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1987/09/01 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第3号
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1987/09/01 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第3号

#1
第109回国会 法務委員会 第3号
昭和六十二年九月一日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月二十七日
    辞任         補欠選任
     神谷信之助君     宮本 顕治君
 八月三十一日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     近藤 忠孝君
 九月一日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     永野 茂門君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         三木 忠雄君
    理 事
                鈴木 省吾君
                守住 有信君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                徳永 正利君
                中西 一郎君
                永野 茂門君
                長谷川 信君
                林  ゆう君
                一井 淳治君
                安永 英雄君
                近藤 忠孝君
                関  嘉彦君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  遠藤  要君
   政府委員
       法務政務次官   工藤万砂美君
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  清水  湛君
       法務省民事局長  千種 秀夫君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       草場 良八君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   町田  顯君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  上谷  清君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   吉丸  眞君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       運輸省国際運輸
       ・観光局観光部
       企画課長     平野 忠邦君
       労働省労働基準
       局企画官     奥津 照嗣君
   参考人
       東京都立大学法
       学部教授     江藤 价泰君
       元簡易裁判所判
       事        岡田 勝二君
       読売新聞社論説
       委員       滝鼻 卓雄君
       大阪大学法学部
       教授       中野貞一郎君
       山形県弁護士会
       簡裁統廃合問題
       対策委員会代表
       委員       長岡 壽一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(第百八回国会内閣提出
 、第百九回国会衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
○民法等の一部を改正する法律案(第百八回国会
 内閣提出、第百九回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして御意見を伺うため、お手元に配付いたしております名簿のとおり、五名の方々に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙の中当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後約九十分程度、委員の質疑にお答えいただきたいと、このように考えております。
 それでは、これより各参考人に順次御意見をお述べいただきたいと存じます。
 まず最初に、江藤参考人よりよろしくお願いいたします。
#3
○参考人(江藤价泰君) ただいま御紹介いただきました江藤でございます。
 私は、民事訴訟法と裁判制度につきまして大学で講義、また演習を担当しております関係上、その点から意見を述べさせていただきたいと思います。もちろん簡易裁判所の場合には刑事訴訟の問題もあるわけでございますが、その点については暗いことをあらかしめお断りしておきたいと思います。
 まず、今回の法律案の改正に意見を申し上げる前に、簡易裁判所が戦後発足当初にどうであったのか、ちょっとオーバーな言い方になりますけれども、その理念と現実との食い違いということを最初申し上げ、それから、いわゆる戦後過程において簡易裁判所がどのような歩みを続けてきたかということについてお話し申し上げ、最後に私の意見を述べさせていただくという順序でいきたいと思います。
 御承知のように、簡易裁判所は、昭和二十二年五月三日、裁判所法の施行とともに発足したわけでございますが、当初の理念として立法過程で高らかにうたいとげておりましたのは、国民に密着した裁判所ということに尽きるかと思います。具体的に申し上げますと、庶民の中に生起する少額、軽微な紛争というものを簡易な手続によって迅速に処理するという観点からつくられた、それが理念であったということが言えると思います。それは、簡単に申し上げれば、少額裁判所として位置づけられていたということであると思うのであります。しかし、そのような構造で簡易裁判所が置かれましたので、かつての裁判所構成法下における区裁判所の構成員、それから権限等はすべて裁判所法下の新地方裁判所に引き継がれるということになり、簡易裁判所は最下級審として地方裁判所と並ぶ裁判所でありますが、それとは異質な裁判所として位置づけられたということがその点について言えるかと思うのであります。
 簡易裁判所はそのような形で発足したわけでありますが、庁舎数としてまず第一に検討してみますと、戦後当初においては五百五十七庁置かれました。これは全くの新設であるわけでありますが、五百五十七庁置かれております。その当時における区裁判所の数を見ますと二百八十三庁でございますので、約倍の簡易裁判所が置かれたということになるかと思います。これは、戦後当初の我が国の財政危機等々を考えた場合、国は非常に大きな英断をしたというふうに評価できると思います。もちろん、それにもかかわらず問題がないわけではございませんで、当初の立法過程では警察署一つに対して簡易裁判所一つ、いわゆる令状裁判所という位置づけからするとやや退歩が見られる。その当時の警察所の数がたしか千百二十七でございますので、その点からでは若干の退歩が見られるわけですが、大きな革新的な事業というものがそこで行われたと評価できるわけでございます。
 しかし、新地方裁判所と旧地方裁判所との対応関係において見ますと、簡易裁判所が純粋な少額裁判所として置かれたということは必ずしも言い切れないのではないだろうかということが別途言えるかと思います。それは、新地方裁判所は本庁が四十九、それから支部が二百二十八で、合計二百七十七庁新地方裁判所が置かれたわけであります。それに対しまして旧地方裁判所はどうであったかといいますと、本庁四十九、それから支部が八十七、それに区裁判所が二百八十三ございましたので、合計しますと四百十九庁になります。そういたしますと、新地方裁判所が旧地方裁判所と区裁判所すべての事件を引き受けて簡易裁判所を純粋な少額裁判所として機能させるという観点から見ますと、この数ではとても新地方裁判所は対応し切れないということになるかと思います。
 それから、もう一つの問題点はその当時における裁判官の定数であります。いわゆる定員数といった観点で見ますと、旧制度下の裁判官、これは昭和二十年当時における裁判官の数でございますが一千百八十九名であります。これに対して裁判所法発足時においては千八十七名と減員しておるわけであります。この点からしましても、簡易裁判所が純粋の少額裁判所として数字的に機能し得ないのではないか、負担の点から機能し得ないのではないかというように考えるわけであります。
 それからまた、簡易裁判所の訴訟手続についてでありますが、これは御承知のように、民事訴訟法第二編第四章三百五十二条以下に規定されておりますが、簡易裁判所の特則手続というのは区裁判所当時における手続を踏襲しているわけであります。やや新たに追加されたものとして見ますと、三百五十二条の手続の特色とか、それから簡易な調書でもよろしいとか、それから書面尋問等若干の規定が追加されているだけであります。したがいまして、その面からも純粋な少額裁判所としての簡易裁判所というものが訴訟手続上必ずしも依然として貫徹していないということが言えるかと思います。
 さらにまた、控訴審との関係で見ました場合には、いわゆる講学上申します続審構造というものとの関係で地方裁判所が控訴審になるわけでありますが、簡単に言いますと、事実審理は簡易裁判所から控訴審である地方裁判所まで引き継いで行われるということになりますので、その面からどうしても簡易裁判所の訴訟手続というのは本来の民事訴訟法の手続に従っていかざるを得ないような形に構造的にしむけられているということがあるかと思います。したがいまして、発足当初におきます簡易裁判所から見ますと、理念的には確かに少額裁判所ということがうたわれておりましたけれども、現実を見ました場合には、やはり小型の地方裁判所あるいは旧区裁判所的な要素というものを多分に担わされていたということが言えるかと思います。
 さらに、戦後過程について見ていきますと、まず第一に、問題になるかと思いますのは、簡易裁判所の実質上の整理統廃合というものが戦後過程で進んでいるということであります。例えば、二十一庁の全部事務移転庁というものがあります。さらにこの中には、もちろん裁判所法施行時、すなわち昭和二十二年以来未開設庁が八庁含まれておりますが、その二十一庁、それから裁判官の非常駐庁というのが現在時点で百五十庁に上っているという現実があるわけであります。
 それから第二には、事物管轄、それから科刑権の拡張ということがあると思います。
 事物管轄について申し上げますと、発足当初では訴額は五千円というのであったわけでありますが、昭和二十五年には三万円、それから二十九年には十万円、それから四十五年には三十万円、五十七年には九十万円、それぞれその額に満たない事件ということになっておりますが、そのような形で引き上げが行われております。いずれの場合においても、地方裁判所における訴訟事件の遅延の解消と、それから最高裁判所の負担軽減といった観点からこのような訴額引き上げが行われている。要するに、簡易裁判所の小型地方裁判所化ないし区裁判所化というものをこの訴額引き上げは促進しているということが言えるかと思います。
 それから三番目には、最高裁判所規則によりまして先ほど申し上げました特則手続をより少額手続にふさわしいように改めていくような施策が必ずしも十分になされてはいなかったということがあるかと思います。
 そのような実態というものをさらに追認する方向で、昭和三十九年に臨時司法制度調査会の意見書が出ておりますが、この意見書を見ますと、今回の簡易裁判所の適正配置に関する法制審議会答申のいわば原型になるものがそこにすべて出ております。例えば、簡易裁判所の整理統合といった問題、大都市部とそれから過疎地におけるいわゆる小規模の独立簡裁というものについての統合といったようなものがすべて出ているわけであります。さらに、今回の法改正ということになってくるわけでございまして、そうして見できますと、少額裁判所として理念的に発足した簡易裁判所は、戦後過程全体を通じて見できますと、必ずしもそのようなものとして位置づけられるには至らなかったということが結論として言えるかと思うのであります。そのような形で現在の簡易裁判所があるということは、結局のところ少額裁判所というものに対する国民の訴え出るという可能性が甚だ薄いということであるということになると思います。
 諸外国を見た場合に、この少額裁判所に対するそれなりの整備というものが各国では行われております。例えば、一番よく言われる点ではアメリカでございますけれども、私どもが主として勉強しておりますフランスの場合においても素人裁判所というものが実に大量に行われております。
 簡単に申し上げますと、これはすべて素人裁判官で主として行われているものですけれども、商事裁判所が二百二十七庁置かれておりまして、裁判官数は二千三百四十六人、年間の処理事件数が約二十六万件という、これは一九八二年の統計でございます。それから労働裁判所は二百八十二庁置かれております。この事件処理数は、勧解事件、和解を勧める事件でありますが、これが十一・四万件、判決が十四・三万件で、裁判官総数が六千二百七十三人といったようなことになっております。もちろんこの場合の労働裁判所はいわゆる労働争議ではございませんで、労働契約に関する紛争を事物管轄としているものであります。それから農事契約関係をめぐる紛争に対しまして、御承知のようにフランスは農業国でございますから、置かれている裁判所は四百九庁ございます。裁判官総数三千三百九十一人、年間処理事件数が大体六千五百件ぐらい処理されている。それから、社会保障関係の紛争につきまして百十庁置かれております、裁判官総数が四千二百人、年間処理事件数が十六万三千件といったように、これは簡単に言えば我が国の簡易裁判所における少額、軽微な事件を簡易、迅速に処理するというのとほぼ同じようなものとして、例外裁判所として置かれているわけであります。
 そのような、我が国のいわば裁判所法の母型になっておりますフランスにおいてそのようなものが大いに機能しているというのに対して、我が国の場合にはほぼ地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所ということで、職業裁判官のみによって我が国の裁判制度が担われているといった点で、明らかに裁判に対する国民のアクセスといった点では受け皿が余りにも小さ過ぎるのではないかということを痛感せざるを得ないわけであります。我が国が諸外国に並んで裁判を受ける国民の権利というものを十分に保障するといった観点からするならば、私は今回の簡易裁判所の統廃合というものについて、それなりの理由はあるということは十分承知しておりますが、いわば司法の本流というものをもっと充実強化するということがなければ、このような形での改正、いわば小手先の改正ということによっては決して抜本的な解決にはならないんではないだろうか。やはり司法の本流を充実強化するということがあり、それを前提にした上で少額裁判所の充実ということを図っていく必要がある。
 そのためには、現在の簡易裁判所というものが持っている少額裁判機能というものをそれなりにより発展させる方向で、今回の法律案の成立、恐らくこれは成立すると思うわけでありますが、成立を契機にいたしまして、例えば、大都市においては一庁化するということが言われておるわけでありますが、これは余りにもトラスチックな改革であるように思います。
 例えば、東京都を考えた場合、八百四十万に対して簡易裁判所一庁というのは何とも驚くべきことではないだろうか。八百四十万と申しますとヨーロッパの場合には一国を形成するぐらいのところで、そこで簡易裁判所一つということはとても言えないんではないだろうか。
 例えば、パリの場合、御承知のように、面積から申しますと世田谷区ぐらいの大きさしかございませんところに、各区ごとに我が国の簡易裁判所に対応するような、小審裁判所と訳しておりますが、そのような裁判所が置かれております。さらにまた、シテ島には御承知のように破棄院それから控訴院、それからわが国の地方裁判所に対応する大審裁判所というのが置かれているわけでございまして、交通の便といった点からすればはるかにパリの方が便利でありますけれども、区役所の隣にこの小審裁判所が置かれているということで、本当にげた履きで国民はそれを利用する。
 一国の司法制度というものが本当に国民のためにあるかどうかということは、そのような小規模な国民の紛争というものに対してどれだけ国が手を差し伸べているかということによって真価が決まるのではないだろうかというように考えますので、その点からいたしましても、今回の法改正というものを契機にして大いにこの少額裁判所、あるいは少額事件部でも結構でございますけれども、そのようなものを、何もキャリア裁判官あるいは現在のような簡易裁判所の裁判官ではなくて、本当の素人が裁判を行うといったよりな、いわば国民に密着した裁判所というものをつくるような方向でお考えいただければというように思っております。
 以上で私の意見を終わります。
 どうもありがとうございました。
#4
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
 続きまして、岡田参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(岡田勝二君) ただいま御紹介いただきました岡田でございます。
 私は、昭和四十七年に人事院任用局長を最後に行政官生活を終わりまして、その後、昭和五十三年八月に簡易裁判所判事に任命され、東京簡裁判事、続いて渋谷簡裁判事として勤務いたしまして六十年九月に定年退官いたしました。その後、六十一年の一月から渋谷簡易裁判所で司法委員として和解のお手伝いをしておる者でございます。七年余の裁判官生活を送った者といたしまして、本日の議題になっておりますところの簡裁の適正配置、統廃合を内容とする下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして私の意見を申し述べさせていただきます。
 簡易裁判所制度ができましたのが昭和二十二年でありますから、ことしでちょうど四十年になります。この間におきまして、我が国経済の発展に伴いまして農山村から都市への人口流出によりまして農山村の著しい人口減少、都市、殊に大都市及びその周辺地域への著しい人口増加が見られたわけであります。都市問題の一つとしての都市における犯罪の増加、多発現象が見られますし、また、同じく都市問題の一つとしての住宅問題から引き起こされるところの借地、借家等の不動産問題が大きくクローズアップされてきております。さらには商品、サービス関係の取引の増加が目覚ましいものがございますし、あるいは交通事故などのトラブルの増加も非常に顕著なものがございます。これに伴いまして、都市部におきましては民事、刑事の事件数が、単なる人口比でなくて、人口に対してある係数と申しますか、乗数と申しますか、そういうものを掛けた数値として飛躍的に増加しているように思われます。
 また一方、この四十年間におきまして道路の著しい改善、それから公共交通機関の充実、自家用自動車の発達、増加など、交通事情は大幅によくなっております。したがいまして、A地とB地の間の二地間の時間距離は相当に短縮されております。それに伴いまして、住民の生活圏、つまり経済活動を含めます社会活動の地域的範囲は相当に広がっております。都市、農山村を問わず通勤、通学距離が延びているということはその一つの証左であろうかと思います。これらの人口の移動と、それから交通事情の変化という現象は、年を追って顕著になってまいっておりまして、それとともに民事、刑事の事件数の偏在ということが昭和三十九年の臨時司法制度調査会の答申のころには、特に簡裁統廃合が調査会の答申の一つの大きな柱になっておるほどに大きな問題を投げかけてきたと思います。その後、今日までさらに二十三年、人口移動と交通事情の変化という現象をてこにいたしまして提起される簡裁統廃合問題は年とともに大きな課題になってきたと考えられます。
 このような状況のもとで、簡裁間における民事、刑事の事件数の著しい格差を生じまして、それは直ちに裁判官、書記官等の職員の仕事の負担のアンバランスを生じてきております。それは裁判官、書記官等の人事管理上の問題だけではなく、裁判実務の面において負担の過重は裁判の遅延を引き起こし、また裁判の疎漏をも引き起こしかねない問題でもございます。
 簡裁統廃合問題を焦眉の急を要する問題といたしましたのはいわゆるサラ金問題、クレジット問題等の消費者信用の諸事件であります。これらの事件は一時恐ろしいばかりの急カーブを描いて増加してまいりました。私が勤務しておりました渋谷簡裁におきましては、五十九年一月から、従来、民事四、刑事三の裁判官の配置を民事五、刑事二と、刑事から民事へ裁判官を一人移しましたし、それに即応いたしまして書記官、事務官等もしかるべき措置をとったわけでございます。さらにその後、同年五十九年十月には司法委員の活用ということに着目いたしまして、これを活用して和解に当たらせて民事裁判官の負担を軽減することにいたしたわけでございます。ほかの簡裁でも同様の措置を、工夫をされたのではないかと思いますが、一つの簡裁の中でできることはせいぜいこのぐらいのことじゃないかと思います。
 もとより、このような問題に対処いたしますには、裁判官、書記官以下の増員が最も望ましいことではありましょうが、また、現に最高裁当局でも毎年努力を重ねられて、裁判所職員定員法の改正による増員がなされてきていることは事実でありますが、現実的には裁判官、書記官等の飛躍的な増員ということは諸般の情勢からなかなか難しいことであるように思われます。そうでありますならば、事件数の少ない裁判所につきましては、余り無理のない範囲で、すなわち多少の不便は国民に我慢していただいて、これを統廃合するのもやむを得ないかと考えます。国民に身近な裁判所、国民の駆け込み寺内な裁判所というのは、何も物理的、距離的に身近なところにある裁判所という意味ばかりでなく、もっと基本的には心理的に身近な裁判所という意味であろうかと思います。
 戦前と戦後では、国民が司法、裁判所というものを見る目が大きく変わってきたように思います。新聞、テレビ等に民事、刑事に関する事件や訴訟が報道されることが非常に多くなってまいりましたのはその一つのあらわれであろうかと思います。昨日は多摩川の決壊による東京高裁の判決が出ておりますし、あしたは最高裁で離婚問題の大法廷判決が出る、もうその出る前から報道されておるような状況であります。そうは言いますものの、個々の国民にとりましては、裁判所、この席にも多くいらっしゃいますが、弁護士の先生というのは実は縁遠い、敷居の高いところでございます。簡裁と家裁の区別すら知らない人が決して珍しくないというのが現実であります。話し合いはしても争訟という形をとるのを好まない、裁判所へ行きたくないというのが多くの国民のメンタリティーではないでしょうか。
 仕事の負担の過重からくる問題については、先ほど申し述べましたが、他面、仕事の過少からくる問題もございます。事件数の少ない簡裁では、毎日毎日仕事があるとは限りません。簡裁の裁判官が魚釣りに行っていて、用事があれば呼びにいくというのはこれは大分昔の牧歌的な風景のようでありますが、今その時間的余裕を法律実務の勉強に充てているというのが簡裁裁判官の実情のようであります。
 それはそれで結構でございますが、この勉強が身につくにはやはり実務を重ねつつ、つまり勉強と実務が両々相まってこそ本当の意味で法律実務家としての勉強が身につくんだと思います。闘いつつ学ぶということこそ貴重でありまして、単なる法律書を読んでの勉強では畳の上の水練になりかねません。やはり馬はくら数でございます。実務があってこそ勉強にも身が入り、勉強が身につくものであります。このことは法曹関係者のみでなく、例えばお医者さんの場合にも十分当てはまることだと考えます。
 さらに付言いたしますと、私は、裁判官は一人だけという裁判所は本来的には望ましいものとは思いません。とかく裁判官は社会的、人的交際が少ない、狭い、世間が狭いということが言われますが、せめて二人いてこそお互いに切磋琢磨もできるわけであります。また、もとより裁判官は独立不羈で判断するわけではありますが、個々の法律問題につきまして他の裁判官の意見を徴してみるということは何ら差し支えないことであり、これこそ裁判官の独断、独善を排する道であろうかと思います。また一面、単独裁判官、その庁に一人しか裁判官がいないということからくる心理的な負担、圧迫感も少なくなかろうかと考えます。
 以上は地方における簡裁の統廃合について申し述べましたが、続いて大都市におけるそれについて申し上げます。
 私が二年前まで勤務しておりました、そして今は時々出務しております渋谷簡裁は、渋谷、世田谷、目黒の三区を管轄区域としておりまして、その人口は百三十二万、警察署は九署ございます。ちなみに都内の二十三区内には簡裁は十二庁、裁判官は約八十名、警察署は七十四署ございます。
 政令指定都市のような大都市にありましては、昼間人口と夜間人口との大きな開きが各区において見られますし、さらに例えば東京の場合、神奈川都民、川崎都民等々という言葉がありますように、大都市及びその周辺地域では住民の生活圏は地方住民のそれよりもさらに大きいのが現実の姿であります。
 このような状況のもとでは、大都市の簡裁はこれを一庁に統合して、大量化し、多様化している事件を、専門部を設けていわば分業体制をとることが必要であろうかと考えます。現在でも東京簡裁では刑事訴訟、民事訴訟のほかに令状略式や調停が分かれており、ある程度の分業、専門化が行われておりますが、さらにこれを徹底して、刑事交通、手形、支払い命令−督促手続です。即決和解、過料なども分立させ、あるいは民事訴訟や調停にいたしましても、不動産、交通、金銭などと区分することも十分に考えてしかるべきことかと考えます。裁判官も、専門部を担当して何年かすればその道のベテランになります。言葉は悪いですけれども、何でも屋ですと、一庁在勤中に格別何も十分にこなせるまでに至らないというおそれがございます。
 それから、二十三区内に十二の簡裁がありますれば、その細かい取り扱いにつきまして区々に分かれて、往々弁護士から東京簡裁ではこう、豊島簡裁ではこうとその取り扱いの差異を指摘されることがあります。民事の受け付けにつきましても、受け付け窓口が余り忙しくては、当事者の話は正直とかく長くなりがちなものでございますが、話をゆっくり聞いてあげるという余裕などはなくなってしまいますし、そうでなくても、裁判所職員としては、一方当事者に肩入れしたと誤解されても困るので、とかく応答は言葉少なに控え目になり、それが逆に当事者からは裁判所は不親切だなどと思われかねません。その辺に今の大都市簡裁の窓口でなし得ることの限界がございます。
 考えられますこととしては、従来からの受け付け窓口とは別に、相談センターとも言うべき相談窓口を設けまして、ベテラン書記官を配置し、相談を懇切丁寧に聞いてあげるような体制、施設を準備することであります。さらには、裁判所、弁護士会、司法書士会、その他の関係諸機関、団体による常設の無料法律相談の場を設けることなどが考えられてよいと思います。そうしてこそ裁判所、司法というものを国民の身近なものにする、迂遠なようではありますが、実は早道ではないかと思うわけでございます。
 以上は、わずか七年余という短い簡裁判事としての、しかも司法部外から入ってきたいわば素人裁判官であった者の目から見たところを率直に申し上げた次第でございます。この法案の成立を強く期待しておるものでございます。
 終わります。
#6
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
 続きまして、滝鼻参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(滝鼻卓雄君) ただいま御紹介いただきました滝鼻卓雄でございます。
 現在、読売新聞の論説委員をしておりますけれども、論説委員になる二年ほど前までは約十二年間にわたりまして、いわゆる司法記者というものを務めておりました。その間には裁判所、検察庁、弁護士会というものを担当したわけでありまして、今回簡易裁判所の適正配置について意見陳述するに当たりましては、傍聴席から見た裁判所のあり方、あるいは裁判所を利用する市民の側から見た裁判所への注文といったような点をお話ししてみたいと思うわけであります。
 冒頭から個人的な体験で恐縮ではありますけれども、私が可決記者をやっておりました十二年の間、簡易裁判所の事件を取材したという経験はたった数回ぐらいしかございません。その事件はいずれもニュース価値の高い事件ではありましたけれども、十年を超える裁判所担当の中で、たった数回とは余りにも少な過ぎると今は反省しているわけであります。ただ、その簡裁に対する取材の回数が少ない一つの理由は、やはり都内において霞が関からそれぞれの簡裁に行く交通の便が非常に悪いということが一つの理由に挙げられるかと思います。日ごろ報道の自由とかあるいは知る権利というようなことを口にしております私どもが、交通の便というようなことを理由にするのは甚だ恥ずかしい次第ではありますけれども、実情はそのとおりであります。簡易裁判所がある一カ所に集中してあれば、もっと貴重なニュースが発掘できたんではないかというふうに考える次第でございます。
 もう一つ、これも個人的な体験でございますけれども、私は今都下の町田市というところに住んでおります。数年前に自分の住んでいるところの近くにいわゆる迷惑施設というものができる動きがございました。付近の人たちと相談した結果、やはりこの問題は裁判所に解決を求めたらどうかという話になったわけでありますけれども、町田市の管轄は八王子の裁判所になりますけれども、そこへ行くには何しろ非常に交通の不便なところでございます。かえって都心の霞が関の裁判所に出てきた方が非常に便利だということで、そのときは地域の人たちと話し合って訴訟を断念したわけでありますけれども、その断念した理由の一つが地域の裁判所がないということ、非常に交通が不便である、適正に配置されていないという点であったことは間違いない事実でございます。
 以上のように、私の身の回りのことを考えてみましても、簡易裁判所、特に身近にある簡易裁判所の適正な配置ということが非常に重要な問題であるということも私自身経験したわけでございます。
 今回、最高裁が小規模簡裁の一部の廃止とそれから都市簡裁の集約化ということを骨子とした法律の改正案をこの委員会に提案されているわけでございますけれども、私はこの案については原則的に賛成でございます。もちろん、今紹介した個人的な体験のみによって賛成しているわけではないことはもちろんであります。
 特に、地方の独立簡裁について申しますと、事件が余りにも少ないために、いわゆる独立簡裁の半数には裁判官が常駐していないという事実も知っていなければならないと思います。このような小規模簡裁にはもちろんほとんどの町に弁護士さんはおりません。そのため、この町で事件があるときには近くの簡裁から裁判官、それから刑事事件の場合は検察官、それから弁護士さんが同じ汽車でやってきてそこで事件を処理するという光景もよく見られるようであります。よく西部劇を見ますと、アメリカの西部開拓時代にサーキットコートの裁判官が町から町をめぐって事件を処理したというシーンにぶつかりますけれども、まさに同じようなシーンが日本の小規模簡裁の周辺で見られるということも指摘できるのではないかと思います。それはそれでほほ笑ましい光景ではありますけれども、裁判の効率化ということを考えますと、まだ改善すべき点はあるのではないかというふうに私は考えるわけであります。
 そういう小規模簡裁の問題についてもう一つ言いたいのは、簡裁を取り巻く社会情勢あるいは経済情勢が、できてから町十年間非常に大きく変わったということであります。新憲法の施行によりましていわゆる逮捕の令状主義というものが採用されましたけれども、その結果二つの警察に大体一つの割合で簡易裁判所ができたわけでございます。その数は五百を超えまして、今でも大体同じような数があるわけです。終戦当時は、やみ物資の流通によるやみ米事件であるとか、あるいはその他軽微な事件がかなり多かったとは聞いておりますけれども、現在では小都市あるいは郡部の人口が非常に少なくなりまして、あるいは交通手段の飛躍的な発展によって簡裁と隣の簡裁の所要時間というものも極めて短縮された現実もございます。また反対に、先ほど町田市のケースを言いましたけれども、管轄内の裁判所に行くのも非常に不便になるというケースもあるわけでございます。
