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1987/07/21 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 予算委員会 第3号
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1987/07/21 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 予算委員会 第3号

#1
第109回国会 予算委員会 第3号
昭和六十二年七月二十一日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月二十日
    辞任         補欠選任
     板垣  正君     田辺 哲夫君
     松浦 孝治君     永田 良雄君
     近藤 忠孝君     上田耕一郎君
     吉岡 吉典君     橋本  敦君
     秋山  肇君     野末 陳平君
     青木  茂君     平野  清君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         原 文兵衛君
    理 事
                伊江 朝雄君
               大河原太一郎君
                林  ゆう君
                藤野 賢二君
                吉川 芳男君
                野田  哲君
                矢原 秀男君
                沓脱タケ子君
                橋本孝一郎君
    委 員
                石本  茂君
                梶木 又三君
                金丸 三郎君
                北  修二君
                佐藤栄佐久君
                坂野 重信君
                坂元 親男君
                下稲葉耕吉君
                杉元 恒雄君
                田中 正巳君
                田辺 哲夫君
                竹山  裕君
                中西 一郎君
                永田 良雄君
                野沢 太三君
                林 健太郎君
                林田悠紀夫君
                降矢 敬義君
                増岡 康治君
                吉村 真事君
                粕谷 照美君
                菅野 久光君
                福間 知之君
                矢田部 理君
                安恒 良一君
                山口 哲夫君
                及川 順郎君
                広中和歌子君
                和田 教美君
                上田耕一郎君
                橋本  敦君
                勝木 健司君
                野末 陳平君
                下村  泰君
                平野  清君
   国務大臣
       内閣総理大臣   中曽根康弘君
       国 務 大 臣  金丸  信君
       法 務 大 臣  遠藤  要君
       外 務 大 臣  倉成  正君
       大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君
       文 部 大 臣  塩川正十郎君
       厚 生 大 臣  斎藤 十朗君
       農林水産大臣   加藤 六月君
       通商産業大臣   田村  元君
       運 輸 大 臣  橋本龍太郎君
       郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君
       労 働 大 臣  平井 卓志君
       建 設 大 臣  天野 光晴君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    葉梨 信行君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 後藤田正晴君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  山下 徳夫君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)
       (国土庁長官)  綿貫 民輔君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  栗原 祐幸君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       近藤 鉄雄君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)      三ッ林弥太郎君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  稲村 利幸君
   政府委員
       内閣法制局長官  味村  治君
       内閣法制局第一
       部長       関   守君
       内閣総理大臣官
       房審議官     本多 秀司君
       警察庁長官    山田 英雄君
       警察庁長官官房
       長        小池 康雄君
       警察庁警務局長  大堀太千男君
       警察庁刑事局保
       安部長      漆間 英治君
       警察庁交通局長  内田 文夫君
       警察庁警備局長  新田  勇君
       総務庁長官官房
       審議官
       兼内閣審議官   山田 馨司君
       総務庁長官官房
       交通安全対策室
       長        原田 達夫君
       防衛庁参事官   瀬木 博基君
       防衛庁参事官   筒井 良三君
       防衛庁長官官房
       長        依田 智治君
       防衛庁防衛局長  西廣 整輝君
       防衛庁経理局長  日吉  章君
       防衛庁装備局長  山本 雅司君
       防衛施設庁総務
       部長       弘法堂 忠君
       防衛施設庁施設
       部長       鈴木  杲君
       防衛施設庁労務
       部長       山崎 博司君
       経済企画庁調整
       局長       横溝 雅夫君
       経済企画庁総合
       計画局審議官   宮本 邦男君
       科学技術庁研究
       開発局長     川崎 雅弘君
       環境庁企画調整
       局長       加藤 陸美君
       環境庁企画調整
       局環境保健部長  目黒 克己君
       環境庁大気保全
       局長       長谷川慧重君
       国土庁計画・調
       整局長      長沢 哲夫君
       国土庁土地局長  片桐 久雄君
       国土庁大都市圏
       整備局長     柳   晃君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       外務省北米局長  藤井 宏昭君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    恩田  宗君
       外務省経済局長  渡辺 幸治君
       外務省条約局長  斉藤 邦彦君
       外務省国際連合
       局長       中平  立君
       大蔵大臣官房総
       務審議官     長富祐一郎君
       大蔵省主計局長  西垣  昭君
       大蔵省主税局長  水野  勝君
       大蔵省証券局長  藤田 恒郎君
       大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君
       大蔵省国際金融
       局長       内海  孚君
       国税庁次長    日向  隆君
       文部省初等中等
       教育局長     西崎 清久君
       文部省学術国際
       局長       植木  浩君
       文部省社会教育
       局長       澤田 道也君
       厚生大臣官房総
       務審議官     長尾 立子君
       厚生省健康政策
       局長       竹中 浩治君
       厚生省保健医療
       局長       仲村 英一君
       厚生省保健医療
       局老人保健部長  黒木 武弘君
       厚生省生活衛生
       局水道環境部長  森下 忠幸君
       厚生省社会局長  小林 功典君
       厚生省保険局長  下村  健君
       農林水産大臣官
       房長       甕   滋君
       食糧庁長官    後藤 康夫君
       通商産業省通商
       政策局長     村岡 茂生君
       通商産業省貿易
       局長       畠山  襄君
       通商産業省産業
       政策局長     杉山  弘君
       通商産業省機械
       情報産業局長   児玉 幸治君
       工業技術院長   飯塚 幸三君
       資源エネルギー
       庁長官      浜岡 平一君
       運輸大臣官房国
       有鉄道改革推進
       総括審議官    林  淳司君
       運輸省運輸政策
       局長       塩田 澄夫君
       運輸省地域交通
       局長       熊代  健君
       運輸省海上技術
       安全局長     間野  忠君
       労働大臣官房長  岡部 晃三君
       労働省労働基準
       局長       平賀 俊行君
       労働省職業安定
       局長       白井晋太郎君
       建設大臣官房総
       務審議官     田村 嘉朗君
       建設省住宅局長  片山 正夫君
       自治省行政局選
       挙部長      小笠原臣也君
       自治省財政局長  矢野浩一郎君
       自治省税務局長  津田  正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        宮下 忠安君
   参考人
       日本銀行総裁   澄田  智君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)(
 内閣提出、衆議院送付)
○昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)
 (内閣提出、衆議院送付)
○昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1
 号)(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和六十二年度一般会計補正予算、昭和六十二年度特別会計補正予算、昭和六十二年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(原文兵衛君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 昭和六十二年度補正予算三案審査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(原文兵衛君) それでは、これより質疑を行います。矢原秀男君。
#6
○矢原秀男君 公明党を代表いたしまして、数点にわたり質疑を交わしていきたいと思います。
 中曽根総理、あなたは政権を担当されて四年有半となられます。この間、国民の賛否の採点評価がなされておるわけでございます。このことは中曽根総理御自身がまた一番よくかみしめておわかりのことと思います。私は、この機に当たりましてまずお伺いをしたいわけでございます。
 今世界の人口が五十億となっております。増加の一途をたどるでしょう。共有する緑の地球、限られた資源、食糧、環境もこのまま推移すると遠き将来必ず森林の消失、環境破壊、やがて砂漠化の加速、地球は滅亡の道を歩むことになります。多難な国際政治と経済、すべての警鐘に耳を傾け、英知を尽くすときであります。
 中曽根総理、現今の世界に通用する、日本を代表する指導者の資格条件についてまず述べていただきたいと思います。
#7
○国務大臣(中曽根康弘君) 大変難しい御質問で、私ごときが到底お答えできる御質問ではないと思いますが、せっかく御質問でございますから卑見を思いつくままに申し述べさせていただきます。
 私は衆議院でも、政治の指導者の要件として国境を越えた人類愛というものをまず第一に挙げましたが、世界的な指導という関係になりますとこれが一番基本で、国境を越えた大きな人類愛を厳然として持っておる、そして人間のあるいは人類の将来についての大きな理想と夢というものを持って、その大きな人類的な理想、夢というものを実現していくための世界戦略というものを持たなければいけないと思うんです。それと同時に、それを今度は具体的に展開していくための政策とか戦術を持つ必要があります。
 そういうような大きな夢、理想というものはちょうど星を見るがごとき性格もありますから、上ばかり見ているというと溝におっこってしまう。やはりそれを実現していくための冷厳な国際社会の中における戦術と政策というものを持ってそれを強い意志で推進していく。しかし、そういうことを実行していくためには、やはりほかの民族や国家の文化あるいは生きざまというものに対する深い理解と尊敬を持っておることがもう基本的条件だろうと思います。みんな個性を持った、何千年あるいは何百年という、お互いが手をとって生きてきた民族なり国家という集団があるわけでございますから、それは平等に貴重なものであります。
 今までは、西洋文明というものが一切のスタートで、ほかの文明というものはその周辺にあるもの、あるいは西洋文明の影響を受けて新しく展開してきつつあるものというような間違った印象がありましたが、やはり世界の各地に発生している文明というものは、それぞれオリジナルな価値と値打ちを持っておるものであります。例えばジャズというようなものはアフリカから発生しましたが、それが今アメリカにもてはやされ、今世界的に若者の心を楽しませているというようなもので、そういう芽は世界じゅうどこにもあると思うのであります。日本のお花とか茶の場とかという精神もそういうものでございましょう。
 そういう意味において、各民族、各国家が持っておる固有の文化なり生きざまというものに対する心からなる尊敬、これを持っておることが大事であります。そういうようなことは全般的に申せば見識と申せましょう。しかし、それを実現していくためには、やはり自分の国内においてそれを実践する必要がありましょうし、国民の強い支持を得るということが自分の立脚点を固めるという意味において非常に大事ではないかと思います。
 思いつくままに申し上げましたが、これでお許しを願いたいと思います。
#8
○矢原秀男君 今私も、この地球の中で国境を越えた人類の立場の平和というものを中心に考えていく指導者、こういうことで質問をさせていただいたわけでございます。
 では質問の視点を変えますけれども、残る中曽根内閣の期間にどう結末をつけるのか、残された課題で伺いたいと思います。
 まず、衆議院の議員定数の抜本是正の問題でございます。
 国勢調査の公式集計がまとまれば抜本是正をする旨の条件づきの暫定定数で前回総選挙は行われたと承知いたしております。公式集計も済みましたが抜本是正の動きは見られません。総理の任期中にいかがなさいますか、お尋ねをいたします。
#9
○国務大臣(中曽根康弘君) この前、各党の御協議及び議長のあっせんに基づきまして、昭和六十年度の国勢調査の最終結果を待って、それに基づいて選挙法の思い切った改正をやろう、すなわち定員の縮減をやろう、そういう趣旨の各党の協議が成立いたしております。これは速やかにやる必要があると思うのでございます。残念ながら目前のいろいろな仕事に忙殺されていまして、この一番深い大きな問題にまだ取っ組んでないのは甚だ残念でございますが、いずれ各党の間におきましてこれを推進する議が調えられて、そして思い切った改革が、国民の皆さんが納得する改革がなされることが望ましいし、自由民主党もそういう方向に向かって大いに努力してまいりたいと思う次第でございます。
#10
○矢原秀男君 政府は、先般の六十一年六月二日衆議院解散を定数是正解散、また違憲解消などと唱えておられたのでございます。六十一年六月二日の解散に当たっての政府声明では、国権の最高機関たる国会を構成する衆議院の違憲的状態を実体的に是正し、国政の諸課題に対応する態勢を整えることが緊要である、このように判断したと強調されて選挙に進まれたわけでございます。総理は自民党の総裁でもあるわけでございます。国会に責任転嫁する前に、前回の提案の成立経過等からして政府・与党が責任ある対処をするということが先決ではないかと思うわけでございます。この点についてもう一度伺いたいと思います。
#11
○国務大臣(中曽根康弘君) 自民党は国会における第一党であり与党でございますから、やはりそれ相応の責任を持っていると思います。我々は、自民党の皆さん方とともにお話し合いを進めまして、また各党の御協力もいただきまして大いに努力いたしたいと思う次第であります。
#12
○矢原秀男君 念のために申し上げておきますけれども、一票の価値について、最高裁大法廷判決、五十八年十一月には、憲法は有権者の投票価値の平等を要求している云々と判決を下しております。これを遵守することが我が国の民主政治の基幹であると思うのでございます。早急に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、政治資金規正法について伺いたいと思います。
 同法を骨抜きにする政治家軍団の想像を絶する過大なパーティー対策についてどう対処されますか、お伺いしたいのでございます。
 国民の皆さんは時々、一晩で約二十億円とか十億円とかと言われるパーティー収入の推定の新聞報道を見られたと思います。実際は企業や業界へ割り当てでパーティー券を売りつけている二とに目を丸くして驚いておられると思います。こういうニュースの一面に中曽根総理は驚かれるのか、それとも驚かないのか、どちらでございましょうか。
#13
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は新聞を見て驚いておる方であります。ああいう多額な金額が果たして入っているのかどうか私は疑問に思う点がございます。ある程度パーティー券というのを、昔私も幹事長のころ党のパーティーをやったり、あるいは我々のグループのパーティーをやったことがございますが、金額ははるかに少ないものでありました。そういう点から、ちょっと景気づけの数字じゃないか、そういう感なきにしもあらずであります。
#14
○矢原秀男君 いずれにいたしましても、金権体質の政治が言われて久しいのでございます。一向に改まらないばかりか、巧妙で大がかりになってきたと選挙民は心配をいたしております。
 政治資金規正法改正、昭和五十七年法八十一、この基本的な理念の第二条には、この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨といたしております。また、これに対する判断は国民にゆだねるとあります。自治省では過大パーティーの規制を考えていると思いますが、最近のパーティーの利益率を初め実態を報告し、これと政治資金規正法の関係を答えていただきたいのでございます。お願いをいたします。
#15
○政府委員(小笠原臣也君) お答え申し上げます。
 いわゆる励ます会等のパーティーの実態については、私ども詳細に承知しておるわけではございませんけれども、政治資金の収支報告書を通じてその報告がなされております。それで見ますと、昭和六十年分につきましては百四十六件のパーティーが行われたということで、それぞれの団体から報告をされておりまして、その収入額は七十九億円ということになっております。
 それで、今収益率というお話がございましたけれども、収益率という観点で私どもとらえておりませんけれども、収入に対して経費の額は七十九億円の収入に対して十七億円ということになっておりまして、その差は六十二億円という実態になっておるわけでございます。
#16
○矢原秀男君 総理、私も十年前にアメリカの大統領選挙の視察をいたしました。大統領の候補並びに選挙運動をされる方々ともいろいろとお話をしてまいりました。また、亡くなりましたロックフェラー副大統領とも会見をしましてこういう問題に触れてまいったところでございます。また、報道界ではニューヨーク・タイムズの編集長、ワシントン・ポストの編集長等々とも日米のこういう関係の意見も交換をしたところでございました。
 金権政治は必ず政治の腐敗を招くことは古今東西の歴史が示すとおりでございます。総理は戦後政治の総決算を掲げられました。民主政治の基本を危うくする選挙制度や政治資金には抜本的な改革を考えられなかったと思うのでございます。手を触れられなかった、こういうふうに私は感じるわけでございますが、その理由を伺いたいのであります。総理の戦後政治の総決算で一番大事な目玉をお忘れになっている。このまま十月退陣されますと画竜点睛を欠くことになりませんか。お尋ねをするわけでございます。
#17
○国務大臣(中曽根康弘君) 政治資金規正法には、たしか何年か経過後に見直すという規定があったと思います。そのときに我々も真剣に見直してみたことはございます。ただ、これは各党が政治活動をしていく一つの基礎条件をつくっておるものですから、一党だけの考えによってこれを進めることは適当でない。みんな各党それぞれ歴史もあり、また立党、支持者の性格、みんな違うわけでございます。そういう意味においてみんなが互譲、妥協し合いながら、しかも節度のある政治資金それから公明な政治資金、そういうところへ向かって進むことが望ましいと思っておるのであります。
 私の在任中にはなかなかこれを手がけることはできませんで甚だ残念でございますが、いずれこれは各党各派において御協議を願いまして、相当思い切った改革をやるべきときが近づいてきておる。これは定数の問題と相ともに我々としては大きな課題をしょっておると考えておる次第でございます。
#18
○矢原秀男君 次に、中曽根総理は第百九回国会の開会に臨み所信表明演説をされました。その中で、私は消費者米価についてお尋ねを簡単にしたいと思います。
 総理の所信表明演説において、一つは農政審議会の報告を踏まえて農業の生産性の向上を図りつつ、二番目には内外の価格差の縮小に努めるとともに、三番目には国民の納得の得られる価格水準で食糧の安定供給が図られるよう各般の施策の充実を図る、こういうふうに表明をされたわけでございます。そしてその次に生産者米価、麦価をそれぞれ五・九五%、四・九%引き下げたと言及されたのでございます。消費者米価の引き下げについては、その時点では所信表明の項目を見ましたけれどもお話しなさっておられないと私は見ました。
 こういうわけでございますので、一つは、消費者米価の引き下げについてはどうお考えになっていらっしゃるのか。二番目には、食管制度の運営改善についてはどうお考えになっていらっしゃるのか。この二点をお伺いしたいと思います。
#19
○国務大臣(中曽根康弘君) 消費者米価の問題については、農林水産大臣がここでも御答弁申し上げておりますが、今回は五・九五%生産者米価を引き下げさせていただきました。それに応じましていずれ消費者米価も引き下げるべきであると考えております。ただ、どの程度、いつやるかという問題は、今までの取り扱いの先例、予算編成との絡み等がございまして、それらをよく見きわめた上でできるだけ早目にやるべきである。これは言いかえれば円高差益の還元にも当たるわけです。なぜ生産者米価が下げられたかといえば、これは石油の値が鎮静したとか、そういう円高の恩恵をかなり受けた点もあるわけでございますから、そういう一環としてもできるだけ早くやるべきである、そう考えております。
 それから食管制度につきましては、片方生産者に対しては安定的な経営を保障する、売り渡しに対しては政府が責任を持って考える、消費者に対しても安定的な供給を保障する、そういう意味で大きな仕事を果たし、日本の社会の安定に非常に大きく貢献してきた制度であると思いますが、しかし、いろいろな問題点も出てきておりまして、この基本線、根幹を維持しつつ、ふぐあいなところはこれを漸次是正していく、そういうような態度が好ましいと思っております。農政審の答申にもこの点については触れた点がございますから、農政審の答申を尊重しながら我々は改革すべきところは改革していくようにしたいと思っております。
#20
○矢原秀男君 総理大臣の姿勢についての最後の質問でございます。死刑存廃問題についてお伺いをしたいと思います。
 ベルリン七月十七日ロイター共同の報道によりますと、東ドイツ政府は十七日、一つは死刑を廃止、二番目には受刑者への恩赦を実施すると発表いたしております。この問題は、日本においても学者の中で何十年来賛成、反対に分かれているのでございます。東ドイツについては、私がちょっと真剣に考えておりますのは、やはり共産主義の国家でございますし、非常に思い切ってやっていらっしゃる。こういう立場で東ドイツ国内での人権侵害に対する西ドイツの批判、そういう意識した決定ではないかとも報じられておるのでございます。東ドイツ国営ADN通信によりますと、恩赦の対象者は、一、ナチ犯罪人、二、戦争犯罪人、三、スパイ、四、殺人犯、五、人道にもとる悪質な犯罪人を除くすべての受刑者で、無期懲役は最高十五年に刑が短縮された。恩赦の実施は十月となっております。
 こういう中で、私は死刑制度の存廃に対しまして、一つは日本人の国民感情の分析、二番目には最高裁判所の判断について、三番目には死刑廃止論の立場から、四番目には死刑存続論の立場から、五番目は時期尚早論の立場から、六番目は諸外国の事情分析の中から、七番目には外国人から見た日本の死刑制度について、八番目は衝動殺人に対する犯罪被害者等給付金支給法等の立場から、それぞれ分析、研究、検討をさせていただきました。
 こういう中で、日本の死刑については廃止を検討していくのか、それともこのまま存続でやっていくのか、国際化の中で非常に重要な問題になっているわけでございます。こういう中で中曽根総理は死刑問題についてはどのように考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
#21
○国務大臣(中曽根康弘君) 死刑の問題というのは、国民の関心を持っておる非常に大きな問題で、政治の課題でもあり、かつまた国家統治の基本原理にかかわる問題を持っておると思っております。
 私が聞いたところでは、日本で世論調査をしましたら、死刑廃止に賛成という方が約一三%、反対という方が約七〇%、そのほかがわからないという数字の由で、日本国民はやはり七〇%が死刑の存続を求めている、そういうふうに考えております。
 私自体は、無事の国民に対する凶悪な犯罪、残虐なる犯罪、そういう問題に対しまして、やはりこれは正義を維持するという面からも、国民が支持しているそういう死刑というようなものは存続しかるべきではないかと思っております。国民世論というものも非常に大事でございます。ですから、国民世論をそんたくしつつ、かつまた国家社会の正義を維持するということも、政治にとって、統治にとって非常に重要な問題でもございます。そういう点について日本国民の核心はそう変化していないと私は思っております。したがいまして、存続しかるべしと現在考えておる次第です。
#22
○矢原秀男君 存廃にはいろいろあると思いますけれども、必ず二十一世紀指向の中でこの問題が再燃すると思うわけでございます。またそのときにはよく検討をしていただきたいと思います。
 では次にココム問題に移ってまいりますけれども、その前に、きょうの新聞でございますけれども、ソ連に自動操縦資料を流すということで会社の役員が調べられているようでございます。この点については警察庁といたしましてはどういうふうな状況であるのか、伺ってみたいと思います。
#23
○政府委員(新田勇君) 御説明申し上げます。
 警視庁公安部では、東京都狛江市にございます東京航空計器株式会社の総務部付清水実が、昭和六十一年四月十六日、勤務先であります東京航空計器株式会社から、同社所有のフライト・マネジメント・システムに関する研究開発成果資料を会社外に無断で持ち出して窃取したほか、その他航空機技術、航空機開発プロジェクトに関する文書、資料等を会社外に持ち出し、これらを現物あるいはコピーの形でソ連通商代表部Y・G・ポクロフスキー代表代理及びアエロフロート・ソ連航空日本太平洋地区企画部Y・N・デミドフ前部長に提供し謝礼を得ていたということのために、昨日までに家宅捜索を行い関係証拠物を差し押さえるとともに、同人を窃盗及び業務上横領の容疑により東京地方検察庁に送致したものでございます。
 これまでの被疑者の供述によりますと、被疑者は、前記両名の具体的な要求を受けて、両名に対し前記情報、資料を継続的に提供し、現金その他の謝礼を受け取っていたということが判明いたしております。
 なお、贓物故買等法令に違反する行為を行っていた疑いがあるということから、事情を聴取する必要があるため、外務省を通じまして昨日ポクロフスキー代表代理の出頭を要請したところでございます。
#24
○矢原秀男君 通産大臣、これはココムとはどういうふうな関連性がございますか。
#25
○国務大臣(田村元君) これはいわゆる窃盗とかそういう意味の刑事事件でございますから、警察の調べをしばらく見守らなければ何ともコメントのしようがない。どうもこれは調べが進まないとわかりませんけれども、今受けておる印象では純粋の窃盗というような感じでございます。
#26
○矢原秀男君 通産大臣、きのうココムの問題でいろいろと御報告を伺いました。アメリカにあなたが参られて、きのうの質疑で言い残されたそういう話というものがあればもう一度述べていただきたいと思います。
#27
