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1987/08/27 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 外務委員会 第3号
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1987/08/27 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 外務委員会 第3号

#1
第109回国会 外務委員会 第3号
昭和六十二年八月二十七日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月二十六日
    辞任         補欠選任
     久世 公堯君     鳩山威一郎君
 八月二十七日
    辞任         補欠選任
     三池  信君     松浦 孝治君
     黒柳  明君     伏見 康治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         森山 眞弓君
    理 事
                宮澤  弘君
                最上  進君
                松前 達郎君
                小西 博行君
    委 員
                大鷹 淑子君
                後藤 正夫君
                嶋崎  均君
                林 健太郎君
                林田悠紀夫君
                原 文兵衛君
                藤井 孝男君
                松浦 孝治君
                中村  哲君
                矢田部 理君
                広中和歌子君
                伏見 康治君
                立木  洋君
                田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  倉成  正君
   政府委員
       外務大臣官房外
       務報道官     松田 慶文君
       外務大臣官房審
       議官       柳井 俊二君
       外務省北米局長  藤井 宏昭君
       外務省欧亜局長  長谷川和年君
       外務省経済協力
       局長       英  正道君
       外務省条約局長  斉藤 邦彦君
       外務省国際連合
       局長       遠藤  實君
   事務局側
       常任委員会専門 
       員        小杉 照夫君
   説明員
       環境庁長官官房
       国際課長     黒川 雄爾君
       法務大臣官房審
       議官       佐藤 勲平君
       外務大臣官房領
       事移住部長    妹尾 正毅君
       外務省アジア局
       審議官      谷野作太郎君
       外務省中近東ア
       フリカ局審議官  小原  武君
       外務省経済局次
       長        池田 廸彦君
       大蔵省主計局主
       計企画官     杉井  孝君
       林野庁林政部林
       産課長      高橋  勲君
       労働省職業安定
       局雇用政策課長  廣見 和夫君
   参考人
       国際協力事業団
       理事       山極 榮司君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府と
 の間の条約の締結について承認を求めるの件
 (第百八回国会内閣提出、第百九回国会衆議院
 送付)
○政府調達に関する協定を改正する議定書の締結
 について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、久世公堯君が委員を辞任され、その補欠として鳩山威一郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(森山眞弓君) 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、政府調達に関する協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(森山眞弓君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております両件の審査のため、本日、国際協力事業団理事山極榮司君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(森山眞弓君) 両件につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○松前達郎君 まず最初に、政府調達に関する協定の改正議定書についでお伺いをいたしたいと思うんですが、政府調達品というものについては今までもある一定の枠がはめられている。その枠というのはそれぞれ国益とかあるいは国内事情とかそういうものに基づいた枠であって、一般的には自由な公開の場における調達というのが行われなくてよかったわけなんですね。それが今回政府調達については、この規定の適用外とされていた部分をやめまして、すべて自由無差別の原則を適用していくということに私理解しているんですが、それでよろしゅうございますか。
#8
○説明員(池田廸彦君) 今回お手元にございます議定書は、ガットの東京ラウンドで作成いたしました政府調達に関する協定を修正するものでございます。
 御指摘のように、基本的にはあらゆる政府調達をこの協定及び議定書の対象にすることが望ましいわけでございますが、余りに細かい案件につきましてまで厳重な手続を適用いたしますとこれは事務的に極めて煩雑になる、こういう考え方から、今回の議定書では、これまで十五万SDR以上の政府調達について適用となっていたものを、二万SDR切り下げまして十三万SDR以上の調達について今後協定を適用する、そういうふうにいたしたわけでございます。
 それからもう一つ、これまでは対象になっておりませんでした借り入れによる調達でございますね、簡単に言えばリース等でございます。これはこれまで調達協定の対象外であったものをこのたびこれを取り入れることにする。これがいわゆる協定適用範囲拡大の問題でございます。
 このほか、入札手続を改善いたしますとか、あるいは落札情報を公示することにするとか、こういう形で手続の透明性をさらに強める。これが今回の改正の趣旨でございます。
#9
○松前達郎君 そうしますと、さっき私が申し上げた規定の適用外とされていたものについては、金額的な部分を変えていくということであって、この規定をなくしてしまうということではない、こういうふうに理解していいんですか。
#10
○説明員(池田廸彦君) そのとおりでございます。いわゆる最低価額、基準額と申しますが、これを今後十三万SDR以上に改めたという趣旨でございます。
#11
○松前達郎君 そうすると、ここに「国防上ないし国家安全保障上国内産品を購入する必要がある」というような文言があるわけですね。それから中小企業対策、地域産業振興策あるいは高度技術産業、こういったようなものを育成するためにこの規定適用外という条項があるわけですね。これはまだ生きているというふうなことであれば、当然、この規定について言いますと、ただ単に金額的な面だけを変えるんだということにすぎないというふうにとってよろしゅうございますか。
#12
○説明員(池田廸彦君) 基本的には金額的な面を変えるのみでございます。我が国の中小企業からの調達につきましては、我が国は技術を入れております。それから御指摘のいわゆる国防条項、これはすべての国に適用される例外規定でございまして、例えば武器などをこの協定の手続に従わないで調達する場合、これは例外としてすべての国に認める、こういう立て方になっております。
#13
○松前達郎君 武器の場合はそれぞれの国において方針がありますからそういうことになると思うんですが、政府調達品についてのそれ以外のものについて、例えば自由な場においての競争入札にするとか、公開をしながら入札をさしていくとか、あるいは入札した結果を公表するとか、そういうふうなことも含まれていると伺ったんですが、それも含まれておりますか。
#14
○説明員(池田廸彦君) 御指摘の点は調達の手続の問題でございます。基本的な考え方は、公開入札及び選択入札を原則とし、一定の条件を満たす場合に単一入札を認める、こういう立て方でございます。そのほか、今先生御指摘のような各種公示の手続、それから公示の最低の日取りを定めるという規定が方々にうたっております。
#15
○松前達郎君 そういうことであれば、この協定を新しく改正するということによる外国に与える影響、外国から日本を見た場合、今貿易問題とかいろいろありますが、そういったものとの関連の中で一体どういうふうに見られるであろうか、どういう効果があるであろうか、その点どうお考えになっているか。
#16
○説明員(池田廸彦君) 実は私ども同じ問題意識を持ちまして、何とか計量化しようと試みたのでございますが、実はなかなか難しゅうございます。非常に粗い数字でございまして、本当に単なるめどというふうに御理解願いたいのでございますが、例えば最低価額を、基準額を十五万SDRから十三万SDRに下げた場合、大体五%ぐらいふえるだろうと見込まれます。それから借り入れによる調達を加えた場合どれだけふえるだろうか、これは推計を試みたのでございますが、できませんでした。ただしふえるだろうということでございます。
 それからもう一つ、我が国につきましては、円高の効果が基準額切り下げの効果と加えて二重にきいてまいります。したがいまして、これらを全部推計するということは残念ながら私どもの能力が及びませんで、ふえるであろうと思っておるということで御理解願いたいのでございます。
#17
○松前達郎君 この政府調達に関する協定の問題についてはそのぐらいにいたしまして、カナダとの所得に対する租税の二重課税の回避、脱税の防止についてお伺いしたいんです。
 この内容は、これは各国と日本政府との間に幾つかもう既にこれに類似したものが条約として結ばれておるわけですね。今後我が国の産業等も外国に出ていって生産をする場合もありましょうし、国際活動が盛んになればなるほどこういった問題というのは非常に大きな問題になってくるわけですが、内容的に言いますと、いわゆるモデルがあるという話も伺っているんですが、大体それにのっとった内容になっているかどうか、特に日本とカナダの間の条約について他の国との条約との比較において違う部分があるのかどうか、その点ひとつお伺いしたいんです。
#18
○政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のように、我が国と相当数の国との間で租税条約を締結しております。現在三十六カ国との間で租税条約がございます。この中で、カナダのごとく先進国であります場合には、これも先ほどちょっとお触れになりましたように、OECDモデル条約を参考といたしましてこれにのっとった形で締結した条約が多いわけでございます。先進国との間の条約におきましては、やはり経済交流がいわば相互乗り入れ的と申しますか、双方で投資活動をやっているというようなことが多いわけでございますので、したがいまして、基本的には、例えば投資所得に対する源泉地国の課税率を低く抑える、あるいは事業活動を行います場合には工場、支店等のいわゆる恒久的施設を通じて活動を行う場合にのみ源泉地国で課税するという原則が広く採用されておりますが、このような恒久的施設の範囲というものもやや限定的に規定しているということが言えると思います。
 今回のカナダとの新租税条約につきましては、現行の租税条約を全面改定いたしまして、できるだけOECDモデル及び我が国がほかの先進国と締結いたしました条約に近い形でつくり直したものでございます。特に旧条約に比べますと、例えば条約の対象となる人的範囲を拡大するとか、あるいは用語の定義を整備する、さらに譲渡所得、不動産所得等について新たな独立の条項を設ける、さらに投資所得につきましては現条約よりOECDモデルに近い税率に引き下げるというような改定をしております。基本的にはほかの先進国との租税条約と非常に近い内容のものになっているということが言えると思います。
#19
○松前達郎君 この種の条約について、今三十六カ国というお話でありますが、その他の国との条約、現在締結しようという意向で検討しつつあるところがございますか、この種のもので。
#20
○政府委員(柳井俊二君) 現在、これから交渉する計画について全部を把握しているわけではございませんけれども、今回のカナダとの租税条約のごとく、過去に締結した条約が古くなりましてこれを改定するというようなことも時々やっております。現在、マレーシア、インド等数カ国との間でこの種の改定交渉をやっております。他の主要国につきましては大体現在締結済みでございます。今後必要に応じて、特に経済関係の実態等を踏まえまして必要に応じて締結していきたいというふうに考えております。
#21
○松前達郎君 もう一つだけちょっと質問させていただきたいんですが、この三十六カ国、資料いただいたんですが、この中に東欧諸国とかソ連というのが入っているんですね。これも締結しているわけですね。これについてはレートの問題がどうもバランスがとれてない、要するに円と各国の通貨とのレートですね、そういうふうな問題は出てきませんか、税金の問題に関しては。
#22
○政府委員(柳井俊二君) 私、社会主義諸国との租税条約交渉を直接やったことはございませんので、具体的なことは今承知しておりませんけれども、御承知のとおり、租税条約と申しますのは、関係国の課税権の調整、課税権が競合する場合に二重課税を排除するように調整するというのが基本でございますので、必ずしもこの為替のレートの問題というのが直接に出てくるということはないのではないかと、一般的にはそのように考えております。
#23
○松前達郎君 税金をとにかく両方から取らないようにするということですから、為替関係ないと言えばそれっきりなんですけれども、金額的に換
算してもどっちで払った方が得かなんという問題が出てくる可能性もありますね。ですからレートの問題というのはある程度関係があるんじゃないかと思ったものですから質問させていただいたんですが、余り問題がなければ結構だと思いますけれども。それでは今のカナダとの条約についてはそれだけにいたします。
 次に、以前の理事会で外務省からいただきましたSDIに関する研究参加、いわゆる戦略防衛構想における研究に対する日本国の参加に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定、そういった協定の文書をいただいたわけなんですが、SDI研究参加についての問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
 まず最初に、協定文の内容について二、三質問させていただきたいんですが、協定の一番最初に「参加者による参加」、これは日本からの参加者の場合、「衡平かつ真正な競争の基礎の上において円滑ならしめる意図を有する。」、これは基本的なこの協定の精神といいますか、そういうものを代表した文章だと思うんですが、「衡平かつ真正な競争」というのはどういうふうなことを意味しておられるのか、これについて御説明いただきたいんです。
#24
○政府委員(藤井宏昭君) これはまさにSDIに関する我が国の参加の目的を規定した条項でございまして、「衡平かつ真正」と申しますのは、我が国の参加者が、米国及び第三国の参加者との関係におきまして、それが商業的な意味で自由な競争ができるという見地から「衡平かつ真正な競争」を確保する、それがこの協定の目的であるということを規定したものでございます。
#25
○松前達郎君 競争をするということというのは、研究活動における競争なのか、それとも、後でいろいろとこれについての落札、契約だとかいろいろ出てくるわけですね、こういったような事項に関しての衡平なのか。あるいは、これは日米間の協定ですけれども、そのほかの国もアメリカとの間に協定を結んでいると思うんですね。恐らく研究対象となるテーマというのはそれぞれ集中的にある特定のものに限られてくるんじゃないか。そうなった場合に、日本の研究関係者だけではなく、あるいは企業だけではなく、例えばこれはイタリアも入っていますね、あるいはその他たくさん入っているんですが、そういった国々の研究活動も対象として、日本も含めて「衡平かつ真正」なのかどうか。その点はいかがでしょうか。
#26
○政府委員(藤井宏昭君) この協定に言っております参加ということは、日本の企業等が契約などを結びまして、アメリカの計画でありますところのSDI計画の一端に参加するということでございます。ここの一項で申しておりますことも、その参加、すなわち契約などを結ぶ際における競争ということでございまして、研究の内容の競争とかそういうことではございません。
#27
○松前達郎君 参加条件ということになりますね。
#28
○政府委員(藤井宏昭君) 参加条件と申しますか、参加に当たりましての自由な競争を旨とするということでございます。
#29
○松前達郎君 わかりました。参加をするかしないかを意思決定するときの自由なる競争というふうに理解するんですが、これはどうなんでしょうか、他の国とアメリカ、日本以外の国との協定というのがあるんですが、これは秘密だから外務省は入手できないかもしれませんが、そういった協定の内容についてある程度調査されておりますか。
#30
○政府委員(藤井宏昭君) 委員御存じのとおり、他の四カ国とアメリカの間でSDI参加に関する協定がございますけれども、いずれもすべて不公表になっております。したがいまして、外務省といたしましては、どの程度情報を入手したかを含めまして、その他の国の協定についてコメントする立場には残念ながらございません。
#31
○松前達郎君 それから次に、この二番目に、「参加を希望する日本国及びアメリカ合衆国の者が、この協定の範囲内において落札される契約の獲得について、平等の条件で競争する」、これは、さっき一番目で申し上げた「衡平かつ真正」というものの中の説明になるんじゃないかと思うんですが、どうも読んでみて非常にわかりにくいものですから、そういうことを意味するんじゃないかと私思うんですが、いかがでしょうか。
#32
○政府委員(藤井宏昭君) 第一項は、先ほど申しましたようにこの協定の目的でございます。それから第二項は、さらに具体的に、日本の企業等が契約等を落札いたしますときに、その契約の獲得について日米両企業が「平等の条件で競争することを許容するよう努める。」ということを確認しておるわけでございます。
#33
○松前達郎君 何か余りよくわからないんですけれども、もともと米側がつくったやつを日本語に直したんじゃないですかね。こちら側と十分協議しておやりになったのかどうか。この文章を読んだだけでは、どういうことを具体的に意味するのか、どうも私には余りよくわからないんです。
 それから、ずっと先の方になりますが、また「公正かつ衡平な待遇」というのが出てくるんですが、それは、「参加者により創出された情報に対しては、公正かつ衡平な待遇が与えられる。」、また同時に、「実施より前に又はその実施とは無関係に当該参加者により創出された情報に対しても同様とする。」という文章が出てくるんですが、これは特に関連する問題としては秘密の保護という問題もあると思うんですね。そういう問題も含めて考えたときに、事前に、実施より前に「無関係に当該参加者により創出された情報」、これも対象になってくるのかどうか、その辺を伺いたいんです。
#34
○政府委員(藤井宏昭君) 先ほどの参加の話とはこれは別な話でございますけれども、情報に対しまして、まずアメリカ側からいわゆる背景情報として情報が来る、その情報をもとにいたしまして研究を行うということでございます。その結果研究の成果が出てくる、こういう流れでございますけれども、その際に、アメリカから来た情報でない、それとは無関係に自分があらかじめ持っていた情報、この情報については一切日本側の使用権あるいは秘密保護、その両面で制約されることはないというのがこの協定の趣旨でございます。
 それから第二に、先ほどの条文の流れの中で、アメリカ側からもらった情報、それをもとに研究いたしました成果ということとは無関係に、自分がつくり出しました情報についても、先ほど申しました第一点の、あらかじめ持っていた情報と同様に秘密の保護あるいは使用権の面で規制されることはないということを規定しているわけでございます。
#35
○松前達郎君 そうしますと、私が理解したのと逆になってきたんですが、企業が参加する、参加すれば企業はたくさんの情報を持っているわけですね、その情報まで何らかの束縛を受けるということがないようにするために「公正かつ衡平な待遇」というふうに理解していいわけですね。
#36
○政府委員(藤井宏昭君) そのような趣旨でございます。
 この四項にございます前段の方の、「日本国及びアメリカ合衆国の参加者により創出された情報」につきまして「公正かつ衡平な待遇が与えられる。」という、この部分がまさに成果の利用でございます。先ほどの情報の流れの中で、アメリカから来ました情報、それを利用して成果をつくった、これにつきまして一定の権利を確保するということが実はこの協定の目的であると同時に、今の流れとは無関係にそうした情報、あるいはその前から持っていた情報は束縛されないということを確保するということがこの協定の目的でございます。
#37
○松前達郎君 この研究参加を日本政府は決定されたわけですが、この参加する範囲、これは前にも委員会で質問さしていただいたんですが、これはもう民間に限るのか、あるいは政府関係の研究諸機関がありますね、そういうところも参加するのか、その辺はいかがでしょうか。
#38
○政府委員(藤井宏昭君) 参加する単位は、民間
