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1987/09/10 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第5号
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1987/09/10 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 法務委員会 第5号

#1
第109回国会 法務委員会 第5号
昭和六十二年九月十日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月三日
    辞任         補欠選任
     下稲葉耕吉君     松岡滿壽男君
 九月四日
    辞任         補欠選任
     松岡滿壽男君     下稲葉耕吉君
 九月九日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     神谷信之助君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         三木 忠雄君
    理 事
                鈴木 省吾君
                守住 有信君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                林  ゆう君
                千葉 景子君
                安永 英雄君
                神谷信之助君
                関  嘉彦君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  遠藤  要君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房審
       議官       稲葉 威雄君
       法務省民事局長  千種 秀夫君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   早川 義郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       法務大臣官房審
       議官       佐藤 勲平君
       法務省入国管理
       局登録課長    黒木 忠正君
       大蔵省主税局税
       制第三課長    野村 興児君
       文部省学術国際
       局国際教育文化
       課長       田原 昭之君
       文部省学術国際
       局留学生課長   雨宮  忠君
       労働省職業安定
       局民間需給調整
       事業室長     戸苅 利和君
       労働省職業安定
       局企画官     吉免 光顕君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民法等の一部を改正する法律案(第百八回国会
 内閣提出、第百九回国会衆議院送付)
○外国人登録法の一部を改正する法律案(第百八
 回国会内閣提出、第百九回国会衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨九月九日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(三木忠雄君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○千葉景子君 それでは、前回に引き続きましてお尋ねさせていただきます。
 まず、きょうは、戸籍の処理について伺いたいと思うんですが、戸籍につきましてはひな形というんでしょうか、いただいているわけなんですけれども、戸籍の仕組みにつきまして今回の特別養子、いろいろと配慮があるようです。できるだけ身分関係が、はっきりしないというとおかしいですけれども、子供にも一定の程度はわかりにくい工夫をするというようなところもあるようですので、ちょっとその辺を御説明いただけませんでしょうか。
#5
○政府委員(千種秀夫君) 特別養子の戸籍上の記載につきましては、一面におきましては、従来の議論の中で、一見養子とわかることは好ましくないという一つの要請がございます。と同時に、もう一つは、戸籍というものが身分関係を公証するものであるという戸籍制度本来の使命がございまして、そのいずれをどこまではっきりさせるかという一つの妥協的な、あるいは政策的な問題としてこの問題が議論されたわけでございます。
 そこで、養子ということが全然わからないようにすると、その一方の要請は達せられるのでございますけれども、身分関係の続き柄がわからなくなってしまう。そこで、今回特別養子の戸籍につきましては、これから御説明するような考案がなされたわけでございます。これは、法務大臣の諮問機関であります民事行政審議会、いわゆる民行審といっておりますが、民行審の諮問に基づいてそうなってきたわけでございます。
 第一に、これは審判によって成立するものでございますから、審判が確定いたしますと、実親の戸籍からその特別養子の戸籍を新しく分離して、新しい子供だけの戸籍を編製いたしまして、その親の戸籍には、審判の確定によって除籍する、そういう記載をするわけでございます。その一人できました養子の戸籍、それができますと、そこから直ちに養親の戸籍に入籍をいたしまして、そのときにはもう既に審判によりまして、養親の氏によって戸籍ができておりますから、同じ氏で養親の戸籍に入る。その養親の戸籍には、やはり何月何日民法八百十七条の二による裁判確定ということを原因としていつだれだれの戸籍から入籍、こういうような記入をすることによりましてその続き柄がわかるようにするということでございます。
 ただ、ただいま申し上げましたように、養子の戸籍を見ますと、身分事項欄に民法八百十七条の二による裁判確定ということが書いてある以外は養子に関する記載は一切ございません。例えば、実父母のところは父、母と書いてございますし、子供の続き柄は長男とか次男とか、そういうふうに書いてあって、養父母とか養子という言葉は一切出ない、したがって、一見して養子であることはわからない、こういうような工夫をしたわけでございます。
#6
○千葉景子君 戸籍をどういう記載にするかというのはなかなか難しい問題で、大変工夫をいただいたというふうに思うんですけれども、これによりましても上の記載を読めば養子であるということはわかる、こういうことで、むしろ、そういうことが全くわからなくしてしまった方が子供のためにもいいんではないかという意見もあるようなんですが、そうしました場合の不都合が何かいろいろあるんじゃないかと思うのですね。続き柄が全然わからなくなってしまう、それでこういう工夫がなされたと思いますけれども、その辺はどういう問題点があるということが考えられますでしょうか。
#7
○政府委員(千種秀夫君) まず、特別養子につきまして問題が残りましたのは、近親婚の禁止という婚姻障害の問題でございます。したがいまして、これは優生上、結婚をする段階になりましたときにそういう障害がわからないというのは困る。また、戸籍制度というのはそういうことをわからせるための制度でもあるので、そこのところは最小限わかるようにしたい、そういう意味からもとの戸籍をたどれるルートというものをつくらざるを得ないということが一つございました。
 ただ、ただいま御指摘のように、戸籍の上でわからない方がいいということは一つありまして、外国の場合は戸籍という制度ではなくて、個人個人の例えば出生証明書というような証明の仕方になっておりますから、親の欄だけ直せばいいということで、我々の制度とはかなりそういう点で違った扱いができる。むしろ、養子であることを隠しやすいといいますか、見えにくいというか、そういう制度になっておるわけでございます。そういうことから、戸籍についても外国の例に倣って見えないようにしろという議論はかなりあったわけでございますが、ただいま申し上げたような婚姻障害の点が一つの問題でございました。
 それからもう一つは、養子というものを隠しておくということ自身が果たしていいことかどうかという根本の議論がございました。いずれは大人になる段階においてはわかるわけではないか。そういうことを一生隠すということが非常に難しいということと同時に、そういうことを隠すことは必ずしもよいことではないのではないか。外国のように戸籍のようなものがない場合におきましても、やはり養子というものは親が子供にある時期にちゃんと話して、自分はおまえがかわいいから養子にして育ててきたんだということを早いうちから言うのが、かえって親子関係を安定し緊密にするゆえんではないか。こういう議論がなされておるわけでございまして、それを告知というんでしょうか、テリングとよく言っておるようですけれども、そういうことが定着してきたんだ、またそういうことが好ましいんだ。そういうことから、そんなに隠すことばかり考える必要はないので、むしろ実質を告げるべきだ。
 戸籍において注意すべきことは、一見してわからないように、要するに、例えば子供がまだ養子であることを知らない段階において、戸籍謄本を学校へ持っていったら先生からおまえは養子かと言われたというように、他人からそういうことを言われて本人が驚くような状況は好ましくない。
 そういう意味で、戸籍は一見してわからないようにした方がいいけれども、本質的にはやはり親子関係においては養子であるというふうにはっきりさせた方がいい、そういうようなことがございまして、こういう状態に落ちついたわけでございます。
#8
○千葉景子君 よくわかりました。
 ところで、ちょっと一つ具体例で確認をしたいんですけれども、例えば、母親の非摘出子、いわゆる未婚の母のような場合、その子供を特別養子にするというケースを考えてみた場合に、そのときはいわゆる実の父ですね、まだ認知がされていないとしますと、父は法的には父親でないということになって、いわゆる実親の同意権というものはないということになるわけでしょうか。
#9
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございまして、特別養子につきまして親の同意という場合には、法律上の親の同意でございますから、認知していない父親は同意する親に当たらないというふうに考えております。
#10
○千葉景子君 同意権はない、そして逆に実父母との関係というのは断絶してしまうわけで、認知とかあるいは子供の側からの認知請求ですね、それもなくなってしまうということになるわけですね。
#11
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。まあ、断絶する前から法律的関係がないわけですから、強いて言えば断絶するものがないわけなんでございますけれども、その可能性があったということでございまして、その可能性が封ぜられるということになると思います。
#12
○千葉景子君 非常に厳しいといいますか、そういう感じがいたすわけで、確かに法的な父親ではないわけですが、実の父親であることはそのとおりで、法的になれる可能性もなくなってしまうということで、かなりこういう面でも実際の適用の場面などでは十分な説明等がやはり必要なんじゃないかなというふうに思います。
 これは、ちょっと念のためにお聞きしたところですけれども、今回の法律によりますと、縁組についてはいろいろな端緒といいますか、児童相談所ばかりではなくて、それ以外の端緒も考えられるわけですね。そうなりますと、養子あっせん、こういうものに対する配慮といいますか、少し考えていかなければいけないんじゃないか。我が国では割とこういう問題が未発達といいますか、ヨーロッパなどとは違うようなところがありますので、あっせんに対する法的規制などはする必要がないかどうか、その辺のお考えはいかがでしょうか。
#13
○政府委員(千種秀夫君) 児童福祉行政に関しましては、厚生省の方でいろいろと御検討いただいておるところでございますし、私どもから申し上げるのが適当であるかどうかは疑問でございますが、この特別養子をつくる過程におきまして関係があるということで、いろいろな打ち合わせその他連絡をとりました経緯から申しますと、もちろんそういうことに関しましては厚生省の方で特に力を入れてまたやっていただけると思っております。現に、児童福祉関係で申しますと、法のあっせんはもちろん制裁が規定してございますけれども、児童福祉相談所以外にも、そういう社会福祉法人あるいは民法法人で主務官庁の監督のもとにそういうことをする団体も現にございますし、そういうことはこれからだんだんと発展といいますか、盛んになっていくことを期待しているわけでございます。
#14
○千葉景子君 盛んになったりいろいろできてくるというのは私も別に問題はないと思うんですが、そうなりますと私的な、個人的なあっせんとかそういうケースも考えられないわけではないわけですね。こういうところに何か法の規制といいますか、例えばこういう組織と人材を備えていないとあっせんはやってはいけないとか、こういうことは特別今は考えていらっしゃいませんか。
#15
○政府委員(稲葉威雄君) その点は厚生省所管の法律でございます社会福祉事業法という法律がございまして、私的団体が養子縁組のあっせんの事業を行うという場合には都道府県知事に届け出をしなければならないということになっております。届け出義務が課してありまして、そして不当な行為があったときは、知事はその事業の制限または停止を命ずることができるという規定になっております。これの運用については厚生省によろしく配慮を私どもからもお願いしておりまして、この運用で十分対処できるというふうに私どもは考えております。
#16
○千葉景子君 はい、わかりました。
 それでは次ですが、今回、親子関係が新しく養親との間にでき、それから実親との関係では親子関係が断絶をするということなんですが、刑法との関係で尊属に関する規定などがございますが、この点についてはどういう適用になるんでしょうか。
#17
○政府委員(岡村泰孝君) 刑法上の親族関係の有無につきましては民法の定めるところによるわけであります。したがいまして、今回の改正案八百十七条の九によりますと、特別養子縁組が成立いたしますと、民法上実方の父母との親族関係が消滅するということになるわけでございます。そういたしますと、刑法上の尊属というものにもこの特別養子の実親は当たらないということになるわけてあります。
#18
○千葉景子君 そうすると、尊属に対する殺人とか傷害等の、今、問題はありますが条文がありますわね。そういうものほかぶらないということになるわけですね。
#19
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりでございます。
#20
○千葉景子君 いろいろとお聞きをしてきたんですが、私はこの法律自体は決して必要がないというふうには思わないんですが、養子である、あるいは子供の幸せ、福祉を考えるという観点に立っている法律だというふうに思います。しかしながら、子供の意思が全く関与できない仕組みになっている。まあ、小さいうちはよろしいかと思いますが、ある程度成長した場合、普通の養子に比べますと親の相続権も失う。かなりそこでは差が出てきますし、それから先ほどのような認知の請求権とかそういうものも失われる可能性がある。それから離縁という道もほとんど閉ざされているということで、かなり子供の意思が阻害されている。子供の幸せとは言うんですけれども、それだったらもう少し大人になった場合には配慮をしてもいいんではないだろうかという気がするんですね。これが特別養子の眼目だといえばそれまでなんですけれども、そういう面もございますし、親にとっても親子関係が断絶させられるということで、当初は問題なくても将来に向かって時期を経るに従って問題が出ないとも限らない、こういうことを含めましてこれをよく理解をし浸透させるという努力が法務省の方にも必要かと思います。
 こういう面を含めまして、最後に、大臣のこの制度に対する今後の取り組み方をお聞きしたいと思うんです。
#21
○国務大臣(遠藤要君) 先ほど来、先生と民事局との質疑応答を聞いていて、いろいろこの問題自体も完璧だとは申し上げかねると思います。しかし、とにかくこの制度を定着させてみて、その後にいろいろ問題点をさらに改善していかなければならぬじゃないかと。
 一つは、この問題で年齢が六歳ということに制限しております。この六歳がいいか悪いかということであり、また民事局長からお話しのとおり、審議会の方では、知らせた方がいいというのと知らせない方がいいというような二つのあれから民法八百十七条の二によって縁組を成立させる、つくるというようなことを明示しておいて果たしていいのかどうかというような点、そして、実親との離別ということを考えるとなかなか複雑な点がたくさんあると思いますけれども、しかし実際自分の子供をよそに特別に養子にやるというときには、いろいろ家庭環境、いろいろの問題から親子断絶をして、養父に自分の子供として育ててほしいという望みで縁組をさせる、そういうような点を考えると、子供の人権ということも大切であろうと思いますけれども、養父自体が自分の子供として育てたのにそれが学校教育が終わってから今度は子供の人権ということで実親との関係をどうするかというようなことになるとちょっとその点は子供として、また実親として今さらと、こういうふうな感じを持つわけでもございます。
 そういうような点、もろもろの点について衆議院の委員会でもいろいろお尋ねがございましたけれども、とにかくこの制度は児童福祉という面を重点的に置いた制度で、そして子供が、養い親の方で自分の本当の子供が生まれたからといって簡単に追い出していくというようなことをやめさせるためにはこれ以外ないというのが審議会の意向ではなかったかと、こう承知をいたしております。
 そのような状態で、今後の運用状況を見て特別養子のもろもろの点についてさらに検討していきたいと、こういうふうな考えであるということを申し上げておきたいと思います。
#22
○千葉景子君 どうもありがとうございました。
 それで、ちょっと時間をおかりして、つい先日、九月二日にいわゆる有責配偶者からの離婚という問題につきまして、最高裁判所の判決が出されております。それについて二、三点お伺いしておきたいというふうに思っております。
 この判決なんですけれども、大筋これまでの判決と、判例と違っているところ、そのあたりを含めて、今回の骨子といいますか、それをちょっと御説明いただけますでしょうか。
#23
○最高裁判所長官代理者(早川義郎君) 今回の判決のまず骨子を申し上げますが、ごく簡単に申し上げますが、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が当事者の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間に及び、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によって精神的、社会的、経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情がない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないとするものでございまして、従前の最高裁の判例は、原則としますと有責配偶者からの離婚請求は認められないということでしたので、今後は一定の条件のもとには認められる場合があることを判示しているもの、こういうことでございます。
#24
○千葉景子君 こういう判決が出まして、今後、有責配偶者からの請求も一定認めるということがこれからの家裁の調停とか審判、こういうところにも大分影響があるんではないだろうかということで、心配やら喜んでいるやら、いろいろ意見があるようですけれども、このあたりはいかがでしょうか。
#25
○最高裁判所長官代理者(早川義郎君) ただいまも申し上げましたように、今回の大法廷判決は一定の条件のもとにおいては有責配偶者の離婚請求が認められる場合があることを判示したものでございますが、この判例が直接適用される場面というものは離婚訴訟であろうと思いますが、離婚調停にもそれなりの影響を及ぼすものと考えております。
 ただ、家裁の離婚調停におきましては、従前から有責配偶者からの離婚の申し立てでありましても、調停委員会の事情聴取や調査官の調査によって当該婚姻関係が既に回復しがたいまでに破綻しておる、そして当事者の合意が調う限りにおいては離婚による解決の方が妥当である、そのように考えられる場合には、調停委員会といたしましてもその方向での説得を行っていた、そのかわり、相手方が離婚によってこうむる経済的な不利益であるとか、あるいは精神的な苦痛、こういったものは財産分与なり慰謝料等の離婚給付によってできる限り償っていくと、こういうふうな形で調停が行われてきたわけでございます。
 そういう意味では、今回の最高裁の判決によって家裁における調停離婚が大きく変わるかといいますと、それはないのではないかと考えております。ただ、相手方が調停の場面で離婚に応じないでいるような場合に、調停委員会といたしましてもその事件が調停不調で訴訟に移った場合に訴訟でどういう結果になるのか、そういった最終的な落ち着きぐあいについての見通しをつけながら調停をやっておりましたので、今後は離婚の方向での説得というものはある程度しやすくなるのではないかと考えております。
 ただ、有責配偶者からの調停申し立てということになりますと、申立人が夫であって相手方が妻であるという場合がどうしても多かろうと思われますが、そうなりますと経済的な弱者である妻の離婚後の生活の保障であるとか、あるいは子の監護、こういうことについては家庭裁判所としても一層の配慮が必要になってくる、かように考えております。当該夫婦の婚姻期間であるとか、年齢であるとか、あるいは当事者の経済的な資力であるとか、未成熟子の状況であるとか、あるいは双方の有責性、こういったものを勘案しつつ離婚給付や養育費の取り決めについての細心の考慮を払う、こういう形で調停が進められるのではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、今後、調停はこの判例の趣旨をよく踏まえて行われるべきでありますので、そういう意味ではこれから各種の調停委員の研修や研究会の機会にこの判例の内容を正確に知らせ、また、その趣旨というものを十分理解して行うようにいろいろと検討してまいりたい、かように考えております。
#26
○千葉景子君 ぜひそのようにしていただきたいというふうに思います。
 といいますのは、有責配偶者からの離婚請求を許さないというのは、そもそもが踏んだりけったり判決と言われるように、自分の方で責任をつくっておきながらかってにまた離婚をして、女性にとっては踏んだりけったりの結果に落ち込まされる、こういうことを避けるという趣旨もありまして、多分こういう有責配偶者からの離婚請求が認められないできていたかというふうに思うんです。そういう意味では、今の状況の中でも離婚後の女性の生活というのはそう楽なものではない。そういうケースが多いかと思うんですね。そういう意味ではその経済的な配慮、こういうものが何とも必要だというふうに思います。
 これは、福祉なりそういう面での問題でもあるかと思うんですが、そういう意味で、例えば、法的にこの有責配偶者からの離婚について要件、条件といいますか、そういうものをつけて明確にする。例えば、何年以上の別居ならいいとか、あるいは子供が何歳以上でなければいけないとか、いろいろ考えられますが、そういう条件をこれから法的に付していく、こういうことは御検討はなさっていらっしやいませんでしょうか。
#27
○政府委員(千種秀夫君) 今、具体的にしているかということになりますと、まだそこまでしているわけではございませんけれども、諸外国の例を見ておりますと、一つには、離婚法の歴史というものはかなりいろいろな社会的要素がありまして一概に比較するわけにはまいりませんけれども、外国の最近の離婚法は、先生の御指摘のような点はかなり細かく規定をしております。そういうことは今後大いに参考にしていくべきことかと思ってはおります。
 ただ、日本の場合は、本法につきましては、一つには協議離婚というものがございまして、かなり自由に任されておりました。外国の方は協議離婚というものがないために、それをまた裁判の中へ取り入れて合意による離婚であるとか、破綻主義であるとか、有責主義であるとかいろいろな規定をしていく中で、どういうものを破綻状態というかということでいろんな条件が出てきたという経緯がございます。
 日本の場合は、そういうことで当事者の意思に任されていた部分、それから裁判所の裁量に任されていた部分がかなり広くて弾力的になっておりましたので、その実務のあるいは実際の中でそういうことが評価され、また、問題になる場合に初めて判例になってきたという経緯がございますので、そこに出てきたいろいろな問題を諸外国の例等見比べて、必要とあらばそういう関係を整理していく必要があろうと考えております。
#28
○千葉景子君 それから、それと同時に、離婚効果といいますか、例えば財産分与でありますとか、慰謝料でありますとか、それから子供の扶養の養育費、こういう問題も統計上などは必ずしも十分な額が払われているとまでは言えない状態だと思うんですが、このあたりにつきましても、これは実効性があるかどうかは別といたしまして、例えば、収入の半分は養育費として渡すとか、あるいは三分の一を給付をするとか、こういう形も考えられるかと思いますけれども、こういうところの法的規制あるいは整備、こういう点はいかがでしょうか。
#29
○政府委員(千種秀夫君) その点もただいま申し上げたこととほぼ同じになるかと思いますが、やはり外国の立法ではそういうことを割合にきっちり書いている、これは一種国民性ということにも関係がございますけれども、そういう立法例もあるようでございます。
 今まで、私どもの日本での実務の運営というものはかなり裁判所の裁量に任されているだろうと思いますし、また私どもの家庭裁判所というものはそういうことができるような仕組みになっているという利点もあるかと思います。そういう意味でその運用をもう少し見きわめて、必要とあらばそういうことも検討はしてみたいと考えております。
#30
○千葉景子君 よくわかりました。
 破綻主義といいますか、有責配偶者からの離婚請求を認めるということも、一つの時代のいろいろな意識の変化、条件の変化などによるものだというふうに思います。ただ、先ほど申しましたように踏んだりけったりということがまた繰り返されるようなことがないようなぜひ配慮をしていただきたいと思います。裁判あるいは調停などは個々の判断の問題ですので一概にこうせいと言えるようなものではないかと思いますけれども、ぜひその辺の御配慮をお願いいたしまして私の質問を終わらせていただきます。
#31
○猪熊重二君 前回に引き続きまして、法案の逐条的な内容について若干お伺いしたいと思います。
 八百十七条の三についてお伺いいたします。
 この八百十七条の三というのは養親の資格要件を定めた規定であると思いますが、そうでしょうか。
#32
○政府委員(千種秀夫君) そのとおりと思います。
#33
○猪熊重二君 この一項で養親となる者は、夫婦でなければならないと規定していますが、ここに「配偶者のある者」というのはいわゆる法律上の夫婦を指すのであって、内縁は含まないということでしょうか。
#34
○政府委員(千種秀夫君) 条文の解釈としてそのように考えております。
#35
○猪熊重二君 二項の文言についてお伺いしたいんですが、「夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。」という規定の意味はどういうところにありましょうか。
#36
○政府委員(千種秀夫君) これは共同して養親となることが必要だということから実体的な要件としてそのように書いたものであろうと思いますが、これは実際に手続の上で申し立てる場合においても夫婦は共同して申し立てることになろうかと思います。もっともこの中し立て手続につきましてはさらに家事審判規則において定められることとなると思います。
#37
○猪熊重二君 「他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。」というだけの文言を読むと、申し立ては夫婦の一方でできる。しかし実際に養親となるためには他方の一方も承知しなければならない。すなわち申し立ては一方だけでもよろしいというふうにも読めるのですが、そういうことじゃないわけですか。
#38
○政府委員(稲葉威雄君) これは八百十七条の二の解釈になるわけでございまして、八百十七条の二では「養親となる者の請求により、」「特別養子縁組を成立させることができる。」と、こう書いてありますので、この場合には夫婦が共同して養親となる。したがって、養親となる者は夫婦である、こういう関係になろうかと思います。
#39
○猪熊重二君 この二項のただし書きについてお伺いします。
 二項のただし書きは、「ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。」と、このようにただし書きは規定してあります。そうすると、一方の配偶者の嫡出子もしくは特別養子を特別養子とする場合には一方配偶者だけの特別養子を認める、この場合には申し立ては一方配偶者だけでよろしいということになるわけでしょうか。
#40
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。
#41
○猪熊重二君 そうすると、他方の配偶者の意思というものはどんな段階でどのように確認されるんでしょうか。
#42
○政府委員(稲葉威雄君) それは、八百十七条の六におきまして、「養子となる者の父母の同意がなければならない。」という規定がございます。これの一般的な適用局面でございまして、裁判所が当然それは確認することになります。しかし、当然そういう場合には事前に相談した上で申し立てをするのが当たり前でございまして、同意がないというようなことはほとんど考えられないというふうに思っております。
#43
○猪熊重二君 この場合、例えば妻の嫡出子を夫が特別養子にする、このような場合に妻の例えば三男を夫の方が特別養子にするといった場合に、この特別養子の続き柄欄にはどのように記載されるんでしょうか。
#44
○政府委員(千種秀夫君) 戸籍一般の原則でございますが、現にそこに夫婦、要するに、子供からいえば両親、その続き柄を表示することになっておりますので、特別養子の場合に養父母がございますとその養父母の子供になった者が初めてであればそれは長男ということになります。したがって、前に三男であった者が今度は長男と表示されることになるわけでございます。
#45
○猪熊重二君 そうすると、妻の方の三男が今度は夫婦の特別養子になって長男になるというと、戸籍には三男と書いたり長男と書いたり二つ書いてあるわけですか。
#46
○政府委員(千種秀夫君) そう言えばそういうことになります。
#47
○猪熊重二君 何だか一つの戸籍で長男になったり三男になったり、この間の西川委員の話じゃないけれども随分おかしな話ですが、そういうことなんでしょうか。
 それから、他方の配偶者の養子を特別養子とするには夫婦で養親となることが必要だということですが、これはどうしてそういうことになるんでしょうか。
#48
○政府委員(稲葉威雄君) 先ほどの問題でございますけれども、三男という記載と長男という記載が同時に併存するわけではございませんで、前の記載は消しますので、新しい戸籍の上では長男という記載だけが現存いたします。ただ、局長が申し上げましたのは、そういう記載がされたということは事実でございますので、それがある意味では併存しているということになるわけであります。
 夫婦で養親となることが必要だということにいたしましたのは、新しい親をつくるわけでございますから、これは完全な親で、片親から子供が生まれるというのは、それは先ほどの未婚の母といいますか、非嫡出子というのがないわけではございませんけれども、それは祝福された状態で社会に生まれてきているということではないのが社会的な実態でございます。そういうことを考えますと、子供の幸福のためにはやはり完全な父母を与える、そういう形にすることが望ましいのではないか、そういう見地からそうしたわけでございます。
#49
○猪熊重二君 一般の養子の効果として民法八百九条は、「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子たる身分を取得する。」と、こう規定してあるわけです。だから、一般の養子の場合でも、嫡出子にもかかわらず、この場合には先ほどの二項本文と違って夫婦で養親とならなきゃならぬというこになると、この規定と矛盾するように思いますが、いかがでしょうか。