○国務大臣(田村元君) 言い残したというのも、これちょっと私としても判断がつきかねますので、きのう申し上げましたこととダブりますけれども、私が訪米いたしましたことについて少し申し上げてみたいと思います。また、きのうとダブるかもしれませんが、お許しを願いたい。
 今回の事件につきましては、我が国はみずからの問題としてその再発防止に全力を挙げておるものでございます。また、今回の事件に関しまして、米国内に日本に対する非難と不信が著しく高まっております。これを放置することは、日米関係の基本を揺るがすのみならず、西側諸国の我が国に対する信頼を著しく損なうことになります。このような観点から訪米いたしまして、我が国の姿勢及び再発防止策について米側の正確な理解を求め、不信感の払拭に努めてきたものでございます。日本側としましては、今回の東芝機械問題は、我が国はもとより西側自由主義陣営の安全保障につきまして重大な懸念を生じかねないものとして遺憾の意を表明するとともに、重大なる決意を持って再発防止のための徹底した措置を講ずる考えであることを表明いたしました。
 次に、以上の認識の上に立ちまして、政府のこれまでにとった制裁措置、再発防止策について説明いたしまして、また今後とるべき措置として、刑事罰、行政処分の強化、時効の延長を内容とする法律改正案の今臨時国会への提出、通産省における戦略物資の輸出管理人員の増強、検査体制の拡充強化、ココムへの積極的貢献を行うこと、東芝機械のソビエトブロックに対する輸出打ち切り決定等の東芝及び東芝機械の自主的措置、こういうものを向こうに申したわけでございます。これに対しまして、アメリカの行政府は日本の対応を評価するとの反応が一般的でございました。そして、再発防止措置と今後の対策が重要との立場でありました。日米間の輸出管理についての協力関係の強化につきましても意見の一致を見ました。また、行政府は東芝制裁法案にも反対の立場でありました。ただ、議会関係者の場合は、私は、理解を深めてもらったと思われる方も相当あり、また非常に厳しい反応を示す方も相当あった、こういう印象でございました。
#28
○矢原秀男君 私は、この因果関係について結論的に申し上げますと、総理も国会で述べていらっしゃいますけれども、濃厚の嫌疑ということでございまして、日本の法律の証拠主義というこの問題からまいりますと、この点についてはやはり冷静なる考え方が必要である、こういうふうに考えております。
 そこで、通産大臣、とにかくあなたが訪米をされる、新聞報道やテレビは、何か日本とアメリカが戦争状態に巻き込まれているような、非常にそういう雰囲気を、国民の皆さんも経済戦争だなというふうに感じられたと思うんですね。通産省に「戦略物資・技術の輸出規制について」という本があるわけですね。これは終戦後まだ戦争が続いているのかなというふうに非常に感じるわけでございますが、こういう戦略物資、技術の輸出規制というこの名前のつけ方は、平和国家の日本としてはちょっと妥当ではない、こういうふうに思うんですが、それが一点。
 それからもう一つは、今外為法の改正が検討されております。きょうはその問題を少し突っ込んでみたいと思うんです。
 外為法、この外国為替及び外国貿易管理法の昭和六十一年、法七十の最終改正では、第一章の総則の目的の第一条は、この法律は、外国の貿易は自由の基本に立ち、対外取引に対し必要最小限の管理または調整を行うことによって、対外取引に対しての正常な発展、国際収支の均衡、通貨の安定、国の経済の健全な発展に寄与することを訴えているのでございます。だから、外為法によるココム強制はこの条文に照らして違法との見解は、東京地裁の一九六九年判決確定があるわけでございます。このココムの取り決めは日米など西側十六の国の秘密の約束でございまして、法的効力のない紳士協定でございます。反面、違反すれば刑罰で強制をされているのでございます。そうですから、これを変える場合は、憲法の平和主義、第九条とココムとの関連性、こういうふうなものもやはり慎重に検討されなければいけない。
 こういう立場の中で、具体的に伺いますけれども、この外為法二十五条二号、労務、役務提供、これは技術・ソフト輸出の制限と、四十八条、貨物輸出の承認、これが一つ。二番目には同法の五十三条、輸出入禁止処分の作。三番目には六十七条、貿易関係者の官庁への報告義務。四番目には六十八条、通産大臣の立入検査、質問権。五番目には七十から七十三条の罰則の規定。こういうふうなことから成っているわけでございますが、この中でソフト技術とは何を指すのか。この点も含めて明快に答えていただきたいと思います。
#29
○政府委員(畠山襄君) まず第一点、戦略物資という言葉がよろしくないという御指摘でございますが、戦略物資という言葉は、恐縮でございますが、かなり日本の平和とかそういう問題と離れまして一種のテクニカルタームとして使われておりまして、私どももさよう使わせていただいておるわけでございます。
 それから第二点、今具体的に条文を御指摘の上尋ねられたソフトの問題でございますけれども、まず第一番目の二十五条と四十八条という御指摘でございましたけれども、二十五条の二号で、平和、安全の維持の妨げにならない範囲で規制ができる、こうなっておりますが、この二十五条の便益、これはソフトの技術が含まれてございます。
 それから五十三条、六十七条等々がございましたが、五十三条の「制裁」というところは、これは今のところは輸出の禁止ということにとどまっておりまして、したがって、それに付随するソフトということは考えられますけれども、技術自体を規制する、あるいは規制の対象とするという概念は含まれてないというふうに理解いたしております。
 それから「報告義務」「立入検査」等につきましては、当然役務の場合も対象になる場合があるわけでございます。その意味でソフトの場合も対象になる場合があろうかと思います。
 それから罰則につきましては、当然先ほどのその二十五条違反の罰則につきましてはソフトがかかわっておるということでございます。
 以上でございます。
#30
○矢原秀男君 ソフト技術の中で技術者あるいは学者の頭脳も入るのかという問題、そしてまた、もし入るとすれば、技術者あるいは学者のココム対象国への渡航についても規制されるのかどうか、こういう問題もやはり再燃すると思うのでございますが、この際、お考えを伺いたいと思います。通産大臣、いかがでございますか。
#31
○政府委員(畠山襄君) 技術の輸出といいます場合に、考え方としては、今御指摘のように、その技術者自身の持っておられる知識、そういうものも入り得るわけでございますけれども、この為替管理法で人の移動を規制するということはできませんので、為替管理法という観点からはそれは含まれておらないということでございます。
#32
○矢原秀男君 中曽根総理、今の答弁を伺っておりまして、技術者あるいは学者の頭脳、こういうふうなものも入ってくる、しかし、これは外為法の範疇には入らない、じゃ新しい法をつくらなくちゃいけない、こういう問題になると思うのでございます。これは人であるがゆえに人権の問題、いろんな問題も含めて相当深く検討されねばやはり大きな問題の禍根を残す、こういうふうに考えるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
#33
○国務大臣(中曽根康弘君) なかなか難しいデリケートな内容を包含する対象であると思います。それだけに慎重によく検討さるべきであると思います。
#34
○矢原秀男君 私は今回のアメリカ政府の立場も非常にわかるわけでございますけれども、やはり一つの企業に対し、これは間違いは間違い、これはきちっとしなくちゃいけないと思うんです。しかし、もう寄ってたかってたたいてしまう。国家権力で一つの企業をたたいてしまう。これはやはり、通産大臣の御報告を聞いておりまして、アメリカ議会の上院と下院、えげつないとかいろんな問題あります。報告されておりましたけれども、アメリカの民主主義は冷静で公平なんです。ですから私は、あなたの御報告を私はきのうも聞いたわけでございますけれども、アメリカの民主主義は、民衆は冷静でございますから、こういう節度はきちっとわきまえておると思います。
 そういう意味で、このココムの問題を通して通産大臣から、将来の貿易に対する日本や企業のあり方、こういうことを担当大臣として一言姿勢を伺っておきたいと思います。
#35
○国務大臣(田村元君) ココムに関しましては、これは御指摘のとおり紳士協定でございます。でございますから、これに違反した者は日本国内の法令に基づいて処罰をするということはこれは当然のことでございます。今度の東芝機械の問題は、御承知のように虚偽の申告をして、もうまさに、通産省に責任なしとは言いませんけれども、虚偽の申告をして完全な犯罪行為でございました。
 それはそれとして、お尋ねの件でありますが、私は、今アメリカ議会がすべて非常に民主主義をわきまえて自由を謳歌し冷静であるというふうには思えないんです、率直に言って。中にはそういう人もいるし、中には非常にエキサイトする人もいる、それは人まちまちだと僕は思うんです。ただ、全体的には日本に対して極めて厳しいものがあるということはこれはもう率直に言えると思います。だからといって、アメリカは自由主義のメッカでございますから、その点は我々が学ばなければならない点は非常に大きいと思います。
 それで、日本の企業でございますけれども、私は通産大臣になってきょうでちょうど一年でございます。昨年の明日入閣をしたわけであります。一年間振り返ってみてつくづく思いますことは、日本の企業は非常に勤勉で営業熱心でよくやります。けれども、基本的な過ちを犯しておる企業も中にはあるわけです。それはもうけんかな主義であり、シェア拡大主義だと。そのためにはモラルというものを時に踏みにじることもある。全部とは申しません。中にはそういうのもある。これは残念ながら私が今までの経験で得た実感でございます。
 でございますから、これからの日本の企業は、こういう大きな貿易インバランスを抱えておる日本の企業であるだけになお――もちろん金もうけをするなとは言いません。もうけたらいいと思います。いいと思いますけれども、そこにモラルというものを十分認識し、そうして世界から愛される日本企業になってもらいたい。世界から総スカンを食らうような企業にはなってもらいたくない。世界にはルールというものがあるはずでございます。自由主義陣営のルールもあれば、社会主義陣営も含めた全世界のルールもあるはずでございます。そういう点で、モラルを守る企業として育っていってもらいたい。これがちょうど一年たちました今の私の実感でございます。
#36
○矢原秀男君 じゃ次に移らしていただきます。減税とマル優の問題でございます。
 税制改革問題については、現在税制改革協議会において与野党の話し合いが行われておりますが、減税問題は非常に重要でございます。ここで総理の基本的認識を伺いたいと思います。このことにつきましては、戦後から昭和五十年代前半ごろまで国民の租税負担率は一八から一九%と安定していたのでございますが、それが最近かなり高くなってきております。これこそが国民の間に広がった重税感を示す指標ではないかなとも思うわけでございます。まず、総理の基本的な認識を伺いたいと思います。
#37
○国務大臣(中曽根康弘君) 戦後四十年たちます間に日本経済も日本の国民生活も非常に大きな変貌を遂げました。主として生産力の拡大あるいは生活水準の上昇、そういういい現象もあったわけでありますが、この間において、約三十七年前につくられましたいわゆるシャウプ税制というものが非常に大きなゆがみ、ひずみを生じてきまして、そして例えばサラリーマンにおける大きな重税感であるとか、あるいは直接税と間接税の比率の問題であるとか、あるいはキャピタルゲインに対する問題であるとか、あるいは多国籍企業に対する課税の問題であるとか、新しい問題が次々に出てきました。
 これらの大きなひずみを是正して、そして二十一世紀につなげるような新しい税体系を構築するということが現在の大きな課題であると、そう思いまして、政府税調に諮問しまた各党の皆さん方のお考えも承り、そういうことで税制大改革をやろうと志して乗り出してきたわけでございますが、売上税の問題で蹉跌を来しまして、現在税制協議会等におきまして次のステップをいろいろ検討しておるところでございます。この大きなひずみ、それからこれを直さなければいけないという国民感情、そして国民は税制改革を欲しているという最近の世論調査、こういうものをわきまえまして、適切な改正に向けて一歩一歩前進するように努力いたしたいと考えております。
#38
○矢原秀男君 昭和五十五年度実績が二二・二%であったのが、六十一年度の当初予算では二五・一%と上昇をしております。これは、税制改革において歳入中立性を強調しておきながら、租税収入の歳入面の中立性が維持されておらないという数字の分析でございます。
 こういう中で、私端的に申し上げますと、減税については私たち公明党では二兆円減税はやるべきであると主張をいたしているのでございます。その財源でございますけれども、六十一年度の決算では超過税収が二兆四千億ございました。二分の一は国債償還にいくわけでございますから、六十一年度の剰余金は一兆七千五百五十七億になっております。今回の補正に組み込まれたのが四千三十億でございます。残として一兆三千五百二十七億残っているわけでございます。私はこれも減税財源としてやはり検討すべきである。
 そうして、もう一点はNTTの株の売却益でございます。いろんな論議が国会でなされておりますが、長い間国民がすべて育ててきた大きな一つの財産でございます。そういう意味で、一面で、この売却されます株の利益によりまして、これは減税に充てますよということも政治の信頼を得る大きな一つではないかと思うのでございます。今NTTの株は七百八十万株、政府の持ち株でございますが、これを五回に分けて六十一年度が百九十五万株、それから六十二、六十三、六十四、六十五年度といくわけでございますが、この問題につきましても、国債整理基金、そうして一般会計という法的ないろいろのものがあると思いますけれども、私は、今申し上げましたように、やはり剰余金、NTTの株の益、そういうふうなもので二兆円の減税はことしはやるべきである、そうして恒久財源はゆっくり検討をすべきであると考えるのでございますけれども、この点について総理大臣の見解を伺いたいと思います。
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) まず、昭和六十一年度に相当額の自然増が出たという点に関しまして言われましたことは、そのとおりでございます。そのとおりでございますが、今年度におきまして所得税等のどのような減税が行われるかということは、税制改革協議会等々の御討議にもよりますが、一兆を超える所得課税の減税といたしまして、計数といたしましては、いわゆる歳入余剰がこれにほぼ見合う、これは国会のお許しを得てのことでございますが、計数でありますことはそのとおりでございましょうと思います。ただ、一度減税をいたしました場合には、これは一遍限りということは考えられませんので、今年度はよろしいとして、明年度それをどのようにして賄うかということはそこから答えが出てまいりませんので、やはり恒久財源を必要とするのではないかと考えます。
 次に、NTTの売却益の処分につきましてのお考えでございますが、私どもは、これは確かにあと何年かは売却益が期待できますけれども、そうであるといたしましても、それはいずれにしろいっときの財産処分収入でございますから、恒久的な減税の財源とすることにはやはり問題があるであろうと考えます。
 また、NTTは確かに国民の過去の努力の蓄積でございますが、減税というのは筋道といたしましては税金を払う人に向けられるべきものでございますから、税金を払っていない人はこのNTTの過去の処分の益から受益をしないということに、理屈ではそうなるわけでございますから、そういうこともございまして、やはりNTTの処分益を減税財源にすることは私どもとしては適当ではないのではないかというふうに考えております。
#40
○委員長(原文兵衛君) 関連質疑を許します。広中和歌子君。
#41
○広中和歌子君 公明党・国民会議の広中和歌子でございます。専業主婦にも税金の恩典をという視点で関連質問をさせていただきます。
 産業のサービス化とともに女性の職場進出は年年盛んになり、なかんずく結婚した女性の就業がふえております。女性の能力が女性の伝統的職場、つまり家庭以外で発揮され、適正な金銭的報酬と社会的評価を受けているということはそれなりに喜ばしいことでございますが、一方、職場で働きたくても家庭の事情でそれができず、あるいはそれを選択せずに主婦業に専心している女性も数多くいるわけでございます。
 それで、総理並びに文部大臣にお伺いしたいのでございますが、専業主婦の社会における役割とその評価をそれぞれのお立場からお話しいただければありがたいと思います。
#42
○国務大臣(塩川正十郎君) 専業主婦の方は、私は、確かに家庭だけではなくして、やはり社会の安定にも非常に重要なお仕事であると思っておりまして、そして、まず家庭の中にありましてそれぞれの社会の構成員としての責任をきちっと果たしていただいておることに対しまして、私は高い評価をいたしておるものでございます。
#43
○国務大臣(中曽根康弘君) まず、私は専業主婦という名前がよくないと思うんです。奥さんであり、お母さんであり、家庭を整えているというのは、業務ではありませんね。これはやはり愛情を持ってその一家を支え、一家をつかさどっていくという、とうとい仕事で、業という言葉になじまない。
 ですから、私はむしろ、前から考えていたんですが、家庭主婦という名前とそれから有業主婦、業を持つ奥さん。なぜなれば、家庭にあっても内職している方がありますから、そういう方は有業ですわね。ですから有業と家庭と、そういう二つに対比して名前をつけたらどうか。専業主婦という言葉を聞くたびに私は、女性が侮辱されているような、家庭におられる奥さんのお心に沿わない表現がそこで行われている、政治の僭越である、そういうふうにも感ずるので、ひとつここで皆さんで御相談願って適当な名前に変えてもらったらどうか、まずそのことを提起したいと思います。
 それから、やはり家庭の主婦の皆様方は、その環境なりあるいは御信念に従って家庭をお守りくだされ、また内助の功を積まれており、あるいは子供たちの面倒を見ておられるので、仕事を持っておられる皆さん方と同様に非常に崇高な仕事をおやりいただいて、しかも地味な仕事に甘んじて営々としておやりいただいておる、私はそういう意味においてひとしく敬意を表するものでございます。
 ややもすると、この方々の立場が今まで表へ出ておりません。評価も物的にされておりません。配偶者控除というものがありますけれども、それは当然の話であります。そこで家庭婦人、主婦の皆さん方にというので、この間の税制改革では所得税でたしか十五万、それから住民税で十二万の特別控除をお願いいたした法案を出したわけでありますが、これが成就しなくて甚だ残念でございますけれども、しかし、こういうような家庭の皆様方に対する配慮というものは現代政治においても非常に重要であり、我々はこれをぜひとも実現いたしたいと考えておる次第でございます。
#44
○広中和歌子君 総理に敬意を表しまして、これから家庭主婦という言い方をされていただきますけれども、家庭主婦は現税制におきまして十分に報われているというふうにお考えでしょうか。大蔵大臣にお伺いしたいわけでございますが、例えば家を買った場合、妻が一生懸命節約してローンを払っていくわけでございますけれども、妻と夫の共同名義にすることは現税制では不可能であろうと思います。これは外国の例などではどうなのか、そういうことも含めましてお答えいただければありがたいと思います。
#45
○国務大臣(宮澤喜一君) 家庭における主婦の役割というのは、今総理が言われましたように、ただ経済的なものだけではもとよりないわけでございますけれども、今、仮に配偶者、男女ということが普通でございますから主婦と言わせていただきますけれども、御主人が一定の所得を得られる上で主婦の果たされる貢献というものはもうはかり知れないものでございますから、経済的な意味におきましても、それは税法上でもやはり考慮されてしかるべきでありますし、殊に、比較権衡の問題になりますが、御夫婦で事業を、小さなお店でもやっていらっしゃる場合に、青色申告の場合には専従者の給与というものを認めるわけでございますから、それと御家庭というものと、実際やっておられることは違いましても、いわば経済的な面だけで見ましても所得を生むという意味ではその共同の部分が非常に少なからずある、そういうことを考えまして今度配偶者特別控除というものを導入しようといたしておるわけでございますけれども、その評価いかん、これをもって十分とするかどうかということはいろいろの議論の分かれるところであろうと思います。
 なお、今、住宅を取得いたしました場合にその所有権を夫婦間で分けられるかどうか、欧米の例と言われましたので、私ちょっと存じませんから、政府委員からお答えをいたします。
#46
○政府委員(水野勝君) 我が国におきましては、夫婦間でも財産が移転すれば贈与税がかかるわけでございますので、通常でございましたら、共同名義にされますとその共同名義、半分半分であればその分は贈与税の対象になるわけでございますが、住宅に関しましては、一定の婚姻期間がございます場合には一千万円を限度として非課税措置があるわけでございます。
 また、外国におきましては、アメリカ、イギリスなどにおきましては夫婦間の財産の移転は課税の対象になりませんが、ドイツ、フランス等におきましては一定の限度で課税の対象になる、このような制度になっているようでございます。
#47
○広中和歌子君 私はアメリカでいわゆる家庭主婦をしていたわけでございますけれども、一銭の収入もなく、すべての収入の半分は私のものであるといったような状況の中で子育てその他、主婦業に専心してまいりました。日本の税制というのは稼得者単位であり家族単位でない。税制が社会の基本的な考え方を反映するといたしますと、日本は家族を尊重していない、無視というふうに解釈してよろしいでしょうか。
#48
○政府委員(水野勝君) 所得税の歴史におきましては、そもそもは世帯単位で、とにかく世帯でどなたが働かれましてもそれぞれの方の所得を世帯で合算して全部累進課税を行うというのが初めの時期にはあるわけでございますが、しかしそれでは少し個人個人の勤労される立場に対していかがかというあたり、その他もろもろの理由がございまして、個人個人で課税をするという個人単位課税が次に出てまいるわけでございますが、それをさらに発展させてまいりまして、どちらが働かれようともそれは二人でともに等分、ひとしく半分ずつ稼いだというような形での二分二乗の制度になる。いろんな発展の段階があろうかと思われますが、アメリカにおきましては二分二乗制度、我が国におきましてはそれぞれ個人個人、働かれる、稼得される個人の立場に立ちまして課税を行わせていただいている。それはそれで全部を合算するという制度に比べれば個人個人のお立場に着目した制度であろうかと思うわけでございます。
#49
○広中和歌子君 自営業者のように、ただいまお話しありましたように、収入を妻と分かち合えない中高年サラリーマンの重税感、また税の不公平感が今回の税制改革推進の大きな力の一つになったと思いますが、妻が働いて二つの月給袋のある家庭と、一家で夫のみあるいは妻だけしか働いていない家庭との税金格差というものも非常に大きいのではないかと思いますが、具体的な数字を挙げて御説明いただけませんでしょうか。例えば七百万の収入のある家庭でございます。
#50
○政府委員(水野勝君) 委員御指摘のとおりでございまして、例えば七百万の収入を世帯として上げておられる、そういう場合でも、片方の方だけが働いておられてそれだけの収入がある場合と、お二人で同じ金額ずつで七百万を上げておられるという場合を比べますと、やはり二人で同じ額ずつで七百万を稼がれる方の方が負担としては低い。七百万を前提にいたしますと、三百五十万ずつでございますと所得税は三十二万九千円でございますが、御主人だけが働いている、それで七百万という場合には五十二万二千円で、二十万円ぐらいの差があるという制度に現在はなっておるわけでございます。
#51
○広中和歌子君 託児所の公的費用、それから老人ホームの公的費用、そういうものについて数字をお願いいたします。
#52
○政府委員(小林功典君) 保育所と老人ホームの公費負担の額の御質問でございます。
 まず保育所から申し上げますと、一人当たりの月額経費が約三万六千円でございます。そのうち公費負担分が一万八千円でございます。ですから、ちょうど公費負担と利用者負担が半々という形になっております。
 それから特別養護老人ホームにおきましては、一人当たりの月額経費は約二十万円でございまして、そのうちの公費負担は約十七万九千円、率で申しますと九割が公費負担、こういうことになります。
#53
○広中和歌子君 今の御説明でもございましたように、家庭主婦の役割というのは非常に大切なものがございます。特に高齢化社会に向かいまして、行政などではできないさまざまな面、ソフトの面でございますけれども、主婦のボランティアとしての役割なんかも非常に大切なのではなかろうかと思います。そういう意味で、もっと主婦に配慮をした税制というもの、そういうものをしていただきたいわけでございますけれども、いわゆる十五万円の配偶者控除、これは六百万の標準家庭ですか、におきましては一月幾らの減税になるんでしょうか。
 そのことを伺いまして、質問を終わらせていただきます。
#54
○政府委員(水野勝君) 六百万の年収でございましても、その家庭の家族の形態等にもよるわけでございますが、この間御提案申し上げた税制改革案でございますと、そのあたりは一五%の限界税率になる。そうすると、十五万円でございますと年二万二千円といった計算になろうかと思うわけでございます。
#55
○広中和歌子君 月にしますと。
#56
○政府委員(水野勝君) 千八百円ぐらいかと……。正確な計算はちょっとまだしてございませんが、そんな感じでございます。
#57
○広中和歌子君 どうもありがとうございました。
#58
○矢原秀男君 総理大臣、大蔵大臣ね、今の広中議員の質問の基本的なものは、税制の面から世の男性は御家庭の奥さんを大事にしなさいという角度からの質問であったと思うわけでございます。それぞれ教訓としていっていただきたいと思います。
 それで、私、マル優制度について、この論議はいろいろ述べていらっしゃいますので、きょうは簡単に結論だけ申してみたいと思います。税制面から非課税にして、庶民のささやかな蓄えを守るためにあったわけでございます。庶民の立場に立つ公明党といたしましては、マル優の廃止は反対であります。
 政府は、貯蓄奨励はその役割を終わった、マル優乱用は目立っている、また外国から過剰貯蓄である等々の理由から、庶民のささやかな蓄えをも奪おうとされております。貯蓄増強中央委員会の貯蓄に関する世論調査では、貯蓄の動機として、一つは老後の備え、二番目は不時の出費、三番は教育費の三つを挙げております。社会保障が十分でない我が国では、家計の人々がみんな寄って、病気になった場合はお年寄りの方でも若い方でも家庭でみんなが守らなければいけない、こういう厳しい日本の家計の状況でございます。
 そういう問題の中で、外圧があったからいきなり政府で、長年やっているものをやめようとする。そこにいろんな工夫がない。これはまた問題であろうかと思うわけでございます。社会保障が十分でない我が国では、家計を削ってこつこつと、ある人は税金を払って、その積み立てが貯金でございます。その貯金の額が日本としてでっかいから、そういうことではいけないと思います。もし老後を支える方法が別途にあるのであれば、総理大臣、端的で結構でございますけれども、日本の老後、高齢化社会、一千二百万以上の方が高齢化と言われておりますけれども、本当に年金で生活できる、そういう日本の国であるならば私はこれをやめてもいいと思います。しかし、そういう過程ではないんです。そういう日本ではございません。
 そういう意味で、総理大臣のマル優に対する姿勢を伺っておきたいと思います。
#59
○国務大臣(中曽根康弘君) 貯蓄が持っておりまする意義及び国家社会に対する貢献というものも、私は認めるのに人後に落ちるものではございません。しかし、やはり税法の原則というものからしますと、所得のあるところには税が生まれる。そういうことで、利子といえども所得でございますから、税は生まれるというのがやっぱり一般的な原則でございます。
 それで、このマル優というものが生まれました歴史的背景というものも考えてみますと、これは前から申し上げますように、戦前は貯蓄増強組合のようなものについて認めておった。昭和十六年、太平洋戦争にも絡みまして、恐らくこれは国債消化のための貯蓄政策として、あのころ貯蓄推進あるいは貯蓄増強本部というようなものがありまして、そういう意味でも貯蓄奨励のために、また戦時国策遂行のための政策として、マル優制度は一挙に拡大されて行われた。しかし戦後におきましては、この貯蓄というものが日本経済再建のための資本をここで供給したという意味において、非常に大きな功績もあったと思うのでございます。
 しかし、最近は割合に所得水準が上がりまして、しかも日本は中産階層中心の、所得から見ればちょうちん型の、真ん中が膨らんでいる社会にだんだんなってまいりました。そのほかいろいろ社会福祉施設やら社会保障も欧米並みに進められてきておるわけです。税に至りましては、大体先ほどお話しのように二五%、それからそれに社会保障関係の経費、費用で約一一%、三六%ぐらいで、これはアメリカと並んで世界で一番低い税並びに社会保険、つまり国民負担率の国でございます。多い国は五〇%から六〇%出しておる。例えば英国とかスウェーデンなんかはそうです。
 そういう面から見ますと、日本はそういう意味におきましては税及び社会保険料の負担は世界でも一番安い、低い国にもなっておるわけでございます。そういう面から見ますと、お年寄りとかあるいは母子家庭とかあるいは身体障害者とか、特に社会の弱い方々で我々が配慮しなければならない方々を除いては、これは一般的に同じような扱いで納めていただく、そういうようにしたらどうかと。もしそういう面で著しく困るという層が出てきたら、それは別の社会政策の面で見たらどうだろうか、そういうのが私の考えの基本にあるのでございます。
#60
○矢原秀男君 この問題は議論の違うところでございますが、私たちはマル優反対の線で進んでまいる決意でございます。
 日本銀行総裁に来ていただいておりますので、順序を変えまして地価対策について伺いたいと思います。
 まず最初に、全国銀行の建設業、不動産業向けの貸出残高について大蔵大臣から伺ってみたいと思います。
#61
○政府委員(平澤貞昭君) 全国銀行の建設業及び不動産業向け貸出残高でございますけれども、六十二年三月末で建設業向けが十四兆八千四十一億円、それから不動産業向けが三十兆二千九百八十三億円となっております。
#62
○矢原秀男君 今御報告をいただきましたけれども、六十二年の三月で不動産業界に向けて三十兆二千億の融資という形になるわけでございます。大半が非常にまじめな方々でございますが、特に中央信託、この面について具体的に質疑を交わしていきたいと思いますが、土地転がしのために八重洲の一等地を不動産会社と結託して融資金で地上げをし、土地の転売不明金は十五億円になんなんとしている、こういうふうな問題が出ているわけでございます。
