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1947/09/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 決算・労働連合委員会 第3号
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1947/09/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 決算・労働連合委員会 第3号

#1
第001回国会 決算・労働連合委員会 第3号
  付託事件
○國家公務員法案(内閣送付)
○國家公務員法の規定が適用せられる
 までの官吏の任免に関する法律案
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月二十五日(木曜日)
   午後二時二十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國家公務員法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(下條康麿君) 只今から連合委員会を開きます。最初に、齋藤國務大臣に……。
#3
○國務大臣(齋藤隆夫君) それでは本委員会に付託せられましたところの國家公務員法案提案の理由をこれから説明いたします。
 我が國現在の官吏制度は、明治以来多年の傳統の上に築き上げられて來たものでございまするが、日本國憲法の施行せられました今日、ここに旧來の傳統を一擲しまして、新憲法の精神に則つて新たなる基盤の上に、國家公務員の制度を立てるということは、現下の必然的な要請であり、又このことは新日本建設の大事業を完成する上におきましても、喫緊の要務であると存じます。以上の見地からいたしまして政府におきましては、先般來鋭意これが研究を重ねて参つたのでございまするが、ここに成案を得まして、國家公務員法案を立案し、今期國會の御審議を煩わすことに相成つたのでございます。本案は、國家公務員について適用さるべき各般の根本基準を掲げまして、科学的合理的な基礎の上に、民主的な方法で國家公務員を選択し、且つ指導すべきことを定めまして、眞に國民全体の奉仕者として有能誠実な職員を確保し、以て國民に対して公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とするものであります。
 次に本案の要点につきまして大体御説明をいたとたいと存じまするが、先ず本案の適用範囲についてであります。本案は國家公務員の職を一般職と國務大臣その他の特別職とに分つことといたしまして、この法律は一般職に属するすべての職にこれを適用することといたしたのであります。
 次にこの法律運営の中枢機関といたしまして本法の完全な実施を確保し、その目的を達成するために内閣総理大臣所轄の下に人事院を設置することにいたしたのであります。而してこの人事院は公務員の職階、任免、給與、恩給その他公務員に関する人事行政の綜合調整に関する事項等を掌ることにいたしましたが、その組織につきましては人事行政を民主的ならしめると同時に、これが運営の嚴正公平を期するがために、これを構成する人事官の選任方法、身分の保障等につきまして所要の規定を設けて本法の趣旨の達成に遺憾なきを期している次第であります。
 次に官職の基準として、先ずすべての國民はこの法律の適用について平等に取扱われ、人種、信條、性別、社会的身分、又は門地によって差別せられないという根本基準を定めたのであります。又この法律におきましては従來の官吏の身分的區別はこれを排除することとなり、國家公務員の職につきましては、その職務と責任の度合において精密なる職階性を採用することとして、國家公務員の任用、給與等はこの職階に應じてなさるべきものといたしたのであります。又職員の採用、昇進等は原則としてすべて試験によることとして、殊に採用試験はすべての國民に対して平等に公開せらるべきものといたしまして、任用の公正明朗を期することにいたしたのであります。
 次に國家公務員の能率増進を図るの見地からいたしまして能率考査の制度を実施し、又教育、訓練、保健、安全保持その他職員の能率増進、福利向上に必要な各般の施設をなすべきことを定めておるのであります。
 次に國家公務員の分限及び懲戒に関しましては、本人の意思に反して罷免その他不利益な処分を行うのは、法律に列挙する事由に該当する場合のみに限るものといたしまして、尚國家公務員に対する保障として、これに対する不利益な処分について異議がある場合におきましては、これを人事院に訴えて、審査を要求し得ることといたしておるのであります。
 それから次に國家公務員の服務につきましては、國家公務員は國民全体の奉仕者として、公共のために勤務し、その職務の遂行に当つて全力を挙げてこれに専念すべき旨の基準を掲げまして、この精神に基きまして諸般の服務上の紀律を掲げておるのであります。
 以上國家公務員法につきまして、その概要を説明したのでありますが、尚この機会に國家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する法律案の趣旨を御説明いたして置きます。
 即ち國家公務員法の規定は、各官職について順次その適用を見るのでございますが、その適用がなされまするまでの間の官吏の身分取扱に関して、法制を備える必要があるのでありますが、暫定的の措置でありますので、概ね從前の例によることといたしたのであります。これを併せて御審議の上議決あらんことをお願いいたします。尚詳細の點は政府委員からして説明いたします。どうかよろしく御審議の程をお願いいたします。これを以て大体提案の理由といたします。
#4
○政府委員(前田克己君) それでは私から國家公務員法案の内容につきまして、少しく詳細に御説明申上げます。
 本法案は、本則百十條、附則十四條から成る相当廣範なものでありまするが、その内容は大体三つの眼目から成立っておるのでございます。「第一」は、本法の目的及びその適用範囲に関する事柄なのであります。「第二」は、この法律実施のための中枢機関たる人事院に関する事柄であります。「第三」は、国家公務員制度の実体をなすところの各般の根本基準に関する事柄であります。
 そこで先ず第一の眼目の点でありますが、本法案は、その劈頭に、本法案の目的とするところを掲げまして、この法律は官職についての諸般の基準を掲げ、職員が公務の遂行に当りまして、最大の能率を発揮し得るよう、民主的な方法でこれを選択し且つ指導すべきことを定め、以て國民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とするものであることを明かにしているのであります。
 次に本法の適用を受ける國家公務員の範囲でありまするが、國家公務員の職を一般職と特別職とに分ち、特別職は、本法の適用からこれを除外しておるのであります。而して特別職は、第二條に列記された各種の職でありまして、特別職以外の職を一般職とするのであります。この特別職の中には、第一に、従來自由任用に委されておりました官職、即ち國務大臣その他の政教官及び秘書官を掲げますると共に、交省のいわゆる事務次官、それから建設院及び終戰連絡中央事務局の長、宮内府長官等をもこれに加えました。第一に、会計檢査院の檢査官の如く、その任命について國会の選挙、議決、又は同意を必要とする職員の官職も特別職となっております。第四に、單純な営務に雇傭される者の職を特別職といたしました。これらの職員は、その仕事の性質が、一般行政職員とは異なっておりまして、その任用、分限、服務、給與等につきまして、本法をそのまま適用することは、必ずしも適当ではないと認めるによるのであります。
 尚國会議員、裁判官等も同様の趣旨でこれを特別職の中に数えております。
 以上特別職に属する主要なものを挙げたのでありますがこれ等を除外いたしました國家公務員の職、即ち一般職がこの法律の適用を受けるわけであります。但し、この一般職の中に含まれる官職の中でも、外交官、領事官、学校教員、裁判所の職員、檢察官等につきましては、その職務の特殊性に基き、本法上の適用上若干の特例を要することも考えられますので、これ又法律或いは人事院規則によって例外規定を設けるの途を附則の方において規定いたしております。
 次に第二の眼目でありまする人事院に関する諸規定、これは法律では第二章に規定されておるのでありますが、これについて御説明をいたします。人事院はこの法律の完全な実施を確保し、その目的を達成するため、内閣総理大臣の所轄の下に設けられるものであります。先ずその組織について申上げます。人事院の首脳部は三人の人事官を以て構成せられております。その中一人がその総裁に任命されるのであります。この三人の人事官が人事官会議を構成いたしまして、その合議によりまして人事院運営の重要事項を決めて行くわけであります。
