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1987/07/10 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 本会議 第3号
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1987/07/10 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 本会議 第3号

#1
第109回国会 本会議 第3号
昭和六十二年七月十日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和六十二年七月十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員及び裁判官訴追委
  員予備員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員の選挙
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(藤田正明君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 飯田忠雄君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、抜山映子君から裁判官訴追委員予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申し出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(藤田正明君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(藤田正明君) つきましては、この際、
 裁判官弾劾裁判所裁判員、
 裁判官訴追委員予備員、
 検察官適格審査会委員、同予備委員各一名、
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員二名、
 日本ユネスコ国内委員会委員一名の選挙
を行います。
#6
○倉田寛之君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、これを議長に一任することの動議を提出いたします。
#7
○浜本万三君 私は、ただいまの倉田君の動議に賛成いたします。
#8
○議長(藤田正明君) 倉田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(藤田正明君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に峯山昭範君を、
 裁判官訴追委員予備員に鈴木和美君を、
 検察官適格審査会委員に桧垣徳太郎君を、
 同君の予備委員に竹山裕君を、
 国土開発幹線自動車道建設審議会委員に小川仁一君、鶴岡洋君を、
 日本ユネスコ国内委員会委員に前田勲男君を、
それぞれ指名いたします。
 なお、裁判官訴追委員予備員の職務を行う順序は、鈴木和美君を第三順位とし、第三順位の及川順郎君を第四順位に、第四順位の諫山博君を第五順位といたします。
#10
○議長(藤田正明君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。和田教美君。
   〔和田教美君登壇、拍手〕
#11
○和田教美君 私は、公明党・国民会議を代表して、今回の政府演説に対して質問し、中曽根総理及び関係大臣の答弁を求めるものであります。
 中曽根総理の自民党総裁としての任期は十月で切れますから、この国会は中曽根政権にとって最後の臨時国会になるはすであります。ところが、総理は所信表明演説では、さきのベネチア・サミットで政府の緊急経済対策が高い評価を受けたと言い、また、戦後政治の総決算路線の成果を並べ立てるなど、一方的な自画自賛に終始しております。さらに、税制改革問題では、与野党の税制改革協議会を無視して、ベネチア・サミットで少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優の廃止を公約するなど勇み足が目立ちます。
 「くれてなお命の限り蝉しぐれ」が総理の政治信条だと言われます。しかし、世の中には「日暮れて道遠し」という言葉がありますし、また、戦後の政界では「一内閣一仕事」と言われた時代もあります。十月の政権交代まであと四カ月足らずというこの時期に、到底実現不可能な願望に執着するのでなく、この際は内閣が当面している未解決の困難な課題について謙虚に国民に語りかける姿勢が望ましいのではありませんか。それともポスト中曽根の総裁争いの推移次第では、総理自身の再続投の思惑をなお捨てておられないのか、率直な心境をお聞きしたいのであります。
 次に、ベネチア・サミットと関連し、総理及び宮澤大蔵大臣にただしたいのは、現在の世界経済の深刻な構造的不均衡とそれによる危機的状況について、一体どのような認識を持っているかという点であります。
 米国の対外純債務残高は昨年末二千六百三十六億ドルに達しました。基軸通貨国の米国は今や世界最大の債務国、借金国になっているのです。このまま進めば、アメリカの純債務額は、九〇年に五千億ドル、九五年には一兆ドルに達するなどさまざまな予測が出ております。米国の経済運営が海外からの資金に依存する度合いが大きくなればなるほどドルの不安定さが増すと考えるのがまず常識的でしょう。ドル相場は持ち直していますけれども、米国の経済体質が急によくなったわけではありません。
 一方、米国と対照的に世界一の純債権国になった我が国の場合は、プラザ合意以来の急激な円高による不況で、この三月期決算では、製造業の多くが大幅な減収減益になったのに、金を扱う銀行、証券が財テクで空前の好決算となっています。そればかりか、円高や貿易摩擦で本業が不振の製造業もマネーゲームに参加し、経済界総財テクの観を呈しています。こうして株価の高騰、大都市圏における狂乱地価など投機的な傾向が強まっております。
 異常な経済状況の中で、近ごろ内外のエコノミストの間で、一九二九年に始まった世界恐慌再来の可能性をめぐる論議が活発に展開されています。確かに二九年恐慌当時と今の状況を比べて似ている点が多いのは否定できません。さきに挙げた株式ブーム・マネーゲームもその一つですが、そのほかにも世界的な貿易の不均衡と国際資金の偏在、二九年恐慌時におけるドイツの賠償問題の重圧に類する現在の発展途上国の累積債務問題、国際通貨制度の動揺、保護主義の台頭などが指摘されます。
 もちろん重要な相違点もあります。世界恐慌の教訓に基づいて財政政策による景気調整機能の強化が図られておりますし、戦後、不十分ではあってもIMF体制など国際協調の仕組みが発達しています。各国蔵相によるG5、G7、さらにサミットも破局的な危機回避のための国際協調体制と言えます。
 私は、もちろん二九年恐慌の再来説を支持するものではありません。国際協調と相互監視によって危機回避に成功することを心から望むものであります。しかし、少なからぬ日本国民の間に、いつの日か恐慌ないし大不況が起こらないかという不安があることも否定できません。総理及び大蔵大臣は、世界恐慌は起こらないと断言できるか、またその理由は何か、危機回避のためどのような手段が必要かについて、サミットでの討議を踏まえて答えていただきたいのであります。
 日米貿易摩擦は、ますます深刻化、長期化の様相を見せております。米国は半導体をめぐる対日制裁措置の部分的解除をしましたが、まだ全面解除は行われていません。米上院で討議中の包括貿易法案は、既に下院で可決している貿易法案と同様、日本などの貿易慣行を問題視して、報復措置の適用を強化するなど保護主義的な色彩が濃い内容になると伝えられております。
 昨年の対米貿易黒字は五百数十億ドルに達し、円高が進んでもなかなか黒字が減らない問題について、アメリカに原因がある、いや日本が悪いと応酬が続いています。私は、日米の貿易不均衡の拡大については、日米双方に構造的要因があると考えます。アメリカ側の要因に、企業の国際競争力の低下や過剰な消費体質があることは確かで、政府は米国に対し、もっと経済、財政のべルトを締め直せと強く迫る必要があります。
 しかし、私がここで問題にしたいのは、急激な円高のもとで、人件費節約や下請いびりをしながらも、なお輸出市場のシェア争いに固執する日本企業の体質であります。日本の経営者が輸出シェア主義を変えない限り、貿易摩擦の根は絶えないでしょう。この問題をどのように考えるか、業界任せではそれが改まらない場合どう対応するか、また、東芝機械によるココム規制違反事件で何のため通産相を米国に派遣するのか、総理の見解を求めます。
 次に、政府がサミット前に決めた緊急経済対策と、その財政的裏づけとなる総額二兆七百九十三億円の六十二年度補正予算案についてお伺いしたい。
 従来の対外経済対策には、ごまかし、水増し部分が多かったのですが、それに比べれば、今回の緊急経済対策は、財政支出を伴ういわゆる真水も多く、運用次第では内需拡大の呼び水となる規模のものであることは認めてよいと思います。しかし、我々の立場からすれば、今回の補正予算案による超緊縮型財政運営の修正は余りにも遅きに失した感を否めず、その内需拡大効果に疑問を持ちます。
 公明党は、円高不況が表面化した時点から、内需主導、国際協調型経済への大転換をいち早く主張してきましたが、総理は六十五年度赤字国債脱却の財政再建目標にこだわって、対策の小出し、出しおくれを重ね、その政策的失敗が円高不況を一層深くし、また海外からのジャパン・バッシング、日本たたきを増幅させたからであります。緊急経済対策と補正予算によって経常黒字の圧縮にどの程度の効果があるか、また、これによって六十二年度経済成長率の政府見通し三・五%の達成は可能か、政府の見解を求めます。
 報道によると、今度の緊急経済対策による貿易黒字の削減効果は五、六十億ドル程度にすぎないといいます。そうだとすれば、対外不均衡の是正を重点に考えれば、今回限りの対策ではだめで、今後数年間にわたる本格的な積極財政への転換を必要とします。政府は、今回の補正予算がそのような積極財政への第一歩と位置づけるのか、あるいはあくまで臨時、緊急の措置にとどめるのか、昭和六十三年度予算編成への基本姿勢とあわせて、総理及び大蔵大臣の明確な見解を求めます。
 また、我々は、内需拡大を財政面から支援するため、六十五年度赤字国債脱却の財政再建目標を数年間おくらせることを主張してきましたが、政府も目標修正について腹を決めたのか、お答え願いたいのであります。
 内需主導型経済への転換が貿易黒字減らしに副次的な効果があるとしても、本来その目標は国民生活の質の向上を目指すものでなければなりません。ただ公共事業量をふやせばよい式の考え方ではだめで、発想の大転換が必要です。その重要な視点が経済大国から生活大国への方向転換にあると我々は強調してきました。日本が世界一の金持ち国になったと言われても、外国からウサギ小屋と指摘される狭い住宅、高い生活費など、一般庶民の生活実感と大きくかけ離れています。緊急経済対策で措置された住宅対策は単に融資枠の拡大にすぎません。住宅対策の柱として、欧米に比べて制度の不備が目立つ日本の住宅取得促進税制の充実、思い切った住宅ローン減税などを実施することが必要です。また、社会資本整備も、従来型の道路中心の産業優先主義から脱却して、もっと公共衛生、下水道、公園など生活関連の整備に重点を置くべきだと思いますが、どうですか。
 次に、売上税の廃案と補正予算案との関連についてであります。
 さきの通常国会で、大多数の国民の反対によって売上税関連諸法案はついに廃案になりました。しかし、同時に成立した六十二年度本予算では、歳入歳出の両面でこの売上税分が計上されたままとなっています。これらの売上税相当分は、財政法の原則からいって、売上税関連諸法案の廃案に伴って今回の補正予算で当然減額されるべき筋合いのものであります。ところが、全く見直しが行われていません。これはなぜですか。大蔵大臣は見直しを行わない理由として、税制改革協議会が進行中であることを挙げていますが、売上税は明確に廃案になったのですから、この理由は了承できません。
 私がこの見直しを問題とするのは、それによってGNP一%を突破した六十二年度防衛関係費を再び一%の枠内におさめることが簡単にできるからであります。防衛庁の一%枠突破分は百三十四億円ですが、補正予算案で既に修正減額済みの円高による外貨支払いの不用額の防衛庁分四十一億円に、防衛庁関係の売上税相当分を加えるとGNP比一%の枠内におさめることは十分可能であります。我々は、一%枠を厳守する政治的意味を重視する立場からも、各省庁合わせて約八百億円に上る売上税相当額の減額を強く要求します。また、六十三年度予算編成では防衛費一%枠を復活する考えがあるかどうか、大蔵大臣、防衛庁長官の見解を求めるものであります。
 次に、昭和六十二年度の所得税減税について伺います。
 本年度の所得税減税は、総理が内外に示したまさに待ったなしの公約でもあり、中堅サラリーマンの重税感の軽減や当面する内需拡大のためにも、税制全般の改革問題とは切り離してこの補正予算案で処理すべきものであります。我々は、減税規模を二兆円以上とし、その財源は二兆四千億円に上る六十一年度税収の自然増に伴う決算剰余金の一部とNTT株の売却益の一部によって十分賄えると考えます。
 ところが、政府・自民党は、このほどの与野党税制改革協議会において、急に本年度所得税減税とマル債の廃止をワンセットのものとして提案してきました。これはマル優問題も含めて、売上税関連諸法案の臨時国会提出は考えないというさきの通常国会末の与野党合意を踏みにじるものであります。税制全般の改革論議は本年度所得税減税と切り離し、時間をかけて行うべきものであります、
 マル優は、国民大衆が不時の病気や子供の教育あるいは老後に備えて貯蓄するのを助ける制度です。この制度を金持ちが乱用しているという理由で廃止するのは明らかに庶民いじめです。総理はきのうの答弁で、廃止ではなく制度改革だと言われましたが、それはまさに強弁というものです。我々はあくまでマル優廃止に反対いたします。
 六十二年度所得税減税の規模、中堅所得層の所得税率を引き下げるのか、税制改革協議会の協議が整わない場合でも政府は減税法案を臨時国会に提出するのか、また、マル優廃止は見送るか強行するか、総理及び大蔵大臣の所信を伺いたい。
 次に、雇用問題について伺います。
 総務庁の発表によると、ことし五月の完全失業者数は百九十一万人、完全失業率は三・二%となり、今と同じ調査方法が導入された昭和二十八年以来の最悪の記録となりました。このまま推移すると、完全失業者二百万人の突破は必至であり、中長期的には二百五十万人、完全失業率は四%台になるのではないかと危惧されています。
 経済、産業構造を過度の輸出依存型から内需主導型に転換することは必要ですが、それは痛みを伴う困難な道であります。最大の問題の一つは、その転換の過程で、従来型産業の事業所閉鎖や縮小などによって、労働者にさまざまな雇用不安を生じさせつつあることです。今こそ政府は、産業の構造転換が勤労者の犠牲においてのみ行われないよう雇用対策に全力で取り組まなければなりません。今後の総合的雇用対策の強化策について総理の答弁を願います。
 また、構造調整過程では、産業、職業、年齢、地域の間で求職と求人がうまくかみ合わず、それが失業者をふやすという状況が発生しますが、これを解消するため具体的にどのような対策を講じているか、あわせて伺いたい。
 当面の外交問題では、まず最近の日中関係について伺いたい。
 国交正常化十五周年を迎えた日中関係は、国民レベルを中心に全体として順調に発展していると思います。しかし、政府レベルでは、教科書問題、靖国神社公式参拝問題、ズ・ダン号事件、GNP比一%枠突破、光華寮問題など一連の憂慮すべき問題が起こっております。例えばケ小平党中央顧問委員会主任に対する柳谷前外務事務次官の「雲の上の人」発言に見られるように、近来、政府、外務省首脳の姿勢がひとりよがりで、謙虚さ、慎重さを欠くことが、中国の対日姿勢を硬化させる一因になっていると思います。
 中国側が二つの中国の考えにつながると批判する光華寮裁判の問題について、政府が三権分立の建前から司法への介入は慎むというのは理解できますが、ただそれを繰り返すだけでは不十分です。我が国が国交正常化の際に言明した一つの中国の立場を今後とも堅持することを一層明確にするのはもちろんですが、さらに中国の懸念する日本の一部に見られる軍国主義の傾向について深く反省することが必要です。光華寮問題などについては、トウ主任が事態打開について総理自身の迅速な対応を求めていることでもあり、この問題を含め対中国外交の基本姿勢について総理の考えをお聞きします。
 さらに、日中の友好関係を定着させるためには、経済面、人的交流面で国民レベルに及ぶ緊密化こそが重要と考えます。その意味で、経済面では日中貿易の不均衡の是正、技術移転の要請、農水産品を中心とした市場開放や第三次円借款の前倒し要請などにどのように対処するか、また、人的交流面では、中国からの留学生の増大、財政的困難に陥っている日中友好会館への国庫補助などについて前向きに取り組む考えがあるか、あわせて伺いたいのであります。
