必要でございまして、そのための総合的な対策を眼目とすべきであると考えておる次第でございます。
 以上が私たちの基本的な考え方でございますが、以下、指定解除、新たな環境保健政策、今後の費用負担方式の三点について考え方を述べさせていただきます。
 まず第一の、第一種地域の指定を全面解除すべきであるとの中公審答申に関してでございますが、これは大気汚染とその健康への影響とに関する科学的評価をもとに、民事責任を踏まえた本制度の公正、合理的なあり方について検討した結果導かれた当然の結論と理解しております。かつて我が国の一部の地域において見られましたような著しい大気汚染はなくなり、それによる疾病の多発もない状況、すなわち指定地域内でも大気汚染をぜんそく等の主たる原因と考えることができない状況にあることを踏まえれば、新たに患者を認定し、これに補償することは明らかに制度の趣旨を逸脱するものであります。むしろ、地域の指定を継続して新たな認定を行うことそれ自身が、認定を受けられる指定地域内の患者と認定を受けられないその他地域の患者との間で社会的不公正を助長していると言っても過言ではないと考えておる次第でございます。
 なお、一部に今回の制度改正が患者の切り捨てであるとの批判があるようでございますが、この切り捨ての意味するところが、既に認定されている方々の補償に関するものであるとすれば、既に認定されている方々に対しては治癒するまで補償が継続されることになっておるわけでございまして、全くの誤解と考える次第でございます。また、新たに認定される可能性のある方々に対するものであるとすれば、既に申し上げましたように、現在の大気汚染はぜんそく等の主たる原因ではないとする専門家の検討結果が出ておりまして、大気汚染による健康被害を受けた方々に補償するという制度の趣旨に照らしましても、切り捨てという批判は当たらないと存ずる次第でございます。
 次に、今後の総合的な環境保健施策等の実施に
ついての考え方を申し上げたいと存じます。
 昨年十月の中公審答申にも指摘されておりますが、大気汚染から国民の健康を守る対策は、その状況に応じて適宜適切なものでなければならないと考えます。すなわち、中公審答申においてはこの対策を三段階に分けまして、第一に発生源規制等によって健康被害をもたらすことのない環境を確保すること、第二に健康被害の予防または健康回復を図る措置等によって大気汚染による健康影響を予防しなければならないこと、そして第三として公健制度等を活用して健康影響の損害を補てんすること等によって被害者の救済を図ること、以上三つの措置が考えられております。そして現状におきましては、第三の公健制度を活用して被害者の救済を図らなければならない地域は既に存在せず、全国ほとんどの地域が第一の発生源規制によって健康被害をもたらすことのない環境を確保できる状況であり、一部の地域のみが第二点の健康被害の予防措置等をとらなければならない状況にある、これが中公審の検討の結果であると受け取っております。
 この一部地域における健康被害予防のための事業に関連して、中公審答申後の昨年十一月、環境庁長官から経団連に対しまして、その事業の費用を賄うための基金の創設について要請がございました。私どもといたしましては、内部において慎重に検討をいたしましたが、本年二月、大局的見地に立ちましてこれに協力すべく意思を決定いたしまして、その旨環境庁にもお伝えしてあるところでございます。
 最後に、今後の固定発生源に関する費用負担の仕組みに関連して申し上げます。
 現在、賦課金の納付義務者は、毎年四月一日に一定規模以上のばい煙発生施設を保有する事業者とされ、各事業者の支払う賦課金は前年のSOx排出量が基準とされております。今回、改正法が成立し地域指定が全面解除される場合には、既に認定されている患者に補償するための賦課金の納付義務者は指定解除された年度の納付義務者だけに限定され、賦課金の算定基準にもいわゆる過去分が導入されることになっておりますし、各企業は新たに創設される基金への拠出も行うことになります。納付義務者の限定及び賦課金算定方式への過去分の導入につきましては異論はございません。しかし、私どもといたしましては賦課金算定方式の継続性や企業経営の安定性等にかんがみまして、個別事業者が負担する毎年の賦課金及び基金拠出金の額が大幅に変動することのないよう措置されることを強く望んでおるわけでございます。
 以上、簡単に私どもの考えの一端を申し上げましたが、私どもの真意は、科学的、合理的に運用されていない現行制度は早急に改正する必要があり、制度改正を可能とするために、一日も早く法律を改正していただきたいという点にございます。中公審が長年にわたる検討の結果、現行制度を改正すべきであると答申してから既に十カ月が経過しようとしております。今回の改正法案につきましては、制度の合理的な運営に資するものと考え、でき得る限り早期に成立さしていただきたいと存じます。
 以上で終わります。ありがとうございました。
#6
○委員長(山東昭子君) どうもありがとうございました。
 それでは、次に全国公害患者の会連合会事務局長の神戸治夫参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(神戸治夫君) その日も明け方から、のどちんこが飛び出してくるようなセキがひんぱんに出て、そのうち呼吸がとても苦しくなってきました。長距離を走ったときゼイゼイと息苦しくなって体中で深呼吸しないと息ができないのをひどくしたような状態です。そのうち目の前で電気熔接の火花みたいなのが散るようになり、鼻水は出るタンは出る、苦しくて苦しくてもう口もきけないし、人がそばに寄ってくるのさえたえられない。すぐそばのお手洗いへも廊下をはって一息ずつついて何とかたどりつくような状態です。それでもなおこらえていましたところ、午後になってなかば意識を失ってしまい妻の手で病院に運び込まれました。入院しても二、三日は意識はもうろうとし、また一〇日間は全く食事も受けつけず、点滴だけの毎日でした。
 こうした苦しみからのがれたくて、今から一年ほど前、私は自殺をはかったことがあります。妻が仕事に出て私一人のとき、おぜんの上に書き置きを残してガスホースをくわえビニール袋を頭からかぶってガスのせんをひねりました。間もなく私はもうろうとなって横たわってしまったようです。しかし、硬度そこに妻が帰ってきて、私の顔を力いっぱいひっぱたいてくれたのでした。
 今読み上げたのは、最近私たち患者会が発行したこの「きれいな空を私たちの手に!」、既にこれは参議院の先生方全員に配付させていただいておりますけれども、ここに載った公害患者さんの訴えの一部です。
 こうした患者さんの苦しみは、挙げれば切りがないほどたくさんあります。きょうも多数、この委員会室に多くの患者さんが傍聴に来ておられますけれども、こういった死ぬような発作を何度か体験されているはずです。二つ、三つになる女の子が発作に苦しみながら、注射を打ってほしいと、お母さんに抱かれて病院に駆け込んでくるような姿もありますし、家にいても酸素吸入器を手放しできずに、十メートル、十五メートルも長いホースをつけて家の中の生活をしなければならないような患者さん。苦しみに苦しみ抜いて、ついに焼身自殺をはかったような患者さんも見ております。
 主婦であれば夫の世話をしなくてはならないところ、炊事、洗濯も十分にできず、つらい思いをしております。小学生であれば病気のために勉強がおくれ、好きな体育もできなくて、ただしょんぼりと見つめていなくてはならない、そういった状態があります。働いている人は会社を病気のために首にされ、また働ける人も仕事はどんどん転々とされなくてはなりません。公害病は個人のこういった全生活、そして社会生活すべてにわたって影響を与えております。
 私は、六年前に全国の公害患者の会の専従職員となって今活動をしておりますけれども、その前の十年間ほどは、川崎の最も公害のひどい町にある民間の病院で医療ケースワーカーの仕事をやっておりました。こうした患者さんをそれからずっと見てきているわけです。
 医療ケースワーカーの仕事をやっていて考えた点ですが、一つは、医療従事者として一人一人の患者さんの苦しみを和らげ、病気を治していくことはもちろんですけれども、本当に公害病の原因を取り除かなければこうした患者さんは救えない。いつまでも苦しみが続き、犠牲者も後を絶たないということと、もう一つは、たくさんのこういった患者さんを発生させ、住民の健康を破壊させている公害発生源企業をこのままに放置しておいてよいのかどうかという点でした。そして、以降多くの被害者の結集を図りつつ、企業や行政への運動を起こさなければならないということで、川崎の日本鋼管や東京電力への抗議行動に参加したり、川崎市の救済制度をつくるために、そしてこの補償法をつくるときにも、川崎の患者さんと一緒になって国会でも訴えをして、あるいは環境庁にも訴えをして、そういった活動をしてきました。こうした信念は今も変わっておりません。きれいな空気と生きる権利を求めて、これからも私は公害の問題をライフワークとして取り組んでいきたいというふうに思っております。
 自己紹介となりましたけれども、このような体験を通じて、公害病患者を切り捨てる公害補償法の改悪案、公害指定地域の全面解除について、私はこれに強く反対する立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 第一に、この改悪案は、大気汚染は改善された、公害病の原因は大気汚染でなく喫煙やアレルギーだなどと宣伝している産業界の主張に沿ったものであって、被害者や国会を無視してつくられ
たものです。全面解除と引きかえに基金構想をつくるというようなことが、まだ中公審の答申が出る前から産業界と環境庁が秘密裏に画策されてきましたし、実際、昨年十一月に国民の目を隠れて環境庁長官が経団連の幹部とひそかに会ったりしております。また国会でも、この間何度となくこの公害補償制度の問題について取り上げられ、質問もなされましたが、中公審で審議中だということで、環境庁、政府はまともに答えようとはしていませんでした。
 中公審の構成についても、環境保健部会二十四人の委員がいらっしゃるわけですけれども、その三分の一から四分の一が直接大企業、加害企業の代表、例えば経団連の環境安全委員長をされている岩村さん、この方は千葉川鉄裁判の被告になっている方です。あるいは鉄鋼連盟の小林さん、こういった方が堂々と入っているのに、被害者である私たち患者の代表は一人も入っていません。審議している最中、既に委員の半分以上の入れかわりがありました。その間、私たち患者会は重ねて重ねて被害者の代表を入れてほしいということを要求をしてきたわけですけれども、ことごとくこれを拒否されてきました。
 かつて二酸化窒素環境基準の緩和のとき、学者である中公審委員のところへ鉄鋼や自動車業界から二千四百億円もの多額の研究費が流れ、政治献金が出されたということが国会でも大問題になりましたけれども、今回もそのようなことがなかったとは言い切れないのではないかと思います。
 このような産業界や加害企業に顔を向けた改悪案は絶対に認めることはできませんし、政府は直ちにこれを撤回すべきであるというふうに思います。
 第二に、改悪案の基礎となった答申づくりの過程で、作業小委員会が専門委員会報告を歪曲したり、都合のよい部分のみを引用して全面解除の理由づけを行っている点です。
 やはり一番のポイントはあの報告の結論部分、「現在の大気汚染が総体として慢性閉塞性肺疾旭の自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できない」、これ自体は科学的に十分評価できるものだというふうに私たちは思いますが、問題はその後に続く、「しかしながら」現状の大気汚染は三十年代、四十年代と同様のものとは思えない、ここの部分です。これが全面解除の口実にされたわけです。しかし、この「しかしながら、」以降の部分は、専門委員会報告書の本文を最初から最後まで全部見ても、どこにもその裏づけとなるデータ、資料はありませんし、もっと言えば、これは環境庁担当者による作文の可能性が濃厚だということです。保事実、昨年九月の十二日に患者会が環境保健部と交渉しました。驚いたことに、そのとき担当課長は、ない知恵を絞って書いたと言ったのです。ここにそのテープもあります。必要でしたら後で聞いていただいても結構です。このテープを起こしたパンフレットもあります。ぜひこういったものをお読みいただきたいというふうに思います。
 第三に、自治体の意見が無視されているということも非常に重大な問題点であります。自治体というのは公害の現場を一番よく知っている行政の最前線です。被害者の実態を一番よく知っております。にもかかわらず、関係五十一自治体の九割が反対しているのに環境庁はこれを無視して、制度の運用に資するということで、反対の意見を十分酌み尽くしていません。これは全くのまやかしであります。全面解除をするという制度廃止にも等しい重大な決定に九割の自治体が反対しているのに、こんな回答は絶対に納得できません。
 公害行政はこれまで常に自治体が主導してやってきました。四日市、川崎市、大阪、名古屋等々すべて公害行政は自治体が先取りしてやって、国はむしろこれに後から追いついてきた、そういう歴史があるわけです。医療救済法をつくるに当たっては四日市市の医療費助成条例がありましたし、補償法をつくる前、旧法と補償法の間では各地で企業の拠出金による療養費の補助費等の助成条例、こういったものがつくられて補償法に結びついていったわけです。大気汚染防止の上でも自治体の上乗せ規制を認めているではありませんか。これは汚染の状況が地域ごとに違うこと、自治体の主体性を認めた上でのことです。今回の見直しで言えば四十一指定地域を個々に調査していないのは全くけしからぬというふうに思います。
 産業界、加害企業の人たちは、大気汚染は改善されたと主張しております。しかし現実は一向によくなっておりません。患者はそのことを肌で感じております。亜硫酸ガスはひところより改善されたと言われています。しかし、この改善されたと言われる亜硫酸ガスによる健康への影響が今も出ていることは、中公審の専門委員会の報告も否定できないとしております。
 一方、窒素酸化物や浮遊粉じん等による高濃度汚染は一向に改善されず、環境基準の達成のめどすら立っていません。とりわけ大都市や幹線道路沿道における汚染が深刻であることは皆さん十分御承知のとおりです。何かNO2が横ばいといいますと、知らない人は余り大したことがないんじゃないかというふうに思われがちですけれども、これはあくまでも平均値であって、〇・〇六、〇七あるいは〇・一を超えるようなそういう濃度がしょっちゅう瞬間的には起こっております。二十四時間そこに暮らしている患者や住民から見れば、これはその瞬間瞬間の空気を吸っているのでなくて、累積した形で、積もり積もった形でこれを吸っているわけですから大変なことです。
 こうした中、公害被害者は依然としてふえ続け、全国四十一の公害指定地域においてもすべての地域で認定患者が今も新しく発生しています。中公審答申は認定患者のうち気管支ぜんそくの患者の増加率が全国的傾向であるとして、原因を大気汚染以外に求めようとしていますけれども、こういったSO2、NO2、粉じん等複合汚染の進行と、そして何よりも汚染物質の中心が亜硫酸ガスから窒素酸化物等に移ってきている、こういったことはもう医学の常識であって、私たち被害者が何よりもこれを体験しておるところです。
 SO2は気道の上部を侵します。言ってみればせきやたん、慢性気管支炎的な症状が出るというふうに言われておりますし、それに対してSO2以上に有毒なNO2、これは気道の下部、抹消、肺の奥深くを侵します。呼吸困難、発作が主要な症状だというふうに言われております。ですからSO2からNO2に濃度が変わった、汚染が変わったということは、慢性気管支炎から気管支ぜんそくのような病気がふえてきている、これが何よりの証拠であります。
 私たちはこの改悪案の国会審議に当たって、衆議院段階から一貫して慎重審議を強く国会の先生方に要請してきました。衆議院では参考人質疑を含めて四回、四日間審議が行われたわけですけれども、良識の府としての参議院では衆議院以上にこの問題について慎重審議を行っていただきたいと心から願っています。中公審関係の審議資料をぜひ政府に提出させることはもちろん、公害発生源や被害者の実情を直接ぜひ視察をしていただいたり、地方行政委員会など、ほかの関係する委員会との連合審査をぜひ行っていただきたいというふうに思います。そして全面解除を前提とするこの改悪案の非科学性、非人道性を徹底的に浮き彫りにしていただきたいというふうに思います。また、本委員会に要望が出されている大阪市での公聴会開催についてもぜひ実現されるよう御尽力いただきたいというふうに思います。
 これまでの間、国会で公害補償法の一部改正が行われるたびに、何回となく附帯決議がなされてきました。私たちはこの附帯決議の実現を要求運動の大きな柱として取り組んできましたが、政府のサボタージュによりその多くは実現されていません。全く遺憾に思います。例えば補償法が成立したときの四十八年九月二十日の参議院の附帯決議にもあるような、窒素酸化物を指定要件に加えたり、指定疾病を拡大する、慰謝料を設ける、地域の実情に即した健康回復事業などは、やられていないか全く不十分です。国会はこの附帯決議が実行されない限り、この改悪法案を通さないとい
う決意でぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。
 以上から、国民の健康を守るためにも補償法の改悪案はぜひとも廃案にしていただきたいこと、むしろ見直すのであればNO2等を指定要件に加えて補償法を改善、拡充するようにしていただきたいことを重ねて訴えて私の意見陳述を終わります。
#8
○委員長(山東昭子君) どうもありがとうございました。
 続いて、日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会委員の峯田勝次参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(峯田勝次君) 私は、ただいま紹介いただきました日本弁護士連合会の公害対策環境保全委員会の委員を務めさせていただいております峯田と申します。