 そのような傾向を踏まえまして、事件の数が簡裁によって非常に偏在化しております。例えば、大阪簡裁では年間二万件を超える事件があるそうですけれども、青森県のある簡裁ではたったの三件という簡裁もあるようです。ここ五年間の平均で見ましても、年間十二件以下、月一件以下という簡裁が二十四庁もあるというふうに聞いております。もちろんこういう簡裁には裁判官が常駐しているわけではありませんけれども、やはり職員は必要ですから、例えば一つの簡裁に三人の職員がいると、大体年間の人件費で二千万円ぐらいが必要ではないかと考えるわけで、この人たちが月一件の事件を処理した後は庁舎の清掃とか草むしりしかないという話も聞いておりますし、私が最近出張したときにもそのような話を聞きました。この行革の時代に極めてむだな話でありますし、また、そこに配置されている職員の勤務意欲にもかかわる問題ではないかと思うわけで、ぜひ改善を進めていただきたいというふうに考えます。
 それからもう一つは、大都市簡裁の集約化の問題でございます。これはこれまでの参考人も指摘されておりますように、社会、経済活動が都心に集中しあるいは交通網が整備されて、今の住民の生活圏がかつての地域よりも広がってきた。それから地域に根差したいわゆる地域感覚というものも少しずつ薄くなってきたということを考えますと、都内に今点在しております裁判所をある程度集約してもやむを得ないというふうに考えるわけでございます。特に、クレジットであるとかあるいはサラ金関係の消費者信用訴訟というものは、例えば渋谷、豊島、新宿といった簡裁に集中しておりまして、それに反比例するような形で、以前は比較的地域特性の強いと言われていました借家、借地といったような不動産事件は比較的少なくなっていると聞いております。したがいまして、大都市に点在している簡易裁判所というものは利用する上で不便になっているのが現実ではないかと考えるわけでして、その点においても大都市における簡裁の集約化ということについては原則的には賛成の意見を持っております。
 このように、簡裁の適正配置についての法律改正は、原則は賛意を表明いたしますけれども、その実現に当たっては幾つかの注文を出しておきたいと思います。
 まず一つは、先ほども御指摘がございましたけれども、裁判所というところは私たち住民にとっては極めて敷居の高いところでございます。その簡裁が一カ所に集約される、あるいは別の簡裁と一緒になるという、規模が大きくなれば当事者はそれだけ威圧感というものを受けます。やはり気軽に利用できる簡易裁判所の実現ということをまず希望するわけであります。
 二番目に、利用しやすい裁判所をつくるためには幾つかの具体的な措置が必要ではないかと考えるわけであります。例えば、大きな簡易裁判所へ行って自分の悩みを訴えるときにどこへ行っていいかわからないというのが実情であろうかと思います。そのためにはそれぞれの簡易裁判所にいわゆる総合病院で言う振り分け診療科みたいな案内所をつくってもらいたい。できればそのカウンターも今の裁判所の小さな窓口ではなくてオーブンカウンターにしてもらいたいということをまず提案したいと思います。
 それから三番目に、現在は昼間働く人が都市には随分多いわけでして、裁判所も昼間しかやっておりません。そのために、自分の法律的な援助を求めるためには、裁判所も電話サービスあるいは夜間の訴えの受け付けということもこれからは考えていただきたいと思う次第でございます。
 それから、これが一番重要でございますけれども、簡易裁判所で一番身近に感じる事件としてはやはり本人訴訟と調停事件の問題であろうかと思います。
 簡裁事件に対する弁護士の関与率というのは年年減っているようでして、反対に本人訴訟がふえ続けている現状があるようです。現在は、約八割の事件が弁護士がついていない本人訴訟であると言われています。その原因は、弁護士事務所自体が都心に集中して地方にないということもあるでしょうし、また定型化した消費者信用訴訟ということが激増していることもその一つであろうかと思います。したがいまして、そういういわゆる丸腰の当事者がやってきたときに、気軽に利用できるような簡裁の実現ということが必要であろうかと思います。
 もう一つは、地域の特性をそのまま反映した調停事件のあり方であろうかと思います。最高裁は事件の種類別にある程度の調停委員の専門分担であるとか、あるいは地域的な分担を考慮しているというふうに聞いておりますけれども、このような慮配はぜひ実現していただきたいと思うわけでございます。
 それから、五番目になりますけれども、地域と裁判所が遠くなればなるほどやはり裁判官は現場を見てくれない傾向がございます。特に東京、霞が関一カ所に簡裁が集中されますと、出張尋問であるとか、あるいは証拠保全の手続であるとか、現場検証などがなかなか実現しないのではないかという心配を私どもは持つわけでございます。弁護士会も同じような心配を持っているようでございます。このようなことがないように、今度は裁判所の方が遠くへ出かけて、それぞれの地域の事件を自分の目で見ていただきたいというふうに考えるわけでございます。
 最後に、今までるる述べましたことは、言葉で言うのは簡単ではございますが、これを一つ一つ実現するのは非常に困難な面もございます。とかく裁判所は裁判の機能面であるとか効率面だけを強調する癖がございますけれども、私たちにとっては身近で利用のしやすい裁判所というのが簡裁の理念であろうかと思います。それを忘れてしまっては新しくできた簡裁はただのコンクリートの箱になってしまうんではないかと心配するわけでございます。
 以上が私の意見でございます。
 どうもありがとうございました。
#8
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
 続きまして、中野参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(中野貞一郎君) ただいま御紹介をいただきました中野貞一郎でございます。
 大学で民事訴訟法の研究をいたしておりますので、昨年の簡易裁判所の適正配置に関する法制審議会司法制度部会の審議及び答申に参加させていただき、それを踏まえまして、現在、皆様御審議中の下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、いささかの私見を申し述べさせていただきます。
 最初に申し上げたいと思いますのは、簡易裁判所の適正配置の必然性でございます。
 申すまでもなく、裁判所も社会機構の一環でありまして、社会の変化、進展と歩調を合わせて進むべきものでございます。簡易裁判所は御承知のとおり、昭和二十二年、戦後間もなくの司法改革によって新しく設けられました最下級審の裁判所でございまして、その配置に当たりましては、新憲法の令状主義の要諦から警察署の配置との関連、これが重視されましたほか、当時の交通事情や人口分布等が基準にされましたことは当然でございます。その設置後、既に四十年の歳月をけみしまして、その間に社会事情は大きく変化いたしました。人口は約一・五倍にふえ、しかも都市部での増加あるいは郡部での減少というこの二つの相反する現象、両極化現象というものが進んでまいりまして、他面では鉄道・バス路線、道路網の発達、整備、それに加えまして、当時何人も予想しなかったような自動車保有台数の激増、日常的交通手段としての車の利用、こういったものが大幅に交通事情を改善、変容してまいりました。これらは簡裁に提起されます事件にいろいろな影響を与えたのであります。
 行政にありましては、行政区画の広域化でありますとかあるいは警察組織の改変によりましてこういう社会事情の変化に対応してまいりましたけれども、ひとり裁判所はこの動きの中に取り残されてまいりました。
 現在、ここで御審議いただいておりますこの下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部改正というのは、何よりも簡裁発足当時の配置の基礎になった客観的な事情変更ということに合わせる、アジャストするということから出てきているわけでございまして、この改正はいつかは必ずなされなければならなかった、本来ならばもっと早く出てきてしかるべきものであったと思われるのであります。
 ほかの国の例をとりましても、例えば、ドゴールの訴訟改革は一九五八年でございますが、これはそれまでの治安裁判所が約二千近くあったものを四百五十五庁の小審裁判所へ移したと言われておりますが、これは交通事情の変化、予算の効率的な利用といった点が基本になっているようでございます。
 現在の日本で、これまで取り残されてきた裁判所改革というものが今動き出したのはなぜかということでございますけれども、これは二面の理由があるということでございます。
 一つは、当初配置の不合理が顕在化してどうにもならなくなった、こういうことであります。現在、裁判官を常置させることができない、事件数が少ない簡易裁判所が全国で百四十庁に上っておるわけであります。裁判所を置く以上は事件の受け付け、書類の授受などのために最低限の人員配置はどうしても不可欠でございますし、庁舎、備品等の整備を要する、こういう非効率的な運営を余儀なくされまして、隔地に赴いてまいります裁判官や弁護士の負担も大きい。これが簡裁にとどまらず裁判所全体の合理的運営を妨げてきたというのが実情でございまして、これにもはや耐えられない段階に来ているということが一つでございます。
 もう一つは、これまで各参考人も申されましたとおり、最近の大都市における簡裁事件の急激な増加でございます。特に、昭和五十年代以降の消費者信用の飛躍的な膨張というものをバックに、例えば、十年前に比べまして三倍以上に当たるような数が出てきている。特に大都市におきましてはまさに爆発的に膨張しているわけでございまして、現在のまま推移いたしますと、大都市簡裁は負担事件の重圧に耐え切れず、機能麻痺に陥るおそれがございます。人員や財政の支出がスムーズにやられるならばその困難は切り抜けられるでありましょうけれども、裁判所としては、大都市簡裁の統合、再編成を急ぐ以外に、差し迫った危惧を脱する道はないと思われるのでございます。
 第二の問題点は、簡易裁判所の使命、性格から見て、今回の改正法案のような形で再配置をすることが妥当なのかどうかという点でございます。
 簡易裁判所制度の発足当時におきましては、簡易裁判所の理念として、国民一般にとって最も身近な親しみやすい裁判所を設けて、少額、軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理させるいわゆる民衆裁判所である、駆け込み裁判所である、これを全国津々浦々に設けるのだということがうたわれたのでありますが、今回のように簡易裁判所を大幅に整理統合するというのは、この理念に逆行するものではないかという疑問が出されているわけでございます。
 この点につきましては、私は次の三点を指摘したいと思うわけでございます。
 第一は、駆け込み裁判所ということが、裁判所をどんどん利用できる、裁判所へのいわゆるアクセスということを言うのであれば、それは裁判所への場所的、物理的な距離の問題ではないはずでございまして、むしろ、実効的な権利保護が受けられることのたやすさというものが問題になるはずでございます。
 裁判官がいない、月に四回あるいは二回というようなテンポでしかやってこない。あるいは事件の受け付けのために必要な最低限の職員さえもそろわないいわゆる二人庁というようなものが現在四十五庁もある。あるいは全部事務を移転してしまった庁もある。こういう状況でございまして、現在の配置のままの簡裁すべてにおいて万全の体制を維持することはできない。多少遠くても裁判官の常駐する設備の整った裁判所で迅速な裁判を受ける、あるいは弁護士さんが独立簡裁のある地域にほとんどおられないということも事実でございまして、弁護士さんの受任を得て実効的な権利保護が受けられるという状態を確保しなければならない、こういうことであります。
 第二は、簡易裁判所の役割、これは駆け込み裁判所としてだけつくられたものではなく、同時に、地方裁判所と並んで第一審の管轄を分担する裁判所だという点でございます。
 殊に、刑事では微罪事件は裁判所に参りませんから、簡易裁判所は当然小型地裁の性格を持たざるを得ない、こういうことでありまして、三審制度のほかに駆け込み裁判所があるわけではなく、簡易裁判所はれっきとした三審制度の最下級審裁判所として地方裁判所と並ぶものであるわけでございます。これは江藤参考人も既に詳しく申されたとおりでございます。
 第三は、駆け込み裁判所という理念は、アメリカ占領下におきましてアメリカの少額裁判所、スモール・クレームズ・コートを一つのモデルにしたものでございます。しかし、紛争があれば直ちに裁判所に駆け込むという発想は、もともと日本社会に異質なものでございます。法というものが機能いたしますのは、特に文化、伝統を異にする国民が共存しているところでは法が唯一の基準になるわけでありまして、社会の紛争を一つの統一基準で裁こうとすれば、それは法しかないということであります。アメリカにおきまして裁判所が非常によく利用されているのはそのことが根本の理由でございます。
 最近も、ミノルタという会社がアメリカで訴えられたという記事が新聞に出ておりましたが、現在、日本の大きな自動車会社は、それぞれ三ケタ以上の訴訟事件をアメリカで持っているというようなことが言われています。これはアメリカの国民が、国民生活の中で隣人とのトラブルでもあるいは親子のトラブルでも裁判所に持ち込むと同じように、企業におきましても、企業のビジネス手断として、あるいは企業の戦略として訴訟を利用するということが社会の一つの風潮なんでございまして、こういった点にアメリカ社会の特徴がある。単一民族で一つの共通のモラル、倫理、礼儀、こういったもので支配されております社会におきましては、法は真っ先に出てくることはないんでありまして、これは日本だけではなく、韓国におきましても、あるいは中国におきましてもそうなんです。
 簡裁が駆け込み裁判所として成長してこなかった基盤は、日本社会の特質にある。日本には日本に合った紛争解決制度として、調停とかあるいは新しい少額裁判というものが利用されなければならない、こういうことでございます。
 最後に、改正案の評価、将来への展望ということでございます。
 確かに、これまで四十年にわたって存在してまいりました簡易裁判所が、他の簡易裁判所に統合される、廃止されるというのは、その地域住民にとりましては何といっても不便なことであり、どんなへんぴなところにおきましてもそこに裁判所があるということが周辺住民の法意識を高め、あるいは紛争解決の役に立つということはもちろん否定できません。しかし、裁判所は国家の裁判所として限られた人員、施設、予算の範囲内で運用されなければならないわけでございまして、この限られた人員や予算をできるだけ効率的に配分して、できるだけ充実した機能を果たしてもらうということが必要であります。四十年の実績、人口動態、交通事情の推移というものを考慮して今回再配置が行われますのは当然であり、一つの必然でしかない。そして、統合されました配置のもとで人的、物的に充実された形で簡裁の機能を確保し、向上させるということが目標とならなければならないということであります。
 今次の改正案が基本にしております事件数と所要時間をもとにした立案の形式でございますが、これは私は妥当なものだと思うわけであります。年間の事件数、民事訴訟、刑事訴訟、調停事件、これを合わせて百件というのは、全簡裁の裁判官一人当たりの平均件数の三分の一を割っているわけでございますし、また、統合される裁判所までの所要時間一時間という基準も、社会通念上、裁判所の利用に当たりましてその程度の負担は当然許されるであろう、極めて常識的な、国民の納得を得やすい基準と思われるわけでございます。答申の出しました数から改正案では四十八庁独立簡裁が減っているわけでありますが、これは答申案が全国的に公平な形で行われるように実施基準を出したのに対しまして、各簡裁の個別事情、地域の実態に即して修正したものでございまして、その間の裁判所、弁護士会、各地の自治体等が払われました絶大な努力に敬意を表したいと思うわけであります。
 このように、四十年近く手がつけられていなかった裁判所制度の見直しという今回の改正は、対象を簡裁の適正配置ということに限定しておりますけれども、これは簡裁の適正配置にとどまるものではなく、広く裁判所の機能の充実、改善の大きなきっかけになると思われるのでございます。
 大都市簡裁における今後の、例えば、専門部制を導入するとか・あるいはコンピューターを導入して能率的に処理する。これは西ドイツにおきましては、一九七六年の民事訴訟法改正法、いわゆる簡素化法というものによりまして法律を改正いたしましてコンピューターの導入を許したわけでございまして、これによりまして大量の督促事件というものが極めて迅速に処理されるようになっているわけであります。このような措置は、今後の日本におきましてもやがてはぜひ必要なことでございます。
 また、この簡易裁判所の充実を契機に、各参考人も申されましたように、一般の少額請求事件をくみ上げて日本の紛争解決として適当な手続を新しく探し求めまして、あるいは調停制度の充実した利用によりまして解決を図っていく、あるいは簡裁のなくなったところへの出張調停あるいは出張審判を考える、こういった措置が今考えられているようでございますけれども、それはぜひとも今後の課題として逐次実現されていかなければならない。あるいは簡易裁判所に併置されておりました家庭裁判所支部の統廃合の問題、あるいは地裁の支部の設置の見直しなど、今後、簡裁の適正配置をきっかけとして多くの課題が次々に解決されていくということを切に希望し、そのための努力を期待したい、こういうふうに考えるわけでございます。
 以上の次第で、今次の改正案に対しましてその成立を切に希望し期待するものでございます。
 どうもありがとうございました。
#10
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。
 それでは最後に、長岡参考人にお願い申し上げます。
#11
○参考人(長岡壽一君) 山形県弁護士会の長岡壽一でございます。
 山形県からお呼びいただきまして、意見を述べる機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。
 今お渡しいたしました資料は、山形県弁護士会において簡易裁判所の統廃合に関する協議をして意見書を作成したものでございます。御参考にしていただければありがたいと存じます。
 山形県弁護士会では、最高裁判所において昭和五十九年、独立簡易裁判所を廃止して統合するという動きが出て以来、委員会を設けまして地域の実情を踏まえて検討してまいりました。その結果、昭和六十一年十二月五日臨時総会を開きまして、先ほどお渡しいたしました資料のとおり決議をしております。それは、山形県内において対象となっている村山、寒河江両簡易裁判所を廃止することについては反対であるという結論でございます。それに関連しまして若干意見を述べさしていただきます。
 まず、御留意いただきたいのは、弁護士がこのような意見を述べるにつきましては、弁護士の業務という観点からではなく、地域住民が裁判を受ける権利がいかに保障されるかという観点から述べさしていただくのだということであります。弁護士法第一条では、弁護士は「法律制度の改善に努力しなければならない。」と規定されております。このような観点から公正中立な立場で述べたいと考えております。
 まず、本件の法案のもとになっている基準には、事件数と隣の裁判所までの交通所要時間の二つの基準があります。そこで、まず事件数を一つの重要な基準とすることの問題点を述べさしていただきます。
 最高裁判所におきまして事件数を基準としたことにつきましては、ジュリストという雑誌の八百七十一号に最高裁判所の担当者が論文を載せております。それによりますとこのような記載がございます。「事件数の増減は様々の要因によって左右されるところであるが、実証的なデータからすると人口の増減と最も密接に対応していると思われる。」とされております。では、なぜ人口を基準としないで事件数を基準としたのでありましょうか、ここに重大な疑問を持つわけであります。
 最高裁判所の基本的な考え方に、事務処理の効率化という裁判所側からの考え方があったのではないかと思わざるを得ません。例えば、議員定数の増減、変更をするについて投票率を基準とするでしょうか。人口を基準としているではありませんか。同じように、簡易裁判所を廃止するかどうかということについて、地域住民の人口ではなく、どれだけ利用したかといういわば選挙における投票率を基準として改革するような基準だと思われます。やはり潜在的に裁判を受ける権利というものがある以上、それは事件数ではなく国民の数によって潜在的な需要というものがはかられなければならないのではないでしょうか。
 また、具体的に事件数と申しましても、基準とされている五年間の事件数というものには大変特殊な意味がございます。先ほど参考人の方からも意見の中で述べられましたように、この期間においては特にサラ金関係の事件数が急激に増加したということであります。つまり、サラ金の営業所の多い地域の裁判所にはたくさん事件が持ち込まれて、サラ金の営業所がないところにはほとんど事件が持ち込まれない。つまり、増加はしないということでございます。しかるに、この傾向は約二年ないし三年だけの一時的なものでございます。全国的な実情はわかりませんけれども、山形県内においてはそのとおりでございます。
 例えば、山形簡易裁判所の民事調停事件数は、昭和五十六年に六百五件、五十七年に五百三十七件であったものが、五十八年には何と千五百二十八件にふえまして、五十九年にも千五百三十九件となっております。しかるに、その翌年六十年には六百五十八件に減っております。これは、その間にいわゆるサラ金二法、貸金業法などが制定、改正され施行された結果、このような事件は急激に減ってもとに戻ったわけであります。このような事件数の中身というものも考えていただかなければならないのではないかと思う次第であります。
 また、刑事訴訟事件につきましては、既に簡易裁判所に対応して設置されております区検察庁がそれぞれ隣接庁に事務を移転しておりまして、ほとんどその実態がありません。そこで、区検察庁側では、その簡易裁判所にはできるだけ起訴をしないようにしようという方針がとられております。このような状況のもとで刑事事件がほとんどないというのは当たり前のことだろうと思います。
 次に、所要時間の点について考えてみたいと思います。
 六十分以内という基準は、中心地から隣の簡易裁判所まで行く時間を言っております。しかし、その中心地からさらに遠方にある住民、これもたくさんいるわけでございます。例えば、村山簡易裁判所の管轄区域内で見ますと、その中心地の楯岡というところから山形簡易裁判所に行くのに約五十四分かかります。これは特急のバスを利用した場合の最短距離。しかし、その楯岡よりもさらに遠いところにある集落、それが半分以上でございます。ですから、管内人口十万余りの中で、過半の人がそれよりももっと、一時間以上要する地域に住んでいるという実情であります。そのような地域の実情も十分考慮されなければならないと思います。
 また、山形県におきましては冬季間、つまり冬の間の交通事情は全く夏場と違うということでございます。雪が降りますと、その結果道路交通は大変粗悪になりまして、通常五十分で行けるところが七十分、八十分とかかるということがあるわけでございます。これは十二月から三月までの間、実質約三カ月くらいの間はそのような実情でございます。このような地域の実情というものも、交通事情を考える上で、単に数字にあらわれたところだけでなく検討していただく必要があろうかと存じます。
 また、裁判所側では、各関係自治体などの意向を十分聴取してその実情の把握に努めているんだということを述べられておりますが、果たして本当に地域の実情をおわかりになってこのような線引きをされ、あるいは個別事情を考慮して廃止あるいは存置という結論を出されているのか疑問な点がございます。確かに弁護士会との協議は、山形においても昭和六十一年十月から十一月にかけて三回行われました。しかし、その協議は、既に廃止という結論は決まっているんだ、ただ弁護士会の意見を聞くという場を設けるというにすぎないような雰囲気でございました。また、地方自治体の市町村長あるいは議長、その他の関係機関の意向をどのような形で聞かれたのか、把握されたのか大変疑問でありますし、不明確でもあります。私どもが各自治体の首長あるいは議長、それからその他関係団体の方々に意見を伺ったところ、すべての機関の担当者は廃止に反対するというふうに言っております。そしてまた、最高裁判所あてにも要望書などをそれぞれ連名で出されておるのであります。
 このような種々の問題点を十分御検討いただきまして、単に事件数と所要時間という二つの基準で物事を割り切ることなく、本当の、実質的な国民の裁判を受ける権利を実現される方向において御検討されるよう切に要望をする次第でございます。
#12
○委員長(三木忠雄君) どうもありがとうございました。以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#13
○守住有信君 自民党の守住でございますが、五人の参考人の先生方からそれぞれのお立場、角度あるいは全体論、部分論もございましたけれども、それぞれ貴重な御意見を拝聴させていただきまして本当にありがとうございました。
 時間も少のうございますので、それぞれ短い時間で要点を、御意見を御開陳いただきましたが、お尋ねしたいことがございます。
 まず、岡田参考人にお願いしたいんですが、今大都会における特に東京、行政官としてあるいは簡易裁判所の判事としてのみずからの御体験の中から東京の問題が出てまいりましたが、一部大阪もございました。私が思っておりますのは、今度は地方の県での都会がございます、県庁所在地その他。そこと農村部の関連の問題といたしまして、いわゆる裁判を受ける権利、平等な権利でございますが、それと同時に、迅速な裁判と申しますか、今中野参考人からもお聞きしておりますと、平均の三倍、一定の基準をおつくりになりましたけれども、それ自体も平均の三倍だということもお聞きしたわけでございますが、そういう地方におきます県庁所在地等と郡部との関係で、裁判を受ける権利と同時に、迅速処理と申しますか、同じ権利にもそういう密集したところでは、あるいは事件報が多いところでは非常に時間がかかるということをお聞きしておるわけでございますが、その辺の角度からの、さらに御体験の中からいろいろお聞きになっておられる実態からの御意見をお伺いしたいわけでございます。
 あわせて、同じようなテーマで、司法記者としてずっと見ておられました論説委員の滝鼻先生、それからまた、法制審の司法制度部会で、この問題を最初からずっと全体論的にも、いろいろ司法のエネルギーの迅速化ということにもお取り組みをいただきました中野先生から、それぞれのお立場、角度で結構でございますが、お聞かせいただければありがたいと思うわけでございます。
#14
○参考人(岡田勝二君) 今、御指摘のありました府県におきます都市と地方ということに私は触れせまんでしたが、十分ございます、一つの県の中におきましても、農山村から県庁所在地その他の大都市への人口集中という現象は、これはもう国勢調査の推移を見ても明らかなとおりでございます。対応いたしまして当然のことながら事件数もそういうことになってきておると存じます。それに対しまして、平等、迅速な裁判ということは、そういう県庁所在地は地方裁判所もあることでございますし、他の地方の簡裁に比べれば人員も充実しておりますから、できるだけ分化、専門化というふうなことを重ね、あるいはその他いろいろ方策は考えられてしかるべきことかと存じております。
 残念ながら、私七年間を東京だけで生活しておりますので、地方県におきます実情はつまびらかにいたしませんので御要望に沿えるかどうかは疑問でございますが、方向としてはやはりそういう方向をとっていかなきゃならぬだろうと考えております。
#15
○参考人(滝鼻卓雄君) 大都市以外の都府県の県庁所在地に所在しております簡易裁判所に事件が偏在化している傾向というのは確かにそのとおりであろうかと思います。したがいまして、簡易裁判所の理念であります身近な裁判所ということは、簡易な手続、それからそこに依頼しやすい弁護士がいるということ、それから本人訴訟もわかりやすくできるということ、それに加えて迅速な審理であろうかと思います。したがいまして、東京以外の府県におきましても大きな都市へ簡裁が次第に集約されていく傾向は今後進むであろうというふうに考える次第でございます。
#16
○参考人(中野貞一郎君) ただいまの御質問のうち、私に向けられました部分は手続の迅速性ということに関連するものであろうと思います。
 簡易裁判所の手続につきましては、民事訴訟法の三百五十二条から三百五十九条に特則を設けておりますが、問題はこれが余り利用されていないということでございます。これは江藤参考人も言われましたように、小型地裁という性格が非常に強くて、例えば、判決でございましても簡易裁判所では地方裁判所のように詳しい判決を書く必要がないわけですね。これは三百五十九条というところで非常に簡単に判決していいということになっているわけであります。外国では結論だけでいい、判決の主文だけでいいというような形で最下級審の判決をさせているところもあるわけでございまして、やはり判決が簡単でいい、審理はできるだけフリーに事件の実態に即して展開されるということが望ましいわけでございます。
 しかし、これが三審制度の一番下の裁判所としまして判決が、これに対して負けた方が控訴いたしますと上級裁判所にいくわけですね。そこで見直しをされるということになってくる。しかも続審手続で、手続は前の手続をもとにしてやっていく、こういう構造になっておりますので、簡易裁判所の督促が現在は非常に薄い、こういった点は簡易裁判所の統合がなされましたのを機に当然手続面においても見直しが行われませんと、手続の点で今回の改正のメリットが失われるということにもなろうかと思います。
 また、大都市につきましては、非常にこの事件の、特に督促手続のように裁判官の法律的判断というものがほとんど必要でない、裁判官は後から異議の申し立てがあったときに詳しく調べるという形で一応は支払い命令を出す、このような手続におきましては、そこに裁判官の手をかけるということは非常に非能率的でありまして、こういった点の改正も今後考えていかなければならない。こういった手続面での改革は今後の問題として残されていると存ずる次第でございます。
#17
○守住有信君 どうもありがとうございました。
#18
○一井淳治君 貴重な御意見をまことにありがとうございました。
 時間が余りございませんので、まず、各参考人の方々に対してあらかじめ質問を一括して出させていただきますので、結論だけで結構でありますから簡単なお答えをいただきたいというふうに思います。
 まず、江藤参考人に対してお尋ねしたいわけでございますけれども、先ほど簡易裁判所創設の理念と簡易裁判所の置かれている現実について御説明をいただいたわけでございますけれども、日本国内には現在救済を求めるべき権利侵害というものがないのかどうか、泣き寝入りという状態が起こっておるのかどうかという日本国内の状態の問題でございます。
 それからもう一つは、それを救済しなくちゃならないという立場に立った場合には、裁判所がもう少し親しみやすい裁判所となる、その他我が国の司法の充実、活性化という問題も考えなくてはならないと思うんですけれども、私個人の考えでは、どうも裁判所の方では自己規制が強過ぎて縮小再生産に陥っておるのではないかという非常に危惧の念を持っておるわけでございまして、救済のための司法の充実という観点からどうあるべきかというこの二点について簡単にお話をいただきたいというふうに思います。
 それから、滝鼻参考人にお願いしたいわけでございますけれども、先ほど、裁判所がより国民のものになるための克服すべき貴重な御意見を幾つかいただきましたが、在野の記者として御活動いただいておられまして、国民の実情というものがよくおわかりだと思いますので御質問するわけでございますけれども、日本には権利侵害あるいは泣き寝入りというものがあるのかどうかという問題。ある程度泣き寝入りも放置していいんだということが司法制度で正しいのか、あるいはこういった泣き寝入りを放置してはいけない、やはり積極的に司法は救済する策を立つべきであるかどうかというその根本的な問題点について。
 第三に、弁護士受任の必要ということを先ほどおっしゃられたわけでございますけれども、私自身弁護士でございまして、弁護士の立場というものを守りたい職業的な意欲は持っておるわけでございますけれども、しかし、本当に国民のために泣き寝入りをなくしていくという立場に立った場合には、もう裁判所の方でかなり柔軟に対応して、弁護士なしでもどんどん国民が裁判所に提訴していく方がかえっていいんじゃないか、そういう考え方も可能ではないかと思うんですけれども、そのあたりについての率直なお考えをいただきたい、そういうふうに思います。
