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1987/09/04 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 外交・総合安全保障に関する調査会外交・軍縮小委員会 第1号
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1987/09/04 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 外交・総合安全保障に関する調査会外交・軍縮小委員会 第1号

#1
第109回国会 外交・総合安全保障に関する調査会外交・軍縮小委員会 第1号
昭和六十二年九月四日(金曜日)
   午後二時開会
    ―――――――――――――
 昭和六十二年七月六日外交・総合安全保障に関
 する調査会長において本小委員を左のとおり指
 名した。
                石井 一二君
                植木 光教君
                杉元 恒雄君
                林 健太郎君
                林田悠紀夫君
                山内 一郎君
                赤桐  操君
                黒柳  明君
                田  英夫君
 同日外交・総合安全保障に関する調査会長は左
 の者を小委員長に指名した。
                林田悠紀夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    小委員長        林田悠紀夫君
    小委員
                石井 一二君
                杉元 恒雄君
                林 健太郎君
                山内 一郎君
                赤桐  操君
                黒柳  明君
    小委員外委員
                堀江 正夫君
                上田耕一郎君
                関  嘉彦君
   政府委員
       防衛庁参事官   瀬木 博基君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        荻本 雄三君
   説明員
       外務省アジア局
       審議官      谷野作太郎君
       外務省国際連合
       局軍縮課長    宮本 雄二君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外交・軍縮問題に関する件
 (東アジアにおける緊張緩和と軍縮・軍備管理
 について)
    ―――――――――――――
#2
○小委員長(林田悠紀夫君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査会外交・軍縮小委員会を開会いたします。
 外交・軍縮問題に関する件を議題とし、東アジアに、おける緊張緩和と軍縮・軍備管理について、外務省、防衛庁から順次説明を聴取いたします。
 それでは、まず外務省から説明を聴取いたします。アジア局谷野審議官。
#3
○説明員(谷野作太郎君) それでは、私、外務省のアジア局で審議官をいたしております谷野でございますが、御要請によりまして東アジアにおける緊張緩和の問題並びに、軍縮軍備管理の問題についてお時間をいただいて御説明申し上げたいと思います。
 まず、東アジアということでございますが、通常私ども念頭に置きますのは、日本は別といたしまして、中国、朝鮮半島、台湾、香港、そしていわゆるビルマ以東の東南アジア、そしてソ連のシベリア地方、モンゴル、大体こういった国々あるいは地域を念頭に置きまして、以下のお話を進めさしていただきたいと存じます。
 簡単な説明の骨子をお手元に配付してございますので、それに目をお通しいただきながらお話をしたいと思います。
 まず、アジアのお話をいたします前に、若干アジアとの対比におきましてヨーロッパの問題について冒頭お話ししたいと思いますが、諸先生も昨今の新聞等で御存じのように、INFの問題を中心に米ソの間の核軍縮の交渉、これは一定の進展を見せておることは御承知のとおりでございまして、特にINFの協定につきましては早期妥結の可能性が高まってきておるわけでございます。翻ってみまするに、欧州におきましては六〇年代の末からいわゆる欧州安全保障協力会議の動きを中心といたします信頼醸成措置、あるいはいわゆる中欧の相互均衡兵力の削減交渉の問題、これを中心といたしまして通常兵器の軍縮への動きが定着しております。そして、アメリカとソ連との間の核軍縮の交渉の動きと並行いたしまして、これに刺激される形で欧州での軍縮・軍備管理への動きが強まってきておるわけでございます。そしてこのような欧州の動きは、一つには欧州におきまするいわゆる領土問題が基本的に解決しておるという現実、そして二つ目にはNATOあるいはワルソー条約という軍事ブロックの間の対峙の図式がはっきりしておるということ、そういった理由を背景にいたしまして以上申し上げたようなことが可能になったと考えられます。
 これに対しまして、本日の主題でございますアジア・太平洋の地域におきましては、一つには我が国の北方領土問題を初めといたしまして未解決の領土問題が実は各地に存在しておるという現実がございます。そして第二には、軍事ブロックの間の対峙といった図式は以上御説明しましたヨーロッパほど実は明確ではないということ。そして、特に中国というアメリカあるいはソ連から離れた自主独立の大きな国がアジアには存在するという事実がございます。そして第三点は、朝鮮半島あるいはカンボジア、そしてアフガン、こういった未解決の地域紛争をアジアにおいては抱え込んでおるという事実がございまして、そういうことによりまして軍縮あるいは軍備管理といったことについての条件というものがヨーロッパに比べまして著しく未成熟な状況にあるということを申し上げたいと思います。したがいまして、この地域の軍縮・軍備管理を論ずるに当たりましては、まずこの地域の緊張緩和、紛争の解決ということが私どもは大前提と考えておりまして、そういう意味から、我が国といたしましても、政治、経済あるいは経済協力といった外交面に努力を集中していくということが何よりも当面重要であるということが政府の私どもの認識でございます。
 以上申し上げましたような基本的な認識に立ちまして、以下、東アジアの情勢を検討し、あるいはまたさらに、アジアの平和あるいはアジアの安定に向けての日本の役割というものを御説明してみたいと存じます。
 まず、東アジアの情勢についてお話をしてみたいと存じます。
 概観いたしまするに、諸先生も御存じのとおり、東アジアにはいわば安定材料と申しますか、緊張緩和への動き、要因が一方であります。他方、しかしながら不安定要素といいますか、不安定材料、引き続き緊張が持続しておるという地域もございます。
 そこでまず、前半の安定材料ということについて幾つかのポイントをお話ししてみたいと思いますが、まず第一点は、お手元にもございますが。何といっても中国の近年における経済建設を重視した路線、そこから来まするいわば穏健な、現実的な外交といいますか、対外路線というものがございます。
 中国は、御承知のとおり七八年十二月の党大会、党の中央委員会がございましたけれども、そこでケ小平主任の指導のもとで、国内建設を最重点といたしましたいわゆる近代化政策というものを着実に遂行いたしております。そしてその結果、国民の生活水準も着実に向上しつつあるわけでございます。そして、そういった近年における中国の近代化路線のもとにおきまして日本と中国の関係、あるいはアメリカと中国の関係、ヨーロッパと中国の関係が着実に進展しておるわけでございますが、日中関係あるいは米中関係のこういった進展というものが言うまでもなく東アジア地域の安定に大きく寄与するものである、これは御異論のないところだと思いますが、そういった関係の進展というものも、中国の側におきまするこのような変化を背景としてこそ私どもは初めて可能であったのであろうと考えます。
 次に、安定要因の第二の点といたしまして、いわゆるアジアにおける巷間NICSと言っておりますけれども、新興工業国あるいは新興地域といったものの出現がございます。具体的には韓国であり、シンガポールであり、あるいは台湾であり、香港でございますが、人によってはこれをアジアにおける小さな四つの上りもというような表現をする人もございますけれども、いずれにいたしましても、こういったアジアのNICSが六十年代以降先進国に比して非常に高い経済成長率を達成してまいりました。そして近時におきます世界経済の低迷のもとで、八五年には若干成長率は鈍化いたしましたけれども、八六年に至りまして円高あるいは石油価格の低下、そして国際的な低金利の状況のもとで輸出増をてこといたしまして再び非常に大きな高成長の状態を回復しております。アジアのNICSの世界経済、貿易に占める重要性ということが非常に増大しておるということにつきましては論をまたないわけでございますけれども、こういった諸国、地域の今後のさらに大きなこの面での役割が期待されるわけでございます。またさらに、このアジアのNICにに加えまして、最近特にタイの経済が非常に好調であるという事実がございまして、これも非常に明るい材料と言えると思います。
 他方、不安定材料の幾つかを考えてみますと、やはり第一は、よく指摘されるところでありますけれども、ソ連の軍事的な増強というものがございます。
 ソ連は、諸先生も御存じのように一九六〇年代の中期から極東の地域に存在するすべてのいわば軍事的な分野におきまして顕著な増強、近代化に着手してまいりました。その背景には中ソ対立といったようなこと、あるいはオホーツク海の戦略的な重要性の増大といったようなこと、あるいはシベリア開発の進展といったようなことがよく指摘されるところでございまして、いずれにいたしましても近年におきますソ連の極東における軍事力の顕著な例といたしまして、例えば今や千七百基前後になったと言われますSS20の配備、あるいはソ連太平洋艦隊の増強、航空兵力の近代化、あるいは北方領土への師団規模の地上軍隊、あるいはミグ23約四十機と言われておりますけれども、こういったものの展開、そして最後に一九七九年からベトナムにおきまして軍事的なプレゼンスを維持してきておるということ、こういったことがよく指摘されるところでございます。
 第二点は、昨今、日本の新聞にもよく報道されます朝鮮半島の情勢でございます。
 朝鮮半島におきましては、申すまでもなく南北が非常に厳しい状況で対峙しておるわけでございまして、そういった緊張した状態というものは依然として継続しておるという状態でございます。こういった中で、委員各位も御承知のように、明年韓国におきましては二月に政権の交代を迎えます。そして九月にはオリンピックの大会が来るということでございまして、朝鮮半島の情勢は非常に重要な局面を迎えておるわけでございます。最近に至りまして、昨年の一月以来中断されておりましたいわゆる南北間の対話に関して若干の動きも見られましたけれども、現在はいわば再び膠着した状況に立ち戻っております。非常に遺憾なことであると考えておりますが、それとともに朝鮮半島の問題でよく指摘されますのは、やはり近年におきまするソ連と北朝鮮の間の軍事協力の進展、よくミグ23の供与の例が引かれますけれども、こういった軍事協力の進展がまた注目されるところでございまして、西側はもとより中国といった国も実はこの点について注目し心配もしておるというふうに承知いたしております。
 第三点は、カンボジアの情勢でございます。
 インドシナにおきましては、七八年にベトナムがカンボジアに大量の軍隊を進駐させるという事態が起こりました。自来九年目に入りますけれども、カンボジアの問題は依然としてトンネルが見えない未解決の状況が続いておりまして、これまた東南アジアの平和と安定というものを考えます場合に、大きな脅威となっておるわけでございます。最近も幾つかの動きがございましたけれども、軍事的にも政治的にも解決のめどが立っておらないという状況であろうかと思います。
 そして、不安材料の最後にやはりフィリピンの状況というものを挙げなければいけないと思います。
 確かにアキノ政権成立以来一年半になりますが、この間、右あるいは右からのいろいろな政治勢力から挑戦を受けながら、国民のアキノ大統領に対する圧倒的な支持を背景にいたしまして新しい憲法をつくり、そして議会の選挙におきましても圧倒的な与党の勝利ということで、それなりの政治的な体制の枠組みづくりに成果をおさめてきたわけでございます。しかしそのやさきで、御記憶のように、先日もフィリピンの一部の国軍筋によるかなり大がかりなクーデター、結局未遂に終わりましたけれども、クーデターの未遂事件というものが発生いたしました。今後対外的な債務の問題あるいは失業の問題をどうするかという問題、それからアキノさん自身が非常に御熱心であると言われます農地改革の問題、いろいろ政治、経済、社会問題、課題は山積しておるわけでございまして、こういった問題に有効な手を打って一つ一つ着実に問題を解決していくということが望まれるわけでございます。
 フィリピンとの関係でもう一つよく話題になりますのは、例のフィリピンにあります米軍の基地の存在でございまして、これが存続することがアジア・太平洋地域の平和と安全の見地から重要というふうに考えられるわけでございますけれども、他方、九二年に至りますと米比基地協定というものが期限切れの状況を迎えます。そして、この基地を存続させるか否かということについていろいろフィリピンの中でも議論がございましたことは実は各委員も御存じのとおりでございまして、アメリカ等は、かつアメリカのみならずほかの周辺のアジア諸国もその成り行きに非常に大きな関心を持っておるということでございます。
 以上申し上げましたように、安定的な材料それに対しまするに不安定材料、緊張緩和へ向かう動き、それに対しまするに緊張が依然厳しく持続しておる、こういった二つの状況が激しく交錯しておるというのが今日の東アジアの実態、姿であろうかと存じます。そして、今さら改めて申し上げるをでもないことでございますけれども、実はこの点も私はヨーロッパと非常に違うところだと存じまするが、アジアにおきましては政治はもとより社会体制を非常に異にした国々、歴史的にも社会的にも、そして文化的にも宗教的にもいろいろ背景を異にした国々が混在しておる、これがまたアジアでございます。
 しかりとすれば、我が国といたしましては、東アジアに対する外交というものは、そういった東アジア地域の持ちまする多様性といったものをやはり十分に念頭に置いて、一つ一つ細かい手の行き届いた外交を展開していかなければいけないということが第一点に挙げられると思います。そして何よりも、以上申し上げました不安定な材料、緊張の要因は早さに及んでその芽を摘み取るという努力、そして他方安定材料、緊張緩和の要因はできるだけこれを拡大していく、育てていくということが我々が努力すべき方向でなかろうかと存じております。