 日弁連は補償法成立以後、今日まで何回となくこの補償法の問題につきまして報告書を取りまとめまして、さらに意見書を関係各方面に提出してまいりました。現在問題になっております指定地域の解除問題につきましても、昭和五十八年の十一月に環境庁長官から中公審に対し諮問がありました後、三回意見書を提出いたしました。当委員会の先生方にも既にお届けに上がっているかと存じます。詳しい、かなり多方面にわたります意見はその中に盛り込んでございますので、ぜひとも御参考にしていただきたいというふうに考えておりますが、当委員会に招かれましたこの機会を利用いたしまして、若干の点につきまして改めて訴えをさせていただきたい、意見を述べたいというふうに思います。
 まず、私どもがこの地域指定解除問題に取り組むに当たりましての指摘の第一点は、手続過程が非常に不公正で非民主的でおったということの指摘であります。
 昭和五十九年の二月付の私どもの意見書の中では、手続的な担保といたしまして概略三つほどの提案をいたしました。一つは被害者側推薦の学識経験者を中公審の環境保健部会の委員会に加える。そして損害賠償制度に習熟した法律専門家を専門委員会の中にも加えていただくこと。そして公聴会を開催するとか、あるいは議事録、資料の公開をする、こういった手続的な保障をする必要があるということを申し上げました。
 なぜ、このようなことを申し上げたかということでございますが、何と申しましても第一種地域の解除問題といいますのは本救済制度の根幹をなすものでありまして、被害者の権利保障の面でいきますと三要件の重要な柱になっておることから明らかなように、スタートになる重要な命題だからであります。
 もう一つは、本制度がスタート以来、民事責任を踏まえた損害賠償保障制度だという構想を持っている以上、この制度は被害者の権利の制度化という本質的な法律上の性格を持っているというふうに考えます。そしてまた、潜在患者を含めました広く国民の健康と生命にかかわっている法律である。このような観点からいたしますと、被害者側の関係委員会に対する参加であるとか公聴会の開催、あるいは資料、議事録の公開という手続は不可欠なものだというふうに私どもは考えました。現に公共料金等の改定問題につきましては公聴会が各地で行われることになっております。
 中公審の審議規則を拝見いたしましても、私どもが提案をしておりますような手続的保障ができないという論拠は全くなかったわけであります。しかし、残念ながらこれまでの経過を拝見しておりますと、私どもの提言はほとんど生かされなかったというのが実感であります。こういう非民主的、不公正な手続過程で行われた今回の改正法案、極めて遺憾な事態だというふうに私どもは考えております。
 次に、指定地域の全面解除の答申が中公審からなされました。その論拠となりました二つの基準についての法律的な見解であります。
 中公審の答申はこう申しております。人口集団に対する大気汚染の影響を定量的に判断できること、これが一つ。二つ目は、地域の患者をすべて大気汚染によるものとみなし得ること。砕いて言いますと、大気汚染の寄与度を判定をいたしまして、大気汚染に関連する諸要因の中で大気汚染が主たる原因であるということの証明がない限りは地域指定は行わない、これに該当しない限りは解除をするという、これが中公審答申の骨格をなす法律的な見解であります。私どもはこの法律的な見解について極めて大きな疑問を持っておる次第であります。
 この点につきましては、まずこのような法律的な見解が認められるものであろうかどうか、さらに従前の裁判所で蓄積された判例理論その他に合致するものであろうかどうか、これが一点であります。二つ目は、答申が言っております寄与度の判定、これができるという前提に立っておりますが、果たしてできるものでしょうか、これが二つ目であります。そして三つ目の疑問は、中公審答申は現行四十一指定地域すべて二つの判断基準に合致しないということで全面解除を答申したわけでありますが、果たして寄与度の判定をいたしまして、それが主たる原因であるかなかったかということについての検討を実際に行っているであろうかという、三つの観点からの疑問であります。
 まず最初に、このような二つの判断基準というのが法理論上認められるかという点でありますが、御存じのように、閉塞性呼吸器疾患は非特異性疾患だと言われております。大気汚染のほかにも、性であるとか年齢、喫煙、体質、アレルギーということをよく言われますが体質の問題、職業性暴露の問題、あるいは気象、生活水準、遺伝因子、さまざまの因子が取り上げられております。
 これらのさまざまな危険因子ないし交絡因子の中で大気汚染の寄与度を判定しろという理論でありますが、私どもは、大気汚染以外のその他の諸要因というのは被害者にとって責任を免除する理由にはならないし、あるいは責任を限定するという理由にもならない。例えば、年をとった。確かに年をとるということを通じまして呼吸器疾患になる可能性が高くなりますが、年をとったということを理由にして、年をとったということと大気汚染の関与の寄与度を比べまして、年をとったということの方が影響が大きければ責任がないというふうに断定していいものかどうか。現在の法律理論上そういうことを認めることはできないというふうに考えます。また、このような考え方が従前の判例理論ないし本制度の発足時の中公審の考え方と一致するかどうかという点について若干の御紹介をしておきたいというふうに思います。
 本制度発足時、昭和四十八年当時の中公審の答申、さまざまな答申がございますが、医療分科会の答申の中にこのような指摘がございます。加害者に法律上の責任を追及できる要素が働いている限り、科学的寄与度を定量的に明らかに分離し得なくても法的因果関係はあるというふうに考えるべきだという考え方であります。この考え方によりますと、大気汚染の寄与度を定量的に分離、量的判定をしろということは言っていないわけであります。
 制度の基本になりました四日市判決はどうでしょう。御存じのように本制度の重要な契機となった判決でございますが、判決は、一字一句ではありませんが、このように指摘しております。他の因子が関与していても、大気汚染と罹患、増悪との間に因果関係があれば損害賠償責任に消長は来さない。このように指摘をいたしておりまして、大気汚染のその他の諸要因との関係での寄与度の判定は一切行っておりません。現にヘビースモーカーだという指摘を受けた原告もいらっしゃいましたけれども、全員につきまして損害賠償の認容をいたしております。
 時間の関係で全部を申し上げることはできないのが残念でありますが、東京の例でいきますとクロムの労災事件という事件がございました。これは六価クロムに暴露された人たちががんにかかった、そのがんとクロムとの間に因果関係があるかどうか、責任を問うていいかどうかという事件でございましたけれども、もちろん、がんは御存じのように非特異性疾患であります。裁判所はこの
非特異性疾患であるがんにつきまして、クロムは誘因であれば十分であるという観点で損害賠償を認容したわけであります。
 もう少し大きい事件でまいりますと、大阪国際空港の事件。損害賠償の点では最高裁まで行きまして、全部認容された事件でありますが、ここでも騒音と難聴、胃腸障害、こういった身体的被害との関係で因果関係があるかどうか、責任を負わせていいかどうかということが大きな論点になりました。ところが裁判所は、騒音がこうした身体的被害の一因であればよろしいという観点に立ちまして損害賠償請求を認めた判決をいたしております。さらに名古屋地裁の予防接種の事件におきまして、予防接種と脳炎、脳症との関係につきましても、たとえほかの原因が関与しておったとしても、ほかの原因だけによってその疾病が生じたということが証明されない限り責任を認めてよろしい、因果関係を認めるべきだという判断でございます。
 少しくどくなりましたけれども、こうしたこれまでの裁判所の考え方その他からいたしますと、中公審がこのたびの判断基準といたしました、寄与度の判定をいたしまして、そのほかの諸要因との比較の中で大気汚染が主であったかどうかというようなことを因果関係の面で判断する必要がないというのがこれまでの裁判所の判例であります。そういう意味では、中公審の考え方は極めて特異なものであったと評さざるを得ないというふうに私どもは考えております。
 次に、そういう因果関係の問題とは別に、では大気汚染とその他の諸要因の寄与度の判定が実際には可能なんですかという問題であります。
 可能だという前提がなければ、中公審の二つの判断基準は意味をなしません。しかし、残念ながら、これまでの疫学調査その他を通じまして、大気汚染とその他の諸要因との間の寄与度の判定というのは不可能だというのが実態であろうかと承知しております。したがいまして、当然のことですが、このたびの答申の中で四十一指定地域の解除を打ち出すに際しましても、中公審もあるいはその委託を受けました専門委員会におきましても、検討の過程におきまして大気汚染とその他の諸要因との間の寄与度の判定をした形跡は一切ございません。どの部分を閲覧、通読をいたしましてもそのような記述はないのであります。そうしますと、四十一指定地域の解除というのはどのような科学的な根拠を持っておやりになって、それが冒頭紹介いたしました二つの判断基準に合致するとかしないとかいう判断をされたのか、私どもは極めて疑問に思うところであります。
 時間が迫ってまいりましたので少し飛びますが、あと一点だけでございますが、実は指定地域の解除要件につきましては、御存じのように、昭和四十九年十一月二十五日付の中公審答申がございます。答申の部分の朗読は省略させていただきますが、私どもは、この四十九年十一月二十五日付答申で言う解除要件というのを今回全部現状に合わないということで排斥をした理由、全く納得できるものがないというふうに考えておりますが、現に答申を見ましても、なぜ、どういう科学的な検討を経た上で、以前取り決めました解除要件を排斥するのかという指摘がないというのが実情だというふうに考えます。
 何か有症率に影響を与える新しい因子が出現したかのごとく読むこともできますし、あるいは以前からある因子ではありますけれども最近になってその因子が有症率に極めて大きな影響を与えるということが判明したかのように読むこともできますが、いずれも、これまでの公衆衛生学の蓄積の経過を見てみましても、有症率に何か特別に影響を与える因子が発見されたというレポートは一切ないというふうに私どもは承知しております。そうしますと、この四十九年十一月二十五日付答申に言う解除要件に従って現在考えてみたらどうかということに帰着いたしますが、これについては環境庁もしっかりしたデータを実はお持ちではないというのが実情ではないかというふうに見受けられます。
 以上、何点か申し上げましたけれども、私ども日弁連といたしましても、現状におきまして四十一指定地域の全面解除をすることは時期が尚早である。専門委員会で解析を経た二酸化窒素との関係も考慮して、二酸化窒素を指定地域の要件に加えて、幹線沿道に対する措置も含めて新しく救済制度の拡充を図っていくことが現在のとりあえずの急務であろうというふうに考えております。これが私どもの現在における提言でございます。
 少し早口になりましたけれども、これをもちまして私の意見陳述を終わります。
#10
○委員長(山東昭子君) どうもありがとうございました。
 ちょっと速記をとめてくださいませ。
   〔速記中止〕
#11
○委員長(山東昭子君) 速記を起こしてください。
 それでは続きまして、京都大学経済研究所教授塚谷恒雄参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(塚谷恒雄君) 塚谷でございます。
 私は従来から、本公健法制度には矛盾がありまして、早急に改正すべきであるという意見を持ち、かつ公表してまいりました。その最大の矛盾点は費用負担であります。すなわち、この制度にありましては、第一種地域で、被害発生の原因行為に接近して、その民事責任の程度に応じて費用負担を行うということにはなっておらず、被害発生の原因行為とはほぼ無関係に、前年度の硫黄酸化物排出量という間接的な行為のみをとらえて擬似的に費用を捻出しているという、こういう矛盾があります。その結果、例えば燃料転換あるいは指定地域の外への転出が可能であった原因者は、場合によっては賦課金の負担が極端に少なくなっております。逆に、原因者ではなかった者が多額の負担をするという事態が現在生じております。もちろん、この事態は、見方によっては大都市に集中した汚染型工場の分散化の効果もありましたけれども、逆に本制度の趣旨からは外れ、地域間の不公平及び賦課金を負担する企業間の不公平という問題を生じております。
 さて、それでは今回の御提案になられておる第一種地域解除の根拠について、国民の健康を汚染から保護するという見地から意見を申し述べさせていただきます。
 姓名ははっきり覚えていないんですが、白雪姫という女性が、かつて毒リンゴを食べたことがあります。彼女が食べたリンゴの中の毒物よりはるかに薄い毒をリンゴにまぜてこれを食べるといたします。そして、例えば三十から四十九歳の比較的頑健な成人にこれを与えて、だれも白雪姫のようには眠らなかったといたします。このとき人は、このリンゴが安全であるというふうに判断するでありましょうか。仮にその毒性が百分の一といたします。これは、このリンゴを食べて死ぬ確率が百分の一ということでありますが、百人がそれを食べて一人も死ななかったときに、そのことをもって根拠といたしまして、このリンゴは安全であるというふうに言うでありましょうか。実は、その確率というのは、百人のうち百人とも死なないという確率は三〇%を超し三五、六%になるのであります。また、がんのようにがん細胞が増殖するまで十年、あるいは発がんの可能性が非常に高くなるまで四十年という潜伏期間があるとき、汚染があって二十年後にだれもがんにならなといって、その物質の発がん性が否定されるわけではありません。
 公健法制度をこのような論理で見るときに、幾つかの問題が出てまいります。
 昨年秋、中公審は、その四月に出された専門委員会報告を根拠に公健法制度第一種地域の解除を答申いたしましたけれども、これは今述べた白雪姫のリンゴの問題から見ますと大変問題があるわけですが、四月の専門委員会報告で「現在の大気汚染が総体として慢性閉塞性肺疾患の自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないと考える。」と述べた根拠は、実は昭和五十五年から五十九年に、環境庁の環境保健部及び大気保全局が行った全国の小学校区を対象とする疫学調査
であります。この二つの調査には重大な欠陥があります。すなわち対象集団から弱者が除外されているという点であります。
 環境保健部の調査では、例えば小学校児童及び同居する父母、祖父母を対象といたしましたが、解析段階では成人は三十から四十九歳に限定しております。小学生の両親というのは一般に頑健で、大気汚染に対する高感受性群ではありません。専門委員会は留意事項として、高感受性集団が比較的少数にとどまる限り、通常の人口集団を対象とする疫学調査では見逃される可能性があると述べております。これに対し中公審は、高感受性集団とは「児童、老齢者、呼吸器疾患罹患者等ではなく、通常の疫学調査において検出し得ないような少数の集団を指している。」と理解し、高感受性集団は本制度の対象外であると述べております。
 弱者集団というのは、実は決して中公審が理解しているように検出し得ない少数の集団ではありません。これは単に先ほど述べました二つの環境庁調査で除外されたにすぎません。例えば環境保健部調査報告書の冒頭にはこのように述べております。成人調査においては、解析対象者が三十代、四十代の比較的頑健な年代であること、また小学生と同居している者であるため、その地域の住民の均等な抽出にはなっていない、このようなまとめをしております。
 このほかにも中公審答申は、専門委員会報告について、現在の我が国の一般環境中に見られる最高濃度レベルの大気汚染影響を含めて評価されているとみなしたり、あるいは現行四十一指定地域における大気汚染も含めて現在の我が国の大気汚染は、地域の有症率を決定するさまざまな要因の中で主たる原因をなすものとは考えられないと述べておりますが、いずれも安全性の証明にはなっておりません。
 頑健な者だけを調べて大丈夫だという判断は、科学的な方法論から見て肯定できません。なぜならば、大気汚染による有害性の証明という方法は、まず無害という仮説を設けて、この仮説を否定して初めて完結するという方法を我々はとっております。弱者を考慮せずに頑健な者を対象にした調査でだれも影響が認められない、あるいは軽微であるという言い方はできないのであります。そこで、そのような調査で無害性が否定されなかったからといって無害性あるいは安全性の証明にはなりません。疫学にはこのような方法論があり、我々はそれを採用して結論を出しているのであります。
 大気汚染影響に関する実験の手法には動物実験、人体実験、疫学研究の三つがあります。動物実験と疫学研究の二つの分野において、我が国は最近世界をリードする知見を上げております。例えば動物実験では、一九八〇年代に入りまして国立公害研究所を中心にしてNO2が〇・〇四ppmという驚くべき低濃度での影響が確認されております。また、ディーゼルエンジンの排ガスの影響では結核予防会結核研究所で発がん性がほぼ証明されております。疫学研究でも、東京都によって呼吸器症状や呼吸器がん死亡率に関する大気汚染影響、特に自動車の証明が現在成功しつつあります。これらはいずれも従来は証明できなかった低濃度の影響、従来は証明できなかった道路沿道の影響、これらを検知するものであります。