 それから、中野参考人に対してお尋ねしたいわけでございますけれども、この法制度の改正というものは、机の上の議論とそれから現実の議論というものがあると思うわけでございます。私どもも、月に一件しか扱わないようなへんぴな場所の裁判所をあくまで存置せよというふうなことを言っているわけで決してございませんで、現実の国民の不利益ということを考えているわけでございます。今回統廃合によりまして一番心配しておりますのは、受け入れる側の裁判所、これが大体都市部のかなり事件数が多くて渋滞ぎみの裁判所が受け入れるという現実があるわけでございますけれども、受け入れ裁判所との関係で一つは地理的に遠くなること。それから、もう既に受け入れる裁判所の側が相当事件が渋滞しておりまして、そこへ統合される裁判所の事件が入ってきてさらに渋滞が過密になる。そうすると次回期日の指定が先になって、迅速の要求に反することになるんじゃないか。
 それから、裁判所の口頭受理の問題でありますけれども、現在、地方の田舎の方の事件数の少ない裁判所では口頭受理をやっているけれども、都市部の今度受け入れる側の裁判所の方は大体口頭受理をしないような不親切な裁判所が多いということ。それから、裁判官の常駐ということは確かに必要でございますけれども、現実にはなかなか裁判所の職員もそんなに一人一人の国民に対して親切ではございませんので、裁判官が常駐するかどうかということはそれほど大きな問題になってないというふうに私は思うわけでございますが、そういう現実の中で、統廃合についてどういうふうに考えたらいいのか、その点が一つでございます。
 それからもう一つは、先ほど国情の違いということをおっしゃったわけでございますけれども、日本の国情の中でどういうふうに裁判所はあるべきか。特に国情については見方があると思いをすけれども、私は長年の弁護士としての経験からいきますと、例えば、交通事故が起こりますと損害賠償の問題が発生いたしますが、大体が保険会社、これは大企業でございますけれども、かなり安い金額を被害者に押しつけるような形で示談をしてしまう。現実は長いものに巻かれろというふうな形で被害者が泣き寝入りするというような事態がございまして、仮に、弁護士がついて裁判所へ出せば現実の示談金額よりは相当高い金額になると思いますけれども、そういう観点から泣き寝入りだというふうに思うわけでございます。
 そういうふうな状態があるものですから、国民の側でも暴力団を頼んで法外の救済を求める。そうすると、保険会社の方も思い切って、我々弁護士もびっくりするほどの金額を出す。そこで暴力団もある程度市民権を得ている、暴力団の資金源になって非常に秩序が乱れているというふうな現状もあるわけでございますけれども、国情との関係で裁判所はいかにあるべきかという点を御質問いたしたいと思います。
 それから、長岡参考人には、ただいまちょっと飛ばされたんではないかと思いますけれども、弁護士としての御経験から、国民の側に立って簡易裁判所は将来いかにあるべきか、地域においていかに機能すべきであるかという点についての御説明をいただきたいと思います。簡単で結構でございます。
#19
○委員長(三木忠雄君) それでは、江藤参考人からお願いします。
#20
○参考人(江藤价泰君) 非常に難しい御質問でございまして、泣き寝入り云々ということなんですが、実態として知っているわけではございませんので、話がちょっとずれるかと思うんでございますけれども、法律扶助とか訴訟救助という、要するに、裁判所にアクセスしやすいかどうかということが一つあるかと思います。簡単に裁判所が利用できるということになれば、利用するから泣き寝入りはいなくなるといった観点で外国との比較ということで申し上げますと、例えば、先ほどちょっと申し上げましたフランスの場合ですと、全部ではございませんけれども、一九七二年に裁判援助法というものが成立いたしまして、これは訴訟当事者の四分の三について訴訟を無料にするという法案でございます。そのときの政府委員の説明が四分の三まではすると。もちろんこの場合に全部援助と一部援助ということで年収等で差をつけているわけでございますけれども、ともかくそういった方向に一九七二年に踏み切っておるということがございます。
 それから、今申し上げた裁判援助法というのは我が国の訴訟救助制度の原形になるものでございますけれども、我が国ではもう一つ法律扶助制度というものがございます。これは御承知のように日弁連が中心となっている組織になるわけでございますけれども、それと同じようなシステムをとっているイギリス、フランスでどの程度の法律扶助の金額が出ているかということを数字の上で申し上げますと、ちょっと古いんですが、アメリカが一九七八年に一億九千万ドル支出しております。それからイギリスが一億一千万ポンド支出しております。アメリカの場合、非常に円高になりますけれども、計算上申し上げますと、仮に一ドル百円ということで言うと約百九十億ぐらいになるわけです。
 我が国の場合どのぐらいになるかということになりますと、我が国では大体八千万円ぐらいの予算なんですね、今申し上げた法律扶助協会に国が出しているのが。仮に、これを一億として計算しましても、アメリカとの対応では百九十分の一になる。イギリスの場合は一・一億ポンドという場合に、ポンドを仮に二百円とした場合でも大体二百倍ぐらいになるということで、そういった数字の上から見ると泣き寝入りということ、容易にアクセスし得ない。要するに、今諸外国の大勢は裁判の無料化という方向に動いているわけでございますけれども、そういった訴訟費用というものとの関連ではなかなか難しい要素はあるんではないかというように考えられます。
 それから、縮小再生産ではないかという御質問があったわけでございますけれども、実は、これもちょっと話が古くなりまして申しわけございませんけれども、裁判官の数といったことで見ますと確かにそういったことは言えるかと思います。
 明治二十三年に裁判所構成法ができました時点では、我が国の裁判官、これまさに明治維新から二十年間の間に養成された裁判官数というのは約千五百人でございます。ところが、現在の我が国の判事、判事補の定数は恐らく千九百人ぐらいだろうと思うんです。ですからほとんど裁判官の数はふえていないということが言えると思います。人口が二倍になりますと訴訟というのは二人で行うわけですから、四人ということの計算になるわけですが、そうしますと六倍ぐらいの紛争が発生するということになるかと思います。御承知のように明治二十三年段階ですと我が国の人口は約三千万ぐらいで、もちろん現在のような交通も発達しておりませんし、それから産業といったものも微々たるものですから、公害といったような問題も起きないだろうし、まして先ほど出ましたようなサラ金等の問題も起きていない。その段階でも千五百人の裁判官を養成した。
 ところが、現在では人口も一億二千万というと約四倍ぐらいになるんで、四倍になりますと組み合わせでいきますと八人になりますから、一割足すことになるんで二十何倍かになるかと思いますけれども、それだけ人口がふえたということになるとすると、相当程度裁判官の数をふやさなければ対応し切れないということは現実問題としてあるんではないだろうかというように思います。これは単なる算術の上の計算でございますから、そう一概には言えないと思いますけれども、ともかく今の裁判官の数の、先ほどちょっと申し上げました司法の本流ですね、いわゆる職業裁判官の数というものが今の倍ぐらいいても我が国の場合は本当に対応し切れるのかどうかというのは疑問だと思います。
 例えば、フランスの場合ですと、現在大体四千八百人ぐらいキャリア裁判官がおるわけでございますけれども、人口が大体五千百万ということで、フランスはドイツ、アメリカ等に比べても少ないと言われていていろいろ国内で議論が出ているところなんでございますけれども、それでもそのぐらいいる。それに対して、我が国はキャリア裁判官だけで言うと千九百人ぐらいである、というのはいかにも少な過ぎるという感を持っております。
 以上でございます。
#21
○参考人(滝鼻卓雄君) 各種の権利侵害あるいはそれに基づく泣き寝入りがあっていいのかというお尋ねでございますけれども、これは決して放置して、そのままにしていいはずはございません。しかし、何事も裁判所に持ち込むということはいわゆる訴訟社会を招くことになりまして、アメリカなどでは夫婦間でも訴訟が起こるというようなこともありますけれども、日本の実情では訴訟社会が進むということは余りなじまないのではないかというふうに考えるわけです。
 しかしながら、最近よく見られる傾向でありますが、裁判所以外の不法な権力を使って物事の紛争を解決しよう、例えば、民事介入暴力であるとかあるいはその他のもろもろの違法な権力が紛争を解決するということが間々ございます。このようなことを排除するためにも、やはり身近な裁判所である簡易裁判所に対して庶民、住民が簡単な手続で訴えをできるということは非常に重要なことではないかというふうに考えます。
 もう一つ、弁護士の役割でございますけれども、本人訴訟が八割と申しましたけれども、できるならばやはり専門のリーガルサービスを受けた方がいいんではないかというふうに私個人では思います。そのためには、法曹人口が非常に少ないという問題はございます。今、法務省で懇談会をつくって司法試験のあり方を再検討しておりますけれども、そういうことを含めて、国民が均質、均等な司法サービスを受けられる法曹ということを実現していただきたいというふうに考える次第でございます。
 以上です。
#22
○参考人(中野貞一郎君) 受け入れ側の裁判所が渋滞している場合には、統廃合によりましてそのあぶりを食って、かえって審理が長引いてしまうというようなことが起こらないか、こういう懸念があるのではないかという御質問でございますが、今回の改正の趣旨は簡易裁判所の統廃合によりまして人員と予算の効率的な利用を図るということでございますので、例えば、現在でございますと裁判官が週に一回のテンポで僻地の裁判所に行く。それは単に一日だけにとどまらず、いわゆる泊がつくということで二日にわたってその裁判官が手を取られるというようなことがありますと非常に非能率な裁判所運営になります。今回の統廃合によりまして人員とそれから各簡易裁判所で必要最低限の費用、こういったものを合理化いたしまして、そこに出てまいりました余力というものを効率的に必要な部分に振り向けていくということでございますので、全体としては懸念されるような事態は起こらないというように考えられるのではないかと思います。
 また、日本の国情から訴訟というものがどうなのか、こういうことでございますが、日本人が法による一刀両断的な解決を好まない、こういう傾向は確かにあると思いますけれども、やはり法的な、裁判が受けられるということは必要でございまして、このためには、少額な事件でありましてもあるいは弁護士をつけられない人でありましても判決がもらえるというようになっていなければならないと思います。
 江藤参考人からフランスやアメリカの例が挙げられましたけれども、そのほかにも西ドイツは、これは民事訴訟法ができましたときから救助弁護士制度というものがございまして、刑事の国選弁護人と同じように民事にも国選弁護人というものがつくわけでございます。そういたしませんと裁判を受ける権利というものは絵にかいたもちになるわけです。また、イギリスにおきましてもリーガル・エイド・アンド・アドバイス・アクトというものができておりますが、これは戦争中にイギリスがダンケルクで敗戦いたしまして、国家存亡の危機にこの法案の立案が開始されているのでございまして、そういった点から考えましても議員諸公におかれましてはこういった訴訟救助の改善というものに努力していただきたい、これは希望でございます。
#23
○参考人(長岡壽一君) 結論的に言えば、国民、つまり地域住民が気安く裁判所に行けるということだろうと思います。
 簡易裁判所の実情で特徴的なことは、本人訴訟と民事調停だと思います。いずれも大部分が弁護士を代理人として頼まないで、みずから裁判所に赴いて裁判所書記官に実情をお話をしまして、そこで訴訟においては口頭受理、調停においても口頭の申し立てを受理していただくという形をとっているのが多いわけでございます。それが距離的に離れ、また小さな裁判所が大きな裁判所になってしまいますと、かえって心理的には住民が裁判所に行くことを押しとどめる契機になってしまうのではないかと思われます。
 また、簡易裁判所の裁判官につきましてもやはり絶対数が不足しているという点が国民に対するサービスの低下を招いていることは否めないと思います。日本弁護士連合会でも現在の裁判官を将来は三倍にふやすよう努力すべきだというような意見を述べているところでもございます。
 以上でございます。
#24
○猪熊重二君 公明党の猪熊と申します。
 ただいま、参考人の諸先生方から貴重な御意見をお伺いしましてありがとうございました。
 ほとんどの参考人の先生方から御指摘があったことは、簡易裁判所の現在の事件処理の状況についていろいろお話があったわけでございます。私自身も、現在の簡易裁判所のあり方について、いろいろ問題があると考えております。
 例えば、法律相談的なことは一切していない。裁判所の窓口において書記官であれいわんや簡易裁判所裁判官であれ、法律相談的なことについては何もしていない。したがって、先ほどどなたかが言われましたが、電話の相談なんということは全然考えられていない。このような法律相談の問題あるいは口頭受理の問題、口頭で受理して調停申し立てなりあるいは支払い命令、訴え提起なりというふうな手続も実際にはほとんどやっておられない。あるいは審理においても地裁の小型化のような審理をしていて迅速な審理、簡便な紛争解決ということに非常にほど遠い。どなたかもおっしゃいましたけれども、夜間とか日曜の開庁というふうなこともほとんど行われていない。
 そこで、江藤参考人と滝鼻参考人にお伺いしますが、このような簡裁の執務の状況が現在の簡裁の事件数あるいは裁判官の配置、こういうふうな問題に対してどの程度の原因となっておるんだろうかというふうな点についてお伺いしたいと思います。日本国民の国民性から簡裁というものが利用されないんだということなのか、あるいは簡裁の現状が簡裁を非常に有名無実のものにしているのか、この辺について、これは感想でございましょうけれども、江藤参考人と滝鼻参考人からお伺いしたい。
 次に、中野先生にお伺いしたいと思います。
 ここでのお話にもございましたように、法制審議会の委員としていろいろ御苦労いただいたわけでございますが、私は法制審議会の今回の統廃合に関する相関表の作成についてお伺いしたいんです。
 簡裁が廃止されますとそれに対応する区検も廃止されます。ところが、この廃止対象庁に対応する区検では年間千数百人あるいは二千人近い被疑者が取り調べを受け、あるいは略式命令なり公判請求なりされているわけです。このように、事は直接は簡裁の統廃合ですけれども、それによって区検に呼び出されて捜査を受けている管内の人間が、年間千数百人ないし二千人という人間が違う区検に出頭しなきゃならぬというふうな事情はどの程度考慮されたんでしょうか、これが一点です。
 それから、先ほど長岡参考人もおっしゃいましたけれども、事件数だけでなくして廃止対象管内の人口の推移というふうなものについてもどの程度御検討されたんでしょうかということをお伺いしたいんです。というのは、法制審で一応このくらいというふうな枠を考えられた。その考えられた枠をさらに今回の法案においては絞って百一庁にしたわけですが、この百一庁の中の七庁は人口増になっているんです。
 具体的な問題を申し上げますと、廃止予定庁である西尾簡裁の場合なんか三万五千人増加になっているんです。三万五千人といったら小さな町や小さな市が一つできるぐらいの人口なんです。あるいは近江八幡でしょうか、ここも二万三千人、ともかく一万人以上の人口増の庁が七庁あるんです。このような人口の増減の問題についても法制審においてどの程度考慮されたんでしょうか。これが二点目でございます。
 それから最後に、中野参考人のお話で、簡裁の現状を余りに是認し過ぎて、国の便宜というか国の財政というか、余りにそういうところに観点が行き過ぎている憂いがあるんじゃなかろうかとも思うんですが、この辺も御感想で結構でございます。
 以上、三名の先生にお願いしたいと思います。
#25
○参考人(江藤价泰君) 簡裁の現状といいますか、あり方がこのような問題を招いているんではないかという御意見でございましたけれども、現実に私は体験しているわけでございませんで、いろいろ論文等で見ておりますと、例えば口頭受理ということがございます。ところが、裁判所書記官がそこで口頭受理をするということになると、受理をする場合には当然出てくるのは原告なわけでございますから、原告の話を聞いて、一定の訴状等の作成に関与するということになると、言葉は悪いんでございますけれども、一方当事者に簡易裁判所が加担しているような印象を与えるということで、その辺の難しさというのがいろいろと議論されていることはございます。
 また、簡易裁判所それ自身が、今度は今申し上げたような口頭受理ということで事件を受理したといたしましても、もう一つは迅速にできないということは先ほど来中野参考人も言われましたけれども、また私も申し上げましたけれども、通常の控訴審になりますと、手続に移るわけですね。ですから、どうしてもそのような口頭受理とか簡易な判決といったようなものをつくったとすると、簡易裁判所の判事としては控訴審で再点検されるということになって、何か手抜きの裁判をしているんじゃないかという印象を持たれる。そのために地方裁判所におけると同じような特則を利用し得ないような形に簡易裁判所の判事が追い込まれていくと言うと言葉は悪いんですけれども、それが心理的圧迫を持つに至っている。これもまた恐らく事実であろうというふうに思いますけれども、そういった点から、迅速な裁判だとかあるいはまた法律相談的なことをやっていないとかいうことが生じているのではないだろうかというように考えております。
#26
○参考人(滝鼻卓雄君) 簡易裁判所を初めとする裁判所の任務の一つとして法律相談ということが言われておりますが、私が聞いた範囲では、一部の簡易裁判所においてはその事件の中身についての法律相談はもちろんいたしませんけれども、手続であるとかあるいは本人だけで来た場合、これはここに行きなさい、こういう書式ですというような手続面のサービスはしているというふうに聞いております。
 しかし、これが全国的に制度化したものではもちろんございませんで、これから新しくできる簡易裁判所の一つの新しい姿がこういうところにあるんではないかというふうに考えるわけでございます。
 あと、迅速な裁判の問題でございますけれども、これは確かに簡裁だけではなくて、簡易な手続であるはずの簡裁ですらかなり時間がかかる事件も多いというふうに聞いております。こういうところは、新しくできた裁判官が実際にいる簡易裁判所においてスピード化されるべきものであるというふうに考えます。
 以上です。
#27
○参考人(中野貞一郎君) 法制審議会におけるいわゆる相関表の作成につきまして、区検察庁の点はどこまで考慮されたのかということでございますが、対象が簡易裁判所の設置を見直すということでございますので、区検察庁は直接の対象ではございません。しかし、それが併記されている以上、区検察庁も統廃合によってそのあおりを食うわけでございますので、その点につきましては法制審議会のメンバーの中に検察庁の方からも何人がお入りになりまして、これら相関表の作成経過につきましては検察関係の代表の方々の意見も十分に開陳され、それがしんしゃくされているということを申し上げたいと思います。
 それから相関表ということでございますけれども、これは簡易裁判所の統廃合を全国一律にやるためにやむを得ず事件数と時間というものを基準にして一つの全国統一の枠をつくり出して作業をしたということでございまして、統廃合される個個の簡易裁判所につきましての関連の諸事情というものは、その後の裁判所あるいは弁護士会等の各位の御尽力によりまして十分に調整されてきているというように考えるものでございます。
 また、この改正が単に効率面だけのメリットを追っているのではないかということでございますが、先ほど申しましたように、現在どうにもならないという状況が一つございますので、これを基礎にして再配置を図り、その上で簡易裁判所の充実、その機能の発揮というものを考えていく。そのためには手続面の改正なども私は大変重要なことだと考えております。
#28
○橋本敦君 時間が大変少ないので、すべての参考人の皆さんにお伺いできないのでありますが、まず江藤参考人にお伺いしたいと思います。
 簡裁が当初設置をされた理念というものは、これはもう憲法的にも制度的にも明らかであったわけでありますが、しかし同時に、続審構造の中で小型地裁としての要素も担わされてきたという一面があった。これは確かにそうでしょう。しかし、国民のための簡易、そしてまた迅速な少額裁判所として地域の実情に密着した機能を果たすということと、それから小型地裁の要素も持たされたということとは、私はウエートが非常に違うと思うんです。根本は簡裁の民衆裁判所の理念をどう充実強化させるかということであった。ところが、今日までの司法制度の経過を見てみますと、残念ながらどっちの方向に重点の努力がなされたかというと、簡裁の充実強化よりも、むしろ、小型地裁化の要素を促進する方向に実は方向づけが強められてきたのではないか。
 今度のこの簡裁の適正配置という名の統廃合によりまして、いよいよ小型地裁化という方向が前面に出てくる、そういう心配の方が強いのではないかということを私は心配しておりますが、先生のお立場から結論的にどうお考えになるか、これが一点であります。
 それから第二点として、大都市の一庁集約化ということは問題があるという御指摘をいただきました。東京では八百四十万、こういう広大な人口の中で一庁にする。私の住んでおります大阪も市内は二百万の人口を超えますが、大阪簡裁だけ一庁にする。これは大都市においては大都市の中の地域性はもうなくなったのだろうか。これは確かに近代化ということの中で、そういう要素が、地域性がだんだん小さくなってきている、薄くなってきている要素というものは、これは私も否定しません。
 しかし同時に、そうでありながら広大な大東京、また大阪でも、それぞれの特性がございまして、例えば、浅草の地域とそれから港区の地域は違うでしょう。あるいは私どもの大阪で言うならば、西淀川という兵庫に接着した淀川の右岸に当たる旧来からの漁民を中心とした地域と、それから大阪の中心部を成す地域とはこれは違うでしょう。そういうところで簡裁の機能としてそれぞれの実情に応じた民事紛争の解決という機能はその地から出ている調停委員を含めて地域性というものはあるのではないか。そういう意味で、大都市集約の一本化というのはそれ自体問題があるというように思うんです。
 この点について中野先生にもお伺いしたいんですが、法制審でも、大都市の集約化は全部一庁にせよという結論に達したということではなくて、集約化の方向が望ましいが、それなり慎重に、必ず一庁でなくちゃならぬというところまでいっていたのではないように私は理解しておるんですが、その点はどうだったんでしょうか。これが中野先生へのお尋ねでございます。
 それから、長岡先生にお伺いしたいと思いますが、御指摘のように、定数是正は投票率によってやるというそういうことはやっていない、これは当然だと思いますね。そういう意味で、国民の裁判を受ける権利、それはひとしくすべての国民に保障されなきゃならぬのですから、その権利を持っている国民がどれだけいるかという人口を基本的なベースに考えるというのが合理的だというのは私もそう思います。それと同時に、どんな適正配置も一切認めないというように私どもお互いに言っているわけじゃありませんので、事件数もなるほど地域の実情によって考慮する必要はあるでしょう。そこのところで、事件数について言う場合に一時的な現象を見てはならぬというお説は私も賛成です。
 同時に、家庭裁判所の出張所が設置されているところは、家裁の調停だとか事件数、これはその簡裁の事件数にカウントすべきだと、こう思うんですが、最高裁は家裁出張所の事件はカウントしないで、簡裁の刑訴、民訴、調停事件だけやっているわけですね。家庭裁判所は、本来全部出張所を設けてもいいぐらい家裁事件というのは地域に密着し、国民が身近なところでなきゃならぬわけですから、そうあるべきだし、また家裁事件の適正な数というものは見るべきだというように私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。
 それからもう一つは、御指摘がありました交通事情に基づく所要時間の問題でありますが、私も全国あちらこちらの実情も気にはしておりますが、実際は、地方に参りますと、過疎の現象の中でバスが間引きをされるという状況もある。それから、国鉄の方も、時間は速くなったけれども本数が間引かれるという状況もあるというようなことで、田舎の方に行きますと、一時間というけれども、実際はその一時間というのは使用駅から統合されるところへ行くのに使用駅間の時間を基本にしておって、住んでいる自分のところから行くということを基本にしてくれていないという不満を聞くんですね。田舎では一日がかりだよと、こういうところもあると思うんですが、いただいた資料でも、一日がかりのような状況も山形でも出かねない状況だと思うんです。
 こうなりますと、ついつい裁判を受けるというそのことが事実上妨げられるということにもなりかねない。だから、裁判を受ける権利の保障が先ほどから皆さん議論になったように、訴訟救助を充実することも大事でしょう。それからまた、裁判官や職員が適正に配置されることも大事でしょう。しかし、簡裁の理念からいえば、いざというときに近くに裁判所が利用できるということが非常に大事な要素だと、私はこう思っておるんですが、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
 以上です。
#29
○参考人(江藤价泰君) 小型地裁化が促進されたではないかということでございますけれども、私はそう考えております。というよりは、今度の改正によりまして簡易裁判所は実質的には小型地裁として位置づけられたのではないか。したがいまして、国民の中における簡易、少額な事件というものに対応するためには今後必ずしも機能し得ないというように。考えております。
 そこで、先ほど申し上げましたように、これは一橋大学の竹下教授が言われていることですけれども、まず大都市の簡裁に少額事件部のようなものをつくって、実験的に行い、それを広めていくという提案に賛成しているわけでございますけれども、さらに言えば、私は全国的に少額事件裁判所というものをつくっていく必要があるんじゃないか。これは何もそんなにお金のかかるものとしてつくる必要はないので、素人裁判官でも行えるし、本当に気楽にできるようなものとしてそういうものをつくっていく必要があるんではないか。これをこの機会に設置する方向で本当に議員の諸先生方にお考えいただきたいというように考えているわけでございます。
 それからもう一つは、ちょっと長くなって申しわけないんですけれども、イタチごっこみたいなことがあるかと思います。我が国の国民性ということがよく言われて、事件数がふえないから、少ないから裁判所を削るということがあるんですけれども、我が国の裁判事件の統計をずっと見ていきますと、必ずしも事件が少ないということは言えないんです。例えば、明治年間、明治十六年というのは、我が国における民事の第一審の新受事件の最高だろうと思いますけれども、百三十三万件ぐらい明治十六年に提起されているんです。ということは、我が国の国民は必ずしも訴訟になじまないとか権利意識がないとかということではないんではないか。
 なぜそれでは、十六年以降減ってくるかといいますと、明治十七年に民事訴訟印紙規則が施行されるわけです。それまでは訴訟はただだったわけです。ところが、訴訟を提起した場合にはお金を取るということになりましたので、その当時は歩いていって宿屋へ泊まって訴訟をやっていた。ところが、そこへまさに「ラクダの背中に紙一枚」ではございませんけれども、印紙代も払わなきゃならない、訴訟費用も払わなきゃならないということになってきてがたっとこの十七年以降だんだん減ってきているということがあります。もちろん、それ以外にもいろんな要素があるかと思いますけれども、少なくとも統計で見る限り明治十六年というのは大きなピークなんです。
 ですから、受け皿をきちんと国がつくった場合には訴訟事件はふえていくだろう。もちろん、何でもかんでも訴訟で解決しろという意味で申し上げているわけでございませんけれども、必ずしも我が国の受け皿というものが十分に機能していないというところから国民は裁判所を利用しなくなってきている。どこへ行っているかというと、結局のところ、先ほどもちょっと話が出ましたように、暴力団まがいのところで相当解決されている事件というのが、本当の意味の解決ではないと思いますけれども、あるかと思います。
 それからもう一つの、大都市の一庁集約化ということでOA化、専門部制ということを提案されているわけですけれども、確かにそういったことはせざるを得ない要素があると思います。しかし、よく考えてみますと、集団的な処理になじむような事件というのは、どちらかというと、例えばクレジット会社を原告とするような事件なわけで、そうなりますと、簡易裁判所というのはいわばクレジット会社の事件処理係あるいは取り立て機関化してしまう。そうなってしまうということは裁判所というものに対する国民の信頼をますます失わせることになるのではないか。
 私は、このようなクレジット事件というのは、確かにお金の点だけから見れば少額事件かもしれませんけれども、本来の少額事件というのはやはり市民相互間の簡易、軽微な事件なのであって、クレジット会社のやるようなものは少額事件と考える必要はないと思います。ですから、そういったものをOA化し専門部化して大都市で一庁でやるということがあったとしても、本当に気楽に行けるような、先ほどもちょっと申し上げましたような、素人が行うようなそういう裁判所というものを、区役所の一室を借りて、夜間でもいいだろうし、午前中だけでもいいだろうし、本当に気楽に利用できるようなことになれば国民の裁判に対する信頼あるいは国に対する信頼というものは高まるのではないだろうか、そのように考えているわけでございます。
#30
○参考人(中野貞一郎君) 先ほどの御質問の趣旨は、大都市簡裁の集約についての法制審議会の答申は、必ず大都市において一庁にするということであったのかどうか、こういう御趣旨と承りましたが、これは仰せのとおりそうではございません。この答申におきましては、各都市の実情を十分に勘案しつつできるだけ統合することという表現になっておりまして、東京、大阪、名古屋、北九州、これが審議の過程では問題になってきたわけでございますけれども、現に提出されましたこの法律改正案におきましては、北九州市は一都市一庁ではなくなっているわけでございまして、各都市の実情に応じでできるだけ統合するということでございます。
 それから、大都市における地域性というものを一庁統合でいけるのかということでございますけれども、一庁統合でございましても各地域の地域性というものを反映させることは実務上決してできないわけではございません。例えば、特定の紛争につきまして調停委員を選ぶという場合に、その地域の調停委員を選任するといったようなこともできますし、あるいは現地で出張調停を行うといったように、地域性をある程度反映させることは一庁統合いたしましてもできることでございます。
 また、私自身としましては、東京、大阪、名古屋では一庁統合が望ましいと個人的には考えておりますけれども、これは大都市における事件処理のいわゆるスケールメリットというものを確保するためには、ばらばらな形では困るということが一つあると同時に、集約に例外を設けますと、この集約に入ったところと入らなかったところとのアンバランスとか不平等といったような問題もまた起こってくるわけでございまして、もし客観的な事情で、特に異なるところがないならば、また、その地域性にしてこの裁判のやり方について差異を設けなければ困るという特別の事情があれば別でございますけれども、できるだけ一庁統合が望ましい、こういうように考えております。
#31
○参考人(長岡壽一君) 家庭裁判所の出張所の事件数につきましては、御指摘のとおりだと思います。
 現在、百一庁の対象庁のうち三十七庁に家庭裁判所の出張所が併設されていると言われておりますが、これがどのようになるのかということも十分御審査願いたい事項でございます。