 総理は、ベネチア・サミットで欧州のINF、すなわち中距離核戦力の全廃交渉に関連し、ソ連がアジア部にINF百弾頭を残すことに固執するなら、米国のINF百弾頭はアラスカに配備してはどうかと発言しました。我が国は非核三原則を国是とし、これまで核の廃絶を目指して努力してきました。その日本の総理が、核兵器を新たに配備せよと受け取られかねない提案をするのは断じて許されません。
 総理は、所信表明演説で、核軍縮は部分的なものにとどまらず、全地球的な規模での各種核兵器の削減と廃絶を目指す旨述べられました。しかし、アラスカ配備の発言はこの主張と矛盾するものではありませんか。むしろ、今回の発言は、米国の核戦略に協力するものであり、ソ連がこれを逆手にとって、アジア部のINFの固定化に乗り出すかもしれません。そうなれば、アジアを中距離核のにらみ合いの場とし、軍事的緊張を激化させることにつながる可能性があります。我が国としては、核抑止論に拘泥するよりも、米ソ双方に核の全廃を求め、ソ連アジア部のINFの無条件撤廃を主張し続ける方が世界の世論に対し説得力を持つと考えますが、総理の見解を求めます。
 この際、米国の戦略防衛構想、SDI参加問題について質問いたします。
 SDI日米協定の締結が近いとされますが、協定内容の公開、日本企業の技術利用、新たな秘密保護立法はしないという日本側の交渉原則は守られているのですか。特に、日本企業が参加しても、現在持っている技術を米国に吸収されるだけで、共同研究による成果が安全保障上の理由で利用禁止になりはしないかという不安が参加を予定する企業の間で起こっています。この際、昨年九月の研究参加の決定を白紙に戻すべきだと考えますが、総理はどうお考えですか。
 次に、防衛問題に移ります。
 政府筋の否定にもかかわらず、中国初め周辺アジア諸国は、我が国の軍事大国化への懸念を強めています。米軍備管理軍縮局の報告や「ミリタリー・バランス」によると、日本の防衛費は世界九位ないし十位にランクされています。しかし、これらの資料は、いずれもまだドル高・円安時代の八四年の軍事費の比較です。昭和六十二年度の防衛費三兆五千百七十四億円を一ドル百五十円で換算すると、約二百三十四億ドルになります。ドル計算で現在の日本の防衛費は、米ソに次いで大体フランス、西独並みと見てよいでしょう。
 特に私が指摘したいのは、防衛費の継続的な増強テンポであります。中曽根政権が発足した昭和五十七年度に比べ、六十二年度の防衛費は三六%伸びています。これでは周辺の国々が日本の軍事大国化の懸念を持つのは理由があると思いますが、どうですか。
 我々が防衛費のGNP一%枠をあくまで厳守し、その突出をやめよと強く主張する根拠の一つも、そこにあります。
 このほど防衛庁長官が出した指示によると、来年度の防衛予算要求に当たっては、いわゆる洋上防空を重視し、OTH、超水平線レーダーや新型の対空ミサイルシステム護衛艦で一隻千数百億円もするエイジス艦の導入を積極的に検討する方針がうたわれています。しかし、防衛計画大綱の構想には洋上防空は想定されていません。領空及びその近接空域における本土防空にはおのずから一定の限界がありますが、洋上となるとその範囲はどこまでか、甚だあいまいであります。
 さらに問題なのは、洋上防空システムのための装備は、OTHレーダーやエイジス艦だけでは完結せず、次はAWACS、すなわち空中警戒管制機あるいは空中給油機などの購入要求へとつながるのは必至で、膨大な装備費を必要とします。我々は、このような政府の構想は甚だ危険で明らかに専守防衛の枠を超えると考えます。政府は、なぜ洋上防空を必要だというのか、問題の基本についてお尋ねしたい。
 自衛隊の次期支援戦闘機、FSXの選定をめぐって、今、日米の防衛産業が入り乱れて一兆円商戦を展開しています。防衛庁が要求するFSXの仕様は、米側によると、世界にまだ存在しないほどの最高水準のものと言われています。専守防衛という原則のもとで、なぜ最高水準の性能が必要なのか、そこが疑問です。
 支援戦闘機の性格から、航続距離、各種装備などの面で他国に脅威を与えるおそれがないもので、専守防衛の原則を踏み外さないことが絶対に必要です。FSX選定の結論はいつごろ出すのか、自主開発か、日米共同開発か、米機の輸入かなどの問題とともに、選定の条件についてただしたいのであります。
 以上三点について総理及び防衛庁長官の答弁を求めます。
 終わりに、緊急の問題である地価対策について質問します。
 東京を初め大都市とその周辺部の地価は異常な高騰を続け、まさに地価狂乱であります。地価の上昇が大法人など土地所有者の含み資産を膨張させる一方で、個人の住宅取得難、住宅費負担の増大や社会資本整備のおくれをもたらし、社会的不公平を拡大させています。内需拡大の柱である公共事業、住宅建設促進を実効あるものにするために、地価の抑制、宅地の供給増が緊急の課題であります。
 ところが、政府の地価対策は、閣僚の中からさえ、現在の異常地価は中曽根政権の土地政策の失敗と反省の声が出るほど、まさに土地無策であり、見るべきものがありません。私は、地価狂乱に対処するためには、公共の福祉と私権の制限の問題にまで踏み込んで検討するなど、特段の決意を持って取り組まなければならないと考えますが、総理からその決意のほどをお聞きしたいのであります。
 地価抑制の緊急対策として、土地転がしなどで得た不当な値上がり益を吸い上げなくてはなりません。そのため、二年以内の土地転がしに極めて重い税金をかける超短期重課税などは一般の税制改革と切り離し、今国会での法制定を急ぐべきです。その一方、地価が急上昇する都市部などで、一定規模以下の庶民の住宅地については、固定資産税が上がって住めないという悲劇を避けるため、固定資産税の軽減措置をとるなどの配慮が必要です。
 また、我々は、大法人の多くが保有する帳簿価格の極めて低い土地、建物などについては、個人資産課税との落差が大き過ぎるという立場からこれを再評価し、十年ぐらいの分割納税による再評価税を課すべきだと提案しています。
 特定市街化区域内農地の宅地並み課税の強化なども含め、地価対策には土地税制の抜本的見直しが必要です。政府は新行革審に地価対策について諮問しました。憲法問題まで踏み込んでじっくり取り組むことも重要ですが、何しろ地価抑制は急を要する課題であり、時期を失せず、一つでも二つでも実効ある緊急対策を急ぐべきです。政府の見解を求めます。
 土地については自由経済の論理に任せるのではなく、欧米諸国並みに公共財としての側面を重視する決断と勇気ある実行を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(中曽根康弘君) 和田議員にお答えをいたします。
 広範な御質問をいただきましたので要点を申し上げて、あとは関係大臣にお願いをいたします。
 まず、任期あと四カ月であるので謙虚に国民に語りかけよという御主張でございますが、全く同感でございます。国民の皆さんのお声によく耳を傾けまして、また、我々の考えているところをよく御理解いただくようにお訴え申し上げまして、対話をこの国会等を通じて強化してまいりたいと思っております。政治には小休止はない、そう考えております。
 次に、世界経済に対する認識でございますが、私は一九二九年のような世界恐慌が起こる可能性はないと確信しております。と申しますのは、あのときと今日とでは条件がまるっきり違っている。一番大きな条件の相違というものは、一つは、あのころはブロック経済の網が世界じゅうに張りめぐらされまして、英連邦のオタワ会議とかそのほかの大きな障害が生まれてきておった。あるいは政治的条件といたしましても、ザールの占領の問題、それからいわゆるドイツに対する賠償金請求、そういうようないろいろな問題がありまして、ドイツから相当な資本逃避が一挙に行われておった。そういう政治的不安定な情勢も背景にあったと思います。
 しかし、今日におきましては、国際間の経済協調が非常に進んでおりまして、保護主義あるいはブロック化の傾向に対しては断固反対する、そういうサミットにおきましても何回もやっておりますように首脳間の明確な意思表示が行われている。そして、相互政策協調、それから構造改革というものがうたわれ、実践されつつあります。そして、金融のいろいろな事態に対しましては、相次いでG7のような大蔵大臣、中央銀行総裁の会議が持たれまして、発展途上国や累積債務問題も含めて、それらが救済について協調協議を実行しておるという状態です。そのほか、情報が非常に普遍的に通達されるようになってまいりまして、要らざる不安感が起こるという余地は前よりは非常に少なくなってきております。そのようないろんな情勢とアメリカ経済が持っておる潜在的な強さというもの等を考えてみますと、一九二九年のような世界恐慌が起こる条件はない、そう考えております。
 詳細は専門家でいらっしゃいます大蔵大臣からお聞き願いたいと思います。
 次に、日本の企業の行動の問題でありますが、節度のある企業行動をとっていただいて、世界経済との調和をあくまで守っていただくということが大事であります。自由貿易を推進するという必要は、日本にとっては最も大きな条件でございます。そういう意味におきまして、我々は今まで累次にわたる努力をしてきたわけでございますが、企業側がこれに相応する節度ある態度をとってもらいませんと、自由貿易自体に影響を及ぼしてくるわけでございます。
 そういう点考えてみますと、企業の対外行動、それと同時に国内的な影響等も考えて、下請代金の問題であるとか、関連中小企業に対する対応であるとか、あるいは金融に対する関係、先ほども御指摘がありましたようないわゆるマネーゲームというものに対する自粛、いろいろな問題につきましても、こういう微妙な重大な時期においては、企業も相応の社会的責任、世界的責任を持っておるのでございまして、そういう面において新しい企業観あるいは経済道徳観というものが生まれなければならないのであります。東芝事件の世界的反響を見ましても、我々はそれを痛感する次第でございまして、そういう点については企業側の研さんと自粛を求めたいと考えておる次第であります。
 通産大臣をアメリカに派遣するという問題につきましては、現在、米国におきましては、巨額の貿易赤字を背景に保護主義的条項を含む包括貿易法案が審議されていて、そして最近の東芝事件等を背景に、この保護主義に対する国会の空気というものは非常に強まってきております。また、一方におきまして、東芝機械の対ソ不正輸出に端を発しました日本の輸出管理体制に対する非難も高まってきております。そういういろんな点を考えてみまして、これに対して的確に対応する必要がございます。
 したがって、国会の御了承が得られるならば、速やかに通産大臣を米国に派遣して、米国の国会あるいは政府の要人に対しまして、あるいはジャーナリズムに対しまして、我が政府の講じている措置あるいは再発防止策等について説明し、あわせて保護主義法案に対する我々の考え方というものを明確に示しまして、日米経済関係全般にわたる率直な意見交換を行い、いろいろな問題に対する対応を行っていただきたい。御苦労ではございますけれども、国会の御了承をいただきましたら速やかにに行ってきてもらいたい、そう考えておる次第であります。
 緊急経済対策の経済的効果につきましては、今回の内需拡大策は我が国GNPの一・八%に相当する大規模なものでありまして、今後一年間で我が国のGNPを二%程度押し上げる。そういう計算からいたしまして、実質三・五%成長は十分可能であると考えております。
 また、内需拡大、政府調達等によります輸入の増大等も、経常収支黒字をおおむね五十億ドルから六十億ドルぐらい追加的に削減する効果があると考えております。さらに、主要企業におきまして、通産省から輸入拡大努力を要請しまして、おおむね六十二億ドル程度の追加輸入を約束していただいておるわけでございますが、これらにつきましても的確に行われるように我々は努力してまいるつもりでおります。
 次に、積極財政と六十二年度予算の問題でございますが、私は、行政改革の理念あるいはその手法というものは、やはり継続して努力して追求しなければならぬと思っております。百五十二兆を超えるような大きな国債を来年度以降に日本は持つことになります。これだけ膨大な国債を持っているということは、ちょっと手を緩め安心するというと、それがインフレにつながる危険性なきにしもあらずであります。
 そういうようなことを考えますと、何としても物価の安定を持続するということが、国民生活の基盤の最大、重大な保障であると考えておるのです。政府は、いろいろ御議論いただきましたが、円高基調のもとに物価の超安定的な措置を今までも講じてきまして、このように長い期間にわたって物価がこれだけ安定したことはないと思うのであります。それは、政府が物価安定を最大の重大案件と考えて処置してきたからでありまして、今後、いかなる政府が出てきましても、物価安定という問題は至上命題であり、追求されなければならぬと思うのであります。
 そういうような面から、これを持続的にやっていくというためには、やはり行政改革によりましてむだな経費を削減して、小さな政府でむだをなくしていく、そういうような努力は引き続いて行われなければなりませんし、しかしまた一面において、雇用や景気に対する配慮から臨時、緊急の措置も認められておりますから、そういう臨時、緊急の措置は機に応じて断行するという、いわゆる二刀流と私は申しておりますが、基本はやはり行政改革、臨調精神を基本にする、あとは応用問題である、そう考えている。応用問題も一回限りというような程度のものではない。御指摘のように、必要が持続しているときはその必要に応ずる態度をとることもまた必要である、こう考えております。
 私は、六十三年度予算の概算要求の編成に当たりましては、やはり基本的にはこの行政改革を貫きまして、経常経費は昨年同様に厳しい査定、削減を行う。しかし、投資的経費や公共事業費等につきましては、これを例外とする。しかし、目標はあくまで赤字公債を減らしていくということと、予算における国債依存率というものをできたら二〇%以下に引き下げる。我々の予算におきましては、今まで一九・四%まで引き下げましたが、今回の補正予算等によりまして二一%をまた超えました。しかし、経済規模は拡大しつつありますから、そういう意味におきましては、現在の電電株とかあるいは税の増収とか、いろいろなものと組み合わせてやれば二〇%台に引き下げることも、これはやり方によってはできるのではないかと思うのであります。
 それと同様に、また六十五年度赤字公債依存体質脱却、これも同じように税収の動向、あるいはNTT株の状況、あるいは自然増収、そういういろいろな情勢を勘案してやれば、努力によっては望みなきにあらずで、その目標に近づくことは可能であると考えておるのです。そういう意味におきまして、政府としては、あくまでむだをなくし、増税を防ぎ、そして国民に快適な生活を保障するという意味におきましても、行政改革の精神、これは堅持すべきである。そういう意味におきまして、六十五年度赤字公債依存体質脱却という旗はおろさない、こう考えておるのであります。
 次に、減税の問題でございますが、これは前から申し上げておりますように、現在、税制改革協議会におきましていろいろ御論議願っておりますので、その結果を我々は見守りたいと思う次第でございます。
 ただし、施政方針演説で申し上げましたように、所得税減税の先行実施はぜひ実現したい、そういうふうに考えておりまして、これが財源措置等も含めまして、この税制改革協議会の推移を見守っておるところでございます。
 御指摘の雇用対策は、現下の最重要課題の一つでございます。業種、地域の雇用動向を的確に把握して、そうして現在の経済政策と結びつけまして、いわゆる三十万人雇用開発プログラムあるいは地域雇用開発等々を結びつけまして雇用対策に万全を期してまいりたい。
 なお、いわゆるミスマッチと言われる摩擦的な失業というものに対しましては、この雇用開発計画にもございますけれども、訓練であるとかあるいは紹介であるとか、そういうマッチのチャンスをさらにふやすように地域的な問題も含めて努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
 中国に対する外交基本姿勢は、一貫して現在も変わっておりません。それは日中友好平和条約、あるいは共同宣言、あるいは四原則、これを厳守して、そうして相互信頼関係に立脚して、不断の対話を通じて友好協力を深めていくということでございます。
 最近の幾つかの問題はございましたけれども、日中間の交流というものは次第に増大しており、経済関係におきましても、貿易は拡大均衡の方向に進みつつあります。日本のいわゆる黒字の過大という問題がございましたが、本年度におきましては非常に大きく是正されました。今後とも対話を深めまして、中国の近代化に対する我が方の協力、民間資本の中国に対する協力、こういうような問題につきましても積極的に努力してまいりたいと思います。
 貿易を見てみますと、八六年におきましては、総額で百五十五億ドルでございまして、これもふえつつあります。インバランスの関係は、八五年が六十億ドルでありましたが、八六年は四十二億ドルに減り、八七年の五月までは五億ドル程度に激減しております。投資は、八五年が約一億ドルぐらいでございましたが、八六年は二・二六億ドルで、これは倍増しております。そのほか、経済協力あるいは人的交流等も非常に最近は進んできております。