 さて、以上申し上げた幾つかの点で、特に委員各位に御関心があろうかと思います朝鮮半島の問題、カンボジアの問題、そして中国の問題についていま少し詳しくお話ししてみたいと存じます。
 まず、朝鮮半島の問題でございますけれども、いわゆる南北の対話、これは一九七三年の赤十字本会談そして南北の調節委員会会談というのがございましたけれども、これを最後に金大中事件が起こりましたり、例のラングーン事件が起こりましたりいたしまして、本格的な会談はその後行われておりませんでした。しかしながら、その後、御記憶だと思いますけれども、八四年の九月に韓国は大変大きな水害の被害をこうむりまして、これを契機といたしまして北朝鮮の方から救援物資の提供をしてもいいという動きがございました。韓国側もこれを受けるということで、南北の対話の機運が急速に高まりまして、八五年に入りまして赤十字会談あるいは経済を主題とする経済会談あるいは国会の間の会談、これは予備会談でございましたけれども、そういったものが開かれ、またスポーツの面でもオリンピック等との関係でIOCの仲介によりますスポーツ会談というものが開催されました。私どもはこれが順調に進展することを期待して見守っておったわけでございますけれども、八六年に至りまして北朝鮮は、例の米韓両軍の合同演習、チームスピリットを理由に対話を一方的に延期するという措置をとりました。そして現在は、御存じのようにオリンピックとの関係でスポーツ会談というものがスイスで細々と続いておりますけれども、それ以外の会談、対話というものは一切中断された状況でございます。
 そういう背景で、南北の双方の間から対話の再開に向けまして実はいろいろな提案も出されておりまして、詳細な御説明は省きますけれども、軍事問題の会談をやろうとか、あるいは兵力削減の会談をやろうとか、あるいはそういったものも含めて幅広い外相会談をやろうとか、いろいろな提案が行き交っております。先日も、社会党の田辺前書記長が北朝鮮御訪問中に、御記憶のように北側から兵力削減に向けての大きな提案が投げかけられたということもございました。
 ただし、南北のこういった提案を子細に検討いたしてみますと、私どもはこういう感じを持っております。北の方はどうもやはり軍事問題に焦点を絞って、なかんずく朝鮮半島からの米軍の撤退というものに大きな関心が向けられておるやに見受けられます。他方南の方は、そこに至るまでの南北間の信頼の回復であり、信頼の醸成であり、そしてそのためには、まずは南北で国連に同時に入ろうではないか、あるいは南北それぞれ周辺の諸国に承認してもらう、いわゆるクロス承認と申しますが、そういったより幅広い信頼醸成のための措置というものがとりあえずの当面の関心事のように見受けられます。北はこれに対しまして、そういったことこそ南北の朝鮮といいますか、朝鮮半島の分断につながるものと言って非常に反対しておるわけですけれども、いずれにいたしましても南と北の思惑といいますか、考え方といいますか、立場といいますか、依然大きな隔たりがあるということでございまして、なかなかトンネルの先が見えてこないということでございます。
 朝鮮半島の問題といいますのは、もちろん国会等でもいろいろ御議論がありまして、政府からも御答弁申し上げておりますけれども、やはり第一義的には南北の両当事者の直接の対話によって平和的に解決されなければならないということが我が国政府の基本的な立場でございます。そしてそういう観点から、政府といたしましてもできるだけ早い機会に意味ある対話が再開されるということを強く期待しておるわけでございまして、またその環境づくりのために必要とあれば、要請を受けて関係国と緊密に協力しながら、できることがあれば日本としても積極的に貢献していきたいというのが政府の立場でございます。
 さて次に、北朝鮮の相互兵力削減の提案がございましたが、これは細かい内容は御質問に答える形でお答えすることにいたしたいと思いますが、要するに南北の兵力を段階的に削減しておく、そしてやはり行く行くは米軍の朝鮮半島からの撤退ということを眼目にいたしております。これに対しまして韓国の方は、南北の外相会談というものを提案いたしまして、先ほど申し上げましたように、国連の同時加盟とかクロス承認とか、そういう幅広いものを取り上げようということを言っておりまして、これが韓国の現在の立場でございます。
 さて、そういうことで双方の非常に大きな隔たりがあるわけでございますが、他方そういう状況で、間違いなく実は来年の九月ソウル・オリンピックというものが迫ってくるわけでございます。これを一体どういうふう値しのぐか、どういうふうに成功裏にこれを開催するかということに関心が持たれるわけでございますけれども、オリンピックをめぐりましては、ソウル・オリンピックの南北による共催を主張しております北朝鮮の立場に対しまして、それに反対いたします韓国の立場、この間で大きく妥協の見通しが立たないまま今日に至っております。これも細かい内容に立ち至るのは差し控えますけれども、本年の四月に第四回の会談というものがスイスにおいて南北間で持たれましたが、IOCの調停案として出しました種目の数、北朝鮮で開催する種目の数をIOCは一つの調停案を出したわけでございますけれども、北朝鮮はこれを不満といたしまして新たな反対提案をいたしました。しかしながら、これに対しましてIOCの方は今度は北朝鮮の提案を拒否するということで、これもまた合意に至っておりません。
 そういうことで、南北間の話し合いあるいは東側諸国の参加の問題につきましては、いろいろ今後も動きがあろうかと思いますけれども、これも我が国といたしましては、八八年のソウル・オリンピックが政治体制あるいはイデオロギーを超越いたしまして世界のすべての国家の参加のもとに成功裏に開催されるということが強く期待されるわけでございまして、政府といたしましてもこの大会の成功のためにできる限りの協力を惜しまない所存でございます。明年のオリンピックが中国、ソ連、東欧諸国はもとより、できれば北朝鮮の参加を得て開催にこぎつけるということができますれば、これは単にスポーツの祭典ということのみならず、いわば一大国際政治ページェントといいますか、行事になるわけでございまして、これが朝鮮半島の緊張緩和の大きな転機にもつながり得るということで、このソウル・オリンピックの成功というものが強く期待されるわけでございます。
 次に、カンボジアの情勢でございますけれども、これも後ほどの御質問にお答えする形で御関心の向きには詳しくお話ししたいと思いますけれども、要するに民主カンボジアの側の提案と、そしてこれに対するベトナムの提案というものが行き交っておりまして、結局これもまた先がなかなか見えないという状況が続いておりまして、冒頭申し上げましたように、このインドシナにおける緊張緩和の存続ということが東南アジアの平和と安定のために一つの大きな不安定要因になっておるということでございます。カンボジアの問題につきましては、御承知のようにベトナム軍十四万人とも十七万人とも言われますけれども、これのカンボジアからの撤退、そしてカンボジア人の民族自決の精神を柱といたしますいわば包括的な政治解決が不可欠であろうと思います。
 我が国といたしましても、立場を同じくいたしますASEAN諸国の政治解決を目指すそういった努力に協力もし、これを支持していくという立場でございまして、他方ベトナムとは引き続き日本政府としては対話を維持して問題の解決の環境づくりに努めていきたいというふうに考えております。
 さて、最後に中国情勢でございますけれども、冒頭御説明いたしましたように、現在中国では経済建設路線、経済建設を重視する路線というものがケ小平さんの指導のもとに展開されております。先ほど申し上げましたように、こういった経済の建設というものを国の最高の施策、目標として据えまして、諸外国との交流も活発に進める、穏健な路線を歩む中国、こういったものの存在はアジアの平和と安定にとって極めて私どもは大きな意味を持つものと考えております。
 既に述べたところでございますけれども、日本と中国の関係あるいは米中関係の進展があるわけでございます。かつまた、そういったことが東アジアの平和と安定に大きく寄与しておるわけでございますけれども、こういったアメリカあるいは日本との関係の進展ということも中国側における好ましい変化があって初めて可能であったわけでございまして、今後とも我が国を初めとする西側の対中外交も、できる限りそういった中国側の現在の近代化路線というものを支援し、これに協力していくという方向で努力を展開すべきものと考えます。
 そういう中国で、本日の主題は軍備管理・軍縮ということでございますが、百万人の軍隊を適宜縮小するという大胆な措置がございました。この削減によりまして、現在、中国人民解放軍は四百二十万人から約三百二十万人程度になったものと見られております。そのねらいは軍備費の削減によります国家建設の強化、あるいは大量の復員兵を経済建設に向け得るというようなこと、あるいは軍隊の精鋭化による戦闘力の強化というようなこと、そして平和中国というもののイメージアップというそういったことが背景にあったのではないかと見られております。
 中国との関係で若干中ソ関係についてお話しいたしますと、中国とソ連との間には、依然としていわゆる中国が出しております三つの障害というものがございます。中ソ国境地帯に展開されたソ連軍の存在、そして第二点は、ベトナムに対するソ連の支援、そういったことを中国側は非常に問題にしておりまして、それについての日に見える改善がなければ中ソ関係の基本的な良好な関係への回復というものはないということを中国側は言っております。第三点は、言うまでもなくアフガニスタンにおけるソ連軍の存在でございます。
 しかしながら、さはさりながら、最近は中ソ間で実務的な会談も始まっておりまして、若干そういう背景を受けまして留学生の交換も進み、貿易も伸びておるようでございまして、両国のこういった関係の改善というものが今後ともある程度進むと思います。決して五〇年代の、御記憶のような戦略的な関係に中ソが復帰するというのはなかなか難しいと思いますけれども、ある程度の改善は引き続き進むであろうと見られておりまして、こういった中ソ関係の改善というものは、やはり東アジアの緊張緩和というものに非常に大きく寄与するわけでございまして、我が国としても基本的に歓迎すべきものであろうかと思います。
 さて最後に、そういうことを申し上げた上で、しからば日本といたしましてアジアの平和と安定のためにどういう役割があろうかということを簡単に御説明したいと思います。
 まず、アジアの平和と安定ということを考えます場合に、やはり何といっても軍事面とそしてそれと同様重要な非軍事面の問題があろうか思いますが、まず軍事面の問題についてお話しいたしますと、アメリカは七〇年代前半においてベトナムから御記憶のように軍事的に撤兵いたしました。そして、以後七〇年代末ごろまでは米国の国防努力はソ連とは対照的に、実は抑制されたものであったと思います。しかしながら、近年、例のデタントというものを十分に利用し切った形でソ連の軍事力の強化というものがございました。そういうものに対応いたしまして、アメリカもこの地域における抑止力の信頼性の維持強化に努めておる状況でございます。
 東アジアの諸国が何をもっていわゆるその国々への脅威というふうに観念するか、そしてその上に立って各国がこの安全保障政策の根幹にどういうことを据えるかということは、もちろんその国国によって少しずつ異なるところでございます。しかしながら、近年におきますソ連のこの地域における軍事的な進出というものは、もちろん一部の社会主義諸国は別でございますけれども、インドネシアあるいはマレーシアといった、いわば非同盟の中立路線を標榜する国々にとっても無関心ではあり得ないところでございまして、これに対する有効な抑止力としてこの地域におるけアメリカの軍事的な存在というものは引き続き期待する気持ちが強いように見受けられます。
 そして他方、冒頭申し上げましたように、アジアの平和と安定、こういったものは以上申し上げました軍事的な面だけには実は限られないわけでございまして、それにはそのほかに政治の問題、経済的な問題というものがございます。東アジアの諸国が当面しておりますいろいろな脅威、チャレンジ、挑戦というものは、ひとりソ連からの軍事的な脅威のみではないということもまた明らかでございまして、それらは実は貧困の問題であり、あるいは国によっては国民の統合の問題であり、そして政治的、社会的な安定の問題でございます。そしてまた民主化の問題でございます。そういうふうに政治、経済、社会万般にわたるわけでございまして、こういった多様な問題に的確に対処し得てこそ、初めてこれらの諸国はみずからの強さを高めまして外からの脅威に有効に対処できるというふうに思いますし、また、実はそこに日本に期待される役割というものがあろうかと思います。
 そこで、まず政治の面でございますけれども、これはいろいろな日本の政治的な役割というのはございましょうけれども、ごく例示的に申し上げますと、一つは新聞等にも報道されました中国と韓国との間の関係の改善といいますか、進展といいますか、そういうものを日本としても韓国等の要請を受けてある程度お手伝いできるのではないかということがございます。事実、中曽根総理御自身も、八六年十一月に中国にいらっしゃいましたときに、そういった中国との関係の進展を望む韓国側の気持ちというものを中国側にお伝えになったようなことがございました。
 第二点は、何といってもやはり私どもは安定した良好な日中関係の存在というものがあろうかと思います。それに向けての日本の努力というものがあろうかと思います。本年はたまたま日中の国交正常化十五周年でございますが、十五年間日中関係は間違いなく着実に発展してきたと思います。貿易面、経済協力の雨その他の面で大きく発展してまいりました。人的な交流も非常に盛んでございます。最近に至りまして、委員各位にも御心配をいただいております幾つかの問題がありますけれども、さはさりながら、基本的には私どもは日中関係は良好な安定した関係を維持し得ておるものと思います。
 そして、こういった安定した良好な日中関係の存在というものが、アジアひいては世界の平和と安定にとって極めて重要な条件となっておるというのが日本はもとより中国の認識でもあろうかと思います。したがいまして、我が国といたしましては、今、中国が進めております近代化建設への努力に対しまして引き続き精いっぱいの協力を行っていく、これがあるべき方針であろうかと思います。
 第三点は、経済問題ではやはり何といいましても日本の市場の開放、そして東アジアへの投資を活発にするということであろうかと思います。これら諸国から我が国への輸出といった面では、まだまだ日本がなすべき措置は多々あるような気がいたしますし、また、これらの諸国が日本からより活発な投資というものを期待する気持ちも非常に強いわけでございます。そういったことが非常に引き続き今後とも重要であろうかと思います。
