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1987/09/17 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 社会労働委員会 第8号
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1987/09/17 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 社会労働委員会 第8号

#1
第109回国会 社会労働委員会 第8号
昭和六十二年九月十七日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月十七日
    辞任         補欠選任
     沓掛 哲男君     木宮 和彦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         関口 恵造君
    理 事
                佐々木 満君
                田代由紀男君
                糸久八重子君
                中野 鉄造君
    委 員
                岩崎 純三君
                遠藤 政夫君
                小野 清子君
                木宮 和彦君
                田中 正巳君
                寺内 弘子君
                前島英三郎君
                松浦 孝治君
                宮崎 秀樹君
                千葉 景子君
                対馬 孝且君
                浜本 万三君
                中西 珠子君
                沓脱タケ子君
                内藤  功君
                橋本孝一郎君
   国務大臣
       内閣総理大臣   中曽根康弘君
       労 働 大 臣  平井 卓志君
   政府委員
       総務庁人事局次
       長
       兼内閣審議官   田中  史君
       経済企画庁国民
       生活局長     海野 恒男君
       外務省経済局長  渡辺 幸治君
       外務省国際連合
       局長       遠藤  實君
       中小企業庁計画
       部長       小林  惇君
       労働大臣官房審
       議官       野崎 和昭君
       労働省労働基準
       局長       平賀 俊行君
       労働省労働基準
       局賃金福祉部長  若林 之矩君
       労働省婦人局長  佐藤ギン子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        此村 友一君
   説明員
       厚生省児童家庭
       局母子福祉課長  柏崎 澄雄君
       社会保険庁医療
       保険部健康保険
       課長       佐々木典夫君
       労働大臣官房審
       議官       齋藤 邦彦君
       労働省労働基準
       局監督課長    松原 東樹君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○労働基準法の一部を改正する法律案(第百八回
 国会内閣提出、第百九回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○千葉景子君 先日の委員会で、同僚の糸久委員の方から外務省に対して、欧米諸国との労働時間格差問題の是正について、また人事院、総務庁に対しましては、公務員の閉庁を伴った四週六休制の早期実施について、またさらに労働省に対しましては、法定過労働時間制について、変形労働時間制について、中小企業の格差問題について、事業場外、裁量労働問題について、年次有給休暇などの問題につきまして質問をさせていただきましたけれども、私はその糸久委員の九月七日の本会議代表質問、また九月十日の委員会質問を引き継ぎまして質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず最初に、年次有給休暇についてお尋ねさせていただきます。
 先日の九月十日の委員会で、糸久委員が年次有給休暇の不利益取り扱いにつきまして、過去における案出勤数に応じて賞与を支給することは労働基準法違反とはならないといたしました昭和三十年十一月三十日の通達、基収四千七百十八号の廃止と、皆勤手当の支給やボーナスの算定などにおいて年休を欠勤扱いにすることについて、直ちに法違反とは認めがたいとしております昭和五十三年六月の通達、基発第三百五十五号の全面的見直しを求めまして、これに対して労働省の御答弁は、三十年通達は廃止し、五十三年通達は見直すということでございました。
 そこでお尋ねをさせていただきますけれども、我が国の年次有給休暇の消化というのは大変悪いという現状でございますが、これは年休を取得したことによって賃金あるいは昇進、昇格などに不利益な取り扱いがなされるからだということが原因となっております。そういう意味で、年次有給休暇の不利益取り扱いを禁止する措置を法律の中で明確に行うべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
#4
○国務大臣(平井卓志君) 御指摘ございました年休の取得に伴う不利益取り扱いにつきましては、おっしゃいますように労働基準法第三十九条の趣旨に反しますので、これまでもその是正に努めてまいったところでございますが、今後なお一層この是正指導を徹底してまいる考えでございます。
 その他、本委員会での御議論も踏まえまして適切に対処したいと考えております。
#5
○千葉景子君 ただいまいただきました大臣の御答弁というのは、私の質問の趣旨に沿って措置していただけるものと、こう理解いたしますので、ぜひそのようにお願いをしたいというふうに思います。
 それでは次に、時間外・休日労働の問題について質問をさせていただきます。
 新前川レポートによりますと、二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に千八百時間の実現という目標が定められております。これは、完全週休二日制の実施、有給休暇二十日完全消化のケースにほぼ対応するものだとされておりますけれども、それでは時間外・休日労働についてはどの程度とすることを目標としているのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
#6
○政府委員(平賀俊行君) 所定外の労働時間につきましては、景気の変動によって増減するものでございますけれども、新前川レポートでは、一応の目安として、年間の総実労働時間千八百時間程度の場合に、所定外の時間は年間百五十時間程度と想定をしておると承知しております。
#7
○千葉景子君 今目標として百五十時間ということでございますけれども、その目標を達成するということになりますと、これまで行われているような法的根拠のない指針によって目安を定め、行政指導をするというやり方ではなかなかこの目標を達成するということは困難だろうというふうに思います。
 我が国の労働時間が欧米諸国に比べて著しく長いというその原因の一つは、やはり時間外・休日労働が長いことです。労働省からいただいております資料によっても、一九八三年、日本の年間所定外労働時間といいますのは二百二時間、欧米諸国の場合よりも五十時間から百五十時間、いわゆる一労働週から三労働週も多くなっております。産業、規模別に見た場合でも、産業では、後からまた質問で触れさせていただきますけれども、自動車運転者、つまり道路貨物と道路旅客の運輸業は別にしまして、年間二百五十時間を超えているというのが鉱業、それから出版・印刷、非鉄金属、金属製品、一般機械器具、こういう産業で年間二百五十時間を超えている。また企業規模で見ましても、大企業と言われている千人以上の企業で二百二十三時間という大変長時間労働となっております。
 また、ソフトウエア労働者、これについても大変今長時間労働というのが問題となっておりまして、私の手元にも「ソフトウエア労働者の残業実態」と言われる報告がございます。このソフトウエア産業というのは、労働省の方でも御承知のように、急激な高成長による人手不足があると言われておりまして、それにしても大変異常な残業時間となっています。月に百六十時間から二百時間、これが普通の残業時間だという実態。また、ある会社などでは最高の残業時間二百六十八時間、この会社は通常の労働時間が月間百六十時間でございますから、合計しますと四百二十八時間ということにもなります。睡眠時間とか通勤時間などを含めまして、あと私生活に残された時間はわずか一日約十時間、これはかなり極端な例ではございますけれども、ここまでに至っている。
 このような長時間労働になりますと、これで家庭生活、市民生活あるいは健康が守られるか、もう大変疑問なところです。こういうことについて行政指導がどうなっているのか。結局は残業について法的な規制がございません。行政指導で行っているということになります。法的な規制がなくて青天井になっているというのが実態でございまして、そういうことからこのような極端な長時間の残業という事態が起こるのではないか、そう言わざるを得ないわけです。
 このソフトウエア労働者の実態報告によりますと、労働者の月間五十時間という目安、これはむしろソフトウエア業では五十時間以上の残業を奨励するというような逆の効果を生んでいるということも指摘されております。ある大手コンピューター会社が下請業者に流した文書がここでも紹介をされておりますが、その中では、「貴社の三六協定申請内容のうち延長することができる時間を一日につき十三時間、一カ月につき百時間に変更したうえで協定書の写しをご送付願います」と、こういう文書を流しているわけです。すなわち、受け入れ派遣ソフトウエア労働者をほとんど二十四時間、自由自在に働かせるようにしておけと下請企業に指示、命令をしているというような内容です。
 まさにこれは親会社と下請企業の問題を浮き彫りにしていると言わざるを得ませんけれども、こういうような指摘されている事実からしても、残業規制というのは、これまで行政指導で行われていても効果がない、まさに法律で行わなければ効果が出ないのではないかと言わざるを得ない。欧米諸国などでも、一日二時間とか、一週八時間あるいは四十八時間とか、年間百三十時間などの上限規制あるいは割り増し賃金を五〇%にするとか、一五〇%にするとか、こういう措置を講じて残業規制を行っているわけです。
 こういう実態を見まして、時間外・休日労働の上限というものは、今日の実態からいきますと法律によって規制されなければならない、こういうふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
#8
○政府委員(平賀俊行君) 御指摘のとおり、所定外の労働時間が長いということは、欧米諸国などに比べて我が国の実労働時間が長いという一つの要素になっております。したがいまして、労働時間の短縮を実効あらしめるためには、その所定外労働時間の縮減を図ることがぜひ必要であると考えております。
 ただ、我が国でこのように所定外労働時間が長いということ、特に大企業で長いということのお話がございましたけれども、これなどにつきましては、やはり雇用慣行のもとで、雇用調整を所定外労働時間の増減で行うということで労働者の雇用を維持する、安定させるということも考えられております。そういう雇用政策をとっているということもこれまた事実でございます。
 また、これも御指摘の中にございましたけれども、所定外労働時間の実態が業種によって異なるということでございます。ソフトウエア産業とか、あるいは運輸業などの例を挙げられましたけれども、業種でかなりまちまちであるという実態でございますので、所定外労働時間の上限を法律で一律に規制することは、少なくとも現状においては適当と考えられませんので、まず第一は、先ほど申し上げましたように、大企業で、どちらかといいますと労働組合のあるところでやはり残業が行われているということも事実でございますので、なるべく労使の自主的な努力によって所定外労働時間の削減を図ることがまず必要であると考えております。
 また、労働省では、このような見地から、景気の変動等にかかわりのない恒常的な長時間労働を改善するためには、やはり労使が締結する三六協定で定める時間外労働時間の限度につきまして目安を設けて、これに基づいて行政指導を行っております。昭和六十三年度にはこの時間外労働協定についての実態調査を行いまして、これに基づきまして、年間の時間外労働時間数の限度を含む新しい指針を作成するということを今考えておるところでございます。また、今後とも労働基準監督署における時間外労働協定届の受理に際しましては、この指針の遵守について適切な指導を行って、その徹底を図ってまいりたいと思います。
#9
○千葉景子君 ただいまの御答弁で、時間外労働協定に関する実態調査を行って、年間の時間外労働時間数の限度を含む新しい指針を作成されるということでございますけれども、やはりこれまでの経緯を見ても、指針による指導だけでは時間外労働というのは縮減されないというのがこれまでの実態ではなかったかと思います。
 そういう意味では、今の御答弁では私は残念ながら承服しかねるわけですけれども、仮に新しい目安をつくるとして、年間時間外労働時間数はせめて現在の女性並みの百五十時間程度にすべきであるというふうに考えます。この点、年間時間外労働時間数の限度を何時間ぐらいになさるつもりか、お尋ねしたいと思います。
#10
○政府委員(平賀俊行君) ただいま御質問の、年間の時間外労働時間の限度につきましては、先ほどお答え申し上げました、来年度実施いたします時間外・休日労働協定に関する実態調査の結果を踏まえまして、中央労働基準審議会の意見を伺い、時間外労働の縮減に実効を期し得るような時間を設定したいと考えております。したがいまして、現在のところでは具体的に何時間というところまでは申し上げる段階ではございません。
#11
○千葉景子君 現在でも女性の場合、百五十時間というところにある程度張りついて行われているわけですから、せめてやはり百五十時間程度の規制をやっていただきたいというふうに強く要望させていただきたいと思います。
 次に、引き続きまして、割り増し賃金の問題について質問させていただきます。
 まず基本的にですけれども、割り増し賃金制度というのは時間外あるいは休日労働を間接的に抑制するために設けられた制度であると私は考えております。これが普通の考えではないかと思うんです。すなわち、所定労働時間を延長して働いた労働は、その分余計にこうむる心身の疲労に対し補償を含んだ賃金が支払われるべきで、また、使用者に対しましては、このような補償義務を課すことによって使用者が時間外労働の抑制に向かうことを期待して、法定労働時間の社会的基盤が掘り崩されないようにする、こういうために割り増し賃金制度というのが存在するというふうに考えます。
 このような基本的な観点から考えますと、現行法上は二五%という割り増し賃金率になっておりますけれども、これは労基法制定以来四十年間一度も見直されていない。今度の改正案でもこの点は見送られているという状態です。先ほどから申し述べておりますように、欧米諸国と比較しても、もはやこれはもうはるか過去の数値であると言わざるを得ない。また、近隣のアジア諸国などと比較しても、我が国の現行法というのは大変おくれているというふうに考えざるを得ないわけです。さらに、所定労働日の残業と休日残業、これも同じ割り増し率になっているし、また、割り増し賃金の算定基礎である所定内賃金、これも諸手当部分の占める割合が大変高まっている。こういうことで、時間当たりの賃金単価が大変低くなってきている、こういう現状もあります。
 割り増し賃金制度が本来持っております、先ほど申し述べた補償と抑制、こういう機能が現状では失われてきているんじゃないだろうか、こういうふうに思われるんですが、この点についてはどうお考えでしょうか。
#12
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘のとおり、法定労働時間を超える労働に対しまして割り増し賃金を支払うべきことにしておりますのは、時間外労働に対する抑制、言いかえますと、労働基準法が定めます労働時間の原則の遵守を確保するとともに、労働が長時間に及ぶことに対する補償の趣旨であるというふうに考えております。
 そこで、お尋ねのように、最近、賃金の中に手当に関する部分がふえてきているということも、そのような傾向が認められるかと思いますけれども、割り増し賃金の算定基礎になります賃金につきましては、いろいろな手当の性格を考えまして、通勤手当、家族手当等に限定しまして算定の基礎から除外しているわけでございます。この家族手当、通勤手当の賃金に占める割合というのは、必ずしも大きな増加は認められないというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、そうした基本給等に対しまして二割五分増しの割り増し賃金の支払いを義務づけております以上、この割り増し賃金の意義が全く失われているということではないと考えております。
#13
○千葉景子君 全く失われてはいないということでございますけれども、現在におきましてはもう少し検討の余地があるのではないだろうかというふうに私は考えております。
 こういうことをあらわす意味でも、昭和六十年の労働白書いわゆる六十一年に出ました昭和六十年の「労働経済の分析」、これは労働省の方から出されているものでございますけれども、これによると、「所定外労働時間が恒常的になるのは、企業にとって、新たな労働者を雇入れて働かせるよりも既存の労働者に追加的な労働を行わせる方」がコスト面で有利であるからだ、こういう指摘がされております。労働省の方の白書で指摘されているわけです。労基法の割り増し賃金率二五%が時間外労働の抑制の効果を果たしていないということは、こういう白書などからも明らかなのではないか。
 そういう意味では、私は時間外労働を減らして雇用をふやす観点からこういうことを考えても、法定割り増し率二五%の引き上げを図るべきではないかというふうにやはり考えざるを得ないんですけれども、いかがでしょうか。
#14
○政府委員(野崎和昭君) 我が国におきます割り増し賃金率の状況を見ますと、法定の割り増し率でございます二五%を超えた割り増し率を協定しております事業場というのは、現状におきましてはまだ五%未満であるというのが実情でございます。さらに、そういった現状におきまして、今回の改正の目的としておりますような法定労働時間の短縮ということと割り増し賃金率の引き上げということを比較いたしますと、やはり法定労働時間の短縮という方に重点を置くべきではないかというふうに考える次第でございます。
 このような状況を考えますと、割り増し賃金率の引き上げにつきましては、当面は、やはり労使慣行の形成を見守るということが適当ではないかというふうに考えております。
#15
○千葉景子君 現状がまだほとんどが二五%だ、だから引き上げる必要はないんだ、こういう現状追認型では時間外労働というのは減らないわけですね。むしろそれを法律を定めて引き上げていこう、そういう努力がなされないと時間外労働は減らないというふうに私は思います。まして労使慣行の形成を見守るというのは余りにも弱腰の姿勢である。労働条件の改善を図る上ではやはり積極的に法律を改善していくという必要があるだろうというふうに思います。
 労基研の最終報告では、休日労働の割り増し賃金率を引き上げるべきであるというふうに提言していたわけですね。だから、こういうことから見ても、やはり割り増し賃金率を法律で引き上げていくということが必要だろうというふうに思います。また、全体の引き上げがどうしても難しいということがございましても、せめて休日労働の割り増し賃金率、これだけでも引き上げることが必要ではないか。日本の場合は時間外、休日、全く分けてございませんけれども、休日だけでも引き上げる必要があるんではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
#16
○政府委員(野崎和昭君) 御指摘のように、法律で現状を変えていくという政策判断も重要かどば思いますが、労働基準法の場合、どうしても罰則をもって最低基準を定めるということから、むしろ現状がある程度進んだ段階でそれを法定化するということが適当な場合が多いんではないかというふうにも感ずる次第でございます。
 ただいまのお尋ねの、法定の休日労働の割り増し賃金率につきましては、また同じお答えになって恐縮なんでございますけれども、この法定の休日労働に対する割り増し賃金率が二五%を超えているという事業場はやはり五%程度でございますので、この点につきましても当面は労使慣行の形成を見守ることにいたしたいと考えているところでございます。
#17
○千葉景子君 どうも、すべて現状がこうであるからやむを得ないというような一貫したお答えが続くわけでございまして、現状がそうだからということでこれまで結局は労働条件が改善されないで来たわけですから、その点はぜひこれまでの経緯を頭に置いていただいて、せっかくの久しぶりの労基法改正ということでもございますので、積極的な法改正を実現していただきたいというふうに思います。
 今後、各事業場において所定労働時間というのが次第に短縮されていくだろうというふうに思います。そうなりますと、法律上正当な取り扱いによれば、時間外・休日労働の割り増し賃金の計算の基礎になる「通常の労働時間又は労働日の賃金」というのは所定労働時間を基準にして計算されるべきであろうというふうな思います。
 これは当たり前のことなんですけれども、何でこんなことを質問させていただくかといえば、今、企業においては所定労働時間を短縮した後も時間外・休日労働の割り増し賃金を短縮前の労働時間、いわば法定労働時間によって計算した時間当たり賃金、これを基礎に計算して支払っているところがあるというふうに聞いているわけです。例えば、土曜日を新しく半休にしたけれども、就業規則上は仕事に支障のない限りは帰宅を許すということであって、全体が労働日であることは短縮以前と変わりない、こういうような理届などをつけまして、短縮前の時間、これを基礎にして割り増し賃金を支払っているというようなケースがあるようです。
 こういう割り増し賃金の単価の計算の基礎となる時間、それは当然短縮された所定労働時間であると、こういうふうに法律上正当に扱かわれなければいけないというふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
#18
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘のとおり、割り増し賃金の算定の基礎となります時間当たり賃金は、その事業場の所定労働時間を基礎として計算すべきものでございます。したがいまして、所定労働時間が短縮されれば当然短縮された所定労働時間を基礎にして計算すべきものであると考えております。
#19
○千葉景子君 そのようにはっきりお答えいただきましたものですから、その点については今後も十分に指導、監督をしていただくようにぜひ強く要望させていただきます。
 時間外・休日労働の法的規制、あるいは割り増し賃金率の引き上げについては、これまでどうも実態にこだわり過ぎて現状追認をしている、こういう消極的な御答弁に終始をされているわけです。時間外労働の法律による規制というものは、第一次の労基研報告からも二十年来の課題でもございます。これは十分御承知のところだと思うんですね。今回の改正においてこそやるべきではなかったかというふうに思います。どうも今回法規制が難しいんだと、現状を見守ってというようなこともおっしゃられているわけですけれども、どうしても今回法規制ができないということであれば、少なくとも三年後の見直しのときまでにこれを検討して、法的規制を行うと、こういう方向でいくべきだというふうに思います。これはこちらも譲歩をいたしましたそういう提案なんですけれども、この点はいかがでしょうか。
#20
○国務大臣(平井卓志君) いろいろ御指摘をいただいておりますが、御案内のように時間外労働の短縮につきましては、労使が締結いたします時間外労働協定について指針を設けて指導を行っておるところでありまするが、今後さらに年間の時間外労働時間数の限度を含む新しい指針によってその遵守の徹底を図ってまいりたい。先生おっしゃいますところは、現状追認型であってそれではなかなか改善されないではないかということでございますが、そういう点も踏まえまして引き続き有効な規制方法について検討してまいりたい、かように考えております。
#21
○千葉景子君 ぜひその有効な規制方法を検討いただきたいというふうに思います。
 ところで、法の第三十五条は、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」というふうにあります。「四週間を通じ四日以上の休日」というのは法律によって休日を特定することが要求されていないということになるわけですが、こうなりますと働いている方は自分が一体いつ休めるのかと、こういうことがはっきりしませんし、予定がつかない。働く者としては大変生活が安定しないという面が出てまいります。労働者保護の見地からしましても、休日を特定させるということがやはり必要ではないか、そういうことによって休日もとりやすい、生活も安定するということになるかと思いますが、この休日の特定についてはいかがお考えでしょうか。
#22
○政府委員(平賀俊行君) 御質問の労働基準法の三十五条の第二項で、四週四日の休日を与える場合に、法律上の要件としてこれを特定すべきことだとはされておりません。しかし、御指摘のように、労働者の生活等の観点から考えますと休日が事前に特定されることが望ましいと考えられますので、従来からこの二項の適用を受ける四週四休制の場合にもできる限り具体的な定めをするように指導してきたところでございます。
    ―――――――――――――
#23
○委員長(関口恵造君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、沓掛哲男君が委員を辞任され、その補欠として木宮和彦君が選任されました。
    ―――――――――――――
#24
○千葉景子君 これまでも指導なさっていらしたということでございますけれども、生活の質の向上という観点から考えましてもぜひとも休日の特定というのは必要だろうというふうに考えます。
 そういう意味では、これも三年後の見直しの時期に法律の中に特定を要するというような規定をぜひ設けてほしい、設けるべきではないかと考えますけれども、この点はいかがでしょうか。
#25
○政府委員(平賀俊行君) 先ほどお答えいたしましたように、四週四休制をやむを得ずとる場合においてもその特定が必要であるという見地から指導を行ってまいりましたが、御質問の趣旨なども十分考慮いたしまして、今後とも関係事業所に対する指導を一層強化してまいりたいと存じます。
#26
○千葉景子君 指導とともに法律での特定などもぜひぜひ検討をしていただきたいというふうに要望をさせていただきます。
 それでは次に、最初にちょっと質問の中でも触れさせていただきましたが、自動車の運転者に関しましてお尋ねしたいというふうに思います。
 まず、自動車運転者の労働時間問題でございますけれども、自動車運転者、中でもトラック運転者の労働時間というのが年間三千時間を超えていて、非常に他の産業に比べて突出して長いというのが実態です。これは八六年の五月から七月の一カ月平均の調査、これは全日本トラック協会の行ったものでございますけれども、このような実態調査によりましても、例えば路線の大型運転者ですと月間で二百六十四時間、年間で三千百七十時間という労働時間になっております。また、路線の普通運転者でも三千四十四時間、こういう非常に長時間の労働になっている。
 また、ある新聞などに出た記事によりますと、「函館−岡山、七十五時間で往復しろ、過労トラック激突――家族旅行の三人死亡」というような記事が出ておりまして、これには、二十五日午後十時半に函館を出発して、岡山などを回って約三千キロの行程を二十九日午前二時までに函館に戻れ」と会社に言われて、二十八日には途中の金沢で二時間休んだだけという強行軍である。こういう中で反対車線から来た家族族行のワゴン車に正面衝突をして、乗っていた一家六人のうち、三人を死亡させ、三人に重傷を負わせた。こういう非常に過密な長時間労働の中で起きた事故、こういうものが紹介をされております。
 こういうものは氷山の一角であって、これに類した、あるいはここまで至らないけれども、こういう事故というのはもう多々発生をしているというふうに言われております。こういう高速輸送の比重というのは今ますます高まっているわけで、そういう中での交通事故は重大化する危険性が大変高いわけですけれども、こういう現状を労働省としてもどのように認識をされているか、そしてこういう現状に対してこれまでどのように対応されてきたのか、まずお聞きをしたいというふうに思います。
#27
○政府委員(野崎和昭君) 自動車運転者の労働時間を私どもで行っております毎月勤労統計調査で見ますと、昭和六十一年におきましては道路貨物運送業、御指摘のトラック運送業について見ますと、年間総労働時間は二千五百七十九時間ということになっておりまして、全産業平均の二千百時間に比べましても相当な額、全産業の中でも最も労働時間の長い業種に属しているというふうに考えております。
 このように今日全般的に労働時間短縮が図られております中で、自動車運転者の労働時間というのは依然として長時間であるということから、労働省におきましても特に自動車運転者の労働時間等の改善基準という指導基準を特別につくりまして、この指導基準に基づきまして監督、指導を重点的に行っているところでございます。
#28
○千葉景子君 ILOも一九七九年六月に、路面運送における労働時間及び休息期間に関する条約、いわゆる百五十三号条約と言われているものですけれども、これを採択しております。労働省も一九六七年二月九日付基発第百三十九号通達ですけれども、自動車運転者の労働時間等の改善基準というのを廃止して、百五十三号条約が採択された一九七九年十二月二十七日に、新しく自動車運転者の労働時間等の改善基準について、いわゆる二七通達というものを出しております。百五十三号条約及びこの二七通達がつくられた背景、そしてその当時政府の方でどのように考えられていたのか、まずお聞きをさせていただきたいと思います。
#29
○政府委員(野崎和昭君) 労働省におきましては、ただいま先生御指摘のとおりILOの百五十三号条約、路面運送に関する新しい条約が採択されましたことを受けまして、五十四年十二月にいわゆる二七通達を策定しまして、これが先ほど申しました自動車運転者の労働時間等に関する改善基準でございます。これに基づいて指導を行っているという経緯でございます。
 このILO百五十三号条約、これは一九七九年に採択されたわけでございますが、この条約は、その前にございました六十七号条約が四十年前に採択された条約でございまして、実情に余り合わないということで、批准国がわずか四カ国であったという実情にかんがみまして、その改正が行われたものでございます。労働省としても、またその百五十三号条約に合わせて指導基準を改めたという経緯になっております。なお、この百五十三号条約の採択に際しましては日本政府としてもこれに賛成をいたしたところでございます。
#30
○千葉景子君 この百五十三号条約、日本政府としても賛成をして、労働省も二七通達で指導をされてきたということでございますけれども、この二七通達が出た一九七九年、それと昨年の産業別年間総実労働時間、これを毎月勤労統計調査をもとに推計して比較してみますと、ほかの産業は労働時間が短縮されてきているのに対しまして、この道路貨物運送業だけはむしろ長くなっている。昨年はその二七通達が出された一九七九年よりも七十一時間多くなっている。また道路旅客運送業、これは百三十七時間多くなっている。これがあらわすように、指導してきているとはいうものの全く改善をされていないというふうに言わざるを得ないわけです。
 また改善基準違背事業所数、この集計もこれは労基局の方で集計をされているわけでございますけれども、この集計を見ても一般路線貨物は改善にほとんど変化がない、一般区域貨物と特定貨物が若干減りつつあるかなという程度で、到底大きく改善されているとは思えないわけですね。これは一体どういうところに問題があるのか、どんなふうにお考えでしょうか。
#31
○政府委員(野崎和昭君) 改善基準は五十四年に策定いたしまして、それ以後毎年それに基づいて指導を行い、その結果を取りまとめておるところでございますけれども、先生御指摘のように改善は微々たるものではございますが、全く行われていないということではなくて、二七通達の施行以来、最近までの間に違背率は六割から五割弱という形で漸次減少してきている。また項目別に見ましても改善の傾向にあるということはうかがえるのではないかと、そういうふうに認識しております。
 しかし、いずれにいたしましても改善の歩みが非常に遅く満足すべきものではないわけでございますけれども、その原因といたしましては、トラック運送業界というのは非常に現在急激に変化している業界でございまして、宅配便の普及等非常に流通面における大きな変化の中で業界自体が変化している。また全般的に過当競争でございまして、労働時間問題に対しましても各企業の対応がどうしてもおくれがちになると、そういうことのためであるというふうに認識しております。
 しかし、今後さらに二七通達の遵守徹底のために監督指導を強化してまいる所存でございます。
#32
○千葉景子君 改善も微々たるものというようなことのようですけれども、私は微々たるというところもかなり怪しいのではないかというふうに思います。認識の違いがどうも若干あるようでございますけれども、この百五十三号条約、日本政府はなかなか条約というものの採択に賛成するということが少ないのですけれども、珍しくこの条約については採択に賛成をしているということもあります。
 労働省としては自動車運転者の労働時間規制というものに、これまでの通達による指導、こういうことを抜本的に改めて、法的な規制措置、あるいは百五十三号条約を批准する。こういうような積極的な姿勢で取り組むべきではないか、微々たると言わなくて済むような取り組みをしていただきたいというふうに思いますけれども、この法的規制措置あるいは条約の批准などについてはいかがお考えでしょうか。
#33
○国務大臣(平井卓志君) 自動車運転者の労働時間問題につきましては、これはもうおっしゃいますように早急にその改善を図ることが必要であると私どもも認識をいたしております。
 この自動車運転者の労働時間等の規制にかかわる問題につきましては、現在、中央労働基準審議会におきまして、関係業界の労使代表が参加いたしますところの自動車運転者労働時間問題小委員会がただいま設置をされまして検討が行われているところでございますが、この問題につきましては政府として今次法改正と一体のものだとしておりますので、早期に同小委員会の結論が得られますように努めてまいるというふうに考えております。
 また、このILO第百五十三号条約の趣旨はおおむね妥当と考えられるわけですが、ILO条約の批准に当たりましては、従来からも申し上げておりますように、国内法令が当該条約に完全に適合するように諮った上で批准をいたすことといたしておりまして、第百五十三号条約につきましてもこの趣旨に沿って今後対処してまいりたいというふうに考えております。
#34
○千葉景子君 引き続き積極的な取り組みをぜひ進めていただきたいという要望をさせていただきます。
 それでは次に、深夜交代制労働問題につきまして何点かお尋ねをさせていただきます。
 まず、深夜交代制労働は、これまで電気、ガス、電信電話また病院、鉄道、こういう社会生活上の必要性やあるいは鉄鋼、化学など生産技術上の要請、こういうことから深夜交代制労働というのが行われてきております。また最近では、MEなどの技術革新が非常に進展をいたしまして、大変巨額な設備投資がされる。その早期償却を図るために深夜交代労働というのがむしろ拡大する傾向にあるというふうに言われております。また、小売とかサービス業、こういう第三次産業においても、深夜族といいますか、二十四時間営業など営業時間の延長に伴いまして深夜交代制労働が大変普及しつつあるというのが現状です。また、金融情報の国際化、こういうものに伴ってそういう分野でも二十四時間体制がしかれております。金融情報などは世界をめぐっているということでございますから、こういうところでも深夜交代制労働というものは広がる一方でございます。
 深夜交代制労働というのは、これはもう申すまでもありませんけれども、昼間働いて夜は休息をとる、夜は寝る、こういう人間本来の生活形態あるいは生理的な機能、こういうものに反するわけでして、どうしても労働者の健康あるいは社会生活、家庭生活に大変大きな影響を及ぼす、むしろ悪影響を及ぼすということになります。
 労働省としては、この深夜交代制労働が労働者の健康や家庭生活、市民生活などに及ぼす影響、こういうものをどのように認識されているのか、まずお尋ねしたいと思います。
#35
○政府委員(平賀俊行君) 深夜交代制労働につきましては、確かにいろいろな社会生活の都合といいますか、あるいは生産技術等の面からやはり最近におきましてそういう場面が随分いろいろな産業に出てきていることは事実でございます。したがいまして、私どもがお願いしました労働基準法研究会におきましても、この問題につきまして御検討をし、六十年十二月に報告書をいただいておりますが、その研究報告の中で、これまでこの問題についてのいろいろ健康の関係等について専門家の御意見をいろいろと勉強していただいた結果、専門家の意見も分かれている、そういう状況が指摘をされているわけでございます。