 最近の日本人の訪中者数を見ましても、七二年におきましては八千人であったのが、八六年には三十三万四千人に上がってきております。また、中国人の訪日を見ましても、七二年には九百九十人であったのが、八六年には七万五千二百八十人と、こういうふうになっております。また、留学生につきましてもふえてきております。あるいは研修員につきましても同様でございます。
 このように両国の関係、公約あるいは私的な関係を通じて交流を増大してまいりたいと思っております。
 INFのアラスカ配備問題は、私がここで累次申し上げるように、我々の目標は、世界から核兵器を追放することで、ゼロにすることである。それと同時に、ヨーロッパとアジアを平等な扱いにして、アジアの犠牲においてヨーロッパをゼロにするということは認めない、あくまで平等にゼロでなければならない、それを実現しようということなのでありまして、しかし、軍備管理交渉におきましては、現実は米ソ間におきましても各カテゴリー間における削減で行われておるわけです。つまり、SS20についてはパーシングUであるとかクルージングミサイルであるとか、戦車に対しては戦車であるとか、その同じカテゴリー間で行われている。
 そういう点考えてみますと、ソ連がどうしてもアジアに百置くという場合に、それをなくさせるためにはアメリカもじゃ百置くぞと、そういうような権利を留保して、それを両方ゼロにしようという相殺する材料が要る、これは交渉のテクニックの問題でございます。そういうような意味におきましても、ゼロを実現するための交渉の一つの過程における材料としてそういうことも容認する、そういう意味のことを申し上げておるのです。
 今までの軍縮を見ますと、米ソともに均衡による抑止という理論に立っております。ソ連も同じであります。そういう意味におきまして均衡という面を考えると、これは対抗条件を持たなければ均衡はできないし、ゼロにはできない。これが冷厳なる軍縮の実態なのでありまして、そういう現実性に立った考えで行わなければゼロはできないと、そう私は考えておるのであります。
 SDIの問題でございますが、この取り決めにつきましては今、協議中であり、具体的内容について申し上げることは差し控えたいと思いますが、合意内容につきましては公表し得るものは公表する、我が国のSDI研究参加については現行の国内法及び日米間の取り決めの枠組みの中で処理する、研究成果の利用の問題も含め、日米双方にとり満足のいく結果が得られるよう努力する、こういう立場で今最終調整を行っております。
 我が国企業が参加を希望する場合には、この参加を円滑ならしめるための取り決めを行おうとしておるので、研究成果の利用問題を含め、日米双方にとり満足のいく結果が得られるよう今努力しておるところでございます。
 もとより、民間がSDI研究に参加するかしないかということは、民間企業の自主的判断で決めることでございます。したがって、SDIの交渉を撤回する、我が国の方針を撤回する、そういうことはございません。
 防衛費の問題でございますが、平和憲法のもと専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない、節度ある防衛力を整備する、これは前から申し上げているとおりであります。
 我々が現在追求しているのは、三木内閣がたしか昭和五十一年につくりました防衛計画大綱水準、それに近づく、達成するということなので、十年以上も前につくった三木内閣のその水準にまだ達していない。三木内閣があれをつくったときには数年で達成できると見通してやったことです。しかし、それがまた十年たっても達成できない。そういう意味でこれが達成のために五カ年計画もつくりまして今努力している過程なのでございます。そういう継続的な努力の過程としてこれはぜひごらんいただきたい。あくまでも三木内閣の一%に関する閣議決定の精神を尊重しつつ、それを実行しているという態度なのでございます。
 洋上防空の問題やあるいはそのほかの技術的な問題等につきましては、栗原君から御答弁があると思います。
 土地問題につきましては、さきの通常国会に御提案申し上げた所有期間二年以下の超短期所有土地に対する重課制度の創設を含む土地税制の見直しは、税制全般にわたる抜本的見直しを行うという今般の税制改革の一環をなすものでありまして、政府としては、この部分のみを切り離して実施するということは適当ではない、税制改革協議会において今包括的に検討が進められておりますので、この推移を見たいと思うわけであります。
 固定資産税の軽減措置につきましては、昭和六十三年度の固定資産税に係る土地の評価がえについては、目下自治省において全国的な観点から評価の基準となる地点について適正な評価が行われるよう調整を行っております。異常な地価騰貴の状況にも十分配慮しながら課税団体との調整を行っており、既に住宅用地については課税標準額を二分の一、さらに一定規模以下の小規模住宅用地については四分の一とする軽減措置等を講じてきておるところでありまして、居住用資産に対しては、これ以上の特例措置を講ずることは、市町村の財源に与える影響もありまして問題でございます。
 固定資産税の負担については、昨年の十月の税制調査会の答申において、多くの納税者に対し毎年課税されるという固定資産税の性格を踏まえて、負担の急増を緩和するためなだらかな増加となるよう配慮が必要であるとされておりまして、この趣旨を踏まえて対処する所存でございます。
 再評価税の御提案がございましたが、大法人の土地等に対する再評価税については、所得課税として考えてみますと、まだ実現しないキャピタルゲインに対する課税となっておりまして、これは適当ではない。なぜ大法人だけを相手にするのかという問題もあります。さらに、企業のこのような土地への課税は、不況にあえぐ例えば鉄鋼であるとか造船であるとかという装置産業等に極めて重大な影響を与えるという問題もあるのであります。
 地価の高騰対策につきましては、地価対策関係閣僚会議において、土地取引規制の強化、国等が土地売買等の契約を締結しようとする場合の配慮、土地税制の見直し等を内容とする対策を了承いたしまして推進しているところでございます。
 前国会で、国土利用計画法の一部改正法案が成立いたしましたので、監視区域制度を積極的に活用するよう地方公共団体を指導してまいる所存でございます。なお、税制につきましては、税制改革協議会において協議しておりますので、この状況を注視いたしております。
 先日、新行革審に対しまして地価等土地対策に関する基本的かつ総合的な改革方策について提言願いたいと要請したところでございます。
 今後ともこの関係閣僚会議を機動的に運用いたしまして、政府・与党あるいは関係業界一体となりまして、効果的な地価対策を強力に推進いたしたいと思っております。
 残余の答弁は関係各大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) 世界経済の現状を一九二九年当時と比べてどう考えているか大蔵大臣としても答えるという、そういうお尋ねでございました。
 確かに、おっしゃいますように、世界経済にいろいろ問題がございます。幾つかを挙げてみましても、基軸通貨の国でございますところの米国が大幅な財政赤字を抱えているということ、あるいは先進工業国間で貿易収支あるいは経常収支に甚だしい不均衡があるというようなこと、また、そういう背景のもとに為替相場がかなり変動する、あるいはまた、いわゆる保護主義が台頭してくるといったような問題もございます。また、開発途上国について見ますと、一次産品の価格が低迷しておる状況は長く続いておりますし、それから累積債務国について見ますと、この問題がいまだにほとんど解決していないといったようなことを和田議員は脳裏に置かれましてお尋ねになられたに違いないと思います。
 まさにそのとおりでございますが、ただ、これも御指摘になりましたが、各国の間では、あの当時に比べますと、国の中並びに国際間においてかなりそういう事態に対応する制度を今日は持っておるということを申し上げることができると思います。すなわち、国内的に申せば、例えば失業保険でありますとか、あるいは広くいろいろな社会保障制度、それから預金保険のようなものもございますし、また、おっしゃいましたように、財政が景気調整する機能も各国でいろいろ努力しておるというようなことがございます。
 また、国際間について申せば、例えばIMFでございますが、これは何とかして累積債務を解決しようとしてその中心になって動いておりますし、保護主義について申せばガットがございます。それから、一般的な政策協調ではOECDがございますし、開発途上国に対する融資という意味では世銀がございます。それから、いわゆるG5であるとかG7であるとか、そしてサミット等々随時随所でそういう協議をし、問題を出し合っている仕組みがございますので、結論として申しますれば、和田議員も決してそういうことを願うものではないと言われましたとおり、何とかそういう事態は回避していけるのではないか。
 ただ、そのためには我が国としても最大の努力をしなければならないということは、この御審議いただいております補正予算もその一つでございますが、そういう責務を負っておりますし、また、基軸通貨の国であります米国の財政赤字あるいは国際競争力について格段の努力が望まれる。この点は、先般サミットにおきまして、日米間の首脳会談の場で総理からレーガン大統領に強くそのことを要請されたのが私の脳裏にございますが、我が国としてもしなければならないことが多いことと存じます。
 そこで、そのような我が国の努力でございますが、これも和田議員が言われましたように、一遍だけ補正予算を組んだら問題が直るというほど簡単なものではございません。したがいまして、六十三年度予算編成に当たりましても、財政再建というこの命題は大変に大事な命題でございますから、そういうことを考えながら、先ほど総理大臣の言われました条件の中で、財政としても精いっぱいの努力を続けるべきものというふうに考えております。
 それから、住宅取得について、我が国の促進税制が不十分ではないかという御指摘がございまして、先般御提案いたしました六十二年度の税制改正におきましては、従来の促進税制の控除の対象期間を三年から五年間に延長いたしたい、かように考えておるわけでございますが、五年間全体といたしますと二千四百億円ぐらいの減税効果になると存じます。
 なお、現在の住宅建設発注の動向は、年間大体百五十万戸というかなり高い順調な水準でございます。我が国としては、促進については最大限の税制措置を講じておるつもりでございます。
 それから、社会資本の整備につきまして、産業関連というよりはもっと生活関連に力を注ぐべきではないかということはまことに同感でございます。
 今般、NTTの株の売却代金で一部社会資本の整備をさしていただきたいと思っておりますが、その際には地域の開発整備、それからそれに関連いたします生活関連の下水道、公園等々に重点的に配分をいたそうと考えておりまして、この点はかなり顕著に、例えば六十二年度当初におきまして、下水道、環境衛生等のシェアは一五・七%でございますが、このたびの補正の結果、それが二〇・五%になります。各省庁におかれても、その点は非常に配慮していただいておりますが、御指摘のような方向を促進いたすべきものと考えております。
 それから、売上税に関しましてこのたびの補正予算についてお尋ねがございました。これは、私が財政演説におきまして、税制改革関連の歳入歳出については、今回は補正を行わないことにしたと申し上げたことについてのお尋ねでございます。
 確かに形式的に申しますと、政府が前国会に御提案いたしました税制改革案はほとんどすべて廃案になったわけでございます。したがいまして、売上税に関する部分は、歳出におきましても歳入におきましても、もとの法律案は存在しないという状況になっております。
 そこで、このような状況を形式的に補正に現出しようといたしますと、すべての税制改革案がほとんどなくなったわけでございますので、従来の税制をもう一遍補正という形で組み直す、形式的にはさようになるかと存じますが、そのことはいかにも現実的でございませんし、殊に廃案になりました経緯が、衆議院議長のごあっせんによりまして、共産党を除く各党が税制改革協議会で今後の税制改革について検討されるということでございました。これは公の場でございますので、そういうやさきに政府がまた勝手にその結論を何か先取りするとか、独自の判断をその御協議に先んじて行うということはどうも適当なことではないと考えました。先例がございませんのでいかにすべきかといろいろ考えました。したがいまして、今回の補正におきましては、歳入歳出ともこの税制改革関連は補正をしていないということを先般財政演説で申し上げたわけでございます。
 防衛費につきましては、実は六十二年度の予算編成に当たりまして、長年の懸案でありましたいわゆる後方について整備をいたしたいという防衛庁長官のお話はまことにごもっともであると考えたわけで、その結果といたしまして一%の問題が出たわけでございますけれども、しかし同時に、一月二十四日に新しい閣議決定をいたしておりますので、今後とも節度ある防衛力の整備が行われていくことと存じます。
 それから、マル優についてお尋ねがございました。
 これは昨日も総理大臣の言われたことでございますが、私どもは、今度マル優を廃止すると申しますよりは、社会的に特別な配慮を要する人々のために新しい制度としてこれを改めようというふうに考えておるわけでございます。確かにマル優は低所得者も十分に利用しておられますけれども、この二百八十兆という元本について、これが全く利子であるがゆえに課税を受けていないということは、本来正常なことではないように存じます。勢い、そういう制度でございますから、どちらかといえば高額所得者の方が利益を受けている、受益の度合いは大きいと存じます。
 例えば標準家庭で申しますれば、一人九百万円までの免除がございますから、三千六百万円という元本について税金が払われていないということになるわけでございますから、それはやはり正常なことではないと存じます。そういうことは改めたい。ただし、老齢者でありますとか、あるいは母子家庭でありますとか、身体障害者の方々には特別な社会的な配慮をする必要がございますから、そのための新しい制度として改組をいたしたいと考えておるわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(栗原祐幸君) 防衛費と売上税の関係でございますが、ただいま大蔵大臣から申されたとおり、売上税は政府全体の問題でございます。したがいまして、防衛庁だけ特別なことをするというわけにはまいりません。この点は御理解をいただきたいと思います。
 なお、六十三年度の防衛予算についてでございますが、これはこれからの作業をしてみなきゃならぬという段階でございます。しかし、一%を超えた段階で政府がこの一%にかわる新たな防衛力整備の閣議決定を行っております、節度ある防衛力整備をすると。その閣議決定によって今後も防衛費を計上する、そういう態度でございます。
 それから、フランスとか西ドイツ並みに昭和六十二年度の防衛予算はなっているじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、私は必ずしもそれは当たらないと思うのです。なぜかといいますと、最近の主要各国の通貨とドルとの関係を見ますと、日本だけが円高じゃない、各国の主要通貨がみんなドルに向かって強含みであります。そういう意味合いからすると、御指摘のように、日本がフランス、西ドイツ並みという御指摘は当たらないのじゃないか。
 もう一つは何かといいますと、防衛力というものは長年にわたる防衛力整備の蓄積である。ですから、六十二年度を見て云々ということではなしに、防衛力の蓄積がどのぐらいあるか、そういう観点から御判断をいただくべきものではないか、こう考えます。
 それから、中曽根政権ができてから三六%も伸びた、これはけしからぬというお話でございますが、今、総理大臣からもお話がございましたが、おくれておりまするところの防衛力整備を継続的、計画的にやろう、そういうことでやっているのでございまして、これはむしろ三六%伸びるということが当然でございます。このために諸外国がどうのこうのというお話でございますが、我が国の防衛政策の基本、専守防衛の基本政策というものをよく理解させるようにさらに努力しなければならないと思っております。先般、私は中国へ参りまして、友好かつ率直にいろいろ話をいたしました。向こうの方の理解を求めたところでございます。
 それから、洋上防空についてでございますが、これもまた近年の経空脅威というものが質的に大きく変わってきたということであります。御案内のとおり、航空機の性能が非常によくなった、あるいは長射程のミサイル等が出てきた、それにどう対応するかということは、これは防衛上当然のことでございます。
 なお、防衛計画の大綱には、防衛のために必要な各種の機能を持ち、後方支援まで含めて、組織、配備にバランスをとるということ、いわゆる必要な機能を持つ。これは対潜作戦などと同じように洋上防空の大きな機能である、そういうように感じております。