#50
○政府委員(稲葉威雄君) 普通養子の場合には実方との縁が切れるという関係がないわけでございまして、特別養子の場合には実方との縁が切れるという効果が生ずるわけでございます。いわば、積極的な面での養親の嫡出子たる身分を取得するという点については同じでございますが、消極的な効果でございます実方との関係が切れるという関係をつくるためにはやはり夫婦共同して縁組をするべきである、こういう考え方になるわけでございます。
   〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕
#51
○猪熊重二君 結局、一般の養子の場合には実方との親族関係が切れないので、それで特に養子の場合であっても夫婦で特別養子縁組をしなければならない、それによって実方との身分関係が切れるということになるんだ、こういうわけですね。
#52
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。
#53
○猪熊重二君 続いて八百十七条の五についてお伺いします。
 この六歳、八歳というような年齢制限については、先ほどからもお話がありましたように、どの辺がいいかというのはやってみなきゃわからぬという側面もあるわけですが、また、それについて民事局長も施行後の国民的な要望というふうなことによって変動することもあり得るというふうなことも述べておられるところです。ただ、私としては、六歳、八歳の年齢制限そのものはそのものとして、この改正法が施行された直後の問題についてちょっと心配するわけなんです。
 これは、前の委員会のときに西川委員の方からもお話がありましたけれども、法が施行されて特別養子になりたいといったときに、六歳をちょっとでも過ぎていると原則的に特別養子になれない。何とかしてこの附則によってしばらくの期間の経過措置みたいなものを考える余地はないのか。
 例えば、この法律を施行して半年間ないし一年間ぐらいの間には、六歳とあるけれども、これを十歳にするとか、十二歳にするとかいうふうなことになると、特別養子という制度ができたから私も特別養子になりたい、あるいは特別養子をつくりたい、こういう人も救われるわけです。ところが、このままでいくと一日過ぎてももうできない、こういうことになってしまう。しかも、これは全く新しい制度なんですから、やはりこういう制度をつくるときには、こんないい制度ができたんだから私もという希望があるとすれば、そういう人の希望にこたえるためにも何か経過措置について附則で定めるというふうなことが妥当だと思いますが、いかがでしょうか。
   〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕
#54
○政府委員(千種秀夫君) まず、この年齢を切りますと必ずどこかで一日違いという人が出てくるわけでございまして、これは何歳で切りましてもそこは救えない問題でございますから、そこはあきらめていただくしかないんでございますが…。
 あと、経過措置といいましても、六歳、八歳をさらにということになりますと、それでは一年延ばして八歳を九歳がいいか十歳がいいか、今度はまだその境目がなかなか難しくなってまいります。これは何か権利でございますと、さかのぼって何年間は認めてやろうということになってくるわけでございますが、特別養子に年齢を加えたというのは、その養子が幼心であって、自分の判断というものがまだつかない幼児ということを一応の基準として考えたものでございます。
 もし、その考え方を貫きますと、十五歳ないし二十歳というような自分の判断能力が相当出てきたものにつきましてはちょっと認めるのはいささかどうであろうかと。それを認めるのならば初めから認めた方がいいんじゃないか、こういう議論に戻りまして、結局は六歳というものを基準として考えたものでございますから、経過措置としても特別な手当てをしなかったわけでございます。
#55
○猪熊重二君 ちょっとしつこいようですけれども、大体六歳というのが別に合理的根拠があるわけじゃなくして、まあまあ六歳ということで六歳となっただけのことなんです。だから、六歳というものに非常に客観的な、六歳でなけりゃならぬという理由があるなら別だけれども、たまたま六歳と決めただけなんです。
 だとすれば、この法が施行されたときに六歳一日の人は、もうおまえさんはだめだと何も言う必要はないんであって、今、民事局長がおっしゃるように、どこで決めてもそれは出っ張る人は出てくるんです。しかし、まあまあ六歳ぐらいがいいだろうというなら、六歳一日を含んで七歳、八歳、十二、三歳ぐらいまではどうか。それも長い期間じゃなくて、法が施行されて半年か一年ぐらいの間、国民が法を知るまでの期間ぐらいの経過措置があった方が、せっかくいい法律だからということでつくっておきながら、適用が非常に狭いということでは困るんじゃないかという点で申し上げたわけなんです。再考の余地はないわけなんですね。
#56
○政府委員(稲葉威雄君) この六歳という基準につきましては、一応、法制審議会の中間試案というもので六歳という案を提示しまして、そしてなお十二歳とすることも考えられるがどうかということで各界の意見を伺っております。それに対しまして六歳がいいという意見が多数を占めまして、そのためにそのような年齢に一応セットしたわけでございます。これは先ほど局長が申し上げましたように、新しい親子関係をつくるというためには幼年期である方が望ましい、完全な親子、実父母と同じような関係をつくるためにはそうである方が望ましいという一種の心理学的な配慮に基づくものでございますけれども、一方では外国ではもっと上の年齢のものまで認めているものもございます。
 したがいまして、この点は将来検討の余地があろうかと思いますけれども、一応そういうものに特別養子が適しているんだということを前提にいたしますと、十二歳までしたときに、先ほど局長も申しましたとおり、それは特別養子に適しているという年齢ではない、一応この法律の建前としてはそういうことになるわけでございまして、経過措置とは言えやはりそれを認めるということは制度の本来の趣旨からやや外れるのではないかということで、いろいろ検討いたしましたけれども、経過措置は今回は見送るということになったわけでございます。
#57
○国務大臣(遠藤要君) 今の猪熊先生のお尋ねに対して民事局からそれぞれ答弁させていただきましたが、先ほど千葉先生にもお答え申し上げているように、この法案は今審議会でそういうふうになったからということだけではないので、法務大臣として責任持って提出をいたしておりますので、審議会が提出しておるのではございません。私が提出をいたしております。
 そういうふうな点もございますので、線の引き方にもいろいろあろうと思いますけれども、とにかくこれを一度やらせてみていただいて、先生方の御意見もそういうようなのがあるということで、あくまでも児童福祉ということを、児童の幸せということを考えてのこの制度でございますので、一度これをやらせてもらって、再検討する場合もあり得るということで御理解をちょうだいいたしたい、こう思っております。
#58
○猪熊重二君 まことに大臣のおっしゃるように、今後いろいろ頑張って、国民的合意を得ていい法律にしていくということは非常に大切なことだと思います。
 次に、八百十七条の六の養子縁組に対する実父母の同意についてお伺いします。
 この場合、この実父母というのは養子が実子の場合、養子の場合、それぞれどの範囲の人が同意をなし得る父母ということになりましょうか。
#59
○政府委員(千種秀夫君) 要するに、法律上の父母でございますから、養子の場合実親である父母、養親である父母、これも含まれるわけでございます。
#60
○猪熊重二君 実父母の同意に関連して、先ほど千葉委員の方からもお話がありましたけれども、認知していない父あるいはこのただし書きに規定している「意思を表示することができない」父母ということで、この「意思を表示することができない」父母という中には所在不明の父母も入るんだというふうなことが前回民事局長からお話あったわけですが、そうすると、認知していない文もしくは所在不明ということでたまたまこの縁組の際にいなかったというふうな父母で縁組に対する自分の同意、不同意についての意思を全く無視されてしまったような親の、縁組に対する不服申し立て手段みたいなものは確保されているんでしょうか。
#61
○政府委員(千種秀夫君) 御質問の前提にございます法律上の父でない者、認知していない父、こういう者が外れる、またただし書きでその意思表示ができない、または所在がわからない、こういう者が外れるということは御説明のとおりでございますが、この手続上の保証につきましては、これは例えば偽って、いないといってそういう者を除外して申し立てた場合にその本人が不服を申し立てられるか、こういう御趣旨かと存じます。こういうことにつきましては、今後この手続につきまして家事審判規則ができて不服の申し立てなどの規定ができることと期待しておりますが、例えば、即時抗告の手続でございますと本人がその追完をする。即時抗告をして、もし確定してしまった後でありますと再審に準ずる手続、これは家事審判法手続から非訟事件手続法、さらには民事訴訟法を準用しておりますが、そういう準再審というような手続、こういうものによって不服の申し立てを認めていくことになろうと思っております。
#62
○猪熊重二君 次に、八百十七条の八についてお伺いします。
 八百十七条の八は「六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。」という規定なんですが、この二項で、「前項の期間は、」「請求」、要するに、養子縁組の「請求の時から起算する。」と、こういうことになっています。そうすると、請求のときにいまだ監護していないときはいつから起算するんでしょうか。
#63
○政府委員(千種秀夫君) これは実質的に考えて六カ月以上の監護の状況を見て判断するという趣旨でございますから、請求のときに通常は監護をもうしているだろうということが前提になってこういう文言になっておりますが、もし請求のときにいまだ監護していないときには実質的に監護を始めたときからそのように考えるべきだと思います。それが六カ月以上の監護という、「以上」というところにかかっているのではないかと思います。
#64
○猪熊重二君 そうすると、特別養子縁組の請求をするについては、特別養子となるべき者を現に監護しているということが請求の要件であるというわけじゃないんですね。
#65
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおりでございます。
#66
○猪熊重二君 八百十七条の九についてお伺いします。
 この八百十七条の九についても先ほど千葉委員の方からも質問があったんですが、養子と実方の父母との親族関係は終了するという規定になっております。この認知していない父もしくは母、まあ母ということは余りありませんから、認知していない父との親族関係も終了するんでしょうか。
#67
○政府委員(千種秀夫君) この親族関係というのは、法律上の親子関係でございます。そういうものを基礎としておりますから、認知していない父につきましてはそもそも法律上の親子関係がないので、断絶する前提となる親族関係がないということを先ほど申し上げたわけでございますが、言いかえますと、認知をする潜在的な関係といいますか、そういうものがこの効果として終了することによって認知ができないという関係になると考えます。
#68
○猪熊重二君 しかし、認知していないといっても父は父なんですから、この父の同意ももちろん何ら考慮されない、何にも知らない間に認知をする権利、親子となる権利が消えてしまう、こういうことになると、認知していない父から親子関係存在確認請求とかそういうふうな裁判でも起きたときに一〇〇%親子関係を認めないということが憲法にも反しない、法律に適合するんだというふうになるというお考えはお持ちなんでしょうか。
#69
○政府委員(千種秀夫君) 極端な話をいたしますとそういうことになるんでございますけれども、もし認知をしていない父親がいるということがわかりましたら、それに黙ってそうっとやろうということを考えているわけじゃないんで、やはりそういうものはちゃんと身分関係を整序して、それぞれの意見を述べて状況を判断してやるのが子供のためであろうと思いますので、そういうことがわかっておれば恐らくは認知もさせるでございましょうし、その意見も聞くと思うのでございます。
 そういうことを前提として考えます場合には、その特別養子縁組はもう六カ月以上の監護状況を見て裁判所が定めるわけでございますから、その後になって、おれは認知をしたいと思うが、させないのは憲法違反だと言われましても、これはちょっと親の義務を果たしておるのかなということから考えまして、違憲とも言えないのではないかと思うわけでございます。
#70
○猪熊重二君 この血族関係の断絶ということに関連して、先ほども話が出たんですが、私としてもどうしても納得できないのは、特別養子になって実方との血族関係が断絶する、これはそれでいいんですけれども、養子がある程度の年になって、特別養子縁組の壷父母が実父母のような形になるわけですが、こちらはこちらで維持しつつ、なおどうしても実際の生みの親との関係を持ちたいというふうなものを全く認めないということになると、養子の個人としての権利、個人として尊重される権利、養子の幸福追求権、要するに、憲法十二条に反するというふうにも考えられるんですが、いかがですか。
#71
○政府委員(千種秀夫君) この八百十七条の九の断絶の効果というものは、法律上の親族関係が終了するということでございますから、自然的な血縁関係あるいは親子関係と申してもよろしいかもしれませんが、そういうものまで切ろうということはどだい不可能なことでございまして、そういうことについて子供が大人になり、自覚をして交渉を持とうということはむしろ結構なことではないかと思うわけでございまして、血のつながった親であるから、身分が異なり環境が異なっても、それなりに孝養を尽くしたいと思えばそれはそれでよろしいのではないかと思います。そういうことまでも禁じた趣旨ではございません。養子について、親子関係でテリングと言って告知をしろということを言う以上は、養子であるということを自覚すればおのずからそういうことも発生してくるでありましょうし、それを拒否する趣旨は少しもございません。
#72
○猪熊重二君 まさに今局長がおっしゃったように、養子がこれが本当のおっかさんだ、これが本当のおとっつあんだということで孝養を尽くしたい、親子の情を持って親として子としてやっていきたいと、これを法律がやっちゃいけないとかどうだとか言うことはできない、それはもう当然の話なんです。
 私が言っているのは、そうだとしたらそういう養子と実父母、一たん親子関係が断絶した実父母に法律的にも親子としての関係を認めるべきじゃなかろうかと申し上げているんです。一生懸命孝養を尽くす、尽くさぬ、これは事実の問題であって、法が関与する問題じゃない。そういうふうに一生懸命やっているけれども法律的には他人だよという状況じゃなくして、養子に実父母との親族関係を復活する権利というものをどういう要件を限定するにしろ認めるべきが妥当じゃないか、こう申し上げているわけですね。
#73
○政府委員(稲葉威雄君) 法律的な関係と自然的な関係が断絶、そごするというのは今までにも例があるわけでございまして、例えば、嫡出否認という制度が一定の要件がございまして、夫婦間の子供としてある一定の時期に生まれますと、実際にはその父親の子供、夫の子供でなくても、もうその夫婦の子供になってしまうわけでございまして、これは後で争いようがないわけでございます。
 これは、婚姻生活の安定と申しますか、あるいは親子関係の安定、家庭の安定というもののために、そういう自然的血縁関係とは離れたところで法律関係を固定してしまおうという考え方に立っているわけでございますが、この特別養子制度もそういう面がございまして、結局、子供の幸福のため、あるいは養親との結合の強固なことを通じて、そして安定した家庭生活、家庭というものをつくるためには復活を認めるということは適当ではないという判断をしたわけでございまして、法律制度としてはそういう意味合いを持つということを御理解いただきたいというふうに思っております。
#74
○猪熊重二君 結局、今あなたがおっしゃったように嫡出否認の訴えの期間が非常に少ない。法律的には親子でない者を親子にするような形になる。これを是正するためには、嫡出否認の訴えが認められないかわりに親子関係不存在確認の訴えということで、結局は法が裁判において実質的に親子関係でない者は親子関係がないということを確定せざるを得ない、それと同じような意味で私は申し上げている。
 時間がありませんから、八百十七条の十について、この一項の離縁について、養子もしくは検察官の申し立ての場合に一号だけの要件でよろしいんじゃなかろうか、二号の要件は必要ないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#75
○政府委員(千種秀夫君) 考えようによるわけなんでございますが、この特別養子は結果として実子と同じように考えるということを目標にしております。したがいまして、実子の場合ですと、親が悪意の遺棄だとか、養子の利益を著しく害する。事由がある場合にどうするかといいますと、これはやはり離縁というものがないわけでございますから、結局親権を奪って後見人を選任するとか、児童福祉関係の施設にお世話になるとか、さらに特別養子を含む養子をするとか、そういうことになってくるわけでございまして、特別養子の場合でも実親子関係と同じに考えれば、一の要件だけならばそういうふうに考えれば済むということになってまいります。
 そこで、その二の要件、要するに、実父母が出てきて相当の監護ができるということを要件にしないと実親子関係と同じような扱いでないということになってくるので、そこが一つこの第二号の要件が加わった理由でございます。
#76
○猪熊重二君 最後に、法務大臣に先ほどもお考えを伺ったんですけれども、ともかくつくるときには一生懸命に運用を見て立派にします、何しますと言うけれども、つくっちゃうとそれっきりということが非常に多いんで、このような新しい制度、しかも国民になじみのない制度をおつくりになるわけですから、今後の運用及びその改善について、もう一言ちゃんとこれはやるよということについての御意見をお伺いして、終わりたいと思うんです。
#77
○国務大臣(遠藤要君) この制度は、先生御承知のとおり親子断絶という効果を一体どういうように考えるか、養い親と実子との少しも変わりのないような親子関係を結ばせて、そしてその子供に強固な安定策を講じるというような趣旨で法の改正をお願い申し上げているわけでございまして、そういうような点で審議会ではもろもろ検討していただいた結果がこのような成案になったというわけでございますけれども、これをひとつぜひ国民の皆さん方の御理解をちょうだいいたして効果の上がるような方向で持っていきたい。しかし、やってみたら御指摘のように、もろもろやはり問題があるという場合には、今までの役所と異なって法務省も大変柔軟な姿勢をとっておりますので、国民に歓迎されるような有効的な改正もあり得るという点で検討してまいりたい、こう思いますので、御理解をちょうだいいたします。
#78
○橋本敦君 法案に入る前に、一般調査で質問をしたいと思います。
 実は、登録免許税の改正が大蔵委員会にかかっておるわけでありますが、登記に関する重要な問題でありまして、本来なら法務委員会との連合審査も当然しかるべきだと、こう思うんですが、会期末でもあり、そういう日程も厳しゅうございますので、法務委員会としてもこれを論議しておく必要があると、こう思いましてその質問をさせていただくわけであります。
 今回の改正は、昭和六十二年の十一月一日から六十四年三月三十一日までの間として、土地に関する登記に関して現在の登録免許税を五〇%も引き上げるという大変なことになっているわけであります。今の時期にこういう引き上げをなぜやるのか、まずその理由を端的に伺いたいのであります。
#79
○説明員(野村興児君) お答えをいたします。
 今回の登録免許税の負担の引き上げにつきましては、趣旨といたしましてはあくまでも登録免許税の負担の適正を図る、こういうことでございます。
 具体的に申し上げますれば、現在不動産登記に関しましての登録免許税の課税標準と申しますのは、固定資産税の評価額を用いているわけでございます。御承知のとおり、固定資産税の評価額と申しますのは、実際の土地の売買あるいは取引の価格に比べますと相当低い水準になっております。このために土地に関しますところの登記に係る登録免許税の税負担というものが低い水準になっている、こういう背景、事情を考えまして、今回の税制改革におきまして、税調の抜本答申にもございましたんでございますけれども、資産に関連いたします課税の一環といたしまして、先ほど申しました取引価格と固定資産税評価額との乖離の状況あるいは最近の地価の動向、こういった事情を踏まえまして、当分の間の措置といたしまして、土地登記に係る登録免許税の課税標準を従来より五〇%引き上げる、こういうことでございます。
#80
○橋本敦君 それは全く理由にならぬのですよ。
 なぜ理由にならぬかというと、登記の場合に登録免許税を取る。例えば不動産売買の場合は不動産の価額の千分の五十とこうなっていますね。しかし、その不動産の価額というのは、これは登録免許税法の附則第七条そのもので固定資産の評価額でやるんだということを決めているわけですよ。その固定資産の評価額が実際の土地の実勢価格、つまり時価そのものとは当然乖離しているということを承知の上で固定資産評価というのが台帳に記載されてきて、だからこそそれはそれなりの評価として三年ごとに見直すと、こうなっているわけだ。だから、乖離があるからそれを埋めると言うならば、これは登録免許税法の附則第七条が必要でなくなりますよ。だから、そういう意味で、今おっしゃった理由は根本的にまず第一に理由がない。
 それから、最近の地価によってその乖離が一層ひどくなったと、こういうことをおっしゃったけれども、その最近の地価の高騰というのは一体どこに原因があるか、国民の側にあるか。そういう観点からいいますと、地価の高騰は、たびたび国会でも議論されておりますように、これはまさに政府自身の土地対策、これのおくれもあるし、国有地の過大な価格での民間への移譲という問題があるし、建設大臣もいろいろと政府に責任なしとは言えないということを御答弁なさっているように、現在の土地の高騰ということを理由にするなら、それは国民の側に責任がないのは明白でしょう。しかも、土地の高騰は、これは国土庁が監視区域を一定の地域につくるということでもあらわれておりますように、全国一律に上がっているんじゃないんです。
 ところが、この法案で登録免許税を引き上げるのは、一挙に五〇%引き上げるのは全国一律ですよ。特別に土地の高騰した部分に限ってということではない。この点からいっても、あなたのおっしゃる説明は国民の立場で納得できるものではありませんね。なぜ全国一律にやるのか。まさに不公平を助長しますよ。この不公平性という問題について大蔵省はどう考えていますか。
#81
○説明員(野村興児君) ただいま御指摘ございましたように、現在の不動産の登記の場合におきますところの登録免許税の課税標準、これは登記のときにおける不動産の価額ということで規定されているわけでございますが、その価額と申しますのは、やはり全国的に網羅されまして、かつ客観性が担保されたものである、こういった必要性があるわけでございます。このために先生今御指摘ございましたように、登録免許税法附則の第七条におきまして、その「不動産の価額は、当分の間」という限定を付しまして固定資産税評価額、すなわち固定資産税台帳に登録されております価格でございますが、そういう画定資産税の評価額ということにしているわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、一方でいろんな事情によりまして土地の高騰というものもあるわけでございます。特に固定資産税の評価額との乖離ということがいろんな形で指摘を受けているわけでございます。
 したがいまして、あくまでもその負担の状況ということからいいますと、いろいろな土地の売買と申しますのはそれ相応の負担能力があるというところに着目いたしまして、そこに担税力を求めましてここに五〇%の引き上げということを申しているわけでございます。
#82
○橋本敦君 私の質問には答えられないんですよね。
 地価高騰による乖離がひどくなった、だから五〇%上げると言うけれども、その高騰は特定地域じゃないか、都市部に集中しているじゃないか、全国一律ではないじゃないかにもかかわらず、この法案は全国一律に五〇%引き上げということになっている。これはおっしゃることについて整合性がありませんよということについてお答えはできないんですね。
 それからさらに、もう一つあります。固定資産税がそれなりに適正であるように政府としては在来から三年ごとに大体見直してきている。そして、六十三年は見直しの時期に当たっている。この固定資産税の見直しについて、今の急激な地価高騰をそのまま盛り込んで、これによって固定資産税を大きく引き上げるということは新たな国民の負担を増大させますから、これは適正と言えないので、この際は思い切って見直しは見送るべきだという見解を我々は持っておりますが、それにしても適正に見直していくんだということは、これは自治大臣もたびたび答弁をしておりますが、そういう見直しが来年やられることが日の前にわかっていながら、ことしの十一月から五〇%も引き上げる。来年以降見直しがやられて、現在の固定資産税価額が在来のように平均二%アップになるという、こういう考え方もあるが、アップになったらその上に五〇%かぶっていくんですよ。だから、固定資産税の見直しがやられるということ、そのことが目に見えておるのにそれ以前からもう上げていくというのは、これは余りにもひどい大増税攻勢ではないかと国民は受け取りますが、どう考えますか。
#83
○説明員(野村興児君) 固定資産税と評価額との乖離の状況でございますが、例えば、今回五〇%の負担増が行われますけれども、例えば今固定資産税と評価との乖離の状況、各地によって相当の事情が違いますけれども、例えば仮に二〇%の差がある、これは全国的な平均値に近い数字だろうと私ども思っておりますけれども、この場合に今回の五〇%の引き上げが行われたといたしましても、実際行われますところの取引ないしは売買の価格というものとその負担増された部分の比率をとってみますと大体〇・五%相当になるわけでございます。確かに五〇%という数字は一見大きい数字でございますけれども、実際のそういう土地取引が行われているそういった方々に対する負担としましては、〇・五%の増というものはそれほど今までの事情からいいますと適正を欠くものではない、こういうふうに思っております。
 全国的な話でございますけれども、これにつきましては、私どもは今回の地価高騰というものについてこれを抑制するとかそういった観点ではございませんで、あくまでも担税力をそこに求めまして、そこに着目いたしまして課税をする、こういう意味で負担の適正化ということを申しているわけでございます。
#84
○橋本敦君 担税力だけを考えれば税制間違いますよ。応能負担ということは大事だが、同時に税そのものが公正でなくちゃならぬ、必要以上の税を国民に課すなんてことがあっちゃならぬのは当たり前ですよ。
 だから、固定資産評価額と現在の土地価格との乖離が大きくなったからと言うけれども、来年から政府は見直すと言っているんだから、それを待って考えればいいのに、早々と十一月一日からもう五〇%引き上げる。来年政府が固定資産税を見直して高くしてくれば、五〇%はその上にかかっていくんだから、これは大変な増収だ。大蔵省、これは取り過ぎですよ。
 例えば、時価一億円の土地を検討してみましょう。固定資産税の台帳の価格はどれくらいか。大体今も議論に出ておりますが、その時価の大体二、三割と、こういうのが多いですから、二五%と考えますと、一億円の二五%で二千五百万円、現行登録免許税は千分の五十、所有権移転、売買の場合は。ですから、二千五百万の千分の五十で百二十五万円です。ところが、十一月一日から本年度内、これがどうなるかといいますと、それが五〇%アップされるんですから、二千五百万円に一・五を掛けて千分の五十といたしますと百八十七万五千円ですから、六十二万五千円アップになるわけですね。一遍に登記所に納める登録免許税が時価一億円の土地について六十二万五千円上がるんです。そして、もしもこれが来年度大体従来どおり二〇%程度の固定資産税の引き上げということになって千分の五十がかぶるとしますとどうなるかといいますと、二千五百万円、これが二〇%上がりますから掛ける一・二、そして一五〇%になりますから一・五、それに千分の五十もともと。これで結局二百二十五万に、なりますからね。現在と比べますと、二百二十五万と百二十五万の差、百万円の差が出てくるんです。
 時価一億円の土地というと、これは庶民から見れば大変な土地ですけれども、しかし今坪当たり五百万としますとたった二十坪ですから、もうそこらにある土地なんです、時価一億円というのは。だから多くの国民にかかわりがある値段を私は指摘したんですが、一遍に百万円も登録税を取るんですよ。あなたは、これは一%程度だ、負担能力があると言いますが、土地を売ったら売ったで譲渡税、買い取ったら買い取ったで土地取得税、地方税でかかってくる。国はもうそこでがっぽり税金を取っているんですよ。今土地を売ったら高いですよ。そしてその上にこの登録免許税を一億円の土地で百万も取ると、こうなりますと、私は地価をどんどん政府が引き上げることについて対策がおくれ、その結果現実の地価と固定資産評価額との乖離ができたから、こういって登録免許税まで一遍に五〇%値上げする、これは国民から見ればたまったものじゃない。ダブルパンチ以上の大増税攻勢となりますから、司法書士会の皆さんを初めみんな反対しているのは当たり前ですよ。
 そこで、法務省に聞きますけれども、土地の売買に関して所有権の移転の際に、AからBに売る、BからCに売った場合に、所有権の移転登記をAからB、BからCと移転関係を登記上明確にしないで、中間省略でBを扱いて最終のCにAからいきなり登記をするという仕組みがいわゆる中間省略の登記としてしばしばやられることがあるんですが、これについてどうお考えですか。
#85
○政府委員(千種秀夫君) 講学上、中間省略登記ということ、仰せのとおりでございますが、登記所の窓口で見ております場合には、双方が申請してくるわけでございますから、当事者となっていない隠れた中間者というものは書類の上ではわからないというのが現状でございまして、必ずしもその実態は把握していないのが実情でございます。
#86
○橋本敦君 それじゃ、所有権移転あるいは土地に関する抵当権設定、賃借り権の設定など、いわゆる今回の対象になる土地に関する登記関係というのは年間どのくらい今ありますか。
#87
○政府委員(千種秀夫君) 概略申しまして二百七十万件を前後しているところでございます。昨年一年で約二百六十六万三千件という数字が上がっておりますが、実を申しますとこれはすべてではございませんで、例えば、仮登記に関するものについては統計上その他の欄に入っておりまして、必ずしも土地に関するというものが把握できないのでございます。もう一つ区分建物の移転につきましては、建物の方の統計に入っているために、これまた土地に関係がありながら土地のものとしては数字が把握できない要素がございます。そういうものを合わせてどのぐらいになるかといいますと、推定でございますが、恐らくは三百万件ぐらいになるのではないかと思っております。
#88
○橋本敦君 ですから、今日土地に関する取引ということで、それの登記移転関係を含めて三百万件、つまり国民の非常に広い範囲に及ぶ問題なんですね。だから、登録免許税の引き上げは国民の多くにかかわる大事な問題なので私は特に取り上げているわけです。
 そこで民事局長、もう一つ伺いますけれども、中間省略という登記がやられるということは、登記のまさに公示機能あるいは信用性、そういったことを考える場合は好ましくないということは法務省は考えているわけですね。
#89
○政府委員(千種秀夫君) 登記は権利関係をそのまま反映するのが好ましいと考えております。
#90
○橋本敦君 ところが、登録税がこれだけ高くなりますと、結局、最終的に自分の土地として自分が利用するその最終のユーザー、国民は権利登記をしなきゃなりませんが、中間の売買というものはできるだけ抜いて、登録税が高くなりますから、それを納めないようにしている。私は、中間省略の登記というのがどんどん広まる危険を今度の改正はもたらしてくるということを心配しているんです。
 局長、どう思われますか。ないと言い切れますか。
#91