 人事官の任命につきましては、努めてこれを民主的ならしむると共に、内閣の専断を避ける意味におきまして、特に両議院の同意を得て、内閣がこれを行うことといたしました。人事官は天皇の認証官でありまして、任期は六年であります。人事官たるべき者の資格要件としましては、人格が高潔で、民主的な組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ人事行政に関し識見を有する年齢三十五歳以上の者たることを要するといたしておるのであります。かような條件を特に掲げましたのは、人事行政の民主的な且つ中正なる運営及び科学的、合理的な人事管理を主眼とする本法案の趣旨の達成に遺憾なきを期せんとするに外ならんのであります。尚本案は、人事院の公正中立を確保するために、人事官同志の間に、同一の政党に属する者、又は、同一の大学学部の同一学科の卒業者等がないように、所要の制限を設けますると共に、人事官の身分を保障するため、その退職の事由を法定し、又罷免につきましては、心身の故障、職務上の義務違背等の場合においては、内閣総理大臣の訴追に基く最高裁判所の弾劾裁判を必要とする旨を定めておるのであります。
 尚人事院には、右の三人の人事官の下に事務総局が設けられまして、事務総長の一人と所要の職員を所属させまして、その事務を掌ることになっております。
 次に人事院の権限でございまするが、これは一口に申述べれば、第三條に明かな如く、各廳職員に関する人事行政の綜合調整、及び職員の試験に関する事項ということになりますが、要するに人事院は本法施行の中枢機関でありまするから、その個々の具体的の権能は本法の随所に現われておるわけであります。その中主要な事項について申上げますと、先ず人事院規則の制定改廃であります。即ち人事院は、この法律の執行に関し必要な事項について内閣総理大臣の承認を経て、人事院規則を制定し得ることになっております。本案におきましては、本法実施の細則は、別に法律で定められるもの以外は、概ね人事院規則を以つて定むべきものとしておりますが、これは主として人事管理上の諸準則が、専門技術的な性格のものであることによるものであり、かたわら人事院が綜合的、中立的な立場を基盤といたしまして、これら諸準則の一元性及び公平中立性を期待せんとするものであります。以上の外人事院の具体的な権限として主要なものは、これは後にも触れる機会がありますが、職階制の立案、給與準則の立案、試験及び選考の実施、恩給制度の立案、公務傷病等、に対する補償制度の立案、職員からの不服の申立の審査、人事行政に関する勧告等であります。以上が人事院の組織権限についての大要でありますが、尚人事院と各省との緊密な連絡を確保するために、各省の人事主任官を以て構成する人事主任官会議を人事院に置くこととし、人事行政の全般に円滑なる運営を期しております。
 次に第三の点に移りまして、官職の基準に関する第三章の諸規定であります。新公務員制度の本体をなす事項、即ち職員の試験任免、給與分限、懲戒、服務、恩給等に関する事項がここに定められている次第であります。先ず第二章の第一節は通則といたしまして、「すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信條、性別、社会的身分又は門地によって、差別されてはならない。」旨の原則を掲げております。國民が官職を占むるに当つて、日本國憲法第十四條の趣旨が堅持されなければならないことを明示いたしておりますと共に、他方「この法律に基いて定めらるべき給與、勤務時間その他勤務條件に関する基礎事項は、社会一般の情勢の変化に適應」すべき旨の原則を定めているのであります。続いて第二節は職階制に関する規定であります。この法律は職階制を以て人事管理の基準といたしているのでありまして、その骨子は、すべての官職はこれを職種と等級とに區分し、職務と責任の類似性によりまして科学的に分類し、かくして精密に分類せられた官職については、同一の資格要件を必要とし、又同程度の給與が與えられなければならないようになっておるのであります。從つてこの法律が完全にその意味を発揮いたしますのは、あらゆる官職について職階制が適用されるに至ることを前提とするのであります。これは極めて困難な仕事でありまして、一朝一夕にできるものではありません。職階制の確立は前に申上げた通り、人事院の最も重要なる任務でありますが、その方法といたしましては、実施可能な部分から実施し、逐次すべての官職に及ぼす方針であります。第三節に移りまして、これは試験及び任免に関する規定でありまして、五款に分かれているのであります。その要点を極く簡單に申上げますと、先ず職員の任用は、新規の採用、昇任、轉任、降任の四つの場合を含みまするが、いずれについても情実を排除し、專らその者の実際の能力、即ち試験成績、勤務成績、その他能力の実証に基ずいて、適材を活用するということが根本基準であり、外の諸規定はいずれもこの根本基準に則つて定められているのであります。即ち職員に対する任免等の人事権は等級に感じて内閣、内閣総理大臣、各省大臣、その他各廳の長が行うのであります。官職に欠員が生じました場合にこれを補充する方法としては、任命権者は、採用、轉任、昇任、及び降任のいずれによることも自由であります。ただ特別の場合には人事院が任命方法を指定することがあり得るわけであります。職員の新規の採用について申上げますると、これは大体競争試験によるということが原則であります。その試験は官職の、先程申上げました職階制に基ずく分類に應じまして、人事院の定める試験機関によって行われ、最低限度の受験資格を設けることを認める外、すべて公開の原則によってなん人でも試験を受け得られるようにすべきものと定めております。尤も人事院の承認のありました場合には、公開競争試験によらず、選考の方法による途が開かれております。次に昇任でありますが、これは原則として下級在職者のやはり競争試験によるのであります。この場合も競争試験を不適当とする特別の場合には在職者の從前の実績に基ずく選考等の方法によることもできるものと定めてあります。以上のように競争試験によって採用昇任を行おうとする場合には、任命権者からの請求に應じて人事院は予め作成してありますところの任命候補者名簿に記載してある者のうちから、任用さるべき一人について、各五人の候補者を推薦するのであります。任命権者はその中かち適任者を任命することができるのであります。
 尚新規採用の場合においては、原則として、職員の採用は一應六ケ月の期間は條件附任命といたしまして、その期間にある者が、その官職についての適格性を示した場合に初めて本任用となることを定めているのであります。以上述べましたのは本來の任用の手続でありますが、緊急を要する場合等で、本來の手続によることのできない場合には、一定の條件の下に臨時に職員としての任用を行うことができると定めてあります。次に第四節に移りまして、これは職員の給與に関する規定であります。先ず給與は官職の職務と責任に應じたものでなければならないという根本基準を掲げ、その趣旨はできるだけ速やかに、且つ現行制度に適当な考慮を拂いつつ、可能な範囲で作成せらるべきものとしているのであります。而して給與は法律で定める給與準則に基ずいてなさるべきものでありまして、人事院は職階制に適合した給與準則の立案の責務を有する旨を定めております。尚この給與準則には俸給表が規定さるべきものであり、その俸給表には職階制による等級ごとに一定の幅を以て俸給が定められ、且つそれは生計費、民間における賃金、その他の事情を考慮して定めらるべきことを要求しているのであります。尚給與に関しまして人事院が適法、且つ公正に給與の支拂が行われることを確保するために、各廳を監視する任務を與えられ、給與簿を検査し、必要があるときは取扱の是正を命ずる等の権限をもつことといたしております。第五節は職員の能率に関しましてこれが十分に発揮され、且つその増進が図られなければならないという根本基準を明らかにし、これがために勤務成績の評定並びに能率増進計画の樹立及び実施等について規定いたしているのであります。從來職員の能率増進に関する科学的乃至計画的な措置は遺憾ながら極めて不十分でありましたので、この欠点を是正するために、人事院の定めるところに從いまして所轄行政廳の長がその職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、そうして職員の執務に遺憾なきを期することとし、同時にこれを職員の昇給、昇任或いは降任免職等の際の公正な基礎材料たらしめることにいたしているのであります。次に他方人事院の綜合的な企画の下に関係各廳の長は職員の教育訓練、保健、元気回復、安全の保持、厚生に関する事項について具体的な計画の樹立及び実施を定めまして、積極的に職員の能率向上、福利の増進に資さなければならないことを規定いたしております。第六節は分限、懲戒、公務傷病に対する補障の規定でありまして、これらはすべて公正に行われなければならないという根本の基準を明かにいたしますると共に、分限に関しましては身分保障、欠格による失職、本人の意に反する降任及び免職、本人の意に反する休職の効果等について規定をいたしております。