 しかし、ただいま御指摘がありましたように、一つは人間本来の生活形態というのはやはり昼間働いて夜寝るというのが、それが自然の形だろうと思います。それから、夜働いて昼間帰って寝るという形でございますと、確かに子供さんなどとの生活時間のずれができる、それから、そういう状況ですとコミュニティーの活動などにも不便を生ずる、言いかえれば、家庭生活あるいは社会生活の面でも影響があるということ、これらの問題があるということにつきましては、十分認識して私どもとしても対応してまいりたい、こう考えておるところでございます。
#36
○千葉景子君 交代制労働が健康に及ぼす影響については、今の御答弁だと専門家の間でも必ずしも一致した見解がないというようなことでございますけれども、これについてはさまざま多くの実態調査がなされております。そして、こういう調査を見ると、深夜交代制労働者が常日勤労働者に比べて睡眠が質量ともに恒常的に不足がちである。その結果、慢性的に肉体的あるいは精神的疲労が蓄積しているということが明白でございます。
 労基研報告は、深夜交代制労働に法的規制を加えている国はほとんどないと言っておりますけれども、女子、年少者についてだけでなくて、深夜労働従事者一般に法的保護を与えている国も、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ベルギー、オランダなどの北欧を中心とした諸国、フランスでも一九七七年の労働の復権に関する法というものによって交代制の規制と交代制勤務従事者へのきめ細かい保護措置を講じているわけです。
 深夜交代制労働というのは、本来社会生活上の必要性とか生産技術上の要請によるものなどございますけれども、やはり必要最小限度のものに限定されるべきではないか、そういうふうに思います。そして、その場合でも、勤務回数とか休息時間あるいは仮眠施設などについて法的規制を設けるべきではないかと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
#37
○国務大臣(平井卓志君) 深夜交代制労働の実態でございますが、御案内のように業種、業態等によって極めて多種多様でございまして、国際的にも主要先進国で深夜交代制労働一般について法的規制を加えておる国は少ないわけでございます。
 また、深夜交代制労働に対しまして具体的にとられるべき措置については、専門家の間で必ずしもこれ意見が一致しているとは言えないこと等もございまして、現段階において深夜交代制労働に関して法的に画一的な規制を加えることは私ども適当でないというふうに考えております。
 しかしながら、労働省としましても、先ほど局長が答弁いたしましたように、労働基準法研究会報告の趣旨に沿いまして、御指摘の諸点にも配慮しながら、関係者の意見をよく聞いて、深夜交代制労働において労使が考慮すべき事項についての指針を作成してまいりたい、かように考えております。
#38
○千葉景子君 深夜交代制労働に対して具体的にとられるべき措置については、専門家の間でも必ずしも見解が一致していないというどうも御認識のようで、法的に画一的な規制を加えるということが必ずしも適当ではない、そういうお考えのようですけれども、既に昭和五十三年、日本産業衛生学会交替制勤務委員会の意見書あるいはILOの一九七七年、専門家による報告書、こういうものが発表されておりまして、そのほかにも専門家による具体的な措置について提言がなされていることからすれば、法律による規制措置の必要性については、専門家の間ではむしろ一定の見解の一致があると、そう考えていいんじゃないだろうかというふうに思うんです。
 人間の生存の一番の基本ですね、人間らしい生活そして健康な市民生活、家庭生活、こういうことにかかわるところですから、やはり労働省として法的な規制をするというような積極的な取り組みをぜひ早急にやっていただくように、これは強く要請をさせていただきたいというふうに思います。
 さらに質問させていただきますけれども、深夜労働の場合、割り増し賃金率は今二五%でございますけれども、これを一〇〇%あるいは少なくとも五〇%程度にまでは引き上げるべきではないだろうか。これは、普通の時間外にさらに深夜ということがつけ加わるようなものですから、少なくとも五〇%までは引き上げるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#39
○政府委員(平賀俊行君) 先ほどから割り増し賃金率に関する御質問がございまして、私どもとしては実態を踏まえて実はお答えをしており、非常に消極的であるという御指摘も受けておりますけれども、実は深夜労働についての割り増し賃金の実態につきましては、先ほどまでと同様に、二五%を超える割り増し賃金率を定めている事業場というのは五%程度でございます。言いかえれば、そのほかの九〇%以上の事業所につきましては二五%が適用の協定をしておるか、あるいは協定をしないで実際にやったときは法定の二五%を適用すると、こういうことになっておるところでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、この問題につきましても、実際の労使慣行の状況等を見守っていくことにならざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
#40
○千葉景子君 大変私としては不満足といいますか、納得のいかないところでございますけれども、少なくとも今後引き上げなどの検討を続けていただきたいというふうに思います。
 この深夜交代制労働に関して、とりわけ看護職員について大変問題が生じているという実情がございますので、ちょっとその点について質問をさせていただきたいというふうに思います。
 自治労などで、この看護職員について、お医者さんあるいは学者の方などを通じて看護職員の労働と健康ということについて調査などをなさっております。この内容を見ますと、交代勤務についている看護婦の約三分の一が夜勤回数が九回を超えている、最高は十八回にも上っている。そして看護婦では、局所及び全身の疲労症状、消化器症状、婦人科症状、精神疲労症状等を訴える者がほかの事務の職員に比べて非常に多い。また、切迫流産、早産、こういうものも多いし、また胃潰瘍とか十二指腸潰瘍の比率が高いということが指摘をされております。
 また、特に注目すべきことは、いわゆる燃え尽き症候群と言われる症状があらわれている。これはバーンアウトと言われておりますけれども、夜勤回数の増加、大看護婦単位の導入、トラブルが起きたときになかなか相談相手がいないというようなことも原因しているようですけれども、夜勤交代制勤務、こういうものが原因になっているのではないだろうかというふうに言われております。
 この燃え尽き症候群というのは、看護婦などにとっても大変患者さんと相対する仕事としては問題の多いところでして、例えば仕事に対する意欲や積極性を失って最終的には欠勤や退職をしてしまうと、こういう事態もある。そして人と仕事をするとストレスを感じるとか、仕事に欲求不満を感じる、また仕事で消耗する、疲れ果てた感じがする、仕事で燃え尽きた感じがする、こういう心身ともに疲労状況がつくられる。
 これがどういうふうにあらわれるかといいますと、ある患者を非人間的なものとして扱っている感じがする、要するに人間に対しても物を扱うようなそういう感じになる。あるいは仕事について人に対しても非常に冷淡になる。そしてある患者にはどんなふうになってもいいんだと、全く気にかけなくなってしまう、こういうような感情の起伏の喪失、こういうようなことまで起こっていると、こういうことが言われておりまして、これについては看護婦の燃え尽き症候群、この問題を聖路加看護大学の南裕子先生、こういう方も指摘をされているところなわけです。
 こういう実情を見ますと、看護職員についてはこれまでも要望が労働省などにも出ておるようでございますし、ILOの看護職員条約でも看護労働の特殊性、専門性、尊厳性にふさわしい必要な量と質の看護の提供というのを求めているわけです。そういうことから、ぜひ夜勤は複数で、そして万八日以内にするということを法的にも規制をする、こういうことがぜひとも必要ではないかというふうに私は考えるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
#41
○政府委員(平賀俊行君) 病院における看護婦さんの勤務は、その仕事の性格上、二十四時間どなたかが勤務していなければいけないという状況にあるわけでございます。したがいまして、深夜における勤務が必須の業態でありまして、私といたしましてはそういう大変な勤務でございますけれども、多くの看護婦さんは非常に高いモラルを持って仕事をしていただいていると思っております。
 こういった勤務の実情にかんがみ、労働省といたしましてもやはり看護婦さんの勤務条件の問題につきまして、深夜業を含む夜勤日数が一カ月の三分の一を超えるものを対象として順次その日数の減少を図るよう昭和四十八年の七月二十七日付の通達を出しまして、地域における医療事情あるいは看護婦さんの充足状況等の実情を勘案しながら指導を行っているところでございます。今後ともその徹底を図っていきたいと存じております。
 また、先ほど大臣が御答弁申し上げました、深夜交代制労働において労使が考慮すべき事項についての指針の策定に当たりましても、御指摘の点なども含めた検討を行ってまいりたいと存じております。
#42
○千葉景子君 これも、本来ならば法的規制が必要な現実ではないかというふうに思いますけれども、難しいといたしますればぜひ積極的に指針などを設けて指導をいただきたいと思います。
 次に、VDT労働について若干お尋ねしたいと思います。
 最近、マイクロエレクトロニクスいわゆるMEを中心とした技術革新の影響があらゆる産業分野に及んでおります。事務所などでもOA化が急速に進められて、オフコン、パソコン、ワープロ、こういうようなVDTを利用した労働というのが非常に増加しているわけです。
 この生産と雇用の増加を見てみましても、昭和四十二年から五十八年の間に事務用機器では出荷額が三十三・七倍、また雇用も三・七倍、電算機関係でも出荷額が三十倍、雇用で六・二倍、事務用機器では七万三千人、そして電算機関係では十万人以上の人が雇用をされているということになります。OA機器の導入状況を見ましても、ほとんどの企業でOA機器を導入しているという実態がございます。こういうOA機器の急速な普及に伴って、とりわけ女子労働者がこういうOA機器操作に従事することが大変多いわけです。これは御存じだと思います。
 このVDT労働の健康への影響とその対応についても、多くの研究や調査が国内外で行われておりますけれども、それらの調査によれば、VDTと放射線をめぐる問題とかテクノストレスとしての健康への影響などについて調査がなされて、健康の面では、視力の低下とか妊産婦への影響、精神的、心理的影響、こういうものが極めて大きいと報告をされております。
 労働省としては、このVDT作業の労働者に与える影響について一体どういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
#43
○政府委員(平賀俊行君) 御指摘のように、最近の事務のやり方が急速に電算機等の普及によって変わってきております。そういった産業の生産額が上がる、言いかえればそれはどこかで利用されているわけでございまして、現実にその事務のやり方が急速に変わっておるということ、そして今までの事務のやり方に比べまして、やはりそういうVDTの作業に従事する方からは例えば目が疲れるとか、あるいは肩が凝るとか、そういった疲労を訴える度合いが高いということも承知をしております。
 ただ、一般的に申しますと、こういったVDT作業におきましても、作業環境の管理、あるいはそれ自体の作業の管理、あるいは労働者の健康管理、これらのいわば労働衛生管理が適正に行われれば健康障害をもたらすことはない、したがって健康の保持が可能である、どういうことが認識をされておるわけでございます。
 ただ、こういった新しい傾向などもございますし、私どもといたしましても五十八年度から三カ年にわたって、オフィスオートメーション化に伴います作業環境や労働対応の変化が労働者の健康に及ぼす影響について専門家の方に寄っていただきまして、医学的、科学的な調査研究を進めてまいりまして、その成果なども踏まえまして昭和六十年十二月にVDT作業のための労働衛生上の指針を公表いたしまして、その周知徹底に努力をいたしているところでございます。
#44
○千葉景子君 ただいまおっしゃった、労働省が昭和六十年十二月に医学的、科学的調査研究の成果を踏まえて策定したと言われているVDT作業のための労働衛生上の指針、これによりますと、VDT作業者を専業従事者に限定するとかその対象が非常に狭くなっている、あるいは一日の作業時間を定めていない、総量規制をしないというような大変大きな問題点が残されているんじゃないかと思います。
 産業衛生学会のVDT作業に関する勧告、これは一九八五年の七月ですけれども、を初め多くの調査結果も、一日の作業時間、一連続作業時間、作業休止時間、時間外労働、深夜勤などについて規制をすることが必要だということを提言しております。
 そういうことを踏まえて、VDT作業については一日の作業時間とか一連続作業時間あるいは時間外労働、深夜業などについて規制をしていく必要があるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#45
○政府委員(平賀俊行君) 現在のところでは、先ほどお答えしましたし、また御質問の中にありましたように、VDT作業のための労働衛生上の指針に基づきまして指導をし、周知徹底に努めているわけでございます。そしてこの中では、専業的にVDT作業を行う労働者の作業時間については、VDT作業以外の作業を組み込むなどによって一日の作業時間が短くなるように指導している、その他連続作業時間を六十分として、その後で十分ないし十五分ぐらいの休止時間を設ける等をこれまた指導しているところでございます。
 もちろんこの問題については、非常に新しい問題でありますし、今後とも十分に研究検討を続けてまいりたいと存じております。
#46
○千葉景子君 これは新しい問題でもございますので、ぜひ慎重に検討していただきたいというふうに思います。
 次に、VDTも新しい問題でございますけれども、もう一つ新しい問題として、在宅労働問題について若干お尋ねいたします。
 現在、ワープロとかパソコンなどの発達に伴って在宅で行う仕事、こういうものがふえてきております。在宅労働の実態につきましては、労働協会雑誌八五年十一月号、これで雇用職業総合研究所研究員の平田周一さんと武蔵大学助教授の仁田道夫さんが労働大臣官房政策調査部総合政策課の委託によって、在宅勤務が勤労者の家庭生活に及ぼす影響に関する調査というものを行って、その結果から在宅勤務の特徴というものを次のように要約をされています。
 これはまず在宅勤務者と事業主との関係は請負関係である場合が多い、雇用関係にある者が少なく、そして新技術を利用した比較的高い知識、技能水準を要求される新たな家庭内職の姿が浮かび上がってくる、こういう特徴を指摘されているわけです。
 新聞などのルポルタージュなどによりましても、「東京調布市、2DKのアパートが、Mさんのマイホーム兼オフィスだ。五畳間の台所の片隅。ファクシミリ、プリンター、音響カプラー、ワードプロセッサーといった情報社会を象徴するマシンが、キッチンワゴンや冷蔵庫にまじって、でんと置かれている。まだピッカピカ。無理もない。在宅ワープロ・オペレーターとして書類作成を請け負い始めたのは、ほんの二カ月前なのだ」、これは「ホームオフィス」というルポルタージュですけれども、こういう姿が最近ちらちら見られるようになった。
 今後こういうような在宅勤務というような新しい形態の労働がふえるというふうに予想されますけれども、こういう労働において問題が生じないように、早目にやはり対策を講じておくべきであろうかというふうに思いますが、仁の点はいかがでしょう。
#47
○政府委員(平賀俊行君) 社会経済情勢の変化、あるいは技術の進歩、あるいはそういう機器の改善等に伴いまして、御指摘のように在宅のままでいろいろな情報の伝達ができるとか、新しい勤務形態の労働が増加することも確かに予想されるところでございます。
 先ほどの委託調査などもそういった実態を把握するための私どもとしての対応でございますけれども、今後ともそのような新しい形態の労働につきましてはさらにその実態の把握に努め、御指摘のように問題が生じないように適切に対処いたしたいと存じております。
#48
○千葉景子君 それでは次に、休日、休暇の問題について質問させていただきます。
 国民の祝日と休日についてでございますけれども、国民の祝日に関する法律では年間十二日の国民の祝日を定めて、かつ当日は休日として、その日が「日曜日にあたるときは、その翌日を休日とする」というふうに規定しております。また、昭和六十年十二月の法改正によりまして、「その前日及び翌日が「国民の祝日」である日」、いわゆる連休の谷間ですね、こういう日は「休日とする」と規定をされております。五月四日などがそれに当たりますけれども、公務員の場合はこの祝日法に言う休日は休日とされておりまして、また民間の企業でもその国民の祝日を企業の休日とする旨を就業規則で定めている場合もありますけれども、休日としていないという企業も多いわけです。
 政府としては、国民の祝日を休業とすべきでありますし、できるだけ休日とするように措置すべきではないか、みんなで休もうというふうにすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#49
○国務大臣(平井卓志君) 国民の休日につきましては、これはもう申し上げるまでもなく国民こぞって祝い、また感謝し、または記念するために設けられておるものでございまして、法律でも国民の祝日を休日と規定をいたしておりまして、国民ができるだけその日にふさわしく過ごすように期待をしておるところでございます。労働省としましても、それが望ましいと考えておりまするし、また実際にも国民の祝日を休日としている企業が大変多いわけでございます。
 労働省としましては、週休二日制を基本といたしまして休日増を図っておるわけでございますが、ゴールデンウイークのような祝日の多い期間につきまして、連続休暇の普及を指導してまいる考えであります。
#50
○千葉景子君 我が国では、祝日は国民の祝日しかないわけで、それに対して欧米諸国などではそれ以外に地方ごとでの祝日あるいは宗教関係の祝日などもあるかと思いますけれども、大変祝日が多いというふうにも聞いております。そういうことを考えますと、我が国の祝日ももっとふやしてもいいんじゃないか。
 とりわけ我が党は、五月一日のメーデーを祝日にすべきではないかというふうにこれまでも要求をしてきております。労働者の数も四千数百万人いるという現状でございまして、メーデーを祝日にすることは今の時点では社会的合理性もあるんではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#51
○政府委員(平賀俊行君) 現在、国民の祝日は我が国では十二日となっております。この十二日という、公休日といいますか、公の休日は、欧米主要国、これらは宗教的なオリジンのある休日なども含めての数に比べて若干多いといいますか、ほとんど遜色のない休日の数になっております。
 また、五月一日のメーデーをその公の休日に入れるかどうかという問題につきましては、実は現在の公の休日、国民の祝日の中に勤労感謝の日というものが入っております。そういう意味では、同じような性格のものという考え方もできるかと思いますが、加えて六十年の十二月に国民の祝日に関する法律の一部改正をいたしまして、五月四日を休日とするということになっておるところでございまして、その意味からしますと五月一日というのは三日、四日、五日という連休と余り開きがないということもあり、現時点では難しいかなと考えております。
#52
○千葉景子君 また、年末年始の休暇もこれまでは年末の三十日から大体お正月の三日ぐらいまでは休むというような社会的な慣習があったように思うんですね。しかし、最近はデパートなどで見られるように、大型店舗が年末年始を休まず営業する、そういう傾向も出ておりまして、そうするとそれに関連して働く人も出てくるわけです。そして、そういう中で年末年始を休むという社会的慣習が崩れてきているんじゃないかという気もするわけです。
 こういうような実態を労働省としてはどういうふうにお考えで、またどういうふうに対策を講じられているのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
#53
○政府委員(平賀俊行君) 社会生活の多様化あるいは全体としての国民のいわばニーズといいますか、そういうもの、特に消費者としての要望とかそういった観点から、店の側といいますか、その営業時間についていろいろな要請、要望が出ている。これを背景にいたしまして、全部とは申しませんけれども、一部の百貨店あるいは大規模小売店等が初売りの時期を早める場合があるということは承知をしております。
 ところで、その正月などについて何日まで休むかということにつきましては、基本的にはやはり各企業の営業政策あるいは各企業の労使の間で決める問題だろうと思いますけれども、労働省といたしましてはやはり少なくとも労働者福祉等の観点から、少なくとも正月三が日ぐらいは休業とすることが望ましいのではないかと考えておりまして、従来から関係業界に対しましても休業日の設定は例えば正月三が日に行ってほしいということで、真剣に御検討をいただくように期待をし、また要請をしているところでございます。
 結局、この問題は、国民生活全般にやはり影響がございますし、労使の立場あるいは消費者の立場、その他全体として国民世論の動向を踏まえながら、今後とも適切に対処していきたいと考えております。
#54
○千葉景子君 労働省は、昭和五十五年に週休二日制等労働時間対策推進計画というものを策定されて、その計画の中で週休日、特別休日、年次有給休暇などの組み合わせによって、ゴールデンウイークそれから夏季、年末年始などの季節と業務の繁閑に応じた連続休暇の普及を図るということを指導されてきているようですけれども、その推進状況はいかがでしょうか。
#55
○政府委員(平賀俊行君) 御指摘のように、労働省としてはいろいろ連続的に四季折々に休暇がとれるようにキャンペーンあるいはその普及推進活動等を行っております。ただ、それを始めたのも五十五年以降でございますので、短い時間の実績等で判断するのは難しゅうございますけれども、少なくとも先ほどお答え申し上げましたように、五月四日の休日を法制化したということは、連続休暇を図るための一つのポイントであると考えております。
 また、夏の休暇につきましては昨年から「ほっとウィーク」というネーミングといいますか、名前をつけまして、民間あるいは官公庁も含めてこれらが普及、定着するように新しい形でまたキャンペーンを行っております。その結果、これは必ずしも大きな数字ではございませんけれども、少しずつ普及、定着していると考えておりますし、今後ともそういった夏ばかりでなくて、ゴールデンウイークあるいは秋の祝日等を利用して、折々に連続休暇がとれるように私どもとしてもまた指導、要請をしてまいりたいと考えております。
#56
○千葉景子君 それでは次に、病気休暇制度についてちょっとお尋ねしたいと思うんです。
 労働省の発表している欠勤日数についての国際比較を見ますと、欧米諸国に比べて我が国は極端に少ないんですね。一九八二年で四・二日。これに対して西ドイツは二十・五日、フランスで十九・一日、アメリカで九・八日。これは外国の病休等を欠勤に含めているという問題があるかと思いますけれども、我が国の労働者の場合は、病気で休む場合、年次有給休暇を使って休むことが多いわけで、大変欠勤日数が少ないということにもなるわけです。
 病気休暇制度について、実態は一体どんなふうになっているでしょうか。
#57
○政府委員(野崎和昭君) 昭和五十九年に行いました賃金労働時間制度等総合調査によりますと、有給の病気休暇制度がある企業は、全体では二一・三%でございます。規模別に見ますと、千人以上で三三・六%、百人から九百九十九大規模で二八・二%、三十人から九十九人で一八・三%ということになっております。
#58
○千葉景子君 労基研報告は、年休の使用目的について、
  ILO条約及び欧米諸国の法制においては、年次有給休暇に病休等の期間を含めないこととされているが、我が国の年次有給休暇制度は、使用目的にこのような制限を加えていない。この点は我が国の年次有給休暇制度の特色のひとつをなすものであるが、年次有給休暇を病休等に使用することは、既に我が国の社会の実態となっていると考えられ、現行制度で差し支えないものと考える。
 こういうふうにしているわけです。
 しかし、ILO条約を引き合いにするまでもなく、このような目的に年休を利用するというのは本来の年休の制度の趣旨には反するわけですね。私傷病などに備えるために年休消化が悪いということが言われておりまして、年休消化を促進したり、あるいは労働時間の短縮を図るためにも、私傷病に利用される病気休暇制度を制度化すべきではないか、これによって年休の消化も進むのではないかというふうに思いますけれども、この制度についてはいかがでしょうか。
#59
○政府委員(野崎和昭君) 年次有給休暇とは別に有給の病気休暇制度を設けることにつきましては、欧米先進諸国におきましても、実はそのような有給の病気休暇制度を有しております国は必ずしも多くないと申しますか、むしろ少ない状況だと思います。また、我が国におきましては、健康保険法によりまして、私傷病で四日以上休んだ場合には所得補償がなされるということにもなっておりますので、やはり当面は労使関係の形勢を見守るということが適当であるというふうに思っております。
#60
○千葉景子君 年休消化を促進したりするためにもこの制度がぜひとも必要ではないかというように思いますが、それとともに介護休暇制度、これも病気休暇制度と合わせて今後必要になってくるのではないだろうかというふうに思いますけれども、この介護休暇制度の実態、これはどのようになっているでしょうか。
#61
○政府委員(佐藤ギン子君) 労働省でいたしました調査によりますと、昭和六十年で従業員が三十人以上の事業所で何らかの介護のための休暇の制度を持っておりますところが一一・四%となっております。
#62
○千葉景子君 我が国でも高齢化社会がこれから進展をするという中で、介護休暇制度の社会的必要性は極めて強いわけです。そういうことを見ますと、これをぜひとも制度化すべきであるというふうに私は強く感じるわけですけれども、この制度化についてはいかがお考えでしょうか。
#63
○政府委員(佐藤ギン子君) ただいま申し上げましたように、三十人以上で一一・四%でございますから、日本では三十人以上の事業所が非常に多いわけでございますので、普及の程度というのは現在一割を大きく下回っているということでございます。それから、介護の休暇というものが一般化していないこともございまして、現在行われておりますところでも、その日数その他非常にまちまちになっておるわけでございまして、私どもはこれから丁普及の動向とか、実施されております制度の内容あるいはその効果、問題点がどんなところにあるかというようなことも検討をする必要があるのではないかと考えております。
#64
○千葉景子君 現在では、この介護休暇制度というのは女性にとっては大変望まれる制度なわけです。これから先は男性にとっても必要になってくる時代がぜひとも来ていただきたいというふうに思うわけですけれども、そういう意味でぜひ積極的に今の実態などを検討されて、制度化に向けて努力をいただきたいというふうに思います。
 それでは次に、労使協定と就業規則問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。
 今回の改正法案は、三カ月の変形制、フレックスタイム制、一週単位の非定型的な変形制、また時間計算の事業場外労働、裁量労働、年次有給休暇の計画的付与などについて、労使協定というものを要件としているのが一つの特徴ではないかというふうに思います。そうなりますと、労使協定の要件が十分機能するかどうかというのは、法が制度の趣旨に沿って運用されるかどうかにかかっていると言っても過言ではないわけです。
 労使協定というのは、労働組合もしくは従業員代表と使用者代表が協議して合意をすることによって初めて効力が出るわけでございますけれども、問題は、労働組合がない場合、労働者の意思を反映した従業員代表が選出できるのかどうかということが大変大きい問題だろうと思います。
 これはもう労働省に申し上げるまでもなく、我が国の企業は大変中小零細企業が多い、また、組合の組織率も残念ながら年々低下をしておりまして、現在では民間で二三・九%、八〇%近くが未組織の労働者である、これが実態でございます。
 労基法というのは、そもそもが罰則を設けて、それによって強行的な救済を図ろうという法律でございますし、また、労基法の本質というのは、本来は個別的な労働者保護、こういうものが基本的な性格であろうかというふうに思います。したがって、この労使協定を要件とするというのは、そういう意味では、この労基法の基本からいきますと極めて異質、労基法を変形させたと言っても過言ではないと思うんですけれども、もし労使協定を要件とするのであれば、少なくとも法律の重要な事項を労使協定にゆだねる場合には、無制限にゆだねるのではなくて、そのルールを少なくとも法律で明記しなければいけないのではないかというふうに思います。
 このルールは、労働者代表が本当に労働者の意思を代表し得るものであるかどうか、それから選出方法が民主的なものであるかどうか、こういうことが中心になろうかというふうに思うんですが、労働省の五十三年の調査、三六協定締結当事者の選定方法を見ますと、事業場規模が大きくなるに従って選挙による選出が多いわけですけれども、小さいところでは使用者が指名するとか、あるいは親睦会が推薦をするとか、そういうような形が非常に多いというふうに言わざるを得ません。
 そういうことになりますと、労働者代表の資格要件、あるいはその選出方法、こういうものが法律で明確にされませんと、真に労働者の意思を反映し、あるいは民主的に選ばれるということが難しくなってくるだろう、それが今の実態だろうというふうに思いますが、この資格要件、選出方法を法律で明記すべきだということについてはいかがでしょうか。
#65
○国務大臣(平井卓志君) 御指摘の問題につきましては、当委員会でいろいろ御議論をいただいたところでございますが、各種労使協定の締結当事者につきましては、もう既に御案内のように、中央労働基準審議会の建議におきましても、適正なものとなるよう指導すること、かようになっておるところでございまして、私ども、新たに通達を出しまして、その中で資格要件また適正な選出方法を明確にいたしまして、適切に指導してまいりたい、かように考えております。
#66
○千葉景子君 新たに通達を出して指導をなされるということですけれども、通達行政でこれまで労働者の労働条件がどれだけ改善をされてきたのかということを見ますと、この通達で本当に労働者代表が民主的に、そして意思を反映して選出できるようになるか、残念ながらちょっと疑問を呈しないわけにはいかないわけです。
 しかしながら、通達でおやりになるということであれば、そこで重視していただきたいのは、労使協定の締結当事者の資格要件についてはぜひとも厳密に考えていただきたい。
 昭和五十三年十一月二十日、基発六百四十二号、三六協定の労働者代表に関する通達、これを見ますと、過半数代表者の適格性を有しない者として「事業場全体の労働時間等労働条件の計画・管理に関する権限を有する者」、これが適格性を有しない者として挙げられていますけれども、これにいわゆる監督者が含まれるのかどうか、ちょっとあいまいなわけです。
 さきの労働省の調査でも、小規模の事業場では選挙による選出方法は少ない、そして日本的な労使慣行、こういうものを見ますと、監督的な立場にある者が代表に選ばれていることが多いですし、そういう現状がやはり見られるわけです。
 そういう意味では、これから出される通達、通達で指導されていくということですけれども、管理監督者は締結当事者になれないということを明確にしていただきたいというふうに思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
#67
○政府委員(平賀俊行君) 労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場における労使協定の締結当事者の資格要件につきましては、先ほど御指摘のありました「事業場全体の労働時間等労働条件の計画・管理に関する権限を有する者」、これは管理監督者の例示でございますけれども、そういった者も含めて、管理監督者でないことが必要であることを明確にいたしたいと存じております。
#68
○千葉景子君 その点はぜひはっきりとさせておいていただきたいというふうに強く要望いたします。
 また、その際に、選出方法を選挙を基本とした民主的な方法、こういうもので選ばれるように、これも明確にしていただきたいというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。
#69
○政府委員(平賀俊行君) 労使協定の締結当事者の選出方法につきましては、その人が労働者の過半数を代表して労使協定を締結することの適否について判断する機会が当該事業所の労働者に与えられていること、それは使用者の指名などその意向によって選出するようなものであってはならないこと、これが第一。
 それから第二には、当該事業所の過半数の労働者がその人を支持していると認められる民主的な手続がとられていること、具体的には労働者の投票あるいは選挙などの方法によって選出が行われることといった要件を満たすことが必要である旨を明確にいたしたいと存じております。
#70
○千葉景子君 この点についても、ぜひ通達の中で明確に記載をしていただきたいというふうに思います。
 ところで、先ほども指摘させていただいたんですけれども、改正案は労使協定にゆだねている部分が多い。そこで、これ一つ問題になるんですけれども、労使協定と労働者個人の関係、これが問題になってくるだろうというふうに思います。例えば、ある事業場で変形労働の協定がなされる、そして十時間を設定するということがあるといたします。そういう場合に、労働者個人について八時間を超えて働く義務が生ずるのかどうか、こういうことが問題になってこようかと思うわけです。
 これまでの労使協定の効力の解釈というのは、労働基準法における労使協定の効力は刑事免責である、労働者個人に直接義務を課すものではないというふうに私は理解をしているわけでございますけれども、これが労働基準法の解釈であるというふうに思いますけれども、このように考えてよろしゅうございましょうか。
#71
○政府委員(野崎和昭君) 先生よく御存じのとおり、この点については学説上若干見解が分かれているかと思いますが、労働省といたしましては、労働基準法における労使協定の効力は、その協定が結ばれております場合に、その定めるところに従って労働をさせましても労働基準法に違反しないという効果を持つものである。したがいまして、労働者の民事上の義務の問題につきましては、その協定から直接生ずるものではなく、別に労働協約、就業規則等の根拠が必要であるというふうに解釈しております。
#72
○千葉景子君 この点は、実際の現場でも問題が出るところでもございますので、ぜひこれからもこの解釈に基づいた指導をいただきたいというふうに思います。
 ところで、労使協定とともに問題になるのが就業規則の問題でございます。
 現行法では、就業規則の作成及び届け出の義務を課す使用者というのは十人以上の労働者を使用する者というふうになっております。産業構造の変化などに伴いまして、とりわけサービス業などを中心にして小零細規模、こういう事業所が増加している、今後もこういうことはふえていくだろうというふうに考えられるわけです。
 小零細規模の事業所に働く労働者というのは、どちらかといえば使用者の専制的な支配といいますか、一方的に使用者の言うことを聞かざるを得ないというようになっているのが現状です。労働条件も恣意的に、使用者の思うままに決められている場合が多いというふうに言わざるを得ないわけですね。労働時間が完全週休二日制、週四十時間に向かおうという今の時代ですから、小零細規模の労働条件を引き上げていくことは大変重要な課題だろうというふうに思います。こういうことからしても、労働者と使用者の権利義務関係を規定している就業規則の整備が零細なところでも必要不可欠であろうかというふうに思います。
 こういうことから考えますと、就業規則の作成及び届け出の義務を課す使用者というのは、現在は十人以上でございますけれども、少なくとも常時五人以上の労働者を使用する者と改めるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。また、常時五人未満の労働者を使用する使用者についても、パート労働者のように雇い入れ通知書の作成等これに類似するようなもので指導していく必要があるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
#73
○国務大臣(平井卓志君) おっしゃいますように、規模十人未満の事業場における就業規則の作成状況等にかんがみますると、現時点では、就業規則の作成義務を常時五人以上の労働者を使用する事業場にまで広げますことは困難ではないかというふうに考えております。しかしながら、中央労働基準審議会の建議等もございまして、規模十人未満の事業場も含め小規模事業場における就業規則の整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
 このために、労働時間短縮の指導の一環といたしまして、中小また零細企業を対象にこうした点について専門的知識を持ったアドバイザーによる相談、また就業規則の作成等についての指導、援助を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
#74