○政府委員(千種秀夫君) あるかもしれませんが、よくわかりません。
#92
○橋本敦君 ということで、登記の公示機能、これに対しても重大な障害を及ぼしかねないという問題も含んでいるということで大事なんですね。
 それで、大蔵省に伺いますが、これで一体どれくらいの増収を見込んでいますか、今年度内、そして今後の六十四年三月まで。答えてください。
#93
○説明員(野村興児君) 土地の登記にかかわります登録免許税の引き上げにつきましては、先ほど御指摘ございましたように、六十二年十一月一日から以降の登記に適用されることとなっているわけでございまして、これによります六十二年度の増収額はおおむね九百億程度を見込んでおります。なお、平年度といいますか六十二年度につきましては、約二千億程度を見込んでおるところでございます。
#94
○橋本敦君 ですから、わずか二年で二千億。大変なものですよ。
 それで、六十四年三月三十一日が来てどうするかというと、いいですか、自治省が来年やる固定資産の評価の見直しで、引き上げが少なければ今度五〇%上げたやつをもっと引き上げるつもりで六十四年三月三十一日までとしているんじゃありませんか。そこのところはどうなんですか、
#95
○説明員(野村興児君) 先ほど申し上げましたように、今回の適正化の措置についてはあくまでも適用期限を設けているわけでございます。すなわち六十四年三月三十一日までとしておりますけれども、これは、趣旨は、あくまでも六十三年度に先ほど先生御指摘がございましたように固定資産税の評価額の評価がえが行われることがあるわけでございます。これらの事情を勘案いたしまして、その見直しがどうなっていくか、その帰趨を見きわめていきたいという趣旨で六十三年度末までの措置としているわけでございます。
#96
○橋本敦君 ですから、まさに大蔵省の方から固定資産の評価がえを高くやりなさいよ、やらなかったらまた考えますよと言わんばかりの姿勢だと、私はこう言うんです。こういうことはまさに政府の政策、政治の一貫性としてこれはおかしいです。ですから、大蔵省がこの法案を立案することによって固定資産の評価がえということを所管するその自治省の仕事が公正にかつ国民の世論を受けて適正に行われることに先走り的な悪影響を与えかねないという意味において、この法案の提出の仕方なりこの法案は問題がある。私はそのことを指摘すると同時に、これは大蔵省の方で撤回を含めて再考してもらいたいということを指摘をして、この質問はこれで終わります。大蔵省、御苦労さまでございました。
 そこで、法案の関係でありますが、民事局長、我が国の養子制度としては、いわゆる一般の養子制度、特別養子制度、この間から議論しておりますように併存することになります。併存しますから、ある意味で選択は可能であるはずなんですが、片っ方は六歳未満という限度がございますから、子供の意思をどう尊重するかということが非常に困難なという事情もあって、事実上の選択ということは難しいわけです。
 そこで今度は逆に、その特別養子制度で育てられた子供が、テリングの結果、実の父と母を知る、そして実の父と母はそのころ平穏に安定した生活を営んでもいる、だからそういう中でその血縁関係は血縁関係として回復したい。しかし、さりとてお世話になった養親つまり、養父母に対してはやはり愛情もあるしその関係を切ろうという気はない、そういうときにいわゆる特別養子を離縁して、もともとの養子縁組に直せば両方の関係は今の養子制度のようにできるわけですね。こういうことを希望するという人間の気持ちが、私はないとは言えぬと思うんですよ。そういう場合が起こった場合に、法はどういうように機能するでしょうか。
#97
○政府委員(千種秀夫君) これはまだできていない制度でございますから、やってみた結果、そういうこともあるかということは考えられないことではございませんけれども、そういう関係が予測されるようなときに特別養子を認めるであろうかということを翻って考えますと、余りそういう例は特別養子を認める段階ではないんじゃないかと思うわけです。そうしますと、そういう状況が結果としてあらわれるのはまれな例であろうと思います。そのまれな例についてどういう原則をつくっておくかということになるわけでございますが、余り原則を変えておきますと全体の制度の趣旨を損うということにもなりまして、現在のところはそういう場合はそれはそれでひとつ考えていただきたい。しかし、そういうものが多くなり、議論が出てきました場合にはもう少し実親の引き取りというものを緩和するとか、そういう問題がおのずから出てこようと思っております。
#98
○橋本敦君 まれかもしれないけれども、あり得ないわけではないことなんですね。
 そこで、今おっしゃったのは、そういうことが起こるような場合は特別養子縁組をしないということですが、そのときには特別養子縁組を許可するという実質要件を備えていても、人間の人生は発展もし、変化もするわけですから、私が言うようなことなんです。その証拠に、離縁の場合にその離縁を認める要件として、「実父母が相当の監護をすることができること。」というものを法も規定しているじゃありませんか。だから、ある意味ではそういった予想性はあるんです。ですから、全くまれだとは言い切れないんですね。
 そこで、もう一つの問題として、まさに今度の特別養子制度は、大臣もさっきおっしゃったように、本当に子供の利益、子供の幸せ、これを中心に考えるということですね。
 しかし、その子供の幸せは親子の関係、親族との関係、つまり家庭ということで包まれながら実際はいくわけですから。そういう意味で、その子供に幸せのためにどういう家庭を与え、どういう家庭との断絶をするか、これは私は裁判所の責任は本当に重いと思うんですね。そういう裁判所の責任は重いんだけれども、前回私が指摘したようにヨーロッパ協定ではいろんな裁判所が調査すべき要件あるいは事項をずっと列記して、それなりにスタンダードな判断基準をつくっておりますが、我が国の法ではその実質要件というものは極めて簡単で、「父母による養子となる者の監護が著しく困難」、これも抽象的ですね。そして「又は不適当である」、監護が不適当である、これもわかるようですが、抽象的ですね。そしてまた、「その他特別の事情がある場合」ということで範囲を広げていますね。これらはまさに裁判所の裁量事項に結局は多くの部分が属すると思うのですが、どうでしょうか。
#99
○政府委員(千種秀夫君) 仰せのとおり、特別養子は審判で決めるものでございますから、裁判所がかなりの審査、判断権を持っておるわけでございます。それをどのようにしていくかということは裁判所の運用でございますから、これから最高裁判所の事務総局の方で家事審判規則というものを定めて、さらに、その運用についてはいろいろな意思統一を図って行っていかれると思います。それだけ我が国の場合は家庭裁判所の制度が充実しているということも言えるわけでございまして、法律はかなり大幅にその運用にあるいはその規則の制定にゆだねているということは言えると思うわけでございます。そういう意味で、法律は特に書いてございませんけれども、実質はもちろんヨーロッパの養子協定というようなものの内容も参考にされると思いますし、また、そうしていただきたいと思っております。
#100
○橋本敦君 そういうことで責任は家庭裁判所に大変重いということがはっきりしてきたわけですね。
 そこで、そうなりますと家庭裁判所の裁判官がこういった特別養子制度の問題、そして児童をめぐる国際的な条約や我が国の児童福祉法を含めた子供の権利と養育、そして人権という問題、これについて非常に深い知識と、しかも我が国社会における実情を見通していただく、そういう資質が一つは裁判官にも要求されるでしょう。
 それからもう一つは、児童六歳未満ということになりますと、その子供の意思は尊重できませんけれども、その子供の心情を理解していくために、いわゆる専門的なケースワーカーによる児童心理学、これの堪能な人を調査官に養成するということも必要でしょう。特別養子問題として何件ふえるかという事件の問題じゃない。そうじゃなくて、この問題で、本当に子供の幸せのためにということで、この制度がいろんな矛盾を露呈することなく機能していくことになるために裁判所は一段と重い責任をこの法律によって負われたのではないか、こう思っております。そういう観点で今後裁判官の問題、研修の問題、それから調査官の充実の問題、それからオフィシャルなケースワーカーやオフィシャルな児童福祉機関との連携の問題どうやっておいきになるのか、御所見を伺いたいのであります。
#101
○最高裁判所長官代理者(早川義郎君) この法案が成立いたしますと特別養子縁組制度の運用は家裁にゆだねられる、こういう形になりますので、いわば家庭裁判所がこの特別養子縁組制度の養い方といいますか、育ての親の責任を負うことになるわけでございます。そういう意味では、この制度が子の福祉のために十分活用されるように今後運用面において努力するといいますか、受け入れ体制の整備に努めたいと考えております。
 それで、現在考えておりますことは、一つはこの特別養子縁組制度の手続の多くが家事審判規則にゆだねられておりますので、現在その規則の改正を検討中といいますか、準備作業中でございます。何分にもこの制度が子の福祉を図るとともに、実父母との親子関係が断絶されるという重大な効果を持つものでございますので、慎重な手続きでこれを進めなければいかぬ、かように考えております。一つには、実父母について陳述を期日において聞くという必要的審問というこれまでの甲類審判事項から大分はみ出したような慎重な手続、こういったものを考えております。また、即時抗告権者の範囲等についてもなるべく幅広く認めていこう、こういう方向で検討を進めております。
 次に、調査の関係でございますが、要保護要件にいたしましても、養親の適格性であるとか、あるいは養親と養子との適合性、こういった問題については相当慎重な調査が必要である、そういうふうに考えております。特に試験養育制度も設けられましたので、そういった点については今後の問題になりますが、研修その他いろいろ配慮していく必要があろうかと考えております。
 いずれにしましても、この要保護児童の福祉を図るという基本的な制度でございますので、児童福祉の中枢機関である児童相談所との連携ということが非常に重要になってくるわけでございます。そういう意味で、通常の事件におきましては、要保護児童と認められる限りにおきましては児童相談所への調査嘱託等々ということでいろいろと児童福祉機関の協力を得なければいかぬ、そういうことで十分な連携が保たれ、また協力を得られるように現在児童相談所ともいろいろと協議中でございます。
 今後も、この法案が通りましたら家事審判官会同あるいは調査官会同、それから児童福祉機関との連絡協議会、こういったものを順次開催してまいりまして、いろいろ考えられる問題点等を相互に検討し、意見交換をしてまいりたい、かように考えております。
 その他、資料の作成等々、私どもとしてもできる限りのことはしたい、かように考えております。
#102
○橋本敦君 詳しい御説明をいただきましてありがとうございました。そういう方針で今後の課題の達成をぜひお願いしたいと思うんです。
 最後に、この法案を提出されまして、我が国で初めて特別養子制度ということが生まれてくることになりまして、法務大臣に御見解をお伺いしたいんでありますが、平素から人情厚い大臣というように私どもお伺いしておりますが、人情というものは子供にとっては実の親にもあり、実の親も子にあり、そしてまた、養親、養父母にもある、本当に難しい問題ですね。なるだけ私は特別養子にやらなきゃならぬような子供はつくるべきじゃない、つくっちゃならぬ、こう思いますが、できたかわいそうな子供は温かい家庭環境を与えてやらにゃならぬ。私は、特別養子制度はいろんな矛盾の上に出てくる非常に難しい問題だと思っておりますが、どんどん進めてよいというようなものでも決してないでしょうし、新しい今度の改革はそれなりに大きな意味を持っていることも事実でしょうし、大事な問題だと思っております。
 今後、どういうようにこれを育てていこうとなさるのか、大臣の御所見をお伺いして、質問を終わります。
#103
○国務大臣(遠藤要君) この法案の提出の趣旨説明でもお話し申し上げておるとおり、一番は、親子断絶ということは、その養子になる子供に対する利益と養父母との親子関係を強固な安定したものにさせるという点でございまして、子供のためにも養父母、特に養父母として実親との断絶ということは責任を痛感させる、そういうふうな趣旨だと御理解を願っておきたいと思います。
 さような点で、私どもとしてはこの法改正の趣旨はあくまでも子供の利益と幸せ、福祉ということを前提としての御提案でございますので、この定着した後においても、不十分な点は柔軟な姿勢で私は改善していきたいと、私自身が一生法務大臣をやっておるわけではございませんので、その点は引き継ぎをしてびちっとさせておきたいと思いますので、御理解を願いたいと思います。
#104
○橋本敦君 終わります。
#105
○委員長(三木忠雄君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 民法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#107
○委員長(三木忠雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#108
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時四十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#109
○委員長(三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 外国人登録法の一部を改正する法律案(第百八回国会閣法第六二号)を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
#110
○国務大臣(遠藤要君) 外国人登録法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 外国人登録法に基づく指紋押捺制度については、在日外国人等から種々議論がありますところ、この制度が正確な外国人登録を維持するために果たしてきた役割は大きく、その改正は外国人の出入国・在留管理の根幹に係るものであることから慎重に研究、検討を打ってまいりました。その結果、外国人の心情を考慮して指紋制度を中心に外国人登録制度の適正、合理化を図る必要があると認められるため、この際、外国人登録法の一部を改正しようとするものでありまして、その改正の要点は次のとおりであります。
 その第一は、登録等の申請をする場合における指紋の押捺を原則として最初の申請の場合に限ることとすることであります。すなわち、登録されている者と当該申請に係る者との同一性が指紋によらなければ確認できないとき等時に指紋の再押捺を命じられたときを除き、重ねて指紋を押すことを要しないこととするとともに、押すべき指紋は、登録原票及び指紋原紙に押せば足りることとし、登録証明書には指紋を転写することとするものであります、
 その第二は、登録証明書をラミネート・カード型のものに改めることを前提に法律の規定を整備することであります。
 その第三は、登録の確認の期間を適正化することであり、外国人は、新規登録を受けた日または前回確認を受けた日から五年を経過する日前三十日以内に登録事項の確認の申請をしなければならないこととなっているのを、新規登録を受けた日等の後の五回目の誕生日から三十日以内に確認申請を行わなければならないこととするとともに在留期間が一年未満である等のため指紋を押していない者等については新規登録等を受けた日から一年以上五年未満の範囲内において短縮することができるとするものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#111
○委員長(三木忠雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
#112
○委員長(三木忠雄君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外国人登録法の一部を改正する法律案(第百八回国会閣法第六二号)の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#113
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#114
○委員長(三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします、
    ―――――――――――――
#115
○委員長(三木忠雄君) これより外国人登録法の一部を改正する法律案(第百八回国会閣法第六二号)について質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#116
○千葉景子君 ただいま法務大臣の方から、外国人登録法の一部を改正する法律案につきまして趣旨説明をいただきました。質疑に入る前に一言申し添えておきたいと思います。
 この法案は、外国人に関連する非常に重要な法案でございます。とりわけ日本の国際化あるいは国際国家として日本がいかにこれから生きていくか、こういう問題が非常に大きく取り上げられている現在、この法案につきましてはやはり広く国会の中で論議がなされる、これがまず基本の考え方ではないかと思います。そういう意味で、この法案につきましては本来本会議での法務大臣からのしっかりとした御説明がなされるべきではなかったか。それが本会議での趣旨説明が行われずに委員会の審議に入ったということについて、私は大変遺憾に思います。これだけの重要法案、この審議を通じましてこの問題点を明らかにしていきたいと思いますが、その点をぜひ法務大臣におきましてもお含みをいただいておきたい。まず、それを申し上げておきたいというふうに思います。
 それでは、本題に入りたいと思います。
 まず、我が国には現在多数の外国人が入国をし、あるいは在留をし、居住をしているというふうに考えられます。我が国に在留している外国人、これが一体どのくらいの数になっているのか、それをまずはっきりさせていただきたいと思います。
#117
○政府委員(小林俊二君) 昭和六十一年、昨年末現在の数字で見ますと、総数は約八十六万七千人であります。
#118
○千葉景子君 約八十七万人近い人が在留をしている。今のお答えは我が国に在留している外国人と考えてよろしいんでございましょうか。
#119
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録法に基づく登録を行っている外国人の総数であります。年間入国する外国人の数は最近約二百万に上っております。これらの人々の大半は観光その他短期入国を目的として来られる方々でありますのでその大半は外国人登録をいたしておりません。したがって、そうした人々を除き、九十日以上在留する人々が外国人登録の対象となるわけでございまして、現在そうした制度のもとで登録をされている人々の数が八十六万七千であるということであります。
#120
○千葉景子君 今、九十日未満の観光客などは外国人登録が必要とされないというお話でしたが、我が国に入国する外国人の中で外国人登録の対象とされる人、それは法的にどういう場合になりますか。お答えをいただきます。
#121
○政府委員(小林俊二君) ただいま申し上げました八十六万七千人のうちその八割弱を占める六十七万八千人は韓国、朝鮮人であります。すなわち朝鮮半島出身者であります。これに次ぎますのが中国、主として台湾の出身者でありまして九・七%、八万四千人であります。この二つのカテゴリーに属する人々が登録されている外国人の大半を占めるわけであります。
#122
○千葉景子君 在日している朝鮮あるいは韓国の方、中国の方が大方外国人登録の対象とされる人ということはわかるんですが、そうではなくて要件ですね。入国した者のうちどういう場合に外国人登録をしなければいけないのか、その要件をお聞かせください。
#123
○政府委員(小林俊二君) 九十日を超えて我が国に在留することを認められている人々であります。
#124
○千葉景子君 今お話にありましたように、約八十七万人余りの方が在留をし、そしてその中で外国人登録の対象とされる人が九十日未満の観光客などは除くということになります。そういう意味では外国人登録の対象とされる人が八十五万人近くあるいは約八十五万人ほどいると考えてよろしいんじゃないかというふうに思いますが、この中で外国人登録数で占める割合、先ほどお話しありましたが、韓国あるいは朝鮮の方、中国からいらしている方、こういう皆さんがほとんどを占めるというお話でございましたけれども、その数は大体どのくらいになりますでしょうか。
#125
○政府委員(小林俊二君) あるいは私の御説明が十分ではなかったかと存じますが、八十六万七千人は既にすべて登録をしておる外国人の数でございます。したがって、短期入国目的で入国する二百万の外国人のうちの大半の人々はこの数には全く含まれていないわけでございます。この八十六万七千人の内訳は、七八・二%が六十七万八千人の朝鮮半島出身者であります。また、八万四千人が中国、主として台湾の出身者であります。そのほかにフィリピン、英国等が続くわけでございます。登録人員の詳細につきましては、もし必要であれば御説明申し上げます。
#126
○千葉景子君 細かい数字は結構でございます。
 このように、日本の中には多数の外国人、そしてしかもその中では朝鮮半島から見えた方あるいは中国からいらしている方、こういう方がかなりの割合を占めている、こういう現状がわかるかと思います。
 ところで、こういう実態を踏まえまして、まず大臣にお聞きしたいんですが、外国人というものに対して一体どういう御認識をお持ちなのか。日本人と外国人というのは全く違うんだ、あるいはいやそんなこと決してはない、同じ人間として同じような立場にあるんだと。いろいろお考えあるかと思いますけれども、外国人というものに対してどういう認識で、どういう立場で物事を考えていらっしゃるか、まずそれをお聞きしたいというふうに思います。
#127
○国務大臣(遠藤要君) 外国人に対する私の考え方といいましょうか、印象についてお尋ねでございますが、日本も御承知のとおり国際国家だ、国際日本としてというような言葉が常時話の中にあらわれております。そのような点で、平和な国際社会を形成する、維持するためには各国との友好増進に努めていかなければならない、そういうふうなことは今さら申し上げるまでもないと思います。
 ただ、法務大臣の所管事項たる出入国管理の遂行に当たっては、外国人の入国、滞在について以上の二つの側面の間に妥当なバランスを確保していくことが必要である。もっと簡明に申し上げれば、外国とのつき合いというのはもっと友好的に、日本においでの間はできるだけ快適な生活をしていただくことが望ましい、こう思っておりますけれども、その反面日本の法律は法律としてやはり遵守していただきたい、こういうふうな考えを私は持っております。
#128
○千葉景子君 快適な生活を送っていただくということは、これはもう最低限の必要な不可欠なことだろうというふうに思います。ただ、いわゆる外国人とりわけ日本に居住している外国人というものが現実の生活の中では日本人とかなり違った環境に置かれたり、あるいは法的にも違った取り扱いを受けていたり、そういう面があるかと思います。また、現実に法的には同じであろうけれども、扱いとして厳しい扱いを受けている、差別を受けている、こういう実態も否定できないんではないか。
 こういうことを踏まえて、法的にも一体日本人とそういう外国人とどう違い、どう違わないのか、その辺の明確な御認識をお伺いしたいんです。
#129
○国務大臣(遠藤要君) 今、先生のおっしゃるように、外国人の方々でも、日本で生まれて二世、三世、日本国以外よその国を知らないという外国人もたくさんおいでになることを承知いたしております。そういうふうな点がございますけれども、私どもとしてはその方々は何よりもやはり自分の生まれた国を愛していただいておるというこを確信しております。外国人として生活をしていこうということに対しましては登録法というものが形成されておりますので、その登録もできる限りその方々にも余り窮屈な思いをさせないような方法に回転していくべきだと、そういうふうなことは私自身強く感じておるわけでございます。
 御承知のとおり、この法も、五年に一度ずつ指紋を押していただくというのも、できるならばということで、法提出としては法務省自体としても、ぎりぎりというとよそに影響も与えるのですけれども、ぎりぎりの緩和策を講じたということで、一度だけは指紋を押捺していただいて登録をしてもらう、そしてその登録の正確さを期させて、保持させていただきたいという気持ちでこの登録法を提出したというような点で、私個人的には先ほども申し上げたように、二世、三世の日本以外知らない外国の方がたくさんおいでになる、そういうような方々に余り差別というと言葉がおかしゅうございますけれども、法的にそういうふうな方法を講じなければならぬかどうかということでございますが、現時点としてはこれがぎりぎりだというようなことで皆さん方に御審議をいただくということでございまして、また社会情勢が変わりますれば変わったような方向で弾力的に検討していかなければならぬと、こう承知をいたしております。
#130
○千葉景子君 大臣の心情をお伺いしたのですけれども、私の聞いているのはそういうことではなくて、外国人登録法の問題ばかりではなくて、日本人と外国人というものが本当に同じ人間である、あるいは法的にも変わらない地位を日本の国内で保有できるのか。あるいは、いや決してそうではない、外国人としてこういう特殊な側面があるから、そうではなくてやはり特別な扱いをしなければいけないんだと、そのあたりの基本的な考え方をお聞きしたいわけです。
 憲法におきましても人権を尊重する、あるいは国際協調をする、こういうことも書かれているわけで、その基本的な外国人に対する考え方ですね、それをお聞きしているわけなんです。必ずしも外国人登録法、これについてどうお考えかということを今はお聞きしているわけではないんですが、その辺どうでしょうか。
#131
○政府委員(小林俊二君) 法的な側面から申し上げれば、外国人と国民との間にはその国のいかんを問わず明確な相違が存するわけでございます。すなわち、外国人はその国の国家の構成員ではございません。その国の社会の構成員ではあっても、国家の構成員はあくまで国民でございます。したがって、その法的な地位の明確な相違から生ずる取り扱い上の区別というものはいかなる国においても存在するわけでございます。極めて端的に申し上げれば、外国人が一国に入国し、在留するというのはその国の政府の許可にかかっているわけでございます。一方、その国の国民がその国に入国し、あるいは出国し、さらに在留することについては、通常、全体主義国家においては別の例もございますけれども、私どもが生活をしておる我が国のような国におきましては、全く政府の許可によらしめられていないということで明確な相違があるということでございます。したがって、こういう基本的な、法的な地位の相違からくる合理的な区別というものは存在し得るという点において先生の御質問にかかわってくるのかと存じます。
 しかし、一方、こうした最小限の区別を離れまして、人権の尊重ということにつきましては、これは憲法上、国民も外国人も相違はございません。ひとしくその人権の保障に裨益するところがあるというふうに考えております。
#132
○千葉景子君 その御認識に立って今後の御答弁をいただきたいというふうに思うんです。
 先ほどの御答弁で、我が国に在留している外国人、そのうちの八割方は在日韓国人あるいは朝鮮人の皆さん、いわゆる朝鮮半島から日本に来られた方であるというお話でございます。この皆さんについては、歴史的にも非常にいろいろな経過があるというふうに私は考えております。こういう歴史的な経過も踏まえまして、我が国に在留する、八割以上を占める朝鮮半島から来られた皆さんに対して政府あるいは法務大臣として一体どういうお考えをお持ちなのか、その辺をお聞きしたいというふうに思います。
#133
○政府委員(小林俊二君) 入国管理当局としてかかわる分野についてのみ申し上げますれば、これらの人々の在留につきましては、法的及び行政上の取り扱いにおいていわば優遇措置を講じている面は少なくないわけでございます。すなわち、韓国籍を有する人々については協定永住という特別の地位が認められておりますし、また協定永住を取り得なかった、あるいは取らなかった朝鮮半島出身者で終戦前から我が国に在留していた人々あるいはその人々の子孫につきましては特例永住といった措置も講ぜられて今日に至っており、さらに、特例永住をも取り得なかった、あるいは取らなかった人々については、永住の許可の要件を緩和した簡易永住という制度の適用もあるわけでございます。こうした措置によって、これらの人々の在留はより安定性のあるものにされて今日に至っているわけでございます。
 また、協定永住の内容といたしまして、一般の外国人については、例えば、一年以上の禁錮または懲役に処せられた人々について退去強制の対象となりますけれども、協定永住につきましては七年以上というふうに要件が大幅に緩和されております。その精神にのっとって、現在では入国管理当局におきましては、実際上の取り扱いとして十年以下の禁錮または懲役に処せられた人々を事実上退去強制の対象から外しているというような優遇措置も講じているわけでございます。
 こういうふうに、在留の実態に即しまして、私どもといたしましては、入国管理行政の枠内においてこうした歴史的な背景を持つ、あるいは社会的な事情を持つ人々につきまして、でき得る限りの好意的な配慮を払っているということを申し上げることができるのでございまして、そうした措置の背後にある物の考え方は、先生の御指摘になっているラインに沿うものと存じます。
#134
○千葉景子君 今おっしゃったことは、歴史的に見て、朝鮮半島の皆さんが敗戦前から日本政府のいわゆる植民地政策などによって強制的に日本に連れてこられた、こういう背景があるわけです。そういう意味では当たり前のことであって、それが優遇であるとか、特段の配慮をしているとか、それほど胸を張って言えるような話ではないんじゃないか。最低のことです。当たり前のことではないかと思うんですよ。
 そういう背景を踏まえて、確かに入国やあるいは在留に対して一定の配慮を加えているかもしれない、しかし、現実に日本で暮らしている、そういう韓国、朝鮮の在日の皆さん、こういう人たちに対して日本政府あるいは法務省として人権問題等についてこれまで一体どういう配慮をし、そしてこれからどうやっていこうとしているのか。これは本来、国際化とか、国際協調、国際国家というような言葉を始終使われている中曽根総理にお聞きすべき話かもしれません。それはまた後日審議を踏まえてお聞きしたいと思いますが、こういう歴史を踏まえてこれまでも、それから今後も一体どう考えていこうとしていらっしゃるのか。これはぜひ大臣にお聞きしたいというふうに思います。
#135
○国務大臣(遠藤要君) 朝鮮半島と日本というのは、改めて強調申し上げるまでもなく隣国でございます。そのような点で、アジアの中においても隣国との親善、協調ということは必要なことであり、ましてや日本に在留される半島の方々に対してはでき得る限りの、可能な限りのもろもろの好意的なと申しましょうか、こちらとしては好意的という言葉が果たして当てはまるかどうかわかりませんけれども、許される範囲においての、やはり同志としてとでも言いましょうか、隣の国の人である、隣組だ、同じアジア人だというような点で、やはり差別のないつき合いをしていくべきであると私は思っております。
#136
○政府委員(小林俊二君) 先ほど入国管理当局としてお答え申し上げましたので、その内容もまた入国管理行政にかかわることに限られたわけでございますけれども、これを離れて、一般に我が国に在留する朝鮮半島出身者、台湾出身者を中心とする外国人についての取り扱いということであれば、これは政府、各省にわたる問題は極めて大きいわけでございます。特に想起されますのは、福祉の関係でございます、あるいは教育の関係でございます。これらの分野におきまして外国人――外国人と言う場合には、結果的には先生御指摘の方々が中心となるわけでありますが、これらに対する取り扱い、処遇を内国民と同等に行うという方向で最近、特に十年ほどの間に大幅に法制の整備が行われまして、そして実際に多くの福祉関係の法令等から国籍条項が除かれてきたということがございます。
 このことは、朝鮮半島出身者等を中心とする我が国在留外国人に対して福祉の雨その他におきまして日本国民と同等の利益を与えさせる、裨益させるという思想がその背景にあってそうした動きとなってきたものと存じます。その背後には、国際人権規約の批准であるとか、あるいは難民条約の批准であるとかといったような節々があったわけでございますけれども、ともかく、これを可能ならしめたのはそうした国民の認識であるというふうに申し上げることができるかと存じます。