 大蔵省としても調査、そうしてそれぞれの銀行等に対していろいろと手を打っていらっしゃると思いますけれども、こういう問題が日本の国の政治、経済を根底から覆していく、将来にそういう禍根を残していく、それが地価の問題であると私は提起したいと思うのです。そういう意味で、国民の集大成の預金というものが間違って土地転がしで国民の首を絞めていっている、こういうふうなことでは大変だと思いますが、この点について大蔵省としてはどういう手を打っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
#63
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御指摘の特定の事案につきましてはつまびらかにいたしませんが、一般的に、御指摘のように不正あるいは不正常な不動産取引に対して金融機関が金を貸しますことは好ましくないことでございますから、何度か銀行局長から通達をいたしましたが、昨年の暮れに重ねてそのような通達をいたしました。しかし、最近の状況がさらに目立つようになっておりますので、昨日もこの席で申し上げましたが、従来の年二回の報告、ヒアリングに加えまして特別ヒアリングという仕組みを発足させたいと考えまして、それは特定の地域、東京都、首都圏などがそうでございますが、不動産関連の貸出残高が目立って大きい金融機関等々を特定いたしまして、具体的にどのような融資が行われておるかといったようなことについて特別のヒアリングをやり報告を徴したい。これはもう今週からでもそういう地域、金融機関の選択に入りたいと思っておりますが、そういうことを考えております。
 なお、このような世評にもかんがみまして、信託協会あるいは全国銀行協会等々におきましておのおの自粛をし、御自分たちでもそういう意味での内部的なチェックを行うという体制をとるということをある協会は既に決定し、他はこれから決定をするというような状況になっております。
#64
○矢原秀男君 よくお願いをしたいと思います。
 それで、澄田日銀総裁にお伺いをしたいと思います。
 総裁は、こういうふうな事態の中で、先ごろ日銀が発表いたしました、先ほど私が申し上げました、銀行から不動産業者向けの貸出残高は三十兆二千億円に上っている、対前年度の伸び率は実に三六・二%にも増加している。こういうことで、総裁も心配されてこの面についての自粛を強調されていらっしゃいますけれども、総裁といたしまして地価抑制に対する現況と今後どうすればいいのか、こういう問題について伺いたいと思います。
#65
○参考人(澄田智君) 地価上昇問題につきましては、長期にわたる金融緩和がその一つの要因であるということは決して否定できないことであると存じております。しかし、そのほかにも例えば経済社会の情報化、国際化の進展、これを背景とした大都市への機能の集中、あるいは土地の売り手が税制の関係で代替地を取得するという傾向が広く行われているといったもろもろの事情も大きく影響している、こういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、地価上昇問題については、私から申し上げるまでもなく、税制の活用等により土地の供給を進めるとか、あるいは各種の機能の大都市集中の傾向に手を打つとか、いろいろの対策が同時に必要であるということは当然のことと私どもも考えることでございます。総合的な見地からぜひ検討を進めなければならないことである、こういうふうに考えておるわけでございます。
 日本銀行といたしましては、金融機関の融資によりまして投機的な土地取引が行われ地価上昇に拍車をかけるというような点、そうしてまた都市部を中心とする地他上昇が一般物価水準の上昇につながるというようなことがないように、今後とも十分日本銀行は日本銀行の立場として注意をしてまいりたい。現在、金融政策の運営に当たりましては、総合的な判断といたしまして、現在の緩和基調を維持しつついくということは必要であると考えておりますが、他方で緩和の行き過ぎは何としても回避するという観点に立って慎重な政策運営の姿勢をとっておるところでございますし、今後もこれをとり続けるつもりでございます。
 このような観点から、金融機関に対しては常日ごろから節度ある融資態度を要請しているところでございますが、今後とも金融機関との日常の接触を通じまして、土地融資を含めまして融資全体に節度が十分保たれますように要請をしていくつもりでございます。私どもといたしましては、金融機関においてもそうした趣旨を十分に踏まえられて、土地融資を含めて融資全体の節度を保っていくように強く期待をしているところでございます。
#66
○矢原秀男君 よろしくお願いをいたします。
 最後になりますが、総理大臣、あなたも首都圏を中心に高騰する地価対策を審議する問題で臨時行政改革推進審議会にその旨をゆだねられたわけでございますけれども、地価対策に対する総理大臣としての所見というものも伺いたいと思います。
#67
○国務大臣(中曽根康弘君) 東京都を中心にする大都会の地価の暴騰に対しては、政治はこれに対応する政策を出すということが今急務になってきたと思います。先般の国会におきましても、国土計画法の改正による監視区域の拡大であるとか、あるいは税制の面から見て超短期の土地の移転等に対する重課であるとか、そのほか幾つかの対策をやったのでございますが、それだけではもうカバーし切れない。そういう意味におきまして、これは税の面あるいは行政の面あるいは金融の面、総合的にまず投機を抑えて供給をふやしていく、そうすれば下がっていく。そういう同時作戦をやらなきゃいけないという考えに立ちまして、政府としても今いろいろ努力をしつつあります。
 それから、一方におきまして、先ほどのお話のように行革審に緊急の諮問をいたしまして、至急根本的な案、それから短期的な案というものを出していただきまして、強力にこれを推進したい、そう考えているところであります。
 私の任期に限度はありますけれども、任期の範囲内においてできるだけのことを最大限にやっておきたい、そう考えておる次第でございます。
#68
○矢原秀男君 総理の決意を伺って安心をするものでございます。
 ここで、この関連としてその線上にどうしても浮かんでまいりますのは、世界の例を見てまいりましても、遷都の問題に移ってくるわけでございます。
 昭和五十二年十一月に決定の三全総には、「東京における中枢管理機能集積の主因となり、東京一点集中の要因となってきた首都機能の移転再配置を進めることが、国土総合開発政策上の重要な課題」と俎上に上がったわけでございます。そして六十二年の六月、四全総においては、「遷都問題については、国民生活全体に大きな影響を及ぼし、国土政策の観点のみでは決定できない面があるが、東京一極集中への基本的対応として重要と考えられる。」、こういう意味合いから、「国民的規模での議論を踏まえ、引き続き検討する。」とうたっているのでございます。
 この歴史的な経過というものは相当以前からあるわけでございまして、戦後、政府関係では、首都移転構想というものを初めて発表されたのが中曽根総理の師にも当たられます河野一郎当時の建設相であったと言われております。それから新首都建設構想はずっと進んでまいるわけでございますが、私は、東京のこの過大な人口集中、そうして想像できない地価、こういう問題から、世界と比べましたときに、首都の移転問題というものに早々に真剣に取り組んでいかなければいけない、こういうふうに考えるわけでございます。
 私は、そういう意味で、東京一極集中の弊害というものをいろんな角度から検討してまいりました。人口増の問題、住宅の不足、そして国際的な事務所、地価の高騰、震災被害の想定、交通渋滞、通勤時間の問題、環境問題、緑の問題、高齢化社会への対応、水の不足の問題、こういうふうに挙げれば切りがないわけでございます。そういう中で、住宅の不足にいたしましても、この東京都内でマンションの在庫が今現在三百四戸しかないというデータを持っているわけでございます。また事務所の不足につきましても、空き室の率からいきますと六十年の四月で〇・二%である。そしてまた人口にいたしましても、首都圏、東京都、埼玉、神奈川、千葉県を含みますと六十年で既に三千万人を超えている。そして地価の高騰にいたしましても、千代田区では五八・三%対前年度比率、こういうふうな巨大な伸び率になっている。
 こういうことを考えてまいりますと、真剣に検討をしていかなければならない、こういうふうに私は思うわけでございますけれども、総理大臣の御見解を伺いたいと思います。
#69
○国務大臣(綿貫民輔君) 遷都論につきましては、今先生御指摘のとおり、古くは皇居の移転問題あるいは今の河野先生の浜名湖を中心にした新しい遷都論とかあるいは東北地方、富士山ろくへの遷都論とかいろいろございましたが、昭和五十年に超党派の国会議員と学識経験者によりまして新首都問題懇談会というものをつくりまして、その後も検討を続けていただいておるわけでございます。その後、御指摘のように、昭和五十二年に三全総におきましてこの遷都論の方向を検討すべきだということが位置づけられておりますが、今回の四全総におきましても今おっしゃいましたようないろいろの問題を含めて検討課題として位置づけておるわけでございます。
 行政政治機構と経済との関係、こういうものがございますので、単なる国土政策だけでは論じられない国民生活に及ぼす極めて大きな問題を含んでおりますので、今後も国民的な論議を背景にして十分検討していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
#70
○矢原秀男君 諸外国の遷都の原因等々を国の資料から見てまいりますと、国土庁では八例を挙げておられます。過密の解消のためにというのが、いろんな条件があろうかと思いますけれども、イギリス。これはドイツの攻撃のために分都の形をとっております。そのほかスウェーデン、インド、フィリピン、またその他では西ドイツ、アメリカ合衆国、ブラジル、オーストラリア、こういうふうになっておりますけれども、主体は過密の解消であろうかと思います。
 今国土庁長官がお話しになりましたが、皇居はやはり僕は置くべきであろうかと思うんですね、これは私の案でございますが。そうして遷都の問題について、首都機能の主要部門としては国会及びその関連部門、いわゆる政治部門を中心とする東京大都市圏外への移転が最適ではないかなと思うわけでございますが、この点についての最後でございますので、総理大臣の見解を伺っておきたいと思います。
#71
○国務大臣(中曽根康弘君) この問題は四全総の検討課題として検討が続けられるであろうと思いますし、それを期待いたしております。合いわゆる東京プロブレムと称する東京問題をめぐりましてさまざまな論が起きつつあります。分都論という発想もございますし、あるいは東京湾を埋め立てて膨大な新しい海上都市をつくって千葉県まで包含して大きな一つの首都圏、第二次首都圏というようなものを、狭義の首都圏をつくったらどうか、そういう議論もございます。割合に雄大な案がだんだん出てきておりますが、そういういろいろな案をよく検討しまして、そうして慎重に考えて結論を出していったらいいと考えております。
#72
○矢原秀男君 次に移ります。
 円高不況と地域経済対策でございます。
 最近の我が国では、経済、物価安定の背景には個人消費、緩やかな傾向で横に動いておりますけれども、しかし油断をすれば非常に厳しい面が物価問題等を含めてあろうかと思うのでございます。世界経済での円高による輸出の減少、依然として景気の回復は厳しいわけでございます。
 昭和五十七年度当時から、地方におきましては単年度としては収支が均衡する見込みとなっておりましたが、地方財政はその後の経済、円高不況で停滞ぎみというのが現状分析ではないかと思うのでございます。国税及び地方税とも大幅な減収を生じ、再び巨額の財源不足額を生じ、借入金等の特例措置によって補てんをされている、こういうことが年々進んでいるのが実情ではないかと思います。このような厳しい財政環境のもとで私は行政の面から考えてみれば、地方公共団体、地方行政を中心とする日本というものは、内政の直接の担い手、これが地方行政であろうかと思うのでございます。こういう特性を持った地域社会の形成に国としては全力を挙げていかなければいけない、このように考えるわけでございますが、財政の面でございますので、この点大蔵大臣はどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
#73
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のとおりであると思います。
 殊に、ただいま日先の問題といたしましては、昭和六十一年度におきまして地方に対する相当の精算増が見込まれる一方で、補正予算等々におきましては殊さら地方に大きな御負担をかけるということもございますので、その点地方財政に御支障がないように国としても考えてまいらなければならないというふうに思っております。
#74
○矢原秀男君 私も市会議員、県会議員という地方議員を経ておりますので、こういう問題の非常な厳しさ、国からおりてくる財政面だけの手当てがあっても、地方はどうするのかという問題は非常に複雑で厳しいものがあるわけでございます。そういう意味で、基本的な地方行政の非常な苦しさを訴えたわけでございます。
 円高と地域経済の一面でございますけれども、今回の円高不況と言われる局面で、輸出の産業、鉄鋼、造船、自動車、電機、軒並み悪化をいたしております。また、円高メリットを受けた輸入産業、石油、ガス、化学、電力。金余りを背景として証券、銀行、不動産は大幅な増益となっている。ここに明暗の二極化現象が見られるのでございます。いわゆる製造業の低迷、非製造業の好調といった景気の二局面が一つの特徴でございます。もう一つの特徴は、東京圏への集中化が一段と進んで、地域経済の低迷と地域間の格差が一段と拡大をしたことだと考えております。この点につきまして総理大臣はどういう御認識を持っていらっしゃるでございましょうか。
#75
○国務大臣(田村元君) おっしゃるとおり、今の日本は非常に極端に経済の二面性をあらわしております。しかし、その対策としては、当然、円高メリットを受けておるものからは円高の差益還元ということで貢献していただかなきゃならぬし、今御指摘のあったような急激な円高による不況業種という点については、経済構造調整を含むいろいろな対策を講じていかなきゃならぬ。要は、高目の経済成長策をとっていくということが必要でございましょう。その意味において、先般の内需拡大策というものがこれから大きく貢献するでありましょうし、先ほど来言われておりますように、これは一年ぽっきりのものであってはならない。ある程度の高目の経済成長、いわゆる需給のバランスというものが十分とれるような体制がある程度定着するまで配慮を加えていかなきゃならぬと思います。
 そこで問題は、東京圏にいろんなものが集中し過ぎるんじゃないかというふうに私承りましたが、率直に言いまして、東京都を見てみましても地価が暴騰しておる。それは、一つにはオフィスが全然なくなっておるということ、それからマンションがほとんどもう売り切れて、ないということ。ということは結局、例えば関西経済圏を見ましても中京経済圏を見ましても、そこに落ち込みが見られる。全部本社を東京へどんどんと集中してくるというような現象がございます。これはもちろん、そういうことをしちゃいかぬといって刑罰で処するわけにはまいりませんけれども、通産省はもちろん当然でございますけれども、国土庁、また企画庁みんなが力を合わせまして、知恵を絞ってその対応をしていかなきゃならぬことは申すまでもございません。私どもも思いを新たにして、つまり一遍東京圏の整理をしてみたらどうだろうか、考え方として。
 それで、先ほど来の遷都論なんかも非常な見識だと思って私実は承っておりましたが、東京圏についても、一度洗い直しをする、そして関係省庁が一遍勉強してみるということが必要じゃなかろうかというふうに思っております。
#76
○矢原秀男君 一つの具体面でございますが、地方債での補てん、これが基本的なことでございます。しかし、既に地方債、借入金の残高は六十二年度末で六十四兆円。公債費負担比率も一四・二%と非常に高いのでございます。自治体の中には起債のできない、すなわち単独事業のできないところさえあろうかと思うのでございます。
 地方への負担転嫁が行われれば行われるほど一面では地域経済の格差は一層拡大する、こういう面も出てくるわけでございます。この点については自治大臣はいかがお考えでございますか。
#77
○政府委員(矢野浩一郎君) 地方財政の借金の状況についての御質問でございますが、先ほど御指摘のとおり、地方財政の借金総額は交付税特別会計における借入残高も含めまして約六十三兆七千億円、ほぼ六十四兆円でございます。しかも、この借金の償還につきましても、これも御指摘のように、公債費の負担比率、一般財源の中に占める公債費の割合は一四%を既に超えておるわけでございます。ただ、地方財政は、平均で一四%と申しましても団体によってかなり違うわけでございまして、全国三千三百の団体の中でその割合が二〇%を超えておるというものが既に千を超えておるわけでございます。
 したがいまして、自治省といたしましても 一方で、すべてを起債に頼るということはなかなかこれからも難しくなってくる。従来は、公共事業の実施等につきまして、とにかく当面の措置として起債という手段をとってまいったわけでございますが、このように起債の額がふえ、また公債費の額もふえてまいりますと、なかなかそれだけでは難しくなる。今回の追加補正に際しての地方財源措置も、そういう観点から、特に弱小団体はなかなかこれに耐え切れない。そういう意味で、単に起債だけではなくて一般財源による措置、こういうものを含めて事業の執行に支障のないよう、またそれによって地域経済が活性化できるように財源措置については目下大蔵省と協議中でございまして、先ほど大蔵大臣からもお答えのあったとおりでございます。
 そういった点で、借金の問題、今後の地方財政にとって大変重要な問題でございますので、十分その辺の対策を中長期的に考えてまいりたい、このように存じておる次第でございます。
#78
○矢原秀男君 私も、地方への負担転嫁というものは徐々に軽減をしてやっていかなければ大変だと思うわけでございます。
 ここで大蔵大臣に確認をしておきたいのでございますけれども、六十三年度は地方に対する補助金、補助率のカットはないと明言をしていただきたいと思うのでございますけれども、大蔵大臣の所見を伺います。
#79
○国務大臣(宮澤喜一君) 過去におきましてそのようなことで地方にいろいろ御負担を願っておりますことは、私どももよく承知をいたしております。ただ、行革審等々におきましても補助金等についてはできるだけ見直すようにというような御示唆もあり、また国の財政も御承知のようなことでございますので、六十三年度のことをまだ申し上げる段階になっておりません。まだ十分に検討をいたしておりません。どういう問題が出てまいりますかただいまからはっきり申し上げることはできませんが、恐らく御発言の御趣旨は、過去において随分そういうことを重ねてやったではないか、限度があるぞという御趣旨であろうかと承ります。そういうことも十分考えながらよく検討いたします。
#80
○矢原秀男君 よろしくお願いをしたいと思います。
 今度は、雇用の面から労働大臣に伺ってみたいと思います。
 経済企画庁の試算によりますと、六十−六十八年の間に新たに三百二十七万人の雇用機会が増加をいたしますけれども、その五二・三%は東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県に集中をしてしまうということでございます。しかも、地域経済の格差を放置すれば、東京圏で六十八年には四十六万人、また地域間での労働力の移動がなければ首都圏で十七万人の労働者の不足に陥ると言われております。近畿、九州はおのおの六十四万人、三十三万人の大量の失業者が出ると懸念されております。つまり、将来もますます人口の東京集中化が不可避というわけでございますけれども、この面からも地域経済の活性化がぜひとも必要だと考えるわけでございます。この点について労相、経企庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。
#81
○国務大臣(平井卓志君) ただいま御指摘になりました都市部に対する過度の集中、この問題につきましては今後非常に注目すべき、また重要な課題であると考えております。
 御指摘のように、地方経済の活性化はどうしてもやらなけりゃならぬ。同時に、労働力の移動ということにつきましてさらに今後広域化してくる。従来からお答え申し上げておりますように、個々の労働者の能力開発を含めたあらゆる部門における訓練等々、これは御案内のように非常に就業構造が多様化して高度化してまいりますから、そういう中で労働力移動を円滑にやるというのは、高齢化対策と含めまして今後の雇用政策の非常に重要な中心課題であろうかというふうに私は考えております。したがって、高齢化対策、また訓練、能力開発、広域化に備える情報の全国ネット化等々も含めてそのような意味で努力してまいりたい、かように考えております。
#82
○国務大臣(近藤鉄雄君) これからの経済政策の大きな課題は国民生活の充実向上でございますけれども、先生御指摘の、首都圏に日本の人口が集まるような状況の中では国民生活の本当の意味の向上充実ができない。そういう点で、労働政策、産業政策いろんな配慮がございますが、国民生活の充実の観点からも、東京集中を排して、地方においてそれぞれ安定して豊かな生活ができるようなそうした地方における社会資本の整備、労働大臣のお話にございましたような情報インフラの整備、そういったことについてもこれからの公共事業の執行等において十分な配慮をしていかなければならないと考えている次第でございます。
#83
○委員長(原文兵衛君) 矢原秀男君の残余の質疑は午後に護ることとし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#84
○委員長(原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和六十二年度補正予算三案を一括して議題といたします。
 休憩前に引き続き、矢原秀男君の質疑を行います。矢原秀男君。
#85
○矢原秀男君 まず、運輸大臣にお伺いをしたいと思います。
 円高のもとで、現在日本の国は造船の不況、それに対する船員の雇用というものも大きな問題になっております。この現況分析と、そうして将来に対してどういう救済の政策を考えていらっしゃるのか、二点ほど伺いたいと思います。
#86
○国務大臣(橋本龍太郎君) とっさのお尋ねでありまして、的確な御答弁になるかどうかわかりませんが、まず現在の造船の状況は委員御指摘のとおり大変厳しい情勢にございます。それは基本的に海運の不況というものがそのもとにございまして、世界的に船腹が過剰状態になっている、また現在の経済情勢の中で荷物の動き方自体が従来に比べて減っている、こうした点もございますし、付加価値の高い貨物が航空機に奪われているといった理由もございましょう。そうした中で、殊に昨今の為替相場の影響を受けまして大変海運の市況も低迷をいたしております。海運会社のそうした状況は新規の船腹需要にも当然響いてまいりまして、今非常に造船界は厳しい状況にございます。そして、ついしばらく前まで世界の新造船の半分以上を占めておりました我が国が他国の追い上げをかわすのに必死の情勢ということも御承知のとおりであります。
 そうした中で、現在私どもといたしましては、まず第一に、解撤を急いで老朽船腹をできるだけ解消させる、そしてその中における新規の造船需要をつかみ出す、ここに一つのねらいを当てております。また、これは造船、海運ともに国際競争の中で最大限の省力化に努めてまいりましたけれども、これから先もなお超省力化船とでも申しましょうか、より少ない人員で運航可能な船腹をふやしていかなければなりません。こうした新規需要を開発していく努力も必要であります。また、浮体ビル等さまざまな角度から論議が行われておりますが、重量構造物の建造等々にも進出をしてもらわなければなりません。ただ、基本的に現在我が国の造船界、船腹の船台が過剰であります。こうした中で審議会の御答申をいただきまして、二〇%程度の設備の削減というものにも踏み切らなければならない状況でありまして、極めて厳しい情勢の中で生き残りを策しているさなかであります。
 御承知のような影響は船員の雇用情勢の中にも当然出てまいりました。これは、外国船腹への乗り組みでありますとかさまざまな努力をいたしておりますけれども、同時に、海抜職の陸上への転換といった対策もあわせていかなければならない厳しい状況にございます。
#87
○矢原秀男君 どうかこの問題も国を挙げて全面的に救済に当たっていただきたいと思います。
 ここで文部大臣に伺うわけでございますが、昨年の末、中曽根総理と公明党の矢野委員長との党首会談の際、こういう造船不況の中で洋上学校構想というものを提案されたわけでございます。今、現在の小中学校教育では、新たな洋上での体験、そうして人格を育てる共回生活、学習、こういう問題が海に囲まれた日本の国でも真剣に考えられております。
 これは滋賀県の「湖の子」でございますけれども、滋賀県では独自で船を建造し、琵琶湖で一泊二日、非常に大きな成果を得ているわけでございます。文部省は公教育の場として洋上を活用する、こういうことについて文部大臣の所見を伺いたいと思うのでございます。
#88
○国務大臣(塩川正十郎君) 洋上研修は私はすばらしい企画だと思っております。現に、きょうですか、初任者研修の洋上研修の第一梯団がきょう結成、結団することになっておりまして、初任者研修におきましても、洋上教育研修を通じてお互いの親睦を図るとともに、突っ込んだ話し合いもできるということでそういたしておるわけでございます。
 でございますから、これも学校教育に私たちも応用いたしたいと思うのでございますけれども、しかしその前提としていろいろ解決しなきゃならぬ問題がございます。それは一つは、やはり小さい児童生徒が対象でございますので、これを完全に管理と言ったら語弊がございますが、何といっても海の上でございますので、この安全を確保していくということについてどこがどのように責任をとるかという、この問題が非常に重要であるということがございますのと、それともう一つは、費用が相当かさみますので、この費用の負担をどういうぐあいにするかということ等もございます。そういうことを列挙いたしまして検討を進めておるところでございまして、まだ具体的な例を見ましてそれを対象に調査検討しておるところでございます。
#89
○矢原秀男君 これは文部省行政当局に伺いたいと思いますが、海と山と違いますけれども、現在自然教室推進事業というものも非常に充実をいたしておりますけれども、この概要を具体的に伺ってみたいと思います。
#90
○政府委員(西崎清久君) 先生御指摘の自然教室事業でございますが、今年度の予算で申しますと約五億円の予算を計上いたしまして、小中学校の児童生徒が五泊六日あるいは三泊四日で、主としまして国公立の少年自然の家とか青年の家等で自然に親しみ、自然の観察とか教師とのいろいろな触れ合いとか、そういうふうな意味での健康増進事業も含めて実施をしておるわけでございまして、全国的に申しますと約二千校が参加しておる、こういう現状でございます。
#91
○矢原秀男君 中曽根総理に伺いますが、海に囲まれた日本のロマンという問題、また今は文部大臣からお話ございましたが、安全性を考えながらどうしていくかという問題がございますけれども、いろいろと鋭意検討をされてみられる必要があろうかと思いますけれども、総理大臣のこの件に関する所見を伺ってみたいと思います。
#92
○国務大臣(中曽根康弘君) 私も大賛成でございます。前から、やっぱり子供たちにとって非常に大事なのは原体験というものがあると思います。我々が小ちゃい子供のころ原っぱで石けりしたとか、あるいは稲光におののいて家へ逃げ帰ったとか、あるいは魚やドジョウをつかまえてヒルに食いつかれたとか、ああいうような原体験というのは大きくなってからも生きておりまして、それが非常に大事であるということは年とるとなるほどふえてきております。最近は校舎もコンクリートになったり、運動場自体が土でなくなったり、また周りはみんなコンクリートになっている。そういう状況ですから、今のような企画では足りない、もっと思い切ってこの企画をふやして、自然に触れ、自然に対する驚異あるいはあこがれ、あらゆる勉学をする。それと同時に、泊まるという過程を通じまして友達や先生と友情の触れ合い等を磨く、これまた非常に大事なチャンスでございます。
 そういう意味において、この予算も相当ふやして、そして充実したものにしていきたいと考えております。
#93
○矢原秀男君 よろしく検討をお願いしたいと思います。
 次に、公害健康被害補償法の改正について伺ってみたいと思います。
 まず、公害健康被害補償法の経緯について当局に伺いたいと思います。
#94
○政府委員(目黒克己君) 公害健康被害補償制度の改正につきましては、現在の大気汚染の状況の変化、態様の変化等を踏まえまして中央公害対策審議会の方に諮問をいたしました結果、その答申を得、また各方面の御意見も伺い、私どもの方といたしましては、地域指定を解除し、現在の患者さんはそのまま補償を続ける、しかしながら、予防という面から個別的な補償というものをやめまして、地域全体に対して対応する、こういったような考え方で制度の改正を行っているところでございます。
#95
○矢原秀男君 今、二十一世紀の車社会を指向しますときに、自動車の保有車両数はこれだけでも五千万台を超えているわけでございます。そして、いろいろの工場の大気汚染、こういう競合の中で被害というものは非常に進んでいることは事実でございます。今、東京都で三万七千八百九十九人、大阪市で一万八千七百六十九人、尼崎で五千三百八十人、名古屋中南部で五千百五十七人、公害認定者は九万五千三百九十一人、これは六十一年の三月、毎年九千人近くの新認定患者が出ているのでございます。
 こういう中で、私は今考えておりますのは、やはり局部的に非常に大変なところもいろいろと調査をすべきではないか、こういうふうに思うのでございますけれども、この点をいかがされているか伺ってみたいと思います。
#96
○政府委員(目黒克己君) 先ほど申し上げました中央公害対策審議会の答申を出す前に、今御指摘の局地的な汚染につきましても、現在の科学的な知見を総合いたしまして先ほど申し上げましたような結論に到達したわけでございまして、特に局地的汚染というものにつきましても審議会でも留意をいたしているところでございますし、また私どもも、この点につきましても先ほど申し上げました予防対策等を中心に対応をいたしているところでございます。
#97
○矢原秀男君 六十一年十月の中公審の答申では、局地的汚染について科学的知見によってもこれらの地域をやはり調査をすべきである、こういうふうに答申を出しておりますけれども、この点はいかがでございますか。
#98
○政府委員(目黒克己君) 御指摘の点につきましては、中央公害対策審議会の留意事項等についてあるわけでございます。この点につきまして私どもは、六十二年度の予算等におきましてもサーベイランス等を含めましてこの面の調査研究等を現在も行っているところでございます。また、この辺につきましても今後の一つの課題ということで私ども取り組んでまいるということにいたしているところでございます。
