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1987/09/03 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第4号
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1987/09/03 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第4号

#1
第109回国会 法務委員会 第4号
昭和六十二年九月三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月一日
    辞任         補欠選任
     近藤 忠孝君     宮本 顕治君
 九月二日
    辞任         補欠選任
     永野 茂門君     斎藤 十朗君
     一井 淳治君     千葉 景子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         三木 忠雄君
    理 事
                鈴木 省吾君
                守住 有信君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                林  ゆう君
                千葉 景子君
                安永 英雄君
                関  嘉彦君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
    国務大臣
        法 務 大 臣 遠藤  要君
    政府委員
        法務大臣官房長 根來 泰周君
        法務省民事局長 千種 秀夫君
        法務省刑事局長 岡村 泰孝君
        法務省矯正局長 敷田  稔君
    最高裁判所長官代理者
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  早川 義郎君
    事務局側
        常任委員会専門
        員       片岡 定彦君
    説明員
        厚生省児童家庭
        局育成課長   田代  實君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民法等の一部を改正する法律案(第百八回国会
 内閣提出、第百九回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る九月一日、近藤忠孝君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。
 また、昨九月二日、永野茂門君及び一井淳治君が委員を辞任され、その補欠として斎藤十郎君及び千葉景子君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(三木忠雄君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○千葉景子君 本日は、民法等の一部を改正する法律案についてでございますが、その前に若干、死刑確定者の接見交通について二、三質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、刑事局の方にお尋ねしたいんですが、現在死刑確定者と申しますのは何人ぐらい存在していますでしょうか。
#5
○政府委員(敷田稔君) 死刑確定者のことでございますので、矯正局の方からお答えいたしたいと思います。
 現在、二十八名の死刑確定者が拘置されております。
#6
○千葉景子君 死刑確定者につきまして、今二十八名というお話だったんですが、その接見交通について近時さまざまな問題が生じているかと思います。
 それにつきましてお尋ねしたいんですが、接見交通につきまして昭和三十八年に通達が出されておりますけれども、その点は間違いございませんでしょうか。
#7
○政府委員(敷田稔君) 間違いございません。
#8
○千葉景子君 この三十八年の通達は法務省の矯正局長名で出されました「死刑確定者の接見及び信書の発受について」という通達でございますが、この通達によって死刑確定者の接見交通というのは、何か特別に取り扱いが変わったというところはございますか。
#9
○政府委員(敷田稔君) 明治四十一年から存在しております監獄法の第九条の解釈につきまして昭和三十八年に出した通達でございますが、その通達は、それまでの監獄法第九条の解釈を明らかにしたということでございましたので、その前後においてその解釈自体に関する変更はございません。
#10
○千葉景子君 そうなりますと、この監獄問題につきまして、基本書といいますか、ポケット註釈全書の「改訂 監獄法」というものがございます。これによりますと、死刑確定者の位置づけにつきましては、
 死刑確定者を拘置監に拘禁し、また、「刑事被告人」に準ずるものとしているのは、死刑確定者は、その法律的地位において一種の受刑者ではあるが、行刑上矯正の対象となる者としての受刑者ではなく、単に刑の執行を待っている者であるという意味からであろう。刑死を待つ者に対する立法者の抑止しがたい人情にもとづく「法の涙」による。それが死刑確定者に在監者中いわば最も高い法律的地位を認め、比較的自由な処遇を与えている趣旨であるとおもわれる。こういうことが基本書とも言われるべきものに記載をされておりますが、法務省の死刑確定者に対する立場といいますのは、ほぼこういう考え方を基本にしていると考えてよろしいでしょうか。
#11
○政府委員(敷田稔君) 法務省の考え方は、市販の文書にとらわれず、法律の解釈をその責任を持つ行政官庁としていたしているわけでございますが、この第九条の解釈によるものと思います。
 まず、法律の性格上一番近いものは刑事被告人である。したがって、監獄法の第九条も「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被告人二適用ス可キ規定ハ」とありまして、「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者二之ヲ準用シ」、こう書いてございますので、その点に関します限りは先生御指摘のこのコンメンタールの記載のとおりであろうかと思います。
 ただしかし、それははっきり「刑事被告人二適用ス可キ規定」を「準用ス」、こう書いてあるわけでございまして、したがいまして監獄法の別の部分に刑事被告人にはこれをする、これをするというように刑事被告人を主体として書かれてある条文があります場合にはそれを準用する、こういう趣旨でございます。
 しかるに、今御指摘のような面会あるいは信書に関します部分につきましては、現在の監獄法では刑事被告人に対する特段の規定がございませんので、したがって、準用すべき規定もまだない、そうなります場合には監獄法本来の解釈に従ってこれを実施していく、こういうことになると思います。
#12
○千葉景子君 この通達の出された後なんですが、昭和四十三年四月二十三日の衆議院の法務委員会におきまして、当時、刑事局総務課長でいらっしゃった伊藤課長が次のように考え方をお答えになっていらっしゃるわけです。
 死刑囚につきましては、死刑の執行がされますまで、監獄法によりまして、刑事被告人と同じ程度の扱いをすることになっております。したがいまして、面会でございますとか、あるいは信書の発受とか、そういった点につきまして、いわゆる勾留中の被告人と同じ程度の扱いを受けておるように承知しております。
こういうお答えですが、基本的にこのお答えと現在特に変わっているところはございませんね。
#13
○政府委員(敷田稔君) 現在の取り扱いは、先ほど通達に関しまして御説明申し上げたとおりでございます。
#14
○千葉景子君 ちょっと質問とお答えがずれるんですが、そうしますと、この伊藤総務課長のお答えと今法務省のとられている立場というのは同じだと考えてよろしいですね。
#15
○政府委員(敷田稔君) 若干微妙な点がございますが、私どもの「いわゆる勾留中の被告人と同じ程度の扱い」ということでございますが、その「同じ程度」という意味がどのような意味であるかということでございますけれども、いわゆる刑が確定しているかどうかという点につきまして、あるいは無罪の推定を受けるか受けないかという点につきましては、現在の刑事被告人とは大幅に違っておりますし、すべての点において刑事被告人と同様にすべきものであるかどうかという点につきましては、なお検討すべきものがあろうかと思います。
 いずれにいたしましても、今先生のお読み上げになった部分につきましては、当時の刑事局でございますが、この死刑確定者の処遇の責任を持つところは矯正局でございますので、所管外の事項についてその認識を述べたということであろうかと存じます。
#16
○千葉景子君 どうもちょっとお答えがはっきりしませんで、よくわからないんですが、微妙な点に違いがあって、「同じ程度の扱い」といってもその「同じ程度」というのはどのくらいか、微妙なことがあるということなんでございますけれども、それは全く同じと私も申し上げるつもりはございませんけれども、基本的な考え方として刑事被告人に準ずるといいますか、刑事被告人と同じような、ある程度緩やかな取り扱いをなさっているということでよろしいんでしょうか。その微妙なところというのがよく私にはわかりませんが。
#17
○政府委員(敷田稔君) もう少しはっきり申し上げますと、御承知のように、死刑確定者と申しますのは死刑を執行するために拘置している者でございます。この死刑の執行と申しますのは、恐らく日本国の公務員に課せられております最も苦しい仕事ではないかと思います。他の人命を奪うという死刑の執行を行う者といたしましては、刑事政策の本義にのっとりまして、可能な限り安心立命の境地に達する状態においてこれを執行いたしたい、あるいは執行すべきであるということを考えておりますので、したがいまして、いわゆる心情の安定といいますことが死刑囚、死刑確定者の処遇につきましては最も基本的な点であろうと考えます。
 しかるに、刑事被告人はそのような事情がございませんので、そういう意味におきまして、これを同一であるかと言われますと、それは同一ではないと、このようにお答え申し上げたわけでございます。
#18
○千葉景子君 お答えがちょっと不十分なところがあります。
 それではさらに、昭和五十三年十月二十日、やはりこれも衆議院の法務委員会でございますが、法務省の石原一彦矯正局長でございますけれども、やはり死刑確定者について答弁をなさっていらっしゃいます。それによりますと、「死刑確定者について別段の面があればそれによる、それ以外については刑事被告人の規定を準用する」と、「そういう観点から刑事被告人の規定を準用する場合が多い、」、こういうお答えをしていらっしゃいます。そして、監獄法の「七十五条という点以外には確たる格別の定めはございません。」、したがって、「面会、通信等の外部交通に関する刑事被告人の規定はどうなっているかという点を見ますと、監獄法の四十五条一項及び四十六条一項でございますが、」これについては云々、こういうふうに続いているわけでございます。
 そうなりますと、このお答えから推測されることは、監獄法四十五条一項、四十六条一項について、これは刑事被告人にも適用されているので、死刑確定者についてもこれを準用するというお答えというふうに私は受け取れるんですが、そのとおりでよろしいでしょうか。
#19
○政府委員(敷田稔君) 前段の、別段の定めがあるものが七十五条であるということはそのとおりだと存じます。ただ、後段の四十五条、四十六条につきましてでございますが、仮にこれが刑事被告人にも適用のある規定でありますれば、それが死刑確定者にも準用されるということは間違いございません。ただ、私が申し上げたいのは、四十五条及び四十六条は刑事被告人に適用される規定ではないので、したがって死刑確定者にも四十五条、四十六条は適用されない、こういう考え方でございます。
#20
○千葉景子君 そうすると、この昭和五十三年の石原矯正局長の御答弁と現在は法務省の考え方がお変わりになっているというふうに考えてよろしいでしょうか。
#21
○政府委員(敷田稔君) 先生のおっしゃっているのは、五十三年十月二十日の衆議院法務委員会のことでございましょうか――これによりますと、石原当時政府委員は、「監獄法の四十五条一項及び四十六条一項でございますが、監獄の長の絶対的な全般的な裁量になっているのでございます。」というようなことでございまして、刑事被告人に関して特段の規定がこれには入っておりませんので、したがって、特段の規定がない限りは監獄法の四十五条及び四十六条という一般の規定の適用に従うことになるということでございます。
#22
○千葉景子君 御説明がちょっと違うんですけれども、石原局長は、刑事被告人の規定はどうなっているかというと、そこで四十五条一項、四十六条一項を引かれてそして説明されていらっしゃる。それが裁量の逸脱がないように通達ではっきりしたんだという説明をされていらっしゃるわけですけれども、同じことを今もおっしゃっているわけですか。この説明と同じと考えてよろしいですか。
#23
○政府委員(敷田稔君) 当時の石原局長の答弁と同じでございます。
#24
○千葉景子君 はい、わかりました。それでは、そういう観点で今後の死刑因の接見交通についてもぜひ取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 ところで、先ほどちらっとお話が出ましたけれども、この通達の中で接見及び信書の発受につきまして要件が一応定められているようでございます。その要件によりますと、一つは、「本人の身柄の確保を阻害し又は社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合」、二つ、「本人の心情の安定を害するおそれのある場合」、三つ、「その他施設の管理運営上支障を生ずる場合」、この三つのいずれかに該当するようなときは許可を与えないことが相当であるというふうにされているわけですが、現在、現場におきましては接見や信書に関して許可が与えられない。その理由には、二番目の本人の心情の安定を害するおそれがあるからだと説明をされている場合が多いようでございますけれども、この「本人の心情の安定を害する」というのは一体どういう根拠で、だれがどのように判断なさっているのか、お聞きしたいと思います。
#25
○政府委員(敷田稔君) 「心情の安定を害する」と申しますのは、刑の執行に向けての心情を安定させたいというその望み、その希望、それに反する場合であるということでございます。それは施設長が客観的、主観的状況を判断いたしまして、心情の安定を害するかどうかを最終的に決定するということでございます。
#26
○千葉景子君 これにつきましては、多分内部的に一定の基準とか何か、それを判断する場合の準則のようなものがおありかと思いますけれども、いかがでしょうか。
#27
○政府委員(敷田稔君) 内部的な基準が先ほど来御指摘の三十八年の通達でございまして、これ以上のものは現地の施設長の判断ということになろうかと存じます。
#28
○千葉景子君 心情の安定ということになりますと、個人差、非常に主観的なものであるということになると思いますが、その心情の安定ということが一番よくわかるのはやはり本人であるというのが常識ではないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
#29
○政府委員(敷田稔君) 本人である場合もあるかと存じますが、本人でない場合もまたあろうかと思いまして、それは具体的事情によるべきものと思っております。
#30
○千葉景子君 心情といいますと、個人の内心の問題でございます。そうなりますと、これは憲法で言う良心の自由にもかかわるような問題でございますけれども、それを心情の安定という非常に漠然とした基準で他の者が決定をしていく。これについては非常に個人差もあり、基準としては危険なものではないかと思いますが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
#31
○政府委員(敷田稔君) ただいまの、個人差のあるという御指摘でございますが、個人差があるからこそ個々具体的なケースを日々これを観察いたして、その拘置をいたしております当該施設の施設長の判断にゆだねることが適切である、このように理解いたしております。
#32
○千葉景子君 この要件ですけれども、本人の心情の安定ということが理由で接見が認められないという事例が多いようでございますけれども、これには、それだけではなくて、多分、その他先ほど申し上げた一、三の要件なども加味されて判断をなさっているんじゃないかというふうに思うんです。ですから、必ずしも本人が訴えている、あるいは親族が面会を求めているというだけで面会を許せと私も言うつもりはありませんけれども、やはりこの「本人の心情の安定」という要件につきましては、少なくとも本人の意思あるいは本人の意向というものが基本になるべきではないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
#33
○政府委員(敷田稔君) 本人の意思を尋ねる場合もあることは間違いございません。
#34
○千葉景子君 それはむしろ逆ではないですか。やはり心情、本人の内心の問題であれば本人が第一であり、そして、それに対して、さまざまなほかの条件もあるでしょう。それを加味して判断をすると、これが基本原則ではないでしょうか。いかがですか。
#35
○政府委員(敷田稔君) 場合によりましては、それを尋ねること自体が著しく「心情の安定を害する」という事案もまたあり得るわけでございまして、それはあくまで具体的な判断に任せたい、このように考えております。
#36
○千葉景子君 具体的な判断をなさるということは、もうこれは否定できないところでございますけれども、少なくともこのほかの「身柄の確保」でありますとか、「施設の管理」、その問題はある程度客観的に御判断なさるところかと思いますけれども、この「本人の心情」というところにおきましては、本人の意向を尊重して判断することを基本としてこれから考えていくということはできませんでしょうか。
#37
○政府委員(敷田稔君) 本人の心情の安定の程度を判定する上において、必要である限りはそのように施設長はいたしておると思うんです。
#38
○千葉景子君 やはりこれは個人の非常に重要な権利ではないかというふうに思います、内心の問題ですから。そういう意味では、ぜひ本人がどういう心情にあるか、気持ちにあるかということを基本の判断材料として、今後この接見交通問題に取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 最近非常に接見交通、これが制約される方向に具体的にあるんじゃないかと考えざるを得ないんですね。それにすべてこの「心情の安定」ということが理由として付されるわけですから、そういう意味では、これがほかの理由による接見の拒否あるいは制限、それの安易な理由に使われないように、ぜひここは厳密に判断をしていただきたいというふうに思います。その点はいかがでしょうか。
#39
○政府委員(敷田稔君) 「心情の安定」の判断につきましては、いよいよ慎重にいたしていかなければならないと思いますが、接見交通がだんだん制限されてくるようになっているという点につきましては、必ずしもそうではございません。新しい刑事施設法をごらんいただきますと、接見交通に関しましては、さらにその権利性が高まった形で規定されております。
#40
○千葉景子君 今、別に新しい刑事施設法の問題をやっているわけではございませんで、現行上非常に制約が強まっているという話を私はしているわけです。
 これは幾つか例がございますけれども、過去には、例えば有名な免田栄さんですね、この方は再審が認められまして釈放になったわけですけれども、免田さんなどのときには、これは一例ですが、獄中で飼っていたインコが逃げたりしたものですから、福岡の放送局にはがきを出したら放送になった。そして、そのインコを見つけた少年がわざわざ届けてくれまして、その少年と面会も許されたというようなことが獄中記の中にも記載されているわけです。そして、その他にも、獄中で再審請求の書類の書き方を他の獄中者から教わる、そういう形で獄中、獄外がなり自由に交通が確保されていたというような事例があるんですけれども、最近はこういうことはもうまず考えられない。親族ですらなかなか面会が許されないという状況なんです。このあたりについては実際に変化があると思われませんか。
#41
○政府委員(敷田稔君) 特段の変化があるものとは考えておりません。
#42
○千葉景子君 最近、面会、文通なども、以前は緩やかだったけれども、新しい面会者との面会が禁止されたとか、新しい文通者との文通はもう禁止されたとか、そういう例がもうあちらこちらに出てきているわけです。例えば、島田事件の赤堀さん、この方も昭和五十年春からは新しい面会者との面会は禁止されておりますし、六十年夏からは新しい文通者とは文通が禁止されているというふうにだんだん幅が狭くなってきている、こういう実情がございますので、この辺の実態を調査され、そしてこの接見交通につきましての取り組みですね、取り扱い、見直していくということをぜひ考えていただきたいと思うんですけれども、こういう事情を見まして、このあたりは重要な問題として法務大臣にもぜひお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#43
○国務大臣(遠藤要君) ただいま千葉先生のいろいろ御質疑を拝聴していてと言うと第三者みたいなことを申し上げて恐縮ですが、死刑確定者に対する処遇の問題については、ただいま矯正局長からるる御説明を申し上げておりますけれども、矯正局自体としては適正に行われていると、やっておりますということであろうと思いますが、先生の御意見、今の御発言というものも大きくやはり参考として、これから一層確定者に対する処遇、特に接見交通、そういうような点について検討してみたい、こう思っております。
#44
○千葉景子君 これはもう最低限人間性の問題でありますし、人権の問題でございますので、取り組み方をぜひよろしくお願いをして、死刑確定者の接見交通問題につきましては一応質問を終わらせていただきたいというふうに思います。
 そして次に、民法等の一部を改正する法律案についての質問に入らせていただきます。
 今回の民法等の一部を改正する法律案でございますけれども、これは普通ちょっと受け取ったところは、中心としては特別養子の制度、これが中心になっているようでございますけれども、その他養子制度についても見直しがなされているという観点もございますので、まず養子制度全体について若干お尋ねをしてみたいというふうに思います。
 まず、養子制度といいますのは、基本的に一体どういう位置づけ、どういう趣旨、目的、こういうものであるのか、これを基本としてまずお尋ねしたいんです。
#45
○政府委員(千種秀夫君) 親族法の中で、養子制度というものは長い歴史がございまして、起源はローマ、ギリシャというところに淵源があるわけでございます。昔の養子制度というのは家族あるいは家という時代もございましたでしょうが、そういうものの承継者を得るということから発生したようでございます。外国語でアドプションという言葉が使われておりますが、その意味も日本の養子という意味ではなくて承継するというような意味が含まれているわけでございまして、そういうものが今世紀に至るまでずうっと長い歴史をもって発展してきたようでございます。日本の民法ももとは中国大陸から来ているわけでございますが、中国の養子という制度もやはり後継者を得るというような趣旨が入っていたようでございます。そういう意味におきましては、養子というのは子供のためよりも親のためと申しますか、家のためと申しますか、歴史の中ではそういう位置づけがされてきたように思われます。
 これが最近の、特に近代国家になって、それも百年もたっておるわけでございますけれども、その時期になりまして、子供というものを独立した人格の対象者として考えるような考え方、個人主義の考え方、こういう時代になってまいりますと、家のためとか親のためとかいう養子ではなくて、子供のための養子、こういうような考え方がだんだんと浸透してまいりました。現在私どもの民法の中にある養子制度あるいは諸外国でやっておる養子制度というものは、どちらかというと親のためというか、家のためから子供のための養子、こういうふうに変わってきているようでございまして、ヨーロッパ諸国の養子制度の本流というのは子のため、子の利益、子の福祉のための養子制度、こういう形になってきております。
 そこで、我が民法の現行法はどうかと言われますと、これはまだその中間的な要素がかなりございまして、両方の面があると言えると思います。また、ここで提案しております特別養子というのは、そういう意味では子の福祉のためを標榜しておるわけでございまして一歩前進しておる、こういう位置づけになるかと思います。
#46
○千葉景子君 よくわかりました。現在、近代といいますか、我が国の養子制度も基本的には子供の幸せのためということが基本だというふうに私も考えております。
 ところが、かなり実態といいますか、これはなかなかわかりにくいところですけれども、数字ですね、例えば、養子の形態がどういうものであるとか、そういういろいろな統計などを見ますと、必ずしもその実態は子供の幸せのためという理念が浸透している、生かされているとは思われない面があるんですが、そのあたりはいかがでしょうか。
#47
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおりでございまして、私どもは養子の統計は届け出数によってとりあえず見ておるわけでございますが、戸籍の届け出で養子とわかるものの中の年齢別で、成人の養子は三分の二を占めております。年間今九万件ぐらいの養子の届け出があるわけでございます。その三分の二は成人の養子でございます。そういうことを考えますと、やはり子供のための養子というイメージは余りわかないわけでございます。
 しかし、一面におきまして、これは戦後ずっと今日までの長い経過の中で見ておりますと、親を失った子供でございますとか、いろいろな関係で生まれてきた子供で、子供を監護養育する家庭なり親がいないという恵まれない子がだんだんとふえてきております。これは昔からあったことかもしれないのでございますけれども、静的な社会で、例えば農村部などで考えられますと、その身内の者が引き取ってしかるべく養育をしておったというようなことで表に出なかったものもかなりあるだろうと思います。
 それが特に表に出てきましたというのは、都会生活の中で親類縁者等割合に薄い縁の中で暮らしておりますと、子供自身を社会が見てやらなければならない、そういう事態がかなり進行してまいりまして、みんなの意識の中にそういう問題がだんだんとあらわれてきた。そういう意味から、実態がどのくらい変わったということは必ずしも正確に把握はできないのでございますが、想像の域を出ないのでございますが、少なくとも皆様の意識の中にはそういうことがだんだんと顕著になってきた、そういう変化はあろうかと思います。
#48
○千葉景子君 実態といたしましては推測の域はなかなか出ないわけですけれども、まだまだ養子制度の理念が十分に国民の中に浸透していないという懸念もあるかと思うんですね。
 こういう中で、今回特別養子制度というものがつくられるということになりますが、これにつきましては、この制度の理念、それから目的、これがこれまでのいわゆる一般的な養子制度とどのように違うのか、あるいは同じなのか、それを一歩進めたものであるのか、その辺の基本的な問題を若干お答えいただきたいと思います。
#49
○政府委員(千種秀夫君) 先ほどから先生の御指摘にございますように、子供のための養子、子の福利のための養子、こういうものは少なくとも、ヨーロッパのように国が、国土が戦場と化して戦争孤児が非常に多くなった、こういう社会においては非常に顕著にあらわれてきておりまして、そういう外国の諸制度の発展あるいは議論というものが私ども日本の国にもかなり強い影響を及ぼしてきております。少なくとも専門家の間にはそういう意識がかなり強まっております。
 私どもがこういう問題を初めて問題といたしましたのが昭和の三十年代でございまして、御存じのように、法制審議会で当初そういう問題を提案したのが三十一、二年のことでございます。仮決定及び留保事項という中に載せられておるのが昭和三十四年のことでございますから、そのころからこの特別養子というものは一つの形をもって提案されてきたわけでございます。
 それが、長々と今日まで実らなかったのは、仰せのとおりに、国民の意識がそこまで高まっていなかったという証拠かもしれないのでございますが、しかし、それが三十年代、四十年代、さらに五十年代と、大きく分けますとその三段階に分けでいろいろな議論を通じてここまで実ってきた、その過程においてそれぞれの分野において議論がなされ、それが大方の意見として結晶してきた、そういう経過からいたしますと、子供のための養子ということは国民全体の中にもかなり理解され、また受け入れられてきたのではないか、そういう認識を持っております。
#50