#137
○千葉景子君 それでは、その中で、外国人登録法の適用に当たって一体どのような態度をとり、どのような配慮をなさってきたか、その点についてお聞きをしたいと思います。
#138
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録法に限って申し上げれば、先ほど申し上げた国民と外国人との間の基本的な、法的な地位の相違というものが大きくかかわり合いを持ってくるわけでございます。しかしながら、その前提に立ってなお申し上げれば、戦後、昭和二十七年に外国人登録法が制定されましてから今日まで十数回にわたる改正が行われてきております。
 もちろん、外国人登録法の適用に当たって朝鮮半島出身者あるいは台湾出身者を区別して扱うということは全くなされておりませんで、外国人というものを事の性質上平等に取り扱ってはおりますけれども、しかし、法律制定後三十年を超える施行の歴史において客観情勢の変化に応じて改正が加えられてきたわけでございまして、この改正の内容はひとしくその要件の緩和ということにあったわけでございます。これは客観情勢と、それからこの登録の対象となる人々の立場というものとの二つの側面を比較考量と申しますか、その間にバランスをとっていくという基本的な立場から改善を図り得た、あるいは図ってきたということになるわけでございます。
#139
○千葉景子君 その延長線上に今回の外国人登録法の一部を改正する問題も存在する、そのように考えられるわけですか。
#140
○政府委員(小林俊二君) まさにそのとおりでございます。
 ただ、今回の改正について特に指摘し得る点があるとすれば、今回の改正は、政府側の一方的なイニシアチブによるのみではなくて、国内の外国人団体を中心とする在留外国人側の強い希望に応じてこれを実現に持っていったという背景は、若干特異な点であろうかと思います。しかしながら、政府の考え方におきます基本的な立場は従来の改正と変わるところはございません。
#141
○千葉景子君 今、外国人の皆さんの意見も取り入れて、そしてこれまで政府がとってきた一連の政策の延長上にと言いますけれども、これが本当に外国人の皆さんの心情なり意見、そういうものを取り入れているのかどうか私は大変疑問に思います。まさにこの法律が、これまでも外国人に対する差別やあるいは人権侵害をもたらしてきたわけですけれども、今回のこの改正案、これはまさにその延長というよりも、それをさらに強化するような危険性も含んでいる、こういう内容ではないだろうかというふうに思います。その辺は、今後個々明らかにさせていただきたいというふうに思っております。
 ところで、こういう外国人に対する問題というのは、在留外国人、在日外国人、とりわけ外国人登録法のもとで、朝鮮半島から来た皆さんに対する問題、それが今大きな課題として片方にございますけれども、それと表裏一体と言うべき問題が最近起こっているのではないだろうかというふうに私は考えております。というのは、いわゆる俗な言葉で言われておりますけれども、じゃぱゆきさんと申しましょうか、そういう日本で働く外国人の方々が大変ふえているという現状がございます。それはよく認識をされているところだというふうに思いますけれども、これから私たちが取り組まなければいけない問題は、在留外国人の方々に対する問題、そして短期間で働きにきているような方に対する問題、こういう問題が国際化の中で二本柱として存在するのではないだろうかというふうに思うわけです。そういう意味で、これは表裏一体の問題として、外国人労働者の問題を若干お聞きしておきたいというふうに思っております。
 この外国人、最近入国に絡まって特徴的なこと、これはどういう点が挙げられるでしょうか。その点についてお聞きをしたいというふうに思います。
#142
○政府委員(小林俊二君) 外国人の入国は、現在年間約二百万ほどでございます。昨年一年間について見ますと、前年度に比べて、円高その他の影響があって一〇%ほど落ち込んでおります。ところが、一定の国民、すなわちフィリピン、バングラデシュ、パキスタンといった国々からの入国者は、しかもその大半が観光等を表面上の目的とする短期入国者でありますが、これらの国々については何十%といった増加を示しているということが統計上極めて目立つ点でございます。すなわち、フィリピンにつきましては約二三%増、パキスタンについては約四四%増、バングラデシュに至っては約九二%増という増加でございまして、こうした増加は、その他の国々からの入国者がいずれも軒並み減少しているという事実に照らして一層目につくのであります。
#143
○千葉景子君 今、東南アジア、フィリピンを中心として大変増加をしているということですけれども、こうやって入国される皆さんというのは、基本的には外国人登録の対象とはなっていない方が多いわけですね。
#144
○政府委員(小林俊二君) 不法残留者について見ますと、半年以上一年内外在留して不法に就労して出頭するという人々が大半を占めております。そういう意味では、九十日以上の滞在をするわけでございますけれども、いずれも不法滞在でございますので、外国人登録のために出頭するということは当然なことながらございません。したがって、法的には外国人登録法の対象となっているけれども、登録をあえて受けることはしないという実態が存するわけであります。
#145
○千葉景子君 そうなりますと、こういう不法残留といいますか、短期の滞在を目的として入国する人たちに対しては外国人登録法というものは意味を持たない、そういうことになるわけですね。
#146
○政府委員(小林俊二君) 九十日というのは、外国人が我が国に入国して外国人登録を行うまでのいわば猶予期間でございます。したがって、在留が法的に合法的であるか否かを問わず、九十日以上我が国に在留する外国人は登録の義務を負うわけであります。したがって、これら不法残留者は、実際上九十日以上我が国に在留することによって、そしてその間、登録の義務を果たさないことによって法違反を犯しているということでございますが、しかしながら、もちろん市区町村の窓口に登録にあらわれればその在留の背景についてのチェックが行われますので、不法残留という事実が発覚いたします。そのためにあえて登録にあらわれるということが行われていないということでございます。このことをもって、外国人登録がこれらの人々について有効に働いていないと言うべきか否かというのは評価の問題であろうかと存じます。
#147
○千葉景子君 実質的に外国人登録法の網からこぼれ落ちてしまっているということになろうかというふうに思うわけです。
 ところで、かなりふえているフィリピンを中心とした入国者ですけれども、いろいろな在留資格、入国の目的があるかというふうに思いますけれども、どのような在留資格で入国している場合が多いんでしょうか。
#148
○政府委員(小林俊二君) 新規入国者と申しますのは再入国者を除いた入国者でございますが、新規に我が国に入国する外国人の約九〇%は観光を中心とするいわゆる四−一−四といいます短期在留資格でございます。その他の面にわたりますと、これは非常に多岐にわたりますので、九割内外が短期在留を少なくとも表面上の目的とする入国者であるということでございます。
#149
○千葉景子君 九十日以内の短期滞在を目的としているということですが、統計などによりますと、フィリピンなどは特徴的かと思うんですが、正規の入国者数と出国者数との間に極端な差が生じているように思うんですよ。毎年の累計になるのでその年がどうかということはわかりませんが、ほぼ毎年一万人近くの食い違い、普通短期であれば入国して出国していくということでほぼ数は重なり合ってくるんではないかというふうに思うんですが、一万人近くの差がここ数年生じているというふうに数字からは見えるんですが、これはどういうことでしょうか。
#150
○政府委員(小林俊二君) その点は当局においても注目をしている点でございます。ことしの四月ごろでございましたか、試みに一定の電算処理をいたしまして、在留期間を定められて入国したフィリピン人のうち、その在留期間を超えて我が国に在留している者が何人いるかということを推算したことがございますが、その結果によれば一万七千人が本年三月末で不法残留しているという推定をなし得る結果を得たのであります。
#151
○千葉景子君 こういう不法残留といいますか、いわゆる期間を過ぎても出国をしていないというケースなんですけれども、一体これはどうなってしまっているのか。そういうことについては法務省としては調査をされたり、どういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
#152
○政府委員(小林俊二君) これらの人々は摘発の結果等から判断いたしますと、そのほとんどすべてが、女性の場合はホステスあるいはストリッパーとして、男性の場合には土木作業員あるいは工員、雑役夫等として我が国で不法に就労しているものと推定されます。
#153
○千葉景子君 これにつきましては、いろいろな原因とか世界的な情勢があるかと思いますけれども、その辺についてはどんなふうに認識をされていらっしゃいますか。
#154
○政府委員(小林俊二君) こうした不法就労者、不法残留を含む不法就労者の数が近年激増していることにつきましては、種々その社会的な背景があるわけでございますが、その一つは、従来これらの国々から働きに出ていた中近東が石油の値段の低落のために不況に見舞われて労働機会が減少し、労働を続けることができなくなってきているということ。さらに、近辺諸国におきます経済的な停滞、さらに我が国における円高による我が国での稼働の効率性の上昇というようなことが背景にあることは間違いないところでございますが、これらに加えて近年特にこうした数字が著しく伸びている背景には、例えばフィリピンあるいはタイ国等における国内の送り出し組織と我が国における暴力団等を中心とする受け入れ組織との組織化が非常に進展している、その相互の連携関係も緊密化している。そうした送り出し、受け入れの態勢の整備と言ったら非常におかしゅうございますけれども、それが進んだということが近年におけるこうした数字の背後にある有力な原因であろうかと分析いたしております。
#155
○千葉景子君 今その背景等お伺いしたわけなんですけれども、実際にその送り出し、あるいはこちらの受け入れの実態、あるいはどういうところで働いているか、そのルートとかそういうことについて法務省として実態を調査されたり、あるいはそれに対する対応を考えられたり、そういうことはしていらっしゃるんでしょうか。
#156
○政府委員(小林俊二君) これらの不法就労者の実態については、ほとんど専ら摘発された実例を追跡することによって承知するということに尽きるわけでございます。これらの不法就労者の摘発については、もちろん入国管理局の入国警備官だけでは到底カバーいたし切れませんので、主として警察の協力を得まして摘発に努めているわけでございます。そして、その背後関係に暴力団その他の組織が存在する場合を中心としてその実態の解明に努めているわけでございまして、この点についても特に警察側が強い関心を寄せておられるわけであります。
 こうした協力体制から実態の解明、摘発、さらに罰則の適用といった面に遺漏なきを期したいというのが入国管理局の基本的な立場でありまして、努力もそこに向けられているわけであります。
#157
○千葉景子君 こういう問題につきましては、最近新聞の記事とかいろいろな報道などでも大変目につくところなわけです。新しいところなどによりますと、これは九月の七日の新聞記事でございますけれども、例えば、欧米人の妻やメードに成り済ましてタイの人が入国をし、そしてその男性の方はすぐに出国をして、女性の方はそのまま在留をしている。それで多分いろんな形で働いているのではないだろうかというふうに思いますけれども、こういうケース、あるいは大変低賃金で、あるいは暴力を振るわれたり、あるいは賃金が払われない、また女性の場合では強制的に売春をさせられるというようなケースとか、これはもうかなり挙げたら切りがないほどのいろいろな事件が出てきているわけです。
 そういう意味では、警察の摘発を受けてから対策をとるといいますか、それに対して法的な措置をとるということではもう対応し切れないところまで来ているんではないかというふうに思うんですけれども、こういう実態を踏まえていかがなものでしょうか。
#158
○政府委員(小林俊二君) いわゆるじゃぱゆきさん、男性、女性を含めた我が国における不法就労者の実態について一言申し上げますと、昨年については八千百三十一人の不法就労者、不法残留絡みの不法就労者を強制送還しているわけでございます。しかしながら、その実態を一べついたしますと、そのうち当局が実際に稼働中を摘発して、そして処理の上送り返したという人々は全体の一六・三%にすぎないのであります。その残りは何かと申しますと、その大半は来日の目的を達して、半年から一年あるいは一年半にわたって我が国で稼働し、十分収入も得た、そしてそれはほとんどすべて送金してしまった、そろそろ国へ帰りたいということで当局に出頭してきて、そして送り返される人々であります。
 ということは何を意味するかといいますと、これらの人々は、退去強制と申しましても一向に日本に来て不法に就労するということに対する制約要因にはなっていない。それを反省を求めるとか、あるいはそれに対して制裁を加えるとかいう効果は全く退去強制によって受けていないという人々でございまして、これらの人々は、本人の考えに照らして十分に働き、そして本国に送金もし、お土産も買い込んで、そして極めて朗らかに入管当局にあらわれてくるという人々なのであります。こういうことを繰り返していては、不法就労のその制圧と申しますか、防止というかにはほとんど役に立たないのでおりまして、したがって、当局といたしましては何とかその不法就労を制圧し、あるいは防止するための措置を講ずる必要がある。そのためには、もちろん摘発が最も直接的な手段でありますが、その前にまず我が国に来させないということが必要であるというふうに考えるわけであります。
 特に、フィリピンの場合にはいずれも観光査証を取って我が国に入ってくる人々が大半でありますから、これは外務省の協力を得て、マニラその他の在外公館においてこうした疑いのある人々に対して査証を出すことをもっと制約してもらうという必要があるわけでございまして、この点について外務省には繰り返し協力を求めているところであります。
 また、空港等我が国への出入国港においてその入国を阻止するということもいたしております。こうして空港からむなしく引き返さざるを得ない、上陸を禁止される人々の数も非常な数に上っておりますが、御理解いただけるとおり空港における施設には非常な制約がございます。また、一人の上陸申請者に対して費し得る時間も極めて制限されております。長い列がつくられておる入国申請者に対して一人一人にそれほどの時間をかけるわけにはまいりませんので、こうした面での制約もございます。そうした中で、ともかく疑わしい案件について突っ込んだ審査を行って上陸を禁止する案件も年々ふえているわけでございます。こうして、ともかく我が国にまず入国することを防止する、次に、入国しても在留の目的、すなわち不法就労の目的を達する前に摘発するという案件をふやしていかないことには、退去強制案件がいかにその数においてふえていってもこうした状態に対処する効果的な措置にはなり得ないという現実が存するわけであります。
#159
○千葉景子君 いろいろ努力をされていることはよくわかるんですが、今の中には幾つか問題があるだろうと思うんですね。十分に働いて、お土産も持って、送金をして笑顔で帰っていくというケースも多いということですけれども、本当に一体それが実態だろうか、確かに働いて賃金を得ることができるかもしれませんけれども、それはやはり我が国の一番低辺の、低賃金の、そういう箇所を担って、そういうところの労働力として使われているというのが実態ではないだろうかというふうに思うわけですし、それから不法就労というか、不法入国でしょうか、そういうものがないように、むしろ入国の際にチェックを強化をしていくということですけれども、これも今の時代の中で、一体入国を全く阻止していく、あるいは受け入れない、そういう体制で一体対応し切れるのか、それがいいのかどうか、そういう問題も今後の課題として残されているんではないだろうかというふうに思うんです。それについてはきょう一言で済まされる問題ではございませんけれども、その辺についても今後の検討課題であろうかというふうに思います。
 ところで、今観光ビザ、観光目的という形で入り、そして不法在留し、不法就労しているというケースが多いというお話でしたけれども、最近、それにプラスして見られるのが就学とかあるいは研修、こういうものを在留目的として、在留資格として入国をし、そしていわゆる労働力として働いているというケースもあるというふうにも聞いておりますけれども、その辺について若干お尋ねしたいというふうに思っております。
 政府の方で、一九八三年に二十一世紀に向けて留学生十万人計画というものをお立てになっているわけですね。それに従って一九八四年に法務省の方で留学ビザの手続の簡素化ということをなさっているかと思いますが、その辺は間違いございませんか。
#160
○政府委員(小林俊二君) 先生の御指摘の手続は、留学目的の入国申請に関する事前審査終了証制度のことであろうかと存じます。
 この制度は、本人が在外公館に保証人の保証状を含む書類を提出して初めて申請が受け付けられるという従来の方法を改めまして、我が国内において保証人がその留学を希望する外国人のために事前の審査を申請する制度を設けてその審査の結果許可をされた者につきましてはその事前審査終了証というものを交付することによってそれを本人に送付し、それが在外公館に提出されればそれ以上審査をすることなしに査証が与えられるということでございまして、これによって保証人を探したり、その他外国人にとってかなりの負担となっていた部分が簡略化されたという事実がございます。
#161
○千葉景子君 こういう形で、就学を目的とした入国はかなり手続上楽になったという面があるわけですけれども、そうなりますと今度は十万人計画という遠大な計画もあるわけで、受け入れの方がしっかりしておりませんと、入ってきたけれども学校はあるんだかないんだかわからない、一体勉学ができるのかわからないというような状態が起こらないとも限らないわけです。とりわけ日本語などを学びにきたいというときに、日本語教育などの整備がなされているのかどうかという点も非常に疑問です。中には安い学費で、そのかわりに働かされているというようなこともこれもまた記事などで見たことがあるわけですけれども、こういう点について、留学生ですね、就学を目的として入国する者に対する法務省としての何か対策といいますか、バックアップ体制ですね、そういうものは考えていらっしゃいますか。
#162
○政府委員(小林俊二君) 就学生と留学生とを当局は一応区別いたしておりまして、大学等に入学いたします留学生は特別のカテゴリーの在留資格を与えております。この不法就労等の関係でこれらの人々が問題となることは余りないのであります。その関係で問題となるのは大半が先生もおっしゃいました就学生でございます。その中でも特に目につきますのは、日本語学校に入学をするという名目で我が国に入国しながら、ほとんど学校にも行かずに専らキャバレーその他で働いているという人々でございます。したがいまして、管理という観点から申しますと、日本語学校を中心とするいわゆる各種学校等の協力を得ると申しますか、その面からの管理を進めるということに非常に大きな重点がございます。
 このために当局におきましては信用のできる日本語学校等を一定のリストに掲載いたしまして、そのリストに掲載されている教育機関につきましては、先ほど申し上げました事前審査終了証の対象として手続を簡略化する、すなわちそれらの学校の校長が入学を希望する人々の保証人となることを認めるということをいたしております。
 しかし、過去の実績等から見て、その就学生の管理に非常に遺漏がある、あるいは非常に疑問があるという教育機関についてはこういう取り扱いを認めておりません。したがって、その場合には従来どおりの手続を踏まなければならないということによって区別をしているわけでございまして、こうした手続を通じて信用のできる教育機関が淘汰の中から残っていくということになる。そしてその教育機関の協力を得て在日の外国人の管理が適正に行われることを確保していくということも私どもが努力をしている一つの面でございます。
#163
○千葉景子君 この問題についてですけれども、留学生十万人計画等にかかわって、文部省の方としてはこういう計画に対してどんな体制をとっていらっしゃるんでしょうか。
#164
○説明員(雨宮忠君) 先生御指摘のように、昭和五十八年に総理の指示に基づきまして有識者の懇談会を設けまして留学生受け入れの拡充方策についていろいろ検討していただいたわけでございますが、欧米諸国に比べましてまだ受け入れが低いのではないか、あるいは日本の国際的な地位から見てまだまだ努力すべきことがあるのではないか、あるいは我が国の高等教育機関全体の受け入れ能力から見てもっと受け入れられるのではないかというようないろいろな考え方がございまして、二十一世紀初頭に十万人の受け入れを目指してということで施策を進めるに至ったわけでございます。
 それの実現のためにはいろいろな意味での受け入れ態勢の整備を図らねばならないということでございまして、受け入れる大学などの教育機関の受け入れ態勢の整備というのが一つございますし、また今話題になってございます日本語教育自体の体制整備ということもございますし、また居住ということから留学生の宿舎の確保というようなことも大きな課題になっているわけでございます。
 留学生にかかわる施策は非常に幅広うございます。今挙げましたのは大きな柱でございますけれども、それらすべて含めましてできる限りの努力をしておるところでございます。
#165
○千葉景子君 こうなりますと留学生にとっても大変費用とか学費あるいは滞在費等において負担が大きいわけですけれども、こういう費用などに対しての援助とか、そういう点についてはいかがでしょうか。やはりこの留学生受け入れを促進するためにそういう点についても配慮をしていかなければなかなか積極的に日本へ留学しようというような人もふえないだろうというふうに思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
#166
○説明員(雨宮忠君) 留学生の中には大別いたしまして我が国政府が奨学金を支給して、渡航旅費から始めまして月々の奨学金まで支給して、全勉学生活の面倒を見るという形での国費留学生というのが一つの種類としてございます。それからそれ以外を一般に私費の留学生と呼んでおります。昨年の五月一日現在で我が国の大学等の高等教育機関で受け入れております留学生の数は約一万八千六百人でございますが、そのうちで最初に申しました国費の留学生が約三千人余りございます。残りが私費の留学生、こういうことになっておるわけでございます。
 私費の留学生は、基本的にはその親元からの送金であるとか、あるいは場合によってはその国の政府から奨学金を得る者であるとか、あるいは我が国の奨学団体から奨学金を得て生活する者であるとか、あるいは一部分をアルバイトに頼る者であるとかいろんな組み合わせがあるわけでございますけれども、特に昨今、一昨年秋以来の円高等の状況によりまして、多かれ少なかれ私費による留学生の生活が非常に厳しいものになってきているということは一般に当然言えるわけでございまして、私どもといたしましてはかねてから国費、私費区別なく、例えば、こちらで勉強している間にけがだのあるいは病気だのをするということになると非常に勉学に差しさわりが出てくる。経費負担も大変だろうということで八割の医療費補助というような制度もとってもおります。また、私費の留学生で学業優秀であるというような場合には国費留学生への切りかえ措置というようなこともやっております。
 また、奨学団体の設立促進というようなこともやっておるわけでございますが、特に来年度に向けまして、例えば、私立大学でそのような私費留学生に対する授業料免除措置をとったというような場合には国が何らかの形で援助できないだろうかというようなこと、あるいは住居の確保ということにも関連いたしまして権利金等の一部補助ができないだろうかというようなことを来年度の予算措置に向けまして種々検討しておるところでございます。
#167
○千葉景子君 留学生などに対してはかなりそういう積極的な施策も少しずつ進められているというところがあるかと思うのですが、先ほど言った修学目的で入国をする場合、やはり日本語教育機関等の整備というのがこれからやはり必要だろうと思うのですが、いわゆる文教政策といいますか、そういう中での日本語教育機関ですね、こういうものの位置づけというのはどんなふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
#168
○説明員(田原昭之君) お答え申し上げます。
 先ほど、先生のお話にございましたいわゆる日本語学校と申しますか、日本語教育機関につきましてその設置形態を申し上げますと、現在私どもが把握している限りにおきましては大学院、大学等が約二百十機関ございます。それから高専、専修学校、各種学校等が約七十数機関ございます。その他全体で四百二十七機関あるわけでございますが、いわゆる学校教育法の大学なり専修学校等になっていない一般の財団法人なりあるいは宗教法人等、あるいは株式会社等が設置しております日本語学校というものが百五十三校ございます。これにつきましては直接的に文部省を初め都道府県教育委員会等の教育当局が直接的な監督をする権限は現在のところないわけでございます。
 しかしながら、広い意味での教育でございますので、文部省といたしましては、むしろ行政の対象としてはこういういわゆる百五十三の直接的な権限のない学校に対しましても行政の対象として含めていくということでその教育内容等を勘案をいたしまして、これまでも例えば、日本語教育のいろんな研究協力をする場合の協力校に指定して研究をしていただいたり、あるいは毎年東西二カ所で日本語教育のそういう機関の関係者にお集まりいただいて共通な問題についていろいろと御討議いただいたり情報交換をする、そういうふうな場所を設けましてできるだけ広く日本語教育機関の水準の向上を図っていきたい、このようなことを現在進めておるところでございます。
#169
○千葉景子君 そういういわゆる学校教育法といいますか、そういうものから外れるような日本語学校ですね、こういうものについては法務省なりほかの省庁とも連携をとってそこでの外国人なりがきちっとした教育が受けられるように、不法な、不当な労働力として働かされたりするようなことがないような措置をぜひ今後も講じていただきたいというふうに思っております。
 もう一つ、最近やはり問題になるのが研修という、それを資格として労働するというケースも考えられるわけです。というのは、研修というものがそもそも技術を習得する、実際にいろいろな作業をしたり仕事をしながら習得するという面もありますから、労働するということと紙一重というところもあるわけですね。そういう意味ではこういうところも下手をすると抜け道になっていくという可能性も今後強いんではないかというふうに思っております。そういう意味で研修の体制ですね、こういうものに対する対策、こういうことは法務省の方としては考えていらっしゃいましょうか。
#170
○政府委員(小林俊二君) 開発途上国からの来日する研修生は、従来公的な機関を経て来られる方々がほとんどだったわけであります。例えば、国際協力事業団でありあるいは通産省の補助しております海外技術者研修協会といったような公的な機関を通じて我が国に研修のために来日する人々についてはこの不法就労といったような問題は全く存在しなかったのでございます。その経費は一切日本側の公的な機関、私企業が集まった団体を含めて公的な機関が支給してあるいは支出してそういう研修を行わせるわけでございますから、そういう研修を受け入れる側にとってほとんど経費の上での負担はなくて済むということでございました。
 ところが、海外との接触が非常に緊密化してまいりますといろいろな理由で民間の企業がそうした機関を通じないで直接自分のところに研修生を受け入れるといった形態が目につくようになってきたのでございます。民間の企業が自分の経費で海外から研修生を受け入れるという場合には、ある程度何らかの見返りということが含まれてこざるを得ないのでございまして、そういう見返りを一切認めないとなりますと、民間企業が研修生を受け入れるということを一切禁止するということに等しい状態になるわけでございまして、それもまた行き過ぎであろうというふうに思われます。
 そこで、肝要なことは何らかのバランスをとる、要するに、それがもう全くの低賃金労働に徹したようなケースについては認めない、少なくともその妥当な部分、本人が技術を身につけて本国へ帰ってそれを生かすという研修という側面が十分に確保されていなくてはならないということでございます。そうしたことで、民間の企業が受け入れる研修生については、御指摘のように問題が基本的にあり得ますので、審査について慎重を期しているところでございます。そして、その一定の職種、特に産業、工業部面を中心とする一定の職種の研修については労働省と協議をして、その枠内であればこれを認めるといったような手続もとっております。
 その他の分野、医療であるとか、農業、水産業といったような分野におきましては関係省との協議という手続はとっておりませんけれども、その場合におきましても、今申し上げましたように低賃金労働というふうな形態あるいは色彩に流れることがないように、その面から研修計画あるいは研修施設あるいは研修体制といったようなものについての慎重な検討、審査を行っているというのが現状でございます。
#171
○千葉景子君 研修というところではその区別が大変難しいところもあるので慎重にしていかなければいけないだろうというふうに思うんですが、最近、大企業などでも外国人を採用するというケースがふえてきている。資料などによりますと、神戸製鋼とか、西武セゾングループですか、それ以外にも証券会社等で外国人を採用しているところがふえてきている。何か大阪商工会議所の実態調査によると百十五社、三百人以上の外国人が企業に採用されているというような実態もあるようなんですね。
 こうしてまいりますと、先ほどから不法ではあるけれども大量のやっぱり労働者が日本で働いているという実態、あるいは大企業などで外国人を採用しているというような実態、こういうのを見ますと、これまでの労働者、一応単純労働者というんでしょうか、そういうものは原則として受け入れていないというこれまでの基本的な考え方をもう一度検討し直さなきゃいけない、そういういろいろな状況も出てきているんではないだろうかというふうに思うわけです。
 特に、大企業の方ではむしろ優遇された労働力として受け入れられる、逆に反対の方では零細企業とか、あるいは低賃金労働として不法なというような形で入ってくる、こういう二分化された形態になってきているわけですけれども、こういう問題について今後法務省としてはこういう入国について一体どう考えていくのか。まだ結論が出る段階ではないかもしれませんけれども、そういう方向性などはございますでしょうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
#172
○政府委員(小林俊二君) 単純労働者とその他の外国人で我が国で稼働を希望する人々、就職が主でございますが、就職を希望する人々とは従来から入国管理行政上明確に区別をいたしておりますし、現実に区別が可能でございます。そういうことで、単純労働者以外の外国人の稼働希望者につきましては近年非常にその数もふえておりますし、また職種も多様化いたしております。この面につきましては、入国管理当局としては国内の経済界を中心とする需要の伸びに即応していくというのが基本的な態度でございまして、この面において最近基本的に政策が変わったということは全くございません。単に需要が拡大し多様化してきたということでございまして、それに応じて入ってくる人々の種類だとかあるいは数がふえたということでございます。
 一方、単純労働者につきましては、我が国は今日まで一貫してこれを受け入れる、戦前を通じてこれを受け入れるという政策をとったことはございません。この政策は現在でも続いております。
 この面について今後どうあるべきかということは、これは一つの別個の問題でございまして、ことしの入管白書においても私どもが指摘いたしましたように、この点については国内各界、関係省庁その他の意向の動向、国民の世論の動向、あるいはその背景にある状況の発展ということを慎重に見きわめつつ考えて研究していくべき問題であるということでございまして、この二つのカテゴリーの稼働を目的とする外国人を峻別して対応していくということは、現在のところ全く変更する意思はございません。