企業それから理論的には政府研究機関など、政府の特殊法人等もあり得ると思いますが、を含んでおります。ただし、第一点は、事の性質上、すなわち極めて高度なテクノロジーに関心を持ち、またその能力を有するということが一つ。それから第二点は、政府研究機関につきましては、それぞれの研究機関の持っております設置法あるいは条例等によります。その機関の目的上の制約等がございまして、政府関係機関の研究参加ということにつきましては理論的には可能でございますが、現在そのような計画ないし将来の見通しというものがあるわけではございません。
#39
○松前達郎君 ちょっと法律の名前を忘れてしまったんですけれども、前に、科学技術に関連する研究開発について、民間の研究機関あるいは政府が直轄する研究機関、そういう研究機関の間の交流をしよう、人的交流も含めてですね、例えば外国人の研究者を入れてもいいとかいろいろな問題についての法改正があったような記憶があるんですね。
 ですから、そうなりますとやはりSDIに関しての研究参加というのは、これは政府機関の研究所等も参加することに当然なってきてしまうわけなんですが、そのとき問題になったのが防衛庁の研究機関がどうなのかというのが問題になったんですね。これはやはりちょっと、私の言っている意味がおわかりになると思うんですが、その辺の拡大解釈でいわゆるSDIそのもののシステム研究あるいはそれ全体の構想に関する研究にまで将来どんどん発展する可能性もあるんで、まあ研究参加というふうに表題はなっていますので、そこまでは歯どめがきくと思うんですが、外務省として恐らくそういうことをお考えになりながらこの協定をつくられたと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
#40
○政府委員(藤井宏昭君) ただいま御指摘の法律でございますが、私もちょっと正確なあれは忘れましたが、そういう話が一時問題になったことは記憶しております。ただ、私の知識はその程度であるということが示すように、外務省といたしまして、SDIの参加との関連でその案件について協議を受けたりあるいは相談したということはございません。したがいまして、SDIの参加との関連で自衛隊の方が民間の企業で研究する云々ということが問題になってくるということを現在想定しているわけでは全くございません。
#41
○松前達郎君 それから、例えば契約という言葉も出てくるんですが、研究開発に参加する以上、一つのプロジェクトなりあるいはテーマなりに決めて、それに対してどういう企業がどういうふうに参加していくかあるいはその他の研究機関が参加するか、これを決めていくんだと思うんです。具体的に、日本側が参加する場合に契約をするとか、そういうのはアメリカ側は一体どこと契約するんですか。
#42
○政府委員(藤井宏昭君) これは大きく言って二つの形があると思います。一つは、国防省そのものと契約をするということでございます。その場合には日本の企業などはいわゆるプライムコントラクターになるということでございます。それからもう一つの形は、アメリカの企業が国防省と契約をいたしまして、その米企業がプライムコントラクターになり、その米企業と日本企業が契約をするという形でございます。
#43
○松前達郎君 いろんなハイレベルのテクノロジーというのが今非常に問題になっているんですが、今非常にハイライトを浴びているのが超電導なんというのがありますね。これの技術も、利用の方法によっては戦略防衛構想の中に幾つでも取り込むことができるテクノロジーがあるわけなんですけれども、そういった問題とか、あるいは新素材開発というのは割と日本は得意としている分野なんで、この新素材の研究開発の分野、また同時にレーザー技術、これも先技術としては日本の場合は世界的レベルにある。とりわけセンサーのガリウム砒素なんというのは日本でなきゃできない。あるいはそれを含めた光学技術全体、例えばミラー衛星のミラーというのは日本からたしか輸出したはずです。こういったような技術、そういうものがやはり日本としてはすぐれた技術を持っているわけなんで、恐らく対象となってくるのはそういったような分野がSDIのアメリカ側の要望としての対象になってくるんじゃないか、研究開発を要望されるんじゃないか、こういうふうに思うんです。
 つい最近レーガン大統領が、例えばアメリカの超電導のテクノロジーあるいは素材開発等についてはどうも日本には教えたくない、これはアメリカだけでやるんだと。日本が現在では半導体技術に関しては、特に品質の問題ではアメリカよりはるかにすぐれてきた、アメリカの方が逆におくれをとった、こういうふうな意識がどうか知りませんが、いずれにしても、新しいテクノロジーをまた日本に出してしまうと、それをもとにして積み重ねが行われて日本がまたアメリカに優位に立つ状況が出るんじゃないか、こういうことを恐らく配慮してそういう発言があったんじゃないかと思うんです。
 いずれにしても、こういった新しい技術というのは、特別にこれを軍事用とかそういうものに限ってだけ使っていって、人間の生活とか人間の幸福のために使っていくということがそこでもってストップされてしまうとすると、非常に私は大きな意味で問題が起きてくるんじゃないか、こういうふうに思うんです。
 特に、これらの技術、今申し上げたような諸技術がアメリカに日本から供与された場合、あるいは日本が開発をしたものをアメリカが吸収していった場合、そのためにすべてその傘下に入って抑え込まれてしまって、一切今後それについての我々の生活関連技術には応用されない、適用されないようなことが出てくる可能性があるというふうに思うんです。その辺ちょっと私心配しているんです。例えば、超電導一つ取り上げても、これは国際的に人間の技術改革、イノベーションとして取り扱うべきであって、すべてそのデータは公表すべきであるというような意見が、つい最近京都で行われた会議でも出された。
 そういうことと関連して考えた場合、果たしてSDIに参加するということが意義あることなのかどうか。ちょっと違う見方をしている、私違うビューポイントから見ているのですけれども、どうなんでしょうか、その辺、大臣どういうふうにお考えでしょうか。
#44
○国務大臣(倉成正君) 今先生からいろいろ専門の超電導から新素材あるいはレーザーその他お話がございました。
 確かに日本の企業の中にもいろいろなすぐれた技術を持っております。新素材にしましてもカーボンファイバーとかいろんな問題ございますし、センサーについてもまた超電導についてもいろいろな技術を持っておると思います。ただ、この研究に参加するかどうかというのは企業の自由に任されているわけでございます。それからまた、参加企業等が契約以前から有していた技術、情報については、単に研究契約を結んだからといって、その契約で米側にその権利を譲渡しない限りは米政府に所有権、使用権が制約されることはありません。それからまた、企業等が参加した結果何か新しいものを生み出したという場合には、通常取り消し可能な非排他的かつ使用料の免除された使用権が与えられているという最低限の保障があるわけでございます。
 やはりこれだけの、残念ながら今軍事技術というのが科学技術の進歩に非常に大きな影響を及ぼしてきておるということ、それから汎用技術と軍事技術との区別というのが大変不明確になってきているという面もございますけれども、しかし、先端技術について我々が世界におくれないようにするためには、やはりこういう面について、企業が希望するならばこれに参加してそしてその新しい技術におくれないようにやっていくということは、それなりに意義があることではないかと思っておる次第でございます。
#45
○松前達郎君 今大臣おっしゃった中で、先端技術が世界におくれないようにということをおっ
しゃいましたけれども、まさにそれはそのとおりだと思うんですが、この先端技術なるものが、日本の場合は民間企業の中で先端技術が育て上げられたから今日のような経済発展につながったんですね。アメリカの場合はごく一部の、いわゆる国防産業の中で、軍事産業の中でその先端技術が取り上げられて、大衆の中にそれがフィードバックされなかった、その辺が問題なんですね。それでおくれちゃったんですね、アメリカのいわゆる民生品の生産の品質とかその他すべて含めた面が。
 ですから、そういう面から今考えて私は申し上げたのであって、日本の先端技術は決して外国におくれているわけではない。とりわけその中で防衛関係というか、軍事関係の技術については確かに日本はアメリカほど、そればっかりやっていませんでしたからおくれているかもしれませんが、今おくれを取り戻して追いつくというのは防衛面の、軍事面は確かにそれは言えるんですね。ところが民需用とか一般生活に関連する先端技術については決して私はおくれていないと思うんです。ただ問題は、今さっき申し上げたようなセンサーとかそういうものについては軍事にも使えるので、今先端技術に関してどこまでが軍事か、どこまでが非軍事かという区別はできませんけれども、ただ精神的には今申し上げたようなことで考えていかないと、何か手かせ足かせがはめられてしまう可能性がある。それを私心配しているわけです。
 そこでもう一つは、例えば企業が契約をする場合に、これは担当がどこでしょうか、通産省でしょうか、守秘義務が当然発生いたしますから、その義務について話し合いをして、それでよければ参加をするということになるんじゃないかと思うんですが、この話し合いというのはどうなんでしょうか。外務省はもうこれは関係ないわけですね。
#46
○国務大臣(倉成正君) 守秘義務の点については政府委員からお答えしますけれども、ちょっとお言葉を返すようですけれども、基礎技術の面では日本はまだまだいろいろな点についてかなりおくれがある。もちろん相当いろんな点について進んだ面もございますけれども、ノーベル賞の受賞者一つとってみましても、化学、物理その他という点から考えまして、やはり基礎研究という面についてもう少し日本も本格的にこの問題に取り組むべきじゃなかろうか。
 それから、民間が主体として確かにいろいろな技術をやってまいりましたけれども、例えば超LSIの問題等につきましては、もちろんオーガナイザーとしての役割でありますけれども、政府がいろいろな役割を果たしたという点もございますから、やはり政府は政府なりにいろいろな役割を果たしましたし、また工業技術院等におきましてもかなりすぐれた技術をここで開発をしておるという点、ございます。
 したがって、先生のおっしゃることもっともだと思いますけれども、私から申しますと、まだまだ日本はそういう面についてはさらに努力すべきじゃないかということでございますけれども、非常に高い評価を先生から与えていただけば大変力強い限りでございます。
 なお、守秘義務の問題については政府委員から答弁をさせます。
#47
○政府委員(藤井宏昭君) ただいま御指摘の守秘義務でございますけれども、これは基本的には、先ほど先生御指摘のように、通産省と当該企業との契約によって行うということでございます。
#48
○松前達郎君 そのときはどういう形で行うんでしょうか、通産省の企業との話し合いというのは。
#49
○政府委員(藤井宏昭君) これは、通産省が一定のフォーミュラをつくりまして、そのフォーミュラにのっとりまして企業との間で契約を結ぶということでございまして、これはあくまで企業の自主的な契約でございます。しかし、その結ぶに当たりましては通産省が一定のフォーミュラを作成するというふうに了解しております。
#50
○松前達郎君 その一定のフォームですね、決まったものというのは前もって企業に提示されて、それでよければ参加をしてくださいということになるんですか。
#51
○政府委員(藤井宏昭君) 企業がSDI研究グループに参加する場合に、ただいま御指摘のように、守秘義務がどのようなものであろうか、これはその事案によって幾らかは違うことがあるかもしれませんが、基本的には一定だと思いますけれども、ということを十分勘案しながら全体の企業のメリットを判断して参加をするかどうかということを決めていくということでございます。
#52
○松前達郎君 まだその辺余りはっきりしてないのかもしれませんが、企業にとってみるとこれは大変な問題なんですね、参加するかしないか。ある企業はもう参加しないと決めたところもありますし、例えばココム問題で東芝、まあ東芝機械ですけれども、じゃ東芝は一体どうするのか。いろんな問題が出てくるわけですね。ですからその辺がどうもまだはっきりしていないような気がするので、またいずれその問題についてはお尋ねしていきたいと思います。
 さっき大臣がおっしゃった基礎的な技術という面ですね。これは確かにおくれていると言えばおくれている面が今まであったわけですが、そういう面の国際協力、例えばSDIを通じての協力となると、これはもう研究所段階の協力ということになってくるんですね。そうすると当然、アメリカ側で考えられている研究所といったら、ロスアラモスの研究所ですとか、これは炭酸ガスレーザーをやっていますね、それから中性粒子ビーム兵器の開発をやっているし、自由電子レーザーの兵器開発、これはニューメキシコでやっているわけですね。それからマックスウェルの研究所、これはカリフォルニアですが、レールガンの開発ですね。そのほかローレンス・リバモア、これ有名なんですが、これもカリフォルニアにある。これはエックス線レーザー。あるいはサンディアの国立研究所、これもエックス線レーザー。そういうところと恐らくやらなきゃならない、まあ研究所段階ですね、基礎的なもの。
 そういうふうになってくるので、非常に大がかりな体制というものが展開されるような気がするんです。その辺展開するのはいいんですが、研究所の問題としてはいいんですが、その結果としてこれがいわゆるアメリカの防衛構想に加担をしていくということに結局はなっていくわけなんですね。加担をするだけじゃなくて、逆にそれで締め上げられたんじゃこれは大変な問題が出てくる。そういう心配を和していたものですから、その辺は十分もう外務省の皆さんはわかっておられると思うんですが、いろいろ問題がこれから出てくると思いますが、その辺はお考えいただいて対応していただければというふうに思います。
 さて、SDIはそのぐらいにしまして、もう一つ最近の、これは私自身にも電話が来たんですが、反ソキャンペーンの問題なんですね。というのは、外交官の追放合戦というのがまた日本との間に、まあ一人か二人の問題ですが、合戦と言っていいかどうかわからないんですが、今起こったわけですね。これは国際的な外交の問題としては当然起こる問題かもしれませんけれども、その一つの理由としてソ連側が言っているのは、反ソキャンペーンが日本で盛んに行われているということを盛んに言うんですね。これはとり方によってはどうにもとれるかもしれませんが、恐らくこれは例えばココムの問題、また新聞などで取り上げているのは、ココムの問題だろう、それからさらに幾つかのスパイ事件ですね、こういう問題が絡んでいるんじゃないか、こういうふうに言われているわけなんです。
 ココム規制の問題、これはまた蒸し返す必要ないと思いますが、これでも、私どもの友人である教授が、スクリュー音の減少というものが、東芝機械を輸出して彼らがそれを使って加工したその結果によるものではない、因果関係はないだろうという発言をした途端に、今度怪電話がかかってきて、あれはソ連のスパイだ、これから尾行をつけるとか、そういうふうなことを盛んに、これ一
回じゃないんです、そういうことまで言ってくる。どっから来たか大体見当つくんですけれども。
 大臣がその問題について、いわゆるその東芝機械と今の潜水艦の雑音低減の問題は一定の因果関係はあるんだとおっしゃいましたですね。そればかりじゃないということですね。その機械ですべてが解決したわけじゃないだろうけども、一定の因果関係はあるだろうというふうな国会での答弁をされた記録があるんですけど、これは確かにそうかもしれません。
 ただ問題は、何も東芝機械だけがすべて雑音低減の決め手になったわけじゃなくて、例えば潜水艦の一番重要なプロペラシャフトのベアリングなんて日本製なんですね。日本から輸出しているんです。それから原子炉からの動力に変えるあのシステムの中のベアリングも全部日本製である。そうなるとこれもココムにひっかかるわけですね。ところが実際ソ連の潜水艦は使っているわけですね。
 そういったようなこともあるんで、全部が総合してそうなったのかどうかと私は思うんですけれども、前にも私ここで申し上げたように、ソ連の潜水艦はダミーの雑音発生機を艦首につけてカムフラージュしているわけですし、そういったような面で何も東芝機械が雑音低減のすべてをこれで行えたということじゃないということだろうと私は思うんです。まあそういったような問題を発言するとすぐ反応が出てくるということですね。
 それからさらに、例えばかつての大韓航空機撃墜事件の場合でも、これもソ連はスパイ飛行である、こういうふうなことを言った。国内でもそういうことを唱える人が多い。私もそういう疑惑を持ったことがあるんですけれども。こういうことを言うのが反ソキャンペーンである。しかも、撃墜事件のときに交信記録を見てみると、もうそれでスパイ説が覆されて、ソ連のこれは偽情報であるなんていうことを言うような状況ですね。
 それからさらに、最近ではソ連船の小名浜寄港、これは当委員会でも漁業の問題でソ連との間の問題をかねがね取り扱ったわけですが、そのときに、ソ連の漁船が小名浜に休養のためと物資補給ですか、寄港するということを恐らく日ソ漁業協定で決めたわけですね。ところが実際行ってみると大変な妨害に遭って、その妨害だけならいいんですが、その妨害が余りにも露骨であるために、小名浜地域の日本の商店の皆さんとか、そういう日本の住民の皆さんがもう既に怖がってしまう。そうなると雰囲気としてはもう全く排除する雰囲気になってくる。また、それをソ連の船員が直接上司へ報告したものですから、それでまた非常に印象悪くしている。
 どうもこういった一つの反ソキャンペーンというものが行われている。これがソ連にとって非常にかんにさわるところだろうと私は思っているわけなんです。
 とりわけ、その反ソキャンペーンを行っている組織としていろんなのがあるんですけれども、つい最近後藤田官房長官の発言にもあるように、例えば右翼による妨害活動の規制ですね。国会のところでもやっていますし、ソ連大使館の前に行ってもやっています。もう大変なものですね。恐らく諸外国でこんなのはないと思うんですね。この辺について大臣一体どういうふうにお考えなのか、それが一つ。
 それからもう一つ、横田基地スパイ事件というのもありましたね。それから例の航空計器の問題。いろいろあったわけですが、横田の場合などは、これはただ単なるテクニカルオーダーの普通の文書が手に入ったというだけで、何も大騒ぎするような問題じゃないんですけれども、それをまたわざわざと、大変だ、最高機密が漏れたというふうに宣伝をする。そういったものも含めて恐らく私は反ソキャンペーンだとソ連はとっているんじゃないかと思うんです。
 日ソ関係というのは、隣の国ですから、しかも大きな国ですし、何もわざわざ敵に回す必要もないし、ちょうどアメリカとソ連は今相当な交渉をしながら、我々の懸案であった核兵器の削減までもやろうと、いろんな駆け引きはありますけれども、そういう方向に向かっているし、経済関係でも米ソの間の経済交流というのはとんどんやっているわけですね。特にヨーロッパとソ連との間でもやっている。このままほうっておくとどうも日本だけ取り残されちゃうんじゃないかという気もするんですが、そういった問題に対してやはりもっと視野を大きくして我々としては考えていかなければならないんじゃないか。これは私がそういうふうに感想として申し上げるわけなんですが、今の一連の問題についていかがでしょうか。
#53
○国務大臣(倉成正君) 幾つかの問題の御提起がございましたけれども、東芝機械の問題につきましては、ソ連の潜水艦の静粛化との因果関係については、政府の見解は累次申し上げておりますとおり、具体的証拠は入手しておりませんが、因果関係について濃厚な嫌疑がある、そういう認識を持っておるわけでございます。いずれにしましても、本件については、極めて高度の工作を行うことができ、潜水艦を含む艦船の性能向上に利用することができる本件の工作機械が我が国の法令に違反してソ連に輸出されたこと自体が、我が国を含む西側全体の安全保障上重要な問題である、そういう認識に立っておるわけでございます。
 そこで、先生から今反ソキャンペーンというお話ございましたけれども、実は私は、日本とソ連は移転することのできない隣国であるという認識を持っております。したがいまして、やはりソ連との関係に友好善隣の関係が確立するということが望ましいわけでございます。不幸にして北方領土の問題ございますけれども、いずれにしましても、感情的になったりいろいろなことをやるということは好ましいことではないし、またいろいろ大使館の前で大きな拡声機がどなり立てるというようなことは、ソ連の大使館とかいうことではなくして、もうこういうことは望ましいことではないと私自身思っておる次第でございます。
 先ほどお話しの在ソの日本大使館の防衛駐在官及び在京のソ連通商代表部に対する国外退去の要請等、一連の余り好ましからざる問題が相互に起こっていることは事実でございます。しかし、これは一応いろいろ両国関係それぞれの立場で出てきた問題でございますけれども、私は、こういう問題はこういう問題として的確に処理していくと同時に、今回国連に出席いたしました段階におきましてはシェワルナゼ外相とゆっくりいろいろ日ソ間の問題についてお話しをする、軍縮の問題につきましても、その他日ソ関係の諸懸案の問題についても事務レベルでもやっておりますけれども、外相レベルで十分お話をするということで合意ができているわけでございます。
 やはりそういう大局的な見地に立って世界の政治、経済、諸問題についてのお話をすると同時に、そういうさざ波があるからといって、反ソキャンペーンその他というような姿勢を日本政府がとっておるわけではございません。日本の外務省としてはそういう気持ちはございませんので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
    ―――――――――――――
#54
○委員長(森山眞弓君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 先ほど、黒柳明君が委員を辞任され、その補欠として伏見康治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#55
○広中和歌子君 まず、政府調達に関する協定の改正議定書について御質問させていただきます。
 我が国の政府調達協定対象機関の中に、既に民営化されておりますところのJR各会社やNTTが依然として入っている理由についてまずお伺いいたします。
#56
○説明員(池田廸彦君) 政府調達協定の基本的な目的といいますのは、とかく自国品愛用に傾きがちな政府調達の面で、それをやはり競争条件にさらすようにしようということにあるわけでございます。その意味からは、民営化がされました以上は、これは当然その純粋の商業的考慮、コマーシャルコンシダレーションだけで行動するわけで