 公健法発足当時、制度的割り切りとされていた大気汚染の影響が、現在は相当程度の信頼性をもって科学レベルで証明されようとしているのであります。しかし、今回の中公審答申は頑健者のみを対象に、しかも不十分な解析で行われた二つの調査のみを根拠に出されております。この解析をもう少し詳細にやるならば、あるいは調査対象を指定地域内の高感受性集団に広げれば、中公審答申の中身は全く別のものになったと私は考えるのであります。例えば環境保健部の調査で、中公審あるいは専門委員会も解析をしておりませんけれども、指定地域と非指定地域の危険度を比べてまいりますと、児童のぜんそくに関しては一・四三倍、あるいは持続性ゼロゼロとたんについては二倍、あるいは三十から四十九歳の女性ですら持続性せき・たんの危険度は三倍というふうに指定地域の方が高いのであります。
 また昨年、私が大阪地域で四百人に対して公害保健福祉事業の調査を行いましたが、そのときにお盆や正月にふるさとに帰省した者の体の調子はどうかという問いを出しましたところ、七三%が体の調子がよくなると答え、その滞在日数というのは五・四日、これも非常に幅の狭い答えでありましたが五・四日と、皆一様な答えを出しております。これらは現状の大都市の汚染の影響をあらわしているとも解釈できます。
 また、ぜんそく患者について一言申し上げます。
 ぜんそくの病因が大気汚染ではないということが言われておりますが、大阪では現在重要な臨床疫学データが得られております。すなわち、大阪と金沢のそれぞれ同じ症状を持つぜんそく患者を転地させたときに、大阪の患者の症状は大幅に好転しましたが、金沢の患者の症状は不変という答えが出ております。仮に大気汚染が症状増悪に関係しないならば、このような現象は起こり得ません。
 また、全国のぜんそく患者が増加しているという厚生省が行っておる患者調査のデータもありますが、この調査は、この中身は疫学的視点からはデータが不十分であります。すなわち第一に、昭和四十五年以降現在まで、六十五歳以上の老人層の受療率が十万人当たり一万人から二万人にと増加しております。仮に有病率が一定であっても老人層の受療率が増加いたしますと、ぜんそく患者の数は見かけ上増大してまいります。ちょうど胃がんあるいは肺がんが戦後同じく増大しているといった主張と全く同じであります。人口構成を一定にいたしますと、がん全体の死亡率は我が国では徐々に減少しております。ただし肺がんだけが、例えば昭和三十五年十万人中四・八人が、昭和六十年には十一・五人と二倍以上に増加し、しかも、その肺がんのうち、たばこには関係がないと言われている肺がんの比率が増大しております。
 最後に、国際社会における我が国の環境政策について意見を申し述べます。
 我が国は日本人が思うほど国際社会で尊敬を集めておりません。経済成長が世界経済のバランスを崩す可能性も指摘されております。しかしながら、高度な技術と信義を重んじる人の心をもって環境を守る政策を実施するならば、日本は世界の尊敬を徐々に集める国となり得ると考えます。PPPを経済システムに組み入れ公健法制度の樹立に成功した国は我が国だけであります。この制度を堅持し、さらに発展させることは弱者を保護し、山紫水明の国土を保全することであります。汚染者がその責務を全うするという経済システムに弱者の保護を組み合わせた社会をつくり、豊かな心と美しい国土を持つ国ができれば、これこそが国際社会、将来の二十一世紀における我が国の安全保障につながるのではないかと思います。
 現行制度の根拠を補強して拡充を図るため、最後に私は次の四点が大事であると考えます。
 第一は、現行の被認定者の徹底的な疫学調査を行うことであります。単に臨床データだけではなく、社会生活調査あるいは将来の死亡調査といった疫学調査を実施する点であります。第二点は、冒頭に申し上げました負担の公平化を図ることであります。第三点は、自動車沿道、特にディーゼル排気ガス等による影響の疫学調査を実施し、そして第四に、このディーゼル排ガス対策の技術開発を誘導するような政策、かつて我が国は乗用車について驚くべき技術開発を行いましたが、これと同じような誘導政策をさらに発展させることだと思います。
 以上でございます。
#13
○委員長(山東昭子君) どうも大変ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#14
○小川仁一君 参考人の皆さん御苦労さまでございました。今お話しいただいたうちから限られた時間で幾つか御質問申し上げますから、御意見を賜りたいと思います。
 最初にお話しをいただきました新宿の山本区長さんにお願いをいたしますが、私過日、過日といってもほんの二、三日前でございますが、新宿区を私の足で歩かしていただきました。区役所には参上しませんで大変失礼しました。そして、幾つかの患者さんの家あるいは自排局、あるいは道路の、私盛岡出身なものですからぱっと来るんですね、道路を歩いていると排気ガスのにおいというのが。そんなことを感じながら歩きましたので、幾つかお伺いしたいんですが、まず区の資料、先ほど御説明ございましたが、非常にお子さんが、というと若い年齢の方が気管支ぜんそくに多いという感じがいたしました。大体私の計算でいきますというと、五歳未満が三二、三%、五歳から九歳までがやっぱり三三%ぐらい、合わせて六六%ぐらいの子供たちが患者の認定を受けております。
 それで、患者さんの家を歩いて聞いてみますと、実はもっとあると言うんです。なぜ、その方方が認定を受けないのと言ったら、進学する際、学校に入る際、認定患者になっていると入学するときに虚弱体質あるいは虚弱な子供と見られて非常に入学試験に損をするというお母さん方の認識があって、かなりきつい子供さんでも認定を受けさせないでいるんですね。これは大変なことだと思います。しかし、これは統計に上がっている数字じゃございませんから区長さんはおわかりにはならないと思いますが、傾向的にそういう傾向がございましょうかどうか。これは御所見だけで結構でございます。
 それからまた、新宿では足柄学園という気管支ぜんそくの子供さんを足柄に連れていって、清浄な空気の中で合宿して養護をしておられるというすばらしい施設をおつくりになっております。先ほど二十三区の区長会の会長さんというお話でございましたが、ほかの区でもこのような状況というのがあるものでございましょうか。それは気管支ぜんそくの子供さんを中心にしておやりになっているのでございましょうか。これを国やなんかへ、こういう施設をつくるべきだと、こういうふうな御要望などお気持ちがあったらお知らせ願いたいと思います。
 それからもう一つ、牛込柳町、ひどい地帯でございますね。あそこの測定する場所というのは低地の一番低いところではなくて、これはこの前委員会でも言いましたが、斜面になった高いところで百メーター以上離れたところ、しかも三メーターぐらい高い場所で測定をしておられるんです。もう一つ、新宿へ行きましたら、新宿御苑の中に測定地があるんですね。道路からはたしか五メーターか十メーター離れています。これは樹木の中です。樹木というのは元来空気を清浄する能力を持ちますから、ああいうところで測定したやつが濃度を達成しているとか達成してないとかという判断の対象にならないと思って実はこの前委員会で申し上げたんですが、ああいう場所はやっぱり新宿区の濃度をはかるのに適切でございましょうか。
 また、何軒かの患者さんの家を訪ねましたら、中年の方でございますが、携帯用の吸入器を持ってセールスの仕事をしておられるという方があった。セールスですから自分のノルマをこなさないと大変だというので携帯用のと、こういう状態で、それを吸入するのにセールスの途中、喫茶店に入ってやるわけにはいかない、食べ物屋ではできないと大変困っている。そういう方々がお住まいになっているのは、道路に四万を囲まれた中の、高層ではなく、むしろ二階ぐらいの住宅のずっと密集した地帯なんです。ですから、こういう逆に吹きだまりのように浮遊物質あるいはNOxがたまっている状況があるのではないかというふうな感じがいたしましたが、そういうことについてのお感じがありましたらお知らせ願いたいと思います。
#15
○参考人(山本克忠君) 小川委員の御質疑にお答えします。
 新宿区におきましては非常に年少者の数が多いわけでございまして、これは今、私どもの調査によりますと大体十五歳未満が五三%を占めております。それで、六十一年度の新規認定者の中にも三百二十一人が見つかっておりまして、この点につきましては、先ほど私が意見で申し上げましたように、新宿区におきましてはいわゆる硫黄酸化物の問題はある程度小康状態を得ておりますけれども、やはり窒素酸化物というものが非常に大きな影響を与えているんだろうというふうに解釈いたしますし、同時に新宿区として特徴のあるのは、非常に新宿区は恵まれておりまして、大病院が八つもあるわけでございます。
 そういう意味で、いわゆる患者さんが病院にかかる率も非常に高いということ、それがほかの区に比べて非常に多いのかなという感じもせぬわけではございませんけれども、いずれにいたしましてもそういう形でございまして、私どもも今回のこの問題につきまして、特にこれから先、対応といたしましてはやはり窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質などの広範囲にわたる複合汚染というものに対する対応をやっていただかなきゃならぬということを先ほど申し上げたわけでございます。
 特に私どもの方では、今お話がございましたように足柄に健康学園がございまして、ここに夏約二週間ぐらい、これは女子医大が非常に骨を折ってくださいまして、看護婦も医者もついて、そしてそこで治療しておるということは実際にございます。こういうことで私どもといたしましては、区といたしましてもできる限りそういうものに対応しておるところでございますけれども、しかしながら、数から申し上げますと必ずしも全体がそこへ収容できるというわけではございませんので、そういう点ではまだ十分だとは申し上げかねます。
 そういう意味で、柳町の問題がちょっと話に出ましたけれども、柳町の問題は、確かにお話のようにくぼ地になっておりまして、そしてあそこに悪い排気ガスがたまるという、そういう立地条件もあるわけでございます。一時鉛があるということで大騒ぎになりましたけれども、鉛の方はほとんど最近では検出されないようでございまして、一応小康状態を得ておるわけでございますけれども、私といたしましては、やはりここでこの公害被害補償法の廃止という、第一種地域指定の解除ということはどうしても納得ができないということできょうは伺っておるわけでございますが、どういたしましても、そういう意味におきましては、やはり窒素酸化物についても十分それに対応するだけのものを国におきましても調査していただいて、これに対する対応をしていただきたいというふうに考えております。
 足柄学園は、これ以外にも教育委員会におきまして中学生の移動教室という形で、これは正規の授業をやるわけでございますけれども、広い場所で十分に伸び伸びとやるということで今現実にやっております。小学校も最近千葉県にそういうものをつくりまして、できる限りそういう意味におきましては、立地条件上は非常に条件が悪いわけでございますから、それらに対する対応を十分考えてやっているつもりでございます。
#16
○小川仁一君 ありがとうございました。新宿区は今度は東京都庁がお移りになるわけで、ますます大変な地帯になると思いますところだけに、区のいろいろな姿勢を見ますと、「安全で快適な、みどりのあるまち」とか「健康でおもいやりのあるまち」といったような言葉を掲げて懸命の御努力をしておられますが、どうかさらに区としては調査をして、さっき申し上げましたように、実は高校へ入るのが大変だというので隠しているような子供さんたちまで安心できるような状態をおつくり願いたいものとお願い申し上げます。
 次は、経済団体連合会の柴崎さんにちょっとお聞きをいたしますが、柴崎さんはもと通産省にお勤めの方のようでございまして、通産省においで
の時代から今のようなお考えでございましょうか。
 それからもう一つは、経済団体の安全委ですが、いつごろから経済団体連合会にお入りになっておられるかわかりませんけれども、五十五年の十二月九日に経団連がお出しになった公健制度の改正に関する意見の中で、これは出された本の四十七ページにございますが、「当会が入手し得た環境庁委託による地域指定基礎調査等の結果からみると、疾病の実際の発生状況を示す呼吸器疾患受診率については本制度による指定地域と非汚染地域との間にほとんど差異がみられない。即ちこの事実はこれらの指定地域においてもともと疾病の多発が存在しなかったことを示唆するものと言えよう。」、こういう文章がございます。この「環境庁委託による地域指定基礎調査」と称するものは、このころ御関係がなくて御存じなければいたし方ございませんが、何年ごろにお出しになった、少なくとも五十五年以前のものだと思いますが、どういう種類の御調査かわからないんですが、お聞かせ願いたい。
 それによって「これらの指定地域においてもともと疾病の多発が存在しなかったことを示唆するものと言えよう。」という「これらの指定地域」というのはどこを指しておられるか、もしおわかりでございましたら、ぜひお知らせを願いたいと思います。
#17
○参考人(柴崎芳三君) 先生の御質問にお答え申し上げます。
 御指摘のように私、もと通産省におりまして、公害関係の仕事もやっておったことがございます。ただ、私の在任中にはまだこの公健法はできておりませんで、指定地域の問題とかあるいは患者の認定の問題とか、そういう問題は一切ございませんでしたので、先ほど申し上げた意見との比較はできないわけでございます。
 それから五十五年の十二月九日の経団連のそのペーパーについては、ちょっと今、私はっきり内容がわかりませんので、また必要であるならば後刻いろいろ調べまして御報告申し上げたいと存ずる次第でございます。
#18
○小川仁一君 私も御存じあるかどうかわからないもので、存じておられるならと思ってお聞きしたのでしたから、それで結構でございますが、後で厚生省の方からこの資料をいただきたいと思います。
 そうしますと、六十一年四月二十二日の「早期改正を要望する」という方にはおかかわり合いになっておられましょうか。もしそれの方におかかわり合いになっておるというと、これは経団連月報の一九八六年六月の五十六ページでございますが、部分を抜き出しての質問で失礼でございますけれども、「また本制度には地域指定解除のほか、なお種々の問題が残されており、引き続きその見直しを早急に行なうべきである。」という意見が出ております。種々の問題と見直しということについてどんなことをお考えでございましょうか、お伺いしたいと思います。
#19
○参考人(柴崎芳三君) この六十一年四月二十二日の要望書に関しましては、私深く関係しております。
 したがいまして、ただいまの御質問に対してお答え申し上げたいと思うわけでございますが、この補償制度の改正につきまして一番基本になるのは、やはり指定地域の解除の問題でございまして、指定地域の解除について、専門委員会の御意見も出た段階でございますので、いろいろ具体的な措置をぜひとっていただきたいというぐあいにお願いしたわけでございますが、その後の問題につきましては、いろいろ問題はあるわけでございますけれども、やはりこの指定地域の解除が実現いたしませんと具体的にどういう問題がどう展開するのか、我々としても具体的には取り上げる手段がございませんので、まず指定地域の解除をしていただいた上で、その後でまた慎重に検討して、施行状況を見ながら慎重に検討いたしまして必要なものを各方面にお願いしたいと、このような考え方でこの要望書が出たわけでございます。
#20
○小川仁一君 こういった幾つかの要望書を出しておられますけれども、やはり経団連、企業側としてはその出しております、あるいはその企業がつくったものが出しておりますSOxにしてもNOxにしても、そういったようなものが気管支関係の病気に全然無関係だとはお考えになっておられないでしょうね。
#21
○参考人(柴崎芳三君) 専門委員会の答申あるいは中公審答申にもございますように、SOx、NOxが全然関係がないということはいずれの答申も言っておられませんし、また経済団体連合会といたしましてもそのようには考えてはおりません。
 ただし、昭和三十年あるいは四十年時代の状況と比べますと、またそれ以後のいろいろの医学的な知見、科学的な知見を整理いたしますと、以前考えておったよりはその寄与度は少ないのではないか。特に今、公害認定患者の大半を占めます気管支ぜんそくに関して申し上げますと、これは大気汚染による影響よりは、むしろアレルギー体質あるいはその他のいろいろのファクターが重なりまして、そちらの方の寄与度が大きいのではないかというような基本的な認識を持っております。
#22
○小川仁一君 ここは参考人を呼んでの委員会でございますから、これ以上いろいろ申し上げたいことがあっても申し上げることはできませんけれども、ただ私、鈴木さんの本を読んでみたら、戸外の汚染度が一であったとき、窓その他を完全密閉しないでおりますと、戸内にも〇・六ぐらいの汚染影響があるというお話をしておられたことを今思い出しながら、ひとつ、やはり企業自身の中にも、四日市裁判みたいなものが出てこないうちは煙突を改造しないんだ、SOxの出し方を抑えないんだというような認識でなく、今後お仕事を進めていただきたいという気持ちだけを申し上げて、終わります。
 次は塚谷先生でございますが、「公害研究」というのを拝見しておりまして、一九八六年のVOL16 ナンバー2というものです。思い出していただきたいと思いますが、そこの中で対談をなさっております。鈴木先生と田尻先生と先生のものですが、そこの中でこういうお話がございます。
 都衛生局調査の重大さを、疫学的、公衆衛生学的に理解できない委員がおられます。いま言った疫学の大きな方法論、それから衛生局の行った調査の結果を、もう少し理解しないと、制度に対しては、有効な対処ができないのではないでしょうか。というお話をしておられますが、中公審は東京都の調査を十分分析し、これを参考にしたというふうに御理解になっておりましょうか。審議の過程で、提出時期が非常に近いものですから、あれは余り分析しなかったというふうな御認識でございましょうか。そしてまた、今言ったお言葉の意味についてのお話を聞かしていただければありがたいと思います。