 FSXにつきましては、これはF1の後継機でございます。これはもう既に今までもずっと言ってきた。しかも、そのFSXというのは、これを配備するのは一九九〇年代の後半ということでございます。その将来の技術水準に合わせていろいろやっておる。もちろん、総理が言われたとおり、専守防衛でやるのは、これは当然でございます。
 なお、今後アメリカとの関係も踏まえ、どのようにFSXを処理するのかということでございますが、これは、私どもが申し上げておるとおり、現有機の転用、あるいは外国機の導入、あるいは日米共同開発を含めた開発、この三つでございますが、基本原則は、いわゆる防衛上客観的に見てすぐれたものでなければならない、それから、日米安全保障体制というものを考えて、少なくともアメリカの国防省の理解を得なきゃならない、両国の防衛産業の圧力は受けない、この三原則で処理をいたしたいと思います。
 いつ、どうするかということについては、現在の段階で申し上げることができない、こういうことでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(藤田正明君) 佐藤昭夫君。
   〔佐藤昭夫君登壇、拍手〕
#16
○佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 総理、一体あなたの五年間の政治は何であったでしょうか。今、巷では、世界一の金持ち国というが、この暮らしで世界一かどの国民の怒りの声が高まっています。失業率は史上最高の三・二%、昨年一年間の倒産は一万七千五百件。二時間通勤とウサギ小屋。外国誌が「富める日本の貧しき民」を特集するなど、国際的な批判も高まっています。
 総理、これが中曽根内閣の五年間の政治が国民生活にもたらしたものであり、その根源は根深いアメリカ従属と大企業奉仕にあります。
 第一に、外交・防衛政策がそうです。
 総理、あなたは日本列島不沈空母化、日米運命共同体発言で登場し、日本の領域外まで軍事行動を拡大するシーレーン防衛、日米共同作戦計画などアメリカ有事の際の自衛隊参戦体制推進と、そのための軍事費を、対GNP一%突破を初めとして米ソに次ぐ世界第三位にまで巨大化させました。そして、核密約が示すように、非核三原則を空洞化し、我が国の核基地化に進んで加担してきました。核兵器廃絶の国際世論の高まりの中で、アジアを含めてINF全廃の米ソ合意の可能性が強まっているとき、総理が過日のベネチア・サミットにおいて中距離核ミサイル、INF百発のアラスカ配備を言明したことは極めて重大であります。
 総理は、アジア・ゼロを実現するテクニックだと強弁しますが、この発言の根底にはソ連脅威論があり、自民党の今のパンフレットでも、ソ連は絶対に核兵器を廃絶しないという前提で核兵器廃絶に反対だとしています。しかしソ連は、ブレジネフ時代と違い、核兵器廃絶やINFの全廃など核兵器の大幅削減を訴え、検証問題についても積極的な提案を行っています。総理は、そのどこが理想論であり、また観念論であるというのか。核軍縮のためにはまず核軍拡が必要だとする総理のような立場こそが、今日五万発を超えるまでに核兵器を増大させてきた最も危険で非現実的な立場ではないのか。しかとお答えを願いたいのであります。
 また、自民党パンフの通常兵器がある限り核兵器が必要という立場について、衆議院の松本議員の質問に一切答えませんでしたが、こんな立場こそ平和に有害ではないのか。答弁を求めます。
 我が国周辺の核戦争の危険な状況を一刻も早く取り除くためには、この発言を直ちに取り消し、世界唯一の被爆国の首相として、アジア・太平洋地域のすべての核兵器の撤去のため先頭に立って行動すべきではありませんか。そして、今こそ各国首脳に核兵器廃絶の呼びかけをすべきときではありませんか。
 総理、あなたは経済政策においても対米従属ぶりを露骨に進めました。その最たるもの、異常円高について、G5や宮澤・ベーカー会談などを重ねるたびにアメリカに追随し、我が国経済と国民生活に重大な打撃を与えました。
 マル優廃止、これもレーガンへの卑屈な公約が出発であります。国会で廃案が決まって半月もたたぬのに、またもやベネチア・サミットではマル優廃止を約束してきました。国民は、不時の入り用や老後に備えて乏しい収入からつめに火をともす思いで貯金をしています。このわずかな利子にまで一律二〇%もの課税をし、高額所得者には税率を三五%から二〇%に下げ、利子所得が高額になるほど減税額が多くなるという、まことに無情なものじゃありませんか。
 悪用者がいることを廃止の理由にしていますが、それは一部大金持ちの問題です。コンピューター処理で不正防止が可能になっていたにもかかわらず使用しなかった政府の責任は重大です。一部大金持ちの不正を放置しながら多くの国民に犠牲を負わせるとは本末転倒であります。また、マル優廃止を機会に、どんなに所得があってもその利息に二〇%の課税で、架空名義による脱税も野放しになり、一層の不公正拡大となるではありませんか。はっきりとお答えを願いたいのであります。
 何よりも、マル優廃止は売上税とともに行わないという昨年衆参同時選挙での公約に違反し、さきの国会の決定も踏みにじる暴挙はきっぱり断念するよう明言を求めるものであります。
 この際、衆議院松本議員の質問に対する宮澤大蔵大臣の答弁について聞きます。
 あなたは、税制改革協議会について、「共産党は参加していないが、議会の公党間で協議されているので、私的な話し合いの場とは考えていません」と答えました。とんでもない。共産党は不当に排除されたのです。一体、衆議院のどの機関でいつ設置されたのか、どうして公的機関と言えるのか、きっちりと答えていただきたいのであります。
 また、政府は、抜本的内需拡大策として今国会に補正予算案を提出していますが、その内容は、依然対米従属型、大企業優先型であります。日本製品で遜色ないのにアメリカ製スーパーコンピューターの購入や政府専用機の購入など、アメリカを中心に一千億円を超える買い物をする一方、民活大企業には四千億円に上る巨額の無利子融資を計上しながら、円高に苦しむ中小企業のせめて利率三%の融資要求にはこたえないなど、内需拡大に全く逆行するものであります。
 我が党は、マル優廃止と新大型間接税の導入をやめ、軍事費の大幅削減と大企業優遇税制の是正によって三兆円減税を実施し、国民生活を向上させ、中小企業に仕事をつくる真の内需拡大に役立つよう、補正予算の抜本的組みかえを要求いたしますが、総理の見解はどうでしょうか。
 総理はまた、対外経済摩擦の解消と称して、経済構造調整を打ち出しました。その第一が、日米首脳会談などでの米の輸入自由化を迫るアメリカの圧力に屈し、ガット・ニューラウンドの議題にするという約束です。その突破口として、政府は三十一年ぶりに米価を引き下げました。過酷な減反の押しつけによって飯米農家が米を買わねばならぬとか、借金で夜逃げする農家が続出するなどの事態に追い打ちをかけるものです。
 総理並びに農水大臣、口では農は国の基本であると言いながら、この実態は何ですか。強制減反をやめ、米の輸入は絶対に行わない、生産費を償う価格保障、農機具、肥料などの独占価格の引き下げを直ちに行うよう、見解を求めます。
 また、この対米従属のもとでの大企業優先の政治も、中曽根政治の特徴の一つです。
 今、深く急激に進行し国民経済を脅かしているのが産業の空洞化であります。大資本は、これまで輸出ラッシュの中心となってまいりました電機、自動車などの生産拠点を海外に移転する一方、造船、鉄鋼などでは大規模な首切りが行われ、戦後最高の失業率に示される深刻な雇用不安、中小企業の倒産、地域経済の壊滅的な破壊さえ引き起こしています。利潤のために手段を選ばぬこのような大企業の横暴を、自由主義経済を口実に野放しにすることは絶対許されません。
 我が党は、この産業の空洞化を許さず、不当な大量解雇をなくすため、異常な円高の早急な是正、経済構造調整政策の中止とともに、大企業の一方的な行為に対する規制策が緊急に必要と考えますが、総理の見解を求めます。
 また、労働基準法改悪案は、わずか週二時間の労働時間短縮を口実に、労働時間の弾力的運用によって残業代なしの長時間過密労働に道を開くもので、世界の趨勢に反し、労働者の健康破壊はもちろん、雇用拡大、内需拡大に逆行するものであります。総理、法案の撤回、根本的再検討を強く求めます。
 我が国の国連婦人の十年も、男女の賃金格差が逆に拡大するなど、働く婦人にとって成果は乏しいものでした。その上、変形労働時間制が適用されれば家族生活も成り立たなくなります。最近、三洋電機大阪工場で、会社は三千億円ももうけながら、突如パート労働者を千五百人も首切りました。パートの大量解雇はあちこちで発生しています。
 総理並びに労働大臣、当面、パート等の一方的解雇の規制、男女賃金格差の是正、育児休業制度の創設などを急ぐ必要があると考えますが、見解はいかがですか。
 中曽根内閣の反国民性は、民主主義や教育の問題でも新たな危機をもたらしています。
 我が党幹部宅に対する盗聴事件は、多くの証拠物件が押収され、現職警官の関与も天下周知の事実となっているのに、いまだに強制捜査も行われず、立件も行われていません。一方、警察庁、神奈川県警の一部幹部の更迭が行われましたが、これで幕引きを策しているとも言われています。
 総理、政党幹部に対する電話盗聴事件は、民主政治の重大なじゅうりんであり、それが権力機関によってなされたとすれば、法治国家の根幹を揺るがす、あってはならない重大問題であると思うが、どうですか。
 特に、これは中曽根内閣の時期に起こった事件であり、本件に対する総理並びに政府の責任は重大で、自浄能力が問われる問題であります。取り調べられた警官が上司の指示で黙秘し、捜査に協力しないとすると、それこそ権力による民主政治の破壊であります。重大な疑惑をかけられている警察当局が進んで真相を明らかにするよう、また、もみ消しの策動など一切しないように総理は指導すべきではありませんか。答弁を求めます。
 三年間余りで一万三千四百二十九件、百三十八億円余の被害という霊感商法の背後に、韓国仕込みの謀略団体、統一協会、勝共連合があることは明白なのに、総理の御子息や福田元首相らが勝共連合の依頼で霊石感謝の会に祝電を打っています。一方、これを糾弾するマスコミや弁護士などに対する脅迫も続いています。
 六月四日の本院決算委員会での私の質問に対し遠藤法務大臣は、その根を絶やす方途を検討すると答弁されましたが、総理、自民党総裁として、今後、勝共連合ときっぱり手を切ると明言されますか。また、勝共連合などを使って反動勢力がたくらむ国家機密法案再提出はやらないと断言していただきたいのであります。
 次に、教育、特に当面の焦点、大学問題について質問をいたします。
 政府提出の大学審議会設置法案は、政府任命の大学審議会を設け、大学に関する重要事項について文部大臣に勧告するという従来にない強力な権限を持たせて、大学の権力統制を図ろうとするものであります。我が党は、この法案の廃案を強く要求します。戦前の大学自治破壊があの十五年戦争暴走の導火線となった歴史の教訓を総理はどうとらえているのか、伺いたいのであります。
 今、東京大学では、大学院重点大学構想が重大化しています。これは大多数の大学には劣悪な研究教育条件を押しつけながら、少数の特定大学をエリート大学化しようという臨教審方針の先取りであります。また、寄附講座として新日鉄、NTT、NECなどが乗り出し、真理探求と国民のための教育研究機関としての大学の任務を、財界奉仕の方向に変質させようとしています。そして、軍事研究導入の危険も強めています。
 しかも、こうした重大な措置を、全構成員の協議を定めた東大確認書にも反して一方的に東大当局が六十三年度予算要求を行ったことに対し、大学の自治を破壊するものとして教職員、学生の大きな反対が巻き起こっています。我が党は、大学の重大な変質につながるこのような大学院重点大学構想は反対であります。
 この東大構想を突破口にして、文部省も、総合研究大学院や先端科学技術大学院等の検討を始め、大学の財界本位再編成を強力に進めようとしていますが、同時に、これは今日の受験地獄激化の重要な要因である大学間格差をますます拡大するものであります。
 総理、今最も重要なことは、このような方向でなく、大学間格差の解消、すべての大学の研究教育条件の充実、私学助成の増額、数年来横ばい、実質低下を続けている大学の教育研究費などを大幅に増額することではありませんか。
 以上指摘したように、中曽根政治は歴代自民党内閣の中でも最悪のものであります。総理は、これが国際国家日本として世界に貢献し、二十一世紀を目指すたくましい国づくりの道だなどと強弁してきました。しかし、実際は、核戦争阻止、核兵器廃絶を求める世界の大勢に逆行し、人類の文明を破滅させる道であり、我が国の経済、教育の未来についても、大企業栄えて民減ぶ道、国づくりどころか亡国の道にほかなりません。だからこそ、この無謀な道を推し進めるため、あなたの政治手法はうそとペテンを常としてきました。
 あなたは、みずからの悪政をマッキーバーや孔子の言葉で飾っていますが、「巧言令色鮮し仁」、この教えはあなたは忘れたのですか。このような政府に国民の未来を断じて任せることはできません。即時退陣すべきであります。
 我が党は、核戦争阻止と核兵器廃絶、国民生活向上と民主主義擁護、教育の発展を目指す政治革新のため、引き続き全力を挙げて闘うことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えをいたします。
 いわゆるINFのアラスカ配備の問題は、ここで前から申し上げているように、アジア・ゼロにするための交渉上の材料としてこれを申し上げたということであります。核廃絶の問題については、国会でも常に申し上げているように、あらゆる機会を使って日本は努力し、政府も努力しておる。この間のベネチア・サミットにおきましても、日本のそういう基本的方針は強く鮮明にしたところなのであります。
 自民党パンフレットの関係でございますが、これは前から申し上げているように、核兵器の一方的廃止は平和を破壊する危険がある、一方的廃止という言葉を今度は入れてあるわけでありまして、これは私は正しいと思っておるのであります。均衡と抑止で今のような平和が維持されておる、そういう考えに立っていることは前から申し上げているとおりであります。
 次に、マル優の問題でございますが、マル優は御存じのように戦争前からおりまして、これは貯蓄優遇措置として貯蓄組合に対して一時認めておった。昭和十六年の太平洋戦争の前後からこれが大々的に拡大されて、国債消化のための戦時貯蓄増強運動としてこれが取り上げられたわけであります。それが戦後も実は続いておるのでありますが、最近においては外国でこういうものをとっている先進国はない。したがって、これは貯金に補助金を与えるものである、これが貿易摩擦の一つの大きなものとして指摘されてきておるわけです。そういうような面も考えまして、国際水準に日本のいろいろな条件を持っていこう、さもないというと日本に対する批判はやまない、そういう考えに立ってこの改革もひとつ考えてみる、そのほか不公正があることは御指摘のとおりでございます。
 ただ、こういう問題に対して、いわゆるグリーンカードとか、あるいはマル優カードというカード制をとった場合どうかと考えてみますと、これはなぜグリーンカードが中止されたかということを考えてみてもわかるように、あれをやるということは結局、国民背番号制になって、そして結局はああいう制度はひとり歩きいたしまして、国民の懐に手を突っ込んで税金を取り出すというような形になりかねない。そういう恐怖心を与えるということは税制としてどうであろうか。
 我々は共産党みたいな統制経済に反対であり、自由経済であります。そういう国民の自由を最大限に維持して、そういう恐怖感のないような、喜んで税金を出していただくというような制度に持っていったらどうだろうか。それには社会的に弱い方は十分配慮するけれども、一律に皆様方から薄くいただくという形にしておけば恐怖感はないし、またそういう制度が新しくできれば不安感がなくなってまいります。税務署に踏み込まれるという不安感もなくなるでしょう。そういう意味において穏当なやり方ではないかと我々は考えておるわけであります。
 いずれにせよ、そういう新しい型のやり方等も我々はこのマル優については検討しておりまして、新型マル優というか、新しい改組案というか、そういう問題についても検討しております。税制協議会でもいろいろ御議論願っておるわけでありますから、それを見守っているということなのであります。
 それから、税制協議会から共産党は不当排除されたというお話ですが、これは各党の話し合いで決まったことであって、政府に八つ当たりしてもしようがないことであります。
 補正予算につきまして、組みかえをお考えのようでございますが、内容によりまして我々は検討いたしますが、例によって非常な宣伝的な内容でないように期待しておる次第でございます。何でも防衛費を削れば済むというような考えは余りにも単細胞的な考えではないかと思う次第であります。