ございますから、本来的に申せば、この政府調達協定に残すというのは若干筋が違う面は確かにあるわけでございます。
 実は私ども、そういう問題意識を持ちまして、今度の議定書を交渉するに当たりまして問題提起をしたわけでございます。ところが、実際上の問題といたしまして、この三つの継承法人、この基準額以上の調達額が、日本の場合全基準額以上の調達額の四二%を占めます。それともう一つ、これもやはり事実上の問題でございますが、米国、ECを初めとしまして、この三つの機関に対する関心が非常に強かった。
 そういうわけでございまして、確かに民営化はされたけれども、これをもしも政府調達協定から外そうというのであれば、それに見合う代償を出してもらわなきゃいけない、こう言われたわけでございます。これは今申し上げましたような大きなウエートを持っておりますので、ちょっと代償の手当てがつかない。そこで、問題提起をし、それからこれから先も問題提起をするということを言いました上で、ともかくこの旧三公社、これにつきましては調達協定の対象として残すということに踏み切った次第でございます。
#57
○広中和歌子君 ということは、いずれはその中から、協定から外すということになるのでございますか。
#58
○説明員(池田廸彦君) もともと協定のバランスは、各国がそれぞれ自分が政府調達協定を適用する対象として考える機関全体の調達額、これを持ち寄りまして、交渉によりまして各国大体これでバランスがとれたというところで決めたという経緯がございます。したがいまして、民営化ということであっても、これを外すときには代償を出さなければならないということでございます。この諸外国からの要請と申しますか、こういう態度はこれは簡単には崩れないだろうと思います。
 しかしながら、冒頭に申し上げましたように、やはりそのまますぐわかったと言える問題ではないと思っておりますので、問題提起はしようと思っております。しかし、我が方の問題提起が各国に受け入れられるかどうかは、これは全く今後の話し合いの問題でございます。
#59
○広中和歌子君 民間の調達に占めも外国製品の割合というのは、政府調達の外国製品に占める割合と比べてどういうふうになっているんでしょうか。その数字はわかりますでしょうか。
#60
○説明員(池田廸彦君) 民間の調達に占める外国製品の割合というのは調べておりませんのでございますが、基準額以上の調達額の中に占めます外国産品の割合は、八五年ペースで申しますと約一三%になります。
#61
○広中和歌子君 それは民間でございますね。
#62
○説明員(池田廸彦君) 民間の方はちょっと掌握いたしかねておりますが、ただ、民間という御指摘がこの承継法人のことをおっしゃっておられるのでございましたらば、先ほど申し上げましたように、基準額以上の調達額の四二%、絶対額では、例えばNTTだけで九百九十八億円、ほぼ三分の一近いシェアを持っております。したがって、外国品調達の割合も相当高いものと思われます。
#63
○広中和歌子君 私がお伺いしたいのは、数字はおわかりにならなくても、一般に民間では自国製品を愛用するという傾向の方が強いということなのでございましょうか。つまり、わざわざ協定をつくった趣旨に反するというような傾向が日本にあるということなんでしょうか。
#64
○説明員(池田廸彦君) 実態的な調査をいたしたわけではございませんので確定的なことは申し上げられませんが、一般論といたしましては、民間機関の場合には、会社等の場合には、これはコマーシャルコンシダレーションで、経費を最小限に抑えて利益を最大限にするということだと承知しておりますので、その場合には国産品先行というのが非常に強いということは必ずしも言えないのではないかと思います。もちろん、長年の取引の関係とかそういうものもありますから、簡単な論理一本で割り切ることはできませんけれども、やはりコマーシャルコンシダレーションが優先するのではないかと思います。
#65
○広中和歌子君 ということは、民間にJRあるいはNTTなどを開放した方がむしろ外国製品購入がふえるということになりますか。
#66
○説明員(池田廸彦君) 旧三公社の三承継法人につきましては、実はこの協定の対象として残すというときに事前によく御相談申し上げまして、御了解を得ております。それからまた、それぞれの監督官庁の了解と承認も得ております。さらに、この三承継法人とも民営化されたとはいえそれなりの社会的な責任というものを果たしていかれるわけでありますから、政府調達協定にのっとった行動をとるという点は十分に理解されておるものと思います。
#67
○広中和歌子君 ですから、その結果として外国製品を買うということにコミットする場合の方が多いのかどうかということ、それが問題なのでございます。
#68
○説明員(池田廸彦君) これはビジネスの判断でございますので何とも申し上げられませんけれども、少なくとも協定上の義務、すなわち内外無差別、それから基本的に競争入札、選択入札、それから一定の条件が満たされた場合に単一入札、こういう趣旨は十分に理解して行動されるものと確信しております。
#69
○広中和歌子君 ということは、民間ではコマーシャルインタレストというような言葉をお使いになりましたけれども、どちらかというとやはり国産品愛用の傾向が強い、特にグループ内での調達とか企業系列内での調達とか、そういう傾向が出てくるというようなことが考えられるということなんですか。
#70
○説明員(池田廸彦君) これは民間企業一般になりますと率直に申し上げまして何とも申し上げかねますが、系列内の調達ということにいたしましても、中長期の期間をとって考えればあるいは結果としては割り安になる場合もあるだろう、したがって、やはりそれぞれの企業におかれて収支決算の考慮に基づいて合理的とお考えになる判断を下されることだと思います。
#71
○広中和歌子君 それはおっしゃるとおりだと思いますけれども、ともかく非常に日本で内需拡大の中で、しかも外国製品を買ってほしいという諸外国からの要請がある中で、政府の調達というものが外国製品を買うということに非常に大きな比重を占めるということそれ自体が非常に問題ではなかろうかなというふうに私は感じたものでございますから、このような質問をしたわけでございます。
 ともかく、今通産省の方がおいでになっておりませんので、この問題はこのくらいにさせていただきまして、次に、フィリピンを初め東南アジアからいわゆるじゃぱゆきさんという形で呼ばれる現象につきましてお伺いさせていただきたいのです。
 いわゆる外国人女性が日本で性産業に従事する、あるいはされるということをじゃぱゆきさんというふうに呼ぶといたしますと、ここにありますのはフィリピンの新聞に書かれましたじゃぱゆきさんのことなのでございますが、一九八七年六月二十一日、二十二日、その前後にフィリピンの新聞には大きく取り上げられた事件がございます。
 それは、たまたまここにマニラスタンダードという新聞がありますので、ちょっと簡単に御紹介いたしますと、三人のフィリピン女性に絡むものでございまして、一九八六年八月末、レストラン等で働くという条件で三人のフィリピン女性が出稼ぎのために日本に行ったのですが、売春行為を強いられ、翌年二月に自殺を図って窓から飛びおりたのですが、死に切れず足をけがした。そういうことでございます。そしてその結果、ストップといういわゆる市民団体に保護され、そしてこの女性たちが三人、六月二十一日にマニラに戻ったという事件でございます。
 この実態につきまして外務省の方にお伺いいたします。
#72
○説明員(妹尾正毅君) お答えいたします。
 フィリピンにおきましては、今委員御指摘のケースを初めといたしまして、じゃぱゆきさんに関する報道がいろいろありまして、一番問題なのは、今のように非常に具体的な格好で出てくるのがあるんですけれども、私どもといたしましても、これは大臣も訪比されましたときにアキノ大統領に大臣みずからおっしゃったように、非常に日本にとっても問題だし、日比関係上も問題だと考えているわけでして、わかる限りのことをチェックしているわけでございます。
 ところが一番の問題は、例えば向こうでこういうふうなことで記者会見などが行われても、そういうことについて今度は日本側が事実を知りたいといって接触しようとすると、そういう記者会見をした人とも連絡がとれない、フィリピン政府を通じて情報をとろうとしてもとれないということが非常に多いわけでございまして、日本側で対策を進める上ではまず事実を知る必要があるわけでございます。それが非常にわかりにくいということで非常にむしろ困っているということでございます。
#73
○広中和歌子君 外務大臣は、この前、五月でございましたかASEANに御旅行なさいました帰途フィリピンに立ち寄られて、その件について恐らくアキノ大統領からお聞きになっていらっしゃるんではなかろうかと思いますけれども、どのような御見解、御感想をお持ちなのか、お伺いいたします。
#74
○国務大臣(倉成正君) ちょうど六月二十二日に私フィリピンに参りまして、アキノ大統領を表敬いたしまして、私の方からこの問題を持ち出しました。日本側としてもこの問題は非常に重要な問題であるので解決を具体的に真剣に考えております、日本側でも査証審査の厳正化等に取り組んでいるけれども、この問題解決にはやはり日本とフィリピン双方の協力が必要である、フィリピン側の協力も要請したいし、また本質的には本問題はフィリピンの経済が改善してフィリピンの雇用の機会がふえれば解決すると思うという率直な御意見を私からアキノ大統領に申し上げました。アキノ大統領は、フィリピンにおいても何ができるか検討中である、また現在日比間の事務レベルで進められている協議を継続していきたいという旨を御発言になりました。
 その後六月二十四日、マニラで開催された第一回の日比外交事務レベル協議で、在比我が方の大使館とフィリピンの側で、すべての関係当局との間の協議の場を設けることを合意いたしております。近々第一回会議が開催される予定でございまして、なかなか一遍に解決できない問題かもしれませんけれども、真剣にひとつこの問題に日本側としても取り組むし、アキノ大統領みずからが大変深い御関心を持っておられることでございますから、フィリピン側にもひとつ真剣に相互で御協力してこの問題を解決してまいりましょうということをお話し合いをしたというのが経過でございます。
#75
○広中和歌子君 なぜ売春をするかということでございますけれども、今倉成外務大臣が経済的な理由というようなことをおっしゃったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、どこの国でも法律とか協定で売春というものをとめることは需要がある限り不可能であろうと思うのでございます。しかしながら、日本が非常に今豊かになっている、それは世界じゅうに知られていることでございますし、特に円高の中で日本の円を稼ぐということがフィリピンの女性のみならず多くの男性にとっても非常に魅力的なものである。これは事フィリピンに限らず発展途上国の失業者、失業しなくても、自国に送金をしたいというようなそういう人たちがどんどんふえているということは事実ではなかろうかと思います。
 そういう実態に今後日本はどのように対応していくかというのが大きな問題ではなかろうかと思いますけれども、外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
#76
○国務大臣(倉成正君) ただいま先生の御提起になりました問題は、非常に本質的な、外国人労働者をどう受け入れるかという問題を非常に含んでおる問題でございますので、十分我々、単に一時的じゃなくて、基本的に方向を定めた上で対応しなきゃならないと考えておる次第でございます。
 仮にフィリピンの女性の方が日本に正式に来られたというような場合に、例えば看護婦さんとか美容師さんとか、あるいは事務のキーパンチャーであるとか――特に、私フィリピンのマカティ・メディカル・センターにちょっと体調を壊して二、三日いたことがございますけれども、フィリピンの女性の一つの希望は、看護婦さんになって、そして勉強して、そしてアメリカに行きたいというようなことを非常に希望しているということを知りました。また美容師さんとか、いろいろそういう正業と申しますか、そういう形で日本で勉強していただくということは非常にいいことじゃないかと思うのでございます。ただ、外国人労働者を大量に日本にどういう形で受け入れるかということになりますと、これは単にフィリピンだけの問題じゃありませんし、ASEAN諸国その他ございます。日本の国内の雇用の問題、またその他の問題ございますから、やはり基本的なスタンスをきちっとした上でないと、ただ受け入れるというだけのことでは問題をかえって複雑にすると思いますので、そういう問題についても勉強をさしていただいておるところでございます。
#77
○広中和歌子君 基本的な姿勢というお言葉でございましたけれども、大量に入れるのは望しくないとおっしゃいましたけれども、少数ずつ、つまりクォータを設けて外国人を受け入れていくというお考えは今まで出てきたことでございましょうか、またそういうことをお考えでいらっしゃいますでしょうか。
#78
○国務大臣(倉成正君) それじゃ政府委員から今までの経過を御報告申し上げます。
#79
○説明員(妹尾正毅君) それでは御説明申し上げますが、今御指摘のようなケースというのは単純労働力に該当するものがあると思うんですけれども、単純労働力につきましては、これは私どもよりかむしろ労働省の所管の問題でありますけれども、あるいは法務省にかかわる問題ですが、従来、単純労働力については原則として認めないというのがこれまでの方針になっているわけでございます。簡単に申し上げますとそういうことでございます。
#80
○広中和歌子君 それでは、先ほど外務大臣がおっしゃいましたような看護婦さんであるとか美容師さんであるとか、そういう人たちは単純労働者とは考えないという、別なカテゴリーで扱われる可能性はあるわけでございますね。
#81
○説明員(妹尾正毅君) 私からどこまでお答えすべきか、法務省の問題という点もあるかと思いますが、単純労働力ということで従来いろいろ話題に上がっておりますのは、むしろお手伝いさんのケースでして、美容師さんの場合どうか知りませんが、例えば看護婦さんですと、日本国内の看護婦としての資格の問題がございますから、日本の資格を持ってないと日本国内で働けない、研修はいいですけれども、働くことはできないとか、入国に関する問題以外にもいろんな問題があり得ると思います。
#82
○広中和歌子君 では今のことを法務省、労働省の方にお伺いさせていただきたいんですが。
#83
○説明員(佐藤勲平君) 今も妹尾部長からお話がありましたけれども、労働者の中には、簡単に分けまして単純労働者とそうでない労働者といいますか、二つのカテゴリーに大きく分けられるだろうと思います。
 単純労働者については、先ほども話がありましたけれども、原則として稼働のための入国というのは認めないという原則になっております。それからそれ以外のものにつきましては、日本の国内における需要の動向だとかその必要性だとかに応じて比較的弾力的に入国は認めるようにしておるところであります。ただ、今おっしゃられたような看護婦さんとかいうような場合は、国内法の問題もありますし、それから国内的な需要の問題もありますので、その点についてはまたそれぞれの
ケースについて慎重に考えながら入国を認めるということになるだろうと思います。
#84
○広中和歌子君 例えば看護婦さんである場合ですけれども、日本での資格ということでございますが、これは日本人でなければならないという規定はあるのでございましょうか、労働省にお伺いいたします。美容師でも結構でございますけれども。
#85
○説明員(廣見和夫君) 今先生のお尋ねの美容師の方等について何らかの国籍の制限があるかどうかということにつきましては、私の方から直接お答えするのが適当なのかどうかわかりませんが、一般的に申し上げまして、我が国の労働法関係ではむしろ国籍による差別はしない、国によって労働法関係の適用を異にするということはないというのが原則でございますので、例えば美容師さんにつきまして日本人でなければならない、日本国籍を有する者でなければならないということはないと思います。
 ただ、労働省といたしましては今の問題につきましてこのように考えております。基本的には、従来から、単純労働力を中心といたしまして我が国としては受け入れるべき情勢にはないだろうということで、これは閣議の了解もいただきましてそういう方針をとってきたわけでございます。現在のところ労働省といたしましてはそういう方針にのっとり、また今後のことを考えてみましても、いわゆる単純無技能労働力、こういう人たちにつきましては、いろいろと国内に与える問題、あるいはまたそういう人たちを受け入れることが相手国のためにもなるのかどうかいったような問題、いろんな観点から考えますと、やはり単純無技能労働力は受け入れることは適当ではないんではなかろうかというふうに考えております。
 ただし、いわゆる技術者あるいは高度の熟練の方々あるいはいわゆるビジネスマンと言われるような人たち、こういう人たちにつきましてはいろんな立場からまた別途考えられるべき問題であろう。基本的にはこのように考えておるところでございます。
#86
○広中和歌子君 例えば建築現場などで働く人とか、それからこれから老人ホームなどでいろいろな形のヘルパーさんというのが必要だろうと思いますけれども、そういう方たちは単純労働のカテゴリーに入るのでございましょうか。
#87
○説明員(廣見和夫君) 私どもいわゆる単純無技能労働力というふうに考えておりますが、厳密にそれが一体どの範囲までかということに個別に一つ一つの職種を取り上げてまいりますと大変難しい問題が出てまいるかと思います。それは入国をどのように考えていくかということになりますので、それとの関連でいろいろと個別に考えなければならないと思いますが、例えば建設現場で働くということで一般的に考えますと、ただ単に労務を提供する、何らかの経験は必要とするのかもしれませんが、高度の熟練を要しないような人であれば単純労働力としてやはり基本的にはとらえて考えていくべきものではなかろうか、このように思っております。
#88
○広中和歌子君 この解釈の仕方が非常におもしろい問題だと思いますけれども、アメリカでウーマンリブが盛んになりましたときに、専業主婦でございますね、それをいわゆる家事専従者とかそういうような言い方をせずに、家事技術者といったような名前で呼んだことがございました。ですから、例えばヘルパーさんとか、それから工事現場で働く人たちにもいわゆる建設技術者であるとか医療技術者とかさまざまな名前で呼ぶことは、これは解釈の問題ではなかろうかと思いますけれども、その背後にあるのは受け入れるかどうかという日本の姿勢ではなかろうかと思うのでございます。
 その点につきまして、留学生でしたら十万人までというような、ともかくこれから日本が国際化していく中で外国人を受け入れる、しかも留学生を受け入れるということに対しては非常に積極的でいらっしゃるわけでございますけれども、労働者を受け入れる、しかもお金を必要としている人たちを受け入れていくという、そういうことに対する日本の基本的な姿勢というものが今改めて問われなければならないんではなかろうか。今日本は大変に金持ちでございまして、寛大であることが許される立場にあるんではなかろうかと思いますけれども、その点について外務大臣改めて。
#89
○国務大臣(倉成正君) 今いろいろ関係各省からお話がございまして、日本の雇用情勢から考えて単純労働者を受け入れる状況でないというので消極的な態度を今までとってきておるということは、今までお答えしたとおりでございます。
 ただ、先生お話しのように、国際国家日本としてこれからどう対処していくべきかという問題になってくると、やはり検討に値する問題である。したがって、国内事情を十分踏まえながらどういう形でそういう問題に対処するか。私は基本的な非常に哲学が要るということを申し上げたのはそういう意味で申し上げたわけでございますから、十分論議を尽くした上で対応を決めるべきだと思っておる次第でございます。
 現に、私の郷里は長崎でございますけれども、長崎の離島には韓国あるいは台湾、そういう方のお医者さんが非常に多いわけでございまして、医師過剰と言われながら、何というか日本人のお医者さんがいらっしゃらないというような事情もございます。ですから、やはりいろいろな、全体として、国際国家日本、転換期にある今日の世界の中で日本の立場ということを十分真剣に検討して結論を出すべき問題であろうかと思います。
#90
○広中和歌子君 一番最初に私は外務委員会で同様の質問をさせていただいたわけでございますけれども、そのときに、例えばドイツとかフランスとかといったヨーロッパ諸国を例に挙げられまして、単純労働者を受け入れたことが結果として非常に後から社会的な問題になっているというようなことを例に挙げられたわけでございます。これは日本人を説得するには非常にいい説得力のあることだと思いますけれども、しかしながら、日本のこれまでのやり方というのは非常に効率主義でございまして、それでは日本は世界に友達をつくり得ないんじゃないか。そういう立場も考慮いただきましてこの問題を前向きに検討していただきたいと、外務省だけではなくて労働省、法務省にもお願いいたしまして次の問題に移らせていただきたいと思います。
 次は、小規模援助についてなんでございます。
 私は一年前に政治の世界に入らせていただいてから、ブラジルとかそれからエジプト、フィリピン、台湾など、いわゆる日本のすぐ後に続くさまざまな国々を訪問させていただいて、それなりに勉強してきたわけでございますけれども、ODAの中での大型援助というものは金銭的にも、そして規模の点でも非常に効果も上げているし、非常に評価してよろしいことでございますけれども、しかし要請ベースによらない現地のニーズに合った援助の必要性というものも痛感したわけでございます。つまり、火事場の見舞い金と言っては語弊があるかもしれませんけれども、非常にタイミングのいい援助、それからパーソン・ツー・パーソンというんでしょうか、個人的な心の通ったというんでしょうか、相手が困っているのを見て、そしてすぐに対応するといったような、そういった金一封的な援助とか、それから一方では、現地でしかわからない、しかし現地の方では気づかないような、こうして差し上げられれば非常にいいんじゃないかと思われるような援助もあるわけでございます。