#173
○千葉景子君 これに対して現実に稼働している労働者がいるという実態があるわけですが、労働省としてはこういう問題についてはいかがお考えになっていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。
#174
○説明員(吉免光顕君) まず、受け入れの問題について少しお答えをしたいと思いますけれども、外国人の労働者の受け入れをするしないの問題そのものは、先生も御指摘のように、非常に経済、社会、あるいはいろんな面で国際化が進む中で幅広く検討を進めていく必要があると思っております。そういう場合でも雇用情勢であるとか、あるいは先生御指摘のように労働条件、そういった面で悪条件が出てくるということもございますし、そういう点で十分考慮していく必要があるというふうに思っています。私どもの方でもそういう意味で単純労働力については受け入れないということで考えてまいりたいというふうに思っております。
 また、不法に就労している外国人につきましては、雇用情勢あるいは労働条件に悪影響を及ぼさない、あるいはそういう要因になりかねないということで、私どもの方としましても関係省庁と連携をとってこの問題に厳正に対処していきたいというふうに考えています。
#175
○千葉景子君 受け入れないというお話でございます。それは今後のまた問題にはなるかと思うんですが、厳然としてやはりそういう労働力が日本の中に存在し、そしてそれが日本の経済、一番低賃金、あるいは最下層といいますか、そういうところを支えている。それによって産業が成り立ち、日本の企業が利益を上げているという実態があるわけですね、それはもう厳然と。
 そうしますと、受け入れるかどうかという問題とともに、そういう労働者に対して一体どういう対応をしていくか、こういう問題も残されるだろうというふうに思います。例えば、最初に述べましたけれども、賃金が支払われないとか、暴力を振るわれるとか、強制的に労働させられるとか、これはまさに本当に人権の問題でもございますし、こういうことについては我が国の労働法体系、こういうものを使ってきちっと救済をしたり、対処をされていくつもりであるか、そこのところを労働省、法務省にもお聞きをしたいというふうに思います。
#176
○説明員(戸苅利和君) 強制労働ですとか、あるいは賃金不払いですとか、そういった問題も含めまして、一つは労働基準関係の法律でございますけれども、これにつきましては、日本の国内で行われる労働でありますれば、それが日本人であるか外国人であるかを問わず適用されるということになっておりまして、不法に入国して、就労されている方につきましてもそういった労働基準法関係の法令は当然適用されるということになっております。
 それから、労働者派遣法ですとか、あるいは職業安定法ですとかそういったものに基づきまして、労働者派遣なりあるいは労働者の供給事業なりあるいは職業紹介なりということも行われる、それが国内でそういった労働者派遣等の行為が行われる場合には、それも日本人であるか外国人であるかを問わずにこの法律が適用されるということになっておりまして、特に労働基準法関係につきまして強制労働等の重大悪質な法令違反がありましたら、そういったものについては厳正に対処しているところであります。
#177
○政府委員(小林俊二君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、不法就労の摘発について入国管理局は警察との協力に大幅に依存しているわけでございますけれども、しかしながら、不法就労対策といたしまして一つの重要な側面は、これらの人々を雇用する日本人に対する規制でございます。そういう面におきましては、労働省との協力の必要あるいはその余地は極めて大きいのでありまして、特に、地方レベルにおきます労働省の出先機関との協力ということを今後緊密にしていきたいというふうに強く考えております。そういう面において、日本人雇用者に対する指導あるいは規制を通じてこの問題についてさらに効果的な手が打てることを期待いたしておるわけでございます。
 なお、一言申し加えますれば、昨年の摘発の例で見ますと、全体の数八千人余りのうちの四分の三は女性でございます。これらの女性はキャバレー、バー等においてホステスとして、あるいは売春婦として稼働している人々でありまして、日本経済の枠組みの中に組み込まれているとは到底言いがたい人々であります。したがって、こうした人々については単純労働力の合法化とか何かということとは全く将来とも縁のない分野でございますので、この問題を単純労働力の導入の合法化と結びつけて考えるということには若干の困難があろうかと思います。
#178
○千葉景子君 今の局長のお答えには私はちょっと納得いかないところがあるんですが、これはまた時間のあるときにやらせていただくとして、そのほかにも、そのもとを正さなきゃいけないという意味では、労働者派遣法ですとか、ブローカーなり無許可事業などがあったり、あるいは有料職業紹介、ピンはねをしているというようなことになれば職業安定法とか、それから労基法、そういうものも使ってそういう業者なりに対する厳正な取り締まりも行えるはずですので、そういう点についても今後手抜かりなくやっていただきたいというふうに思うわけです。
 ところで、こういう外国人労働者は、先ほど言ったように、日本の低賃金あるいは産業を一番底で支えるというような労働力として今大変大きな問題になっている。これはさかのぼって考えますと、先ほどから私が申し上げている日本に現在在留されている朝鮮半島から見えた多くの方々、こういう皆さんが戦前から日本の一番最下層の、あるいは低賃金の労働力として使われてきたという歴史と相重なるところが私はあると思います。そういう意味では、これからこの労働者の問題をどうしていくかという問題、これが外国人登録法をどう考えていくかという問題とも密接にかかわるところではないだろうかというふうに思うわけです。そういう意味で、ぜひこの問題の共通点を認識していただいて、これからのさまざまな対処をしていただきたいというふうに思います。
 そこで、今回の外国人登録法の問題に直接に入らせていただきたいと思うんですが、今回の法案、これに至るまでには外国人登録法に対して抜本的に改正をしてほしい、こういう日本国じゅうの声が存在していることは多分法務大臣も、あるいは法務省当局の皆さんも御存じではないだろうかというふうに思うわけです。地方議会などにおいても一都一道二府八県、市で四百二、町で四百四十五、村で八十四、特別区で十三、合計で九百五十六、これは法務省に提出をされている、送付されてきた数だそうでございますが、ほかの統計によりますと一千以上の反対決議が地方議会においても上げられている。
 その大きな要求の内容というのは、指紋押捺制度を廃止してほしい、それから外国人登録証の常時携帯制度についても廃止をすべきである、そして重い罰則を緩和しろ、こういう要求が主な内容になっているわけです。それに引きかえまして今回の改正の内容というのは、これと全く別な内容になっているわけですけれども、このような全国からの、あるいは日本国民の、地方議会の声、こういうものについては一体どういうふうに考えていらっしゃるのか、それをまずお聞かせいただきたいと思います。
#179
○政府委員(小林俊二君) 地方議会から送付されてまいります意見書につきましては、もとより私どもも注意深くそのフォローをしているつもりでございますし、その内容において私どもの立場と調整し得る点があればこれを取り入れるという方向でその検討をしているところでございます。
 一口で申し上げれば、その意見内容については行政の運営上あるいは政策の立案上参考とさせていただいているということでございます。
#180
○千葉景子君 どういう点を参考にされたんでしょうか。
#181
○政府委員(小林俊二君) 一口で申し上げれば、その外国人登録法に規定されている諸要件の緩和という点でございまして、今回の法改正も含めこれまでの法改正は、先ほども申し上げましたように、一貫して要件の緩和という方向で行われてきているという点は、こうした意見にも沿った結果であろうかと思います。
#182
○千葉景子君 今述べたような地方議会とかそれから日本国じゅうから上がっている声というのは、そんな問題じゃないんです。この指紋押捺制度が一体どんな本質を持って、この指紋押捺をしなければならない人たちにとってどれほどの苦痛をもたらしているか、あるいは常に登録証を携帯しなければいけないことによってどれだけの不利益やあるいは嫌がらせを受けているか、あるいは日本人に比べてこういうことに違反して重い罰則が加えられることでふだんから不安な生活を強いられているか、こういうことを踏まえてこの外国人登録法、この大きな柱ですけれども、これを抜本的に変えてほしい、こういうものをなくしていくべきだ、こういう声が大多数の声なんですよ。今回の改正案にはそういう声が全く反映されていないではないですか、その辺はいかがですか。
#183
○政府委員(小林俊二君) 先ほどもお答え申し上げた点でありますけれども、およそ行政府における政策立案の基本的な立場というものは、その行政目的の確保が一方にございまして、他方においてその行政の対象となる人々の立場なり希望なりというものがあるわけでございます。この二つの側面は常に一致するとは限らないわけでございまして、こうした二つの側面の間に妥当なバランスを確保していくというのがその基本的な立場であるべきかと考えるわけでございます。
 したがいまして、こうした地方議会の意見書に表明されているような外国人住民の希望を一〇〇%受け入れた場合に、しからば一方の側面である行政目的を達成することができるのかという問題が残るわけであります。これが達成できるということであるならば問題は生じないわけでありますが、私どもの認識するところにおいてはそれはそういうことではないということでありまして、こうした両方の側面に立脚したバランスを求めていくということが今日までの外国人登録法改正の背後にもあったと申し上げることができるかと思うのであります。
#184
○千葉景子君 その行政目的につきましては、順次お聞きしていかざるを得ないわけですけれども、それでしたら、こういう改正をするに当たっては、こういう法律が直接適用される外国人の皆さんの実態、あるいはその意識、意見、こういうものをまず聴取されたり、あるいは調査されたり、そういうことがまずもって必要だと思いますけれども、法務省としてはこういう皆さんについてその実態を調査されたり、あるいは直接声を聞いたり、そういうことをどのくらいなさったんですか。
#185
○政府委員(小林俊二君) 外国人、特に我が国に在留する外国人の大半を占める朝鮮半島出身者の実態の調査ということは、昨年金国的に実施いたしまして、その結果を取りまとめたところでございます。また、それらの外国人を代表する外国人団体も幾つか御存じのようにございます。これらの団体との協議あるいは連絡ということも常時行われているわけでございまして、私どもとの間の連絡関係はむしろ緊密なものがあると言ってよろしいのではないかと思います。
 また、外国人である以上、その外国人を代表する本国があるわけであります。もちろん朝鮮半島の北半分につきましては外交関係はございませんけれども、韓国については我が国と外交関係があり、韓国政府は在日韓国人の立場も代表して日本政府との間の意思の疎通を図っているわけでございます。したがいまして、こうした韓国政府との意見交換、韓国政府からの申し入れといったことも過去におきましてこの改正に至る間におきましても累次あったわけでございます。こうした経路を通じて在日する外国人の人々の意思あるいは希望というものは、私どもとしては十分承知しているつもりでございます。
#186
○千葉景子君 今、その実態を調査されたということで、結果がまとまっていらっしゃるわけですね。それは私に資料としてお見せいただけますね。
#187
○政府委員(小林俊二君) 提出することが可能でございます。
#188
○千葉景子君 それは、提出していただきたいというふうに思います。
 今、いろいろと連携をとってということがございましたけれども、例えば、十六歳になって指紋を押さなければいけない、そういう人たちからの声とか、直接の訴えとか、それ以外にも指紋を押さなければいけない人たちの声とか、それから常時携帯をして不便を強いられている人たちのいろいろな苦痛の声とか、そういう声を一体どれほど直接に耳を傾けられたり、あるいは聞かれたりしたんでしょうか。
 この問題が出ましてから、指紋不押捺の人は法を犯しているんだから法務省としては面会はできないとか、そういうことも払お聞きしたわけですけれども、そういう中でこの法律の改正がなされる、そして内容が決められていくというのは私は到底納得がいかないんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
#189
○政府委員(小林俊二君) 私どもはこの法改正、制度の改善の問題と、現行法に基づく義務の履行という問題は次元の異なる問題であるというふうに、考えております。すなわち、我が国のように言論の自由あるいは政治活動の自由が認められ、保障され、遵守されている国におきまして、社会において、現行法に不満がある、あるいはそのあり方について要求があるということで、それを表明する手段あるいはそれを実現する手段として現行法の義務にあえて違反するということを正当化する余地はないというのが私どもの見解でございます。
 したがいまして、先生の御指摘のような拒否という事例につきまして、これをエンドースすると申しますか、裏づけるような措置は私どもとしては到底とり得ないところでございます。しかしながら、そうした面を離れてこの法律のあり方について、制度のあり方について関係者の人々と話をするということについて、私どもは何ら制限を付する気持ちはあるいは方針はないわけでございまして、進んでそうした先ほど申しましたようなチャンネルも含めて、これらの人々の声に耳を傾ける態度をとってきたつもりでございます。
#190
○委員長(三木忠雄君) 千葉君、そろそろ時間でございます。
#191
○千葉景子君 はい。時間なんで、質疑は全くこれからというところなんですが、非常に私は冷たい言葉だと思います。
 これまでお話をしてきましたけれども、いろいろな歴史を踏まえて、そしてこの中でこの法律を適用されてきた人たちの悲痛な声というものは全く理解されていないんじゃないか、あるいは本当に真摯に受けとめられていないんじゃないか、そういう気がするわけです。またこの続きをさせていただきますけれども、そういう中でそういう皆さんの声、本当は直接こういう場で聞いていただくことが一番いいことだというふうに思います。それが可能であればそういう形で、そうでなくても、今回の法改正の動きに対してどんな心情を抱いているか、そういうことはぜひ今後明らかにさせていただきたいと思いますので、そういうものを踏まえて今回の審議にぜひ臨んでいただきたいというふうに思います。
 終わります。
#192
○猪熊重二君 外国人登録法に対する質問に先立って、出入国管理法について若干質問させていただきたいと思います。
 まず、いわゆる入管法は、一口で言うとどういう目的の法律ということになるでしょうか。
#193
○政府委員(小林俊二君) 出入国管理法は、我が国への内外人の出入国の公正な管理を確保することを目的といたしております。
#194
○猪熊重二君 確かに、法文によれば日本人、外国人を問わず、今局長がおっしゃったように内外人の出国、入国、こういうことになっておりますが、実際には法文の規定から見れば、日本人に関する問題は六十条、六十一条に二条あるだけで、あとはほとんどいわゆる外国人の入国及び出国に関する規定、こういうふうに考えられます。外国人の入国、出国及び入国した外国人の在留資格の問題、この辺が入管法の主目的であるというふうに考えてよろしいでしょうか。
#195
○政府委員(小林俊二君) 出入国管理法の大半が外国人に関する規定によって占められているのは、先ほど千葉先生の御質問に対してお答えしましたように、外国人と国民との間に基本的な法的な地位の相違があるからでございます。言いかえれば、外国人の場合にはその入国及び在留は、その入国し、在留する国の政府の主権に基づく許可にかからしめられているということでございます。このためにその許可に関連する諸法規がこの出入国管理法の多くの部分を占めているという結果にもなっているわけでございます。
 そうした点を踏まえて御質問にお答えすれば、この出入国管理法の外国人の入国、在留に関する規定の目的を一言で申し上げるとするならば、秩序ある外国人の入国及び在留を確保する、すなわち政府の許可の範囲内においてこれらが行われることを確保するということにその主目的があるというふうにお答え申し上げることもできるかと存じます。
#196
○猪熊重二君 法文によれば、外国人の入国、出国に対する「公正な管理を図る」ことを目的にしている、こういうことになっておりますが、「公正な管理」の「公正」ということについてどのようにお考えなんでしょうか。
#197
○政府委員(小林俊二君) 内外の諸要件に照らして適正妥当であるべきであるというのが「公正」ということの概念かと存じます。
#198
○猪熊重二君 先ほど入管局長は、秩序ある入出国管理体制というふうなことをおっしゃいましたが、「公正な管理」というのは、秩序あるということを主目的に置くよりは、国際主義的な観点あるいは内外人平等主義的観点という側面を「公正な」というふうに言っているように思いますが、いかがですか。
#199
○政府委員(小林俊二君) 国際人権規約にうたっておりますような内外人平等主義あるいは我が国の憲法に規定されておりますような法のもとの平等という概念は、基本的人権に直接かかわるような問題について特に強調される点でございます。したがって、合理的な理由のない、根拠のない差別、差別というのは不当な不利益をもたらす区別というふうに理解いたしておりますけれども、そうしたものを排除する趣旨であろうかと思います。
 一方、私が先ほど既に申し上げましたように、国民と外国人との間に存する基本的な法的地位の相違に由来する、起因する合理的な取り扱い上の区別がこれに含まれるものとは全く考えておりません。
#200
○猪熊重二君 ところで、外国人の入国に関して少々伺います。
 外国人が本邦に入国するためには、有効な旅券を所持していなければならない、その上でその旅券に上陸許可の証印を受けなければならない、これが上陸するための要件だと、こういうことになっております。
   〔委員長退席、理事鈴木省吾君着席〕この上陸許可の証印交付の手続は、どこで、だれが行うんでしょうか。
#201
○政府委員(小林俊二君) 外国人が我が国に上陸する入国港、これは空港及び海港がございますけれども、入国港におきまして入国審査官がこれを行います。
#202
○猪熊重二君 まず、上陸許可のための審査としては、旅券が果たして有効であるかどうかということを見なきゃなりませんね。この旅券の有効性はどんな観点から判断するんでしょうか。
#203
○説明員(佐藤勲平君) 申すまでもなく、有効な旅券と申しますと、それぞれの国が発行したという点がまず最初に必要な要件であろうと思いますし、また発給されたその旅券自身がその所持しておる者について発給されたものであるかどうか、そういうような点が大きな要件であろうと思います。
#204
○猪熊重二君 私が聞きたいのは、この旅券は有効だといった場合に、有効な旅券を持っている所持人がまさにその旅券の名義人であるのかどうか、この辺の人の同一性はどのようにして判断するのかということをお聞きしたいわけなんです。いかがでしょうか。
#205
○説明員(佐藤勲平君) 通常、旅券には写真が張られております。そしてさらに身分事項その他が記載されております。それらによって確認しておるというところであります。
#206
○猪熊重二君 入管法で一番大切なのは、入ってくる人間がどういう人間がということを調べなきゃならぬ、これがまず入管法の第一歩ですね。そのときに、写真と旅券に記載されている身分事項の確認ということで、旅券の所持人が旅券に表示されている人間と同一であるかどうかということは確実に認定、判断できるんでしょうか。
#207
○政府委員(小林俊二君) いわゆる偽造旅券、変造旅券によって入国審査の目を逃れて我が国に入国する者が極めて日につくというのは事実でございます。したがって、入国審査が入国港において私どもが期待するに十分なほど現実に行われているということは言いがたい状況にございます。したがって、改善の余地は大きいというふうに考えております。
#208
○猪熊重二君 私の質問に対する答えじゃないんです。私が質問しているのは、旅券が有効か無効かどうやって判断するんだと。旅券自体は、紙自体は有効だということになったときに、その紙を、旅券を持ってきている人間が旅券に表示されている人間と同一かどうかはどうやって判断するんだと、こう質問したわけです。そうしたら、写真と旅券の身分的記載事項の照合でよろしいんだと、こうおっしゃるから、それだけで十分に確認できるんですかと伺っているんです。
#209
○政府委員(小林俊二君) 私がお答え申し上げましたのは、十分にというのが一〇〇%ということであれば一〇〇%ではないということでございます。
#210
○猪熊重二君 そうすると、一〇〇%でないというと、ちょっと疑わしいのが入ってきても困る、本人だかどうだかわからぬということになったときに、その後の本人の同一性を確認する手段としてはどんなことをやっているんでしょうか。
#211
○政府委員(小林俊二君) 実際の事の経過、現状に照らして申し上げれば、こうした変造あるいは偽造旅券が発覚いたしますケースは、入国港の窓口においても起こっておりますけれども、その他その入ってきた外国人が不法就労あるいは不法残留といったような入管法違反の行為を行いまして、摘発の結果審査の過程を通じてそれが確認される。これは実は私の旅券ではありませんというようなことを自白するといったようなケースがあって発覚するという事例が極めて多うございます。
#212
○猪熊重二君 この旅券所持人の同一性については、指紋が何らかの形で作用していることはないんでしょうか。
#213
○政府委員(小林俊二君) 入国審査の段階においては指紋は用いられておりませんので、これが作用しているということはございません。
 なお、偽造、変造旅券と申し上げましたけれども、特にフィリピンから参ります人々の不法就労事件に関連をいたします旅券は真正の旅券で、偽造でも変造でもない旅券でございます。にもかかわらず、その発給の手続における瑕疵がございまして、他人の名義で自分の写真を張りつけた真正の旅券が発給され入手されて、一たん退去を受けた者が旬日を経ずしてまた新しい旅券で入ってくるといったような事例もあるわけでございます。
#214
○猪熊重二君 私はよく知らないんですが、旅券には指紋は押捺してある国もあるんでしょうか、ないんでしょうか。
#215
○説明員(黒木忠正君) 国によりましては旅券に指紋を押させている国があるようでございます。
#216
○猪熊重二君 旅券に指紋が押してある場合に、もしこの外登法によって指紋を押捺させるんだったら、そこで指紋を押捺させてみたら同一性というものは非常にはっきりすると思うんですが、いかがでしょうか。
#217
○政府委員(小林俊二君) 旅券に対する指紋押捺が国際的に一般化するという状況においてはそのようなことを考える余地が出てこようかと思いますが、現在のところ旅券に指紋を押捺している国は極めて限られておりまして、ほとんどがそういうことはないというのが現況でございます。したがって、旅券との照合という意味において指紋を利用する余地は非常に乏しいと言わざるを得ないわけでございます。
#218
○猪熊重二君 旅券に指紋が押してない場合であっても、指紋を押させることによって本人の同一性を確認するかどうかというふうなことはお考えになったことはありますか。
#219
○政府委員(小林俊二君) 入国管理という観点に限って申し上げれば、入管法違反を犯した外国人が収容されますと、退去強制を受ける前に指紋の押捺を求めております。これは法定されていることでございまして、したがって、かつて我が国に入管法上の違法行為を犯して退去強制になった外国人の指紋は保管されているわけでございます。したがって、これとの照合ということは、再犯あるいは三犯、四犯というようなたび重ねて入管法違反を犯したことが現在日の前にいる被疑者にないかどうかということを確認する手段としては用いられております。
#220
○猪熊重二君 要するに、従前指紋をとってある人間についてはもう一度指紋を押させてその本人の同一性を確認するということはある、こういうことですね。それよろしいですね。−そうすると、今まで一度もやってない人には指紋を押させてもほとんど意味がないから、だから押させないわけですか。
#221
○政府委員(小林俊二君) 入管法違反を初めて犯した外国人であっても、収容されればそこで指紋の押捺が義務づけられます。求められます。そこで指紋という資料が入国管理局の警備部門に保管されることになるわけでございまして、その意味は将来にわたっての資料でございまして、その瞬間において指紋が何らかの意味を果たすということはございません。
#222
○猪熊重二君 しかし、今入ってくる人間を許可しようかしまいかといっているときに、その入国外国人の在留期間というものはもうその時点で判明しているわけでしょう。ですから、この人が上陸した後に外登法に基づく登録申請ないし指紋の押捺をしなければならない状況の人になるかそうじゃないのかというのは、まさにこの人を日本国に入国させるかさせないかということを決めるときにははっきりしているわけです。いかがですか。
#223
○政府委員(小林俊二君) 我が国の入国管理法のもとにおきましては、入国後における在留資格の変更という手続がございます。あるいは在留期間の更新という手続がございます。したがいまして、一人の外国人が我が国に入国する瞬間においては、その外国人がその意思においてあるいはその結果においてどのくらい我が国に在留するかということは把握いたしかねます、
#224
○猪熊重二君 それは、入った後どのように変わるかどうかという例外的な場合があるかないかということは、それはあり得るでしょう。私が今聞いたのは、入ってくるときからもう一年間の在留期間が法定されているとすれば、その人は九十日以内だけれども、まあ九十日のときには外国人登録申請をして一年たてば指紋押捺せにゃならぬということがはっきりしている、そういう立場の人がいるでしょうと、こう聞いているんです。短く入ったのが更新になって長くなったとかそういうものもあるでしょうけれども、そういう例外的な場合じゃなくて、入ってくる人を見たときにそういう人がいるいないということはわかるでしょうと、こう聞いているんです。
#225
○政府委員(小林俊二君) 入国後において期間の更新を受けるあるいは在留資格の変更を受けるというのは決して例外ではございません。そのパーセンテージがどのくらいかということをただいま数字で御説明するわけにはまいりませんけれども、極めて多人数に上るわけでございます。
#226
○猪熊重二君 非常に不誠実な答弁だ、私が聞いているのに対して。
 私が最初から聞いているのは、入国の際に一年以上の在留期間が判明している外国人がいるでしょうと、こう聞いているんです、
#227
○政府委員(小林俊二君) それはそのとおりでございます、そういう人もおられます。
#228
○猪熊重二君 その人には指紋を、もし指紋制度というものが正当であるとすれば、そのときに押させておくことが一番はっきりしている。後になって押したとか押さぬとかというよりも、そのときに押させておけば、押さなきゃ入れぬよと言えば押しますということになるかもしれぬ。もし指紋制度というものが本当に必要な制度なら、そういう人に対してはそのときに押させたらいかがですか。
#229
○政府委員(小林俊二君) 現在、外国人登録法に基づく指紋の押捺は、あくまでその登録に関連してその登録の手続の一環として行われているわけでございますから、入国港における上陸申請の段階において登録ということが行われない限り、その登録に関連する一環としての指紋の押捺という問題が生じてこないわけでございます。しかし、将来の立法政策としてそういうふうに法律をつくったらいいではないかというのが御意見でございましたら、それは立法政策の問題でございますから、全く考慮の余地がないというふうには申し上げかねるわけでございます。
 しかしながら、実際に入国港に上陸申請をいたします外国人の大半は、極めて短期の在留期間を目的として入国をする人々でございます。したがいまして、そういう人々が大半を占める上陸港というところで登録に伴う手続を行うということは、必要のない人々を多く目の前にしているわけでございますから、行政の円滑な実施上必ずしも適当ではないということも言い得るわけでございますし、また登録をする場合には、その登録の対象となる人々が実際に居住する市区町村においてその登録を行うということが行政の目的に沿うのではないかというふうにも考えられます。
#230
○猪熊重二君 私は、外登法における指紋が非常にすばらしい法律制度だから、入国許可の際に指紋を押させたらどうでしょうなんという立法政策を申し上げているわけじゃないんです。もし外国人に対しても本当に恥ずかしくなく指紋を押捺させることができるんだったら、そのときにやったらどうですか。そのときにはできないでしょう。日本に入ってくる外国人にいきなり、あなた一年以上だと外登法の関係でこういうことになっている、だからあなた押しなさいなんということは国際法的に見ても国際信義的に見てもあり得ないことでしょう。入ってくるときにやっておけば一番確実にもかかわらずなぜそのときにやらないで、入ってきてからやる外登法の指紋押捺というものの実質が何であるか、これまた後でお話し申し上げますけれども、私は立法政策で申し上げたんじゃないんです。皮肉で申し上げたということを申し上げておきたい。
 次に、先ほど千葉委員の方から質問がございまして、それに対して入管局長の方からも答弁いろいろありました。要するに、現在の外国人登録している外国人の実態というか、本当に外から入ってきて外国人登録をしている人と外から入ってきたんじゃなくて外国人登録している人との数の比率、このようなことを先ほどお伺いしましたので、この数字を前提にして、大体外国人登録している人員が八十六万七千人ぐらい、これに対して外から入ってきたんじゃなくてもともと中にいて登録している人のおおよその数字をもう一度言ってください。どのくらいですか。
#231
○説明員(佐藤勲平君) 御質問の御趣旨が、もとからと言われるのは戦前から我が国におった方々という意味ではないかと思いますが、その観点から申し上げますと、いわゆる協定永住を受けている者が約三十四万二千人、それから一般永住という者が二十九万三千人、それからそのほか法一二六の二の六該当者と言われている人が約二万人おります。
#232
○猪熊重二君 そうすると、先ほどの数字だと、私が聞いたのが間違いなければ、韓国、朝鮮の方で六十七万八千人、台湾出身の方が八万四千人、合わせると七十六万二千人と、このくらいの方がもともと日本にいた人の数だということでよろしいでしょうか。
#233
○政府委員(小林俊二君) もともと日本にいた朝鮮半島及び台湾出身者とその子孫であるというふうに御了解願ってよろしいかと思います。
#234
○猪熊重二君 この方々がいろんな資格はあるけれども、ともかく永住権者となっているとした場合に、この永住権を持っている人はそれを持っていない外国人に比べでどのような法的な取り扱いの差異がありましょうか。
#235
○政府委員(小林俊二君) 極めて明確な差異は、在留期間の更新を受ける必要はないということでございますし、また、その在留中の稼働を含めて活動について制限がないということでございまして、その二つが最も大きな差異でございます。
 なお、協定永住については先ほども申しましたように、退去強制について一定の特別の取り扱いが行われているということもございます。
#236
○猪熊重二君 要するに、在留期限の定めがないということは、単に手続をするとかせぬとかということの問題でなくして、一口に言えば永久にいてよろしい、こういうことであろうと思うんです。
 それから、資格外活動の制限がないということは、いかなる職業につこうと、どこに行ってどういうところに勤めようと全く勝手ですよ、こういうことだろうと思うんですが、それでよろしいでしょうか。
#237
○政府委員(小林俊二君) その在留期限の定めがないということは、原則として先生の今御指摘になったとおりでございますけれども、永住者といえども退去強制事由の対象となることがないわけではございません。犯罪等一定の事由が生じたときには退去を求められるということは、強制されるということは起こり得るわけであります。