申すまでもなく職員は國民全体の奉仕者として、安んじて職務に専任できるようにいたさなければなりません。これがために法律に定める事由による場合の外は、本人の意に反して降任、休職又は免職されることがないこととすると共に、人事院の規則が定める事由に該当するときにのみ、降給されることにいたしまして、職員の身分を保障いたしておるのであります。免職、降任の理由といたしましては、勤務成績不良の場合、心身の故障の場合及び官職に対する適格性の欠除の場合を挙げました。休職の理由といたしましては心身の故障のため、長期休養を要する場合及び刑事事件に関し起訴された場合を挙げております。而して休職者は休職期間満一年の経過により当然退官いたすのであります。夫に懲戒に関する規定でありますが、懲戒処分は免職、停職、減給又は譴責の四種といたしました。懲戒の事由といたしましては、本法又は人事院規則違反の場合で、職務上の義務違反又は職務怠慢の場合、それから國民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった際、この三つを挙げておるのであります。尚從來懲戒につきましては事前の手続きとして、原則として懲戒委員会に付議することとなっておりましたが、本案では任命権者が直ちに処分を行い得るものとし、後に述べまする如く、人事院の事後審査による救済の途を設けて処分の公正を期することといたしました。以上が原則でありますが、臨時的職員、或いは條件付任用期間中の職員等に関しましては、その特殊性に顧みまして分限の規定を適用しないことといたしておるのであります。それから同じ節の中で保障に関する規定でありまするが、これは職員の勤務條件及びその意に反する不利益な処分に関しまして職員に対する発言の機会を與えんとするものであります。以て分限及び懲戒等の公正な運営を確保するための裏附とすると共に、すべての職員をして欣然として積極的に職務に専念することを得せしめようとする趣旨によるものであります。これがために一方には職員は俸給給料その他あらゆる勤務條件に関し人事院に対して、人事院又は所轄廳が適当な行政措置を行うことを要求する途を開くことといたしました。すべてこの要求に対しましては人事院は事案を審査判定し、必要あるときは一定の措置を取らなければならんのであります。又次に職員がその意に反しまして休職、降給、降任、免職その他著しい不利益な処分を受け、又は懲戒処分を受ける。その処分の際に処分の事由等を記載した説明書の交付を受けまして一定期間内に人事院に審査を請求することができることといたしておるのであります。この審査の請求に対しましては、人事院は事案を審査して、処分の正当なときはこれを確認いたしますが、正当でないときはこれが是正について所要の措置を取るべきことといたしておるのであります。尚保障の一つといたしまして、公務傷病に対する補償についても所要の規定を置いております。第七節は職員の服務に関して、「すべて職員は、國民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」という根本基準を明かにいたしまして、又服務の宣誓、法令及び上司の命令に從う義務、政治的行爲の制限、私企業からの隔離、他の事業、又は事務の関與制限等について規定をいたしました。次に職員の服務に関しましては大体從前の官吏服務規律にも相当詳細に規定されております。今回の規定も趣旨においては、大差のない事項も多いのでありまするが、ただ二三の点につきまして新しい規定を設けておるのであります。即ち國家公務員の自覚に徹せしめるため新たに宣誓の義務を負わさせることといたしました。又國民全体に対する奉仕者として眞に中立的な立場で職務に専念すべしという公務員の本質に顧みまして、政党又は政治的目的のために寄附金その他の利益を求め、若しくはこれを受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行爲に関與することを禁止いたしました。更に特別の場合の外、公選による公職の候補者となること、及び政党又はその他の政治的團体の役員となることを禁ずることといたしました。更に職員に対し廣く商業、工業、金融業等の営利を目的とする営利企業の役員、顧問、評議員等の兼職を禁じますと共に、みずから営利企業を営むことも禁止いたしておるのであります。尚職員の在職中の職務執行の公正を期するために、退職後二年間は原則として、その者が退職前二年間に在職しておりました官職と密接な関係にある営利企業を代表する地位に就職してはならないということにいたしました。又営利企業につきまして株式の所有の関係、その他の関係によりまして、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員につきましては、職務途行上特に留意する必要がありますので、本人の株式所有の関係、その他の関係について報告を徴することができる途を開き、報告に基きまして関係の存続が適当でないと認めるときは、その旨を通知し、更に進んでは職員が当該職業との関係を断つか、退職するかしなければならないことといたしました。最後の節は、退職者に対する恩給に関する規定であります。恩給制度は公務員として相当期間忠実に勤務して、退職した職員の老後の生活に資するために、必要な所得を與えることを主要な眼目とするものであります。現行の恩給制度も勿論その趣旨は大体相似たものでありまするが、受給者の範囲、その内容等について今後十分人事院において研究した上で、現行制度の改むべき点は改めちれて行くものと考えております。
 以上の外、本法は第四章におきまして本法の施行に必要な罰則を決めております。それから附則におきまして本法の施行期日、その他本法の施行について必要な経過措置等を規定いたしておるのであります。本法の一般的な施行期日は明年の七月一日であります。併し人事院は遅くとも昭和二十四年の一月一日には設置されなければならないということになっております。ところがそれまでの暫定措置といたしまして、本年の十月一日から内閣総理大臣の所轄の下に、臨時人事委員会を置くことといたしておるのであります。この委員会は委員長及び委員二名を以て組織せられ、この法律の施行に必要な範囲で人事行政一般に関する調査、その他本法実施の準備の事務を掌り、明年七月一日からこの法律に定める人事院の職権を行うものとされておるのであります。
 尚一言御説明を申上げたいのは、新制度に切替えの際の現職者の措置でありまするが、人事院の指定する日に、その指定する官職に在任する者は、この法律に基ずいてその官職に就いたものとみなされるのであります。別に特別の試験、選考等の手続を要さないのであります。ただ人事院の指定する日における各廳の局長、次長等、特定の上級の官職に在任する者は、その際臨時的の職員に任用されたものとみなすこととなりました。これは、これらの制度の移り替りに伴う人事運営上の支障を防ぐと共に、同時にこれらの地位のものについては少しも早く新制度による人事の更新がなされんことを期しておるわけであります。以上長くなりましたが、公務員法案につきまして、やや詳細の趣旨を御説明いたしました。他は御質疑に應じましてお答えをいたします。
#5
○小川友三君 本案の第一章第二條につきましてお伺いいたします。國家公務員、これに書いてある特別職というのですが、これに國会議員を含まないと明記してあるのですが、そうしますと國会議員で官房長官もあり、國務大臣もあり、政務次官もあると思いますが、その場合は國会議員を辞職したものと見なすとか、國会議員でないものとみなしてこうした立法をしたかということをお伺いするのであります。それから第二條の十六に大使及び公使ということが書いてありますが、総領事、領事はこの中に含まないかということをお伺いいたします。それから十八の國家職員ですが、この中には各委員会の専門委員も含まれておると思いますが、この点をお伺いいたします。それから第五條に[政党の役員であった者又は任命の日以前一年間」とありますが、これは政党員を信用していないためにこうしたものを書いたか。これを訂正する意思があるかないかということをお伺いいたします。
#6