 最後に、それに等しく重要なのは、やはりこれらの国に対するいろいろな意味での経済協力であろうかと思います。
 東アジアは、歴史的にも政治的にも経済的にも、そして文化的にも我が国にとりまして非常に重要な国々でございますし、しかるがゆえに日本の援助にとりましては最重点の国でございまして、八六年では実績ベースで何と二国間の政府の開発援助、日本が行っております開発援助の約四三%がこれらの地域に向けられておるということが言われます。ただ、やはり経済協力の面でもいろいろまだ改善すべき点はあるわけでございまして、そういった面を引き続き政府としては精いっぱい努力していかなければいけないと思います。
 以上、長々と申し述べましたけれども、やはり我が国は東アジアの国々とともに、いわば平和と繁栄を目指す、あるいは分かち合うよき隣人の関係というものを構築しなければいけないと思います。他方、我が国は間違いなくこの地域におきましては経済の面あるいは科学技術の面でぬきんでた存在、立場にあるわけでございます。したがいまして、そういう意味からもこれらの国々の日本に対しまする厚い期待というものも大きいわけでございます。我が国といたしましても、この地域の平和と繁栄のために今後とも我が国の国力、そして国情にふさわしいやり方で貢献していかなければいけないと思っております。委員各位の御指導、御支援をお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
#4
○小委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 次に、防衛庁から説明を聴取いたします。瀬木参事官。
#5
○政府委員(瀬木博基君) 防衛庁の瀬木でございます。
 若干の時間をいただきまして、きょうの課題でございます東アジアの、特に軍事面について御説明をきせていただきます。
 国際的なシステムというものを考えます場合に、それを動かす要因というものはいろいろなものがあると思います。政治であり経済であり、また文化というものもあると思います。その中にあって軍事、国防というものも一つの要素であります。この一つの要素と申しますのは。全体の中である意味では一つにすぎないというふうにも見られますし、しかし。一つであり重要な役割を帯びているということでもあると思います。すなわち、私は国際政治を見る上で軍事問題というものは過大に評価すべきでもないし、他方過小にも評価すべきでない、そういう観点から見るべきものであると思っております。
 きょうの課題でございますところの東アジアというものを考えますときの全体的な枠組みにつきましては、ただいま外務省の方から非常に詳細な説明がございました。防衛庁としても全体の枠組みについては同じような分析をいたしておりますので、そういう基本的な枠組みについては立ち入らないことといたしたいと思います。
 外務省からも説明がございましたように、東アジア全体をとってみますと安定的な要素、また不安定な状態というものが非常に交錯している。そういうことであり、言ってみれば光があり、また陰がある、こういう両面が非常に顕著であるという地域であろうと思います。光につきましては既に指摘されましたが、私は、この地域は総体的には、世界全体を見れば安定しておるし、また発展しているという意味でやはりぬきんでた地域であると思います。他方、陰の部分につきましては、極東ソ連軍の問題、朝鮮半島の問題、カンボジアの問題、また最近の問題としてのフィリピンというようなことが説明がございました。その中にありまして日本は大きな存在である、また、一つの安定的な勢力である。これは私は全く否定しがたい事実であろうと思います。これに貢献する要素はいろいろなものがございます。
 その中にあって、日本が安全保障で極めて確実な状態にあるということは決して無視し得ない要因だと思います。我が国は着実な防衛力を整備する一方、日米安保体制というものを堅持いたしております。他方、我が国は憲法その他の建前、また国策からいって、軍事面で国際的な役割は果たさないということになっております。そういう国として私は、現在の東アジアに位置する日本から見て一体どういう状態にあるかということを見てみたいわけであります。
 この説明に当たりまして、私はこの地域別の小地域と申しますか、そういうところの基本的なところへ時間を使うことを避けまして、国対国という形で分析をしてまいります。この点は配付してございますところの要旨というところにほぼ沿ってまいりたいと思います。ただ、この国対国ということを言います場合に、決してそれはその国と国とが常に対立をしているという意味でもなければ、また非常に常に協力状態にあるというようなものでもない。それは国というものの性格上それぞれ複雑な関係をはらみながら国際関係が成り立っているということであると思います。
 北東アジアの地域で申しますと、米ソの軍事的対峙、中ソ及び朝鮮半島というような軍事的な問題が複雑に絡み合っております。米、中、ソ三カ国の関係を見ますと、米ソ両国のグローバルな軍事的対峙の一環として、この地域における対峙及び中ソ両国の国境を挟んでの対峙が依然として続いております。一方、米ソ、米中、中ソというようなそれぞれの間の関係で話し合い、また交流も進展しております。また、朝鮮半島におきましては南北間の対話の動きが高まり、また中断する一方、百二十万を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しており、軍事的な緊張という構図は変わっておりません。
 そこで、まず第一番目に米ソ関係を取り上げてみたいと思います。
 ソ連は、申すまでもなくユーラシア大陸というところの中心を占める大きな大陸国家であります。このソ連の基本的な軍事的な体制と申しますものは、ユーラシア大陸というところに位置するソ連として、ヨーロッパであり、極東であり、また中東というところに兵力を集中するという形をとっております。その一つとしての極東にソ連は全体として三分の一から四分の一の軍事力を配備し、引き続き質、量両面にわたって増強を行っております。中距離核というもので現在世間をにぎわしておりますSS20というものも極東方面に全ソ連の持っておりますところの約三分の一強、百七十基ほどを配備しております。また、バックファイア爆撃機という極めてすぐれた攻撃能力を有する爆撃機を約八十五機配備しております用地上、海上、航空それぞれについても量的、質的な増強を継続いたしております。また、ソ連が一九七八年以降、我が国固有の領土である北方領土に地上軍部隊を配備し、現在では師団規模と推定される規模の兵力を持つとともに、ミグ23新鋭戦闘機を約四十機配備しておるわけであります。
 他方、米国は海を隔てた海洋国家として、基本的にユーラシア大陸、ヨーロッパ、アジアに同盟国を持つ。一方、ヨーロッパ、北東アジアに前方配備を行う、そしてその間を機動力でつなぐという基本的な戦略を持っております。この地域においては日本、韓国等との間で安全保障条約を結びますとともに、ハワイに司令部を置く太平洋軍の隷下の陸、海、空の三軍を持っております。
 このように米ソ両国は、この地域において軍事的に対峙しておりますが、二国間の関係においても、全般においてもアフガニスタンへのソ連の軍事的介入以来、比較的冷たい関係が続いておりました。しかし昨今はグローバルな関係において軍備管理・軍縮等の協議も進み、明るい兆しも見えております。
 次に、中ソ関係に目を転じてみますと、中ソ関係では経済分野を中心とする各種の話し合いが進展しており、また、先ほど外務省からも説明がありました国境問題についても、久しぶりの次官クラスの会談が再開されております。
 昨年七月、ゴルバチョフ書記長がウラジオストクで演説を行ったということで、善隣の雰囲気をつくり出すためのいろいろな措置を検討する用意があるということを声明すもとともに、モンゴル駐留軍の撤退の表明を行うなど、強い中国との間の関係改善意欲を表明しております。しかしながら、現在においても中ソ国境においては双方合わせて百八十万人という大規模な軍事力が配備されておりまして、基本的な軍事力対峙の状況に変化はございません。
 中国では当面、経済建設が最優先課題となっておるということで、軍につきましても百万人の兵力を削減する一方。組織、機構の簡素化に努める、また、自由諸国を含める外国からの技術導入を図るなどで近代化に努めております。中国軍はこのように兵力削減を行っておりますけれども、中ソ国境周辺には依然として六十三個師団、百三十万人以上という大規模な兵力を配備いたしております。他方、ソ連は中ソ国境に今なお五十七個師団、約五十万人以上の地上兵力を配備いたしております。
 米中関係に移りますと、米中関係は七九年の国交正常化以来、台湾問題を抱えながらも関係発展の努力が払われております。両国首脳の相互訪問もあり、交流が拡大しております。
 軍事関係の分野におきましても、昨年以来ワインバーガー国防長官の訪中、米艦船三隻のチンタオ入港、中国軍事委員会副主席の訪米というように交流が活発化しております。
 朝鮮半島につきましては、南北対話の動きがいろいろあるということは外務省から説明がございましたので、繰り返しません。そういう対話の試みがなされ、残念ながらいずれも実を結んでいないという状態にある一方、依然として百二十万人を超える地上軍が対峙しておる。軍事的な緊張が続いている状況には変化が見られておりません。
 北朝鮮は、いわゆる四大軍事路線に基づき、七〇年以来軍事力増強、近代化を図っており、最近においては機械化、装甲化というような編成の改編等を行う一方、前方配備を行うという状態にございます。また、ソ連との間で軍事的関係を緊密化しており、航空機、地対空ミサイル等の新兵器の導入を図る一方、ソ連機による領空の通過を許す。また、両国の海軍による合同演習を行うというような動きがあり、朝鮮半島での軍事バランスというものとの関係で注目を集めております。
 一方韓国は、北朝鮮の軍事力増強を深刻な脅威として受けとめ、国防努力を行っております。他方、米国との防衛条約に基づきまして、現在、四万三千人の米軍が韓国に配備されております。このような在韓米軍と、またそれを裏づける米国の確固たる韓国防衛の意思と、また韓国の防衛努力とが相まって朝鮮半島の相対的な安定は保たれていると思っております。保東南アジアにおける緊張という問題につきましては、これまた既に外務省から説明がございましたが、カンボジア問題、また最近のフィリピンの状態という問題がございます。
 カンボジアにおいては、ベトナムが約十七万の兵力を駐留させ、ソ連の支援を受けつつ、ヘン・サムリン政権によりますところのカンボジアの支配定着化を図っております。一方の民主カンボジア連合三派は、カンボジアの内部でゲリラ活動で対抗するということで、依然としてカンボジアの平和は訪れていないということでございます。そして、国連、ASEANその他から紛争解決のためのいろいろな提案がなされておりますが、いまだに実っていないということであります。
 中越国境に目を転じてみますと、中越国境におきましては七九年二月から三月にかけての軍事衝突以来、紛争の平和的解決及び関係正常化のために開かれておりました中越会談が、七九年以来中断されたままとなっており、今年の五月、グエン・バン・リン書記長とゴルバチョフ書記長との会談において、中国との関係正常化はアジアの重要な要素であると強調する共同声明が発表されるなどの動きが見られましたが、具体的な歩み寄りの動きはございません。
 中越国境においては、現在中国軍が約二十個師団、三十万人、ベトナム軍三十個師団、約三十万人という二大勢力が対峙しており、現在も小規模な武力衝突が続いております。先般、栗原防衛庁、長官が中国を訪れた際も、中国の首脳、また地方に赴きました際も、地方の軍団長という者がこの中越国境の情勢において極めて厳しい認識を示しておりました。
 他方、ソ連はこの東アジアにおいて自国とは別の大きな基地を持っております。これがすなわちベトナムでございます。七八年にソ連はベトナムと友好協力関係を締結し、政治的な影響力の伸長を図るとともに、カムラン湾の海空軍施設を使用、これを重要な拠点として航空機による哨戒活動を実施するとともに、南シナ海に艦艇のプレゼンスを維持しております。
 最後に、アメリカとASEANとの動向でございますが、かつて米国はベトナム後遺症ということで、この地域からのプレゼンスをかなり減少させたわけでございますが、現在においてはASEANとの協力友好関係を強める、また軍事援助、経済援助ということで、地域的な安定の維持に努めるということで、ASEANへのプレゼンスというものの回復に努めていると見られます。
 他方、フィリピンに駐留しますところの海軍、空軍というものの存在、タイとの間の共同演習、戦時予備備蓄の実施、西太平洋、インド洋というところにおける空母戦闘グループのプレゼンスということ等の軍事的なプレゼンスにつきましても、これらの存在によってこの地域の安定に寄与しております。ASEAN諸国もそれぞれの国防努力というものを継続し、またASEAN相互の経済、文化交流というものを通じまして域内の結束を図り、先進民主主義諸国との間の協力関係の増進に努めております。
 このように、東アジアの全体におきまして緊張緩和、紛争解決というものの動きが見られる一方、依然として不安定要因、紛争というものも継続しておるということで、全体としての緊張緩和が実現するまでにはまだまだ相当の努力、時日がかかるのではないかと思われます。
#6
○小委員長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。
 以上で説明聴取は終了いたしました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○杉元恒雄君 ことしの五月に日韓外相定期会議がありまして、その際に、南北対話を促進するということについて合意されたと承知しておりますが、先ほどお話を承りましたように、南北対話は今スポーツ会談以外は中断しているわけであります。しかし、ソウル・オリンピック開催を契機にして、南北対話の再開も期待されないわけではない。しかし、南北対話で一番いつも痛感させられるのは、最も重要で欠かすことのできないのは、相互信頼というこのことだと思います。しかし残念ながら、現在は決して良好なものではありません。こういった環境の中で、日韓外相会議で南北対話を促進させるというこの合意というのは、具体的にはどういうことが内容になっているんだろうか、それをお伺いいたしたいと思います。
 またあわせて、北朝鮮の兵力削減提案がありましたが、その北朝鮮の意図はどういうところにあると理解していいのか、お教えをいただきたい。