○千葉景子君 労働条件を改善していく上で、就業規則の作成状況が悪いからこそ法による規制、そしてそれによって労働条件を改善していくということが必要なわけでありまして、作成状況が悪いから困難だと言っていたら、いつまでたっても改善されないということにもなりかねないわけです。
 そういう意味では、就業規則の常時五人以上の使用者については難しいというのは大変私は不満足というか、納得のいかない御回答だと思います。十人未満の企業がもうほとんど大部分を占めるという――大部分とは言いませんけれども大変大きな割合を占める日本の現状ですから、ここにこそ就業規則の作成、届け出義務を課して労働条件をはっきりさせるということが必要なんじゃないかと思います。これも困難だと言って放置をしないで、今後ぜひ検討を続けていただきたいというふうに思います。
 ところで、最近コンビニエンスストアというような独立性のない小規模店舗が増加しております。ある企業だと一万五千の店舗を有している。大体どこか想像つくようなものでございますけれども、小売企業の中では大変優良企業なんですけれども、一つ一つ見れば三、四人くらいだと、従業員が。こういうような場合、労働者の数が十人未満ということになりまして就業規則の作成義務がないということになりますと、これは大変大きな問題になります。
 こういうチェーン店というのは今後どんどんふえる傾向にもございますので、労働基準法上の事業場概念も見直していただいて、就業規則の作成義務をこういう店舗、こういうところにも課すようにすべきではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
#75
○政府委員(平賀俊行君) 御指摘のように、コンビニエンスストアなどで小さな単位のチェーン店、支店、分店などが多くできているということは事実でございます。
 ところで、そういった単位が事業場と数えられるかどうか、事業場とみなし得るかどうかにつきましては、それぞれの事業場、それぞれの店の事業運営とかあるいは労務管理の実態に即して判断をすることになろうかと思いますし、それらが上位の機関、本店等との組織的関連が密であるときはやはりこれらと一括して一つの事業場として取り扱っておるところでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、そういったチェーン店等がある場合につきましては、それが事業場とみなされようとみなされまいと本社を通じての指導ということが必要であろうと思いますし、こういう方法を通じて名店の就業規則の整備を図ってまいりたいと存じております。
#76
○千葉景子君 その点についてもぜひ整備をお願いをしたいと思います。
 ところで、中小零細の事業場におきましては、労働者への就業規則の周知が大変不十分である。そればかりでなく、就業規則があるということすら明らかにしないことがあるわけです。こういう就業条件をめぐるトラブルが発生をいたしましても、一体就業規則がどこにあって、その内容がどんなになっているかも従業員にとってはわからない、こういう状態もしばしば存在をしております。
 我が国の小規模事業場における労使関係が、どうしても先ほど言いましたように使用者の一方的な支配に属しているというような状況から考えますと、労働者の方で就業規則の明示を要求する、一人でぜひ見せてほしいというようなことを要求するというのは大変困難なわけですね。これは御理解をいただけるというふうに思うわけです。
 そこで、当該の労働者が就業規則の閲覧を労働基準監督署に請求した場合、監督署としては閲覧をさせるということを認めるべきではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
#77
○政府委員(平賀俊行君) 労働基準監督署は、使用者から届け出のあった書類を、言ってみれば監督業務の必要上それを見る立場でありまして、それを労働者も含めてほかの人に見せるという立場ではございません。
 御質問の中にありましたように、労働者に見せることも含めて就業規則の周知義務というのは明確に使用者にあるわけでございます。それは労働者の個々の契約条件を明らかにするというためにも必要ですし、労働者保護のためにぜひ必要な規定でございます。当然使用者に対して周知するための義務、これは法律上の義務でありますので、これを徹底するようにいたしたいと存じております。
#78
○千葉景子君 先ほどから申しておりますように、小規模な事業所での労使関係ですね、こういう実態に配慮をされて、見せてほしいと言うことによってまた何か不利益をこうむったり、何だ見たいと言っているやつはどいつだというような問題が起こらないように、そういう点も十分配慮をしていただきながら周知義務を果たさせるようにぜひ指導をいただきたいというふうに思っております。
 ところで、先ほど監督署で就業規則、これはその開示を目的としたものではなくて、開示すべき性質のものではないということでございますけれども、見せてならないということも別に規定されているわけではないわけでして、ましてや第三者が見たいというわけではなくて、当該の事業場で働いている者が自分の事業場の就業規則を見たいということでございますから、この閲覧についてはぜひ認める方向で、先ほどの事業場内での労使関係などを考えますと、監督署で見せていただくということができれば大変労働者にとっても救いの道になるわけです。そういう意味ではこの閲覧について認める方向でぜひ検討をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#79
○政府委員(平賀俊行君) そういった場合、恐らくはその労働者と使用者の間に労働条件をめぐってのいろいろな問題があるケースかと考えます。場合によっては具体的に労働基準法の違反等の問題があるということであろうかと思います。そういった場合に、監督署といたしましては、そういった労働者の申告に基づいて必要な調査等もいたしますし、また労働者とのいろいろな事実の把握等に努めるところでございます。具体的な状況に応じて適切に対処いたしたいと存じます。
#80
○千葉景子君 それはぜひ適切な対処をお願いいたします。
 その他まだ派遣労働に関する問題などございますが、それは後ほどまた同僚委員の方から質問させていただきたいと思います。
 私の質問はこれで終わりにさせていただきます。
#81
○委員長(関口恵造君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開会
#82
○委員長(関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#83
○糸久八重子君 午前中の千葉委員の質問の中で、就業規則の問題が残されておりましたので、続けて私質問させていただきたいと思います。
 労働者派遣法が施行されまして一年二カ月になりますけれども、この労働者派遣事業の許可、届け出された事業所は、東京、大阪など大都市を中心としてかなりの数に上っていると思われますけれども、就業規則の整備は図られておりますでしょうか。
#84
○政府委員(野崎和昭君) 労働者派遣業におきます就業規則の届け出の有無につきましては、派遣事業に関します許可、届け出申請の際に公共職業安定所におきまして作成の有無を確認いたしております。またその結果、労働基準監督署への届け出がなされるわけでございますが、内容につきましては当然労働基準監督署において点検をいたしているわけでございます。そうした状況でございますので、労働者派遣業におきます就業規則の作成届け出は適正に行われているというふうに考えております。
#85
○糸久八重子君 労働者派遣事業の労働者の特性は、派遣元に雇用されている労働者がそれぞれ違った派遣先で働いておりまして、同じ会社の労働者が一堂に会することがないわけでございます。したがって、労働者代表の選出が極めて困難になるわけでございますけれども、労働者派遣業におきます労働者代表の選出はどのようになっておりますでしょうか。
#86
○政府委員(野崎和昭君) 御指摘のとおり、派遣業におきましては事業の特殊性から労働者代表の選出について適正に行われることが特に必要でございますので、私どもの方で具体的に方法を示しまして通達を出しているところでございます。
 その中身を申し上げますと、四つの方法を具体的に示しているわけでございますが、一つは労働者の投票による選挙または信任の方法による場合、もう一つは回覧の方式による選挙または信任による場合のほか、三つ目といたしまして、派遣先ごとに代表者を選んでいただきまして、その話し合いによって全体の代表者を選んでいただくというやり方、四つ目は派遣先ごとに代表者を選んでいただき、その連名によって協定を締結していただく方法、この四つの方法を具体的に例示いたしまして、実態に応じまして適正な方法で選任が行われるよう指導しているところでございます。
 今後とも実態の把握に努めまして、適正に行われますよう指導してまいりたいというふうに思っております。
#87
○糸久八重子君 問題の多い派遣業でございますから、十分に指導をしていただきたいと思いますし、また二年後の法見直しの際にはこれらが改善できるように適切に指導していただきたい、そう思うわけでございます。
 続きまして、賃金の口座支払いについてでございますけれども、現在と同様、労働者の意思に基づいていること、それから、労働者が指定する本人名義の口座に振り込まれること、振り込まれた賃金の金額が所定の支払い日に払い出し得る状況にあること等が担保されていなければならないと考えますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
#88
○国務大臣(平井卓志君) 賃金を口座振り込みにより支払うことにつきましては、六十一年十二月の中央労働基準審議会の建議を踏まえまして法的に明確にすることといたしておるところでございます。
 おっしゃいます場合、この場合でございますが、預貯金口座の指定は労働者自身が行うこととする等御指摘の点は従前と同様の取り扱いをいたしてまいる所存であります。
#89
○糸久八重子君 次に、監督行政につきましてお伺いをいたします。
 労働基準法は、労働者の保護を図るために法律で最低労働条件を定め、これに使用者が違反した場合は罰せられるという労働刑法でございます。
 我が国の労働者は、中小零細企業に働く労働者が圧倒的多数を占め、しかもそれらの方たちは未組織労働者が多いわけでございます。これらの未組織労働者はみずからの労働条件を改善する手段を持ち得ないばかりか、みずからを守るものは労働基準法しかないというのが現実なわけであります。また、使用者は激しい企業間競争に勝ち残るために労働コスト削減に懸命となっておりまして、労働者の労働条件や権利を低下させようとして、法律で定められました最低労働基準さえ破ろうとする傾向があるわけでございます。
 労働基準法は働く者の憲法と言われております。この労働基準法の実効確保のためには監督行政が極めて重要であると思いますが、この定期監督の実施状況及び違反状況はどのようになっておりますでしょうか。
#90
○政府委員(平賀俊行君) 昭和六十一年の定期監督等の実施事業所数は約十七万三千でございました。このうち何らかの法違反が認められた事業所の数は九万八千でございます。したがいまして、何らかの違反があった事業所の割合は約五七%でございます。
 これは非常に限られた数の監督官で監督を実施するものですから、私どもとしてはできる限り違反のありそうな事業所、これを監督しているというために違反率が高くなったものと理解をしております。
 個々の条項別に見ますと、一番多かったものが労働安全衛生法の第二十条から二十五条のいろいろな設備等の安全基準に関する違反率が二二・六%、それから労働基準法の三十二条等の男子の労働時間に関するものが一一・二%、それから安全衛生法六十六条の健康診断に関する違反があったものが九・三%などでございます。
#91
○糸久八重子君 ヨーロッパに比べますと我が国の監督官は非常に少人数でございます。ちなみに、監督官一人当たりの事業所数は、イギリスが百八十五、フランスが百二十三、西ドイツが六百八十となっております。日本は監督官一人当たりの事業所数は千八十七でございまして、イギリス、フランスと比べますと極めて多く、対象企業をすべてチェックするためには十八年から二十年かかると言われております。ILO二十号勧告が明らかにしておりますように、フランスで実施している年一回の監督という体制の確立が原則でありまして、その方向への努力が求められておるわけでございます。
 我が党は、せめて監督実施率を現在の四倍の二〇%程度に引き上げることといたしまして、そのために労働基準監督官を五年計画で四倍に増員するよう繰り返し要求してまいりました。我が党の考え方に立って監督官をふやすべきではないかと、そう思うわけですけれども、この点につきましてはいかがでございましょうか。
#92
○政府委員(平賀俊行君) 労働基準監督行政は、御指摘のように労働者保護の観点から極めて重要な制度であると考えておりますし、また現下における労働時間短縮の重要性にかんがみまして、今回の改正によって新しい法制度、今回の改正が加わった全体としての法制度の適正な運用が確保されるように、労働基準監督官の増員等、養成体制の充実について最大限の努力をいたしたいと考えております。
#93
○糸久八重子君 監督行政の充実とあわせて大事なことはい労働時間の短縮を早急に図るために労働行政の一層の強化にあると思います。そのために、中央、地方の労働基準審議会に産業、業種別の小委員会を設けること、それから労働者派遣法の場合の適正運営協力員や労働安全衛生法の場合の災害防止指導員などのような制度を設けること、さらに現在地方に設けられております時短懇談会の機能を強化すること、それから時短のための業者間協定の促進等々、いろいろ工夫をすべきであると考えますけれども、この点はいかがでございましょうか。
#94
○国務大臣(平井卓志君) おっしゃいますように、時間短縮を早急に進めてまいることは、これはもう極めて重要であることは十分に私ども認識いたしております。
 委員の御意見も踏まえまして、地方労働基準審議会の活用等についても十分に検討してまいりたい、かように考えております。
#95
○糸久八重子君 労働時間の短縮は、法律によって行うことは当然ですけれども、労使が協定した労働時間水準の労働協約を他に拡大適用する方法を促進することも必要であろうと思います。
 労働組合法第十八条には、「一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立に基き、労働委員会の決議により、労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約の適用を受けるべきことの決定をすることができる」としておるわけですけれども、労働協約の地域拡張を定めておるわけですね。
 労働協約の拡張の例はこれまでどのくらいあり、そしてそれはいつごろのどういう事例があるのか、お尋ねをいたします。
#96
○説明員(齋藤邦彦君) 先生御指摘のように、労働組合法十八条はいわゆる労働協約の地域的の一般的拘束力について定めておるわけでございますが、この十八条の規定に基づきまして法施行以来現在まで具体的に労働協約の拡張適用の決定がなされました件数は、七件ございます。そのうち五件は昭和三十年代までの間に決定されたものでございますし、残りの二件は昭和五十年代後半に適用の決定がなされたものでございます。なお、現在有効に拡張適用をされておりますのが一件ございます。
 今まで拡張適用されました労働協約の内容でございますけれども、個々の協約によっていろいろ差がございますが、賃金、労働時間、休日等に関するものでございます。
 また適用を受けました労働者もいろいろな業種がございますが、製材業ですとか炭鉱業ですとか繊維業等の労働者に拡張適用された例がございます。
#97
○糸久八重子君 活用された例が非常に少ないわけですけれども、その原因は何とお考えでしょうか。
#98
○説明員(齋藤邦彦君) 労働組合法十八条の規定は、一の地域におきまして従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至った場合と、こういうような規定をいたしておるわけでございます。しかるに、現実の我が国労働組合の組織形態を見てみますと、企業別労働組合がほとんどでございます。したがいまして、労働協約自身も企業別のそれぞれの労働者が個々の対応する使用者との間に結ぶという例がほとんどでございます。したがいまして、そういうような日本の労働組合の組織形態の特殊性等から見ますと、なかなか本制度の適用条件を満たすことが困難な事態があるということだろうというふうに思います。
 またもう一つあえてつけ加えさせていただきますと、我が国の労働協約の規定自身が最低の労働条件を具体的に決めているという例が比較的少ないというようなことも挙げられるんではないかと、こういうふうに思っておる次第でございます。
#99
○糸久八重子君 例えば今一つある業種、どういう例でもいいんですが、織物等の例をとってみますと、その中の幾つかの労働組合が年間休日九十日の労働協約を結ぶ、そしてまたほかの幾つかの労働組合が年間休日八十日の労働協約を結んだとしますね。そのように、ある地域の中で複数の労働協約がある場合には、それらの労働協約のうち最も低い水準の協約、つまりここの例で言いますと、年間休日八十日というその労働協約が拡張適用されることになると思うのですが、いかがですか。
#100
○説明員(齋藤邦彦君) この労組法十八条の制度といいますのは、一つの地域において同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けるということが要件になっておるわけでございます。したがいまして、複数の労働協約があるというような場合には本条の適用の問題が生じてこないということになるんではないかというふうに思うわけでございます。
#101
○糸久八重子君 労働協約の拡張適用がどんどん利用されまして、労使の自主的な努力による労働時間の短縮が進むことを期待するわけでございますけれども、そのためにはこの制度の厳しい要件を見直す必要があると思います。特に同種の労働者の大部分、つまりその大部分とは四分の三以上という解釈のようですけれども、これを二分の一以上にすべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。
#102
○説明員(齋藤邦彦君) 御指摘のように、十八条の規定は労働者の大部分が同一のと申しますか、一つの労働協約の適用を受けるに至った場合と、こういうふうになっておるわけでございまして、法律上の文言は「大部分」という規定になっておりますが、法制定以来の解釈論といたしまして、労組法の十七条で一般的拘束力を定めておる規定がございますが、その規定とのバランス上、一応四分の三以上というのが解釈の参考になるんではないかということでございます。したがいまして、実際の拡張適用の例も大体そのような基準をもとにして拡張適用の決定を労働委員会がしておるという実態になっておるわけでございます。
 先生御指摘のように、この要件をもう少し緩和すべきではないかという御議論がありますことは十分承知しておる次第でございますが、このような御議論のほかに、一方では我が国の労働組合の組織形態が企業別組合であるという実態から踏まえて、この規定そのものが実情に合わないのではないか、むしろこの規定は別な形にすべきではないかというような御議論もございます。まだこの辺の御議論の一致を見るといいますか、いろいろの見解がございまして集約するのが甚だ困難ではないかというふうに思っておるわけでございまして、私どもといたしましては、これからも各方面いろんな御議論があろうかと思いますので、そういうような御議論を伺いながらこの問題についてさらに研究をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
#103
○糸久八重子君 政府は昭和五十五年に、昭和六十年までに二千時間を目指すという目標を決めて、週休二日制等労働時間対策推進計画を作成したわけですけれども、この目標は結局実現できずに、新たに昭和六十年に労働時間短縮の展望と指針を策定して、六十五年までに二千時間を目指すとして二千時間達成の時期を延ばしてきたわけでございますけれども、展望と指針策定から二年たって成果はどのようになっておりますでしょうか。
#104
○政府委員(平賀俊行君) 労働時間短縮の展望と指針は、六十年六月に中央労働基準審議会の御了承を得て策定し、お示しをしているところでございますが、それ以後、統計的に把握できる時期というのは、昭和六十年の実績とそれから六十一年の実績とが把握されております。
 その状況をかいつまんで申し上げますと、年間の総労働時間では六十年が二千百十時間、六十一年では二千百二時間。それから何らかの形での週休二日制を実施している事業場で働いている労働者数の割合というのが、六十年では七六・五%でございましたのが六十一年には七八%に、それから月二回以上の週休二日制を実施しているというところが六一・六%から六五・五%になり、また、年間の休日を比較しますと、六十年の九二・九日というのが六十一年には九四・一日と。これらの指標から見まして、労働時間短縮が少しずつは進んでいると思いますけれども、その結果は満足すべき状態にないということはこれまた明らかでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、まず行政措置といいますか、昭和六十一年度から、例えば民間の特に中小企業等の集団について自主的に労働時間の短縮を御検討いただく、そういうグループを全国各都道府県でつくりまして、そこで自主的な労働時間短縮への努力を促進するという事業を実施いたしましたり、あるいは連続休暇等のキャンペーン活動なども六十一年度以来実施しております。
 そういった各般の措置を講ずるとともに、実は労働基準法の改正についての御検討を中央労働基準審議会にお願いをし、今般改正法案を提出、また御審議をいただいておりますが、この労働基準法の改正、施行ができますれば、さらにこれらをてこにいたしまして労働時間短縮の対策を私どもの出先各機関を通じて積極的にまた展開をし、一層その充実強化を図りまして所期の目的を達成するように全力を尽くしたいと考えております。
#105
○糸久八重子君 今まで我が党といたしましては、この法律案につきまして各種の質疑をしてまいりましたけれども、これらの質疑を踏まえまして、以下労働大臣に対しまして確認答弁を求めておきたいと存じます。
 まず第一に、週四十時間制への移行時期について大臣の考え方を再確認いたしたいのですが、いかがでしょうか。
#106
○国務大臣(平井卓志君) 本委員会でたびたびの御指摘をいただきました問題でございますが、週四十時間制への移行時期につきましては、新前川レポートの目標の実現を図るために、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるように努力をいたしたいと申し上げておるところでございます。
 しかしながら、労働時間の動向は労使の努力また経済動向等々によりまして左右されるものでございますので、現時点でその移行時期を確定的に見通すことは大変困難でございますので、法令上明記することは適当でないということで申し上げておるわけでございます。御理解をいただきたいと思います。
#107
○糸久八重子君 御答弁のように一九九〇年代前半と申しましても、一九九〇年から九五年まで相当幅がございます。遅くとも一九九〇年代前半の半ばである一九九三年までには週四十時間制に移行すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#108
○国務大臣(平井卓志君) 御趣旨に沿いますように最大限努力をいたしたいと考えております。
#109
○糸久八重子君 次に、当面の週法定労働時間についてでございますが、改正法施行当初は週四十六時間とするものの、三年後を目途にできるだけ速やかに週四十四時間制に移行させるということで間違いはございませんか。
#110
○国務大臣(平井卓志君) 当面の法定労働時間につきましては、おっしゃいますように週四十六時間といたしますが、改正法施行後三年をめどにできるだけ速やかに週四十四時間とする所存であります。
#111
○糸久八重子君 適法定労働時間の適用猶予措置につきましては、その対象事業場の範囲をできるだけ限定すべきと思いますが、いかがでしょうか。
#112
○国務大臣(平井卓志君) 当面の法定労働時間の適用を猶予されます事業場の範囲につきましては、既に御答弁を申し上げておりますけれども、規模別、業種別の労働時間の実態に即しまして、当該規模、業種に属する事業場の相当数が週四十六時間を超えております場合に限定することといたしまして、具体的には中央労働基準審議会の意見を聞いて、できるだけ限定をいたしたいと考えております。
#113
○糸久八重子君 三カ月単位の変形労働時間制については、一日十時間、一週四十八時間の上限規制を設けるとともに、一週間に一日は休日を与えなければならないとすべきであると思いますが、いかがですか。
#114
○国務大臣(平井卓志君) 三カ月単位の変形労働時間制のおっしゃいますような一日、一週等の上限につきましては、中基審の意見を聞いて決めるということになっておりますが、一日の上限を十時間とすることを前提にさらに検討をいたしたいと考えております。
#115
○糸久八重子君 変形労働時間制につきましては、妊産婦を適用除外とすることは当然のことと思います。加えて育児、介護等の家族的責任を有する労働者や勤労学生など特別な事情のある者については、事業主に対し、これを導入するに当たっては十分配慮する義務を負わせる必要があると思いますが、いかがですか。
#116
○国務大臣(平井卓志君) 御指摘の育児担当者、また介護の責任を有する者、勤労学生等につきましては、変形労働時間制の適用に際し必要な配慮がなされるように指導する所存であります。
#117
○糸久八重子君 一カ月単位の変形労働時間制については、事業主が就業規則で定めればこれを導入できることになっておりますが、これについても労使協定の締結及び行政官庁への届け出を義務づける必要があると思います。
 今回はこれらの措置が見送られたとしても、せめて三年後には改正法の見直しが行われると思いますが、その場合には再検討すべきだと思いますが、いかがですか。
#118
○国務大臣(平井卓志君) 一カ月単位のこの変形労働時間制につきましては、乱用されるようなことがございませんように十分指導をいたしますと同時に、今御指摘の三年後の見直し時期までに実態を調査いたしまして、規制の要否、その方法等について検討いたしたいと考えております。
#119
○糸久八重子君 年次有給休暇の最低付与日数については、四から六労働週という欧米諸国並みの水準、少なくとも三労働週以上というILO条約の水準への引き上げについて引き続き積極的に検討するとともに、改正法による猶予適用措置については、その対象事業場に対し猶予期間中であってもできる限り本則どおりの日数を付与するように指導すべきであると思いますが、いかがですか。
#120
○国務大臣(平井卓志君) 年休につきましては、今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考にいたしまして、さらに付与日数の増加を図ることを検討いたしたいと考えております。
 また、御指摘の点でございますが、年休の最低付与日数の引き上げに関し、適用猶予期間中の事業場につきましても可能な限り本則の日数が付与されますように指導いたしたいと考えております。
#121
○糸久八重子君 出稼ぎ労働者については、かねてから年次有給休暇について強い要望があることを労働省も承知しているはずでございます。これに積極的に対応すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
#122
○国務大臣(平井卓志君) 出稼ぎ労働者は、一般に契約の形態といたしまして継続勤務となっておりません。したがって労働基準法の年次有給休暇の規定は適用されませんが、そのような出稼ぎ労働者に対しましても、パートタイム労働者との均衡上、年次有給休暇が付与されますように、関係業界等を指導してまいりたいと考えております。
#123
○糸久八重子君 時間が参りまして、あと数点確認をさせていただきたい部分があるのですけれども、夕方総理もお見えになるということでございますから、そちらに譲りまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#124
○中西珠子君 私はこの前の質問のときに、週四十時間制について、また労使協定の問題、変形労働時間制、年次有給休暇の計画的付与、フレックスタイム制その他につきまして通告をいたしまして、それは質問が終わりましたが、裁量労働についてと事業場外労働について、それから換算制、これにつきましては通告はしたものの、時間切れになりまして全然触れていないという状況でございますので、きょうは法案に即しまして、この事業場外労働と裁量労働についてお聞きしたいと思います。
 労基法改正案の三十八条の二でございますが、これは事業場外労働ということで、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」、こう書いてございますね。これはこれまで労働基準法の施行規則第二十二条にありましたただし書きより前の部分をそっくり持ってきたと思っているのですが、そうでしょうか。
#125
○政府委員(野崎和昭君) 御指摘のとおり、現行の施行規則二十二条を基本にいたしまして、これに検討を加えまして合理的に改めた趣旨でございます。
#126
○中西珠子君 その労基法施行規則二十二条のただし書きですね、「但し、使用者が予め別段の指示をした場合は、この限りでない」、これを削除してあるわけですが、これを削除して新たに「ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、命令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」、こういう新たなるただし書きになっているわけですね。
 この事業場外で業務に従事して、労働時間が算定しがたい労働者というのは、新聞、ラジオ、テレビあたりで報道関係に従事していらして取材をなさる記者の人とか、それから営業マンで外に出ることが非常に多くて時間を把握できないというふうな人もいますでしょうし、そのほかどういう業種が考えられますか。
#127
○政府委員(野崎和昭君) 業務といたしましては、先生御指摘の新聞記者の方であるとかセールスマンであるとか、そういう方が代表的なものであると思っております。そのほか、通常の労働者が事業場外に出張したというような場合もすべてこの規定の対象になるというふうに思っております。
#128
○中西珠子君 この改正法案三十八条の二のただし書き、「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、命令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」、この命令はどのようなことを考えていらっしゃいますか。
#129
○政府委員(野崎和昭君) 事業場外労働に関しますこの規定は、労働時間の計算に関する規定でございまして、休憩時間とか休日に関する規定はこういった場合でも当然適用されるものでございますので、その旨をこの省令で念のため規定したいというふうに思っております。
#130
○中西珠子君 当該業務の遂行に必要とされる時間というのは、業務ごとに決めていくということを考えていらっしゃるわけですか。
#131
○政府委員(野崎和昭君) 一応、この改正前と改正後の違いを若干説明させていただきますと、改正前におきましては、事業場外で労働をしまして労働時間を算定しがたい場合には、すべて所定労働時間労働したものとみなすと、その事業場の決められた就業時間で労働が終わったものとみなしていたわけでございます。
 しかしながら、新聞記者などはその代表的なものかと思いますけれども、通常事業場外で労働しておりまして、仕事が所定労働時間で終わらないのが通常であるという場合がございますので、そういう場合につきましては、その通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる時間、その時間を労働したものとみなすというふうにしたわけでございます。したがいまして、これは通常所定労働時間を超えるそういう業務ごとにすべて労働時間は違ってくるというふうに思っております。
#132
○中西珠子君 そういたしますと、通常所定労働時間を超えて働くというふうにみなされた場合、事業場外で働く人たちの一応所定労働時間を超えて働いた時間外労働についてはそれの手続が必要ですね。いわば三六協定を結ぶとか、それからまたそれで認められた場合はちゃんと残業手当を払うということが必要になりますね。その点はどのようにお考えですか。
#133
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘のとおり、事業場外での労働が通常十時間必要であるというふうに認められました場合には、八時間を二時間超えておりますので、三六協定を締結することはもちろん前提でございますと同時に、二時間分の割り増し賃金を支払うことが必要になるわけでございます。
#134
○中西珠子君 時間外労働については、時間外労働の手続と割り増し賃金を払うということをやっぱりこれは法律の中に書いておかなくちゃいけないんじゃないでしょうかね。どうでございますか。
 労基法研究会では、時間外労働の手続をちゃんと踏むということ、例えば三六協定を結ぶということ、それから割り増し賃金に相当する手当の支給というものを条件とすると言っているわけですね。条件としてみなし労働を認めようということでございますが、その条件についてはこの法案の中には全然お書きにならないのはなぜでしょうか。
#135
○政府委員(野崎和昭君) ただいまお答え申し上げましたように、通常必要とされる時間労働したものとみなすということで、その十時間なら十時間労働したものとみなす、法律的にはそういう扱いになるわけでございます。そういう扱いになりますので、当然のことでございますが、割り増し賃金の規定とか三六協定の規定とかが当然適用になる、そういうことになるというふうに解釈しております。
#136
○中西珠子君 通常必要とされる時間、所定労働時間プラス時間外労働、この通常必要とされるものとみなすその根拠はどういうものを根拠にして、どういう資料でみなすようにお考えでしょうか。
#137
○政府委員(野崎和昭君) ただいまの点が現実問題としてなかなか難しい点でございますが、一応一般的に申しますと、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」と申しますのは、通常の人が通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間というふうに言えるのではないかと思います。
 ある具体的な業務を遂行する場合には、日によりまして、あるいはまた人によりまして若干実際に必要とされる時間が異なるかもしれませんけれども、平均的には一定の時間というものが考えられるわけでございます。この時間を「通常必要とされる時間」というふうに考えているわけでございます。
#138
○中西珠子君 やはり個人的に同じ仕事を遂行するにも差があると思うんですね、個人差が。それからまた、そのときの状況によって、お天気がすごく悪かったとか、いろいろいろんな状況によって通常必要とされる時間よりも超えてどうしても働かなきゃならなかったということがあり得ると思うんですね。そういう場合は、実はこういう「通常必要とされる時間」ということでみなされているけれども、私はこういう事情でもっともっと長時間働かざるを得なかったんですというふうに労働者個人が自己申告をしまして、そしてもう少し何とかなりませんかというふうな、こういうことはできますか。
#139
○政府委員(野崎和昭君) ただいま先生御指摘のように、事業場外の労働に従事したその人の特別の事情から、通常必要とされる時間よりもたくさん労働せざるを得なかったということも確かにあろうかと思いますが、逆に、例えば自宅近くで労働したということで通常よりも短い時間で済んでしまったということもあり得るわけでございまして、そういったことを一々厳密に計算いたしますと非常に困難になってまいりますので、先ほど申しましたように平均的な時間で算定をするということにいたしているわけでございます。
 なお、いずれにいたしましても平均的な時間というのは労使で話し合って決めていただくわけでございますけれども、場合によりましては労使間で意見が一致せず、かえって紛争が起こるということも考えられますので、この法律におきましては、労使間であらかじめその時間について合理的な時間を設定しておくというような場合には、その設定された時間をもって通常必要とされる時間とみなすということにいたしているわけでございます。
#140
○中西珠子君 今、野崎さんがおっしゃいましたのは後の方ですね。ただし書きの場合の労使協定を結んだ場合のお話ですね。その労使協定が、前もってやっておいた方が後でいろいろ争いが起こらなくてよろしいでしょうというお考えはよくわかるんでございますけれども、今度はその労使協定で定められた時間というものがやはり問題になってくるのではないかと思うんですね。
 それで、それもまた平均的な時間というものを考えて労使協定を定めるということになるのでしょうが、非常にやはり個人差というものもあるし、この協定によらないで自己申告でやりたいという人が出てきた場合は、これはその人の扱いはどうなりますか。
#141
○政府委員(野崎和昭君) この規定が適用になりますのは、事業場外で労働をして労働時間を算定しがたい場合ということになっております。したがいまして、自己申告という場合でございましても、その自己申告を使用者側が受け入れた場合にはその時間で現実に労働したものというふうに処理できると思いますけれども、労働時間が算定できないという前提に立って考えますと、使用者側がそれを受け入れるということは一般的には期待できないわけでございます。そういたしますと、やはりみなし労働時間制によらざるを得ないというふうに思います。