○政府委員(前田克己君) 最初の御質問でありまするが、國家公務員という言葉の定義だけから申しますれば、廣くは國会議員が含まれることになると思うのであります。ただこの法律は只今御説明いたしました通り、職階制ということを基準にいたしまして、且つ人事院において人事行政の統轄に当らしめるということを主眼として、これに適当に職員を法律適用の対象といたしておるのであります。從つて國会議員というものは全然その目的になるべき性質のものでありませんので、除外をいたしました次第であります。ところが御質問のように國会議員が國務大臣、或いは官房長官等に就任いたす場合もあるのであります。これら政務官は第二條におきまして、やはり特別職といたしまして、法律の適用から結局除外をされておるのであります。待って只今御心配の如く辞任というような問題は起きて來ないわけであります。次に外交官についてお尋ねでありますが、これは大使、公使を特別職といたしましたのは、この任命につきましては外國のアグレマンを必要といたしまして、又その職務内容も、これは國を代表いたしまして、外國に使いするというような非常に特殊な地位を持っております。これを任命いたしまする時も、必ずしも外交官として下から上つた人を任命するばかりでなく、廣く國内全般に國家を代表するに適当な人を登用するというようなことが必要のために特別職といたしておるのであります。総領事、領事は、これは純然たる外務省の事務官吏でありまして、大使、公使とは余程趣が違つておるのであります。從つてこれにつきましては一般の外交官とはその職務の特殊性に鑑みまして、多少の特別規定は附則の方で設けられると思うのであります。特別職とはいたしておらないのであります。次に國会職員はお尋ねの如く廣く専門調査員等も含むものであります。それから第五條の政党の問題であります。これは先程御説明いたしましたように人事官というものは極めて嚴正な人事に関する行政に当るべきものでありまして、從つて極めて抽象的な立場にあることを必要とせらるるものであります。その意味におきまして余り政党の色が濃く着くということは支障があると思われますので、政党の役員になる程深入りをした方は遠慮をして頂くという規定であります。別に政党を嫌つたわけでもない。或いは不信任といたしたわけでもないのであります。政党員であることは少しも差支がないのであります。御了承を願いたいと思います。
#7
○小川友三君 関聯してちょっと簡單でありますが、大使の中で、特命全権大使、特命全権公使というのはこの中に含みましようか。
#8
○政府委員(前田克己君) 含まれます。
#9
○吉川末次郎君 いろいろ審議が進んで行くに從つてお尋ねしたいことが起つて來るかと思いますが、先ず二三の点について御答弁が願いたいと思います。國務大臣の御答弁が願えれば大変結構でありますが、第一は、常任委員長会議がありまして途中から加わりましたので、或いはお話があったかも知れませんが、ここに頂いておりまするところの資料といたしましては、官吏関係法令の拔萃と職階制度の説明という資料だけを頂いておるのでありますが、まだ十分拜見いたしておりませんが、アメリカの職階制度でありますか、それについてのことが概略書いてあるようでありますが、大体アメリカのこうした行政廳の人事制度によって専らお作りになつたものであるかどうか、或いはこういう公務員の人事行政に関する他國の制度等について尚同様に参考にする必要はないかどうか。又そういう資料があれば、十分にこれ以外に一つ頂きたいということをお尋ねすると同時に、御要求申す次第であります。
 第二番目にお尋ねいたしたいことは、これは特に國務相の御答弁が願いたいと思うのでありますが、ずっとこの法案を拜見いたしましたところ、アメリカの考えをいろいろ根抵においておられたのだらうと思うのでありますが、米國のパブリツク・アドミニストレーシヨンにおける人事行政についての観念であります。いわゆる政党の排撃、アメリカの言葉で申しますと、スポイル・システム、官吏の中に政党員が入って來て、そうして公務員の地位を政党員が占めるということ、即ちスポイル・システム、日本では文官分捕り制度などと翻訳いたしておりますが、これを極力排斥して、そうしてやはりアメリカの言葉でメリツト・システムというのでありますが、そういう政党の排撃というような観念が非常に強くこの法案に現われておると思うのであります。これは一應了解できるのでありますが、併しながらそれが行過ぎておるような、囚われた観念に陷つていやしないかというようなことが非常に危惧されるのでありまして、斎藤國務相よく御承知でありますように、今日は日本の政治的な変革期であります。日本の民主革命といわれておるところの時機なのでありますから、そうした新憲法を中心とするところの民主革命の精神というものが、パブリツク・アドミニストレーシヨンの末端にまで十分に行き亙るようにしなければならないと思うのであります。その点は現在のアメリカなどと、今日政治の革命的な変革期にありまするところの日本におけるところの人事行政の考え方というものとは、非常に変つていなければならないのじゃないかと思うのであります。ここには一般職と特別職ということを掲げられておりますが、ここに掲げられておりまするものは、從來とも政務官として取扱われて來たところのものが中心になっておると思うのでありますが、これによりますると、例えば斎藤國務相が閣僚の一人になっていらつしやいます現内閣が行いました人事行政、労働省の婦人及び少年局の局長に山川菊栄女史を起用したというようなことは、世間からも、今日片山内閣の人事行政として極めて評判がいいのであります。私も亦非常にいい人事行政であると考えるのでありますが、そうした局長は除外されておるのでありまするから、山川菊栄女史の任用の如きはできないこととなりまするが、併し私は現内閣の政治的な立場からいたしまして、又現在の日本の政治の客観的な情勢からいたしまして、ああした人が労働省の主脳部に採用されるというようなことは私は非常に必要なことじゃないかと思うのであります。それは政党というものに対するところの中立的な立場にありまする、昔からの官僚というようなものがその職につきますよりも、私は今日の日本の政治的変革の目的を達成するという上において必要なことじゃないかと思う。同様なことが行政の各部面において私は人事行政上考えられて行かなければならぬと思うのでありますが、この法案は余りに日本と、実情の今日異なっておりまするところの、平常的な、ノーマルな状態にありますアメリカの政治事情等を模倣するということに余りに急であるような感がいたしますが、そうしたことに対する、私の考えに対する一つ斎藤國務相の御答弁を願いたいと思うのであります。
 それからちょっとしたことでありますが、第五條に、「人事官は、人格が高潔で、」云々という言葉がありますが、これはどうも日本の法律の文言といたしましては、私の浅学を以ていたしますると極めて新しい言葉の御表現であるように考えるのでありますが、何かこういうような法律上の前例が、ひとり日本のみならず、外國においてもあるのであるかどうか、総理大臣の任命につきましても、或は國会議員が選挙されること等につきましても、特にその人間が、人格が高潔で、というような言葉は、法律的に表われておらんように思うのでありますが、成るほど人事院の人事官が人格が高潔でなければならぬことは当然でありますが、そうすると外の公務員はいかにも人格が高潔であるということを條件としないような感じがするのでありますが、特にこういう文言をお入れになつた御精神は分りますが、もう少し法律学的な建前から一つ御答弁が願いたいと思うのであります。
 尚それに関聯いたしまして、新聞の報道いたしておりますところによりますというと、この法律は議会を通過いたしましても、実施されるのは大分後になるのでありますが、昭和二十三年七月一日から二年以内にといっていることは御説明の通りでありますが、それまでは人事委員会というものによって、この事務を御運行になるような法案になっておると思います。ところが時事新報であったと思いますが、その一時的な人事院に移るまでの人事委員会の主脳幹部といたしまして、名を挙げて書いております。それが殆んど決定事項であるかのように時事新報は報道いたしておりましたが、それは今日行政調査部に働いていらつしやるというように聞いております、部長か何かの職に在る前の貴族院議員であった、慶應義塾の憲法の先生であったと聞いておりますが、浅井清氏が任命されると書いてありました。もう一人書いてありましたが、その一人は昔から実業界におけるところの、能率の研究をしていらつしやいます能率屋さんの上野陽一氏がなられるようなことが報道せられておりましたが、或いはこれは新聞の誤報と固より思うのでありますが、そういうような御腹案があるのであるかどうか。又傳えられておるところの浅井清氏や能率研究家の上野陽一氏等が、その所要されておるところの第五條の人格高潔の士であるというふうにそのエキザンプルとして我々が考えていいのであるかどうかということについて、先ずお答を願いたい。
#10
○國務大臣(齋藤隆夫君) 御質問に対して御満足なお答えをすることができるかできぬかは存じませんが、私の考えておりまするところを卒直に申上げてみたいと思います。御承知の通りに昨年の十二月の初め頃からして、前内閣において行政調査部というものを設けまして、そうして日本の行政組織を根本的に全般的に改革する。同時に公務員の採用及び運用について最善の方法を考えるということで、行政調査部ができた。爾來今日になるまで多数の要員が当りまして、内外の制度について熱心に研究を続けておるのであります。この公務員法も実を申しますというと、その委員の方々の非常な研究と努力とによってこれができたのであります。それが原案と相成つておるのであります。