 もう一つ続けて韓国の点につきましてお尋ねしますが、最近、韓国では政府の持っておる情報を初め各種の情報が大幅に公開されるようになってきたのでありますが、このことは日本人にとって韓国に関する理解が進み、一般的に良好な雰囲気をつくっていることも事実であります。一方、北韓鮮はどうかと言うと、情報については秘密主義を依然としてとっているために、何となく不安、あるときは不気味にさえ思えることがあるわけです。先般の金日成主席の死亡誤報事件なども記憶に新しいところでございます。
 そこで、最近ソ連も情報公開の方向に進んでいるというこういうこのごろでありますから、北朝鮮のこの規制がもし改まる方向へ行くとなりますと、南北対話のためにはえらい効果が出てくるように思いますけれども、こういった可能性についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか。あるいは、この際あわせて伺いますが、外務省が北朝鮮の情報の入手、分析についてどのような体制を持っているのか、そしてその精度についての確信の度合いはどの程度のものであるか。なかなかお答えにくいこともあると思いますが、答えていただける範囲でひとつお願いしたいと思います。
#8
○説明員(谷野作太郎君) 南北対話の促進のために日本政府がいかなる措置をとれるかというお尋ねがございましたが、確かに先生御指摘のように、大きな障害は申すまでもなく南北間の非常に大きな不信の存在であろうと思います。北の方にもいろいろ主張があるわけでございましょうけれども、韓国にしてみれば、やはりあのようなラングーン事件というものもございましたし、そういった北への不信というものもゆえなきわけではございません。
 そこで、私どもは基本的には南北の問題は先ほど御説明いたしましたように、南北双方の当事者のお話し合いによるのが基本的な筋道であろうということでございますけれども、側面からも韓国なりの御要請があれば何か対話促進のために協力もしたいということでございまして、例えば一つの例でございますが、先ほどちょっとお話しいたしましたように、韓国のそういった北との関係改善、信頼醸成措置に対する期待、そういった気持ちを日本等が中国に伝え、そして中国がそういった気持ちを北朝鮮に伝えるというようなことは一つあろうかと思います。これももちろん限度がございますけれども、そういった周辺からの協力というものが可能かと思います。
 それから第二点の、北朝鮮の兵力削減の提案がございましたが、それについての評価でございますが、私は、私の評価と言うよりむしろ韓国のあの提案についての受けとめ方というものがどのようなものであったかということを話した方がよろしいかと思います。やはり韓国が非常にあの提案について心配もし、即これに応ずることができなかったのは、先ほどもこれもちょっと御説明いたしましたが、米軍の問題でございました。あの中に米軍の段階的な朝鮮半島からの撤退ということがございまして、この点に対する韓国側の非常に強い猜疑心があります。結局はそこに北朝鮮の最終的なねらいがあるのではないかということに対する非常に強い韓国側の猜疑心がございまして、韓国は韓国で反対の提案をいたしまして、正面からこの提案を受ける形で土俵に乗るということはなかなかしなかったわけでございます。
 それから第三点は、北朝鮮のいわば情報公開が極めて不十分である、秘密主義であるというお話がございました。私も残念ながらそのような感じを非常に強く持っております。
 若干横道にそれますけれども、各位の御心配もいただいております例えば、日本との関係で今非常に心配されておりますのは、例の富士山丸の船員二名の方の北朝鮮における抑留の問題でございますけれども、この問題につきましても、私どもは精いっぱいの努力をしておりますが、なかなか手がかりがつかめません。非常に歯がゆい思いでおりますけれども、いずれにいたしましても、そういった秘密主義といいますか情報公開が非常に不十分だというのは、確かに北朝鮮の大きな問題であろうかと思います。
 ただ、以下は私どもの期待といいますかそういうことになるわけでございましょうけれども、お隣の中国の事例がそうでございましたように、やはり国の施策の中心を、先ほど来御説明いたしましたように、経済の建設というふうに大胆にも沢東さんの時代から国の施策の中心を変えてまいりました。そしてそのためには、中国みずからできることもさることながら、やはり諸外国との交流、諸外国からの支援というものが不可欠でございまして、昨今の中国は、御存じのように大変大胆に国を開き、諸外国との交流も活発でございます。恐らく北朝鮮も、伝えられるところによりますと、そういった経済の問題でかなり苦しい状況にあると言われますし、国の中でそういった路線を模索するといいますかそういう向きもあるやに聞いておりますので、そういうところに一つの寄せるべき期待の方向があろうかなと思っております。
 最後に、まことに痛い御質問でございまして、北朝鮮の情報をちゃんと政府、外務省は分析しておるかということでございました。まことにごもっともな御指摘でございまして、私どもは、もちろん与えられた職務でございますから、いろいろ御批判はあろうかと思いますけれども、また私どもも決して十分だとは実は思っておりませんけれども、私どもなりに精いっぱいやっております。
 事柄の性質上、どこでどうということはなかなか申し上げにくいわけでございますけれども、例えば、北京等にピョンヤンに勤めます西側の外交官がたまには出てまいります。そういった人たちの話を聞きましたり、それから北朝鮮と国交関係にございます第三国の政府の方々等といろいろ意見交換をしまして、情報の入手に努める。それから、これは北朝鮮のみに限ったことではございませんけれども、やはりそれよりも重要なのは公開された資料の分析であろうかと思います。北朝鮮のラジオをしっかりと聞き、北朝鮮の新聞をしっかりと専門的な日で分析すると、そこからまた何がしかのものが出てくるわけでございまして、そういう努力をしておるわけでございます。ただ、繰り返しになりますが、私どももまだまだこの点でやるべきことは多々あろうかと思っております。
#9
○杉元恒雄君 フィリピンについて伺いたいと思いますが、八月の末に発生いたしました国軍の改革派によるクーデター未遂事件ですね。フィリピンの政情の不安定さを改めて痛感したわけですけれども、私たちはアキノ大統領に対するフィリピン国民の支持は本当に厚くて広範であるんだというぐあいに思っておりましただけに、新聞に出ておりました今回の反乱、その反乱の首謀者が国民のアキノ離れの傾向を利用しようとしたんだという、こういう新聞報道を見ましてショックを感じたわけです。このようなクーデターが続発する背景は一体何が、どういうことがあるのか。特に社会経済構造上にその原因があると言われていますが、このクーデター勢力に支持を与えているのはどのような階層の人々なんだろうか、その辺についてお話を願いたいと思うのです。
#10
○説明員(谷野作太郎君) お話のございました先般のクーデター騒ぎ、私ども、それからマニラの私どもの大使館、大使以下がなり実は深刻に受けとめました。過去五回ございました。これが五回目でございますけれども、今回が何といいましても規模も非常に大きいし、犠牲者も多く出たということでございました。かつクーデターを起こしましたのがいわばエンリレさんという前の国防大臣でございましたその側近中の側近が首謀者であったということでございまして、そういう意味でもかなり今までのものとは違った様相でございました。
 いろいろな背景がございましたけれども、今の御指摘、御質問に関連して申し上げますれば、一つは、新聞にもちょっと出ておりましたけれども、最近フィリピンで石油製品を中心といたしまして値上げ措置がございました。これが引き金になりまして大きく諸物価が上がるというようなことに対して、一般の市民等に非常な不満、不安感がございまして、クーデター騒ぎがございました二、三日前にほぼフィリピン全国を巻き込んだゼネスト騒ぎがございました。そういった社会的なまさに先生御指摘の不安があったと思います。
 そこで、事を起こした軍人さん側の不満がどういうところにあったかといいますと、これは御多分に漏れず昇級の問題、待遇の問題等が第一でございました。そして第二は、アキノ政権の共産党勢力ゲリラに対する取り組み方が軍人たちから見れば手ぬるいという不満もあったようでございました。いずれにいたしましてもそういうことで決起になったわけでございますが、幸い今度はアキノ大統領以下今までとかなり違った極めて強い態度で事に臨みまして、余り人ごとにならずに反乱軍は制圧されたということでございました。
 アキノさんは、今のようなお話がございましたけれども、やはり先回の議会の選挙もほとんど与党が議席を独占するということで、大変な引き続き国民の人気はそれなりに高いのだと思います。もちろんいずれの政府も国内に不満分子があるのはフィリピンのみではございませんけれども、アキノ政権に対する犬方の支持というものはフィリピンでは崩れていないというふうに考えております。
 ただ、ちょっと話を続ければ、しかし先ほど申し上げましたように、フィリピンはこれからいろいろな問題があることはあります。越えなければならない山、農地改革の問題、それから対外的な債務をどうするかというような問題、今申し上げました共産党ゲリラに対する対策をどうするかというような問題、いろいろアキノ政権が抱える課題というものはそれなりに幾つも幾つも大きなものがあろうかと私は思います。
#11
○杉元恒雄君 もう一点伺いますが、ごく簡単に答えていただければ結構です。
 米軍のスビック海軍基地とクラーク空軍基地は、一九九一年ですか、現行の使用協定が切れるというように承っておりますが、フィリピンの新憲法はその存続には上院の三分の二の賛成が必要と定めており、事実上国会がどう判断するかが最大のポイントになっておる。また、アキノ大統領も基地存続問題は国会の判断にゆだねる姿勢でいると伝えられております。両基地は、アジア・太平洋はもちろんインド洋に至る地域における西側の安全保障に極めて重要な役割を果たしておるわけでありまして、この使用協定の行方は我が国にとっても大きな問題があると関心の持たれるところでありますが、外務省はこのことについてどのように見通しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
#12
○説明員(谷野作太郎君) 現在の時点で、必ずこうなるであろうというはっきりした見通しは実は残念ながら持ち得ておりません。先生御指摘のように、あそこにおける米軍の存在を引き続き何らかの形で維持するということは、やはりあの地域は東アジアの全体の平和と安定に不可欠なことでございましょうし、そういう意味におきまして、ただいまお話しのクラークの基地であり、スビックの基地であり、非常に日本にとってもその将来は無関心ではおれないわけでございます。フィリピンでこの問題がどういうふうに討議され、どういう結末になりますか、私どもも関心を持って見守っておる、そして、先ほどちょっと御説明しましたように、アメリカも非常に心配をしながら関心を持って見守り、また非公式にフィリピン政府とも既に話し合いも始めておるという状況でございます。
#13
○杉元恒雄君 終わります。
#14
○赤桐操君 外務省の審議官にまず伺いたいと思うのですが、先ほどあなたの御説明の中では、ヨーロッパにおける信頼醸成の状況とアジアにおける状況では違いがあるということを前提としてお話があったと思うのでありますが、その点をもうちょっと具体的に御説明願いたいと思うのです。
#15
○説明員(谷野作太郎君) 私から簡単に申し上げまして、説明員の軍縮課長からいま少し詳しく御説明させたいと思います。
 私どもの申し上げたかったことは、ヨーロッパは、委員各位に申し上げるまでもないことでございますけれども、一方においてはNATOという大きな存在、そしてそれに対峙するにワルソー条約の一連の国家群というのがございまして、図式的にきちんとしていると申しますか、そういう軍事的なブロックの対立というものが非常にきちんとしておる、はっきり図式的に描けるということ、そしてまた、アジアにございますいろいろな領土紛争も含めて、そういった点在する緊張の火種というものが各所にあるという状況ではないという気がいたします。そういう中で、ヨーロッパでは、昨今では軍備管理・軍縮への非常に大きな動きが既に始まっておるわけでございますけれども、アジアにおきましては、そういった複雑な状況のもとで、朝鮮半島一つをとりましても、先ほど御指摘のような南北の非常に大きな不信感もございます。まずはそういったものの除去、カンボジア紛争の解決、そういったものから信頼措置も生まれ、そこからおのずと軍備縮小といいますか、そういう動きも出てくるのではないかということを私は申し上げたかったわけでございます。
#16
○説明員(宮本雄二君) 谷野審議官の説明に特段つけ加えることはございませんが、事実関係を御説明いたしますと、欧州において軍縮のプロセスが進展いたしましたのは、七〇年代の初めに、一つはヘルシンキの欧州安全保障協力会議というものの準備会合が七二年に発足いたしました。七三年に中部欧州の兵力削減交渉というものが始まりました。その間、それまでに至る経緯で最大の問題はやはりドイツの領土問題というふうに言われておりました。最終的に西独政府がドイツの領土問題で現状を是認するという形で承認した結果、CSCEのプロセスが進み出したというふうに言われております。最大の問題は、やはり私どもの目からしますと、アジア・太平洋においては領土問題が未解決のところがかなり多うございますし、ヨーロッパにおいてはそれが解決しているというところを一つだけ補足させていただきたいと思います。
#17
○赤桐操君 今、そういう焦点が解決されたのが促進の一つの契機であったという説明ですけれども、それにしても、全欧、東西がここまで緊張緩和に大きく貢献をしつつあるということは、それなりの大変な努力があったと思うのです。それはヨーロッパでは自然にそういう条件があってできたんだというふうに私は見ていないのです。やっぱり各国とも相当の努力をしたと思うのです。例えば今度の米ソ関係の中における軍縮の西ドイツの思い切った動きなんかも、これはそういう努力の中から自信を持った一つの行動だと思うのです。そういうようなことは一体アジアではどうなんだと、こういうように比較して考える必要があると思うのです。
 例えば今の説明なんかにしても、中国の百万人の縮減の問題をどう評価するかということについて、私は正しくこれを評価していく必要があると思うのです。これは谷野さんの方の考え方としては、ここに出ていますけれども、百万人の縮減を基本的に完了し、中ソ両国の関係が実務的に改善の方向をたどっておるというふうに出ているんですね。ということは、非常に大きく動き出してききいるというように私は理解してもいいと思うのです。ということは、百万人の縮減というものは大変なものだったんだということになると思うのです。これだけのものを場合によっては縮減してもいいのだという腹を持ったお互いの信頼関係の醸成があったからこういうふうになってきたと思うのですけれども、それはそういうふうに理解していいのでしょう、あなたの方の考えは。
#18