 次に、軍事費の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、昭和五十一年であると思いますが、三木内閣のときにこの防衛計画大綱水準に至ろうと、そういうことを決めまして、そして一%の枠も決めたわけです。しかし、あのときは経済状況から見まして数年でこれが達成されるという予想で行われた。しかし、十年たってもまだできない。これをぜひとも早く達成しなければならぬ。そういうわけで営々として各内閣継続的に努力してきたところなのでございまして、政府としては中期防衛力整備計画を達成しよう、そういう五カ年計画をつくって、それを具体的に実践しているところでございます。
 栗原長官が先ほど申しましたように、防衛というものは蓄積でありまして、ある一年だけを断面的に見るということは適当でないのです。どういうぐあいの防衛力が全般的に整備されているか、そういうような面から周辺状況等も考えまして、そして総体的に決まる。しかし、日本は憲法等独特の防衛政策を持っている、その範囲内でやっているということは申し上げたとおりです。
 農政の問題につきましては、農業というものは特殊性があるということを今回非常に強調いたしまして、サミットの宣言におきましても、食糧の安定的供給、あるいはさらに各国の国情による弾力的な農業政策の実施、あるいは環境に対する影響、そういう点を声明の中に日本の努力で実は入れてもらったわけでありまして、そういうような根拠を持ちながら、我々は農政審の答申を農協の皆さんと一緒になって実現していくように努力していきたい。詳細は農水大臣から御答弁申し上げます。
 海外直接投資の問題につきましては、いわゆる空洞化の問題とか、あるいは下請関連企業に対する影響とか、そういう問題も考えなければならぬのでございまして、我々は総合的政策としてこれらの産業政策を今後ともやってまいりたいと思う次第です。
 特に、雇用問題、失業問題に対する影響というものを非常に重要視してまいりたいと思うのであります。
 円高の問題につきましては、これは大蔵大臣から御答弁があると思いますが、我々といたしましては、政策協調、構造改革等を通じまして長期的安定を行う。今までは大蔵大臣レベルの声明でございましたが、ベネチア・サミットにおきましては、総理大臣・大統領間の一致した強い決意の表明というものがございまして、アメリカのようやく輸出が回復し始めたというとき、世界経済の一つの転機にこの強い声明を出しましたのは、今日、きょうも百五十円であると思いますが、そういうような安定的な方向に動いてきておるわけで、この努力を我々はしてまいりたいと思うわけであります。
 構造調整政策は、日本の国民生活の質的向上のためにぜひ行わなければならぬもので、これをやめる考えはございません。
 労働基準法につきましては、法案として提出しておりますが、これが成立の上には、これらの問題の実現につきまして、現実的立場に立ちましてできるだけ努力してまいりたいと、そういうことでありますので、ぜひ法案成立に御協力願いたいと思います。
 女子労働対策の充実につきましても、一体として努力してまいりたいと思います。
 盗聴事件につきましては、捜査当局において捜査中であります。この種の違法行為に対しては、厳正な態度で臨むと申し上げたとおりであります。
 いわゆる霊感商法という問題で、悪質な商法については、従来から被害の未然防止措置や取り締まりを積極的に行っておるのであります。
 一部団体との関係について、自民党は縁を切れとかなんとか言っておられますが、これは思想と行動の自由に対する重大なる侵犯発言であると私は考えています。共産党の独裁的な政策のあらわれではないかと私は考えています。こういう思想と行動の自由を侵害するような、こういう憲法違反的発言はぜひ慎んでもらいたいと、こう思うのであります。
 特に、今最後に、うそとかペテンとかという非常に品位のない発言をされましたが、こういう神聖な議場でそのような品位のない発言をするということは、共産党の名誉のために惜しむものであります。
 スパイ防止法案につきましては、これは今慎重審議、党内において検討しているということであります。
 大学審議会につきましては、大学自治を侵害するようなものではなくして、むしろ大学の改革を促進する、国民の期待に沿うような大学になっていただく、そういうことなのでありまして、考え方を撤回することはございません。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(宮澤喜一君) 税制改革協議会につきましてお尋ねでございましたが、衆議院議長のあっせんはたしか四月の二十三日であったと思います。「六十二年度予算の本院通過をまって直ちに、本院に税制改革に関する協議機関を設置し税制改正について検討を行うこと。なお、その組織、運営については、各党において速やかに協議すること。」となっております。
 共産党が御参加をされなかった経緯についてはつまびらかにいたしませんが、しかし、こういうあっせんでございますので、これは私的なものだというふうには私ども考えておりません。
 それから、為替の問題でございますが、これ以上急激な為替の変動があることは、我が国ばかりでなく、サミットに参加した各国おのおのにとって逆効果であるという首脳間の合意、したがって、それを防ぐために政策協調、介入等を行おう。この合意は大変に重みのあるものであるというふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(加藤六月君) 佐藤議員の御質問にお答えいたします。
 まず、強制減反についてでありますが、我が国農業の基幹作物であり国民の主食である米については、生産力が需要を大幅に上回っており、その需給ギャップはなお拡大する方向にあります。
 このため、本年度から新たに、水田を活用して生産される作物の生産性の向上、地域輪作農法の確立、需要の動向に応じた米の計画生産を一体的に推進する水田農業確立対策を実施しているところであります。
 今後とも、生産者、生産者団体と行政とが一体となって水田農業の確立を図ってまいる所存であります。
 米は日本国民の主食であり、我が国農業の基幹をなすものであること、また、水田稲作は、国土や自然環境の保全上不可欠の役割を果たしているのみならず、我が国の伝統的文化の形成とも深く結びついていること等、極めて重要な作物であり、先般の農政審報告を尊重し、生産性の向上を図りつつ、今後とも国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、国内産で自給する方針を堅持していく考えであります。
 次に、農産物の価格設定について申し上げます。
 米を初めとする主要な農産物につきましては、それぞれの農産物の生産、流通、消費の特性を踏まえ、各種の価格政策を講じております。
 これらの価格制度は、農産物ごとに区々であり、価格算定方式につきましても、米のように生産費所得補償方式によるものから、需給実勢方式、パリティ方式等区々でありますが、生産事情その他経済事情の変化に即応した価格決定をそれぞれ行ってきたところでございます。本年産の生産者米価につきましても、生産費所得補償方式に基づき、米の需給事情に即応しつつ、生産コストの低減の状況等を反映して決定したところであります。
 次に、生産資材価格につきまして申し上げますと、農産物の生産コストの中で、農業機械、肥料等の生産資材費の割合が高いことにかんがみ、生産性向上を図るためには、構造政策の推進に加え、これら生産資材費の節減が重要な課題であると考えております。
 今後とも、関係省庁と連携を図りつつ、農業生産資材が適切な価格で安定的かつ円滑に供給されるよう関係業界、団体の指導に努めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣平井卓志君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。
 女子労働者の対策につきましては、男女雇用機会均等法の円滑な施行に努めておりますほか、本年六月には女子労働者福祉対策基本方針を策定いたしまして、女子労働者の福祉の増進と地位の向上を図るための諸施策についてその基本的方向を示しまして、婦人行政の一層の充実を図っておるところであります。
 パート労働者の雇用の安定等を図りますためには、労働基準法の遵守徹底を図ると同時に、その雇用管理の適正化等について、パートタイム労働対策要綱に基づきまして労使に対する啓発指導に努めておるところであります。
 男女賃金格差の是正につきましては、労働基準法に定める男女同一賃金の原則の徹底を図るとともに、雇用の分野における男女の均等な取り扱いが着実に実現されていきますように、男女雇用機会均等法の適切な運用に努めておるところであります。
 育児休業制度の普及促進につきましては、育児休業奨励金の大幅な拡充、育児休業制度普及指導員の婦人少年室への配置等の諸対策を講じておるところであります。
 今後とも、女子労働者の福祉の増進と地位の向上が図られますように施策の充実に努めてまいる所存であります。(拍手)
#21
○議長(藤田正明君) これにて休憩をいたします。
   午前十一時五十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開議
#22
○議長(藤田正明君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。栗林卓司君。
   〔栗林卓司君登壇、拍手〕
#23
○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、先日の政府演説に対して、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。
 総理は、自民党の両院議員総会で、この臨時国会を締めくくりの国会としたいとあいさつをされたそうであります。それでは総理は、現在の円高に何の手も打たずに中曽根政治の幕を引くおつもりなのでありましょうか。
 総理は、今回の緊急経済対策がサミットで高い評価を得たと自賛しておられます。それは、いつも宿題をやったことがない生徒が珍しくやってきたので、先生から褒められたというたぐいの話なのではありませんか。
 総理が就任された昭和五十七年十一月の円レートは二百五十三円でありました。以来、円は高騰を続け、特にG5以降は、米国の政府高官の口先介入に追われて急激かつ大幅な円高を記録してまいりました。その日先介入の背後にあるものは、減税と建設公債発行を含む本格的内需拡大策に対する催促だったのではありませんか。政府は、いよいよ緊急経済対策に踏み切ったわけでありますが、どうせやる羽目に立たされるのであれば、なぜもっと早くやらなかったのでありましょうか。かねて申し上げてまいりましたとおり、昨年の補正予算で、あるいはことしの当初予算で本格的な内需拡大策が発表され、実行されていたら、米国政府高官の口先介入も鈍り、異常な円の高騰もなかったのではありませんか。
 総理は、今回のように財政出動による経済対策が要請される状況のもとでは積極的に対応すると所信表明で述べておられます。しかし、今回に限らず、総理が政権を担当した五年間を通していつでも高まっていたものが財政出動の要請であり、この点に関し余りに鈍感であったことが、今にして思えば、中曽根内閣の、そして国民の痛恨事だったのではありませんか。
 米国の金融専門機関であるモルガン・ギャランティー・トラストの計算によれば、購買力平価、すなわち円とドルがそれぞれの国内で持っている購買力を比べた円ドルレートの理論値は二百円であります。OECDの発表でもおおむね同様の数字でありました。問題は、この数字と実際の為替レートとの間の著しい隔たりであります。今回のベネチア・サミットの経済宣言を見ると、対外不均衡の是正は為替レートの変化だけでは解決できないと指摘してあります。それに気がついただけでも大きな前進であります。
 しかし、振り返ると、これまでは政府の内需拡大策の貧しさから円レートのみに対外不均衡是正の重圧がかかる結果となり、極めて割高な円相場になってきたのではありませんか。もちろん、何が適正レートであるかということは厳密に言えば難しい問題であります。しかし、私は、現在の円レートが政策の失敗の結果もたらされたものであり、その円レートのもとで日本のまじめな労働者が苦しみ抜いているわけでありますから、この円レートを是正する義務が中曽根内閣にあるのではないかということを申し上げたかったのであります。総理並びに大蔵大臣の御所見を伺います。
 行き過ぎた円レートを是正するためには、経常収支の黒字を減らさなければなりません。今回の緊急経済対策のねらいの一つも、本来そこにあったのでありましょう。しかし、我が国の輸入の低い価格・所得弾性値を考えれば、多くを期待するのは極めて困難であります。したがって、輸出の減少に期待を寄せることになりますが、そのために不可欠なものは米国の財政赤字の削減であります。結局、日本の黒字減らしのためには、我が国の内需拡大策と米国の財政赤字削減の二つの政策が対置して進行することが必要だということであります。そのどちらが欠けても歯車はうまく回らないということであり、これがいわゆる政策協調というものだと思います。
 ところで、歯車の片方である米国の財政赤字の削減問題について、総理は政策努力の強化が必要であることを特に強調したと述べておられますが、総理の御所見と見通しを伺います。
 もともと米国の財政赤字は、レーガン大統領の大盤振る舞いのなれの果てであります。削減するのは当たり前でありますし、削減するならするで世界経済への影響も心配されます。そこで、財政赤字削減が持つ需要収縮効果にも目配りをして対策を講じたものが今回の緊急経済対策なのではありませんか。私にはそう思えるのでありますが、これは褒め過ぎでありましょうか。総理並びに大蔵大臣に伺います。
 この意味で、今回の緊急経済対策は、国際国家日本としての積極的な意見表明であったことは確かであります。今回の日本の緊急経済対策を契機にして、各国の間の政策協調が力強く前進する気配を見せていることを率直に評価したいと思います。今回のサミットでは、サミットに参加していない新興工業国にも、政策協調への参加と責任の分担を呼びかけております。これは従来にはなかったことであり、政策協調が深みと広がりを一層増しつつあることを示していると思います。今後サミットは、国際機関化の性格を一層はっきりさせてくるだろうと思います。そして、そこでの論議を積み上げる中で、これからの国際通貨制度づくりも具体的に進展していくものと予想しても大きな間違いはないのではありますまいか。
 そして、こうした努力を通して、適正な円レートの安定的確保が図られるものと期待を込めて展望している次第であります。この点について、総理、大蔵大臣の今後に対する所見をお尋ねしておきたいと思います。
 なお、申し上げるまでもないことでありますが、適正な為替レートを安定的に維持することが最大量高の景気対策であります。
 なお、先日、総理から国際国家のあり方について諭しがありました。そこで、私なりに一言つけ加えさせていただきますと、国際国家にとって一番大切なことは、一度した約束は絶対に破らない、必ず実行するということであります。したがって、所得税減税の国際公約を守ることが他の何物にも優先する課題になってきたのではありませんか。当座の財源手当てができないわけではありませんから、まず減税を実行して、後でゆっくりと考えてもよい問題なのではありませんか。
 一般的に言って、減税に恒久財源が必要なことは当たり前であり、否定する人はありますまい。しかし、その財源をどこに求めるかということになると、その検討と国民の合意形成に時間がかかることは当たり前ではありませんか。今必要なことは、まず公約を果たすことであります。総理は、交換条件としてマル優問題を再び持ち出してこられました。しかし、この問題はさきの国会で一度決着がついた問題ではありませんか。再浮上させれば国会の論議が紛糾することは目に見えております。それなのに、減税の交換条件としてマル優問題を再浮上させたことは、外から見れば、減税のサボタージュとしてしか映らないのではありますまいか。同じ意味で大蔵大臣に、直間比率の是正論を再浮上させた真意を伺います。
 総理は、マル優制度は諸外国の批判が高いと言われますが、批判が高いのはそれを使わないからであって、貯蓄の高さそれ自体を非難する国はないはずであります。米国の貯蓄率の低さを考えると、日本の貯蓄は世界経済全体の今後のためにも感謝されるべき大切な財産なのではありませんか。
 なお、いわゆる前川リポートでありますが、国会で何の審議も決議もしていないものを、我が国の公的な意思として外部に発表したところにすべての誤りの発端があったことをこの際申し上げておきたいと思います。
 ところで、財源の心配という意味でいえば、もっと心配なのは緊急経済対策そのものの財源問題であります。緊急経済対策は、ことしやって来年はやらないで済ませるというわけにはいかない問題であります。では、緊急経済対策を抱いた財政運営をどうしていかれるのか、まず基本方針を総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
 その際、国民の皆さんに税負担の増加をお願いするということは全くないのでありましょうか。その可能性がないわけではないというのであれば、今急がなければならないのは不公平税制の徹底した是正ではありませんか。減税見合いの財源探しで国会を空転させている暇はないはすであります。所得税減税の恒久財源そのものは、緊急経済対策全体の中長期の財源を検討する中でおのずから浮かび上がってくるものではありませんか。