#238
○猪熊重二君 そうすると、同じ外国人登録法という投網で十把一からげにやっているけれども、この外国人登録法の中の八割を超える人と、そうでない人とは非常に、法的な地位というか、取り扱いが別でしょう。要するに、外登法によって登録させるということは、本邦におけるいろんな状況における外国人のありようを把握していくためにやっているわけなんです。そこに在留期間の問題として資格外活動の問題と、この二つが一番肝心かなめのことなんだと私は思うわけです。そうすると、肝心かなめのことが必要な一割、二割の人と、そんな肝心かなめのことが全く無関係な八割を超える人と、こういう法的に差が、全然性質の違うものを外国人登録法という一つの法律で外国人という枠組み一つで制定しようというところには無理があると思うんですが、いかがでしょうか。
#239
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録制度の基本的な目的は、端的に申し上げれば不正規在留外国人と正規在留外国人とを区別することであります。言いかえれば、正規在留外国人にその在留が正規のものであるということを立証する手段を与えるということにもなるわけであります。不正規在留外国人として問題となるのは不法入国者であり、不法在留者であります。これらの人々が、できれば取ってかわりたい、なりかわりたいと思う相手は短期に我が国に在留する外国人ではなくて、正規に我が国に長期に在留する外国人であるということが経験的に知られております。したがって、永住者を含む長期在留外国人であればあるほどその身分関係、居住関係を明確に把握する必要がある、あるいはその正当性を立証せしめる必要があるということになるわけでありまして、このために米国においても永住者を限って指紋の押捺を徹底しているという現実があるわけであります。
#240
○猪熊重二君 私が申し上げているのは、永住外国人に指紋押捺させるのがいいとか悪いとか、そういう個別的な問題じゃなくして、これだけ法的性質が違うものを十把一からげに外国人登録法という法律を適用するようなことは好ましくないんじゃないか、こういうことを申し上げているんです。
 会社だからといったって、大規模な株式会社にはちゃんと商法の株式会社法の規定があるんです。小さなこちょこちょ急いでやらにゃならぬ小さな会社には有限会社法という法律があるんです。あるいは同じに悪いことをしたとしても成人の、一般の刑事訴訟法に対して子供がやったんだと言えば少年法というものがある。要するに、規制の中身が非常に違うんだったら法律もかえたらどうですかと、その方が余り矛盾が生じなくてよろしいんじゃありませんか、こんなことをお考えになったことはありませんかと伺っているんです。いかがですか。
#241
○説明員(佐藤勲平君) 先ほど来局長が申しましたように、申すまでもなく、外国人と国民との間に法的な相違が、はっきりとしたものがあるわけでございまして、その差というものが非常に大きいわけでありまして、外国人という者について居住関係、身分関係というものを明確にするという観点からこの外国人登録法という法律、それからそれに基づく外国人登録制度というものがあるわけでありまして、その中で、特に委員のおっしゃる法的効果が違うものを分けるべきではないかという点は、外国人の居住関係、身分関係を明らかにし、またこの外国人登録法の第一条の「目的」にもありますけれども、「在留外国人の公正な管理」という観点から言えば、その点の差は設けられないのではないかというふうに考えておるわけであります。
#242
○猪熊重二君 私は永住外国人はほうりっ放しにしておいていいとかどうとか、そんなことを申し上げているんじゃないんです。同じ法律でやると非常に支障を来す、あるいは不合理だという点が出てくるんです、出てくる。もし出てこないと言うなら私は今から細かくお伺いしますよ。これだけいろいろ不合理的な結論が出てくるんだとしたら別にした方がよろしいじゃないか、こういうことを考えたことはないのかと、こう聞いているわけなんです。考えたことがなければ考えたことがなくてもいいんです。
 それでは、私はいろんな中から二、三点お伺いしたい。要するに、定住外国人と、きのうきょう入ってきて一年たったからという外国人と同じに取り扱うことは非常に不合理があると思うから、その点についてお伺いします。
 まず、新規登録して、登録事項に変更があると変更登録の申請をせにゃなりませんね。その変更登録の申請についてお伺いする。住所の変更を生じたときは変更登録の申請をしなければなりませんか。
#243
○説明員(黒木忠正君) 十四日以内に新しい居住地の市町村長に対して変更登録の申請をする義務がございます。
#244
○猪熊重二君 日本人の場合はいかがですか。
#245
○説明員(黒木忠正君) ちょっと正確じゃないかもしれませんが、住民基本台帳法の規定によりまして、たしか十四日以内に同じような届け出をする義務があると承知しております。
#246
○猪熊重二君 庁本人の場合にも、住民基本台帳法に基づいて住所を変更したら届け出なきゃならぬ。届け出をしないときにはどんな処罰、処罰というか、行政罰というか、どんなことになっているか、どうでしょうか。
   〔理事鈴木省吾君退席、委員長着席〕
#247
○説明員(黒木忠正君) 過料に処せられるということになっております。
#248
○猪熊重二君 五千円の過料に処せられることになっていますね。
#249
○説明員(黒木忠正君) そのようでございます。
#250
○猪熊重二君 外国人が、特に永住権を有する外国人が住所変更をしたけれども、十四日以内にこの外登法に基づいて変更の届け出をしないとどういう処罰になるでしょうか。
#251
○説明員(黒木忠正君) 「一年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金に処する。」ということになっております。
#252
○猪熊重二君 永住外国人は、長い人になれば四十年、五十年日本にいて、日本に入ってきて、まあ戦前は、入ってきたには違いないけれども、入ってきたといったって自分で好きで入ってきたわけじゃないんだ、連れてこられたから入ってきたんだ。それで三十年、四十年、五十年いて、出ていくこともないんだ。
 先ほど私が、永住外国人は他の人とどこが違いますかと。まあ、それは人殺しでもすれば国外退去ということにもなるけれども、悪いことをしていなければ、普通のことをしていれば、そして何十万という人が普通のことをしているんです。この普通のことをしている限り、日本国から追い出されることはないわけなんです。そして、期限もないし、どこへ行って、何の仕事をしてもいい。こういう立場であるにもかかわらず、ほとんど同本人と同じ、その面において日本人と同じであるにもかかわらず、日本人は住民基本台帳法の届け出をしなかったら五千円の過料、過ち料です、罰金じゃないんだ、刑罰じゃないんだ、行政罰に過ぎぬ。それで済むのに、片っ方は何で一年以下の懲役、二十万円以下の罰金、おまけにそれを併科することができる。これはどういうことなんですか。
#253
○説明員(佐藤勲平君) 申すまでもありませんけれども、日本人の場合には戸籍制度、それと今委員御指摘の住民基本台帳法によるいわゆる住民登録が行われておるわけでありまして、その制度は非常に完備されたものだというふうに言われておるようであります。そのような関係に基づきまして、日本人の場合には身分関係と居住関係が明確になっておるということが言えるだろうと思います。
 それに比べまして、我が国に在留いたします外国人の場合には、今申しました戸籍法、それから住民基本台帳法の適用がありませんので、居住関係、身分関係の登録という点からいえば非常に差があるわけであります。そのような観点から、日本人と外国人との場合には制度が異なっておりますし、また制度の目的、そのようなものが異なっておれば、その義務の履行を担保する罰則というものも相違が出てくるのは当然ではないかと思っております。
#254
○猪熊重二君 全然私にはわからぬ答弁だ。片っ方は住民基本台帳法があって、これで身分関係は処理しているんだ、片っ方は外国人登録法によって身分関係を処理しているんです。両方とも身分関係を管理、把握しているという意味では同じじゃないですか。そして、その届け出義務の違反について片っ方は過ち料五千円、片っ方は懲役一年もしくは禁錮、罰金二十万円、それの併科、この刑罰というか、処罰の際の差の合理性はどこにあるかということを伺っているんです。
#255
○政府委員(小林俊二君) 外国人と国民との間には基本的な法的な地位の差があるということを再々申し上げております。その法的な差異から生ずる一つの反証的な重大な事実は何かといえば、不正規在留者というものが日本人についてはないということであります、一方、外国人については存在するということであります。
 外国人登録法の端的な目的の一つは、最も重要な部分は、不正規在留外国人を正規在留外国人と区別することであります。こうした機能は住民台帳法あるいは国籍法には期待されていないわけでありまして、こうした重大な一つの違反事件と申しますか、局面と申しますかの面における機能が存在するかしないかということによって身分関係あるいは居住関係を明確ならしめる、明確に把握するということの行政上の意味が非常に違ってくるということになるわけでありまして、これを担保する手段に相違も出てくるわけであります。
#256
○猪熊重二君 まず私がわからないのは、住所変更をすることと不正在留ということがどれだけの因果関係があるのかどうか、もしそれが因果関係がないとしたら、今あなたのお答えになったことは重処罰の理由にはならぬ。
 それから、もう一つ重要なことは、不正在留者がいるかもしれぬ。先ほどの局長のお話で、フィリピンから来て、一万数千人がどこかへ消えていって、不正に在留しているということもあるかもしれぬ。それは外から入ってきたのがどこかへ消えちゃった、こういう意味の不正であって、もともといたのが不正だとかどうとかという数字とは無関係です。
 そうすると、不正な在留資格を取得するのがいるということで、いろいろ入管でも苦労しているのは、それは私もわからないわけじゃないけれども、不正なことをするやつがいるかもしれぬから、五人いるのか百人いるのか知らぬけれども、何でそれだけの人間のために数十万の人間がこれだけの重罰を科せられなければならぬかということの合理性が私にはわからぬ、こう申し上げているんです。お答えいただきたい。
#257
○政府委員(小林俊二君) 行政法規におきます罰則は、もちろん言うまでもないことでございますが、罰則を科することにその目的があるのではなくて、その行政法規の達成する目的を担保しようとしているわけでございます。その手段として罰則は存在するわけでありますから、その罰則を科さなければならないかとおっしゃられれば、罰則を科することが目的ではないんだというふうにお答えするほかないかと存じます。
#258
○猪熊重二君 それは在日朝鮮人、韓国人に対するべっ視ではありませんか。日本人は余りそういうふうな変更届けをしない人は少ないだろうから五千円の過料程度でやるんだと。朝鮮人、韓国人はどうもやりそうもないから少し重くしておけばびっくらしてやるだろうと、これはべっ視じゃありませんか、いかがです。
#259
○国務大臣(遠藤要君) 今度の一部改正は、私としては外国人の心情を考えて、幾分なりとも緩和していこうという考えで一昨年ですか、五年に一度ずつ指紋押捺ということになっておった。それで、今の御指摘の罰則やなんかも含めて五年に一回ずつ指紋を押すことは結構だということで満場一致で改正をしていただいておる。それを今度は一度だけだということになりますると、皆さん方から喜んでいただける、こういうふうに感じたわけです。
 しかし、外国人の方々の心情というのはそれで満足するものではなくして、常時携帯とか何かの問題がいろいろあることだということは私なりに承知をいたしております。しかし、一挙にそのような形にはなかなかいかないので、幾分なりとも緩和していこうという気持ちでこのような法の改正をお願い申し上げておるわけでございまして、私自身先ほども千葉さんにお話し申し上げたように、永住され、また二世、三世としてよその国を知らない外国人がたくさんあります。そういうような点を考えると、これからまたさらに改善していかなければならぬなと、ひしひしと私としては感じております。
 しかし、そういうふうな点で、すべての法案全部を見直すという考えはなく、まあ五年に一度のやつを一生に一度だという気持ちで提案をしたのでございますので、いずれ猪熊先生の御指摘の点や、先ほど千葉さんのお話なども私として頭の中にしみ込ませておいて、もろもろの、先ほど来、冷たい答弁だなどと言われたようでございますけれども、役所は役所としてやはり行政管理をしている役人の立場ということもあり、各省庁間とのまた打ち合わせ等もございますのですが、できる限りその立場の方々の心情を理解してこれから一歩一歩前進せしめていくということでございますので、御理解をちょうだいいたしたいと存じます。
#260
○猪熊重二君 大臣がいろいろおっしゃっているその趣旨も私、十分にわかるつもりではおるんです。そしてまた、今回の改正を非常に法務当局、入管の方も苦労してやっておられる、それもわかる。わかるんだけれども、しかし、こういう法律では内外人の平等ということに対して非常にまだ配慮が足りない、こういうことを私は考えているわけなんです。
 それで、特に定住朝鮮、韓国、台湾の出身の方、こういう定住外国人に対する外登法の適用というものをもう少し区分けしたらどうだとこう申し上げたら、全然考える余地がない、ほとんど両方とも同じで構わぬとこうおっしゃるから、だから、そうだったら今の住所変更の登録についての科刑の問題はどうなんだと、こう申し上げたんです。入管局長の方では私が申し上げたようなことを全然お考えのようじゃないから、もう少しこの点についてお伺いしておきたいんです。今のは住所変更の問題ですが、今度は職業変更の問題なんです。
 日本人はどういう職業を選ぼうが、どこに勤務しようが、職業だとか、あるいは勤務先の変更については全く何の届け出も必要ないし、自由です。これに対して、永住外国人を含めて、外国人は、職業、勤務先を変更したときは変更届の必要がありますか。また、それに違反したら、どういう処罰になりますか。
#261
○説明員(黒木忠正君) 十四日以内に変更登録をする義務がございます。
 この規定に違反いたしますと、先ほどと同じでありますけれども、「一年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金」ということになります。
#262
○猪熊重二君 私は、先ほどから同じことを申し上げていて非常に恐縮なんだけれども、なぜ日本人とそんなに違うんですか。職業を変えたら届け出ろ、いい職業でも国であっせんしてくれるんですか。住所を変更して、いいところへでも入れてくれるというなら別だけれども、何もしないのに、職業を変えたら、勤務先を変えたら届け出ろ、しなければ懲役一年もしくは禁錮または二十万円以下の罰金を科す必要がなぜあるのかと私は考えるわけです。法のもとの平等は、確かにすべて日本国民はと書いてあるけれども、これは、日本国民が法のもとに平等であるだけではなくして、内外人平等だというのが憲法の国際主義の観点から言われていることは当たり前のことなんだ。
 さらに今度は、外国人登録証明書の携帯ないし携帯義務の違反についてお伺いしたい、
 外国人登録証明書を携帯しなければならないといった場合の携帯とは、警察官等から提示を求められたときは直ちに提示し得るように所持することだというふうに判例では言っている。この携帯義務に違反すると二十万円以下の罰金の処罰規定があります。私が伺いたいのは、この登録証明書の携帯義務違反というのは故意犯に限りますか、過失犯に限りますか、いかがでしょうか。
#263
○政府委員(岡村泰孝君) 外国人登録証明書の携帯義務違反につきましては、故意犯並びに過失犯が処罰できるというふうに解されております。
#264
○猪熊重二君 確かに、判例でも故意犯、過失犯を問わず処罰するということになっておりますが、法務省としては、裁判所の判決は判決として、過失犯を処罰するということについて変更するなり、故意犯に限るように今後はやっていこうとか、そういうことはありますか。
#265
○政府委員(岡村泰孝君) 検察といたしましては、最高裁判所の判例に従いまして、故意犯並びに過失犯について携帯義務違反が成立するものという解釈のもとに実務の処理をいたしておるところでございます。
 ただ、それではそのすべてを処罰するのかという御質問でございますれば、これはやはり個々の事案の犯状に応じまして、検察といたしましては適切な処理を行うよう努めているところであります。
#266
○猪熊重二君 警察、検察で適宜に恩恵を与えて処罰せぬでやるとかやらぬとかという問題は別の問題として、私が伺いたいのは、登録証明書をぼんやりして忘れて持っていなくても罰金二十万円に処せられるということの相当性なんです。私は、わざと持っていかない故意犯について二十万円の罰金は仮に許されるとしても、ぼんやりして、悪気もなしに持ってうちを出ることを忘れて駅へ行った、あるいは水泳に行った、遠足に行った――どこへ行ってもいいけれども、ぼんやりしていても罰金二十万円となるわけなんです。ぼんやりしていて登録証明書を持っていないと罰金二十万円ほど悪いことなんだろうか、他の過失犯と比べてどういうことになるんだろうかということで質問しないんです。間違って人を殺したら、どういう罪名になって幾らの処罰になりますか。
#267
○政府委員(岡村泰孝君) 刑法に過失致死という罪名がございまして、「過失二因リ人ヲ死二致シタル者八千円以下ノ罰金ニ処ス」ということになっておりますが、現在これは罰金等臨時措置法によりまして二十万円以下の罰金ということになります。
#268
○猪熊重二君 間違って人を殺した、とんでもないやつだ、ぼんやりし過ぎている、人の命を一人失わせた。これに対する刑法の処罰規定は罰金二十万円なんです。外国人登録証明書をぼんやりして持たないで水泳に行った。これも罰金二十万円なんです。間違って人を殺したことに対する違法性の評価と、ぼんやりして外国人登録証明書を持って出るのを忘れたこととの違法性を同じように考えますか。いかがですか。
#269
○政府委員(岡村泰孝君) 私の先ほどの説明でございますが、過失で死亡させました場合、単純過失致死と、業務上過失致死あるいは重過失致死という二つの類型があるわけでございます。私が申し上げましたのは単純過失致死でございまして、重大な過失がある場合、あるいは業務上必要な注意義務を怠りました場合は、五年以下の懲役もしくは禁錮または二十万円以下の罰金ということになっているわけでございます。
 日本の処罰規定は、一般に法定刑の幅が広いというふうに言われておるわけでございます。例えば重過失致死というものを例にとりましても、その重大な過失の中身というものが非常に違ってくるわけでございます。非常に重大な過失、結果が重大な場合もございましょうし、犯情悪質なものから犯情軽徴なものまでを含めまして今言いました五年以下または二十万円以下の罰金、そういう処罰規定の中で、しかも検察官がそれを起訴するか不起訴にするかという選別権を適正に行使する、そういう前提のもとにおきまして個々具体的な事案に応じて処罰され、あるいは不起訴にされておる、こういう実情にあるわけでございます。
 そういう点から見まして、外国人登録証明書の不携帯につきましても罰金二十万円以下という法定刑になっておりますけれども、これもやはり不携帯の中身、個々の事案に応じまして犯情の重いものから軽いものまでいろいろあるわけでございます。こういったものを先ほど申し上げましたように検察官が適正に起訴、不起訴の選別権を行使する、それで起訴すべきものにつきましては二十万円以下の法定刑の中で適正と考えられます罰金を求刑する、こういう運用になっておるわけでございます。
#270
○猪熊重二君 過失致死罪に過失致死と業務上過失ないし重過失致死というのがあるのは私も知っています。外国人登録証明書を持って出ないなんというのはほんのぼんやりだから、だから私は通常の過失致死に相当すると思っているんです。それにわざわざ重過失だとかどうとかそんなものを持ってきて比較するのは筋違いだと私は思います。
 もう一つ、ぼんやりしていて火を放った、失火罪、百十六条の失火罪の刑罰はどうなっておりますか。
#271
○政府委員(岡村泰孝君) 失火罪につきましてはやは力二十万円以下の罰金ということになっております。ただし、これも過失致死罪の場合と同じく、業務上の過失による場合、あるいは重過失による場合、これは三年以下の禁錮または六十万円以下の罰金ということになっております。
#272
○猪熊重二君 それも、重大な過失の失火ということじゃなくて、ほんのぼんやりして失火したものについて、しかも失火して焼 したものは、焼いたものは建造物、艦船、鉱坑、こんな重大なものをぼんやりして燃して、それが罰金二十万円なんです。登録証明書をぼんやりして持っていかないのと同じ程度に評価するべきものなんでしょうか。私はこんなに重罰を科すのはまことに不適当だと、こう思っているんです。しかも、この登録証の携帯義務ということについても、先ほどの住所変更、職業、勤務地の変更と同じように永住権を有する外国人にとってはほとんど必要のない規定であると思えるわけなんです。それにもかかわらず、ぼんやり持って出ないのと人を間違って殺したのと同じ、間違って火を放って艦船、建造物を燃しちゃったのと同じだけの刑罰をなぜ科す必要があるんだろうか。こういう刑罰を科すことについて、どうしてもここには外国人に対する取り締まり優先、外国人に対する差別、こういうものがあるように思いますが、法務大臣、いかがでしょうか。
#273
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま委員は過失犯にのみ触れておられるわけでございますが、例えば、殺人罪につきましても放火罪につきましても故意犯もあるわけでございます。故意犯は別の類型といたしまして非常に重く処罰されておるわけでございます。ただ、外国人登録証明書の不携帯事犯につきましては故意、過失犯を含めまして同じ二十万円以下という法定刑が定められておるわけでございまして、単に過失犯のみについて二十万円以下という規定ではないことにつきまして御理解を得たいと思います。
#274
○猪熊重二君 今のお話も、言葉は非常に申しわけないけれども、私は詭弁だと思う。
 最初に私は申し上げたんです、この規定は故意犯に限りますか、過失犯に限りますかと。最高の判決は過失犯も含むと言っているけれども、検察において、法務省において過失犯はやめようというお考えはありますかと言ったら、ないと言う。ないとしたら、法の規定としては、もし法務省のようにお考えならば、わざと持って出なかったやつも間違って持って出なかったのも要は二十万円までの罰金に処するということは法定刑として決まっているんですから、あとは具体的事案に応じてあるいは検察において情状酌量して二十万を三万円にしてやろうか一方にしてやろうか、そういう裁量の問題じゃなくて、法定刑の問題として、過失犯について罰金二十万円というのは、過失によって人を殺したことと同じだけの違法性の評価をしなきゃならぬということは内外人に対する差別、このように考えるということなんです。
 また、携帯義務のほかにも提示義務についても、定住外国人止そうでない、入ってきて、しばらくいて出ていく外国人とを区別してやるべきが外登法の建前としては適正だろうということについての論証というか、具体的な不都合というものを私は申し上げているわけなんです。
 ほかにもいっぱいあるんです。しかし、時間がないからもうそれ以上言えないけれども、永住権を有する八割からの外国人に対する適用すべき外登法と、二割弱の、来たけれども、何年がいて出ていく外国人とを区分けして法規制するのが妥当じゃないか、こういうことを申し上げているんです。
 法務大臣、いかがですか。人を間違って殺したのが二十万円、間違って持って出なかったのが二十万円、このバランスをいかがお考えですか。
#275
○国務大臣(遠藤要君) いろいろ先生方の御質問をお聞きしておって、この際、登録法の一部改正法案を提出してよかったなと、こうしみじみ感じております。今のような問題は、率直に申し上げると、そういうふうな面についてまでは法務大臣は勉強しておりませんでした。率直に申し上げておきたいと思います。さような点で、先ほど来申し上げているように、永住二世、三世、そういうふうな方々も突然――突然というと言葉がおかしゅうございますけれども、新たに入国しようとされた人も果たしてどうかというような点はこれからの私どもとしての検討課題だと、こう思っております。さような点で、差別という気持ちは、今法務省自体全然持っておりません。
 本来からこういうふうな罰則をつくっておったのですが、罰則が目的でないことは先生もよく御理解願っており、さきの、前の前の大臣のときに、運用の面において閣議で国家公安委員長と話し合いをされておるようでございます。今先生御指摘のとおり、運用でなく、そのもの自体がもっと閣議で発言するよりも改善すべきだというのが先生の御意思のようでもございますので、以後十分検討してみたい、こう思います。私は改めてこの法案を提出して皆さんに御理解をちょうだいすることは大変いい機会だったなと、こうしみじみ感じさせられております。
#276
○猪熊重二君 大変ありがとうございました。
 私がいろいろ申し上げていることを入管局長、非常に気に入らぬかもしれぬけれども、しかし、法務省が他の省庁とけんかしてこの外登法をもう少しいいものにするための材料を提供していると、こういうふうに思ってまあ勘弁していただいて、この次ももう少しいろいろやらしていただくことで、きょうは、どうもありがとうございました。
#277
○橋本敦君 最初に、わかり切ったことからお尋ねすることになりますが、本邦に在留資格を持って在留する外国の皆さんに、我が憲法は適用がありますかありませんか。局長いかがですか。
#278
○政府委員(小林俊二君) 適用はございます。
#279
○橋本敦君 したがって、本来的には憲法の適用という大事な問題から見るならば、国民と在留資格を持つ外国の皆さんとの間に合理的な範囲を超える差異があってはならぬ、こうなるわけですね。そこで、それぞれの国の主権にかかわる在留外国人の管理の問題は、その国の憲法とのかかわりと同時に、民主的な国際社会において通用する近代的なレベルを持っていなくちゃならない。それは国際人権規約が今諸国で批准されているということもその一つであります。
 そこで、我が国の在留外国人に対する管理という行政が、憲法とのかかわりや今日の国際社会とのかかわりにおいてどういう理念で進めるかということが非常に大事であります。その点で私は、今の外国人登録法に見られる外国人に対する管理の政策は余りにも外国人に対する取り締まり重点に傾き過ぎているのではないか、ここのところが根本的に大きな問題として反省すべき問題としてあるのではないか。その一つが猪熊委員が先ほどから指摘されているそのことにもかかわってくる。その一つが指紋をどういう方法でどのようにとるかということにもかかわってくる。そしてまた同時に、そのことが我が国が今後国民に対する関係においても、どのようにこの問題を進めていくかという大事な問題にもかかわってくる、こう思うのであります。
 なぜ私がそういうことを言うかといいますと、実は本を読んでいまして、一つは、大変な論文があることを発見したのであります。その論文を紹介する前に法務大臣にお伺いしますが、法務省は我が国の国民に、在留資格を持つ外国人じゃありませんよ、我が国の国民にすべて指紋を登録させる、そういうようなことを考えたことがあるでしょうか。また、そんなことを考えることはあり得るのでしょうか、どうでしょうか。
#280
○国務大臣(遠藤要君) 率直に申し上げると、考えてはおりません。
 御承知のとおり、いつかの背番号の話やグリーンカードすら私どもとしては反対をいたしておりますので、全国民に指紋を求めるというようなことは考えておりません。
#281
○橋本敦君 もっともだと思うんですね。グリーンカードは私の方で反対とおっしゃいましたが、自民党は法案として提案なさったわけですから、反対したのは私の方でございまして、それはいいんですが。
 入管局長に伺いますが、外国人登録問題で堪能な大澤久さんという方、入管の方に今いらっしゃいますか。
#282
○政府委員(小林俊二君) 入国管理局本局の参事官をしている人物であろうと思います。
#283
○橋本敦君 そのとおりであります。その方が、ちょっと古いんですが、一九六三年七月号の「外人登録」という本に論文を書いていらっしゃいます。この「外人登録」という本は、どこが出しているどういう本か局長は御存じでしょうか。
#284
○説明員(黒木忠正君) 各県単位に協議会というものがございまして、それの連合会というものがございます。その連合会において発行している雑誌でございます。
#285
○橋本敦君 いわば、準公共刊行物ですね。そこにこう書いてあるんですよ。「かつて満州国では、戸籍制度に指紋を採用し、氏名、生年月日などの登録と同時に指紋も登録させ、戸籍による形式的な識別の不備を補ったといわれる。戸籍詐称事件など戸籍の形式的記載から生じる問題を解決するためにも、戸籍に指紋を採用する制度は今日でも充分意義のある試みであると思われる。」、「今日でも」ですよ。大変なことですね。そして論文のもう少し先に行きますと、「将来は、指紋を国民登録にまで普及し、より公共の福祉に役立たせるべきである。…わが国の実情では、指紋について国民登録の制度を実施するには、よりいっそう一般の理解と関心を深め、その普及をはかる必要があるように思われる」、こう書いてある。指紋問題は単に在留資格を持つ外国人の皆さんに対する国の主権の問題にかかわらず、我が国自身の国民にも関係する問題を持っているということの一つのあらわれであります。
 法務省のお役人が、準公共的刊行物に日本の国民に対してもこういった指紋を採用して国民登録にまで普及するのがよいという論文を堂々と書いている。大臣が、法務省は本気でそんなことを考えたことはないし、考えることもないとおっしゃったことは、私はもちろん信じておりますが、法務省の中でこういう論文が堂々と書かれているということについてどう考えたらいいんでしょうか。局長あるいは登録課長でもいいですが。
#286
○説明員(黒木忠正君) 当時は、「外人登録」と言ったが、現在は「外国人登録」と名称が変わっておりますけれども、これには私どもも時々寄稿するということで書いております。これはあくまでも個人的な立場で書いておるものでございまして、あくまでも役所の公式見解というものではございません。
 それからもう一つは、先ほど一九六三年七月号とおっしゃいましたけれども、年数にいたしますと今から二十四、五年前の論文でございまして、現在は私どもと同じ年ごろになっておりますけれども、当時は大変まだ若い、入りたてのころに書いた論文でございます。たがいまして、現在私ども考えておりますのは、個人的発言であるから全く自由である、何を書いてもいいんだというのはやはりこれは問題があるわけでございまして、筆を曲げろというところまでは申しませんけれども、そのように余り先走ったと申しますか、奇抜な議論というものは、こういう雑誌の類には投稿しないのが適当であろうというふうに考えております。
#287
○橋本敦君 我が国の法務省の行政的政策的考え方がこうであるというように、国民から重大な不信を持って見られかねないという問題がありますから、したがって、お役人がお書きになるとき、もちろん思想、言論の自由はあるでしょうが、それはそれとして踏まえていただかぬといけません。今おっしゃったように、私はこの論文についてはこれは法務省としても結構だということはとても言えないということをお伺いしましたからこれはこの程度におきますが、ここに出てくる満州国ということを聞きますと、指紋との関係で私はやはり歴史的に暗いイメージで考えざるを得ない。指紋そのものに暗いイメージがつきまとっているということが今の指紋制度そのものについても避けて通れない大事な問題だということに思うんですよ。
 ことしの八月十一日に新聞が報道いたしておりますが、「指紋押なつ強制は旧満州国時代から」、こういうことで学者の皆さんが調査にわざわざ中国東北地方に行かれましてそして発表されておる記事がありました。この調査団の記事によりますと、なるほど当時、我が国がまさに他国の領土に我が国のかいらい国家満州国を樹立して満州を支配するという侵略体制を広げたわけでありますが、そのときに「満州という人為的国家で採用した差別・分断管理の思想」、これが端的にあらわれたのが指紋であった。つまり、中国人労働者やあるいは住民が、まあ日本で言えば昔お百姓の皆さんが生活できなくなって、封建的圧政のもとから村を挙げて逃散をするということもあったわけですが、そういった集団的逃散を防止しあるいは支配を強化するために指紋制度を強制した歴史があるというのであります。