○説明員(谷野作太郎君) 私からまず御説明いたしまして、防衛庁の方からあるいは補足的に御説明があろうかと思いますけれども、中国はやはり間違いなく非常に大きな、委員御指摘のような評価すべき措置であったと思います。中国解放軍はこれまで肥大化してきておったといいますか、かなり大きな金額がこれに充てられてきたわけでございまして、そういった実情から脱却して、先ほど来申し上げております国の経済、社会の近代化のために国の施策の重点を移す、また軍隊も人数を少なくして、しかしながらむしろそれによってより精鋭化された軍隊をつくり上げるということが考え方の背景にあったと思います。いずれにいたしましても、軍も含めて質的にも量的にも近代化していくというところに中国側の基本的な考え方があったというふうに私どもは説明を受けておるわけでございます。
#19
○政府委員(瀬木博基君) 中国の百万人の兵員削減という問題につきまして、今の委員御質問に対する谷野審議官の回答でほぼ尽きておると思います。
 私どもが先般、栗原防衛庁長官を長といたしまして中国に赴いた際、中国側から受けました説明も、これは中国の全体の近代化の一環、中国の人民解放軍の一環ということで受け取ってほしいということでありました。百万人の人員を削減するということは中国としては軍縮という形で必ずしもとらえていない、すなわち全体としての中国解放軍の兵力を落とすという意図はない、むしろ人間を減らすことによって近代化していくという位置づけをしているということだと思います。
 中国とソ連との国交の正常化、また二国間については友好関係を維持発展させようという動きは一方にございますが、中国としては、やはりソ連に対しては極めて安全保障上厳しい見方をしておるということが実態であるということだと思います。
 他方、委員御指摘のヨーロッパの問題でございますが、確かにヨーロッパはいろいろな形で緊張緩和の動きもあるわけでございますが、他方、NATOとワルソー・パクトとの間の基本的な対立関係というのは、これはスカンジナビア半島から始まってトルコに至るまで依然として大きく対峙をしておる。これに対して、特にNATOの方としてはソ連に対して、ソ連側というか、ワルソー・パクト側より勢力的な劣位にあるということで、これに対して非常な警戒感を持っておるという基本的な構図は変わっておらないと思います。
#20
○赤桐操君 外務省の見方と防衛庁の見方には見方の差があるように私は今聞いているわけなんですけれども、いずれにしても中国では、いろいろ中国全体が近代化を進めているわけであって、もちろんその関係を出た行動ではないと思いますが、百万の大軍を縮減したということは私はこれはやっぱり一つの大きな事実だと思う。これが一つ。それからもう一つは、そうしたものが一つアジアでも大きく出てきて、これが中ソ関係で大変効果を上げているように思うのですけれども、この点については防衛庁はどう見ていますか。
#21
○政府委員(瀬木博基君) 中ソ関係につきましては、これはブレジネフ時代から関係の正常化をやろうじゃないかという呼びかけがあって、これに、八三年だと思いましたが、中国がこたえて交渉を始めるというところから出ておるわけでございますが、中国としては何といっても最大の関心事は国の近代化ということだろうと思います。その近代化のためには平和的な国際環境が欲しいということで、これは西側との協力を進める一方、ソ連との間の不必要な摩擦というものは決して国のためにならないということを悟り、そういう二国間の摩擦の種をできるだけ少なくしていきたいということだろうと思います。
 他方、中国が常にその国交の正常化を進めるに当たっても基本的な問題を解決しなければいけないのだと言っております。それで三つの障害ということを挙げておるわけでございますが、そういうような基本的なものについては、単に中ソの関係を改善するというそのためだけで基本的な問題を忘れ去ることはできないということを強く言っております。したがいまして、二国間の関係を増進していくという一方の目的を持ちながらも、決して国益から見て中国として非常に大きな障害として見ておるところの三つの問題について譲ることはないと思います。
#22
○赤桐操君 いや、そういう意味じゃなくて、百万の大軍を縮減する、そしてそういう方向づけの中で中ソ関係も非常にうまくいってきている、そういう動きを示していることは事実じゃないのか、それはいわば欧州における緊張緩和のための相互の努力と同じではないのかと、こういうように私は位置づけながら今伺っているわけです。ところが、防衛庁側の方の説明によれば、それはそういう現象はあるかもしれぬけれども本質はそうではないのだ、対峙しているんだと、こういう見方にウエートがかかっているとすれば、やっぱり私は若干政府側の見方についてこの問題は考え方に相違があるように思うのです。この小委員会の目的は、少なくともどこにアジアにおけるところの緊張緩和、あるいはまた信頼性の醸成をつくり上げるチャンスなり場所なりそういうものが求められるのかということが、この場、きょうの我々が意欲的に求めながら話している内容なんです、はっきり言って。これはただ漠然とあなた方の意見を聞いているわけじゃないのだ。そういう意味で、今、外務省の方の意見と防衛庁の方の意見を聞いてみるといささかニュアンスに違いがあるんじゃないか、こう思って聞いているわけです。
 そういう意味で、またさらにもう一つ進めてみるというと、欧州においてはもう既に軍事行動についてはいろんな面で通告し合ってやっているわけですね。これは全欧州安保会議の中でそういうことで出ておるわけでしょう。それで通告し合えるものを通告し合っているわけでしょう。アジアにおいてはそういう例は余りないわけだ、実際のこと言って。そこに大きな差が現実にあると思います。そこまで持っていくのにはアジアではどうしたらいいのかということが問題になるわけで、その一つとして中国では百万の大軍を縮減して中ソ関係を今改善しているということは事実だと思う。そうだとすれば朝鮮半島における十万の北の方の提案が、裏があるか表があるかは別にして、こうしたものが出たならばこれを一つのきっかけにして、南北朝鮮のお互いの融和を図っていく等の信頼醸成の一つのチャンスに持っていくような努力はすることはできないのか、こういうように我々としては考えるわけなんです。
 そういう意味で、今いろいろと杉元さんの御質問に答弁されておる内容も伺ったんですけれども、そういう点から見ると、これは私は、お互いに、防衛庁の場合においても外務省の場合においてももうちょっと深い分析をしてもらって、例えば北の方との接触だって政府に直接関係がないとしても、野党の方においてあるとするならば、これは大きく評価をしながら関係づけていくべきだと思うのです。これは外務省だけでなくて防衛庁だってそういうことを考えるべきだと思う。そういうように私は実は考えている。そういう状況でなければチャンスをつかめないと思いますね。これが一つ。
 それからさらに、日本がそれでは米ソ関係の中でどういう立場にあるかと言えば、これは日米安保の関係の中から当然日ソの関係が出てきておりますね。これは北の問題が出ているわけです。これは先ほどの話じゃないが、領土問題が一つネックになっていることは事実なんです。朝鮮半島における国境の問題も大きな一つのあれになって、双方が大きな問題になってきておりますけれども、領土問題が一つ解決しないことも大きな問題になっておる。しかし、その他の問題で醸成することができないことはないだろうというふうに私は考えるわけです。例えば軍事費の一%問題にしても同じことが言えると思うのです。周りの国がみんな削減をしているのに日本だけがふやしていくというやり方をとっているわけですよ、日本自体が。こういうことについては、どうも全欧州におけるところの両陣営が努力をし合いながら信頼性醸成を図っているその努力と、これを横目に見ながら日本が歩んできている道とでは違いがあるんじゃないか。ここにアジアにおける近隣諸国の不信感が出てくるのは当然じゃないのか、こう思うのですが、こういうものについては外務省はどうお考えになっておりますか。
#23
○説明員(谷野作太郎君) 我が国のいわゆる防衛力の整備につきまして、近隣諸国がどう受けとめ、これについてどういうふうに政府は考えておるかという御質問だったと思いますが、昨年の防衛費の決定に当たりまして、委員御記憶であろうかと思いますが、アジアの中では中国が反応を示しました。アジアのほかの国が日本の防衛力の問題について心配しておる、そういう気持ちを大切にすべきであるということと、やはり日本の防衛力に一定の歯どめといいますか、限度を設けるべきであるというような趣旨であったと記憶いたします。他方、その他のアジアの国では、この問題につきまして公式に反応を示したところはございませんでした。
 しかしながら、委員御指摘のように、いろいろアジアとの関係でそれぞれ受けとめ方は微妙であり得るわけでございますから、私どもは出先の大使に訓令いたしまして、日本の防衛の基本的な政策をきちんと先方の政府に説明し、この辺については、シビリアンコントロール、非核三原則、軍事大国にならない、そういった日本の基本的な防衛政策にはいささかの変更もないのであるということを先方に説明し、先方の理解を得たものと思っております。
#24
○黒柳明君 外務省に二、三点お伺いします。
 一つは北鮮に対するアメリカのアプローチなんですけれども、おととしの暮れあたりから去年あたり、これは私たちのいろいろの情報なんですけれども、米中正常化みたいに、日本の頭越しにアメリカが北鮮と交渉している、こんなような話もあったんです。先ほどおっしゃったように、確かに当事者同士の話し合いが中心にはなると思いますが、アメリカもやっぱり全く傍観しているわけじゃないと思うのです。なかなか我が国も一番関係が深い間柄でも手が出せない状況ですけれども、何か外務省としてアメリカの北に対する陰に陽にのアプローチ、そんなものの情報をつかんでいらっしゃるかどうか。
 それからもう一点は、最近ちょっとジュネーブのINFの交渉のニュースが流れてこないのですけれども、アジアの百発の存廃の問題とかあるいはダブルゼロの問題とか、あるいは西ドイツのパージングTAの問題、みんなこれクリアして、その後今どうなっているのか、あるいはやっていないのですか、交渉は。だから報道が流れてこないんですか。
 それから、これは非常に難しい問題ですが、秋と言えばもう秋ですから、年内いっぱいあたりの米ソ外相会談から首脳会談にも持っていけるぐらいな何か合意、調印あたりできるのかどうか、外務省としてどういう情報ないし見通しをお持ちなのか。
 ちょっと観点は違うのですが、もう一点は、ASEAN――フィリピンを除いて四カ国、タイ、マレーシア、シンガポール・インドネシア、向こう一年ぐらいの間に今の政局なり社会情勢が変革する可能性、何かそんな要素があるのか、あるいは全く一年ぐらい向こうにはそういう要素はないと。もしあればどんなような可能性が、これは全く可能性、推測というようなことも含めてということになると思いますが、その三点お願いします。
#25
○説明員(谷野作太郎君) まず、アメリカと北朝鮮の関係でございますけれども、黒柳先生御指摘のようにアメリカがとった措置は、要するに二言で申し上げますと、第三国が主催するいわば社交の場におきまして北朝鮮側からアプローチがあった場合には、アメリカの外交官は彼らと会話を行っても差し支えないという訓令を出しました。それが当時極めて大きなニュースとして報道されたわけでございます。私は、そういうことはありますけれども、その問題も含めまして、アメリカが北朝鮮との関係で考えておりますこと、あるいはとろうとする処置、この問題もそうでございましたけれども、事前に日本政府とは緊密な協議もございまして、先方の考え方の説明もございまして、委員の御心配のような、ある冒頭越しに米国と北朝鮮が手を結ぶというようなことはあり得ないことだと思っております。
 それから、さらにつけ加えますれば、あるいは黒柳先生御存じかと思いますけれども、実は日本政府は、アメリカがとったような措置は既にかねてから実施済みでございまして、一々どこでいつということをこういう場で申し上げにくいわけでございますけれども、我が方の大使館と先方と社交等の場で出会い等はあります。また、ある種の話し合いも行っております。その意味におきましては、むしろ我が方の措置は、アメリカにかねてから一歩先んじておったということであろうかと思います。
 後段の点は軍縮課長からお答えいたします。
#26
○説明員(宮本雄二君) INFの問題について御説明させていただきます。
 七月下旬にゴルバチョフ書記長が、アジアも含めましたグローバルな長射程、短射程のINFを全廃するということに同意いたしまして、アジアのINF問題はこれで解決いたしました。
 八月、先般コール首相がパーシングTAと言われます短射程のINFにつきまして、米ソがINFをグローバルに全廃する場合には西独としてパーシングTAのミサイルを廃棄してもいいという発言をいたしました。現在残っております問題は、このパーシングTAを米ソの交渉対象にするかどうかということでございます。西独及びアメリカは、これは西独が持っているミサイルであるから、したがって米ソの交渉の対象にすべきではないということであり、ソ連側は、弾頭はアメリカのものであるから米ソの交渉にすべきであるというところが今パーシングTAについては最大の争点として残っております。
 それ以上に実態的に難しい面をはらんでおりますのが、実は検証条項でございます。
 八月二十五日に、米国は、グローバルなゼロということが本決まりになりましたので、それに基づく検証条項を提出いたしました。それまでのアメリカの検証条項は、核弾頭を残すということを前提につくっておった検証条項ですので、非常に複雑でかつ詳細な、精緻な検証を求めていたわけでございますが、ゼロになってしまうために検証が比較的簡単なもので済むということでございます。したがいまして、比較的簡単な検証の案をアメリカがソ連側にぶつけたということでございます。この問題に関するソ連側の回答はまだ到着いたしておりません。したがいまして、パーシングTAを米ソの交渉対象にするかどうかということと検証の細部について、米ソは引き続きジュネーブで交渉を続けておるという状況でございます。
 米ソ関係につきましては、九月十五日から十七日まで、シェワルナゼ外相の訪米の上、シュルツ長官との会談が予定されております。ここで間違いなくINFの問題は取り上げられると思います。ここで米ソの首脳会談をもしやれるとすればどういうふうにするのか、そもそもやれるのかやれないのかというところを両外相の間で見定めるということ、見定めた後、その後の米ソの政治スケジュールが決まってくるのではないかと思われます。
#27