 そういうような種類の援助というのは、いわゆる日本の援助の基本でありますところの要請ベースによる援助のカテゴリーには入らないわけでございますけれども、金銭的には非常に小規模であっても効果は抜群というのがこういった種類の援助ではなかろうかと思いますが、その点についてお伺いいたします。
#91
○国務大臣(倉成正君) 今広中先生のおっしゃった点は、もう全く私も同感でございまして、六十一年度から二億円、そういう機材、大体金額的には百万から一千万ぐらいのものをイヤマークいた
しまして、別枠にして各国にいろいろやっているわけでございます。
 例えば、今度バングラデシュに私参りましたけれども、ここではワードプロセッサーとかそういうもの、それから先生今お話しの、おいでになりましたフィリピンではハンドトラクターとか噴霧機であるとか農業用の機材、それからブラジルでは公害用のPCBの防止の機材、あるいはインドネシアでは漁業用の資材、スリランカでは医療の機材、タイでも農業用のそういうちょっとした発電機とか電気ドリルとか、それからバヌアツでは大変原始的でありますけれども、すきとかまさかりとかハンマーとか、そういうきめ細かい現地のニーズに合うもの、やはり機動的に対応できるということが必要ではないかと思うわけでございます。
 どちらかというと、対外援助をやりますときには国家的なプレスティージをということで、非常に大規模なプロジェクトというのがその国の指導者はとかく希望してまいりますけれども、やはり地についた、現地のニーズに本当に合ったもの、例えば教育用の機材で映写機であるとか、いろいろなそういう問題をもっときめ細かく、現地のニーズに合ったものをやるべきだということをかねがね申しておりまして、そういう方向で今いろいろこの問題に取り組んでいるところでございます。
#92
○広中和歌子君 今、御説明を大変ありがたくお伺いしたわけですけれども、主に機材が多かったようでございますけれども、金一封といったような、つまりあちらにお任せしてそして自由に使っていただく、例えばNGOのボランティアグループなどに差し上げて、そちらで有効な形でお使いくださいといったような援助もあり得るんでしょうか。含まれているんでしょうか。
#93
○政府委員(英正道君) 現在の援助の仕組みの中では、現金を供与するというのは、災害が起きたときに、一番必要なものをどうぞこれで買ってくださいということで、現金を数万ドルから数十万ドルというくらいの規模で供与するということのみでございまして、今広中委員の言われたような、現地の在外公館が一定の金額を持っていて、粋なら枠を持っていて、仰せられたようなときに金を出すというような仕組みがあると確かに非常に有効な場合があると思うんです。現地の在外の大使からもそういう意見具申が参るわけでございますが、他方同時に、なかなかその執行面の点から、適正に管理するという点からの問題点等ございまして、現在までのところそういう制度はまだできていないのでございますけれども、大変貴重な御示唆をいただいたと思っております。今後引き続き検討させていただきたいと思っております。
#94
○国務大臣(倉成正君) ちょっと今の点で。例えば今度私バングラデシュに参りまして、これは六十年来の大水害でございます。そこで食糧援助をしてほしいということでございまして、私の滞在中に、経協局長その他非常に徹夜で作業いたしまして、とにかく十万トンの食糧援助をするということを決定して先方に通告したわけでございます。もちろん正規の手続は少し後になりますけれども、そういう方針を決めて先方にこういたしますということを申し上げました。したがって、そういう意味では機動的にニーズに合うことをやらしていただいておるわけでございます。
#95
○広中和歌子君 管理の面の難しさということをおっしゃったわけでございますけれども、難しさを強調する余りに、そして多少の、何というのでしょうか、正しくない使われ方ということを恐れるために、せっかくいいアイデアがあっても使われないというのでは大変もったいないような気もいたします。
 それから、ODAの援助の総額というのはどのぐらいなんでございますか。それに対してこの小規模援助というのはもう本当に微々たるものだろうと思うのでございますが、ちょっと総額を。
#96
○政府委員(英正道君) 昨年の、一九八六年のODAの総額は五十六億ドル強でございます。
#97
○広中和歌子君 仮にその一%を使いましてもいろんなことができるんじゃないかと思うのでございますけれども、そういったような自由な予算の取り方というのは官庁では不可能なんですか。
#98
○政府委員(英正道君) もちろん不可能ということはないのでございます。現に六十二年度の補正予算で百四十五億円の、これは三年にわたってアフリカに五億ドルのノンプロジェクトの無償援助を供与するということを政府が決めまして、その枠内で補正予算をいただくというようなこともあったわけでございます。これはまさに相手の国が最も必要とする輸入。先般ケニアの大蔵大臣の一行が東京に見えられてお話をしましたけれども、例えばもう石油製品が買えなくて車が動いていません、工場がパーツがなくて動いていませんと、そういうことを訴えられまして、日本がそういうタイプの援助を始められたということは大変アフリカの需要には合致しますということで喜ばれたわけでございますので、そういう方向に動いていきたいと思っておるわけでございます。
 ただ、仰せのような非常に少額のものということについては、他方同時に、ある程度実施する場合に一つの基準、その国の中においてもAという人はもらったけれどもBという人はもらわない、なぜだという話が当然出てくるわけでございます。また今度は、Aという国、Bという国、Cという国、それぞれの中でやはり実施のやり方というものがばらばらになるということもまた問題がありますものですから、実は問題意識としては前々からございました。
 私ども、大使会議を開きますと、常に大使から異口同音に出てまいりますのが、ほかの国の例に倣って日本もそういう非常に適切に、効果的に、しかも非常にスピーディーに使えるような基金というものを現地の公館に置くことができないかということを実は訴えられるわけでございます。検討したこともあるわけでございますけれども、これまでのところ力不足でまだ実現していないということでございますので、実施体制の問題もありますけれども、いろいろ勉強してそういう方向に持っていくように努力はぜひしたいと思っております。
#99
○広中和歌子君 ぜひお力をおつけになって実現していただきたいと心からお願いいたしまして、質問を終わります。
#100
○伏見康治君 倉成大臣にプライベートなことから申し上げて済みませんが、昨日全くたまたま同じ食堂に居合わせまして、大変失礼いたしました。
 その際御紹介を申し上げましたベーカーさんというのが、ICSU、インターナショナル・カウンシル・オブ・サイエンティフィック・ユニオンズの事務局長を長らくやっておられた方でございまして、図らずもきょう実はICSUについていろいろ大臣の御意見を伺いたいと思って、出るその準備として甚だ都合のいい出会いになりました。大臣にはこれを機会にひとつICSUに対する関心を少し強めていただきたいと思っておるわけでございます。
 ICSUというのは、国際的な意味での日本学術会議みたいなものでございます。御承知と思いますが、私は何年か前に日本学術会議の会長を五年ばかり相務めまして、日本学術会議というのは内外に対する科学者の代表ということになっておりまして、したがって、日本学術会議のやります仕事の相当の部分というものは外国の学者とのおつき合いというところにございます。そして、もう非常に古い昔からICSUという国際的な学術会議に日本学術会議として参加して、国から予算をいただいてそれに一応のコントリビューションをしております。
 もっとも、日本学術会議が国の機関であるか民間の機関であるか非常に不明確なことがございまして、議論をすれば限りないんですが、一応半官半民の機関というようなことで御理解いただいて、ICSUの方は完全に民間団体、要するに科学者の集まりであって国の集まりでは全然ないわけなんです。それをサポートするいろんな公の機
関はございますけれども、集まり自身としては民間人の集まり、科学者の集まり。
 それはちょうど、アメリカのナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスというのがございますが、これも実は法律で設立されたものらしいんですけれども、しかしこれは本来の意味のアカデミーでございまして、したがってそのメンバーは完全に個人としての科学者の集まりということになっております。もっとも、ナショナル・リサーチ・カウンシルというのが同じ建物の中にございまして、そちらの方はお役所の金で動いているようでございます。日本学術会議はその点、アメリカのように科学者の独自の組織というものとそれからお役所の方の組織というものの区別がいささか不明瞭でございまして、そのために会長といたしましては大分苦労させられたことを思っておりますんですが、一応ここでは半官半民であるというふうに御理解願いたい。そして純民間の世界的な組織に日本として参加しておりますということをまず御承知おき願いたいと思います。
 そのICSUというのは、実はそのほかにそれぞれの専門の学問、例えば物理学なら物理学の国際会議、国際ユニオンというのがございます。インターナショナル・ユニオン・オブ・ピュア・アンド・アプライド・フィジックス、略称IUPAPと申しますが、そういう学術連合というのがたくさんございまして、それをいわば総括している立場なんですね、ICSUというのは。それで、やっております仕事は、個々のユニオンでございますと、例えば今京都でやっております低温物理学の国際会議であるとか、あるいはことしの春ごろやりました素粒子の方のPANICであるとか、いろんな国際会議をそういうところが主催しているわけですが、日本でやる場合には、もちろんそれに参加しておる日本側、特に日本学術会議が責任を持って地元としてのサービスをいろいろしておるわけでございます。
 そういうことをやるたびにいつも問題になりますのは、おいでになる方に対して外務省がビザをお出しにならないということのために、非常に苦労させられるわけでございます。そのICSUの非常に根本的な原則といたしましては、フリー・サーキュレーション・オブ・サイエンティスト、科学者の自由な交流ということをもって非常な大きな原則であると考えているわけです。つまり、性別であるとかあるいは人種別であるとか、あるいは宗教上の信念であるとか、あるいはその他のいろいろな科学以外のことに関することについては差別しないで、科学者というものは自由に国境を越えて交流すべきものだというのが大原則でございまして、そしてICSUはそれでずっと闘ってきたようなものでございます。というのは、いろいろな国が必ずしも自由に科学者の交流を許してくれるわけではございませんでして、ビザ問題でICSUは相手の国とけんかをしなけりゃならない羽目にしばしば陥っていたわけです。
 この際特に申し上げますが、特にそういう意味で悪い国はソビエトでございまして、ソビエトは気に入らない科学者に対してはビザを出しませんので、それにプロテストすることが非常に繰り返されてきたわけで、まあそういう意味から申しますとICSUは全体としては西欧的なんではないかと思います。
 そういう立場でICSUというのが仕事をしてきたということをまず申し上げておきたいのでございますが、この際大臣に、日本学術会議及びICSUについて、今私が申し上げましたようなお考えであるかどうか、ちょっと…。
#101
○国務大臣(倉成正君) 昨日たまたま伏見先生の御紹介でドクター・ベーカーにお目にかかる機会を得まして、大変弘光栄に存じた次第でございます。
 先生今お話しのように、国際学術交流は、学術の振興に役立つとともに、諸国民間の相互理解の促進にも資する意義を有しております。また、これを一層促進を図っていくということが非常に大切だと考えておる次第でございます。
 先生が今御指摘のインターナショナル・カウンシル・オブ・サイエンティフィック・ユニオンズ、いわゆるICSUの問題につきましては、一九三一年の創設以来世界最大の国際的な学術団体として傘下の国際学術連合の活動の助成あるいは国際会議、シンポジウムの開催を通じまして国際レベルの学術研究の連絡を図るとともに、ICSU単独で、あるいはユネスコ等の国際機関と共同で大規模な国際合同研究計画を実施し、多大の成果を上げていると私伺っておるわけでございます。したがいまして、我が国としても、このICSUが国際学術交流の促進に果たす重要な役割にかんがみまして、今後とも可能な限りの協力を行っていくべきものと考えておる次第でございまして、学術会議につきましてもまた同様の考え方を持っている次第でございます。
 また、ビザの問題の詳細については、私も細かく承知しておりませんので、必要があればまた政府委員から御報告いたしたいと思います。
#102
○伏見康治君 もう一つ、国際団体について申し上げなくちゃいけないんですが、ユナイティッドネーションズ、国際連合は政府が寄り集まってできている機関で、先ほどのICSUの全く民間人の集まりと大分意味が違う。
 日本は政府としてもちろん国際連合に参加しておる。終戦以来日本の外交上の一つの柱として国連主義ということが言われておりました。多分現在でも私はその国連主義という立場が守られてきていると思うのでございます。そのせいだろうと思うんですが、中曽根政府は大変アメリカと仲よくなすっているようでございますけれども、そのアメリカとイギリスが反対している国連の決議がございまして、日本はそれに賛成しているわけでございます。そういう日本政府の建前、つまり一方では巨大国に対して仲よくするということをやる一方、しかし同時に世界全体のことも眺めてそのバランスのとれた外交政策をとっておられる。決してアメリカ一辺倒ではないということを示しておられるのは私は大いに歓迎したいのでございます。
 ただ、今私が問題にしている点では、実は大変威張っているわけでございまして、国連が南アフリカのアパルトヘイト問題に対して非常に強いプロテストをしておりまして、そしてそれの実際上のいわば懲罰動議的なことがございまして、いろいろな方々の出入りを阻害するような決議がされているわけです。科学者の自由交流という、先ほど申し上げましたICSUの立場と衝突するようなことが行われているわけでございまして、私はそのアパルトヘイトというのは大変けしからぬことだと思いますので、それに対して敵に懲罰を加えるということは妥当なことだと思うんです。しかし、それを一つのルールにしてしまいますと、科学者の交流はいかぬといったようなルールにしてしまいますと、これは先ほどのICSUの方で絶えず叫ばれている原則と真正面から衝突することになるわけでございます。
 二つの原則を外務大臣としてはどういうふうにお裁きになる御方針であるかという点をお伺いいたしたいと思います。
#103
○政府委員(松田慶文君) 若干実務にかかわりがございますので、まず私から御説明させていただきたいと存じます。
 ただいま伏見委員御指摘のとおり、国連尊重、人種差別反対という普遍の原理に対して私どもは忠実でありたいと思っておりますし、またICSUを通ずる科学者の自由交流という確立された慣行及び運用も尊重するという原則を持っております。したがいまして、ICSU主催ないし共催の会合に世界の科学者の方々がお見えになるときは、最大限度の努力を払いましてその入国を可能とならしめて、現に運用してきております。
 私どもは、実務的に何とか南アの人も含めての自由往来を確保しつつ、しかしながらその運用には一定の条件を付して、国連のもとでの人種差別反対の原則をも守りたいという、非常に双方を見合いました運用を果たしてきている次第でございます。御指摘の二つの異なった原則を前にして、このような実務的な原則を守りつつ自由往来を確
保するという措置をとっておりますことを御理解賜りたいと存ずる次第でございます。
#104
○伏見康治君 今の御説明で大体満足したいと思うのでございますが、ただ、ICSUのフリーサーキュレーションの原則というときに、アパルトヘイト懲罰の原則というのと少しニュアンスが違うような感じがするんです。私は原則としてはフリーサーキュレーションの方が非常に高い原則だと思うんですね、こういう問題に対しては。それで、ICSUのフリー・サーキュレーション・オブ・サイエンティストの意味合いをもっとそしゃくして、本当の価値というものを考えていただきたいと思うのでございます。
 フリー・サーキュレーション・サイエンティストというのは、日本のような単一民族の国にとっては実はそれを大事にしなけりゃならぬという機会が少なかったと思うんですが、主としてこれはヨーロッパで育った思想だと思うんでございますね。目の前に林健太郎さんという西洋史の大家がおられるのでちょっとぐあいが悪いんですが。
 ことしはニュートンのプリンキピアという、要するにあらゆる自然科学の最初の古典と言われる本が出でちょうど三百年になりまして、いろんなところでお祝いがある年なのでございます。
 このプリンキピアというのは、英語で書かれているんじゃなくてラテン語で書かれているわけですが、ラテン語というのはその当時のヨーロッパ語であって、つまりドイツであろうとフランスであろうとイギリス人であろうと、みんなに共通な言葉としてラテン語というものが学問の上で採用されていたんだと思うんですね。つまりヨーロッパの学問というものは、国別に育っていったんではなくて、ヨーロッパ全体の文化として育っていったわけです。ですから、学問というものは本来国境を越えたものであるという思想がヨーロッパでは歴史的に育てられてきたと思うんですが、そのまた思想があったためにヨーロッパで私は自然科学が非常に発達したんだと思うんです。ほかの東洋や中東あたりでも自然科学の芽生えになる個々のアイデアというものはたくさん生まれたにもかかわらず、それが科学という学問体系になっていくための条件がヨーロッパにはあったと思うのです。その条件の一つは、国境を越えて自由に学問をお互いに交流したというところに根があると私は考えているわけです。
 その証拠になる話を、わかりやすいお話を一つ申し上げますと、デービィーという有名な化学者が、ロイヤルインスティチューションをつくった方でありますが、その方が英仏戦争の真っ最中にパリのアカデミーフランセーズを訪問しておられるという歴史的事実があるわけです。ふだんならともかくとして、戦争している最中に戦線を通り越してアカデミーの会議に参加しておられるという歴史的事実がございます。これは実は私は本で勉強したんではなくて、ICSUの会長をしておられたことのあるイギリスのケンドルーさんという方と問答をいたしましたときにケンドルーさんから教えられたことなんでございます。
 そのほか例を挙げれば幾つもございますが、例えばもっと近いところで申しますと、第一次大戦争の終わり近く、アインシュタインが一般相対性原理を唱えました。あれだけの大戦争をしている最中にアインシュタインのこの理論はたちまちイギリスの天文学者エディントンのところに届きまして、エディントンはその実証のために直ちに日食の観測に出かけて、太陽のそばを通る光が曲がるということを実証して見せたわけですね。
 つまり、学問というものは、戦争している最中にも国境を越えてお互いに連絡するということによって非常な発達を遂げてきたという僕は証拠があると思うんです。ですから、ICSUの方々が、特にICSUの主要な部分は結局ヨーロッパ人、いわゆる先進国の方々が多いということにもよると思いますけれども、その国境を越えて自由な学者の交流をするということが科学というものを育て上げてきた。これは科学を育てる上において非常に大事な条件だと私は信じますので、先ほどのフリーサーキュレーションの原財をアプリシエートなさる大臣のお言葉は大いに歓迎いたしますけれども、まだ歓迎の仕方が足りないのではないかという感じを受けますので、もう一遍大臣からその点を確かめたいと思うんです。
#105
○国務大臣(倉成正君) 大変伏見先生からいろいろな事例を御提示になりまして、貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございました。
 私どもは、先生のおっしゃる精神を体して、これから現実問題としてはいろいろな問題が起こるかもしれませんけれども、基本的にはただいま伏見先生のお話の精神を外しまして、これから科学のフリーサーキュレーションという問題について取り組んでまいりたいと思うわけでございます。
 アインシュタインのお話が出ましたけれども、アインシュタインはダートマス大学にしばらくいたこともございまして、そういうことでずっと世界じゅういろいろ交流がされているという事実も私もよく承知しておりますので、そういう意味から、先生のただいまのお話は十分肝に銘じて我々も勉強さしていただきたいと思います。
#106
○伏見康治君 ありがとうございました。これで終わります。
#107
○委員長(森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#108
○委員長(森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#109
○矢田部理君 まず、この政府調達に関する協定を改正する議定書についてでありますが、調達契約の最低価額を下げられましたですね、その経緯と根拠を簡単に御説明ください。
#110
○説明員(池田廸彦君) これまで十五万SDRであったわけでございますが、協定の規定により、この引き下げも含めて検討するようにということになっておりまして、これが今度の議定書交渉のそもそもの発端でございます。一部の国は非常に大幅な引き下げを主張しました。しかしこれに対してはかえって事務の煩雑性が増すという主張もございます。そこで両者の主張を折衷いたしまして、結局十三万SDRということで落着したわけでございます。
#111
○矢田部理君 あわせて、今度の改正では、産品の購入だけではなしに借り入れも含めるということで適用範囲を拡大されたと思われるわけでありますが、これらの諸措置によって貿易の拡大ですね、日本の政府調達がどのぐらいふえるのか、どんな影響が出てくるかということについて概括的にお示しをいただきたい。
#112
○説明員(池田廸彦君) できるだけ私どもといたしましても計量的な評価を試みたわけでございますが、残念ながら変数が多過ぎまして満足のいく結果は得られておりません。ごく概略のめど程度の話でございますけれども、十五万SDRから十三万SDRへの限度額引き下げに伴い、おおむね五%程度の増加が見込まれています。あと、利益の方は余りにも不確定要素が多くてちょっと計量化できません。
#113