#142
○中西珠子君 自分で算定した業務時間を申告できない、それも労働者がたとえ申告しても使用者側がそれを受け入れない場合の方が多いだろうからできないだろう、こういうことですけれども、法的に言うとどういう根拠がございますでしょうか。
#143
○政府委員(野崎和昭君) 労働基準法で労働時間と申しますのは、使用者の指揮監督下で働いた時間ということになっております。そこで、今のように事業場外で労働した場合と申しますと、通常は使用者の指揮監督下にないわけでございます。そこで、もちろんその方は現実に必要な事業場外の場所へ行き働かれたんでございましょうけれども、使用者の指揮監督下にないということで、働いたという事実だけでは労働時間と言うことは難しいと思います。
 使用者がそれを認めて、その労働は自分の指揮監督下で働いたんだということで認めればその時間が労働時間になるわけでございますし、また逆に、あらかじめ使用者が、どこへ行ってどういう形で働くようにという指示をすればその時間は使用者の指揮監督下の労働ということになるんでございますけれども、そういった場合でない場合、一般の場合には、現実に労働者が働いたという時間が即労働時間になるというものではないと思います。
#144
○中西珠子君 協定で定めた時間が、必要ということで定められた時間が所定労働時間を超えて、事業場外では所定だけじゃなくてやっぱり非常に時間外労働をするということが常態というか、常時そのような状況があるから、これくらいの時間外労働を必要ということに認めまして、そして三六協定を結んで時間外労働の手続を踏み、それから時間外労働に対する補償ですね、割り増し賃金、そういったものを払うということをきちっとやはり協定を結ぶときに中に入れておくべきだと思うんですね。
 それもやはり労使の力関係によって、残業はこんなにしているはずはない、もっと少ないはずだというようなことで、必要な時間というものが非常に短縮された、凝縮された時間に協定の内容をされてしまうという可能性も非常にあるわけですね。そういう場合、やはりそうすると使用者側が残業をやっているということは認めないということにもなりますし、先ほどおっしゃったように、事業場外で目の届かないところで指揮監督のもとにということではない場合、なかなか使用者側は認めないということになりますでしょうし、これはやはり大変力関係で決まってくるみなし労働時間制ではないかと思うんですね。そういうふうな、残業手当を少なくするためにこれを使うという危険は全然ないと思っていらっしゃいますか。
#145
○政府委員(野崎和昭君) 先生よく御存じのように、現行の施行規則二十二条との比較で申し上げますと、現行の施行規則のもとでは時間外労働というものは発生する余地がなかったわけでございますので、それに比べますと、今回は実態に合わせて時間外労働があるものは時間外労働として算定しようということでございまして、その意味では実態に合った合理的なものだと思っております。
 ただ、新たに生じました問題は、その時間数を何時間と数えるかという問題が生じたわけでございますが、これはやはり業務の内容をよく知っております労使に決めていただくということが一番適当ではないか。また逆に、労使協定で十時間なら十時間というふうに決められますと、今度は働く側の労働者も大体十時間程度をめどに働くことができるということになりまして、またその措置が実態に合ったものになってくると、そんなような効果も期待できると思っているところでございます。
#146
○中西珠子君 これはまた労使協定の問題になってくるわけですけれども、やはり適正な労働者の代表というものが選ばれる手続というものと、それからその人たちがちゃんと自分が代表する労働者の意見をきちっと聞くということと、その労働者代表の資格の問題ですね、そういったものが大変大事になってくると思うんです。
 この場合ばかりでなく、三カ月単位の変形労働時間制の導入、それから非定型的一週間単位の変形労働時間制の導入、それから年次有給休暇の計画的付与、フレックスタイム制の導入、それから事業場外労働もその協定による場合も出てくるということでありますし、それから裁量労働、これにつきましては裁量労働の範囲も時間算定も労使協定にゆだねるということになっておりますね。
 それほど労使協定というものを重視していらっしゃるのであれば、また労使協定にゆだねるのが一番いいということをお考えでいらっしゃるのであれば、やはり日本のように産業民主主義というものが成熟していない、発達していない段階で、未組織の労働者が非常に多いという、組織率が非常に低いという段階で、やはり適正な労働者代表というものが選ばれるようなきちっとした手続、無記名、秘密投票で民主的に選ぶとか、それから資格についても厳正な要件を加えるとか、そういったことが大事だし、また従業員の意見聴取義務というふうなものもきちっと法律に定めておく必要があると思うんですけれども、これは全然そういうことはお考えになっていないんでしょうか。
#147
○政府委員(平賀俊行君) 確かに、労使協定を要件とする規定が今回の改正によって幾つか加えられているということは事実でございますし、また改正前の規定においてもさまざまな労使協定が規定をされております。その点について、労働者側代表の資格要件とかあるいは選出手続について適正なものにするべきであるという議論は、この基準法改正案をいろいろ御検討いただきました中央労働基準審議会で労使の代表も入っていただいて十分話し合いをし、いろいろな御議論がございました。
 結果として、この点に関しては法律上の規定にするという結論は得られなかったわけでございますが、先般来御答弁申し上げておりますように、この労使協定を適正なものとするために、労働者代表がその要件あるいは手続等についても適正な方が選ばれるように指導するようにということが中央労働基準審議会の建議の中に加えられまして、私どもといたしましても、その点十分通達にそういったものを書き込みまして、これからもさらに適正な労働者代表が選ばれるように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
#148
○中西珠子君 通達をお出しいただいて、そして指導してくださるということでございますけれども、通達には拘束力がないわけでしょう。それで指導にもやはり拘束力がないわけですから、非常に今まで指導なすっていたことの実効性が上がった場合もあるけれども、上がらない場合の方が多いのではないか。
 それから、けさほど千葉委員からも御指摘がありました昭和五十三年度の三六協定に関する調査においても、やはり労働者代表というものが使用者側の指名によって出てくる場合が非常に多いとか、管理監督の地位にある者が出てきているのが多いとか、それから労働者の意見を全然聞かないのが多いというふうな調査結果も出ておりますし、私が最近聞いたところによりますと、食品産業あたりで既にもう、この基準法の改正案が来年の四月一日から施行になるだろうということを予測していて、三カ月単位の変形労働時間制を導入する準備をしているというんですね。
 ここには組合があるんですけれども、その組合の代表の偉い方が、そこで働いている女子の労働者の意見など全然聞いてくれないで、今度はこうなるんだよと、こういうふうに言われる。そして、今までもらっていた残業手当は全然なくなってしまって、そして今度は土曜日に、暇なときに休みをやるから、全然残業とはみなさないことにするんだよと、こういうふうに一方的に押しつけられて、全然意見を聞いてくれない。
 母子家庭とかいろいろ事情のある女子労働者が非常に長時間労働を強いられるばかりでなく、残業手当がなくなって、そして収入減になるということでいろいろ訴えが来たりしておりますんですけれども、そういうふうに、組合があってもなかなか労働組合員の意見を聞いてもらえないという、そういうところもないわけではない。
 それにむしろ、組合のないところが圧倒的に多いんですから、やはり労使協定を結ぶに当たっては、その締結当事者の資格、労働者代表の資格、それから選出手続の民主的な公正な手続というふうなもの、従業員の意見を聞く義務というふうなものはどうしても法定にしていただきたいと思うわけでございますが、どうして法定にできないのか私は全然わからない。法定にできなければ、せめて規則にしていただきたいと思うんです。
 ILOの百三十五号条約というのがございます。労働者代表条約というのがありますが、これには労働組合代表ばかりでなく、組合とは別個に選出された代表というものも含むというふうになっておりますが、その選出された代表は「国内法令又は労働協約に従って自由に選挙した代表」というふうになっていますね。だから、国内法令でこういうことを書き込むというのはちっともおかしいことではないと思うんですけれども、どうして法律の中に入れられないのでしょうか。もう一度御返答をお願いします。
#149
○政府委員(平賀俊行君) 先ほどから申し上げておりますように、我が国の労使関係といいますか、中小企業が多いという労使関係、その中で労働組合の組織率が比較的低い、しかし労働基準法上の問題について労働者代表を選ばなければいけない、その考え方、あるいは労働者代表の要件とか労働者代表を選出する手続等につきましては、先ほどILO条約を引かれましたけれども、そういった条約、あるいは国内での労働組合を結成をして、その労働組合の役員等を選ぶようなやり方、そういうやり方が適切であるということ、その必要性があるということでございますけれども、それを法律上の義務として書き込むといいますか、そういう段階ではないということを、その審議会の労使の方々でいろいろの御意見を闘わせた末、結論としてはそういうことにとどまっておるわけでございます。
 もちろん、先ほどから申し上げておりますように、そういう適正な手続、あるいは適正な要件、資格を持った方々が選定されるべきことは当然であると思いますし、またこれはその法律事項になるかどうかは別にして、先生御指摘のような例、構成員のメンバーの意見をよく聞いてできるだけそういう運営を適切に図らなければいけないということはこれはもう常識であろうかと思いますので、そういう問題については法律上の要件にはいたしませんけれども、現段階においては通達等にそれを明確にして事実上監督機関によって指導するということで措置をさせていただきたいと、こう考えておるわけでございます。
#150
○中西珠子君 私は、産業民主主義が残念ながらまだ余り発達していない、未成熟であるという日本においてこそそういうきちっとした民主的な手続とか、意見聴取義務というふうなものを法律に定めなければならない、もしくは規則に定めなければならない必要性があるのだといまだに考えておりますけれども、とにかく通達をお出しになるならば、通達に厳密に私が申し上げたような要件をお書きになっていただいて、そして強力な指導をしていただきたいということを要望しておきます。
 それから次に、裁量労働についてでございますが、これもまた労使協定で裁量労働の範囲と時間の算定というものをゆだねるということでございますが、まず法案に即してお聞きいたしますと、「研究開発の業務その他の業務」というのはどういう業務でございますか。
#151
○政府委員(野崎和昭君) 研究開発業務のほか、議論で出ておりました具体例の一つといたしましては、放送番組の企画業務等もこれに当たろうかと思っております。要するに、業務の性質上、その具体的な遂行の方法について労働者自身の裁量にゆだねる必要がある業務ということに一般的には言えるというふうに思っております。
#152
○中西珠子君 「研究開発の業務」の「開発」という中には結局コンピューターのプログラマーだとかシステムアナリストだとか、そういうふうなものも入りますか。
#153
○政府委員(野崎和昭君) 「研究開発」の意味は、やはり研究よりは若干広いというふうに思っておりまして、御指摘のように「開発」の中にはコンピューターシステムの開発ということもあり得るというふうに思っております。ただし、プログラマーということになりますと、果たしてこの規定に申します裁量労働に当たるかどうかということについては、実態によりますけれども、一般には当たらないというふうに考えております。
#154
○中西珠子君 裁量労働の中には放送番組の業務が入るというふうに労基法研究会なんかは言っているわけですね。それで、こういういわゆる放送番組の制作に携わる人というのは非常に範囲が広くて、いろんな業種の人がいると思うんですけれども、プロデューサーとかディレクターとかそういったものは入るわけですか。それから、映写技師とかそういう面はどうなりますか。
#155
○政府委員(野崎和昭君) 大幅に本人の裁量にゆだねることが必要な業務ということでございますので、一般的に言えばプロデューサーというようなものはこれに該当するというふうに思いますが、映写技師とかそういう方は、私実態はよく存じませんが、通常当たらないんではないかというふうに思っております。
#156
○中西珠子君 ディレクターはどうでしょうか。
#157
○政府委員(野崎和昭君) ディレクターも、通常言われますディレクターの業務の内容から考えますと裁量労働の範囲に入るのではないかというふうに思います。
#158
○中西珠子君 新聞記者の中でも、取材をする、そしてそれを報道する、記事に書くというふうな人ばかりでなくて、いわゆるデスクだとか、それから編集者、編集委員というふうに呼ばれている方々、こういう方々は裁量労働に入りますか。
#159
○政府委員(野崎和昭君) 何度も申し上げますが、これはあくまでも特に労働時間管理あるいは仕事の進め方について本人に任せるしかない。使用者がああいうふうにしなさい、こういうふうにしなさいということを言っても仕方がないと申しますか、言えばかえって仕事ができないという業務でございます。
 そういう意味で申しますと、今御指摘のございましたような、新聞社の中で時間に縛られて仕事をしておられる方については当たらない場合が多いのではないかというふうに思います。
#160
○中西珠子君 とにかく使用者側から具体的な指示をしないで本人の裁量に任せるというのが裁量労働だということですけれども、具体的な指示をしないというその具体的な指示の内容はどういうものをお考えですか。
#161
○政府委員(野崎和昭君) 法律の条文で申し上げますと、「当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない」という文言になっておりますが、先ほども申し上げましたが、労働時間の基本的な要素でございます使用者の指揮監督ということに関連させて申し上げますと、使用者が具体的な指揮監督をしないということだというふうにも言えるのではないかと思います。
#162
○中西珠子君 抽象的には使用者に指揮監督権があるわけですから、その指揮監督権はあるけれども、具体的に業務の遂行方法とか時間の配分とかそういったことについては何も言わないで任せておく、そういう人のことですか。だけれども、抽象的にやはり法的にも指揮監督が全然及ばない労働者というのはいないわけですね。いかがでしょうか。
#163
○政府委員(野崎和昭君) この裁量労働の場合には、確かに事業場外労働と違いまして事業場の中でその方は労働しておられるわけでございますので、先生御指摘のとおり抽象的には使用者の指揮監督は及んでいるというふうに言えると思いますが、ここにございますように、労使間の協定で具体的な指揮監督をしないということを明確に取り決めた場合、その場合に裁量労働に該当することになるというふうに考えております。
#164
○中西珠子君 それで、結局業務の範囲もまた労働時間の算定についても裁量労働ということにしようということになった場合は、これは労使間の交渉そして決定ということになって労使協定が結ばれるということですね。
 それで、とにかく労使協定の問題はさっきも言っていたような問題があるわけですけれども、別に「命令で定めるところにより、その協定で定める時間労働したものとみなす」というこの「命令で定めるところにより」の内容は何でしょうか。
#165
○政府委員(野崎和昭君) この点は先ほど事業場外労働で申し上げましたのと全く同じでございまして、このみなし労働時間に関する規定はあくまでも時間計算に関する規定でございますので、休憩時間とか休日とか、そういった規定は適用されるんだということを念のため書く予定にいたしております。
#166
○中西珠子君 裁量労働というものをやはり適用して、みなし労働時間制の適用ということになりますと、これは法律の中に業務を具体的、限定的に書いておく必要があるのではないでしょうか。その点はどうなんでしょう、全然そのようには考えていらっしゃらないんですか。これから先裁量労働の範囲はすべて労使にゆだねるということですか。
#167
○政府委員(野崎和昭君) 審議会におきましても御指摘のような御意見はあったんでございますけれども、裁量労働の一般的な意味づけは現在の法律で十分なされているわけでございます。
 ただ、これをさらに具体的に省令で書くということになりますと、どうしても業務の実態というのは業種業態によって多種多様でございまして、書くことは非常に困難であるということで、法律で一般的な業務の性質を書きまして、あとそれに当たるかどうかの判断を労使協定にゆだねたということでございます。
 ただ、私どもこの法を施行いたします場合には、そういった法の趣旨が誤解されるといけませんので、具体的な事例を十分挙げ、また趣旨を十分明らかにして必要な指導を行ってまいりたいというふうに思っております。
#168
○中西珠子君 私、裁量労働というものは、例えばジャーナリスト、そういう方々の多くが裁量労働に入るのではないか。殊にテレビ、ラジオ、それから新聞記者の中でも編集委員のような方、そういう方は裁量労働に入るのではないか。もちろん研究者それから研究開発、RアンドDですね、そういうものに従事している方々、そういうものは裁量労働に入るのではないかと考えますけれども、そこにちょっと、労使協定で十把一からげに、大体これくらいの時間労働したものとみなすというみなし労働というものになってきますと、これはやはり個人の、個々の利害の調整も難しい。そしてこういった仕事に従事している方々は、非常に個人差がある仕事の仕方をしていらっしゃるでしょうし、それからまた自主的な判断だとか、創造性のようなものが必要とされる仕事に従事している方ですから、集団的にこの業務に全部入ってしまって全部この時間働いたものとみなされるという、それがたとえ時間外労働も含んだみなし方であっても、なかなかこれは個人個人のそういう裁量労働に従事していると考えられる方の権利とか保護ということに欠けるということになるのではないかという心配が非常にあるわけなんですね。
 それで、私はいわゆるジャーナリストという、新聞記者とかテレビ、ラジオ、雑誌記者、それから編集者、そういった方々の労働条件を調べることをILOのジュネーブの本部から依頼されまして、これ私ごとになって大変恐縮なんですけれども、私がまだILOの日本の支局におりましたときに調査したわけです。それで新聞社も大体全部回りましたし、それからテレビ、NHKはもちろん民間放送も回ったし、それから雑誌関係も回りましたし、いろいろなところに行きまして労働協約とか労使協定とか、そういったものをそれぞれいただいてきまして分析をしました。それから労使の方にもお会いしていろいろ問題を聞いたわけです。
 そのときの、一九七八年の調査でございますけれども、その少し古くなったところをアップ・ツー・デートにしたものが一九八四年にILOが出しました「ジャーナリスト」という本なんですね。これは「プロフェッション ジャーナリスト」と書いてありまして、初めの方に、ILOの本部が世界じゅうに散在していますILOの支局だとか駐在員事務所だとかそういったところに質問書を出して調査してもらった結果をこれにまとめたものだというふうに書いてあるわけですね。それで分析いたしました協約の内容とか協定の内容もここに多少入っております。
 私はそのときにいろいろ労使の方から問題も伺いまして、非常にそういったジャーナリストの方々、民間放送とかそれから新聞関係の記者の方、報道記者の方、取材記者の方、編集委員の方々、そういった方々とかラジオで働いていらっしゃる方々、そういった方々の労働条件に依然として関心を持ちまして、そのころ言われていたことが果たしてどうなったかなという思いがしているわけなんです。それでとにかく私はそのころに言われていたプロデューサー、ディレクターあたりの残業手当がすごく多くて困るんだ、それで何か協定のようなものを結んで大体残業に見合うようなお手当という形にしたいんだというお話も聞いていたわけでございます。
 それで、昭和四十九年あたりにも労働大臣に民放連から要請を出されておりますけれども、また最近も五十七年八月、五十八年九月ごろにもそういう労働大臣あての要請を出されて、とにかく残業手当が余りにもかさみ過ぎて、そして所定内労働は割と時間としては短いわけですから残業がかさむというふうなことで、これはやはり労使協定に基づいてそして何らかの手当を与えるというふうな方向で検討していただきたい、何かそれが可能になるようなことを考えていただきたいという要請が出されていると聞いているんですが、これは事実ですか。
#169
○政府委員(野崎和昭君) 昭和五十七年八月と五十八年九月に、民間放送連盟から御趣旨のような要望書が出されていると承知しております。
#170
○中西珠子君 労働省としては、これに対してどのような対応をなすったわけですか。
#171
○政府委員(野崎和昭君) 先生御承知のとおり、昭和五十七年の五月に、労働省では学識経験者で構成されます労働基準法研究会を再開いたしまして、労働基準法の見直しを始めたわけでございます。そのことが新聞等に報ぜられまして、その関係で各界からいろいろな要望意見がこの研究会に寄せられたわけでございますが、この民間放送連盟からの御要望もその中の一つであるというふうに承知いたしております。
 これは一応労働省の方へお持ちいただいたようでございますけれども、そういったたぐいのものはすべて研究会の先生方にごらんに入れまして研究の参考にしていただいた、そういう関係だというふうに理解しております。
#172
○中西珠子君 「ジャーナリスト」という本の中にも出ておりますけれども、とにかく民間放送、NHK、テレビもラジオもそれから新聞社で働いている新聞記者、編集者も含めて、そういう方々の仕事というのは物すごくそれこそ裁量による仕事の遂行というものも必要になるでしょうけれども、そのほかに先ほど申し上げたように、自分自身の経験に基づいた判断とか、それから自分自身の考え方がはっきりとしている個性が強烈な人とか、それからまた非常に創造性というものが要求される仕事ということでありまして、非常に個人差があるわけですね。ですから、やはり個人差というものを考えてあげる必要があるのではないか。
 それで仕事によって、やはり同じこれくらいの仕事の時間がかかるであろうから、これで協定によってみなしてしまうというだけではちょっと配慮が足らな過ぎるんではないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
#173
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘のとおりの実態ではないかというふうに思いますが、同じような仕事をしておられます主として研究開発業務に従事しておられます方のお話を私どももいろいろな機会に伺っているわけでございますが、非常に長い時間働いて、若干表現は適切でないかもしれませんけれども、膨大な時間外労働をやっておられる方もいらっしゃれば、逆に同じような仕事をしながら時間外労働の申告をほとんどされないという実態にある方もいらっしゃる。長い方については果たしてそんなに長い時間、時間外労働を行っているんだろうかというようなお話も耳にいたしますし、また時間外労働の申告をされない方については、実はいろいろと例えば家に帰ってもそういった問題を考えているんだけれども、なかなか申告しにくいというようなお話も伺うわけでございます。
 そこで今回の裁量労働につきましては、もしそういったような点で個別に時間計算をすることが実態に合わないような状況にあるならば、そしてそれをこういった形の裁量労働ということでみなし労働時間制にすることについて労使の合意ができるならば、そういう扱いを認めようという趣旨でございまして、基本的にはそれぞれ実際に働いた時間を算定するというのが基本であろうかと思いますけれども、裁量労働の特殊性からして、労使の意見が一致した場合には今回の法律にありますような特別な取り扱いも認めようという趣旨でございます。
#174
○中西珠子君 とにかく研究開発とかそれからいわゆる裁量労働に従事していると考えられる方々の労働時間の把握が難しいということは確かにわかります。
 うちへ帰ってからもそのことを考えていて、寝るときまで考えている、夢にも見る、明くる日起きてからも考えるというふうなことで、結局、なかなか労働時間の算定が難しいということもありますでしょうし、また、プロデューサーとしてプロデュースする人は、自分が考えたりするばかりでなく、いろいろ各方面の作家から、とにかくスポンサーからいろんな人に――民間放送ではスポンサーですね、会わなくちゃならない時間もあるとか、本当に自分の所定内労働ではカバーできない物すごい長時間の労働、もう算定ができないほどの労働を必要とするということもあると思うんですね。
 それが今まで自己申告によってこれくらいということで、そうか、そういうことですか、それなら払いましょうということでいわゆる推定によって払われていた人たちは、この裁量労働の労使協定が結ばれることによって残業手当が非常に少なくなるという問題がありますね。
 逆に、今おっしゃったように、研究開発に従事していて、そして時間外労働も自分としてはどうやって申告をしていいかわからないし、どれだけが時間外労働と考えてもいいかわからないというふうなことで申告しなかったり、また、とにかく自分はそういう時間の切り売りをしているんじゃないというふうな気持ちでしなかったりする、しかも長時間働いているという人もいて、そういう人にとっては、大体これぐらいはなさったんでしょうということで時間外を含めた時間というものを協定によって決めて、そしてお手当のような形で長時間お働きになった分、殊に所定内労働を超した分については払うことにするということはメリットがあると思うんですね。
 逆に、デメリットがあって、これまで自己申告によってやっていて、そしてそれが大体認められていたところへこれが入ってくると、非常に残業代を節約されるのではないかという気持ちがするわけですね。使用者側が何とか残業のもう少し合理的な処理の仕方というものを協定に求め、また手当の形に求めたとすれば、それは使用者側の意見を聞いたことになるということですし、非常にこれは難しい問題ではあるわけですね。
 しかし、もしこれがどうしてもやった方がいいということになって、労使協定で裁量労働の範囲とそれから時間算定をやるということになりました場合、どうしても自分は嫌だ、自分で算定した労働時間を申告することが許されてしかるべきだと思ってどうしてもそうしたいという人は、することができますか。
 これまた同じような質問になるけれども、これはさっきのようにお答えが同じであってはちょっと困ると思うんですよ。ちょっと事業場外労働の場合と違いますからね。
#175
○政府委員(野崎和昭君) 確かに先生御指摘のとおり、事業場外労働の場合には絶対的に算定できないわけでございますので、嫌だと、こう言われましても、算定できない以上はみなし労働時間制ということになると思いますが、この裁量労働につきましては基本的には算定できるという前提に立っておりますので、どうしても嫌だと言われる方についてどうするかということは、労使協定を締結する中で労使で話し合っていただくことになると思いますけれども、先生御指摘のような解決方法もその可能な解決方法の一つの中に入っているというふうに思います。
#176
○中西珠子君 どうしても嫌だという人は、自分は個別的に使用者側と契約してやっていくということが可能であるわけでしょう。可能ですよね。
#177
○政府委員(野崎和昭君) 裁量労働の場合には、労働時間を算定することは客観的には可能でございますので、裁量労働の規定が適用されないからといって労働時間の算定ができなくなるわけではございません。そういう意味では、その人の希望を入れる余地はあるということでございますが、何分同じ仕事に従事する方につきましては、やはり同じように扱うということもまた労働の場面では必要なことでございますので、そういったいろいろな要素を考慮して労使間でよく話し合っていただくことが適当ではないかというふうに思う次第でございます。
#178
○中西珠子君 非常に個性的な仕事であり個人差が非常にある仕事であるということのために、やはり自分で算定した労働時間を申告して、そしてそれでやってもらいたいという人が出てきた場合は、それを私はやはり許すべきだと。今、可能ではあるというふうにおっしゃいましたけれども、実際問題として結局同じような仕事をしている人たちが労使協定を結んでみなし労働ということになれば、自分だけが独立してやれるだけの日本人に個別な労働契約の概念が徹底しておりませんし、自分だけがひとり頑張ってやっていくということは周りのやはり同僚あたりから白い目で見られるというふうなこともあって、非常に難しいことになるのではないかと思うわけですね。
 だから結局、個の労働者の労働契約ということがまだまだ浸透していないし、そうかといって集団的な労使関係が物すごく発達しているわけでもない日本で、この労使協定によって決めるというのは大変大きな問題があると思うんですね。ですから、これはどうしても自分がこれじゃ満足できないということであれば、せめて自己申告ができるような道を開いておいてやるということが必要でしょうし、また、そういった指導もやっていただきたいと思うんですが、どうですか。
#179
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘のように、裁量労働として扱われることを希望しない方が一人なりあるいは少数いらっしゃる場合に、労働者代表の方がそういった方の意向を無視して協定を締結してしまうということは必ずしも適当ではないと思いますが、また逆に、全体として一つの方向で統一的に扱おうという合意が形成されております場合に、そういった方々についても同調していただくということもまた職場を円滑に運営するために望ましいことではないかと思います。
 いずれにいたしましても、具体的なケースに応じまして十分話し合っていただくということが最も適当ではないかというふうに思います。
#180
○中西珠子君 十分話し合うことが果たして可能かどうか。可能ではない場合もあるという、先ほども申し上げたような事情もあるということで、結局労使協定の問題、労使協定にゆだねられることの是非の問題と労働者代表の選び方、また、意見聴取義務という問題にぶつかってしまうわけです。
 これはもう本当に厳重な要件を通達なら通達にお入れになって強力に指導していただきませんと、個人の労働者の権利というものが侵害されたり、また保護に欠けることが出てくるという可能性が非常にあるわけですから、この点はもう慎重に運用し対処していただきたいと思います。これは強い要望でございます。大臣、いかがでございましょうか。
#181
○国務大臣(平井卓志君) かなり専門的に相当切り込んだ御質疑でございましたが、いずれにいたしましても事業場外労働と同様に、通常の方法で時間計算が非常にいたしにくいし、また、実態に合わぬという場合を想定して労使の合意ということを要件にみなし労働時間制というものをとっておるわけでございまして、やはりここのところは事務方が御答弁を申し上げましたように、労使協定と申しましょうか、労使の合意という点について職場内でこれはひとつ十分にお話し合いを願うということが私は一番大きいポイントではなかろうか、そしてまた、実態に即して使用者側も柔軟に判断すべき点もあろうかというふうに考えております。
#182
○中西珠子君 労働省としては強力な指導をぜひその点でしていただきたいと思います。それでないと、労使自治というものに名をかりてやはり個々の労働者の権利というものが侵害されたり保護というものが弱まったりするという危険が非常にあると思いますので、その点は厳重に指導し、またよく見きわめて実態調査などもやっていただきたいと思います。
 それから、労働基準法研究会で零細商業・サービス業、こういったところの労働時間の換算制というものをやる方がいいということが報告書に出ておりまして、また中基審でもそのような方向で換算制というものをやるということがいいのではないかと出ているわけでございますけれども、今度は労基法の四十条というものを使って換算制をなさるということで、別個に新たなる改正条項というものは出していらっしゃらないわけでございますね。しかし、この換算制というものはなさるおつもりなんですか。
#183
○政府委員(平賀俊行君) 非常に小さい規模の事業場、特に商業・サービス業等の問題でございます。
 この点につきましては先生御承知のように、従来労働基準法の特例の取り扱いとして週五十四時間の特例が認められておりまして、これを計画的、段階的に廃止するという措置がとられておりまして、六十二年度末までに少なくとも五人から九人の規模の事業場についてはそれを廃止するということが既に審議会で決まっております。ただ、その段階で一人から四人の事業場の取り扱いの問題については再度検討するということになっておるところでございます。
 いずれにいたしましても、新しく提案されました換算の問題につきましても、こういった従来の特例の取り扱いの経過等を踏まえて今後中央労働基準審議会で十分御検討をいただく問題でございますので、私どもといたしましては、そういう審議会の今後の御検討の結果をいただいた上、適切に判断いたしたいと存じております。
#184
○中西珠子君 来年、一応十人未満のところの運輸業と十人未満の商業・サービス業、これは特例が廃止になりますね、三月に。それから一人から四人までのところは結局中央労働基準審議会の意見を聞いてから決めるということになっておりますね。その意見を決めていただくときに換算制が出てくる可能性が非常にあるのではないかと心配する向きがあるわけです。というのは、換算して長い手持ち時間もすべて含んだ拘束労働時間が所定外の労働時間も含んだ長いものになってしまった場合も所定内の法定労働時間とみなすというふうになりますと、結局、時間当たりの賃金というものは非常に安くなってしまうという労働者側のデメリットというか、一種の損失があるわけですね。
 一方、経営者側としてもまた政府としても、統計上手待ち時間も含んだ拘束労働時間が法定を超えていて時間外の労働を含んでおりましても、結局、その長いものを法定の労働時間とみなしてしまうということになりますと、使用者側も大変損にはならないし、得になると言っちゃあれですけれども。そうして、政府の方も統計をとる上からいうと、法定の中におさまってしまって換算されてしまっているんだから、非常に時間短縮のメリットが出てきたということは、外に向かって言うことができるというふうなこともありまして、
   〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕
結局一番損するのはそういう小さいところで働いている労働者ではないかという、こういう懸念される向きがあるわけですね。ですから、できる限り換算制というのはやらないでいただきたいという強い要望を申し上げておきます。
 フランスとかいろんなところでやられておりまして、いわゆるイクイバレントタイムというふうにして換算制があるわけですけれども、しかしそれは本当に限定されたところでしか今やられていないということも聞いておりますし、ぜひこの点は慎重に中基審の方々とも御相談いただきまして、換算制をやらない方向で対処していただきたいという要望を申し上げておきます。
 私もう時間がだんだんなくなってきましたので、前に申し上げたいろいろの点や、それからこれまでの審議の過程で大臣やその他基準局長などから御答弁をいただきました点につきまして確認さしていただきたいと思います。
 例えばこの前、年次有給休暇につきまして、とにかく中小企業とそれから三百人以上の企業との間に年次有給休暇の最低付与日数についてあんまり格差を設けることは、中小企業と大企業との間の労働条件の格差をますます広げることであるし、中小企業の労働者に対する一種の差別的な扱いになる。
 そして、女性がまた三百人以下のところで九割近く働いているわけですから、殊に女子労働者に対する差別的な扱いになるという点だとか、それから年次有給休暇の付与日数を五日までは自由に使えるけれども、それ以上は計画的付与ということになさると、現在家庭責任が非常に重くかかっている女子労働者にとっては、子供の病気の介護とか、老人介護だとか、子供の学校の行事のためにそういう年次有給休暇を使っている人たちにとっては大変な打撃であるということも申し上げまして、もし、計画的付与というもので決められた時期に年休をとらなかった場合の年休権が消滅しないような保障を何とかしていただきたいという要望も申し上げたわけでございます。
 労使協定を結ぶときに特別な配慮をするように指導するということをおっしゃってくだすったわけでございますけれども、大臣はいかがでございましょうか。
#185
○国務大臣(平井卓志君) 二つ、三つの点について御指摘があったわけでございますが、一つには猶予期間の問題でございます。
 この猶予期間の適用でございますが、これは当委員会においてたびたび御指摘をいただきましたので、結論から申しますと中央労働基準審議会の意見を聞いてやるわけでございますが、これはもうできるだけ限定をいたしたいというふうに考えております。
 それから年次有給休暇の問題でございます。
 これももう既に御議論をいただいたわけでございますが、猶予期間中でございましても労働基準法本則どおりの年次有給休暇を付与することは、これは当然望ましいわけでございます。可能な限り本則の日数の十日を付与するように関連事業場に対して指導をしてまいりたい。
 この年次有給休暇の問題でございますが、将来の適当な時期にILO条約の水準を参考にいたしまして、さらに付与日数の増加を図るべく検討もいたしたいというふうに考えております。