○千葉景子君 私なども、この特別養子の制度が出るまで余り頭の中に思い浮かばなかったこともありますし、普通、国民の中でどれほど養子の本来的な意義が定着してきたのかというのは若干疑問があるんですけれども、今回、こういう時期になりまして、その間の議論の経過はございましょうけれども、法案を提出されるということになった何か特別な経緯とか理由とかはございますんでしょうか。
#51
○政府委員(千種秀夫君) 特にその提案の必要性というか、理由は何かということになろうかと思いますが、その説明を申し上げる前に、何かこの需要といいますか、どういう必要があってこういう制度が生まれたか、こういう点を申し上げた方が御理解が得やすいのではないかと思います。
 先ほど申し上げましたように、ヨーロッパのように国土が戦場になり、戦争孤児がたくさんできる、家庭を必要としている子供が多いという国ではそういうことがかなり顕著に目に見えてわかってまいりますが、日本の場合、一部沖縄のようなところは除きまして、国土が戦場と化したということがそれほどなかった、空襲などもございましたけれども、農村地帯においてはある程度そういうことがございません。そういうことから余りその問題が真剣に取り上げられなかった。あるいはテーマとして取り上げられても議論百出でなかなか意見の一致を見なかった、そういう事実がございます。
 ところが、だんだんと都会の生活というものが大きな部分を占めてまいります中にいろいろな監護、養育を必要とする子供がふえてまいりまして、具体的には児童福祉施設に入っておる子供でございますとか、それからこれは四十年代の終わりでございますが菊田医師の事件があって、妊娠中絶をするよりは生まれた方がいいということで、子供の人権、子供の生命という観点から、中絶をしないかわりにその生まれた子供はよそに実子としてくれてやる、こういうような問題が出てまいりまして、これは社会問題と同時に一つの法律問題として議論をされました。
 そういう中でよく考えてみますと、昔から家庭を必要としている子供というものは数少ないがあったということがだんだんとわかってまいりました。そこで、五十年代の後半五十七年からこの議論が再度取り上げられたわけでございますが、その時点では、養子制度全体ということでは少し数が少ないけれども、確実にそういう子供は現におる。また、その人たちは自分の親にかわる養親というものを必要としておる、そういう声が非常に高まってまいりました。そういう意味で、これは先ほど来国民全体に受け入れられるかとか、あるいはそういうことが理解されておるかという点から言いますと、されていない面もありますが、ある一部においてそういう必要が出たということはある程度国民全体に理解されてきたと思うわけでございます。
 この法案は、そういう意味で、国民全体の養子としてこういう特別養子という形を必ずしも現在指向しているわけではないのでございまして、とりあえずその必要を感じている人たちのために、そういう子供の利益のために今までの養子制度は一応そのままにして、これと並んで特別養子制度をつくろう、こういう考え方で出てきたものでございます。そういう意味におきましては、この必要性はその限りでかなり顕著であるということが言えます。
#52
○千葉景子君 丁寧な御説明をいただきまして、そういう意味では確かに養子の問題というのは国民全体がこれを利用するというような問題ではございませんで、むしろ一部少数の方の何とか意向を、少しでも門戸を広げようというところがあるかと思います。そういう意味では非常に画期的な制度でもあろうかというふうに思うんですが、こういう制度をつくられた以上は、やはり養子制度がそもそも子供の幸せのためであるというような点ですね。そしてまた、こういう制度がつくられたということ、こういうことを国民にもよく浸透させるといいますか、理解をしてもらうという必要があるのではないかというふうに思います。
 そういう意味では、法務省ばかりではなくて、今後家庭裁判所とか児童相談所、こういうところとの協力体制、あるいは各機関の努力が必要かと思いますけれども、そのあたりについてはどんなように考えていらっしゃいますでしょうか。
#53
○政府委員(千種秀夫君) まことに御指摘のとおりでございまして、私どももあらゆる機会あらゆる機関を通してこの趣旨を国民全体に徹底したいと考えておりますが、具体的に申しますと、やはり関係機関と申しますと戸籍の届け出という事務と密接に関連しておりまして、これは各市町村が戸籍の事務を取り扱っております関係上、法改正が行われますと直ちに市町村に対してその取り扱い方を定めて伝達するとともに、その趣旨を理解していただくためのいろいろな方法をとります。それを通じて市町村関係の関係者には相当のPRができるだろうと思っております。
 それと同時に、これは家庭裁判所審判で行うものでございますから、家庭裁判所にとりましてはかなり直接の仕事でございまして、家庭裁判所あるいは裁判所、最高裁判所当局におかれてもいろいろなことを今検討しておられると思います。また、私どもも、今までこれは主として参事官室から法制審議会関係の方々を通じてやってきたことではございますが、法律専門家あるいは福祉施設の関係者、そういう方々にもかなり直接にこの趣旨を伝達したいと思っております。あわせて、これは今までもいろいろな機会にマスコミ、テレビあるいは新聞、雑誌、こういうものに取り上げていただいておりますが、今後もそういう努力を続けてまいりたいと思っております。
#54
○千葉景子君 ぜひ、取り組み方をお願いしたいと思います。
 今回のこの特別養子の制度で非常に重要な役割を担うだろうと思われますのが児童相談所ではないかというふうに思うんですね。そういう意味で若干児童相談所の関与についてお尋ねしたいと思っておりますが、現在児童相談所を介して一般の養子縁組をなさるというケースがかなり多いのではないかというふうに思いますけれども、そのあたりはいかがでしょうか。これは厚生省の方になりますでしょうか。
#55
○説明員(田代實君) 児童相談所が養子縁組のあっせんを行う場合に、養子となるべき者に対しまして少なくとも六カ月以上里親として養育することを指導しておるわけでございます。昭和六十一年度におきまして里親委託を経て養子縁組に至った児童の数というのは三百三人おります。また、六十一年度におきまして児童相談所が養子縁組のあっせんをした児童のうち里親委託を経なかった者の数というのは十三人に上っております。里親委託を経た者の数と合計いたしますと、三百十六人ということになっております。
#56
○千葉景子君 現在でも、こういう児童相談所を介して、そして里親制度などを経由して養子縁組をなさる方が多いと思いますけれども、これは今後、特別養子の制度ができましても、やはり児童相談所経由といいますか関与するケースが多いと推測をされますが、その辺はいかがでしょうか。
#57
○説明員(田代實君) 児童相談所は御案内のとおり保護者がいないなど要保護性のある児童につきまして相談に応じ、必要な指導を行うことを業務としておるわけでございますけれども、指導の結果といたしまして施設入所の措置とか、それから里親への委託とともに特別養子縁組のあっせんも行われる場合があろうかと考えております。この場合には適切な縁組がなされるように、また、児童の福祉が図られるように、普通養子縁組の場合と同様に、原則といたしましては一定期間里親制度にかかわらしめることとしておるわけでございますが、従来の経験が生きますので、運用面から見ましてもそれほどの困難はないのではないかというふうに考えております。また、業務量の点から見ましても、最近の未成年養子縁組数やそれから里親から養子縁組に至った児童の数などから見まして、特別養子縁組を希望する者の数というのは、今のところ不確定な要素はあるもののそれほど多くないのではないかというふうに考えております。したがいまして、過重な負担にはならないのではないかというふうに考えております。
 そういう意味から児童相談所の現行体制の中で特別養子縁組に対しても十分対応できると考えておりまして、なおこれは、特別養子縁組制度発足に当たりまして全国の児童相談所長の意見も伺った結果でございまして、いずれにいたしましても当面の実施状況を見守ってまいりたいと考えております。
#58
○千葉景子君 今回のこの法案におきましては、中間試案の段階では児童相談所のあっせんが前置されると。あっせん前置というのが考えられていたようなんですけれども、この法案によりましてはこれが削除され、とりわけ前置ということではなくなったわけですけれども、これは何か特に理由というものはございますでしょうか。
#59
○政府委員(千種秀夫君) 中間試案の段階で児童相談所のあっせんを建前と考えておりましたのは、御承知のとおり、子供が私的に変なルートであっせんされては困るという不安があったので、したがって、公的なしっかりしたところであっせんをしてもらいたいと。そういう気持ちからこういうことが考えられたわけでございますが、いろいろと中間試案に対する意見を伺っておりますと、そういうことを公的といいますか、いわゆる公益法人などでやっておられるところもあるそうでございまして、また、そこではこれからそういうことがだんだんとふえていくような傾向もあるやに思われまして、そうなりますと、ある特定のところだけに申し立て権を独占いたしますことはちょっと要件としてはきつ過ぎるんじゃないか、そういうことから、法文の要件としては外しまして、しかし、実態はその児童相談所あるいはそれに準ずるような公益法人、とにかく身元のしっかりしたところからやっていただきたい。
 というのは、外国なんかでもいわゆる幼児の市場ができる 要するに金をとってあっせんする そういうようなことが言われたこともございまして、そういう点ではかなり気をつけなきゃいけないことだと思いますが、児童相談所だけに独占するというのも、民間の信頼できる方々を排除することになってよくないのではないか、そういう理由から削除されたわけでございます。
#60
○千葉景子君 具体的にはどういうあっせん機関といいますか、いろいろなルートになるかと思いますけれども、児童相談所以外に公共的といいますか、公益的な何か具体的に考えられているようなケースはございますでしょうか。
#61
○説明員(田代實君) 養子縁組の相談があったとき、どのような対応をというお話かと思いますけれども、児童相談所におきましては、まず二つのケースが考えられるんではないかというふうに思っております。
 まず一つは、里親が現に養育している児童と養子縁組をする場合。それともう一つは、養子を希望する者が里親でない場合と二つ考えられるのでございますけれども、まず里親が現に養育している児童と養子縁組を希望する相談があった場合には、里親と里子の双方の事情を十分調査いたしまして、その縁組をまとめるように努めているところでございます。また、養子を希望する者が里親でない場合には、児童の福祉を損なうことのないように基本的には一般的に里親になってもらうようとりあえず指導しているわけでございますけれども、しかしその者が里親にならない場合には、里親の場合に準じまして、児童相談所が里子を希望する者の家庭調査及び当該児童の調査を行いまして、相互の適合性を判断した上で家庭裁判所に養子縁組の手続をとるように指導しているところでございます。
#62
○千葉景子君 今回は今回児童相談所のあっせんの前置というものが削除はされているんですけれども、実質上は児童相談所のいろいろな指導が考えられるということかと思うんですね。ただ、例えばお医者さんであるとか、先ほど菊田医師の問題も出ましたけれども、そういうような形であっせんがなされるとか、一般私人によってですね、そういうこともやはり一応頭に置かれて考えられていらっしゃるわけですか。
#63
○政府委員(千種秀夫君) 一応頭に置いているつもりでございます。
 例えば、最近は交通事故などで不意に両親が亡くなった、航空機事故もございますが、そういうこともあるわけでございまして、そのときすべてが特別養子とは言えないのですが、そういう場合でもあろうかと思います。そういう意味で、どういう事情があるかということがすべて想定されませんので、一応道だけはあけておく、こういうことでございます。
#64
○千葉景子君 これは、先ほどお答えがあったように、児童相談所に限らずほかの形で門戸も開くということなんですか。法律的にも問題点というのは何かあるんでしょうか。削除された理由としまして、あっせん前置がですね。
#65
○政府委員(千種秀夫君) これは、児童福祉法でそういう社会福祉事業をする公益法人というものがございまして、そういう法人が認可された上でそういう仕事をしておることも事実なんでございますが、児童相談所以外にそういう公益法人があるということも事実なんでございますが、私どもが手続的に見ます場合に、審判というのは一種もう裁判でございますけれども、だれでも裁判を受けられるという、裁判を受ける権利というような面からも考えてみた場合に、ある者だけがその権利を独占するような形にするのもよくないんではないか、そういう理論的な配慮もございます。
#66
○千葉景子君 現在の社会情勢と、それからその法的な裁判を受ける権利といいますか、そういうものを奪ってはいけないという、そういう法的な側面の両方から多分この前置というものが削除をされたんではないかというふうに思うんですけれども、この児童相談所が今後のこの特別養子におきましても大変重要な役割を果たしていくだろうというふうに思われますので、ぜひその点の十分な対処をお願いをしたいというふうに思っております。そして…
#67
○政府委員(千種秀夫君) ちょっとその点。
 その点十分御説明がしてなかったかと思いますが、これは申し立てのところでは規定に盛り込みませんでしたが、実際の運用といたしましては児童相談所にお願いしなきゃならない分野がかなりございまして、その実効の運用をどうするかということにつきましては、この法案提案前から協議を続けているところでございます。この法案ができました暁には、これは最高裁判所の事務総局家庭局でございますが、そこで審判規則などをつくりまして、その規則の中では児童相談所にいろいろ調査をお願いしたり、その施設にいた子供につきましては資料をいただいたり、相協力してその児童の福祉のために調査をする、こういうことになっております。そういう御了解も得ているつもりでございます。
#68
○千葉景子君 それでは、少し個々の要件に関しましてお尋ねしたいというふうに思います。
 まず、特別養子につきまして、養子の年齢でございます。今回の法案では六歳未満というのが原則となっているわけですけれども、特に六歳未満とされた理由、これをお答えいただきたい。
#69
○政府委員(千種秀夫君) ここに至るまでにはいろいろな意見もございまして、未成年全部に及ぼすべきであるという議論ももちろんございましたけれども、特別養子を考えます場合に、なぜそういう制度をつくるのか、またどういう形につくるのか、そういう要件、効果との兼ね合いでいろいろと議論がされて煮詰まってきた経過がございます。
 特別養子をなぜつくるかということの動機としましては、子供が養子になった場合に、実方と養方といいますか、その二つの、法律関係、身分関係が生ずるということが実際は非常に不安定になっておるという指摘、批判がございました。やはり子供としましては、特に小さいときは自分の親というものは一緒に住んでいる両親が自分の親である、そういう精神的な安定感というものを持っていませんと養育上非常によくないということが指摘されております。
 そういたしますと、いわゆる断絶養子といいますように、実方の方は親子関係を切るのがよい。しかし、切るということは、今までの血縁関係を重んずる身分法の建前からすると非常に抵抗がある。しかし、その抵抗を排してまで切るような事態にならないと特別養子は認められない。そういうことから要件を厳しくし、かつその実効あらしめようとしていきますと、なるたけ年齢は低い方がいい。子供が大きくなりますと、特に学校などへ行きますと社会生活というものが子供にも生まれてまいりますから、やはりいろいろなことで自分は養子であるとか、あるいはこれから親を離れて養子に行けというようなことで抵抗を感じるだろう。したがって、スムーズに自分の養親との間で親子関係を築くということは難しいのではないか。そういうようなことから未就学児童、ということは満六歳未満、こういうことが必要の基準になりまして、要件を絞るかわりに幼児に、幼児というのは学校へ行くまでの六歳未満の子にしよう、こういうことが大方の意見としてまとまったわけでございます。
#70
○千葉景子君 諸外国の法制などをちょっと調べてみますと、イギリス、西ドイツ、ソ連あたりで十八歳、あるいはフランスですと十五歳ぐらいではないかというふうに思うんですけれども、こういうものに比較いたしますと、今の御説明よくわかるんですが、いかにも門戸が狭いといいますか、という気がしないではないんですが、このあたりはいかがでしょうか。諸外国と日本との国民性とか諸条件、こういうものが大分違うというふうにやはりとらえられていらっしゃるんでしょうか。
#71
○政府委員(千種秀夫君) 結論としまして、御指摘のように、我が国の情勢が少し違うということになるわけでございますが、一つには、養子制度の発展の過程を見てまいりますと、ヨーロッパでも子供について特別養子を認める場合は幼少のときに限った制度もあったわけでございます。一つの例ですが、イタリアの場合なんかは一九八三年に養子については特別の法律ができまして、これは八歳から十八歳、要するに、未成年の最上限まで変えだというような経緯もございまして、個々の制度を見てまいりますと、昔は小さかったけど、だんだん養子の制度本流になってきて未成年一般に及ぼしたという傾向もあるわけでございます。初めからずっと未成年は特別養子という国も相当あるわけでございますけれども、諸外国の場合、未成年については特別養子が原則と、ほかにあったとしましてもそれは成年について特別養子でない普通の養子とか単純養子とかいろいろ言っておりますが、そういう意味で二本立てになっております。
 日本の場合は、未成年でも二本立てなんでございますね。成人、未成年を問わず今の現行養子制度というものがありまして、そのほかに特別養子をこの際こしらえるというわけでございますから、特別養子の未成年の中でも六歳未満のところは重複しているわけでございます。そういう意味でかなり絞っても普通の養子制度があるから当面これでいけるんじゃないか、また、そこまで急に変えていいんだろうか、そういうことからかなり絞ったということになります。
#72
○千葉景子君 そうなりますと、今後いろいろな情勢の変化とかこの実施状況とか見ながら、年齢なども少し幅を広げていくという可能性もやはり残されていると考えてよろしいわけでしょうか。
#73
○政府委員(千種秀夫君) 私どもも実はそういうふうに考えております。ただ、身分関係の法律というのはある程度期間を見て観察しませんと、私どもも、国民の意識の変化ということもわかりませんし、子供の成長にも伴って新しいいろいろな問題が出てくるという可能性もございますので、今後の推移を十分見守っていきたいと思っております。
#74
○千葉景子君 これについては、例外といいますか、引き続き養育していた場合ですね、それ以前から。その場合には八歳に達するまでは縁組みができるということで逆に今度は八歳まで延びているわけですけれども、普通ですと、引き続き養育をしていたわけですから、その間に養子縁組みをする時期もあると考えられますから、特に八歳までの例外を設けだということが実益があるのかどうかちょっとわからないんですが、そのあたりはいかがでしょうか。
#75
○政府委員(千種秀夫君) 何歳までがいいかということは非常にやはり難しい、最後は一つの決断なんでございますが、六歳までで切るということがかなり低年齢に抑えたということからもうちょっと上でもいいんじゃないかという御意見がございまして、その低年齢に抑えた趣旨が先ほどのようなことでございますと、そういうおそれがない者は少し延ばしてもいいんじゃないか、こういうことから、前から継続的に養っている場合には少し上でもいい、少しという以上はまあ二つぐらいかなと、こういうようなところから八歳というふうになったのでございます。
#76
○千葉景子君 今のお答えからいきますと、今後もかなり柔軟なまた改正等も図っていただけるんじゃないかというふうに思います。
 次に、いわゆる養父母要件といいますか、「父母による養子となる者の監護が著しく困難」あるいは「不適当である」あるいは「その他特別の事情」という要件なんですが、この「その他特別の事情」というのは例えばどういうものが考えられるんでしょうか。
#77
○政府委員(千種秀夫君) いろいろ考えられると思いますので私の考え及ばないところもあるかとは思いますけれども、議論の中で、一つ考えられるような例といたしまして、これは養子をさらに特別養子にするということが考えられるわけでございます。要するに、新しい制度ができたから新しい特別養子にしよう、そうしますと、養親のところに子供がいるわけですから、それは養父母要件は、要するに保護の要件は欠けていないんですね、親が養っている以上はちゃんと養っているわけなんでございますが。そういう場合、特別養子の方がいいということになりますと、この前段の要件にかからないものですから、そういう場合は「その他」の事項で読んでいくことになろうかと思います。
 それ以外にそういうことがあるかどうかというのは、これはちょっと具体的にケースが出ないとわからないんでございますが、ある場合もあろうかということでこういう一般条項がついているわけでございます。
#78
○千葉景子君 連れ子の養子などはこういう「特別の事情」などにはかからないんでしょうか。
#79
○政府委員(千種秀夫君) 審議の過程で、連れ子の問題がかなり議論になったことがあるんでございますが、私どもは連れ子がいけないということも言い切れないんでございますが、連れ子はこの要件に当たるかどうかということにつきましては、さらにその先の子供の利益になるかどうかということも含めまして慎重に考えなければいけないんじゃないかということから、文言上入らないかと言われますと、入る場合もあろうかと思いますけれども、余り多くを期待していないわけでございます。
#80
○千葉景子君 一応形式的には該当するということでしょうか。あり得るということになるんでしょうか。
#81
○政府委員(千種秀夫君) 連れ子の場合がここの「その他特別の事情」に該当するかと直接そう言われますと、そうは言い切れない、こういうことなんですが、連れ子の中にそういう場合があるか、ある場合もあるかと言われると、絶対ないとは言い切れないという程度なんでございます。
#82
○千葉景子君 ここでとどまっていてもあれなものですから、次に、今度は養親、親の方の要件についてお尋ねしたいと思います。
 今回の法案によりますと、基本的に夫婦の共同縁組でなくてはいけないということでございます。配偶者のない者などは養親となることはできないわけですけれども、むしろ、不幸なお子さんがいまして、配偶者のないひとり者であるけれどもぜひ養親となって育てたいというケースでもあればこれは非常に喜ばしいことではないかというふうに思うわけなんですね。そういう意味で、この夫婦共同縁組ということに限られた理由というのはどういうところにあるんでしょうか。
#83
○政府委員(千種秀夫君) これも議論が多いところでございますが、端的に結論を申し上げれば、子供の福祉のためにそれが一番いいのではないかということで手がたくやったわけでございますが、それは外国の特別養子でも必ずしも夫婦でなければならぬというものばかりではございません。
 それから、御指摘のように、そういう好ましい親子関係ということも考えられないわけではないんでございますが、ただいまもお話に出ましたように、年をとって子供が欲しいと言われましても、それは子供の側から考えるのが子供の福祉でございますから、親の方か子供が欲しいということはちょっと二の次にしないといけないんじゃないか。それから、日本の場合には普通の養子がずっと未成年についても並行してございますので、当面はそういう方で賄っていただいて、だんだんと考えていった方がいいんじゃないかということで、手がたくこういう結論になったわけでございます。
#84
○千葉景子君 非常に手がたくということと、縁組をする場合には普通以上にできるだけ幸せに条件がそろっている方がいいというようなことは、本当にこれは気持ちとしてはわかりますけれども、今一般の社会の中でも片親であるというケースもかなりあるわけです。しかも家庭というものが両親がそろっているにこしたことはないわけですけれども、そうではなくても十分に幸せである、そういう生き方もある、そういう時代にもなってきております。そういう意味では、ここは非常にかたくというんですが、少し柔軟にといいますか、前向きに考えていただきたいところなんですが、今後、そのあたり少し検討なさるというようなお気持ちはございますでしょうか。
#85
○政府委員(千種秀夫君) 私どもは、この制度に限りませず養子一般の問題、身分法一般につきましてもそうでございますが、社会の情勢といいますか、国民の意識といいますか、そういうものの変化に対応して柔軟に考えていきたいとは思っております。
 今、私どもがこの結論をとりましたのは、現段階において子供の利益ということを強調しますと、理想的な家庭というものを描いてそういうふうになったわけでございますが、これから長い間にそういう意識なり需要というものが変化していく場合にはそれに対応していろいろ検討していくべきことだと考えております。
#86
○千葉景子君 理想的な家庭像というものもだんだん変化していくものでございますし、最近は、きのうは離婚の判決なども出まして大分時代も変わってくるようでございますので、ぜひそのあたり考えていただきたいと思います。
 例えば、こういうケースなどがあり得るんじゃないかと思うんですね。夫婦の一方の嫡出子、それを単独でいわゆる養子縁組をする、配偶者の連れ子を養子にするというようなケースですね、こういうことも考えられる。そういうときですと、結局これは共同にはできませんといいますか、本当は単独で特別養子にしたいということもあり得るんじゃないかと思うんですね。こういうことはここから漏れてしまうということになるかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#87
○政府委員(千種秀夫君) 夫婦の片っ方の嫡出子を片っ方は特別養子ということはできるんでございます。それでよろしいでしょうか。
#88
○千葉景子君 それはどういう形でやり得るということになりますでしょうか。
#89
○政府委員(千種秀夫君) ちょっと私の説明が不十分であって申しわけないんでございますが、この提案しております特別養子の規定の八百十七条の三の「養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。」という次の二項に「夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子の養親となる場合は、この限りでない。」という、このただし書きで、原則は夫婦共同必要的なんですが、片っ方の子が嫡出子の場合、その一方の親がやる場合は一人でできるということになっております。
#90
○千葉景子君 では、この二項によって今私の出したような例は救済といいますか、されるということになりますか。
#91
○政府委員(千種秀夫君) さようでございます。
#92
○千葉景子君 次に、養親の年齢ですね、養親になれる年齢が二十五歳ということになっております。これにつきましても、やはり同じような疑問でございますけれども、普通、成人二十歳になれば一応完全な財産の管理能力というものも民法上認められている、社会的にも一定の自立した生活ができるという年齢でございます。この二十歳ぐらいで養親になれる年齢というふうにはできませんでしょうか。
#93
○政府委員(千種秀夫君) これもできないか言われればできるかもしれないんでございますが、最大一番上の子供が六歳まででございますから、一番極端な例を申しますと二十歳の親が六歳の子を特別養子にするということも出てくるわけでございます。国によっては十五歳以上とか、それ以上の年齢差ということを要件にしている国もあるわけですが、ある程度そういうことを考えますと余り近いのも好ましくない。したがって二十五歳なら六歳でも二十ぐらいは違うわけでございますし、もう一つは、今の私どもの社会の中で見ておりまして、二十で結婚する人や、もっと若くて結婚される方もおりますけれども、どちらかというと二十五歳ぐらい、これは一般の成人で言いますと、大学も出て就職もしてちょっと落ちついたかなという年でございます。そういう社会的にも精神的にも安定した成人であることがやはり子供の利益という観点から言えば好ましくはないかということで二十五歳という線が出てきたわけでございます。
 ただ、それで両方が二十五歳以上でなきゃいかぬというのもちょっと酷ではないかというので、それならば片一方が二十五歳以上ならば片一方は二十歳以上でいいじゃないかということになったわけでございますから、結果として半分は先生の御要望に応じていることになります。
#94
○千葉景子君 これも手がたくというような感じもしないわけではありませんで、ただ、養親となる側も自分がふらふらしている状態で養親となろうということも余り考えられない。それから、家庭裁判所の手続も経るということありますので、一応成人となっていることによって養親としての要件は満たす人ではないだろうか。それほど弊害はないんじゃないだろうかというふうに私などは考えるわけで、むしろこれは法律としてはなかなか難しいところでございますけれども、上限といいますか、そういうことの弊害の方がひょっとしたらあるのかなというような気もしないではないんですが、そのあたりはいかがでしょうか。
#95