 終戰以來日本の諸般の組織についていろいろの改革が行われまして、その改革の中には、外國の制度が入っております。併しながら外國と日本とは御承知の通りに國家組織の根本からして違いまするので、その制度をばそのまま日本に持って来るということは、これは甚だ不適当でありまするからして、この間をよく調整いたしまするがために、お互ひに相当に苦心をしておるようなのが今日の現状でございまして、この公務員法もそういうような点からして、大分米國の職階制なるものが混つておりますことを御承知おきを願いたいのであります。
 それからしてアメリカでは御承知の通り長いあいだスポイル・システムの排除に行政部がよほど改革に骨折つたということも書物において見たのでありまするが、近頃はそれが職階制というものが発達いたしまして、その弊害も段々と氣をつけておるように思っておりまするが、この公務員法も主としてこの職階制度を基本といたしまして、官界の宿弊をば一掃したいという建前になっておるのであります。
 それからして政党員と公務員との関係でありまするが、この法律におきましても政党員は公務員になってはいかないということは書いておりません。確か政党の役員はいかんということは現れておると思いまするが、政党員でも公務員になれるのでありまして、御指摘になりました労働省の局長でありますとか、こういう方が、労働問題について多年の経験者でありまするからして、公務員となってその事項を掌握せられるということは、これは官界のためによほど喜ぶべきことであると思います。
 その外詳しいことは前田政府委員からお答えすることにいたします。私大体のことしか存じておりませんからして、この法文の内容に関することは政府委員よりお答えすることにいたします。私は思いつきましたことだけをお答えをいたします。
#11
○政府委員(前田克己君) 今大臣の答弁に漏れましたところだけ補足して申上げます。法案を作りますに際しましては、アメリカの資料ばかりでなく、その外英國或いは昔のドイツ等の資料も研究をいたしたのであります。いろいろ断片的のものがあり、或いは非常に浩瀚なものがありまして、直ぐ今お手許に参考資料として差出すような形には整理されておりません。
 それから第五條の人格高潔云々の字句についてのお尋ねでございまするが、これは特別の意味は持っておりません。この法律全体を通じまして同様の御疑問の出るような字句が、或いは恩給のところ、服務のところにもあると思うのでありますが、法律的な特別な意味は持っておりません。
 それから臨時人事委員会の候補者のことにつきまして、一部新聞紙に報道がございました。これは只今の法案の趣旨によりまして、政府におきまして愼重選考中でありまして、未だ決定に至っておりません。ただ新聞紙に傳えられましたような方々も、別にこの要件を欠いておる方というふうには、政府といたしても考えておりません。
#12
○吉川末次郎君 今のことに荷関聯してお尋ねいたしたいのでありますが、斎藤國務相はアメリカの制度を非常に参考にしたものである、そうして日本の官界を粛正するということのためにアメリカでいわれて來たところのスポイル・システムの排除、行政部面からの政党員の排撃ということを非常に重要視したというような御答弁があったと思うのでありますが、併しこれは官界の粛正を非常に日本に要するといたしましたならば、日本の官界にはアメリカのスポイル・システム排撃に際して考えられておるような政党員の行政部面、公務員への、官界への侵入というものは、今日まで殆どなかったといっても決して過言ではないと思うのでありまして、日本の官界が粛正されるところの必要がある、そうしてその粛正さるべきところのものは、官界へ入っておらんところの政党を排撃するということをしきりに考える必要があるのではなくして、そういう考え方は今私が申しますようにアメリカのスポイル・システム排撃の、公務員採用に関する考えを、全然事情が違うのに表現的に、そのまま余りに偏して、書物上の知識で、行政調査部の諸君が採択されておるのではないか、粛正を要するところの、日本の官界におけるところのものは誰であるか、それは今日まで日本の行政界をば一〇〇パーセント支配して來たところのいわゆる官僚の輩なのでありますから、これを粛正するということが、私は國家公務員法が新らしく制定されるところの、最も重要なる基本的な観念でなければならないと思うのであります。ところが政党を排撃するということにこの全部の法文を通じて、極めて綿密なことにまでも規定をおいて、外國のそうした全然事情の違うところの法律というものを、極めて浅薄な態度で模倣しておられるような感がいたすのであります。本当に日本の今日の官界を粛正しなければならない、そうして粛正さるべきところの対象は、封建的な、腐敗した官僚であったし、又あるということをば、どうもネグレクトされておると思うのであります。この法案に対する世間一般の批評もそういうところにあると思う、政党をしきりに排撃することは、今日までの日本を、この敗戰の結果に軍閥とともに陥れたところの官僚が声高く今日まで日本の政界において叫んで來たところの彼等のスローガンであります。政党員の排撃ということは……。そうして彼等は官吏任用制度を基本にして行政部面への政党色の侵入を排撃し、殊に地方自治体におけるところの政党の排撃ということを全く見当違いの間違つた議論をいたしまして、詳しいことは私省略いたしますが、今日までやつて來たのであります。今日まですでに彼等は自己のギルト的な勢力を温存し、これを保全しようという利己的な考えによって政党を排撃し、彼の厖大なる、有力なる、パワーフルな、官僚の政治力というものを作つて來たのであります。ところがそれを粛正すべきところの新内閣のそうした行政のための立法であるところの國家公務員法というものが、昔の官僚が自己保存のために、エゴイズムのために、自己のギルド的な慾望の満足のためにして來たことと同じことを、やはりこの立法の精神の骨子にしておられるような感があるということを、世間も非難しており、又私も非常に不満に思うのでありますが、重ねて今の点についてできるならば齋藤先輩の御答弁が願いたいと思うのであります。
#13
○國務大臣(齋藤隆夫君) 日本の政治の運行に当りまして、官僚に対する所の観念はすでに決定的に決つておると思います。官僚の弊害もどういうものであるかということももう世間衆知のことでありまして、我々が今更かれこれ穿撃する必要はないと思いまするが、この公務員法の大体の趣旨もやはりその官僚の宿弊をこれによって一掃したいという精神は、この法案の各所に私は現われておるように思います。職階制の如きは最もその著しき一つであると思います。政党の弊害ということは、これまでも随分言われましたが、全く政党の弊害が、官界になかったとは言えないのであります。あったと思いますけれども、それも改めなければならんという趣旨を以て、公務員法は作られておるわけであります。故にあらゆる官界の宿弊を一掃するという見地の上に立って、これが作られておるのでありまして、これが適正に行われましたならば、從來の弊害は相当に粛正せられるものである、こう考えておりまするからして、これ以上はおのおの見る所によって違いましようが、我々はそういう考えを以て、この法案をば一貰しておるということを御承知置きを願いたいと思います。
#14
○太田敏兄君 この法案の附則にもそう書いてありますし、只今の御説明にも言われたのでありますが、この法律で十月一日から臨時人事委員会は発足したいということでありまするが、そうすると結局この法案は、今月中に議了せねばならんということになりますが、今日から数えまして六日で、日曜を除きますと五日しかないのでありますが、こういったような重大なる法案を近々数日中を以て議了するということは、非常に無理ではないかと思うのでありますが、併し無理にこれを間に合せようと思いますれば、殆んどこれは鵜呑みにするよりほかにないと思いますが、そういうことは甚だ遺憾であると思うのであります。これを今率然として出されまして、そそくさに審議するという理由が特にありますれば伺いたいと思うのでありますが、私はできれば特にこういう重要なる法案は、愼重を期して審議に当りたいと思うのであります。
 それから第二に、この第五條の規定にありまする人事官の選任のことでありまするが、これは両院の同意を経てとありますから、恐らく政府から両院に諮問せられるであらうと思いますが、更に私はこれを本当に民主的な國民の公僕たる官僚組織を作るためには、先ず最も民主的な人事官を置く必要がある。それにはただ政府から両院にその同意を経るということだけでなしに、その前に一種の民主的な方法で人事官を選任する、そしてそれを國会の同意を経て総理大臣がこれを任命するというふうにすることが望ましいと思のであります。これは最高裁判所の裁判官の候補者が、一種の民主的な方法で選挙されまして、それを総理大臣が任命したのでありますが、やはりこういうふうに先ず最も民主的な方法で人事官の候補者を或いはこの倍数とか、或いはその任意で宜しいとか、兎に角民主約な方法で先ず選任しまして、それを両院に諮つて内閣総理大臣がこれを任命するというふうにしたらば、もっと民主的な、より民主的な人事官が得られるのではないかと思います。これにつきまして当局の御意見を伺いたいと思います。