○矢田部理君 主体となる政府ですが、この政府の中には依然として三公社も入っておるというふうに聞いておるわけですが、国内的には民営化してもう少し自由闊達にやれるようになっているのに、国際的にはまだ民営化していないということによってどんなブレーキが三公社等にかかることに、三公社じゃなくて今は民間会社でありますが、その辺はどんなふうにお考えでしょうか。
#114
○説明員(池田廸彦君) ブレーキという意味が必ずしも私十分に理解できませんけれども、民営化の目的に何らかの支障があるかという意味でございましたらば、それはございません。これは今までどおり外国産品の供給者に対して自由公正な競争機会を与えるという趣旨でございまして、これは当然のことながら、それぞれの民営化された機
関が自分で考えて行うべき行動と完全に合致するものでございます。
#115
○矢田部理君 全く関係がないということもないでしょう。例えば民間会社ならば随意契約だっていいわけだし、とりたてて入札制度をこの基準に従ってやらなきゃならぬという仕組みにはなっていないわけだから、やっぱり何らかの影響があるんじゃありませんか。
#116
○説明員(池田廸彦君) 協定上も一定の条件のもとに随意契約を行うことが認められております。確かに協定の適用が全くない場合に比べれば、工事の手続でございますとか、あるいは今御指摘のありましたように一定の条件の場合にのみ随意契約が認められる、そういう点はございます。しかしながら、民営化されたとは申しましても、三つの会社いずれもそれなりの社会的な責任を有する機関でありまして、この三機関を残すに当たりましてはそれぞれの機関に十分に相談いたしましてその了承を得ておりますし、監督官庁の了解も得てこういう措置をとったわけでございます。
#117
○矢田部理君 もう一つの日加租税条約について一点だけ伺っておきますが、今度の条約の改定によって何かプラス効果が日加間の貿易とか経済関係について出てくるようなことがあるんでしょうか。あるとすればどんなことでしょうか。一点だけ伺っておきたいと思います。
#118
○政府委員(柳井俊二君) 現行の日加租税条約は、御承知のとおり昭和三十九年に作成されたものでございまして、条約の締結以来二十年以上もたっておりますので、内容的に古くなっておるわけでございます。そこで、OECDモデル条約及び最近我が国が締結いたしました条約例を踏まえまして現行の条約の改正を行った次第でございます。
 この新条約におきましては、条約の対象となる人的範囲を拡大いたしまして、また用語の定義の整備、あるいは譲渡所得、不動産所得等について新たな独立の条項を設ける、あるいは芸能人等に関しまして政府間の特別の計画に基づいた文化交流につきましては免税をするというような措置をとりましたほか、利子及び使用料に関する源泉地国での限度課税率を一五%から一〇%に引き下げるというような措置をとっているわけでございます。要するに、全般にわたりまして最近の租税条約のより改善された規定を取り入れておりますので、これによりまして我が国とカナダとの間の二重課税の回避等の制度がさらに整備されまして、その結果、両国間の経済交流あるいは文化交流等の交流が一層促進されるというふうに期待しております。
#119
○矢田部理君 条約関係は結構でございます。
 そこで次のテーマであります。東マレーシアのサラワク州というところで森林の伐採問題をめぐって現地で大変なトラブルが起こっておりますので、それについて伺いたいと思います。
 そこの原住民、先住民族の人たちが三月以来半年近くにわたって座り込みをして道路封鎖をして、森林の破壊をこれ以上進めないでほしい、やめてほしいというようなことがあるわけですが、外務大臣御存じでしょうか。
#120
○国務大臣(倉成正君) 承知いたしております。サラワク州においてそういう事件が起こっていることは承知しております。
#121
○矢田部理君 ここにその現場の写真がございますから、ちょっと見ていただければと思います。
 サラワクだけに限りませんで、国際的に見ましても熱帯雨林が急速に破壊をされて砂漠化していくという深刻な状況があるわけでありますが、その重要な事例としてサラワク問題をきょうは取り上げてみたいと思うのでありますが、どうしてこんなことが起こったか、外務大臣としての認識を伺いたいと思います。
#122
○政府委員(英正道君) 本邦の企業がマレーシアの企業と一緒になって現地で木材の伐採輸出権を獲得してその事業が行われている。その結果、その州政府から伐採が認められた地域の中に住んでいる住民について問題が起きている。それでそういう抗議活動が起きてきた。こういうふうに基本的に理解しております。
#123
○矢田部理君 私の調査したところ、あるいはいろいろ聞いたところによりますと、こういう木材の伐採をやる、そのための林道をつくるというようなことになりますと、その山の中に住んでいる先住民族の人たちに環境の面でもそれから暮らしの面でも極めて深刻な影響を与えるにもかかわらず、ほとんどそれらの人たちと接点のないまま、意見も聞かず、状況調査もしないままこの種事業を進めている。その結果森林が破壊をされる、生活の場を失うというようなことで非常に大きな反発が生まれていると思うのでありますが、それについて、特に今度の場合にはJICAの融資問題なども絡んでおりますので、JICAの方から伺いたいと思います。
 JICAはこの林道の建設に二億の融資をしたということでありますが、どんな経過だったんでしょうか。
#124
○参考人(山極榮司君) 先生御指摘のリンバンの林業開発協力事業の概要にかかわる点でございますが、これは、マレーシア国のサラワク州リンバン省におきまして、本邦企業が現地合弁企業を通じまして伐採、製材、単板製造の事業を四十九年から行っているわけでございます。伐採地区につきましては、これはリンバン川の両側の約十八万五千ヘクタールでございますが、この地域は州政府の所有地でございまして、合弁企業は州政府の開発計画等に基づきまして、先ほど局長からお話しのように、伐採輸出権を与えられておるわけでございます。
 昭和五十五年に丸太の運搬を、架線、いわゆるケーブルでございますが、これを計画しましたところ、リンバン省から、リンバン川の上流に居住するイバン族それからケラビット族、プナン族などの交通なりあるいは物資の運搬などの便に供するために、道路とか橋梁の建設の要望が出されたわけでございます。本邦企業あるいは合弁企業といたしましては、地域開発とか公共性等を考慮しましてこの要望を受け入れて、その所要資金の融資を当事業団に申し入れてきたわけでございます。
 JICAといたしましては、今お話しの現地住民がそれまでの危険を伴う河川利用の交通から解放されるということもございましたし、それから州政府などによる行政サービスの充実ということも図れるだろうというふうなことから、住民の福祉向上に貢献するという点、それから本体事業に日本輸出入銀行の融資があるというようなことから、我が方、JICAの融資条件にも妥当するということもございまして、五十七年の五月に融資承諾を行ってきたわけでございます。
 なお、この対象事業は道路約二十九キロと橋梁一基でございます。
#125
○矢田部理君 国際協力事業団法によりますと、確かに一定の条件のもとでJICAとして融資措置が講じられることはわかりますが、その根拠条文を見てみますと、二十一条でしょうか、本体となる事業がなければならぬわけですね。この本体となる事業は何でしょうか。その本体となる事業に附属する、あるいは関連する施設ということになっているようでありますが、本体の事業は何でしょうか。
#126
○参考人(山極榮司君) これは輸銀が融資をしております道路ということになります。
#127
○矢田部理君 二十一条の三号に、「次の業務を行う」ということで業務の内容が書いてあるんですが、前段は、「住民の福祉向上のための文化、交通、通信、衛生、生活環境等に係る施設の整備事業」と書いてあり、後段に、「農林業若しくは鉱工業に係る開発の事業」と書いてあるわけです。そして二つをまとめて開発事業、事業本体というふうに言っているのではないかと思われますが、今度の融資の対象となる開発事業の本体は前段にかかるんでしょうか、後段にかかるんでしょうか。
#128
○参考人(山極榮司君) これは関連する事業でございますから前段でございます。
#129
○矢田部理君 前段にかかっている。
#130
○参考人(山極榮司君) はい。
#131
○矢田部理君 そうしますと、先ほど言われたリンバンの林業開発事業ということではないわけですか。
#132
○参考人(山極榮司君) これは林業開発に関連する施設ということになります。
#133
○矢田部理君 ですから、関連施設の本体になるのは何かと聞いているんです。それはリンバンにおける林業開発事業じゃないんですか。
#134
○参考人(山極榮司君) そうでございます。
#135
○矢田部理君 そうしますと先ほどの答えと違うじゃありませんか。
#136
○参考人(山極榮司君) 輸銀関係の本体事業と申しますのは、これはその地域の林木の伐採等の事業をやっているわけでございまして、その林業の搬出するための道路というのが本体事業ということになるわけでございます。それにJICAの融資は相関連をするという意味での関連整備事業、こういうことになるわけでございます。
#137
○矢田部理君 少しおかしくありませんか。全体として林業の開発をやっている。その林業開発が本体事業ならわかりますよ。そのための道路ということなら位置づけはわかりますが、林業開発をやるに当たって別の道路がある、その道路が本体事業で、その道路に延長する道路が附帯事業、附属事業だというのは少し位置づけがおかしくありませんか。
#138
○参考人(山極榮司君) ちょっと私の御説明が悪かったわけでございますが、これは林業開発に関係する林道建設に付随する生活道路というふうに申し上げた方がいいと思います。
#139
○矢田部理君 そうすると、本体事業は何ですか。もう一回聞きます。
#140
○参考人(山極榮司君) ですから、林業開発に関係するその林道建設というのが本体事業になるわけでございます。
#141
○矢田部理君 それがおかしいと言っているんですよ。林道そのものは目的じゃないんでしょう。リンバンの林業開発事業が本体事業で、みんなあなた方の文書もそう書いてある。林道はむしろその本体事業に附属する施設なんだ、道路なんだ。その附属物を本体に持ってきて、今度の融資はそのまた附属だという位置づけは問題じゃありませんか。
#142
○参考人(山極榮司君) 林道というのは、先生今御指摘のように、ある意味では林業開発に付随するという御指摘でございますが、私たちの理解は、林業開発に関係するという意味で、林道もいわゆる全体の林業開発の本体であるという理解をいたしておるわけでございます。
#143
○矢田部理君 じゃもう一点、同質の観点から。
 二十二条がありますね、事業団法の。二十二条によりますと、貸し付けをする場合には次の二項に当てはまらなきゃならない。つまり、輸銀とか海外経済協力基金とかの資金の貸し付けがまず本体事業にあること。そして、附属するこれからの事業についてはその種金融機関からの貸し付けを受けることが困難であること。この二つの条項に当たらなければあなた方のところは融資ができないと言っているんですが、これに当たると判断するんですか。
#144
○参考人(山極榮司君) そう判断しています。
#145
○矢田部理君 輸銀や基金がどうして貸し付けが困難だったんでしょうか。
#146
○参考人(山極榮司君) これは事業の性格からいいまして、ある意味ではリスキーといいますか、なかなか融資条件いかんによってはやりにくいということでございまして、そういう意味でJICAはソフトの条件を提示するという意味での融資をいたしているわけであります。
#147
○矢田部理君 物すごい超低利の融資なんですよね、JICAの融資というのは。〇・七五%。長期超低利の融資なんです。しかも、ここの道を開発して、本来これは林道です。リンバン社という伊藤忠との合弁会社がその奥にある山の木を切り出すための搬出路じゃありませんか、基本的な性格は。それを今言ったようなまやかし的な理屈をつけて、本体事業が別の私道だ、それに附属する道路がこれだというようなことで融資をするのは事業団のあり方として適切じゃないんじゃありませんか。大変融資に問題があると私は感じますが、いかがでしょうか。
#148
○参考人(山極榮司君) 先ほど申し上げましたように、この林道はその前段階としての林業開発ということと相関連をいたしておりますので、それが本体事業というふうに理解をし、JICAの融資につきましては、それに生活道路的なものを考慮してその道路をつくったという意味でございます。
#149
○矢田部理君 それは少しく強弁ではございませんか。
 あるところまでは私道として木材を伐採する会社が材木を運搬するためにつくった。その先はJICAの超低利のお金でつくらせる、そして実際には林道として使用する。ところがその附属施設のための融資には本体事業に融資がなきゃならない。ところが本体事業である木材伐採の事業には輸銀その他の融資がつけられていない。そこで、本体事業ではない、本体事業を実行するための私道たる林道に輸銀から金を出させる。それを本体事業にして、これを関連施設とか附属施設にした。少しごまかしが過ぎやしませんか。
#150
○参考人(山極榮司君) これは先ほど申し上げましたように、林道はそれに先行する輸銀関係の融資がなされておるわけでございまして、この林道はそういう意味ではその林業開発の一環的な事業であるという理解をいたしておるわけでございますので、それに対してJICAとしては生活道路的なものを敷設してきた、こういう経過になっておるわけでございます。
#151
○矢田部理君 ここはそれじゃ森林伐採会社などなどは林道として使っていませんか。大変生活道路を強調しますが、使っていませんか。
#152
○参考人(山極榮司君) それは林道としても使っております。
#153
○矢田部理君 主たる理由は林道として使っているんじゃありませんか。現地の人なんかほとんど使っていませんよ。もともと狩猟民族とか山を移動して焼き畑などをやっている人たちですから、砂利道なんかは足が痛くて歩けない。交通手段は舟で移動しているわけです。私企業のための林道をつくるのをあたかも生活道路であるかのごときポーズを装ってつくっている。しかも、そのお金を私企業が負担するのではなくてJICAが超低利で負担をさせられる。こんなことが行われているわけで、私たちはちょっとこれは問題があり過ぎると思うのでありますが、次の問題に入ります。
 そこで、そこに融資をするに当たってJICAとしては事前調査をしましたか。
#154
○参考人(山極榮司君) やっております。
#155
○矢田部理君 事前調査というのは、何のために、どういうことを対象にしてやるんでしょうか。
#156
○参考人(山極榮司君) 融資前調査につきましては、貸付対象事業の持っておりますいわゆる国際協力効果あるいは貸し付けにかかわります債権の保全等に関しましてこの事前調査を行っているわけでございます。マレーシアのサラワク州リンバン開発事業に対する調査は、そういう意味で五十六年十一月に実施したわけでございます。
#157
○矢田部理君 調査は、事前調査がありますね。それから事後調査も行っているでしょうか。
#158
○参考人(山極榮司君) これは事前調査と、いわば私たちの方は中間調査というふうに申しております。
#159
○矢田部理君 その両調査報告書を当委員会に出していただけませんか。
#160
○参考人(山極榮司君) これは融資に関する調査でございまして、融資先の企業に関する情報等も記載されておりますので、外部に公表することは好ましくないということで、私たちの投融資関係の報告書はすべて秘報告書というふうにしまして公表をいたしておらないわけでございます。
#161
○矢田部理君 一般的に公表してないのはわかりますが、この種問題がいろいろ派生をしておりますので、問題点をやっぱりはっきりさせる意味で
ぜひ当委員会に出してほしいと思うんですが、いかがですか。
#162
○参考人(山極榮司君) これは、今申し上げたような理由で公表することはできないわけでございます。
#163
○矢田部理君 私企業の調査やりますな、返済能力とか借金の能力とかということについて。その部分を除いても、調査マニュアルによればかなりいろんな面の調査をしなければならぬのですが、そういう部分でも出せませんか。
#164
○参考人(山極榮司君) 報告の内容は、今申し上げましたような企業の秘密にかかわる点と相関連をしておる内容でございますので、提出は残念ながらできないわけでございます。
#165
○矢田部理君 相関連してないでしょう、このマニュアルを見ますと。事業実施主体の経営状況などなどについては企業の秘密とかにかかわりますが、それ以外の相当部分、例えば、最初から読みますと、「事業実施地域における政治、経済及び社会環境の概要」とか、「事業計画内容の妥当性」とか、それから「国際協力効果に係わる調査」というようなことは企業とは関係ないんじゃありませんか。そういうものも出せませんか。
#166
○参考人(山極榮司君) 先ほど申し上げましたように、そこの点につきましては、調査報告書の内容を見ますと、やはり相関連する部分が出てくるわけでございますので、公表はできないということでございます。
#167
○矢田部理君 私も中身を全然知らぬで聞いているんじゃないんですよ。余りいいかげんな説明をしないでください。
 企業に純粋にかかわる部分はいいというんだ、場合によっては。全部がかわってはいませんよ。大勢はかかわっていない部分の方が多い。だから、企業秘密にかかわるとか、企業とのかかわりで出せないというのは口実にすぎない。その部分を外して出しなさい。出せませんか。
#168
○参考人(山極榮司君) 再三申し上げておりますとおり、全体が秘扱いの報告書になっておりますので、そういうふうにさせていただきたいと思います。
#169
○矢田部理君 これは大臣にも要請しておきたいんですが、どうも経済協力とかそれにかかわる投融資、これを一切ベールで囲ってしまって明らかにしない。率直に言って今の融資などはそれ自体がそう大きな金額でもない。にもかかわらず、そういうことで明らかにしないことが、経済協力についていろんな利権や問題性をはらんでいるのであって、ようやくマニュアルだけきのう私のところに出してきた。報告書の中身だって私はまんざら知らないわけじゃない。しかしそういうことを国会にも出さないという姿勢はよくないんじゃありませんか。何でもかんでも秘密扱いにしている。国民の貴重な税金がそこに使われてそれが基礎となって融資が行われる。しかも〇・七五という超低利の融資ですよ。ちょっと一般には考えられない。それが今言ったような、私からいえばへ理屈ですよ、理屈のつけ方が。お金が出る。これだけじゃない、いっぱい問題の事例はあるわけであります。
 したがって、その調査報告書ぐらいは、外務大臣、やっぱり委員会が要求したら出してしかるべきだ。少なくとも国会の場で明らかにしてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#170
○国務大臣(倉成正君) 今参考人からるる申し上げましたとおり、一定のルールのもとにおいてお出しできるものとできないものがあるということで、ただいま参考人は出せないと御説明申し上げているわけでございます。しかし、先生がおっしゃるように、できるだけ事情を説明できることは国会の皆様方に、貴重なお金を使うわけでありますから、説明をするという姿勢でなければならないと思いますけれども、ただいま御要求の資料については参考人が申したとおりだと思います。
#171
○矢田部理君 私、余りそういうことであきらめませんので、委員会として後で御相談をいただきたい、理事会で。
#172
○委員長(森山眞弓君) では、理事会において相談させていただきます。
#173
○矢田部理君 ということで、そこにお預けをいたしまして、次の質問に入ります。
 そこで、事前調査をやるに当たって、きのういただいた、これも初めていただいたのでありますが、調査マニュアルというものをいただきました。これは一枚の紙だけ私のところに届いたのでありますが、どういう表題の文書なんでしょうか。あるいはまた事業団のどこでつくったどういう種類の文書なんでしょうか。
#174
○参考人(山極榮司君) これは、JICAの中で担当者が調査するに当たりまして一定の意識統一をしようということで、先生に差し上げたそういうものができておるわけでございます。
#175
○矢田部理君 ただこの紙一枚だけあるんですか。ほかにもこれにかかわる文書とか、これは一般論ですが、プロジェクトとか、中身によっては違ったマニュアルもあるんでしょうか。
#176
○参考人(山極榮司君) これは、差し上げましたのは開発投融資関連のところでございますが、それぞれにつきまして調査をするに当たっての留意事項等をまとめたものがございます。
#177
○矢田部理君 そういうものは一冊の冊子か何かになっているんでしょうか。
#178
○参考人(山極榮司君) これはなっているものもございますし、なっていないものもございます。
#179
○矢田部理君 あわせて調査のマニュアルも、ほかのものも全部まとめて出していただきたいのですが、いかがですか。
#180
○参考人(山極榮司君) この点につきましては、中でよく相談をいたしまして、御提出できるものは提出させていただきたいと思います。
#181
○矢田部理君 提出できるものに限らず、原則として全部出してください。その点もお願いしておいて、資料の要求ばかりしておると中身が議論になりませんので…。
 そこで、きのういただいた調査マニュアルによりますと、「調査実施基準」というのが(3)というところに書いてあるのですが、今度のリンバン開発事業に関連した融資をするに当たっては、このどの項目に該当するということで事前調査をされたんでしょうか。
#182
○参考人(山極榮司君) これは差し上げた資料の中の「調査項目」がございますが、その(i)の「一般調査」、それから(ii)の「国際協力効果に係わる調査」、それから三番目の「債権の保全及び回収に係わる調査」、その他必要な調査ということにいたしておりますので、これが一般的な調査のやり方でございます。
#183
○矢田部理君 そこを聞いておるんじゃないんです。(3)というところに、「調査実施基準」という見出しで中身が書いてあるでしょう、以下四つか五つ。「次のいずれかの場合に実施するものとする。」と書いてある。そのいずれに当たると考えて調査をされたのでしょうかと聞いている。
#184
○参考人(山極榮司君) 大変失礼をいたしました。
 (3)の「調査実施基準」というところの御質問だと思いますが、これは(v)までございますが、主として(i)のところと(ii)のところでございます。