 もう一つ、大阪と金沢の話がありました。非常に興味深く聞きましたが、その点もう少し聞かしていただけることがあったらお願いしたいと思います。
#23
○参考人(塚谷恒雄君) 東京都の衛生局の報告書というのは、中公審の専門委員会の報告が出た後で公表されております。したがって、中公審の専門委員会、いわゆる鈴木委員長が主宰いたしました専門委員会においては、東京都衛生局の報告の検討は行っておりません。しかしながら、十月でしたかに出された中公審、専門委員会の報告を受けた大気部会ですけれども、においては、その委員あるいは政府側の方々が東京都衛生局の調査も十分検討したと述べておりますので、中公審としては検討をしているとみなすのが妥当かと思います。
 しかしながら、専門委員会に付託せずに議論を行うのであれば、何も鈴木委員長の専門委員会が設置される必要はないわけであります。専門委員会が設置されたということは、専門的知見を解析し評価をする、科学的に評価をするという理由がありますので、単なる中公審の大気部会において
解析がされ、評価がされたとは私は評価しておりません。
 そして、東京都の衛生局の調査の重要性というのは、あれはちょうど昭和五十四年度から始まっておりまして、数年間の長い期間をかけ、しかも単なる症状調査ではなくて臨床データあるいは動物実験等を組み合わせた、従来になかった調査であります。一つの調査主体が動物実験、疫学実験あるいは人体実験、多方面の実験手法をまとめて、数年をかけて行ったという意味では、我が国では初めての調査であります。今後も東京都はこの調査を続行されると言明されているやに聞いております。
 大気汚染の影響というのは、暴露されて一年や二年で急に病気になるというものではなくて、非常に長い年月がかかるわけでございます。発がんについていいますと数十年を経過しないとできませんので、この意味でも東京都のような調査が国に先駆けて行われるということに私は前から注目をしている次第であります。
 次に気管支ぜんそくですけれども、大阪と金沢の調査というのは、実はぜんそく患者であっても大気汚染地域におけるぜんそく患者とそれから非大気汚染地域におけるぜんそく患者の症状の違い、あるいは病因というんでしょうか、原因の違いはどういうものであろうかという、そういう目的のもとに調査を行ったわけであります。
 先ほどは転地の影響を申し上げましなけれども、例えば喫煙の影響を調査してみますと、禁煙後にぜんそく患者の症状がどれくらい好転するかという、こういう調査を行いますと、大気汚染地域では改善されたものは四七%、約半数であります。半数の人が汚染地域で禁煙をいたしますと症状が好転いたします。しかしながら、その四七%に比べて金沢の方では八五%の人が症状が好転するわけであります。逆に言いますと、金沢では一五%の人が禁煙しても変わらない、それから大阪では五三%の人が変わらないという、そういう答え方をしております。
 それから、ぜんそくについてもう一言述べさせていただきますと、臨床データですけれども、大阪では昭和四十年代のぜんそく患者、それから昭和五十年代のぜんそく患者について追跡の調査を行いますと、確かに昭和五十年代に入りますとアレルギー反応陽性者が非常にふえてまいります。それ以前はアレルギーではなくて単にSO2等が入った粒子状物質等でやられている可能性もあったわけですけれども、五十年代に入りますといわゆるアレルギーの陽性者がふえてまいります。
 これについては、例えば一九八四年の日本アレルギー学会で東京大学の人が実はディーゼル排ガスと形花粉とをまぜて、混入させて反応を見ると反応陽性率が高まるという、そういう結果も出しております。これなどは確かにアレルギー素因者はふえているわけですけれども、その素因者の反応の中に大気汚染が関与している、症状の増悪に関与していることを示すものではないかと考えております。
 以上です。
#24
○小川仁一君 ありがとうございました。
 私の分は終わります。
#25
○渡辺四郎君 私は、まず新宿の山本区長さんにお尋ねをいたしますが、先ほど参考人として述べられました中で、内閣総理大臣名によるいわゆる報告を求められた、意見を求められたということで新宿区としても報告を出したというお話がありましたが、その報告書に対して環境庁なりあるいは公害対策審議会の方から、何か現地に出てきて調査をするとか、あるいは御質問とか何かあったかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#26
○参考人(山本克忠君) 今の渡辺委員の御質疑でございますけれども、総理大臣に意見を申し述べましたけれども、それに対する返事はいただいておりません。
#27
○渡辺四郎君 全くなかったということですか。
 それから峯田先生に法律の専門家として、私非常に弱いものですからお尋ねしたいわけですが、先生も手続的に大変問題があるんだというふうにおっしゃっておられました。私も、どう見ても当初、これはやっぱり手続的に間違っておるというふうに実は判断をしておるわけですが、公健法の二条の四項でいわゆる地域の指定解除をする場合には内閣総理大臣が審議会並びに関係自治体の長の意見を聞かなければならないと、こうなっております。
 私が一番そこをお聞きをしたいのは、審議会並びに自治体の長の意見を聞かなければならない、これは政令の制定なりあるいは改廃するときの場合です。指定を解除したり、指定したりする場合の政令の制定なんですが、そこで言います審議会並びに関係自治体の長の意見を聞かなければならない、その重みといいますか、今度の場合は二条の一項に基づいて環境庁の長官がいわばあり方について、いわゆる今の公害指定地域の補償のあり方を含めてですが、そういうあり方について審議会に諮問をした。ところが、答申の内容を見てみますと、それが一挙に総理から求められた指定の地域の解除という答申で出てきておる。
 そういう点から見れば、私はさっき新宿の区長さんにもお聞きをしたわけですが、指定の解除をやるということになれば自治体の意見というのも審議会の意見というのも同列ではないか。この四項で言う「並びに」という並列的な扱いといいますか、そこらをひとつお聞かせ願いたいと思うんです。
#28
○参考人(峯田勝次君) ただいまのお話でございますが、補償法の二条四項に基づく意見の聴取ということの重みをどう考えるかという点でございますが、御存じのように、この補償法のシステムは基本的にはすべての実務を自治体が行うということになっております。認定から始まりまして給付に至る一連の行政事務は地方自治体が行うという形になっております。また、指定地域にする際の疫学調査を行いましたけれども、これらも環境庁がおやりになった仕事ではございませんで、すべて関係自治体に委嘱をいたしまして調査をして、その上で関係自治体からの意見を添えた形で地域指定を行うという、こういう手続構造になっております。
 こういった補償法の体系から考えてみましても、骨組み、骨格を考えるのはもちろん国のレベルではございますが、実際に自治体の中で被害の実態を把握し、それを救済をしていくというこの極めて根幹をなす事務がすべて自治体を通してやられてきている、こういったことを考えてみますと、自治体の意見というものはこの補償法の二条の四項の中では大きな位置づけを持っているものだというふうに私どもは考えております。
 実は環境庁の企画調整局長の編集なさいました「逐条解説 公害健康被害補償法」という解説書がございますが、こういうふうに述べております。「対象となる地域と疾病の指定は健康被害に係る救済の前提となり、健康被害者の権利と密接なかかわりあいをもつ一方、その費用を負担する者の拠出義務に大きく関係をもってくる。」、このために諮問手続その他を決めたというふうに解説をしておりまして、被害者の権利問題とも直結をしているという前提でございます。それは行政法上の判例もございますが、指定地域の解除といった処分をするにつきましては、法律上の有効要件にも該当する、それだけの重さを持っている意見聴取であるというふうに考えております。
#29
○渡辺四郎君 それじゃ塚谷先生にお尋ねしますが、私はここに神奈川県下の実態調査、神奈川県の医師会の具体的なレポートとしてまとめた実態調査の結果もいただきましたが、全国の保険医連合会の皆さんが、これは開業医、歯科医師含めて五万六千の先生方で構成されておりますが、結論的にはこういうことを言っておりますね。現行指定地域の大気汚染は依然深刻です。それは専門的立場からの各種疫学調査、日常診療において臨床的見地からも明らかだとし、大気汚染と健康影響との因果関係であれば全国からの二千七百の臨床報告症例もあり、神奈川県保団連の病院、診療所の医師の全員が総力を挙げて取り組んだ広域的気管支ぜんそく患者の実態調査をまとめたのがこれ
ですというふうにまとめられておるわけです。
 その中で、二つの問題でまとめた報告がされておりますが、この調査を十数年前から実施している川崎市、それから足柄上部ですか、それから津久井郡、湖南、厚木、相模原等で一カ月間に受診した患者を対象に調査したものという、これによるといわゆるSOx濃度と患者数とは明らかに比例しているだけでなく、環境基準以下でも高い相関が認められる。NOxについてはさらに相関が高く、工業地帯では云々というデータも正確にそろえております。
 それからいま一つは、先ほど申し上げました全国から出された二千七百のいわゆる臨床の症例ですね、こういうものが例えば学会で発表された場合。私お聞きしたいんですけれども、そうすれば、どの程度と申しますと非常にわかりいい質問と思うんですが、私、相当の大きい重みのある調査研究の発表といいますか、結果になるんじゃないか、一般的に学会発表では。そこらについてひとつ先生の御意見をお伺いしたいと思います。
#30
○参考人(塚谷恒雄君) 一般論として、学会発表しただけでは全く検討に値しません。我々は、科学のレベルでこれが成果である、業績であると評価するのは、学会に投稿いたしまして、匿名のレフェリーがそれを審査し、問題がないと認めて公表されたときに初めて日の目を見るわけです。そして、なおかつそれが単一例だけではなくて、その他の研究者も独立に同じことをやって同じ結果を得た。望ましいのは、それが国際間で同じ結論を得たというところまで合意が達せられると、初めて貴重なものであるというふうに評価するわけです。
 ですから、今御紹介いただいた神奈川県のデータについて私は寡聞にして知らないわけですけれども、早くそういうものをレフェリーつきの学会に投稿されて、他の学者の批判をいただいて、それから物を言うべきであると。もちろん、それが正しいか間違っているかは全くわかりません。しかしながら、手続を経ないことには学問レベルでは何も言わないということでございます。
#31
○渡辺四郎君 ですから、恐らくそういうふうに先生もお考えだと思います。大気汚染問題について、私は福岡県の太宰府に住んでおりますが、八月十七日にこっちに上ってきて、そのまま帰っておりません。私は太宰府ではどうしても朝起きたら深呼吸したいという気になるわけです。ところが、この東京に住んで、私麹町の議員宿舎に住んでおりますけれども、ここにおったら全くそういう気にならないわけです。ですから、完全に私は大気が汚染をされておるというのは自分自身の肌で実は感じておるわけです。それが何であるかというのは今わかっていないというふうにいろいろ言われておりますけれども、全体的に大気が汚染されておるというふうに私自身肌で感じております。
 ですから、今先生にお尋ねしたのは、結局同じような思いで学者の皆さんあるいは医師会の皆さん、あるいは東京都、神奈川、あるいは横浜、川崎にしろ、各自治体が一生懸命、長年の間調査に取り組んできた、その結果というのは大体同じような方向の結果が出ておるのじゃないか、今の患者から見ても。そうすると、私はこれはもう一つの定説となって、非常に重みのあるものとして、こういう全国の臨床の実例まで挙がっておるわけですから、そういうものにやっぱり生かしていかれるべきじゃないか。他の調査結果で全く別な意見が出ておれば別ですけれども、この神奈川の結果が東京の方の結果とも全く同じような状況が出ておりますし、そういう点で実はお聞きをいたしました。ありがとうございました。
#32
○丸谷金保君 最初に、新宿区の区長さんに。
 今お話を承っておりますと、大体年間約一〇%近くぜんそく患者がふえておるというふうなことでございますね。新宿区で四百人台から二千二百人台に第一種指定の患者がふえている、大体一〇%くらいふえているというふうな御説明でございましたが、この間、新宿区の公園の面積はどの程度ふえたのか。あるいはまた人口はドーナツ現象で、ビルはどんどん建つけれど人口は減っているのかどうか。ふえているのかということ。
 それからもう一点、先ほどちょっとお答えを聞き漏らしたのかもしれませんが、小川委員の御質問に対して、新宿御苑の中にある測定地、これがそのままでいいのか悪いのかということの御意見を承らなかったような気がするので、その三点についてひとつ。
#33
○参考人(山本克忠君) 丸谷氏の御質問にお答えします。
 まず第一点の、新宿御苑の中に測定器を置いてあるということでございますけれども、これは私の聞き損ないかよくわかりませんけれども、御苑の中には置いてありません。
 それから新宿区の公園の面積、今ちょっとここで記録を持っておりませんのでよくわかりませんけれども、人口一人当たり大体二・幾ら、三ちょっと欠ける程度に公園はできております。
 それから人口の推移でございますけれども、大体三十二万、少し横ばい状況になっておりますけれども、多少減りぎみということが実態でございます。
#34
○丸谷金保君 柴崎さんにお尋ねいたしますが、先ほど制度の運営には積極的に協力してきたというお話がございました。それはわかるんですが、制度の制定のときには経団連はどうだったんですか。こういう制度を早くつくれというふうに積極的に進めてまいったのかどうか。できたから協力するというのと、制度をつくることに協力するというのはこれは別なことなので、その点聞き漏らしましたのでお伺いいたしたいと思います。
 それから、特にこの機会に聞いておきたいんですが、私は三十一日の日にも総理に、この東京の大気汚染は、いろんな機関が東京に集中する。だから経済界やそういうものを首都から機能分散してくれというさきに、まず政府が思い切って移転するというふうな方法をとらなきゃとても解決できないじゃないか。こういうことに対して経団連としての御意見があれば承りたいと思います。
 それからもう一つ、科学的合理的でない現行法は廃止すべきだということなんですが、どうも今諸先生の話を聞いていると、廃止をする方に科学的な根拠がないような気がしているんですが、この点は廃止するということについて科学的な根拠があるんだと。特に専門委員会の報告、この中では少なくとも慢性閉塞性肺疾患に「何らかの影響を及ぼしている」と、こう言っているんです。これはうそなのかどうか。そう言っているんですが、そういうことは取るに足らぬことだと。もっともこの報告は「しかしながら、」と後へ続いておりますが、しかし影響があるということは専門委員会の報告には出ておりますので。もう、そういう合理性はないんだと。
 それから、もしこれが合理性がなくなったから廃止するんだというのであれば、私は北海道なんですが、今まで北海道なんか負担金を相当大きく払っているんですが、これは一体どんな合理性があったんだと。今、合理性がないから廃止せいというのなら、今まで北海道その他が拠出していたこれらにはどんな合理性があったのか。
 以上の点についてひとつお願いします。
#35
○参考人(柴崎芳三君) お答え申し上げます。
 つくるときの協力の問題でございますが、これは例の四日市の裁判その他公害の最も激しい時期でございまして、公害問題が一つの社会問題として大変重要な様相を呈しておりました。経済界といたしましても公害因子の排出という点につきましては十分認識しておりましたし、また濃度その他をとりましても大変高い濃度の地域が現実に存在しておりました。今回の専門委員会の答申におきます地域における定量的な観察ということにも該当するような状態でございましたので、何らか患者の皆さんに対してこれを補償するという方法があれば、これは産業界としても協力すべきであろうという気持ちは全体を通じて存在しておったわけでございます。
 ただ、やはりこのような制度をつくる場合には十分慎重に、かつ、その内容を十分練った上でつ
くっていただきたいということで、経団連といたしましては一番重要な柱として公費負担の問題を出しておりました。公費負担と申しますと、結局その当時におきましても公害指定四疾病につきましては、大気汚染も関係があるけれども、自然の状態で発生する患者も当然あるはずである。特にぜんそく関係につきましては、先ほども申し上げましたように、アレルギー体質その他も関係があるということはその当時からはっきりしておりましたので、そういう自然的に生ずる患者に対してまで公害患者として認定された場合に固定発生源の側でその補償の責めを負うことは、これはちょっと行き過ぎではないだろうかという点が第一点でございます。
 それから第二点は、負担金の徴収に関しましてやはり手続上いろいろ難しい問題がございますので、中小淵源についてはすそ切りを行いました。そのすそ切りに関してまで指定地域の固定発生源のグループが負担する必要があるかどうか、これはやはり国あるいは地方公共団体の公的な問題ではないか、そういう問題も含めまして公的な負担もがみ合わせて産業界としても応分の賦課金を負担したいということを強くお願いしたわけでございますが、いろいろの関係がございまして八割は固定発生源、二割が自動車重量税ということでまとまりまして、その結論につきましては、実は産業界の内部でもいろいろ意見がございました。しかし当時の状況から見ますと、こういう形でもこの制度が合理的に運営されるならばやむを得ないであろうということで、全面的に協力の体制をとったというのが作成時の状況でございます。