 次に、通産大臣にお尋ねをいたします。
 今厳しい円高のもとで、日本の産業は存亡の苦しみに耐えておりますが、中でも非鉄金属鉱山は、中曽根内閣発足当時はおおむね百を数えておりましたが、今は十にも満たないありさまであります。しかも、この非鉄金属鉱山は地域経済の核であり、しかも、海外の資源開発を進めるに当たっての日本技術の母港でもあります。この非鉄金属鉱山を守るために、従来から経営安定化融資制度の活用等さまざま御苦労はいただいてまいりましたが、この融資対象の思い切った拡大と、あるいは既設の鉱山の周りにまで精密探鉱の領域を広げるなど、さまざまな工夫と努力を凝らしていただきたいのであります。
 次に、構造改善問題と円高のかかわりについてお尋ねをいたします。
 先ほど申し上げましたように、為替レートの変動だけで対外収支の不均衡を是正しようとしても、それは無理でありました。同じ意味で、為替レートの変動だけで構造調整を進めようと思ったら、それもやはり無理なのではありますまいか。行き過ぎた円高になりますと当然産業界は悲鳴を上げます。ところが、その悲鳴を聞くと、あたかもそれが構造調整に対する進軍ラッパが鳴っているかのように受ける風潮が感じられますので、構造調整を進めるに当たっての基本的な考え方を通産大臣にまずお伺いいたします。もともと為替レートの変動が持っている時計と構造調整が持っている時計は違うのであります。
 次に、円高不況下の内需拡大と関係が深い円高差益の還元問題について伺います。
 現在の実績を見ると、円高差益はおおむね半分しか還元されておりません。ことしの一−三月の状況を見ますと、円高差益は十八兆円発生しておりますが、そのうち還元されたのは十兆円、残り八兆円は雲散霧消であります。この姿に果たして我慢ができるのか、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。
 恐らくこの原因というのは、久しく官僚統制になじんでまいりました我が国の経済体質そのものがあると思います。この意味で言いますと、円高下の景気刺激を図るためにも、我が国経済の活性化を図るためにも、国内経済の思い切った自由化を進めることが必要だと思いますが、総理大臣の御所見を伺います。
 最後に、経済成長の成果配分について、総理並びに労働大臣にお尋ねをいたします。
 望ましい成果配分というのは、言うまでもなく、労働時間にあるいは賃金に配分されるのが最も望ましい姿でありますが、現状を見ると、それぞれミクロに押し寄せる厳しい状況に追われて、望ましい成果配分がされるどころか、賃下げ、雇用調整あるいは長時間労働、労働強化が進んでいる状況にあります。これは結果として内需拡大の足を引っ張っていると言わなければなりません。では、こうした状況について、今回の緊急経済対策はどのような効果を発揮し、かつ期待することができるのでありましょうか、具体的に労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 最後に、近い将来に、では、この現在のゆがんだ成果配分の姿を考えながら、やがて望ましい成果配分が現実にあらわれ、そして国民生活が力強く向上することをどのように期待してよろしいのでありましょうか。この点、御所見と展望を総理並びに労働大臣にお尋ねをして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(中曽根康弘君) 栗林議員にお答えをいたします。
 まず、緊急経済対策の実施の時期、タイミング、それから為替調整の問題の御質問でございます。
 私は、為替の調整という問題は、自由経済下でございますから、政府が乱高下が起きた場合に介入するということはありますが、やはりこれは自由経済の流動に任せる、いわゆるフローティングシステムというのはそういう精神からできているものであると思っております。
 しかし、先般来の情勢を見ますと、乱高下の現象が見られたために、各国政策協調の成果といたしまして、介入も行い、是正措置も努力してきたところでございます。最近におきましては、割合に安定の状態に戻ってまいりました。
 こういうような状況のもとに、景気にはずみをつけて、そして、世界的な調整政策の一環として、我が国の分担である内需の振興というものをやる時期に来たと、そういうタイミングの問題もあったのであります。政策をやるという場合には、有効にそれが作用する時期を選ぶということが大事であります。
 最近の動向を見ますと、世界経済全体にやや上昇の機運が出てきつつあります。我が国にいたしましても、同じように、景気につきましては若干の前兆が出つつあります。また、為替の安定の気配も見えて、底が見えてきたということを専門家たちも考えるに至っております。
 そういうようなときに、思い切った、瞬発力のある、内需拡大を中心にする緊急対策を講じまして、その勢いを増していく。そういう意味におきまして、今回、六兆円に及ぶ思い切った措置を講じたということでございます。
 一方におきましては、アメリカに対しまして財政赤字の削減を強く求めておりまして、あるいはヨーロッパに対する日本の大きな黒字の自主的調整という面も考えておりまして、そういう面から起こるリセスの現象に対しては、内需によってそれらのものの受け入れをつくっていく、それによって国内産業を救っていく。そういう考えに立ちまして、世界経済との調和も考えつつ実行した次第なのでございます。
 私は、遅過ぎたのではないかという御質問でございますけれども、今の政府が一番中心に考えていることは、何といっても物価の安定なのでございます。そして、インフレの回避なのでございます。
 今までのような二百五十円というような円安の状況では、国際経済の面からも、日本のドル蓄積はますます大きくなりますし、どうしてもこれの調整を要するというので、プラザ合意あるいはルーブル合意等を通じましてその調整策を講じてきたところでございますが、今後におきましても、やはり為替の長期的安定というものを考えまして、そして激変が行われないような措置を協調してつくっていく、そういう努力をしていく。
 為替の変動の傾向というものは、そのときそのときの経済の諸条件を反映して行われるものでしょう。短期的には投機が介入する余地はございますが、長期的に見れば、経済のファンダメンタルズと言われる諸条件が次第に反応してくるものであると思っております。その諸条件の是正あるいは向上という面につきまして各国とも話し合っておるわけでございますが、今後とも積極的に努力していきたい、そう考えた次第なのであります。
 円高におきましては、余り急激に行われまして、そのために輸出産業等に御迷惑をおかけして大変恐縮な面もございましたが、しかし適正な円高というものは国民生活の質の向上をもたらし、物価の安定に極めて資するものであります。
 最近の状況を見ますと、このように長期にわたって対前年ほとんどゼロというような、物価が超安定した時代というのは昭和三十年代以来珍しい現象であります。これは目に見えないけれども、国民生活に対してどれくらいの安心感を与えているかわかりません。それは政治の非常に重要なところでありまして、今後とも我々はひたむきに追求していかなければならぬところである、そう考えているところでございます。
 次に、米国財政赤字削減の展望の問題でございますが、アメリカも財政赤字削減について努力していることは事実であり、若干の成果も上がっておるところでございます。
 アメリカ議会においても、いわゆるグラム・ラドマン法という法律を制定いたしまして、これはまあ憲法違反の疑いも若干あったようでございますが、実質的にはこのグラム・ラドマン法に基づいて財政赤字削減、ともに立法府も行政府も努力しているところでございます。
 最近の国際世論、先般のベネチア・サミットにおきましても、アメリカの財政赤字削減の声は各国から強く出ました。アメリカ国内からも出てきておるわけであります。そういう動向にかんがみまして、アメリカ政府も本格的に熱意を持ってこれにかかっております。このベネチア・サミットの会議中におきましても、アメリカ政府当局は、本年度は約四百億ドルぐらい削減してみせたい、そういうことを断言しておりました。
 私は、こういう調子で削減が進んでいけば世界経済に対しても非常にいい条件を持ってくる、しかし、それによって出てくるリセスに対しては、アメリカ及び各国みずからがおのおのこれに対応する受け入れ措置を行う、あるいは国際協調で行って、特に発展途上国その他に面倒をかけないように国際協調で処理していく必要があると、そう考えておりますし、おのおのの国民経済に対するマイナスの反応も自分の力で消していかなければならないであろう、それがアメリカに対して財政赤字の削減を要求する側の一方の当然の措置ではないかと、そう考えておる次第でございます。我々が今回行いました緊急経済対策はそういう意味も持っておるのでございます。
 次に、減税の問題でございますが、所得税の減税や、その他財源措置の問題については、税制改革協議会において今御論議願って、注目しておるところでございます。しかし、減税先行はぜひ断行したいと所信表明でも申し上げたとおりで、一兆円を下らざるものを考え、税制改革協議会の御意見がどういうふうに発展するか注目しておるということでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、恒久的財源をもって保障するということを行うことは誠実なやり方であると思っております。
 マル優廃止の問題についてもいろいろ御議論がございましたが、私はいろいろな御議論があると思います。そこで、税制改革協議会におきましてもこの論議がいよいよ始まりました。それらを注目しておりますが、いわゆるカード制というものは、グリーンカードであろうが、あるいはマル優カードというものでありましょうが、マル優カードにつきましてはどういう具体案をお持ちであるか御提示願わないと論評できませんけれども、しかし、要するに限度管理を厳重にやるということ以外はないと思うのです。そういうことをやるとなると、どうしてもこれはグリーンカード制に近づいていかざるを得ない。もしそういう状況になるとすると、グリーンカードのときにも言われましたけれども、これは恐らく相当な資産逃避が起こるであろう。
 何しろ、日本の預金の七〇%はこういうような処置を受けておるわけでございますから、そういうような状況から見ますと、そこにあるお金というものは、あるいは土地に移るかもしれぬ、株式に移るかもしれぬ、国外に逃避するかもしれぬ、そういうものが動き出すと相当経済に対して変動が出てまいります。そういうことをまず恐れる必要がある。
 要するに、金融政策において一番大事なのは国民心理であります。実態よりも予想とか想像とか、国民心理が非常に重要なのであります。そういう意味におきまして、この資産逃避というような問題をどう考えられるのであろうか。
 あるいは、さらに、結局は限度管理を厳重にするというような形になれば、どうしてもこれは役所のやることはひとり歩きしてまいりまして、国民の納税者の懐に手を突っ込んでお金を取り出すという形に背番号制というやり方はいかざるを得ないのじゃないか。皆さんがいい気分で協力するという、そういう状況で納税していただくというのが税の制度としてはいい方法ではないか、そう思うのであります。
 今マル優制度を悪用している人たちは、いつそれが発動するか、戦々恐々たる状態にそういう場合にはなるでしょう。それは当然のことであります。しかし、それは相当数あると言われておる。
 そういうような状況を考えてみると、一律にある程度の分離課税で税を納めていただく、しかし、もうそういう手を突っ込むようなことはやりません、そのかわり税は納めていただく、そういうやり方の方が安心感を与えて、しかも納税の効果がある、政治としては穏当なやり方ではないかと、そういうふうに私は思うのでございますが、いかがでございましょうか。これらにつきましては、いずれ、税制協議会において御審議願っておるところでございますから、その結果を見守りたいと考えておるところでございます。
 前川リポートの問題につきましては、前にもここで御答弁申し上げましたように、あれをそのままやったというのではなくして、たしか東京サミットの前、五月一日にあれを中心にして政府は自分で検討を加えて、経済構造調整政策として閣議決定をして、その閣議決定を実行しておるという段階になっておるので、国会を無視して前川リポートをひとり歩きさせていると、そういうものではないのであります。このことは重ねて申し上げておきます。
 今後の財政方針につきましては、必要に応じて必要な政策を行うという段階に入ってきていると思います。やはり行革の効果をさらに持続的に徹底していくということ、それと同時に、経常経費につきましては昨年同様厳しい査定を行うということ、しかし、投資的経費や公共事業等については例外とする、しかし、あくまで赤字公債は減らしていくということ、予算における国債依存率を減らしていくこと。前から申し上げておりますように、二〇%を割るように努力したいと申し上げておるのでございますが、そういう努力をした来年度予算編成というものを考える。また、それ以後につきましても、必要に応じて緊急発動の事態が出てくれば当然それは持続してやるべきであり、こういう効果は一回で終わるものではない、ある程度持続的に行うというところに公共事業そのほかの効果は出てくるものであると、そのように考えております。
 規制の見直しについては全く賛成でございまして、今後行政改革でやる一番大きな点は、この規制の見直し、規制緩和であると考えております。
 経済成長の恩恵を市民が共有するようにすべきであるというお示しは全く同感でございまして、今行っておる円高差益の還元というものもそうでございます。電力料金、ガス料金の引き下げ、あるいは一般物価も引き下げている。これはその大きな一つの例でございますが、これから行うこととしては、緊急経済対策に盛られておりまする減税の断行、それから労働時間短縮の問題、それから住宅政策、こういうものであるだろうと思いまして、特に力を入れる考えでおります。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆるプラザ合意がございましたのは一昨年の九月の二十二日でござ
いますが、あのときのドル切り下げの努力というのが、あれほど急速にまた大幅に行われるだろうということは、当時予想した向きは少なかったであろうと思います。したがって、このことはその後のアメリカの国際収支、また米国に対する我が国のような黒字国の国際収支関係に大きな影響を及ぼすはずのことでありまして、もしなお今日ドルがあの当時の水準であったといたしますと、これはどういう状況であるか、大変なことになっておったろうと思いますので、このプラザ合意そのものは、私は大変に意義のあったことであると思っております。
 ただ、いかにも我が国にとりまして円の上昇が大幅であり、急速でございましたから、我が国ほどの経済でもこれにはにわかに対応できないというところから、困難を生じてまいったというのが経緯であったと思います。
 私が昨年の九月、十月とベーカー長官と話をいたしまして、十月に日米間の合意ができたわけでございますが、先ほど栗林議員が、アメリカが財政赤字を減らすということはデフレ効果があるのであるから、日本あるいはドイツのような国がそれを需要造出でカバーしなければいけないだろうと言われましたことは、まさしくそのとおりでありまして、私とベーカー長官との議論もその辺をめぐって行われました。まさにそういう役割を担わなきゃならない我が国にとって、円がいつまでも上昇を続けるということは、そういう努力そのものを不可能にするというのが私の議論であり、立場であったわけでありまして、それについての理解ができましたので、両国間の政策協調と介入が決められた、こういう経緯でございます。
 そして、この合意が翌年の、今年でございますが、二月のルーブル合意になりまして、これ以上大きな為替の変動は各国とももう迷惑である、したがって、各国間で政策協調を行い協調介入を行おうということになりまして、それが先般のサミットで首脳間で認められたという経緯でございます。
 そういうことでございますので、我が国としては、そのような我が国の果たすべき役割、内需拡大の役割を果たしますために、不十分という御批判はありましたが、昨年補正予算を組み、今回また大きな補正をお願い申し上げておる、こういう経緯でございます。
 サミットというものが、これからそういう安定の役割を果たしていくことを期待するという仰せでありまして、私もまさにそのとおりでございます。国際機関になっていくかどうかはにわかに言われませんとしましても、そういう役割を期待いたしたい。また、ここへまいりましてやや為替も落ちついてまいったように見ておるわけでございます。
 それから、直間比率のことをなぜ口にしたか、どういう考えかというお尋ねでございました。
 これは衆議院議長のあっせんにも使われておる表現でございますけれども、我が国のように所得水準がこれほど高くなり、かつ所得の格差が少ない国におきましては、社会の共通費用というのは国民に広く薄く負担してもらうということができるし、また適当なのではないかという考えを持っておりまして、その観点からいたしますと、七、三以上直接税にウエートがかかっているということは、やはり考えてしかるべきではないかという、そういう考えを持っております。