○政府委員(千種秀夫君) 国によっては親の年齢の上限のようなものも決めているところもあるようでございますが、私ども日本の場合は特別養子のほかに普通の養子がございますものですから、そこまでは考えなくてもよろしいんではないか。とりあえず、どちらかと言えば最低限の方が大事ではないかということで下の方だけを規定した次第でございます。
#96
○千葉景子君 これにつきましては、家庭裁判所の手続の中で、余りにもふさわしくない状況というのはそこでチェックをされるだろうというふうに思いますので、その点でとめておきたいと思います。
 次に、特別養子縁組の手続でございますけれども、六カ月の試験養育ということが今回定められているわけですが、これはだれがどういう形でこの経過をいろいろ調査をするのか。この辺の考えていらっしゃる実態を教えていただきたいんですが。
#97
○政府委員(千種秀夫君) 例えば、典型的な例で里親なんという場合でございますと、これは既に養育が行われているわけでございますが、これから申し立てようとする場合にはとにかく養親が申し立てるわけでございますが、一体その子供はどこにおってどういう状態なんだということを尋ねますと、ここにいてこういうわけだと、それなら少し養ってみなさいということで、これは裁判所が命じるわけじゃなくて、事実関係を調査し、把握する前提としてそういうことを要件にしている。わけでございますが、実際にそういう養育関係というものが開始されますと、これは家庭裁判所におきましては家庭裁判所調査官がその経過を観察するわけでございます。
 その観察の仕方として親子関係、特に児童福祉の点からそれを判断する必要がある場合には児童相談所に対してその調査を委嘱する、お願いしていろいろ観察していただく、その報告を受けるということも考えておりますし、また、児童福祉関係の施設に収容されていた子供につきましては、それなりの資料をお持ちでございましょうから、それもこちらに貸していただく、見せていただく、こういうことを考えまして、具体的にその厚生省の関係の方々とも話をしてきたところでございます。
 この具体的な手続は、この法案ができました後に、家事審判規則などによってそういう基本が定められる予定になっているそうでございまして、そのさらに運用につきましては、それぞれの関係機関で通達その他でやっていただけるという見込みを持っております。
#98
○千葉景子君 基本的にはやはり家庭裁判所の調査官が基本になるということになるかと思うんですけれども、先ほどからのお話ですと、特別に特別養子の申し立てが急にどっと来るというようなことはないかと思うんですが、この辺の人的な手当てとか、そういうことについては問題はございませんでしょうか。
#99
○政府委員(千種秀夫君) これは、これからのPRということとも関連をいたしてくるわけでございまして、余り結構な制度ができたから皆さんおいでくださいというふうにやるわけにもいかないところがございますが、ある意味においては先生のような御心配も考えなければいけないかと思います。ですから、定着していくまでの間にいろいろな現象は起こってくるかと思いますが、私どもが今まで調査しております数字の中から考えてみますと、特別養子の要件に合致するような申し立ての数は年間にして五百ないし千ぐらいではなかろうかと推測をしております。家庭裁判所の方でもそういうことについては以前から関心をお持ちでいろいろ感触的な調査をしておられるように伺っておりますが、その程度でしたら裁判所全体に対して大きな負担になるということはないだろう、そういうふうに予測しております。
#100
○千葉景子君 基本的数から、推測されるような数からいきますとさほどの負担にならないかなというふうに思うんですが、これは期間六カ月というところで、その間にいろいろなやはり調査をしなければいけない。その親子関係がふさわしいかどうかを調べなければいけないとなると仕事としてはそう軽いものではないと思うんですね。そういう意味では負担がかなりかかってくるんじゃないかと思うんですけれども、例えば調査官なり、そのあたりはどうでしょうか。
#101
○政府委員(千種秀夫君) これは半分は、あるいはすべてかもしれませんが、裁判所のことでございまして、私が答えてよろしいかどうかはわからないんでございますが、仕事の内容からいたしまして一件といえども非常に重要な判断でございますから、その担当者にとりましては負担はあるかと思います。問題は、全体としましてその件数、その中から負担がどういうふうになるかということであろうかと思うんでございますが、そういう意味ではさして大きな負担にならないだろうという予測をしているわけでございます。
#102
○千葉景子君 これは、ある意味ではこの制度が少し運用されてみないとその数とか、それから仕事の負担ですとかわかりにくい点があるかと思いますが、このあたりもその状況を見て、ぜひ裁判所の方とも御検討を加えていただいて、人的にも非常に不足のないような手当てでやっていただきたいというふうに思います。
 それでは次に、ここが非常に私もわからない、そしてちょっと難しいところかと思うんですけれども、今回の特別養子につきましては父母の同意が要件とされているわけです。同意というものが結局は親族関係を断絶させますね。今度、実親との関係ではその要件にもなるわけで、これまで民法の中では余り見当たらないような非常に新しい問題ではないだろうかというふうに思うんですが、これは一体どういう性格を持つ意思表示といいますか、ものなんでしょうか。
#103
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおり、これは法理論的に、あるいは理論的な構造からいいますと新しい問題でございまして、理論的な問題はまた学者の方に考えていただかなければならない面もございますが、この養子制度というものは、古い養子制度はどちらかというと契約型と申しますか、当事者が約束をして身分関係をつくるということで、それが公益に関係がある、要するに人権に関係があるとか、国民の利益に関係があるということから家庭裁判所が関与する、そういう形になっておるわけでございますけれども、この特別養子というのは専ら子の福祉のために親の意思を一応度外視して、一応でございますが度外視して、いわゆる国家宣言型と申しますか、裁判所あるいは国によりましては行政機関が養子を成立させる、形成させるというような、そういう仕組みになっておるわけでございまして、ここに提案されております特別養子も家庭裁判所の審判によって成立させる、そういう意味では国家宣言型の養子でございます。
 そういう意味では、親の同意というものは、その当事者の契約というような意味での意思表示とは違いまして、結局は自分の身分関係に変更を生ずることについて、これは仕方がないから同意するという意味の、そういう養子の成立につきましては一種の条件になってきておるわけでございます。ですから、それは専ら同意をする実親の関係のある法律関係を放棄するといいますか、切られることに同意するという関係、そういう面だけで考えているわけでございまして、子供の福祉の上で反対だとか、そういうようなことは余り考えられていない、それは意見としては申しましょうけれども、そういうことではないわけでございます。したがいまして、この同意が得られないような場合には、結局同意がなくても審判ができるような仕組みになっているわけで、これは必ずしも絶対必要な要件ではないことになっております。
#104
○千葉景子君 この同意というのは、非常に大きな法的な効果といいますか、断絶ということをもたらしますので、非常に慎重な確認というものが必要なんじゃないかと思うんですね。
 現行の中でも、例えば、養子縁組をしたけれども、後から、いや養子に出すんじゃなかったとか、取り戻したいというようなこともあり得るんじゃないかと思うんです。現在の制度ですと、並列的に実親の方の関係も残っておりますからまだしも、今回の特別養子になりますとその関係が全く切られてしまう。後になって、いやそんなはずじゃなかったということになりましても非常に困るわけで、この辺の手続、どういう形でその同意をとられるか、その方法ですね、これはどういう形で考えられていらっしゃいますか。
#105
○政府委員(千種秀夫君) 特別養子の形成が審判で行われるわけでございますから、裁判所は結局その同意があるかということを確認しなければならなくなってまいります。
 そこで、その手続は、この法案が通りました場合には、家事審判規則で手続をつくりまして、どういう形の手続をとるかということが決まることになっているというふうに聞いております。恐らくは実親がいない場合もあるわけですけれども、実親がいる場合は直接その事情を聴取するということを保証するような手続になろうかと想像しております。
#106
○千葉景子君 要するに、裁判所に対して裁判官の直接の何というんでしょうね、同意を確認をするというようなことになるんでしょうか。それとも、書面なりで確認をとる、そのあたりは何か既に検討されているようなことはございますでしょうか。
#107
○政府委員(千種秀夫君) 今、裁判所当局で御検討の中身は、もちろん書面も出させるようでございますが、書面に基づいて本人を直接審尋して確かめる、こういうことを考えておられるようです。
#108
○千葉景子君 これはぜひ慎重な、後からトラブルがないような形が必要だろうというふうに思います。
 それから、この同意をする時期ですが、例えば、こういう問題は未婚の母であるとか、あるいは何か非常に問題のある出産の直後であるとか、こういうようなことも考えられるわけです。そうなりますと同意の時期とか状態ですね、そういうことについても一定の配慮をしなければいけないこともあるんじゃないかと思うんですが、同意の時期などについては何かこれまでに検討されたり、考えていらっしゃるようなことはございますか。
#109
○政府委員(千種秀夫君) これは典型的な場合は同意書が最初の申し立て書についてくるんでございましょうけれども、六カ月という試験期間がございますので、その間に十分熟慮期間といいますか、時間的な余裕はあるので、結局は審判の確定するまでに同意が得られれば手続上は有効であろう、こういうふうに考えております。
 したがって、それまでに撤回ということもあり得るわけでございますし、裁判所はその期間にやはりそれだけの慎重な配慮をして、同意の真意を確認するようにざれると期待しておるわけです。
#110
○千葉景子君 そうなりますと、試験養育の期間に限定されるのかどうか、同意の撤回ということも認められるということになりましょうか。それからいつまで撤回を許すか、こういう問題はどうでしょうか。
#111
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおりでございまして、私どもも撤回するような場合もあり得るというふうに考えておりますが、撤回がいつまでできるかといいますと、やはりこれは審判の効力との関係で、審判確定の時期までであると考えております。
#112
○千葉景子君 わかりました。これは何となく一番問題が起こりそうな箇所なものですから、ぜひ慎重にお願いしたいと思います。
 この同意なんですが、父母の同意を要しない特別な事情というようなことがあるわけですけれども、これは意思を表示できない、それから「父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由」ということになるわけですが、これはどういうケースが考えられますでしょうか。
#113
○政府委員(千種秀夫君) このただし書きでございますが、「意思を表示することができない場合」は、もちろんいないときはできませんので、それは当然といたしましても、いないといっても死んでいない場合と、どこかへ消えてしまっていない場合、これもできないわけでございます。それから、精神異常ということももちろん考えられます。心神喪失者、こういう者はできないということになります。それから「虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由」というのは、要するに親がわがままで、実際の客観的な状況からすると無理であって、同意をしない、それは考え方によると非常に危険な判断がされるのではないかと思われますが、例えば、典型的なことを申しますと、子供が施設に入れられるというような場合とかなり重複してまいりますけれども、暴力団が未成年の娘を強姦して生まれてしまった子供がいるとか、そういうときに親が同意しない、こう言われますと、これはちゃんと親としての義務を果たさないのにと、こういうことになってくるわけでございます。それ個々の具体的な例を考えてみますと、これは慎重な判断が必要でございますが、仮に「悪意の遺棄」といって、捨て子になりますと「悪意の遺棄」でございましょうけれども、また拾ってきて、どうしても自分がやると言った場合にはまた考えなければなりませんし、なかなか難しいんですが、その同意が客観的に見て権利の乱用であるというふうに見られる、そういうことであろうかと思います。
#114
○千葉景子君 不同意が権利の乱用ということでございましょうか。
#115
○政府委員(千種秀夫君) さようでございます。
#116
○千葉景子君 例えば、親が二人、実親という形でありますけれども、一人だけではどうしても不同意である、これはもう本当に客観的に見ても、勝手なことを言っておる、子供にとってはそれが大変利益を害するであろうというふうな、こういうケースはどう考えていいんでしょうか。
#117
○政府委員(千種秀夫君) この場合は一人ずつについてこのただし書きを考えていけばよろしいかと思います。すなわち、一人が同意し、一人が不同意のその不同意がただし書きに該当すれば、両方同意が調ったというふうに見るわけでございます。
#118
○千葉景子君 わかりました。
 今の同意の問題とかかわりまして、今回の特別養子というのは、実親と子供の関係が断絶をする。これは全く子供の方はこれに関与しないわけですね、意思を表示するということはありませんので。結局、子供の意思を全く入れずに実親との断絶を図るわけですけれども、身分関係というのは一応親族法の中でも血族を基本としております。それについては例外といいますか、非常に特別な扱いになるかと思うんですが、これについては非常にやはり問題が残されるんじゃないだろうかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
#119
○政府委員(千種秀夫君) すべて仰せのとおりでございまして、今後どういう問題が起こるかということもこれは十分監視しなければいけないんでございますが、しかし、そういうことを踏まえてこの制度ができたということを考えます場合に、なぜそうなったかということを申し上げますと、結局、身分関係というものは自然的な血縁関係を基礎としてできているわけでございますが、現在の社会制度としての身分関係というのは法律で定めだものでございますから、具体的に申しますと、血がつながっているけれども身分関係がないという現象は、現行法のもとでもいろいろあるわけでございます。認知をしない非嫡出子というのは親子関係はないわけでございますし、法律制度が社会の制度としてこれでいくべきだというところは血縁とそごしても制度の趣旨を貫く、こういう考えで、この特別養子の制度が考えられてきたわけでございます。そういう意味で、一応割り切って踏み切ったということにはなるわけでございます。
 ただ、そこへ踏み切るまでの間の批判と申しますか、反対と申しますか、それには根強くその血縁関係に基づいた立場からの議論がございました。今後もあるかと思います。そういう意味から、また、この制度ができたからといってその血縁関係を社会的にも全く抹殺して無視した方がいいという議論ではございませんで、血がつながっていれば子供が探索して、実の親に会いたいということも出てまいりましょうし、現に近親婚の制限というのは縁が切れてもあるわけでございますし、まだかなり要件は厳しいんですが、離縁ということも認められておるわけですから、そうしますと、もとへ戻るという可能性もやはりあるわけでございまして、切れたということが法律的、社会的に全く無意味になったかというと無意味になっているわけでもないわけでございます。そういう意味で一応割り切った、こういうことになろうと思います。
#120
○千葉景子君 確かに、法的にそう定めたからそうなんだと言ってしまえばそのとおりなんですけれども、結局、実親に対する相続の権利でありますとか、扶養の権利だとか、認知に関する件とかいろいろなものが全部消滅してしまう、それを全く回復するといいますか、関与できる余地がないということになるわけですね。
 例えば、成年後に特別養子であるということがわかりますね。そういうときに、全くこういう関係について口出しができぬということはいかがなものなんでしょうか。その辺やはり子供の権利といいますか、一人の人間の権利を奪うという意味では若干簡単過ぎるような気はするんですけれども、いかがでしょうか。
#121
○政府委員(千種秀夫君) もちろん、そういう御意見もございまして、考えようによってはそういうことも言えるわけでございますが、子供が大人になって、世話になった親を捨てて、世話にならない親の方へ帰るというのは場合によってはわがままということにもなりかねないわけでございまして、これは問題は、大人になろうとなるまいと、先ほど申しましたように、実の親がわかってはいけないということではございませんから、戸籍の上でもまたそれがたどれるようにはしてあるわけでございます。そういうことで、わかった血縁の親に対して孝養を尽くすということがあってもまたこれおかしくないことでございます。
 ただ、財産が欲しいからとか、あるいは財産を目当てにとかいうことになってまいりますと、これは特別養子をつくる制度の趣旨ということとも関連いたしまして、実方との関係を常に維持するということがこの特別養子の趣旨に反する。要するに、親は一人であるということを建前にして子供の監護、養育をしていこうというのが特別養子の趣旨でございますから、実方がいつでも復活して何か利害関係が生ずるということは、それだけ養親子関係の精神状態を不安定にするわけでございます。実方から逆に何か金銭的な要求が出てくる場合もございます。相続権だけではなくて、関係者からあちらは裕福に暮らしておるから何かしてくれという第三者のいろいろな要求が入ってくることも考えられるわけでございます。そういうことを切っていこうというのが特別養子の趣旨でございますから、できたものはなるたけ実親、要するに、嫡出子と同じ関係で考えていこう、そういうことになってまいりますと、実際の親子の間で、親が憎いからもう縁を切ろうと思っても切れないわけでございますし、隣がお金持ちだからその財産を欲しいと言ってもやっぱりもらえないわけですから、そこは割り切った以上は、余り過去のことを振り返らないようにした方がいいんじゃないかと、まあどっちかというとそういう考え方でこの特別養子制度ができているわけでございます。
#122
○千葉景子君 実の親子関係というのは、これは基本がもう血縁を基本にしてそこは切れないものですから、そこでいろいろな問題が起こっても、それと法定的な関係というのは同レベルには論じられないんではないかと思うんですね。実親の方の財産を目当てにとかそういうことを抜きにしまして、やはりこれは権利の問題として基本的な、もともとは持っていた権利、これを普通ですと、本人が放棄をするとか、意思を表示して関与できるということであればいいんですが、これは全くそういう機会もないということになりますので、どうもこのあたりが子の意思といいますか、小さいうちは養育という観点からできるだけ外野からのつまらない声が聞こえない方がいいということもあろうとは思うんですが、成年後などにはそういう問題もなくなってくるわけで、そこで、自分の関与しないうちに全くそういう権利が剥奪されていたということもあるわけですね。こういうことが若干、ちょっと私もどうももう一つ納得がいかないというところなわけです。
 これは、離縁も原則として認められませんので、例えば、養親との間で破綻生じたような場合とか、何か問題が起こらないとも限らないと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。
#123
○政府委員(千種秀夫君) そこの辺が難しいところでございまして、特別養子の要件に、要するに、成立のための要件に該当するということになりますと、実親の方がそういうふうに後でいいことばかり出てくるというのは余りないだろう、そういうことが予測されたら特別養子を許すべきではないだろう、こういうような要件との裏返しの問題が実は絡んでくるわけでございます。そういう意味から、大人になったときに実親の方に関係を戻した方がいいというような例は非常に少ないということをまず考えているわけでございます。
 しかし、そういうことを言いましても、やはり実親の関係を復縁する方がいいという場合があったとき困る。そういう議論がありまして、当初は余り考えていなかった離縁ということも入れたわけでございまして、その離縁の中に、実親の方が出てきて、そっちの方が監護、養育のためにいい。一方、養親子関係の方はいろいろと虐待などがあってよくない。こういう場合には離縁ができるというふうにしておりますから、そういうふうに該当する場合には離縁によって今御指摘のような問題は解決されると思います。しかし、そうでないとき、要するに、実親はあらわれない、財産だけ残ったというような場合に、その財産をよそへやっちゃうよりはこの子にやった方がいいというような議論は実はないわけではないんでございますけれども、そういうことは余りないだろうということと、あっても余りそれにこだわりますとよくないんじゃないかというようなことからこういう結論になっているわけでございます。
 ただ、私考えられますことは、先ほどから申し上げておりますように、身分関係の法律というのは実際にやってみてみんながどういうふうになっていくかということを見きわめませんと、余り予測だけでいろんなことができないということがございます。これからやる場合、六歳未満の子が養子になって成人してといいますと十四年かかりますから、十四年の間観察してそういう問題が出てきましたら、これはまあそのときに考えてもまだ間に合うんじゃないか、そういうふうにも考えております。
 それから、離縁でなく、実親子関係がそのままで切れてしまって養親子関係がうまくいかない場合どうするかということになってまいりますが、これは実子と同じように考ていくわけですから、実子関係で親が非常によくない場合はどうするかということになりますと、親権を剥奪して後見人をつけるとか、児童相談所にお願いしてそういう福祉関係の御指導を受けるとか、さらにはよそへ養子にやるとか、特別養子も含めまして、そういう形で実子の場合は処理されていくはずでございます。したがって、それと同じようにということになりますと、やはり同じように考えていけばよろしいんじゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。
#124
○千葉景子君 御説明いただくことは本当によくわかるわけで、ただ、基本的な権利だということで、私も、ちょっと簡単に法的に奪ってしまうことがいかがなものか、そういう疑問が残るわけです。これは、とりわけ成年に達した場合は。
 後にも伺うんですが、解消ですね。離縁の問題ともかかわるだろうというふうに思うんですね。結局、離縁自体も今回の法案では非常に限定をされている。そして、実親との関係も、片方ではもう一切断絶をさせられてしまう。両方から見ても、子供が自分の意思を関与させられる余地というのはほとんどないわけですね。この制度自体が子の利益を図っているものですから、極端な不利益が起こるというようなことは余りないとは思うんですけれども、こういう側面から不利益が起こらないことを私も望むわけで、ぜひこのあたりも、その十四年間ということになりますが、その間にもできるだけ考えて、常に目を凝らしていただきたいというふうに思います。
 時間も余りないものですから、あと残されたところは別といたしまして、一つだけ離縁について伺っておきたいというふうに思います。この離縁についてなんですけれども、これも今の議論とかかわりますが、成年に達した後ですね、もう少し柔軟な扱いがなされてもいいんじゃないだろうかなというふうに思うんですね。あくまでも実子と同じように考えるといいましてもやはり養子なわけでございまして、そういう意味では成年後の離縁というのはもう少し要件を広げてもよろしいんじゃないか。特に、実親の監護要件、これは成年になると無関係じゃないかというふうに思うんですね、独立の人間になりますし。ここはいかがでしょうか。
#125
○政府委員(千種秀夫君) 子供の福祉、子供の監護、養育ということが柱になっているものでございますから、成立の場合と裏腹に離縁についてもそういう要件が入ってきているわけでございますので、これは成人になりますと、普通の場合は監護、養育ということはございませんので、成人になった場合には、原則としてこういう要件は当てはまらないことになってまいります。
 ただ、まあ、例外といいますとちょっと例外過ぎるかもしれませんが、要するに、精神状態が不安定、そういう精神病者ということだって考えられるわけでございます。それから、精神状態でなくても、やはり監護、養育をするような身体障害ということも考えられるわけでございまして、全くないということではないのでこういうことになっておるわけでございます。実際にはほとんどないと思います。
#126
○千葉景子君 実際にはないといいますか、この監護要件というのは成年になった場合は、原則としては要らないということと解釈してよろしいんですか。
#127
○政府委員(千種秀夫君) ちょっと裏返してございまして、成年になってしまいますと、監護、養育する必要がないので離縁はできないという方へ解釈するわけでございます。
#128
○千葉景子君 そうすると、成年になりますと離縁ということはあり得ないということですね。――わかりました。
 この特別養子で離縁があり得るといいますか、認められるというのは未成年の間に限られるということですか。
#129
○政府委員(千種秀夫君) 普通の場合はそういうことになります。普通でない場合として、成年になっても監護を要するような精神異常とかあるいは身体障害とかという場合もあり得るだろうということでございまして、それは例外として考えられるということでございます。
#130
○千葉景子君 何度も済いません。確認をさせていただくんですが、そうすると成年になってもそういう特別な状況がありまして、これはいずれにも該当するわけですから、養親の方では面倒を見られないと、しかしながら実父母の方で相当の監護をすることができるということがあれば成年後でも離縁を認めるということですね。
#131
○政府委員(千種秀夫君) さようでございます。
#132
○千葉景子君 成年後の離縁というのは限られた場合になるというふうに八百十七条の十というのは解釈をするということでしょうか。
#133
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。
#134
○千葉景子君 ちょっと時間がないものですから、あと大分積み残しがありますので、後日に回します。
#135
○委員長(三木忠雄君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#136
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#137
○猪熊重二君 民法等の一部を改正する法律案の中で、従前の養子縁組に関する部分を含めての改正の問題と、新しく規定された特別養子の問題と二つあります。最初に、従前の民法の改正に関する問題について順次お伺いして、その後時間があったら新設された特別養子についてお伺いしたいと思います。いただいた資料の法律案新旧対照条文表、これに基づいて順番に質問さしていただきます。
 まず、七百九十一条の一項に、「戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、」という文言が新しく加入されましたが、これは何か特別に意味があるんでしょうか。
#138
○政府委員(千種秀夫君) これは、規定を整備する機会に形式の上でよそとの平仄を合わせたということが主な理由でございます。
 例えば、これは氏に関する規定でございますが、離婚した者が結婚当時の氏を続称することができるという規定を七百六十七条に置いておりますが、これもやはり「戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、」という規定が実は入っておりまして、こちらも入っておればちょうどよいわけなんでございますが、改正した時期が違いましたためにもとは入っていなかったわけでございます。そのほか七百三十九条の「婚姻の届出」もそうでございます。これは届け出ないと効力が生じないということもありまして、届け出ということは非常に重要な要件でございます。そういうこともあって、これはそういう文言が入っていたわけでございます。
 今まで、どちらかといいますと、家庭裁判所の許可を得るということが重要な要件だったのでございますが、それを外しますと、当事者が届け出ることによって初めてこれができるということもございまして、それは念のためにも書いた方がよろしいということでそういう規定が入ったわけでございます。特に改めて意味のあることではございません。
#139
○猪熊重二君 続いて、二項が新設されたわけですが、この二項はどういうことなのか、具体的な例をお教えいただきたいと思います。
#140