 山形県の弁護士会との説明会の中では、裁判所の所長は、簡易裁判所は廃止されても出張所は残して事務を行いますということを述べておられます。しかるに、先日いただきました衆議院法務委員会の七月二十八日の審査の議事録によりますと、最高裁判所側は、三十七庁の家庭裁判所出張所は今回の法律の改正に伴って廃止されると述べておられます。この辺も果たしてどうなのか。先ほどお話のありました区検察庁の件も含めて、やはり十分に関連して御審査されるべきかと思います。
 家庭裁判所について申し上げれば、簡易裁判所と同じように、その特徴は家事調停にあると思います。家事調停の大部分は弁護士を最初から選ばない、依頼しないで、みずから裁判所に赴いて、家庭裁判所の調査官などとお話をされて、そして申し立てなどの手続をするというのが実例でございます。国民に密着した裁判所という点では、簡易裁判所とともに最も身近にあるものだと考えております。
 次に、交通事情についてでありますが、今まで三十分で行けたところが一時間半になるということになれば、まさに一日がかりでございます。最高裁判所の案の基礎になるのは、中心地から隣接の庁までの所要時間ということだけでありまして、その中心地に行くまでの時間というものを考慮していただかなければならないんじゃないかということは、当初意見で申し上げたとおりでございます。
 また、地域を取り上げてみますと、山形県内では、山形は大都会でございます、地域住民の意識といたしましては。そこで、例えば、村山市という、ここは山形県の中では比較的田舎と位置づけられますが、その田舎の人が都会である山形市に出かけるためには、やはり身なり服装などからきちんとしていかなければならないというふうな意識がまだ根強いわけであります。
 このようなことからも、距離的な問題だけじゃなくて、場所が大都会に集約されるということが国民を裁判所から遠ざける一つの要因にもなりかねないのではないかということを心配している次第であります。
#32
○関嘉彦君 民社党の関です。
 きょうは、各参考人にはお忙しいところどうもありがとうございます。私の持ち時間は十分でございますので、まず江藤参考人と長岡参考人お二人にだけ限って質問したいと思います。
 江藤さんの久しぶりにアカデミックなお話を聞かせていただきまして、私も政治家になって四年ですけれども、大分ディスインテリになっておりまして、きょうお話をお聞きして、大学時代の懐かしい雰囲気を思い出した次第です。
 お話が非常にアカデミックでございましたので、直接簡易裁判所の問題には関連しないと思うんですけれども、将来の日本の裁判制度を考える場合の参考意見として質問したいと思っておりますが、それは、つまり日本の文化的な特性と裁判との関係の問題です。フランスの素人裁判所のお話なんか大変興味を持ってお伺いしたんですが、日本の場合に、普通の人たちはやはり素人裁判官よりもプロフェッショナルな裁判官の方を信頼するんじゃないか、あるいはより好むんじゃないか。それは日本で陪審制度なんかが根づかないことの一つとも関連する問題だと思うんですけれども、いい悪いは別にしまして、日本の文化的な特性という点から考えまして、そういった素人裁判所的なものが根づくかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
#33
○参考人(江藤价泰君) 昔を若干思い出させたわけでございますけれども、確かにおっしゃるとおり難しい問題はあるかと思います。ただ、今お話に出ました陪審とのかかわりで言いますと、陪審施行されて、これは日弁連の機関誌にずっと出ていたんですけれども、意外に利用はされているんですね。放火事件等では相当数無罪が出ているということがありまして、必ずしも素人、陪審を一般に国民は忌避したということは言えないんではないだろうかというように考えております。
 それでよろしゅうございましょうか。
#34
○関嘉彦君 素人裁判所的なものが日本に根づいていくかどうかということですね。その点特に今簡易裁判所なんかの問題とも…。
#35
○参考人(江藤价泰君) 素人裁判所について言いますと、本来、簡易裁判所ができるときには立法過程では素人裁判官にするという意見が相当出ていたわけでございますけれども、実際上は司法の実務に多年携わった者といったようなもので選任されるということになってしまったために、素人裁判官というのはほとんど選任されなかったということがありますので、我が国の裁判における一つの歴史的経験ということでは全くないわけです。ですから、今後やるとすれば、これはまさに実験的にやるよりほかしようがないと思いますけれども、やってみれば案外うまくいくんではないだろうか。もちろん全然素人ではなくて、とりあえず、例えば弁護士に夜はパートでそういうことをやってもらうとか、あるいは法律学者でそういうことに興味を持つ人に参加してもらうとかということをやって、だんだんやっていった場合には相当数成功する裁判所も出てくるんではないだろうかというように考えております。
 もちろん、我が国は全国的に見た場合に地域的実情に大分違いがありますから、地域によっては成功するところがあるかもしれないし、しないということもあるかもしれませんけれども、しかし、私はやってみるに大いに値するものがあるんではないだろうかと考えております。
#36
○関嘉彦君 どうもありがとうございました。
 長岡参考人にお伺いしたいと思いますが、簡易裁判所の統廃合を考える場合に事件数ではなしに人口数を基準にして考えるべきではないか、選挙の場合でも投票率で決めてはいない。
 大変おもしろい議論だと思うんですけれども、その場合に、裁判の効率という点を考えますと、やはり事件数というものも考慮すべきではないか。つまり、一方では訴訟事件数が非常に少ないところと、他方においては非常にふえている、両極化と申しますか、そういうことがあるわけですね。そうすると非常にふえているところではどうしても渋滞する、遅延する。それから他方、非常に少ないところでは裁判官なり職員の人たちの士気にも関係するんじゃないか。すべて事件数だけというのもどうかと思うんですけれども、事件数というのは効率化という点からやはり考慮すべき一つの要素ではないかということが一つ。
 それから交通事情。つまり裁判所までのアクセスの時間数なんかの問題。確かに人口が減少している地域の方々には大変お気の毒だと思いますし、また夏と冬とは事情が違うというふうなことも確かにそのとおりだと思うんですけれども、しかしこれは裁判だけに限らず、義務教育である小学校なんかの場合を考えましてもかなり長時間かかって通っている児童もおるし、都会なんかでは非常に近い。そういった不公平もあるわけですけれども、ある程度の不公平というのはやむを得ないんじゃないかと思うんですけれども、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。
#37
○参考人(長岡壽一君) お答えになるかどうかですが、まず第一点につきましては、確かに裁判所の事務処理上の効率化ということも十分考慮されるべきだろうとは思います。ただ、私が趣旨として述べたいのは、それをもう動かない基準として所要時間と事件数というものを固定的なものとして置かれては困るのではないかということでございます。
 また、裁判官が平均的な裁判官より手持ち事件数が三分の一以下であって、暇で困っているのではないかというふうな問題があり得るかもしれませんけれども、実態は決してそうではございません。つまり山形の場合ですと、今回の問題になっております寒河江にしましても村山にしましても、週に一回山形簡易裁判所から裁判官が出張するわけです。それでその週に一回開延する、あるいは民事調停を開くということになっております。それではその対象となっている地域は週のうち通常月曜日から金曜日まで五日のうち一日しか裁判官がいなくて、かえって大変不公平ではないかと思われるかもしれません。しかし、これも決してそうではございません。
 山形には、裁判官が二人在駐しておりますけれども、住民が事件を相談に行って申し立てるかどうかの窓口相談をして、裁判官がそれに関与するということはほとんどございません。大部分は書記官の限りでそれを受け付ける、受け付けない、あるいはどのような指導をするかという判断をしておるわけでございます。それで裁判官が常駐しない庁におきましても必ず書記官は一名以上在駐しておりますから、こういうリーガルサービスという点では何ら支障はないと考えております。
 それから、法制審議会や最高裁判所が基準にしております事件数は、民事訴訟、刑事訴訟、調停の三つだけでございます。これ以外にも督促事件といいまして支払い命令を発行する、あるいは刑事事件で略式の罰金刑の裁判をする、特に交通違反、スピード違反とか無免許などはこの事件が相当数多いわけでございます。こういう事件数はおおむね人口に比例して増減しております。ですから、事件数の一部だけを取り上げて論議するのは若干不足ではないかというふうに考えるものでございます。
 第二番目の御質問についてですが、確かにいろいろな公共の教育機関であるとかその他のものについて統合され学生や生徒が遠隔地まで通わなければならないという事例は当然出てきております。しかし、これは地域においてそれを議論して、例えば、今まである町の中に三つの中学校があったのを一つにまとめるべきかどうかということは、それは町立の中学校ですから町において住民の参加のもとに議論し尽くされて決めたものでございます。そういう点で、今回の問題とは質を異にするのではないかと思います。
 では、今回の問題につきまして国民の意見というものはどうやって出てくるのであろうかを考えてみますと、国民は、私はよく裁判所を利用するからこの裁判所をなくしてもらっては困るというような人はまず一人もいないと思います。そんなことを言えば、何だあの人は、事件屋だなとか、訴訟ざたが好きだとかいうふうな悪いレッテルを張られてしまいますし、現実にもそのような人はほとんどいないわけでございます。ですから、国民の裁判を受ける権利というのは、潜在的にあるものをどうやってくみ上げるかということこそが基本にならなければならないんじゃないかと思います。
 例えば、先年の国鉄のローカル線の廃止というふうな問題が出てきますと、沿線の住民はこぞって反対いたします。みんな利用するからですね。それと裁判所の廃止というものは相当次元が違うんだということを御理解いただきたいと思います。
#38
○西川潔君 西川潔でございます。よろしくお願いいたします。
 早朝より本当に御苦労様でございます。ふだんでしたらお昼御飯の時間ですが、最後に長岡参考人に一つだけお伺いしたいと思います。
 実は、今お話をお伺いしておりましたところ、先日のこの委員会で僕が質問をさしていただいた内容ととても近いものですから、最後に一言だけお伺いしたいなと、こういうふうに思っております。
 ただいま、大都市では暴力団が随分介入しているというお話をお伺いしまして、まだまだ我が国では封建的な部分が一僕も四国の高知県でございますが、田舎の方へ参りますとそういう部分がまだまだ残っております。そうしてまた統廃合されて遠くへ――先ほどもおっしゃいましたように身なりもきちんとして行かなきゃいけない、久しぶりにたんすから洋服や着物も引っ張り出さなきゃいけない。特にお年寄りなんかにとっては大変なことだと思います。そうしますと、どうしても都会では暴力団、そしてまた田舎の方では村の顔役だとか実力者だとか有力者だとかいうような法の違った部分の結果が出るのではないかなということを大変僕なんかは心配するんですが、一隅を照らすではありませんが、社会の片隅で一生懸命頑張っている人たちが、こういう統廃合によって不便さを感じながら、どうしようかな、遠いし、体のぐあいも悪いし、神経痛も出ているし、リューマチでもあるしというようなことで、それではあの人にお願いしなきゃといってこの話は解決してもらうというような、ちょっと間違った部分の結果が出るのではないかなということを僕なんかは心配するんですが、最後にそれを一つお伺いして終わりにしたいと思います。
#39
○参考人(長岡壽一君) これも適切なお答えをできるかどうか心配ですが、やはりいわゆる事件屋というのがございます。それからまた、民事介入暴力、暴力団が民事事件が起きたとなるとそれに介入して、企業の倒産の整理であるとか債権の取り立てであるとか、そのような場面に関与してくるという社会問題が起きております。これは大阪方面から発生しまして、次第に東へ向けてまた北上し、山形県内においても同様の例が少しずつ起きている状況にあります。
 暴力団であるとか、事件屋であるとかが発生する素地というのは、司法機関、裁判所、検察庁、警察、弁護士、こういうものが整備されていないところが多いようであります。ですから、仮にこのたびの簡易裁判所の統廃合という一つをとってみましても、ある地域から簡易裁判所がなくなる、検察庁もなくなるとなりますと、やはり事件屋なり暴力団なり、司法の目をかいくぐって暗躍するという素地が醸し出される危険性というものは一般論としてはあるのではないかと思っております。
 また、地域住民が司法の救済を求めて裁判所に相談に行くというのは、やはり相当困ったときでありますから、そのような困ったときに身近にあるのと、一時間も二時間も行かなければならないところにあるのとでは、心理的な側面からのアクセスというのは相当違ってくるだろうということは容易に予測されるところであります。
#40
○委員長(三木忠雄君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時三十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時開会
#41
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨八月三十一日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。
    ―――――――――――――
#42
○委員長(三木忠雄君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察及び裁判の運営等に関する調査を便宜一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#43
○一井淳治君 法案について質疑をさしていただきたいと思いますけれども、まず、今回の法案は統廃合を目的としておりますけれども、どういう目的で統廃合なさるのか、そこのところをまず第一にお尋ねいたしたいと思います。
#44
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 今回の簡易裁判所の適正配置、統廃合の問題でございますが、これは戦後の社会事情の変動にかんがみまして、社会の実情から余りにもかけ離れて多くの問題を生み出しております簡易裁判所の配置を見直して、その充実を図ろうとするものでございます。
 この問題につきましては、実は昭和三十年代から既に問題とされていたわけでございまして、裁判所を初めといたします法曹間の多年にわたる懸案であったわけでございます。長期間の検討を続けました上で、特に、近時の事件の増加の中で都市部の裁判所と地方における裁判所との間で事件の極端な偏在現象が生じてまいりました。そういうアンバランスが一層顕著となりまして、もはやこれを放置し得ないというふうに考えられたため提起されたものでございます。
 今回の統廃合によりまして、事件数の偏在に伴うアンバラ、それから非常に利用度の少ない裁判所におきましても裁判官あるいは裁判所職員を一定数配置しておかなければならないという状況、他方、都市部の裁判所におきましては事件が非常に急増いたしまして十分な司法サービスが提供できないという状況が出てまいりましたので、配置の是正を図りますことにより人員及び予算の適正、効率的な再配分をいたしまして全体的な簡易裁判所の機能の充実強化、そのことがひいては裁判所全体の機能の充実強化に資することになるわけでございまして、そのような目的から今回の統廃合を考えているわけでございます。
#45
○一井淳治君 いわゆる臨調行革路線、財政の節約、再建という問題との関係はどうなんでしょうか。
#46
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 昭和五十八年三月に発表されました臨調の最終答申におきましても、司法府に対する改革の要望がなされているところでございます。もとより、裁判所は臨調の答申に形式的に拘束されるわけでもございませんし、また、その職責の面でも、いついかなる状況のもとにおきましてもすべての事件についてひとしく適正迅速に裁判を行うという仕事を通じて国民の権利を擁護し、秩序ある社会の発展を支えるという基本的な使命を担っておりますので、答申の要望に応ずるか応じないかと容易に言い得るものではございません。
 先ほど御説明申しましたように、この問題は実は臨調の始まりますよりずっと前の昭和三十年代からの問題でございます。なるほど、社会の実情に応じて行政機構の簡素化を図るという意味合いにおきましては、臨調の基本的な認識と相通ずる面がございます。しかし、私どもはこの適正配置によりまして司法の人員なり予算なりを縮小するということは考えておりませんので、もし臨調行革と申しますものが人員、予算の縮小を考えるものであるといたしますならば、その点におきまして今回の適正配置は臨調とは異なる面があるわけでございます。
#47
○一井淳治君 今回の統廃合には、地方の簡易裁判所の統廃合と大都市部の統廃合、二つの性格が異なるというふうに思いますけれども、地方の簡易裁判所の統廃合については具体的にどういうねらいをお持ちなのか。
 例えば、従来の簡易裁判所の庁舎がなくなるわけでございますから、それによって予算上もある程度のメリットが出ると思いますけれども、その庁舎をなくしていくメリットはどれくらいあるのか。それを今度統合された方、受け入れ庁の方へどの程度予算が回っていってどういうふうなメリットがあるのか。これは予算上の問題でございます。ただいまの御回答によりますと余り予算上の問題は考えないようなお話もあったわけでございますけれども、そのあたりの経済的な効率の問題、さらにはそれ以外にどのような機能上の強化が行われるのか、そのあたりについての御説明をお願いしたいと思います。
#48
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 今回の簡易裁判所、特に小規模独立簡易裁判所の適正配置、整理統合によりましてどういう経済的メリットがあるかということはなかなか難しゅうございます。特に金額的に出すということは非常に難しいわけでございますけれども、いずれにしましても、裁判所予算は御存じのとおり八七、八%が人件費でございます。今回の適正配置によりまして私ども人員を削減するということは全く考えておりませんので、その意味では人件費そのものには何ら影響がないというふうに考えております。その人件費が圧倒的な割合を占めるわけでございますので、金銭的にプラスになる面といいますか、浮く面というのは非常に限られた額だということになろうかと思います。
 強いて申し上げますと、一つは建物が必要でなくなります。現在、廃止対象庁になっております百一庁のうち六十庁は木造でございます。これは早晩建てかえなければならないものでございますけれども、これが廃止になりますとその建てかえは必要でなくなるということがあろうかと思います。それから、跡地も現在の簡易裁判所の敷地としては必要なくなるわけでございますから、これが適正な活用が図られるということが広い意味では経済的メリットになろうかと考えております。
#49
○一井淳治君 あと、機能上といいますか、裁判の、司法制度の運用をよくしていく上でのメリットというものも質問してお答えがなかったわけで、これはまた後ほどお願いしたいと思いますけれども、受け入れ庁側の受け入れ態勢、これはどのようになっているのかということをお聞きしたいわけでございます。
 といいますのは、大部分の場合に受け入れ庁は都市部の簡易裁判所が多いわけでございまして、そういうところはもう既に相当事件数があって渋滞ぎみになっております。裁判所の場合は法廷がなければ仕事ができないという一つの致命的な点がございまして、現在都市部の裁判所というものは法廷の割り振りが決まっておるわけでございまして、もしこの都市部の裁判所に現状のまま集中したのでは都市の当事者も非常に渋滞の迷惑をこうむるし、今まで割と早い日にちのうちに処理していただいておった地方の方の統合される側の管轄内の国民も非常な迷惑をこうむるというふうになるわけでございます。これは法廷の場合でございます。
 それ以外に、例えば交通の略式なんかにしましても、現在都市部ではもう長時間立ったまま待っている。こういうことをほうっておきましたら国民の裁判所に対する反感が助長されはしないかということを私ども見ておって非常に心配なわけでございますけれども、そういう状況があります。
 また、午前中にもちょっと質問申し上げたんですが、今まで都市部は忙しいということで口頭の受け付けを余りしていないということがございます。今言った都市部が忙しいということが助長されますと、ますます国民と裁判所との間が離れていくという問題が起こります。そうして、受け付けをふやすということを考えれば、そこでも庁舎の増築ということをまずやらなくちゃいけないというふうになるわけでございますけれども、そういうふうな受け入れ庁側の態勢、これはどうなんでございましょうか。
#50
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 今回廃止の対象になります庁は、御説明してまいりましたとおり非常に事件数も人員も少ないところでございます。したがいまして、人員にしても二、三人ぐらい、事件数にしても三種の事件で年間百件以下のところでございますので、これを受け入れることによって受け入れ庁が狭隘になるとか、あるいは法廷が足らなくなるというところはほとんどないのではなかろうかと考えております。
 ただ、御指摘のとおり、都市部の事件が従前の管轄どおりであって、非常に事件がふえているところがございます。そういうところにつきましては、法廷や調停室等が不足ぎみであるとかいうところは当然出てまいってきております。私ども、そういうところにつきましては順次整備を図っていきたいと思っておりますし、現に整備を図っているところでございます。今後とも一層その点の努力はしていきたいと考えております。
 なお、お尋ねの交通略式の場合でございますけれども、現在、三者が集まりまして在庁の形でやっているところ、かなりの数がございます。本庁の所在地とかあるいは甲号支部の所在地簡裁等につきましてはそれなりの交通裁判部門ということで整備をしてまいっておりますけれども、乙号支部あるいは独立簡裁につきましては事件数等から独立の施設をつくるほどの事件数はないように考えられます。ただ、御指摘のような事情があるといたしますと、現在月に一回とか二回程度行っております三者処理の日にちをふやすとか、あるいは呼び出し時間についてもう少し細やかに配慮するといったような検討も可能かと思います。そういった点を含めて十分慎重に検討さしていただきたいと考えております。
#51
○一井淳治君 今回統廃合される方の簡易裁判所に配置されておる裁判官が十一人、書記官が百三十四人、それから事務官が百四十六人おられるというふうに聞いておりますけれども、こういった方々は具体的にどのように配置され、そしてどのように司法制度の向上のために活用されていくのか、そのあたりについてお尋ねしたいと思います。
#52
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 先ほど、経理局長から申し上げましたように、私たちとしましては、今回の簡易裁判所の適正配置が実現いたしました場合に、これによって人員削減をするということは全く考えていないわけでございます。
 今委員が指摘されましたような十名程度の裁判官、それから二百数十名の一般職員が現在廃止される予定の裁判所に勤務いたしております。その人員分につきましては削減するのではなく、なるべく今後の簡易裁判所の充実のために生かしていきたいというふうに考えているわけでございます。
 具体的には、簡易裁判所で裁判官の配置されていないところがかなりの数ございます。裁判官につきましてはそういったところに優先的に配置をしていきたいと思うわけでございます。
 それから、今回廃止になりますとこれを受け入れる簡易裁判所がございます。そういった受け入れをする裁判所とか、あるいは事件が増加していて非常に繁忙が感じられている裁判所とか、そういったようなところに二百数十名の一般職を、これから検討していかなければならないわけでありますが、配置していきたいというふうに思うわけでございます。
 ただ、これは人員枠の問題でございまして、現に勤務している人をそれぞれどのようなところに配置していくかというのはこれは別問題でございまして、現に配置されている人々につきましては、その個人的な事情等も十分考えまして、転勤等によって不利益が極端に生じないようになるべく近隣の裁判所に異動できるように考えていきたいというふうに思っております。
#53
○一井淳治君 職員の方の不利益が発生しないようにというお話でございますけれども、職員団体の方と協議をするとか、あるいは再配置の方針を出すとか、何か具体的な方策があるんでしょうか。
#54
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 職員団体との関係では、簡易裁判所の適正配置の構想が出てきましたときからその構想の趣旨を伝え、説明をし、そして理解を求めてきたところでございます。そして、この整理統合が現実化する場合には職員の配置の問題がございますので、職員の勤務条件の問題を検討しなければならないというときには各裁判所において十分正規の交渉を行い、協議をして対処していく予定であるということを職員組合の方に機会あるごとに伝えまして、その理解を今まで求めてきたところでございます。
 まだ、具体的な各裁判所の廃止ということが本決まりになっているわけではございませんので、今までのところまだ正規の交渉は行われていないわけでありますが、これは今後現実化した場合に職員組合との間で十分な協議は行っていく予定でございます。
#55
○一井淳治君 今までお話をお聞きした範囲では、どうも地方の簡易裁判所の統廃合によって具体的なメリットが出てくるような感じを受けないわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
 といいますのは、確かに庁舎をなくして一部の庁に集中していく、それによって集中される方の庁舎が例えば大幅に増築をされて、あるいはそこで裁判官の増員等をやって積極的な活動が始まっていくのかといえば、そういったイメージがどうもうかがわれませんし、ただ単に、今まで幾つがあった庁舎を切り捨ててしまう、私どもはできる限り裁判所の方が多少無理をしてでも発展していきたいという気持ちを持っておるわけでございますけれども、地方の出先を切ってしまってそれでおしまいだというふうなことに終わってしまうんじゃないかという危惧の念を非常に持つわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
#56
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 先ほども申し上げましたように、今回の適正配置は簡裁全体の機能の充実強化を図っていきたいというところにねらいがあるわけでございます。
 受け入れ庁につきましては、御指摘のとおり、従来の体制でございますとかなり繁忙をきわめておりまして、必ずしも司法サービスを十分提供できなかった面があったかもしれません。それで、今、人事局長が御説明申し上げましたように、今回の適正配置によりまして、裁判官は十一名でございますが、一般職になりますと二百八十名の人的余力が生ずるわけでございまして、それを受け入れ庁の方にまず配置をいたしまして、従来よりも受け入れ態勢の整備充実を図っていきたい、そのようにいたしまして、物的、人的に整った裁判所を利用していただきたい。現在の統廃合の対象になっておりますのは、御承知のとおり、必ずしも人的、物的に設備の整っていない裁判所でございまして、裁判官につきましても週一回なり月一回のてん補をお待ちいただかなければならない。そのために期日指定の不十分さというようなものがございまして、おいおい期日が長くなる、そういう面もございます。
 私ども受け入れ庁の方の体制を整備充実いたしまして、込み合って事件の期日指定が先になるというような体制は解消していきたい。そういう整った裁判所を利用していただくことによって、これを利用される住民の方々にも従来に比較いたしましてより適切な司法サービスが提供できるようにやってまいりたい、こう考えているわけでございます。
 そのほか、これを契機にいたしまして、簡裁の人的、物的施設を充実いたしますとともに、簡裁の手続につきましても種々の見直しを行いまして、国民の方々の利用しやすい簡易裁判所を充実していきたいというように考えております。
#57
○一井淳治君 机の上では確かに立派な計画であり得ましても、現実がそのように対応しないと非常に残念なことになるというふうに思います。
 簡易裁判所の場合には非常に多くの事件を扱っておりますけれども、例えば、即決和解をする日は何曜日というふうに、これは別に法律の規定があるわけじゃございませんけれども、その曜日に決めてしまいますと動きがとれなくなってしまいまして、担当の裁判官がおられないとそのおられない週が飛んでしまう。次の日に何か事故があると二週間も飛んでしまう。お役所業務の最も見本みたいなことが現実にはあるわけでございまして、そういうものも克服していかないと、本当に出先機関を切るだけで終わったというふうにならざるを得ないので、その点を非常に心配しておるわけでございます。
 次に、大都市簡裁の方の問題についてお尋ねしたいわけでございますけれども、具体的に東京の場合を例に引いて、どういうふうな簡易裁判所をつくり、そしてどのようにして少額事件を吸収していこうとしておられるのか、具体的なイメージについてまずお聞きしたいと思います。
#58
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) まず、具体的なイメージにつきまして御説明申し上げます前に、大都市簡易裁判所の集約を考えます基本的な考え方というものをまず申し上げなければならないかと思います、
 これは、地方における小規模独立簡裁とは異なりまして事件数はかなり多うございます。あるいは繁忙をきわめていると言ってよろしいかと思います。私ども、この大都市簡裁の集約を考えましたときには、現時点における事件処理のみならず、将来における都市簡易裁判所のありようとして何を考えていくべきか、こういうことを考えたわけでございます。今後十年、二十年というような期間を考えます場合、都市部における住民の裁判所利用に対するニーズと申しますか、そういうものはますます多様化、複雑化していくであろう、事件はますますふえるであろう。それを考えました場合、現在のように、東京二十三区内に十二の簡裁を分散配置し、それぞれある程度の人員配置を行いまして裁判所を運営していく現在の体制を維持していて、果たして将来の都市住民のニーズにこたえ得るであろうか、こういうことを考えたわけでございます。
 そのような考え方から出発いたしますと、現在非常に生活圏は広がっておりまして、東京都の二十三区内の簡裁の実情を見ましても、簡裁を御利用いただく方々はその管内住民だけには限りませんで、よその簡裁管内の方々もかなり利用しておられる。こういう状況がございます。
 一方、交通事情は、都心を中心にいたしまして放射線状に発達しておる。こういう状況を踏まえますと、この際、二十三区内の簡易裁判所を、例えば、霞が関、あそこは司法センターを形成しているような場所でございますからそこに集約をいたしまして、かなりの程度の裁判官、書記官、事務官を擁する大規模の簡易裁判所になりますが、その簡易裁判所におきまして専門部体制をとる。例えば訴訟でございますと、不動産訴訟、金銭訴訟あるいは交通事故等の損害賠償請求部というのも考えられようかと思います。
 さらには、本人訴訟と、弁護士さんがついていらっしゃる難しい訴訟とがこもごも同じ期日に入りますと、きめ細かな訴訟運営がなかなかできないわけでございます。本人訴訟だけは別にくくって特別の係あるいは部を設けるとか、あるいはけさほども参考人の方々から御指摘のございましたように、少額事件のみを取り扱うような部を考えるとか、そのような専門的事件処理体制をとることによりまして、きめ細やかであり、かつスピーディーな事件処理体制がとれるのではないか、これが一つでございます。