 それから第二番日の政府の移転の問題でございますが、これは余りに大きい問題でございますので、経団連の中ではいろいろ議論もあるように聞いておりますけれども、この場におきましてはちょっと私からの意見の開陳は控えさしていただきたいと思います。
 それから、第三番日の科学的合理的でないから廃止する。じゃ廃止する方に合理的な根拠があるかどうかということでございますが、特に専門委員会の意見の中で、何らかの影響があることはこれは明らかであるという表現を先生、今具体的な内容として取り上げられたわけでございますが、実は経団連といたしましては、この制度は著しい大気汚染がございまして、著しい大気汚染の中で四疾病が多発する状況を前提にして、緊急的に患者の皆さんの補償に対して全面的に協力するということが法の趣旨であるというぐあいに考えておる次第でございまして、しからば著しい大。気汚染、また疾病の多発というのはどういう状況かということも中公審の以前の答申の中にはっきりしておるわけでございますが、今回専門委員会で検試されたSOx、NOxあるいはSPM等々の状況と、それから医学的な観察との関係を克明に当たってみますと、著しい汚染下における病気の多発という概念には当てはまらない。
 したがって法の一番基本に置いております。そういう枠組みから考えますと、もう現在の状況では指定地域をそのまま残しておくということはちょっと法の趣旨にもそぐわないのではないかということを考えまして、我々は廃止の方向にも合理的な根拠ありというように考えておる次第でございます。
 それから北海道を一体どうしてくれるかという最後の先生の御質問でございますが、実はこの制度そのものが御承知のように指定地域、暴露要件、四疾病という割り切りでできておりまして、しかもその割り切りの根底には疫学における相関関係を法的な因果関係としてそのまま採用するという形をとっておるわけでございますが、疫学における相関関係というのは公害因子がふえれば相関的に患者もふえる。しかし公害因子がなくなれば患者も相関して減るというのが大原則になるわけでございますが、一たんこの制度をやっていますと、公害因子は減っております。SOxは大幅に減り、NOxも平衡状態あるいは若干減っております。SPMも地域によっては相当減っております。
 そういう減っている現象が出ておるにもかかわらず、患者は減らない。これはもう明らかに疫学における大原則とは全く逆の傾向が出ておるわけでございまして、この点を我々はこの制度の不合理性というぐあいに言っておるわけでございますが、その不合理で北海道の企業の皆さんには大変御迷惑をかけておる次第でございますが、ぜひこの改正案を一刻も早く通していただいて、それ以外に救済の道はないと思いますのでよろしくお願いいたしたいと思います。
#36
○丸谷金保君 ちょっと質問とずれているんですが、時間ございませんので。私の申し上げたのは北海道からお金をたくさん取る合理性がないのに、今度は廃止する方だけ合理的でないから廃止するというのはおかしいということを申し上げたんですが、その点はちょっと時間がございません、患者の会に聞かなければならないことがありますので。
 実は、今もいろいろお話がございましたのですが、既存の患者については今までどおりの給付が行われるのだからという意見もございました。実害はないのだと。にもかかわらず、大変患者の会の人たちが熱心にこういう法案を通してもらっては困ると、そういうことを言っている根拠。
 それからもう一つは、中公審その他のテープがあるということでしたが、そのテープは私たちの方にもコピーをとってちょうだいできますかどうかということの御返事をお願いいたしたいと思います。
 もう時間がないから、それだけにしておきます。
#37
○参考人(神戸治夫君) 何で私たちがこの全面解除に強く反対しているか。新規の認定患者の切り捨てにはなるけれども、既存の患者は守れるのじゃないか。そういう法案になぜ反対するかということですけれども、一つは何といっても私たち患者の一番の要求は一日も早く健康を取り戻したい、苦しみから解放されたいということです。そういうことで、決して補償費をもらえばよいという考え方で私たちこんな苦しい運動をしているのではありません。
 そして二点目には、この補償法の改正案の中身から見ても、既存の認定患者の切り捨てにつながるのじゃないかというふうに思われる点があるわけです。それは、例えば同じ大気汚染が原因で病気が一たん直って再発した場合、指定地域を解除した場合、もう一回再発した場合、そういったときには今回は全く救済する道がないというような点がありますし、それから何よりも今度の全面解除とセットになっている基金構想、基金の問題そのものが新規の患者の切り捨てと既存患者の切り捨てにつながる。
 環境庁が出されている資料も手元にありますけれども、六十二年度の予算ベース八百七十億円を、これも将来続くということで線引きしておいて、その上で、さらに毎年六千人ずつ減っていく、減った分のお金を基金の方に回すと。先日の委員会で長官は、既存の患者は守るんだということを胸張っておっしゃいましたけれども、制度的にこういう仕組みになっている以上、私たちは非常に不安を感じているわけですし、また、この間の補償法の運用状況を見ましても、障害等級がどんどん一級を二級にとか、二級を三級にとか、そういうことで切り捨てられてきています。それから六歳以上のぜんそく性気管支炎を打ち切りというような課長通達も出されましたし、それからフローボリュームを、そういう新しい検査を踏み込んでの制度的な患者の切り捨ての策動もなされました。そういったもろもろのこれまでの運動の経過から見ても、既存の患者を守れるという点については非常に信用しがたい、不安だという点を申し上げたいと思います。
 それから、先ほどのテープの件ですけれども、残念ながら中公審のテープというものについては私たちにまだ公開されていません。先ほどお見せしたのは環境庁との交渉のテープでありまして、必要であれば後日、丸谷先生の方にもお聞かせしたいというふうには考えております。
#38
○石井道子君 参考人の皆様方におかれましては、大変御多用のところを本委員会のためにお越しいただきまして、本当に心から感謝を申し上げます。
 また、この公健法改正を大変心配されまして、患者さんの皆様方が大変御不自由なお体で苦しそうにこの陳情に図られたり、また委員会にも大勢傍聴されているわけでございまして、大変私も心が痛むわけでございますが、公害患者の皆様方が十分な治療を受けられまして、そして少しでも早くよくなるように、苦しみを少しでも和らげるための血の通った行政が必要ではないかとつくづく感じるわけでございます。
 まず、神戸参考人にお伺いをしたいと思います。
 このたびの制度改正の第一の点は、第一種指定地域の解除でございますが、このことにつきましては、既に認定された患者さんについては今までどおりの補償が続けられるということでございます。また、その費用を確保するための中身になっているわけでございますが、神戸参考人はこのことについては反対をされているわけでございますけれども、先ほども補償法の改善をすべきであると御要望もなさっておりましたけれども、なお一層改善をされるための具体的な方法がありましたらばお聞かせをいただきたいと思います。
 また、もし、この法案が仮に通ったといたしましたときの神戸参考人の御感想、御要望もあわせてお伺いをしたいと思うわけでございます。
 また、この公健法の改正案に盛り込まれておりますもう一つの柱であります、大気汚染の影響による健康被害を予防するために必要な事業を行うことになっております。健康を守る上で積極的な意味があると考えておりますけれども、今まで患者さん、また家族の皆様方のために大変な御苦労をされ、お世話をなさっておりましたその御経験から、この健康被害予防事業を効果的に実施していく上で、その内容についての御意見を伺いたいと思います。
#39
○参考人(神戸治夫君) 先ほどからさまざまな議論を聞いているわけですけれども、私たちは空気を吸って生きているわけです。その中で亜硫酸ガスと窒素酸化物を使い分けて吸うということはできないと思うんですよ心経団連の方が言われているような亜硫酸ガスが減ったからほかの物質がふえていてもおかしくないというようなことの議論にはならないというように思います。
 制度の改善の方向として、私たち患者の方としては、何よりも今の大気汚染の主役である二酸化窒素や浮遊粉じん、亜硫酸ガスとあわせてこういった汚染物質についても地域指定の要件に加えていただいて、さらにまだまだたくさんいる被害者、患者さんを救済してほしい。指定疾病についても、慢性気管支炎やぜんそく性気管支炎、肺気腫、こういった現行の四つの認定疾病だけじゃなくて、目や鼻の病気、そういった大気汚染が原因と思われるような病気についても拡大してほしい。それから補償費についても、今健康な方の約八割の水準になってますけれども、これについても一〇〇%支給してほしい等々、さまざまな要望があります。
 そういった方向で、むしろ今回の改正案について反対をしているわけですけれども、仮に見直すのであれば、補償制度をもっともっと改善、拡充の方向でやっていただきたいというふうに思います。
 それから、通った場合の感想ですけれども、これは私たちは今、全力を挙げてこの補償法の改悪案を廃案にしてほしい、そういう運動をしている最中でありますし、仮にもそういったことはとても私、今の段階で述べる場はありません。ぜひ、この参議院の審議の段階においてこの法案は廃案にしてほしいというふうに考えております。
 それから三つ目の予防事業の問題ですけれども、これも指定地域全面解除をした後のこととして、基金に伴ってこういった事業、新しい事業が地方自治体あるいは補償協会を通じてやられるということなんですけれども、これについても、基金、全面解除との引きかえだという点で本質的にやっぱり問題があるというふうに考えていますし、もちろん健康調査、医療等々こういった中身そのものについては決して反対ではありませんけれども、ただ、私たちこれまでの経過から見て現行の公害健康被害補償法、予算的に見ても一千億のうち、もうほとんど九九%以上が補償費、お金の支払いに終わっている。肝心な健康回復、患者さんにとって一番大事な健康回復の方の予算というのは一%にも満たない、年間二億か三億円ぐらいしか上がらない。
 そういった中で、こういう環境庁がやられる新しい事業、こういった問題についても、なぜ今の段階でやるのか、補償が始まった段階でもっとやるべきじゃなかったかというふうに率直に思います。今行われている保健福祉事業についても転地療養等、あるいはぜんそく教室等をもっともっと拡充しなければならぬ点があると思いますし、その点では今まで以上に私たち患者の状態、あるいは日ごろ治療に当たっている主治医の先生方の意見を踏まえてやってほしいなというふうに考えております。
#40
○石井道子君 ありがとうございます。
 それでは次に、山本参考人にお伺いをいたします。
 まず第一は、費用の負担の問題でございます。この公害健康被害補償制度は、社会福祉制度ではなくて民事責任を踏まえた制度として全国の企業から費用を強制的に徴収をいたしまして、指定地域内の患者に補償するという方法をとっているわけでございます。六十年度の費用負担は、工場等の固定発生源が負担する賦課金が約七百二十億円でございまして、そのうち指定地域内の企業が三五%の二百五十億円でございます。残りの六五%が四百七十億円でございまして、それはその他の地域ですべて負担をしているような状況でございます。まさに地方が東京とか大阪の大都市を支える形になっているわけでございますけれども、ちなみに新宿区につきましては、新宿区内の患者のために使われた額というのは約十二億六千五十万円でございまして、新宿区の企業が支払った賦課金の総額というものは千四百二十万円でございます。
 新宿区長さんの総理大臣からの意見を求められました御意見の報告の中にいろいろございますが、「費用負担方法の問題を含め、現行公害健康被害補償制度を都市型複合汚染の状況に適合したものとするべきであります。」とおっしゃっているわけでございます。公健法を都市型複合汚染の状況に適合したものとすべきであるというふうにおっしゃっているわけでございますが、それとまた、先ほども調査研究を十分に行ってほしいとおっしゃっていらっしゃるわけでございます。この都市型ということは例えば新宿区内の患者の補償に要する費用のうち、工場等の固定発生源については新宿区内の企業から徴収して賄うというようなことを含めてお考えなのでございましょうか。
#41
○参考人(山本克忠君) お答えします。
 ただいまの費用負担の方法の問題でございますけれども、現行の費用負担につきましては、御案内のように固定発生源が八割、移動発生源が二割となっておりますけれども、しかし窒素酸化物の大気汚染への寄与率は移動発生源七割、固定発生源三割でございまして、都の調査でもこれが明らかになっておりますが、制度の改正に当たっては、費用負担についても実情に合った仕組みにしていただく必要があるんだというふうに考えておりますので、その点はよろしくお願いいたしたいというように思います。
 なお、区民の健康を守る立場から私どもは保健所を中心に今後疾病予防、健康づくりのための対人保健サービスを進めていくことについてはやぶさかでございませんけれども、新しい事業につきましては詳細は承知しておりませんけれども、従来の事業や現に行っている公害保健福祉事業等との機動性、有機性あるいは整合性を配慮しながら効果的な実施に努めていくように私どもは考えております。
   〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕
#42
○石井道子君 それから、今おっしゃいましたけれども今度の法案の中に健康被害予防事業がございます。この事業は今までも、現行の公健法の中にも公害保健福祉事業として地方自治体の負担が四分の一ということで法律で決められまして存在をしていたわけでございますが、なかなか十分に運用されていなかったのではないか、そんなような自治体もあるようでございまして、今度はこの改正案におきましてはその負担がゼロになるということでございますから、また基金によって行われるわけでございますから、その運用の仕方というのは非常に柔軟に事業が行われるのではないかと思いますので、その辺の問題につきまして地方自治体が協会と並んで重要な役割を果たす立場になるというふうに思うわけでございます。現段階ではまだ法律が成立してはおりませんからお答えにくいかもしれませんけれども、新宿区の区民の健康を第一線で守っておられるお立場から、この改正案が成立した場合、新しい事業をどのように活用したらよろしいか、そんなことをもうちょっとお話しいただけますでしょうか。
#43
○参考人(山本克忠君) 今、石井委員からの御質疑でございますけれども、それらにつきましては先ほどもちょっと申し上げましたように、従来の事業、現に行ってきております公害保健福祉事業等については、そういったものとの有機性あるいは整合性を十分配慮しながら、効率的な実施に努めていくというふうに考えております。この点につきましては、ひとつ国の方におきましても十分配慮していただきまして、何と申しましても自治体の懐ぐあいというのは必ずしも潤沢ではございませんので、そういう意味では大変な経費がかかるということになりますと、区民の健康を守っていくという立場も崩れてくるということになりますので、その点につきましては十分にひとつ国の方でも御配慮いただき、また我々の方も区民の健康を守るという立場からできるだけの努力をしていきたいというふうに考えております。
#44
○石井道子君 次に、柴崎参考人にお伺いいたします。
 もう時間がありませんので簡単に申し上げますけれども、今回、産業界としても既に認知をされております患者についての補償を行わなければなりませんし、費用も負担をしなければなりません。そしてまた、新しく行われる基金事業のための拠出も行うわけでございますけれども、このような健康被害予防事業の財源である基金について、経済界としてどのような御意見を持っていらっしゃいますでしょうか。
 また、いろんなNOxの環境基準に達するための努力をあらゆる角度でしなければなりませんが、産業界として積極的にこのことについても対策を立てていくべきではないかと思います。どのようなことをお考えになっておりますか、御意見を伺いたいと思います。
#45
○参考人(柴崎芳三君) 基金の創設につきましては、本年二月の経団連の理事会におきまして正式に案件として諮りまして、全会一致で基金の創設については全面的に協力いたしますということを決定いたしまして、環境庁の長官にも既に御連絡申し上げております。したがいまして、その点は経団連として責任を持って実行いたしたい、かように考えております。
 それから、第二点はNOxの対策でございますね。NOxの対策につきましては、各方面からいろいろ言われておりますように沿道対策が最も重要な対策になろうかと思います。したがいまして、この基金で行う事業としても重要な事項として取り上げられると思いますし、また、NOxの排出源であるディーゼルあるいは一般の自動車その他につきましても、環境庁あるいは運輸省その他の関係各省の御指導によりまして最大限の努力を傾注いたしましてその対策を実行する、かような考え方ではっきり方向を決めておるわけでございます。
#46
○石井道子君 ありがとうございました。
#47
○高桑栄松君 参考人の皆様大変御苦労さまでございました。いろいろいい御意見を承らせていただきましたが、二、三思いついたことを質問させていただきたいと思います。
 最初に柴崎参考人に承りたいんですけれども、専門委員会報告が中公審答申に引用されたわけですね。その中で、現状で大気汚染の健康影響への可能性は否定できない、この解釈が大変問題になっているのではないかと私は思うんですが、これは経団連側としてはこの可能性が否定できないというのは、イエスととるのか、ノーととるのか、ちょっと伺いたいと思います。
#48