○政府委員(千種秀夫君) 子供が親と氏を異にする場合というのは、実はいろいろなことが考えられるわけでございます。この一項の場合で典型的に考えられておりますのは、親が離婚をして片一方の親が復氏をしたために母親と父親の氏が異なったというようなことが典型的に考えられるわけでございますが、子と親の氏が変わる場合はそれ以外にもいろいろございまして、二項で想定されているものは、親の夫婦がよその養子になったというようなことが一つ考えられます。
 家族そろって養子に行くならいいんですけれども、孫まで養子になるわけでもないものでございますから、養子になった両親は養親の氏に変わってしまう、孫は一人残される。そうしますと、親と子の氏が変わるというわけでございますが、そのような場合は、別に家庭裁判所の許可を得なくても親子同じ氏でいいんじゃないか。従来は旧の一項の規定で家庭裁判所の許可を必要としたわけでございますが、そういうふうに親が身分行為によって氏が変わり、しかも離婚したわけでもない、婚姻中である、こういう場合には許可なしに届け出だけで子供がついていけるようにしたらどうだ、そういう声が前からあったわけでございます。そういうのが今の典型でございますが、それに類するものとして、養子であった親が今度は離縁をしたとか、縁組が取り消されたとか、要するに両親の縁組にかかわる例が二、三あるわけでございます。
 もう一つは、これはまた七百九十一条の規定でございますが、親になってからもさらに親がその親と氏が異なるといって氏を変えることがございます、あるいは成年になって戻るということがございます。そういう場合も親が夫婦である限り子供はついていってもいいじゃないか、それは届け出だけでさせよう、そういう趣旨でこういうものができたわけでございます。
 そのほかに、例としては少ないんですが、親が結婚して準正によって前は母親だけの戸籍にいた者が残された、それも親がちゃんと結婚して変わったんだからいいじゃないか、そんな例が考えられるわけでございます。
#141
○猪熊重二君 なるほど、教わってみるといろんなことがあるんだということがわかりました。
 次に、七百九十五条についてお伺いしますが、従前の民法は、養親が夫婦の場合も養子が夫婦の場合も、夫婦は夫婦で一固まりになって縁組せにゃならぬ、こういう規定になっていたわけですね。今回の改正法によると、養親の方も養子の方も夫婦であった場合であっても、原則的に単独で養子縁組ができる、こういうふうに改正されたように思えるんですが、もしそうとすれば、従前の夫婦を単位とする養子を夫婦である場合にも格別に養子縁組ができるというふうにしたことの理由はどういうところにあるんでしょうか。
#142
○政府委員(千種秀夫君) 従前の夫婦共同の養子という制度も、大方の場合はおかしいことはないのでございますが、それを原則といたしますと、要するに、身分行為は一人でやるものだという理論的な考え方が基礎にあるわけでございますが、これが、夫婦が常に共同でなければならぬということになりますと、片方が意思表示ができないような場合も出てまいります。これは、精神能力がない、意思能力がないというような場合もございますし、いなくなってどこかに行ってしまったというような場合もあるでございましょうが、その場合にも夫婦が共同でなければならないということになってまいります、そこで、現行法は多少無理をいたしまして、そういう場合には片一方の意思表示だけで夫婦共同名義で養子ができるというような規定が置かれているわけでございます。
 それを考えてみましてもおわかりのように、共同養子を余り強制しますと、非常に無理なことになってしまう。それも、なぜそうしたかというと、家を単位とした古い戦前の養子制度というものが頭の中に残っておりまして、家制度はなくしましたけれども、そういうところにまだ残影が残っていたというようなことが言われておるわけでございます。ですから、理論的に身分行為は一人ずつやったらどうだというふうに直そうといたしますと、共同でやるにしても二人がそれぞれ共同でやればいいじゃないか、こういうふうな説明になってまいります。それから、子供のために養子というものを考えます場合には、両親がそろって両方とも養子になるということが理想ではあるのでございますが、常にそうか、こういうことを考えてみますと、現実の問題としてそうでもない。というのは、養子の者が結婚して夫婦になりますと、その夫婦の片一方はどこかの養子ですが、もう片一方は養子ではない。要するに、夫婦の片一方だけが養子になっている例というのは、結婚と養子の順序によってはさまざまあり得るわけでございます。
 また、夫婦共同で養子になりましても、片一方が死亡している場合には、片一方だけの養親との関係で養親子の関係が継続する。その人が再婚をしますと、再婚した人と当然養子にならないわけですから、養親の一方だけと養子縁組が継続するという事例も現実に現行法のもとであるわけでございます。
 そういうことから考えますと、理論的にも整合性のあるように、それぞれ独立して養子縁組ができるようにした方がいいんじゃないか。ただ、そのかわり、これは後ほど必要がありましたら御説明いたしますが、勝手にできないように同意を要件とする、こういうような仕組みにしたわけでございます。
#143
○猪熊重二君 確かに、夫婦が一固まりになってやらなきゃならぬということはないし、身分行為は各自単独にというふうなことも立法の真価ということで結構なことだと思うんです。今おっしゃられたように、ただ好き勝手に知らぬうちに養子をとってしまったというふうなことがないように配偶者の同意を得なきゃならぬということになっているわけですが、この「配偶者の同意」というのは具体的にはどんな方法でやるんでしょうか。
#144
○政府委員(千種秀夫君) これは戸籍に届け出をする場合に、その同意が確認されないと受理されないということになってまいります。
 そこで、戸籍に一体どういう手続で届け出るのかということになるのでございますが、一般に、同意を要する場合の手続といたしましては、戸籍法の三十八条に規定がございまして、「届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。」というのが原則でございまして、同意書というものを同意すべき者がこしらえまして、署名捺印して、この届け言とともに提出するということになっております。
 ただし、このただし書きがございまして、「同意又は承諾をした者に、届書にその旨を附記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。」というような規定もございまして、今までの届け書を利用します場合には「その他」の事項という欄がございまして、そこに同意する者がみずから、これに同意すると書いて署名捺印すれば受け付けるということで当面やっていこうと考えております。
#145
○猪熊重二君 今の戸籍の届け出の同意の場合なんかは、届け出用紙の一カ所に同意をする人間の署名押印欄があって、そこに署名押印する。ところが、その署名はだれがやったんだかわからないし、押印は判こ屋で買ってきた三文判というふうかことで、同意の問題だけではなくして、婚姻届そのものあるいは離婚届、離縁届そのものについても「署名押印」ということが書いてはあるけれども、どこのだれが書いたんだか届け出を受理する戸籍役人の方としては全然わからない。そのために、知らない間に人と結婚させられたり、知らない間に離婚させられたりというふうなこともあるんですが、「配偶者の同意」という問題だけじゃなくして、戸籍届の署名と押印に関して、何か改善策というふうなものは一般論として考えてはおられませんか。
#146
○政府委員(千種秀夫君) 何か考えていないかという御質問でございますと、具体的に今考えていることはないのでございますが、常にそういう心配だけはしておりまして、どうしたらいいかということは考えております。
 ただ、今新しく出てまいりましたこの「配偶者の同意」以前に、御指摘のようにそもそも婚姻も離婚もみんな届け出がございまして、この届け出には、やはりそういう形式をとった同意書のようなもので、あるいは署名捺印でやっておるわけでございまして、それを一々実態的に戸籍の窓口で審理をいたしますと戸籍の窓口が裁判所のようになってしまいまして無理でございますから、結局は、形式審査で一見疑わしくない以上は受け付けておる、あとは、それが無効になるか取り消しの訴えが出るか、こういうようなところでチェックをしていくということでやってきておるわけでございまして、そのために、御指摘のような不正な届け出が出るということを一〇〇%チェックすることは今できないのでございますが、私どもが具体的に考えていないと言う理由は、そういうことで現状は何とかやっている、これに対する名案が特にない、こういう程度で無事に過ぎているという認識が前提にあるからでございます。
#147
○猪熊重二君 その「配偶者の同意」についても「配偶者がその意思を表示することができない場合」はこの同意が要らない、こういうふうな規定になっておりますが、この「意思を表示することができない場合」というのは具体的にはどんなことをお考えでしょうか。
#148
○政府委員(千種秀夫君) 具体的には、その者が行方不明であるとか、あるいはおりましても意思能力がない精神異常でございますとか、そういう場合が考えられます。
#149
○猪熊重二君 そうすると、これは今、局長がおっしゃったように、戸籍受理官吏が形式的に審査をするといった場合に、行方不明であることとか、いわんや精神障害者であるとか、この辺のことは何によって証明することになりますか。
#150
○政府委員(千種秀夫君) これは届け書に届け人が「その他」という欄にその事由を書きまして、その届け人そのものが署名捺印するということで一応届け書の手続は担保をされているものとして取り扱うつもりでございます。
 これもまた、実質的な審理をいたしますということになると同様な困難が出てくるわけでございまして、これは勝手にやられては困るではないかということでございますが、果たしてそういう例がたくさん出てまいりますと、これは確かに手当てを考えなければいけませんのですが、私どもがとりあえずそういうことでいこうというのは、この内容からいたしまして、乱用をしてごまかした届けを出すということは余りなかろう、こういう前提でやっておるからでございます。
#151
○猪熊重二君 ただ、今までは夫婦養子ということで、例えば、夫婦の場合にだれかを養子にするといったときに自分たちが一緒にやらなければ養子にできなかった。ところが、御主人だけが隠し子を養子にしてしまうとか、そんなようなときに奥さんの同意が必要だと原則的には言っておるけれども、その同意書に、戸籍の紙に名前を書いて、いないとか、所在不明でわからないとか、あるいは精神障害者に勝手にされてしまっては非常に困るんじゃありませんか。他の一方の同意というのはそんなに軽く考えていいものなんでしょうかね。いかがですか。
#152
○政府委員(千種秀夫君) 夫婦共同養子の場合に、片方が意思表示ができない場合ということは実は現行法でもございまして、先ほど申し上げましたように、そのときは一方の届け人で両方名義の養子をしてしまうというようなことになっておるわけです。
 それを逆に、個人に分解して片方の同意を要するという形にしたのですが、意思表示ができない場合というのは現在でもそれから改正後でも状況は同じでございまして、今までもそれでやってきたということが一つ前提になっておるわけでございます。したがって、今まででもそういう御指摘のような不正をしようと思えばできたわけでございまして、今度はそういうことをいたしますと取り消しができるということで、後でそれをより担保しているということになっているわけでございます。
#153
○猪熊重二君 余り一つの問題ばかりあれしていてもしようがないのですが、今申し上げたのが七百九十六条の原則的な規定として、夫婦養親、夫婦養子は夫婦それぞれについて各別にできる、これが原則規定だろうと思うのです。それに対して七百九十五条の場合だと、養子が未成年の場合にはちょっと要件が違うということになっております。未成年者を養子にする場合には従前と同じというか、夫婦の場合には夫婦でやらなきゃならぬ、こういう規定になっておりますね。
 この限りでは従前と同じなんですが、これが残ったというか、あるいは未成年者を養子にする場合には夫婦一緒でなきゃならぬというふうになった理由はどういうところにありましょうか。
#154
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のように、未成年の場合は親が夫婦である場合はそろってしなさいということになりましたのは、これはまあ特別養子をつくっていく過程でも問題になったわけでございますが、未成年の場合は結局その制度自体からおわかりのように、子供のための監護、教育ということが必要である。したがって、今まで共同でやりなさいといっていたところの必要性というものが全部消えないだろう。それならば未成年の養子については夫婦共同養子を残したらどうかということで残ったわけでございます。
#155
○猪熊重二君 私も、それはそれで非常に結構な話だと思うんですが、ただ夫婦で未成年者を養子にするときには配偶者と一緒にしなきゃならない、ただし、片方の配偶者の嫡出である子を養子とする場合は構わない、こういう規定になっておりますね。
 私が伺いたいのは、改正前においては夫婦は夫婦の一方が他の一方の子を養子にするときは単独でできる、こういう規定になっております。要するに、旧法というか現行法では、片方の子供ならば嫡出子であろうと非嫡出子であろうと、昔の言葉で言えば片方が婚姻外で産んだ、私生児という言葉が妥当かどうか知りませんけれども、ともかく片方が産んだ子供だったら片方だけで養子縁組できる、こういう規定になっていたわけです。ところが、今度は嫡出子でなければならないと決めた理由はどういうところにあるんでしょう。
#156
○政府委員(千種秀夫君) これは、端的に申しまして、従前の規定と申しますか、現行の規定が少し足りなかったというかおかしかったから直そう、こういうことでございまして、何がおかしいかということになりますと、非嫡出子の場合を考えますと、非嫡出子を連れた親が結婚をした。で、結婚した相手がこれを養子にしますと、一方だけの養子でございますと養子の方は嫡出子と同じ身分になり、もともとの血のつながった親の方は非嫡出子の身分になる。まあ夫婦の子供でありながら片っ方は嫡出関係、片っ方は非嫡出関係、これは相続分でも変わってくるわけですけれども、それがそもそもおかしいじゃないか。非嫡出子を養子にする以上は両方の嫡出子にしないとおかしいので、それで非嫡出子の場合は両方養子にしろということで、嫡出子だけのときは片っ方だけでいいというのは、片方だけが養子にすれば両方嫡出子になります。非嫡出子のときは、自分の子であると思っても、それはやはりちゃんと養子にして両方嫡出関係をつくれと、それがこの改正の趣旨でございます。
#157
○猪熊重二君 細かいところなんですが、この場合は嫡出の子に限るということですが、未成年養子に関する家庭裁判所の許可の場合には、配偶者の直系卑属の場合は家庭裁判所の許可が要らないという規定になっておりますね。そうすると、家庭裁判所の許可の場合の問題と、それから養子縁組の場合とは違うといえば違うのかもしれませんけれども、養子縁組のときには、嫡出子をする場合には片方と一緒にしなくもよろしい、他の配偶者と一緒にしなくもよろしい。その要件と、それから未成年養子について家庭裁判所の許可をもらわなきゃならぬという場合の要件とずれていることはちょっと不思議に思うんですが、何か理由はあるんでしょうか。
#158
○政府委員(千種秀夫君) 結局、家庭裁判所の許可をいただくということは、子供の福祉を考える上で公的な判断を必要とするということだろうと思います。そこで、それが要らないということで外れているということでございますから、結局その目的が違うとでも申しましょうか、そこに差異があってもおかしくないのではないか、こう思うわけでございます。
#159
○猪熊重二君 要するに、配偶者の直系卑属の場合ということだったら先ほど申し上げた中の非嫡出子の場合が含まれてくるわけですね。このときは家庭裁判所の許可は要らぬ、こういうことになっているわけですね。
#160
○政府委員(千種秀夫君) さようでございます。
#161
○猪熊重二君 次に、八百六条の二についてお伺いします。
 この八百六条の二の第一項にも「追認をしたときは、この限りでない。」という規定がありますが、この「追認」というものの具体的な確認方法はどういうことになるんでしょうか。
#162
○政府委員(千種秀夫君) この「追認」というのは本文を受けたただし書きの中に出てくるわけでございますが、本文というのは、「取消しを裁判所に請求することができる。」、こういうわけですから、取り消す場合には必ず裁判所に取り消しの訴えを起こしてくることになります。そこで、いやこれは追認したんだということが抗弁という形で出てくるわけでございまして、それ以外にはその追認ということが法的な効果を持ってあらわれる場面はないわけでございます。
 そこで、法廷で争われた場合に追認したというのはどういうことで確認するかということになりますと、これはもちろん追認でございますから、相手に対する意思表示、追認、同意するわけですから、追認は相手に対する意思表示があったということでないと、いかに自分が確かに遺言を残して公正証書にしてしまっておいてもこれは追認にならないわけでございますけれども、その意思表示としての追認ということは様式を問いませんので、ちゃんと文書にした場合も、口頭でした場合も、諸般の事情からそういうふうに認められる場合も、これは個々の事件の事実認定の問題であろうと考えます。
#163
○猪熊重二君 細かいことばかりで非常に恐縮なんですが、八百六条の三の一項ただし書きについてお伺いします。
 このただし書きには、要するに、監護権者の同意ということが七百九十七条の二項に書いてあるわけですが、この監護権者の取り消し権の喪失の事由として縁組を知ってから六カ月を経過したときという規定が入っておりませんですね。これはなぜ入っていないんでしょうか。
#164
○政府委員(千種秀夫君) 御説明をする前提として、七百九十七条の御説明をした方がよろしいかと思って余分なことを申し上げるんでございますが、この七百九十七条の場合は、子供の親が離婚をして、片方が親権者、しかし幼少であるために母親が監護者というようなケースがございまして、親権者でない監護者が子供を実はひざ元に置いて養育しているというのが状況として考えられるわけでございます。このときに親権者がどうも気に人もない、離婚した相手が子供を養っているのはどうも気に入らないから親権を利用してよそへ養子にやってしまう。そうすると、実際はその母親の手から子供を引き揚げるというようなことになります。従来それが権利の乱用であるというようなことから養子制度を無効とするような判決が下級審ながら幾つかございまして、その問題が議論になっていたわけでございます。そこで、子供を養育している監護者というものを、利益があるからその同意を必要とするということにしたのがこのそもそもの七百九十七条の二項の規定でございます。
 そこで、その同意がないときには取り消せるというのが先ほどの御指摘の八百六条の三でございますけれども、この場合に同意がないで取り消せるという状況は、子供を自分がずっと継続して監護しているのに養子縁組だけがされたということが考えられるわけでございまして、この前の配偶者の同意の場合はそういう状況とちょっと違うわけでございますね。そこで、期限が特になくても、自分が養育をしておって、それが養子になって二年も三年もたってまだ養育を継続しているとすれば、その監護、養育しているという事実に基づいてまだ取り消しの利益がある、そういうふうに考えられるから特に六カ月というような期間を置かなかったわけでございます。
#165
○猪熊重二君 要するに、子供を実際に監護している人が同意しなければ未成年者が養子にいくことは原則的にはない。ところが、監護している人が知らぬ間に養子縁組されちゃっている、これは取り消してもらわなきゃならない。ところが一項ただし書きには養子が十五になってしまえばもう監護権者の取り消し権はなくなっちゃう、こういうことになっている。十五歳に達した後六カ月を経過すると取り消し権がなくなっちゃう。監護権者の意向と全く無関係な事由に基づいて取り消し権がなくなってしまうということはどういうことなんでしょうか。
#166
○政府委員(千種秀夫君) このただし書きの前段は、御指摘のように、本人の追認あるいは同意なんでございますが、後段は、監護権者と関係のない特殊な事由でございまして、違うことが二つ書いてあるということになるわけです。
 なぜそういうことかといいますと、養子は十五歳になりますと自分の意思表示によって縁組みをすることができるわけでございます。また、追認もできるというようなことになってまいります。そうしますと、自分でやる以上は、監護権者は監護することが自分の利益でございますので監護に関しては取り消すということができても、本人が自分で養子、よろしい、こう言ってしまいますともう監護権者の出る幕がないわけでございます。そこで、取り消しを残してかつ十五歳以上の本人が追認をしたということによって取り消しがまた無効になるというような面倒くさいことをするよりは、本人が十五歳になって追認をする以上はもう監護権者の取り消し権はない、こういった方がわかりやすいということでこのただし書きの中に違ったものが二つ並べて書いてあるということでございます。
#167
○猪熊重二君 それは、そこまではわかるんですが、「養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、」監護権者の取り消し権が喪失する、こういうことになっておりますですね。この「若しくは追認をしたときは、」というのは、養子がということだろうと思うんですが、養子が追認をしたときはということになると養子が十五歳に達した後六カ月を経過すりゃもう取り消し権はなくなるんだと。またさらに、養子が追認したときもなくなるんだと。そういうことになると養子が十五歳に達して六カ月を経過する以前に追認するということをお考えなんでしょうか。そうするとそんな十五歳未満みたいな養子の追認というふうなことをお考えなんでしょうか。これはどう読むんですか。
#168
○政府委員(千種秀夫君) 最初に仰せられたとおりでございまして、十五歳になってから六カ月経過するか十五になって六カ月未満に追認するかということでございまして、十五未満ということは考えておりません。
#169
○猪熊重二君 これは、「又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたとき」ということで、この「追認」の方には十五だとか十八だとか年齢は何もないように思うんだけれども、年齢が係るんですか。
#170
○政府委員(千種秀夫君) 係るつもりでございます。
#171
○猪熊重二君 そうすると、これ分けて文章をつくってみるとどういう文章になりますか。
#172
○政府委員(千種秀夫君) これは法文をつくるかなり技術的な問題かと存じますが、現行の八百七条に似たような規定がございます。これは養子が未成年である場合の無許可縁組の取り消しということで、ただし書きに、「養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。」というので、ポッが入っているということで、前段が前後に係るように読めるようでございます。
#173
○猪熊重二君 だって、「又は養子が十五歳に達した後」という後ろに点でもあれば、十五歳に達した後、片方が六カ月を経過し、それでもしくは追認と、こう読めるけれども、このままの文章じゃ養子が十五歳に達した後六カ月を経過し、もしくは養子が追認をしたときとしか読めないように思うのだけれども、そういうふうに読むわけなんですか。
#174
○政府委員(千種秀夫君) それ以外には読まないようにお願いしたいと思います。
#175
○猪熊重二君 同じ条項の二項に関連して伺うと、詐欺、強迫による監護権者の同意を、それを理由にして取り消すと。この中には今言ったただし書きの中の養子が十五云々と、これはもってきていないのだけれども、どうしてもってきていないのですか。
#176
○政府委員(千種秀夫君) 八百六条の三の二項で準用しておりますところの「前条第二項の規定」というのは、配偶者が同意をする場合に、その同意に瑕疵がある場合の規定でございます。配偶者の同意というのは自分自身の利益ということが実は関係しておりまして、養子が後で追認されただけでは困るわけでございます。やはり自分の追認権というものは最後まで確保してもらわないと利益は守れない。そこで養子の十五歳に達した後の追認というようなことはこの規定に入っていないわけでございます。
 ただ、この規定を重ねてこっちにもってくるのは面倒ですから、この限りにおいては準用したわけです。そうしますと、この一項のただし書きの十五歳以下のところが入っていないけれどもどうなるかという問題は御指摘のように出てまいりますが、これは先ほど申し上げましたように、監護権者の同意、追認という問題と、養子自身が独立して十五歳に達したときに自分で追認したり、養子縁組をしたりするということとはそもそも別なことでございますから、強いて言えば八百六条の三のただし書きの中に入れなくてもいいこと当然なことを書いた。
 なぜ書いたかというと一項のただし書きの場合は取り消しはずうっとできる。一方に取り消しておいて、片一方で本人が同意したということになりますと二重の手間になる。それならばお互いに打ち消して、ないことにしてしまった方が簡便でわかりいいということで書いたわけでございます。二項の方はそれは当然過ぎるので、書かなくても本人が十五歳になって養子縁組を自分の意思表示でいたしますとこんなものは全部飛んでしまいますから、したがって、書かなくても解釈として当然そうなるだろうということであえて面倒な規定は書かなかったというのが実情でございます。
#177
○猪熊重二君 次に八百十条についてお伺いします。
 「養子は、養親の氏を称する。」と、ここまでは現行法と同じなわけです。養子に行ったら養親の氏に変わりなさい、親の氏に変わりなさいということになるわけです。そのただし書きなんですが、このただし書きがちょっと読んだんじゃなかなか理解できない条項なんです。このただし書きを少し説明していただきたいと思います。
#178
○政府委員(千種秀夫君) この規定は苦心の作でございまして、ちょっと読んでわからないように書いてございます。しかし、これから御説明いたしますように極めて単純なことでございまして、七百五十条に婚姻いたしますとどちらかの氏を称しなければならない。ですから夫婦で養子をいたしますと養親の氏を称しなければいけないというのと、例えば、夫あるいは妻の夫婦の氏を定めた場合にその氏を称しなければいけないというのとどっちがどういうふうに優先するのかということが疑問になります。特に夫婦養子の場合は今まで夫婦一緒でございますからそういう疑問はなかったわけです、そろって行ってしまいます。ところが、ばらばらに養子ということを認めますと、夫婦の一方が養子になったために別の氏になってしまうんじゃないかという疑念が生じます。そこで親子と夫婦のうちの氏のどちらを優先させるかということで結果として、やはり今の身分法の単位は夫婦ではないか、だから夫婦の氏を優先させよう、こういうことでございます。
 その結果どういうことになるかと言いますと、婚姻をした者がそろって養子になってその養親の氏になるという場合に、それが結婚したときの筆頭者でありますと、これは妻の方が夫の氏を称した結婚をしたといいますと、夫が養子に行きますと結婚の場合筆頭者の氏になりますから妻も養親の氏に変わる、こういうことでございます。ところが、その場合の例でございますが、筆頭者でない妻が養子になったとしますと、これは婚姻の氏が優先しますから養子になりましても氏は変わらないで従前のとおり夫の氏を称しておる、したがって、養親と養子の氏は同じにならない、こういうことです。
 しかし、それはお互いに生きている場合とか結婚している場合の話でございまして、夫婦が離婚をして復氏するときにどこへ復氏していくかということになりますと、復氏していくところは親子関係の養親子関係のところへもっていきますから、結婚する前の氏ではなくて養親の氏へ復氏する、こういう意味でまだやはり意味がある。そういう関係を文章に直したらこういうことになったわけでございます。
#179
○猪熊重二君 要するに、夫婦がいる、婚姻によって妻が夫の姓に、氏に変えた。この場合この妻が養子縁組したとしても、婚姻によって改めた者すなわちこの妻は、夫の氏に改めた夫の氏のままで、養親の氏を称するわけじゃないんだ、ここまではまだわかるんです。結婚して御主人の名字にした、だけれども、また養子になったけれども養親の方よりも御主人と一緒の名字の方、姓、氏の方でいこうと、ここまではいいです。
 ただ、今度は、御主人の方が養子になった。御主人が養子になったときにその奥さんはどうするかというと、結局御主人が養親の氏を称してそれに続いて奥さんも養親の氏を称するというんでしょう。何で、一回せっかく名字を変えてきた奥さんが、御主人が養子になったらまたそっちまでくっついていかなきゃならぬのか。しかも、自分が養子になったときには自分も御主人も全然変わらない。なぜ、婚姻のときに姓を、氏を変えた人はそんなに後まで引きずられるのか、その辺の理由が全然わかりませんけれども、どうなんですか。
#180