 こういうことがあったという事実は局長、御存じでしょうか。
#288
○政府委員(小林俊二君) 先生御指摘の調査につきましては、新聞等で承知いたしております。そういう調査が行われたという報道を通じて承知したところでございまして、満州国における実態につきましては直接つまびらかにいたしておるわけじゃございません。
#289
○橋本敦君 それで、刑事局長にお伺いしたいのでありますが、日本の国民は、みだりにその意に反して官憲に指紋をとられないという権利と自由が憲法上の規定から当然あると思いますが、どう考えますか。
#290
○政府委員(岡村泰孝君) 任意の採取の場合は別といたしまして、強制的に採取をいたします場合には、刑訴法によりますと身体検査令状によることになるわけでございます。ただし、身体の拘束を受けている場合には指紋等の採取につきましては身体検査令状によらなくてもよいという規定になっております。
#291
○橋本敦君 つまり、裁判所が許可した身体検査令状によらなければ指紋はとれないわけです。犯罪の容疑で逮捕されたときは、今おっしゃるようにそれはそれでとれるということになっている。
 そこで刑事局長に伺いますが、身体検査令状で指紋をとってもよいという裁判所の許可令状がある、あるいは逮捕されたときに身体を拘束されたので指紋をとるということになってとられるという状況のときに、これを拒否した場合、刑罰の制裁がありますか。
#292
○政府委員(岡村泰孝君) 身体検査を拒む者に対しましては過料を科することができるわけでございますが、その過料を科しても効果がないと認めるときはそのまま身体の検査を行うことができるという刑訴法の規定がございます。
#293
○橋本敦君 つまり、過料程度だということであります。しかも、それは警察官や検察官という行政の権力によってやるのじゃなくて、その行き過ぎをチェックする機能を持っている裁判所の令状許可ということによってやられる場合それを拒否した場合でありますから、いわゆる指紋押捺というこれからお伺いする問題と少し性質は違うわけでありますが、それでも過料にすぎない。
 この指紋というものがまさに肖像権の侵害、これは写真の場合ですが、指紋も勝手にとられれば人権侵害ということに当然なると思います。そういうことでこの指紋について、指紋を強制的に権力がとるという制度それ自体が、私の良心が許さぬ、憲法が許さぬという確信を持ってこれを拒否するという人が出てくるのは、私はこれは今の憲法体系下あるいは今日の国際社会発展の中での民主的潮流から見て、人権意識の高揚という中から当然あり得ることだと思うんです。
 そこで局長に聞きたいのですが、あちらこちらで指紋押捺拒否が随分起こりました。これは単に行政法規に違反してけしからぬというはうにたけ見るのか、今私が言ったように、アメリカでは宗教的理由による徴兵忌避は良心の作用だということで刑罰の制裁から外れますが、これもみずからの人権意識と良心に基づくそういった意識のもので、単に取り締まり違反ということでは言えない高い次元の人権問題や思想問題を含んでいる重大なことだというように私は見るべきだと思っておりますが、局長は一連の押捺拒否事件についてどうお考えでしたか。
#294
○政府委員(小林俊二君) この点は先ほど申し上げたところでございますけれども、私どもといたしましては現行法制度に関する批判そのものを何ら否定するつもりは毛頭ございませんし、それを抑圧することができるわけもございません。
 しかしながら、そういう批判なり反対なり要望なりというものを表明する手段として、現にそれが押捺拒否の実態でありますけれども、その手段として法違反を故意に犯すということを認めるわけにはいかないということでございます。そういう観点から私どもは入国管理行政の日々の運用に当たっているということでございます。すなわち、その拒否の背後にある反対意見そのものを否定するつもりあるいはそれを排除するつもりは毛頭ございません。しかしながら、それを表明する手段として、あるいはそれを実現する手段として故意に法違反を犯すという行為に対しては私どもとしてはあくまでこれを否定して対応をする必要があるということでございます。
#295
○橋本敦君 わかりました。
 それでは、具体的に全国で指紋押捺拒否事件数が最近、ここ二、三年でも結構ですが、どれくらいあったんでしょうか。課長の方で数字がわかりますか。
#296
○説明員(黒木忠正君) 指紋押捺拒否者がふえ始めましたのは数年ほど前からでございますが、これまでの累計でなおかつ現在も指紋の押捺をしていない人、いわゆる拒否者でございますが、最近の数字では九百五十一名でございます。
#297
○橋本敦君 具体的な処分としては何件ぐらいがどういう処分になったでしょうか。つまり、刑事事件として起訴された立件からまずお伺いしましょう。
#298
○政府委員(岡村泰孝君) 昭和五十六年以降本年七月末までの数字でございますが、この間に検察官が受理いたしました事件が全部で百九十二件ございます。そのうち公判請求いたしましたものが三十七件、略式請求いたしましたものが六十四件、それから少年事件で家庭裁判所に送致いたしましたものが三十三件、不起訴処分にいたしましたものが四十九件、以上でございます。
 なお、私先ほど身体検査を拒否した場合のことに関連いたしまして直接強制に関する刑訴法百三十九条の規定を申し上げましたが、罰則規定といたしましては「五千円以下の罰金又は拘留に処する。」という百三十八条の規定のあることもつけ加えておきたいと思います。
#299
○橋本敦君 そこで刑事局長、その結果として事件はどういうような形で裁判の結果として終結をしたか、全部はなかなかつまびらかにできないでしょうが、裁判所の判断の傾向としてはどういうようになっておりますか。
#300
○政府委員(岡村泰孝君) ただいま申し上げました数字のうち略式命令の確定いたしましたものが四十七件、略式命令ではない正式の裁判が確定いたしましたものが四件でございます。これらにつきましては、罰金額は三万円から五万円というものが多いように思われます。
#301
○橋本敦君 刑罰そのものとしては一年以下の懲役というのが罰則としてはあると思うんですが、裁判の結果、懲役刑が宣告されたような例はありますか。
#302
○政府委員(岡村泰孝君) 他に余罪がありまして併合審理されたような場合は私ちょっと把握いたしておりませんけれども、指紋押捺拒否事件だけということでございますと、少なくとも五十六年以降懲役刑が科せられた事例はございません。
#303
○橋本敦君 私は、指紋押捺という手段がいいということを言うために質問をしているんじゃありません。そういうことをやらざるを得ないという心情をお持ちである皆さんのその心情を考えれば、それは人権意識と憲法にかかわる重大な問題を持っていますよ、だから、単に行政法違反の違法行為をやっているというだけ見てはなりませんよということを言うために言ったのであり、そしてまた、裁判所の裁判の結果を見ても、無罪ということは出ていないにしても、懲役刑にまで処していないという実情もわかるわけですが、それはそれなりに裁判所も、事態を憲法問題をはらんでいる重要な問題としての認識をお持ちだろうと私は思うんですね。
 そこでもう一つお尋ねしたいのは、この指紋押捺をやるようになったのがたしか昭和五十二年ごろからだと思うんですが、局長、間違いありませんか。
#304
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録制度は昭和二十二年に外国人登録令によって発足したものでございますが、昭和二十七年の外国人登録法制定によって指紋制度が導入されまして、実際に実施に移されたのは昭和三十年でございます。
#305
○橋本敦君 失礼しました。五十二年でなく三十年ですね。
 そこで、昭和三十年以前に、つまり、指紋をとる以前の在留資格を持つ外国人の皆さんに対する管理行政で、指紋がないためにどんな支障が生じたのかということを、当時の社会事情の中で具体的に言えばどういうことがあったということになるんですか。
#306
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録の二重、三重登録、あるいは幽霊登録、さらには、他人の登録証明書の不正行使、こういった案件が横行して目に余る状態になっていたというふうに承知いたしております。
#307
○橋本敦君 それは、戦後の一定の混乱期というような社会的事情もその背景的事情としての原因には大いにあったというように見て当然ではありませんか。
#308
○政府委員(小林俊二君) それは、特に二重、三重登録が配給の二重取り、三重取りを目的として行われた面が大きかったという点において、戦後の混乱期に影響されている面があったと思います。ただ、これと並んで、朝鮮半島からの密入国者に対して登録証明書を不正に譲与して、それを売却するなり譲渡するなりして、そしてこれを使用せしめて正規在留者を装わしめたという事例も極めて多数に上るということが確認されております。
#309
○橋本敦君 もう一つのことを聞きますが、韓国からの日本への不正な密入国が最近どんどんふえているということはないと思いますが、状況はどうですか。
#310
○政府委員(小林俊二君) 韓国からの密入国の趨勢は、もちろんこれは密入国である限りにおきまして正確に把握することが困難でございます。しかしながら、摘発された事例を逆算いたしますとと申しますか、それから推測いたしますと、一たんかなり鎮静化していたものが、最近、特に一昨年の秒あたりからまた再び復活の兆しを見せておるというふうに理解いたしております。そしてその背景には、韓国から大量に労働力の供給されていた中近東諸国における不況、それによる職業機会の減少というものがはね返ってそういう状況になっているのではないかというふうに分析しているところでございます。特に最近、いわゆる集団密航事件というものの摘発が再び目につくようになってきているという状況がございます。
#311
○橋本敦君 そこで、第一の配給の二重取りというようなことが当時の社会事情としてあったということはわかりましたが、今はもうそれはないんです。それで密入国も鎮静化してきた、これはそのとおりです。最近、また一部ふえかけている、こう言いますが、これはやはり経済事情の変動ということが大きな原因ですね。
 それで、第二番目の密入国の増加ということについて言えば、指紋ということを制度として採用するかどうかではなくて、在留資格を持つ外国人の皆さんに対する管理行政の分野よりもむしろ出入国管理を厳しくやる、そこのところの方が重点的な問題になると私は思うんですよ。だから大きく言えば、戦後昭和三十年から始めた指紋制度ということではあるが、それを当時やろうとしたその立法事実としての歴史的背景事情というのは、今日の社会発展の中で大きくもう減ってきているというか、なくなってきているという事実も一つは見なくちゃならぬということであります。
 それからもう一つの問題ですが、これだけ反対があるのに、外国人の皆さんの在留管理を行う上でどうしてもこれがなくちゃならぬという決定的な理由はどこにあるのか、一遍はっきりと言ってほしいんです。
#312
○政府委員(小林俊二君) 指紋の採取、指紋制度が外国人登録制度の正確性を維持するために不可欠であるということでございます。その最も重要な機能と申しますのは、摘発の端緒となるというよりも、外国人登録制度に対する撹乱要因と申しますか、端的に申し上げれば、先ほど申し上げたような、正規在留者の外国人登録証明書を不正規在留者が不正に入手してこれを利用するというような登録法違反行為を未然に防止する、抑止するという点にあるわけであります。
 すなわち、私どもの違反調査等から、他人の外国人登録証明書を不正に入手してこれを行使しておったというような事例が今でも毎年三十件程度確認されるんでありますが、この三十件程度を分析いたしますと、その内容はほとんどすべて昭和三十年の指紋制度導入以前に入手したものを密入国者が後生大事に持っていたというケースでございまして、その他のものは、昭和三十年以降に他人の登録証明書を入手して使用したというケースはいずれも十四歳以下の未成年のケースでございます。
 と申しますのは、これらの未成年者が学校に入学するに際して他人の子供の登録証明書を親が入手して使わしていたということでございまして、これは結局、登録証明書に指紋も写真もないということを奇貨として行ったということが言えるわけでございまして、言葉をかえれば、昭和三十年の指紋制度導入以降におきましては、指紋の表示されている成人の登録証明書を不正に入手して使用したという例が発見されていないということでありまして、事ほどさように指紋というものはこうした登録証明書の不正使用といった違法行為を未然に抑止する非常に効果的な機能を発揮しているということが言えるわけであります。
#313
○橋本敦君 そうとはならないんじゃないですか。八十万人いらっしゃる皆さんの中でたった三十件程度ということですよ、問題にしているのは。ですから、ほとんどの皆さんはそういうようような不正使用ということとは関係なしに公然と日本で生活をし、仕事につき、在留資格を得てやっておられるという方が圧倒的多数ですからね。だが、それに対する管理行政として、わずかなことであくまでも指紋をとるというのは一体いいのかという問題が一つは残る。
 それからもう一つ、局長、はっきり聞きたいのは、そういう管理行政をやって個人の識別をやる上で顔写真ではだめだ、指紋でなくちゃならぬのかということはたびたび議論されてきました。もう一遍重ねて聞きますが、なぜ写真では識別ができないのですか、指紋でなきゃならぬというのはなぜですか。
#314
○政府委員(小林俊二君) これは、指紋制度導入の経緯を振り返ってみれば最もはっきりわかることでありますが、昭和二十二年の先ほど申し上げた外国人登録令の時代におきましては写真が使用されておったのでありまして、指紋は制度として導入されていなかった、その結果、先ほど申し上げたような混乱が非常に日に余る状態になったという事実がございます。そういった事実の背景には、指紋というものを通じて個人の同一人性を科学的に絶対的に誤りなく特定できるという特性があるわけであります。しかしながら、写真の場合に他人のそら似とか、あるいは容貌の変化とか、あるいは写真の撮り方とかによって絶対的にこの写真がある個人に属するということを立証することは不可能であります。そういう欠点があるために、もちろん写真は有力な手段ではあるけれども、それが絶対的な決め手にはなり得ないということになっているわけであります。
#315
○橋本敦君 写真が有力な手段であることはお認めになった。写真技術も進んでいますしね。それは昭和二十年代の写真と違って、今はもっと精巧に撮れるでしょうし、他人のそら似と言うけれども、そんなにないですよ。局長によく似た方はそんなにもないし、私に似た者もそんなにもないですよ。
 そこで、もう一つ局長にどうしても聞かにゃならぬ。指紋がそれほど大事な絶対的不可欠の識別方法だというのであれば、これはまさに日本だけの問題じゃなくて国際的通有性がなくちゃならない。なぜならば、それぞれの国がそれぞれの国の主権に基づいてそれぞれの国の中の在留外国人管理を行政としてやっているからですね。そこで聞きますが、それほど絶対的なものであれば、世界の進んだ諸国を含めてほとんどの国が指紋押捺を外国人にやらしているということになるだろうけれども、実際は全くそうではないのではないか。進んだ諸国を含めて、どうですか。そしてまた、外国人登録で指紋押捺をやっている国は世界でどことどこですか。明らかにしてほしいと思うんです。
#316
○政府委員(小林俊二君) 私どもでは、社会的な政治的な背景、制度等における背景が我が国に多かれ少なかれ似通っている国五十カ国について、これはいわゆる先進国と言われる国々を中心とするわけでありますけれども、調査をいたしましたが、その五十カ国の中では三十四カ国が多かれ少なかれ指紋制度を採用しているということが確認されております。この調査の対象を五十カ国程度に限りましたのは、社会的、政治的な背景を全く異にする国についてこういう制度の表面的な事実のみを比較対照しても余り意味がないからであります。
#317
○橋本敦君 いや、違うんですよ、局長、意味がないんじゃないんですよ。社会的、政治的な事情が似ていようが似ていまいが、在留外国人の管理行政としてどこの国でも識別や個人の同一性の認識というものは大事なんですよ。いいですか、だから、その不可欠の絶対的な手段であるというならば、政治的状況や社会的状況が似る似ないにかかわらず、その国の主権の行使である在留外国人の管理行政として圧倒的多数の世界の国々が採用しておるということになっても不思議じゃないはずだ。だから聞いているんですよ。たった五十カ国しか調査しなかったというのは、そういう意味で私の質問に答えられない調査の欠点が一つありますよ。
 それからもう一つは、三十何カ国と言いましたね。多かれ少なかれとおっしゃいましたが、この多かれ少なかれというのはどういう意味なんですか、その意味がわからない。
#318
○政府委員(小林俊二君) それは、一律に外国人に対して指紋押捺義務を課している国が二十五カ国であるということであって、残りの九カ国は特別の必要が生じた場合に押捺の義務を課する法的な手だてがあるということでございますので、両方含めて多かれ少なかれと申し上げたわけであります。
#319
○橋本敦君 だから、日本は多かれ少なかれのどっちに入るんですか。二十五に入るわけですな。そうですね。だから、その二十五の国の名前を恐縮ですが教えてくださいますか。
#320
○説明員(黒木忠正君) 順不同になろうかと思いますが、手元の資料を見ますと、まず韓国がございます。それからタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、それからこれは国じゃございません、地域でございますが香港、それからヨーロッパにまいりましてスペイン、ポルトガル、それからアメリカ大陸にまいりましてアメリカ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コスタリカ、ドミニカ、ホンジュラス、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ニカラグア、パラグァイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、これで二十五カ国でございます。
#321
○橋本敦君 はい、わかりました。
 ですから、はっきりしたことは、アメリカを除いて先進資本主義国ではないということがはっきりしているわけであります。
 しかし、フランスにしてもイギリスにしてもイタリーにしてもそれぞれ外国からのたくさんな労働者が入り込んできて、外国人労働者問題はそれぞれの国でいろいろな問題、大きな課題になっていることも御存じでしょう。しかし、こういった一律的な指紋押捺制度はとっていないのであります。
 そこで、局長にもう一つ伺いたいのは、この指紋をとって、その指紋自体で、いいですか、識別するのはだれがどこで識別するということで役立てるんですか。
#322
○政府委員(小林俊二君) 先ほど、その指紋制度の最も重要な機能は抑止効果である、防止効果であると申しましたが、その点をさらに超えて実際に識別をする場が生ずるという、どこで生ずるかという御質問でございますので、現在は市区町村の窓口である、それが最も多いというふうに申し上げるべきかと思います。ただ、そのほかにも特別の状況のもとにおいて外国人登録証明書の提示を求め、そしてその後識別に役立てるというケースがないではございません。しかし、多くの場合は市区町村の窓口であるというふうに申し上げるべきかと思います。
#323
○橋本敦君 具体的に局長に聞きますが、町で警察官が不審尋問をやるという場合がある。登録証を持っているかと聞かれる。持っていますと出す。いいですか、そこに指紋の押捺している指紋がある。それの同一性を確認するのは警察官はどうするのでしょうか。
#324
○政府委員(小林俊二君) それは仰せのとおり、それだけの前提では強制的に指紋を採取して照合することはできないわけでありますけれども、その登録証明書の写真の照合あるいは身分事項に関する相手についての質問等からその証明書が本人のものであるということが非常に疑わしいような場合においては、本人がそれを希望するならばその指紋の押捺をみずから申し出ることによって自分でその登録証明書が自分のものであるということを疑いなく立証することができるわけであります。
 なお、さらにその状況から進んで、そうした職務質問の結果本人が不法入国者であるという疑いが極めて濃くなった場合におきましては、刑事訴訟法の手続に入って強制的に訴訟法上の手続によって採取して照合するということもあり得るわけであります。
#325
○橋本敦君 自分から進んでなんてそんなおかしなことないですよ。それから強制的にと言ったって、犯罪の嫌疑がないのに現行犯逮捕できるわけじゃなし、あなたがおっしゃったようにまず写真を見て疑わしくなければそれはそれでいいんですよ。だから、結局指紋をとってでも識別する現場の方で、いいですか、その場で直ちに直接一見明白に識別する機能を指紋というのは持たぬのですよ、正確に照合する以外にはね、いいですか。
 それからさらに、市町村の窓口でと言いますが、市町村の窓口の係官はその指紋の照合はどんなふうにやっているんですか。
#326
○説明員(黒木忠正君) 市町村の窓口におきましては、出頭しました外国人、最初の指紋は別でございますが、二度目以降に出頭しました外国人につきましては、当然のことながら写真それから提出された旅券、それから申請書、登録原票に書かれた記載事項、こういったものを確認するわけでございますが、さらに加えて指紋も目で照合する、これは鑑識じゃございません、照合するということをするように指導しております。
#327
○橋本敦君 目で照合するというのは、それはだれにでもすぐ一見して明白にわからぬでしょう、どうですか、指紋というのは。
#328
○説明員(黒木忠正君) 今、言葉で鑑識という言葉と使い分けて申し上げましたけれども、確かに鑑識ということになりますと、これは専門的な技術と申しますか、知識が必要になるわけでございますが、通常の場合幾何学模様と申しますか、一つの模様で出てまいります指紋でございますから、例えば、私の同じ手の中指、人指し指の二つ押してみましても明らかにこの指紋は違います。これは私が見てもわかることでございます。しかも、外国人登録の指紋と申しますのは、遺留指紋と一つの指紋を照合するということではございませんで、その人が前回押したであろう指紋と、今出頭している人物のその指紋とこの二つを比べるということは大変やさしいと申しますか、見比べることは容易であるということでございます。
#329
○橋本敦君 そう簡単にいかぬですよ。だからあなたがおっしゃったように、まず写真、記載事項、それで同一性を確認する、これは実務です。だから、市町村の窓口で実際に鑑識まで含めて指紋を照合することはほとんどない。そしてまた、あなたがおっしゃったように、指紋を一見して見るように指導しているというけれども、実際問題として、市町村の窓口で写真と記載事項で実務は処理されているのが多くて、指紋を一々照合するあるいは鑑識するというのは全く数少ない例だということはお認めになりますか。市町村の実情を調べたらわかりますよ。
#330
○説明員(黒木忠正君) 原票をお示しすることはできませんけれども、原票には指紋が連続して押してございます。前回に出頭したときの指紋の横に次の指紋を押す、こういうことになっておりますので、これに距離にして数センチも離れていない指紋を見比べるわけでございますから、写真を見比べるのよりももっと正確な確認ができるということでございます。
#331
○橋本敦君 私がいいたいのは、実情を聞いているんです。
 例えば、昭和五十九年八月二十九日に宣告された東京地裁刑事一〇部の判決があるんですが、この中でもそういう問題についてはっきりこう言っています。「窓口において登録証明書の切替交付などを行なう際、その場で直ちに、新たに押なつさせた指紋を保管中の登録原票などに押されている従前の指紋と照合して、同一人性を確認するという作業を行なっていない市町村のかなりあることが窺われ、」云々と。証拠によって認定しているんです。写真を中心に、記載事項を中心にスムーズにやっているのが実情じゃないかということを言っているんです。
 裁判所の判決の事実認定、間違っているんですか。間違っているとは言えないでしょう。
#332
○説明員(黒木忠正君) 確かに、市町村の現場におきまして指紋を照合していないというその言葉の意味もあるんですけれども、やっていないという市町村もあるということがわかりました。確かにそういう判決でも指摘されていることでございますが、そういった事態を踏まえまして昭和六十年五月、通達を発出いたしまして、指紋の照合を励行するようにということを私ども指示しておりますので、私が先ほど申し上げましたのは、少なくともその後においては励行されているという認識である、こういうことを申し上げたわけでございます。
#333
○橋本敦君 結局、課長、局長がおっしゃったように、指紋をとるというのは抑止力という問題、そこなんですよ。実務の上で一々指紋を照合してどうこうということで実際の管理行政が進んでいるということに基本的にならぬのですよ。ならぬどころか、むしろ携帯義務づけ、それから指紋をとる、このことによって逆に警察官の取り締まり体制を強化して、在留外国人に対するいろんな意味での権力の取り締まり体制の強化に逆にこれが使われる、そういう意味で非近代的な管理行政にさえなっているんです。
 だから、抑止力ということをさっき局長がおっしゃった、これが本当に大事なんです。抑止力ということ、そのことのために、憲法あるいは人権にかかわる指紋をその意に反して強制的に、法の制裁によってとるという体制が民主国家として一体許されるのか、憲法上許されるのか、国際社会から見て許されるのか、こういう問題なんですよ。私はそういう抑止効果ということで、いわば刑罰と制裁のおどしで正規在留資格を持つ外国人の皆さんに対する管理行政をやろうという今の日本の姿勢は根本的に考え直すべきであるというように考えざるを得ません。
 この問題については、続いて次回に質問をしたいと思いますが、ほぼ時間が参りましたので、きょうは切りのいいところで終わっておきたいと思います。
#334
○関嘉彦君 議題となっています外国人登録法の一部改正案について質問いたします。本日は、主として原理的な問題、考え方の問題につきまして質問いたしまして、運用上の問題につきましては次回また詳しく質問したいと思っております。
 まず最初に、事実を確認しておきたい。統計数字を確認しておきたいと思ったんですが、既に多くの委員から質問がございましたので、時間を節約する意味で私の方から言います。確認したいと思いますので、間違っておれば訂正していただきたいと思います。
 まず、外国人登録をしている外国人、六十一年末で八十六万七千人、それから登録の内訳は韓国人それから北朝鮮から来た人、これが六十八万人、中国人が八万四千、それからその韓国人及び北朝鮮から来た人のうちで協定永住者、これが三十四万人、一般永住者が二十九万人、法百二十六に基づく永住者が二万人、計六十五万人、その数字間違いございませんですか。
#335
○説明員(黒木忠正君) おおむねそのとおりでございます。
#336
○関嘉彦君 その中で指紋押捺を義務づけられている人、それは何人でございますか。
#337
○説明員(黒木忠正君) この登録外国人の中で指紋押捺している者の数字というのは、直接数字は持っていないのでございますが、少なくとも十六歳未満の者二十万人、これは対象外でございますので、登録外国人からまずこの二十万人を除きます六十五万余でございますが、その中で、先ほど先生の御指摘になりましたように永住の資格を持っている人、こういった人たちが全体の約七五%を占めております。したがいまして、六十五万人中の七五%以上の人が指紋を押捺している、こういう数字になろうかと思います。
#338
○関嘉彦君 六十五万人のうちの七五%ですね。
#339
○説明員(黒木忠正君) 七五%以上でございます。
#340
○関嘉彦君 それから、協定永住者それから一般永住者、その他の永住者の中で、日本で生まれた人、いわゆる二世、三世、この正確な数字はわからないかもしれませんけれども、大体の割合でいいんですが、どのくらいになりますか。
#341
○説明員(黒木忠正君) これも私どもの方でいわゆる二世、三世という形での統計は出しておりません。ただ、これまでのいろいろのデータ等を総合いたしますと、九〇%近い人たちが日本で生まれた方であるというふうに承知しております。
#342
○関嘉彦君 そういう事実の上に立っていろいろ質問したいと思っていたんですけれども、既に今、橋本委員からかなり詳細な質問がありましたので、かなりダブってしまったんですけれども、それを補促する意味で質問していきたいと思います。
 まず、この中で一番重要な問題はやはり指紋制度の問題だと思うんですけれども、指紋制度について外国の実情、それについては橋本委員の質問に対して、現在、内国人外国人共通にやっているということじゃなしに、外国人だけ指紋をやっているところが、今おっしゃった三十四カ国ですね。そして、その例として挙げられたのが、大部分は東南アジア諸国、いわば新しく独立したばかりの国。それからラテンアメリカ諸国、これはいろいろ歴史的な事情があるし、いずれも、言っては悪いんですけれども余り人権意識の発達していない国と言っていいんじゃないかと思います。軍事政権であるとか腐敗政権なんかが長らく統治していた国で、人権意識が非常に希薄な国と言っていいんじゃないかと。そういうものを除きますと、スペイン、ポルトガルはヨーロッパにあるわけですけれども、これも長いことファシスト政権のもとにあった国ですね。最近民主化されてきておりますけれども、やはり人権意識という点については、他のヨーロッパ諸国に比べると劣っていた国と言っていいんじゃないかと思います。
 残りはアメリカですけれども、アメリカの場合は一年以上定住する者は指紋押捺が義務づけられているそうですけれども、実際に向こうに行った人の話を聞きますと、一年以上留学したり、商社なんかから行っていた人で指紋を強制された人はほとんどいなかったというふうに聞いているんですけれども、アメリカの場合、法務省の方ではそれをどういうふうに掌握しておられますか。
#343
○説明員(黒木忠正君) アメリカに入国する場合、いわゆる移民として入国する場合と、非移民、いわゆる移民以外の資格で入る場合と二通りあるわけでございますが、まず、移民につきましては必ず指紋を押してもらう。日本で申せば永住者でございますが、これについては必ず指紋を押してもらう。それから、非永住者につきましては、一年未満の滞在予定者については指紋は不必要、必要でないという制度になっておりますが、一年以上滞在する場合につきましてもその相手国がその国の国民に指紋を要求していない場合は指紋の押捺を求めない、いわゆる相互主義の取り扱いをしているわけです。
 ただし、今、先生から御発言ございましたように、日本の商社の人とか新聞記者だとか留学生とか、向こうに三年行っていても指紋を押さなかったということは私ども再三聞くわけでございます。その辺、アメリカの法律制度の上では今申し上げたような形になっておりますけれども、実際の運用がそうなっていないのではないかということでアメリカ側に聞くわけでございますが、アメリカ側は建前論と申しますか、制度的にはこうなっていますという答えでございまして、制度と実情との間にはギャップがあるようでございます。また、永住者につきましては必ず指紋を押させているということでございます、
#344
○関嘉彦君 アメリカで、法律上は一年以上は押さなくちゃならなくなっているけれども、実際には相互主義で、日本人に対して要求していいのにかかわらず運用上やっていないということは、やはり人権ということを考えて余り好ましくない制度である、したがって、できれば緩やかに、余り厳格に運用しないんだ、そういうふうな考え方に立っているんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#345
○説明員(黒木忠正君) そういう人権的な立場からというふうには私どもは理解していないわけでございまして、アメリカの特に永住者に関する指紋制度というものを見てみますと、第二次世界大戦中、これは戦争中でございますから、外国人に対する管理は非常に厳しかったはずでございまして、そのころは指紋制度があったんですけれども、戦後――年数はちょっと承知していないんですが、指紋制度を廃止しております。