○参考人(柴崎芳三君) イエス、ノーの答えではちょっと舌足らずで誤解を招くおそれがありますので、その受け取り方を御説明申し上げたいと思いますが、影響は否定できないということは確かに専門委員会で指摘されました。ただ問題の焦点は、先ほど申し上げましたように、現在のこの制度が著しい大気汚染のもとにおいて病気が多発することに対する対策として厳然として存在しておるわけでございまして、そういう前提条件から申し上げますと、ある程度の影響が否定できないという程度の関係では、この制度の中の具体的な手段としてこれを取り上げるということは、ちょっと法の趣旨から見ましても逸脱しておるのではないか、かように専門委員会の別の箇所でそういう表現がございますが、この考え方は経団連としても全く同一の考え方でございまして、したがいまして影響のあることは否定いたしません。しかし、この制度の中にそのままその考え方が生かせるかというと、それはちょっと逸脱の可能性があるのではないかということで、その点は否定しておるわけでございます。
#49
○高桑栄松君 何かよく私はわからなかったんですけれども、これは専門委員会報告にきちっと載っているやつですから、その解釈が問題で、鈴木委員長もこれに対して相当なコメントを別な雑誌に載せておられるわけです。
 それでもう一つは、要するに全面解除ということは、こういった報告書をもとにして結論が出てきたと。いや、これは、経団連が中公審じゃございませんからね、採用されたのに対するお考えを聞いているわけですけれども。私は私の考えがあるんですけれども、環境が改善をされた、SO2ですね。しかしNOxは依然として横ばいである。それからSPMはこれも余り変わりはない、場所によりますね。
 それで、これは四十一地区全部が同じレベルに、同じように変動しているのではないと思うんです。したがいまして、SOxが環境基準の半分くらいになったという一つの事実を私は踏まえますと、見直しということはあってもいい。しかし全面というのは、オールオアなんてことはあり得ないんじゃないか。つまり、地域別に依然として高濃度なところもある。それはSOxだけではなくて、当然大気汚染健康影響というのは複合汚染でございますから、ですから複合汚染という立場で当然高濃度の場所とそうでない場所とで、言うなれば非常に簡単な言葉で言えば地域別の指定というか、そういったことで、四十一全面地域解除ではないはずだ、科学的なデータに基づいてそういう判定をすべきだと私は思っているんですが、お考えはいかがでしょうか。
#50
○参考人(柴崎芳三君) ただいま先生の御指摘のようにSOx、NOx、SPMではそれぞれ様態が違っておると思います。この点をとらえて複合汚染という考え方が存在しておることも承知しております。ただ、この複合汚染とは一体どういう影響があるかということについて、医学的な詳細な知見あるいは科学的な知見というものが出ておるかといいますと、私たちが見る限り、そういったものは存在しません。概念として複合汚染ということはありますけれども、なかなかそれを現実にこれがこうだというような形で、著しい大気汚染であり、あるいは疾病が多発するものであるというような関係、関連でこれをはっきり証明したものは、私個人としては存じておりません。
 したがいまして、物を判断する場合には、やはり四日市の公害裁判のときからの経緯をずうっと
考えますと、一番主たる指標となるのはSOxではないか。SOxはただいま先生の御指摘のように環境基準の半分以下に、四十一地域の全部そういう形になっておるわけでございますので、そういうことを考え合わせますと、四十一地域全面的な指定解除ということも科学的に正しい方向ではないかと、経団連としてもかように考えておる次第でございます。
#51
○高桑栄松君 この法律はSOx被害対策、被害補償法ではないんだから、それはSOxだけでやるべきことではないと私は受け取りますけれども、今のお考えに対して、ここは討論の場じゃないので、お考えを承ったこととして、疫学の御専門であられる塚谷先生にお伺いしたいんですが、一つは健康影響への可能性は否定できないというのを、これはイエスなのかノーなのか、それが一つです。
 それからもう一つは、現在複合汚染のデータがないということを今、柴崎参考人がおっしゃったわけですが、なければ肯定も否定もできなくなってしまうんだから、解除はできなくなるんじゃないかという、非常に単純な考えが私は出てきたんですけれども、その辺についてのお考えを承りたいと思います。
#52
○参考人(塚谷恒雄君) 影響がなければ、ないというふうに積極的に明示するのが学術的な論理というか、表現の方法です。影響は認められなかった、それ以外の表現の仕方は影響あるという、イエスということだと思います。
 それから、複合汚染の影響が存在しないということですけれども、疫学的に見ますと、実は現在の知見が不十分であるという評価と同じ評価が四日市の疫学調査に対しても当てはまると思っております。あの疫学調査は、この制度の基本になったので、どなたも科学的面からは評価をいたしませんけれども、現在の科学の目で見ますと非常に不十分な疫学調査であったわけです。もちろん濃度は高かったわけですけれども。
 それで、四日市の疫学調査に比べると、最近得られた疫学調査の方がはるかに科学としての論理、あるいは整合性、あるいはほかの調査との一致性というのは高くなっております。しかし残念なことに、いつでしたか、この制度の地域指定の拡大という、これは一九七八年の六月に名古屋、東大阪、八尾という各地が指定されて、それ以降指定という作業は行われていないわけです。疫学調査というのは、先ほど言いました東京都の疫学調査それから環境庁の疫学調査のほかには、指定地域の要件を満たすための症状調査という意味合いで、各自治体が大学等の援助を得て行われてきて、その地域指定の作業中に得られた疫学知見が四日市よりははるかに科学的になっているわけです。
 しかし、七八年以降そのような調査が自治体では行われなくなってきましたので、それから、かつ既存の指定地域内の疫学調査も行政的には行われていないわけです、東京都を別にしまして。その意味で七八年以降ある程度ストップしておりますけれども、しかし疫学調査の中身としては非常に高い精度が得られております。
 複合汚染の影響については、これは我が国の伝統的な考え方でありまして、単体の影響を見るのではなくて、複合した大気汚染状況下で単体、SO2とかNO2とか、単体の汚染物質を指標として影響を見るという、こういう考え方をとっております。ですから、四日市の疫学を初めとして現在までの疫学調査はすべて複合化の汚染の影響を見ているわけであります。
 以上です。
#53
○高桑栄松君 専門委員会報告の基礎になった調査資料は環境庁の実施した二つの資料であったというふうに承知しておりますけれども、私今データをちょっと忘れてきたんですけれども、あの両方の調査の結論のところで欄がありますね。一%と五%の有意性に丸と二重丸がついてます。この項目は七割から八割有意性があると書いてある。そして、これは明らかに複合汚染のことを言っている。それ以外のことはないです。複合汚染の汚染度ということと、学童と親のいろんな組み合わせで有意性を見ているわけです。あれを見ますと、七割から八割は一%または五%以下の有意差なんです。
 私は医者でございますので、疫学も少しかじっておりますので、私自身は主たる原因ということに対して、先生、がんのことおっしゃったから、発がん物質がある、それだけでは発がんしないと。しかし、発がん促進物質が別にある。一緒になったらがんになる。どっちが主原因なんだ。発がん物質ではないかと思う人もいるでしょうが、促進物質がなきゃ起きないんですから。だから、例えばベースに何があっても、それに対してそれを刺激するものがわずかにあっても主たる原因と言えないわけではない。私は、それもやっぱり主たる原因かもしらんな、それさえなければいいはずだということも言えると思っているんです。
 それで先生に、疫学者でございますから伺いたいと思うのは、七割か八割あの項目の中で有意性があるのに、すべてが有意性がなかったら合理性はないと言うのだろうかと思うんです。というのは、環境庁調査が唯一の基礎であったとすれば、この基礎から出発して物事を考えてもらいたいと思うわけです。それで健康影響は否定できないと言っているのに、それを否定しちゃったのではないかなという、私はそれを主張しているわけです。私が申し上げているのは、地域別の見直しは私は考えてもいいと思う。しかし、全面解除は明らかに理由がないと私はそう思っているわけですが、先生のお考えを聞きたいと思うんです。
#54
○参考人(塚谷恒雄君) 環境庁の疫学調査は、先ほども私ちょっと言いましたが、疫学的には評価しておりません。非常に不備が多いわけです。例えば弱者が入っていない。それから学童といえども小学校の一年生から六年生までの比率が、あの激しい成長期の学童の比率が全国ばらばらになっております。それから社会条件が違うところの、撹乱要因と言っているんですが、攪乱要因が気象的にも社会的にも非常に違うところの学童を取り上げて調査をしているわけです。ですから、その調査から得られる結果というのは、仮に大気汚染の影響があったとしても明瞭には出ない、検出されないということが調査の計画書を見た段階で予想されるわけです。
 しかし、それにもかかわらず、今先生がおっしゃったようにあの調査の結果には一%有意、五%有意というそういう影響が否定できないという項目が出ているわけです。私は、もしもあの調査を指定地域を加味して、それこそ四十一指定地域あるいは高濃度の汚染地域について行ったのであれば、これはもっと強くはっきりと著しい大気汚染の影響による疾病の多発というものが手にとるように出たのではないかという、そういう予測ですけれども、を持っているわけです。
#55
○高桑栄松君 私が国会あるいはこの委員会で主張していることのもう一つは、健康と疾病というのは連続したものなんだから、去年まで六千人の新患者が出て、きょうからゼロになるということはあり得ない。だから、これはもしそういうことを条件として考えてみても中間措置というものがないのかという話をしてきているわけです。
 それで、先生のホランド疫学というものの批判というか、それを拝読いたしまして、あそこに盛られているものの一つで私が注目をしたのは、幼少時に大気汚染にさらされたときに、それが二十になっても影響が残っているということがあったと思うんですが、もしそうだとしますと、環境条件がSOxだけをとっても環境基準の例えば二分の一になったそこだけをとるとすれば、その時点以前の部分の影響は私は考えてもいいのではないかという、私自身余り納得して言っているんじゃないんですが、何かそういう措置が要るのではないかという気持ちを持っていたんです。だからホランド疫学の、先生のを拝読して、ひょっとすると私の考えがやっぱりよかったかなと思っているんですが、いかがでしょうか。
#56
○参考人(塚谷恒雄君) 私も先生と同意見でございます。特にまだ科学のレベルでは立証はされて
いないわけですが。肺がんという問題がございます。肺がんには三種類ありまして、扁平上皮細胞、腺がん、それから未分化のがんというふうにあるわけです。戦後すぐにアメリカを中心といたしましてたばこの害が叫ばれていたわけですが、それは扁平上皮がんであります。腺がんにはたばこの影響はないわけですが、これが徐々に現在我が国でふえつつあるわけです。その他のがんは、女性の肝臓がんを別といたしまして、すべて減少傾向にあるわけです。あるいは一定レベルにコンスタントになっておるわけですね。
 がんというものを考えますと、先ほどおっしゃいましたイニシエーター、それからがんは一つの細胞から始まって十年、二十年、三十年たってようやく臨床的に検知する増殖細胞になるわけですが、その間の長い期間が発がん物質の影響となってあらわれるわけです。大気汚染物質の中にも明らかに発がん性に関連性のあるものが従来から指摘されているわけです。ただ幸か不幸か、我が国ではそれが学問レベルで検知できるまでの大気汚染の歴史がないわけです。昭和三十年代後半からようやく三十年間たったくらいでありまして、もう少したつとその影響がもっとはっきり出てくるのではないかという懸念を私持っております。
 もちろん、慢性気管支炎症状あるいは肺気腫等も治療に際しては非常に困難な病気で、単に汚染がなくなったからといって患者が一年や二年、あるいは三年や五年でなくなるものではないわけですけれども、慢性気管支炎、肺気腫、呼吸器症状と同じように呼吸器の肺がんというものに注目をしなければならないと思っております。
#57
○広中和歌子君 参考人の皆様方どうも御苦労さまでございます。
 最初に新宿区長でいらっしゃる山本参考人に御質問させていただきます。
 先ほどのお言葉の中で、公健法を改正するに際しては慎重かつ適切にというお言葉をお使いになりましたけれども、この慎重かつ適切にというのは具体的にどのようなことを考えておっしゃったことでございましょうか。
#58
○参考人(山本克忠君) 東京都が行いました複合大気汚染にかかわる健康影響調査でございますけれども、窒素酸化物の健康影響が示唆されておりまして、この点につきましての解明が十分になされていないままでございますけれども、地域指定を一律に、また一斉に解除するということについては時期尚早ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#59
○広中和歌子君 つまり反対でいらっしゃるわけだと思いますけれども、東京都の他の指定地域の区長さん方ともお話し合いをなさったと思いますけれども、どのような御意見でいらしたか、お聞かせ願いたいと思います。
#60
○参考人(山本克忠君) お答えします。
 区長会では、かねてから公害健康被害補償制度については窒素酸化物を中心とした都市型複合大気汚染の現状に適合したものに制度全体を改め、環境行政の後退につながらないように十分配慮すべきであると、こういう要請をいたしております。しかし、今回の改正法案では必ずしもこれまで区長会が要請してきた内容に沿っているというふうには考えられませんので、したがいまして地域指定解除を含む法改正には十分慎重に対処していただきたいと思います。
 また、制度の見直しに当たりましては、近年の大気汚染の実態に即した抜本的な対策を講じるとともに、当面、窒素酸化物対策の基本であるディーゼル車の排ガス規制強化などを早急に講ずべきものだというふうに考えておりますが、そういう点でひとつ御配慮いただきたいというふうに思います。
#61
○広中和歌子君 ほかの区の区長さんの御意見とも一緒でございますか。
#62
○参考人(山本克忠君) 二十三区ございますけれども、大体において、一区がちょっと我々と考え方が少し違うようでございますけれども、あとの二十二区につきましては同じような考え方で国に対しても要望しているところでございます。
#63
○広中和歌子君 どうもありがとうございました。
 次に、柴崎参考人にお伺いさせていただきます。
 SO2が十年間に五分の一に減り、特に指定地域では十五分の一に減ったということは非常に評価されていいことであろうと思いますけれども、しかし二酸化窒素に関しましては、NOxに関しましては横ばいである、そういう御説明でありたと思います。しかしながら費用負担に関しましては、先ほどから御説明がありましたように八対二でもって、SO2をもととする工場などの負担が八になり、そして自動車関係というのでしょうか、排気ガス関係が二になっている、そのことにつきましてどのようなお考えをお持ちなのか。経団連の中には自動車関連とかそれから石油関係の会社があると思いますけれども、お話し合いをなさったのでしょうか、お伺いいたします。
#64
○参考人(柴崎芳三君) お答え申し上げます。
 固定発生源八、自動車重量税二というのは発足以来そのままの形であるわけでございますが、実はこの負担割合につきましては産業界で云々を言いましてもなかなかその意思が通る問題ではございません。国の方の予算その他とも非常に重要な関係がございまして、端的に申し上げますれば政府においてその割合は決めると。自動車重量税の二割負担という問題は限時立法になっておりまして、たしか二年ごとに延長してきておると思うのでございますが、その延長の都度いろいろ現状と比較いたしまして議論は行われておるわけでございますが、やはりこれを変えることはいろいろ問題があるということで、その都度、前からの方式が引き継がれておる次第でございまして、経団連の中でもいろいろ意見はございますけれども政府の御決定に従いまして八割分をずっと負担してきたということになっておるわけでございます。
#65
○広中和歌子君 御努力の結果が負担減に反映されないという御不満は十分あると思うのでございますけれども、同じ産業界の中でそのような一方では努力し、下げたのに、そういう努力をしたとも思えないように見える自動車とか石油関係のそういう部分の負担増について御不満であるということは事実でございますね。そしてそういうことに関して政府に働きかけをなさいましたでしょうか。
#66
○参考人(柴崎芳三君) いろいろ現状を御説明いたしまして意見を申し上げたことはございますけれども、当初からのこういった形が確定しておりまして、今この原則をいろいろ変えるということになりますとこの問題だけではおさまらない非常に広範な影響があることは事実でございます。したがいまして経団連といたしましては、この負担比率の問題よりは、先ほどから申し上げておりますように制度全体の改正の中で問題を解決したい、このように考えまして、そういった趣旨の要望の中にこの問題の矛盾も含めましていろいろお願いしてきておるというのが実態でございます。
#67
○広中和歌子君 大分前のことでございましたけれども、日本が自動車輸出を盛んにアメリカにしようと努力しておりましたときにマスキー法というのができまして、そのマスキー法をクリアしなければ輸出ができないというようなことで日本の自動車産業界は随分排ガスについて努力なさったと思います。こういうことを言っては失礼でございますけれども、SO2に関しましてもやはり負担金を減らそう、そういう御努力がSO2の減少につながったのではないか、そんなふうに思うわけでございますけれども、そういう中で、やはり負担をすることによってそれがインセンティブになるというようなことも考えられるのではないかと思いますけれども、その点についていかがでございましょうか。