 それから、クレジットの関係がこれからますます伸びていくだろうと思います。クレジットの関係では、やはり支払い命令の事件がふえるわけでございます。支払い命令につきましては非常に定型的な処理が可能でございますので、その点につきましては、西ドイツのひそみに倣いまして電算処理の体制を考えていってはどうであろうか。略式事件につきましても、交通略式は道交法の改正によりまして若干減ってくる面もございますが、やはり今後もますます伸びていくことは考えておかなければならない。略式につきましても、フランスにおきましては電算処理体制を考えているようでございます。そういうふうに、定型的な処理になじむ事務処理につきましては、コンピューター化を考えることによりまして迅速処理体制を図っていかなければならない。支払い命令の申し立てをしましてから発行まで十日もかかるようであっては支払い命令制度の本来の趣旨に沿わないわけでございます。
 そういうふうな、一方では専門部体制を考え、他方では電算化による合理的、スピーディーな処理体制を考える。そのためには、東京都内にございます十二簡裁を一カ所に集約いたしましてスケールメリットを最大限に活用する必要があるわけでございまして、そのような観点から大都市簡裁の集約を考えているわけでございます。
#59
○一井淳治君 東京の場合、既存の簡易裁判所を統合しても全部の裁判所を統合してしまうわけにはいかない。いろいろな事情から分室等を残していかなければならないということもあるんじゃないかと思いますけれども、そのあたりのことはどうなっているんでしょうか。
#60
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡易裁判所におきましては、ただいま申しましたような各種の事件の処理のほかに令状処理を行っているわけでございまして、管内に警察署が多数ございまして、かなり遠方の警察署もございます。そういう令状事務処理の観点から、分室のような拠点を幾つか設ける必要があろうかと思っております。
 私ども、現在の段階では、現在ございます東京北簡裁の周辺のあたり、それから南は大森簡裁の周辺のあたり、それから交通切符の処理につきましては、現在墨田の簡易裁判所において二十三区内一円の事務を取り扱っておりますが、これはそのまま交通部のような形で残しておく必要があるであろう。そういたしますと、墨田におきましても令状処理の拠点ということで機能させていく必要がある。そのような拠点を設けました場合、そこに施設がございますものでございますから、例えば、調停事件のように地域性のあるような事件もそこで処理するということを考えてみてはどうかというように考えていたわけでございます。
 東京の三弁護士会といろいろ意見折衝をしております中で、そうであればむしろ民事裁判なんかも地域性のあるものはそこでやるようにしてはどうかというような御意見もございました。この点につきましては、現在裁判所と弁護士会との間で意見交換を行っているわけでございますが、多少意見の対立がございます。建物ができ上がりますまでに相当の年月がございますので、その間に十分協議を重ねていきながら、この東京簡裁の分室においてどのような事務を処理するか十分考えてまいりたいというふうに考えております。
#61
○一井淳治君 交通切符のためとか、あるいは警察の令状請求のためとかという必要のためには分室を残す、一般国民のためには残さないで集合してしまうという点がどうかと思いますけれども、それはともかくといたしまして、東京を一つに集中するというのは大変な巨額な予算が要るんじゃないかと思いますけれども、そういうふうな大変なお金をつぎ込んでまで多くの国民が反対している一庁集中化をやるだけのメリットがあるんでしょうか、どうでしょうか。
#62
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 簡裁の新しい庁舎を建てますにはかなりの費用を要するであろう、今それが幾らかというのは明確にははじき出せませんけれども、相当巨額の費用を伴うことは間違いございません。しかしながら、先ほども申し上げましたように、今後十年、二十年という先のことを考えていかなければならないわけでございます。私どもこの点につきましては、二十三区につきましても各区の区長さん、議会の議長さん方に地裁の所長が十分御説明して回ったわけでございます。都議会の議長さん、それから都知事さんの方にも御説明申し上げてまいってきております。反対の方もいらっしゃいますけれども、私どもが今考えております限りにおきましては、弁護士会それから司法書士会におきましてもいろいろ意見交換を重ねた結果、二十三区の土地管轄を一本化する簡易裁判所を設置すべきであろうということについては御理解をいただいたというふうに考えておりますし、各区の区長さん、区議会の議長さん、都議会の議長さん、都知事さんにも御説明申し上げまして、そのことについては御理解をいただいたというふうに考えているわけでございます。
 将来の都市住民のニーズにこたえるためにはこのような構想を実現させていかなければならない、それが結局は将来の都市住民の裁判所利用の便につながるものだというふうに考えているところでございます。
#63
○一井淳治君 次に、簡易裁判所が統廃合された場合の土地の跡地についてお尋ねしたいわけでございますけれども、簡裁が廃止された場合、その敷地についてはどのようになるんでしょうか。何か裁判所として計画をお持ちなんでございましょうか。
#64
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 簡易裁判所の敷地のように、一定の行政目的のために使われております国有財産がその行政目的がなくなりました場合には、国有財産法の規定によりまして大蔵大臣に引き継ぐということになっております。したがいまして、廃止されました簡易裁判所の跡地は、この法律の規定によって大蔵大臣に引き継がれるということになるわけでございます。その後の管理、処分は大蔵大臣の権限で行うということになります。法律的に申しますともうそういう形にしかならないわけでございます。
 ただ、私ども今回の問題につきまして地元市町村等に何度も御説明に赴き、いろいろお話し合いもしたわけでございます。そういった中で、裁判所が廃止になるのはやむを得ないけれども、廃止された後の跡地を何とか使いたいという御要望があった地元市町村が相当数ございます。私どもといたしましても、簡易裁判所の設立のときにいろいろお世話になったところもたくさんございます。その後、簡易裁判所が今日まで続いてまいりました途中で地元市町村に何かとお世話になっておりますし、今回の計画にも御協力いただいているということもございます。したがいまして、そういった地元の御要望が通るように、私どもの立場として側面からの援助にはなりますが、資料の作成あるいは御希望を財務当局に取り次ぐ等できるだけの努力はして、地元市町村の御要望が実現できる方向に働きかけたいと考えております。
#65
○一井淳治君 地元を大切にすることにつきましては、よろしくお願いしたいというふうに思います。
 一つ、これはできない要望かもしれませんけれども、将来廃止された場合に、巡回裁判に似た制度を実施するというふうなお話も聞いておりますけれども、今度廃止される建物の敷地、建物をそういったものに使うことはできないんだろうかという点と、それからもう一つは、将来人口増、事件増等の場合には簡易裁判所をまた新しく新設してもらわなくちゃいけないという事態も起こってくるんじゃないかと思いますけれども、そういった場合に大蔵省の方から容易に協力いただけるように、現時点で安易に廃止するんじゃなくて、将来のことについてもよく話をした上で廃止していただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
#66
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 今回廃止いたします簡易裁判所につきまして、私どもアフターケアと称しておりますけれども、地元の御要望があり、必要があるところにつきましては出張調停等のアフターサービスをやりたいと考えております。
 そういうことをやりますためには、当然場所が必要になるわけでございますが、委員御指摘のように、現在の裁判所の建物を残すということになりますと、先ほど申し上げましたとおりかなり古い建物もございます。そうでないものにつきましても、建物が残ります以上やはり維持管理要員も必要になるということになってくるわけでございます。他方、出張調停等を行うといたしましても、今の事件数程度でございますと月に一回とか二回程度であろうかと思います。そういうところに多額の費用がかかる建物を残しておくことが果たしていいかどうかということは、国有財産の有効活用あるいは予算の効率的執行という面から問題があるのではなかろうかと思っております。もちろん、裁判所の手続を行うわけですからそれなりの場所である必要はあると思います。
 現在、そういう御要望がございます地元市町村とお話し合いをしておりますけれども、幾つかの地元市町村からは自分のところの施設を提供してもいいというお話も伺っております。この法案が通りましたら、施行に向けましてそういった点の詰めを十分行っていきたいと考えております。
 それからもう一点でございますけれども、将来事件増になり、改めて簡裁を新設するという場合の用地の御心配でございます。私ども、この計画を実施してまいります間に、先ほど申し上げましたような跡地の問題等もございますので、財務当局には土地の問題等につきましてこの経過を含めまして十分説明をしてまいってきているわけでございますので、財務当局の方も今回の計画等は十分承知しているはずでございます。したがいまして、御指摘のような事態になりましたときに財務当局が土地を出し渋るというようなことは私どもないと確信しておりますし、私どもその必要な場合にはそれだけの措置をとりたいと考えております。
#67
○一井淳治君 跡地の問題につきまして将来どうなるのか、それから地元との関係等につきまして法務省の方にも、簡易裁判所に対応する区検が廃止されますのでお尋ねしたいと思います。
#68
○政府委員(岡村泰孝君) 区検察庁の場合でありますが、廃止されます区検察庁が、法務局などと一緒に合同庁舎に入居しているところがあるわけでございます。こういう合同庁舎に入居しております場合は、区検が廃止されましても合同庁舎そのものが廃止されるわけではございませんので、跡地の利用の問題は生じてこないわけでございます。それから、廃止されます区検察庁の土地が借り上げの場合があるわけでございます。これにつきましては貸し主にお返しすることになります。それ以外の場合は、最高裁の方から御説明がありましたと同じように、大蔵大臣に所管がえということになるわけでございます。
#69
○一井淳治君 廃止になった場合に、現実にその付近の住民は遠方の裁判所に行かなくちゃならない、こういう点で不利益があることは客観的な事実だと思いますけれども、その点の救済ということで、例えば、巡回して出張するんだというふうなお話も聞いておりますけれども、救済対策ということについてはどのようになっておるんでしょうか。
#70
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 民事関係について申し上げますが、適正配置に伴いまして簡易裁判所がこれまでより遠隔化するということになりまして、そのため地域によっては住民に不便を生ずることがないとは言えないわけでございます。そこで、先ほどからも申し上げておりますとおり、裁判所といたしましては幾つかのアフターケアと申しますか、不便の解消策を考えておりますが、その中で最も重点的に考えておりますのがいわゆる出張しての現地調停あるいは家庭裁判所の事件で申しますと審判も含めての出張処理でございます。これはそれぞれの地方の事件の多い少ない、あるいはまた各地方公共団体等の要望等もあるわけでございますし、先ほどから話が出ております施設をどうするかという問題もございますので、それぞれの各地方自治体からよく要望を聞きました上で具体策を決めていきたいというふうに考えているわけでございます。そのように各地方自治体から要望があり、御協力が得られますところにつきましては、事件の多少によりまして、例えば定期的に月二回とか一回、時期を決めまして出張して処理をする、あるいはまたそれほどの事件のないところにつきましては随時出張して事件処理を行うというふうなことを考えておるわけでございます。
 その際に、例えば調停事件で申しますと、廃止されることになります簡易裁判所あるいはまた、家庭裁判所の出張所の事件を扱っておられた調停委員の方で事件を担当していただきまして、できるだけその地域に詳しい方々の知識、経験を生かしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 そのほかに、これはそう大きな効果があるというわけではないと思いますが、例えば、地方自治体の役場あるいはまた警察署等の相談窓口があるようでございますが、そういうところに訴訟でございますとか調停の定型的な申し立て用紙、詳しい記載例等を備えつけておきまして、利用者の便に供するということも考えております。特に、支払い命令の申し立て等でございますと、書面で郵送するだけで済むわけでございますので、比較的定型的なものも多うございますので、そういうふうな希望があれば備えつけのための用紙を配付するということを考えておるわけでございます。
 それから訴訟事件につきましては、これは今までも司法委員の活用をいろいろと考えてまいりました。今後適正配置が実現いたしました後にも、民間の知識を活用するという意味で司法委員をできるだけ活用してまいりたいと思いますが、その場合にも、例えば、地域性を考慮いたしまして司法委員を選任した上で、事件によっては現地で和解をしてもらうのにいろいろ活躍していただく、そういうようなことでできるだけ不便の解消に努めていくということも考えておる次第でございます。
 そのほか、現在も手続相談、受け付け相談というようなものを電話でしてまいりますとそれに対応するということも行っておるわけでございますが、今度の適正配置によりまして遠隔地から相談に来るのが大変だという地域もできてくると思いますので、例えば、そういうふうな手続の相談に応ずる窓口の職員にできるだけベテランを配しまして電話等での相談等に応ずる、そのような体制も今考えておる次第でございます。
 いずれにしましても、必ずしも十分とは申せない点がございましょうが、できるだけ遠方の方の不便を解消するために、いろんな形でアフターサービスを考えていきたい、そのように考えております。
#71
○一井淳治君 出張していただくということが非常に大切だと思いますけれども、これは廃止された簡易裁判所ごとにやっていただけるのかどうか、どの程度お考えなのかという点が第一点と、もう一つ、略式の一括処理ですね。これは刑事事件の関係でございますが、そういったことはどうなっているのか、二点についてお尋ねしたいと思います。
#72
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 民事関係についてお答えいたしますが、これは廃止される裁判所の事件数の多少、それから地元の要望等と関連してくるわけでございますが、私どもは、地元の御要望があり、それから場所等について御協力が得られるならば原則的に出張処理に応じていきたいというふうに考えております。極端に事件が少ない、あるいは特に地方自治体等の要望もないというところは別でございますが、要望があるところにつきましてはできるだけ実施していくつもりでございます。
 そのときに、事件数の多い少ないによりまして出張回数の多い少ないということは出てくるかと思いますし、極端に事件が少ないところでは場合によれば随時出張というふうな扱いになるところも出てまいると思いますが、この点につきましては御要望にはなるべく沿っていく方針でございます。
#73
○最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 略式命令の処理について御説明申し上げます。
 略式命令の大多数は道路交通法違反いわゆる交通切符の事件でございますが、これは御承知のとおり現在非常に多くの庁で警察、検察庁、裁判所が一緒になりまして、一貫した手続を一日のうちで済ますいわゆる即日処理の体制をとっております。今度統合の対象となります庁におきましてもこのような処理体制をとっているところもあるわけでございますが、このため、統合される庁までの距離が大きくて違反者の負担が大きいというふうに考えられるような場合につきましては、事件数あるいは地元の御要望なども考えまして、調停などと同じく出張処理を検討いたしたいというふうに考えております。
#74
○一井淳治君 簡易裁判所に対応する区検の方も統廃合されてしまうわけでございますけれども、地元の住民に対するアフターサービスといいますか、そういう観点から検察庁とすればどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
#75
○政府委員(岡村泰孝君) 区検察庁において処理いたしております事件の大部分が、先ほどから指摘されておりますところの略式請求事件でございます。これら略式請求事件のうち八〇%以上、例えば昭和五十九年でございますか、この場合は八四%であったと思いますが、これが道交法違反事件でございまして、この大部分が先ほどから御説明いたしておりますとおりの三者即日処理ということで行われている実情にあるわけでございます。そういうような点から見まして、ただいま最高裁の方から御説明のありましたように、三者即日処理につきまして出張して処理するという点につきましても最高裁判所ともいろいろ協議をいたしてまいりたいというふうに思っております。
#76
○一井淳治君 次に、裁判所法三十八条の事務移転の関係についてお尋ねしたいわけでございますけれども、この条項の趣旨を裁判所の方ではどのように理解されておるのか。今までの実施例を見ますとやや乱用に過ぎるんではないかということも感じられますので、そのあたりのことについてまずお尋ねしたいと思います。
#77
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判所法三十八条では、「簡易裁判所において特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所に当該簡易裁判所の事務の全部又は一部を取り扱わせることができる。」と定めているわけでございます。ここの特別事情と申しますのは、例えば、災害でございますとか、あるいは疫病でございますとか、さらには、庁舎の腐朽、庁舎の確保困難によって具体的に当該庁がそこにおいて執務を行うことが困難となった事情を指すわけでございます。官署としての裁判所で執務を行うことができない人的、物的な障害が生じた場合を特別の事情と言うふうに考えられるわけでございます。
#78
○一井淳治君 事務移転庁が意外と多かったわけでございますけれども、中には愛知の横須賀でございますか、火災で庁舎の復旧をしないまま事務移転で終わっているというところもあるようでございまして、今後は簡易裁判所が精鋭化されてくるわけでございますので、事務移転が行われるようなことはないというふうに考えるんでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
#79
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 今回の法案を可決成立させていただきました暁には、存置される簡裁につきましては庁舎整備を早急に行っていく予定でございまして、用地あるいは庁舎の確保の困難、庁舎の腐朽というような従前事務移転を必要とせざるを得なかった事情の多くは当面解消するわけでございます。
 ただ、自然災害を初めといたしまして、一時的あるいは継続的に当該簡易裁判所におきまして事務を取り扱うことが不可能になる事態は今後もその発生が予測されるわけであります。また、例えば、庁舎の建てかえ等を要します場合に一時的、暫定的に事務移転をする必要はあるわけでございます。また、遠い将来のことを考えてみますと、そのときどきの状況によりまして事務移転をするということもあり得ようかと思われます。
 ただ、近い将来に現在の百一庁以外の庁につきまして事務移転をして、なし崩しに廃庁状態に持っていくというようなことは現在の段階では考えておりません。
#80
○一井淳治君 もう一つ、民訴不取り扱い庁というものが全国的に相当数ございますけれども、これはどういうふうな法的根拠でなされ、また、どういう場合に取り扱わない序となされてきたのか、そのあたりの御説明をいただきたいと思います。
#81
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 民訴不取り扱い庁につきましては、簡易裁判所の民事の事物管轄の改定を行いました昭和二十九年の裁判所法の一部を改正する法律の附則の三項に、「当分の間、最高裁判所の規則で指定する簡易裁判所の民事訴訟に関する事務は、その所在地を管轄する地方裁判所又はその支部の所在地に設立された簡易裁判所で最高裁判所の規則で指定するものが取り扱う。」という規定がございまして、それに基づいて、具体的には民事訴訟事務取扱に関する簡易裁判所指定規則というものを最高裁の規則で定めまして、その規則によりまして民事訴訟に関する事務を取り扱わない庁が指定されたわけでございます。民訴事務不取り扱いの指定の措置につきましては、今申しました裁判所法の一部改正によりまして、簡裁の民事事物管轄の訴額が三万円以下でございましたのを十万円以下に拡張したわけでございます。その拡張に伴いまして、従前に比較いたしまして簡裁の取り扱う民事訴訟事件が増加することになったわけでございます。
 当時、その増加した民事訴訟を取り扱うのにふさわしい人的陣容あるいは物的設備の整備の行き届いていない庁もございましたので、これに対処するものといたしまして民訴事務不取り扱いの指定措置というものが講ぜられたわけでございます。
#82
○一井淳治君 今後はこういったことが起こらないように、仮に、いろいろ事情がありました場合は、裁判官の増員なりいろんな物的、人的、施設の拡充によって事務処理をしていただきたいというふうに思います。
 それから、本日は事務総長さんがお見えでございますので、特に質問なり要望をさしていただきたいのでございます。
 私どもは、最も国民に密着する第一線の裁判所として簡易裁判所の充実強化ということを心から念願しておるわけでございますけれども、それに向かって、最高裁とすれば今後どのような御方針でおられるのか、どのような政策を実施していかれるのか、そのあたりにつきまして御質問いたしたいと思います。
 特に、簡易裁判所の理念と申しましょうか、国民に対して少額事件について簡易、迅速な処理をしていくということが非常に重要であるということは、この委員会の午前中の参考人のお話などによってもはっきりしてきたと思うんですけれども、簡易裁判所の理想像といいますか、理念を生かしながら将来どのようにやっていかれるかということにつきまして御質問いたしたいと思います。
#83
○最高裁判所長官代理者(草場良八君) これまで総務局長その他からるる御説明申し上げましたとおり、このたびの簡易裁判所の適正配置は、過去四十年間の簡易裁判所の実情を踏まえまして、社会事情の変化に即して簡易裁判所の配置を合理的なものに改めまして、その充実強化を図ろうとするものであります。そのような観点から、この検討の過程におきましても、関係各方面から種々貴重な御指摘をいただいているところでございます。裁判所といたしましては、これらの御趣旨を踏まえまして、簡易裁判所の充実に努めてまいる所存でございます。
 具体的に申し上げますと、人員につきましては、この法案の成立後に残ります裁判官非常駐庁につきまして、今回統合の対象から除外された理由でございますとか、あるいは事件数などを考慮いたしまして、必要に応じまして常駐化を図ってまいりたいと考えております。また、廃止される簡裁に勤務しております一般の職員は二百数十名に上るわけでございますが、これらの職員は、受け入れ庁でございますとか、あるいはその他の事件数が増加しております庁を中心に再配置を行いまして、事務処理を充実させてまいりたいと考えております。
 また、施設の面につきましては、木造の未整備庁舎を早急に整備いたしますとともに、そのほかの設備あるいは備品等につきましても十分な手当てを講じてまいりたい、かように考えております。
 また、裁判所の手続に関しましても、関係各方面から御指摘をちょうだいしました受け付け事務の改善あるいは調停事件処理の充実等々につきまして今後鋭意検討を行いまして、国民の皆様の利用しやすい簡易裁判所を実現してまいりたい、かように考えております。
#84
○猪熊重二君 前回の委員会の終了に際して、法案について二、三お伺いしたい点を申し上げました。ただ、今、一井委員の方から御質問の裁判所の跡地の問題、あるいは廃止された管内区域の住民へのサービスの問題、あるいは今後の簡裁の増設、新設の問題、廃止対象庁の職員の問題、このような問題については今お答えがございましたし、さらに裁判所法三十八条の運用の問題についてもお話がございましたので、法案に関しては一点お伺いするだけにしたいと思います。
 先ほどの長岡壽一参考人の御意見だと、山形地方裁判所の所長は、山形弁護士会との簡裁統廃合に関する打ち合わせの際に、家裁出張所は廃止されません、こういうふうに言われたと。ところが、衆議院の議事録を見ると全部べたっと家裁出張所は廃止する、こういうお話になってびっくりした、こうおっしゃいました。家裁が併置されている今回の廃止簡裁百一庁中三十七庁、この出張所が廃止されるということは、最高裁としては全部廃止するんだということをいつ決めたんでしょうか。
#85
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 今回の法案にございますように、簡易裁判所の統廃合の対象庁を確定してまいります過程におきまして、その廃止される対象庁に併置されている家庭裁判所出張所は廃止すべきものであるというふうに考えながら作業を進めてきたわけでございます。
#86
○猪熊重二君 そうすると、それはいつなんですか。
 それでは、山形の所長が山形弁護士会との打ち合わせで言った、出張所を廃止しませんと言ったということが事実であるとすれば、そのときには廃止するということが決まっていたんですか、決まっていなかったんですか、どっちなんですか。
#87
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) けさほどの長岡参考人の御意見、私も後ろで拝聴させていただいていたわけでございます。それで、本来ならばかような事柄をこの場で御披露申し上げるのもいかがかと思いますけれども、あるいは誤った印象をお持ちいただいても困るわけでございますので、山形の方に私どもも前から報告は受けて承知いたしておりましたが、今回あの御発言がございましたので、改めて電話でさらに確認したわけでございますが、その折衝経緯等につきまして若干御報告させていただきたいと思います。
 法制審答申後、この答申の趣旨を踏まえまして、山形地裁と山形県弁護士会との間では、六十一年の十月十一日、十一月八日、十一月二十七日の三回にわたりまして相当詳細な意見の交換を行ってまいっております用地裁側からは所長、地、家裁の事務局長、弁護士会側からは会長、副会長二名外弁護士二名、合計五名が毎回出席しておられたわけでございます。長岡弁護士も副会長として毎回出席されていたわけでございます。
 単なる事実関係ということで御報告させていただきますと、問題の家裁出張所の取り扱いにつきましては、第一回の十月十一日の意見交換会におきまして山形県弁護士会側から村山簡裁が仮に統合されるとすれば家裁村山出張所も廃止されるものと理解してよろしいかという発問がございました。これに対し山形地裁所長は、そのとおりであるというふうに回答いたしております。
 さらに続けまして、相関表では家裁の事件数を考慮していないが、村山簡裁の場合、家裁事件数は個別的事情になるのかという問いがございました。再び所長から、相関表の事件数は簡裁の事件数だけであり、家裁事件は、答申にもございますように、個別事情として考慮されることになる。家裁の事件数については家裁出張所が併設されているすべての簡裁の問題で、村山簡裁だけということにはならない。こういうふうな回答をしているわけでございます。
 さらに、その上で家裁出張所が廃止された場合の出張事件処理につきまして第一回、第三回の意見交換会において説明がなされました。第三回では弁護士会長からも、それは最高裁の方針であるのかといった質問もなされているわけでございます。したがいまして、山形地方裁判所長におきまして家裁出張所は廃止されないんだと明言した事実はございません。
 その後、山形の弁護士会がやはり東京に参られまして、日弁連と私どもも入りまして山形弁護士会の意見もるるお伺いいたしました。私どもの方の意見も申し述べたわけでございます。その際にも長岡弁護士は同席されておりました。家裁出張所の廃止につきまして誤解があるようなことはその場ではなかったように私は記憶いたしております。
#88
○猪熊重二君 その点了解しました。よく調べていただいてありがとうございました。
 法案に対する質疑はこれで終わりたいと思います。
 続いて、公証人制度及びその運用について、時間のある限りの質問をさせていただきたいと思います。
 御承知のとおり、公証人は法務大臣が任命する特殊な国家公務員であります。この公証人が作成する公正証書のうちいわゆる執行証書と呼ばれるものは、これによって直ちに強制執行ができるということでございますので、ある意味においては判決や支払い命令、そのほか裁判所で作成した各種調書と同じような力が、執行法上の力があるわけであります。
 ところが、この公正証書の作成が従来ややもすると安易につくられる。そのために強制執行した段階において各種の不服申し立て訴訟等が提起されていると、こういう現状にあります。去る八月九日、十一日の両日にわたっても読売新聞紙上において、債務者本人が知らない間に作成された公正証書による強制執行に対して裁判所に請求異議の訴えが出ている、あるいは国及び債権者を相手とする損害賠償訴訟が起きているというふうなことが報道されております。順次、この公証人制度及びその運用についてお伺いしていきたい。
 まず、公証人の現在の定員は幾らになっておりましょうか。
#89
○政府委員(千種秀夫君) 公証人の定員は、公証人定員規則という省令で定めておるんでございますが、六十二年九月現在、というのはきょう現在でございますが、定員は六百三十九名でございます。
#90
○猪熊重二君 定員数は終戦後、概略でいいですけれども、ふえてきたとか、変更はないとか、どんなことになっておりましょうか。
#91
○政府委員(千種秀夫君) 終戦後と申されましたのですが、ここの手元の資料で一番早いところで二十四年の四月に四百七十五人でございまして、これが四十年に五百十名になり、その後順次増加しまして現在の六百三十九名になっております。
#92
○猪熊重二君 現在、定数は六百三十九名ですが、実際に公証人に任命されて仕事をしている人はどのくらいおりましょうか。
#93
○政府委員(千種秀夫君) 現在公証人である者の数は五百九名でございます。
#94
○猪熊重二君 どういう人を公証人に任命するかということについて公証人法では三種類にわたって規定しております。まず、法文の形態からいけば、原則的に任命形態というかそれが公証人法十二条にございます。この公証人法十二条によれば、成人の日本国民は何人も一定の試験に合格して六カ月以上実地修習をすれば公証人に任命され得る立場にあるということになっておりまして、これが公証人の任命の原則規定、まず第一番の規定になっております。
 この条項によって任命された公証人は現在おりますか。
#95
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘の公証人はおりません。
#96
○猪熊重二君 この条項に書いてある「試験及実地修習二関スル規程」は、現在制定されておりますか。
#97
○政府委員(千種秀夫君) 現在制定されておりません。
#98
○猪熊重二君 「試験及実地修習ニ関スル規程」も制定されていないし、したがって、試験も行われないし、したがって、それによって法務大臣に任命された人が一人もいないということは一体どういうことなんでしょうか。その理由をお伺いしたい。
#99
○政府委員(千種秀夫君) これは、次の十三条をお読みいただきますと、任命資格の二として「裁判官、検察官又ハ弁護士タルノ資格ヲ有スル者」というのが出ておりまして、これによって任命されているからなのでございます。規定の文言はごらんのとおりでございまして、ほかにも任命資格三というのがございますけれども、並んで規定してございまして、もし試験をするといたしましてもこの中身は実質的に同じであるということが考えられるためになかなか試験の制度が実現していないというのが現状でございます。
#100
○猪熊重二君 今、民事局長がおっしゃったように、十二条の次に十三条があるのは私もわかるのですが、法文でいえば十二条が大切だし、原則だから十二条が先に書いてあって、その後、判検事、弁護士からも任命できるよというのが十三条にあるわけなんです。