#99
○矢原秀男君 今数学を挙げましたけれども、病状は進んでいるわけでございます。
 これは具体例でございますけれども、兵庫県尼崎市におきまして、城内小学校では千十一人の児童数のうち患者が二百五十三人でございます。実に二五%の率でございます。城内小学校の四年生のA君でございますけれども、僕は公害病でよくせきをします。休みます。だから、朝六時三十分に起きて乾布摩擦をしてから走りに行きます。そうして、おとついぜんそく発作が起きたとき、一日じゅう座っていました。なぜかというと、寝るとせきが出ておなかが痛いからでございます。だから、座っている方が楽でした。こういうふうにして夜中の二時、朝まで起きていた。欠席日数は四月から十二月まで十六日。こういうふうにして子供ながらに一生懸命頑張っている。
 こういう公害の問題については我々政治の場でもってやはり対処しなければいけない。こういう点について総理大臣いかがお考えでございますか、伺います。
#100
○国務大臣(稲村利幸君) 先生の御意見でございますが、この三年間、公害問題に関して中公審の権威者たちが四十二回、そして小委員会では十一回と大変な時間をかけて審議をされまして、科学的ないわゆる知見に基づいて、この辺で改正をして予防的なものに十分配慮したらいいんではないか、そういう意見がまとまりまして、この国会で新たな法案をつくって、公害の予防という観点に重点を置いてこの指定を解除して取り組んでいこう、こういうふうに考えた次第でございます。
#101
○矢原秀男君 やはり打ち切る場合はそれに対する対策を考えなければなりません。
 今、公害のない水素自動車はどの程度進んでいるんですか、研究。
#102
○政府委員(飯塚幸三君) お答えいたします。
 私ども工業技術院では、昭和四十九年度から無公害エンジンとして期待されております水素エンジンについて研究を進めておりまして、昭和六十年度には水素エンジンで動く水素自動車の試作を行いまして、最高時速百キロメートル以上、一回の水素ガス充てんによりまして二百キロメートル以上の走行距離を達成しております。なお、さらに工業技術院では、昭和六十一年度から引き続き不活性ガスを用いまして排気ガスの出ない水素エンジンの開発に着手をしております。
#103
○矢原秀男君 水素自動車は、水素をつくるためには電力が安いということが問題でございます。ですから、世界で安い電力の国はどこであるか、カナダであるかどこであるか、そういうことになれば両国で一緒につくっていく、そうして車社会の地球上を、やはり十年ぐらいかかると思いますけれども、そういう明確な段階をつくりながら救済をしていかなければいけないということを考えますと、公害で被害を受けていらっしゃる方々、こういう方々に対してはまだまだ私は継続をして救済をしなければいけない。運輸省のメタノール自動車はどうですか。
#104
○国務大臣(橋本龍太郎君) メタノールを燃料といたしますトラック、バスの導入に運輸省が努めておりますことは委員御承知のとおりであります。また、メタノール自動車につきましては既に内外の関係業界での研究が随分進んでまいりました。現在、東京都におきましてメタノールトラック約三十台による市内走行試験を行っておりまして、この円滑な導入に向けて努力をいたしてまいりたいと考えております。
 ちなみに、今後の見通しといたしましては、おおむね三カ年この走行試験を実施いたしたいと考えておりますけれども、東京都においてもまだ台数がふえる予定でありますし、神奈川地区あるいは大阪地区におきましても増車の計画がございます。ただ、これで問題は、実は車両の改造費が非常に高くつく、また燃料の供給体制をどうするか、また、長距離を走りますと、軽油に比べまして単位容積当たりの発熱量が少ないために燃料タンクが非常に大きくなってしまうのではないかといったような問題がございます。しかし、そういの状況を持ちながらも、この普及を図りますために自動車税の軽減あるいは自動車取得税の軽減を今年度においても行っておるところでありますし、今後ともこうした努力を続けていきたいと考えております。
#105
○矢原秀男君 この点について総理大臣に最後に一言伺っておきたいのでございますが、やはり公害で苦しんでいらっしゃる方々、これはやはり真心の政治で救済をしなければいけない。その段階では救済方法はこういうふうにございますという本当に段階を踏まなければいけない。いきなり切ってしまえば大変なことになります。この点について最後に総理大臣の公害健康被害の方々に対する救済の方途を伺って、質問を終わりたいと思います。
#106
○国務大臣(中曽根康弘君) 最近の大気汚染の状況を各地域ごとにずっと検査し調査をしまして、最近の情勢は安定的に良好に回復した、そういう判定のもとに今回の措置を行った次第でございます。しかし、今後もこれらに対する監視は厳重に行い続けるべきであると思っております。
 こういう事態にかんがみまして、やはり予防を中心にこれから政策の重点を移行していこうという考えは、私は適当な考え方であると思っております。しかしながら、今まで既にこの公健法のもとにいろいろ対策を講ぜられている対象の方々あるいは今後万一にも発生しかねまじきそういうような方々に対しては、今後とも慎重に対処して、そしていろいろ万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
#107
○委員長(原文兵衛君) 以上で矢原秀男君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#108
○委員長(原文兵衛君) 次に、安恒良一君の質疑を行います。安恒良一君。
#109
○安恒良一君 まず、緊急経済対策について総理にお聞きしたいんですが。どうも当初事務当局が四兆円というふうに考えておったのが六兆円に訂正をされた。建設大臣や通産大臣が大型補正を要望されたということで、一晩で七千億も上積みになったと報道されていますが、四兆円がどうして六兆円になったかということと、一晩で七千億も増額する場合には、どんな事業の増額を総理としてお認めになったのか、御答弁を願いたいと思います。
#110
○国務大臣(中曽根康弘君) 去年の補正予算の量が大体四兆三千億円でしたか、四兆円台でありました。したがって私は、当初からこれは五兆円が見当だと。一部には三兆ないし四兆という考えもございましたが、私個人は五兆円が大体の目標にありました。しかし、その後いろいろ、いわゆる真水をふやそう、年内に消化する率をうんとつくろう、そういうようなこと等々いろいろの考え、また円高の不況の切り込みぐあい、失業の出る状況、こういうものを考えまして、もう一つエンジンを吹かす必要が出てきている、そういう最終判断に基づきまして行ったものでございます。
#111
○安恒良一君 もう一つエンジンをと言われましたが、私はどういう歳出項目についてお考えになったのかということをちょっと聞いているんですけれども。
#112
○国務大臣(近藤鉄雄君) 総理からお話ございましたが、昨年の総合経済対策は三兆六千億でございますが、そのうち公共事業等で三兆円でございまして、その他民間の設備投資、中小企業対策等等で六千億円をふやしたわけでございますけれども、今度の緊急経済対策の場合には、実は私たちが当初老友ておりました政府の見通しの各項目について検討いたしますと、どうも設備投資が、実は円高が当初私ども一年間一ドル百六十円の前半ぐらいを想定していろんな経済計画をしておったわけでございますけれども、年が改まりましてから円高がどんどん進行してまいります。そういうふうに進行してまいりますと、おのずから民間設備投資が私ども当初考えたほど伸びないということが一つございますし、それから経常収支、国際収支のバランスでございますが、いわゆる輸出と輸入のバランスでございます経常海外余剰の見通しも、どうも輸出は伸びないし輸入が大幅にふえて、しかも百六十円が百四十円になるといたしますと、円ベースの受け取りが全体として、黒字が減るだけじゃなしに、百六十円が百四十円になりますから、それだけ円ベースというのが下がってまいります。
 そういうことで、こちらの面からも新たな需要を創出しなければならないんだ、こういう民間設備投資とそれから外需の両面からの新しい内需拡大をしなければならないとすると、昨年の三兆円では当然間に合わないし、五兆円をまさに直接国及び地方自治体そして道路公団といった国、地方そして政府関係機関のみずからの責任において実行できて、そして年度内に消化できるものを中心にして、さらに住宅金融をふやす、こういうことで積み上げて合計五兆円というこういう数字にしたわけでございます。
#113
○安恒良一君 きのう野田さんとのやりとりで近藤さんは、六兆円の緊急経済対策は実質成長三・五%は今度は間違いない、こう言われていますが、私はあなたと何回かここで論争したけれども、あなたが言ったこと一遍も当たったことがないんですね、大体私が言つたことがほぼ当たっているんです。
 そこで、きょうはその前提でいま少し聞きたいんですが、六兆円の緊急経済対策で、御承知のとおり、一兆円の減税を政府が見込んでいると言われています。まあ一兆円か幾らかというのは決まっておりません。そこで近藤長官、三・五%達成可能だと答えられましたから、その減税の額と実施の時期、例えばことしの十月から実施した場合、もしくは来年の一月から実施した場合、これがあなたがおっしゃっている三・五%の経済成長にどういう影響を与えますか、答えてください。
#114
○国務大臣(近藤鉄雄君) 減税の実施の時期につきましては、まさに今、国会で与野党で税制問題の協議会で御議論していただいているところでございますので、この協議会の結論を待つわけでございますので、私から、いつどのような形で減税が行われるか、またその減税がどういう形の減税になるのか、ここでお話をできるような状況ではまだないわけでございます。
#115
○安恒良一君 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。三・五%の経済成長の中に一兆円以上の減税というのはどういうふうに見込んでいるのか、そのことを聞いているんです。それを仮に十月と来年と言っただけですから、あなたにそんなことを聞こうと思っていませんから。
#116
○国務大臣(近藤鉄雄君) 六兆円全体でこれはGNP対比一・八%でございまして、これが向こう一年間で二%程度のGNPを押し上げる、こういうふうに私ども試算をしているわけでございますが、そのうちの一兆円でございますから六分の一でございますね。したがって、二%の大ざっぱに言って六分の一程度が減税によって所得を押し上げる寄与度だ、こういうふうに私ども考えている次第でございます。
#117
○安恒良一君 これは通年の場合ですね。だから私は、今まだ決まっていませんから実施の時期を聞いたんですが、もうこれ以上はやめておきましょう。
 そこで今度は通産大臣と経企庁長官にお聞きしたいんですが、今度の緊急対策というのは、日本で言うと内需拡大だ、外国から言うと国際収支の黒字削減ということを大きく期待していると思います。そこで、この緊急経済対策で、六十二年度、六十三年度、それぞれ黒字がどの程度減ると思われますか。
#118
○国務大臣(近藤鉄雄君) 実は私ども当初の見通しては、経常収支の黒字が六十二年度百十億ドル相当減るであろう、こういう見通しをつくっておったわけでございますが、経済成長が自然体でまいりますとどうも三・五%から一%そこらはダウンするのではないか、こういうことでございます。その上での今度の緊急経済対策でございまして、これが一年間全部効果が出尽くしますと二%でございますが、六十二年度、すなわち来年三月末までには少なくともこのうちの半分が効果を上げるであろう、一%プラスアルファぐらいのGNP押し上げ効果があるであろう、こういうふうに計算をしているわけでございます。
 そういう判断でいろいろ過去の計数を掛け合わしまして数字をはじきますと、四十億ドルから五十億ドルぐらい、これにプラスして政府の特別調達十億ドルを加えますので、五十億ドルから六十億ドルくらいの経常収支を減らす効果があるであろう。これに自然体としておのずから円高によって経常収支の黒字の解消が進みますから、合わせて百億ドルを超える経常収支の黒字削減が六十二年度においては見込まれるであろう、こういうふうに計算をしているわけであります。
 六十三年度は、さらに先の話でございますので今ここではっきりしたことを申し上げられませんが、ただ私どもは、今度の経済構造調整指針の中でも大体年間百億ドルぐらいずつ経常収支を減らしていかないとGNP対比四・五、六%にもなるような黒字の解消にならない、こういうことでございますので、来年度におきましても百億ドルを多少上回る程度の経常収支の黒字削減が実現するようにいろいろ経済運営を図ってまいりたい、こういう考えでございます。
#119
○国務大臣(田村元君) 少し具体的なお答えになりますが、最近の貿易動向について見ますと、円高と、これまで行ってまいりました輸入拡大策などの諸施策によりまして、輸出数量の減少傾向、輸入数量の増加傾向が定着してまいりました。ドルベース通関収支じりをとりましても、本年五月に二年二カ月ぶりに対前年比マイナスに転じました。六月も対前年比一〇・二%減と減少傾向が定着しつつあるという感じがいたします。今後さらに貿易インバランスの解消を図るために、内需拡大策、経済構造調整の推進、製品輸入の拡大といったような努力を行っていく必要がございますが、このために、先般決定されました内需拡大策と輸入拡大策などから成る緊急経済対策を着実に実行に移してまいる所存でございます。
 さらに、この貿易黒字を累積債務問題に悩んでおります発展途上国に還流するために、前の国会で成立しました輸出保険法の一部改正、この法律によりまして輸出保険を貿易保険へと拡充することとしておりまして、その積極的な活用を図ってまいりたいと考えております。
 なお、緊急経済対策による黒字削減効果につきましては、他の諸国の政策、為替レートの動向等と関係するために、これを正確に示すことは現実に困難だと思います。けれども、他の条件がすべて現状と変わらぬものという前提の上に立った場合に、内需拡大に伴う輸入増に政府調達による十億ドルの追加輸入が相まって、経常収支ベースで黒字をおおむね、先ほど企画庁長官申しましたが、五十億ドルから六十億ドル程度追加的に削減する効果があると試算されております。
 さらに、去る四月に主要企業三百二社に対して輸入拡大要請を行いました。これは私が直接やったわけでございますが、アンケート調査をいたしましたところ、昭和六十年度に対して六十一年度二〇%の輸入増でございましたが、じゃ六十二年度の対前年比はと。八%ぐらいとしか答えが出てこなかったんです。そこで、三百二社の方々にお越しをいただいて、積極的に輸入努力をお願いしたんです。その後でまた調べましたら、二一%という数字が出てまいりました。そういうことでございまして、この上方修正ということで製品輸入は恐らく六十億ドルぐらいこれでふえるだろうというふうに思っております。
 でございますから、百億ドルから百十あるいは百二十ぐらいというような、これは極めて正確な計算はできませんから、しかしそれは大体先ほど申し上げたように現状ということを基盤として計算をすればということになりますが、そういうことでございますので、相当期待されると思っております。ただ、国際的な貿易不均衡の是正のためには我が国一国の努力のみではどうにもなりません。アメリカの財政赤字削減と競争力強化、それから西独の内需拡大、その他EC諸国の構造調整等の早急な実効ある実施と相まって進めていかなければならないということだろうと思います。
#120
○安恒良一君 そこで総理にお聞きしたいんですが、以上のやりとりを聞かれてわかるように、まあせいぜい百億ドル前後だと。これでは緊急経済対策の効果が薄いということで外国から再び批判が起こるんじゃないか。実は総理が説明されたときにサッチャーさんが、それでは大した効果はないじゃないかと半畳を入れられたと聞いていますが、私はやはり日本の輸入構造、依存度が日本は九・八%、西ドイツは二五%ですね。そんな違いを正確に説明されたんだろうか。でないと、また秋から年末にかけて私は貿易摩擦が起こるんじゃないかと思いますが、その点どうでしょうか、総理。
#121
○国務大臣(中曽根康弘君) 百億ドルというのは大きいですよね。今までの増加傾向に歯どめを打って、そして今度は減少の方向に向かわせる、そういう大きな切りかえを意味します。
 最近の為替の状況あるいは輸出輸入の動向等を見ますと、数量的にもまた円ベースでも、当然ですが、輸出、輸入ともにバランス回復の方向に今顕著に動き始めております。ドルにおきましても大体そういう傾向で打ち出してきております。この傾向が進んでまいりますと、自動的に、自律的にそういう方向に動くことになると思います。そこへ拍車をかけまして今のような百億ドルというものが動いてきますと、これは相当な力になってくると思います。そういう力が出てきて、傾向が出てくれば、あとは一年、二年、三年という時間の問題でございますから、私は切りかわっていくだろうと考えておる次第でございます。やはり大事なのは、切りかわり目のときに加速度をつけるということが大事なのではないかと思っています。
#122
○安恒良一君 六十一年度一千十四億ドルですからね。それのせいぜい五、六十億ドルから百億ドルですから、大したことはない。
 そこで、率直に言って、問題になりそうなときには総理は御退陣されていますから、ここでニューリーダーの一人である宮澤さんにお聞きをしたいんですが、私は日本の国際収支の黒字体質はそう簡単に改まるとは思わない。生産体制が輸出分を織り込んでいます。加工貿易型が基本であります。それから、製品輸入はふえているが欧米諸国に比べると非常に少ない。加えて度を超えた企業や産業の輸出競争がありますね。こんなことがすぐ簡単に私は改まると思いませんが、やはり六兆円でそんなに期待を外国に持たせることはよくないんじゃないか、こういうふうに思いますが、その点宮澤さんどうですか。
#123
○国務大臣(宮澤喜一君) 実はベネチアでサミットがございましたときに、首脳だけで御会議のときには、大蔵大臣は大蔵大臣の会議をいたしておったわけでございますけれども、まさしくその話が話題に出まして、私も安恒委員の言われますように、今年度の外貨効果が五十億ドルであれ六十億ドルであれ、千億ドルという黒字にはもうはるかに小さな数字でありますし、GNP効果にいたしましても、これ一遍だけ補正予算を組んだら問題が片づくというものではないというふうに私も強く思っておりますものですから、その点で何か誤解を生むことはよくないと考えましたので、これはこの補正予算の話ですと。
 それで話は済むわけじゃないので、長いことこういう努力を我が国としては継続していくつもりであるし、また前川報告の言っていることもそういうことであると思うということは、誤解を生じませんように大蔵大臣会議では申しておきましたし、それは絶えずやはり今後とも言っておく必要があるように思います。
#124
○安恒良一君 次は財政問題に移ります。
 今度の予算が非常に欠陥予算であるということは既に野田委員から指摘があったので、それを省略しまして、今回の補正は臨時異例と政府は言われていますが、そうすると近い将来に平常な状態に戻るということになると思いますが、問題は、この臨時異例を今後どう扱うのか、もしくは臨時異例の継続の期間の目安はどのようにされていますか。
#125
○国務大臣(宮澤喜一君) 臨時異例といいましても、先ほど申しましたように、一度補正予算を組みますと問題が直るというわけではございませんから、財政再建の努力はなお道半ばでございますのでこれを外すわけにはまいりませんが、その中でやはりいろいろ工夫をしてまいらなければならないと思います。
 けさほどからもお話しのように、少し景気が底をついて、底を打ったという感じもございますし、それにNTTの株式がそこそこに売れますとこれはかなりの援軍にもここ数年間なるということもございますから、そこらのところから経済運営全体が多少我が国の潜在力を引き出すような形で、成長にいたしますと多少高目、そうなりますと財政もおのずから受益をいたしますので、そういう形で運営をしていくということが肝要ではないかと思っております。
#126
○安恒良一君 どうも抽象的で全くわかりかねます。
 そこで、今も財政堅持とかいろいろ、これ総理にお聞きしたいんですが、衆参本会議また本院の決算委員会またきのうの質問で、依然として総理は六十五年度財政再建は可能だ、こう言われています。そこで、財政再建が可能だというのは数字の問題でございますから、六十三年から六十五年の三カ年の姿を数字で御説明願いたいし、また六十一年度国債発行額約五兆円、これを六十五年度ゼロにする財源の調達方法も数字でひとつこちら側が理解できるように御説明願いたいと思います。
#127
○国務大臣(宮澤喜一君) 実はその問題につきましては、安恒委員から資料として御要求があったことを存じておりますが、これは事の性質上なかなか資料で申し上げることが難しゅうございまして、それは政府が中期計画を持っておりませんから、持っておりましても問題でございますけれども、これから二、三年間の成長率というものも今予測がついておるわけではございません。それから、したがいまして自然増収、税収につきましてもこれという見通しがあるわけではない。かつて中期展望では名目成長率を五%ないし六%といたしまして、六・五とした時代もあったわけですが、それで弾性値を一・一にするといったようなことを考えておったときもございますけれども、それは現実にはなかなかそうなってまいりませんでした。で、ここで景気が多少よくなってまいりますから、名目成長率は多少高くなるかという期待は持ちますけれども、それをこれから三年間にわたってどうであろうか、その間の租税弾性値がどうであろうかということも数字をもってお示しするということになりますと、それは必ずしも確度を持って申し上げられることではございません。
 それからもう一つはNTTの株式の売却でございますが、これも政府としてはある程度の期待ないし希望を持っておりますけれども、正確にこれから何年間かの売却価格を申し上げるというわけにもまいらない。安恒委員の言われますのは、六十五年度に特例公債依存の体質から脱却できると言うのならばその道筋を示せと言われますので、それはお話としては決してわからないわけではございませんけれども、事の性質上数字をもってそれをお示しするということはできない、御要求ではございますけれども、その資料を御提出することができないということが率直な私どもの立場でございます。
 他方で、六十五年度がそれならばもうだめではないかという御主張はしばしば聞かれます。厳しいことは厳しゅうございますけれども、ここで仮に、かれこれ五兆円近いものが残っておるわけでございますから、それを年分で割っていけば一応年割りの数字は出てまいりますが、それは経済運営によりましてはかなり税収なども動いてまいりますし、あれこれ要因がございまして、完全にこれはもうできないからここで旗を巻こうというような状況にもない。まだそれだけの年月が残っているという感じがいたしておるわけでございます。
#128
○安恒良一君 理解、納得できません。なぜかというと、六十五年度の財政再建は可能だとおっしゃっているし、それから赤字公債の発行もゼロにすることが可能だと、こう言われているんで、そうするとこれから各一年度に一兆六千六百億ずつ返還しなきゃならないんです。そういうものを数字で示さないで、可能だとかできるとかお話ししておって、お話というのはそっちが言われているんですから。
 理事、この点をはっきりしてください。私はできません、これより質問。
#129
○国務大臣(宮澤喜一君) それは普通にお考えいただきましても、なかなかそういう、これから三年余りにわたるそのような数字をある程度の確度を持って出せと言われましても、それは難しいということはおわかりいただけると思います。
#130
○安恒良一君 わからない、わからない、そんなものはわからない。
#131
○委員長(原文兵衛君) 本問題の取り扱いにつきましては理事会において協議いたします。
#132
○安恒良一君 数字を詰めてくれるそうですが、もしもできなけりゃできないで取り消しをやっぱりはっきりされることを私は強く言っておきます。
 次に、六十一年度の税の見積もりが非常に違っておりますから、この点について収支決算について説明してください。
#133
○政府委員(水野勝君) 六十一年度税収につきましては、現在その複数が出まして、今月三十一日をもちまして確定いたすことになっておりますので、まだ決算額が確定しておるわけではございませんが、おおむねの概数が出ておりますので概数によりまして申し上げますと、補正後予算に対しましては二兆四千二百八十四億円の増収額となっておるわけでございます。これは昨年十月三十一日に御提案申し上げました補正予算の中で計上したものでございまして、この時期といたしましては、当時の税収の動向、経済の動向等を見込みまして、補正予算におきまして一兆一千二百億円の減額を立てたところでございますが、それが逆の方向になりまして、二兆四千億円の増収になったということを私ども見積もりの手法といたしまして大変遺憾なことと思っておるわけでございます。
 補正を見積もった段階におきましては税収の伸び率は低下をする一方でございましたが、年度後半になりまして、経済の底を打ったような情勢をも受けまして、特に後半四半期には二けた台の伸びを示すということから二兆四千億円の増収と相なったわけでございます。見積もりの手法等につきましては今後ともなおよく研究いたしまして、このようなことのないように努めたいと思っておる次第でございます。
#134
○安恒良一君 まだ聞かぬことまでべらべらしゃべっているので、先の方の質問通告していることは皆しゃべっているんじゃないかと思う。私は、六十一年度の税収見積もりと決算についてどうなっているか、それからこれを税目別にちょっと報告してくれと、こう言っただけですよ、あなた。
#135
○政府委員(水野勝君) 全体といたしましては先ほど申し上げました二兆四千二百八十四億円でございます。この中で大きな数字は、法人税一兆三千五百九十億冊、所得税が四千三百二十八億円、有価証券取引税三千八百五十四億円、印紙収入が千百三十九億円、こうしたところが主な税目となってございまして、合計いたしまして二兆四千二百八十四億円の増収額となっております。これは現在の概数でございまして、今月末の確定を待っておるところでございます。
#136
○安恒良一君 そこで大蔵大臣に聞きたいんですが、前大臣が一、二%の狂いは誤差と、こういうことをしばしば言われたのです。ところが今見ますと六・二%も狂っているんですよ、六・二%も。しかも、我々がいつも聞きますと、税は積み上げ方式だ、個別積み上げ方式だと、こういうことをしばしば言っている。なぜこんなに狂ったんですか、大蔵大臣。
#137
○国務大臣(宮澤喜一君) なぜ間違ったかというお尋ねでありますので、まずそれには、大変に申しわけないことをしたということを申し上げておかなければどうもなりません。
 結果として、今税目を申し上げましたように、一番大きいのは法人税でございますが、これはやはり大企業、殊に製造業は悪い、為替がこうなりましたし、輸出が不振でございますから。そして経常利益も三割も落ちるというような状況で、この三月の、過ぎました三月期の決算は非常に悪いだろうということを昨年の夏過ぎころ考えておりました。実際には非製造業は悪くないということはわかっておりましたが、大どころの製造業が、金融収支であれ、あるいは有価証券の売却であれ、いろいろ財テク等々大変に決算に苦労をして、かなりの実は決算をいたしまして、そのことが法人税収の見積もりを一番大きく狂わせた原因でございます。また、非製造業、殊に金融業なんかもそういう関係がありまして思ったよりもなお大きないい決算が出たということがございます。
 それからもう一つの問題は、やはり土地に関することでございまして、これは法人にもございますが、主として個人の申告所得税あるいは相続税に、私ども思いましたよりもはるかに土地の価格が値上がりしましたことが譲渡所得となりあるいは相続財産の評価増になりして、これがこの二つの税収を大きく狂わせております。
 それから最後に、申し上げるまでもないことでございますが、株式取引がしたがいまして相当大きく、かつ価格が高くなってまいりましたので、有価証券取引税がこれはある程度大きくなるだろうということは見込んでおりましたが、それ以上に大きくなりました。
 大体大別いたしますとそのような要因でございますけれども、大変に見積もりを間違えましたことは重ね重ね申しわけないことだと思います。
#138
○安恒良一君 そこで、六十一年度の税収の見込みが大きく違いますと六十二年度税収に及ぼす影響が大きいと思いますから、その影響、それから税収の伸び率を四・四%しか見込まれていませんが、これも少な過ぎるのじゃないかと思いますから、こういう六十二年度のことについて説明をしてください。
#139
○政府委員(水野勝君) 六十二年度の基礎となります六十一年度におきましてこのような金額が増収となっておりますところから、これが六十二年度税収に何がしかの影響のあることは否定できないところでございます。ただ、六十一年度の増収額二兆四千億円、ただいま大臣から申し上げましたように、いろいろ特殊な事情がございます。例えば六十一年度の税収の伸びをGNP弾性値、概数での数字でございますが、弾性値で見てまいりますと二・一五となってございまして、これはこうした数字をと力始めて以来例のない高い数字でございまして、この十年間平均は一・一程度でございますから、この六十一年度の税収が極めて異例な数字であるということがうかがわれるわけでございます。
 そうしたものを基礎といたしまして、どれだけ今後それを土台にいたしまして伸ばすことができるかという点につきましては、私ども六十一年度税収の決算額の確定を待ちましてさらに十分分析をいたしまして検討してまいりませんと、また間違いを繰り返すことにも相なりますので、現時点といたしましては影響のあることは否定はできませんが、これがどの程度具体的に六十二年度に影響するかにつきましては、現在のところなお計算はいたしていないところでございます。
#140
○安恒良一君 大蔵大臣、これも納得できないです。もうこの三十一日で締めるのであって、六十一年度歳入決算額と対比すれば、この前、国会で決めた我々の予算では、六十二年度税収はマイナス六千七百四十五億にもなるんですよね、今度の決算額から比べれば。
 そこで、私はやはりこの点については、この時点において大体どのくらいに六十二年度の税収が見積もられるかということをまず数字的に我々に説明してもらいたい。わかるはずなんです。その点どうですか。
#141
○国務大臣(宮澤喜一君) 実はこの六十二年度の税収につきましては、いろいろ私ども頭を悩ましていることがございまして、六十一年度の自然増収が、ただいま申し上げましたようなまことに予想しないような、しかも何度も継続して起こりそうもないような事情によって生じたものでございますので、それを普通の手法のように六十二年度に向かって投影をして計算をするわけにまいらない。申し上げますなら、今まで伝統的な手法でやっておりました税収見積もりというものをちょっとここは考えてみないといけないというようなことを関係者が一様に思っておりまして、安恒委員の言われますように、土台にした六十一年度がこれだけ違っておるのだから六十二年度が影響を受けないはずはない。私どもも、はずはないと思うのでございます。思うのでございますが、このような一回限りと思われるような要因がどのように六十二年度に影響をしていくのかということが、なかなかその見当がつきにくいというのが実は実情でございます。