 また、この計画的付与に当たりましては、年次有給休暇の日数の少ないもの、その他特別の事情のある方に対して必要な配慮をするように指導いたしてまいりたいというふうに考えております。
#186
○中西珠子君 年次有給休暇の取得率が非常に低くて、五〇%ぐらいという日本の状況でございますが、その取得率の低い大きな理由の一つとしては、やはりボーナスにおける査定が非常に不利になるとか、もちろん精皆勤手当は出さないとか、また昇進、昇給において不利益な扱いをするとか、また退職時の退職金手当の算定においても年休を取得した人に対しては不利益な取り扱いをするとか、そういった不利益な取り扱いというものがいまだに後を絶たないという状況の中で、やはり年休取得率が上がらないということがございます。
 この不利益取り扱いを禁止する条項というのはどうしても法律の中に入れなければならないと思うのでございますが、いかがでございましょうか、大臣。
#187
○国務大臣(平井卓志君) 不利益取り扱い、これはまさしく労働基準法違反という点もございまするし、そういうことのないように私ども当委員会の審議の経過を十分に踏まえまして処置をいたしたいというふうに考えております。
#188
○中西珠子君 ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、変形労働時間制についてでございます。
 変形労働時間制は、生体のリズムを崩して健康障害をもたらすというふうなことで反対している労働医学の権威も多いわけでございますが、衆議院の修正によりまして、殊に三カ月単位の変形労働時間制につきましては、労働大臣が中央労働基準審議会の意見を聞いて一日の労働時間の限度、一週間の限度、また連続労働日数の限度というものをお決めになる命令をお出しになることができるというふうになりまして、一歩前進と思うわけでございますが、その限度につきましてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
 もちろん審議会の意見を聞かなくちゃいけないというお答えになるかとも思いますが、労働大臣、また労働省としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#189
○政府委員(平賀俊行君) 三カ月単位の変形労働時間制における一日、一週等の労働時間の上限あるいは連続して労働させる日数の限度については、御質問にありますように、衆議院の修正で必要な条文が入っているわけでございますが、これにつきましてはその条文にありますように、中央労働基準審議会の意見を聞いた上で命令で定めることになっておりますが、一日の労働時間の上限は十時間とすることを前提にさらに検討させていただきたいと存じます。
#190
○中西珠子君 私は一カ月単位の変形労働時間制につきましても、ぜひ一週、一日の労働時間の上限、また連続労働日数の限度というものを定めるべきだと主張しているわけでございます。
 変形体日制とこれは併用することができますので、連続労働日数の上限を定めることは非常に重要であるし、また、一日の労働時間、一週の労働時間の最高限度というものはやはり定めていただきたいと思うわけでございますが、その点に関してはいかがでしょうか。
#191
○政府委員(平賀俊行君) 先般の委員会でも御答弁申し上げましたように、一カ月単位の変形労働時間制は、現在の四週の労働時間制を基礎としてというか、それと同じような形態のものでございますが、この形態の労働につきましては、運輸業あるいは建物の維持管理等の業務で夜間の交代制の勤務等、労働時間が長くてそのかわり非番日あるいは休日等を長くする形態のものが比較的多うございます。したがって、新しく導入されます三カ月単位の変形制のように、一日、一週の限度あるいは連続して働く日数等について規定することに必ずしもなじまないという状態のものでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、同じような限度を設けることは適当でないと考えておりますが、現実にこの問題につきましては、新しくいろいろな形での変形制が導入されること等に伴っていろいろ問題が生ずることがないようにその点は十分指導していきたいと考えておりますと同時に、この改正法の規定につきまして、衆議院の同じく修正によりまして、三年後に見直すということになっておりますので、その時期までにこうした実態を調査いたしまして必要な措置等があればとってまいりたい、こう考えておるところでございます。
#192
○中西珠子君 これまでの四週間四十八時間平均であればいいという変形労働時間制につきましては、確かに問題がなかったかもしれません。しかし、一カ月単位となりますと、仕事のサイクルが一カ月単位だから、これはもっと広く使われるようになるのではないかという考え方も使用者側の中にもあるというふうに伺っておりますし、これはやはり必要だと思いますが、とにかくこれについては実態調査をしていただきまして、そして必要か必要でないかは、その三年後の見直しのときにぜひその調査のデータをお申しいただくということを強く要望いたしておきます。
 それから、労働基準法の六十六条に妊産婦の時間外労働、深夜労働それから休日労働の免除規定がありますが、変形労働時間制が導入になりますと、時間外労働ということがなくなって、繁忙時は長時間労働が所定内の労働になってしまう。こういうことのために六十六条の規定が死文化されるというおそれがあるわけでございますが、妊産婦はどうしても変形労働時間制から適用免除にしなければいけないと思うのでございますが、大臣、この点はいかがでございますか。
#193
○国務大臣(平井卓志君) 今御指摘の点につきましても当委員会でいろいろ御議論がございました。特に、妊産婦等につきましては変形労働時間制の適用を除外いたしますことについて、本委員会での議論を踏まえて御懸念のないように適切に対処してまいる考えであります。
#194
○中西珠子君 どうぞぜひよろしくお願いいたします。
 それから、変形労働時間制に組み込まれてしまいますと、子供を保育中の者とか――これは男女ともに子供を保育中の者、それから老人を介護中の者、また学校に通っている勤労学生、こういった者に対して変形労働時間制の適用があるがゆえに、保育園に迎えにも行かれなかったとか、老人介護が大変しにくくてどうにもならなくなったとか、それから勤労学生が学校に行かれなくなったというふうなことがございませんように、ぜひとも通達をお出しになって指導をしていただきたいと思うのでございますが、いかがでしょうか。
 勤労学生と申しますときに、勤労青少年福祉法の中の第十二条に基づいて勤労学生に対しては配慮をするということになっていますけれども、もっと勤労青少年よりも年上の人で、今、生涯教育ということが重要であり必要であるということが盛んに言われておりますから、もっと年齢の高い人で大学の夜間部に行ったりまた専修学校に行ったりしている人もいると思うんですが、そういった人も含めた勤労学生に対しての御配慮も必要と思いますが、いかがでございますか。
#195
○国務大臣(平井卓志君) 子供さんを保育中の方、さらには老人を介護中の方々につきましても勤労学生と同様に、変形労働時間制の適用に際し必要な配慮がなされるように通達を出して指導いたしてまいるというふうに考えております。
 また、今も委員が御指摘になった問題でございますが、勤労青少年福祉法第十二条によりまして当該勤労青少年が教育を受けるために必要な時間を確保することができるよう努めなければならぬとされておりますので、夜間大学生につきましてもこれと同様の配慮がなされるよう使用者に対して指導する考えであります。
#196
○中西珠子君 指導は通達を出してしていただけますでしょうね。
#197
○政府委員(平賀俊行君) この変形制の問題その他いろいろ運用がございますが、育児を担当する人あるいは介護のための責任を有する人あるいは勤労学生その他については通達を出して指導をしてまいりたいと存じております。
#198
○中西珠子君 週四十時間制への移行過程についてでございますが、これは一応三百人以上は四十六時間でスタートし、三百人以下は当分ただいまのままの四十八時間制ということだそうでございますが、この猶予期間を置く事業場については、もっと対象を業種や規模によって限定するべぎだと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
 そしてまた、週四十時間制の実現ということにつきましては、やはりはっきりとした実現の時期というものを明確にするべきだと思いますが、この点についていかがでございましょうか。」
 それからまた、中小零細企業に対する配慮は絶対に必要だと思うんですけれども、そういった中小零細企業に対する時間短縮促進のための環境づくり、雰囲気づくりというもの、それから国民の意識の啓発というものも必要だと思うんですが、その点いかがでございましょうか。大臣の御答弁をお聞きしまして、時間が参りましたから私の質問を終わらせていただきます。
#199
○国務大臣(平井卓志君) もう御案内のように、週四十時間制への移行時期につきましては、新前川レポートの目標の実現を図るために、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるように努力をいたしたいと考えております。
 また、当面の法定労働時間の適用を猶予される事業場の範囲につきましては、できるだけ限定をいたしたいと考えております。
 また、中小零細企業における労働時間短縮を促進するためには、必要な指導、援助の拡充に努めてまいりたいというふうに考えております。
#200
○沓脱タケ子君 それでは、労働基準法の一部改正についての質問を行いたいと思います。
 まず大臣にお聞きをしたいんですが、今回の労基法の改正につきましては、いつのことか知らないけれども週四十時間制の実施、そして変形労働時間制の導入というのが大変特徴的になってあらわれておりますが、
   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕今度の労基法の改正によって労働者の労働生活、家庭生活等を含めまして、幸せの増進が保障されるとお考えになっておられるか、まずそのことをお聞きしたいんです。
#201
○国務大臣(平井卓志君) いろいろなお考え方もございましょうが、私どもはこの時間短縮という内外ともの一つの時代の要請と申しましょうか、それを進めますための補完的な一つのかつ有効な方法としてこのたびの基準法改正をお願いいたしておるわけでございまして、法律改正によってのみ私は時間短縮が推進できるとは決して申し上げておりませんで、やはり国民の方々の御理解、さらには公務員の週休二日制への早期移行、金融機関その他の方々のやはり御協力、御理解と申しましょうか、そういう国民的なコンセンサスの中で時間短縮がなされていくものと考えております。
 結局、そういうことになりますと、一つにはやはり国民の生活パターンというものがある程度変わっていかなければならぬ。そこでまた新たな需要も生まれまして、そういう中で生活の質の向上というものを図っていくべきである、かふうに考えております。
#202
○沓脱タケ子君 もうひとつはっきり、幸せの増進につながると言っていただいたんかどうか、今の答弁聞いておってもようわかぬですね。
 おもしろい統計があるんですね。電機労連の御調査で、世界十カ国の電機労働者を調査して、月に何回家庭サービスをやっているかという調査をしている。これを見てみますと、これはポーランドが一カ月二十六・三回、ユーゴが二十五・八回、イギリス、西ドイツこれが大体二十回前後ですね。一番少ないのがヨーロッパではスウェーデンの十七・九回。日本の電機労働者は何回かというと、日曜日を入れて一カ月に四・三回。これは統計調査ですから非常に鮮明なんです。私は、今でもこういう状況になっておって、日本の電機労働者が日曜日を入れて月四・三回しか家族団らん、家庭サービスができていない。今度の労基法の一部改正をやったら、これがさらに前進をするということが保障できるかどうか、こういうのがさっき私、幸福の前進につながるかと言って聞いたら、余りはっきりおっしゃらなかった。今電機労働者の例にとったら四・三回、これが十回、十五回とヨーロッパ並みに近づくかどうか、これをまず聞きたい。
#203
○政府委員(平賀俊行君) 家庭サービスをどのぐらいやるかどうかということにつきましては、もちろん労働時間が短くそういう家庭サービス等に充てる時間が多くなるということが一つの条件であるということと存じますが、この問題につきましては、伺いました数字等によりますと、やはり労働時間の問題のみならず、生活習慣というか、そういうことも影響しているのではないかと考えております。
 しかしいずれにいたしましても、私ども今回労働基準法の改正を御提案申し上げましたのは、労働時間の短縮を促進するためでございます。私どもとしては労働時間を短縮し、それが先生先ほど御指摘にあったように労働者生活の幸福につながるもの、そしてそれが家庭サービスの回数をふやすということにも貢献し得るものと考えております。
#204
○沓脱タケ子君 貢献し得るものと考えておられる。それは自信がなかったらこんなもの出せぬわね。
 そこでお聞きをしたいんですが、今回の労基法の改正では一日八時間労働制を崩しているというのが最大の改悪点だということで、国民の各層からかなり強い御批判が出ているのは御承知のとおりですね。
 法案を見てみますと、現行の三十二条の「労働時間」は、「休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を超えて、労働させてはならない」と書いてあるんですね。改正案を見ますと、同じく三十二条には「労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない」、一週間の四十時間というのが先に出ている。二項で「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない」。現行法は一日八時間制、一週四十八時間と、こういうふうに規定をしているのを、今度の改正案では一週を先に持ってきて、一週の労働時間四十時間、そして一週間の各日の割り振りが一日八時間ずつと、こう書いてある。
 こうなってくると、どうなんですか、私は今までの論議を伺っておりますと、やはり改正案では一日の労働時間というものが源則ではなくて、一週の労働時間を原則にしているのかなと思えるんですが、その点はどうですか。これはたびたび御答弁を伺っているんですが、念のために聞いておきます。
#205
○政府委員(野崎和昭君) 先生御指摘の改正法の三十二条の二項におきましては、今先生が読み上げられましたとおり、「使用者は、」「休憩時間を除き一日について八時町を超えて、労働させてはならない」と書いてございまして、一日八時間労働制の原則はここに明確に規定されているわけでございます。ただ、現行法の規定と違いますのは、現行法におきましては一つの条文の中に一日八時間、一週四十八時間と書いてありましたのを、一週の労働時間を先に出し、一日の労働時間の上限は二項に書いたということでございます。
 この考え方につきましては、これももう先生十分御承知のことと思いますが、一日八時間労働制が実現いたしまして、一日八時間、一週四十八時間の時代から一週四十時間の時代へと、その一週四十時間の時代からヨーロッパではさらに進んでいるようでございますけれども、そういうように四十時間制に進んでまいります過程で、一日八時間の原則は崩しませんけれども、一日の規制と一週の規制、どちらが重要かということになりますと、一日は八時間のままでいい、しかし一週は四十八時間ではなくて四十時間、あるいはさらにそれより短く短縮していく、そういう流れになってまいりまして、そういう意味で一週の労働時間の規制の方が重要になってきた、そういうことがございますのでこの規定の上でもそれをあらわすことにしたということでございます。
#206
○沓脱タケ子君 大変丁寧に御説明をいただいたんだけれど、一日八時間という原則は崩さないんだということになるなら、私はやっぱり不思議だなと思うのは、現行法の「休憩時間を除き一日について八時間、一週について四十八時間」というところを、「一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない」、そういうふうな改正案で当然であろうと思うのが、そうではなくて一週単位の四十時間が先に出て、一週の各日についての割り振りが「一日について八時間を超えて、労働させてはならない」というふうに変わったというところが、これはやっぱり何か理念があるわけでしょう。意義があるわけでしょう。何ということなしに変えたわけじゃないでしょう。その辺のところをもうちょっと聞かせてください。
#207
○政府委員(野崎和昭君) ただいま申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、今後の労働時間の規制のあり方といたしましては、週の労働時間の規制ということが重要になる、もちろん一日の規制も重要でないとは申しませんが、一日と週とを比較しますと、週単位に規制をしていく、そして週単位で労働時間を短縮していくということが重要になる、その考え方をあらわしたものだというふうに思っております。
#208
○沓脱タケ子君 そうすると、やっぱり一週間単位の労働時間が基礎になって一日単位の八時間というのは二の次だ、こういうお考えだということになりますね。だから、一日八時間労働制が崩されるということで強い批判が出てくるのは当たり前だと思うんです。
 私、論を進めていきたいと思いますので少し問題を変えますが、思い返してみますと、約十年ぐらい前でございましたか、あの有名なトヨタ自動車のかんばん方式というのが導入をされた時期がございました。これはもう皆さんも十分御承知のとおり、部品在庫を持たない、在庫は一切持たないで、必要なときに必要な量を必要な時間に納入させるという徹底した在庫管理の方式でありましたね。これをやり始めたころには下請企業の企業主及び労働者は大変な目に遭って泣かされた。まあしかし今日ではこのいわゆるトヨタのかんばん方式という名による在庫管理の徹底化というのが一般化してきております。私はこのことを思い起こしたんですけれどもね。
 部品については全くかんばん方式が定着をしたんで、今度は労働基準法を改正して労働力のかんばん方式をやる。つまり、企業の必要なとき必要なだけ労働力を使うという労働時間の体制をつくり上げる、こういう極端な労働力管理の合理化がねらわれているのではないのかなということを感じました。
 これは部品管理のかんばん方式が、これは物ですけれども、今度はこれを労基法を改正して、そして労働力のいわゆるかんばん方式という形で徹底的に労働力管理をやって、そして生産あるいは企業の労務コストを徹底的に抑えていく、こういうことがねらわれているんではないかなと思うのですが、これはいかがですか、労働省。間違うていたら間違うていると言って教えてください。
#209
○政府委員(平賀俊行君) 私どもとしては、先生がおっしゃるようなことを意図しているものでは全くございません。
#210
○沓脱タケ子君 それは、労働省がそんなことを考えてたらあなた、労働省でなくなります。だから考えてる言うたらえらいこと、ないのが当たり前でございます。だから、私が申し上げた、今、労働力のいわゆるかんばん方式というものをやっていくためには、企業の要求からいったら一日八時間労働制というものが固定される、このことが企業活動の上で彼らが労働力のコストダウンをしていく上では障害になっていた。だから一週間単位の労働時間を基準としようとしてきたのではないか。私はそうしか見えない。そうでもないんですか。まさかそんなことを労働省が知ってやっているとは思いませんけれどもね。やっぱり、労働の態様、企業の態様の変化ということが、こういうことが要求をされ出してきているというふうに見てよろしいんですか。
#211
○政府委員(野崎和昭君) 先生の御指摘の点は、労働時間の弾力化と申しますか、具体的に変形労働時間制等を導入する理由をお尋ねかと思うんでございますけれども、理由は大きく分けて二つあろうかと思います。
 一つは、第三次産業が非常に拡大してまいった。製造業の場合には自分の工場で朝八時から夕方五時までというような稼働時間を定めることが十分可能なわけでございますけれども、三次産業の場合にはやはり需要の波に合わせて営業をしなければならないということで、そういう業種がふえたということと、一方、そういう業種において労働時間の短縮を図りながら業務の波に労働を合わせていくというためには、どうしても変形労働時間制のような制度が必要である。これは、変形労働時間制をとりませんと、結局一日八時間を超えて営業しなければならない部分は全部残業時間に出てくるわけでございます。しかし、それを需要の波に合わせれば全体としての労働時間の短縮が図れる。これは労働者にとってもプラスの面があるわけでございます。労使双方にとってプラスの面がある。
 ただしかし、あくまでもこれは労使が合意した場合に導入できるということで、労使協定の締結が要件になっておりますことは御承知のとおりでございます。
#212
○沓脱タケ子君 変形労働はまた変形労働で聞きますから、今回の労基法改正全体を言ってるわけですからね。
 私はやっぱり、今審議官の御説明でも、企業の態様あるいは企業活動の態様に応じて変化をさせなければならないということが言われておりましたね。そのとおりだと思うんです。
 しかし、私考えてみますのに、人間というのは、世の中がどのように社会経済の仕組みが変わろうと、発展してこようと、人間が生物としての本性というのは変わらない、これはもう動かすことのできないものですよ。人間という生物はやっぱり一日二十四時間を単位として生きている生物なんですね。これが人間としての本性なんですよ。したがって、一日二十四時間を単位として生きているということは、八時間働いて八時間眠る、そして残った時間は生活時間という形で生活を今日してきていると思うのでございます。
 ですから、世の中が変わってきたから、企業の態様が変わったからいって人間も変われといって、寝だめをすることも食いだめをすることもできないわけです、どんなに世の中が、企業の態様が変わろうと、人間というのは一日二十四時間を単位として生きている生物なんです。この本性は変わらない。この大原則を無視してはならないと思う。ですから、この人間の動かすべからざる本性を無視して企業活動の要求、態様に人間を合わせようとするような今回の改正案というのは、私は人としてこれを認めることはできないなと思うのです。
 もともと社会の経済の発展、文化の発展、社会全体の発展というのは人間の幸せにつながらなければならないものです。人間の人たるの本性や本質を踏みつぶして企業の発展だけを求めようとするような意図を持っての改正案などというのは、私は今回のような労基法の改正案はどうもそういうふうに思えてならないので、絶対に認めがたいと思うのはそこなんです。御見解があったら伺います。
#213
○政府委員(平賀俊行君) 先生御指摘のように、労働基準法本来が労働者が人たるに値する生活を確保するための労働条件の最低基準を定めた法律でございます。今回の法律改正も、そのように労働基準法の本旨にのっとり、企業経営のためではなくて、労働者の保護のための立法でございます。
#214
○沓脱タケ子君 そんな心配ないということですな、はよ言うたら。心配がないようにしていただきたいと思うんです。
 そこで、時間の都合もありますから少し具体的にお聞きをしていきたいんですが、例えば現行やられております四週間の変形労働ですね、これを見てみますと、私も変形労働というのは余りよう詳しく見てなくて知らなかったんですけれども、よくよく調べてみると、現行の変形労働の場合でも四十八日間の連続労働が可能になるわけですね。だから、今回の法改正で三カ月の変形労働が導入をされてくると、これは理論的にというか、きちんと並べてみたら三カ月のうち七十日間休みなしに連続労働させることが可能になるんですね。これは驚きなんですがね。しかも連続労働の際に、一日当たりの長時間変形労働時間が集中したら労働者はたまらないですね。
 なんでそんなことになるかなあと思って調べてみたんです、現行法をですよ。現行法を調べたんですから私もうかつな話ですけれどもね。労基法の三十五条には「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」、二項には「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」、こういうふうに決められているんです。そうしますと、一カ月、四週間ですね、今だったら、四週間つまり二十八月のうちに四日間まとめてとったらあとの二十四日連続労働させても現行の基準法には抵触しないということになるんじゃありませんか。どうなんです。
#215
○政府委員(平賀俊行君) それは変形労働時間制をとらなくても、通常の労働時間、休日制でも、現行の労働基準法の規定を極端に運用すれば、四日の休日をその四週の両側に、右と左に置くとすれば、間の労働日数は連続するという算術的な結論は出てきます。
#216
○沓脱タケ子君 そうか、変形労働でなくても極端に言えばなるわけですね。えらいことですな。
 そうすると、三カ月の変形労働制、変形制が事業活動で使われるということになってまいりますと、これは当然のこととして事業活動の季節的な調整あるいは事業活動の時期的な問題で生産調整というようなことが起こりますから、これに利用されるというのは当然のことだと思うんですね。
 そうしますと、現行法でも四週間で休みを両端へとったら真ん中、二十四日は連続して働かすことができると、それで労基法違反でないということになるわけですが、三カ月単位の変形制が改正になって導入されるということになりますと、これまた労使協定が結ばれたら、極端なことを言うたら、計算したら七十日連続労働をさせることができるようになるんですか。
#217
○政府委員(平賀俊行君) 今回御提案申し上げました労働基準法の改正案につきましては、既に衆議院段階からいろいろと御議論がございまして、特に新しく導入します三カ月単位の変形労働時間制についてはその御議論が集中いたしまして、衆議院での御審議の結果、三カ月単位の変形労働時町制につきましては、一日、一週間の労働時間の限度、そして連続して労働する日数の限度を中央労働基準審議会の意見を聞いて命令で定める旨の規定が追加されました。したがいまして、審議会の御意見によってそこら辺のところが適切に定められるものと考えております。
#218
○沓脱タケ子君 先回りしてお答えをいただいたんですけれども、実際、今だってできるといってさっき言われたんだから、三カ月の変形労働制が導入をされますと、そういう問題というのは当然出てくる。
 審議会の御意見を聞いて適切に定められると思いますと言うけれども、最高何ぼにしますねん。気になりますがね、現行法でもやれるといって言い出したら。どのくらいのことを考えているか。
#219
○政府委員(平賀俊行君) その点につきましては、既に本日何回か御答弁申し上げておりますように、一日の労働時間を十時間とすることを前提に、その他の問題については今後検討させていただきたいと存じております。
#220
○沓脱タケ子君 何回も御説明を申し上げていると言うけれども、それだけしか聞いてないから聞いている。
 私、とにかく会期末、ごしゃごしゃ法案があって、午前中は環境特別委員会へやむなく行った。そういうことで、朝のあなたの答弁を聞いていませんけれども、あなたは何遍も言いましたなんということを言う。それはさっきの話は聞きましたで。極端に言うたら二十四日も連続労働ができるというようなことになったら、連続労働は最低何日ぐらいにはせめてせにゃいかぬと考えてますというのをなぜ言わないんですか。言わないと風もと思うんです。
#221
○政府委員(平賀俊行君) 先ほどの質疑の経過をさらに詳しく御説明をいたしますと、御質問に際して、一日十時間、一週四十八時間、そして一週間に一日休みをとる、そういう形で規制をする考えはないかという御質問に対して、いずれにしてもこの問題は中央労働基準審議会の御意見を承って命令で定めることになりますけれども、私どもといたしましては、一日十時間とすることを前提としてさらに検討させていただきたいと、こういうようにお答え申し上げたわけでございます。
#222
○沓脱タケ子君 持って回って言っているけれども、結局言ってへん、わからへん。
 それで、時間がもったいないから前へ進めますが、私は変形労働というのは頭のいい人が考えたもんやなと思うんですが、その頭のいい人たちが考え出したこの変形労働制というのを上手に使こうたら、随分使いようがあるなということを発見しました。
 それは、例えば三カ月労働制を極端に考えますと、全期間を通じてこれは週休日は最低一日休むんです、確保するんです。国民の祝日の振りかえも含めて休日はきっちり確保した上で、全期間十三週、九十一日です。このうちの一、二、三週とそれから第十、第十一、第十二、第十三週のこの七週間を午前中だけの一日四時間労働とする。そうしたらあとの第四週から第九週までの六週間は毎日の労働時間を十二時間とするということができるんですね。そうしたら、その週というのは一週六日だから七十二時間労働を六週間継続するということ、これは可能なんです。それなら三カ月で一週当たり何ぼになるかといったら、換算しますと一週ちょうど四十時間になる。そうしたら改正労基法にも違反にならぬ。
 この六週間、猛烈に忙しいから連続して十二時間労働やと、そのかわりにその前と後の暇なときには四時間にしてあげます。こういうことをやっても労基法違反にならぬわけですね、全体として一週四十時間ということになれば。そうなんでしょう。
#223
○政府委員(野崎和昭君) 上限につきましては、今回の衆議院での修正によりまして上限が設けられることになっておりますが、仮にそのことを別といたしましても、言いかえましたら現行の変形労働時間制の運用の実際を見てみましても、先生の御指摘になりますような合理性のない極端な形態というのは私ども全く聞いていないわけでござい音す。あるいは机の上でいろいろと時間設定をしますればそういうことも可能かもしれませんけれども、実際には起こっていない。起こっていないということはやはり労働の現場というのは長い間継続して働かれる場所でございまして、仮に一時期の都合でそういうことをとりましても、結局は長い間それを続けることは不可能でございます。
 まして、今回の三カ月の変形制につきましては労使協定の締結、言いかえれば労働者代表の合意と、さらに今回修正によりまして上限時間が設けられますので、そういった先生御指摘のような心配というのは全くないというふうに確信いたしております。
#224
○沓脱タケ子君 私は、全くないとおっしゃるからそうかなと思うけれども、やっぱり信用できない。労働基準法というのは人たるに値する最低基準を決める。最高基準と違う、最低基準を決めるんですね。今言ったようなことが絶対に起こっちゃならぬのです。例えば六週間は一日十二時間、その前の三週間は四時間、その後の四週間は四時間労働。それで三カ月変形労働、一週に換算したら四十時間になって改正労基法の範囲に入るんです。だから、別にいいじゃないか、四時間の日もあるんだからということを言われたんだったらこれはえらいことになるなと思うんです。そんなことはないでしょうな。上限も何もきちんと決めたと言わぬからいろいろ聞かなきゃならぬでしょう、これから御相談を申し上げましてと言うだけだから。
 私は何も無理なことを言おうとしていない。こういうことに歯どめをかけなかったら大変なことになりますべと冒頭言ったでしょう。労働力のかんばん方式をねらっているというふうに私が思ったのはこれなんです。都合のいいときには十二時間働かします、暇やから四時間で結構です、こうされたらどうなるか。いや四時間で帰れる日が余計あったら結構やないかとおっしゃるかもしれません。本当に帰れるんならまたそれも結構なんですね。ところがどないなるやわからへん、それは。
 なかなか御答弁がてきぱきいかぬから私ちょっと問題を前に進めますが、例えば六週間十二時間、前後四時間、なかなかいいなと、早く帰れる日がそないまたたくさんあったら結構やと思いますけれども、なかなかそうはいかぬですね。
 今御承知のように残業の実態というのは随分いろいろとありますね。
 私ちょっと具体例を挙げますわ。長崎相互銀行の銀行と従業員の組合で構成をされております時間管理委員会というのが、昨年の八月から十月の期間を対象にいたしまして全行員の労働実態アンケートをやった。そのアンケートをもとに従業員組合がアンケートの中の退行時間の調査から残業時間というものを試算した、退行時間まで仕事をしたという想定をしてしたんですね。ほんなら一人当たり一カ月六十六時間になったんですね。ところが残業として請求している時間数はわずか九時間、未払い残業時間数が一人当たり月平均実に五十七時間にもなっているわけでございます。
 この銀行の賃金資料によりますと、時間外手当の単価を試算して未払い時間外手当を一人当たりに計算すると、月額八万四千七百五十七円になる。
 労働省にちょっと考えてほしいのは、組合と銀行がみずから調査してこういう結果を明らかにしているんですよ。こんなことを知っていますか。御承知じゃないですか。
#225
○政府委員(野崎和昭君) ただいま初めて伺いました。
#226
○沓脱タケ子君 御承知じゃなかったらすぐに調査をしてください。調査をして実態がそれであれば法違反でしょう。いかがですか。
#227
○政府委員(野崎和昭君) お話によりますと、労働組合も関与した調査のようでございますので、法違反であれば当然労使間で話し合って是正がされるものと思います。
 いずれにいたしましても、労働者の方から具体的に法違反の指摘がありますれば格別でございますが、今のお話だけで調査を行うということは適当でないと思っております。
#228
○沓脱タケ子君 どうして適当でないの。どうしてですか。これは銀行と組合とで構成されている時間管理委員会というところが調査をしているんですよ、全行員を対象にして。これが事実だったら三十七条違反でしょう。法違反を黙って見過ごすんですか。国会で指摘しているのに何という態度ですか。
#229
○政府委員(野崎和昭君) ただいま申し上げましたのは、まさに組合も関与して労使で御調査になられた結果でございますので、その処理に当たりましては恐らく当然法違反があれば労使で話し合って是正されるであろう、そういった措置をまず見守りたいという趣旨でございます。
#230
○沓脱タケ子君 知らない間はよろしいがな。国会で私が正式に申し上げているんだから調査をして当たり前じゃないですか。どうして調査すると言わないんですか。局長どうなんですか。
#231
○政府委員(平賀俊行君) 法違反があるかどうかということをこの時点で確定するわけにはいかないし、それはありますということも私どもは申し上げられないわけでございますが、具体的にその企業の名前も挙げて御指摘になったことでございますので、私どもといたしましては実態を把握したいと存じます。
#232
○沓脱タケ子君 当たり前のことを四の五の言って時間とるんだな。
 それで、私はこのことをなぜ言うたか。これは今までの御審議の中でも、変形労働をやる場合には残業は規制する規制すると盛んにおっしゃっているでしょう。そうですね。残業規制はやりますね。
#233
○政府委員(野崎和昭君) 変形労働時間制をとります一つの大きな理由は、業務の繁閑に合わせまして労働時間を設定することができることによりまして、結局全体としての労働時間が短くなる。言いかえれば、これまで残業として扱われていた部分が全体として短くなるということでございます。
 この三カ月単位の変形労働時間制について特に申し上げますと、これは所定労働時間を四十時間にすることが前提になっております。四十時間を超えましたら、その時点から割り増し賃金を払っていただくことになっております。法定労働時間は四十六時間を予定しておりますので、残業を予定して業務の繁閑に対応するということであるならば、この三カ月単位の変形労働制はむしろとらない方が使用者にとってはコストアップにならないという関係になっております。したがいまして、言いかえますと三カ月単位の変形労働時間制をとる以上は、残業は突発的なものを除いてはやらない、そういう体制で労使とも納得してやっていただく、そういうことになると思っております。
#234
○沓脱タケ子君 三カ月単位で変形労働制をとった場合にはできるだけ残業を規制するんですね。やらないんでしょう。やるんですか。私非常に心配なのは、じゃ残業のかわりに変形をとって忙しいときに十時間、暇なときに六時間というふうにやりますねんと、こうなるんですがね。
 ところが、今私たまたま長崎相互の話を出しましたけれども、これはほんの一例であって、今不払い残業というのはもう天下に横行していますよ、実際上。労働省は知らないんだったら本当に本気で調査なさったらいいと思います。まあ教えてくれと言うたらこれから教えますけれどもね。だけれども、一日十時間の日、一日六時間の日というのができるけれども、六時間の日に六時間で終わらないような不払い残業がプラスされていくということになると、全体としての労働時間が大変長くなるんではないか、こういう心配をしているんです。
 そういうものを規制するということをきちんとやらなかったら、変形労働制をやったら本当に働く人たちというのはもう全く、サービス残業がこれに加わったりしたら長時間労働の連続になるであろう、そのことを大変心配しますが、どうですか。
#235
○政府委員(平賀俊行君) 先生、たまたま銀行の名前を挙げられて、先生の御指摘によりますとその銀行で毎月五十七時間平均しての残業があるという実態を御披露なされたわけでございます。要するにこの銀行のような業態、通常は一日八時間働いて、そしてその上に繁閑に応じて残業があるという形であろうと推定されるわけでございます。
 したがいまして、先ほど審議官がお答え申し上げましたように、こういうような業態の場合に、本来季節的な繁閑に応じて変形制を適用するという余地はあるのかもしれませんけれども、こういうものについて変形制が適用できる性格のものではなくて、法律の適用関係でいいますと、一週四十六時間を超える場合に残業手当の支払い義務が生ずるという通常の労働時間制をとる。それから一週平均して変形労働制をとったにしても、四十時間平均にしてそれを上回るときに残業を払う仕組みをとるという場合にどちらを選択するかといえば、特にコストという点を考えるならば平均四十時間でその上に残業が上積みされるような制度を採用するということは、これはいわばコストという点では大変にマイナスになる。そういう意味では一日に必ず八時間働くという業態について変形労働時間制を適用することはまず考えられないというふうにお答え申し上げているわけでございます。