 私が言いたいのは、こういうふうに日本国民がだれでも資格試験さえ受ければできるというのに何もその手だてをせぬということは、国民の公証人になりたいという人、その人の職業選択の自由も奪ってしまうことになるし、どだい法のもとの平等原則に反しないかということを申し上げたいんです。この点についての所見をお伺いしたい。
#101
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のような御見解も十分成り立つと思うのでございます。この試験制度をどうするかという問題は、実地の問題としましてはかなり難しい問題がございます。というのは、今の司法試験の問題でも、ここまで参りましていろいろの社会的問題になってきておりますが、この公証人の試験ということをもし考えます場合に中身はどうなるか、これは次の十三条の規定の内容との比較からいたしましてもかなり司法試験と同じものになってくるであろう。また、その採用人数はどうなるであろうかといいますと、弁護士あるいは判検事に比べましてもかなり数が少ないものになってまいります。
 そういうことから、その少ない人数のために同じような試験をまたするということが大変であるというような経緯から今日までこういう状態になってきたのでございまして、御指摘のようにできればそういう試験、制度ができるのがいいのかもしれませんが、できたといたしましてもその合格者はやはり司法に関する実務経験というものを積まなければならないということになりますと、かなり制度としては重複したものになり、かつスケールは非常に小さいものになる、こういうようなことから現在の状態のままになってきているのが現状でございます。
#102
○猪熊重二君 それでは次に、十三条によると先ほど申し上げましたように判検事、弁護士は公証人に任命され得る資格がある、法務大臣が任命する、こういうことになるわけですが、現在判事、検事、弁護士から任命された公証人の人数はどうなっておりましょうか。
#103
○政府委員(千種秀夫君) きょう現在で判検事、弁護士の合計で三百六十九名おります。
#104
○猪熊重二君 その内訳はどうなっておりましょうか。
#105
○政府委員(千種秀夫君) 裁判官が百三十八名、検察官が二百二十九名、もっともこの検察官というのはなったときの地位でございますから、判事から検事になった人も法務局長のような人もおるわけでございますが、それから弁護士が二名でございます。
#106
○猪熊重二君 そうすると、三百六十九名中弁護士が二名であとは判検事ということになると、公証人は判検事からだけ法務大臣が任命しているという現実、状況にあることになります。どうしてこのように検察官が一番多くて二百二十九人、判事がその半分ぐらいで百三十八人、弁護士は判事、検事の人数に比べたら五倍もあるいは七倍もいるにもかかわらずたったの二名ということになる。なぜ弁護士の任命人員が非常に少なく、判検事の、特に検事の人数だけが多いんでしょうか。
#107
○政府委員(千種秀夫君) これは、一つには公証人制度の戦後の経緯というものがございますけれども、希望によって任命しているというやり方のせいでもございまして、一つには、弁護士でかなりの経験をなすった方というのは仕事を放棄して弁護士から公証人になられる方は非常に少ないということが少なくともかってございました。中には、弁護士は向かないから公証人になられたという方もいらっしゃるようでございますが、公証人の立場からしますと弁護士が務まらないからというのはちょっと困るような事情もございまして、いろいろな事情があってそういうことになってきておるわけでございます。
#108
○猪熊重二君 それからもう一つ、先ほど申し上げましたように、三種類のうちの最後の種類として公証人法十三条の二によれば、右のような法曹資格がない者であっても、当分の間公証人審査会の選考を経た場合には試験、実地修習なくして特定法務局所属の公証人に任命することができるというふうに規定されております。この条項が、これは追加条項になっておりますから法制定後に規定されたんでしょうけれども、規定されたのはいつでしょうか。また、その規定された趣旨をお伺いしたい。
#109
○政府委員(千種秀夫君) これは、調べてみますと昭和二十四年の改正によって新設された規定でございます。当時の事情といたしまして、公証人の適任者を確保することが非常に困難でございまして、公証人の欠員のところが相当数あたっという事情がございます。今でもそうなんでございますが、やはり都会地で仕事の多いところで、また生活の楽なところでなりたいという方が多うございまして、今でも欠員があるというところは大体余り人がいらっしゃりたいとおっしゃらないところなんでございまして、昔はもっとそういうところが多かったという事情がございました。そういうことからやむを得ずこういう規定がつくられたわけでございまして、まだ地方の余り人の行きたがらないようなところはこの規定で活用をしてやっているところもございます。
#110
○猪熊重二君 この条項によって任命されている公証人は現在どのくらいおりましょうか。
#111
○政府委員(千種秀夫君) 先ほど申し上げました五百九人から三百六十九人を引きますものですから、差し引き百四十人になると思います。
#112
○猪熊重二君 人が余り行きたくないということで百四十人の公証人、これは公証人全体の人数からいけば四分の一くらいの人数になるわけですが、任命されている人はおおよそどんな人が任命されておりましょうか。
#113
○政府委員(千種秀夫君) かなりの部分の方々は法務局長の経験者でございまして、法務局長も、一期やったような人は大体なれないといいますか、二期以上やった人というようなことがある程度内部の推薦基準になっております。それからほかは、法務省あるいは裁判所の関係の職員のかなり上の方、そういう方が入っております。
#114
○猪熊重二君 ただ、先ほどの話から聞くとちょっと私には納得できないんです。余り都会でもなくて、言葉は露骨になるけれども、余りもうかりもせぬようなとこみだと人が行きたがらないんで、それてしょうがないからやるというけれども、その人が百四十人もいて、それが法務局長を二期以上経験されたような方をお充てになる。そんなに行きたい人がいないところなら、それこそ先ほど言った十二条に従って全国民から募集して試験をやってやったらいいじゃないですか。その辺どうなんでしょうか。何か私から見ると、要するに、公証人制度というのは法務省と裁判所と二つの役所の出先機関というか、職員の出張先というか、そういうふうに思える。どうでしょうか。
#115
○政府委員(千種秀夫君) なるほど私どももそういうことを心配しておるわけでございます。これは百四十大もということでございますが、百四十人というのは大体全部一人役場でございまして、県庁所在地以外の、都市でございますけれどもそういうところでございまして、今のところ、ぜひなりたいという方がいらっしゃっても、その方がそれじゃ司法試験を受けて受かるかということになりますとこれまた難しいんでございまして、そこのところがなかなかバランス上難しいところでございます。
#116
○猪熊重二君 公証人が任命されて仕事をするためには身元保証金というものを納付せなきゃならぬということが公証人法十九条に規定されておりますが、この身元保証金というのは、例えば、公証人が事務執行において間違いあるいは故意に第三者に損害を加えたというふうな場合に、国家賠償法に基づいて国が賠償した、その場合の国の賠償金の本人に対する求償権の担保ともなっている金額なんでしょうか。
#117
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおり、そういう機能も背負っているといいますか、そういう性格のものでございます。
#118
○猪熊重二君 そうすると、先ほど申し上げたように、読売新聞によれば、公証人が何ら嘱託もせぬのに公正証書を作成したということで国と債権者を相手取って三百万円だか五百万円の損害賠償請求をした。もしこれで国の方が負ければ五百万払って、公証人に故意もしくは重大な過失があるとすると公証人に求償せにゃならぬと。その求償権の担保としてこの身元保証金というものを納付させているんだということになるわけですが、この身元保証金の金額は幾らですか。
#119
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の前提がちょっと現状とはずれておるわけなんでございますが、金額を先に申し上げますと大都市で三万円、要するに、昭和二十四年でございますかに定められたままの金額になっております。
#120
○猪熊重二君 今どき三万円の保証金を出して保証金を出したというふうなのは、借家の賃貸借にもないし、どこにもない。まして損害賠償を請求されて国の方が五百万、一千万も損害賠償を払った、公証人に対して損害賠償に基づく求償権を行使するそのための担保ですという金額が三万円。しかも、もっと細かく言えば、東京都区部及び大阪市が三万円で、人口七万以上の市が二万円ですよ。その他は一万円じゃありませんか。こんなものが何の身元保証金の価値があるでしょうか、常識から考えて。法に身元保証金を取れとせっかく書いてある、それが実質的には全然生かされていないと私は思います。これについてはまたいろいろ検討してください。
 ところで次に、公証人には定年はありますか。
#121
○政府委員(千種秀夫君) 法律で定年を決めたというよりは、法務大臣は七十歳になればやめさせられるという規定がございまして、実際はそれで運用しております。
#122
○猪熊重二君 実際には七十歳で皆さんおやめになっておられる、そうすると次の後がまを任命する、こういう運用になっているらしいですから、その点はそれとして、公証人の職務執行区域についてお伺いします。
 公証人は公証人法十八条二項によると、「公証人ハ役場二於テ其ノ職務ヲ行フコトヲ要ス」、こういうことになっております。要するに、公証人は所属法務局もしくは地方法務局の管内に役場を設けてそこで仕事をしろと。それで、「役場二於テ其ノ職務ヲ行フコトヲ要ス」という規定になっておりますが、これはどういう意味なんでしょうか。
#123
○政府委員(千種秀夫君) ただいまの御質問は、十八条、公証人役場、「公証人ハ法務大臣ノ指定シタル地二其ノ役場ヲ設クヘシ」、この点でございましたでしょうか。
#124
○猪熊重二君 ええ。それと二項の方です。
#125
○政府委員(千種秀夫君) 「公証人ハ役場ニ於テ其ノ職務ヲ行フコトヲ要ス」、結局、公証人の事務所というものをどこかに定めませんと、公証人が全国どこへ行ってやってもいいということになっても責任がはっきりしない、そういうことで公証役場というものを必ずつくって大臣に届け出るようにということになっておるわけでございます。
 ただ、それは役場でのことでございまして、離れて仕事をする場合がその前の十七条にございます。
#126
○猪熊重二君 公証人は公証人役場においてその職務を行うことを要するけれども、その役場においてなす仕事は別にその所属法務局の管内の居住者に限るというふうな限定はないわけですか。
#127
○政府委員(千種秀夫君) その点の管轄の規定はございません。
#128
○猪熊重二君 そうすると、事務所を持っている、例えば、妥当かどうか知りませんけれども、埼玉県の大宮市なら大宮市に事務所を持っている、浦和市に事務所を持っている、だけれどもその浦和地方法務局管内に居住していない人でも、だれでも事務所に来さえすればその人の仕事をできる、こういうことになるわけですね。
#129
○政府委員(千種秀夫君) 結果としてさようでございます。
#130
○猪熊重二君 そうすると、私が非常に不思議に思うのは、公証人は法務局もしくは地方法務局――一々両方言うのは面倒くさいから法務局とだけ申し上げますけれども、法務局ごとに人数を決めて、法務局ごとに所属を決めて公証人を任命しているのにもかかわらず、日本全国どこの人でも、だれでもいらっしゃいということで役場に来た人の仕事ができるというんだと、せっかくその法務局単位で公証人の人数を決め任命した趣旨と全然無関係と思いますが、いかがですか。
#131
○政府委員(千種秀夫君) その仕事のやり方がそうなれば無関係になってしまうんですが、現実の問題としまして、公正役場というものを決めて看板を掲げて仕事をしております限り、そうよその方が、わざわざ北海道の方から訪ねてこられるというようなこともないわけでございます。それで大体バランスがとれているわけですが、実際の問題といたしまして、契約を公正証書にする場合には必ずしもその管内に二人とも居住していない、それなら裁判所のように債務者の方の住所で決めるか、こういうことになってくるわけですが、これは裁判所のように一方的に呼び出すわけじゃなくて、両当事者が随意においでになるわけですから、それはそう厳しくしなくてもいいだろう、むしろ、利用者の便利にということで特に規定がないわけでございます。
#132
○猪熊重二君 法務局ごとに公証人の人数を決めるということは、公証人の仕事も平均化するように、すなわち、結果的には公証人の収入の安定にもつながるように、公証人が貧すれば鈍するなんということになると困りますので、そういう点もあるわけなんです。
 そうしたら、例えば、東京に勤務場所があるから東京の公証人のところに行こうというと、この近辺の埼玉だとか神奈川だとかの居住者がみんな東京の公証人のところへ来るということになれば、東京の公証人は事件数もあり、したがって収入もあっていいけれども、近辺の方は飯の食い上げたなんということにでもなったら非常に困る。そのような点はお考えになりませんか。
#133
○政府委員(千種秀夫君) 確かに、そういうふうに飯の食い上げになりますと考えなければいけないのでございますが、幸いにまだそういう事態になっておりませんことと、近辺も地域によって公証事務というものはかなりあるものでございまして、地域を離れた公正証書の需要というものもないわけじゃございません。例えば、外国の文書の認証なんというのは霞が関とか丸の内とかそういうところにかなり限られてまいりますけれども、それはただいま御指摘のような類型のものでございますが、会社の定款の認証なんといいますと、地域で会社を設立するためにわざわざ東京までお見えになる方はないようでございまして、そういう点では余り私ども実態が偏ることはないと見ておるわけでございます。したがって、何かそういう事象が起こりますとそれはまた考えなければならぬと思っております。
#134
○猪熊重二君 これは風聞的なことであれですけれども、要するに、公証人の中にも公正証書作成に行ったときに、法規に従って厳密にいろいろ当事者に、嘱託人に尋ねたり、厳密にいろいろ言う人がいる。また一方でルーズに、持っていらっしゃい、持っていらっしゃいと言う人もいる。持っていらっしゃい、持っていらっしゃいと言う。一口に言って、手続、内容についてルーズな人のところにだけ事件が集まるというふうなことも風評としてあるわけなんです。
 それ以上に、先ほど民事局長は、公正証書作成は両当事者が首をそろえて来るんですと、こうおっしゃいましたけれども、この後引き続いてお伺いしますが、実際には代理委任でやっているわけなんです。要するに、例えば、サラ金の会社の社員ともう一人の社員が債務者の代理人になって二人で行くだけなんです。これがどこでもいいということになると、顔見知りの、行けばすぐやってくれる、便宜を図ってくれる非常にルーズな公証人のところへ集中するというふうな可能性が非常にあるわけなんです。
 ですから、日本弁護士連合会からも、この公証人制度について法務大臣の方に意見書が出ている。この意見書においても、せめて割賦販売法、貸金業の規制等に関する法律に関連する執行証書の作成の場合には債務者の住所地の公証人に限るように改善するべきだという意見が出ているわけなんです。そうすると、クレジット会社、サラ金会社が一カ所のところへばあっと持っていくわけにはいかないんです。それぞれの債務者がいる公証人のところへ持っていかなきゃならぬ。向こうも手間がかかるわけです。
 先ほどから簡裁統廃合に関連して大量事件だとかどうとかこうとかいろいろおっしゃっておる。OA機器化だとかどうとか言っておられるけれども、すべてと言わぬまでも、ほとんどがサラ金の便宜のためじゃありませんか。この執行証書の作成も同じじゃないですか。サラ金会社が特定の公証人のところへ関東近辺の全部のやつを集めてきて、紙で集まるわけなんです、人間が集まるわけじゃないんです。債務者が行くことになっているけれども代理でできるから、金を貸したときに紙をとっておけばそれでみんな集まってくる。
 せめて、この日弁連の提案について検討するようなお考えはありませんか。
#135
○政府委員(千種秀夫君) 私どももその御提案を拝見し、大いに検討はしておるわけでございますけれども、一つの問題として、実はいろいろ難しい問題がございます。
 というのは、ただいまサラ金というお話も出ましたが、一時サラ金も多かったんですが、今はクレジットが非常に多いんじゃないかと思います。クレジットのような消費者金融というものが普及してきます場合に、その消費者金融の小口債権というものをどのように確保するかというのは一つの社会問題であり法律問題でございますが、これはどうもけしからぬというふうに社会的、倫理的に否定してしまうわけにもいかない問題でございまして、そうしますと、それはどこかへ行くとすれば簡易裁判所に行くか公証人に行くか、もっと質の悪いのは取り立て屋に行くか、こういうようなことになってまいります。
 そうしますと、ある程度のコスト、ある程度の手軽さといいますか、簡易迅速な方法によってそれが無事に回収されるということもまた必要なんでございまして、そういう観点から申しますと、公正証書を厳格にしてつくりにくくすれば害はないかといいましても、大体悪い人はどんなことをやっても悪いことをいたしますし、公正証書といいましてもすべてが執行されるわけじゃなくて、ほんの数%しか執行されるということはないわけでございます。
 ですから、その大部分の事務のために非常に不便になるということは公証人の担当者の方々の意見によりましても非常に難しい、そういうようなことも言われるために、結局、今必要なことは本人が知らない間に代理委任状がどんどん使われて被害者が出る、そういったことに対する監視を強めることが大事ではないか、そういう観点から今アプローチをしているわけでございます。
#136
○猪熊重二君 ちょっと話が落ちて恐縮ですけれども、公証人の収入というか事件報酬というか、これについても巷間非常にいろんなうわさがあるわけです。公証人の報酬すなわち公証人法七条に言う「手数料・郵便料・日当・旅費」について、法務大臣は実際の金額を把握する仕組みになっておりましょうか。
#137
○政府委員(千種秀夫君) 手数料というのはグロスで入ってまいりますので、法務局が全体を把握することができるようになっております。
#138
○猪熊重二君 その金額等は、こういう席上では余り発表はしにくいわけでしょうか、する気ならば金額はわかるんですか。
#139
○政府委員(千種秀夫君) 発表しにくいといえばしにくいのでございます。なぜかと申しますと、グロスで入ってくるのが収入であるかのごとき錯覚を起こすのでございますが、実は公証人の事務所、役場の経営というものはすべて公証人に任されているわけでございまして、したがって、事務所の物的施設はもちろんのこと、書几、備品、部品、文房具、そういったものまで全部公証人の手数料の中で賄われます。
 そのほかに、これは政策的な配慮からでございますが、個人の収入ということで考えられては困るのは、人のいないところでもあるいはお客の少ないところでもまんべんなく公証事務をサービスとして提供するためには、個人差をならすという意味で経済合同ということを進めております。例えば、東京の場合でございますと五〇%の収入を全部拠出して、それを割り戻すということによって非常に仕事の少ない、収入の手数料の少ない事務所の経費を賄う、こういうようなやり方をしておるわけでございます。そういうことで、格差があるといいましてもかなりの額が経費に落ち、さらにそれが合同によってならされているというのが現状でございますので、そこでまあグロスで手数料の額を申し上げるのは非常に難しいということでございます。
#140
○猪熊重二君 私も、何も公証人の収入が多いからどう、少ないからどうこうということを申し上げているんじゃないんですけれども、要するに、公証人の収入が仮に非常に多ければもう少し公証人の人数をふやしたらどうかとか、その方が国民のために便宜であるとか、あるいはここは非常に収入が多いけれどもここは収入が少ないからどうだとか、そういうことを当然考える一つのファクターになるだろう、こう思うから申し上げるんです。
 それで、収入金額だけはわかるけれども、経費がわからぬから実収入がわからぬとおっしゃるけれども、年収五千万あるいは一億という収入があって、どの程度の経費がかかるかというのは、公証人役場へ二、三回行ってみた人にすればわかるわけなんです。その中の何割が収入になるかということもわかるわけです。
 私は、先ほどからいろいろ申し上げているのは、法務省や裁判所の先輩なり関係者なりが公証人になっていることが非常に多いとすれば、もう少し公証人に対する指導監督あるいは事務の監査、こういうものを、身内なんだから身内なりにもう少しみっちりやったらどうでしょうかということを申し上げたいわけなんです。
 まだちょっと時間がありますからお伺いしますが、要するに、先ほど申し上げましたように、公正証書のうちでも執行証書は債権者と債務者の両方が出頭することが理屈の上では原則になっているけれども、実際には、債権者もしくはその代理人、サラ金等で言えば、そのサラ金会社の従業員が金を借りている債務者の代理人として二人で行って公正証書をつくるんです。そして金を借りるときに、債務者の方は無我無中だから、印鑑証明持ってこい――はい、ここへ判こつけ――はい、これだけで、金が入る方ばっかり一生懸命ですから、印鑑証明とわけがわからぬ紙に実印を押して渡してしまう。そうしたら、内容も自分が全然理解していない金額の公正証書、利息もそう、弁済期もそう、しかも、その書類を知ったときには差し押さえがもう来ている、こういう状況になるわけなんです。
 その公正証書の謄本を同時送達すれば、裁判所の執行官が公正証書を持つと同時に差し押さえに来て、――公正証書を送達して、差し押さえして、後十日たてば競売になっちゃうんです。知りもせぬうちに書類をつくられて、その十日後にはたんすを持っていかれることになるわけなんです。こういう事態になってはまずいということで、債務者が代理人で公正証書を作成した場合には債務者本人に通知しろという規定が公証人法施行規則十三条の二に規定されているわけです。法務省としてもいろいろお考えいただいていることは非常にありがたいことなんです。そういう通知があれば知らぬうちに公正証書をつくられたということもないだろう。しかし、この通知は実際にはどのように運用されておりますか。
#141
○政府委員(千種秀夫君) その通知は公証人の方から必ず出しているようでございます。
 先ほど監督の問題も御指摘を受けまして、私ども、先生御指摘のとおりまことにごもっともと思っておりますが、最近、特にこの問題については力を入れているつもりでございます。
 この間も、新聞記事が出まして、早速公証人の役員の方をお呼びして実情を報告させました。そのときにも確かめたのでございますが、これは例の地方の公証人の問題が問題になったので特に私ども心配をしておるんですが、東京の関係者の方々からも同じような心配の声が出まして、東京でやっておられる先生方のやり方は、集団事件といえども代理人というものを確かめて、一人一人によって金額、弁済期も違うのだから、それは必ず確かめてやるようにしております、類型が同じだから審査の仕方とかサインの仕方とかそういうものはかなり簡易、迅速になっておるけれども、事前の準備というのはかなり慎重にやっております、こういう報告を受けております。
 そういうことで、この問題につきましても重ねて各局に通達を出しまして、実際に励行するように、また、していないかどうかを確かめるようにしたいと考えております。
#142
○猪熊重二君 要するに、先ほどから申し上げているように、差し押さえに来ていきなり公正証書を見たというのじゃなくて、事前に通知があればおかしいなということになるわけなんです。しかも、この通知は実際にははがきで通知することになっている。そのはがきが先方に着いたのか着かないのか、それもわからぬ。出したはがきが戻ってくる。戻ってくればそれをつづっておくだけなんです。
 こういうふうに、せっかく法務省で規則をつくって、作成したら直ちに通知しなさいという規定があるんですから、それに公証人の収入も非常に大きいんですから、何も六十円のはがきじゃなくて、せめて書留で出せと。法務大臣いかがでしょう。公証人も大分収入もあるんですから、書留郵便は三百五十円くらいだと思うんですけれども、通知したら、本人のところには届いたか届かぬか、戻ってきたら戻ってきっ放しでほうっておくというはがきじゃなくて、作成したらともかく債務者本人の方へ書留郵便で通知するということについて、手間はかかる、金はかかるかもしれぬけれども、もう少し債務者のための方策というものについてお考えいただけませんか、いかがでしょうか。
#143
○政府委員(千種秀夫君) 事務的なことがございますので、私から申し上げます。
 裁判所の送達でもそうなんですが、書留ですと債務者で執行されるような人は受け取らないために返ってきてしまうんです。はがきが一番よく通じる、こういうことでございます。
 それから、いかに費用をかけましても、公証人は自分で負担しませんで、みんな債務者か債権者の費用に還元してしまうものですから、そういう費用がかかるということがまた一つ問題があるわけでございます。
#144
○猪熊重二君 それは民事局長違う。このはがき代はだれが負担するべきかということを、照会があって、民事局長自身が、債務者なり債権者が負担するべきものじゃなくて、公証人が負担しろとあなた自身が通知しているんです。そうでしょう、通達あるでしょう。
 それで、はがきだったら届くかもしれぬけれども、書留だったら戻ってくる。戻ってきたらもう一回出したっていいんです。それがだめだと思う、私は。何のために通知しろという趣旨をつくったか、せっかく法務省で。それなのに、はがきの方が便利だというわけにはいかぬ。そんなもの大体あなた、果たして郵便屋が届けたか届けないか、それだってわかりはせぬ。戻ってきたらみんな積んでおくだけ。私も統計とっているわけじゃないけれども、戻ってくるのが確かに一割か二割ぐらいあるらしい。それはただ積んでおくだけだと。だとしたら、もう少し電話でやるとかあるいは書留だけれども、二度やってみるとか、さらにもっと言えば、特別送達をやってみるとか、何らがもっと方法を考えて債務者の保護ということをお考えになったらどうでしょう。大臣いかがですか。民事局長の今の答弁では私は納得せぬ。
#145
○政府委員(千種秀夫君) 確かに、はがきの通知は公証人の負担でということになっております。先ほど言葉が足りませんでしたけれども、この費用を上げますということになりますと、公証人の負担にさせるということについてはまた異論があろうということでございます。
 それから、送達性についてはがきの方が着くというのは、これはちょっと表現としてはよくないんでございますけれども、実態は裁判所の執行においても同じことを言われておりまして、はがきで出さないと、書留だけでは何遍でも返ってくるということが本当にございます。そこはこれから、先生の御指摘に従いまして十分検討させていただきます。
#146
○猪熊重二君 時間がありませんから、この公証人がつくった公正証書に対する不服申し立て、法律的には請求異議だとか執行文付与に対する異議だとかいろんな問題が非常にあるんです。
 そこで、私は法務省にお伺いしたんです。こういうものをちゃんと統計とっているかと。裁判所の判決に対する不服申し立ての比率と公証人のつくった執行証書に対する不服申し立ての比率をとっているかというと、それはちょっと統計どれない、こうおっしゃるんで、できないものはしようがないけれども、執行証書の作成によるトラブルというものが非常に多いわけなんです。
 最後に法務大臣に、この公正証書作成の公証人の仕事というのは、一番最初申し上げましたように、裁判所の判決と同じだけの力が、少なくも金銭債権等に関しては同じ力があるものが、こんなに簡便にサラ金会社の課長と係長と二人で行ったらできちゃって、債務者の方は全く寝耳に水と、こんな公正証書が幾らでもあるんです。何とかもう少しこの制度をうまく運用するように、法務省として、大臣は任命権者なんですから、今後の指揮、指導監督についての御所見をお伺いしたい。
#147
○国務大臣(遠藤要君) 今、先生からいろいろ御意見がございましたが、公証人の立場というのは先生お話しのとおりでございまして、いかに重要なことかということは私もよく承知をいたしております。
 ところで、その公証人のそれぞれの御性格によっていろいろ扱い方や何かもサービス本位といいましょうか、便宜主義な方もあるし、一つ一つ慎重にやっている公証人もある、これもまた承知をいたしております。そのような点で、先般も民事局長に私からも、いろいろ提言を今しておるさなかでございますが、いかに公証人役場の立場が大切なものであるかということで検討してまいりたいと思いますので、御了承願います。
#148
○猪熊重二君 どうもありがとうございました。終わります。
#149
○橋本敦君 重要な法案の審議でありますが、その前に、一般調査の質問をまず片づけておきたいと思います。
 強制送還されるオーバーステイを含む人たちの問題と、それに関連をしてディスカウントの安い航空券をノーマルな値段で売りつけるという、そういう業者が介在しているということで、一つには、自分の祖国へ帰る人たちに過大な負担を与えるということと、もう一つ、我が国の行政として国際的信用にもかかわりかねないという問題があるものですから、この問題をただしておきたいと思うわけであります。
 まず、第一の質問は、具体的な実情からお聞きをいたしますが、資格外活動あるいは不法残留、こういったことで強制退去となった外国人の数、これは昨年度どのくらいになっておりますか。
#150
○政府委員(小林俊二君) 昭和六十一年中につきまして数字を一べついたしますと、退去強制手続をとった入管法違反者は一万五百七十三名を数えております。このうち、その七六・九%に当たります八千百三十一人が資格外活動あるいは資格外活動を含む不法残留のいわゆる不法就労者でございます。
#151
○橋本敦君 今年度上半期の状況はわかりますか。
#152
○政府委員(小林俊二君) 暦年でございますが、本年上半期におきましては違反者総数が七千二百十一人、前年の同期四千三百三十三人に比しまして六六・四%の増となっております。このうち、いわゆる不法就労者の数を見ますと五千八百二人、前年同期の三千二百五十一人に対して七八・五%の増を示しております。
#153
○橋本敦君 ここ数年をとってみますと、顕著な傾向としては年々非常にふえているというように見てよろしいわけですか。
#154
○政府委員(小林俊二君) そのとおりでございます。
#155
○橋本敦君 そういった不法残留事犯の具体的な内容でありますが、実際は、東南アジア諸国から我が国に来て単純労働に従事するという事例が多いように思いますが、昭和六十一年度の出入国管理のいわゆる白書にも数字が出ておりますが、概要を説明していただけますか。
#156
○政府委員(小林俊二君) ただいま御説明申し上げました不法就労者の内訳をまず国籍で見ますと、第一位がフィリピンでございまして全体の七七・四%を占めております。次いで、タイでございまして一二・一%、さらに中国、主として台湾でございますが四・四%というのがその国籍別の概要でございます。これを男女の性別で見ますと、男性が二六・九%の二千百八十六人、女性が七三・一%の五千九百四十五人ということでございます。
 また、就労職種別の概要を一べついたしますと、女性の場合には圧倒的に多いのがクラブ、バー等におけるホステスでございます。男性は数の上ではまだ女性に及びませんけれども、稼働職種は建設事業等の土木作業員、その他単純労働に従事する工員といったようなところがその大半を占めております。
#157
○橋本敦君 白書によります資格外活動事犯の特徴として、入管の方で指摘されている項目を整理してみますと、一つは、内外のブローカーが結託して勧誘をして、稼働先を日本に求めてくる者をあっせんして就労させるというブローカーが介在しているという事犯が多いこと。それから二つ目には、暴力団がこれに介在して、例えば、稼働先のあっせんをやる、ひどいのになると偽装結婚というような手段を使ってまで入国をさして稼働さしておる、こういう事犯があります。三つ目には、女性の中には残念ながら売春行為に使われるという人たちが多くなっているということが特徴として指摘されているように思いますが、いかがですか。