 それからもう一つの問題は、税法そのものが不安定な状況にございますことは御承知のとおりでございますけれども、そういったようなことを含めまして、何とか見当をつけてみろとおっしゃることは、私が安恒委員の立場でもそう申したいところでございますけれども、しばらくここは事態の推移を見さしていただきまして、どういう推計方法によるかを検討さしていただきたいと思います。
#142
○安恒良一君 大蔵大臣、私は理解できないんです。私は、個人の問題じゃなくて、私たちは憲法によって予算の審議権を認められているわけです。そして、六十二年度補正を今ここで議論をしているんですね。で、これ、歳出だけを議論。問題は歳出と歳入ですから。ところが、そのもとになる税収が非常に違っているということになりますと、それはなぜかというと、今祝日ごとに言っていただきましたが、前年度決算額以下です、これは三十一日で決まるんですが。その歳入をこの際補正をやらないまま議論をしていくというのは、私たちは国会議員の権威を疑われると思う、国会議員の権威を疑われる。それから予算の審議権の放棄につながる。これは理解できません。どうしてくれますか、総理。この点はっきりしてください。
#143
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、実は私の財政演説で申し上げましたように、政府が通常国会に提案申し上げました税制改革案のほとんどが廃案になったばかりでなく、その結果を衆議院議長のごあっせんによりまして、共産党以外の各党による税制改革協議会が今御検討中である。そういう状況にございますために、本来でありますと、理屈で申しますと、今度補正を出しました場合には、当初の税制改革案は全部廃案になったわけでございますから、理屈の上では、その前のと申しますか、現行のと申しますか、の税制に返って、一応それによって歳入見積もりを出さなければならないということに理屈の上ではなるわけでございます。
 しかし、それは政府すらもそれについての改正案を前国会にお願いしていったほどの立場でございますから、税制改革協議会でもなおどういう改革案をつくるかを御検討中でございますから、もう一遍もとの税制に返りまして、この補正をするということは、実は現実性のないことを申し上げるようなことになりますし、また、税制改革協議会が政府の案はいけないと言われましたことに対して、また政府が御検討に先んじて何か自分のいわば考えを申し上げるということも適当なことではない。
 したがいまして、財政演説で申し上げましたように、このたびの補正では税制改革関係は歳入、歳出ともこの補正には触れないままで補正予算案を編成いたしました。こういうことは前例のないことでございます。現行の税制に返って、その実現性があろうとなかろうと、その上での税収をはじけとおっしゃれば、形式的にはそうであろうかと思いますが、それはいかにも現実にあり得ない事態を形の上だけでつくるということになりまして、決して政治的に正しいやり方ではないであろう、こう考えましたがゆえに、いずれ税制が固まりましたときに、その段階におきまして、その税制によりますところの歳入――歳出にも恐らく売上税等で関係が出てまいると思いますが、それらを改めまして補正の形で御審議をいただかざるを得ない、こういうふうに考えております。
#144
○安恒良一君 恐らくそこに逃げられるだろうと思いましたけれども、少なくとも大きく歳入がこの現行税制のままで組まれた予算から違ってくるという場合に、私はやはり改めるべきだと思いますが、これにこれ以上時間をかけられません。次に参ります。
 労働大臣、我が国の年間の総労働時間とヨーロッパ、アメリカの総労働時間、どうなっていますか。
#145
○政府委員(平賀俊行君) 我が国と欧米諸国の労働時間の統計、必ずしも基礎が一致しておりませんが、できる限りその基準を合わせた上で製造業生産労働者で比較しますと、一九八五年でアメリカ千九百二十四時間、イギリス千九百五十二時間、フランス千六百四十三時間、西ドイツ千六百五十九時間、これに対して我が国は二千百六十八時間となっております。
#146
○安恒良一君 そこで、いわゆる今回の労働基準法の改正と新前川レポートについて聞きたいと思いますが、新前川レポートがこの労働時間の短縮やワークシェアリングについて提起していることについて説明してください。
#147
○政府委員(平賀俊行君) 本年五月十四日の経済審議会の建議、新前川レポートでは、労働時間の問題について四カ所で触れております。
 一つは、「構造調整のための方策」の中で「労働時間短縮」という項目を設けて、その中で、外国との労働時間の現状を比較し、国民生活の向上などを図るために労働時間短縮の趣旨を挙げて、そのためには二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に千八百時間程度の水準を目指すことが必要であるとして、週休二日制の普及促進等による休日増、中小零細企業への指導の積極的な推進あるいは波及効果の大きい公務員、金融機関等の週休二日制の積極的な推進を提言しております。
 また二つ目、「内需拡大」の項目の中で、消費拡大の観点から労働時間の短縮を取り上げ、自由時間の増加等によるゆとりあるライフスタイルへの移行の促進、有給休暇取得の積極的な推進など、それから成長の成果を賃金と労働時間短縮へ適切に配分することが必要であるなどを提言しております。
 また三番目に、「雇用への対応」という項目の中で、先生御質問のように、長期的な雇用機会の再配分の観点から、労働時間短縮を通じた世代間等の雇用機会再配分といった形の日本的ワークシェアリングの推進を提言しております。
 最後に、「構造調整を進めるための当面の行動指針」という項目で、年間総労働時間千八百時間へ向けての労働時間の短縮、それから二番目に公務員、金融機関の週休二日制の積極的推進が必要であるとしております。
#148
○安恒良一君 労働大臣、お聞きのとおりです。
 そこで、あなたがこの国会に提出されました労働基準法の改正はこの新前川レポートの趣旨に沿って出されたと思いますが、具体的に説明してください。と同時に、今回の法改正によるこの労働時間の短縮がどれだけ雇用拡大につながるのか、具体的数字でお示しください。
#149
○国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。
 まず前段の御質問でございますが、このたびの労働基準法改正法案は新前川レポートの趣旨に沿ったものであるかどうかと。この新前川レポートにつきましては、今回の労働基準法改正法案のもとになりました昨年十二月の中央労働基準審議会建議後に出されたものでございますが、二〇〇〇年に向けてのできるだけ早期に千八百時間程度とすることを目標としてレポートは掲げておりまして、内容は完全週休二日制の実施と有給休暇二十日の完全消化、これが行われることが必要であるとレポートはいたしております。
 一方、本法案は、週四十時間制、これは完全週休二日制に相当するわけでございますが、これを目標に法定労働時間を段階的に短縮する。中身につきましては、年次有給休暇の最高付与日数二十日、これはそのままといたしまして、最低付与日数を現行の六日から十日に引き上げる、さらに労使協定による計画的付与を認めることによりましてその消化をさらに促進する等々を内容としておるものでございまして、その方向は新前川レポートと同じでございまして、新前川レポートを実現するための重要な手段の一つである、かように理解をいたしております。
 いま一つの具体的な雇用拡大効果がどうかということでございますが、労働時間短縮は、個別企業にとって考えました場合に、結局はコストの問題になるわけでございます。少なくとも仮に賃金額を労働時間短縮前に据え置くといたしますと、労働時間短縮分だけ生産性の向上で吸収する必要があるというふうに私どもは理解をいたしております。したがって、労働時間短縮を直ちに雇用の増加に結びつけ得るかどうか、この点につきましては、私必ずしも短期的に見て明確でないと考えております。しかしながら、長期的な観点から考えました場合、労働時間の短縮によってやはり国民の生活パターンが非常に大きく変化する、それによって新たな需要が生じまして全体として雇用機会の増大につながるものと認識をいたしております。
 ちなみに昨年の労働白書では、このたびお願いしております労働基準法の改正法案で明記されました週四十時間制、言いかえましたら完全週休二日制が達成されました場合には、需要拡大効果によりまして約五十万人の雇用増が見込まれる、かように推計をいたしております。
#150
○安恒良一君 まあ新前川レポートの方向に沿っているということなんですが、そこで、どうも今度の基準法改正は仏つくって魂入れずじゃないか。というのは、週四十時間制に改めているのは評価できますが、これを政令によって週四十六時間まで許容する。ですから、いつの時期になったら完全実施で週四十時間になるかというのが全然これ不明確ですね。ですから、週四十時間労働移行期日をひとつ明確にしてください。
#151
○国務大臣(平井卓志君) 御指摘の点でございますが、週四十時間労働制への移行時期につきましては、中央労働基準審議会の審議の過程におきまして、現時点で明確に見通すことは困難であるとされたところでございます。これは、御案内のように労働基準法は、これで定められました時間というのはすべての事業所に、いつも申し上げるのでございますが、罰則をもって強制されます最低基準でございますので、法定労働時間の短縮に当たってはやはり中小企業の労働時間の実態等も十分に考慮する必要がある、このように私は理解をいたしております。
 ただ、この前川レポートでは労働時間短縮につきまして、二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に千八百時間程度、これは完全週休二日制実施、年次有給休暇二十日の完全消化ということでございますが、千八百時間程度を目指すことが必要であると提言しております。労働省としましては週四十時間労働制への移行については、こうした点に十分に留意しながら、できるだけ早期に実現できることが望ましいと考えておりまして、さようなために条件整備に全力を挙げたい、かように考えております。
#152
○安恒良一君 総理、眠いようですがちょっと聞いてください。
 やはりもう長時間労働というのは非常に諸外国から非難されていますね。そこで、せっかく法改正するならば少なくとも、直ちに今できなければ、週四十時間は何年後にする、こういうことを僕はやっぱり明らかにすることが対内外的に必要ではないかと思いますが、その点どうですか、総理。
#153
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本が年間二千百時間余、西ドイツが一番少なくて千六百時間、英米の平均が千八百時間合、こういうことを見ますというと、日本は非常に働き過ぎているという感なきにしもあらずで、国際水準に近づけるということで労働基準法の改正をお願いしておるわけです。これをしかし段階的にやりませんと、経済や労働関係、労使関係に与える影響も大でございます。元来、労働時間の問題というものは労使交渉で決まるべき性格のものですが、国としてもしかしある最低水準というものは見詰めていなければならぬということで、労働基準法の改正という形になりました。
 ここで一番我々が心配しているのは中小企業の関係のことでございます。したがいまして、中小企業の方をよく見詰めつつ、それらの方々が納得できる形で段階的に、片方の大企業そのほかの中堅企業等々のものをはしご段をいかにうまくつけて四十時間に持っていくか、そういう課題に今労働省は取り組んでおりまして、私もこの点については非常に熱心に労働省を督励しているところなんです。
 何とか労働界の皆さんの御理解も得て、また中小企業の皆さんの御理解も得られるような考え方でうまいはしご段をつけられないものかと、そう思って今後も努力してまいりたいと思いますし、官庁関係、公務員関係につきましてはこれは四週五休の制度化の問題が出てまいりますし、土曜閉庁という問題も出てまいりましょう。これらの問題は今割合に試運転の状況はよさそうです。ただ、やっぱり病院の関係とかボイラーマンとか看護婦さんとか、そういう問題があるので、こういう問題も逐次片づけて、そして官庁の方もスムーズに移行するように努力してまいりたいと思っておる次第です。
#154
○安恒良一君 総理に重ねて聞きますが、総理も言われましたように、段階的と言ったんですね。ところが何段かわからないんですよ、今度の改正。だから何段にしますかということを僕は聞いている、三段なら三段とかですね。段階的にと言うけれども、今のお話では全然これはわからないです。ですから、私はやはりこの際明確に、この点は三年なら三年後には経過措置をしてやるならやる、こういうふうにやっぱり御明言された方がいいんじゃないかと思いますが、何段ですか、総理、段階的と言われましたが。
#155
○国務大臣(中曽根康弘君) まさにその辺が平井労働大臣が苦心している最中でございまして、平井労働大臣の苦労をよく見守って激励してまいりたいと思っておるところであります。
#156
○安恒良一君 それじゃ、平井労働大臣が余り苦心をしていないということを実例的に申し上げましょう。
 中小企業のことを考えていると言いますが、それじゃ従業員三百人以上の中小企業の分布状況をひとつ数字で説明してください。
#157
○政府委員(平賀俊行君) 事業所の数で言いますと、三百人以上の事業所は全体約三百万余りの〇・三%、百人から二百九十九人が一%、三十人から九十九人が五・三%、一人から二十九人が九三・四%、これが事業所の数の分布でございます。
 それから労働者の数の分布で言いますと、三百人以上が一六・四%、それから百人から二百九十九人が一四・三%、三十人から九十九人が二三・三%、それから一人から二十九人が四六%、こういう分布になっております。
#158
○安恒良一君 そこで総理と労働大臣、三百人以下の事業所というのは全体の九九%、労働者の数は八七%ですね。三百人以上の事業所ではもう労働者の九五%が既に週四十六時間以下になっているんです。ところが今度は三百人以下のところは、今の四十六時間制の適用ですら三年間これまた猶予するというんですよ。四十時間にいくんじゃない、三年間猶予する、こう言っているんですから、労働省は。これじゃ今度の法改正は大体だれのためなんですか。いろいろ平井さん苦労しておると、こう言われるけれども、一つも苦労してないじゃないですか。そこはどうですか。
#159
○国務大臣(平井卓志君) ただいま御指摘いただきました点が今回の時短を目標とする基準法改正の極めて難しいところでございまして、規模三百人以下の事業所では、過所定労働時間が現行法の四十八時間である事業所の割合が五二・七%、これは半数以上となっておるわけでございまして、過去十年間経済の流れが変わりましてから今日まで時短が非常に遅々として進まなかった、その大半の原因がこの中小企業等にございます。したがって、これら中小規模の事業所に即時に週四十六時間以下とすることをこれまさしく法律改正でやりますと義務づけることになりますので、これはやはり過去の実績と現状を見た場合に適当でない、かように考えられますので、中央労働基準審議会の建議では三年程度の猶予期間を置くことが適当とされたものと、私はこのように理解をいたしております。
#160
○安恒良一君 何も中央労働審議会のことを聞いているんじゃないんです。あなたは労働大臣としてどうするのか。四十八時間を四十時間にするのには段階をつけなきゃならぬ、中小企業のことを考えているとおっしゃる。ところが中小企業の実態を今度言うと、四十時間にいく段階じゃなくて四十六時間に移行するのにもここでは三年間今度はっきり猶予をつけられる。こういう労働行政で本当にあなたが考えているような時間短縮というのが実現するんでしょうか。どうでしょうか、総理。
#161
○国務大臣(平井卓志君) 御指摘ではございますが、この労働時間の短縮は、先ほども総理から御答弁がございましたように、法定労働時間の短縮のみによって行われるものでございませんで、規模のいかんを問わず、それぞれの事業所の実態に応じて努力されることが私は必要であると思うわけであります。
 今回の改正によりまして、中小規模の事業所につきましても一定の期間後には法定労働時間が短縮されるわけでございまして、労働基準法本則に週四十時間制を明記いたすわけでございますから、全体として労働時間の短縮への積極的な努力は促進される。それ以外に、先ほど御議論ございましたように、やはり非常に我が国において影響の大きいとされる公務員部門の今後の縮小、また、それに関連する金融機関、さらには商店街等等、そういうふうな総合的な意味での国民のコンセンサスの中で着実に実行されるべきものと、かように判断をいたしております。
#162
○安恒良一君 理解と納得できません。これはいずれ法案審議のときに野党としてはこの点は修正をする、三年なら三年ということをしたいと思っています。
 そこで、今度の問題の最大の問題は、この変形労働制を導入されてかなり弾力化をされていますが、この変形労働制について説明してください。
#163
○政府委員(平賀俊行君) 中央労働基準審議会の建議の中に、最近といいますか、労働基準法制定時から四十年経過して社会や経済の実態も変わり、特に三次産業等の就業者がふえております。そこで、労働時間について単に固定的に何時から何時まで、あるいは出勤時間等をすべての労働者に同じような適用をするということではなくて、労働時間の取り扱いの弾力化を提言しております。
 そして具体的には、現在の規定でも四週間を平均して四十八時間の取り扱いを認めておりますが、この四週間というのを一カ月で計算をしてもよろしいというのが一つ。それから出退勤時間について弾力的に取り扱う、いわゆるフレックスタイム制を導入するということが一つ。それから、繁閑の差がある事業所について三カ月を単位にして計算する。その場合に、現在の要件に加えて、原則として四十時間、その三カ月を平均して一週間の平均労働時間が四十時間でなければいけない。規模が小さい事業所、中小規模の事業所ではそれが四十四時間でもいい。その変形制を適用する場合については労使の協定が必要である。その三カ月単位の変形制。それからもう一つは、非常に小さな規模の事業所で、一週間の中の労働時間について、労働時間といいますか、事情等の変化がある場合に、あらかじめ労働者に通知して労使の協定をして一日の労働時間を十時間まで延ばす。その場合には一週間の労働時間を中小規模ですから四十四時間での範囲内でやる。
 大別してこの四つの変形制を導入しております。
#164
○安恒良一君 そこで労働大臣、極端に言うと、繁閑に応じて一日、一週当たりの労働時間を自由に伸縮できる。それでは現行の一日八時間労働時間制が大きく崩れるんじゃないか。すなわち労働者の生活リズムが乱れたり健康障害が起きる。経済的にも残業収入が減る。これでは労働者の生活落としになると思いますが、この部分についてはぜひ撤回をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
#165
○国務大臣(平井卓志君) 労働時間に関する法的規制の弾力化につきましては、労働基準法制定当時に比べまして、御案内のように第三次産業の占める比重が非常に増大しておる、また社会経済情勢の変化に対応しなくてはならぬ、そしてこの労使の工夫によりまして労働時間短縮を進めやすくするためにも必要であるという理解のもとにこういう形になったわけでございます。
 御指摘の三カ月単位の変形労働制でございますけれども、これは今骨子を簡単に局長から御説明申し上げましたが、季節等によって業務に繁閑の差がある場合に労働時間のより合理的な配分が可能となる。さらに総労働時間がそういう中で短縮されることが期待される。四週平均して一週四十八時間とする従来からの変形労働時間、これの運用におきましても特段の問題を今日まで生じていなかったという経過もございますし、この新しい制度につきましては、これまでの要件に加えて、三カ月平均で週四十時間以下、中小企業の場合は四十四時間ということでございますが、こういう枠を入れまして、さらに労使協定の締結が必要であるという二つの要件のもとに認められるものでございまして、危惧されますような乱用のおそれはないものと私は考えております。
 しかしながら、法案が成立した際には、万一にもそのような事態が生ずることがないように十分な指導を行いたいと考えております。
#166
○安恒良一君 従来何もなかったというのは全く不勉強ですね。例えば佐川急便、全国を査察してもらいましたが、いろいろ問題がありましたね。ですから、労働組合のあるところはいいですが、ないところではいろいろこれは大きい問題を起こすんですよ。もう少し労働大臣、実態をよく御勉強をお願いしたいと思います。いずれこの問題は法案審議のときにやりたいと思います。
 そこで次は、内需拡大というのが今百家争鳴なんです。GNP一人当たり一万七千ドルから一万八千ドル。国民は少しも裕福感がないんですね。これはどこに原因があるんだろうか。この点についてひとつ労働大臣、経企庁長官、お考えを聞かせてください。
#167
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生の御指摘のように、今の為替を換算いたしますと、日本人の一人当たりGNPが一万八千ドル前後、こういうことになりまして、名目的には世界最高でございますが、どうも私たち国民としてはその実感がない。こういうことの理由はいろいろございますが、その第一のものは、外に対して強い円が内に対して強くない。具体的には食費だとかエネルギー費だとか、または住居費だとか、そういったもの。これは計算の仕方いろいろございますが、いろいろ計算をしてみても、その分が欧米で生活するよりも高くかかってしまって、実際自分たちのそれ以外の生活に使う余裕がない、こういうことが一つあると思います。
 それからもう一つ、それと関係いたしますが、何といっても住宅が非常におくれておりますし、またその住宅の周辺である都市環境がおくれておる。また、全体としての社会的なインフラの整備がこれも相当おくれている。特に地方においてはその程度が著しい。
 こういうことでございますので、まさに内需拡大政策というのはそうしたおくれた分野に日本の高度な生産力、技術力を振り向けて本当に実体のある国民生活を実現することが内需政策の基本的な考え方だ、かように考えている次第でございます。
#168
○国務大臣(平井卓志君) ただいま委員おっしゃいましたように、最近の急激な為替レート、これから見ました賃金水準は欧米諸国と同程度ないしはそれ以上となっておるわけでございますが、御案内のように、俗に言われます消費購買力平価、これで見ました賃金水準となりますといささかそれに足りない。こういうことが、ただいま企画庁長官の方から申し上げました住宅問題その他勤労者の生活を取り巻く周囲の環境によって、いわゆる生活実感からすると充足感というものが感じられない、これが実情であろうかと思います。
 そういうことでございますので、やはり基本的には、いろいろ総合政策がございましょうが、私どもといたしましては、勤労者生活の向上を図るという観点から、雇用の安定、物価の安定、さらには先ほど御議論がございましたような労働時間の短縮、さらには勤労者の財産形成等々、制度を利用いたしましてやはり積極的に進めていくことが必要であろうかと、かように考えております。
#169
○安恒良一君 どこに問題があるかということをお聞きしたんですが、それでは、内需拡大のために、そして国民がGNP世界第一位の国であるとの生活実感と見合うために具体的にどうしようとされるのか、どことどこをどうしようとされているのか、その考え方について聞かせてください。
#170
○国務大臣(近藤鉄雄君) しばしば御指摘がございますいわゆる新前川レポート、経済構造調整の指針もまさにその問題を取り上げているわけでございますが、外に強い円が内に向かっても強い円になるためには、先ほど申しましたような食費またはエネルギー光熱費、そして住宅費が欧米諸国との比較においても十分安いものになるための具体的な施策が必要でございます。
 そのためには、まさに農業の生産性の向上、合理化、基盤整備等々、そういった形で農家の方々の収入を減らさない形で国民生活の実質的な向上を図るということが必要でございます。また住宅につきましても、土地そして住宅について現在いろんなことが考えられておりますが、さらに私ども政策資源の適正な配分、今は重点的な配分という言い方をしてございますが、いろんな政策を、いかにしたら土地の価格が安定し、そして住宅がよくなるかについて注ぎ込む、こういうことでございますし、いわゆる社会インフラの整備につきましても、これもこの前川レポートの中でも取り上げられてございます。今度の補正予算も、また来年度予算もその方向で重点的な社会資本の整備に政府としても意を用いてまいる、こういうことだと思います。
#171
○国務大臣(平井卓志君) 総合的には今企画庁長官が申し上げたとおりだと思いますけれども、全般的に申し上げて、雇用対策といい、我々が今やっておりますこと、この前提といたしましては、やはり内需拡大を中心とした均衡のとれた中程度の経済成長という前提がございませんとすべての政策が有効に働かない、かように考えております。そういう意味では、為替の安定も含めてやはり経済成長はこれはもう不可欠な要件である。そういう中で雇用の安定、勤労者の生活向上等々について具体策を推進してまいらなければならぬ、かように考えております。
#172
○安恒良一君 そこで総理にお聞きしたいんですが、今のやりとりを聞かれて、私は内需拡大の第一歩は一人当たりGNP世界第一に見合う生活水準の向上を図ることだと思う。
 そこで、国民生活白書が指摘していますように、それは個人消費をふやすことが内需拡大の柱だ。いわゆる可処分所得の拡大。具体的には、大幅な減税、二つ目には経済力に見合った賃上げ、そして三つ目には労働時間の短縮。それから第二番目には、今各大臣も指摘されたように、社会資本、特に生活関連の社会資本の投資が非常におくれていますから、これが国民生活の間に乖離がございますから、やはり二十一世紀を展望して国民生活水準を豊かにするために住宅、福祉、文化等等に投資を重点的に向けていく、そのことが非常に必要だと思いますが、総理、お考えいかがですか。
#173
○国務大臣(中曽根康弘君) 今、安恒さんが挙げられました諸項目は正しいと思います。ただ、それ以外に何があるかと考えると、やはり設備投資であるとか、あるいは公共事業であるとか、あるいは科学技術、技術開発、そういうようなものもありますけれども、しかし流通や消費の面、そういう面に対する直接性を考えてみますと、おっしゃる面が非常に強いと思います。
#174
○安恒良一君 次の問題に行きます。
 厚生大臣にお聞きしたいんですが、今度国民医療総合対策本部が中間報告を出されました。この中で長期入院の是正が大きな柱になっていますが、なぜ我が国は諸外国に比べてこんなに入院日数が長いのでしょう。その原因はどこにありますか、厚生大臣。
#175
○国務大臣(斎藤十朗君) 長期入院の諸外国との原因的な比較でございますが、日本の家族形態とか社会習慣とかいろいろな広い範囲の問題があろうかと思うわけでございますが、具体的に二、三挙げてみますると、今回お認めをいただきまして本年度からモデル事業を実施いたしてまいろうといたしております老人保健施設等のような、病弱な、そして要介護老人の施設ニーズに対応するような施設が今までなかったわけでございまして、そういったような施設ニーズに対応する部分も病院が対応してきていたという面もあろうかと思います。
 また、第二点といたしましては、医学的には退院が許されるという状況にありましても、家庭でのケアとかまた老人ホーム等福祉施設でのケア、そういったケアの基盤的な体制というものがなお不十分であったというようなことから、いわゆるいうところの社会的入院というようなものも見受けられたというふうに思うわけであります。
 第三番目といたしましては、費用負担の面でございまするけれども、在宅にある場合、また施設にある場合、また入院をする場合における費用負担の整合性を欠いていたという面もあろうかと。
 そんなようなことがいろいろとサックスをいたしまして、今御指摘のような、残念ながら長期入院の非常に長い状態に現在置かれておるという状態だと考えております。
#176
○安恒良一君 誤解がないように、私が指摘しているんじゃないですからね。皆さんが指摘をされていますから、言葉を正確に使ってください。
 そこで、いろいろ言われましたが、私も五、六点あると思うんです。結果的に言うと我が国の医療水準は非常に高くて、第一線の医者も一生懸命働いていますね。ところがどうも早く退院ができない。こういうところはその効果がどうしてあらわれないんだろうか。このことについて少し聞かせてください。
#177
○国務大臣(斎藤十朗君) 日本の医療の水準、健康の水準、また医療供給水準というものも世界の中でも相当なレベルに達しておると思います。それにもかかわらず長期入院が是正されにくいという点につきまして、先ほど私が申し上げましたような医療の周辺の問題も相当いろいろあるのではないかというふうに思わざるを得ないと思います。
#178
○安恒良一君 結局、入院するほど悪くならないうちの日常の治療体制が十分なのか、それから早く退院できるような病院の医療というものが本当に十分確保されているのか、そこの点をどう考えられますか。
#179
○国務大臣(斎藤十朗君) 確かにそういう面も十分あると思いまして、病気にならないこと、要するに保健、ヘルスサービスというようなものの一層の拡充を図ってまいるということも努めておるわけであります。
 また同時に、退院等につきまして、今回、先ほどお話のございました国民医療総合対策におきましても、これから各病院等におきまして入退院の判定委員会というようなものを設けていただいて、複数の医療担当者によって入退院の問題について真剣に議論をしていただき、そして適正な入退院が行われるようにしていただきたいというようなことも考えておるところでございます。
#180
○安恒良一君 昭和五十二年の三月、厚生省保険局が国会に提出しました現行診療報酬体系における点数制の矛盾というのがあったんです。ちょっと説明してみてください。
#181
○政府委員(下村健君) ただいま御質問がありました文書は、昭和五十二年の三月に衆議院の予算委員会の第三分科会におきましての有島委員の質疑に答えて、三月十七日に提出いたした資料だと思います。
 七項目ございまして、第一点は、患者が多くないと医業が成り立たない。第二点は、医薬品を多量に投与しないと点数が増加しない。第三点は、より高価な医薬品を投与しないと点数が増加しない。第四点が、反復施療が多い医師の方が名医よりも点数が増加する。第五点が、施設の良否の差は点数表に反映されない。六が、診療時間の長短に応じた点数が認められない。七が、病名をたくさん列挙しないと点数が増加しないという内容になっておりまして、現在の出来高払いと言われております診療報酬についての問題点を指摘いたしたものでございます。
#182