 それから第二十一條の権限の委任の下りでありまするが、これは「この法律に基く権限で重要でないものについて、これを他の機関をして行わしめることができる。」こうありまするが、これはちょっと字句に拘わるわけではありませんが、「重要でないものについて」ということがよく分らないのでありますが、或は二級官以上は直接人事院でやる、そうして三級官以下のものは他の機関に委任して行はせる、尚これは別に言葉に囚われるわけではありませんけれども、重要でないということもちょっと耳障りでありまして、上級官吏が重要であつて、下級官吏が重要でないということはないと思うのでありますが、そういうような語呂の穿法なり、或いはその範囲を具体的に調査部の方の構想をお伺いしてみたいと思います。
#15
○國務大臣(齋藤隆夫君) この附則の第二條でありますか、第一條でありますか、この法律は十月一日から施行するということになっておりまして、もう十月一日はあと残す所一週間しかないのでありまして、その間にこの法律の審議を完了願うということは、誠にこれは政府としても実は苦しい立場におるのでありまして、もっと早くこれを提出することができればよかったのでありますけれども、諸般の関係によって遅れました。政府といたしましてはなるべくこの期間内に審議を議了して頂きたいのでございまするけれども、これ以上は國会の権能でありまするからして、國会の方においてどういう工合にお取扱いを願うことができますか、政府といたしましては、何らこれに喙を容れることはできないのでございます。併し事情は御承知の通りの次第でありまするからして、よろしく一つ御考慮願いたいと思います。
#16
○政府委員(前田克己君) 爾余の二点について私からお答えいたします。第一は人事官の任命方法について、もう少しなにか民主的な方法が考えられんかというお尋ねであります。これにつきましては、随分いろいろ外の例もございまするし、内部でも議論があったのでありまするが、結局は國民の代表者たる國会の同意を経て任命するのであるかち、これが一番民主的な方法ではないか、或いは何等か諮問機関、推薦機関のようなものから一應推薦を受けるような方法、或いは逆に國会の方から指名をして頂くような方法がいろいろあると思いまするが、人事官の職務そのものが非常に技術的な専門的な性質のものでありまするから、又行政の実際にも通曉しておることを必要といたしまするので、そういう点を考慮いたしまするとやはり第五條に定めました資格要件を具えた候補者を内閣総理大臣が責任を持って愼重に選考して、それを國民輿論の判断に問うために両院議員の同意を得る、これが実際的でもあり、且つ民主的な要望を入れた、かように考えて規定いたしておるのであります。
 それから二十一條の権限で重要でないものについての委任の規定でございますが、これは読んで宇のごとく重要でないものを他の機関をして行わしめるという規定でございます。ただこの職員の任免につきましては、後の五十五條のところに明かになっておりまするように、人事院自身は職員の具体的な任免ということにはいずれの場合と言わず與らないのであります。任免はすべて任免権者に属することになっておるのであります。ただその他いろいろこの官職の共準に掲げられております事項、殊に能率のこと、或いは服務に関すること等で、各省でそれぞれ特殊の事情のあるものもあります。余り基本的でない軽微な事柄を他の機関に任せる場合もあるということでこの規定をおいておる次第であります。
#17
○北村一男君 この人事官というものは非常に重要性を帯びておるわけでございますが、人事官を選ぶ標準に人格が高潔で、能率的に仕事を運べて、その他私、法文を持って來ませんが、標準がもう一つあつて、それから三十五歳以上、資格が四つついておる、これはこういうことは主観的でこれがいいと言いましても、客観的にはどうも人格の点において疑義があるというような点も考えられますが、これは絶対條件では勿論ないと思われまするが、どの程度の重要性を持っておるのであるか、自分の子供に嫁婿を迎えるにも、いい者を選ぼうとしてもなかなかそのいい人がない。或程度我慢しなければならんというような実情から考えて、これはどの程度に重さをおいてお考えになっているのか、或いは他の委員から質問がありましたかも知れませんが、それを承つておきたいと思います。
#18
○政府委員(前田克己君) 法律の規定といたしましては別に飾りの言葉ではございませんから、書いてありまする通り、人格も高潔でなければならんし、民主的な統治組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解がなくちやならない、又人事行政に関して識見も持たなくちやならない、年齢も三十五歳以上、これは飽までも絶対的に守らなければならん、こう考えるのであります。この中年齢のことの如きはこれは誰が見ても間違いない、その他のことも或程度その人の経歴等によりまして、おのずから客観的な判断が下せると思うのであります。勿論相当見る人によって違うような分子もございます。実際この人事官を選任いたしまするときの手続きといたしましては、総理大臣の手許におきまして関係の人が相談をして選ぶということになると思うのであります。併しこれは任命は内閣でありまして、閣議にもかかりますし、又両議院の同意というもう一つ檢討の機会もございます。これらの機会にこれが檢討されまして、著るしく個人の主観によって選任が左右される、そういう心配はないものと考えております。
#19
○北村一男君 あなた自体が大体こんな人間が日本に沢山あるとお考えになっておりますか、そのあなたの御意見を一遍承りたい。
#20
○政府委員(前田克己君) まだ現在の我が國におきましては、過去において人事行政というものに対する研究も、或いはそういう実行も十分発達いたしておりませんので、この要件に合致した方を選ぶのは相当困難とは考えております。併し廣く官民を通じまして、この人材を求めれば三人ぐらいの方を探すことは不可能ではないのではないかと考えておる次第であります。
#21
○北村一男君 そういう考え方が官僚の考え方なんで、さっき吉川委員が仰せられましたそういう考え方から清算してかかれということがこの公務員法に盛られんければならん。そんな人間は今の世の中にはありません。私は断言します。そういう空想を盛つたような法文は國民に対して不親切であります。そこで私はこれ以上は意見の相違でありまするが、今太田委員の仰せられたように、やはり諮問機関のようなものを拵えて、諮問委員のようなものを拵えて、そうしてそれにお諮りになることが過ちを少くするゆえんだと思いますから、これは是非そういうように改めて頂きたいと存じます。
#22
○岩間正男君 個々の具体的なことについては後程これが進行するに連れて詳しく伺いたいと思いますが、先ず総括的にお伺いしたいことがあります。
 第一にこの第一條のこの法律制定の目的という條項によりますと、民主的な方法によって選択し、又民主的な運営をするというようなことが謳はれておるのでありますが、これがこの法案の中で果してどれだけ実行されておるかという点について甚だどうも疑わしいものがあると思うのであります。只今も前の方から意見がありましたのでありますが、そういう運営の方法について果して今日この法案が十分に官僚臭を拔切つた形の民主的な基盤からなされておるか、立法されておるかどうかという点について疑問があると思うのでありますが、こういう点につきまして、その大綱でもいいですから、御答弁が願いたいと思うのであります。
 次に今日日本の公務員の諸君は殆ど多くが労働組合を結成しておるのであります。この労働組合そのものに対していろいろな意見があるとは思いますけれども、その根本精神とするところは、現段階の日本の民主革命、こういうものを推進するところの主体的な、そうしてそれを下から盛上げて行くところの最も基本的なものとしての自覚を以て立ち上っておるのだろうと思うのであります。吉川委員からも先程質疑があったのでありますけれども、從つて恐らくこのような一つの主体的な力を持つたところの組合というものに対して当局がこれを指導し、いや指導という言葉が当らないとすれば、これをよく見守つて大きく育てて行く。そうしてその中から今までの官僚の制度の誤つて來たいろいろな問題を自然と脱皮するような方法を取らうということが最も大きな方針ではないかと考えられるのでありますが、それにつきまして、このような公務員法案がここで急速に決定されて行く、そうしてこの法案を見ますというと、そういうような民主的な方法というものを助長するような面よりも、これを拘束するというような面が非常に多いというように見られる。この拘束によって現段階漸く成長し始めたところの民主的な動向というものに水を差される。結局眞の今國民が待望しておるところのこの公務員の民主化というものが十分になされない。從つてこの法案を樹立する元來の目的からも遠くなるというような矛盾した面が見られるのでありますが、こういう点について果してこの労働組合法とこの國家公務員法というものをどのような関聯において今後これを考えて行くべきかという点、そういう点についてお聴きしたいと思うのであります。