 殊に、我が国がこれから老齢化いたしますと、どうしても若い人がたくさんの老人を背負うということ、これは所得税ではどんなに重くしましてもなかなかしょい切れないということでございますから、今から私どものような、つまり老人になります者がそれを負担していくという、そういう制度が何か要るのではないかということを思っているわけでございます。
 それから、今後の財政運営でございますが、先ほど総理からお話がございました。先ほどのようなことでございますから、一回の補正予算を組んだだけで事態が済むとは思っておりません。財政再建というのは大事な課題でございますが、その中であるいはNTT株式の売却収入の活用を図るとか、いろいろな工夫をいたしまして、財政が最大限の努力をいたしてまいらなければならないと思います。
 それからもう一つ、今後増税ということを考えるかということでございました。
 私どもとしましては、我が国の経済の潜在力というものをできるだけ顕在化することによってもう少し高い成長ができるのではないか、それによりまして、つまり税率を上げるという形ではなく、いわゆる自然増の形で財政もそれによって均てんする、そういう経済運営をやることが大事ではないか、むしろそのように考えております。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(田村元君) 非鉄金属鉱山が現在の円高で大変困難な状態にあるということは十分認識いたしております。まことにお気の毒に思っております。
 このために、さきの緊急経済対策の決定に基づきまして、このたび構造坑道整備事業の融資対象への追加などの措置を講じたところでございます。
 また、国内探鉱につきましても、御指摘の点も踏まえまして、現行国内探鉱制度の範囲内で運用上の工夫を凝らしていきたいというふうに思っております。
 それから、為替レート調整のみで構造調整を行うことは問題ではないかという御指摘でございます。私も全く同感でございます。
 構造調整を進めるに当たりましては、産業活力を維持しながら、我が国経済を内需主導型に変革することによって対外不均衡是正を行って、その成果が我が国の国民生活の質の向上につながるようにしていくことが重要であることは論をまちません。
 このために、内需の拡大など需要面の対策に加えまして、雇用、関連中小企業への影響の軽減、地域経済の活性化、技術開発の推進等の各種施策を的確に講じることによりまして、構造調整が円滑に進むように努めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(近藤鉄雄君) 円高差益等の還元につきましては、昨年来累次にわたる対策等を行い、本年に入りましてからも約二兆円規模の電力・ガス料金の再引き下げ。輸入牛肉の展示販売における小売目安価格の引き下け等、いろいろ実施してまいっております。このような措置によりまして、円高差益還元率は期を追って上昇いたしまして、本年一−三月期には七八・七%、累計でも先生御指摘のように六〇%近くに達しております。
 政府といたしましては、今後さらに円高差益等の経済全体への一層の浸透を図るため、今般の緊急経済対策におきましても、公共料金についても、「可能な限りその引下げに努めるものとし、引下げが困難なものについても、当該事業の収支状況等を勘案しつつ、料金等の長期安定、サービスの改善等を図る」こととしておりますし、一般商品につきましても、消費者の選択の幅を広げるための情報提供等をさらに進めるなど、円高差益の還元の措置、状況づくりを積極的に推進してまいります。
 経済の自由化を進めるべしとの御指摘でもございますが、政府といたしましても、今後さらに流通過程の合理化や競争条件の強化、競争制限的行為の監視等に努め、経済活動に対する公的規制を見直し、民間企業が自由に活動し得る領域を広げることが物価政策としても重要な課題であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣平井卓志君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(平井卓志君) 今回の緊急経済対策は、現在の大変厳しい雇用状況の中にあってどのような効果を及ぼすか、かようなお尋ねでございますが、経済成長の成果の賃金また労働時間短縮への適切な配分というのはぜひとも必要である、この御指摘は全くそのとおりでございます。労使が国民経済的観点から、産業、企業の実力に見合った適切な対応を期待するところであります。
 また、こうした成果配分が円滑に進むためには、適切な経済成長が達成されまして、雇用の安定が確保されることが重要であると考えております。
 今回の内需拡大を中心とした緊急経済対策は、こうした効果があるものと理解をいたしております。
 またさらに、労働省といたしましても、同対策に盛り込んでおります三十万人雇用開発プログラムの着実な実施、各種助成金制度の改善等の雇用対策や、さらには週休二日制の普及等、労働時間短縮のための施策を推進いたしております。こうした努力により雇用の安定等に資するものと認識いたしております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(藤田正明君) 稲村稔夫君。
   〔稲村稔夫君登壇、拍手〕
#30
○稲村稔夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、中曽根総理の政治姿勢並びに政府の政策展開の方向について質問したいと存じます。
 まず最初に、本臨時国会に臨む総理の姿勢について伺いたいと思います。
 本来であれば、国民の意思を無視して百八国会に提出した売上税法案が廃案になった、その反省と国民に対する謝罪の気持ちが本国会における総理の所信表明の中ににじみ出てくるのが、良識ある政治家であれば至極当然のことであろうと思うのでありますが、残念ながら声高な自画自賛ばかりで、いささかもそれが感じられないのであります。逆に、七月八日の衆議院本会議における我が党の岡田利春副委員長の質問、きのうの本院における我が党の青木薪次議員の質問に対する答弁には、みずからを正当化しようという開き直りと言わざるを得ないものが多いのは、まことに遺憾であります。
 そればかりか、レーガン米大統領にINFのアラスカ配備を要請した、これはあるいは支持したというのかもしれませんが、これを核抑止論の立場から核廃止のための戦術だとする等は、これが再び過ちは繰り返しませんと誓い、国民合意の非核三原則を持つ国の総理の態度であろうかと、その見識を疑いたくなるのであります。この点は繰り返して質問が出ているところでありますけれども、くどいようでありますが、どうしても納得できないところでありますので、あえてまたお伺いをいたします。
 ノーベルがダイナマイトの発明により戦争が抑止されると考えた、その結果がどうであったかということは極めて教訓的だと思うのであります。もしあなたが民主主義者であると自負しておられるならば、このような答弁は訂正されてしかるべきだと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 次に、内需拡大のための大型補正予算を提出されていますが、産業空洞化傾向にどのように対処されるのか、特にその影響を深刻に受ける中小零細企業対策や雇用対策にどれだけ力を入れるおつもりなのか、伺いたいのであります。
 中小零細企業の多くは、大企業の海外投資に伴う受注減あるいは単価切り下げにあえぎ、あるいは内外の市場で新興工業国製品に追い上げられて青息吐息であるなど、大変厳しい環境に置かれております。それですから、せっかくの業種転換の融資制度などあっても、これを利用する余力すらなくなっているものが少なくないのであります。もし、それは経済法則のしからしむるところで、かなりの犠牲が出てもやむを得ないと言われるのならば、何をか言わんやということでありますが、このような中小零細企業救援のための対策についてどのように考えておられるのか、総理並びに通産大臣のお考えをお聞かせいただきたいのであります。
 また、これまでは我が国の非一次産業の労働者のうち、約八割が中小零細企業で働いてきたのが実態でありました。しかも、比較的年齢の高い労働者の多くが中小零細企業を就労の場としておりました。それだけに、雇用という観点からも中小零細企業のこのような状況は憂うべきだと思うのであります。中小零細企業の雇用対策は、企業が生き延びていけるような適切な対策で雇用の場を確保していかなければ、三十万人の雇用対策とか、新しい雇用創設援助程度だけではとても対応し切れるものではないと思うのでありますが、今後何らかの対策をお考えでありますかどうか、通産大臣と労働大臣にお伺いしたいのであります。
 三つ目は、農林漁業対策についてであります。
 先日、政府は、生産者米価を五・九五%引き下げることを決めました。これは我が国稲作農業に重大な打撃を与えるものでありまして、極めて遺憾であります。この米価によって二から二。五ヘクタール以下の小規模経営農家は、さなきだに減反強化で収入減になっている上に、生産費割れの追い打ちがかけられることになるわけであります。この米価で生産費をカバーできる農家は全体の一九%程度、販売量のシェアにして三七%程度であろうと食糧庁当局も推定をしているわけであります。
 そこで、もし内外の価格差の縮小を図りたいならば、生産諸資材の価格引き下げや土地改良費負担の大幅軽減その他、農家の自助努力の範囲を超える諸経費の引き下げ策が事前に行われなければなりません。より上層農に耕作放棄が拡大するようでは、到底、所信表明に言われるような食糧の安定供給が図られる価格水準だとは言えないからであります。それに、もしかつてのように連年の不作などという不測の事態が起こったときは一体どうされますか。国会決議を尊重し、米の完全自給と食管制度の根幹を堅持することは当然でありますが、この点、総理及び農林水産大臣、明確にお答えをいただきたいと存じます。
 また、稲作農家全体の農業就業人口の面からいきましても、その八四%余りの五百九万人が二ヘクタール以下であります。この中で余剰になる労働力を一体どこで吸収できるのでありましょうか。農林水産行政、労働行政の面でその対策をどのように立てておられるか。もしその対策なしに米価引き下げだけを決めたというのであれば、それは片手落ちで無責任も甚だしいと言われてもいたし方ありますまい。
 総理、あなたは昨日も農は国のもとなどと言われておりましたが、その基幹をなす稲作農業でさえこんな状態であります。果実も酪農も、そして畜産も、もうこれ以上の市場開放には耐えられないところにまで追い詰められております。自国の農業を危機に追い込んで、一体何をよりどころに農は国のもとと言われるのかを明らかにしていただきたいのであります。
 また、農業の国際化といっても、しょせんは先進国の余剰農産物の売り込み競争であり、それが農産物輸出途上国を苦しめているという面もあるわけであります。こうした国際的矛盾解消に今までどれだけ努力をしてこられましたか、お答えをいただきたいと思います。
 森林は今、危機に瀕しております。林業不況に円高・ドル安の追い打ちで、森林づくりの意欲を失った民有林の中には、間伐も行わないままの、もやしのような森林がよく目につくようになりました。過疎の進行と林業労働力の減少、高齢化も目立ち、森林の荒廃による山地崩壊、水害等の危険や水資源不足が心配されます。関東地方の昨年の水害やことしの水不足も、その影響なしとは言えないと思うのであります。
 ところが、国民共有の財産とも言うべき国有林も危機的状況にあります。戦後復興から高度成長期にかけての増伐で得た収入を一般会計に吸い上げたりしたことのツケとして、六十一年度末に一兆五千億円に達する債務残高を抱えることとなり、森林づくり放棄とも言うべき大合理化が進められようとしているからであります。
 森林・林業の再建を図るための施策の第一は、国産材の需要拡大と材価安定により森林づくりへの意欲を回復させること、第二は、間伐の実施、保育の充実や生産基盤としての林道網の整備を思い切った国の助成で推進すること、第三は、山村の生活環境の近代化、林業労働者の雇用、賃金、労働条件、安全作業等に抜本的対策を講じて山村振興と雇用の創出に努めること、第四に、国有林の公的機能発揮のための費用は一般会計から繰り入れ、長期借入金については民有林に準じて償還期間、据置期間の延長、借入金利子の軽減を図って国有林野事業の財政再建を図ることだと思いますが、農林水産大臣の御見解を伺いたいのであります。
 そこで、総理、国有林、民有林を問わず、森林・林業の現状は一刻も猶予できない危機的状況なのですから、このままではとてもあなたが言う「花と緑に囲まれた潤いある地域社会」どころではありません。今こそ、昨年五月の本院本会議における決議を踏まえていただき、国を挙げて森林・林業、国有林の再建に取り組むべきだと思いますが、いかがでありましょうか。
 漁業関係における雇用の問題も深刻であります。
 北洋から締め出され、離職を余儀なくされた約六千人の漁民のその後はどうなっているでありましょうか。同じ漁業関係への就労が希望され、玉突き失業と言われる問題も生じておりますし、加えて、関連水産加工業への就労の場も大幅に減っております。
 また、IWCによって完全撤退の方向に追い込まれている捕鯨の場合は、捕鯨基地だった町村を死活問題にまで追い詰めているのであります。科学的な資源保護を踏まえつつ、捕鯨の存続のために全力を尽くしていただかなければ、雇用の面からも深刻であります。漁業関係の雇用の場確保のためにどのような対策をお持ちか、農林水産大臣、労働大臣に伺いたいのであります。
 私は、公共事業による内需拡大策も、中小零細企業の経営の安定と雇用と所得が確保され、そして、農林漁業振興とあわせた雇用対策等により農林漁業者の所得が確保されなければ、結局、特定の業種と企業、特定の階層の個人のみに富を集中させる以外の何物でもなくなってしまうと思うのであります。したがって、雇用対策を含めた中小零細企業対策、農林漁業対策にあわせて、せめて我が党が主張している程度の大幅減税が実行されなければ、国民のための内需拡大策にはならないと思いますが、政府の御見解はいかがでありましょうか。
 またさらに、通告を急にいたしましたので、あるいは答弁が間に合わないかもしれませんが、この公共事業中心の内需拡大策に伴う地方自治体の財源への手当てというのはどうなっておりますか、これもひとつお聞かせをいただきたいと思うのであります。
 第四番目は、マル優廃止ではなくて制度改正だと言い直されましたが、いずれにいたしましても、大衆課税強化の方向に総理は恋々としておられるようですが、私は、それより先に検討すべきものが幾つもあると思うのであります。例えばいわゆる金余り現象であります。大都市での不動産投資や財テクがいろいろと話題になっておりますが、それは大多数の国民にとっては縁のないものであります。
 そこで、極めて俗な言い方をさせていただけば、余っているお金は、住宅対策等その他国民に還元される諸事業のための財源として活用させていただいてよいのではないかと思うのであります。また、そうすることによって大都市での狂乱の地価騰貴防止にもつながると思うのであります。
 それに、総理、こうした大都市の地価騰貴は、我が党の岡田副委員長が指摘したように、中曽根民活路線の申し子だと言ってよいと思いますし、間もなく総理をおやめになるあなたが、なぜ今さらのように地価対策を新行革審に諮問なさるのか、私は極めて理解に苦しむのであります。
 また、企業の海外進出や多国籍企業化等による経済活動の国際化が急速に進んでいるにもかかわらず、国の財政の方は一国の範囲にとどまっているというところにいろいろと新しい矛盾が生まれておりますが、こうした中で我が国は世界第一の貿易黒字国になっております。しかし、国民の多くから見れば、世界一に飛び抜けて生活が豊かになったわけでもないし、国の財政も大変厳しいと言われるが、一体その富はどこへ行っているのだろうかと不思議に思えるに違いありません。それはなぜなのか、どうすれば国民に還元できるのかを含めて、政府のお考えを伺いたいと存じます。
 最後に、総理、我が党の青木議員も指摘いたしましたが、甚だ残念ながら、あなたの総理就任以来、美辞麗句と単語をうまく組み合わせたスローガン的文句、核抑止論等のタカ派的言動、そして防衛費突出予算が目立ち、一方では福祉の大幅な後退をさせながら、もう一方では一機一億ドル以上もし、その上、大枚な維持管理経費のかかる政府専用機を二機も購入しようなどという、格好よさには気前よくお金を使おうとするなど、何か方針上におけるアンバランスが目につきます。特に、経済政策の面ではマイナス評価にならざるを得ないものばかりが目につくのであります。