○安恒良一君 そこで厚生大臣に聞きたいんですが、このペーパーが出てもう十年になっていますが、どの程度診療報酬のあり方に修正が加えられたんでしょうか。その結果、現状はどうなっていますか。
#183
○国務大臣(斎藤十朗君) ただいま、当時指摘されました七点につきましてどのような改善をいたしてまいりましたかということについて申し上げますと、まず最初の、患者が多くないと医業が成り立たないという面につきましては、医療経済実態調査の結果から見ましても、一般的には医業経営が成り立たないという例はまれでございます。なお、供給過剰傾向を前提といたしますれば、患者数の減を診療報酬でカバーするということは適当でないというふうに考えておる次第であります。
 それから医薬品を多量に使うという点や、また高価な医薬品を使うという点につきましては、実勢価格と薬価基準との乖離の是正をいたしてまいりました。また、技術料重視の診療報酬の体系へ移行をいたしてまいりました。
 また、第四番目の反復施療が多い医師が名医よりも点数が多いという点につきましては、検査料等の包括化、いわゆるマルメというようなこともいたしてまいりました。
 また、施設のよい悪いによって点数に反映されないという点につきましては、一定の施設基準を満たした医療機関に限って点数を認めるというような運動療法とか作業療法等の診療報酬体系を設定いたしてまいりました。また、一定の設備についての点数上の評価などもいたしてまいりました。
 また、六番目の診療時間の長短に応じた点数が認められないという点につきましては、往診料等について一部所要の時間を配慮する、そういう点数を設定いたしてまいりました。
 また、病名をたくさん列挙しないと点数が増加しないという点につきましては、不正不当な診療請求というような観点から指導、監査を強化いたしてまいったという状況でございます。
#184
○安恒良一君 厚生大臣いろいろ言われて、御努力されたことはある程度私わかりますが、本当に本質的に変わっているんでしょうか。例えば医薬品よりも今度は検査を多くしないと医業が成り立たない、長期入院にチェックが厳しくなったから反復入院で点数を上げる、こういう状態が依然としてやはり続いているんじゃないでしょうか。ですから、本来の医療効果を妨げるような診療報酬という点は全く同じような状態になっているんじゃないんですか。どうですか、そこは。
#185
○国務大臣(斎藤十朗君) 御指摘をいただきましたように、薬価差益から検査の方に移るというような点も見受けられます。先ほど申し上げましたように、検査の診療報酬等につきまして包括的な組み立てを実施したりいたしておりまして、努力をいたしてまいりましたが、同時に、今回の国民医療総合対策におきましても、そういった検査料などを含む老人医療の診療報酬についての見直しを行って、真にお年寄りの医療にふさわしいというか、質の向上された医療が行われるような診療報酬の見直しをやってまいりたいというふうに考えております。また、反復入院の問題等につきまして、先ほど申し上げましたように、各病院に入退院判定委員会というようなものをつくっていただきまして、適正な入退院を図ってもらうというような観点から推進をいたしてまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、医療の問題、医療費が、今後高齢化、そしてまた医療の高度化というようなことで老人医療を中心といたしまして、医療費全体が増高いたしてまいるということは避けられない状況であります。しかしながら、将来を考えますと、国民所得と大体一体となったような医療費の伸びというものに持っていくということが必要でありまして、これまでも、例えば医療保険制度の見直し、また監査とか審査、レセプトの点検、そういったような適正化という対策、こういったものを続けてまいりましたが、今回はそういうこととともに、医療の内容、医療の質の向上を図る中で効率的な医療を行い、そして適正な医療費に結びつけていくような、そういうための取り組みといたしまして、国民総合対策というものを今考え、これから実行をいたしてまいりたいと、こう考えておるところでございます。
#186
○安恒良一君 私は、中間報告ですからここで注意を喚起しておきますから、本報告をまとめられるとききちっとしてもらいたいのは、医療費の伸びだけに目を奪われて医療費の削減だけが中心になってはいけない。例えば、この前も指摘しておきました予防、それから病気にかからないために家庭医制度のあり方の問題等々、たくさんあわせて考えなきゃならぬものがある。
 どうもあの中間報告を見るとそういう点が心配でございますから、まだ中間報告なんですからこれは本報告のときには、いわゆる強制的な国民皆保険であるというこの本質、そして医療というものについて国が十分にサービスをしていくという本質を忘れないような報告にしてもらいたいと思いますが、大臣、どうですか。
#187
○国務大臣(斎藤十朗君) もとより、国民医療の総合対策を進めてまいりますには、医療関係者はもとより関係の皆様方また国民の皆様方の御意見を十分お聞きし、そしてその理解のもとに、より良質な医療なり、またより健康な国民生活を送っていただくために進めてまいる、こういうことでございますので、幅広く御意見をお聞きいたしてまいらなければならないと考えておりまするし、また、専門家である安恒先生からの今のいろいろな御意見等についても十分踏まえさしていただいて、これから取り組ましていただきたいと思います。
#188
○安恒良一君 そこで、この中にも家庭医の機能充実とか、それからまた家庭医懇談会から今後の家庭医制度を考える、いろいろ出ていますが、私は家庭医制度を考えていくとき、今の点数出来高払いシステムを前提にするわけにはいかないと思いますが、この点はどうしますか。
#189
○国務大臣(斎藤十朗君) 家庭医機能にかかわる独特な診療報酬の評価をどうするかという点でございますが、実は来年度予算でこの家庭医機能を発揮したケアシステムというもののモデル事業というようなものをひとつやってみたいということで、来年度の予算要求をしようといたしておるわけでございますが、そういったモデル事業を通じて、家庭医としての独特な評価をどのようにしていったらいいかということについてひとつ検討いたしてまいりたいというふうに思っております。
#190
○安恒良一君 そこで、家庭医の機能について、研修システムの試行ということが書いてありますが、研修システムの試行はどこでどういうふうにされますか。
#191
○政府委員(竹中浩治君) 家庭医のモデル事業は、先ほど大臣が申し上げましたように、来年度の概算要求ということで考えております。
 今考えておりますのは二つございまして、一つは家庭医養成のためのモデル研修プログラム、それからもう一つは、それぞれ地域を決めまして、地域医師会の御協力をいただいて家庭医機能に合う開業医を支援するモデル事業をやりたい、この二つを今考えております。
#192
○安恒良一君 この前の予算委員会で、自治医大においてこういうものの研修をやったらどうかというふうに私は提案したんですが、厚生省はそれを自治医大に要請する気はありませんか。もしくは、自治医大側は、頼まれるまでもなくこういうものに取り組むという考えはございませんか。厚生大臣と自治大臣にお聞きします。
#193
○政府委員(竹中浩治君) 自治医大が地域家庭医療について非常に御努力をいただいておるわけでございまして、私どもといたしましても、今後、そういう協力を自治省や自治医科大学と十分御相談をしてお願いしてまいりたいと思っております。
#194
○国務大臣(葉梨信行君) 昭和五十八年に自治医科大学附属病院内に地域家庭診療センターというのを設置いたしました。これは僻地診療所をモデルにしたものでございます。そして、自治医科大学の周辺の南河内町と国分寺町内の土地区の三千人の地域の方々を対象といたしまして、地域保健活動であるとか、あるいはお子さんからお年寄りまですべての年齢層につきまして、全診療科目につきまして診療を行っております。これは、家庭医療と申しますか家庭医学と申しますか、実践と教育を行っているわけでございます。このセンターがただいま先生触れられました家庭医の養成とかあるいは家庭医の研修システムの研究等にお役に立つのであれば、私ども自治省といたしまして、自治医科大学に協力を要請することも考えております。
#195
○安恒良一君 それじゃ、次の問題にいきます。
 大蔵省に聞きたいんですが、この六月ごろから生命保険業界等の金融機関の円ドル投機の規制に乗り出したという報道がされていますが、その内容と、規制に踏み切った理由は何でしょうか。
#196
○政府委員(内海孚君) お答え申し上げます。
 生命保険等の機関投資家のドル債券等の取得は、それ自体は長期的な資産運用でございまして、いわば基本的には実需でございます。ただ、こういった長期的な動きとは別に、これは一般的に市場参加者の間で行われることがあるわけですが、短期的なドルの売買によってさやを稼ぐというようなことが行われますと、そういった投機によっていろいろ攪乱的な影響があり、またこれが国民経済あるいはひいては国民生活にも影響があるということで、そういった取引については自粛していただくようお願いしたというのがその内容でございます。
#197
○安恒良一君 生保業界の円ドル売り買いのスケールが大きいというが、それはどの程度ですか、実態を少し報告してみてください。
#198
○政府委員(内海孚君) 現在、生保業界だけではなくて、すべての投資家についてドル債の取得は全く自由になっておりまして、生保業界でどの程度取得をしているかということは詳細には把握しておりません。
#199
○安恒良一君 把握していないのに円やドルの売り買いのスケールが大きいということで忠告したというのはおかしい。
 そこで私は、六十一年四月以来現在まで生保が扱った円買い円売り、各社別集計高の資料を出してもらいたいということをきのうお願いしておったんですが、手元に届いていませんが、どうなっていますか。
#200
○政府委員(内海孚君) 先ほどお答え申し上げましたように、現在、ドルの売買、これは為替市場で自由に行われておりまして、そのマーケットへの参加者ごとの売り買いの数字はそういった理由で把握しておりませんので、そういった資料がないということでございます。
#201
○安恒良一君 大蔵大臣にお聞きしたいんです。資料がないないと言うんですが、資料がないのにいろいろ御注意されているんですが、私は通貨相場が不安定なのはニュースを過大な材料にして行う投機行為にあると思うんです。ですから、今後も引き続き生保、銀行、証券等の通貨投機を厳重に監督するという考えはありませんか。どうですか、大蔵大臣。
#202
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど政府委員が申し上げましたことの意味は、私どもは自由経済の信者でございますし市場に決して干渉するつもりはございませんが、いわゆるディーリングと称して一時間に三度も五度も売ったり買ったりしてさやを稼ぐということは、これがいわゆる一般の商品市場ならともかく、通貨でございますと、本当に中小企業の方々が事業計画を立てて一生懸命生きょうとしているときにそういうディーリングによって為替が不当に大きく動くということは、やはり私は看過してならないことだというふうに考えましたので、そのような不正常な投機を慎んでもらいたい、それについてはそれに関する報告を求める、こういうことをいたしたわけでございまして、そのような正常でない取引については今後とも自粛を求めてまいりたいと思っております。
#203
○安恒良一君 そこで今度は、生保のいわゆる不動産の建設仮勘定、それから営業用不動産、投資用不動産等々、生保が行っておることについて資料提出を求めておりましたが、説明してください。
#204
○政府委員(平澤貞昭君) 生命保険会社の不動産の保有高の推移でございますが、五十五年度末で一兆六千四百七十八億円、それから現在、六十一年度末がわかっておりますが、三兆七千七百七十億円ということになっております。
#205
○安恒良一君 それから生保の貸付金のうち、これも五ヵ年間、不動産についての融資額がどうなっていますか。
#206
○政府委員(平澤貞昭君) 生命保険会社のいわゆる不動産業向けの貸付残高でございますが、五十五年度末が一兆三千八百七十九億円、それから六十一年度末が一兆九千二百八十八億円ということになっております。
#207
○安恒良一君 不動産業向け、建設業向け、両方聞いているんですよ。それと合計。
#208
○政府委員(平澤貞昭君) 失礼いたしました。五十五年度末の建設業向けが四千八百四億円、先ほどの不動産業向けが一兆三千八百七十九億円でございますから、合計一兆八千六百八十三億円となっております。それから、六十一年度末の建設業向けが四千六百九十三億円、不動産業向けが先ほど申し上げましたように一兆九千二百八十八億円ですから、合わせまして二兆三千九百八十一億円ということでございます。
#209
○安恒良一君 そこで、私が求めておったことと大分違うのは、これを生命保険会社、損害保険会社、銀行というふうにトータルで出してありますが、私はとりあえず生命保険会社の各社別に、この不動産、建設業向け生命保険の融資がどうなっているのか、また生命保険が持っている不動産の保有高について営業用と投資用、これがどうなっているか、こういうことを各社別に出してもらいたいと言っておったんですが、私の手元に来たのはトータルですが、これはどうして出せないんですか。
#210
○政府委員(平澤貞昭君) 各社別の数字はとっておりますけれども、個別の生命保険会社の数字でございますので、先生にお見せするのを差し控えたわけでございます。
#211
○安恒良一君 私は理解できません。というのは、最近の生保その他、金融機関の投資については目に余るものがあります。そこで内容を知りたいといったことを言っておるわけですから、この点について理事取り扱いを決めてください。
#212
○委員長(原文兵衛君) 本問題につきましても、先ほどと同様、理事会で協議いたします。
#213
○安恒良一君 それでは、昭和五十年に保険審議会が生命保険会社の社員総代構成についていろいろ述べていますが、それの中身をちょっと説明してください。
#214
○政府委員(平澤貞昭君) 保険審議会の答申はかなり長いものでございますが、主として大きな部分は生命保険会社の経営の問題についてでございます。特に社員の、いわゆる保険契約者でございますが、その意思が経営にうまく反映するように、社員総代の選考あるいは総代会の運営、評議員会、それから契約者懇談会の問題等々について今申し上げたようなことをできるだけ反映するように考えるというのが内容でございます。
#215
○安恒良一君 そこで、その答申から十二年たっていますが、どのような改善指導を行われましたか。また、その効果は現実にどうあらわれていますか。
#216
○政府委員(平澤貞昭君) この問題につきましては、その前昭和四十年にも答申が出ておりまして、したがって四十年、五十年と二回にわたって出ております。
 その答申の中身につきましては、その後、行政上種々の措置をとっております。したがって、今後の問題といたしましても、これについてはさらにその考え方に沿って行政上進めていくということでございます。
#217
○安恒良一君 わかりません。中身がないじゃないか。はっきり言ってください。今の答えはわからない、全然。何を言っているかさっぱりわからない。
#218
○政府委員(平澤貞昭君) それでは、より詳しく申し上げますと、実施状況でございますが、(「それではとは何だ」と呼ぶ者あり)今先生がより詳しくというお話でございましたので……。
 実施状況についてでございますけれども、例えば社員総代候補選考委員会の設置、これをやっております。それから評議員会の設置、これもやっております。それから、契約者懇談会の普及、これは各地に設けろということでございますので、それも実施しているわけでございます。
#219
○安恒良一君 六十一年度十六社の社員総代の数は幾らですか。また、その総代はどういうふうにして決められていますか。
#220
○政府委員(平澤貞昭君) 総代は、選考委員会を設けまして、そこで選考した中から選んで決めております。
#221
○安恒良一君 その選考委員会はだれがどこでどういう人を選んでいるんですか。
#222
○政府委員(平澤貞昭君) 先ほど御質問のございました総代の定数でございますが、六十一年度でございますが千七百四十名、これは保険会社各社の総計でございます。
 それから選考委員会につきましてですが、これにつきましては、社員の中から一定の基準で、できるだけ年齢、地域、その他等を勘案いたしまして公平に選ぶようにしているのでございます。
#223
○安恒良一君 実際に保険料を納めている人たちが総代を選ぶことに本当に関与できているんですか。
#224
○政府委員(平澤貞昭君) 先ほど申し上げました答申にもございますように、できるだけそういう方向で各般の措置をとってきております。
#225
○安恒良一君 総代会のいわゆる任務はどういう任務でしょうか。
#226
○政府委員(平澤貞昭君) 総代会でございますので、契約者である社員の利益を代表いたしまして、その利益をできるだけ確保するように努力するということでございます。
#227
○安恒良一君 まあ、銀行局長だから不勉強だから答えが簡単なのかわからぬけれども、その生命保険会社の社会の公共性、安全性を前提に、どういうふうにやるかという意思決定及びチェックの機関じゃありませんか、総代会の任務は。
#228
○政府委員(平澤貞昭君) 例えば総代会の主な議決事項でございますけれども、定款の変更、取締役の選任それから解任、監査役の選任、解任、それから決算及び剰余金の承認等々になっております。
#229
○安恒良一君 そこで、私が今聞いておったように、選考委員会の選び方一つをとってもはっきりしないんですね。ですから、総代会というのは会社と縁がある、いわゆるなれ合いで私は選ばれているんじゃないかと。ですから、これは株式会社とは違うんですが、株式会社よりもずさんなシステムの中で今度は経営者が選ばれて、そしてこの人たちが総資産五十四兆円以上の運営を現在しているわけです。ですから、少なくとも私は生保というのは公共性、安全性、有利性を基準にした運営に徹するべきだと思います。金が余るから何でもやったらいいということではないと思うんで、金が余るならば、それはいわゆる過度な募集行為を制限する、さらに、利益配分ということで保険者への配当金を十分に手厚くして還元する、こういうふうにしていかなきゃならぬと思いますから、私は今の生命保険相互会社制度の見直し等について着手すべきだと思いますが、まずこの点について大蔵大臣のお考えを、今のやりとりを聞いて聞かしてください。
#230
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどお話の昭和五十年の保険審議会の答申、総代等に関する答申でございますが、それは今日までのところ、その答申の趣旨に沿いまして実行をされておると存じます。
 また、生命保険会社のいわゆる契約者配当に対する還元も、まず九九%と非常に高い率で行われておりまして、概して申しまして、ただいまの生命保険会社の運営は、まず全体を改めなければならないようなそういう状況にはない、ほぼ設立の趣旨に沿って行われておるというふうに考えます。
#231
○安恒良一君 改善の余地はないんでしょうかね。いろいろ答申がたくさん出ていますから、あなたは全く今やっていることをいいと言われているんですが、私は改善の余地があると思うんですが、そういう点についてどう考えられますか。この点は総理もお考えを聞かしてください。
#232
○国務大臣(宮澤喜一君) むろん答申もございますし、改善の余地がないと申し上げておるわけではございませんが、大筋におきまして、保険審議会等々が答申をされましたそれに沿いまして大筋では運営されておる。むろん改善すべきところは常に改善を怠ってはならないと思います。
#233
○国務大臣(中曽根康弘君) 大蔵大臣と同じ考えです。
#234
○安恒良一君 重ねて聞きますが、何十億もする絵を買ってみたり、外国に出かけて行ってビルを買ってみたり、いろんなことを今やっているんじゃないですか。そういうことについて、まああなたたちはそれはいろいろ行政との関係があるかもしれませんけれども、国民にこの点について非常にひんしゅくを買っていると思いますが、大蔵大臣、どうですか。
#235
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま生命保険会社のお話と承っておりました。経営者の判断の中でそういったようなことが行われる。むろん反社会的なこと等々はこれは許すわけにはまいりませんけれども、概して私は大変に大きく改善を要しなきゃならないという状況だとは考えておりません。
#236
○委員長(原文兵衛君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#237
○委員長(原文兵衛君) 次に、橋本敦君の質疑を行います。橋本敦君。
#238
○橋本敦君 私は、きょうは中曽根内閣の五年間の政治、そのもとでの核廃絶の問題、あるいはマル優廃止問題、さらには経済問題などを質問いたしますが、それに先立って、まず盗聴事件から質問に入りたいと思うのであります。なぜなら、この問題は我が憲法と民主政治の根幹にかかわる重大問題だからであります。
 我が党の緒方国際部長宅に、昨年、近くの電柱からマンション、メゾン玉川学園の一室に引き込み線が引き込まれまして、それによって電話盗聴がなされていたという事実が発覚をいたしました。そして、これは多数の証拠によって神奈川県警警備公安課の現職警官がこの盗聴を行ったという重大な容疑で、今検察庁が東京地検特捜部によって捜査を進めているところであります。
 言うまでもありませんが、電話盗聴というような陰湿な反社会的な不法な行為、これは我が憲法十三条が保障する個人の尊厳とプライバシーを侵す、さらに十九条の思想、信条の自由を侵す、そして二十一条の結社の自由、具体的にその二項に「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と明記してある、その憲法に反することはこれは言うまでもありません。
 アメリカでも、御存じのように、ウォーターゲート事件という事件がございました。アメリカの連邦最高裁は、そのウォーターゲート事件が大きな問題になっているさなかでありますが、一九七三年六月十九日に全員一致で、捜査官憲の盗聴はこれは憲法に違反すると明確に判決をいたしました。その判決は言っております。「政府がその動機においていかに寛大であろうとも、自らの政策に激しく反対する者を疑惑の目で見がちなことは、歴史に残るおびただしい記録が示している」、「もし行政府の裁量で(盗聴のような)国内監視手段が行われるなら(いわれのない捜索や押収から市民を保護する)憲法修正第四条は保証されなくなる」と明確に判決をしています。私は当然だと思うのであります。
 したがって、本件の電話盗聴行為なるものも、まず第一に我が憲法の基本的な原則を犯す重大な事件だということは明らかだと思うのでありますが、総理は憲法との関係でどのように御認識いただいておりますか。
#239
○国務大臣(中曽根康弘君) 本件の嫌疑は基本的人権にかかわる重大な問題をはらんでいると思いまして、検察庁においても鋭意これを取り調べ、捜査を続行しておるところでございます。
#240
○橋本敦君 警察庁長官、憲法には公務員の憲法遵守義務を明確に九十九条で規定をしておりますが、警察官もまた憲法九十九条によって憲法擁護の義務を明確に負っているのではありませんか。
#241
○政府委員(山田英雄君) 警察は社会、公共の秩序の維持という重大な責務に当たっているわけでございまして、ただいま御指摘のことにつきましても憲法、法令を遵守することはもとよりであると思います。
#242
○橋本敦君 今お認めになったように、警察官が電話盗聴を行うという行為はみずからの憲法を守る義務にも反する。言ってみれば、憲法秩序に対する反逆行為と言ってもいい重大な問題であります。今検察庁はこの問題で捜査を続けておりますが、法務省刑事局長、この件は憲法にかかわる重大な事件だという認識で厳正捜査をやられますか。
#243
○政府委員(岡村泰孝君) 東京地検におきましては、本件につきまして厳正、公平に捜査を進めているところでございます。
#244
○橋本敦君 憲法との関係でどう認識しているか。
#245
○政府委員(岡村泰孝君) 憲法に保障されております通信の秘密にかかわる犯罪であるというふうに当然にこれは認識しているところでございます。
#246
○橋本敦君 総理は、先ほど衆議院の予算委員会において我が党の正森議員の追及に対し、国家公安委員長も警察庁長官も本件が警察官による犯行であるという重大な容疑で調べを受けていること、この事実を認められた上で、総理は「まことに遺憾な事件でございますが、厳正公平に処理いたします。」と答弁されました。総理、その答弁は相手が警官であろうともそれは厳正、公正に徹底的に調べるというこういう御趣旨と思いますが、間違いございませんか。
#247
○国務大臣(中曽根康弘君) 法の違反に対しては、何人といえども法のもとに平等であり、厳正、公平にやるべきものと心得ております。
#248
○橋本敦君 我が党幹部に対する盗聴は緒方宅事件だけではありません。上田参議院議員、副委員長上田宅に対する盗聴事件も発覚をいたしました。国会議員に対する盗聴というかつてない重大な事件であります。この告訴に対して検察庁は今調べているというのでありますが、この問題で私が質問したことに対しても総理は、厳正な態度で臨むことで指示をいたしておりますと答弁されておるのでありますが、果たして検察庁は真剣にこれを捜査しているかどうか疑わしい状況があると私は思うのであります。
 それは、仕掛けられた器具が、盗聴器、どういう機能を持つかどうか今鑑定に出していると、こう言います。それは結構ですが、その鑑定がいつ出るのかはっきりしない。そして、その鑑定を待つだけではなくて周辺の捜査を積極的に行うべきでありますが、事実上検察庁は今そういった熱心な捜査をやっていないのではないかと思われますが、捜査状況はどうなっておりますか。
#249
○政府委員(岡村泰孝君) 現在東京地検におきましては必要な捜査を行っているところでございます。
#250
○橋本敦君 具体的にさっぱりわかりません。していないということを指摘しているんですよ。
 警察の盗聴というのは、実は我が党だけの問題ではない状況があります。元茨城県の県警警備部長をしておられました警視正の江間恒氏という人が、先ほどもいろんな委員会で申し上げましたけれども、はっきりと証言をされて、一時は社会党の皆さん、公明党まで盗聴していたことがあると、こういう証言があるくらいであります。したがって、どの新聞についても、これは民主主義の重大な問題だということで徹底解明を求めている声が圧倒的であります。今国民の声が徹底解明せよ、事態を国民の前に明らかにせよ、こういうことであることは警察庁長官承知しておりますか。
#251
○政府委員(山田英雄君) 盗聴容疑事案、これが重大な問題であるということは十分に承知しております。
#252
○橋本敦君 もっと積極的に答弁してくださいよ。重大なことかどうか聞いているんじゃない。国民の世論は徹底解明を求めている、そのことは承知かと、こう聞いているんです。いいですか。例えば毎日新聞はこう言っていますよ。事もあろうに現職の警察官が盗聴に関与した疑いで東京地検特捜部の取り調べを受けるという事態が起きたのである。これは前代未聞の事態である。その活動状況に関する情報を収集するために盗聴を行うというそういうことは議会制民主主義に真っ向から反する。盗聴という行為の重大性からもぜひとも全容解明に全力を挙げてもらいたい、はっきりこう言っているんですね。
 ならば聞くけれども、長官は、正森議員の質問に対してこう答えられました。「神奈川県警においては電話による盗聴は行っていないという報告を受けております。」、こう言っております。この問題はどういう意味でしょうか。それは神奈川県警以外のどこかの警官がやったとおっしゃるのか、あるいは神奈川県警が組織的にやったという犯行、これを隠して個人的なはね上がりの犯行だと言いたいのか、はっきり言ってください。
#253
○政府委員(山田英雄君) お尋ねの事案は、ただいま検察庁並びに警視庁において捜査中でございますが、神奈川県警におきますこれまでの調査結果では、神奈川県警が電話盗聴を行ったことはないという報告を受けておるわけでございます。
 警察官が関与したかどうか、このことにつきましては検察庁において捜査中でございます。捜査の結果にまちたいと考えております。
#254
○橋本敦君 納得できません。今の答弁は事実を明らかにする姿勢ではありません。この事件が組織的犯行であるということは、これは一人や二人が思いつきでやれることではないというだけじゃない。今までの新聞報道や多くの証拠によっても、神奈川県警の警備公安課を中心にして組織的に、アジトの設定から盗聴行為、資料の整理からあらゆる面で組織的にやられた犯行であることはもうはっきりしていますよ。
 さらに、先ほど言いましたあの江間氏はどう言っているかといいますと、こういう盗聴行為は絶対に警察庁の承諾なしにやらない。企画の討議と承認をするのは警察庁が承認をしなきゃ地方ではそういう非合法はやれません。非合法手段を講ずる場合には必ず警察庁の了解を得なければ着手しませんと、こうはっきり言っているのであります。大体考えてみても、今容疑を受けて調べられているのは神奈川県警の警備公安課の警官だということは新聞で明らかですが、神奈川県警の警官が、厳格な管轄の定めを飛び越えて東京管内の町田署の管内まで出かけて行って盗聴行為をするなどということが警察庁の了解なしにできますか。何といってもこれは組織的犯行であるということは明らかであります。
 しかもそのことは、我が党に寄せられた内部告発の投書によっても事実上裏づけられているのであります。我が党が受け取った投書は「東京地方検察庁 日本共産党 朝日新聞社御中」と、こうなっておりますから我が党だけが受け取ったものではないと思いますが、はっきりこう言っていますよ。この盗聴はもとより、日本共産党に対するあらゆるその他の作業も警察庁ですべて管理されており、勝手に県警がやれるものではありません。警察庁の命令で行う場合が多いのです。今回の場合も警察庁からの要請で県警がやらされたのです。具体的には、本庁の公安一課に所属する中一野分室のキャップである堀警視正から直接頼まれ、永井警視などからいろいろと指導を受けました。そして、技術関係は間藤、前川先生らの指導で実行していますと、こう書いてある。調べてみますと事実に符合するところが多いのであります。
 警察庁長官に聞きますが、警察庁には、ここで名前が出てきた、具体的に言えば今名前を言ったような人がいるかどうかはっきり答えてください。
#255
○政府委員(山田英雄君) 個々の警察官の在籍の有無を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
 また、江間証言なるものは、既に亡くなられた方のお話でありまして、その真偽のほどを確かめようがないと思いますし、また、投書につきましてはコメントする限りではございません。
#256
○橋本敦君 まず刑事局長に聞きますが、この投書は捜査の上で重要な参考になるものとして重大な関心を払っておられませんか。当然でしょう。
#257