#236
○沓脱タケ子君 そこで時間を全部費やすわけにいかないんで次へいきますが、私はしかし変形労働時間制をとったらこれは一週四十時間になって、超勤やったら四十一時間からは超勤手当もらえるんだから有利だなどと今御説明をなさっておりますけれども、そうではなくて、不払い残業がずっと上積みされて大変な長時間労働が押しつけられる結果になりはしないかなということを一番心配をしています。そのことだけ申し上げて次に参ります。
 同時に、変形労働時間制の導入というのは繁閑によって変形労働をやるわけですから、残業時間というものがなくなるわけですね。ある日に長時間労働をやっても、それは所定労働時間ということになるわけですから当然のこととして残業時間が減りますね。それはどうですか。
#237
○政府委員(野崎和昭君) 御指摘のように、変形労働時間制を合理的に運用すれば全体として労働時間が短くなる。短くなるというのはそれまであった残業時間が減るということになると思います。
#238
○沓脱タケ子君 そこで、理屈の上では確かにそうなるんですよね。三カ月の単位で変形労働時間制を導入できるようにすると、どこでもいろいろ例はあるんですけれども、例えばデパートなんかだったらお歳暮と中元の時期というのは一番忙しいわけです。だからお歳暮のときいったら十一月、十二月が忙しい。それで中元のときというのは六月、七月が忙しい。こういう季節的に業務に繁閑の差がある場合に、これが三カ月変形労働に組み込まれたら当然のこととして忙しいときの長時間の仕事というのは所定内になりますわね。それはどうですか。
#239
○政府委員(野崎和昭君) 先生お尋ねのように、デパートの十二月の業態を考えてみますと、これは完全週休二日制にすることが前提でございますので、十二月各週とも休日が二日あったところを仮に忙しいということで一週間に一日の休日にしたというふうにいたしまして、一月なり二月なりにその休日を与えたら一月、二月は休日が一週間に三日になるわけでございます。そういうことになりますけれども、一月は週三日休日制になりますけれども、十二月は週一日休日制になります。そして二日あるうちの一日は働くことになりますけれども、その働いた時間は休日労働になりませんので、そこの部分の休日労働手当は確かになくなりますが、かわりに一月、二月で休日が一日ふえているわけでございます。
 要するに短縮された時間をとるのか、休日労働手当をとるのかという問題でございまして、時間短縮のためにはそういった問題についての選択の余地を与える必要があるというのが今回の改正の趣旨でございまして、その選択は言うまでもなく労働者代表と使用者との間の合意にゆだねられているところでございます。
#240
○沓脱タケ子君 いずれにしても、使用者の側には割り増し賃金の支払いの義務は三カ月の変形労働で時間外をしなきゃならないわけですね。働く人はあるとき忙しいときは十時間、十二時間働かにゃならぬかもわからぬ。しかし暇なときは週三日休みやるというわけですよ。そしたら割り増し賃金の支払い義務というのは法的には生じないわけでしょう、当然。違いますか。
#241
○政府委員(野崎和昭君) 御指摘のように、十二月に二日あるべき休日のうち一日働いたその日の休日労働手当は確かになくなりますけれども、もう一つ絶対に忘れていただいては困りますのは一月、二月にその公休日が一日ふえているということでございます。
#242
○沓脱タケ子君 話の筋はそうなんです。生活の実態と話の筋と違うから笑っているわけです。何でその間に違いが出るかというと、例えば私、一人の人を見てみたら、婦人労働者ですけれども、都内のデパートの配送センターにおる方です。一年間に残業手当が今忙しい月は四万三千円、それで暇な月いうたら二千五百円から三千百円ぐらいですね。しかし年間を通してこの人は残業代が十三万八千二百円になっている。
 しかし、これが変形労働に組み込まれて、長く働いても、例えば十時間、十一時間働いても、これが所定内労働ということになって残業手当がつかないということになりますと、これは働く人の側は残業手当という実質賃金が懐に入らない、使用者の側は同じように働かしておりながら割り増し賃金を払わなくてもよいという関係が生まれますね、この収入という問題で見たら。
 ところで、毎月勤労統計によって見ますと、全国での残業代というのは年間、これは衆議院で労働省が御答弁になっているのでは十兆六千億だそうですね。それでよろしいか。
#243
○政府委員(平賀俊行君) 毎月勤労統計のその残業の時間とそれからそれに伴う所定外の手当といいますか、それを推計いたしますと大体御質問のような数字になります。
 それから、ただいまの前の例でございますが、多少なりとも残業があるということは、暇な月でも一日八時間の就労はしているということでございます。また、その就労が必要であるという現場ではないかと思います。したがって、変形時間を採用するときに、暇な月にめちゃくちゃにその労働時間が減るものかどうかというのは、少なくとも暇な月でも残業が必要であるというふうな労働の実態であるならば、そういうならしができかねる事業場、したがってそういうところで変形労働時間は通常、常識的には採用できない。採用すれば恐らく残業代はまだかさむということになりますので、そういう場合に変形労働時間制が仮に採用されて残業手当が減るという推計は成り立たないものと私どもは考えております。
#244
○沓脱タケ子君 そういう数字が成り立たないと言ったって、三カ月変形労働に組み込まれたらそういうことになり得る。
 今、十兆六千億はよろしいんやな。それ聞いたんよ。それで私、この十兆六千億を出してきた試算に関連して、大阪だけでどのくらいになるのかなと思って試算をしてみました。そうしたら、これは少なく見積もっても大阪では七千億以上あります。ちなみに大阪府下の百貨店の六十一年度の総売上高というのは一兆一千七百億。だから、大阪の百貨店というのは大概よく稼いでいますが、あの百貨店の売り上げ全体に匹敵するほどの超勤、残業代というのが出ているわけです。これの随分大きな影響だと思いますが、これが全額減額にならぬかどうか知りませんが、この十兆六千億のたとえ半分でも労働者の収入が実際に減るということになったら、これはえらいことになるんじゃありませんか。内需拡大どころの話じゃないでしょう。
 政府統計によっても、ローンの支払いはこれは全国平均で六万五千円ですね。ローンが払いにくくなるというふうなことになるでしょう。耐久消費財を買うということも非常に落ち込むでしょう。大変なことになりそうだなと。労働時間を短くします、うまいことやりますと言うけれども、働く人の懐ぐあいとの関係では大変なことになりそうですよということを申し上げている。
 時間の都合がありますから次にいきます。
 厚生省にちょっと聞きますが、厚生年金の保険料の算定基礎、標準報酬月額には残業代は入っていますか。
#245
○説明員(佐々木典夫君) 残業手当が健康保険あるいは厚生年金の制度の中でどういうふうに位置づけられているかというお尋ねでございますが、御承知のとおり健康保険あるいは厚生年金保険は標準報酬制度をとっております。この標準報酬制度に当たりまして月々の報酬総額を算定の基礎といたしますが、この場合の健康保険あるいは厚生年金保険におきます報酬の観念は、臨時的なものあるいは三カ月を超えた期間ごとに支給されるような賞与等を除きまして、賃金あるいは給料、俸給、手当などで、労務の対償として受けるすべての報酬を名称のいかんを問わず対象といたしております。そういう意味では、超過勤務手当ということで標準報酬の基礎となる報酬の対象になるということでございます。
#246
○沓脱タケ子君 そうしますと、標準報酬の中に超勤が入っているということだったら、それがなくなったらこれまたえらいことで、年金額もそれにつれて減るわけですな。三カ月変形労働制に入ってそれで残業がなくなった、そうすると確かに標準報酬が減るから掛金は減るかもわからぬけれども、年老いて年金をもらうことになったら年金の額が減るということになるんですね。えらい影響ありますよ。
 雇用保険はどうですかな、これは労働省か。失業給付。
#247
○説明員(松原東樹君) 雇用保険を含めまして労働保険の保険料率につきましては、当該事業場の全労働者に支払います賃金の総額を保険料の算定基礎といたしております。この賃金総額には当然、いわゆる残業手当も含まれるところでございます。
#248
○沓脱タケ子君 そうすると、残業手当ががさっと減る、もらえぬようになるということになると、年金ももらうときにはがさっと減る。これは死ぬまで影響しますよ。雇用保険の失業給付ももらうときには減る。失業したときに減りますよ、もらうのが。
 それから健康保険もそうやとさっき説明あったし、それから特に民間の健保組合というのが大概影響を受けるんじゃないかなというふうに思いますが、これは国から財政補助がありませんからこれでがさっと減ったら健保組合は大変財政ピンチになってくるという心配が起こってきそうに思います。これも健保組合にも影響があると思うわけでございます。
 それで、大分時間がたっておりますので、もうあと時間がたくさんありませんから少し整理をして前へ進めますが、これは皆さんからの質疑の中で出ておりましたが、労働省は昭和五十五年、週休二日制等労働時間対策推進計画というのを決めましたな、六十年には二千時間にすると。これうまくいかなかった。いってないでしょう、現実に。それで、このときに目的、意義を三点挙げておるんですが、これは今も考えは変わっていませんか。
#249
○政府委員(平賀俊行君) こういう労働時間短縮の計画を立てる場合の、その労働時間の短縮の目的等については変わっておりません。
#250
○沓脱タケ子君 それで、皆さんがいろいろおっしゃっておられますので私もどうしても聞いていかにゃいかぬと思うところを幾つかちょっと聞きたいと思うんですが、法六十条で、十八歳未満の年少労働者にはすべて変形労働制の除外をしておりますけれども、その理由は何ですか。
#251
○政府委員(野崎和昭君) 満十八歳未満の年少労働者につきましては、まだ身体的にも発育途上でございまして、その健全な生育を確保するためには労働時間について特別な配慮を加える必要があるという見。地に立ったものでございます。
#252
○沓脱タケ子君 婦人局長おりませんか。――それならだれか局長でも大臣でも答えてもらったらよろしいけれども、妊婦のおなかの中の胎児というのは発育途上と違いますか。私の認識では、青少年の発育と母胎の中の胎児の発育といったらテンポが母胎の胎児の方が物すごい速いように思いますが、それはどうですか。
#253
○政府委員(野崎和昭君) 先生よく御承知のとおり、最初、労働基準法は女子、年少者ということで女子と年少者を同じレベルで保護の対象として扱っておりましたけれども、均等法以来、女子についてはそういった特別の保護というのはかえって均等を阻害するという見地になっておりますが、母性保護につきましてはこれは別ということになっておりまして、胎児の保護というのはまさに母性保護の一環であるというふうに思っております。
#254
○沓脱タケ子君 母性保護をしなかったら胎児の保護はできませんわな。それで、現行の六十六条では、これは先ほどもお話がありましたように、大体妊産婦の時間外、休日、深夜労働というのは禁止されているわけですが、これは均等法でもいろいろ言われていますがね。変形労働時間制が導入をされますと、今は時間外なら禁止ということになりますが、変形労働になれば長時間になってもこれは所定内時間ということになりますから、就業は拒否することはできませんわね。そうすると、残業は禁止、時間外は禁止というふうにならないわけです。
 したがって、妊産婦保護の問題というのが極めて大事で、変形労働時間から妊産婦は適用除外にすべしという御意見というのがたくさん各委員からも積極的に出ているのはそこだと思うんですね。これはどうですか。
 私、労働省は大変よく勉強しておられて、もう時間がないから詳しく言えないけれども、女子労働者の母性健康管理テキストというのをわざわざ労働省婦人局婦人福祉課でつくって、非常に丁寧に妊産婦の指導あるいは産後の指導等のことについて意を用いて指導をなさっておられる。それを考えたら、これは適用除外を法律で明記されるということが当たり前ではないかと思いますが、どうですか。
#255
○国務大臣(平井卓志君) 妊産婦につきましての御懸念の問題について当委員会でいろいろ御議論をちょうだいいたしましたけれども、政府といたしましては、この妊産婦についての変形労働時間制の適用を除外することについて、本委員会での議論を踏まえて御懸念のないように対処いたしたい、かように申し上げておるところであります。
#256
○沓脱タケ子君 そうすると、法制化するということですな。大変結構です。当たり前のことやけど、原案に出てないという方がおかしいんですな、大体。
 それで、例えば高齢者、身体障害者、こういう人たちの適用除外は考えますか、考えませんか。
#257
○政府委員(野崎和昭君) 高齢者の場合には、高齢の度合いにもよりますけれども、やはり年齢の差というよりもむしろ個人差が非常に大きいんではないかと思います。現に、高齢者でビルの管理業務等に従事しておられる方、守衛等に従事しておられる方、大勢いらっしゃいまして、この方は現行の四週間の変形労働時間制のもとで働いておられるわけでございます。そういった関係もございますので、一律に高齢者であるからということで特別な扱いをすることは必ずしも適当ではないと思いますけれども、それぞれの個人的事情に応じて個別に配慮が加えられることは必要なことであるというふうに思っております。
#258
○沓脱タケ子君 夜間定時制高校とか、そういう通学の人たちについては便宜を図るというふうなことを言っていましたが、あるいは介護の必要な場合に適用除外にするという問題、これらは法律に明記されますか。
#259
○政府委員(平賀俊行君) これは老人の介護が必要な方あるいはその通学について配慮が必要な学生さんなどにつきましては、それぞれの事情に応じて通達を出しまして必要な配慮をするように指導いたしてまいりたいと思います。
#260
○沓脱タケ子君 通達できちんとやると、こういうことですな。変形労働時間の導入によって労働者家庭の生活影響というのは大変大きいと思うんです。多くをお聞きする時間がありませんので、例えば子供を育てている場合ですね、子育て、こういう問題から見てみますと、ある日は八時間、ある日は十時間、ある日は七時間というふうになると、保育対策というのは大変難しくなると思うんですね。
 私念のために厚生省にお聞きをいたしたいのは、こういう点では厚生省は、この労働時間の変形労働制の導入に当たって保育対策をどうするかなど労働省と協議をなさったことがありますか。
#261
○説明員(柏崎澄雄君) 御説明申し上げます。
 保育所につきましてでございますが、婦人就労の増大あるいは婦人就労の形態の多様性、変化等に対応いたしますために、従来より延長保育制の導入、保育時間の延長などでございますが、そのような措置をこれまで講じてきているところでございます。今後ともそのような動向を踏まえながら一層の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
#262
○沓脱タケ子君 これはよほど腹を据えてやるんならやってもらわないと、昭和五十五年にベビーホテルで大問題になりましたね。あのときに夜間保育対策をおとりになってこられたわけですが、それ以後、夜間保育所は全国で幾らもふえていませんね。
 これは言ってもらうのは気の毒なぐらいで、昭和五十六年が四カ所。もう私が言いますがね、やっと六十年で十九カ所、六十二年で二十六カ所なんですね。全国の保育所といったら二万ぐらいあるでしょう。二万ぐらいある中でまあ大体二十六カ所ぐらいしか夜間保育というのはできてない。延長保育に至っては、これはまあ六十一年でやっと三百七十ですね。これでは私、やっぱり労働時間の態様の変更を労働省がやろうとしている中では、今日の国民生活の中で保育時間の態様、保育所の態様というのが非常に重要になってこようと思うのですが、これは厚生省としてはどうしておられますか。
#263
○説明員(柏崎澄雄君) 御説明申し上げます。
 保育時間の延長保育、夜間保育、そのような保育時間の延長への対応は私ども極めて重要な施策と考えております。そのようなことにかんがみまして、六十二年度におきましては、延長保育の徴収金の軽減を図るとか、あるいは夜間保育につきまして少し時間的に拡充を図るとか、あるいは保育所機能強化推進費と申しまして、従来の助成のほかにこれらを積極的に進めていただく場合にささやかではございますがさらに御助成申し上げようというような努力をいたしたところでございます。今後ともいろいろと努力してまいりたいと考えております。
#264
○沓脱タケ子君 それでね、努力をしようとしておられるようなんだけれども、地方自治体はこれね、国の機関委任事務から団体委任事務へということで国の責任が格下げになりましたね。その上に、一年限りやいって初め言うといて、補助金を十分の八から今十分の五になって、三年間というふうなことで地方自治体は大変な状況です。公的保育所を取り巻く環境というのは随分悪いですね。こういう中で、本当に代替措置を本気で考えなかったら子供たちはどうなるか。
 私はたまたまこれは共働き家庭の方々は大変だなという実例を見つけて驚いているんです。というのは、夫婦共働きをしておられたら大体所得税三十万内外だそうです。陸前高田と言ったら岩手県ですね。この岩手県では、国基準の制度で夜間保育を八時までやっている。そうすると、保育料が幾らになっているかいったら九万五千八百四十四円です。二時間の超過分が一万五千九百七十四円。これでは子供をやっぱり公立保育所へ預けられない。ベビーホテルがあったらベビーホテルへ連れていくしかしようがない。しかし子供がかわいそうだからということで、働くお母さんは職場をやめざるを得ないというところまで追い込まれることは避けられないと思う。
 やはり、労働基準を変えていくという場合には、それを取り巻く環境の整備ということが並行してやられなければ本当に大変なことになるではないかというふうに思いますが、その点、厚生省は大概苦労していますと言うけれども、労働省そんなことを考えておらないんですか。労働大臣、一遍厚生大臣と相談をして、大蔵省へどんと言って金をひとつ取って、労働基準変えるんやからそれに合うような環境づくりをしなかったら大変だということで手を打つ必要があると思いますが、いかがですか。
#265
○国務大臣(平井卓志君) おっしゃいますように、今委員の指摘されましたようなケース、また将来的展望に立って考えました場合には、環境の整備というのは不可欠で、また急がなければならぬという御議論は当然のことで、そのように努力をいたしたいと考えております。
#266
○沓脱タケ子君 もう時間がほどなく終わりですが、最後に私、やっぱり家庭生活に及ぼす影響の大きなものの一つとして、年次有給休暇の問題がある。何しろヨーロッパの諸国と比べたら恥ずかしいほど日数が短いし、取得率が大変悪い。取得率が悪いというのは、人手が足らぬという問題があって休みにくい、休んだらペナルティーを科せられる。そういうことでなかなか取りにくいわけですが、私は今度の制度は随分問題があるけれども、その中でも計画付与の問題で、共働きの家庭だったらどうするんやろうかと思うんです。御主人の方は七月一日から五日まで年休付与、奥さんの方は八月二十日から五日間計画付与やと言われたら、これは話にならぬと思いますが、そういう点ではすべての日数について自由取得を保障するということが非常に大事ではないかと思いますが、そういうことについての御意見はどうですか。
#267
○政府委員(平賀俊行君) 年次有給休暇の制度は、戦後労働基準法によって我が国で初めて制度的に保障されたものでございます。
 外国における年次休暇の習慣というのは、もちろん自由取得の建前になっておりますけれども、連続して家族一緒に長期の休暇をするという慣行がございまして、それで定着をしているように思います。我が国の場合はそれとは別に、ずっと四十年間の休暇の運用を見ておりますと、やはりいろいろな場合に分割して利用されるという実態にございます。結果として、年次休暇の取得率は、平均すると五割程度でございます。
 そういうことで、できるだけ取得率を向上させるための我が国にふさわしい慣行として計画的付与の制度を今回御提案を申し上げたわけでございます。もちろん、現在の自由取得の制度の中で、いろいろ個人的な事情がある方もございますし、あるいは年次休暇の日数の少ない方などもございます。いろいろ具体的には難しい条件もあろうかと思いますけれども、そういった条件も含めて、年次休暇を計画的に取得する場合の協定をするときに、そういう条件なども勘案した上で運用をするように指導をしてまいりたいと存じます。
#268
○委員長(関口恵造君) 沓脱君、時間です。
#269
○沓脱タケ子君 時間ですので、最後に申し上げておきたいんですが、私冒頭に申し上げた疑問というのは今の質問の範囲ではやはり解くことはできない。そういう点で、この一部改正についてはどうしても賛成できないなという思いを強くしていることを申し上げておきたい。
 一言だけ財形問題について触れておきたいと思います。
#270
○委員長(関口恵造君) 時間です。
#271
○沓脱タケ子君 一言だけ。
 財形の一部改正ですが、これは御案内のようにマル優廃止に伴うものなので、私は労働者のわずかな財産形成という貯蓄に二〇%も税金をかけるというふうなやり方というのは、本来財形の趣旨に反する。そういう点で極めて不当なやり方だというふうに思いますし、従来から利子非課税制度というのが財形貯蓄制度の根幹ではなかったか、大臣もずっとこれを言ってきたはずではなかったか。この点では、そういう従来からの決議なり御意見に反するものだと思いますが、その点についての御見解を伺っておきたい。
#272
○委員長(関口恵造君) 簡潔にお答えください。
#273
○国務大臣(平井卓志君) ただいまの御指摘でございますけれども、少額貯蓄の非課税問題というのは、御案内のように税制改正一般の中の一つの流れであり、またその一つの選択であろうかと。ただ、この財形問題につきましては、おっしゃいますように非常に労働者の資産形成、なかんずくストックの面がおくれておる、そういう中でこのたび一連の税制改正が行われんとしておるわけでございます。
 ただ、この財形問題につきましては、特に労働者にとって必要であるという年金さらには持ち家というこの二点については非課税ということでお認めをいただいておるわけでございまして、その他の一般財形と申しましょうか、これは他のサラリーマンとの均衡上の問題もございまして課税になるということでございまして、今申し上げましたように、今後財形問題につきましてはそれなりにお認めいただいた制度を最大限に活用してさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#274
○沓脱タケ子君 どうも済みません。終わります。
#275
○橋本孝一郎君 我が国における労働時間の実態とその格差の現状というものは、組織労働者と未組織労働者の間、あるいは企業規模及びまた業種間、さらに地域格差といいますかが極めて複雑に介在しておると思います。したがって、今日の経済大国と言われる日本において、国際水準に見合った労働時間短縮に持っていく上において基準法の役割というのは非常に大きいわけであります。今回の改正の中で幾つかの問題点がありますけれども、私はそれらについて、重複するところがあるかと思いますけれども、確認の意味もございますので御答弁を願いたいと思います。
 まず、この四十時間労働への移行時期なんでありますけれども、当面過労働時間は四十六時間、そして三年後に四十四時間とすることが一応今日段階では明確になっておるわけでありますが、新前川レポートにもございますように、千八百時間に持っていくためには、少なくともこの四十時間制というものは、言われておりますように一九九〇年代前半に持ってこないとなかなか実際難しいんではなかろうか。
 そういう意味において、衆議院段階におきましても我が党の田中委員から、前半とは九三年であるという、その趣旨に沿って最大限努力するという御答弁があったわけでありますけれども、「前半にできるだけ速やかに」とされる以上、四十時間制への移行は少なくとも九五年ではないと思うわけですけれども、これまでの政府答弁から一九九三年を目標年度として理解していっていいのかどうか、くどいようでありますけれども、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
#276
○国務大臣(平井卓志君) おっしゃいますとおり、一九九〇年代前半にできるだけ速やかにということでございますので、目標年度としては一九九三年というふうにお考えいただいて結構かと思っております。
#277
○橋本孝一郎君 次は、変形労働時間制の問題についてお尋ねしたいと思います。
 新しく三カ月単位の変形労働時間制というのがとられて、これに対するいろいろな疑問あるいは心配というものが出されておるわけでありますけれども、それらにきちっと歯どめをかけていく必要があるわけであります。特に、三カ月単位の変形労働時間制については、衆議院における修正で一日、一週並びに連続して労働させる日数の限度を定めることができることとなったわけであります。しかも審議を通じて、一日の限度は十時間とすることが常識的な線であるという御答弁があったわけであります。
 しかし、一週並びに連続労働させる日数の限度についてはまだ目安が明らかになっておりません。少なくとも一週一回は休日がとれるように、また連続して労働させる日数は六日程度にできないのか、また一週間の延長限度も、いわゆる十時間ですから、八時間労働からすると二掛ける六という算術的な計算でなくて、できるだけ低く抑えていくということが適当ではないかと思いますが、それらの点についての御見解をお尋ねしたいと思います。
#278
○政府委員(平賀俊行君) 三カ月単位の変形労働時間制における一日、一週の労働時間の限度、あるいは連続して労働する日数の限度などにつきましては、衆議院の段階での修正において、中央労働基準審議会の意見を聞いて命令で定めるということになっておりますけれども、御質問のように一日の労働時間の上限は十時間とすることを前提に、さらに御質問の趣旨を踏まえまして検討させていただきたいと存じます。
#279
○橋本孝一郎君 次に、一カ月単位の変形労働時間制についてでありますけれども、三カ月単位あるいは一週単位については届け出が義務づけられておるわけでありますけれども、一カ月単位の変形労働時間制については労使協定の締結をむしろ要件とすべきではないか。この点について、なぜできないのか、理由を含めてひとつお答え願いたいと思います。
#280
○政府委員(平賀俊行君) 一カ月単位の変形労働時間制につきましては、従来から、基準法施行以来実施しております四週間単位の変形労働時間制と同じ性質のものであると考えております。この点につきましては、四十年間ずっと運用してまいりまして、特に協定等の要件がなくても適正に運用されているというふうにまず考えます。
 それともう一つは、今後この関係の変形労働時間制が拡大される場面といいますのは、週四十八時間労働制から四十時間制に移行する過程、そういう過渡的な過程では、例えば四十六時間といたしますと、それは四週間のうち一回だけ休みを日曜日のほかにふやす、その週は四十時間、ほかの週は四十八時間で平均して四十六時間という形の運用が最も典型的なケースになると思います。言いかえれば、中小零細企業において過渡的に労働時間を短縮していく場面においては、週単位の労働時間について変形制で運用するという場合が多くなると存じます。
 これは新しい規定での一カ月単位での変形制で運用される場面でございます。これはもちろん労使協定を要件とすることもあるいは必要かもしれませんが、むしろそういう特別な要件を課さないで、中小企業の実態に即して進めるためには従来どおりのやり方でいった方が適切ではないかと考えている次第でございます。
 しかし、一カ月単位の変形制、これは三カ月単位の変形制あるいは一週間の非定型的変形制とか、いろいろな場面でその変形制がだんだんと用いられることも予想される。私どもとしてはそういう一カ月単位の変形制について将来とも問題を生ずることはないと考えておるわけでございますけれども、しかしこれまた、新しい改正法の運用の実態などを考えつつ、三年後に検討するという規定も入りましたので、それまでに一カ月も含めて変形制の運用の実態を調査して、必要があれば適切な措置をとってまいりたいと存じております。
 なお、一カ月単位の変形労働時間制の導入に伴う就業規則の変更に当たりましては、労働者代表の意見が十分反映されるように指導してまいりたいと考えております。
#281
○橋本孝一郎君 次に、中小企業に対する経過措置についてでありますけれども、三百人規模以下の事業場についてては法定労働時間の適用が猶予されることになっております。しかし、中小企業といってもいろいろあって、業種によっては人員で縛るということは必ずしも現状に合わない。三百人以下でも業種によってはもう大企業と言えるものもあるわけであります。したがって、単純に規模だけで輪切りするのではなくて、業種と規模とを組み合わせてきめ細かい対応をして、猶予期間をできるだけ限定すべきではないか、こう思いますが、これについての御見解をお尋ねしたいと思います。
#282
○政府委員(平賀俊行君) 当面の法定労働時間の適用を猶予する事業所につきましては、御質問のように、規模別、業種別の労働時間の実態に即し、当該規模、業種に属する事業所の相当数が週四十六時間を超えている場合に限ることとし、具体的には中央労働基準審議会の意見をお聞きしましてできるだけ限定してまいりたいと存じます。
#283
○橋本孝一郎君 次に、変形労働時間で女子、特に産婦の変形労働の適用除外、育児時間の問題についてお尋ねしたいんですけれども、請求せずに、変形労働に従事した場合の育児時間については、現行一日二回各三十分を一日三回とすべきではないか、この点についての御見解をお尋ねしたいと思います。
#284
○政府委員(平賀俊行君) 育児時間について現行一日二回各三十分と定めておりますのはいわゆる最低基準でございまして、これに対してそれを上回る育児時間を与えるということはもちろん適法でございますし、また変形労働に従事する等で、その場合に具体的にこの時間を超えて育児時間を与える必要がある、そういう配慮が必要であるという場合には、各事業所にそういう適切な配慮が加えられるように指導してまいりたいと存じます。
#285
○橋本孝一郎君 これは指導と言うんですが、通達か何か出されるんですか。
#286
○政府委員(平賀俊行君) 育児を担当する人あるいは介護等の必要がある人、特に育児に必要な時間の問題につきましては、具体的な時間を指定するということではございませんけれども、必要な配慮が加えらるべきであるということを通達したいと存じます。
#287
○橋本孝一郎君 次に、老人とか病人等の介護を要する者を持つ者について、こういう者もいわゆる適用除外にすべきではないか、変形労働時間の適用除外にすべきではないかと思うんですが、その点についての御見解をお尋ねしたいと思います。
#288
○政府委員(平賀俊行君) 法律上、そういう規定を設けるということは必ずしも適当でないと存じますけれども、この問題につきましても、老人、病人等を介護する必要がある方々につきましては、変形労働時間制の適用に際し必要な配慮がなされるよう、同じく通達を出し、指導するようにしたいと存じます。
#289
○橋本孝一郎君 それから、問題になっております事業場外労働についていろいろと既に議論があったわけですけれども、それらを十分監督していく上においても、すべて労使協定の締結とその行政官庁への届け出義務を明確にすべきではないか。そして、そういった変形といいましょうか、つまり時間外労働を把握しにくい事業場外労働の指導をしていくべきではないかと思いますけれども、労働省の御見解をお尋ねしたいと思います。
#290
○政府委員(平賀俊行君) 事業場外労働につきましては、突発的に生ずるような場合は別として、常態として行われるものについてはあらかじめ労使協定を締結しておくように指導してまいりたいと存じます。
 また、届け出につきましては、法定労働時間を超える労働時間を定める労使協定について、労働基準監督署への届け出を義務づける方向で中央労働基準審議会にお諮りしたいと存じます。
#291
○橋本孝一郎君 それは、法定労働時間を超えるものについて中央労働基準審議会へ諮るということですか、その点とうなるわけですか。
#292
○政府委員(平賀俊行君) この改正法律を施行する省令案の中にそういう規定を入れることとし、その省令を中央労働基準審議会にお諮りしたいと存じております。
#293
○橋本孝一郎君 次に、年次有給休暇でありますけれども、労働組合のあるところは問題は余りありませんけれども、特に中小企業に対する年次有給休暇というのは、国際的に見ても特に水準は下にあるわけです。したがって、中小企業への経過措置については、一つの日数をふやしていくために毎年一日ずつ引き上げていく、こういうふうな方法も一つの方法ではなかろうかと思いますけれども、そういった方法の指導並びに通達ができるのかどうか、労働省のひとつ見解をお尋ねしたいと思います。
#294
○政府委員(平賀俊行君) 年次有給休暇の最低付与日数の引き上げにつきましては、中小零細企業における年次有給休暇の現在の付与日数の実態等にかんがみ、経過措置を置かざるを得ないという状況でございますが、経過措置の期間、十日の規定が猶予される期間であっても、できるだけ本則どおりの、あるいは本則以上の年次有給休暇を付与することが望ましいことはもちろんでございまして、御意見も参考にしながら、可能な限り本則の十日に近づけるようなやり方で、中小企業であっても年次休暇の最低付与日数を引き上げていくように指導してまいりたいと存じます。
#295
○橋本孝一郎君 次はVDT労働者についてであります。この部門には多くの婦人が働いているのが実態であります。そしてまたこれからますますふえていくと予想もされますこのVDT作業について、現在の指針では、常時作業する労働者については一連続作業を一時間以内、連続作業の間に十分ないし十五分の作業休止期間を、連続作業の途中に一、二回の小休止をとるようにとしております。これは一日八時間労働を前提士しているわけでありますが、こうした業務について、変形労働で労働時間が長くなることを考えると、現在の指針の見直しをしてむしろ総量規制をすべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#296
○政府委員(平賀俊行君) VDT作業の問題につきましては、従来から専門家の方々に御検討をいただいて御質問の指針を出しているわけでございます。この作業自体まだ新しい問題でございまして、今後ともいろいろと研究、検討しなければならない場面はいろいろとあることと存じます。御指摘の状況も含め十分私どもとしても勉強し、そして、もし何らかの措置が必要ならばその際に検討をさせていただきたいと存じます。
#297
○橋本孝一郎君 最後に、今問題になっておりますこの改正法案で見送られている労働契約あるいは就業規則、賃金、退職金関係の基本的改正について、これももう既に多くの意見がこの法改正に合わせて出ておるわけであります。今回これは見送られているわけでありますが、その実施時期を含めて明確にひとつお答えを願いたいと思います。
#298
○政府委員(平賀俊行君) 御質問の労働契約あるいは就業規則等、今回御提案した問題以外の基本的な問題も含めて労働基準法に関係する事項につきましては、既に中央労働基準審議会でも建議をする際にいろいろとその問題について御議論があったところでございますが、改正法施行後できるだけ速やかに審議会に検討の場を設けて、速やかに結論を得るように努力したいと存じます。
#299
○橋本孝一郎君 終わります。
#300
○委員長(関口恵造君) 午後五時二十五分から再開することとし、休憩いたします。
   午後四時二十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時二十五分開会
#301
○委員長(関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#302
○浜本万三君 四十年ぶりの基準法の改正でございますので、きょうは総理に御出席をいただきました。
 まず最初に、若干の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
 総理は、この国会閉会と同時に国連総会に出席のため訪米する予定であると承っております。本案の審議に入る前に、若干の当面する諸課題につきまして総理の御見解をただしておきたいと思います。
 まず第一に、総理は、国連総会で二十一日には演説の機会が予定されておるようでございますが、国際場裡で何を訴えられ、国際社会での日本の役割と責任をどのように明確にされていくお考えでございましょうか、この際、明らかにしていただきたいと思います。
#303
○国務大臣(中曽根康弘君) もし国会の関係でお許しを得、また状況が許すならば、アメリカへ参りましてレーガン大統領と首脳会談並びに国連総会において日本の立場を鮮明にする演説をしてきたいと思っております。
 まだ国連総会における演説について草稿が固まっておるわけではありませんが、今の御質問に対しまして考えつくところを申し上げますと、何といっても現在一番大事なことは平和と軍縮の問題で、現在既にシュルツ国務長官とシェワルナゼ外務大臣との間でINFを中心に米ソの交渉が進みつつあるやに承っております。これは非常に大事な瞬間に今たどりつきつつあると私は見ておるのです。
 そこで、両者が大局的見地に立って核兵器を減少させ、さらにこれを地上から追放する、そういう方向への第一歩をぜひとも今度の外相会談やあるいは考えられる米ソ首脳会談で実現させたいと思うのです。