 ところが、一九七九年にアメリカは先ほど申し上げた指紋制度を復活しておるわけでございます。復活しました理由は、アメリカの場合、当時の記録によりますと、永住外国人の中で、永住外国人の日本で言う登録証明書でございますか、これを不法入国者などが譲り受けて、それを不正使用するという件数が調査した中の二七%に及んだということで、アメリカはこれではということで一九七九年に指紋制度をまた採用したといういきさつでございまして、そういったことから見ますと、一年以上滞在する人に指紋を押させていないというのは、アメリカ政府の立場を聞いておりませんけれども。必ずしも人権意識があってそうなっておるというふうにはちょっと理解しがたいのではないかというふうに思っております。
#346
○関嘉彦君 アメリカの国籍の場合はいわゆる出生地主義をとっていて日本なんかと違いますので、二世、三世というのはもう全く問題にならないわけです。したがって、移民であるとか永住権を取得する場合を除いては、実際上は余りこれは使われていないというふうに理解していいんではないかと思います。
 したがいまして、私は外国でやっていることが何でもかんでもすべていいと言うつもりはありません。場合によっては日本独自の制度を維持した方がいい場合もたくさんありますから、何でもかんでも外国がやっているからそうしろという意味ではございませんけれども、しかし、少なくとも日本と同じような憲法を持っていて、そしてかなり民主主義が定着しているような国においては指紋制度は全然とっていない。あるいはとっている場合にしても、運用上非常に寛大な措置をとっているというふうに考えられるんじゃないかと思うんですが、その点、最後に法務大臣の意見をもあわせてお伺いしたいと思っております。
 それで、次の問題に入りまして、今の橋本委員の御質問の中にもありましたけれども、これも質問がダブっちゃうんですけれども、同一人性、同一性確認のため、アイデンティティーの確認のために指紋が必要だと。それで、例えば氏名、生年月日の訂正申し立て、あるいは移転、移住のときなんかの訂正に対して指紋原票と区役所で照合しているわけですけれども、実際に専門家でもない区役所の窓口の人たちが一々指紋原票に当たって照合して、そしてそれをおかしいというふうに見分けている、見分けたと、そういう件数は一体どの程度あるんですか。
#347
○説明員(黒木忠正君) 今お尋ねの趣旨のような形での発見というものは承知しておりません、
#348
○関嘉彦君 実際上は余りないんじゃないかと思います。
 それから、先ほどの答弁の中で、一時だんだん減ってきつつあったのが、六十年以降またふえてきた、指紋と照らし合わせて違反が見つかったのが。これはしかし、課長も言われましたように、経済的な理由によって今まで中近東に働きに出ていた人たちが行けなくなってきて、こちらに入ってきていわゆる不法入国、それが見つかった。それで違反件数がだんだんふえてきたんだと思うんですけれども、それはいわば短期入国です。観光ビザなんかで入ってくるそのカテゴリーであって、それはフィリピンあたりから入ってくるいわゆるじゃぱゆきさんなんかで入ってくるのと同じカテゴリーの問題で、したがって、特に指紋によってそれが抑止し得るものとは考えられないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#349
○政府委員(小林俊二君) 先ほど私が、一昨年末あたりからまたふえ出したと申し上げたのは、外国人登録法違反事件ではございませんで、密入国そのものでございます。密入国の事案が、摘発数の増大ということを通じて、その背後にかなりの復活と申しますか、かなりの増加が、再増加があるのではないかということを疑わしめる状況になっているということでございます。
 また、指紋に関連する入管法違反事件そのものが、六十年末以降またふえ出したということを申し上げたわけではございません。
#350
○関嘉彦君 それで、法務省に保管しておられるいわゆる指紋原紙ですね。市町村あたりから、これちょっとおかしいと言って法務省の方に照会に来るその件数は、指紋原紙の方に照合するために照会する件数は毎年大体どのくらいあって、それによって不都合が発見された例はどの程度ですか。
#351
○説明員(佐藤勲平君) お答えいたします。
 まず最初の御質問の市町村から、指紋が一致しないとかいう点の照会という件数につきましては承知しておりません。ないと思います、
 ただ、制度といたしまして、市町村で指紋を押してもらいました指紋原紙が法務省の方へ送られてまいります。それについて私どもの方で前に送られてきた指紋原紙に押してある指紋との間の照合という作業はいたしております。その照合の結果、同一の指紋ではない、違った人間だということがわかるのが年間数百件ございます。
#352
○関嘉彦君 これも先ほど来多くの委員が質問されたことなんですけれども、日本人は、生まれたときに親が市役所に届けるだけで戸籍の中に身分条項が書き込まれる、指紋は全然しない、十六歳になっても指紋は全然しないわけです。ところが、定住外国人の場合には、二世、三世であっても一定年齢になると指紋しなくてはいけない。そういうふうに差別する根本的な理由、これは先ほどちょっと言われたように思いますけれども、もう一度それをお聞きしたいと思います。
#353
○政府委員(小林俊二君) 最も基本的な理由は、国民と外国人との間の法的な違いに起因するものでございます。言いかえれば、日本人の場合には不法入国者、不法在留者という者は存在しないのに対して、外国人の場合にはそういう人々が存在するということでございます。したがって、外国人については、不正在留者と正規在留者を区別する必要があるというところに最も基本的な違いがあろうというふうに申し上げるべきかと思います。
#354
○関嘉彦君 不法入国者を取り締まるために必要だと言われるんですけれども、初めからこちらにいる人ですね、それから二世、三世、これの数が、先ほど言われたように非常に膨大な数、そういった人たちに対して多くの苦痛を与える――不法入国者というふうな者はごく少数だと思うんですけれども、それに対して多くの苦痛を与える理由が薄弱ではないかというふうに感ずるんですけれども、どうですか。
#355
○政府委員(小林俊二君) 仰せのとおり、もし不正在留者すなわち不法入国者あるいは不法残留者の数が取るに足らないものであるならばそういう結論になり得るかとも思いますけれども、実際には、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、不法残留者の数は年々増加の一途をたどっておるわけでございます。既に一万人を超えております。そしてまた、一方、不法入国者、特に密入国者の状況は、昭和二十七年に検挙された者が約三千名であるのに対して、昭和六十一年中に退去強制手続の対象となった不法入国者は六百人であるということでございますから、減ってはおりますけれども、決してその数は無視するに足るものではございません。これらはいずれも退去強制手続の対象となった人々でありまして、そういう手続に乗ることなしに実際に潜在している不法入国者、密入国者の数は万をもって数える必要があるというふうに私どもは推定いたしております。
#356
○関嘉彦君 それは、そういうふうに推定しておられるだけで、指紋の問題によって発覚した件数はどのくらいですか。不法入国が今言われた数だけあると推定されているわけですね。
#357
○説明員(黒木忠正君) 先ほども申し上げましたように、指紋の照合によって発覚したということは最近ではございませんけれども、しかしながら、人物が入れかわっていたというようなものがほかのところでわかって不法入国が発覚するというものが、先ほども申し上げました年間三十件平均ぐらいあると申し上げたのはそういう数字でございます。もちろん、その場合指紋によって最終的に人物の違いとかいうことも確認できるわけでございます。
#358
○関嘉彦君 それでは、少し観点を変えて質問いたしますが、一般の犯罪捜査のために指紋が利用されているんではないかというふうに考えている人がいるんですけれども、その点はどうですか。
#359
○説明員(黒木忠正君) 外国人登録制度で採用されています指紋と申しますのは、あくまでも外国人登録を正確に維持すると、先ほど来御説明しておりますように、戦後の混乱期の反省を経てこの制度が採用されているということでございまして、市区町村、それから私どもの方で指紋を保管しておりますけれども、この指紋というものを一般の犯罪捜査のために提供するということはしないという原則で今日まで来ております。
#360
○関嘉彦君 最近はどうか知りませんけれども、二、三年前に聞いた話ですけれども、警察官が市町村の窓口なんかに行ってこの指紋を、勝手にということじゃないだろうけども、許可を得てでしょうけれども、閲覧しているというふうなことが言われたことがあるんですけれども、いかがですか。
#361
○説明員(黒木忠正君) 閲覧と申しますが、手ぶらで来まして指紋を見ましても、その指紋の紋様を目にイメージとして焼きつけて帰るということは事実上難しいことだろうと思います。したがいまして、閲覧はちょっと別といたしまして、私どもその登録原票の写しを提供する場合はあるわけでございますが、その場合に、指紋がそのままついていきますと、私どもの申す登録のため以外に使われるおそれがございますので、これも昭和六十年の五月の通達をもちまして、その場合登録原票の指紋欄はほかの紙を当ててその部分は写らないようにして提供するようにという指導を徹底しております。
#362
○関嘉彦君 そうすると、六十年五月以降はその通達が十分守られているというふうに考えていいですか。
#363
○説明員(黒木忠正君) 完全に守られていると思います。
#364
○関嘉彦君 結論的に、結局、指紋にかわる刷り込み写真ですね、それで代用できないかという話ですけれども、先ほど来、他人のそら似とか写真では正確を期しがたいというふうなお話でしたけれども、写真の技術なんかが非常に進歩してまいりますとこれによってかなり代用できるんではないかというふうに考えるんですけれども、写真では信用できない、依然としてやはり信用できないというお考えですか。
#365
○政府委員(小林俊二君) 最終的な決め手には、写真は依然としてなり得ないということでございます。
#366
○関嘉彦君 それで、大臣にお伺いいたしますけれども、先ほどの外国との比較の問題ですね。先ほど申しましたように、何でもかんでも外国のまねをしろということは決して言いませんけれども、合理的な根拠のあるものはできるだけ先進民主主義国がやっている制度に近づけるべきではないか、これが日本の国際化の道ではないかということを考えますし、それからまた、普通の外国人とそれから永住者ですね、協定永住者と一般永住者なんか、そういった永住者とは今までの歴史的な背景、それから日常生活がほとんど日本人と同じであるというふうなことを考えて、将来の立法の問題、あるいは直ちに新しく改正するということはできないにしても、運用上やはり区別して考えるべきじゃないかというふうに考えるんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
#367
○国務大臣(遠藤要君) 一つは、よその国との比較の問題ですが、日本の国というのは組織と役所の正確さは世界一だとこう言われているんです。果たしてそれでいいかどうかということは別として世界一だとこう言われておりますけれども、法の運用や何かについてはこの登録問題についていろいろ議論がされておって、先ほど申し上げたとおり、嶋崎法務大臣のときに、国家公安委員長と閣議の中で、何といいましょうか、運用の面でよろしくというような形になっているということがアメリカにちょっと似ているところじゃないかなと、こう感じられますが、いろいろ先ほど来、指紋は一体何のためにやるのか、抑止力だということで答えておりますけれども、確かに指紋を押してからその後に不正がほとんどないという点においては抑止力においては一〇〇%だと、こう思いますけれども、やはり社会がこのように毎年毎年変わってくるというのに依然として法務省ががちんとしていていいかどうかということもやはり考えていかなければならぬ、こう思っております。
 そういうような点で、先生御指摘の永住者または二世、三世、そういうふうな方々は、先ほども私は何度も申し上げているんですが、外国人でありながら日本に生まれて日本国以外知らない、その人たちはやはり自分の生まれた地域に対しては深い愛情を持っておられると、こう思うわけであります。その心情をやはり考えていかなければならぬではないかなと、こういうふうな点は感じておりますけれども、この法案を、先ほど来申し上げているとおり、一歩前進だと、そういうふうな気持ちでひとつ御理解願って、私も、法務大臣に就任して一年ですが、その中でもろもろの問題が一回に改善ということはなかなかいかないものだなあということを、いかに大臣の力の弱さというのをしみじみ感じさせられておるわけそございますので、逐次これからも改善して、日本に永住される方々が快適な生活を行われるような方途に努力していきたいとこう思っておりますけれども、現状は今の法案が、この改正法が最善のぎりぎりだということで、ひとつ関委員にも御理解願い、安永先生にもぜひそういうような点を御理解願っておきたい、こう思います。
#368
○関嘉彦君 もう時間が参りましたから、質問通告していた法文上の解釈の問題は次回に譲ることにいたしまして、きょうは、ここで終わりたいと思います。
#369
○西川潔君 最後になりまして、もうほとんどの先生方から御質問が出ました。毎回思うことですが、きょうもたくさん用意してまいりましたがほとんど出ましたので、でもそれなりに、自分で復習の意味も込めまして、しつこくなるかもわかりませんが、どうぞひとつ嫌がらずに御答弁いただきたいと思います。
 きょうは、自分は傍聴席に座っているような気持ちでずっと聞かしていただきまして、日本人に生まれて本当によかったなあと。僕は四国から大阪へ昭和二十九年に参りまして、大阪にも随分韓国の方、そして朝鮮の方、知り合いもたくさんおられます。こういう問題も特に僕たちは耳にするんですが、きょう皆さん方のお話を聞いておりまして、本当に日本人に生まれてよかったなあと。しかし、今こうして苦しんでいらっしゃる方のために、僕は国会では老人福祉のことで頑張ろうということで参ったんですが、ここへ来ると、本当にいろんなことで寂しくつらく悲しい思いをしていらっしゃる方がいかにたくさんおられるかということを本当に痛感いたしております。
 今回、この問題が出まして、自分はどうしようかなあと思いました。基本的に言えば、全廃していただくことがもうそれは一番うれしいことであるんですけれども、一度押せば一生じなくてもいい、今まだ賛成しようか反対しようか迷っております。このまま賛成してあげたい。新しい制度になって大変な数の人たちが反対や、指紋は押さない、でももうそんなに騒がないでくれ、おれたちは一回押して後一生押さなくてもいい、その人生を選びたいと言う人もたくさんいらっしゃると思うんです。こういう人たちのためには自分は賛成して、本会議場でも起立をしたいと思っておりますが、しかし悩み苦しんでいらっしゃる方々のためにはどうしようか。
 実は、うちの家内もハーフでございまして、半分外国人でございまして、京都で生まれましたが、お父さんは戦後すぐいなくなったんですが、お母さんが京都の方ですので、日本国籍ということで、そういう寂しい、本当に宿命というんですか、背負わなくてよかったんですけれども、特にこういうことは、家内のことを考え、また大阪のお友たちのことを考えますと、もう一度一からでございますが、ひとつよろしくお願いします。
 まず、この外国人登録法というのは、どういうふうな立法の趣旨でつくられたのか、どういうふうにつくられたのか、どういう法律なのかという、もう一遍その目的をお伺いしたいんですが。
#370
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録法制定の経緯については先ほどちょっと触れたところでございますが、基本に戻って、どういう趣旨でこの制度が設けられているのかという御質問でございますので、この点にお答え申し上げますと、我が国に在留する外国人の居住関係、身分関係を正確に把握し登録し、把握し記録することによって、出入国管理行政その他教育であるとか税務であるとか福祉であるとか、もろもろの行政について正確な資料を提供するということを目的としているわけでございます。
#371
○西川潔君 わかりました。
 そうなりますと、先ほど来お話をお伺いいたしました協定、特別、そして永住、半永住、いろいろございます。特に永住の方なんかは大部分の方が戦前から日本に住んでいるわけですが、二世とか三世とか言われる方、そしてましてや日本に生まれて永住権を持って、そして日本の憲法に沿って、そしてまた税金も納め、将来は日本の国で日本の土でもって骨を埋めようというふうな方々です。そういう人たちに外国人登録を求める。せめてそういう人たちには特別な扱いということはできないものなんでしょうか。
#372
○政府委員(小林俊二君) 入国管理行政の枠内におきましても、今先生の御指摘のような永住者あるいは永住者に準ずる人々についてはある程度特別の取り扱いを既に行っているわけでございますけれども、この外国人登録法という行政に限って申し上げれば、その行政の目的の性質上、その外国人を一定以上の期間滞在する外国人の中でさらに区別して取り扱うということは目的と趣旨にそぐわないと言わざるを得ないわけでございます。
#373
○西川潔君 先日、特別養子のときに橋本先生がおっしゃっておりましたが、法は家に入らずと、法律は家の中にはなかなか入ってこないというんですね。これはまさに嫌がっているものでも入ってくるわけなんですけれども、そうしますと、先ほど来局長さんのお話に何度か出てまいりましたが、送り出す側そしてまた日本で受け入れられる側、いわゆる不正に入国をしてくる人たちが大変多い。そうなるとそういう人たちが、一部の悪いことをする人たちの儀牲になっているような気がしてどうもならないんですが、いかがでしょうか。
#374
○政府委員(小林俊二君) もちろん、こういう正規在留、不正規在留を立証する手段に伴う負担というものは、その原因となっている不正規在留者、不正規入国者の側に課することができればそれは公平の原理からいって最も望ましいわけでございますけれども、事の性質上、不正入国者、不正在留者に不正入国者、不正在留者証明書というものを持たせるわけにまいりませんので、やはり正規在留者の側に正規在留者であるということを立証する手段を与えるということしかなし得ないというのが事の現実でございます。
#375
○西川潔君 これだけ国際的な水準が上がってきて、本当に恐ろしいぐらいの警察の力がございまして、それではもっとその以前に水際でというんですか、差しとめるようなことができないんでしょうか。
#376
○政府委員(小林俊二君) 不正規在留者の中の不法残留者につきましては、これは特に外務省等との協力によって流入そのものを少なくとももっと制約するという可能性はあろうかと思いまして協議を求め、協力を要請しているわけでございます。しかしながら、一方の朝鮮半島からの密入国者の話になりますと、これは長い海岸線でございまして、暮夜ひそかに漁船に紛れて、船底に隠れて入ってくる人間が水際で検挙されるという率は非常に少のうございます。朝鮮半島からの密入国者、ほとんど済州島出身者でありますけれども、これらの人々が摘発をされるのは、既に我が国に入国、上陸し、そして潜在中に摘発をされる。その契機になるのは登録証明書の不携帯というようなことを含めて在留中の摘発というのが最も圧倒的に多うございます。したがって、これを水際で検挙する、水際で防止するということは言うべくしてほとんど不可能に近い難しいことであると言わざるを得ないと存じます。
#377
○西川潔君 それでは次に移ります。
 今回のこの外国人登録法の改正ですが、在日の外国人の間で随分反対があるんですが、その反対の理由を法務省としてはどういうふうに考えていらっしゃるのか、ひとつ素人の僕らにわかるようにお願いします。
#378
○政府委員(小林俊二君) これは、もろもろの事象を分析して推定するしかないわけでございますけれども、現在の指紋押捺拒否運動を含めた反対運動が非常に社会的な事象として目につくようになりましたのは今から五年ほど前でございます。なぜ三十数年も施行されてきた登録制度に基づく指紋制度についての反対がこの五年間にそれほど高まってきたのかという社会的な事象をどう受けとめるかということでございます。もちろん、その制度が導入された当時、若干の反対運動があって何人かの拒否者が出たということはございましたけれども、しかし、それが鎮静化して数十年はそういう問題が表面化することなしに経緯しておったわけであります。
 そこで、私どもがこれについて考えまするのは、一つには、今から五年ほど前に国際人権規約が批准されたということが一つの契機になっているのではないかと推測をいたします。すなわち、国際人権規約B規約には、品位を傷つける取り扱いをしてはならないといったような一見極めて広範にわたる規定がございます。こうした規約の採択、批准ということが一つの刺激を与えたのではないかと思います。
 もう一つの要因は、直接かかわり合っている韓国人社会あるいは朝鮮人社会の中で、いわゆる三世、四世といった日本で生まれ育って日本以外に出たことのない若い人々の発言権がそれぞれの家庭において増大してきていたということではないかというのも一つの推測でございます。すなわち、一世、二世に比べて三世、四世と言われる、日本で生まれて日本人と同じように育ち、日本人とつき合って育ってきた、日本語しかしゃべれない、韓国に行ったこともなければ北朝鮮に行ったこともないといった人々にとっては、十六歳なり十四歳なりに達したときに日本人と違った取り扱いを受けるということに対する違和感が、一世、二世のように自分たちは外国人であるという意識が極めて強くあった人々に比べて非常に大きかったということと、それからそういう人々の発言権がそれぞれの社会において増してきたということがこの反対運動の背後にあるのではないかと私どもは想像、推測いたしております。
#379
○西川潔君 そこで、それではひとつお伺いしたいんですが、品位を傷つけるというようなことに関してですが、指紋押捺を原則として一回限りにしたというこの理由ですね。一回限りということは次、再度押すことがないわけですから、それを照合するというチャンスが出てこないわけです。それでしたら一回目もしなくてもいいんではないでしょうか。
#380
○政府委員(小林俊二君) 確かに、指紋を一遍押しただけでその後照合することができないというような制度であればこれはほとんど機能することはなくなる。もちろん、その登録証明書等における抑止力は依然として残ります。これが登録証明書に指紋を転写する理由でありますけれども、照合ということが全くなければその面での機能を発揮することはなくなるわけでございますが、今回の改正法案におきましては、特に必要のある場合に限ってでございますが、照合をするための指紋の押捺を改めて命ずることができるようになっておりますので、そこでその照合という面からの機能も維持するということになるわけでございます。これが外国人登録法上の私どもの求める最小限のあり方であるというふうに御理解願いたいと思うのであります。
#381
○西川潔君 また、再度呼び出されて指紋をとるというときには、例えば指をけがしたとか、やけどしてケロイド状になったとかというとき以外に、もう一度お役所の方から呼び出されて押さなければいけないというようなことというのはどういうときに生ずるんでしょうか。
#382
○政府委員(小林俊二君) 一般論で申し上げれば、指紋押捺のために特に呼び出されて押捺を命ぜられるということはないと存じます。再度押捺を求められることがあるとすれば、それは主として外国人登録の切りかえのために、現在五年ごとになっておりますが、切りかえ登録申請のために出頭したときに、前回に登録をされていた人物と出頭した人物との間の同一人性に重大な疑いがある。例えば、写真を見るといかにも違う、あるいはいろいろ身分事項について質問をするとしどろもどろであって、登録されている事項について十分に答えられないといったようなことからそういう疑いが生じたときに初めて指紋の押捺を改めて求められることが起こり得るというのでありまして、主としてそうした切りかえ申請の際等の窓口における出頭の際であるということであろうかと存じます。
#383
○西川潔君 例えば、火事だとか地震だとか水害だとか、そういう天災のときというのはどうなんでしょうか。
#384
○政府委員(小林俊二君) 火事とか、水害とか等によりまして、市区町村が保管いたしております登録原票が焼けてしまったとか、あるいは水につかって使いものにならなくなったというような場合に改めて指紋を押していただくという必要が生じ得るわけでありますが、この場合におきましても法務省が別途保管いたしております指紋原紙を使うことがまず考えられておるわけでございまして、法務省において保管をしております指紋原紙を市区町村に送付して、そしてそれ以降の指紋の用に供するということがございますので、その両方ともが火事や水害で減失するということはほとんどあり得ないことではないかというふうに考えております。
#385
○西川潔君 改正案によりますと、現在の押捺の拒否者の多くはかつて押捺をしているので改めてとられることはないんですが、毎年十六歳になる少年、少女は相変わらず押捺をすることになるわけですけれども、この十六歳に決めたというところをお伺いしたいんですが。
#386
○政府委員(小林俊二君) 指紋押捺義務発生年齢につきましては、昭和五十七年に前回の登録法改正をめぐりまして種々議論が行われた経緯がございます。その議論を通じて十四歳という当時の押捺義務年齢を十六歳に引き上げたわけであります。その十六歳ということの背後にございますのは、十六歳という年齢が義務教育を終わって社会的に独立した行動をとり出す年齢であるということでございます。各国の法制を見ましても、この点については国際的な普遍的な基準というのは全くございません。国によって極めてばらばらでございまして、一歳から二十一歳までほとんどどこが中心であるということも言いにくい、言い得ないような状況にございます。したがって、それぞれの年齢についてはそれぞれの説明が可能でございますが、十六歳について申し上げれば以上のとおりでございます。
#387
○西川潔君 もう自分自身、これは私の個人的な考えですけれども、十六歳といいますと、自分も十九、十七、十三という三人の子供がおるんですが、本当に多感な年に、こういういろんな資料を読みましても、役所に行って隅の方に呼ばれて手にインクをつけられてというのは、韓国人である、朝鮮人であるということを本当に隠している人もたくさんいらっしゃる。その中で、みんなの見ている前で、公衆の面前で証明させられているような気持ちがしてならない。そういうところから、これは私が聞いた大阪での話ですが、横道にそれなり非行に走ったりということが多々あるんですね、たくさんあります。こういうことで何とか、それは何歳にというのは難しいことなんでしょうけれども、もう少し成人になってというようなことは考えていただけないものなんでしょうか。
#388
○政府委員(小林俊二君) 成人になって、国籍等について判断をするべき人も出てくるような段階で初めて指紋押捺を求めるべきではないかというのは、一つの議論として存在する余地はあるわけでございまして、政府部内におきましても種々議論をされた点でございます。しかしながら、種々議論を尽くした末に五十七年に十四歳を十六歳に引き上げた現在の制度をその点について変更する十分な理由はないという結論に達したわけでございまして、議論そのものは存在し得るというふうに申し上げることはできるかと思います。
#389
○西川潔君 先ほどから、僕は関先生とお隣でお話しさせていただいていたんですけれども、小林局長は三百六十度どんなところから質問しても立て板に水のごとくで、本当に四十一年でこんなに頭のいい人にお出会いしたと言うとまた刑事局長や民事局長に悪いんですけれども、お隣にまた大臣がいらっしゃってまことに恐縮なんですけれども、どんな部分からお話をお伺いしても即問即答といいますか、頭脳明晰といいますか、本当に感心させられるんです。
 僕ら上の学校には行っておりませんが、義理だとか人情とかではそれは世の中だめなんですけれども、そういう部分もう少し、こういう部分も西川さんこうですね、こういうところはもう少し考えてみようじゃないかというような少し人情を加味したようなお答えがしていただきたいんですけれども、ですます調でまことに…。それなりに今度は、ようし次は困らせてやるぐらいの問題をつくってこにゃいかぬなというふうに思っておるんですが、いつも委員会で困らせていらっしゃるのは猪熊先生と橋本先生なんですけれども、早く追いつけ追い越せで努力します。
 今度は、携帯の問題をちょっとお伺いしたいんですけれども、この前の新聞にも載っておりましたのですが、例えば、交通検問のときなんかに免許証を見せて、外国人であるということで不携帯である場合はきつくおしかりをこうむるそうですご言動に少し注意しないと署まで来いというようなこともあるそうですが、こういうことを全国津々浦々まで大臣ひとつ指示していただけますでしょうか、きついおしかりでない方向に持っていっていただけるようなことを切にお願いしたいのですが。
#390
○国務大臣(遠藤要君) 立て板に水から今度は何と申しましょうか、こっちの方でお答えをするのは、一つは十六歳という問題は先ほど入管局長のお答えしたのが正しい理屈なんですが、それに私から素直に申し上げると、さきに五年ごとに指紋をやろうというときに十六歳で満場一致で了解いただいたんです、国会で。そういうような経緯から十六歳ならば問題がないだろうという考えで提出したことも事実なんです。しかし、このように各先生方からの御意見もございますので、私自身としては今自体としてはこれが最も正しい法案だと、改善だとこういうふうなことを申し上げておきたいと思います。皆さんのこのような御意見を拝聴して、さらに検討してみなくてはならないな、こういうふうなことで、十六歳といえばまだ少年でもございますので、そういうような点で検討の余地があるということでお答え申し上げておきたい、こう思います。
 それから、携帯の問題については指紋と同じようなことであって、常時携帯も同じような方向でございますけれども、こういうふうなもろもろの運用の問題で先ほど関先生からもお話がございましたけれども、アメリカでは法はつくってあるがそううるさくないというようなお話がございました。この点は前々の法務大臣のときに国家公安委員長と話し合いがされて、運用の面においてひとつというようなことで、これが警察庁なりそれぞれから徹底されたようです。
 それで、今まで自動車の何かでストップさせられて免許証を提示の場合に、外国人だということになると改めて登録証を見せるというようなことが最近はなくなったと承知をいたしておりますけれども、そういうような点がございますので、さらに私からも運用の面において、アメリカ方式まではいかなくてもできる限り皆さん方の御注意、皆さん方のいろいろの問題、また、登録者の心情、そういうような点を考えて、運用の面において余り皆さん方に刺激を与えないような方向でやってほしいということを私から改めて国家公安委員長に申し入れをして徹底をさせたい、こういうふうな考えでございますので、その点御理解願いたいと思います。
#391
○西川潔君 本当です。人情の大臣と言われております。その人情を加味できない法律もたくさんございますが、特にこういう問題は優しさを少し加えていただきまして、市場に買い物に行く、スーパーに行く、ふろに行く、そんなときまで持っていなければいけないのかな、我々では考えられないような毎日の生活をしていらっしゃるわけですから、どうぞその人たちが、これはもう宿命だというようなあきらめだけで一生を終わらないような、終わらすことのないような、優しい御指導をいただきたいと思います。
 例えば、大阪の話ですけれども、ドライブをしておりまして、二、三日後に恋人の彼女にプロポーズしようという人が、今まで自分の身分を隠しておったわけですね、それが検問ではれてしまって破談になったというような悲しい話も聞いております。
 今もまだどっちにしようか悩んでおります。また次の委員会で質問さしていただきますが、それまでしっかり勉強してきます。今後ともひとつよろしく。
#392
○国務大臣(遠藤要君) 西川先生、悩むことなく決断してほしいと思います。
 御承知のとおり、この法案が通らないとまた五年ごとに指紋押捺をしていくということになるわけでございますので…
#393
○西川潔君 僕は、その部分は本当に賛成をしてあげたい。
#394
○国務大臣(遠藤要君) さような点で、我々としては逐次改善していきたい、そういうふうな考えておりますので、今すっきりひとつお願いいたします。
#395
○西川潔君 しっかり考えさしていただきます。
 きょうは、どうもありがとうございました。
#396
○委員長(三木忠雄君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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