○政府委員(岡村泰孝君) そういう投書につきましては、東京地検といたしまして捜査を行う上の参考の資料といたしておるものと承知いたしております。
#258
○橋本敦君 警察庁長官、神奈川県で、神奈川県警公安課の職員の職、氏名を明らかにされたいという情報公開法の規定に基づく請求について、この問題で神奈川県の公文書公開審査会は、神奈川県では警視以上の氏名、職は言っておるが警部以下は非公開になっているが警部以下も県民に公開すべきであるという、こういう決定をやっておりますね。ところが、警察官は県警は公表を拒否しておる。けしからぬと思うんですが、今答弁があったように名前も絶対言わないというそういう姿勢で神奈川県警に指導しておるんですか、長官。
#259
○政府委員(小池康雄君) 警察職員の氏名、所属等を公表いたしますことは、警察職員あるいはその家族に危害が及ぶことが危惧されるところでございまして、警察の職務の遂行上支障があると考えております。神奈川県警察においても同様に考えていると承知しております。
#260
○橋本敦君 そんな答弁はおかしいですよ。この神奈川県の審査会の決定は、そういう嫌がらせや危害なんということを言うのはそれは警察官だけに限らぬじゃないか、一般職員や民間企業の役職員にもあり得る、そういうことで役職、氏名を公表しないということはこれは民主的な体制に反するとはっきり言っていますよ。
 それからさらに長官に聞きますが、今あなたはお答えにならないと言ったけれども、この情報公開法の関係とは別に、なぜ私に答えられないのか、もっとはっきり言ってくださいよ。
 全国警察職員録という名簿がある。これは内部告発で上田議員のところに届けられたものだが、それを見ますと、この投書に書いてあるとおり、堀貞行警視正、永井警視それから技官の間藤先生、前川先生とこの投書では書いてあるが、ちゃんと課長補佐、技官として名前が出ている、職員録にもはっきりあるじゃないですか。なぜ言えないんですか。
#261
○政府委員(山田英雄君) ただいま御指摘のような警察庁における本件との関連というのはもともとないわけでございます。
 それから一般的に申しまして、職員の在籍の有無ということにつきましては、先ほど官房長がお答えしたとおり、その有無を一般的に一々お答えするのは遠慮させていただくというのが我々の考え方でございます。
#262
○橋本敦君 警官が現存するかどうかそれさえ言わないというのは、これは全くもみ消しじゃありませんか。長官はあなたみずからもみ消し工作をやらせているのと違うんですか。おかしいですよ。そうでなかったらはっきり答えなさいよ。まさにこういう組織的犯行だからそれは証拠隠滅の疑いがあり得る、通常考えられる、そういうことでそういう点の疑念を持っておりますが、まさに長官の態度は、もみ消し工作をやっている、そういう姿勢にほかならぬ。長官、もう一遍はっきり答えてください。
#263
○政府委員(山田英雄君) 先ほどお答えしたとおりの考え方を御理解いただきたいと思います。
#264
○橋本敦君 到底納得できませんね。
 長官にお伺いしますけれども、電話盗聴が違法であるということはもうはっきりしています。これまでに電話盗聴のような違法な行為はするなという指示をなさったことがありますか、ありませんか。前から電話盗聴とか盗聴はしばしば問題になってきたんです。どうですか。
#265
○政府委員(山田英雄君) 警察がその責務の遂行で行います情報収集活動、これは常に適正、妥当に行わなければならないことは言うまでもございません。したがいまして、電話による盗聴、こういうことはあってはならないわけでございまして、都道府県警察の第一線に対しましても必要な都度その趣旨は徹底しておるわけでございます。
#266
○橋本敦君 済みません、具体的指示をお出しになったんですか、その都度と言いますが。指示を出したのなら何月何日どういう指示だと教えてほしいんです。
#267
○政府委員(山田英雄君) そのことは我々情報収集活動の当然の前提と考えておりますので徹底しておると思います。
#268
○橋本敦君 全然はっきりしません。そういう態度だから盗聴事件というのは起こってくるんですよ。
 配付している資料をごらんください、一の一。我が党と嶋士団体に対する盗聴事件はその一覧表のとおりずらっと三十二件、おびただしいものじゃありませんか。これはもう氷山の一角ですよ。刑事局長に伺いますが、これらの関係で一件でも事件を立件し、起訴したことがありますか。
#269
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまの一覧表に記載してあります事件のうち、告訴、告発を受けるなどいたしまして東京地検におきまして捜査をいたしたところの事件もあるわけでございますが、ほとんどが犯人検挙に至らないということでございまして、結論的には起訴いたしました事例はございません。
#270
○橋本敦君 今度は犯人検挙に至らなきゃいかぬ事件ですよ。いっぱい証拠はあるんですよ。そこが大事なんです。
 総理、ウォーターゲート事件というのがあって、ニクソン大統領が辞任をされた大きなケースであったことは御存じと思いますが、そのウォーターゲート事件で、ニクソン大統領が辞任しただけでは済まなかった、厳しい処分が関係者に行われたことは御存じでしょうか。
#271
○国務大臣(中曽根康弘君) 知っております。
#272
○橋本敦君 配付しました資料の一の三をごらんいただきたいのであります。
 これは国会図書館からいただいた資料で、ウォーターゲート関係者の処分の状況を書いたものを翻訳してそこで一覧表にしました。事件の中心人物であるのは、もちろんこれは中心となって工作をしたメンバーですが、元CIA工作員、元FBI・元地方検事、大変なことであります。これらは、謀議、強盗あるいは盗聴、盗聴器の不法所持などで、多いのは八年の刑を受けております。
 もう一つ大事なのは、その次の表をごらんください。もみ消し工作、オブストラクション・オブ・ジャスティス、この罪によって、どうですか、大統領補佐官であろうが首席補佐官であろうが、あるいは有名なミッチェル元司法長官であろうが、司法妨害と偽証の罪で、何と八年に至る重い刑を受けているのであります。まさに盗聴事件の重大さ、そのもみ消しの重大さはこのケースからも示されているのであります。
 今、警察がこういった犯行を犯しながら、しかもこれを明確に国民の前に明らかにせず、そして県警本部長や警備局長、これの退任も本件とは全く関係ないと何の反省も示さず、反憲法秩序を依然として維持しようという方向にいくときに、捜査において車の両輪と言われる片方の検察庁はこれに追随するのか、毅然としてこれに対処して厳正捜査をやるのかが問われております。刑事局長の決意を聞きたい。
#273
○政府委員(岡村泰孝君) 先ほど来申し上げておりますように、現在東京地検におきましては、本件につきまして厳正、公平な立場で捜査をいたしておるところでございます。
#274
○橋本敦君 強制捜査も行わずいまだに一件の検挙もないというが、今度は、検挙も行わず具体的に捜査を遂げずに不起訴にするようなことがあっては、まさにその責務に背くでしょう。暗黒政治の魔の手を温存させることになるでしょう。
 最後にこの件について総理に伺いますが、こういう警察官の電話盗聴は憲法に違反するような重大な事件であるという、こういう御認識に立ては、今後は絶対にやらせない、政府の責任者としてそういう立場を貫いて指示をするなど具体的な処置をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#275
○国務大臣(中曽根康弘君) 捜査そのほかは厳正、公平に行われるようにしておりますし、また、こういう事件が起きないように再発防止についても厳重に指示しております。
#276
○橋本敦君 それでは、次の問題に移ってまいります。
 核兵器の廃絶という大事な課題であります。
 言うまでもありませんが、かつて三発だった、四発だったと言われた原子爆弾、原子兵器は、今や核抑止論、均衡論などそういう口実の中での果てしない核軍拡の中で五万発を超え、まさに人類の危機が深まるという状況にまでなってきました。したがって、我が党がかねてから言っておりますように、核保有国がまず緊急の重大課題として核廃絶を国際協定によって政治的に合意して、人類の願いにこたえる大きな道を開いていかねばなりません。今日の世界の大勢は、核兵器廃絶、核兵器の大幅削減の方向に大きく動こうとしていると思います。
 総理も所信表明で、「特に核軍縮の問題については、レイキャビクにおける米ソ首脳の話し合いを踏まえ、中距離核等の削減に向けての大きな進展が期待されております。」とお述べになりましたが、これは、総理も今日の世界の大勢が核兵器廃絶に向かっているという、そういうことを御認識してのことでしょうか。
#277
○国務大臣(中曽根康弘君) 米ソ両国間におきまして、お互いに核兵器を廃絶しようというそういう気持ちを持っていろいろ折衝が行われている、そう認識しております。
#278
○橋本敦君 その折衝を総理は支持される立場でおっしゃったと思うのです。ところが衆議院での我が党の岡崎議員の質問に対して、果たしてソ連がその核廃絶の条約交渉をやる立場に踏み切るかどうか甚だ疑問であると、こう述べられました。これは事実に反する重大な発言ではありませんか。
 なるほど自民党がおつくりになった「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」というようなパンフレットは、これは、ソ連は核廃絶をしません、こう断言したり、あるいは通常軍備がなくならない限り核廃絶はないなどと間違った考えを書いていることは何度も指摘したとおりでありますが、今日の世界の大勢から見て、ソ連が核廃絶のそういった交渉に踏み切るかどうか疑問であるというのは、これはまた現実の事実に反するのではありませんか。今、ソ連は、ブレジネフ時代と違って、交渉でも具体的にあらゆる核兵器の廃絶を目指して現に努力しているではありませんか。
 例えば、まず第一に、一九八四年の十二月には、我が党とソビエト共産党との両党会談でも、核兵器を不法なものとして、その廃絶を人類にとって死活的に重要な課題としてはっきりと宣言をいたしましたが、それが具体的に世界政治の場でも八五年の一月八日発表されました米ソ共同声明になって、グロムイコ外相、シュルツ国務長官との間で、双方は会談を通じて核兵器と宇宙兵器に関する来るべき米ソ交渉の主題と目的について討議したとして、双方は来るべき交渉があらゆる領域での核兵器の完全廃絶をもたらすべきであると信ずると、明確にその方向を明らかにしました。
 そしてさらに、それだけではありません。ゴルバチョフ書記長は、八六年一月十五日に声明を出して、紀元二〇〇〇年までに期限つきで核兵器の完全廃絶をやろう、こういうことをはっきりと訴えておりますし、八六年のあの、総理もしばしばおっしゃるレイキャビク首脳会談、この会談の後の記者会見でもはっきりとゴルバチョフ書記長は、要約すれば、我々は米大統領との会談でミサイルの廃絶と削減についても同意したのである。核兵器の大幅削減を行う我々の用意について我々は次のような問題を立てた。核兵器の廃絶の具体的局面に入ると同時に、検証について完全に明快であるべきであるとして、総理がいつもおっしゃる検証についても、この検証の受け入れはもちろん、厳重な、完全な信頼を保証する、そういう検証を支持してやりますということもはっきりと会見で言っております。こうして、核兵器削減のためにすべての方向に向けて打開をしていき、核戦争の脅威を取り除き、核のない世界を可能にするようにしよう、こうはっきり言っております。
 こういうはっきりした事実があるにもかかわらず、なぜ総理はソ連が核廃絶に踏み切るかどうか疑問だなどとおっしゃるのでしょうか。
#279
○国務大臣(中曽根康弘君) 核廃絶は我々自由民主党及び現内閣が強く主張しておるところであり、そのための米ソ首脳会談に向けても我々はこれをできるだけ早期に実りあるものを行わさせようと努力してきたところであり、そういう方向に向かって潮の流れは動いてきておる。私が二年ぐらい前から申し上げておるとおり来ておる。これは我々としても喜ばしく感じておるところです。しかし、今までの足取りを見てみるというと、一進一退、ジグザグで動いているという点は認めざるを得ない。これは恐らく両国とも内容についていろいろまだ十分了解するところに至らず、あるいは国際関係や国内諸情勢というものも絡んでいるんでしょう。
 そういうわけですから、そう共産党の皆さんみたいに楽観的に物を考えるということにはいかぬ。やはり物は単に希望的観測だけではなくして、冷厳に見詰めていく必要がある。そして、冷厳に厳しく厳しく見詰めて、どこにその難路があるか、隘路があるか、それを一つ一つ取り崩し、ほぐしていくようにするところにやはり現実的前進が行われる。我々はそういう渋い見方で物を見ておる。ちょっと甘さが、あなた方と違う点があるんじゃないか、そう思っております。
#280
○橋本敦君 総理、我々も厳しく見ているんです。本当に核廃絶を緊急の課題として核保有国がまず政治的合意をと、こう言っていますが、それに反対をし、それを妨害する勢力が世界のあちこちにもある。そのことは私たちも重大な問題として認識をして、だからこそ世界でこういった核兵器廃絶のための国際統一戦線をつくろう、国内でも非核三原則を含めて完全な核廃絶のために運動しよう、こう言って頑張っているのであります。むしろ中曽根総理、あなたの姿勢こそが、いろいろな口実を設けて核廃絶に向けて断固と進もうとしない障害をつくり出しているのではないか。その意味で、INFのあのアラスカへの配備発言というのはその象徴的な一つだと私は思うのであります。
   〔委員長退席、理事林道君着席〕
 ソビエトのゴルバチョフ書記長は、七月三日、ガンジー・インド首相歓迎会でも、ヨーロッパでの中距離核ミサイルの核廃絶、これを第一歩と位置づけて、アジア・太平洋地域の核軍縮についても米国と交渉に入る用意があると、こう言明しています。また、ゴルバチョフ書記長は、五月の十九日、ベトナムのグエン・バン・リン書記長と会見をいたしまして、こういうように言っています。我々は今ヨーロッパから核兵器を一掃するために積極的な方針をとっているのである、この核の危険を世界のほかの地域に移すためにそうしているのではない、我々の目的は、一九八六年一月十五日に我々の宣言したプログラムに従って、核兵器のストックが最も大量に集積されているヨーロッパを手始めに、手始めにですよ、すべての大陸を二〇〇〇年までに核兵器から解放し、その土台の上に包括的な国際平和、安全保障体制を築くことにあるとその目標を明確にしています。
 こういう世界の流れがあるときに、中距離核ミサイルの問題に関してアラスカに配備せよなどとおっしゃる総理のこの発言は、これはまさに核兵器の廃絶どころか新たな緊張と配備の拡大を要求するということになる。そうではありませんか。
#281
○国務大臣(中曽根康弘君) 核兵器廃絶というものは具体的に一歩一歩前進しなければ意味がないし、実効性は上がっておらぬのです。演説はだれでもできるのです。問題は実行です。我々はそれを冷厳に今見詰めておる。そして、これを促進しようと努力しようとしておる。私がアラスカ云々という発言をいたしましたというのは、この席上でも申し上げましたが、それこそ核兵器廃絶のために交渉の過程でそういうこともアメリカに対して許容する、そういう意味で申し上げたので、廃絶のためにやっておるのですよ。もしここに置いていいというならば何もそんなことは言いません。シベリアがゼロになればアメリカもゼロになる。シベリアが残ればアメリカも残る。それでは両方ゼロにしよう、そういうところで核兵器の交渉というのは行われておる。そういう意味で、シベリア・ゼロにするための努力として御理解願いたいと思うんです。
#282
○橋本敦君 総理、それは論理として大きな飛躍があると私どもは思うんです。なぜなら、シベリアの中距離核ミサイルを廃棄せよということが核をなくすんだとおっしゃいましたが、なくすんじゃなくて新たにそこに置けというんですから、論理矛盾そのものであります。
 そしてそれだけではありません。ゴルバチョフがこのアジアにおける、シベリアにおける百発の中距離核ミサイルについてこ丸もなくす方向で努力するということをはっきりと言っているんですよ。先ほどお話しをしたベトナムのグエン・バン・リン共産党書記長との会談でもこう言っていますよ。なぜソ連は米ソに中距離ミサイルの弾頭百個ずつ残すことに同意したのかという質問が出されている。答えよ。これは一定の妥協である、米国政府がソ連に向けて配備した核兵器をアジアに残そうとしているので我々も対抗してそこに力のバランスを維持せざるを得ない。米国はアジア・太平洋地域に強力な核のこぶしを集中し、自分の艦船や他国領土の軍事基地の核兵器のストックを補充している。
 そこで総理、大事なことは、まさにアジア核ゼロ、これをやるためには、ソビエトに対してもSS20を撤去しなさい、同時にアジア・太平洋地域、ここでもアメリカは核の配備をやめなさいというのが基本的な課題ではありませんか。アラスカに配備せよではありません。どうお思いになりますか。
#283
○国務大臣(中曽根康弘君) 軍縮というものは、お互いが均衡を目指して、そしてさらにそれをレベルダウンしてゼロにしよう、そういう現実的過程で進んでおる。しかも軍縮の場合には、同じカテゴリーの兵器を並べてそれを減らしていこう、ゼロにしようと、同じカテゴリーで物は進んでいる。ですから、SS20に対してはパージングUとかあるいはクルージングミサイルとか、そういうカテゴリーで進んでおるわけですよ。ですから、SS20百、ヨーロッパはやめてアジアに置く、我我はアジアに置くということは認めないと。それはアジアとヨーロッパは平等でなけりゃならぬし、アジアの犠牲においてヨーロッパが解決するということは認めない、そういうことを私は常に強くヨーロッパの人にもソ連の人にも言っておるわけであります。
 しかし、アジアに百置くとソ連が主張しておるという事態がありました。そこで、レイキャビクでゴルバチョフ書記長とレーガン大統領が会ったときに、もしソ連がアジアに百置くならアメリカはアラスカを含めてアメリカの木生に百置く権利を留保する、そういう話がレーガン側から行われたと承知しておる。そういう形で物が一時進んでおりました。それで私は、どうしてもアジア、これをゼロにする、そういうことを実現するためには、核軍縮の場合は均衡ですから、ですから結局相殺するものを持たなければアジアのゼロは実現できない、そういう意味においてレーガン大統領のそのときの発言を容認した。そうしてアジア・ゼロを実現してもらいたいという一念に駆られて努力してきている、そういうことなのであります。
 ところがソ連は、アジア地域においてはSS20以外にもいろいろ核兵器を持っているでしょう。それは恐らくないとは言い切れないでしょう。そういう意味において、SS20とかパージングU以外のものについては、今度はそれぞれのカテゴリーにおいて将来話があるかもしれません。SS20に対してほかのカテゴリーのものを持ってくるというのは、今までの軍縮のこの交渉の経緯から見てそれはらち外の話にこれを波及させていると、そういうことなのであります。
#284
○橋本敦君 総理がいつもおっしゃる均衡、そして縮小とおっしゃいますが、歴史的に今日までの経過を見ても、均衡から縮小ではなくて均衡から拡大と進んできました。だから、そういう意味で、均衡論というのは実は核拡大論だという歴史的実証がなされているわけであります。そして今、同じカテゴリーでとおっしゃいましたが、基本的にはすべての核兵器の廃絶、これが課題であるし、ソビエトのSS20、これに対する同じカテゴリーその他いろいろあるとおっしゃいますが、朝鮮にはランスミサイルが南に置かれておる、そういったことも含め、あるいはそれだけではありません、今あなたはいろいろ核がシベリアにもあるとおっしゃいましたが、それこそアジア・太平洋地域にアメリカは、海洋を含めて膨大な核優位を今も保持しようとしているじゃありませんか。
 だから、そういうことを含めて、本当にアジア、これが非核、そのことを貫いていくためには、我々共産党は、かねてからアジア・太平洋非核地帯、これを主張してまいりましたが、同時にSS20の撤去も目指して具体的にやっぱり話を進めていかねばならぬという立場に立っております。
 そこで、総理にもう一つ伺いますが、総理は、ソビエトはシベリアに新たにヨーロッパから中距離核ミサイルを百持ってきて配備すると、こうお考えですか。そこの事実はどうなんですか。
 きのうもこの予算委員会のお話を伺っておりますと、シベリアに百のSS20を置こうという考えがあるという御答弁がありましたので、間き方によってはヨーロッパからわざわざ持ってくるように聞こえたものですから、確認したいんです。
#285
○国務大臣(中曽根康弘君) 私の記憶では、SS20は四百四十一ですかありました。そのうちたしか二百七十ぐらいがアジアにあるんですね。ですから、アジアに残置すると、それが正確な表現でしょう。
#286
○橋本敦君 おっしゃるような状況で、改めて持ってくるんじゃなくて、戸といってもアジアにあるのを百まで削減するということですからね。そこのところが非常に大事です。そしてそれをゼロにしていく課題がこれから大事な課題だということでありますが、そういう問題に関連をして総理に一つ伺いたいのは、今、アジアでのその問題はいろいろとこれからの課題も多いということでひとまずおくとして、ヨーロッパでの中距離核ミサイルの廃絶を他の地域と切り離してこれを行うということについて、総理は御賛成なのかどうなのでしょうか。
#287
○国務大臣(中曽根康弘君) 安全保障、核兵器の廃絶というものはグローバルベースで行われなけりゃならない、そういうことをかねがね私は主張しておるので、アジアもヨーロッパも平等に削減、廃絶はなさるべきであろう、そう考えておるんです。
#288
○橋本敦君 基本的にはそうですが、アジアの問題が片づかなかったらヨーロッパのせっかく交渉が進んでいる中距離核ミサイルの廃絶、これの合意も延ばす、そういうことになったら、グローバルゼロとおっしゃるその言い方は、ヨーロッパの非核をまず重要な核兵器削減の第一歩としてつくり上げるそのことをも防げることになりませんか。それは、グローバルゼロと言いながら事実上グローバルプラス、存置することになりはしませんか。ヨーロッパの問題について言うなら、西ドイツはパージングIAというミサイルを留保すると言っておりますが、総理はこの点のお考えはいかがですか。
#289
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、ジュネーブあるいはレイキャビクにおける米ソの軍縮交渉というのは、同じカテゴリーのものを減らしていこう、そういう話で、まずICBM、大陸間弾道弾、これは五〇%削減とか、あるいは今言ったパーシングUとグラウンドクルージングミサイル、これが見合ってなくそう、今のは五千キロですが、その下の五百キロから千キロメーターの間のもの、SRINF、これもそのものをお互いが減らそう、それからそれ以下のものと、そういうふうにちゃんと同じカテゴリーのものを減らしていこう、そういう話になっておるんです。これはあなたもお認めになりますね。
 ですから、ゴルバチョフさんがSS20をやめる、それじゃほかのSS20に見合うグラウンドグルージングミサイルとかあるいはパーシングU、それでないほかのものを持ち出すというのは私は間違いだと先ほど来申し上げたんです。そういうカテゴリー別にやっていることをアジアにおいても適用さるべきなのが軍縮交渉の今までのパターンなのであって、そういうやり方自体が大事なのであります。ルール違反をやってはいかぬのです。ソ連がルール違反をやるような発言をしているから私は警告して言っているのであります。
 それからヨーロッパの場合におきましても、今言ったようにパージングU、それとクルージングミサイル対SS20、そういう範疇でやっているのでありますから、それ以外のものについては米ソの交渉でどういうふうになるか推移を見守っておるということです。
#290
○橋本敦君 西ドイツの問題については見守っているということで、はっきりお答えになりませんでした。
 ソビエトがルール違反だというお話がありましたが、それはルール違反ではなくて、先ほどから言っておりますように、アジアにおいても、ヨーロッパ非核、これを第一歩として次いで非核をつくる、それをやろうということをはっきりと言っておるんですから、その問題について、ルール違反を理由に、ソビエトが努力しているその問題を、被爆国の総理としてアジアにおける非核をどう貫くか、この姿勢を明確にしないでクレームをおつけになるというのは私は間違っていると思います。
 ヨーロッパでのINFの、中距離核ミサイルの廃絶は、核兵器の削減に向けての大事な一歩になるはずです。私ども共産党は、緊急課題として、すべての核兵器の廃絶、そのために国際協定を含む政治的合意がまず大事だと言っておりますが、部分的にとられる処置であっても、それが核戦争を阻止するために役立つ、核兵器の廃絶に向かって大きく前進する一歩になる、それならばそれはそれとして当然評価して進めるべきだ、こう考えていますから、ヨーロッパのこの問題についてもこれはやっぱり早く進めるべきだという立場で聞いておるのでありますが、総理は、そうじゃなくて、グローバルゼロを口実にして、あるいはグローバルゼロを理由にしてはっきりとこれについて態度をお示しにならない。それどころか、アラスカ配備発言を撤回なさらないというのは、これは納得できることではありません。
 しかし、この問題では論争時間が限られておりますから、次の第三のココム問題について質問をいたします。
 今、ココム問題は大きな問題になってまいりました。はっきり言っておきますが、我が党はもちろん武器輸出には反対であります。問題は、東芝事件でクローズアップされたこのココムとは一体何か。これは一九四九年、冷戦体制下につくられたものでありますけれども、普通「対共産圏輸出統制委員会」、こう訳されておりますが、正確な英語で言えばコーディネーティング・コミッティー・フォア・エクスポート・コントロールですから、正確に訳せばこれは「対外貿易調整委員会」とでもいいましょうか。はっきりした訳語が外務省にありますか。そして、このココムの本部は一体どこにありますか。この会議のために日本から出席をするのはどの省のどういう役職の方が行かれますか。そして、ここでつくられる禁輸品日、ココムリスト、これ自体は公表されますか。そして、ここで決まったことは国際協定として、あるいは国際的に法的拘束力を持つ有効なものとして存在するのですか。
 この辺、まず外務省、答えてください。
#291
○政府委員(渡辺幸治君) お答え申し上げます。
 ココムとは、パリにございます自由民主主義諸国間の共産圏に対する輸出規制を非公式に協議いたします機関でございまして、英語で恐縮でございますけれども、コーディネーティング・コミッティー・フォア・ストラテジック・エクスポート・コントロールのコーディネーティング・コミッティーの冒頭部分の略称でございます。
#292
○橋本敦君 本部がどこにあって、だれが行くのか。法的拘束力があるのか。
#293
○政府委員(渡辺幸治君) ココムとは、先ほど申しましたように、自由民主主義諸国の共産圏貿易に関する非公式の協議機関でございまして、場所はパリにございまして……
#294
○橋本敦君 パリのどこにあるの。
#295
○政府委員(渡辺幸治君) 非公式でございますから、それは公表されづらいということでございます。
#296
○橋本敦君 効力がありますか。まだ答弁が残っております。決まったことは法的効力があるのか。日本から行くのはどの省のだれが行くのか。
#297
○政府委員(渡辺幸治君) お答え申し上げます。
 ただいま申しましたように、ココムとはそういう共産圏に対する戦略物資の輸出規制に関する非公式の協議機関でございますから、拘束力はございません。
 出席者につきましては、外務省そして通産省の担当者でございます。
#298
○橋本敦君 その担当者の名前は公表できますか。
#299
○政府委員(渡辺幸治君) お答えいたします。
 この会合は週に約一回ずつ開かれておりまして、それ以外に別途ココムのリストのレビューであるとか、あるいはハイレベルの会合がございます。
 週に一回の定期的な会合については、パリの日本大使館員が出席しております。
#300
○橋本敦君 秘密のベールに覆われている。言ってみれば冷戦構造時代の遺物なんですよ。しかも、非公式の会議だと言いながら、事実上、今度の件を見てごらんなさい、物すごい圧力で日本にプレッシャーをかけてくる。日本がこのココムに入ったのは安保条約が発効した翌年でありますが、アジア地域で、あるいはNATO諸国以外で入っているのは日本だけ。
 そういう状況の中で、何と、通産大臣の答弁がいろいろありましたように、東芝の機械がソビエトの原子力潜水艦の音紋を消すのに具体的にそれが働いたかどうか具体的な証拠ははっきり国民にはわからない。そして、あなた自身もわからないのでしょう。いろいろな話を聞いた心証だというのでしょう。そういうあいまいなことで今度アメリカの要求で外為法まで罰則を強化する。疑わしきは罰せずと言いますが、今度は疑わしき者はどんどん罰するという、そういうことになる。まさに、日本の憲法秩序に反するだけじゃありません。
 こういったココム体制から脱却して、日本の経済主権、貿易の向山、これを確保するのが進むべき道ではありませんか。
#301
○国務大臣(田村元君) ココムといういわゆる紳士協定というものがあるわけでございますから、日本が加盟しておる以上これを守るのは当然だと思います。
#302
○理事(林ゆう君) 関連質疑を許します。上田耕一郎君。
#303
○上田耕一郎君 極めて変なことが起きていると思うんです。首相ね、ソ連に対しては外為法まで改悪してココムに基づいて戦略物資は一切禁止を強化するというわけでしょう。ところが、アメリカに対しては武器輸出三原則という政府の方針並びに国会決議を無視して協定まで結んで軍事技術を供与し、いよいよSDIの研究の協定まで結ぼうというのでしょう。おかしくはありませんか。
#304
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカは日米安保条約を結びまして、日本の防衛に関しては共同対処の行為をやっておる同盟国であるからです。
#305
○上田耕一郎君 そうすると総理の立場は、アメリカの軍事力はソ連より強くなれば強くなるほどいい、ソ連の原子力潜水艦は音がうるさければうるさいほどいいということでしょう。
 そうするとあなたは、均衡と抑止、均衡と抑止というのを口が酸っぱくなるほど言うけれども、バランスじゃないじゃないですか。結局、対ソ軍事優位、力の政策、これが本音なんじゃないですか。
   〔理事林道君退席、委員長着席〕
 私は今度アメリカへ参議院の議員団で行きましたけれども、産業空洞化ところじゃなくて、政治も空洞化ですよ、アメリカは。そういう対ソ脅威論、対ソ敵視論、とんでもない神話に基づいてアメリカがやっているのに、あなたはそれにくっついてアンバランスを主張しているのじゃないですか。
#306
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほどから申し上げているように、均衡を維持しつつレベルダウンをしていく。あのようにくどくどしく申し上げたとおりなのであります。
#307