○説明員(谷野作太郎君) 最後にASEANの国国についてお尋ねがございましたけれども、基本的に私どもはASEANのインドネシア、マレーシア、それからタイ、シンガポール等につきまして、当面その先行きにつきまして心配はしておりません。委員も御存じのように、近年実は、特に経済面ではASEANは七〇年代に非常に高い経済成長率を謳歌した時代がございました。ところが、その後主として石油等の一次産品の急激な価格の値下が力によりまして、例えばインドネシアにしましても石油の輸出に経済が負っている面が非常に大きいわけでございますが、こういった状況で多くの国々が非常に経済的に困難な状況に立ち至ったわけでございます。幸い八六年、特にことしになりまして、これはフィリピンもそうでございますけれども、再び経済成長率が上向きになっておりますし、その中でも特に先ほどちょっと申し上げましたように、タイの経済の発展ぶりはまことに見事なものだと思います。そういうことで、竹本からの投資も、私どもの承知いたしますところでは、大変大きな、大変数多くの投資がタイへ目がけてなされておるというのが昨今の状況のようでございます。
 そういうことで、これも委員御承知のところだと思いますけれども、ASEANはことしの年末、ブルネイも含めまして六カ国が集まりまして、マニラで久しぶりの最高首脳レベルの会議を持ちます。そこへ実は域外からどういう国の総理なり大統領に来てもらおうかという話があったようでございます。今のところ、ぜひ日本の総理大臣には来てもらいたい、そして日本からの協力もいろいろな面で得たいということでございましょうけれども、唯一日本の総理大臣に出席方の声がかかっておるという状況でございます。いずれにいたしましても、どなたが総理大臣になられましょうとも、その新総理のもとで第一に手がけられる大きな外交案件がこのASEANの首脳とのマニラにおける出会いということでございまして、私どもも何とかそういったASEAN側の強い期待にこたえられるように精いっぱいの協力の姿勢を示すべきだと思っておりまして、準備を始めておるところでございます。
#28
○黒柳明君 防衛庁に一点だけお伺いしたいのは、あるいは担当の分野じゃないかとも思うのですけれども、ちょっとわかりませんですが、在韓米軍と在日米軍、在韓が四万三千、在日が五万ぐらいいるんですかね。この接点というのですけれども、これはかつて動乱のときに国連軍として日本も国益のために援助をするというようなことがありました。今、国連軍は韓国にいるわけですね、一応米軍と称する国連軍にせよ。何ですか、安保条約のもとで在日米軍の日本の基地が、要するに、在韓米軍の基地の兵たん、あるいは補給処になるなんということがあるんですか。あれ、ふだん在韓米軍と在日米軍との交流、訓練を除いて常時横田ないし嘉手納、飛行機がありますね。あるいは艦船等の往復、こんなものは年じゅうあるんですか。
#29
○政府委員(瀬木博基君) 米軍の一々の動きがどういうふうになっているかということは、これは日本政府は必ずしも知っているわけではございません。
 他方、先生の御指摘の国連軍でございますが、韓国におります国連軍の後部支援としての国連軍というものは、依然として日本にまだ残っているわけでございます。
#30
○黒柳明君 日本に国連軍がいるのですか。
#31
○政府委員(瀬木博基君) はい。日本と国連軍との間の協定というものはいまだに有効でございまして、現実に国連軍の後部支援部隊、実は、まあ留守番みたいなものでございますが、非常に小さいものでございますが、そういう部隊はその協定にのっとって現在も日本におります。これはそういう意味で在韓の国連軍の後部支援をしているということであろうと思います。
 それでは、在韓米軍と在日米軍とは有機的にどういう結びつきがあるかということを見てみますと、法制的ないしはその部隊としての機能は完全に分かれております。実は去年までは日本におりますところの空軍、ここの在日米空軍、第五空軍でございますが、これが韓国も在韓の米空軍を含めて責任分野であったわけですが、それを去年二つに分けまして、それで韓国の空軍は第七空軍ということに分けたわけでございます。そうしましたことから組織的にも在韓米軍と在日米軍とはまず組織としては分かれてございます。ただ、軍隊の特性がございますから、その間で補給が行われる場合に、例えば韓国に行われる補給を日本の飛行場を通じるとか、場合によっては日本の提供しておりますところの港湾が使われるという、そういう物理的な関係はあるんではないかと思いますが、これは一々どういうふうになっているかはわかりません。
#32
○黒柳明君 結構です。
#33
○小委員外委員(上田耕一郎君) 東アジアの軍縮問題を考える場合に、谷野審議官が、アジアにおいてはヨーロッパと比べても軍備管理、軍縮が非常に未成熟だと言われたように、ヨーロッパとアジアとの非常な情勢の違い、そこを認識して考えることが前提になってくるだろうと思うのです。
 まず、防衛庁の瀬木参事官にお伺いしたいのですけれども、ヨーロッパでは例えばNATOとワルシャワ条約機構があるバランスを持っている。そのバランスについては、核がいや西が強いとか、いや通常兵器は東が強いとかいろいろ評価や議論もありますけれども、あるバランスを持って、しかもレベルが高くなった悪循環で拡大してきたわけですね。そういう状況にあり、だからそこでは軍縮の問題が世論の中でも、またそれぞれ各国政府もずっと問題にしてきたことがあって、INFの相互配備についても、今度ヨーロッパ中心にINFのダブルゼロが課題になってくるような状況があるわけです。ところがアジアではまるで違うと思うのです。
 例えば軍事ブロックの問題について言っても、東側ではソ連、中国の友好同盟条約があったんだけれども、あれは中ソ論争でなくなりました。今ソ連とベトナム、ソ連と朝鮮等々のやっぱり軍事的な緊密な関係等々があるにしても、公然たる軍事同盟はないわけです。ないだけじゃなくて、同じ社会主義国の間で、中ソでああいう緊張があり、中国とベトナムの間には戦争があったというような状況でしょう。
 他方、西側は、SETOはなくなりましたけれども、日米軍事同盟がある。それから韓国、台湾、フィリピンとの条約がある。それからANZUSはニュージーランドの問題があってやや軍事的機能は弱まっておりますけれども、むしろ東側の軍事ブロックがかっちりあって、しかもその中軸は、世界最大の経済力、軍事力を持っているアメリカと世界最大の債権国になってきた日本とが中軸になっているわけでしょう。核兵器の配置を見ましても、私は東、つまりアジアでは核兵器を含めて西側のアメリカを中心とした軍事力が圧倒的に強いと思うのです。ほとんどバランスを語ることができない状況だ。その米ソ対決の悪循環の中で、ソ連側もいろいろ措置をとってくる、特に北方領土を含め、シベリアを含め、中ソ対立もあります。その中で対決構造が生まれ、悪循環が発展してきたんだけれども、全体としては、軍事ブロックの問題を見ても、核の問題を見ても、軍事力を見ても、アメリカ側が圧倒的に強いということは西側が強いということ、この認識から始まらないと問題がまるっきり間違うだろうと思うのです。
 私どもは七九年に日ソ両党会談をやったときに、千島を全部返せというので大分やったんです。そのときソ連側はこう言いました、そんなことを言ったって、アメリカ、日本、韓国、中国にこう取り囲まれて、どんどん軍備拡大されたら大変だと。非常に被害者意識ですね。そこへ千島を返したら大変なことになるということで、千島を返すことを彼らは断る。だから、日本が安保条約をなくして、独立、中立になれば、あなた方は前に南千島を返すと約束したじゃないかというのでいろいろ議論をしたんです。
 私は外務省からゴルバチョフのウラジオ演説を全文いただいて、さっき読んだんですが、この中にも「一九七〇年代後半から、米国は太平洋における軍事力を増強するための大規模な措置をとった。米国の強請によって、ワシントン=東京=ソウルの三国軍事同盟が形成されつつある。」、こういう言い方をしています。それで、今度の「日本の防衛」にも大変たくさん書いてあるんだが、ソ連側の例えば北方領土その他東アジアにおける軍事力増強について、アメリカ自身の一九八六年版の「ソ連の軍事力」、これはアメリカ国防総省が発表したものですが、こう書いてある。「ソ連の太平洋艦隊は「米空母からの空襲や上陸作戦からソ連領土を防衛するために決定的重要性をもつ」」と。それから、朝日新聞の有名な軍事専門家の田岡記者は、この国防総省の発表文を読んで、「もし、ソ連海軍の士官が書いたとしても、ソ連海軍の防衛的性格をこれ以上に説得力を持って書くことはむずかしいだろう」、こう論評したぐらいなんです。
 だから、今の東アジアの米ソ対決の軍事状況を、ソ連がどんどん増強して、これがそうですけれども、大変なことになったんで、日本もアメリカと一緒になってこのソ連の脅威に対抗するために軍事力を増強しなきゃならぬというふうに描き出すのは、まるっきり事実に反している。これは進藤栄一教授が「世界」にも書いていたけれども、例えば空母だってアメリカは今は十五隻か、巨大な航空母艦を持っている、原子力空母もますますふえる。ところが、ソ連は対潜空母、キエフ級がたった三隻でしょう。だから船の数を数えれば、よく防衛庁の方は、ソ連太平洋艦隊は約八百四十隻か、何かおっしゃいますけれども、数はあるけれども古い船で、だからもう軍事力全体からいうと、アジアではヨーロッパと違ってバランスについて語ることできないぐらいに状況が違うのだ。この認識から出発しないと話がまるっきり逆になると思うのですが、いかがでしょう。
#34
○政府委員(瀬木博基君) 上田先生が日ソの間の問題でも非常に御苦心されて、千島列島を返せというようにソ連ともお話し合いをされていると、大変敬意を表したいと思います。
 我々も、もしアジアの間の軍備のバランスがとれて、これによって緊張が緩和されるという事態になれば、これにこしたことはないわけで、我が国の防衛力ぐらい守りに徹しているという国においては、緊張があっていいなどということは一つもないわけでございまして、むしろ緊張が緩和されればこれにこしたことは。ないと思っております。
 先ほど上田委員がアメリカの軍事力、それから日本、韓国の経済力というものを加えれば、これはソ連と比べて明らかに西側の方が有利じゃないかというお話がございました。これはちょっと私は……
#35
○小委員外委員(上田耕一郎君) 有利じゃない、強いですよ。
#36
○政府委員(瀬木博基君) 強い――わかりました。それはちょっと違うのではないか。それは上田委員がおっしゃられるように、アメリカの軍事力ないし国力が全部極東にある、もう日本の隣にあって、日本とアメリカとこれが一緒になって東アジアに位置しているということであれば、これはそうかもしれません。それはそういうことが考えられると思います。ただ現実には、ソ連というのはヨーロッパの国であると同時にアジアの国であり、極東の国であるわけでございます。日本はもちろん極東の国。それに比べまして、アメリカというのは世界で一番大きな太平洋というものを隔てた北米大陸にある海洋国でございます。
 この極東地域にある軍事力というものは、これは先ほども申し上げましたけれども、米国が持っておる、前方配備されているというものの全体から見ればそれほど大きくない四万程度の兵力が日本、韓国にそれぞれ配備されておるわけでございます。また太平洋艦隊もあるわけでありますが、それと極東にあるソ連の軍事力というものを比べれば、これは西側が強いということは、どんなふうに見てもそれは言えないと思います。これは客観的な数字を見ましても――核の問題はちょっと置きます、核の問題はやはりグローバルな意味があって、地域的に分析するのはどうかと思いますが、通常兵力を見てみれば、ソ連のバランスというものはアメリカと比べてやはり極東地域にどうしても大きいと見ざるを得ないと思います。これは確かに上田委員がおっしゃるように、数だけを見るのはおかしいじゃないかという議論もございますが、数だけではなくて、質を見てもソ連の現在の極東軍事力というものは非常に質が向上しているということは、これは残念ながら認めざるを得ないだろうと思うのです。
 しかしてそれであれば、私は非常にアラーミングにとらえる必要があるかというと、それはそうでなくちゃならぬことはないと思います。そういうこともあり得ると思います。それは何といっても、ソ連は極東にも位置する国でありますし、アメリカはそういう国ではない、北米大陸にある国でありますから、それだけを機械的に比べて、アメリカに比べてソ連が強過ぎる、これではこれはとても大変だ、日本も軍備を急がにゃならぬという結論にはならぬだろうと思います。やはりそれは米ソ、東西関係ということを見た場合には、一つの地域だけを見る必要はないのであって、全体のグローバルなバランスということを考える必要もある。また、日米の安保体制というものがどれだけ強いものであるかということを考える必要もある。そういうバランスのとれた見方をすればいいのだろう、いいのだろうというか、そうするべきであろうと思います。
 ただ、その基本になるところの軍事的なバランスというものを見る場合に、アメリカの軍事力という全体を見る、それとプラスした日本の経済力と合わせて、それとソ連と比べればそんなことはないだろうというのは必ずしも正確な分析ではないのじゃないでしょうか。
#37
○小委員外委員(上田耕一郎君) この議論をやるとかなりいろんな問題が出てくると思うのですけれども、私も何もアメリカの国力全部を足して言っているわけじゃなくて、太平洋における軍事状況が、むしろアメリカの方が圧倒的に強くて、ソ連の側はむしろ防衛的だと。私は何もソ連を弁護するわけじゃないのですよ。それにもかかわらず、こういう今の米ソ対決の悪循環の中でますます軍備拡張にアジアもなりつつある、しかし、推進力はどうもアメリカの側だということを私は主張しているんです。
 なお、私はバランスの問題を言ったけれども、軍事的バランスで平和が保たれると思っているわけじゃないので、だから、核兵器廃絶を初め軍縮をやるべきだと言っているんですが、同時にヨーロッパなどでもそのバランスがある役割を果たしていることは我々現実に見るわけだ。アメリカが圧倒的に強くて、アメリカだけが核兵器を持っているという戦後数年の時期がよかったかというと、そうじゃないわけだ。だから、我々はヨーロッパの平和運動の方々とちょっと違って、例えばソ連に一方的に軍縮を求める一方的軍縮論の立場はとらないので、これはやっぱり協定を結んで全体が核兵器をなくして、廃絶すべきだという立場をとっているわけだ。
 なお、瀬木さんは、日本ほど防衛的な軍備を持っているところはないとおっしゃったけれども、これは去年以来我々が国会でも大分追及したんですが、例の海洋戦略がありますね。去年の春、アメリカの雑誌に載ったワトキンズ海軍作戦部長の論文、それからケリー海兵隊司令官の論文は、もしヨーロッパあるいは中東で米ソ対決が通常戦争で始まってもすぐアジアで第二戦線を開く、去年、ソロモン国務次官補が海軍大学ででしたか、第二戦線論を述べました。ああいうことで、その際アメリカの海軍は同盟国と一緒に、つまり日本と一緒にソ連の弾道ミサイル原潜を壊滅させる。まだ通常戦争でもソ連の核兵器を持った弾道ミサィル原潜を全部つぶすと言うんですから、核のバランスを変えちゃう、そのことで勝利できる。ケリー海兵隊司令官の論文は、第三段階で千島、ナハリンの占領まで言っているんです。そうなってくると、日本はどこからも攻められていなくても、ヨーロッパで戦争が起きたら直ちにアメリカの側は構想として日本の自衛隊と一緒に、それこそ核戦争を挑発するような、ソ連の弾道ミサイル原潜を――P3Cも何もみんなそれに動員されるわけです。そういう危険な状況にあるということを何度も国会でも追及したんです。きょうはこのお答えは要りませんが、政府側は、アメリカがそういう戦略をとっていても日本側は自主的に行いますという非常に空疎な言葉で答弁されたんだけれども、言葉では片づかない大変な状況が進んでいるんです。