#185
○矢田部理君 この「調査実施基準」の(i)、そして(ii)に該当するということで事前調査をやられたと、こういう趣旨でございますね。
#186
○参考人(山極榮司君) そうでございます。
#187
○矢田部理君 そこで伺いますが、(i)では、「国際協力効果に係わる調査の場合であって、事業実施地域関係機関、地域住民等の要請等を確認し、事業実施主体のとるべき措置を検討指導することが、必要であると認められる場合」、少なくとも一つの理由としてこれに当たったので調査を実施したということでありますが、ここに出てくる「地域住民等の要請等」は、調査に当たっては確認をしたでしょうか。確認をしたとすれば、いつ、だれが出向いていって、どんな地域住民にお会いになって、どんな確認をされたのか、伺いたいと思います。
#188
○参考人(山極榮司君) 事前調査におきましては、先生御指摘のような環境に関する調査とかい
ろいろあるわけでございますけれども、私たちの事前調査の段階では、既存資料の分析とか、それからサラワク州政府関係者からの聞き取り、それから現地調査等によりましておおよその意向を聞いたわけでございます。
 御指摘の例えばプナン族その他個別の意向調査というものはこの段階では実施しておりませんて、そういう地域住民の意向はサラワク州政府が主としてキャッチをして、その方から我々としては状況を聞いた、こういうことになっておるわけでございます。
#189
○矢田部理君 おかしいんじゃありませんか。この事前調査をする理由として、今言ったような理由が挙げられていると同時に、この調査の項目の中にも、地域住民への開放状況と利用度あるいは利用可能性、地域住民の期待度、その道路なら道路建設に対する期待度などを調査しなきゃならぬということで明示をしているのであります。地域の住民と行政機関とを同じものに考えたんじゃまずいんじゃありませんか。特に地域住民と言う場合は行政機関と区別をして言うのが常識だと思うんですが、いかがなんですか。
#190
○参考人(山極榮司君) この点につきましては大変難しい問題があるわけでございますが、習慣とか言語等が異なる多数の部族がいるという中での住民の意向調査というのは、手法としても大変難しい問題があるように思います。したがいまして、今申し上げましたような、州政府等の関係者等から住民全体としての意向を聞くというのが当時としては精いっぱいの努力ではなかったかというふうに考えているわけでございます。
#191
○矢田部理君 わざわざマニュアルまでつくっておきながら、地域住民というところが相当何カ所かにわたってこのマニュアルには出てくるわけです。政府とか行政機関から聞くというなら何も地域住民という表現は要らない。
 そして、事実このプナン族にせよあるいはカヤンとかケラビット族にせよ、十分に聞く機会も可能性もあるわけです。例えばこのカヤンとかケラビット族などについて言えば、ロングハウスということでまとまって集落をなしている。そこには長もいる。狩猟民族であるプナン族にしたってチーフがいるわけです。そういう努力を一切しない。そういう地域住民からまさに意見を聞かなかったこと、そして、率直に言うと事業団の方からも大変問題のある資金を融資をしたこと、それがまた先ほどのような原住民の人たちの長期にわたる道路封鎖、激しい抵抗ということに遭っているんじゃありませんか。
#192
○参考人(山極榮司君) この点につきましては、今申し上げましたように大変多数の部族の方々がいらっしゃるわけでございまして、その意向を個別にお聞きするという方法はとらなかったわけでございますが、やはり相手国政府の州政府としてはそういう方々と日ごろ接触をいたしておりますので、地域住民の意向は州政府が十分把握しているだろうという認識のもとに私たちは全体としての意向調査をやってきたということでございます。
#193
○矢田部理君 日本の国内で問題を置き直してみましても、地域住民から意向を聞く、あるいは住民の期待度を調べるとか要請を確認するとかというときに、県や市町村役場にさえ聞けばいいと、日本のように一応民主化された制度のもとにあってもそうではなくて、やっぱり部落に出向いていったり公聴会を開いたり住民集会を持ったりして住民の意向を聞くのが普通の行政の手法じゃありませんか。
 まして、これは、マレーシアについての行政機構についてあれこれ言うつもりはありませんが、そう民主主義が成熟しているとも思えないわけですから、行政機関の意見さえ聞けば住民の意向はわかるんだというのは少し飛躍ではありませんか。そういう姿勢こそが今度の問題を生んでいる一つの要因になっているんじゃありませんか。
#194
○参考人(山極榮司君) この点につきましては、基本的には、先生御指摘のように地域住民の意向を計画に十分反映させていく、その方法につきましては可能な限りその地域に合った方法をとっていくということでございまして、意向調査については我々としましても基本的には十分意を注いでいるつもりでございます。
 ただ、今回のリンバン地区の場合につきましては、先ほど来申し上げておりますように、大変習慣、言語が異なる多数の部族という中で、十分直接的には接触をして個別的な意向調査はしなかったわけでございますが、先ほど来の州政府その他関係者の方から、極力そういう意向を全体として把握できるような形で調査を進めてきたということでございまして、基本的には、計画樹立に当たって地域住民の意向を十分反映させるような努力は現在もしておりますし、大変重要な課題でございますので、今後とも十分意を注いでいきたいというふうに考えているわけでございます。
#195
○矢田部理君 先ほど、あなた方の方で、事前調査だけでなくて中間調査もして報告書をまとめられておりますね。その資料の一部などを読ませてもらうと、住民の期待度は非常に大きいというような評価もなされているようですが、その住民がどうしてこんなに大勢、半年以上にもわたって、最初は数カ所だったそうですが、その後十二カ所になり、今二十四カ所とも言われておるわけでありますが、全面的にこの山を封鎖する、道路封鎖をやる、大変な事態になっている。期待度が大きいと言っておりますが、この人たちはほとんど使っておりませんよ。もともと車があったり乗り物があったりするわけじゃありません。船の便なんです、川を船で渡るという。はだしで歩くわけですから砂利道などは痛くて歩きづらいといって、これも使っていない。あなた方の報告とは全く逆な状況になっている。
 したがって、そういう調査報告をもとにして融資をすることにも大変問題があると思うのでありますが、環境に対するアセスといいますか事前の評価などはしたでしょうか。
#196
○参考人(山極榮司君) 私たちは、こういう技術協力といいますか、これを実施するに当たりまして、自然環境とか地域社会に与える影響という点については十分配慮すべきであるという点は先生御指摘のとおりでございまして、そういう姿勢でやっているわけでございます。最近では、自然環境に大きな影響を与えているというようなことで、例えばの例でございますが、ダムの建設というような場合につきましては…
#197
○矢田部理君 ちょっと待ってください。本件について環境調査をやったかと聞いている。
#198
○参考人(山極榮司君) これは、先ほど申し上げましたように一応の環境調査はやっております。
#199
○矢田部理君 その調査の内容を報告してください。
#200
○参考人(山極榮司君) これは環境調査というような具体的な例ではございませんで、全体として自然環境あるいは社会環境等につきましての調査は、一般調査の中でやっているわけでございます。
#201
○矢田部理君 その内容を聞かせてください。どういう調査をして、どういう結果、どういう内容になったのか。
#202
○参考人(山極榮司君) この点については今資料を持ち合わせておりません。後日…。
#203
○矢田部理君 きのうからそのことを聞くと言って通告しているわけですよ。――ないんですか。
#204
○委員長(森山眞弓君) 山極参考人、いかがですか。
#205
○矢田部理君 資料を見なきゃ答えられない程度の中身ですか。
#206
○参考人(山極榮司君) これは、今申し上げましたように、一般調査の中で相関連をしているわけでございますので、環境調査といってそこを特筆して申し上げることは現段階では難しいということでございます。
#207
○矢田部理君 やっていないんですよね。プナン族なんというのは、この森林そのものが生活の場なんですね。そこで狩猟をする、魚をとる、山の幸を集めて生活をしているわけですから。その山が全部伐採の対象にされる、そのための道路がつ
くられる、あなた方の融資がつく。生活そのものが奪われることになってしまう。環境破壊の問題とあわせて極めて深刻です。
 この人たち、まさに住民の意向を全く聞かず、その機会もつくらず、何らの補償もせず伐採事業だけを進める。そのために公共道などという名目で融資をつける、林道で運び出す。怒るのは当たり前じゃありませんか。この融資やその前段階としての調査や住民とのかかわりについて深刻な反省が事業団として必要だと思いますが、どうでしょうか。
#208
○参考人(山極榮司君) この点につきましては、先ほど申し上げましたように、住民の意向という点については今後とも十分意を尽くしたいというふうに思っているわけでございますが、この段階、リンバン地区につきましては、先ほど来御説明申し上げましたように、特殊な例というふうに考えておるわけでございまして、そういう点を含めまして、今後この意向を聞くための手法というようなことにつきましてはさらに十分検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
#209
○矢田部理君 この問題の背景にはやっぱり日本の林業政策があると思うんですね。日本の材木が外国からの輸入に相当程度依拠しておって、特に南洋材を大量に買い込んでいる。そのための伐採をやる。後の再生計画もそれから現地住民の暮らしも無視してどんどん切り出していく。熱帯雨林は半分以上がなくなってきている。この深刻な状況があるんですが、外務大臣としてどんな御理解でしょうか。
#210
○国務大臣(倉成正君) 実は私、先生が今御指摘のサラワク州の現地を知らないものですから余り的確なお答えできないと思いますが、この地域の樹木は大体メランチという熱帯産の広葉樹、これが八〇%だと聞いております。
 今先生が御指摘の問題は、いわゆる開発と環境という基本的な問題でございまして、サラワク州の政府の要請によって、よかれかしと思って生活福祉のためにつくった林道が封鎖という非常に不幸な事態に陥っているという問題でございます。
 したがって、これはもう釈迦に説法でございますけれども、やはりある程度林道があって、間伐をしたりいろいろしないと森林の保存ができない。また、いろいろそういう問題あるわけですけれども、そこで生活している住民の環境という問題どこの開発という問題と非常にぶつかった典型的な問題じゃないかと思いますので、これからいろいろこのような開発をする場合におきましては、やはり国際場裏のいろいろな動向や、また関係省庁で検討しております開発援助に関する環境への配慮ということを念頭に置いて、一層きめの細かい調査を進めるようにこれからいたしてまいりたいと思っておる次第でございます。
#211
○矢田部理君 本来は先ほどの事例を一つの参考にして熱帯林問題をもう少し本格的に論議したいわけですが、ちょっと時間がありませんのでいずれ別の機会に譲るとしまして、問題点だけ指摘しておきます。
 東南アジアの島嶼、フィリピンとかインドネシアとかマレーシアなどがそれに当たるかと思うんですが、その七割が日本などの森林伐採によって破壊されてしまっている。これは国際的な調査でそうなっているわけですね。しかも、その伐採した南洋材を大量に日本は輸入している。日本の木材の二割以上がその輸入材に頼っている。その結果大変日本の木材市場は圧迫をされているわけであります。そしてそれもここ数年を出ずして、少なくとも今世紀中には絶滅に近い破壊になるだろう。フィリピンなどがその典型なのであります。
 ラワンなどという木が中心になるわけでありますが、これは二百年も三百年もかかるわけです。到底あとそこにもう一度木が育つという保証がないわけです。やっぱり湿地帯でなきゃならぬので、木を切って乾いてしまうと次の木が育つとか生えるということにならないわけです。全部この熱帯林を裸にしてしまっている。その熱帯林の中にはいろんな、何といいますか、生態系があって、遺伝子とか種とかということについての保存にとっても極めて深刻な状況が広がっている。
 その意味で言えば、これは注文的になりますが、林野庁にもおいでいただいてもう少し林野庁とも議論したかったのでありますが、この南洋材に相当程度依存する日本の林業政策といいますか、木材の需給関係といいますか、そういうものを根本的に見直す時期に来ている。そして少なくとも相当程度の熱帯雨林を日本として残していく、こういう国際的な観点に立つ必要がある。その中心になるのはやっぱり外務省でありますが、同時に環境庁、林野庁もその観点でひとつきちっと政策の見直しをしていただきたいというのが第一であります。
 それから、国際協力事業団なども含めてこれからODAのいろんな開発援助などもやっていくわけでありますが、せっかく国民の貴重な税金が使われておりますのに、結果として地域住民の反発を受けたり、それから地域や本当に貧しい人たちにお金が届かなかったり、援助が効果的にならなかったりする傾向がずっと続いているわけであります。
 そこで私としては、住民の方々の意向を、行政機関の意見を聞けばいいというものじゃない、できるだけいろんな方法を尽くしてやっぱり直接的に生の声を聞く、それからそれにまつわる環境を事前アセス等で十分調べてその環境保全のために尽くす、こういうことが外交を中心に海外的な経済協力なりさまざまな政策の中でも非常に重要な時期に来ているのではないか。そのことをプナンの人たちの道路封鎖は極めてシビアな形で我々の前に問題を提起しているのではないかというふうに考えているのであります。
 もう少しいろんな議論したかったんですが、外務大臣、それから環境庁、林野庁、国際協力事業団、それぞれにお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
#212
○説明員(高橋勲君) お答えいたします。
 林野庁といたしましては木材需給を所管しているわけでございますが、木材は十年ぐらい前に比べますと最近は需要そのものは大分減ってきております。その中で南洋材に対する依存度もかなり減少してきております。これは、南洋材の資源の維持保全の問題、いろいろと考えますと、やはり資源として余力のある国内材あるいは針葉樹林、そういうものに転換していくというふうな考え方をとる必要があるからということでございます。特に、国内材は現在育成途上でありますけれども、もう数年を経ずしてかなり充実してくる時期を迎えるというふうなこともございますので、木材需給全体につきましては国内材の供給を中心に考え、将来的に日本の森林あるいは熱帯林の維持保続、こういうものが全うできるような政策を考えていきたいというふうに考えております。
#213
○説明員(黒川雄爾君) 環境庁では、地球的規模の環境問題に対処するために、五十五年から大来元外務大臣を座長としまして地球的規模の環境問題に関する懇談会というものを設けました。そして本年四月に、この懇談会での提言がもとになりまして、環境と開発に関する世界委員会の報告書ということで、「アワー・コモン・フューチャー」というのが取りまとめられましたけれども、その中では、持続的開発ということで、将来世代のためにも開発ができるようにという、それを一つの理念としました国際協力の強化を求めております。特に、今お話にありましたような熱帯林につきましては、世界の陸上生物の種の約半分がここに生息しているとか、それから熱帯林の保全というものが、その土壌の保全とか洪水の防止といったようなものにとどまらずに、遺伝子の資源、野生生物の保護といった面からも非常に重要であるという認識をしております。
 それで環境庁といたしましては、国連環境計画、UNEPと言っておりますが、そういったものにおける多国間協力とか二国間協力を通じまして地球規模の環境保全に積極的に貢献していきたいと思っております。具体的には、地球的規模の環境問題に関する懇談会、そういったものの場を
通じまして、地球環境保全のために優先的に取り組むべき政策の方向、調査研究の方法、国際環境協力の推進体制といったようなものを検討していきたいと思っております。
#214
○参考人(山極榮司君) 新しい時代に即応する形で効率的な事業を進めるということが大変重要でございますので、今後とも、事前調査、特に事前調査につきましては十分意を尽くしていきたいというふうに思っているわけでございます。
#215
○国務大臣(倉成正君) 私が申し上げたいことをみんなそれぞれ専門の方からお話ございましたけれども、今熱帯林の問題は非常に重要な国際的な問題になっておるという認識を持っております。したがって、この問題には真剣に取り組むべきであると私は考えております。
 同時に、開発とどう調和させていくかという問題、新しい技術も進んでおることでございますし、やはりそういう問題もあわせて考えてみる必要があると思います。メタセコイアとかいろんな非常に成長の速い樹木もあるわけでございます。いろいろ私は新しい分野のそういう熱帯林に対する対応もひとつ考えてみる必要があると思います。ただ消極的にこれを受け取るということではなくて、この際ひとつさらに一歩進めて、新しい将来像を描いていく、百年後、二百年後を描いていくということが大切じゃないかと思っております。
#216
○矢田部理君 終わりますが、一点だけ御注意申し上げておきたいのは、先ほどお話が出ました環境と開発に関する世界委員会が、「地球の未来を守るために」という本をまとめておるんですが、これはもう日本のことを言ったんじゃないかと思いますね。「木材企業は実質上全ての生産林地域を数年間賃借し、森林の再生にほとんど関心を払わずに資源を乱開発している。」、さらに「熱帯の国々の脆弱な国内森林政策と工業国の木材の高い伐採コストと結びついて、熱帯木材の特定の工業国への輸出を進め、森林伐採に拍車をかけている。」というようなことで、まさに日本に対する痛烈な批判とか指摘がなされておるわけであります。
 その点では、改めて熱帯雨林を守るための施策を日本の外交の一つの大きな柱としても立てていただく、それに見合って森林政策も変更する、木材政策も変えるというふうなことはやっぱり考えるべきだと思います。終わります。
#217
○立木洋君 まず最初に、政府調達に関する協定を改正する議定書に関連してお尋ねしたいと思います。
 まず、大臣に御所見をお伺いしたいんですが、今日の日米経済摩擦というのは多岐多面にわたって大変な広がりを見せて、問題が一層重大化しているという状況にあることは大臣御承知のとおりだと思うんです。あの円高問題で重大な事態が依然としてまだ完全に解決される状態にはなっていないわけですし、貿易収支の問題も依然として問題が後を引いております。
 当面の問題を見ますと、例えばいろいろな米国製のスーパーコンピューターの購入問題、あるいは国際新空港建設工事や第二KDDへの米企業の参入問題、あるいは農産物輸入の自由化や石炭輸入問題だとか、チョコレートの関税引き下げ問題だとか、あるいは米国製次期支援戦闘機の導入問題だとか、簡単に思い出すだけでも幾つかずらっとあるわけです。私は、こういう問題の推移、経過を見てみますと、円高の場合もそうでしたけれども、結局は、いろいろなことがあるけれども、アメリカの要望にどうこたえていくかという形で問題が進行していっている。これはもう具体的な例を挙げませんけれども、無理が通れば道理が引っ込むみたいなところもなきにしもあらずではないかという感を非常に強くするわけです。
 そうした事態が、国内の経済状況を見てみますと、いろいろな形で犠牲や問題を生じるということにもなるわけですが、こういう最近の日米経済摩擦の動向についてどういうふうに大臣お考えになっておられるのか、まずその基本的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
#218
○国務大臣(倉成正君) 大変基本的な問題でございますので、余り時間をとることを省略させて、ポイントだけ申させていただきたいと思います。
 私は、基本的には日米間に貿易の大きな不均衡があるという問題、これがやはり一つの大きな貿易摩擦の背景にあると思います。これを円高によって何とか解消していこうということをいろいろ政策として考えられたようでありますけれども、なかなかそれがうまくいかない。それで、現在発表されております貿易の赤字にいたしましても、四半期をとりましても、年率に直しますとアメリカの貿易赤字千六百億ドルぐらいになる。財政赤字も依然として少しずつ減っておりますけれども相当な赤字がある。いわゆる貿易赤字、財政赤字、双子の赤字が続いておる。これは基本的に申しますと、八一年にアメリカが大減税をやりまして小さな政府を目指したけれども、現実としてはそうなっていないということによってもたらされたものであると思いますけれども、しかし反面、世界経済全体から申しますと、アメリカが実力以上の消費をしたということによって日本の輸出がふえ、あるいは東南アジア、NICSの輸出がふえてその景気を支えた、そういう面もあると思うわけでございます。
 したがって、私はそういう日米間の貿易のバランス、アメリカの双子の赤字、あるいはだんだん新興工業国として興ってきておりますNICS、またヨーロッパの経済、そういう世界経済全体がバランスのとれた形でこれからどういう構想を描いていくかということでなければならないと思うわけであります。
 当面日本としては、余り大きな貿易黒字が長年にわたって続いていく、一千億ドルに及ぶ貿易の黒字を日本が続けていくということは、やはり世界経済全体のバランス上許されない。したがってこの問題についてどう対応していくかということではないかと思うわけでございます。世界経済全体が大きな構造変化の過程にあるわけでございますから、その構造変化の中にどうスムーズにソフトランディングしていくか、また一割国家となった日本が、そういう貿易の大きな黒字を背景として世界経済にどういう形でこの資金を、ちょうど産油国が石油ショックのときに還流したように、どういうふうに資金を還流していくか、そういうやはり国際的な責任が日本経済としてはあるのではないかと思っております。
#219