#68
○参考人(柴崎芳三君) 負担がインセンティブになるということは確かに事実でございます。ただ、この公健法以外に大気汚染防止のための規制法がございまして、その規制法に基づいて総量規制が行われておりますので、罰則を伴う総量規制でございますので、その規制に対する協力といい
ますか遵守といいますか、これも非常に重要なファクターになっておりまして、そういう総合的な国の大気汚染防止対策というようなことで、その中の一環としてこの負担金も働いておるという関係であろうかと思います。
#69
○広中和歌子君 公健法を改正なさった後に基金を設立なさる、そして五百億をそれに充てていらっしゃるというわけでございますけれども、しかし、あくまで基金でございますから実際に使えるお金は年五百億ではなくてその果実でございますね。そういたしますと、今非常に低金利の時代、二十億ぐらいでございましょうか、それくらいのお金で先ほどから新宿の区長さんとか、それから塚谷先生などが要望していらっしゃいますところの十分な研究調査とか、それからディーゼル車における排ガス規制の研究とか、そのようなものが果たして可能なんでございましょうか。塚谷参考人並びに柴崎参考人、お二人の御意見をお伺いしたいと思います。
#70
○参考人(塚谷恒雄君) 私、基金の内容、使い方がどのようになるかというのをしかとは承知しておりませんけれども、昨年度尼崎市、これはこの制度だけではなくて環境保健事業で市独自の救済事業を行っている市ですけれども、そこで調査をした結果から見ますと、現行の法律あるいは市の施策に基づく福祉事業というものは非常に不十分であると。しかしながら尼崎市は他の自治体に比べて相当なことを独自で行っております。その費用が患者一人当たりに直しますと約二万七千円になります。これは転地療養とかバス代とか、そういったものであります。もちろん、転地療養の施設の費用は別であります。家の運営費とかはたくさんかかるわけですけれどもそれは別にいたしまして、九万名の全国の患者に二万七千円を掛けますと約二十五億から二十六億円かかるわけです。この中には調査費も何も入っておりません。患者自体が非常に不満ではあるけれども、しかし大阪に比べると尼崎の方がよくやっているという、涙ながらのお金でございますけれども、それくらいかかっております。調査研究あるいはもっと現行の指定地域を広げて道路沿道等を加味して本当の基金の使い道を考えますと到底足らないというふうに思っております。
#71
○参考人(柴崎芳三君) お答え申し上げます。
 五百億という基金の額は環境庁の方から経団連に提示された数字でございまして、この委員会に御提出なされました資料にも載っておるかと思います。したがいまして経団連といたしましては、環境庁が中公審の答申を受けまして五百億でこの対策事業は十分できるであろうということでお申し入れになったというぐあいに受け取っておりまして、そういう意味で全面的に協力すると。多分この事業は完全にできるであろうというぐあいに考えております。
#72
○広中和歌子君 最後に一つお伺いします。
 ということは、もう少し多くてもよろしいということでございましょうか。また、そのように多くあった方が、そのようなお申し入れであったのでそれを実行できると。それ以上でありました場合にはいかがでございましょうか。基金でございますから一遍でございますよね。
#73
○参考人(柴崎芳三君) 五百億という金額は大変大きい金額でございまして、その果実で一応二十五億というのは環境庁からお話のありました事業でございますので、環境庁で慎重に検討された結果をそのまま経団連としては受け取りまして、これ以上の線というものは考えておりません。
#74
○広中和歌子君 じゃ、そうすると基金という形ではなくて一年に幾ら幾らという形であればお出しになりやすいということはございますでしょうか。つまり、五百億おまとめになるという形じゃなくて、例えば五十億、百億、百五十億、どういう形ででもそういうような形でまとめていただくことも可能でございますか。つまり、基金方式じゃない方法でございます。それで終わります。
#75
○参考人(柴崎芳三君) 基金の設定につきましては、中公審の答申にもはっきり明記されておりまして、恐らく環境庁さんでも、それを受けましてこれ以外の方法は考えておられないのではないかと思うわけでございまして、したがって基金でない別の方法ということは今経団連としても全く検討もしたこともないし、また検討するつもりもございません。
#76
○近藤忠孝君 塚谷参考人から着席順に順次聞いてまいりますから、よろしくお願いいたします。
 まず、塚谷参考人ですが、先ほどから問題になっている可能性は否定できないという問題ですね。これは因果関係ありということははっきりしていますが、ただ患者さんにすれば、あるならあるとはっきり言ってくれという気持ちなんですね。そんな持って回った言い方をするものだから、疫学のイロハを知らぬ連中が作業小委員会でとんでもない逆の結論を出してしまったと。ここは国権の最高機関ですから、そういった過ちをしちゃいかぬという意味で、さらに一歩突っ込んでお聞きしたいんですが、じゃ疫学ではなぜこういう表現になるのか、関係あることが。その筋道を簡単に。
#77
○参考人(塚谷恒雄君) これは他の科学の分野における、西洋近代科学ですけれども、における論理とほぼ同じであります。
 影響があるということを証明したい、あるいはある一つのことを証明したいという場合には、それを否定する仮説をまず設けます。そして調査なり実験を行いまして、その初めの仮説を否定できれば初めて影響があるという言い方をするわけです。これは他の分野でも、数学は別ですけれども、他の実験科学の分野でも、あることを証明するためにはどうしたらいいかという論理があるわけです。あることを証明するためには、現在の考えでは、それをまず否定した仮説をつくっておいて、その仮説を否定することによってこのことを証明するという、それ以外の論理はないのではないかとさえ言われているくらいであります。疫学は特にその論理を使います。
 ですから、この環境庁の調査において専門委員会が評価をした場合でも、これは影響がないのだという仮説をつくっておいて、それが環境庁の二つの調査において否定できるか否定できないかという、こういう論理を使ったわけです。それで、先ほど高桑先生がおっしゃったように、一%の有意水準あるいは五%の有意水準、百に一つの、あるいは二十に一つの間違いは犯さないだろうという意味合いで、初めの仮説すなわち影響がないという仮説を否定するわけです。それをもって影響があると言おうとしているわけですけれども、しかしやや一般常識と、科学的には論理を使って行いますので、影響があるんだと強い調子では言わないのが科学の約束であります。
#78
○近藤忠孝君 そうしますと、作業小委員会は疫学の一番基本を知らない人がつくったものだと、こういうことになるわけですね。
 それから、先生のことし二月の法律時報で論文がありますが、その中で第二項目の有害性の定量的評価、その一番最後の部分で「大気汚染影響について定量的判断ができないことは、その無害性の証明ができないことと同一である。」、先ほど言われたことと同じことなんだろうと思うんですが、なかなかやっぱり学者の先生の言葉は難しいもので、どうぞ素人にわかりやすいように塚谷先生にお伺いしたいと思うんですね。
#79
○参考人(塚谷恒雄君) 影響があるということを証明するのは、例えば白雪姫がリンゴを一個食べれば、ほかの小人が死ななくても、白雪姫が死ぬというか眠っただけで、そのリンゴは影響があるという証明ができるわけです。しかしながら、このリンゴが無害であるという証明は非常に難しいわけです。無害であるということを証明するのはどうしたらいいかというのは、現在のところわかってないわけですね。唯一わかるのは、疫学においては量反応関係という非常に定量的な解析であるわけです。
 これは何かといいますと、リンゴを百個食べたら死んじゃった。それから五十個食べたらまだ生きていた。一個食べたらぴんぴんしていた、ビタミンCがよくなって肌もきれいになった。こうい
う関係をつくりますと、そこで初めてリンゴ五十個と百個の間が有害であるという、そういうことが言えて、それで五十個以下、一個であれば安全である、そういう証明ができるわけです。ですから、現在のところ安全であるという証明を行うためには量反応関係という、どれだけの量であればどれくらいの危険性があるかという危険性の証明は非常に簡単にできるわけです。どれくらいであるかという、そういう知見がないことには安全であるとは言えない、そういう意味であります。
#80
○近藤忠孝君 逆に申しまと、有害性の証明としては定量的なものは必要でないということに逆になるんでしょうかね。それはどうなんでしょうか。
#81
○参考人(塚谷恒雄君) 有害であるということを定性的に言うことは可能であります。もちろんそれをもっとはっきりと、定性的にだったらこのリンゴを食べていいのかどうかの判断ができませんので、判断をするためには定量的な知見が必要であるわけです。しかしながら、安全であるという言い方には定性的な言い方はできないわけです。安全であるということを言うためには、常にそれは定量的に言わなければ証明にはならないということです。
#82
○近藤忠孝君 それから、この同じ論文の中で、指定四十一地域についての検討がないではないかという批判をされておりますね。ただ中公審側に言わせますと、この四十一指定地域を検討しなかった理由として、ここの大気汚染濃度は我が国の現在の一般大気中の最高濃度レベル以下であるので、だからやらなかったんだと、こういう説明をしていますね。これについては先生どうお考えでありますか。
#83
○参考人(塚谷恒雄君) それは昭和五十三年度のNO2の環境基準の改定の際に問題になったことですけれども、大気保全局長通達においては、それまでは道路沿道は環境基準の適用外であるとされていたものが、道路沿道も適用するので念のため申し添えるという文言が入ったわけです。ですから、我々は当然その後の自動車の交通量の増大に伴って最高の大気汚染地域というのは、都市においては道路沿道であるという理解をしており、それは大気保全局長通達にも一致するところであると思っています。その点で、指定地域の中の一部分の地域の一般環境のみを対象とした調査というのは、現状の大気汚染あるいは交通問題からしてそぐわないものであると思っております。
#84
○近藤忠孝君 それからもう一点ですが、この公健法制定時の中公審答申、要するに指定地域の解除要件ですね、今回の答申はそれを否定したということを先生は批判されておりますが、これについて簡単に御説明いただきたいと思います。
#85
○参考人(塚谷恒雄君) 私は、行政というのは、特に国の行政というのは整合性がなければならないと思っているわけです。中公審というのは環境行政の基本的な重要事項を答申するところであり、その報告、答申の中身は整合的に後世に受け継いでいかれるべきであると考えております。
 当時の中公審の解除要件の答申は、解除の要件を具体的に示しているわけです。ですから、今回解除をするのであれば、それと同じレベルでどのような要件を満たせれば解除してもいいか悪いかということを論議すべきであると思っているわけですが、今回はその昭和四十九年の中公審答申とは全く関係のない、突如としてすべて解除してしまうんだという、その合理的根拠のないことを言っておりますので、その点で行政の進め方としては整合性がないというか、突如環境行政に大地震が起きて地盤の亀裂が起きたような、そういう印象を持っております。
#86
○近藤忠孝君 次に、峯田参考人ですが、先ほど法的因果関係論の展開がありました。定量的判断あるいは主な原因を必要とする、これらについては、これらは因果関係の要件ではない、これが四日市判決以来の判例の立場である、こういうお話がありました。
 私なりに考えてみますと、私自身はイタイイタイ病裁判を担当しまして、あのときにはカドミウムなかりせばイタイイタイ病発生せず、このことが実証できれば因果関係ありと。もっと実際は立証できたんですけれども、因果関係論としてはそのことが必要なんだと。要するに、原因物質なければその結果は発生しない、そのことが説明できればいいので、そのことが参考人の言われた、いわば定量的判断あるいは主な原因は要件でないというのと同じ意味かどうか、そのことをまず御説明いただきたいと思います。
#87
○参考人(峯田勝次君) ただいま近藤先生が御指摘になったとおりのことでございます。
#88
○近藤忠孝君 これも先ほど峯田参考人お話しのように、主たる原因であるということが証明されない限り因果関係認めないというのが今回のこの中公審の答申ですね。しかし、それは一面不可能である。となりますと、不可能なことを強いられている。だから、これは証明できませんよね。となりますと、特に非特異性疾患の場合にはその疾病だけ見たんじゃ原因はわからない、これはみんな認めるわけですね。となりますと、こういう非特異性疾患の患者を救済するには、やっぱり集団に目をつけていかなきゃいかぬし、その場合に無理なこと、不可能なことを強いられたらもうこれはだめだ。となりますと、私はもしもこの中公審答申がまかり通るとなりますと、日本の大気汚染患者はもう救済の道がなくなってしまうんじゃないか、因果関係の指摘、そして救済させるという。そういうことを私はこれから率直に受けるんですが、その辺について御意見があれば付言していただきたいと思います。
#89
○参考人(峯田勝次君) 先生御指摘のように、指定地域にするかどうか、あるいは指定地域の指定の要件というのは、この本制度の中では法律の議論でまいりますと因果関係をどう考えるかということと同じことをやっていただいたわけですけれども、今回の中公審の答申のように、非特異性疾患につきまして加害要因とされている大気汚染の物質の寄与度を判定をして、それのみによって生じたかどうかという、そこまで証明がつかない限りは救済はしないんだということになってまいりますと、実際個別の患者につきましても、それのみによってなったということはほとんどないわけでございまして、災害的な事例であればそういうことも言えるかとも思いますが、通常の事態ではそういうことはあり得ないわけであります。
 集団的な観察の場面におきましても、これは塚谷先生の論文にも出てございますけれども、大気汚染が主たる原因であるとか、それのみによって生じたというようなことを集団的なレベルでも分析、判別することはできないという現在の実情からまいりますと、全国各地で幾つかの大気汚染訴訟が現在継続をいたしておりますけれども、この補償制度で切られて、さらに司法の分野に持ち込めということかというふうにも思いたくなるわけですが、永久に救済の道は閉ざされるということになっていくんではなかろうかと危惧をいたしております。
#90
○近藤忠孝君 大変重大な事態だと思います。
 そこで、この二つの判断基準の問題ですね。これについて日弁連の意見書によりますと、定量的判断などを求めるこの二つの判断基準そのものが唐突に過ぎ、説得的でないと言っていますね。どうしてこんな結論が出てきたのか。一応、中公審のいろんな議論をごらんになって、どうしてこんな結論がどういうぐあいにあの議論の中で出てきたのか、この点について、また、それについての御批判があれば述べていただきたいと思います。
#91
○参考人(峯田勝次君) 実は私どもも、この中公審の答申の原案は作業小委員会というところでおつくりになったわけでございまして、その中には有名な法律学者もおられたわけです。全く大気汚染なりその他の公害関係にノータッチでこられた先生方ではなかったわけでありますので、なぜこういうような以前の裁判所の考え方とも極めてかけ離れた因果関係についての考え方が登場してきたのかということについては、非常に驚きを持って迎える以外には方法がないというのが正直なところでありまして、なぜ出てきたのかなという其
体的な契機については本当にやみの中というしか私としては申しようがないというのが実情であります。
#92
○近藤忠孝君 そうしますと通常の法律家であれば、今までの裁判の経過から出ている因果関係論からいって、こういう判断基準を設けたり、先ほどの可能性は否定できないというその字句などからは、こういった結論は出てくるはずがないというのが、日弁連はこういう意見書を持っていますから、つくっていますから、これは大体日弁連としてのお考えということでお聞きしてよろしいでしょうか。
#93
○参考人(峯田勝次君) これは公害に関する部分だけではございませんで、例えば交通事故にいたしましても、医療過誤の事件にいたしましても、責任をとるためには因果関係というものが必要でございまして、何が被害なり損害なりを発生させたかという議論は常に取り扱うわけでございますが、どの場面におきましてもこれまでの裁判所の取り扱いを通じまして、ある加害行為がすべて結果についての引き金になったといいますか、それがすべての原因だというようなところまで立証を求められたことはございませんわけでして、もちろん例えば交通事故でいいましたら、その人に過失があれば責任は認める、因果関係は認めるけれども一定の減額はするということは、損害額の中で責任の範囲の問題での調整は行いますけれども、責任があるかないかという場面におきまして、主たる原因であるかどうかというような議論はしないのが我々の世界の常識だと考えております。
#94
○近藤忠孝君 そうしますと、中公審の中にその常識からはみ出した人がおったと、こういうことになるわけですが。
 それから次に、これは先ほど塚谷参考人に聞いた四十一指定地域についての検討がないことについて、これは日弁連としてはどうお考えか。先ほど御紹介したような中公審の言い分がありますが、これについて御意見があれば承りたいと思います。
#95
○参考人(峯田勝次君) 実は、指定をする際には特別措置法時代からの指定地域はそのまま引き継がれましたですけれども、その後の地域はすべて指定をする際に疫学調査が行われました。
   〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕
暴露要件あるいは有症率の程度というのはすべてチェックして、それで俎上にのせてきたという行政的な手続を踏んできておるわけでございまして、答申の中には、指定地域の一部分も環境庁の二つの調査の中に含んでいるからあたかもそれで足りるかのようなところもうかがわれるわけですけれども、しかしこの環境庁の二つの調査というのは、先ほど来議論になっておりますように、疫学調査として極めて不備な点を持っておりますことももちろん、当然被害者の権利保障の制度的な取り決めというのはこの法律という、その法律の世界の観点からいたしましても、現行四十一指定地域について救済の道を閉ざすという法律的なり政治的な決断をされるについては、当然指定地域全部での調査が不可欠であったであろうというふうに考えております。
#96
○近藤忠孝君 もう一つは、先ほども聞きましたが四十九年の答申を排斥した点、要するに指定地域の解除条件ですね。日弁連としてはこの指定の理由についてどのようにお考えになり、どのような反論をされていますか。
#97
○参考人(峯田勝次君) 実は、この四十九年十一月答申に示されました解除要件がどうしてだめなのかということにつきまして、この答申はこのように述べております。「すなわち、当時は、各地域の汚染レベルが改善する過程において、大気汚染以外の因子が大きな影響を与えず、大気汚染の影響の程度が定量的に判断し得るような状況が維持されたままで、各地域における疾病の発生状況が改善されていくことが想定されていた。」、ところがどうもそうでない、だから当時の解除要件の考え方は現在では採用しがたいということで要件そのものを放棄したという形になっておるわけです。
 しかし、私どもこれ専門委員会の報告も拝見をいたしましても、答申に盛られておりますように、汚染が改善されていく過程で何か新しいインパクトが出てきて当時の考え方が成り立たなくなってきたというようなレポートは少しも載っていないわけでありまして、こういった考え方自身が出てきた根拠自身も、法律家の専門家なり行政責任者が集まられた作業小委員会でなぜこういうことを言えるだけの集積がおありになったのかというのを極めて不可解に考えておるわけです。
#98
○近藤忠孝君 じゃ峯田参考人、最後になりますが、大変ねじ曲げがあったし、認識の間違いがあったということですが、要するに中公審のなすべきことは何であったのか、この現在の大気汚染あるいは患者問題についてですね。この点について最後に御意見があれば承りたいと思います。
#99
○参考人(峯田勝次君) 補償法の運用と実施に関しましては、四十九年の実施以来、国会の附帯決議が随分とたくさんございまして、その具体化というのが環境庁並びにその環境行政に関する重要事項を審議する中公審の責務としてあったであろうというふうに思うわけです。そういう点では、今日まで指定地域内における調査活動も一切行われてこなかったというようなところを一つとってみてみましても、本来、附帯決議で盛られたさまざまな任務を正面から取り上げてやることが何よりも中公審としての真っ先に行うべき任務ではなかったかというふうに思います。
#100
○沓脱タケ子君 それでは、公害患者会の神戸参考人に伺いますが、先ほど冒頭の御報告でも大変いろいろと御意見がございました。特に、環境保健部会に加害者代表的存在の財界代表は入っているけれども、患者代表は、被害者代表は入れてもらえないというふうなことだとか、今度の全面指定解除、そして新規患者打ち切りの根拠になっている唯一の科学的根拠である専門委員会報告あるいは中公審答申、こういうものがどうやら科学的根拠なしに文章が変わっていたり、あるいはねじ曲げておられたりというふうなことで非常に不安だという御意見などをお述べになったわけですが、私は端的にお伺いしたいと思うのは、こういう公害被害者にとってこの制度を、この法案改正を通すというふうなことになれば、患者の命綱を断ち切るような大変な法案だと思っておりますので、簡潔に言ってほしいと思いますのは、皆さん方のチラシなんかにも参議院の良識に期待したいなどと書いておられますが、参議院の当委員会に対して患者のお立場で、被害者のお立場で御要望があれば率直にお述べをいただきたい。
 それからもう一つ、柴崎参考人にお伺いをいたします。
 確かに本制度ができて、加害企業という立場ではあったけれども、汚染者負担という形で社会的責任を果たしてこられたということを冒頭にお述べになりました。私は、この制度を参考人はこういうふうに全面指定解除をするということが当然だとおっしゃったけれども、これをやられたら大変なことになるなということを改めて感じたんです。
 なぜかといいますと、それじゃこの制度ができる前に加害企業が自発的に、自主的に本当に公害規制をおやりになっていたであろうかという、三十年代、四十年代を思い出しますときに、やっぱり法の規制によって被害者の救済という責任を持ち、あるいは総量規制等の罰則の伴うような規制があって初めて公害問題に重大な歯どめがかかってきたんではないかなと思うんです。したがって、本法ができる当初、どうしてできたか。これは加害企業が積極的な立場でこういう法律をつくらせてきたのか、あるいは被害者や国民が猛烈に頑張って、とりわけ本法では四日市判決でそれ以後になされたという経過を見ましても、どっちなんだと、その点ははっきりやはり見ていただいて御見解を伺っておきたいと思います。
#101
○参考人(神戸治夫君) お答えします。
 中公審の答申は、会長さんあるいは部会長さんの答弁を見ますと、何か結果的に総意としてまと
まったというふうに受け取られていますけれども、もし万が一、万が一といいますか、被害者が中公審の委員に参加していれば、そんなことでは絶対なかったというふうに思います。それは、これまでの審議のいろんな資料なりそういった点から見て、十分そんなふうに思います。
 それとあわせて、せっかくの機会ですので一、二、ちょっと意見を言わせていただきたいというふうに思いますけれども、やはり今度の全面解除がされちゃうと私たち一番心配しているのは、もう公害は終わったんじゃないかと。事実、NO2の基準緩和でもう大気汚染は改善されたということで相当この社会的風潮があるわけですけれども、患者についても認定患者がいないとなると、どんどんこれから進められようとしている開発、大型の開発、東京湾の横断道路や関西新空港、いろんな開発がありますけれども、そういったのはもう拍車がかかるんじゃないかという心配が一つあります。
 それからもう一点は、補償法の役割の問題なんですけれども、私たち患者としては、この補償法というのは不十分ながらも患者の健康の回復あるいは生活の安定には役立ってきましたけれども、もう一つやはり公害をなくすという問題にもこの補償法には大きな役割があったんじゃないか。確かに亜硫酸ガスは減りました。これは各自治体の規制の努力あるいは被害者の運動がその背景として大きかったわけですけれども、そのことからいうならば、今の費用負担の問題、亜硫酸ガスの排出量だけでなく窒素酸化物の排出量に応じて費用負担をさせる。過去一年間だけじゃなくてさかのぼって、五年、六年、発病にさかのぼってトータルとしての賦課金を課すとか、そういった問題、あるいは、私たち絶対にこれはけしからぬと思っているのはやはり自動車メーカーが一円の負担もしていない、こういった問題についてもこの審議の見直しの中でぜひ先生方に改善の方向でお願いしたいなというふうに思います。
 それからもう一点で最後に、この公害健康被害補償制度、日本のこの補償制度、これは今外国からも非常に注目されています。つい先日というか、これまでにも、日本で言えば参議院の調査室に当たるようなアメリカの立法府のそういったところの方も見えられましたし、多くの学者、研究者の方も視察に来ているわけですけれども、そういった中でやはり今の政府の環境庁がこの制度を改悪しようとしていることについて強い批判というか、御意見があるようです。そういった点で、この補償法を外国からも批判をされないようなそういうことでぜひ前向きに改善、拡充の方向でお願いしたいというふうに思います。
#102
○参考人(柴崎芳三君) お答え申し上げます。
 規制が撤廃されると、また企業サイドとしては公害防止に対する努力が薄くなるのではないかというような御趣旨の御質問でございますけれども、振り返ってみますと企業が本格的に公害対策に乗り出したのは、四十五年の公害国会で十四の法律ができましていろいろの意味で大変厳しい規制がしかれました。確かにこれが一つの動因になっておることは事実でございます。しかし、そういった総合的な法律規制の中で今までずっと努力してまいりまして、大気汚染あるいは水質汚濁につきましても相当改善の状況が実現しております。
 この現在の状況は努力の結果のたまものでございまして、これを今後またぞろ過去の状態に戻すというような考え方は企業サイドには全くありませんし、さらに二歩、三歩前向きの前進を考えておりまして、その点はぜひ今までの企業の努力を十分把握した上で今後の態勢についても信頼していただきたいと、かように考えておる次第でございます。
 この公健法の制度につきましては四十五年の公害国会のときに、公害に関する賠償問題として無過失責任制度という考え方が導入されまして、これを一般の裁判に任せておりますと因果関係の証明が健康被害者の方に寄せられるものですから、なかなか結論は出ないと。だから、その点についても何らか踏み切った行政措置が必要ではないかというような考え方で公健法の基本的な方向が生み出されたというぐあいに私理解しておるわけでございますが、しかし、そのときの前提といたしまして先ほどから申し上げておりますように、著しい大気汚染に対する、大気汚染下における疾病の多発という前提条件のもとで三つの大変大胆な割り切りが理論的に結びついておったわけでございますが、その前提条件が大分なくなってまいりますと、この踏み切り自身も非常に宙に浮いたものになりまして、なかなか現実に対応した方法としては考えられない。
 このようなことで、現在改正を経団連としてはお願いしておるわけでございまして、改正が実現いたしましても、先ほどから申し上げておりますように、現在の既認定患者に対する責任というものは十分心得ておりますし、また、環境庁が新たに展開されます基金に基づいた対策につきましても全面的に協力するという態勢でございますので、その辺よろしく御了承いただきたいと思います。
#103
○沓脱タケ子君 時間ですので結構です。
#104
○山田勇君 参考人の皆さんには長時間たいへん御苦労さまでございます。私が最後の質疑者でございますが、与えられた時間が往復で十五分でございます。恐らく一問一答になろうかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
 柴崎参考人に、お尋ねをいたします。
 先ほど来拠出金の問題、また環境庁の指導によってできるだけの協力をするということを今も御答弁なさっておられましたが、その中にありましてこの拠出金を一部事業費に充てますということが言われておるんですが、事業とはどういう事業をお考えになっておられるのかどうか。柴崎さん、答えられる範囲内で結構でございます。
#105
○参考人(柴崎芳三君) お答え申し上げます。
 この事業の内容は経団連で考えるものではございませんで、環境庁で基本的な方向を決めまして、これは以前の公害健康被害補償協会とそれから地方公共団体に対する助成金でやるわけでございまして、したがいまして経団連といたしましてはいろいろやっていただきたいこともありますのでその都度御要望は申し上げますけれども、基本は環境庁の御方針に従って基金を拠出することに全力を注ぐというようなことでございます。
#106
○山田勇君 続いて神戸参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど同僚委員の間から、この法案が通過したときに対して、後に何か大きく要望することがあるかということでお尋ねになりましたところ、神戸さんは廃案へ追い込むのだという運動を展開しているさなかに仮定のものに答えることはできないということは全くそのとおりだろうと思います。
 しかしながら、当委員会は与野党問わず慎重に審議をやるという形の中に審議に審議を重ねてまいっております。月曜日も衆議院がやらない公害調査等で板橋の方へ行ったり、まだまだその審議を続けていくという中にあって、御承知のとおり議会制民主主義のルールにのっとっていつの日かごの法案というものに対して何らかの決着をつけなければならない、そういう形の中にあって、それもこちらへ置いておくとして、神戸さんは全国公害患者の会連合会事務局長として今まで公害患者の健康回復、また補償金の問題等々、大変な御努力をなさっておられます。もう心から敬意を表するものでございますが、今言われた拠出金による事業化という形になってくれば、好むと好まざるとにかかわらず、こういう行政の中に神戸さんは全風公害患者の会連合会の事務局長として、またそういう形の中で折衝をしていかなければならない。
 これは仮定としてですよ、法案が通ったとか通らないとか、そういう問題じゃなく、そういう事業というものに対して神戸参考人は被害者の健康を守り、これからまた認定をされない新患者に対する健康、予防という立場からも、こういうことをやってほしい、こういうことをこの事業の中に
はぜひやってほしい、例えば転地医療に対して何人か、五十人なら五十人、三十人なら三十人、一番公害のところから転地医療をする、そこの健康データをずっと上げてくる、その中に仮に患者が回復をするということになればそういう事業を促進してもらいたいとか。私たちは大変不勉強で、そういう神戸さんの御苦労わかりませんが、実際患者さんと日夜接触なさって、仮に新しい事業をすればこういう希望、こういうことをやってほしいということを、法案が通過するとかしないとかいう、そういう問題を取り除いてひとつ患者さんの立場に立って神戸参考人からぜひお話を承りたいと思っております。
#107
○参考人(神戸治夫君) お答えします。
 二つ質問があったと思いますけれども、一つはやはり私たちは、先生がおっしゃられるようにこの法案について徹底審議をすればするほど、こんな法案は国会で通しちゃいかぬというふうな結論になるんじゃないかというふうに私たちは確信しております。衆議院の誤りを参議院で繰り返さないでほしいということが第一問のお答えです。
 第二問の新しい事業の問題ですけれども、これはもう仮定の話だからというふうにおっしゃられましたけれども、やはりそれは現行法、現在の公害健康被害補償法の保健福祉事業を充実するということがまず先決だというふうに思います。その辺の反省が環境庁になくして新事業をぶち上げても意味ないというふうに思います。
#108
○山田勇君 先ほど来からの神戸参考人のお話を聞いておりますと、まず環境庁やその行政との信頼関係というのはもう失われております。さりとて、この新しい形の中でこの法案というものが課せられた場合、法治国家の国民として、これは国法ですから賛成反対は別として、与えられた法律に対して順応していかなければならない。その中にあって信頼の回復こそ患者の健康回復、また医療問題というものにつながっていくと思います。ぜひ環境庁との間の中にあって信頼の回復をこいねがう者の一人でございます。
 そこで塚谷先生保にお尋ねをいたします。
 大都市幹線道路沿道の局地汚染の問題についてどうお考えになっておるか、お考えを聞かしていただきたいと思います。
#109
○参考人(塚谷恒雄君) 自動車による汚染ですけれども、私は二つの点を意見として述べさせていただきたいと思います。
 一つは、ディーゼル車の問題でございます。これは我が国の貿易のほぼ一〇〇%が船を使いまして海外と交流をしているわけです。最近、特に生鮮食料品あるいは貴重なものがコンテナで貿易されるようになりまして、大型のディーゼルエンジンを積んだトラックが東京とそれから関西に入り込みまして、それが都市の中を通りまして日本全国を走り回るという状況になっております。以前からディーゼル排ガスに含まれるベンツピレン等の排ガス問題は注意せよというふうに我々は言っていたわけですが、これが量的にも質的にも非常に高くなっている。特に大都市の中でそれが問題になっているということが一つ言いたいところです。
 もう一つは、かつての乗用車における排ガス規制、マスキー法の日本版の適用ですけれども、これが例えばトヨタ自動車の東富士研究所の所長の言をかりますと、あの規制があったから我々は高性能のエンジン、そしてそれに伴う居住性の豊かな乗用車の開発に成功したんだと述べておるとおり、あの規制によって我が国の乗用車の世界における地位が飛躍的に高まったわけです。これは環境行政が技術開発に対して貢献した一つの典型的な例であったと思っております。
 それに引きかえ、大型車の現在の規制は非常に緩やかで、例えば排ガス規制にしても濃度規制でありまして、西ドイツ、アメリカ等の大型車の技術開発の現状に比べても我が国は非常に弱いわけです。これを何とかよくして国際競争力をつけるという点では、過去の経験から言いますと大型車における、特にディーゼル車における規制をさらに強くすることが、トヨタ自動車のある取締役が言うように結果として産業界のためになるんだということを私は強く言いたいわけであります。
#110
○山田勇君 終わります。
#111
○委員長(山東昭子君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は長時間にわたり、非常に貴重な御意見をお述べいただきまして本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 以上をもちまして本日の質疑を終わります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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