 あなたは、胸を張ってサミットで緊急経済対策について高い評価を得たと言っておられますが、同時に、各国首脳の実績を見ようという態度も一緒についているわけであります。これでは、ていのよいお手並み拝見ということにもなるのではありませんか。確かに今日の時代は、あるいは先進各国とも模索の時代だと言えるかもしれません。しかし、それにしても、我が国のこれまでの経済二重構造を変えるというのでありますから、あなたの言うような、時として痛みを生ぜざるを得ないなどという、おおらかな程度ではとても済むはずがありません。そのために大変な犠牲を強いられるであろう中小零細企業、農林漁業、雇用者の対策について、六十二年度予算においても、また今回の総理の所信表明においても、適切な対策が見出せないのがまことに残念であります。そのことを強く指摘して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(中曽根康弘君) 稲村議員にお答えをいたします。
 政治姿勢は謙虚であれというお言葉でございますが、謙虚に虚心坦懐に努めさせていただきたいと思っております。いろいろ、国民の皆様や野党の皆さんの御政策についても傾聴いたしたいと思いますので、何とぞ具体的な御提案を期待しておる次第でございます。
 次に、INFの配備の問題でございますが、これはシベリアにおけるSS20をぜひゼロにしてもらうための交渉上のテクニックとして、そういうこともあり得るということを許容し支持した、そういうことなのでございます。
 御存じのように、今いわゆるレイキャビクの幻の合意と言われた中には、シベリア百、アメリカ領土、アメリカの本土、アラスカを含めて百というような話があったと聞かされております。そういうような状況のもとに、両方の百がにらみ合ってゼロになるという可能性はあるわけです。その可能性を放棄して、シベリアに百だけもし万一認めるような交渉態度をとって、そうなった場合にどうなるか。シベリアの百をなくすために、こちらには相殺する同じカテゴリーのものがないと、そうなるというと、これは北海道であるとか、東北の日本の航空基地にあるいろいろなものをどうかしろ、そういう条件が向こうから出てくるかもしれない。そういう場合には、日本の防衛上非常に大きな問題が出るわけです。
 我々は非武装中立論をとりません。自衛隊を持って日本の最小限の防衛は全うしようという考えを持っているわけですから、日本の国益を守るためにもそういう相殺の条件をアメリカに与えておいて、シベリア・ゼロを実現したい、そういう念願でやっていることを御認識願いたいと思うのであります。
 軍縮という問題は観念論ではできないので、現にあるものをどうしてなくしていくかという、それは現実的、具体的に話が進められなければ成功しないということも重ねて申し上げるのであります。
 次に、中小零細企業対策でございますが、このような景気変動等のさなかにあって、もまれておりまする中小零細企業に対して特別の配慮をすることは大事でありまして、情報とかあるいは技術の開発であるとか、あるいは市場の開拓であるとか、あるいは金融や税制上の措置であるとか、あらゆる面につきまして我々は協力の手を差し伸べ、そして営業が万全に行われるようにきめ細かく政策を展開いたします。具体的には通産大臣からお答えを申し上げる次第でございます。
 中小企業等における労働問題も同様でございまして、これらの失業を防ぐためにも、我々は積極的に手を打っていかなければならぬと考えております。
 農業の問題につきましては農林水産大臣からお答えがあると思いますが、米の問題については、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を尊重いたしまして、国内産で自給する方針で対処してまいりたいと一貫して申し上げているとおりでございます。
 食管制度については、事情の変化に即応して適切な運営面での改善を図りつつ、米を政府が責任を持って管理することによって、生産者に対してはその再生産を確保し、消費者に対しては安定的にその供給の責任を果たす、そういう制度の基本は今後も堅持してまいりたいと思う次第でございます。
 農産物の市場開放問題につきましては、さきのサミットにおきましても、その前のOECD等におきましてもいろいろ論議が行われたところで、我が国は農産物の輸出国ではないわけです。百八十億ドルに上る農林水産物を輸入している国で、特にアメリカからは六十二億ドルぐらいの農産物を輸入している国でありまして、輸出競争をしている国とはまるきり条件が違うわけでございます。そういうような特異性もよく説明いたしまして、そして国際経済と調和のある姿勢でこれらの問題を解決していきたい。
 特に、農政審議会の報告を尊重して、農協の皆さんと一緒になってこれが合理化あるいは改革に努めてまいりたい、そう考えておるところでございます。
 森林政策は、現下の国情から考えて、水資源の涵養とかあるいは緑の保全とか、非常に重要な政策であると心得ております。これにつきましては、既に長期計画もできておることでございますから、その線に沿いまして我々は懸命に努力してまいるつもりでおります。詳細は農水大臣からお答えがございます。
 さらに、公共事業の自治体負担増の問題です。
 六十二年度補正予算における追加公共事業等に係る地方負担が極めて多額に上ることから、事業の円滑な実施に支障がないように適切な財源措置を講ずる必要があると考えております。
 具体的な方針は、今後、税制改革の取り扱いのいかんにより必要となる地方財政対策の見直しとあわせて関係省庁で協議して、追加公共事業等に伴う地方負担に係る具体的な財源対策や交付税法の改正内容等について決定してまいりたいと思います。
 また、地方単独事業の追加については、地方団体の意向もある程度踏まえて八千億円の追加措置を要請したものでございまして、緊急経済対策の趣旨に沿って各地方団体で積極的な対応がなされれば可能であると考えております。
 いわゆる金余り現象等につきましては、マネーゲーム的な動きについて、いたずらに投機的にならないように金融機関あるいはそのほかを監督してまいるつもりです。
 特に、金融機関の土地関連融資につきましては、公共性を自覚して投機的な土地取引に係る融資を厳に慎むように今後も指導してまいります。
 地価対策につきましては、関係閣僚会議におきまして、今後とも諸般の法制あるいは行政の実績あるいは先例等も追い、さらに新行革審にもこれが意見の開陳を要請しているところでございますが、総合的にこの閣僚会議を駆使いたしまして有効な政策を打ち出してまいりたいと思っております。
 国民生活の向上につきましては、質の向上を図るという時代に入ってまいりまして、政府は、経済構造調整推進要綱に基づいて、各種の質的向上のために努力しております。先ほど来申し上げましたように、これからはやっぱり減税、それから時短、住宅、こういう問題が重点であると考えます。
 外為法の改正の問題については、今回の東芝機械事件のような問題の再発防止に万全を期するため、戦略物資に関する輸出管理体制の強化拡充を通産大臣に検討を指示したところでございます。
 今後の輸出管理体制の強化拡充策の中には、行政上の措置、法律上の措置、両方の強化策もその検討の対象として入れさしておるわけでございます。
 経済政策の問題でございますが、総合的な経済政策の観点から、物価の安定それから行政改革、財政改革の推進というものを念願してやってまいりました。物価の安定につきましては成功したと思っております。しかし、為替の乱高下が起こりまして御迷惑をおかけしたことは甚だ恐縮に存じておるところでございますが、しかし、この補正予算及び緊急対策等によりましてこの情勢を好転せしめ、そして内需の喚起、失業問題の解決等に向かってこれでたくましく前進するように努力してまいる次第でございます。
 残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(田村元君) 円高不況に直面いたします中小企業の円滑な構造転換などを支援するために、六十年十二月以来、御承知の新転換法、それから新地域法の制定を初めとしまして、数次にわたり中小企業の構造転換対策を総合的に講じているところでございます。
 両法に基づく低利融資等の施策は着実に利用されておりまして、今後とも、これらの施策の積極的な活用により中小企業の円滑な構造転換を期待いたしております。
 本年度には、新たに、親企業の構造調整に伴い影響を受ける下請中小企業の新分野進出などを円滑化するため、低利融資及び技術開発助成制度を創設いたす所存でございます。
 さらに、さきの緊急経済対策を受けまして、今臨時国会に提出している補正予算案におきましても、特定地域対策等に中小企業対策費四百億円を計上しているところでございます。
 それから、中小企業を取り巻く円高等の厳しい環境変化のもとで、特に輸出型産地、企業城下町の中小企業の雇用は大変厳しい状況にあると認識しております。
 このような状況のもとで、中小企業が環境変化に的確かつ円滑に対応していけるよう、先ほど申し上げました新地域法及び新転換法に基づく低利融資等を初め、技術開発助成、中小企業金融及び税制の整備、小規模企業に対する経営改善普及事業の充実など、総合的な中小企業対策を展開してきているところでございますが、今後ともその充実に万全を期してまいりたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣平井卓志君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(平井卓志君) 中小零細企業は、我が国の経済、雇用の中で非常に大きいウエートを占めるものでございまして、こうした中小零細企業における雇用の安定が重要であるという御認識は、そのとおりでございます。
 三十万人雇用開発プログラムにおきましては、企業間、産業間労働移動の円滑化、地域における雇用開発の促進等、各種の施策を盛り込んでおるところでございまして、この中で中小企業に対しましては、各種助成金制度について中小企業ができるだけ利用しやすくなるよう、大企業に比べ特に高率の助成を行いますとともに、中小企業の事業転換、多角化に伴う能力開発を推進すべく、中小企業事業転換等能力開発給付金を創設するなど、手厚い助成を行っておるところでございます。
 今後とも、中小零細企業の実情を十分踏まえて、中小零細企業に配慮した雇用対策の充実に努めていく考えでございます。
 農業関係の労働力の問題でございますが、農業におきましては、中長期的に就業者の減少が見られるところでございまして、農業就業者の他産業への転換につきましては、産業構造の変化に伴う雇用問題として適切な対応が必要であると理解いたしております。
 このために、労働省としましては、円滑な職業転換が図られますように、職業能力の開発施策の機動的な運営に努めますとともに、地域雇用開発等促進法に基づきまして、雇用機会が不足している地域において新たな雇用機会の開発を進めるなど、産業構造の変化に対応した雇用対策の強化に努めてきたところでございまして、今後とも、これら各種の対策を積極的に推進いたしたいと考えております。
 最後に、北洋関係の離職者対策問題でございますが、北洋漁業関係の国際協定の締結に伴いまして、減船を余儀なくされることによって発生する離職者につきましては、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づく特定漁業の指定を行いまして、船員保険の失業保険延長給付、職業転換給付金の支給等によりまして、その再就職の促進等に努めておるところでございます。
 また、北洋漁業関連の水産加工業につきましても、冷凍水産物製造業等三業種を特定不況業種に指定いたしますとともに、北海道等の北洋漁業開運地域を、本年四月より施行されました地域雇用開発等促進法に基づきまして特定雇用開発促進地域に指定する等、各般の対策を講ずることによりまして、これら業種、地域の関係労働者の雇用の安定に万全を期しているところでございます。
 今後とも、関係省庁と十分連絡をとりながら、北洋漁業関係離職者の雇用機会の確保等に全力を挙げたい、かように考えております。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(加藤六月君) 稲村議員の御質問にお答えいたします。
 まず、本年産の生産者米価につきましては、将来にわたって我が国稲作の健全な発展を図り、国民の主食である米の安定供給を図っていくとの方針のもとに、米需給の趨勢、現に進みつつある生産性向上や生産コスト低減の状況、最近の経済実勢等を的確に反映し、国民の理解と納得と支援の得られるものとなるよう決定したところであります。
 また、あわせて、我が国稲作農業及び農村の活性化対策を講ずることとしており、今般の補正予算におきましても、農業生産基盤整備の促進や経営近代化施設の整備等の稲作コスト低減対策、農村生活環境の整備や地場産業の育成等の農村活性化対策等の諸施策を盛り込んだところであります。
 今後とも、稲作の担い手が明るい希望を持って稲作農業に取り組めるよう各般の施策を講じ、生産性の向上を図りつつ、足腰の強い農業を築いてまいりたいと考えております。
 なお、農村の雇用対策に関しましては、労働省等との緊密な連携を保ちつつ就業機会の確保を図ってまいりたいと考えております。
 また、国民の主要食糧である米については、不作等の不測の事態に備えるという基本的な考え方に立って、三度の過剰の発生を防止しつつ、適正な水準の在庫を保有し、米の安定供給を図ることとしておるところであります。
 次に、生産諸資材の価格の引き下げにつきましては、農産物の生産コストの中で、農業機械、肥料等の生産資材費の割合が高いことにかんがみ、生産性向上を図るためには、構造政策の推進に加え、これら生産資材費の節減が重要な課題であると考えております。
 肥料につきましては、六十一年七月から六十二年六月までの昨肥料年度において一一・四%引き下げが行われ、さらに本年七月からは五・六%引き下げられたところであります。農業機械につきましても、外国産トラクターについて本年一月から平均五%の引き下げが行われたところであります。
 今後とも、関係省庁とも連携を図りつつ、農業生産資材が適切な価格で安定的かつ円滑に供給されるよう、関係業界、団体の指導に努めてまいる所存でございます。
 次に、土地改良費負担につきましては、その軽減を図るために、今後事業を実施する地区について、整備の程度に応じた経費及び地元負担額をあらかじめ明示し、土地改良区等が適切な整備水準を選択する方式の導入、本日付で通達を出しましたが、新規地区採択の抑制と継続地区の早期完了を図るための予算の重点配分、立地条件等の実情に即した経済的工法の工夫等による事業費の引き下げを図るとともに、農林漁業金融公庫の農業基盤整備資金について、六月十六日から団体営補助残は年利四・七%から四・二%へ、県営補助残は年利五・二%から四・七五%へそれぞれ引き下げたところであり、これらにより事業費の抑制及び農家負担の軽減に努めております。
 次に、森林・林業の活性化でございますが、我が国森林・林業、木材産業の現状は、国産材需要の停滞とこれに伴う価格の低迷等による収益性の悪化など、極めて厳しい状況にあります。
 このような状況に対処するため、昨年の林政審議会の報告を踏まえ、木材需要の拡大、造林、林道等林業生産基盤の整備、国産材主産地の形成と担い手の育成確保等、各般の施策を推進してまいる所存であります。
 国有林野事業につきましては、昨年の林政審議会答申に即して現行改善計画を改定強化し、業務運営の一層の改善合理化、要員規模の適正化等最大限の自主的改善努力を尽くすとともに、所要の財源措置を講ずることにより、国有林野事業の経営の健全性の確立に努めてまいる考えであります。
 次に、漁業関係であります。
 昨年度の北洋減船に伴い離職を余儀なくされた漁船乗組員につきましては、先ほど労働大臣からお答えがございましたが、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、すなわち漁臨法等に基づき、就職指導、職業訓練、職業転換給付金の支給等の措置が講じられているところであります。
 さらに、本年度から新たに漁業離職者に対し、他業種の漁船への体験乗船等を実施し、新たな分野における漁労技能者としての育成を促進してまいることとしております。
 今後とも、関係省庁との連絡を密にしつつ漁業離職者の再就職促進について努力をしてまいる所存であります。
 なお、捕鯨問題につきましては、今後とも科学的根拠に基づき、捕鯨の存続のため全力を傾けてまいる所存であります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(宮澤喜一君) 地方自治体の財源につきましてお尋ねがございましたのですが、御承知のように、政府の提出いたしました税制改革案が前国会で廃案になりまして、かわるものができておりませんために、交付税を決定することができない状況でおるわけでございます。
 ただ、ただいま御指摘のように、この補正予算に伴います地方の負担増というものは当然予想されますし、また過年度分の精算も精算増が間違いなくあると思いますので、したがいまして、税制改革の案が固まりました段階で自治大臣と御相談をいたしたいと思っております。
 地方財政の運営に支障がないように必ず措置をいたします。(拍手)
#36
○議長(藤田正明君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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