#158
○政府委員(小林俊二君) 先生、今御指摘の諸点はいずれもそのとおりでございまして、特に、ここ数年間不法就労者の数の異常な急増を見ておる背景には、主としてフィリピンあるいはタイでございますが、相手方の送り出しのネットワークと我が国国内におきます受け入れのネットワークそれぞれの連携が次第に強化されてきて、いわば軌道に乗ってきたというようなことが、この不法就労者数の急増の背後にある最も重要な要因であろうと思われます。
#159
○橋本敦君 さて、こういった問題にどう対応するかですが、根本的原因は、東南アジア諸国の経済的事情、貧困な国民の状況、経済的自立あるいは雇用の拡大が十分でないということがあると私は思います。したがって、こういう問題について我が国がどう援助、貢献できるかという課題はあるでしょう。
 それと同時に、現在起こっているこの問題について、我が国としてどう対応するかということがあります。一つには、なるほど門戸を開放して労働ビザ解禁をする、つまり単純労働であっても正式にビザとして受け入れるということもこれは考えられるでしょう。しかし、それは我が国の国内における労働事情に大変大きな影響を与えますから、これまた慎重に検討しなくちゃならぬ。とりあえず、不法な暴力団の介入やあるいは不法な仲介業者の介入や、あるいは不法残留と知りながら雇用するということを公然とやっているこういった状況や、あるいは我が国国内における労働保護立法に著しく欠ける問題や、そういったことは厳しく規制していくというのがさしあたり国際的にも日本のとるべき方向として私は非常に大事ではないかというように思うんですね。ここのあたり根本的な対応策の中の課題でありますが、大臣としてお考えがございましたらお示しをいただきたいのですが、いかがでしょうか。
#160
○国務大臣(遠藤要君) ただいま、先生の御指摘の点でございますけれども、私自身閣議でも二、三度この問題について発言をいたしております。
 一つは、不法入国の問題にも絡む問題でございますけれども、暴力団とか悪質ブローカーが日本のいろいろの建設またはクラブ等に投入する、それが正常な賃金を払っておるかどうかということが非常に疑問であります。話に聞くと驚くような低賃金であっせんしている。そういうふうなことがあり、また仕事によっては女性の場合は売春等も行われているということになりますると、今はよその国も黙っておりますけれども、何かの際に日本の国辱的なことになるのではないかというような点を懸念することが一つと、労働市場に与える影響が甚だ大だというような点で、閣議においても関係省庁に御協力を願って、ただ取り締まるだけではなかなか問題があるというような点で、私自身としては、建設なり、土木事業なりそういうような問題に、そういうふうな労務者を導入するということに対しては国自体として指名を遠慮願うとか、何かそういうふうな処置をとらないとなかなかこの根が絶やせないというようなことで、関係省庁の事務同士でも話し合いをさせてほしいということで、御了解をとって、いろいろ今協議をしているということでございます。
 さらにまた、法務省自体としても、各国の、特にフィリピンその他の国の大使館や何かと十分話し合って、観光ビザで入国するということであるが、本当に日本に観光においでになる人にまた大変失礼なことになっても大変だという点でそこはなかなか面倒なところでございますけれども、そういうようなものを厳重にひとつチェックしてほしいというような要請もいたしておるというわけでございまして、先生御指摘のとおり、私どももその点に対して非常に危惧している現況でございます。
#161
○橋本敦君 わかりました。
 そこで、労働省にお伺いいたしますが、現在の我が国の労働保護法の観点から見て、こういった不法残留ということでその弱みにつけ込んで著しい低賃金あるいはタコ部屋的労働あるいは時には売春ということに走らされる、こういうことに対する保護立法の観点から、労働省としては具体的な対策を、あるいは考え方をお持ちでしょうか。
#162
○説明員(奥津照嗣君) 労働関係法令の適用の件でございますけれども、労働基準法など労働基準関係法令は日本国内における労働でありますれば日本人であるか外国人であるかを問わず適用されるものでございます。また、職業安定法につきましても日本人であるか外国人であるかを問わず適用されるものでございます。
 こうした観点から、私どもといたしましては、強制労働であるとか中間搾取であるとかそういった重大悪質な法違反を犯しました使用者などに対しましては厳正に対処しているところでございまして、引き続きこのような方向で対処していきたいと考えております。
#163
○橋本敦君 今のお話は、例えば労働者派遣事業法違反ということで反公衆衛生あるいは公衆道徳に違反するような職業へのあっせん、こういったことを禁止、処罰するということも可能ではないと思いますが、いかがですか。
#164
○説明員(奥津照嗣君) これは、現行の職業安定法上の規定といたしまして、例えばでございますが、有害業務にあっせんをした場合にその禁止を図るとか、あるいは労働者供給事業の禁止など、そういった職業安定法上の規定がありますので、それらにより対処するというようにしておるわけでございます。
#165
○橋本敦君 入管局長の御答弁にもございましたように、特に、フィリピンからの女性が総数におきまして二千名を超えるということで、一番圧倒的に多いというので、いわゆるじゃぱゆきさんという悲劇的な言葉も生まれておるようなことですが、こういう点はアジアの女性、日本の女性に限らず人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約というのがありますね。さらには女性差別撤廃条約も批准されたわけですが、こういった国際条約から見ても違反する実態がないとは言えないという、これは実情をよく調べなくちゃならぬという状況があると思うんですが、これは労働省でしょうか、どこでお答えいただけますか。
#166
○説明員(奥津照嗣君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、労働基準法であるとかそれから職業安定法とかそういった現行の法律の中で適正に対処したいというように考えておるわけでございます。
#167
○橋本敦君 きょうは、外務省呼んでいませんが、条約が批准されれば国内的にこの趣旨は貫徹しなければならぬわけで、私が言う不法なブローカー、暴力団の介入、こういったものは労働保護立法の適正な運用で十分対処できるという結論ですか、新たな法的処置が必要だという結論ですか、そこはどうですか。
#168
○説明員(奥津照嗣君) 先ほども申し上げましたように、強制労働であるとか中間搾取であるとか、そういった重大悪質な法違反につきましては現行の法を最大限活用する、そういう方向で対処をしていけると考えておるところでございます。
#169
○橋本敦君 大臣がおっしゃった事務レベルの協議もこれからも進むことでしょうから、こういった問題については一段と厳しい対処をお願いしておきたいと思うんです。
 それから、刑事局長にお伺いいたしますが、資格外活動あるいは不法残留、つまりビザが切れた後に滞留している、そういったことを知りながら、女性や、単純労働者を雇用しているという雇用主に対する刑事上適用される可能性の法律というものはあるんでしょうか。
#170
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまお尋ねのような場合に、雇い主自身を直接に処罰する規定は存しないところであります。しかしながら、ただいま御指摘のありましたように、資格外活動の罪あるいは不法残留の罪、こういったものがいわゆるじゃぱゆきさん等について成立いたします場合に、雇い主をその犯罪の共犯として処罰し得るかという問題は残ってくるところであろうと思います。
#171
○橋本敦君 つまり、おっしゃるのは幇助犯の成立の可能性ということですね。
#172
○政府委員(岡村泰孝君) あるいは幇助あるいは教唆なども考えられるかと思います。
#173
○橋本敦君 暴力団がいわゆる人買い的にフィリピンヘ行って女性を勧誘して連れてくる、あるいは連れてきた女性を暴力団が受け取って売春街にあっせんをするというようなことで、ピンはねをしたり自分の利益に不法に使ったりするというような悪質な行為に対しては刑法的にはどうでしょうか。
#174
○政府委員(岡村泰孝君) 特別法といたしましては売春防止法の問題があろうかと思います。刑法上の問題といたしましてどういう場合が想定されるか、今ちょっとすぐには即答いたしかねるところであります。
#175
○橋本敦君 どっちにしても、例えば、職安法違反ということになれば刑事制裁がある部分がありますからそれはそれでいけますが、独立に刑法的にどういう犯罪になるか、これはなかなか難しいわけですね。だから、そういうことをかいくぐって私はかなりそういった暴力団なり不法なあっせんブローカーの介在が実際はなかなか絶やされていない、こう思うんです。だから、そういった点については、大臣もおっしゃいましたが、実務レベルでの各省との検討も含めて厳しい対処をお願いしておきたいということを言っておきたいと思うんです。
 そこで、こういう人たちが働いて、今度は帰国するということになりますと、これは不法残留の場合当然自首して出るかあるいは発覚されるか、ともかく法律的要件としては弧制退去、入管局長、こういうことになるわけですか。
#176
○政府委員(小林俊二君) そのとおりでございます。主として不法残留ということで退去強制手続をとられる者が圧倒的でございます。
#177
○橋本敦君 そこで、その次の問題は、新聞でも大きく報道されて、なるほどこれはまたけしからぬなと思ったんですが、強制退去ということで帰る人たちに対する航空券のあっせんの問題ですが、基本的には自費で帰るという建前ですか。
#178
○政府委員(小林俊二君) 政策としてはそのとおりでございます。
 もちろん、国費送還ということも技術的には可能でございますが、それが余り一般化いたしますと、これらの人々はあり金残らずをまず送金して、無一文になってから出頭するという格好になりますので、結局、そういう対応の仕方をエンカレッジするというのはいかがかという点もございまして、自費で帰国してもらうということを原則にいたしております。そのことから先生御指摘のような問題が若干起こっていたわけでございます。
 また、御質問があればお答え申し上げます。
#179
○橋本敦君 そこで、自費で切符を買わせるんですが、十分日本語もわからない、自分でどこにどういう切符を売っているかもわからないというようなこともあって、結局旅行業者を入管があっせんをしてやる、こういうことで実情はあったように聞いております。ところが一方、航空券の方はフィリピンまで行くのに格安の航空券がいろいろございまして、ノーマルフライトフィーで行くと十万二千円ほどなんですが、実際は四万円、五万円、六万円いろいろある。ある業者によりますと、仕入れ価格が三万から四万前後で、それをノーマルの十万二千六百円で売りますと、一枚売れば六万円がもうかるというようなことでもうけている事例がある、こういうことでひど過ぎるではないかという話が出ているわけですね。
 入管の方としては、こういう事情は知っておられたのか、あるいはこういうことをする業者にあっせんを任せるというのは出先の警備官だけの判断でやられているというところからそういうことになってきているのか、そこらあたりの実情と、それからこういう悪徳業者が介在している実情を全部つかんでいらっしゃるのかどうか、つかんでいなければ、全国各地に入管はございますし、すべてについて一遍実態調査をぜひやってもらいたいと思うんですが、どうなっておりますか。
#180
○政府委員(小林俊二君) 御指摘の事案は、八月二十九日の朝日新聞で報道されていた大阪空港出張所における事案であろうと存じますが、大阪空港につきましてその経緯、実態を詳細に調査いたしました。その結果承知したところは、同空港におきましてこの数年間はこの種の案件の非常な増加がございまして、その対応に非常に苦慮しておったということが背景にございます。
 昭和五十九年に八件であったものが六十一年には百八十八件、本年は上半期だけで三百十一件というような、小さな出張所としてはまことに対応に苦慮することが日に見えるような状況でございます。その間、全国的には五十九年に六千八百三十件だったものが六十一年には一万五百七十三件でございますから二倍にはなっておりません。ところが、この出張所につきましては二十倍を超えているという状況にございます。こうした中で、何とかスムーズに被退去強制者の帰国を実現するためにいろいろ腐心をしていたということがあるわけでございます。すべての出頭者あるいは摘発された者が帰国旅費に見合うものを持っていてくれれば全く問題はないわけでございますけれども、中にはほんの少ししか現金を持っていない、あとの者は昔お土産を買ってしまったとか本国に送金してしまったとかというようなこと、あるいは来た途端につかまってまだ稼いでいないというような事案が多かったわけでございます。
 こういうような事案に当たりますと、入管局といたしましては、本人たちが働いておりましたバーであるとか、クラブであるとかの経営者にかけ合って帰国の旅費を出させるとか、あるいは仲間のじゃぱゆきさんにカンパを求めるとかいうようなあっせんをいたしまして、そして何とか送り出しているというのが実態でございます。
 そうした努力の間におきまして、ともかく安い航空券を入手するというのが一つの問題点となってくるわけでございます。そこで、一定の業者につきましてそういうあっせんを求めるということがだんだん発展いたしまして、その業者の方ではお金を持っているじゃぱゆきさんからは通常料金を受け取って、そしてディスカウントの切符を渡す、それによって生じた差額をお金を持っていないじゃぱゆきさんのための旅費あるいは航空券の提供に流用するといったようなことで操作をしながら何とか入管局の方の要求、まあ入管局の方の要求も無理だといえば無理だという点があるのかもしれませんけれども、応じていたという点がございまして、入管局としてもあからさまになかなか強いことは言えないような状況ができつつあったというのが実態でございます。
 しかしながら、こういう不正規な取引と申しますか慣行を放置いたしますと、これが発展してまたどういうスキャンダルになるかもわからないということもございますので、幸い記事が出る前に私どもはその状況については情報を入手しておりましたので、こうした状態は放置するのは好ましくないということで、こういうことをやめればそれですぐ問題がすべて片づくというものでもございませんけれども、少なくとも業者にそういう部分のあっせんを急がすというのは基本的に好ましくないということでやめさせるようにいたしまして、またこの事例を全国に通知して、このようなことが行われないようにということを確保してもらうように連絡をしたというのが現況でございまして、現在のところ大阪空港以外ではこういうことが行われていたという報告は受けておりません。大阪空港における異常なこの種案件の増加から出てきた腐心の策がたまたま好ましからざる結果をもたらしつつあったということが現状であろうかと存じます。
#181
○橋本敦君 今おっしゃったように、全国に大阪のような事例を起こさないようにという指示ですか、これをなさったというのは最近ですか。
#182
○政府委員(小林俊二君) そのとおりでございます。
#183
○橋本敦君 苦労して働いた人たちにノーマルの切符をオフィシャルにあっせんしてやることがいいというように私も言っているわけじゃございませんで、通常に入手できる方法でしかも安い切符が手に入れば一番よろしいわけですね。だから、業者も安く切符を手に入れれば適正なマージンでそれを売ってあげればいいので、明らかに四万程度のディスカウントの切符を、これをノーマルだと売るというのは詐欺的な商法に近いわけですから、政府のやっている仕事の一環としての入管行政にこれが絡みますと、行政の信用にかかわりますから、この点は厳しく対処してもらわねばならぬ、こう思うんですね。今後ともどういうようにやるかということは、そちらの方でまた御検討いただきますが、こういうことで、法務大臣、この問題については、入管局長の指示どおり、全国で信用を害するようなことがないように、業者が介入しますから、適正な運用をぜひ厳しく御示達願いたいと思いますが、よろしいですか。
#184
○国務大臣(遠藤要君) さきほどからのじゃぱゆきさんといいましょうか、そういうような問題に関しては、先ほど申し上げたとおり国の信用という点もございます。十分注意をしてまいりたいと思います。
#185
○橋本敦君 キリスト教矯風会の斎藤さんという方が新聞で言っておられるんですが、じゃぱゆきさんの置かれている立場を考えると、できる限り安い航空運賃で帰国させてあげるべきなのに、格安航空券を通常運賃で売るとは何ということでしょう、入管の人たちは彼女たちがどんな思いをしてお金を蓄えたのかわかっているでしょうか。こういう泣かされていた人が確認できたら、しかるべき手を打たなくちゃならぬ、こう言っておられます。
 一方、業者への監督指導ということは法務省じゃなくて運輸省の所管がと思うんですが、運輸省としても無関心でおってもらっては困るんで、不法な利益を入管行政に絡んで利得するようなことは、業者指導としてさせないように指導してもらいたいと思いますが、運輸省はいかがでしょうか。
#186
○説明員(平野忠邦君) ただいま、先生御指摘のとおりでございまして、私ども旅行業を監督いたしております立場から、旅行に関します取引の公正あるいは旅行者の保護と申しますのは、まさに旅行業者としての基本的責務と考えております。したがいまして、今後とも、そのような実態を調べまして、事実関係を確認した上で、このようなことのないように、必要に応じまして指導してまいりたいと考えております。
#187
○橋本敦君 わかりました。
 以上で一般調査を終わります。どうも関係省庁ありがとうございました。
 それでは、法案に関連をして質問をいたします。
 前回、私は岡山の備前簡裁の例を取り上げまして、最高裁が法制審答申を得てお考えになっていた基準に照らしても、再検討を要する、つまり廃止すべきでないところではないかということを申し上げたんですが、個別的に検討しますと全国で随分たくさんある可能性がございます。
 例えば、島根の大田簡易裁判所、これを見てみますと、裁判所から出されている資料を見ましても、一つは、昭和六十年度では民事訴訟事件が八十六件、民事調停四十四件、刑事訴訟一件ということで百三十一件になっておる。六十一年は、民事訴訟が七十二件、民事調停四十八件、これで百二十件になっておる。なるほど五十五年から五十九年の平均は九十二件でございますけれども、直近の六十年、六十一年は百二十を超えておるという状況がある。したがって、機械的に百二十件以下だから当然廃止対象庁だとお考えになるには、ちょっと余裕を持って考えなきゃならぬ裁判所ではないかということを事件の点から一つ。
 それからもう一つは、民事調停の事件をこの大田簡裁で調べてみますと、管内の住所を有する人が申立人で八二%、相手方で八四%、調停は当然相手方のところへ申し立てるということで管轄が決まりますから、相手方が八四%管内は当然ですが、申立人も八二%はかなり高い。したがって、民事紛争の解決としての大事な調停ということをとってみても、この大田簡易裁判所は地域に機能しておる、廃止しない方がいいという判断になるのではないかと思いますが、いかがですか。
#188
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 大田簡易裁判所の近年の事件数の推移につきましては、御指摘のとおりでございます。大田簡易裁判所の事件数の動向というのは、時によりますとでこぼこがございまして、三十年でございますと百四十件ございました。これが四十年になりますと六十三件、五十年四十四件とこう減ってくるんですが、五十六年にはまた九十六件というふうに、これは三種の事件でございます。ところが、その翌年の五十七年には五十件に減りまして、五十八年になりますと九十三件、五十九年になりますと今御指摘のように百五十九件、ところがこれ六十年が百三十一件、先ほど御指摘のとおりでございまして、六十一年になりますと百十九件になります。今年度の事件の出ぐあいを見まして、上半期から年間を推定いたしますと七十二件ぐらいになるわけでございます。
 五十八年から六十一年にかけまして非常に事件がふえているわけでございますが、実態を見ますと、どうもいわゆるサラ金調停、これがかなり出ておりまして、サラ金規制法の関係でそれが下火になってまいった、そういうこともあろうかと思います。クレジット訴訟の関係もまた減ってきておる、こういうふうに近年は確かに事件はふえてございますけれども、過去から今日に至るまでの事件の動きぐあいとか、それから人口につきましては三十年当時が六万八千人ぐらいでございまして、これが六十年には五万人を切っております。やや減少傾向にございます。そういうことを絡み合わせますと、今後はやはりこの平均の九十三件、これがちょうど相関表で申しますと九十一件から百件の九十件台でございます。大体この程度で推移するのではないか、こういうふうに予測できるわけでございます。
 調停につきましては、御指摘のとおり、これは一般的に管内の住民の方々の利用度合いというのが高こうございます。高うございますが、先ほど申しましたように、五十九年に七十三件ございました調停事件数が、その後四十四件、四十九件というふうにまた若干減ってきておりまして、今年の前半から見ますと、年間で二十四件ぐらいになるんじゃないだろうか、こういうような推測もつくわけでございます。そこら辺を勘案いたしまして、今後大幅な事件数の増加はないであろうというふうに見込みまして、今回統合庁というふうに決めさせていただいたわけでございます。
#189
○橋本敦君 でこぼこがあることはお認めになったんですが、そのぼこだけ考えると、でこのときにも裁判所は機能しなくちゃいかぬわけで、事件がふえる可能性もあり得る裁判所なんですよ。
 それで、地域的に見ましても、出雲の方へ行くことになるんですが、出雲へ行くとなりますとこの管内の、いただいた資料で仁万駅から出雲まで六十六分列車でかかることになると、だからその仁万駅までバスで出る、歩いて出る、そういうことを考えますと六十六分、つまり列車に乗っている時間だけで一時間超えますから、ですから一時間半近くあるいは奥地からですと一時間四十分ぐらいはかかる。あるいはその奥の温泉津からですと出雲まで列車だけで八十分かかりますから、この点からいっても一時間以上というのは明白なわけですから、この所要時間という点から見ましても大田簡裁は廃止対象庁としての基準に合致しないと言えるんじゃないですか。
#190
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 確かに、御指摘のとおり、仁摩町からでございますと出雲市までJRで六十分でございます。出雲市で降りましてから出雲簡裁まで出向くのが徒歩で十二分、合計七十二分かかります。ところが、この所要時間のとり方につきましては、これまでも御説明申し上げておりますが、管内全般につきましてそれぞれ起点をたくさん設けまして所要時間をはかるというのは基準としては意味がございません。
 そこで、基準として何をとるかということで、その所在地の市町村の中心の風から隣接の簡易裁判所まで何分かかるか、こういうことでとったわけでございます。管内の中には、例えば出雲について申しますと、出雲に近いところもございますれば、大田よりはかえって時間のかかるところもございます。そういう状況を加味しながら、管内の交通事情、どこを所要時間の代表とすべきであるかというふうに考えまして、やはり所在地の市町村が人口も多うございます。ただいま御指摘の仁摩町は五千九百人でございますけれども、大田市になりますと三万八千五百人でございます。裁判所の利用者を見ましても大田が圧倒的に多いわけでございます。
 そういうところから、大田を中心といたしまして隣接町までの所要時間を計測したわけでございまして、そのようにいたしました場合、大田市からJRで出雲まで四十五分でございまして、出雲市の駅から簡裁まで徒歩十二分でございますから、五十七分というところにおさまるわけでございまして、遠隔地の状況というようなものは地域の個別事情として考えてまいろうというふうに思ったわけでございます。
 そのほかの簡易裁判所につきましては、そういう遠隔地からの距離というようなものも勘案いたしましてやっておりますが、例えば、島根大田簡裁について申しますと、一番遠隔の温泉津町、これから八十五分かかるわけでございますが、この温泉津町も人口五千五百人でございまして、裁判所の利用度合いというのは大田に比べますと比較的少のうございます。そういう点から、今回統合はやむを得ないものというふうに考えたわけでございます。
#191
○橋本敦君 結局、廃止対象庁になるということで、そういう頭で起点を大田にとって計算すると六十分切れるということになるのではないか。ところが、裁判所を利用する国民の側から見れば、なるほど大田は人口が多いけれども、大田の人たちばかりじゃないということも明らかですから、これは非常に難しい問題ですよ。しかも、島根の地理的事情を言いますと、出雲は松江に近いんですが、大田は東西に長い島根県の中心部分でありまして、その大田の簡裁がなくなりますと、西の方へいきますと浜田その他ありますが、そこがぽこっと、東の出雲へ行きますと、出雲と松江は近いんですが、まさに東西に長い島根県の真ん中部分から裁判所がなくなる、こういう状況になりますので存置すべきだということで考えるべきではないかということの一つとして私は注目したわけなんですね。これはぜひ検討してほしい一つの裁判所の例であります。
 それから今度は、熊本の山の中の矢部町というところがございます。これは私も行ったことがあるんですが、守住先生は熊本ですからおわかりですが、本当に山の中でございます。熊本県の矢部町議会が昨年十月に最高裁あてに出した意見書の中にも、これはまさに羊腸の道を伝っていく山奥である。羊腸の道というのは羊の腸が曲がりくねったという意味なんでしょうが、そういうところだと、こう言っています。この矢部の簡裁の事件を見てみますと、民事事件で調停が二十一件、督促が百九十八件、通常一審が四十五件、そして略式等は二百六十五件と出ておりますが、なるほど事件数は百二十の下でしょう。しかし、ここは家裁の出張所が設置されているんですね。こういう山の中で家裁の出張所があるということはこれは大事です、家裁事件の処理にとって。家裁事件の調停は三十二件あるいは審判が四十六件というように、これを加えますとかなり機能している、こういうことになる。
 ところが、これがなくなりますと御船へ行かなきゃならぬ、こうなるんですが、御船へ行きますのは、この矢部簡裁の管轄地域で言いますと、その端の清和村、蘇陽町から矢部を通り越して御船へ行く。こうなりまして、国道に出るバスまでまだ別のバスに乗って出て、そして国道でバスを乗りかえてそのバスでと、こうなりますと過疎地帯ですからバスの便も不便で、聞いてみますと一泊がかりになる、こういうことらしいんですね。こういう事情ですからもう町長以下全町会議員党派を超えて残してほしいという要請、県議会に要請し、県議会も意見書を出しましたが、五十九年二月以来六回も存置せよという決議を町議会がやっているという状況、住民二万六千名のうち一万七百八十六名の反対署名が寄せられている、こういう状況だ、こういうことですから、なるほど切実な要求だなということがわかるんですが、これはもうぜひ残していただけませんか。どうですか。
#192
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 矢部管内の状況につきましては、御指摘のような事情があるわけでございますが、まずその事件数、これは三種の件数でございますが、それで申しますと三十年当時は二百二十二件あったわけでございます。それが年々減ってまいりまして五十六年には三十六件ぐらいになってきた。五十七年には五十九件とまたふえておりまして、五十八年、五十九年、六十年と六十件台で推移しているわけでございます。六十一年には九十件というふうに伸びましたけれども、本年度の前半で見ますと今度はがたっと減っておりまして、年間推定件数が三十四件ぐらいになるようでございます。
 確かに、家裁出張所を併設いたしておりまして家裁出張所の件数も相応にはございます。しかし、これは同じ枠内にございます吉野あるいは朝日、美作、赤岡、これらに比べまして比較的少のうございます。家裁の出張所の件数につきましては、法制審答申におきましても、基本的な事件数には加えないけれども地域の諸事情ということで勘案しよう、こういうことでございまして、私どもこの吉野、朝日、美作、赤岡の横並びとの関係でも見たわけでございますが、今申しました吉野は管内面積が御承知のとおり非常に広うございます。他町に比べますと倍ぐらい広うございまして、吉野川沿いに町村が散在しておりまして、全般的な交通事情が非常に悪うございます。今回は統合から外しておりますけれども、そのほかの上市、朝日、美作、赤岡、これはいずれも統合やむを得ないものというふうに決めさせていただいたわけでございます。
 そういうような関係もございまして、交通事情につきましては、例えば、清和村からでございますとバス便で八十分でございます。蘇陽町は御指摘のとおり御船へ出ますと相当時間がかかります。蘇陽町は町の一部が既に高森簡裁の管轄内でございますので、今回地元の御意向も近い高森簡裁に編入してもらいたい、こういうことでございましたから高森簡裁の方へ統合する、こういうことを予定しているわけでございます。それによりますと、バス便で七十七分、現在は時間がさらに短くなっております。
 こういうふうな状況でございますので、確かにいろいろ御要望も陳情もございましたし、私どもも直接お目にかかったことはございます。いろいろ御事情を申し上げましてその後またいろいろな動きもございましたけれども、私どもの意のあるところを御説明申し上げまして御理解をお願いするということでまいってきたわけでございまして、今回の統合をやむを得ないものというふうに御理解賜りたいと思います。
#193
○橋本敦君 そういう答弁ではありますが、地元の皆さんの強い意向ということを考えますと、この地域では家裁出張所とともに残すべきではないかという考えは変わりません。
 一つ一つやっていると時間が大変ですが、次は、大都市の集約化構想、この問題です。
 参考人の意見もあり、また議論もされたわけで、東京の場合は省略いたしますが、どっちにしても東京八百万区民という八百万の人口の中で簡裁を一つだけに集約するというのは大変な大手術といいますか、これは簡裁として機能するかなということを心配せざるを得ない大変なことなんですが、大阪の場合でも今度は一庁集約ということにされるわけです。大阪の場合では生野、西淀川、阿倍野がなくなっていく。
 基本的な考え方としてお聞きしたいんですが、大都市あるいは大きな都会であってもそれの行政区域によってはそれなりの特殊性があり、地域性があるということはこれは否定できないと思うんです。事件だけ見ますと、例えば、サラ金あるいは割賦販売その他流通信用関係の訴訟がだあっと広がるということは大都市に限らず全国的な状況ということですから、地域性がなくなるということは一つはそういう社会現象としてあるでしょう。もう一つの地域性がなくなるというのは、会社を相手に初めから承諾をさせまして自分の営業所がある簡裁に管轄合意させるものですから、例えば、大阪で言えば大阪簡裁が圧倒的に事件数が多くなる背景にはそういうことがある。地域性がなくなるということはこういった作為的なことで地域性がなくなるのですね。
 地域的な状況で言いますと、例えば、西淀川というのが、淀川の東側で一つの独立した生活圏に近いところで、それなりに土地の古い人がそこに住んでおられるという状況がある。生野をとってみますと、これはまた大阪の中心部ですが、大阪の下町の中小零細企業が圧倒的に集まっている、しかも朝鮮の方もたくさん戦前からいるという特殊性があるというようなことでその地域の特殊性というのは大都市であってもあるんですよ。それなりに機能して、西淀にしても、阿倍野にしても、生野にしても、相関表で指摘されておりますが、事件数そのものは百二十を超えておりますでしょう。これをあえて一庁集約ということで本当に簡裁の機能を大都市で守れるのかという問題が根本的にあると思うんですが、この点は局長いかがお考えですか。
#194
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 確かに、大都市におきましてもそれぞれの地域性というものはございますし、例えば、東京二十三区におかれましてもそれぞれ区における特殊性というものを区長さんあるいは区議会議長さんはそれを表明されましてそのような町づくりにいそしんでおられるわけでございます。私ども決してそのような地域性のあることを否定するわけではございません。