 今まで残念ながら、広島で核兵器が爆発して以来、核兵器は全人類の意思に反してふえる方向に歩んできた。減らそうという、あるいはなくそうという意思は当事者にも世界的にも非常に強いのでありますけれども、これは業の兵器だと前から言っておりますように、ふえる方向に歩んできた。今度初めてそれを逆転させて、流れを逆流に転ずる、減らす方向に進めさせる、それができるということは両者に信頼関係が醸成されるということにもなりまして、最初の一歩は小さくても必ず大きな巨歩に発展せしめ得る可能性が出てくると思いますし、そういうことがもし成功するならば、各地にある地域紛争その他についてもいい影響が必ず出てくると思うんです。
 そういう意味において、今の時点は非常に重要な時期でありますから、米ソ両方が人類的良心に立ち返って、そして官僚を抑えて、政治家の決断をもって核兵器を減らす第一歩を確実に前進せしめてもらいたい、そう思うのです。
 これが日本国民の悲願であり、私がかねて訴えてきたことであり、米ソの首脳部に対しても直接私が言ってきたところでもありますから、そういう大事なときでありますので、そのことを強く日本の主張として訴えてきたいと思いますし、必要な協力は我々としても側面からやるにやぶさかでないと考えております。
 それから、経済の問題で、世界経済、特に南北問題というものはまだ解決されておりませんし、債務累積国の問題も非常に重要な状況でございます。そういう意味において、世界経済をいかに発展させるか。日本も必要な協力を辞さない、そういう意味で先般、昨年から約三百億ドルの資金還流あるいはサハラ以南のアフリカに対して五億ドルの無償援助等を我々は実行しつつあります。それらはやはり世界経済全般を考えての処置でありまして、やはり全世界が同じような観点に立ってみんなで助け合いをやっていく。そういうことで世界経済をさらに上昇の方向へ向けるように、発展の方向に向けるように我々としてみんなで協力し合おうじゃないか、そういう点も訴えたいと思います。
 それから大事な点は、地球環境の保全でございまして、いろいろな問題がございます。酸性雨もありますし、森林の問題もございます。砂漠化の問題もございます。そのほか幾つもございますが、やはり大事な地球をみんなでもう一回さらに大事にし合う、そういう考えは非常に日本としても痛感しておるところであり、我々も率先してそれを促進し、協力してまいりたいと思っておりますが、世界的にも呼びかけてまいりたい、等々思いつくままに申し上げた次第であります。
#304
○浜本万三君 今、総理から国連で訴えたい三つの項目につきましてお話がございました。
 その一つ、米ソ間のINFの交渉が最終合意に近づきつつあることは私どもとしても大変歓迎すべきことでございます。これを機会に核戦力について思い切ったレベルダウンを図り、核廃絶に向けてさらに一歩前進させる方向に大きく歩んでもらいたい。これが全国民の願いであると存じます。
 世界唯一の被爆国として、我が国は世界に向けて核廃絶を主唱する義務と責任が総理の言われるようにあるのではないかと私も思います。しかし、難しい現在の国際関係のもとでどのようにその考え方を表明していかれるおつもりか、この点につきましてひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
#305
○国務大臣(中曽根康弘君) 平和と軍縮の問題というものは、かなり技術的な難しい要素も実はあると思います。
 平和というものは戦争のない間の谷間みたいなものなのか。二十世紀を見ていますと、二度の大きな大戦を経験し、また各地においていろいろな小さな紛争、大きな紛争等がありまして、恐らく二十世紀というものは戦争の多い世紀であったと痛感するのではないかと思います。
 二十世紀終わりになりまして、こういう二十世紀のこのような悲惨な経験を繰り返さないように二十一世紀を心がけなければならぬ。そういう意味において、二十世紀というものを分析し、反省し、指針をつくり出す大事なときに入りつつあるように思います。そういう一つとして核兵器の問題もございますが、やはりこれは何といっても相手方が信頼できるという場ができないと削減ということはできない。相手方が信頼できる場というのは何であるかといえば、検証の問題であるとかあるいは規制そのほか諸般の問題がございます。
 そういうお互いが安心して相手を信頼できるような措置を具体的に伴うことが必要なので、今回米ソ間でINFに関して交渉が進んできたというのは、その問題について両方が歩み寄ってきたということで、一番端的な例は検証の問題でございましょう。そういうような観点から、かなり技術的な難しい問題もあるのでありますが、それらを克服しつつ、さらにそういう技術的な問題を政治的判断というものによって溶解させながら前進させていく、そういうことが政治家としての立場で必要ではないかと思うのです。
 しかし、あくまで安心できる体制、相手を猜疑心を持ってながめなくてもいいという体制ができることがやはり平和を維持するもとなので、もし不幸にして、話し合いをしつつも必ずしも適切な状況でなくして、相手を疑うとか非常な不均衡状態で猜疑心が出るとかなんとかという問題が出ると、かえってそれは戦争の危険性を増す結果にもなります。そういう意味におきまして、かなり緻密な作業が現実には必要であると思います。しかし、それのみに堕しておったら前進はしないので、それを調節するのが政治家の役目である、そういう考えに立って進めていくべきであると思っております。
#306
○浜本万三君 次は、日米間の経済問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、現在日本とアメリカの間では、貿易摩擦をきっかけに、米国の貿易赤字が思うように解消しないということで、米国の議会ではいろんないら立ちがあるようでございます。米国の赤字増加の責任を一方的に日本など黒字国に転嫁いたしまして、貿易法案で報復を強化するということでは筋が通らない、私はかように思います。
 総理は今度渡米されまして、当然レーガン大統領との会談の機会がおるんではないか、かように思います。そういう点について明確にレーガン大統領ほかアメリカの首脳に日本の立場を明言していただくように私は希望いたしたいと思います。
 もう一つあわせてお尋ねするわけでございますが、現在重要な国際問題の一つは、やはりペルシャ湾の安全航行権確保の問題ではないかと思います。これまた日米首脳会談の重要なテーマの一つとなることが予想されるわけなんでございますが、総理は、アメリカ側がペルシャ湾経由の原油の最大の受益国である日本に応分の責任分担を求めてきた場合、どのように対応される考え方でございましょうか。
 情報によりますと、財政面で応分の負担をするとか、あるいは沿岸諸国への経済技術協力の強化などの間接的支援策などが浮上しておるようでありますが、それらの点についてどのようなお考えを持っておられるか、これもひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
#307
○国務大臣(中曽根康弘君) 貿易の問題につきましては、日本の貿易黒字の突出ということがやはり世界的均衡を害している、そういうふうに言われておりまして、この黒字の削減に我々も懸命の努力をしてまいりましたが、最近ようやくその成果が出てまいりまして、ここ三、四カ月の傾向を見ますと、明らかにドルベースにおいても、あるいは数量ベースにおきましてはもちろん、昨年度に比べてマイナスに転じております。そういう状況から見まして、我々の努力は奏功してきつつあるやに思います。世界的な黒字もそうですが、対米黒字もそうです。
 それから、顕著なことは製品輸入が非常にふえてまいりました。これらは、我々の努力がやはり実を結んできつつあると思います。そういうような実証的な状況を相手方にもよく説明し、我々がさらなる努力を行って、これに弾みをつけて問題解決にさらに前進していきたい、そう思っております。
 しかしまた、一方におきましては、日米間にはいろんな問題がございまして、相手側もやってもらわなきゃならぬ問題もあるわけです。例えば、アメリカ側では財政赤字の削減問題、グラム・ラドマン法というものが一体現実的にどの程度適用されているのかどうか。ことしは、アメリカは税制改革をやってかなりの税収が上がるようで、その結果、赤字は一時的に大分減るようですが、来年以降またどういうふうになる可能性があるだろうか。あるいはアメリカの生産性の問題とかいろんな問題がまた向こうにもあるわけであります。また、日米金利差の問題も先方からは言われておる問題であります。しかし、金利という問題は、経済の自然現象の反映という面もありまして、長期的に見ればそう操作しにくい要素がある。それがまた金利自由化、貿易自由化の成果でもあるわけであります。
 そういうようないろんな難しい複雑な問題がありますが、やはり大局的に立ちまして我々がベネチア・サミットで約束したこと、あるいはOECD閣僚協で約束したこと等を誠実に実行して、そうしてお互いが努力し合い、その共同の成果に向かって進むように協力し合うということでやってまいりたいと思っております。
#308
○浜本万三君 最後にお尋ねするんですが、今日我が国経済は、貿易収支における黒字が年間一千億ドルを超えるというように、文字どおり貿易大国、経済大国となったわけでありますが、国民の実生活を見ますと必ずしも経済的にも精神的にもゆとりのある豊かな生活を送っているとは残念ながら思われないのであります。
 これから論議いたします労働時間一つをとってみましても、先進諸国との間に二百時間から五百時間も差があり、長時間労働となっております。これはゆとりのある生活とは言えません。また、住宅環境を初め社会資本の整備という面でも著しく立ちおくれておるわけでございます。
 総理は、在任五カ年、各方面で意欲的に取り組まれたわけでございますが、国民生活が実質的にレベルアップしたという実感がないというのが勤労大衆の声ではないかと思います。この五年間の実績についてどのような自己採点をされておるのか、これもひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
#309
○国務大臣(中曽根康弘君) 五年間近く政治を執行さしていただきまして、その間いろいろお世話さまにもなり、御協力をいただきまして、感謝申し上げる次第でございます。
 なすことも少なく、じくじたるものでございますけれども、やはり我々の努力の目標というものは明らかであると思います。
 先ほど平和、軍縮の問題があり、また国際経済協力の問題等がございましたが、我が国の問題を見ますというと、生活の質の向上、そういう点においてこれから大いに奮闘しなければならぬと思います。
 例えば食物の価格、これはやはり国民生活に必須なものでございますけれども、外国に比べてやはり非常に高い面がある。あるいは住宅の質の問題、量的にはもう既に十分間に合ってきておるわけです。しかし、住宅の質というものを考えてみますと、規模はだんだん改善されつつありますけれども、質の向上という面にもっと我々は馬力を入れなきゃいかぬ問題もあるでしょう。あるいは今問題になっておりまする労働時間の問題、あるいは休暇の問題、こういうような問題も外国と比べてみて我々は努力しなければならぬ大きな分野であると思います。
 そういうような、外国に比べてみて予算は膨大であり、黒字も膨大ではありますけれども、まだまだ世界水準から見ると離れているところを我々は国民的合意のもとに懸命の努力をしてやっていかなければならぬと、そう思っております。
#310
○浜本万三君 労働時間に関連する問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
 ことし四月発表されましたいわゆる新前川レポートでは「必ずしもこれまでの経済成長の成果が生活の質の向上に反映されているとは言い難い」と指摘されております。その象徴として「低い居住水準、高い生計費、長い労働時間」を挙げております。そして、「政策目標としては、少なくとも一九九〇年度年間総労働時間二千時間を達成することが既に設定されているが、さらに、二〇〇〇年に向けてできるだけ早期に、」「千八百時間程度を目指すことが必要である」と強調されておるのであります。
 そこでお尋ねするわけですが、年間総労働時間二千時間というのは、実は八年前に設定された政府の目標でございます。それによりますと、昭和六十年、つまり今から二年前に達成されているはずでございます。現実にその間労働時間の短縮は進まないで、むしろやや増加の傾向さえ見られるわけでございますが、その理由について総理はどのようにお考えでございましょうか。
#311
○国務大臣(中曽根康弘君) 昭和六十五年、二千時間を目指して労働時間短縮に最大限努力してまいりたいと思います。
 やはり現在の状況というものは、二度の石油危機を受けまして経済的要因がかなりあるだろうと思うんです。会社の採算、そういうものが賃金とかあるいは勤務時間等にも影響してくる。やっぱり石油ショックというものはかなり大きなファクターをなしてきていると思いますが、それから今や脱却しつつあり、それを克服するだけの生産性とか、あるいは科学技術の発明とか、あるいは経営管理、あるいはQCの発展とか、そういういろんな面で今前進しつつあるところでありまして、ただいま申し上げた方面に向かって努力してまいるべきであると思います。
#312
○浜本万三君 数字のことですから労働大臣に一つお尋ねしておきたいと思いますが、我が国の実情は、労使の自主的努力と行政指導によっては労働時間の短縮が進まないことはこの間の経緯が実証しておると思います。したがってどうしても法的措置が必要になるわけでございますが、政府提出の労働基準法改正法案では不十分であると思います。
 例えば労働省の試算では、政府案が施行された場合の労働時間の短縮の見込みは、三年後でわずか五十時間程度でしかないということでございます。これでは年間二千時間という目標は実現されないのではないかと思いますが、労働大臣の見解を承りたいと思います。
#313
○国務大臣(平井卓志君) 昭和六十一年の年間総労働時間は、御案内のように約二千百時間でございまして、昭和六十五年度二千時間の目標を達成いたしますためには約百時間の短縮が必要であるということになります。
 一方、おっしゃいますように、今回の法改正による直接的効果だけでも三年間で約五十五時間が見込まれるわけでございますが、そのほか、法定労働時間短縮の目標を四十時間と定めるわけでございますから、これらから労使の自主的努力もこれは当然促進されるものと考えられまして、労働省といたしましても今後一層行政指導に努めてまいる考えであります。
 さらに、経済情勢から見まして所定外労働時間も縮小傾向で推移すると考えられますことも一つの理由でございまして、この目標の達成は十分に可能なものであるというふうに考えております。
#314
○浜本万三君 急激かつ大幅な円高のもとで、輸出向け製品や輸入品と競合する商品をつくっている企業の経営環境が大変悪化しております。しかし、これを労働条件にしわ寄せすればいわゆる円高悪循環に陥るのではないかと思います。このことは多くの経済学者が指摘をしておるところであります。
 例えば辻村江太郎教授は、「円高・ドル安の経済学」の中で次のようなことを申しておるわけでございます。
 日本の企業が輸出価格を上げまいと努力して、一ドル二四〇円から一六〇円まで、五〇%の円高になるまでの間に、円建ての生産コストを二〇%下げることに成功していたとすると、ドル建ての輸出価格は二〇%しか上がらず、したがって輸出数量の減少は八%にとどまる。したがって、アメリカ側が目安としていた一〇%の輸入数量減少という目標は達成されないから、一六〇円という円高でもまだ足りない、もっと円高にすることが必要だ、という結果になる。
  この例から明らかなように、輸出価格が円レートに直結している場合なら一ドル一九〇円で上げ止まるはずのものが、円高に抵抗しようとして円建てコストを下げるという企業努力が行われると、一ドル一六〇円でもまだ上げ足りない、ということになるのである。というふうに指摘をしております。
 また同教授は、「輸出価格を下げる努力の反作用として円高がさらに進むことを考慮すると、日本の企業、日本の労使は、ゴールのないマラソンを力走している憾みがある」んだという指摘があるわけなんでございますが、総理はこの点についていかように思われますか。
#315
○国務大臣(中曽根康弘君) 円高という現象に対しまして、企業競争力ということだけを今のような観点から追求しますと、おっしゃるような結果が出る可能性は非常にあると思います。しかし、円高という現象に対しましてはさまざまな方法を組み合わせて対応すべきでありまして、例えば内需の振興ということは非常に重要なファクターであります。
 最近、景気も回復してまいりまして、明らかに上昇ラインに入ってまいりました。それで、最近の統計数字を見ますというと、外需に依存した部分がぐっと減少して、それを内需で完全にカバーしている。外需に依存している部分は四%ぐらいマイナスであるけれども、内需に依存している部分が四%ぐらいプラスになっている、こういうわけで完全に内需依存型に今や転換しつつあります。そういうやり方でやれば外国との競争というのみに頼らなくもいいわけであります。
 あるいは構造調整、あるいは新しい近代的経営方法、情報、あるいは技術の改善、そういうさまざまなものの組み合わせによってこういうことは改革さるべきものでありまして、いわゆる構造改革という点が、私は最も国際的にも調和のとれた大事な仕事ではないかと思っております。
#316
○浜本万三君 労働時間の短縮は、今日重要な国民的緊急課題となっておりまして、新前川レポートも「今後中長期にわたり労働時間を着実に短縮し、我が国の経済力にふさわしいものとすることが、画期的な国民生活向上の必須の要件である」と強調しております。
 先ほども指摘いたしましたように、我が国の実情では労働時間の短縮を実現するために法的措置が不可欠ではないかと思います。しかし、政府の労働基準法改正法案の内容では、その点極めて不十分だと思います。
 まず、週四十時間制の実施時期についてですが、政府案は週四十時間制を本則に明記することはしたものの、附則により当面適用する労働時間を命令で定めることとし、週四十時間制は棚上げにされておるわけでございます。法律論上の問題もあるが、実際上の問題としても週四十時間制の実施時期を法律に明記すべきであると思います。
 我が国の企業の環境適応力は国際的にも知られていることでございまするし、実施時期があらかじめ明示されれば、事業主はこれを十分計算に入れて今後対応していくことになると思うのであります。この点、総理はいかようにお考えか、お尋ねをいたしたいと思います。
#317
○国務大臣(中曽根康弘君) 週四十時間制への移行時期については、新前川リポートの目標の実現を図るため、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行できるよう努力する考え方でおります。
 しかし、労働時間の動向は労使の努力、経済情勢等によって左右されるものでありまして、現時点で移行時期を確定的に見通すことは困難でありますので、法律に明記することは必ずしも適当でない、そのように考えておる次第であります。
#318
○浜本万三君 総理は、先日の七日の本会議場におきまして、同僚の糸久議員の質問に対しまして、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに週四十時間制に移行できるよう努力すると答弁なさいました。一九九〇年代前半と申しましても、一九九〇年から九五年まで相当幅があるわけでございます。遅くとも一九九〇年代前半の半ばである一九九三年までには四十時間制に移行すべきではないかと思いますが、この点明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
#319
○国務大臣(中曽根康弘君) ただいまおっしゃいました一九九三年というのは努力目標の一つの大事な地点である、そういうことを心得まして実現するように一生懸命努力してまいりたいと思います。
#320
○浜本万三君 週四十時間制への移行時期につきましては、本来法律に明記すべきであると考えますが、それがどうしても困難であるとするならば、せめて従来の労働時間短縮と展望の指針を見直しまして、五年後には週四十時間制、完全週休二日制に移行することを前提とした新たな時間短縮推進五カ年計画を策定してもらいたいと思います。また、この計画の周知徹底を図りつつ強力な行政指導を進めていく必要があると存じますが、いかがでございましょうか。
#321
○国務大臣(中曽根康弘君) 政府が提案をいたしまして、労働大臣以下政府が御説明申し上げました政府の考え方、衆議院でも修正を受けましたけれども、その衆議院の修正も受け入れた形で労働大臣以下政府が答弁いたしましたその計画を実現していくために、そういう中長期の計画なり方法を策定しつつ努力することは大事であると考えております。
#322
○浜本万三君 公務員の問題でございますが、公務員の土曜閉庁方式による完全週休二日制につきましても、その民間への波及効果に着目いたしまして公務先行型でこれを推進することとし、少なくとも一九九三年より前に、例えば一九九〇年にはこれを実施するよう最大限努力すべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
#323
○国務大臣(中曽根康弘君) 諸外国の状況を見ますると、我が国においても完全週休二日制を目標として努力する必要があると思います。公務員の週休二日制につきましては、当面人事院の勧告にもありまする四週六休制への円滑な移行に努める所存でございます。
 なお、言われておりまする閉庁方式の導入についても、総務庁を中心に現在検討しておる最中でございます。
#324
○浜本万三君 七日の本会議代表質問も含め、我が党といたしましてはこれまで糸久委員、千葉委員、それから私が政府提出の労働基準法改正法案をめぐりまして質問をしてまいりました、これらの質疑を踏まえまして、以下総理に対しまして確認答弁を求めておきたいと思います。これまでも労働大臣から相当明確な答弁をいただいておりますが、総理から答弁をいただければさらに重みがあると思いますので、そういう意味で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、当面の週法定労働時間の問題でございますが、改正法施行当初は週四十六時間とするものの、三年後を目途にできるだけ速やかに四十四時間制に移行させるということでございますが、間違いございませんか。
#325
○国務大臣(中曽根康弘君) 本会議におきまして答弁申し上げたとおり、当面の法定労働時間については週四十六時間といたしますが、改正法施行後三年を目途にできるだけ速やかに週四十四時間とする所存でございます。
#326
○浜本万三君 週法定労働時間の適用猶予措置につきましては、その対象事業場の範囲をできるだけ限定すべきだと思いますが、いかがですか。
#327
○国務大臣(中曽根康弘君) 御指摘のとおり、適用を猶予される事業場の範囲につきましてはできるだけ限定する所存でおります。
#328
○浜本万三君 週四十時間制をできる限り速やかに実施するためには、下請企業の保護のための施策を強化しつつ、中小企業に対し金融、税制上の優遇措置を含む経済的援助措置を講ずる必要があると存じますが、この点につきましても最大限の努力を払ってほしいと思いますが、いかがですか。
#329
○国務大臣(中曽根康弘君) 同感でございます。
 中小企業の労働時間短縮のための条件としては、中小企業の経営基盤の強化、生産性の向上が不可欠でございます。政府としては、中小企業の経営基盤の強化及び技術力の向上、情報化への対応、人材養成の強化等による中小企業の生産性の向上を図る見地から、金融、税制上の措置等を含む各種の施策を講じておりますし、今後も努力してまいりたいと思っております。
 また、特に下請中小企業対策といたしましては、下請取引の適正化に引き続き努力するとともに、六十二年度において新分野進出等のための技術開発助成及び低利融資制度の創設等の措置を講じております。
 こうした中小企業施策の推進を通じまして、労働時間短縮を含め中小企業における労働条件の向上が図られると期待し、努力してまいりたいと思います。
#330
○浜本万三君 三カ月単位の変形労働時間制につきましては、一日十時間、一週四十八時間の上限規制を設けるとともに一週間に一日は休日を与えなければならないこととすべきであると思いますが、いかがでございますか。
#331
○国務大臣(中曽根康弘君) 三カ月単位の変形労働時間制の一日、一週等の上限につきましては、一日の上限を十時間とすることを前提にさらに検討してまいりたいと思っております。
#332
○浜本万三君 変形労働時間制につきましては、妊産婦を適用除外とすることは当然のことだと思います。加えて、育児、介護等の家族的責任を有する労働者や勤労学生など、特別の事情のある者につきましては省令で事業主に対し、これを導入するに当たっては十分配慮する義務を負わせる必要があると思いますが、いかがでございましょうか。
#333
○国務大臣(中曽根康弘君) 育児担当者、介護の責任を有する者、勤労学生等につきましては、変形労働時間制の適用に際して必要な配慮がなされるよう措置してまいる所存でおります。
#334
○浜本万三君 一カ月単位の変形労働時間制につきましては、事業主が就業規則で定めればこれを導入できることになっておりますが、これにつきましても、労使協定の締結及び行政官庁への届け出を義務づける必要があります。今回はこれらの措置を見送られたとしても、せめて三年後に改正法の見直しが行われる場合には再検討すべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
#335
○国務大臣(中曽根康弘君) 一カ月単位の変形労働時間制については、乱用されることがないよう十分指導いたしますとともに、三年後の見直し時期までに実態を調査し、規制の要否、その方法等につきまして検討する所存でございます。
#336
○浜本万三君 年次有給休暇の最低付与日数につきましては、四から六労働週という欧米諸国並みの水準、少なくとも三労働週以上というILO条約の水準への引き上げについて引き続き積極的に検討するとともに、改正法による猶予適用措置につきましては、その対象事業場に対し、猶予期間中であってもできる限り本則どおりの日数を付与するよう指導すべきであると思いますが、いかがでございますか。
#337
○国務大臣(中曽根康弘君) 年次有給休暇につきましては、今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考にさらに付与日数の増化を図ることを検討する所存でございます。
 また、年次有給休暇の最低付与日数の引き上げに関しまして、適用猶予期間中の事業につきましても可能な限り本則の日数が付与されるよう指導する所存でございます。
#338
○浜本万三君 時間外・休日労働につきましては、欧米諸国のように上限規制や高率の賃金割り増し率を設定するなどの規制措置が必要だと思います。今回は時間外・休日労働の法的規制が見送られたとしても、当面はその適正化のための行政指導に努めるとともに、その結果いかんにつきましては法的規制に踏み切るべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
 また、労働基準法違反が後を絶たない状況がございますが、指導監督に当たる労働基準監督官が欧米諸国に比べ圧倒的に少ないことも問題があると思います。労働基準法の履行の確保また労働時間短縮の一層の促進を図るため、労働基準監督官等の増員を初め、労働基準行政の体制の充実強化を図るべきだと思いますが、いかがでございましょうか、あわせて御質問をいたします。
#339
○国務大臣(中曽根康弘君) 時間外労働の規制につきましては、時間外労働協定締結の指針に年間の時間外労働時間数の目安を加える等その見直しを行い、その遵守の徹底に努めるとともに、引き続き有効な規制方法について検討してまいる所存でおります。
 なお、労働基準行政の問題でございますが、現下における労働時間短縮の重要性にかんがみ、今回の改正による新しい法制度の適正な運用が確保されるよう、厳しい行財政事情を踏まえつつ労働基準行政体制の充実について努力してまいる所存でおります。
#340
○浜本万三君 時間ですから終わります。
#341
○中西珠子君 ただいま議題になっております労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、総理に御質問させていただきます。
 今回の労働基準法改正案で導入されることになっております変形労働時間制やみなし労働時間制は、使用者側にとっては残業手当の節約になるかもしれませんが、労働者側にとっては収入減となることは明らかであります。残業が恒常化して残業手当というものが生活費のかなりの部分を占めている労働者の家計にとっては、それは大きな痛手となるわけでございます。
 労働時間の短縮が賃金の減少を伴わないようにということは、ILOの条約にも勧告にも明記してあることでございますが、この点についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 それから、日本の賃金体系は非常に基本給が低くて手当の比重が大きい、そういうところからもやはり時間外労働の手当というものをどうしても当てにする、依存しなければならないという状況もできてくるわけでございますが、これからは労働時間短縮に伴いまして日本の賃金体系の改善というものが必要ではないかと思います。基本給をもっと高くしていくという面が非常に必要になってくるのではないかと思いますが、この点に関しても総理の御見解をお伺いしたいと思います。
#342
○国務大臣(中曽根康弘君) 我が国におきましては、雇用調整を時間外労働の増減で行う慣行があるため、時間外労働時間がある程度長目になることは現実として避けられない情勢でございます。しかしそれだけでなく、恒常的な時間外労働が一部の産業、企業に見られるのも事実でありまして、それが時間外労働手当に対する依存を生み、時間外労働を減らすことを困難にしている面もありますが、こうした悪循環は労使が十分話し合って断ち切ることが必要であると思います。
#343
○中西珠子君 今度の労働基準法改正案におきましては、非常に労使協定による措置が拡大されております。労使協定にゆだねるというのが非常にたくさんございまして、三カ月単位の変形労働時間制だとか非定型的一週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、それから事業場外の労働のみなし労働時間制、それから裁量労働の範囲、また労働時間の算定などをみなし労働時間制にするための労使協定、フレックスタイム制の導入、また時間外労働の規制の手続につきましては既に三六協定というものがあるわけですけれども、年次有給休暇の計画的付与についても労使協定というのを新たに導入されるということでございまして、その労使協定というものが適正に結ばれるという保障、また個々の労働者というものがきちんと意見を聞かれてそして保護される、また個々の労働者の権利も軽視されないという保障はどこにもないわけでございますが、私はまだ産業民主主義が成熟していない日本の現状を見ますと、労使協定による措置を大幅に拡大されて、そして新しい制度のほとんどを労使協定にゆだねていらっしゃるということは、どうも労使自治に名をかりた個別的労働者の権利の軽視になり、保護の後退になるのではないかと非常に懸念するわけでございます。総理は、日本の労使関係の実態をどのように把握していらっしゃるのでしょうか、お伺いいたします。
#344
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の労働組合の組織率は第三次産業の拡大等、産業やあるいは就業構造の変化や労働者の意識の変化によりまして低下している傾向にあります。しかし、労働組合のある事業場におきましては労使双方の努力により良好で安定した労使関係が維持されております。また労働組合のない事業場におきましても、従業員と経営者の間には良好なコミュニケーションが持たれているのが通常と承知しております。
 したがいまして、労働組合がない事業場におきましても労働者代表が適切に選出されないとは必ずしも言えないと考えますが、いずれにしても各種労使協定の締結当事者である労働者代表の選出については、労働者の意思が適正に反映されるよう指導してまいる所存でございます。
 御指摘の、何でも労使協定を基礎にしてということで、これは逃げを張っているんではないかという御質問の御趣旨かと存じますが、やはり何といっても組合と経営者との話し合いというものが関係の基準でございまして、その上に立ちながら労使関係を適切に反映さしていくということが大事ではないかと思います。
 国家といたしましては、最低限のものだけは保障していくし、その最低限の水準というものは、時代の進展、国際情勢との順応という面から見まして、一歩一歩それを格上げしつつ努力してきておるところでございます。今後も我々はそういうような考えに立ちまして、いわゆる前川リポートが示している線に沿いまして、一歩一歩努力し続けてまいりたいと思っております。
#345
○中西珠子君 労働者代者の資格要件とか、また労働者代表が民主的に選出される手続、そしてまた労働者代表が従業員の意思をきちっと聴取していく、そしてそれを代表していくという、そういう保障が法的にやはりなされるべきだと考えるわけでございますが、指導をする、通達を出すとおっしゃいましても、なかなかそれは実効性の上がるものではございませんで、やはり法的な措置が必要と思うわけでございますが、いかがでしょうか。
#346
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、まさに組合員の皆様やあるいはそこでお働きになっている皆様方が民主的に自主的にお決めになることで、上から干渉すべき性格のものではないと思うのでございます。そういうまた環境が生まれるように労使関係を維持していくということも、今度は経営者側としては心がけなければならぬ面でもあると思います。
 そういう考えに立ちまして、自主的に適切に代表が生まれるように措置していくべきであり、また労働省といたしましてもそういう環境をつくるように指導していくということが大事であると考えております。
#347
○中西珠子君 労働組合があるところは心配はないと思うんですけれども、圧倒的に未組織の事業場の多い日本におきましてはやはり何らかの保障というものが必要ではないかと思うわけでございます。
 次に、時間外労働規制についてお聞きいたしますが、先ほど社会党の浜本委員からの御質問に答えて、大いに指針も改めて指導していくというお話でございましたけれども、やはり時間外労働の長さ、残業が恒常化しているという状況が、年休の取得率も低く、また年休の最低付与日数も低いという日本においては長時間労働の原因となっているということが言えるのではないかと思うのでございます。
 女子労働者につきましては、一昨年の男女雇用機会均等法の制定に伴いまして労働基準法が改正されまして、女子労働者の時間外労働、休日労働、深夜業の規制が緩和されました。それに伴いましていろいろな問題も起きてはおりますけれども、一応規制は存続しているわけでございます。ところが、男子の労働者に関しましては、危険有害業務については残業規制がございますが、三六協定さえ結べばそのほかの一般の労働者につきましては幾らでも残業させられる状況にあるわけでございます。そして、いろいろ残業から来る弊害というものも起きているわけでございますが、男子労働者についてもやはり時間外労働の法的規制が必要だと、せめて女子並みの法的規制は必要であると考えるわけでございますが、総理はどのような御意見でいらっしゃいますか、お伺いいたします。
#348
○国務大臣(中曽根康弘君) 労働時間の短縮を実効あらしめるためには、時間外労働時間の縮減も重要な問題であると考えておりますが、我が国の雇用慣行のもとにおいては、雇用調整を時間外労働時間の増減で行うことにより、労働者の雇用の安定が図られていることも事実であります。とともに、時間外労働時間の実態も業種等でかなりの差異がありまして、時間外労働時間の上限を法律で一律に規制することは少なくとも現状においては適当ではなく、労使の自主的努力により時間外労働時間の削減を図ることが適当であると思います。
 このような見地から、労働省では景気の変動にかかわりのない恒常的な長時間労働を改善するため、労使が締結する三六協定で定める時間外労働の限度に関し、目安を設けまして行政指導を行っているところでございます。
#349
○中西珠子君 労働基準法の改正案では週四十時間制をうたっておりますけれども、週四十時間制の実施の時期はいまだに明確ではございません。本会議の私の質問に対しましても総理はお答えになりましたけれども、いまだに明確ではないということは、国際国家日本を標榜なすっている総理としては、国際協調の上からも問題がないとお考えでいらっしゃいますのかどうか。
 それから、週四十時間の移行措置が非常に緩慢でございまして、全事業場の〇・一五%にすぎない三百人以上の事業場では週四十六時間でスタートし、九九・八五%を占めている三百人以下の事業場におきましては猶予期間を置いているわけでございます。猶予期間を置く対象というのは、やはりもっと厳しく業種と規模の上で限定すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 それから、中小企業に対する配慮というのはもちろん非常に必要なことだとは思いますけれども、中小企業の時間短縮が容易になるような環境づくりが必要で、税制面、金融面、下請保護の面からやはり指導、そして援助を与えて、労働時間の短縮が促進され、週四十時間制の実現が一日も早くなるような環境づくりをしていく必要があると思いますが、御見解を伺います。
#350
○国務大臣(中曽根康弘君) 週四十時間労働制につきましては、我々の努力目標について、既に大臣や私からも先ほど来お答えしたとおりで、やはり一歩一歩着実に前進しつつ、いろいろな中小企業そのほかに対する配慮も行って、摩擦なくできるだけ円滑に行うように努力していきたいと思っておるところでございます。