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のようなことを考えて例外をつくりますと、結婚した者は養子縁組をしても氏を変えないというふうにすればよろしいわけでございます。したがって、「養子は、養親の氏を称する。」、ただし書きに、ただし養子が婚姻しているときはその限りでないと、こうやればその御趣旨に沿うかと思うんですけれども、養親子関係を明らかにするということで原則を立てているものですから、結婚しているときでも筆頭者の場合は養子の氏にした方がいいんじゃないか、そういう考えでこうしたわけでございまして、私ども気がつかなかったわけでございますけれども、そういう御意見が多ければそれは変えてもよろしいかと思いますけれども、どうも大体そういうふうに皆さんおっしゃっていたように記憶しております。
#181
○猪熊重二君 結局、婚姻によって氏を変えるという現況が日本の場合はどっちの氏でも決めろ、こういうことになっているけれども、奥さんが御主人の氏に変えて、それで奥さんが養子になったときはおまえそのままだよと、御主人が一人で養子になったら今度はそっちへ行くというんじゃ、何か女の人があっちこっち引きずり回されてはかばかしいような気がするもんだからちょっとお伺いしたわけなんです。
#182
○政府委員(千種秀夫君) 筆頭者は御主人であるというふうに思うとそうなるわけでございますけれども、今の戸籍の事務は筆頭者の氏が変わると家族が変わるという建前をとっておりますから、そこのところをやはり整合性といいますか、戸籍の扱いを全部統一していきませんとそこだけ例外をつくるというのも多少問題があろうかと思います。
#183
○猪熊重二君 次に、八百十一条の離縁の問題の六項についてお伺いします。
 現行法は、養親、養子両方いて養親が死亡したときにだけ養子が離縁できるという規定になっておりました。ところが、改正法は養親が死亡した場合でなくても養子が死亡した場合であっても、いずれにせよ縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者の離縁というものを認めよう、こういうふうな改正案になっていますが、これはどういうことなんでしょうか。
#184
○政府委員(千種秀夫君) 現行法の御説明を先にした方が御理解いただきやすいと思って申し上げるわけでございますが、現在の規定は養親が死亡したときに養子の方からだけ離縁の申し立てができるという建前になっております、もちろんそれは家庭裁判所の許可を得てですが。戦前は家の制度があったためにその養子にとった者が、養親が亡くなったから帰ってくれたのでは跡継ぎがなくなって困る、したがって戸主の同意が要るというような建前になっておりました。家の制度がなくなったので戸主ということのかわりに家庭裁判所の許可ということで置きかえてその制度が存続しているわけでございます。その規定の趣旨は、ですからもとは家の制度に起因しているのじゃないかということで、なぜこういう制度が要るんだということ自身がいろいろ議論されてきたわけでございます。
 要するに、死んだ後に離縁とはどういうことだという根本論もあるわけでございまして、婚姻の場合でございますと配偶者が亡くなってから離婚ということをいたしませんですね。姻族関係を切るために復氏をしていますけれども、それは離婚という言葉は使わないわけですから。しかし、養子の場合には結局血族関係というようなものも残っておりますので、相続、扶養という問題がまだ残っておる。それをやはりきっちり切るなら切るということでその離縁という制度を使ってそれをやっておるわけでございます。
 そういうことで、現行の制度はそれなりの意味があるのですけれども、もとはやはり家の制度を前提として親が亡くなったときに子の方からだけという建前でできておった。ところが、いろいろと理論的に突き詰めてまいりますと養親子関係というものの法的効果の中核をなすのはやはり扶養の義務であるとか相続の権利であるとかこういうことになってまいります。そういうふうに、権利義務は相互的なものでございますから子の方からだけ申し立てられる、子が死んだときに親の方から申し立てられないのはおかしいじゃないかと、こういう議論になってまいります。そういうことで今度の改正はむしろ現行の一方的な離縁の請求を相互的に変えた、平等にした、こういうところに力点があるわけでございます。
#185
○猪熊重二君 そうすると、非常に例えば悪いけれども、養子縁組をした当事者が死んだ後に離縁を認めるというふうなことは家制度の残存というふうなことで非常にぐあいが悪いけれども、片方に認めるんなら片方にも認めるのが公平だということになると、女性の姦通罪だけ認めるのはぐあいが悪いから姦通罪は両方とも廃止しようというのとほとんど同じようなことにも考えられる、それは別にして。
 いずれにせよ、私が伺いたいのは、養親が死亡したけれども養子ですから養子は死亡した養親の財産をいろいろ相続していただきますわね。その後でも離縁ということはあり得るわけなんですか。
#186
○政府委員(千種秀夫君) 現行法ではもちろんできます。
#187
○猪熊重二君 そうすると、従前は夫婦養子だったから、養親が夫婦の場合にはその養親両方と一緒に養子になったけれども、今度は別々の、単独の養子関係、養子縁組ということになります。そうすると、養親のうちの父親、養父とだけ縁組をして養子になった。で、この養親が死亡した。そうすると、養母じゃないけれども、養親の奥さんがいれば奥さんと養子が二分の一ずつ相続する、養親が亡くなって二分の一ずつ法定相続分として相続する。その後で私は養子関係を終わりにすると言うと、財産だけ二分の一もらっちゃって、義夫の妻、普通でいえば養子にとってお母さん、この人とは養子縁組もしていないし他人だということになると、御主人が死んだにもかかわらず、奥さんは半分だけもらって、あとの半分は養子がもらって、しかもその後離縁しちゃって何も無関係だと、こういう事態にもなり得るわけですね。
#188
○政府委員(千種秀夫君) それは養子が離縁したらそうなります。しかし、許可するかどうかということになりますと、そういう事情は十分考えなければなりません。
#189
○猪熊重二君 そうすると、そういうふうに養親が死んで、もらうものはもらって、その後離縁というふうなことを申し出てきた場合には、ちょっと面の皮が厚過ぎるということで許可せぬというふうなことを家庭裁判所では多分考えるだろう、こういうふうにお考えなわけですね。
#190
○政府委員(千種秀夫君) 先ほど申し上げましたように、養子、養親関係の法律的効果の中核になるものが一方は扶養であり、一方が相続であるというような相互的なものとして考えてみます場合は、一方だけ利益を得て、一方の義務は免れようというのは公平に反するというのは御指摘のとおりでございますから、おのずから許可の段階でそういう問題は出てこようと思います。
#191
○猪熊重二君 これは、法律的な能書きの問題で申しわけありませんけれども、通常、離縁というのは縁組をやめようという両当事者の意思表示ということですね。離縁というのは、離婚といえば、もう夫婦やめようよという夫と妻の合意ということになっているわけです。このときに離縁と言うけれども、この離縁は片っ方が死んじゃっているんですから、お互いもう養子、養親やめよう、そういう意味での合意じゃありませんね。
 そうすると、家庭裁判所の許可ということと、離縁ということと、それの届け出ということと、この三つはそれぞれどんな法律関係にあるんでしょうか。
#192
○政府委員(千種秀夫君) 一方が死んで離縁ということでございますから、双方の合意というわけにはいかないので、やはりこれは単独行為というふうに理解されておるようでございます。この裁判所の許可というのは受理の要件というふうに考えられております。有効要件ではないかという疑問も出るわけでございますが、これは受理の要件というふうに考えられております。ということは、これが受理されてしまいますと無効にはならない、こういうふうに現状においても理解されているわけでございます。
#193
○猪熊重二君 そうすると、残った一方が裁判所の許可書を貼付して届け出する、その届け出によって離縁という効果が発生する、こういうことでございましょうか。
#194
○政府委員(千種秀夫君) そのとおりでございます。
#195
○猪熊重二君 次に、八百十一条の二についてお伺いします。
 これは、「養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦がともにしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思の表示することができないときは、この限りでない。」という新設規定ですけれども、養子が未成年のときには夫婦がともに離縁しなければならないという必要性はあるわけでしょうか。
#196
○政府委員(千種秀夫君) これは、未成年養子をするときに養親の方が夫婦であれば共同でしろということの裏腹の関係でございまして、それをもし原則として維持します場合には、未成年の養子に対して親の片方だけで離縁を許しますと、当初予定をしていたというか、成立の段階で予定しなかった片親の養子ということが可能になってしまいます。それはやはり整合性に合わないので、やめるときは一緒に、成立のときも一緒にと、こういうことを考えてこういう規定になりました。
#197
○猪熊重二君 「ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。」と、こう書いてある場合の「この限りでない。」ということの意味はどういう意味になるんでしょうか。というのは、どういうことをお伺いしたいかというと、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは養親夫婦が片っ方の意思で離縁できるということなのか、それとも意思を表示することができない人は置いといて自分だけでできるということなのか、これはどういうふうにお読みになるんでしょうか。
#198
○政府委員(千種秀夫君) ただし書きでございますが、「夫婦の一方がその意思を表示することができないとき」は、そのできないものは離縁ができないし、できるものは一方でできる。そうすると、片一方ずつになるということになりまして、その片一方ずつの方は離縁は裁判上の離縁の手続によるしかないわけでございます。
#199
○猪熊重二君 そうすると、今おっしゃったのは、結局夫婦の一方がその意思を表示できないときは自分だけでできるということ。そうすると、残った方は、意思を表示することができないというのは、通常精神障害的なことでできないということになると、そちらの方の人はいつまでも残っちゃっているということになるわけですか。
#200
○政府委員(千種秀夫君) そういうことになるわけでございます。それでまずければ、離縁を裁判の手続によってするということになります。
#201
○猪熊重二君 次に、八百十四条についてお伺いします。
 「縁組の当事者の一方は、次の場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。」と、こういうふうにありますが、「縁組の当事者の一方」ということで、この養親が夫婦であって、しかも、養子が未成年の場合なんかはこの離縁の訴えは提起できるんでしょうか。
#202
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりできるということになります。未成年で親が二人いる場合は、二人を両方相手にしてすることになります。
#203
○猪熊重二君 八百十六条の二項についてお伺いします。
 縁組してから七年たった人が離縁したときには、縁組したときの名前を称することもできるというこういう新しい規定なんですが、婚姻の場合にはこの七年というふうな限定が何もなくて、一口に言えば、きょう婚姻してあした離婚しても、その婚姻の標に定めた氏を称することができるわけですが、これを七年と決めたのは婚姻のときとは違って何か特別に意味がある、こういうお考えなんでしょうか。
#204
○政府委員(千種秀夫君) 婚姻の場合と多少違う配慮をしたわけでございます。なぜかといいますと、これは五十一年に婚氏続称の、要するに、離婚した場合の氏の続称についての改正をした場合にも、続称をさせる以上はそれが社会的に使われていたという事実関係が必要ではないかという議論がございまして、そのために期間をどのぐらいにしたらいいか、そういう議論があったわけでございますけれども、これはいろいろとその必要性を調査してまいりますと、婚氏続称の必要性があるというのは大概、離婚して子供があってその子供を復氏した母親が養育しているような場合、要するに、学校に子供が行っておる、一緒に住んでいる母親は氏が違う、これはどうも子供の教育のためにもよくないというような事例が非常に多うございました。そうしますと、子供がいる以上は年限を問わずに子供と同じ氏にしたいという必要はかなりあるんじゃないか、社会生活の上においてもそういう必要性があるんじゃないかということから、結局は年限を省いたわけでございます。
 それでも、氏を変えるために婚姻の手続を乱用して氏を変えられる方がありはしないかという御指摘でございますが、そういうことになりますと確かにあるわけでございますが、しかし、縁組と婚姻というのは精神的にも大分違いますから、そう簡単に婚姻の手続を乱用する人は少なくとも現在はおらないようでございます。
 養子ということになりますと、これは今相続税が高いから養子にしようなんということをお考えの方もおられますから、いろいろと使いやすさといいますか、そういうことで乱用されるおそれもありそうだと。そうしますと、やはりある程度継続した期間それを使ったという実績がないと、これは余り容易に認めることはどうであろうかというようなことが議論になりまして、それならば一定期間というのはどのくらいであろうかということでいろいろな年限が提案されたわけですが、まあある種の妥協の結果のようなものでございまして、七年ぐらい使っておれば相当ではないかということからこういう案になったわけでございます。
#205
○猪熊重二君 大変こちょこちょしたようなことで現行法の改正についてお伺いしました。この後、今回新設された特別養子についてもうしばらくお伺いさしていただきたいと思います。
 この特別養子制度について役所の方からいろいろ説明は伺ったり資料をいただいたりするんですが、本当にこの特別養子というふうな制度が必要なんだろうかどうなんだろうかという点にまだなかなか納得できる点が少ない。
 それはどうしてかというと、特別養子を必要としているいろんな児童福祉施設関係者の方々とか、家庭裁判所でも特にそういうふうなことにいろいろ関係しておられる方とか、要するに、特にそういうことに関係しておられる方々の御意見が非常に大きく聞こえる。もう一つは、学者の御意見が非常に聞こえる。学者はヨーロッパ養子法ということで、この特別養子みたいな制度はヨーロッパじゃもう全部できているんだと。アメリカの養子じゃこの特別養子以上にもう少ししっかりしているのがあるんだ。日本だけがまごまごしていつまでも現在のような一般養子みたいなことじゃ何となしに世界の法文化に対しておくれているような気がするというふうな観点からもしいろいろ論述をしておられるんだとすると、必ずしも学者の御意見というものがこの身分法という法分野において果たして妥当なんだろうかというふうな点があるわけなんです。
 ですから、本当に一般国民の意識において親子の縁を切ってしまうようなこんな特別養子制度というものをつくることがどうなんだろうかという国民の一般の意思というものをどのくらい考えた上でこの法案ができたんだろうか、この辺が非常に私は疑問なんです。
 社会福祉あるいは児童福祉関係の方がいろいろ職務熱心の余りに、こういうのがありゃいいなと言うのはわかるんですよ。それから学者が、アメリカじゃどうだ、フランスじゃどうだ、何じゃどうだという論文を書いてああじゃこうじゃおっしゃるのもわかる。しかし、親子の問題だとか、夫婦の問題というのは、アメリカはアメリカの問題であって、日本には日本、韓国には韓国、中国には中国のいろんな問題があるわけなんだ。どの程度一般国民が、親子の血縁を切ってしまうんだよというふうなこういう特別養子制度というものについて理解し、もしくは賛成しているんだろうかどうだろうか。どのくらい調査なり統計なりなさったんでしょうか、その点ちょっとお伺いしたい。
#206
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおり、身分法といいますのは、国民の意識あるいは社会的な伝統といったものに根づいておりまして、そう簡単に理論的に割り切れるものではございません。
 そこで、この特別養子というものの提案といいますか、そういうことがなされたのは遠く昭和三十年代にさかのぼるわけでございます。法務省でもそういう終戦後直した民法を全面的に見直すということを、これは昭和三十年代初めからずっとやってきておりまして、三十年代にはその問題の事項別な整理をいたしまして、その中でも特別養子が今のような形で提案されていたわけでございます。しかし、昭和三十年代というのはまだ我が国の社会もそれほど安定はしておりません。そういうこともありまして、三十年代の議論はどっちかというと消極的ということでございました。
 それがまた四十年代になりまして、特に四十年代というのは、ヨーロッパなどではそういう養子制度がどんどんと進んだ時代でございまして、一九六七年にヨーロッパの養子協定ができたということでございますから昭和四十二年でございますが、そういう外国からの知識、情報というものもかなり入ってきたことは事実でございますが、そこに生じたのが例の菊田医師事件でございまして、これが昭和四十八年のことでございます。昭和四十八年というのは、四十年代ですが、そろそろオイルショックで世の中が大いに変わってくるような時代でございまして、そういう時期にそういう問題が起こってきたということは、これは身分関係というよりはどちらかというと未婚の母とか、要するに、保護を要する子供が社会の中にたくさん出てきたという社会現象に対する注目であったわけでございます。そういう意味で身分法関係の基礎となるものは、日本の場合は血縁関係を基礎として戸籍制度もできておりますし、なかなか一般的には動かしにくいという情勢でございましたが、新しく出てきた社会問題として、保護を要する子供がある、そういうものが現実に量としてあるということがそこで初めて明るみに出たわけでございます。
 ところが、そのとき、四十八年当時におきましても、やはり菊田医師事件に対しては世論は非常に反対でございました。当時、あれは実子特例法というふうな名前で呼ばれていたわけでございますが、そういう提案に対しましては、血縁関係を基礎とする我が国の制度にはなじまない、戸籍の真実性を害する、あるいは倫理的でないそういう問題を助長するとかいろいろな社会的な批判が多うございまして、これまた実らなかったわけでございます。しかし、四十八年から五十五年ぐらいまでの間そういう議論が続きました中に、やはりだんだんと都市化が進んで行きまして、そういう要保護児童の数もふえてまいりました。それに対する社会的な行政もだんだんと進んでまいりまして、そういう中でどうしてもそういうものに対する需要というものもよそ並みに考えなければいけないんじゃないかという認識が新たに出てまいりまして、それでこの問題が改めて取り上げられたのが昭和五十七年からでございました。
 それからことしの二月までですから三年余議論を進めます。その過程で、私どももいろいろな学者の意見、そういうものをまとめて世に問いまして、中間試案を発表し、各種団体からいろいろな御意見を承りました。しかし、その時点におきましてはそういう制度の創設ということにつきましては基本的に皆賛成であるというところまで参りまして、その間に私も大いに時代が変わったなという感を強くしたわけでございますが、しかしそれは結局、いろいろな批判を踏まえてのことでございまして、我が国の身分制度、少なくとも養子制度を全部そういうふうに変えようということについては、これは皆さんの合意はなかなか得られないでございましょう。今でもそう思います。
 しかし、今までの養子制度をそのまま存置した上に、特別に必要なそういう児童に対して特別な養子制度、それは我が国がひとりで考えたことではなくて、これはヨーロッパにおいて既に何十年かの経験を経て成長してきたそういう制度を参考にすることは決して無理なことではないだろう。そういう観点から、個々の条件につきましてはいろいろ賛否両論ございますけれども一大方の意見としてこういう制度を是認するというふうに皆さんおっしゃっているように私どもは認識しているわけでございます。
 ただ、そういう経緯がございますので、これにつきましては非常に要件を絞って、一般養子と並んでこういう制度をつくるわけでもございますので、かなり要件を絞って例外的な制度としてここに提案している次第でございます。
#207
○猪熊重二君 非常に形式的なことをお伺いしますが、この「第五款 特別養子」について、この「特別養子」という用語は余り妥当でないんじゃないかという私の意見なんですけれども、なぜかというと、この第五款に条文の数としては八百十七条の二から八百十七条の十一まで条文があります。しかし、この中に特別養子という用語は一つもないんです。特別養子縁組という用語はもちろんありますけれども、特別養子という用語自体はないんです。それから、民法のこの第五款につながる款の表題としても、第一款は「縁組の要件」、第二款は「縁組の無効及び取消」、第三款は「縁組の効力」、第四款は「離縁」、第五款にきて「特別養子」と、こういうことになってくると、なぜこれを特別養子縁組とやらないで「特別養子」とやったのか、条文の中には一つも出てこない用語を款の題名にしたのか、お伺いしたい。
#208
○政府委員(千種秀夫君) これもかなり法律をつくる技術的な形式論ということが入っておりまして、私どももいろいろ考えたのでございますが、今の民法の身分編の第三章「親子」というところがございます。これは七百七十二条のところから始まる章節でございますが、その第一節が「実子」と書いてあります。それから「養子」と、こういうふうにいくわけでございまして、そこに縁組の場合でも養子は養子となっておりまして、もちろん縁組をしなければ養子にならないんですが、第二節が「養子」と、こうなっている。そこで、その養子の特別なものだから「特別養子」と、こういう横並びのタイトルをつけたというのがその理由でございます。
#209
○猪熊重二君 八百十七条の二についてお伺いします。
 要するに、特別養子の一番最初の問題なんですが、「家庭裁判所は、」中を略しまして、「特別養子縁組を成立させることができる。」と書いてあります。この「成立させることができる。」ということはどういう意味なんでしょうか。
#210
○政府委員(千種秀夫君) 読んだとおりではございますけれども、結局、裁判所が縁組の成立の審判をしないと養子縁組が成立しないということでございまして、この審判が効力を発生する基礎になる。こういうことで形成判決といいますか、これは審判でございますから判決ではないんですが、講学上の類型から言うとそういうことになると思います。
#211
○猪熊重二君 そうすると、これは判決じゃないけれども、要するに形成的裁判なんだ。そうすると、家庭裁判所が特別養子縁組を成立させることを認める、許可するというか、こういう審判があるとそれで特別養子縁組は成立する人ですか。成立するという、それによって効力を生じてしまうのか。要するに、伺いたいのは、届け出とこの審判との関係はどういうことになりますかと伺いたいんです。
#212
○政府委員(千種秀夫君) 審判は、一般論といたしましてこれを受ける者に告知することによってその効力を生ずるということで、その効力が生じますと、中身が形成的な効力でございますから養親子関係はそれで成立し、効力を発するわけでございます。
 そうすると、今度は届け出の関係でだれも届けなくても効力はあるかというような問題になってまいりますが、まさにそのとおりでございまして、ほっといて届けないと困りますので必ず届けるような仕組みを今度はつくったわけでございます。これは、家庭裁判所が本籍地の戸籍を所管しているところにまず通知をいたしまして、それでなかなか届けてこないということになりますとこちらから催告をして、催告をしても届けないときは職権でそれが記載できる、そういうふうな仕組みをつくってございます。
#213
○猪熊重二君 そうすると、これは届け出は言えば報告事項の届け出にすぎない。えらい大した効力を持つものを今度は改正でつくり出したわけですね。
#214
○政府委員(千種秀夫君) それほど大したことであるかどうかはちょっとわからないんでございますけれども、仰せのとおりでございますので、両親が当事者で申し立てをしますけれども、届け出は片親でもいい、それは明らかに報告的届け出だからでございます。
#215
○猪熊重二君 特別養子縁組の申し立ては、途中で取り下げられますね。いつまで取り下げられますか。取り下げは養親の一方でも取り下げられますか。その辺どうでしょうか。
#216
○政府委員(千種秀夫君) 取り下げは可能でございますので、考えてみますのに、これは審判が確定するまでの間は取り下げられると思います。言い渡されたままほっておきますとこれは確定してしまいますから、不服の申し立てをするとか何かしないといけないと思いますが、取り下げが一方でできるかということでございますが、これは両方が当事者でございますので、両方でないとできないと思います。
#217
○猪熊重二君 いや、申し立てするときは養親でいいんじゃないかと思って申し立てたけれども、どうもいろいろやっているうちに私は嫌になった、これは取り下げられないとちょっと困ると思うんだけれども、いかがですか、これは一方が。
#218
○政府委員(千種秀夫君) もう嫌だというのはその実体的な意思ということで、したがって、片一方だけが申し立てるということになりますと、これはできない。その申し立てという審判の手続は民法の問題でなくて、これは家事審判規則の手続でございますから、それは手続上は二人でできないと言ってもよろしいかと思うんでございます。
#219
○猪熊重二君 そうすると、取り下げは、夫婦で申し立てしたんだから夫婦一括でなきゃ取り下げできないと。ただ片方が嫌だ嫌だと言っていると、裁判所の審判の中身のときの考慮にすることで足りると、こういうことなんでございますか。
#220
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。
#221
○猪熊重二君 裁判に対する不服申し立てはまだ規則ができていないんではっきりしないんですが、即時抗告ができるのか、できないのか。できるとした場合に即時抗告の申し立て権者はだれになるのか。その辺についてお伺いしたい。
#222
○最高裁判所長官代理者(早川義郎君) 現行の養子縁組許可事件につきましては、認容、却下のいずれにつきましても不服申し立てができないことになっております。
 ただ、今回の特別養子縁組につきましては、養親子間に実親子に近いような親子関係ができる、また、実父母としましても親子関係が終了する、こういうふうな重大な法律効果が発生するといいますか、身分関係の変動を来すものでございますから、この成立審判あるいは却下の審判につきましては、当然即時抗告が認められなければならないだろうと思います。
 即時抗告権者の範囲につきましては、家事審判規則で定めることになっておりますが、規則の改正につきましては、これから法案の成立をまちまして家庭規則制定諮問委員会を開いて、最高裁判所の裁判官会議でこれを議決する、こういうことになりますので、家庭局としましても、現在その態勢の準備作業は行っておりますが、いずれにしても裁判官会議の議決をまつことでございますので、確定的なことは申し上げられないわけでございます。
 ただ、私どもの方で現在考えておりますのは、まず成立の審判につきましては、実父母、これについては即時抗告権を認める必要があろうかと思います。同意をしている実父母につきまして、同意をしているんだから不服申し立て権は要らないんじゃないかということも考えられるわけですが、これは同意の撤回の問題とも関連いたしまして、やはり確定までは撤回ができる、こういうことになりますと、同意をしている父母につきましても即時抗告権を認める必要があろうと。それから、子供につきましては、これは原則として六歳未満でございます。で、たかだか八歳未満と、こういうことになりますので、意思能力がないということで、子供自身には即時抗告権を認める必要はないであろうと。それから、養親の方でございますが、これは養親の請求によっていわばそれが認容されて特別養子縁組が成立するわけでございますから、養親については認める必要がないではないかと。それで、もし養親の方で申し立てはしてみたものの、その後養子縁組をする意思を欠いたという場合には、先ほど来先生の御質問なさっておりますようを取り下げの問題で片がつく、こういうことになります。
 ただ、あともう一つ、実父母につきましては、非嫡の子のような場合には実父母が未成年の場合がございます。そういった場合には、未成年たる父母にかわって、父母に対して親権を行使する者、これが親権代行者になりますが、これが子についても親権を代行するわけですので、こういったものについても即時抗告権を認める必要があろうと。それから、後見人についても同じですし、子の後見人についても同様でございますし、また実父母が禁治産等の場合には実父母に後見人がつくわけですが、こういったものについても実父母の利益を擁護する、あるいは子の福祉を考える、そういうことで即時抗告権を認める必要があろうかと、かように考えております。
 それから却下の審判につきましては、これは養親となろうとする者に認めなければいけないことでございます。