○立木洋君 日本側の責任と言われる点については別としまして、私が特に大臣にお考えいただきたいのは、アメリカの言う主張をどう受け入れていくかという形で動いていくということだけになるとやはり問題ではないか。特に経済不均衡の問題についてもそうです。何しろアメリカの多国籍企業というのはどんどん進出してそれで逆輸入されるわけですから、産業が空洞化してですね。事態がそういうふうになるということはあり得ることです。ですから問題は、本当に平等互恵の経済環境を打ち立てていくという点については、これはアメリカにも言うべきことは言い、守らせるべきことは守らせるということがなければならないのに、今日幾つかの問題を新聞で報道されている経緯を見ますと、どうしたらこのアメリカの無理を聞くことができるのかという形での推移というのも私は特に気になるんですね。気になるというか、これはそういうことではいけないというふうに私は感じたものですから最初の問題を述べたわけです。
 このことについて、例えばことしの補正予算で、政府の緊急輸入という項目が出されて、一千四百五十億円、結局外国の企業から品物を輸入するという項目が計上されたわけですね。問題は、そういうふうに今まで外国から品物を輸入するということだけを目的として独自に予算が計上されたことが一体あるのかないのか。それからまた、そういうことまでしてやるわけですが、会計法から見ますと、例えば競争入札の原則との関係で、国内企業を排除して外国だけから品物を輸入するというふうなことが会計法上どういうふうなかか
わりになるのか。そこらあたりの問題はどのようにお考えになっているのか。大蔵省もお願いしていると思うんですが。
#220
○説明員(杉井孝君) 先生御指摘の今般の補正予算で措置いたしましたいわゆる政府調達対策に係ります物品の調達につきましては、個別品目の調達に当たりましては、各省庁におきまして、政府調達協定や国内法令に従いまして、原則として競争入札により調達することになっておりますので、内外無差別の原則が適用されるというふうに理解しているところでございます。
#221
○国務大臣(倉成正君) アメリカの貿易赤字、財政赤字についての要請につきましては、ベネチア・サミットの宣言の中でもはっきりこの項目をうたっておるわけでございます。ですから、この件は決してアメリカが要求するからというのではなくて、日本が膨大な貿易黒字を出している、しかも世界の一割国家になった責任としてやはりやるべきことはやる。また、アメリカと余り大きな貿易の不均衡があるということは、まあよいものを安く売るんだから何が悪いかということになりますけれども、しかし、現実に先方に大きな失業者が出てくる、社会問題が出てくるということになれば、それなりに日本もそれに対応することを相互にやっていくという意味で、決してアメリカの要求に屈するということではなくて、日本が国際国家また相互の日米関係ということでやるべきことはやっていくということではないか、自主的にやるべきことだと私は考えておるわけでございます。
#222
○立木洋君 大臣、先ほど言われたように、国内の問題は一応別としてと私は言ったわけで、私たち自身だって、日本の大企業が集中豪雨的な輸出をやって、外国の労働者が首を切られたりして失業状態が生じるというふうなことは当然避けなければならないし、そういう点こそやはり規制は必要だということはこれは明確なんですね。しかし問題は、いろんな経緯を見ていますと、アメリカ側の無理を何としてでも聞くという方向に動くことが新聞の報道上では見られるので、そういう点は十分に注意していただきたいということを私としては述べたつもりなので、その点ははっきりさせておきたいと思うんです。
 それで大蔵省の方、今までこういうふうな輸入だけを目的として独自に計上したものはあるんですか、予算に。
#223
○説明員(杉井孝君) 詳しくは資料等を持っておりませんのではっきりはいたしませんが、内需拡大の一環としまして特別の項目を立てて計上したことはございませんが、輸入促進という観点から医療機器等を購入した例はあるように思っております。
#224
○立木洋君 過去に輸入だけを目的として独自に計上したということはないわけですね。五十三年度には、たしか補正としては、在外公館が買い取りをするということで若干のあれはありましたけれども、こういう形でなったのは今回初めてですね。
 それで、こういうことだけを計上するというのは、先ほども言ったように、会計法上との関係はどうなるんですか。つまり、私たちは政府調達に関する協定ということについても前回反対しているわけですが、しかし政府調達においてすらこれは内外無差別ですよ。外国のだけを購入する、日本の対象は一切排除されておるというのは、会計法上で言えば二十九条の三項ですか、競争入札の原則という関連ではどういうふうに考えていられるのか。
#225
○説明員(杉井孝君) 先生御指摘のように、今回の措置は、外務大臣からも御答弁がありましたように、対外不均衡の是正でありますとか、調和ある対外経済関係の形成にも資するように配意したところでございますが、政府部内で慎重に検討を行って、政府の主体的な判断のもとに措置をしたところでございます。
 今後、個別品目の調達に当たりましては、各省庁におきまして、先生御指摘のような政府調達協定あるいは国内法令に従いまして、原則として競争入札により調達することになりますので、先生御指摘のように内外無差別の原則にのっとって調達が行われるものと考えておるところでございます。
#226
○立木洋君 つまりそういう点が問題なんですよね。今まで前例がないんですよ、こういう予算の組み方というのは。そして結局、アメリカから買え買えといって、中曽根さんが向こうで、わかりました、何とか引き受けましょうというふうに帰ってきてこういう補正の形になったんですね。今まで会計法との関連を見ても、こういう形で組むというのは、会計法とのかかわりでどうなんだろうかという疑義さえ生じるような事態でしょう。
 それから、大蔵省でいろいろ話をお聞きしますと、国内品と競合しないようにということだということだけれども、国内品と競合しないといって、スーパーコンピューターは日本がつくっていないのかといったらとんでもありません。富士通にしたってNECにしたってちゃんとあるわけです。安いものを、いいものを買う方がいいんじゃないかというふうなことさえ出てくる。ところが調べてみると、国内では非常に安い価格で買っているからけしからぬのじゃないかというふうな話が出てきただとか、何とかアメリカの品物を買い入れる方がいい方向に無理を聞いていこうというふうなことになると、私はいかがなものかというふうに指摘せざるを得ないと思うんです。
 財政法に定められた点で言えば、大蔵省が予算の編成権を持っているわけですが、これはそうではなくて、各省庁に、おまえのところ何か買いたいものがあるか、今まで緊縮財政で買うものがないと困っておったけれども、この際だというんでわあわあ提出してやる。いろんな問題が出てくるわけです。だから、財政法上どうなるのか、会計法上どうなるのか、そういうことにすべてが優先してアメリカの言うことを聞くというようなことになるのはいかがなものか。やはり日本の国内は国内としての問題があるわけですから、きちっとした処置をしないと今の経済摩擦の問題についても正しい解決にはならないということは私はこの際述べておきたいと思うんです。
 それで、例えば八月七日に松永駐米大使が記者会見で、通産省と文部省が米国製スーパーコンピューター導入に関心を持っているというふうに言っている。どうしてアメリカ製とここで特定するのか。あるいは新聞なんかによると、盛んに売り込みがなされておって、アメリカではクレイ。リサーチ社のものをぜひ買ってほしいというふうな話が出てきていると。事実関係としても、スーパーコンピューターの購入については、首相自身が訪米した際にレーガンと約束をしたというふうな報道もあります。
 こういうふうに見てみますと、協定第四条において加えられておる条項4ですね、つまり特定企業から助言を得たというふうなことになるのではないかとさえ疑わざるを得ないようなことになっている。通産や文部が関心を持っているというふうになると、今度は特定の調達の仕様が既にでき上がっているのかというふうなことまで疑わざるを得なくなる。事実、一企業の利益を優先するものであるということであるならば、これはやはり誤りであるし、そういうふうなことがあってはいけないわけです。こういうふうな問題がやっぱり出てくる背景があるというふうに考えるんですが、松永大使の発言等々の経緯は一体どういうふうになっているんでしょうか。
#227
○国務大臣(倉成正君) 今せっかくの立木委員のお話でございますけれども、私は実はちょっと見解を異にするわけでございまして、実はガットのウルグアイ・ラウンドのときもBOB、バランス・オブ・ベネフィットということで欧州から随分日本の貿易の黒字に対していろいろ批判が出ました。それは結局、我々も最後まで頑張りまして、貿易というのは世界全体でバランスすべきもので、欧州とだけでそういうことではあるべきでないということで、全体の宣言の中から外して議長サマリーの中で入れたわけでございます。
 やはり一千億ドルという貿易の黒字が、これはかつてのオイルダラーがアラブの諸国に集まったときのことをお考えになればわかりますように、日本が黒字を出しているということになると、やはり貿易相互依存の中にある世界経済の中で他国とのつき合いということも考えていかなきゃならない。外国から買えるものがあれば買うという姿勢、それは悪いものを、そして物すごく高いものを外国から買うということじゃなくて、今お話ございますけれども、何もアメリカだけじゃなくして広く外国製品についてよいものがあればひとつこれを入れていく、これは政府が調達する。そして民間がこれを一つの手がかりにして、よいものがあればやはり外国からも入れてインバランスを多少とでも変えていくということでなければ、一千億ドルという膨大な黒字を日本がずっと続けていくということは、世界経済の中で私は常識として許されないと思います。
 したがって、日本みずからのためにそういうことをやっておるわけでございますから、決して先生がおっしゃるようにアメリカの圧力に屈するとかそういうことではなくて、みずからの政策の選択としてやっておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
#228
○立木洋君 その辺大切な問題なので、私も私の考え方をちゃんと述べさせていただきたいんです。
 私は日本が黒字がずっと続いておっていいというふうなことを言っているんじゃないんですよ。日本は日本でそういう努力をする、黒字を減らす、大企業のさっき言ったようなことはきちっと規制をする。しかし同時に、アメリカはアメリカなりにやっぱり赤字を減らすという努力をきちっとやるべきだ。そういう点については対等の要求をすべきだ。そうではなくて、日本は努力をする、そしてそのことのために、いわゆる円高の問題その他の状況で、農家なんかだって今大変ですよ。中小企業の倒産だって大変ですよ。日本の産業の空洞化が始まって、部品の製作なんかで企業が海外に出ていって空洞化して首切りが起こる、大変な状態ですよ。だから、何もそういう無理が通れば道理が引っ込むというふうな点はしないで、やっぱり筋を通すべきは通す必要があるのではないかということを私は主張したいんです。
 だから、今のこの問題だって、私が言っているのは、これ以上時間がとれませんからもう言いませんけれども、例えば今度のこの政府調達に関する協定の問題でも、アメリカみずからがこういうふうな形で推進してきた。だけど問題は、アメリカだってバイ・アメリカン法というのがあって、海外からの政府の調達についてはみずからやっぱり閉ざしているんですよ。そして外国には、政府の調達についてもっと広げろ、もっと価格を引き下げて枠を広げろというふうなことは要求するけれども、みずからはやろうとしない、バイ・アメリカン法というのがあるわけですから。
 それからガットの問題についてだって、ガット協定の本体を米国議会が承認していないじゃないですか。いや、アメリカ政府はガットに加入しているというのは知っていますよ。だからガットとして協議もやっています。しかし、常にアメリカの議会というのはガットよりも連邦法を優位にとって問題にしているから議会でいつも問題が繰り返されるじゃないですか。こういうふうな点はやっぱり、何も国際的に協力するというのを我々は反対しているんじゃないんですよ。アメリカが憎くて言っているんしゃないんです。対等、平等に主張すべきことは主張する、そしてお互いに協力し合える範囲内で協力できるようなことはお互いに協力していけばいいわけですから、そういうことを私は主張したいわけなんです。
 そういう点を外務大臣にしっかりと心得ておいていただかないと私は困ると思ったので、今度の問題に関連して、いわゆる財政上の措置の問題についても、事実上の経済摩擦の処理の上でもそういう点はきちっとやっぱり対応していただきたいということをこの機会に申し上げたいということで申し上げたんで、日本の国における大企業のそういう輸出ラッシュみたいな問題についての規制に私は反対しているんじゃなくて、それは規制はやるべきだという点は当然のこととして主張しているわけですから、そのことはお間違えないように大臣に御理解をしていただきたいと思うんです。いかがでしょうか。
#229
○国務大臣(倉成正君) 先生のおっしゃる意味は結局、大企業がどんどん輸出する場合にはそれは規制してでも輸出を抑えるという意味にちょっと受け取ったわけでございますけれども…
#230
○立木洋君 違いますよ。
#231
○国務大臣(倉成正君) そうでなければ、やはり私は、一千億ドルの膨大な黒字をずっと何年も続けていくということは、世界経済の大きな撹乱要因になって、これは世界経済全体がパンクすると思います。
 御案内のとおり、途上国の債務が一兆ドルあります。アメリカは一九八六年末で二千六百億ドルの債務国になってきております。その中で日本がやはり国際的な役割を一割国家として果たしていかなければ、私は世界経済これからどうなるかと非常に心配しているわけです。したがって、日本としては、国際国家日本として世界経済全体のバランスをとるために積極的な役割をもっともっと、今政府がとっている立場以上に果たすべきであるというくらい私自身は個人的には思っているわけでございます。そういう意味においてやっておるわけでございまして、決して外圧に屈するとかそういうことでやっていることではない。アメリカの貿易赤字、財政赤字については、ベネチア・サミットの宣言文をごらんになったらわかりますように、ちゃんとこれに規定してございます。しかし一面、御案内のとおり、先ほど経済から申しますと、このアメリカの貿易赤字、財政赤字が世界の経済、東南アジアの経済をある程度潤した、NICSの経済を潤した、日本の経済にプラスしたというのが現実であるということも認めざるを得ない。
 こういうことでございますから、非常に経済というのは入り込んでおりますから、今ここで先生と経済論争いたしたいと思いませんけれども、私は、日本独自の立場で、今日本のとっておる立場というのは正しい方向である、さらにもっと国際国家日本として役割を果たすべきである、そうしなければ日本は国際社会において孤立していく、そう信じております。
#232
○立木洋君 大臣の主張というのは、述べていることを全く理解されていないと思うんですね。黒字がいつまでもあってもいいということを私は言っているわけじゃないんです。それの解決のための努力、適切な形で努力をしなければならないということはこっちとしてあるけれども、アメリカに対してもああいう貿易の赤字をなくすような努力を要求すべきだ。それは先ほど言ったような制度上の問題からいろいろな問題があるわけだが、そのことはきちっとしないといけない。アメリカの無理難題を何でも受け入れるというふうな外交姿勢にならぬようにということが十分におわかりになっていないようですから、そういうことを重ねて私は繰り返し今後とも要求していくように主張したいと思いますが、これは今…
#233
○国務大臣(倉成正君) それじゃ一言だけ言わしてください。
 アメリカが保護主義になったら、これはアメリカは資源も持っておりますし、基礎技術も持っておりますし、一時的には困るでしょうけれども、ある程度やっていけると思います。日本は貿易立国、資源小国でございます。したがって貿易なしには日本の国は成り立たない国であります。したがって私は、日本の立場から考えると、やはり私どもはみずからこれらの問題を積極的に解決するという努力をしていかなければいけないということを申し上げておるわけでございまして、先生の基本的な考え方とは決して矛盾してないと思っております。
 米側の努力、米側がやるべきことは十分やるべきだということは、我々も機会あるごとに先方にも伝えているところでございます。
#234
○立木洋君 私は、そうなってないから申し上げているんです。ですから、結局アメリカの無理難題をやはり受け入れていかれるというどうも御姿勢のようなので、そのことは明確に述べておいて、今後引き続いて議論はしていきたいと思います。
 次の問題でお尋ねしたいのは、シナイ半島での駐留の多国籍軍についての協力援助という問題がいろいろ新聞紙上で問題にされてきました。現在部内でどうあるべきかを検討中だということが繰り返し言われてきましたが、先般の新聞では大体援助をする方向に固まったというふうなことが報道として出されておりましたが、現状としてはどういうふうな検討がなされて、どういうふうな状況にまで今至っているのか、その検討の経過と結論についてお聞かせいただきたい。
#235
○説明員(小原武君) シナイ半島多国籍軍監視団、いわゆるMFOに対しまして資金援助をすべきかどうかということは、現在予算措置の問題を含めて検討中でございます。
#236
○立木洋君 では、援助するということで決まったということじゃないわけですね。
#237
○説明員(小原武君) 現在検討中でございます。
#238
○立木洋君 それじゃ三億ドルか何ぼか額を決めて大体出すという方向に固まったという報道は正確ではないということでいいんですね。
#239
○説明員(小原武君) はい、ただいま検討中でございます。
#240
○立木洋君 この多国籍軍というのはどういう性格の軍隊なのか、多国籍軍の任務あるいは目的というものはどういうふうになっているのか、その点はいかがでしょうか。
#241
○説明員(小原武君) 多国籍軍の任務でございますけれども、シナイ半島におきますエジプトとイスラエルの国境及び国境の隣接地帯におきまして、検問あるいは監視、検証などを行うという任務を持った国際協力活動でございます。
#242
○立木洋君 これは国連との関係ではどうなっているでしょうか。
#243
○説明員(小原武君) 国連と直接の関係はございません。設立の基礎は、エジプト・イスラエルの議定書に根拠を置いております。そして、欧米、アジア、ラ米など十一カ国が現在幅広く参加して活動しております。
#244
○立木洋君 これは今言われたように全く国連とは関係がないわけで、国連の平和維持軍云々ということが、国連軍を派遣するかどうかということが問題になったけれども、それが拒否されて一致に至らなかったという結果、こういう形でアメリカ大統領の提案に基づいて必要な措置をとるということで、イスラエル、エジプト、アメリカとの三国の間での議定書でこれが派遣されているということであって、国連とは一切関係がない。事実上、この多国籍軍の派遣については近隣の中東、中近東の地帯の中でもこれに反対している、賛成していないという状況も見られますし、また、デクエヤル国連事務総長の話によりますと、一致したコンセンサスがないものである、場合によっては重大な政治的な反発を招きかねないというふうな指摘も国連事務総長によっては行われている。
 こういうふうなものに対して、国連でオーソライズされていないこういう多国籍の軍隊、特に、目的はこの地域における安全保障の確保ということが明示されているこの軍隊に対して、日本が財政的にでも援助を行うということは私は成り立たないんじゃないかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
#245
○説明員(小原武君) 機構的に国連の平和維持軍と関係がないということは、先生がおっしゃるとおりでございますけれども、このMFO自体、国連の平和維持軍に関する規定の多くを踏襲しておりまして、実際的にその性格及び機能の面で、国連の平和維持軍と非常によく似た存在であるということが言えると思っております。そして、実際にこのイスラエルとエジプトの国境が接しておりますシナイ半島の平和と安定、さらに中東の平和と安定に実際に大きく寄与しているわけでございます。
 私どもは、実際の活動の実態に即しまして、現に国際社会の平和と安定に役立っているというふうに判断しておるわけでございます。
#246
○立木洋君 例えば議定書の中では、国連軍のそういう趣旨にのっとって云々ということがあります。しかし、国連が認めている、いないということと、それからその議定書の中にそういうことが書かれて、実際にどういう行動が行われているのかということは、これは別ですよ。やはりその点は明確にしておかないといけない。国連軍に似通った任務を持ってそういう役割を果たし得ているというふうな見方でするのと、国連できちっと認められた国連軍というのとはまたこれは違うということはやっぱりはっきり区別しておかなければならない点だと私は思うんです。国連軍と同じ役割を果たしておるというふうに安易に判断されるのは私はいかがなものかというふうに述べておきたいと思います。
 この点では、いわゆる日本の憲法を初め国内法や条約の枠組みから考えてみて、どこからどういう名目でお金を出すかといったって、いろいろな問題がやっぱり私は生じるだろうと思う。
 それから、現に当外務委員会でかつての園田外相は、韓国の防衛だとか軍事的な費用のために協力するというふうなことは、どんな場合でもそれは不可能だ、これは私の信念で不可能だと言うんではなくて、国会、憲法その他の規定でできないことでありますと言って、明確に園田外相は当時述べられました。また、かつての田中通産大臣も、武器輸出の問題に関連しては、これは憲法の精神にのっとって国際紛争は武力をもって解決をしないという精神で、日本から輸出された武器が国際紛争で使われるということになれば、これは間接的なものにもなると思いますので、武器というものの輸出ということに対しましては非常に慎重でなければならないということは当然でありますというふうに、いろいろとこれまでも指摘が明確に国会の中でなされているわけです。