 更に今日一番大きな問題になっておりますのは、この公務員、詰り官吏一人々々の生活権の問題なのでありますが、この生活権を確立するところの規定というものが、本法案では非常に抽象的であり、微弱であるというところから、現在においては非常に問題が発生しておる。官僚のいろいろな涜職の問題とか、それから自分の職場を利用して権益を漁るというような問題が発生しておるのでありまして、この法案の裏附けとしての、当然この生活権の確立というものが強調されなければならないと思うのであります。これなくしては、この法案も恐らく空文になってしまうということがはっきり考えられるのでありますが、この点についての当局の意向をもっとはっきり明確に指示して、ここで説明して貰いたいと思います。
 第四番に行きまして、これは現在官僚機構の中で、やはり大きな欠点の一つとして、挙げられておりますのは、このセクシヨナリズムであります。繩張り争というものが現に今日あります。殊に、今次の水害によって櫻堤の決壌というような問題の如きは、最も端的な官僚機構の見本的な現われでありまして、こういうものに対して現状のままで、これが推移して行つたならば、依然として官僚制度の弊害は拔くことのできない段階にあると思うのであります。これについてこの公務員法は如何なる具体的な措置を取り、そうしてこれを解決せんと努力しておるかという点について、これははっきりした一つの見通しを指示して貰いたいと思うのであります。このような点につき考慮が十分になされない限り、この公務員法は官僚の病弊を、最も障害とするところを完全にこれを一擲するというような面がなければ、絶対に日本の公務員の改革というものはできないと思う節があるのでありますから、この点について特にはっきりした御答弁が願いたいと思うのであります。
 更にもう一項でありますが、人事官の問題でありますが、この人事官が三人と限定されておる、而もその三人の中の一人が総裁というようなことになると、非常に人数が少い。このような少い人事官をどういうような根拠によって選ばれたか、これだけの人数において果して民主的な運営というものが可能であるかどうか、大体以上五項目に亘りまして、概括的に質問をいたしたいと思います。
#23
○國務大臣(齋藤隆夫君) 第一に民主的な方法で公務員を選択するという文字が現われておりますが、この法律の施行によって、果して民主的に公務員を選定することができるかできないかという御質問のように伺いましたが、御承知の通りにこれまでは公務員を採用するにつきましては高等試験というものがありまして、これには相当の学歴なんかも必要となっておりましたけれども、今度の試験制度におきましては、そのような学歴の如きものはすつかり止めまして、如何なる学歴のある人でも、学歴のない人でも、等しく試験に應ずるということになっておりますからして、これまでのような弊害はないと思いますと同時に、民主的と申しましたところが、試験も何もせずして、勝手に任命するということも、これにも相当の弊害がありまするので、いずれの民主國におきましても、公務員を採用するにつきましては、それ相当な試験があるのでありますからして、これらの試験につきましては、各方面からしていろいろな非難もあると思うのでありまするからして、この非難に鑑みまして、この法律はそれらの非難に値するものは排斥して、極めて民主的な方法によって試験制度を改めるということによりまして、これより以外にどうも民主的に公務員を選定するという方法はないように考えておるのであります。それからして労働組合法との関係につきましてお尋ねがありましたが、本法と労働組合法との間には、実は何らの関係がありません。労働組合法は労働組合法の規定によって施行せられるのでありましようし、本法は本法の目的によって施行せられるのでありまして、直接には何らの関係はないと思います。それからしてこういうふうな法律を拵えても、生活権の裏附けがなければ駄目じゃないか、併しながらそういうことはこの法律以外において、一般の政治問題でありまして、この法律はそこまでは関係はしておらんのであります。
 セクシヨナリズムの問題がありましたが、これは多年の問題でありまして、これは今度の行政機構の改革につきましても、セクシヨナリズムを排斥して、すべての行政事務を一元化するという方に案を練つておりまするからして、これがどういうふうな形となって現われて來るかはまだ分りませんけれども、この点は極めて御同感であります。人事官三人ということについてお話がありましたが、これは他の政府委員からお答えを申上げさせます。
#24
○政府委員(前田克己君) それでは最後の人事官の数の点について私の所見を申述べます。これは結局人事官会議というものを設けるのでありまするが、併しやる仕事は普通の官職におきまする執行事務でありまして、これは余り多くなりますると、議決の手続等にも非常に時間がかかりまするし、又各人の責任の自覚というような点から申しましても、必ずしもよい結果が得られないのではないかと思うのであります。それから又先程御質問のありましたように、人数が多くなりまする程、法律に決めた趣旨の適格性を備えた方の選考に非常に困難でありまするので、それらの点も考慮に入れまして三人と決めました次第であります。
#25
○岩間正男君 私の質問の中で、少し不明確なところがあったと思うのでありますが、労働組合法との関係という質問の出し方が非常にまずかったと思うのでありますが、労働組合法によって労働組合を形成したこの公務員の既得権と、この公務員法とはどういうような関係を持つかという点に質問を改めたいと思います。
#26
○政府委員(前田克己君) まだ御質問とピントが合わないかも知れませんが、結局この法案には公務員に関する特別法でありまするから、この法案で何か規定を設けますれば、それが労働法や労働関係調整法の特別法になるわけでありまするが、この法案は御覧の通りその点については何も規定を設けておりません。從つて公務員の團結権、或いは争議権等に関する他の法律による制限、或いは権利というものは何ら変更がないわけであります。
 それから屡々問題になることでありまするが、現在職員組合というものが團体協約によりまして、或る程度各官廳等の人事権に關與しておる場合があるのであります。これは現在といえども、法令によって別にそういうことが認められておるわけではなく、ただ法令によって與えられておりまする任免権の裁量内の事項としてそういうことが規定されておるのであります。從つてこの点は本法案に移りましても同様でありまして、こういう事柄を法令上認めるということにつきましては、必らずしも適当ではないと思うのでありまして、ただ実際問題としてそれをどう扱つて行くかということは、本法施行後の取扱い、運営の問題として、将來の研究問題になるわけでございます。
#27
○中野重治君 これはさっき吉川委員の間に対して斎藤大臣が答えられたと思いますが、その答がよく分らないので、もう一度お尋ねしたいのですが、それは根本的な問題で、細かい問題もお尋ねしますけれども、それはこの法案の作られた根本精神に関するもので、つまり簡單に言えばこういうことになります。それはこの法案が、アメリカにおける公務員法というようなものを本法に配して、そうしてできるだけ日本式に適用できるように改めたいということは皆認めておるわけですが、それについて、アメリカでは政党の力が発達して、政党政治が発達して、部分的に発達し過ぎたようなところがある。官吏が政党の力に押されて困るような点がある。それを政党の大き過ぎる力から官吏及び官吏の仕事を守ろうというところにアメリカでのこの法律の意義があるわけです。そういうことが今説明されたわけですね。日本ではそれが逆であるということも認められておるわけで、そこでアメリカでは、いわば大ざつぱに言ってしまえば、政党の力をもう少し抑える。ところが日本では官僚の力を抑えなければならん。官僚の今までの組織を根本的に破壊して、國民の公僕としての公務員の性格を新しく作つて行かなければならん。そういうときに、官僚と言っては言葉が妥当でないかも知れませんが、つまり官僚を守るためのアメリカ方式を、官僚の力を根本的に破壊して新しい公僕方式を作つて行くための日本に持って來るということは、現在でさえすでに非常に大きい又惡く大きい日本の官僚の力を一層強め、一層法制的に固定化するということにしかならん。そういう点についての吉川委員の質問だったと思うのです。ところがそれについて斎藤大臣は、見解の相違だと答えられたと思いますが、見解の相違ということは、これは誰にもあることだから仕方がないけれども、弱めるべき官僚、弱めなければならん日本の官僚、その官僚を守るための法律を作り上げることでどうして目的を達せられると思うのか。この点については見解を一致させて置かないと、この全法案を審議するのに、一口に言えば、話にならんと考えるわけです。その点ですでに見解の相違があるのか、つまり我々は日本におけるよくない官僚の長年、これは大臣がさっき、明治以來多年の傳統とか、舊來の傳統を一擲しなければならんとか、新憲法の精神に則るとかいうふうに、最初この法案ができて來る説明があったわけですが、政府ではそれを認められておるわけでありますね。大臣と我々とそこでは一致しておるわけでありますね。その力を根本的に弱めて改める。そこへ強めるのがよいということであると、我々は、強める方を持って來てはいけない、弱める方式、政党の力をもっと伸ばす方式をここへ繰り込まなければならん。この点ですでに根本的な喰い違いがあつて、そうしてそれは單に見解の相違であるということでこれがパスするものであるならば、これは甚だ問題に立ち入ることすらもすでに遮断されてしまうということになると思いますので、その点では政府側も我々も根本的には一致した見解に到達したい、こう思うわけです。