 大体そういったあたりを考えております。
#223
○猪熊重二君 終わりました。
 いろいろ細かいことをどうもありがとうございました。この続きは、また次回にいろいろ伺わせていただきます。
#224
○橋本敦君 法案に入る前に一般調査の件で質問をしておきたいと思います。
 最近の新聞報道ですが、高知の刑務所で若い看守の人ですけれども、残念ながら暴力団大門組の幹部と親しくなったということから、贈収賄の容疑で警察で調べられるという事件が発生している。私は、暴力団の根絶というのは非常に大事な日本の社会的課題だと、こう思いますから、この法務委員会でも浜松の問題も取り上げながら、その根絶のために政府も、警察、裁判所もちろんですが、毅然とした態度で対処していただくようにと厳しく要求をしてまいりました。
 暴力団の根絶ということは非常に大事でありますが、実際刑務所等の見学その他をいたしましても、再犯の可能性はこの暴力団の人たちが一番高い、そういう意味で矯正局としてもその処遇なりあるいは教育的効果を上げるためには大変な御苦労をなさっている、そのことはよく理解しております。ところが、社会を挙げて暴力団の根絶という課題に直面しているときに、刑務所の職員が暴力団に特別の便宜を計らうことによって行刑の目的を損ない、同時に、贈収賄の容疑で調べを受けるということによって国民の信頼を失うことになるのはまことに遺憾なことだ、こう思うわけであります。
 そこで、局長にお伺いしますが、この事案は具体的にはどういう事案なのか、その原因は何なのか、お調べいただいておればまずその概要から御説明をいただきたいのであります。
#225
○政府委員(敷田稔君) 事件の全容につきましては必ずしも明らかにいたしておりませんが、高知刑務所によります現段階までの調査によりますと、事件の概要といたしましては一応次のようなことになろうかと思います。
 川村という看守が、夜間、独居者房で勤務中でございましたが、昭和六十年の十二月ごろから服務規程に違反しまして、暴力団幹部の受刑者、この新聞報道によりましても末広となっておりますが、これらと私語を交わすうちにその者に依頼されまして、他の受刑者との密書の授受の仲介や所外の者との未検閲信書の取り次ぎというようなことなどで便宜を与えていたわけでございますが、そのころ自分が購入しましたマンションのローンの支払いに追われていましたことから、この末広にいろいろ私語を交わす段階で融資を受ける先があるかないかというようなことで相談を持ちかけまして、その確たる返事がないままに同人は出所したわけでございます。
 その出所後の昭和六十一年九月ころ、その看守が高松の市内でその出所しました男と会いまして、前と同じように融資のあっせん先を相談をいたしましたところ、そのはっきりした返事は得られていないわけでありますが、その日、同人に誘われまして市内で飲食店で約一万円相当の飲食物の供応を受けた。それからまた、その晩ホテルに宿泊したわけでありますが、その際そのホテル代金の一万円余りの支払いも同人にしてもらった、これが現段階で私どもの把握しております事件の全容でございます。
#226
○橋本敦君 警察は、今贈収賄容疑で調べているということも報道されておりますが、これは承知されておりますか。
#227
○政府委員(敷田稔君) 承知いたしております。
#228
○橋本敦君 当該看守の勤務及び身分関係は、現状は監督上どうなっておりますか。
#229
○政府委員(敷田稔君) こういう事実があったということがわかりまして、直ちに、継続的に受刑者との接触をするポストは好ましくないという判断から、事務のみを取り扱う部署に配置がえをいたしております。
#230
○橋本敦君 そういたしますと、今は配置がえだけでありますが、今お調べになった事実の経過からいっても服務規程違反は明白ですね。ましてや暴力団に内部で他の組員にメモを渡してやったり、検閲を逃れて書面を出す、そういうことで暴力団が所外の自分の組関係その他と連絡をとるということも容易に手助けをしている。こういうことになりますと、これは行刑上ゆゆしい重大な支障を来すことになりますから一そういう意味では規律違反は重大な規律違反だということになりませんか。
#231
○政府委員(敷田稔君) 仰せのとおりでございます。本人に対する懲戒処分につきましては、事案の全容が明らかになり次第速やかに行う所存でございます。
#232
○橋本敦君 こうなりました原因を、局長はこの事案についてどの点が主要な原因だったとお考えでしょうか。
#233
○政府委員(敷田稔君) いろいろ難しい点があるわけでございますが、何といいましても若い看守でございまして、実は私語を交わしてはいけないということが服務規程に明らかに書いてあるわけでございますが、それが夜間一人で勤務をいたす状況になりますと、ついつい処遇者も一人と考えまして私語を交わすということになりがちで、その私語を交わす過程で種々の誘惑と申しますか、頼みを受けてついつい引き受けてやってしまうというようなことが多い状況であろうかと思います。したがいまして、この服務規律というもの、つまり受刑者と私語を交わさないということ、それからその他の服務規律を厳重に守らせるということがまずその第一であろうかと考えておりまして、このようなことが再度起こらないように、現地の所長といたしましてもその服務規律の見直しその他について考えているところでございます。
#234
○橋本敦君 若い看守ですから、そういう意味ではそれまでの教育、服務上の監督、この点はもっと厳しくすべきだったという点もやはりあろうと思うんですよ。
 それからもう一つは、先ほどおっしゃったローンを抱えている、それの返済の融資をつい暴力団に頼むという下心もあったように聞くんですが、実際、生活環境はどうなんですか。
#235
○政府委員(敷田稔君) 融資のあっせんについて相談をしたということを言われておりますので、あるいはそれが事実といたしますと、融資を欲するような経済状態であったのかと思われるわけでございますが、しかし、特にこの職員だけが非常に貧しいというわけでもございませんので、やはり職務規律の徹底ということは必要ではないかと考えております。
#236
○橋本敦君 局長、こういう事件が起こったら、それなりの原因があるわけですから、きちっとやっていくためにも、本人の生活状況も含めて直ちに事情聴取をして対応をおとりになるべきですよ。今のお話ですと、本人の生活環境も含めて正確にまだ聞いておられないようですね。だから、事務勤務にかえたというだけではこれは足りません。もっととるべき処置は正しくとり、原因を究明し、今後の課題に生かしていただかなくちゃならぬと私は思います。
 これまで、刑務所で暴力団との癒着関係が問題になったという事例は、私は調べてはおりませんが、一体どのぐらいあるんですかね。ないんですかね。どうですか。
#237
○政府委員(敷田稔君) ないわけではございません。直ちに何件という数は申し上げることはできませんが、やはりございます。
#238
○橋本敦君 ちょっとわかっている数字を言ってください。
#239
○政府委員(敷田稔君) 一番新しい事案は六十一年の十一月二十一日の名古屋刑務所の事案でございまして、これも大変遺憾でございますが、既に同人につきましては判決を受けておりまして、看守としての立場では懲戒免職処分を受けております。
#240
○橋本敦君 実際、暴力団というのはしたたかなもので、本当に私も根絶は大変だと思っておるんですが、刑務所の職員の皆さんまで暴力団に毒され利用されるということがありますと、本当に裁判所がいかに厳しく処断をしてももうどうにもならぬということになりますから、こういう問題は国の行刑上としても、不法な暴力を許さないという民主的な課題としても本当に大事なんですね。
 そこでまず、今後このようなことを起こさないということについて改めて法務大臣の御所信を聞いておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#241
○国務大臣(遠藤要君) 職員と暴力団員との癒着の問題については、ただいま矯正局長からるるお話をしておりますけれども、それを補足するということもどうかと思いますけれども、ただ単に職員に服務規程を厳守させる、私語を禁ずるというだけでいいかどうかということでございまして、先生御指摘のとおり、法治国家として刑務所まで暴力団に汚染されるということになりまするとこれは大変ゆゆしい問題である。
 こういうような点で、暴力団員から朝、おはようと言われて、おはようとこたえるのが私語がどうか、そういうふうな点も考えなければならぬし、刑務所の中に収容されている人の社会復帰ということも考えるとある程度私語もやはり取り交わすということが常識だと、こう思います。そういうふうな点を考えると、これからの運営その他についてもっと再検討していかなければならぬ。例えば、一暴力団員に対して話をしたり、いろいろ事情を聞くときには、単独でいいかどうか、複数によっていろいろの話をするというようなことも必要ではないかなと、こう感ぜられる。また、これは話の話でございますが、暴力団の組織の中はなかなか巧妙で、あらゆる面に浸透してくる。
 この事件は、中身はわかりませんけれども、例えばローンで公務員が借金をしている。そうすると、あなたはそのローンはどういうふうな利子で借金をしていますか、今、金が余って無利子で貸したいという人もあるんですよというようなことで相談をかけるとか、あなたは酒飲むんですか、幾らか飲むよと言うと、そうですか、どこで飲むのかというようなことで、屋台だと言うと、その点が暴力団の別の方に伝えられて、その周辺に暴力団がいて、偶然会ったような形でピール一杯ごちそうしたりなんかしてくる、それが一つのつなぎになって脅迫されているいろやる場合もあるというようなことを聞いておるわけでございます。
 そういうような点を考えると、これからのすべての問題について、法治国家として民主主義国家を守っていくということになると、我々もただ単に服務規程を厳守させるというだけではなく、やはり役所としてもろもろの改善をして、そして当事者にも、もちろん服務規程を厳守させるけれども、そういうふうな汚染されないような、例えば待遇問題やなんかについてもいろいろこれから検討していかなければならないと、そういうふうにこのたびの問題を感じて、ただ単に今後厳重に取り締まりますと言うだけでは済まない問題だなということを感じ、その点を努力してまいりたい、こう思っております。
#242
○橋本敦君 私も、法務委員として各地の刑務所等見学さしていただきまして、本当に多数の職員の皆さん、刑務官の皆さんは刑務所の中で大変な苦労をして処遇に対応され、教育効果が上がるように努力されております。私もよく知っております。ですから、こういうことは本当にごく一部でしか起こっていないこともよく知っております。しかし、それにしてもあの困難な刑務所の中での刑の執行や教育的配慮ということで、ただでさえしたたかな暴力団が多数いるようなところで秩序を守り、そしてまた衛生の面から生活の面から規律の面からと全部気配りをしてやるというのは大変なことですし、本当に安心して、いわば生活の心配のために暴力団についつけ込まれるというようなことが、若い職員でもないようにしてやってほしいという面は、大臣おっしゃるように私も痛感いたします。そういう意味でこれを一つの契機にして職員の皆さんへの適正な処遇、待遇の改善、こういったことにも一段と局長も大臣も御尽力いただきますように、厳しいことを申しましたが、あわせてお願いをしておきたいと思う次第でございます。
#243
○国務大臣(遠藤要君) 先生の御趣旨、我々も当然だと、こう思っておりますので、今後そのような面についても全力を投球したい、こう思います。
#244
○橋本敦君 これで終わります。ありがとうございました。
 それでは、法案についてお伺いしたいと思います。
 朝からの審議を通じまして、特別養子制度が、今度、民法の改正という形でもつくられるようになってきました経過、一応考え方等も含めて御答弁がございました。繰り返しませんが、まず、実情からお伺いしたいんです。
 中間試案の説明でも出ておりますけれども、今の一般養子は実際は大部分が未成年者ではなくて成年養子だ、こういうふうになっておりますが、数字的に実情を正確に言っていただきますとどういうことになっておりますか。
#245
○政府委員(千種秀夫君) 養子縁組は戸籍の届け出によって数字が把握できるわけでございます。そういう意味で私どもが養子縁組全体の数字として把握しておりますのが、五十八年の統計でございますが、これが九万一千百二十六件ということになっております。そして、その大体三分の二が成人の養子でございます。あとは未成年ということになりますが、これは家庭裁判所の許可を要するものと要しないものとございますし、その中の年齢区別というものは必ずしも正確に把握しておりません。他の資料によって若干推測できるという程度でございます。
#246
○橋本敦君 いわゆる恵まれない子供たちが里子に出るということはございますが、児童相談所等のあっせんによる里子、そこから養子縁組に発展したケースというのは数字的にはつかめるんですか。
#247
○政府委員(千種秀夫君) けさほど厚生省の方が里子からの養子についての数字をある程度言っておられたかと思うんでございますが、私どもは他の文献に載っているので見ておりますが、五十八年の当時に里子から養子になった子供がたしか四百飛んで何人であったかというふうに記憶しております。
#248
○橋本敦君 ですから、現在のところ圧倒的多数はいわゆる成年の養子だという実情がある。こういうことになっているのは、我が国における一定の社会的慣習、風習として家系をつないでいく、あるいは家名をつないでいく、こういったことから成年養子を中心にして養子制度が利用されているのが実情だということですか。
#249
○政府委員(千種秀夫君) この制度ができまして、使われてみないと確かなことは言えないのでございますが、今までの大人の養子が圧倒的に多いということは、やはり家とは申しませんまでも、家産とか、家名とか、祭祀とか、そういうものの承継者ということを意識して行われているものだと思われます。
 ただ、未成年者のうちで、相当数は少なくとも六歳未満で裁判所の許可を得た者が、やはり同じ年の統計でございますが、三千人ぐらいあるわけでございますから、そうしますと千人単位のそういった家系だけではなくて、逆に親の方に子がない、子を育てたい、これも子供のためと言えば子供のためではありますが、本当に要保護的な児童というものはさらにそれより少ないのではないかなということを推測しておるわけでございます。
#250
○橋本敦君 逆にまた、今度は老後の扶養をやってもらいたいということの目的のために、つまり子のためじゃなくて、そういう目的のために養子ということを考えるというのもかなりあるという実情ですね。
#251
○政府委員(千種秀夫君) さように理解しております。
#252
○橋本敦君 したがって、本当に子供の利益のための養子制度というのは、言ってみれば、この特別養子制度が全部だと言いませんが、今度の特別養子制度を検討することを通じて初めて子供のための養子制度ということをもう一遍改めて社会的認識をしっかりさせる必要があるという状況もあるというように見ておりますが、お考えいかがですか。
#253
○政府委員(千種秀夫君) 私どももさように考えております。何分にもこの特別養子制度というものは、我が国においては民法の制度としては初めてのことでございます。そのためにいろいろ慎重論といいますか、一種のアレルギーといいますか、そういうものを含めた反対、批判もございまして、そのためにかなり要件も絞り、かなり手がたくできております。そういうことから考えますと、これが実際に運用されていく過程でみんなの意識が変わっていくということは十分考えられるわけでございまして、そういう意味もかなりあると思いますし、それをまたフォローして国民の意識なり需要の傾向というものもこれから把握していかなければいけない、そういうふうに考えております。
#254
○橋本敦君 六歳以下の場合は一般養子制度をとるか、あるいはこの特別養子制度でいくか、言ってみれば、選択が可能だという状況になるわけですね。しかし、選択は可能だけれども、要件がありますから、それなりの要件に従ったものでないとできないということになる。この選択の問題、これはいわゆる選択ということなのか、あるいは特別養子制度というのは一般養子との単なる選択ではなくて、本当に恵まれない子供たちに温かい安定した家庭環境を社会的に与えてやろう、そういうことが優先する制度として単なる選択でないという見方でいくのか、そこはどうお考えですか。
#255
○政府委員(千種秀夫君) 厳格にどちらかというふうに決めてはいないんでございますが、事の成立した経緯からいたしますと、先生御指摘の後段の方になろうかと思います。さればといって、先ほど申しましたように、そういう施設に入っている子あるいはそうでない子がそういう申請をしてきたときに、どこまでこれを新制度で認めるか、これはやはり難しい問題でございまして、どちらにしましても未成年でございますれば裁判所に相談に来ると思います。それで出てきたものがどっちで行くべきかということは、これから裁判所の窓口の運用その他の判断の中でいろいろ経験を積んで、行くべきところへ向かっていくだろう。したがって、制度を開いてみないとどのぐらいの申請が出てくるか、ある地方でどっと出るということだってあり得るわけでございますので、これはなかなか今後難しい問題だとは思っております。
#256
○橋本敦君 私は、後者の観点から法文に即してもう一点伺いたいのですが、八百十七条の二の規定の仕方の問題なんです。これによりますと、「家庭裁判所は、」、「養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組を成立させることができる。」と、こう書いてあるでしょう。これが私は後ろ向きの規定の仕方という感じがしてしようがないんですよ。だから、前向きの規定をするならその子供に、いいですか、新しい親子関係、これを創設して形成していくんだと、こういうことですね。だから、その点は資料にも入っておりますけれども、ヨーロッパ協定を見ますと、「養子縁組が子に安定と調和のある家庭を与えることになるように、」、そういう目的で権限のある当局が、養子縁組が児童の利益を保障すると確信した場合に限り、縁組の宣告を行うものとする。こう言っているんですよ。
 ところが、日本の方は、この八百十七条の規定は、実の親の血族との親族関係を断ち切りますよと、そういう断ち切り縁組をやり成立させますよと、こういう規定の仕方なんですね。だから、私は、特別養子縁組の目的が、この八百十七条自体から見る限り子供によりよい安定的な家庭環境を与え、新しい人生を親との関係でつくってやるんだということよりも、もとの親との関係を切っちまうぞと、そういうことをやるんだぞということを規定しているだけという意味においてこの規定の仕方でいいのかなという感じがしておるんですが、どうですか。
#257
○政府委員(千種秀夫君) そういう観点からのお話し、ごもっともだと思うんでございますが、実は、現状の民法の規定の中にこの規定を織り込んだという経緯から、前後の整合性というようなことでこうなってきたということが一つございます。
 なぜかと申しますと、例えば、ヨーロッパの養子協定のようなものは、養子そのものが独立したものでございますから、目的、前文から全部入っております。それを受けて、イタリアの新しい八三年の法律なども、これは特別養子の特別の法律でございますから、またそれも、その前文から、目的から全部うたいとげてあるわけでございまして、そうすれば格好がいいんでございますけれども、民法のこの中に入れるにはちょっと重たくなってくるわけでございます。
 それからもう一つは、制度の問題でございますが、日本の養子は、今までの現行の養子でも、養子になって養親の方の親族との関係では、血族関係というのは全部嫡出子と同じように生じます。これのことを実は完全養子というような言葉でヨーロッパで言われているわけですが、ヨーロッパの養子制度は今まで全部完全養子だったわけじゃないんでございまして、今でもまだ不完全な養子、一部だけしかその親族関係が生じない。例えば下だけ、親と子供は親族関係が生ずるけれども、その土とか周辺にはいかないようなものもある。そういうことからいいますと、日本の今までの養子制度はそういう意味では完全養子だったわけです。切れる方の関係、実方と切れる方、これを断絶養子というような言葉で呼んでおります。断絶というのは、何となく言葉としては感じが悪いんで余り使いたくない言葉ですが、要するに実方との関係が切れるという方の、そういう関係が特別養子の実は一番の核心的要件なんでございます。
 それで、子供の特別養子につきましては、ヨーロッパはかなり断絶養子というのが法制の上では進んでおりまして、日本の法制の上では断絶の面が非常に今までなかった、そこが新しいということで、既存の養子制度と並べて書いたときに断絶の要件というのがぼんと前へ出た、それでそれを称して特別養子と言うというような言い方、言葉の定義にもなってきた。それが整合性と申しますか、もう民法の養子の頭から読んだときにわかりやすいということで、ちょっとこれは法制局的な、技術的な問題になってまいりますけれども、そういうことでここに断絶のところだけが表へ強く出た。確かに、仰せのとおりにこの制度の趣旨をうたいとげるには余りいい格好ではないということは言えるんでございますけれども、結局その中身は次の要件で読んでもらうということで、八百十七条の三以下にどういう趣旨の養子制度であるか、ここの中に子供の福祉のため、子供の利益のためという要件を並べているということになるわけでございます。
#258
○橋本敦君 説明は説明としてわかりましたが、私は八百十七条の規定の仕方、工夫の余地があるなということで考えております。
 さて、この八百十七条の二で、「成立させることができる。」というのは、先ほどの議論からも家庭裁判所の審判ということで形成的効力を付与するということはわかりますが、これを審判でやる、つまり許可事項にしないという意味はどこにあるんですか。
#259
○政府委員(千種秀夫君) 今の許可というのはどういうことかということを考えてみますのに、養子は身分行為で当事者が、ということは養子と養親が契約をして、それを裁判所が認めるかという、公的に認知するといいますか、条件を付するということになっておるわけですが、この特別養子というのは、よその、特にヨーロッパの特別養子は皆そう言われておりますが、契約ではなくて国家宣言型だと、こういう言葉で表現されておるように、当事者の契約ではない。したがって許可ということも考えられない。そういう構造になっているためにこういうことになっているわけでございます。
#260
○橋本敦君 そこで、そうであるならば、裁判所の審判ということで、これは公権力的にそういうことでやっていくわけですから、要件としては一つは養親となる者の請求によるということと、それから実父母の同意ということと、これが一つの最低限の要件としてありますから当事者間の意思を全然無視するものでない、幾ら審判であり、公権力の介入であってもということはわかりますよ。
 しかし、六歳未満、こうなりますと、その子供は意思表示できないわけですから、子供の意思はどこにも反映できないということになりますね。そこで、子供の幸せ、子供の意思を考えた場合に、この審判で裁判所が考えるべき事項として何が大事かということを考えますと、中間試案にもありました児童相談所の手続の前置主義、これは午前も千葉先生からも議論がありましたが、これはやはり一つの大事な課題であったように思うんです。
 この点についてもう一度重ねて伺いますが、これをなくした理由よりも、審判をする中で、むしろこれをどう生かしながら子供の利益を守っていくか、意思を尊重していくかということをどう考えていくかという点で御意見を聞きたいんです。
#261
○政府委員(千種秀夫君) これはけさほど申し上げましたように、児童相談所のあっせんというものを期待する気持ちは少しも変わっていないわけでございますが、それだけに頼るというよりは、それだけに限定することによって、最近は特に児童相談所以外にも公益法人、社会福祉法人でそういうことを許されてやっておられる方々もおりますし、そういうものが今の社会情勢の中ではふえていくであろうということも期待されているものでございますから、そういうふうに制限をしないでいく方法がいいだろうということから、それを要件としないで規定をした、そういう経緯があるわけでございます。
 そして、今後実際に運用していく段になりましても、したがって、そういうものに対する期待が大きいということにおいて、そういうものからの申し立てがあるであろうということは大いにまた期待をしているわけでございます。また、そうでないいろいろなルートから道が開かれておりますから、申し立てがあるということも考えられますが、その場合でも家庭裁判所においては調査官がそれをフォローして養親子関係がうまくいくかどうか、また、その要件が本当に満たされているかどうかということを調査するわけでございます。
 そういう観点からの調査ということになりますと要保護性について児童福祉機関、施設、そういうものの知識、それから判断、そういうものも参考にしていかなければならないだろう、そういうことからこれは法案ができる過程におきまして、家庭裁判所あるいは最高裁判所の事務総局の家庭局あるいは法務省の民事局、そして、けさほど来ておられましたが、厚生省の関係の課と密接な連携をとりまして、そういう協力体制でやっていこう、ついては、この法案が通りました暁には家庭裁判所の方は最高裁制所において家事審判規則でそういう調査の嘱託であるとか、資料の提供をするとか、そういうことも規定し、また、運用通達などを出して相互に情報を交換してやろう、こういう建前で今準備が進んでおります。
#262
○橋本敦君 児童のために児童福祉法があり、厚生省もそれなりに努力しているという実績もあり、それから、各県に設置された児童相談所でそれなりの経験も積んでおり、いろんなことで我が国にも子供のための行政の蓄積があるわけですから、そういったものは今局長がおっしゃったように専門機関の設置と充実という観点も含めて調査の中で生かしてもらいたいと思うんです。
 そこで、家庭裁判所の調査の問題ですが、八百十七条の八で「六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。」、こう書いてあります。これ以外に、家庭裁判所が考慮すべき事項としてこの八百十七条の八以外に特に規定している項目はあるのかないのか、その点はどうなんですか。
#263
○政府委員(千種秀夫君) これはどちらかというと要件という形で、その前の八百十七条の七の中。に書いてあることがそれに該当するかと思いますが、この八百十七条の七におきましては、「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難な又は不適当であることその他特別の事情がある場合」ということで、要保護要件ということをまずうたってございます。そしてそのほかに、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」ということでございますから、将来にわたってその養親子関係を続けていく、それを嫡出子関係と同様な関係として形成していくことが望ましいかどうかという、その中にいろいろな観察すべき事情が入ってまいります。その手続として、この六カ月間は観察期間を置こうということでございますから、その中で判断される事情というのは事案によって異なりますが、前条の要件のもろもろの事情、そういうふうに申し上げた方がよろしいかと思います。
#264
○橋本敦君 局長、八百十七条の七は、特別養子縁組を成立させる法的、実質的要件だと私は思うんですよ。家庭裁判所の調査事項はそれにまつわって出てくるんですが、調査事項そのままじゃない。八百十七条の八は、これは家庭裁判所が審判をする、それの前提として「六箇月以上の期間監護した状況」というのは判断事項としてこれは入れなきゃならぬ規定だというふうに私は見て、整合性があると思うんですがね。
 そこで、なぜ私がこういうことを聞くかといいますと、八百十七条の七の要件は、ある意味で抽象的です。だから、何をどう調査するか。その調査した結果、どう判断するかはかなり家庭裁判所の裁量判断にゆだねられるという構造になっておる、そうではありませんか。
#265
○政府委員(千種秀夫君) まことにそのとおりでございます。
#266
○橋本敦君 そこで、その裁量判断の幅が広いわけですから、本当にその判断が、実質要件に合致し、子供の利益になるということが本当にそのとおり間違いないかどうかということについて家庭裁判所の責任は重い。同時に、その調査は大事だと、こうなるんですね。
 そこで、その調査が大事だということで専門的、公的機関を活用するということが大事だということを申し上げましたが、この点でヨーロッパ協定をちょっと読んでみますと、調査に非常に重点を置いて書いていますね、第九条。そこでは、こういうことを調査しなさいということで、第九条の2で、「特に次の事項についてなされること。」ということで、特に調査すべきことをずっと書いております。私は、これはこのとおりせよとは言いませんが、家庭裁判所の調査について、これは参考になるなど、こう見ておりますが、いかがですか。
#267
○政府委員(千種秀夫君) それは御指摘のとおり、ごもっともな御指摘と考えます。
 これは結局、家庭裁判所が審判をする段で、各担当の審判官といいますか、裁判官が最終的には考えることになりますので、私どももそういうことは当然研究し、活用されてやっていかれるものと期待しておるわけでございます。