○上田耕一郎君 中曽根さんの論理は完全に崩壊したことが今の答弁でも明らかです。均衡維持じゃないんです。
 粟原防衛庁長官、この間ウェッブ海軍長官との間で、このココム違反事件と関連して対ソ潜水艦探知能力向上、日米協力を決めだそうですが、内容は何を決めましたか。
#308
○国務大臣(栗原祐幸君) まだ内容は何も決めていないんです。
#309
○上田耕一郎君 これもバランスがとれていないですよ。野田さんには答えたでしょう、ハワイでやるということを決めたと。私には一切答えない。これは反共主義の権化みたいなんですね、アメリカにくっついて。
 さて、沖縄のホワイトビーチに海上自衛隊の海洋観測所があります。下北半島にもあります。公年の八月六日付の沖縄タイムスによりますと、この海洋観測所で海底ケーブルを延ばして潜水艦作戦用の海中データを収集して米軍に提供している、こう大きな記事が載っている。坂東所長はアメリカの技師団もここに来ているということを明らかにしました。つまり、ソ連の原潜の追求用データ収集、その米軍のシステムの軍事分担を下北並びにホワイトビーチの海洋観測所でやっているんですね。それからまた、先ほどのウェッブ海軍長官とのあれも決めた。OTHレーダー設置も問題になっているけれども、これもソ連のバックファイア向きだということを認めております。
 栗原防衛庁長官、これらは、事実上、ソ連を仮想敵国として日米の軍事協力を平時から進めるということになりませんか。
#310
○政府委員(西廣整輝君) 御承知のように、海というのは決して一様ではございませんで、海水の密度であるとか海温の層、レーヤーがあるということでありまして、例えば、ソーナーのすぐ下にあっても海温が違っておるとある角度で音波が曲がってしまって探知できないといったような状況がありまして、それが四季でいろいろ変わってくるとかいろんな状況があるわけです。そういう意味で、対潜作戦を効果的に行うためにはやはり我が国周辺の海洋の海象状況あるいは海水のいろいろな分布、そういったものを常日ごろから調べておくということは非常に大事であります。そのために、今先生が言われたように下北と沖縄に海洋観測所があるわけでありますが、そこでさまざまなデータをとっておるというのが実情でありまして、とられたデータは横須賀の方に送られてきていろいろ分析をするわけであります。
 そういったことで得られたデータについて、我我としては、必要なものについてはアメリカと情報交換を行う場合もありますけれども、決してアメリカとどうこうという今お話しのようなことではないわけでございます。
#311
○上田耕一郎君 総理にお伺いします。
 これまで政府は、仮想敵国は憲法上とらない、また防衛対象国という態度もとらないとしてきているんですけれども、事実上、ソ連の原子力潜水艦に対してこれだけ日米で一緒にやろうというのでしょう。ソ連を防衛対象国あるいは仮想敵国、そういう態度に変更したんじゃないですか。
#312
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本は仮想敵国を設けておりません。ソ連ももちろん仮想敵国としては考えておりません。しかし、日本防衛に必要な諸般の情報あるいはデータ、そういうものは常日ごろ蓄積して万一の際に備えるというのは防衛の本義の一つであります。
#313
○上田耕一郎君 八七年度のアメリカのワインバーガー長官の国防報告の中には、日本はソ連の敵対国だとはっきり書いてあるんですよね。そういうアメリカのソ連敵視政策、ソ連の侵略の脅威から自由世界を守るという本当に神話みたいなものに日本はくっついて、今度はこの東芝のココム事件、これを契機に貿易、経済までがんじがらめになって、アメリカとあなたの言う日米運命共同体路線をまっしぐらに走ろうとしているんです。根源には日米軍事同盟があるので私どもはこの破棄を主張しますが、まずココムから脱却すべきだということを言いたいと思います。
 田村通産相、こういう日米軍事同盟のおかげで大変なことになっているんだが、報道によると、アメリカ議会内には再発防止策として外為法改正、これが一つ。もう一つは、ソ連への技術流出を防ぐための国家機密法の国会再提出、これを要求する声があるというのが東京新聞の二面トップで報道をされていますが、あなたは、記者会見で国家機密法問題についても触れたけれども、事実はどうですか。
#314
○国務大臣(田村元君) その記事を私まだ読んでおりませんが、それは完全な誤報ですね。
#315
○上田耕一郎君 しかしこれは、誤報と言うが、米関係筋ははっきり述べているんですね。「強硬派議員が日本に期待する再発防止策の中には、」「国家機密法の国会再提出が含まれている」と言って、国会議員の名前まで挙がっているんです。
 首相、こういう問題に関連して、国家機密法、この再提出をココムの問題に関連して考えることはまさかないでしょうね。
#316
○国務大臣(田村元君) 今のあなたの話を承っておると、そういうことを考えておる国会議員がアメリカにおるという。それはどんな考え方を持っておるのもおるでしょうよ、日本だってあなたのような考え方を持っておる人だっておるんですから。それまで私の責任にされちゃたまりませんよ。
 私に対してそんな話は全然ありません。これは随分きついことを言うたのもおりましたけれども、そんな話は全然出ませんでした。
#317
○上田耕一郎君 首相、どうですか。
#318
○国務大臣(中曽根康弘君) 今のお話でよくおわかりだと思います。
#319
○橋本敦君 バランスを欠く答弁ばかりじゃないかと思いますよ。
 次に、マル優の廃止問題に質問を移しますが、その前に税制協議会問題についてはっきりさせておきたいと思うのです。
 この協議会が我が党を排除しているということは、かねてから我々は、議会制民主主義に反する、六百万以上の有権者の支持を受けて国会に議席を持っている公然たる我が党を排除する、こんなことは許されぬと言ってきました。
 我が党が議長裁定に賛成しない、反対したのは当然です。なぜなら、公約違反の大型間接税やマル優廃止、これをやる火種を残す、これは圧倒的多数の国民の意思に沿うことではありません。しかし、我が党は、裁定には反対したけれども、院内に正式に協議会がつくられるなら当然参加をすることを表明し、議長も共産党が入るのは当然だ、こう確認をされたんです。ところが、今我が党を排除してこれがやられているんです。総理も大蔵大臣も、これが国会の公式の公的な機関だというようにおっしゃった。
 そこでお伺いしなくちゃならぬのですが、公的機関だと言うのなら、いつ、国会のどの機関でこれの設置が議決をされたのか、言ってください。
#320
○国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと今持っておりませんが、議長のあっせんは四月二十三日であったかと思いますが、各党で構成を協議するようにということでございました。その結果、今日まで十何回にわたり御協議が行われておりまして、これは天下の公党が議長の公のあっせんのもとになさっておることでございますから、私的な行為だとは到底思えません。
#321
○橋本敦君 大臣、明確に答えてください。国会のどの機関で議決をされたのかどうか、これが一つ。どうぞ。
#322
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は政府側でございますのでその点つまびらかにいたしませんが、国会の機関でというのはどういう意味でしょうか。議長があっせんをされて、各党がそれを受けられて、そして今日まで協議が続けられているとすれば、共産党のお入りにならなかった事情はつまびらかにいたしませんが、これは私的な相談であるというふうには到底思えません。
#323
○橋本敦君 違います。例えば衆議院には衆議院公報があり、参議院には参議院公報があるでしょう。私は衆議院の委員部にちゃんときのう確認して聞いたんです。この税制協議会の設置は衆議院公報に登載されていますか。――されていません。なぜか。院の議決で設置されたものでないので公報には出せませんと言っているんです。これまで、議会制度協議会、これは議運の議決で設置されたから公報に載っています。ロッキードの問題で問題になった政治倫理協議会、これも議院運営委員会で議決されて設置をされたから公報に載っています。公報に出ていないこと自体が、国会の、院の正式機関の議決でなされたものでない、いわば公的なものでないことを証明している、宮澤大臣が御答弁になったように議決された事実はないのですから。にもかかわらずこれを公的機関だと言うのは筋が通りませんし、この協議会は初めから非公開を確認して進めていますから、国会の正式機関で初めから秘密会、非公開を前提とするような機関が公的機関と言えますか。断じて私どもは承服することができません。
 次に、具体的にマル優廃止問題に入りますが、なぜこれだけ国民が反対するのか。これは結局、庶民には大増税になり大金持ちには減税になる、庶民の感情、気持ち、これが許さない。そしてまた同時に、あの選挙できっぱりと大型間接税反対、売上税反対、マル優廃止反対と国民が意思表示をして、自民党が全国で大きく議席を減らして、国民はもう決着がついたと思っているのにまたぞろこれを出してくる。まさにこれは国民の期待に背く行為ではないかというのが基本的な国民の怒りでしょう。
 大蔵大臣に伺いますが、まず、庶民にはゼロから一遍に二〇%税金をかけますが、お金持ちの資産所得を例えば例にとってみましょう。あのNTTの株は一株百二十万円で売り出されましたが、調べてみますと、きょうは二百三十二万円になっているそうですね、大変な値上がりです。だから、これを百株持っていてきょう売りますと、それは一億一千二百万円の利益になる。これに税金がかかりますか。
#324
○政府委員(水野勝君) 現在、有価証券の譲渡による所得は、一定の継続的取引等の場合を除きましては原則として非課税となっておるわけでございます。
#325
○橋本敦君 今の場合非課税ですね、確認します。百株。
#326
○政府委員(水野勝君) そのとおりでございます。
#327
○橋本敦君 そう答えてくれれば一遍で済むんです。
 問題は、株や有価証券で利益を上げても基本的には非課税で税金ゼロだと、こういうことをおいておいて、そうして庶民には大事な大事な生活資金の一部である貯金の利子に二〇%も課税をする、これはやっぱり基本的におかしいですよ。
 だから、税調会長の小倉さんもどう言っているか。金持ちにとって日本は総合所得ではない。月給だけは総合所得になっているけれども、株の売買でもうけるとか配当などは総合されていない。富裕階級はそういうものが主たる所得の源泉です。所得税を重視して総合所得に持っていくべきだ。ところがそれがなかなか通らぬ。こう言っておられますね。
 大蔵省に具体的に聞きますが、廃案になった政府法案で計算いたしますと、年収五百万円のサラリーマン四人世帯の減税額は幾らになりますか。
 同時に、ついでに聞いておきます。同じ五百万円で、夫が三百万、妻が二百万、専業主婦控除いわゆる配偶者特別控除が適用されない共働きの世帯で、子供を二人夫の扶養に入れるとして計算しますと減税額は幾らになりますか。
#328
○政府委員(水野勝君) 先般御提案した減税案による計算ということでございますので、所得税につきまして計算をいたしますと、御主人だけ五百万、この場合は二十二万五千円が十九万二千円になる。三百万と二百万の場合でございますと……
#329
○橋本敦君 減税額を言ってください。
#330
○政府委員(水野勝君) 減税額は三万二千六百五十円。三百万円と二百万円の場合は一万五千円でございます。また、これは所得税のみの場合でございまして、住民税を合わせますと、前者の場合は六万八百円、後者の場合は一万九千六百円でございます。
#331
○橋本敦君 わかりました。
 ですから、どうなるかといいますと、減税は今言ったように六万及び一万九千円、そしてマル優の廃止の結果、五百万円の貯蓄があるとしますと、利率五%で利子があるとしますと、それに対する課税二〇%で五万円になる。そうしますと、何のことはない、政府法案で減税を受けたものは全部飛んでしまうどころか、共稼ぎ世帯では、何と減税はたった一万九千円で、預金利子に対して、五百万貯金を持っていると五万円もかかるということになるでしょう。五百万の預金に対して五万円もかかる。飛んでしまうんですよ、減税額。飛ぶところか大増税ですね。こういうようなことをこのマル優廃止ということで、庶民の大事な貯蓄、これに対して大増税の負担を押しつけるんですから、国民が反対するのは当たり前です。
 そこでもう一つ聞きますけれども、中曽根総理は、六十五歳以上のお年寄りは非課税にするんだ、こうおっしゃいました。しかし肝心なことは、六十五になるまで一生懸命働いて老後のためにと貯金をし、そして資金を蓄えて、働けなくなったらそれで暮らしを立てなくちゃならぬというので庶民は頑張って苦労して貯金しているわけです。六十五になってからマル優を認めてもらっても意味ないじゃないですか。お年寄りたちや若い人たちも含めてみんなそう言っています。労働省でも、老後のためには一千五百万から預金が必要だということを言っているでしょう。だから、そういう意味では、これは全く庶民の感情に合いません。また事実に合いません。非課税のまま残るのは一体どれくらいのパーセントですか、大蔵省言ってください。
#332
○政府委員(水野勝君) 先ほどの五百万円の方の数字でございますが、先般の保案によりましても、サラリーマンの方の平均の年間収入は五百八十五万円、それから平均の保有額は四百七十四万円、そうしたものの中でのマル優対象等のものを選び出しますと、平均といたしましては四万六千円の減税、利子課税は三万円程度でございまして、十分一万円以上の減税に平均値としては相なっておるわけでございます。
 それから、お年寄りの範囲でございますが、お年寄り……
#333
○橋本敦君 全体の残るのは。
#334
○政府委員(水野勝君) それから身体障害者、母子世帯等でございまして、現在の非課税貯蓄の四分の一程度は引き続きまして非課税と相なるものと先般の案では予想されておったところでございます。
#335
○橋本敦君 はっきりしたでしょう。たった四分の一しか残らない。これで「樅ノ木は残った」じゃないが、マル優は残ったと言うわけにはいかぬですよ、総理。まさにこのマル優廃止はあなたの公約違反であり、選挙の結果の国民の審判の結果に背くものじゃありませんか。
 先般の新聞記事、七月十三日、読売で報道されておりますが、河本前国務相が青森の八戸市で演説をされましてこう言っておられますね、「自民党が公約したことを実行する内閣でなければならない」、「自民党は売上税問題で国民にウソをつく政党という印象を与えてしまった。」と、こう言っておられます。総理の責任は重いと思いますが、公約違反、国民の選挙の審判に背を向けるというその姿勢を改めてもらいたい、いかがですか。
#336
○国務大臣(中曽根康弘君) 前からくどく言っているように、公約違反はしておりません。
#337
○橋本敦君 総理、事実に反するということはもう時間がありませんからくどくど言いませんが、国民は公約違反だと、こう思っていますよ。その証拠に新聞のコラム欄にこういう記事が載っています。
 総理は、宰相つまり総理大臣の条件、資格をいろいろとおっしゃいまして、「人類愛」「同胞愛」「愛国心」「千万人と言えども我行かんという強固な意志と実行力」、こうおっしゃいました。しかし「宰相の条件に、首相がつけ加えるのを忘れたことが一つあった。」、失礼だから聞きませんが、答えはこう書いています。「それは公約を守る人であること。」、こう書いています。国民は公約違反だと、こう思ってマル優存続を強く要求しています。そのことをもう一度強く主張して、次の質問に移ります。
 次の質問は、交差点の交通事故の問題なんです。なぜ何遍も私どもがこれを持ち出し質問をするのかといいますと、皆さんもお認めになるように、人の命、人間の生命は地球よりも重いということわざがありますように、安全であるべき交差点で交通事故に遭い命を落とすという、そういう国民が一人もないように早くしたいという、そういう立場からです。
 まず伺いますが、先日十四日午後一時四十五分ごろに神奈川県大磯の国道一号線の交差点で起こった死亡事故がありました。どういう事故で、原因は何か、説明してください。
#338
○政府委員(内田文夫君) お答えいたします。
 本件の事故はことしの四月十四日、神奈川県の大磯にあります国道一号線上の交差点で起こったわけでありますが、この交差点のちょうど南側から青信号に従いまして国道に入ってここで右折しようとした普通貨物車が、これは右折する場合には当然横断歩道を通行します歩行者の安全を確認しなければならない義務があるわけでございますが、この確認を怠りまして、ちょうどこの国道の横断歩道を南から北側に向かって歩いておりました主婦の方をひいて、約五時間後に死亡された、こういう事案でございます。
#339
○橋本敦君 被害者のお年は。
#340
○政府委員(内田文夫君) 被害者のお年は六十五歳でございます。
 運転者につきまして業務上過失傷害容疑で現行犯逮捕いたしまして、詳細な事故原因等につきましては現在捜査中でございます。
#341
○橋本敦君 青信号で交差点を渡って交通事故に遭って亡くなる、けがをする、これは大変なことですね。
 伺いますが、交通事故全体の中で交差点及びその付近で起こる事故の率はどのくらいですか。
#342
○政府委員(内田文夫君) 昨年中の交通事故の中で、交差点の中及びその周辺、と申しますと交差点から三十メートル周辺ということで、殊に市街地ですとほとんど道路が入ってしまうという状況になりますが、それを含めますと全体の死者の四一・六%ということになっておりますが、交差点だけですと三〇・六%という数字になっております。もちろん交差点の中では一番多いのが車と車の事故でございまして、車と人との事故はその中の二五・四%で、全体の死亡事故の七・八%と、こういうことになっております。また、そのうち信号機が作動しております交差点におきます事故は三百三件ということで、そのうちまた歩行者が信号に従って横断をしていた、いわゆる歩行者に過失がない、信号無視とかそういうものがないというのは百三件ということで、全体の一・二%と、こういう数字になっております。
#343
○橋本敦君 青信号であれば安心して渡る、これは信号として当たり前じゃないですか。青信号で渡っていても交通事故に遭うというのは、これは一体だれが責任をとってくれるんですか。信号を設置して青信号のときは渡ってよろしいというのは、これは公的に市民、町民の安全を保障しているシステムじゃありませんか。どうなんですか。
#344
○政府委員(内田文夫君) ただいま申し上げましたように、青信号で安心をして渡っていたといいますか、そういう歩行者の方が百三という数字でありますけれども、亡くなったということは大変残念なことだと我々思っておるわけでございますが、これは当然車も横断歩行者に十分注意をして渡るということが法的に義務づけられておるわけでございまして、こういった事故に際しましては、運転者に対してそれなりの刑罰を求めているところでございます。
#345
○橋本敦君 私が指摘している問題は、車の運転者の注意義務違反に原因をなすりつけるだけじゃいかぬというのですよ。青信号で安心して渡るというそのシステムは国家的に国民に保障しているはずなんだから、国が責任を持って青信号で渡ったならば安全が保障されるというそのことをどうつくるかということ、そうでしょう。青信号で渡ったって安全と言えますか、皆さん笑っているけれども。青信号だから渡るんでしょう。青信号で渡って交通事故に遭って死ぬなんて、そんなばかなことが起こることがおかしい。どうやってそれを防ぐかはっきり一遍言ってください。問題はそこですよ。
#346
○政府委員(内田文夫君) 交差点と申しますのは相互の交通が交差をしているところでございまして、お互いに交通の流れというものを考えて交通の規制が行われているわけでございます。もちろんこの交差点、青信号で歩行者が渡る、それから右折車が通過するということがあるわけでございますが、その右折車に対しましては、交差点の手前で歩行者を確認し、歩行者がいる場合はとまらなければならない。そして、そのスピードも常にとまれるスピードで通るということが法的に義務づけられているところでございます。
#347
○橋本敦君 それだけでは足らぬから亡くなっている事故が起こっているんじゃないですか。だから、はっきり言いますと、国の責任で青信号の安全性を本当に保障するような交差点システムをつくりなさい。スクランブルにするとか、人が青信号で渡っている間は車は進行しないで待つとか、そういうふうにしなさい。どうですか、はっきりしてください。やる気があるのかないのか。
#348
○政府委員(内田文夫君) 警察といたしましては、交差点におきます交通事故の実態を踏まえまして、これを極力防止するということで人命尊重の理念のもとに、従来から歩行者用の信号機とか、そういった安全施設の整備とか、歩行者を脅かします横断歩行者への妨害行為といいましょうか、そういった危険な違反の取り締まり等に全力を挙げてきているところでございまして、今後とも関係機関、団体と協力の上、引き続いて人命尊重の理念のもとにこの施策を一層強力に進めてまいりたい、こう思っております。
#349
○橋本敦君 理念だけではだめですよ。具体的に安全措置をとりなさいというのですよ。
 総務庁長官に伺いますが、交通安全基本計画がありますね。これの第一次、昭和四十六年度から五十年度及び第二次、五十一年度から五十五年度まで、この計画を見ますと、「人命尊重がなにものにも優先する」、こういうことでやっていくということがはっきり書いてある。それが五十六年度以降この言葉がなくなりましたね。なぜそうなったんですか。
#350
○政府委員(原田達夫君) お答えいたします。
 第一次計画以降、第二次、第三次、今回の第四次計画におきましても、それぞれ前書きにおきまして、人命尊重が何物にも優先するということを明記しております。この前書きは、御案内のように、全体にかかるものでございまして、基本理念でございます。
#351
○橋本敦君 いや、それがなぜなくなったかという質問をしている。質問をよく聞いてください。
#352
○政府委員(原田達夫君) 第四次の計画におきましても、ちょっと読み上げますと、「交通事故の防止は、従来にも増して、国及び地方公共団体並びに国民一人一人が全力を挙げて取り組まなければならない緊急かつ重要な課題であり、引き続き、人命尊重の理念の下に、交通安全対策全般にわたる」云々と書いてございまして、明記してございます。
#353
○橋本敦君 変わったでしょう。人命尊重が何物にも優先する、これが大事なんですよ。車の流れや進行、車との調和というようなことをあなたたちが言うということは間違っている。人命尊重が優先する。これが大事ですよ。
 総務庁長官、言いたいのは、こういう人命尊重、これが何物にも優先するという方向にはっきりと交通政策の基本を立て戻してください。そして、お年寄りや子供が青信号を安心して渡れるような、そういった国家的な保障をきちっとするような交通システム、これをつくってくれることを望みますが、具体的に答弁をしてください。
#354
○国務大臣(山下徳夫君) 警察当局等からかなり具体的に答弁していると思うのでございますけれども、共産党の皆さん方、今回の臨時国会におきましても、交差点の事故をもう何回もお取り上げになっている。ですから、これが交差点で直進だけなら、あなたのおっしゃるような事故は比較的少ないと思うんですよ。そこに右折、左折があって、いわゆる人間の歩行と交差をするというところに問題があると思うのでございます。ですから、スクランブルとおっしゃるけれども、これは交通の流れを悪くするという弊害もありますし、いろいろそこには科学的とか、いろんな実例をつぶさに調査しながら現在の交通体系はできている。しかし、それでもまだ人命尊重の立場から、もっと改良すべきことはないかということで第四次交通基本計画をつくって、さらに詰めてこれをやろうと。そして、六十五年度には交通死者を八千人にしようということでございます。
 これは総理大臣が会長でございますよ。それで十六人の閣僚、大変なこれは大仕掛けのものになっておりまして、そうして各都道府県に至るまでこれから、これからというか、既にもう指示をいたしておりますけれども、そういうことで具体的に詳細に、しかも合理的にひとつ今後は立ててやろうということでございますから、どうですか、この辺でもうおわかりいただいて。随分答弁申し上げていると思うんですけれども。
#355
○橋本敦君 いつまでもこれをやっているわけにもいきませんが、総理を先頭とする大がかりな割に、きちっといかないんですよ。それが問題ですよ。それはやっぱり政府の姿勢が、人命尊重を何にも増して優先するというその姿勢を後退さしたということに重大な問題がある。ここですよ、問題は。はっきりと、八千人に交通事故死者を減らしたいというんじゃなくて、ゼロを目指して命を守る政治をやってくださいな。そのことを厳しく主張して、次の課題に移ります。
 次の問題は、産業空洞化が進行して、一体日本の失業を含めてどうなるか。これで本当の内需拡大ができるかという課題であります。日本は今日富める国、世界有数の債権国と言われておりますが、それでもこのニューズウイークが総理の顔写真入りで報道しておりますように、「富める日本の貧しき民」と、こう書いていますね。それで、
 アメリカが債務国に転落する一方で、日本は世界一の債権国となった。世界一の金持ち国――だが喜んでばかりはいられない。金余りで、なるほど日本企業の海外投資熱は高まるばかりだが、目を国内に転じれば一般庶民は相も変わらぬ「ウサギ小屋」住まい。売上税法案が廃案に追い込まれたのも、金余りとは無縁な庶民の生活実感があったからではないのか。
本当にそうだと思いますよ。このことは日経ビジネスにも出ておりましたけれども、こういった大企業が世界有数の大企業に大きく成長しながら、みずからつくり出した円高で、今度はそのつくり出した円高を円高対策と称して海外に生産をどんどん移していく。一体日本の産業はどうなるのか。大変ですよ。
 そこで政府に伺いますが、現在の失業率、失業者数、どうなっていますか。
#356
○政府委員(白井晋太郎君) お答えいたします。
 失業率は五月で三・二%、失業者数は百九十二万だったと思います。
#357
○橋本敦君 失業統計をとり始めて最悪の事態ですね。そして、今後こういう海外直接投資、これが拡大していくならばどれぐらいの雇用機会が奪われるのか。この点について通産省、産構審報告でどう言っておりますか、数字を言ってください。
#358
○政府委員(杉山弘君) お尋ねの産業構造審議会総合部会企画小委員会が昨年五月に取りまとめました「二十一世紀産業社会の基本構想」におきます試算によりますと、これから海外直接投資が進んでまいります二〇〇〇年の段階で、海外直接投資をやらずに国内で生産を継続した場合に比べまして約五十六万人の雇用機会の喪失になる、こういうような報告をちょうだいいたしております。
#359
○橋本敦君 一五%の場合、もっとふえるでしょう。
#360
○政府委員(杉山弘君) これは昨年五月の調査の段階でございますので、最近時点ではもう少し海外直接投資の比率が、今後におきます伸び率が高まっていると思います。私どもが昨年の秋に調査をいたしました段階では、累積ベースで年率一四%増、こういうことになっておりますので、それでまいりますと、これはちょっと年次が若干違いますが、一九九五年度、若干五年ほど早まって約六十万人ほど国内で生産を継続した場合に比べまして雇用機会が失われるのではないか、こういう報告をいただいております。
#361
○橋本敦君 経企庁の「世界経済国家日本へ」というこの資料を見ましても、二〇〇〇年の国内産業構造で三百六万人からの製造業関係で雇用が減る、大変なことであります。
 こういうような状況をつくり出すという一つの例として、私は大阪に本社があります三洋の例を取り上げて質問をしたいのでありますが、この三洋という会社は、資料でお渡ししておりますが、電機大手十社の海外進出状況では最も早くから高くて、群を抜いて五二%、こういう状況です。そして会社四季報によりましても、六十一年度経常利益百五十一億を上げておる。ところが、生産をさらに海外へ移すということで、先ほど大阪の住道工場で定勤職員と呼ばれる、定時九時から出勤して終業時刻は正社員と同じですが、それで雇用期間一年を継続して何年も何年も勤めている、本当に生産の主力になっているそういう人たち、それから二カ月期間契約で更新をしているパートの人たちを含めて、一遍に千二百名の大量の解雇をしたのであります。会社が赤字で倒産ならわかりますが、こういうむちゃが許されますか。労働者というのは、闘う労働者は知恵がありますが、ここにこういうビラを出していますね。「こんなムチャクチャ許サンヨー」、うまいことを言うものですよ。
 私は、時間がなくなりましたから総理に伺いますが、こういう海外へどんどん出ていって国内産業を空洞化し、国民を苦しめ、地域を疲弊させる。こういう傾向に今思い切って歯どめをかけなければ真の内需拡大もできないのではないか。政府の経済政策、労働政策の国民的な大きな転換を要求して質問を終わりたいと思いますが、いかがですか。
#362
○国務大臣(中曽根康弘君) 企業がおのおの自己の採算や将来性あるいは安定性等も考えて国内に置くか海外へ置くか自主的に決めていただくことで、政府がこれを統制するという考えはございません。しかしながら、労働政策とかそういういろんな面からの、そういう点からは政府は関心を持って、そして企業の方々とよく話をする、そういうことはあり得ると思います。
#363
○国務大臣(田村元君) 先ほど上田委員の御質問、というよりむしろ御発言というんでしょうか、特定新聞の記事の問題で、私はそういうスパイ防止法とかなんとかというものを先方から押しつけられたようなお話をなすったというふうに受けとめたんです。ですから、誤報とあえて申し上げたんです。ところが、その後でお話を聞いてみると、そういう考え方を持った議員も向こうにおるというお話なんで、それはいろんな考え方があるでしょうよ、あなたのような考え方も日本にあるんだからと、こう申し上げたんです。ですから、特定紙の名前が出ましたから、それに対しては特定紙の名誉のために私は……(「誤報じゃないんだね。そういう事実があったと認めるんだね、あなたは」と呼ぶ者あり)
#364
○橋本敦君 誤報じゃないんですね。
#365
○国務大臣(田村元君) いや、誤報であるかどうかということより、あなたがスパイ防止法の話が向こうから私にあったような印象を与えた言い方をなすったから……(「あんた、記者会見で言ったことと……」と呼ぶ者あり)そういう話はない。はっきりと、そういう話はありません。(「じゃ、なぜ記者会見で言ったの」と呼ぶ者あり)そういう話はありません。いや、いや、記者会見でそんなことは言っていません。向こうから話があったと言っておりません。日本はスパイ防止法すらできないような社会環境になっておりますと、こういうことを僕は言ったわけなんです。日本の社会環境を言ったんです。ですから、そういう点で、特定紙の名前が出ましたから、私はあえて一言申し上げた次第であります。
#366
○委員長(原文兵衛君) 以上で橋本敦君の質疑は終了いたしました。
 明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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