 私たちは参議院の調査団で六月にカナダ、アメリカへ行って、六月三十日に、ハワイの太平洋軍司令部に寄ったんです。もっともあのときは十五分ぐらいしかお会いできなくて残念だったんですけれども、この新しい防衛白書にも書いてあるが、第三艦隊の司令部、あれが今までハワイの島にあったのが今度コロナドという旗艦、船に移ったでしょう。そのことと、それから第三艦隊と第七艦隊の領域をなくしたのはどういうことかということを私は第一問で聞いたら、有事に備えるためだ、そういう返事もされましたけれども、やっぱりこういう世界で軍縮が問題になっているときに、太平洋の東半分を持っていた第三艦隊と第七艦隊の境界、全体を外したわけじゃないらしいけれども、より機動的にして、第三艦隊の司令部を旗艦に移す、有事に備えるためだというようなことを答えるような準戦事態勢にアメリカの太平洋軍全体がなっていること、公然と非常に危険な海洋戦略を発表している、これは三年前からこの戦略だというような状況を見ますと、アジアにおいてはそういう力関係も軍事バランスも私がさっき言ったような状況にあり、そこへアメリカがそういう構成をとっている。マンスフィールド大使は、日本はアメリカ防衛の第一線だということまで手紙に書かれるというところまで来ているわけです。だから私は、非常に危険な情勢にあるが、危険な情勢の根源の指摘が政府あるいは防衛庁と私どもとまるっきり違うと思うわけです。しかし、問題はそこにあるんだと思うのです。
 そこで、外務省の谷野さんにこの問題に関連してお伺いしたいのは、ヨーロッパではこの軍縮問題でいろんな交渉も行われ、会議もあり、七五年にはヘルシンキ会議があったわけですね。第二次大戦後の国境問題を中心に、やっぱりヨーロッパの平和を守ろう、維持しようという合意が東側、西側含めて行われた。その後も軍縮問題でもジュネーブでもあるいはストックホルムでもずうっと会議が恒常的に続けられているし、あるいは二国間の会議なんかも開かれているし、だからいろいろ、東側と西側、あるいは中立政策をとっている北欧の諸国とかが発言して議論する場所があるわけですね。
 ところがアジアでは、谷野さんは先ほど非常に未成熟だとおっしゃったけれども、議論する会議がないわけです。まあ戦後、これは軍縮中心じゃないけれども、バンドン会議、日本も参加しましたけれども、アジアの発展途上国が平和五原則を打ち出して、これは非常に平和の問題でも画期的な会議になったと思うのです。その後そういうアジアの軍縮問題、軍備管理と軍縮とは違うのだけれども、軍備管理についてさえ会議もない。まして軍縮を本気に議論する会議はずうっとないと思うのです。
 それでゴルバチョフ演説では、一々ゴルバチョフの代弁はしませんけれども、幾つかのアジアにおける軍縮の提案をして、それで、こういう措置を討議策定するための会議をソ連の沿岸地方の一都市で開催することもできるだろうと提案している。これは、広島でそういう会議をというような話なんかも問題になっているわけだけれども、やっぱりそれこそINF合意がことしじゅうにできる可能性も強まっているわけですね、コール首相がああいう提案をし、ソ連側もレーガン大統領も高く評価した。もしINF合意ができると、レイキャビク会談での戦略核兵器の大幅削減、第一段階は五〇%削減をやろう、あの合意に進んでいく可能性もあります。私は六月にアメリカへ行ったときに、軍縮管理局のエメリー副長官は、INFができたら戦略核兵器はもっと容易だと言いました。そういう状況のときにこの日本のあるアジアで会議一つもないというのは非常に問題だと思うのです。
 そういう点で、世界で唯一の被爆国であるこの日本が東アジアの軍縮問題で国際会議をやろうじゃないか。おっしゃったように、アジアは非常に多種多様な国々があるわけだけれども、非同盟諸国というのは、あれは日本が侵略したところから生まれたんです。ビルマとインドで生まれて、ユーゴスラビアのチトーは、ビルマ、インドを訪問して私は非同盟という外交政策の天啓を得たといって、ユーゴに戻ってきたときに述べているんです。だから、日本の侵略した国が、今、世界で百カ国以上参加している非同盟諸国会議の非同盟の理念を、生まれたのはその国々から、アジアからなんですね。その非同盟の国々がアジアには非常に多いわけで、そういうところで日本がそういう軍縮の会議を提唱するということは世界から非常に期待されておると思うのだけれども、外務省には全くそういう気持ちはないのですか。
#38
○説明員(谷野作太郎君) 私がお答えする前に、ちょっと防衛庁の方から補足的な御説明をしたいと言っております。
#39
○政府委員(瀬木博基君) お求めではございませんけれども、ちょっと何点か述べさせていただきます。
 一つは、この地域においてアメリカ海軍が大変力を持っているじゃないか、これはそうだろうと思います。海軍の力というのはやはりアメリカが大きな力を持っている、これは海洋国家でございますから、大陸国家のソ連と大変違うところ。しかして、それが我々の一つのよすがでもあるわけでございますね、アメリカと組んでいるところの。他方、やはり大陸国家ですから、ソ連は。我々の隣国でありますので、海軍がアメリカと多少は力が違うといって脅威の度合いが低まるか、これはちょっと、そうは必ずしも言えないということだろうと思います。
 第二番目に、海洋戦略のお話がございまして、これは国会でも何度がお尋ねもございました。先生はもうお気づきになっているかと思いますけれども、ワトキンズ作戦部長はもう引退されまして、退役後は新しいトロスト大将がなられて、同じこの海洋戦略をことし発表されたわけです。それを見ますと、アメリカの海洋戦略というものは一つのシナリオに基づいたそういう行動であるはずもなきゃあるべきでもないということを書いていまして、若干ニュアンスの違うことを言っておりまして、いろいろな考え方はあるけれども、それは一つのワトキンズさんなりケリーさんの一つの考え方だというふうに見た方がいいのではないか。その基本にあるのは、やはり、いかにして抑止を充実していくかというところにアメリカの基本があると私は思います。
 それから、第七艦隊、第三艦隊の話がございました。
 これは私が聞いたわけじゃありませんから想像でございますけれども、アメリカが有事ということを考える場合に、第七艦隊というのは大変世界で一番大きな分野を分担している、アフリカまでインド洋をずっとカバーしているわけでございます。第七艦隊の活動の場というのは広がっておって、どんどんインド洋、場合によってはペルシャ湾にまで行かなくちゃならない。そこで、第七艦隊ができるだけ活動しやすくするために第三艦隊は、かつては練習艦隊であったわけですけれども、しっかりした留守番が引き受けられる、俗に言えば、そういうふうに改編したんじゃないかと私は見ております。
 それから、最後にアジアの軍縮の問題もございました。
 確かにアジアには軍縮の話し合いの場というのはないのですが、話し合いの場があるかないかということで軍縮が進むか進まないかというのはこれはちょっと事が逆さまではないか。やはりそういう環境があれば環境に応じて場ができる、どういう場があるか、どんな目的で参加するかということが決まる。やはりこれまでヨーロッパで問題になっておりました核軍縮という問題がアジアではないわけでございます。ないというか、そこに問題があるわけじゃなくて、むしろアジアの問題があるとすれば、地域紛争といいますか隣接国との間の問題が大きいわけでございますから、そういうところの中で行われるのは、一番最初に来るのは二国間のそれぞれの間の話し合いということがやっぱり大きいのじゃないでしょうか。
#40
○小委員外委員(上田耕一郎君) 谷野さん、さっきのお答えともう一つ、私はこれも国会で取り上げたんだけれども、ASEAN会議で倉成さんが非核地帯構想について感情的に見ちゃいかぬと言っていたでしょう。そんなことも含めて、日本がアジア非核地帯構想の問題と軍縮会議の提唱ということを進めるべきじゃないかということを含めてお答えいただきたいと思います。
#41
○説明員(谷野作太郎君) 私どもも、アジアも含めましていわば均衡がとれた形でこの地域に存在します軍備のレベルというものが少しずつ小さなものになっていくということ自体は、非常に結構なことだと思っております。
 ただ、今、防衛庁からもお話がございましたように、かつまた上田委員からも御指摘がございましたけれども、そこに行き着くためにも残念ながらまだ、朝鮮半島のお話をるるいたしましたけれども、朝鮮半島の状況一つとってみましても大変強い相互の間の不信がある。そして朝鮮半島のミリタリーバランスを見てみますと、先ほど上田委員の御指摘あるいはお話ではございますけれども、北が八十三万強の軍隊を展開しておりますのに対して韓国は六十万弱でございます。特に作戦機の数になりますと北の方が約倍の作戦機を保有しておるということで、南側はむしろ北のレベルになるべく早く追いつきたいというのが当面の努力目標であるわけでございまして、朝鮮半島自体どってもそういう状況でございます。
 したがいまして、もちろんアジアで軍縮会議を呼びかける、日本がその場所を提供するということ自体は、それは言うことは非常に易しいわけでございますけれども、政府がやります以上、やはりそれなりの環境なり確たる成算なり見通しがないまま呼びかけてみましても、今のような状況ではなかなか関係方面がこれに応じてくるという状況ではないと思いますものですから、先ほど来申し上げましたように、日本政府も含めまして当面の努力は、そういった各所に存在しておりますいろいろな紛争の火種、緊張の要因というものを一つ一ついろいろな形で解きほぐしていく、そういうことに日本もお手伝いしていくことにこそ当面の私どもの努力の焦点が向けられるべきではないかということを申し上げたわけでございます。
 それから、倉成大臣の発言につきまして御指摘がございましたけれども、大臣が過般のASEAN拡大外相会議の共同記者会見の場で申し上げたかったことは、あるいは事実こういうふうに申されたわけですけれども、第一点は、ASEANの一部にございます非核地帯構想をどういうふうに取り扱うかということは、実はASEANの中でも議論があるようでございますけれども、基本的には域内の諸国の方々が決められる問題であるというのが第一点でございました。そして、他方日本としてこの問題をどう考えるかということにつきまして大臣は三点申されたわけでございまして、一つは、核兵器国を含むすべての関係国の同意があること。そして第二点は、この地域のみならず世界全体の平和と安定に悪い影響が出てこないということでなければいけない。そして第三点は、よく指摘されますように、この種の非核地帯構想につきましてやはり実効のあるものでなければなりませんから、査察、検証等を含む適切な保障措置が必要ではないかということ。そして第四点は、いずれにいたしましてもそれは公海における航行の自由といったものも含めまして国際法のいろいろな原則にのっとったものであることが必要ではなかろうかと、こういう点を指摘されたというふうに聞いております。
#42
○小委員外委員(関嘉彦君) この小委員会は外交・軍縮に関して日本が何をすべきかということを最終的に結論を出す委員会ですけれども、そのためにはまず事実関係をはっきり認識しておく必要があると思いますので、きょうは専ら事実関係、事実はどうなっているか、その点だけ御質問いたします。大部分は外務省ですけれども、防衛庁の方にまず最初に一点だけ質問しておきたいと思います。
 ゴルバチョフのウラジオストクの演説以来蒙古においてソ連はどの程度軍隊を減らしたか、撤兵したか。それから同じように・アフガニスタンからソ連はどの程度撤兵したのか。伝え聞くところによると、不要になった軍隊だけを撤兵したにすぎないのだという報道もありますけれども、実際にどの程度の撤兵が行われたかということが第一点。
 それから、これは外務省にお聞きすべきか防衛庁にお聞きすべきかちょっとよくわからないのですけれども、中ソ関係において中国の軍隊とソ連の軍隊との間でどの程度の交流が行われているのか。こちらの方はむしろ外務省だと思うのですけれども、国と国との間の実務的な関係の改善は非常に行われているようですけれども、ソ連の党と中国の党、党と党との関係において何らかの改善の兆候があるか。あわせて質問だけ最初にずっと言ってしまいます。
 それから、中国の外交政策ですけれども、中国とアメリカとの関係はむしろ深まりこそすれ決して悪くはなっていないと思うわけです。ヨーロッパ諸国との関係もかなり改善されてきているように思う。にもかかわらず日本との関係においてのみ基本的には変わらないという外務省の認識ですけれども、少なくとも不協和音が表面的には目立っているわけです。どういうところに原因があるというふうにお考えか。それが中国に関する質問。
 それから、北朝鮮に関しまして、後継者の問題ですけれども、金正日氏が後継者になることに北朝鮮の党の中では大体決まっていると見ていいのかどうか。
 それから二番目に、最近私の印象では北朝鮮はかなりソ連との間の関係を深めてきている。前は中国とソ連との両方に対して等距離外交みたいだったと思うのです。これがむしろソ連との関係に重点を移しているように思うのですけれども、中国で接触されて、中国の人たちが北朝鮮をどういうふうに見ているのかということについて何らかの御見解があればお伺いしたい。
 それから三番目に、韓国の関係で、民主化が進んでいるということは非常に結構なことであり、また新しい憲法なんかが制定されるということも非常に結構なことだと思うのですが、いわゆる両金氏の、金大中氏と金泳三氏の民主党の対米、対北朝鮮政策が今の政府のそれとどういう点で違っているか、違っている点があるかどうか。それが韓国について。
 それからフィリピン。フィリピンの問題は非常に日本にとって大事だと思うのですが、いわゆる新人民軍の動き、あるいはその背後にある共産党の動き、これは今までの私の知識では外部からの援助とか支援とかというものは余りなかったように思うのです。ソ連はマルコス時代に大失敗をやらかしましたから、ソ連なんかの支援なんかもなかったように思うのですけれども、現在どうなっているのか、外部からの支援なんかがあるのかどうか。
 それから、これは非常に難しいと思うのですけれども、軍隊の中で、マルコス派、エンリレ派あるいはラモス派というふうに一応分類するとして、その勢力関係は一体どういうふうになっているか。
 それからASEAN諸国。フィリピンは一応別にして、ASEAN諸国は一応安定しているように見えるんですけれども、政権の後継者選びのルールはまだ確立していない国が多いように思うのです。そういう点で政情のそういった不安定要因というものをどの程度、どういうふうに評価しておられるか。