#268
○橋本敦君 そこで、同じ3で、「この調査は、できるだけこの分野での養成教育と経験により資格を取得したソーシアル・ケースワーカーによって、行わなければならないものとする」と、こういう規定がある。これは私は非常に大事だと思うんです。というのは、この特別養子制度について、例えば、実親との断絶が必要だとか、あるいは監護の対応と状況が、六カ月間試験期間でやってみる。その結果の評価についてもソーシャルケースワーカーという児童心理学及び児童を扱うということでの福祉及び教育的観点からの専門家、これは私は、家庭裁判所は未経験の分野だと思いますよ、日本の家庭裁判所は。少年調査官というのはありますけれども、これは六歳までの子供の里親関係を専門的に扱っているケースワーカーと違って、一般的に調査官と言うけれども、これは未分野のことで、今度は新しい課題。だから、そういう意味では日本でもこうした資格を持ったソーシャルケースワーカーの公的な活用というかあるいはソーシャルケースワーカーを生み出すというか、そういうようなことも社会的には当然必要になっているという大事な問題だと思うんですね。そこらあたり、局長のお考えはどうですか。
#269
○政府委員(千種秀夫君) まことにごもっとも、御指摘のとおりだと思います。
#270
○橋本敦君 もっともはいいんですが、具体的にどうやってソーシャルケースワーカーを育てていくか。きょうは厚生省呼んでいませんので、またこの次の機会にしたいと思うんですが、何かお考えありますか。
#271
○政府委員(千種秀夫君) 私もいろいろ考えないわけではないんでございます。これはどちらかといいますと、法律を運用するのが家庭裁判所でございますので、裁判所の方でお答えいただく方が適当かと思います。
 ただ、従来の打ち合わせの経緯からして、御指摘のことも踏まえて児童相談所の方に十分知識、経験を活用するように御協力したい、またお願いしたい、そういう話はできております。
#272
○橋本敦君 家庭局長に、私も最高裁ちょっときょう会ってもらおうかなと思ったんですが、質問通告をしてないものですから失礼したんですが、今の家庭裁判所の少年調査官と、それなりの経験を積まれておりますが、これは児童心理を含めた新しい分野ですから、家庭裁判所は年間五百ないし千件ぐらいでしょうから今の人員で対応できますと、こうおっしゃったが、人数の対応だけじゃない。実質的な中身を本当によりよくしていくための対応として、こうしたソーシャルケースワーカーを含めて人員の充実、質的な充実を家庭裁判所の調査官も含めてやってもらいたいということを要望したかったんですが、局長から伝えておいていただくようにお願いしておきます。
 さて、その次の問題ですけれども、六歳以下に限定したのはなぜかという問題ももう午前中から議論されました。逆に上の方はどうかということについては今度の改正法は出ておりません。ところが、その六歳以下の三歳の子供を、両親が交通事故で突然亡くなった、何とか育ててやりたい、子供がないから特別養子で守り育ててやろう、そういうことであっても、八十を超えた夫婦だったら、三つの子供が大きゅうなるまで生きておってくれるかどうかわからぬ。こういう場合は、外国の場合は上限が国によってはあるわけですね。それはそれでいいんですが、家庭裁判所は、そういう場合の判断事項として上限の年齢というのは審判の際の考慮の対象には当然なるんでしょうね、どうですか。
#273
○政府委員(千種秀夫君) 私どもも立案の議論の中で当然それは家庭裁判所の審判の判断事項に入るという前提で考えております。
#274
○橋本敦君 そこが難しいんですね。七十であっても元気だ、ゲーテは七十二歳で子供をつくったと、こういうわけですからね。だから、家庭裁判所が判断なさるというのは個別的事情もあり非常に難しい。ヨーロッパ協定はそこのところ合理的なことを言っておるんですね。「権限のある当局は、養親子間の年齢差が通常の親子間の年齢差より低い場合には、前記の諸要件を充足しているものとは、原則としてみなさないものとすること。」ということを言っておりまして、年齢差が通常より低い場合、これは低い方ですが、これを逆に考えますと、余りにもお年を召した場合も、社会的相当の年齢差の範囲を超えるという判断がここからすぐ出てきそうな判断があるんですね。そういう意味でこの問題は非常に難しいんですが、問題があるということを指摘しておきたいわけであります。
 それで、例外的に八歳、こういうお話がございましたが、例外的なら十歳でも十二歳でもいいんじゃないんでしょうか。
#275
○政府委員(千種秀夫君) いいとおっしゃればよろしいわけです。しかし、いろんな意見がございますので、こういうことに落ちついたということでございます。
#276
○橋本敦君 いろんな意見の集約がこうなったということですね。これも難しい問題なんです。例外ならば私は八歳というように決める必要はなかったのじゃないかなという気がします。
 さて、その次の問題は断絶の問題ですが、実父母との断絶がよいという意味で、これはヨーロッパの経験あるいは日本で里親が子供を育てている経験、それから実際の異常な紛争があった状況から見て、断絶がよいと、ここのところ、そのメリットといいますか、よいと判断をされておる理由があるわけですから、その点ちょっと説明していただけませんか。
#277
○政府委員(千種秀夫君) 実は、この特別養子をつくるという要望、そのこともさることでございますが、現実にある養親子関係、この中でいろいろ問題がある、こういう指摘が前からあるわけでございます。
 その問題の一つが、実親子関係と養親子関係の二重の関係があるために、こちらがいいとこちらから何か要望が出たり干渉があったり、非常に真ん中にいる養子が不安定な地位に立たされる。大人になってもそうでございますけれども、子供のときに要するに精神状態が安定しない。生育盛りにそういうことがあっては子供のために非常によくない、そういう指摘が今までございました。それが子供にとって、特に監護、養育を要する未成年の子にとって、親は唯一である、養親であろうと実親であろうと、あっちこっちにあるんじゃなくてこの人は本当に自分の信頼すべき親である、そういうふうに考えるような家庭環境というものが子供の養育のためには必要である、それが緊密な、安定した心理状態、親子関係というのが子の健全な育成のために必要なのだという議論がずっとなされてきたわけです。
 したがいまして、それをどうやって実現するかという形でこの特別養子のようなものが出てきた関係で、そこに実親子関係でよくない親であるとか、親がいなくて養育できないとか、そういう場合にはすっぱり切って、養親子関係だけを実親子関係と同じように育てていくべきではないか、そういうような理論的な経緯でできてきたわけでございますから、いきなりあるものをぷっつり切ると言うといかにも何か切れるような気がいたしますけれども、もともと切る、要するに、手術で取ってしまった方がいいと、こういうようなものでございますから、健全なものをすぱっと切るのとはちょっと違うわけでございまして、そういう経緯でございます。
#278
○橋本敦君 これは本当に難しい問題で、確かに子供の精神的安定、それから養い親がまことに愛情を持って専念してその子供を育てるという本当にその決意を固めるという上からも、それから安定した精神状態に子供を置いておくということをプラスして、煩わしい法律関係に組み込まれないというようなことからも断絶ということが一つは大事な要件だというのはある程度わかるんですよ、それはわかる。
 ところが、一方で、戸籍法はきょうは聞きませんけれども、成長した子供が自分の実父母を捜そうと思えば捜せる道は残しておいてやっている。これは人道的にも残すという必要があるでしょう。そうなってきますと、両方の調和を、この法案は特別養子制度の本来の目的からどういうふうに進めていくかという非常に難しい問題を背負っているわけなんですよね。
 そういうことで考えてまいりますと、思い切って断絶なら、今言ったように、自分の実父母も捜せないというようにしてしまうというような方法だってあるんですが、それはそうはしない。しかし、断絶ということは特別養子制度について非常に大事なことだということになってきますが、そこらあたりの調和点ということをどう考えていらっしゃるかということと、それから、これは法律事項ではないけれども、ヨーロッパその他の資料を見てみますと、日本と若干感情的に違うのか知りませんが、子供にはある一定の動揺しない年齢に達したならば真実を告知してやるということも進んでやる方がいいんだという、いわゆるテリングですね、こういう考え方もある。そういうことを含めて、一体どうお考えか、大変難しい質問になりましたけれども、聞いておきたいんです。
#279
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のいろいろな問題をいろいろ考えまして、その調和点としてこれでどうだろうというのが、ここに提案しております実は特別養子なんでございます。
 それで、まあそう言ってしまうと終わってしまうんですけれども、その中で二つの要請というものは矛盾したままでやはりあるわけでございまして、一つには戸籍の上でたどれるようにしようというのが、日本の場合特に婚姻障害というものを残しておりますから、どうしてもそのためには戸籍の上でそういう必要がございました。しかし、その基礎になる血縁関係というものに対する考え方でございますが、これはいかに特別養子であって断絶するといっても、血のつながりを、自然の関係を否定してしまおうとか、うそでくるめて隠してしまおうとか、そういうことはよくない。それはやはり一生の間には必ずまたわかることでもあろうし、わかることを、またそれを追求しようという子供の意思や利益というものも否定するわけにはいかないであろう、それがこの提案の裏にも厳然としてあるわけでございます。
 そういうことになりますと、戸籍の記載もまた機会がございましたら申し上げますが、一見して養子であるということはわからないようにしたいと。それはなぜかというと、子供が小さいときに、学校に戸籍謄本を持っていったら他人からおまえは養子がとこう言われてショックを受ける、こんなことは非常に養親子関係にはよくない。したがって、一見してよそからわからないようにするということは必要である。しかし、戸籍の上にうそを書いてはいけないから、一応一見してわからなくても法律的な事項はきちんと書いておこう。それはしかし、本人が成長して自分で見るのでないと見にくいようにしておこう、そういう工夫をこしらえているわけでございます。
 したがって、親子関係の間では、養子であることの事実を隠すということは好ましいこととは考えられておりませんので、親子の間でその時期を見て、よい関係の中でよく子供に理解をさせていく。また、その言い方についてもうそのないように、自分が、親が本当に子供をかわいがって、そのために養子として来たんだということを言うようにさせたい、それが御指摘のテリングの問題でございまして、これは今回の提案につきましても、皆さんがこぞってこういうことにした方がいいということを言っておられるところでございます。
 ただ、私も本で読んだことではありますが、アメリカでは特にテリングということが言われておるようですが、この制度が定着するまでに四十年もかかったということが書いてございましたように、この問題は、今後定着していくまでにはいろいろな紆余曲折、体験、試行錯誤というものが考えられると思います。その結果、どうしていくのが我が国の社会で一番いいか、そこにおのずから方向が出てくるだろう、そういうふうに思っております。
#280
○橋本敦君 そこで、八百十七条の六もその関係の調和の一つとして苦労した条文だと思うんですが、実父母の同意ですね。その実父母の同意のただし書きで、「養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、」、十分な意思表示能力が実父母にあって、実父母が同意しない場合でも、これは同意とみなすということになるわけでしょう。そこで、これが非常に難しいんだけれども、大体実父母の気持ちも尊重しなくちゃなりません、子供の利益も尊重しなきゃならぬという複合的なそこの重なりがあるから同意を要件としている。ところが、その同意をしないということが実父母の乱用だと。子供の監護、養育、将来のためにはあなたは同意する方がいいんだと。実際の特別養子でこちらの家庭にいる方がいいんだと。
 こういうような状況があっても、心身ともに正常な、別に意思表示能力に欠けるところのない実父母が、いや私は同意したくない、ごう言っている場合でもそれはやはり同意権の乱用だよと、子供の利益を著しく害する場合はあなたの同意がなくても裁判所はやれるんだよということをこのただし書きで決めるには、この「養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」というのは、本当に認定できるかどうかということを私は心配するんですが、そこはどういう場合にこの規定が子供のために機能するとお思いですか。
#281
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおり、大変難しい判断でございまして、字の文面からだけではちょっと事態が想像できないような場面もございますが、こういう規定をつくっていく過程で、やはり当初考えておりますのは、やはり児童福祉関係の施設に入っているような子が対象になって物が考えられてきたわけでございます。
 したがって、そういう子は実親がおりましても、例えば強姦されて産まれた子供で、母親が十六歳、こういうようなのがいたといたしますと、これは手放したくないといっても、自分で養っていく能力もないし、現に施設におるわけでございます。そういうときに親がどうしても同意しない、こう言ったらどうしようか、そういうことを考えますと、同意にこだわっていては事が処理できない場合もあろう、そういうことが念頭にあってのことでございますから、両親が養っている子供を連れてきて同意するかしないか、そう言われますとこれは非常に難しい。むしろそういうケースは余り念頭にないと言った方がよろしいかと思います。そういう意味で、実際に出てくるものをどういうふうに判断するかは難しいのでございますが、私どもが典型的な例として考えている場合はそれほど難しくない、一見して同意しないことが不同意の権利の乱用であるというようなことはある程度考えられる、そういうつもりでこの文章ができたわけでございます。
#282
○橋本敦君 局長、それは難しいんですよ。そのただし書きの初めに書いてある実父母が子供を虐待しているとか、あるいは悪意で遺棄しているとか、自分がそんなことをやっているにもかかわらず同意しない、これは許せませんよとこれは言いやすいですよ、客観的に明白です。
 しかし、今おっしゃった十六歳か十七歳の子供であっても生まれた我が子がかわいい、何とかして将来私が育ててやりたいとこう思い込んで一生懸命努力している女性があり得るんですよね。そしてその女性は、いやあなたそう言ったってあなたの能力じゃだめだよ、こういって特別養子に持っていかれるということで、本人は我が子かわいさの余りにその家の近くに行って壁の陰か電柱の陰から子供を見るという、浪花節の話じゃありませんがそういう心理だってあり得るでしょう。そうなると、特別養子制度をつくってそこへやっても、その子供の精神的安定、また養親が本当に真剣に育てているということに対してディスターフにならないとも限らない。私はこういう人間関係というのは本当に複雑だから、これが全部裁判所の裁量、判断事項になるということでは家庭裁判所は本当に大変な重い責任を持つなということを痛感するんですね。
 それで、もう一つの問題として、今おっしゃったように、今度は逆に未婚の父がある場合、子供が生まれたことを知らされていないから知らないということがあった場合に、認知をしていれば同意するときに両方の同意。認知していないで知らないから自分は同意をするかしないかの機会を失したということが後でわかった場合にどうなるか。そういった事後の取り消しを含む法律関係というのは、もう審判の結果が出ちゃったらどうにもならぬということに制度的にはなるわけですね。ここらあたりの議論はなかったですか。未婚の父の同意権をどう見るか。
#283
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の前段でございますけれども、生まれたばかりで何とかしたいという親がいるときにというわけですが、特別養子は養親となる者が申し立てるわけでございますから、それを勝手に官権が奪っていってどこかの養子に入れちまうというわけではないので、そういう場合には成人になって養えるまで、六歳になる間まだ時間があるわけですし、その子は大概児童施設に入っているわけですから、児童福祉施設に入れて養育を続けながら親も独立すべくいろいろ準備をして、二十になってもう一度考えればいい、そういうことに普通はなるだろうと思うんです。生まれたすぐのときにこれは将来困るからどこかへ早くやっちゃおう、これはちょっと早計に過ぎるので、その辺は児童福祉行政の方にもう少し期待をしていいんじゃないかと私は思います。
 申し立て権者が養親でございますから、どこか無理に押し込んで養親になる者を仕立ててくればそれはありますけれども、そういう状況のもとでそういう申し立てができるかどうかというと、そういう不安定な状況のもとで申し立てはさせない方が児童福祉行政の趣旨に沿っているんじゃないか。そういう意味で、運用のよきを得ればそういうことは余りないんじゃないかと私は思っているわけでございます。
 それから未婚の父でございますか、どこかに生まれた子がいてもわからないような父親がいたといたしますと、これはそういうのは余り親として遇するのはどうかと思うんでございます。それで、わかっていて認知しないという親に至ってはなおさらでございまして、これは親子関係が切れるぐらいでございますから、認知の可能性だけの関係は当然切れないとおかしいので、親子関係が切れた後になってから認知するというのもいささか規定の整合性に合わない、そういうことで、議論はされましたが、これは消極ということで規定をオミットされているというわけでございます。
#284
○橋本敦君 そこで、次の問題でありますけれども、先ほど私が指摘した八百十七条の八の六カ月以上の試験養育期間の設定でございますね。この規定の仕方で、第二項なんです。「前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。」と、こうなっておりますね。こうした趣旨は、これは家庭裁判所が調査の対象としてきっちりとらえてやろう、だからその前から養育しているということであっても、その状況が明白である場合は別だけれども、請求があったときから最低六カ月は養護期間としてこれはよく見るよと、こういう趣旨で設けられているというように思うんですね。
 そうなりますと、つまり請求をしたときにはまだ実際は監護、養育していなくて、申し立てをしてから大急ぎで監護、養育するということも出てくるんですよ。それが本当に子供のための監護、養育が、それとも裁判所に審判を早くしてもらうためにその期間は必死で一生懸命おいしいものを食べさせ、お菓子もやりということはありませんが、そういうことをやるということになってもこれはいかぬでしょう。だからここらの規定の運用について、私が指摘したような「請求の時から」という規定の仕方に問題があるというお考えはありませんか。
#285
○政府委員(千種秀夫君) これは、例えば里子に行っておるとか、そういうことで既存の関係が十分把握できる場合は確かに必要ないんでございますが、何といいましても最終的に裁判所は自分の責任でその実態を把握して判断をするということになりますと、最低限その期間というか審査の対象になるべきものがないと、例えば、施設に入っていない子あるいは里子に出していない子については何も期間がないということになりますので、その最小限を保証する意味でこの六カ月ということに規定があるわけでございますから、その六カ月だけではないわけでございますし、いろいろな過去の実績というものも参考になるとは思うんでございます。
#286
○橋本敦君 要するに、「請求の時から」というように起算点をわざわざ書いだというのは、よく検討対象にするという意味でしっかり見ていきますよと、こういう意味ですね。だからその実を、この規定どおりやってもらわなきゃいかぬというように思います。
 そこで、その次の点としてお伺いしたいことは離縁の関係なんですが、全然離縁を認めないということではいけないということもあって、例外的に八百十七条の十の要件に合致するときは離縁もやむを得ないということになっているんですね。第二号で「実父母が相当の監護をすることができること。」、これが離縁の要件になっているでしょう。
 そこで、私が心配するのは、血のつながった我が子がやはりかわいいですから、一たん特別養子に出した実の父母が生活も安定した、十分養ってやることもできるようになった、相当の監護もできるようになった、こういうことで返してもらいたいというような離縁をそこから要求するというような、この「実父母が相当の監護をすることができる」ということになれば離縁の申し立てはふえやせぬかなと。そういう心配があれば、本当は特別養子で一生懸命に子供を育ててやろうという人も、いつ突然実父母からもう相当の監護ができるようになったから返してくれと言われるかもしれぬという心配があれば、本当に打ち込んで子供を育てるというのも難しくなりはせぬか、こういう心配もあるんですね。この規定についてこの適用、説明してくださいますか。私が言ったような心配はありませんか。
#287
○政府委員(千種秀夫君) そういう心配がないわけではございません。そこで、実父母が相当の監護ができるといって引き取りに来たときに、それだけの要件で離縁ができるようにしてあるかという問題がそこへ出てくるわけでございますが、それでございますと、御指摘のように養親の方が不安定になったりしてはいけません。そこでこの要件は二つ、両方の要件がなきゃいかぬという意味で一号の方は「養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。」という要件が加わっているわけです。ですから、二つなければ離縁できないというふうにしたわけです。
 それは結局、養子を成立させるときの要件の裏返しのようなものでございまして、入るときに厳しいから出るときも厳しくないと安定しない、こういう関係になっております。それをもう一度この手続の中で考えてみますと、子の利益のためになるかどうかという最初の判断でございますね。そういう離縁事由が発生しないということを将来見越すのは難しいんですけれども、そこをなるたけ見越して離縁の申し立てがないように調査した上で養子縁組を成立させる、こういう関係になってまいります。ですから、なかなかこれは禁反言というわけにもいきません。昔虐待しておいて今ごろになって何だと、こういう気持ちもないではございませんけれども、そういうもとの実態と離縁のときの関係というものはやはりある程度つながって考えていかなければならないかなと思っております。
 ただ、御指摘のように、これからやってみないとどういう申し立てが出るとも出ないともそれはわからないのでございます。
#288
○橋本敦君 本当に、法律は家に入らずということわざが古来からございますが、人間関係を律する、特に身分法、家族法というのは、人間の生活や社会環境、社会発展の中で複雑なものですから、法律でどこまで切れるか本当に難しいんですよね。ですから、こういう規定も運用によって合理性を持つようにしていかなきゃならぬということですね。そういう意味で第一号が第二号にかぶさるという御指摘、これはよくわかりました。またそうでなくちゃならぬと思います。
 そこで、二つの問題を最後に聞いておきたいんです。
 一つは、まず第一号の、せっかく裁判所が特別養子を認定して審判しているにもかかわらず、どういうことからか養親が虐待や悪意の遺棄というようなことで子供の利益に反するというようなことになってくることがあり得る、人間社会ですからね。その場合に、その子供が六歳未満であればまたどこかへ特別養子に行くということは法的に可能ですか。
 それからもう一つの質問は、離縁によって実父母のとこるへ帰ったとしますと、また血縁関係が法律上も表に出て回復するわけですね。行っていた間の法律関係というのは法律上どう評価するということになるのかという問題があるんですが、ここらはどういうように考えるのか。この二点を伺って、あとは次の機会に譲って、きょうは終わりたいと思います。
#289
○政府委員(千種秀夫君) 特別養子がさらに養子になれるかということでございますが、これはなれると考えております。特に離縁の要件の第二、実父母の相当の監護というものを期待できない場合に養親子関係において破綻を来すということもないではないかと思います。その場合には実親子関係で例えば親が子供を虐待するとかいう場合と同じように考えればいいわけでございまして、それは親権を剥奪して後見人を選任するとか、児童福祉法に基づいた行政的な援助をするとか、さらに特別養子を含めた養子ということも考えられるわけでございますから、特別養子が嫡出子と同じであるというのであれば同じように考えればよろしいかと思うわけでございます。
 もう一つは、離縁した場合の法律関係でございますが、これは非遡及的に復活するということでございまして、特別養親子関係の時点の法律関係はもとへ戻らない。その間に起こったいろんな相続とかその他のことはその人に効力は及びませんが、離縁した先は前からあったと同じ状態で効力が及ぶ、こういう関係になります。
#290
○橋本敦君 わかりました。
 それじゃ、きょうは終わります。
#291
○関嘉彦君 けさほど来専門家のいろいろ質問を承っておったんですけれども、法律の文言というのは専門家の人にも一見しただけではなかなかわからないように書いてあるものだというふうなことをおっしゃいまして、私実は安心したわけでございます。私も学生時代、法律というのは一番嫌いな学科でした。法務委員になって少し勉強しなくちゃいけないと思って法律の本を買ってきて読むんですけれども、何遍繰り返して読んでも全然頭に入らなくて、これは私はよほど頭が悪いんだと思って悲観していたんですけれども、専門家でもなかなかわからないようなものを我々わかるはずがないんで、その点についてはいささか安心した次第でございます。
 議題になっております特別養子制度の問題について若干質問を用意してきたんですけれども、これも今まで三人の専門家の方から非常に詳しい専門的な立場で質問されて、その後でございますので、何か真打ちの後から前座が出てきて話しているようなものでいささか気が引けるんでございますけれども、全然質問しないというわけにいきませんので、あえて勇を鼓して素人の立場から質問いたします。若干重複する点、ほとんど重複するんですけれども御了承願いたいと思います。
 この特別養子制度がつくられるようになりました経過は既に御説明ございました。昭和三十年代に一度法制審議会で議論されたけれども、ネガティブな意見が多くて留保になって、その後昭和四十年代になって都市化現象なんかが広がってきて、児童保護施設なんかに厄介になるような子供が非常にふえてきた。また菊田事件みたいなようなことがあって世論も少しずつ変わってきたのでこの法案を提出することにしたんだと。この経過はそれでわかったんですが、この特別養子制度の理念と申しますか、これも先ほどちょっとお話しになりましたけれども、立法の趣旨と申しますか、それをもう一度お話し願いたいと思います。
#292
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の趣旨に合致するかどうか心もとないのでございますが、特別養子制度の理念といいますのは、結局は国家、社会が子供の福祉のために養父母、児童をどういうふうに処遇していくか、こういうことであろうかと思います。従来の養子が自分の家族や家系や財産承継人あるいは老後の扶養というようなことを考えて個人的に考えていた養子というものを、社会の中で監護、養育していく必要のある子供に国家、社会がその責任において養子をして親を与え家庭を与えて保護していこう、こういうところに特別養子の理念といいますか、目的があると言えると思います。
#293
○関嘉彦君 実の親子関係を断絶するといいますか、切ってしまうという点が非常に重要な点だと思うんですけれども、この考え方は生みの親よりも育ての親、そちらの方が大事なんだ、そういう観点からこの法案ができたというふうに理解してよろしゅうございますか。
#294
○政府委員(千種秀夫君) 確かに特別養子制度をつくる基礎の考え方としてはそういう考え方が前提になっております。
#295
○関嘉彦君 これを質問しましたのは、今さっき橋本委員からも御質問ございました八百十七条の十の「離縁」の場合ですね。それで、家庭裁判所の、養親による虐待とかというふうなことの判定の場合ですけれども、これも程度問題で、どの程度のことを虐待かというようなことを判定する場合に、育ての親を非常に重視する観点からいうと、この条文の解釈なんかについてもしんしゃくする余地が出てくるんじゃないか、そういう点からお伺いしたんですけれども、そういう意味に理解してよろしゅうございますか。
#296
○政府委員(千種秀夫君) 判断の基礎としてそういう考え方も確かに関係はございますが、離縁に関して申しますと、血のつながった実親でありましても子供を虐待したり遺棄したりする人はいるわけでございまして、その点では、養親であろうと実親であろうとこの点では同じでよろしいのではないかと思っております。
#297