 しかし、他面、生活圏というものが非常に広がってまいりまして、生活圏、経済圏あるいは通勤、通学圏というものが東京の場合でございますと都内一円、大阪の場合でございますと市内一円に広がっておる、そういう意味合いにおきまして事件の特殊性というのはかつてほどは強くはないであろう、だんだん希薄化していることは間違いないだろうと思います。他面、しかし、特殊性の色濃い事件があるということもこれは否定できません。今後の都市裁判所のありようを考えてまいります場合、やはり大量的に提起されます地域性、特殊性の比較的薄い事件の処理と、特殊性のある事件の処理とを分別いたしまして、それ相応な処理ができるような体制に持っていかなければならない。地域性の少ない事件の大量処理を考えます場合には、やはり統合して集約化を図り、そのスケールメリットを生かす必要があるであろう。他面、地域性のある事件の処理につきましては、それに相応した事件処理体制ができるような工夫をしてしかるべきでないであろうか。
 例えば、調停でございますと、その地域出身の調停委員の方に事件の指定をいたしまして、その地域に密着したような形で事件の処理をやっていただく。そういうふうな配慮をしていけば、集約によるデメリットというものはかなりの程度において減殺されるのではないか、かように考えているところでございます。
#195
○橋本敦君 局長は、前回の私の質問の中で、大阪弁護士会も昭和二十八年ごろから適正配置やったらいいじゃないかという意見を言っているよというふうにおっしゃったんですが、あれは私が弁護士になる前で、民主的な状況が弁護士会になかったと言えば冗談になりますが、古い話なんですよ。最近の昭和六十一年に大阪弁護士会はこの問題で議論しまして、大都市簡裁の集約問題については、利用者自体は大阪簡裁まで行かなきゃならぬのですから、利用の便は不便になることはこれはもう否めない事実なんですね。したがって、そういう現状を考えますと、司法の国民サービスの低下ということが起こることは事実なものですから、この点については慎重に検討してほしいという意見書を出しているんですね。
 そこで事件数を見ますと、局長、阿倍野の簡裁の場合は、五十六年から六十年の間の民事訴訟事件が平均で千件超えているわけですよ。かなりの事件やっていますね、千件超えている。千件超えているこんな裁判所を廃止するというのはちょっとこれは行き過ぎじゃないか、幾ら都会でもという気がしますし、それから生野にしても百二十九件ということですね。だから調停を加えますと、阿倍野の場合は調停が平均で年間六百七十九件もあります。
 おっしゃるように、その地元の調停委員をつけたらいいじゃないかとこういっても、簡裁に統合されますと、事件の配置その他で一々そこまで検討して、年間六百件から五百件からという調停事件で一々その調停委員の人を地元の人でということでうまくできるかどうか問題ですよ。そういうことをやることのためにそこに簡裁があったんですからね。だからそういう意味では、阿倍野は事件数からいっても残すべきだし、西淀は今度は淀川を越えて簡裁に行かなきゃならぬという地域性からいっても、西淀というのは古い町ということからいっても、生野は先ほどお話しした特徴からいってもそれぞれ機能してきたからこれはやっぱり残すべきだ、こういうように思うんです。
 それで、民事訴訟あるいは調停事件で当事者の管内比率を調べてみますと、西淀の場合は民事訴訟、原告で約六〇%管内の人、被告は八九・五、九〇%が管内の人、こういう状況ですね。それから阿倍野の場合はちょっと数字が下がりますが、三〇%という状況が、管内原告は三〇%超えておりますし、それから調停になりますと、これはもう圧倒的に相手方は管内、相手方が八二%、八八・九%、六五・八%というふうにその管内はこうなりますからやっぱり機能しているんですよね、その地域で。だから、私は、当然国民に奉仕する簡裁のあり方として大都市においても残すべきだ、これを全部大簡に統合するというのはこれはちょっと行き過ぎだというように思わざるを得ません。
 それからさらに、この裁判所は最高裁としても重視されて、近年改造されている。冷房も去年から入れてもらったばかりだということで利用者は喜んでいる。それを廃止してしまうというのは、国家経済の面から見ても、地域の問題から見ても、これは無理なことをするなということにならざるを得ないんですが、その点どうですか。
#196
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御指摘のように、事件数を見ましても阿倍野、生野、西淀、西淀は若干少のうございますけれども、阿倍野、生野が非常に機能している、このこと自体、私ども決して否定するわけではございません。大都市簡裁を統合する基本的な考え方といたしましては、機能していないから統合するというわけではございませんで、今後増大し複雑多様化していくであろう大阪市民のニーズにこたえるために大阪の簡易裁判所の姿はいかにあるべきか、こういう観点から考えているわけでございます。
 それで、確かに民事訴訟の件数は一千件超えております。しかし、その多くはたしかクレジット訴訟、立てかえ金訴訟であろうかと思いますが、これは集約し専門的な処理体制をとることによってむしろ効率的な事件処理が得られるわけでございますし、それから専門部の体制をとりまして不動産訴訟あるいは金銭訴訟、それぞれ分けてやる、そのことによりまして専門的事件処理体制による充実強化ということも図られるわけでございます。支払い命令・略式につきましてもかなりの数がございますが、それを統合しOA化を図ることによりまして迅速処理も図ることができるであろう、このような観点から統合を考えているわけでございます。
 ただいま御指摘のように、近年、冷房化をしたりいたしておりまして確かに国費を投じている面はございます。それは東京の場合にも台東簡裁というのは比較的最近建ったものでありまして、その点、国費の点からするといかがなものかという御意見もあることは十分承知いたしております。しかし、今後十年あるいは二十年先の裁判所の姿を考えます場合、やはりこの際統合してスケールメリットを生かせる体制をしいておくことがぜひ必要であると考えて、このような法案の御審議をお願いしているわけでございます。
#197
○橋本敦君 東京も大きな簡裁を霞が関につくる、大阪は大きな高等裁判所、地裁に併設して簡裁があるということで、簡裁のイメージが本当に近代的な大ビルの中の裁判所へ行くということで変わってきますから、庶民裁判所という感覚はだんだんなくなって、私が心配して指摘する簡裁の地裁の小型化という傾向が一層助長されるということになるということが、国民の少額、簡易な手続での裁判を求めるということとの矛盾が激化すると私は思うんですよ。
 そういうことで、都市の集約についても、法制審の司法制度部会で必ず一庁にせよということは決めていませんよね。実情に応じて検討せよ、こういうことで、一庁にせよということまではっきり言っているのではない、これは間違いありませんね。
#198
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) 法制審の答申におきましては、それぞれの都市の実情に応じてできる限り統合する、こういうことになっております。
#199
○橋本敦君 大阪でもこの三つはぜひ残してもらう必要があるという意見を申し上げておるんですが、決着つきませんが、どっちにしても今後簡裁の充実強化ということは、これはやらなきゃならぬ課題だと思うんです。そういう面から見て、百一庁、粗削りに独立簡裁を半分近く削ってしまうというのは私はちょっと行き過ぎたということで申し上げておるんで、一庁でも削ったらいかぬ、適正配置はだめだということじゃ決してないんですよ。ないんですが、今度の法案ではちょっとどころか大きく行き過ぎだということを言っておるんです。
 今後の課題として、人口集中地域には簡裁は増設もするし、それから人員の適正配置その他で充実もさせるし、それから職員を統廃合したからといって合理化で首を切るというようなことはやらないと、いろいろ御答弁ありました。大阪の実情について言いますと、大阪の堺、泉北もう満杯状態、そして北の方の枚方簡裁もこれはもういっぱいで、地域的にいえば交野とか四条畷、大東、ここは一つの管轄地域として新しく簡裁をつくってほしいという住民の希望もあります。将来はこういった大阪だけではありません、全国のそういった各地の希望や実情に応じて、簡裁の充実については十分地域の意見も聞き、あるいは職員の皆さんの意見も聞き、簡裁充実をやっていくというこの姿勢を貫いてほしいと思うんですが、いかがですか。
#200
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) 今回の簡裁の適正配置の趣旨は、まさに簡裁を全体として充実強化するためには何を考えるべきかという点から考えたわけでございまして、今回の法案を可決成立していただきました暁には、これをてこにいたしまして簡裁の運営面でもより充実強化できますように私ども努めてまいりたいと思いますし、将来の事情変更等がございましたら、新たに簡易裁判所の設置を必要とするような状況が出てまいりました地域につきましては、またその当時の状況をいろいろ勘案いたしまして、また法改正をお願いするというときが来るであろうというふうに考えております。
#201
○橋本敦君 時間が参りましたので、終わります。
#202
○関嘉彦君 議題になっております下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部改正案につきましては、民社党は賛成でございますけれども、その賛成の理由は、いわゆる臨調の行革路線、行政改革の考え方、その意味で賛成しているのではございません。普通の行政官庁につきましては私はもっともっと行政改革をやるべきだというふうに考えておりますけれども、司法関係につきましては、たびたびこの席で繰り返し申し上げておりますように、諸外国なんかに比較しましても、法曹関係の人数は非常に少ない。そのために紛争なんか起こりましても法の裁きを受けるというんではなしに、町の有力者であるとかあるいは時として暴力団なんかの介入によって解決するというふうなことが行われている。これはまことに遺憾なことでございますので、何よりも裁判を迅速化しなくちゃならない、あるいは効率化していかなくてはいけない。そういう点から、今度の統廃合によってそれができるだろうと信じて賛成しているわけでございます。
 確かに、廃止される地域の人たちは不便になっていく、その点については同情を申し上げますけれども、他方において、大都市なんかにおいては非常に事務が渋滞して十分に法の保護が受けられないというふうな現状もございますので、全体として考えてみますと、今度の統廃合によって裁判の効率化が行われるものと信じて賛成する次第でございます。ただ、そのために統廃合によって裁判官の数が減るとか、あるいは職員の数が減るというふうなことはないかと思って、そういうことを質問する予定でおりましたけれども、先ほど来一井委員からその点については詳しい質問がございましたので、繰り返すことはやめます。
 ただ、一つだけお伺いしたいんですけれども、東京の場合特別区内のやつを一カ所に集中して、その集積の利益を上げるということを言っておられたわけですけれども、恐らく霞が関あたりに建てることを考えておられるだろうと思いますが、大体どの程度の大きさの建物を考えておられるのか。さらに、何人ぐらいの裁判官あるいは職員の数を考えておられるのか。大体の予測で結構ですけれども、それをお伺いしたいと思います。
#203
○最高裁判所長官代理者(町田顯君) 東京の中央簡易裁判所でございますけれども、御指摘のとおり霞が関地区に置きたいと考えております。もっと具体的に申しますと、現在検察庁が建っております位置に、元の刑事裁判所あるいは高等裁判所が建っておりました部分に移転する予定になっております。検察庁の空地に統合いたしました簡易裁判所を建てたいと思っております。
 規模等はまだ相当先のことでもございますし、明確なことは申し上げにくいわけでございますけれども、現在の統合いたします都内簡裁全部合わせた面積がほぼ一万四千平米ぐらいございます。もっとも、中には墨田の裁判所のように交通裁判所として残すところもございますので、一万四千全部がなくなるわけではございませんけれども、そういったものを目安にいたしまして、それに劣らないものは当然確保したい、簡裁の建物の敷地として、建物の面積として確保したいと考えております。
#204
○最高萩判所長官代理者(山口繁君) 裁判官の人員と職員の数についてでございますが、現在東京二十三区内の簡裁、十二簡裁に所属しております裁判官が八十人前後ございます。職員の数は二百数十人でございます。新しい東京簡易裁判所ができました場合には、先ほど来御説明申し上げておりますように、OA化による事務処理であるとか、専門的事務処理体制をとるとか、いろいろアイデア、工夫を凝らしてまいりたいと思っておりますので、そのときの状況でそれぞれ人員配置を考えなければならないと思いますが、大体似たような規模の人的構成を持つ裁判所というふうにお考えいただいて妨げないのではないかというふうに考えております。
#205
○関嘉彦君 これは質問というよりもむしろ希望なんですけれども、先ほど来多くの委員の方から質問をされました上うに、簡易裁判所は民衆の裁判所としてやはり一般の国民に近寄りやすい裁判所でなくちゃいけない。そのためには、例えば建物のデザインでありますとか、そういったハードの面のみならず、口頭の受け付けをやるとか、あるいは法律相談のコーナーを設けるとか、そういう面につきましても一層の必要なサービスが円滑にいくように、そのことを十分配慮していただきたい。また、そのハード面及びソフト面につきましても、弁護士会あるいは司法書士会あたりの意見も十分聞かれて、本当の民衆の裁判所の名前にふさわしいようなものにしていただきたいということを希望しております。
 そのことについて御所見があればお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
#206
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御指摘のとおり、簡易裁判所がよりよく国民の方々に利用されるようになりますためには、ハード面、ソフト面両面におきまして御利用いただけるような形に持っていく必要がございます。そのため私どもといたしましても、弁護士会、司法書士会その他の関係機関と十分意見交換をするということをお約束いたしておりまして、今後建物ができ上がりますまで新しい簡易裁判所のありようについて十分意見を伺いながら、それが具体化できますように努めてまいりたいというふうに考えております。
    ―――――――――――――
#207
○委員長(三木忠雄君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、斎藤十朗君が委員を辞任され、その補欠として永野茂門君が選任されました。
    ―――――――――――――
#208
○委員長(三木忠雄君) 検察及び裁判の運営等に関する調査につきましての質疑はこの程度とし、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#209
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#210
○一井淳治君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。
 簡易裁判所は、昭和二十二年に戦後の新しい司法制度の一環として創設され、国民に身近で親しみやすい、国民のだれもが気軽に利用できる民衆裁判所あるいは駆け込み裁判所として機能し得るように全国津々浦々に設置することが目標とされ、当時、全国に戦前の区裁判所の数のほぼ倍に相当する五百五十七庁が新設されたのであります。
 この簡易裁判所の理念があくまで尊重され、充実への努力が重ねられなければならないことは、民主主義、法治国家の原則からしても当然のことであります。
 我が国には、伝統的に、国民は裁判所に縁遠い存在という気持ちを持っているということもありまして、裁判所の方から各地域の住民の中に積極的に出ていくという努力が必要とされているのでありまして、この民衆裁判所あるいは駆け込み裁判所としての簡易裁判所の充実が強く望まれるのであります。
 今回の統廃合案により統廃合されると、裁判所への提訴をあきらめざるを得なくなることが多々起こることが予想されるわけでありまして、また、泣き寝入りを助長することになるということも否定できない現実でありますし、その他、住民への不利益が極めて大きいのであります。今回の改正案は、簡易裁判所の理念に真っ向から反するものであり、これが本法律案に反対する最も重要な理由であります。
 そして第二に、今回の統廃合案は、廃止対象地域の住民の不利益に比して統合するメリットが明確にうかがえない。すなわち、司法機能の充実が確保されないという点を指摘しておきたいと思うのであります。最高裁判所からの重ねての御説明にもかかわらず、統廃合による住民の不利益は明確でありますけれども、簡易裁判所が現実にどのように充実強化されるかという、この肝心な点が明らかにならないのであります。
 一例として、受け入れ庁の大部分は都市部にあって、既に法廷が不足しているというのが現状でありますけれども、今回の統廃合により、さらに法廷の不足という状態が増進され、廃止される庁の住民はもとより受け入れ庁側の住民訴訟の遅延という被害を受ける可能性があり、また、口頭受理が行われがたいという都市部簡易裁判所の住民に対する不親切が一般化してしまうことが容易に想像されるのでありますが、受け入れ庁側での以上を改善するための多額の予算の投入とか、庁舎、施設などの大幅な改善の見通しは不確実なのであります。
 また、大都市地域簡易裁判所の一庁集中化についても、訴訟の効率化という裁判所側からの立場からのみ考えられたものでありまして、この一庁集中化によりまして、欠席裁判の率をますます増加するなど、住民離れの中での能率化は進行すると思われますが、巨額の資金を投入してまで、大都市地域の住民の反対を押し切って、住民への不親切を押しつけながら地域に密着した簡易裁判所をなくしていく必要はなく、大都市地域の簡易裁判所への一庁集中化に対しても反対せざるを得ないのであります。
 反対理由の第三といたしまして、廃止基準とその運用は、現実には切り捨てのための基準となっていることでございます。
 基準の事件数につきましても、民事訴訟、刑事訴訟及び調停の昭和五十五年から昭和五十九年までの年間平均事件数のみが基本指標とされており、それ以外の督促、略式などはすべて除外されております。そしてまた、簡易裁判所と同時に廃止されることになる区検及び家庭裁判所出張所を利用している地元住民の実態が考慮されていないのであります。こうして、弱小簡易裁判所をいかにして多く切り捨てるかという手法で統廃合が進められたと言わざるを得ないのであります。
 第四番目に、今回の簡易裁判所の廃止に当たっては、地方自治体の意見を聞くなど、地元の諸事情を十分に考慮することが前提となっておりますが、二百以上の市町村からの要望書あるいは意見書が提出され、存続を希望する市町村は多数に上っており、地元の理解、同意を得たとはみなしがたく、法制審議会の答申に沿った統廃合案であるとは言いがたいのではないか、疑問とするところでございます。
 以上、反対理由を述べてまいりましたが、ここで簡易裁判所の現状を概観してみますと、簡易裁判所の設立以来既に四十年を経ておりますが、簡易裁判所の現状は当初の理念とはほど遠い状態にあると言わざるを得ないのであります。未開庁が八庁、全部事務移転庁が二十一庁、裁判官非常駐庁が百五十庁、そして一般職員二人庁が四十五庁に及んでおり、庁舎の未整備、老朽化、設備・備品の改善等の問題も解決されておりません。
 また、当委員会の昭和四十五年、第六十三回国会における附帯決議にもかかわらず、簡易裁判所の訴訟手続に関する特則は活用されず、簡易な手続で迅速に処理するという簡易裁判所の特色が生かされていないのであります。窓口業務についても、利用する住民の立場に立った考慮がなされていないことも周知の事実であります。
 簡易裁判所の現状は、充実強化を怠ってきた結果にほかならないのであり、私は最高裁判所が簡易裁判所を切り捨てるという方向で努力するのではなく、民衆裁判所あるいは駆け込み裁判所としての簡易裁判所を充実強化するという方向で努力されることを要望いたしまして、本法律案に対する反対の討論を終わります。
#211
○橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、本法案に対する反対討論を行います。
 簡易裁判所は、言うまでもなく新憲法の発足とともに、戦後司法民主化措置の一環として司法の民主化と地域住民への奉仕を目的として設立されたものであります。この制度が司法の民主化に貢献するところ少なからざるものがあろう、と当時の司法大臣も高らかにその理想を強調しておったのであります。しかし、簡裁の発足当初から、この制度の拡充強化に裁判所が全力を傾けてきたかというと、必ずしもそうではないというのが残念ながら実情であります。
 最高裁は、法定されている簡裁のうち八庁を未開設庁のまま今日まで放置してきました。さらに、地元住民の反対を押し切って二十一庁を事務移転、こうして事実上廃庁処分にしたほか、裁判官不在の簡裁が百五十庁、職員が一人あるいは二人といわれるこういった二人庁、これも百数十庁あり、簡裁の充実強化に努力してきたとは到底言えない実情であります。
 今回、簡裁の適正配置と称して、実に百三十九庁を統廃合しようとしておりますが、これは現在の簡裁総数五百七十五庁を事実上半減させようというものであって、まさに一九六四年の臨司意見書に沿うとともに、臨調行革路線の裁判所版と言わざるを得ないのであります。すなわち、第二次臨調の最終答申に、「司法府においても自発的に改革の努力をされることを強く要望する。」、とこういう文言がありましたが、当時これに対して最高裁長官は、行革に対する裁判所の協力は簡易裁判所の統廃合である、こう明言しております。
 このような大量の簡裁の廃止は、簡裁設立当初の理念、地域住民への司法サービス、この問題を根本から切り崩し、国民の裁判を受ける権利をも奪いかねないという状況に至るものであります。
 今回、最高裁は一定の基準を定めて、これに適合するものは廃庁にするという方針を出しました。すなわち、一年間の受理事件数、統合庁への交通時間などがそれであります。
 私は幾つかの簡裁を現地調査しましたが、これの機械的適用は問題があります。例えば、岡山県の備前簡裁の例でありますが、これは質問で指摘しましたが、最高裁の示した資料によれば、年間受理件数は七十六件ということになっています。しかし、これには家裁出張所が併設されているにもかかわらず、この家裁事件は含まれていません。その他督促事件、略式命令は千件以上ありますが、これも顧慮されていません。簡裁独特の窓口相談、これについて正確な統計もないという状況でありますが、これも数十件はあるはずであります。合計いたしますと、年間相当数の事件を処理しているのでありまして、事件数七十六件といえば閑古鳥が鳴いておるというような状況に聞こえますけれども、決してそうではないのであります。
 また、一時間という隣接簡裁までの交通に要する時間の問題でありますが、これも機械的な適用は問題があります。先ほど指摘しました熊本県の矢部簡裁の例でも、曲がりくねった険阻な山道を越えて隣の簡裁にまで行くのに、時には一日がかりになるだろうという人もあるぐらいであります。このように具体的な交通事情を無視して、机上の計算で画一的に処理するということには地域の実情に合わない問題が出てくるのであります。
 さらに、このような簡裁の廃止に地元住民が強く反対しているにもかかわらず、これを強行しようとする姿勢に問題があります。
 矢部町議会は六回も反対の決議をしました。そしてまた、全司法労働組合が全国から請願署名、衆参国会に六十万人を超える請願を提出をしておりますが、全司法労働組合の呼びかけにこたえて、これだけたくさんの人が請願署名に応ずるということは、それぞれの地域の実情に応じて住民の反対がいかに強いかを示しております。
 最後に、大都市簡裁の一庁化の問題であります。
 人口の集中、住居の高層化、人間関係の複雑化など、一層これから都市機能と住民の生活構造は複雑になっていくでしょう。こういう中で事件の増加が予想されるときに、例えば、人口八百万の東京でさえこれをたった一庁にしてしまうというのは、時代の要求にさからい、余りにも行き過ぎではないでしょうか。簡裁は各地域の住民の身近なところに存在する、ここに簡裁制度の根幹があります。大都市においてもこれは変わりません。
 大阪における阿倍野、生野、西淀川簡裁は、住民の生活基盤に密着した機能を現に果たしていることを指摘しました。もしこれら三庁が廃止され、大阪簡裁に統合されるなら、今よりもっと裁判所が住民にとって遠いところになることは間違いありません。大都市の簡易裁判所を地裁併設一庁にしてしまうという構想は、簡裁制度の趣旨に反し、簡易裁判所の小型地裁化を大きく進める、こういう問題として私は賛成できないのであります。
 以上見てきたように、今回の改正案は簡裁設立当初の民衆の駆け込み裁判所という根本的理念から大きく遠ざかり、本来あるべき民衆裁判所を小型地裁化するとともに、憲法が定めている国民の裁判を受ける権利の強化を願う立場からは到底賛成できないものであることを指摘して、反対討論を終わります。
 以上です。
#212
○委員長(三木忠雄君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#213
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#214
○委員長(三木忠雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、守住君から発言を求められておりますので、これを許します。守住君。
#215
○守住有信君 私は、ただいま可決されました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派及び会派に属しない議員西川潔君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び最高裁判所は、次の事項について格段の努力をすべきである。
 一、簡易裁判所の機能を充実、強化するため、その人的、物的施設の一層の整備を図ること。
 二、統廃合された簡易裁判所の存する地域について、住民の利便を十分に考慮し、出張による事件処理を行う等適切な措置を講ずること。
 三、廃止された簡易裁判所及び区検察庁等所属の職員については、その給与等の勤務条件に不利益が生ずることのないよう十分配慮すること。
 四、簡易裁判所の統廃合された地域においても、今後、人口の急増、事件の増加等著しい条件の変化が生じた場合は、簡易裁判所の新設を考慮すること。
 五、今後、裁判所法第三十八条による簡易裁判所の事務の全部又は一部の移転を行うに当たっては、同条の趣旨に則り慎重に行うよう配意すること。
  右決議する。
 以上でございます。
#216
○委員長(三木忠雄君) ただいま守住君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#217
○委員長(三木忠雄君) 全会一致と認めます。よって、守住君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、遠藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。遠藤法務大臣。
#218
○国務大臣(遠藤要君) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対しては、皆さん方の御熱心な御討議をいただき、御可決をちょうだいいたしましたことを心から御礼申し上げます。
 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、今後とも努力を重ねてまいる所存であり、最高裁判所にもその趣旨を伝え、遺憾なきを期してまいる所存でございます。
#219
○委員長(三木忠雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#220
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#221
○委員長(三木忠雄君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
#222
○国務大臣(遠藤要君) 民法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、養子制度の充実等を図るため、従来の養子制度のほかに、子の利益のため特に必要がある場合に、家庭裁判所が、審判により、養父母との間に実の親子と同様な強固で安定した親子関係を成立させる特別養子制度を新設するとともに、従来の養子制度についても配偶者のある者が縁組をする要件を緩和し、あわせて、親族関係の変更に伴う氏の変更に関する規定を整備する等の目的から、民法、家事審判法及び戸籍法の一部を改正しようとするものであります。
 改正の要点を申し上げますと、まず、民法中、特別養子につきましては、第一に、この特別養子縁組は、家庭裁判所が審判によって成立させることができるものとし、その審判は養親となるべき者の請求に基づいてするものとしております。そして、家庭裁判所は、審判に先立ち、養親となる者が養子となるべき者を監護養育する状況を観察して、これを決すべきものとしております。
 第二に、特別養子縁組の実質的要件としましては、実親による監護が著しく困難または不適当である等の特別の事情のある子について、その利益のため特に必要があるときに限るものとし、原則として、養子となる者が六歳未満であること、養親となるべき者が二十五歳以上の夫婦であること、及び実親の同意があることを要するものとしておりますが、これらの要件については、いずれも実際の必要に応じ、特定の場合に若干の例外を認めております。
 第三に、縁組の成立によって、養子は養親の嫡出子の地位を取得するとともに、養子と実方の親族との親族関係は、婚姻障害を除き、終了するものとしております。
 第四に、離縁は原則としてこれを許さないものとしておりますが、養親に養子の利益を著しく害する事由があり、実親が相当の監護をすることができるときは、家庭裁判所は、実親等の請求に基づき、審判により離縁をさせることができるものとし、離縁により養子と実親との親族関係が従前に復するものとしております。
 次に、従来の養子制度等につきましては、第一に、現行法においては、夫婦は必ず共同で縁組をしなければならないものとされておりますが、これを改め、養子が未成年者である場合を除き、夫婦の一方でも、配偶者の同意を得て、単独で縁組をすることができるものとしております。
 第二に、現行法においては、十五歳未満の子について、離婚等の際親権者でない父母の一方が子の監護者とされているときでも、親権者は、監護者の意思にかかわりなく、その子の縁組の承諾をし得るものとされておりますが、これを改め、そのような場合には子の監護者の同意を得なければならないものとしております。
 第三に、子がその氏を父母の氏に変更するに当たって家庭裁判所の許可を要しない場合を認めるとともに、縁組後七年を経過した後に離縁をしたときは、養子は、戸籍の届け出によって離縁後も養親の氏を称することができることとするなど、親族関係の変更等に伴う氏の変更について、規定を整備することとしております。
 次に、家事審判法につきましては、前述の特別養子縁組及びその離縁に関する処分を、同法第九条第一項甲類の審判事項として、新たに規定することとしております。
 最後に、戸籍法につきましては、第一に、民法の改正により特別養子制度が新設されることに伴い、特別養子縁組の届け出及び届け出のあった場合の戸籍の取り扱いに関し所要の規定を設けるものとしております。
 第二に、民法の改正により氏の変更についての規定が整備されることに伴い、その届け出及び届け出のあった場合の新戸籍の編製等に関する規定について所要の整備をするものとしております。
 第三に、その他の民法の改正に伴い、届け出に関する規定について所要の整備をするものとしております。
 以上が、民法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#223
○委員長(三木忠雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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