 大分たくさん質問を出しましたけれども、まだ時間があればまた追加したいことがあります。
#43
○政府委員(瀬木博基君) 私がいただきました質問は先生の中では比較的易しい質問ではないかと思いますので、先に答えさせていただきます。
 モンゴル駐留のソ連軍の撤退につきましてはウラジオストク演説にあったわけでございますが、本年の四月から六月にかけて一個師団を含む一部の兵力がモンゴルから撤退いたしておる。ただ、これは実体的にはモンゴルから隣接するソ連軍管区に移転しただけであるということで、中国当局もこれは撤退ということにはなっているけれども大きなものではないということを言っておるところから見ても、そんなに大きなものではないのではないかと思います。
 他方、アフガニスタンからのソ連軍の撤退でございますが、これは八六年末に、防空三個連隊、自動車化狙撃二連隊、機甲一連隊という合計六連隊がアフガニスタンから撤退したということをソ連が発表いたしました。
 これにつきましてはいろいろな見方がございまして、まず第一に、六個連隊といってもこの中の防空、機甲という四個連隊というものはアフガニスタンという土地柄からいって役に立たぬ。また、相手のゲリラ活動をしているアフガニスタンの反対勢力というものを考えた場合に余り役に立たないので、そもそも要らなかったものを引き揚げただけだどいう見方とか、撤退する前にそれらの部隊は実は新たに投入して、投入した部隊が撤退したということだけにすぎないとかいろいろな見方がございますが、現実にはアフガニスタンにおけるソ連の戦闘兵力というものはほとんど減っておらないということで、今でも十一万六千人おるというところから見て、その撤退というものは実体的にも余り大した意味はなかったということが現実的ではないかと思います。
 それから、中国とソ連との間の軍事交流ということでございますが、実質的な意味のある交流が行われているとは我々存じておりません。
#44
○説明員(谷野作太郎君) 大変数多くの試験問題をちょうだいいたしまして、何点ぐらいとれるか自信がありませんけれども、順序不同にお答えしてまいりたいと思います。
 まず、日中関係、確かに幾つかの不協和音があるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように基本的にはさはさりながら、安定した良好な日中関係というレールは外れていないというように思います。そういう前提でお聞き取りいただきたいのですが、中国との間に問題になっておりますのは、大きく分けて二つあると思います。一つは、いわゆる過去の歴史、戦争をめぐる問題でございます。これに対する日本側の認識の問題。そして第二点は、台湾の問題といいますか、台湾をめぐる問題でございます。
 前者について申しますれば、それが具体的には教科書の問題であり、あるいは中国側が最近申しておりますのは、日本にどうも大東亜戦争肯定論のような、そういった論文が非常に多いということをよく指摘します。後者につきましては、これも幾つかございました。過般北朝鮮から逃れてまいりました十一名の亡命者を台湾へまずは移送した、あの手続をめぐりまして、日本政府にある種の批判がございました。最近では、これは御指摘するまでもなく光華寮をめぐる非常に強い中国の姿勢でございます。原因といいますか、それはそういうことだと思いますが、私どもは基本的に日中関係を安定したものに継続するということは、いろいろな意味で中国のみならずまさに日本のため、アジアのために必要だと思っておりますので、問題はありますものの、一つ一つ冷静に日本の立場を説明し、先方の理解を求める、また日本側として正すべきところがあればこれは正すべきであろうと、こういうことで臨んでおります。
 それから……
#45
○小委員外委員(関嘉彦君) ちょっとその前に一つ、ソ連と中国との党と党との関係の問題について。それから、今お答えになったことに関連して……
#46
○説明員(谷野作太郎君) これも過般のいろいろな中ソ間の交流の記録を見ておりますと、主として中ソ間の交流は貿易の面、あるいは経済の面、文化、そういった面に非常に偏っておりますと申しますか、その面での交流が盛んでございまして、委員御指摘のように、党の間の活発な交流が行われているということではないと思います。
#47
○小委員外委員(関嘉彦君) やはり中ソ関係を見る場合に、ああいう共産主義の国というのは党と党と基本的な関係を持っているので、そこをはっきり押さえていくことが必要だと私は思うのです。
 それから、日本との関係の問題で、もっと経済協力を進めてくれという要求があるように思うのです。最近では、賠償問題もとらなかったんだというふうな不満もあるようですけれども、しかし他方において、日本の経済進出に対して、また日本が経済的に中国を支配するんじゃないかということを、保守派といいますか、あるいは反対する人たちが言っているということも聞くんですけれども、その協力の問題はどうでしょうか。
#48
○説明員(谷野作太郎君) その点は、まずお答えしますと、むしろ確かに先生御指摘のような日本のいわゆる経済侵略と申しますが、そういったことに対する懸念といいますか、心配というものは、例えば少なくともひところ、学生たちの間でそういったスローガンといいますか、ものが散見されたときがございました。しかし、つい一番最近の時点の状況といいますのは、二、三日前も例の孫平化さん、中日友好協会の会長の記者会見の談話で出ておりましたけれども、むしろああいった方々も含めて中国の政府が日本の政府に言っておりますことは、ケ小平氏にも言われたことでございますけれども、まだまだ日本の政府、民間の中国に対する経済協力というものが中国の期待するレベルまで届いていないということであろうと思います。
 私どもはそれに対しまして、もちろん中国の期待の大きさはわかりますけれども、他方、政府ベースの経済協力は先生も御存じだと思いますけれども、実は中国の諸外国から得ております政府開発援助の実に七割以上が日本からでございまして、政府ベースに関する限り極めて多くのものを政府レベルで協力しておるという事実がございます。北京にも日本が無償で建てました中日友好病院という大変立派な病院がございます。他方、民間レベルの例えば直接投資、貿易でございますけれども、投資につきましても、ひところは確かに中国の期待するレベルではございませんでしたけれども、現状はアメリカよりちょっと劣るぐらいのレベルにまでは来ております。しかし、何せ一衣帯水の隣国でまだまだ量的には少ない少ないと言われればそれはそれでありますけれども、少なくともアメリカに比べて日本の中国に対する経済協力は活発でない、量的にも劣るということを指摘される向きがありますけれども、それは事実ではないと思います。
 それから、貿易につきましては、実は最近起こっておりますことは、むしろ中国からの輸入が活発にふえております。問題は、問題はと申しますのは、むしろ中国全体が今経済が引き締めの状況に入っております。そういう背景で、日本からの中国への輸出が大幅に減ってきております。これは日中間の貿易のインバランスというのが彼らの非常に大きな心配の種でございますから、そのインバランスを解消するという意味におきましては決して悪い事態ではないわけでございますけれども、往復の日中貿易の総額を見ますと、確かにこれは減少の傾向にある。しかしながらその理由は、むしろ日本の対中輸出が減ってきておるところにあるということでございます。
 それから、全部お答えできるかどうかわかりませんけれども、金正日さんが後継者になるであろうかと、これは私がこういう席できちっと確言できるだけの残念ながら材料を持っておりません。多くの見方は、あの人はいずれ今の最高指導者の後を襲うであろうというのが大方の見方であるということでございまして、それ以上のものではございません。
 それから、韓国の野党の方々が南北対話なりについてどういう感じを持っておられるかということでございますけれども、私どもの漏れ聞いておりますところでも、野党も含めて責任ある立場にある方は、当面米軍の朝鮮半島における存在というものはやはり必要であろうということにおいては与党と大きな違いはないと思います。ただ、野党の指導者たちがよく言われますのは、いわゆる野党の側に立って言う民主的な政権、こういうものが南にできてこそ初めて北と意味のある対話ができるのだということをいつも野党の指導者は言っております。
 それから、ASEANの安定の話でございますが、先ほども黒柳先生からお尋ねがございましたが、あのとき確かに申し上げるのを忘れましたのは、いずれ、タイもそうでございますが、シンガポール、インドネシア、多くの国々が長年続いてきた指導者の交代の時期を迎えるということがございます。しかし、フィリピンのああいう事態がございましたけれども、特にマレーシアも含めましてそれなりに後継者は育ってきておるようでございますし、また次の政権に移るだけの一つの手続はそれなりに、もちろん日本等に比べればまだ未成熟な面はございましょうけれども、それなりに一つのルールはできつつあるということだと思います。
 それから、フィリピンの中の軍のいろいろな派閥がある、これは御指摘のとおりでございまして、マルコスさんと意を通ずる向きがあり、これが過般の五回ありましたクーデターの多くの指導者はむしろそちらの筋の人たちであったわけです。今回五回目のクーデター騒ぎが若干深刻だと申しましたのは、少なくとも指導者はそうではなくて、むしろエンリレさんにつながった人であったということでございまして、委員御指摘のように、したがって軍の中もアキノさんに忠誠を誓う向き、マルコスさんの方に関心を向ける向き、そしてアキノ政権の先ほど申し上げましたように、幾つかの施策に不満を抱く人たち、なかなか軍の中は複雑であるというように思います。
 あとは最後に、フィリピンのいわば新人民軍の状況でございますけれども、これも私どもはこういう席ではっきり確信を持って彼らに対する支援がどういうところから来ておるということを明確に申し上げるだけの材料を持ち合わせません。今、大体兵力として、ここの資料によりますと二万三千二百名という資料がございますけれども、こういう勢力をどこの外国が支援しておるのか、支援していないのかということは話題になるところでございますけれども、本店で明確に申し上げるだけの材料は持ち合わせません。
#49
○小委員外委員(関嘉彦君) ちょっと答弁漏れがありますから。
#50
○説明員(谷野作太郎君) 失礼いたしました。
#51
○小委員外委員(関嘉彦君) 中国の人たちが北朝鮮をどのように見ているか、もちろん公の席、公式には何もそういうことは言わないと思うのですけれども、私的な接触において北朝鮮に対してどういう見方をしているか。殊に金正日氏が後継者になるという問題については、これは共産主義の原理に反すると私は思います。これは間接に聞いた話なんでどこまで信頼性があるかどうか知りませんけれども、ある人が中国のある要人と話したときに、こういうことは共産主義の原理に反するんだという不快感を表明したという話を聞いたんです。そういうふうな問題について何かインフォメーションをお持ちでございますか。
#52
○説明員(谷野作太郎君) これもこういう公の席で申し上げるにはよほど言葉を慎重に選ばなければいけませんし、なかなか限度はありますけれども、御承知ように中国と北朝鮮の関係は、それなりに指導者のレベルで交流も活発であることは御承知のとおりでございますが、ただ中国が最近の問題としてやはり気にかけておりますのは、ソ連と北朝鮮との間のいわば軍事的な協力関係というものがミグ23戦闘機の供与を含めまして非常に活発になってきておりますので、その点について非常に強い関心以上のものを持っておると思われます。
 それから、中国の政府の方々とお話しいたしまして、やはり北朝鮮の人たちの強い民族主義といいますかナショナリズムといいますか、そういうものに自分たちは非常に強く感銘を受けておるといいますか、インプレスされておるということをよく耳にします。そういう御説明で私の申し上げたいことをお酌み取りいただければと思いますが。
#53
○小委員外委員(関嘉彦君) 韓国の最近の労働運動ですね、労働不安、これは今までのそういったものが一切抑えつけられていたそれの反動としてある意味では私は当然ではないかと思うのですが、これがだんだん過激化していくというような兆候があるのかどうか、あるいは殊にこの新学期から学生が登校してくるようになってきた場合に、学生運動がかなり活発化してくるんではないかと思うのですが、その見通しと、それからその中に北朝鮮の工作と申しますかそういうものが、これもなかなか難しいと思うのですけれども浸透しているかどうか。
#54
○説明員(谷野作太郎君) 韓国の最近の状況につきましては、私どもも非常に実は関心以上のものを持って心配しながら見守っておるわけでございますが、ただいまお話のありました労使紛争は、その中でもこれが一体どういうおさまり方を見せるかということにつきましては確かに心配な点がございます。やはり経済が、政治がごたごたした状況が続きます中で、経済は先ほどもちょっとアジアのNICSということを申しましたが、大変上りもであった。しかし、その成長の分け前が必ずしも底辺の労働者まで彼らの満足するレベルで行っていなかったということが一挙に昨今の爆発的な状況になったんだと思います。
 さてそこで、これもただいまお話ございましたように、もう九月に入ったわけでございますけれども、学生たちが一斉にキャンパスに帰ってくる。それで、二、三日前の報道では、たしかソウル大学の学生運動支部でございましたか、既に自分たちと労働者との連帯運動を始めるという声明を出しております。こういった動きが今後どういうふうに展開するか非常に心配されるところでございますが、他方、私どもの聞いている話では、若干今度は安心できる材料を申し上げるとすれば、労働者の人たちもいつまでも過激な学生たちと歩調をともにしていてはやはり全国民的な支持を失うという意識も出てきておるようでございまして、学生と若干の距離を置き始めておるというような観測もございます。
 それから第二点の、こういった過激な学生運動に北朝鮮がどういうふうにかかわっておるのかおらないのか。これは私ども第三者として、特に日本政府として断定できる材料は持っておりませんけれども、少なくとも韓国政府はそういうふうに状況を分析しておるということは事実でございます。特に一部の過激な学生たちのスローガンといいますか、そういうものを見てみますと、昨今の北におけるスローガンとほとんど言葉、表現ぶりが同じでございまして、そんなこともありまして、少なくとも韓国の政府当局はそういった事態を非常に深刻に憂慮しておるということでございます。
#55
○小委員長(林田悠紀夫君) 以上で質疑は終了いたしました。
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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