○関嘉彦君 戸籍の問題はまた後で専門家の人たちからいろいろ御質問があるかと思うんですけれども、前座が先に質問しておきますけれども、実の親子関係を断絶する、少なくとも表面はわからないようにしておくというのでありますならば、その戸籍の書き方が非常に問題になってくると思うんですけれども、その戸籍の書き方は一体どういうふうになるわけでございますか。
#298
○政府委員(千種秀夫君) これは、法案ができましてから戸籍法の施行規則のようなものを定めまして、その上で正式に決まることではございますけれども、今私どもそういう法制をつくる前提として、例えば戸籍関係につきましては、同じく法務大臣の諮問機関でございます民事行政審議会というものがございまして、そこにお諮りしてどういうふうに記載するかなんということも御検討いただいたわけでございまして、その結果によりますと、大体戸籍法をこういうふうに改正して実施していこうというふうに考えているわけです。
 まず第一に、実体法の規定で家庭裁判所の審判によって特別養子縁組が成立するわけでございますから、それが確定いたしますと、申し立てをした養親が、これは片親でもよろしゅうございますけれども、確定した審判を持って戸籍の役場へ行くわけでございます。そこで特別養子の戸籍の手続をしようといたしますと、戸籍吏の方としましては、実の親の戸籍に何年何月だれだれの特別養子となる縁組の裁判が確定したということをその養子の欄に記入いたしまして、その養子をその親の戸籍から除くわけです。それで養子のために一人だけの新しい戸籍をつくります。その新しい戸籍をつくるときには、既に審判によって確定しておりますから養親の親の名前で新しい戸籍をつくるわけです。その瞬間は、結局実の親の戸籍から子供が除かれまして子供だけの新しい戸籍ができたということになりますが、その次の瞬間といいますか、同時に、その新しい子の戸籍から今度は養親の戸籍に転入をさせます。この転入するときに、やはりその審判の経緯というのは身分事項欄に書きまして、この審判によって子供の一人の戸籍から入籍した、こういうふうに書くわけです。
 そして、でき上がった養親の中の戸籍というのは、父も母も養親ではありますが養の字は使いませんで父、母と。今の養子ですと実の父母と養父母とが親の欄に二重に書いてございますから、これは一見して養子の戸籍ということがわかります。しかし特別養子の場合は、親としては父、母と書いて、それは養親の名前が書いてあるわけです。また、子供のところには養子と書かないで長男なら長男、次男なら次男、こういうふうに書きますから、その欄においても実子と同じ書き方になってまいります。どこが違うかというと、戸籍の身分事項欄に審判によって入ってきたということが書いてある、こういうようなことになるわけでございます。
 そういうことによって、真実を偽らず、しかし一見してよそからおまえは養子だと言われるようなおそれのないような形にこしらえよう、こういうことで皆様の御了承を得て案を立案中でございます。
#299
○関嘉彦君 要するに、身分事項の欄に民法第八百十七条ですかによって云々という字句が入るわけですね。
 そうすると、それに関連するんですけれども、六歳に限った理由、これも先ほど来お話がございました。大体義務教育に就学する年齢を一応考えて、確かに六歳以下、七歳以下、八歳以下、議論すれば幾らでも議論できるんですけれども、一応義務教育に就学する年齢だと。そうしますと、義務教育に就学するのに今戸籍謄本が必要かどうか知りませんけれども、六歳ぐらいであれば八百十七条なんて書いてあっても全然わからないと思いますが、中学校ぐらいになってくるとほかの人と違うということはだんだんわかってくるわけですね。その場合に、まず六歳に限った、特例として八歳までありますけれども、その理由は、つまり養い親と子供を実の親と子供と同じようにその関係を安定させるためだ、それで実の親の影響なんかが及ばないようにするためだ、それを子供にも知らせないようにしてやった方がいいんだと。
 確かにそのとおりだと思うんですけれども、しかし中学生ぐらいになってからそのことは十分知った上で、しかしあの実の親とは関係を持ちたくないんだ、そういう場合もあるんじゃないかと思うんです。その場合には、この特別養子制度の適用はできないわけですね。やはり八歳を例外にしたんですから、例外的には少なくとも義務教育の終了までぐらいは認めてもいいんじゃないかというふうな考えもあるし、実は私の知り合いで八歳を超えたためにこの適用を受けられない、法律ができても適用を受けられないというんで非常に悲観している人があるんですけれども、その点どうお考えになりますか。
#300
○政府委員(千種秀夫君) 結局は、六歳に限った理由はどうかということになってくるかと思うんでございますが、御指摘のように、未成年といいましても小学校に上がるまでと小学校上がってからと、さらにまた大学に入るまでも未成年でございますから、その間に子供の意識、また法制度に対する認識とか、そういうものも移り変わっていくだろうと思います。
 そこで、どこまでやったらいいかということは、結局は、いろいろ賛否両論がある中で、まず手がたくやるという意味では一番子供の意思が確定しない幼児のときということで大方の意見が一致してそうなったわけでございますが、よその国、特にヨーロッパの国などはおおむねでございますが未成年で、十八歳以下でございますし、フランスのように十五歳というのもございますけれども、かなり上でございます。
 そういった制度が変遷していった過程を見ておりましても、最初八歳までであったものを十八歳まで延ばしたというイタリアのような国もございまして、これはやはりみんなにその制度が受け入れられ、需要があるといいますか、国民の支持が得られるということによって変わっていくものではないかと思うわけでございまして、当面はしたがってかなり狭く厳格にやりましたけれども、これは今後の推移を見て、長い間には広げたりそのほかの改正をしていく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えております。
#301
○関嘉彦君 将来は、その事態の推移を見て改正することもあり得るということですね。その改正は、原則としては六歳でありますけれども、例外としてそれをずっと上の方まで年齢を認めていくということですか。
#302
○政府委員(千種秀夫君) そこは、これからの推移を見ないとわかりませんので、原則を上げていってもよろしいし、とりあえず例外を認めていくという暫定措置も考えられないことではございません。
 ただ、この特別養子が、先ほど来申し上げておりますように、確かにそういう必要がある程度ではありますが、国民全部に関係があるかと言われますと、数の上からいって、かなり特殊な子供の救済のために使われるのではないか。したがって、それが国民一般に利用されるようなものであるかというと、養子そのものは現在でも十万を切るぐらいでございますから、なかなかどこまで原則を広げる必要が出てくるか、そこは今後の推移を見ないとちょっと予見しかねるところでございます。
#303
○関嘉彦君 先ほどもちょっと名前が出ましたけれども、四十八年の菊田医師事件のあの菊田医師が、ことしの中央公論の九月号にその批判をしておられる。お読みになったと思いますけれども、菊田医師は、人工中絶であるとか捨て子であるとか子殺し、それを防止するという観点から、この改正案に対していろいろの批判をしておられて、結論的に言えば不十分である。今度の改正では実親子の関係を、親族関係を断絶し、養子を戸籍上実子とすることしか認めていないので、母の戸籍、戸籍上の二重戸籍制という意味ですか、表向きの戸籍には出産の事実を記載せずに、それから今おっしゃった養い親の戸籍の方にも出生の日時、場所のみを記載して八百十七条云々というふうなことは書かない。そういう戸籍上の特別措置によって、いわば実子特例法とでも申しますか、そういうふうな考え方を主張しておられるんですけれども、この考え方をとらなかった理由。
 私は必ずしも菊田医師の言っていることに賛成ではないんですけれども、考え方としては一つ成り立つ考え方だと思う。この考え方をとらなかった理由。
 法制審議会あたりで議論がされましたかどうか。
#304
○政府委員(千種秀夫君) 私どもも、もちろん菊田医師のお書きになっているもの、あるいはそういう御議論は十分検討をし、また法制審議会でもそういう意見に対する意見というものは多く出たわけでございますが、結局その菊田医師の特に関心を持っておられる点は、やはり子供を中絶しないということにおりまして、それは医師の立場から当然でありますけれども、戸籍にどう書くかということはお医者さんの専門外の問題でございまして、法制審議会においては、そういうことのために身分関係を公証する戸籍の制度をゆがめることは好ましくない、またそういう身分関係をうそでごまかしていくということ自身が、これは身分法秩序に対して好ましいことではない。菊田医師事件をめぐる法律家サイドの意見というものは大体そういうところに集約されるわけでございます。
 翻ってそういう関係はどうするのかということでございますが、それはやはり身分関係をきちんと明らかにして、明らかにしてというのは何も世の中に公表してという意味じゃございませんけれども、制度としてはきちんとして、子供の人権を守るなら子供の人権を守るように制度をこしらえていけばいいじゃないか、そういう議論になりまして、ようやくこの特別養子制度というものが軌道に乗り、また結実したという経緯があるわけでございます。
 したがいまして、今度できた特別養子制度がそうした不倫の子をふやすのではないかというような御批判がありましたけれども、それはどちらかというと菊田医師事件のときに言われました実子特例法のような、産んだ親の戸籍を汚したくない、そっとどこかにしまってしまおう、こういうような考え方こそ危険があるわけでございまして、特別養子制度というのは、そういう意味では菊田医師の御意向には余り沿ったものではないかもしれないのでございます。
 それで、そういう必要があるかということを言われますと、それはまた必要があるのかもしれません。日本の場合古くから、結婚しないでできた子供は社会の中で別な親を仕立てて、その親の戸籍に入れたという例もございますし、現にそういうことをやっておられる人も田舎なんかではあるかもしれない。そういうことはこの制度ができたからといって消えないかもしれません。しかし、それを消そうとするのが、またそういうことをなくそうとするのがこの特別養子制度の実は目的ではないんでございまして、できた子供の人権をきちんと守って、制度の整合性もあるいは信実性も確保したい、そういう道を開いたということによって幾分かは、そうしたやみのルートと言っては語弊がございますけれども、国の制度からすれば、違った方向に流れていたものが正常な道に戻ってくるということはある程度は期待しているところでございます。
#305
○関嘉彦君 伝え聞くところによりますと、妊娠中絶なんかが非常に広がっている。菊田医師の主張するような実子特例法みたいなものが仮に制定されても、その妊娠中絶なんかを著しく減らすことができるかどうか。私、妊娠したことがないのでさっぱりわかりませんけれども、そこのところはなかなか難しいんですが、もし客観的なデータによって妊娠中絶なんか、こういった忌まわしいことを非常に減らすことができるとすれば、提案されている特別養子制度と並んで実子特例法というものをつくることも考えられるんじゃないか。
 戸籍の虚偽の記載というふうなことを言われましたけれども、先ほど言われましたように日本では自分の産んだ子供でもないのにそれを自分の子供だと届けている例なんかもありますね。何かそれうまく、私は今すぐそれをしろと言っているんじゃないんですけれども、今後の社会情勢の変化あるいは人倫関係の変化というふうなことを考えると、これと並んでそういうふうなことも考えていいんじゃないかという気がするんですけれども、法律の整合性という点からそういうことは考えられませんですか。
#306
○政府委員(千種秀夫君) 今まで長い間議論してきた中では、現時点ではそこまでやろうという意見は余りございませんでした。ただ、そういうことをおっしゃる方がいらっしゃいますから、そういうことは現にあるとは思いますし、そういうまあ言ってみれば親の戸籍を汚したくないからどこかへ隠したい、こういう必要といいますか、そういうことを願う人がいらっしゃる以上は、それに対して何らかの手当てを講じないと同じことが続いて起こるんではないか、そういう心配があるわけでございまして、そういうことはこれから先長い間にどうしたらいいかまだ考えていかなければならない問題だとは思っております。
 ただ、現時点でそれについて何か対策があるかといいますと、法律の方では特に考えておりません。どっちかと言えばそういう子供はつくらないようにしていただくということでございまして、それは法律以外の問題であろうかと思っております。
#307
○関嘉彦君 これは、質問というよりも私の感想みたいなものですけれども、実子特例法的な考え方がヨーロッパでは大体一般的と言っていいんではないですか。
#308
○政府委員(千種秀夫君) 実子特例法的な考え方というこの中身でございますが、特別養子と言われておりますのは、実は実子特例法とはちょっと違うつもりでいるのでございます。
 特別養子のことを実子特例法と呼ぶ方もいらっしゃったんですけれども、発想が、実子特例法というのは、養子ということじゃなくて初めから実子にしようというわけですから、そういう意味では私どもは養子は養子だと、隠したくないと、そういう意味で実質実子と同じような内容を持つ養子である。そういう意味ですから、特別養子というふうに言わしていただきますと、この特別養子のようなものは、ヨーロッパ諸国では未成年の子につきましてはそれが原則と言ってよろしいかと思います。
#309
○関嘉彦君 私の用語の使い方がちょっと不完全でしたので誤解を与えたと思いますけれども、いただいた資料の中にフランスの民法のことが書いてあるんですけれども、フランスの民法の完全養子制度というやつですね。単純養子制度ではなしに完全養子制度、これは実子特例法的な考え方のものじゃないんですか。
#310
○政府委員(千種秀夫君) これは、まさに私どもの提案しております特別養子と同じようなものとお考えいただいた方がよろしいかと思います。
 その「完全」という言葉なんでございますけれども、どういうふうな場合に使われるかと申しますと、養子になりまして養親と養子の関係ができるわけですが、実際の実子と同じだということになりますと、養親以外の親族との関係でも全く同じになるはずでございます。したがって、養親の兄弟とか親族がみんな親族になってしまうわけです。それが同じ場合が完全養子と言っているわけです。したがって、今私どもがやっております現在の養子制度も養親の関係で言えば完全養子なのでございます。
 問題は実方が切れるかどうかということで、そのことは断絶養子という言葉を使っておるんですけれども、断絶養子で完全養子なものが特別養子なわけでございます。今の日本の現状は完全養子ではあるんです。完全養子ですが実方の方が切れないという意味で二重の構造になっている、こういうわけでございます。完全養子という言葉はそういう意味で使われておるんですけれども、ここで使われているフランスの完全養子という言葉は、実はこの特別養子と同じ中身のものでございます。
#311
○関嘉彦君 今ちょっとその条文が見当たらないんですけれども、いただいた資料によりますと、戸籍の方でも民法の第何条によるというふうなことを書かずに、単に出生事実、それから日時、場所しか書かないというのでありますならば、いわゆる菊田氏の言っているような意味の実子特例法に近いんじゃないか、そういう意味で質問したわけです。
#312
○政府委員(千種秀夫君) そういうふうに感じられるのはごもっともでございまして、というのは、戸籍の制度というのは日本特有の制度でございまして、これは血縁関係を正確に把握する、また反映するというような特別な制度でございます。ですからヨーロッパ、アメリカも含めまして、欧米諸国では家族をまとめて帳面に載せるというような制度はないのでございます。みんな出生証明書というように一人ずつになっておりますから、親はだれと書けば、それが養子でも産んだ実子でもそれだけ見るとわからないようにできております。したがって、養親子関係の届けを出しますと、親のところを養親にして、親は養親が書かれてしまって、手続上の書類は裏へ隠されてしまいますから、いつも見えているのは現にある親と子なんでございます。そういう意味では、おっしゃるように発想的には実子特例法的な現象を呈しているわけですが、法律の規定、要件、効果という点では、私どもが言っております特別養子と同じようなものになっております。
#313
○西川潔君 どうぞよろしくお願いいたします。
 午前中からずっとお話をお伺いさせていただきまして、こんなに新しい制度、子供のことに対して諸先生方がこんなにまじめに、やさしくいろんな御意見を出されて、本当に正直なところうれしい気持ちでいっぱいです。
 僕はよく色紙に「叱かるな子供 来た道 笑うな年寄 これから行く道」とよく書かしてもらうんですけれども、きのうの夜から、もう夜を徹してずっといろんなことをお伺いしたくて勉強してまいりましたが、ほとんどのお話が出まして――先ほど関先生もおっしゃっておられましたが、真打ちが先にやって前座、前座がやりますともう最後は僕ら修業の身と、こうなるんですけれども、何かおいしい高野豆腐のだしを搾り取ったあとみたいなお話になると思うんですが、どうぞ御無礼をお許しいただきまして、重複するかもわかりませんが、よろしくお願いいたします。
 先ほど橋本先生のお話にも出たんですけれども、法律はその家の中には入ってこないという話には本当に感動しました。一つ一つの玄関から入りまして、そのおうちおうちにはいろんな悩みやら心配やらいろんなことがございます。毎日の生活は大変でございます。「となりの芝生」ではございませんが、そういう意味から、自分も特別養子のことを一生懸命お伺いしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
 今までお話をお伺いさせていただきまして、特別養子制度が子供の福祉のためということで新設されるんでしたら、現行の普通養子制度をもう廃止して、たくさんのお話を聞いたんですが、諸外国と同じように一本化をしてもらう方がかえって幸せが多いんではないかなというような気がするんですが、そういうことを検討していただくようなことは今後ございませんでしょうか。
#314
○政府委員(千種秀夫君) まことにごもっともなお話でございますけれども、特別養子制度というものは、我が国の従来の制度に比べますとかなり画期的な制度でございまして、果たして我が国の社会の中に十分受け入れられるかどうかというような疑問を呈する方々もかなり多かったわけでございます。
 先ほど来申し上げておりますように、そういう意見はだんだんと整理され、集約されてきているわけでございますが、私どもといたしましても、そういう批判がまだ強いということは十分認識しておりまして、そのために、この制度が最終的にまとまりますときに、かなり要件を絞らざるを得なかった、したがって、前から手がたくというようなことを言っておりますけれども、疑問のあるところはなるたけ妥協して、外して、そして特別養子をこしらえたという経緯がございます。そのために幼少の児童に限ったというようなことがございまして、そうしますと、六歳で切るものですから、それ以上の未成年について、じゃどうするかということになると、従来の養子制度をここは廃止をしてしまうというわけにもちょっと飛躍があり過ぎるんじゃないか。したがって、当面は従来の養子制度をそのまま存置した上で、とりあえずそこに救済を求めている子供たち、それに対する手当てをしようじゃないかというような形でこの制度が結実したと言うことができると思います。そういう意味で、将来の展望といたしましては、今後の運用によりまして、未成年の養子についてはこの特別養子の形でいくのが社会の中で一番好ましい、そういう世論が出てまいりまして、それが定着する暁にはそういうふうに改正していくということは十分考えられます。ヨーロッパでもそういうふうに進んでいって改正した、例えばイタリアのような国もないではございません。したがって、施行された後の運用状況を見て考えたいと思っております。
#315
○西川潔君 ありがとうございました。
 また、この特別養子制度という新しい制度ができますと、もちろん喜んでくださる方もたくさんいらっしゃいますし、また、これを真心で受けとめないで安易に考える方も中にはいると思います。ですから、子供を若いお母さんが、一時はよくコインロッカーの事件などもございましたが、安易に子供を産み捨てるというような風潮が出てこないのかなと、素人考えですが、そういうことになるとまたある意味での社会問題になり、そういうことが僕ら素朴な疑問になるんですけれども、このあたりは法務省はどういうふうにお考えでしょうか。
#316
○政府委員(千種秀夫君) この制度の規定を子細に見ますと、そういうふうに安易に子供ができるようにはできていないんでございますけれども、そういう風潮とでも申しますか、ムードといいますか、例の菊田医師事件以来ずっと出てきておりますところの未婚の母というような問題が、何かこれによって解決するんではないかという誤解を生ずるということもあながちないとは言えないかと思います。それは今の社会の雰囲気の中でこういう新しいものができたからその受けとめ方に対する誤解であろうとは思いますけれども、そういう意味では私どもも、この制度の運用はもとより、制度の趣旨をどのようにみんなに正確に伝えるか、これは十分考えていかなきゃいけない、そういうふうに考えております。
#317
○西川潔君 いろんなところでいろいろ勉強させていただいて、ニュースもこのためにもいろんな人にもお伺いしてきたんですけれども、小学校六年生でもう子供を産んだ、中学校一年生で出産したというような話もお伺いします。そのあたりをひとつどうぞよろしくお願いいたします。
 先日も、私のところに送られてきました手紙のお話をさしていただいたんですが、今回も一通いただいております。ある里親の方ですが、二人の子供さんを育てているんですけれども、二人の子供さんのうち、上の子供さんが七歳なんです。下の子供さんが五歳です。来年の一月十七日に上の子供さんが八歳になります。特別養子の年齢制限にかかるのではないかということで前々からいただいておったんですけれども、本当にぎりぎりでこの子は間に合う、よかった、お電話もさしていただきました。中には、兄弟で上の子だけが年齢制限で取り残されるというようなこともこれから出てくると思います。
 例えば、僕が考えまするには、兄が八歳を超えますと弟が長男になりまして兄が次男になるというような、こういうことが起こってはこないでしょうか。
#318
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の趣旨がちょっと理解できなくて違ったことになるかもしれませんが、今聞かれましたお子さんというのは、よその子供を預かって育てておるというようなことでございましたでしょうか。
#319
○西川潔君 里親さんでございまして、お二人をいわゆる養子にいただいているわけですね。それで、兄さんが八歳を超えた場合、新しい制度になりますと弟は大丈夫なんですけれども、兄さんは今までの養子制度でいくわけですから、戸籍上は弟が長男になって、兄が将来戸籍を見た場合には、おれはどうなっているんだという、そういう寂しさで、兄、弟というのが入れかわるような事態が僕は起こってくると思うんですが、いかがでしょうか。
#320
○政府委員(千種秀夫君) どうも技術的なことでございますが、特別養子になりますと、長男なら長男と書きますから、弟が長男となって、兄の方は普通の養子のままですと養子ということになってまいります。戸籍に記載される順序は、特別養子となった子は長男として末尾に記載されるということでございます。
#321
○西川潔君 そういうふうになった場合に、法律に臨機応変なんというのは大変御無礼な表現ですが、成人になったときでもお互いに兄弟が話し合って、もちろん親の承諾も得まして、そして裁判所なりそういうところへ寄せていただいて変えていただくというようなことは、将来そういうことはできないものでしょうか。どうしてもうちの中では兄が弟に頭が上がらないような、何か一抹の寂しさみたいなものが一生残るんではないかなと思うんです。
#322
○政府委員(千種秀夫君) 私もそこまで考えておりませんでしたので、そういうふうに戸籍を見て、おれが長男だというようなそういう子供は特別養子にしない方がよろしいんでございますが…。
#323
○西川潔君 でも、それは後でわかったことですから結果論になります。まあひとつ、こういうことも本当に、先ほど橋本先生がおっしゃったように、家の中にはなかなか法律は入っていかないというのはそういうことだと思います。でも、そういうお手紙をいただいて自分は本当に胸の痛い思いをしたんですけれども。
 話は変わるんですが、今度は父母欄だとか続き柄の記載を実の子供と同様にするのでしたら、養子縁組事項も一度記載するのはやむを得ないと思うんですけれども、転籍の際に移記しないという取り扱いにはできないものでしょうか。いわゆる転籍の際にこれを移記しない、もう書かないというふうにしてもらえないものでしょうか。
#324
○政府委員(千種秀夫君) 転籍のときに要らないものは全部落としますので、身分事項も落としてはいかがかと、こういう質問の趣旨がと思いますが、これは重要な事項でございますので転籍のときにも移記するということになっております。
 それで、それじゃ養子がわかってしまうじゃないかというような御心配がと思うんですが、これはわかってしまうわけでございまして、むしろそれを隠そうというのはどうもよくないという考え方なんで、一見して養子であるというような表示は非常に好ましくないけれども、身分関係が戸籍の上でよく見ればはっきりするということだけは表示しておきたい。それじゃ、どういう表示までは許されるであろうかということで表示の仕方をいろいろ研究いたしまして、子供であれば普通は理解できないが、大人になれば理解できるような表現ならば我慢すべきではないか、そういうことからこういう表示になっておるものでございますから、これは一応現在は転籍のときも移記するという建前で考えております。
#325
○西川潔君 朝からも何度か出ておって恐縮ですが、第八百十七条の三、「養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。」とあるんですが、養親が初めからひとり者の場合もあるでしょうし、またあるいは夫婦そろって養子を引き取って育ててきたんですが、一方が突発的な事故で、交通事故か何かで死亡してしまったような場合も本当にあると思います。このような場合に、普通養子を特別養子に変えることというのはできないものでしょうか。
#326
○政府委員(千種秀夫君) 確かに、そういう気持ちもするわけでございますが、やはり特別養子というものは子供の利益ということを優先させて、子供のために最も理想的な両親というものを授けたいという発想からできておるために、やはり養親になる者は夫婦であることが望ましいということで、これまた要件としては少し厳しいとも感じられるんですが、手がたくこういうような案でまとまった次第でございまして、これは仰せのとおりに、よその国では必ずしも夫婦である必要はない制度もございまして、そういう点はこれから先の必要、運用の経過を見て考えていきたいと思っております。
#327
○西川潔君 よろしくお願いします。
 何分にも、突発事故ということで、そういうふうな本当に子供のための福祉であるという意味でございましたらなおさらのこと、そういうことがある場合は優しい意味でのそういう処置を考えてやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、最後になりますが、画期的な制度ですし、こういう制度を心待ちにしていた人もたくさんいらっしゃいます。お手紙もいただきまして、喜びのお便りもいただいておりますし、この制度の運用に当たりまして、最後に、法務大臣の決意のほどを伺って質問を終わりたいと思いますが、よろしくお願いします。
#328
○国務大臣(遠藤要君) きょうは、各先生からもろもろの御質疑をちょうだいいたしておるわけでございますけれども、この問題は、先生御理解願ったとおり、子供の幸せという、子供の福祉のために、そしてやはり子供さんに家庭愛、そして父母に対する親子関係というものを徹底させたい、そういうような点で、現在の養子に関する法によっては不十分だという点からそのようなことに、法制審議会や何かでもしばしば議論されたことを御提案しておるという状態でございますので、これがぜひ一日も早く法の確定を願って、国民各層に御理解と御協力をしていただき、そして定着していった場合に、年齢の問題その他について検討して、さらに改善の方向でいきたい、こういうふうな考えを持っておるわけでございまして、どうぞそのような点を御理解願い、国民全般に対しての周知徹底の面においても法務省としてもろもろ検討いたしておるわけでございますが、何分法務省としては三階から飛びおりたような法案でございまして、大変皆さん方にもいろいろ御心配、御協力を煩わしておりますが、どうぞその趣旨を御理解願いたい。万全を期していきたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
#329
○委員長(三木忠雄君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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