 中小企業の労働時間短縮のための条件としては、中小企業の経営基盤の強化、生産性の向上が不可欠でございまして、先ほど来申し上げましたように、経営基盤の強化、技術力の向上、情報化への対応、人材養成の強化等による中小企業の生産性の向上を図る見地から、金融や税制上の措置を含む各種の施策を講じておるところでございます。中小企業施策の推進を通じまして、労働時間短縮も含め中小企業における労働条件の向上が図られることを期待し、今後も努力してまいる所存でございます。
#351
○中西珠子君 労働基準法の改正と、総理が御主張になっています戦後政治の総決算との関係についてお聞きしたいと思うわけでございます。
 技術革新の進展、経済社会情勢の変化に伴って起きてくる問題に対処して、労働者の健康と生活を守るということが労働者保護立法としての労働基準法の目的であり、また労働省の使命なのではないかと思っているわけでございますけれども、今回の労働基準法の改正案は、労働者の生存権と勤労権を尊重し、基本的人権を守り、労働者とその家族が健康で文化的な生活ができるように労働条件の最低基準を決めていくという労働基準法の本来の目的、また個別的労働者の保護という基準法の性格というものを弱めることになっているのではないかと私は大変危惧するわけでございます。
 経済社会情勢が変わってきても、技術革新がどんどん進んでも労働者の健康を守らなければいけない、労働者の保護を考えなければいけないという基本の理念は同じであるわけでございますけれども、どうも今回の労働基準法の改正案というものを考えますと、いろいろ心配なことが起きてくるわけでございます。むしろ労働者保護の目的というものが弱められてしまう、達成ができなくなってしまうのではないかという危惧があるわけでございますけれども、これは総理がふだん御主張になっております戦後政治の総決算の一環としてなさるわけでございましょうか、いかがでございますか。お聞きしたいと思います。
#352
○国務大臣(中曽根康弘君) やはり戦後の時代の変化に即応いたしまして、停滞ぎみな労働時間の問題というものを打破する、そういう意味におきまして今回労働基準法の改正というものをお願いしておるわけでございます。必ずしも内容について十分御満足を得られないのは残念でございますけれども、しかし内外の情勢を考えまして、国民的合意をできるだけ得つつ着実に前進するという意味におきましては、一歩前進、二歩前進というところをぜひお認め願いたいと思うのでございます。
 戦後政治の総決算との関係いかんと言われますが、明らかにこれは戦後政治の改革の一つではあると確信いたしております。
#353
○中西珠子君 終わります。どうもありがとうございました。
#354
○内藤功君 労働時間と休暇の問題は、これは一つは日本の数千万の働く人たち、労働者の自身の生活、健康の問題である。また、その家族の人たちの問題でもあります。それから、日本のやはり文化、余暇というものがなければ文化というのは発展しませんから、それから民主主義のやっぱり基礎になると思うんですね。
 労働基準法の立案に当たり、本院議員もおやりになった寺本広作さんは、この基準法について、
  民主主義を支へるものは窮極において国民一人一人の教養である。国民の大多数を占める労働者に余暇を保障し、必要な物質生活の基礎を保障することは、その教養を高めるための前提要件である。
  労働基準法は労働者に最低限度の文化生活を営むために必要な労働条件を保障することによってかうした要件を充たし、我が国における民主主義の根底を培はんとする処にその政治的な制定理由を持つ。ということを当時言っておられるわけであります。
 この面と、もう一つは、やはりILO条約を中心に約二世紀近くにわたってつくられた国際的な労働常識、労働基準といいますか、そういうものに日本がやはりおくれないように、その先進国の水準にはついていくということの二つのことが今日本の政治にかけられた問題じゃないかと、私は考察する次第であります。
 まず総理に、この労働時間問題、休暇問題についての基本的なお考えの姿勢というものを伺いたいと思います。
#355
○国務大臣(中曽根康弘君) 基本的には、内藤さんのお考えで結構であると思います。
#356
○内藤功君 そこでお伺いするんですが、本法案については私どもは反対をする。同時に、反対だけじゃなくて、本当にこういう方向で行くんだという抜本的な修正案を出すという立場でやっているわけです。
 そこで、私はこの間総理に本会議でお聞きしたんだけれども、八時間労働制というけれども、いろんな変形労働時間制だとか、フレックスタイムだとか、労働時間のみなし制だとが入ってきちゃっているんです。それでしかも、三十二条の冒頭にあった一日八時間を超えちゃいけないというのは第二項に押しやられているでしょう。そういうのを見て、八時間労働制というのは崩されているんじゃないかということを聞いたんです。私は崩されているという答えが来ると思った。ところが総理は、崩されていませんというお答えであります。私だけじゃありません、日本経済新聞も八月二日の社説で、一日の労働時間八時間というのは揺らぐことになると言っていますから、私だけの独断じゃないと思うんですね。
 総理、どういう点でこの八時間労働制というのは崩れていないとおっしゃったんでしょうか。本会議でもう一問聞こうと思ったけれども、本会議では聞けないから、ここであなたのお考えを聞きたいと思うんです。
#357
○国務大臣(中曽根康弘君) 今回の改正におきましても、一日の法定労働時間は八時間と厳然としておりまして、八時間労働制の原則は崩れてはおりません。
 ただ、最近日本の社会経済生活の変化、特に労働基準法制定当時に比しまして、第三次産業の占める割合が著しく増大している等の大きな変化がございまして、それらに対応するとともに、労使の工夫によって労働時間短縮を進めやすくすると、そういう意味の行為もあるわけでございます。やはり八時間労働制というものが厳然として基礎にありまして、そうしてそれを中心にしつつ弾力的に今それに対する対応の方策をいろいろ考えた、社会の実情に合うように我々はいろいろ措置したと、そういうことであるとお考え願いたいと思うのです。
#358
○内藤功君 要するに、条文にまだ残っていると、私は首の友一枚で残っているという感じなんですね。しかし総理はそれを一つの根拠にしている。
 それから三次産業の変遷に伴うと言われましたが、産業構造は変わっているんだけれども、八時間働いて、八時間寝て、それで八時間は自由な時間にするという人間本来の、人間というものの生理、生活、リズムというものは十九世紀も今も私は変わらぬと思うんですね。そのことを申し上げておきたいんです。
 時間がないので次の質問に入りますが、それは四十時間問題なんです。先ほどからお話がありますが、四十時間というものは、三十二条一項だけ見ると日本ももう四十時間の国になったかと思う。ところが一般の人が見にくいところの、非常に発見しがたい後の方の百三十一条というところに、「命令で定める時間」と読みかえるというふうになっているんですよ。細かい議論を総理にして申しわけないが、大事なところです。
 そして、政令で四十六時間にする、三百人以下は四十八時間ですね。私はこれは人をして誤解せしむる、上品に言えば誤解せしめやすい、複雑難解にして誤解をせしめやすい条文だと思うんです。
 私は法律をつくる者は、これは細かい議論じゃありません、はっきりわかりやすく、日本は四十六時間しかいけないんだと、四十六時間でいくと、三百人以下は四十八時間だとなぜ書けないのか。何で持って回って今すぐできもしない四十時間を書いたのかというのは非常に問題だと思いますね。
 それで、これについてどうしてこういうふうになったのか。もう一つは、総理はよく段階的実施ということを言われるんですが、段階的実施というのは、ILOの百十六号勧告第八項というところを見ますと、「時間的間隔を置いて段階的に短縮する」ということだとうたわれておりますよ。したがって、当分の間というような決め方だとか、それから総理も一生懸命努力して言っているんだろうけれども、一九九三年という気の遠くなるような時期ですね。内閣だって幾つかわるかわかりませんよ。選挙だって何回やるかわかりませんよ。そういうときの目標ということで、これは労働時間の目標を決めたとか段階的実施とは私は言えないと思う。
 アメリカへ行ってお聞きになればわかりますが、アメリカではそういうのは段階的実施とは言わない。一九三八年アメリカの公正労働基準法ができたとき、これは四十時間を目標にした。最初の一年は四十四時間、次の年に四十二時間、三年目に四十時間にするとはっきり公正労働基準法は書いて、やったというのでありますから、この条項は四十時間の目標を法文に決めていない以上、段階的実施と言うには余りにも恥ずかしいものだ。これは国際労働法の常識だというふうに私は理解をしているんですが、総理いかがですか。わからなければこれは労働大臣でもいいです。
#359
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は見解の相違ですね。やはり週四十時間労働というものを厳然として根本に据えておるので、そこに至るまでの経過的措置として政令その他で弾力的に適応さしていこう。それで四十八時間から四十六時間、それから四十四時間、そして四十時間、そういうコースを決めておる。
 そういうふうにしながら日本の社会になじみやすく、そしてしかも脱法行為が行われないようにスムーズに行わさしていく、中小企業の面倒も見ながら考えていく、それがやはり政治として穏当なやり方なので、やはり国により地域によりみんな基礎が違い条件が違うわけです。
 アメリカはアメリカの社会、日本は日本の社会、東洋は東洋、共産圏は共産圏、共産圏のソ連や中国が何時間労働をどういうふうにしているか、変形労働時間というものをどういうふうにしているか知悉はしておりませんが、やはりみんなその国その国によって条件があるのではないかと、そう思っております。
 ただし、日本としてはこれだけの国際国家でございますから、ILOの示している基準にできるだけ精いっぱいの努力をして近づけていく、これは忘れてはならぬことであると思っております。
#360
○内藤功君 今のお話を聞いていますと、一つ総理、論理の飛躍があるのは、四十時間にいつするかというのがこの法律のどこにもないんですね。ですから、これは段階的実施じゃないんです。四十四までなんですね。それから先は吉として行方がわからないという法律だというところに私は問題があると指摘しておるわけであります。
 そこで、総理は近くアメリカにいらっしゃる、韓国にもいらっしゃる、こういうふうになかなか政権末期といえども精力的にというふうに新聞には報道されておりますね。
 そこで、私は思うんですが、アメリカに行った場合でもヨーロッパに行かれた場合でも、四十時間労働を決めたけれども、実際は今四十六時間なんだと、恥ずかしいけれども。四十時間にいくのはいつだか法律に決めていないんだと、わからないんだということを、やっぱり総理は正直な方だから国際場裏でおっしゃるでしょう。しかし、日本の政府の中にはあるいは日本の一部には、日本は四十時間になった、近くなるということを言っている人がいるんですね。これは正確にやはり本当の今の時間改正はこういうものだということを言わなきゃならぬと思いますが、それはお認めになるでしょうね。
#361
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は韓国に行くというのは聞いたことないんですが、共産党の情報は間違っているんじゃないですか。
 それから、今の労働時間の問題は先ほど来お答えしたとおりでありまして、ちゃんとはしご段はつくっておるわけであり、それはまた政令というものによって社会経済情勢を勘案しながら、特にまた、労使関係の状況というものを大事にしながら我々は考えていきたいと、そう思っておるわけであります。
#362
○内藤功君 韓国は訂正します。
 それで、我が国のこの新聞、放送、印刷、広告、出版の労働組合の人は非常に心配しまして、八月二十日付のニューヨーク・タイムズ、次いで九月十日付のイギリスのガーディアン紙に意見広告を載せたんですよ、約半ページぐらいの、ここに持っていますけれどもね。そうしてこの中で、日本の今の労働基準法というのは週四十時間と言っているけれども、実際はこういうものだということを書いてある、これはガーディアンであります。特に、ニューヨーク・タイムズは他の議員がやりましたが、ガーディアンの場合は九月十日に意見広告を出しましたところ、イギリスで大変な反響なんですね、こんなことなのかと。十二日の夜のあるテレビで、日本でも、インタビューをやっている労働者が、日本の労働基準法というのはまだ四十八時間で、それがしばらく続くのかと言って驚いておるということです。
 デンマークの労働組合からも、この運動をやっている、意見広告をやっている新聞の労働組合のところに、大変驚いた、詳しい労働基準法の資料を送ってくれという手紙が来ておるというような状況であります。これは国際問題でありますから非常に大きな問題だと思いますね。
 次に、女子労働者の問題なんです。
 私は、本会議でも聞きましたけれども、やはりこの労働基準法の案が出されましてから、男の労働者もそうですが、特に女子労働者がいろんな労働組合の考え方、理念を乗り越えてやっぱり大きな運動になってきているんですね。これはやはり、家事、育児の責任が事実上日本の社会で多くかかっているという方がこの三カ月の変形労働制なんかになったら大変だということだと思います。
 きょうは時間がないんで全部紹介できませんが、ここに私は新日本婦人の会の東京都本部と神奈川県本部が最近調べたアンケートを持っているんですよ。これを見ますと、東京の都内九十七企業で働く万五百七十八人からアンケートをとっているんですね。九二%がフルタイマー、一般事務の方、看護婦さん、製造業技術者、保母さんに電話交換手、教師に編集の関係の方、オペレーター、タイピストと、大体三十代、四十代の方で小、中、高校生を持つ御家庭の方ですね。そして、通勤時間が一時間、こういう方に対して残業のことを聞いたところが四三%の人がみんな残業で苦しんでいる。月に十時間以上が二〇%、三十時間から六〇%。これが、こういう人もいるというような統計ですね。神奈川県の方でも同じような統計ですね。
 現状でもそういうところへ持ってきて、この三カ月の変形労働時間制があったら大変だと。いろいろさっきから配慮する、あるいはというお話がございますけれども、配慮じゃやっぱり、いい経営者ならいいですよ、言うこと聞かない人もいますからね。これはやっぱり法律でもってきちんとしなきゃならぬ。
 日本共産党は修正案で、だから、そういう問題を起こす三カ月の変形労働制などというものは入れないで、それで現行法の残業時間というものの上限を規制していく、こういう案を出しておるわけであります。
 この問題、本会議でも聞きましたが、そういう女子労働者の今の運動、要求というものについての総理のお考えをここで承っておきたいと思うんです。
#363
○国務大臣(中曽根康弘君) 女子労働者についてはやはりいろいろ我々も配慮もしておりますし、妊産婦はもとより、先ほど来申し上げましたように、育児の問題あるいは寝たきり介護あるいはさらに学生の問題もございましょう。大体女性が多いわけですね、そういうような問題。そういうさまざまな問題についてはしかるべき配慮を行ってやっておるわけなのであります。
#364
○内藤功君 配慮ということは、これは保障にならぬということを私は委員会でも申し上げたわけであります。
 最後に私が伺いたいのは、この日本の、やはり世界で有名な超長時間労働と言われているものの重要なる一因は、この時間外労働というものが法制上野放したということなんであります。これについて先ほど総理は、中西委員の質問に対しまして、現在の通達で月あるいは週の残業時間の目安時間、これを決めて指導しておるからということを言われました。確かにそういう通達があるんですね。昭和五十七年六月三十日告示六十九号というのがここにあります。ありますが、この欠陥はどこにあるかというと、一つは、人間の健康に一番大事な一日の上限がない。もう一つは、これは目安であって、目安というのは下でもいいし上でもいいということなんです。そうじゃなくて上限でなくちゃいけない。これが根本的な欠陥なんです。私は中基審を含めて、こういうものについて積極的な提言がなかったというのは国際常識からいっておかしいと思うんです。
 というのは、ILO一号条約、三十号条約、百十六号勧告とすべて言っていますよ、超過勤務時間の最大限度、これを決めろとちゃんと書いてあるわけなんですよ。私はここにどうしてもその上限規制が必要だと思うんです。
 これは総理、労働省、ごらんになったことありますか。「脳・心臓疾患の労災補償」という分厚い本で、九十六件の脳・心臓関係で亡くなった方の労災認定が行われたケースを収録しております。これを見ますと、本当に長時間の労働、残業の集積、これが疲労の蓄積になって死に至る、こういう深刻な例をたくさん持っています。私はこれを何度か読んで、本当に労働基準法というものは時間短縮は緊急の問題だ、しかも上限を抑えるということがどうしても必要だと。これはお考え直していただきたい。これは法律で定めるということの方向にお考え直していただきたいということを私は最後に御質問を申し上げたいと思うんです。いかがでしょう。
#365
○国務大臣(中曽根康弘君) 時間外労働の規制につきましては、労使が締結する時間外労働協定締結の指針に年間の時間外労働時間の目安を加える等その見直しを行い、その遵守の徹底に努めておるとともに、引き続き有効な規制方法について検討する所存でございます。
#366
○橋本孝一郎君 私は、最後に一つだけ意見を申し上げて総理の御所見を伺いたいと思います。
 労働時間短縮というのは、先ほど総理もおっしゃいましたように、現在日本が進めていかなきゃならない経済構造調整のいわゆる大きな目標の一つだと思います。そのほかにおいても、先ほどおっしゃいましたように、低い居住水準の解消、これには社会資本の充実あるいは住宅問題、土地問題――土地問題についてはもうまさに政治の最も今までおくれておった部分であったと私は思います。
 さらに二番目は、高い生計費、日本の場合には世界に比較して、米においてもそうでありまするし、その他肉等日常の生計費が非常に高い、したがって、輸入の拡大あるいは規制の緩和、これらの政策によって解消していかなきゃならないと思います。
 三つ目は、私はやはり長い労働時間の解消、新前川レポートでも言われておりますように、千八百時間への二十一世紀に向かっての短縮、これはもうまさに人生八十年時代に入りましてゆとりのある生活をしていく上においてもぜひもっともっと早くこれが進められなきゃならない問題であると思います。
 このいずれもが最も大きな今政治目標、構造を調整していく目標だと思います。ところが、労働時間というとややもすると職場の労働条件の問題にとらわれがちでありまするし、今言ったように、目標からいえばそればかりではないわけでありまして、国民生活のあり方にかかわる問題だと思います。したがって、経営者、労働者はもとより、国民全体の私はむしろ意識の変革というんでしょうか、変革を国民合意として形成していかないとこれはなかなか進まないであろうと思います。
 したがって、そういう国民合意を形成していくために労使はもちろん、労使トップを含めてもちろんでありますけれども、各界を網羅した仮称でありますけれども時短の国民推進会議といったようなものをつくって、そして意識の変革、そしてムードをつくり上げていくという、そういう必要があるんじゃないかと思いますけれども、総理の御所見をお尋ねしたいと思います。
#367
○国務大臣(中曽根康弘君) 確かに橋本さんがおっしゃいますように、時短、労働時間というような問題は、これは職場の問題であると同時にまた労使の問題でありましょうが、それと同時にやはり日本人の生きざまの問題であり、あるいは日本文化というものにもまた関係してくる大局的な観点も必要であると、私今お聞きしまして感じたところでございます。今回の法改正は、そういうような意識も多少持ってやったものでございまして、今や官民を挙げて努力すべき国民的課題であると認識いたしております。
 この法案が目標としている週四十時間労働制の実現に向けての方策等に関しまして、国民的コンセンサスを得るために、御提案のようにハイレベルの労使その他の関係者の会議を設けることは大変有意義なことであると考えます。改正法案が成立した場合には、その具体化について労働省に検討をさせたいと思います。
#368
○橋本孝一郎君 ぜひその方向で、中央はもちろんでありますけれども地方も含めて、いわゆる国民全体としての運動に盛り上がっていくようにひとつ御検討をお願い申し上げまして質問を終わります。
#369
○委員長(関口恵造君) 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
 労働基準法の一部を改正する法律案の修正について佐々木石及び内藤君からそれぞれ発言を求められておりますので、この際、順次これを許します。佐々木君。
#370
○佐々木満君 私は自由民主党を代表いたしまして、労働基準法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。
 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
 まず第一に、いわゆる変形労働時間制についてであります。これにつきましては、使用者は、妊産婦の請求があった場合には、一週及び一日の法定労働時間を超えて労働させてはならないものとすることであります。
 第二は、週の法定労働時間を定める政令は、週四十時間労働制に可及的速やかに移行するため、制定され、また改正されるものであることを明確にすることであります。
 第三に、使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないものとすることであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#371
○委員長(関口恵造君) 内藤君。
#372
○内藤功君 私は日本共産党を代表して、労働基準法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。
 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
 これより、その趣旨について御説明申し上げます。
 政府案は、現行労働基準法の根幹である一日八時間労働制を破壊し、変形労働時間制、みなし労働の導入など企業の都合に合わせて労働時間を自由自在に伸縮できるようにするものです。これは、八時間を超えて何時間働かせても時間外手当を支払う必要がなくなるという資本、企業のための改悪であると言わなければなりません。
 このような労働基準法の改悪は、労働者の健康と家庭生活を破壊し、特に婦人労働者の働く機会と権利を奪うものです。
 よって、現行の八時間労働制を厳守し、これを根本から崩す変形労働時間制、みなし労働の導入条項を全面削除し、一週の所定労働時間を四十時間と定め、週休二日制を原則とすることが修正案の第一です。
 第二に、労働時間の短縮を行うためには、我が国の超長時間労働の原因になっている時間外労働を規制しなければなりません。時間外労働について一日二時間、年間百二十時間の上限を定め、割り増し賃率を欧米各国並みに大幅に引き上げることとしています。
 第三に、深夜交代制労働は、公共性、公益性を有し、あるいは生産技術上真にやむを得ないものとして定める場合を除き、原則として禁止したことです。
 第四に、年次有給休暇は労働者の請求する時期に自由に取得できるものとし、最低付与日数を二十日としたことです。また、就職初年度やパート労働者への比例付与ができるようにするとともに、労働基準法上の年休の権利行使に対する不利益取り扱いを禁止したことです。
 第五に、VDT、コンベヤー作業などの過密労働を規制するために国が作業の基準を定め、その実行を企業に義務づけるようにしたことです。
 第六に、労使協定の締結当事者の選出手続の民主化を定め、管理監督者以外の者から直接選挙によって選出するようにしたことです。
 第七に、使用者が、労働時間の短縮に当たって賃金の引き下げを行ってはならないことを法文上明記したことです。
 第八に、労働時間短縮に伴う中小企業経営への影響を配慮し、必要な助成を行うこととしたことです。
 以上が本修正案の内容であります。この修正案の実現こそ、真の労働時間短縮を進める確かな保障です。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#373
○委員長(関口恵造君) これより原案並びに両修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#374
○千葉景子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、政府提出の労働基準法の一部を改正する法律案及び両修正案につきまして反対の立場で討論を行います。
 我が国は今、国民生活の質の画期的な向上を目指して、経済社会全体を大きく変革していかなければならず、そうした基本的観点から、欧米諸国から厳しく批判されている我が国の長労働時間の改善を図ることが、当面する緊急かつ重要な国民的課題となっております。
 ところが、政府案は、こうした課題にこたえておらず、むしろ生活の質的向上に逆行する部分さえ含んでおります。
 政府案の主な問題点を指摘すれば、第一に、週法定労働時間の短縮措置についてです。
 政府案は、週四十時間を法律に明記することとしているものの、附則により、当面の労働時間を命令で定めることにしております。我が党は、当面四十四時間とし、改正法施行後、三年後をめどに四十時間制に移行させるべきだと考えるのですが、政府の見解では、週四十時間制の実施時期はなお定かでなく、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに移行するよう努力すると言うにとどまっております。
 第二は、変形労働時間制の拡大についてです。
 新たに導入される三カ月変形制については、一日及び一週間の労働時間の限度や連続労働日数の限度を命令で定めることができるように修正され、一週間単位の非定型的変形制については、省令で本人の意思の尊重を要件に加え、これらの変形制については労使協定の届け出義務を負わせ、また、妊産婦を変形制の適用除外とすることは、我が党の要求に合致することではありますが、育児、介護、通学等の特別な事情のある労働者に対する配慮の義務づけ、従来の四週変形制への規制措置などについてはなお問題が残されております。
 第三は、年次有給休暇の付与についてです。
 政府案は、最低付与日数を現行の六日から十日に引き上げることとしておりますが、欧米諸国が回ないし六労働週となっており、ILO条約でも三労働週以上とすることを求めていることに照らせば、極めて不十分と言わなければなりません。また、ILO条約が年休取得の資格について、六カ月以上の勤務を条件としてはならないとしているのに、相変わらず一年勤続等の条件を改善しようとしていないことも問題です。
 第四は、事業場規模による格差についてです。
 政府案は、適法定労働時間の適用について猶予措置を講じることになっておりますが、労働基準法は、労働者保護法として労働条件の最低基準を定めるものですから、猶予措置を講じることがやむを得ない場合であっても、法のもとの平等という原則に照らして、その期間はごく短期間、その対象範囲もできる限り限定すべきです。政府案では、この点、なおあいまいさが残っております。また、わずか四日の付与日数の引き上げについても、六年間もの猶予期間を設けていることは納得できません。
 第五に、時間外・休日労働について、有効な規制措置を講じていないことも不満です。
 最後に、三年後に改正法を見直すという措置を講じることは賢明なことであると考えます。新前川レポートも指摘しているように、「今後中長期にわたり労働時間を着実に短縮し、我が国の経済力にふさわしいものとすることが、画期的な国民生活向上の必須の要件」であり、完全週休二日制、週四十時間労働制の確立、年休付与日数二十日水準の実現のため、労使間のみならず国会や政府はもちろん、国民全体が引き続き努力する必要があることを申し添えて、私の反対討論を終わります。
#375
○田代由紀男君 私は、自由民主党を代表して、労働基準法の一部を改正する法律案について、自由民主党提出の修正案及び修正部分を除く原案に賛成するとともに、日本共産党提出の修正案に反対の意見を表明するものであります。
 今日、労働時間の短縮は、労働者の福祉の増進、長期的に見た雇用機会の確保等の観点から重要であるのみならず、特に最近においては、経済構造の調整、内需拡大等の観点からも重要な課題となっており、国際社会における我が国の地位にふさわしい労働時間の水準とする必要性が高まっているものと考えます。
 もとより、労働時間の短縮は、労働生産性向上の成果配分として、労使間において進められるべきものでありますが、我が国においては、適切な法的措置によって労使の自主的努力を補完し、その促進に資することが必要であると考えます。
 したがいまして、私としましてはこのような必要性にかんがみ、労働基準法を適切に改正する必要があると考えます。
 このたびの政府案は、このような必要性に対応して、法定労働時間を週四十時間を目標に段階的に短縮すること、第三次産業の拡大等の社会経済情勢の変化等に対応して、フレックスタイム制、三カ月単位の変形労働時間制等、労働時間に関する法的規制を弾力化すること等を内容とするものであり、時宜を得た適切な内容であると考えます。
 また、自由民主党提出の修正案につきましても、妊産婦が請求した場合は、各種変形労働時間制の規定にかかわらず、法定労働時間を超えて労働させてはならないこととすること、週の法定労働時間を定める政令は、週四十時間労働制に可及的速やかに移行するため制定され、改正されるものである旨を明らかにすること並びに年次有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取り扱いをしないようにしなければならないこととすることを内容とするものであり、いずれも妥当なものと考えております。
 一方、日本共産党提出の修正案については、非現実的であり、賛成しかねるものであります。
 以上の理由により、私は自由民主党提出の修正案及び修正部分を除く原案に賛成するとともに、日本共産党提出の修正案に反対するものであります。
 以上で私の討論を終わります。
#376
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の労働基準法の一部を改正する法律案並びに自由民主党提出の修正案に反対、日本共産党提出の修正案に賛成の立場から討論を行います。
 政府改正案に反対する第一の理由は、変形労働時間制の大幅な導入によって、世界と日本の労働者が闘い取ってきた歴史的成果である一日八時間労働制を根底から破壊しようとするからであります。
 一週間、一カ月、三カ月の変形労働時間制やフレックスタイム制の導入は、企業の都合に合わせて所定内労働時間を自由自在に伸縮できるようにし、必要な時間に必要なだけ労働者を働かせるものであり、まさに労働力のかんばん方式と言わなければなりません。
 第二は、一カ月変形労働時間制の導入などによって、広範な職場に変形労働時間が持ち込まれることになります。それは、先進国の中でも最悪である我が国の長時間、超過密労働を固定化するとともに、労働者にはサービス残業を所定内労働として強制することになるものであります。
 現在、企業が支払っている十兆円を超える残業代の半分以上が節減をされ、資本、企業にただ取りされることになるのであります。これは、資本に巨大な超過利潤を保証しようとするものであり、そもそも労働者を保護すべき労働基準法を労働者搾取の法律に大きく変質させるものであります。
 第三は、改正案の売り物である週四十時間労働制は、いつ実現するのか明記されておらず、週四十時間の実現をはるかかなたに押しやり、遠い将来の願望にしてしまうことであります。
 すなわち、対米公約をした内需拡大、労働時間短縮の手前、表向きは週四十時間を押し出して海外の批判をかわしつつ、内実は労働者を長時間過密労働に駆り立てるというごまかしの手法です。このような大改悪が、労働者の健康と家庭をますます破壊し、とりわけ婦人労働者は、変形労働時間制の大規模な拡大と導入によって母性破壊、健康破壊が進み、保育所への送迎が困難になるなど、働く機会と権利そのものが奪われることになります。
 さらに、夜間の定時制高校や大学二部などで働きながら学ぶ人たちの勉学が困難になることも疑いありません。
 自由民主党提案の修正案は、八時間労働制の破壊、変形労働時間制の導入と拡大という政府改悪案の根幹を何ら変えるものではなく、反対であります。
 我が党は、政府改正案に対する我が党の根本的修正案に掲げた八時間労働制の厳守と変形労働時間制、みなし労働時間制の削除など、労働者の命と暮らしを守り、人間らしく働くことのできる真の時間短縮を目指して闘う決意を表明し、私の反対討論を終わります。
#377
○委員長(関口恵造君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 それでは、これより労働基準法の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、内藤君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#378
○委員長(関口恵造君) 少数と認めます。よって、内藤君提出の修正案は否決されました。
 次に、佐々木君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#379
○委員長(関口恵造君) 多数と認めます。よって、佐々木君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#380
○委員長(関口恵造君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 糸久君から発言を求められておりますので、これを許します。糸久君。
#381
○糸久八重子君 私は、ただいま可決されました労働基準法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 以下、案文を朗読いたします。
    労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  労働時間を着実かつ可及的速やかに短縮することが、国民生活の質的向上、中長期的に見た雇用機会の拡大、国際協調の観点から重要であることにかんがみ、政府は次の事項について適切な措置を講すべきである。
 一、中小・零細企業における週休二日制等労働時間短縮を促進するため、環境整備を進めるとともに、必要な指導・援助の拡充に努めること。また、下請企業における労働条件の改善・向上の観点からも、取引条件の適正化のためなお一層の指導監督を行うこと。
 二、変形労働時間制については、濫用されることのないよう十分指導するとともに、三年後の見直し時期までに実態調査を行うこと。
 三、年次有給休暇について、今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考に、さらに付与日数の増加を図ることを検討すること。
 四、年次有給休暇の最低付与日数の引上げに関し、適用猶予期間中の事業についても、可能な限り本則の日数が付与されるよう指導すること。また、年次有給休暇の計画的付与に当たっては、付与日数の少ない者その他特別の事情のある者に対し必要な配慮をするよう指導すること。
 五、出稼労働者に関し、パートタイム労働者との均衡を考慮し、これらの者にも年次有給休暇が付与されるよう関係業界等を指導すること。
 六、時間外労働の規制について、当面、時間外労働協定締結の指針に年間の時間外労働時間数の目安を加える等その見直しを行い、その遵守の徹底に努めるとともに、引き続き有効な規制方法について検討すること。
 七、各種労使協定の締結当事者である労働者代表の選出については、労働者の意思を適正に反映した選出が行われるよう指導すること。
 八、十人未満の事業場も含め小規模事業場において就業規則の整備が行われるよう、適切な指導を行うこと。
 九、自動車運転者の労働時間等の規制に係る問題については、今次法改正と一体のものとして、適切な措置をとること。
 十、労働基準法の履行確保、労働時間短縮の一層の促進を図るため、労働基準監督官等の増員をはじめ労働基準行政体制の充実強化を図ること。
 十一、公務員の閉庁方式による完全週休二日制、金融機関の土曜閉店による完全週休二日制、小中、高等学校の土曜休日制の早期実現に努めること。
  右決議する。
 以上でございます。
#382
○委員長(関口恵造君) ただいま糸久君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#383
○委員長(関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、糸久君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、平井労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。平井労働大臣。
#384
○国務大臣(平井卓志君) ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。
#385
○委員長(関口恵造君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#386
○委員長(関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後七時十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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