#28
○國務大臣(齋藤隆夫君) この法案が現われました動機につきましては、最前申した通りであります。併しながらこの法案を作成するについて、アメリカの思想もいくらか混つておりますることも、これは疑いないのであります。併しながらこの法案はこの法案として独立な規定が設けられておるのでありますからして、この規定そのものによって御審議願いたいのでありまして、我々はこの法案によって我が國の官界多年の宿弊をでき得る限り一掃することができる、こういう考えを以てこの法案に当つておるのでありますからして、何もアメリカの官界では、いわゆる政党の弊害を受けて官吏が苦しんでおつたからして、そのアメリカの思想を眞似て作つたところのこの法案は、やはり徹頭徹尾その思想の下においてできておるものであろうと、こう解釈せられるというと、我々の解釈と大分違うのであります。この法案を審議せられるに当りましては、やはりこの法案自体について、この法案によって目的を達することができるかできないかという点について主力を注がれて、子の不備なる点はどこまでも御訂正を願いたいと思うのであります。
#29
○中野重治君 これでアメリカの法律の影響を受けるとしても、それは我々は日本の問題を解決するために参考にするのだと、決して翻訳を我々がここで議論をするのではないということははっきりしたと思います。その点で見解はほぼ一致したと私も思いますが、それならば、その実際の條文がどうなっておるかということについて今度は細かい質問をしたいのですが、人事院の問題がこの法案の中枢であるということも、これは認められておるわけで、これは委員長の方からもお話のあった通り、人事院がこの法案の中枢であるからして、從つて決算委員会でこの問題を取扱うということにもなるわけで、これも誰にも皆認められておると思いますけれども、その人事院の構成について、これが内閣総理大臣の一方的な任命が行われるような、そういう仕組になっておること、それがどうして官僚機構の温存のために役立たないで、却つて官僚の民主化のために役立つという説明、それをお聴きしたい。
 それから問題は沢山出ておるようでありますが、人事院規則というものが出ておりますが、その人事院規則というものはなんであるかということをお聴きしたい。法律でもなければ政令でもないという形になっておりますが、そういうものを作ることが憲法の精神を活かすのにマッチしておるかどうか。それから而も、法律でもなく制令でもないこの人事院規則というものが強い力、それから廣い範囲の力を持っておるということになっております。それですから尚更、そういうものを作るということが、憲法の精神に違反しないかどうか、それから人事院規則というものが、これによりますと、勿論この法案がこのまますらすら通れば、人事院に白紙委任だれるということになるのですが、要するに人事院が総理大臣の一方的任命によってできるように構成されるようになっていて、その人事院が自分だけで人事院規則を作ると、その人事院規則というのは政令でもなく法令でもないと、而もその規則というものは廣範且つ強力な作用を及ぼし、そうしてその人事院がこの法案の中枢であるということは万人が認めておる。こういうことは果して日本の官吏の全仕組を國民の公僕にするために新しく法案を出す際の行政上のその中枢になる人事院というものを民主的なものとして説明するのに妥当であるかどうか、それをお聴きしたいと思います。
#30
○國務大臣(齋藤隆夫君) 人事官の任命のことについてのお尋ねでありまするが、これはもう最前政府委員からお答えしたと思いますが、これは総理大臣が勝手に決めることができるものではなくて、やはり両院の承諾を得るのであります。両院の承諾を得るという点で、これは民主的な任命であることは十分その趣旨を達することができると思います。申すまでもなく両院は國民の代表機関でありまするからして、両院のやつたことは即ち國民のやつたことになるのでありますから、これ以上に國民が直接に人事官の任命について口を入れるということになりますると、これはもう人民の直接政治になるのでありまして、間接政治である立憲政治とは相容れん思想であると思います。國会が承諾するというその一事によって民主的な任命であるという理論が十分に達成せられるとこう私は考えております。他の人事院の規則につきましては、これは政府委員からお答えいたさせます。
#31
○政府委員(前田克己君) 人事院規則の性質でございますが、これはちょっと例を取りますと、会計檢査院法の規定で、檢査院規程というものを作る、大体これと似たものであります。ただ檢査院は独立機関でありますが、これは総理大臣の所轄に属する機構でありまするから、制定することが勝手にはできません。総理大臣の承認を受けることを必要とするのであります。併し公務員法に基ずく限り、一種特別な地位を持つ法規である、これはもうその通りであります。
 そこで、それにしても人事院規則への委任が非常に多過ぎる。かたがた人事院の選任方法と相俟つて非常に不安な点があるという御心配があり、随所に人事院規則というものが出ては参りまするが、その中には可なり施行細則的な規定も多いのでありまして、こういうものを政令によらないで、人事院規則で決めるということを規定する趣旨が非常に強いのであります。それで決まりまする内容は可なり技術的なものがありまするから、これを法律で釘附け的に規定してしまうにも適しない事項は非常に多いのでありまして、或る程度人事院規則に委せることも己むを得ないと思うのであります。ただこの場合、普通でありまするならば、法律の施行は政令によるというわけでありまするが、この点は人事院は総理大臣の所轄にはありますけれども、業務り性質上、或石程度独立的な地位を有せしめる必要があるのでありまして、その意味におきまして、人事院に委せるということで人事院規則を作らしておるのでありまして、人事院の構成者が選任よろしきを得まするならば、こういう専門家を集めました人に委せる方が規則の中立性を確保するというような上から行きましても適当であるとこう考える次第であります。
#32
○委員長(下條康麿君) まだ御質問があろうと思いますが……。
#33
○原虎一君 この程度で散会を希望いたします。
#34
○委員長(下條康麿君) 本日はこの程度で散会いたします。明日は午後一時半から開きますからどうぞ……。
   午後四時十五分散会
 出席者は左の通り。
  決算委員
   委員長     下條 康麿君
   理事
           太田 敏兄君
           山下 義信君
   委員
           岩崎正三郎君
           吉川末次郎君
           北村 一男君
           中川 幸平君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           小川 友三君
           小野  哲君
           鈴木 憲一君
           山崎  恒君
           千田  正君
  労働委員
   委員長     原  虎一君
   理事      堀  末治君
   委員
           赤松 常子君
           天田 勝正君
           平岡 市三君
           紅露 みつ君
           奥 むめお君
           竹下 豐次君
           姫井 伊介君
           中野 重治君
           岩間 正男君
  國務大臣
   國 務 大 臣 齋藤 隆夫君
  政府委員
   総理廳事務官
   (行政調査部総
   務部長)    前田 克己君
   総理廳事務官
   (行政調査部公
   務員部長)   淺井  清君
ソース: 国立国会図書館
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