 これは明確に安全保障ということで軍事行動をとるわけですから、この軍事行動に、いわゆるシナイ半島の平和を武力によって抑えるというふうなことのために日本が協力するという形ではなくて、国連でもいろいろ提起されて話し合いによって解決するようにという努力がなされているわけです。そういう点では、外務大臣だって話し合いによって解決するようにという努力を今までしていなかったというわけではないでしょうし、だからそういう面でこそ本当の努力をすべきだ。武力によって、力によって問題を抑え込んで解決するというふうな方向に日本が手をかすということになってはならないというのが、これは私たちの憲法の精神に対する立場ですから、少なくとも今回のそういうシナイ半島の多国籍軍に対する財政的な援助ということは行うべきではないということを指摘しておきたいと思うんですが、大臣いかがでしょうか。
#247
○政府委員(斉藤邦彦君) 大臣がお答えになります前に、憲法関連の御質問がございましたので、便宜上私の方からお答えいたします。
 これも従来政府がたびたび明らかにしているとおりでございますけれども、憲法上認められておりません集団的自衛権というのは国家による実力の行使にかかわる概念でございますので、我が国が単に費用を支出するということはこれは実力の行使ではございませんので、我が国の憲法解釈上認められていない集団的自衛権の行使には当たらないと考えられる次第でございます。
 それから、ただいま御指摘がございました園田大臣、田中大臣の答弁でございますけれども、これは恐らく憲法の規定そのものを離れまして、憲法の掲げる平和主義の精神というものからおのずから我が国の行動には一定の制約があるということを述べたものだろうと考えますけれども、ただいま問題になっておりますこのMFOのごとく国際社会の平和と安全の維持に貢献する活動をする国際的組織に対しまして、このような活動のために資金を拠出するということは、憲法の平和主義の精神から見ましてもこれに反するものとは到底
考えられない次第でございます。
#248
○説明員(小原武君) 一言だけ補足させていただきますが、このMFOは当事国たるエジプトもイスラエルもともに合意している組織でございます。それから、活動として武力による解決を求めているということはございません。
#249
○国務大臣(倉成正君) 今条約局長及び政府委員からお答えしたとおりでございまして、今検討中の懸案でございますけれども、我が国の法制あるいは憲法に違反するとは思いませんし、また憲法の掲げる平和主義の理念との関係では、MFOのような国際社会の平和と安全の維持に貢献する活動をする国際的な組織に資金を拠出することは、平和主義の理念に反するとは考えておりません。
#250
○立木洋君 時間がないので一言だけ申し上げておきたいと思いますが、条約局長が言われたのは、今までの国会の中で政府として答弁されていることを述べられたというふうに私は理解しております。
 しかし、少なくともこの問題に関して言うならば、憲法の精神、それから我々が紛争を助長するようなことに関与すべきではないという国会での決議、あるいは武器輸出を禁止した国会での考え方、これらの問題についてはやはりもっと厳密であるべきである、これは軍事紛争にかかわる問題ですから。同時に、今言われた問題で言えば、多国籍軍というのは国連でオーソライズされた、国連で認められているわけじゃありません。いろいろとやはり意見の違いが生じ得るいわゆる軍隊の存在なんです。これはそれと同じような役割を果たすというようなことで同等視してこれに援助することは問題ないというふうな形で問題を一般化することは、私は賛成できないわけです。
 そういう点では、もう少しやはり日本の憲法の考え方や国会内で議決されておる点をもっと厳格に踏まえていただいて、こういう問題に対しては、紛争を助長したりあるいは力によって解決するというふうなことではなくて、平和的な話し合いで解決する方向に日本の政府は努力すべきであるということを再度強調しておきたいというふうに思います。
 終わります。
#251
○田英夫君 本日議題になっております二つの案件につきましては、既に同僚委員からも御質問がありましたので、私は、最初に、実は事前にお知らせしていなかった問題ですが、きょうの昼にたまたまマンスフィールド駐日アメリカ大使と食事をともにする機会がありました。当然この時期ですからココムの問題、それに関連をして貿易法案の問題などにも触れましたし、また米ソのINF交渉の問題なども話題になったわけでありますが、それは別にしまして、これは本来政府にお尋ねするという問題ではなくて、国会の問題であり、あるいは与野党の問題だと思うんですが、議員連盟の問題をマンスフィールド大使からむしろ提起されました。
 御存じのとおり、マンスフィールドさんは民主党の院内総務を務められた議会人でありますから特に熱心でありますが、日本とアメリカとの現在の状況を見るときに、もっと議会人同士の率直な意見の交流があっていいのではないかと感ずる、ぜひひとつ議員同士の交流の組織をつくってはどうかと思うという御意見です。
 御存じのとおり、日米議員連盟というのが日本側には小坂徳三郎さんを会長にしてあります。私も実は副会長を仰せつかっておりますが、これは、その他たくさんある議員連盟と同様にいわば非公式のものだと言えるんじゃないでしょうか。つまり、アメリカの場合は議員連盟というものは二つしかない。隣国のカナダとメキシコについての友好議員連盟がある。しかもそれは、アメリカの場合は議会で議決をして政府が費用を負担するという形で非常にオフィシャルな組織になっている。日本でそれに対応するものをつくれるならば、アメリカ側も同様にそうしたオフィシャルなものをつくりたいんだと。日本が現在のようないわば公式でない形の、親睦のような形の議員連盟であると、アメリカは議会で議決をして政府も金を出すというそういうことにならないという意見を述べておられたわけですが、私もかなりの部分で同感でありますし、今の日米間の状況を考えると、与野党を通じ超党派で国会議員のそうしたものをつくることは非常に意義があるだろうと思います。
 これは重ねて申し上げますが、大臣に伺うべきものではないかもしれませんが、与党の幹部でもあり、外務大臣である倉成さんに御意見をこの機会に伺っておきたいと思います。
#252
○国務大臣(倉成正君) これは国会自身でお決めいただくことでございますので、行政府の責任者である私が申し上げるべきことではございませんが、日米両国の議員の交流を活発化するということは望ましいことと考えております。したがって、その件については外務省もいろいろお手伝い申し上げたいと思いますが、正式の国会の議決に基づく日米議員連盟ということになりますと、予算を伴うことでもありますし、いろいろな問題がこれに派生してまいると思いますので、国会の方で、各党の間で十分御検討いただいてお決めいただければ幸せと思う次第でございます。
#253
○田英夫君 次に、韓国の問題について伺いたいんですが、八月の半ばに短時日でしたが韓国を訪問いたしまして、盧泰愚民主正義党総裁、それから金泳三統一民主党総裁、それから金大中統一民主党常任顧問、この三人の方にお会いする機会がありました。言うまでもなく、この三人の中から次の大統領が出るという三人でありますから、大変参考になる意見交換がありました。
 最初に、その中でいささか気になることですが、金大中さんとお会いしましたときに、冒頭に彼が言いましたのは、非常に強い調子なんですが、いわゆる金大中氏拉致事件について日韓両国政府は既に決着したというふうに言っているけれども、自分は当事者として決着したと思っていない。このことを――このことをというのはつまり、韓国の公権力がやったことであるということを今のこの韓国の政治情勢の中でならば自分の力によって証明することができる。このことを日本政府はどう考えているんだろうかと強い調子で言っていたのでありますが、このことについて今改めて政府はどういうふうにお考えか伺っておきたいと思います。
#254
○国務大臣(倉成正君) 田先生、非常に韓国の情勢にお詳しいわけでございますけれども、金大中の拉致事件についての日本政府の立場は、累次お答え申し上げておりますとおり、金大中事件は既に外交的に決着済みと心得ております。金大中事件の外交的決着については、その当時の日韓双方の最高首脳が日韓関係の大局を考えて高度の政治的判断を下したものであり、現在の内閣も引き続き尊重する態度を維持している次第でございます。
#255
○田英夫君 政府としての御答弁はそうなるだろうと思いますが、実は、今いみじくも大臣が言われたとおり、当時の日韓両国政府首脳がそういう大局的な立場から判断をした、こういうことをお答えになりましたが、韓国側の方は現在、後で申し上げますけれども、かなり大きく政府も考え方が変わろうとしていると思います。
 口上書という形で、宮澤外務大臣のときに第二次政治決着と言われておりますが、この問題については犯人を特定することはできないし、そういう形で解決をするという約束ができたと思いますが、条約局長がおいでですからちょっと確認をしておきたいんです。
 この口上書というものの性格ですね。実は金大中さんと話しておりまして、向こうの中で統一民主党の幹部がそこにほかにもおられたんですが、議論していました。この口上書というのは条約に類するものか、あるいはもっと軽いものかという議論をしていました。この辺はどう考えたらいいですか。
#256
○政府委員(斉藤邦彦君) 口上書というのは、異なる政府の間での意思伝達の手段として使われる文書でございます。その使われ方によりましては、一方的に片方の意思を他方の政府に伝達する
ときに使われることもございますし、それから場合によっては口上書の交換という形で一定の事項についての合意を確認するということもございます。
 条約かどうかという御質問でございますが、条約という意味が、国家間ないし政府間を法的に拘束いたしますいわゆる国際約束という意味での御質問であるとすれば、口上書の交換という形式をもって国際約束をつくるということも、それほど頻繁にはございませんが事例としてはございます。ただ、通常最も多い使われ方は、私の理解するところでは、口上書というのは、お互いに一方的に片方の意思を先方に通告する際に使われるものであろうと考えられます。
#257
○田英夫君 この金大中さんの拉致事件の決着をしたときの口上書というのは、両政府間の約束、こういう性格のものだったと思うんですけれども。
 そこで金大中さんが指摘しますのは、その口上書中に、いわゆる金大中さんの海外における活動は問題にしないという一項目が入っているわけですね。ところが、その後全斗煥政権になりましてから、そのことを理由にして、つまり具体的には、韓国政府に反対をする運動を海外でやっている韓民統の議長になったということを理由にして死刑の判決を受けたというふうに彼は言っているわけです。これは明らかに口上書違反になる。にもかかわらず、日本政府はその韓国政府が行った口上書違反に対して抗議もしなければ何の行動もとらなかった。私ども自分たちの仲間がそのコピーを入手して日本政府に送ったけれどもこれも黙殺された。こういうことで大変不快感をあらわにしているわけですけれども、この点については政府はどういうふうにお考えですか。
#258
○説明員(谷野作太郎君) お答え申し上げます。
 ただいま先生のおっしゃいましたいわゆる金大中さんにつきまして、今後反国家活動をしない限り日米両国の滞在中の行動については責任を問わないということは、口上書ではございませんで、いわゆる先生も御記憶の第一次の政治決着の、外交的な決着のとき、いわば両国政府間で文書によらざる了解事項として成立したわけでございます。
 さてそこで、ただいま御指摘の点が問題になるわけでございますけれども、金大中さんの八〇年九月の判決の後、日本政府から韓国政府の方にこの点を確かめたことがございます。その結果、韓国政府から判決の理由要旨というのが日本政府に届けられまして、それによりますと、ちょっと読み上げてみますと、「被告人金大中に対する反国家団体関連部分については、友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、被告人が韓民統議長の身分を引続き維持しつつ」、以下が重要でありますけれども、「国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り本件を判断した」というふうな説明を受けておりまして、したがって、金大中さんの国外の行動、言動が問題になっての判決ではないというのが私どもの理解でございます。
#259
○田英夫君 いずれにしましても、この金大中さんの私に対する発言というものは、金大中氏拉致事件というのは日韓の間にあるとげだということを言った人があるわけですけれども、依然としてそのとげは刺さったままだということをあらわしていると思います。また、現在の韓国の政治状況、これは他国のことに勝手な見通しを申し上げるべきではないと思いますけれども、もしかすれば金大中さん自身が大統領になる、つまり金大中政権というものが誕生するということもあり得る状況なんですね。そうなった場合、あるいはそうでなくても、私は韓国に行きまして、改めて最近の大きな政治的変貌というものに驚いたわけですけれども、日本の政府の方もこうした事態を踏まえてやはりあらかじめ相当決断をした対韓政策というものをお考えになるべきではないかと思うんです。
 金大中さん自身最後に、日本政府に対して注文はありますか、言いたいことはありますかということに対して、もう私は余り細かなことをとやかく言う気持ちにはならない。ただ、今までは余りにも政府、権力を握っている側とだけ接触をしてきた。ぜひこれからは我々とも大いに交流をして意見を交換しようじゃないかということを伝えてくれと。まあ谷野さんはお会いになっているようですし、またソウルの大使館の方は自宅を訪問したりもしておられるということを聞きましたから、全く交流がないわけじゃないでしょうけれども、金大中さんの気持ちとしては、自分たちの、つまり現在野党側である自分たちの気持ちももっと聞いてくれ、考え方も聞いてくれということを言っております。そういう意味で、最後に彼が言いましたのは、来年の二月、つまり現大統領が任期が切れる二月二十四日ですが、それまでに少しは韓国の民主化に役立つことを日本政府はやってほしい、こういう言い方をしているわけです。
 私も、実は金大中さんの拉致事件発生後からずっとこの問題にいろいろ口を出してまいりましたから、あるいはかかわってきましたんで、今この状況の中でも大変難しい問題だと思います、このとげを抜くということは大変難しい問題だということは十分わかるんですけれども、にもかかわらず、今金大中さん自身は公党の常任顧問で完全に政治的に復権をして政治活動をやっている韓国の指導的政治家の一人でありますから、この方にかかわるそうした問題のとげが刺さりっ放しということではまことにぐあいが悪いんじゃないか。この際ぜひ日本政府も大胆な措置をとられるべきではないかと思いますが、大臣いかがでしょうか。
#260
○国務大臣(倉成正君) 先生の御意見は十分承りましたけれども、御案内のとおり、他国の政情について今日本政府がコメントする立場にないことは御承知のとおりでございます。
 なお、金大中氏の拉致事件につきましては、これまで我が国の捜査結果によれば、韓国による我が国の主権侵害があったと断定するに至っておりません。したがって、我が国は主権侵害について韓国の責任を追及する立場にはないので、かかる責任の解除措置の一つとしての原状回復等を韓国政府に国際法上の権利として要求し得る立場にはございません。したがって、現在の日本政府の考え方を変更する考えは残念ながらございません。
#261
○田英夫君 そうおっしゃることはよくわかるんですけれども、韓国の状況が非常に大きく変わっているということをぜひ踏まえていただかないと、これも非常に厳しい言葉ですけれども、このままにしておくと日本政府は恥をかくことになりますよということを金大中さんが言っているんです。韓国の方はそういう点については非常に厳しい国民性があると私は思いますし、適当なところで妥協をするということを嫌うそういう性格からしても、あの八〇年のソウルの春と言われたときに、当時の、つまり事件が起きたときのKCIAの責任者であった人と自由になった金大中さんが会って、あれはKCIAがやったことだということを金大中さんに発言をしているという事実があります。そのことを、今完全に政治的に復権をした金大中さんが公党の責任者として韓国の国内でそれをもしやったとするならば、日本政府は非常に苦しい立場になる。
 もう一つ申し上げておきたいことは、盧泰愚さんがもし仮に大統領になられる、つまり盧泰愚政権というものが生まれる可能性ももちろんあるわけでしょうけれども、その場合は、朴大統領あるいは全斗煥大統領の韓国政府とはかなり違った空気の政権になるであろうということを私は感じてきたわけです。もちろん韓国の学生諸君などは盧泰愚政権は全斗煥政権の亜流であるという言葉を使っているわけですけれども、直接会って話を聞きまして、人柄もよくわかりましたが、私は二度目なんですけれども、同時に、はっきりと周囲を含めて、もう今までのような政治はやれない、もっと民主主義、民主政治、そして清潔な政治というものを目指さなければ政権を維持することすらできなくなるだろうということを盧泰愚さん自身が言っております。
 それから、金潤煥という人は今全斗煥大統領の秘書室長ですが、秘書室長というのはかなり政治的地位が高いようです。この人は盧泰愚さんと中学の同級生というような、同郷で同級生という関係で非常に近い人ですが、この人とも会いましたら、彼の意見からしても、つまり今全斗煥政権の秘書室長という立場の人が、盧泰愚政権というものになった場合には、これはもう今までのようなものではだめだ、まず一つ大きく変えなくちゃいけないのは、大統領が政治をやるという体制はなくならなければならない、もっと議会並びに政党が政治の主役であるという民主主義の体制にしなければならないと思うということを言っているわけであります。このことはソウルの大使館から十二分に情報として大臣のもとへ届いていると思います。
 そういう状況の中での金大中さんの拉致事件の対応ということを実は申し上げたいわけでありまして、今大臣のお答えは何年か前の外務大臣がお答えになったことと全く同じでありますけれども、そういうことではもう済まなくなるということをぜひお考えいただきたい。
 改めて一言御答弁をいただきたいと思います。
#262
○国務大臣(倉成正君) 田先生の御意見は貴重な御意見として承りました。しかし、日本の外交の責任者としての私は他国の政局の見通しについてコメントする立場にはございませんので、この点は御理解を賜りたいと思います。
#263
○田英夫君 私も、ここで意見を言うだけでなくて、この問題についてはとげを抜く作業を政府の皆さんとも一緒にやりたいぐらいの気持ちでおりますし、また、きょうあえて実は警察庁の方に御出席を要求しなかったのは、鬼の知る限り、事件当時から終始、警察の捜査という立場からは明らかに犯人を特定できるということを当時の、その後大使もやられましたけれども、山本警備局長が答えておられます。私の記憶では、金東雲の指紋は素人が肉眼で判定できるほど明確なものであるということを、速記録にも残っておりますけれども、答えております。したがって、公の席で今この時期に警察庁からそういう発言が再び出てくるということになりますと、これはかなり大きな問題になりかねません。そういうことも含めまして、しかし大きな決断をすべきときだという意見を今申し上げたわけです。
 時間がありませんので、もっといろいろ申し上げたいことがありますけれども、きょうはこの程度にしておきます。ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#264
○委員長(森山眞弓君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 先ほど、三池信君が委員を辞任され、その補欠として松浦孝治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#265
○委員長(森山眞弓君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#266
○委員長(森山眞弓君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより両件を一括して討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#267
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日加租税条約及び政府調達に関する協定を改正する議定書に対し反対の討論を行います。
 日加租税条約は、短期滞在者や芸能人など一般国民について二重課税を回避する点は評価するものでありますけれども、しかし、我が国の場合、外国税額控除制度と結びついて海外に進出する日本の大企業を税制面で優遇し、日本の課税権さえ制約して税収を減少させるなどの重大な問題がありますので、反対するものであります。
 次に、政府調達に関する協定を改正する議定書については、調達限度額を引き下げるなど対象枠の拡大や入札手続の簡便化及び入札期間の延長などのサービス向上が行われています。これは、アメリカを初めとした外国大企業に対して我が国官公需の門戸を一層開放するものであり、また、自民党政府の対米追随の経済外交と相まって、国民本位の内需拡大に逆行し、我が国中小企業、労働者に新たな犠牲をもたらすものであり、よって本議定書に反対を表明して、反対討論を終わります。
#268
○委員長(森山眞弓君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#269
○委員長(森山眞弓君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府との間の条約の締結について承認を求めるの件の採決を行います。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#270
○委員長(森山眞弓君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、政府調達に関する協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の採決を行います。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#271
○委員長(森山眞弓君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#272
○委員長(森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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